TS転生したは良いものの身体の感度が良すぎる件 (内臓脂肪が多いガリノッポ)
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異世界転生にロマンを感じていた時が僕にもありました。

仕事の疲労によりタガが外れた奴が書いた、妄想とエロと勢いでできた、闇鍋です。美味く感じたならあなたも仲間です。


 転生しましたなんて台詞、もうみんな聞き飽きたことだろうと思う。そして、転生特典をもらいましたって流れも耳にタコができるくらい聞いたかもしれない。

 

 ただ、だな。実際起きてるんだよなぁ。

 

 通り魔に刺されそうになった女の子の身代わりになって刺された俺は倒れこみ、そこにトラックが突っ込んで来て跳ね飛ばされた後に、落ちてきた鉄骨に貫かれて死んだ。

 

 何が起きたのかは俺が一番わけわかんなかったけど、実際に起きたのだ。

 

 「いやぁ~、寝ぼけてミスったとはいえここまでひどい死に方をする奴も珍しいねぇ~。」

 

 そして、現在目の前にいるのは今回の惨状を生み出したゴミクズこと自称神である。

 

 「メンゴメンゴ、許してちょんまげ。このかわゆい神ちゃまに免じてその怒りを抑えてチョーだいな?」

 

 体をくねらせウインクしながら、舌を出して謝罪という名の煽りムーブをするこのくそアマ。もう、怒りを超越してアルマゲドンを起こしそうである。

 

 「———————そもそもなんで連鎖起こしてんだよ!!ぷよぷよじゃねぇんだぞオラァ!!女の子助けて死んだならともかくなんでそこにトラックがプップー って来てマキシマムドライブされて、鉄骨がそれをやきうヨロシクのバッティングしてんだよ!!さらにはどてっぱら貫いて地面に突き刺さった鉄骨が墓標みたいになってんのはなんの!?死んでから供養までのRTAか!?多分これが一番早いわボケ!!」

 

 怒りは火山の噴火、具体的にはカムチャッカのインフェルノの如く噴出した。

 

 「まぁまぁ、さっきも言った通りお詫びに特典つけて転生させてあげるって言ったでしょ?だからそんなビーバーみたいにカリカリしないで?」

 

 「ぅるっせぇ!!なーにがビーバーみたいにカリカリだよ!むしろ『あ”あ”あ”---!!』だよ、叫ぶビーバーだよ!!」

 

 もう自分でも何言ってんのかわかんなくなってきた。

 

 そんな俺の叫びなど無視をして、自称神はおもむろに何かを出した。

 

 「さて、ここでいくら文句を言っても仕方ないし、とりあえずここから三枚引きなよ。」

 

 出てきたのは箱。というか、くじ箱。何もない空間から出現したそれに思わず固まる。

 

 「な、なんだよそれ?」

 

 「あーもう察しが悪いなぁ。ここから特典を引くんだよ。ほら、早く早く。」

 

 急かす自称神は俺の腕を箱に突っ込ませる。混乱していた俺は言うがままに箱から三枚の紙を引いてしまった。

 

 ——————瞬間、体を無重力感が襲う。

 

 「は?」

 

 そして、続くのは人間が最も恐怖を感じるものの一つ。

 

 「俺は攻殻機動隊じゃねぇぇぇぇええええええ!!」

 

 墜落だった。そう、あの少佐の如く頭から落ちたのだ。

 

 「それじゃあばいにゃら。次の人生もふぁいとぉ、だよ?」

 

 

 このクソったれは、最期の最後まで耳に障る甘ったるい声で俺を煽ってきやがる。しかし、落ちていく中で俺にできたのは、歯を食いしばりながら恐怖に耐えることと、思いの丈をあのクソアマめがけてぶつけることだけだった。

 

 「ファッキンごぉっどッ!!!」

 

 終わることのない滑空。重力加速度に従って加速していく身体は、その衝撃に耐えられなくなり次第に意識が薄くなっていく。

 

 結果、キレてばっかりで死の実感を得ることなく今生の俺は終わりを迎えたのであった。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 ―—————そして、またもやキレる案件。いや、ほんとなんなん?俺あんまり悪いことした記憶ないよ?善良なパンピーだったよ?なのにこの仕打ちはひどすぎる。

 

 目覚めた俺の目の前に広がるのは一面に広がる荒野。植物はサボテンみたいなのしかないし、周りに人はいないし、そもそもこの世界に存在しているのかすらわからない。

 

 そして、遠くから少しずつ視界に映る範囲を広げてくるのは、明らかに危険な雰囲気を放つ肉食獣らしき群れ。このままなら、一分後には奴らの牙が俺の肌を食い破ることだろう。

 

 「おいおい・・・・・・おいおいおいおい。」

 

 転生させた意味がわからなくなってきたところではあるが、そんなこと考えていても待っているのは二度目の死のみである。どうにかして、この世紀末的状況を切り抜けなければならない。やべ、あのハイエナたちがモヒカンバイクの賊に見えてきた・・・・・・

 

 「そ、そうだ!確かあのクソアマ、転生特典があるとか言ってたはずだ。あれ?引いた紙はどこだ?」

 

 手に握られていた三枚の紙がなかった。それを探すために辺りを見渡していると、タイミングを図ったように頭上から何かが落ちてくる。

 

 ズサッ、と固い荒野の地面に突き刺さる物体。それは、この場には不釣り合いなほど豪華な装飾が施されている手鏡だった。

 

 「————は?」

 

 映る姿に、絶句。いやいや、なんだよこれ。こんなんどっからどう見ても―—————

 

 そんな思考を遮るように続けざまに落ちてくるのは、探していた三枚の紙。ひらひらと宙を踊るそれらは、俺に対する当てつけであるかのように、その身に刻まれた文字を一斉に俺の目へと伝えた。

 

 

 『ちょー強い身体能力』

 

 『めっちゃすごい刀の才能』

 

 

 一つ目と二つ目の特典は、言葉の表現はともかくとしてどちらもこの場を切り抜けるのに、助けとなるものだった。逃げるなり戦うなりの選択肢ができたことに少しだけ安堵する。

