地下時間 (あくる)
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はじまり

Undertale熱が再燃したので



*ひんやりとした感覚が体を包んでいる。

*あなたはそれに違和感を覚えた。

 

……?

 

花の匂いが鼻をくすぐる。うつぶせに倒れていた体を起こした。

体を起こすためについた手の下には柔らかな感触の花が群生して咲いていた。いや、倒れていた場所は咲いている花たちの中心だったらしい。よくよく見てみれば体の周りは花だらけで上からは光が差し込んでいた。

…じっとしていても仕方がない。この穴であろう場所から一つだけ伸びている道を進んでみることにした。

 

少し進むと門の様なものを見つけた。しばらくじっと見ていると目の前に白い枠で囲まれた四角いものが現れそこにメッセージが現れた。

 

*あなたは門を見つけた。

*だが扉はついておらず、どうしてこれがあるのだろうと疑問を抱いた。

 

四角いものは足を一歩踏み出せば消えてしまった。もう一度門の様なものを見れば同じメッセージが同じ四角に囲われて現れる。何度繰り返しても同じ現象が起きるようだ。

不思議に思いながらもそのまま門の様なものをくぐれば、小さく光が差し込む場所に顔のついた花が咲いていた。

その花を近くで見ようと足を進めると、なんと花は口を動かし話しかけてきた。

 

*やあ!

*ぼくはFLOWEY。

*お花のFLOWEYさ!

 

声と同時にまた四角いものが現れる。しかも今度は顔アイコン付きだ。

 

*きみは困っているみたいだから、この地下世界の過ごし方を教えてあげるよ!

*準備はいい?

*いくよ!

 

花が動いて話しているのは驚いたが、困ってはいたので申し出はありがたい。デジャブのような気がするが、気にせずうなずいた。すると不思議な効果音とともに胸のあたりから真っ赤なハートが飛び出した。

メッセージが書かれていた四角いものにハートが囲われる。

四角の下には LV1 と書かれ、その隣にHPの文字と黄色いバー、バーの横には 20/20 という数字。まるでゲームのようだ。

体を動かすとハートもそれに合わせて動いた。ハートに手を伸ばして動かせば手の動きに合わせて動く。ついでに手で動かしたハートに合わせて体も動いた。だがハートは四角の外に出すことはできないようだ。

なんだこれは。

 

「そのハートが見える?それはきみのソウル、君の心や体のあらわれさ。きみのソウルは弱いけど、LVを上げると強くなっていくから安心してね。

LVってどういう意味かって?もちろんLOVEのことさ。

LOVEがほしいよね?少しだけ僕がきみに分けてあげるよ!」

 

こんどは声とともに吹き出しがFloweyの横に飛び出した。

分けてあげる、と言うと花についた顔がウィンクをする。花のくせになんて器用なんだろう。白い小さな粒がFloweyの周りに浮かぶ。

 

「これがLOVEだよ。今から落とすから動いてたくさん集めてね!」

 

そう言いうと白い粒を一斉に落としてきた。

動いて、とは言われたが動かずともすべての白い粒が四角の中のハートに向かってきている。下手に動くと逆に取りこぼしてしまいそうだ。

ハートを動かさずにそのままじっとしていると粒がハートに触れる。すると立っているのがやっとなくらいの痛みと衝撃が体に響いた。どういうことかとFloweyを見ると醜悪に顔部分がゆがんだ。

 

「バーカ。

この世界は殺るか殺られるかなんだよ。」

 

吹き出しの文字は嘲笑うかのように震えていた。

ハートの入った四角がさっきの粒に隙間なく囲われる。

 

「 死 ね 。」

 

ヒャーハハハ!と狂ったような笑い声とともに粒でできた円が狭められていく。恐怖で体が動かない。体を動かしていないからかハートも動かない。これが自分を表すソウルという言葉をどうしようもなく理解した。

粒が寸前に迫る、というところで粒が消え痛みもスッと消えた。

Floweyも驚いたのか顔が元に戻る。そしてどこからともなく現れた火の玉に吹き飛ばされ茎部分からどこかへ飛んで行ってしまった。驚くことに彼には根っこが付いていなかったらしい。変わった植物もいたものだ。

突然の出来事に的外れなことを考えているとFloweyよりも大きな生物がやってきた。その生物は白くモフモフで頭に小さなツノが生えている。そして垂れ耳だ。

彼女は優しく語りかけてきた。

 

「なんて恐ろしいモンスターなんでしょう。か弱い子供を傷つけるなんて…

怖がらなくてもいいのよ、おちびさん。私はTOLIEL。このRUINSの管理をしているの。

ここにあなたのような人間が落ちてくるのは本当に久しぶりなの。

ついてきて!地下を案内するわ。」

 

どうやらFloweyとTolielはモンスターらしい。

*こっちよ。といってTolielは進んでいってしまう。

こちらはさっき優しくされた後にひどく裏切られた直後だ。彼女を信じていいものかと首を傾げた。しかし戻ってもあるのは小さな花畑のある行き止まりしかない。警戒しながら彼女の後を追った。

さっきと似たような門の様なものをくぐると待っていたTolielはこちらを気にしながら進んでいく。

目に映るのは落ち葉と階段と遺跡。落ち葉の中にはキラキラと輝く何かがあった。Tolielは階段を上っていくが自分はキラキラしたものが気になりそっと手を伸ばした。

すると

 

*遺跡の影がぼんやりと現れ、あなたは決意で満たされた。

*HPが全回復した。

 CHARA LV1 Ruins-入口 セーブ完了

 

というメッセージが現れた。CHARA…?

