魔法先生ネギま!? 現れた誰も知らない大魔王 (上平 英)
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プロローグ

 魔界。

 

 俺が住む世界。悪魔と呼ばれる者たちが住む世界。

 

 俺は何千年とわからないほど昔に魔界で生まれ、何千年もの間、魔界で生き続けていた。

 

 元々力のある悪魔であった俺は、数千年を経たいまでは大勢の悪魔を統べる魔王と呼ばれるようになり、他の魔王たちと共に魔界を長年支配していた。

 

 しかし、自分の支配下に置いている土地を統治したり、現魔王の俺を倒して新たな魔王とならん悪魔を蹴散らしたりするのにも俺は飽きてしまった。

 

 魔界には暇を潰す娯楽ももちろんあるが、もう生まれてから何千年……、娯楽という娯楽はすでに遊びつくしてしまっていた。

 

 魔界の外に行けばまだまだ俺が知らない娯楽や魔界とは違う世界がある。――と、たまに人間界などという別の世界へ分霊とはいえ、呼びだされる下級悪魔や中級悪魔、一部の上級悪魔などが言っていたが、俺は魔王。

 

 魔王である俺を分霊とはいえ、人間界に召喚しようとすると、その対価が大きすぎて人間も召喚しようともしないし、そもそも俺の存在すら知らないそうだ。

 

 そう、俺の存在を知らないのだ。誰ひとりとして他の世界の者たちは……。

 

 …………。

 

 いや、まあ、俺は元々いた魔王よりも数千年ほど新参者だし、戦ったりとかほとんどしないで遊びまわっていたし、威厳とか力を見せつけるとか、そんなの考えたこともなかったし、いくつかあるらしい人間界のなかに存在する漫画とかアニメとか好きで、気まぐれに引き篭もったりしたし、女が好きで魔界一周女漁りの旅とか放浪したり、魔界中から厳選した女悪魔……、主にサキュバスたちを魔王城に囲ってハーレムとかも楽しんだり、統治している土地で美人の女型悪魔を優遇したり、魔王城の近くに人間界を元にした歓楽街を作ったり、遊びまわって他の魔王からもそれで注意されたりしたけど……。

 

 人間界で俺の知名度がないってどういうことだよ。

 

 ルシファーとかサタンとかレヴィアタンとか知ってるくせに俺のこと知らないって、なに?

 

 ずっと昔に他の魔王たちが人間界で神と戦ってたときに自分だけ支配している国で「ハーレム! ハーレム!」とか言って女たちと遊んでいたからって酷くない?

 

 神話の神々からも戦争に魔王に数えられてないし、人間界のどの聖書にも存在してないとされてるそうだし、もう世界的に空気な存在にされてるよ……。

 

 まったく、本当になんで誰も俺の存在知らないんだよ……、ていうか、教えないんだよ……。

 

 支配している国で主にサキュバスや女型悪魔の魔王をちゃんとしてるのに、眷属悪魔の誰も王さまである俺を宣伝しないってなんなの? 人間界に呼びだされたときに誰の眷属か言ってやらないの?

 

 そのことを眷属悪魔やメイドとかやらせてる人間の魂とかに聞いたら、国内では『最高の魔王さま』だけど、支配してる国の外では『あまり紹介したくない魔王さま』とか言うし……。

 

 他の魔王たちも自分の眷属の美女とかいろいろな種族の女悪魔を寄越してくるから、俺って他の魔王たちから好かれてるんだと思っていたのに、実は他の魔王たちから絶滅しそうな種族を増やすための種馬扱いされていたそうだ……。

 

 はぁ……。

 

 本当にいろいろ面倒になったんだよ。

 

 魔王とか言われてるのに、土地管理するだけで暇だし……。

 

 何千年か1回あるかないかぐらいに魔王も別世界に分霊で召喚されるそうだけど、俺はない。名前も知られてないから偶然とかも確立的にありえない。

 

 はぁぁ……。

 

 これからの生活を考えると……、ぶっちゃけ暇過ぎて死にそうなんだよ。

 

 悪魔の寿命は確立されていないというか、現魔王で古株のサタンが確か3万歳超えてるぐらいだから、まだ新参で数千歳の俺なんて死ぬまでに何万年もかかるし、それまでこのまま魔界の魔王とか考えるだけで狂いそうになる……。

 

 もうね、だから自分で行くことにしたんだ。

 

 幸い俺が統治している国には悪魔がたくさんいるし、俺の次代となる魔王候補もいる。魔王辞めて『呼ばれないなら自分から行ってやんよ』の精神で人間界に行くことにしたんだ。

 

 これなら人間界に大きな対価を払わせる必要としないし、寿命の内数千年ぐらいはその世界で消費できるだろうからね。

 

 だから今から出発することにするよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔王城の最上階。俺が人間界に行くと決めてからすでに数年が過ぎていた。

 

 うん、数年が過ぎていた。

 

 魔王としての最後の仕事と次代の魔王への引継ぎをしていたからだ。

 

 最後に、魔界を去る前に、統治していた自分の国を魔王城から見下ろす。

 

 目下に広がるどこまでも続くような広大な土地……、というか大陸が俺が支配していた魔界だった。

 

 現在、その魔界にいるほとんどの女悪魔たちが魔王城のいたるところに、白濁した俺の精液塗れで倒れていた。

 

 おそらく魔王として最後に思い出や種を残せたことだろう。

 

 いやらしいアヘ顔や放心してる暗い目、満足そうな寝顔を見下ろして、女悪魔たちから集めた魔力と自分の魔力、その他魔界を出ると言ったときに他の魔王から餞別にともらった魔力と、色欲などを司る妖艶な美女悪魔であるベルフェゴールと作りだした人間界へ行くためのゲートへと向う。

 

「本当に行くの?」

 

 後ろから声をかけられた。声の主はわかっている。次代の魔王だ。

 

「ああ、もちろん。あとは任せるぞ、次代の魔王」

 

 力のある悪魔で、美女で、実の娘だ。先ほどまでアヘっていたのにもうすっかり回復しているところがさすが俺の娘だな。

 

「……なにか最後に褒められたくない事で褒められた気がしたけど……。まあ、いいわ。いってらっしゃいお父さま」

 

「ああ、いってくる」

 

 俺はそう言ってゲートへと向う。

 

 ゲートの傍で待っていたベルフェゴールが一礼した。

 

「魔王さま、行き先特定できませんが、いくつかある人間界に繋がっています」

 

「行くための魔力は足りているか?」

 

 人間界へ行くための魔力は分霊でさえ、元々膨大量を必要とするのに、今回は実体……肉体を持っていくのだから、必要な魔力の量は計り知れない。

 

 そのことを心配していたのだが、ベルフェゴールは笑顔でうなずいた。

 

「はい。魔王さまとこの魔界の女悪魔たちの魔力では足りませんでしたが、他の魔王さまから渡された魔力が膨大な量でして。問題なく人間界へゲートが繋げられました。これで実体を持って人間界へ行けるでしょう」

 

「そうか」

 

 古株の魔王たちまで俺の門出を祝ってくれているのか。

 

 ほんの少しだけだが俺が魔王たちに感謝していると、ベルフェゴールはため息を吐いた。

 

「厄介払いができると、喜んで魔力を差しだされたような気もしますが……」

 

「口を慎め、ベルフェゴール。協力してもらっているのだ。そういうことを言うな」

 

「すみません」

 

「わかればいい」

 

 素直に頭を下げるベルフェゴールを許してから、ゲートへと歩を進める。

 

 目の前にゲートが迫り、あと1歩でゲートに入る。

 

「では、さらばだ。何千年後、何万年後かわからないが、また会おう」

 

 俺は最後に言葉を紡ぎ――、俺はゲートを潜り――、俺は魔界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが人間界か……」

 

 魔界から人間界へのゲートを潜った俺の上には魔界の紫色の空ではない、青い空が広がり、眼前には魔界でも珍しい大樹があった。

 

 さらに大樹の周りは魔界とは違う、青々した緑が広がり、溢れんばかりの生命の息吹を感じさせた。

 

 とりあえず魔界ではないことを確認したので、今度は自分の体を調べる。

 

「ふむ、分霊ではない完全な実体だな。魔力や身体能力の低下も見られない、ちゃんと人間界へ来れたようだな。あとはこの世界がどういう人間界なのかを知りたいが――、まずは眼前の大樹だな」

 

 他の木々とはまるで違う巨大な大樹に触れる。

 

「やはり魔力を内包していたか。俺がこの場に召喚されたのもこの大樹が原因かもしれないな」

 

 もう少し調べてみると、この大樹は内包した魔力を使って人払いのような結界を張っていることがわかった。まあ、結界といっても認識を逸らすような弱々しい防衛本能のようなもののようだが。

 

 とにかく内包している魔力といい、このまま成長すれば数千年後には立派な世界樹となるだろうな。

 

「幸い人間はもちろん、誰にも気づかれてないようだし……、今のうちにツバをつけておくか」

 

 この大樹はいろいろと便利そうだ。ここを拠点にして人間界に居座ろうではないか。

 

 自然に囲まれての生活も悪くないだろう。

 

 俺は大樹に意思疎通を図る。

 

『――――、――、――――、――』

 

 魔界に住んでいる森の民の一族から教えてもらった意思を伝えるための信号を大樹に送る。

 

 繰り返し送ること数分、大樹が反応を見せ始めた。

 

『――……、――、……、――――』

 

『―――、―――、―――――』

 

『――、―――、―――』

 

 やはり森の民から教えてもらった意思疎通法がよかったようだ。大樹はうれしそうに発光し、俺を迎え入れてくれた。

 

 一応無償で拠点を置いていいそうだが、それでは悪いと俺は大樹と契約を交わす。

 

 本来、将来の世界樹といえど、魔王と契約することはできない……、というか、しないどころか一方的に魔王が力を貸させるのだが、ここは人間界だ。ぶっちゃけ悪魔の契約とかしてみたかったんだよ。俺、呼びだされた事ねぇし。

 

 そこで決まったことは、

 

 1、世界樹が自衛できない事態に陥った場合は俺が守る。

 

 2、世界樹はここら一帯の土地を俺に使わせる。

 

 という、契約書もない簡単な契約だ。

 

 これから長い付き合いなるから仲良くしようと意思を通じさせてから、家を作れるような開けた場所がないかと訊ねた。

 

『―――、―――』

 

『――――』

 

『――――』

 

 大樹から場所を訊き、礼を言ってからその場所に向った。

 

 その場所は大樹から数キロほど離れたところにあった。

 

 周囲を木々に囲まれ、中央に広大な草原が広がり、小さな池と小川が流れる美しい場所だった。

 

「結構広いが、今後人が増えれば丁度いいか。まずは家だ」

 

 まずは家の材料と、魔力で木々を切り倒して材木を作る。ずっと石畳の西洋風の古城だったので、森の民の家や人間界の漫画にでてきた木で出来た家というものに憧れていたので作業が捗る。

 

 材料を作りだしたあとは、その木々を組んでログハウスという家を造り始める。

 

 こちらは魔界の家とそう変わらないし、数千年前に魔王でなかったころに実際に造ったことがあるので造り方は覚えている。……うろ思えだが……。

 

「さてと、造り始めるか」

 

 新生活の第一歩だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新生活への第一歩を踏み出してから早1月……。

 

「まだ完成しねぇ……ッ!」

 

 正直、家造り舐めてたわ。マジで。

 

 いまだに半分しか造れてないんだよ。

 

 最初に基礎となる柱を地中深くに刺して、丸太を敷いて、壁造って、屋根造って完成したんだけど、ちょっと雨が降ると地面に敷いた丸太が湿気を帯びてジメジメしたり、水漏れしたり、そもそも広いよなと思って立てた家だったけど、風呂場やトイレやキッチンとか付けると急に狭くなったりとか……。

 

「はぁぁ……」

 

 本当に偉大だよ、家を造る職人は。

 

 もういっそのこと人間に頼ろうかなぁ……。

 

 魔王城から少し持ちだした貴金属や魔法具を対価にすれば、立派な家を建ててくれそうだし……。

 

「ん~……」

 

 でもこの場所を知られたくないし、ここまでやったんだから自分の手で完成させたい気もする……。

 

「はぁぁぁ……、これも暇潰しになるよなぁ」

 

 大きなため息を吐いて作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局自分で家を造ることに決めてから約3年。

 

 納得のいく家が完成した。

 

 水吐きをや通気性を重視した家で、1階は骨組みと地下へと続く通路だけで、2階、3階部分に住居を立て、防腐など木が腐らないように魔力で強化し、屋根も雨漏りしないか何度も確認し、壊れないように強固にしたり、玄関部だけ別の小さな屋根を設けて雨水が跳ねないようにしたり、上質な木を使用して風呂場を作ったり、試行錯誤を繰り返して水洗便所に近いものを再現し、自家製の紙というものにも挑戦してみたり、同じく山から湧き水を引いて水道を作りだしたり、それと別に井戸を掘ってみたり、小川の向こう側に渡るため用にと橋を架けたりと、少しでも前の生活に近づけるように、自分が納得する家を造るために、暇を潰すために本当にいろいろやった。

 

 現在はロフトで木で作りだしたロッキングチェアという揺れる椅子に座り、森で囀る小鳥の鳴き声や風と木の葉が奏でる音楽を訊きながら緩やかな時間を過ごしていた。

 

「はぁ」

 

 満足だという息が出てしまう。

 

 自然に囲まれ、誰にも会わずに、静かに時を過ごす。

 

 …………ん?

 

 ……誰にも会わずに?

 

 …………。

 

 ………………。

 

「…………家造るのに夢中で、せっかく人間界に来てるのにまだ人間と会ってねぇえええええええええええ!」

 

 なに家造りに丸々3年かけてんだ!?

 

 その間に人間と会えただろうになんで俺はこの森に引き篭もってんだよぉぉぉっ!

 

「クソ! くっ、だが、家は完成したんだ! 今からでも人間に会いに行こうじゃないか!」

 

 そうと決まればさっそく行動だ!

 

 出かける準備をしてから玄関から飛びだす!

 

 森を突っ切るのは逆に遅くなるし、魔力で浮かび上がって人里を目指す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お手製のログハウスもとい、新たなる魔王城から出て人里を目指して、目的の人里までやってきた。

 

 人里に入る前に、いままでの魔王な服装は派手だったので近くの森にまずは着地する。人間の服がどういうものか観察してから魔力でその服を創りだし、着替えてから人里に入った。

 

 魔法で言語を誤魔化して、異文化交流してどんな世界なのか情報を得たんですが……、時代にいろいろな問題があった。

 

 まあ、人里に住んでる人間の格好から大体予想していたけど、俺がやってきた世界は漫画やアニメといったものがない遥か昔の世界だったのだ。

 

 いくつも存在する人間界は、時代の進みなどが似ているところがあるというので、魔界から持ってきた人間界の歴史を記した『社会の教科書』というものを数冊取り出し、ここの王の名などを聞きだして、人里から離れ、いまの時代など現在地などを大まかに調べる。

 

 …………。

 

 とりあえず、大気圏まで出て地図などと地形を照らし合わせながら調べた結果。世界樹と自宅がある国は日本で、住んでいる土地は将来の埼玉と呼ばれるところにあるようだ。

 

「えーと、王さまの名前で完全に合致するものは……ないな。似ている時代の進み方からいって今の時代は察するに室町時代か。ん~……」

 

 漫画やアニメが生まれる時代は描かれていないが少なくても300年、400年後ぐらいだよなぁ……。

 

 漫画やアニメがないって、なんか急にやる気がなくなったんだけど……。

 

 ん~、どうしようかなぁ。とりあえずは生の巫女さんや侍とか見て見たいけど……。

 

 どうせこの島国に拠点作ってんだし、この島国は後回しにして先に他のところを旅しながら巡るかな……。

 

 丁度ヨーロッパとかいうところで100年戦争とかやってる頃らしいし、暇潰しにもちょうどいいだろ。メイドさんとか騎士とかいまの時代ぐらいしかいないらしいし、巫女や侍はいつまでもいるらしいからな。

 

 まずは留守中に森や家、大樹を荒らされないように数年ぐらいかけて強固な結界を張ってからだな。

 

 それにしてもヨーロッパか。

 

 途中中国大陸も通るし、チャイナ娘がいるか物色しながら移動して、インディアンとかアマゾネスとかいう種族のワイルド女とかも探して、ヨーロッパでは金髪美女漁りだな! ジャンヌとかいう聖処女と呼ばれる女もいるそうだし! 楽しみだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………失敗した。

 

 一箇所に留まりすぎてしまった。

 

 今、私は街の中央にある広場で処刑されかかっていた。

 

 処刑台として高く設置された場所で、体は太い木の柱に何重にも巻かれた縄で縛り付けられ、胸に杭を打たれていて、足元には燃えやすそうな小枝と藁がいくつも積まれていた。

 

 処刑台とは別の高い台に立った肥えた男……、この街の領主が立ち、その下で羊皮紙を拡げた甲冑を着込んだ兵士が処刑されるところを見物しに来た人間たちに向って声を張り上げる。

 

「これより、吸血鬼、エヴァンジェリン・マクダウェルの処刑を執り行う!」

 

 甲冑を着込んだ兵士の言葉に見物に来た住人が私を恐れるような、蔑むような視線で見た。

 

 ざわざわと色々な会話が聞える。

 

 それは全て私を否定する冷たい言葉だった。

 

 私は吸血鬼だ。

 

 胸に杭を刺されても死なない。

 

 不死の吸血鬼……。

 

 だが、最初からそうだったわけではない。

 

 本当は人間だったんだ。

 

 10歳の誕生日に吸血鬼にされるまでは……。

 

 領主が私がどんなに残虐か、血を吸うバケモノだとか、散々広場に集まった町人に言う。

 

 町人たちもその言葉を聞いて私を怖がり、処刑されるんだと安心したような表情をうかべた。

 

 ……私を知らないのに本当によく言う。

 

 ……私を知らないのに聞いただけでよく怖がる。

 

 吸血鬼にされてから約100年……、私はよく1人で生きれてこれたな。

 

 だけど、最期は油断で捕まるなんて本当に私はドジだな……。

 

「さあ、火を放て!」

 

 領主の男がそう叫ぶ。

 

 たいまつを持った甲冑姿の兵士が、たいまつの炎を私の足元に積まれた小枝や藁に近づけ、火を移した。

 

 ああ……これで私も終わりか……。

 

 赤く燃える炎が燃え上がる。

 

「あがぁあああああああ! 熱い! 熱いっ! 熱いぃいいいいいっ!」

 

 身を焼く炎に、溜まらずに口から悲鳴が漏れる。

 

 足元から段々と近づいてくる濃密な死の気配に、先ほどまで諦めていた生への渇望が湧き上がる。

 

「ああああああああああああ! がああああ、あああああああっ!」

 

 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない!

 

 私は! 死にたくない!

 

 助けて! 助けて! 助けて! 助けて!

 

 誰か! 誰か! 誰か!

 

「ぐあああああああああああ、がああああああああああああああ!!」

 

 喉が嗄れてしまうほど、喉が傷ついてしまうほど、広場に、街に響くほどの悲鳴をあげるが、誰も、誰1人として助けてくれる者はいない。

 

 身を焼く炎越しに見れば、領主は満足げな笑みを浮かべ、兵士は当然だという顔で立ち、見物にきた人間もほとんど当然だという顔で、他は目を伏せる者ばかり。

 

 誰も……、誰も助けてくれない……。

 

 この街に住んでいた間に出来た知り合いも、友人だと思っていた人も、誰も助けてくれない。

 

「あがあああああああああああああああああああああ!」

 

 私が……、私が消えていく……。

 

 体が熱に焼かれて消えていく……。

 

 意識が飛びそうになる……。

 

 死にたくない……。死にたくないよぉぉ……。

 

 誰か、誰か助けて……。

 

 誰でもいいから……、誰か私を……助けて……。

 

「――助けて欲しいか?」

 

 ――っ!

 

「俺ならおまえを助けられるが、助けて欲しいか?」

 

 炎に焼かれ、ほとんど聞えなくなったはずの耳にそんな声が聞えた。

 

「あ……ぐ……」

 

 喉が嗄れて声が出せないが、目は少しだけ見えた。

 

 誰かが私の前に立っていた。

 

「ある契約を交わせば、俺はおまえを救おう」

 

 幻聴? 幻覚?

 

 もうどちらでもいい。

 

 助けてくれるなら……、吸血鬼の私に手を差し伸べてくれるなら――誰だろうと関係ない。

 

 私は声がしたほうへ顔を向け、懸命に、最後の力を振り絞るように口を出す。

 

「なん……で、も、します……! た、す……けて、く……だ、さい!」

 

 お願いするように、すがるように、祈るように、私は言葉を紡いだ。

 

 その瞬間――。

 

 ブオンッ!

 

 と、一陣の突風が吹いた。

 

 突風は私を焼いていた炎をかき消し、次に何がが胸に刺さっていた杭が抜きさり、体を拘束していた縄が解かれた。

 

 拘束から解放された私は前へ倒れ落ちるが、誰かに抱き止められた。

 

 大きな、広く、温かい、懐かしい温もりだ。

 

 吸血鬼ゆえに治り始めた目で見上げると、ぼやけた視界が段々と回復していった。

 

 視界に映ったのは、褐色の肌で闇のように黒い髪、赤い瞳をした整った顔立ちをした野生的な男だった。

 

 抱きとめられている体から感じる力は凄まじいものだ。

 

 それに男からは気品のような……、私より遥かに上の存在のように感じられた。

 

「エヴァンジェリン・マクダウェル。……だったな?」

 

 男がこちらを見下ろし声をかける。

 

「は……い」

 

 私はゆっくりと治り始めた喉で声を紡ぎ、うなずいた。

 

「契約だ。対価としておまえは俺のモノとなる」

 

「――っ!」

 

 正面から見つめられながら男にそう言われたとき、私の胸はドキリと高鳴ったが、その前に大事なことがあった。

 

「私は、きゅ、吸血鬼……ですよ?」

 

 もしも彼が、私のことを冤罪などで捕まった人間だと勘違いしていて、私を助けたのなら……、吸血鬼である私は捨てられる。

 

 せっかく救われたのに、また1人になるのだけは嫌だ。

 

 私は彼の服を「捨てないで」とすがるように掴み、彼の返答を待った。

 

 吸血鬼でも捨てないでくれるか、吸血鬼でも救ってくれるのか。

 

 だけど、私の心配を他所に彼は八重歯を見せながら笑顔で言った。

 

「知ってる」

 

 と……。

 

「おまえが吸血鬼でも関係ない」

 

 と……。

 

 吸血鬼にされて初めて、吸血鬼である私を受け入れてくれたことに、助けられたことに涙が溢れる私に彼は続けて笑顔で言う。

 

「これからはおまえは俺の女だ」

 

 …………え?

 



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第1話 自己紹介とこれからの相談 ☆

 日本からヨーロッパへと寄り道しながら大体100年ほどで辿りつき、赤毛や金髪の美女を楽しみながら旅を続け、ある街へやってきたんだが、そこで10歳ぐらいの金髪の少女が火あぶりの刑に処せられているところに遭遇した。

 

 この魔女狩りの時代には珍しくもない光景だったが、俺は磔にされ、燃やされている少女に強く惹かれた。

 

 薄いながらも懐かしい魔の匂いはもちろん、火に身を焼かれながらも生を渇望するその姿がいたく気に入ったのだ。

 

 俺はすぐに彼女の元へと行き、周りの人間たちに幻術をかけた。

 

 火であぶられている彼女に、俺は悪魔としての契約を持ちかけ、『何でもするから助けて』という願いを聞き入れ、『俺のモノとする』という契約を結んだ。

 

 そして契約を終えた俺は、彼女が追われないように、幻術で人間たちに彼女は完全に何も残さずに死んだように見せ、街から連れだした。

 

 現在はその街から数十kmほど離れたある森のなかにいた。

 

 その森は大樹こそないものの、美しい森で、俺が第2の拠点として2つ目のログハウスを建てた場所だった。

 

 移動し始めてすぐに精神的にも肉体的にも疲れ果てて意識を失った彼女を、家へと招く。

 

 ベッドに寝かせて彼女の煤などで汚れた体をタオルで清めた。

 

 うん、よく磨いたら髪も綺麗な金髪で、肌も白く、整った顔立ちと女を感じさる体で、将来も楽しみな美少女だった。

 

 本当に、全身薄汚れていたのがウソみたいなぐらい綺麗になった。

 

 それからベッドに寝かせて、少女が目覚めるまで看病することに決め、意識を失う前に自分のことを吸血鬼だと言っていたので、いろいろ観察したりと楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、ここは……」

 

 金髪の少女を看病して2日。やっと彼女が目覚めたようだ。

 

 彼女はゆっくりとベッドから上半身を起こして周囲に視線を送った。

 

 その視線が俺のところへと向う。

 

「――っ」

 

 俺を見た彼女は目を大きく開いて驚いていた。

 

「あ、あなたは……」

 

 恐る恐る訊ねる彼女。助けたときの事をあまり覚えていないんだろう。

 

 あまり刺激しないようにあいさつする。

 

「おはよう、吸血鬼」

 

「――っ。……おはようございます」

 

 ん? 何やらショックを受けたような反応だったな?

 

 まあ、それは置いておいて、契約内容の確認からか。

 

「契約について覚えているか?」

 

「契約……」

 

「おまえを助ける代わりに、おまえは俺のモノになる、という契約だ」

 

「……覚えて、います」

 

「だったら、いい」

 

 契約を忘れられていたらどうしようかと思ったが、覚えているのならいい。

 

「あ、あの……」

 

 彼女から声をかけてきた。

 

「なんだ?」

 

「お、お名前は……?」

 

「ん? 名前?」

 

 名前か……。俺自身、魔界で使っていた名前もあるが、あまり魔族……、それも元とはいえ、魔王が名前を明かすことははばまれるし……。いや、でも、ここは素直に名前を言って有名になるチャンスか? ルシファーとかサタンばかり有名になりすぎて正直、羨ましかったし、俺もあいつらみたいに有名になれる滅多にないチャンスだし……。

 

 俺が答えていいものか悩んでいると、彼女から名を明かした。

 

「私は、エヴァンジェリン・マクダウェルです」。

 

「エヴァンジェリンか。いい名だ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 顔を少しだけ赤く染めるエヴァンジェリン。

 

 ふむ……、本当にどうするか……。

 

 名前を言うか、言うまいか。

 

 ん~……、もういっそのことエヴァンジェリンに決めてもらうか。この世界に当分住むことになるんだ。いつまでも「元魔王」と呼べというわけにはいかない。

 

 エヴァンジェリンの目を見ながら言う。

 

「俺の名前はおまえが決めてくれ」

 

「わ、私が!?」

 

 驚くエヴァンジェリンだが、無視して続ける。

 

「俺には名前があるが、それは前の世界のものであまり使えないんだ。この世界で名乗るための名を、おまえが新たに名づけてくれ」

 

「前の世界? え、とでも、わ、私なんかが名前を決めて、いいんですか?」

 

「ああ」

 

 エヴァンジェリンにしっかりとうなずく。

 

「わ、わかりました……」

 

 エヴァンジェリンはうなずくと、すばらく考え中のポーズをして、決めた。

 

「アルヴィン・アンドリュー……ではどうですか?」

 

「アルヴィン・アンドリュー?」

 

 ふむ……、響きはなかなか、悪いとも言えんし、ややいいと言えるな。

 

「だ、ダメですか?」

 

 涙目になりながら聞いてくるエヴァンジェリンの頭に手を置く。手を置いた時にビクッと体を震わせたのはまだこちらの事を警戒しているからだろう。

 

 エヴァンジェリンを安心させるように頭を撫でて、うなずく。

 

「わかった。俺は今からアルヴィン・アンドリューだ。これからよろしく、エヴァンジェリン」

 

「――っ、は、はい! よ、よろしくお願いします!」

 

 パァッと笑顔を見せるエヴァンジェリン。

 

「まあ、とりあえず……、まずは服をどうにかしないとな」

 

「え? …………。――っ!」

 

 エヴァンジェリンはその言葉で、自分が裸であることにやっと気づき、顔を真っ赤にしてシーツを体に巻きつける。

 

「な、なんで!? わ、私!? は、裸!?」

 

 エヴァンジェリンは、混乱しているようだ。

 

「――っ! ま、まさか――」

 

 エヴァンジェリンは、俺に背を向けると何かを確認するように下半身を見つめていた。

 

「あ、あった……」

 

 エヴァンジェリンは、安心したようにつぶやいた。

 

 ここでこちらから助け舟をだす。

 

「裸なのは火で服が燃えたからだ」

 

「そ、そうなんですか」

 

 安心したような表情を見せるエヴァンジェリンだが……。

 

「まっ、煤やドロなんかで汚れたおまえの全身を洗ったのは俺だけどな」

 

「――っ!」

 

「ハハハハハ」

 

 固まるエヴァンジェリンが面白くて笑い声をあげるが、すぐにエヴァンジェリンから放たれた悲鳴でかき消された。

 

 ハハハハハ、本当にこれから退屈しないでよさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、ところであなたはいったい何者なんですか?」

 

 私は助けてくれた彼……アルヴィン・アンドリューに質問した。

 

 アルヴィンさんは食事であるスープを作りながら、首だけ振り返った。

 

「俺か?」

 

「はい」

 

 火あぶりの刑にされている私を助けだし、空を飛んだりと彼はいろいろと人間からかけ離れているし、本来の名前を使えないという変な人だ。まあ、私に名前をつけさせてくれたのは若干うれしかったが……。

 

 最初は、私を吸血鬼にした奴と同じ魔法使いと思ったが、そういう感じでもない。

 

 私がいろいろ考えを広げているなか、彼は何事もないかという風に言った。

 

「ああ、俺は悪魔だよ」

 

 と……。

 

「あ、悪魔ですか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「……そ、そうですか」

 

 当然のごとく人外であることをばらした。

 

 悪魔は本来人間などから恐れられるものだが、私は悪魔だと聞かされてもそこまで驚かなかった。

 

 おそらく私の吸血鬼としての本能のようなものが、彼が何者であるか予想していたのだろう。

 

 それに、私自身彼が何者であってもどうでもよかったんだと思う。

 

「ほら、飲め。温まるぞ」

 

 アルヴィンさんから木でできた器に入ったスープと、同じく木でできたスプーンが差しだされる。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 私は器を受け取り、スープに口をつけた。

 

「…………美味しい……」

 

 口のなかに広がる食材の味と温かさ。……久々に飲んだ。

 

 スープが体に栄養を行き渡らせていくのを感じ、私は生きているんだと実感した。

 

「うっ……、ひくっ……、美味しい……、美味しいです」

 

 嗚咽を漏らし、涙を止めるのも忘れて私はスープを飲む。

 

「そうか。それはよかったな」

 

 アルヴィンさんはそうつぶやき、私が寝ているベッドのすぐ横に置いた椅子に座り、同じくスープを飲んでいた。

 

 スープを飲み終わり、再び私はベッドに寝かされた。

 

 アルヴィンさんは私が寝かされているベットのすぐ横に置いた椅子に座って看病してくれるようだ。

 

 誰かに看病してもらう。こちらも10年ぶりぐらいのことだった。

 

 ベッドに寝転んだままアルヴィンさんに話しかける。

 

「あの……、これから私はどうすれば?」

 

 契約では私は彼の所有物……もとい女になったはずだ。

 

 彼の女……。

 

 見た目は10歳だけど、100年ほど生きている私にはそれがどんな事になるのか理解できた。

 

 少し不安を抱きながら彼の返答を待っていると、彼は私の体を見ながら話し始めた。

 

 シーツ越しに裸を見られているような視線だったけど、我慢、我慢……。

 

「そうだなぁ。とりあえず最初は俺の眷属扱いで、鍛えるかな」

 

「鍛える? 魔法とか習ったりするんですか?」

 

 そう私が言うと、アルヴィンさんは意外そうな表情を浮かべた。

 

「あれ? この世界って魔法があるのか?」

 

 魔法使いがいる事を知らない?

 

 まあ、私も吸血鬼にした奴が自分のことを魔法使いだと話すまでは知らなかったなと思ったが、少し変だ。悪魔って召喚されてこちらの世界へやって来るものじゃなかったの?

 

 なのに悪魔である彼の召喚主らしき人の影すら見えないし、召喚されたのなら魔法があることを知らないのはおかしい。

 

「え、ええ。私を吸血鬼にしたのは魔法使いですし、これまでに数人ほどの魔法使いとも会いました」

 

 出会った数人の魔法使いは全員真祖の吸血鬼である私を殺そうとする奴らだったけど。

 

「そうなのか?」

 

「はい。それに何でも魔法世界というものがあるそうです」

 

「魔法世界!?」

 

 アルヴィンさんが興味津々とキラキラとした瞳で大声をあげた。少し子供っぽい。

 

 それからアルヴィンさんは顎に手を置いて、考えをまとめるように「うん、……うん」と1人でうなずき、「よし!」と何かを決めた。

 

「まずは魔法世界とやらに渡って魔法を覚えるか!」

 

「えっと……、私が魔法を覚えるんですよね?」

 

 それなのに、なんでそんなに楽しそうなのか気になる。

 

 アルヴィンさんはテンション高めにうなずく。

 

「ああ、そうとも! あんな人間共に捕まったりしないように、みっちりきっちり鍛えてやろう!」

 

 これまで魔法は向けられるだけだったけど、これから魔法を覚えられれば自衛できるようになる。

 

 私はアルヴィンさんに頭を下げる。

 

「……よろしくお願いします」

 

 アルヴィンさんは笑顔でうなずき、私の頭に手を置いた。

 

 大きな手の平だ……。まるで父上や母上から撫でられているような、心が温かくなって安心する。

 

 本当に……、本当に久々だ……。

 

「俺が最強の吸血鬼にしてやるよ、エヴァンジェリン」

 

 アルヴィンさんのつぶやきを聞きながら、私はゆっくりと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エヴァンジェリンを助けてからすでに3ヶ月が経とうとしていた。

 

 現在俺たちは魔法世界にある森のなかにいた。

 

「思いのほか簡単にこれたな」

 

 自分でも魔法世界に行こうと思って、3ヶ月でまさか来れるとは予想もしていなかった。

 

「アルヴィンさんが魔法を使って魔法使いから聞きだしたおかげですね」

 

 頭の上、肩車しているエヴァンジェリンがそうつぶやいた。

 

 ふむ、金髪少女を肩車……、なかなかいいな。

 

 やわらかくスベスベしたエヴァンジェリンの肌や体温を頭や肩に感じながら言う。

 

「そうなんだけど、あまり早くついてもなぁ~」

 

 魔法世界へ行くための冒険とかしたかったんだよぉ。

 

「だったら、あの……」

 

 頭の上のエヴァンジェリンが何か言いたげだ。

 

「どうした?」

 

 恥ずかしそうに、というか、言いにくそうに言う。

 

「お家……造りませんか?」

 

「家かぁ~」

 

 これまで家を2軒ほど建てたけど……。

 

「そ、そういうのじゃなくて、元から建ってあるお家に住んだり、土地を買ったりして造るほうのお家です」

 

「ああ、そっちか」

 

 造るといっても建てるじゃなくて、巣作りのほうね。

 

「はい」

 

「うん。それなら楽そうだし、魔法の習得にも集中できるか。旅ならそこからすればいいだし」

 

 ……それにそろそろエヴァンジェリンとしたいし……。

 

「――っ」

 

 エヴァンジェリンの体が少しだけ震えた。

 

「どうした?」

 

「い、いえ、なんでも。何か悪寒というか身の危険みたいなものを感じただけです」

 

「身の危険って、だけ(・・)ですまされるようなものじゃないと思うけどな」

 

「と、とにかく心配いらないです。さあ、家を探しましょう」

 

「まっ、そうだな。まずは家探し。手に入れる金は龍種とか倒せば簡単に入るそうだし、盗賊とかそういう奴らからも盗ればいいんだしな」

 

「……普通、龍種なんて倒せないからその分お金がいいんですけどね。盗賊しかり」

 

「ハハハハ、まあ、弱肉強食ってところだろ。コレも」

 

「そうですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家を探して、数週間。気に入った古城が見つかり、俺とエヴァンジェリン……、長いからエヴァは、そちらへと住処を移した。

 

 今回は人間界にあるログハウスではなく、かなり大きな西洋風の城だった。

 

 城のなかは荒らされておらず、城の周りには魔物がたくさんいたから、おそらくその魔物が原因で引き払ったんだろう。

 

 いまはその魔物たちを追い払い、エヴァと魔法の勉強をしているところだった。

 

 魔法の勉強用にと、部屋よりも先に綺麗にした城の書斎に、これまでに収集した魔法書を納めて勉強を開始する。

 

 書斎に設けられたテラスに出てからエヴァに言う。

 

「さあ、初級魔法のおさらいだ。エヴァ」

 

「はい! リク・ラクラ・ラックライラック『 火よ 灯れ (アール ディスカット)』」

 

 いい返事を返したエヴァは魔力を流すための始動キーを唱えてから魔法の呪文を唱え、初心者用のおもちゃのような杖を振った。

 

 ボッ。

 

 振った杖の先から小さな火が生まれた。

 

「出来ました!」

 

「うん、次は魔法の射手(サギタ・マギカ)だ」

 

「はい! リク・ラクラ・ラックライラック、闇の精霊! 魔法の射手、闇の一矢!」

 

 今度は杖の先から黒い矢が飛びだし、空へと放たれた。

 

「うん、じゃあ、次は武装解除、それから中級魔法の闇の吹雪だ」

 

「はい!」

 

 そうして今まで魔法書で覚えた魔法をおさらいさせる。

 

 さすが吸血鬼というか普通の人間よりも魔力が多く、エヴァ自身にもおそらく才能があるのだろう。魔法を覚え始めて数ヶ月ですでに中級魔法が扱えていた。

 

 もう少ししたら上級魔法を覚えさせるか。

 

「はぁはぁ……、お、終わりました」

 

 エヴァは魔力と精神力を大量に減らして、肩で息をしていた。

 

「ああ、ようやった。上手くなったなエヴァ」

 

 そんなエヴァの頭を撫でながら褒めると、エヴァは頬を赤らめ「えへへ」とうれしそうに喜んだ。

 

 ――っ。かわいいなぁっ!

 

 心のなかでエヴァのかわいらしさに悶えていると、エヴァはいつになくもじもじと俺の服の裾を掴んできた。

 

「あ、あの……」

 

 ふむ……、この感じは吸血衝動か? そういえば助けてから数ヶ月経つが血を吸わせていないな。

 

「血か?」

 

 そう訊くとエヴァはうなずいた。

 

「は、はい……」

 

「わかった。では寝室へ行くか」

 

「――っ! は、はい!」

 

 エヴァは俺の言葉に驚いたがすぐに元気よく返事を返した。

 

 エヴァと手を繋いで寝室へと向う。

 

 あからさまにエヴァは俺のことを意識しているようで、そわそわしている。

 

 これまでエヴァから好意を向けられている事に気づいても手は出さすに添い寝したり、一緒に風呂に入るだけで、旅の途中に引っ掛けた女とばかりしていたからな。

 

 エヴァは約100歳。自分の女にすると言ったからには、そろそろ自分にも手を出して欲しいんだろう。幼児体型で誰も相手にしてくれなかったそうだし、仮に相手にしようとするのも幼女趣味の変態だったそうだからな。初心なんだけど、そろそろ気を許せる相手に貞操を捧げたいみたいだ。

 

 城の上方にある広めの寝室へと向う。

 

 そこは掃除したばかりで綺麗になっており、キングサイズの天蓋付きベッドや簡単な家具しかまだ置いていない部屋だった。

 

 まずは自分がベッドの端に座り、その自分の膝の上にエヴァを座らせる。

 

 吸血衝動が強くなっているのかエヴァの呼吸音がいつもより大きい。

 

 エヴァに血を吸わせる前に注意を言っておく。

 

「前にもいったが、俺は主がいない実体を持った悪魔だ」

 

「はい」

 

「悪魔の血は魔力の塊のようなものだから、まだ吸血鬼になりたてのおまえでは、俺の血を数滴でも飲めば魔力に酔ってしまうだろう」

 

「そ、そんなにですか?」

 

 吸血鬼として人間の何倍もの魔力を保有するゆえに、血ごと俺の魔力を受け止める自信があったようだが、実際には俺の魔力はエヴァのキャパシティを明らかに超えている。

 

「まあ、俺は元とはいえ魔王だからな」

 

「え?」

 

 エヴァが面白い顔で固まった。

 

 それがかわいらしくも面白く後ろから悪戯してしまう。

 

 エヴァに着せている白いドレスのスカートを少しだけ捲ったり、抱きついて腹を撫でたり、脇から手を入れてほとんど膨らんでいない胸を擦ったり、プニプニの頬っぺたをつついてみたりした。

 

「ま……おう……?」

 

 一生懸命受け入れられない、信じられないと搾りだしたエヴァに、しっかりと肯定する。

 

「そうだよ。サタンやルシファーなんかと同列の大がつく魔王さま。まあ、俺が大魔王であることなんて誰も知らないんだけどな」

 

「……知らない?」

 

 そこに食いついたね。

 

「うん。俺の存在は悪魔以外ほとんどの者が知らないはず。なにしろ神々や他の大魔王たちが争ってるなか1人だけ魔界で遊んでいたからな」

 

「…………」

 

「本当に酷いんだぜ、皆。俺が数千年遊んでただけで完全無視なんだから。ルシファーやサタンとかレヴィアタンとかが有名になって聖書に刻まれたりするのに、俺だけ未だに書かれないんだ。大魔王らしい活動なんて土地管理ぐらいでほとんどしなかったからってさぁ、天界まで無視する必要ないよな」

 

「……………」

 

「ありゃ? どうしたんだエヴァ?」

 

 どうリアクションしていいか困っているような感じだね。

 

 しばらくしてエヴァが口を開いた。

 

「えっと、質問していいですか?」

 

「うん、いいよ」

 

「アルヴィンさんは魔王なんですよね?」

 

「うん、魔王神に次いで上から2番目の大魔王な」

 

「どうして大魔王が人間界に実体で来れたんですか? よくて分霊ぐらいしか呼びだせないんじゃないんですか?」

 

「ああ、それね。ゲートを創ってもらったんだよ」

 

「ゲート?」

 

「そ。自分の支配している国にいる悪魔と自分の魔力、それに他の大魔王たちにも魔力をもらって、ベルフェゴールに人間界へのゲートを創ってもらったんだ」

 

「…………」

 

 エヴァは俺の言った言葉の内容を頭でまとめているようだった。時おり「それだけ魔力があるなら移動に使う消費魔力は十分賄える」とかつぶやいていた。

 

「それで納得したかい?」

 

「は、はい……、あなたがいろいろな面で別格だって再認識しました」

 

「ふふ、失礼だね」

 

「すみません……」

 

「まあ、いいさ。事実だし。――それよりも血を飲もう。ワインに数滴血を落として薄めればいいだろう」

 

「は、はい」

 

 虚空に手を入れてワイングラスとワイン壜を出し、グラスにワインを注いだ。

 

 人差し指を犬歯で傷つけ、グラスの上で一滴血を落とす。血が一滴落ちてすぐ、指の傷が塞がり、ついていた血も蒸発した。

 

「さあ、エヴァ。めしあがれ」

 

「い、いただきます」

 

 俺の血が混じった血のように赤いワインにエヴァは口をつけた。

 

「――っ、す、すごい……」

 

 1口飲んだエヴァは目を大きく開いて驚き、2口、3口と口をつけ、ゴクゴクと水を飲むように飲んでいった。

 

「はぁはぁ……、こんなに美味しいワイン飲んだ事ないです」

 

 ワインと一緒に体に俺の魔力を内包した血が染み渡っているのだろう。ビクビクと時おり体を震わせて魔力を味わっていた。

 

「満足したかい?」

 

「はぁはぁ……、はい。ありがとうございました」

 

 後ろにもたれかかってくるエヴァからグラスを取り上げ、ワイン壜を虚空にしまう。

 

「さてと、じゃあ、今度は俺が満足させてもらう番だな」

 

「――っ」

 

 真っ赤になるエヴァの耳元でつぶやく。

 

「今夜はエヴァが気絶するまで寝かさないよ」

 

「――っ!」

 

 エヴァが服の裾を掴んでこちらのほうに顔を向けた。うれしそうな、安心したような、不安そうな、覚悟を決めたような表情になって、

 

「はい」

 

 とうなずくと、目を閉じてキスを求めるように小さな唇をつきだしてきた。

 

「楽しもうね、エヴァ」

 

「――っん」

 

 俺は唇を重ねてエヴァをベッドへ押し倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月明かりに照らされる部屋。その部屋に置かれた天蓋付きのベッドの中央で、裸のエヴァが寝転んでいた。

 

 俺はエヴァの正面に座っていて、ペニスを見せて怖がらせないように下着だけ着て上半身は完全な裸だ。

 

 エヴァは俺に裸を見られる事が恥ずかしいと、手で胸とかわいらしいオマンコを隠し、体を硬くして緊張しているようだった。一緒に風呂に入ったときいつも見ているが、今回は意味合いが違うからな。

 

「綺麗だよ、エヴァ」

 

「そ、そんなに見ないでください、アルヴィンさん。恥ずかしいです」

 

「何を言うんだ。こんなに綺麗なんだから見ないと損だろう。さあ、手をどけるんだ。――エヴァの全部俺に見せてくれ」

 

「――っ、は、はい……」

 

 エヴァは真っ赤な顔でゆっくりと手をどけ始める。

 

 隠されていたピンク色の小さな乳首や、ぴったりと閉じた幼いオマンコが眼前に現れた。

 

「ふふ、綺麗だし、かわいいな」

 

 まずはエヴァの緊張を解こうと隣に寝転がり、腹に手を置いた。

 

「――っ」

 

 エヴァは触れられて体を緊張させるが、これまでに添い寝や一緒にお風呂に入ったりとスキンシップは取っていたので、すぐに落ち着いてきたようだ。

 

 今度は手の平でエヴァの腹から胸へとを優しく撫でていく。

 

 少しだけ小丘になっている胸を擦ると、エヴァはビクッと体を震わせた。

 

 手の平からコリコリした小さな乳首の感触が伝わる。感度もいいようだしなかなかの逸材だ。

 

 一生懸命、手で胸を隠してしまわないようにエヴァは後ろ手にシーツを握っていた。

 

「ふふっ、かわいいな」

 

 俺の言葉をどうとらえたのかエヴァは少しだけ不機嫌そうに顔を背けた。

 

「どうしたんだ?」

 

 指で少しだけ膨らんだ胸を摘まむように揉みながら訊ねると、エヴァは顔を背けたまま小声でつぶやいた。

 

「……どうせ私は子供ですよ。胸も小さいままですよ」

 

「アハハハ」

 

 それを聞いた俺は少しだけ笑みをもらしてしまう。

 

「わ、笑わないでください!」

 

「ああ、スマンスマン。あまりにかわいらしくてな」

 

「~~っ!」

 

 顔を真っ赤に染めるエヴァ。そのエヴァの白く細い首筋を舌でペロリと舐める。

 

「んんっ、アルヴィンさん」

 

「ちゅっ、レロッ……、美味しいな」

 

 首筋から鎖骨へとゆっくり舌で舐めていき、胸へと辿りつく。

 

 小さな乳首を乳輪ごと口で咥え、舌の腹でひと舐めした。

 

「あぅっ、ん……、はぁ……あ、アルヴィンさ、んっ」

 

 気持ちいいのか、くすぐったいのかエヴァはビクビクと体を震わせ、胸に顔を埋めて乳首に吸いつく俺に抱きついてきた。

 

 細い腕が後頭部に回され、もっと弄ってくれと言っているみたいに押しつけられる。

 

「あはぁ……、はぁはぁ……、胸が、おかしくなるぅぅ……」

 

 発情した雌の甘い吐息を頭に感じながら今度は手をエヴァの股へと侵入させる。

 

「――っ! あ、アルヴィンさん、そこは――!」

 

 ぎゅっと頭を抱くエヴァ。まだオマンコを弄るのは怖いみたいだが、これからずっとここを使って触れ合うようになるんだ。

 

 乳首から一端口を離して言う。

 

「大丈夫、やさしくするよ」

 

「……っん、あ、ああ……っ、ゆ、指が……!」

 

 エヴァの股に侵入させた手でまだ何も生えていないスベスベの恥丘を撫でて、オマンコのスジに触れた。

 

 こちらもスベスベしていて、跳ね返してくるようなプニプニのオマンコだった。

 

 今度はもう片方の放置していた乳首を弄りながら、股間に侵入させた指を使ってロリマンコを左右に開いた。

 

 ぴったりと閉じていたスジを開くと、ムワッとした生暖かい湯気のようなものを感じ、ますます興奮する。

 

 人差し指で開いたロリマンコを下からなぞるように触れる。指に絡みつく愛液の温かさとヌメリを感じた。

 

「少しだけだが、濡れてきたな」

 

「――っ、そ、それは……」

 

「ふふっ、別に恥ずかしがることじゃないだろ。これはエヴァが気持ちよくなってくれている証拠のようなものだ。感じてくれて俺はうれしいよ」

 

 まっ、証拠といっても、守る為に勝手に出る場合もあるけどな。

 

 だが、その言葉が思ったよりも効いたようだ。

 

 エヴァはトロン表情を緩め始めて、体からも緊張が抜けていった。

 

 少しだけ体を前へ持っていき、エヴァの唇を奪って唾液を送り込む。

 

「――っん。んんっ、……こくっ、……ごくっ……、じゅちゅ……、はぁぁぁ……」

 

 エヴァはたっぷり送った唾液を喉を動かして飲み干し、口を離すと満足気なため息を吐いた。

 

 そんなエヴァの頬にキスをして再び唇を重ねる。

 

 舌を口内に侵入させ、歯を磨くそうに八重歯を舌で磨き、舌同士を絡め合わせ、侵入させた手で幼いオマンコを弄りながら……。

 

「はふっ、んじゅ……ふぅ、じゅ、ちゅ……はぁ、んんっ」

 

 エヴァの喘ぎ声と共に段々と股が開いていく。

 

「もうトロトロだな、エヴァ。気持ちいいか」

 

「ん……、はぃ……きもひいいでひゅ……」

 

 涎を垂らしながら、だらしない表情でエヴァはうなずいた。

 

 オマンコの具合といい出来上がったようだが、エヴァの体の年齢は人間の10歳だそうだからな。まだセックスまでは無理だろうが、イクということまで感じさせてみるか。

 

「もっと気持ちよくなろうか、エヴァ」

 

「……もっと?」

 

「ああ、もっとだよ」

 

 そう言ってからエヴァの股の間に体を入れる。

 

 そして、ゆっくりとオマンコに顔を下ろした。

 

 エヴァの濃い匂いがオマンコから香る。

 

「あ、アルヴィンさん……」

 

 股を閉じようとするエヴァだが、両手で太ももを持って閉じさせない。

 

 顔を股に埋めたままエヴァのオマンコを観察する。

 

 エヴァのオマンコは本当に幼い子供のオマンコで、ピッタリ口を閉じ、その割れ目から愛液を少しだけ漏れさせていた。

 

 オマンコの上にあるツルツルした恥丘にキスをしてから舌を出し、ツーっとなぞるようにオマンコへと向った。

 

「そ、そこは……、き、汚いです! あ、アルヴィンさんっ!」

 

 そう悲鳴のような叫びをあげながら両手で俺の頭を押し、足に力を入れて股を閉じようとするが、俺は動かない。

 

 少しだけ口を離してエヴァに言う。

 

「全然汚くないよ、エヴァ。それどころかずっと舐めていたくなるほど綺麗で美味しいオマンコだ」

 

「――っ、で、でも……っ」

 

「ふふっ、大丈夫。まだエヴァは俺を感じてくれていればいいから」

 

 会話を止めて、エヴァのオマンコのスジを舌で割り開いて舐め始める。

 

「あっ、……やっ! ほ、本当に舐め、られて……、んんっ!」

 

 オマンコを生まれて初めて舐められただろうエヴァは刺激に戸惑っているようで、頭を押しのけようとしていた腕からは力が抜け、股も大きく開き始めていた。

 

 エヴァからの抵抗がなくなり、喘ぎ声をあげるようになったので、俺はそのまま時間をかけて小さな膣口や尿道口、小陰唇の感触を舌でじっくりと楽しんだ。

 

 エヴァのオマンコは全てがコンパクトのお子様サイズで膣口も膣道も狭い。

 

 今、俺のペニスを挿入したら処女膜など関係なしに裂けてしまうだろうから、これから時間をかけてゆっくりと受け入れれるように拡張していかないといけないな。

 

 まっ、何年かかろうと、何十年かかろうと、何百年かかろうと別にいいし、根気よくエヴァと楽しみながらするか。

 

 今日はまずはクンニだな。舌を入れて膣口を拡げよう。

 

 顔をエヴァのオマンコにくっつけて舌先で膣口を集中して舐め始める。

 

「はぁはぁ……、んっ、あぅっ……、はぁはぁ……」

 

 エヴァの喘ぎ声の質が変わり始めた。

 

 どうやらオマンコを舐められることで生まれる快感を受け入れ始めたようだ。もっと舐めてとお願いするようにエヴァの腰が浮き上がってきた。

 

 外から見れば幼い少女が大股開いて男に舐めさせているように見えるだろうな。

 

「気持ちいいか、エヴァ」

 

 小さな皮を被ったクリトリスに息を吹きかけながら訊ねると、エヴァは素直にうなずいた。

 

「はい……、すごく……。すごく気持ちいぃ、です……」

 

「エヴァが気持ちよくなってくれて俺もうれしいよ。ほら、自分で胸を弄ってごらん。もっと気持ちよくなれるぞ」

 

「もっと、気持ちよく……」

 

 エヴァは自分の胸にゆっくりと触れる。

 

「――ぁんっ!」

 

 胸に触れた瞬間、エヴァは体をビクッと跳ねさせ、オマンコから愛液をドロリと分泌させた。

 

 少しだけイッタようだな。

 

「はぁはぁ……、なに? さっきの……。頭が一瞬真っ白に……」

 

 戸惑いながらも胸を揉み続けるエヴァに教える。

 

「それは絶頂に達した証拠だよ。イクとも言うんだけど。性的に最高に気持ちよくなったときに感じるものなんだよ」

 

「最高に……気持ちよく?」

 

「そうだよ。オマンコ舐められたり、胸を揉んだりされて最高に気持ちよかったんだね」

 

「…………うん」

 

 恥ずかしそうだけど、しっかりとエヴァはうなずいた。

 

 だけど、まだエヴァは絶頂を迎えるのに慣れていないだろうから、さらにその感覚を教え込まないとな。

 

「エヴァ、今度は最高に気持ちよくなりそうになったらイクと叫んでごらん。スムーズに気持ちよくなれるから」

 

「はいっ、わかり、ました」

 

「じゃあ、またオマンコ舐めてあげるよ」

 

 再びオマンコに口をつけて舐め始める。

 

 愛液を舐め取り、いやらしく、じゅるじゅると音を立てながら舐めしゃぶる。

 

「――んっ、はぁ……っ。んっ……、はぁはぁ……」

 

 エヴァの膣口がほぐれ始めたのを舌先で感じ、ゆっくりと縁をなぞるように舌で拡げながら入れていく。

 

「あっ! くぅっ、はぁはぁっ。――ううっ、し、舌が……、わ、私のなかに……ッ!」

 

 体をビクビクと震わせながら腰を引いて挿入を逃れようとするエヴァだが、逃がさない。

 

 しっかりと細い腰を掴んで顔を押しつけ、舌を奥へと侵入させた。

 

 差し込んだ舌で輪のように狭いエヴァの膣口やその先にある膣道の感触や味、体温などを楽しみながら、鼻先に触れるクリトリスの臭いを嗅いた。

 

「――っ」

 

 奥へと進めていた舌先が何かにぶつかった。どうやら処女膜に到達したようだ。エヴァの体がビクッと跳ねた。

 

 再生するだろうが、舌で初の処女膜喪失はかわいそうだな。

 

 処女膜を傷つけないように浅い位置で舌を前後に動かし始める。

 

「くぅっ! ――ん、んんっ、そ、そんなに舌で、ズ……、ズボズボしないでくださいっ。――いっ、……イキそうになるから本当にや、め……」

 

 そう言われてもね~。イカせるのが目的だからな。

 

 エヴァの腰から手を離して太ももをがっしり抱いて、ダメだと膣道を舌でかき回す。

 

「ああああぁぁぁぁっ! だ、ダメ! か、かき回さない、でっ! イクっ! イクゥゥウウウウウウウウウウ!」

 

 エヴァは悲鳴をあげて体をのけ反らせると、ビクッ、ビクッと体を痙攣させた。

 

 どうやら刺激が強すぎたようだ。一気にイッてしまった。

 

 ビュッ、ビュとエヴァのオマンコから噴き出る潮を顔受けながら、ゆっくりと舌を引き抜く。

 

 体を起こして改めてベッドの上に寝転んだエヴァを見ると、胸を激しく上下させながら虚ろな表情で下半身を痙攣させていた。

 

 うん、完全にイッタようだな。

 

 まだまだ弄ってあげてもいいが、ここまでが限界のようだな。……意識も飛んでるようだし。

 

 まあ、俺自身も興奮して昂ぶっていて性欲を発散したい気もするが、無茶はさせられないからな。

 

 エヴァの隣に寝転がった。

 

 隣に寝転がった俺に、エヴァは見かけ通り、幼い子供のように抱きついてきた。

 

 ゆっくりと目を閉じ、息を整えて、そのまま眠ったようだ。

 

「おやすみ、エヴァ」

 

「――ん……」

 

 いまはこれだけで充分だ。




 さすがに慣らしてもない10歳児の体に挿入は無理ですよぉ~。


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第2話 歴史は流れ ☆

 エヴァと魔法世界の古城で暮らし始めて約200年。

 

 エヴァの魔法の腕はすでにこの世界でもトップクラスの腕前となっていた。

 

 この100年、住処である土地に侵入する魔物を倒させたりと実戦経験も積んでいて、大型の龍種なども1人で倒せるようになっているので、人間はもちろん、並みの魔法使いが何人束になって襲い掛かってきても、エヴァを捕らえることはできないだろう。

 

 最上級魔法をも習得したエヴァは現在、魔法具や魔法薬、オリジナルの魔法などを創ったりするのに興味を示し、魔法の練度をあげながら研究を続けていた。

 

 一方、俺はというと……。

 

 古城の修復をしたり、農作業に精を出していた。

 

 ……いや、だってね。

 

 住むところよくしたいじゃん?

 

 いつまでも古い城のままなんて衛生的にマズいし、家の周りには凶暴な魔物が住んでいたから近くには街や国はもちろん集落すらないんだし、買いに行くのも面倒だ。それに魔法の研究なんかで忙しくしてるエヴァと違って俺だけずっと暇なのはつまらないからな。

 

 古城を綺麗にしたり、野菜作りとか果物作りとかいろいろを始めたんですよ。

 

 幸い時間だけはあるから遠くの村や集落なんかに行って、金や盗賊退治を対価に栽培法聞いたり種をもらったりして、ゆっくり植物栽培したりしてるんです。

 

 古城の修理も10年ぐらいどっかの国の職人に弟子入りして教えてもらったし、この200年で俺の生活スキルはかなり上がりました。

 

 いまでは10種類以上の野菜や果物はもちろん、エヴァの魔法薬の元となる薬草なんかも育てているし、古城も壊れていた場所だけじゃなく、古くなって汚れが目立っていたところを磨いて塗料を塗って、エヴァの要望通り綺麗で立派な白い城に変えていた。

 

 もう魔物が住む廃れた城とは言れないだろうな。

 

 城の周りに生えていた木も切り倒した。草もキチンと刈った。立派な城だと自分でも自負するぐらいだ。

 

 今日1日食べる分の野菜を収穫してから城へ帰る。まっ、帰るといっても城壁内で栽培してるから庭から家のなかに入るが正しいんだけどさ。

 

 そのままキッチンへと向かい朝食の準備と同時に昼食と夕食の仕込みを始める。

 

 まったく、元とはいえ魔界の大魔王が熟練した主婦みたいな生活してんなぁ。少し前だったら全部眷属悪魔達にやらせていたのにさ。

 

 1時間ほどで食事の準備を終えて、エヴァと一緒に寝起きするのに使っている部屋へと運ぶ。

 

 城には立派な晩餐会室もあるのだが、そこに2人では大きすぎるのだ。

 

 それに部屋に置いたテーブルのほうで食事するほうが寂しくないからな。

 

 部屋に入り、テーブルの上に食器を並べ、食事を用意してから、天蓋付きのベッドでおやすみ中のエヴァを起こす。

 

 これから朝食といっても、現在の時刻は昼の少し前。吸血鬼のエヴァに合わせた時刻だ。

 

「エヴァ~、そろそろ起きろ~」

 

 声をかけながら体を少しだけ揺する。エヴァはこの200年まったく成長のせの字もしていない10歳の容姿のままだ。

 

 確か、純血の吸血鬼なら人間と同じように成長して若い時期がすごく永くて、吸血鬼の血が薄まるほど成長が遅くなる。

 

 と、聞いていたけど、エヴァは真祖の吸血鬼という人間ベースの吸血鬼だから完全な大人になるまでにはおそらく人間の1000倍ぐらいの時間がかかって、10000年ぐらいの時間で10歳ほど成長するじゃないか。

 

 ――って、この前……、5年前ぐらいに俺が巨乳娼婦と楽しんでいたのを見て、幼児体型に悩んでいたエヴァに言ったらすっごい落ち込んでたっけ。まあ、すぐにフォロー入れて元気付けたけどね。

 

「ほら~、エヴァ~」

 

「ん……、んん……」

 

 ゆっくりとエヴァが目を覚ます。目を擦りながらベッドから上半身を起こして伸びをした。うん、スケスケのネグリジェが異様に似合う幼児体型だね!

 

「ふぁぁ……、おはよう、アルヴィン」

 

「おはよう、エヴァ。朝食の準備が出来てるよ。はい、濡れタオル」

 

 いつも通り、虚空に作った倉庫用の空間から濡れタオルを出してエヴァに渡す。

 

「ん、ありがとう」

 

 エヴァは礼を言ってから濡れタオルを受け取ると顔を拭いた。

 

 それから濡れタオルを返してもらい虚空になおして、テーブルにつかせる。

 

 それから食事の前の祈り……、悪魔と吸血鬼なので神ではなく食材などへの感謝を込めて祈り、朝食を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べ終わり、一緒に食器を洗い片付けたあと、城の上方に設けたテラスでエヴァをヒザの上に乗せてくつろいでいると、城門が開いた。

 

 開いた城門から大きめのナイフを持った小さな2頭身の人形が入ってきた。

 

 エヴァがその人形を見下ろしながら呆れたようすでつぶやく。

 

「ん? 茶々ゼロのヤツ、また出かけていたのか?」

 

 茶々ゼロは、いわえる呪いの人形で、エヴァが後衛で呪文詠唱して魔法を放つまでの間、敵から守ったりする前衛要員なのだが、血を見たり戦うのが大好きで、度々城を抜け出しては魔物を狩ったり、獣を狩ったりしているクセの強い人形だった。

 

「また獣でも狩ってきたのかな?」

 

 3日に一度のペースで狩ってくるから、まだまだ食べきれない肉がたくさん余ってて、まだいらないんだけどなぁ……。

 

 そんなことを話していると、テラスまでふわふわと茶々ゼロが飛んできた。

 

「どうした? 茶々ゼロ。また獣でも狩ってきたのか?」

 

 エヴァが膝の上に座ったまま訊ねると、茶々ゼロは首を横に振った。そして門のほうを指差した。

 

「御主人、旦那。兵士タチガココヲ目指シテ進軍シテキテルゼ」

 

「なに?」

 

「兵士が?」

 

 ……なんでここに兵士たちが?

 

「茶々ゼロ、本当にここを目指して来てるのか?」

 

 俺の問いに茶々ゼロはうなずく。

 

「アア、大勢ノ兵士タチが隊列作ッテ、真ッ直グコッチ二進ンデタゼ」

 

 この城の周りには特に何もないからなぁ。やっぱりこの城を目指してるんだろう。

 

 でもなんでこの城なんだ?

 

「エヴァ、なんでこっちに兵士を寄越したと思う?」

 

「そうだな……」

 

 エヴァは考えるように顎に手を置き話し始めた。

 

「おそらくだが、この土地が欲しいんじゃないか?」

 

「土地が?」

 

「ああ。この土地は私たちが住みかにするまで元々魔物たちの住みかだっただろ。それが魔物が減って廃れていた城も綺麗になれば、ここは自然豊かないい土地だからな。大方、どこかの国がこの土地を寄越せと言いにきたんだろう」

 

 そういや魔界でもそんなことがあったっけなぁ。

 

「最初は交渉するだろうが、大勢の兵士までをつれてきてるんだ。こちらが断わったら無理矢理排除しにくるだろう。――まったく、森の奥だからといって魔物避け以外の結界を張らなかったことが裏目にでたな」

 

 エヴァはため息を吐きながらそうつぶやいた。ああ、200年前の大人しい感じのエヴァもよかったけど、こっちもかわいいなぁ~。

 

「こ、こらッ。ふ、服に手を入れるな! 揉むんじゃない!」 

 

「エヴァ、これからベッドに行こうか?」

 

「――っ! いきなりに何を言う!? い、今はそれどころじゃないだろ! ――んんっ! だ、だから弄るなと……あっ! せめて、せめて夜まで待て! 昼間からなど……、それに茶々ゼロの前でするなんて……」

 

 うん、もうトロトロになってきたねぇ~。オマンコもすんなり指を受け入れてるし、俺のペニスでいつも拡げられてるおかげだね。

 

 椅子に座りながらエヴァを楽しんでいると、テラスの転落防止の柵に座った茶々ゼロがため息を吐いた。

 

「オイオイ、イチャツクノハアトニシロヨ。アト3時間モシナイグライデ兵士タチガヤッテクンダゼ。ドウスルンダヨ?」

 

「そういやそうだったね。エヴァ、どうしようか?」

 

 弄るのを止めてエヴァに訊ねると、エヴァは息を整えながら言った。

 

「はぁはぁ……、どうするもこうするも兵士たちを返り討ちにすればいいだろ……」

 

「オオ! 久々ニ人間切レルノカ! ブッ殺シテイインダヨナ!?」

 

「茶々ゼロ、興奮して刃物を振り回すな。でも、返り討ちかぁ。まあ、それが1番楽だけどねぇ」

 

「なんだ? 何か問題があるのか?」

 

 首をかしげるエヴァを後ろから抱きながら言う。

 

「ここで返り討ちなんかにしたら、今度は国をあげて占領しにきそうだろ。それに不当に領地を占領した~とか、俺たちは人外だからそれも言われて賞金首にされそうだし、魔法世界に住みにくくなるだろ」

 

「それもそうだな。国ぐらい滅ぼそうと思えば滅ぼせるが、下手に賞金首にされて賞金目当てや英雄志望の雑魚共に群がられるのはうっとうしそうだ」

 

 同意するようにうなずくエヴァに、続けて言う。

 

「だから、いっそのことここから引越ししないか?」

 

「引越し?」

 

「そ。引越し」

 

 エヴァは納得できないと眉を顰める。

 

「……だけど、それでは私たちが逃げたみたいで少し嫌なんだが……。住み慣れた城を奴らにくれてやるのも癪だし……」

 

「だったら、エヴァが作ってた、ほら、ダイオラマ魔法球だったけ? アレにこの城を収納すればいいだろ」

 

「ふむ……」

 

「城は最初からなかったように消して雲隠れしよう。それなら俺たちの存在も調べようがないし。それに、俺たちがここから出て行けば、また魔物の住処になるだろうから、結果的に土地も渡さなくて済むよ」

 

「……そうだな。いつかは出て行くことになっていたんだしな」

 

 エヴァも納得したようだ。これで賞金首として追われず、これまで通り堂々と女漁りができるな。

 

「じゃっ、準備に取り掛かろうか」

 

「ああ、土地と城が手に入ると思っていた奴らの驚く顔が目に浮ぶな! ハハハハハ!」

 

「ナンダ……、戦ワネェノカヨ」

 

 エヴァは高笑いし、茶々ゼロは血が見れないと落ち込んでいた。

 

 さてと、ここから俺は特に手伝うこともないし、これからどうするか考えるか。あ、女漁りは当然予定に組み込み済み。

 

 これを機に魔法世界から人間世界に帰るのもいいけど、まだまだ魔法世界には美女がいるし、50年ぐらいかけてもう一度魔法世界を旅してから帰るかなぁ。

 

 あと100年、200年、魔法世界に住んでもいいけど、一箇所に留まってやりたい事もあるし、本当の本拠地である人間世界の家にエヴァを連れて行きたいし……。

 

 まっ、人間世界に帰るのは決定だな。あとは道中ゆっくりと考えよう。時間だけはあるんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土地ごと城をダイオラマ魔法球に入れて、住んでいた土地から引越しをしてから50年。

 

 魔法世界中を周り、ウェスペルタティア王国とかいう国でエヴァが人形の材料などを買い込んでいるなか、その国にいた魔法世界を創ったとかいう陰気な魔法使いローブの造物主(名前は教えてくれなかった)と知り合ったり、ヘラス帝国という亜人が大勢住んでる国に行って、エヴァが魔法の修行兼研究材料にするため茶々ゼロつれてやたらデカい龍と戦ってるなか、『角っ娘何人切りできるかな?』と、はしゃいで娼館周りしたり、街や集落なんかで女性に声をかけてベッドまで連れ込んだりと、なかなか充実した生活を送っていた。

 

 そして、現在。

 

 俺たちは魔法世界から出て人間世界にある拠点にいた。

 

 広範囲に渡って張っている結界のなかに入り、数百年ぶりの帰宅を大樹が発光するという歓迎を受けながら、帰ってきた。

 

 いまはエヴァと茶々ゼロに大樹を紹介させているところだ。

 

「どうだい、エヴァ。なかなかの木だろ」

 

「アルヴィン……、こ、これはなかなかで済ませていいレベルなのか? ……こんなに巨大で大きな魔力を内包している木なんて、魔法世界でも見なかったぞ」

 

 エヴァは大樹を見上げながらヒクヒクと顔を引きつらせていた。

 

 まあ、驚く気持ちも分からないではない。

 

「この木は数千年後には世界樹と呼べるものになる木だからね」

 

「……世界樹って、アノ世界樹か?」

 

「うん。アノ、世界樹だよ」

 

「…………アルヴィンがこの島を拠点にした本当の理由がやっとわかったような気がする。――これほどまでの木があるならここを拠点にしても何もおかしくないよな」

 

 そうため息を吐くエヴァ。これまでなんだと思っていたんだ?

 

「巫女トカ、舞妓トカガ目的ジャ、ナカッタンダナ」

 

 茶々ゼロが意外そうにつぶやいた。

 

 まったく、このお人形さんは俺をなんだと思っているんだ……。

 

「いくらなんでもそれだけで住む場所決めたりしないって」

 

「…………」

 

「あれ? エヴァ。何か言いたそうだね?」

 

 エヴァはプイッと頬を膨らませてそっぽを向いた。

 

「別に……。舞妓や巫女が本当の目的じゃなかったんだなって。少しだけ見直しただけだ」

 

「もう、エヴァまでそう思ってたの? 心外だなぁ」

 

 京都で買った白い着物姿のエヴァを後ろから抱きつく。

 

「ええい、抱きつくな! それにいったいどの口が心外などと言ってるんだ!? これまでのおまえの行動を見ればそう思わないほうが不思議だろ。まったく、毎晩のように抜いてやってるというのに吉原なんぞに通いよってからに!」 

 

「カカカカ、ホントニ旦那ハ底ナシダヨナ」

 

「それにも限度というものがあるだろう! サキュバスを統べていた元魔王といえば納得してしまうが、相手をするこちらの身にもなれ!」 

 

 手足をバタつかせて大声をあげるエヴァ。おおう、純血悪魔と比べても劣らない凶悪な魔力だねぇ~。

 

 エヴァをぎゅっと抱きしめながら言う。

 

「まあまあ、落ち着いて。エヴァが大好きだから俺もその分興奮しちゃうんだよ」

 

「……だ、大好きだから……?」

 

「そ。大好きだから。考えてみてよ。普通だったら1人を相手に一晩で十回もするわけないだろ? エヴァがかわいくて大好きだから、俺も歯止めが効かなくて普通よりも、激しくエッチしちゃうんだよ」

 

「――っ。それは……。……ま、まあ、私もアルヴィンとセックスするのが嫌いと言うわけでは……、むしろ好きというか……」

 

 エヴァはもじもじとつぶやきながら、顔を真っ赤に変えていく。

 

 一方の茶々ゼロは木にもたれかかってつまらなそうにしていた。

 

「ダッタラ吉原行ッタリ、巫女ヤ舞妓トカ、他ノ女ト交尾スンノハ止メロヨナ。……ン? アア、止メチマッタラ御主人ガ壊レチマウカ」

 

 そう、エヴァだけで受け止めようと思ったら確実に壊れちゃうからね。あと交尾言うの止めろ。

 

 まっ、それより――。

 

「エヴァ、久々にお外でしよう」

 

「――っ! こ、ここでか?」

 

「そうだよ、ここで」

 

 着物の隙間から手を侵入させてエヴァの胸を擦るように触れる。

 

「――っん、だ、だが……」

 

 周囲を気にするように視線を向けるエヴァの耳元で囁く。

 

「大丈夫。人払いの結界を常に張っているし、ここに来るまでの間で領主なんかにもお金払ってこの土地は名実共に俺たちの私有地にしただろ。誰にも咎められることもない。久々に青空の下でしよう」

 

 両手で脇や腹の上辺りから先端に向って肉を集めるように胸を弄っていると、エヴァが陥落した。

 

「し、仕方のない奴だな……。――茶々ゼロ」

 

「ワカッテルヨ。ソノ辺、散歩シテクル。思ウ存分、サカッテロ」

 

 茶々ゼロはヤレヤレダゼとため息を吐きながら森のなかへ消えていく。

 

「「…………」」

 

 ……いったいどうしてこんな性格に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茶々ゼロの態度で少しだけ下がった気を取り直して愛撫を開始する。

 

 後ろから抱きついた状態で、片手でエヴァの胸を揉みながら手の平で擦り、乳首のコリコリとした感触を楽しみながら、もう片方の手をオマンコへ向けて侵入させる。

 

「おっ、さすがエヴァ。ちゃんと着物の下はつけてないんだね」

 

 ショーツの感触などなく、直接オマンコに手が触れる。指でスジを擦るとスジ間からじゅんっと愛液が染み出してきた。

 

 エヴァは感じているようで体を前かがみにして、俺へ向ってお尻を擦りつけた。

 

「あ、当たり前だ。元々着物の下は何もつけないのが普通なんだ。着物用の下着もあるにはあるが、私は好みではない。――くっ、あっ! もっ、もうそろそろいいだろ?」

 

 挿入を求めるように、同じく男性用の着物を着てる俺のペニスに、小さなお尻を擦りつけてきたけど――。

 

「まだ十分ほぐれてないよ? ほら、指1本入れただけでキツキツだし、しっかり奥まで濡れてないし」

 

 指をオマンコに入れてかき回すが、キツキツでそこまで濡れていない。

 

「――っんくっ! そ、それは、そうなんだが……。……やはり外でするのは恥ずかしいんだ。あまり時間はかけたくないし、ドロドロに汚されたら家に帰るまでが恥ずかしいだろ……」

 

「でも結構痛いと思うよ?」

 

 拡張してるとはいえ、相変わらずの子供マンコだし……。

 

「――んんっ、あぅ……。……そ、それは……、この前作ってたアレがあっただろ」

 

 恥ずかしそうにエヴァはつぶやく。アレって――、アレか?

 

「ローションのこと?」

 

 植物育てるついでに作ってみた100%天然素材のローション。エヴァにも話したけどいくつもある人間界の未来のアイテム。魔界ではサキュバスの愛液を混ぜて加工したモノが気持ちよくなれて人気だったけど。エヴァが言ってるのはこの世界で作った海草などが原料の試作品だろう。

 

「そ、そうだ。それを使えばすぐに濡らすことができるんだろ? ……ちょっと怖いが、ローションの試作品が完成してから私と試したがっていたし、丁度いい機会でもあるだろう」

 

 おおっ! 試してくれる気になったんだね!

 

「ありがとう、エヴァ。愛してるよ」

 

「べ、別に礼など……。…………わ、私も愛してるよ」

 

 真っ赤になりながらロリマンコに侵入させた指をキュンキュン締めつけてくるエヴァを愛らしく想いながら一端離れて、大樹に両手をつかせる。もうヌレヌレだからローションいらなそうだけどせっかくだからね。

 

「エヴァ、もっと股を開いてお尻をつきだして」

 

「こ、こうか?」

 

「うん、いいよ」

 

 ああ、本当にいいね! 和服の下半身部分を肌蹴させた金髪の幼い少女が、大きな木に両手をついて四つんばいみたいに小さな尻をつきだしてる姿は!

 

 悪い事してるみたいで悪魔心も刺激されるし!

 

 それにしても200年以上弄り続けてるっていうのに、見かけはずっとロリマンコのまんまだよなぁ。

 

 まあ、ロリマンコは本当に見かけだけで、俺のペニスもギチギチだけどしっかり受け入れるし、すぐに濡れる。地面までポタポタ落ちるほど愛液も分泌する、ド淫乱マンコなんだけどさ。

 

 虚空から浣腸でもよく使うタイプの先が太めで丸くなっている500ml用の注射器を取りだし、ついでに挿入しやすいようにペニスを取りだしておく。

 

 同じく虚空からローション入りの壜を取りだし、注射器にローションをセットする。

 

「用意できたよ、エヴァ」

 

「そ、そうか。――早くしてくれ、この格好で待つのは……」

 

「わかってるよ。安心して、いま入れてあげるから」

 

 注射器の先端をエヴァのロリマンコにあてがう。その先端を動かしながらクリトリス、尿道口に軽く触れさせながら、膣口へと向わせ、先端を挿入した。

 

「――あうっ!」

 

 ビクッとエヴァの体が跳ねるが――。

 

「じゃっ、注いでいくね」

 

 このままローション注入が待ってる。

 

 木の幹についていた両腕を曲げて顔を隠して、エヴァが懇願するようにつぶやく。

 

「ゆ、ゆっくり……、ゆっくりだぞ? いきなりはダメだからな……」

 

 色素の薄い桃色のかわいらしいお尻の穴がピクピクしてる……。こっちも弄りたいな~。

 

「わかってるって、大丈夫だよ」

 

 注射器のピストンをゆっくりと押す。

 

「あ、あああ……、つ、冷たぃぃ。わ、私のなかに注がれて……、んんっ、も、もうちょっとゆ、ゆっくり……、くぅっ、あ、アルヴィン……ッ!」

 

 注射器内のローションが減る度に、エヴァの上半身がゆっくりと下がり、足も生まれたての小鹿のようにブルブルと震えていく。

 

「もうちょっとで全部だから我慢しようね~」

 

「ま、待てっ! ぜ、全部入れる必要はない、だろっ! こ、コラ!」

 

「ああ、それもそうか。浣腸じゃなかったね」

 

「そうだ、全部入れるのは浣腸のときだけにしろ! ――っ! い、いや、浣腸でも全部入れるな! 程度を考えてしろ!」

 

「わかった、わかった。抜いてあげるよ」

 

「――あぅっ! ……はぁはぁ、助かった……」

 

 注射器を抜くとエヴァの置くから透明なジェル状のローションが出てきた。これを指で膣の壁に擦りつけるんだけど……、俺もそろそろ一発出したいし、ペニスでならすか。

 

 ペニスにも残ったローションをかけてすべりをよくする。

 

 そしてエヴァのオマンコにペニスをあてがう。

 

「―-っ。ア、アルヴィン!? も、もう挿入するのか!?」

 

「心配しなくても大丈夫だよ。ちゃんとこっちにもローション塗ってるし、やさしくするから」

 

「い、いや、そういうわけではなくてだな……」

 

「ん? いま入れられるとすぐにイッちゃうって言いたいの?」

 

「――っ!」

 

 図星か。ふふっ、かわいいなぁ。

 

「それも大丈夫だよ。何回でもイかせてあげるし、この森に響くぐらいの大声で喘いでも問題ないから、一緒に気持ちよくなろう」

 

「……く。――まったく、仕方ないな……。あまり乱暴に扱うなよ?」

 

「ああ、まかせて」

 

 うなずいてから腰を進める。

 

「――く、ううっ! や、やっぱり、最初はいつも……、き、キツい、な」

 

 ピッタリと閉じたオマンコを無理矢理拡げながらエヴァの膣口に亀頭が到達した。そのままエヴァの小さな尻を両手で掴んでさらに腰を進めると、小さかった穴が段々と広がっていき、亀頭を飲み込んでいった。

 

「元々体温高めだけど、ローションの所為か少しだけ熱く感じるかな? ――うん、しっかり奥まで濡れてるみたいだ。これならすぐに動いてもよさそうだな」

 

「ま、まだ入り口付近までだからな。子宮口はまだ待ってくれ」

 

「うん、浅いところで擦ってあげるよ」

 

 腰を進めたあと、少しだけ引き、また進めるという感じに、入り口辺りを亀頭でクポクポと擦る。

 

「あっ、ああっ! だ、ダメだ……。そ、それはッ! んくっ、あああぁぁぁっ! ――はぁはぁ……っ、め、捲れる! お、オマンコが捲れてしまうッ!」

 

 木に抱きつきながら悲鳴をあげるエヴァ。確かに俺のペニスの雁にロリマンコの肉が引っかかって吸盤みたいに吸いついてるなぁ!

 

「すごく気持ちいい! すごくいいよエヴァ! 狭い入り口で雁首を閉められたり、押すときに亀頭の先から伝わってくる子宮や、引く時に甘えん坊みたいに離さないって絡みついてくるセマセマのオマンコ! もう最高だ、エヴァ!」

 

 体を反らして腰だけ、ペニスだけ突き出したような格好でエヴァのオマンコを味わう。

 

「……くぅんっ! はぁはぁ……、そ、そんなに気持ち、いいか?」

 

「ああ! 気持ちよすぎてもう射精でそうだ!」

 

「――っ! そ、そうか」

 

 エヴァのオマンコがキュンキュンと締まった!

 

「エヴァ、もう我慢できない! 奥擦っていい? 子宮口こじ開けて種付けしていい?」

 

 腰を両手で抱いて、エヴァに問う。おそらくエヴァが断わってもこのままピストンするだろうが……。

 

 エヴァは振り返り、いつものツンっとした態度で言う。

 

「ま、まったく、し、仕方のない奴だな。――あまり激しくするなよ?」

 

「わかった! ありがと、エヴァ」

 

 エヴァの体の上に覆いかぶさるように、上半身を倒してエヴァの顔の高さぐらいの位置で木に両手をつき、腰を進める! ペニスがグブプッと膣の空気を抜きながら、子宮へ向って進んで行く!

 

 エヴァの膣の3分の2ぐらいまで進んだぐらいで、突然エヴァの体がビクッと跳ねた。

 

「ん? どうした、エヴァ」

 

「はぁっ、はぁっ……ん、はぁはぁ、な、なんでもない……」

 

 エヴァはそう言うけど、それから少し腰を進めるだけでビクッと体を震わせて軽くイッてるようだった。

 

 少しだけ腰を引いて、今度は引いた地点から少し先まで進めてみる。

 

「――っ! んっ、んんっ!」

 

 おおう、エヴァの体がビクビクしてる。まだ子宮までいってないのにどうしてだ?

 

 絶頂で力が抜け、木に完全にもたれかかり、膣に入れられたペニスに支えられているような状態のエヴァが荒い息を吐きながら言った。

 

「ろ、ローションが……、し、子宮のなかに入って……。はぁはぁ……」

 

 ああ、だからイッちゃったんだね。

 

「一端ペニス抜いてローション掻き出そうか?」

 

「――っ。はぁはぁ、そ、それはいい。このままつ、続けてくれ。人体に影響のないやつなんだろ? それに私は人外だから耐久力も人から外れてるし……、大丈夫だ。アルヴィンも射精したいんだろう? 私は気にせずこのまま続けて射精してくれ」

 

 エヴァ……。

 

 そのあと小声で、

 

「掻き出されるほうがイキ狂ってしまうからな」

 

 って言わなきゃ完璧だったのに……。

 

 まっ、いつものことだから、気にせず続けるけどね。

 

「じゃあ、いくよ」

 

「ああ、来い。おまえの欲望を私の腹で受け止めてやる」

 

 この上からの喋り方も聞き慣れたもんだね~。見かけが幼児な分、年長者としての貫禄出すために話し方変えたみたいだけど、似合ってるよ、エヴァ。

 

 腰を進めてエヴァの子宮口まで亀頭を進める。

 

 いきなり子宮を突き上げるのでは刺激が強すぎるので、亀頭に子宮口の感触を感じたら少しだけ引き、その場でキープする。

 

「エヴァ、ほら、子宮口までペニスが来てるのわかるかい?」

 

「はぁはぁ、ああ、わ、わかる……。いま私とアルヴィンは1つになってるんだな……」

 

「ああ、エヴァをすごく感じるよ。熱くて狭くて、甘えん坊みたいに絡みついてきて……、エヴァそのものを表してるみたいだ」

 

「わ、私はそんなに甘えん坊では……」

 

 そこだけは同意しないか。

 

「愛してるよ、エヴァ」

 

 エヴァの首筋にキスをする。

 

「私もだ。アルヴィン」

 

 エヴァはそうつぶやくと首をこちらへ向けて、キスを求めるように唇をつきだしてきた。

 

 要望に答えて唇を重ねる。

 

「ちゅっ、はぁ、アルヴィン……」

 

 唇を割ってエヴァの口内に舌を侵入させ、歯や歯茎を舐めて奥の小さな舌と自分の舌を絡め合わせ、唾液を啜る。

 

「じゅるるっ、レロッ、ほら、エヴァ。そろそろ腰も動かし始めるよ」

 

「ま、まふぇ、い、いふぁあ……。――っ!」

 

 ピストンを開始して、入り口から子宮口までをペニスで擦りあげる。

 

 子供らしさが残っているエヴァのオマンコは、みっちり肉が詰まって狭く、大人の女とは一味違う感触で、より興奮を高めていく。

 

 ズボズボと角度を時おり変えながら、ペニスの形を覚え込ませるように、エヴァのロリマンコをつき荒らしていると、エヴァの体が段々地面へと沈んでいった。

 

「ふぶっ、はぁっ! ア、アルヴィ……ンっ! も、もう体が……!」

 

 地面に落ちる前に、急いでエヴァを抱き上げる。

 

「……っ! ……ぅっ!」

 

 抱き上げた先にうっかり子宮ごと子宮口を突き上げてしまったようだ。かろうじで子宮内に入ってないが先っぽがめり込んでしまい、エヴァがオマンコをきゅっきゅと締めつけながら絶頂に達していた。

 

 俺もその締まりで射精してしまいそうになるが、寸前のところで何とか堪えた。

 

 スパートをかけるために絶頂している最中のエヴァのヒザに両腕をまわして抱えあげる。

 

「やぁっ、あ、アルヴィン! こ、この格好は――!」

 

「150年ぐらい前までいつもこうやって繋がってただろ」

 

「む、昔と今は違うだろっ! ――ぁくっ! し、子宮口が……。――っ、う、動けない……」 

 

 エヴァが悲鳴のような叫びをあげながら口元に手を持ってくる。真っ赤に何ながら体勢を変えようとエヴァはもがくが、もがくぶんだけ子宮口が亀頭でぐりぐりと擦られるためにすぐに体を震わせて、大人しくなった。

 

「せっかく外でやってるんだし、このまましよう。ほら、このほうが支えられるからエヴァも楽だろう」

 

「ら、楽とかそういう問題じゃなくて……! ――んあっ!? こ、こら! 動き、始めるな! やっ、ほ、本当にこの格好は……」

 

 エヴァはそう言いながらも150年前と同じく、両手を後ろにある俺の首に回して背中を仰け反らせた。

 

 女の子におしっこをさせてるような格好だからな。最近大人ぶってきたエヴァは幼児体型もあって恥ずかしいんだろう。

 

 ヒザを曲げた反動で体を上下に揺らし、エヴァのオマンコをグイグイと下から突き上げる。

 

「あ、ああ……っ! く、はぁはぁっ、こ、この変態魔王め!」

 

「それならエヴァも変態だろ? こんな格好で気持ちよくなってるんだからさっ!」

 

 入り口付近まで引き抜いたペニスで、膣壁を削りながら最深部である子宮口まで突き入れる!

 

「――あああああぁぁぁぁっ! そ、それは、だ、ダメェェ……、い、イッちゃ……、イき続けちゃう……ッ」

 

 びゅっ、びゅっとエヴァの膣から潮が噴きだした。おお、木にかかっちゃってるじゃないか。

 

 これは……、うん。マズいよな。一応未来の世界樹なんだし。

 

 くるりと木に背を向けて、周りの森側のほうを体ごと向く。

 

「ほら、エヴァ、周りを見てごらん」

 

「はぁはぁ……、ん? ――っ!」

 

「わかった? いまの俺たち、こんな大自然に見守られながら交尾してるだよ」

 

「お外で……、交尾……、森に囲まれて……、見られながら……」

 

 うわ言のようにつぶやくエヴァの目の前に、最近やっと覚え始めたこの世界の魔法を使い、氷でできた鏡を出現させる。

 

「ほら、これがいまの俺たちだよ。エヴァのロリマンコが俺の極太チンポを一生懸命咥え込んでるのがよくわかるね」

 

「ああ……、あんなに奥まで……、あ、アルヴィンのオチンチンが、わ、私のオマンコのなかに……」

 

 鏡を見つめるエヴァの耳元でさらに囁く。

 

「顔もあんなに蕩けて……、すっごく幸せそうで、気持ちよさそうだね」

 

「わ、私……」

 

 鏡のなかに映ったエヴァは言葉通り、オマンコをつかれながら、幸せそうに涎を垂らしながら緩んだ笑顔を浮べていた。

 

「エヴァ、俺は最高に気持ちいいよ。エヴァはどうだい?」

 

「……わ、私も……、き、気持ち、いい……。――んあっ、き、気持ち、いいっ! アルヴィンのオチンチン、すごく気持ちいい! もっと、もっと私を犯してくれぇぇぇ!」

 

「もちろんだよ、エヴァ」

 

 後ろを向いたエヴァと唇を重ねて舌を絡めながら、オマンコをペニスで犯す。

 

 鏡に映る姿が、着物を着た10歳の金髪少女を犯して堕として、犯してるように見えるのが何とも言えなず、興奮がさらに高まる。

 

「くっ、ああっ! な、なかで大きく……、だ、出すのかアルヴィン! わ、私の子宮に精子を注ぐのか!」

 

「ああ、思いっきり射精してやる! 外で、この場所で、種付けしてやる!」

 

「――ッ! フハハッ! ハハハハ! 来い、アルヴィン! はぁはぁっ! 私が全て受け止めてやる!」

 

 エヴァが淫靡な笑顔を浮かべて、オマンコを締めつけた! 

 

 精液を搾り取るようにグネグネと膣道が動き、絶頂に達する!

 

「イクッ、イクよ、エヴァ!」

 

 腰が震え、玉袋から竿を通って亀頭から精液が噴きでる!

 

 ビュッ、ビュルゥゥッ! ビュビュゥウウウウウ! ビュッ、ビュビュ……!

 

「――熱っ! あ、ああ……っ、い、いっぱい! くあああっ、うぐっ、ああっ! イ、イクッ! わ、私もッ! イ、イクゥウウウウウウウウウウウウウウ~~~~!」

 

 エヴァの悲鳴が森に轟く!

