おい、バトルしろよ (ししゃも丸)
しおりを挟む

設定集1

今回は主人公とヒロインたちがメインです。

本編にも出てないことも書くけど、特に最後の下の方には重大なネタバレ?というか実際に本編に出るかわからないので色々と書いてます。
R18版にある裏設定も少し濁して書いてます。理由は更新できるほど余裕がないからです。
話が進むごとに更新する予定。
色々とガバガバですが許してね。


 

 

 

 

 ・レッド 別名「繋ぐ者」「星の管理者」「シロナのヒモ」 

『ポケットモンスターSPECIAL』のレッドに転生した主人公。

 自我の覚醒は物心ついたときからであり、彼が5歳前後に両親が事故で他界してしまいそれ以来一人で暮らす。

 転生前は20代半ばの会社員らしく、年上に対して(一部除く)はちゃんと敬語で話したりする。

 旅に出る前は近所の子供たちにイジメられていていた。原因は不明だがある日から鍛え初めて現在のようになってしまう。

 

 その結果、この世界で世にも珍しい生身でポケモンと戦うトレーナーへと昇華してしまい、終いには通算102回も死んだり、某サイヤ人並みにパワーアップして生き返る。

 ついにはこの世界の神であるアルセウスと同じ力──つまり、この星を管理する権限を与えられ、彼はその身をこの星を護るために捧げることとなる。

 人間には好かれない彼であるが、その代わりと言わんばかりにポケモン達からは好かれる。イエローのような力を持つわけでもないのに、素でポケモン達の話す言葉がわかる。

 

 本人は原作の知識を知っているためか、実際に起きる事件を未然に防せがなければらないと思っており、その結果が命を削ってまで今日まで戦い続けていた。彼が戦うのはそれを知っているからという責任のために戦っていただけで、本当はただ普通に旅をしたかった。

 実際に第6章ではシロナと旅をして、生まれて初めて平穏な日常を過ごすことになり、改めて本当は戦いたくないと気づく(※1)。

 だがアルセウスと出会い、そして力を託された結果。彼は再びこの世界を護ることを決意する。上記のことと、楽しい日常を与えてくれたシロナに心から感謝しており、そのためか彼女を誰よりも特別視している(※2)

 またサカキに対してかなり執着している。彼との戦いは自分の負けだと認めており、決着をつける日を待ち望んでいる。

 

 第7章以降は常にシロナに買ってもらった服に、真っ赤なマフラーを常に身に着けている。

 

 備考

 転生したというよりは転生された存在であり、それを行った存在はまだ不明である。

 世界の舞台となっている『ポケットモンスターSPECIAL』を知らない。

 生前においてはポケモンのキャラクターで好きなのがナツメであり、その想いは転生しても変わらず、彼女と殺し愛いをした末に結ばれる。

 なお、次に好きなのはシロナ、カミツレ、ルザミーネ、リーリエと何故か金髪キャラが好きな模様。つまり……? 

 本人はナツメ一筋らしい(※3)

 生前の性癖なのか年上好きであり、同時に無駄に年上キラーである。

 ポケモンの知識は覚えている範囲では第三世代までであり、第四世代はギリギリ。それ以降は名前が一致するか怪しく、地名やジムリーダーの名前すらほぼ覚えていない(一部除く)。

 物の価値観が生前の日本人のためか、俗にいうダサTが普通に面白くカッコいいと思っていて、こちらの世界の人間とは価値観が違う(※4)

 最近の得意技は波動を使った技で、特に波動砲が大のお気に入りの模様。

 

※1 生前が平凡な性格のためか、本当は戦いなんてしたくない……と、本人はそう思っている。彼の本性はむしろその逆であり、かなり好戦的な性格である。いわゆる戦いになるとスイッチが入ってそっちになる。なので普段は大人しい性格。ただ肉体が生粋のマサラ人のためか、本編のようになっている。

※2 本編でも言っていたようにレッドとシロナはまさに一心同体の存在。そのため色んな意味で相性がいい(お姉さん以上)。

※3 第6章時点で彼の中では愛しているのはナツメであるが、シロナはそれと同等かそれ以上の特別な存在になっている。

※4 この趣味に関してはナツメを初めとしたヒロインたちやグリーンやマサキといった友人、仲間のポケモンたちですら「それはない」と言われる始末。あのお姉さんですら擁護できない。なお、シロナはそれを理解した上でちゃんとレッドの趣味を肯定しているただ一人の存在である。

 

 

 

 

 ・リーフ

 グリーンの双子の妹。生まれた経緯はブルーのデザインが真斗版が好きで、けど山本版のブルーも好きだから、じゃあ後者をリーフとして出してやるという流れで生まれた。

 レッドに御三家を与える都合上、彼女がフシギダネをもらって旅に出ることになる。原作での主要キャラたちはニックネームをつけるので、フシギバナならバナちゃん。キュウコンだったらコンコンという名前を付ける。

 また一部を除いて原作レッドと同じことを画面外でやっている。カスミのギャラドスをもらったり、プテラを入手したり。

 

 生まれた経緯は上記のこともあるが、実際は他の地方にいくことになるレッドの代わりとしての役目も担っている。そのため第1章でのポケモンリーグでは、グリーンではなく彼女が決勝戦の相手である。

 第3章以降からはレッドの代わりにカントーチャンピオンとして君臨しており、手持ちのハピナスとラッキー通称『桃色の悪魔たち』によって、挑戦者たちを倒している。その戦いを見て後に『鉄壁のリーフ』とまで呼ばれるようになる。

 

 ある日を境にレッドと同じように強くなりたいと思い、彼に懇願して特訓をしてもらう。殴るのが嫌だからということで『はたく』を主軸とした技構成になる。

 

 得意技 はたく おうふくビンタ エアスラッシュ リーフブレード 

 

 ・備考

 ブルーと対照的で巨乳ではなく貧乳である。その代わりにお尻は大きく安産型(重要)。

 第7章においては主人公的な存在。

 レッドのことは大体把握しているし、されている(意味深)。

 

 

 

 ・ナナミ

 グリーンとリーフの姉でありオーキドの孫のひとり。原作でもポケモンの手当てをしたり研究描写があるので、本作では医者兼研究員という形になっている。

 ただそれも最初だけで、第7章時点ではコンテストに出場するハナダのお姉さんのサポーター、時には自身も出場しているためか、意外とカントーに居ないときの方が多い。

 

 本編開始前では両親が亡くなったレッドの面倒を見ていた。気を遣うというよりも、むしろ気を使われたり、子供らしかぬ大人の雰囲気や漢気に魅了されて徐々に年下である彼に好意を抱いていた。

 そして、結果的にレッドを食べた。

 ある意味レッドを年上好きにさせた張本人でもある。

 

 備考

 レッドのはじめての相手(本人は知らない)。

 他のヒロインにはない絶対的で世界の命運を握る鍵を手にしている。

 上記のこともあり、下手をすれば将来諸悪の根源的な存在になる(超重要)。

 

 

 

 ・ブルー

 本作では原作よりもサポートよりな扱いになっている。原作でも、「子供版峰不二子」みたいなイメージ像があったので、そのような感じが強い。

 本編でもシステムにハッキングしたり、メタモンを使った潜入といった場面を意識して書いていた。

 うまく描写できていたのかは自信はないが、いまではレッドがとても信頼をおいている一人である。境遇が境遇だけに、初期メンバーの中では広い視野で物事を見ており、非情になれる一面を持っているからというのもあるため。

 なので第3章終盤において、〈未来レッド〉が現れた際には彼の雰囲気が違うことに気づいたりしている。

 

 原作ではブルー自身がゲーム基準(FR・LG)のデザインになったのに対し(そちらはリーフということになっている)、こちらではただの衣装チェンジになっている。

 イメージとしては、原作のミニスカートをロングにして、左側にスリットがあるようなもの。

 さらにリーフとは別で、彼女は足技を主体にした戦いを得意とする。その際、リーフの戦闘服を真似して、ブルーには脚部装甲を与えた。

 

 色々と裏工作を考えた結果、シルバーにレッドを「義兄さん」と呼ばれることに成功してしまった。なお、実際そうなった場合どうなることやら(他人事)。

 

 備考

 巨乳である。

 ナナミの秘密を知っている。

 

 〈対ポケモン脚部装甲〉

 制作者はマサキ。

 イメージとしては膝までがある西洋の鎧のイメージ。色は銀で、ところどころ青と赤のラインが入っている。足はハイヒールのようになっていて、そこにモンスターボールを隠すことも可能。

 軽量にすぐれ、かつ耐久性も備わっている。「はかいこうせん」ぐらいだったら数発は耐えらえる(たぶん)。

 

 

 

 ・イエロー

 一応第3章の主人公兼ヒロイン……であるが、どういう訳か筋肉フェチという属性が付け足されてしまった。

 本作では、レッドを除いてポケモンの言葉がわかる数少ない人間の一人である。

 原作では「FR・LG」以降出番はなく、また強さ的な意味で成長が不明のため、本作では主人公であるレッドによって少なからず影響されている。

 

 第4章でちょっとだけ殺意の波動に目覚めており、第7章の時点において特訓をしている時になにかあったようで……? 

 

 ・備考

 貴重な貧乳ロリっ子金髪ポニーテール(重要)

 ピカによってレッドの自宅に金髪ロリ本を仕込まれていることを知らない。

 某サイヤ人並に自分とポケモンの戦闘力を自由に変化させることができる。

 

 

 

 

 ・ナツメ

 メインヒロイン。本作のとてもかわいいメインヒロイン。

 一応本作における人間側の最強候補の一人である。原作よりも力を強化しており、やろうと思えば視界に入れずとも、対象の存在を感じられれば心臓を潰せるぐらい。

 特にテレポートは得意技の一つであるが、長距離テレポートに関しては一回では不可能であり、行ったことのない土地にはテレポートはできない(無理にやろうとすればできなくはない)。

 メインヒロインのくせに料理や洗濯といった家事全般は全くと言っていいほどできず、そちらはすべて使用人となったカンナの仕事になっている。

 一応できなくはないが、すべての作業を念力で使うやり方で料理をするのでとても危険である。

 レッドの行い(主に女性関係)に対して時々愛想を尽かしているが、誰よりもレッドを愛してる。

 

 戦闘能力に関しては成長途中であったレッド(第1章)を追い詰めるほどの力を持っているほどの強者である。

 なお、第7章までにおいて力は第1章よりも増しており、よって戦闘能力は比較にならないほどである。

 

 第1章においてレッドとの殺し愛いの果てに結ばれるが、それでも周りからの扱いは酷く、常にレッドを狙われている。

 さらにレッドからお姉さんを紹介された日は、まるで彼氏の実家に挨拶に行ったかのような感じで会ったという。

 第4章では未来予知が不規則でかなり不明瞭だったのは、〈未来レッド〉による干渉によるもの。ただし彼が現れた時点で、同時間軸に二人のレッドの反応を感じられてはいた。

 第7章時点において、それまでにレッドを探すためにイッシュ地方に行った際に女優デビューしており、その時スカウトしてきた監督や関係者から再び出演のオファーがきている。

 

 備考

 メインヒロイン。

 最近ポケウッドに本格的に女優デビューする際にイメチェン(HG・SSのモデル)するか悩んでいる。

 ミカンが苦手。

 

 

 

 

 ・ハナダのお姉さん イメージモデル「ガンソード」のファサリナ

 ハナダシティに住んでいるお姉さん。

 第1章において、ハナダシティを訪れたレッドと出会い彼のお姉さんとなった。その際に彼のはじめてを奪ったようである。

 ハナダシティの中では比較的有名な人物であり、かつてハナダに住んでいたとある大富豪の遺産を引き継いでいるため、その保有資産は全国で上から数えた方が早いとされている。

 

 レッドのことを弟のように溺愛、心酔しているようで、彼の事なら遠く離れた場所だろうと感知できる。

 第4章においてはレッドに頼まれて自ら戦いの場に出たほどである。

 武器は主に三節棍を用いた戦いをする。

 

 第5章時点ではレッドを探すためにナナミを連れて全国にあるポケモンコンテストに出場して優勝している。

 

 第7章では〈レッドくんだいすきクラブ〉の会長であり、彼が行方をくらました際には、会員全員に〈レッドくんぬいぐみ〉を作って提供した。

 

 護衛ということプレゼントされたハッサムことサミュエル・L・ジャクソンがいる。

 

 備考

 元ネタはハナダシティにあるクチバシティへと向かう際に通る民家の人。

 レッドだけを殺すだけのお姉さん(意味深)

 レッドがもつフシギバナの元々の持ち主。フシギダネの時は「ダネダネちゃん」と呼んでいた。

 出生不明、人生壮絶すぎぃ! (意味深)

 第7章時点では、全国のポケモンコンテストをハッサムだけですべての部門を優勝したせいか、すでに殿堂入りかつ、ハッサムは出禁状態らしい。

 

 以下本編に出ないネタバレ

 その正体は女神の転生体である。

 元ネタである「ブラック・ホワイト」に出てくる二人の女神と違って、ガチもんの女神。

 かつて神話(※5)、神々が存在した時代に人類を滅ぼそうとする神々から人類を守っていたサンレッドに恋して、神々を裏切って人類側に寝返った。

 色々あって二人は結ばれることはないと突きつけられ、「じゃあ死んで人間になります!」みたいな流れでレッドがいる時代へと転生した。

 前世の記憶はないが力だけは少なからず残っており、無意識の内に力を使っていることがある。

 

※5神話の時代にはアルセウスより格下の神々が多くいた時代。人型だけではなく、それと同等のポケモンも少なからずいた(デジモンでいうロイヤルナイツとか究極体デジモン)。

 

 

 

 ・エリカ

 ぶっちゃけて言えば第1章9話の時点で出番はほぼ終わりだった。実際中身はそういう話であったが、別にヒロインというわけでもなかった。

 しかし、大きなお友達の声援によってヒロインに再び浮上した。

 

 第7章時点において、タマムシとヤマブキは隣同士ということもあってか、エリカ、ナツメ両者ともに頻繁に互いの家でお茶をするぐらい仲が良くなっている。

 

 備考 

 美乳。

 貴重な和服系お嬢様。

 

 

 

 

 ・ミカン

「わたしが使うポケモンは……シャキーン! はがねタイプです!!」、と挑戦者に名乗るのがすでに代名詞になっている。

 天然なのかそれとも策士なのか不明であるが、色々と恐ろしい子。特にナツメに対してはかなり毒舌を吐く。

 逆に言えば、それだけナツメをレッドの彼女として認めている証拠である。ただしそれはそれとして、今日も毒舌を吐く。

 第7章時点ではカンナに裁縫を教わりながら、自分でぬいぐみを制作している。

 

 備考

 スルースキルS

 毒舌(ナツメのみ)

 ジョウト地方のヒロイン

 

 

 

 ・カンナ

 作中唯一レッドを死に追い詰めた貴重な一人であり、そのあとナツメの調教によってメイド堕ちした人。

 当初はメイド堕ちの予定はなかったが、なぜか今の形になった。

 ナツメの策略により、彼女を「奥様」と呼ばせて周囲にレッドとの疑似夫婦を構築させる予定が、そのレッドが「旦那様」と呼ぶことを嫌うので半ば失敗に終わった。

 調教の所為で元の人格は壊れたと思いきや、精神が強いのかそれとも一周回って安定したのか、当初はナツメの前では猫を被っていたこともある(レッドは見抜いてた)。

 

 レッドに対しては〈四天王事件〉での負い目もあったが、色々あって彼との仲は良好。

 旅に出る前はすべてナツメが家事全般をしていたので、レッドからの評価は高い。

 いずれは主とメイドの愛の逃避行計画を練っているようである。

 

 実力は元四天王ということもあり、さらにはレッドのブートキャンプによって強化された。シロナを除けばポケモンとシンクロできるトレーナーの一人である。

 また、パルシェンとのシンクロによりさらに肉体面と能力も強化され、ヤナギ程ではないが氷の壁や武器を生成することも可能になっている。

 ただ第7章時点では鍛錬を怠ったため、実力は〈仮面の男事件〉より鈍っている。

 

 備考

 メイド型メガネ標準装備年上系お姉さん。

 着やせするタイプ。

 カロス地方にすごくキャラが被っている奴がいる。

 

 

 

 サーナイト(ヒロイン版)

 第5章におけるヒロイン……である。

 元々力が強いためか、テレパシーによってある程度人間の言葉を話せる。親があのレッドだけあって、サーナイトになってからはかなり人間臭いポケモンになった。

 それもあってか、かなり肉体面においても人間に近いフォルムになっている。

 常に旅の中でレッドに膝枕をさせており、もう彼は普通の枕では満足できない体になっている(自覚なし)。

 また、夢の中でちょっとした念力の応用で色々していた模様(意味深)。

 シロナとは姉妹のように仲が良く、彼女とは互いに秘密を打ち明けている仲である。

 

 ・備考

 ちなみにベッドはカビゴンが一番の模様。

 

 

 

 

 

 ・シロナ(ロリ版)別名「レッドの保護者」「ダメンズウォーカー」

 第6章におけるヒロイン。

 第5章でボロボロで薬物中毒になっていたレッドと一緒に旅をすることになり、彼に薬を与える際に色々と目覚めた。

 そのためか、旅の中ではまるでお母さんのようにレッドを躾けたりする一面もある。移動する時は常に手をつないで歩くのが当たり前となっている。

 レッドと旅をする中で彼を誰よりも理解できるようになり、まさに「一心同体」という状態(※6)。

 

 戦闘面においては、元々未来のチャンピオンとして約束された人生であったが、レッドによってその才能をさらに昇華され、僅か11歳にして手持ちポケモン全員とのシンクロを可能にし、さらには波動の力を身に着けた。

 

 〈第6章での役割〉

 同章におけるシロナの役割はレッドに平和と平穏を取り戻させることであった。アルセウスがこの時代を選んだのは、未来を知っているという点もあるが、「彼女だけが真にレッドという人間を理解できる」からである。

 だからこそ、レッドは自分を見抜き、理解し、言葉にしてくれたシロナを大切かつ特別視している。

 

 ・備考

 ロリ。

 真・ヒロイン。

 整理整頓以外完全装備型ヒロイン。

 アイス大好きガール。

 太陽神の加護持ち。

 

 

 

 ・シロナ(大人版)別名「レッドの保護者」「無敗のチャンピオン」「ダメンズウォーカー」「美人で最強な考古学者なチャンピオン」「アイスクリーム大食い女王」

 第8か9章(予定)時点で25歳の設定。

 レッドと別れてから約14年間、常に彼との再会を待ち続けているヒロインである。再会した時のために、全国にある〈しばむら〉にある地域限定ダサTを毎月購入する契約をしており、別荘の二階はすでにそれが入った段ボールが置いてある倉庫となっている。

 

 14年間常にシンオウチャンピオンの座を守っており、非公式の交流戦においても常に無敗である。

 腰にはレッドから預かっている彼の帽子がある。定期的にきれいにしているが、時代の経過と共に消さない汚れもあり、それをバカにした者はこの世の地獄を見るらしい。

 

 第4章の序盤でのナツメとリーフと邂逅したさい、つい今まで溜まっていたストレスが暴発してしまい、ちょっと手を出してしまった。なので、謝罪しようにも気まずい状態になってしまい今に至る。

 

 才色兼備で男女の人気は高く、また全国で数少ない波動を使える人間でもあるためか、格闘家からの人気も高い。

 また、肌が十代のように若々しく全国の女性からはその秘訣を迫られているが、本人は特に何もしておらず、さらには化粧もしたことがない。

 

 レッドと別れてからよく夢をみるようになった。特に最近は波動の鍛錬をしていたら「波動砲」なる技を会得してしまい、さらにはシンクロを超えたシンクロがあるのではと日々鍛錬に力を入れている模様。

 

 ・備考

 レッドと一心同体かつ常に繋がっている。

 項目が二つある女。

 太陽神の加護EX

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・太陽の戦士サンレッド

 彼は人とポケモンのために戦う正義のヒーローである。

 人の形をしているため人間だと思われるが、色々とポケモンの技も使う恐ろしい戦士だ。

 最終話「決戦ルネシティ」において、伝説の古代ポケモングラードンとカイオーガとの戦いでその命を落としたと言われている。

 

 以下ネタバレ。

 その正体はレッドがホウエン地方に行く際、マサキに制作してもらったマスクをつけたレッド。

 主な用途としては、身バレを防ぐためとカッコいいからである。

 しかし第5章であったヒガナ、第6章でシロナに〈太陽神〉にそっくりと言われており、その関連性は不明である。

 

 ・備考

 全話とおして、全力で戦ったことは一度もない。

 

 

 

 ・太陽の戦士サンレッドRX

 彼の者こそ〈太陽神話〉に登場する〈太陽の神〉である。この星のあらゆる伝説、逸話、伝承にその名前や姿を描かれた壁画などが数多く残されている。

 しかし残念ながら、現代において彼の知名度はあまりにも低く、歴史オタからはマイナーな神の一人だと言われるほどであった。

 それでも知っている者からすれば超有名であり、この星における最初のポケモントレーナーではないかという論文も発表されている。

 モンスターボールがない神話の時代において、〈伝説の六闘士〉と呼ばれる6体のポケモンを従えていたと言われている。

 その強さは未知数であり、未だに謎に包まれている。

 

 以下ネタバレ

 その正体はアルセウスによって彼の力を与えられ、さらに進化したレッドのもう一つの姿である。

 左腕には美しくも危険な力を秘められたガントレットを嵌めている。手の甲には6つの石があり、それぞれ大いなる力を秘めている。

 本編の舞台である世界が悪に墜ちていないのも、彼があらゆる時代で現れて闇を祓い、光を照らしているからである。

 

 ・備考

 テレビ番組で例えると、だいたい4クール以上の話があったり、放送されていない幻の回があったりなかったり。

 

 

 

 

 〈用語集〉

 ・イシツブテ

 彼らはありとあらゆる場所に存在している。

 ・ポケモンバトル

 レッドがいうポケモンバトルと、世間一般のポケモンバトルは非常にかけ離れている。一応彼の中では普通のポケモンバトルはただのバトルと思っていて、命をかけた戦いを真面目なポケモンバトルと思い込んでいる

 ・シンクロ

 元ネタは遊戯王のシンクロが由来。なお、効果はロックマンエグゼみたいな感じ。

 トレーナーとポケモンの絆の境地であり、これを会得しているトレーナーはあまりいない。効果は主にバトル面において発揮され、言葉を交わさずとも命令を伝え、ポケモンが見ている光景も見ることができその逆も可能。ただダメージはもろにトレーナー自身にも及ぶ。しかしトレーナーが受けたダメージはポケモンに対してはそこまでではない。

 これは人間とポケモンでは元から違うためであり、ひっかくやたいあたりですら人間にとっては命に係る技であるが、ポケモン側はそうではないからである。

 つまりシンクロは強力ではあるがまさに諸刃の剣なのである。

 ・アクセルシンクロ

 元ネタはまんま遊戯王。

 シンクロを超えたシンクロ。人間とポケモンの絆の境地のその向こう側。これに達したポケモンはその姿を変える。

 つまりリングとストーンを使わないメガシンカである。ただこれを使えるのはレッドだけであり、彼以外には不可能な技である。たぶん頑張ればシロナはできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下重大なネタバレ

 ・レッドがイジメられた原因と死について

 幼少のころからイジメられていたのは親無しとポケモンを持っていないからというだけではない。本来ならば、両親と一緒に事故で死ぬはずだった。

 だが、彼は本来のレッドではなく別の魂がはいった存在であり、そのことも関係して運よく生き残った。

 

 またアルセウスが見せた悪に染まった世界というのは、原作のゲームである『ポケットモンスターウルトラサン・ムーン』において登場した『レインボーロケット団』のサカキを初めとしたその世界で野望を達成したそれぞれのボス達が支配した世界である。

 これは『本来その野望を阻止する主人公に相当する人物がおらず、本当に野望を達成した世界』と解釈されているため、なので本来その始まりである『ポケットモンスター赤・緑』のレッドがなんらかの原因で死亡したために本作では物語が始まらない、つまりレッドの死=『ポケットモンスター』の物語が始まらないという設定。

 なのでレッドがいなければグリーンはライバルとして成長することもなく、ロケット団はレッドによって壊滅されることもない(世界によってはグリーンがその代わりとなった可能性もある)。

 一応各世代に関しては、それぞれの主人公は存在したが何らかの理由で死亡したか、元から存在しない設定になっている。

 ただしレッドだけは例外。どの世界にも絶対に存在しており、誤差はあるが必ず死亡している。

 

 なので、これらの世界は共に近く似た世界であるため、『レッドの死』という因果が流れ込み、世界の意思そのものが『レッド』という存在を殺そうとしているために、いじめを通して彼を自殺させようとしているのが今回の世界のパターン。

 

 だが、主人公である『彼』が転生したことで歴史が変わり、尚且つこの世界はゲームの『ポケットモンスター』の世界ではなく、それと非常に似た『ポケットモンスターSPECIAL』という世界ということもあって、この世界の『レッド』は死ななかった。

 一応幼少期はいじめ、旅に出てからはマチス戦、四天王戦とレッドは死んではいるが、どういう訳か生き返る。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 マサラタウンのレッド
目と目が合ったらポケモンバトル


目標。ナツメとか可愛い子とイチャイチャすること。

なお、題材。


 

 

 

 ここはマサラタウン。カントー地方の中では比較的田舎なこの町にはこれと言ったものはないが、ポケモン博士で有名なオーキド博士の研究所があることぐらいが取り柄の町。

 そんな田舎町のはずれに流れている小さな川辺で町の子供たちが遊んでいる。ここは何度も言うように田舎だ。遊べる遊具などはないし、やれることも限られている。だからこうして近くの川辺で遊ぶか、家でゲームをするかといったことしか選択肢がない。

 いや、正確には俺で遊んでいた。自分を除いて子供たちの周りには小さいポケモン──ニドランやコラッタといったこの辺りで捕まえられるポケモンがいるが、俺には一匹もポケモンはいなかった。トレーナーでなくともポケモンを持つのはある意味で当たり前で、そんな当たり前なことができてない俺は、少年たちにとって絶好の遊びの対象なるのは至極当然のことだった。

 

 

「やーい、レッド。お前まだポケモン持ってないのか?」

「ぷぷっ。お前ぐらいだぜ、ポケモン持ってないの!」

「まぁそれもしょうがないよなー。お前の家、びんぼーだもん!」

「レッドだけに赤字ってか? あはは!!」

 

 

 レッド。そう、俺の名前はレッド。子供のころ遊んだゲーム「ポケットモンスター」の主人公の名前で、今はそれが俺の名前になっている。

 何でこうなったのかは分からない。以前はバリバリの20代で平日は社畜のように働き、休日は家に籠って寝るかゲームか酒を飲むかの生活を送っていた。それがなんでいきなりポケモンの世界に転生し……というか、なんで死んだのかさえまったく覚えていない。

 しかし、気持ちを切り替えて心機一転この世界で生きていくと決めた。なにせ、トレーナーになればポケモンバトルで食っていけるし、ゲームの知識もあるからチャンピオンにだってなれる。そう、俺の未来は明るい。

 レッド死亡説? 大丈夫だって安心しろよ~。

 と、言いたいところなのだが。目の前のガキ共のいうように俺にはポケモンがいない。貰えるのは旅に出るときだ。だというのにこいつらは持っているんだから世の中不公平である。

 だから今現在いじめにあっているのだが……相手が悪かった。なにせ、見た目は子供でも中身は大人である。

 なので俺は、何度目かわからぬ喧嘩という名のポケモンバトルを実行した。近くに転がっている石ころ(何か重いなと思ったらイシツブテだった)で、まずは目の前のガキに向けて投げた。咄嗟の行動で反応できなかったのか、そいつの頭に直撃しそのまま後ろに倒れた。

 

 

「れ、レッドてめぇ! 何すんだよ!」

「レッドのくせに生意気だぞ!」

「は⁉ 目と目があったらバトルだろうが!」

 

 そう啖呵を切って俺はその辺に転がっている石(イシツブテ)を使って、ポケモンとトレーナーにバトルを挑んだ。

 

 

 

 

 

「いてて。コラッタはよゆーだったが、やっぱニドランは危なかったぜ。どくのトゲが怖くて中々手を出せなかったからな」

 

 

 負傷した主な要因はニドランだった。ニドランの特性にはどくのトゲがあることを覚えていたため、さすがに素手で殴りかかることはできなかったのだ。そこでイシツブテを使ってニドランを殴り倒したのは良かったが、その間に攻撃を食らってしまったのは喧嘩慣れしていないのが原因だろう。

 戦いの反省をしつつ傷跡を舐めながら自宅に帰る。しかしどういう訳か、家には誰もいない。ゲームでは母親が確かにいたのにここにはいない。

 当時はそれにすごく驚いた。ここは確かにポケットモンスターの世界なのに、所々自分の知識と違うのだ。まぁそこはリアルになればそうだよなっていう部分と、なぁにこれっていうものもあって頭を悩ませた。その最もたる要因は、現在飯だけお世話になっているライバルであるグリーンことオーキドの家である。

 玄関の前に立ち、そっとドアノブを回しながら開けつつ。

 

 

「た、ただいま……」

 

 

 それはさながら空き巣が『こんにちはー。誰かいますかーいませんよねー』みたいな感じ。なんでこんなことをするか。それは、ここにはこわーいお姉さんがいるからだ。

 

 

「あら、レッドくん。お帰りなさい」

「な、ナナミさん。た、ただいま。えーと、おれお腹空いたなー」

「ふーん、そう。でも、他にいう事あるわよね?」

 

 腰に手を置き、いかにも怒ってますオーラを放っている彼女。別に女性経験は人並みにあるが、こんなにも怖いと思った女性は初めてだ。だから、どう対応したらいいかまったくわからない。なので適当に思いついた言葉を口に出すしかない。

 

 

「……遅くなってごめんなさい?」

 

 

 ふるふると顔を横に振られた。

 

 

「あ、汚れてるからお風呂入ってきたほうがよかった?」

 

 

 再び顔を横に振られる。

 

 

「じゃ、じゃあ……いつも夜更かしてることに気づいたから?」

「それは最初から知ってます」

「ファッ!? も、もしや、俺が近所の兄ちゃんから譲ってもらったエロ本コレクションを見つけたの!?」

「あ、それなら今日燃やしたわよ」

「ウッソだろお前! あれの価値がどれだけあると……はい、ごめんなさい。なので睨まないでくださいぃ」

「はぁ」

 

 

 とナナミはくそデカいため息をつき、呆れながら言った。

 

 

「今日のこと、ちゃんと言うことあるでしょ?」

「今日? ああ、それか」

 

 

 どうやら先に逃げ帰ったガキ共が親に泣きついてそれ経由で彼女は知ったのだろう。なにせ、ここマサラタウンで一人で暮らしているとは言っても保護者は必要で、それがナナミなのは運がいいと言えばいいのだろうけどこういう時は面倒だ。

 なので、俺はちゃんと報告した。

 

 

「もちろん、ぼっこぼこにしておこづかいも手に入れたぜ!」

「この……お馬鹿さん!」

「ぐえぇ!!」

 

 

 ナナミのげんこつ! レッドにはこうかばつぐんだ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前が見えなくなるほどのげんこつを食らっても次のページには元に戻ってる漫画のごとく、平然としながら夕飯をいただいた。ナナミは台所で洗い物をしていたので、小言を言われるのはもううんざりだったので帰ろうと思った矢先。ナナミの妹であるリーフが声をかけてきた。

 

 

「レッドったらまた喧嘩したの?」

「違います。目と目があったからポケモンバトルをしただけです」

「でも、レッドはポケモン持ってないじゃん」

「ふ。俺は数百年に一人生まれるスーパーマサラ人だから平気なのさ。ていうか、お前だって持ってないだろ」

「ですよねー。あはは!」

 

 

 リーフ。ナナミの妹であり、グリーンとは兄と妹の関係。ようは二卵性双生児というやつらしい。彼女こそ俺が困惑させられている一番の要因と言えた。リーフは知ってるよ? リメイク版の女主人公の名前がそれだったのは覚えている。それならば、グリーンいらないじゃん! その逆も然りだけど。

 しかし、問題はそこではない。レッド、グリーン、リーフ。いずれも同い年でライバル。オーキドからポケモンは三匹。ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネ。うん、一匹余らないのはいいことだよ。でもさ、誰がどれを貰うのかが問題で。

 

 

「それにしてもさ、明日から旅に出る前に喧嘩なんてレッドらしいと言えばらしいけど」

「あ、うん。ソッスネ」

 

 

 そう。もう明日はついにマサラから旅立ちの時。それだというのに俺はグリーンに一度も会ってない。ていうか、いるはずなのにいないのだ。てっきりリーフがグリーン枠かと思ったが、どうやらちゃんと存在しているらしく、どっかに修行しているとのこと。いったいどこのなのだよ。

 そんなことを思っているとナナミが手を拭きながらこちらに戻りながらグリーンについて話してきた。

 

 

「そうそう。グリーンなら今日帰ってきたのよ?」

「ファッ⁉」

「レッドくん、外にいたから知らないのも無理はないわよ」

「そ、それで? そのグリーンはいずこ?」

「お兄ちゃんならおじいちゃんのとこ行ってそれっきりだよ。なんかポケモン貰って草むらに行ったっておじいちゃんから聞いた」

「はぁ⁉」

 

 

 思わず大きな声をあげならリーフの肩を掴んでは揺らしながら彼女に問いかけた。

 

 

「あ、あいつ何を貰ったんだよ!?」

「し、知らないよー!」

「もう許せるぞオイ!」

「は、はぁ? もう離してよ! レッドなんか旅に出て困ってても助けあげないんだからね!」

 

 

 そう言って無理やり手を払って自分の部屋に行こうとうするリーフ。しかし、ふと足を止めて憎たらしい笑みを浮かべながら言う。

 

 

「あ、レッドにはタウンマップ上げないからね。だって、二個しかないからわたしとお兄ちゃんの分だから当然だよねぇ? じゃあ、レッド。また明日~」

 

 

 手を振りながら去っていくその姿は……。

 

 

「れ、レッド君? リーフはああ言ってるけどね? 本当は……」

「大丈夫ですよ、ナナミさん。俺を怒らせたら大したもんすよ。……ていうか、マジで〇したろうかな」

「え、え? いまなんて」

「じゃあナナミさん、ごちそうさまでした。リーフにはどうぞよ ろ し くと言っておいてください。では」

 

 

 苛立ちを隠せぬまま、ナナミの制止など気にも留めずオーキド家をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 ため息をつきながら自宅へ向けて帰る。ゲームはすぐ近くのように思えるが、どうやら我が家はこのマサラタウンでは少し離れたところに位置している。不便、すごく不便なのだ。しかし明日から旅立つというわけではあるが、家の管理はどうしたものかと少し大人らしいことを考えてしまう。

「やった、明日からついに冒険の始まりだ!」と意気込みたいが不安しかない。だって、ようはリアルモンハンみたいな世界でしょ? 草むらを歩いているだけで野生のポケモンとバトル、目と目が合っただけでバトル……危険すぎる。

 何度目か分からないため息をついて顔をあげると、もう夜なのにどこか明るい場所が見えた。そこは森の方で、この時間帯ではさすがに危険でましてポケモンを持っていない自分は特に危ない。だが、好奇心が勝り俺はその場に向けて駆け出した。

 走って五分くらいだろうか。森を少し抜けたところにある草むらで、あいつ──グリーンと明るい原因であるヒトカゲが。

 

 

「は? キレそう」

 

 

 やだ! やだ! ねぇ小生ヒトカゲじゃなきゃやだ! 

 カントー御三家だったらヒトカゲがだろうが。例えタケシで詰むけど、カスミでも詰むけど、ていうかタマムシにつくまでそれなりに苦戦するけど、それでもヒトカゲがいいの。

 ていうか、グリーンなんだからフシギダネ選べよ……あ、そうなるとリーフと被るのか。

 しかしあいつ、何とバトルしてるんだ? 

 そう思って目を凝らしてヒトカゲにいる先のポケモンへと目を向けると、そこには驚くべきポケモンがいた。

 

 

「は? なんでここにミュウがいるんだよ?」

 

 

 なぜか目の前には幻のポケモンと呼ばれるミュウがいた。ていうか、なんであいつ逃げないの? まぁ、ゲームじゃないから。でも、レベルはどうせ40とか70だろうし、レベル5のヒトカゲが勝てるわけないじゃんアゼルバイジャン。

 と思いつつも、俺はバトルに見入っていた。多分指示をちゃんと出してるんだろうけど、それがなんていうか……芸術的? とにかくうまいんと思います。それでも、ミュウはなんかバリアを張って何人たりとも攻撃を受け付けてはいないのだが。

 そんなミュウもどういう訳か、護るだけで攻撃はせずじっとヒトカゲ、あるいはグリーンを見ていた。

 すると突然グリーンはヒトカゲをボールに戻した。相手の実力に気づいたのだろうか。

 ならばと草むら飛び出し、そこに転がっていたイシツブテを持ってミュウへとバトルへと挑むことにする。ボールないけど。

 自分以外の存在に気づいたグリーンは特に驚きもせず、ただ俺に告げた。

 

 

「やめておけ。お前が敵う相手じゃないぞ」

「まぁ見とけよ見とけよ」

「ふん。勝手にしろ。ところで、ポケモンはどこにいる?」

「あぁん? いねぇよ」

「ではどうやってあいつと戦う?」

「もちろん……拳で」

「……話にならん」

 

 

 呆れるようにグリーンはその場を去っていった。そして、残された俺とミュウ。どこかミュウが笑っているように見える。気のせいかと思うが、ミュウはその場にいたまま。グリーンと話している間に逃げられたのに、あいつは俺を待っていた。

 

 

「いいぜ、じゃあポケモンバトルといこ──」

『いたぞ! あそこだ!』

「ファッ⁉ 誰だよ!」

 

 

 声の方に視線を向けると、そこには黒ずくめの男達がぞろぞろとやってきた。胸にはRと書かれた文字が。それはとても見覚えのある、というか知っているやつらだった。

 

 

「なんでロケット団がマサラにいるんだよ! ちょっと出番が早すぎィ!」

 

 

 突然のことではあったが彼らがここにいるのは分からなくもない。何せロケット団である。大方このミュウを探しに来ていたのであろう。

 ならば、するべきことは一つである。

 

 

「おい、お前は俺の言葉がわかるだろう⁉ ていうか、わかれ! 俺があいつらとバトルするから、お前は逃げろ! いいな!」

「……」

「おい、小僧! 怪我をしたくなきゃそこをどきな」

「いい子にしていれば、ちょっと気絶するだけで済むぜ」

 

 

 やれやれ。まさに悪党がはく台詞だ。

 トレードマークである帽子を深くかぶり、

 

 

「おい」

「あん?」

「(ポケモン)バトルしろよ」

「バトルだぁ⁉ ポケモンを持ってないガキが調子乗ってんじゃねぇぞ!」

「ポケモンなら拾った(イシツブテ)」

「いいからつべこべ言わずとっと失せ──」

「目と目が合ったらバトルだろうがぁあああ!!」

 

 

 そして俺はロケット団に向けて突撃した。指示を出されるのは面倒だからまずはトレーナーを殴り、時にはイシツブテを投げて。ポケモンはいかにもというメンツだったのは覚えている。たしかニドキング、マタドガス、ラッタ、コイル、ベトベトン、マルマイン……。

 バトルの中で一瞬だけ覚えていることがある。逃げろといったのにまだ逃げないミュウがどこか笑っていたこと。そのあとは知らない。気づけばいなかったから。

 それに、俺の意識も途中からなくなって最後まで覚えてないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井……いや、マジで知らない天井だ」

 

 

 目を開けると、そこは本当に知らない場所だった。雰囲気的には病院で、腕には点滴チューブが刺さっていたので抜いた、ちょっと痛い。

 同時に人の気配がすると白いカーテンが開き、そこにはナナミさんがいた。

 

 

「あ、ナナミさん。おはよう。ところで、ここどこ?」

 

 

 彼女に尋ねたはいいがすぐに返事は帰ってこない。むしろ、今にも泣きそうで。そう思った直後、彼女は飛び込んできた。

 

 

「レッドくん!」

「うぉ!」

「よかった、目を覚まして! 本当に心配したのよ!?」

「えーと、ごめんなさい?」

「といっても、レッドくんは生粋のマサラ生まれだからすぐに起きると思ったけどね」

「……すぐに起きる? あの、俺どんくらい寝てたの?」

「えーと、1日と9時間ぐらい?」

「一日……って!」

「うん。もうグリーンとリーフは旅に出たよ。昨日」

「……完全に出遅れてるんじゃん」

 

 

 一日とはいえど一日だ。マサラとトキワまですぐにいける距離じゃない。だってゲームじゃないから。何が最悪ってもうポケモン選べないじゃん。三択どころか二択だったのが一択になったけど。

 落ち込んでいるナナミさんに励まされながら俺はオーキドとやっと会う事になった。

 だが、さらに追い打ちをかけるようにオーキドからとんでもないことを告げられた。

 

 

「だから、ないんじゃ」

「……もう一度聞くよ。何がないって」

「だから、ポケモン」

「あれーおかしいねー。グリーンがヒトカゲでリーフがフシギダネ。じゃあゼニガメが残ってるよね、なんでー?」

「その……な。盗まれたんじゃ。てへ」

「お前の管理責任ガバガバじゃねぇかよ……というとでも思ったか、この糞じじぃ! ゼニガメが盗まれたぁ⁉ それただの金銀じゃねぇか! 二年ぐらい早いんだよ!」

「金銀ってなんのことじゃ!」

「お黙り! じゃあどうすんだよ! あれか、イーブイでもくれるってか!」

「そんな貴重なポケモンやるわけないじゃろ。ていうか、わしが可愛がるし」

「……じゃあ、死のうか」

 

 

 そこらへんにあった分厚い本をもって俺はにっこりと笑みを浮かびながらオーキドに迫ろうとした。当然のように待ったと助手共が止めに入った。なお、ナナミさんは呆れて止めにすら入らなかった。どっちに呆れてるかは知らない方がいいんだろうか。

 

 

「わ、わかった! ぼ、ボールとおこづかいをやろう!」

「……いくら」

「ごひゃ」

 

 

 レッドのこわいかお! オーキドはひるんだ! 

 

 

「一万円あげるわい……。ボールも10個もやる。あとおまけでポケモン図鑑」

「メインがおまけとか泣きたくなりますよー」

「あと、レッド」

「なんだよ」

「これからはトレーナーへのダイレクトアタックは控えるんじゃぞ」

「うん、おかのした」

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで。

 自宅に帰り何も入ってないバッグにボールを入れ、鍵を閉めて家を見上げた。一人しかいない家がとうとう誰もいない家になってしまった。一人で暮らすには快適だが寂しいものだった。ていうか売ったら大金になるかと思ってしまう自分は最低だなと思いつつも、帰る場所はやっぱりあった方がいいかなと考え思いとどまった。

 家を背にナナミと待ち合わせしている場所へと向かう。彼女はマサラからトキワへと向かう道の出入りで待っていた。その手には小さく四角いタブレットのようなものが。

 

 

「あれ、それって」

「うん。タウンマップ」

「え、普通紙媒体じゃ」

「私からレッドくんへのプレゼントよ。もちろん二人には内緒よ?」

 

 

 口に指を当てるそのポーズはとてもエロく見えた。

 

 

「一応最新版だから他の地方のも入ってるけど、ないよりはいいよね」

「あっふーん」

「それにしても、ポケモンを持たないトレーナーが旅に出るって。本当に信じられないね。レッドくんがはじめてよ、きっと」

「いやぁ、照れますな」

「もう。そうやって調子に乗るんだから。……レッドくん」

「……え」

 

 

 すると彼女はそっと抱きしめてきた。まだ11歳であるので身長は平均より少しある程度。それでもナナミの方が少し背が高い。だから、もろに彼女の胸の感触が伝わってくる。とても柔らかい。そして、彼女の秘密を知りつい口に出してしまう。

 

 

「ナナミさんって」

「うん」

「着やせするタイプなんですね」

「レッドくんのエッチ」

「今のなんかエロいっす」

「うふふ。私ね、レッドくんのこと……好きよ」

「俺も好きっす」

「じゃあ、両想いね」

「え、マジでそっちの意味?」

「さぁ。どうかしら」

 

 

 そっと体を離すと、ナナミは目を瞑って俺の頬にキスをしてきた。なんか、健全な行動がとてもエロく見えるという新しい境地を見出した気分。

 

 

「おまじない、無事に旅ができますようにって」

「じゃあ死ねないっすね」

「うん、そうだよ」

「「……」」

 

 

 会話が途切れる。

 何て言うかとても甘酸っぱいのだ。まさにこれが青春と言わんばかり。いやまあね? ナナミってほらちゃんとした立ち絵とかなかったからとても美人だってすごい驚いているわけ。だから、すっごい緊張するんだ、これが。

 いやしかし、俺にはポケモンで好きな人がいるし。でもでも、ちょっとギャルゲーの主人公みたいなことしてみたいし。

 的な欲望の結果。浮気しても……バレへんやろの精神でいくことにした。

 

 

「じゃあ、チャンピオンになったら……デートしてください」

「なれなかったらどうするの?」

「その時は……慰めてください」

「……どっちがいい?」

「ちょっと何を言ってるかわかりませんね」

「とぼけちゃって。でも、うん。いいよ。待ってる」

「はい。それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい、レッドくん」

 

 

 

 ナナミに別れを告げ、俺はマサラタウンをあとにする。

 遂に始まる俺の旅。でもまずは……。

 

 

「ポケモンだよな……」

 

 

 道中の危険を避けるため、俺は近くに転がっていたイシツブテを拾いトキワシティを目指すのであった。

 

 

 

 

 

 しかし、レッドは知らなかった。

 この世界がポケモンはポケモンでも、ポケットモンスターSPECIALだということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さくても、自分が知る大人の誰よりも逞しい背中をしている少年が見えなくなるまで手を振った。もう彼とは会えない。どれくらいの時間がかかるだろうか。半年、いや一年かも。

 それは辛い。きっとその間に彼は私のことなんて忘れてしまうだろうと思った。だからなのか、自分でも驚くほどに攻めた行動に出た。

 

 

「だってリーフったらレッドくんのこと好きなのバレバレだし。お姉ちゃんもどうしたらいいかわからないんだもん。旅に出ちゃえばリーフが有利だし、これぐらい許されるよね! まあでも」

 

 

 妹は知らない私だけが知っている秘密。それは絶対に揺るぎない圧倒的有利なこと。

 それは──。

 

 

「レッドくん、お姉さん物ばかり集めてたからよかったわ。うん、きっと私のことを意識していたに違いない。さあて。レッドくん家へお掃除にいきましょ!」

 

 

 漏れなく、彼のお宝を見つけたら処分して私のとすり替えておかなくちゃ(使命感)。

 

 

 

 

 

 

 データ

 レベル12

 なまえ レッド

 タイプ ワイルド

 とくせい スーパーマサラ人

 わざ  イシツブテ(殴)

      イシツブテ(投)

      あといっぱい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すっげぇ久しぶりに帰ってきた。
なんでポケモンかって、イチャイチャしたいから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

そうだ。俺がわざマシンになればいいんだ

え、ニョロゾ? いいやつだったよ……



 

 拝啓。

 天国にいるかもしれないお母様。あなたの息子がマサラタウンを旅立って早五日。私はいまトキワの森で野宿をしています。

 ここはとても自然が豊かで虫ポケモンたちであふれかえっていて、なんていうか……とても開放的なのです。それと同時に四六時中ポケモンなのか人間なのかわからない謎の視線を感じているので、夜もおちおち寝ていられないことを除けばここはいいキャンプ場なんじゃないでしょうか。

 

 あ、ポケモンもちゃんと捕まえましたよ。なんとスピアーですよ、スピアー! 