 

 しかし、だ。最後の特典が余りにもアレな内容でめまいがする。けれどその内容は、先に落ちてきた手鏡に映る光景を証明する内容でもあった。

 

 

 『そりゃもうとんでもないほどに綺麗な顔で、一部の曇りもないくらいにびゅーてぃほー黒髪ロングで、ルビーみたいに赤く輝く二重のぱっちりなお目目で、聴くものを虜にするロリータぼいすで、———————

 

 紙に所狭しと記されている容姿を表す言葉の数々。長すぎて、読むのが面倒だが、問題なのはそこじゃない。

 

 『——————で、某忍者のような感度の女の子』

 

 「はぁぁぁああああああああああああああ!!??」

 

 思い切っり対○忍じゃねぇか!!いやいやいや、シャレになってねぇって!!いやだぞ、俺はあんなア○顔晒したくないぞ!!さっきから妙に体がムズムズというかゾクゾクしてるわけだ!こんなん特典じゃなくて呪いだよ!

 

 「ってハイエナたちが目前にきてるぅーー!!」

 

 気が付けば、鋭い牙をもつハイエナたちが目前に迫っていた。つか、あいつらマジでモヒカンヘアーじゃん。どういうことだよ。

 

 クソッ、もうこうなったらヤケだ、やってやろうじゃんかよ。例えあいつらがいくら強そうだとしても、この身体能力には敵うまい。

 

 けど、あれ?よく見たらあいつら獲物に襲い掛かるというより・・・・・・・

 

 「にーげるんだよぉーーーーーーー!!」

 

 本能の叫ぶがままにこの場から一目散に逃げ出す。いやだって、あれどう見てもメスに襲い掛かる目してるもん。明らかにあいつらのエリュシデータがイキリトしてるもん。捕まったら最後、3000倍の感度により二度目の人生終了のお知らせだ。

 

 「俺たちの戦いはこれからだッ!!!」

 

 前世の俺へ

 

 拝啓 二度目の人生。今度は普通の死に方したいです。今のところ一番起きそうな死因はテクノブレイクやけど・・・・・・敬具

 

 

 

 

 

 

 『えー、この物語はTS転生した頭がゆるい主人公が、感度が良すぎて人生の絶頂に至り続ける、ロークオリティ下ネタ勘違い系異世界という闇鍋的パンドラの箱なのである。R18になったら勝ち、っていうテンションでやってくんでそこんところヨロシクぅー(byかわゆい神ちゃま)』

 

 

  

 

 

 

 




 対魔忍だから、頭がゆるくないとダメだよねっていう固定観念。と


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戦いの中にいつも快楽堕ちの危険が付きまとう暮らし

勢いって大事よ?むしろそれしかない。


 剣と魔法の世界。王国に冒険者ギルド。人間以外の多様な種族。伝説の武具。そして、勇者と魔王。これらは多分、指輪をめぐる物語が生まれてから形を多少は変えながらもずっと使われ続けている設定と世界観であることだろう。

 

 そして、そんな世界で俺はいま生きている。普通ならワクワクが止まらず、七つの玉やら聖杯やらヒロインやらを探しにゴーマイウェイ、ごまえーをするところである。が、とある事情によりそれらすべてを断念せざるを得なくなった。

 

 まぁ、お察しの通りこの対○忍ボディのせいなんだけどね。

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 「・・・・・・」

 

 場は都から少し離れた山道。手にしているのは愛用の刀。身に着けているのは革で作られた軽装。そう、戦闘のための装いをしているのだ。

 

 目の前にいるのはそりゃもうでかいムカデ。でっかいアゴをキチキチと鳴らせながら、こちらへ襲い掛かってくる。それを難なく避けはするものの、その巨体がぶつかる地面は大きく音を立て、砂煙をまき散らす。クソっ、砂が肌を撫でやがるッ!

 

 「んっ♡」

 

 感度が良すぎる身体が感じるのは、全身を手の平で撫で回されているような感覚。ぞわぞわと鳥肌が立ち、力が抜けそうになる。しかし、ここで足を止めてしまえばあのムカデの餌食だ。そうはなるまいと、力を込めその甲殻へと切りかかる。

 

 「だ、駄目だ!鎧ムカデの甲殻は鋼鉄なんて目じゃないんだ!弾かれる!」

 

 おっと君のことを忘れていたよ。えーと、名前はきいてないから、とりあえずボーイ君でいいか。

 

 そう、俺がムカデと戦っているのは襲われていたこのボーイ君を助けるためなのである。少し気弱そうなイケメンのボーイ君は、剣と鎧を身に着けてはいるものの、ムカデにやられて今にも食われそうになっていたのだ。

 

 やれやれ、なんて大人なテンションで間に入ったのだが、相変わらずの身体の反応にうんざりする。まぁ、それもしかたないかぁ。と思考の片手間にムカデの身体を得物で半分に分断する。どんなに硬くても(意味深)、節の辺りはどうしようもないからね。

 

 「なっ—————」

 

 驚くボーイ君を脇目に、さらにムカデの身体を切り刻んでいく。甲殻類のモンスターは真っ二つにしても動くからね、ちゃんと木っ端みじん切りにしないといけない。

 

 そして、粉々になったムカデの残骸は音を立てて地面へと落ちていく。まぁ、こんなもんかね。

 

 転生を果たしてから早3年。命の危機ばかり感じていた(主にテクノブレイクによる)俺は、快楽地獄でゲームオーバーにならないために死に物狂いで努力をしてきた。

 

 すぐに絶頂に至る身体を、それでも動けるように訓練したり・・・・・・すぐ至るのはなんともならなかったが。

 

 ア○顔を晒さないためにポーカーフェイスを極めたり・・・・・・しゃべりにくくなったり表情筋が麻痺したが。

 

 果てには感覚を10分の1にするアイテムを何とかして手に入れたり・・・・・・3000倍が300倍になっただけだが。

 

 ま、まぁいっぱいがんばったの!がんばれ♡がんばれ♡って自分に言い聞かせて頑張ってきたの!