よくわからないがセーブとは節約したり、誰かを救うSAVEではなく、ゲームの方のSAVEでいいのだろうか。疑問に思いつつもTolielがこちらを待っているようなので少し早めに階段を駆け上った。

 



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遺跡 そのいち

遺跡に入ると我が子と呼ばれ、パズルの説明を受けた。彼女がパズルを解いて開いた扉を潜り抜けると、次の部屋でこちらを待っている。

次の部屋に行く前に近くの看板を読めば、賢い者も愚かな者も中道は通らない。という文が書かれていた。このパズルの正解を表しているようだ。…本当にそれだけだろうか?

次の部屋に行けばこんどはパズルをやらせてくれるらしい。しかもしるしまでつけてくれたそうだ。とてもうれしい。

彼女の付けたしるしのついたスイッチだけを押すと道の先にあったトゲが引っ込んだ。

 

「よくできました!お利口さんね、我が子。」

 

と褒められ自分の口角がほんのりと上にあがるのを感じる。

照れていると、さぁ次の部屋に行きましょうと彼女がいった。

 

誘導されるままに次の部屋に入るとマネキンが置いてあった。

地下ではモンスターが襲ってくることが有るらしい。でもお話すればTolielが仲裁してくれるという。それまではお話していればいいそうだ。

Dummyで練習してみてほしいと言われたのでDummyとよばれたマネキンの近くに立つ。するとFloweyと話していた時に聞こえた効果音と共にソウルが胸から飛び出した。

 

*Dummyと遭遇した。

 

というメッセージとともにFloweyの時にはなかった4つの四角が現れた。その四角にはそれぞれFIGHT、ACT、ITEM、MERCYと書かれていてそれぞれにアイコンがついている。ソウルはFIGHTの四角の中にあるが、手で動かせば他の四角の中にも入れるようだ。

ACTの中にソウルを入れてDummyを調べてみるとステータスが四角の中に表示された。

次はTolielに言われた通りACTにソウルを入れてお話してみる。

 

*あなたはDummyに挨拶をした。

*そのまま目覚めた時の花畑について話した。

 

*一方的な会話だ。

*これは会話と言えるのだろうか…?

 

*TOLIELはあなたを見て喜んでいる。

 

*あなたは勝利した!

* 0 XP と 0 gold を得た。

 

戦闘が終わればソウルは胸の中に戻り、Tolielは微笑みながらこちらを褒めてくれた。

突然終わった戦闘にしばらく呆けてしまったが、次の部屋でTolielがこちらを待っているのを見てハッとして彼女を追いかけた。

 

次の部屋に入ると、この部屋にもパズルがあるのよ。解けるかしら?と言いながら、こちらを気にしつつTolielが進んでいく。彼女を追いかけていると突然例の効果音とともに戦闘に入った。ソウルが胸から飛び出る。どうやら初めての実戦の時のようだ。

 

*Froggitが襲ってきた!

 

カエルの様なモンスターがあらわれた。四角のメッセージによるとFroggitというらしい。

早速言われた通りにしようとACTにソウルを入れてFroggitを調べる。FroggitのATKやDEF、人生観がわかった。

調べ終わるとFroggitのターンになり、こちらに何かしようとしてきた。

だが、Tolielが凄い形相で戦闘に入ってきてFroggitはどこかへ行ってしまった。

仲裁と言っていたのはこれのようだ。仲裁とは何だったのか、知っている仲裁と違う気がする。

 

強制的に戦闘を終わらされた後にTolielに話し掛けると、これがパズルよ。とトゲだらけの床を指す。でも…と彼女が続け、手を握って頂戴、とこちらに手を差し出してきた。

言われた通りに手を握る。手をつなぐと彼女は針だらけの床に足を踏み出した。すると彼女の足元のとげがスッと引っ込み通れるようになっていく。一歩、また一歩と踏み出したところは全て安全な場所のようで、すんなりと向こうの道にわたることができた。

わたり終わると彼女の手が離され、少し残念に思った。彼女の手は程よくぷにぷにで甲の部分は素晴らしいモフモフだったからだ。

手を離した彼女は、このパズルはまだあなたには危険すぎるものね。といって次の部屋へ向かって行った。

 

次の部屋に入ると彼女は口を開いた。

 

「ここまでよくやってきたわね、我が子。けれど、ちょっと辛いことをしなくてはいけないのよ。この部屋は一人で進んでほしいの。ごめんなさいね。」

 

そういうとTolielは背を向けて歩き出した。すぐに追いかけ始めたが体が大きい彼女の方が当然歩幅も大きくすぐに見失ってしまった。しばらく歩き続けても終わりが見えずに少しだけ不安になってくる。

それでも止まらずに歩き続ければなぜか不自然にある大きな柱があった。不思議に思いながらも柱の前を通り過ぎるとその柱の陰からTolielが出てきた。

彼女曰く今のは一人でいられるかのテストで、危険が内容に柱の陰からこちらをずっとうかがっていたらしい。

用事があるから待っていてほしいのだと言う彼女から携帯電話を差し出される。

携帯電話を受け取れば何かあったら連絡するのよ、ここでいい子でまっていてちょうだいねと言って彼女は行ってしまった。

 

…これで探検ができる!