 え? そんなのトキワの森で出てくるわけないだろ! いい加減にしろ!? ちょっと待ってください。ここはゲームじゃないんですから、ビードルやコクーンがいるってことはスピアーもいるってことでいいんだよ。

 どうやって捕まえたかって? イシツブテを投げました! 

 

 

 さて。最初に捕まえたのがスピアーというのが中々マニアックかもしれないが、スピアーはかっこいいから許されると思う。うろ覚えだけど、メガシンカしたらかっこよかった気がする。

 ただ、このスピアーは少し面白いやつで。多分群れのリーダーだったららしく、そこら辺のポケモンよりちょっと強い。なにせ、捕まえようとした際に容赦なく頭と心臓目がけてくるんだからそりゃあ強いわけだ。

 そのことでスピアーに尋ねてみた。

 

 

「お前ってさ、人間の弱点っていうかそういうのがわかるのか?」

「……」

 

 

 コクリと頷くスピアー氏。やだ、この子怖い。でも、嫌いじゃないわ。

 

 

「成程なぁ。やっぱ野生だけあって縄張り意識が強いのかね。それはお前もか、ピカチュウ」

「ピッカ! ピカピカ、ピッカチュウ!」

 

 

 小さな手でジャブをしながら相手を叩きのめし、最後には自慢の電気技でトドメを刺す! というようなジェスチャーをしてくるピカチュウ。

 こいつもスピアーの次に捕まえたポケモン。いや、単純にカスミ戦のために捕まえただけなんだけどね。それでもいざ探そうと思ったら意外といなくて、たまたま歩いていたらそっちから不意打ちで攻撃してきたのが最初の出会い。冷静に考えるとひでーや。

 

 

「お前も野生の割には強いよな。ま、俺のパンチ一発で倒れるようじゃまだまだだね」

「ピカピカ」

「……」

 

 

 お前は何を言っているんだ、そういわんばかりな目で俺を見つめる。いや、スピアーはまったくわからないんだけど。

 

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 

 あ、そうだ。ゲーム序盤のイベントであるセキエイ高原でのライバルとの戦いは普通にスルーした。だってもう完全に出遅れてるし、あのグリーンがタイミングよく現れるわけないだろうしね。

 リーフ? 知らね。

 そもそも、あいつの手持ちってどうなるんだろうか。ゲーム基準で言ってもグリーンと被るわけないし、いざバトルってなったら絶対に不利だ。

 

 

 バトルと言えば、トキワの森にいるトレーナーは全員倒した。スピアーとピカチュウを捕まえたのでレベリングを開始したからだ。ただ相性が悪いので時間はかかった。

 しかし、ここはゲームではない。何度もバトルができる。そう、できたんだけど……。

 終いにはあまりにも俺が何度もバトルを挑む=おこづかいゲットを繰り返していたので、たぶん今のトキワの森にはトレーナーは一人もいません。

 それに気づくまでの間、必死に森中を探し回って誰もいないことを知った俺は、叫んだ。

 

 

「誰か俺と、俺とバトルしろぉおおおおおおおお!」

 

 

 そんなこんだんで、トキワの森で早三日。そろそろニビシティを目指そうかなと思っているのだが、どうしても大きな問題がある。

 

 

「タケシ戦、どうすっかな……。いや、マンキーとかニドラン見つければいいんだけど、めんどくさくてなぁ」

 

 

 手持ちはどう見てもいわタイプに不利。くそぉ、ゼニガメなら楽勝なのに。

 悩むこと数分。俺はあることを思い出した。

 ピカチュウはたしか、アイアンテールを覚えたはずだ。あれは、はがねタイプの技だったはずだからいわにはこうかばつぐんのはず。

 でもあれはレベル技じゃないし、技マシンもない。ていうか今のカントーにあるのか? 

 俺はピカチュウをじっと見つめる。

 人間は教えてもらえばそれを学習し、自分で実践することができる。ならば、ポケモンにだって実際に見せてやればできるのではないか。

 そうだ。俺が技マシンになればいいんだ。

 

 

「よし、ピカ。俺がアイアンテールをするから覚えろ」

「お前バカじゃねぇの!? (ピカピカ⁉)」

「いいか。俺の右足をお前の尻尾とする。でだ。こう助走をつけて」

 

 

 俺は目の前の木を目がけて走り、少し手前で大地を蹴って前方宙返りをして叫んだ。

 

 

「アイアンテール!」

 

 

 レッドのアイアンテール? 木は真っ二つだ! 

 ドスンと斬られた側の木が地面に倒れ大きな音を奏でた。

 

 

「ざっとこんな感じだ」

「ピカ! (できるわけないよ!)」

「そうかそうか。お前もやる気満々か」

「ピカチュゥ!! (ちげぇよ!)」

「あ、スピアーは感謝のミサイルばり千回な。1ターンキルできるようにならきゃこの先生き残れないからな!」

「……」

 

 

 スピアーとピカチュウは思った。とんでもない人間に手を出してしまったと。だが捕まえられてしまった以上仕方がない。二匹はトレーナーの命令に従い特訓を始めるのであった。

 

 

 

 数時間後。

 ピカチュウはアイアンテールをおぼえた! 

 

 

 

 

 

 

 五日目のお昼ごろ。

 俺はトキワの森を抜けてニビシティにたどり着いた。早速ジム戦といきたいところだったが、何故かポケモンセンターが爆発四散していた。

 

 

「は? なにあれですか。縛りプレイですか?」

 

 

 かつてあったポケモンセンターの前で愚痴を吐いているのは自分でだけではない。ここはトレーナーだけではなく多くの人が利用する場所だ。それがなくなればどうなるか。例えるなら街に一軒しかない病院が突然閉鎖してしまえば、当然市民はパニックになるというものだろう。

 そんな俺を嘲笑うかのように背後から数日ぶりに知った人間の声が耳に入った。

 

 

「はーいレッド。久しぶりね」

「げぇリーフ! それと……グリーンか」

「ふっ。どうやら自己紹介は不要なようだな」

「レッドも災難だねー。ジム戦の前にポケモンセンターがこうなっちゃうなんて! まぁ、わたしと兄貴はその前にもうバッジを手に入れたんだけど!」

「う、うぜぇ……」

「そもそもレッド。お前、ポケモンはどうした? リーフから聞いた話では、お前はおじいちゃんからポケモンを貰ってないと聞いているが」

「あぁん? ゲットしたぜ。しかも二匹」

「うそぉ! どうやって!? まさか、人のを盗んだんじゃないでしょうね!」

「どうって、イシツブテと拳で」

「……」

「笑えない冗談はよせ」

 

 

 リーフはぽかーんとしているし、グリーンに至ってはこれぽっちも信じている素振りではない。ていうか今気づいたけど、このグリーン「チャオ!」とか「バイビー」と言うような男には見えんな。

 

 

「そもそもさ。俺のこと心配しているのか、それともこの現状見て嘲笑っているのかどっちのだよ」

「え、両方!」

「ねぇ。あなたの妹性格悪いって言われたことない?」

「俺ほどじゃあない」

「うわぁ。じゃあ、キズぐすりとか分けてあげるとか……なさるおつもりはないと?」

 

 

 二人はグッとサムズアップして答える。やっぱ兄妹だわ、こいつら。

 するとグリーンがバッジをちらちらと見せつけながら挑発してきた。

 

 

「まさかレッド。ポケモンセンターが使えないだけでジム戦を諦めるのか? 別にいいんだぜ。ここで留まる間俺達はどんどん先に行ってバッジを集めてポケモンリーグに出るからな」

「えーまだバッジを一個も持ってないのー? それが許されるのはトキワシティまでだよねー!」

「……で」

「で?」

「ん、どうした」

「できらぁ!」

 

 

 二人を背にして俺は走り出した。糞っ、なんで子供二人に言葉責めにあわなきゃいけないのか。ふざけんな、大人をからかうんじゃない。

 別に悔しくない、悔しくなんてないんだからな! 

 

 

 

 

 その後。タケシに事情を話したらジムにあるマシンでポケモンを回復してくれた。

 うほっ、いい男! 

 でも、タケシのやつ上半身裸の割には意外と筋肉ついてなかった。まったくがっかりだぜ! 

 あと、タケシのイワークはピカのアイアンテールで口では言えない状態になってしまった。なんていうか、イワークなんだけどイワークじゃないみたいな。

 

 

 そしてジム戦のあと二人に報告しようとしたらすでにいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




作中ではやってないけど、レベリングはレッドと戦った方が簡単にあがります。
あとその内一人称やら三人称になったりします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クソゲーはここからだぜ

今回はちょっと真面目に書いたぞい。
(あとバトル描写は一部を除いてほぼ)ないです


 

 タケシを倒したレッドは真っ先に博物館へとむかった。

 いや、正式には博物館の裏口である。ゲームではいあいぎりがなければいけないルートであるが、今なら実際にいけるとレッドは思ったからだ。

 しかし、現実は非常であった。

 

 

「木じゃなくて現代的とはまいったね!」

 

 

 そう。昔よくみたちゃんとしたバリケードがあり、一つしかない出入口はIDカードがないと入れないしくみなっていたのだ。

 レッドとしてはあわよくばひみつのコハクを手に入れたろの精神でいたのだが、こうして出鼻をくじかれてしまえば気力も一気に下がってしまうもの。

 なので、そのままオツキミ山へと向かうことにした。

 道中のトレーナーを何度も倒し、可愛いミニスカートのお姉さんとちょっと親密な関係を築いたりと、ゲームでは何度もニビシティに戻って回復したのが今ではまだ0回。そしてそのままオツキミ山の麓にあるポケモンセンターにたどり着いのだ。

 中に入るなりレッドは施設内を見渡した。ニビシティ程ではないがそこそこ人はいる。俗に言うやまおとこがちらほらと。しかしレッドのお目当ては彼らではない。言葉にするならまさに胡散臭いおっさんである。

 だが、辺りを見回してもそんな人間一人もいないのだ。

 

 

「あるぇー。コイキングを売りつけてくるおっさんがいねえぞ」

 

 

 500円でレベル5のコイキングと交換できるのが初代の面白いところで、まさか当時はこいつがギャラドスになるなんて思いもしなかったことをレッドは思い出す。実際のところ手に入ればラッキー程度に思っていたので特には気にはしてないのだ。いればとっととレベルを上げてギャラドスにすれば、オツキミ山が楽に攻略できるな程度にしか考えていなかったからだ。

 

 

「ねぇ知ってる? 青い火の玉のこと」

「え、なにそれ?」

「何でも、オツキミ山の出口付近に最近夜な夜な青い火の玉が出るって噂だよ」

「どうせゴースとかじゃないの? 大袈裟だって」

 

 

 近くを通りかかる二人組の女性の会話が耳に入る。レッドは特に関心はなかったが、片方の子がいうようにゴースのいたずらだと思った。なにせトキワの森にスピアーやらバタフリーがいるのだから、夜にゴースが現れても不思議ではないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 そのあとレッドはポケモンを回復させた後オツキミ山へと向かうことにした。ただレッドもとい、前世の癖と言うか貧乏性のところがあり、貰えるものは貰っとく主義だったのでちょっと後悔していた。

 

 

「ギャラドスじゃなくても水ポケモンどうすっかなぁ。なみのり考えなきゃいけないし……先回りしてシルフ攻略してラプラス貰うかなぁ」

 

 

 実際のところラプラスの優先度はかなり高い。ラプラスは何だかんだでゲームのレッドの手持ちになっているからだ。見た目重視だったらミロカロスなども候補にはなっているが、現時点でホウエンになどいけるわけもないので諦めるしかない。

 そんなとき。

 

 

「グォオオオ!!」

 

 

 聞いたことがあるようでないようなポケモンの咆哮が目の前のオツキミ山の入り口から聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ。 っ! ヒトちゃんよけて!」

 

 

 自身も傷を負い、そんな自分もよりも傷を負っている手持ちのポケモンであるヒトデマンにカスミは指示を出す。しかしヒトデマンは避けない。避けてしまえば背後にいるマスターに当たってしまうからだ。

 

 

「ヒトちゃん!」

 

 

 ヒトデマンは敵対しているポケモン──ギャラドスのハイドロポンプを受けて倒れてしまう。ギャラドスは凶暴だ。進化前のコイキングと違いその差は歴然。ここは海でも川でもなく陸だというのに、ギャラドスはそんなの関係ないのか暴れている。

 だが、問題はそこではない。

 ここはオツキミ山。ギャラドスなど現れるはずがないポケモン。だからこそ、カスミはこの子を追ってまでここに来たのだ。

 しかしそれもおしまいだ。

 ギャラドスはこちらを睨み、再びハイドロポンプを放つ態勢に入っている。カスミは倒れているヒトデマンをかばうように抱きしめる。

 死を覚悟しようと矢先、背後から軽い声が聞こえた。

 

 

「ちょっとなんでここにギャラドスがいるんだよぉ。やめたくなりますよぉ~トレーナー」

 

 

 視線を向ければそこには自分より幼い少年がいた。そしてすぐにカスミは気づいた。ギャラドスの対象が自分ではなく彼に向いたのを。

 だから叫んだ。

 

 

「だめ逃げて!」

 

 

 それは同時だった。叫び終えるころには少年がいた場所にハイドロポンプは放たれてしまった。

可哀想に。いや、何を言っているのだ。これは自分が招いた結果だ。

 カスミは再び戦う闘志を取り戻し、ヒトデマンにじこさいせいを命じようとした時、

 

 

「暴れるなよ、暴れるなよ……。スピアー、ミサイルばりで旋回しながら牽制しろ!」

 

 

 いつの間にか違う所に立っていた少年の手から放たれたボールから物凄いスピードで飛ぶスピアー。信じられないほどミサイルばりを全弾当てながらギャラドスの周りを旋回する。

 

 

「ピカ、10万ボルト!」

「ピッカチュウ!」

 

 

 ピカチュウの10万ボルト。こうかはばつぐんだ! 

 

 

「やったの⁉」

「やめろばか!」

 

 

 しかしギャラドスは倒れてはいない。そうあの10万ボルトをくらってまだ倒れていないのだ。けどあと少し、カスミも援護しようとすると少年は何故かギャラドスに向けて走り出し拳を振り上げた。

 

 

「これが基本の聖拳・月!」

 

 

 少年の正拳突きがギャラドスのお腹……に直撃した。その様子は先ほどの10万ボルトよりも苦しそうに見える。そしてそのままギャラドスは地面に倒れ、彼はボールを投げた。

 

 

「ギャラドスゲットだぜ!」

 

 

 カスミはじこさいせいしたヒトデマンをボールに戻して少年に声をかけた。

 

 

「ありがとう。おかげで助かったわ。私はカスミ、あなたは?」

「ファッ⁉ カスミナンデ⁉」

 

 

 少年は酷く驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 単刀直入に言えば、レッドは酷く混乱していた。それもそのはず。ここはオツキミ山で、それがハナダ側ではなくニビの管轄にハナダジムのジムリーダーであるカスミがいるのだ。驚くのも無理はないだろう。

 ただ、ギャラドス一匹にこんなにも苦戦しているジムリーダーって実際どうよ、なんて内心思っているレッドである。いや、たしかに普通と違って少しおかしなギャラドスであるのは間違いないのであるが……。

 カスミの手当てをしながらレッドは彼女から事の経緯を訊いた。

 なんでももともとこのギャラドスはカスミの手持ちだったらしく、それが突然行方をくらまして気付いた時には先ほどの状態になって暴れまわっていたという。それをこのオツキミ山まで追ってきたというのだが。

 話を聞く限りどうみても心当たりは一つしかなかった。

 

 

「それってロケット団の仕業か?」

「知ってるのあなた⁉」

「え? まぁ、うん」

 

 

 頬を掻きながら答えるレッドはどう答えたらいいかわからなかった。深い所はまでは知らないが大まかなことは彼は知っているからだ。タマムシのゲーセンの地下には彼らの秘密基地があって、ヤマブキにあるシルフカンパニーはすでにロケット団の支配下。

 これらゲームの情報は彼にとって最大のアドバンテージ。欲を言えば自分だけが知っている最も効果のある武器。それをやすやすと教える気はない。

 仮に。自分がやらなくてもおそらくグリーンがなんとかするだろうとレッドは推測していた。タマムシはわからないがポケモンタワー、シルフカンパニーに関しては彼は現場に足を運んでいるからだ。

 それにゲームと違ってここのグリーンはああ見えて正義感は強いだろうし、妹のリーフと共になんとかするのではないかと考えている。

 とりあえずレッドはカスミに一般人が知ってそうな情報を教え、彼女もその程度の情報は知っているのか勝手に納得していた。まぁ、ロケット団のことを深く知っている人間など数多くはいない。

 

 

「そうだ。これ、お前のなんだろ。ほれ」

「わっとっと。えーと、いいの? 仮にもレッドが捕まえたのよ?」

「いいよ。だってカスミのポケモンだろ? 別になんとかなるし」

「あ、ありがとう」

「でさ。カスミはハナダに戻るんだろ?」

「そ、そうだけど。どうして私がハナダに戻るってわかるのよ」

「い、いや、なんか水ポケモン使ってるしハナダ出身かなって」

「レッド。あんたアホっぽいように見えて賢いのね!」

「アホは余計だ!」

 

 

 なんとか誤魔化して難を逃れたレッド。

 そしてカスミと共にオツキミ山の洞窟へ抜けてハナダを目指すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのにどうしてこうなった」

 

 

 レッドは目の前の状況に嘆いていた。しかし待てと、それ以前に思い当たる節があったではないかと自分に言い聞かす。洞窟の入り口にはロケット団の下っ端が数名いて、それをリアルファイトで突破したまではいい。いや、それ以前にロケット団が多すぎる。洞窟の入り口から道中まで。ゲームではやまおとこや他のトレーナーだっていたのに誰もいない。

 ていうかリアル洞窟は怖すぎるとレッドは内心ビビっていた。

 それが突然ロケット団の集団と遭遇し、それもなぜかいるはずのないサイホーンを持った団員まで現れる始末。サイホーン自体カスミのポケモンで楽々と倒したのだが、幹部らしき男が謎の薬をサイホーンに打つと不思議なことにサイドンに進化したのだ。

 さすがのレッドもそれには驚き、サイドンのつのドリルの余波でカスミは気を失ってしまう。彼女を背負いながらレッドは相変わらず生身でサイドンと対峙していた。

 

 

「おいおい。ふしぎなアメじゃなくてふしぎなお薬かよ。やべぇよやべぇよ」

「貴様、トレーナーのくせに何故ポケモンを出さない」

「ん? 別に必要ないだろう。あ、でもレベリングは必要だし……おっと」

 

 

 再びサイドンのつのドリルがレッドを襲う。彼は簡単にそれを避けるがつのドリルの余波で飛んでくる石はどうにもならない。それは確実に体力の消耗を与えていた。

 

 

「その常人離れした身のこなし。そうか、貴様が最近我らロケット団の邪魔をしている小僧だな」

「俺も有名になったもんだ。……しかし、妙だな」

「妙? なにがだ」

「アンタだよ。幹部ぽい格好しているアンタ。俺はお前を知っている気がする」

「何を惚けたことを……サイドン!」

「!」

 

 

 再びサイドンが襲い掛かるのを避ける。サイドンの攻撃が単調なのはここが洞窟だからだ。じしんなどしてしまえば彼らも埋まってしまう。それが功を奏しているのはいいがこのままではマズい。

 それでもそんな状況の中でレッドはあることを考えている。それはあの男のことだ。声は別に聞いたことはないのだが、帽子のせいではっきりと断言はできないが自分は彼を知っている気がしてならないのだ。

 サイドンにも目をやりつつあの男について観察する。服装は確かに他の下っ端とは違う、ところどころ鎖帷子のようなものが見えて、首にはマフラーらしきのもがある。

 そこでレッドは気づいた。しかしありえないとすぐに否定する。だが、それしかない。

 額を一粒の汗が流れる。どうやらここは自分が知っているポケモンの世界ではないのだという現実がレッドを襲う。

 知らないと言うことは恐怖だ。それが知っているゲームなのにだ。

 それでもレッドは男──ジムリーダーであるはずの男に言う。

 

 

「──お前、キョウだな」

「……なに?」

「間違いないね。お前はセキチクシティのジムリーダーのキョウだ!」

「サイドン……奴を殺せ」

 

 

 酷く冷たい声。これは本気だ。

 レッドはそれを聞いてニヤリと不気味な笑みを浮かべ、ようやく相棒のポケモン達を出した。

 ピカチュウとスピアー。それを見て、キョウらしき男は笑った。

 

「はははっ! ピカチュウにスピアーだと? 貴様、サイドンのタイプを知らんのか!」

「知ってるとも。だがな、俺は知った。ここの(・・・)ポケモンバトルにおいてタイプ相性がすべてではないと。だから──スピアー!」

 

 

 レッドの叫びと共にスピアーは地面すれすれを駆ける。ここは洞窟で外と違って狭い。むしろ機動力を活かせないと思われたが現実は違った。スピアーはヒットアンドアウェイ、サイドンに自慢の槍を突いては離脱を繰り返す。サイドンはまるで人がハエや蚊に振り回されているかのように踊っている。

 

 

「ええい! サイドン何をしている! そんな虫など叩き落とせ!」

「いいや、もう手遅れだ」

「なに?」

 

 

 キョウがサイドンに目を向けると様子がおかしいことに気づく。サイドンの体がふらふらと安定せず、そしてすぐに前から倒れた。

 

 

「な、どうして……まさか!」

「そう。どくのエキスパートのアンタならわかるだろう?」

「どくどくか。だが、こんなにも早くサイドンが倒れるわけが」

 

 

 サイドンを倒したスピアーがレッドの隣に戻ると彼はそっと彼の頭を撫でた。

 

「こいつは特別でね。相手の急所がわかるんだよ。人もポケモンもな」

「な! それではつまり……」

「そう。スピアーの攻撃はどれも『きゅうしょにあたった!』になる」

「く、クソゲーすぎる」

「なに。クソゲーはここからだぜ」

 

 

 そうレッドは言うとピカチュウに視線を向けた。ピカチュウもまたコクリと頷く。

 

「ピカチュウ、天井に向けてアイアンテール!」

「貴様ぁああああ!!!」

「へへっ。生きてたらまた会おうぜ!」

 

 

 ピカチュウのアイアンテールは洞窟の天井に当たるとすぐに崩落を開始した。キョウの咆哮は瓦礫の音でかき消されレッドには届くことはなかった。

 

 

 

 洞窟の崩落から30分後。

 レッドのいわくだき! 

 ドン! と、岩が砕け散る音共に光が差し込む。カスミを背負いながらひたすら目の前にいる瓦礫に対して休まずのいわくだきは流石のレッドも堪えたようだ。

 

 

「で、出口だぁ。自分でやったとは言え今回は危なかった……ん?」

 

 

 すると腰についているピカチュウのボールがカタカタと揺れる。それでなんとなく何が言いたいのか察した。

 

 

「はいはい。俺が悪いんですよ。けど、あれで下っ端どもは死んだろうな。キョウは知らんが」

 

 

 キョウは忍者だから生き延びているだろうという謎の自信があった。

 しかし、本当の問題はキョウの存在である。ゲームではただのジムリーダーが今ではロケット団の幹部。たしかにロケット団ぽいと言えばそうなのであるがそれでは腑に落ちない。

 一番の問題は、ロケット団の戦力にジムリーダー級の戦力が備わっていることである。ここはゲームではない。メタで倒せるほど簡単ではない。下手をすれば命を落とす。

 まぁ今回はまさにその状況だったのであるが割愛する。

 ふぅと小さなため息をついて改めて冷静になるレッド。抱えているカスミに目を向けすぐに前を向いてハナダに向けて歩き出す。砂埃まみれなってしまった自慢の帽子を深くかぶり、レッドは小さくつぶやいた。

 

 

「これはちょっと本気でいかねぇとやべぇな」

 

 

 なお。数分後目覚めたカスミに奇声をあげられ全力のビンタを食らった模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドとは別にハナダと繋がっているオツキミ山の出口で、ロケット団の幹部であるキョウは肩で息をしながら地面を這いつくばっていた。

 

 

「はぁはぁ。あ、あの小僧めぇ……生き残ったのは、俺だけか」

 

 

 別にどうでもいいがボスの手駒を失ったのはよくない。キョウはボスの恐ろしさをよく理解しているつもりだ。今回は確かに自分の失敗であり失態。しかしそれをもみ消すことは最も愚かな行為だ。彼は素直にボスへと直通でつながるポケギアで連絡する。

 数秒のコールを待ってボスは出た。

 

 

『結果は?』

 

 

 たった一言だというのにこの重み。キョウは臆せず正直に報告した。

 

 

「失敗しました」

『失敗、だと? お前ほどの男がなぁ。まさか、噂のガキにやられたんじゃないだろうな?』

「……はい」

 

 

 ロケット団においてあの小僧は話題の一つであった。マサラタウンにおけるミュウ捕獲作戦でそいつの名が挙がった。誰もがあの小僧のことを訊くと口を揃えて『あいつはトレーナーじゃない』と言う。最初はポケモンを持っていないからだと思った。だが、ポケモンを持っていない小僧にそいつらはやられたのだ。そう考えれば危険だ。

 キョウはボスに問われる前に要点だけを伝える。

 

 

「あいつは、洞窟だというのに躊躇いもなく天井を攻撃して崩落を起こしました。結果、自分以外全員死亡です」

『……』

 

 

 静寂。自分は忍だ。それは嫌いではないが今は違う。もっとも嫌いなものになっている。

 ごくりと唾をのみボスの次の言葉を待つ。

 

 

『ははははははっ!』

 

 

 待っていたのは罵声でも怒声でもなく歓喜だった。

 

 

『そいつの名は?』

「……レッド。マサラタウンのレッドです」

『レッドか。いいだろう、お前はそのまま帰還し次の指示を待て』

「は」

 

 

 ぶつっと通話が切れる。

 キョウは分かっている。あそこで無駄なことを聞くこと自体が愚かな行為だと。

 そして彼はボスの命令通り帰還する。たった一人で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※適当データ

レッド レベル19
ピカチュウ レベル25
スピアー レベル27

ちなみに、レッドの上限は50。ただし、必ずしもなれるとは限らない。


スピアーついて調べてたらダブルニードルが専用技じゃなくなってたことに驚いた。
それにしてもイチャイチャしたいのに一向にできない。ポケスペだから仕方がないね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ではこれからレッドブートキャンプ先取り編を開始します

メガリザードンxかっこいいお!
でも、初代じゃ出せるわけないお……
なら、色違いで変異個体として出すお!



 

 

 

 

 ハナダシティ側にあるオツキミ山の洞窟の出入口付近を一人の少年レッドが散策していた。なぜ先へと進まず元来た道を戻っているのか。

 それは数日前、レッドはこの洞窟の一件のあとカスミをハナダシティへと送り届けたあとのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 そこは水の都と呼ばれるにふさわしいところで、ゲームと違いあたりに水路が流れゴンドラなども走っている。こういうところがゲームと違って新しい発見で面白いとレッドは食い入るように街を見渡していた。

 するとなぜか彼女のジムではなく家にいくことに。カスミの家は豪邸でなんとお嬢様だったらしい。

 そこで一晩過ごした後、レッドはカスミと戦いバッジをゲット。そのまま彼女に別れを告げてマサキの家に向かう。

 当然問題となるのはゴールデンボールブリッジ。トレーナーを倒した後変装していたロケット団をぼこりきんのたまを貰うのだが……。

 

 

「おい。もう一個あるだろ。あくしろよ」

「な、なにを言ってるんですか。それは一個しか……」

「惚けるなよ。もう一個あるだろ。ほれ、ジャンプしろよ」

「ひぃいいいい!」

 

 

 ほぼカツアゲと同じことをしてもう一個を手に入れたレッド。そのままマサキとも出会ったのだが、これがなんとポケモンになっていなかった。

 いや、それもそうだと改めて気づく。なにせ、ブリッジの手前でグリーンと戦うイベントがないのだから当然だ。それにマサキが言うにはリーフによってもとに戻ったらしい。

 なお、サントアンヌ号のチケットはくれなかった。あげるぐらいだったら自分でいくわと言われたので持ってきたイシツブテを投げてやった。

 もうハナダではすることがないと思いクチバに向かおうとした時だ。ゲームと違っていあいぎりとか必要ないし、わざわざあの家を通る必要はないのではと気づいた。しかしだ、あそこにロケット団がいるのでそれはそれで民家の人も困ると思いレッドはなんとなく直感でその家に入り、案の定ロケット団がいたのでぼこぼこにした。

 はいこれでおしまい、というわけにはいかないのが現実。家は荒らされ、住民であるきれいなお姉さんは乱暴されていたのだ。彼女を癒すために一日使ったのは必要経費だとレッドは言い張る。

 その翌朝。互いに肌をテカテカさせながら別れの挨拶の時に、突然彼女からあるものを託された。

 

 

「ねぇ、レッドくん。この子も一緒に連れていってくれないかな」

 

 

 そう言って渡されたボールにはフシギダネが入っていた。

 彼女は続けて言う。

 

 

「私はこの子を可愛がることしかできない。でも、この子は男の子だから戦いたいのね。それに私を護れなかったことを後悔していると思うから」

「ありがとナス。大事に育てるよ」

「うん、お願いね。あとこれはおまじないよ」

 

 

 お姉さんはレッドの唇にそっと自分の唇を重ねる。

 

 

「あなたと過ごしたあの夜は忘れないわ。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてレッドは彼女に別れを告げ歩き出した。その行先はまさに今ここであるオツキミ山。彼は気づいたのだ。この世界がポケットモンスターのピカチュウバージョンだということに。それは絶対とは言い切れないのは、最初にピカチュウを貰ってないからであるがそれはいい。しかし、ピカチュウバージョンは御三家を手に入れることができるゲーム。なら、ヒトカゲもいるはずだ。

 

 

「さてと。多分ここら辺だと思うんだが」

 

 

 うろ覚えなゲームのマップと実際の位置でそれとなく計測した結果、少し開けている場所に出た。ゲームのヒトカゲはモンスターボールに入っているのは覚えている。それはきっと誰かに捨てられたということだろう。

 

 

「なんてことを……。ヒトカゲを捨てるとかこれもうわかんねぇな」

 

 

 最低な屑人間に愚痴を吐きながら辺りを散策していると、一つの視線をレッドは感じた。そのまま視線のある方に目を向けると、木の傍に青い火の玉が浮いていた。いや、正確には尻尾だ。

 ビンゴ。たしかにいた。それにあのポケモンセンターで聞こえた話は本当だったのか。

 噂も馬鹿にならないと思いながら、レッドは刺激しないようヒトカゲに近づく。ヒトカゲはすでに彼の存在に気づいており、警戒しながらぬるっと木の裏から顔をだした。その仕草が可愛いと思ったのは一瞬。すぐに青ざめた。

 

 

「お前、目が……」

 

 

 ヒトカゲの左目。そこに縦に引っかかれた傷跡があった。それでわかった。この子は人間に捨てられたんじゃない。群れから追い出されたのだ。色違い、それも赤い炎ではなく青い炎。気味が悪いと群れから孤立し、必死に仲間に加わろうとしたのを拒絶されてしまったのだ。

 

 

「そうか。お前も一人ぼっちなんだ。俺と同じだな」

「カゲカゲ」

 

 

 フルフルと頭を振り、右目で腰についているモンスターボールを見るヒトカゲ。

 

 

「こいつらはたしかに仲間だ。けどな、本当の意味でこの世界じゃ俺は一人ぼっちなんだよ」

「カゲ?」

 

 

 ヒトカゲは頭をひねる。さすがにわからないらしい。

 自分はこの世界では特別だ。良い意味でも悪い意味でも。良いことは今までの自分が自分としていられていること。悪いことはこの世界で自分としての自我が残っていること、それに家族は誰もいないこと。

 そう考えると本当に悲劇の主人公のような境遇だなとクスリと笑うレッド。

 

 

「なぁヒトカゲ。お前さ、見返してやりたくないか?」

「……?」

「お前を捨てた仲間…いや、この世界中にいる自分と同じ奴らを。肌の色や炎の色が違う? だからどうしたって、俺はこんなに強いんだってさ」

「カ、カゲ?」

「本当になれるかって? ああ、なれるとも。俺がそこまで導いてやる。なにせ俺は、ポケモントレーナーだからな!」

 

 

 レッドは生まれて初めて自分がポケモントレーナーだと胸を張って言った。今まではそんなこと思ってもみなかったような気がする。自覚と言うか覚悟みたいな。ただこの世界を旅できればいいとさえ思っていたから。

 だが今は違う。こいつを見て決意した。こいつを立派なリザードンにしてやろうと。そして自分もさらなる高みへいけるかもしれないと。

 

 

「だから、俺と来いヒトカゲ!」

「カゲ!」

 

 

 レッドはヒトカゲをつかまえた! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして場所を移してハナダの洞窟の一階付近。手持ちのポケモンたちは全員外に出ており、彼らの前に立ってレッドは高らかに宣言をした。

 

 

「えーでは、これからレッドブートキャンプ先取り編を開始します!」

「ぴ、ぴかぁ……」

「どうしたピカチュウ?」

 

 

 ズボンの裾をピカチュウは引っ張る。その仕草はいかにもお化け屋敷を怖がる子供と同じだ。ピカチュウだけではない。新入りのフシギダネも怯えた様子で、スピアーは少し落ち着きがない。先ほどのヒトカゲと言えば。

 

 

「か、カゲ!!」

 

 

 先程のこともあって彼だけはファイティングポーズを取っていた。

 

 

「見ろよこのヒトカゲの背中を! こいつはやるかもしれねぇ! ま、お前らは野生の勘でここのヤバさがわかるから仕方がないんだけど」

 

 

 ハナダの洞窟はゲームにおいてチャンピオン後に開放されるステージ。ここには高レベル野生ポケモンたちが数多く存在し、その最深部にはミュウツーがプレイヤーを待っている。

 しかし本来、ここはなみのりを手に入れても警備員がいるため入ることはできないがどうしてか警備員はいなかった。それになみのりを使えるポケモンを持っていないレッドがどうやってここまで来れたかと言えば、単純に泳いできたからである。トレーナーが海で泳げるんだから俺だってできるだろの精神である。

 

 

「それにしても……うーん、やっぱいないなアイツ」

 

 

 何となく気配を探ってみてもミュウツーの気配はない。あるのは強い野生ポケモンたちのみ。

 もしかしてまだ生まれてないのか? それとも別の場所とか? 逆襲のあそことか……ていうかあそこどこなのだよ。

 

 

「ま、いないならいないでいっか。というわけで、段取りな。俺が瀕死状態まで追い込むから、トドメは自分でさせ。以上!」

『……』

「何だなんだ。だらしない奴らめ。お、丁度いいところにアーボックが来たぜ」

 

 

 アーボックは比較的凶暴な部類に入るポケモンである。腹の模様で威嚇して獲物を捕らえるのだ。そして今回は真っ先に人間であるレッド目がけて襲い掛かった! 

 

 

「シャー!!」

「踏み込みが甘い!」

「⁉」

『『⁉』』

 

 

 アーボックの攻撃を華麗に躱したレッドはどういう原理で技をかけているのかまったくわからないが、コブラツイストをアーボックにかけている。

 

 

 レッドのコブラツイスト! アーボックの体力をじわじわと削っている! 

 

 

「ちょっとダメージが弱いな。もっと……こう!」

「グエェ───!!」

「ん、そろそろだな。ヒトカゲ、ひっかく」

「か、カゲ……」

 

 

 えいっと小さな体で巨体なアーボックの尻尾あたりをひっかく。

 すると。

 

 

「カゲ? ……リザァ!」

 

 

 おめでとう! ヒトカゲはリザードに進化した! 

 

 

「やりますねぇ! あ、でも左目の傷は残ったままか……。男の勲章と思えばカッコいいから気にすんな」

「リザァアアア!」

「お前らもヒトカゲ、じゃなかったな。リザードでやり方はわかったな!」 

「ちょっと何を言っているかわからないピカ(ピカピカピ)」

「お前ら丸太は持ったな⁉ では、ハナダの洞窟RTAはいよーいスタート」

『『⁉』』

 

 

 突然現れた丸太を手に持ってレッドは洞窟内へと突貫した。少し遅れてポケモンたちも彼のあとに続く。

 その様子はさながら映画の戦闘シーンのようだ。レッドが丸太でポケモンたちをちぎっては投げて、時にはメガトンパンチやメガトンキック、すてみタックルを繰り出して。そしてそのあとにピカチュウ達が続く。

 そしてブートキャンプ開始から数時間後。

 ハナダの洞窟の入り口前にて。レッドは涙を流していた。

 

 

「お前らぁ……立派になって」

 

 

 レッドは貰って初めてポケモン図鑑をやっと使った。今までバッグの奥底に放り込まれていたからかなり汚い。

 ピカチュウレベル56、スピアーレベル58、フシギバナレベル53、リザードンレベル61。

 何て言う強さ。これならセキエイ高原なんて余裕だぜ。しかしリザードンはなんかメガ進化っぽい見た目になった。けど、カッコイイからいっかとレッドは一人でうんうんと頷く。

 

 

「ピカピ」

「どうしたピカチュウ?」

「バナバナ」

 

 裾を引っ張って何かを伝えようとするピカチュウを補佐するようにフシギバナのつるがレッドのポケモン図鑑をさしている。

 

 

「なんだ見たいのか。ほれ」

 

 

 レッドからポケモン図鑑を渡されると、フシギバナのつるで図鑑を支えピカチュウが小さな手でポチポチと操作してある画面が現れた。

 

【レッド レベル24】

 

 画面を覗き込むようにスピアーもリザードンも顔を近づけ、画面を見てレッドを見る。

 

 

『あれで24なのか……』

 

 

 彼らは自分たちのマスターがとんでもない存在だということを改めて自覚するのであった。

 

 

 

 

 

 




先取り(ハナダの洞窟)

レベルが高くても負けるときは負けるのがポケスペ風(偏見)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リーフレポート※R15

リーフを出した理由は以下の通り。
1、ブルーは黒ノースリーブが一番かわいいから
2.レッドには別の形で御三家をゲットする都合があったから。
3.ポケスペ読者からすればブルーだけどリーフはリーフでかわいいから。
4.真斗版のブルーが一番かわいい異論は認める。


注意 今回エロシーンあります。R15がどの程度までやっていいかは知らんけどな!