 

 その結果として、なんとか冒険者として生計を立てれるようになったのである。いや~、最初はモンスターすべてが淫獣に見えたものだ。それが今では、こんな風に何の問題もなく片付けられるように—————あ。

 

 拳ほどの大きさの形を残していたムカデの足の一部が、俺の上から落ちてくる。どうやら切り損ねていたらしい。そして、それはそのまま俺の豊満な胸へと接触する。

 

 「はぁ・・・・・・♡」

 

 体中を電流が走り抜け、快感が湧き上がる。上げそうになった喘ぎ声をなんとか吐息までに押し殺し、表情もそのままを維持する。しかし、それ以上の生理的反応は抑えられなかったようで頬は血の気を増し、目は潤み、肌は汗をほんのりとかき始める。

 さらには、(以下、比喩表現)わたしの雪見大福には頂点にさくらんぼがトッピングされ、ハリーポッター的秘密の部屋の入り口からは洪水が発生していた。

 

 失態だ。気を抜いていたばっかりに、目の前に人がいるのにも関わらずこんな状態になってしまった。怪しまれる前に、なんとかして、さっさと撤収しなければ。

 

 「・・・・・・終わった。もう、帰ると良い。」

 

 ポーカーフェイスを得るために失ったコミュニケーション能力。だが、少しの会話くらいなら出来ないこともない。

 

 「あ、あの、ありがとう。」

 

 「・・・・・・」

 

 お礼なんていいから、さっさと立ち上がってくれ!俺は早く帰ってお風呂に入りたいんだ!じめじめした下着を履いてるのって思った以上に不快感あるんだぞ?

 

 「———————」

 

 しかし、ボーイ君は立ち上がらずにこちらを見たままだ。このまま置いて帰ってもまたモンスターに襲われかねないし、動いてもらわないと困るんだがなぁ。はぁ、仕方がない。

 

 「っ———♡」

 

 座り込んでいるボーイ君の手を握り、引っ張り上げて立たせる(誤字じゃないよ)。その際に、手の平からゾクゾクと登ってくる感覚に思わず歯を食いしばる。あぁもう、これが嫌だから人とは接触したくなかったのに!

 

 そして、そのまま振り返り無言で歩き始める。ほら、ボーイ君。都までならついて行ってあげるから着いてきてくれよ?あ、それと今は俺の顔は絶対に見るなよ?耐え続けた快感のガス抜きをせにゃならんからな。

 

 

 「あ、あの。」

 

 数分後。前を歩きながら熱い吐息を吐いている俺に、ボーイ君はしばらくぶりに言葉を口にした。なんか、変に緊張している気がするのは気のせいだろうか。

 

 「名前、を教えてくれ・・・・・・」

 

 別に俺の名前なんてどうでも良いだろうに。命の恩人の名前くらいは憶えておきたいっていう礼儀みたいなものなのだろうか。このボーイ君は変に律儀だなぁ。けど、そこまで言うなら名前くらいは教えても良いだろう。

 

 「・・・・・・アサカゼ」

 

 どうせ、この名前はあのクソったれな自称神が付けたものだから価値もあってないようなものだ。偽名すら名乗れないように呪いが掛けられてんだよ!!ほんっとに迷惑な話だ!!つか、モチーフがあからさま過ぎてもうね。

 

 「アサカゼ、か。俺はヴォーイ、ヴォーイ・クーンだ。今日は本当に助かった。」

 

 ん?ボーイ君?(主人公特有の難聴スキル) へー、変な名前だな。というか俺って直感で名前当てるとかすごくね(アホ)?

 

 

 

 

 

 自己紹介を終えた後は特に会話も無く、都まで安全にたどり着くことができた。これで気まぐれの親切も終わりだ。もう、初心者冒険者があんな高レベル帯のエリアに行っちゃダメだぞ?

 

 別れ際にも俺は何も言わず、手を軽く振ってその場を後にした。その際に、餞別というか新米へのエールとして腕輪を彼に渡した。この腕輪、敏捷がかなり上がるらしいぞ?俺が着けても、風当たりが強くなって逝っちゃう(快楽天へ)からね。

 

 「アサカゼ、俺絶対にお前に追いつくから。待っててくれ!」

 

 ボーイ君は決意に満ちた表情で意気込みを叫んだ。うんうん、ほほえましいわぁ。俺も久しぶりの人との交流で楽しくなかったと言えば嘘になるし、会えて良かったよ。俺って(主に触覚が)敏感だから人とあんまり関係持てないし、なにより避けられてるからなぁ。ビッチだって多分みんなに思われてんだよぉ( ;∀;)

 まぁ、ボーイ君とは二度と会うことはないんだろうけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで久しぶりに帰ってきた我が家。孤児院跡を土地ごと買っただけあって、広いし近所には誰もいない。此処を自宅にしたのには訳があった。

 

 「————————っ♡ んはぁーー♡」

 

 妙に艶やかで淫猥な声が聞こえる。というか、俺の声だ。そしてここは風呂場である。つまり、この声は湯船に浸かるときに出てしまう声なのだ。

 

 「ふぅ。ん、ん、今日も疲れたぁー♡」

 

 体を覆う暖かいそれは、心地よくはあるのだが、感覚としては全身にまとわりつくように体を温めるのだ。よってこのボディはそれを快感と捉えるわけだな(断言) 

 

 ——————つまりは、風呂でイロイロな意味で気持ち良くなっちゃうのであるッ!!

 

 こんな声、他の人に聞かれるわけにはいかんやろ?せやからしょうがないんや!