自分が言いつけを守るいい子だと思ったら大間違いだ。でもTolielはFloweyみたいにだますことはしなさそうだとなんとなく思った。言いつけを守るのはそれとはまた別問題なだけだ。

だって戦闘もまともにやってないし、パズルだって簡単なものしか説いていない。地下にはたくさんパズルがあるとTolielはそう言っていた。だったら少しくらい解いたとしても全然問題ないはずだ。

そう言い聞かすと渡された携帯電話をしまい一人次の部屋へ歩き出す。

 

――Prrrr

 

ビクッと体が震えた。まさかばれたのだろうか。彼女は今出ていったばかりなのにもう電話がかかってくるとは思わなかった。ピッと通話ボタンを押して耳に当てる。電話に出るとまたアイコン付きの四角いものが目の前に表示された。耳に当てているのに顔が見えることに驚いた。ここにきてから驚いてばかりだ。

 

「もしもし、TOLIELよ。部屋から出てたりしないわよね?

その先にはあなたに教えていないパズルがあるの、一人で解くのは危ないからちゃんと待っていてね。」

 

――ガチャン

 

出たとも出ていないとも言わなかったが誤魔化せたようだ。

進んだ部屋には落ち葉のうえにあのキラキラがあって、入り口の側にはFroggitが佇んでいた。ここの部屋では二つに道が分かれている。どちらに行ったらいいのだろうか。

しかしまずは佇んでいるFroggitだ。せっかくのモンスターと話をするチャンスなのだから、どちらに行くのかは後回しにしよう。早速戦闘でお話ししようとFroggitに近付く。すると戦闘画面が現れることはなく、向こうから話しかけてきた。

 

「*ゲコッ、ゲコッ。

(ちょっといいかな、人間さん。モンスターとのバトルでアドバイスがあるんだ。)

(ACTで行動するかFIGHTで弱らせたモンスターはバトルしたがらなくなるから、どうか…MERCYで停戦しておくれ。)」

 

アドバイスを聞いてからTolielがいなくなってどうやって戦闘を終わらせたらいいのか知らないことに気が付いた。アドバイスしてくれた彼にお礼を伝えてFroggitを見ると四角いものが現れた。

 

*2回のゲコッの中に凄くたくさんの情報が詰まっていた。

*あなたの中のモンスターの好感度が上がった。

 

この四角は自分の中の状況を正確に表している。だが好感度…?そんなものはあった記憶はない。

……?なぜ無いと思ったのだろうか。よくわからない。自分の中に知らないモノがある様な気がする。

首をかしげながらも次はキラキラに向かって歩く。足元の落ち葉が音を立てて何とも言えない気持ちにさせた。

キラキラに向かって手を伸ばす。

 

*カサカサとなる落ち葉を通り、あなたは決意でみたされた。

 CHARA LV1 Ruins-落ち葉の絨毯 セーブ完了

 

このキラキラではやはりセーブができるようだ。死んだらここからやり直せたりして、とバカげたことを考えて一笑に付した。

 



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遺跡 そのに

たぶん書き直すかも、きっと、メイビー


この部屋の目につくものはあらかた調べた。後回しにしていたが分かれている道に目をやる。いったいどちらの道がパズルにつながっているのだろうか。

Tolielがパズルを解くのを見た瞬間パズルがやりたくてたまらなくなった。考えてスイッチを押したり、特定の行動をしてふさがっている道が開いた瞬間がとても好きになったのだ。

 

まずはFroggitの近くにある方の道へ行ってみる。

部屋に入るとすぐに行き止まりになっていた。部屋の両脇には水が揺らめいていて、部屋の中心に手が届きそうな台とその上に入れ物が置いてある。

 

*おひとつどうぞ、とある。

*キャンディーを取る? はい いいえ

 

入れ物に手を伸ばすと四角にメッセージが現れた。はいといいえの選択方法が分からないので一粒取ってみる。

 

*キャンディーを取った。

*([c]でメニューをひらく。)

 

出てくるメッセージといい、本当にゲームみたいだ。

[c]とはなんだろうか。指でcを作ってみても何も起こらない。ゲームのボタンかと思い、体のどこかが対応していないかとペタペタと触ってみる。

すると、いつもソウルが飛び出す胸のあたりに左手で触れた途端、広場らしきものの映像が表示された。

CHARA LV1 というSAVEの時に見かける文字とCotinue Resetという文字が浮かんでいる。

…今は広場にだれもいない。

左手でもう一度胸に触れると映像は消えてしまった。

次に右手で胸に触れてみる。すると今度はちゃんとメニュー画面が出てきた。

こちらは小さな四角にCHARA LV1 HP 20/20と書かれその下の四角に持ち物、状態、電話と書かれていた。

持ち物をソウルで選択すればモンスターキャンディーの文字と、使う、詳細、捨てるが書かれた四角が新たに表示された。詳細を選択してみる。

 