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日お姉ちゃんが一冊のノートをくれた。これで日記でもつけてみたらと言うので今日から書くことにする。

 まずは自分のことについて書こうと思う。

 わたしには姉と兄がいる。ナナミお姉ちゃんとグリーン。グリーンに至っては先に生まれただけで兄という扱いになったのは今でも解せない。でも、いい兄貴なんだと思う。

 そんなグリーンがおじいちゃんの伝手でジョウトに修行に行ってしまったものだから、わたし達兄妹の関係は意外と深くはない。それでも手紙でやり取りはしていたし、険悪な関係になっていないのはなんだかんだで一緒に生まれたからだろうか。

 

 

 

 

 

 ふと自分が住んでいるこの町マサラタウンについて思ったことを書こう。

 ここは田舎だけど穏やかでとても美しい町だと思う。それでも物足りないものが多いのは否定できなかった。遊ぶ遊具なんであんまりないし、都会からは離れているし、同年代の友達はそんなにいない。いてもみんなポケモンを持っていて自慢してくる。

 そのことに対してわたしも最初は抵抗があった。けど、おじいちゃんが言うのだ。お前も旅に出る年になったらポケモンをプレゼントしようと。

 聞き訳がよかったのかわたしはすんなりとそのことを受け入れ、特にポケモンがいなくてもこれといって嫉妬などは抱かなかった。当然、わたしがオーキド博士の孫という肩書があるので誰もそのことについては言ってこなかったし、何かをしてこうようとはしてこなかった。

 ある子を除いて。

 

 

 

 

 

 その男はわたしと同い年らしい。グリーンはもういなくて知らないのも無理はないけど、わたしはその時までまったく知らなかった。

 名前はレッド。マサラタウンの端にある一軒家に住んでいるようだ。その家については知っているけど、まさか人が住んでいるなんて思ってもみなかった。友達の間ではお化けハウスなんて呼んでいてから。

 けど一番驚いたのはお姉ちゃんのことだった。お姉ちゃんはレッドのことは大分前から知っていて、頻繁に掃除や料理などをしていてあげてるのだ。理由を尋ねれば、おじいちゃんに頼まれたからとか、あの子は早くに母親を失くして一人ぼっちだからと。

 それからお姉ちゃんは色々と変わった。うまくは言えないけどよく笑顔でいるようになった。料理も毎日それなりの物がでるようになった。

 わたしは大事なお姉ちゃんが取られるような気分になった。だから、そのレッドという子供が嫌いになった。

 

 

 

 

 

 ある日からわたしはお姉ちゃんのあとをコッソリついてそのレッドを観察しはじめた。赤いジャケットと帽子がトレードマークの普通の男の子。家の窓から近くにいたイシツブテを土台にして中を覗くと、レッドはお姉ちゃんと一緒に掃除をしたり色々と作業を手伝っていた。

 意外だった。もっとガサツでいい加減なやつだと思った。

 とりあえず今日は帰ってまた明日観察をしよう。

 

 

 

 

 レッドのやつは意外とアウトドアな男らしい。ご飯の時間を除いてほぼ外にいることが多い。といっても家の敷地からはあまり出ない。出るとしたらランニングぐらいだろうか。外で何をやっているかと言えば、イシツブテで何度も投げ込みをして、敷地に生えているでっかい木に縄を巻き付けてそこに何度も拳を叩きつけている。

 なんだあいつは。

 本当に訳がわからなかった。遊ぶどころか毎日鍛錬している。

 この頃になるとわたしはレッドの観察に飽きてきた。見ていてもつまらないし、わたしの貴重な時間を浪費してまでやることではないからだ。

 だからなんとなく、本当になんとなくお姉さんにたずねたのだ。

 

 

「お姉ちゃんってさ、レッドのところにいくといつも笑顔だよね」

「え、そう? でも……そうかも。レッドくんって他の子と違って気を使わなくてもいいし、頼りになるし可愛いのよね。あ、この前なんかリンゴを潰してジュースを作ったのよ!? すごいでしょ!」

 

 

 それを訊いてわたしは二度とレッドの話題を出すことはなかった。そしてあいつを観察するのも止めた。

 

 

 

 

 

 ど、どうしよう。わたしもお姉ちゃんのこと言えなくなってしまった! 突然のことで自分でもわからないけど、とにかく整理しよう。うん。

 今日も暇だからと思って少し遠出して海でも見に行こうということなった。しかし、そこへいくにはマサラの南部にある草むらを抜けなければならない。ここら一帯のポケモンはそこまで凶暴なポケモンはいないから平気だと思ったのが甘かった。それにポケモンを持っていない自分なら尚更だった。

 わたしは運悪くあるポケモンに出会ってしまった。

 

 

 

 注意 ここからえっちシーンです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、モンジャラ⁉」

「モジャ~!」

「に、逃げなきゃ……きゃっ!」

 

 

 逃げようと思った矢先、リーフは足元に転がっていたイシツブテに躓いてしまった。その瞬間、モンジャラの触手が彼女の足を捉えてしまったのだ。

 

 

「や、やだ。離して!」

「モジャ~モジャ~」

 

 

 ぬるぬると足のつま先から太ももまでゆっくりと絡めながら次第にリーフのスカートの中へと侵入する。同時に別の触手がリーフの両手を絡めて宙に浮かせた。リーフはモンジャラの少し手前で固定され、モンジャラは下から見上げるようにリーフを舌で舐めるかのような目で視姦する。

 リーフはあまりにも目の前のモンジャラが怖く叫ぶことすらできない。もしこの時叫べていたら運が良ければ誰かの耳に入ったかもしれない。

 しかし現実はあまりにも残酷。誰かが助けに来てくれるなどという幻想を抱きながらも、彼女を犯す触手は動き続ける。

 足、腕、そして首から今度は口を塞いでくる。

 

「モジャ! モジャ!」

 

 目の前の光景に興奮しているモンジャラ。彼の触手の獲物はリーフのスカートだ。前を少しめくっては戻し、今度は後ろ側をめくってはジッと眺める。彼女の白の下着がさらにモンジャラを刺激する。スカート越しにリーフのお尻をすりすりと撫でるように触手を動かす。同時に今度は前も寂しいだろうと言わんばかりに陰部に押し付ける。

 

「んっ!」

 

 思わす声を出してしまうリーフ。それがモンジャラをさらに熱くさせる。下半身の次は上だ。彼女の小さな乳房をあらわにし、触手の先でつんつんと撫でる。

 

 

「ら、めぇ」

「モジャ───!!」

 

 

 遂に抑えらなくなったモンジャラはリーフの聖域へと手を伸ばす。彼は紳士のようでパンツは破かず、ズらす派らしかった。

 そして、触手が最後のトビラを破ろうと──。

 

 

「ここはR15だよ斬り!」

「モジャ~~⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてわたしはレッドに助けられたのだ。レッドは理由は本人でもよくわからないが嫌な予感してあそこに来たらしい。でもそのおかげでわたしは助かったのだ。

 我ながら簡単にレッドに惚れてしまったと思う。けど、腰が抜けて彼におぶってもらった時のレッドの背中はとても逞しかったのだ。

 それからレッドは我が家で食事を毎日するようになり彼と接する機会が増えた。でも、中々二人の仲は進展しないし、わたしはつい辛く当たってしまう。なんとかしたいと思って、家ではお姉ちゃんがレッドを甘やかすからわたしはその反対のことをしてしまう。

 いつかレッドと恋人同士になりたい、そんな淡い恋心を抱く時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 旅たちの前夜。少し前に家を出たばかりのレッドがおじいちゃんの研究所に運ばれた。原因はわからなくて、騒ぎに気付いた人がレッドを見つけたらしい。レッドの体はボロボロで何かと戦っていたのではないかとおじいちゃんは言っていた。

 グリーンが何かを知ってそうな雰囲気だったけど何もしゃべらず、わたしはレッドの傍にいたかったけど明日が旅立ちだからと家に帰った。お姉ちゃんは心配でレッドの傍で看病している。

 不公平だ。

 

 

 

 

 

 旅立ち当日。わたしはおじいちゃんからフシギダネをもらった。名前はダネちゃん。とりあえずグリーンと途中まで一緒にいくことになった。あいつは嫌がっていたけど妹のわたしの頼みは断らないのは知っている。

 そして最後にレッドが寝ている部屋に寄った。

 傷跡は一晩できれいになくなっていて静かに寝ていた。わたしはあたりを見回し、レッドの唇を奪った。

 

 

「早く起きないとわたしがチャンピオンになっちゃうぞ!」

 

 

 そしてわたしはレッドの部屋を後にし、マサラタウンを出たのであった。

 

 

 

 

 

 次にレッドと出会ったのはニビシティでのことだった。可愛そうなことに無残に壊れたポケモンセンターの前で。

 噂では野生のポケモンの仕業でポケモンセンターが壊れてしまったらしい。グリーンはそんなわけあるかと言っていたがその通りだと思う。しかしいまのわたし達にはどうすることもできない。できるとすればレッドを励ますことぐらいだった。

 ごめん、うそ。本当は励ましてあげたかったけど二人でレッドを煽ってしまった。

 逃げ出したレッドはたぶんそのままジムに向かったと思う。レッドなら勝てる。たぶん。

 本当は待っていてあげたいけど、グリーンが先に行くと言ってしまったのでわたしも付いていく。グリーンのポケモンじゃ相性が悪いし、わたしのダネちゃんなら安心してオツキミ山を越えることができる。

 まあ結局のところ、こうして二人で行動しているのはきっと今まで兄妹で過ごせなかった穴埋めをしているんだと思う。グリーンはそんなことを口に出さないけど。

 

 

 

 

 ハナダシティについた。今までは山や森ばかりの風景だったのが、町中を大きな水路が流れているまさに水の都だ。

 なんとなく気づいたのはここの女性はみんな可愛くてきれいなお姉さんがいっぱいいるなという印象だった。

 ジムリーダーも可愛い人だっていうしちょっと心配。特に同じフシギダネを持っているということで意気投合したお姉さんはとてもきれいでいい人だった。カフェで一緒にお茶をしたけど、仕草の一つ一つが見惚れるぐらいすごかった。ああいう人を美人っていうんだろうな。

 はぁ。レッドは今頃オツキミ山かな。

 

 

 

 

 

 クチバについた。今度は海が一面に広がっている。マサラタウンとはまた違った景色なのでとても新鮮だ。グリーンは全然見向きもしないけど。

港に行くとサントアンヌ号が停泊していた。すごく大きくてこんな船に一度は乗ってみたいと思った。もちろんレッドと一緒にだ。

 それにしてもレッドはまだ追いつかない。一体何をやっているのか。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。今読み返すと恥ずかしいね」

「バナ?」

「え、何でもないよバナちゃん」

 

 

 ダネちゃんはフシギダネからフシギソウに進化した。そのためダネちゃんではダメだと思いバナちゃんに改名した。

 

 

「それにしても、レッドのやつ今頃どこにいるんだろう。まったく、困った奴なんだから!」

「バナバナ」

「そうだねバナちゃん。今はレッドよりもグリーンだよね。馬鹿兄貴、ポケモンタワーに向かってから一向に戻ってこないんだから。わたしには危ないから待ってろ、なんてよく言えたもんね。さ、行こうかバナちゃん!」

「バナ!」

 

 

 リーフはポケモンセンターを飛び出しポケモンタワーに向かう。

 シオンタウンの雨はまだ止まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃のレッド。

 

 

「いやぁアレだな。ネットがあれば掲示板に【急募】ハナダの洞窟のポケモンを全部倒したら懐かれた【対処方法求む】って感じだな」

 

 

 ハナダの洞窟の最深部。そこにはここまでにたどり着く間に倒したポケモンたちがずらーりと並んでいた。まるで王にひれ伏す国民のようだ。

 

 

「お前らが俺を慕ってくれるのは嬉しいんだ。けど、ボールはないし全員を連れてはいけないんだ。だから俺からお願いがある。たぶんだけど、ミュウツーっていう強いポケモンが来たら何も言わず迎え入れてやってくれよな」

『『はーい』』

「それじゃ元気でな!」

 

 

 こうしてレッドは次の目的地であるクチバへと向かうのであった。

 

 

 

 




リーフ補完回。
リーフの手持ちとか全然考えてないんで誰かアドバイスくれ(強欲)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

だから今までの弱い自分とさよならバイバイ

みんなレッドを人間じゃないって言うお……。
でも、もし仮に長く続けられたみんなこう思うお……。

まあレッドだしって。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓。

 ハナダで一夜を共にしたお姉さんお元気でしょうか。レッドは今サントアンヌ号にいます。豪華客船というのには初めて乗りましたが、いやすごいですね。これはちょっとした自慢になります。

 周りを見渡す限りの海。ぼくの周りを囲んでいるレアコイルやコイル、ビリリダマにマルマイン。そして、暴走しているエレブー。まさに絶景とはこのことです。

 叶うのならお姉さんと一緒に夕焼けを見ながら過ごしたいものです。

 つまり何が言いたいかというと、いまピンチです(当社比)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポケモンが行方不明?」

「そうなんじゃよ。わしのケーシィも突然いなくなってしまったんじゃ」

 

 

 クチバにあるポケモンだいすきクラブ。そこでレッドは自転車引換券を貰うべく会長の話を嫌々聞いているのだが、話がなぜかとんでもない話題になってしまった。

 

 

「テレポートでどっかいったんじゃねぇの?」

「ちゃんとご飯には帰ってくるわい」

「で、それは爺さんだけじゃないと」

「そうじゃ。ここだけじゃなく他の町からもそんな被害が相次いでいるんじゃよ」

「うーん」

 

 

 腕を組んで頭を悩ませながらレッドは記憶を探る。ゲームにおいてそんなイベントはない。あるとすればいあいぎりイベントぐらいになる。隠しイベントというよりも没イベントなんて聞いたことがない。バグでなんかトラックがあるぐらいしか覚えがない。

 となると、ここはロケット団ということになるのだろうか。

 それにしても目と鼻の先にジムリーダーがいるというのにクチバほんとだめだめだぁ。

 

 

「よし。じゃあ、俺がちょっくら調査してみるわ」

「本当か! もしわしのケーシィが見つかったらちゃんとお礼はするぞ!」

「それはどうもっと」

「あ、ところでな」

「なんだよ。藪から棒に」

「き、君のピカチュウしばらく置いていってくれんかのう。このピカチュウは逞しくとても可愛くてもふもふしたいんじゃ!」

「やめろよご主人(ピカピカ!)」

 

 

 すでに会長に抱きかかえられているピカチュウが必死にレッドに訴える。だが予想外なことにレッドは一匹を除いて全部ボールから出してしまった。

 

 

「うぉおおお。なんてカッコいいんじゃ!」

「ピカピカ⁉」

「リザぁ⁉」

「お前らの言いたいことはわかる。だがな、俺は気づいてしまったんだ。お前らは確かに強くなった。これは本当だ。だがしかし、俺はまったくと言っていい程強くなった実感がないんだ」

 

 

 スピアーはその槍を器用に使いレッドにポケモン図鑑を当てた。『レッド レベル24』、たしかに強くはなっていないなとスピアーは頷く。

 

 

「いや、それはご主人が規格外なだけでは」とフシギバナは訝しんだ。

「きっと俺は知らず知らずお前たちに頼りっぱなしになっていたんだと思う。だからここは心機一転し俺自身の力で未来を切り開く! じゃああとはよろしく~!」

「ピカ──!!」

「おおぉ。なんてトレーナー想いなポケモンなんじゃ!」

「ちげぇよ!」

「……」

 

 

 スピアーはただ一人、主の背中を黙って見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 港に着いたレッドは観光客のふりをしながら辺りを調査した。特にこれといって怪しいと思ったわけではないが、イベントがあるとしたらここサントアンヌ号ぐらいだと思ったからだ。現に今日出港するのか、船員たちの荷物の積み込みで大忙し。大きな木箱を肩に乗せてせっせと運んでいる姿は様になっている。

 

 

「妙だな」

 

 

 レッドはある違和感に気づいた。サントアンヌ号は豪華客船。行き先はたぶんジョウトか他の地方だと思われるが、それなのに観光客がいないのだ。あるのは大きな木箱ばかり。ふとだいすきクラブの人間が言っていたことを思い出す。

 何故かサントアンヌ号にジムリーダーのマチスが関わっている、か。

 先のオツキミ山の一件のこともある。マチスがロケット団の一員の可能性は否定できない。しかし自分の憶測だけではすべてを断言できるわけもなく、ならば調査するしかない。

 レッドは残した一個のボールを投げた。

 

「ゼニゼニ!」

「頼むゼニガメ」

 

 

 現れたのはゼニガメ。レッドはクチバに来た際に真っ先にゼニガメを回収していたのだ。連れてきたのもレベルが低いのでレベリングも兼ねているというのもある。

 海に入ったゼニガメの背に立って乗るレッド。腕を組んで進むその姿は子供らしかぬ貫禄があった。ゼニガメはサントアンヌ号の反対側に回ると、レッドは錨に掴まり無事侵入に成功した。ゼニガメを頭にのせて船内を捜索する。

 やはり船内にある部屋にはどれも積み荷ばかりがある。元の豪華客船ではなく本当に貨物船と化しているようだ。数多くある部屋の一つに入り、小さめの積み荷の中をあける。

 

 

「やっぱりな」

 

 

 中にいたのはプリンだった。ポケモンバトルではあまり強いイメージはないが、愛玩用という意味では高い人気を誇る。このような可愛いポケモンなどはコレクター達には高く売れるのだろう。

 するとペチペチと頭にいるゼニガメが顔を叩く。どうやら何かを見つけたようだ。

 目を向けると何故か床にボールが転がっていた。気になって手を伸ばそうとする。

 

 

「なんでこんなところに……マズい!」

 

 

 咄嗟にゼニガメを抱きかかえて伏せると同時にボールが突如電撃を放った。それはボールではない。ポケモンのビリリダマだ。

 電撃が掠めるがなんとか無傷ですむ。急いでここから離れなくては。来た道を戻ろうとした矢先、出口には大きな男が立ちはだかっていた。

 レッドは自然とその男の名を口に出した。

 

 

「ジムリーダーのマチス……」

「そういうお前は最近噂のマサラタウンのレッドだな。まったくよ、オレたちのビジネスを邪魔しやがって」

「ビジネスだと? 人間の屑がこの野郎……」

「へ、ガキの癖によく吠える。ポケモンは所詮道具。だからこそ、オレたちがもっとよりよいやり方でポケモンを導いているんだ。ま、それが金で取引されているとしてもな!」

「道具だと? マチス、お前だって組織の道具にすぎないだろうが。お前もポケモンと変わりはしないな!」

「フフフ。威勢だけはいいな、だからこそ殺し甲斐がある。おい!」

 

 

 パチンと指をならすと奥から鎖でつながれているエレブーが電気を放ちながらゆっくり姿を現した。

 

 

「こいつはここの番犬よ。見たところお前の手持ちはそのゼニガメ一匹。多勢に無勢。今ならそのゼニガメをよこせば命だけは助けてやるぜ。ただし、人体実験としてな!」

「それはどうも……」

 

 

 レッドは冷静な顔を崩さず答える。それでもマチスの言う通りここは自分が圧倒的に不利。狭く、逃げ場もない。自分だけなら何とかなるがゼニガメがいる。できることはただ一つしかなかった。

 

 

「ゼニガメしろいきりだ!」

 

 

 ゼニガメから放たれたしろいきりがすぐに部屋全体を包み込む。狭いことが幸いしたようだ。レッドはすぐさま腕をクロスし壁に向けて走った。

 レッドのとっしん。壁はこわれた! 

 

 

「けほけほ。ガキの癖に戦いなれてやがる。なんてやつだ……まぁいい。お前はここから逃げられないぜ、レッド。HAHAHA!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在。

 レッドはなんとか船の中から脱出はできたが案の定船首側に追い込まれてしまい絶体絶命であった。背後は海。周りは電気ポケモンに凶暴なエレブー。この状況では逃げるのが最善の選択であるのは間違いないだろう。だがしかし、ここで逃げてしまえばマチスはおろか盗まれたポケモンたちは二度と戻ることはない。

 それだけはダメだ。

 別に正義感で動いているわけではない。自分しかいないのだ。ここでこいつらと戦えるのは。レッドの目に恐れや恐怖はなかった。しかしポケモンは違った。

 レッドの足元でゼニガメは小さく震えていた。当然だ。ゼニガメは今日仲間になったばかり。まともに野生ポケモンとバトルもしていなければトレーナー戦だってしていない。

 それにゼニガメには自信というものがなかった。自分以外はみな強い者たちばかり。なぜこんなひ弱な自分を仲間にしたのか理解できなかった。それだというのに今マスターと共にいるのは自分だけ。助けたい、なんとかしたいと願っても力がない。逆立ちしたって目の前のコイルにだって自分は勝てないだろう。だってそうだろう、水ポケモンが電気ポケモンに勝てるわけがないんだから。

 しかし、レッドはそんなゼニガメに語り掛ける。怖いかと。

 

 

「ぜ、ゼニ?」

「怖いよな、ゼニガメ。正直申し訳ない気持ちでいっぱいだ。だけどなゼニガメ。タイプ相性はたしかにある。けど、それだけがポケモンバトルじゃない。いや、これこそが本当のポケモンバトル。トレーナーとポケモンが共に戦う、これこそが真のポケモンバトルよ!」

「ゼニ……!」

 

 

 レッドの言葉でゼニガメの目に光が、闘志が宿るのを彼はたしかに感じていた。だからこそ余裕の笑みを浮かべる。

 しかし、そんな二人をマチスは笑う。

 

 

「なにがポケモンバトルだ! これはただの蹂躙! しかしだレッド。お前にもチャンスをやる」

「チャンスだと?」

「俺の部下になれ。お前は使える。ここにいるどの下っ端どもよりもな。それにお前なら幹部にだってなれる。金も女もポケモンも好きなようにできる! 悪くはないだろう?」

「部下になれだぁ? 寝言言ってんじゃねぇよぬへへ!」

「それが答えか……なら、食らいなレッド! お前らかみなりだ!」

「!」

 

 

 咄嗟に甲羅を掴み後ろに放り投げられるゼニガメの目に、電気ポケモンたちが一斉に放ったかみなりがレッドを襲う姿が映る。

 

 

「イワァアアアアアアク!!!」

 

 

 それは一瞬だった。かみなりが止むとレッドの声は途絶えその場に倒れる。ゼニガメは慌ててレッドに駆け寄り叫ぶ。

 

 

「ゼニィ! ゼニィ!」

「馬鹿なヤツだ。俺の提案を受け入れれば死なずにすんだのによ」

「ゼニィイイ!」

「お、なんだお前。死んだご主人を守ろうってか。いいねぇその眼。怒りに燃えた眼だ。お前ならうちで強いポケモンになるだろうぜ。おい、やれ。ただし殺すなよ」

 

 

 マチスはエレブーにゼニガメを瀕死にさせるようにと命令を下す。それでもゼニガメは一歩も引かない。レッドの前に立ち、彼を守るのだ。

 そしてエレブーがゼニガメ目がけて右手のかみなりパンチを振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体が今までにないぐらい軽い。ああ、そうか。俺は、死んだのか。

 いくら鍛えても、あのかみなりを耐えられるほど自分は丈夫ではないのだ。そう悟ると同時に残念な気持ちをレッドは抱き、ちょっと弱気になったというか死んだことでふと考えしまった。

 なんであんなに鍛えていたのだろうか――と。

 こちらに来て物心ついた時に自分がレッドだと知った。当然喜んだ。別にレッドになったからではない。この世界に生まれたことに喜び、感謝をしたからだ。けど、両親が二人とも死別していたのは喜べるはずもなかった。

 ある日あることに気づいた。レッドはマサラタウンの生まれだ。アニメのサトシはその驚異的な生命力でマサラ人とネタにされていた。

 ならば自分にもできるだろうと思った。だから見様見真似、なんちゃって格闘技をして鍛え始めた。何度も木に拳をぶつければ、いずれは砕けるはずだ。たくさん走れば、誰よりも速く走れるはずだ。

 例えポケモンだろうと対等に渡り合えるはずだ。どんなに強いポケモンの攻撃だろうと耐えられるはずだ。何度も10万ボルト食らったサトシのように耐えられるはずだと信じてきた。

 ……そうか。俺は信じなかったんだ。

 さすがにこれは死ぬなと諦め、だからこうなってしまったのかと。

 なら、答えは簡単だ。信じればいい。

 俺はレッドでポケモントレーナー。かみなり程度の攻撃で死ぬはずがないんだと――。

 だから今までの弱い自分とさよならバイバイ。

 そしていま――限界を一つ超えるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 ゼニガメは目を瞑った。すまないご主人、無力なオレを許してくれ……。

 しかしいつになってもエレブーの攻撃は届かない。ゼニガメはつぶっていた目をあけるとそこには──エレブーのかみなりパンチを受け止めているレッドがいた。

 

「ぜ、ゼニ⁉」

「なんだと⁉」

「ふぅー。ありがとなゼニガメ。よくやってくれた、偉いぞ」

「ぜ、ゼニィ……」

「ありえなぁい! あれほどのかみなりを食らって生きているはずが⁉」

「ああ。確かにそうだ。俺は一度死んだ(・・・)

「は、はぁ⁉」

「まずお前に感謝しよう。マチス、本当にありがとう。俺は悩んでいたんだ。鍛錬してもどんなに強いポケモンと戦っても強くなれる実感を得られなかったんだ。だけど、いま理解した。更なる高みへと昇るためには人間のいや、トレーナーの限界という名の殻を破らなければいけないんだと。そして俺は進化した、死と言う名の殻を破って!」

「ちょと何を言っているのか分からないデース!」

「さぁ、バトルをしようぜ! いくぞゼニガメ!」

「ゼニ!」

 

 

 ゼニガメは甲羅に籠りレッドはそのままサッカーボールのように扱い叫んだ。

 

 

「ゼニガメを相手のポケモンにシュ──―!!」

 

 

 レッドが放ったゼニガメは微弱な電気を纏い周りにいるポケモンに当たっては弾かれて次のポケモンへとまた当たり弾かれる。さながらそれは……ピンボールのようだった。

 そして最後にはレッドの下に戻ってくる。

 

 

「超エキサイティング!」

「……は! エレブーもう一度奴にトドメを刺せ!」

「いくぜ、マチス……とぉう!」

 

 

 レッドのイナズマキック! エレブーはマチスを巻き込み大きく吹き飛ばされた! 

 

 

「マチス、お前もまた強敵だった……」

「ゼニィ!」

 

 

 こうして死の淵から蘇ったレッドとゼニガメの活躍により、ポケモン密輸作戦は阻止されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 警察との聴取のあと、レッドはポケモンだいすきクラブへと戻り会長と話をしていた。

 

 

「おぉおお! レッドくんのおかげで解決とは! わしの目に狂いはなかったわい!」

「よく言うよ、この爺さんは」

「ところで、わしのケーシィは……」

「ああそうだった。そのことなんだけど……これがそう」

「これ?」

「うん」

 

 

 レッドが指を差したのはケーシィにしては大きく、とても逞しい体つきをしている……フーディンであった。

 

 

「なんでぇええええ⁉」

「いやぁ、不思議なこともあるもんだね。盗まれてユンゲラーに進化したのはいいけど、まさか盗まれただけで進化条件を満たすとは。まだまだポケモンの奥は深いぜ!」

「そんなぁああああ!!」

「じゃあこの自転車引換券は貰っていくから!」

 

 

 レッドはリザードンの背に乗りハナダへと向かうのであった。

 可愛いケーシィから逞しくなったフーディンになってしまい悲しんでいる会長を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 クチバの港から少し離れた堤防。そこにはレッドによって吹き飛ばされたマチスが横たわっていた。彼は目を覚まし一体何が起きたのかまだ理解できないでいた。そんなマチスの問題を解決するかのように一人の女が答えた。

 

 

「お前は負けたんだよ、マチス」

「な、ナツメ⁉ どうしてここに」

「ふん。そんなことはどうでもいい。それよりも感謝してもらいたいな。海へ沈みかけていたお前を助けたやったんだからな」

「けっ。誰がお前みたいな小娘に礼を言うか」

 

 

 マチスの問いにナツメはふんと鼻をならし宙に浮かびながら足を組み彼を見下ろす。

 

 

「しかし無様だな。たかが子供一人にやられるとは。幹部を辞めたらどうだ?」

「お前はあいつ……レッドと戦ってないからそう言えるのさ。オレは確かにあいつを殺した。何十体といる電気ポケモンのかみなりを食らわせてな! だがあいつは生きていた。それに動揺しないはずがないだろうが!」

「言い訳は見苦しいな。キョウに続きお前も失敗とは。ボスもそこまで寛大ではない」

「なんとでも言え。レッドは普通のトレーナーじゃねぇ。まさにバケモンだ。お前と同じで──―!!!」

 

 

 突然マチスは自分の胸を押さえつけるようにその場に膝をついた。目の前ではナツメの手がマチスに向けられている。

 

 

「て、て……め……!!」

「言葉に気を付けろ。お前の心臓を潰すことなど容易いんだからな……!」

 

 

 そう言うとナツメはサイコパワーを解きマチスを解放した。ぜぇぜぇと肩で息をするマチス。これほど空気が恋しいと思ったことはないだろう。

 

 

「兎に角ボスからの伝言だ。今回の件は目に付き過ぎた。しばらく大人しくしていろとのことだ」

「へいへい。了解です!」

 

 

 手を振ってマチスは表向きであるクチバジムへと歩き出す。ナツメは少しだけ彼の背中を眺めると、視線を沈みかけている夕日へと向けた。

 

 

「マサラタウンのレッド、か」

 

 

 そう呟くとナツメはテレポートをしてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 適当データ

【レッド レベル26】

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ポケモンよりトレーナーが戦ってるね。おかしいね。
感想などでレッドのことを予想されている方がおりましたが、一応これ2話目投稿時点で完成済みでした。

あと最後に。メインヒロイン(人間最強格の一人)のナツメ登場です、やったぜ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しく入ったイかれたメンバーを紹介するぜ! 

日間ランキング見たら1位になっててたまげた。
中井さんありがとう! フラ――ッシュ!


 

 

 

 

 

 

 諸君らはカントーのとあるとこに無人発電所と呼ばれる建造物があるのはご存じだろうか。そこはその名の通り発電所であるのだが、一体どういう目的で建てられたのかまったく不明なのである。建造時期もそれなりに古く、今では知っている人間はほとんどいない。

 そもそもあそこ一つでカントー中の電気が賄えるかと言えば分からない。現在は各都市に発電所はあるし、最悪電気ポケモンで発電してたりもしている。

 それで何がそこにあるかと言えば、施設はほぼ当時のままの形で残っている。動力は電力で、つまり電気があればいい。無人になったことで周囲にいた電気ポケモンが集まって気づけば多くの電気ポケモンの住処となってしまったのだ。

 そして、そこは伝説のポケモンであるサンダーの住処ともなっている。

 なぜそんな話をするか。それは簡単である。なにせ、

 

 

「いま私はその話題の無人発電所に来ているからです!」

「ピカピカ!!」

「やっぱピカは張り切ってやがるな」

 

 

 ぱちぱちと拍手しているピカチュウは可愛いと思った。こほんと咳払いしてレッドはマイクを持った振りをしながら叫んだ。

 

 

「ついでに新しく入ったイかれたメンバーを紹介するぜ! 自転車を受け取るついでに、ハナダの洞窟ブートキャンプで鍛えたカメックス!」

「ガメェ!」

「あとなんかサイクリングのレースでなぜかいて、ポケモンのふえが無くてもなんとかなって捕まえたニューフェイスのカビゴン!」

「zzz」

「おらぁ起きろ!」

「ごふ!」

 

 

 あのカビゴンですらレッドの一発で起きてしまうのだから末恐ろしいとポケモン一同は心に思った。

 レッドはずらりと並んだ手持ちのポケモンたちを見て誇らしげに胸を張る。

 

 

「にしても。気づけば6匹集まったな。スピアー、ピカチュウ、リザードン、フシギバナ、カメックス、カビゴン……。うーん、バランスいいんだかこれはもうわかんねぇな」

 

 

 まぁ一部を除いてレッドの手持ちまんまだから特にこれといって問題はないのではないかと勝手に納得している。それに戦うポケモンは6匹だけど、手元に持ってていいポケモンに制限はないから。なにせ、マチスはあんなにポケモンを従えていたんだから平気だと思ったからである。

 

 

「さてと。改めて本日のメニューはカビゴンの集中鍛錬とサンダー捕獲でお送りいたします」

「マスター、おいら寝てたいっす」

「うるせぇ、やれ」

「うっす」

 

 

 カビゴンが普通に喋っていることなどお構いなく、レッドら一行は発電所の中へ進んでいく。中には案の定コイルやレアコイル、マルマインといったカントーの電気ポケモンばかりだ。エレブーもいるが、それならエレキブルぐらいいてもよくねとレッドは思う。

 

 

「ピカは発電所のブーストでかなり強化されてるからピカとスパーリングだな。特にカメックスは電気に慣れさせておく必要があるし、まぁ10万ボルトを10回ぐらい耐えれば問題ないだろ」

「ガメガメ!」

「お前のそのやる気、イエスだね! じゃあカビゴンは一人で野生のポケモンを倒すんだぞ」

「……一人か、やったぜ」

「あ、どうせサボりそうだからスピアーが付き添いで頼むぞ。手を抜いたりしたら容赦なく刺していいから」

「ガーンだな」

 

 

 両手をつくカビゴンに早速スピアーが喝を入れるのを横目にレッドは施設の奥へと歩き出す。それをリザードンとフシギバナが心配そうにたずねる。

 

 

「リザァ?」

「バナナ」

「ん? 一人で平気かって。大丈夫だって安心しろよー。最近、電気には耐性がついたからな。じゃ、行ってくる」

 

 

 シュッと手を振りレッドはサンダーの下へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 道中のポケモンはやはり野生のポケモンだけあって感覚が研ぎ澄まされているのか、レッドの力量をすぐに察知し隠れるか、遠目に見るだけで手を出してはこなかった。

 歯応えがないなと素直に思った。ハナダの洞窟のやつらのが殺る気で溢れていたというのに。これだから最近のポケモンは軟弱だ。と、おっさんみたいなことを口に出すレッド。

 

 

「近いな」

 

 

 一度死んだからなのか、妙な能力を身に着けてしまったレッド。今もおそらくサンダーが発する電子の反応を肌で感じている。こちらが気づいているということは恐らくサンダーも気づいているはずで、現に逃げないのは待っているからだろうか。

 まぁ行けばわかるか。

 レッドは歩みを早め、かなり大型の機械があるフロアにサンダーはいた。

 

 

「ギャーオ!」

「うぉ! 生で見るとすげー尖ってるってはっきりわかんだね」

 

 

 レッドの余裕そうな態度が癇に障ったのか、サンダーは容赦なく『でんじほう』を放った。例えるならそれは巨大なエネルギー弾で、レッドなど易々と飲み込んでしまう。それを見てサンダーは高らかに吠えた。

 

 

「ギャーオ! ……ンダ⁉」

「ほう。さすがサンダーのでんじほう。中々の威力ですね。だがしかし、俺に電気技は止めた方がいい。なにせ……」

 

 

 バチバチとレッドの周囲がはじけ、先程の攻撃でえぐれた床の破片が宙に浮かんでははじけ飛んでいく。彼は帽子を外して腰にかける、すぅーと息を吸って吐き、ふんと力を入れた瞬間謎のオーラを纏い始めた。

 

 

「俺にエネルギーを与えるだけだからな」

「ンダーwwwww」

「さぁ、ポケモン解体ショーの始まりや」

 

 

 レッドは実験のために持っていたイシツブテを構え、先程のサンダーのような巨大なエネルギーを生み出し、

 

 

「イシツブテ砲!」

 

 

 という名の『でんじほう』もどきが放たれた。超スピード? なそれは視認することすら容易ではなく、さらに二人の距離はたったの数メートルほど。サンダーが避けられるわけなかったのである。

 サンダーはその場に倒れアニメのごとく目を回していた。

 それを見ても容赦なくレッドはボールを投げた。

 若い頃はボタンを連打すれば捕まると思ってました……。

 そんな遠い昔のことを思い出しながらゲットしたサンダーを手に相棒たちがいる場所まで戻るレッドは、早速サンダーを紹介した。

 

 

「新しい仲間を紹介する! サンダーです!」

「ギャーオ!」

 

 

 サンダーの伝説ポケモンとしての威圧がレッドのポケモンたちを襲う! 

 

 

「……(槍をチラつかせるスピアー氏)」

「ピカぁ?」

「リザぁ?」

「バナぁ?」

「ガメぇ?」

「なんだァ?てめぇ……」

「……ぎゃーお……」

 

 

 高速でレッドパーティーのヒエラルキーが決まった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってシオンタウン。別にそらをとぶを持っていないが、リザードンは空を飛べるんだからいけるだろの精神でレッドは簡単にたどり着いた。

 予想通りシオンタウンは不気味で、あのBGMが脳裏に聞こえてきそうな雰囲気だ。ふとポケモンタワーを見上げた。すると、タワーの中腹ほどに大きな穴が開いているのが目に入る。

 もしやと思いレッドはこの町の住民ぽい人にあることを聞くために声をかけた。

 

 

「すみません。フジ老人の家はどこですか?」

「フジさんの? なら──」

 

 

 教えてもらった人に礼を言って別れたレッドは彼の家を目指した。

 フジ老人の家の前について扉をノック。すると年寄りの声とともに扉が開いた。

 

 

「はて。誰だったかな?」

「あ、初めまして。自分はレッドと言います」

「レッド……レッド……ああ、リーフちゃんが言ってたのは君のことか」

「リーフをご存じで?」

「ああ。彼女のお兄さんのグリーンくんも知っておるよ。まぁ立ち話はなんだ。中へ入ってくれ」

 

 

 彼の淹れたお茶を飲みながらレッドは事の経緯を知った。

 なんでもグリーンがポケモンタワーに行って戻らず、心配したリーフが追いかけたあとに二人してボロボロになって帰ってきたのだと。

 

 

 

「それで二人が戦ったのがロケット団だと?」

「そう言っておったよ。いつの時代も悪党は存在するものだねぇ……」

「……そうですね」

 

 

 レッドは悩んでいた。

 フジ老人は初代においては意外な重要人物。ミュウを発見し、その細胞からミュウツーを作り出した張本人。しかしそれはゲームでの話で、実際にこちらでは違うのかもしれないという可能性もあるからだ。だが彼はここシオンタウンにいる。それが答えなのではないかとも思えてしまう。

 悩んだ末にレッドは、フジにたずねた。

 

 

「フジ博士。あなたはミュウツーを作りましたか?」

「……何かの間違いだ。私は科学者ではないよ」

「俺知ってるんですよ。グレンにある今ではポケモン屋敷と呼ばれている建物が博士のものだって。それとカツラとは友人同士だってことも」

「どうしてそれを……」

「言ったでしょ、知ってるって。だから教えてほしい」

 

 

 ふぅと息を吐いたフジは覚悟を決めたのかゆっくりと語り始めた。

 

 

「……ミュウにはすべてのポケモンのDNAがあることは知ってるかね?」

「ええ」

「それはつまり、そのDNAを一つ一つ解析すれば理論上はすべてのポケモンを人造的に生み出せるということになる」

「確かにその通りです」

「だが私はある欲望に駆られた。誰も知らない、私だけが見つけ生み出したポケモンを作ろうと」

「それがミュウを模して作ったミュウツーですか?」

「いや、違う」

 

 

 フジは否定し、続けた。

 

 

「私は新しいポケモンを生み出す理論を考えたにすぎない。ミュウツーという名前も仮につけた名前なんだよ」

「では誰がミュウツーを……まさか」

「察しの通りだ。カツラくんだ」

「まさか、博士もロケット団にいたのですか?」

「それはわからない。私はある組織の援助の下ミュウを見つけ、そのあとその組織の施設で研究をしていた。そしてあの理論を完成させた瞬間、今までどこかに失くしていた善の心が戻った。それで怖くなった私はすべてを捨ててここにいるというわけだ。だが君はこれを聞いてどうしたいんだ?」

「いえ。ただ確認しておきたかっただけです。すみません、無理を言って」

「怒る権利など私にはないよ」

 

 

 湯のみをテーブルに置きレッドは立ち上がる。聞くべきことは訊いた。なら、ここには用はなく次の目的地であるタマムシを目指すだけだ。

 

 

「行くのかい」

「はい。お茶ごちそうまでした。……あ、最後に聞きたいことがあるんですが」

「ん? なんだね」

「最果ての孤島の場所って覚えてます?」

「ミュウかい? といっても、偶然あそこにミュウが居たというだけで常にいるわけではない。それに当時の資料はすべて処分してしまったんだ。すまないね」

「そうですか。ま、機会があったら自分で見つけることにします。俺はトレーナーですから。では、お元気で」

 

 

 幻のポケモンミュウ。正規の手段で手に入る方法は限られていて、その一つが最果ての孤島だった。しかし、彼の言う通りミュウがそこにいるとは限らない。現にミュウはマサラタウンにいたのだ。ふとレッドは空を見上げた。もしかしたらこの雲の上にいるかもしれない、何故かそう思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 8番道路を自転車で走るレッドはタマムシへと通じる地下通路を目指していた。ヤマブキシティに関してはやはり通行止めになっており、強引に突破することも考えたが今はまだその時ではないと判断し思いとどまった。

 そんな時だ。前方に自分と同じぐらいの少女がこちらに声をかけているのに気づいた。

 

 

「そこのお兄さんー! ちょっと寄ってかなーい?」

 

 

 綺麗な声をしているなと思ったのが第一印象。レッドはつい気になって彼女の前で自転車を止めた。

 

 

「実は私、ポケモンに役立つ便利な道具をたーくさん持ってるの。よかったら見ていかない?」

 

 

 そう言いながらグイグイと迫る彼女。その時レッドはある既視感を抱きつい口に出した。

 

 

「……リーフ?」

 

 

 目の前の少女は同じマサラで育った幼馴染にとても似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にはある廃墟が見えた。大きく、辺りは気味が悪い雰囲気を纏っている。そこに一人の大柄の男が何かわめているように見えた。あれは、知っている人間だ、多分マチス。

 ということは、これは予知夢か。

 私はエスパーあるいはサイキッカーと呼ばれる女だ。だからなのか私は普通の夢を見ない。見るとしたらそれは今のように予知夢だ。生まれてから夢は一度も見たことはない。すべてが予知夢。

 原因は分からない。寝ている間に無意識に力が働いているのかもしれないと幼い頃は思ったが、今ではどうでもいいことだと割り切るようになった。

 するとビジョンが変わった。

 これは珍しいこともあるものだ。

 ナツメは予知夢の中で不敵に笑みを浮かべる。いつもは一つの映像だけだなのだが、極稀に二つ目を見ることがあり、それがいま起きている

 そこは……広い場所だ。なんとなく知っているような場所。先程と違って景色がぼやけている所為かハッキリと見ることがでない。

 あれは……トレーナーか? 

 そうなると誰かとバトルをしているのだろうか。ナツメはその相手は誰なのかと疑問を抱くと、それに呼応するかのように景色が変わる。

 ──私だ。

 先程とは比べ物にならないぐらい鮮明としていた。だから間違いなく目の前に映っているのは自分だった。目の前にいるナツメはとても柔らかい表情をしていた。その光景はとても受け入れがたい光景だった。

 ありえない、あんな顔をするわけがないと。

 だが、その光景を羨ましく思っている自分も確かにいるのもまた事実であった。

 

 

 

「最悪の目覚めだ……」

 

 

 意識が覚醒し寝ている体を起こしての第一声がそれだった。

 ナツメは首を振りベッドから出てシャワーを浴びてから身支度を整え、手持ちのポケモンであるユンゲラーの補佐のもと、ボスがいる場所へとテレポートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一度死んだからというパワーワードには草生えますわ。
あと感想などでヒロインのことを言われるのですが、ハーレムタグ付けた方がいいですかね。
個人的に例えるとシティーハンターの獠と香、うる星やつらであたるとラム、コブラだと……あ、死ぬわ。え、例えが古い? そんな感じでハーレムを意識しているわけではないんだけど。
意見を貰えると助かります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お前頭だけは良さそうだもんな

いまのもくひょうは、がんばって原作3巻まで止まらないことです


 

 

 

 

 

 

 

「……リーフ?」

「リーフって誰よ。私にはちゃーんとした名前があるの、ブルーっていうね! 失礼しちゃうわもう」

 

 

 目の前のカモは人を見た途端誰かの名前を言ってきた。たぶんきっと女に違いないと私の女としての勘がささやく。きっと別れた彼女でも思い出したのだろう。なんて女々しい男なのだろうか。しかしこれはチャンスだとブルーは笑みを浮かべる。

 

 

「お詫びに私の商品買っていってよ。プラスパワーにディフェンダー、マックスアップだってあるわよ!」

「……ぶるー……ブルー……え、マジで? 本当にあのブルー?」

「ちょっと、アンタ大丈夫?」

 

 

 ブルーの名前をぶつぶつと言っていてどこか様子がおかしい。目を見開きジッと彼女を見つめる。ついそれにドキッと胸を躍らせるブルー。

 それも仕方がない。私はそこら辺の女たちと違ってナイスバディだから、男にとっては刺激が強すぎるのだろう。それは彼女にとって喜ばしいことだ。女であれば尚更。

 

 

「あ、ああ。大丈夫、ダイジョーブ。で、何の話だっけ」

「だから、私の商品を買ってほしいのよ」

「どれどれ……え、全部いらない」

 

 

 ずらりと地面に並べた商品を一通り見てすぐに彼からお断りの返事を宣告された。

 ま、まさかこいつ、これが全部偽物だって気づいて……。

 見た目は同じだが効果は何にもないただのおもちゃ同然の代物だ。使わなければ効果がわからないので、何も知らないトレーナーには大変効果がある。そのため同じ人間には売れないというのが欠点ではあった。

 たまにこういった道具に詳しい人間を捕まえてしまったこともあるブルーは、顔には出さず冷静に対処する。

 

 

「えーどうして? 使えばあなたのポケモンが強くなるのよ!」

「いや、だって必要ないし……」

 

 

 こいつは手ごわい。多分金は持っているのは間違いないが、おそらくこれらの効果を本当に知らないのだ。だから買わないのだろうと睨んだブルーは奥の手を使う。

 

 

「じゃ、じゃあこのきあいのタスキはどう? ポケモンに持たせればどんな攻撃でも一度は耐えるわよ」

「あ、それもうこっちでもあるのか。でも、俺のポケモンは耐えろって言えば耐えるし。ていうか結構硬いから平気だと思う」

 

 

 くっ、こいつ頭がイシツブテでできるのかまったく隙が無い。ならば、本当に奥の手を使わなければいないらしい。

 ブルーは手持ちのバッグから小さな袋にあったあめ玉を出した。

 

 

「これならどう⁉ ふしぎなアメよ! ポケモンに食べたらレベルが1あがるという貴重なアイテム!」

 

 

 もちろん偽物だ。フレンドリィショップの倉庫で偶然見つけたダンボールの中に入っていたこれは、ふしぎなアメによく似たパチモノ。本物だったら当然自分のポケモンに使っている。しかし予想が外れ、これはかなり在庫が残ってしまった。なにせ確かめろと言われて一個でも食べればバレてしまう。先に本物を渡すという方法もあるが、本物はとても高価で数もすくない。

 ブルーからしても在庫処理という名目でなんとか捌きたい一心だった。

 

 

「え、マジで⁉ ふしぎなアメあんの⁉」

 

 

 ──食いついた! 

 ブルーはつい抑えきれずニヤリと笑みを浮かべてしまう。

 

 

「ええ。それも10個もね!」

「じゅ、10個も⁉ よし買った!」

「毎度ありがとうございまーす」

「えーと、財布……財布はっと……」

「!」

 

 

 彼が財布を探すためにジャケットをめくると、そこにはあるモノが目に入った。

 

 

「はいじゃあこれな」

「ありがとう! 子供だからって言ってまともに相手してくれなかったのよ!」

「あ、そ、そうなんだ」

 

 

 感謝しながら彼に抱き着くブルー。そしていつもの仕草で彼の懐に手を伸ばし、それを手に入れると同時に離れる。

 もう用は済んだ。

 

 

「それじゃあまた何処かで会いましょう!」

 

 

 

 ま、二度と会うことはないけどね。

 ブルーは目的地であるタマムシへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 残されたレッドは彼女が見えなくなるまでその背中を見送り、もう平気だと思った当たりで抑えていた感情を爆発させた。

 

 

「えぇえええ⁉ ブルーってあのブルーだよな⁉ 青版の主人公の!」

 

 

 赤版がレッド、緑版がグリーン……あれ、リーフだっけ? それでピカチュウ版がイエローだったはず。今まで気づかなった自分もアレであるが、まさかブルーの存在を忘れていたとは。しかもそれが女ときた。

 レッドは落ち着けと言い聞かせ何度も深呼吸したあと、冷静に彼女を思い出す。

 

 

「顔立ちはやっぱリーフ似だったな……。あとやっぱ胸が大きかったわ。いやー今どきの若い子の成長ってすごい。リーフにも分けてほしいよ」

 

 

 本人がいないことをいいことにレッドは普段言えないことを言う。彼はピカチュウをボールから出すと早速ブルーから買ったふしぎなアメをあげてみた。喜んだ顔を浮かべながらピカチュウはアメを口の中で転がす。

 

 

「いや、舐めるんじゃなくて飲み込めよ。ん、いやそれも変か……」

「ぴかぁ?」

「で、ピカよ。1レベル上がった感じはするか?」

 

 

 フルフルと顔を振るピカチュウを見てレッドは地面に膝をついて叫んだ。

 

 

「ちくしょぉ────! 偽物をつかまされた! くそっ、おっぱいがデカいからって調子に乗りやがって!」

「いや、ただ単にマスターが馬鹿なのでは? いらないなら、おいらが食べるっす」

「ピカピカ」

 

 

 勝手にボールから出たカビゴンが器用に紙袋をはがして残りのアメを口に放り込もうとする。そうはさせるかとレッドが一個だけ口に入る前にそれを自分の口へと放り込んだ。

 

 

「俺の金で買ったんだから、一個ぐらい俺が食べなきゃ意味ないだろうが。あ、意外と美味いなこれ」

 

 

 ピロリン♪ レッドはレベルが1あがって27レベルになった! 