 

 白目を向きそうになりながら、ビクッ、ビクッ、っと、体を痙攣させながら、子宮で精液を受け止め続けていた。

 

「はぁはぁ、最高だったよ、エヴァ」

 

「……ん」

 

 小猫のようにエヴァが擦りついてきた。射精を終えてペニスは少し小さくなったが、元々エヴァの膣より大きいので精液がこぼれ落ちてこない。

 

 少しだけ膨らんだ下腹が精液が詰まってるからだと思うと、妙にエロく感じる。

 

「――ぅん……」

 

 そんな事を考えているとエヴァの体が小さく震えた。ああ、この感じは――。

 

「おしっこしたくなったんだね」

 

「――っ」

 

「ほら、丁度いいしこのまましちゃいなよ」

 

「で、でも……」

 

 エヴァは躊躇うように小声でつぶやくが……。

 

「どちらにしろペニス抜いたら、出ちゃうだろ? この格好なら汚れないし、久々にエヴァのおしっこ飛ぶところ見たいんだ。お願い、エヴァ」

 

 そうお願いすると、エヴァは、

 

「し、仕方のない奴だ……。あ、あまり見るんじゃないぞ?」

 

「うん、わかってるよ。ほら、しー、しー」

 

 ヒザを大きく開かせて耳元で急かす。

 

「バ、バカ者ッ! こ、子供にするみたいに言うな!」

 

「アハハ、ゴメンゴメン」

 

「まったく……。――んっ、クソ、入ってるから出しにくいな」

 

「だったら抜く?」

 

「う……、それだと逆に……。こ、このままでいい」

 

 ゆっくりと尿道口を緩めているようで、湧き出すように黄色いおしっこが漏れ始め、やがて勢いが増していき、ぴゅーっと細い線を描きながら地面に生い茂る草原へと飛び始めた。

 

「く……、うう……」

 

 膀胱に力を入れて最後の一滴までおしっこを排出したようだ。

 

「はぁはぁ……、終わったぞ」

 

 息を整えるエヴァだが、顔が真っ赤だ。

 

 耳元で囁くように言う。

 

「かわいかったよ、エヴァ」

 

「~~っ! う、うるさい!」

 

 恥ずかしさを隠すようにギリギリと後ろ手に首を絞めてくるが、それすらかわいらしい。

 

 ビクビクッとペニスが反応してしまう。

 

「――っあ……、さっき、腹が膨れるほど出したのにもう回復したのか?」

 

「うん、そうみたい。――もう1回しよっか?」

 

「はぁぁぁ……、本当に仕方のない奴だ。あと1回だけだぞ?」

 

「うん、ありがとエヴァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2時間後――。

 

「フハハハハ! このまま私が搾りつくしてやる! ――っ! コ、コラ、おまえまで腰を振るな! あっ、やっ! し、子宮口をぐりぐりするなぁぁぁ……!」

 

「エヴァ、もっと擦りつけて! すごく気持ちいいよ! ああっ、もう出しちゃいそうだ!」

 

「あくぅっ! 出せ! 思う存分、私で射精しろ! アルヴィン!」

 

「…………。……オイオイ、マダヤッテンノカヨ。シカモ騎乗位デ御主人ガ上。馬鹿ミタイニ腰振ッテ、外デスンノ嫌ガッテナカッタンジャネェノカヨ。ア~ア、イツマデ待ッテリャイインダヨ……」

 




 これから処女ばっかになるだろうから、エヴァの破瓜シーンは略。


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第3話 2人は日本でも変わらない ☆ 

 木で創られた家の寝室。大きなベッドで私は目覚めた。

 

 寝起きでぼやけた視界がゆっくりとはっきりし始める。

 

 私の隣には、私と一緒で昔と何ひとつ変わらない、黒髪で浅黒い肌をした男が眠っていた。

 

 アルヴィン・アンドリュー。

 

 私を救ってくれた悪魔で、誰も知らない元魔王。変わり者で、とんでもない女好きで、私が名づけた名前を使い続ける、私が愛してる悪魔。

 

 真祖の吸血鬼にされ、追われ逃げ続ける100年の地獄から私を救ってくれた悪魔。

 

 私に真祖の吸血鬼としての生と、魔法という力をくれた悪魔。

 

 生を受けてもう350年を過ぎ、周りが老い死んでいくなか、彼はいつも通り私の傍に代わらずいてくれる。

 

 グー、グーと小さないびきをかきながら眠るアルヴィンの前髪を指ですかす。

 

 かなりのクセっ毛で肌触りはいいとは言えないが、私は大好きだ。

 

「日ノ輪ちゃん~、ツッキー~、ぐへへ……」

 

 ……だらしない顔つきでアルヴィンが寝言をつぶやいた。

 

「…………」

 

 こぉのっ、万年浮気男めぇぇぇっ!

 

 私が毎日のように抜いてるのに、吉原なんぞに通いよってからにぃぃぃっ!

 

 あの淫乱せびり女とわっち女のどこがいいんだ!?

 

 私のほうがスペックで勝っているだろうが! 幻術を使えば大人の女にもなれるんだぞ! 私のほうが肌もスベスベだし、耐久力も体力も勝ってるし、この体型の女を思う存分犯せるのは稀なものなんだぞ!

 

 昨晩も私の小さなオマンコにドバドバと射精しまくったクセに、まだ女を求めるか!

 

 この350年、私がちょっと目を離すと娼婦を買いに街にいったり、どこぞの国に侵入して女王や姫やメイドなんかを物色したり……、ヘラスに行ったときは『角ッ娘制覇だ~!』とか言いながら娼婦を食いまくって娼館を何件も営業停止にさせたり……!

 

 クソッ! 忌々しい!

 

 私は自分とアルヴィンの体を隠すようにかけていたシーツのなかに潜り込む。

 

 そしてアルヴィンの股の間まで移動する。

 

 アルヴィンは手足を広げて大の字に寝ていたので、ベストな位置取りができた。

 

 搾り取ってやる! 私の臭いをこびりつかせて取れないようにしてやる!

 

 そう意気込み、シーツのなかで鎌首をもたげているペニスを睨む。

 

 アルヴィンのは浅黒く、先が剥けていて太く長く、雁高でエグイ、赤ん坊の腕ほどはあらんかという巨大なペニスだ。玉もプリプリで回復力が高く、雌を発情させるような雄の臭いがキツく、さらに少年スタイルとかいってサイズを小さくできたり、形状を操って栓をするように一部を膨らませたり、表面びっしりにイボイボをつけれたりできたりととんでもない代物だ。

 

 少し前にイボイボチンポで犯されたときは何回もイかされて記憶が曖昧になっている。……まあ、「チンポ大好き~♪」とか、「私はアルヴィンの肉便器ですぅぅっ! おしっこ飲ませてくだしゃぁぁい!」とかいらん事は覚えてしまっていたが……。

 

 少しだけ落ち込みそうになったが、アルヴィンが起きる前に始めようと気を取り直す。

 

 口をいっぱいに開けて、勃起しておらず鎌首をもたげているペニスを下から咥え込む。

 

 くっ、もうの口いっぱいなのにこれで勃起していないって、なんて大きさなんだ。

 

「じゅっ、じゅじゅっ……」

 

 いつもしている通り、息を吸い込む要領で喉まで、飲み込むようにペニスを入れる。

 

 真祖の吸血鬼だから1、2時間呼吸しないでもまったく苦しくないのは便利なんだが、こんなことで吸血鬼になったことが便利だとは思いたくなかった……。

 

「ん、う……」

 

 シーツの外からアルヴィンの悩ましげな吐息が聞こえた。ふふっ、感じているようだな。少しずつ口のなかで大きくなってきたぞ。

 

 片手でアルヴィンの玉袋を掴む。やさしく解すように転がし、舌を無理矢理動かしてペニスの竿を舐める。

 

 ああ、すごい……、熱ぃ……。

 

 アルヴィンが私で感じてくれている……。

 

 段々と私自身も興奮してきた。もう片方の手を自らの股に差し込むと、オマンコがくちゅりとヌメリを帯びていた。

 

「ん、も……、じゅる、じゅるるぅぅ……」

 

 鼻でスンスンとアルヴィンの臭いを嗅ぎながら、少しずつ顔を上下に動かして喉も使ってペニスをしゃぶる。射精しやすいように玉袋もかわいがり、オマンコに人差し指を入れた。

 

「ふぶぅっ、んっ……」

 

 指がゆっくりと膣道に入っていく。体内に入れるという異物感に慣れてしまった私は、すぐにその指を動かし膣道をかきまわす。

 

「んじゅっ、じゅじゅっ、ふぼ……」

 

 オナニーしながら男のモノを喉まで入れてしゃぶるなんて……、私は何て淫乱になってしまったんだ……。

 

 あまりの痴態に自虐的になるが、それすらも私を昂ぶらせた。くっ、こんな体にしおってからに……ッ。

 

 昨夜たっぷりと注ぎ込まれた精液が子宮からこぼれ出し、指に絡まる。その指で膣道をかき回すと、まるで自分自身でアルヴィンの臭いをつけてるみたいですごく興奮した。

 

「あ……、ううっ……」

 

 アルヴィンも私と一緒に興奮しているようだ。

 

 口のなかでペニスが大きく、硬くなり、玉袋が震えてる。

 

 ふふふ、さあ、私の胃袋に濃厚で煮えたぎった精液を射精するがいい!

 

 本格的に顔ごと激しく前後左右に激しく動かし、ペニスから精液を搾り出す!

 

 先から根元と、ディープスロートしながら舌を高速で動かし雁首や尿道口を穿る!

 

「う、ううっ……!」

 

 アルヴィンの気持ちよさそうな声が聞える。

 

 もっと気持ちよくなって! もっと私で気持ちよくなって! もっと私を感じて!

 

 愛する全力で男に尽くす。幸せな気持ちが心いっぱいに広がり、愛を求めるように私はペニスに吸いついた。

 

「うっ、ぐ、ああっ!」

 

 ガバッ!

 

「ぶぼっ!?」

 

 アルヴィンの大きな両手が私の頭を掴んで引き寄せた!

 

 ペニスが喉の奥まで突っ込まれ、そのままビクビクと喉でペニスが跳ねながら、射精を開始した。

 

 ビュルッ、ビュッ、ビュウウウウウウウウウウ~~!

 

「ぼぼっ、ごっ……!」

 

 胃に直接流し込まれる熱湯のように熱い精液。私は射精と同時にクリトリスを指で摘まみ、絶頂を迎える。

 

「んぼっ!」

 

 ビクッビクッと体を震わせ胃の中の精液を感じながら静かにイく。快感を内に溜めるように、内側で味わう。

 

 私の口マンコがそんなに気持ちよかったか?

 

 ははっ、胃がたぷたぷじゃないか。

 

 ちゅううううっとしっかり最後の一滴まで吸いだしてから、吐き出すようにペニスを口から出した。

 

「げほっ、けほっ、けほっ……、はぁはぁ……」

 

 少しむせたが、胃の中に精液を、アルヴィンを感じる。精液に入った濃い魔力が染み渡るように全身に広がり、体が火照る。

 

「あ……、うう……、はぁはぁ……」

 

 これだけで人間を吸血したときの何倍の満足感がある。

 

 …………そういえばセックスし始めてから血ではなく、アルヴィンの精液を吸っているような気がする……。

 

「はぁはぁ……、んくっ……」

 

 アルヴィンが起きる前にペニスを綺麗にしないと……。

 

 バサッ。

 

 私の体を隠していたシーツが捲られた。――あ……。

 

「……エヴァ」

 

「…………お、おはよう、アルヴィン……」

 

「おはよう、エヴァ。いったい何をしてたんだい?」

 

「そ、それは……」

 

 股の間……、精液臭い口……、い、言い逃れできないッ。

 

 アルヴィンがかわいそうな子を見るような視線で私を見た。

 

「や、やめろよ! そ、そんな目で私を見るなよぉっ!」

 

 特に性欲の権化たるアルヴィンにそんな目で見られている事が、私を傷つける。

 

「エヴァ……」

 

「…………」

 

 同じく裸である私は胸と股を身を隠して視線をアルヴィンから視線を逸らす。

 

「そんなに足りなかったのか」

 

「え? ――っ!? ちょっ、アルヴィン!?」

 

 ベッドに押し倒された! ちょっと待て!? ま、まさか――。

 

 アルヴィンは体を隠していた私の両手を取って、バンザイさせるように頭の上に片手で固定すると、首筋を舐めてきた!

 

「――っん、あ、アルヴィン!?」

 

「欲求不満な事に気づけなくてゴメン。今日は一日中犯してやるからな」

 

「なっ!? そ、それだけは――、っん」

 

 唇を奪われ、舌をねじ込まれ、牙を舐められる。

 

 ――うっ、ま、マズい! さっき私もイッたばかりだから……。

 

「はぁはぁ……、――っ!」

 

 アルヴィンの開いているほうの片手が股に差し込まれ、指でオマンコを触られる。

 

 ――ぐりんっ。

 

「――~~ぅっ!」

 

 オマンコを指でかき回される!

 

「や、やめ……! あ、アルヴィン……!」

 

 少しあげた頭から腹を通って見えるのは、アルヴィンの大きな手の指がオマンコに入ったり出たりしているところだった。

 

 捻りを入れながら、角度を変えられながら指がオマンコをかき回す。

 

「あぁっ! オマンコがぁっ! くぅぅぅっ!」

 

「もうヌレヌレだな。エヴァ。そんなにオマンコしたかったのか?」

 

 アルヴィンが耳元でそう囁く!

 

「そんな、こと……! ううっ!」

 

 オマンコから感じる快感! 首を横に振って否定するが、アルヴィンは頬をキスしながら胸へと顔を持っていき――。

 

「相変わらずおいしそうだ。いまは乳首もピンと勃起して弄りたくなる」

 

「あ、アルヴィ――っん!」

 

 ――っ! む、胸を……、おっぱいを口に咥えられ――。

 

「いやっ、アルヴィン……、お、おっぱい吸わないでぇぇっ、いやっ、ち、乳首を舌で……んんっ、変になる! アルヴィンが欲しくなっちゃうぅぅぅっ!」

 

 体がバカになったようにビクビクと震える! アルヴィンの愛撫で思考が蕩け始める!

 

 アルヴィンの愛撫に夢中になり、股を大きく開き、後ろ手に私はシーツを握りしめた。

 

「ああっ! くっ、はぁはぁ……、っんん、――っ!」

 

 アルヴィンの指が子宮口をぐりぐりと擦る!

 

「あああああああぁぁぁぁ~~~~っ! ああっ! ううっ! はぁぁっ!」

 

 ビクッビクと何度も体が大きく跳ねる! 腰が浮き股を大きく開かせ、ビュッビュッと潮を噴いてだらしなくイってしてしまう!

 

「はぁはぁ……、はぁはぁ……」

 

 絶頂で荒くなった息を整えようとするが――、アルヴィンはここからが本番だった。

 

「エヴァ、挿入するぞ」

 

 いつの間にか私のだらしなく開いた股の間にアルヴィンが体を滑り込ませて、明らかに私の幼いオマンコとはサイズ違いの大蛇のような大きなペニスをこちらに向けていたのだ。

 

 い、今イったばかりだから入れられるのはマズい! ま、前のように狂ってしまう!

 

「ま、まっ――、っん!」

 

 ズズズっ!

 

 私の制止の声はアルヴィンに届かず、アルヴィンのペニスが私のオマンコを押しひろげるように侵入してきた。

 

 ――っ! い、痛っ! クソッ! 無理矢理拡げられて痛いが、それ以上に気持ちいいっ!

 

「ほら、もっと入るぞ」

 

「――っんん!」

 

 さらにアルヴィンのペニスが私のなかに入ってくる!

 

 熱く、大きく、長く、私の穴を埋めて満たしてくれる肉棒が、どんどん入ってくる!

 

 正常位で繋がり合い……、不覚にも私が一番大好きな体位だ。

 

 覆いかぶさってくるアルヴィンに正面から抱きつけて抱きしめられるから。アルヴィンをすごく感じる体位だから……。

 

「アルヴィン……」

 

 両手両足を使ってアルヴィンにしがみつく。幼児体型ゆえにコアラや小猿のように見えてしまうのはいただけないが、がっしりと抱きしめる。

 

 ああ……、すごくアルヴィンを感じる……。

 

 全身がアルヴィンで満たされる……。

 

「ふふっ、エヴァは甘えん坊だな」

 

「……うるさい」

 

 大体私がこんな風になったのはおまえのせいだろう。私は外では凛々しく自立できるようになったのに、家のなかでおまえが相変わらず……、いや、昔以上にかわいがるからいけないんだ……。

 

「よしよし、おなかいっぱいミルク出してあげるからね~」

 

「――っ」

 

 アルヴィンのペニスが私のなかで跳ねた。――クソ、ミルク=精液の構図が頭から離れない! アルヴィンと出会ってから血の補給よりも、アルヴィンの精子を飲んでることが多いし……、わ、私は女としても吸血鬼としてもうダメかもしれない……。

 

 私のオマンコに刺さっている杭といっても過言ではない巨チンが動き始める。

 

「いくよ、エヴァ」

 

 これから今日一日中犯されるだろう……、とんでもない痴態をまたアルヴィンに見せてしまうだろうが……、今日誘ったのは私だ。

 

「――っ! くっ、もう仕方ない、か……。――来い、アルヴィン」

 

 ここで満足して娼婦を抱きにいかなくなるなら、本望だ。

 

 ……私も気持ちよくなれるし……、もし、とんでもない痴態を見せてしまった場合は――忘れよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~、最高だったよ、エヴァ」

 

「……わ、私も、気持ちよかった……」

 

 今朝方エヴァにフェラチオされて起きて、そのあとエヴァの欲求不満を解消するために、次の日……つまり、今日の朝まで盛っていたんだ。

 

 現在俺とエヴァは家の風呂に入って汚れを落としていた。

 

 親子のようにヒザの上にエヴァを抱いて湯船に浸かる。

 

 前はお風呂に入れると、

 

「お湯に浸かると死んでしまいます!」

 

 なんて迷信信じて怯えていたけど、今はまったりお湯に浸かっている。慣れたもんだなぁ。

 

 エヴァの頭を撫でる。細く、サラサラのキラキラした金髪で触り心地は最高だが、お風呂に入るにはまとめたほうがよさそうだな。

 

「そういえば……」

 

「なんだい?」

 

 エヴァがこちらを振り返り訊ねてきた。

 

「これからどうするんだ? 人間界……、魔法世界側でいうところの旧世界の自宅に帰ってきて1週間ほど経つが、何か目的はあるのか?」

 

「目的か~……」

 

 目的と言われもなぁ。特にこれといって考えてないし……。

 

「とりあえず俺とエヴァが食べる分の農園造りかなぁ」

 

「農園って……、前から思っていたが元大魔王がそんなことしていいのか?」

 

 エヴァは呆れ顔でそう言うけど……。

 

「いいんじゃない? 元大魔王っていっても俺は認知されてないんだし、楽しまなきゃ損だろ」

 

「まあ、正直農園造りとか美味しいもの食べれるからいいが……」

 

「ん? どうした?」

 

 訊ねると、エヴァは頬を少しだけ膨らませて小窓のほうを向き、もごもごと言い難そうにつぶやいた。

 

「……京の陰陽師や神鳴流の女のところに行くのはどうにかならんか?」

 

「え~、でも陰陽師の美雲ちゃんの一族には『気に入った娘がいるなら手ほどきする』って契約結んじゃったし、神鳴流の咲夜ちゃんとも奥義作りの契約しちゃったし~」

 

「――っく。だが、毎回京に行くたびにあの女の一族のところに行ってるじゃないか。魔法世界に住んでいたときも時々旧世界に帰って会いにいってたようだし……」

 

「まあ、京の陰陽師や神鳴流、遊楽の女達なんかとの付き合いも、もう2、300年ぐらいになるからねぇ……。それに、俺の精子で孕んだ女は避妊してるからいないけど、母体に俺の精子……、もとい因子が宿って子供みたいなもんもいるから、どうしても贔屓しちまうんだよなぁ」

 

「はぁ!? ちょっ、ちょっと待て! そんな話、私は聞いたことないぞ!?」

 

「あれ? 言ったことなかったけ?」

 

「ない! 一度もないぞ!」

 

「あれ~、おかしいなぁ。――まあ、でもほら、陰陽師はわかりにくいにはしても、神鳴流に俺の因子が宿ってることはわかりやすいだろ。力を解放しすぎると瞳の白黒が反転するんだから」

 

「なっ!? やはりあれは――」

 

「そ、エヴァが思ってる通りだと思うよ。体のリミッターを外したりするときなんかに俺の因子が反応して起きる軽い魔性化だよ」

 

「そ、そう考えればいろいろと納得がつく。……が、新たに神鳴流を習う男はどうなんだ? 男のなかにも目を白黒させる者が稀にいたはずだぞ?」

 

「ああ、それはねぇ。多分先祖返りみたいなもんなんじゃない?」

 

「先祖返りだと?」

 

 エヴァちゃん怖い~。けど話しちゃう。

 

「うん。俺って京の街で遊びまくってるじゃん、何百年も。それで――」

 

「つまりなにか? ネズミのように増えていったというのか? おまえの因子を持った女が男と子供を作って、因子を持った子供が、また因子を持つ子供や、因子を持っていなかった子供と結婚して、子を作ってを繰り返したと言いたいのか?」

 

「うん、そうだよ、エヴァ」

 

「………………」

 

 エヴァがプルプル震えてる。……お、段々魔力も上がってきて――。

 

「こぉのっ! 浮気男がぁぁぁああああああああああああああああああああ!」

 

 ブフオオオオンッ!

 

 エヴァが全身から魔力を放出した。おおっ、ヤバいヤバい。咄嗟に障壁でエヴァを囲ってなかったら魔力の余波で風呂場が大惨事だったぞ。

 

「くっおのぉおおおおおおお! アルヴィンィィィン! この障壁を解け! 今日という今日はその浮気根性を叩きなおしてやる! 私だけを見れないように調教してやる!」

 

 ブチギレたエヴァをとりあえず挑発してみる。

 

「ハハハハハハ、うれしいお誘いだけど、調教されるのはどっちかな!」

 

「その余裕が続くのは今日までだ! 私が長い年月をかけて開発した闇の魔法! それを使えば少しぐらい手傷を負わせることぐらいできる!」

 

「おおう、断言したねエヴァ。これは元大魔王である俺の力を見せつけるため、過信しないようにするために力を見せつけて調教しないといけないかな? そのあとは久々に2本生やしてオマンコとお尻を同時に犯して、京の都を犬のお散歩スタイルで歩き回ろうか?」

 

「――っ!? ちょっ、待っ! ゴメンなさい! や、やっぱり止め――」

 

「さあ、おしおきを始めようか? エヴァ」

 

「あ――……」

 

 青い顔をしてガタガタ震えるエヴァだが、これもエヴァのためなんだ3割ぐらい。

 

「まあ、せめてもの慈悲として犬の散歩の時は念入りに認識阻害の結界をかけてあげるから、安心していいよ」

 

「や、やぁあああああ……」

 

 もう少し大声で悲鳴はあげようねぇ~。

 

「オイオイ、マタ俺ハ放置カヨ……」

 

 入り口で寂しそうな茶々ゼロのつぶやきが聞えたが、俺は構わずエヴァに襲いかかった。

 



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第4話 契約違反の代償は高いです 

 日本の自宅へと帰ってきてしばらく。中国のチャイナっ娘や、アメリカのインディアンガールズなどと戯れたり、魔法世界に行くため転送ポータルまでの移動が面倒だからって、自宅兼私有地となっている土地の一角に魔法世界へ繋がった隠しゲートを創ったり、エヴァといくつもある人間世界の歴史本を読んだりして、観光したり、いろいろ勉強したりと旧世界、魔法世界両方で遊んでいると、18世紀に差し掛かったぐらいから土地に侵入しようとする者が現れてきた。

 

 まあ、ただ侵入しようとする者ならあまり珍しくはないんだが、今回のものは少々毛色が違っていた。

 

 まずこの俺とエヴァが住んでいる土地というものは、現在神が住む土地として日本の神聖な土地となっていて大きな結界も張られており、日本の裏に精通している神鳴流や陰陽師などにとっても大恩がある者達が住んでいる土地として大事にされていて、本来なら誰しもが迂回するような土地なのだ。

 

 なので普段侵入してくるのはそんな事情を知らないほど低俗な盗賊や、興味本位に近づいてくるバカぐらいしかいないのだが、今回侵入しようとしてくる者は、まったくそこらの事情など関係なしに強引に結界を破ろうとしたり、金にものを言わせて周囲の土地を買ったりしてきているのだ。

 

 俺とエヴァの留守中にもかなりの頻度で、しかも大勢の人数がこの結界に侵入しようとしていると、世界樹……神木・蟠桃も言っていたし、もうそろそろエヴァがキレてしまいそうなんだ。

 

 周囲の土地から買い、周りに認識阻害の結界を張って堂々と中央に孤立させた俺達の土地を侵そうとしてくる相手側の汚いやり方に。

 

 そして、当然今日もまた侵入を試みようと結界を破ろうとしてる。

 

 エヴァは侵入者が結界を破ろうとしてる場所を睨んで怒鳴る。

 

「ああ、まったく! うるさいハエ共め! いっそのことすべて皆殺しにしてくれようか!」

 

 怒りのボルテージが上がっているエヴァが全身から魔力を放出させる。

 

 そして魔法を放つ構えをとって――。

 

「リク・ラクラ・ラックライラック! 契約に従い我に従え、氷の女――」

 

「ちょっ!? エヴァ、待った!」

 

 周囲の環境とか関係無しに大魔法を放とうとしたエヴァを捕まえ慌てて止める。

 

「何をする!」

 

「いやいやいや、そっちこそだろ! エヴァがその魔法放ったら家庭菜園はもちろん森が凍りつくだろうが!」

 

 ほぼ絶対零度、150フィート四方の広範囲完全凍結殲滅呪文なんか放つなよな!

 

「むぅ」

 

「かわいく頬を膨らませてもさっきのはやりすぎだ!」 

 

「だが、アルヴィン……」

 

 いじけモードに入るエヴァの頭に手を置いてやさしく撫でる。

 

「まあ、気持ちはわからなくもない。魔法世界でも住んでた城を取り上げられそうになって、結局引っ越したからな」

 

「……そうだ。私はもう奪われるかたちで拠点を動かしたくないぞ。奪われるぐらいなら敵を殲滅したほうがいい」

 

 まっ、俺とエヴァだけで実際に魔法世界も旧世界も殲滅できるぐらいの力はあるんだけど。

 

 それじゃ、つまらなすぎるし事後処理が面倒だ。

 

「とりあえず、戦争なんかは面倒だから、侵入者と対話でもしてみようか」

 

「話す? だが、奴らは話を訊くのか? 私たちは人外……。しかも、真祖の吸血鬼と大魔王なんだぞ。私たちの正体を知ったらそれを理由に喜々として土地を奪いにきそうだが……?」

 

 不機嫌そうにつぶやくエヴァだけど……、吸血っていつしたっけ? 血よりも俺の精子ばっか飲んでる気がする。

 

「でも、話してみないとわからないだろ? これ以上あれこれ探られるのもいい気分じゃないしな」

 

「……それもそうだな。はぁ……、どちらにしろ面倒なことになりそうだ」

 

「でも相手に諦めるような気配がないんだし、放置しておくほうが後々面倒なことになりそうだろ?」

 

「それは……、そう、だな……」

 

「だからここらで相手側の主張とか理由とかを知っておこうじゃないか」

 

「むぅ……、わかったよ」

 

 嘆息するエヴァを引きつれ、俺は侵入者の元へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、私たちに何の用だ?」

 

「わ、私は本国の命令で……!」

 

 はい。話を訊きに行ったんですが、エヴァがフライング気味な先手を打ちました。

 

 多数いる侵入者のなかで、外見的にも魔力的にも1番偉そうな金髪のおっさんを有無を言わさずにロープで体をぐるぐる巻きにして地面に寝かせ、エヴァはそいつの喉元に『断罪の剣』という光の剣をそえました。

 

「本国の命令だと? ――つまり貴様らは魔法使いか?」

 

 エヴァが威圧を強める。金髪のおっさんはその魔法とエヴァの魔力を見て怯えてます。まあ、人間にすればエヴァの魔力は大きいからねぇ。

 

「は、はいっ! わ、私は魔法使いです! ど、どうか剣を下ろしてっ、く、くださりませんか!?」

 

「ああん? 私有地に何度も不法に侵入しようとしたり、周囲の土地を買うという挑発行為を行っておいて言っているのか?」

 

「そ、それは……!」

 

 もう金髪のおっさんビビリまくりです。エヴァもストレスを発散するみたいに魔力を放出してますし。

 

 そろそろ止め時だな。話が進まない。

 

「エヴァ、ストップだ」

 

「だが、アルヴィン……」

 

「このままじゃ話もできないだろ? こいつらの目的や理由とやらを聞いてみようじゃないか」

 

「……わかったよ」

 

 そう言ってエヴァはしぶしぶ剣を収めた。

 

 未だに簀巻きにされているおっさんを見下ろして言う。

 

「さて、魔法使い。これからおまえがこちらを害してきた目的や理由とやらを聞いてやろう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 死の恐怖から解放されたからかおっさんは涙を流して頭を下げた。ただ話がスムーズに進むように解放しただけで、まったく礼を言われることじゃないんだがな。

 

 俺はおっさんを縛っている縄を切って言う。

 

「では、移動しようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっさんがこの土地にちょっかいをかけてきた理由を問いただすため、俺は自宅から少し離れた森にある休憩所へと移動した。

 

 休憩所といっても立派な建物で屋根付きで木製テーブルと簡単な壁としっかりとした創りの建物だ。

 

 拉致とも取れなくはないが、丁度おっさん以外に魔法使いが近くにいなかったこともあり、追っ手はない。

 

 休憩場に設置したテーブルの椅子である長椅子に俺とエヴァが並んで座り、その間、正面に金髪のおっさんを座らせた。

 

 そこでの金髪のおっさん達が何度も強引に侵入してきた目的など理由を聞いて、相手側の主張は集約すると『この土地を使うから俺達に寄越せ』だった。

 

 エヴァは相手側の一方的な主張とやり方に眉間にシワよせ、怒りで顔をピクピクさせた。

 

「つまり、魔法使いの拠点としてこの土地が欲しいから、現在この土地を所有している私達を追い出そうとしていたわけか」

 

「そ、それは……」

 

 金髪のおっさんはエヴァの怒りに小さくなって顔中……、おそらく体中に冷たい汗をかいているようだ。

 

 その金髪のおっさんにエヴァは冷淡に告げる。

 

「却下だ」

 

 エヴァの意見に俺も同意して、

 

「ああ、却下だ」

 

 と、うなずいた。

 

 土地寄越せと言われて、かわいがってきた土地を渡せるわけがないじゃないか。そもそも世界樹との契約もある。

 

「ど、どうしてもですか……?」

 

 金髪のおっさんは訊ねるが――。

 

「「もちろんだ」」

 

 と、俺たちは揃ってうなずいた。

 

 これで諦めてくれればいいのだが、おっさんは食い下がる。

 

「でっ、ですが! この土地は我々にとって重要な――」

 

「おまえたちがどう思っているかなど知るか」

 

「俺たちにはまったく関係のないことだ」

 

「――っ」

 

 エヴァと俺が食い下がるおっさんの言葉を遮って切り捨る。そしてエヴァは威圧するような眼光で睨んだ。

 

「この土地は私たちにとって大事な土地だ。他所からやってきた魔法使いなどに渡せるか」

 

 エヴァは本国にいる身勝手な魔法使いとか、一方的な正義を掲げる『立派な魔法使い』が大嫌いだからな。

 

「ここは諦めてくれないか? 他の土地でも探せばいいだろ。イギリスとかゲートがあるんだし、そこに拠点創ればいいんじゃないか?」

 

 俺が助け舟? というか代案を出してみるが……。

 

「イギリスにはすでに拠点があるのです。それに……、絶対にこの土地でないといけないのです……」

 

 と、魔法使いのおっさんは首を横に振った。ていうかこの土地でないといけないって、やっぱり――。

 

「世界樹が目的か」

 

「――っ!」

 

 俺のつぶやきに魔法使いはあからさまな反応を見せた。この土地……、世界樹近くの地下には天然の大きなゲートがあったし、おそらくそれを確保したいんだろう。ていうか気づいてないとでも思ったのか?

 

 エヴァがチッと舌打ちをしたあと、意地悪そうな笑みを浮かべて魔法使いに尋ねる。

 

「それで、私達がこの土地から退かなかったらどうなるんだ? 退かせるために軍でも送るか? ああ?」

 

 エヴァの挑発のような言葉に魔法使いは額の汗をハンカチで拭い、ゆっくりとうなずいた。

 

「それも、本国は辞さないかと……」

 

「そうか……」

 

 エヴァはそれだけ言うと――、

 

「ストップだ。エヴァ」

 

「――ちっ」

 

 ふぅ、何とか行動する前に止められたか。まったく気づいてないようだけど、俺が止めなきゃ殺されてたね、魔法使い。

 

 気を取り直して俺が魔法使いに話しかける。

 

「先ほど軍をあげてでも俺達を退かせようとすると言っていたな」

 

「あくまでそれは最終手段で――、っう!」

 

 はぁ、魔力をほんの少し、1%にも満たないだけの量を解放し、威圧するだけで、喋れなくなるのか。

 

 完全に魔力を収め、改めて大魔王モードで魔法使いに訊ねる。

 

「魔法使いよ。俺とエヴァが魔法世界程度に負けるとでも本気で思っているのか?」

 

「そ、それは……」

 

 怯える魔法使いに、エヴァも続けて言う。

 

「私は真祖の吸血鬼で、こいつは実体を持った規格外の悪魔だぞ。――魔法世界の一国家、いや、全魔法使いが襲ってこようと退けられる」

 

「なっ! 真祖の吸血鬼!? じ、実体を持つ悪魔ですと!?」

 

 魔法使いのおっさんは顔を真っ青にして震えた。

 

 そして止めのようにエヴァが嗤いながら言った。

 

「どうだ? 私たちと戦争をしてみるか? 確実に貴様らが大打撃を負うこと、間違い無しだ」

 

 と……。

 

 魔法使いはそれで放心状態となった。先ほどの魔力でも威圧もあって、これで深層心理まで恐怖が刻み込まれただろう。次は――。

 

「魔法使いよ」

 

「……は、……はいっ! な、なんでしょうか!?」

 

「おまえ達は世界樹が欲しいとは言うが、それはそもそも不可能だ」

 

「ふ、不可能とは?」

 

「そのままの意味だ。世界樹、神木・蟠桃は俺たち……、厳密には俺と契約している。俺が守る代わりにこの土地を委ねるとな。万が一にでも俺とエヴァをこの土地から退けれたとしても、蟠桃はおまえ等を受け入れないだろう」

 

「…………それは本当ですか?」

 

「もちろんだ。500年近くなるがそれほど前からの契約だ。試しにそうだな……」

 

 信じさせるために、蟠桃に頼む。もはや宴会芸の18番となったアノ技を。

 

『―――、――――、――――――』

 

『――、―――』

 

 どうやらあちら側も乗り気のようだ。

 

「では証拠を見せよう。丁度ここから世界樹が見えるだろう。そこから世界樹を見ていろよ」

 

 魔法使いにそう言って発動させる。

 

「おお……、こ、これは……」

 

 魔法使いは呆然と世界樹を見た。光り輝く世界樹を……。一方、エヴァはというと見慣れてるからスルーだったが、脅しにかけては俺以上!

 

 椅子に踏ん反り返って喜々として魔法使いを脅しにかかった!

 

「どうだ、魔法使い? 世界樹の内包する魔力は? おまえらがこの土地を無理矢理奪えたとしても、今度はあの魔力を持った世界樹がおまえらに牙を剥くぞ。何せ500年以上守っていた存在が不等に追い出されたのだ。暴走して何をしでかすかわからないぞ?」

 

「…………ぁ、ぅ……」

 

 魔法使いはただ呆然と、どうすればいいんだと頭を抱えていた。

 

 力で奪うにはあまりに強すぎる。仮に力以外で奪えたとしても、今度は世界樹が牙を剥くかもしれない。

 

 だが、それでもこの土地は確保しないといけない。

 

 精神が不安定になりかけていたところで、テーブルの下からエヴァを触って念話を繋ぐ。

 

『エヴァ』

 

『なんだ、アルヴィン?』

 

『このままこいつを追い払えば、また次のバカに説明しなきゃいけなくなる。この辺が落としどころだろう』

 

『ちっ、不愉快だが仕方がないか』

 

『ああ、だがまずはこの土地の活用法を聞いてから考えよう』

 

『それもそうだな』

 

 エヴァとの相談を終えて魔法使いに訊ねる。

 

「そういえば、この土地をおまえらが手に入れたとしてどうするつもりだったんだ?」

 

 魔法使いはゆっくりと答えた。

 

「……そ、それは……、これほどの大きな土地なので魔法使いも通える学園都市を創ろうかと……」

 

「学園都市……」

 

 つまり学生の園か。……セーラー、スク水……、そういえば色々あったなぁ。コスプレエッチ……、最近は本職のところに行ってたけど、この世界ではまだセーラーとかブレザーとかないわけだし、エヴァとか素人に着せるのもいいけど、本物を愛でるのもなかなか……。それに多くの人間界の歴史ではもう少しすれば20歳以下とセックスしたらダメとかいう法律ができるそうだし……、まあ、悪魔である俺には法律とか関係ないけど。

 

 うーん……、と、俺が心のなかで唸っていると、魔法使いのほうから切り出してきた。

 

「そ、そうです! 土地を貸し出すというのはどうでしょう!? 我々が金品などを対価に土地を借りるのです!」

 

 これいい案だよな! 見たいに言うが、エヴァは甘くない。高圧的な視線で魔法使いを睨み、言う。

 

「ほう、土地を借す、か。外堀を埋めるように周囲の土地を金にものを言わせて支配下においたおまえらが、戦争をしてでも排除すると言った、おまえらに土地を借せと言うのか?」

 

「…………」

 

 魔法使いのおっさんは何も言えずに固まった。このままでは話はまた最初に戻るとこちらから切り出す。

 

「……ふむ、そうだな……。まあ、条件次第では貸してやってもいいだろう」

 

「アルヴィン!?」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 不機嫌そうに驚くエヴァだが、それも作戦の内だ。

 

 暗闇のなかで一筋の光が見えたという魔法使いに大きな要求を通すための……。

 

 止む終えずというか、仕方なしに慈悲をかけてという感じでエヴァに提案する。

 

「エヴァ、どうだろう? いつまでも広大なこの土地が森のままというのは将来的にありえないんだし、蟠桃と俺たちが住む土地での干渉や、不法侵入など、ある程度の金品を対価に土地を貸し出してみないか?」

 

「だ、だが……、土地を貸せばこいつらは絶対に、契約を結んでから何代かすれば、貸した土地を私物化して私たちの土地も寄越せと言ってくるぞ?」

 

 嫌がるエヴァに、俺は諭すように言う。

 

「そうなったら、そのときに滅ぼせばいいことだろう? 元々俺たちは人外。貸した土地に一般人や魔法使いが住んでいようと関係なしに吹き飛ばせばいいんだ」

 

「――む? ああ、それもそうだったな。契約を破られたらすべてを破壊すればいいか」

 

「…………」

 

 しぶしぶうなずくエヴァと、そうなった場合を考えて固まる魔法使い。

 

 テーブルの下では相変わらず念話での相談が続けられいた。

 

『これだけの経緯を挟めばいいだろう』

 

『そうだな。じゃあ、今度はアルヴィンが先に契約内容を開示して、私がその契約を水増しだな』

 

『ああ、そうしたほうが、引き出しやすいし、こちらが妥協してやってるんだと自覚させられるからな』

 

『まったく、おまえは本当に悪魔だよ』

 

『そういうエヴァだって真祖の吸血鬼だろ?』

 

『ハハハハハ!』

 

『フハハハハハ!』

 

「(本国にどう説明しよう……)」

 

 魔法使いは1人うなだれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局のところ本国に魔法使いを帰し、正式な場で会議した結果、結ばれた契約はこうなった。

 

 1、世界樹、神木・蟠桃とアルヴィン・アンドリューとエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの指定した土地には不干渉で、不法侵入した場合、いかなる理由があろうと生殺与奪権はこちら側にある。

 

 2、私有地を貸し出す対価として毎年現在の価値で言うところの3億円を支払う(年代がどうなろうとその時代での3億円分の支払いを要求)。内1億までは魔法世界通貨でいいが、魔法世界の銀行での差し押さえ、横領等があれば、契約違反とみなす。

 

 3、世界樹、神木・蟠桃の調査は認めない(これはひと悶着あったが、俺が守るという契約をしていることと、蟠桃自身が拒絶していることを新たな宴会芸となるだろう黒色発光させて、魔法使い側に世界樹自身が敵意をあることを示させて納得させた)。

 

 4、貸した土地でのある程度の自由行動権。その土地で襲われたりした場合、襲った者の生殺与奪権を得る。さらに貸した土地で非人道的な研究などが行なわれた場合などは魔法使い側に何らかの罰則を科す。

 

 5、基本貸した土地の防衛はそちらで行なうこと(世界樹の魔力を頼りにしていた魔法使いもいたようだが、貸してもらった土地ぐらい自分で防衛するのが基本だと大きな反論などはなかった)。

 

 と、以上が最初の会談で決まったことなんだが、学園都市が設立されてから1代目学園長が任期を終えて2代目学園長が就任してから、段々と反発というか不満が強くなってきた。

 

 学園都市の規模が大きくなりすぎて自分達では防衛しきれなくなってきたことも原因だったが、1番は正義の魔法使いが悪魔と真祖の吸血鬼に土地を借りていることが我慢できないんだそうだ。

 

 遠まわしに出て行け、出て行けとうるさく言ってきたり、蟠桃を強引に調べに来て学園都市の防衛や一般人への魔法使いバレ防止用の認識阻害の結界に使ったりする魔力を得ようとしたりしたので、こちら側がキレた。

 

 キレた上で追い込んだ。

 

 まずは強硬派なる俺達を排除しにくる正義の魔法使いたちが、住居と森に張ってある結界を破って入りやすくなるように細工し、私有地の内側で捕縛。

 

 捕縛した魔法使いを2代目学園長につきつけ、契約違反だと警告。

 

 捕縛した魔法使い達を切り捨て、しらをきる2代目学園長に、作戦を強行させた魔法使いやバックにいる組織が誰かを、森のなかで愚痴を溢すようにバカみたいに話していた魔法使いたちの会話を記録した映像を見せるが、それでも2代目学園長がしらを切りそうだったので殺気を向けて威嚇すると、真っ白になって誰が命令したかを吐いた。

 

 結果、魔法世界のメガロメセンブリアという契約した国の元老院という機関が黒幕らしいと判明。

 

 そして、『真祖の吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』と、『実体を持った悪魔、アルヴィン・アンドリュー』とかいう賞金首にされる計画が魔法世界のメガロメセンブリアであることを聞きだした。

 

 ちなみに賞金はエヴァが500万ドル、俺が400万ドルと、実際の実力などでいっても、ものすごくふざけた値段だった。

 

 しかも、大量殺人など虐殺といった身に覚えのない罪で賞金首にされるという。

 

 当然俺とエヴァは怒り、学園ごと滅ぼそうかと思ったが、一計を案じて元老院を別の方向から虐めることにした。

 

 その方法は、実に簡単。

 

 変装&分身した俺がメガロメセンブリアに行き、元老院を糾弾したんだ。

 

 都市のラジオ局など乗っ取って、念話を使い最高額賞金首として手配されることになったと放送したあとすぐに、空に映像を映し出して、冤罪だと訴えたのだ。

 

『自分たちは立派な魔法使いを目指す者です! 私たちは国民の皆さんに聞いて欲しいことがあって行動しました! 先ほど放送されたと思いますが、新たな高額の賞金首にされた2人は実は無実で、冤罪なんです! 彼らは旧世界のある土地で何百年も住んでいたのですが、数十年前、メガロメセンブリアの元老院が旧世界に魔法使いの拠点を得ようと、しぶる彼らに頼み込んで何とか対価を支払うことで土地を借りたのですが、元老院はその対価を惜しみ、彼らが人外だというところにつけこみ、正義感の強い『立派な魔法使い』を目指す者たちに、「彼らは悪である!」、「我々の土地を不等に占拠し、金品を巻き上げている!」、「罪を重ねた悪だ!」と洗脳し、彼らを襲わせたのです! ――皆さん! 私たちは自分たちの正義に恥じないようにこの場で元老院を兆弾します! 彼らは悪ではない! 悪なのは腐りきった元老院であると!』

 

 てな感じに放送し、呆然としてる国民のなかで同じく変身させた分身体に煽らせる。

 

『そ、そんな元老院が……』

 

『俺達を騙したのか!?』

 

『だけど、人外でしょ?』

 

『人外といっても彼らは数百年前から旧世界の土地に住んでいたそうじゃないか』

 

『それも、そうだな……。旧世界は我々の世界とは別だ』

 

『そうだ! 旧世界は我々の世界ではないんだぞ! 拠点が欲しくて土地まで借してもらってるのに、借りる金が惜しいからと、犯罪者に仕立て上げるとは、立派な魔法使いがすることじゃない!』

 

『そうだ! 立派な魔法使いを貶める行為だ!』

 

『元老院は腐ってる!』

 

 などと、少しずつ内側から煽り、さらに糾弾する。

 

『我々が独自に調査した結果、この書類に記載されている元老院の魔法使いが諸悪の根源だと判明しました! さらに調べていく内に元老院が違法な魔法薬での人体実験や奴隷の取引なども発覚したのです! 悪を断罪する立場にある、国の重鎮である元老院が、悪の苗床になっているのです! 彼らの非道な行いは、我々メガロメセンブリアの民が浄化させなければいけない! 我々「立派な魔法使い」の品位を貶めた諸悪の根源は絶対に絶たねばいけない! 皆さん! 「立派な魔法使い」として立ち上がりましょう! このままでは我々の大事な人にも元老院に巣食っている「悪の魔法使い」の魔の手が忍び寄ります! 実際にすでに悪とする判断材料もそろっているのです! 立派な魔法使いを名乗るのならば! 自分が立派な魔法使いだと家族や子供に胸を張りたいのなら! 元老院の悪を皆で絶つのです!』

 

 そうして杖を元老院のほうへ向け、観衆のなかに仕込んだ数十人の国民に歓声をあげさせ、誘導する。

 

『俺は行くぞ!』

 

『だが、彼らが言ってることは本当なのか?』

 

『俺は本当だと思うぜ! 元老院は腐ってる! 不正が横行しているのは事実だ!』

 

『なんでそう言えるの?』

 

『俺の家族は元老院を兆弾しようとして、元老院が放った暗殺者に殺されたんだ!』

 

『ねえ! 空をから振ってくる紙を読んでみて! 元老院がやった事が書かれているわ!』

 

『なっ!? 人体実験!? しかも病院の地下で!?』

 

『そういえばその病院で噂を聞いたことがある! あの噂は本当だったの……!』

 

 ここまでもっていってやればもう簡単。民衆を先導させるように仕込んだ分身を動かし、暴徒化させ、人の波を作って元老院へ向う。

 

 ちなみに暴徒化した住民が向う元老院では先行して放送した際に映っていた、個性を強くした魔法使い(分身)たちがなかにいる連中が逃げないよう数人で囲うように、転移できなくする結界を張っていて、

 

『先ほど放送した他の仲間は先に元老院の奴らを確保しに行った! 俺たちは周りで結界を張って逃げられないようにしてるんだ! どうか彼らと元老院の悪を正してくれ!』

 

 と、暴徒化した民衆を元老院へ向わせ、最後の仕上げとして、元老院の老害と糾弾した勇気あるリーダーが一騎打ちしている場面をいいポジションで見せ、どこから現れたかわからない子供を、錯乱し自分から悪の自供をする完全悪役な老害が放つ魔法から庇う形で死傷を負わせ、相打ちにさせる。

 

 さらに追加で、死ぬ間際に元老院の悪で人生を狂わされたストーリーを透き通る声で民衆に話し、カッコよく『立派な魔法使い』として死なせ、死体をそいつの親友である魔法使い(分身)に抱かせ、外に出て、外で結界を張っていた他の仲間達にどんな死に様だったか話させた。

 

 老害のほとんど不正を暴かれ捕まったことを立派な魔法使い(分身)が改めて広場に集まった民衆に告げる。

 

 そして、立派な魔法使い(分身)たちは、広場で尊い犠牲の下、悪は捕まり裁かれるであろうと演説した。

 

 これから国の浄化のあとの再生に入り、『立派な魔法使い』を体現しているといってもいい、元老院を勇敢に糾弾した魔法使い(分身)たちが、新たにメガロメセンブリアの元老院の椅子に座る案が民衆から多く出るが、それを断る。

 

 それでも強く押す者がいたが、親友魔法使い(分身)に、我々は元々リーダーを慕い、『立派な魔法使い』として行動したんだとか、元老院を糾弾した我々が、元老院に座ることはできないと断るが、国の再生には喜んで手を貸そうと言い。反論を抑えた。

 

 そして、死亡した立派な魔法使い(分身)の親友魔法使い(分身)に「今回犯罪者に仕立て上げてしまった旧世界にいる2人に正式に謝罪しなければ」と、他の魔法使いが「何をそこまでしなくても」と言うなか、立派な魔法使いの親友魔法使い(分身)は分身ではない魔法使いも数人引き連れ、旧世界に渡り、条約違反などを行い、元老院の悪に手を染めた者のリストに記載されている2代目学園長を解任&相応しい刑に処させ、正式に謝罪した。

 

 俺とエヴァは始めはやって来た魔法使いたちに不機嫌そうに対応するが、魔法使い(分身)の話を聞き、その誠意ある謝罪や元老院を糾弾した勇気ある行いに敬意を示すという形で、世界樹の一部魔力(溜まっていた余分魔力)を学園都市の防衛に使う許可と、国の再生のために資金が要るだろうと、要求する金品を5年の間半分にすることを決めた。

 

 犯罪者に仕立て上げられるという大迷惑をかけられた俺たちが譲り、大変だろうと逆に援助したことで、本国から謝罪にやって来た魔法使いたちは、我々に少なからずの好印象を抱き、やはり元老院が間違っていたことを確信。その情報を本国へと持ち帰った。

 

 そのあとは、国の再生に立派な魔法使い(分身)たちは尽力し、正しい立派な魔法使いの精神を広め、元老院が再生され、国が安定したところを見計らい、引退と隠居を表明。

 

『どうか魔法使いとしての道を間違わないで欲しい』とか、『私の今は亡き生涯の供である立派な魔法使いである彼のように生きて欲しい』などと演説し、姿をくらませた。

 

 そして、その結果……。

 

 俺たちは昔と同じような平穏を過ごしていた。

 

「ハハハハハ、本当に『悪』だな」

 

 一連の事件を記録し編集した『立派な魔法使いの行い』というタイトルの自作自演の感動人生映画を観てエヴァはハンカチを持ってそう涙を拭きながら笑い声をあげた。

 

 とりあえず、この映画は5、60年ほど経ったぐらいにメガロメセンブリアの放送局に提供し、放送させるつもりだ。

 

 意地の悪い笑みを浮かべるエヴァを後ろから抱いて俺はいつものようにつぶやいた。

 

「まあ、悪魔のなかでも元大魔王だからな」

 

 19世紀も半ばに差し掛かった頃の出来事だった。

 



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第5話 造物主との会談 

 メガロメセンブリアに賞金首にされかかったのを、別の方向から断罪した俺たちは相変わらずな日々を送っていた。

 

 世の中の人間同士での戦争が揮発し、世界大戦が揮発しても関係なしに、相変わらずのだ。

 

 まあ、元々世捨て人、というか人間ではないからな。もとより関係ないといえば関係ない。

 

 戦争で戦力になるだろう京……、今は京都の陰陽師や神鳴流剣士達も『我々の技は悪霊や人に害をなす、人外に振るうもので戦争のために使うものではない』って、基本不参加だ。まあ、異能者が人間世界の戦争に関わると碌なことが起こらないからな。

 

 だから俺は持て余した時間を、現実の6時間がダイオラマ魔法球の中では12時間という設定を変えたダイオラマ魔法球をエヴァに開発してもらい、そのなかで植物栽培を続けていた。

 

 ちなみに何故設定を弄くったかというと、前に魔法世界に住んでいた時の城は、1時間、24時間タイプのダイオラマ魔法球だったから、1日放っておくだけで魔法球のなかで24日が経ち、2日、3日で48日、72日と経ってしまうからだ。引越しから数日後にダイオラマ魔法球に入って見たとき、家庭菜園が荒れ放題になっていたことに愕然としたことを覚えているから、こういう設定に変えたのだ。

 

 でも、それでも外と中との時間の流れが違うので、定期的に入らないと菜園が荒れてしまうので、エヴァと錬金術師たちのなかで有名だった『フラスコのなかの小人』という意味のホムンクルスを生成し、ダイオラマ魔法球(フラスコ)に入れて農園の管理や建物の管理をさせることにした。

 

 ちなみにホムンクルスのタイプは、ホムンクルスで元々性別関係ないんだし奉仕されるなら女性だよな、ってことで全員女性型。個別に個性も持たせて清楚タイプとガサツタイプと元気タイプ、ツンデレ、クーデレタイプなどをいろいろ創ってみた。

 

 こうして俺はダイオラマ魔法球内での品種改良しながらの農作業に精をだしたり、その食材を美味しく調理したいからと料理の修業をしたりしていた。

 

 一方のエヴァはというと、ちんちくりんのおっさんから合気柔術を習ってから、その練習したり、俺が栽培した新種の薬草を活用して新たな魔法薬を開発したり、人形作りをしたり、ゴスロリドレスなど、かわいい服を自作してたりしている。

 

 それに、基本森のなかでの生活といっても、世界各地にも同じように拠点を散りばめているので、時おり転移魔法を使って世界旅行したりしている。

 

 そうして時は流れていき、1982年。

 

 22年周期で神木・蟠桃がその身に内包した過剰魔力を発光しながら消費する年。俺は魔法世界へ観光兼大戦がどうなっているか様子を見るために、魔法世界へと出発した。

 

 行くのは俺だけ、エヴァはお留守番だ。魔法世界ではいたるところで大戦が起こっているそうだし、中継ぎを経て俺達の土地半分……、麻帆良という土地に建設されている学園都市の学園長に就任した近衛近衛門なる男が、2代目のように攻撃的ではないにしろ、必要以上にこちらに干渉したがっている傾向にあるから、あまり長期間留守にはできないんだ。

 

 まっ、元々留守番っていっても自分の土地の一角に魔法世界への転移ポータルあるし、寂しがりやのエヴァのために、自身のエヴァ成分補充のために遅くても3ヶ月に1回ぐらいは帰ってくるつもりだからな。

 

 ぶっちゃけ、エヴァを置いていく理由は特になかったり……。あるとしても女を口説きにくくなるぐらい……。

 

 ちなみに茶々ゼロは戦闘大好きで戦争大好きと、いろいろな意味で危険なので当然お留守番。

 

 ………………。

 

 さてと、魔法世界へ行きますか!

 

 冤罪ですぐ取り消されたけど、賞金首の顔写真対策のために、久々に人外形態である、かわいくないからとデフォルメしたぬいぐるみサイズの黒龍フォームになって、魔法世界へと俺は出発した。

 

 お土産期待しといてね、エヴァ。……と茶々ゼロ。

 

 

 

 

 

◆ 

 

 

 

 

 

 そしてやって来ました魔法世界!

 

 うん、自宅の敷地内に転送ポータルがあるから、1時間もかからずに来れました。

 

 しかも地下に作った隠しポータルだから入国審査とかもいらないし、いつも通り影を媒介にした転移で移動します。

 

 とりあえずは戦争の理由を知ってるだろうあいつのとこに行きますか。

 

 エンテオフュシア王国に転移し、それから空中を飛行しながら墓守の宮殿へと向う。

 

「相変わらず辛気臭いところだなぁ」

 

 空中王宮なのにラスボスダンジョンみたいな住処に、思わず素直な感想が漏れてしまった。

 

 まあ、誰も聞いていないだろうと、王宮内へ向かうと……。

 

「何者だ!」

 

「龍?」

 

「何故ここに?」

 

「敵か?」

 

「貴様は……」

 

 ぞろぞろと出てきました。

 

 おいおい、ここはいつの間にこんな大所帯になったんだ? 数百年ぐらい前は陰気な造物主しかいなかったはずなのに。

 

 とりあえず、刺激しないように長男? もしかして夫? 造物主って男だっけ?  女のような気がしたけど……。まあ、いいや。年長っぽい筋肉に話しかける。

 

「え~と、はじめまして。アルヴィンだけど、造物主いる?」

 

「……知り合い……、なのですか?」

 

 少しだけ警戒を解いてくれたようだ。

 

「まあ、数百年前からの付き合いかなぁ。いまだに本名教えてくれないけど……」

 

 ていうか、こいつら人工的に創られた人形じゃない? 俺とエヴァが創ったホムンクルスに少し似てるし、そもそも陰気なあいつに夫とか嫁さんとか息子とか、家庭が似合わないしさ。

 

 そんなことを考えていると、宮殿の奥から数百年前とまったく変わらない全身黒ローブ姿スの造物主が出てきた。

 

「よっ、造物主。また遊びに来たよ~」

 

「アルヴィンか……。この時期に来たということは、魔法世界で起こっている戦争の理由に気づいたか」

 

 相変わらずの深読み&自己解釈だねぇ。ていうか、戦争の理由っておまえかよ……。それに俺の黒龍フォームには触れないの?

 

「それで、何をしに来た? 計画を邪魔しに来たのか?」

 

「なっ! 計画の邪魔!? こいつやはり!」

 

 おお、造物主の言いがかりに、雷っぽい青年がバチバチしてる。

 

 俺は首を横に振って言う。

 

「別にそんなつもりないけど。ただ万年ヒッキーのおまえが寂しいだろうって、唯一の友人? まあ、知り合いが会いに来ただけ」

 

「……そうか」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 造物主はこちらの腹を探るような感じでうなずいたが、子供たちは造物主をほんのちょっぴりかわいそうな人を見るように遠巻きに眺めていた。

 

 その空気に居心地が悪くなったか造物主が奥で話そうと提案してきた。

 

 俺はそれにうなずき宮殿の奥へと向かい、テーブルなし、仰々しい2つの椅子を離れた位置に、対面に向わせで置いた場所へと招かれ、造物主と向かい合わせで椅子に座り、造物主から話し始めた。

 

「私が何故大戦を起こした理由について聞きに来たんだろう。昔会ったときに言ったがこの世界は元々、私が創り出した人工の世界で、その寿命が――」

 

 おいおい、語りたがり屋か? 勝手に話し始めたんだけど……。

 

「――それで、私は『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』を創り、魔法世界が崩壊する前に、魔法世界の住民をその新たな世界へ送る計画だ。先ほどおまえが見た者たちは私が創り出した戦闘用の人形で、その構成員の幹部たちだ」

 

 ふ~ん、やっぱりか。ていうか、お茶出ねぇの、ここ? かれこれ30分ぐらい『魔法世界は滅びる!』、『魔法世界に住む住人を完全なる世界のなかへ入れて救わないといけないんだ!』、『私は世界を救うんだ!』と熱弁されて正直そろそろ帰りたいです……。

 

「そういえば、アルヴィンは元大魔王だったな」

 

「ん? ああ、そうだけど」

 

 椅子に座りにくいから人間形態になろうかなぁ、と考えていたら造物主は椅子にもたれかかり訊ねてきた。

 

「滅びゆく魔法世界を我々は住人を完全なる世界に入れることで救済するつもりだが、おまえはどうする?」

 

「どうするって?」

 

「我々と対立するか、協力するのか、はたまた無干渉なのかだ」

 

「ん~……、俺はぶっちゃけどうでもいいって言ったら、いいんだけどねぇ。魔法世界の獣っ娘や、角っ娘が消えちゃうのは嫌だなぁ」

 

「…………それも全て幻想だぞ」

 

 あれ? なにこいつ?

 

「幻想って言っても、元々世界ってのは幻想だろ」

 

「?」

 

 わからないといった様子の造物主に、丁寧に説明を始める。

 

「魔法世界における崩壊とか、将来的に人間界でもいつかは起こるって言ってるんだよ。魔界もいつかは滅びるだろうしな。――滅びるまでは全てが幻想……、ってのは言ってしまえば当然だろ」

 

「――っ」

 

「今回のことも結構単純なことだ。魔法世界を創ったおまえ=神さまが力不足で崩壊することになりました~。火星に戻って魔法世界は消滅します。――なんてことも、大きな視点で見れば案外普通のことなんだよ。人間界でも滅びに瀕して創造主=神さまが出てきたりしても、しなくても、将来的には崩壊するかもしれないものなんだし」

 

「全てが崩壊という未来を通るだと!? 崩壊は決まっていることだから受け入れろとでも言うのか!?」

 

 俺の言葉に激しく動揺を見せる造物主。まっ、こいつは魔法世界と1つの人間世界しか知らないようだし、仕方がないか。

 

「造物主、教えてやる。――実際、世界っていうのは結構な頻度で崩壊しているんだぞ」

 

「なっ!?」

 

 ショックを受けた様子の造物主だが、かまわず続ける。

 

「魔界に住む者……、魔王ぐらいになれば誰もが知っていることだが、世界というのは幾つも存在する。それは違う次元、異なった銀河などに存在し、それらはまったく同じ世界であったり、次元が違ったり無数に存在するんだ」

 

「いくつも世界が存在する……?」

 

「その世界はいろいろなことが原因で滅んでいる。隕石の衝突だったり、太陽が消滅したり、化学兵器の暴発だっり、人間同士の戦いだったり……。おまえのように世界を創った本人が気まぐれで崩壊させたりと、このおまえが創りだした魔法世界に限らず、世界というものはいずれは崩壊するものだ。――だから、言ってしまえば、最初から存在する世界は誰が創造しようと、全ては崩壊までの長い幻想なんだよ」

 

「………………」

 

 長い沈黙がこの場を支配する……。

 

 何かを悩んでいるように、考えているように、造物主の全身黒ローブからはうかがえないが、少なくとも喜んではいないようだ。

 

 ……そろそろ本気で帰ろうかなぁ。

 

「元大魔王……」

 

「なんだ、造物主」

 

「崩壊は……、最初から世界に定められていたことなのか?」

 

「……そうだな。どんな世界でも生まれてからは成長、崩壊とそれまでの時間は永くても終わりは変わらないだろう。世界樹も枯れないとは言うが、ただ単にあれも1000年、2000年といった千年単位で生きるもので、数万年ほど経てば寿命がくるものなんだ。枯れないと人間が言うのは、枯れるまでの時間が人間の寿命よりも遥かに長いから枯れないものだと、そんな幻想を抱いてるだけなんだよ」

 

「世界樹でさえもか……。――私が『完全なる世界』に住民を入れても……」

 

「崩壊の運命は変わらないだろうな。完全なるっていったところで、その世界もいずれは何らかの理由で魔法世界のように崩壊するよ」

 

「……………」

 

 永遠と思われた魔法世界の崩壊という実例がある分、造物主も『完全な世界』に不安をもったようだ。

 

「まっ、そう気を落とすなって。崩壊を止めることはできないまでも先延ばしにすることはできるんだからさ」

 

「だが、先延ばしにしたとしても……」

 

「崩壊するだろう。――が、それでもいいだろ。さっきも言ったが元々世界は崩壊するものなんだ。その世界を崩壊させないように努力するのは生命として当然の行動だと俺は思うぞ」

 

「……私は、どうすればいいんだ……」

 

 弱々しい声でつぶやく造物主。元々陰気な奴だから空気がものすごく重い……。

 

「まあ、おまえはおまえなりに崩壊から魔法世界を救えばいいんじゃないか?」

 

「私なりに……?」

 

「そ。おまえなりに試行錯誤して悩んだ結果の『完全なる世界』なんだろ?」

 

「ああ……、2000年以上悩んだ」

 

「マジで!? 2000年悩んでんの!?」

 

「…………」

 

「…………その、ゴメン」

 

「……別にいい」

 

 とりあえず場を切り替えて……。帰りたいし結論に入る。

 

「全部まとめて考えると、おまえはおまえのやり方で世界を崩壊から救えばいい。――俺はそうだな……、魔法世界が崩壊するのは嫌だから、別の方法でも考えるかな」

 

「別の方法だと?」

 

「そう、別の方法。魔法世界を救う(結局延命だけど言わない)方法がひとつしかないってことはないんだし、俺は俺で動き始めることにするよ」

 

「……それは、我々と敵対するということか?」

 

「極論が過ぎるぞ、おまえ。俺は俺で動くって言ったろ。――そりゃあ、救う方法の違いでおまえと敵対するようなことになるかも知れないが、俺が表立っておまえを打ち滅ぼすみたいなことはしないよ。面倒くさいし。この魔法世界と人間世界で見るとおまえが1番歳が近いんだしさ」

 

 まっ、歳が近いっていっても数千歳は離れてるだろうけどね。

 

「……そうか。肉体があって制限がない大魔王が敵にまわらなくなっただけよしとするか」

 

 俺の言葉を一応納得した様子の造物主は椅子から立ち上がった。

 

「だが、今回の大戦だけは絶対に邪魔しないで欲しい」

 

「絶対は無理だ。俺の大事な獣っ娘や角っ娘とかが死んでいくのは気分がいいもんじゃないし、――おまえに俺の行動を制限される義理もない」

 

「…………やはり、そうか……。ではそれ相応の対価を払おう」

 

「対価?」

 

 造物主は宮殿のさらに奥へと足を進めて、俺についてくるよう促した。

 

 長い回廊を造物主が歩き、その後ろを俺がふわふわと黒龍モードでついていく。

 

「大魔王といえど、悪魔。それ相応の対価を引き換えにすれば願いを聞いてくれるのだろう?」

 

「まあ、そうなんだけど、造物主。俺は実体で来てるから魔力を引き換えにとかは意味ないぞ? それに元とはいえ大魔王クラスと契約するんだ。魔力を対価にするならこの星の全ての魔力を対価にしても足りないぞ」

 

「それはわかっている。……昔に力の片鱗を見せられたときに嫌というほど理解できた」

 

 ああ、はじめて会ったときね。俺が廃墟だと思って宮殿に入ったとき、侵入者は「問答無用殺します」とか攻撃してきたから、そいつら無力化するときに力の一部を解放したんだよな~。

 

「じゃあ、何を対価にするんだ?」

 

「ついてくればわかる」

 

 あ~、対価ねぇ。ホムンクルスを創ってるから魂もあんまりいらないし、魔法具や魔法書も自分とエヴァで製作できるし、何か渡せるものでもあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 墓守の宮殿の奥、造物主が差し出す対価が何かといろいろ考えながらついていってると、造物主は大きな扉の前で止まった。

 

「ここだ」

 

 ゴオオ……、とうるさく扉が開き、造物主が中に入る。俺も続いて入ると……。

 

「何だコレ? 棺か?」

 

 石でできた棺のようなもの、いや、棺そのものが部屋のなかにいくつも鎮座していた。

 

 造物主はそのなかの1つの前で止まる。

 

「これがおまえにとって丁度いい対価になるだろう」

 

「?」

 

 疑問符を浮べていると、造物主は魔法で棺の蓋を開けた。

 

 その棺を覗き込んで見ると、薄い褐色肌で、クセのある長い白い髪の小柄な女の子がいた。

 

 疑問符を浮べたままの俺に、造物主が説明を始める。

 

「私が創りだした戦闘用の人形、アーウェルンクスシリーズだ。これは現在起動しているアーウェルンクス達の予備の肉体として作っておいたもので、予定では火のアートゥルの2代目となる器だった。それゆえにこの魔法世界ではかなりの上位にはいる能力を有している」

 

「へ~」

 

 ふわふわと空中を浮遊しながら調べてみると、うん、確かに人形だった。造物主が言った通り、身体能力も高く、強い火の精霊の加護を受けているようだ。

 

「でも、魂がないぞ?」

 

 これじゃあ、ホムンクルスよりも意味ないただの肉じゃん。

 

「さっきも言ったがそれは今稼働中のアーウェルンクスの予備の肉体なんだから、現在魂が入っていないのは当然だ」

 

「なに? じゃあ俺が魂入れんの?」

 

「そう言うことになるな」

 

「う~ん……、まあ、いっか。知らない内におまえになんか仕込まれるのは嫌だし、見掛けも上々。内面はこれから育てていけばいいんだし、うん。契約の対価とすることを認める」

 

「…………そうか」

 

 対価にしていいと許可したのに、何やら納得できていない様子の造物主。

 

「どうしたんだ?」

 

「いや、なんでもない。……まさか大魔王とあろう者が女を用意するだけで譲歩するなんて。……やはりエヴァンジェリンのような子供型を用意しておいてよかった……」

 

 小声だけどばっちし聞えてるからね、造物主! あと俺はロリも好きなだけだからな! 大人も大好きだから!

 

「まっ、対価としては少ないから、要求できる願いも限られることになるがいいんだな?」

 

「ああ、おまえに渡せるような物は他にない。もう1体実は作製しているがそれは外見的に旧世界には相応しくないからな。――それで契約だが、この大戦で表立って行動しないと約束してくれればいい」

 

「つまり、大戦の規模を大きくしてる黒幕で、世界の敵認定にされるだろうおまえらを、俺が気まぐれにぶち殺すなって言いたいんだろ」

 

「……その通りだ」

 

 完全に手を出すな、という選択肢がない状態ではそれが最善か。これだったら、俺が前線に現れることがないし、こいつ、俺のことバカで面倒くさがりだと思ってるらしいから、裏側でこそこそ動くなんてしないって思ってるみたいだからな。

 

「契約成立だな。――ああ、このままじゃおまえの支配があるかも知れないし、始まりと終わりの魔法とか効きそうだから、こいつは完全に俺の眷属にするぞ?」

 

「好きにしろ」

 

「じゃあ、さっそく」

 

 彼女が入った棺の下に魔法陣を敷き、龍の手の指先を切って口元に血を一滴落とし、眷属化する。

 

 胸の中央、心臓に俺のマークが刻まれたら眷属化完了だ。

 

「…………。よし、無事に眷属化できた。魔法世界からも、おまえの支配からも切り離したからな」

 

「ああ」

 

 造物主はうなずいたのを同時に、彼女が目を覚ます。

 

「…………」

 

 ふむ、まだ自己の魂や考えは生まれていない、まっさらな状態だが、これから教育していけばいいか。

 

 とりあえず……。

 

「俺がキミのパパ兼主人だ。基礎知識はついでに入れたが、理解できるか?」

 

「はい」

 

 俺の言葉に素直にうなずいた。どうやら理解はできているようだ。

 

「じゃあ、これで用は全部済んだな。俺らは帰るぞ」

 

「ああ、わかった。契約は忘れるなよ」

 

「ふん。誰に言ってるんだ? 俺は悪魔だぞ。交わした契約は絶対だ。行くぞ、え~……と、ニィ」

 

「ニィ?」

 

「そうだ。それがおまえの新たな名だ。ちなみに俺のここでの名はアルヴィン・アンドリュー。気軽にパパやお父さん、お兄さん、お兄ちゃんなど、好きに呼んでくれ」

 

 火の二代目予定だったそうだからね。弐=ニィだ。

 

「わかった」

 

「よろしい。じゃあな、造物主」

 

 最後にもう一度造物主に挨拶してから、俺はニィを引きつれて墓守の宮殿から出て行った。ちなみに、ニィに与えた知識のなかには魔法はないので、俺が浮遊魔法を使って飛ばしてる。

 

 さてと、娘ができたけど、これからどうするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニィをつれて墓守の宮殿を出たまではいいが、魔法世界は現在大戦中。旅をするには少々危険だし、一箇所に留まったほうがいい。

 

 とりあえず、近いというか、同じ国の首都オスティアに滞在するかな。

 

 灯台下暗し~、みたいにすごく近くにいると知ったら造物主が驚きそうだしね。

 

 オスティアで大部屋の宿を取ってそこで一夜を過ごす。

 

 宿で今まで棺のなかにいたためか埃っぽかったので、桶に張ったお湯で体を洗わせた。

 

「これからどうするんですか?」

 

 お湯で体を洗い終わったニィが訊ねてきた。

 

「しばらくこの国を拠点にしようと考えているよ。ニィの自衛のためにも魔法も覚えないといけないからね」

 

「魔法?」

 

 かわいらしく首をかしげるニィの頭を手の代わりに尻尾で撫でながら言う。

 

「そ、魔法。気を覚えさせてもいいけど、ニィには魔法のほうが合ってるようだからね」

 

 身体構造的にはほぼ人と同じで、魔力量はこの世界の人間と比べてかなり高めで火の精霊の加護つきと高スペック。さらに大魔王である俺直属の眷属にしたんだし、鍛えればかなり強くなるだろう。

 

 虚空に黒龍の手を突っ込んで、ある物を取り出す。

 

「ニィ、こっちにおいで」

 

「はい」

 

 近づいてきたニィに手を出すよう促して、差し出した手の平に置いた。

 

「指輪?」

 

 かわいく首をかしげるニィに説明する。

 

「それは魔法の発動体だ。まあ、生まれ的に必要ないだろうが、普通は必要だからな。つけておいたほうがいい」

 

「フェイクということですね」

 

 と、ニィは指輪を人差し指に嵌めた。まだ個としての表情は乏しいが、機動して数時間にしてはかなり早く個が生まれてきたな。

 

「じゃっ、今日のところは寝るか」

 

「はい」

 

 ニィと一緒にベッドに潜り込み、ニィに抱き枕にされ、こうして1日が終わった。

 

 とりあえず、ニィのゴスロリドレスはかわいらしいけど、寝るときはちょっと邪魔だね。

 

 まずはパジャマとか服を買わないといけないな。

 

 一応エヴァが作った服も取り出せるし、別荘のなかには魔界にいたころから制作して溜めていた様々なコスプレ衣装が多々置いてあるけど、ニィ専用として服を買ってあげたいからね。

 

 まあ、それも全部明日からだ。

 




 原作2代目火のアートゥル、弐ことニィをゲット!


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第6話 ひとつの契約 ☆

 オスティアに住みはじめて1週間。必要品を買い込み、ダイオラマ魔法球を使ってのニィに初級呪文を教えたり、一般常識の勉強をしたりと教育したりしていた。

 

「それがなんで、いま王宮に忍び込んでいることに繋がる?」

 

 ニィが疑問符をいっぱい浮べながら聞いてくる。

 

 そう、いまは首都オスティア近くを浮遊している空中王宮に俺たちはいた。ちなみにこの1週間&ダイオラマ魔法球での数ヶ月でニィにははっきりと個というものが生まれはじめている。

 

 俺はニィの頭の上に、黒龍フォームで乗っかったまま、その疑問に答える。

 

「今回の目的は認識阻害の結界が張れてるかの試験と、ついでに王宮の書斎に入ることが目的だよ」

 

「へ~」

 

 納得した様子のニィにさらに俺は続けて言う。

 

「あと、ウェスペルタティア王国の王族って前から美女が多くてね。その血がちゃんと受け継がれてるか確認するために来たんだよ」

 

「…………」

 

 あれ? ニィが呆れたようにため息吐いてる。どうしたの?

 

「……さすが性欲過多の元大魔王さま」

 

 ニィは重たいため息を吐いて遠くを見つめた。う~ん、やっぱり修行を見る合間に娼館に通ったりしてたのが悪かったかなぁ? 

 

 ニィの頭からふよふよと肩を通って、廊下の先を指差して言う。

 

「ニィ、書斎は確かあっちにあったはずだから進んで~」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お主達は何者なんじゃ?」

 

「え~と、あれ?」

 

「見つかったな」

 

 …………目の前にいるのは金髪の美少女。その人物が誰かはわかっている。この国の姫であるアリカ・アナルキア・エンテオフュシアだ。やっぱ部屋に侵入したのが悪かったかぁ。

 

 アリカはこちらを警戒しながら訊ねてきた。

 

「私を暗殺しに来たのか?」

 

「へ? 違うけど」

 

「だったら何故王宮に忍び込んで私の前に現れた?」

 

 現れたわけじゃないんだよね。見つかっただけで。

 

「ぶっちゃけ、この国の王族が昔と変わらず美人なのか見物しに来たんだよ」

 

 うん、裂け眉も継承されてるようだし安心したよ!

 

「…………?」

 

 いったい何を言っておるんじゃ? という感じにアリカは首をかしげた。

 

 まあ、俺たちの目的は完了したんだ。そろそろ帰らせてもらうか。

 

「じゃあ、アリカちゃん。俺たち帰るね~。ニィ、帰ろう」

 

「いいのか?」

 

「いいんじゃない?」

 

 首をかしげるニィを引きつれて出口のほうへ向おうとするが……。

 

「ちょっと待て」

 

 と、アリカが待ったをかけてきた。

 

 振り返って訊ねる。

 

「え~と、アリカちゃん? 何か用かな?」

 

「主らこそ何を普通に帰ろうとしておるんじゃ。主らは立派な侵入者じゃぞ」

 

「うっ、まあ、そうだね。じゃあ、う~ん……、コレあげる」

 

 虚空に手を突っ込んでアル物を取り出し、アリカに差し出す。

 

「なんじゃ? この黒い玉は? 中に数字が描いてあるな、4?」

 

 野球ボールサイズの球をアリカが両手で観察するように見つめた。その球を指差しながら説明する。

 

「そのボールはアルヴィンボールといって7つ集めて『いでよ、アルヴィン!』と叫ぶと、俺がそのボールから出てきて何でも1つ、俺と俺の周りに不利益にならない範囲で、対価なしで願いを叶えてくれちゃうというお宝アイテムなんだ」

 

「……その玉は違う意味で使用しちゃいけないアイテムだと思うぞ……」

 

 ニィがそんな感想を漏らすなか、アリカはボールを見て、俺をジト目で睨んできた。

 

「……人語を話せるとはいえ主のような小さい龍に叶えられる願いとは、ボールを7つ集めたとしてもあまり役に立たないような気がするのじゃが?」

 

「おいおい、酷いなぁ。いまはこの姿をしてるが、俺は魔界で元大魔王だったんだぞ。しかも実体を持ってこの世界に来てるから制限などもない、1分の1大魔王の力が振るえるんだ。人間の願いぐらい叶えられるさ」

 

「…………大魔王?」

 

「そう! 元は魔界の大魔王! 神話にも聖書にもどこにも記されることもなかった! 誰も知らない魔界の大魔王さまだったんだ!」

 

「……それが何故ここに?」

 

 あ~、まだ信じてないな! まあ、信じられないと思うけどさ。

 

「退屈だったから他の大魔王や魔王とかに協力してもらって、この世界にやってきたんだよ。来たのは大体5、600年ぐらい前になるね」

 

「…………」

 

「どうしたんだい、アリカちゃん?」

 

「いや、すまぬ。ちょっと時間をくれ……」

 

 指で眉間を揉みもみしてる。

 

「ねえ、長くなるんだったら帰っていい? あ、ちなみにアルヴィンボールの残りの7つは魔法世界と旧世界のどちらの世界にも散らばってるから、がんばって集めてね~」

 

「1つ……、よいか?」

 

「なんだい、アリカちゃん」

 

「アリカちゃんはやめよ。アリカと呼べ」

 

「じゃあ、俺もアルヴィンでいいよ。ちなみにこの子はニィ」

 

「よろしく」

 

 ニィは軽く頭下げる。うん、前は他人に声をかけられても基本無視だったけど少しずつ社交的になってきたねぇ~。

 

「ではアルヴィン。主はどんな願いを叶えることができるのだ?」

 

「簡単だけど難しい質問だね~。そうだね、とりあえず、武力で世界を滅ぼすことができるよ。それと大抵のアイテムは手に入れることができるし、大金も手に入れることができる。魔法世界で今起こってる大戦の裏事情も知ってるし、そもそも俺が動けば魔法世界の大戦なんて争う奴らごと全部消滅させることができるよ」

 

「――っ! なっ!?」

 

 大きくアリカが目を開いて驚きの様子だ。

 

「なに? 魔法世界滅ぼしたいの?」

 

「違う! 大戦の裏側を知っておるとはどういうことじゃ!? 『完全なる世界』について知っておるのか!?」

 

「ああ~、『完全なる世界』ね。うん、知ってるよ~。その首領とか数百年来の知り合いだし、目的とかも聞いてもないのに長々と聞かされたからね~」

 

「…………いや、まさか……、どうして……」

 

 何やらアリカが小声でぶつぶつとつぶやいてる。

 

「じゃあ、アリカ。今度こそ俺達帰るね~」

 

「ま、待つのじゃ!」

 

 尻尾をがっ! と握られた。

 

「おいおい、なんだよぉ」

 

「『完全なる世界』の情報を……」

 

「アルヴィンボールを全部集めてから出直せ」

 

「ぐ、ぐぬぅ……」

 

 せっかく作ったんだから集めてよね。まあ、作ったこと知ってるのはエヴァぐらいだけどさ。

 

「ま、魔法世界と旧世界に散らばったボールを7つも集める時間はないのじゃ!」

 

「いや、そんなこと堂々と言われてもねぇ。だいたい大魔王クラスの悪魔がボール集めるだけで願い叶えてくれる夢のアイテムなんだよ? それで世界征服もできるし、完全な死者蘇生まではできないまでも、魂があれば擬似的に蘇生させることもできるんだよ? 自分でもものすごく良心的でお得アイテムだと思うんだけど、何が不満なの?」 

 

「そ、そう言われればそうじゃが……」

 

「そうだろ。それに悪魔が滅多な事で無償奉仕なんてするわけないじゃん。悪魔の基本は契約。つまり取引なんだからさぁ」

 

「……それはつまり対価を払えば情報が得られるのか?」

 

 ピッキーン! みたいに思いついた様子のアリカさん。

 

「でも簡単に言うけどさぁ。アリカに対価払えるの? 俺は元とはいえ大魔王だし、『完全なる世界』の情報って魔法世界の秘密の塊みたいなもんなんだけど?」

 

「う……、うぬぅ……」

 

 もう、かわいらしく頬を膨らませちゃって。こんな顔されるとちょっと虐めたくなるよね~。

 

 ――なんて思っていたら……。

 

 ニィが悪戯っぽい表情でアリカに言った。

 

「物で払えないなら、体で払えば? ――アルヴィンは頻繁に娼館行ったりするぐらい女が大好きだから、裸でも見せれば対価になると思う」

 

「ちょっ!? ニィ!?」

 

 娘の発言に驚く俺をよそに、アリカは額に手を当てて悩みこんだ。

 

「む、むぅ……、は、裸、かぁ……。私が裸を見せれば『完全なる世界』の情報が……」

 

 ……どうするんだよ、この状況……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カオスから立ち直った俺たち3人……、あれ? 俺って今は1匹ってカウントするんだっけ? まあ、いいや。

 

 現在はアリカの私室に出したダイオラマ魔法球(南の島のバカンスタイプで通常の1時間24時間タイプ)の中に俺たちはいた。一応部屋にはアリカの偽者置いてます。

 

 いまはロフトに設置したテーブル&椅子2つに向かい合って座って話し合っていた。ちなみに俺は黒龍フォームだからテーブルの上に座ってます。

 

「それで、私はどこで脱げばいいのじゃ?」

 

「いや、アリカ……。脱ぐってとこから離れない?」

 

「じゃが……」

 

「ていうか、そもそも1度や2度脱いだぐらいで世界の情報が手に入るって、おまえの裸にどれだけ価値があるんだよ……、って思うんだけど?」

 

「ぬ、ぬぅ……、じゃが……」

 

 アリカさん、「不服じゃ」って表情で見ないでください……。

 

 ていうか、ニィも部屋の中でアイス食べてないで話しに参加してよ。なに? アイスキャンディーうまうま? ……知らないよ、ニィ。

 

 はぁぁ……、さてと、いったいこの状況をどうするかなぁ。

 

 しばらく考え込んでいると、アリカが顔を赤らめてもじもじしはじめた。

 

「…………し、仕方ないのじゃ……」

 

 アリカ、どうしたんだい? 嫌な予感がするんだけど。

 

 アリカは背中に手を回して――。

 

 パサッ。

 

「…………」

 

 上着が半分脱げた。

 

 そして席から立ち上がり、ドレスに手をかけて――。

 

 バサッ。

 

「…………下着はショーツ以外つけないんだね」

 

「ふんっ!」

 

 眼前に登場したお姫さまの裸体に思わず感想ももらす俺に、アリカは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

 う~ん、それにしても眼福だねぇ~。サラサラの金髪、小さくなくも大きくもない形のいい胸、くびれた腰。お尻も小ぶりで丸いし、太もももむっちり!

 

 恥ずかしそうに顔を赤くするも、手は腰のところに置いて裸体を隠さないのは王族としての誇りかな?

 

 アリカは覚悟を決めたように一度目を瞑り、開いて真剣な表情で言う。

 

「さ、さあ、私の体を貪れ……」

 

「ん?」

 

「悪魔と契約する場合には処女を捧げるのじゃろう? それとも血のほうがよかったか?」

 

「…………ま、まあ、魔力以外の対価でいえば一般的だね」

 

 女好きの悪魔だったら魔力の代わりに処女もらったり、その血をもらったりするし、大魔王クラスと契約を結べるほどの魔力なんて用意できないだろうし……。

 

「じゃあ、一応俺も変身っと」

 

 いつまでもデフォルメ黒龍のままじゃ格好つかないからね。

 

 テーブルからどいてボフンッと白い煙を巻き上げ、人間形態に変身した。

 

 さてと、どうすっかな~。

 

「~~~~~~~~~~~っ!」

 

 ――っ!? アリカがいきなり声にならない悲鳴をあげた! 

 

 どうしたんだ?

 

 アリカの視線は下を向いていて――、あ~……。

 

「もしかして男の見るのはじめてだった?」

 

「そ、それは……!」

 

 はじめてだったみたいだ。

 

「隠そうか? ていうか最近服着てなかったから着るの忘れてたんだよねぇ」

 

 虚空に手を突っ込んで服を取り出そうとするが……。

 

「へ、平気じゃ」

 

 と、アリカが断わった。そして――。

 

「こ、これをどうにかすればよいのじゃろう?」

 

 アリカがペニスに手を伸ばしてきた。恐る恐る、にぎにぎと戸惑いながら触れてきた。

 

「あ、熱い……、ビクビクしておるな……」

 

 アリカさんの口からそんな感想が漏れる。アリカの指、気持ちいいね!

 

 さわさわ……、ぎゅっ、ぎゅっ。

 

 ペニスをどう扱っていいのかわからない様子のアリカは、片手の指でペニスを何度も弄り、しだいと警戒心が抜けてきたのか、避けていた亀頭の部分を指先でつついたり、玉袋を触ったりし始めた。

 

「どう? 男の生殖器、ペニスやチンコと呼ばれるものの感触は?」

 

「ふ、不思議な感触じゃ……、熱いし、血管がビクビクしてて……、こ、これが男のモノなのか……。ん? 先から何か出てきておるな」

 

「それはカウパーって言ってね、気持ちいいと出るものなんだよ」

 

「そ、そうなのか?」

 

 亀頭の先端にある尿道口を指で弄るアリカ。――って意外とエッチな子?

 

「それでどうすればいいのじゃ? 男は精子を射精させねばいかんのじゃろう?」

 

 へぇ、王宮である程度の性教育は受けてるみたいだね。

 

「うん、そうだよ。――でも、それにはある程度の技術がいるんだ」

 

「ど、どうすればいいんじゃ?」

 

「てっとり早く射精させたいなら、口を使えばいいよ」

 

「く、口!?」

 

 真っ赤になって驚くアリカ。アリカはペニスを握っていないほうの手を胸にあて、うなずいて覚悟を決めた。――ふふっ、エッチな美女相手だったら手だけでも十分いけるけど、せっかくだからね。

 

 アリカは床に両膝をついて口を大きく開け、ペニスを咥えようとする。

 

「ちょっとストップ」

 

「なんじゃ?」

 

「先にこっちでキスしようよ」

 

 体を少し倒して顔を上げたアリカと唇を重ねる。

 

「――っ!?」

 

 目を大きく開かせて驚くアリカの頬に両手を添えて、唇を舌で割ってアリカの口内に舌を侵入させる。そして舌を絡めながら唾液をゆっくりと流し込む。

 

「――んんっ、んむっ……、こ、の……、うむぅ、うむぅっ……!」

 

 アリカが両手を掴んできたけど、止まれない! 久々の女!

 

 いや、ニィにもしてよかったけど、まだ、ね。

 

「んあっ、ふぅっ……、うぐぐ……、う、ぅん……」

 

 段々とアリカの抵抗が止んできた。

 

 気が済んで唇を離す頃にはアリカの体からは力が抜け、だらりと床に座り込み、放心していた。

 

「お~い、アリカ~」

 

「はぁはぁ……、はぁ……、はぁぁ……、何をする、のじゃ……?」

 

 呼びかけるが荒い息を整えながら睨むアリカ。でも――。

 

「ペニスのほうに先にキスするって嫌じゃない?」

 

「ぅ……」

 

 アリカってキスしたことなさそうだし、ファーストがペニスってのはねぇ。

 

「…………」

 

 アリカは手で口の橋から漏れた涎を拭いながらジト目で睨むと、両手でペニスを握りペニスを咥えてきた。

 

「じゅぶ、じゅ……、はぁはぁ、……どうすればよいのじゃ?」

 

 亀頭から雁首まで咥えて軽く頭を前後に揺すったあと、ペニスから口を離してアリカが訊ねてきた。アリカの頭を撫でながら言う。

 

「そうだな。さっきよりももっと咥え込んで前後に頭を動かしながら、口を窄めて……、そうそう、いいね」

 

 アリカは指示通りペニスを咥え、口を窄めて顔を動かしはじめた。

 

「ああ、気持ちいいよ、アリカ。ときどき舌で亀頭……、先っぽを舐めたり、吸いついたりするともっといいよ」

 

「んじゅ……、こうか?」

 

 恐る恐る舌で亀頭を舐めたり、思い切ってパクッとペニスを咥えてちゅぅっと吸いついてくる。

 

「ああ、いいよ。すごくいい……」

 

 ん~、姫様の口奉仕最高だね! 全裸&ジト目での上目使いがすごくエロいです。

 

 アリカはそのまま雁と皮の間や尿道口を舐めたりといろいろ試しながらフェラチオを続けた。

 

 ん~、もうちょい楽しんでいたいけど、そろそろ射精してあげないとね。

 

「アリカ、そろそろ射精()すよ」

 

「う、うむ……」

 

 ペニスを咥えながらうなずくアリカに、俺は欲望を解放した。

 

「で、射精()るっ!」

 

「――っ! ふがぁっ!?」

 

 ビュッ、ビュルウウウウウウウ。ビュビュゥゥゥッ。

 

 アリカの口のなかに射精するが、アリカは射精に驚いたのかすぐに口を離し、白濁した精液がアリカの全身に降りかかった。

 

「げほっ、げほっ! な、何てモノを口のなかに出すのじゃ……!」

 

 半ば涙目のアリカは口元を押さえ睨んでくる。

 

「あ~、ゴメンゴメン。はじめてだったら飲むのは無理だよね」

 

 久しぶりだったし、ずっとエヴァや娼婦とか慣れた女ばっかり相手にしてたからつい、いつも通りやっちゃった。

 

「まったく、酷い味じゃし、体もベトベト。最悪の気分じゃ」

 

「よしよし、でも気持ちよかったよ。ありがとね」

 

「う、うむぅ……」

 

 口元を抑えて吐きそうになってるアリカの背中をやさしく撫でる。うわー、改めて見ると本当によく出たね。アリカの体のいたるところに精液かかってるじゃん。

 

 アリカはジト目のまま見上げながら言う。

 

「それで、『完全なる世界』の情報は?」

 

「え?」

 

「え? ――ではない。それとも何か? まだ足りないと申すのか?」

 

「いやいや、そもそも裸でペニス舐めるのを対価に契約するって言ったっけ?」

 

「――っ。…………」

 

 そういえば! ってなったあと、黙っちゃったよ……。

 

 ん~……、このまま何も無しじゃかわいそうだよねぇ。

 

「ねえ、アリカ」

 

「…………なんじゃ?」

 

「フェラチオで抜いてもらったことだし、格安で契約してあげようか?」

 

「契約とは……、情報を教えるということか?」

 

「うん、そうなるね。『完全なる世界』について教えてあげる代わりに――」

 

「代わりに?」

 

 アリカの体を下から上まで見る。……うん。

 

「俺の着せ替え人形になって」

 

「…………は?」

 

 俺の言葉に呆けるアリカ。処女を差し出さなくてよくなっただけでも少しは喜んでよ……。

 

 まっ、対価にしようとして覚悟を決めたらすぐに裸になったり、フェラチオしたと、妙な貞操観念と価値観持ってるみたいだから、こうなることは予想してたけどさぁ。

 

「これからアリカにいろんな衣装を着て合計で5000枚の写真撮影をさせてもらう代わりに、俺は『完全なる世界』の情報を与える。という契約だよ。一般的に見たら完全に吊り合ってないだろうけど……、そこはまあ、先ほどのアリカの大胆行動と俺のやさしさで軽くしといたから」

 

「ぬ、ぬぅ……、よ、喜んでいいのじゃろうか?」

 

 複雑そうなアリカだけど、これはかなり安い対価なんだよ。丁度俺がコスプレ撮影に嵌っててよかったと思ってよ。

 

「それで、どうするんだいアリカちゃん。契約を結ぶ? それとも結ばない?」

 

「……結ぶ……。結ぶに決まっておるじゃろう」

 

「じゃあ、契約成立だね」

 

 こうして俺とアリカはひとつの契約を結んだ。

 



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第7話 契約完了! ☆

 青い海、真っ白な砂浜、人工太陽がギラギラと眩しい南国のリゾートのビーチ。

 

 誰も居ないビーチで水と戯れる金髪の美女。

 

 最初は硬かった表情も緩み、少女のような笑顔を見せてくれる。

 

 そして露出がやや高めの青色ビキニが彼女の魅力をさらに引きあげていた。

 

 そんな彼女を俺は――。

 

「いいよ、アリカ! すっごく綺麗だ! 今度はピースしてニッコリ笑って見ようか。――うん、いいよ~!」

 

 魔界にいたとき眷属の悪魔が献上してきた一眼レフカメラを魔法具に改造したカメラで撮影していた。

 

「よし! ビキニ姿はこれで十分だな! 今度はこれ着てみようか、アリカ」

 

「ふぅ……、今度のは露出は少ないようじゃのぅ」

 

 そうつぶやきながらアリカは俺の差し出した競泳水着という、ある場所がかなりきわどくなってるぴっちりタイプの水着を手に取った。もちろん色は紺と白の2つのタイプを常備してるぜ!