*モンスターキャンディー HP10回復 -間違いなくリコリスあじではない。

 

モンスターキャンディーの説明が出た。リコリス味ではないのは分かったが結局何味なのかわからなかった。

回復とあるが食べれば傷が治ったりするのだろうか。そんなバカな。

もう一度右手で胸に触れれば出ていた四角はすべて消え、視界がクリアになった。

 

ここにはキャンディー以外何もないようだ。元の場所に引き返し、今度はもう片方の道へ歩き出す。

戯れに道のわきにある落ち葉を蹴飛ばそうと近寄れば効果音と共にソウルが飛び出した。目の前にはどこから現れたのかFroggitが立ちふさがっている。

 

*Froggitが飛び出してきた!

 

本当に初めての実戦だ。DummyでやったときのようにACTを選ぶと*調べるのほかに*お世辞と*威嚇がある。ソウルを*お世辞に合わせてお世辞を言ってみた。

 

*あなたはFroggitにおなかの部分がcuteだと伝えた。

*Froggitは言葉の意味を理解できなかったが、それでもお世辞に照れている。

 

「(感慨深く)ゲコッ。」

 

相手のターンになると魔法でできたハエがソウルめがけて飛んでくる。

複数飛んでくるハエのうち一匹がソウルに当たった。チリッと体が傷んだが、HPが18/20になっている以外見た目に変化はない。他の数回かわし切れば相手のターンは終わったようだ。

 

*Froggitはあなたと戦うことに抵抗を感じている。

 

ターンが回ってきたのでもう一度ACTを選ぶとFroggitの名前が黄色くなっていた。四角に書かれた文章と名前の色からMERCYができるのではないかとMERCYを選択する。それからFroggitを選択すればFroggitはどこかへ行ってしまった。

 

*あなたは勝利した!

*0 XPと2 goldを得た。

 

ソウルが戻る。うまくできたことに安心して息をついて顔を上げるとFroggitがいた場所に硬貨が落ちていた。拾い上げ、周りを見渡すがFroggitが取りに戻る様子はない。

少しだけ来た道を戻る。

 

「*ゲコッ、ゲコッ。

(どうしたんだい、人間さん。え?モンスターがお金を落としていったがどうすればいいのかわからない?)

(もらっておきなよ、きっと満足できる時間が過ごせたことへのお礼さ。ほんの少しお詫びもあるかもね。)」

 

アドバイスをくれた方のFroggitに落とし物について尋ねれば、もらっていいと返された。お礼を伝えてお金をサイフにそっとしまい次の部屋に進む。

 

次の部屋には特に何もなかった。しいて言うならばダクトが二つ付いているくらいだ。パズルはまだ無いらしい。少し駆け足気味で部屋を横断…しようとした。

部屋の真ん中に差し掛かると突然足元に穴が開きそのまま下に落ちていく。

けがをしそうな高さだったが、下に落ち葉がぎっしりと敷いてあったおかげで掠り傷ひとつない。

落ち葉の左右には普通のドアくらいの大きさの入口。右のほうへ近づけばそのまま吸い込まれて、初めに見えたダクトから飛び出して足元に穴が開いた場所の先に出た。

後ろを振り返れば道の真ん中にぽっかりと穴が開いている。よく見れば穴の周りの地面が不自然に見える。

どうやら上の通路を通ると必ず落ちるようになっていたようだ。

 

――Prrrr

 

不便そうな通路を抜け次の部屋に足を踏み入れると電話が鳴った。通話ボタンを押すとまたアイコン付きの四角が現れる。

 

「もしもし、TOLIELよ。何か理由があるわけではないけれど、あなたはシナモンとバタースコッチ、どっちが好みかしら?」

 

*あなたはバタースコッチと答えた。

 

「うんうん、わかったわ。ありがとうね!」

 

――ガチャン

 

――Prrrr

 

「もしもし、TOLIELよ。シナモンが嫌い、というわけじゃないのよね?あなたの好みは分かったけれど、もし食卓に並んだらお鼻が曲がるくらい嫌なのかしら?」

 

*あなたは多すぎなければ大丈夫だと答えた。

 

「うんうん、わかったわ。それと、待っていてくれてありがとうね。」

 

――ガチャン

 

電話が切れてから一歩踏み出すとまた電話がかかってきた。シナモンは少量ならおいしいけれど、かけ過ぎると他の風味が損なわれてしまう絶妙なスパイスで、加減が難しいので多く使われているものは苦手だ。

 

気を取り直して部屋を見ると行き先がトゲでふさがれている。そして動かせと言わんばかりに部屋の真ん中に感圧式のタイルと載せられそうな岩が置いてあり、壁には看板がはられている。

看板には4つのうち3つを動かすのを推奨するとあった。

しかし岩は4つもない。

とりあえず岩を動かそうと押してみると、なんと大して力を入れていないのに岩が動いた。自分の身の丈の1/4程の大きさがある大岩が、だ。地下には不思議なことがあふれている。