 

 

「はて。昔どこかで散々聞きなれた音が聞こえたような……。ま、いっか」

 

 

 どうやら偽物の中に偶然本物が紛れていたことに、レッドは最後まで気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでイーブイいねぇんだよ。いや、実際にいたら困ると言えば困るんだけど……」

 

 

 タマムシに着いたレッドはすぐさまイーブイが置いてあるビルの屋上へと向かった。そこには確かにゲームと同じようは部屋があって、扉には鍵かかっておらず開けてみて中に入る。内装はゲームを現実すればこんな感じというモノであったが、テーブルの上にイーブイはなかったのだ。

 レッドはとりあえず深くは考えず気持ちを切り替える。

 

 

「それにしても、ゲームと違ってさすがにロケット団はうろついていないな」

 

 

 タマムシのゲームセンターにあるロケット団のアジトを攻略しなければ、タマムシを歩いていたロケット団は消えなかったのをレッドは思い出す。ではグリーンかリーフがやってしまったのかといえば違う。街の雰囲気が少しピリピリしているのを確かに感じる。

 ロケット団か、それともジム戦か。レッドは少し悩み先に後者を片付けることにした。ジム戦なんてリザードンを使えばすぐに終わる、ならばそのあとでロケット団を片付ければいいと判断した。

 だが人生とは思い通りにいかないもの。

 タマムシジムを訪れたレッドにかけられた言葉は意外なものだった。

 

 

「はぁ⁉ なんで俺とバトルできないんだよ!」

 

 

 相手はここのスタッフらしき女性だろうか。ジム戦を申し出ると丁寧に断られたのだ。

 

 

「ですから、今エリカお嬢様はある仕事で手が離せない、だからジム戦はできないと申しております」

「ジムリーダーなんて立って待ってるだけの簡単の仕事だろうが!」

「何も知らないトレーナー風情が。口を慎みなさい!」

「トレーナーがジム戦を申し込んでいるのにそれを追い返すとか頭にきますよ! いいから、エリカを呼んでこいや! こっちは予定がいっぱいあるんですぅ!」

「よくもエリカ様を呼び捨てにしたわね! いいわ。アンタなんて私が──」

「何を騒いでいるのですか?」

「──エリカ様⁉」

 

 

 突然奥から現れた着物を纏ったまさに大和撫子のような女性──ジムリーダーのエリカが二人に割って入った。使用人は彼女の存在に気づくとすぐに膝をついて事の経緯を話す。

 

 

「そうですか。ですが申し訳ありません。いまはある問題で手が離せないのです。後日またジム戦ということでお願いできないでしょうか?」

「いや、バトルなんてパパっとやれば終わるからさ」

「貴様、無礼な口は慎めと──」

 

 

 使用人の言葉をエリカは手を前に出して止めさせた。穏やかな目から一瞬にしてトレーナーとしての目つきに変わるとレッドを挑発するような言い草で言う。

 

 

「そこまで大口を叩く割には、あまり強そうには見ませんわね」

「ファッ⁉ これでもバッジ2個あるんですけど! 本当ならもう3個だけど……あれ?」

「あらあら。もしかして何か幻でも見ていたのですか? それとも演技からしら? うふふ」

「あ、あの女……!」

 

 

 レッドは今になってブルーにバッジが盗まれたことに気づいた。いくら自分やポケモンたちが強くても、これで信用しろというのは無理な話だ。状況は悪くなる一方。ただのトレーナーから嘘つきにランクダウンしてしまっている。

 打開策を考えているレッドに何故かエリカはそれを助けるように言ってきた。

 

 

「そんなに私とバトルがしたいですか?」

「ああ、したいね」

「なら、条件を一つ出しましょう」

「いいぜ乗った。で、その条件は」

「──実は私のポケモン……イーブイがいなくなってしまったのです。あの子を見つけて連れてきてくれたらバトルをしてあげますよ、マサラタウンのレッド」

 

 

 不気味な笑みを浮かべながら提案するその姿は、どう見てもいい所で育ったお嬢様だとは思えなかった。

 レッドは人生において、生まれて初めて体験する感覚を味わいジムを後にした。

 

 

 

 

 

 彼、レッドが去ったあとエリカは自分の私室へと戻ろうと振り返る。それを使用人が彼女に先程のことを問う。

 

 

「エリカ様なぜです。なぜ、イーブイの情報をあんな少年に渡すのですか⁉」

「口を慎みなさい。どこにスパイが紛れているかわかりません。ほら、そこに」

「え?」

「ラフレシア!」

 

 

 彼女の指示でラフレシアははっぱカッターを繰り出す。しかしそこは何もない空間……だったか、はっぱが何かを捉えるとそれは現れた。

 

 

「スリープ!」

「やはりポケモンも使ってきますか。イーブイは確かに私達がロケット団を抑えるために必要な存在です。ですが、我々の存在自体がこの街では目立ちます」

「だからあの少年を使うと?」 

「ええ。彼のことはタケシやカスミから聞いています。バッジがなかったのはともかく、彼の実力は本物でしょう。それに噂にあるロケット団を倒しているトレーナーが彼ならば……」

 

 

 エリカはそれ以上口にすることなく再び歩き出す。ただ胸の中で初めて会ったばかりの少年にすべてを託して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってタマムシにある広場のベンチにレッドは座っていた。膝に肘を乗せ、考える人のように先程の会話のことを思い出していた。

 私のポケモン、エリカは確かにそう言った。なるほど、ならばあのビルにイーブイがいなかったのもうなずける。

 

 

「けっ。お嬢様のくせに平然と嘘をつきますですこと」

 

 

 あれはどう聞いても嘘だ。断言できるのはゲームの知識を知っているから他ならないが、普通に考えれば草ポケモン専門のエリカがイーブイなんて持ってるわけないのだ。

 いや、いつか持つのか。

 イーブイの進化系の一つ。リーフィアなら納得はできた。しかしここカントーで進化するというのは知らないし、おそらくリーフィアの存在自体がまだないはず。それに進化条件もたしか……何処かの森でレベルアップだったろうか。

 

 

「俺、実機プレイしてなかったからなぁ。そんなことよりもイーブイを捕まえないと」

 

 

 推測だがイーブイは間違いなくここタマムシにいることは間違いなかった。理由はエリカがこの街にいること。じゃなければジムになどいないだろう。

 

 

「しかし一体どうやって探すか。氣で探るにしてもこう街中色々と混じちゃって……」

「あれレッド、レッドやないか!」

「……誰?」

「誰やない! マサキやマサキ! ハナダで会ったやろ⁉」

「あぁマサキか。もう二度と会わないと思ってたわ」

 

 

 マサキ。ポケモン世界においてポケモンあずかりシステムを作った天才。意外と重要人物な割には悪の組織などからはマークされない不思議な存在。

 ハッキリ言えば、彼を捕らえてボックスのシステムを書き換えればどんなポケモンも手に入れ放題だろうなぁとレッドはマサキと再会して思った。

 物は試しで話してみるか。

 レッドは簡単にマサキに説明すると、彼はポンと胸を叩いた。

 

 

「なんやそんことで悩んでたんか! それならわいが何とかしたる!」

 

 

 するとマサキは背負っていたバッグから妙な機械を取り出した。それは小さめなレーダーみたいなものに、それを繋いでいるディプレイ端末のようなものだ。

 

 

「何それ」

「これはな、ポケモンの電波を感じ取ってそのポケモンがどんなタイプなのかがわかる優れものや!」

「まあお前頭だけは良さそうだもんな」

「天才やからな! だからこうしてたまにタマムシ大学の講義をしてるんやで」

「へー。あ、さっそく映った。電気? サンダースなんていないぞ」

「いや、これはお前から感じ取ってるで。ピカチュウでも出してるんか?」

「あー悪い、今抑える」

「抑える? お、消えた」

 

 

 どうやら機械はレッドから発せられている微弱な電気を捉えているようだ。つまりこれは正常に働いているという証拠になる。

 

 

「けどさ、目撃証言を聞いたけど変なんだ」

「変?」

「何でも火を噴いたり電気を発したり水を出すんだと」

「なんや。イーブイのバーゲンセールかいな」

「実際定期的に新しい進化先ができるしな」

「ははは。レッドも面白いこと言うなぁ。イーブイの進化は3種類やろ? お、噂をすれば反応がある。こっちや!」

「……最終的に8種類もあるんだよなぁ」

 

 

 マサキが走り出したあとレッドは死んだような目で呟きながら彼の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 マサキの探知機のおかげでイーブイを見つけたレッド。しかし、そのイーブイは普通のイーブイではなかった。イーブイは本来進化の石と特別な条件下に進化するポケモンで、進化してしまえば二度とイーブイに戻ることはないはずなのだが。

 

 

「レッドなんやあのイーブイ⁉ サンダースかと思えばシャワーズになったり、そしたらイーブイに戻ったらブースター。あんなの聞いたことがないで!」

「それは俺もだよ……ピカ!」

「チュゥ!」

 

 

 出来るだけ傷つけまいとピカチュウのでんきショックでダメージを減らそうとしたのだが、でんき技を使えばサンダースになるし、他の技を使おうとすればシャワーズになって溶けて避ける。こちらが手をこまねているとブースターになりかえんほうしゃを撃ってくる。

 どうする。こんな街中でわざわざ力を使う訳には……。

 今まで野生のポケモン相手に力を振るってきたレッドではあるが、こんな人目に付く場所で力を使う気は毛頭なかった。使うのは野生ポケモンか悪党のみと決めている。

 

 

「ピカよけろ!」

「ピッ!」

 

 

 ブースターの再びかえんほうしゃが地面を焼く。再びピカチュウにでんきショックを命じる。ブースターはもう一度サンダースになろうとするその瞬間、ある動きを捉えた。

 耳が動いた──

 もしかしたら、あれが変身するための予備動作なのか。腰にあるスピアーのボールに手を伸ばし、レッドはピカチュウに指示を出す。

 

 

「ピカ!」

「!」

 

 

 具体的な命令がなくともピカチュウはレッドが何を言いたいのかわかっている。ピカチュウはイーブイに向けてでんこうせっかを仕掛ける。それに気づいたサンダースは今度はシャワーズになろうとするために動きを止める一瞬、その瞬間をレッドは待っていた。

 

 

「スピアーこうそくいどうからのみねうち!」

「!!」

 

 

 でんこうせっかで迫るピカチュウはそのままサンダースを通り過ぎ、同時にシャワーズになるとすでに目の前にはスピアーがシャワーズを捉えていた。

 スピアーのみねうち。イーブイは気を失った! 

 イーブイが倒れるとすぐさま二人は駆け寄る。

 するとマサキが何かに気づいたのか、イーブイの耳を見せながら言った。

 

 

「見てみレッド。これはどうやら自然に進化をしたわけじゃないらしいで。……レッド? 聞いとるんか?」

「ああ。聞いてるぜマサキ」

 

 

 レッドは優しくイーブイを抱きかかえて立ち上がる。

 

 

「ピカチュウに次いでポケモンの看板を背負ったイーブイさんをこんな目に遭わせるとかよぉ……キレちまったよ、久しぶりに」

 

 

 怒りに震えるレッドは腕の中のイーブイに刺激を与えないよう静かに、そして早くタマムシジムへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――レッドのメガトンキック。タマムシジムの扉はぶっ壊れた! 

 ドォン。盛大なチャイムを鳴らしながら入るレッドとマサキ。マサキに関してはおろおろと震えながらレッドの後に続く。

 ジムの中央は巨大なバトルフィールド。その中心にエリカは待っていたと言わんばかりにレッドを迎えていた。

 

 

「まあ。もうイーブイを捕まえてきてくれたのですね! どうやら実力は本当のようですね。バトルなんて必要ありません。どうかバッジを受け取ってください」

 

 

 ニコニコと笑みを浮かべながらバッジを差し出すエリカ。しかしレッドは受け取る気配はない。ただ言葉だけを投げつけた。

 

 

「てめぇ、ロケット団だったのか」

「なんやて⁉」

「ふふふ。仮に、私がロケット団だとしたらレッド、あなたはどうするおつもりですか」

 

 

 言うとエリカは手持ちのポケモンを出した。ラフレシア、ナッシー、ウツドン、ウツボット彼女のフルメンバーだ。

 

 

「──最初は」

「?」

「最初は同じくさタイプのフシギバナで全タテしてやろうかと思った」

「すごい舐めプやな」

「だが、タイトルにもなるイーブイさんをこんな目にした貴様らを許すわけがねぇ……!」

 

 

 バチバチとレッドの周囲に電気が走る。マサキは驚いてレッドから離れ、周りにいるエリカの使用人……私兵たちも動揺している中、エリカだけはレッドから目を離さない。

 レッドの意志に呼応するようにボールから自分の意志で、漆黒の肌を持ち、蒼炎を身に纏ったリザードンが現れる。

 

「リザァアアアア!!」

「明日の朝日は拝めねぇぞ!」

 

 

 リザードンの咆哮だけでもエリカのポケモン達は一歩を後ろに下がってしまう。ほのおポケモンにくさタイプが勝つのは至難の業。だがそれ以上に彼らは感じてしまっている。レッドから発せられている圧に押されているのだ。

 

 

「……どうした、かかってこい」

「いいえ。降参ですわ」

「──は?」

 

 

 エリカはポケモンをボールに戻すとその場に膝をついて首を垂れた。驚きの展開に気が抜けたのか、ぷしゅーと音を立てながらレッドは元に戻った。

 

 

「まずはあなたを騙して利用したことをお許しください。ああしたのは我々が動くにはロケット団にバレてしまうのと、あなたの実力を知るためだったのです」

「じゃあアンタらはロケット団ではないっていうんか?」

 

 

 横からマサキが口を出す。

 

 

「むしろその逆。我々はロケット団から街を、そしてポケモンを守るために活動しているのです」

「しかしなぜイーブイが」

 

 

 レッドが尋ねるとエリカは近づきそっとイーブイを撫でながら言う。

 

 

「まずはこの子をボールに入れて回復をしてあげましょう」

「あ、ああ。頼む」

「レッド。あなたには伝えなければならないことがたくさんあります。どうか私の部屋に来てください。そこで詳しく話をいたしましょう」

「わかった」

「あのワイは……あ、はい。お邪魔ですよね」

 

 

 レッドの威圧! ではなく、エリカの笑顔がマサキに何かを訴えた。

 そしてレッドは回復したイーブイを抱きかかえながらエリカの後に続いて彼女の部屋と向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回からシリアスでございます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カントーってやっぱ魔境だって絶対

ちなみに、原作を知ってる方なら通じると思うけど。
このイーブイはとてもちーとです。でも、最終的には一つの進化を選ぶ。
だけど、レッドくんが手を加えるのでなんとかなる予定です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリカの私室に案内されたあと、無事回復したイーブイをエリカから返してもらった。先程まで苦しそうにもがいていたイーブイであるが、いまは至って普通に振る舞っている。パーティーの中では一番のもふもふポケモンなので、レッドの手は昔飼っていた猫を撫でていたように、ひたすらイーブイでもふもふを味わっていた。

 その間エリカが屋敷の敷地で取れた葉を使った紅茶を入れながら前に座る。カップを手に取り紅茶を一口飲む。

 相変わらず何が美味いのかわからない。

 今でも変わらず好きなのはブラックコーヒーなので紅茶を楽しめる舌を持ち合わせていなかったのだ。そんなレッドの些細な動きからエリカは見抜いたのか、

 

 

「やはり男性の方は、コーヒーの方が好きなのでしょうか?」

「あ、顔に出てた?」

「はい。いかにも、何でこれが美味いんだって。そんな感じですわね」

「ふ。さすがジムリーダー。洞察力も優れていると見た」

「ありがとうございます。では……何からお話しましょうか」

 

 

 カップを置いて改めて真剣な顔つきで語るエリカ。

 

 

「まずそのイーブイについてお話しましょう。その子を知ったのは我々のスパイが入手した資料で知りました」

「資料?」

「はい。こちらになります」

 

 

 渡された分厚い資料のタイトルは『イーブイ改造計画』と書かれていた。軽くパラパラめくっていく。書いてあるのは専門用語ばかりであまり理解できそうにない。それも見透かされたのかエリカが簡単に説明してくれる。

 

 

「イーブイには3つの進化ができ、もしそれが自由自在にできるなら大きな戦力となる。まあこんな所でしょうか」

「その成功例がこいつってわけか」

 

 

 エリカはコクリと頷いた。

 

 

「ロケット団にとって誤算だったのはこの子が脱走したことでしょう。それをスパイから聞いた私達も必死に保護を試みようとはしたのですが……結果はこの通りです。タイプを自由に変えられるというのは厄介ですわ」

「……そうだな」

 

 

 イーブイを撫でながらまだ進化の可能性が5つ(いまのところは)もあることを胸にしまいながら同調する。

 

 

「ジムリーダーとして不甲斐ないとは思っていますが、このタマムシのどこかにロケット団の研究施設があるのですわ」

「場所は割れてるんだろ?」

「ええ。ゲームセンターにその研究所に繋がる基地があるのは掴んでいます。ですが場所が場所なだけに、おいそれと踏み込むことができない状況です」

「……素直に俺の力を借りたいと言ったらどうだ?」

 

 

 レッドは我慢できず率直に伝えた。

 この部屋で二人きりで話しているのも誰かに知られないためであり、あくまで表向きは協力関係ではなく、独自に……好き勝手動いてほしいのだろう。騒ぎを起こせばジムリーダーとしての職務を理由に活動できるからだ。

 そのことにエリカは顔を少し曇らせる。

 

 

「本当は、あなたのような子供にこんなことを頼みたくはないのです。本来ならそれは我々大人の務め。それをいくらロケット団が手をこまねいているトレーナーだとしてもです」

「別にそんなことを思ったことないよ。何て言うか、使命なんだよ」

「使命、ですか?」

「うん。きっと俺がやらなきゃいけないんだと思う」

 

 

 ゲームの流れ的に。なんて言えるわけはなかった。けれど、実際にロケット団のしてきたことを目にすれば、ヒーローごっこと言われようが正しいことをしなくてはいけない気にはなる。

 

 

「レッドは……強いのですね」

「弱いよ俺は。まだまだ弱い。だから鍛錬を欠かさず、日々ポケモン達と高みを目指してるんだ」

「目標はチャンピオンですか?」

「うーん。まあそうなるのかな。あんまり興味ないけどね」

「本当、変わったお方ですわ。ところでレッド」

「ん?」

「もう時間も遅いですし、今日は我が家に泊っていってくださいな。ご飯もご馳走しますわ」

「ゴチです!」

「はい。でもまずは」

「へ?」

 

 

 パチンとエリカが指を鳴らすと部屋に入った数名のメイドがレッドを取り囲んだ。 

 

 

「離せこら!」

「抵抗しないでください!」

「三人に勝てるわけありません!」

「さぁ、行きますわよ!」

 

 

 ――レッドのわるあがき! ざんねんメイドにはこうがないようだ……。

 

 

 

 

 

 

 40分ほど経過し、改めてエリカの私室にレッドは戻っていた。あのあと強制的に服を脱がされ、生まれて初めて見る広いお風呂に放り投げられ、美人のメイドさんたちにあちこちを綺麗に掃除されてしまった。そのあと豪華な夕飯を食べたあと、再びここに戻ってきた。

 しかしバスローブってのは落ち着かない。

 表現すると、とてもスースーしてよくない。とても開放的な感じで新しい扉が開きそうだ。それにいつもの服じゃないと何だか落ち着かないというのもある。

 ならばと扉を開けて外にいるメイドに試しに聞いてみる。

 

 

「あの……」

「はい、何でしょうか」

「俺の服、乾いた?」

「ああそれでしたら、かなり痛まれていたのでこちらで新しく用意させていただきました。一応以前のもと同じものをお作りしました」

「あ、どうも」

 

 

 綺麗に畳まれた服を受け取り扉を閉める。手に持って広げくんくんとなんとなく匂いを嗅ぐ。すごく新品の匂いだ。

 着替えながらレッドはふとあることを思い出した。

 

 

「風呂に入ったのいつ以来だっけ……。いつもカメックスのハイドロポンプの応用でシャワー浴びてるからもう忘れちゃった」

 

 

 着替え終えて何となく部屋を見渡す。まさにお嬢様に相応しい部屋だと感じる。特にベッドは天幕付き。これがお嬢様だよなと言っているようなものだ。

 ちょっとぐらいいいよな。

 レッドはゆっくりと腰かける。ふかふかだ。カビゴンのお腹よりふかふかだ。毎晩カビゴンの上で寝ているので野宿に不便はない。が、これは別格。これを味わったら普通のベッドになんて戻れはしないだろう。

 実際に寝てみたらもっとすごいのだろうか。

 ごくりと唾を飲み込み、男は度胸だと言い聞かせ前に倒れこむ。ぽすんとまるで包み込むような感覚。久しく感じてなかった優しい感じがした。

 

 

「なんだろう。すごくいい匂いがする。エリカの匂いかな……は!」

 

 

 思わず正気に戻ったレッドはすぐに起き上がった。

 

 

「やべぇよやべぇよ! 俺匂いフェチでも何でもないんだって! でも……くんくん、いい匂い──」

「あら、レッド。どうかしたのですか?」

「イエ! ナンデモアリマセン!」

「あ、もしかして眠いのでしょうか? お疲れですものね」

「い、いや、本当に平気。別に眠くない!」

「そうですか。……よいしょっ」

「……⁉」

 

 

 エリカはだんだんとレッドに近づいてくると、何故か隣に座った。彼女が座るとよりこのベッドが完成されているようにさえ思える。肩と肩が触れ合う距離、白い着物というか寝巻き。

 そもそもなんでそんなに胸を強調しているのか、これがわからない。

 レッドは思った。もっとこうシュッとしているものではないかと。しかもちょっとたるんでるのか、見えそうで見えなそうな演出を出している。なんだ、なんなんだこの女は。

 かつてない程焦っていることにレッドはようやく気付く。

 女性経験は人並みにあるはずだというのに先程からペースを掴まされているこの感覚。おかしい、おかしいぞ。ハナダのお姉さんの時とはまったく別のものだ。いや、あの時はそういう雰囲気だったのだ。乱暴された彼女を落ち着かせるためにずっと手を握ってあげ、気づけば真っ暗になった部屋でお姉さんが言ったのだ。「抱きしめて、くれませんか?」って。抱きしめたんだ、時には背中をぽんぽんと撫でてあげたり、大丈夫だよと声をかけて安心させたりと。そしたらその、お姉さんから耳元で囁かれたのだ。そのあとのことは……うん。素敵な一夜だった。今でもお姉さんとの思い出は昨日のことのように覚えている。

 ああハナダのお姉さん、助けて。この状況をどうすればいいのかとレッドは遠く離れた彼女にSOSを送る。

 

 

「ねぇレッド」

「はいぃ!」

「あなたにはこれを受け取る資格がありますわ」

 

 

 そういうと手を胸の谷間に入れ、そこからバッジ取り出して渡してきた。

 

 

「い、いや、なんでその……必要ある? 胸から」

「? いいですから受け取ってください。その資格があなたにあります」

 

 

 無理やり手を引っ張られバッジを渡される。エリカの手は自分と比べて小さく、とても柔らかかった。

 

 

「そ、その。ありがとう」

「礼を言うのはこちらです。それにまだ、個人的にあなたに恩返しをしたいですし。ふふふ」

「え、マジ──! エリカ」

「え、レッド⁉」

 

 

 突然顔つきが変わったレッドはエリカを抱きしめそのままベッドに押し倒す。彼女は抱きしめられてやっと顔を赤く染めて慌てていた。そんな状態にも関わらず彼は耳元でつぶやく。

 

 

「そのまま聞いて。誰かに視られてる」

「え?」

「大丈夫。バレてない。だからそういう風に思わせるために電気を消してくれ」

「は、はい……」

 

 

 ベッドの近くに置かれた台にライトを制御するリモコンを取ったエリカは電源をオフにする。辺りは真っ暗になり、カーテンから差し込む月の光だけが部屋を照らすだけになる。

 1、2分ぐらいだろうか。レッドはゆっくりとエリカから離れて床に降りた。

 

 

「エリカはそのままで。俺はちょっと出てくる」

 

 

 出ていこうとするレッドをエリカは呼び止めて言った。

 

 

「気を付けてくださいね」

「ああ。任せろ」

 

 

 エリカの手を握ってレッドは笑顔で言うと、今度こそ部屋を出て行った。

 残された彼女は握られた手をなんどもにぎにぎとさせながら布団に隠れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まったく見てられん。

 エリカ家の屋敷の上空にて、ユンゲラーに補佐されながらナツメは監視していた。イーブイがあの少年の手に渡ったので、興味本位で監視というなの観察をしていたのだ。エスパーであると同時に透視能力もあるナツメにとって壁などないに等しい。

 それ故に、少年がエリカを押し倒したところで視るのをやめだ。別に恥ずかしいわけではない。なんでこんなことをしてまで他人の行為を覗かなければいけないのかというだけだ。

 しかし、年の割には鍛えていたな。

 風呂から部屋で着替えをする時も彼の体を視ていたためか、脳裏に焼き付いてしまった。年相応ではない引き締まった筋肉に、どころどころある傷跡は彼の旅を語っているようだった。

 まぁいい。もう戻るか。

 

 

「ユンゲラー。てれぽ──」

 

 

 それは油断だった。警戒を緩めていたこの一瞬に、それは……赤い目をした何かが目前に迫るのに今気づいた。

 

 

「なっ!」

 

 

 それがスピアーだと分かったのは腕に傷を負わされて通り過ぎた際に聞こえた羽音だ。再度テレポートを試みようとするがそれは叶わなかった。スピアーの後に続いて目の前を覆う巨大な影が迫ると、男の声が聞こえた。

 

 

「見つけたぜ、おらぁ!」

「ぐっ!」

 

 

 首を掴まれた。かなり力強く締めているため息がうまくできず、これでは単独でテレポートすらできない。あれには集中力を使うため、こんな状態でテレポートすればどこに行きつく見当もつかない。

 何とか相手だけでも確かめようとするが暗闇のためハッキリと見えない。だが天が味方したのか、雲で隠れていた月が姿を現し男の姿を映した。

 

 

「レッド──」

「ファッ⁉ ナツメ⁉」

 

 

 相手の正体が自分だと知ると、掴まれている首の拘束が少し緩んだ。

 

 

「まさかお前もロケット団、なのか?」

「ふっ。だとしたらどうする? マチスのように私も倒すか?」

「……ああ。もちろん」

 

 

 右手を手刀のように構えると、そこからバチバチと電気が流れ始める。一体どういう原理なのかは考えない。考えるだけ無駄だ。それに以前マチスが言っていたように一度死んだことによって何かに覚醒したのかもしれない。自分と同じサイコパワーのような力に。

 しかし今はその力を使うことはできない。目を横にすればユンゲラーは先程のスピアーに槍を突き付けられ身動きが取れない。

 八方塞がりなこの状況の中、ある異変が起きた。

 

 

「……どうした。手が震えているぞ」

 

 

 一向に手を下さないレッドに違和感を覚えた。よく見れば彼の右手は震えていた。

 

 

「なんだ。女を殺すことに抵抗でもあるのか。存外、甘いんだな」

「ち、ちげぇし。こ、殺すし……」

「……?」

 

 

 様子がおかしい。先程と違って冷静を欠いているようにも思える。ならばとレッドの頭の中を覗き込むナツメ。

 ──殺せるわけねぇじゃん! 

 

 

「──は?」

「な、なんだよ」

「い、いやなんでも。早くしろ」

 

 

 しかしレッドはトドメを刺さない。再び頭の中を見る。

 ──やべぇ、どうしよう。

 ──無理だって、無理無理のカタツムリ。

 ──ナツメを殺したらこの先どうなるか……。

 ──ていうか一番好きな女を殺せるかよ! 

 いま、なんと言った。好き? 私のことを? しかも一番? 

 今度はこちらがおかしくなりそうだった。

 

 

「ギャーオ!」

 

 

 その時レッドの背後で巨大なポケモン、サンダーが心配そうな目をしながら彼に訴えてきた。

 ナツメはなんとか話題を反らすための材料を手に入れた。

 

「分かってるって。やるって、マジでやっちゃう……やっちゃうよ?」

「ほう。やはりサンダーはお前が持っていたか」

「なに? それはどういうことだ」

「フフフ。私はエスパーだ。そういう事も分かるのだよ」

「だから話題を反らそうってか。いいか、マジでやるぞ。静電気でバッチっとするぐらいな感覚でやるからな!」

「おぉ怖い怖い。だけどな、レッド。死ぬ前に一つだけ聞かせてはくれないか」

「いいだろう。言ってみろ」

「では聞くが……サンダーがそこにいるのに、お前はどうやって空を飛んでいるんだ?」

 

 

 そう。今までレッドはサンダーに掴まれて飛んでいるかと思っていた。だがよく見れば、自分と同じように宙に浮いている。

 

 

「ちょっとした電気の応用だ。でもまだ練習中で、今はサンダー(バッテリー)がいないと長くは飛べないんだがな」

「そうか電気か……」

 

 

 ようは私の電気バージョンと言ったころかとナツメは勝手に納得した。

 

 

「実はレッド、お前に伝えたいことがあるんだ」

「なんだ突然。なら言えばいいだろう」

「だめだ。もっと近くに。大丈夫だ、いまの私には何もできないよ」

「……」

 

 

 数秒レッドは悩んだ末に体を押し付けて近づけきた。距離にしてたった数センチの距離。ナツメはレッドの耳に近づけて卑しい囁きをする。

 

 

「──私もお前が一番好きだよ」

「ファッ⁉」

 

 

 首を絞めていた手が離れ、ナツメは右手でレッドの腹に手を当てサイコキネシスを繰り出すといとも簡単に吹き飛んだ。一瞬の隙を見せたレッドは突然何が起こったのか理解が追いつかない。

 

 

「ユンゲラー!」

 

 

 続いてスピアーにもサイコキネシスをかけてユンゲラーを解放させる。ユンゲラーはすぐにナツメを抱えて10メートルほど離れた場所にテレポートした。

 

 

「ハハハ! 油断したなレッド! 私はエスパーだぞ? お前の頭の中を読むことぐらい造作もないんだ」

「え、マジかよ……死にたい」

「次に会う時はもっと女の扱いを勉強しておけ。そんな乱暴な振舞では私のように簡単に手玉に取られるぞ? ああ、それとなレッド」

「……」

「お前、少しずつ落ちてるぞ。アハハ!」

「え──―」

「また会おう、マサラタウンのレッド!」

 

 

 テレポートする瞬間目に入ったのは、マヌケな顔して地上へと落ちていく無様な姿だった。

 

 

 

 

 

「あぁあああああ!!! サンダぁああああ!!」

「……ギャ? ぎゃ、ギャーオ!!」

 

 

 少し遅れて自分の主が落ちていることに気づいたサンダーはすぐに急降下してレッドを追いかける。しかしレッドがいた場所は地上から約20メートルの高さ、出遅れたサンダーでは間に合わない。

 腰についているカビゴンのボールを地上に投げる。ボールからカビゴンが出てくるのと、レッドがカビゴンのお腹に不時着するのはほぼ同時であった。

 ただカビゴンのお腹はまるでトランポリンのように弾力があり、レッドは何回か打ち上げては落ちてを繰り返しながらカビゴンに礼を言う。

 

 

「さんきゅーカビゴン」

「夜食のラーメンを所望する」

 

 

 何とか無事に地上に戻ったレッドはサンダーとカビゴンを戻す。辺りを見回せばタマムシシティの郊外にある森のようだ。ここから街の方へ目指せばエリカのお屋敷に戻れる。

 だがその前にと、レッドは周囲を見渡すと突然叫びだした。

 

 

「男の純情を弄びやがって────!! くそぅ、ちくしょうぉ……」

 

 

 目の前にあったイシツブテに八つ当たりする。

 レッド──いや、彼にとってナツメとはとても特別な人物である。カントー地方に登場する女の中では断トツにナツメが好きだったのだ。一応次に来るのはエリカである。

 そんな彼女がまさかロケット団の幹部なのはショックで、もっと酷いのは頭の中を覗かれて自分の恋心を利用されて嘘をつかれたことである。

 

 

「ゆぐ……ロケット団絶対に許さねぇ!」

 

 

 怒りの矛先をロケット団にすることでなんとか平静を保つ。

 しかし改めて気づく。マチス、キョウ、ナツメ、カツラ──そしてロケット団のボス・サカキ。カントーのジムリーダーの半分がロケット団にいる。

 

 

「カントーってやっぱ魔境だって絶対」

 

 

 困り果てた顔をしながら天を仰ぐレッド。記憶が正しければ、ジムリーダーが悪の組織側にいるのは初代以外になかったはず。となるとこれだけの戦力が敵側にあるということは、あまりにも不公平ではないのだろうかと。

 考えても仕方がないとため息をつく。そのまま屋敷の方向へ歩き出そうとするがふと足を止めた。

 

 

「……やっぱ野宿しよ」

 

 

 今まで野宿ばかりしていたのが祟ったのか、普通の暮らしがどうにも性に合わないことに気づいた。再びカビゴンを出してお腹に上って仰向けになる。

 明日はゲームセンターを潰すか。次の目的を決めながら眠りにつくレッド。しかし大事なことを忘れているようなと思い始めると中々寝付けない。結局そのままポケモン達を全員だして、軽く運動したやっと眠ることができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキシティにあるシルフカンパニーにある一室。そこにナツメはテレポートして帰還した。すぐさま部屋の主であるロケット団のボスであるサカキに報告した。

 

 

「ボス。どうやらサンダーはやはりあの少年が手に入れていたようです」

「そうか」

「それだけですか?」

 

 

 一言ですますサカキにナツメは首を傾げてそのまま尋ねる。

 

 

「何故だ」

「いえ。サンダーは我らの計画の要の一つ。アレを使うためにもサンダーは必要不可欠のはずでは?」

「エスパーという割には先が視えていないな、ナツメ」

「は……」

「問題ない。近々ファイヤーの捕獲作戦が始まり、フリーザーの所在もそろそろ発見できる頃だ。そしてサンダー。アレもここに来る」

「ロケット団を潰すためにレッドが来るからですか?」

 

 

 口で笑うだけでサカキは答えなかった。彼と長い付き合いなるナツメでさえ踏み込めない領域もある。頭の中を覗こうなど一度も考えたことなどなかった。

 サカキは椅子から立ち上がるとジャケットを羽織りはじめた。どこかに行くのだろうか。ナツメは聞いた。

 

 

「しばらく指揮はお前らに任せる。俺は少し外に出てくる」

「……どちらへ?」

「俺もそのトレーナーが気になった」

 

 

 たったそれだけを言い残しサカキは部屋を出た。残されたナツメは、スピアーに傷つけられた腕を抑え体を震わせながら呟いた。

 

 

 

「お前はサカキ様が自ら動くほどの男ということか、レッド」

 

 

 一番好きな女を殺せるかよ──

 彼の頭の中で言った言葉がどうにも振り払えないナツメは、自身に渦巻く謎の想いに悩まされながらただ立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






メインヒロインであるナツメの描写を入れつつ、なぜかレッドの中でハナダのお姉さんの存在が大きいです。自分で書いている割にはよくわかってないです。
どんな人がいいかなとアニメキャラでイメージした結果、某痛快娯楽復讐劇に出てくるお姉さんしか思い浮かばなかった。
たぶん、知ってる人は納得すると思う。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トレーナーたる者、ポケモンと心交わすことなど当然のこと

ついに前回をもってタグにハナダのお姉さんを付けました。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓。

 エリカへ。お元気でしょうか。わたしは元気です。まずは昨夜のことは本当に申し訳ないと思っております。いや、本当ですよ? 問題が片付いた後にちゃんと屋敷に帰ろうとしたんです。

 だけど、やっぱり野宿が一番だと思ってそのまま外で一夜を過ごしました。

 けして、わたしがエリカのことが苦手だからというわけではないことを改めて伝えたいと思います。本当です。本物のお嬢様に会えてとても光栄ですし、その所為もあって昨夜のわたしはとても緊張していたのです。だからちょっと挙動不審だったのです。今思い出しても、エリカの部屋でちょっと興奮していたわけではないのです。

 なのでお詫びというわけではありませんが、タマムシの問題を一つ潰したいと思っております。

 はい、そうです。わたしはいま、ロケット団の秘密研究所に潜入しているからです。

 

 

 

 追伸。あのイーブイはマサラタウンにいるオーキド博士に治療を頼みました。年は食っても頭はいいと思うので、きっとイーブイを治してくれると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外で一夜明けた朝。レッドはタマムシシティへと戻っていた。朝だけに人の通りは少なく、いてもポケモンと一緒に散歩、あるいはジョギングをしている人ぐらい。ただ偶然にも黒ずくめの男がいたので、そのまま裏路地へ連れ込んでお話したあと、男の情報から得たルートで地下にある秘密研究所へと侵入に成功した。

 地下は予想以上に広く、ゲームと違ってそれぞれの部署に分かれているためかなり複雑化している。それでもうまくいっているのは男の情報がかなり正確だったからだろう。目的はここの破壊であるが、それとは別に個人的に気になることがある。偶然にも男はここの研究部門の場所を把握していたおかげであった。さらに一定の団員、おそらく隊長クラスの人間しか入れない場所があると。

 

 

「さて、と。ここか」

 

 

 問題の研究所へと通じる扉の前にたどり着く。案の定扉にはカードキーが必要らしい。

 レッドは口笛を吹きながら右手の人差し指を出してカードキーを通す装置に指を当て、バチッっと電気を流してロックの解除を操作した。赤から青になり扉が開くのでとっとと中に入る。

 意外といけるもんだ。

 実のところショートさせて強引に入る予定だったが、意外にもそう意識すれば何とかなった。レッドは通路をひたすら歩き、ある区間に入ると壁がガラス張りになっているところに出る。そこに顔をのぞかせて中を見た。そこは実験場らしく、拘束されたイシツブテに機械のアームが伸びて何かを食べさせると、イシツブテは光に包まれゴローンに進化し、さらにもう一度食べさせるとゴローニャに進化した。進化したことで拘束具が壊れて暴れまわっている。

 強制的に進化せてかつ暴走状態、か。

 違う部屋から水ポケモンが現れハイドロポンプを食らってさすがのゴローニャも倒れた。それを見届けさらに歩みを進める。そしてこの施設の一番奥にたどり着く。運がいいことにここにはカードキーは必要なくそのまま入れる。そこには目的の一つであったポケモンがいた。

 

 

(……まさかまだここにいたのか、ミュウツー)

 

 

 カプセルにいられたミュウツーはまだ眠っていた。歩きながら施設を見渡す。どうやらここはかなり重要な区間らしく、モニターがずらりと並んでいて監視室の役目も担っているようだ。モニターの映像にはここの施設内はもちろん、街の映像にジムにまでカメラが設置されていた。ロケット団もジムリーダーであるエリカを警戒しているのだろう。

 キィイイン──

 

 

(うっ、なんだ。頭に何か……)

 

 

 突然の頭の痛みに思わず頭を抱える。だが痛みはすぐに消えた。原因を探ろうとするがある会話が耳に入る。

 

 

「なんとかここまでこぎ着けたミュウツーの完成度は90%といったところです」

「残りの10%はどうすれば埋まる?」

「それは難しいでしょう。このミュウツーは強さだけなら無類の強さを持ち合わせていますが、その分凶暴で我々の制御下に置くことは非常に困難。強さと管理能力を併せ持った新たなミュウツーを生み出すには、やはり今あるサンプルだけでは不可能です」

 

 

 声の方に向くと、そこにはサングラスをかけているスキンヘッドの男、カツラがここの責任者と思しき人間に報告している。

 男はそんなことをわかりきっているのか怒鳴って言い返した。

 

 

「それは承知している! だからこそ再度ミュウを捕獲してこいと言うのだろう」

「ええ。ですが……それは不可能」

「そのために血眼になってあの小娘を追っているのではないか! ミュウのデータを記録したディスクを取り返さなければ、捕まえることはおろか見つけることもできん!」

「……小娘?」

 

 

 まさかリーフのやつじゃ。

 それを聞いてレッドは思わず不安になった。ロケット団と関わるような少女なのは彼女ぐらいしか思いつかないからだ。シオンタウンでロケット団を退けたことで彼らと関わることになってしまったのかもしれない。

 最悪の事態を想像するところで、警報機が騒ぎ始める。

 

 

「どうした⁉」

「見つけました! 東16ポイントにあの少女が現れました!」

 

 

 メインモニターに映し出されたのはリーフではなかった。この前一度だけ会い、不良品のふしぎなアメを買わされバッジを盗んだブルーであった。

 

 

「総員出動! お前も突っ立ってないで行くぞ!」

「あらほらさっさー!」

 

 

 脱出する手間が省けた、レッドは笑みを浮かべながら先を走るリーダーの後ろに続きながら現場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東16ポイント。タマムシシティから少し離れた郊外に位置するここは、森を抜けると崖があり危険な場所である。危険である故に住民は滅多な事では近寄らないし隠れるのは絶好の場所であった。しかしさすがに監視カメラには気づかなかったブルーは、こうして崖っぷちに追い込まれていた。

 

 

「やーね。か弱い女の子一人に大勢で囲んじゃって。ロケット団にしては随分と大袈裟じゃなーい?」

 

 

 ピンチながらも余裕を演出する。見渡せばサイドン、カイリキー、サワムラー、ゴローン、ウツボット、ナッシー等々と強力なポケモンが待ち構えているが、これぐらい乗り切れる自信があった。

 

 

「さぁ渡してもらおうか。ミュウのデータが入ったディスクを。大人しく返せば命だけは助けてやろう。命だけはな」

「あら怖い。けどそれはダメよ。だって、アタシがミュウを捕まえるんだもーん!」

 

 

 持っていたディスクをカメールに持たせる。こうすれば相手は手加減をせざるをえない。あとはどうやってこの場から逃げるのかが問題だ。すると痺れを切らしたリーダーはポケモンたちに命令してきた。

 中々やるけど、この子の敵じゃない。

 カメールはその身軽な体を駆使して相手を翻弄し蹴散らす。

 

 

「ふふ。ディスクを気にしてまともに戦えないようね。ま、ジムバッジを二つも持っているあたしにかかれば当然よね。おほほ」

 

 

 この間の少年から盗んだバッジをイヤリングにして見せびらかすブルーに、リーダーは新たなポケモンケンタロスを繰り出した。

 鼻息を荒くし、今に突撃してきそうな見るからなに凶暴なケンタロスにブルーの額に汗が流れる。

 

 

「ははは。こいつはサファリゾーンでリーダーだったやつだ。それも尻尾で指揮することもできる。やれぃ!」

 

 

 ピシッピシッと鞭のように自身の尻尾を振るケンタロス。すると倒れていたポケモンたちが突如立ち上がり、カメールに襲い掛かる。さすがに数の暴力に勝てない。そのままディスクを落とし、ブルーのところまで飛ばれてしまう。

 慌ててカメールをボールに戻すブルーに容赦なくケンタロスに命令を下すロケット団のリーダー。

 

 

「いけぇケンタロス! とっしんだ!」

「まにあ──!」

 

 

 新たなにポケモンを出そうにも間に合わない。ブルーは思わず目をつむった。

 

 

「……あれ?」

 

 瞼を開ける。どうしてケンタロスは来ず五体満足に無事。だが代わりに目の前には黒い服を纏ったロケット団の一人が立っていた。

 顔を傾ければどうやら自分とケンタロスの間に入ったらしい。

 でも、なんで? 