 

 そしてアリカはビキニの紐を外し、その場で全裸になって着替え始めた。

 

 ダイオラマ魔法球に篭ってすでに3時間――、魔法球内では3日。少し前までは1回1回少し離れたところに建っている別荘に戻ったり、森のなかで隠れて着替えていたけど、ダイオラマ魔法球のなかには俺たち以外に女性型人のホムンクルスしかいないし、俺には一度全裸を見られていることもあって、時間短縮のため、アリカはその場で着替えるようになっていた。

 

 普通の紳士ならば目を背けるであろうが、俺は悪魔で元大魔王。もちろん生着替えシーンを撮らないわけもなく、変わらず撮影を続けていた。

 

 アリカもすでに慣れたようで咎めずに水着に着替える。

 

 まあ、着替えシーンも5000枚のなかにカウントするからね。アリカとしても撮影する量が減るという面でも黙認してるようだ。

 

 ちなみにニィも少し前までアリカと一緒に撮影していたのだが、現在は紺色のスクール水着を着て砂浜でホムンクルスたちと遊んでる。

 

「これでよいか?」

 

「おお! 今度の水着も似合ってるね~」

 

 競泳水着姿のアリカ! 最高だよ! 特にくい込み具合と三角の角度がいいね!

 

「ふ、ふんっ、世辞などよいわ。さっさと撮影をはじめよ」

 

 真っ赤になるところもかわいいね~。

 

「じゃあ、まずはいろんなポーズをとってみようか。撮ってるから思うようにポーズして」

 

「うむ」

 

 アリカはうなずいてポージングをはじめる。最初のようなぎこちなく硬かった彼女はすでにいない。慣れたものでカメラに向って満面の笑顔を見せて様々な笑顔を見せてくれる。

 

 メイド服を着込んで誘惑するような妖艶な笑みを見せたり、巫女服を着込んで天真爛漫な笑顔を見せたり、こちらのちょっとエッチな要望(メイドスカートを口で咥えて下着を見せさせたり、巫女服を肌蹴させたりとか)にも答えてくれて、こちらが褒めれば褒めるだけ喜び、自分を美しく見せようと考え、自ら表情を作ったり様々なポーズを決める。立派なモデルとなっていた!

 

 魔道具となった一眼レフカメラで撮られた写真は、一度俺の脳内に映し出され、それを気に入ったら対価となる5000枚を収容するアルバム(1冊50枚、25ページ。210×297。全100冊)に記録される仕組みで、空に浮べたカウンターに写る数字は3234枚!

 

 すでに1500枚以上撮り終えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイオラマ魔法球に入って10日、つまり外で10時間が経とうとしていた頃。5000枚を予定していた写真撮影も残り500枚を切っていた。

 

 現在地はビーチから少し離れた森のなかに建っているログハウスにいた。

 

 魔法球に建てたログハウスはホムンクルスの住居も含んでいるので、旧世界に建てているものよりもかなり大きめだ。

 

 そのログハウスの一室に設けた撮影場に俺とアリカはいた。

 

「よし、前はいい感じに撮れたな。アリカ。今度は後ろを向いて」

 

「うむ」

 

 いつも通りの撮影なのだが、今回は方向性が違っていた。

 

 パシャッ、パシャッとフラッシュをたきながらアリカを撮影し、俺は満足げに何度もうなずく。

 

「本当に綺麗だよ、アリカ」

 

「ほ、褒められるのうれしいのじゃが、なるべく早く済ませよ……」

 

 褒められたアリカは恥ずかしそうにつぶやくが、ポーズを崩さない。

 

「じゃあ、今度は正面を向いて座って見て」

 

「わ、わかった」

 

「いいよ、じゃあそのまま股を開いて見ようか~?」

 

「な、なんじゃと!? ……く、くぅ……、し、仕方がないのぅ……」

 

 指示に驚くもののアリカは股を開き、見事なM字開脚を見せた。

 

 ――それも全裸でだ。

 

 パシャッ、パシャッといろいろな角度でアリカの裸体を撮影する。

 

 ああ、まさかアリカのヘアヌードを撮れるなんて……。正直断わられると思って提案したたけど、本人が結構乗り気だったのが意外だった。

 

「本当に綺麗だよ、アリカ。服を着ていなくてもキミは最高だ」

 

「そ、そんなにか?」

 

「ああ、最高だ! すごく興奮する! じゃあ、もっと股を開いてオマンコを両手の指で開いて見ようか?」

 

「――っ! そ、そんなこと……」

 

「大丈夫だって、アリカは全部綺麗だし、着替えてるときにもよく見てたしね」

 

「なっ!? み、見ておったじゃと!?」

 

 真っ赤になって驚くアリカだけど……。

 

「そりゃあ、あんなに堂等と脱いでたらね~。だからもう全部見てるんだし今さらだろ?」

 

「…………む、むうぅ。わ、わかったのじゃ」

 

 ずっと撮影してカメラと俺の前ではあまり羞恥しなくなったアリカだったが、さすがにこれは恥ずかしかったようで目を閉じ、顔を背けて両手の指でオマンコを開いた。

 

 その瞬間、俺もカメラのシャッターを何度も切り、倍率を上げたり、下げたり、角度を変えたりと撮影する。

 

 アリカのパイパンオマンコのなかに隠れてる綺麗なピンク色まで、全てを撮影した。

 

 その結果、M字開脚だけで一気に20枚ほどアルバムに収められ、候補だったものが対価とは関係ない別のアルバムに収められた。

 

 そのあとも俺はアリカにいろいろなポーズを要求し、アリカの全てをアルバムに収めていき、残り300枚を切ったところで、ある提案を持ちかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゅ、んじゅ……、はぁはぁ……、ニィ、ちゃんと撮っておるのか? さっきからカウントが減っておらんぞ」

 

「意外と撮るの難しいんだ、我慢して続けろ」

 

「む、むぅ……、お願いじゃから早く撮って終わらせてくれ。こやつのは臭いもアレじゃが、大きすぎるのじゃ、顎が疲れてしまう……」

 

「わかった。善処する」

 

「俺としてはゆっくりでいいんだけどね~」

 

「何を言っておるっ。舐め続ける(わらわ)のことも考えよ! 何時間、何回舐めさせ続けられておると思うのじゃ! 口のなかがペニス臭くて辛いのじゃぞ」

 

 文句を言いながら怒るアリカ。彼女の怒りも理解できる。

 

 ある提案……、つまりフェラチオしてるところを撮影するという提案が通ってからすでに1日が経とうとしていたからだ。

 

 フェラチオをさせてアルバムに入れる50枚ほど撮影したところで、暇してたニィに撮影を交代していろんな角度から撮影し始めたのだが、ニィの撮る写真が失敗続きでアルバムが全然消費できないでいたのだ。

 

 アリカが両手で竿を扱き、亀頭を舌で舐めながら文句を撮影者であるニィに言う。

 

「まったく、使い方は知っておるのに、なぜ綺麗に撮れんのじゃ?」

 

「一応知識として入れたはずなんだけどな~」

 

 そう俺もアリカの頭を撫でながらつぶやくがニィは、

 

「知識だけでは意味がない。やはり実際に経験してみる事も大事なのだ」

 

 と、決め顔でつぶやき、シャッターを押し続けた。あ、1枚合格。残り234枚。

 

 何度目かになるフェラチオを続けてそろそろ3時間が経とうとしていた。

 

「アリカ、そろそろ射精()すよっ、スパートかけて精液を吸いだして!」

 

「わかったのじゃ。……ニィ、しっかりと撮るのじゃぞ」

 

「わかった、まかせて」

 

 ニィが返事を返すと、アリカが上目使いでペニスを咥え込み、顔を前後に揺すりながら尿道口に吸いつき、スパートをかける。

 

 元々高スペックだったアリカは何度かのフェラチオでコツを掴み、すでに熟練の娼婦と化していた。

 

 アリカは片手で竿をにぎにぎと握りながら、もう片方の手で射精を促すように玉袋をほぐし、口を窄めて尿道口に吸いついた。

 

 俺は背を仰け反らせ、両手をアリカの頭に添えてアリカのフェラチオを味わう。

 

「いいっ! いいぞ、アリカ! もっと、もっとしゃぶりついてくれ!」

 

「んじゅぅぅぅ、じゅぅぅっ、ふー、ふー……っ、じゅるるぅっ」

 

 撮影係のニィが俺の胸に乗ってペニスに顔を埋めて吸いつくアリカを撮影する。

 

 パシャッ、パシャッとフラッシュがたかれる度にアリカの体が跳ねたのを感じ、俺も興奮してアリカの口内に射精した。

 

射精()すぞ! アリカ!」

 

 ビュッ、ビュルゥゥゥゥッ。

 

「――っん、……ごきゅっ、……ごぐっん……、ぶはっ! はぁはぁ……、だ、出しすぎじゃ……、はぁはぁ」

 

 もう飲みきれないと口を離したアリカの頭に、顔に、胸に降りかかる精液。少し前まで飲む事もできずに吐いていたが、何度もフェラチオをした結果、精液を飲めるようになり、射精途中のペニスも片手で扱いて、射精後も尿道口に溜まった精液を吸いだしたりと、お掃除フェラまでできるようになっていた。

 

 お掃除フェラをしながらアリカがニィに訊ねる。

 

「じゅ、じゅちゅっ、レロッ……、はぁはぁ……、ニィ、撮影は?」

 

「ばっちり」

 

 訊ねられたニィは自信たっぷりにうなずいた。俺も脳内に入ってきた撮影データを読み取り、うなずいた。

 

「うん、合格。一気に50枚減ったよ」

 

「そ、そうか……。はぁはぁ、これであとちょっとじゃな……」

 

 大量にカウントが減ってうれしそうなアリカ。本当によくやったよ、ニィ。まさか連続撮影で射精からお掃除フェラまで一連の流れを感じさせるように撮影するなんてすごいよ。

 

「偉いぞ、ニィ」

 

「よくやったのじゃ」

 

「ふふっ、私にかかればこんなものだ」

 

 ニィも大量消費に満足した様子で笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撮影が一区切りし、体を洗い数時間の休憩を終えたあと、再び俺達3人は撮影場へと戻ってきていた。

 

 残り撮影数はあと約280枚。

 

 5000枚を10日というハイペースで撮り続け、全裸&フェラチオ、パイズリとそろそろ撮り飽き、ネタが尽き始め、今後どういうスタイルで撮影するかを3人で軽食をつまみながら相談した結果、ニィが提案した『攻めと受けが逆になる』という手法を採用し、今度はアリカが受けになり、俺が攻めとなってニィが撮影することになった。

 

「あまり臭いを嗅ぐでないっ……」

 

「心配しなくてもいい匂いだよ、アリカ」

 

 撮影場に用意したダブルベッドの上、裸の状態でM字に開いたアリカの股に、同じく裸の俺が顔を埋めていた。

 

「すごく美味しそうだ」

 

「――っん」

 

 眼前に広がるアリカのオマンコ。少しヒダが開いていてなかのピンクが顔を出しているところがいやらしい。

 

 アリカのオマンコに口をつけて舌でオマンコを舐める。

 

 舌にはあまり味が広がらず、匂いも石鹸の匂いが濃く、アリカの元々の味があまりしない。

 

 前は臭いがしてたのに……、やっぱシャワーに突撃して陰部の手入れの仕方や洗い方を教え込んだのがまずかったようだ。

 

 まあ、でも舐め続ければ愛液がでるよな。

 

「くっ、んんっ……、そ、そんなに……、ペロペロと舐めるで、ないっ」

 

 ふるふると震えながら俺の頭を掴んでくるアリカ。表情も緩んでいて、快感をきちんと感じてるようだ。

 

 その様子をパシャッ、パシャッとフラッシュをたきながらニィが撮影し続ける。

 

 脳内に送られてくるデータを処理し、新たに5枚をアルバムへ。補助用にオートでピントや光り加減を合わせるように改良してよかった。

 

 しばらくそのまま舐め続けてもよかったが、これはあくまで撮影のためのクンニだ。体位を変えないといけない。

 

 アリカの両膝に手を差し込んで持上げて体を曲げさせる。

 

「――っ! こ、この格好は……!」

 

「すごくいいよ、アリカ」 

 

「こ、これ! アルヴィン! この格好はいくらなんでも下品すぎじゃ!」

 

 真っ赤になってオマンコを両手で隠そうとするが、俺は完全に両膝を動かせないように抱き、オマンコにしゃぶりついているので無駄だ。

 

 それでももがくアリカだが、そこをニィが関係ないと言わんばかりに激写する。

 

「ニィ!? と、撮るではない! こんな格好っ、撮ってはダメじゃ!」

 

「まかせて。綺麗に撮るから」

 

 アリカが悲鳴のように言うが、ニィはまったく聞いていない。

 

「だ、ダメじゃ……、撮ってはダメじゃぁぁ……」

 

 自力で逃げ出す事が不可能と悟ったアリカは顔を隠して涙声でつぶやくが、それでも撮影を止めない。それどころか楽しくなったのかニィは何度もシャッターを切り続けた。

 

「――んくっ、んんっ!」

 

 しだいにアリカはシャッター音とフラッシュの光りで体を反応させるようになった。

 

 舐められることを受け入れてきたなと、俺はなかのピンクに舌を差込み舐め始めた。

 

 膣口から尿道口、クリトリスへと舌で舐めると、アリカはビクッ、ビクッと体を痙攣させ、軽く絶頂を味わっていたようだった。

 

 そこで俺はもっとアリカを蕩けさせるために膣口に狙いを定め、舌をねじ込み始めた。

 

「――っく! そ、そこはダメっん! ああっ、妾のなかに入って……!」

 

「じゅ、じゅじゅっ、レロッ……、はぁはぁ、愛液がすごくでてるな。気持ちいいか、アリカ」

 

 ワザと息を荒げてオマンコに顔を埋めて訊ねる。

 

「そ、そんなことあるわけが……、ああっ!」

 

 アリカは俺の言葉に顔を背けて否定しようとするが、舌を捻じ込んでくるりと回転させるとビクッンと体を痙攣させた。

 

「ぅん……、はぁはぁ……、っん……」

 

 蕩けたエロい表情で息を吐くアリカ。軽くイッているようだ。

 

 王族の威厳も何もない雌の表情。それさえもニィは関係無しに撮影する。

 

 パシャッ、パシャッとフラッシュがたかれる度にアリカの体は反応を見せた。

 

 俺はニィの撮影したなかから5枚をアルバムへと収めて、マングリ返しを止め、仰向けで寝転んでいるアリカの隣に寝転び、カメラへ向ってピースしたり、アリカを片手に抱いたところを撮影させ計20枚ほど追加でアルバムに収めた。

 

「じゃあ、今度はおっぱい弄ってるところを撮影しようか?」

 

「ま、待つのじゃ……、はぁはぁ、いま何かされると妾は……」

 

「大丈夫だよ。どんなにエロくて、はしたなくなっても俺は好きだから、ね」

 

「な、何を言って……」

 

「ほら、俺が胡座をかいて座るから、股の間に腰を下ろして」

 

「う、うぅ……、仕方ない……。――っ! こ、これ、ニィ! こんなところまで撮るでない!」

 

 胡座をかいた俺の股の間に座ろうとしているところを激写され、アリカは顔を真っ赤に染めた。

 

 ニィはもう慣れた様子でアリカを無視してシャッターを切り続け、俺に話しかけてきた。

 

「ハメ撮りみたいで楽しい。アルヴィン、そのまま本当にオチンチン入れたら?」

 

「に、ニィ!? 主は何を言っておるのじゃ!」

 

 ニィの言葉に驚いて座ろうとしていた腰を浮かせるアリカ。ハメ撮りって言葉どこで覚えたんだこいつ?

 

「ん~、俺としてはいいんだけど、それは契約に入ってないからね~」

 

 俺がそうつぶやくとアリカは安心したように息を吐いた。

 

「当たり前じゃ……。契約の対価でもないのに、一国の姫が婚姻も結んでおらんのに処女を散らしていいわけはないじゃろう」

 

 まぁ、それ以外は結構やっちゃってるんだけどね。

 

「ほら、アリカ~。早く腰を落としておっぱい弄らせて~」

 

「わ、わかっておるわ!」

 

 真っ赤になって怒鳴りながらも、アリカは万が一にもペニスが入らないように片手でどかしながら腰を落とした。

 

 丁度、ペニスの上にアリカのオマンコが乗っかるような格好で、アリカはこちらに身を預けた。

 

 まずはアリカを股の間に座らせ、その後ろで俺がピースしているところなどをニィに何枚か撮影させてアルバムに収めたあと、アリカの脇の下から両手を滑り込ませ、おっぱいを掴んだ。

 

「く、ん……、や、やさしくじゃぞ?」

 

「うん、まかせて、アリカ」

 

 ビクッと体を震わせ、顔だけ後ろを向いてつぶやくアリカに、俺は笑顔でうなずた。

 

 そして胸の下側から上へ肉を集めるように揉んだり、指先で乳輪をなぞったり、乳首を親指と人差し指で摘まんだりとアリカの胸を愛撫し始める。

 

「――っん、あぅ、……ふぅっ、あ、アルヴィン……、は、激しすぎるのじゃ……、もう少し……、っん」

 

 アリカが両手を頭の上へバンザイするように持ってきて、俺の頭を抱いて甘くつぶやいた。

 

「ふふっ、気持ちよさそうだね、アリカ。オマンコの涎でペニスがびしょ濡れだよ。――もっとしてほしいのかい?」

 

「――っ、そ、そんなこと……」

 

 否定するようにアリカはつぶやくが、その表情は完全に蕩けていて、離れるどころか体を密着させてきた。

 

 片手で腰を抱きしめ、もう片方の手をアリカの頬に添えて、耳元で甘く囁く。

 

「素直になろう。ここには俺たち以外誰も居ないんだし、ここでのことは絶対に外に漏らさない。――それに、アリカの体は素直に俺を求めているよ」

 

「な、なにを……」

 

「実は自分でも気づいているだろう? 俺の上に座ってからずっと、オマンコを俺のペニスに擦りつけていたこと。いまも精液が欲しいって膣口が吸いついてきてるね」

 

「――っ。わ、妾は……」

 

 ショックを受けた表情を見せたのは一瞬。アリカはオマンコを擦りつけているペニスを見つめ、ごくりと喉を鳴らした。

 

 かれこれ1日近くフェラチオをして、そのあとオマンコも舐められたのだ。

 

 アリカの性感は敏感になっていて、受精しやすいように子宮も下りてきていることだろう。

 

 頬に添えていた手をオマンコへと持っていき、恥丘を撫でながら囁く。

 

挿入(いれ)てみるかい?」

 

「――っ!」

 

「いまよりもすごく気持ちいいよ」

 

「…………」

 

 俺の誘いに大きく目を見開いて驚くアリカ。ここで素直に快楽を求めてうなずくアリカではなかった。

 

「だ、ダメじゃ……。一国の姫が婚約もしておらん相手に純潔を捧げることは……」

 

 アリカは弱々しくもしっかりと首を横に振って拒絶したが、ここでアリカの拒絶を受け入れ、素直に俺が引き下がるというのは悪魔としては無理だ。

 

 アリカのクリトリスを包皮の上からやさしく触れながら訊ねる。

 

「ここで終わらせたとしても、お互いが我慢できないんじゃないか?」

 

「し、しかし……、契約では……」

 

「ああ、契約では処女は入ってなかった。――が、契約など関係無しに、今はアリカと気持ちよくなりたいんだ」

 

「――っ」

 

 言葉と同時にクリトリスを押して、アリカの体をビクッと跳ねさせる。

 

 そして蕩けたアリカの顔をこちらに向かせ、目を見ながらつぶやく。

 

「アリカ……、俺はおまえが好きだよ。一国の姫としての凛とした佇まい。国だけでなく世界を憂う心。そして内に隠した少女のような心。その魂にいたるまで全てが好ましい」

 

「い、いきなり何を言って――、んんっ!?」

 

 アリカの発言を無視して無理矢理唇を合わせる。ダオライマ魔法球に入ってから一度しかしたことがなかったキスだ。

 

 いきなりキスされたアリカは驚いて離れようと体を揺り、両手も使って離れようとするが、その両手をとって指を絡めて唾液を流し込んで抑えた。

 

 ごくっ、ごくっとアリカの喉が鳴るたびに抵抗が弱くなる。

 

 さらに口を開いてアリカの唇に被せ、舌を侵入させてアリカの舌と絡め合わせると、離そうとしていた手がすがるようにしっかりと握られ、こちらへ体重を預けてきた。

 

 それからじっくりとキスを交わし続け、アリカが完全にふやけたところで唇を離した。

 

「はぁはぁ……、はぁはぁ……、んく……、はぁはぁ……」

 

 長いキスで荒くなった息を整えるアリカの名を呼ぶ。

 

「アリカ……」

 

 アリカは俺が次に言いたいことを察した様子で首を横に振った。

 

「そ、それだけは……、ダメなのじゃ……」

 

 愛液を漏らし、快楽に支配された表情を浮かべながら、欲しいとペニスにオマンコを擦りつけながらも拒絶する。

 

 まさに処女を守ることに対して鉄壁だ。

 

 だが、それでこそ攻める甲斐があるというもの。

 

 最後の一歩で踏み留まっているアリカに最後の一歩を踏ませようと、押し倒して四つんばいにしてオマンコの入り口を浅くペニスで弄ろうかと考えていると、ここでまたニィが提案してきた。

 

「アリカ、処女を破かれるのが嫌ならお尻ですればいいんじゃないか?」

 

 と……。

 

 ニィのその言葉に、アリカは純潔以外に快感を満たす方法があるのかと興味深そうに訊ねた。

 

「はぁはぁ……、お、お尻でとはなんじゃ?」

 

「そのままの意味。オマンコの代わりにお尻の穴にオチンチン入れてセックスする」

 

「し、尻の穴で!?」

 

 驚くアリカにニィはさも当然のように言う。

 

「処女散らしたくないならお尻を使えばいい。お尻でするための道具とかもあるし、オマンコほどではないけど、お尻でも感じられるよ」

 

「じゃ、じゃがそのような不浄な場所……」

 

「アルヴィンは悪魔だし、関係無しに喜ぶと思う。処女散らしてしまいたくないなら、そこを使わせればいい」

 

「じ、じゃが――」

 

「どちらにしろ野獣になったアルヴィンはもう止められないし、アリカも我慢できない」

 

「――っ」

 

 アリカはニィの言葉を受けて悩み始めた。内容はおそらく、このまま処女を散らすか、お尻を弄らせて回避するか、だ。

 

 経験者にとってそれはものすごく難しいだろう選択だが、アリカはお尻でするセックスについてまったく知らない。

 

 最悪、処女が無事ならば……、とアリカはニィと俺の予想していた通りの選択をした。

 

 そのときのニィの笑顔は、今まで見たなかで1番楽しそうだった。

 

 ……それにしてもニィはどこでアナルセックスを知ったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撮影場に置いたベッドの上。結局アナルセックスすることにした俺とアリカはそのための最後の準備をしていた。

 

 ベッドの上で、土下座するように四つんばいになってお尻を掲げるアリカと、その後ろ、アリカのお尻の谷間に顔を埋める俺。

 

 両手でアリカの小さなお尻を掴み、谷間の奥に隠れたかわいらしい色素の薄いピンク色のアナルに俺のペニスを受け入れさせるため、丹念に舌で舐めしゃぶっていた。

 

「ふっ……、ぅぅ……、くぅぅ……」

 

 舌先でアナルのシワを舐める度、穴をつつく度にアリカの口から悩ましげな吐息が漏れる。

 

 興奮はすでに十分高まってる。お尻の穴に舌を捻じ込んだ。

 

「――くぅっ!」

 

 ズボズボと前後に舌を動かし、顔全体を擦りつけ鼻息をお尻の谷間に当てる。

 

「ふぅぅっ、……ふぅっ! はぁはぁっ、し、舌が……、お、奥まで……っ」

 

「ちゅっ、じゅちゅっ、美味しい……、美味しいよ、アリカ」

 

 顔を少しだけ離し、ニィに拡げたアナルにキスする様子や舌を捻じ込む様子を撮影させながらつぶやく。

 

「くぅ……、はぁはぁ……、喜んで尻を舐めるとは……、この変態悪魔めっ」 

 

 お尻を舐められているアリカは熱っぽく唸りながらせめてもの抵抗と罵るが、それも興奮を高めさせる要因になるだけだ。

 

 アリカのアナルに愛液を絡めた指を1本突き刺した。

 

「――くぅっ! う、ううっ……!」

 

 アリカの体がビクンと跳ねるが関係ない。挿入()れた指をアナルのなかで前後させてかき回す。

 

「ゆ、指が……、ぬうっ……、ぐぬぅぅ……」

 

 アナルを指でかき回されたアリカは歯を食いしばり、何ともいえない声を漏らしてよがっていた。

 

 たっぷりと指でかき回して弄ったあと、アナルに挿入れる指を2本に増やし、挿入れている両手の人差し指を左右に拡げた。

 

 開いたアナルの奥から染みだす液体を眺めながらうんうんとうなずき、訊ねる。

 

「やっぱり一度浣腸して綺麗にしたから臭いも汚れも目立たないな。潤滑油用に注入したローションもいい感じに暖まってるみたいだし、そろそろ挿入れようか?」

 

「な、何でもよいから、は、早く! 早く終わらせるのじゃ……! これ以上焦らされたら、し、尻がおかしくなってしまうのじゃぁぁっ」

 

 訊ねられたアリカはもう限界とベッドに備えつけていた枕を抱きしめ、顔を埋めて懇願した。

 

 おそらくアナル用ローションに仕込んである媚薬成分の働きだろう。アリカは自らお尻を振ってペニスを強請っている。

 

 そんな姫のあわれもない下品な様子に興奮を覚えつつ、ローション代わりにペニスをオマンコに擦りつけ愛液をまぶす。

 

「くぅっ……、あ、熱い……。――あ、アルヴィン……、ま、股に擦りつけてないで、は、早く……」

 

「ふふっ、わかってるよ。たっぷりアリカの愛液もまぶしたし、これから挿入れ始めるよ」

 

 そう言って愛液に濡れたペニスを上へと持っていき、両手の人差し指で拡げているアナルにペニスの先端をあてがった。

 

 指を少しだけずらし、亀頭をアナルに咥えさせる。

 

「さあ、アリカ。挿入れていくからな」

 

「ゆ、ゆっくりじゃぞ?」

 

「もちろん。お互いが気持ちよくなるように時間をかけて慣らしてあげるよ」

 

「そ、それは……、あ、あまり時間をかけるのも……」

 

 枕に顔を埋めたままもじもじとつぶやくアリカだけど、そろそろ俺も限界だ。

 

「――挿入れるよ」

 

 そう会話を切って腰を進める始める。

 

 小さなアナルが大きく広がり、亀頭をゆっくりと咥えていく。

 

「――かっ! ああっ! ぐぬぅぅ……」 

 

 ぎちぎちとアナルを拡げて進むペニスに、アリカの口から悲鳴のような声が漏れる。

 

 挿入れられていく様子をあらゆる角度から撮影していたニィから、撮影データが脳内に送られ、見えないはずのアリカの顔が見えた。

 

 枕を抱きしめながら悲鳴のような息を吐くアリカ。その表情は快楽を感じてよがっているいやらしい雌の顔をしていた。

 

 その顔を直に見ようとアリカに覆いかぶさり、両手をアリカの顔のすぐ横へと持ってきた。

 

 ペニスをアナルの奥へと捻じ込みながら顔を覗き込むと、アリカは真っ赤になって叫び、枕に顔を埋めて隠す。

 

「み、見るで、ない! 妾のこのような姿を……、ううっ、見るではないっ……!」

 

 泣き声を上げている子供のようなアリカの姿に興奮し、密着を高めて背中から首筋まで舌で舐める。

 

「くっ、ふぅ……、し、舌が……。尻のなかにペニスが……。うぅ……、もうわけがわからないのじゃぁぁ……」

 

 ああ、本当にぞくぞくするな。もっと虐めてあげたくなる。

 

 上半身を起こしてアリカのお尻を掴む。

 

「アリカ、動かすぞ」

 

「動く?」

 

 疑問符を浮べるアリカを無視して腰を引き、ペニスでアナルの肉を擦った。

 

「――っんん!? あああああっ!」

 

 アリカの口から悲鳴が漏れるが無視して続ける。

 

 丁寧にアナルの奥から入り口付近までペニスを1回1回抜いて、犯していく。

 

「あくぅっ……、め、捲れて……、く、苦しぃのじゃぁ……、はぁはぁ……」

 

 空気を吐きだすようにグポグポといやらしくお尻を鳴らしながら、アリカは気持ちよさそうな声を漏らす。

 

「アリカ、どうだ? お尻の穴は気に入ったか?」

 

 ベッドに顔を埋めるアリカにそう訊ねると、顔だけこちらに向けて否定の声をあげた。

 

「そ、そんなわけが……、はぁはぁ、あるわけなかろう……っ! 苦しい、だけじゃ……!」

 

 まだそんな態度を見せれる事に若干ながら驚くが、俺はいじめっ子のような笑みを浮かべてアリカのオマンコに触れた。

 

「今さら嘘を言うのはなしだよ。――ほら、オマンコがこんなに涎を垂らしてるんだ。苦しいだけのはずがないだろう?」

 

「――っ」

 

 指で触るとぐじゅぐじゅといやらしい音が鳴り響くオマンコに、はっとするアリカ。

 

「気持ちいいんだろ、アリカ」

 

「違っ――」

 

「お尻の穴をペニスで擦られて、気持ちよくなってるんだろう?」

 

「そ、そんなこと……、――んああっ!」

 

「アナルに入れたペニスを引き抜かれるときが1番好きなんだろう? まるで男の前で汚物をひり出しているようで……。他人に排泄をコントロールされてるみたいで感じるんだろう?」

 

「――っ。や、やめて……」

 

「何も恥ずかしがることはないだろう、アリカ。素直に気持ちいいと言ってごらん。ここは外界と隔離されてるんだ。今だけは姫ではなく1人の女として快楽に身を任せて見よう」

 

 誘惑しながらぐぽぐぽとゆっくりとした速度でアナルを犯し続ける。

 

 何度とないピストンを続ける内に、アリカが次第に理性を失い始めた。

 

「はぁはぁ……、ふぅんっ、はぁはぁ……、ぃぃ……、気持ちぃぃ……」

 

 オマンコを指でほぐしながらペニスをピストンする度に声をあげ、自らも快楽を求め始める。

 

 アナルを犯しながらアリカに訊ねる。

 

「どうだ? 気持ちいいだろう」

 

「……う、うぅ……」

 

 最初だったらすぐに否定したが、快楽に支配されたいまは違う。

 

「……ぃぃ、……気持ちいぃ……」

 

 小声ながらも問いにうなずき、アリカははっきりと快楽を感じていることを認めた。

 

 俺は腰を引き、ペニスでアナル越しに子宮を小突くように腰を進めながら再度アリカに訊ねる。

 

「気持ちいいか? お尻を穿り回されて気持ちいいか?」

 

「……あ、ああっ、気持ち、いいっ……。すごく、気持ちいいっ!」 

 

 アリカはトロトロに蕩けた顔で何度もうなずいた。

 

 俺の腰の動きに合わせてアリカは腰を振り、アナルセックスによる快楽を感じ、そして味う。

 

「う、ううんっ! ――すっ、すご、いぃっ! 気持ちいいっ! もっと……、もっと……っ!」

 

 そして、さらなら快楽を求めるアリカの望みを叶えるため、俺はピストンの速度を上げた。

 

 アリカのくびれた細い腰を両手で抱いて、ズボズボとアナルを犯す。

 

「あはぁっ、ぅうっ! すご……、ぃいっ! はぁはぁっ! お、おかしく……、おかしくなるのじゃぁぁぁっ!」

 

「いい! すごく気持ちいいぞ、アリカ! もっといやらしい姿を俺に見せろ!」 

 

「だ、ダメじゃぁっ! こ、こんなの妾では……、くぅっ! はぁはぁ、ううっ、妾はっ……!」

 

 何度も何度もピストンを繰り返し、背中にキスを落としながら、射精への準備へと移行する。

 

 体を起こし、尻を掴んで腰だけ前へ突きだし、アリカの尻を犯しながら叫ぶ。

 

「アリカ! 射精()る! なかに射精()すぞ!」

 

 アナルのなかでビクビクとペニスを震わせ、アリカの快楽も引き上げさせるためにクリトリスを指で弄る。

 

「――っ! あ、アルヴィンっ……!」

 

 アリカはシーツをぎゅっと握りしめる。

 

 もはや抵抗などはしない。

 

 それどころかアリカは射精を受け止めるため、俺の腰の動きに合わせてきた。

 

 その事実に大きな興奮を覚えた俺は入り口付近までペニスを抜き、そして、腰を進めて最深部までペニスを捻じ込んだ。

 

射精()すぞっ!」

 

そう俺が叫んだ瞬間――。

 

 玉袋に溜められていた精液がペニスを駆け上がり、アリカのアナルのなかに吐き出された。

 

 ビュルッ! ビュルゥゥッ、ビュルウウウウゥゥゥゥッ!

 

「あああああああああああああぁぁぁぁっ!」

 

 アナルのなかに射精されたアリカの絶叫が部屋にこだまする。

 

「はぁはぁっ! はぁっ! 熱っ、熱い! 妾のなかで……! うううっ、精液が蠢いて……、くっ、はぁぁぁっ」

 

 アリカは体を反らして体を痙攣させ、体内で感じる精液を味わいながら絶頂していた。

 

 ペニスをひり出そうとアナルをうごめかせ、体を痙攣させて何度かわからない絶頂を味わったアリカは力をなくしてベッドに沈んだ。

 

 ベッドに沈み込むアリカを見下ろしながら、俺はゆっくりとアナルからペニスを引き抜く。

 

 ズボンッといやらしい音を立てて抜かれたペニスは精液など様々な体液で汚れていて、ペニスという栓を抜かれたアリカは閉じる事を忘れ、その穴から白濁した精液がドクドクと漏れだした。

 

 その様子までニィに撮影されているが、アリカはすでに思考能力を失っていて、虚ろな瞳でベッドに倒れ伏せたまま。

 

 俺はそんなアリカの横に寝転び、アリカを胸に抱いた。

 

 頬を撫でながら耳元で心に染み渡るように、

 

「最高に気持ちよかったよ、アリカ。――大好きだよ」

 

 ――と、囁いた。

 

 アリカは聞えたか聞えてないかわからないが、ゆっくりと瞳を閉じて眠りに堕ちていった。

 

 5000枚の最後の1枚は、ベッドの上でお尻から精液を漏らしながら、俺に抱きついて眠るアリカとのツーショットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに翌日の朝……。

 

「な、なぜ主が妾の隣で寝ておるのじゃぁぁぁぁっ!」

 

「おはよう、アリカ。昨日は激しかったね」

 

「――っ! ああっ! うう……、なんて事じゃ……、妾は……、妾は……っ」

 

「思い出したかい?」

 

「ううっ、まさか尻で……、――っん、は、腹がごわごわするのじゃぁ……」

 

「ああ、昨日はそのまま寝たからね。気持ち悪いんだったらとりあえず浣腸したほうがいいよ。お風呂の準備もさせておくし、道具もトイレに置いてあるから、ね」

 

「――っ。れ、礼など言わんからな」

 

「ふふっ、わかってるよ」

 

 ツンデレ乙~。

 

「ああ……、妾は何てことを……」

 



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第8話 新たな契 

 魔法球に入って12時間、魔法球内では12日目の昼。契約の対価である5000枚を撮り終えたことを機に、見返りとして提示していた『完全なる世界』、しいていえば魔法世界の情報をアリカに与えた。

 

 その情報には、魔法世界が火星という星に創造した人工世界であること。

 

 魔法世界の人口が増えすぎて魔力が枯渇し、将来的に魔力がなくなり魔法世界が火星に戻って崩壊してしまう危機にあること。

 

 魔法世界の崩壊から、魔法世界の住民たち(魔法世界で生まれた人間や亜人、動植物など)を救うために、魔法世界を創りだした造物主は『完全なる世界』という組織と、もう1つの世界、『完全なる世界』を新たに作り出し、戦争を後ろから煽り魔法世界の人口を減らして魔力の消費する量を軽減させ、同時に魔法世界の創造で生まれた、いわば人工人間たちを元の魔力に還元して『完全なる世界』に入れていること。

 

 など、俺が造物主に聞いた話だった。

 

 アリカは魔法世界は人工世界で、魔力枯渇によって崩壊の危機にあることを聞かされて呆然としている。

 

「…………そんな、まさか……」

 

 心の整理と頭の整理が追いついていない様子で情緒が不安定だ。

 

 俺はニィをつれて、しばらく情報と心を整理する時間として半日ほど1人にさせて待つことにした。

 

 本当だったら魔法世界の情報と『完全なる世界』の情報を与えた時点で契約は完了しているので、情報を聞いた相手を気遣う必要などはないのだが、このまま放っておけなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイオラマ魔法球内に作った人工のビーチ。そこに俺とニィはいた。

 

 青と白のビーチパラソルの下、2つ並べたビーチベッドの片方に俺は寝転がり人工の月を眺めていた。

 

 月を眺める俺に、ある言葉が投げかけられる。

 

「アルヴィンは悪魔らしくないな」

 

「ん?」

 

 言葉の主はニィだった。

 

 スポーツブラタイプの黒ビキニを着込み、片手に砂遊び用の小さなシャベルを持っていた。

 

「何でそう思うんだ?」

 

「私が持ってる知識には悪魔というのは、残虐で非道、契約を結べは何でもする使い魔のような存在だとあったから」

 

「ああ、そういえばニィに与えた知識は人間から見た一般常識だったな」

 

 ニィを手招きして自分のビーチベットの近く、砂浜に座らせ寝転がったまま頭を撫でる。

 

「ニィ。一般的には知られていないが、悪魔には様々な者がいるんだよ」

 

「様々な者?」

 

「そう。人間が悪魔を見るときは、大体が魔法使いとかに戦うために召喚されて使役されるから非道や残虐な面が目立つけど、本来悪魔=魔族にもそれぞれ意思もあり、個性もあるんだよ」

 

「アルヴィンみたいな悪魔がいてもおかしくないってこと?」

 

「ああ、そうだよ」

 

 ニィの疑問に答えるようにうなずいた。…………ニィには魔界でも変わり者扱いだった事は話さなくてもいいだろう。

 

「……アルヴィン」

 

 ニィの頭を撫でていると後ろから声をかけられた。声の主は振り返らなくてもわかる。

 

「アリカ、か……」

 

「…………」

 

 アリカは無言で足音だけ鳴らしながら近づいてきた。

 

「妾は……、どうすればいいのじゃろう……?」

 

 泣きそうな、細い声だった。

 

「…………」

 

「魔法世界が造物主に想像された世界で、妾や人間、亜人を含むほとんどの住民は作られた人工の生命で、将来的に魔法世界は崩壊する……。魔法世界の救済のために造物主が『完全なる世界』を組織し、大戦を起こした理由も理解できてしまうのじゃ……」

 

 沈んだ声のままアリカは続ける。

 

「いったいどうすればいいのじゃ……? 妾は大戦を止めたいと思っておった。……じゃが……」

 

「魔法世界の崩壊とか話がいきなり大きくなりすぎて、自分が何をしていいかわからない。――ってところか」

 

「…………」

 

 無言は肯定と受け取る。

 

「アリカ」

 

「…………」

 

 アリカが沈みっぱなしなのは嫌だね。特に何もできないけど……。

 

「こっちにおいで」

 

「?」

 

 疑問符を浮べるアリカを呼び寄せる。そしてビーチベッドの開いている場所を指差した。

 

「……なんじゃ?」

 

「いいから、そのまま寝転がりなよ」

 

「…………」

 

 渋々といった様子でアリカはソファベッドに寝転がる。

 

 俺は枕代わりに片腕をアリカに差し出すと、アリカはそれに頭を乗せて息を吐いた。

 

 そのまま無言でパラソルから覗ける人工の星を見上げる。

 

 アリカは不安げな面持ちのまま胸にしがみつくように抱きついて、ゆっくりと嗚咽を漏らしながら涙を流し始めた。

 

 ずっと知りたいと思っていた、大戦を裏から手引きしている黒幕認定していた『完全なる世界』の目的と、魔法世界の誕生と崩壊の危機に瀕していた事などを知った事でアリカの心は崩壊寸前だったのだ。

 

 片腕で包むようにアリカの体を抱きながら、落ち着くまで夜空を見つめ続けた。

 

「……そろそろ私にも手を出して欲しい。地下倉庫の本みたいに」

 

 …………ニィのエロ知識は魔界から持ってきた俺のエロ本達が元凶だったのか……。

 

 ていうかニィ、たま~にパパとか小声でつぶやいてるところ見るけど、ナチュラルに近親狙ってる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカを片手に抱いて数時間が経った頃。アリカは漏らすようにつぶやき始めた。

 

「……父王は……、……人の生もこの世も、全ては儚い泡沫な夢に過ぎぬと言った……」

 

「…………」

 

「父王は……、父上は知っておったのだな。この世界の在り方を……」

 

「…………」

 

「アルヴィン……、妾はそれを知ってどうすればよいのじゃろう……? 大戦を停めようと『紅き翼』に協力を仰ぎ、同じく大戦を止めよと考えるヘラス帝国の姫と会談の場を設けたが、妾はどうすればいいのじゃろう……」

 

 まるで暗黒面に堕ちたように、アリカは続ける。

 

 ぶつぶつと1人で、大戦を止めようとしてもそれは結局無駄になってしまうのではないか? 魔法世界の崩壊を防ぐ手立てはないのか? 大戦を止める。『完全なる世界』の邪魔をするのは正しい事なのか?

 

 などと、いろいろと悩み続けた。

 

 泣きはらした顔で俺を見上げるアリカ。

 

「妾も……、妾も創られた幻想なのじゃろうか?」

 

 不安そうに己の手を見つめるアリカ。

 

「今感じている感情も、温もりも、記憶さえも全てが創りものなのじゃろうか?」

 

 そんな不安を口に出すアリカの手を、開いたもう片方の手で掴んで、抱くように腕枕していた手を引き寄せ抱きしめる。

 

「――っ」

 

 抱きしめた俺をアリカは今にも泣きそうな顔で見上げてくる。

 

 俺はアリカの顔を正面から見つめ、唇を重ねた。

 

「――っん」

 

 ピッタリと唇を重ねて、離す。そしてアリカの瞳を見ながら訊ねる。

 

「アリカ、今何を感じている?」

 

「それは……、わからないのじゃ……」

 

 アリカは顔を赤らめ俯いた。

 

 そんなアリカをやさしく抱くと、胸に顔を埋めたまま小声でつぶやいた。

 

「だ、だが……、い、嫌ではなかったのじゃ……」

 

「そうか……」

 

「そ、それに……、体が熱くて、恥ずかしくて……、胸が苦しくて……、妾は……」

 

「その感情も創り物だと思う?」

 

「……それは……」

 

「俺はアリカも、この魔法世界に住んでいる住民もただの創り物だとは思わないよ」

 

「じゃが……」

 

 俺はアリカを抱きしめたまま言う。

 

「それに、大きく考えてみれば元々全ての世界ってのは創り物なんじゃないか?」

 

「全ての世界が創り物?」

 

「そう。魔法世界に限らずな。――元々旧世界も大まかな創りは違うだろうけど、神なんかが創りだした物だろうし、そこに住んでいる住民は元々全てが神の創造物=創り物ってことになるだろう?」

 

「…………」

 

 よくわからないようなので、もっと掻い摘んで説明する。

 

「つまり俺が言いたいことは、魔法世界の住民も旧世界の住民も何かに創りだされたって点では変わらないんだから、自分が造物主に創りだされた人工生命だからって悲観するなってことだよ」

 

 まだ悲しい顔を浮べているアリカを見つめ、言う。

 

「そもそも自分で自分をただの人形だって決めつけるなよ。おまえは俺にとって魔法世界の造物主に創造された人形の1つなんかじゃないんだからさ」

 

「――っ。主にとって……?」

 

「ああ。俺にとっておまえがただの人形なんかじゃない。――魔法球のなかで一緒に過ごしたこの10日間だけで、俺のなかでアリカは変えのきかない大きな存在になってるんだからな」

 

「そ、そうなのか……?」

 

「ああ」

 

「ぅぅ……」

 

 断言するとアリカは顔を真っ赤にして俯いた。恥ずかしそうなのは変わらないけど、ちょっと違う意味でも赤面したみたいだ。

 

 しばらくそのままでいると、アリカはゆっくりとうなずいた。

 

「そうじゃな……。妾や魔法世界に住む住民が人工生命だったとしても、すでに造物主の手を離れた1つの個。ただの人形で済まされるわけがない」

 

「ああ」

 

 俺がそううなずくと、アリカは顔をあげた。

 

「じゃが妾はどうすればいいのじゃろう?」

 

 ただの人形ではない事は理解したけど、まだ無視できない問題は残ってる。

 

「戦争を裏から煽る『完全なる世界』という悪の組織を倒し、魔法世界における大戦を停め、世を平和にしたい。――そう、妾は思っていたが、『完全なる世界』が完全な悪では……、いや、大きく見れば正義だと知った」

 

「ただの悪だと思っていた相手にも、こちらが理解できる正義をもって行動していることを知って迷ったか?」

 

「…………その通りじゃ。このまま『完全なる世界』を打倒し、大戦を停めたとしても魔法世界はいずれ崩壊してしまう」

 

「まあ、奴らの目的でいえば魔法世界の住民を大戦で減らしてあとは『完全なる世界』に収容してリセット、だからなぁ。結果的にいうと人為的に魔法世界を崩壊させるのか、自然に崩壊させるのかの違いしかないんだよな」

 

「…………崩壊を回避することはできぬのか?」

 

「まあ、今のところは。――そもそも魔法世界を魔法世界にするための魔力が予定より住民が増え過ぎたせいで魔力が枯渇し、元々の生き物が住めない土地に戻るから魔法世界は崩壊ってわけなんだ。崩壊を回避するためには、魔法世界自ら魔力を大量生成するようにしたり、生命が住めない魔法世界の土地を、魔力がなくても生命が住める土地に変えるぐらいしないといけないんだ」

 

「……妾には考えの及ばぬ事柄か」

 

 アリカは自称気味につぶやくが、すぐに何かに気づいたようで裂け眉を曲げて訊ねてきた。

 

「ん? アルヴィン。いまのところというのはどういう意味じゃ? 将来的には崩壊を回避することができる……、という意味なのか?」

 

「ああ……、それはねぇ」

 

 ……どうしよう言う? 言わないでおく?

 

 俺が言うか言うまいか悩んでいると、アリカがある核心を持って迫ってきた。

 

「魔法世界の崩壊を回避する手立てに心当たりがあるのじゃな?」

 

「いや、心当たりは……、まあ、あるには……、あるかなぁ」

 

「――っ!」

 

 希望を見出したようなアリカだけど、俺は首を横に振る。

 

「けど、まだ心当たりレベルだ。用意も何もしていないし、できるかどうかもわからない。少なくても今回の戦争を停めるのには役立たない」

 

 実際に俺が考えている方法は数十年単位、数百年単位の計画だ。

 

「『完全なる世界』が大戦を煽って、早期に魔法世界を崩壊させようとしているいま。俺が考えてる方法を実用できる段階まで持ってきて実戦に移すことは時間が足りない」

 

「……じゃが、救う手立てがないわけではないのであろう」

 

「まあ、そうだけど……」

 

 あれ? アリカさん? 少し元気になってきてませんか?

 

 アリカはソファベッドから起き上がり、戸惑う俺に覆いかぶさるように上半身を乗せて正面から見つめてきた。

 

「アルヴィン。――妾は、主に賭けたい」

 

「え?」

 

 ……なんですか?

 

「妾は『完全なる世界』がやっている崩壊からの救済ではなく、主の考える崩壊からの回避を支持すると言っておるのじゃ」

 

「…………。いやいやいや、待てよ! いきなり何言ってるんだ、おまえ!?」

 

 俺は魔法世界を救う方法を開示すらしてないんだぞ!?

 

 そう声を上げる俺にアリカは微笑んで言う。

 

「ふふっ、おかしいことを言っておるのは自分でも自覚しておる。――じゃが、妾は『完全なる世界』が行なう救済よりも、アルヴィンが考え、将来見つけるであろう魔法世界を救う方法のほうが、魔法世界に住む住民にとってよいと妾は思うのだ」

 

「ぅ……」

 

 確信をもってつぶやかれるアリカの言葉に俺は顔を引きつらせて唸った。

 

 アリカはそんな俺の様子に微笑み、話し始めた。

 

「妾はな、アルヴィン。『完全なる世界』の考える救済と別の方法があるのなら、妾は別の違う方法を考えたいと思っておるのじゃ」

 

「……だけど、俺が考えてる方法が成功しなかったらどうするんだ? 俺が考えつく方法が『完全なる世界』よりも悪い方法だったら、おまえはどうするんだ?」

 

「それは……、不甲斐ない話であるが『わからない』の一言じゃ」

 

「おいおい……」

 

「――じゃが、アルヴィンの思いつく方法であれば、亜人だけでも助かるのであろう?」

 

「は?」

 

 確信をもってつぶやかれたアリカの言葉に大きな疑問符を浮べる俺に、アリカは口元に手を当て恥ずかしそうに小声でつぶやいた。

 

「その……、アルヴィンは角っ娘や獣っ娘といった亜人の女が好きなのじゃろう?」

 

「……………え?」

 

 いや、え? なんでそのことを? ……え? まさかアリカ、俺がその娘たちが消えるのが嫌で魔法世界を救おうと思ったことに気づいて――。いや、そんなはずは……。

 

 全身から戸惑いの汗を流す俺にアリカは……、隣に置いたもう1つのビーチベッドで寝ているニィをちらっと見ながら答えた。

 

「ニィが教えてくれたんじゃ。アルヴィンはオスティアを拠点に、頻繁にヘラス帝国に転移して黒龍から人間の姿になって様々な娼館を回ってると。大昔からヘラス帝国の娼館に通ってる常連で、金払いのいい上客でいろいろな逸話をもってる伝説のヤリチン男じゃとな。――妾は、そんな男が亜人達を見捨てるとは思えんし、アルヴィンならばついででも、魔法世界全体を救ってくれると信じておるのじゃ」

 

「…………」

 

 断言したアリカに何も言えなくなる。

 

 ……ニィ、おまえって奴はなんて話をアリカにしてるんだ……。

 

 あと、アリカさん。ヤリチンって意味わかってるけど、わかってないだろう……。そんな堂々と言っていい言葉じゃないからな、それ。

 

「妾は『完全なる世界』の真の目的を知っても、魔法世界の救済になるとしてもやり方に納得ができぬ。魔法世界の全ての住民を、住民が都合のいい世界に収容しても救済されたとは思えないのじゃ」

 

「……だったら、どうするつもりだ?」

 

「大戦と停める」

 

 いや、決め顔で断言されても……。

 

「今までの計画と大きく変わらず、協力者達と共に『完全なる世界』を倒し、大戦を停めるのじゃ。――そうすれば幾分かは魔法世界の崩壊を遅らせることができるじゃろう?」

 

「ま、まあ……、すぐに崩壊させようとする奴がいなくなれば、元々の寿命になるからな」

 

「その間にアルヴィンには魔法世界を救う手立てを考えてもらいたいのじゃ」

 

「…………いや、それはちょっと待てよ」

 

「む?」

 

「そもそもなんで俺が魔法世界を救う事に確定してるんだ? 俺、元大魔王で、魔族で、悪魔なんだぞ。それに、元々俺は気まぐれで魔法世界を救おうとか思ってた奴だ。それがなんで魔法世界を救う方法を見つけ出して、絶対に魔法世界を救ってやるみたいな話になってるんだよ?」

 

「む、むぅ……」

 

 痛いところつかれたのじゃ……、みたいな顔をするなよ。

 

「じゃっ、じゃったら対価を……」

 

「いや、どう考えても内容的に払えるものじゃないだろう……。魔法世界と『完全なる世界』の情報を与えたのも、対価で見れば絶対に吊り合わないぐらいこっちが譲歩してるんだから。俺に魔法世界を救わせるとなると、どんな対価を支払ったとしても吊り合わないって……」

 

 半ば呆れながら言うと、アリカはウルウルと潤んだ瞳で下から見上げるような視線で見つめて、涙声でつぶやいた。

 

「アルヴィンは、妾を救ってはくれぬのか……?」

 

「…………どこで覚えたその技術……」

 

「…………」

 

 ジト目でつぶやくと今度は黙るアリカ。教えたのはニィだよな。ていうか、姫様も実行するなよ……。

 

 しばらくアリカと出方をうかがうように睨み合っていると、アリカのほうから折れた。

 

 大きく息を吐いて俺の胸に顔を埋める。

 

「…………」

 

「…………」

 

 いじける子供のようにアリカは抱きついてくる。その様子に俺は大きく重いため息を吐く。

 

 そしてニィが言った通り、俺は悪魔らしくない悪魔だと自分で自覚し、夜明けを迎え始めた空を見上げながら、独り言のようにつぶやく。

 

「……まあ、絶対救うとは言えないが、元々俺は自発的に魔法世界を救うつもりだった」

 

「……」

 

 アリカがこちらを見上げてきたが、空を見上げたまま続ける。

 

「この大戦を俺が停める事は造物主との契約でできないが……、大戦が終われば契約は終わり、俺は自分自身の欲のために、自分が見つけるであろう方法で魔法世界の崩壊を回避するつもりだ」

 

「…………つまり、大戦を停め、『完全なる世界』を打倒して時間を延ばせば……、アルヴィンが魔法世界を……」

 

「……さあな。俺は魔法世界に住む者達の事情なんか知らない。救うっていっても、俺自身の欲を満たすためにやった結果がそうなるだけじゃないか? ……そもそも、崩壊までの時間もわからないから将来どうなるかわからないよ」

 

「…………ふふっ、ああ、そういうことか」

 

 アリカはクスリと微笑み、小声でつぶやいた。

 

 いや、そういうことって、どういうことだよ……。

 

「本当に、主は悪魔らしくない奴じゃな」

 

「ふんっ」

 

 アリカに満面の笑みで言われて、少々気恥ずかしくなり、そっぽを向く。

 

 アリカはそんな俺をクスクスと笑い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝。そろそろ外での13時間、ダオライマ魔法球内での13日目の朝を迎えた頃。俺とニィとアリカの3人は出口へと集まっていた。

 

「ところで主らはこれからどうするつもりなのじゃ?」

 

 元の姫様ルックに着替えたアリカが俺とニィに訊ねた。

 

 俺は頭をかきながら素直に、

 

「特に何も考えてない」

 

 と答えると、アリカはうなずき、

 

「じゃったら、妾と一緒に居てはくれぬか?」

 

 と言ってきた。

 

 俺は少しだけ驚き、アリカを見つめた。

 

 アリカは俺に笑みを向けると、後ろを向いて顔だけ振り返った。

 

「どこに行くか決まっておらんのじゃろう? じゃったら妾のところに居ついても何も問題なかろう? それに食事や寝床ぐらいはただで振る舞うぞ」

 

「…………俺たちは大戦には協力しないぞ?」

 

「わかっておる。戦の戦力として主らを頼りはせぬ。――ただ傍に居て欲しいだけじゃ」

 

「アイスキャンディーがあるなら行く」

 

「そうか、ニィ。好きなだけ用意しよう」

 

「契約成立」

 

 そう言ってニィがアリカの隣に並んだ。――って!?

 

「ニィ!? おまえ何を言ってるんだ!?」

 

「アルヴィンは行かないのか?」

 

「いや、そういう話じゃなくてな……」

 

 う~……、どうする? アリカについていくか? でもそれじゃあ自由に娼館……、いや転移を使えばいけるな。その間ニィをつけとけばいいんだし……。う~……ん、どうしよう?

 

「アリカについて行けば、たまに性欲発散させてもらえるよ」

 

「――行こう」

 

「――っ!? に、ニィ!? 主は何を言っておるのじゃ!?」

 

「でもアリカ。これが1番アルヴィンに効果的だよ?」

 

「そ、それはそうみたいじゃが、一国の姫が婚約者でもない者に何度も体を許すのは……」

 

「今さらじゃないの?」

 

「ぅ……。……そうじゃったな……。妾はすでに……、汚れじゃったか……。ふふっ、今さらか。今さらじゃったな。――アルヴィン、その条件でよいから、大戦が終わるまででよいから、妾についてきてくれ」

 

「ああ、わかったよ。どっちにしろ数年は魔法世界を旅行するつもりだったし、根無し草よりどこかに留まったほうが、ニィの教育にいいからな」

 

「……礼を言ったほうがよいのじゃろうか?」

 

「いいさ。これも契約扱いにするから、取引みたいなものだ」

 

「そうか。ではアルヴィン」

 

「ああ」

 

 うなずいてボフンッと白い煙を立てながらデフォルメ黒龍に変身する。そして空中を浮遊しアリカの首に胴を巻きつかせるように乗っかった。

 

「……妾は騎士の誓いのようなものをやりたかったんじゃが……」

 

「ふっ、元大魔王の俺が騎士なわけないだろう? 大戦では役に立たないんだから使い魔扱いでいいさ」

 

「そうか」

 

 アリカはうなずくと手で俺の胴を撫でてきた。

 

「ふむ、それにしてもなかなかの触り心地じゃな。鱗も丸くなっておるし、熱くも冷たくもないし、重さも軽いのぅ」

 

「首に巻きついたり、抱きつかれたときに痛いのは嫌だろう? そもそもこのフォームは戦闘用じゃないし、最低限の戦闘能力を持っていればそれで十分だし。――アリカもこの姿でいたほうがいろいろと都合がいいだろう?」

 

「そうじゃな。普通男を寝室などに入れられぬが、主なら使い魔だからと誰にも気に留められんし、外見を見てもすごい戦闘能力があるとは思えんから護衛にもぴったりじゃしな」

 

「ん? 俺っておまえの護衛しなきゃいけないのか?」

 

「もちろんじゃ。使い魔としておるのじゃから主人を守るのは当たり前であろう。大戦が終わる前に死んだらどうするんじゃ」

 

「…………くっ、わかったよ。大戦の終わりが見れるよう護衛してやるよ」

 

「ふふっ、よろしく頼むのじゃ、アルヴィン」

 

「ああ、わかったよ」

 

 アリカの肩の上で長い首をだらけさせる。アリカはクスクス笑いながら片手で俺の頭を撫でた。

 

 手玉にとられた気がしないでもないけど、まあ、いいか。

 

「ふふふ、アイスキャンディーと寝床確保」

 

 あ~、ニィはあとでお説教ね。個性的になり始めたのはうれしいけど、いろいろとはっちゃけすぎてるから。

 



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第9話 (無謀な王女+無謀な皇女)×秘密会談=拉致監禁 

 ダイオラマ魔法球から現実に戻ってきて2日。アリカが同じく大戦を停めようと考えているヘラス帝国の姫と秘密裏に会談しに行くと告げられた。

 

 普通であればそこまで気にする事柄ではなかったのだが……。

 

 アリカは会談に護衛は不用だと言いやがった。

 

 なんでも平和のための会談だし、相手に信用されるためにも、最低限……小型船の操舵手さえいればいいとか……。

 

 だから俺もニィも城でお留守番しててくれとか言いだしやがったんだ。

 

 戦時中に国外で秘密会談とか最高の暗殺&誘拐しやすい状況での護衛無し発言に、ニィも呆れた様子だ。

 

「アリカは……、やはりバカだったのか?」

 

「ニィ、『やはり』とはなんじゃ? 妾はバカではないぞ」

 

「いや、アリカ。戦時中の会談なのに護衛無しはいくらなんでもバカだろう……」

 

 ニィの言葉を不服そうに否定したアリカを、俺が否定する。

 

 ニィは呆れた様子のまま、サンドイッチを食べながらアリカに訊ねる。

 

「そもそも『紅き翼』だったか? 凄腕の戦闘集団がこの国にいるんだからそいつらを使えばいいんじゃないか?」

 

「それはダメじゃ。あやつらはいい意味でも悪い意味でも有名すぎる。――あやつらを連れて行けばいらぬ不安をかうであろう」

 

「まあ、それはわからんでもないか」

 

 ニィは納得したようにため息を吐いた。

 

 まっ、『紅き翼』はメンバー全員が規格外の集団で有名人らしいからな。変装させて連れて行けばいいというわけでもないし、置いていくのは当然か。

 

「だけど、なんで俺たちもそれで留守番になるんだ? 俺たちは城に引き篭もりっぱなしだし、戦力になるとは誰も知らないはずだぞ?」

 

「それは……」

 

 俺の言葉に詰まるアリカ。何か大層な理由でもないみたいだし、「平和のための会談は相手が知らなくても強い護衛つけたらダメだよね。だからアルヴィンとニィも置いていかないと……」ってな感じで実はよく考えていなかったり……。

 

「…………そうじゃな。アルヴィンは元大魔王といっても誰も知らぬし、ニィも知られてはおらん。そもそもかわいらしい黒龍の姿なんじゃし、別にペットだと言うことにしておけば……」

 

 小声でぶつぶつと考え始めるアリカさん。…………図星でしたか

 

「うむ。万が一にも襲われた場合マズいしの。やはり主らも一緒に来てはくれぬか?」

 

「……ああ」

 

「……わかった」

 

 華麗な手の平返しにうなずく俺とニィ。

 

「でも、俺と違ってニィは能力の隠蔽が完全じゃないからな。会談のときは俺の影に潜ませておいたほうがいいか?」

 

「そのようなことができるのか?」

 

「まあな。元々は影を媒介にした転移魔法の応用みたいなものだから、素養と術式があれば誰でも使えるぞ」

 

「そうなのか。それならば頼む。護衛は少ないほうがよいからな」

 

「わかった」

 

 アリカにうなずく。ふぅ、何とか護衛無しは回避できたな。

 

「それでアリカ。いつ出発するんだ?」

 

「これからじゃ」

 

「へ?」

 

「え?」

 

 アリカの言葉に俺とニィはリアクションを忘れて固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカに会談の場に向うと言われて数時間後。現在オスティアの空港にいた。

 

 俺はニィを影のなかで待機させ、黒龍フォームでアリカの首に巻きつくように乗っかっていた。

 

 俺たち会談に向うメンバーの他に空港にいるのは『紅き翼』のメンバーという、赤毛の子供と旧世界のサムライ、ニィと創りが似ている子供。筋肉質の亜人に、本体が別にあるだろう人外。ふけ顔スーツの歩きタバコオヤジに、それによく似たスーツ姿の子供だ。

 

「よう、姫さん。あんた黒龍なんて飼ってたのか?」

 

『紅き翼』のメンバーだという赤毛が興味深そうに訊ねてきた。

 

 アリカは俺の頭を撫でながら答える。

 

「黒龍のアルヴィン。妾の使い魔じゃ」

 

「使い魔?」

 

 アリカの言葉に疑問符を浮べる赤毛の子供。なんでそんな顔になるんだ? 見ればスーツの子供も意外です! と言いたそうにしてるし。

 

 まあ、俺には別段どうでもいいか。

 

 俺は特に何もすることないんだし、アリカの首に巻きついたまま寝ようとしていると、優男風の人外が近づいてきた。

 

「これは珍しい黒龍ですね。細く長い首と胴体に、短い手足。なにより翼がないのに浮遊して……。こんな黒龍、長い年月を生きていますが、一度も見た事がありませんよ」

 

 興味深そうに観察してくる優男人外に、もう1人が加わった。

 

「これは……、この黒龍はまさか……」

 

 旧世界のサムライだった。信じられないようなモノを見るように顎に手を当ててジロジロと観察してきた。

 

「何か知っているのですか、詠春?」

 

「あ、ああ。私の故郷……、旧世界の呪術師、陰陽師と呼ばれる者たちに代々伝わる伝承に、この黒龍のような龍がでてくるんだ」

 

 詠春の言葉に、ヘラス帝国の亜人が俺を指差して意外そうにつぶやく。

 

「ん? じゃあ、このちっこいのがその伝説の龍なのか?」

 

「それは……、私にもわからない。だが、伝承は数百年前のモノだし、いつまでも小さいままというのは……」

 

「だったら、その伝説の黒龍の子供とかじゃないですか?」

 

 スーツの子供がそう言い、アリカも気になったのか念話で訊ねてきた。

 

『実際のところはどうなのじゃ?』

 

『その龍、本人だ』

 

 アリカの質問に俺は素直に念話で返す。何故念話で会話しているかというと、話せることがわかるといろいろと面倒になるかもしれないからだ。

 

 そして、話せないではなく、話さないのであれば話せることがバレても平気だからな。

 

 今度こそアリカの胸に顔を置いて寝ようとすると……。

 

「その伝説の龍だそうだ」

 

 と、アリカがあっさりと詠春にバラした……。

 

「そりゃあ、すげぇな」

 

「――なっ!?」

 

「ほう、そうなのですか」

 

「へぇ、こんなちっこいのがなぁ」

 

「そう言われてみれば、こやつから歴史を感じるのぅ」

 

「ほ、本物?」

 

 上から赤毛、詠春、優男、亜人、子供、スーツ子供だ。

 

 詠春以外それぞれが感心するような、疑うような視線を送ってきていた。

 

『おい、アリカ』

 

『なんじゃ? 別に言っても困りはせぬだろう?』

 

 そう息を吐きながら言うアリカに、詠春が凄まじい勢いで詰め寄った。

 

「アリカさま! 本当なんですかそれは!?」

 

「そ、そうじゃが」

 

 アリカは詠春の勢いに押されて少しだけたじろいた。

 

『なんなのじゃ、こやつ。主は旧世界で有名じゃったのか?』

 

 なぜ詠春が興奮しているのかを念話で訊ねてきた。俺は詠春と目を会わせないように寝たふりをしながら言う。

 

『ああ、京都という都市の一部でな。――約500年前ぐらいに魔法世界に住んでいたときも、時おり旧世界に行っていて、かれこれ陰陽師や神鳴流と呼ばれる者の開祖からの付き合いだ』

 

『…………なんとなくじゃが旧世界で主はすごいということはわかるのじゃ』

 

『まあな』

 

 口の端を持上げて笑っていると、興奮した詠春が仲間に俺を説明してる声が聞えてきた。

 

「そもそもその黒龍というのはな、京都では最も神聖な生き物とされているんだ。なぜかというと黒龍は数年から数十年単位で京都に現れ、今はなき大昔の陰陽師の術を見所のある術者や巫女に伝授したり、神鳴流の剣士に大きな力を与えたりとしてだな。――大昔に京で神が暴れた際も、京の術者たちに協力してその神を封印する手助けをしてくれたりと、何かと京を守る為に動いてくれて……」

 

 長々と説明を続ける詠春と、話を聞きながら感心したような息を漏らしたり、興味深そうな視線を俺に送ってくる『紅き翼』。…………ていうか、まだ続くのか?

 

 アリカも詠春の話に感心しているなかの1人で、話を聞きながら俺の胴を撫でていた。

 

 そんななか乗る予定となっていた小型飛行船のほうから、フケ顔スーツ歩きタバコオヤジがやって来た。

 

「アリカさま。準備が整いました」

 

「わかったのじゃ」

 

 アリカは歩きタバコの言葉にうなずき飛行船へ足を向ける。

 

 完全に寝堕ちしそうになっていた俺の耳に声が聞えてきた。

 

「つまり、あの証拠があれば戦を終わらせられるのじゃな?」

 

「ま、多分な」

 

「では、それは主に任す」

 

「あんたもよくやるぜ、戦果の中こんなボロ舟で帝国第3皇女と接触しに行こうってんだからな」

 

 アリカの会話の相手は赤毛の子供か。

 

「なんじゃ、心配しておるのか?」

 

「へ? 心配? 何の?」

 

「…………」

 

 赤毛の態度に怒りとイラつきで無言となるアリカ。…………さっきのアリカの問いに、その反応で返すのはないだろう……。

 

 半ば呆れていると、アリカがイラつきを発散するため赤毛にビンタを放ち、舟へと向った。

 

「アリカさま! その黒龍と話を……!」

 

「落ち着きなさい詠春、帰ってきてからでいいでしょう」

 

「コレ! ガトウ、タカミチ! 詠春を抑えるのじゃ!」

 

「おいおい、どうしたんだこいつ?」

 

「は、はい!」

 

「アリカさま! お願いですから黒龍と話を~!」

 

「ガハハハハッ! またぶたれてやんの!」

 

「うるせぞ、ラカン!」

 

「おおっ、やるか、ナギ!」

 

 …………。

 

「騒がしい連中じゃ」

 

 …………ああ、まったくの同意見だが、そもそもおまえがバラすからこうなったんだからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカと飛行船の船内に乗り込んで数時間ほどが経った頃。俺は目を覚ました。

 

「起きたか、アルヴィン」

 

「ああ」

 

 うなずき、固まった体をほぐすように伸びをする。いつの間にかベッドに寝かされていたようだ。

 

 あくびをかみころし、ふと気になったことがあったので、椅子に座って書類を読んでいるアリカに訊ねてみる。

 

「そういえば会談の場まで行くのに大体何時間かかるんだ?」

 

 先ほど行くと聞かされたばかりだから、会談の場まで何時間かかるとは聞かされていなかった。

 

 アリカは書類に目を通しながら、顎に手を当てて答えた。

 

「そうじゃな、大体2日ぐらいじゃ」

 

「2日?」

 

「うむ。敵に会わんように隠れながらの移動になるからの、移動には時間がかかるのじゃ」

 

「へぇ、そうなのか」

 

 じゃあ、2日間は暇なのかぁ~。

 

 ふわふわと空中を漂いながらアリカのヒザの上に座る。

 

 アリカはふぅと少し息を吐くと、片手で俺の胴を撫でてきた。

 

「そういえば、アルヴィン。ニィはどうしておるのじゃ?」

 

「ん? ニィか。ニィは――」

 

 影と繋げている家に意識を向けてニィがどうしてるか確認すると……。

 

『うむ、今度はこれを着てみるか。え~と、白スク水? ニーソ? よくわからんな。メイド1号、着付けを頼む。メイド2号はそのまま撮影を頼む』

 

『かしこまりました。ニィ様、ネコミミも用意しておきますね』

 

『では着付けの間に背景を変えておきます。プールがいいですか? それとも地下室?』

 

『任せる』

 

 ………………。

 

「……ニィはホムンクルスメイドと遊んでるみたいだから大丈夫だよ」

 

「そうなのか?」

 

「うん。とっても楽しそうだ」

 

「ニィには窮屈な思いをさせておると思ったが、そうでないならよい」

 

『ほ、ほう、これはなかなかエッチだな』

 

『はい、ニィさま。とても綺麗でかわいらしいです』

 

『プールもいいですが、地下室も似合いそうです。ニィさまこちらに視線を……、はい、今度は――』

 

『ふふふっ、アリカだけ100冊のアルバムがあるなどズルいからな。ここにいる間にアルヴィンを悶死させるような、ものすごいアルバムを制作してやる』

 

「……うん。本当に、楽しそうだ」

 

「アルヴィン? どうしたのじゃ?」

 

「いや、なんでもない」

 

 とりあえず楽しみにしてるよ、ニィ。

 

 こうしてゆっくりと俺たちの短い旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オスティアの空港を出発してから約3日後……。

 

「…………見事に捕まったな」

 

『ああ、驚くほど見事にな』

 

「ぅぅ……、捕まってしまったのじゃぁぁ……」

 

 俺達と会談相手のヘラス帝国第3皇女……、テオドラと共に、敵対組織に捕まってしまっていた。

 

 現在地は闇の迷宮と呼ばれるダンジョンの牢屋のような、一面を分厚い壁で囲まれた長方形の部屋で、俺とアリカ、テオドラの3人でそこに閉じ込められていた。

 

『はぁ……、主には護衛は頼んでおらんかったし、大戦には協力しない約束じゃったから、襲われれば捕まるのが当然か』

 

 アリカは部屋に備えつけられた長椅子に座り、重いため息を吐いてしみじみといった風にそんな愚痴を漏らす。

 

 俺はそんなアリカの肩に巻きついたまま言う。

 

『まあ、そうだが、仮に襲ってきた連中を俺が退けたとしても、第3皇女のテオドラをどうするんだっていう話になるし、襲ってきた相手も必要以上に危害を加えてこない奴らだったからな』

 

『殺されるわけではないから素直に捕まり、救助を待ったほうがいいと?』

 

『ああ、そういうことだ』

 

『ふむ……』

 

『それに逃げようと思えば、いつでも逃げることができるぞ』

 

『本当か?』

 

『ああ、影を媒介にした転移魔法を使えば簡単だ』

 

『じゃが、魔法の発動体は没収されて……』

 

『悪魔の俺に発動体が必要だと思うか?』

 

『…………そうじゃったな』

 

『だから危なくなったらすぐに転移すればいい。いまは救助を待とう』

 

『わかった』

 

 アリカが納得したところで胸の谷間に顔を乗せる。

 

『これ、どこに頭を乗せておるのだ』

 

『どこって胸だけど?』

 

『はぁぁぁ……、主という奴は……』

 

 アリカはさっきよりも長いため息を吐いて長椅子と繋がってる壁にもたれかかる。俺はそんなアリカの様子がおもしろくて、笑みを浮かべて谷間に顔を埋めた。

 

 いい匂いで温かく、スベスベの吸いつくような柔肌は最高の枕だ。

 

 顔を動かし、アリカの胸の谷間で遊びながら言う。

 

『それにしても結構実ってきたねぇ』

 

『……何の事じゃ?』

 

『アリカのおっぱい大きくなったね~、って言ってるんだよ』

 

『――っ』

 

 胸の谷間でふふんと鼻を鳴らしてアリカの顔を見上げると、顔を赤に染めて恥ずかしそうに俺から視線を逸らした。これもツンデレポイントかな? いや~、それにしてもワンサイズぐらい大きくなったんじゃない?

 

『やっぱり寝るときによく揉んだり、たまに口とかお尻とかで精液を受け止めてるおかげかな?』

 

「――なっ!?」

 

 俺の発言にアリカは念話を忘れて、そのまま大声をあげて驚いた。

 

「どうしたのじゃ、アリカ!?」

 

 突然大声をあげたアリカに、部屋の奥で嘆いていたテオドラが心配そうな表情を浮かべて訊ねてきた。

 

 アリカはテオドラの問いに、普段のクールな対応をする。

 

「何でもないのじゃ。驚かせてすまなかった」

 

「そうか?」

 

「気にしないでくれると助かる」

 

 アリカは会話を切って、心を落ち着かせようと息を整え始める。

 

『それで、アルヴィン。……せ、精液を体で受け止めるとなぜ胸が大きくなるのじゃ?』

 

『まあ、アリカは知らなくて当然だろうけど、女性は性的に快楽を感じたり、男の精子を身に受けたりすると、女性ホルモンってのが刺激されて、より女らしくなるそうなんだ』

 

『む……』

 

『アリカも俺に弄られて感じたことがあるだろう? 口やお尻の穴じゃなく、オマンコのほうにペニスを入れて子宮で精液を受け止めたいとかさ』

 

『そ、それは……』

 

 俺の言葉に心当たりがあるのだろう、アリカは真っ赤になって俯いた。

 

『子宮で精液受け止めて受精して妊娠して子を産みたい。――まさに女性の本能にして欲求……。その欲求を叶えるために、女性ホルモンが普段より活発に活動して男を欲情させるような体に変化させていってるんだよ』

 

『…………』

 

 アリカは無言で自分の体に視線を落とした。胸から腰、股から足先まで見つめて顔を赤らめた。

 

「本当にどうしたのじゃ?」

 

 そんなテオドラの問いにも気づかないほど内心で戸惑うアリカ。

 

『一例をあげると、女性が妊娠したら胸がはって母乳が出るようになるってことあるだろう? あれも妊娠によって女性ホルモンが働いて母乳が出るように体を変えたからなんだ』

 

『……さ、最近胸が服に擦れただけで痛くなるのは、ぼ、母乳が出そうになっておるからなのか?』

 

 心配そうに訊ねるアリカだけど……。

 

『おそらくただ弄りまくったせいで敏感になってるからだろうな』

 

『――っ』

 

「本当にどうしたのじゃ、アリカ……?」

 

 テオドラが何かつぶやいたが無視してアリカの胸を短い前足で軽く叩く。

 

『まあ、毎晩のように吸いついてるんだ。もしかしたら出るかもしれないな、母乳』

 

『妊娠もしてないのに母乳が……』

 

『なんだ? じゃあ、思い切って妊娠してみるか?』

 

「それはダメに決まっておるじゃろう!」

 

「――おおぅっ!? ど、どうしたのじゃアリカ!?」

 

 アリカの突然の大声にテオドラは椅子から転げ落ち、怯えるような表情でアリカを見た。

 

 アリカはううっ、手で口元を塞いでテオドラから顔を逸らした。

 

「…………」

 

「…………」

 

 何ともいえない空気が場を支配する。

 

 まあ、黒龍フォームの俺には関係ないとアリカの胸の谷間を味わいながら目を閉じた。

 

「アリカ……」

 

「……なんじゃ?」

 

「会談のときから気になっておったが、その黒龍はなんなのじゃ?」

 

「…………妾の使い魔じゃ」

 

「そうなのか? さ、触ってもよいか?」

 

『よいか、アルヴィン?』

 

『ん~……、乱暴にしないなら別にいいけど』

 

『わかったのじゃ』

 

「乱暴にしないなら触ってもよいそうじゃぞ」

 

「アリカは黒龍の言葉がわかるのか!?」

 

「う、うむ……」

 

「それはすごいのぅ。使い魔といっておったし、念話みたいなものなのか?」

 

「……そうじゃ」

 

 アリカがうなずいたあと、すぅっと頭の上に小さな手が乗った。頭の両側に生えている小さな角を触らないように、頭の中央をやさしく撫でてくる。

 

「ふむ、かわいいのぅ。妾もこんな使い魔が欲しいのじゃ」

 

「…………かわいく見えてもその実、ものすごくエッチな悪魔じゃがな」

 

「ん? 何か言ったかアリカ?」

 

「なんでもないのじゃ」

 

『……小声で言っても俺にはバッチリ聞えていたからね、アリカ。夜になったら、いつもよりしつこく吸いつくから覚悟しといてよ?』

 

「――っ!?」

 

『ふふふ、母乳が出ちゃうかもしれないな』

 

「どうしたのじゃ、アリカ? すごい汗じゃぞ?」

 

「なっ、なんでもないのじゃ……」

 



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第10話 突然の決定 

 ヘラス帝国の第3皇女と平和のための秘密会談中に、『完全なる世界』の構成員らしき者たちに捕まって数日。

 

 俺たちは暇を持て余していた。

 

 いや、俺たちはでは語弊があるな。正確にはテオドラが、暇を持て余していた。

 

 元々テオドラは10歳ぐらいの幼い皇女で、度々王宮を抜け出すほどのおてんば姫だったから、数日間何もない部屋に閉じ込められて様々な不安などと共に欲求不満(ストレス)が溜まっていたのだ。

 

「ううぅ、暇じゃぁぁ~、暇なのじゃぁぁぁ~」

 

 そうつぶやきながら長椅子を転げるテオドラ。

 

 その様子を視界の端で眺めながらアリカもため息を吐いた。

 

『ここに押し込められて数日が経つが、食事ぐらいしか楽しみがないからのぅ。窓の外から差し込む光で大体の時間はわかっても、窓の位置が高すぎて外の景色までは見れぬからな……』

 

『そうだな。それに俺たちは別で色々な楽しみがあるけど、あいつはないからなぁ』

 

『…………』

 

 あれ? 同意しないの?

 

『……一応言っておくが、あれが楽しみと思っておるのは主だけじゃからな? そこを間違えるでない』

 

『え~、アリカも結構楽しんでたじゃん。――近くで寝てるテオドラに気づかれないように、服の隙間に入っての愛撫。トイレでのフェラチオ&アナルセックス。ここ数日お風呂に入ってないのにオマンコとか胸が綺麗なのは俺の努力があってこそだろぉ』

 

『その分下着などがぐしょぐしょになったじゃろう! それに万が一にでもテオドラにバレたらどうするつもりなのじゃ! 妾が使い魔でオナニーしたり、人に変身させて奉仕させるようなスケベ姫と認識されてしまうではないか!』

 

 おおぅ、オナニーとか奉仕とかスケベ姫とか最初のアリカじゃ想像できない発言が飛び出してる!

 

『まあまあ、落ち着こうよ、アリカ』

 

『まったく、誰の所為で興奮しておると思うのじゃ!』

 

『ゴメンゴメン』

 

 ぷりぷりと怒るアリカの頭を尻尾で撫でて落ち着かせる。少々弄りすぎたな。

 

 場を切り替えようとしてあることを思い出す。

 

「あ、そういえば」

 

「なんじゃ? もう念話では話さぬのか?」

 

「…………。……まあ、いいんじゃない? テオドラが暇で死にそうだしさ」

 

「……喋った? ――っ!? なななななっ、黒龍がしゃべっとるぅぅぅぅっ!?」

 

 テオドラのそんな声が部屋に木霊する。さっきまで暇そうにしてたのがウソみたいだ。

 

「ぬ、主は喋ることができたのか!?」

 

「喋れないって言ったっけ?」

 

 テオドラが詰め寄って訊ねてきたが、俺はさも当然のように受け流す。

 

 テオドラはその言葉を聞いて「ぐぬぬ……」と納得できないと言った視線を向けてきた。

 

「それよりもアルヴィン、何か思い出したか?」

 

「そ、それよりも!? 喋れる事を秘密にされていた妾を無視するのか!?」

 

 ガーンっとショックを受けた様子のテオドラ。この子、本当におもしろい。

 

「テオドラ」

 

「…………なんじゃ、黒龍?」

 

 ――ガンバレ。……って言ったら泣くな。もしかしたら号泣するかもしれない。

 

 なので、申し訳なさそうな表情を浮かべてテオドラに謝罪する。

 

「喋れることを黙っていたことについて素直に謝るが、これには様々な理由があったのだ」

 

「り、理由?」

 

「ああ、実をいうと俺はいろいろとわけありの龍でな。だから周りに俺の正体が露見しないように、今まで喋ることを自粛していたのだ。――だが、テオドラがあまりに暇そうにしていたから、話し相手にでもなれればと思って喋ることにしたんだ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ああ」

 

「そ、それは……、その……、ありがとう……、なのじゃ」

 

 テオドラは少しだけ顔を赤くしてもじもじとうれしそうにつぶやいた。

 

『まったく、よくいくつもウソを並べられるのぅ』

 

『何を言ってるんだ、アリカ。テオドラが暇そうにしていたから話し相手になってやろうと思ったのも本当だぞ』

 

『そうなのか?』

 

『何だその疑うような視線は? 俺は女にやさしい悪魔として、魔界でもこの世界でもすごく有名なんだぞ』

 

『…………そう考えれば納得か』

 

 アリカの念話での会話を切って改めて言う。

 

「話を元に戻すとな。思い出したんだ。もうすぐ旧世界にある自宅で、世界樹の大発光が起こることをな」

 

「――っ!?」

 

「世界樹とな?」

 

「ああ、世界樹だ。樹齢は大体数千年とまだ若いのだが、見る分にはなかなか壮観でな。特に今年の、22年周期で起こる大発光はすごく綺麗なんだ。それに毎年その時期に近くの学園都市で祭りも開かれるし、なかなか楽しいぞ」

 

「祭りかぁ~、妾も行って見たいのじゃぁ……」

 

 テオドラが妄想を膨らませながらつぶやく一方、アリカはこめかみを指でマッサージしていた。

 

「あ、アルヴィン……、それは本物の世界樹なのか?」

 

 信じられないといった風のアリカに俺はうなずく。

 

「もちろん、本物だよ。かれこれもう数百年の付き合いになるかなぁ」

 

「…………」

 

「主はそんなに生きておったのか!?」

 

 驚くテオドラに体をふわふわと揺らしながら笑む。

 

「アハハハ、この姿じゃ誤解されるだろうけど、この姿は仮の姿だからね」

 

「ほう、仮の姿か。真の姿になればヘラス帝国の古龍龍樹よりも大きかったりするのか?」

 

「ハハハハ、それは秘密だ」

 

「うぅ~、残念じゃのぅ……。ん? さっきからどうしたのじゃ、アリカ」

 

「…………」

 

 テオドラが訊ねたが返事がない。思考が停止してるようだ。

 

「お~い、アリカ~」

 

「――っ。はっ!? な、なんじゃ?」

 

 ぺしぺしとアリカの頭を尻尾で軽く叩いてやっと反応を見せた。

 

「どうしたんだ、アリカ」

 

「いや、なんでもないのじゃ。……改めて主のすごさがわかっただけで……」

 

 ん~、ならまあいいや。いつものことだし。

 

 それよりも重要なことがあるんだよね。

 

 テオドラには聞かされないと念話で会話する。

 

『落ち着いて聞いてほしいんだけど……、実を言うとその世界樹が魔法世界を救う手段だったりするんだよね』

 

『なんじゃと!? それはどういうことじゃ!?』

 

『アリカ、無理だと思うけど落ち着いて、ね?』

 

『…………すまぬ。……それで、どうして世界樹が魔法世界を救う手段になると思うのじゃ?』

 

『それは、まあ、詳しい説明はあとでするよ。確定したわけじゃないしね。とりあえず……』

 

『とりあえず?』

 

『旧世界に行かないといけない。それも世界樹が大発光する前に。毎年発光はするけど、大発光は22年周期だからな。今年を逃すと22年後になるし、魔法世界の寿命もわからないんだから早い内に確かめたほうがいいと思う』

 

『……アルヴィン、主だけ――』

 

『俺だけってのは無理……、というかヤダ。大戦が終わるまで一緒にいるって契約だからな』

 

『じゃが……』

 

 アリカはそうつぶやきながらテオドラへと視線を移した。

 

 そう、この牢屋を脱出できても亜人であるテオドラは旧世界には行けないのだ。必然的にテオドラをどこかへ放っていくことになってしまう。そうなるのなら2人で牢屋にいたほうがいいのじゃないかと、先ほどアリカは俺だけに行くよう提案したのだ。

 

 だがそれもダメだとなると、テオドラは1人になってしまう。アリカはそれを心配してるのだが……。

 

『テオドラも連れて行けばいいだろ?』

 

『――っ!? できるのか!?』

 

 驚きの声をあげるアリカにうなずき、念話をやめてテオドラに声をかける。

 

「テオドラ」

 

「ん? どうかしたのか?」

 

「これから旧世界に行って大発光を見に行かないか?」

 

「――っ!? じゃ、じゃが、妾は亜人じゃから旧世界には行けぬのではないか? それにこの牢獄から脱出せねば……」

 

「ああ、牢屋から出るだけなら簡単だぞ。ていうか最初からできた」

 

「なっ!? ならなぜ主はやらんのじゃぁぁぁっ! もう何日も牢獄で生活しておるのじゃぞぉぉぉっ!」

 

 涙を浮べて怒鳴るテオドラにわかるよう丁寧に説明する。

 

「いろいろとあってな。ここから下手に逃げ出せなかったんだよ。――いや、実を言うといまも脱げ出さないほうがいいんだ」

 

「むぅ? 何かまた理由でもあるのか?」

 

「ああ。その理由を簡単に説明すると、俺たちには誰一人として味方がいないからだ。たとえいまこの迷宮を脱出して自国に戻ったとしても、味方がいないのでは謀殺されるのがオチだろうから、俺たとの味方になるであろう者たちが救助しに来るのを待っていたんだよ」

 

「…………なんとなく納得したのじゃが、それだと妾たちがここを脱出して旧世界に行くのは止めたほうがいいのではないか?」

 

 テオドラの疑問は最もだ。もちろんその打開策も用意している。

 

「ああ、そうだ。――だから脱出したと思われないように変わり身を置いていくんだよ」

 

「変わり身か?」

 

「そう。精巧作った変わり身で、旧世界に行ってる間に誰かが救助に来たときに知らせる役割をもったな」

 

「それならば……、あ、じゃが、妾は……」

 

「大丈夫、テオドラも旧世界に行ける」

 

「そ、そうなのか?」

 

「うん、簡易契約で俺の眷属にすればな」

 

「簡易契約……?」

 

 テオドラは聞き覚えのない言葉に首をかしげ、アリカも気になったのか念話で訊いてきた。

 

『どういうことなのじゃ? 魔法世界の亜人や人間は原則旧世界では活動できなかったのではないのか?』

 

『ああ。魔法世界の大半の住人は魔法世界の魔力で元々構成されてるから、旧世界にいけなかったり、行動に大きな制限がかかるんだけど、俺の眷属にしてしまえば問題ないんだ』

 

『…………つまり魔力の供給のようなものなのか?』

 

『うん。まっ、正確にいうと一時的に魔法世界との関係を切るってことになるんだけどな。――ちなみにアリカは旧世界人の血が流れてるから問題なく行けるから』

 

『……そうなのか』

 

 アリカとの念話を切って変わり身を制作しようとしていると、テオドラが頬を赤に染めてこちらをチラチラと見つめていることに気づいた。

 

「……し、仕方がないのじゃ。こ、これはカウントしないのじゃ……」

 

 恥ずかしいといった様子で、もじもじしながらテオドラは俺に向って両手を伸ばしてきた。

 

 両の頬を手で挟まれ固定される。

 

「……テ、オ?」

 

 俺の疑問の声も聞えない。テオドラは顔を近づけて……。

 

 ――ちゅ。

 

 ……キスされた……?