岩を感圧タイルに動かせば道をふさいでいたトゲが一斉に引っ込んだ。正解のようだ。念願のパズルだったがこれだけでは足りない。さらなるパズルを求めて次の部屋へ進んだ。

 



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遺跡 そのにのに

いつか書き直す ぱーとつー






次の部屋に行くとそこにはダクトと不自然な地面。二つ前の部屋で見た光景だ。不自然な地面に一歩踏み出せば当然のごとく底に穴が開いて落ちた。

下の落ち葉に着地して辺りを見渡すと、今度は上にあがれそうな入り口が一つしかない。その代わりに看板が一つ。その看板によると上の部屋を進むには落ち葉を踏まないように歩けばいいらしい。よくよくみれば落ち葉が無い場所が道のようになっている。

上に戻ろうとするとFroggitのペアが飛び出してきたが、お世辞を言ってMERCYすると二匹ともどこかへ行ってしまった。

上にあがり下の部屋の落ち葉がない道を思い出しながら歩いていけば下の部屋と同じ位置に看板があるのを見つけた。だがその看板の下には落ち葉が敷き詰められている。少し迷ったが下の部屋のあそこには落ち葉はなかった。好奇心のままに看板の下の落ち葉を踏みしめて看板の文字を追う。

*下の看板をよまなかったの?

………。してやられたような気持ちになった。

 

落とし穴パズルを渡り切ると地面から何かがポコッと現れた。よく見ようと近付けば効果音とともにソウルが飛び出した。

 

*Moldsmalが道をふさいだ!

 

地面から現れたのはモンスターだったようだ。Moldsmalはカップゼリーのような形状の体を上下に伸び縮みさせてこちらを通さないようにガードしている。

しかしACTを選んでみるとMoldsmalの名前は最初から黄色だ。

このままMERCYしてもよさそうだが、初めて会ったモンスターなのでACTをしてみることにした。

頑張って身振り手振りで*ナンパしていることを伝えてみる。

 

*あなたはお尻をフリフリした。

*Moldsmalもフリフリし返した。

*なんと意味深な会話だろうか!

 

「*ヌメヌメ*」

 

ACTが終わり相手のターンになると上から丸い塊がゆらゆらと落ちてきた。そして中心辺りに近づくと途中で10個の小さな塊になって花火のようにはじける。Froggitよりも避けづらい攻撃だ。

避けきれず小さな塊がソウルをかすめるとまたチリッとした痛みが体を襲った。HPが16になったが、またもや外傷は見当たらない。

 

*Moldsmalは思案に暮れている。

 

ターンが回ってきたが初めから名前が黄色のせいでこれで合っているのかどうかの判断がつかない。今度はMoldsmalの*真似をしてみる。

 

*Moldsmalの横に寝転んだ。

*世界について少しだけ深く理解した気がする。

 

「*セクシーなプルプル*」

 

今度はMoldsmalの体のプルプルに合わせて塊が落ちてくる。しかし落ち来る場所が左に固まっていたおかげで今回はノーダメージでターンが回ってきた。

 

*Moldsmalは物思いにふけっている。

 

相変わらずMoldsmalの名前は黄色いままだ。これ以上変化しないのだろう。MERCYをした。

 

*あなたは勝利した!

*0 XP と 1 gold を得た。

 

Moldsmalがふさいでいた場所が若干モサモサしている。…これはカビ?ひょっとして丸い塊はカビだったのだろうか。

道を通り抜けて次の部屋へ行くとそこにはトゲが行く手を阻んでいて岩と感圧式タイルが3つずつ置いてあった。デジャブを感じる。

左2つの岩を押すとこれらの岩もやはり簡単に動いた。岩が自分から動いてくれているような気までしてくる。そして最後に一番右の岩を動かそうとすると触れた途端声が飛んできた。

 

「おおっと!俺を押そうってのはどこのどいつだ?

ん?動いてくださいだって?しょうがないな、おちびちゃん。今回だけだぜ?」

 

動くように言えば彼は半歩分動いた。だがタイルまで距離がある。

 

「あん?タイルにのってくださいだって?あいよ、まかせろ。」

 

彼がタイルの上に乗ればトゲが引っ込む。そこを通ろうと近付けば乗る直前でトゲが勢いよく突き出した。

岩を見ればタイルの上から外れている。

 

「じっとしていてください?やれやれ、初めからそう言ってくれよ。岩づかいの荒い奴だな。」

 

頬を少し膨らませながら文句をいうと彼はどっこいしょと再びタイルの上にのってくれた。もう一度引っ込んだトゲに近付いても今度は飛び出したりしなかった。それでも早く通り抜けたくて駆け足気味に進んだ。

 

トゲの部屋を抜ければそこにあったのはネズミの巣穴と丸い机、あとはセーブポイント。机の上にはチーズが直に置かれている。チーズをのせるための皿は見当たらなかった。

じっとチーズを見つめればいつものメッセージが出てきた。

 

*このチーズは随分と長い間ここにあったようだ。

*机にへばりついている…。

*あなたはこのチーズを食べない方がいい。

 