 

 豪華な装飾の手鏡に映るのはやはりクッソエロい美少女だ。これが、彼女だったらとは何度思ったことかわからない。けれど、今日も感じまくるこのメスこそが俺なのである。

 

 「はぁ・・・・・・♡」

 

 俺の異世界転生生活は七難八苦を体現しているのであった。

 




次回はボーイ君のサイド。下ネタ要素薄くなるけど、温度差に笑いながら風邪ひいてほしいです。
ところで、下ネタの割合なんですが、やっぱり少ないっすかね?もっと増やしても良いっすかね?(アクセルに足を置きながら)


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勘違いは偶然と世界の悪意でできているらしい

少し遅くなってしまってゴメンよ。うちのパソコちゃんが突然ツンデレになって言うこと聞いてくれなかったんよぅ。

あと、多分真面目に書いちゃったから時間掛かったのもある。勘違い要素を取り入れてる以上、別視点書かなきゃオモロくないからなぁ。

あと下ネタ少なくてすまない。次回はもっと増やすから(戒め)


因みに、ポケモンやりながら書いてたんで誤字あったらメンゴ!あ、ガリノッポの嫁ポケはパルシェン(意味深)だよ?


「──ーお前さん、悪りぃことは言わねぇ。あの女と関わるのは止めとけ」

 

 冒険者ギルドの酒場。半ば情報屋みたいになっている此処では、金次第ではあるが周辺の情報が大概手に入る。ここの店主の元凄腕冒険者の親父は、こわもての顔なのに美人に弱くて有名だ。

 

 俺——————ヴォーイ・クーンは、ある情報を求め人が少ない時間帯、つまりは昼下がりに此処へ赴いた。

 

 

 

「な、なんでだよ! 別にどんな奴かぐらい教えてくれたっていいだろ? 金だって多少は払う」

 

 しかし、件の女—————アサカゼの情報を聞いたらこの通りである。

 

 先日、というか昨日。俺は彼女に命を救われた。まだ冒険者になって日が浅い俺は、モンスターの討伐なんてのは下級のみで他は運搬の依頼なんかを受けて、なんとか食いつないでいた。

 

 しかし、どうやら昨日の依頼は運搬ではあるが駆け出しが受けるものではなかったらしい。都から少し離れたあの山道を通って隣町まで行くのだが、あの道は凶暴なモンスターが多くいるらしい。

 

 そんなことも知らず、美味しい報酬金額につられた俺は危うく命を落としそうになったのである。マヌケな話だ。

 

「たしかに、あの女に命を救われたっていうヤツは他にもいる」

 

「やっぱり良い奴なんじゃ「だがな────―」…………なんだよ?」

 

 俺の言葉を遮って親父が口にしたのは、想像もしていなかった内容だった。

 

「あの女はそもそも得体が知れない」

 

「え?」

 

 親父が憂鬱そうに言葉を並べていく。

 

「あの女、アサカゼは3年前ほどから突然この業界に姿を見せた出身地年齢本名すべてが不詳の冒険者だ。それ以前のコイツを知るヤツは誰もいない。どんな優秀な諜報役に依頼しても分からなかった」

 

 つまりは正体不明ってヤツよ。親父は頭を掻きながらそう言った。

 

「そしてとても冒険者をやっている女とは思えないほどのあの美貌だ。

 川が流れている様にクセなく腰まで伸びる黒髪。シミやそばかすのない白い柔肌。この辺の大陸ではあり得ない真っ赤な瞳。戦いに向いていない豊満な胸。細く華奢に見える手足。でかくて肉づきの良いケツ。ほら、どこもかしこも異常の一言だ」

 

 たしかに、あの美しさ容姿に俺も見惚れた。その余りの美しさに、あの時の俺は呆けたままで、彼女が手を引いてくれるまで座り込んだままだった。

 

 そういえば、あの時の彼女の顔は妙に色っぽくて息を吐く音すら意識に入ってきた。無表情であるはずなのに、まるで男を惑わすおとぎ話の妖精みたいで…………

 

「ん? 兄ちゃんどうした。そんな顔を赤らめて」

 

「え? い、いや、なんでもない。それより、続きを聞かせてくれ」

 

 ええい、煩悩退散退散!! 俺は一体何を考えているんだ! そんなことは今は重要じゃない! 

 逸れた思考を元に戻そうと頭を振る。親父には少し変な目で見られたが、それは無視することした。

 

「戦闘のスタイルは回避を主軸に置いた、ヒットアンドアウェイ。使っている武器は細く鋭い剣。本人曰く『カタナ』ってのらしいが、それ以外はわからん。あんなすぐに折れちまいそうな剣を、隙間に滑り込ませるように振って、敵を一刀両断。敵は跡形も残さないらしいな」

 

 そう、彼女は剣の類が通じない鎧ムカデの甲殻をいとも簡単に切断してみせた。そして、生存の確認が必要なくなる程に切り刻んだのだ。美しいとまで思わせる一連の動作はあまりにも現実離れした動きで、彼女の実力の高さを証明していた。

 

 しかし、これまでの情報に彼女を避ける理由があっただろうか。俺はその点には首を傾げざるを得なかった。

 

 

「…………以上が確かな情報だ。が、あの女が問題なのはそこじゃない」

 

 親父はうんざりした表情だった。

 

「——————あの女に関わったヤツは、みんな狂わされちまうんだ」

 

「ど、どういうことだ?」

 

「そのままの意味だ。画家が関わればあの女の絵しか描かなくなり、男が握手をすればその感触が忘れられず妻と別れ、冒険者がパーティーを組めば安全マージンを判断できなくなる。みんな、あの女と関わってそうなっちまった」

 

 そのせいで、破滅したヤツだっているんだ。親父はそう続けた。

 

「それで付いた通り名は『伝染する狂乱(インフルエンサー)』。この辺じゃ誰も近寄ろうとはしねぇよ」

 

 

「そんな……」

 

 俺は、その言葉を到底信じることができなかった。縁もゆかりもない俺を助けてくれた彼女が、人を破滅へと導いているだなんて…………

 

「まあ、そういうこった。情報料はタダにしといてやる。だから、あの女に近づくのはやめときな」

 

 親父はその言葉を最後に会話を切り、裏方へ入って行った。

 

「…………」

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 街中を歩きながら思った。本当にあの話が彼女の真実なのか。本当に人を狂わせる魔性の類なのか。

 

「だけど、アサカゼはあんなにも俺に優しくしてくれた…………」

 

 確かに戦闘時のあの妖艶な表情は、普通じゃない。まるで悦楽に浸っているかのような(事実だよ)あの顔は、命を賭けて戦っている者とは思えないほど、美しかった。

 

 だが、あの時に俺は他にも何かを感じた筈だ。それはなんだ? 