 

 

「やれやれ。結局こうなるんだから」

「……あはは。ひ、久しぶりぃ……」

 

 肩をすくめてこちらを向いたその顔には見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、貴様! 一体何の真似だ!」

「何の真似、と言われてもね。さすがにこいつを殺させるわけにはいかなくて……」

「一体何を……! ええい、お前は何者だ!?」

 

 

 答える気など毛頭ないレッドが頬をかいていると、後ろにいるブルーが勝手に着ていたロケット団の服を剥ぎながら言った。

 

 

「はーい! この人あたしのダーリンでーす!」

「な⁉ 貴様はマサラタウンのレッド⁉」

「あれ? あたしの反応と違うんだけど」

「なら話は早い! お前を手土産に幹部に昇進だ。やれ、ケンタロス! ……ケンタロス⁉」

 

 

 ケンタロスはレッドが間に入ってから一度も動いておらず、今もリーダーである男の命令を聞いてはいなかった。むしろ、モォーと鳴きながらレッドに頭をこすり付けている。

 

 

「おおよしよし」

「そ、そんな馬鹿な! あのケンタロスが手懐けられているだと⁉」

「トレーナーたる者、ポケモンと心交わすことなど当然のこと。それが野生でも、相手のポケモンでもだ。それじゃあ頼んだぞ」

「ぶもぉ!」

 

 

 レッドに頼まれて気分が高まったのか、ケンタロスは再び尻尾を振ってポケモンたちを操りロケット団に襲い掛かる。

 

 

「さ。逃げるぞ」

「ええ、もちろん!」

「あ、その前に」

「なによ」

「ぷちショック」

「ぁ──」

 

 

 ブルーの肩に手を置いて軽い電気を流す。そのショックで気を失ったブルーを抱きかかえた。

 こいつちゃんと飯食ってんのかな。

 腕の中で眠るブルーはとても軽く、女の子と言ってもこんなにも軽いのかと驚きつつレッドはその場から急いで離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって。研究施設で見た監視室のモニターに映っていない死角があるタマムシの一角に、レッドはブルーを運んでそこに生えていた木に彼女を縛り付けた。

 念のための用心しないと。

 彼女には前科があるため、さすがのレッドも無警戒ではいられなかった。眠っている間に彼女の体を検査する。どうせあのディスクは偽物だろうと思ったからで、案の定彼女の胸の谷間にあったので普通に取らせてもらった。

(白か。意外とピュアなんだな)

 しっかりと下着の色を確認したあと服をちゃんと直す。あとバッジも返してもらう。

 そろそろ起こそうと思って気絶させた同じ要領で電気を流した。

 

 

「わっ!」

「お、ちゃんと起きた」

「ちょっと! あんた、あたしに何をしたのよ!」

「それはこっちの台詞だろう。偽物売りつけた上にバッジまで盗みやがって」

「それは……おほほ……」

「それと、これ」

 

 

 ミュウのデータが入ったディスクを見せると、胸を見て顔を真っ赤にして怒り出した。

 

 

「エッチ!」

「意外だな。てっきり受け流すと思ったのに」

「なんで逆にあんたは冷静なのよ! もっと年相応に照れなさいよ。乙女の体に触ったんだから」

 

 

 年相応か。なんだか随分と遠い昔のように感じる。そんなことを考えているとハナダのお姉さんのことをつい思い出してしまう。あれを美しいというんだろうな。

 レッドはブルーとお姉さんを比べた。思わず吹き出す。最初から比較にすらならない。

 

 

「ふっ」

「いま、すっごい失礼なこと考えたでしょ、あんた」

「ところで、あんたじゃなくて俺にはレッドっていう名前があるの。はい、復唱」

「あーはいはい。わかりました! じゃあレッド、これほどいて」

「何も盗まないなら」

「……わかった。レッドから何も盗まないわよ(今は)」

 

 

 俺以外は盗むのか。

 呆れつつレッドは縛っていた縄を解いて解放した。改めてブルーに事の経緯を問いただし、総括すると。

 

 

「ミュウを売るとか頭にきますよ!」

「なんでよ⁉ ミュウは151番目の幻のポケモンなのよ⁉ それを買おうっていう人間はたくさんいるわ。それも大金を積んで!」

 

 

 807種類です(現在進行形で増えてます)……なんて言えるわけもなく、適当に相槌をうって否定する。

 

 

「いいか。幻は幻だからこそ夢や浪漫があるんだ。いくら人間がポケモンを捕まえられるからって、超えちゃ一ならない線っていうのがあるんだ、それをわかれよ!」

「なにいい子ぶってんのよ。所詮人間なんてポケモンを道具としか思ってないのよ。だからロケット団みたいな組織が平気で金もうけに使う。なんでそれがわからないのレッド⁉」

「じゃあお前もポケモンを道具だと思ってるのか?」

「そんなわけないじゃない。それはそれ、これはこれよ」

「……」

「……」

 

 

 

 互いに意見の違いで睨み合う二人。先に折れたのはレッドだった。状況が状況なだけに言い争っている時間はない。

 

 

「とりあえず、ロケット団にミュウを渡すわけにはいかないからお前の話を聞く」

「最初からそう言えばいいのよ」

「で。そのディスクで何ができるんだ?」

「ふふふ。これを使うの」

 

 

 取り出したのは見覚えのあるアイテムシルフスコープだった。まさかこんなところでお目にかかるとはレッドも思いもよらなかった。

 

 

「これにデータを入れてっと。で、これを被る」

「なんか赤い彗星ぽい」

「青い巨星の間違いでしょ」

「胸だけに?」

「ふん!」

 

 

 ――ブルーのげんこつ! レッドは前が見えない! 

 

 

「今度セクハラしたらもっと酷いわよ」

「これぐらい軽く流せよぉ……」

「待って。反応があるわ! それじゃあメタちゃんお願いね」

 

 

 メタモンが現れるとへんしんを使ってミュウに化ける。そのままメタモンは空、方向的に街方へと向かっていく。

 

 

「囮か?」

「そうよーん。その間にミュウを捕まえるのよ。付いてきて!」

 

 

 先に走り出したブルー。レッドはため息をついて重い腰をあげてから少し遅れて彼女を後を追いはじめた。

 

 

 

 

 

 それから場所は変わりタマムシの北部。あたりは平原で自然の風景が広がっている。それだけではなく、意外にも野生のポケモンが一匹もいなかった。

 

 

「で、どこにいるんだ?」

「いい? ミュウはエスパータイプだと言われているの。エスパーポケモンは特殊な波長、ようはサイコキネシス等の念力を体から発しているの。これはその波長を捕らえることができるってわけ」

「ふーん」

「もっと驚きなさいよ」

「いや別にそんなに凄いとは思ってないし……あ、なんか来るぞ」

「ちょっと、適当なことを……ってきたわ!」

 

 

 ブルー特製スコープよりも、レッドの電気レーダーが早くにミュウの波長を感じ取った。同時にミュウが発するサイコキネシスが風をまるで嵐のように変える。立っているだけで精一杯のブルーとは違いレッドは、高速で動いているミュウを当たり前のように追っていた。

 

 

「ちょっと、捕まえるのを手伝いなさいよ!」

「ロケット団の邪魔をするために手伝うとは言ったが、ミュウを捕まえるとは言ってないぞ」

「ああもう! カメちゃん!」

 

 

 やけくそ気味にカメールを出すブルー。しかしカメールではミュウを捕らえることは難しかった。レッドのフシギバナであれば簡単にいったかもしれないが、元々ミュウを逃がすつもりでいるためその方法が実現することはなかった。

 そんな時。タマムシの方で大きな爆発と同時に煙が上がっているのが見えた。

 

 

「なんだ?」

「──! いまよ!」

 

 

 ミュウも謎の爆発音に気を取られてたのか動きを一瞬止めたところを、カメールが攻撃を当ててミュウにダメージを与えて弱らせた。そのあとカメールがミュウに飛びついて拘束する。

 

 

「おほほ! やったわ、ミュウちゃんゲッ──」

「ブルー!」

 

 

 ブルーを抱えてその場を避けるのと、元いた場所に巨大な岩が落ちるのはほぼ同時だった。

 飛んできたであろう場所に視線を向けるレッド。そこにはロケット団がずらりと崖の上からこちらを見下していた。

 

 

「貴様ら、よくも騙してくれたな。ただでは帰らせんぞ! お前らをこいつと同じ目に合わせやる!」

「メタちゃん!」

 

 

 そう言って囮になっていたメタモンが投げ落とされ駆け寄るブルー。

 

 

「やれ、ルージュラ! サイコウェーブ!」

「きゃあああ!」

「……」

 

 

 サイコウェーブは例えるとちょうおんぱの念力版である。それを直接人間に向けるとどうなるか。ちょうほんぱとは違って耳を塞いでも直接脳に届くため防ぎようがない。場合によっては拷問にも使われ人を狂わし、操ることもできる恐ろしい技だ。

 だがレッドは違う。特殊な電波で打ち消すことで被害を抑えている。ブルーまで守れないのは、まだ調節が難しく鍛錬が足りていないためだ。

 ロケット団のリーダーはレッドが失神でもしたかと思い高らかに勝利の雄たけびを上げる。ミュウを捕まえていたカメールもこのサイコウェーブでミュウを解放してしまったからだ。

 

 

「捕まえろルージュラ! これで俺は晴れて幹部昇進だぁ!」

 

 

 ルージュラが地面を蹴って宙にいるミュウへとその自慢の髪の毛を伸ばし拘束する。

 

 

「捕まえちゃ、った! (じゅら!)」

「……」

 

 ミュウも少なからずダメージが残っているが、レッド同様に別の波長を出してルージュラのサイコウェーブを打ち消している。にも関わらず、ミュウは逃げなかった。

 その目には紅い閃光が見えているから。

 

 

「──スピアー、その髪を斬れ」

「──!!」

「ああん。きれちゃった! (じゅらじゅら⁉)」

「トドメだ。ダブルニードル」

 

 

 そのままルージュラに向けて急降下し、主に忠誠を捧げた二本の槍を構え、ルージュラを貫いた。

 ──スピアーのダブルニードル。きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ! ルージュラはたおれた。

 どんなポケモンでも急所を見抜き、さらに効果抜群の技を食らって立っていられるポケモンはいなかった。

 

 

「強くてカッコいいのね。きらいじゃない、わ──(じゅら──)」

「──」

「ん? ああ、そうだな。死なない程度にやれ」

 

 

 スピアーは崖の上にいるロケット団をどうするかとレッドに指示を仰ぐと、期待通りの命令が来た。体が動けなくなる程度のどくをロケット団全員に打ち込むと、スピアーは真っ直ぐレッドの手にあるボールへと戻った。

 さてと。あいつは……いた。

 ミュウは空の上でこちらを見ていた。これで二度目だ。

 

 

「また助けてやったぞ。お礼は……いいや。またどっかでな」

「みゅー」

 

 

 初めて聞いた鳴き声は意外と綺麗で驚いた。ミュウが飛んでいなくなってから、レッドはブルーに声をかけた。

 

 

「ブルー大丈夫か?」

「ええ、なんとかね。それにしてもレッドってば、すごい強いのね」

「鍛えてるからな。しかしミュウは行っちゃったし、今回はただ働きだったな」

「あら、そうでもないわよ。じゃーん、ミュウをカメラに収めたわ! これだけでもコレクターに売れるわよぉ!」

「はー。お前のその商人魂には俺も叶わないよ」

「ふふふ。ありがと。それとねレッド」

「ん?」

「これは助けてくれたお礼とお詫び。だから勘違いしちゃダメよ」

「……え」

 

 

 手を後ろに組んで、こちらに歩いてきたブルーは、背伸びをしながら頬に顔を近づけてきた。

 

 

「ふふーん。かっこよかったわよ」

 

 

 頬に柔らかい感触に不思議と甘いにおいが同時にした。あまりにも突然なことで脳の処理が追い付かず、数秒経ってやっと彼女がキスをしたのだと理解できた。

 

 

「それじゃあ、レッド。またどこかであい──」

 

 

 別れを告げようとするブルーの言葉は、第三者の怒りの叫びによってかき消された。

 

 

「あ、アンタたち! な、なにやってんのよぉおおお!!」

 

 

 そこにはブルーと似た顔をしている幼馴染のリーフがそこに立って二人を、特にレッドを睨んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一年ほど前に諸事情により手放したポケスペを買い戻すことに決めました。
やっぱ面白いや。みんなも買おう!

そしてこれで当分の作業については安心だぜ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

しばらく金欠だからトレーナー狩りしなくちゃ(使命感)

今でもだけど、本当はバトルをデュエルと言いたい。
それと以前リーフの手持ちのアドバイスをもとに何とか決めました。みんなありがとナス!
おかげでとんでもないのが一体います(私はよく理解していない模様)。





 

 

 

 

 

 

 

 

 それは偶然だった。

 タマムシに用があったリーフはゲームセンターに向けて歩いていた。目的は単純、スロットをするためだ。

 今日もむしり取ってやろっと。

 恐ろしいことにリーフにはギャンブルの才能があったらしい。スリー7を揃えるなんて簡単で、コインをがっぽがっぽ稼いでいた。

 そんな浮かれた気分で店に入ろうとしたその時、店から黒ずくめの集団が何処かへ走り去っていくのを目撃する。

 

 

「あれは──ロケット団! まさか、こんなところにあいつらの基地があるなんて。こうしちゃいられないわ!」

 

 

 そのあとどうなったかは簡単であろう。ロケット団の地下研究室に単身で乗り込み、残っていたトレーナー全員とバトルしたのだ。おかげでレベルがあがり、フシギソウはフシギバナに進化することができた。

 大方施設にいるトレーナーを倒したと一息つこうとしたリーフ。その瞬間別の所で大きな爆発が起きたのだ。何がなんだかわからないがとにかく爆発が起きた場所へ向かった。そこには無残に飛び散るガラスの破片と壊れた機器類。

 

 

「あれ、これって」

 

 

 偶然生き残っていたモニターに映し出された映像にレッドが映っていたのを見つけだすリーフ。

 

 

「なーんだ。レッドったらもうタマムシまで来てたんだ。えへへ、や……た?」

 

 

 しかし、映像に映っていたのはレッドだけではなかった。もう一人、知らない女がレッドといるのに気がづいた。

 

 

「誰よあの女! レッドのばかぁ!」

 

 

 叫びながら来た道を戻るリーフ。

 同時に彼女がいなくなると、映像は途絶え煙の中から影が薄っすらと浮かび上がり、煙に乗ってどこかへと消えてしまった。

 

 

 

 

 

 外に出ると待っていたのはジムリーダーであるエリカを筆頭にこの街の自警団。彼女は突然現れた自分にとても驚き声をかけてきた。

 

 

「あ、あなたはリーフではありませんか! どうしてここに?」

「え? ロケット団を見つけたんでぼこぼこにしてきたんですけど……」

「あなたもお強いトレーナーだと思ってはいましたがこれ程とは。ところで、レッドと一緒では──」

「そうだ、レッドだ! ごめんなさいエリカさん、わたし急いでるんで! コンコン、全速力でダッシュよ!」

 

 

 キュウコンの背に乗りその場をあとにするリーフ。

 だいたい走って15分経ってからだろうか、目的の場所につくとレッドがあの女とキスをしているのを目撃してしまい、思わず叫んでしまった。

 

 

「あ、アンタたち! な、なにやってんのよぉおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いい流れで終わりかと思った矢先、突然のリーフの登場によりここはカントーで一番の混沌と化してしまった。彼女を知らないブルーはレッドに近寄りながら聞いてきた。

 

 

「あの子誰?」

「幼馴染のリーフ」

「レッド、その女誰?」

「こいつはブルー。見ての通りの……詐欺師?」

 

 

 問われて一度ブルーの方へ見て答える。詐欺師と言われ反論するブルーにリーフが二人の間に入って引き離す。

 

 

「で、あんた。レッドとどういう関係なわけ⁉」

「関係って言われても……! あたしたちはビジネスパートナーよ。ね、レッド」

「いや、被害者と加害者の関係だろ」

「そういうところよ、レッド」

「なんでそんなに仲がいいのよ!」

「そうか?」

「そうかしら?」

 

 

 どう見ても互いに言い争っていると思うし、意見すらバラバラだ。これで仲がいいというリーフはどうかしているのではないだろうか。

 彼女は続けてブルーに対してがみがみと怒鳴り散らしている。レッドはそもそもなんでここにいるのかとたずねた。

 

 

「ゲームセンターの地下にロケット団の基地があって、そこのモニターに二人がいたからよ」

「……え、なに。お前があれやったの?」

「当たり前じゃない! わたしにかかればロケット団なんてらくしょーよ」

「な、なら、ボスはいたか⁉」

 

 

 リーフの肩に掴みかかって体を揺らしながら言う。

 

 

「い、いなかったわよ! そもそもいきなり施設が爆発してそれどころじゃなかったし」

「爆発?」

 

 

 もしかして、ミュウツーが逃げたのか。

 それを聞いて安堵する。となればきっと、向かうのはハナダの洞窟だ。仮にロケット団がハナダの洞窟を見つけても、おいそれとは先へと進むことはできない。なにせ、あそこで強くなったのはレッドのポケモンだけとは限らないのだ。

 抱えていた問題の一つが片付き、未だに言い争っている二人へと目を向ける。

 似ている。うり二つってわけじゃないけど。

 声は違うから見分けは簡単につくが、所々似ているなと思わせる部分がある。レッドは試しに聞いてみた。

 

 

「なあ、二人って生き別れの姉妹だったりしない?」

「そんなわけないじゃない」

「そのぐらいわかるでしょ! このバカレッド!」

「やっぱり似てるって」

「とにかく! あたしはレッドとそういう関係じゃないから、また会いましょう!」

 

 

 ブルーはプリンを出すとそのまま膨らんだプリンに捕まって空へと飛んでいく。それを見たレッドはリーフに問いかける。

 

 

「はぇープリンって空飛べたんすね。で、お前は追いかけないわけ」

「……持ってない」

「は?」

「持ってないの! 空を飛べるポケモン!」

「……ピジョンとか、いらっしゃらないんですか?」

「グリーンなら持ってる……わたし持ってない」

「うっそだろお前」

 

 

 ひこうポケモン、特に初代なら最低でもポッポかオニスズメぐらいは捕まえているものだ。ポッポを捕まえてピジョットにしたのは懐かしい思い出だとレッドを思い返す。それなのにリーフは一匹もひこうポケモンを持ってないと言う。

 

 

「ちなみに、いまの手持ち何持ってるんだ?」

「えーとフシギバナ、キュウコン、ギャラドスでしょ」

「ギャラドス?」

「うん。最近みずポケモンでカスミさんに相談したら譲ってくれたの」

 

 

 ギャラドスと聞いてもしやと思ったが、案の定以前捕まえたカスミのギャラドスだった。レッドは続けてとリーフ言った。

 

 

「あと最近サファリゾーンで捕まえたラッキー」

 

 

 さらっととんでもない名前が聞こえた。でも幻聴だと思って聞き流した。

 

 

「最後に、タマムシシティに来た時に見つけたイーブイ」

「──イーブイ?」

「うん。イーブイ。街を歩いていたら偶然見つけたの。ほら、可愛いでしょ!」

「う、うん。かわいいね……」

 

 

 どうりで探しても見つからなかったわけだ。まさか二匹目がいたとは思わなかった。しかしよく考えれば、イーブイが一匹とは限らないと気づく。そもそもイーブイの生息地はカントーにおいては不明なのだ。それだけリーフの運がいいということだろう。

 

 

「ところで。レッドの手持ちは? わたしだけ教えるのは不公平なんだけど」

 

 

 痛い所を突かれる。いや、普通に話してもいいと思うのだが、如何せんレベルの関係と御三家を持っているため中々言いづらい。さらにおまけにサンダーを持っているのでもっと言いづらい。

 だから正直に嘘をつくことにしたレッド。

 

 

「ピカチュウとスピアー」

「あとは?」

「それだけ」

「ほんとぉ?」

「いえす」

「……」

「……あとカビゴン捕まえました」

「にひひ。わたしのかちぃ! もっと捕まえなきゃだめだよ、レッドくーん。おじいちゃんからポケモン図鑑を渡されてるんだから」

「あ、忘れてたわ。けど、全国図鑑すら入ってない図鑑に価値なんてないし……」

「?」

 

 

 言っていることが理解できていないリーフは首をかしげる。時代なのか、それともネットワークがまったく発展していないのか。いまだにこの初代ポケモン図鑑は151匹分のデータしか入っていないポンコツ図鑑なのだ。

 

 

「話は戻るが、ひこうポケモンは持っておけよ。便利なんだからさ」

「えー。だってかわいい子いないし」

「じゃあなんか見つけたら俺がプレゼントするよ」

「ほんと⁉ レッドがわたしにプレゼントをくれるの⁉」

「お、おう」

 

 

 目をキラキラと輝かせ、まるで犬のように飛びつくリーフに少し驚いて一歩下がる。レッドとしても、いくらギャラドスでなみのりができると言ってもそらをとぶと比べれば、どちらが便利かは一目瞭然。さて、どんなポケモンがいいかと考えていると、リーフが何かを思い出したのかまたこわいかおをしてレッドに問い詰める。

 

 

「ところで。なんでエリカさんがレッドのことを知ってるの?」

「へ?」

「だってエリカさん。レッドのことも聞いてきただもん。それで、二人はどういう関係なの?」

 

 

 声は静かだがところどころを強調して言う。

 

 

「ひ、一晩ご飯を頂いただけだって……」

「なんでただのトレーナーとジムリーダーが一緒にご飯を食べるのよ」

「……それは、その、お礼だって」

「ふーん。お礼、ね」

「そう、お礼!」

「……」

「……!」

 

 

 レッドは脱兎のごとくにげだした! リーフのついげき! レッドはがんばってにげている……うまくにげられたようだ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タマムシシティとセキチクシティを繋ぐサイクリングロード。そこに逃げ込むことに成功したレッドはのんびりと自転車を走らせながらリーフのしつこさを思い出していた。

 手持ちのリザードンを筆頭にした御三家とサンダーも見られるわけもいかず、とにかく自分の足で全速力で走るレッドに対して、リーフはキュウコンに乗って追いかけてきた。人間がポケモンの脚力に敵うわけない、それはもう昔の話だ。人は走れる、ポケモンより速く。

 そしてタマムシシティにまでたどり着いた時には、すでにリーフを振り切っていてそのままサイクリングロードへと足を延ばした。

 

 

「さすがにゲームと違って速度の制限はないよな」

 

 

 タマムシシティから下る時は速く、セキチクシティから上ると重力でもかかっているのか物凄く遅く走るという理不尽使用。しかし現実ではそんな制限はない。

 のんびりセキチクシティへ向かいながら景色を楽しむ。すると対向車線に3人組のぼうそうぞくが走っているのが目に入った。

 いいなぁ、バイク。

 生前は自動二輪免許だけは学生自体時代に取ったはいいが、資金面でバイクを買うことはできずたまにレンタルで乗ることしかができなかったのを思い出した。

 彼らのバイクを物欲しそうに眺めていると、突然速度を上げてこちらに跳んできた。

 

 

「ヒャッハー!」

「ここはオレ達の縄張りだぁ!」

「自転車ごときが走るところじゃねぇぜ!」

 

 

 鴨が葱を背負って来たとはまさにこのこと。不敵な笑みを浮かべながらレッドは立ち止まり、暴走族三人に言った。

 

「おい」

「あぁん?」

「バトルしろよ」

「バトルだぁ!?」

「そうだ。それに3対1でいいぜ。その代わりに俺が勝ったらそのバイクを貰うぞ」

「こいつぁどえらいハリキリボーイがやってきたぜ」

「こっちが勝ったらお前は何を差し出すんだ?」

「おこずかい(MAX)を全部だ」

「いいぜぇ、バトルだぁ!」

『『『『ライディングバトル・アクセラレーション!』』』』

 

 

 ぼうそうぞくはアクセルを回し、レッドはペダルをこぎながらボールを投げ、

 

 

「スピアーミサイルばりでトレーナーにダイレクトアタック!」

『『『な、なにぃいいい⁉』』』

 

 

 スピアーから放たれたミサイルばりが容赦なく三人へと直撃した。するとどこから現れた謎のおじさんが現れて。

 

 

「1ターンに3人を。ワンターンスリィーキルゥ……」

 

 

 それだけ言っておじさんはセキチクシティ方面に向かっていった。

 レッドは気にせず、自転車を降りて倒れている暴走族に歩み寄り、ニッコリと笑った。

 

 

「て、てめぇ。きたねぇぞ……」

「馬鹿め。暴走族相手にまともにバトルすると思ったか。そして約束だ。バイクを貰っていくぞ」

「そ、それだけは! それだけは勘弁してくれ! ママに頼んで買ってもらった新車なんだ! まだローンも残ってるんだよぉ!」

「だったらいい機会だ。真面目に働いてローンを返すんだな。ほれ、代わりに自転車はくれてやる」

 

 

 どんなに頑張っても二人しか乗れない自転車を置いて、バイクに跨りアクセルスロットルを回してエンジンを吹かす。

 ドッドッドとエンジンの鼓動が伝わる感覚はバイク乗りにしか分からないだろう。ギアをファーストに入れてクラッチペダルを離しながらアクセルを回す。加速……セカンド……と、だんだんとギアをあげて、サイクリングロードを逆走する。

 向かう先はタマムシデパート。そこへレッドはバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クチバの横にある11番道路。ここはシオンタウンへと続く道であり、年に一度はサイクリングレースが行われる場所でもある。もちろん自転車だけではなく、バイク乗りも走っているのだが今日は見慣れない赤いバイクが走っていた。

 

 

「最高の仕上がりだFR号! これならオゾン層だって行けるぜ!」

 

 

 普通のバイクとは違う形をしたレッド専用バイク、名を『FR(ファイアレッド)号』。何でも揃っているタマムシデパートにてパーツやらペイントなどを大量に買い込み、ちょうど暇していたマサキを捕まえて完成させたこのマシンは、舗装された道はもちろん山や砂漠などなんのその。さらに海も渡れるホバー機能付きだ。ただ残念なことに、そこで資金はなくなり空を飛ぶジェット機能は付けられなかったので、次回へ持ち越しとなってしまった。

 

 

「しばらく金欠だからトレーナー狩りしなくちゃ(使命感)」

 

 

 そう呟きながら向かっているのはディグダの穴である。なんでそこに行くことになったのか、これは特に理由はなかった。前回クチバに来た際に寄るのを忘れたから行きたくなったというのが理由になるといえばなるのだろうか。

 ディグダの穴はそこからニビシティの下にある2番道路まで繋がっていることになる。地図にしてもかなり長い距離だ。聞いた話では稀に化石が掘れるらしく、それ目当てで穴に潜る人間が多いと聞いた。

 入り口までつくとレッドはマシンから降りてボールに戻す。これがこのマシン最大の機能であり、天才マサキの発明の一つ。主に資金が溶けた理由は、この機能を再現するために大量の部品を買い込んだことにある。

 一応飽きた時のためにあなぬけのヒモは用意していたが、これがどんな原理で洞窟を抜けられるのかさっぱり。いざ洞窟に入ろうとした時、後ろから声をかけられた。振り向くと体格がよく、人柄がよさそうなおじさんがいた。

 

 

「きみ、もしかしてポケモントレーナーかい?」

「そうだけど、おじさんは?」

「ああ。私はちょっとした化石マニアでね。このディグダの穴で採掘をしているんだが、生憎私はポケモンを持っていなくてね。できれば一緒に同行させてほしいんだ。もちろんお礼はするよ」

「マジっすか⁉ 任せてくださいよ、出口まで五体満足でお送りいたします!」

 

 

 お礼をすると言われて現金なレッドは即了承した。それに隠す気もなく目が「金 金」になっているぐらいだ。そんな彼を気にすることなく笑って流す化石マニアの男。

 

 

「ははは。頼もしいね」

「あ、俺の名前はレッドって言います。おじさんは?」

「これは失礼した。私は──サカキ。しがない化石マニアさ」

 

 

 なんとか平静を装いながら答える、それがレッドの限界だった。

 なにせ──

 

「──いい名前ですね!」

 

 

 ラスボスが向こうから会いに来たのだから。

 

 

 

 

 

 




バトルで勝っておこずかいを貰うなら、バイクを貰ってもいい。バトルとはそういうものだ(違う)

リーフはなんかcvがくぎゅうにするとピッタリとあう。そういう世代だからか。
あと、遊戯王は5dsが一番好き



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

洞窟にいねぇとか初見殺しはやめろや!

最近バーガーキングにハマってます


 

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓。

 薄暗いディグダの穴からリーフへ。

 先日は大変申し訳ございませんでした。当方といたしましても、あれ以上付きまとわれるとその時以上にあらぬ疑いをかけられ、根掘り葉掘り聞かれると思ったためお暇させていただきました。

 それと誤解がないように言っておきますが、エリカ嬢とは何もありません。色々あって彼女がお礼にと晩御飯をご馳走になったのです。大変美味しゅうございました。

 さらに加えると、彼女のお屋敷で寝泊まりしておりません。ベッドの上には少しほどおりましたが。いいにお──いえ、なんでもありません。

 なので再度申し上げますが、わたしとエリカ嬢とは何もありませんので悪しからず。

 あと、わたしから二点お知恵をお送りします。

 まず一つ。イーブイは大事に育ててあげてください。きっと将来リーフを助けてくれるポケモンになることでしょう。しかしあなた様のパーティーでいくと、でんきポケモンが足りておられないように見えますので、サンダースにするのも一考かと思われます。私情ではありますが、もう少し待った方が選択の幅が広がるのではないかと。

 そして最後ですが……。

 

 

 

 

 

 

 もし、ブルーの胸に嫉妬してるなら諦めろ。

 

 

 

 

 追伸。多分二度と会うことはないでしょう。だって、隣にロケット団のボスがいるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディグダの穴はクチバとニビを繋ぐ唯一のルートであるが、その距離は思った以上長い道のりである。ディグダが掘ったとされるこの穴は近年専門家の論文によると、まだ発見されていないだけでカントー中に繋がっているのではないか、という報告もあるぐらいだ。現に道中正規ルートではない道がいくつかあった。

 化石マニアに扮していることもあって、その道のりは容易ではない。ただ私の運がいいのか、それとも彼の運がいいのか、いくつか化石らしきものが見つかった。これには我ながら驚いた。

 彼──マサラタウンのレッドは、今私のために見張りをしている最中だ。時刻はすでに深夜。当然洞窟内で野宿ということになる。

 歩きながら私はレッドを常に観察している。彼の腰にあるボールは全部で7つ。内4は報告にあるスピアー、ピカチュウ、カメックス(おそらくゼニガメから進化しているだろう)、そして我々が捕獲する前にゲットされてしまったサンダー。残りの3つはまだ分からない。

 野宿する際、事前に持ち込んでいた枯木で焚き火をしているが、その火をおこすのも彼のほのおポケモンを拝めると思ったが残念。原始的な火打石で火を起こした。

 寝てる振りをする前は、二人して仲のいい友人のような会話を楽しんでいたものの、こうして寝てるであろう人間に対して視線を注いでいる。

 

 

(くくっ。見抜いているのか、それとも)

 

 

 まったく退屈しない男だと思った。私の正体──ロケット団のボスであるこのサカキだと知って警戒して、自分の手持ちポケモンを見せない素振りをしているのだろう。情報は力だ、彼のしている行動は全くもって合理的。敵に情報を与えまいとするその警戒心。本当に面白い。

 面白いと言えばこいつの手持ちの一匹であるスピアー。不思議と今の顔が緩んでしまう程笑いそうになる。どこかに自分と共通する所があると思うと余計に。

 結論から言えば、私達は夜が明けるまで互いに眠らない時間を過ごし、そのまま起きた振りをしながら出口へと向かうことに。

 

 

「うぉ、まぶし!」

「いやぁ、一日籠っていたから日の光がキツイなぁ」

「そっすね。そう言えば、化石はどのくらい見つかったんです?」

 

 

 問われるとポケットから化石と思われるものを手に取ってレッドに見せた。

 

 

「それなりに見つかったけど、必ずしも化石とは限らないからね。ま、あっても大方ポケモンの歯とかその類だろうな」

「ふーん。やっぱり化石っていうのはそう簡単に見つからないもんなのか」

「当たり前じゃないか」

 

 

 笑って答えるが、今のレッドの話し方には疑問を覚える。まるで、簡単に見つかるような言い草だ。問いただしたいと思っても、この状況では余計に今の関係をこじらせるだけか。

 サカキは演技を続けることを選び進路をニビシティにある博物館へと目指す。

 すると先を歩いていたレッドが足を止めて唸り始めた。

 

 

「んー?」

「どうしたんだ」

「いや、なんか暑くない?」

「言われてみれば……」

 

 

 たしかにここら一帯の熱気は異常だ。おそらく野生のポケモンの仕業だろう。ほのおポケモンとなると性格を考慮してブーバーの可能性が高い。あれは性格的にも大人しい部類ではないからだ。

 真相を確かめるためにレッドが走り出しそのあと追う。ニビシティに入ると、この原因がすぐにわかった。

 予想通りブーバーのかえんほうしゃによって博物館が燃えているのだ。

 

 

(さて。偶然とはいえ、これは見物だ)

 

 

 嘘と見抜かれているとしてもサカキにはポケモンを持っていないことになっている。どういう訳か、ニビシティの住民は何故か駆けつけてこない。そうなると、目の前の惨劇を解決できうるのはレッドしかいないことになる。

 どんなポケモンでもその実力とトレーナーとしての判断力を見極めることができ、この状況はサカキにとって最高の事故であった。

 

 

「で、どうするんだレッド……レッド?」

 

 

 こちらの問いかけに反応せず、黙々と歩いていく。少し歩いたところで足を止めると、転がっていた二匹のイシツブテを持って、鬱憤を晴らすがごとく目の前にいるブーバーへと投げた。

 

 

「ふざけんなごらぁ!」

 

 

 ──レッドのイシツブテ投げ。 ブーバーの頭に当たった! ブーバーは倒れた。

 想像していたのとは違う光景が起こり、サカキは演技を忘れて思わず笑ってしまった。

 

 

「ふふ、ハハハ!」

「どうしたん?」

「い、いや、何でもない。しかし凄いな。それにしても、何であんなに怒ってたんだ?」

「ただの私怨」

「そうか」

 

 

 結局ポケモンの情報は何も入らなかった。

 だが、それ以上に大きな成果も手に入った。それはレッド自身。彼の強さは並外れている。力だけではない。洞察力、観察力、判断力にも優れている。さらに姿を見せぬポケモンは我がロケット団幹部を撃退する程の力を備えている。

 そう。実に、我がロケット団にほしい人材。

 しかしそれは叶わないだろう。現にロケット団を潰して回っているし、本人はそれを望まない。

 

 

「博物館がこれでは、化石かどうかを調べることはできないな」

「そういうことになるね」

「レッド、これはお礼だ。受け取ってくれ」

 

 

 サカキは手に入れた化石の中で一番きれいなモノを選んで渡す。ただ受け取った本人は酷く動揺しているようだったが。

 

 

「え、え、ま、マジでいいの?」

「ああ。それにお礼をすると言ったろ」

「あ、うん。……金がよかった」

 

 

 聞こえないように小声で言ったんだろうがハッキリと聞こえている。どうやら意外と現金な奴のようだ。

 

 

「それじゃあ、俺行くよ」

 

 

 別れを告げて背中を見せる。

 さて、彼は優秀だ。だが同時に超が付くほどの危険人物。ならば、ここで始末するのがボスとしての仕事。

 

 

(一撃で仕留める)

 

 

 腰に隠していたボールに手を伸ばし投げようとしたその時、レッドは振り返り本当の素顔を見せて言った。

 

 

「また会おうぜ、サカキ(・・・)

 

 

 するとレッドの周りに砂埃が舞い姿を見失うその一瞬に何かが空へと飛んで行った。

 

 

「また会おう、か。いいだろう、レッド。その時が来るまで待とうじゃないか」

 

 

 サカキもまたニビシティを背にして歩き出す。

 胸のポケットにしまっていた組織の通信端末が鳴った。相手は幹部の一人。どうやら例の作戦に進展があったらしい。

 

 

「私だ」

『ボス報告します。フリーザーをふたごじまにて発見。これより捕獲作戦を開始します。それと別の部隊から裏切り者を発見したそうです』

 

 

 返事はせずそのまま端末を切って胸にしまう。再び歩きながらふたごじまがある方角へと目を向ける。奇しくもその方角はレッドが飛び去った方向と同じだった。

 

 

「さて。フリーザーが大変だぞ、レッド」

 

 

 他人事のように言うとサカキは高らかに笑いながらヤマブキシティへ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふたごじまから数キロ離れた上空に島を目指すレッドを乗せたリザードンが飛んでいる。リザードンの背中に座るレッドは、サカキからもらったきれいな化石を見ていた。

 

 

「やべぇよやべぇよ。調子に乗って最後、宣戦布告みたいなことしちまったぞ……」

 

 

 今になって自分の行動に後悔する。しかし一体だれが想像できる。まさかラスボスがいきなり現れて、一夜を共にさえ過ごしてしまった。どう見ても自分が目的であるのは明白で、その理由は依然不明。だから昨日から一睡もせず、隙を見せぬようずっと監視していた。

 まさかその過程で、博物館が燃えるとは思わなかったが。

 

 

「あとで回収しようと思ったひみつのこはく勿体ねぇー。しかしこの化石、どっかで見たことがあるんだよなぁ。なんだっけ?」

 

 

 レッドの持つそれこそがひみつのこはくなのだが、生憎最後に見たのがリメイク版発売当時、その写真を覚えているという方が珍しい。

 

 

「それにしても、ボス自ら会いにくるとか。もしかしてピカチュウバージョンじゃない?」

 

 

 今更になってこの世界の時間軸に疑問を抱いた。御三家のことでてっきりピカチュウバージョンだと思っていたが、その前にオツキミ山でコジロウとムサシが現れるイベントも、化石を手に入れるイベントもなかったことを思い出す。さらに付け足すならシオンタウンのガラガライベント、本来なら先に攻略するはずのタマムシのゲームセンター。

 この時点で自分が得ている情報にあまり意味がなくなってきている。

 

 

「この先の展開がまったく読めねぇ。ジムリーダーはロケット団にいるし、ボスは直接殺しに来る。けど、このあとは絶対シルフだろ……。うぇ、リーフとグリーンが片付けてくれねぇかなぁ……。無理だよなぁ。絶対に詰む」

 

 

 二人が弱い訳ではない。当然二人を信じていないわけではない。単純にロケット団という組織が大きいのだ。上から末端まで多くの団員がボスであるサカキに忠誠を誓っている。そこはサカキの指導者としてのカリスマなのであろうが、彼らはボスが不在であってもジョウトにて独自に活動を行うほどだ。憶測になるがポケモンを使っての裏稼業となると、カントーだけではなくジョウトや他の地方にも幅広く忍ばしている可能性もある。

 それにこちらではその戦力にジムリーダーが加わっている。戦いは数だよ兄貴、なんて言葉があるように数の多さはそのまま力になる。

 それにだ、ゲームのように体力が減ったからポケモンセンターで回復なんてことはできないだろう。

 

 

「となると戦力確保は優先ってことか。まあ、お前らだけでもいいんだけど」

「リザァ!」

 

 

 ぽんぽんとリザードンの背中を叩くと、任せろと言わんばかりに答える。

 

 

「フリーザーは目前、ファイヤーは……別にバレへんやろ。セキエイにいるのに気づかないんだから」

「リザー!」

「お、着いたか」

 

 

 遠くからではわからなかったが、どうやらふたごじまは予想以上に小さいらしい。それでもここにある洞窟にフリーザーがいるはず。

 リザードンが島の上空に入ると、地上へ降下する。しかしレッドは、地上から約15メートル程の高さでリザードンから飛び降りる。

 ──レッドのスーパーヒーロー着地! レッドの足に少しのダメージだ。

 

 

「……デップーの言う通りだ、すっげー足にくる」

 

 

 痛む足を撫でながら戻ってきたリザードンをボールに戻して島の洞窟の入り口を探す。おそらく盛り上がっている山のどこかに入り口があるはず。そこを目指すレッドは途中森の中で立ち止まった。

 どうやらこの島にいるのは自分だけではないようだ。

 音からしてここからそう遠くはない。地面を蹴って走り出して森を抜けると広いところに出る。そこにはロケット団いた。人数にして10名ぐらいだろうか。

 

 

「お前らここで何をやってる!」

「ん? 貴様はマサラタウンのレッドか。ハハハ、遅かったな!」

「一体何を──」

 

 

 リーダーらしき男がいうとボールを投げた。現れたのは目的であるフリーザーで、それを見たレッドは思わず叫んだ。

 

 

「はぁあああ⁉」

「どうだ悔しかろう! このフリーザーはすでにロケット団が頂いたのだ! こうして外にいる所を捕まえらえたのはまことに僥倖!」

 

 

 何ていう事だ。すでにフリーザーは捕まえられてしまっていた。そんなことが許されるのか? いや、許されるもなにもプレイヤーの目に前にいきなりライバルが現れて、いきなり強制バトル画面からのゲットみたいなことをされたら怒る。誰だって怒る。

 だがそれよりも、レッドに許せないことがあった。

 

 

「──洞窟にいねぇとか初見殺しはやめろや!」

 

 

 サンダーはちゃんと無人発電所の中にいたんだぞ、とレッド叫ぶ。そんな事は知ったことかと、ロケット団はフリーザーに続いて次々とポケモンを出してくる。

 こちらも応戦するためにボールに手をかけようとするが、リーダーの男が持つ端末に通信が入ったらしく、離れていても声が届いた。

 

 

「なに、裏切者のカツラに手こずっている⁉ いいだろう、こちらも合流する。残念だが貴様と遊んでやる時間はないようだ。やれフリーザー! ふぶき!」

「やべっ!」

 

 

 ──レッドのあなをほる。 レッドは地中へ潜った。

 そこら辺のポケモンとは比べ物にならないふぶきがレッドを、このふたごじまを襲う。その範囲、威力は流石伝説のポケモンと言ったところだろうか。

 辺り一面が氷漬けにされ、レッドの姿がないのを確認するとロケット団一同はふたごじまを離れてグレン島に向かう。

 ロケット団が去って数分後。地上から這い出るレッド。

 

 

「マップ兵器とかクソだな。まあ初代じゃぶっ壊れ技だし、当然か。それにしてにも、カツラって言ってたな」

 

 

 先程の通話のやり取りを思い出す。それに裏切り者とも。助けるべきか否か、答えはもちろん前者であった。カツラのしてきた行いは許されるはずはないが、問題は彼が死んではいけないということだ。

 ならば急がなければ。

 レッドはリザードンを出してグレン島へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 




一応報告
書き溜めが現在第一章の最後に取り掛かりました。
なので問題なく第一章は完結できると思います。
あと何話なのかはあえて秘密にしておきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

やべ。ファン〇ンガッツがあったからつい熱くなってしまった

速報
第一章分の書き溜め完了


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたぞ、追え!」

「B班は何をしている、周りこめ!」

 

 

 グレン島、そのま火山の麓にある森の中を一匹のギャロップが駆け抜ける。それを追いかけるのはロケット団。ギャロップは時速240キロ。森の中とは言え、そう簡単には追いつけない。

 グレン島は私の故郷。つまりはホームグランド、目を瞑ってもこのギャロップなら走れる。

 しかしそれも時間の問題だろうと、カツラは諦めかけていた。カントー本土ならともかく、ここはグレン島。それほど大きい島でないし、いずれは包囲網を敷かれてしまうだろう。

 

 

(私にはまだやらねばならないことがある!)