このメッセージは親切にもこちらを心配してくれているらしい。さすがに食べようとはしていなかったが、チーズは放っておくことにした。

ネズミの巣穴からは時々チュウ、チュと鳴き声が聞こえる。御在宅のようだ。

光っているセーブポイントに手を伸ばす。

 

*いつかネズミが穴から出てチーズを食べる日が来るのだろう…

*あなたは決意でみたされた。

 CHARA LV1 Ruins-ネズミの穴 セーブ完了

 




これからセーブポイントはセーブポイントで統一する、と思う。

戦闘描写が長いのはRPGだし、それ以外移動しかしてないし、アンテで書けるのってイベントと戦闘がメインだから許してヒヤシンス。

補足
Moldsmal は 公式日本語だと チビカビ です。


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遺跡 そのさん

ナプスタ戦メインです。





セーブした場所の次の部屋に行くと、白い何かが部屋の真ん中にある。落ち葉の上にあるそれは袋のようにも布のようにも見える。

大きなビニール袋か何かだろうか。先の道は二手に分かれているが、どちらにせよアレをどかさないと進めなさそうだ。

どかしに行こうと一歩踏み出すとソウルが飛び出した。

 

*FroggitとWhimsunが向かってきた!

 

また初めてのモンスターがいる。彼の名前はWhimsunというらしい。悲しそうな顔をして小さな羽でFroggitの右上を飛んでいる。Whimsunの名前も最初から黄色だ。

とりあえず悲しそうな顔をしたWhimsunを*慰めるために声をかけた。

 

*あなたはWhimsunを慰めようとした。

*しかし、初めの一言の半分もいかないうちにWhimsunは泣いて逃げ出した。

 

逃げ出したというメッセージが出てWhimsunはどこかへ飛んで行ってしまった。

何がいけなかったのだろうか。地下に来てから逃げられたのは初めてだ。

残ったFroggitは攻撃を避けてお世辞を言ってからMERCYした。

 

*あなたは勝利した!

*0 XP と 2 gold を得た。

 

戦闘を終えて彼らがいた場所を見るとFroggitのいた場所には 2 gold 落ちていたが、Whimsunがいたところには何もなかった。やはりWhimsunを満足させることができなかったのだろう。

すこし悔しい気持ちになった。

 

出鼻をくじかれたものの、さっきの戦闘でダメージをくらわなかったためHPはセーブポイントで回復した数値、つまり20のままだ。

ゆっくりと白いものに近付いてみる。すると白いものには顔がついていた。コレもモンスターだったようだ。

 

*zzzzzzzzzzzzz…

*zzzzzzzzzzzz…

 

*(もう行ったかな…)

*zzzzzzzzz…

 

*お化けは寝たふりをして、声に出して「z(ゼット)」と言い続けている。

*押しのける? はい いいえ

 

選択肢が出た。押しのける以外にも方法があると思うのだが、いつも動けば消えるメッセージが今回に限って消えない。

押しのけるかどうかを選ぶしかないようだ。

仕方がないので押しのけようと白いモンスターに手を触れようとすると効果音と共にソウルが飛び出した。

 

*Napstablookだ。

 

お化けが目をうるうるさせてこちらを見つめている。

………?

このモンスターとの戦闘画面になった途端、独特な音楽が流れ始めた。

あたりを見渡してもオーディオ機器は見当たらないが、音は間違いなく自分の鼓膜を震わせている。

不思議な感覚だが嫌ではない。それにこの音楽は何となく目の前の彼にあっていると感じた。

他のモンスターと何か違うのか*調べてみる。

 

*NAPSTABLOOK -ATK 10 -DEF 10

*このモンスターにユーモアのセンスはないようだ。

 

この現象のことが分からなかった上に、ひどく辛辣なメッセージが出てきた。

だが自分はこのメッセージが本当のことを描写することを実感し、知っている。…申し訳ない気分になった。

 

「ああ、ぼくって本当におもしろい。」

 

彼はそういうと大小さまざまな涙を降らせてきた。多すぎて避けきれない。何粒か当たったが、俗にいう無敵時間のようなものがあるらしく、HPは1粒分しか減らず17になるだけで済んだ。

 

*Napstablookは宙を見つめている。

 

なぜ彼が涙を流しているのかはわからないが、きっと悲しんでいるのだろう。

Whimsunを慰めるのには失敗してしまったが今度こそは、と彼の気分を上げさせるために*ナンパしてみることにした。

 

*あなたはNapstablookに一緒にどこかへ遊びに行こうと誘った。

 

「でも…きっとがっかりしちゃうよ。」

 

また彼が涙を降らせてくる。だが気のせいか少し涙の量が減った気がする。今度は避けきることができた。

 

*Napstablookは一人になりたいと思っている。

 

涙の量からしてこの方向性で間違ってはいないらしい。

更に気分を上げさせるために今度は直接的に*励ましてみることにした。

 

*あなたは笑みを浮かべて励ましの言葉を贈ろうとした。

*しかし「がんばれがんばれ、できるできる!絶対できる!やれるって!気持ちの問題だって!そこであきらめるなそこで!Never Give Up!」……。

*謎の大きな励ましの声によってかき消されてしまった。

*この部屋の温度が上がったような気がする。

 

「へっ…

何が起こったのかわからないけど、今はホントにそんな気分じゃないんだ。

ごめんなさい。」

 