 

「――っ!? テオドラ!?」

 

 アリカがいち早く驚きの声をあげるが、テオドラは唇を合わせ続ける。

 

 閉じていた目を開けて「なんで?」と言いたげな表情を浮かべ、ぐいぐいと唇を押し付けてきたり、さらには恐る恐る舌まで差し込んできた。

 

「ん……、じゅちゅ……、ふぅ……、はじゅっ……」

 

 大胆に口を開け、唾液を送り込んだり、啜ったり、舌を絡めてみたりとテオドラは試していく。

 

「ぬ、主らは何をやっておるのじゃぁぁぁっ!」

 

 俺もテオドラの突然のディープキスに答えるように舌を動かし始めたところで、アリカが怒鳴り声をあげた。

 

 そこでやっと、テオドラが崩れ落ちるように唇を離す。

 

 テオドラは赤く、唇を指で撫でながら蕩けた表情のまま疑問を口にする。

 

「はぁはぁ……、なぜじゃ……? なぜ仮契約ができぬのだ?」

 

「「…………」」

 

 テオドラのそのつぶやきに俺とアリカは何も言えなくなる。ていうか仮契約しようとしてたのかよ。……こいつも第1皇女や第2皇女みたいな淫乱かと思っちゃったじゃないか。

 

 半ば呆れたままテオドラに説明する。

 

「テオドラ、俺のは仮契約じゃくて独自の契約だからキスする必要はないんだぞ?」

 

「――なっ!? そう、じゃったのか……?」

 

「ああ。ただ単位体のどこかに触れて印を刻めばいいだけだからな」

 

「……うう、じゃったら妾のファーストキスは……」

 

「ハハハハ、まあ、そう落ち込むな。俺は将来美女になるだろうおまえのはじめてをもらえてうれしかったからさ」

 

「――っ、そ、そうか……。ふふっ、そう言われると悪い気はせんな」

 

「…………」

 

 赤い顔でテオドラはハニカムが、逆にアリカの機嫌が悪くなったようだ……。

 

 無表情、無言、視線のコンボで威圧される。

 

 なので、いまはアリカを無視して素早くテオドラの鎖骨辺りに手を当てて印を刻んだ。

 

 10cmほどの小さなモノで、方翼が天使の翼、もう方翼が悪魔の翼でそのつなぎ目、中央に小さなハートが刻まれた紋章だ。ちなみに魔界での俺のマークを少しかわいくしたものである。

 

 しっかりと刻まれたことを確認してうなずく。

 

「これが契約の証だ。これでテオドラも旧世界に長期滞在できるぞ。まあ、角などはかくさないといけないけどな」

 

「わかったのじゃ」

 

 うなずき、紋章を擦るテオドラ。あれ? アリカが羨ましそうにしてる?

 

「アリカもつけるか?」

 

「――っ。わ、妾には必要のないものなのじゃろう」

 

「そうだけど……」

 

 念話に切り替えて言う。

 

『大戦が終わるまで傍にいるって契約した証として、つけたほうがいいんじゃないか?』

 

『そ、それは……、そう、じゃのう……』

 

『じゃあ、アリカは旧世界に付いてからつけような』

 

『なんじゃ? いまつけぬのか?』

 

『アリカの場合、大戦が終わるまでつけとくことになるんだから、テオドラみたいに見える場所にはつけれないだろ? だから夜、ね』

 

『へ、変なところにつけるではないぞ?』

 

『…………』

 

 よし!

 

「じゃあ、テオドラ、アリカ。変わり身置いて旧世界に行こう!」

 

「旧世界に行けるのじゃ~! 久々の外なのじゃ~!」

 

『アルヴィン! 本当に変なところにつけるのはなしじゃからな!』

 

 こうして騒がしい2人を連れて俺は旧世界へ行くことになった。

 

 あ、そういえばニィにも言わないと……。

 

『ほ、ほほう、これが大人のおもちゃというものか』

 

『はい、ニィさま。これを使いながらまた新たなお姿を撮るのもいいと思います』

 

『だが、処女は両方とも……』

 

『ご心配ありません。ディルドーは入れなくても持つだけで十分魅力的ですし、ピンクローターという処女を傷つけずに楽しめるポピュラーなものもありますので』

 

『そ、そうなのか? それなら試しに使いながら撮影して見てもいいか』

 

『はい。そういう知識もインプットされているので、お任せください』

 

 …………まだ放置でいいかなぁ。ていうかホムンクルスメイドにそんな知識入れたっけ?

 



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第11話 旧世界到着 ☆

 旧世界にある22年周期で大発光する世界樹が魔法世界を救う手段になるかもしれないと、それを確かめに俺とアリカ、ついでにテオドラの計3名は、数日ほど閉じ込められていた『闇の迷宮』から脱出した。

 

 一応、脱走がバレたり、助けに来た相手とすれ違いにならないように精巧な人形を置いてきている。

 

 そして脱出した俺たちは、旧世界に渡るためのゲートポートが設置されている連合のメガロメセンブリアではなく、ある場所を経由してそこから旧世界へと渡った。

 

 ちなみに、アリカとテオドラに魔法世界と旧世界がどこで繋がっているのかを秘密にするため、ワザと多重転移を繰り返して長い距離を移動したように見せた。

 

 最終的に、私有地を囲うように存在する麻帆良学園都市の一角に設置した隠れ家(連れ込み部屋ともいう)であるマンションの一室に出た。

 

「すごいのじゃぁっ! これが旧世界か!」

 

「これが、旧世界……」

 

 マンションの窓の外。麻帆良学園都市を見下ろしながらテオドラとアリカは感動したようにつぶやいた。

 

「アルヴィン! 早く街に繰り出すのじゃ!」

 

 テオドラは窓に張り付きはしゃぎながら俺を急かしてくるが、待ったをかける。

 

「外に出るんだったらまずは格好を変えるのが先だろ? まあ、祭り開催前で気が早い連中がもう仮装してるから、今から学園祭が終わるまでは姫様ルックでいいと思うけどな」

 

「おお、そういえばちらほら魔法世界の亜人に似ておる格好をしておるのう。――ってアルヴィンの姿はどうするのじゃ? 人形のフリでもするのか?」

 

「ん? ああ、俺は人型になるから大丈夫だ」

 

「なに!? アルヴィンは人に変身できるのか!?」

 

「まあ、実を言うと人型が基本だな」

 

「そうなのか!?」

 

「いま変身してやるよ」

 

 驚かせてやろうと変身しようとするが――。

 

『――アルヴィン!』

 

『なんだ、アリカ』

 

『また全裸で登場せぬだろうな?』

 

『あ、忘れてた』

 

『…………はぁ。テオドラは姫といっても子供なのじゃから絶対にアレは見せるでない。服を着た状態でも変身できるのじゃから、服を着た状態で変身するのじゃ』

 

『そうだな』

 

 アリカにうなずいてボフンッと煙を立てて変身した。

 

 浅黒い肌。黒髪のくせっ毛。整っているが整いすぎてない顔。筋肉質過ぎない体。

 

 魔界時代からずっとよく使っている人間の基本フォームだ。

 

 このフォームから自在に若さや肉体を操れるが、最近は18歳ぐらいで固定してるのでその姿で登場する。もちろん服はしっかり着込んで違和感がないように学生服だよ。

 

 180cmにとどかんばかりのやや高めの身長の男の登場にテオドラは驚きの表情を浮かべるが、すぐにがっかりとした表情になった。

 

「なんじゃ、案外普通じゃな」

 

「……酷い言われようだな」

 

 せっかくインパクトなしで普通に変身したのに、やっぱり全ら――。

 

『それはやめい』

 

『ん、アリカ? いったい何のことだい?』

 

『はぁ……、惚けるでない。服を脱ごうとしたじゃろう、いま』

 

『…………』

 

『これ、目を背けるな』

 

 …………。

 

「よし、テオドラ! アリカ! 街に繰り出そう!」

 

「おお~!」

 

 元気よく返事するテオドラ。エヴァのところには夕方行けばいいしね。

 

『はぁ。……世界樹のことはよいのか?』

 

『大丈夫大丈夫。大発光は3日間開催される学園祭の最終日で、今日はまだ学園祭前日だし、家から世界樹まですぐだからね。――あ、それともうニィを外に出してもいいな』

 

『学園祭最終日か……』

 

 硬い表情でつぶやくアリカ。魔法世界を救う手段になるかもしれないから色々考えるのは仕方がないけど、楽しまないと損だよ?

 

「テオドラ、街に行く前にこの子を紹介するよ。出ておいでニィ」

 

 影に呼びかけると、影のなかからズズズとニィが出てきた。うん、事前に連絡しておいてよかった。

 

「か、影から出てきた!? な、何者なのじゃ?」

 

「妾のもうひとりの護衛じゃ。アルヴィンの娘でもある」

 

「む、娘!? 娘がおったのか!?」

 

 大きく目を見開いて驚くテオドラに、ニィは軽く頭を下げて挨拶する。

 

「ニィだ。よろしく」

 

「わ、妾はヘラス帝国第3皇女テオドラじゃ。よ、よろしくなのじゃ。…………主は本当にアルヴィンの娘なのか? まあ、肌の色なども似ておるが……」

 

 ジロジロと見てくるテオドラを気にせずニィはうなずいた。

 

「アルヴィンと血のつながりはないけど、娘だ」

 

「そ、それはすまなかったのじゃ」

 

 申し訳なさそうに謝るテオドラ。おそらく血のつながりはないという発言で複雑な事情があるんだと思ったようだが、ニィは小声で……。

 

「だから、アルヴィンとエッチしても問題なし。近親エンドが円滑にできる」

 

 とつぶやいていて、近くにいたことで聞えたアリカは何とも言えない表情を浮かべ、「どういう教育をしておるのじゃ?」と俺をジト目で睨んできていた。

 

 ていうか俺が子供の教育に悪いことは認めるけど、こうなったのはニィ自身が1番の原因だからな? その次に俺、そしてアリカも入るからな?

 

 何故アリカも原因になるかって? そりゃあ、撮影でエロい姿見せたから当然。

 

 俺たちは4人そろって街の観光へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4人そろって麻帆良の学園都市に設けられた街を観察しながら練り歩く。

 

 俺とアリカを挟んでテオドラを真ん中に手を繋ぎ、ニィは俺に肩車された格好で観光する。

 

「おお、すごいのう! あれはなんじゃ、アルヴィン」

 

「ん? あれは食べ物屋台だな。焼き鳥という串に刺した鳥の肉を売る屋台みたいだ。まあ、まだ開店してないが、明日から開店するだろう」

 

「ほう、焼き鳥かぁ~」

 

「食べてみたかったら明日からだな」

 

「うむ」

 

「アルヴィン、ここにいる連中の格好もコスプレなのか?」

 

「ん、ん~……、どうだろう? 学ランとセーラー服は制服だろうが、それも数種類あるし……、コスプレなのかなぁ?」

 

「ふ~ん、そうなのか。でもここの連中の制服ってあんまり色気がないな」

 

「まあ、色気よりも清楚が好かれる時代だからな。――だが、アレはあれでミニスカと別の魅力があるんだぞ」

 

「別の魅力?」

 

「ああ」

 

 例えばスカートのなかに頭を突っ込んだり、手を突っ込んだりするときとか……。

 

「アルヴィン」

 

「ん? どうした、アリカ」

 

「アレはなんなのじゃ?」

 

「ああ、アレは野外舞台だな。あそこで歌を歌ったり芸を披露したりするんだよ」

 

「ほう。…………」

 

「…………ん? どうした?」

 

 怪訝に思って訊ねてみると、アリカは躊躇うように小声でつぶやいた。

 

「いや、な。『紅き翼』のサウザンドマスターと街に繰り出したときとは大違いだと思ってな」

 

「サウザンドマスター?」

 

「無礼な赤毛の子供がおったじゃろう」

 

「ああ、そういえばいたな」

 

 アリカに叩かれてた奴。

 

「その者と街に繰り出したときは、碌に街の案内もせぬし、テロにも巻き込まれたりとなかなか大変じゃったんじゃ。まあ、そのおかげで戦争を停める手立てが手に入ったのじゃが……」

 

「『紅き翼』ごと全世界に指名手配されたからなぁ~。おそらく証拠も握りつぶされただろうな」

 

「はぁ……、そうじゃろうな」

 

 アリカは重たいため息を吐いた。

 

 一方、テオドラとニィは俺たちの話を聞いていなかったようで、視線はある屋台に注がれていた。

 

 アリカがテオドラとニィの視線の先を追ってつぶやく。

 

「アイスクリーム屋か」

 

「む! アリカはアレが何の屋台か知っておるのか!?」

 

「まあの。甘くて冷たい氷で作られた菓子を売っておる屋じゃよ」

 

「ほほう、そうなのかぁ~」

 

 涎を漏らしながらテオドラの視線はアイスクリーム屋に注がれており、俺の手がぎゅっと少しだけ強く握られた。

 

「旧世界のアイス……」

 

 頭の上からもニィのつぶやきが聞えてきた。

 

 俺は旧世界の金が入った財布をポケット内で出してアリカを含めた3人に訊ねた。

 

「食べてみるか?」

 

「よいのか!?」

 

「うん!」

 

「わ、妾もか?」

 

「そりゃあな。いままで捕まってて『闇の迷宮』で出される食事しか食べてなかったんだ。奢ってやるよ」

 

「やったぁ~! 大好きなのじゃ、アルヴィン!」

 

「私も……、普通以上に……、愛してる、アルヴィン」

 

「こ、ここは妾も何か言ったほうがよいのか?」

 

「ハハハハ、まあいいんじゃない? それよりアイス買いに行こう」

 

 アイスクリーム屋に足を向けて買いに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイスクリーム屋でアイスを買って、再び麻帆良学園の見学に移った俺たちは日が暮れるまで街をまわった。

 

 夕食も食べ終わって自宅に帰宅する。

 

 遊び疲れて眠るニィを背中に、テオドラを横抱きにして自宅へ繋がる道を進む。アリカにも若干の疲れが見えた。

 

 しばらく歩いて行くと大きく開けた場所へと出た。

 

 広い庭と家庭菜園、小さな小川と泉。大きなログハウス。600年以上前から建っている我が家だ。

 

 その玄関の前で金髪の幼女が不機嫌そうな顔をして立っていた。

 

「ただいま、エヴァ」

 

「…………おかえり、アルヴィン。……そいつらが今回引っ掛けてきた女か」

 

「アハハハハ……」

 

「誰が引っ掛けてきた女じゃ」

 

 アリカは寝ているニィとテオドラを起こさないように小声でつぶやいたけど、あながち間違えじゃないんだよな。

 

 エヴァはふんと鼻を鳴らすと、玄関のドアを開けて家のなか入り、首だけ振り返って言った。

 

「とりあえず、なかに入れ。その子供を客室でも寝かせてやれ」

 

「わかったよ。エヴァ」

 

 エヴァにうなずき、アリカを伴って玄関を潜って言う。

 

「ようこそ我が家へ、歓迎するよ。アリカ、テオドラ。それにおかえりニィ」

 

「う、うむ。世話になるのじゃ」

 

 アリカは恥ずかしそうに頭を下げた。ちなみにテオドラとニィは睡眠中なので返事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眠っているニィとニィを客室に寝かせたあと、リビングのテーブルについて今回の件をエヴァに説明していた。

 

「魔法世界の大戦争。平和のために秘密会談しようとして拉致された連合とヘラス帝国の姫。造物主の創りだした『完全なる世界』とその計画。……動機は不純だが、魔法世界を救う手段を探す事にしたアルヴィンと契約する事で世界の真実を知った連合側の姫であるアリカを伴い、ここへ来た、……か。――ふむ、なかなか大変な事になっているみたいだな、アルヴィン」

 

「まあね。今は世界樹が魔法世界を救うかもしれないから閉じ込められてた『闇の迷宮』に変わり身置いて帰ってきたんだよ。亜人のテオドラがここに出てこれたのは一時的に眷属にしたから」

 

「エヴァンジェリン、テオドラには『完全なる世界』と魔法世界の真実を……」

 

「わかっている。自分が人工生命で魔法世界の魔力で創造されている話など魔法世界の住民はもとより、あんな小娘には聞かせないほうがいいだろう。――そういえば、もう1人のニィという小娘はなんなのだ? ホムンクルスに似ているがアルヴィンと私が製作したものとは系統が違う……、それに直属の眷族でもあるようだ」

 

「ああ、ニィね。アリカに会う前に造物主に会って『完全なる世界』の目的とか聞いたあと、表立って大戦に介入しない対価にもらったんだよ。――まあ、俺の娘だね」

 

「……ふむ、そうか。それなら私の娘でもあるんだな」

 

「…………」

 

「なんだ、アリカ。その目は?」

 

「な、なんでもないのじゃ」

 

 エヴァから目を逸らすアリカは強引に話を変える。

 

「そ、そういえば主は真祖の吸血鬼なのじゃったな?」

 

 アリカの言葉にエヴァは眉をピクリと動かした。

 

 そして、威厳と自信たっぷりに改めて自己紹介をする。

 

「ああ、そうだ。真祖の吸血鬼、不死の魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」

 

 おそらくエヴァは真祖の吸血鬼であると凄めば、アリカも怯えるだろうと思っているんだろうが……。

 

「うむ、聞いておる。500年ほど前に拾った礼儀正しくかわいい娘で、いつの間にか大きく粗暴な態度を取るようになったとな。まあ、それでもかわいい娘には変わりないと話しておった」

 

「そ、そうなのか? ほ、ほほう、アルヴィンがそんなことを……」

 

 頬を赤らめ「うれしくないんだからな!」みたいな態度を取りながらエヴァはチラチラと俺を見てきた。こういうところがわかいいんだよなぁ~。

 

 エヴァの機嫌はかなりよくなったようだ。

 

「ま、まあ、世界樹の調査が終わるまで滞在するといい。それに私も手伝おう。魔法世界の崩壊は私たちにも影響が出るだろうからな」

 

 と自分から協力すると言ってきたほどだ。……アリカ、まさか狙ってやったのか?

 

「それは助かるのじゃ。魔法世界を代表して礼を言う」

 

「ふんっ、別に礼などいい。気まぐれのようなものだしな」

 

 おお、照れてるねぇ。かわいいよエヴァ。

 

 ――って、もう12時超えてしまってるな。

 

「じゃあ、話はこれまでにしてそろそろ寝ようか?」

 

「そうだな」

 

「そうじゃな」

 

 2人がうなずいたので席から立ち上がり寝室へと向う。

 

 寝室のドアを開け、虚空からそれぞれの寝巻きを出して着替え、奥から俺、エヴァ、アリカの順番でベッドに入る。

 

「……おい」

 

「ん? どうしたんだ、エヴァ」

 

「どうしたのじゃ?」

 

「どっ、どうしたんじゃない! 何故貴様まで同じベッドに入っているんだ! ていうか自然にアルヴィンの前で着替えたな、おい!」

 

「――っ!」

 

 エヴァの指摘にはっとするアリカ。一緒に寝るのが習慣化されてしまったようだね。

 

 怒り心頭のエヴァが俺に掴みかかる。

 

「やはりか貴様! 昔から貴様という奴は、姫やら女王やら貴族やら娼婦やら! 美人で気に入れば何でも喰らいおって! 私が毎回抜いてやってるのに……、こぉのっ、淫乱悪魔めがぁぁぁっ!」

 

「なっ!? アルヴィン、主はこんな小さな娘にまで……!?」

 

「何を言っている、私は小さな娘などではないぞ! 年ならすでに500歳は越えておるわ! ――アリカ! 言っておくがアルヴィンとコレは私のだから手を出すんじゃないぞ!」

 

 エヴァはそう宣言しながら俺のペニスを掴んだ。

 

 金髪幼女がペニスを握ってる姿にアリカは大声を出す。

 

「な、何を言っておるのじゃ!? そのなりでアルヴィンのチっ……、モノが入るわけがなかろう! 裂けてしまうぞ!?」

 

「ほぅ? まるで実際にその身で愉しんだことがあるみたいだな?」

 

「――っ! ……な、何のことじゃ?」

 

「ふんっ、惚けても無駄だ。――まさか一国の姫君ともあろう者が……」

 

「くっ……。わ、妾はまだ純潔じゃ」

 

「ふふっ。ああ、そのようだな。処女ではあるようだが――、その分口と尻の穴をかなり使い込んでいるな?」

 

「――っ!? な、何故そのことを!?」

 

 アリカが大声を出して驚く様子に、エヴァはいじめっ子のような笑みを浮かべた。

 

「やはりか」

 

「――っ、だ、騙したのか?」

 

「いや、騙すまでもない。こんな淫乱悪魔を近くに置いてるんだから、何もないはずはないと確信していただけだ」

 

「ぐぬぬ……」

 

 アリカは羞恥で顔を赤らめジト目でエヴァを睨むが、エヴァはその視線を笑顔で受け止めた。

 

「処女だけは守るために口と尻をアルヴィンに捧げたか」

 

「…………」

 

 エヴァから無言で視線を外すアリカ。

 

「ふふっ、まあ、いい」

 

 エヴァは益々笑みを強め、俺の服を脱がしてきた。

 

 元々下着1枚しか着ていない俺は手早く裸にされ、小窓がある奥の壁に股を開かされた状態で座らされた。

 

 そしてエヴァは俺の唇に軽くキスをすると、首筋から胸へと何度もキスをしながらペニスへと向かっていった。

 

 興奮した面持ちでエヴァはペニスを両手で挟む。顔を近づけ、小さな鼻をヒクヒクさせて臭いを嗅いだ。

 

「くっ、このいくつも混ざった女の臭い……。中でも強いのは……淫乱姫か」

 

「ぬ、主は何をしようとしておるのじゃ!」

 

「黙っていろ、淫乱姫」

 

「淫乱姫!?」

 

「オマンコでの快楽も知らないくせに尻の穴でよがるおまえは淫乱姫がお似合いだ」

 

「――っ」

 

 押し黙るアリカにエヴァは得意げな笑みを浮かべ、小さな口をいっぱいに広げてペニスにしゃぶりついた。

 

「ん、じゅっ、じゅるる……。……はぁはぁ、じゅっ、すぐに私の臭いを上書きしてやるからな」

 

「エヴァっ」

 

「ふふふっ、気持ちよさそうだな、アルヴィン。――ん、じゅぽっ、……どうだ? そこの淫乱姫よりも気持ちいいだろう。なにせ年季が違うからな」

 

「え、エヴァ……」

 

 俺の股の間にエヴァは顔を埋めてペニスを舐めしゃぶる。時おり吸血鬼の牙がペニスの竿にあたってアクセントになって気持ちよく、見た目金髪美幼女の奉仕にされるのは別の意味で興奮した。

 

 エヴァは両手を自らのオマンコに持っていき弄り始める。

 

「え、エヴァンジェリン……」

 

 四つんばいになっているエヴァの丁度尻側にいるアリカの視線は、エヴァのオマンコに釘づけのようだった。おそらくエヴァの大胆な手淫、もといオナニーにアリカは戸惑っているのだろう。

 

 エヴァの頭を撫でていると、そろそろ射精しろとエヴァが視線で訴え、スパートをかけてきた。

 

 エヴァの口内で亀頭全体を舌で舐められる。包まれるようにやさしく咥えられ、頬袋を突かせたり、喉で扱いたりゆっくりと快感を高めさせ、油断させたところで尿道口にちゅぅぅぅっと吸いついてきた。

 

「う、ううっ、エヴァ!」

 

「――うぶっ、ふぅっ」

 

 エヴァの頭を両手で掴んで引き寄せる。

 

 俺の行動に大きく瞳させたエヴァだったが、すぐに目を細めてやさしく微笑んだ。

 

「で、射精()る!」

 

 ビュッ、ビュビュッ、ビュルゥゥゥゥ……。

 

「うむっ! ぅく、……ごきゅ、ごくっ……、ごくっ、じゅるるっ、んぐっ!」

 

 口内へ大量に放った精液をエヴァは漏らさず飲み干し、尿道にも精液を残さないようにちゅぅぅぅっと吸いつき続けた。

 

 完全に射精が止まったのを確認すると口を離した。

 

「はぁはぁ……、ふふっ、相変わらず内包している魔力も味も全てが極上だな」

 

「エヴァも最高に気持ちよかったよ」

 

「ふふっ、もっと気持ちよくしてやるから覚悟していろ」

 

 エヴァは顔を指差して得意げに言った。

 

 そのかわいらしさにギンギンに大きくなるペニス。

 

 エヴァは満足げにペニスを見つめると、幼女の見かけに似合っているのが不思議な大人っぽい黒のショーツを横にずらした。

 

 俺に背を向け中腰になる。ペニスに片手を添えてオマンコに狙いを定めた。

 

「さあ、淫乱姫。そこで私たちの愛をよく見ていろよ」

 

「え、エヴァンジェリン……」

 

 エヴァはゆっくりと腰を下ろす。

 

 ペニスの先端がエヴァのロリマンコのスジに挟められ、膣口にすべるように当てがわられて、ぐぐぐっと押しひろげるようにじゅっくり、熱いオマンコに包まれていく。

 

「す、すごいのじゃ……」

 

 エヴァの肩越しにアリカの顔を覗ける。その視線はエヴァのロリマンコに釘付けのようだ。

 

「んっ、くっ……。――ふふふっ、どうだ? アルヴィンのモノが私のなかに入ってるのがよく見えるだろう?」

 

「い、痛くないのか?」

 

「ふんっ、人よりも耐久力はあるから痛みは少ない。無茶をしない限り裂けないさ。まあ、少し窮屈なだけだ。それよりも快楽のほうが大きいぞ。――んんっ、こ、コラ、いきなりなかで跳ねさせるな!」

 

「仕方ないだろ、エヴァ。エヴァのオマンコがぎゅうぎゅうに狭くて絞めてくるから、じっとはしていられないんだよ」

 

「ふふふっ、そうか。そんなに私を犯したいんだな。――よし、この淫乱姫で発情しないように精液を搾り取ってやる」

 

「わ、妾を淫乱姫などと――、っ!」

 

 アリカが叫ぼうとした瞬間、エヴァが腰を使い始めた。

 

 ゆっくりと腰をあげて、下ろす。

 

 アリカの目からはエヴァのロリマンコが巨チンを咥えてるところがよく見えるんだろう。

 

 信じられないものを見るように結合部を見つめていた。

 

「くぅっ、や、やっぱり久々だと感じすぎるな。……ぁくっ、私のなかでアルヴィンが跳ねてる……。――ふふっ、気持ちいいのか?」

 

「当然だろっ、エヴァのオマンコ、すごく狭いのに熱くて愛液でドロドロしてて、奥までやわらかいんだ。気持ちよすぎるぐらいだよ」

 

「ふふっ、そうかそうか。そんなに気持ちいいか! ――っん、はぁっ、アルヴィンのも雁が凶悪で狂ってしまいそうなぐらい気持ちいいぞ!」

 

「エヴァっ、も、もうそろそろ……!」

 

「ああ、わかってるよ。――子宮もアルヴィンの精液が欲しくて下りてきているのを感じるだろう? ……くっ、さあ、子宮口をこじ開けて私の子宮に存分に射精しろ!」

 

 エヴァは俺に背を預け、そう叫びながら腰をふる。

 

 きゅうううっ、きゅぅぅぅっとエヴァのロリマンコが絞まり、精液を子宮で受け止めようと吸いついてくる。

 

「エヴァ、なかに射精()すぞ!」

 

「ああ、存分に射精して私を満たしてくれ!」

 

 ビュッ、ビュルッ、ビュルゥウウウウウウッ!

 

 フェラチオとは比べ物にならないほどの精液をエヴァの子宮に吐き出す。

 

 ドブドプと吐き出される精液が子宮内を満たしてもまだ射精が続く。

 

「――んんっ、くぅっ、はぁはぁ、はぁっ! ふふふっ、はぁぁっ」

 

 いつもなら大声で叫びながらよがるエヴァだが、やはりアリカの前とあっては声を抑えたのだろう。

 

 ふふふんっと、得意げに鼻を鳴らしてオマンコからペニスを抜き、呆然としているアリカに、中出しされて大きく開いたままになった膣口から漏れ出る精液を見せつけながら言う。

 

「どうだ、淫乱姫。これが本物のセックスだ。尻の穴ではない、本来出すべき場所に出すセックス。子作りのためのセックス。子宮で煮えたぎった精液を受け止めるのは最高に幸せな気分だぞ」

 

「…………」

 

 エヴァの言葉に何も言えずに口ごもるアリカ。その様子にエヴァは優越感でも感じたのか、さらに挑発するように言葉を続ける。

 

「ハハハハッ、どうだ? 羨ましいか? 口と尻の穴にしか射精してもらえない淫乱姫よ」

 

「く、口と尻でするのはわ、妾が望んだことで……」

 

「望んだことねぇ」

 

 エヴァはアリカを上から下まで観察するように見つめてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「私にはおまえが私を羨ましがっていようにしか思えないんだがな」

 

「――っ」

 

 エヴァの言葉に明らかな反応を見せたアリカ。

 

 エヴァはアリカを追い詰めるように、惑わすようにつぶやく。

 

「本当はオマンコに入れて欲しくて溜まらないんだろう? 一国の姫だからと始めは断わっただろうが、口と尻で何度も精液を受け止めたり、アルヴィンに愛撫されるうちにオマンコに入れたいと望み始めたんだろう?」

 

「そ、それは……」

 

「まあ、それも当然だろう。男と違って女の尻には性感帯はないのだからな。オマンコが疼くのはしかたがないさ。いままで尻の穴と愛撫だけで満足できていたことが不思議だな」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうだ。――そういえば淫乱姫、確か大戦が終わるまでアルヴィンを傍に置くんだったな?」

 

「あ、ああ……」

 

「ふむ、それなら遅かれ早かれ処女を捨てることになるだろうな」

 

「――っ!?」

 

「そんなに驚くことか? いまでも我慢できないクセに」

 

「…………」

 

 俯くアリカにエヴァは続ける。

 

「その寝巻きの下。愛液でじゅっくりと濡れているオマンコを弄りたくて堪らないんだろう? オマンコを使えなくしている立場と処女膜が邪魔で仕方ないんだろう? ――そんなおまえがこれまで通り、口と尻の穴と愛撫だけで我慢できるはずがないだろうよ。1ヶ月――、いや、10日もしないうちにアルヴィンを求めていただろうな」

 

「ぬ、主にわ、妾の何が分かる……!?」

 

「ふふっ、わかるさ。私も似たようなものだったからな」

 

「――っ!?」

 

 エヴァは俺に背を預けて話し始めた。

 

「私はこんななりだろう? 私とアルヴィンがいくら繋がりたいと思っても、小さい子供のオマンコでは最初繋がれずに、毎夜口で抜いたり、尻の穴で抜いていたり、愛撫で慰めあったりしていたんだ。――オマンコを使えない苦しみは人一倍分かってるつもりだよ」

 

「…………」

 

「アリカ、オマンコに入れてあげられなくて辛いと感じたことはないか? 口や尻の穴でなく、本当に入れる場所を使って精液を受け止めてやりたいと思ったことはないか? 子宮が疼きに答えられない自分が情けなく思ったことはないか?」

 

「…………」

 

「私はアルヴィンの精液を受け止められなくて辛かった。……胃や腸にたっぷり精液が入っているのに、肝心の子宮は空っぽなのはとても空しく思ったよ」

 

「……エヴァンジェリン……」

 

 アリカが顔を上げたところでエヴァは再度問いかける。

 

「おまえはいつまでそうしているつもりだ?」

 

「…………」

 

「私にはわかる。すでにおまえはオマンコ以外をアルヴィンに預けたんだろう?」

 

「…………」

 

 エヴァの言葉に無言で自分の体に目を落とすアリカ。

 

「考えてみろ、アリカ。普通、そこまで体を預けることなどできるはずがないだろう? おまえの心の内ではアルヴィンに処女を捧げたくて、子宮に射精してもらいたくて仕方ないんだ」

 

「じゃが、妾は……」

 

「一国の姫か?」

 

「…………そうじゃ」

 

「ふふっ、嘘だな」

 

「……嘘?」

 

 過去形に疑問を感じて顔を上げたアリカにエヴァは言い放つ。

 

「ああ、おまえは姫などではない。なにせウェスペルタティア王国のアリカは魔法世界で捕らわれているんだからな。――今はここにいるのはただのアリカだろう?」

 

 なかなかうまいこと言うね、エヴァ。だから途中から淫乱姫って呼ばなくなったんだな。

 

 俺が感心する一方でアリカは納得できないと声をあげようとするが、実際に魔法世界に自身の身代わりがいるので自分が本物の姫だとは強く断言できないでいた。

 

 エヴァはそろそろだろうと、起き上がりアリカの顔を正面から見つめて踏ん切りをつけさせるようにつぶやいた。

 

「魔法世界に帰るまで、せめてそれまでは一国の姫という立場は忘れて男に抱かれてみろ。――魔法世界にいるほとんどが知らない大戦が起きている理由や、魔法世界の崩壊など、全てを1人で抱え続けるとすぐに潰れてしまうからな」

 

「エヴァンジェリン……」

 

「ふん、エヴァでいい。――それじゃあ、お膳立てはしてやったんだ。最高の一夜を味あわせてやれ、アルヴィン」

 

 エヴァはそう言うとベッドから下りて部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エヴァがいなくなった寝室のベッドの上、俺とアリカは裸で抱き合い、唇を交わし合っていた。

 

 少し前までのたどたどしい動きもすでになく、こちらの動きに合わせて舌を合わせて絡めてきてくれる。

 

 唾液を混ぜ合い、啜り合ったところでアリカをベッドに押し倒す。

 

 指をいつものアナルではなく、オマンコに持っていってスジをなぞる。

 

 そして指先を膣口にあてがい、アリカに訊ねる。

 

「……本当にいいのか?」

 

「……うむ」

 

 アリカは小声で小さくうなずいた。

 

 これもエヴァのお膳立てのおかげだろうな。

 

 アリカの股に両手を差し込んでゆっくりと広げる。

 

 アリカは抵抗もなく股を大きく開いた。

 

 無毛の恥丘の下、オマンコのスジから少しだけ覗けるピンク色。

 

「あ、あまり見るではない……」

 

「何度も見て弄ってるが、綺麗だ」

 

「――っ」

 

 真っ赤になるアリカ。愛撫は――。

 

「ちゃ、ちゃんと濡れておるから、じゅ、準備はよい」

 

 実際にオマンコを見るとちゃんと奥まで濡れているみたいだった。まあ、前から指1本ぐらいなら入れていたから大丈夫だろう。

 

「わかったよ」

 

 俺はうなずき、ペニスをアリカのオマンコにあてがった。

 

 エヴァとの行為でついたものでなく、洗ってローションをまぶしているので、スムーズに入れることができるだろう。

 

「入れるぞ?」

 

「あ、アルヴィン……」

 

「ん?」

 

「その……、て、手を繋いでくれぬか?」

 

「ああ、喜んで」

 

 アリカと手を繋ぐ。膣口にしっかりペニスの先端を咥えさせているから、このまま腰を進めてもズレることはないだろう。

 

 改めてアリカに視線を向けると、アリカは無言でうなずいた。

 

 ゆっくりと腰を進めて、膣口を拡げていく。

 

「――っ、んっ!」

 

 アリカの眉が悩ましく歪む。指よりも1回りも2回りも太く、長いペニスがゆっくりと咥え込まれていく。

 

「――っあ、く……、はぁはぁ……、……っ」

 

 亀頭が入ったところで先端に何かが当たった。

 

 少し動かすと、アリカの体がビクンと跳ねた。処女膜だな。

 

「アリカ……」

 

 ――処女をもらうぞ? そう声に込めて名を呼ぶ。

 

「アルヴィン」

 

 アリカは俺を正面から見つめて名を呼ぶと、ぎゅっと手を強く繋いでうなずいた。

 

 俺は腰を前へ進め、ブチブチと処女膜を破きながら、一思いに子宮口近くまで貫いた。

 

「――ああっ、くぅっ! ~~~~っ!」

 

 さすがアリカと言うべきか、大きな悲鳴をあげることはせずに目を瞑って耐え切った。

 

「はぁはぁ……、ぅっ」

 

 破瓜の痛みを感じ続けているからかアリカの表情は硬く、オマンコもギチギチに絞まっていた。

 

 手を繋いだまま上からアリカを見下ろすと、オマンコから赤い筋が伝っていた。

 

 しばらくは痛いだろうとアリカの体に覆いかぶさる。

 

 アリカの胸の感触を味わいつつ、お互いの心臓の鼓動を聞きながら抱き合う。

 

 やっと入れられたアリカのオマンコ。

 

 想像以上に奥まで濡れていて、締めつけも十分。全体的に粒が多くザラザラとした肉壁はとても気持ちがいい。

 

「はぁはぁ、アルヴィン……」

 

「アリカ、確かに処女をもらったよ」

 

 そう笑顔で言うと、アリカは恥ずかしそうに顔を背けた。オマンコがピクピクとしっかり反応してるところがかわいらしい。

 

「アリカ……」

 

「――っ、す、すまぬが、まだ動かないでくれると……」

 

「ああ、わかってるよ。馴染むまで動かない。代わりに別のところで楽しませてもらうからね」

 

 アリカと唇を合わせ、ゆっくりと手を離して胸に触れる。

 

「――ぁっ」

 

 重ね合わせている唇の間からアリカの吐息が漏れた。

 

 さらにアリカと激しくキスを交わしながら胸に置いた手を動かし始める。

 

 横から前へ、胸全体を解しながら、乳首を指で摘まんだり、爪で掻く。

 

「くっ、んんっ……、はぁはぁ……、アル……」

 

「すごく気持ちいいよ、アリカ。胸を揉む度にオマンコが絞まってすごくいい!」

 

「こ、これっ、……そ、そんなに揉むんじゃないっ!」

 

「前にも言ったけどこんな極上の胸、目の前にあるのに触らないままでいるほうが無理だって」

 

「はぁはぁ……、まったく……、主という奴は……」

 

 呆れたようにつぶやくアリカだけど、体のほうはゆっくりとペニスに馴染んできていた。

 

「ア、アルヴィン……」

 

 アリカは恥ずかしそうに俺の名を呼ぶ。

 

 言いたいことはすでにわかっていた。

 

 アリカに覆いかぶさり、耳元で小声で訊ねる。

 

「そろそろ動くか?」

 

「――っ」

 

 アリカはばっと顔を赤らめる。いつもよりもじもじと、何か言おうとしては止め、ジト目で睨み、無言になったあとゆっくりとうなずいた。

 

「や、やさしく、ゆっくりじゃからな……?」

 

「――っ、ああ。やさしくするよ、アリカ」

 

 いまのはかなりの破壊力があった。うん、本当にすっごくエロかわいかったよ、アリカ!

 

 上半身を起こし、アリカの腰の横に手をついてゆっくりと腰を引く。

 

 ずずずと雁首で狭い膣をひっかきながら引き抜き、膣口に差し掛かったところで再び子宮口の近くまでペニスを差し込む。

 

「はぁはぁ……、くぅぅぅっ、はぁはぁっ、んっ、アル、ヴィンっ……」

 

「ああ、すごいよアリカ。熱々で狭くてザラザラで、奥までしっとり濡れてて……、子宮が吸いついてきている……」

 

「ぁんっ……、わ、妾もアルヴィンをなかに感じるのじゃ。……すごく熱くて、心まで温くしてくれる……。わっ……、妾を奥から満たしてくれる……」

 

 アリカは子宮がある下腹辺りを両手でさすりながら微笑む。心も膣もだいぶほぐれてきたみたいでピストンがスムーズになってきた。

 

 アリカの片足を抱いて持上げ、横向きに寝かせて捻れた膣内をゆっくりとピストンする。

 

「はぁはぁっ、す、すごい……、アルヴィンっ!」

 

 片足を持上げながらオマンコをつくと、アリカのタガが外れたのか大声でよがり始めた。

 

 腕枕するように差し込んだ手をアリカの口元に持っていくと、アリカはその手に吸いついてきて、指を奥歯で甘く噛んだ。

 

「アリカ、すごく気持ちいい! キュウキュウ絞まってきてすごくいいよ! ――アリカも気持ちいい?」

 

「そ、そへふぁっ……」

 

「正直に今の気持ちを言えばいいんだよ、アリカ」

 

 アリカの口から指を抜いて、ペニスの先端を子宮口に軽く押しつけるようにぐりぐりとピストンしながら訊ねる。

 

「――っん! ぅんんっ、はぁぁぁっ! ううっ、くぅっ!」

 

 キュンキュンとアリカの膣が絞まり、子宮が吸いついてくる。

 

「ぅぅっ、あ、アルヴィン……」

 

 ビクッビクッと体を跳ねさせるアリカ。軽くイっているみたいだけど、まだ足りない。

 

「アリカ」

 

「はぁはぁ……、すごく気持ち……、いいのじゃ……。こ、これが本物のセックスなのか……?」

 

 ふふっ、いい感じに蕩けているみたいだな。

 

 そろそろ俺も射精したいし、スパートをかけないとな。アリカの子宮口に亀頭を押しつけるよにピストンしながら耳元で言う。

 

「アリカ、このまま子宮に射精()すぞ!」

 

「――っ! そ、それ、は……」

 

 やはり中出しには抵抗があるようだが、いまさらだ。むしろここで中出ししないと臆病になってしまうかもしれない。

 

 アリカと密着し、思う存分に射精する。

 

 ビュルッ、ビュルゥゥゥッ、ビュッ、ビュビュウウウウウウウ……。

 

「――ううっ! ぅくっ、あああああぁあああああああああああああ~~~~!」

 

 アリカの絶叫が部屋に響く。防音対策が万全のこの部屋でなければ、おそらく森にまで聞えていただろう。

 

「はぁはぁ……、く、くぅっ、熱い……、ま、まだ中に出て……」

 

「ああ、すごく気持ちいい。このまま俺の精子で子宮いっぱいにしてやるからな」

 

「ぅぅっ、も、もう入らないのじゃっ。あ、アルヴィン……」

 

 トロトロに蕩けた顔でアリカは抜くよう振り返って懇願する。あ~、確かに初めての中出しで俺の精液はいろいろヤバい。

 

 魔族のなかでも特異な性質を秘めている俺の精液は女の子宮にこびりついて蠢くし、軽い媚薬効果も秘めていて意図的に仕込めば、人間相手の妊娠確立120%だからな。

 

 腰を引いてずぶぶんとペニスを引き抜く。

 

 栓を失ったオマンコから子宮で受け止め切れなかった精液が溢れ、アリカはビクビクと体を震わせた。

 

 ゆっくりと上げさせていた足を降ろして後ろから抱きしめる。

 

「最高だったよ、アリカ」

 

「……わ、妾もじゃ……」

 

 抱きしめる手に自分の手を重ねながらアリカは笑顔を浮べた。

 

 ……………………。

 

「……もう一度……、するか?」

 

「いいの、アリカ」

 

「まあ、いつも2、3回はしておるし。ま、まだ硬いのが股の間に……」

 

「あははは。――でも、アリカ、痛くないのか?」

 

「だ、大丈夫じゃ。……最初は痛かったが、もう痛くはない。むしろ……」

 

「むしろ?」

 

「な、なんでもないのじゃ!」

 

「ふふっ、そうか。じゃあ、今度は後ろからしていい?」

 

「う、後ろからっ……!? ……う、わかったのじゃ。――じゃがまだ慣れてないから始めは――」

 

「ああ、わかってる」

 

 四つんばいになったアリカのオマンコに標準を定めてペニスを差し込んだ。

 

 さあ、2ラウンド目の開始だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、御主人。アイツラマダ盛ッテルゾ。イイノカ?」

 

「ふんっ、別にあんな小娘が増えたぐらいで問題ないさ」

 

「ソウナノカ? ソノワリニハ不機嫌ソウニ見エルゾ?」

 

「うるさい! 自分の男が他の女と一夜を共にしてるのに、機嫌よくなるわけがないだろうが!」

 

「ダッタラ何デオ膳立テナンカシタンダヨ?」

 

「それは……、何百年もこの面子でいるんだ。そろそろ違う女が増えてもいいだろう。それにあれほどの女なんだ、時の流れによって別れを繰り返すアルヴィンと一緒にいる資格は十分あるだろう」

 

「ン? 御主人ハアノ女ヲ不老不死ニデモスルキカ?」

 

「ふん、私がするわけじゃないぞ。――奴が自分でなるんだ」

 

「?」

 

「あいつの魔法世界を救いたいという望みは、到底人間のまま叶えることはできないものなんだよ。大戦が終わって解決しないどころか、それでやっと救済の入り口に立つことができることだ。それにそもそも魔法世界の大戦が無事に終わるとは思えない」

 

「ダガヨ、アイツガ人間止メル理由ニハ足リナインジャナイカ? ムシロナラズニ終ワル可能性ガ高イト思ウゼ」

 

「はっ、そんなこと私も分かっているさ。――分かっているが、いずれあいつは人間を止めると私の勘がいってるんだよ」

 

「御主人ノ勘、カ……。イマイチ頼リニナラネェナ」

 

「茶々ゼロ……、従者の分際でいい度胸だな、おい」

 



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第12話 学園祭から魔法世界へ ☆

 キングサイズのベッドの上、俺は仰向けで寝転がっていた。

 

 仰向けで寝転がる俺の上には裸のアリカが。

 

 昨夜処女をもらったあとで、そのまま何度も朝方近くまでセックスを続け、やっと先ほど終わったところだった。

 

 アリカの長くてサラサラの金髪を指ですかしながら撫でると、アリカは気持ちよさそうに吐息を漏らす。

 

 いまの彼女からは王族の責務や威厳など余計なものはなく、彼女の内に隠れた少女が現れていた。

 

 ん~、それにしてもこの格好はちょっとマズいなぁ。

 

 アリカの胸の感触はもとより、オマンコにはペニスが入ったままだし。

 

 アリカの体中から俺の臭いがしたり、吐息が首筋に当たったり、ペニスを動かすとアリカが反応したり……。

 

「色々とマズいよなぁ」

 

「………………なら、どかせばいいだろう?」

 

 声がした方向に視線をもっていくとエヴァが立っていた。

 

「う~ん、でもこの状況って男としてかなり役得だろ? それにこんなに気持ちよさそうに寝てるんだしさ」

 

 風を引かないようにシーツで体は隠してあるが、アリカの顔は出ている。その顔を覗きこんだエヴァは軽く舌打ちした。

 

 そしてエヴァはため息を吐いてドアに手をかけた。

 

「まったく、久しぶりにアルヴィンが作った食事を食べれると思ったのに……」

 

「ゴメンな、エヴァ」

 

「まあ、いいさ。――慣れてるしな」

 

「う……」

 

 そう言われるといろいろ思うところがあったり……。

 

 エヴァは俺のほうへ顔だけ向けて、ニヤリと指を指して笑んだ。

 

「ふっ、テオドラとニィの対応は私に任せておけ。――だが、起きるのがあまりに遅いとそいつらをつれて呼びに来るからな?」

 

「ああ、わかったよ。ありがとう、エヴァ」

 

 エヴァはドアを開けて部屋から出て行った。

 

「さてと、いつ起こそうかなぁ」

 

 俺は幸せそうなアリカの顔を覗きこみながらため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカの寝顔を眺めながらしばらく。9時を回ってそろそろ起こさないといけないなと呼びかける。

 

「アリカ~、そろそろ起きろ~」

 

「ん……、ぅん……?」

 

 アリカの割れ眉がピクリと反応する。

 

「アリカ~」

 

「……アル、ヴィン……?」

 

 アリカはゆっくりと目を開けた。手で目を擦りながら周りを見て――。

 

 ――ビクッ。

 

「――っ!?」

 

 アリカの体が跳ねる。入ったままになってるペニスに膣が反応し、改めてその事実に気づいたアリカは一瞬で真っ赤にして俯いた。

 

 最近ではいつも裸で抱き合うように寝ていて普通になってきたのだが、さすがに繋がったまま寝た事と、アナルではない子作りを目的としたオマンコでのセックスしてしまった事で許容量を超えたようだ。

 

 真っ赤になった顔を無言で逸らすアリカは俺の胸に手をついて起き上がろうとする。どうやら入れたままでいるのが恥ずかしいらしい。

 

「――っん。……あぁ、はぁぁっ!」

 

 アリカはオマンコに入ったままになっているペニスに悩ましく体を震わせるが、それらを必死に我慢して、後ろに倒れるようにオマンコからペニスを引き抜いた。

 

「――はぁっ、ん……、はぁはぁ……」

 

 仰向けで片腕を使って顔を隠すようにしたアリカ。その体のいたるところにキスマークがついていて、軽く開いた股の間からは固まりかけの精液が覗けた。

 

「おはよう、アリカ。――濡れタオル使う?」

 

「はぁはぁ……、た、頼むのじゃ」

 

「わかった、はい」

 

 虚空からいつものように濡れタオルを出現させてアリカに手渡す。

 

 アリカはまず顔を拭いて胸から下半身へと清めていく。

 

 あ~、シーツもベトベトだな。洗濯しないと。

 

「ア、アルヴィン……」

 

「ん? どうしたのアリカ」

 

「その……、わ、妾は……」

 

 アリカは体を手で隠し、もじもじとしている。その視線はシーツに付着した破瓜の血。

 

 俺はアリカに笑顔でうなずいて言う。

 

「ああ、最高の夜だったな」

 

「――っ」

 

 顔を合わせないように俯くアリカを、下から覗きこみながら訊ねる。

 

「嫌だったか?」

 

「そ、それは……、嫌じゃ……、なかった……、のじゃ」

 

 もごもご言い難そうにしながらも否定するアリカ。

 

 いつもの無表情といわれがちなクールな表情を作って必死に感情を隠そうとするアリカはとてもかわいらしかった!

 

 もう、すごくかわいいじゃないか! これが萌え殺しというものなのか!?

 

「アリカ――」

 

「ア、アルヴィン……」

 

 湧き上がった感情のままアリカの名を呼んで顔を近づけていくと、アリカも俺の名を呼び、顔を上げてゆっくりと目を細めてくれた。

 

 そのままゆっくりと唇を重ねて離す。

 

 見詰め合って再び唇を重ね、口を開けて舌を絡める。

 

「んっ、あぅっ、アル……」

 

「じゅるぅっ、はぁ……、アリカ」

 

 ゆっくりと舌同士を絡めながらアリカの脇から胸へと手を持っていく。

 

「アルヴィン……っ」

 

 俺の胸に手を当てて離そうとするがまったく力が入っていない。

 

「アリカ、……またしようか?」

 

「……な、そ、それは……」

 

 抱きしめながら囁くと、アリカは視線を逸らした。胸の前に手を置いて恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 

 ここは強引に攻めてみようかと、ベッドに押し倒す。

 

 先ほどまで挿入していたからオマンコの奥まですでに濡れているのは分かっている。

 

 見つめながら、片手でペニスをアリカの膣口に合わせてゆっくりと腰を進める。

 

「――っん、アル……っ!」

 

 先ほどまで挿入していたため、まだ柔らかく広がっていてペニスはスムーズにアリカのオマンコに飲み込まれていく。

 

「あ、ああっ! く……、ぁあっ! はぁはぁ……、くぅっ……!」

 

 アリカの膣道をペニスがゆっくりと押し拡げながら進み、やがて最深部である子宮口へと到達した。

 

 立てさせた両膝を掴んでオマンコに挿入しているペニスをビクッビクッと跳ねさせると、アリカは顔を歪めて後ろ手にシーツをぎゅっと掴んだ。

 

「あ、朝からこのような行為をするのは……、ダ、ダメじゃ……っ、す、するならよ、夜に……、――くっ、んんっ!」

 

 赤くした顔でアリカは抗議の声を上げるが、俺はそんなアリカも愛おしく、腰を少しだけ動かし、オマンコを雁で掻いて強制的に黙らせる。

 

 昨夜の俺は一睡もしておらず、ずっとペニスに膣を入れたままだったので、もう興奮は収まらない。

 

 仰向けで股を開かされたアリカを見下ろしながらペニスでオマンコをほぐし始めた。

 

「アリカ、すごく気持ちいいよ! ん~、最高だ!」

 

 アリカの子宮口近くを亀頭の雁首で小刻みに擦りあげながら叫ぶ。

 

「はぁはぁっ、くっ! アルヴィンっ……、お、奥ばっかり攻めるのはダ、ダメ……っ!」

 

「ふふっ、アリカは奥を擦られるのが大好きなんだね。表情もいつものアリカと違ってて締まりのないすごくエッチな顔になってる」

 

「――っ! み、見るでは、ないっ……、わ、妾のこんな顔……、見てはダメなのじゃぁぁぁっ」

 

「ダメだよ、アリカ。すっごくかわいくて綺麗でエッチななんだから、隠したら勿体無いって」

 

 顔を隠そうとしていた両手を取って覆いかぶさる。

 

 ベッドに両手を縫いつけて逃げ道を塞ぎ、快感が昂ぶりトロトロになってきたので大丈夫だろうと、ペニスでグリグリと子宮口を捏ねて更なる大きな快感を送り込む。

 

「そ、それはダメじゃぁぁぁっ! くああっ! ああっ、も、もうい、イクッ! イって、イってしまうぅぅぅっ!」

 

 子宮口を亀頭でぐりぐりと捏ねられたアリカは体をビクッ、ビクッと大きく震わせて背を逸らした。

 

 涙や鼻水、涎といったものを漏らしながら叫び声を上げ、だらしなく股を開いてされるがままになる。

 

「ああっ! ダメッ! ダメじゃ! おかしく、おかしくなってしまう! あああっ! イクゥウウウウウウウウウウウウ~!」

 

 絶叫するアリカにやはり子宮攻めはやりすぎたなと反省しながらも、子宮は精液が欲しいと吸いついてくるので、俺はアリカの絶頂に合わせて精液を流し込み始める。

 

「俺もイクぞ、アリカ!」 

 

 ビュッ! ビュビュッ! ビュルルゥゥウウウウウウウウウウ!

 

「精液を子宮で受け止めろぉぉぉっ!」

 

 大声で叫びながら腰を打ちつけ、子宮口に亀頭の先端をめり込ませ精液をドクドクと流し込む!

 

「あ、熱っ! ――っんんっ! ま、またイクッ、……な、中に出されてまたイってしまうのじゃぁぁぁっ~~!」

 

 アリカは叫び声を上げ、白目を剥きそうになりながら、ビクビクと全身を跳ねさせて何度も絶頂を迎えた。

 

「はひぃ……、はぁはぁっ……、んぁ……、ひぃ……、ふぅぅ……」

 

「やっぱりおまえは最高だよ、アリカ」

 

 俺は起き上がり、まだ時おり体をビクッと痙攣させながら快感に酔っているアリカからゆっくりとペニスを引き抜いた。

 

 ペニスを引き抜くと同時に、狭い膣で塞がれていた分の精液が解放され、ビュクッ、ビュルっとアリカの体に精液が降り注ぐ。

 

「はぁはぁっ……、ま、また汚れてしまったのじゃぁぁ……」

 

 アリカは精液を浴びながらつぶやき、大きく胸を揺らしながら呼吸を繰り返した。

 

 俺の眼前には、全身に精液を浴びて仰向けで寝転がり、大きく開いた股からもドクドクと大量の精液を溢れさせながら呆然とするアリカが映った。

 

 昨夜に続いて子宮で精液を受け止め、その熱と子宮にこびりつき蠢く精液に快感と満足感を味わい蕩けた表情で息を吐くアリカが映った。

 

 そのアリカのあられもない姿に俺の剛直がさらに固さを増し、急ピッチで新たな精子を精製する。

 

 もっと……、もっとアリカが欲しい……っ!

 

 俺の精液の臭いが口や尻、オマンコも含めて全身にこびりついて取れなくなるまで犯したい! 

 

 俺のペニスでしかイけない体にしてやりたい!

 

 俺のペニスの形にオマンコを変えてやりたい!

 

 俺は抑え切れなくなった欲望に身を任せ、アリカの太ももに手をついた。

 

 そしておそらく断わられても犯すだろうが、わずかに残っていた理性で確認するようにアリカに訊ねた。

 

「アリカ、もう一度……、もう一度しようか?」

 

「――っ」

 

 アリカは俺の発言に驚いたようだが、すぐに大きなため息を吐いて投げやりにうなずいた。

 

「……もういまさらじゃ……、勝手にせよ」

 

「ありがとう。――じゃあ、別の体位でしようね」

 

 アリカからお許しが出たところで片方のヒザを掴んで胸に抱き、もう片方の足を跨いで、横向きの状態で挿入を始めた。

 

「――っ、あ、ああ……」

 

 あふれ出てくる精液を子宮に押し戻すようにペニスを入れていく。アリカはペニスを進めるたびに喘ぎ声を漏らして腰を悩ましくくねらせた。

 

「気持ちいい、すごく気持ちいいよ、アリカ」

 

「んんっ、はぁはぁ……。も、もう子宮はいっぱいじゃから、だ、射精()すときは口か体にするのんじゃぞ……?」

 

 嫌がってる風だったけど、なかなかノリ気じゃないか。

 

「ああ、射精すときは口か体に射精すよ」

 

 ズブズブとオマンコにペニスの形を覚えさせるように、ゆっくりと腰を動かしてセックスを楽しんでいると、部屋の外からすごい速度で近づいてくる気配が……。

 

 ん? どうしたんだ?

 

 少しだけ気になってピストンの速度を緩めてドアの方に視線を向けるとその瞬間、バンっと大きな音と共にドアが開いた。

 

「アルヴィン! アリカ! し、ししし、真祖の吸血鬼が! 真祖の吸血鬼がいるのじゃぁぁぁっ! 血を吸われてしまうの――、じゃ?」

 

「……テオ」

 

「…………て、テオドラ……」

 

「…………アルヴィン、アリカ……? な、何をしておるの、じゃ?」

 

「「………………」」

 

 空気が凍った。

 

 丁度片足を上げさせてドアのほうに結合部を向けているので、テオドラのほうからは結合部が丸見えのはず。

 

 さらにアリカの体のいたるところに虫に刺されたように肌の一部を薄く赤にしてるキスマークやドロドロの白濁した精液が……。

 

 だんだんと顔を赤らめていくテオドラ。ぷるぷると体を震わせ、顔を両手で多い、腹から息を出すために肺いっぱいに空気を取り込み……。

 

「ぬ、主らはな、何をやっておるんじゃぁぁぁぁっ!」

 

 テオドラの心からの悲鳴が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前10時。

 

 俺とアリカ、エヴァとニィとテオドラの5人はテーブルについて軽めの朝食を食べていた。

 

 寝室にテオドラが乱入したあと、続けてエヴァが現れたことでテオドラが気絶し、結局消化不良のままセックスを切り上げたのだ。

 

 だがテオドラはセックスしていた事を覚えているようで、顔を合わせづらそうにしながら食後の紅茶に口につけていた。

 

 アリカもクールぶっているが、テオドラと顔を合わせずらそうにしている。

 

 エヴァはそんな様子を眺めながら、いじめっ子のような笑みを浮かべてアリカに言う。

 

「まさか昨日まで処女だった奴が朝まで続けるとは。おまえはとんだ淫乱気質のようだな、アリカ」

 

「――っ、わ、妾は……」

 

 アリカは何か言おうと口を開くが、何を言っても逆に立場を悪くするだろうと顔を赤くしながら俯く。

 

 そんな様子にエヴァはますます笑みを強くし、マイペースなニィはやっとしたのかとうなずいていた。

 

 アリカはテオドラ、エヴァ、ニィの視線を受けて恥ずかしそうに顔を赤らめ、我慢できないと立ち上がり、話を強引に切り替えた。

 

「がっ、学園祭という祭りがあるのじゃろう! そ、そろそろ皆で向わぬか?」

 

「おおっ! そういえばそうじゃったな! 祭りがあったんじゃった!」

 

「アルヴィン、行こう。アイスクリームとかわたあめが食べたい」

 

 アリカに続くのは同じく祭りを楽しみにしていたテオドラとニィだ。おそらくこの気まずい空気の家よりも祭りに行くほうを優先したのだろう。いつもクールぶっているニィでさえ、おてんば姫のテオドラのように元気に両手を天に向けて上げて立ち上がった。

 

 3人が立ち上がったことで俺もうなずいて立ち上がり、エヴァもため息を吐いて同じく立ち上がった。

 

 そしてそのまま玄関には行――かない。

 

「とりあえず、着替えからだな」

 

 ニィは別として魔法世界の王族ルックはあまりに目立ちすぎるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法世界ルックを変えるついでに全員が外行きの衣装に着替えた。

 

 アリカはノースリーブの白いワンピース姿で、ニィとテオドラは旧世界の紺色ミニスカセーラー服姿。エヴァはアリカに対抗するように幻覚で背を引き上げてスリットの入った白いドレス姿だ。

 

 ちなみに俺はラフなワイシャツに長ズボン姿と結構普通の服装だ。

 

 準備ができたところでそろって家から出た俺たちは、途中の敷地をショートカットできるように転移ゲートを作りだし、それを潜って麻帆良学園まで移動した。

 

 一応、世界樹を中心に私有地となっている半径約1kmは高く分厚い術式で強化した塀で囲んでいて、内側に認識阻害はもちろん様々な結界を張っているので、出入り口として設置した4箇所の門の近く、内側に転移すれば誰にも気づかれることなく外に出ることができるようになっていた。

 

 門から出て麻帆良際に繰り出す。

 

 左側にエヴァと、右側でアリカと両手に花状態で腕を組み、テオドラとニィはそれぞれ手を繋いで祭りの空気を楽しむ。

 

 屋台で買い食いしたり、広場で行なわれるバンドなどのショーを見物したり、気まぐれに『まほら武道会』を見学しにいったりと思う存分に楽しんだ。

 

 まあ、その道中ものすごくレベルの高い美女2人と美少女2人を連れて歩いていたので周りの視線が鬱陶しかったが、これも役得と堂々と見せつけて歩いたのはいい思い出だ。

 

 そして、麻帆良際巡り初日が終わったあとは疲れて眠るテオドラとニィを寝室に押し込め、当初の目的だった『世界樹を利用した魔法世界の救済』についての研究に没頭した。

 

 それから2日、3日目と世界樹大発光などを観測&研究し、世界樹自身とも対話して色々と相談し、旧世界での用事を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧世界での用事が終わり、世界樹大発光から5日。俺とアリカ、テオドラは魔法世界にそろそろ戻ろうとしていた。

 

 ニィについては旧世界に置いていくつもり。

 

 魔法世界に戻ったとしても、まだ救助されていないから基本牢屋のなかでの生活になるだろうから、エヴァと一緒のほうがいいと思っての事だ。

 

 俺たちはそれぞれ準備、といっても牢屋には何も持ち込めないから牢屋を出たときと同じ格好で転移のゲートを繋げた。そこから多重転移で魔法世界に向う予定で、一時の別れを告げようとしていたんだけど……。

 

「ああ、別にいいぞ。私たちもついていくからな」

 

 と、エヴァとニィも魔法世界に行く気満々だった。

 

 俺は魔法世界用のデフォルメ黒龍フォームでエヴァとニィに言う。

 

「だけど、牢屋から出れないから俺の影のなかに作った別荘での生活になるぞ?」

 

「ああ、わかってる。アリカとテオドラが誰かに救助されるまでは牢屋から出れないんだろう。――だが、救助されるまでずっと牢屋のなかで時間を潰すのはあまりに不毛じゃないか?」

 

 エヴァの言葉にテオドラが目を輝かせる。

 

「なんじゃ、エヴァ。主も魔法世界の大戦を停める手伝いをしてくれるのか!」

 

「ふんっ、アルヴィンのように表にはでない裏方だがな。――手伝ってやるよ」

 

「そうか! 真祖の吸血鬼である主が手伝ってくれれば百人力じゃ! 礼を言うぞ、エヴァ」

 

「べ、別におまえたちのためじゃないぞ。大戦が長引けば私たちにも迷惑がかかるかもしれないから仕方なく手伝うんだ。そこを履き違えるなよ」

 

 テオドラの素直な礼と笑顔にたじろぐエヴァは、まさにツンデレ娘のような対応を見せた。

 

 そんなやり取りをアリカやニィと微笑ましく眺めたあと、家と世界樹の護衛にと茶々ゼロとエヴァ(分身)を置いて、5人で転移を開始し、魔法世界へと渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法世界に渡ったあとは牢屋に置いていた分身体と入れ替わり、裏方担当のエヴァ&ニィ組みと別れて行動を開始したのだが……。

 

 救助が来ない……。

 

「もう牢屋に入れられて5ヶ月じゃぞ……? 誰も助けに来んではないか……」

 

 アリカは牢屋の壁に手をつき、何度目かわからない重いため息を吐いた。

 

 テオドラも大きなため息を吐いて、椅子に座り退屈そうに足を揺らしてつぶやく。

 

「救助も来ないことだし、もう自力で脱出してしまったほうがいいのではないか?」

 

 まあ、この半年何も無しでただ牢屋に閉じ込められているからね。

 

 それに、すでに外ではエヴァ主導の下、元々あった人脈や資金を使ったりして、ホムンクルスに魂を与えた使い魔を使い、戦の混乱も利用して世界各地に色々な会社興したり、様々な組織に潜り込ませたりしながら大戦を停めるための情報を集めさせたりと、戦後処理などの準備も始めているので、言ってしまえば俺達がここにいる理由はないのだ。

 

 もしもあるとすれば全世界指名手配になっている『紅き翼』が助けに来るのを待つことぐらいで、捕まっている風に見せているアリカもテオドラも、本当は早く外に出て大戦を停めるため、表立って行動したくてうずうずしているのだ。

 

 だけど、いくらこちらが救助されることを望んでも救助が来る様子はない。

 

 まあ、さすがにずっと牢屋に縛りつけられるのは不毛なので、年が明けても救助が来ないようだったら、外で活動させている者たちを使って脱出ようと考えている。

 

 考えているのだが……、それまでは暇だ。

 

 本当に暇すぎて困るんだ。

 

「なあ、アリカ、テオドラ」

 

「ん?」

 

「なんじゃ、アルヴィン」

 

「たまには旧世界に旅行に行かない?」

 

「「――っ!」」

 

 明らかな反応を見せるアリカとテオドラはすぐに表情を取り繕う。

 

「じゃ、じゃが大戦が続いておるのに妾たちだけ旅行を楽しむのは……」

 

「うむ、そうじゃのう……。妾たちだけ遊ぶのはちょっとのう……」

 

「だけど、アリカもテオドラもずっとここにいるのは暇だろう?」

 

「じゃが……」

 

「う~ん……」

 

 悩んでいるアリカとテオドラにもう一度言う。

 

「誰かが救助しに来るまでは行動できないんだし、いまのアリカとテオドラはいてもいなくても同じだろ? それに裏では大戦を停めるための活動もしてるんだから、別に誰かにそこまで咎められるようなことはないと思うぞ」

 

 まあ、悪魔としては別にそこまで他人を気にする必要もないだろうと単純にそう思うんだけどな。

 

「「…………」」

 

 無言でアリカとテオドラはそれぞれ顔を見合わせる。

 

 しばらく悩むかと思われたそのとき、タイミングを見計らっていたかのように、牢屋の影からズズズとニィを連れたエヴァが現れた。

 

「ふふふ、別に悩む必要などないだろう?」

 

「「――っ」」

 

 どうやら話を聞いていたようだ。エヴァは微笑みながらアリカとテオドラに言う。

 

「先ほどアルヴィンが言った通り、おまえ達がここにいても意味がない。ならば旧世界に行って時間を潰すのも1つの手だろう」

 

「む……」

 

「ん~……」

 

 エヴァの言葉が止めになったようだ。

 

 それからエヴァの言葉に簡単に誘導されて2人の旧世界行きが決定し、そのあとエヴァの要望に合わせて京都に行くことになった。

 

 …………あれ? 俺よりもエヴァのほうが発言権とか信用度が高い?

 



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第13話 京都旅行での一幕 ☆

 魔法世界から再びやって来た旧世界の日本、それも歴史と伝統のある観光名所、京都に俺たちはやって来ていた。

 

 そこで、俺とエヴァとニィ、そして変装させたアリカとテオドラを連れて金閣寺や銀閣寺、二条城などの観光名所巡りにと思う存分に楽み、現在は俺の使い魔に経営をさせている系列の老舗旅館で会席料理に舌鼓を打っていた。

 

 なぜ、旧世界にも使い魔がいるかというと、色々と便利だから。

 

 俺やエヴァのような人外にとって戸籍など様々な点で周りとの差異が生まれたりするので、それを誤魔化すために数百年前から会社を興させたり、様々な国の機関に潜り込ませたりと、社会的に色々とわがままが効くポジションに数百以上の使い魔を配置しているのだ。

 

 さらに言うと、使い魔以外でも俺の配下のような人間がいる。

 

 それは悪魔の契約者だ。

 

 そのなかで代表格的なものをあげると、日本の陰陽師や神鳴流剣士やジャングルの奥地にいる霊媒師(シャーマン)、さらには悪魔祓い(エクソシスト)などの異能者たちだ。

 

 その者たちは人間にあだなす魔を滅ぼしたり、魔を払ったりするため、同じ魔に連なる俺と契約して力を得たり、昔に廃れた術を習ったりと数百年前から契約関係にあるのだ。

 

 他にも一般の人間の願いを聞き入れ、その者と契約を交わして対価を支払わせたりもしているので、表の世界にはでないが、裏の世界ではかなり顔が広いのだ。

 

 そして、それらとも関係無しに何百年も前に、俺とセックスして子宮に因子を残した状態で女が別の男と作った子供と、そのまた子供と……、などと魔族の因子を潜在的に秘めて受け継ぐ者がわずかにいたりする。

 

 ――って、まあ、それも今はどうでもいいんだけどな。

 

 それよりもつかの間の休みを楽しもう。

 

「ほう、これが刺身か、てんぷらか! どれも美味じゃのう! あっ、ニィ! それは妾が楽しみにとっておいた甘エビではないか~!」

 

「ん? そうだったのか? 残していたから嫌いだと思った。じゃあ、代わりにニンジンをやろう」

 

「なぜニンジンなのじゃ~!? 妾がそれを好かん事は主も知っておるじゃろう! 嫌がらせか!?」

 

「これ、テオドラ。あまり騒ぐな」

 

「じゃが、アリカぁぁ……」

 

「な、泣くこともなかろう。ほら、妾の甘エビをやろう」

 

「おお! さすがアリカじゃ!」

 

「まったく騒がしいな。会席料理は静かに楽しむものなんだぞ」

 

「……そういうエヴァは先ほどから酒ばかり飲んでおるような気がするのじゃが?」

 

「ふっ、当然だ。今日出ている酒はどれも幻の一品。どれも滅多に飲めないんだぞ」

 

「む……、確かにどの酒も美味じゃったな」

 

「ふふふ、そうだろう! 美味いだろう! ――ほら、注いでやるから、もっと飲め」

 

「うっ、仕方ないのう……」

 

 ――皆も十分に楽しんでるみたいだしね。

 

「さあ、俺もどんどん食べるぞ~!」

 

 俺も4人の輪に入って会席料理に舌鼓を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京都の老舗旅館の会席料理を味わった俺たち一行は、部屋に付けられた露天風呂に入って垢や疲れを落としていた。

 

 露天風呂はかけ流しで浴槽にヒノキを使用したやや大きめの湯船になっており、大人サイズの俺とアリカ、子供サイズのエヴァやニィ、テオドラの5人が一緒に入ってもまだ余裕があるぐらいのサイズで、窓の外の中庭には京都の風情を現す紅葉が覗けた。

 

 俺はお湯に肩まで浸かりながら息を吐く。

 

「ああ~、最高だな~」

 

 露天風呂もいいが、やはり美女や美少女に囲まれての入浴はいいものだ。

 

 左側には金髪色白でスタイル良し、性格も魂も好みのアリカ姫がいて、右側には金髪色白で10歳という幼児体型ながらも色気を感じさせる、この世界にやって来てから1番付き合いが長い約600歳の吸血鬼であるエヴァが……。

 

 少し離れたところには金髪で褐色肌の魔法世界の角っ娘おてんば姫のテオドラと、白い髪で同じく褐色肌のニィが温泉を楽しんでいる。

 

 その全員が美女で美少女でタオルなど無粋なものもつけずに裸体を晒しているのだ。

 

 元々性欲が強いハーレム気質の魔族でなくとも男なら幸せを感じるだろう。

 

「ふむ、いい湯じゃのぅ……」

 

「ああ、まったくだなぁ」

 

 アリカも隣でまったりと息を漏らして温泉を楽しみ、エヴァもアリカに同意して息を漏らす。

 

 すぐそこでもニィとテオドラが湯を楽しみまったりとしていて穏やかな時間が流れている。

 

 こんなにゆっくりして穏やかな日々は、常に賑わしい魔界では考えられなかったことだ。

 

 ああ、本当に。

 

 特に俺の魔界は他の大魔王や魔王が支配する魔界よりも別の意味で騒がしすぎるからなぁ。

 

「アルヴィン」

 

「ん~? なんだぁ、エヴァ」

 

 エヴァが俺に近づき、耳元で囁く。

 

「どうだ、今夜。久々に浴衣でしないか?」

 

 おっ。

 

「――っ、エ、エヴァっ! ニィとテオドラがいるのじゃぞ!」

 

 エヴァのお誘いにうなずこうとするが、それよりも先にアリカが小声で叫びながらエヴァを注意した。

 

 お誘いの意味を理解し、真っ赤になってるアリカにエヴァは笑いながら言う。

 

「別にいますると言ってるんじゃない。寝静まった頃を見計らってすればいいだろう?」

 

「む……、そ、それはそうなのじゃが、もし見られでもたら、その……、きょ、教育に悪いであろう?」

 

 もじもじしながらつぶやくアリカを見て、エヴァはニヤリと笑んだ。あ~、いじめっ子の顔だねぇ。

 

 俺が予想していた通り、エヴァはその笑みを浮かべたまま何度もうなずいて言う。

 

「確かにそうだな。ああ、教育に悪いな。やっているところを見られたら子供の教育に悪いな。ああ、まったく……。精液を全身に浴びた状態で繋がってるところなんて見せられたら絶叫ものだよなぁ?」

 

「――っ」

 

 エヴァの言葉でアリカの顔がますます赤に染まる。テオドラに見られたときの事を思い出したんだろう。

 

「う~……」

 

 アリカは涙を浮べたジト目で唸りながらエヴァを睨むが、エヴァはまったく気にしないどころか満足そうな笑みを浮かべている。

 

「う~む、そろそろ出るかのぅ」

 

「私も出る」

 

 ――っと、ここで子供組みがあがるようだ。パタパタと出て行く2人にアリカが慌てて声をかける。

 

「テオドラ、ニィ、しっかりと体を拭くのじゃぞ~」

 

「わかっておるのじゃ~」

 

「はい」

 

 2人が露天風呂から出て行き、脱衣所で体を拭くのを見てからアリカは再び露天風呂を楽しみ始める。

 

「ハハハ、まるで母親みたいな奴だな」

 

「なっ!?」

 

「エヴァ、そこは面倒見がいいって言わないと」

 

「そ、そうじゃ! 妾はまだ10代なのじゃからな!」

 

「10代ねぇ……、そうにはまったく見えないな」

 

「まあ、エヴァも600歳には見えないけどね」

 

「アルヴィン!」

 

「そうじゃな、見かけ10歳じゃからのう」

 

 反撃できるとニヤニヤしながらエヴァを見るアリカ。そこでエヴァが切れた。

 

「き、貴様ら~! 言わせておけば幼児体型やらペチャパイやらと……!」

 

「いや、ペチャパイとか言ってないよ」

 

「そうじゃのう、幼児体型とも言っておらんのぅ」

 

 ――そう、体の凹凸に視線を向けただけで……。

 

「くくくくっ! 貴様ら……、いいだろう! 私の精錬されたテクニックをその身に味あわせてやろう!」

 

「――っ! ちょっ、エヴァ!? さすがに露天風呂のなかではダメだって!」

 

「そ、そうじゃ! せめて布団の上でせんか!」

 

「ハハハハハハ! だったら布団の上で思う存分によがらせてやろう! 覚悟しておけアルヴィン、アリカ!」

 

「おおっ、久々に3人でやるか」

 

「――っ!? な、なぜ妾も入っておるのじゃ!?」

 

 俺たちも夜はまだまだ終わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方部屋のなかでは……。

 

「ほう、これが日本の酒か。なかなか美味じゃのう」

 

「テオ、飲んでいいのか?」

 

「別によいじゃろう。魔法世界でもワインを飲んでおったしな」

 

「そうなのか?」

 

「うむ、そうなのじゃ。じゃが京都の酒はワインよりもかなりアルコールが強いようじゃのう」

 

「……大丈夫か?」

 

「うむっ! 大丈夫じゃ! それよりも、ほれ、ニィ。主も飲んでみぬか?」

 

「……わかった、飲んでみる」

 

「おお、なかなかよい飲みっぷりではないか。ほれ、もう一杯」

 

「ん。美味しい……、かな?」

 

「まだニィには早かったかのう?」

 

「テオも早いと思うけど?」

 

「何を言う? 妾はこう見えても10代後半じゃぞ。それに酒は王族としてのたしなみでもあるのじゃ」

 

「ふ~ん」

 

「ほれ、ニィももっと飲め」

 

「わかった(さっさと酔わせて沈めよう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ななな、ど、どうすればいいのじゃ!?

 

 いやいやいや、それよりもどういう状況なのじゃ!?

 

 な、なぜ妾は裸で寝ておるんじゃ!?

 

 し、しかも、なななっ、なぜアルヴィンと一緒の布団で寝ておるのじゃぁぁぁ!?

 

 アリカは!? エヴァは!? ニィはどこにいったのじゃ!?

 

 なぜ妾がアルヴィンと同じ布団で、しかも裸で寝ておるんじゃぁぁぁっ!?  

 

「ん……、ぅ~ん……」

 

「――っ!?」

 

 アルヴィンが寝返りを打ち、そのまま隣にいる妾に腕が回され抱き寄せられる!

 

 ――っ! むむっ、意外と胸板も厚くて筋肉質……って! こやつも裸ではないか!? ていうか抱きしめられて……っ!

 

 も、もしかして妾は一晩を、アルヴィンと裸で、……い、一緒の布団で寝ておったのか!?

 

 昨夜いったい何があったのじゃぁぁぁっ!?

 

「――っ!?」

 

 混乱していると腰に回されていたアルヴィンの手が動き始めた。――くっ、あ、アルヴィンの手が……、ぅんっ! し、尻を掴んで……。

 

「……ぁぁっ」

 

 口から変な声が漏れてしまう! 大きな手が尻を掴み、感触を確かめるように揉み解される!

 

「や、やめ……、っん」

 

 拒絶しようと手でアルヴィンの胸を押すが、力が上手く入らない……!

 

 それどころかアルヴィンのもう片方の手が胸に触れ――。

 

「や、やめよ、……ぅんっ、これ、胸を弄ぶなっ。あっ、くぅ、先っぽはだ、ダメ……っ」

 

 ま、マズい、マズいのじゃぁぁ……。

 

 変な気持ちに……、んんっ、なってしまうのじゃぁぁ。

 

「ん、ああ……」

 

「――ひゃっ!?」

 

 アルヴィンが顔を頭に埋めた瞬間、何かが全身に走り、ビクンッと体が跳ねた!? な、何が起こったのじゃ、って!? ああっ! そ、そこはさすがにダメっ! ダメじゃろう!?

 

「んふふ……」

 

 くぅっ、頭の上でだらしない声を漏らしおって!

 

 くちゅ……。

 

「ぁあっ……、あっ……」

 

 くっ、ま、まさか……、股を触られ……っ!?

 

「くぅぅ……」

 

 お尻から回されたアルヴィンの指が妾の股に容赦なく触れる。女の部分であるスジを指がなぞり、ゆっくりと押しひろげてなかへ入ってくる!

 

 胸を触られながら自分でも弄った事のない股を弄られ、妾の体が反応してしまう。

 

 じゅくりと股からヌメリを帯びた何かが漏れ出して、くちゅりくちゅりといやらしい音が鳴り響く。

 

 ダメ……、ダメじゃ……、指が……、んんっ! ア、アルヴィンっ!

 

 アルヴィンから逃れようとするが、しっかりと腕を背中に回されていて逃げられない! 

 

 それどころか気持ちいいという感情を感じ始め、自然と顔が緩んでしまう。口が開き、いやらしい吐息を漏らして涎が口の端から垂れた。

 

「ん、ん~……」

 

「ひゃっ!?」

 

 アルヴィンが突然体勢を変えて覆いかぶさってきた!

 

 ま、マズい! この格好はいくらなんでもマズいのじゃ! む、昔見た姉さまたちみたいになってしまうのじゃぁぁぁっ!

 

 あのときも姉さまは男に覆いかぶさられるように腰を打ちつけられて……、もう1人の姉さまはそいつの後ろにまわって体を擦りつけられていて……。

 

 あのときはまだ幼くて何をやっていたかわからなかったが、そ、そういう知識の教育を受けて、ま、前にアリカとアルヴィンがやってるのを直に……。

 

 ――っん!?

 

 ま、股に熱いのが触れた!? す、スジに当たって……!

 

 恐怖を感じ、覆いかぶさっているアルヴィンの背中に腕を回してぎゅっとしがみつく。

 

 そして股を閉じようとするが、アルヴィンが間に入っている所為で閉じられない!

 

 それどころか――。

 

「あっ、……ああっ、やめ、やめるのじゃ……、こ、擦るでないっ」

 

 股にスリスリとペニスを擦りつけられた!

 

 覆いかぶさられていて、布団が体にかかっているため、陰になっていて見えないが、露天風呂で見たアルヴィンの大きなキノコのようなペニスが妾の股……、オマンコのスジに擦りつけられいることがわかった。

 

 耳元に当たるアルヴィンの吐息にくすぐったさを感じ、時おり舌で首筋をペロッと舐められ、ビクッと体を跳ねさせてしまう。

 

 熱くて長いものが何度もスジを往復し、どんどんと脳が蕩けて恐怖が抜けていく……。

 

 な、なぜ、妾はこんな気持ちに……。

 

 うう……、ま、股が勝手に開いてしまうのじゃぁぁ……。

 

「アル、ヴィンっ……」

 

 胸から伝わってくるアルヴィンの心臓の鼓動と、密着している事で感じる体温が妾を蕩けさせる。

 

 そういえば、こんな風に抱かれたのはいつ以来じゃったか?

 

 いや、物心ついてから抱きしめられるのも、……男に抱かれるのも生まれてはじめてではないか?

 

 …………。

 

 アルヴィン……。

 

 なぜか抱きしめられていると、安心してしまう……。

 

 心の中で名をつぶやくと、もっと強く抱いて欲しくなる……。

 

 ……最初は小さな黒龍の姿じゃったな。

 

 それから人型にもなれることを知って……、知って……。

 

 ――っ! そういえばアリカと恋仲ではなかったか!? それにエヴァもアルヴィンの嫁と言っておったな。こ、これはもしかして妾は第3の女、浮気相手になるのでは!?

 

「ん~、いい匂いだなぁ」

 

「――っ。こ、コレ、擦りながら首筋を舐めるでな……っ、ひゃっ! くぅっ……、ああっ」

 

 首筋を舐められながら、オマンコを擦られ、さらに気持ちよくなってしまう。

 

 股が自然と大きく開いてしまい、閉じれなくなり、それどころかアルヴィンに強くしがみついてしまう。

 

 するとオマンコの筋を割ってペニスがなかに触れて――、ああっ!

 

 くぅっ! に、逃げられないのなら覚悟を決めるしかない……!

 

 わ、妾はヘラス帝国の第3皇女なのじゃから!

 

 そ、それに、わ、妾は……、ううっ、こんな状況で気づきたくなかったのじゃが……。

 

 アルヴィンが……、す、好きじゃ……。

 

 牢獄から助けられて、旧世界につれてきてくれて、妾にいろいろなものを見せてくれた。

 

 一国の皇女と色眼鏡で見ない友人を作ってくれた。

 

 1人の人として妾と接してくれる。

 

 エヴァやアリカ、ニィがいて、根っからの浮気性のようじゃが、龍で魔族ならばそれも仕方がない。

 

 魔族や龍は基本ハーレムを持つものじゃし、王族である妾も元々一夫多妻制じゃ。

 

 そ、それなら、もういっそのこと……。

 

「こ、このまま……、妾の処女を散らして欲しいのじゃ……」

 

「……いいのか?」

 

「――っ!?」

 

 なっ!? アルヴィン!?

 

「お、おおお、起きておったのか!?」

 

「ん~、いや、さっき起きたところだよ。――さっき起きていまどうなってるか把握して、テオの告白を聞いたんだ」

 

「――っ」

 

 こ、告白!?

 

 妾の顔が熱く、真っ赤になってるのを感じる!

 

 アルヴィンの顔が近くて……、ううっ、顔を合わせられないのじゃぁぁっ。

 

 真っ赤になって顔を逸らす妾にアルヴィンが言う。

 

「テオ。――テオがそんなに俺のことを想っていてくれてうれしいよ」

 

 本当にすごく、うれしそうな顔で……。

 

「俺も天真爛漫でいつも楽しそうなテオが大好きだよ」

 

「――っ!」

 

 告白され返された……。

 

 逸らした状態でアルヴィンの顔を覗くと、心臓の鼓動がうるさくなり、息が苦しくなる。

 

 そして心のなかを温かい気持ちが埋め尽くし、妾の顔を前へ、アルヴィンのほうへ持っていき、自然と口から言葉が漏れてしまう。

 

「わ、妾も、アルヴィンが大、好きじゃ……」

 

 上手く回らない口で、妾はそうつぶやいた。

 

 そしてアルヴィンは笑顔を浮べて、顔を近づけ……。

 

 ――唇が重なった。

 

 口と口を触れ合わせるキス……。

 

 これもはじめてなのじゃ……。

 

 ちゅっ……、ちゅっとついばむように何度も唇を重ね、アルヴィンの舌がゆっくりと妾の口に入ってくる。

 

「あ、あふぃびぃん……、あぁぁ……、んじゅぅ……」

 

「テオ、すごくかわいいよ」

 

 口内をアルヴィンの舌が這い回り、舌同士を絡め合わされる。

 

 ぞわぞわしたものを背筋に感じ、オマンコがきゅんと震え、頭のなかからトロトロに蕩けてしまう……。

 

 流し込まれるアルヴィンの唾液がすごく美味しくて……、もっと欲しくなって舌を自分からアルヴィンの口のなかに入れてしまう……。

 

 体が熱く火照って、オマンコが切なくなってしまい、オマンコのスジをなぞっているペニスに腰を擦りつけてしまう……。

 

 だ、ダメじゃ……、妾がどんどんいやらしくなってしまうのじゃぁぁ……。

 

 じゃが……、どんなにいやらしくなってしまおうと心がそれを受け入れ、もっと求めてしまう。

 

「テオのオマンコ、もう奥までほぐれてるみたいだな」

 

「アルヴィン……、は、早く欲しいのじゃぁぁ、お、オマンコが切なくて……、切なくて我慢できないのじゃぁぁ……」

 

「ふふ、テオはいやらしい子だね。――少しキツいだろうけど、お姉さん達も淫乱気質だったしすぐに慣れると思うから最初は我慢してね?」

 

「ぅんっ、わかったのじゃ」

 

 …………む? さっきアルヴィンは何と言――っ!

 

「んんっ、想像以上に狭いな」

 

「――っく、アル……!」

 

 アルヴィンのペニスが妾のオマンコに突き刺さり、小さな小穴をグググと押し広げられるのを感じる!

 

 メリメリと拡げながら無理矢理巨大なものが妾のなかに侵入してきて……。

 

「~~~~~~っ!」

 

 悲鳴を上げそうになった! 

 

 王族としてのプライドと、アリカやエヴァたちに気づかれると思って咄嗟に声を殺さなければ大きな悲鳴は上げていただろう。

 

 ううっ、オマンコが熱いっ! それにギチギチに広がって痛いっ、痛いのじゃぁっ!

 

 アルヴィンにしがみついて悲鳴を押し殺して堪えるが、目から涙がこぼれ落ちてしまう。

 

「大丈夫か?」

 

 心配したアルヴィンが声をかけてくるが、妾は気にするなと首を縦に振った。

 

 アルヴィンの首を抱いて終わるのを待つ。

 

 た、確かこういうときは天井のシミを数えてろとか言っておったな。……ニィが。

 

 目を瞑って受け入れるために大きく股を開いた妾に、アルヴィンは確認するように訊ねる。

 

「長引かせたら痛いだろうから、一気に行くぞ?」

 

 妾はその問いに小さくうなずいてぎゅっとアルヴィンの首を抱きしめた。

 

「――っんん!」

 

 アルヴィンのペニスがグググっとさらに奥に入ってくる!

 

「――っ!? あああっ!」

 

 な、なんじゃ!? すごく痛いっ!? オマンコのなかから何かが千切れる音が響く!

 

 さっきのが処女膜なのか? 処女を破られた痛みなのか?

 

 呆然とどこか遠くで理解する妾を無視してペニスがどんどん侵入してきてやがて最深部へと到達した。

 

「はぁはぁ……、っんん! はぁはぁっ!」

 

 オマンコをみっちりと埋めるアルヴィンのペニス。

 

 すごく熱くて、痛くて……、そして、すごく幸せな気分じゃ……。

 

 少し動くだけで鈍痛が走るのに反して達成感のようなものが湧き上がり、妾のなかでピクピクと気持ちよさそうに跳ねるペニスが愛おしく感じる。

 

「アルヴィン……っ」

 

「ああ、テオ、ちゃんと奥まで入ったよ。――よくがんばったな」

 

 よしよしと頭を撫でられて……っんん、お、オマンコがキュンキュンしてしまうのじゃぁぁ。

 

 くぅっ、キュンキュンする度にアルヴィンのペニスの形が伝わって、ううっ、だ、ダメじゃ……!

 

 い、痛いのに気持ちいいなどと思っては……! わ、妾は姉さまたちと違って打たれて悦ぶ女などではないのじゃぁぁぁっ!

 

「テオのオマンコ、すごく狭くて絞まって気持ちいいよ。それに感じてるテオの表情もいやらしくてかわいいぞ」

 

「――っん、や、止めよ! はぁはぁ、い、いまそういうことを言うでないっ」

 

 お、オマンコが反応してもっと痛気持ちよくなってしまうのじゃぁぁぁ。

 

 妾は顔を横に振るが、アルヴィンは妾を虐めているときのエヴァと同じような表情になって――。

 

「だ、ダメじゃ! い、いま胸を弄るのは……、くっ、あああっ!」

 

「ちゅっ、ちゅぅっ……、テオのかわいらしいおっぱい、すごくおいしいよ。褐色の肌にピンク色の乳首がとても綺麗だし」

 

「はぁはぁっ、す、吸いつのはだ、ダメじゃぁぁぁ……」

 

 ううっ、乳輪ごと咥えられて……、こ、こやつは赤子か!? あっ、くぅっ! 唇でか、噛むのは反則じゃろうぅぅ……。

 

 あまりの快感に脳を焼かれ、アルヴィンの頭を胸に押しつけるように抱きしめる!

 

 アルヴィンの黒いクセのある髪がくすぐったいが、それ以上に快感に体を支配されていて何かを抱きしめていないと、どうにかなってしまいそうだった。

 

 オマンコを中心に体が痙攣し、脳がトロトロに蕩ける……。

 

 体の奥底から快感と満足感が湧き上がり、何ともいえない感情が心のなかを満たす。

 

 ……こ、これが絶頂というものなのか?

 

 これが、イくというものなのか?

 

 全身を満たし、心のなかから湧き上がる感情に酔い、自然と体から力が抜ける。

 

 だらしなく肢体を布団に広げ、甘く切ない吐息を漏らす……。

 

 これで終わりかと思ってしまいそうなぐらい幸せな気持ちで溢れてしまっていたが……。

 

「テオ、そろそろ動くぞ?」

 

 アルヴィンのその言葉で一気に覚醒した……。

 

 そう、知識で持っていた射精というものをまだ子宮に受けていなかったのだ。

 

 じゃが、妾はまだ……、まだ擦られるのは……!