 

 

 元ロケット団で数多くの実験を繰り返してきた。それを悪だというのはわかる。それでも、科学者として生み出してしまった責任をまだ果たせてはいない。

 だからここで捕まえるわけにはいかないのだ。

 

 

「──! よけろ、ギャロップ!」

 

 

 カツラの指示でよけるギャロップの横を謎の火の物体が通り過ぎた。だがそれはすぐに向きを変え再び迫る。本来向かうはずだったルートから反れてしまい、まるで誘導されているかのようだった。

 なんとか元のルートに戻りたくても、火の塊がそれを邪魔する。やがて、森を抜けて島の端に誘導されてしまう。

 そこにはすでに先回りしていたロケット団がおり、先程まで追い回されていた火の塊──伝説のポケモンファイヤーが姿を現した。

 

 

「な、ファイヤーだと⁉」

「ふふっ。組織を抜けたお前は知らなかったようだが、こいつはセキエイ高原で捕まえたのよ。ほのお使いのお前なら、こいつに殺されるなら本望だろうぜ」

「くっ。だが、ここで負けるわけには」

 

 

 伝説のポケモンファイヤーに対して抵抗するカツラ。研究者とはいえジムリーダーであるカツラは、同じほのおポケモン相手にうまく立ち回る。それでもファイヤーの圧倒的な力に抑えられ始める。

 

 

「ふふっ。さすがジムリーダー伊達じゃないな。だが……おい」

「ああ。いけ、フリーザー!」

「な、フリーザーまで⁉」

 

 

 ふたごじまから合流した別のリーダーがフリーザーを繰り出す。相性では不利といえど、その力はそんなことなど関係ないのか言わんばかりに猛威を振るう。

 二匹の伝説ポケモンに気づくカツラ。本人だけではなくギャロップ、ウィンディと彼のポケモンたちもかなりのダメージを負い始めた。

 しかし突然攻撃を止めてファイヤーとフリーザーを下がらせるロケット団のリーダーは、最後の情けをかけてきた。

 

 

「カツラよ。いまこの場で再びロケット団への忠誠を誓えば助けてやってもいいぞ」

「断る! 私は……私はもう二度と悪魔の手先にはならない! それに死にたくても死に切れん。あいつを……私が生み出したミュウツーを捕らえるまでは!」

「それについては安心するがいい。ミュウツーも我々が捕獲し、サカキ様の道具として利用してやるさ!」

「そうはさせん!」

「ならば、ここで焼かれて死ね!」

 

 

 ファイヤーが攻撃の体制に入ると、カツラのポケモンたちが主人を守るようために壁になるが、フリーザーがそれを邪魔をし、その瞬間最大級のかえんほうしゃが放たれる。

 

 

「ここまで──⁉」

 

 

 その時だ。突如空か飛来した謎のポケモンがファイヤーのかえんほうしゃを封殺し、爆発。辺りが煙で覆われると、今度は突風が巻き起こり煙を払う。

 カツラはゆっくりと目を開け、目の前にいるポケモンを見た。

 

 

「あれは……カメックス、フシギバナ、それにリザードン! それも色違いに加え所々形状が違う。まさか、生きている内にこれほど特異な個体に出会えるとは」

 

 

 自分が置かれている状況を忘れ、つい科学者としての血が騒いでしまう。さらに謎のポケモンの鳴き声が響き渡り上を向く。それはサンダー、カントーの三鳥と呼ばれる伝説のポケモンがこのグレン島に揃った。

 サンダーはゆっくりと地上に降りると、背中に乗せていた主を下した。

 その少年にカツラは見覚えがあった。裏切る前に何度も会議で話題になっていた少年。

 名を──

 

 

「マサラタウンのレッド」

 

 

 自分が裏切るきっかけとなった少年が目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブチ、ブチっと血管が切れるような音がするのがよくわかる。これ程ムカついたのは久しぶりだと実感できるし、逆に言えばまさか自分ですらこうなると思っていなかったとレッドは目の前を状況を見て思う。

 思わず足元に転がっていたイシツブテを蹴り飛ばしてしまう。

 目の前には先程逃げられたフリーザー。その隣にはセキエイ高原の洞窟にいるはずのファイヤー。これは、よくない。とてもよくない。本当によくないことだと思う。

 いや、その考えは自己中心的なのはわかる。でも、それでもと言いたい。カントーはやはり思い入れのある地方。その伝説のポケモンを捕まえたいというこの欲求、どうかわかってほしい。

 

 

「ギャーオ」とサンダーがお前らバカじゃね、と煽っている。

「ギャーオ」とフリーザーがうるせぇ、こちとら外に出たら捕まったんだいと言う。

「ギャーオ」とファイヤーが寝てたら捕まっちゃった、てへぺろとしている。

 

 

 人が怒りの矛先をどこに向けるか悩んでいる際に、この鳥どもは会話している。

 そんな中ロケット団のリーダーがレッドのことなど気にもせずに言った。

 

 

「お前もしつこいな。ならば、そのサンダーも頂く!」

「──お前はちょっと黙れ」

 

 

 ──レッドのにらみつける。 リーダー2は気絶した。

 いきなりあわを吹きながら気絶したリーダー2を見て慌てふためくロケット団。

 

 

「いいぜ、こいよ。こっちもマジで出し惜しみはしねぇぞ……リザードン、フシギバナ、カメックス。アレを使うぞ」

「リザァ!」

「バナァ!」

「ガメェ!」

 

 

 レッドの合図と共にその場に力強く踏ん張る三匹。まるで特大な何かを撃とうとしている体制のように見える。

 

 

「三位一体──」

「くそっ! リーダー2がやられた! 撤収だ撤収! 覚えてろ、マサラタウンのレッド! これで終わったと思うなよ!」

「……」

 

 

 お決まりの逃げ口上を吐きながらロケット団はフリーザー、ファイヤーをボールに戻し、彼らはグレン島を去っていく。

 発射体制に入っていたリザードン達ですらポカーンとした顔になり、ただ立ち尽くす。

 

 

「解せぬ」

 

 

 レッドの何とも言えぬ声ですら、吹いた風によってかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わりグレン島にあるカツラの秘密研究所にレッドは案内されていた。カツラは先程の戦いで負傷していたので、レッドが担いで近くにあった椅子に下すと礼を言ってきた。

 

 

「ありがとう、助かった」

「偶然だから気にすんなよ」

「そうか」

 

 

 なんとも言えない空気が二人の周りに漂っていた。レッドはそんな事ないのだが、とりあずカツラが何か喋るのを待っていて。そのカツラはどうしたらいいのかと変に悩ませていた。

 結局それが5分ほど続き、口を開いたのはカツラであった。

 

 

「何も聞かないのか?」

「聞くって、元ロケット団でミュウツーを作ったことか?」

「知っているのか。いや、当然と言えば当然か。君はあのタマムシの研究所にいたしな」

「なんだ、知ってたのか。別に俺はアンタを責めるとかそういう事はしないぜ? 俺は教育に厳しいって噂(ポケモンによる)だからな。簡単に許しはしないさ」

「ははは、そうか。たしかに、君の言う通りかもな」

「それにフジ博士からはだいたい聞いてるしね」

「博士に会ったのか!? 彼はいまどこに⁉」

「それは言えないよ。ただ、元気にしてるだろうとだけは言っておく」

「そうか……そうだな」

 

 

 様子からしてかなりの落ち込みようだった。二人は友人いや、親友なのだろう。だからこそ会いたい、けれど今更どんな面をして会えばいいんだと悩んでいるのだろうか。

 

 

「彼の残した資料を基にミュウツーを完成させ、そして覚醒したミュウツーは逃げた。私は、人が犯してはならない領域に踏み込んだ」

「まあ、そうだね」

 

 

 カツラの言葉に適当に相槌を打つ。

 そうなってしまうのも、レッドとカツラではこの世界での価値観が違い過ぎるからである。最初からミュウツーが作られて生まれたポケモンだと知っているからだ。だからこそ、いずれは自分がミュウツーを救う予定なのである。あるいは、当事者と部外者との相違になるのだろうか。

 カツラは一言一言に後悔の想いを込めながら、右手の白衣の袖をめくって見せた。それは耐性がない者がみたら距離を置きたくなるものだ、皮膚が一つの生命のようにうねうねと何かに反応している。

 レッドは動じず、冷静にたずねた。

 

 

「それは?」

「これは、ミュウツーの細胞だ」

「細胞?」

「ああ」

 

 

 袖を元に戻しながらうなづくカツラ。

 

 

「私はね、レッド。ミュウツーを完成さるための10%に人間の細胞、つまり私の細胞を移植したんだ。その際に紛れこんだミュウツー細胞が私の腕にこうして取りついているんだ」

「……つまり?」

「察したと思うが、これがミュウツーを見つける唯一の手がかり。やつの近くになればなるほど、こいつが共鳴するんだ」

「……」

「自分勝手な話だった。すまない」

 

 

 謝るカツラにレッドは何も言えなかった。

 むしろ伝えるかどうか悩んでいる。ミュウツーはハナダの洞窟にいると。

 最初は教える気など毛頭なかったが、こうしてカツラの話を聞き、責任を果たそうとしている姿をみて考えが変わり始めている。

 とりあえずそれは一旦置いて、レッドはあたりの設備を見渡した。どれも専門的なものばかりで理解できそうにない。

 そしてグレン島にはある施設があることを思い出す。そう、化石ポケモンを復元してくれる施設。もしかたらここにそれがあるかもしれない、レッドはカツラに聞いた。

 

 

「ああ、あるよ。珍しいな、化石を持っているなんて」

「これなんだけどさ」

 

 

 レッドはサカキから貰った化石を渡す。するとカツラは目を丸くいや、サングラスで分からないが驚いていた。

 

 

「これはひみつのこはく! レッド、どこでこれを?」

「え、それひみつのこはくだったん!?」

「なんだ。知っていて持っていたのではないのかね」

「いや、実物がどんなものか知らなかったから……」

「言われてみればそうかもしれないな。では、早速復元しよう」

 

 

 カツラはひみつのこはくを復元装置にセットして電源を入れた。時間がかかると言うので少し待つことに。ふと、レッドは実験台になったイーブイのことを思い出し尋ねた。

 

 

「イーブイ? ああ、君があの子を救ったのか。言う権利はないが、ありがとう。それと、そのイーブイで思い出したよ」

「イーブイにまだ何かあるのか」

「いや、直接イーブイにあるというわけではない。正確にはイーブイはある計画のための実験で、イーブイの自由進化は副産物に過ぎないんだ」

「副産物?」

 

 

 カツラは頷いて続けた。

 

 

「ロケット団が望んだのはブースター、サンダース、シャワーズ三体の同時発現……三タイプを含んだ新しいイーブイなのだ。しかしそれは叶わず、代わりに自由に進化できるという能力を手に入れた。ただし無理な実験だっために体への負担が大きかった」

「じゃあイーブイのデータで一体何をしようとしているんだ?」

「そこまでは聞かされていなかった。知っているのは、あるモノを使ってあるポケモンに使用することだと。そのポケモンとは」

「カントーの三鳥」

「恐らくな。だからフリーザーとファイヤーの捕獲に力を入れているわけだ」

「……」

 

 

 カツラの話でだんだんとロケット団の目的が見えてきた。しかしこれは大きな分岐点になる。ゲームではただシルフカンパニーを占拠し、そこからカントーを制圧するのが目的だったはず。となると、この先で待ち構えているのは未知の存在だ。

 

 

(こりゃあいよいよ決戦が近いな)

 

 

 かつてないほど危険な戦いが待ち受けていることを想像すると思ず口が緩んでしまう。戦い、闘争を心のどこかで望んでいる自分がいる。

 それにナツメのこともあるか──

 ヤマブキシティのジムリーダーでロケット団の幹部であるナツメ。そんな彼女に惚れている自分がいる。なら、やることは簡単だ。

 勝ち取ればいい。自分の手で。

 生前だってそうだ。欲しいものは働いて、給料を貰って買っていた。

 ここではポケモンバトルで勝てばいい。実にシンプルでスマートな答えだ。

 

 

「どうやら復元が終わったようだ」

 

 

 復元装置が止まり、カツラの声で我に返った。

 

 

 

「すごいプテラか。また珍しいポケモンを手に入れたな、レッド」

「プテラか、そらをとべるしリーフに丁度いいか」

「リーフ? ああ、そういえば彼女もロケット団相手に戦っていた女の子だったな」

「ええ。しかしこれからシルフで決戦ってなるとレベルが少し足りないな……」

 

 

 見た感じレベル5ではなさそうだが、それでは少し心もとない。レッドはカツラに開けている土地はないか聞いた。

 

 

「あるにはあるが、どうするんだ」

「まあ見てなって」

 

 

 ──レッドのブートキャンプ。 プテラは頑張っている! 頑張っている……がんばって……。

 一時間後。

 ──おめでとう! プテラはレベル43になった! 

 言葉で説明するならなんだろうかとカツラは考える。いや、簡単だ。ただ、レッドがプテラと戦っているだけであると。

 

 

「やべ。ファン〇ンガッツがあったからつい熱くなってしまった。まぁ……フシギバナならこんぐらいになってるか」

「レッド、きみは一体……」

「ポケモントレーナーに決まってるじゃん」

「……いや、普通のトレーナーというのは、いやよそう。私の推測で世界を混乱させたくない」

「?」

 

 

 レッドはプテラをボールに戻し、代わりに愛車のFR号を出して跨りエンジンをかける。目指すはとりあえずマサラタウンだ。

 カツラに別れを告げる前にレッドは伝えるべきか迷ったミュウツーのことを話した。

 

 

「ミュウツーを探すならカントー北部を探すといい」

「どうしてわかるんだい」

「トレーナーの勘さ」

「……わかった。それとこれを持っていけ」

 

 

 渡してきたのはクリムゾンバッジだった。レッドは礼を言いながら受け取った。

 

 

「レッド気を付けろ。ロケット団は手ごわいぞ」

「身をもって知ってるよ。それじゃあ、またどこで会おうぜ」

 

 

 FR号は駆ける。マサラを目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレン島を出て一時間もかからぬ内にマサラタウン南部へと入ったレッドは、まず実家へと向かうことにした。予想ではあるがナナミが掃除をしてくれていると思うので、そんなに汚くはなっていないはずだ。

 しかし実際に目にしたのは、まるで空き巣に出も入られた状態になった我が家であった。

 

 

「おいおい。穏やかじゃねえぞ」

 

 

 慌ててFR号に乗り込みマサラタウンの中心へと向かう。しかしどういう訳か、人ひとりいない。まだ明るい時間だというのに子供すら出歩いていない。

 そしてたどり着いたのは無残にも破壊されているオーキド研究所だった。

 

 

「お前も来たか、レッド」

「その声はグリーン!」

 

 

 空かリザードンに乗ったグリーンが下りてやってきた。

 

 

「久しぶりだな」

「ああ。本当は描写されてないだけで、各地で会っていたけどな」

「ふっ。メタいこと言うもんじゃないぜ、レッド」

『『……』』

「で、どうしてここに」

「ヤマブキがきな臭くてな。入ろうと思っても、街全体がバリアで入れないんだ。それでおじいちゃんに知恵を貸してもらおうと思ったらこの有様だ」

「そうか」

 

 

 グリーンが崩壊した研究所を歩きまわるとあるものを見つけてレッドを指名した。それはオーキドのパソコンで、どういう訳かこれだけは無事で電源も生きている。

 

 

「どうやら、こいつが原因らしいな」

「イーブイ!」

 

 

 預けているはずのイーブイがボックスにいない。先程のグレン島でのカツラとの会話を思い出す。まさか、イーブイを連れ戻すためにこれだけのことを? 研究所を襲撃し、住民まで連れ去って。

 

 

「お前やリーフが正義の味方を演じた結果がこれだ」

「グリーン、お前……怒ってるのか?」

「怒ってるってレベルじゃあない。いいか、レッド。マサラとは白。つまりマサラタウンは世界で一番きれいな場所なんだ。それがこの有様になれば、オレだって冷静じゃいられない……」

「グリーン」

「オレは取り戻す。おじいちゃんに姉さん、それに町のみんなを。お前はどうするレッド」

 

 

 そう言い残し、グリーンは再びリザードンに乗ってヤマブキシティへと飛ぶ。残されたレッドは空にいるグリーンに向けて答える。

 

 

「そんなの決まってるぜ、グリーン。今日がロケット団の最後の日になるんだからな」

「ほう。威勢がいいな、相変わらず」

「──!」

 

 

 背後から声が聞こえ咄嗟に振り返しスピアーを出す。

 

 

「ナツメ……!」

「ふふっ。久しぶりだな、レッド。返してもらった後で悪いが、イーブイは頂いたよ。ここの住民もな」

「の、ようだな」

「安心しろ。危害は加えていないさ。なにせ、お前を釣る餌だからな」

「そんなことをしなくてもこっちから出向いてやるのに、盛大な歓迎に涙が出るよ」

「その眼……まったく動じていないな。まあいいさ」

「ナツメ、一つ聞かせろ」

「なんだ」

「どうしてお前はロケット団に入った」

「……」

 

 

 レッドは出会った時から聞きたかったことをたずねた。マチスは元軍人であの性格、よくジムリーダーに収まっているほどだ。キョウは忍びであり、善か悪と問われれば悪だろう。それにカツラは科学者で、目的のためなら手段を問わないからだ。

 だが、ナツメはわからない。きっかけとなる要因がレッドには思い当たらなかった。

 レッドの問いに、ナツメは目を閉じて静かに答えた。

 

 

「私には力があった。そして周りは恐れた、親でさえ。あとは分かるだろう、レッド。私はな、入らざるを得なかった人間なんだよ。お前だって理解しているはずだ。お前のその力は人々にとっては異端すぎるんだよ」

「異端、ね。俺もよくいじめられたよ。それでも、そうはならなかった」

「なぜ、と聞いても?」

「いつも待ち望んでいたんだ、この世界を旅したいって。だからそのために毎日鍛錬を積んでいた。まーなんていうか、ようはこの世界が好きなんだよ」

「私は……嫌いだよ。こんな力を持って生まれた世界なんて」

「そうかい? 俺は好きだぜ」

 

 

 笑顔で心からの本心を伝える。ナツメは目を大きく開き、すぐ閉じるとクスリと笑いこちらに歩いていや、浮きながら近づいてくる。

 

 

「レッド。お前はまだ、私のことが好きか?」

「もちろん大好きだ」

「なら、私を倒しにこい。待ってるぞ──」

「ナツメ!」

 

 

 思わず彼女に手を伸ばすがすり抜けてしまう。

 ──フフフ。さいみんじゅつとサイコキネシスの組み合わせだ。楽しんでもらえたかな? 

 最後に頭の中で声が届く。

 ぎゅっと拳を握り締め、レッドは苦笑した。

 

 

「いいぜ、待ってろよナツメ!」

 

 

 ──そして舞台は決戦の地ヤマブキシティへと移る

 

 

 

 

 

 

 

 

「もちろん大好きだぜ、か。フフフ、何故なんだろうなレッド。お前とはたった数回の出会いと短い会話だけだと言うのに、こうも心を狂わせるのは」

 

 

 シルフカンパニーのある一室にてナツメは一人でレッドとの会話を思い出す。

 彼は自分が好きだと言う。

 何故なんだろうと考えた。初めて会ったあのタマムシの夜以前に会ったことはない。なのにあいつは私を知っている。表向きはジムリーダーであるのでありえない話ではない。

 しかしどこか腑に落ちない。

 

 

「あるいは忘却に消えた予知夢の中で、すでに会っていたのかもな」

 

 

 だが、まあいい。

 未来は視た。ロケット団の制服ではなく、きれいな服を着て、笑いながら誰かと一緒にいる自分。

 それをお前が叶えるというのかレッド。

 ならば私はさしずめ、囚われのヒロインというところか。まあ、そんな柄ではないが。

 ふと目の前にある台においてある装置を見た。丸い形をし、時計の数字のようにある形で堀ったくぼみがある。

 これが今回の要。私がレッドと戦うための舞台装置。

 

 

「さぁ早く来いレッド。私はここにいるぞ」

 

 

 両手を広げるナツメ。それはまるで、私を抱きしめてみろ──そう言っているようだと、隣で控えていたユンゲラーは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








原作を知ってる方は問題ないと思いますが三幹部戦は結構省略します。
さすがにレッドだけで限界です……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヤマブキなんてミックスオレ渡せば入れるだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキシティ上空でプリンに捕まって浮いているブルーと、リザードンに乗ってなんとかバリアを突破しようとしているグリーンがいる。状況は一向に変化がなく、未だにヤマブキシティを囲む壁の外で足止めを食らっていた。

 その間リーフはただ一人何もできずに立ち尽くし、二人を見上げるだけだった。そんな彼女を励ますかのように、足元にいたイーブイが鳴いた。

 

 

「大丈夫だよ、ブイブイ。大丈夫、私は平気」

 

 

 いや、心はかなりボロボロだ。自分だけ何も役に立っていないのがとても腹立たしい。それもおじいちゃんにお姉ちゃん、町のみんなが攫われたと知れば余計に歯がゆい気持ちになる。

 こんな時、あいつならどうするんだろうか。

 

 

「ほんと、どこにいるのよ。バカレッド」

「呼んだか?」

「ひゃう⁉ れ、レッド⁉ いつの間にいるのよ、ていうかそれなに⁉」

「何って、バイク」

 

 

 バイクの割には変な形をしているなと思った。しかも色も赤いし、すごく目立っている。するとレッドは腰からボールを一個取るとこちらに投げてきた。

 

 

「わっと。なに、これ」

「プレゼントだよ。約束したろ?」

「え、うそ。本当に⁉」

 

 

 プレゼントを貰えたことがとてもうれしくて、ついレッドに抱き着く。ぽんぽんと背中を叩き、いいから出してやれと言う。

 開閉スイッチを押して投げる。現れたのは、かっこいいドラゴンだった。

 

 

「え、ドラゴン⁉ 本当に貰っていいの⁉」

「ああ。ちなみにドラゴンじゃなくて、いわ・ひこうな」

「うそだぁ。どうみてもドラゴン・ひこうじゃないの?」

「すみません、それやるとこおりで死ぬからやめてください」

「え、うん」

「あらーレッド。おひさー、元気してた?」

 

 

 空にいたブルーがいつの間にか傍にまで降りてきていた。その角度ではパンツが見えるというのにそんなの気にしている素振りがない。

 なんとなくレッドを見た。もちろん見てた。ばか。ブルーもブルーだ。レッドの視線に気づいている割にはなにもしない。

 

 

「むっ。なんでこっちに来るのよ、ブルー!」

「別に、深い意味なんてないわ」

「ブルー。お前、なに企んでるんだ?」

「おほほ。人聞きの悪いこと言わないでくれる? あたしだってヤマブキに入れなくて困ってるのよ」

「ふーん。ま、どうでもいいが」

「あら酷い。もっと構ってくれもいいじゃない」

「ねぇ。二人とも、本当は仲いいでしょ」

 

 

 二人の会話にイライラしながらリーフは言った。

 

 

「ないない。なあ?」

「ええそうよ」

「納得できない……」

「ところで、お前らこんな所で何やってんだよ。ヤマブキなんてミックスオレ渡せば入れるだろ?」

「そんな訳ないじゃん」

「あたしの体で誘惑してもダメだったわよ」

「はぁあああ。で、グリーンはひたすらバリアを破ろうとしてるわけか」

 

 

 クソデカいため息をつく。仕方がないと言うとボールからカビゴンを出した。どうみてもその表情は、本当はポケモンを出したくないという顔だった。何故なのかは分からないが。

 

 

「カビゴン、ギガインパクト」

「うっす。先鋒カビゴン、いきます!」

 

 

 あの巨体が走る姿は圧巻であるが、どう見ても走っている方向はヤマブキシティを囲む壁に向かっている。

 ──カビゴンのギガインパクト! 壁は壊れた! 

 ばらばらとコンクリートの破片が落ちていく。思わずブルーと目が合ってしまう。考えていることはどうやら一緒のようだ。

 そのカビゴンは壁を破って倒れた体を起こし、体に付いた埃を落としてのそのそとレッドの下へ帰ってくる。あの子は綺麗好きらしい。

 

 

「街にいるロケット団は俺が引き付ける。その間にシルフカンパニーへ行け。じゃ、またな!」

 

 

 それだけ言い残しレッドを乗せたバイクが駆ける。自転車とは比べ物にならない速さで走っていき、ちょうど壁を抜ける辺りで、

 

 

『ライディングバトル・アクセラレーション!』

 

 

 なんて声が薄っすらと耳に入った。

 下の騒ぎに気づいたのかグリーンが降りてきて言った。

 

 

「あいつはもしかしてバカなのか」

「バカでしょ」

「バカだよ」

 

 

 

 恐らく初めて三人の意見が一致した瞬間であった。

 こうして私達はシルフカンパニーへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキシティへ中心部にある市街地の道を駆け抜ける一台のバイクと、それを陸と空から追撃するロケット団とのバトルは、少なからず街に被害を及ぼしていた。

 

 

「ヤツをバトルで拘束せよ!」

「ゴルバット、エアカッター!」

「ピジョット、かぜおこし!」

「オニドリル、ドリルくちばし!」

「迎え撃てスピアー!」

「──!」

 

 

 無数のひこうポケモンたちによる空からの猛攻撃。体を傾けてバイクを操作し、相手の攻撃をかわし続ける。エアカッターは電柱やコンクリートを斬り裂き、かぜおこしは街にある花壇や看板、ビルのガラスを割り多くの物を巻き上げる。直接バイクを壊そうとオニドリルが迫るが、真っ向から立ち向かうスピアーのダブルニードルによって撃沈。

 街全体がバトルフィールドと化したヤマブキシティで繰り広げられているこのハイスピードポケモンバトルは、すでに30分以上は経過していた。

 レッドが出しているポケモンは最初に仲間になったスピアーのみ。主を護る騎士のごとく、その両腕の槍で相手を葬っていた。

 しかし数だけは多いロケット団。倒しても倒してもキリがない。レッドを止めるためにあらゆる手段、ポケモンを使ってくる。いとをはくですら、バイクを止めるには十分すぎる技になっていた。

 

 

「いい加減しつこい! どくびしだ!」

 

 

 スピアーが地上に撒いたどくびしによってロケット団地上班の足がとまる。

 

 

「ミサイルばり!」

 

 

 本来のミサイルばりは上限が5回であるが、レッドのスピアーに上限などは存在しない。機関銃のように降り注ぐミサイルばりが降り注ぐ。そして、スピアーの特殊能力は『必ず急所に当たる』こと。威力も弱く、タイプ相性が悪かろうが相手は倒れる。

 

 

「仕方がない! おい、あれを使え!」

 

 

 リーダー格の団員が何かの指示を飛ばした。すると空から無数の鳥ポケモンに乗った団員が次々と現れ、何かを投下した。目を細めてそれを見る、丸い形をした何かが落ちてくる。

 丸いポケモン……ビリリダマ、マルマインそれにイシツブテ、ゴローン、ゴローニャ。

 

 

 

「まずい!」

 

 

 アクセルを限界まで振り絞り加速する。それに続くようにスピアーもこうそくいどうで加速をはじめる。

 

 

「じばく!」

「だいばくはつ!」

 

 

 さながらポケモン爆撃と言ったところだろうか。次々と責める巨大な爆発が街すら飲み込む。

 

 

「ぐぅっ……!」

 

 

 振動で車体が揺れ、体全体に振動が伝わってくる。ちゃんと走っているのが不思議なくらいだった。それでもアクセルを緩めない。そうしている限り、こいつはずっと走り続ける。

 爆発と言う名の合唱が鳴り始めてどれくらい経っただろうか。まだ耳がおかしくて、しっかりと周囲の音を聞き取れない。

 

 

「……ここまでやるのか」

 

 

 バイクを停めて振り返れば、そこにあるのは破壊の爪痕だけだった。爆発で抉れたコンクリートに所々半壊している建物。

 レッドはピカチュウとサンダーを出して命じた。

 

 

「かみなり!」

「ギャーオ!」

「ピーカーチュゥ!!」

 

 

 二匹のかみなりによって空を飛んでいた鳥ポケモンと、その背に乗っていた団員達は地上へと落下。さらにサンダーがその大きな翼で羽ばたかせて生まれたかみなりを纏ったたつまきが地上にいるロケット団を空彼方へと吹き飛ばす。

 これで全部のはずだ。

 レッドは再び街の惨状を目に焼き付け、改めてロケット団の恐ろしさを胸に刻み、先行しているグリーン達と合流するためにシルフカンパニーへと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドがヤマブキシティ市街地でバトルを繰り広げている頃、シルフカンパニーに先行したグリーン、リーフ、ブルーはそれぞれの敵とのバトルを開始していた。グリーンはキョウ、リーフはマチス、ブルーはナツメ。

 ロケット団三幹部は、容赦なく命をかけたポケモンバトルをしかけてきた。本来であればサンダーを有していたマチスであるが、レッドに捕られてしまいその代わりとして巨大な電力マシーンにより作り出してたリング、電流デスマッチでリーフに戦いを挑む。最初は苦戦していたリーフであるが、相棒であるフシギバナとパーティーの守り役である悪魔──ラッキー、そしてレッドがうっかり育て過ぎてしまったプテラを駆使してマチスを撃破する。

 そのままグリーンと合流してキョウと戦うリーフの二人であるが、バッジの力で増幅されたフリーザーに苦戦を強いられ、最後には氷漬けになってしまう。しかしグリーンのリザードンが外からかえんほうしゃで氷を溶かし、その隙をついて二人はキョウを撃破。

 キョウのゴルバットを頼りに捕らわれている町の住民を助けるために向かうグリーンと、さらに上を目指すリーフはそれぞれ別行動をとる。

 ブルーが入った部屋は、ナツメとそのポケモン達の念が作り出した彼女の苦い記憶を掘り起こす。それでも持ち前のずる賢さでなんとか危機を脱するブルー。彼女は本来の目的のものがある場所を探しに動く。

 そしてレッドは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シルフカンパニー1階にある部屋。裏口から侵入したレッドは、鍵のかかった部屋に隠れていたシルフカンパニーの社員からモンスターボールを受け取った。

 

 

「あったよ、ラプラスが!」

「よし、でかした!」

「誰だアンタ⁉」

「私はここの社員のミヤモト。彼女と一緒に隠れたはいいが、外に出るチャンスを失ってしまったんだ」

「そ、そうですか。いまなら外に出られます、急いで」

「ありがとうございます!」

「助かる!」

 

 

 礼を言って二人はレッドが来た道をたどり外へ向かう。

 社内にいるのはおそらくロケット団幹部と他数名のみ。切羽詰まる中、三人には申し訳がないとは思うがラプラス回収はしておきたかった。

 出遅れた分レッドは急いで非常階段を使って上を目指す。しかしロケット団を潰すのとは別に目的があった。カツラが話していた三鳥を使ってしようとしている計画の阻止、攫われたイーブイの奪還である。そのために、そのあるモノを探していた。

 そして6階ほどあがったころ、入り口の前で警護している団員がいた。何かあると思いレッドは走り力を入れる。

 ──レッドのかみなりパンチ! 下っ端×2は気絶した。

 倒れる下っ端を放置して中に入る。そこには台があって、その上に丸い円盤みたいなものがあった。

 

 

「なんだこれ」

 

 

 まるで大きい丸型の時計で、周りには何かを形をしたくぼみがある。

 

 

「これって、ジムバッジか?」

 

 

 持っているバッジと見比べるとたしかに合う。しかしこんなアイテムは知らないし、聞いたこともない。となると、これがカツラの言っていたあるモノなのだろうか。

 その疑問を解消するかのように、背後からメタモンを使ってロケット団に成りすましたブルーがやってきた。

 

 

「はぁいレッド。あなたも無事入れたみたいね。ところでそれ、あたしにちょーだい」

「……お前、これが何か知ってるのか?」

「知ってるわよ? それはトレーナーバッジエネルギー増幅器。奴らの切り札だもの」

 

 

 それを聞いてレッドは確信する。ならばこれを渡すわけにはいかないと。

 

 

「なら、お前にも渡すわけにはいかないな。ブルー、俺はお前のことは嫌いじゃないが、ことこういう状況に関しては信用できない。どうせお前もこれが目的なんだろ?」

「ま、隠す必要がないから答えるけど、そうよ。で、どうしたら渡してくれるかしら?」

「どうもしないよ」

「そう、なら……」

 

 

 ブルーはボールを構えた。どうやら力ずくでも奪い捕るらしい。レッドも腰にあるボールに手を延ばそうとした。

 

 

 ──いけないなぁ、レッド。女の頼みを断るなんて

 

 

 声が聞こえた。それも直接頭の中に。それができるのは一人しかいない。

 

 

「ナツメか!」

「ちょ、ちょっと、なんかすごい揺れてるわよ!」

 

 

 立っているのがやっとの程の揺れがこのシルフカンパニーを襲っている。同時に真下から巨大な力を感じ、レッドはブルーを脇に抱きかかええて部屋の外へ出たと同時に、先程までいた床が下から盛り上がりはじけ飛んだ。

 

 

「それでは簡単に愛想をつかれてしまうぞ?」

「ちょっとレッド。あいつと知り合いなわけ?」

 

 

 脇に抱えたままブルーが指でナツメをさしながら言った。

 

 

「まあ、なんていうか。片思いの……相手」

「酷いな。私もお前のことをこんなにも想っているのに。しかし、そういう割にはお前の傍には毎回違う女がいるが」

「レッド。悪いことは言わないわ。あの女よりぜっったいに、あたしのがマシよ。きっと毎日頭の中覗かれて生きた心地がしないわよ? それに、あたしより胸が小さい」

「お前、胸の話を絶対にリーフの前ではするなよ」

「さっきもそうだが、お前は本当に癇に障るな。ところでレッド、一つ良いことを教えてやろう」

「なんだ。スリーサイズか?」

「お前の胸にあるバッジ。盗られたぞ、くくくっ」

「な⁉」

 

 

 思わずブルーを見た。ニヤリと笑みを浮かべながら強引に腕を払い、もう片方の手で持っていた増幅器を奪われてしまう。

 

 

「おほほ。ごめんなさい、レッド。この二つはいただいたわ!」

 

 

 その手にあるのはレインボーバッジとクリムゾンバッジ。なんでグレーバッジとブルーバッジを盗らなかったのかと思うと、髪をかき上げて耳を見せた。そこには以前取り戻したはずの二つのバッジがあった。

 もしや──

 

 

「あぁああ! お前やりやがったな!?」

「ふふふ。ブルーちゃん特製ジムバッジレプリカよーん。じゃあ、レッドあとはよろしくね。あと、あたしを選んだ方がマシなのは本当だからー!」

 

 

 手を振りながら去っていくブルー。レッドは自分の不甲斐なさと彼女の執念にあきれ果て、何も言えなかった。

 

 

「付き合う女はちゃんと選ばないとな、レッド」

 

 

 と、ナツメが言う。だがおかしい。アレはロケット団の切り札。そう簡単に渡すはずがない。彼女はただ不気味な笑みをただ浮かべているだけだ。

 

 

「さぁレッド。やっと二人きりになれたな。いでよ、ファイヤー! そして来い、フリーザー!」

 

 

 ボールから現れるファイヤーに開けらた穴から飛んできたフリーザーと対峙する。それに呼応するかのようにボールにいたサンダーが自ら現れた! 

 それを見てさらに口角があがるナツメ。

 

 

『『『ギャーオ!!!』』』

 

 

 レッドの額に汗が流れる。ナツメと二匹の伝説のポケモンの前に恐怖しているわけではない。これは、焦りだ。ここにカントーの三鳥が揃ってしまった。頭の中で何かが警戒を促す。

 だんだんと大きくフロア全体が揺れている。それだけナツメのサイコパワーが増幅しているのだろう。

 

 

「まずは第1ラウンドだ。簡単に死なないでくれよ、レッド。じゃないと……私を抱くことなど永遠にできないからな!」

 

 

 さらに膨れ上がるサイコパワー。それを見てレッドはサンダーに視線を送り、サンダーが頷く。

 サンダーが電気を無尽蔵に生み出し始め、レッドは全身を電気で纏う。自身で生み出せる電気エネルギーに加えて、サンダーからの電力供給でさらに力は増幅され、その影響か髪も黄金色に見える。まさにいまレッドが出せる全力の姿。それはまさに電気を超えライジングとなった瞬間である。

 

 

「いくぞ、サンダー!」

『ギャーオ!』

 

 

 そしてレッドのライジングパワーとサンダー。ナツメのサイコパワーとファイヤー、フリーザーが衝突し、フロア全体に閃光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドからバッジとトレーナーバッジ増幅器を手に入れたブルーは、一階下の階に降りて増幅器にバッジをはめ込んでいた。

 

 

「レッドには悪いけど、これはただエネルギーを増幅するだけじゃないのよねー」

 

 

 掴んだ情報によれば、ここにあるすべて(・・・)の穴にバッジをはめ込んだ時、新ポケモンが生まれるというもの。その新ポケモンを捕まえる、それが今回の目的だ。

 いつかあの男(・・・)と戦うためにも、力は必要なのだ。

 そこで持っているバッジ全部嵌め終える。どう見ても、二個まだ空いている。そこはオレンジバッジとピンクバッジ。ゴールドバッジは下で一回ナツメとやりあったとき盗ったから問題はなかった。

 ──ゴゴゴ。

 それにしても上が騒がしい。レッドのやつ、苦戦しているのかしら。

 

 

「あら、あと二つ足りないわね。となると一旦下に戻って回収しないと」

「あれ、ブルーじゃない! こんなところで何をしているの?」

 

 

 タイミングよく下からリーフが昇ってきた。どうやら他の幹部を退けたらしい。所々真実と嘘を混じらせて事情を話す。この子はレッドの名前を出せばどうにかなるはずだ。 

 

 

「レッドが大変なの!? じゃあ、はいこれ! マチスとキョウから取ってきたの」

「ありがとうリーフ。これで……ふふふ!」

 

 

 残りの二個のバッジを嵌める。すると中央に光の球体が現れた。

 これが新ポケモン? 

 だがそれはブルーの思惑は違ってどかへと飛んで行った。

 

 

「うそぉ⁉ 話と全然違うじゃない!」

「ちょっとブルー。全然違うってどういうことよ!」

「げっ。そ、それはぁ、えーと……!」

「え、え、なになに⁉」

 

 

 再び大きな揺れがこの上の階からシルフカンパニー全体を揺らしている。すると一旦揺れが収まると二人は安堵した。

 

 

「治まった……?」

「ブルー、一体何が──!」

 

 

 その時。轟音と共に天井を壊して何かが飛来した。それはこのフロアの床も壊してもう一階下に堕ちる。煙が晴れるとそこにはトレードマークの帽子はなく、全身がボロボロのレッドが倒れていた。

 

 

『『レッド!』』

 

 

 二人はレッドが明けた穴から飛び降りる。真っ先にリーフがレッドに手を延ばそうとするが、バチッとでんきが走り二人を寄せ付けない。

 

 

「うぅっ」

 

 

 うめき声を上げながらもレッドは立ち上がり、上を見上げながら言った。それに釣られて上を見上げる。

 そこには、私の苦手なとりポケモンがいた。

 

 

「お前ら……逃げろ」

「なに、あれ……」

「いやぁあああ!!!」

 

 

 三人の前にサンダー、ファイヤー、フリーザーが一つになったまったく新しいポケモンが見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簡単解説

 ジムバッジ

 ゲームではレベルによるポケモンの制御とひでんわざを使うために必要なものだが、ポケスペではポケモン自身の能力を上げることが可能になっており、ジムバッジ単体にかなりのエネルギーが備わっている。

 

 トレーナーバッジエネルギー増幅器

 ポケスペオリジナルアイテム。ジムバッジを嵌めることによりエネルギーを増幅させる装置。原作ではこれによって生み出したエネルギーで三鳥を合体させた。

 




次回は久しぶりに1万文字を超える量を書きました。
レッドとナツメのイチャイチャが見れるよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺と、俺とバトルしろぉおおお!!!

イチャイチャ(物理と念力)はじまります


 

 

 

 

 

 

 

 

 数分前──

 

 

「ハハハ、どうしたレッド! 守るだけでは私には勝てないぞ!」

「んなことは、わかってんだよぉ!」

 

 

 ナツメのサイコパワーが辺りに落ちている瓦礫を投げ飛ばしてくるのを拳と脚で粉砕する。だが数が多い。飛んでいるために360度あらゆる角度から彼女は攻撃をしかけてくる。相棒のサンダーとは常に電力が供給されているが、ファイヤーとフリーザーの相手で手一杯だ。

 

 

「おぉおおお!!」

 

 

 ──レッドのスパーク! 周りの瓦礫は消し飛んだ。

 ライジングパワーを手に入れたいま、例え巨大な岩だろうと消し飛ばすほどの威力を持つそれを全体に放出した。

 そのまま咆哮をあげながら加速。ナツメに接近し、雷を纏った拳を奮り下ろす。

 ──レッドのかみなりパンチ! しかしトリプルミラーによって防がれてしまった! 

 

 

「なっ!?」

「リフレクター、ひかりのかべ、ミラーコートの合わせ技だ。どうだ面白いだろう。そしてこれはそれぞれの効果を併せ持つ。つまり──」

 

 

 ミラーコート。それは特殊版カウンターである。つまり、先程のレッドの攻撃が倍になって襲い掛かる。だが、レッドはそれに耐えている。否、さらに強引に突破しようとしていた。

 

 

「こん、のぉおおお!! しゃらくせェーーー!!」

 

 

 まるでガラスが割れたようなもので、その破片は散らばっては力を失って消えた。ナツメもこれには驚いた素振りを見せたが、すぐに笑みを浮かべながら応戦する。

 サイコパワーで作り出した球体をレッドに向けて無数に放つ。イメージと力のコントロールさえ行えば、こうして手を動かさなくても可能だ。

 ──ナツメのサイコボール レッドはこうげきをはじいている! 

 

 

「ならばこれはどうだ!」

 

 

 ──ナツメのサイケこうせん! 

 それに呼応すようにレッドも手をかかげて、空中で踏ん張る。

 ──レッドのでんじほう! 

 相殺。

 両者の攻撃はちょうど二人の間でぶつかり合い消し飛んだ。その際に生じた煙が互いの姿を隠した。その隙をレッドは見逃さず追撃に入り……それは煙を裂き、ナツメに迫る。

 ──レッドのライジングキック! ナツメはバリアを張っている! 

 分かっていたかのように腕をクロスしてバリアを張ったナツメ。だがレッドは止まらない。

 

 

「ぶっとべぇえええ!!」

 

 

 ナツメはボールのように飛ばされながら壁を突き破っていく。

 

 

「ハァハァ……ッァ!」

 

 

 突然体が動かなくなり、声すらまともにあげらない。

 ──ナツメのかなしばり! 

 どうにか目は動き、飛んで行った先を見る。そこには膝をついて、右腕だけを延ばしてこちらを見ているナツメ。どうやら先程の攻撃は無傷ではいかなかったらしい。相当体力も消耗しているのか、肩で息をしている。

 

 

「はぁはぁ……ふん!」

「ぐぁあああ!!」

 

 

 瞬間、ナツメの腕が横に振る払われると、レッドはその方向へ無抵抗に飛ばされる。一枚、二枚、三枚と壁に激突しては壊していく。体の自由が解放されたのはそのまま瓦礫に埋もれた直後で、周囲に展開したエレキフィールドを張り押し上げるようなイメージで瓦礫をどかした。

 思ずサンダーに目だけを向けた。どうやら善戦しているらしい。2対1とはいえ鍛えただけのことはある。が、こちらはかなりキツイ。

 得意の接近戦を仕掛けようにも、ナツメはそれを許さない。当然だ、サイキッカーが接近戦までこなしてみろ。それこそチートだ。

 これでもかなりの修業で力の使い方を覚えたはずではあるが、彼女は生まれてきたころから常に力を制御してきたのだ。その差はさすがに埋めることはできない。

 

 

「ちぇ、結構お気に入りだったのに」

 

 

 気づけば帽子の残骸とも言うべき姿を偶然に目にしてしまう。よく見れば上着もボロボロで、邪魔になるだけなので強引に破いて捨てる。

 そのまま重くなった足を一歩、また一歩と前にだして進む。どうやら宙に浮く余裕がないのか、それとも逆に余裕があるのか、彼女もまた歩いてこちらに向かってくる。

 両者の間は5、6メートルほどになると、ナツメは笑いながら言う。

 

 

「ハハハ! 全力の私とここまでやり合うとは、嬉しい……嬉しいよ! そして楽しいなあレッド!」

「おれ、は……楽しくない……はぁはぁ」

「つれないな。こうして戦いながらお互いの愛を深め合ってるというのに」

「愛なんてなぁ! 言葉とか、ちょっと手を繋いだりするだけで深められるもんだぞ!」

「なら手を繋いでみろ! 私を抱きしめてみろ!」

 

 

 先程からナツメの言動がおかしいことに気づく。何と言えばいいか、これは不安定と呼ぶべきだろうか。今まで数えるほどしか会話をしてこなかったが、今のは過去と比べると雰囲気も、言葉に込めている想いも違う。

 

 

(全力を出して感情的になっているのか?)

 

 

 となれば、先程までの言葉は全部本心。いや、今まで口に出すことがなかった、胸にしまい込んでいた願望。

 深め合っているというのはまさにその通りなのだろう。こんな状態にならなければ、本心も伝えられない。それだけ彼女の人生は壮絶だったと語っているのだ。

 

 

「ふん!」

「ちっ!」

 

 

 ──ナツメのサイコフィールド! 

 ──レッドのエレキフィールド! 

 激突。

 床を削りながら迫りくる二人が作り出したエスパーとで電気の見えない壁が衝突し、バチバチとぶつかりあうエネルギーの余波がさらに周囲に被害を及ぼす。

 衝突してから10秒ほどで、互いのフィールドは消えた。

 

 

「こうなると第1ラウンドは引き分けと言ったところか」

「いや、俺の勝ちだ……」

「そういう意地っ張りなところも好きだぞレッド。だが、次は第2ラウンドだ」

「なにを……は!」

 

 

 その時。背後から光の球がレッドの横を通り過ぎた。それが何かのエネルギーの塊だというのはすぐにわかった。それはそのまま三匹が戦っている場所に行くと、突如光を放った。

 

 

「なんだ⁉」

「ふふふ。さぁ見るがいいレッド。これが、我々ロケット団の切り札だ!」

 

 

 光が消え、サンダーが元いた場所に目を向ける。そこには驚くべきポケモンが生まれていた。

 正面から見てサンダー、ファイヤー、フリーザーが一つになり、いやどちらかと言えば合体だ。それも無理やり体をくっつけたかのような。足も6本、羽も6つ。普通の美的センスならカッコいいとはお世辞にもいなかった。

 それでもレッドはとにかくサンダーに向けて怒鳴った。

 

 

「サンダーお前ぇ! なんで簡単に寝取られてんだよ⁉」

『おれは悪くねぇ!』

 

 

 元々三体にある無尽蔵なエネルギーと巨大なエネルギーが一つになり、さらにここはナツメのサイコパワーによって念が強化されているため、サンダーの声が届く。

 どうやら洗脳まではされていないようだが、残り二匹によって体の主導権は奪えないようだ。

 ナツメはテレポートでその一つになった謎のポケモンの上に移動した。

 

 

「残念だなあレッド。しかしな、我々はお前がサンダーを持っていようと問題はなかったんだ。お前は必ずここに来るからな」

「だからブルーにエネルギー増幅器を奪われてもすました顔をしていたのか」

「そうだ。ああ、そうそう。こいつを返すのを忘れていたよ」

「イーブイ!」

 

 

 乱暴にイーブイを床に落とすとすぐに駆け寄って抱きかかえる。

 

 

「ほのお、でんき、みず。3つのタイプに進化するイーブイはまさに打ってつけだったわけだ。本来ならもう必要なかったのだが、最終調整のためにどうしても必要になってな。こちらとしても穏便に済ませたかったのに、オーキド博士が抵抗してきたから困ったものだよ」

 

 

 イーブイをボールに戻して拳を構える。

 状況は最悪だ。サンダーが奪われてしまい、頼みの電力供給が受けられなくなったいま、残るのは自身が生み出すエネルギーのみ。それも先程と違って格段に出力が落ち、同時に威力も落ちる。

 ならばこちらも、ポケモンを新たに出すしかない。

 

 

「さぁ、第2ラウンドのはじまりだ。まずは小手調べだ。ほのおのうず、れいとうビーム、10まんボルト!」

 

 

 3つのエネルギーが一つなった攻撃が同時に放たれ、咄嗟に横へ飛ぶことで何とかギリギリでかわすことに成功する。

 どう対応すべきかと考えていると、まるで時間を与えるようにナツメが言った。

 

 

「レッド。お前はジムバッジにどんな力があるか知ってるか?」

「ポケモンに言うこと聞かせたりするぐらいじゃないのか?」

 

 

 他にもひでんわざの使用に必要だと言おうと思ったが、この世界では特にバッジは必要ないのだと知っているので口には出さなかった。

 

 

「まあ知らぬのも無理はない。ジムバッジにはそれぞれ力がある。炎・岩・草・電・毒・水・念! 各リーダーが持つバッジには各々にその属性の力が宿っている。まさにこの世の存在するエネルギーと言っても過言ではない。だからこそ、すべてのバッジが必要だったのだ!」

「だがお前ら三幹部はともかく、他のジムリーダーのバッジの入手は容易くは……だからか! だから、俺やグリーン、リーフを泳がせ続けていたのか!」

「そうだ! そして懸念していたカツラのクリムゾンバッジ。それはお前がちゃんと持ってきてくれた、感謝するよレッド!」

「っ!」

 

 

 思わず舌打ちをする。自分がジムバッジを集めるのはそれが普通だと今でも思っていた。だが結局、その当たり前の行動が裏目に出てしまった。ロケット団の計画おいてそれはとても都合がよかったのだ。

 

 

(すまないカツラ。まんまと知らない間に敵の策にハマっちまった)

 

 

 胸の中でカツラに謝罪する。

 ふと、あることに気づいた。ナツメは言った。すべてのジムバッジと。ならばブルーが持って行ったバッジは7つ、どう見ても一つ足りない。

 いや、正確にはある。ボスであるサカキ、彼こそが最後のトキワジムのジムリーダー。ナツメの言葉から察するに、バッジは7つだと思い込んでいるように見える。

 知らないのか、サカキがジムリーダーなのを。

 ゲームでは最初に目にするジムであるが、そこの主は不在。ただそれも、いつから不在でどれだけの人間がジムリーダーの素性を知っているのかというのも曖昧だ。仮に知らなかったとすれば、筋は通る。さらにまだこのシルフカンパニーのどこかにサカキがいるならば、持っているはずのグリーンバッジ。単体でも力を発揮するならば、少なからず目の前のポケモンにも影響を与えているはずだ。

 

 

「さて、お喋りはここまではだ。サ・ファイ・ザー! ゴッドバード!」

「──!」

 

 ──サ・ファイ・ザーのゴッドバード! 