今回は涙は降って来なかった。その代わり拒絶の言葉がソウルの入った四角に直接出てきたが、触れてもダメージを受けることなくターンが回ってきた。

 

*Napstablookは少し機嫌が良くなったようだ。

 

引き続き*励ましを続ける。

 

*あなたはNapstablookにちょっとしたジョークをかました。

*Gilbert(ギルバート)がパーティを開いたら参加者はghost(おばけ)ばかりだった。

*どうしてか?それは G (ギルバート)がパーティのhost(ホスト)だったからだ。

 

「へっ…へっ…」

 

またNapstablookは涙を降らせてきたが、今度は目に見えて涙の数が減ってきている。どうやらゴーストジョークはお気に召したらしい。

 

*励ますとNapstablookの気分が更によくなっていくようだ。

 

メッセージもNapstablookを励ますのを推奨しているようだ。さらに*励ましてみる。

 

*Spirit(ゆうれい)はビン、特に酒瓶の近くでは両手を上にあげたりはしない。棒立ちのままがベストだ。

*だってSpir'i'tがSpir'y'tになったりしたら幽霊がまとめてSpirytus(スピリタス)になってしまうかもしれないからだ。

*Spirit(スピリット)us(私たち)ってね。

*あなたは励ますためにもう一度ジョークをかました。

 

「へっ…へっ…へっ…」

 

*Napstablookはあなたに何か見せたがっている。

 

「やってみるね…」

 

Napstablookがまた涙を流し始めたが、今度は降ってくるのではなくNapstablookの頭上に集まっていく。

集まった涙は何かを形作るようにどんどん繋がり大きくなっていき、最後の一粒までチャプンと音をたててつながると何を作っていたのかが分かった。

帽子だ。Napstablookの頭上に固まった涙はなんと帽子の形にとどまっている。

 

「おしゃれblookって芸なんだ。気に入ってくれたかなぁ…」

 

*Napstablookは感想を心待ちにしている。

 

白い帽子と白い彼の体がマッチしていると感じた。シルクハットの形をしているのが特に良い。

 

*あなたはNapstablookにとても素敵だと伝えた。

 

「ああ…」

 

彼がほんの少しだけ声のトーンを上げて感嘆の声を漏らすと今までの音楽が消え、戦闘画面がフェードアウトしていった。

今回は勝利だとかXPだとかgoldだとかのメッセージは出なかった。

あのメッセージは必ず出るものではないようだ。

 

あいかわらず落ち葉の上に佇んでいるNapstablookが大きな目でこちらを見つめる。

彼はか細い声でそっと口を開いた。

 

「RUINSには誰もいないからよく来てたんだ…でも、今日は良い人に出会えた…

……。うん、そろそろ散歩に戻ろうかな。すぐにどくよ。」

 

それだけ言うと彼は落ち葉の上でスゥーッと消えていった。






ナプスタくんへのジョーク2つは即興で考えました。
数十秒で考えたにしてはノックノックジョーク並みにはできたかと自分では思ってます。


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遺跡 そのさんのに

Napstablookがいた落ち葉の上を通る。そこには彼が居た痕跡もぬくもりも、何も感じられなかった。彼はいったいどこへ消えたのだろうか。

 

二股に分かれている道を左に進んだ。その先には看板とFroggitが1、2、3。3匹もいる。しかし彼らは停戦のやり方を教えてくれたFroggitのようにそこから動くことなく、入ってきたこちらを一瞥しただけだった。戦闘に入る気配はない。

 

まずは入り口から一番近い看板の前に立つ。

 

*迷ったのかい?

*スパイダー・ベイク・セールは下に行って右だよ。

*クモの、クモによる、クモのためのお菓子をお楽しみください!

 

スパイダー・ベイク・セール…

看板にはクモのための、という記述があるが人間は利用しても良いのだろうか。

この部屋はまだ調べていないが、ベイク・セールが気になり、いってみることにした。来た道を引き返し、行っていなかった方への道歩く。

ベイクドセール会場と思わしき部屋には看板と小さなクモの巣と大きなクモの巣がある。看板には売り上げは全て本物のクモに渡ると書いてあった。

それぞれのクモの巣の前には値札がおかれている。

 

*クモのドーナッツ 7 gold

*クモのサイダー 14 gold

 

ドーナッツよりはサイダーの方が高いようだ。メニューを開いて所持金を確認する。手元には 9 gold ある。両方とも気になるが、両方買うにはお金が足りない。

とりあえず小さなクモの巣の前に7goldを置いた。

 

すると小さなクモたちが降りてきてお金を回収するとドーナッツを手渡してくれた。

渡してくれたクモのサイズよりドーナッツの方が大きい。彼らはとても力持ちのようだ。

 

さっそくメニュー画面で詳細を確認してみる。

 

*クモのドーナッツ HP12回復 -クモの手作り。リンゴ酒バター入り。

 

すごく美味しそうなメッセージが出てきた。

リンゴ酒バターという名前からして食欲をそそる。

持っているドーナッツからはまるで出来立てのようにふんわりと甘い香りが漂っている。

ドーナッツがこんなに美味しそうならサイダーだって美味しいに違いない。

今ドーナッツを食べたい気持ちをグッと我慢してドーナッツをしまい、サイダーのお金を貯めるためにベイク・セール会場を後にした。

ーーー

 