 

「行くよ」

 

「まっ、――っんん!」

 

 お、オマンコが抉られるっ! か、雁首が引っかかってめ、捲れてしまうのじゃぁぁぁっ!

 

 痛っ、いいっ!

 

 くぅぅっ! いっ、痛いのに……、痛いのに気持ちいいのじゃぁぁぁっ!

 

「はぁはぁっ、ゆっくりと擦るのはだ、ダメなのじゃぁぁぁ……」

 

 痛みが長く続いて、痛いところをゆっくり擦られるのはダメなのじゃぁぁぁっ。

 

 アルヴィンの首に抱きついて声を漏らす。

 

 オマンコがすごく熱くて、いっぱいになってるオマンコを抉られて体が反応してしまうのじゃ。

 

 何度も往復される度にビクビクと跳ねて……、ううっ! い、イクっ! イッてしまうのじゃぁっ!

 

「テオ、そろそろ射精()すよ!」

 

「だ、射精()すっ!? そ、それは……」

 

 確か子宮に射精されると赤子ができてしまうのじゃなかったか!?

 

 あ、赤子……、アルヴィンとの赤ちゃん……。

 

「…………ぅ」

 

 妾は結局逃げないどころかアルヴィンに抱きついて受け入れるために足を絡めた。

 

「い、イクぞ!」

 

 アルヴィンが腰を打ちつける!

 

「う、くぅっ! お、オマンコのなかでペニスが震えてるのじゃぁっ! あっ、んんっ!」

 

 ビクビクッとオマンコのなかでペニスが跳ねた!

 

 ビュルッ、ビュルゥウウウウウウウウウ~~!

 

「――っん! ああっ、熱っ! 熱い! な、何かが入って……、こ、これが精液なのか!? う、うううっ!」

 

 し、子宮が熱いっ! も、もぞもぞするのじゃぁぁぁっ! あ、くぅぅっ!

 

 あ、頭が真っ白に……、と、蕩けて……!

 

「ま、またっ! また、い、イクゥウウウウウウウウウ~~!」

 

 ビクッ、ビクッっと体が大きく跳ねる!

 

 さ、さきほど感じた絶頂よりもすごい快楽!

 

 トロトロに蕩けて気持ちよすぎてバカになってしまうのじゃぁぁぁ……。

 

 アルヴィンは力が抜けてだらしなく布団に寝転ぶ妾のオマンコからズブズブとペニスを抜く。

 

 すると栓を失った子宮から入りきらなかった精液が逆流し、漏れ始める……。し、尻まで精液が垂れてるのじゃぁぁ。

 

「はぁはぁ……、んんっ、はぁはぁっ、す、すごかったのじゃぁぁ」

 

 妾の口から自然と満足感など幸せな気持ちが漏れ出る。

 

「俺もすごく気持ちよかったよ、テオ」

 

「……ん」

 

 頬を撫でられながらアルヴィンにつぶやかれると、自然と笑みを浮かべてしまう。

 

 うれしくて、幸せで、満たされて……、アルヴィンがもっと欲しくなる。

 

「アルヴィン……」

 

 下から覗き込むように見上げると、アルヴィンは察したように正面から見つめて……。

 

「テオ」

 

 再び唇を重ねてくれた。

 

 親愛を現すようなキス……。

 

 妾の心が幸せな気持ちで満たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、アリカ、あいつらいつこっちに気づくんだ?」

 

「む~……、完全に2人の世界に入っておるようじゃし、言わないと気づかないのではないか?」

 

「うん、私もそう思う」

 

「ん? ニィも起きていたのか?」

 

「実は最初から起きていた」

 

「ちょっ!? ニィ、主はまだ見たらいかんのじゃ!」

 

「なんで?」

 

「なんでって主はまだ子供じゃろう!?」

 

「テオも子供に入ると思うけど?」

 

「そ、それは……! じゃ、じゃがテオはあのなりでも妾とそう変わらん歳じゃから……」

 

「おい、確かヘラスの族は人間観算にするとまだ――」

 

「エヴァ」

 

「ん? なんだ、ニィ」

 

「全部人間観算にすると真祖の吸血鬼であるエヴァは6歳になるよ?」

 

「――っ!」

 

「エヴァは6歳じゃったのか?」

 

「ち、違うぞ! 約600歳だ! 決して6歳などではないぞ! そ、そもそも人外なんだから人間とは違うんだ! そう、人外なんだからな!」

 

「「…………」」

 

「お、おい、何とか言えよ! おい!」

 

「まあ、いいんじゃない」

 

「そ、そうじゃな。それよりもなぜテオがアルヴィンの布団で寝ておったんじゃ? 昨夜は確かに妾とエヴァと一緒に寝ていたはずなのに……」

 

「そ、そういえば……。それにアルヴィンと一緒の布団に裸で入るなんて貞操を捨てるような事をするなんて、昨夜露天風呂から上がった時はニィと一緒の布団で寝ていたはずなのに……」

 

「ああ、それ。私がテオを放り出した」

 

「「――っ!?」」

 

「昨日、テオが残りの酒を飲んでてすっごく酒臭かったから夜中に放り出したら、丁度エッチし終えて寝てたところに転がっていって、アルヴィンの布団のなかに入っていったの。裸になったのはわからないけど、まあ、熱かったんじゃない?」

 

「「お、おまえが元凶かぁぁぁっ!」」

 

「いや、私もこうなるとは予想してなかった。ていうか、私よりも先にテオがアルヴィンとエッチしたことにイライラ……。こうなるんだったら、私が先に夜這いを仕掛ければよかった」

 

「「…………」」

 

「…………どうする、テオ?」

 

「ま、まだこのままで……、いま出て行くと3人に……」

 

「うん、それもそうだね」

 

「ぅう……、アルヴィン……」

 

「よしよし、恥ずかしいと思うけど我慢しようね~」

 




 幼女テオドラゲット! のちのちには巨乳美人に!


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第14話 期間限定の弟子

 京都2日目の朝。

 

 旅館で出された朝食を食べているのだが、昨晩とかなり雰囲気が違っていた。

 

 まず席順から違っていて、テーブルに俺を挟んでテオとニィが座り、向かい側にアリカとエヴァが座っているのだ。

 

 しかも、なんと言うか……。

 

「…………ぁ……」

 

「どうした、テオ?」

 

「なっ、なんでも……な、なぃ、のじゃ……」

 

 テオが、ものすごく、かわいい!

 

 褐色の肌の頬を淡い朱色に染めて行儀が悪いが箸を口に咥えて、こちらをチラチラと見上げてくるんだ!

 

 はじめてを経験したから顔を合わせるのが恥ずかしいのか、俺の動きに1回1回びくっと大げさに驚くテオドラは本当にかわいい!

 

 しばらく見つめると、顔を逸らして誤魔化すように俯いたままご飯を食べたり、少し足を組みなおそうと近づいただけでかわいらしい悲鳴を上げて飛びのいたりと、なんとも微笑ましくあり、かわいらしいのだ!

 

「むぅ……」

 

 もちろん隣のニィもだよ?

 

「アルヴィン、あ~……ん」

 

「あ~……ん、うん、美味しいよ」

 

「そうか♪」

 

 テオに対抗するように何度もアピールしてくるし、ニィは確実に俺の貞操を狙っくる。そりゃあもう、浴衣姿のノーパンで胡座をかいた俺の上に座って小さいお尻を押しつけてきたり、ワザと手を胸に押しつけて揉ませたり……。

 

 そろそろ性的に喰われそうだ。

 

 まっ、逆に喰い返すんだろうけど。

 

 そして正面にいる2人というと……。

 

 先に食べ終わっていて食後のお茶を啜っていた。

 

 いや、うん、当然ただ啜っているだけじゃない。

 

 嫉妬深いエヴァは正面でイチャつかれてるのが気に入らないみたいで、お茶を飲んでるフリをしながらテーブルの下から足を伸ばしてきてペニスを弄っている。

 

 アリカはというと、エヴァに視線で「おまえもやれ」と促されて、恐る恐る足を伸ばしてきて、いまでは夢中で亀頭辺りを指で擦ってきている。

 

 まあ、俺も反撃と足を伸ばして浴衣姿でノーパンだった2人のオマンコを弄ってるんだけどな。

 

 アリカには左足の親指を、エヴァには右足の中指をオマンコに突っ込ませてもらってる。

 

 それぞれ昨晩の精液が残っていてすごく興奮する。

 

 ――っと、ここで俺とニィが食べ終わった。

 

「ごちそうさま」

 

 と手を合わせて感謝の言葉と礼をして箸を置き、勃起して射精したくなってきたペニスはエヴァをテーブルに潜らせて飲ませようかと考えていると――。

 

 隣にいたニィが動いた。

 

 まるで隠す気がないようで、顔を俺の股間に埋めて勃起したペニスを咥え込んだ。

 

「ニィ? ――っ!?」

 

 テオもニィの突然の行動に首をかしげていたが、すぐに何をやっているのか気づいたようで、目を大きくして言葉を失っていた。

 

「ニィっ」

 

 俺もニィの頭を掴んで呼びかけるが、ニィは早く射精しろとペニスをちゅううっと吸いついた。

 

「――っ、だ、射精()すからな」

 

 ここまでされたら仕方がないと、俺は射精を開始する。

 

 ビュルッ! ビュビュッ! ビュビュゥウウウッ!

 

 ニィの口内でペニスが跳ねる!

 

 かわいらしいテオに、エヴァとアリカの足コキ、ニィのバキュームフェラで勃起したペニスから煮えたぎった精液がニィの口から喉を通って胃に吐き出される!

 

「じゅぶぶっ、んぶっ! ふー、ふー……、ごくごきゅっ、ふー……」

 

 股間に頭を埋めたままニィは精液をドンドン飲み込んでいく。

 

 どこで覚えたのか射精中も気持ちよくなるように、唇を引き締めて竿を絞めたり緩めたりしながら、小さな舌でも竿をやさしく撫でて、喉を使って最後の一滴まで搾り取るかのように吸いついた。

 

 ニィの突然の行動に固まっている3人を無視して、ニィはたっぷり時間を使って精液を飲み込み、口を離した。

 

「はぁはぁ……、ネバネバで熱々で、濃厚で……、ふふっ、美味しかったぁぁぁ」

 

 微笑みながら口元に付着した精液を舐め取り、唖然としているテオに見せつけるように、ペニスの掃除を始めた。

 

 竿から亀頭にかけて小さな舌で舐めたり、キスをしたりと綺麗に掃除すると、そこでやっと起き上がった。

 

「に、ニィ……?」

 

 テオが声をかけるが、ニィはトロンとした緩んだ顔で口をもごもごさせていて聞いていない。

 

 おそらく口のなかで精液を味わっているんだろう。

 

 たっぷり味わいつくしたあと、ごくんと喉を鳴らして息をつき、何事もなかったように、

 

「ごちそうさまでした」

 

 と手を合わせた。

 

 …………。

 

 …………いつの間にこんなエッチな娘になったんだろう……?

 

 テオはそんなニィを見て――。

 

「こ、これが妾のなかに入っておったのか……」

 

「ちょっ!? テオ!?」

 

「ふ、太いし、な、長くてキノコのようじゃな……。ニィはこれを咥えて……」

 

 聞いてない!?

 

 ペニスを両手に持って観察してらっしゃる!?

 

 ちょっ!? そのまま行くと――!

 

「こ、コレ! アルヴィンは妾のものじゃぞ!」

 

「なっ!? 何をどさくさに紛れて宣言してるんだ貴様はぁぁぁっ!? 元からアルヴィンは私のだぁぁぁっ!」

 

 今度はアリカとエヴァが無駄にいい身体能力を使って、テーブルを飛び越えてテオから俺を引き離しにきた!

 

「こ、コラ、2人とも行儀が悪いぞっ!」

 

「うるさい、アルヴィン! いまはこいつらに私が1番であると教え込まないといけないんだ!」

 

「何を言っておるのじゃ! 誰が1番など別にどうでもいいであろう!」

 

「ならアリカはアルヴィンから手を離せばいいじゃろう! 妾はさっきはじめてを終えたばかりなんじゃから少しは優遇してくれてもよいじゃろう!」

 

「それとこれとは関係ないのじゃ! それよりも幼児体型の主らではアルヴィンのは耐えられんじゃろう! 妾が代わりに身を捧げてやろうと言うのだから――」

 

「誰が幼児体型だぁぁぁっ! 貴様っ! 昨日あれだけイカせてやったのを忘れたのか!?」

 

「別に妾はエヴァにイカされた覚えはないぞ? アルヴィンにイカされておったのは覚えておるんじゃがのぅ」

 

「き、貴様ぁぁぁっ!」

 

「ふふふ、今のうちじゃ。アルヴィン、ほれ、妾の乳に吸いついてよいぞ。さっきからムズムズして切ないのじゃ」

 

「む、そうか? だったら、いただくよ」

 

「――っん、ふふっ、ちゅうちゅう吸いついてかわいいのぅ」

 

「む、テオが上半身を攻めるなら、妾はパイズリでもしようかのぅ」

 

「――っ! き、貴様ら何をなっとるのだぁぁぁっ! 凍らせて欲しいのかぁぁぁっ!」

 

「エヴァ、うるさい」

 

「――っ! ニィ!? 仮にも母親になんて口の聞き方を……!」

 

「まあ、落ち着いて。それよりもエヴァも参加して精錬されたテクニックで2人を沈めればいいんじゃない?」

 

「おお! それはいい案だな! しかし、おまえは参加しないのか?」

 

「今はいい。処女を散らすときは2人っきりでしたいし。エヴァは気にしないで2人を沈めてきて」

 

「……そうか、わかった。――私はアルヴィンに群がる雌犬共に、しっかり私という存在を刻み込んできてやろう! 私の勇姿を見ているがいい!」

 

「がんばって、ママ」

 

「――っ! ああ! 行ってくる!」

 

「…………さてと、カメラとビデオは……、よし。――認識阻害と透明化の術式展開。これで自由に撮影ができる。ふふふっ、これも家族でのアルバムになるよね」

 

 結局俺たちは夕方近くまで盛り続け、京都旅行2日目は旅館で過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、京都旅行3日目。

 

 俺たち5人は昨日の失敗を反省して大人しく朝食を食べ、京都の観光名所巡りへと繰り出し、十二分に京都を楽しみ、再び旅館へと帰ってきていた。

 

 今回は部屋に付けられた露天風呂ではなく、旅館の広い露天風呂(男女別)に入り、そのまま静かに布団に入り、魔法世界の現状と今後の対策を話し合っていた。

 

 まあ、話し合いといっても、ほとんどがエヴァとニィからの報告だけどね。

 

 そこで報告されたことは、『完全なる世界』が活発な行動を見せていることと、使い魔達を使って起こした企業が戦時ゆえの急成長を遂げて各国から資金が集まってきていること。

 

 それに各国に潜り込ませた使い魔達のなかで、メガロメセンブリアの元老院に潜り込ませようとした使い魔が消されたことなどが話された。

 

「どうやら元老院が怪しいみたいじゃのう」

 

「ああ、あそこは昔から腐っているところだからな。一昔前にも世界樹と土地欲しさに私とアルヴィンを賞金首にしたてあげようとしたりと本当に迷惑な奴らの巣窟だよ。――国では『立派な魔法使い』とかいう精神を掲げて国民を洗脳するみたいにいいように使っているしな。元々真っ黒な組織だからこそ、『完全なる世界』の隠れ蓑になっている可能性が高いと思う」

 

 報告を聞いたテオがうなずきながら言い、エヴァが賛同する。

 

 アリカはエヴァの言葉にうなずき、そういえばと口を開く。

 

「『紅き翼』はどうなっておるのじゃ? 指名手配にされて逃げ回っておるのじゃろう? そもそも本当に妾達を助けようと動いておるのか?」

 

 エヴァは首を横に振って答える。

 

「それについてはまだ不明だ。聞いていたよりも思いのほか慎重で、表にも裏にも情報が出てこない」

 

「そうか……」

 

 残念そうに息を吐くアリカに、ニィが首をかしげながら訊ねた。

 

「アリカって、『紅き翼』のナギと仲良かったんだっけ?」

 

「そうなのか!? アリカ!」

 

 突然の情報にテオががばっと起き上がりアリカを見る。

 

 アリカはテオの興味津々という視線を受けるが……。

 

「ん? 別に何もなかったが?」

 

 と普通に返してテオを意気消沈させた。

 

 そのテオの落胆振りにアリカは慌てて思い出すように唸り、慌てて話し始める。

 

「あっ、そっ、そういえばデートに誘われたのじゃ! オスティアでもデートのようなものもしたような記憶が……、ある? む、む~……、買い物とソフトクリームを食べたぐらいじゃったし、そのあとはテロが起きて『完全なる世界』のアジトに乗り込んだり……。いま思えばあれはデートじゃったんじゃろうか?」

 

「テロに巻き込まれて敵のアジトに乗り込むデートねぇ……」

 

 いったいどんなデートなんだ?

 

 エヴァも半ば呆れたようにため息を吐く。

 

「普通のデートの誘いとかはなかったのか?」

 

「ふ、普通のデート……」

 

 再びうんうんと唸りながら思い出そうとするアリカ。

 

 はっと思い出したと口に出す。

 

「そういえばナギに、人間ながらも時を止められ、『黄昏の巫女』という名を付けられてウェスペルタティア王国の最終防衛装置にされているアスナをつれて京都でデートしようと誘わたことがあったのじゃ!」

 

「「「「…………」」」」

 

「はぁ……。早く大戦を終わらせてアスナを解放し、再び全員そろってまた京都旅行を楽しみたいのう」

 

 憂いをながらつぶやくアリカだけど……。

 

『おい、アリカの奴、ナギという男の存在を忘すれてないか?』

 

『うむ、エヴァの言うとおり、あの言い方なら忘れておるな。おそらく皆の中にはナギという奴は入っておらんじゃろう』

 

『デートしようという言葉だけ覚えてて、デートの意味とかそういうのは忘れてるみたいだし』

 

『俺、さっきまでアリカにデートしようって誘っていたという赤毛少年のナギに嫉妬心を抱いていたけど、アリカの話しを聞いて少しナギが不憫になってきた……。まあ、本人に悪気はないんだろうけど、アリカのなかでのナギの位置付けが圧倒的にアスナって子より低くて……』

 

 全員がアリカに視線を集中させて小声で話していると、何を勘違いしたのか予想はつくが……、アリカは真っ赤になってナギとの関係を否定し始めた。

 

「ち、違うぞ、アルヴィン! わ、妾は……そ、そなただけで、その……、ナ、ナギはケンカ相手というか……、妾が愛しておるのは……、――っ! とっ、とにかく違うんじゃからな!」

 

「うん、ありがとう、アリカ」

 

 俺は隣の布団から迫ってくるアリカを正面から抱きしめるが、内心で赤毛少年ナギに謝った。

 

「こ、コレ、いきなり抱きしめるのは止めよ……、こ、今夜はしないんじゃろう」

 

 真っ赤になってもじもじするアリカを抱きしめながら、謝った。

 

 ――本当にいろいろごめん、赤毛少年。

 

「「「…………(天然は時に残酷なんだな)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日間の京都旅行を終えて魔法世界に戻った俺たちだったが、もはや牢屋に閉じ込められているほうが大戦を長引かせるだろうと、エヴァの手引きで『闇の迷宮』から脱獄することにした。

 

 脱出……、まあ、救出になるんだが、その方法はかなり単純で、使い魔たちに起こさせた会社のなかの1つである傭兵派遣会社で同じく使い魔だけで構成したチームを派遣し、資金欲しさに『闇の迷宮』を荒しに来たが、そこで怪しい奴ら(監視している『完全なる世界』の連中)と戦闘になり、ついでに捕らわれていた姫を救い出したという設定で救出されることにしたのだ。

 

 そのあとは救出された俺たちは国に帰っても『完全なる世界』の者たちに捕らえられる可能性が高いと、それぞれ国に帰ることはせずに、『闇の迷宮』をアジトに変えて傭兵集団(すべて使い魔たち)を通じて自分たちの身の安全と、大戦を拡大させている『完全なる世界』をすべての元凶とし、いままでに集めておいた資料と共にその存在を全世界に公表した。

 

『完全なる世界』を魔法世界の敵としてからはすべてが早く進んでいく。

 

 各地に潜り込ませていた使い魔たちが連携し、『完全なる世界』の傀儡になっていた組織を暴きだしたり、まえに元老院を兆弾したときのように民衆のなかに含ませた使い魔たちに意識誘導させて戦争の沈静化をさせたりと、捕まっていた約半年の間に勢力を拡大させ、様々な場所に潜り込ませた使い魔たちがものすごい働きを見せて、大戦が『完全なる世界』によって仕組まれていることを暴き出していってるのだ。

 

 それとほぼ同時に『紅き翼』のメンバーたちの無罪も使い魔たちに訴えさせて、どうにか再び接触することができた。

 

 まあ、赤毛少年はアリカを自分で『闇の迷宮』から助け出したかったみたいだけどな。

 

 再会したとき、自分達が活躍するまえに打倒『完全なる世界』ムードになってて若干残念そうにしてたし。

 

 だけど、こちらとしては『紅き翼』の参入で戦力がかなり増強できたので大助かりだ。

 

 赤毛少年ナギはアリカにアプローチしてるのか近衛兵みたいな感じで結構近場にいて動いてくれるし、筋肉達磨のラカンは喜んで敵拠点を殲滅しに行ってくれる。詠春とかいう神鳴流剣士やゼクトという見た目子供は、ナギやラカンと違って周りに被害が出ないように戦ってくれるし、アルビレオとかいう実体のない人型を作り出す本や、無音拳とかいう武術の使い手ながらも元政府の犬というガトウは情報収集能力に長けていて、そちらの面で活躍したりと、トントン拍子でことが運んでいくからな。

 

 ああ、トントン拍子で進んで行くんだが……。

 

「お願いします! 黒龍さま! 僕に戦う力をください!」

 

『紅き翼』の一員である少年探偵タカミチがなぜか貢物らしき果物を持ってお願いに来ていた。かれこれ1週間になる。

 

 相変わらず俺は喋らないので、アリカが代わりにタカミチに訊ねる。

 

「なぜこやつに頼んでおるのじゃ?」

 

 アリカの問いに、片膝をつき頭を下げたままタカミチは言う。

 

「詠春さんから聞いたんです! 京都というところでは大昔から黒龍さまにそれ相応の対価を支払えば、なんらかの力を授けてくださると! 僕もナギさんたちの役に立ちたいんです!」

 

 ああ、詠春……、あの神鳴流剣士ね。暇があれば俺に話を聞こうとしてくるからあいつの前では基本アリカの胸の谷間に顔を埋めて狸寝入りしてるんだよなぁ~。

 

「そうか……」

 

 アリカはタカミチの話しにうなずいて……。

 

『どうするんじゃ、アルヴィン』

 

『俺に丸投げかよ!?』

 

『当たり前じゃろう? こやつは主に頼んでおるのじゃぞ』

 

『それはそうだけど……』

 

 う~ん、どうするかなぁ……。

 

 いまは戦力になる者が1人でも欲しいのは本当なんだけど、いまのタカミチが魂を対価にしたとしても絶対に赤毛少年ナギに劣るだろうし、ナギとほぼ同等の『完全なる世界』の幹部に経験からいっても太刀打ちできるはずがないし……。

 

 だけど、1週間も真剣に頼み込んできているこいつを無下にするのは……、まあ、できるけど。

 

 ん? ああ、そういやこいつって白スーツのガトウから無音拳習ってるんじゃなかったけ? 同じ白スーツだから思い出したよ。

 

 ん~……、まだ弱くていまは役に立たないだろうけど、戦争が終わればそれなりに役に立つんじゃないか?

 

 それに俺は戦争中、表で活躍できないから暇だし、暇潰しがてらに鍛えるのもいいんじゃないか?

 

 うん、暇潰しがてらに魔界で読んだいた漫画で使えそうだった戦闘技術を教えてみるか。

 

 考えがまとまったので定位置となっているアリカの首からタカミチの前へと移動する。

 

 そして威厳たっぷりに名を呼ぶ。

 

「タカミチよ」

 

「は、はい!」

 

 まさか喋れるとは思っていなかっただろうタカミチは驚いたが、きちんと顔を伏せたまま返事を返した。

 

 俺は浮遊しながら訊ねる。

 

「力が欲しいのだな?」

 

「はい! 僕はナギさんたちの役に立って大戦を停めたいんです! そのための力が欲しいんです!」

 

 真っ直ぐこちらを見てくるタカミチ。まったく曇りがない子供らしい眼だが、俺は冷酷に告げる。

 

「……おまえのようなただの子供が魂を捧げたとしても得る力はないぞ」

 

「――っ。……それはわかっています」

 

「そもそもいまおまえが大きな対価を支払い、一時的に強大な力を得たとしても『紅き翼』の面々は喜ばないだろう。それどころか子供であるおまえの未来を奪わせ、戦線へと出すことになった己の無力さを嘆くかもしれん」

 

「…………」

 

 俺に言われて俯くタカミチだが、ここからが本番だ。

 

 俺はタカミチに言う。

 

「だが、戦後……、将来の力となる戦闘技術を与えることはできるだろう」

 

「――っ!」

 

 まだ希望があるのかと、バッと顔を上げたタカミチにもう一度、今度は分かりやすく言う。

 

「いまのおまえの力は微々たるものだろう。――しかし、将来、『完全なる世界』を打ち倒したあとの未来、大人へと成長する頃まで鍛え続ければ、おまえはガトウを超える力を得るであろう。――今の『紅き翼』が年月によって過去の者に変わっていく頃、おまえは次世代の『紅き翼』になるだろうな」

 

「次世代の『紅き翼』……」

 

「そうだ。いまではない、未来のおまえだ。おまえの師であるガトウも今回の大戦で使うために無音拳を教えているわけではないのだからな」

 

 俺の言葉にアリカもうなずく。

 

「そうじゃな。ガトウも大戦が終わったあとの未来のために教えておるのじゃろうな」

 

「…………」

 

 タカミチは何かを考え込んでいるように無言だ。

 

 おそらく教え込まれていた無音拳が自分の将来のためのものだったとは思ってなかったんだろう。

 

 ここで話を早く進めるためにこちらから声をかける。

 

「どうするのだ、タカミチよ。主は今、役に立つために大きな対価を差し出し、未来を捨てるか? それとも、いまは裏方で我慢し、未来に役に立てるように鍛えるか?」

 

「……ぼ、僕は……、僕は――!」

 

 ……タカミチは未来を選択した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未来を選択したタカミチに改めて契約を持ちかける。

 

「未来をとった主に求める対価は3つ。まずは俺が教える戦闘技術を他の誰にも教えないことだ」

 

「あのっ、教えないというのは?」

 

「勝手に弟子をとったり、他人に俺が教えた戦闘技術を教えるなという意味だ。やり方を故意ではなく、力量差などで見破られたりした場合は不問とする。――そして2つ目の要求は俺が自由に話せる事を誰にも言わないこと。これに関しては俺が自分から話せることをバラすまでだ。話せると分かれば青山詠春あたりがいろいろとうるさそうだからな」

 

「わかりました」

 

「そして最後の対価だが、無音拳以外の戦闘技術を習うという断わりをガトウに入れておけ。教えてもらってる者が途中で別の者に教えを請う場合の最低限の礼儀でもあるからな」

 

「え?」

 

 拍子抜けしたような声を漏らすタカミチ。まあ、そうだろうな。対価という対価がないんだから。

 

 俺は威厳たっぷりから少しだけ態度を崩して言う。

 

「俺が教えるのは手ほどきまでだからな。これぐらいの対価で十分だ」

 

「こ、黒龍さま……。――ありがとうございます!」

 

 タカミチは感激したような声を漏らして頭を下げてくる。

 

 俺はそんなタカミチにニヒルな笑みを浮かべて、

 

「だが、俺が教える戦闘技術を生かせるかどうかはおまえしだいだということを忘れるなよ? それとガトウには俺が喋れることは話さず、あくまで念話で話したと言え」

 

 と、ゆっくりと浮遊しながらアリカの首へと戻った。

 

 タカミチはもう一度深く礼をすると立ち上がり、「すぐにガトウさんに報告してきます!」と飛び出していった。

 

 これは今日中に教えを請いに来るだろうな。

 

 タカミチが出て行って誰もいなくなったところでアリカが訊ねてきた。

 

「よいのか、アルヴィン。あのような対価で」

 

「まあ、アリカの言いたいことはわかる。でも、まあ、暇潰しと子供にあそこまで頼まれたらねぇ」

 

「ふふふ、とことん甘い大魔王じゃのう」

 

 そう言って俺の頭を撫でながら微笑むアリカ。

 

 い、言えない……。ま、漫画で読んだ技をタカミチに再現させてみようとかいうノリで教えようとしてるなんて……。

 

「と、とりあえず、そろそろ休憩しないか? タカミチと話す前から仕事していたんだしさ」

 

「む、それもそうじゃな。一息つくかのう」

 

 …………。

 

 ……うん、よし! タカミチにしっかり教え込んでやろう! 契約通り手ほどきしかしないけど、魔界でいまの俺と同じように漫画技を再現しようとした悪魔が記した、特訓とかのやり方とかが書かれた書の写本を渡せばいいだろう。

 

 え~と、写本はタカミチと血で契約させて他の誰にも見えないようにして……。最初に覚えさせようとした6つの超人技だけで内容を再構成させて、魔力と気でのやり方も書いてと……。

 

 これはいい暇潰しになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらの予想していた通り、その日の内にやってきたタカミチ。

 

 俺はさっそく訓練用ダイオラマ魔法球(市販)を使って、タカミチとの特訓が開始した。

 

「それではタカミチ! これからおまえに戦闘技術を教える!」

 

「はい!」

 

「この戦闘技術は6つの技から構成させる技で、この6つを習得し、鍛えれば無音拳がなくても十分におまえは強くなる! そして、さらに無音拳との組み合わせでさらに強くなれる!」

 

「はい!」

 

「まずは俺が人型になってその6つの技を実際に見せてやろう! おまえに分かりやすいように手加減して見せるからちゃんと見ているように!」

 

「はい!」

 

 返事をしたタカミチに背を向け、特訓用木人くん18型に向き直る。

 

 指を1本立てて、魔法で強化している木製の木人くん18型の腹に狙いを定めて……。

 

「まずは硬化させた指で相手の体を撃ち抜く局部破壊技……、指銃!」

 

 木人君18型の腹部に指を突き刺す!

 

 すると、木人君18型の腹部に丁度指のサイズの穴が開いた。

 

「――なっ!?」

 

 驚きの声を上げるタカミチに続けて技を見せていく。

 

 木人くん18型から少し離れた位置で、腰を捻らせ、蹴りの体勢になってから……。

 

「蹴りで鎌風を呼び起こす足技にして斬撃技……、嵐脚!」

 

 高速で足を振ると、ヒュゥウウウ! っと、風きり音を響かせながら斬撃が飛び、木人くん18型の体を真っ二つに切り裂いた。

 

「――っ!?」

 

 今度は絶句のタカミチ。

 

 だんだんと技を見せるのが面白くなってきたな。

 

「今度は剃。瞬発的に加速し、消えたように移動する移動技術。これは瞬動術とあまり変わりはないが、剃は純粋な体術によるところが大きいので魔力や気を使用せずに消費を抑えられる」

 

 剃を何度か使用して見せ、次に移る。

 

「月歩。爆発的な脚力で空を蹴り、宙に浮く移動技術。これは浮遊術を使用できない術者が空を飛ぶ相手などと戦ったりするときに有効だ。剃と同じように魔力や気を使用しない純粋な体術のでこちらも消費を抑えられる」

 

 パパパッンと音を鳴らしながら空を蹴るように飛び続ける。

 

 お~、タカミチの口が開いたままになってるなぁ~。

 

 地上に降りて次の技に移る。

 

 今度から防御技なので木人くん18型を再生させて対峙する。

 

「今度は防御技だ。鉄塊、肉体の硬度を鉄に匹敵するほどに高める防御技……、なんだが、人間ではなく、魔法使いや気の達人相手では通用しない場合があるので、必要に応じて鉄塊を使用する際、気で強化すること」

 

 木人くん18型が殴りかかってくるがそれをすべて微動だにせずに受け止める。

 

「さらに紙絵。相手の攻撃によって起こる風圧に身を任せ、攻撃を紙の如く避ける回避術。これは近接格闘の場において相手の攻撃が強いほど有効だ」

 

 木人くん18型の攻撃を今度は緩やかな紙のように避ける。

 

「そして、六式全てを鍛えた者のみが扱える六式最終奥義……」

 

 紙絵で木人くん18型の大振りな攻撃を避けたところで、そのまま懐へと入り、拳を腹部に添えて……。

 

「六王銃ッ!」

 

 ゴガンッ!

 

 大きな打撃音と共に木人くん18型が砕け散った。

 

 すべての六式と最終奥義まで見せたので、タカミチのほうへと移動する。

 

「これが俺がおまえに与える戦闘技術……、力だ」

 

「僕の……力……?」

 

「まあ、ものになるかはおまえしだいだがな。――これから暇なときにダオライマ魔法球を使用して先ほど見せた六式の手ほどきをしてやる」

 

「……は、はいっ! よ、よろしくお願いします!」

 

 真剣な表情で返事をするタカミチに注意として言っておく。

 

「あと、あくまで俺が教えるのは手ほどきまでだ。六式を使うための基本知識と基礎ができればあとはお前自身で極めていけよ?」

 

「ええ!?」

 

「なぜ驚く? 俺が教える六式の技術と差し出した対価を見ても、よくて手ほどきまでだろう?」

 

「は、はい……、そ、そうですね」

 

 納得できないようなタカミチだけど……。

 

「まあ、単に基礎を教え込んで放りだすことはしないから安心しろ。卒業までにはおまえにしか見えないようにした六式の習得方法などが書かれた秘伝書を作って渡してやる」

 

「僕にしか見えない!?」

 

「まあ、あくまで六式の習得方法ぐらいしか書かないがな。あとはガトウから教えてもらってる無音拳と組み合わせたりして新たなおまえ専用の戦闘術を生み出せ」

 

「僕専用の戦闘術……」

 

 タカミチは両手を握ったり緩めたりしながら瞳をキラキラと輝かせた。

 

 うん、やっぱり子供って自分だけとか、自分専用とかいうのに弱いよなぁ~。

 

 ――っと! 今夜は久々にアリカとテオの2人と一緒に寝るんだった!

 

 それによくよく考えてみれば、大戦も終わりそうだし、傭兵集団『紅き翼』の一員であるタカミチとは『完全なる世界』を打ち倒すまで関係じゃないか!?

 

 このままタカミチが基礎を覚える前に『完全なる世界』を倒してしまったら、出張して教えないといけなくなるんじゃないか!?

 

 こ、これはマズい! 

 

『完全なる世界』を打ち倒し、戦後処理をしながら、魔法世界の崩壊を阻止するために地球化の研究とかしなきゃいけないのに!

 

 アリカやテオ、エヴァやニィはもちろん、まだ見ぬ美女や美少女と戯れる時間がなくなるではないか!?

 

 い、急いでタカミチに六式の基礎を叩き込まないと……!

 

「さあ、タカミチ! 俺が教えられる時間は限られているんだ! 止まっている時間などないぞ!」

 

「はい!」

 

「六式を教えるにあたって、まずは六式を扱う上ですべてに必要となる超人的な身体能力を得る事が専決となる! だが、子供の頃からあまり筋肉を付けると背が伸びなくなったりして大人になったときに体格なので困るので、ひたすらランニングをして体力を作れ!」

 

「はい!」

 

「さあ、ストレッチで筋肉を解してから『ダイオラマ魔法球のなかを倒れるまで走ってみよう! 地獄のランニング』のスタートだ!」

 

「は、はいっ!」

 

 さあ、タカミチよ! 『完全なる世界』との最終決戦までには卒業してもらうぞ!

 



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第15話 最終決戦が終わっても問題は残る

 前回でタカミチに六式を教える事になったことは、ダイオラマ魔法球を使用して急ピッチで基礎を叩き込み、タカミチにしか読めない秘伝書を渡して指導を終えた。

 

 ……うん、自分でも無茶な突貫工事だと反省してるよ。

 

 後半に行くまえの中盤辺りからタカミチの目が死んでたし、六式を使用したときのポーズを取りながらのイメージトレーニングなんて始めは恥ずかしがっていたのに、いまでは真面目に、全身全霊で取り込んでて、基礎訓練を積んで秘伝書と共に卒業を言い渡したその日には一日中号泣して喜んでいたからね。

 

 まあ、そのおかげで『完全なる世界』を打ち倒す前に終わらせることができたんだからよしとしよう。

 

 それで、『闇の迷宮』から脱出し、『完全なる世界』が諸悪の根源であると暴いてから現状がどうなっているかだけど……。

 

 様々な国の組織に忍び込ませたり、起こした会社を大企業にまで成長させて大勢の中小企業を傘下に置いたりしている使い魔たちを使ってアリカやテオの発言を支持させ、地を固めながら敵側にいる相手を様々な方法で説得し、裏では復興の準備もしながら、この約半年間で、世界の敵となっている『完全なる世界』の勢力を減らし、『完全なる世界』の本拠地がアリカの国であるウェスペルタティア王国の王都オスティア空中王宮最深部『墓守の宮殿』であることをつきとめ、最終戦争を迎えようとしているところだ。

 

 そしていま、最終戦争を迎えるにあたって、アリカが最後の行動をしているところだ。

 

 その最後の行動というのは……、先王であるアリカの父から王位を奪い、アリカが女王になることだ。

 

 世界をまとめるためにも、『完全なる世界』の傀儡となっている先王を排除し、ウェスペルタティア王国を統べる女王として指揮を執るためにも必要なこと。

 

 王宮に入るまでは『紅き翼』に協力してもらったが、ここからはアリカの仕事と断り、1人で……いや、俺を首に巻いた状態で玉座の間へと続く回廊を歩いていた。

 

 アリカは何も言わない。

 

 俺も、何も言わない。

 

 ゆっくりと回廊を歩き、玉座の間へと到達する。

 

 大きな門を俺が念動力で開き、アリカはなかへと足を進める。

 

「…………」

 

 玉座には先王であるアリカの父が静かに座っていた。

 

 アリカは玉座を見上げる。

 

「父上……」

 

「…………王の椅子を奪いに来たか」

 

「……はい」

 

 先王の問いにアリカはうなずく。

 

 ここに来るまでにあたってアリカはすでに覚悟を決めていた。

 

 それに覚悟が決まっていなかったとしても、『黄昏の巫女』であるアスナを『完全なる世界』に奪われていて、魔法世界を無に戻す術式の準備を相手がはじめているので、迷っている時間などはなかった。

 

 アリカは金色の剣を取り出し、改めて先王に向き直る。

 

「その席を私に譲ってもらいます」

 

「…………」

 

 先王は無言で目を瞑る。そしてゆっくりと開いて独り言のようにつぶやく。

 

「人の生も、この世界も、すべては儚い泡沫の夢に過ぎぬ」

 

 全てを悟ったようなつぶやき、アリカにその剣をもってこの身を貫けと言わんばかりに椅子から動かず、生を諦めたような顔だ。

 

 その何もかも諦めたようすにアリカはぎりっと歯を鳴らし、負の感情を沸き立たせる。

 

 感情のままに怒鳴ろうと、勢いのまま先王と兆弾しようとするが……。

 

 アリカはすべてを飲み込んで、ゆっくりとうなずいた。

 

「あなたが知っている通り、私もこの世界の真実について知っています」

 

「…………」

 

 少しだけ眉をピクリと反応させた先王にアリカは続けて言う。

 

「私は、例えこの世界がすべて幻であったとしても守りたいのです」

 

「……だが、この世界はもはや数十年の――」

 

「それについても知っています」

 

「…………」

 

「『完全なる世界』と造物主が、本当は魔法世界に住む住民を救おうとしていることも理解した上での行動です」

 

 アリカは剣先を下ろし、胸に手を当てて訴える。

 

「ですが私は、『完全なる世界』と造物主が行なう救いとは別の救いを……、魔法世界を崩壊の危機から救う手段を探したいのです! ――そのためにはいま、アスナの魔力完全無効化能力を使って世界を無に戻そうとする『完全なる世界』と造物主の計画を絶対に停めなければいけない! 世界をまとめるためにあなたを王の座から下ろし、私が王にならないといけないのです!」

 

「…………そうか……」

 

 アリカの言葉に小さく先王はつぶやいた。

 

 先王が何を感じて思ったのかはわからない。

 

 アリカの言葉を聞いて改心する……、などという幻想は抱いていない。

 

 それよりもいまは、アリカが王になるために先王である父を排除しなければいけないのだ。

 

 先王もそれを理解しているのか、殺されるつもりのようだ。

 

 アリカは剣を持ったまま玉座へと進み、剣を掲げて――。

 

 バシッ!

 

「――っ!?」

 

 剣ではなく、ビンタを放った。

 

「…………」

 

 ビンタを放ったアリカに先王は始めてはっきりとした驚きの表情を浮かべた。

 

 アリカは驚きの表情を浮かべている先王を改めて正面から見て、言う。

 

「現ウェスペルタティア国王、あなたを拘束し、私がこの国の女王になります」

 

「……殺さないのか?」

 

 先王は意外そうにつぶやく。

 

 先王が言った通り、この場で先王を殺すほうが後々、遺恨を残さない意味でも、国を統治する上でも正しい事だが、アリカは殺さないことを選択した。

 

 アリカは先王を見下ろし、うなずく。

 

「はい。あなたには私が失敗してしまったときの保険になってもらいます。――アルヴィン」

 

 アリカに声をかけられた俺は先王を拘束するロープを出現させて縛り上げ、玉座から下ろす。

 

 そしてアリカは玉座に座り、ウェスペルタティア王国の空に映像を映し出し、先王を排して自分が女王になったことを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカが女王になった日の翌日、『紅き翼』の戦闘員、ナギ、ラカン、詠春、アルビオ、ゼクトを含めたアリアドネー、連合、帝国の混成部隊で『完全なる世界』の本拠地である『墓守の宮殿』に攻め込んだ。

 

 作戦はアリアドネー、連合、帝国の混成部隊で周りを抑え、本願の『墓守の宮殿』に『紅き翼』を投下し、おそらく出てくるだろう『完全なる世界』の幹部達を倒させ、世界を無に返す術式の柱にされている『黄昏の巫女』アスナを救出し、その術式を破壊もしくは発動できなくして『完全なる世界』の野望を打ち砕くというものだ。

 

 まったく俺の活躍どころなんてないんだが、意外と今回動くことになっていて、しかも重要な役回りになっている。

 

 その重要な役回りというのは、『黄昏の巫女』アスナ姫の救出。

 

 ……いや、ね。

 

 ものすごく重要というか、作戦の目的とも言っても過言ではないアスナ姫の救出をすることになってしまったんだよ……。

 

 俺にアスナ姫の救出を対価と引き換えにやってくれって提案してきたのはテオ。

 

 俺はもちろん造物主と先に結んだ契約で、表だって邪魔しないという契約を結んでるからって断わったんだけど……。

 

 テオは自信満々な顔で、

 

「別にアスナを助けるのに表立ってやる必要はなかろう? 術式を停めよと言っているわけでもないんじゃし、偽者と本物を掏りかえてくればいいんじゃ」

 

 と、胸を張って言ってね……。

 

「まあ、それなら……」

 

 って感じでうなずいたんだよね。

 

 いや、対価として「妾を主専用の性奴隷にしていいのじゃ」と言われたからじゃないよ!?

 

 いくら浣腸で綺麗にしたピンク色のお尻の穴をクパクパさせながら差し出されてお願いされたからって、元大魔王の俺が……、はい。うん、あっさり契約してしまいました……。

 

 し、仕方ないじゃないか!

 

 ロリな褐色角っ姫とエッチ中にそんなお願いされたら、断われないって! お願い聞いてあげたくなるじゃん!

 

 だ、大魔王時代前からずっとそういうお願いに弱い俺だし!

 

 大魔王らしくスケベな俺だから、そういうお願いを聞いてあげたくなっちゃうんだよ!

 

 そして、俺は契約に従い、『紅き翼』と『完全なる世界』の連中が戦闘している間に『墓守の宮殿』に忍び込んでアスナと偽者だと比較的分かりやすいだろう木人ちゃん4型ロリっ子バージョンと入れ替え、影を通してエヴァとニィの下にアスナを転移させた。ちなみに木人ちゃん4型にはアスナと同じ服を着せてデコレート済み。

 

 アスナを救出してからはアリアドネー、連合、帝国の混成部隊が周りを抑えてる間に『紅き翼』が『完全なる世界』の幹部たちを倒すところをアリカの首で観戦するだけだったんだが、途中で問題が発生した。

 

 まず戦闘に不参加だと思われていた造物主が急遽戦闘に参加し、『完全なる世界』の幹部達をそれぞれ打ち倒した『紅き翼』の面々を不意打ちして戦闘不能にしたんだ。

 

 いや~、アリカが乗っている戦艦から見ていたけど見事な一撃だったね。

 

 最後の幹部を倒して油断したところにズトンッ!

 

 幹部に止めを刺そうとしていたリーダーのナギを幹部ごと攻撃して倒し、突然の攻撃に驚いている『紅き翼』の面々も攻撃して大ダメージを与えて、絶体絶命だったね。

 

 ナギはもちろん大ダメージを受けていて、筋肉ダルマのラカンなんて両手吹っ飛んでるし、詠春もナギを庇って深手負ってるし、アルビオとゼクトも大ダメージ負って、もうダメだって思ってアリカが俺に頼ろうとしてきたぐらい大ピンチになったんだ。

 

 まあ、その絶対絶命の大ピンチもどこかの主人公っぽいナギがアルビオに残りの魔力で傷の応急処置をさせて、師匠であるゼクトをつれて造物主に挑み、なんと打ち倒しちゃったんだよね……。

 

 いや、マジで赤毛の鳥頭が人間なのか疑うよ。

 

 実体を持って制限のない侯爵ぐらいの力でもあるんじゃね?

 

 普通、『完全なる世界』の幹部と激戦を繰り広げたあとに不意打ちで大ダメージ負ってるのに、幹部よりもずっと強いだろう造物主を2人がかりだとしても、ゼクトという犠牲がでたからって倒せないって……。

 

 造物主に最後の一撃くらわせるときに、「人間なめんじゃね~!」とか叫んでいたけど、20年も生きてないのに世界最強なおまえは絶対人間の枠超えてるよ……。

 

 まあ、でも造物主を含む『完全なる世界』を全部打ち倒したんだけど、結局アスナの完全魔法無効化能力を利用した魔法世界を無に戻す術式が発動し始め、最終的に、魔法世界を無に返す光球を消耗が少ない、準備が遅れてまだ前線に来ていなかった後続部隊を使って魔法世界の皆で協力して光球を押さえ込み、封印という形で処理し、『完全なる世界』との戦争が終わった。

 

 魔法世界は長く続いた大戦の終戦と、すべての原因とされた『完全なる世界』の所業を暴き、打ち倒したとして『紅き翼』を魔法世界の英雄とし、ひとつの時代の終わりを迎える。

 

 ――だが、『完全なる世界』を打ち倒してもまだまだ大きな問題は残ったままであることも事実。

 

 数十年後になるだろう魔法世界の崩壊はもちろん、今すぐに起きる問題もまだごく少数の者しか知りえない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『完全なる世界』を打ち倒し、魔法世界を救った英雄として『紅き翼』の面々が王都オスティアの広場、大戦の終わりに沸く住民達の前で表彰されてから数時間後……。

 

 アリカは王都オスティアの一角にある庭園で、終戦に沸く住民の声を聞きながら黄昏ていた。

 

 アリカは俺の頭を撫でながらつぶやく。

 

「結局、この国は滅んでしまうのだな……」

 

「……術式が発動してしまったからな」

 

『完全なる世界』と造物主を打ち倒したのはいいが、最終目的であった魔法世界を無に返す術式が発動してしまったため、その後に術式ごと封印して処理して魔法世界を全体を消滅から救ったのだが、その余波というか、残り香が原因でウェスペルタティア王国の領土である浮き島から魔力が失われ、あと十数時間もしないうちに崩落するという状況に陥っていたのだ。

 

 現在は混乱を防ぐために一部の人間を動かして住民の避難誘導などを行なっているが、島が崩落してしまえば少なからず犠牲者はでてしまうだろう。

 

 それに土地がなくなれば助かっても国の機能は失われ、国は滅び、何十万人という難民がでてしまうのだ。

 

「だが、アリカもそれは覚悟の上だったんだろう?」

 

「…………」

 

 アリカは無言でうなずいた。

 

 アリカは最終決戦の最中、『完全なる世界』と造物主が仕掛けた術式を一度でも発動させてしまえば、その後すぐに封印処理できたとしても数十時間後に、その余波などで術式を行なっている場所からすぐ近くに存在するウェスペルタティア王国の浮き島が魔力を失って崩落すると、アスナを偽者とすり替えに行った俺の影のなかから隠れて覗いていたエヴァからの報告でわかっていたんだ。

 

 ……わかっていたんだが、術式は発動してしまい、封印するしかできなかったんだ。

 

 最悪、魔法世界を救えても国が滅んでしまうということはすでに承知していたのだ。

 

「アルヴィン……」

 

 アリカはか細い声で、小さく震えながら俺の名を呼んだ。

 

「……妾のすべてを捧げたとしてもこの国は救えないのだろう?」

 

 すがるように、涙を数滴溢しながら、アリカは俺に訊ねた。

 

 俺はアリカの問いにうなずく。

 

「ああ。……この国を崩落から救い、100万の住民を救うなど、現状の対価では不可能だ」

 

「そう……か……」

 

 アリカも最初から分かっているのだ。人ひとりのすべてと、100万の民の価値が吊り合わないことも、国を崩落から救うのがどれだけ人の粋からかけ離れた所業なのか。

 

 どうやっても国が滅んでしまうことを分かっているのだ。

 

 もはやアリカに出来ることは崩落から国民を逃がすことしかできないのだが……。

 

「…………ひとつだけ……、ひとつだけ方法がある……」

 

「……アルヴィン?」

 

「アルヴィンボールだ」

 

「――っ」

 

「はじめてあったときに説明しただろう?」

 

「7つ集めて願いを言えば、対価なしで大魔王であるアルヴィンが願いを叶えてくれるというあのボールか?」

 

「そうだ。あのボールを7つ集めて願えば国も民も救うことができる」

 

「じゃ、じゃが、そのボールは旧世界と魔法世界の両方に散らばっておるのじゃろう? いまから集めたとしても時間が……」

 

 俺はアリカの首から正面にまわる。

 

「俺は魔族だ。――対価を支払い、契約を結べば誰であろうと助け、願いを叶え、救う」

 

「……アルヴィン」

 

 うう……、そんな子犬のような瞳で見つめるな!

 

「さ、最近丁度……、その、エヴァやニィ以外でも直属の眷属が欲しかったところだし、この世界で連れ添う者もエヴァ以外にも欲しかったところだから……、と、特別に、今回だけ特別に、おまえの死後を対価にアルヴィンボールの在り処というか……、その辺に出してやっても……、いい」

 

「アルヴィンっ!」

 

「こ、コラ! いきなり抱きつくな! こ、これはちゃんとした悪魔の契約なんだからな! 国や民を救えたとしても死後おまえはずっと俺のモノになるんだからな! そのへんを――」

 

「よい! それで国や民を救えるのであれば、妾は喜んでこの身をそなたに捧げる!」

 

「くっ、普通はもっとこう、深刻そうに嫌がるとかだな……」

 

「死後を捧げる相手がそなたであればこそじゃ」

 

「ぐぬっ……」

 

 そこまで言われたら怒るに怒れないし、脅して怖がらせたりできない……。

 

 それよりも、あと数時間もしたら崩落が始まるからなぁ。

 

 俺は雰囲気を変えてアリカを見つめる。

 

「アリカ、俺と契約を結ぶか? 死後の魂を売り渡してアルヴィンボールの在り処を聞き出すか?」

 

「うむ、契約しよう。妾の死後をすべてそなたに捧げる」

 

「…………。……わかった。契約は成立した。――これからお前の魂に契約完了の楔を打つ」

 

 コクリとアリカがうなずいたのを確認して、アリカの魂に楔を打つ。

 

 これで今後アリカが死ねば、その魂は輪廻転生の輪に入ることなく、俺の下へやってくるようになった。

 

「これで契約成立だ。――アルヴィンボールは~……、おっ、丁度この庭園に散らばってるようだ。丁度いいし、集めてやろう」

 

「ふふっ、それは助かるのじゃ」

 

 ええいっ、ニヤニヤするな!

 

「ほら、アルヴィンボールだ。前に渡したヤツも含めて集めてやったぞ」

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「あ、ああ……、助かったのじゃ。…………え~と、アルヴィン?」

 

「なんだ?」

 

「なぜ数珠繋ぎになっておるのじゃ?」

 

「そのほうが持ちやすいからだろう」

 

「…………そ、そうじゃな」

 

「まあ、願いごとを叶えさえすれば役目を終えて数珠からボールに戻るから安心しろ」

 

「……そうか、ありがとう、アルヴィン」

 

「ふんっ、礼など言わなくていい。これは契約なのだからな!」

 

「ふふっ、そうじゃったな」

 

 微笑むアリカに注意として言っておく。

 

「使うのは崩落が始まってからにしろよ?」

 

「……なぜじゃ?」

 

 アリカは若干不満そうに首をかしげた。こいつ、やっぱり分かってなかったか……。

 

「崩落前に発動させれば、最初から崩落することが分かっていたみたいじゃないか? そうなれば『完全なる世界』との最終戦争でもいい目を見ようとしていた  M  M  (メガロメセンブリア)に付け入る隙ができるだろう? ――例えば、女王アリカは分かっていて国を危険にさらした! とか指摘してさ」

 

「ふむ……」

 

「それに切羽詰ったところの神頼み的な大魔王頼みで、自分を対価にギリギリで国を救ったと見せといたほうがいいと思う。アルヴィンボールの存在を知っていたのも、偶然黒龍を見て、幼少のときに王宮でボールを7つ集めれば願いを叶えてくれる黒い龍が出てくる話を読んだことがあり、女王になって王宮の宝物庫に入ったときにその話通りに7つのボールを発見した。『完全なる世界』との最終決戦では不確定要素が多くて使わなかったが、王国から魔力が消失するという事態が起きたために、一か八かで使用した。――ってしたほうが、絶大な力を秘めていたアルヴィンボールを持っていたことへの言及は少なくなるだろうし、使用後は空に散るように飛び散れば、アルヴィンボールを狙う者もアリカに近づかないだろうからな」

 

「そ、そうか……。主の言う通りにしたほうがよさそうじゃのう」

 

「まあ、崩壊が始まったときに島の上に浮いてる岩が落ちたりして犠牲者がでるのを心配してるんだろうが、それも大丈夫だ」

 

「そうなのか?」

 

「まあな。まっ、口で説明するのは面倒でかなりの大作戦になるだろうから、直接頭に情報を入れるぞ?」

 

「う、うむ。頼むのじゃ」

 

 自分の額をアリカの額にくっつけて作戦内容を送り込む。

 

「…………これが、作戦か……。ふむ、魔法世界を救う実験でもあるのか……。じゃが、ここまでの所業、大魔王といってもいささか難しいのではないか?」

 

「あ~、それに関しては大丈夫だ。元々一般的に見たら全然吊り合わない契約だし、これなら俺のほうがただ力を消費するだけなんだけど、アルヴィンボールは元々俺の余分魔力を固めて作り出した物だからな。今回使用するだろう魔力は全部ボールで補っておつりが帰ってくるレベルだから問題なしだ」

 

 実際にボール1つで1番大きな王都オスティアがある島ぐらい浮かせる魔力が入ってるからな。

 

「崩落の際に起こると予想される地震や落石とか、そういうものはエヴァとニィ、それに茶々ゼロが対処してくれる。浮かせるために使わないおつり魔力も使用してオスティア一帯に治癒魔法陣を展開させ続けて住民を守るし、こちらの準備は万全だ」

 

「……わ、妾は先ほどまでいろいろと悩んでおったのじゃが……? 主らはすべての事態を予想しておったのか……」

 

 突然頭を抱えだしたアリカ。

 

 だけど――。

 

「アリカが俺に助けを求めなかったら、こちらからは何もしないつもりだった」

 

「む?」

 

「俺は魔族で元大魔王だからな。求められてもいないのに救うこと、助けることなんて滅多にやらない。アリカは俺に助けを求めたから俺は動いたんだ」

 

「…………ふふっ、助けを求める、か。そなたに出会う前の妾であれば絶対にやらなかったことじゃな」

 

「ああ、そういえばあの頃は終始クールぶっていたなぁ。まあ、すぐに露出&フェラチオ体験して写真撮影とかを経験してで表情の起伏がでてきたんだよな」

 

「ううっ、それだけ経験すれば誰だっていつも通りではおれんわっ。あの頃の妾は大戦や国内部の政治的な争いでいろいろと――」

 

「あー、はいはい。それはあとでたっぷり訊くから、まずは国を救う相談でもしましょうか?」

 

「ぬ、主が始めた話じゃろうに……」

 

 アリカはふぬぬっと唸りながらジト目で睨んでくる。

 

 こういう歳相応の表情も魅力的だよな。

 

 俺はいつものようにアリカの首に巻きつき、谷間に頭を乗せる。

 

 おお、ゆっくりだけどまだまだ胸は成長してるみたいだね。

 

 アリカは数珠繋ぎになっているアルヴィンボールをエヴァ特製の『何でも入るよ、倉庫1個分を収容できるのに体積、重さは変わらない道具袋』に入れて、庭園の外へと足を向けた。

 

 ――っと、あれ? 庭園から入ってきてるのって……。

 

「よぉ、姫さん」

 

「ナギ」

 

『紅き翼』のリーダーである赤毛の鳥頭青年のナギだった。

 

 相変わらずの魔法使いの白いローブの下は上下黒の服で靴まで黒の黒づくしという、美的感覚がいいのか悪いのか、それともイケメンだからこそ似合っているのかといろいろ悩むファッションで登場した。

 

 ナギはゆっくりと歩いてきながらつぶやく。

 

「姫子ちゃんも無事に助け出せたみたいだし、終わったな、全部。」

 

「…………」

 

 その言葉にアリカは答えない。

 

 ナギや『紅き翼』の面々や、魔法世界のほとんどの者が『完全なる世界』を打ち倒してすべてが終わったように思っているだろうが、本当は何も終わってないからだ。ナギの言う姫子ちゃん……『黄昏の巫女』アスナを救いだしても、まだ彼女は長年飼い殺しにされていた所為で感情をもたない人形のようで、人間らしさを取り戻すためには永い時間がかかる。それにまだ完全に滅んでいない造物主と『完全なる世界』がアスナの完全魔力無効化能力を求めて付け狙うだろうし、まだまだ問題は山積みなのだ。

 

「どうしたよ。世界は平和になったってのに何かあったか? いつもの仏頂面が余計ヒドイ事になってんぞ、能面王女」

 

『確かに、さっきのかわいらしいジト目のほうがいい表情だったな。――やっぱりアリカは俺やエヴァに弄られたり、虐められたりして怒ったり、いじけてる表情のほうがかわいいよな』

 

 うんうんと念話でつぶやきながらうなずく。

 

『ちょっと黙っておるのじゃ、アルヴィン!』

 

『はいはい、わかったよ』

 

「本当にどうかしたか?」

 

「いや……」

 

 ナギの問いにアリカは目を逸らした。

 

 ナギはそんなアリカの様子に何か言いたげであったが、息を吐いて雰囲気を変えて、背を向けた。

 

 そして「やれやれだぜ」とつぶやき始める。

 

「ま……、なんだな。アンタの騎士役はこれで終わりだな。あんたに預けた俺の杖と翼、そろそろ返してもらうか。――堅苦しいのはキライでね」

 

 そういや、『闇の迷宮』に『紅き翼』がやってきたときに大戦が終わるまで力を貸すっていう契約というか約束を皆のまえでやったっけ。

 

『ん~、でも「完全なる世界」と造物主を倒した「紅き翼」の力は手元においときたいよなぁ』

 

『…………。……ふむ、そうじゃな。最終決戦の際にアルヴィンと通して見た状況からして造物主が死ねば、その近くにある死体や体に乗り移ることのできる不死者のような存在のようじゃからな。――ゼクトの体を奪った造物主が存在しておるのならまた「完全なる世界」が再生される可能性が高いからのう』

 

『造物主と「完全なる世界」を倒すことのできる「紅き翼」をいつでも動かせるようにしといたほうが安心なんだけど、「紅き翼」って元々大戦が終わるまでの契約で協力関係になった傭兵集団だからなぁ。大戦が終わってるいまでは――』

 

『いち傭兵集団に戻るか。まあ、そっちのほうが気楽でよいじゃろうな』

 

 アリカは小さく息を吐いて背中を向けているナギに声をかける。

 

「ナギ」

 

「ん?」

 

 アリカの呼びかけにナギは顔だけ振り返らせる。

 

 アリカは胸に手を置き、目を瞑って笑顔を浮べた。

 

「いままで、本当にありがとう。そなたたちのおかげで大戦を終わらせ、『完全なる世界』を倒すことができたのじゃ。魔法世界の住民を代表して礼を言う」

 

 素直なアリカのお礼……、だったのだけど……。

 

 バザッっと一瞬で移動し、アリカの腰を抱くように腕を回したナギが真剣な顔を近づけてきた。

 

「どうしたんだよ、姫さん。何があった?」

 

 真剣な表情のまま訊ねてくるナギ。

 

『……一応何かあったのは事実なんだけど、素直に礼を言ったら真剣に心配してくるって普段どういう風に思われてるんだ? いや、……能面王女だったな』

 

「…………」

 

 無言のままのアリカにナギは続けて言う。

 

「ちゃんと話せよ。おまえが素直に礼を言うなんて普通じゃねぇよ。本当に何があったんだ?」

 

「…………」

 

 ガッ!

 

 アリカは無言のまま、そのままの体勢でナギの顔面にヒザ蹴りを打ち込んだ。

 

「――っ!?」

 

 ヒザ蹴りをくらって驚いているナギに、アリカは続けて魔力を込めたビンタを放つ!

 

 ゴギンッ!

 

「もぎゃんっ!」

 

 王家の魔力が篭った女王ビンタがナギに命中し、その体を吹き飛ばす!

 

 ナギの体はそのまま空中で何度も回転してから地面へと墜落する!

 

 ヒザ蹴りから女王ビンタという突然だが、見事な2連コンボだった。まあ、ナギがアリカに無礼な態度をとって吹っ飛ばされるっていういつも通りの光景だな。

 

 ナギは地面から這い上がり、頭にできたタンコブを擦りながら言う。

 

「いきなりなにすんだよ。俺は姫さんの事を心配してやってんじゃねぇかよ」

 

 そうつぶやくナギにアリカは背を向ける。

 

「ふん。別に妾はどうもしておらんわ。それと、妾は今やこの国の女王となった。二度と姫と呼ぶことは許さぬ。もはや主らなどが気安く話しかけられる相手ではないのじゃ」

 

 突き放すようにナギに告げる。

 

 ナギを始めとする『紅き翼』と決別すると態度で示すように。

 

「ではな」

 

 アリカは振り返らずに別れを告げる。

 

 ナギは別れを告げるアリカに慌てたようすで声をかける。

 

「オイッ、姫さん!」

 

「姫ではないと言っておるじゃろうが、鳥頭め」

 

 ナギに背中を向けたままアリカは歩き始める。

 

「くっ……」

 

 ナギはアリカに声をかけようとしているが、もごもごと何を言っていいのか悩んでいて声をかけるにかけれないようだ。

 

 アリカがどんどんナギから離れて行く。

 

 ナギは離れて行くアリカにヤケクソ気味に叫ぶ。

 

「アリカ! 俺の翼はまだあんたに預けたままだ! まだ返してもらってねえ!」

 

 さっきアリカがお礼と一緒に杖も翼も返したような気がするけど……?

 

「だっ、だから! アリカが望むなら! その翼で俺がどこへだって連れていってやる!」

 

 真っ赤になって叫んだナギ。ああ、こいつアリカに惚れてたのか。

 

 まっ、いつもアリカにちょっかいかけるから、予想はしてたけどな。

 

 それにしても、魔法世界にやってきた理由が強いヤツと闘いたいからっていうバトルマニアが恋とはねぇ。

 

 で……、俺も気になってるアリカの返答は……。

 

「妾の行き先はすでに決まっておる。――そなたの翼はそなたのものじゃ」

 

「――っ」 

 

 と、拒絶だった。

 

 ナギはショックを受けたように、次の言葉を出せずに固まったままだ。

 

 アリカはナギを置き去りにしたまま庭園から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカが庭園から出てすぐ、『紅き翼』のメンバーであるガトウと、途中で新たに『紅き翼』に加わったタカミチと同い年ぐらいのクルトが現れた。

 

 この2人は元々『紅き翼』の頭脳担当で最終戦の際には艦隊の指揮や連携、交渉などであまり消耗しておらず、水面下で動かしやすい、動ける2人だったので、ウェスペルタティア王国から魔力が消失して島が崩落するという事情をすでに話し、秘密裏に国民を避難させるように動かしていた。

 

 2人はアリカの前で片膝をついたまま、顔だけ上げてガトウが言う。

 

「時間です。まもなく崩落の第一段階が始まります」

 

「進捗状況は?」

 

「術式封印直後から全艦艇、全力であたっており、……現在37%。――陛下のお考えどおり式典と少子この離宮等に全市民を誘導しております。情報統制により混乱もこれまでの所ありませんが――、崩落が始まればその限りでは……。全市民の救出は困難を極めるかと……!」

 

「……ッ」

 

 アルヴィンボールで国と民が救えるといっても、何が起こるか分からないんだ。順調にいってない避難誘導の進行状況にアリカは歯噛みした。

 

 アリカはうなずき、身を翻す。

 

「――わかった。妾も直接指揮にあたる!」

 

『アリカ』

 

『信頼しておるぞ、アルヴィン』

 

『ああ、まかせておけ』

 



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第16話 発動! アルヴィンボールの巻

 鳥山さんすみません……。


 ガトウとクルトからの報告を訊いたアリカはMMの国際戦略艦に乗り、魔力消失現象が始まって崩落し始めたウェスペルタティア王国から民を避難させる指揮を行なっていた。

 

「空中王都の崩落拡大中!」

 

「本艦の周囲にも強力な魔力衰退現象!」

 

「即席の対抗呪文塗装装甲がいつまで持つか――」

 

「泣き言はいらぬ! あと数時間持てば充分じゃ! 最も的確に市民を救えるよう最大効率で舟を回せ! ただし! 捨てて良い命はない! 1人も救いもらすな! これは厳命じゃ!」

 

 アリカは大声で指示を出し、弱気になる救出部隊や船員達を叱咤激励する。

 

 そんななかにまた問題が飛び込んできた。

 

「貧民島の避難作業が難航しています! このままでは!」

 

「理由は!?」

 

「街の構造が複雑な上……、不法移民が多く全住民の把握が……」

 

「……ッ」

 

 アリカは歯噛みし、念話で俺に声をかける。

 

『アルヴィン! もう良いじゃろう!? このままでは死者が……!』

 

『ああ、仕込みももう終わらせた。こちらの作戦はいつでの開始できるぞ。あと、一時的に世界と切り離して魔力衰退現象でも動けるようにしたエヴァとニィのおかげで死者のほうは現在はかろうじで出ていない』

 

『そうか! ならばすぐに始めるぞ!』

 

『ああ!』

 

 アリカは道具袋から数珠繋ぎになっている7つのアルヴィンボールを取り出し、艦の床に置く。

 

「アリカさま、それは!?」

 

 突然の行動に驚くクルトにアリカは簡潔に説明する。

 

「ウェスペルタティア王国の廃れた御伽噺に出てくる伝説級の 魔法具 (マジックアイテム)、アルヴィンボールじゃ!」

 

「アルヴィンボール!? アルヴィンとはその黒龍の名前だったはず……」

 

「そうじゃ! この黒龍を従え、1から7までの番号が書かれたアルヴィンボールをすべて集めて願いを言えば、黒龍は真の姿を表し、何でも1つだけ願いを叶えてくれるという魔法具なのじゃ! ――元々廃れた御伽噺のなかの伝説の魔法具で発動するかすら不明じゃったから『完全なる世界』との最終戦争では使えなかったが、もはやこれに頼るほかない!」

 

「そ、そんな魔法具が!? でっ、ですが、そのような魔法具が発動したとしても何か代償を支払わなければいけないんじゃ……」

 

「…………」

 

 アリカは時間が勿体無いとクルトの会話を打ち切って儀式を始めようとするが……。

 

「――っ! 代償があるのですね!?」

 

 ……なにやら勘違い……、とも言えない、何とも微妙な流れになってきたぞ?

 

 アリカも早く儀式を始めたいからって、

 

「元々世界中に散らばるアルヴィンボールを集めることがこの魔法具の1番の代償になっておる! あとは魔法具を発動させて願い叶えてもらう者を捧げればよいだけじゃ!」

 

「――っ! アリカさま、それではあなたが……!」

 

「黙っておれ、クルト! 儀式の邪魔じゃ!」

 

「くっ……」

 

 儀式を行なうために集中するアリカに歯噛みするクルト。絶対変な流れになってるってアリカさぁぁんっ!

 

『ゴルァアーッ! こんのバカ姫!』

 

 ――っと、ここでナギが艦のモニターの1つに映った。

 

『やい、アリカ、てめぇっ! どういうこったコレは!?』

 

 モニター越しに怒鳴ってくるナギにアリカは冷静に告げる。

 

「見ての通りだ。世界を救う代償に自らの国を滅ぼした。案ずるな。妾もいずれ遠からぬうちに地獄へ堕ちる」

 

『……ッ。何で話さなかった、この唐 変 木(とうへんぼく)!』

 

「話しても無駄であろう。戦いしか能のない主が一人で何の役に立つ」

 

『くそッ……、いまからそっちに向う! 待っとけ、てめぇ!』

 

「ここにそなたの力は必要ない! 妾を助ける暇があるのなら避難民の頭上に落下する浮遊岩の破壊を要請する! まだ崩落のはじめていない地区を頼む!」

 

『む……』

 

「ただし、この魔力消失現象の中では主も満足に飛べまい。主ら『紅き翼』が逃亡生活中に使用していたボロ舟にも対抗呪文処理を施してある! それを……」

 

『もう乗ってるよ!』

 

「ならば良い。では救出活動に全力を尽くしたあと、そなたたちはそのままここを去れ。2度戻るな、最後の命令じゃ」

 

『何!? そりゃどーゆー……』

 

「ナギ!」

 

 ここでクルトが口を挟む! 

 

「アリカさまはアルヴィンボールという伝説級の魔法具を使用し、自分を犠牲とした儀式を始めて国と民を救うつもりです!」

 

『自分を犠牲にだと!? おい、それは本当のことなのかよ!?』

 

「クルト、余計なことを……」

 

「ですが……!」

 

『おい、姫さん!』

 

「うるさい! これはもう決めたことじゃ! ――それよりも切るぞ、この通信の間にも民が死んでいく」

 

『オイッ、待て!』

 

「――っ。へ、陛下しばしお待ちを! アルビレオ・イマ! 聞いていますか!? クルトです!」

 

 クルトの呼びかけにナギの隣からアルビレオが顔を出す。

 

『ハイ、何です? クルトくん』

 

「先ほどアリカさまがおっしゃった通り、二度と戻らないほう賢明かと思います! もし戻れば……、あなた方はメガロメセンブリアに拘束される可能性が高い! いまは身を隠してください! 時が経てば事態は好転する筈です!」

 

『好転するって姫さんは……!』

 

「とにかくコレが終わったら逃げてください! いいですね!?」

 

『わかりました。ナギのコトはお任せを』

 

『どけコラ、アル! てめーらはなせ!』

 

 騒ぐナギをラカンと詠春が取り押さえる。

 

 改めて儀式を始めようとするアリカにアルビレオが声をかける。

 

『陛下、1つお訊ねしてもよろしいでしょうか?』

 

「なんじゃ? 時間が勿体無いので早く言え」

 

『そのアルヴィンボールという魔法具の代償はすぐに命を奪うものなのでしょうか?』

 

「……伝承には書かれてない。発動させてアルヴィンに訊ねんとわからぬ。おそらく願いを叶えるためにすぐには死ぬということはなかろう」

 

『そうですか……。ではナギをこちらで抑えておきますので、通信を続けて儀式を見させていただいてもよろしいでしょうか?』

 

「……勝手にせよ」

 

『おい、はなせ! ラカンっ! 詠春っ!』

 

『ナギ! いまは黙ってください! 現状ではあの魔法具に頼るしかないのです!』

 

『だが……!』

 

『それよりもアリカ様とあの首にいるアルヴィンという黒龍が交わすであろう契約内容を訊くのです! もしかしたら陛下が払う代償をどうにかする手立てになるかもしれないのですから!』 

 

『――っ! くっ……』

 

 モニターの後ろでラカンと詠春に捕まってるナギが、俺に向って「アリカの命なんて要求しやがったらぶっ殺す!」と言わんばかりに殺気を飛ばしてくる。

 

 ていうか、アルビレオ~。アリカが払うことになる代償はあとでどうにかすればいいって、契約破る気満々の発言が契約する側に聞かれてるぞ?

 

 ――っと、アリカはそんなやり取りなんか無視して大声を出すために肺いっぱいに息を吸い込んだ。

 

 そして皆が見守る中、アリカは叫ぶ。

 

「いでよ! アルヴィン!」

 

「…………」

 

『『『『………………』』』』

 

 おいおいクルトもナギたちも、何黙ってんだよ? もっと仰々しい儀式期待してたのか? ある世界ではこの方法が龍を呼び出す呪文として一番有名なんだぞ。

 

 まあ、時間もないので7つの玉を共鳴させるように光らせる。

 

 光り始めたところでやっと全員驚いた様子を見せ始めた。

 

 アルヴィンボールは黒い光を点滅させながら次第にその光を大きくしていき浮き上がる。

 

 浮き始めたアルヴィンボールがアリカの腰の位置まで浮上してきたところで俺はアリカの首から離れ、7つのアルヴィンボールに囲まれるように真ん中に入り、体を黒く光らせる。

 

 そして光らせたまま、威厳のある仰々しい口調でアリカに訊ねる。

 

「仮の姿である黒龍を手なずけ、アルヴィンボールを七つ集めし者よ。――貴様は我に何を望む?」

 

 アリカは息を飲んで答える。

 

「ウェスペルタティア王国を崩落の危機から救ってくれ……。妾はどうなってもよい! じゃから国と民を……!」

 

「…………その代償に貴様は死後のすべてを我に捧げるか?」

 

「捧げるのじゃ! じゃから国を……、民を救ってくだ、さい……!」

 

『姫さん……』

 

「アリカさま……」

 

 代償に二つ返事でうなずいて頭を下げるアリカに、ナギとクルトが声をもらす。

 

 俺は顔の高さをアリカと合わせてうなずく。

 

「心得た。ではウェスペルタティア王国を危機から救おう」

 

 そう言ってから俺はアルヴィンボールと一緒に全身から黒い光りを出してアリカたちの前から消える。

 

 そして、これからが魔法世界を救う実験も含めたウェスペルタティア王国の救済の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリカさまが突然言い出した、ウェスペルタティア王国を崩落の危機から救うかもしてない方法としてアルヴィンボールという魔法具を発動させた。

 

 その魔法具は何でも数字の入ったアルヴィンボールを7つ集めれば、アルヴィンというアリカさまのペットだと思っていた黒龍が真の姿を現して願いを叶えてくれるというものだった。

 

 アリカさまも『完全なる世界』との最終決戦で使わなかった不安要素がある魔法具のようだが、本当に発動してしまった……。

 

 いくら国を救う手段といっても、アリカ様を犠牲にする魔法具なんて心の中では絶対に発動してほしくなかった……。

 

 魔法具が発動し、黒く輝くアルヴィンボールにアリカ様の首から黒龍が移動し、願いを叶える代わりに、アリカ様のその死後を渡せと要求してきた。

 

 死後の魂を求める契約……。

 

 おそらく黒龍は魔族に近い存在なのだろう。

 

 魔族に捧げたアリカ様の死後の魂がどうなるか……。それは僕には想像できないし、想像したくもない。

 

 くっ……、そもそも僕がアリカ様の代わりに死後を捧げればよかったんだ!

 

 僕が、僕が……。

 

 ……アリカ様は魔族に死後の魂を捧げる契約をしたというのに安心したような顔だった……。

 

 自分の身で国が助かればと思っているんだろう。

 

 本当に高貴で、高潔で立派な女王様だ。

 

「アリカさま……」

 

「……クルト、とりあえずコレで何とかなりそうじゃ」

 

「ですが、陛下の死後が……!」

 

「妾の死後などどうでもよいことじゃ。元々、妾は地獄へ堕ちるつもりじゃったからな」

 

「――っ」

 

 僕がアリカさまの言葉に絶句するのとほぼ同時に、モニターに映っていたナギが声を上げた。

 

 両腕をそれぞれラカンさんと詠春さんに捕まっているのに、無理やり前に出てきた。

 

『オイ、姫さん! てめぇが言った行き先っていうのは地獄のことだっていうのかよ!?』

 

「む……、まあ、その通りじゃ」

 

 やはり最初からアリカ様は地獄に堕ちる覚悟で!

 

 クソッ! 僕は……、どうして僕は何もできないんだ!? 『紅き翼』の一員になって詠春さんから剣を教えてもらったというのに、何故、僕は何もできないんだ!?

 

 自分の無力に歯噛みしていると、島の崩落の音とは違う轟音が遥か下……、地面のほうから轟き始めた!

 

 船員の1人が声を上げる。

 

「下方からきょ、巨大な物体が急接近中! 」

 

 その言葉が艦のブリッジに響いた次の瞬間、艦のすぐ前を巨大な物体が横切った!

 

 アリカさまがつかさず指示を送る。

 

「全艦隊と救助を行なっている部隊に告げる! 現在民の救助の途中である部隊と艦は衝撃に備えてすぐに何かに掴まれ! 救助が終わり崩落が続いている地域の近くにいる艦は直ちに崩落している場所から離れよ!」

 

「りょ、了解しました!」

 

 アリカさまの言葉を無線を使用して広めていく。

 

 いったい何が起こったんだと僕が外を見ると……。

 

「こ、これは巨大な……、木、なのか?」

 

 見たこともないものすごく巨大な木が雲を突き破って地面のほうから生えていて、崩落していく王都オスティアを木の中心で受け止め、四方に伸びた数百……、いや千はあるかもしれない枝が周りの島々をすべて受け止め、これまた規格外に巨大なツルが絡みついて割れかけていた土地を繋げたり、崩落してくる小型の浮遊岩を葉や枝で蹴散らした。

 

『これは……、すごいですね』

 

 アルビレオさんがいつのも余裕顔ではなく、大きく目を開いて驚きの声をもらしていた。

 

 いや、本当は皆もアルビレオさんみたいに驚きの声をもらしたかったんだろうけど、あまりのことで言葉が出ないんだ。

 

 さらに皆を驚かせるように、空を覆うほどの魔法陣が出現する!

 

『あれは……、治癒魔法陣!? 感じる魔力といいあの魔法陣が発動し続ければ、最悪死者はでないかもしれません』

 

「ほ、本当ですか!? アルビレオさん!」

 

 犠牲者が出なくなるのかもしてないのか!?

 

『ええ。あの魔法陣が発動している間は即死などでない限り死ぬことはないでしょうし、展開されている規模と範囲から死傷を負って手遅れだった者も助かるはずです。……黒龍は陛下の願い通りに国と民のすべてを救おうとしているのかもしれません』

 

「そ、そんなことがあの黒龍にできたのですか!?」

 

 大樹を生やして国を受け止め、空を覆うほどの治癒魔法陣を展開するなんて、ま、まるで神のようじゃないか!?

 

 そ、そういえば、詠春さんがあの黒龍は旧世界の一部ではかなり有名な神だと教えてもらったような記憶が……。

 

 た、タカミチも何らかの対価を払って六式などという格闘技術を教えてもらったことがあるそうだし、僕も意地を張らないで対価を支払って願いを……、だ、だけど、アリカさまのペットだからといつも胸の谷間で気持ちよさそうに寝てるヤツを見ると……。

 

「陛下! あの大樹が生えてきてから魔力衰退現象が弱くなってきています!」

 

「おそらく大樹には自己で魔力を生み出す能力が備わっていると思われます!」

 

「うむ、それならば最初の予想と違って長い間魔法が使えなくなることはないようじゃな」

 

 ――っと、いけない! まだ終わりじゃなかったんだ!

 

 大樹はドンドン成長しながら島々を絡め取り、完全に崩落が収まってきた。

 

 それを見計らってアリカ様が指示をだす。

 

「全艦隊に告げる! 大樹が崩落を停めた! 魔力衰退現象も大樹が自己生成する魔力で緩和しておる! それに空に大規模な治癒魔法陣が描かれておるから大抵の怪我も治る!動ける者は直ちに取り残された民の捜索と救助に向かうのじゃ!」

 

 もう防げないだろうと誰もが思っていた崩落が停まったことで全艦隊、いやすべての住民から歓声があがる。

 

 絶望の淵から見えた救いに誰しもが士気を高め、我先にと取り残された者達の捜索や救助に向った。

 

 アリカさまは艦の操舵手のほうを向き、指示を出す。

 

「この艦は大樹の中央……、回復魔法陣の中心地へと進路を進めよ」

 

 ――っ。それは……! 