 

「——————もしかしたら」

 

 そうだ! 彼女は何かに耐えるように歯をくいしばっていたじゃないか! 鎧ムカデと戦っているときも、俺の手を引いたときもそうだ。

 

 もしかしたら、彼女が戦っていたのはむしろ自分自身だったんじゃないのか? (正解)

 

 だとしたら、彼女は自分でも抑えきれない欲求や感情を漏らしているだけで、本当は不本意なものだったのではないか(大正解)

 

「行かなきゃ…………!」

 

 俺は走りだした。今すぐ彼女に会いたかった。

 

 俺に優しく、そして親切にしてくれてた彼女こそが本当の彼女。それが俺が追いつきたいと思った彼女だ。きっと噂される彼女は、彼女が持つ抑えきれないナニカ(ビッチ)を見ているに過ぎないのだ。

 

 だとしたら、彼女はどれだけ悲しい思いをしているのだろう。その孤独と絶望感は計り知れない。それを思うと胸が張り裂けそうになった。

 

「アサカゼッ!!」

 

 向かったのは都の郊外。住宅街から離れて住んでいるという彼女の自宅だ。今の俺にはそれすら悲しか感じる。

 

 通りの人ごみをかき分け、目的地へと一直線に進む。なぜ俺が一回会っただけの女に全力を注いでいるのかだって? そんなの好きだからに決まってる。

 

 例え彼女にとっては何気ない行動だったとしても、俺にとっては惚れるに十分なものだったんだ! だから、その女が苦しんでいるのなら助けたい。それは別に可笑しなことなんかじゃない! 

 

 彼女がくれた腕輪は、俺の気持ちに応え、走る速度を上げる。こんな時でも彼女の優しさは俺を助けてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ時。日が沈み辺りが見えにくなるこの時間帯にも、その姿をはっきりと認識することが出来た。

 

「…………どうして此処へ?」

 

 自宅のドアを開ける直前だったアサカゼは振り向き、こちらを見る。表情の変化はなくとも、見開かれた目が驚きの感情を伝えていた。

 

 息を切らせながら、俺はアサカゼに言った。

 

「突然すまない。けど、どうしても伝えたいことがあったんだ」

 

 俺が思いついた案は単純なものだ。体裁も整ってないし、何より急すぎる話だ。彼女とっても迷惑なものだとわかっている。

 けど、彼女の助けになる方法が、俺にはこれしか思いつかなかった。

 

「…………なに?」

 

 首をかわいらしく傾げる彼女に、俺は頭を下げて叫んだ。

 

「——————俺に、闘い方を教えてくれッ!!」

 

 後々、この行動を振り返ってみれば脈絡が無さ過ぎたと恥ずかしく思う。過程や理由を話さずに頼み込むだなんて断られても仕方のない話しだ。

 

 

 

「いいよ」

 

 けど、彼女は何も聞かずにそれを受け入れてくれた。そして、その言葉を聞いて俺は確信した。

 

「ありがとう、本当にありがとう」

 

 もう一度、頭を下げる。

 

 やはり彼女は狂ってもいなければ、異常でもない。優しい女性だ。やはり、何かの事情で誤解されているに過ぎないのだ。

 

「…………明日から、始める。朝、食事前に来て」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 今の俺は強くもないし、別段頭の回転が速いわけでもない。でも、こんな俺にだって彼女のために出来ることはある。

 

「———————それとな、お、俺はお前を避けたりなんてしないからな。他の奴らがどれだけお前のことを避けてても、俺はお前を誤解したりなんてしない」

 

 彼女の手を取って、思いを告げる。そう、俺にできることとは彼女の傍にいることだ。例え誰が彼女否定しても俺だけは、彼女の味方でいよう。そのために強くなりたいし、傍らにいたい。

 それを実行するのに、俺のプライドなんて安いものだ。だから、彼女に教えを乞うことにしたのだ。

 

「ッ―————」

 

 彼女の身体がビクッと跳ねる。そして、それは身体の震えへと繋がっていく。驚きによるものかと思ったが、どうやらそれは違うようだ。なぜなら、その目が潤んでいたからだ。

 

 都の人から狂人と言われ避けられている彼女は、本当は優しいただの女性に過ぎなかった。孤独に悲しみもすれば、優しさに涙もする人間だったのだ。

 

 俺は自らの決意をより強めた。ああ、俺がコイツを、アサカゼを守るんだ。

 

「もう一人になんてさせないし、ならない。だってお前を尊敬してる俺という男がいるからな」

 

 手をより強く握る。彼女の震えは更に大きくなり、やがて涙をこぼし始めた。無表情に隠れていた感情がようやく姿を見せたのだ。

 

「———ッ―—ッ、——————ッ!!」

 

 この姿を見て確信する。やはり彼女は強く、心優しく、美しく、そして普通の感性をもつ人間だったのだ(ここで痛恨の勘違い)! 

 

「大丈夫、大丈夫だ。お前はもう孤独なんかじゃない。だから、もう泣いていいんだ……」

 

「—————!! ———————!?! ———!!!!」

 

 やがて彼女は、膝を崩し涙を流しながら嗚咽をもらした。

 

 俺はそんな彼女の背中を、ずっと優しくたたいていた。

 

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 

 

 ん? 誰かが来た? ってボーイ君じゃん。二度と会わないって思ったけど早速会っちゃったよ。

 

 え? 修行をつけて欲しいって? もちろん構わないさ。男の子が強くなりたい気持ちはよーくわかるからね。

 

 それじゃ、明日から始めようか。厳しくいくから朝飯食べる前に来てね? じゃないとゲロるよ? 

 

 

 

 

 

 

 ッ♡♡ ちょ、まって、なんでとつぜん手なんて握るのさ!? や、やめッ♡ は、手の平って感覚がかなり敏感なんだぞ!! 