今まで通ってきた道を引き返してウロウロして12goldまでお金を貯めた。

なんだかお金をたかっているみたいで気が引けたがモンスターたちも楽しそうにしてくれて助かった。

ただ、Whimsunはいくら励ましてもACTをする前にMERCYしてもさっさと逃げていってしまう。

一度だけ手に力を入れてワナワナさせると逃げずに困惑していたが、それでも次のターンには逃げられてしまった。今までgoldを置いていかなかったWhimsunがそのときだけ2goldを置いていったのはひょっとして「有り金を置いていくから助けてください」ということだったのだろうか。

詫び金……?

次からWhimsunに会ったときはすぐにMERCYすることにした。

 

あと2goldだ。ひたすらいくつかの部屋をウロウロする。するとソウルが飛び出し戦闘画面になった。

これでウロウロするのが終われると良いのだが。

 

*Migospが這いよってきた!

 

Moldsmalの横に見たことのないモンスターがいる。ウサギっぽいがウサギの耳に見えるアレはひょっとしたら触覚かもしれない。

Migospというモンスターはすごく凶悪な目付きでこちらを睨み付けている。

とりあえず様子を見るためにMoldsmalの*真似をして相手にターンを渡す。

 

「*ヌメヌメ*」

「俺たちに従うのだ…!」

 

Moldsmalが上からカビを降らしてくると同時にソウルの入っている四角の左右に虫が集ってきた。

この虫がMigospの攻撃のようだ。

虫攻撃は動かず真ん中にいれば当たることはないが、動かなければMoldsmalの攻撃に当たってしまう。

なんとかかわそうとしたが、かわしきれずにMoldsmalの攻撃でHPが15になった。

しかし名前が黄色のMoldsmalを見逃せば、四角の左右に虫がいるだけになるはずだ。それなら攻撃だって食らわなくなるだろう。

 

*ゼラチン質のアロマの香りが漂っている。

 

ターンが回ってくるとMERCYでMoldsmalを見逃した。

これで楽になるはずだ。

 

するとMoldsmalがいなくなった途端Migospの表情がガラッと変わった。

鋭い目付きは目尻を垂れ、お気楽そうにヘラヘラ笑っている。まるで別人、いや別モンスターのようだ。

 

「ありのままの僕が一番!」

 

相手のターンになるが虫の攻撃はしてこなかった。

それどころか四角の一番下で突っ立っているだけでなにもしてこない。

 

*Migospはこの世界に何一つ悩みがないようだ。

*鼻歌も歌っている。なんてお気楽な…

 

名前を確認すると黄色く表示されていた。

Migospを見ると足でリズムを刻むほど浮かれているようだ。

そっと目をそらしてMERCYした。

 

*あなたは勝利した!

* 0 XPと 3 gold を得た。

 

Moldsmalのいたところに1 gold、Migospのいたところに2 gold落ちている。計3 goldだ。

これでサイダーが買える。

ドーナッツが手作りだったということは、サイダーも手作りなのだろうか。

期待に胸を膨らませてベイク・セール会場へ駆けていった。

 

 

ベイク・セール会場につくと大きな方のクモの巣に14 goldを置いた。

するとまた小さなクモたちが降りてきて水差しを渡してくれた。思っていたよりも大容量だ。少し重たい。

水差しのサイダーは透明ではなくほんのり色がついている。何かフレーバーがついているのかもしれない。

サイダーはシュワシュワと音をたてている。やはりこちらもおいしそうだ。

こちらもメニュー画面で詳細を選んで調べてみる。

 

*クモのサイダー HP24回復 -クモでできている、ヤバいジュース。

 

クモでできている…?

手の中にある水差しを確認する。

………。

具体的な描写は省くが、気が付かなければよかったと思った。

 

*あなたはクモがクモでできているものを売っているという事実に戦慄した。

*あなたは水差しをそっとしまった。

 

ドーナッツとサイダーで贅沢食いしたかったが、サイダーを見て、本当にどうしようもなくなったら食べようと思った。

少なくとも今は食べる気にはならない。

 

たくさんモンスターと話をして疲れたし、精神的にもジャブを食らったので決意がみなぎるセーブポイントへ戻ることにした。

 

ここの部屋は何度通っても変わらない。

机の上のチーズはへばりついたままだし、ネズミは巣穴に引きこもって出てこない。

光るセーブポイントに手を伸ばした。

 

*いつかネズミが穴から出てチーズを食べる日が来るのだろう…

*あなたは決意でみたされた。

 CHARA LV1 Ruins-ネズミの穴 セーブ完了

 

部屋だけではなくセーブポイントのメッセージも同じようだ。

決意を抱くと疲れがとれたような気がする。

HPも20に戻った。

 

なにも変わらないのが寂しくて、なんとなく机にこびりついたチーズをほんの一欠片だけとってネズミの巣に置いてみる。

このチーズがお気に召したならきっと机の上のチーズを食べるに違いない。

その時を楽しみに足取り軽く歩き始めた。



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