 

『オイッ! アリカ!』

 

 さっきまで黙っていたナギもアリカさまがやろうとしていることに声をあげるけど……。

 

「もはやそなたたちの役目はない。  M.M  (メガロメセンブリア)が干渉してくる前に逃げよ。――今度こそ通信を打ち切る」

 

 と冷たく突き放すように告げた。

 

『……ッ!』

 

 ナギはアリカさまの言葉に何も言えなくなり絶句するが、アルビレオさんは素早く行動し始めた。

 

『わかりました。いまは姿をくらましておきます』

 

 アリカさまは無言でうなずき、モニターからナギたちが消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔界時代から倉庫にしまい込んでいた魔界産世界樹の種を利用した『ウェスペルタティア王国の崩落の危機回避大作戦』が無事に成功したようだ。

 

 アリカの願いを聞いた俺が崩落し続けるウェスペルタティア王国の島々で1番大きな王都オスティアの真下、地表に近く転移して魔界産の世界樹の種を放り、アルヴィンボールの魔力を注ぎ込み、急成長させた。

 

 元大魔王で高純度、膨大な魔力を受け取った魔界産世界樹の種はそのまま何千年分もの成長を行い、地面に太く、根深く、広範囲に根を伸ばして上空へと伸び続け、ウェスペルタティア王国の崩落しかけていた島々を持上げ、割れていた地面をその根やツタで繋げて固定した。

 

 まあ、本来なら魔界産世界樹がこちらに都合のいい成長の仕方なんてしないんだが、先に膨大な魔力と引き換えに魔界産世界樹の種と契約を結んでいたので、ほとんどこちらの予定通りに魔界産世界樹が崩落を停めてくれたのだ。

 

 さらに俺は魔界産世界樹を急成長させてもまだ余ってるアルヴィンボールを使用して国を覆うように空に常時怪我を癒し続ける治癒魔法陣を展開し、怪我人が取り残されていたり、救助されたが大怪我を負っていた者にも対処、数名ほど死亡者がいたがそちらも蘇生魔術を使用し、生き返らせた。蘇生魔術に関しても死亡してから時間がさほど経っていなかったことと、膨大な魔力を余らせていたアルヴィンボールのおかげで楽にできた。

 

 そして、もう1つ。

 

 数十年後に起こるだろう魔力枯渇による魔法世界の崩落に対しての対処するための実験も、概ねこちらの予想通りに進んだ。

 

 こちらが予想していたこととは、魔法世界は人工世界であるから魔力が消失すれば火星に戻ってしまうのだから、消失する魔力を超える魔力生成機関があれば魔法世界を崩壊から延命、もしくは救えるのでは? というものだ。

 

 消失する魔力を超える魔力生成機関を今回、魔界産の世界樹で行った結果、無事に魔法世界の地面に根付き、消失を超える魔力の生成を確認した。

 

 魔法世界での一番の課題であったのは根付いてから、自分が吸う以上の魔力を生成するまでの時間だったが、それも別機関から魔力を注ぎ込んで急成長させればいいとわかったし、魔界産世界樹の種はその名の通り、魔法世界……、人工世界産のものではないので、魔法世界を無に返す魔法も通じない。

 

 結果、ウェスペルタティア王国の救済と魔法世界の崩壊の危機から救う道がかなり開けたのだ。

 

 まっ、まだまだ実験は必要だし、いくら大きいからって1本じゃ魔法世界を形作る魔力は補えないからあと少なくても数本は同じ規模の世界樹を生やすか、自己で吸うよりもより多く魔力生成できるような世界樹を数十本生やさなきゃいけないけどな。

 

 それに魔界産の世界樹の種も今回ので使ったし、やはり旧世界の世界樹に頼んで新たな種を作ってもらわないといけない。

 

 そう、作ってもらわないといけないのだが……、世界樹の力を見ると約20年後の大発光の際に多くて5個、少ないとまったく出来ないということになりそうなのだ。

 

 はぁ……、まったくアリカの今後といい問題だらけだな。

 

 予定通り空に広がっている治癒魔法陣の丁度中央付近に、アリカが乗っている艦が到着したのを確認する。

 

 国のすぐ下に地面のように広がっている雲の下から長い胴を少し見せつつ、すべての者に黒龍の存在を意識させてからアリカの元へと移動する。

 

 俺が艦に近づいたところで、艦の前方にモニターが現れた。

 

 そこにはアリカがドアップで映っていて、巨大な俺にも聞えるように拡声器を使用して俺に礼を言ってくる。

 

「ウェスペルタティア王国のすべての者を代表して礼を言う」

 

 モニター越しに深く頭を下げるアリカに、俺は大きな……、声では巨体ゆえにマズいので念話で会話する。

 

 この国すべての者達にもワザと聞えるように、俺は念話で直接頭に言葉を送り込む。

 

『我が分体である黒龍アルヴィンを手なずけ、アルヴィンボールを七つすべて集め、貴様は「ウェスペルタティア王国の国と民を救う」と我に願い、代わりにその死後を差し出すと契約したのだ。礼など言わなくてよい』

 

 一度言葉を切って言う。

 

『空に展開している魔法陣は数時間で消える。我の役目はこれで終わりだ。もう一度、我に願いを言いたければ魔法世界ともう1つの世界に散らばる七つのアルヴィンボールと、世界のどこかに転生する我が分体を手なずけよ。では――、さらばだ』

 

 親切に呼び出す方法を教えてから一方的に別れを告げ、俺は全身を黒く発光させる。

 

 ん? ……何か遠くで体に雷的なものが当たって「待ちやがれクソ龍!」とか叫ぶ赤毛の鳥頭が脳裏に浮んだけど、……これは無視だな。

 

 全身を発光させたあと巨体を光に変えて消していき、飛んでいくのが見やすいように玉だけをより強く光らせて、その場で弱回転させながら……、途中で回転をピタッと停めて七方向に打ち出した。

 

 七方向に飛ぶアルヴィンボールは黒い流れ星のようになって世界のどこかへ飛んでいった。

 

 そして本体である俺はというと……。

 

「んっ!」

 

「だっ、大丈夫ですか、アリカ様!」

 

「はぁはぁ……、だ、大丈夫じゃ」

 

『ただいま~』

 

『くっ、こ、コレ、アルヴィン! も、もぞもぞさせるな! ――ぅぅっ、姿を現すのはマズイからと紋様として肌に張り付くと聞いて嫌な予感を感じておったが、それが当たってしまったのじゃ……』

 

『まあまあ、アリカとか俺たちの関係者にしか基本見えない紋様だし、どこか他の場所に隠れるよりも、これから大変になるだろうアリカのすぐ傍に居てあげたかったからな』

 

『わ、妾の傍に……。そ、それはうれしいのじゃが、距離が……、いくらなんでも肌に張り付くのは近すぎるじゃろうっ。それに体の上をアルヴィンの無数にある丸い鱗に擦られて……、その……』

 

『気持ちよくなっちゃうか?』

 

『――っ。ぬ、主がワザと気持ちよくなるように刺激するのじゃろう! それに気持ちよくなるように妾を開発したのは主であろうが!』

 

『ハハハハ、そうだった』

 

 そう、俺はアリカの肌に張り付いていた。

 

 本当は霊体になって近くにいることも可能だったんだけど、それよりもいまはアリカがすぐ傍に誰かがいることを感じさせたかった。そして俺自身もアリカの傍に居てやりたかったから肌に張り付くという体勢をとったんだ。

 

「アリカさま、お体は本当に大丈夫なのですか!? やはり黒龍と契約を交わした影響が……」

 

 ……まあ、アリカが突然体を跳ねさせたり、声をもらすからクルトや艦の皆に心配かけちゃってるみたいだけどね。

 

 これは仕方ないだろう。

 

 それよりも救助と災害後の対応が先決だ。

 




 とりあえず今回はここまで。

 現在大戦編のエピローグとなる第17話の途中まで書いてます。


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第17話 大戦のおわり ☆

 一応コレで過去の魔法世界大戦編のおわりとなります。

 あと、今回のあとがきに小話がありますよ~。


 ウェスペルタティア王国、女王アリカが、魔法世界で起きていた大規模な戦争を裏で操っていた悪の結社『完全なる世界』との最終戦争時に相手側が使用した世界を無に戻す術式の余波によって魔力を失い、空から地面へと崩落しかけたウェスペルタティア王国を、ウェスペルタティア王国で遥か昔に廃れた物語に出てくる魔法具を使用し、自分の死後を引き換えに国を崩落の危機から救い、死亡していた死者まで蘇らせて犠牲者を出さずに国民を救った。

 

 本来ならば魔力消失現象の後遺症で、永い間にわたって魔法が使えない土地となるはずだったウェスペルタティア王国の領土も、伝説の黒龍が生やした大樹が魔力を生成するおかげで魔法も問題なく使用できるようになっている。

 

 災害後の復興も女王アリカが女王となる前からと共に『完全なる世界』の裏を暴きだしたりと協力していた傭兵集団や、魔法世界の国々に所属している機関や組織、団体などからの支援のおかげで、わずか2ヶ月足らずで都市機能が災害前の70%まで回復し、復興の目処もたった。

 

 ウェスペルタティア王国が魔力消失現象による領土の崩落という絶望的な災害に見まわれたというのに、犠牲者も出ずに復興へと向っているのはすべて伝説の黒龍にその身を、死後を捧げた女王アリカがあってこその奇跡だったのだが……。

 

 災害から2ヵ月後、女王アリカは連合、メガロメセンブリアにある元老院に出頭するように命じられる。

 

 女王アリカは国の復興で忙しいと、元老院から出頭要請を断わるが、再三にわたっての出頭要請にしぶしぶと元老院へと向った。

 

 女王アリカが元老院へと出頭し、国を空けた直後、見計らったようにウェスペルタティア王国でクーデターが起きる。

 

 そのクーデターの首謀者は、なんと死んだものとされていた女王アリカの父である先王だった。

 

 女王アリカがクーデターを起した際、偽者と入れ替わり、身を潜めていたそうだ。

 

 そして女王アリカが元老院に向うため、国を空けたところを見計らい、クーデターを起こしたのだ。

 

 さらに驚くべきことに、クーデターを起こした先王が国民すべての前で、女王アリカこそが『完全なる世界』の真の首領であり、魔法世界の真の敵であったと話、糾弾した。

 

 先王が生きていたことと、先王の話しに混乱する国民たちの元に、またもや見計らったように元老院から女王アリカを『完全なる世界』に関与していた疑いがあるとして逮捕拘束されたという情報がウェスペルタティア王国に広がる。

 

 その情報を受けて、ウェスペルタティア王国は先王の主張を信じる者たちと、女王アリカを信じる者たちと別れたが、逮捕拘束されてほどなくして女王アリカの処刑が2年後に決定したことで、しだいに女王アリカを信じる者の数は減っていき、魔法世界の国々からも女王アリカを信じる者が消えていき、それと半比例するように女王アリカをすべての悪と兆弾する者たちが多くなる。

 

 まるで女王アリカにすべての不満や憎しみを集めるような世界の動きに、1人の記者として何者かの陰謀を感じざるえない。

 

 ――ウェスペルタティア王国、民営新聞、記者の手記から抜擢――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連合最辺境ケルベラス無限監獄。

 

『アリカ、とうとうおまえを公開処刑することに決定したそうだ』

 

「…………そうか」

 

『完全にやられてしまったな。まさか元老院から罪のなすりつけをされて逮捕拘束されるのと同時に国でクーデターを起こしてくるとは思わなかった』

 

「そう……、じゃな……」

 

『……それに元老院と「完全なる世界」の残党がここぞとばかりにアリカの味方減らしを行い、魔法世界の住民も大戦で溜めていた不満や憎しみをおまえに向けている。俺の使い魔達に組織させた会社や傭兵団にも無罪を主張させたが、表へでてもすぐにかき消された。まったくもって孤立無援だな』

 

「……妾が多くの憎しみを引き受けて処刑されることで、世にある不幸を少しでも減らせるのなら本望じゃ……。ウェスペルタティア王国にも傀儡とはいえ王がおるし、復興もそなたとエヴァ達の協力で数年後には終わる。……妾は、このまま……」

 

『そんな棒読みの、一国の王としての体裁を取り繕っただけのセリフが俺に通用するとでも思ってるのか?』

 

「…………」

 

 アリカは黙る。

 

 世界を救うためにがんばったというのに、元老院から身に覚えのない罪を押しつけられ、国は先王のクーデターによって居場所はなく、現在はケルベラス無限監獄に収容されて、満足に動きの取れない重罪人用の囚人服を着せられ、処刑までの日々を世界から悪意を向けられ、『災厄の女王』と呼ばれながら空しく過ごしていた。

 

 俺は……、世界を救おうとしたアリカが、大好きなアリカがここまでされて世界に憎しみを感じていたが、女王であるアリカをその責務から切り離すいい機会だとも思った。

 

 絶望に心を蝕まれ、無気力なアリカ。

 

 ほとんどアリカの肌にくっついていたが、拘束具が保護していない首下の肌から這い出て外にでる。

 

 そしてアリカに問いかける。

 

『本当にこのまま死ぬ気なのか?』

 

 アリカは俺の問いにゆっくりとうなずいた。

 

「それが……、世界が妾に望むことならば……」

 

 問いの答えを訊いた俺は、いつもしていたようにアリカの首に巻きつき、顔を向かい合わせて言う。

 

『だったら契約通りに俺がおまえをもらうぞ』

 

「…………」

 

『どちらにしろ2年後に死ぬつもりなんだろう? だったらいま、俺がおまえをもらう』

 

「じゃ、じゃが、妾は……」

 

『女王か? 女王として公開処刑されないといけないのか? ……そんなもの俺の知ったことか!』

 

「――っ!」

 

 出会ってからはじめてアリカを怒鳴る。

 

『世界がおまえの死を望んでいて、おまえがその死を受け入れているのなら、俺はその死後を貰い受ける! どうせ2人後に死ぬというのならいま、おまえの生を俺に寄越せ!』

 

「わ、妾は……」

 

『世界が望む女王アリカの死は人形にでもさせておけばいいだろう!? 女王ではない、1人の女としておまえはどうしたいんだ!? このまま不当な罪で拘束されたまま、押し付けられた罪に殉じて死にたいのか!?』

 

「……ぃや、じゃ……。……このまま……、死ぬのは、……嫌じゃ!」

 

『だったらいま、女王アリカとしての生を捨てろ! そして何もないただの人間になったおまえを俺に寄越せ! 押しつけられた死が嫌だというなら、その命を先に俺に捧げろ!』

 

「アルヴィン……、妾はっ……」

 

 俺はアリカの首から離れて人間フォームになり、拘束具を下の服ごと引き裂いてアリカを裸に剥く。

 

「なっ、何をするんじゃ!?」

 

 真っ赤になって裸体を隠そうとするアリカの腕をとって無理矢理抱きしめる。

 

「――っ!? こ、コレ! ま、まさかこんなところでするつもりか!? そ、その……、出来れば看守が来る前に済ませ……」

 

 別の事柄で慌て始めたアリカに、俺は真剣な表情で言う。

 

「アリカ……、姫や女王でもない、ただのアリカとして俺の女になってくれ」

 

「――っ!」

 

 俺の告白を訊いたアリカはボフンッと一瞬で顔を真っ赤に染めた。

 

 このままでもいつものように、もじもじとかわいらしい姿を見せてくれるだろうが、今回はこちらから積極的に攻めにいく。

 

「アリカ……」

 

「ぅぅ……」

 

 真っ赤な顔を逸らそうとするアリカをぎゅっと抱きしめてから少しだけ顔を離して、改めて告白する。

 

「俺の傍にずっといてくれ、アリカ」

 

「――っ、……ぅ……、ぁ……、…………。――はいっ」

 

 女王アリカは、女王を捨て、ただのアリカとなり、最高の笑顔を浮べて告白を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っと、それじゃあ、さっそくアリカを魔族にするか」

 

「ま、魔族にじゃと!?」

 

「ああ、前にも直属の眷属にするってそういうことだって言ったろ? そもそもそうしないと魔族である俺と永い時間を共にできないだろう?」

 

「そ、それは……、そうじゃな。永遠のような生とは少し怖いが、永い時をそなたとずっと一緒に入れるならそれも……、悪くない……」

 

「そう言ってくれると本当にうれしいぞ、アリカ。――まっ、魔族になったら身体能力だけじゃなく精神面のほうも強化されるから安心しといていい。それよりも……」

 

「それよりも?」

 

「魔族になるのはかなりキツイと思うからがんばるんだぞ」

 

「む? 魔族化に伴なう痛みなどは覚悟しておるぞ?」

 

「ん? あ~……、その、別に痛みってわけじゃなんだ」

 

「それはどういうこと……、――っ!? ア、アルヴィン!? なっ、ど、どこに手を入れておるのじゃ!? ぅんっ、こ、コレっ! どこにペニスを擦りつけて……っ、ま、まさか……!」

 

「そう、アリカを構成する体を作り変えるからな。セックスしな……、体の中心である丹田近くの体内、つまり子宮に主となる者の高純度で高濃度の魔力の塊を注ぎ込んで、そこから体を再構成というか、上書きしないといけないんだよ」

 

「途中でそれっぽく説明するほうが卑猥じゃぞ……」

 

「ん? じゃあ、つまり中出しセックスしないといけないんだよ」

 

「…………。まあ、よい。……それよりも中出し……、せ、セックスはすでにかなり回数やっておるのではないかっ? 今さら少し激しくなったぐらい……」

 

「いや~、かなりキツイと思うぞ、今回のは。なにせ体を作り変えながらだからな。セックスしながら全身くまなく調べられて、首筋や脇、オマンコ、アナルや尿道口なんか文字通り全身を小さな舌で舐められながら弄られて、子宮に放つ精液も特別製で、子宮のなかでビチビチと蠢きながら、子宮の壁に染み込みながら全身に魔力を行き渡らせるんだよ? アリカも魔力供給すると体が軽くなったり、少し気持ちよくなったりするだろ? 今回のはそれが明らかに許容量を超える、規格外に高純度で高濃度の魔力を身に受けるんだ。俺はアリカが正気でいられるか心配だけど、その一方どうなるか見てみたくて……」

 

「ア、アルヴィンっ! や、やっぱりここでは看守の目もあるし止め――」

 

「ここに入る者や監視カメラなんかには幻術がかかるようにすでに処理済だ」

 

「――っ、そ、そうじゃ! せっかくじゃからエヴァ達も参加させぬか? ニィも処女を散らしたがっておったし丁度――、……む?」

 

「安心しろ、アリカ。私達は影の中から見学させてもらうから、存分に羞恥心と自尊心を……、人間も捨ててこい」

 

「――っ! エヴァ!?」

 

「私もまだ処女は捨てないからいい。まずはアナルから開発してもらって大きくなったら小さくしたアルヴィンのオチンポをオマンコに入れて、そのままオマンコでオチンポ慰めて、大きくなっていくオチンポでゆっくりと処女を破いていく予定だから」

 

「に、ニィ……、その計画は別にいらん情報じゃぞ。――って、それより手に持ったビデオカメラと首に下げたカメラを外さぬか! また妾の痴態を記録するつもりか!?」

 

「うん、当然」

 

 満面の笑みとはいえないが、ニィなりの笑顔でうなずき、シャッターを1回切る。

 

「うむ。ニィの言うとおり、当然だな。私も酒を用意して見学させてもらうことにするか」

 

「う、うぅ~……、ア、アルヴィン……、2人っきりで――」

 

「アリカ、ベッドがないし、まずは壁に手をついて後ろからでするか? それとも片足を抱えてこのまましようか? 駅弁スタイルもよさそうだな」

 

「こ、コレ! 尻をそんなに強く揉むでない! ひぐっ!? し、尻の穴に指が……! まだ解れて……、く、くぅっ! ……は、話が聞えておらんのかっ!? はぁはぁっ、に、逃げ場は……、な、ないのか……?」

 

「ハハハハっ! 諦めるんだな。それよりも覚悟しておけ、今日のアルヴィンはおまえがどんなに卑猥で醜悪な痴態を見せようと、アヘ顔ダブルピースを浮べて豚のように鳴くしかできなくなっても停まらんぞ! ――まあ、私も通った道だ。精々がんばるんだな」

 

「――なっ、エヴァも!? ということは先ほど言ったことをエヴァが……?」

 

「そ、それは別にどうでもいいだろっ! それよりもほら、性欲の塊が動きだすぞ」 

 

「ん~? まだよく濡れてないなぁ。――アリカ、先にオマンコ舐めてあげるよ」

 

「――っ! ま、待つのじゃ! そこは捕らえられてからずっと清めておらん場所――っあんんっ!」

 

「大丈夫だ、アリカ。拘束具には特別な術式がかけられていたんだ。まあ、何度も使い込んでオマンコが卑猥な形になっちゃったけど、色は綺麗なピンク色のままだし、匂いもいいし、魔族に転生させるときに元のピッタリ閉じたぷりぷりのオマンコに変えてあげるからな」

 

「お、オマンコに顔を突っ込んで喋るでないっ。い、息が当たって……」

 

「おお、息だけで感じたのか? オマンコから涎が垂れ始めるぞ」

 

「――っ、そ、そなたが妾をいやらしく開発したんじゃろうが……」

 

「ああ、そうだったな。――だけど、これからは俺の女としてもっといやらしく開発してやるから覚悟しとけよ?」

 

「アルヴィンの女……」

 

「そうだ。魔族になったばかりだから魂と肉体が安定するまで100年は孕ませられないが、これからずっと俺専用の女として全身を開発して、この腹に俺の子を何人も孕ませてやるんだからな。――さあ、まずは舌を突っ込んでアリカのオマンコを楽しませてもらおうか」

 

「わ、妾は……! くっ、ああっ! し、舌がなかに……、ア、アルヴィンっ……」

 

「がんばれよ、アリカ。7回以上射精させてからが本番なんだからな」

 

「予備バッテリー等準備完了。光の矢による光源の確保完了。レフ版投影及び配置完了。隠遁術式可動。録画、開始。――さあ、すべてを記録してやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連合最辺境ケルベラス無限監獄、数ある囚人室の一室。

 

 そこでアリカは全身を白濁した精液や尿や、唾液、愛液といった様々な体液で染め上げられ、虚ろな表情で床に仰向けで倒れていた。

 

 アリカはガバッと股を開き、オマンコからドロドロと精液を溢しながらいやらしく微笑む。

 

「はひぃ……、はひゅ……、オマンコ……、いっひゃいに……、アルヴィンのふぇいし……。アハハハ、ぜんひんアルヴィンのせいひ……、ふふふ、あったかぁいぃ」

 

 アリカはオナニーをするかのように、体中に付着した精液を左手の指で絡めとり、口に運んで恍惚の表情を浮かべながらくちゅくちゅと口内で転がし、もう片方の手の指をオマンコに突っ込んでかき回していた。

 

「ほら、アリカ。そろそろここから出よう」

 

 俺がそう言いながらアリカを床から抱き起こすが、アリカは首に腕を回して駄々っ子のような表情を浮かべる。

 

「もっひょおおっ、もっほ、オマンコパンパンしてぇええ~。もっほ精子ほしぃぃぃ~」

 

 快楽によってトロトロに蕩けた表情で、首に回していないほうの手を使ってペニスを刺激してくる。

 

「ちょっ!? アリカっ、今刺激するとまたやっちゃうだろっ」

 

「よふぃであなひかぁ~、わらわぁの言うこひょがきけにゅのかぁぁ~?」

 

「むぅ。そうまで強請られたら、もう1回してあげたくなるなぁ。――アリカ~、オチンポ汚れてるから胸と口で綺麗にしてくれたらまたパンパンしてあげるよ~?」

 

「しかひゃないのぅ。わらわの胸と口で清めてやひょうっ」

 

 アリカはそのまま俺を押し倒すと片足を跨ぎ、胸でペニスを挟んできた。

 

「うおっ、アハハっ! やっぱりアリカのおっぱいってスベスベで温かくて気持ちいいなぁっ」

 

「ふふふ、当然ひゃろう! わらわの胸なのひゃがらのぅ! ああっ、早くこのオチンポでオマンコしてほひぃのじゃぁぁ」

 

 アリカは全身を擦りつけながら両手で胸を中心に寄せてペニスを挟み込み、そのまま上下に揺すった。

 

 おっぱいの感触とおっぱいからかかる乳圧に、俺はにやけてしまう。

 

 夢中になってパイズリしてくれるアリカに悪戯してあげたくなって、そのまま手をおっぱいに手を伸ばした。

 

 伸ばした手でコリコリになった乳首に触れて、指で挟む。

 

「んあっ! あるヴぃんんっ、いま乳首を抓るのはっ、あううっ、き、気持ちよくなって、んっ、ダメぇぇぇっ!」

 

 軽く乳首を挟んだだけで、アリカはビクビクと体を震わせる。

 

 跨られた足にオマンコから溢れる愛液を感じて益々興奮してしまう。

 

「ほら、アリカ。乳首で気持ちよくなるのはいいけど、しっかりオチンポも弄ってくれないと、オマンコお預けにするぞ?」

 

「んんっ、お預けは嫌じゃぁぁっ! いまおわずけされひゅと、くるってひまうっ!」

 

「なら、ちゃんとしなきゃ。アリカの大好きなオチンポ汁も出してあげるから、な?」

 

「うぅんっ、わかったのじゃぁぁ」

 

 アリカはおっぱいでペニスを強く挟み込み、おっぱいの間から顔を出させた亀頭を舌でペロペロと舐め始めた。

 

「――っ、ああっ、いいぞ、アリカ! もっと先っぽをペロペロするんだ! くっ、ううっ……、ああぁ……、んっ! んあっ、で、射精()る! 射精()すぞ、アリカ! そうだ! くぅっ、ちゅーちゅー吸いついて! ――っく、ううっんっ!」

 

 ビュッ、ビュルゥッ、ビュルゥウウウッ、ビュウウウウウウ~……。

 

「じゅっ、じゅるるぅぅっ、――がぼっ! ふーっ、ふーっ、ごきゅ、ごくごくっ、ぐぅんっ、ふー……っ、ごきゅっ、がぼぉっ、はぁはぁ……、はぁっはぁっ……」

 

 口内にたっぷりと射精した精液に、咳き込みながらも必死に胃へと流し込んだアリカはペニスから口を離すと、そのまま前のめりに倒れ込み、口から精液混じりの涎を漏らしてだらしないアヘ顔を浮べて気絶した。

 

 普段であればアリカを気遣ってここで止めたであろうが、今回は違う。

 

 そう、今回はどんなにやっても魔族になるための儀式であり、体調を整える上で大切なことだからだ!

 

 上半身を起こして股間に顔を埋めたまま気絶しているアリカの脇に手を入れて抱きあげる。

 

 アリカを胸に抱いたまま後ろに倒れ、手を股間へ持っていってペニスをアリカのオマンコに擦りつけてゆっくりと入れる。

 

「――っ、んんんっ……」

 

 ゆっくりと入っていくペニスにアリカの顔が歪む。

 

「はははっ、気絶してるのに感じているのか?」

 

 気絶しているアリカの耳元で囁くようにつぶやき、全身の愛撫に移る。

 

 ムッチリとした太ももを擦ったり、小ぶりな桃尻を両手で捏ねて尻の穴に指を突っ込んでかき回したり、女性らしい美しい曲線を描く背中を下から肩へと撫でたり、薄く浮き上がった肋骨を指でなぞったり、プニプニした頬に触れて首筋から胸へ手を持っていって、両手で胸を掴んで無理やり上半身を起こして揉んだりと思う存分に楽しんだ。

 

「くっ、ううっ、はぁはぁっ、いい、……アルヴィン……」

 

 おっ。起きたみたいだな。

 

「ほら、アリカの大好きなオチンポがなかに入ってるんだから、いつまでも寝てないでしっかり腰を動かして味わないとダメじゃないか」

 

「あぅううっ、んんっ、わ、わひゃっておるっ。オマンコパンパンして搾りつくしてやるのじゃぁぁっ!」

 

 お、おおう……。か、かなりアリカが壊れだしたぞ?

 

「アハハハ! オマンコっ、オマンコ気持ちいいっ! 最高じゃぁぁっ! このままアルヴィンの精子で妊娠するっ! 種付けされるのじゃぁぁ!」

 

 嗤いながら自分の胸を揉み、狂ったように上下に体を揺すって、オマンコをきゅっきゅっと絞めてくる。

 

 ……まっ、いいか。これまでに溜まったストレスが抜けていってるみたいだし、このまま続けようっと。

 

「ほら、アリカ! もっと腰を振って! いやらしくオチンポにオマンコ擦りつけるんだ! おまえのいやらしい姿をもっと俺に見せろ!」

 

 叫びながら、アリカの胸から移動させた手でクリトリスと尻穴を弄り、下からオマンコを突き上げる。

 

「あああっ! んんっ、す、すごぃいいいっ! あああ、ああああっ! ば、バカになるぅっ! 頭が白くなって……、あひゅっ、あひぃいいっ! あるヴぃんんん~っ!」

 

 アリカも下からのピストンに合わせて腰を振り、自らの乳首を抓った。

 

「――っんん! くああっ! はぁっはぁっ、イ、イクッ! イクッてしまうぅぅぅっ! イクのじゃぁあああああ~~~~!」

 

 ビクッ、ビクッっと体を跳ねさせ、きゅぅぅぅっとオマンコを絞めつけ、気持ちよさそうに顎を天井に持上げながらアリカは絶頂を迎えたが……。

 

「あぐぅっ!? ア、アルヴィンっ!? わひゃわはっ、イって……」

 

「1人だけイクのはダメだよ、アリカ。俺はまだイってないんだからさ」

 

「――っ! じゃがっ……! くっ、んあっ、ああっ、はひぃっ、ああああああっ!」

 

「ほらほら、さっきみたいにオマンコ絞めないと中出ししてあげないぞ~」

 

 腰の上で前のめりに崩れ落ちるアリカを抱き、ヒザの上に乗せて対面座位で腰を動かし始める。

 

「ぬぅぅっ、お、奥を雁首が抉って……! そこは弱いのにっ……。こ、壊れてしまうっ、オマンコが壊れてしまうのじゃぁぁぁっ!」

 

 アリカは落ちないように俺の首に両腕を回し、背を弓なりに逸らしてよがる。

 

「ハハハハ! 気持ちいいっ! 気持ちいいぞ、アリカぁぁぁっ!」

 

 じゅぶずゅぶと結合部からいやらしい水音を響かせ、アリカはきゅうううっとオマンコを強く絞めてペニスを扱いてくる。

 

 俺がアリカの尻を持って子宮口に亀頭をグリグリと擦りつけると、アリカは体を激しく痙攣させた。

 

「ダメぇえっ! それは、ダメッ、ダメなのじゃぁぁぁぁっ! くぎゅっん! ひぃっ! ぐぅぅっ、あああああああああああぁぁぁぁぁっ~~!」

 

 トロトロに蕩けた表情で絶叫し、アリカは体を跳ねさせ、オマンコをぎゅきゅうううっと強く絞めつけながらペニスに精液を出すように吸いついてきた。

 

「――っ! だ、射精するぞ! しっかり味わえよ、アリカぁぁぁっ!」

 

 亀頭を子宮口にめり込ませて俺は欲望を解放する!

 

 ビュルッ、ビュビュンッ! ビュルゥウウウウッ! ビュルウウウウウッ~!

 

「熱っ! 熱いっ! あがっ、あああっ、ああああああああぁああああああああ~~~~!」

 

 子宮たっぷりに吐き出された精液の熱にアリカは再び大きな絶叫を上げる。

 

 ビクッ、ビクッと体を痙攣させて荒い息を上げているアリカを床に下ろしてオマンコからペニスを抜くと、精液がドロドロと膣口から溢れ……。

 

「はぁっはぁっ……、はぁはぁ……、っ、はぁっ、ううっ」

 

 アリカは絶頂で力が入らないだろう体にムチを打ってオマンコを隠した。

 

 お、この感じは……。

 

 アリカの様子にある事を感じ取ったので、アリカの背後に回り、耳元で囁く。

 

「ほら、アリカ。我慢しないで。おしっこしたいんだろう? ここで見ててあげるから存分にしてごらん」

 

「――っ、そ、そんにゃ、……み、見られるなんてぇ……」

 

「何も今さら恥ずかしがることはないだろう? ほら、拡げておいてあげるからゆっくりだすんだ」

 

 両手を脇の下から回してくぱぁっとマンスジを拡げる。勃起して皮の剥けたクリの下で小さい尿道とそのすぐ下で膣道が痙攣してる。

 

 アリカの耳元で子供にトイレをさせているかのように囁く。

 

「ほら、ゆっくり力を抜いて……、そうそう、ゆっくり……」

 

 やさしく呼びかけるたびに尿道口が緩み、おしっこがピッピュッと飛ぶように漏れていく。

 

 そして少量だったのが一気に、ダムが決壊してしまったかのように溢れ、一本の線となって遠くへと飛び、ショォォォォッ……という音を部屋に響かせ始めた。

 

「……だ、だめじゃぁぁぁ……、みちぁだめぇぇぇ……」

 

 アリカはそう懇願してくるが見るのを止めない。

 

「あ、あああ……、だめぇぇ……」

 

 とうとうアリカは両手で顔を覆う。羞恥で顔が真っ赤に染まり、普段と違って弱々しくすごく艶かしい。

 

「はぁはぁ、はぁっ……、はひゅぅぅ、……あ、あああ……」

 

「いっぱい出たな、アリカ」

 

 おそらく今の俺はとてもいい悪人面をしてるだろう。よしよしとアリカの髪をすかしながら囁き、もう一度――は、ダメか。そろそろ移動しないとな。

 

「むっ、……んんっ」

 

「どうした?」

 

「ア、アルヴィンのがこぼれて……」

 

 はぁはぁと体を小さく丸めてエッチな息を漏らすアリカ。――っ。やっぱりもう一度……。

 

「おお、まだやる気だぞ、アルヴィンの奴。アリカ、本当に壊れるんじゃないか? ――って、ニィ。おまえ何を用意してるんだ?」

 

「ん? 何ってバイブだけど?」

 

「…………」

 

「普通のからイボイボがあるのとか、同時にクリトリス刺激できるヤツとか。他にもアナルに入れるパールとか、浣腸器とか。まだまだアリカを攻め足りないみたいだから、道具を渡してあげようと思って」

 

「……ニィ。それはやめておいてやれ。これ以上刺激を加えられたらアリカが本当に崩壊するぞ……」

 

「ん~、でももうほら……」

 

「おお、丁度いいところにこんなものが……。ほら、アリカ。後ろの穴に入れてやろう」

 

「――ひぐっ! んんっ! し、尻に……、ボールが……、入って! はぁはぁっ! だ、だめひゃっ……、りょ、両方ズボズボするのはぁぁあああああああ~!」

 

「ハハハハ! なかの感触が変わっていいな! それに尻の穴から出入りする玉がいやらしいな! ハハハハハ!」

 

「…………ああ、なんてことを……」

 

「すごい、潮があんなに噴き出てる。アリカのオマンコとお尻、壊れそう……。ちょ、ちょっと反省」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いのじゃぁぁぁ~!」

 

 連合最辺境ケルベラス無限監獄から抜け出し、隠れ家に転移した俺たちを出迎えたのはテオドラのそんな一言だった。

 

 テオドラはトコトコ歩いてきながらつぶやく。

 

「まったく、監獄から抜け出すと決めてから何日経っておると思っておるのじゃ? 3日じゃぞ、3日! しかもその3日は監獄のなかで2人でイチャついていた時間じゃ!」

 

 ぷりぷりと頬を膨らませて怒るテオドラ。

 

「ごめんな、テオ」

 

「すまないのじゃ、テオ。心配かけたな」

 

 俺とアリカもさすがに3日もやり続けたのはやりすぎだったし、それ以上に捕まっている間、ほとんどアリカに付きっ切りだったので、素直に謝った。

 

「まあ、事情が事情じゃったしな。これから甘えさせてくれるのならば許すのじゃ」

 

 そう言ってテオドラは俺とアリカの手を握る。そして笑みを浮かべて、

 

「とりあえず、おかえりなのじゃ。アルヴィン、アリカ」

 

 と迎えてくれた。

 

 俺もアリカも笑みを浮かべ、「ただいま」と返した。

 

 ああ、これでひと段落がついたんだな。

 

 しみじみそう感じながら、今度はテーブルについてミルクを飲んでいる黄昏の巫女だったアスナをどうするか、考えていた。

 




 次回は少し時間が飛びます。少しだけです。原作突入ではありません。

 とりあえず、小学生アスナ編を少し行ないます。

 その小学生アスナ編でナギサイドなど、少し明らかになります。

 詳しく描写すると、オチ以外ほぼ原作と変わらなくなるで、やめておきます。


 でもちょっとだけ ↓描写 時間系列は処刑台から谷に落ちたところです。


ナギ「助けに着たぜ」

アリカ「……え?」

ナギ「へっ、何呆けてやがんだよ。アリカ」

議員「バカなっ! いかな千の呪文の男とはいえ、あの谷底から生きては!」

ラカン「それはどうかな?」

 ナギ、迫り来る魔獣たちの攻撃を体術で避けて谷から脱出するために走り出す。

ラカン「魔力も気も使えないくらいでヤツが死ぬかよ」

議員「ぐ、捕らえよ! 反逆者だ! 谷底の2人も逃がすな!」

ラカン「おおっと、やるのか? いいのかよ、その程度の戦力で」

議員「フフ……、その程度の戦力でだと? 愚か者が。このイベントの警備はここに見えるだけではない。周囲数10キロに小艦隊と三千名の精鋭部隊が包囲しているいくら貴様等でもこれを……」

ラカン「だから、その程度の戦力で、いいのかって聞いてんだよ」

議員「なっ、なに!?」

 再び谷底。

ナギ「ハハハ! 魔法も使えねえここじゃあ最強の俺さまもレベル1状態だな! けど、クリアの景品がアンタだってんなら、このスリルも悪かねぇぜ!」

アリカ「…………。……あ……、あの……」

ナギ「ゴールはもう少しだ、アリカ! 一気に駆け抜けるぞ!」

アリカ「え、ええっと……」

ナギ「ふんっ! 大方、ここで死ぬのが正しいとか思ってんだだろうが、俺が許さねえ! 箱入り姫さんだから言わなきゃわかんねえだろうから言うぞ!」

アリカ「ち、違うんです。わ、私は……ぐッ!?(なぜ頭突き?)」

ナギ「相変わらずゴチャゴチャうっせぇ~!」

アリカ「……(り、理不尽……)」

ナギ「助ける理由とかだな! 俺が、アンタを、好きだからに、決まってんだろうぉが!」

 そうナギは叫んで谷から脱出した。

アリカ「は?」

ナギ「杖よ!」

 杖を呼び出しナギはその上に乗る。

ナギ「って、オイ。何だよ、その顔。予想もしてなかったって顔だな」

アリカ「…………(ああ、まったく誰一人として予想もしてなかった。ていうか忘れてた)」

ナギ「好きな女1人も救えねぇ男に、世界とか救える訳ないだろ。バカ」

アリカ「……」

ナギ「で? アンタはどうだ?」

アリカ「…………」

ナギ「姫さん?」

アリカ「え? ああ……」

ナギ「おいおい、どうしたんだよ。姫さん」

アリカ「いや、えっと、な……。私は……じゃないんだ」

ナギ「んぁん? 声が小さいス」

アリカ「だから、私はアリカじゃない」

ナギ「…………へ?」

アリカ?「私は単なる人形、というか魔力の塊だ。アリカ本人はすでに黒龍さまと共に……」

ナギ「――なっ!? どっ、どういうことだ! おまえが姫さんじゃないって!? 黒龍様ってまさか……!」

アリカ?「いや、どういうことだって言われても……。ていうか、ほんとは魔獣に食われた瞬間に魔界に予定だったんだ。そろそろほんとに帰るから。じゃあね。あー、ずっと無口でいるの疲れた~」

ナギ「お、おいっ! ちょっと待て!」

アリカ?「ああ、そうだ。ちなみに私が化けてるアリカって人間なら、すでにただのアリカになってて、幸せなはずだから何も心配ないと思うよ」

 アリカ? はそれだけ言うと、光になって消滅。

ナギ「どっ、どういうことだ!? 姫さんは……っ! すでに黒龍の奴に喰われたってことなのか!?」

 戦場から少し離れた場所にて。

クルト「ア、アリカさまが、消えた……? な、なぜ、だ? なぜ……」

タカミチ「…………(アリカさまが消える? すでに師匠、黒龍さまが魂を喰った? いや、黒龍さまはそんなことするような方には見えなかった。むしろ――)」

クルト「僕は納得できない! これではアリカさまの名誉も! MM元老院の虚偽も不正も! 正されることはない! 何よりもアリカさまが死ぬなんて、僕は、納得できないっ!」

タカミチ「……(いや、僕の予想が正しかったとしたら……。アリカさまは今も元気で、魔法世界か旧世界にわからないけど、黒龍さまと一緒だよな? ぼ、僕以外の紅き翼の皆さんは黒龍さまが人の姿になれるとか知らないけど、アリカさまは全部知ってるみたいだったし。いや、そもそも、というか最初に出会ったころぐらいからアリカさまと黒龍さまって一緒にいて、何をするにも一緒みたいだった……。も、もしも黒龍さまとアリカさまがそういう関係だったとしたら……。…………。……こ、これ、気づいたりしたらマズいことじゃ……?)」

クルト「僕はこんな終わりかた納得しない! 納得しないぞ!」

タカミチ「…………(黒龍さまが人間にもなれるって言えたら気づいてくれそうな人もいるけど、ギアスをかけられてるから言えないな……。ていうか、八つ当たりで空に向って千の雷放ってるナギさんに今は近づきたくない)」

ナギ「黒龍! 絶対にてめぇからアリカを取り戻してやる! 世界救いながら、アルヴィンボールとかいうふざけたボールを探し出して! てめぇを引っ張り出して! アリカを必ず取り戻してやる!」

 またまたところ変わって。

アルヴィン「何度か会ってるけど、こうして話すのは初めてだよな? ――とりあえず、よろしく。アスナちゃん」

アスナ「……うん」

アリカ「アスナ。もうお主を防衛装置などにはさせん。1人の女の子として、家族として妾たちが守る」

エヴァ「フハハハ、安心するがいい! 私たちは文字通り最強の集団だ! 何が来ようと守ってやるぞ! そしていずれはおまえもその末席に加わるのだ!」

アスナ「でも私は見た目通りじゃない。100年も前から何人も人を殺してるバケモノ」

テオ「大丈夫じゃ! もとより人外集団である妾たちにとってみれば小さきことじゃ!」

アスナ「?」

ニィ「アルヴィンは実体を持ってる悪魔。エヴァは真祖の吸血鬼。テオは亜人。私は人口生命体でアルヴィンの眷属、だったかな? それに、アリカも今は悪魔になってる。むしろアスナのほうが人間っぽいと思う」

アスナ「?」

アリカ「ふふ、今はわからずともよい。これからお互いを知っていけばよいのじゃ。これからな」

アスナ「ん」


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幼女アスナ編
第18話 幼女アスナは旧世界に


 タイトル変更です。


 魔法世界の大戦が終戦し、捕らわれていたアリカも眷属に変えて救いだした俺たちは現在、旧世界の自宅へと戻って来ていた。

 

 元からの生活拠点であるし、魔法世界の大戦の間は拠点を特定されないために、あちらこちらを点々として(あわただ)しかったからな。しばらくは自宅でのんびりと暮らすつもりだ。

 

 まあ、のんびり暮らすといっても、魔法世界を救うための研究はその間も続けてる。そうしないとアリカが安心できないみたいだし。

 

 だから俺の普段の一日のサイクルを考えると、昼間は畑仕事、夜は魔法世界を救う研究とアリカたちとのエッチだね。

 

 あと、亜人と皇女という立場ゆえに、魔法世界を拠点に暮らしているテオとも、週一か二ぐらいで戯れたりと結構充実した暮らしを楽しみ中だ。やっぱり自宅近くにゲートがあるって便利だよね。

 

「アルヴィン……」

 

 ん? ああ、それともうひとつあったな。

 

 声が発せられた方向の先には、紺色のワンピースを着た、オレンジ色に近い色の髪を両サイドで括り、ツインテールにしたオッドアイの幼女が立っていた。

 

 俺はベッドから上半身を起こす。

 

「なんだい? アスナ」

 

「そろそろ、お昼ご飯」

 

 アスナに言われて部屋の壁に立てかけている時計に視線を移す。時計のハリはすでに12時を回っていた。

 

「もうこんな時間か。うん、わかった。ありがとう、アスナ」

 

「ん」

 

 お礼に小さくコクリとうなずいてドアへと向うアスナ。

 

 そう、アスナだ。

 

 ウェスペルタティア王国が誇る防衛装置、『黄昏の巫女』と呼ばれた魔法完全無効化能力をもったウェスペルタティア王国の王族、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。

 

 魔法戦争が終結し、俺とアリカが監獄にいる間だ、2年ほどテオやエヴァ、ニィと暮らしたあと、アリカを救い出してからは魔法世界にいるテオを除いて、皆で一緒に暮らすようになった幼女アスナだ。まっ、幼女といっても見かけだけで、実年齢は100歳を超えてる。精神年齢のほうは不明だけど。

 

 俺はベッドから降りて、軽く身だしなみを整える。

 

 そして、部屋の入り口で待ってるアスナの隣に並んで、手を差し出す。

 

「ん」

 

 差し出した手に、自らの手を近づけて握ってくるアスナ。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

 最初は無表情だった表情も、この3年で少しは変化が現れるようになってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、アルヴィン」

 

 ダイニングへと向って廊下を歩いていると、アスナが話しかけてきた。

 

「なんだい、アスナ」

 

「エヴァはまだベッドで寝たままだけど、いいの?」

 

 いや、もう部屋を出て廊下歩いてるところなんだけど。今頃かい?

 

「ん~……、まあ、今日はね。吸血……? 吸精の日だからね」

 

 俺の言葉に、アスナはさっきと反対のほうへ首をかしげる。

 

「真祖の吸血鬼は血液じゃなくて精液を飲むの?」

 

「普通は血なんだけどね。家のロリっ娘吸血鬼はそうなんだ。前に吸血したのだって随分と前で……、あれ? 前はいつ吸血したんだっけ? ここ数百年ぐらい吸血してないんじゃ?」

 

 もうヴァンパイアからサキュバスに名前を変えたほうがよさそうだよ、エヴァ。

 

「ふーん……。ねえ、アルヴィン」

 

「ん?」

 

「私はいいの?」

 

「いいの、って何が?」

 

「吸精、しなくてもいいの?」

 

「アスナは吸血鬼じゃないんだし、別に必要ないけど?」

 

 ていうか、いきなり何を言ってるの?

 

 アスナは納得ができないといった風につぶやく。

 

「でも、アリカは?」

 

「アリカ?」

 

「アリカも吸精してる」

 

 え? それ、吸精じゃなくてフェラチオじゃ? エヴァのことといい、……覗いてたの? 

 

「ああ、あれは……」

 

 どう説明しようか考えながら喋ろうとするが、先にアスナが言葉を重ねてきた。

 

「ニィもしてるし、テオドラもしてる。……していないの、私だけ」

 

 そう頬を膨らませるアスナ。アレ? 少し……いや、かなり不機嫌になってる?

 

「ん~、でもアレはねぇ……」

 

 俺の顔を見上げるアスナ。

 

「私じゃダメ?」

 

「いや、そういうわけでもないけど……」

 

 見かけは幼女だけど、実年齢的には100歳超えてるし。

 

「じゃあ、私も吸精したい」

 

 アスナは「あのおもちゃ買ってよぉ」、みたいに強請ってくるけど……。

 

「ほんとにしたいの?」

 

 その問いかけに、アスナはしっかりとうなずく。

 

「うん。アルヴィン、いつもしてもらうとき気持ちよさそう。私も、アルヴィンを気持ちよくしたい」

 

「――っ」

 

 こちらを見上げてくるアスナの瞳には、強い意思が宿っていた。そうか……、そうなのか。そこまで……。

 

「うん、アスナの気持ちはわかったよ。でも、アスナの体にかけてある成長を止める魔法が解除されかけてるからね。それに影響がでたりしたら心配だから、アリカたちに相談してからにしようね」

 

「……わかった」

 

 とりあえず機嫌を直してうなずいたアスナ。ダイニングへと続くドアを開けると――。

 

「やっときおったか、アルヴィン。アスナ、ご苦労様じゃ。エヴァは……いないようじゃな。まったく……、吸血の日とはいっても食事時には集まって欲しいものじゃ」

 

 細く、サラサラとした金髪のロングストレートヘア、クリーム色のワンピースの上から、三毛猫がプリントされたエプロンを付けたスタイルのいい美女……、このやり取りはもういいか。

 

 元女王のアリカが、お玉を片手に立っていた。

 

「遅れてごめんな、アリカ」

 

 アスナを席に座らせ、自分も謝りながら席につく。

 

「まあ、いいのじゃ。いつものことじゃしな」

 

 アリカもそれだけ言って、お玉を片付けて席についた。おっ、今日の昼はクリームパスタとコンソメスープか。

 

 日本の文化に従って「いただきます」と手を合わせて食事を開始する。

 

 アリカとアスナも食事中はあまり喋るタイプではないので、黙々と、たまに会話しながら食事をしていると……。

 

「ねえ、アリカ」

 

「なんじゃ、アスナよ」

 

「私も吸精がしたい」

 

 と、突然アスナが切り出してきた。

 

「――ブッ!?」

 

 アスナの発言に驚いて、飲んでいたスープを噴出すアリカ。

 

「な、ななな何を言っておるのじゃ?」

 

 口元をポケットから取り出したハンカチで拭きながら、震えた声でつぶやくアリカに、アスナは少し頬を膨らませて不満げに言う。

 

「皆はしてるのに、私はしてない。私もアルヴィンを気持ちよくしたい」

 

「…………」

 

 アリカさん、そこで俺を見ないで。俺は何もしてないから。

 

 ――本当じゃろうな?

 

 ――本当だって。

 

 目線で会話し合う。

 

 会話を終えたアリカは、ため息を吐いてアスナのほうへ向き直った。

 

「アスナよ」

 

「何?」

 

「そういうことはまだアスナには早いと思うのじゃ」

 

 諭すように言ったアリカに、アスナは首をかしげる。

 

「なんで? 私、アリカより年上だよ」

 

「うっ。そ、それはそうなのじゃが……。に、肉体の年齢も、精神的な年齢も幼い、から……」

 

 どうやってこの場を収めればいいものかと、顔に汗をかき始めたアリカ。

 

 アスナは畳み掛けるようにパスタが乗った皿を見つめ、さらにパスタをフォークにクルクルと絡ませながら、小さな声でぼそりとつぶやく。

 

「ニィもテオドラも私とそんなに変わらないのに……」

 

「――うぐっ! ……じゃ、じゃが、テオはああ見えて20歳近くで……。ニィは……3さい? ……じゃからのう」

 

 大量の汗を流しながら皿の上でフォークを回すアリカ。そこにはもうパスタはないよ、アリカ。

 

 アスナは止めとばかりに言う。下から上に、見上げながら。

 

「私だけダメなの?」

 

「――うっ……」

 

 アスナの視線に仰け反るアリカ。助けを求めるようにこちらを見てるけど、俺にはどうすることも……。ていうか、する気もないんだよね。魔界で年の差無視なんて普通だったし。はっきりいって何が悪いかわからないんだよ。

 

 俺が頼れないとアリカは悟ったか、腕を組んで考えるポーズをとり、「う~む……」と唸ったあとつぶやいた。

 

「と、とりあえず、アスナはそっちの知識がないようじゃし。ま、まずは教育から始めてみぬか?」

 

「教育?」

 

「う、うむ。教育じゃな。元々体の時間を止めている魔法が消えるのなら、い、いずれは必要になってくる知識じゃし。わ、妾もちゃんと教えられるか不安じゃが、エヴァもおるし大丈夫じゃろう、……うん」

 

「?」

 

 ひとりで話を進めていくアリカに、首をかしげるアスナ。

 

 俺はひとりパスタを食べ終わり、スープを楽しむ。

 

 さてと、午後からは畑仕事かな。ハウスの苺が収穫時だし、メロンのほうも……。今度はスターフルーツとかも作ってみるかな。形もおもしろいし。気温と湿度調整して肥料まいて世話をすれば大丈夫だろ。ああ、あと野菜も収穫しとかないとな。ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、たまねぎ。

 

「うむむ……、じゃが何から教えればよいのじゃ? 生理用品の使い方からか? じゃが悪魔化の影響で最近は妾も使っておらぬし……。教えるのなら魔法世界ではなく、旧世界のものじゃよな? 真祖であるエヴァも、実は3歳児のニィも使っておらぬし。うぬぅ……、実技なら教えられる自信はあるのじゃが……」

 

 さすがに最初から実技で教えるのはやめたほうがいいと思うよ、アリカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ白な城、10メートル近くはあろうかという城壁。

 

 城壁の内側に造られた畑や菜園。

 

 城の内部へと続く大きな扉。

 

 赤い絨毯が敷かれ、高い天井にはシャンデリアが吊るされた、正面ロビー。

 

 何十人分でも一度に調理可能な広いキッチン。

 

 木製の長い机が鎮座してる晩餐会室。

 

 様々な本が並べられた書斎、何十も存在する部屋。

 

 謁見の間と思わしき、装飾が施された椅子が鎮座している部屋。

 

 城の上層部に存在する、ひと際広く、豪華な部屋。

 

 豪華な天蓋付きのベッド、ガラスが嵌められていない窓から覗ける森林。

 

 特に書斎のテラスから望める景色が最高だった。

 

 ……地下室もあったな。うん。

 

 そのどれもが懐かしい。

 

 点々と各地を回る生活から一箇所に腰を据えて、生活し始めたときの記憶だ。

 

 10歳の誕生日に、ただの人間から吸血鬼という化け物に変えられて100年。

 

 当時のヨーロッパは魔女狩りの時代で、真祖の吸血鬼となった私には地獄にも等しい、周りから逃げ回り、怯える日々が、アルヴィン・アンドリューという、悪魔らしくない変わった大魔王に、火あぶりの刑に処せられていた私が出会い、救われたときの記憶。

 

 魔女狩りが横行し、住みにくかった旧世界から、魔法世界へと渡り、誰も住んでいない古城にアルヴィンと2人で住み着き、魔法を習っていた頃の記憶だ。

 

 あの頃の私は、吸血鬼になったばかりと弱く、逃げ回るばかりの生活をしていたため、学もほとんどなく、今では得意な魔法も覚えておらず、ただ魔力が多いだけの吸血鬼だった。

 

 本当に、大魔王であるアルヴィンにはあまりにも不釣合いで中途半端な眷属だったよ、私は。

 

 そんな私に、アルヴィンは様々な教育を施してくれたことを覚えている。

 

 アルヴィンも最初こそこの世界の魔法学に関する知識はなかったが、魔界での何千年という膨大な経験や知識、魔物や賞金首を狩って得た金で魔法に関する書物を買い集め、私と一緒に本を開き、知識を収集解析し、丁寧にマンツーマンで魔力の扱い方を私に教えてくれた。

 

 魔法の勉強ばかりではダメだと、一般的な教養を、授けてくれた。

 

 算数や理科、国語、社会など、アルヴィンは惜しみなく資料を集め、手間をかけて私に教えてくれた。

 

 勉強ばかりで家に引き篭もってばかりはダメだと、遊びに連れ出してくれたり、様々な場所に連れて行ってくれる。

 

 ――アルヴィンはよく笑う。

 

 何千年と生きているのに、無邪気に、子供のように、人外であることを気にすることなく、自由気ままに楽しそうに生きている。

 

 ――私はそんなアルヴィンが見せる笑顔が大好きだ。

 

 闇に生きて闇のなかで朽ち果てる、そんな未来しかないと、火あぶりにされて殺される直前まで世界に絶望していた私を、身を焦がす炎のなかから光の下へと救い上げてくれた光そのもののように思えるから。

 

 ――だから……、だからこそ私以外を見て欲しくない。

 

 ずっと、私だけを見て欲しい。そう思っていた。

 

 私だけを見て、私をずっと一緒にいて。そう願っていた。

 

 ――けど、その気持ちも変わっていく。

 

 自由気ままに出かけたり、旅をするアルヴィンのおかげで、真祖になって初めて友人が出来た。知り合いもできた。

 

 ――だけど、皆、時の流れのなかで消えていく。

 

 アルヴィンを取り合った末に、種族を超えて認め合った悪友たちも、最後は老いてときの流れに消えていった。

 

 ――いつも慣れない別れを繰り返す。

 

 寂しい、辛い、そう想う。

 

 私よりも長い時を生き、人間や亜人に愛情を注いでいるアルヴィンは、私以上に寂しいだろう、辛いだろうと、想う。

 

 魔界ではアルヴィンと同じ魔族が、何千という時を生きるのに対し、ここでは精々永くても数百年、一般の人間なら100年程度だ。

 

 アルヴィンが地球へやって来て、600年ほど。アルヴィンはどれだけ別れを繰り返したのだろう?

 

 私の知らない100年間。

 

 私が知らないところで出会った者たち。

 

 私と出会ってから別れていった者たち。

 

 どれだけの別れを繰り返しているのだろう?

 

 どれだけ悲しい想いをしたのだろう?

 

 私は……、私はいつもアルヴィンという光がいてくれるから大丈夫だけど、アルヴィンは?

 

 アルヴィンは寂しくないのか?

 

 …………。

 

 ――やはり、私だけじゃ足りない。

 

 茶々ゼロだけでは足りない。

 

 ホムンクルスたちだけでは足りない。

 

 ――私のほかにも、必要なんだ。

 

 アルヴィンは500年間も私と一緒に居てくれた。

 

 私は、500年間もアルヴィンを独占していた。

 

 ――私はずっと考えていた。

 

 あり得ないと思うが、アルヴィンが私を例え見てくれなくなっても、一緒に永遠に近い時間を過ごす家族がもっと必要だと考えていた。

 

 ――アルヴィンが感じる寂しさや辛さを埋められるような家族を見つけること。

 

 それは、光の下へだしてくれたアルヴィンへ、私からの恩返しだと考えていたから。

 

 ――だから、アリカを初めて見たとき、チャンスだと思った。

 

 優れた容姿はもちろん、強い意志が宿った瞳、ふとした仕草だけでも高貴な者であることを感じられる気品など。

 

 同じ男を好いてるから、そんな女を数多く見て着たからこそわかる、アリカがアルヴィンに向ける感情など、素質は充分だったから。

 

 新たな家族となったニィが増えても、まだ足りないと、私はずっとアリカをどうやって吸血鬼に変えようかと考えていた。

 

 吸血鬼になればアルヴィンはアリカと永い時間を共に過ごせるだろう、と。

 

 本人の意思を確認した上に、望むのなら行動しようと考えていた。

 

 まあ、それもアルヴィンの眷属となった今では無駄になったがな。

 

 だが、これでアリカとニィ、それにおそらくだが、テオドラが人外を選び、家族となるだろう。

 

 2人っきりで過ごす時間は少なくなったが、これはこれで楽しい日々になっている。

 

 アルヴィンがいて、私がいて、茶々ゼロがいて、アリカがいて、ニィがいて、テオドラがいて、アスナがいて、別荘に行けばホムンクルスたちもいる。

 

 にぎやかな食卓を皆で囲み、アリカと(ねや)でアルヴィンを奪い合ったり、協力したり。

 

 ニィに魔法の手ほどきをしたり、下着や衣装造りを手伝わされたり。

 

 じゃれついてくるテオドラをからかって遊んだり、私とテオドラ、ニィとの3人で街へくりだして買い食いしたり。

 

 茶々ゼロが暇だと言うから、庭の草刈りをさせたり。

 

 魔法球にいるホムンクルスたちがいつの間にかコスプレ好きになって、私たちまでにコスプレを勧めてきて撮影会を開催したり。

 

 魔法世界で拾った訳あり王族のアスナに、アルヴィンが私にしてくれたように教育したり。

 

 皆で旅行へ行って観光したりと、なかなか充実している。

 

 ああ……、本当に充実してるよ。

 

 本来日陰者で、退治されるべき存在である真祖の吸血鬼である私が、幸せを感じている。安心して暮らしていられる。

 

 全てアルヴィンのおかげだ。

 

 アルヴィンがいてくれたから今の私がある。

 

 私は、アルヴィンが大好きだ。

 

 私は、アルヴィンを愛している。

 

 だから、いつかは……。

 

 これ以上私が望んでいいものではないだろうが、いつかは、アルヴィンとの――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が暮れて、夕食も終わった午後8時。

 

 食器の片付けをアルヴィンとニィに任せ別れたあと、アスナをつれてエヴァの部屋へとやってきていた。昼間の性教育のためだ。

 

 ドアを2回軽くノックする。

 

 しばらく待ってみるが、なかからは返事がない。

 

 まだ眠っているおるのか。

 

 ドアノブに手をかけて、部屋のなかへと入る。

 

 案の定、ベッドでスヤスヤと眠っているエヴァンジェリン。

 

 すごく気持ちよさそうに眠っているようだが……。

 

「アリカ。エヴァはなんで股を弄ってるの?」

 

「アスナよ。これは見なかったことにしておくのじゃ」

 

 裸で股を弄りながら眠るのはダメじゃろう……。

 

「ん……、あぅ……、んっ……」

 

 エヴァは色っぽい声を出しながら片手を胸に寄せて、揉みながら寝返りをうち、うつ伏せになる。

 

「あっ……、いぃ……、んんっ」

 

 胸を揉みながら、もう片方の手の指を膣道に挿入して弄り始めるエヴァ。

 

「アリカ。なんで隠すの?」

 

「アスナよ。これは主には刺激が強すぎるのじゃ」

 

 アスナの目をしっかりと手で目隠ししたまま、エヴァを起こそうとすると……。

 

「――っ、んっ!」

 

 エヴァの体がビクッと跳ねた。

 

「くっ……、んっ、……んんっ……、はぁぁぁ……」

 

 ぷるぷると体を震わせたあと、気持ちよさげに息を吐くエヴァ。

 

「…………」

 

 寝ながらイッタようじゃな……。

 

 それにしても、見かけは10歳の幼女なのに、なんでこんなに色っぽいのじゃ?

 

 キラキラと煌く金髪、細い手足、白い肌、胸や尻と大人の女と比べると肉付きはあまりよくないが、しっかりと女を示すような、膨らみや腰のくびれ、尻など存在している肉体。

 

 気持ちよさそうに、純粋に絶頂の余韻を味わっているのがわかる蕩けた表情。

 

 吸血鬼ゆえに鋭い牙が生えているのだが、それは牙というよりも八重歯に近く、口から覗けるそれはかえってエヴァをかわいらしく見せる。

 

 それに加えてネグリジェやベビードールが異様に似合ってしまう幼女か……。

 

 ロリコンにとって最高の獲物じゃろうな。

 

「んはぁぁぁ……」

 

 うつ伏せから仰向けになって、気持ちよさそうに息を吐く、エヴァ。

 

「アリカ。なんで耳まで塞ぐの?」

 

 この声はまだアスナには聞かせられないのじゃ。

 

「スゥ……、スゥ……」

 

 仰向けになったエヴァから再び寝息が聞えてくる。

 

 相変わらずその姿は全裸で、清清しいほど、隠す気はないと言わんばかりに布団を隅において、大の字になって眠っていた。

 

 あまりの格好に息を吐き、アスナから手をどけて、ベッドに近づく。

 

 そして、布団をかけてからエヴァの体を揺さぶる。

 

「エヴァ、エヴァっ、起きるのじゃ」 

 

「ん~……?」

 

 声をかけながら揺さぶっていると、ゆっくりと反応を見せ始めた。

 

「エヴァ」

 

「むぅ……」

 

 ゆっくりとエヴァの瞼が開く。

 

 ベッドに両手をつき、上半身を起こすエヴァ。

 

「むぅ~……、なんだ、人が気持ちよく眠っているというのに……?」

 

 エヴァは目を擦りながら、不機嫌そうにつぶやき、妾の隣に立っていたアスナに気づいた。

 

「ん? アスナもいるのか?」

 

 くああ……っと、あくびをするエヴァに、アスナはいつも通り挨拶する。

 

「おはよう、エヴァ」

 

「うむ。おはよう」

 

 エヴァもアスナに挨拶を交わすが、もう夜じゃからな。

 

「ん~……、丸1日ぐらい寝ていたみたいだな」

 

 ベッドから上半身を起こしたまま背伸びをするエヴァ。せっかくかけてやった布団が捲れて上半身が丸見えだ。

 

 このままではアスナの教育にも悪いので、妾は少しエヴァから視線を外しながら言う。

 

「とりあえず、エヴァ。前を隠すのじゃ。見えておるぞ」

 

「ん? ……おお、すまないな」

 

 上半身が丸見えだと気づいたエヴァは、ベッドから降りて、パチンと指を鳴らした。

 

 エヴァが鳴らした音に反応するように、どこからともなく黒い絵のようなコウモリが現れ、エヴァの体を覆っていく。

 

 やがてエヴァの体が足元から首まで覆われ、黒いコウモリは体に張りつきながら消えていき、服へと変化した。

 

「これでいいだろう」

 

 と、全裸から一瞬で着替えたエヴァはドヤ顔でベッドに腰掛け、悪の魔法使い(エヴァの妄想の産物)っぽくポーズをとるが……。

 

「エヴァ……、前から言っておるが、その格好でかっぽするのはアスナ教育に悪いのじゃ……」

 

「む? そうなのか? 私は別に普通だと思うが……」

 

 そう言いながら自分の服に視線を向けるエヴァ。自覚なかったのか……。

 

「……いや、丈が腰辺りまでしかない薄い黒のキャミソール。一応フリルがあしらわれておるが、それも短く、立っていても座っておっても下着は丸見え。しかも、着ておる下着も生地が薄い黒のショーツ。絶対に普通ではないじゃろ……」

 

 直ばきだから、少し動いただけで脇の間から胸が丸見えだったりするからのぅ。さらに黒いマントをつけて空を飛びまわる姿は、もはや痴女じゃ。

 

 そんな指摘にエヴァは顔を赤くして、誰とも視線を合わせない様に、ひとり言のようにつぶやく。

 

「ぬぅ……。だ、だが……、その……、か、格好いいだろ。こっちのほうが……」

 

「…………」

 

 …………いや、格好がよいのか?

 

「うん、格好いいよ。エヴァ」

 

 無言で首をかしげる妾と違って、アスナがうなずいた。

 

 エヴァはアスナの言葉に「本当か!?」と、顔を輝かせる。

 

 アスナの両肩を掴み、顔を覗き込むエヴァに、アスナはもう一度うなずく。

 

「すごく似合ってると思うよ」

 

「お、おおお……」

 

 アスナの言葉に喜びをかみ締めるエヴァ。

 

 エヴァは俯き、表情を崩すぐらい喜んだあと、顔を上げてうんうんとうなずいた。

 

「さすがアスナだな! この服の良さがわかるとは! うむ! この私が教育しただけのことはある! フハハハハ! そうか! 格好いいか! フハハハハ!」

 

 と、大声で笑うエヴァじゃが……、教育した? 何をじゃ? 妾とアルヴィンはアスナを助け出してから2年間は牢屋で過ごしておった間、何か教育しておったのか?

 

 ……魔法や戦闘とか一般常識とかの教育じゃよな?

 

「エヴァ。私もエヴァみたいな服が欲しい」

 

「ん? 私みたいなのか?」

 

「うん。格好いいし」

 

「――っ。フハハハ! そうか! 格好いいからな!」

 

 褒められて益々上機嫌になるエヴァじゃが……、次に放ったアスナの言葉にこおりついた。

 

「それに、便利だから」

 

「フハハハ! うむ! 便利だから……、便利?」

 

 服が便利だとは普通は言わない。消防士や警察官、作業服など機能性に優れた服装でない限り……。

 

 ましてはエヴァが今着ている、ほとんど下着と変わらない服ならなおのこと。便利だという言葉は限定される。

 

 ……嫌な汗が顔を伝う。エヴァも妾同様、口を開けて固まっている。

 

 だが、そんな妾たちを無視してアスナはつぶやく。無邪気に、事実だけを。

 

「そのまま着替えなくてもセックス……? エッチができるでしょ?」

 

 と……。

 

「私も着るならそういう服がいい。いつでも押し倒されてもいいように」

 

 と……。

 

 エヴァはあまりの事態に絶句し、汗を大量に流した。

 

「あ、あああアスナ? お、おまえ、いったい何を……?」

 

 動揺で震わせた声でつぶやくエヴァに、アスナは妾に言ったときのように、完結に言った。

 

「私もアルヴィンが欲しい」

 

 と。

 

「……………」

 

「……こっちを見るでない。妾は何も知らぬ。主が教育したのではないのか?」

 

「そ、そそそんなことするわけがないだろっ! わ、私たちが教育していたのは魔法の使い方とか一般常識に関してだ! 情操教育はしておっても、せ、性教育はやってない!」

 

 断言するエヴァじゃが、何かおかしい。反論の際に視線を一度もこちらに合わせておらんのじゃ。まるで何かを隠しているような……。

 

 腰をかがめ、アスナと視線を合わせ、肩を掴んで訊ねる。

 

「アスナよ」

 

「なに? アリカ」

 

「妾がまだ牢屋におった頃に、エヴァから他に何を教えてもらっておった? いや、何か話を聞いておらぬか? アルヴィンの」

 

「お、おいっ、ちょっと待て!」

 

 慌てるエヴァ。益々怪しいのじゃ。

 

 止めようとするエヴァだが、正直、というか純粋なアスナは喋ってしまう。

 

「酔っ払ってるエヴァが色々話してた」

 

「あ……」

 

 手を伸ばして固まるエヴァ。アスナは気にした様子もなく話し続ける。

 

「えっと……、昔、火あぶりにされかけたところをアルヴィンに助けられて、魔法世界にやってきて、捨てられた城で暮らしはじめて……」

 

「うむうむ……、それで?」

 

「それからアルヴィンに魔法習ったりして、すごく楽しかったけど、だんだんアルヴィンが欲しくなって、吸血の日に思い切って誘惑して、それから開発? 女性器舐められたり、胸弄られたり……。自分からもしてみようと思って寝込みを襲ったりして……」

 

「……もうそれぐらいでよいぞ、アスナ」

 

「ん? わかった」

 

 ……ふぅ……。まったく……。

 

 立ち上がり、エヴァのほうへ近づく。

 

「あ……、アリカ?」

 

「なんじゃ? エヴァンジェリン」

 

「――っ。そ、そうお、怒ることでもないだろ? は、話しだけで、あっ、アスナは100も超えているんだし!」

 

「ふふふふ、何を言っておるのじゃ? 怒ってはおらぬよ、妾は。その証拠に、ほれ、笑顔を浮べておるじゃろう? ――アスナ、ちょっと部屋から出て行ってもらえるかのう? エヴァと2人で少し話があるのじゃ。なあに、すぐに終わるからな」

 

「わかった。今すぐ出る。じゃあね」

 

 スタタタっと部屋から出て行くアスナ。

 

「いい子じゃな。――さてと……」

 

 もうひとりの幼女はどうしようかのう?

 

「――っ! ちょっ!? ま、待て! 話せばわかる!」

 

「さあ、エヴァンジェリン。まだ精神的に未熟なアスナにまだ早い知識を植えつけた罰を受けてもらおうかのう?」

 

 それにわざとではなくても、オナニーを見せたことに対してもじゃ。

 

 じりじりと距離をつめて捕まえる。

 

 ベッドに座り、上半身を膝に乗せ、キャミソールを捲り、ショーツをずらして尻を出させる、

 

「ま、待てって! て、手に魔力を宿らせるんじゃない! わ、私は……」

 

「さてと、軽く30発はいってみようかのう」

 

「待て~~~~!」

 

 ――パンッ!

 

「~~~~っ!」

 

 ――パンッ!

 

「ひゃっ!」

 

 ――パンッ!

 

「や、やめっ!」

 

 ――パンッ!

 

「うぐっ! あ、アリカぁ……」

 

 ――パンッ!

 

「んくっ! んん~~~っ!」

 

 口を両手で押さえるエヴァ。……ん? 何か変じゃぞ?

 

「どうしたのじゃ?」

 

「…………」

 

 無言で体をビクビクさせながら俯いているので、顔を覗き込んでみる。

 

 赤い顔、かすかに漏れる吐息は甘く、切なさが含まれている。

 

 ……これは。

 

 尻を指先で軽く撫ぜる。

 

「――ぁん! くっ、や、やめ……ろ」

 

 …………。

 

 ゆっくりとある場所を触ってみる。

 

 ――ぐじゅ……。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……のう、エヴァよ」

 

「…………。……なんだよ?」

 

「主、少しばかり控えたほうがよいのではないか? いくらなんでも淫乱すぎるぞ」

 

 プレイでもないただのお仕置きで濡れるなんて終わっておるのじゃ。

 

「――っ。お、おまえにだけは言われたくはないぞっ! わ、私は永い時間をかけてそういう風(・・・・・)に調教されてるから仕方がないが、おまえは最初からドMのアナル狂いじゃないかっ!」

 

「――っ。お、お主こそ! ドSでありながらドM! 小さいなりでアルヴィンの巨チンを咥え込み、吸血ではなく、精液を吸うなんてサキュバスに種族を変えてはどうなんじゃ!」

 

「言ったな、こいつ! 私のテクニックで本物の淫乱女王に変えてやろうか!」

 

「ハッ、軽く返り討ちにして、妾が主を調教してくれる!」

 

 まずはそのだらしないオマンコを手淫で犯してやるのじゃ!

 

「――っ!? こ、コラ! ひ、卑怯だぞ!」

 

「ふんっ、卑怯で結構。これは戦いなのじゃ。ほれ、こっちはどうかのう?」

 

「――ひゃ!? や、やめ……、わ、私はおまえと、違って……、し、尻はあまり……、んぐぐ……」

 

「ふふふ、そういうわりには簡単に妾の指を咥えこんでおるな? どうじゃ? 気持ちがよいじゃろう」

 

「ハッ! 何を言っているっ。アルヴィンと比べると、こんな、もの……! それに、この格好でも反撃は、できるっ!」

 

 エヴァの手が妾の服を切り裂き、なかへと侵入してきた!

 

 エヴァの手が的確にショーツを捉え、ずらして手淫が開始される。

 

「――っ! 服を破くとは……!」

 

「あとできちんと直してやるさっ! 私がおまえを倒したあとでな!」

 

「クッ! 倒すのは妾のほうじゃ!」

 

「いや、私だっ!」

 

 負けられない戦いが、そこにはあるのじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? アスナ、どうした? エヴァの部屋の前で立ってるなんて」

 

「ニィ」

 

「立たされてるのか?」

 

「半分合ってる」

 

「?」

 

「ねえ、ニィ」

 

「なんだ?」

 

「私もアルヴィンがほしい」

 

「そうなのか?」

 

「うん。でも知識がないからアリカがダメだって。それで、エヴァと一緒に教えてもらえる予定だったけど……」

 

「……エヴァとアリカは部屋に篭ってる、と」

 

「うん」

 

「じゃあ、私が教えるか?」

 

「ニィが?」

 

「これでも性に関する知識は豊富。処女を捧げた相手は義理の父であるアルヴィン。アスナのターゲットでもある」

 

「つまりニィは私の先輩?」

 

「そういうこと」

 

「じゃあ、お願い」

 

「了解。基本的なことから全部教える。私が持ってる小型の魔法球に資料も教師役になりそうなのもいるから今から行こう」

 

「わかった。ありがとう、ニィ」

 

「いいよ。アスナは私の義理の妹だし」

 

「……それでも、ありがと」

 

「うん」

 




 こうしてアスナは1番教わってはいけなさそうな人に頼ることに……。



 とりあえず1万字超えて切りもいいので今回はこれで終わり。



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第19話 幼女アスナの1日

 ※今回のはクールな幼女アスナの視点なので、淡々としていて読みづらいです。


 魔法世界に存在している国で最も古い歴史を持つ王国、ウェスペルタティア。

 

 ウェスペルタティア王国には、最強の防衛装置があった。

 

 王国の王族に、ごく稀に生まれる完全魔法無効化能力者。

 

 その完全魔法無効化能力者を媒介にした防衛装置。

 

 通称、黄昏の姫御子。

 

 私、アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアもそうだった。

 

 気づいたら、黄昏の姫御子と呼ばれ、防衛装置として魔法を消し、戦争の道具になっていた。

 

 そこに私の意思はなく、ただただ命じられた役目を果たす日々だった。

 

 他に何もすることもなく、できることもなく、させられることもなく、いつも城で時が過ぎていくのを他人事のように見つめていくだけで……。

 

 私は完全無効化能力を使うための入れ物だった。

 

 私という入れ物を長く使うために、魔法薬で体の時も止められ、老いることもなく、100年以上も防衛装置として国を守らされていた。

 

 攻め込まれる箇所に連れ出され、完全魔法無効化能力の効果を広範囲に広げる魔法陣の上に乗せられ、魔法を消して、国の敵を殺していく。

 

 ――そうだ。

 

 何人、何百人、何千人と完全魔法無効化能力で、私が、殺した。

 

 拒める、拒めないなど関係なく、結局のところ、私が殺した。

 

 私が殺し続けた。

 

 私は大量殺人を行なった悪者だ。

 

 だから、『完全なる世界』に捕まったときは、「やっとこれで終われるんだ」と思った。

 

 何の意味もなかった生が、やっと終わるんだと。

 

 そう、思っていた。

 

 そう思っていたけど、『完全なる世界』が行なおうとした儀式の触媒に使われたとき――。

 

 ――私は救い出された。

 

 儀式の触媒として磔にされていた私を、黒い、小さな龍が助けてくれた。

 

 不思議なことに『完全なる世界』に見つかることなく、私の身代わりを作り出して、私を助け出してくれた。

 

 私は……、これで終われると思っていた私は、また防衛装置として生きる日々に戻らされるのかと思った。

 

 思っていたけど、それは違った。

 

 黒い龍は、本当の意味で助けてくれた。

 

 暗闇のなかにいた私に光をくれた。

 

 テオドラとアリカが儀式の触媒にされている私を、黒い龍に助けるよう頼んだそうだが、それでも関係ない。

 

 ――黒い龍は私の光だ。

 

 真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリン。

 

 エヴァンジェリンの従者で、殺人人形の茶々ゼロ。

 

 火の精霊の加護を受けている悪魔で元人形のニィ。

 

 ヘラス皇国の第3皇女テオドラ。

 

 元ウェスペルタティア王国女王で、現魔族のアリカ。

 

 そして、黒い龍でもある魔界の大魔王、アルヴィン。

 

 ――黒い龍でもあるアルヴィンがいたからこそ、私は皆に出会えたのだから。

 

 殺人兵器でしかなかった私を、もはや人でもない私を、全部受け入れた上で家族として迎え入れてくれた皆と出会わせてくれたのだから……。

 

 ――私は、アルヴィンが大好き。

 

 もちろん、アルヴィンとアリカが捕まっていなかった2年間、私に様々なことを教えてくれたり、遊んでくれたりした、エヴァンジェリンや茶々ゼロ、ニィやテオドラも大好き。

 

 普段は優しいけど、魔法を教えるときは厳しいエヴァンジェリンも、大好き。

 

 いつも包丁研いでて、戦闘訓練のときはすごくうれしそうに襲いかかってくる茶々ゼロも、大好き。

 

 私を着せ替え人形にして写真を撮ったり、アルヴィンとアリカが裸で抱き合ってるビデオを弄ってるニィも、大好き。

 

 ちょっと口うるさかったり、騒がしいときもあるけど、テオドラも、大好き。

 

 女王を辞めて、悪魔になったアリカも、大好き。

 

 ――今の私は、そんな皆に囲まれて、すごく幸せ。

 

 温かくて、居心地がよくて……。

 

 胸がいつもあったかい。

 

 ――今の私は、自分で生きてる。

 

 生かされているのじゃなくて、自分の意思で生きている。

 

 ――それが、当たり前のことが、すごくうれしくて幸せ。

 

 だから、こんな幸せな日々をくれたアルヴィンや皆に、何か返してあげたい。 

 

 ――物でも、心でも、何でもいいから何かを返したい。

 

 そう自分の心が思ったから……。

 

 ――空っぽだった私が、初めて自分自身で望んだことだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前6時30分。

 

 私はいつも通り、ジリリリリ……と鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。

 

 ……目を覚ますけど、目覚まし時計は止めない。

 

 目を瞑って寝息を立てて、寝たふりをする。

 

 寝たふりをしたまま、ちょっと待つと……。

 

「ん……、ふあああ……」

 

 と、隣で寝ていたアリカが目覚めて目覚まし時計を止める。

 

 そのままベッドから上半身を起こして、隣で寝ている私の体を揺すって起こし始める。

 

「アスナ、朝じゃぞ。今日もアルヴィンの手伝いをするのじゃろ?」

 

 本当はもう目を覚ましているけど、

 

「ん……、ん~……」

 

 私は寝たふりをしたままアリカに抱きつく。

 

 ん~……、アリカの体、あったかくて、いい匂い……。

 

「コレ、アスナ。起きぬのか?」

 

 アリカが背中をさすりながら訊ねてくる。うん、そろそろ起きないとダメ。そうじゃないと本当に寝かしつけられるし。

 

 私は目を擦りながら目を開ける。

 

 ベッドから体を起こして、背伸びをする。

 

「ふああ……。おはよ、アリカ」

 

「おはよう、アスナ。やっと起きおったな」

 

 そう言って布団を足元にまとめて、アリカはベッドから降りる。

 

 私もベッドから降りて、アリカと手を繋ぐ。

 

 繋いだ手からアリカの体温が伝わってくる。すごく安心してうれしいと感じる。

 

 ……うん、やっぱり私は、手を繋いで歩くのが好き。

 

「さてと、まず顔を洗いに行くかの」

 

「うん」

 

 こうして、私の1日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 顔を洗ってパジャマから動きやすい服に着替えた私は、家の外へと向う。

 

 目指す場所は家の近くに作った家庭菜園。

 

 家を出て2数分ぐらい……、見えた。

 

 アルヴィンは先に作業してるみたい。

 

 長袖長ズボンで厚く、しっかりした作りの作業服を着て土を弄ってた。

 

「おはよう、アルヴィン」

 

 後ろからそう声をかけると、アルヴィンは作業を止めて後ろを振り返り、「おはよう、アスナ」と挨拶を返してくれた。

 

 私はアルヴィンの隣に腰を下ろして作業を始める。

 

 雑草を抜いたり、間引きしたり、水をかけたり、病気していないか調べたりする。

 

 すごく手間がかかるけど、野菜作りは楽しい。

 

 手間暇かけて、育てて、収穫して、食べる。

 

 自然の一部となって生きる。

 

 すごく楽しい。

 

 以前の私だったら何も感じなかっただろうけど、今は楽しいと思える。

 

 たまに失敗したり、枯らしてしまうこともあるけど、楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 農作業のあと、道具を片付け、手を洗ってから家に帰って、そのままリビングへ向う。

 

 リビングのテーブルにはすでに5人分の朝食が用意されてた。

 

 いつもパンかご飯が中心の朝食で、今日はご飯だ。

 

 キッチンのほうで、エプロンを付けて、調理器具を片付けていたアリカが、私たちに気づて振り返る。

 

「帰ってきおったな。手は洗っておるか?」

 

「ああ、洗ってるよ」

 

「うん」

 

 アリカの問いにうなずいて、私たちはテーブルにつく。

 

 そこに「ふぁあああ……」とあくびをかみころしながらエヴァがやって来て、続いてニィがやってくる。

 

『おはよう、エヴァ、ニィ』

 

 私とアルヴィンが挨拶すると、エヴァとニィも、

 

「ああ、おはよう」

 

「おはよう」

 

 と、返事を返して席につき、アリカもエプロンを外して席について、食事が始まる。

 

 ここに居ないテオドラは魔法世界。

 

 茶々ゼロは……、ソファに座ってテレビ見てる。人形だから食事できないそうだけど、そんなの関係なく、朝から殺伐としてるドラマ見て「ケケケケ……、ソウダ。ブッコロセ」とかうれしそうにつぶやいてる。

 

 にぎやかに、騒がしく、わいわいしながらじゃないけど、いつも通り、皆そろっての食事はそれだけでうれしいと思う。

 

 黄昏の姫御子のときは、食事は単なる作業だったけど、今は違う。

 

「アスナよ。ピーマンも食べないと大きくなれないぞ?」

 

「エヴァもニンニクとネギ食べない」

 

「――うっ! そ、それは……、私は吸血鬼だから……」

 

「それに魔法薬抜けない限り大きくならないし」

 

「それはそうじゃが、肉体が成長しないだけで、栄養による変化は現れるのじゃぞ?」

 

「……つまり?」

 

「食事しだいでは太ったりもするし、痩せたりもする。好き嫌いなく食べる私は最強」

 

「ニィが最強?」

 

「すでにエヴァも超えてるし、テオドラも超えてる。将来的なプロポーションもアリカを超えると予想する」

 

「聞き捨てならんぞ、ニィ! この私を超えたなどと……」

 

「私はすでにBの高みへと到達し、更なる高みへと向っている」

 

「Bっ、Bだと!?」

 

「ねえ、アリカ。私も食べたら大きくなる?」

 

「うむ、そうじゃな。今は体に変化は現れぬとも、将来的には関わってくるじゃろうな」

 

「……なら、食べる」

 

「そうか、良い子じゃな、アスナは」

 

「うん」

 

「あ、アルヴィン……。私は、ニィに……」

 

「大丈夫だよ、エヴァ。真祖の吸血鬼だから時間はかかるだろうけど、いつかは大きくなるよ」

 

「おまえのいつかは千年とか先だろうがーっ! 私はもっと早く大きくなりたいんだー!」

 

「ケケケケ。御主人ハセッカチダナ。別ニソノママデモイイジャネェカ。エターナルロリータ」

 

「エターナル……っ!? おいコラ、ボケ人形! ご主人様になんて口の聞き方を……!」

 

「ケケケケ」

 

「笑うなー!」

 

 うん、すごく温かくて楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を済ませたあと、アルヴィンとニィが食器を洗って片付けている間に、私はアリカと一緒に洗濯物を集めて洗う。

 

 魔法を使えば全部早く、綺麗にできるけど、魔法は使わない。

 

 大体が機械とかを使ったり。

 

 魔法に頼りすぎるのはよくないし、皆寿命も永くて時間もあるからだ。

 

 全ての洗濯物を洗い終え、干し終えると、リビングで休憩。

 

 アルヴィンはソファに座って魔法の本……、メモ帳に育ててる植物や動物がどういう状態か記録を付けたり、次に育てる物を考えたり。

 

 アリカはアルヴィンの隣に座って、連続して放送されるテレビドラマを見たり、何とか茶々ゼロから刃物を取り上げようと説得していたり。

 

 ニィは一人用の椅子に座ってイヤホンってものを耳に付けてビデオカメラで何かしてたり、ブックカバーを被せた本を読んでたり。

 

 茶々ゼロはテーブルのインテリアになっていたり、持ち歩いている刃物についてアリカに怒られたりしてる。

 

 朝食後いなかったエヴァは……、寝てる。

 

 吸血鬼であるエヴァは朝に弱いから、朝食が終わる頃辺りでうとうとし始めて、リビングに2つ、L字に並べて置いてあるソファのひとつを占領して寝てる。

 

 ちなみに、私はというと、アルヴィンとアリカの足の間、カーペットの上に座って背の低いテーブルについてお茶を飲んでまったりしてる。

 

 前はアルヴィンやアリカのヒザを枕にして横になっていたけど、ほとんど寝てしまうから、今はソファに座ったり、床に座ったりしてる。

 

 でも、時々はヒザで寝させてもらう……。

 

 そして、休憩が終わると、昼食の準備が始まる。

 

 私とニィがアルヴィンとアリカに頼まれた食材を菜園から取ってきたり、野菜を切るのを手伝ったりする。

 

 丁度、この頃になるとエヴァが目覚めて、午後の準備を始めに茶々ゼロを連れて、地下室へと向う。

 

 料理が完成したらまた皆で食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食休憩も終わって午後。私はアルヴィンとアリカと別れ、エヴァたちと地下室へと向う。

 

 地下室でやることは、魔法の勉強や戦闘訓練。

 

 私は魔法世界、旧世界を含めて貴重な能力である、魔法完全無効化能力を持っているし、他にも色々な事情もあって、様々な組織に狙われるから自衛の手段として戦い方も含めて魔法を習ってる。

 

 皆に守ってもらうばかりでは嫌だから、頑張って習ってる。

 

 地下室に造られた、まるで絵本に書かれているような『魔法使いの部屋』で。 

 

 ……うん、1階と違ってここは本当に『魔法使いの部屋』。

 

 木製の棚には様々な形のフラスコが並んでいて、その中には赤色や黄色、青色や紫色、緑色などの液体が入ってて、天井には変な形の草や干物などが吊るされている。

 

 床や壁もコケなどが生えた汚れたレンガ……、に見せた普通のレンガ。

 

 いつも小さい鍋しか使わないのに、なぜか部屋の一角を占領してる大きな鍋と薪。

 

 エヴァは発動体を必要としないのに関わらず、私が使う杖が初心者用の杖に関わらず、1メートル以上長い立派な杖が立てかけられていて、その隣にも掃除には使わないのにホウキが。

 

 極めつきにエヴァの今の服装は、黒色のスクール水着みたいな薄い服に、体をスッポリ覆うローブと、ツバが長いトンガリ帽子で、私にもその格好を強要してくる。

 

 …………。

 

 すごく悪の魔法使いの衣装らしいとかニィに絶賛されてから、魔法を教えるときとかによく着てるみたいだけど、私は騙されてると思う。アリカが毎回顔をしかめるのも当然だと思う。

 

 だって私のは黒色じゃなくて、白色だから。

 

 エヴァと黒と白でおそろいとかニィが言って、エヴァもうれしそうな表情を浮かべたけど、私はうれしくない。

 

 帽子やローブはともかく、私がなかに着てるのは本物のスクール水着だったから。

 

 肌触りが変で、服に魔法がかけられてるみたいだから、試しに魔法完全無効化能力を発動させたら、胸のところに『アスナ8才』とか丸い文字で書かれた布が現れた。

 

 ニィにその事を訊ねたら、あっさり認めて「そっちのほうがレア」と握りこぶしに親指立ててた。

 

 正直、ニィの言葉の意味が分からなかった。あと、私は8才じゃない。本当の歳はわからないけど。

 

「さてと、座学はこれぐらいでいいな。次は魔法球のなかで実技だ。行くぞ、アスナ」

 

「うん」

 

 初級魔法と中級魔法の教科書を片手に、エヴァの後ろに続いて魔法球が置かれた別室へと向う。

 

 ……やっぱりこの格好で行くの? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法球のなかに移っての魔法の訓練。

 

 通常の魔法球は外と中で時間が違うけど、私が特訓に使っているのは特別仕様。

 

 外と中で時間が変わらず、いつでも出入り出来るタイプの、本当に特訓するための場所を作り出しただけの魔法球。

 

 今回使用するのは草原タイプ。

 

 その他にも砂漠や南極仕様などが存在する。

 

 他にも魔法球内12時間が魔法球外での6時間などの仕様があるけど、外と時間がずれると、夕食とか寝る時間がずれるから、特訓では一分の一ぐらいしか使わない。

 

 今すぐ強くならなければいけないわけでもないしね。

 

 私はそこでエヴァの指示に従い、魔法を発動させて的を撃ったり、新しい魔法を試したりする。

 

 基本の『魔法の射手』はもちろん、『武装解除』、『眠りの霧』など、戦闘に関係のない占いの魔法なども覚えて、練度を上げていく。

 

 そして、休憩を挟めながら工夫を凝らしながら訓練していき、午後3時ぐらいになると、魔法球内にアリカがやってくる。

 

 手にお菓子を持って、3時のおやつ……ではなく、休憩をする。

 

 その休憩が終わると、今度はアリカと訓練。

 

 アリカとの訓練は主に勉強と剣。

 

 勉強は一般常識とか住んでる国の歴史とか、算数とか国語、生活に必要な知識を蓄える。

 

 剣の特訓をするのは、私が完全魔法無効化能力を持っているから。

 

 私の能力である完全魔法無効化能力は、魔法と気、式紙なんかも消せるけど、自分の魔法も消してしまうので、魔法と一緒に発動できない。

 

 だから、私は剣も覚えてる。

 

 幸い剣の才能は魔法が人並み以下なのに比べて、人並み以上にあったから、剣だけを覚えるというのもあるけど、その場合、必然的に防御には魔法無効化能力を使うことになる。

 

 希少なスキルである魔法無効化能力を公に使えば、各勢力や組織に狙われるから、並み以下の才能しかなくても、魔法も覚えてる。

 

 なので私の戦闘スタイルを分類する場合、後衛大火力型の魔法使いではなく、スピードを生かした前衛型の魔法剣士スタイルになる。

 

 剣を片手に持って、遠距離から中距離は魔法で対処し、近距離戦闘をする場合は、身体強化を行なった上に、剣と魔法を組み合わせて戦う。

 

 ちなみに、身体強化は魔法行使で消費する魔力を無駄使いしないように、主に『気』で行なうけど、本気で戦う場合は少し特殊な技を使う。

 

 魔力と気を合成して大きな力を得る『  気と魔力  の  合一  (シュンシタクシス・アンティケイメノイン)』。日本風にいうと、『咸卦法(かんかほう)』と呼ばれるものを使う。

 

 それを使って、飛躍的に上昇した身体能力で近接戦闘を仕掛け、一気に相手を仕留める。

 

 ちなみに『気と魔力の合一』は、自分を無にして、相反する力である気と魔力を両手にそれぞれ、同じぐらいの強さで宿し、手を合わせて合成して、自分を強化する『究極技法』と呼ばれるぐらい何年も修行が必要な難しい技らしいけど……。

 

 私は元々空っぽだったからか、あっさり出来た。

 

 私の肉体に存在する気と魔力が同量ぐらいだったから、アルヴィンに言われて試して見たら、あっさりと出来た。

 

 出来てからは『気と魔力の合一』の制度や密度を上げる訓練をしたりしていたけど、最近は調子が悪い。

 

 発動出来て、前よりは出力と密度も上がっているのだけど、完全に自分を無にすることができなくなった。

 

 ……完全に自分を無にすることができなくなった。

 

 それは、私が空っぽじゃなくなったてことなのかな?

 

 よくわからないけど、ちょっとうれしかった。

 

 自分を無に出来ないことが。

 

 自分の器に、空っぽだった器に何かが芽生えたのだと証明しているみたいだから。

 

 無に出来ない自分を感じながら、自分を無に変えていく『気と魔力の合一』の修行はすごく、楽しい。

 

 日々成長していく自分がうれしい。

 

「さてと、アスナ。今日は歴史から始めてみようかの」

 

「……うん」

 

「平安時代に作られた……」

 

 ……でも、勉強は苦手……。

 

 わかるようになった時はうれしいけど、わからないこと、覚えなければいけないことが多すぎる。

 

 魔法でも座学は苦手。魔法薬に関しては全滅。すり潰すだけで回復薬代わりになるアルテミシアの葉だけ覚えておけば私は充分。

 

 …………。

 

「コレ。聞いておるのか?」

 

「……聞いてるよ、アリカ」

 

「そうか。では続きを……」

 

 ……早く剣の訓練にならないかな……。

 

 体を動かすのは得意で楽なのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練を終えて夕食も食べ終わって、午後8時。

 

 広いお風呂に入る。

 

 いつもはアルヴィンやアリカと入ったり、ニィと入ったり、エヴァと入ったりとバラバラだけど、私はあまりひとりでお風呂に入ることはない。

 

 今日はアルヴィンとエヴァと一緒に入ってる。

 

 アルヴィンは今、湯船から出て体を洗ってる。

 

 私とエヴァは湯船に浸かってる。

 

 …………。

 

「おい、アスナ。おまえ、どこ見てるんだ?」

 

「アルヴィンのペニス」

 

「――ぶふぉっ!?」

 

 エヴァが噴出した。

 

「ま、まだおまえにはそういう事は早いんじゃないか? 絵や標本を使った夜の座学だけで……」

 

 私はエヴァを見る。上から下に。

 

「な、なんだ?」

 

 胸を隠すエヴァ。だけど、私の視線はもっと下を見てる。

 

 本当にあそこに入ってたの? 私と同じぐらい小さいのに……。

 

「よく入ったね」

 

「――ぶふっ!?」

 

 ちょっとだけ触ってみる。

 

「こ、コラっ……!?」

 

 プニプニしてる。やわらかい。奥がちょっとスベスベ? でも変な感触。

 

「んっ……、や、やめ……、どこでおまえ……」

 

「穴がある? ここが膣口?」

 

「そ、それはさすがに洒落になら……、あうっ!?」

 

 エヴァのなかに指が吸い込まれていく。すごい、人差し指が全部入った。指が締め付けられる。気持ちいい、のかな?

 

 エヴァも私にもたれかかって気持ちよさそう。

 

「エヴァ、気持ちいい?」

 

「ぅん……、くっ、そ、それ以上は……っ。ど、どこでこんなテクを習って……」

 

「テク? ……そういえば、上側を擦るんだっけ?」

 

「――なっ!? そこはダメだっ! そこはすごく弱っ……!」

 

 エヴァがビクビク震えてる。

 

「わかった。やめる」

 

 エヴァの様子が変だったから、私はエヴァの中から手を抜いた。少し手がヌルヌルしてる?

 

「……はぅ? ……やめた、のか?」

 

 エヴァがちょっと残念そう?

 

「続けたほうがよかった?」

 

「そ、それは……。――って、何を言わせる気だー!」

 

「?」

 

 今日のエヴァはよくわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後9時。お風呂も終わって歯磨きをして私が寝る時間。

 

 寝室につれて行かれ、アルヴィンやアリカに私は寝かしつけられていたけど、最近はちょっと違う。

 

 アリカとエヴァから性教育というのを1時間ほど受けさせられてる。

 

 ペニスとかヴァギナとか、精子とか卵子とか、生理とか……、正直わかりにくい。やっぱり実物が1番。

 

 あと、お風呂でエヴァのを弄ったことをアリカとエヴァに怒られた。

 

 そういうことは私にはまだ早いし、同性で親しい間がらでも許可なく触ってはいけないらしい。

 

 でも、アリカもエヴァもニィのビデオで、アルヴィンに押し倒されたり、押し倒したりしてなかった?

 

 そのことを指摘したらまた怒られそうだから言わないけど、ちょっと不満。

 

 保険体育の教科書で勉強したあとは、今度はニィの寝室へと行く。

 

 アリカとエヴァはまだ起きてるし、ニィが今日は私と一緒に寝ると言ってるから。

 

 ニィの部屋に入る。

 

 ニィはすでにベッドにいた。

 

 私もベッドに上がり、うつ伏せになってニィの横に並ぶ。

 

「じゃあ、勉強するか」

 

「うん」

 

 ニィは大きな枕の下に手を入れる。ゴソゴソと取り出す。

 

 取り出したものはペニスに似せたおもちゃや、雑誌や小さな本。

 

「とりあえず、男性器の特徴のおさらい。フェラチオの復習だな」

 

「わかった」

 

 ニィの授業はペニスやヴァギナに似せたおもちゃを使ったり、絵を見て覚えたりだから、アリカやエヴァの授業よりわかりやすい。やっぱり私は実践派。

 

 今日も口を大きく開けてペニスのおもちゃを咥える。

 

 かなり大きくて太いから先っぽしか咥えられない。

 

 けど、おもちゃはアルヴィンのと同じ大きさと形だから、これをきちんとフェラチオできるようにならないと、精液が竿に上ったりして急に大きくなったりする本物では無理。

 

 結構疲れるけど、アルヴィンに喜んでもらえるように頑張る。

 

 ニィの授業を終えたら今度こそ寝る。

 

 ニィの授業は、ニィと寝る時だけだから、いつもより真剣に取り組む。

 

「なかなか上手くなったな。今度、試しに夜這いかけてみるか?」

 

「いいの?」

 

「アルヴィンは一度寝たらなかなか起きないしな。本番はまだダメだが、フェラチオだけして帰れば大丈夫だろう」

 

「…………」

 

「やめておくか?」

 

「うんん。する。アルヴィンを気持ちよくしてあげたい」

 

「なら、手引きは私に任せておいて。数日かけて仕込みをしてアルヴィンをフリーにしておくから」

 

「わかった。ありがとう、ニィ」

 

「礼はいい。義父との禁断の愛に目覚めている同志よ」

 

 ニィはキメ顔でそうつぶやいた。

 

 これで怪しげな服を着せてこなければ、いいんだけど……。

 

 おそらく酷くなることはあっても、改善することはないだろうと、私はもう諦めた。

 

「さすがにアナルの改造は早いしな。とりあえず方法だけ教え込んでおくか……」

 

「…………」

 

 ニィ、その大きな注射器はなに? なんで先が太くて、かえしが付いてるの?

 



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第20話 幼女アスナは真夜中に……。

 今回もアスナ視点になりました。

 次回から先? に進めます。

 まあ、先といってもいきなり原作突入ではないですが。


 深夜。エヴァ以外の皆が完全に寝静まった頃。

 

 ニィに手伝ってもらい、誰にも見つかることなく、私はアルヴィンの部屋に侵入した。

 

 窓側の壁につけられたダブルベッドの上で、アルヴィンが寝ていることを確認する。

 

 うん。アルヴィン以外誰もいない。布団のなかにも誰もいない。

 

 私は手早く服を脱ぐ。

 

 ボタンを外してパジャマの上を脱いで、両手でズボンを脱ぐ。

 

 シャツを脱いで、パンツも脱いで、裸になる。

 

 ……部屋のなかは温かいけど、ちょっと寒い。

 

 部屋に置いてある椅子に服を置いて、私はベッドへと向う。

 

 ベッドではアルヴィンが仰向けで寝ていた。

 

 規則正しい寝息が聞える。

 

 よく眠ってるみたいだ。

 

 布団を少しだけ持上げて、ゆっくりとなかへ忍び込む。

 

 少しだけベッドが沈んで、音がなったけど、起きる様子はない。

 

 私は起きないように警戒しながら、アルヴィンの体に手を伸ばす。

 

「ん」

 

 手に温かいモノが触れた。

 

 この手触りはお風呂で覚えてる。アルヴィンの体だ。

 

 アルヴィンは私やニィと寝る時は服を着てるけど、今は着ていない。

 

 触ってる場所はお腹みたいだ。

 

 手を動かしてもっとよく触ってみる。

 

 割れた肋骨、厚い胸板、わき腹、もじゃもじゃ。

 

 もじゃもじゃとその先はまたあとで。

 

 私はもっとアルヴィンの体に触れるために布団の奥へと侵入していく。

 

 胸から腕、首、頬。

 

 手を通して直接手触りが伝わってくる。

 

 熱も伝わってくる。

 

「アル……、ヴィン」

 

 なんだろう? 触ってると、すごく、胸がもやもやする……。

 

 手だけじゃ、足りない?