 

 やっ♡ま、まっへ? そんな強くされると色々と漏れ出してきちゃうからぁ♡♡ あ~もうっ、だから強くしないでってばッ!! 

 

 アッ、アッ、アッ。も、もう立ってらんないぃ♡♡ 力が抜けてぇ、もう、限界ぃ♡ かんべんしてよぉ♡♡

 

 って、ちょ♡ちょっとそれはまずいってぇ♡♡ そんらにやしゃしく、せにゃかポンポンされたらぁ♡♡ ああぁぁ♡♡ も、もう、らめぇ♡♡ あたまのにゃかま~しろぉ♡ 

 

 まっ、ままままっへてばぁ♡このままだときちゃうからぁ♡♡ アッ、も、もう、ダメぇ♡ くるくる、きちゃうぅぅ♡♡

 

 

 ────————————ッ~~~ッ!! ♡♡ ッ!!?? ♡♡ 

 

 

 

 その大きな高まりを最後に、俺の記憶は途切れている。その後に見た己の身体の惨状から、この事件は加害者ボーイ君による『過失ノアの大洪水(大嘘)』と名付けた。

 

 いやぁ、彼があんなテクニシャンだったとは…………

 

 綿パンツじゃなかったら、津波が起きてたな(余裕のコメント)




徐行運転から、アクセル全開にするとこうなるらしいよ。現実ではみんなも安全運転してよね!!

下ネタが足りなかった人は⬇︎にオマケコーナーがあるから許してネ!












「さーて、ここからはオマケコーナーの時間だよ!司会は全宇宙でもっとも尊くてかわゆい私こと、神ちゃまでーす!!いえーい。


と、言うわけで今回のコーナーはコレ!!
『聞かれてないけど答えちゃおう!エッチなアサカゼちゃんへのQ&A』

ヒューヒュー、ドンドンぱふぱふー!!


まあ、見れば内容はわかるよね?よし、じゃあ早速始めようか。


『くえすちょん1. ディルムッド・オディナに会ったらどうなる?』

他作品を突然出してくる無茶ぶりにもきっと答えてくれるのがうちのアサカゼちゃんよ!さあ、アンサーをどうぞ!!

『あんさー. 「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッ「抱いてッ!!」は?え、どうした「あーんもうディル様ぁ♡今すぐめちゃくちゃにしてぇ〜♡」なんだこの女は!?」』

って感じになるらしいよ。うーん、色々とぐちゃぐちゃだねぇ。まあ、ウチのアサカゼちゃんがあのホクロに逆らえるわけないよネ!


続いて『くえすちょん2. アサカゼちゃんが絶対に勝てない相手は?』

うーん、いっぱいいそうだけどなぁ。みんなはどう思う?まぁ、とりあえず答え聞いてみよっか。


『あんさー.「 マーラ様に決まってんじゃん。え?理由?いや、もう見た目だけで敗北確定でしょ?あんなん無理無理、即堕ちして終わりだよ。」』

……デスヨネー。



んじゃあラストのくえすちょん!いってみよー!!




『くえすちょん3. 排泄のときっt「触れないで下さい…………」アッハイ』


い、以上、オマケコーナーでした〜!!次回もみんな楽しみにしててね〜!!



……最後の、流石にアウトかぁ。放送コード的にアウトだったかぁ。






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女戦士の天敵と言えば?

さて、待たせてしまってすまないとまずは謝りたい。

なぜ遅れたかの理由なんて話しても、言い訳しかならないからね!言い訳は少ししかしません(ゴミ)!!

えー、夏場は地獄の残業地獄で正直人間性を失いかけてまして……
主に性欲という名の人間性が消えてました。それにより今作の創作意欲も無くなり、EDかと自分を疑い始めていたワイ。

けれど、そこに一筋の光という名の同人誌が!!!

それこそが創作意欲を復活させたワイの救世主だったわけだね、ウン。



ありがとうオークさん(ボーボボ風)……


だから今回急遽登場させました(真顔)


 ウサギはライオン。ネズミはネコ。カエルはヘビ。この様に生物には絶対に覆すことのできない食う食われるの関係がある。この『食物連鎖』というものは、一部を除いてほぼ全ての生物が関わっている事柄だ。そして、自らを脅かす相手をこの場合『天敵』と表現するのが正しいだろう。

 

 無論、俺にもその天敵というのは存在する。そりゃもう視界に入れることすら拒みたいくらいには、苦手だ。というか、見るだけで命の危険を感じる。

 

 なんで、突然こんな話しをしているのかだって? 多分みんなも大体予想が付いてると思うがここはあえて俺の現実逃避に付き合って欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 現在地は開けた洞窟。苔が辺り一面に生え、湿りに湿った嫌な空気が広がってるこの空間は、俺の『天敵』の巣だった。

 

 そいつらは人と比べ遥かに高い体格と強靭な肉体を持ち、群れで生活する。上半身はいつも裸で、下半身は布っ切れ一枚という原始人スタイル。

 

 豚の顔に汚らしい肌の色と、その風貌は化け物と呼ぶほかない。さらに奴らは今現在、臨戦態勢(意味深)を取っており、数秒後にはこちらに襲い掛かってきそうな様子である。

 

 そしてなによりも恐ろしいのは奴らの持つその『得物』である。その、天に向かって真っすぐ伸びる槍()はとんでもなく太く、逞しい。あの熱量と硬度を持つ槍()に貫かれたら最期、瞬時に天に昇る(誤字にあらず)羽目になるだろう。

 

 

 …………いや、もうまだるっこしい表現は止めよう。なんせこちとら命の危機に面している。できることなら今すぐにでも尻尾を巻いて逃げ出したいほど、ヤバい状況に俺は身を置いているのだ。

 

 

 

 

「「「ブモォ──────(メスだ──────)!!!」」」

 

 きったねぇ雄叫びと共に襲い掛かって来るのは、豚面の畜生たち。つまりは俺の天敵ことオークさんたちですよハイ。

 

 

 いやいやいやいやいや、不味いまずいマズいまずいまずいマズイ!!! このままじゃ確実に終わりだよ!! 詳しく言えば、あいつらに捕まって思いっきり貫かれて天にも昇る気持ちになって、そのまま苗床エンドだよおおお!! 