 声すら届かない世界。広がるのは光のみ。

 瞬間、光がレッドを包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在──

 

 

「いやぁあああ!」

「ちょっと、ブルー⁉ どうしたの、ねぇったら!」

「……ブルー?」

 

 

 顔だけ後ろに動かす。そこには頭を押さえながら怯え叫ぶブルーの姿。リーフはそんな彼女の肩を掴んで体を抑えている。

 状況が分からない自分にナツメが丁寧に答えを教えた。

 

 

「どうやらその小娘にはトラウマがあるようだ」

「トラウマ?」

「……なの……」

「え、なに? ブルー?」

「だめなのよぉあたし! とりポケモンだけはどうしてもだめなのよ! こわい……こわいの……」

 

 

 これは尋常ではないとすぐに分かった。だからとりポケモンではなく、プリンでそらをとんでいたのかと同時に納得した。

 だが今この状況でブルーに構ってあげられる時間はない。そしてリーフとブルーの二人を護れる自信もなかった。

 

 

「リザードン、かえんほうしゃ!」

「グリーン!」

 

 

 その時崩壊した壁の外からリザードンに乗ったグリーンが現れる。放たされたかえんほうしゃはサ・ファイ・ザーの起こした風によってかき消されてしまう。

 

 

「ちっ、やはりダメか」

「グリーン!おじいちゃんたちは⁉」

「おじいちゃんは助けた。だが、地下2階にある部屋は厳重な扉で、ポケモンの攻撃すら効果がなかった。だから、だれかしら鍵を持っていると思って合流した」

「そこはシルフカンパニーの地下金庫。中と外、両方から破られないようポケモンの攻撃にすら耐えられる特殊装甲だ。感謝してほしいな。そのおかげで、例えこのビルが崩れても無事に済むぞ? そして、これがそのカギだ」

「な、貴様ぁ!」

 

 

 鍵を見せるとナツメはそれを粉々に破壊し、冷静を失ったグリーンをレッドが止める。

 レッドはいまこの状況を冷静に分析していた。グリーンが来たことにより戦力は確かにあがった。だがそれでも、自分の負担が大きい。ナツメは気づけば『じこさいせい』をして完全ではないだろうが回復している。

 それに自分の戦闘スタイルではむしろ彼らは足手まといだ。そしてなによりも、この戦いは自分とナツメの戦いだ。何人たりとも邪魔はしてほしくはない。

 つまりは、男の意地というやつだった。

 

 

「ここにマサラタウンのトレーナーが全員(・・)揃ったわけだ。さあどうするレッド? 戦いはまだ続いているぞ」

「ああ。確かに、そうだ。だから……俺がヤツと決着をつける。お前らは脱出しろ」

「そんなレッドを置いていけるわけないじゃない!」

「そうだ。だが、カギはアイツに破壊されてしまった以上やることは限られている!」

「それは問題ない。ブルー」

「……え?」

 

 

 未だに怯えるブルーの前に膝をつき、彼女の肩を掴んで優しく語り掛ける。

 

 

「メタモンは何にでもへんしんできるんだな?」

「う、うん」

「なら、メタモンをカギにへんしんさせて開けさせればいい。できるよな、ブルー」

「……うん、わかった」

「なら急ぐぞ。建物全体が崩壊の兆しを見せている。しかしレッド、お前はどうする?」

「言ったはずだぜ。決着をつけるって」

「死ぬなよ」

 

 

 言葉ではなく頷いて答えを示した。

 レッドはそのままブルーを立ち上がらせると、いきなりブルーの唇を奪った。さすがに舌は入れなかったようだが、肩を掴んでいた右手が気づけば彼女の下半身にさりげなく移動し、お尻を愛撫していた。

 突然の行動に顔を赤く染めるブルー。グリーンは呆れた顔してそっぽを向き、リーフは口をぱくぱくと上下させている。

 この光景はブルーがレッドを突き放すまで続いた。

 

 

「な、ななな! なにすんのよ! どさくさに紛れてお尻まで触って!?」

「これで今までの貸しはチャラだ。これぐらいの事は許されると思うが?」

「そ、それでも、乙女の唇を簡単に奪って──きゃ!」

 

 

 再度ブルーの唇を奪うと、今度はそのままリザードンの背中へと投げるレッド。

 

 

「頼んだぞ、グリーン」

「わかった! いけ、リザードン!」

「死んだら承知しないわよーーー!!」

 

 

 それは本当に死んだらなのか、それとも唇を奪った責任を取らすのが目的か。まあどうでいい。レッドはまだ残っているリーフと向き合う。彼女はうつむきながら言った。

 

 

「……死んじゃうよ」

「死なない」

「うそ!」

「本当だ」

「なんで、そこまでするのよ⁉」

「あいつに、惚れてるんでな」

 

 

 視線をナツメに向ける。彼女は未だにこちらを見下ろしながら待っていた。

 

 

「じゃあ、まだ惚れてるだけなんだ」

「ん? いや、それ──―」

 

 

 突然視界に飛び込むリーフに唇を奪われる。だがそれにしても長い。ブルーとは違って20秒以上はキスをしていた。

 

 

「お前……」

「死んだら許さないし、絶対に諦めないから」

 

 

 そう言い残してプテラを出してリーフはグリーンのあとを追う。突然の彼女の行動に驚かされ、頬を掻きながらちらりとナツメを見た。

 怒ってはいないが、よくない顔をしていた。

 

 

「こんなにも愛し合っている女の目の前で、堂々と三回も別の女とキスをするとは。まったく、とんだプレイボーイだ。私は悲しいよ、レッド」

「悲しんでもらえるなんて嬉しいねぇ。で、さっきのカギは壊してないんだろ?」

「ああ」

 

 

 うなずいて先程壊れたはずのカギを見せるナツメ。しかしもう用が済んだのか床に投げ捨てた。

 

 

「お前と、二人だけの戦いを邪魔されたくはないからな」

「それもそうだ」

「さて。第2ラウンドは私の勝ちだ、続いて第3ラウンドになるな。サンダーを失ったいま、お前に残された手は限られている。目の前にはサ・ファイ・ザー、そしてこの私だ」

 

 

 腰にある4つのボールを投げた。リザードン、フシギバナ、カメックスにピカチュウ。その眼には闘志のみが宿り、敵対するサ・ファイ・ザーを睨む。

 

 

「サ・ファイ・ザーがお前の切り札ってんなら、俺も出すぜ。とっておきの切り札(ジョーカー)を!」

 

 

 ポケモン達、特にピカチュウを除いた三匹がその場に大きく足を開き、体を固定する。そんな中、ピカチュウは『じゅうでん』を開始する。

 やれるはずだ──

 これから行う技は、彼ら御三家のみが覚えることができるそれぞれの属性の最終奥義。本来であれば簡単に習得ができるはずがない。

 リザードンには『こう、ぼぉおおって感じ』、フシギバナには『なんていうか、根っこがずどどって感じ』、カメックスには『強引に止めたホースを離して飛び出す水のような感じ』と小学生のような表現で伝えるレッドであるが、彼らはそれを必死に理解しようとしたどり着いた。

 しかし独学のために未だに成功確率は低い。

 だが失敗などレッドはおろかポケモン達は微塵も思っていない。あるのはたった一つ。

 目の前の敵を倒すことだ。

 

 

「勝負は……一撃だ」

「ああ」

 

 

 静寂。

 誰ひとりとして声を出さない。ただ、主の命令を待つ。

 戦いのゴングを鳴らしたのは、崩壊しかけていた天井の一部が落ちた音であった。

 

 

「サ・ファイ・ザー! かえんほうしゃ、ふぶき、かみなり!」

「三位一体──」

 

 

 迫りくる三色の攻撃。しかしまだ迎え撃たない。

 リザードン、フシギバナ、カメックスの前に徐々に収束する三匹のエネルギーのチャージがまだ……まだ……いま! 

 

 

究極技一斉射(アルティメット・バースト)!」

 

 

 ブラストバーン、ハードプラント、ハイドロカノン。3つの究極技が一つになり放たれた。それはサ・ファイ・ザーの一撃と衝突するどころかサ・ファイ・ザーごと飲み込む。その砲撃はそのまま天井を突き破り、ビルの外まで貫いた。

 究極の一撃を間一髪のところで避けたナツメはまだ諦めていなかった。サ・ファイ・ザーはすでにやられてしまったのは感知している。だが、これほどの攻撃とエネルギー。絶対に反動で動けないはずと確信し、攻撃の体制に入る。

 

 

「まだだ! まだ、私達の戦いは終わってない!」

 

 

 その手にサイコパワーを纏い特大のサイコキネシスを放とうとするナツメ。そこで、地上から新たなエネルギーを感じ取った。

 ──ピカチュウは限界までじゅうでんした! 

 ──ピカチュウのおんがえし! レッドに持てるすべてのエネルギーを渡した! 

 

 

「ナツメェーーー!!」

「レッドォーーー!!」

 

 

 ──レッドのボルテッカー! 

 ──ナツメのサイコキネシス! 

 激突する両者の最大出力の技と技のぶつかりあい。拮抗する両者――いや、レッドが押されつつある。いくらピカチュウのフルじゅうでんとは言え、元々生み出せるエネルギーには限界がある。もし体力が満タンであれば易々と突破できたかもしれない。けどいまはひんしの状態に近い。

 それでも、諦めない。常に自分を信じると誓った。

 だからこれは──ただのわるあがきだ。

 

 

「うわぁああああああっ!!」

 

 

 無理やり馬鹿みたいに叫ぶ。腹の底から声を出し、叫ぶ。

 

 

「──!」

 

 火事場のバカ力というべき力でサイコキネシスを破ったレッドはそのまま力を失い、同時にナツメもも力を失う。

 そのままナツメを捕まえ、力を失ったことで二人はそのまま床へと落下する。

 

 

『『……』』

 

 

 レッドはナツメに覆いかぶさるような形で力尽きていた。どいてやりたいがまだ上手く体を動かすことができない。

 何とか意地でレッドは勝利を宣言する。

 

 

「だい、3ラウンドは……おれの、かちだ……」

「……ああ……そうだ、な」

「1対1だ……つぎ、どうする」

「……先に、キスをした方が勝ちというのは、どうだ……。まあ、私はうごけな──んっ」

 

 

 最後まで言わせないように、ナツメの口を塞いだ。この時だけは身体が動いた。が、キスをしたらまた動けなくなり、しばらく互いに唇を離すことができないでいた。

 というのは嘘で、そうしたかったからだ。

 そしてようやく唇を離すと、初めて見る彼女の優しい顔を見た。

 ナツメはレッドの顔に手を添えて言った。

 

 

「本当、どうしてお前のことを好きになってしまったんだろうな」

「好きになるのに理由なんていらないさ」

「そうだな、ああそうだ。ところで、レッド。お前も私の事が好き、なんだよな?」

「言ったろ、大好きだって」

「そうか。なら……」

「あれ、ナツメさん。ちょっと、頭が痛いんですけど……」

 

 

 力を失って動けないと言ったのは嘘だったのか。両手で頭を掴み、今にも卵を割るような勢いだ。

 

 

「お前の頭の中にリーフ、ブルーはまあいいだろ。エリカはムカつくがそれもいい。それとナナミという女も……まあ幼い頃を考慮すれば理解できる。だが」

「だ、だが……?」

「お前の奥底にいるあのハナダの女は誰だ? 今でも少なからずお前の中に強くある存在は!」

「ゆ、許して、お願いします……お姉さんは、その、言葉ではうまく言えないの! でも、恋愛感情じゃないの!」

「……嘘は、言ってないな」

「うん」

「まあ……いい」

 

 

 今度はナツメからのふいうちで唇を奪われた。

 

 

「それに話したいこと、あるのだろう?」

「……ああ」

 

 

 好きになった人がナツメでなければ、ずっと心にしまっていた。けど、彼女はエスパーで頭の中を覗けてしまう。つまり隠し事はできない。だから最大の秘密を告白しようと思っていた。

 だが、それはいまじゃない。

 

 

「けど、まだやるべきことが、あるッ」

 

 

 僅かに残ったでんきを体に流し、無理やり体を動かして立ち上がる。このままナツメを抱えて脱出したいが、そうはいかない。

 奴が、サカキが待っている。

 ナツメはそれを読んだのか、それとも自然と理解したのかそれを受け入れてくれた。

 

 

「わかったよ。私はジムで待っている」

「ああ。またな」

「──うん」

 

 

 優しい声で答えたナツメは、初めて見せた笑顔をレッドに送りジムへとテレポートした。

 レッドは倒れているポケモン達をボールに戻す。それとひんしになったことで合体が解かれたサンダー、ファイヤー、フリーザーを回収しゆっくりと最上階を目指す。

 だが、歩くのがとても辛い。体中が悲鳴をあげているのか、言うことを聞いてくれない。それでも、前へ一歩踏み出す。急がなければシルフカンパニーの崩落が始まる。先程の戦いで限界が来ているはずなのだ。

 こちらの手持ちで満足に戦えるのはスピアーとカビゴンのみ。相性は圧倒的にこちらが不利な状況。それでも、まだ戦いは終わっていない。

 なんとか最上階までたどり着くと、そこにはサカキがすでに待っていた。それも両手をポケットに入れ、威風堂々としている。

 

 

「待っていたぞ、レッド」

「サカキ、これでロケット団は終わりだ」

 

 

 レッド自身、これでロケット団は完全に壊滅したとは思ってはいない。現に金銀ではロケット団の残党が暗躍、さらにサカキの生存は匂わせていた。うろ覚えだが最新作ではレインボーロケット団なるものもいた。そこにサカキがいるかは知らないのだが。

 だから未来のためにも、ここでサカキを討つ。

 スピアーが入ったボールをなんとか構える。

 

 

「終わりじゃないさ。例え私が死んでも、『R』は受け継がれる。まあ、簡単に死んでやるつもりもない」

「御託はいい。俺と、俺とバトルをしろ……」

「ああするさ。だが、ここじゃない。それに満身創痍のお前を倒してもなんにも面白くはない。だから、こうするのさ。やれ」

 

 

 サカキが通信機でどこかへ命令すると、シルフカンパニーのあちこちで爆発が起き始める。

 

 

「なんだ、何をしたサカキ⁉」

「なに。シルフを支える柱にイシツブテを仕掛け、じばくさせただけだ」

「な──⁉」

「これはケジメだ、レッド。ロケット団が確かにお前に負けたというな。では、待っているぞレッド。私達が戦うに相応しい場所──トキワシティでな」

「ま、待てサカキ──くっ!」

 

 

 どこかへ去ろうとするサカキを追いかけようと体を動かそうとした瞬間激痛が走る。そのおかげか、崩れた天井に押しつぶされずに済んだ。

 そして、シルフカンパニーの崩壊は完全に始まっている。今すぐここから脱出しなければならない。

 だが、レッドは動かない。その手に持つモンスターボールを握りしめ、いるはずのないサカキに向けて叫ぶ。

 

 

「……戦えサカキ。俺と、俺とバトルしろぉおおお!!!」

 

 

 彼の叫びは崩壊し続ける音によって、けしてサカキに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シルフカンパニー正面玄関付近。そこにはグリーン達に救出されたマサラタウンの人々が警察やタケシ、カスミ、エリカをはじめとした正義のジムリーダーたちによって保護されていた。

 その中にリーフもおり、いまは姉であるナナミを介護していた。

 

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「ええ。私は大丈夫よ、リーフ。グリーンもありがとう」

「礼ならあの女に言ってくれ」

「女? その子は?」

「あれ、ブルーったらいつのまに」

 

 

 さっきまで傍にいたブルーがいない。まあ、それも当然かと納得する。彼女はレッド曰く泥棒らしい。ならば警察などがいるこの場には長く留まりたくないのだろう。

 それでも、ブルーがいなければみんなを助けられなかった。

 だから、ありがとうと心の中で伝えた。

 介護を受けながらナナミにレッドはと問われる。すでにボロボロになったシルフカンパニーの上に目を向け伝えた。

 

 

「まだレッドは、あそこで戦ってる」

「そんな! レッドくん……」

「それよりも姉さんにみんなもだ。今はここを離れた方がいい。シルフの崩落に巻き込まれてしまう」

「え、ええ。そうね──なに!?」

 

 

 突然の爆発。それも一か所ではない。次々とシルフカンパニーのあちこちで立て続けに爆発が起きる。

 警官や自警団が逃げろと叫ぶ。ジムリーダーや他の人間たちの誘導に従いながら避難する人々。彼らに襲いかかるビルの破片をジムリーダーをはじめとしたポケモン達が排除する。

 リーフとグリーンもそれを援護するようにポケモン達に指示を出す中、ナナミが崩壊するシルフカンパニーに向けて走り出すのを、何とか止めながら説得する。

 

 

「ダメだよ、お姉ちゃん! いま行ったらお姉ちゃんまで巻き込まれちゃう!」

「離してリーフ! あそこにはまだ、レッドくんが⁉」

「わかってる! わかってるよ! でも、レッドなら大丈夫だから!」

 

 

 嘘だ。本当は自分だって飛び込みたい。だけど、それはできない。

 涙をこらえるリーフの耳に誰かが叫んだ。

 

 

「おい! アレを見ろ!」

「なんだアレは⁉」

「ポケモンだ!」

「カビゴンだ! やられたんだ、落ちてくる!?」

『ほわぁあああ!!』

 

 

 突如、空から一匹のカビゴンが咆哮をあげながら落下してくる。そう認識した時にはすでに地上へ落下した。460㎏もあるカビゴンが落下すれば、コンクリートなど簡単に粉砕してしまう。

 

 

「カビゴン……は! レッド!」

 

 

 リーフの声に釣られてナナミもカビゴンに駆け寄る。カビゴンの腕の中にはボロボロになったレッドが優しく抱きかかえられていた。

 

 

「レッドくん⁉ ひどい……! 誰か、誰か担架と医療キットを!! 早く!」

 

 

 ナナミはこれでも医者でもある。主に研究所でポケモンを癒すのが仕事であるが、同時に人間の医者でもあった。彼女はすぐにレッドの状態を把握して声を飛ばす。

 リーフはそれを見て、実の姉がレッドのことを自分と同じくらい想っているのだと確信した。なぜ今まで気がつかなかったのだろうと、我ながら鈍感すぎると思った。

 

 

「あれ……スピアー?」

「そうみたいだな」

 

 

 カビゴンに続いて空からボロボロのスピアーがゆっくりとカビゴンの肩に着地した。グリーンはスピアーの状態を見て言った。

 

 

「おそらく、レッドを抱えたカビゴンの道を作っていたんだ。見ろ、槍や体全体に破片を削ったカスがついている」

「二人とも、主人想いなんだね」

「走ったから腹減った」

「……」

 

 

 カビゴンの空気を読まない発言にはさすがのスピアーも疲れてちょっかいを出す気にはなれなかった。

 

 

「ふふ。でも、やっと終わったんだ」

「ああ。ロケット団の最後だ」

 

 

 二人は完全に崩れ落ちたシルフカンパニーを見て、勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒するときというのは、一番意識がハッキリとしている。だからこそ、この覚醒した数秒間でだいたいのことが不思議と分かってしまう。

 まず、体中が言葉で表せないぐらいに激痛が襲っている。起き上がろうとしても力が入らない。指の先がやっと動くくらいだった。

 

 

(……ん)

 

 

 だから無理やり体中に電気を流して強引に動かした。

 

 

「いっ、てぇ……」

 

 

 体を起こせば、なんで重たいのかわかった。ナナミだ。彼女がお腹のあたりを枕にして寝ていた。

 もしかして、ずっと看病してくれたのだろうか。

 ナナミの肩を優しく揺らして名前を呼びながら起こす。

 

 

「ナナミさん」

「ん……れっど……くん?」

「うん。おはよう」

「──レッドくん!? よかった、本当によかったよぉ……」

「心配してくれてありがとう。大丈夫、この通り生きてるよ」

「うん、うん!」

「ところで、ここは?」

「ヤマブキの、ポケモンセンターよ」

 

 

 流している涙を白衣の袖で拭きながら言った。

 

 

「そっか。俺、どのくらい寝てた?」

「3日よ。本当はリーフもいたんだけど、2日目の朝にはまた旅に戻ったわ。それとグリーンとリーフから伝言。セキエイ高原で会おうだって」

「そっか。でも、俺ジムバッジねぇや」

 

 

 セキエイ高原で開かれるポケモンリーグにはバッジをすべて集めないと参加すらできない。バッジはブルーに奪われた後は知らない。おそらく、あの増幅器にはめ込んだあとなんだろうが。

 それにグリーンバッジについてはどうするつもりなのだろうか。

 

 

「何言ってるのレッドくん。ポケモンリーグに参加するのにバッジはいらないわよ? 今年もルールに変更がないなら勝ち抜きのトーナメント戦ね」

「えぇ……」

 

 

 ではバッジを集める必要ないんじゃ。それに四天王の存在とか意味ないんじゃとか考えだしたらキリがなくなってきた。

 

 

「それとね。スピアーなんだけど、レッドくんボールに戻してあげて」

「え?」

「あなたを抱えて飛び降りたカビゴンは、ご飯を食べてすぐにボールに戻ったんだけど。この子だけは少し休んだだけでずっとレッドくんを護っていたの」

 

 

 まだ完全に覚醒していないのか、部屋にスピアーがいたことに今気づいた。体はボロボロで、あの時の戦いのままだ。おそらく、ロケット団の残党が来ないか警戒していたのだろう。

 

 

「ありがとう、スピアー」

 

 

 頭を撫でたあとボールに戻した。

 

 

「ジョーイさんが気を利かせてくれてね? 小型の回復装置を置いてくれたの。傍にいてあげた方が、ポケモン達も喜ぶし、レッドくんが目を覚ますだろうって。でも、10個はちょっと多いわね」

 

 

 ナナミがスピアーのボールを置くと、嫌と言う程聞いたあの音が流れてスピアーが回復した。

 3日も寝ていたとなると、相当体が鈍っていることになる。急いで調整し、やり残したことを片付けなければならない。ベッドから降りようとすると、ナナミがすごい剣幕で止める。

 

 

「ダメよ! まだあと数日は絶対に安静にしていないと!」

「ごめん、ナナミさん。でも俺、まだやらなきゃいけないことがあるんだ。それに会いに行かんきゃいけない人がいるんだ」

「……それって、ここのジムリーダーのナツメさんのこと?」

「……なんで知ってんの?」

 

 

 思わずいつもの口調に戻ってしまった。ナナミは続けて言った。

 

 

「リーフが教えてくれたの。フェアじゃないって」

「フェアって……」

「好きなの? ナツメさんが」

「うん」

「そう……。でも、諦めないよ」

「……へ?」

 

 

 リーフもそうだが、なんでそこで諦めないという言葉が出てくるのだろうか。いっそのこと、一発頬を殴って色々とお互いスッキリしてほしいと思っていたのだ。いや、自分にそれを言う権利はないのは当然だ。

 だけど、なんでこうなるのかと思わずにはいられない。

 

 

「だって、レッドくん以外の男性の人なんて好きになれないもん」

「い、いや。それはちょっと極論すぎません?」

「世の中、自分の想い通りになるとは限らなの。それに、マサラで交わした約束忘れてないよね?」

「……もしチャンピオンになったらデートしてください」

「もしなれなかったら?」

「慰めてください……」

「せーかい。もちろん、レッドくんから私に言ったんだもん。まさか、破らないよね?」

「……ハイ」

「よろしい。あとね、今だから言うけど。私がレッドくんの一番だから」

「……えーと。それ、どういう意味?」

「さぁ、どうなんでしょうか? じゃあ私ご飯持ってくるからね」

 

 

 かつてない程の笑顔を見せながら、ナナミが部屋を去っていくのを確認して小さなため息をつく。身から出た錆とはこのことかと。とりあえず、真実を知るのは怖いがナツメには何て言おうか。

 いや、多分もう知ってそうな気がする。

 レッドは考えるのを放棄して、目の前にある小さいテレビに向けてリハビリがてら電気信号を飛ばして電源をつけた。

 映ったのはとカントーのニュース番組であった。

 

 

『こちら、ハナダ北西部にある森林地帯の上空です! ごらんください、先日まで緑で溢れていたこの森が、一瞬にして不思議な形を残して消えました。えー待ってください……あーる? あ、これは「R」です! もしや先日壊滅したロケット団の残党なのでしょうか⁉』

 

 

 どうやら、おちおち寝てはいられないらしい。

 ハナダ北西部。その付近にあるのはハナダの洞窟。つまり、あれはミュウツーからのメッセージだ。おそらく『R』はレッドのRだ。ロケット団のRとは考えにくい。

 ベッドから降りておいてあった着替えを手に取る。パンツ以外には全身に包帯が巻かれているが、気にせず上に服を着こむ。たぶんナナミが似たような服を用意してくれたのだろう。デザインは違うが、自分らしい赤を基調としている。

 他にはバッグも置いてあるが、もう道具を持つ気はないのでこの際持っていかないことにした。あとはポケモン図鑑、FR号が入ったボールにポケモン達。サンダー、ファイヤー、フリーザーのボールを持って三匹に言う。

 

 

「もう少し待っててな」

 

 

 ボールの中で鳴く三匹に苦笑して、レッドは窓から飛び降りてヤマブキジムへと向かった。

 それから数分後。ポケモンセンターに一人の女性の叫び声が響き渡るのは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキジムの前。扉には休業中と張り紙が張ってあった。まあ、当然かとレッドは納得する。自分よりはマシとはいえ、かなりダメージを負っているのだ。ジム戦はしばらく休業するだろう。

 するとガチャリと入り口のカギが開いた。

 人の気配はない。つまりはそういうことだ。

 レッドは肩をすくめながら中に入る。ジムの中はゲームと似たようなもので、テレポート装置があった。

 何か来る。

 次の瞬間ナツメのユンゲラーが現れた。

 

 

「出迎えごくろうさん」

 

 

 ユンゲラーはうなずくと、レッドは彼の肩に手を置いた。瞬間すぐに別の景色に移り変わる。

 目の前には椅子に座ったナツメの姿が。服装はロケット団ではなく、ゲームで見た馴染のある服装をしていた。

 

 

「そっちのが似合ってるぞ」

「もう知ってる」

「でも、ちゃんと言葉で言われた方が嬉しいだろ?」

「……まあ、な」

「あのさ。こういうことを言うのもあれだけど、すごい変わったな」

「そ、そうか? そんなつもりはないが」

「なんか丸くなったっていうか、牙が抜け落ちたというか。言葉に棘もなくなった感じで……うん、ちょっと優しくなって可愛くなった」

「……当然だ。私は……可愛いんだ」

「うん」

 

 

 嘘偽りのない言葉を贈ると、またナツメは照れた。本当に変わったなって思う。

 だから、ちゃんと自分のことを伝えてから二人の関係を始めたい。

 

 

「知ってると思うけど、俺前世持ちなんだ。まあ、生まれ変わりってやつ」

「の、ようだな」

「それもちょっと特別なんだけど。まあ、この世界のことを知ってる」

「私のこともか?」

「うん。知ってるから、自分のことを好きになったんだろって言われたらそうだって言うしかない。けど、お前が好きなんだ。俺は、お前が好きだでたまらない。これ以上の理由なんて、俺は持ってない」

「私は──」

 

 

 ナツメはゆっくりと歩いてくると、右手をぎゅっと握りながら言った。

 

 

「私はお前が好きだ。いいか、お前が好きなんだ。誰でもない、マサラタウンのレッドが。だから、そんな些細なことなんて……どうでもいい。私にとって過去や未来ではなく、今が大切なんだ」

「些細なこと、か。結構悩んだんだけど」

「お前は、変な所でバカなんだよ」

「へいへい。俺はバカですよー」

『『……』』

 

 互いに手を握り目ながら見つめ合ってどれくらいだろうか。ただ何も考えずに彼女の目をずっと見ていられるような気がした。

 短い静寂を破ったのはナツメの方だった。

 

 

「こういう時、どうすればいいかわからないんだ」

「簡単だ」

 

 

 レッドは両手を広げながら言った。

 

 

「抱きしめてやる。こい」

「……うん!」

 

 

 精一杯の想いを込めて抱きしめ合う二人はキスをしながら後ろに倒れこもうとしてた。しかし、それをユンゲラーの念力が二人を宙に浮かせる。さらにユンゲラーは二人をゆっくりと回転させる。意外な演出家が傍にいたものだ。

 

 

「名残惜しいけど、もう行くよ。まだ、やらなきゃいけないことがある」

「……分かってる」

 

 

 頭の中を読んだのか、ナツメはうなずいてすぐに言った。

 

 

「それと、もう頭の中は覗いていないぞ」

「そうなのか?」

「私だって常に覗かれているのは気分が悪いから……。まあ、女性関係については容赦なく覗くけど」

「……努力します」

「このスケベ、すけこまし」

 

 

 何となくすごい可愛い言い方をするなと思った。

 ナツメは小さなため息をつきながら両手を前に出した。

 ──ナツメのいやしのはどう! レッドの体力が回復した。

 今まで辛かった体の痛みが取れ、無理やり電気を流さなくても動くようになった。

 

 

「ありがとう。やっぱお前、最高の女だよ」

「ふん。どうせ、すぐにまだボロボロになるんだ。一日も経たずに死んでもらっては困る」

「なに、何とかなるさ。それじゃあ、今度はセキエイ高原で会おう」

「わかった。ユンゲラーに送らせよう。場所はハナダでいいか?」

「いや、誰もいない草原でにもしてくれ。先にやることがある」

「わかった。それと……こほん」

「?」

「が、がんばって……レッド」

「ぜってぇー生きるわ」

 

 

 瞬間ユンゲラーはレッドを連れてテレポートし、直後顔を真っ赤にしながら自分の部屋にこもったナツメであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ユンゲラーのテレポートで送ってもらったレッドは、そのままナツメに戻る彼に礼を言ってすぐに別れた。

 辺りを見渡せば、以前ブルーと共にミュウを捕獲した場所と似たようなところであった。広がる草原、吹き渡る風。久しく感じてなかった、冒険の匂いだ。

 腰から三鳥のボールを空に投げる。久しぶりの外で嬉しいのか、縦横無尽に駆け回る。少しして三匹はレッドの前に降り立った。

 

 

『ありがとう、レッド』とフリーザーが礼を言った。

『君は我々の恩人だ』とファイヤーが感謝を述べた。

『俺は悪くねぇから』とサンダーが言い訳をした。

 

 

 何故ここまでハッキリと声が聞こえるのか尋ねると、まだ増幅器のエネルギーが体内に少なからず残っているらしい。それもすぐに消えてしまうが、その前に感謝の気持ちを伝えたかったようだ。

 

 

『あなたがいなければ、きっと私達は人間達に酷いことをしていたでしょう』

『我々の強大するぎる力は、両者のバランスを崩してしまう。我々は自然と共にあるべきなのだ』

『レッドが人間側のバランスを崩してると俺は思う』

「そっか。うん、俺もそう思うよ。捕まえようとしてた俺が言うのもなんだけどね。けど、どの場所でもお前らと同じような存在を求める人間は少なからずいるのも現実だ」

 

 

 レッドの言葉にうなずくフリーザーとファイヤー。サンダーは無視されて拗ねていた。

 

 

「でも、人間がピンチの時は助けてくれよな」

『確約はできない』

『だがレッド、君は恩人だ。君がもし、我々の力が必要な時は呼んでくれ。いつでも力を貸そう』

「ありがとう。フリーザー、ファイヤー』

『では、行こう』

『さらばだ。マサラタウンのレッド』

『『ギャーオ!!』』

 

 

 そして二匹の伝説のポケモン達は空の彼方へそれぞれに飛んでいく。残ったサンダーはじっとレッドを見つめた。

 

 

「お前はいかないのか?」

『これからもきっと、お前は戦い続ける。その時に俺がいなくてもいいのか?』

「そう言われると、ちょっと痛いなぁ」

 

 

 現にサンダーが生み出す無限のエネルギーがあったからこそ、ナツメ達と戦うことができた。普段の自分ならとっくにやられていたに違いない。

 

 

『だろだろ? やっぱお前には俺が必要なんだって!』

「なんだ、お前。俺と一緒に旅がしたいのか」

『お前といると退屈しない』

「あのサンダーにそう言ってもらえると嬉しいな。でも、お別れだ。伝説のポケモンっていうか、さっきの話の通りだ。お前達は自由であるべきなんだよ」

『わかった……もう我儘は言わない』

「ああ、俺も別れは辛いよ」

 

 

 するとサンダーの体が光り輝き、小さな光の玉が現れた。大きさはモンスターボールぐらいだろうか。透明な玉の中にはかみなりが渦巻いている。

 それに似たようなのをどこかで見たことがあると思ったレッド。少し考えて、これが生前に見た映画に出てくるアイテムが、このような形をしていたのを思い出す。

 

 

『本当はこういうのはよくないんだが、間抜けの二人には内緒な』

「これは?」

『俺の加護みたいなもの。お前らで言うポケモンのアイテム』

「雷の玉ってやつか」

『そうなる。まあ、ポケモンじゃなくて、お前専用だけど』

 

 

 サンダーが言うと雷の玉が体の中に入った。思わず通り抜けたと思って後ろを向くがなにもない。本当に体の一部になったらしい。

 

 

『この前ほどじゃないけど、十分にやれるはずだ。それは俺と繋がっているから、お前の身にもしものことがあればすぐに分かる』

「何から何まで悪いな」

『いいさ。お前は俺のマスターだからな。では、さらばだレッド』

「またな、サンダー」

『ギャーオ!』

 

 

 フリーザーとファイヤーとは別の方向へ飛びたっていくサンダーを見送る。空になった3つのボールを見て、笑みを作るレッドは前を向いて言った。

 

 

「さあ。いくか、ハナダへ」

 

 

 一つの別れを体験したレッドであるが、足取りは軽く晴れやかな顔つきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さあ、やろうかミュウツー。俺達のポケモンバトルを!


前回で頑張りすぎたのでちょっと、物足りないかもね。
何がとは言わんが。


 

 

 

 

 

 

 

 

 ハナダの洞窟の入り口付近で、一人の男がキャンプをしていた。頭部は剥げており、目にはサングラスをして白衣を纏った男。名をカツラと言う。

 カツラはレッドの助言の通りにカントー北部を目指し、ここに5日ほど前にたどり着いた。

 今でも右腕のミュウツー細胞が洞窟内部に向けて反応しているが、中に入る気はなかった。目的のミュウツーとはすでにここに訪れた際に邂逅したからだ。

 ミュウツー、あえて彼としよう。彼は持ち前のサイコパワーにより、ここにくることを察知してテレポートで目の前に現れた。

 咄嗟にボールを構えた。なぜなら彼の生みの親は自分だ。生まれたことそのものに疑念と怒りを抱いている。だからこそ、自分を殺すつもりで現れたのだと思った。

 だが、彼は念力で言葉を送ってきた。

 

 

『お前はキライだ。私を生み出した人間だからだ。だが、ワタシには会わなければいけない人間がいる』

「それは誰だ?」

『……レッド』

「レッドだって? なぜ、お前が彼のことを」

『ワタシを閉じ込めていたカプセルにいた時、お前らとは違う人間がいるのを感じた。その人間は他とは比較にならないほどの強さを持っていた。だから、一瞬だけワタシと彼との間に線を繋いで知った』

「……レッドに会ってどうするつもりだ」

『レッド……あいつなら、ワタシの望みを叶えてくれる』

 

 

 彼はそう言って再び洞窟へと戻っていた。その数日後。ヤマブキシティにあるシルフカンパニーが陥落したと知り、レッド達がロケット団を壊滅させたのだと安堵した。

 すると、それを感知したミュウツーが一部の木々をサイコキネシスで粉砕して『R』というメッセージを作った。

 そして今日がロケット団が壊滅して3日目の昼。あれからミュウツーは出てきていない。自分もただその時が来るのをただひたすら待っているだけだった。

 

 

「この音は」

 

 

 すると何処からか、エンジンの音が聞こえてきた。この音には聞き覚えがある。だんだんと音が近くなると、それは森から出てきて私の前で停まった。

 

 

「久しぶりだな、カツラ」

「レッド」

 

 

 どうやら、役者は揃ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 FR号を走らせて2時間ほど。目的地であるハナダの洞窟の前で来ると、すでにそこにはカツラがいた。その姿を見て首を傾げる。見た感じだと数日はここでキャンプをしたように見えるが、ミュウツーとは会えなかったのだろうか。

 

 

「しかし、どうしてここでキャンプなんか」

「彼が君が来るのを待っていたんだ」

「彼?」

『──ワタシだ』

 

 

 頭の中に直接声が届くと、目の前にミュウツーがテレポートして現れた。すでに何度もナツメのテレポートを見て体験しているので、そこまで驚きはしなかった。

 

 

「お前が? なんでだ」

『レッド。ワタシはお前と戦いたいのだ』

「……お前、か。お前達ではなく、俺と。教えてくれ、何故なんだ?」

『理由は三つある。一つは自分を生み出したこの世界への怒りや多くの感情を吐き出したいがため。二つ、ワタシはここからこの間の戦いを見ていた。故に、お前と戦いたいと思ったからだ。そして三つ目は……』

 

 

 ミュウツーは何かを言いかけて洞窟の方を向いた。そこには入り口からずらりと奥まで、洞窟に生息しているポケモン達がレッドを見ていた。

 

 

『彼らはお前を慕っている。捕まえてすらいないのに、彼らはお前を主だと思っている。ここのポケモン達は他と比べれば凶暴だ。そんな彼らがお前に心を許す。それをワタシも確かめたいのだ。目には見えない、しかし確かにある人とポケモンの繋がりを』

 

 

 正直、驚いている。もっとミュウツーは好戦的なイメージがあった。でも、目の前の彼は人と同じように悩み、苦しみ、そして答えを探している。

 洞窟にいるポケモン達に目を向ける。視線に気づくと、彼らはまるで『おーい!』と言いながら手を振っているようだ。それを見てつい口角が緩んでしまう。

 

 

「いいだろうミュウツー。お前がそこまで言うんだ、俺も全力で答えよう」

『感謝する、レッド』

「それと俺は病み上がりなんでな。それでも、全力を出すが……そうだな、3分。時間は3分間、その間だけ俺は全力を出してお前とぶつかる。それでいいか?」

『かまわない。お前の状態は把握している』

「助かるよ」

 

 

 礼を言ってポケモン達を全部外に出す。いつもの手持ちに加えて、イーブイとラプラスも連れてきた。持っているポケモン図鑑、帽子と上着、それとシャツをフシギバナに預ける。素肌というより全身を包帯で巻いた姿が露わになる。

 そのつるで器用にフシギバナは服を持つと心配そうに鳴いた。それは彼だけはなく、フシギバナの頭に乗ったピカチュウが、その小さな手で何かを訴えている。

 

 

「また失くすとナナミさんに怒られるからな」

「ピカピカ!? (俺の手助けはいいのかよ⁉)」

「ありがとうな、ピカ。けど、今回は俺自身の力で戦うよ。サンダーからの置き土産もあるし、リハビリにはちょうどいい」

「リハビリのレベルがラスボスなんだよなぁ。と、おいらは思った」

「ふっ。もし、ヤバくなったら止めてくれよ。頼んだぞ、リザードン、スピアー」

「リザァ!」

「……(こくり)」

 

 

 手持ちのポケモンでこの二匹が一番レベルが高く、常日頃からレッドとのスパーリングをしているため、その分突出して戦闘経験も豊富であり彼とも渡り合えることができていた。

 準備が整った両名は、洞窟から少し開けた土地へ移動する。

 レッドはすぅーと大きく息を吸って吐き、拳を構えた。

 

 

「さあ、やろうかミュウツー。俺達のポケモンバトルを!」

『いくぞ!』

 

 

 ミュウツーが宙に浮くとサイコパワーが一気に膨れ上がった。

 ──ミュウツーのサイコウェーブ! 

 サイコウェーブで作り出したたつまきが発生。だがそれは、たつまきというよりもサイクロンに近い。地面を削り、飛んでくる枯葉や木々を巻き込みながらレッドに迫り、そのまま飲み込んだ。

 

 

「なぜだ、なぜレッドは避けないんだ!?」

「まあ見てなよ。うちのマスターすごいから」

「あ、ああ。ん? 私は今誰と……」

「ゴン(適当)」

 

 

 レッドがサイクロンに飲み込まれて数秒。そこに少しの変化が起きた。バチッバチッと電気が走る。まるで夕立のようで、雷が鳴り響く中レッドの声が轟く。

 

 

「はぁあああ!!」

 

 

 一瞬にしてサイクロンは消し飛んだ。

 ──レッドのフォルムチェンジ! レッドはエレキスタイルに変化した! 

 どうやらサンダーがくれた雷の玉はうまく同調していた。さすがにナツメと戦った時よりは出力が落ちるが、それでも十分すぎるほどのエネルギーが常に湧き上がるのを感じる。それに、先の戦いで限界を超えたためか、作り出せるエネルギーの量が増えたようだ。以前よりも確実に強くなっているのを感じる。

 

 

「さあ、今度はこっちの番だ!」

 

 

 レッドは地面を蹴ってミュウツーへと肉薄する。エスパーとの戦いはナツメで嫌と言う程味わった。彼女との経験から察するに、やはり遠距離より常に間合いを詰めて戦う方がエスパー使いには効果がある。

 

 

「ふん!」

 

 

 ──レッドのかみなりパンチ! 

 

 

「な⁉」

 

 

 しかしレッドの拳はミュウツーには届かず、あるモノで受け止められてしまった。

 

 

「あ、あれはスプーン! そうか、念で武器をつくりだしたのか⁉」

「エスパー使いはみんな応用がうまいなぁ」

「まったくだ。ん?」

「ゴン」

 

 

 自慢の拳はスプーンで受け止められてしまった。が、ナツメに比べれば大したことない。それは盾というよりは武器。防御力はさほどないだろうと見越し、レッドは足に力を入れ、体をねじって強引にスプーンごとミュウツーを押し込む。

 

 

「守ってたら、負けるぞ!」

『──!』

 

 

 ──ミュウツーのサイコカッター! 

 照準はあわせず、間合いをつくるために無造作に放ったそれはレッドの体を斬り裂き、地面へと無数に落ちていく。

 だがレッドはすぐに前を詰める。ミュウツーは上空で、サンダーが居ないいま飛ぶことはできない。そう跳ぶことならできる。

 ──レッドのでんじほう! 

 両手ででんじほうを地面に向けてその推進力で空へと跳び、足に力を込める。そうメガトンキックだ。

 が、なぜかミュウツーの方が一歩早い。

 ──ミュウツーのさきどり! ミュウツーはレッドにメガトンキックをした! 

 

「ぐほっ⁉」

 

 

 相手の技を自分の技として使い、さらに1.5倍のダメージを与える癖のある技を食らったレッドは地上へと激突。

 

 

「さきどり! エスパーポケモンならではの戦法か!」

「まあ、そうそう何回も続かないゴン」

「たしかにな」

 

 

 地上に激突したレッドはそのまま砕けた地面の下敷きになったまま出てこない。警戒しながらも近づくミュウツー。

 その時、何かが土の塊や岩を押しのけてミュウツーの腕に絡みついた。

 

 

「捕まえたぜ」

『──これは包帯?』

「これは痺れるぜ……おらぁ!」

 

 

 ──レッドの10まんボルト! 

 

 

『ぐぅううう!!!』

「まだまだ!」

 

 

 巻き付いている包帯を手繰り寄せ、再度拳に電気を込める。

 ──レッドのかみなりパンチ! 