 

 もっと触れ合いたい……?

 

 体の内側から気持ちが溢れてくる。

 

「アル……」

 

 気持ちを抑えられなくなった私は、アルヴィンの腕を抱きしめる。

 

 ぎゅうと胸に抱いて、体を擦り付ける。

 

 アルヴィンの腕に触れている体が熱くなるけど、もっと、アルヴィンの熱を感じたい……。

 

 自然と、私は腰を、股をアルヴィンの腕に擦りつけ始めた。

 

 股を擦りつけて、胸も抱きしめながら擦りつけて、頬もぴったりと触れる。

 

 ああ……、すごく、温かくて安心する。

 

 んん……。

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜。エヴァ以外の皆が寝静まった頃。

 

 ニィに手伝ってもらい、アルヴィンの部屋に忍び込んだ。

 

 今回は2回目である。

 

 その前の前回は不覚をとり、アルヴィンの腕を抱いたあとあのまま眠ってしまい、朝方ニィに回収され失敗してしまったのだ。

 

 なので今回はリベンジである。

 

 前回と同様に服を脱いで椅子に置く。

 

 怪しまれないように、気づかれないように一月以上間を置いてのリベンジ。

 

 今回は失敗しない。

 

 今回のために毎日アルヴィンとのスキンシップを増やし、お風呂で正面から背後からとアルヴィンに抱きしめるように要求し、鍛えてきたのだ。

 

 私はもう大丈夫。

 

 布団の中へ全裸で忍び込む。

 

 手を伸ばして触れて、腕を抱きしめて体を擦りつける。

 

 …………うん、大丈夫。

 

 体が温かくなって、ちょっと眠気が襲ってきたけど大丈夫。

 

 第一関門を抜けた私はさらに内側へと侵入する。

 

 アルヴィンの脇と腕の間に体を滑り込ませるのだ。

 

「――んっ」

 

 これは……、全方位からの熱……。匂いも濃くなって、うう……。

 

 いつも一緒に寝るときは腕枕してもらってるけど、裸同士では段違い。

 

 気持ちが……、胸の中から溢れて……。

 

「ん~……」

 

「――っ!?」

 

 あ、アルヴィンが寝返りを打って……っ!

 

 う、腕の間に……、だ、抱かれて……、匂いも……いっぱ、い……。

 

 …………。

 

 ……2回目はアルヴィンに抱きしめられながら寝ているところをニィに救助されて終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3回目。腕の間に入って抱きしめられて終わった。

 

 匂いと感触のコンボがダメらしい。

 

 4回目も同じく、少し耐えれたけど、お尻を掴まれて終わった。

 

 厳密にはお尻を揉まれた。こねくり回すように。ニィに途中で救助されなければ、アナルを開発されてたと思う。

 

 5回目も同じく、身を固めて耐えてたけど、お尻に加えて太ももとか触られて、耳にアルヴィンの息が吹きかけれ、終わった。

 

 息を吹きかけられた瞬間、体がビクッとなった。おそらくあれが絶頂なんだろう。でも、あれが絶頂だとしたら、抱きしめられていた時点で私は絶頂を迎えていたことになる……。

 

 6回目も同じく、今度は受け入れるのを前提で抱きつき、何度も軽い絶頂を迎えても耐えていたけど、背中をさすられた時点で終わった。

 

 私は背中が弱いようだ。気持ちよくなりすぎて……、おしっこ漏らした。アルヴィンが目覚める前に、ギリギリでニィが魔法をかけてあとを消し、パジャマを着てニィと一緒に「一緒に寝る」と言って堂々と布団に入り込み、気づかれずに終わったけど、反省。

 

 7回目から13回目まで同じく。

 

 なんだかクセになってきたようだ。作戦開始から1年ほど経つけど、先に進めず、抱きしめられるだけで満足してしまう。

 

 14回目~17回目に差し掛かった辺り、ニィにさすがにもういいだろうと、先に進むように言われて行動に移すことを決意。

 

 完全に当初の目的を忘れていた。アリカとエヴァからの性教育もとっくに終わってるのに、私は何をやっていたんだ。私が気持ちよくなるだけではダメだろう。

 

 18回目から19回目、今までのおさらいを行なった。

 

 相変わらず背中は弱いが、耐えられる時間は増えた。股からきちんと愛液も分泌するようになってきたから、今までの行動は無駄ではなく、むしろ必要な行動だったのだろう。

 

 20回目。決意を決めて行動開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回は抱きしめられないよう初めから行動を開始する。

 

 裸でアルヴィンの足の間にうつ伏せで寝転がる。

 

 深夜の暗闇、布団のなかということで真っ暗で何も見えないが、気による身体強化で眼を強化。

 

 アルヴィンの大きなペニスがよく見える。

 

 亀頭が紫に近い肌色で、雁の段差が激しく、両手でギリギリ掴めるぐらいの太さ。勃起していないのに長さも20センチぐらいはあるようだ。

 

 他にもペニスの上、お腹の下に生えている真っ黒な剛毛がペニスの迫力を増していたり、玉袋も大量の精子が詰まっているみたいで、大きくプリプリ。

 

 これが、本物のアルヴィンのペニス……。

 

 お風呂で見たり、触ってみたことはあるけど……。

 

 フェラチオするために触るのは初めてだ。

 

 観察しながら鼻を動かして臭いを嗅いでみる。

 

「……くっ」

 

 ……やっぱり、すごく濃い。頭がクラクラする。

 

 脇より直接的な、雄の匂い。

 

 体が熱くなって、息が荒くなる。胸がドキドキする。

 

 私、発情してる?

 

 アルヴィンに発情してるの?

 

「はぁはぁ……、はぁはぁ……、んくっ……」

 

 ダメ……、もう……、布団の中で、匂いが篭って……。

 

「はぁはぁ……、はぁ……。……ちゅ」

 

 私は両手でペニスの竿を掴み、亀頭にキスをする。

 

 キスをしてから口を大きく開けて、亀頭を、口で咥え込む。

 

「んむっ……、うふぅ……、じゅる……」

 

 ――っ!

 

 口の中に広がるアルヴィンの味、苦いけど……、すごく、胸がドキドキして、もっと欲しくなる。

 

 これが、アルヴィンのペニスの味。

 

 吸いつき、味わいながら記憶する。

 

 チューチューと吸いながら、さっきから疼くヴァギナ……、オマンコだっけ? それを指で弄る。

 

 体を起こしてペニスを口で咥えたまま、両手を股に差し込み、オマンコを弄る。

 

 先端の尿道口から染み出るカウパーを舌先で救い、転がし、味の濃い裏スジや皮の間に唇で触れながら削ぎ、口内で味わう。

 

 オマンコを片手で少し開いて、もう片方の手の指で内側に触れる。分泌される愛液を指に絡めて広げて、膣口に指が入って処女膜を傷つけないように、指をスジに合わせて縦に擦る。

 

「んっ、ふぅ……、ふぅぅ……、じゅじゅる……。おいひぃ……。おいしいよ、アルヴィン」

 

 ペニスから口を離し、竿に頬ずりしながらお礼を言い、再び亀頭を咥え込む。

 

 咥え込んですぐに広がるペニスの味。

 

 ああ……、本当においしい……。

 

 …………。

 

 早朝、アルヴィンのペニスをおしゃぶり代わりに寝ているところをニィに救助された。アルヴィンが起きる直前だったので、もう少しでバレるところだった。

 

 ちなみに射精させられなかった。おしゃぶり代わりにしただけだったので、射精までにはいたらなかったようだ。

 

 今度は射精までさせてあげたいけど、ペニスとカウパーの匂いと味だけで暴走してしまうほどだったのだ。射精されたら私はどうなるのだろう……。

 

 怖い反面、なんだか楽しみな自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜。私は再びアルヴィンの布団に潜り込む。

 

 以前は足元に体を置いていたが、今回は大胆にアルヴィンの体に跨り、69の体位で行なう。

 

 布団の中を移動し、仰向けで眠るアルヴィンの体に跨り、自分の体をうつ伏せにして覆いかぶさる。

 

 本来ならばお互いの性器が顔付近に来るような体位なのだが、身長の差で私がアルヴィンのペニスを弄れる位置に顔を持ってくると、オマンコが胸の下辺りにきてしまい、アルヴィンの顔まではいかなかい。

 

 やはり私より少し大きいぐらいのエヴァでギリギリ、アルヴィンが体を少し起こして成立する体位なのに、エヴァよりも小さい私が相手の協力なしではできないか。

 

 まあ、こればっかりは仕方がない。

 

 いずれ体が成長してくればアリカのように、アルヴィンの顔にオマンコを押しつけながら、この体位を楽しむことができるだろう。

 

 私は両手でペニスを握り、愛撫を開始する。

 

 まずは口には入れずに、太い竿を握り、上下に扱く。

 

 少しだけ大きく、硬くなり始めたペニス。

 

 浮き出た太い血管の感触が何ともいえないが、愛撫を続ける。

 

 片手を回して玉袋を手で握って包み込み、手前に引くようにやさしくマッサージ。

 

 竿の裏側を指の腹で軽く、亀頭に向けて撫でていき、玉袋を弄っていた片手を離して竿を握る。

 

 亀頭を撫でていた手を開いて、掌の中央で亀頭を包みながら擦り、同時に竿を持った手で上下に扱く。

 

 私の愛撫が効いてきたのか、アルヴィンのペニスはうれしそうに脈動し、硬くなっていく。

 

「ん……、ぐ……」

 

 布団の外からもアルヴィンの気持ちよさそうな声が聞えてくる。

 

 ペニスの先端に触れている掌が、カウパーで汚れていく。

 

 手応えを感じた私は、さらに愛撫の手を激しくしていく。

 

 ああ……、すごく大きくなってる。

 

 すごく気持ちよさそうだ。

 

 私の手がアルヴィンを気持ちよくしてるのがよくわかる。

 

 思わず顔が緩んでしまう。

 

 以前は無表情だったと自覚がある私が、最近表情が豊かになってきたなと思っていたが、今の私の顔はものすごく緩んだ顔をしているだろう。

 

 胸の中から幸せな気持ちが溢れているのだから、当然だ。

 

「アルヴィン……」

 

 名前を呼んだことに反応したのか、ピクッとなるペニス。ふふふ……、すごく、幸せ。

 

 私は両手でペニスの竿を持って自分のほうへと軽く倒し、亀頭を口で咥え込む。

 

 亀頭の雁部分まで咥え、唇を引き締め、一旦吐き出す。

 

 私の唾液とカウパーで汚れた亀頭に舌を這わせて、再び咥え込んで、吐き出す。

 

 何度も繰り返して興奮させていく。

 

 少しずつアルヴィンの腰が動き出した。

 

 何度も亀頭まで入れられては吐き出されることに、じれったく感じたのか吐き出す瞬間に腰を進めて、無理矢理奥へ突っ込んでくる。

 

 私はそれを受け入れ、息苦しく感じながらも喉まで使ってペニスを扱く。

 

 普通の人間よりも並外れた身体能力を持っている私は、無呼吸でも5分は持つ。

 

 無呼吸状態のまま私は動きを止めて、喉をアルヴィンのオナホール代わりにさせる。

 

 ゆっくりと腰を上下に動かすアルヴィン。

 

 喉の奥までアルヴィンでいっぱいにされてこのまま気絶してしまいそうになる。

 

 体から力が抜けて、グボグボと喉を蹂躙されて……、あ、ぐぅ……。

 

 アルヴィンのが大きく……、もしかして射精が近い?

 

 ペニスはビクビクと震えて、波打ってる。

 

 まっ、て……。

 

 い、今されたら、マズい……。

 

 もう私、イッてるのに、これ以上気持ちよくされたら……。

 

 逃げようと両手をつこうとするけど、うまく力が入らない。

 

 ダメ……、逃げ、られない……。

 

 ――ビュルッ!

 

「――っ!」

 

 射精が始まったっ!

 

 喉を伝って、胃の中へ直接流し込まれる!

 

 ビュッ、ビュルル、ビュルルルル、ビュッ……。

 

 吐き出すことも出来ずに吐き出される大量の精液。

 

「ぐぶ……、ぐぶぅ……、む、むぅっ……!」

 

 息ができないっ!

 

 胃の中に吐き出された精液が暴れてる!

 

 ま、魔力がたくさん宿ってるみたいで……、体に染み込んで……、ううっ! 気持ちよすぎる!

 

 外からも中からもアルヴィンに包まれてるみたいで、もう……、意識が……。

 

 ……また、ニィに回収されるの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 …………ん。

 

「う……、うん……」 

 

 意識がゆっくりと浮上してくる。

 

 私……、寝てる?

 

 ……違う、気絶、してたんだ。

 

 アルヴィンのをフェラチオして、口の中に精液を吐き出されて……あれ?

 

 口の中に何かまだ入ってる?

 

 熱くて、硬くて……この形は、アルヴィンのペニス?

 

 味も、口の中にまだ精液の味が残ってる。

 

 気絶してからまだ時間が経ってないの? 

 

 とりあえず私はペニスから口を離して、周りを見る。

 

 まだ真っ暗だった。

 

 深夜で間違いないだろう。

 

 私は口から少し垂れてる精液を袖で……、そういえば服を着てなかったんだ。

 

 精液を指で拭い取った。

 

 強化された眼でそれを見つめてみる。

 

 うん、白くてブニブニ。匂いも独特。

 

 味は……、苦いけど美味しくないけど、おいしいと感じる。

 

 ちょっとクセになる大人の味というものなのかな?

 

 これが出たって事はアルヴィンが気持ちよくなったってことだから、私の目的は達成されたことになる。

 

 ゆっくりと充実感を味わいたいけど、それよりも早く離脱しないと。

 

 自分の唾液とカウパー、そして精液で汚れたペニスに舌を這わせて、お掃除フェラチオというものを行なう。

 

 すぐに硬くなってきたけど、射精させてあげる時間はない。

 

 尿道口に残った精液を吸い出し、お掃除を終えて起き上がる。

 

「……う」

 

 股に感じるヌメリ……。

 

 私の愛液だ。

 

 跨っていた箇所にあるアルヴィンの胸は、当然のごとく愛液で汚れていた。

 

 こっちも掃除しておかないと。

 

 私は一旦布団から出て、用意しておいた除菌シートを持ってくる。

 

 そして、慎重に布団を捲り、アルヴィンの胸についた愛液を拭い、掃除していく。

 

 洗浄の魔法はまだ覚えていないので、たいへんだ。ニィがいればすぐに済むけど、ここに着ていないということは、そこまで時間が経っていないということで、元々私がしなくてはいけないことだ。

 

 アルヴィンの体を一生懸命拭いていく。

 

 ……うん、綺麗になった。

 

 臭いは落ちたかな、と臭いを嗅いで、こちらも問題ない。

 

 あとは布団を元に戻して服を着て戻るだけだ。

 

 私は布団を元のようにかけなおして……。

 

「ん……」

 

 ――っ! 起きた!? い、いや……、起きてない。

 

 少しビックリしたけど、アルヴィンからは変わらず規則正しい寝息が聞え始め、目覚めてはいないようだった。

 

「ふぅ……」

 

 小さく息を吐いて緊張を解す。

 

 改めて布団をかけなおす。

 

 よし、あとは服を……。

 

 椅子にかけておいた服に手をかけようとしたけど、なぜかアルヴィンの顔から視線を離せなかった。

 

 ……そういえば、ペニスにキスしたけど、口はまだだ。

 

 唇同士を重ねるの初めて。ファーストキス、してない。

 

 …………。

 

 最後にキス、ぐらい……いいよね?

 

 私はもう一度ベッドに上がった。

 

 枕元に立って、髪がかからないように片手で抑えて唇を重ねる。

 

 ――っ。

 

 アルヴィンの熱を唇から感じる。距離が、存在が近い。

 

 これがキス。

 

 フェラチオや抱いてもらうのよりも穏やかで、安心する。

 

 私はそのままアルヴィンとのキスを楽しみ、……興味が湧いてしまった。

 

 フレンチキス、ディープキス。

 

 キスのもっと先。

 

 ニィがすごく気持ちいいと言っていた特別なキス。

 

 ここまできたら、試すしかないよね?

 

 私はゆっくりと唇を開けて、舌を伸ばす。

 

 伸ばした舌でアルヴィンの唇を舐めて……、ゾワッ……。

 

 首筋が震えた。

 

 なに、今の?

 

 ゾクゾクした。

 

 すごく、気持ちよくて危うくて、惹き込まれた。

 

 も、もう一度……。

 

 舌で唇を舐める。

 

 今度もゾクゾクしたけど、さっきよりも弱い。

 

 さっきのはもっとすごかった。

 

 私は舌を伸ばして唇の中へと侵入させる。

 

「――っ!」

 

 んんっ、これだ。この感じ。

 

 すごくゾワゾワして気持ちいい。

 

 もっと、もっと奥に入れたらどうなるんだろう?

 

 私は、自身が完全に我を失っていることにも気づかず、溺れていった。

 

 舌同士を絡めることで起こる快楽や、他人の歯茎や歯を舐めるという行為に飲まれていった。

 

 だから、気づいたときには遅かった。

 

 気づいたあとも、逃げる気にすらなれなかった。

 

 私のキスで、情欲を駆り立てられたアルヴィンが動き始める。

 

 されるがままに攻められるだけだったのが一変して、私の口内を蹂躙し始める。

 

 口内を這い回る他人の舌の感触と熱に、意識を飛ばしかける。

 

 最後の抵抗と顔を離そうとするが、アルヴィンの片腕が首に回されたために動けない。

 

 ああ……、もうダメだ……。

 

 その後、口内を気の済むまで蹂躙しつくされた私はベッドへと崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……、んっ。だ、ダメ……、そんなに吸っても、何もでない、から……」

 

 私の胸に顔を埋め、乳首に吸いついてくるアルヴィン。

 

 口内を蹂躙され、うつ伏せになった私は、完全に体からは力が抜けていた。

 

 そんな私に、まだ意識のないアルヴィンは容赦なく愛撫を開始してきたのだ。

 

 うつ伏せだった私を仰向けにして布団の中へと引きずりこみ、上から覆いかぶさって、首筋から胸へと舐められ、今は乳首を吸われていた。

 

 乳輪に沿うように、舌先を這わされ、ワザと聞えるようにいやらしい音を響かせられながら、乳首に吸いつかれる。

 

 私はそれにアルヴィンの頭を抱きしめて耐えるけど、アルヴィンはさらに両手を使い始め、私の理性を追いつめていく。

 

 両方の脇の下に手を差し込まれ、横側から内側に掴まれ、親指で胸を押される。

 

 少しずつ位置がずらされ、乳首など正面からの刺激だけではなく、側面からも刺激を与えられる。

 

「――んっ! んんっ! ……くぅっ」

 

 だ、ダメ! 声を出しちゃ! 本当に起きちゃう!

 

 必死で歯を食いしばるけど、アルヴィンの愛撫がその全てを許さない。

 

 警戒すると弱くなり、油断したところで激しく愛撫され、何がなんだか意識が翻弄されておかしくなっていき、受け入れる以外の選択肢がなくなっていくのだ。

 

「はぁ……、はぁ……、――っ!」

 

 アルヴィンの両手が私の太ももの下に差し込まれる! そのまま内側に片手を入れられて……!

 

「だ、ダメ……!」

 

 アルヴィンの指がオマンコに向かってることがわかる。

 

「まだ……、処女、だから……っ!」

 

 処女膜はペニスで……!

 

 強くアルヴィンの頭を抱きしめながら中に入れられないことを願う。

 

 だけど、アルヴィンの指は私のスジを撫でて、開き、なかに触れてくる。

 

「――っ!」

 

 クリトリスに指の腹が当たって体が震える。電撃のような、ものすごい快楽が送られ、一瞬で意識が飛んだ。

 

「くっ……」

 

 だけど、意識を飛ばしている暇はない。アルヴィンの手が尿道口から膣口へと向っているのだ。

 

 私はヒザを閉じようと力を入れるが、すでに手は膣口を捉えていた。

 

 指がズブブ……、と侵入してくる。

 

 ――っ!

 

 痛っ、その先はダメっ!

 

 泣きそうになりながら身を固める私。

 

 もうダメかと思っていたが……、指はそれ以上挿入されない。

 

 あれ? 助かった?

 

「ん~……?」

 

 アルヴィンの寝息? に疑問の色が含まれた?

 

 不思議に思っていると、アルヴィンの顔が胸から離された。腕に力を入れ忘れていたので、アルヴィンはそのまま体を起こして、布団の中へと消えていった。

 

 何を……?

 

「――きゃっ!?」

 

 下へ消えていったと呆けていたら、いきなり股を大きく開かされた。

 

 大きく開いた股の間にはおそらくアルヴィンが。

 

 太ももの内側に両手を添えられて――ペロッ。

 

「――ひゃっ!」

 

 思わず悲鳴が漏れる。

 

「あうぅぅ……、や、あ……ん」

 

 表面がザラついたヌメヌメの舌がオマンコを這い回る。

 

 アルヴィンにオマンコ舐められてるの?

 

「くっ、んんっ! はぁはぁ……」

 

 オマンコを這い回る舌が、自身のオマンコの形を脳内に映し、どこが舐められているのかを理解させる。

 

 尿道口、膣口、処女膜の手前、中だけでなく、スジの内側も外側も舐められ、包皮に包まれたクリトリスも優しく掃除するように舐められる。

 

「はぁはぁ……、ダメだよ……。そんなところ、汚い、から……」

 

 そうつぶやいてヒザを閉じようとするけど、閉じられない。

 

 体ごと股の間に入れられて、完全に捕食される体勢となっている。

 

 私に出来る事は耐えることのみだが、耐えることすらできない。

 

 もうすでに限界がきていたのだ。

 

「うっ……、あううっ! くぅぅ……」

 

 私の限界を悟ってか、オマンコに顔全体を押し付けられて、オマンコにしゃぶりつかれた。

 

 ぐちゅぐちゅと愛液を啜られたり、舐められたりとされる度にビクビクッと体が跳ねる。

 

 さらに開いた両手が胸へと伸ばされて乳首を摘ままれたり、捏ねられたり、胸全体を触れるか触れないかの位置で撫でられ、勃起した乳首が虐められ、とうとう私は限界を超えて、絶頂を迎えた。

 

「~~~~っ!」

 

 声にならない悲鳴が漏れる。慌てて両手で口を押さえるが、力が上手く入らない。

 

 背中が、体全体が弓なりに反って、ビクッ、ビクッと体が跳ねる。

 

 ビュッ! ビュビュッ!

 

 水鉄砲のようにオマンコから何かが噴いているのを感じる。

 

 アルヴィンの喉がなるのを感じる。

 

 様々なことを感じるが、1番感じているのは、充実感だった。

 

 自分という器がアルヴィンで満たされている、充実している。

 

 幸せな感情がいっぱいで、体から力が抜けていく感じも最高に気分がよかった。

 

 尿道口も緩んでおそらく漏らしているだろうが、今はどうでもよかった。

 

 今は、この充実感を長く味わいたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。……なんでアスナが裸で俺のベッドにいるんだ?」

 

「スゥ……、スゥ……」

 

「しかも、ものすごく幸せそうに寝てるし……。最近ベッドに潜り込んで着ていたのはエヴァじゃなくて、実はアスナだったのか?」

 

「ふふふ……」

 

「……とりあえず、ベッドの惨状を処理をして、寝なおしたあとで考えるか……。あ~、服も着せとかないと」

 

「アル……、大好き」

 

「…………。……はぁ。俺も大好きだよ、アスナ」

 

「ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、ニィ。もっとこっちによっていいんだぞ」

 

「うん。ありがとう、エヴァ(まさかエヴァに廊下で発見されるとは)」

 

「ハハハ、なあに。私はおまえの義母でもあるのだからな! 添い寝ぐらいいつでもやってやるさ」

 

「うん(アルヴィンの部屋から遠ざけるために、添い寝したいって言い出したけど……)」

 

「じゃあ、寝るか」

 

「うん。おやすみ、エヴァ」

 

「ああ、おやすみ、ニィ」

 

「……(これはこれで、うれしい。アスナも気になるけど、大丈夫、だよね。特訓したし)」



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第21話 幼女アスナ京都へ

 早朝。小鳥の鳴き声と窓から差し込む朝日の光で目覚める。

 

 目覚めた私は、いつも通り隣を確認して、誰かいたら目覚まし時計の音を……。

 

 …………。

 

 アルヴィン?

 

 私の隣に寝ていたのは裸ではなく、パジャマを着て寝てるアルヴィンだった。

 

 なんでアルヴィンが隣で寝てるの?

 

 いつもはニィのはずなのに。

 

 部屋はアルヴィンの部屋みたいだし、私が潜り込んだの?

 

 ……あれ?

 

 潜り込む?

 

 私、昨日は夜這いかけなかったけ?

 

 ……もしかして、ニィに回収されなかった?

 

 じゃあ、今の私はなんでパジャマを着てるの?

 

 昨日は、脱いでからは何も着てなかったはず。

 

 脱いでからそのあと自分で着替えた記憶もない。

 

 じゃあ、ニィが私を着替えさせた?

 

 いや、それはない。着替えさせるぐらいなら私を回収してるはず。

 

 それに、今はパジャマ着てるけど、昨日は確かにアルヴィンも裸だった。

 

 いつも裸で寝てるアルヴィンがパジャマを着るときは、旅行先の旅館で浴衣を着たときと、私と一緒に寝るときぐらい。

 

 ニィがアルヴィンと私にパジャマを着せて……、というのはあり得ない。

 

 いくらなんでも着替えさせれば気づくし、起きる。

 

 つまり、アルヴィンが自分で着替えたとしか考えられない。

 

 その場合、色々と説明がつく。

 

 昨日私が気絶したあとに起きて、アルヴィンが私に気づき、パジャマを着せて、自分もパジャマを着て寝たのだ。

 

 おそらくそれが真相。

 

 だけど、これが真相だとすると、私がしたことを全部アルヴィンに知られたことに……。

 

 …………。

 

 ……どうしよう。

 

 こういう場合、どういう対処が有効だろうか?

 

 誤魔化す。白を切る。

 

 ……おそらく無理。動揺など顔に出にくいけど、ウソつくのは苦手。

 

 正直に話す。気持ちを伝える。

 

 1番有効そうだけど、かなり恥ずかしい。口下手な私では空回りして絶対無理。

 

 この場から逃走。ニィと口裏を合わせて力技。

 

 ……すごく魅力的な方法だけど、無理。結局問題を後回しにしただけ。

 

 …………。

 

 全ての選択肢を選びたくはないけど、こうなってしまえばもういっそのこと……。

 

 突っ走るしかない、よね?

 

 ニィに聞いたけど、アリカも最初は勢いに任せてだったそうだし、テオも最初は勘違いから始まって、勢いでそのままセックスしたそうだから、私が勢いでこのままいっても大丈夫なはず。

 

 エヴァやニィはセックスするまで数年かかったそうだけど、それはエヴァは長寿族だからだし、ニィは計画して数年自分で待ったんだから、私には関係ない。

 

 うん。

 

 だから私も勢いのまま進んでいいはず。

 

 そうと決まれば、パジャマを脱ぐ。

 

 上着のボタンを外して、ズボンとパンツを脱いで、アルヴィンのズボンとパンツを脱がす。

 

 まだ、アルヴィンのはふにゃとしてるけど、すぐに硬くなると思うから、ヒザのほうに跨る。

 

 ゆっくりと、やさしく片手でペニスに触れて、撫でる。

 

 竿の部分を掌で撫でて、掴んで上下に扱く。

 

 少しだけ硬くなり始めた。

 

 今度は雁の部分に指を這わせる。

 

 皮との間、笠が開いた部分を指先でなぞり、掌の中央で雁首を上から包む。

 

 掌にじゅっとカウパーが分泌され始めたのを感じる。

 

 そろそろ、こっちも準備しておかないと。

 

 私はペニスの愛撫を続けながら、自分のオマンコに手をもっていく。

 

 ニィみたいに生えてない、産毛すら生えてない、つるつるの下、ピッタリと閉じたオマンコに触れる。

 

「……んっ、やっぱりまだ濡れてない」

 

 中のほうから少しだけ愛液が染み出してきてるけど、全然足りない。

 

 体がエヴァよりも子供な私の場合、奥までじっとりと濡らして解さないと、アルヴィンのは絶対に入らないから、もっと濡らさないといけないのに。

 

 どうすればもっと濡れるんだろう?

 

 昨日は自分でも驚くぐらい濡れていたのに……。

 

 昨日みたいにアルヴィンの体にオマンコをすりつければ濡れるのかな?

 

「すりつける……、あ、そうだ」

 

 私は跨った状態で立ち上がり、アルヴィンのペニスの真上にオマンコをもってくる。

 

 そのまま片手を伸ばしてペニスを固定して、腰を下ろす。

 

 オマンコの割れ目に亀頭を挟みながら、上へ滑らせ、腰を下ろす。

 

 ペニスをアルヴィンのお腹に向けて少し反らすように、体重をかけすぎないようにヒザ立ちになってある程度の位置で止める。

 

 丁度オマンコの割れ目にペニスの竿を挟んで跨っているような状態だ。

 

「このまま、前後に動く……」

 

 オマンコの割れ目でペニスを磨くみたいに、擦る。

 

 素股というものらしい。

 

「あ、う……」

 

 遊びみたいなものだと教えられていたけど、これは……、なかなか……。

 

 ……ドキドキする。

 

 オマンコの内側にアルヴィンのペニスが当たるというのは、本当にドキドキする。

 

 体のすぐ内側にアルヴィンの熱を感じて、体を前後に動かして、オマンコの割れ目に挟んだままペニスを擦ると、私の体から大量に染み出し始めた愛液がペニスを汚し、まるで……。

 

 そう、まるで……。

 

「アルヴィンにマーキングしてるみたい……」

 

 自然と口の端が持ち上がり、笑みがこぼれてしまう。

 

 そのまま私は夢中になって擦り続ける。

 

 オマンコから送られてくる快楽では足りなくなると、シャツの下から手を入れて乳首を弄り、もう片方の手でクリトリスをやさしく捏ねる。

 

「あっ……。はぁはぁ……、くっ、んんっ」

 

 エッチな声が漏れそうになるのを耐えるのも興奮する。

 

 アルヴィンが起きてしまわないかビクビクするのも興奮する。

 

 接触してる部分から送られてくる刺激に興奮する。

 

 ああ、ドキドキが収まらない。

 

 息が荒くなって、体が熱くなって、アルヴィンが欲しくてたまらない。

 

 私の今の状態はおそらく発情。

 

 私はアルヴィンに発情してる。

 

「ふふ……」

 

 自覚するとうれしくなった。

 

 そして、もっと欲しくなった。

 

 ゆっくりと立ち上がる。

 

 ペニスを片手で固定して、先端を膣口に合わせて、ゆっくりと腰を下ろしていく。

 

「……むっ」

 

 全然入らない。

 

 上から乗るように押してみるけど、入らない。

 

 膣口は広がっているような気もするけど、入らない。

 

 もっと股を広げてぐりぐりと押し込んでみるけど、ツルッと滑って入らない。

 

「むぅ~……」

 

 やっぱり今の私では受け入れるのは無理なのだろうか?

 

 私は膣口に亀頭の先端を合わせて、考える。

 

 なんで私よりも少し大きいぐらいのエヴァの中にコレが入ったんだろうと。

 

 ペニスが萎えないように、亀頭部分を割れ目に挟んで擦りながら、考える。

 

 ――コンコン。

 

 突然、部屋の扉がノックされた。

 

「――っ!」

 

 誰か着たっ!?

 

 急いで隠れようとするけど間に合わず、ドアは開いていく。

 

「アルヴィン。起きておる……、か……」

 

 ドアを開けたのはアリカだった。

 

 アリカは途中で言葉を止めて、無言になると、私を見て、アルヴィンを見て、そのままゆっくりとドアを閉めた。

 

 おそらくドアの向こう側では、割れた眉毛の中央、眉間辺りを指で揉んでいるころだろう。

 

 私は今のうちに立ち上がり、最後のチャンスにかけて再度挿入を行なう。

 

 ――ガチャ。

 

 あ、もう戻ってきた。

 

「な、ななな何をやっておるんじゃぁぁぁぁああああ~~!」

 

 アリカの叫びと供に、私の初セックスは失敗に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルヴィンとの初セックスを阻止されて3日後。私はアリカとエヴァに挟まれて、一緒にベッドで寝ていた。

 

 この2人と一緒に寝ている理由は、性教育の再教育が主な原因。

 

 アルヴィンに夜這いしたことを叱られたあと、もう一度性教育を、論理とか難しいことも含めて私に教えられることに決まり、最近夜遅くまで教えられているから、そのまま一緒に寝ているのだ。

 

 正直、勉強は面倒だけど、アリカとエヴァと一緒に寝られるのはいい。

 

 それに先日、現場を押さえられ、本格的に叱られる前に、ニィと打ち合わせして、アリカとエヴァを言い包め……、いや、説得することに私は成功していたのだ。

 

 体にかかっている魔法が解けて、再び体が成長し始め、アルヴィンをきちんと受け入れられる女の体になったらという条件がついているが、将来的に私はアルヴィンとセックスしていいと許された。アルヴィンも悪魔で、人間とは少し価値観を持っているからか、こちらはあっさりと許可が下りた。

 

 まあ、どちらにしろ今のこの体ではアルヴィンのを受け入れられないと先日わかったことだし、今はゆっくりと魔法を解いて、体が成長してから再度リベンジしようと思う。

 

 うん。今は素股とか、フェラチオとか、アルヴィンに愛撫してもらったり、裸で抱き合うだけで我慢して、将来肉体が熟れ始めた頃においしくいただいてもらうのだ。

 

 ふふふふ……、本当に将来が楽しみだ。

 

「く……、ん……」

 

 おっと、そういえば今はエヴァに悪戯している途中だった。

 

 口に含んだ突起に強く吸いつく。

 

「あっ……、こ、こら……、そんなに吸うんじゃ……、くっ……」

 

 ぷるぷると震えるエヴァ。口を離すと唾液でコーティングされたピンク色が……。うん、かわいいコリコリの乳首。

 

「そ、それは赤ちゃんので、あ、アルヴィンのじゃ……、ひゃぅっ」

 

 もう一度含んで舐めると、ビクッとエヴァの体が跳ねた。起きるかな?

 

 私は寝返りをうってアリカに抱きつく。

 

 すると、その直後にエヴァがベッドから上半身を持上げた。

 

「――っ。はぁ……はぁ……」

 

 ちょっと艶のある息を吐いてるエヴァ。私はアリカのほうに向けていた体を、寝返りをうちながらエヴァのほうへ戻す。

 

 そして、目を擦りながら上半身を起こす。

 

 さらに、キャミソールみたいな薄い下着の胸部分に手で掴んでいるエヴァにつぶやく。

 

「エヴァ? どうしたの?」

 

「――っ。ああ、すまん。起こしてしまったか」

 

 エヴァはそう言って私の頭を撫でる。……本当に薄い下着。乳首が起ってるのが見える。この脇の部分が緩いから乳首に直接吸いつけるんだよね。

 

「ん? どうかしたか?」

 

「なんでもないよ」

 

 マズイマズイ。乳首見すぎちゃった。

 

「まだ眠いから寝るね。おやすみ、エヴァ」

 

「ああ、すまないな。起こしたみたいで。――おやすみ、アスナ」

 

「うん、別にいいよ」

 

 そう言って私はもう一度ベッドに体を預けて目を瞑る。エヴァって寝るときアルヴィンと同じで完全に無防備だから悪戯しやすいんだよね。

 

 それに、こういうとき表情が出にくいと便利だよね。短い会話なら誤魔化しやすいし。

 

「スゥ……、スゥ……」

 

 と、寝息を立てる。

 

 もう遅いので、今度は完全にゆっくりと意識を沈めていく。

 

 …………。

 

「くっ……胸が、張る? なぜだ? 私はまだ初潮さえきていないというのに……。まさか、母性に目覚めたというのか?」 

 

 ……おやすみ、エヴァ。

 

「いや、だが……。――ん? 乳首の先端が湿ってる? 母乳、なのか?」

 

「ん~……、む? エヴァ、何を夜中にぶつぶつとつぶやいておるのじゃ?」

 

「……アリカ」

 

「どうしたのじゃ? 胸を見つめて」

 

「じ、実は……、わ、私の胸から母乳が出そうなんだ」

 

「?」

 

「ここ数日、夜中に胸が張って目覚めることが多かったんだが……。今回目覚めてみると、む、胸が湿っていて……」

 

「? 何を言っておるのじゃ?」

 

「だっ、だから母乳が……」

 

「む~……? アルヴィンに吸われすぎてとうとう出るようになったと?」

 

「――っ!? 吸われすぎたからでるなんてあるわけがないだろうっ」

 

「じゃが、それ以外考えられぬしのぅ」

 

「に、妊娠もしていないのに母乳を出すなんて、そんなことあるわけが……。いや、だが、普通の人間でも母乳が出ると聞いたことが……。だが、この胸から母乳なんて……」

 

「そうじゃなぁ~。ほとんど絶壁の乳から母乳なんてでるわけないか~」

 

「なっ! き、貴様っ」

 

「もう夜遅いし、アスナも寝ておるのじゃから、そろそろ布団に入るのじゃ~」

 

「くっ。…………。……それも、そうだな。明日……、明日調べれば……」

 

「うむ。あのバストアップ用のカップで吸えばわかるじゃろぅ」

 

「――っ!? あ、アリカ……、お、おま……、まさか、部屋に隠してたアレを……っ!」

 

「心配せんでもよいのじゃ~。誰にも喋っておらぬよ~。吸引式のバストサイズアップ器具のことなど~」

 

「や、やっぱり知っているじゃないか~! ――っ。それをおまえが知っているということは、ま、まさか……」

 

「ぬ~? さすがに一緒においてあった成長日誌というノートなど読んでおらぬぞ~」

 

「――なっ!?」

 

「ずっと1mm2mm伸びたり減ったりで成長しておるのか、しておらぬのかわからないしの~。備考に書かれてる文章など泣けてくるしの~。読んでなどおらぬよ~。大丈夫。大丈夫じゃ、例えずっと掌サイズにも届かない乳でものぅ」

 

「…………」

 

「エヴァ?」

 

「…………」

 

「む? やっと寝おったのか? それなら妾も寝る……かのぅ……」

 

「…………」

 

「スゥ……スゥ……」

 

「あは……、あはははは………、あはははははは……。…………寝るか」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界に広がるのは、京都の古き良き日本の風景。

 

 私は京都旅行に訪れていた。

 

 今は最初の目的地である清水寺からの景色を堪能しているところ。

 

「ふははははっ! やはりいつ着ても清水寺は最高だなぁ! ほら、あの紅葉など素晴らしいだろう、テオドラ!」

 

「うむっ! そうじゃな! この日本独特の風情溢れる京の景色は最高なのじゃ~!」

 

 ……特にエヴァとテオが堪能してる。

 

 本当に、エヴァなんて新幹線に乗る前から、朝起きる前から何度も観光雑誌を開いたりしてうずうずしてて、京都に着くと、いつもの大魔法を撃ったあとに「これが『闇の福音』の力だー!」って高笑いするときより、ハイテンションだった。

 

 テオのほうも、久々に魔法世界で休暇が取れたから京都旅行に同行することができたけど、ハイテンションのエヴァと一緒になって騒ぐから、ちょっと周りの目が辛い……。

 

 別にテオと一緒が嫌という訳でも、むしろうれしいのだけど……。周りの目が妙に温かくて……、こっちにまで生暖かい視線を向けられて、「お嬢ちゃんも騒がないの? いいんだよ。子供なんだし。声が少し大きいぐらいで、マナーもきちんと守ってるんだしね」みたいな言葉を言われてるみたいで、辛い……。うん。本当に大丈夫だよ、お婆ちゃん。私は静かに観光するタイプだから。恥ずかしがってるわけじゃないよ。

 

 私の隣にいるアリカはというと、周りの視線を軽く受け流してた。

 

 さすが元女王というか、集まってくる様々な視線を華麗にかわして京都の町並みを楽しんでいた。

 

 アルヴィンは……、私の下。

 

 肩車してもらってる。

 

 顔を覗いて見ると、エヴァやテオ越しに京都を楽しんでいた。でも、街を眺めている視線はどこか、何かを懐かしんでいるようだった。

 

 そういえばアルヴィンって数百年も前から京都に頻繁に着てるんだったね。神鳴流って剣術の開祖とか、陰陽師の開祖とかと知り合いで、京都のどこかに九尾と一緒に妖怪横丁作ったらしいし。

 

 まあ、正直昔の絵巻とか書にアルヴィンのあの黒い龍形態がよく描かれてるのには驚いたけど。

 

 関西呪術協会でもアルヴィンはものすごいVIP待遇だし。来ると知らせれば、ホテルからなんでもあっちが喜んで用意してくれる。まあ、関西呪術協会の本山に泊まってくれませんかっていうお誘いが一番多いね。

 

 その誘いに熱心な理由が、アルヴィンが気に入った相手に力の手ほどきをするからだったけ?

 

 でも、ほとんどの爺ちゃんとか婆ちゃんは、仏様とか神仏扱いみたいだよね。手を合わせて頭下げてたし。お神酒とかあげてたし。

 

 アルヴィンも人間形態じゃアレだからって黒い龍形態で相手するから、益々……。神棚に豪華な座布団(明らかに黒い龍の時用)とか、お神酒とか、小さな神殿とかが用意されてたときは……。うん、喋る置物と化してたね。

 

「次は金閣寺と銀閣寺をハシゴだな! 行くぞー!」

 

「おー!」

 

 エヴァとテオがはしゃぎながらバス停を目指しながら歩いていく。

 

 あ。そういえば、エヴァも京都じゃ妖怪扱いなんだっけ? 西洋妖怪っていう。でもあれ? 京都の巫女さんにアルヴィンを守護する姫巫女って教えられたような……? 関西呪術協会に置いてあった文献には良きライバルとか書かれてたけど。

 

 む~……。そういえば関西呪術協会で、魔法世界の戦争に行った人たちがいたっけ。

 

 確か、魔法世界のメガロメセンブリアが関東魔法協会に要請して、それでも人員が足りないからって関西呪術協会にも関東魔法協会の理事で、元京都の名家出身である近衛(このえ) 近右衛門(このえもん)を通して要請があって……。

 

 最初は陰陽師や神鳴流剣士たちも『我々の技は悪霊や人に害をなす、人外に振るうもので戦争のために使うものではない』って、要請を跳ね返していたみたいだけど、若い連中? だっけ。

 

 その若い連中が魔法世界で戦争が揮発して武者修行に出かけて、有名な傭兵団『紅き翼』の主格メンバーになって魔法世界に名を轟かせていた青山(あおやま) 詠春(えいしゅん)に感化されて、武者修行と称して名をあげるために関東魔法協会を通して魔法世界の戦争へ参加。そこから戦火の拡大と供に、戦争に参加したくなかった人たちも戦争に参加せざる終えなかった。

 

 とかいう話があったはず。

 

 それに、魔法世界の戦争で戦死した人たちに対して、魔法世界のほうから保障も何もなく、『偉大なる魔法使い』を目指す者なら戦争への無償参加は当然の義務とか  M  M  (メガロメセンブリア)の元老院に言われて、一方的に話を終わらせられた、って関西呪術協会の元老さんたちがもらしてた。

 

 関西呪術協会の元老さんたちは、自ら進んで戦争に参加して行った若い連中は自業自得だけど、無理矢理、戦争に参加せざる終えなかった者たちの家族には……って、アルヴィンに相談して、最終的には莫大な財産を溜め込んでいたアルヴィンが戦災者に対して資金面で色々と保障したんだったよね。身内同士で遺恨が残らないようにって若い連中の家族のほうも含めて全員。

 

 そんな背景もプラスして、関西呪術協会はアルヴィンには頭が上がらないし、足を向けて寝れないって元老さんたちが話してた。

 

 だから、アルヴィンの身内であるエヴァにもよくしてあげようって時々強請ってくる無茶なお願い事も出きるだけ叶えてあげるのかな?

 

 あのお酒欲しいとか、あの着物の生地くれだとか、お寺の本殿のなか(本来立ち入り禁止)に入れて欲しいとかエヴァに言われても、元老さんたちは叶えてあげるんだよね。……たまにエヴァにペロペロキャンディー渡して舐めるとこ写真に撮ったり、肩車してあげようとするのは理由がわからないけど。

 

 そういえば、戦災者のなかにアルヴィンが鍛えたりしてる子がいたっけ。メガネの、おっちょこちょいの、なぜかゲームの中ボス臭がする子。

 

 名前は確か……、あま……なんとか。

 

「どうかしたか、アスナ」

 

「ん」

 

 アルヴィンに話しかけられて起きる(・・・)

 

「疲れたか?」

 

「違うよ。ちょっと考え事してただけ」

 

 私はそうつぶやいてアルヴィンの頭を寄りかかる。クセのある髪がくすぐったい。

 

 そのまま景色を眺めながら、訊ねる。

 

「そういえば、アルヴィン。今日はどこに泊まるの?」

 

「今日は木ノ葉のところだよ」

 

「木ノ葉のところか」

 

 近衛(このえ) 木ノ葉(このは)。絵に書いたような京都美人で、あの近衛 近右衛門の実の娘。関西呪術協会を脱退して関東魔法協会に所属した父親と半絶縁状態で、関西呪術協会に所属してる高位の陰陽術師。アルヴィンが手ほどきした人間の一人。さっきの中ボスの子の直接師匠でもある。

 

 おっとり系の美人で、実は少し腹黒。その少し腹黒なところはお爺さんに似てるけど……。

 

「あんまり見た目は似てないよね。ぬらりひょんのお爺さんに」

 

 フォフォフォって笑ったりしないし、ぬらりひょんみたいな頭でもないし。

 

「そうだね。おそらく母親の遺伝子が強かったんだろうなぁ」

 

 そうつぶやきながら苦笑するアルヴィン。

 

「おーい! 早く来ないか! バスが行ってしまうだろう!」

 

「このバスを逃すと十五分は待たぬといけぬのじゃぞ~!」

 

 エヴァとニィが大声で呼ぶ声が聞えてきた。旅行先、特に京都では転移魔法を使うって発想はないんだよね、2人とも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 関西呪術協会、総本山近くに建てられたお屋敷。そこが近衛木ノ葉の自宅。

 

 京都らしい昔ながらの日本家屋で、エヴァもお気に入りの家。

 

 現在は皆で食卓を囲んで夕飯を楽しんでいる最中だ。

 

 いつもとは違う、足の短いテーブルに上がってるのは、刺身や天ぷら、京野菜や漬け物といった和食を中心としたメニューで、出されているお酒の味も質も一級品だからエヴァがまたまたハイテンションになってた。

 

 まあ、私も久々にかなり手の込んだ和食を食べることができてテンションが上がってる。やっぱり漬け物は京都だよね。奈良もいいけどさ。

 

 隣に座ってるニィも「漬け物うまうま」ってつぶやきながら食べてる。

 

 もう片方の隣に座ってるテオは、焼酎をちびちびと飲みながら甘エビ食べまくってた。

 

 アルヴィンやアリカ、木ノ葉たちは、アルヴィンを真ん中に、それぞれお酌し合いながら料理を楽しんでた。

 

 ちなみに3人を含めて、今は全員着物を着てる。

 

 だからなのか、着物を着込んでる美女の2人を両隣に侍らせてるアルヴィンは、さながら時代劇のテレビに出てくる悪代官みたいだった。

 

 そういえば、このあとお風呂に入って……、今夜は私、テオ、ニィで一部屋。エヴァとアリカで一部屋という部屋割で寝るんだったよね?

 

 アルヴィンは木ノ葉のところで寝るそうだし。今夜は木ノ葉とするみたい。

 

 ニィ曰く、木ノ葉は床上手、甘え上手らしいから、

 

「今夜は勉強だね」

 

「うむ。ビデオにも撮っておくから帰ってからも復習しよう」

 

「うん」

 

 黒髪ロングストレートの和風美人のエッチなシーンは本当に貴重だし、木ノ葉のテクニックはすごいから本当に勉強になる。

 

 ん~……、だからひとりでもいいんだけど、こうやって3人並んでいるところ見ると、金髪と黒髪の美女との3Pも見てみたいかも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法世界の大戦が終わって早3年。

 

 僕たち『紅き翼』は相変わらず魔法世界の国々を回って、大戦によって引き起こされた内戦の鎮圧や『完全なる世界』の残党狩りなどをしています。

 

 内戦の鎮圧なんかをしていると、ナギさんが最終決戦のときに造物主から言われたという、『武の英雄には未来が造ることはできない』という言葉が身に染みますね。

 

 僕たちには所詮、武力をもってでしか内戦を止めるしかできないのかって。

 

 なんとなく、1年ほど前にクルトが『紅き翼』から抜けて、政治家になる道を選んだことが理解できました。彼は武ではなく、知の英雄になるつもりなのでしょう。昔から頭もよくて、アリカ様以外のことに対しては視野も広かったですからね。

 

 一方の僕はというと、『紅き翼』に所属したまま頑張ろうと思ってます。政治家は性に合いませんしね。

 

 そうそう、まだ師匠であるガトウさんには敵いませんが、これでも僕強くなったんですよ。

 

 無音拳も覚えて、アルヴィンさんから教えてもらった六式も使えるようになりましたし、今は究極技法である咸卦法の修行を始めました。

 

 でも、さすが究極技法というか、咸卦法の習得は難しく、修行は全然進んでいません。

 

 今日は旧世界のある場所で修行しているんですが、全くできないんですよね。これが。

 

 自分を無にするって難しいです。

 

「クソッ! 西の都ってのはどこにあんだよ! 魔法世界にもなかったし、ブルマってへんな名前で青い髪の女もいねえし、どうなってやがんだ!」

 

 …………。……本当に、無にするのって難しいです。

 

 いつものようにアルヴィンボールが見つからずに苛立ってるナギさん。

 

 詠春さんはいつものように、ナギさんにやさしく声をかけて宥める。

 

「ナギ。あくまでアルヴィンボールと漫画のボールは違うんだから、そんな都合よくレーダーを作ってる女性がいるはずないだろ」

 

 詠春さんそうは言いますけど、元々はあなたが持ってきた情報ですよね? 旧世界の漫画に出てくるボールに、アルヴィンボールが似てるって。

 

「だがよ、魔法世界中を1年以上も探し回ってまだ1個しか見つかってねぇんだぞ!? レーダーでも使って探さねぇといつまで経っても見つからねえじゃねぇか!」

 

 本当に、『完全なる世界』の残党狩りや内戦の鎮圧と平行して探し回ってましたもんね、『紅い翼』の全員で。

 

 それで最初の1個目を見つけたときなんて、涙を流して安心したのを今でも覚えてますよ。ちゃんと使用したボールを世界に散らしていたんだって。最悪、あのアルヴィンボールは黒龍さまのウソで、実際にはボールは散らしておらず、見つかりもしないボールを永遠に捜させられるのかって、思っていたから……。

 

 ――と、ナギさんの腕に巻きつけられた魔法書からアルビレオさんが現れた。ちなみに魔法書がアルビレオさんの本体で、人間の姿は実体化させた、言わば幻影らしい。

 

「魔法世界と旧世界に散らばってるアルヴィンボールはあと6つ……。捜索や探索用のアーティファクト所持者でもボールの在り処を特定することをできないのは痛いですね」

 

 全くそうですけど、苦笑しながら遠くを見つめてつぶやかないでくださいよ……。益々心が乱れて自分を無にできなくなるじゃないですか……。

 

 それに実体化していいんですか? 旧世界での実体化はキツいからって、僕にアールフェンクスシリーズの足止めさせてませんでしたっけ? 僕、なにげに死に掛けたんですけど……。

 

 ふと、ニッコリ笑顔をこちらに向けるアルビレオさん。

 

「どうかしましたか、タカミチくん」

 

「いえ、別に……。なんでもありませんよ」

 

 僕は目を合わせる前に、サッと目を逸らし、両手それぞれに発生させた魔力と気を見つめる。

 

 クッ……、どうしても上手くいかないな……。

 

「少しは上達したか、タカミチ」

 

「――っ」

 

 急いで声がかけられたほうに顔を向けると、白いスーツにメガネ、咥えタバコというスタイルのガトウさんが立っていた。

 

 僕は立ち上がってガトウさんの下へ向う。

 

「ガトウさん、用事のほうはもう終わったんですか?」

 

 僕の問いにガトウさんは短く「まあな」と答えたあと、タバコを携帯灰皿へ入れた。あれ? なんとなく汗……かいてる?

 

 僕と同じく、ガトウさんのいつもと違う雰囲気に何かを察したのか、ナギさんが訊く(聞き出す?)前に詠春さんから話を切り出した。

 

「何か新しい情報はあったのか?」

 

「あ~……、まあな」

 

 言葉を濁すガトウさん。悪い情報とか面倒事の情報に多い対応だけど、今回は特に悪そうだ。

 

 ガトウさんは新しいタバコを取り出し、火をつけて言う。

 

「良いニュースと悪いニュースがあるんだ」

 

「良いニュースと悪いニュースだとぉ?」

 

 ナギさん、表情……。ものすごくチンピラっぽいですよ……。

 

「どっちを先に……」

 

「もちろん良いニュースからに決まってんだろっ」

 

 ガトウさんが言い切る前に言葉を被せて断言するナギさん。

 

 ガトウさんはため息を吐いて「そうだな」と肩をすくめる。

 

「じゃあ、良いニュースからな。ナギは長々と話してもわからないだろうから……」

 

「わかってんなら早く言えよ」

 

「…………。……内容を簡潔に言うと、2つ目のボールの情報が出てきた」

 

「――っ! 本当か!?」

 

「ああ。イギリスの、ウェールズの山奥にある魔法使い村……、そう、ナギの故郷に星が4つ浮んでいる黒いボールがあるという情報があってな……」

 

「よくやった、ガトウ!」

 

 そう大声でまたもや話を切るナギさん。バッと身をひるがえして杖を……、って!?

 

「ナギさんっ! いくらなんでも杖で飛んでいくのはマズいですよ! 魔法の秘匿! 秘匿しないと!」

 

 大声を出して止めようとするけど……。

 

「ハッ! 認識阻害の魔法かけとけばいいだろ! いくぜぇぇえええええ!」

 

 そう言って杖に乗り、あっという間に空へ彼方へと消えてしまった。……ナギさん、魔法の秘匿はそういう問題ではないと思います。あと、イギリスはそっちじゃないです。そのまま真っ直ぐ行ったらアメリカ大陸に行っちゃいますよ~。

 

「いいんですか、ガトウさん」

 

「まあ、ああなったらナギの奴はもう止まらないしな」

 

 ふぅっとため息を吐いてタバコを灰皿に入れるガトウさん。

 

 詠春さんはナギさんのあとを追わないのかな?

 

「空港、探すか……」

 

 そういえば、空中に足場を造るのはできても飛べなかったけ。

 

 はぁ……、僕たちも空港を探さないとなぁ。ナギさんは多分アルビレオさんが途中でイギリスの方向を教えるだろうし、先にウェールズに行っておいていいか。

 

「僕たちも行きましょうか、ガトウさん」

 

「ああ、そうだった」

 

 僕の言葉に、何かを思い出したようにつぶやくガトウさん。

 

 ガトウさんは3本目となるタバコを取り出して火を付け、遠く……、遠くを見つめながら言う。

 

「これからタカミチには学校に通ってもらうんだったな」

 

「……え?」

 

 今……、何て? 学校? 僕が……、通う?

 

 戸惑う僕に、優しげな声音で話し始めるガトウさん。

 

「今まで戦争やら内戦の鎮圧やら、『完全なる世界』の残党狩りと血なまぐさいことばっかりだっただろう?」

 

「そう、ですね」

 

 確かに、血なまぐさいことばっかりだった……。

 

「だからな。大戦も終わって、『完全なる世界』もほとんど壊滅した今、まだ子供であるタカミチには血なまぐさい世界からは離れて、普通の学校に通ってほしいと思ったんだ」

 

「僕が……、学校に」

 

「学費や生活費のことなんかも気にしなくてもいいから通ってみないか?」

 

「…………」

 

 突然言われた話。僕は、すぐには答えられなかった。

 

 勉強のほうはガトウさんにある程度教えてもらっていたし、旧世界にある一般の学校に通わせる予定らしいから、呪文詠唱できない僕でも普通に受け入れてもらえると思うけど、まさか学校に通う話が突然出てくるとは思わなかったから、答えられなかったんだ。

 

 だけど、イギリスへと出発するまでの2日間で、僕は学校へ通うことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校へ通うことに決めて、ガトウさんに紹介された学校がある場所へとやってきた僕、高道・T・高畑、13歳は、麻帆良学園中等部へと転入することになりました。

 

 いや~、初めて着たときは驚きましたよ。あっはっはっは。

 

 いくつもの学校が建ち並んでいて、それら関係している人たちが住んでる学生寮や職員寮も建っていて、その人たちを目当てに様々な店が建っていたり、その店を出してる人たちが住んでいるマンションが建ち並んでいたりと、僕が想像していた学校とまるで違っていて、もう学校というよりもひとつの都市でしたからね。本当に、学園都市という名称が似合っている場所ですよ、ここは。

 

 それに、すごく大きな……、木も生えてますし……。

 

 いや、神木って、世界樹って……。

 

 いくらなんでも大きすぎるでしょ!? しかも生えてる場所から1キロ圏内は昔からの私有地だとか……。

 

 正直、アレを見たときはしばらく動けませんでしたね。旧世界にも魔法世界に生えているような大樹が生えているんだって。まあ、そのあとも妖怪みたいな頭をした学園長先生を見て動けなくなりましたけど。

 

 それに、今も……、動けなくなっていますし……。

 

『じゃあ、みんなに紹介するわね。高畑くん』

 

 僕が編入することになった教室から、先ほど学園長室で会った、僕の担任だという女の先生から声をかけられる。

 

「は、はい」

 

 僕は返事を返してドアを開けて潜り、教卓の横へと並ぶ。

 

『――っ』

 

 椅子に座ってるだろう生徒が息を飲むのを感じる。視線が突き刺さる。

 

 僕はなるべく遠くを見るように顔を上げ、女の先生からの合図を待つ。

 

「じゃあ、みんなに紹介するわね。彼は高道・T・高畑くん。みんなと同じ13歳よ。これから3年間、この教室で皆と一緒に勉強する事になったわ。ちょっと戸惑うことも多いと思うけど、皆、仲良くしてあげてね」

 

 と、先生が話したところで、僕が自己紹介を開始する。

 

「高道・T・高畑です。見ての通り男ですが、これから3年間この麻帆良学園女子(・・)中等部に通うことになりました。どうか、よろしくお願いします」

 

 一礼して笑顔を浮べる。ちゃんと笑顔を作れてるのかなぁ?

 

 あっはっはっは……。

 

 ガトウさん……、僕、女子中に通うことになるなんて聞かされてないですよ……。

 

 キャーキャーと騒ぐ声が聞える。そのなかに男の声は一切ない。本当に、カンベンしてください……。




―ウェールズの山奥、魔法使いの村―


ナギ「ジジイ! てめぇ、ボール! ボール持ってるってほんとか!?」

メルディナ校長「なんじゃい、突然。久しぶりに帰ってきたかと思えば」

ナギ「あー……、久しぶりだな! それで、ここに星が中に浮いた黒いボールがあるって本当なのか!?」

校長「星が中に浮いた、黒いボールじゃと? ああ、あれか」

ナギ「あるんだな!」

校長「まあの。スタンの奴が見つけて……」

ナギ「スタンの爺さんか!」

校長「こ、コレ! ナギ! ……出て行ってしもうたか。――スタンの奴がここに持ってきたと言おうとしたんじゃが……、相変わらずせっかちな奴じゃな」

詠春「あの……、私が渡しに行きましょうか?」

校長「すまぬが、頼む。詠春殿」

詠春「はい。任せてください」

ガトウ「すみません。ひとつ……、よろしいでしょうか?」

校長「これはガトウ殿。何か、気になることでも?」

ガトウ「はい。失礼だとは思いますが……、今ではその黒いボール……、アルヴィンボールは魔法世界に知れ渡っているほどの財宝。それをナギにあっさりと渡してよかったのかと……」

校長「ガトウ殿の言いたいことはもっともじゃが、こちらとしては、あれほど有名な魔道具がこの村にあるほうがマズいのじゃ。襲われる理由になるかも知れぬしの。――ならば、いっそのことナギに渡してしまったほうが、よいじゃろう」

詠春「確かに、そうですね。ここは魔法世界とを繋ぐゲートがありますし、アルヴィンボールの存在を知ったトレジャーハンターや、ボールを利用しようと考えている政府の人間が着たら、色々とマズイですから」

校長「うむ。もうすでにアルヴィンボールがこの村にあるという情報も流れておるようじゃし、ナギに渡したのは丁度いい厄介払いじゃ」

ガトウ「私のほうからも『アルヴィンボールはすでにナギが持っていた』という情報を流しておきます」

校長「頼む」


―会談を終わって、ナギと合流後―


ナギ「くははははっ! やったぜ、コレであと5つだ! 待っていやがれ、クソ龍ぅぅぅううう!」

ガトウ「あいつ、俺たちが合流するまで受けてたスタンさんからの説教を、もう忘れてるんじゃないか?」

詠春「ははは……。まあ、ナギですからね。仕方がないです。――そういえばガトウ、何か私に報告することがあったんじゃなかったんですか? ほら、ナギと合流してから話すという」

ガトウ「ああ……、まあな」

詠春「? 何か、悪い報告ですか?」

ガトウ「あー……、そう、だな。日本の京都でのことなんだが……」

詠春「何かあったんですか?」

ガトウ「事件が起きたとかはないんだが……。その……、おまえの婚約が破棄された」

詠春「…………。……え?」

ガトウ「先日、正式に近衛家を通じてな。青山家の了承……、というか快諾して婚約が破棄されたんだ」

詠春「……な、なぜ……?」

ガトウ「あー……、話によると、おまえが武者修行に行ってからいつまで経っても京都に戻らないし、関西から出て関東魔法協会理事長になった近衛近右衛の前例もあって、青山詠春は魔法側……、関東魔法協会側についたと考え、関西呪術協会は組織内でも京都の家系でいっても重要な位置にある近衛家の娘と婚姻を結ばせることはできないと、婚約を破棄したんだ」

詠春「そ、そんな……。――っ。そ、そういえば、木ノ葉さんは? 木ノ葉さんは婚約破棄に反対などは……」

ガトウ「しなかった、らしい」

詠春「――っ」

ガトウ「元々婚約の話は、近衛近右衛門が京都から出て関東魔法協会の理事になったことで、京都内で地に落ちた近衛家の名誉を回復させるため、同じく神鳴流で有名な旧家である青山家との婚約が目的だったからな。青山といっても今のおまえと婚姻を結んでも名誉が回復せず、むしろ京都の中で立場がさらに悪くなるとしたら、婚約破棄は当然の流れといってもいいだろう」

詠春「…………」

ガトウ「…………(とうとう詠春がヒザをついて崩れ落ちた。まあ、しかたねぇよな。関西呪術協会の陰陽師や京都神鳴流の流儀、『我々の技は悪霊や人に害をなす、人外に振るうもので戦争のために使うものではない』というものを、いの一番で破って魔法世界に行って、傭兵として大戦に参加していたんだからな)」

詠春「私は……、平和のために……」

ガトウ「…………(魔法世界の平和のためという大義があっても、旧世界の島国に存在してる関西呪術協会には関係のないものだからなぁ……。いくら魔法世界で有名で武功をあげたといっても、関西呪術協会ではもちろん無意味。むしろ元老たちにとってはマイナスだろう。人外や魔から人を守る術を使って戦争に参加していたんだから。それに、詠春に影響されて魔法世界へ出て行った連中もいると聞く。裏では大戦の激化に伴ない、無理矢理戦争に参加させられた者たちも出てきたという情報もあるぐらいだ)」

詠春「あの木ノ葉さんが……、なぜなんだ……」

ガトウ「…………(あー……、そういえば幼馴染だったけ? そういや大戦期のときでもよく自慢してたな、旧世界にかわいい婚約者がいるって。……詠春が魔法世界へ武者修行に行ってから、婚約破棄を木ノ葉のほうから言い出していたって、教えないほうがいいよなぁ。たまに近衛木ノ葉の自宅に泊まる男が目撃されてるという情報も)」

詠春「うおおおおおおおおおおお! 私はいったいどうすればいいんだぁぁぁぁああああああ!」

ガトウ「…………(とりあえず、1回京都に帰ればいいんじゃねぇか。大戦が終わっても3年以上帰ってないそうだし。あー……、新しいタバコに火ぃつけるか。そういや、タカミチの奴は元気にしてるかなぁ。頭の長い爺さんに預けたけど、ちゃんと学校に通わせてもらってんのかなぁ)」




―後書き―

 今回は地の文ばっかりで、大魔王が着た事によって色々変わってしまった世界の説明ばっかりの話になりました。

 それで、本当に迷いましたが、ナギだけでなく、近衛詠春の結婚フラグが消失してしまいました……。

 実は前からそういうフラグを入れていたのですが、やるかどうか迷いに迷って、結局破局させました。

 人を魔から守る術や剣を、魔法世界の戦争に使った詠春を、大魔王がいることで原作とは違い、関東よりも立場が強い、関西呪術協会の連中が自分たちの長に選ぶわけがありませんしね。

 京都にいただろう木乃香の母も、おそらく近右衛門とは仲が悪いだろう(京都捨てて、関東魔法協会の理事をしている父、関西呪術協会に所属していたと思わしき娘が仲がいいはずがない)と思って、

 結果、婚約は破棄されて彼はずっと青山のままになりました。


 あと、タカミチが麻帆良の女子中等部に通うことになった理由を説明しますと、

 原作にあった、タカミチはエヴァと元同級生でクラスメートという言葉を察すれば……。

 15年間女子中学生に所属していたエヴァ。

 その同級生で、クラスメートだったというタカミチがどこに通っていたかというと……。

 女中学校ですよね。

 あの話を切り出したときの、枯れた笑顔は女子中学生時代を思い出しての笑顔だったのか……。

タカミチ「元クラスメートのよしみだろ、フッ……」

エヴァ「フンッ(そういえば女子中学校に通わされて苦労してたっけな、こいつ)」

 という裏があると思いまして、女子中等部に通うことになりました。


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第22話 トリプルT?

 1話があまりにも長いと、疲れてしまうという声があったので、

 これからは5000~1万字を越えた時点で、切のいいところで切って、投稿回数のほうを増やすことにします。


 京都旅行から数日。時刻は深夜11時を回ったぐらい。

 

「どうだ、アスナ。すごいだろ」

 

「うん。すごい、こんなの初めて見た」

 

 映像は薄暗くした部屋の中央。丸いテーブルの上にはある 魔法 道具 (マジック・アイテム)が乗せられていて、そこから立体的な映像が映し出されていた。

 

 私とニィは魔法道具とセットになっているヘッドホンを耳に、映像を観賞する。

 

『んっ、んんっ、はうぅっ! はぁっ……はぁっ……。ええっ! ええわぁっ! アルヴィンさま、最高やわぁぁぁああ~♪』

 

『最近ずっとしてなかったからな。今夜は思う存分に楽しもう、木ノ葉』

 

『コラっ! 私のことも忘れるんじゃない! 木ノ葉ばかりではなく、私も満足させんかっ!』

 

『妾も忘れてもらっては困るぞ、アルヴィン。初日と2日は木ノ葉に譲ったが、今夜は妾にも……』

 

『ハハハハ、じゃあ、まとめてやるか!』

 

『ふふっ、そうやなぁ。ウチも久しぶりにエヴァちゃんを泣かせたいし。元王女さまと戯れるのも面白そうやね。うん、なら皆で楽しもうかぁ』

 

『ハッ、何が泣かせたい、だ。貴様が私に泣かされるの間違えだろ』

 

『や、やはり木ノ葉にはそっちの気があったのか? 妾としてはアルヴィンと2人きりが……』

 

 映像とリンクして4人が絡み合い始める。

 

「すごい……これが、4Pなんだ……」

 

「まだまだ、これは序盤。これからもっとすごくなる」

 

「もっとすごく……」

 

 ニィが言った通り、4人の激しさが増していく。

 

 アルヴィンが木ノ葉を後ろから犯し、木ノ葉は犯されながらエヴァの股に顔を埋め、アリカはアルヴィンのお尻や結合部に顔を埋め、4人が絡み合って快楽を貪り、楽しみ始めた。

 

 その映像を私は食い入るように見つめ、木ノ葉やエヴァ、アリカからテクニックを盗んでいく。

 

『あっ、っんん……コラッ、どこまで舐めているっ!』

 

『はわぁ~、エヴァちゃんのお尻の穴、小さくてかわええなぁ』

 

『ひわわっ!? ばっ、バカ者っ、舌先で穿るのは……う、んっ、ふぐぐぐ……』

 

 むむ、木ノ葉の舌技すごい。エヴァが声を押し殺して感じてる。

 

 それに、アリカのほうもエッチだ。

 

 アルヴィンのお尻に顔を埋めたり、仰向けになって木ノ葉との結合部を舐めたり、自分でもオナニーしてセックスを愉しんでる。

 

「本当に、すごい……」

 

 心の底から快楽を味わい、愉しんでいるのがよくわかる。

 

 4人とも気持ち良さそうな顔を浮べて、幸せそうだ。

 

 アルヴィンのペニスを受け入れて、精液を幸せそうに受け止めてる。

 

 白濁した精液を含め、様々な体液が4人の体を汚していく。

 

 そして、汚れを広げるように4人は激しく絡み合う。

 

 ああ……いいなぁ……。

 

「私も、早く……」

 

 早く、したい……。

 

 子宮辺りがうずうずする。

 

 欲しい……。アルヴィンの精液……。

 

 膝を擦り合わせる。

 

 3人みたいに、受け入れてあげたい。

 

 パンツの中に手を入れる。

 

 中で、受け止めたい。

 

 ツルツルでピッタリ閉じた幼いオマンコを指で弄る。

 

「はぁっ……はぁっ……んっ……あ、うぅ……」

 

 内側を擦って、指で少し開く。

 

「んっ……はぁはぁっ……」

 

 まだまだ硬くて小さい膣口に指先を入れる。

 

 切ない……。切ないよぉ……。

 

「ふふふ、アスナはオナニーが好きね」

 

「ううっ、ニィの意地悪。わかってるくせに。それに、オナニー好きはニィでしょ?」

 

「ふふふ」

 

 私の問いかけに、ニィは笑みを浮かべる。そして、テーブルの上に置いていたピンクローターのスイッチをいそいそとしまった。

 

 ……今さらしまっても遅いよ、ニィ。

 

 それにまだ、ブブブブって震動音が聞えてる。私は耳いいから最初から聞えてたよ、ニィ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニィと深夜の勉強を続けていると、映像のなかにある発見をした。

 

「ねえ、ニィ。ここに誰か映ってるよね?」

 

「ん? ん~……あ、ほんとだな」

 

 京都の初日と2日目で入手したアルヴィンと木ノ葉のセックス動画。その映像のなかで、ほんの少しだけ開けられた襖の間から、誰かアルヴィンと木ノ葉を覗いていたのだ。

 

 と、いってもその誰かは大体予想はついてるが。

 

「ニィ。確か隠し撮りしてることを気づかれにくくするために、屋敷全体の映像を録画してたんだよね? 警備だからって理由で」

 

「ああ。だから、当然この『誰か』がいる廊下も映ってるはずだ。ちょっと待ってて」

 

 ニィはそう言うと魔法道具を操作し、覗きをしていた『誰か』がいる廊下を映し出した。

 

 その映像に写し出された『誰か』を見て――。

 

「やっぱり」

 

「ああ、やっぱりだな」

 

 私とニィは小さく息を吐いた。

 

 映像に映し出されている廊下には、和服を着た10歳ぐらいの女の子がいて、

 

『はぁはぁ……木ノ葉さま、あんなに激しく突かれとんのに、えらい気持ちよさそうやなぁ。舌もあんなにいやらしく絡めてからに……』

 

『うわっ、尻の穴に入れとるっ。き、気持ちええんやろうか?』

 

『ああっ、あんなに歪めて男根にしゃぶりつくなんて……うわっ、精液ごくごく飲んどる……やらしーなぁ……』

 

 小声でそんなことをつぶやき、オナニーしながら襖のなかを覗いていた。

 

「千草……」

 

「千草だな」

 

 天ヶ崎 千草。魔法世界の大戦で両親を失った戦災孤児で、木ノ葉が弟子として面倒をみている女の子。

 

 少々口と態度は悪いけど、面倒見がいい女の子。

 

 普段から着物を着崩して着ていて、大人ぶっている女の子。

 

 ニィにからかわれて、アルヴィンに夜這いをかけて、私よりも先に処女を散らした女の子。

 

 まあ、その時は破瓜の痛みで千草がおお泣きしてしまい、その泣き声に気づいてかけつけた木ノ葉に慌てて治療されて、そのあとこっぴどく叱られたそうだけど。

 

『はぁぁ……アルヴィンさまの、ウチのなかにまた挿入したいわぁ……。あの真まで響く痛みと熱で満たされたいなぁ』

 

 それが原因でドMに目覚めてしまったんだよね……。

 

 映像のなかの千草はいつもの着崩した着物姿だが、その下には赤い色の荒縄が覗けていた。薄い生地の着物にも縄の線が浮かび上がっていて、小さな胸が縄の締め付けによっていつもよりも大きく見える。

 

 千草は襖の隙間に向ってM字開脚を披露しながら、両手を着物の内側に入れて胸を弄り始めた。

 

『ああっ、ウチの胸もちゅーちゅー吸ってほしいぃ……。歯形やキスマーク付けてもらって……あんっ、ええなぁ、木ノ葉さま。ほんまに羨ましいわぁ』

 

 艶っぽい表情を浮かべて、鼻息荒く襖の中を覗いて、千草はオナニーを楽しむ。

 

『ウチも経験してもう大人の仲間入りしたんやし、ウチも混ぜてもらえんかなぁ。いつも修行修行で身を持て余して困ってるのに、ほんまに木ノ葉さまはずるいわぁ』

 

 千草は愚痴をつぶやきつつも、オナニーを止めない。それどころか自分自身を縄で縛って、その締め付けによる苦痛を愉しんで、悶えている。

 

 いつものひとりSMか……。

 

 千草は快楽に染まっただらしない顔で、なにやらつぶやき始める。

 

『はぁはぁっ……アルヴィンさまっ。アルヴィンさまに調教して欲しいなぁ。エヴァさまや木ノ葉さまもええけど、やっぱり攻めはアルヴィンさまが1番やわぁ』

 

 ? エヴァや木ノ葉?

 

『ウチもエヴァさまみたいに全裸で京の街をお散歩させて欲しいなぁ。認識阻害の術かけて、犬みたいに首輪とリードで繋がれて、街中でおしっこ強要されたり、後ろから犯されながら歩かされたり』

 

 エヴァ、そんなことやってたんだ。さすがだね。

 

『木ノ葉さまみたいに三角木馬に乗せられるのもええなぁ。乳首虐められたり、強制フェラチオ、お尻の穴弄られたり、全身くすぐられて笑い地獄ってもの楽しそうやったしなぁ』

 

 木ノ葉ぁ……。

 

『ああ、そうや。アリカさまみたいにイチャイチャしながらするんもたまにはええよなぁ。正常位で抱き合って、キスしながらとか。ふへへへへ……』

 

 アリカのは、うん。私もしたい。

 

『テオドラさまみたいにお尻を永延と弄られたりするんもええし。ニィはんのアブノーマルな近親プレイもよかったなぁ。やらしいおもちゃとか色々使って。ほんまに気持ち良さそうやったわぁ』

 

 ……ニィ?

 

 顔を向けると、ニィは私から視線を逸らした。

 

 ニィの股から伸びてるピンクのコード。ニィの自室の壁に置かれた本棚。その本棚はフェイクで、分厚い本の後ろにはそういう(・・・・)おもちゃのショーケースになっていることを、私は知っている。そして、京都旅行後にそのコレクションが数個ほど増えたことも。

 

 ニィ、私に隠れてアルヴィンとしたな。

 

「…………」

 

 ……まあ、いいけど。

 

 でも、テオやニィまでしてるのなら、もしかしてアルヴィンとまだセックスしてないのは私だけじゃ……?

 

 まだ体が幼児のままだとしても、これは、早急に手を打つ必要があるかもしれない。

 

 そんなことを真剣に考えていると、映像に動きがあった。

 

『はぁはぁ……はぁはぁ……抜かずにもう5回も……。ええなぁ、ええなぁ……。ウチもおこぼれに預かりたいなぁ』

 

 千草がそんなことをつぶやきながらオナニーに夢中になっていると、

 

 ――襖が開いた。

 

 突然開け放たれた襖には、裸の木ノ葉が笑顔を浮べて立っていて……。

 

『まったく。しゃあないなぁ、千草は』

 

『き、木ノ葉さま……』

 

 木ノ葉に笑顔で見下ろされた千草。見つかってしまった千草はオナニーの手を止めて、M字開脚したまま、引きつった笑みを浮かべ、怯えるように震えだした。

 

 そんな千草の頭に、木ノ葉はやさしく手を置いた。

 

 引きつった笑顔を浮べたまま見上げる千草に、木ノ葉は……、

 

『さあて、おこぼれあげようか』

 

 ドSな笑みを浮かべて微笑みかけた。

 

『あー……』

 

 木ノ葉の微笑みで千草から表情が消えうせ、股の間からじょろろろという音が静かな空間に小さく響いた。

 

『あっ、あ、うわ……』

 

 口をパクパクさせる千草。恐怖で竦む体を何とか動かし、木ノ葉に背を向けて這うように逃げ始める。

 

『そんなに遠慮せんでええんよ、千草。ウチの休憩がてらに。アルヴィンはんとたっぷりかわいがってやるさかい』

 

『や、あ……ごめ……』

 

 千草は腰が抜けているのか、廊下を這うように逃げ続ける。

 

 そして、廊下の突き当たりを曲がろうとしたところで、突然千草の背後から数本の触手が襲いかかった。

 

 触手は人間の腕ほどのサイズで、全体的に紫色。内側にはピンク色の、イソギンチャクみたいな無数の小さな突起物がびっしりとついていた。

 

 それらが千草の肉体を捕縛する。

 

「うわああぁ……」

 

「す、すごいな……」

 

 その光景に、私とニィから思わず声が漏れる。

 

 数本の触手は千草を完全に捕縛すると、

 

『やっ、あぶっ……ゆる……あづぅっ……ああああぁぁぁぁ~っ!』

 

 そのまま一気に襖のなかへと引き込んでいった。

 

「「…………」」

 

 その凄惨な光景に、私とニィはもはや声も出せず、無言になってしまう。

 

 私よりも耐性のあるニィは、廊下を中心に映している映像を、千草が引きずり込まれた襖の内側へと切り替えようとするが――、

 

「――っ!」

 

 小さく開けた襖の間から、木ノ葉が、明らかにカメラのほうを見つめて、人差し指を口元で立てた。

 

 まるで、この先は見てはいけないと言っているかのように。

 

 そして、結局。映像を切り替えても襖のなかは黒一色で統一されていて、私たちは何が起こっているのか見ることができなかった。

 

 ……朝方、アヘ顔を浮かべたまま、うつ伏せで気絶している千草の姿以外は。

 

 布団ではなく、畳の上。全身を様々な体液でコーティングされ、ピクピクと時おり体を痙攣させている千草。部屋にはアルヴィンと木ノ葉の姿はなく、完全に放置状態だった。

 

「ニィ、千草は……大丈夫かな?」

 

「あいつは……真性のドMだ。心配しなくても、大丈夫。それに、この映像のあと、千草と会ったときは平気そうにしてたろ」

 

「そういえば……」

 

『はひゅー……はひゅー……。も……もっちょぉ……。もっちょ……ウチ、虐めてぇなぁ……』

 

 映像のなかの千草が仰向けになり、そのままアヘ顔を浮べ、うれしそうにオナニーを開始する。少しだけ毛が生え始めたオマンコには、紫色のバイブが突っ込まれ、ウインウインと元気よく動いていた。

 

 …………。

 

「……うん、全然平気そうだね」

 

「そうだろう。なにせ、あいつはエヴァ並みのドMだからな。それよりも、木ノ葉には気をつけろよ? あの通り、優しげに見えるが、あいつはドSでバイだから」

 

「うん、大丈夫。わかってるよ」

 

 ……わかってるけど、でも、あのテクニックは欲しい……。

 

 色々な体位でのセックス。パイズリ、フェラチオ。

 

 そして、何よりも誘い方。

 

 極自然に寝室に招き入れて、そのまま布団のなかで男を興奮させ、男のほうから襲わせる。

 

 ……今の、襲えない私に必要なテクニックだ。

 

「ニィ」

 

「なんだ?」

 

「今度は布団のなかとかも透けて見える映像で勉強したい」

 

「布団が透ける……か。それは面白そうだな。わかった。今度そういう魔法道具をエヴァに作ってもらうよ」

 

「エヴァ、作ってくれるかな?」

 

「ふふふ、それは心配ない。口八丁で丸め込むからな」

 

「さすがニィだね」

 

「まあな」

 

 得意げに微笑む、ニィ。

 

 口八丁って言うけど、結局お願いだよね? またエヴァに土下座してお願いするのかな? ジャンピング土下座の練習してたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エヴァに作ってもらった新しい魔法道具で勉強し始めて数年。朝、家の近所をひとりで散策していると、ある光景が目に入った。

 

 それは、男子中学生らしき男を中心に、十数人もの女子中学生たちがわいわいと騒ぎながら登校するというものだった。

 

 大勢の女の子に囲まれながらの登校。アルヴィンや普通の男なら喜びそうなシチュエーションだが、男子中学生らしき男はうんざり疲れ顔でため息を吐いていた。

 

 それどころか――、

 

 腕に胸を押し付けられても、困り顔。

 

 後ろから抱きつかれても、うんざり顔。

 

 笑顔で挨拶されても、疲れたように肩を落とす。

 

 話しかけられても、面倒くさそう。

 

 男が大勢の女に囲まれているのに、まるで喜んでいる様子はなく、むしろ迷惑そうだった。

 

 そんな男子中学生を見て、広場の階段に座り、棒付きのアメを舐めながら、私は思う。

 

 あいつ、ホモか不能のどっちかだな。

 

 ――と。

 

 そして、同時に気づいた。

 

「……あれ? でもここって、もう女子校エリアのはずじゃ?」

 

 麻帆良の学園都市には男子校エリアと、女子校エリア、共学エリアが存在するけど、なんで女子校エリアに男子中学生がいるの?

 

 女子校エリアは麻帆良の一番奥に存在しているため、基本男子が来ることなんて、まずあり得ないはずなのだ。

 

 それに、男子中学生が着ている制服もおかしい。

 

 よく見ると男子中学生が着ている制服は、この辺りの男子高校や共学の高校とは違うデザインで、胸に付けられたマークも、周りの女子中学生と同じマークだった。

 

「もしかして、女子? いや、でも腰とか骨格は男だし……」

 

 気になって観察していると、男子中学生と目が合った。

 

 私は小さく頭を下げて、視線を外す。景色の一部となって飴を舐める。

 

 はぁ……暇だなぁ。

 

「あっ、アスナさまっ!」

 

 ……ん?

 

 突然名前を呼ばれ、顔を上げてみると、男子中学生が立っていた。

 

 男子中学生は私を見るなり、「やっぱりだ」と小さくつぶやき、突然片膝をついて頭を下げてきた。

 

「おっ、お久しぶりです! アスナさま!」

 

「…………」

 

「ぼ、僕はタカミチ。タカミチ・T・高畑です!」

 

「タカミチ・T・高畑……」

 

 つまり、トリプルT?

 

「はい! 『紅き翼』の、ええっと……その……」

 

「『紅き翼』? なんとなく聞き覚えがあるような……」

 

「数年前に起きた大戦で活躍した傭兵団です! えっと、ナギさん。ナギ・スプリングフィールドは覚えていられませんか?」

 

 大戦といえば、魔法世界。そこで活躍した傭兵団『紅き翼』。そして、ナギ・スプリングフィールド。

 

 ナギ……。ナギ・スプリングフィールド……。

 

 数十秒ほど頭を捻り、思い出す。

 

「ああ、あの鳥頭」

 

「と、鳥頭……」

 

「ん? 間違ってた?」

 

「……いえ。合っています」

 

 トリプルTは肩を落としながらうなずいた。やっぱりあの鳥頭のことか。

 

「それで、私に何の用?」

 

「それは……っ」

 

 何かを言いかけて、トリプルTは口をパクパクさせて停まる。膝をついたまま目を伏せて……。

 

 ――んん? どこかで見たことあるシチュエーションだな?

 

 確か……告白シーン。

 

 …………。

 

「僕は……っ!」

 

 勇気を振り絞って顔を上げたトリプルT。私はトリプルTが何かを言う前に、

 

「――ゴメンなさい」

 

 立ち上がって、頭を深く下げる。

 

「……へ?」

 

「気持ちは嬉しいけど。私には好きな人がいるので、ゴメンなさい」

 

「…………」

 

 告白する前に断わられ、放心しているだろうトリプルT。これ以上トリプルTを傷つけないために、私はその場から歩き去る。

 

 ――どうか、新しい恋を見つけてください、トリプルTさん。

 

 トリプルTに群がっていた女子中学生たちをすれ違い、私は帰路に……。

 

「ちょっ! ちょっと待ってくだ……!」

 

 そんな言葉と共に、背後に感じる気配! 掴まれそうになる腕! 身の危険を察知! 

 

 一瞬で戦闘モードに移行し、私はポケットからあるモノを取り出す! それは痴漢撃退用にと、アリカとエヴァが持たせてくれた手の平サイズのスプレー缶!

 

 それを背後にいるだろうトリプルT、もといロリコンにふり掛ける!

 

「うっ!? 何を……っ! うぐっ……」

 

 スプレーを浴びせられたロリコンはその場に片膝をついて、口元を押さえた。

 

 私はロリコンが立ち上がる前に、走り出す。もちろん、走り出す前に

 

「キャー! ロリコン~!」

 

 という悲鳴を上げてから。

 

「ロリコン!? たっ、高畑くんが!?」

 

「そ、そういえばあたしたちにはほとんど無反応よね?」

 

「さっきの子、10歳にも満たない女の子だったけど……」

 

「高畑くん、私たちを置いて、必死に走ってさっきの子のところに行ってた」

 

「まさか13歳以下の女の子以外興味ない、とか?」

 

「……やっぱり、ロリコン?」

 

「うん、ロリコンだね……」

 

「なっ!? まっ、これは誤解……」

 

 後ろから何やら聞えるが、無視して私はそのまま家に帰った。

 

 



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第23話 再会と入院と起こってしまった事件

 ハイDに続き、こちらも投稿。


 トリプルTというロリコンを撃退してから数日後。麻帆良学園の女子校エリア近くにある喫茶店で、アルヴィンとアリカの3人でくつろいでいると、またトリプルTが現れた。

 

 トリプルTは私たち3人を見て驚くような表情を浮かべ、こちらへ駆け寄ってくる。白スーツ姿で……。

 

「やっぱり! アリカさまとアスナさま! それに黒龍さままで!」

 

 大した距離も走ってないのに激しく呼吸を乱す、トリプルT。はぁはぁといやらしい呼吸をするトリプルTを警戒して、私はそっとテーブルの下にナイフをしのばせる。もしもこのロリコンが何かしてきた場合はこのナイフでグサリだ。

 

 テーブルの下で臨戦態勢をとっている私に気づかず、トリプルTは私たちに向って笑顔で話しかけてくる。

 

「お久しぶりです、皆さん!」

 

「おお、久しぶりじゃな、タカミチ」

 

「背ぇ伸びたなぁー。こうして会うのは何年ぶりになるんだっけ?」

 

「終戦してからずっと会っていないので、5年ぶりになりますよ」

 

 アルヴィンの問いに、間髪入れず答えるトリプルT。アリカに同席を勧められ、一席だけ空いているアルヴィンの隣の席へと腰を下ろし、店員にコーヒーを注文する。

 

「やっぱり無事だったんですね、アリカさま」

 

 コーヒーを一口飲んで、うれしそうにつぶやくトリプルT。アリカは申し訳なさそうな表情でうなずく。

 

 魔法世界の公式発表では罪人として処刑されたとされる元女王のアリカ。だけど、実際には処刑される大分前にアルヴィンが助けだしてて、公式で処刑されたのは変わり身のほうなんだよね。

 

 そのことを知っているのはアルヴィンとアリカ、私やエヴァとかテオドラとか、木ノ葉とか最も近しい関係者ぐらい。

 

 魔法世界の大戦中に協力関係だった傭兵集団、『紅き翼』のメンバーにも教えてなくて、他の誰にも知らせてもないはずだけど……、

 

「――やっぱりって、なんで?」

 

「ボクは以前黒龍さま……アルヴィンさまに『六式』っていう格闘技術を習う際に、アルヴィンさまが人になれるって知っていたんです。アルヴィンさまとアリカさまは普段から仲が良さそうでしたし、例え魔道具の契約だからといっても死後のやり取りをするなんてボクには考えられなかったから、きっとどこかでアリカさまは生きてるって思っていたんです」

 

「じゃあ他の『紅き翼』のメンバーも皆知ってるの? アリカが生きてるって」

 

「そ、それは……」

 

 私の問いに苦笑しながらもきちんと答えていたトリプルTが言葉をつまらせる。口を開けたまま表情が固まり、そのまま顔中から大量の汗が流れ始めた。

 

 そんなトリプルTの異変には気づかず、アルヴィンは優雅に紅茶を飲みつつ訊ねる。

 

「そういえば、真っ赤な髪した鳥頭……ナギ・スプリングフィールドは元気か? そろそろ20歳になるんだよな、あいつも」

 

「…………」

 

 無言で笑顔を浮べるトリプルT。大量の汗は止まったようだけど、顔色が最悪になった。浮べてる笑顔も、怖い……。

 

 アリカもトリプルTの異変に気づかず、ケーキを食べながら微笑む。

 

「最近の『紅き翼』は終戦後の復興活動や内戦の鎮圧に力を入れておるのじゃろう? ひと昔前は何も考えずに広域殲滅魔法を放ったりと……殲滅戦などの戦いにしか興味のなかったあやつが、立派に成長したようじゃのぅ」

 

「アハハハハ……」

 

 アリカは懐かしむようにつぶやいたが、それを聞いてトリプルTの口から出たのは乾いたような笑い声。……嘘、ついてる? 色々と。

 

「そっ、そういえば! その……アスナさまはなぜ5年前のお姿のままなんですか?」

 

 話をかえるようにトリプルTが私に視線を移した。アルヴィンは私の頭を撫でながら言う。……大丈夫だよ、攻撃しないよ。ただ、ちょっと向けられる視線が不快なだけ。トリプルTはロリコンだし。私服=白スーツぽいから。警戒してるだけ。

 

「今まで投薬されてた魔法薬がまだ切れないんだ。――まあ、あと数年もすれば自然に効力を失って自然に成長が始まるさ」

 

「そうだったんですか……」

 

 私を見つめるトリプルT。……いずれ成長して幼女じゃなくなることを悲しんでる? やっぱりこの場で男性としての機能を奪ったほうがよさそう……む、アリカ、ナイフ返して。私やエヴァの身が危ないんだよ。

 

 視線を使ってアリカの説得を試みるが上手くいかない。むぅ……。

 

 私とアリカが視線でやり取りをしている中、紅茶をテーブルに置いたアルヴィンがトリプルTに訊ねた。

 

「そういや、タカミチはなんでここにいるんだ? 制服着てるみたいだし、学校に通ってるのか?」

 

「あ、はい……今は――」

 

 アルヴィンの問いにまたもや口を閉ざすトリプルT。どうしたんだ? と疑問符を浮べるアルヴィンとアリカに、私の知っている情報をトリプルTよりも先に話す。

 

 数日前に女子校エリアで会ったこと。

 

 トリプルTが女子中学生数人から囲まれて登校してたこと。

 

 そして、私に告白する前に振られて、そのあと私は襲われそうになり、持たされていた痴漢撃退スプレーをかけて逃げたこと。

 

 トリプルTはロリコンだと言う事も話した。

 

 説明を終えてすぐ、トリプルTがこちらに向って身を乗り出してきた。究極技能を使う準備でもしとこうかな? 右手に……、左手に……。

 

「ご、誤解ですよ、アスナさま! そもそも告白してませんし、僕はロリコンなんかじゃないです!」

 

「なら、女の子に囲まれてたのに迷惑そうだったのは?」

 

「学園長に無理矢理女子中に放り込まれたからですよ! 僕は男なのに女子中に通わされて……」

 

「? それってうれしいことじゃないの? ハーレムだよ?」

 

「うれしくなんて全然ないですよ! クラスメイトは全員女子生徒だから男の友達は作れないですし、皆さん女子校生活が長いとあって男であるボクを意識しない行動ばかり……。僕がまだ教室にいるのに着替えたりするんですよ! 最初の頃なんてどう接していいのかわからなくて胃に穴が空きかけたんですから!」

 

「そう、なんだ……」

 

 ニィがよく読んでる本ではトリプルTみたいな立場になった男は迷惑がるのは最初だけで、数日も経てば小躍りするほどその状況に楽しむようになってたけど……。実際は違うのかな?