 つかアイツら総勢50体はいるよね!? オークですからもちろん全員オスです、本当にありがとうございました!! 

 

 さて、傍らにはボーイ君がいるとはいえ絶体絶命であることには変わりはない。だから、満を持してこのセリフを言わせてくれ。その後は現実逃避という名の回想シーンに入るからヨロシク!! 

 

 

 

 

 ど  う  し  て  こ  う  な  っ  た

 

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

 

 それは、さかのぼること半日前。ボーイ君が教えを乞いてきて、数週間経った朝のことだった。真面目に教えたことを実行してくれる彼に、嬉しい気分になったり、一日一回のペースでラッキーでスケベなことされたりと暇はしない穏やかな期間だった。依頼もなかったしね。

 

 そして今日は久しぶりに私服に身を包んで買い物でも、と思った矢指に冒険者ギルドから緊急の招集が掛かった。なんでも、急ぎの依頼をしたいとのことだった。

 

 そんなわけで、俺はジャケットにロングスカート、そして腰に刀を差しているというアンバランス極まりない恰好で、むさ苦しいギルドの館内を訪れることになったのである。

 

 いやー、ボーイ君いてくれてマジで助かった。こんな格好で一人とか周りの視線が痛すぎるからね。というか料理も裁縫もできるらしいし、彼って割と有能なんだよね。あれ? 女子力ってなんだっけか。

 

 

 

 

 館内は特に目立った様子もなく、いつも通りだった。朝から酒盛りをするアホもいれば、依頼の張られた掲示板とにらめっこしているヤツもいる。あとは、そう、俺の方を見てくる奴だろうか。統一性の無い彼らではあるがその実、全員が冒険者だ。つまりは、冒険者なんていうのはチンピラゴロツキヤンキーの総称みたいなものなのだ。

 

 しかし、目立った様子がないというのは今回に限ってはおかしい。俺たちは緊急の依頼で此処に来たというのに一向に呼び出した相手の姿が見えなかった。

 

「____ギルド長は?」

 

 そして、その呼び出した相手というのがこの冒険者ギルドのトップだった。

 

「姿が見えないな。突然呼びつけておいて自分は遅れるなんて勝手すぎる」

 

 少し不機嫌そうにボーイ君が呟く。もしかして、今日予定してしていた俺とのお出かけを邪魔されてご機嫌ナナメなのか? いや、ボーイ君に限ってそれはないでしょ(断言) 多分単純に休みの日がなくなった事への怒りとかそのあたりだろう。わかるよ、休日出勤させるのは犯罪だよな。

 

 そんな風に思考が変な方向にそれ始めたとき、不意に背後から声が聞こえた。

 

 

 

 

「さーて、アサカゼちゅぁんの今日のパンツは何色かなぁ~?」

 

 そして、間髪入れずに襲い掛かってくる衝撃。思わず目をつむる程の風圧と共に正面から何かが迫ってくる。

 

「アサカゼっ!!」

 

 ボーイ君が両手を広げて前に立ちふさがる。あー、けどボーイ君。多分それ無意味だわ。

 

「「「ほいっ!」」」

 

 気が付けばソイツは目の前にいた。正面に立ちふさがったボーイ君など壁にすらならないとあざける様に笑みを浮かべて、俺の前にいた。その目にも止まらぬ速度を証明するかのように後から来る風によりめくれそうになったスカートを手で押さえるも、そこに伸びてくるのは無数の手_____いや、無数にあるのはその手を伸ばしている本人もだった。

 

 その数48人。それを空いている手で払おうとしても何故か空を切る。文字通り四方八方から迫ってくるそれらは、さらに強い衝撃波を俺の足元目掛けて放ち、スカートを浮かばせる。 因みにこの間、コンマ2秒である。

 

「ッ」

 

 

 むず痒い感覚が身を襲う。不本意な快感によって湧き上がる嫌悪感に流され、俺は衝動的に刀を振り抜いてしまった。

 

 

 

 

 マズいかも、と一瞬頭を不安がよぎったが、それは杞憂だった。

 

「はぁぁぁああああああああああああああ!!?? 中身はスパッツかよぉぉぉぉおおおおお!!?? 俺の残像ミラーの連弾衝撃波十字架手刀トリプルヘキサグラムのついでに本体ミラー48分身高速スカートめくりが破られただとぉぉぉぉおお!!!??」

 

 そこには、スカートを抑えながら刀を抜くも空振った変な格好をした少女と、未だ2人に分身したまま前後からスカートをめくり上げながら叫ぶ中年のオヤジの姿があった。

 

 

「____早く、どいてッ!」

 

 いつまでもスカートに手を掛けたままの変態オヤジに、刃を向け振り下ろす。

 

「おっと、アブナイアブナイ」

 

 が、気が付けば変態は数メートル先に立っていた。

 

 

「お、おおおおお前ッ!! 未婚の女性になんてことを!!?」

 

 顔を赤らめながら叫ぶボーイ君。いや、だからスパッツだからそんな恥ずかしがらなくても良くない? というか君、最近は毎日俺の下着見てるでしょ? しかもことごとく事故で。

 

 

「ん? そんな激高することかね? ただのあいさつだよ、あ、い、さ、つ」

 

「そんな挨拶があってたまるか!!」

 

「あいさつは人それぞれさ。それに、アサカゼちゃんじゃなくてなんで君が怒るんだい? もしかして君はアサカゼちゃんのコレ、かい?」

 

 小指を立てながら呆れたような顔で、変態はさらに語る。

 

「ッ〜〜〜〜!!」

 

「だとしたら、スカートの中身がスパッツとかいう男の希望を打ち砕く悪趣味なコーデも、君の仕業か。はー、いやだいやだ」

 

 のらりくらりと返す変態に、怒りや恥ずかしさでさらに真っ赤に染まるボーイ君。やめときな、ボーイ君。さすがに今回は相手が悪い。

 あ、あとモチロンのことだけどスパッツ履いてるのは俺の自己判断だからね? だってパンツとか弱点丸出しも同然だろ? 

 スカートなんていう軽装に身を包んでいるのは、あのゴミクソの自称神が掛けた『ひと月に1回はスカートを履かなければならない』とかいう呪いの所為だから! 悪しからず! 

 

「アサカゼがそういうなら…………っというかそもそもこの変態は誰だ!? アサカゼは緊急の招集でいそがしいんだ、邪魔をしないでくれよ!」

 

「ぬ? 君、ひょっとして俺のこと知らないの? まったく、俺の名も落ちたもんだなぁ」

 

 そう、この男こそ件の依頼主。今は引退したもののかつては最強、最悪、不敗と語られ、もっぱら『悪と女の敵』と呼ばれていた男。

 

「現冒険者ギルドの長をしている、イャヘン=タイジャンだ。名前くらい聞いたことあるだろ?」

 

 イャヘンは不敵な笑みを浮かべ、煙草を片手に実に強キャラ臭のする雰囲気を醸し出す。

 

 

 

 

 

 ────いや、変態じゃん。

 

「あ、あんたがあの? いやいや、 俺は最強の男だとは聞いたが、こんな変態だなんて聞いてない!」

 

「あ、それ言っちゃう? そう言われると納得させる自信ないなぁ。んじゃまぁ──────」

 

 ちょ、ボーイ君!! 危ない! 

 

「なっ!? い、いつの間に……」

 

 まるで瞬間移動。3度目となる奇妙過ぎる動き。

 

「ハイ、今ので君死んだから」

 

 ボーイ君の首にはギルド長の手がかけられていた。いや、これがねぇ。この俺にもまったく見えんのだよ。恐ろしく速い手刀、俺でも見逃しちゃうね! 

 

「これで、わかってくれたかな? 君も言っていた通り急ぎの依頼なんだ。本人でもないのに出しゃばらないでくれると助かるよ」

 

 笑顔で威圧感を放つ変態に、ボーイ君は黙って下がるしかなかった。お、落ち込まないでね!? そいつ変態のくせしてチート級の強さだから! 相手が悪いだけだから! 

 

 

 

「────さて、そろそろ本題に入ろうか」

 

 

 

「アサカゼちゃん、他でもない君に今回の件を依頼したのは時間がないからだ。多分このままだと2人の女性の生命が無くなる」

 

 より詳しく言えば尊厳もなにもかもを滅茶苦茶にされてから、だがね。そう付け加えたタイジャンの表情は歴戦の男が見せるものとなっていた。

 

「わかった。場所を教えて」

 

 ならば、俺はそこへ一刻も早く向かうだけだ。

 

「ア、アサカゼ…… せめて何の依頼なのかくらい聞いてからでも──「問題ない」ッ……」

 

 彼の言葉を遮り、タイジャンへ質問の答えを求める。俺を呼ぶだなんて戦闘が関係する依頼くらいしか考えられないからな。急いでいるのに根掘り葉掘り聞く必要もない。

 

「ありがとう、君も急いでくれて助かるよ。場所はここから北西を方向にある沼地にある洞窟だ。そこのモンスターたちに囚われている女性2人を救出して欲しい」

 

「わかった」

 

 その言葉がタイジャンに届く頃には、俺は既に駆け出していた。命を守る依頼において時間は絶対的に優先されるものだ。焦りはしないが、ちんたらはしていられない。

 

「んぁ」

 

 身体が風を受け、風を切り裂いていく。その刺激に甘声が少し漏れるもののスピードは一切緩めない。

 

「ア、アサカゼッ!! 待ってくれ、俺も一緒に行く!!」

 

 後ろからボーイ君の声が聞こえる。着いてきてくれるのは嬉しいが、君のスピードに合わせている余裕はないなぁ。

 

「…………素早く移動するときの姿勢、教えたとおりにすれば…………遅れない」

 

 だから、俺からは言えるのはこれだけだ。

 

「ッ! ああ、わかった!! 全力でついていく!」

 

 ボーイ君の顔つきと共に動きも変わった。そうそう、それが正しい姿勢だ、やっぱ飲み込みが早いね。

 

 と、まぁこんな経緯があって現在に至る訳だ。

 

 

 

 

 

 うん、ちゃんと話を聞いておけば、オークなんていう天敵と正面から対峙することなかったね。完全に俺の自業自得だったわ。はぁ~、へこむわー。

 

 

「「「ブゥモ──────!!! フゴフゴ、ブヒッ!! (女は犯せ──!!! 邪魔な男は、殺す!!)」」」

 

 その汚らわしい叫びに現実に引き戻される。さて、このままじゃ俺どころか捕らえられている女性二人も、このケダモノ共に凌辱されてジ・エンドだ。それは、もちろん御免被る。

 

 

 

 だから、俺らはもちろん抵抗するで? この刃で。

 

 迫りくる汚豚(おブタ)さんたちに向かって地を蹴る。オークだろうがなんだろうが、結局のところ一撃もらったらオワオワリってことにゃ変わりない。なら、俺のヤることも変わらないさ。

 

 腰の得物()に手を添え、得物(オーク)の身印に焦点を合わせる!! 

 

「______んっ」

 

 久々に放つ全身全霊の抜刀。その切っ先は狂いなくオークの首を切り飛ばし宙へ舞わせる。確かな手ごたえと、体を走り抜ける甘い感覚が、それが真実であると肯定してくれる。

 

 さぁ、次だ。まだ相手は50以上はいる。だが、負ける気はさらさらない。だから、今の俺に言えるのはこれだけだ。

 

 

 _______俺たちの戦いはこれからだッ!!!! 

 

 

 

 




スカートめくりの元ネタがわかったニキがいっぱいいたら、嬉しい。多分嬉しくてガールズラブのタグが仕事しちゃうな〜(チラ

それはそれとして、次回。 アサカゼ死す!デュアルスタンバイ!!

え?死にはしない?ただ、オークに襲われるだけ?けどそれってある種、死ぬより辛いんじゃ……気にしなくて良い? アッハイ。


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