 

 ううう……っと涙を流し始めるトリプルT。女嫌いってわけでもなさそうだけど、このままいけばあらぬ方向へ腐りそうだ。アルヴィンもそれを感じてるのか、トリプルTから少しだけ距離をおいた。

 

「まあでも、この生活もあと半年もすれば終わるからよかったです。高校も女子校で3年も通わされることになってたら、僕は耐え切れずにこの麻帆良から逃亡してました」

 

 アハハハハ……と、トリプルTは涙を拭って笑顔を浮べた。……というか、今現在女子中学校に通って3年目になるんだ、トリプルT。

 

 残っていたコーヒーを一口で飲み干し、息を吐く。その息を吐く姿はもはや社会に疲れた中年男のそれだった。

 

 そんなトリプルTを懐かしそうに眺めながらアルヴィンがつぶやく。

 

「それにしてもタカミチが学生かぁ。破天荒だったナギもまともになって……ん? そういや、『紅き翼』のメンバーって人間じゃないのも含めてまだ4人ぐらいいなかったか?」

 

「そ、それは……」

 

 再びトリプルTの顔色が悪くなる。……すごい変化速度だ。顔芸って呼べるレベルだね。

 

 キョロキョロとあちこちに目を泳がせながらトリプルTは話し始めた。

 

「ら、ラカンさんは魔法世界にいてですねっ、ガトウさんとアルビレオさんはナギさんと一緒に行動していて、旧世界と魔法世界をいったり着たりしてて……詠春さんは……」

 

「青山詠春がどうしたのじゃ?」

 

 途中で口を閉ざしたトリプルTに、アリカが心配そうに訊ねた。

 

 トリプルTは空になっているコーヒーカップに視線を向けたまま、言い難そうに小さな声でつぶやく。

 

「詠春さんはこの日本に戻ってきていて……ですね……。今はその……ご実家のほうで療養中でして……」

 

「療養中? 負傷しおったのか? あのサムライマスターが」

 

「……はい。……心のほうに結構な傷を負ったらしくて」

 

「むむ、心じゃと?」

 

「事情が事情だけにあまり詳しく言えませんが。なんでも魔法世界の大戦とその戦後処理におわれてずっと京都のほうに帰らなかったらとうとう婚約者にフラレてしまったらしくて……」

 

「むぅ、そうじったのか……」

 

「はい……。元々、家同士が決めていた許婚という関係らしくて。相手の方とは幼なじみだけど、恋人というわけではなかったらしいんですが……」

 

「青山詠春にとってはそうでもなかった、か」

 

「ええ……」

 

 あー……うん。結構よくある話だよね。放っておいた婚約者がいつの間にか他の人のお嫁さんって。それにトリプルTの話からして、その寝取られた人は最初から青山詠春のことをただの幼なじみぐらいとしか見てなかったようだし。哀れ、サムライマスター。最初から脈はなかった。

 

 寝取られサムライマスターの話に誰もが口を閉ざし、場の雰囲気が悪くなる。

 

 そんな雰囲気の中、喫茶店の出入り口のドアが開く。

 

「アルヴィンはーん」

 

 開いたドアの方向からトリプルTの声を遮って、アルヴィンへと声がかけられる。その突然の声に、アルヴィンを含めてテーブルについていた全員が声のほうへと視線を向けると、そこには洋服を着た木ノ葉が立っていた。木ノ葉の後ろには自前の改造巫女服を装備した千草が付き人のように立っている。

 

「遅れてごめんなぁー。ちょっと千草はんの準備に手間取ってもうて……」

 

 そう謝る木ノ葉と、こちらに向って無言で頭を下げる千草。……千草の、準備。歩き方も変だし、いつもより大きな胸といい、巫女服の下は荒縄か。大方千草が悪さでもしたんだろう。女2人でお仕置きプレイ中らしい。

 

「まあ、いいから。とりあえず椅子に座れ、木ノ葉」

 

 アルヴィンが席を立ち、代わりに木ノ葉に座らせる。千草は席にはつかず木ノ葉の後ろに控える。……一見、一人だけ立たされてかわいそうに見えるけど、ドMの千草にはご褒美です。だからトリプルT、席を譲らないでいいんだよ。プレイ中の千草はやさしくされるとプレイの邪魔されたと思って呪ってくるからさ。

 

 一度席を立って、私の席にアルヴィンを座らせる。そして座る椅子がなくなった私は、アルヴィンに抱えられて特等席である膝へ乗せられる。うむ、これでOK。

 

 私が特等席についたところで、木ノ葉がトリプルTへ向ってあいさつする。

 

「はじめまして。近衛木ノ葉っていいます」

 

「はっ、はじめまして! た、タカミチ・T・高畑です!」

 

 戸惑いながらもそう木ノ葉に自己紹介を返したトリプルTだったけど、

 

「近衛? 近衛ってまさか学園長の……」

 

「うん。娘やね。まあでも、結構昔に絶縁してるから麻帆良学園での権力はないでぇ」

 

 いつもの調子でニコニコ笑いながらつぶやく木ノ葉。トリプルTは顔をドンドン引きつらせて訊ねる。トリプルTはある一点を指差して――、

 

「し、失礼ですけど、そのお腹は……」

 

「ん~……気づいたん? まだ目立ってないはずやのに」

 

 トリプルTが口元をピクピクと引きつらせる。木ノ葉は赤くになる顔を隠すように両手で頬を挟み、恥ずかしそうに笑う。

 

 ――妊娠3ヶ月。

 

 相手は言わずと知れたアルヴィンだ。いつもかけてる避妊の魔法を木ノ葉が自分で解除して、逆に悪魔が相手でも妊娠しやすくなる術を新しく開発したらしい。その新術を使って木ノ葉は見事懐妊したそうだ。

 

 木ノ葉の懐妊が判明したときはアリカもエヴァも皆驚いたなぁ……。まぁニィは相変わらずで年の離れた異母姉妹プレイが出来るとか喜んでたけど。テオドラなんかは今のトリプルTみたいに驚きのあまり倒れて――、

 

 ん? 倒れて?

 

「タ、タカミチ!?」

 

 慌てて駆け寄るアリカ。おお、トリプルTが倒れてる。トリプルTの状態は……テオドラのときよりも酷いね。泡噴いてるよ。

 

「しっかりするのじゃ! コレ! タカミチっ!」

 

「近衛……近衛って……。ううぅ、ナギさんだけじゃなく……えい、詠春、さんまで……」

 

 ――それが、トリプルTの最後の言葉だった。

 

「ぼ、僕はもうどうすれば……」

 

 ……訂正。まだ生きてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如倒れてしまったトリプルT。急いで病院へ運んで診てもらうと、原因は心労だったそうだ。

 

 胃に数箇所の穴に、鬱病の気配。一時期精神科に通院していた記録もあったそうだ。

 

「うう……ナギさん……。詠春さん……」

 

 病室のベッドの上でトリプルTが唸る。意識が回復してない今、トリプルTはずっと2人の名前と、『ガトウ』という人物の名前を呼んでいた。

 

 3人の名前を呼び続けるトリプルTを見て、アリカが心配そうにつぶやく。

 

「むぅ……。ナギと詠春を呼んだほうがいいのじゃろうか?」

 

「ナギと詠春か……。それが1番だとは思うが、ナギは魔法世界と旧世界を飛び回ってるし、詠春は病気なんだろ。この場につれてきてもあまり効果がなさそうじゃないか?」

 

「それは……そうじゃな。妾が生きておることを知ればタカミチどころではなくなりそうじゃし……。今妾たちの存在が広まるのはマズいのじゃ」

 

「まっ、連れて来るとしたら『紅き翼』のメンバーで居場所がわかりやすくて、この状況にも臨機応変に対応してくれそうなヤツだな。アリカが生きてることを知っても簡単にバラしそうにない信用できる人間……」

 

「ガトウじゃな」

 

「ああ、ガトウしかいないな」

 

 どうやらガトウという人を呼ぶことになったようだ。……というか、始めからその人の他に候補がいなさそう。

 

 アルヴィンは念話を使って学園長に連絡をとる。トリプルTの状況を話してガトウを呼んでつれてこいと言ってるみたい。

 

 念話を終えて、アルヴィンは私へと手を伸ばす。私はその手を掴んで隣に並ぶ。

 

「これでよし、と。じゃあ俺たちは帰るか。木ノ葉たちも待たせることだし」

 

「うむ。そうじゃな。またの、タカミチ」

 

「またね」

 

 トリプルTに声をかけてから3人で病室を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――京都某所にて。

 

「詠春。準備はできたか?」

 

「ああ。封印を解く呪文も、再封印の呪文も覚えた」

 

「……そうか」

 

「京に眠る伝説の大鬼神リョウメンスクナノカミ。その鬼神を倒し、再封印すれば……旧世界での俺の功績になる。この功績があれば俺は……」

 

「また婚約者として認めてもらう!」

 

「手伝ってもらって悪いな、ナギ」

 

「仲間だろ! 気にすんなよ、詠春!」

 

「それでも、ありがとう、ナギ」

 

「へへっ。じゃあ、ちょっくら大鬼神でも目覚めさせにいくとするか!」

 

「ああ!」

 

 こうして京に封じられていた大鬼神は目覚めることになり、目覚めてすぐに2人の英雄に再び再封印されることとなった。

 

 ちなみに、再封印後――。

 

 青山詠春は功績を得ることはなく、鬼神を復活させた犯罪者として即座に拘束され、もうひとりの実行犯ナギ・スプリングフィールドは現在も逃亡を続けている。

 

 なぜ2人の計画がすぐにバレてしまったのか?

 

 それは、鬼神が封印されてる神殿近くの監視カメラの映像によるものだった。

 

 大戦の英雄たちも魔法世界の魔法的なセキュリティには敏感でも、旧世界の機械的なセキュリティには鈍感だったようだ。監視カメラの映像に2人の姿が祭壇に完全武装で侵入する姿がバッチリと映っおり、祭壇に1番近い場所に存在する監視カメラには青山詠春が封印を解いて再封印するまでの姿が鮮明に映っていたのだ。

 

 それらの証拠を元に後日、青山詠春は無期限の自宅謹慎の処分を言い渡された。これは関西呪術協会の最終兵器である大鬼神を勝手に復活させたことに対し、軽すぎる処分であったが、魔法世界の英雄であることと大鬼神を再封印したほどの実力を考慮してである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルヴィンとアリカと一緒にトリプルTのお見舞いに行ったら、丁度トリプルTのお見舞いに来てた白スーツのフケ顔で『紅き翼』のメンバー、ガトウがいた。

 

 ガトウは私とアリカを見ても大して驚かず、むしろ納得したという様子でうなずいた。なんでもかなり前からアリカの生存と大方の居場所を知っていたそうだ。さすが『紅き翼』唯一の常識人にして諜報担当……なんだけど、『紅き翼』のメンバーでトリプルTとアルビレオ以外にはその情報を教えていないとか。

 

 今はアリカから魔法世界を救う方法を研究してることを聞いたり、代わりに現在の魔法世界の状況など『完全なる世界』関連のことを話したりと色々情報交換をしている。……はっきり言って私はその辺りには興味がないので聞き流してる。

 

 病院の売店で買ったお菓子を食べつつ、話が終わるのをアルヴィンと待つ。ちなみにトリプルTはベッドでおやすみ中だ。起すのも悪いので話し声も小さく静かにしてるが……実は結構前から起きてるよね、トリプルT?

 

「そういえば黒龍さま」

 

「ん?」

 

 ガトウがアルヴィンに話しかける。

 

「5年前に使ったあの魔法具は……まだあれから使われたりしてないのですか?」

 

「ん? ああ、アレか。あれ以来一度も使われてないぞ。まあ、2つの世界に散らばってるからなぁ。次に使われるのは何年後になるか不明だよ」

 

「そう、ですか……」

 

 残念そうなガトウ。だけど、そこまで落ち込んでない。むしろホッとしてる? 魔法世界を救う方法が見つかりそうだからかな?

 

「――む?」

 

 突然ガトウが別のところへ意識を向けた。あの感じからして電波を……魔力をキャッチしたんだろう。術の感じからして念話。送られてくる魔力の質から相手は学園長かな?

 

 ガトウは一言断わりを入れてから念話に応える。

 

「何かあったんですか、学園長」

 

『何かあったどころの話じゃないわい! 京で! 京都で詠春くんが……』

 

「詠春? 詠春がどうしたんですか?」

 

『逮捕されてしまったんじゃ!』

 

「逮捕って……何かあいつが仕出かしたんですか?」

 

『ナギと一緒に鬼神の封印を解いたらしいのじゃ! 幸い、すぐに再封印されたようなんじゃが……』

 

「鬼神の封印を解く? なんで詠春がそんなまねを……」

 

『そんなもんこっちが教えて欲しいわ! それに今はナギじゃ! 詠春くんはすで逮捕されておるようじゃが、ナギは未だ逃亡中らしいのじゃ! ガトウくん、ナギがこれ以上バカなまねをしでかす前に急ぎ京へ向ってくれんか?』

 

「……わかりました。ただちに京へ向います」

 

『これ以上東と西の関係が悪くなる前に、くれぐれも頼むぞい』

 

 その言葉を最後に念話が終わった。ガトウは一度大きく息を吐いたあと、こちらに頭を下げた。

 

「すみません。急用が出来たましたので、私はこれで失礼します」

 

「う、うむ……」

 

「では」

 

 もう一度アリカに頭を下げたあと急いで病室から出て行く。あとに残されたのは私たち3人とベッドの上のトリプルT(狸寝入り)。

 

 病室の窓から空を眺めながらアリカはつぶやく。

 

「人はそう変わらぬか……。ナギよ……」

 

「まあ、詠春のほうは変わったようだけど」

 

 とりあえず、今さっきベッドで意識を手放したトリプルTはこれからどうなるんだろう? 女子中で卒業コースかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 半年後――。

 

 関西呪術協会所属の呪術師、近衛木ノ葉は処女懐妊にて無事に女児を出産した。

 

 女児の名前は近衛木乃香。

 

 父親は不明。

 

 関西呪術協会では『黒龍の姫君』と呼ばれ、大切に育てられている。

 



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第24話 こうして時間は流れてゆく

 途中で6年経過します。


「あう、あうう~」

 

 一面絨毯が敷かれたリビングをはいはいしながらこちらに手を伸ばしてくる赤ん坊。私は赤ん坊の少し前に膝をついて、両手を広げる。

 

「ほら、こっちだよ、木乃香」

 

 近衛木乃香。この赤ん坊の名前だ。半年前に生まれたばかりの木ノ葉の娘で、アルヴィンとの子供である。

 

 木ノ葉譲りの艶やかな黒髪とやわらかい優しげな顔立ちをしていて、将来は木ノ葉そっくりの京都美人になることだろう。……性格のほうはあまり似て欲しくないけど。

 

「あすあ! あすあ!」

 

 木乃香が私に抱きつきながら名前を呼ぶ。私は木乃香を抱きかかえながらつぶやく。

 

「あすあじゃなくて、アスナだよ。ア・ス・ナ」

 

「あすあ!」

 

「ア・ス・ナ」

 

「う~……あすあ!」

 

「…………」

 

「あすあ! あすあ!」

 

「……まあ今はそれでいっか」

 

 ちゃんと名前を呼んでもらえないのは残念だけど。まだこの子は生まれて半年も経っていない赤ちゃんなんだし、仕方ない。家族の名前と顔を認識できてるだけでも十分だろう。

 

 私は木乃香を抱きかかえ、おもちゃであやす。木乃香はガラガラとなるおもちゃがおかしのか、元気な笑い声を出しながら笑う。本当によく笑う子だ。こっちまでうれしくなる。

 

 ガラガラで遊んでいると、ふと、木乃香が廊下へ視線を向ける。

 

 誰かリビングに来たのかな? 私も視線を向けて見ると、そこにはエヴァが立っていた。……リビングと廊下の丁度境目に、巨人の星を目指す親子を様々な柱の陰に隠れるように。

 

 エヴァに気づいた木乃香が両手を伸ばしながら叫ぶ。

 

「へばぁ! へばぁ!」

 

「う……」

 

 木乃香に呼ばれて表情を強張らせるエヴァ。素直に出てくればいいのに、エヴァは躊躇うように視線を泳がせてる。一方の木乃香はというと、エヴァに両手を向けながらまだちゃんと発音できない名前を呼び続けていた。

 

 …………。

 

「エヴァ。こっちにおいでよ。木乃香が呼んでるよ」

 

「む……だが、私は……」

 

「はぁ……。もう前みたいに突然泣くことは少なくなったから、大丈夫だって」

 

「……そ、そうか?」

 

「うん。だから早くおいでよ、このままじゃ木乃香が泣いちゃうよ」

 

「わ、わかった……」

 

 しぶしぶ……ニヤけそうになる顔を何とか我慢しながらエヴァはこちらにやってくる。エヴァが私の前に膝をついて座ると、木乃香はうれしそうに両手を伸ばした。

 

「へばぁ! へばぁ!」

 

「お、おお……。よ、よしよし」

 

 きゃいきゃいとうれしそうに笑う木乃香の頭を、エヴァはまるで割れ物を扱うように撫でた。頭を撫でられた木乃香はエヴァにヒマワリのような笑顔を向けて笑う。

 

「は、はは……。か、かわいいものだな、赤ん坊というのもは」

 

「そうだね」

 

 うん、かわいい。赤ん坊もだけど、エヴァもかわいい。木乃香が生まれてまだ数週間ぐらいのときに一度抱っこして泣かれたからって遠慮して近づかなくなったエヴァもかわいいよ。抱っこしたいのに、かわいがりたいのに指咥えて、機嫌よく名前呼ばれたらニヤニヤ笑って。

 

「ほんと、かわいいよね」

 

「ああ、そうだなぁ。――ほら木乃香、ベロベロ~、ばぁ~」

 

「きゃははは! へばぁ! へばぁ!」

 

「あっはっはっは! 面白いか! ベロベロ~、ばぁ~」

 

 ……くっ、ま、マズい……私の腹筋が崩壊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなり危なかったけど、何とか無事だった。毎日のようにアリカに鍛えられてよかったと初めて思った。

 

 今はリビングに敷いた赤ん坊用の布団で木乃香はお昼寝中。木乃香の隣にはエヴァが一緒になって眠っている。

 

 ……さてと、残った私はどうするかな?

 

 木乃香が起きるまで時間はあるし。修行しようにもエヴァは寝てるし、アリカはアルヴィンと麻帆良学園に行ってて家にいない。ニィは家いるけど、まだ寝てる。夜遅くまで何かの編集をしてたらしい。……茶々ゼロは、訓練でも本気で襲い掛かってくるからなし。

 

 うむむ……何もすることがない。

 

 まだ赤ん坊である木乃香を見守るって仕事もあるにはあるけど、このリビングって常にモニタリングされてるんだよね。

 

 だから木乃香に何かあったらすぐにわかるし、何かあっても数分かからずかけつけられるから、私がここにいて見守ってる意味があまりない。

 

 まあ、木乃香やエヴァの寝顔を眺めてるだけでも楽しいけど。

 

 することのない私がソファに座ってボーッとしてると、

 

「ただいまぁ~」

 

 気の抜けるような、やわらかくてやさしげな声と共に木ノ葉が帰ってきた。廊下を通ってリビングへ木ノ葉がやってくる。

 

「おかえり、木ノ葉」

 

「ただいまぁ、アスナちゃん」

 

 まだ寝てる2人を起さないよう小声でのやり取りだったけど、母親の声に反応したのか木乃香は目を覚ました。木ノ葉は布団の隣に腰を下ろし、目を擦っていた木乃香を抱きかかえる。

 

「ただいまぁ、木乃香」

 

「ん……おかあ、しゃん」

 

「ふふっ、よしよし」

 

 木ノ葉は安心させるように木乃香の背中を撫でる。ゆっくりと、ゆりかごのように腕を揺らしながら木乃香に微笑みかける。

 

 木ノ葉に抱かれ、甘えた声をだす木乃香。

 

「あら? ご飯が食べたいの?」

 

「んーっ、あー」

 

「はいはい、ちょっと待ってね」

 

 木ノ葉はそう言ってソファに腰掛ける。……泣き声で赤ちゃんの気持ちが分かるってすごいよね。

 

「木ノ葉、服脱ぐまで私が木乃香を抱っこしてるから」

 

「うん、ありがとう」

 

 一旦私が木乃香を預かる。

 

「もうすぐおっぱいもらえるからねー」

 

「うんしょ、と……」

 

 帯を外して、和服の胸元を肌蹴させる木ノ葉。和服って胸だけ肌蹴させるのって結構難しいんだよね。全部脱ぐのは簡単だけど。

 

「ほな、アスナちゃん」

 

「ん」

 

 木乃香を木ノ葉に渡す。木ノ葉は木乃香をしっかりと抱いて、口元におっぱいを差し出した。元気よく吸いつきながら木乃香はおっぱいを飲み始める。

 

 木ノ葉はおっぱいを吸う木乃香を愛おしそうに眺めながら微笑む。やわらかい空気が部屋に広がっていく。

 

 ……いつみてもいいなぁ。なんだか安心する。

 

「そういえば、木ノ葉」

 

「んー、なんやぁ?」

 

「悪魔にならないってホントなの?」

 

「うん、そうやでぇー」

 

 なんでもないように、木ノ葉はうなずいた。私は木ノ葉を正面から見ながら言う。

 

「でも、悪魔にならないとすぐに死んじゃうんだよ?」

 

 人間の肉体は脆いし、人間の寿命は悪魔と比べるとものすごく短い。今はそうでもなくても、10年、20年と経てば老いもやってくるし、

 

「木乃香はハーフなんだよ」

 

 悪魔と人間のハーフ。生まれる前からかなり高度な術を使い、人間とあまり変わらない成長速度にしてるけど、いずれ成長も止まり、果てしなく長い年月を生きることになる存在なのだ。

 

 長くて100年ほどしか生きられない人間のままじゃ、木ノ葉は木乃香と一緒にいられない。

 

 悪魔であるアルヴィンの眷属になることで簡単に悪魔に転生できるなら、そうするべきだと私は考えてるし、私も将来悪魔に転生して皆とずっと一緒にいたいと思っている。

 

 けど、木ノ葉は悪魔になりたくないと思っている。

 

 木乃香の頭を撫でながら木ノ葉はうなずいた。

 

「ちゃんと全部わかっとるよ。人間のままじゃ悪魔と一緒になれんことも。例え一緒になれても、少しの時間しか共有できんことも。……人間よりも寿命の長いこの子と一緒にいてあげれる時間がものすごく短こうなるのもわかっとる」

 

「だったら……」

 

「――でもな、ウチは最後まで人間のままでいたいんよ」

 

「人間のまま……」

 

 人間のままでいたいという気持ちは、はっきり言って私にはわからない。元々私は成長を薬で停止させられていたし、この姿のまま100年以上生きてるから、今さら悪魔になったとしても何も変わらない。むしろ、アルヴィンたちを一緒にいられる時間が増えるとうれしく思う。

 

 授乳が終わった木乃香の背中をトントンと叩き、ゲップをさせる。すぐにまた眠り始めた木乃香をあやしながら木ノ葉はつぶやく。

 

「それに、ウチは西の長やからな。――西の呪術協会をまとめるモノが人間じゃなかったら下もまとめられと思うし、人外になれば長になれるって勘違いさせるのもあかんやろ?」

 

「長なんか、ならなかったらよかったのに……」

 

 出産後数ヶ月で西の長になってしまった木ノ葉。長の仕事があるため、木ノ葉は長くこの家にいられない。京都にある木ノ葉の家に転移門を設置して、ドアを開ける感覚でこちらに行き来できるが、それでも長い時間京都から出ることはできないのだ。今も何かあったときのために、京都側に側近である千草が残っている。

 

 私の言葉に木ノ葉困ったように苦笑する。

 

「まあ、ウチも進んでなろうとは思っとらんかったけどなぁ。他になれそうな人間もおらんかったし。元老の爺ちゃんや婆ちゃんにアルヴィンはんのことや木乃香のことで色々わがまま聞いてもらったりお世話になっとったからな」

 

「それは……聞いてるよ」

 

 戸籍のこととか、木乃香の父親が誰かわからなくしたり、色々便宜を図ってもらってることも知ってる。西の呪術協会の元老してるお爺さんやお婆さんにかわいがられてることも知ってる。

 

「――けど、木ノ葉と別れたくないよ」

 

「ふふっ、ありがとうな、アスナちゃん」

 

 微笑みながら木ノ葉が頭を撫でてくる。いつものように。木ノ葉はニコニコと笑う。

 

 やっぱり、私は木ノ葉とずっと一緒にいたいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木乃香が生まれ、早6年。赤ちゃんだった木乃香はすくすくと元気よく育ち、小学生になっていた。

 

 少し前まではいはいで動き回っていたのに、今は嘘みたいに2本の足で走り回る。

 

 舌足らずでちゃっと名前が呼べなかったのに、今はハッキリと私の名前を呼んでくれる。

 

 おっぱいを卒業して、自分でフォークや箸を持ってパクパクとご飯を食べている。

 

 少し前までオシメを変えたりしてたのに、今は自分でトイレに行ける。

 

 書けなかった文字も、今じゃ簡単な漢字ぐらいなら書けるようになった。

 

 数えられなかった数も、今で足し算や引き算ができるようになった。

 

 幼稚園に入るまで我慢の苦手な駄々っ子だったのに、今では我慢することも覚えてる。

 

 木乃香は色んなことを毎日感じて吸収し、驚くような速度で成長していく。

 

 変化の遅い私たちに大きな驚きと変化をくれる。 

 

 本当に、子供というものはいいものだ。

 

「アスナ~、アスナ~。どうしたん?」

 

「ん? ああ、うん。別になんでもないよ、木乃香」

 

「そうなん? けど、さっきから全然給食の食べてないで?」

 

「ちょっと考え事してただけだよ。給食もちゃんと食べるから」

 

 そう言って給食を食べ始める。木乃香はしばらく箸を咥えながらこっちを見ていたけど、本当になんでもないとわかって自分の給食を食べ始めた。

 

 お昼休ご飯の時間はまだまだある。木乃香を眺めながらゆっくり食べよう。

 

「アスナさん! よそ見しながら食べるのは行儀が悪いですよ!」

 

「……いいんちょも、食事中に大声だすのは行儀悪い……」

 

「うっ……それは失礼しましたわ。ですが、よそ見しながら食べるのは行儀が悪いですし、危ないんですよ」

 

「はいはい」

 

「はい、は1回」

 

 ビシッとこちらに指を突きつけてくるのは木乃香と同い年……同級生のいいんちょ。他の小学生たちより知的で物心もついてるようだけど、いかんせん硬い。

 

 あと、注意される私の身にもなってほしい。知らないと思うし、わからないと思うけど、私は年上なのだ。……同じ小学生だけど。

 

 はぁ……。

 

 何も魔法薬の効果が丁度木乃香の小学校への入学と同じ時期に解けたからって、私も一緒に小学校に入学させることはないと思うんだけどなぁ……。学力も一応大学卒業レベルはあるんだし。

 

 アルヴィンやアリカ、木ノ葉は家族以外の集団生活に慣れるためとか、友達を作れるかも、とか……。木乃香からも一緒に行こうって誘われて入学したけど、想像以上に周りが子供なんだよね。

 

 ちなみに通っている学校は、麻帆良学園の敷地に存在する小学校。

 

『立派な魔法使い』を目指すの巣窟であり、私たちにとってある意味敵地になるんだけど、木ノ葉が住んでる京都の山奥には学校なんてないし、麻帆良学園の表向きが学校と言う事もあって最高の教育機関なんだよね。

 

 呪術者として木乃香を育てるとしたら、私たちの教育だけで十分なんだけど。やっぱり様々なことを学んで好きなように生きて欲しいからって、この学校に入れたのだ。

 

 だけど、この学校……麻帆良学園全域に張ってある意識を逸らす結界のせいかも知れないけど、テレビで見る他の地域の子供と麻帆良学園に通う子供ではかなり、違う気がするんだよね。変に無邪気すぎるっていうか……。

 

 唯一、別の意味で他の子供ちは違う、妙に大人っぽいいいんちょとは友達になれそうだけど……。

 

「あら? なんですの、アスナさん。私の顔に何かついてますか?」

 

「んー、別に」

 

 そもそも私は友達の作り方が知らなかったりする。

 

 まあずっと家族とばかり過ごしてたし、周りは大人だらけで、子供に見えても年寄りだったりしたからなぁ。友達っていう関係は今までいなかったんじゃないかな?

 

 木乃香は……木乃香からは家族であり、年が近く見えることもあって親友っぽく思われてるようだけど。私は生まれるときから木乃香の面倒を見たりしてるので友達というより、年の離れた妹だったりと家族として思ってる。

 

 ただの友達と呼べる存在は、まだいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。真っ赤なランドセルを背中にからい、私と木乃香はある場所へとやって来ていた。

 

 麻帆良学園の女子校エリアに程近い、表通りに建っている一件の喫茶店。店の名前は『龍の隠れ家』といって、アルヴィンがやってるお店だ。名前の由来は、どこかで見たらしい『○○の隠れ家』という喫茶店から取ったらしい。

 

 6年ほど前、頻繁に麻帆良散策してるから気になっていたけど、まさか店を開くなんて。……まあ店を始めた理由は、木乃香の父親が無職だと体裁が悪いとかだったけど。

 

 店の扉を開けて、なかへ入る。入店を知らせるためにドアに付けられた鈴が心地よい音を響かせる。

 

 私たちに気づいたアルヴィンがカウンター席の内側からやって来ると、木乃香は元気よく走り寄り、足元に抱きついた。

 

「ただいまぁー、お父さま」

 

「おかえり、木乃香」

 

 アルヴィンはよしよしと木乃香の頭を撫でる。木乃香は頭を撫でられ、気持ち良さそうに目を細めた。

 

「おかえり、アスナ」

 

「ん。ただいま」

 

 私もアルヴィンと挨拶を交わし、ランドセルを置いてカウンター席に座る。私が席に座ると、カウンター席の内側に設置されたドアからアリカが現れた。

 

「おかえり、アスナ、木乃香」

 

「ただいま、アリカ」

 

「ただいまぁー」

 

「いまおやつをもってくるからの」

 

「うん」

 

「はーい!」

 

 返事を返した私たちにアリカはニッコリと微笑み、おやつを用意してくれる。今日のおやつは苺のショートケーキに甘さ控えめのミルクティーだった。

 

 木乃香と隣同士に並んでおやつを食べ始める。……うむ、美味しい。さすがアルヴィン。戯れにだけど、何百年と修行してない。

 

「ほら、口にクリームがついておるぞ」

 

「ん~……」

 

「よし、取れたぞ、木乃香」

 

「ありがとぉ!」

 

 それにメイド服を着用したアリカも、なかなか……。清楚や清純さを全面に出した露出の少ない本場のメイド服を、エヴァとニィが主導になってかわいらしくリメイクしたもので、アリカの高貴な立ち振る舞いとよく合ってる。いつもはストレートにしてる髪をアップにしてまとめてるのも高得点だろう。実際、かなり人気があるんだよね。男の人だけじゃなく、女の人にも。

 

 私と木乃香がケーキを食べていると、カウンターの内側にあるドアから、もうひとりのメイドが登場した。

 

 ふんわりカールした金髪のメガネの女の人で、すっごい美人の巨乳。

 

「こんにちは、しずなさん」

 

「こんにちはぁー」

 

「はい、こんにちは」

 

 メイドはニッコリ笑顔で私たちに挨拶を返す。彼女の名前は、源 しずな。麻帆良の学園都市内に存在する女子大に通う学生で、アルバイトしにきてるメイド2号。ちなみに、麻帆良学園所属の魔法使いで、2年ほど前まで女子高生をしていたアリカと3年間ずっと同じクラスだった友達でもある。

 

 まあ、3年間同じクラスだったのは作為的なもので、元々しずなは学園長にそれとなく遠巻きからでもアリカの様子を観察して欲しいと頼まれた、完全に魔法使い側の人間だったけどね。なんでも1,2年ほど過ごしていくうちに自然と友達になったらしい。

 

 友達になってからもアリカが魔法世界の元女王であることや、アリカが住んでる家に麻帆良学園都市の影の支配者が住んでることを知らされてなかったしずなは、ほいほい誘われるままに家に遊びに来て……。

 

 1回、2回、3回と遊びに来る回数が増えていって……。

 

 ――アルヴィンに食われた。

 

 小学校以降、女子校通い+初めて接する家族や教師以外の男性+保有魔力も多く、ルックスもいいし、金持ちでもある。

 

 さらに、女の扱いに慣れてて来るもの拒まずだ。

 

 アルヴィンと知り合って1年ほどで、ついにしずなからアプローチをかけて、そのまま一気においしくいただかれたのだ。

 

 しずなを警戒していたアリカがエヴァと駆けつけた頃にはベッドの上で艶々してたらしい。

 

 まっ、それから激怒のアリカと呆れのエヴァとか色々あって、しずなはセフレの位置に収まったそうだ。たまに家に泊まりに来て翌朝艶々して帰っていくんだよね。

 

 ショートケーキの最後の一口を食べて、ミルクティーを飲みながらしずなを見る。

 

 いつみても見事な巨乳だ。将来私もあれぐらい育って欲しいけど、無理だろうなぁ。

 

「どうしたの、アスナちゃん?」

 

「んー……なんでもないよ」

 

「そ、そう?」

 

「…………」

 

 しずなは恥ずかしそうに両手で胸を隠す。――だけど、全然隠れてない。むしろ手の平から溢れてる部分が胸の大きさを強調させている。

 

 試しに私もしずなと同じように胸の前に手を当ててみる。……こちらは完全に隠れてしまう。

 

「……羨ましい」

 

「えっと、アスナちゃん?」

 

「……羨ましい」

 

「そ、その……あまり大きくてもいいことないわよ?」

 

「……そう言えるだけもってるからこそ、そう言えるんだよ」

 

 持っている者は持たざる者の気持ちを本当にわかってない。

 

「エヴァを見てみなよ。昔からずっとツルペタなんだよ。通販でバストアップの器具を買って頑張ってるのにダブルA止まりで、ブラジャーを一度も付けたことないんだよ」

 

「そ、それは……。ごめんなさい、私が軽率だったわ」

 

「わかってくれればいいよ。――あと、しずなさんは絶対にエヴァの前では胸の話は禁止だからね」

 

「ええ、気をつけるわ。私も捥がれたくはないから」

 

「ん」

 

 本当に気をつけてね。エヴァは巨乳の持ち主が基本嫌いだから。

 

「まっ、成長薬が完成すればエヴァの悩みもなくなるけどな」

 

 アルヴィンが笑いながらつぶやくけど……。

 

「でもそれってまだ5、6年は完成しないんだよね?」

 

「なにせ真祖の吸血鬼に効く薬だからなぁ。時間はそれなりにかかるさ」

 

 アルヴィンの返答に、私はしずなの胸を眺めながらつぶやく。

 

「それまでエヴァは巨乳を憎み続けるのか……」

 

「……私の胸を見ながら不吉なことをつぶやかないで欲しいのだけど、アスナちゃん」



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第25話 夜這い再び ☆

小学2年生になったばかりのある日。私はジレンマに襲われていた

 

「まさか、こんなことになるなんて……」

 

 そもそもの事の発端は、いいんちょの誕生日パーティ。

 

 あの子供っぽくないのか子供っぽいのか分からない、いいんちょの誕生日プレゼントが思いつかなかった私は、家にあったアルヴィンボールを願い事が叶う魔法の石としてプレゼントした。……正確に言うと魔法の石はひとつだけじゃ持っていても意味なくて、他にあと6つアルヴィンボールを揃えないと願い事を叶えられないんだけど。ただ置いてるだけでも綺麗なボールなので、置物のつもりで私はいいんちょにプレゼントしたのだ。

 

 本当に、単なる置物のつもりで……。

 

「はぁ……」

 

 教室での授業中。小さくため息を吐いて、隣の席に視線を向ける。

 

 隣の席ではいいんちょが椅子に座って真面目に授業を受けている。黒板に書かれたものをノートに写し、先生の話に耳を傾けていた。

 

「? どうかなさいましたの、アスナさん」

 

「……なんでもない」

 

「そうですの? なら、ちゃんと前を向いて授業を……」

 

 こちらの視線に気づいたいいんちょが、いつものように小声で注意してくる。私は注意を無視して、いいんちょの胸元を覗き込む。

 

 いいんちょの胸元……正確には左の鎖骨の少し下の位置には、アルヴィンのマークが刻まれていた。

 

「な、なんですの?」

 

 私の視線を受けて、恥ずかしそうに胸元を隠すいいんちょ。

 

「別に……」

 

 私は小さく息を吐いて、正面を向き直る。

 

 ――いいんちょの胸に刻まれたアルヴィンのマーク。

 

 人間として、悪魔と契約を結んだ証。

 

 悪魔として、人間と契約を結んだ証。

 

 強力な拘束力を持った、正式な契約の証。

 

 その契約を破棄させることは不可能であり、契約は必ず実行されなければならない。

 

 絶対的な効力を持った契約。

 

 契約という名の、絆。

 

 契約が果たされるまで切れることはない、強い絆。

 

 私には存在しない、契約という名の絆。

 

 私の体に刻まれてない、アルヴィンの所有物だと示す刻印。

 

 ……本当に、羨ましい……。

 

 いいんちょが、羨ましい。

 

 こんなことならアルヴィンボールをプレゼントしなければよかったと思ってしまう。

 

 ――でも、私がアルヴィンボールをプレゼントしていなかったら、いいんちょの弟は生まれることなく、確実に死んでいた。

 

 いいんちょがアルヴィンと契約したからこそ、弟は生まれることができたんだ。アルヴィンボールがなかったら、よくて母親しか助からなかっただろう。

 

 弟が生まれることが分かってから、私や木乃香に散々自慢し、喜んでいたいいんちょが悲しむのを見るのは、嫌だった。

 

 いいんちょには、いつも通り偉ぶっていて欲しい。

 

 落ち込んでる姿や、悲しんでる姿は見たくない。

 

 いつものいいんちょじゃないと、こっちまで気持ちが沈んでしまう。

 

 アルヴィンボールをいいんちょにプレゼントしておいてよかったと思ってるけど――。

 

 いいんちょに刻まれたアルヴィンの刻印を見ると、心が揺れる。

 

 色んな想いが私の中で駆け巡る。

 

 もう随分も前から『無』じゃなくなった私の心は、本当によく揺れる。

 

 アルヴィンのこととなると、こと振り子のように揺れ動く。

 

 どんなに小さいことでも、大きく揺れてしまう。

 

「はぁ……」

 

 窓の外から覗ける桜並木を眺めながら、私は物思いにふける。

 

 いっそのこと年齢詐称薬を使って体を成長させて処女膜をぶち破ってもらおうかなぁ……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあなんにしても。いつまで悩んでいてもしょうがない。すでに契約は結ばれていて終わったことだし、今さらどうしようもないのだ。

 

 ――過去の事を振り返るよりも、未来の事を考えよう。

 

 3日前ほどに、エヴァが冷蔵庫に隠してたプリンを食べたニィが言った言葉だ。

 

 あのときニィはプリンの賞味期限切れを理由に処分したと言い、エヴァを騙してた。エヴァも素直だからそれで簡単に騙されていたけど。あのプリンってニィに食べられる、前の日に作ったばかりだったから、賞味期限が切れることはありえないって気づこうよ。騙したニィでさえ、騙されたことに驚いてたよ。……もしかして、エヴァは永い時間生きてるし、物忘れがでてきたのかな?

 

 物忘れなら大変だ。アルヴィンに頼んでいい薬を創ってもらわないと。エヴァが本物のロリババァになっちゃう。

 

 …………。

 

 ……こほん。少し話が脱線した。

 

 とにかく今は過去の事を考えていても仕方がないから、未来の事を考えるのが専決なのだ。

 

 実際に未来の事を考えた私の目の前には、瓶詰めになったあめ玉がある。

 

 喫茶店のお手伝いや月1回もらえるお小遣いを溜めること半年。やっと手に入れる事ができた魔法薬。

 

 その名も『赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬』

 

 使い方は簡単。赤いあめ玉を食べれば大人になれて、青いあめ玉を食べれば子供になれるという魔法薬だ。

 

 流し読みした説明書には、一粒につき大体5歳前後の変化が現れるそうだ。あと、元の年齢からはあまり変化しないとも書いてあった。

 

 試しに私は赤いあめ玉を瓶から取り出してみる。基本、魔法完全無効化能力をもってる私には魔法の類は通じないが、このような魔法薬など、体内に作用するモノに限り、効力があると魔法世界で投薬されていた薬でわかっている。

 

 自室に置いてる姿鏡の前に立って、赤いあめ玉を口に含んでみると、ボンという小さな爆発と煙が起きた。

 

 体を覆い隠すほどの白い煙が消えていくと――鏡には成長した私が映っていた。

 

「これが、未来の私か」

 

 成長率が5歳前後とすると、今の姿は大体の年齢は12歳前後。7歳ボディの今よりだいぶ背も伸びてるけど、

 

「むぅ……エヴァと同じぐらいしかない」

 

 胸が小さいままだった。少しは膨らみがあるとわかるぐらいには成長してるけど、これでは前と変わらない。私の目標はあくまでしずなの爆乳なのだ。……現時点でこの程度だとおそらく永延に無理だろうが、せめてアリカや木ノ葉ぐらいは欲しい。

 

「…………」

 

 もう1個、赤いあめ玉を口に含む。17歳。17歳の私なら……!

 

 口に含んだ瞬間、再び起こる爆発と白い煙。

 

 煙が晴れた先には、

 

「お、おおっ……」

 

 成長した自分の姿に、思わず口から声が漏れた。私は鏡に映った姿を見ながら、両手で自分の胸を掴んだ。

 

「す、すごい……。胸がちゃんと掴めてる」

 

 今は掴む、というより摘まむというほうが合ってる胸が、17歳になると掴めるようになるのか。自分の胸なのが信じられない。アリカや木ノ葉の胸には負けるが、それでもC……いや、Dカップはあるんじゃないか?

 

「ふ、ふふふ……」

 

 思わず笑いが漏れた。鏡に映ってる私も同じようにニヤニヤしてる。

 

 ああ……これが成長というものなのか。

 

 今までずっと体の成長が止まっていたから、成長というものにいまいち実感が湧かなかったけど、ここまで成長した胸……自分を見ると、その実感も湧いてくる。

 

 そうか、そうなのか。私もここまで大きくなるのか。

 

「――あ。そうだ。あそこも確認しておこう」

 

 色んな意味で胸よりも大事な場所だ。ここもしっかりと確認しておかなければ。

 

 手鏡を用意し、着ていたワンピースを脱いでからベッドに座る。長くなった手足に少し戸惑いつつ、パンツを脱いて手鏡で観察する。

 

「…………。……ふむ。パイパンか」

 

 三角形の土手からスジ、お尻の穴にいたるまで見事なつるっぱげ状態。産毛すら生えていない無毛地帯が永延と続いている。これは茂みや林といった以前の問題だ。一帯がずべて砂漠地帯ではないか。見かけも今とほとんど変化が見られないし。

 

「……ま、手入れが必要なくて幸運だと思おう」

 

 成長してなかったロリマンコに少々ショックを感じるが、全く予想できなかったことでもない。私と血縁関係にあるアリカがずっとそうなのだから、当然私にもパイパンの可能性はあったのだ。……ニィが冗談で唱えたウェスペルタティア王国の王族、パイパン属性持ちという説が当たってしまったのはまことに遺憾ではあるが。

 

「これも個性と諦めよう」

 

 指で土手を撫でてみる。……うむ、ツルツルである。さらに赤いあめ玉を飲んだところで期待できそうにない。むしろ絶望の未来を知ってしまいそうだ。

 

「でもまあ、もしものときは育毛剤を作成して塗ればいいだけのことか」

 

 何かに負けた気がするから絶対それは嫌だけど。

 

「さて、と……。薬の効果の時間もあるし、急がないと」

 

 薬の効果は服用から数時間は続くらしいけど、できれば余裕をもって行動したい。

 

 私はベッドから起き上がり、ワンピースを身につける。

 

 鏡の前で髪型を整え、身だしなみをチェックする。化粧箱からリップを取り出し、唇に薄く塗る。

 

 ……よし! 完璧だ。これならいつでもどこでも戦えるだろう。

 

 戦闘準備が整ったことを最後にもう一度確認し、私は戦場へ向う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吸血鬼でいつも1番遅くまで起きてるエヴァもベッドに入る深夜4時。私は長年の訓練で身につけた高い身体能力と技術を使い、誰にも気づかれることなく、アルヴィンの部屋へと侵入した。

 

 部屋の奥に設置された大きなベッドには、熟睡してるアルヴィンが。今夜はアリカやエヴァ、木ノ葉にしずなと、誰ともセックスする予定がないので、ベッドの真ん中で大の字になって眠っていた。

 

 部屋にいるのはアルヴィンと私だけ。もはや私の邪魔するモノは存在しない。……ふふふ、あらかじめ調べておいてよかった。

 

 私はゆっくりとベッドに近づき、着ていたワンピースを脱ぐ。あらかじめワンピースの下には何も着てこなかったので、一枚脱いだだけですでに裸になれた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 肌を隠すものがないせいか、体が火照り、不思議と呼吸が速くなる。自然と内股になってしまい、股の間からは愛液が染み出してきた。

 

「う、わ……」

 

 手で触れて見ると、すぐに指がビショビショになった。いつもより愛液の量が多い。体が成長してるからかな?

 

「はぁはぁ……んっ、あっ……。いつもより、感度もよくなってる?」

 

 ――と、危ない危ない。いつもより気持ちよかったから思わずオナニーしてしまいそうになってた。私の目的はあくまでアルヴィンのペニスなんだから、オナニーの誘惑なんかに負けたらダメだ。

 

 決意を新たに私はアルヴィンが纏っていたシーツを捲り、窓側へ寄せる。

 

 体を隠していたシーツがなくなると、トランクス一枚のアルヴィンが現れた。……アルヴィンは寝るとき基本何も着ない派なのに、珍しい。

 

 けどまあ、今はそれより行動あるのみである。

 

 ちょっとやそっとじゃ起きないと知ってる私は、アルヴィンのパンツを脱がしにかかった。まずは開いてる足を閉じて、パンツの両側に両手を差し込んでゆっくりと脱がしていく。脱がせたパンツは私のワンピースの隣にでも放っておく。

 

「ふむ、まずは硬くするとこからか」

 

 アルヴィンの股の間で鎌首をもたげてるキングサイズのペニスを手で掴む。まだふにゃっとしてるペニスをニギニギすると、ドクンドクンと波打ち始めた。

 

 波打ちと共にゆっくりと大きくなっていくペニス。硬さもどんどん増していき、雁首が凶悪なエラを作りだす。ビンッと天井へ向けてペニスがそそり立つ。

 

「ふふふ……」

 

 もはや私を止められるモノは存在しない。

 

 私はアルヴィンの股の間に膝をつき、ペニスの先端にキスを落とす。片手でペニスを持ちながら裏筋に舌を這わせる。太くて逞しい竿を通って下へ向い、玉袋を口に含む。形容しがたい玉袋の感触に、独特の味や臭いが私の口から全身へと広がっていく。

 

「んぐ……んむむ……」

 

 もごもごと口内で玉袋を動かしながら温める。もちろん手で竿を上下に扱きながら。そんな私の愛撫に反応してかアルヴィンのペニスからカウパーが漏れ始めた。

 

 私は口の中で温めていた玉袋を吐き出し、ペニスに両手を添える。こちらを向くように少し反らして、先端を口に含む。

 

「あ、ふ……ん、ふぅ……」

 

 あまりの大きさに顎が外れそうなるが、伊達に夜這いをかけてない。本番こそはなかったものの、フェラチオや素股、マットプレイと、あらかたのプレイは習得しているのだ。窒息しないようペニスの位置を調整し、鼻で呼吸を行なう。

 

 私の口内が気持ちいいのか、アルヴィンのペニスがピクピクと震えた。ふふっ、まだまだこれからだよ、アルヴィン。

 

 小さく笑みを漏らし、成長した胸でアルヴィンのペニスを挟む。――そう、挟んだのだ。押しつけるや擦りつけるではなく、胸の谷間にアルヴィンのペニスを挟んだ。ペニスの竿を胸で挟んだまま、谷間から顔を出してる亀頭に舌を這わせる。

 

「ちゅ……レロ……ふふっ、おいしい」

 

 美味ではないが、おいしかった。口に広がってる味がアルヴィンからのモノと思うと、いくらでも飲むことができた。

 

「私の初めてのパイズリ。気持ちいい? アルヴィン」

 

「んっ……むぅ……」

 

「うん、気持ちいいんだね。胸の間からアルヴィンの気持ちが伝わってきてるよ。私のおっぱいに挟まれて射精しそうになってるんだね。いいよ、アルヴィン。全部私が受け止めるから」

 

 胸の両側に手を当てて、挟んでいるペニスに圧力をかける。体ごと動かしながらペニスを扱く。

 

「く……」

 

 アルヴィンが小さく声を漏らした。胸の中でペニスがビクビクと震える。――ここだ!

 

「じゅるぅぅっ……!」

 

「――っん」

 

 射精口に唇を重ねて吸い込む! すると口の中で大きく跳ねて――、

 

 ビュッ! ビュルルルルゥゥ! ビュッビュッ!

 

 ペニスが爆発した! まるで濁流のような精液が口のなかへ放出される!

 

 私はペニスを深く咥え込み、しきりに喉を動かす。抵抗は一切しないで、そのまま胃のなかへ精液を収めていく。

 

「うぶぶっ……うぐ……ごくごくごく……ッ! んぶっ……ごくごく…んっ、ぶはぁっ……」

 

 完全に射精が終わったところでペニスを口から離す。大きく息を吸い込み、新鮮な空気を取り込む。口のなかにまだ残ってる、生臭くて、喉に絡んでくるブニブニした精液の味が私のなかに染み込んでいく。

 

 私は体液で濡れてテラテラと怪しく光ってるペニスを再度口に含み、竿に残ってる精液までしっかりと吸い込む。

 

「じゅるるるぅ……む、んん……」

 

 口いっぱいに溜まったところでペニスから口を離す。唇を少しだけ開けて、舌を動かし精液を泳がせる。唇の端から精液が垂れて胸へ伝う。それを指先で掬い取って、そのまま手を口に当てる。こぼれないように手で口を塞ぎ、一思いにごくんと喉を鳴らして精液を飲み下す。

 

 私の喉を通って精液の塊りが胃へと向う。ゆっくりゆっくり、胃のなかへ。

 

 ……ああ、本当に、いい……。

 

 ゾワゾワと全身が震える。

 

 私は自分のお腹に手を当てて笑みを浮かべる。……今ここに、私のなかにアルヴィンの精子が入ってる。子宮に射精されてもないのに、ただそれだけで私は悦びを感じ、イッてしまう。オマンコからドプドプと愛液を漏らし、シーツに大きなシミを作り出してしまう。

 

「はぁはぁ……はぁはぁ……」

 

 自分が発情してると、自覚する。私の体が、心がアルヴィンを求めてる。

 

 普段の夜這いならこのままペニスを挟んで素股をしたり、顔にオマンコを押しつけてクンニをしたりして欲望を沈め、終わらせるところだけど……、

 

「今夜は違うよ」

 

 笑みを浮かべ、立ち上がる。アルヴィンの腰を跨いで、両手を股間へ持ってくる。

 

「エヴァやアリカには子供の体だから止められてたけど、今夜は大人の体だから何も問題ないよね」

 

 相撲のしこを踏むように大きく足を開きながら腰を落としていく。見かけはツルツルで相変わらずのロリマンコだが、確かに生長してるのだ。私はロリマンコを両手で開き、位置を調整する。

 

 ペニスの先端を膣口にくっつける。

 

「――っ」

 

 膣口からペニスの感触が伝わってきた。ペニスから漏れてるカウパーと私の愛液が混ざり合う。ペニスを通してアルヴィンの体温が私へ流れ込んでくる。

 

 ……ま、マズい、少し、イッちゃった。

 

 まだ挿入してないのに、何度もイってしまってる。……オナニーのしすぎで感度が上がりすぎてるようだ。

 

「……なかに入れたら、どうなるんだろ?」

 

 今でさえ、このありさまだ。挿入してピストンされて精液を中に出されたら、私はどうなってしまうんだろう?

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 ――んっ。

 

 ……よし、始めよう。

 

「いくよ、アルヴィン」

 

 ゆっくりと私は腰を落としていき――、

 

「――んー……むにゃ? あれ、アスナ?」

 

「――なっ!? 木乃香!?」

 

 壁側に寄せたシーツから木乃香が現れた! 少し大きいサイズのパジャマを着てる木乃香は寝ぼけているのか目を擦りながらのん気にあくびをかみ殺しているが、こちらはそれどころではない! 挿入前のカウントダウンをしてる最中だったのだ! 私は裸で、その下にはアルヴィンがいて、私のオマンコにはアルヴィンのペニスが当たってて、ほんの少し腰を下ろすだけで入ってしまうところなのだ!

 

 ど、どうにかしないと、この状況……!

 

 全身から嫌な汗を流れ出す。一方の木乃香はというと、

 

「あれー? アスナ、体大きくなってない?」

 

 いつものやんわりした口調の京都弁で首を傾げていた。

 

「こ、これは……その……」

 

 とりあえずアルヴィンの上からどこうと、立ち上がろうとした瞬間――、

 

「――ひぐっ!?」

 

 少し足が滑り、ペニスが膣口にめり込んだ!

 

 ミチっと嫌な音が震動となって伝わり耳から響いてくる。き、キツ……い!

 

 わかっていたけど、あまりにキツすぎる! サイズが、まるで合っていない!

 

「あわわ! アスナ、大丈夫なん!?」

 

「だ、大丈夫……だから。――っんぐ!」

 

 痛みで、腰が上げられない……! それどころか、自分の体重で腰が下がって……ッ!

 

 まるでバットを無理矢理挿入されてるみたいだ! オマンコが、壊れちゃう!

 

「く……ふぎぃ……はぁはぁっ、くっ……!」

 

「ほ、ほんまに大丈夫なん? 父さま起そうか?」

 

「それは……ダメ。ほんとに、私は大丈夫だから」

 

「で、でもぉ……」

 

 心配そうに見つめてくる木乃香。確かに、今は快楽よりも痛みのほうが大きくて苦しい。まさかここまでキツいとは思わなかった。

 

 ――けど、

 

「……いぃ」

 

「アスナ?」

 

 この痛みも、すべてアルヴィンから私に刻まれてるものだ。そう思うと、うれしく感じる。

 

 すごく痛い。すごく苦しい。すごくキツい。

 

 ――けど、

 

「あ、あぁ……」

 

 幸せだ。

 

 これ以上ない幸福感を私は感じてる。

 

 子宮口に亀頭がめり込み、子宮を持上げられ、苦痛を感じてるが。同時に幸福感を感じてる。

 

 私は自分で自分を抱きしめる。

 

「あはぁぁ……」

 

 ゾクゾク、ゾクゾク背筋が震える。

 

 結合部から見えるのは赤い血の線。私の処女膜がアルヴィンのペニスによって奪われたことを示す証。

 

「やっと、ひとつになれた……」

 

 ずっと、我慢してたんだ。ずっとずっと、我慢していたんだ。

 

「アルヴィン……」

 

 私は体を倒し、アルヴィンに覆いかぶさる。大きな胸板に顔を埋め、キスをする。

 

「あ、アスナ……?」

 

 視界に困惑してる様子の木乃香が映る。……そういえば、忘れてた。

 

 私はアルヴィンの胸に顔を埋めたまま、木乃香に手を伸ばす。

 

 ビクッと震える木乃香の頭をやさしく撫でて、微笑む。

 

「私は大丈夫だよ、木乃香」

 

「……ほんまに?」

 

「うん。むしろ幸せだよ」

 

「幸せ?」

 

「うん。やっとアルヴィンとひとつになれたから」

 

「ひとつって……」

 

 木乃香の視線が私の腰へと移る。私はアルヴィンの胸に手をついてゆっくりと起き上がる。

 

「――っ」

 

 少し動いただけでも流れる激痛。私は激痛を感じつつも起き上がり、木乃香へ向って手招きする。

 

 恐る恐る近づいてきた木乃香に、私は指差しながら教えていく。

 

「ほら、アルヴィンのペニスが私のオマンコに入ってるでしょ? これは、セックスっていう行為なんだよ」

 

「……セックス?」

 

「うん。子作りって言ったほうがわかりやすいかな? こうして赤ちゃんができるんだよ」

 

「これで赤ちゃんができるん?」

 

「そう。この状態でアルヴィンのペニスから精液が出れば、私の卵子と結びついて子供ができるの。――まあ、私の今の体は魔法薬で成長させた一時的なものだから、子供はできないんだけどね」

 

「魔法薬飲んだからそんな姿になっとったんやね。――えと、じゃあなんで子供もできんのに父さまとセックスしとるん?」

 

「それは……気持ちいいから」

 

「気持ちいい?」

 

「うん。好きな人とセックスするのはすごく気持ちいいんだよ」

 

「けど、アスナのお股から血ぃ出てですごく痛そうやで……?」

 

「確かに痛いよ。すごく痛い。でも、初めてが痛いのは普通だし。アルヴィンからだったら、この痛みも幸せだと私は思う」

 

「アスナも千草姉ちゃんみたいなドMさんなん?」

 

「……木乃香、どこでそんな言葉を……」

 

 予想外の返答に私は頭に手を当てる。

 

「ニィ姉からやけど? イジメられて悦ぶ人のことをドMと呼ぶって。千草さん、母さまや父さまにイジメられて悦んでるからドMの変態さんなんだって」

 

「そうなんだ……」

 

 ニィ……木乃香に何を教えてるんだ? 私のはまだ性教育の範囲だからセーフだけど、アブノーマルな性癖について教えるのはアウトだよ。

 

「アスナは変態さんなん?」

 

「――っ」

 

 黒曜石のように煌く瞳が私を射抜く。……これで少し感じてしまった私は、変態の気がありそうだ。少し落ち込む。

 

 ――でも、まあいいか。

 

「木乃香。私も今まで自覚はなかったけど、アルヴィン限定で変態だと思う。冷静に考えると完全に依存してるし、そんな自分が好きだと思ってる。――だから、私は堂々と木乃香に宣言するよ、私は変態だと」

 

「そ、そう……」

 

 木乃香に引かれた気もするが、構わない。これが、今の私なのだ。

 

「――っん」

 

「ど、どうしたん、アスナ?」

 

「……大丈夫だよ、木乃香。ちょっと、なかで跳ねただけだから」

 

「え? 跳ねるって……?」

 

 木乃香は首を傾げてくるが、私はそれどころではなかった。ただでさえギチギチなのになかで元気よくビクビクと跳ねてくるのだ。つい先ほどまでバカみたいにイキ続けていた私が、この刺激を耐えられるわけもない。

 

「あ、あああ……っ!」

 

「アスナ……?」

 

「くっ、ふ……い、あああぁっ!」

 

 まるで雷にでもうたれたかのようにビクッ、ビクッと体が震える!

 

「はぁはぁっ、はぁはぁっ……い、いくらなんでも、すごすぎる……!」

 

 送られ続ける刺激に目の前が真っ白になる!

 

「くっ……!」

 

 意識を失いそうになりながらも、アルヴィンのお腹に両手をついて必死に体を支える! この状況で意識を失うわけにはいかない! まだ、私はアルヴィンの精子を子宮で受け止めていないのだ! なんとしても……なんとしても初体験は最後まできっちりやり遂げてみせる!

 

 私は気合を入れなおし、前後に体を動かし始める!

 

「……うっ、くぅ……んっ!」

 

 少し動かすだけでも膣壁に引っかかってるペニスの雁首が、苦痛と共に快楽を送ってくる!

 

「はぁはぁっ……はぁはぁ……」

 

 私は送られ続ける刺激に耐えながら、腰を前後に揺すり続けた。

 

 何度も。

 

 何度も……。

 

 何度も、何度も、何度も。

 

「……く、ふ……あはっ、あはははは……」

 

 腰を揺らしながら笑い声をあげる。

 

 アルヴィンの体に覆いかぶさり、体をすりつける。筋肉質な胸板に舌を這わせ、キスマークをつけていく。

 

「ああ……アルヴィン」

 

 今……この瞬間、アルヴィンは私だけのモノだ。

 

 今、アルヴィンから愛を貰ってるのは私。

 

 今、アルヴィンを愛してるのは私。

 

 今、アルヴィンと愛し合ってるのも私。

 

 今、私たちの邪魔をするものはいない。

 

 今、アルヴィンの精を受け止めてあげるから。

 

 今、アルヴィンの精を受け入れてあげるからね。

 

「大好きだよ、アルヴィン。私は、あなたを愛してる」

 

 ――心の底から、愛してる。

 

「――あっ」

 

 なかでビクビク震えてる。

 

「ふふっ、射精したいんだね、アルヴィン」

 

 私はゆっくりと起き上がり、ロリマンコに力を入れる。ニィとの訓練で身につけた技を使い、ペニスに刺激を送る。

 

「はぁ……はぁ……。いつでもいいからね、アルヴィン」

 

「む……、んっ……」

 

 アルヴィンの顔を少し歪む。体が動いて――、

 

「く、んっ!?」

 

 ビュビュッ! ビュゥウウウウ! ビュウウウッ!

 

 射精が始まった!

 

「あああっ!?」

 

 突然吐き出された大量の精液に悲鳴をあげる! あ、熱い! 熱湯みたいに熱くて……子宮に染み込んでいく……ッ!

 

 どんどん内側からあふれていき、目の前が白く……染まっていく。

 

 全身が……心が……内側からアルヴィンに染められていく。

 

「や、うううっん……! すごいぃぃ……!」

 

 勝手に口から声が漏れる。

 

 手足の感覚まで消えていき、精液のことしか考えられなくなる。

 

 これが……本当のセックスなんだ……。

 

 ニィが、散々自慢してた理由が今ならわかる。

 

「く、ううっん……! ……い、イクのが止まらない……ッ!」

 

 これは、ダメになる。

 

 オナニーができなくなる。

 

 この満足感や幸福感はオナニーと比べものにならない。

 

 あまりに気持ちよすぎて、戻れなくなる。

 

「ああ……」

 

 ニィが自慢したくなって当然だ。私だって自慢したい。

 

「ふふっ……」

 

 アルヴィンの精液を最後の一滴まで子宮で受け止めてから、私はゆっくりと前に倒れる。アルヴィンの胸に顔を埋め、大きく息を吐く。

 

 ……心地いい虚脱感。

 

 全身が重く、股も痛いが、全身から力が抜けて気分もいい。

 

「……ん? アスナ?」

 

「アルヴィン……」

 

 目を覚まし、こちらに顔を向けたアルヴィンに両手を伸ばす。首に腕を絡めて引き寄せ、顔を近づける。

 

「どうしたんだ、その姿? 幻術みたいだが……」

 

「大好きだよ、アルヴィン」

 

「?」

 

 疑問符を浮べてるアルヴィンをかわいらしく思いながら、私は唇を重ねる。

 

 ゆっくりと唇を離し、

 

「私はアルヴィンが大好き」

 

 もう一度つぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスナ? おーい……寝てるのか?」

 

 声をかけながら父さまがアスナの体を揺さぶるが、アスナは気持ち良さそうに眠り続けていた。

 

 起きないアスナに、父さまは小さく息を吐く。頭をかきながらつぶやく。

 

「あー……夜這いは何度かあったけど、まさかセックスまでしてくるなんてなー」

 

 ……夜這い? ようわからんけど、さっきみたいなことしてたってことなんかな?

 

 隠れるように被ったシーツのなかで息を潜めながら、私は首をかしげる。

 

「でもまあ、いいか。どうせ体が成長すればいずれする予定だったんだし。5,6年ぐらい誤差の範囲だろ」

 

 そう言って父さまはアスナの頭を手で撫でる。乱れた髪を整え、

 

「――そういえば、今夜は木乃香と寝てなかったけ?」

 

 ――っ! こ、ここは寝たふりや!

 

 寝たふりをする理由は、ないけど。咄嗟に私は寝たふりをした。いつもみたいな寝息をだす。

 

「いたいた。……ん? 寝てるのか?」

 

 私の体を隠してたシーツが少し持上げられる。父さまがほんまに寝とるか確認するように顔を近づけてきた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「木乃香?」

 

「すぅ……すぅ……」

 

「……寝てるか。――さて、じゃあアスナをどうにかしないといけないな」

 

 持上げていたシーツをそっと戻し、父さまはベッドから降り始める。私はシーツとベッドの間にできてる隙間からその様子を覗く。

 

 まずは体の上に乗ってるアスナの両脇に両手を差し込んで持上げ、ベッドに寝かせる。そして体を起こしてベッドから降りると、床に置いてるアスナの服を手に取った。それを丁寧に畳んで腕にかけると、ベッドに戻ってきてアスナを横抱きにして抱え上げた。

 

「まずは風呂で洗って……シーツは魔法で綺麗にすればいいな」

 

 ……お風呂? お風呂に行くん?

 

 お姫さまだっこでアスナを抱えたまま、父さまは部屋から出て行く。

 

 …………。

 

 2人の足音が完全に消えたのを確認してから、私はシーツから顔を出す。……うん、いないようやね。

 

「ふぅ……」

 

 ゆっくりと息を吐く。寝たふりがバレんでよかったぁ……。

 

「――あ、そういえば……」

 

 さっきまで父さまとアスナが寝ていた場所を観察する。そこには赤いシミと、

 

「なんや、これ?」

 

 ブニブニしてる白いものがあった。

 

 それは生まれて初めて見たものだった。試しに顔を近づけて臭いを嗅いでみたけど、なんだかわからなかった。手で触ってみてもブニブニしてただけだった。

 

「んー、なんやろー?」

 

 すごく不思議なもの。アスナから出たもの? ……うんん。なんとなく、父さまのものっぽい。

 

 わからないけど、そう感じる。

 

「んー……、むー……ん?」

 

 ……ん? あれ?

 

「んむむ?」

 

 いつの間にか、指を咥えてた。白いものを触った指を。……あれ?

 

 ゆっくりと口に入れていた指を出す。唾液で少しふやけた指を見ながら、首をかしげる。

 

「なんでウチ、指舐めたんやろー?」

 

 んー……わからん。――けど、さっきの白いもんの味はどうだったんやろ?

 

 知らないうちに食べてたからよくわからなかった。

 

「むー……」

 

 白いものは、まだたくさんシーツの上に残ってた。

 

「……ちょっとだけ、舐めてみようかな?」

 

 白い塊に手を伸ばして、指につける。ブニブニした塊を親指と人差し指で摘まんで、口に入れてみる。

 

「んー……んっ? 美味しい?」

 

 お菓子みたいに甘くないけど、美味しかった。

 

 口から全身に染み込んでいくみたいに広がっていき、不思議と体から力が溢れてきた。

 

「……魔力? これ、魔力がたくさん籠められてる?」

 

 魔力を回復する魔法薬だったのかな? けど、この魔力の感じは父さまの魔力やし……、

 

「あ……もうない」

 

 気づいたら全部なくなってた。

 

「んー……まだ食べたかったんやけどなぁ……」

 

 ちょっと残念。

 

 やけど、まあええか。

 

「アスナに訊けばなんやったのか教えてくれるやろうし」

 

 魔力のほうもお腹いっぱいや。

 

 父さまの魔力を1番感じるお腹に手をあてる。

 

「えへへっ、父さまの魔力。うーんっ、父さまに抱きしめられてるみたいやー」 

 

 熱くなった顔に両手を当てる。

 

 えへへへ……んー、どうしてもニヤけてまうなー。




 そろそろアスナ編が終わります。


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第26話 起こり続ける想定外

 アルヴィンに夜這いを仕掛け、処女を散らしてからもう2日。やはり私のロリマンコにアルヴィンのペニスは大きすぎたのか、未だに股から違和感が取れないでいた。まるでバットを股の間に挟んでいるような感覚がある。

 

「あら? アスナさん、歩き方が少し変ですわよ? どうかしたんですの?」

 

 隣を歩いているいいんちょが心配そうに訊ねてくる。私は首を横に振って返す。

 

「うんん。なんでもない」

 

「そうですの?」

 

「うん。全然問題ないから」

 

 むしろ、絶好調。この違和感が少女から女へと成長する過程だと思うと、元気になる。

 

「それよりも、いいんちょ」

 

「はい?」

 

「今年は元気だね。去年の遠足のときはすぐにバテてたのに」

 

 毎年行なわれている麻帆良学園の敷地を巡る遠足。平地が多く、休憩も小刻みに挟まれるとはいえ、かなりの距離を歩くこの遠足で、去年いいんちょは早々にバテていたのだ。

 

 いいんちょは得意げに胸を張りながら言う。

 

「当然ですわ。去年の私より、今の私は成長しているんですから。この程度でバテたりしませんわよ。お姉ちゃんになったことですし、かわいい弟にみっともない姿なんて見せられませんわ」

 

 ふむ、姉か……。

 

「ん? どうしたん、アスナ?」

 

 隣を歩いているニッコリ笑顔の木乃香。立場的には妹分なのだけど、いかんせん私の体が同い年のロリボディで同級生だからか、姉として見られていない気がする。この場で木乃香に自分を姉と呼ばせることは簡単だけど、それでは真の姉としてではなく、単なる遊びと取られてしまうだろう。

 

 ――まっ、あと数年もすれば私の体が成長するから、そのとき木乃香には姉の威厳を見せればいいか。

 

「さあ、しゃべってないで先を目指して歩きましょう」

 

「おー」

 

「はいはい」

 

 いいんちょの掛け声に元気よく手を挙げる木乃香。息を吐きながら私もいいんちょにうなずき、歩く速度をあげる。

 

 この股の違和感が消えたら、また夜這いを仕掛けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 股の違和感が完全に消え、アリカやエヴァたちの予定をそれとなくリサーチしながら夜這いのタイミングを見計らっていると、予期せぬ事態が起き始めた。

 

「むむ……」

 

 予期せぬ事態の発生源は、またもやいいんちょだ。

 

 去年から一緒のクラスメイトであり、今年の春に弟が産まれ、姉になった女の子。私の初めての友達である。

 

 そんないいんちょの体から、魔力が漏れ出ていた。

 

 ……なんでいいんちょから魔力が?

 

 弟のことでアルヴィンと契約を交わしていたことはわかっている。魔力を感じても、アルヴィンのものだったらその理由もわかるが、今漏れてる魔力はいいんちょの魔力だった。

 

 魔力自体、生き物なら誰でも大小関わらず有しているものだし、感情や体調によって少しぐらい漏れても不思議じゃないけど、

 

「やっぱり、コントロールしようとしてる……」

 

 いいんちょは明らかに体から漏れた魔力を漏れないよう、体に押し留めようとしていた。

 

 力任せで素人まるだし。逆に魔力が漏れて違和感を感じるいいんちょの魔力コントロール。

 

 だけど、以前は……数日前までは見られなかった行動だった。

 

 ……いいんちょが魔法を知り、覚え始めた?

 

 そうでなければ説明がつかない行動。注意して観察すれば、きちんと魔力コントロールの基本を行なっているのがわかる。

 

 やっぱりいいんちょは誰かに師事して魔法を学んでる。

 

 その誰か、というのはアルヴィンではないだろう。

 

 普段は喫茶店のほうに出てるし、契約を結んだとはいえ、子供に魔法を教えようとは思わないと思う。

 

 いいんちょの家が元々魔法使いの家系か、それに関係する立場の人間で、両親か、雇った人間に魔法を教えさせてる、というほうが近そうだ。

 

「――けど、なんで今なんだろう?」

 

 普通、両親とも魔法使いの場合、魔力の暴走を防ぐためであったり、無意識下でもコントロールすることができるよう、その子供は幼い頃から魔力コントロールを教わるものだ。片親で、魔法関係者がいない。もしくは、何らかの理由で両親が魔法関係者にしたくない場合は、最初から魔法や魔力について学ばせない。そうすれば一般人として、魔法関係者とは思われず、狙われ難くなるからだ。

 

 それらを踏まえて、この不自然なタイミングで魔力コントロールを覚え始めたいいんちょ。

 

 おそらくキッカケは、アルヴィンとの契約だろう。

 

「…………」

 

 いいんちょが結んだ、アルヴィンとの契約……。

 

 契約内容自体は秘密だと言われて教えてもらえなかったが、魔法を覚え始めたいいんちょを見てると、なんだか碌でもないことになりそうな気がする。

 

 しばらくはいいんちょから目を離さないほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いいんちょの監視を続けながら夜這いのタイミングを窺うこと、数ヶ月。……そう数ヶ月だ。数ヶ月前に処女を捧げ、股からの違和感も完全になくなり、さあこれから夜這いかけ放題だと思っていたのに、私はあれから一度も夜這いをかけることで出来ないでいた。

 

 その主だった理由というのが、アリカとエヴァ、木ノ葉といった大人たちの存在である。毎晩のように、日によって入れ替わりながらアリカたちはアルヴィンの寝室へ向かい、アルヴィンとセックスするために肝心の私が夜這いをかけられないのだ。

 

 そのアリカたちがアルヴィンとセックスしないときに夜這いをかけにいこうとすると、今度はドア越しからしずなやニィ、千草なんかの喘ぎ声が聞えてきたり、木乃香が気持ち良さそうに寝ていたりと必ず邪魔が入ってしまう。

 

 数ヶ月前にしたように木乃香の前でするのも……興奮するが、それはダメだ。怒られる。実際、魔法薬を使って私がアルヴィンに夜這いをかけたことをポロッと漏らした木乃香である。

 

 ……うん。あの時はアリカやエヴァが烈火のごとく怒って怖かった。

 

 一応、私も精神や実年齢でいけば立派な大人なんだから、大人の体になったらセックスしても問題ないって反論して万年幼児体型のエヴァを黙らせたけど、木ノ葉は……。

 

 まだ小学生の木乃香にセックス見せ付けたことに怒って、怒られて……、

 

 その日の深夜に、まさかのお仕置き青姦レズプレイさせられたんだよね……。犬耳と尻尾付きで。麻帆良学園都市と私たちの土地とを区別する壁の内側、つまり世界樹を中心に広がってる大きな庭で、四つんばいにさせられながら、尻尾ディルドーをお尻に突っ込まれたまま、歩かされる……。

 

 オプションで付けられた首輪とリード。

 

「ほな、行こうかアスナちゃん」

 

「うう……」

 

「んー? 返事が聞えんなー? 『ワン』はどうしたんかなー?」

 

「……わ、ワン」

 

「うん、ええこやねー。ほな、行こうかぁー」

 

 木ノ葉にリードを引かれながら道を四つんばいで歩かされる。歩く度にお尻に入れてあるディルドーから違和感が伝わってくる。

 

 周囲を木々で囲まれた庭とはいえ、全裸でのお散歩プレイである。恥ずかしくないわけがなかった。

 

 道の端に取り付けられた小さなライト以外光源がない、真っ暗な道。数メートル先も見えない真っ暗な森のなかからはいくつかの視線を感じた。小さな風の音や葉の音が聞える度に私はビクビクと恐怖する。

 

「こ、木ノ葉……」

 

「んー? どうしたんやぁ、アスナちゃん」

 

「その……も、もう許し……」

 

「ん~? 声が小そうてよく聞えんなぁ。もしかして、おしっこしたいん?」

 

「え……?」

 

「丁度よう、木もあることやし。そこでしてええよ」

 

「そ、そこって……?」

 

 木ノ葉が指差した場所は何の変哲もない木だった。何を言ってるのか理解したくなかった私が木ノ葉の顔を見返すも、木ノ葉は笑みを浮かべたまま立ち止まっている。

 

「ほら、まっとってあげるから、ゆっくりしてええんよー」

 

「…………」

 

 動かない木ノ葉。私は覚悟を決めて、犬のように片足を挙げておしっこをする。

 

「う、うう……」

 

 自分にかからないよう、大きく足を上げて。シャーとおしっこが木から地面に跳ねる音を聞きながら、おしっこを出す。

 

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……ッ!

 

 犬耳と犬尻尾、首輪にリード以外何も着てない状況で、お外で見られながらの放尿だ。

 

 屈辱と共に恥辱を味わわされる。

 

「ん。終わったようやね。ほな、お散歩続けようか」

 

「わ、ん……」

 

 リードを引っ張って歩き始める木ノ葉。私は四つんばいであとに続いた。

 

 ……結局、この屈辱と恥辱にまみれたお散歩は、庭を一周するまで終わることはなかった。

 

 本当に何故、私はアリカとエヴァに反論したとき、精神は立派な大人と言ってしまったんだろう?

 

「はぁはぁ……思い出しただけで……んんっ……」

 

 いたいけな子供だと主張していれば、千草のような変態に目覚めることはなかったのに……。

 

「うう……木ノ葉めぇ……」

 

 いつものやさしげな眼差しとは正反対の冷たい木ノ葉の視線……。ニィがコレクションしてるAVに出てくる女王さまなんて目じゃない真性女王の視線や声は、本当に危険だ。特に、木ノ葉は飴と鞭の使い分けが絶妙すぎる。木ノ葉の手にかかれば数時間のお仕置きプレイでどんな人間でもドMに覚醒させてしまうことだろう。

 

 直属の弟子である千草がドMのド変態になるのも当然だ。変態的な触手プレイが大好物になるわけだよ。私も今回の件で露出プレイに目覚めそうだ。

 

「はあぁぁ……」

 

 変態レベルマックスの千草が私を仲間に引き込もうと手招きしてる姿を思い浮かべ、大きく息を吐く。

 

 ――とにかくだ。今は自分の身に起きた悲劇ではなく、今の、これからのことだ。幸い今夜は誰ともアルヴィンとセックスしないから夜這いをかけるには絶好のチャンスなんだから、いつまでも自分の部屋でオナニーしてるわけにもいかないのだ。

 

 思い出しオナニーを止めて、私はベッドの下に隠してる年齢詐称薬を飲んで体を成長させる。17歳ほどの体に成長させた私は、以前ニィにプレゼントされたセクシーな下着に着替える。姿鏡を使って身だしなみを整え、気合を入れてドアを開け――、

 

「アスナちゃん、そんな格好でいったいどこに行こうとしてたんかなぁ?」

 

「こっ、木ノ葉!?」

 

 よりにもよって1番見つかりたくない相手に見つかった!

 

「そんな姿になって行く場所といったら、アルヴィンのところだろうさ」

 

「まったく……やはりこりておらんかったんじゃな」

 

「エヴァ……アリカまで」

 

 待ち構えていたかのようにドアの前に立っていた3人。……まさか、監視されていた!?

 

 ショックを受ける私に、偉そうに腕を組んでるエヴァが言う。

 

「何を勘違いしてるか……大体予想がつくが、違うぞ。――私たちがおまえの部屋に着たのはアルヴィンを捜していたからだ」

 

「へ? アルヴィンを捜す? アルヴィンは家にいないの?」

 

「まあな。……はぁ、まったく。あの性欲魔王はどこに何をしに行ったのやら」

 

 呆れながらため息を吐くエヴァ。……たぶんだけど、女じゃないかな? 

 

「アスナ~」

 

「ん、木乃香?」

 

 私の膝に抱きついてきた木乃香。私の顔を見上げながらニコニコ笑顔を浮べる。

 

「また大きくなっとるんやね、父さまに夜這いかけるつもりやったん?」

 

「うん。まあね」

 

「ならウチもアスナと一緒に父さまに夜這いかけに行ってええ?」

 

 ニコニコ笑顔で訊いてくる木乃香。……え?

 

「夜這い? 木乃香もアルヴィンに夜這いかけたいの?」

 

「うん! 父さま大好きやし、白いのすっごく美味しかったから」

 

「……白いの?」

 

「そう、白くてブニブニしとるやつ!」

 

 ……それって精液だよね? 私は木ノ葉たちの顔を見る。私の視線を受けて、うんざりした様子でエヴァがつぶやく。

 

「木乃香がアルヴィンの味を覚えたのはおまえのせいだぞ、アスナ」

 

 そう言われて思い出す。夜這いをかけたあの夜、盛大にイッたあと片付けしないで失神してしまったことを。おそらく、私が失神したあとでシーツに残っていた精液を木乃香が舐めたんだろう。

 

「けど、エヴァ。木乃香が精液を飲みたがるのはおかしくない?」

 

 味もマズいし、飲みにくい。まだ成熟してない子供の木乃香が飲みたがるものじゃないと思う。

 

「……木乃香は悪魔と人間のハーフだ。別におかしくはないさ。悪魔の性質も受け継いでる木乃香にとって魔力は食事でもあり、男の精とは魔力や気が大量に込められたものの塊であるからな。規格外な魔力を有するアルヴィンの精液を求めても不思議ではない」

 

「そうなんだ」

 

 そう説明されれば別に不思議じゃないか。真祖の吸血鬼のエヴァも吸血しないで精液飲んで生活してるし、悪魔に転生したアリカが精液をジュースのように飲んでるところも見た事ある。悪魔にとって魔力が篭った精液はご馳走なんだろう。

 

「正直、母親としては複雑なんやけどな」

 

 つぶやきながら木ノ葉は木乃香の頭を撫でる。そんな木ノ葉にエヴァはため息を吐きながら言う。

 

「まあ元々、悪魔のアルヴィンにとって親子としての血の繋がりなんて些細なことだからな。この世界で禁忌にされてる近親姦も、悪魔の世界じゃ普通に行なわれているのことだ。実の娘である木乃香のほうから父親であるアルヴィンの子種を求めてもなんら不思議じゃないさ」

 

 ……エヴァ、知ってることを説明したいのはわかるけど、タイミングを考えようよ。木ノ葉の笑顔が『空気読め』って言わんばかりに固まってるよ。ドMの変態に調教されちゃうよ?

 

「……ああでも、エヴァは元からだから大丈夫か」

 

「? 何か言ったか、アスナ」

 

「うんん、別に。なんでもないよ。――それより、結局アルヴィンはどこに行ったんだろ?」

 

 首を傾げる私に、エヴァは鼻を鳴らす。

 

「ハッ。どうせどこかで女でも漁ってるところだろうさ。――おそらく今夜はもう帰ってこないだろうから、私たちも部屋に戻ってね……」

 

 エヴァが言いかけた瞬間、無人であるはずのアルヴィンの部屋のドアノブが回り、扉が開いた。

 

 ……転移魔法を使ってアルヴィンが帰ってきた? その場にいた全員がドアの方へ視線を向けると、なかからアルヴィンが出て着た。

 

「父さまー」

 

「おお、木乃香。まだ起きてたのか」

 

 アルヴィンの姿を確認すると駈け寄っていく木乃香。アルヴィンは木乃香を両手で抱き上げた。なんとも微笑ましい光景なんだけど、私たちの視線はアルヴィンの背後へと向けられていた。

 

「え? あの……お子さんがいらっしゃったんですか?」

 

 ――初めて訊く声。

 

 高い女の声で、歳はまだ10代ぐらい? 幼さが少し残っていて、日本語を使ってなかった。使った言語は英語かな? 

 

「まあな。木乃香っていって俺の娘だよ」

 

「は、はあ……」

 

 戸惑うような声。……おそらくだけど、まだ女はアルヴィンとセックスしてない。そもそもセックスしてたら、今頃ベッドのなかだと思う。アルヴィンの後ろに立ってるということは……新たにアルヴィンと何らかの契約を結んだ人間なんだろう。

 

 アルヴィンが後ろに顔を向けて言う。

 

「ほら、他の家族にも紹介するから来いよ。丁度集まってるみたいだからな」

 

「はい。わかりました」

 

 声と後に続いて、アルヴィンの後ろから女が現れる。

 

 腰まで伸ばした金髪のロングストレートヘア。顔立ちは私やアリカに少し似てる。シスターや聖職者が着るような黒色の清楚なワンピースを着ていて、年齢は20もいかない精々10代後半ぐらいだろう。体に纏っている魔力からいって魔法使い。……それに、少し焦げ臭い?

 

 女は廊下に勢ぞろいしていた私たちに驚きつつも、冷静に自己紹介を始める。

 

「ネカネ・スプリングフィールドです。これからよろしくお願いします」

 

 両手を膝で重ねて頭を下げたネカネ・スプリングフィールド。……ふむ。成長した私と同じぐらいの大きさ。美乳タイプか。

 

 それにしてもスプリングフィールドか。どこかで聞いた家名だ。

 

「ネカネ・スプリングフィールドじゃと?」

 

 アリカにも心当たりがあったのか驚いていた。アリカの隣に立っているエヴァや木ノ葉も同じく驚いているようだ。

 

 エヴァが口元に指を当てて考える素振りを見せる。アルヴィンの隣に立っているネカネを観察して、ゆっくりとうなずく。

 

「……そうか。あの隠れ里で何かあったんだな、アルヴィン」

 

「――なっ!?」

 

 エヴァの言葉に目を大きくさせて驚くアリカ。確認するようにアリカがアルヴィンに視線を向けると、アルヴィンは肩をすくめさせてうなずいた。

 

「まあね。結構ヤバいことが起きてたよ。――これからそのことについて説明したいんだけど、いいか?」

 

 アルヴィンの言葉にアリカたちがうなずく。

 

 アルヴィンは木乃香を下ろし、私に預けて今夜は大人しく寝るように言うと、皆でリビングへ向って行った。……うう、子供ボディが憎い。このまま木乃香を連れて盗み聞き――は、人外レベルのアルヴィンたちには無理なので、寝るしかないか。

 

「じゃあ、木乃香。寝ようか」

 

「うん!」

 

 元気よく返事を返す木乃香。そんな聞き分けのいい木乃香と手を繋いで私は自室へと戻る。

 

 この成長した体では安眠できないので、年齢詐称薬を飲んで元の姿へと戻り、いつもの下着とパジャマに着替える。ベッドに上がって木乃香を……、

 

「この魔法薬を飲めば体が成長するんやね!」

 

「え? ああうん、そうだよ。赤いあめ玉を飲んだら成長して……木乃香?」

 

「えへへ~、あむっ」

 

「――っ!」

 

 手に取った赤いあめ玉を木乃香が口へ放り込む。放り込んだ瞬間、あの爆発音と白い煙が出現し――5歳ほど成長した木乃香が現れた。

 

「おおっ! 手足が長くなっとるー!」

 

 成長した姿を見て、うれしそうにはしゃぐ木乃香。窮屈になったパジャマや下着を脱いで全裸になり、その場でくるっと回って部屋に置かれた姿鏡を覗き込む。

 

「うーん……成長しとるけど、アスナよりは成長しとらんなぁ」

 

 不満げにつぶやいた木乃香だけど、赤いあめ玉を2つ飲んでる私より成長されてたまるか。もしも赤いあめ玉ひとつでさっきの私よりも成長されてたら、私は泣いたぞ。

 

「……むぅ、もうひと粒飲んだら……」

 

「その魔法薬は結構高かったんだから、あんまり使わないでよ、木乃香」

 

「じゃあ、あとひと粒だけ! あとひと粒ちょうだい、アスナ!」

 

「……あとひと粒だけだからね?」

 

「うん! ありがとぉ!」

 

 ニッコリ笑顔でお礼を言う木乃香。……こうやって笑顔を向けられるなら、少しぐらい無茶なお願いでも聞いてあげたくなる。

 

 ニコニコ笑顔で木乃香がパクッと赤いあめ玉を口へ放り込んだ。おなじみの爆発音と白い煙が出現し――、

 

「見て見てアスナ、セクシーダイナマイツ」

 

 私に向ってテレビで覚えたと思われるポーズをとる木乃香。

 

「あれぇ? アスナ、どうしたん?」

 

「…………」

 

「アスナー?」

 

「…………」

 

「?」

 

 ゆさゆさと……。

 

 私の目の前でゆさゆさと揺れる木乃香のおっぱい。

 

「パイナップル……いや、スイカ」

 

「どうしたん、アスナ」

 

「軽くDはある……。ということは、E? ……いや、腰との差を考えるとFの大台に……」

 

「んー?」

 

 首をかしげる木乃香。私は視線を胸から下へと向けて――再び言葉を失った。

 

 ……は、生えてる!?

 

 私と同じくツルツルだったあそこに毛が、生えてるだと!?

 

 しかも産毛レベルじゃなくて、きちんと『生えてる』と認識できるほどにだった。

 

「う、うう……」

 

「ど、どうしたん、アスナ? お腹痛いんか?」

 

 心配そうに顔を覗き込んでくる木乃香。ううう……胸がっ、私を越える深い谷間が……!

 

「だ、大丈夫ダヨ。木乃香。寝よう。今夜は早く寝ヨウ」

 

「え? ああうん。わかった」

 

 そのままベッドに上がってくる木乃香。

 

「――っ! 木乃香っ、そ、その姿のままじゃベッドが狭くなるし、服も着れないから元に戻ろう、ね? ――はい、青いあめ玉」

 

「う、うん。ありがとぉ」

 

 さ、さっき毛が……木乃香の毛が当たった! ベッドに上がったときに当たった! か、髪の毛より太くてザラって……ザラってした!

 

「着替えてきたでぇー」

 

「……うん」

 

 パジャマに着替えた木乃香がベッドに潜り込む。……ああ、いつもの木乃香だ。成長してない、私と同じぐらいの木乃香だ。胸も小さくて毛も生えてない木乃香だ。

 

 私は木乃香を抱きしめる。

 

「……アスナ?」

 

「このまま……。今夜はこのままでお願い、木乃香」

 

「別にええけど……。変なアスナやね」

 

「変でもいいよ。ああ……安心する」

 

 あの魔法薬がここまで怖いものだとは思わなかった……。もう木乃香に赤いあめ玉はあげられない。いつまでも私と同じツルツルでいて。お願いだから。




 アスナ編から抜け出せない……!


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