 衝撃。

 その振動はカツラたちがいるところまで伝わるほどの威力だった。

 

 

「決まった。今の音、確実にミュウツーに入った音だ!」

「いや、どうやら引き分けだゴン」

 

 

 レッドの左手は確実にミュウツーを捉えていた。が、同時にミュウツーが作りだしたフォークもまた彼の腹を捉えていた。

 ──限界だ。

 レッドの体からエネルギーが消え、倒れそうになったのをミュウツーが受け止めた。

 

 

『刃は潰してある。それでも痛いだろうが』

「ああ。ちょっといてぇや……だけど、悪いな。時間切れだ」

『そんなことはない。確かにお前の拳はワタシに届いていた。お前はスゴイ』

「えへへ。満足、出来たか?」

『今まで悩んでいたのが嘘なぐらい晴れやかな気持ちだ。感謝する、レッド。お前のようなトレーナーに会えて』

 

 

 レッドはミュウツーの前で拳を作り、彼もその意図を察したのか苦笑しながらコン、と拳と拳をぶつけ合った。

 そんな二人の様子を眺めていたカツラはふと言葉をもらした。

 

 

「あのミュウツーと互角に渡り合えるレッドくんが凄いのか、それともミュウツーを生み出した私とフジ博士の研究がすごいのか。もう、訳が分からない」

「まあ、両方凄いってことでいいんじゃね?」

「そうかな……そうかもしれないな。ありがとう、カビゴンくん」

「ゴンゴン」

 

 

 ミュウツーに肩を貸してもらいながらレッドはカツラの下へ戻ると、ポケモン達が心配で駆け寄ってきてその対応に追われる。

 そんな中、カツラが手にあるボールを渡してきた。それはマスターボール。どんなポケモンでも絶対に捕まえられる、この世に立った数個しかない特別なボール。

 それを見てレッドも始めてマスターボールの存在を思い出した。

 

 

「マスターボール、これをどうしろって?」

「ミュウツーと約束していたんだ。すべてが終わったら、これに入れてくれと」

「お前も、それでいいのか?」

『ああ。ワタシの力は強大だ。それに、カツラにはワタシの細胞が残っている。離れ離れになるほど、それはカツラの命を蝕む。だから、これでいいんだ』

「……わかった」

 

 

 ボールを受け取り、そのままミュウツーの胸に押し付けるとマスターボールはその力を見せた。ミュウツーが入ったマスターボールをカツラに渡し、レッドは言った。

 

 

「二人には色んなことがあったと思う。でもあんたは、こいつの生みの親なんだ。だから、子供の面倒はしっかり見てやれよ」

「……ああ、そのつもりだ!」

 

 

 互いに握手をして、笑みを浮かべる。

 これで残る問題はあと一つ。レッドはリザードン以外のポケモンを戻し、彼の背に乗る。

 

 

「それじゃあまたなカツラ、ミュウツー」

「ポケモンリーグがんばれよ」

「ああ!」

 

 

 別れを告げてリザードンは飛び立つ。目指すは最後の地。

 

 

「さあ、行くぞ。トキワシティへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキワの森を一人の少女が歩いている。

 この森は少女の遊び場である。

 自然と静かなところが大好きな自分にとって、ここはまさに大きな公園ともいえた。何も考えず森を走り抜けるのはとても気持ちいいし、息を吸えばどこから甘い匂いが漂ってくる。ちょっと森を抜ければ川も流れているし、遊ぶことに事欠かない。周りの男の子達はよくイシツブテ合戦なるものをしているが、自分には無理だと分かって一人で絵を描くのが日課になっている。

 そんな少女でも、ここ最近の森の様子がおかしいことに気づいている。静かな森がざわついている。まるで、何かに脅かされているようだ。

 だからなのか、いつもは迷うはずのないこの森で迷ってしまった。大人たちが言っていた。最近のトキワの森はおかしいから入ってはいけないよと。

 それでも、わたしの遊ぶ場所はここぐらいしかないんだと、少女は言うことを聞かずに森に入ってしまった。

 

 

「な、なに!?」

 

 

 その時、近くの茂みで音がした。それに、誰かに視られているような気もする。音がした茂みの方に思わず近づいてしまう。

 しかし、それがいけなかった。

 茂みから一匹のポケモンミニリュウが少女に襲い掛かる。

 

 

「きゃぁあああ!!」

 

 

 少女は叫びながら思わず目を瞑ってしまう。だが、すぐに自分が地面の上にいないことに気づいた。

 顔をあげれば、そこには男の人が自分を抱いて助けてくれたからだ。

 

 

「え、え?」

「もう大丈夫だ。怪我はないかい?」

「う、うん」

「きゅぅうう!!」

「──」

 

 

 すると彼は少女を下すと、ミニリュウの下へ歩いていく。

 思わずわたしは叫んだ。

 

 

「あ、あぶないよ!」

「大丈夫だって……ほら」

「きゅう~」

「ほ、ほんとうだぁ!」

 

 

 先程の怖い顔はなく、すりすりと自分の頭を撫でて貰いたいのか彼の体にこすり付けている。

 

 

「よしよし。ほら、向こうに川がある。そこへ行くといい」

「きゅー!」

「お、お兄さん。ポケモンの言葉がわかるの?」

 

 

 少女は思わず聞いた。自分にも不思議な力がある。ポケモンの言葉を聞いたり、傷を癒す力が。まさか自分の他にもいたんだとつい興奮してしまった。

 

 

「わかるさ。だって、ポケモントレーナーだもの」

「トレーナーかぁ。わたし、ポケモン持ってないんだ」

「そっか。普通は持ってると思うけど、まあ俺もそれでイジメられたっけ。あはは!」

「それ、笑いごとですますことなの?」

「だって、逆に泣かしてやったし」

「すごーい!」

「ま、鍛えてますから。しかし、ここで会ったのも何かの縁だ。そうだな……お、ちょうどコラッタが。あの子をゲットしてみようか」

「で、でも、わたしポケモンいないよ」

「ほら、これを投げてごらん」

 

 

 お兄さんがボールを一個渡してきたので、思い切って投げる。ポンっと音がするとそこにはピカチュウがいた。

 

 

「ほら、ピカチュウに指示を。でんきショックって」

「うん。え、えっと、ピカチュウでんきショック!」

「ピカ!」

 

 

 ──ピカチュウのでんきショック! コラッタの体力はのこり1だ! 

 

 

「よし。今度はボールを投げるんだ」

「えい!」

 

 ボールが弧を描きコラッタへと当たると、簡単にコラッタを捕まえることができた。

 

 

「おめでとう。これで、コラッタは君のポケモンだ」

「ありがとう、お兄さん! ……ん? あ、う、うしろ!」

 

 

 礼を言うために彼の方へ向いた少女の目には、彼の背後に一匹のスピアーが近づいてきていた。しかし、彼は大丈夫だよと言ってスピアーの頭を撫でた。

 

 

「こいつも俺のポケモンさ。ピカもこいつもここの出身なんだ。で、どうだスピアー」

「──」

「そう、か。わかった。お嬢ちゃん、ここは危険だ。家まで送ろう、どこの子なんだい?」

「トキワシティだよ」

「奇遇だな。俺もトキワシティに用があったんだ。さあ、行こうか」

「う、うん」

 

 

 そしてわたしは、お兄さんと手をつなぎながら生まれ故郷であるトキワシティへと帰った。

 ただ、帰りの道はさっきと違っていた。

 まるで、いつもの森みたいにとても暖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキワの森の生態系がおかしい。ミュウツーとの一件のあと、ハナダのポケモンセンターに寄った際に出会ったマサキに言われた言葉だ。

 なんでも、本来いるはずのないポケモンがいるとのことだった。住処を移動し、そこに住み着くポケモンは少なからずいるのは学会の調査でも判明している。だが、それを理由にしてもいるはずのないポケモンがいるんだと。

 その例が先程のミニリュウだった。

 ゲームではサファリゾーンとコインの景品の二つが有名な入手方法ではるあるが、ここでは海にいるのだと聞いたことがある。だが、トキワの森には川が流れているといっても、ミニリュウはいきすぎている。珍しいと言うなら精々トサキントやアズマオウだろう。

 偶然森で助けた少女を町の大人たちのところまで届けたレッドは、そのまま彼らから森の詳しい状況を聞いていた。

 

 

「少し前からなんだ。やけに凶暴なポケモンが現れたのは」

「幸いにもニビシティへと続く道は舗装されているし、人もいるからいいんだが、子供たちが遊ぶようなところにまで現れていて困っているんだ」

「ふむ……」

 

 

 レッドは腕を組んで考えた。思い当たるのはロケット団ぐらいしかいなかった。ただ、何の目的でこのトキワの森を利用しているかはわからなかった。共通点があるとすれば、ボスであるサカキがこのジムリーダーであることぐらい。いや、だからなのだろうか。

 まあ、凶暴な野生ポケモン達に関しては自分が行けばなんとかなると思うが、それよりも優先すべきことがある。

 

 

「ありがとう。俺もジムでの用が片付いたら手伝うよ」

「ジム? うちのジムリーダーは長らく不在で、もう老朽化がかなり進んでるよ」

「……だろうね」

 

 

 レッドは振り返ってジムのある方へ歩き出すと、あっと声を出して先程の少女の前に戻って頭を撫でながら言った。

 

 

「いいかい、ポケモンは友達で大切な家族だ。だけど、きみが悪い子になるとポケモンも悪い子になっちゃう。だから、大人の言うことを聞いて、いい子にしてるんだぞ」

「わたし、悪い子にならないもん!」

「あはは。そうだね。トレーナーになる気がなくても、これは大切なことだ。よく聞いてくれ」

「うん」

「最後までポケモンを信じるんだ。どんなに辛い時でもね。そうすれば、ポケモンはきっとその気持ちに応えてくれるよ」

「わかった。ね、ラッちゃん!」

「ちゅー!」

 

 

 最後に思いっきり頭を撫でて、今度こそトキワジムへ向かう。

 トキワジムは町のはずれにあって、確かに町の人がいったようにかなり老朽化が進んでいるようだった。前にある看板には閉鎖中。

 

 

「いくか」

 

 

 帽子を深くかぶり直し、入り口のドアを開けた。

 中は真っ暗で何も見えない。そう思った瞬間天井のライトに光が灯った。

 

 

「うっ」

 

 

 思わず腕で光を遮る。薄っすらと前方、そこに一人の影が見えた。だんだんと目が慣れると、フィールドの中央に誰かが立っている。いや、誰かではない。サカキだ。

 いつもの真っ黒いスーツを身を纏い、他のジムリーダーとは圧倒的に違う何かを思わせるその佇まい。

 背中に冷や汗が流れるのがわかる。自分は生まれて初めての感覚を味わっているのだと気づいた。

 それは──。

 

 

「さあ始めようか。私達のポケモンバトルを」

 

 

 その感情はまさしく、恐怖であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いや、俺の勝ちだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恐怖──

 たしかに俺はいま初めて、この世界の人間に恐怖を抱いた。

 なぜ、と自分に問う。

 簡単だ。それはサカキが、今まで出会った誰よりも強く恐ろしい男だからだ。

 先日のナツメとの戦いは不思議と恐怖は感じていなかった。サンダーがいたから? みんながいたから? わからない。

 俺はいま、未知の領域へと踏み込んでいる。

 それが怖い。

 だが、戦わなければならない。ここで、ロケット団を完全に終わらせるために。

 

 

「改めて自己紹介をしよう。私がこのトキワジムのジムリーダーにして、カントー最強のジムリーダー。そして、このカントーを裏で牛耳っているロケット団の首領(ボス)・サカキ」

「……レッド、マサラタウンのレッドだ」

「ふふっ。この時を待っていたぞ、レッド。まずはよくやったと誉めてやろう。数々の作戦を妨害し、幹部をも倒して、ついにはロケット団を壊滅に追い込んだその強さを」

「御託はいい! いいから俺とバトルしろ!」

「まあそう焦るな。まず初めに言っておこう。ここには私一人だけだ。他の団員はいない。まさに正真正銘の真剣勝負。加えて──」

「……?」

 

 

 突然サカキが着ているジャケットを脱いで横に払うとフィールドにボールが落ちた。ボールは6個、訳が分からない。

 

 

「何の真似だ」

「なに、ちょっとしたハンディをやろうと思ってな。お前は普通にポケモンを出していいが、私はここから落ちているボールを拾ってポケモンを出す。もちろん、どれに何が入っているかは運次第だ」

「……断る!」

「ほう」

「ハンディを貰った状態でお前に勝っても意味はない! いいだろう、お前の戦い方に乗ってやる」

 

 

 レッドもまた六個のボールをフィールドに投げたあと後ろに下がる。サカキと同じぐらい自分とボールの距離を保っている。これで、互いに手持ちポケモンはいない。何をするにも目の前にあるボールを取らなければいけない。

 

 

「そうこなくては面白くない。では……いくぞ!」

「!」

 

 

 両者が一斉にボールへと駆け出した。先手は──レッドだった。

 ボールを投げ現れたのはフシギバナだった。

 

 

「はっぱカッター!」

 

 

 ──フシギバナのはっぱカッター! 

 相手がまだ分からない以上無難な攻撃をするしかない。だが、フシギバナのはっぱカッターは虚空を斬り裂くだけだった。

 

 

「な──!」

「はっぱカッターか。威力はそこそこだが、急所によく当たる。悪くない選択肢だ。だが──」

「──! フシギバナ、後ろにつるのムチ!」

「ほう!」

 

 

 フシギバナの体格上、後方の確認は困難であるが見事つるのムチでサカキのポケモンを捕らえた。

 だが、そのポケモンはレッドの驚くべきポケモンだった。

 

 

「パルシェンだと⁉」

 

 

 トキワジムはじめんタイプ専門。ゲームでも使ったことがないはずだった。それがなぜ。

 

 

「完全に後ろ取ったつもりだったが、よく捕まえたな。まあ関係ないが。パルシェン、れいとうビーム!」

「フシギバナ、ねむりごなだ!」

「無駄だ」

「どうかな!」

 

 

 ──パルシェンのれいとうビーム! こうかはばつぐんだ! 

 たしかに並みのフシギバナだったら一撃で落ちたかもしれない。だが、弱点の対策を常に用意してきたのだ。だが、サカキのパルシェンは強い。一撃、一撃なら耐えるはずだ。

 ──フシギバナのねむりごな! パルシェンはねむってしまった! 

 ──フシギバナはこおってしまって動けない! 

 ギリギリだった。最後の力でフシギバナはよくやってくれた。つるのむちでパルシェンを捕まえてなければ結果は変わっていたかもしれない。

 

 

「パルシェンはねむり、フシギバナはこおり漬け。ドローというわけか。さぁ、どんどん行くぞ」

 

 

 休むことなく戦いは開戦。

 そして次も先にボールを投げたのはレッドだった。現れたのはカビゴン。一歩遅れてサカキが投げたボールが開く。

 

 

「メガトンパンチ!」

「往生せいやぁ!」

 

 

 ──カビゴンのメガトンパンチ

 ──……ニドクインのカウンター! 

 顔面にカウンターを受けたカビゴンは一瞬怯んでしまい、そのままニドクインによってジムの外へと投げ飛ばされてしまった。

 

 

「またッ!」

「どうしたレッド。何を焦っているんだ? ほら、次だ!」

 

 

 ニドクインを戻したサカキの次のポケモンはゴローニャであった。ゴローニャはジム全体を利用してパチンコ玉のように辺りを転がり回る。

 レッドは次のポケモンを出すためにボールを探す。だが、そこで何かの視線に気づいた。

 ゴローニャはただ壁を跳ね返っているわけじゃない……? 

 目的は別だ。これは牽制のようなものだ。俺がボールに手を伸ばすのを待っているのだ。その瞬間を狙って次のポケモンを葬ろうとしているのか。

 なら、ボールを取らなければ……。

 視線を壁に開いた穴の向こうにいるカビゴンへと向ける。だが、サカキがそうはさせまいと指示を出す。

 

 

「ゴローニャ!」

「そっちから来てくれるならこっちのもんだ! カビゴン!」

 

 

 カビゴンは起き上がって突撃してくるゴローニャをずつきを浴びせた。レッドの育成によって鍛えてあげたカビゴンの耐久力と防御力なら問題ない。そしてゴローニャは、そのまま纏っていた岩を落とした(・・・・)

 

 

 ──ゴローニャのいわおとし! 

 

 

「甘いぞレッド! だいばくはつ!」

「カビゴン!」

「あ、死──」

 

 

 ──ゴローニャのだいばくはつ! カビゴンはたおれた。

 

 

 目の前で大きな閃光が起こる。レッドは咄嗟に足元に転がっていたボールを壁に向けて蹴った。同時に爆音が収まると、ドンッと大きな音を立てながらカビゴンは倒れる。

 そして次の行動を起こそうとしたその時、首元に鋭い槍を突き付けらて身動きが取れなくなった。

 そのポケモンは、よく知っているポケモンだった。

 

 

「スピアー……」

「ふふっ。驚いたか? 私も初めてお前のポケモンの情報を知った時は驚いたよ。まさか、私と同じポケモンを使っているとな」

「お前は……じめん専門のジムリーダーのはずだ」

「ほう、よく知っているな。たしかにその通りだ。先程のパルシェンは例外だがこいつは違う。私はここで育った。そして最初に捕まえたのがビードル! 私と言えど最初のポケモンだけに愛着は湧く。だからこそ、こいつは特別だ」

「へ、へへ。ロケット団のボスとお揃いとは嬉しいね……」

 

 

 首を槍で刺されたくないために一歩、また一歩と時間をかけて後ろに下がる。ただ視線だけは、先程転がしたボールに向ける。コロコロとゆっくりと壁に向かって転がっている。

 

 

「しかし、お前は詰めが甘い。先程の戦い、お前がカビゴンを出した時点で決め技をだいばくはつに決めていた。そのためにニドクインで外に投げ飛ばし、ゴローニャでトドメを刺す。ポケモンバトルに求めらえるのはその一瞬のなかで先の先を読むバトルセンス! これこそがトレーナーの駆け引きというやつだ!」

「……」

 

 

 戦闘分析を聞かされている間に壁へと追いやられてしまう。そして、ボールはもう少しで壁に当たる。

 

 

「さあ、絶体絶命だぞ。降参するか、レッド?」

「降参は……」

 

 

 もう少し……もうちょっと……。

 転がり続けたボールがようやくたどり着き、壁に開閉スイッチが当たった。

 

 

「しない! スピアー!」

「なに⁉」

 

 

 刹那、目の前のスピアーが、レッドのスピアーによって引き離される。

 スピアー対スピアー。実力は互いに拮抗している。しかし、レッドのスピアーにも意地というものがある。主のために勝利を捧げること。そしてなによりも、同族に負けたくないという執念がサカキのスピアーより一歩上をいった。

 

 

「そのまま叩き落せぇえええ!」

 

 

 ──スピアーのダブルニードル! 

 ダブルニードルを食らわせながら急降下し、地上へと叩き落す。

 

 

「トドメのはかいこうせん!」

 

 

 ──スピアーのはかいこうせん! きゅうしょにあたった! サカキのスピアーは倒れた! 

 サカキの言葉通りに動くのは癪だが、スピアーをボールに戻しすぐに次のボールを構えて投げる。

 

 

「ガメェ!」

「よし!」

 

 

 みずタイプのカメックスならサカキの残りの手持ちと有利に立ち回れる。スピアーが放ったはかいこうせんが起こした煙が晴れる。が、そこには倒したはずのスピアーはおろか、サカキもいない。

 それに気づいた時にはジム全体、いや地面が揺れ動いていた。

 

 

「まずい! 外に出るんだカメックス!」

「ガメェ⁉」

 

 

 足が遅いカメックスに走れと言うのは無理だった。それでも諦めずにレッドはカメックスを担いでジムの外へ向かうが、ジムの崩落には間に合わなかった。

 カメックスはレッドを庇おうとするが完璧に守れたわけではなく、少なからず瓦礫がレッドに降り注ぐ。

 揺れとジムの崩落が終わったころには、なんとか外には出てこられた二人。

 

 

「ぐぅ……くそ、傷が……」

 

 

 ヤマブキを出る前に、ナツメのいやしのはどうによって体力だけは回復したが、傷は未だに完治してはいなかった。それにミュウツーとの連戦がここに来て響いていた。

 

 

「先程のも悪くはなかった。カビゴンがやられるのを確信し次の一手を放つ、アレはいい。だが、次がよくないな。はかいこうせん、威力は申し分ないがその分反動で動けなくなる。そしてお前はそれに夢中になり、私から目を反らした。戦いの最中にトレーナーから目を離せば、その一瞬の隙を相手に突かれる。いまのようにな」

「はぁはぁ……クソが。なにちゃっかし、8体目がいるんだよ」

 

 

 サカキの後ろにはすでに全部のポケモンが出ていた。ニドクイン、ニドキング、サイホーン、サイドン、ダグトリオ。先のスピアーとパルシェンとゴローニャを合わせれば8体だ。

 

 

「奥の手は最後まで取っておくものだ。改めて紹介しようレッド、これが私のベストメンバー。そしてバトルは続いているぞ。次はトレーナーの動きを封じる。サイドン、じわれだ!」

 

「──カメックス!」

 

 

 足元が崩れ落ちるとすぐに傍にいたカメックスの手を掴み、空いていた右手で割れた地面の出っ張りを掴んだ。

 

 

「ぐぅあ!!」

「が、ガメェ!」

「離すわけないだろう!」

 

 

 カメックスが離してくれと言うができるわけがない。大切な仲間だ。

 だが、体が悲鳴をあげている。カメックスの手を掴んでいる手に電気を流し絶対に離さないようにする。それでもこの状況下で約86㎏もあるカメックスを支えるのは無理があった。

 だから、無理やり体を酷使して、カメックスを上へと放り投げた。それのおかげで無事地上には戻れたが。

 

 

「ほう。カメックスを助けたか。だが、それでは指示が出せまい。サイドン、つのドリルだ!」

「ガメェーーー!!」

 

 

 ──サイドンのつのドリル! 

 つのドリルによりカメックスの腹の甲羅が砕け、その場に倒れてしまう。

 

 

「カメックス⁉」

 

 

 崖にぶら下がっているためにカメックスが状況が分からず急いで崖を上る。だがそこには倒れているカメックス。

 そしてレッドを見下ろすサカキとそのポケモン達。

 くそ、何か手は……あれは。

 周囲を見渡せば、すぐ目の前にボールが一個あった。リザードンかピカチュウのどれか。そんなことはどうでもいい。まだ、まだバトルは終わっていない。ここで終わらせてなるものかと、意地でボールに手を伸ばす。が、ダクトリオによって開閉スイッチを破壊されてしまう。その衝撃で転がってきたボールを拾う。中にはリザードンがいた。

 

 

「リザードン……!」

「そのリザードンがお前のパーティーでは一番厄介だからな。この状況下でも覆されてしまうかもしれないと思うとぞっとする」

「くっ」

「しかし、惜しい。惜しいなレッド」

「何が⁉」

「気づかないか? なぜ、お前がこれほどまでに私に一方的にやられるのか。それは、お前には圧倒的に欠けているモノがあるからだ」

「欠けている、もの……?」

「知りたいか? それは──強者との戦いだ! レッド、お前は確かに強い。他のトレーナーやジムリーダーなどでは絶対に歯が立たないくらいに。だがお前はトレーナーとのポケモンバトルよりも、ポケモン本来の自然界における生存競争ばかり行ってきた。人はポケモンには勝てない。だがお前は勝った、勝ち続けた。故に、お前には公式でのポケモンバトルの経験と強いトレーナーとのバトルが圧倒的に足りてないのだ!」

 

 

 俺は、言い返せなかった。トレーナーとバトルしたのは本当に最初の旅の方とおこづかいを稼ぐときだけ。なにせ、弱かったから。むしろ、トレーナーとバトルしてレベルを上げるよりも、自分と鍛錬をした方が効率がよかったからだ。

 そしてなによりも、正式なポケモンバトルは数えるほどだった。タケシ、カスミ……本当に少ない。ポケモンバトルではなく、命をかけた真のポケモンバトルしか行ってこなかった。キョウ、マチス、ナツメと。だから思い上がっていたのか、俺は。

 こんな強い奴らと戦って勝った俺は負けないと。

 

 

「だがあのシルフでの戦い。あれは見事だったよ。あのナツメの全力とサ・ファイ・ザーとの戦いに勝つとはな。しかしあのナツメですら私の部下だった。何故だと思う? 答えはシンプル、私が強いからだ。ロケット団のボス・サカキでもあり、ジムリーダーの私の呼び名は『大地のサカキ』! この地上に立っている限り、私は負けはせん!」

「大地の……サカキ」

「レッド、お前はここまでよくやった。だが、ここまでだ。お前を倒し、再びロケット団を再興する。そのために、以前からこのトキワの森に目をかけてきた」

「……まさか、最近森の生態系が崩れたのは!」

「そう、すべては私の計画だ。あらゆるルートで手に入れたポケモンはタマムシ地下で研究材料となり、隣のヤマブキで戦闘訓練を施し、クチバのサントアヌ号を使ってグレン島を経由しトキワの森へ」

「だが、どうしてここに」

「簡単だ。トキワの森はカントー最大の森。養殖場にはピッタリだ。そして、ジムリーダーがいない町のトレーナーというのはな、レッド。質が格段に落ちるんだよ。だから、この町の連中は手出しができないんだ!」

 

 

 

 冷静にサカキの話を聞き、静かに怒りの炎を燃やしていた。

 サカキは言った。ここで育ったと。生まれ故郷を汚し利用する。今ならあの時のグリーンの気持ちがわかる。あの森は美しいところだ。マサラから出て最初にポケモンをゲットしたのも、修行をしたのもトキワの森だ。

 そして何よりも、ポケモンは自然と共にあるべきだ。人とポケモン、そして自然のバランスが大事なんだ。それを崩そうとするサカキ、お前は──。

 

 

 

「お前は許しておけない! 故郷ですら平気で実験場にするお前に、俺は負けない! これもうジムリーダーとチャレンジャーの戦いじゃない、ロケット団のボス・サカキとの戦いだ!」

「ならばこちらも、容赦なくお前を潰す!」

 

 

 だが見栄を張っても手元にはポケモンがいない。残りのピカチュウのボールすらどこにあるか。

 そう思った矢先に、ピカチュウのボールが手元にやってきた。

 

 

(俺の想いに気づいて、自ら来てくれたのか!)

 

 

 手札は揃った。目をカメックスに向ける。見ろ、奴を。まだ、カメックスの目は死んではいない。任せろ、そう言っている。

 

 

「ピカチュウを手にしても無駄だ! ピカチュウが攻撃を行うのに最短で5秒はかかる! その間に私のニドキングがお前にトドメをさす! どくづき!」

「カメックス! ハイドロポンプ!」

「血迷ったかレッド! サイドン、再びつのドリル!」

 

 

 ──カメックスのハイドロポンプ! 

 ──サイドンのつのドリル! カメックスはたおれた。

 

 

「終わりだレッド!」

「いや、俺の勝ちだ!」

 

 

 ──ニドキングのどくづき! 

 右手にあるピカチュウのボールを上に投げる。そしてその上には、先程倒れる前に放ったハイドロポンプの大量の水が雨となって降り注ぎ始める。同時にレッドは左手でニドキングのどくづきを受け止め、どくをもらってしまう。

 ──レッドはどくじょうたいになった! 

 

 

「サカキ、水ってのは電気を通すもんだぜ」

「まさか──!」

 

 

 そう、それが目的だ。あまごいではなくハイドロポンプを選んだのは、お前を油断させるためだ。お前だけではなく、ここら一帯がハイドロポンプの雨によってずぶ濡れだ。

 そして、俺の手からピカチュウへのじゅうでんはすでに完了している! 

 

 

「10まんボルトぉおおお!!!」

「ば、ばかな! エネルギーがすでに蓄積されている!?」

 

 

 ピカチュウの10まんボルトはサカキとそのポケモン、そしてレッドを巻き込んだ。だが、レッドに電気は効かない。特大の10まんボルトを食らったサカキ達はその場に倒れ、レッドは立ち続けサカキの傍に近づき言った。

 

 

「な、なぜお前は無事、なんだ……」

「忘れたのかサカキ。俺に……電気は効かない。そして自らエネルギーを生み出し、ポケモンにも分け与えることができる。だから、僅か3秒で攻撃が可能になったんだ」

「ふっ……やはりお前は、規格外すぎ、る。みごと、だ……マサラタウンのレッド。お前の……かち、だ──」

「いや、俺の……まけ、だ。最後までポケモンバトルを制していたのはサカキ、お前だ。俺は結局、いつもと……変わ、ら……な──」

 

 

 その場に倒れるレッドにピカチュウが駆け寄る。

 どうやらニドキングのどくが体中に回ってきたようだ。もう目すら開けられない。

 微かにピカチュウの声が聞こえる。

 

 

「やっぱ……イシツブテ……受けと……ば……よか──た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──今度こそ、死んだのか。俺は」

 

 

 意識が覚醒し、第一声の言葉がまたそれだった。

 しかしそれを隣にいる少女が否定した。

 

 

「ウフフ。お兄さんは生きてるよ」

「きみは……あの時の子か。ここは?」

「トキワシティのポケモンセンターだよ。大人達がお兄さんをここまで運んできてくれたの」

「そうか、ありがとう。でも、俺はどくで死んでたはずじゃ」

「どく? 見つけた時は血だらけで、体中がボロボロ。骨も折れてたって」

「そうか……生きているのか、俺は。サカキ……俺以外に誰かいたか?」

「ううん。お兄さんだけだったよ。他に誰かいたの?」

「いや、いいんだ」

 

 

 結局、サカキを倒すことはできなかった。これで、サカキは生きていることになる。つまりはこの先、金銀でロケット団の残党が暗躍することだろう。

 だが、それは俺の役目ではないかとさえ思えてしまう。きっと、金銀の主人公がなんとかするだろう。それにレッドの役目は終えたはずだ。

 なら、あとはチャンピオンになって自由に生きるだけだ。誰でもない、俺の人生を。

 思いにふけていると、少女が嬉しそうに教えてくれる。

 

 

「あとね、やっと町の人が重い腰をあげたの! いまトキワの森のポケモン達をなんとかするために森に向かってるの」

「そうか。なら、俺も手伝わないと」

「で、でも、ジョーイさんが絶対に安静にって」

「何とかなるもんさ……ん? どうした」

 

 

 少女はコラッタを抱きしめがらお願いを言ってきた。

 

 

「あの、ね。ジムはね、すごい戦いで壊れちゃったんだって。ほら、この町の人ポケモン強くないから、教えてくれる新しいリーダーがほしいなって」

「……それって、俺がジムリーダーになってほしいってこと?」

 

 

 コラッタも一緒に少女と頷いた。

 ジムリーダーか。いずれはグリーンがトキワジムのジムリーダーになるんだっけ。けど、そうか。それも悪くないなと思って、すぐにナツメのことを思い出した。ジムリーダーになったらナツメの傍にいられないし、そもそもカントーに留まっているかもわからないのか。

 レッドは頭の中で将来のことを考えた。だが、すぐに止めた。勘だが、性に合わなそうだ。

 

 

「大丈夫さ。きっとみんなを導いてくれるジムリーダーがやってくるよ。それじゃあ、ありがとうな!」

 

 

 少女に別れを告げ、レッドは窓から外へ降りる。上手く着地したつもりだが、足が泣くほど悲鳴をあげているようだ。これもヤマブキで似たような感じを体験した気がする。

 トキワの森へ走っていると、隣に変な気配を感じて顔を横に向けた。

 

 

「ミュウ、どうして」

「ミュ~」

 

 

 声をかけてもミュウは自由気ままだ。体の周りを飛んでると思えば、いきなり頭の上に乗ったり。おかしな奴だ。

 自分でもよくわからないが、どくを取り除いてくれたのはミュウではないのかと思い、声に出す。

 

 

「もしかして、お前が助けてくれたのか?」

「ミュ~ミュ~」

「? ああ、これで貸し借りなしって言ってるのか? だったらあと一回貸しが……いや、いいさ。ありがとう、ミュウ」

『ありがとうレッド。あの森を守ってくれて』

「え? お前──」

「ミュ~」

 

 

 今度こそミュウはどこかへ飛んで行ってしまった。思わず立ち止まってつい言ってしまう。

 

 

「なんだよ、テレパシーで喋れんじゃん!」

 

 

 だがミュウらしい。そう思えてしまう何かがあった。

 

 

「まあいっか。さてと、気を取り直して行きますか!」

 

 

 ミュウのためにも、自然とポケモンそして人間も守ってみせるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 







こいつ短期間で2回も死にかけてんな。
誰のせいなんだろうね。
一応補足で、サカキはメッチャ強いイメージがあるので、レッドのポケモンが強いのでその分強化してます。
ポケスペにおいてレベル差は絶対じゃないから多少はね?

それとピカチュウの10まんボルトに関しては原作通りです。

それに出番がないリザードンくんの明日はどっちだ!?
ラストのポケモンリーグは巻きます。超巻きます。
理由。ナツメ戦、ミュウツー戦、サカキ戦でほぼやり切ったから。
そして、ラストバトルの相手は――?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺か? 俺は……マサラタウンのレッドだ

技に関して過去作のみでしか覚えられない技・教え技でしたっけ? それも普通に使いますのでそこのところをご理解お願いします。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セキエイ高原ポケモンリーグ会場。そこは、ポケモントレーナーの誰しもが目指し、憧れる場所であり、頂点を決める祭典。

 地方にある各都市のジムバッジを手に入れ、チャンピオンロードを無事突破したものだけが四天王への挑戦権を得ることができる。そして四天王を倒しチャンピオンを倒した者こそが新たなるチャンピオンだ

 と、言うのがゲームでの流れであったが、どうやらここでは普通に誰でも参加できるものらしい。

 多くの人達がその目で見たいと、リーグ会場に続々と集まってきている。

 トーナメントはAブロックとBブロックの二つに分かれて行われる。二つのブロックであるが、予選はかなり多く一日では消化しきれない量になっている。

 ジムバッジが不要で参加できる大会で当然だともいえた。

 モニターに表示されたそれぞれのブロックには彼らの名前がもちろんあった。Aブロックにレッド、ブルー。Bブロックにグリーンとリーフがそれぞれ。

 順調にいけば途中で当たり、互いの準決勝の勝者が決勝の舞台で相見えることになる。

 男同士ということもあって、レッドとグリーンは予選が始まる前に互いに激励を送っていた。

 

 

「俺はAブロックでグリーンはBブロックか」

「つまり、決勝で当たるということだな」

「おいおい。妹のリーフは眼中にないってか?」

「そんな訳あるか。妹だろうとライバル、手加減は一切しない。お前だってあの女がいるだろう。それに、ドクター・Oなんてよく分からないのもいるしな」

「ドクター・O。いったいどこのユキナリなんだ……」

「とにかく決勝で会おう、レッド」

「おう!」

 

 

 互いに決勝で会うことを約束し、本当にマンガみたいな展開だと思ったレッド。しかし、彼もこの日をとても待ち望んでいたし、とてもわくわくしている自分も確かにいた。

 そしてなによりも、レッドには野望があった。

 

 

「フッフッフ。見てろよ、グリーン。最初にヒトカゲを捕られた恨み、ここで返してやるぜぇ……」

 

 

 自分の色違いのリザードンを見ながら囁くレッドに、リザードンはボールの中でやる気をメラメラと出している一方、ピカチュウがしょうもないと言ったような顔をしていた。

 予選が始まり何時間にも及ぶバトルが繰り広げられた。

 レッドはスピアー、ピカチュウ、カビゴンを一試合ずつどれか一匹を選んで対戦者を葬っていた。多くの強者との戦いをしてきたレッド。そんな彼とまともに戦えるトレーナーはいなかった。

 

 

 そしてポケモンリーグ二日目。

 Aブロックの準々決勝まで勝ち進み、レッドの相手は名も知らぬトレーナー。もう片方はブルーとドクター・O。

 Bブロックはすでに準決勝で、グリーンとリーフの兄妹対決になったのだが……。

 

 

『勝者! マサラタウンのリーフ!』

 

 

 勝ったのはリーフであった。

 本選まであがると個室の控室が割り振られ、レッドはすぐにグリーンの下へ駆けつけ、彼の胸倉をつかんで激しく揺らしながら怒鳴った。

 

 

「あんなにカッコつけて負けてんなよぉ⁉」

「ふっ。リーフもしばらく見ない間に強くなった」

「妹の成長を喜ぶな! いや、喜んでいいが!」

「しかしな、レッド。俺だって全力を出した。それは見ていたはずだ」

「それは……わかってるけどよぉ」

 

 

 手持ちの情報を隠しているレッドと違い、二人のポケモンはすべて予選の間に公開されている。

 グリーンにはリザードン、ストライク、カイリキー、ピジョット、ポリゴン、ゴルダック。対してリーフはフシギバナ、キュウコン、ギャラドス、プテラ、ラッキーそしてカイリューだった。聞いた話では、ゲームセンターの景品で交換してからコツコツと隠れて育てていたらしい。

 

 

「カイリューには驚いたが、そこはまあゴルダックで対処できた。問題が……プテラとラッキーだった」

「……あれは、うん」

「ラッキーのかたくなる連打とちいさくなる、たまごうみのコンボで苦戦を強いられ、最後にはプテラに粘られてしまった。無駄に強かったぞ、あのプテラ」

「ごめん。そのプテラ、俺が鍛えてリーフにあげたやつ……」

「……」

 

 

 沈黙。

 一瞬目を見開くとすぐにいつもの鋭い眼光を向けてくるグリーンに、思わず目を反らす。今度はこちらが思いっきり体を揺さぶられた。

 

 

「お前も人の事は言えんではないか! 無駄に妹を強くしやがって!」

「だ、だって、あいつがひこうポケモン持ってないって言うからさぁ」

「お前はそうやって女を甘やかす!」

「しょうがないだろ! リーフにはつい甘くなっちまうんだよ!」

『只今より、Aブロック準々決勝第二試合を開始いたします。出場者はステージまで上がりください』

 

 

 二人であーだこーだと喧嘩しているとアナウンスが流れたことで、いったん冷静さを取り戻す二人。レッドは扉のドアノブに手をかけながらグリーンに言った。

 

 

「じゃあ、戻るわ」

「ああ」

「そこは勝てよって言わないのか?」

「ふっ。ライバルより妹の方を応援するに決まっているだろう」

「シスコンめ」

 

 

 誉め言葉を送りレッドは自分の控室に戻り、中継されている映像を見た。

 すでにバトルは始まっており、ブルーはプリンを、ドクター・Oはオニスズメを出していた。

 

 

「あれ。たしかブルーのやつ、鳥は苦手だって……」

 

 

 シルフカンパニーでサ・ファイ・ザーと対峙した時の怯えようを思い出す。案の定、ブルーは怯えつつも応戦する。

 しかしドクター・Oはオニドリル、ドードリオといった鳥ポケモンを次々と繰り出し、ブルーを精神的に追い詰めた。

 そして、戦いの中ドクター・Oの仮面が剥がれ……オーキドが真実を打ち明けた。

 6年前マサラから一人の少女が大きな鳥に連れ去られ行方不明になったこと。そしてその子が、あの旅立ちの日にゼニガメを盗んだこと。

 ブルーは語った。知らない土地に連れてかれ、覚えているのは自分の名前とマサラタウンという地名だけ。偶然知ったマサラタウンから自分と同い年の子供が旅立ったこと。本当は自分も同じようにポケモンと図鑑を貰って旅に出たかったことを。

 結果、準々決勝第二試合の勝者はドクター・Oことオーキドになった。

 その後、ブルーの控室にレッドは足を運んだ。彼女の事情を知ったと言うのもあるが、個人的に聞きたいことがあったからだ。

 

 

「……あら、レッドじゃない。残念だけど、準決勝はあたしとじゃなかったわね」

「別に涙をふかなくたっていいんだぞ。泣きたいときに泣けよ」

「うるさいわいね! 乙女の涙を簡単に見せるわけないじゃない!」

「そんなもんか」

「ほんと、デリカシーがないんだから……。でも、ありがと」

「別に。ただ、俺も結構驚いたっていうか、やっぱりというか」

 

 

 同じゲームの主人公の名を持つ存在。それがマサラタウン以外の生まれだとはにわかに信じられないでいた。それがブルーとの出会いや行動からそういう事もあるのかと、勝手に納得してすっかり忘れていたのだ。

 

 

「ところでブルー。一つ訊きたいことがあるんだが……」

「いつもならお金をもらうけど、今日は特別よ。何が聞きたいの?」

「お前が連れてかれたのって……ジョウト地方か?」

「え、ええ。よくわかったわね」

 

 

 やはりか。どうやら妄想の類だった予想が現実味を帯びてきた。ブルーが連れ去られ、このカントーに戻ってくるとなると、その地方は限られてくる。特にジョウトはカントーの隣だ。距離的にも近い。

 では、どんな鳥ポケモンが彼女を攫ったか。人を攫えてかつ大型なポケモンとなると、一匹しか思いつかない。

 にじいろポケモン・ホウオウ。

 ただ不自然な点がある。ホウオウに出会うためににじいろのはねが必要だ。だが、その入手法はこちらの世界のことを考えると少し不自然だろう。ゲームではとある人物から貰うのだが、こちらの場合となると、すでにホウオウが動いている時点でフラグが消失しているということになる。

 考えられるのは偶然落ちているのを入手したか、出くわしたホウオウから直接入手、あるいはゲットされたかになる。

 仮に、そう仮ににじいろのはね自身にジムバッジと同じようなゲームとは違う力があるとすれば……。

 

 

(ていうか、伝説のポケモンがほいほい捕まってんなよぉ……)

 

 

 思わず愚痴らずにはいられない。だが、それだけ人間の業が深いと言うこと。フリーザーとファイヤーが言ったように彼らの力はあまりにも強大。

 どうやら、ロケット団の残党だけではなさそうだぞ。

 

 

「なら、俺もジョウトへ行くか」

「なによ、急に」

「少し気になることができた」

「もしかして、あたしのため?」

「まあ、それもあるな。ちょっぴり」

「素直じゃないんだから」

「だって、お前のためって言って誤解されたくないし」

「……一応聞くわ。なんで?」

 

 

 何故か一瞬にして声にドスを利かせながら尋ねてきた。

 

 

「だって、ナツメと付き合ってるし」

「……ワンモア」

「ナツメと付き合ってる」

 

 

 直後に沈黙が訪れた。ブルーは下を向いたままレッドに近づくと、両手で彼の頬を引っ張った。

 

 

「あんた、洗脳されてるんじゃないの?」

「ほまえ、ひでぇほというな」

「乙女の唇を奪っておいてよく言うわよ、まったく」

「いってぇー。お前、ナツメと何かあんの?」

「別に。ただ相性が悪いだけでしょ」

「よーわからん」

 

 

 頬を撫でながら言うと、アナウンスが流れる。

 

 

『えー、次のAブロック準決勝レッド選手対ドクター・O選手ですが、ドクター・Oが棄権をしましたことにより、先程Bブロックを制したリーフ選手とレッド選手の決勝戦に変更されました。また、ブルー選手は敗北しておりますので、3位はグリーン選手となります。よって決勝戦はただいまから30分後に開始されます』

 

 

 アナウンスを最後まで聞いていると、ブルーの体がプルプルと増えだして突然叫びだした。

 

 

「あーー!! あたしの賞金がーー!?」

「お前、賞金目当てかよぉ……」

「あっったり前じゃない! 3位だって相当の額なのよ⁉」

「その年で金金言うんじゃねぇよガキのくせにオォン!? ……ほれ、金が欲しいならやるよ」

 

 

 ブルーの手を取って、その上に財布を渡す。中身はざっと上限の半分より上ぐらいだろうか。

 

 

「ちょ、ちょっと何のつもりよ。ま、まさか、愛人契約ってこと⁉」

「このおませさんめ。ちげぇよ、それでもう悪い事するなって言ってんの」

「ど、どうしてそこまでしてくれるのよ……」

「例え離れ離れだったとしても、俺達は幼馴染ってことだろ? だったら、助けてやるのが当たり前でしょうが。たくさん悪い事をしてきたのは知ってる。それが生きていくために必要なことだったのも理解できる。なら、もうするな。これからは、盗む必要はないんだ。だから、堂々と日の当たるところを歩けよ」

「……」

 

 

 そう言うとブルーは無言で抱き着いてきた。下を向けば、頬に涙が流れるのが見えた。

 

 

「ほんと、あんたはあたしより質の悪い男なんだから」

「そう、らしいな」

 

 

 ぽんぽんと優しく彼女の頭を撫でる。涙を拭いて、こちらを見上げてブルーはいつものように言った。

 

 

「けど、本当は愛人契約したいんでしょ?」

「雰囲気ぶち壊しかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 リーフは控室で決勝に向けて最後の準備を終えていた。出場させるポケモンはグリーンの時と変わらない。フシギバナ、キュウコン、ギャラドス、プテラ、ラッキー、カイリュウ。本当は控えのイーブイも出してあげたい。けどちょっと力不足で出せないのと、以前レッドからのアドバイスが気になって未だに進化できないでいた。

 結局今日までレッドの手持ちは全部分からなかった。以前に聞いたスピアー、ピカチュウ、カビゴン。残り三匹は登録はされているので、間違いなくいるのは確かだ。

 準備が整い会場へ向かおうとすると、一緒にいたナナミが複雑そうに言った。

 

 

「お姉ちゃん、リーフがグリーンに勝つなんて驚いちゃった。どっちも応援してたから複雑」

「結構ギリギリだったよ。やっぱりグリーンは強いもの。けど、レッドはもっと強い」

「勝つ気でいるんだ」

「当たり前でしょ」

「ふふふ。そっか、まあ私はどっちが勝ってもいいんだけどね」

「?」

 

 

 その言葉の意図はまったくわからなかった。やけに嬉しそうにしているのはたしかだけど。まあ、お姉ちゃんからしたらレッドも弟みたいなものだし、当然か。

 

 

「じゃあ、行ってくるね」

「ええ。私も応戦してるわ」

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってレッドの控室。

 この部屋に激励をしていたのは、ナツメでもはたまた別の女性でもなかった。なんと、男のマサキである。なんだかんだで色んな所でつるんでいた二人には、奇妙な友情が芽生えていたからだ。

 レッドはただベンチに寝っ転がっているが、マサキは本人の代わりのように興奮して話している。

 

 

「いやぁ、ついにここまで来たなレッド」

「んー」

「なんやなんや。そりゃあグリーンとの決勝じゃなかったかもしれんが、リーフだって相当強いで! まあ、素人目やけど」

「確かにリーフは強くなったぜ。あのグリーンを倒したんだから」

 

 

 それは本当だ。グリーンにはああ言ったが、リーフも相当実力とレベルをあげている。勝敗に関してはポケモンの相性と運がリーフを選んだというのもあるが、まあ運も実力の内か。

 

 

「それとなマサキ。一つ聞きたいんだが」

「なんや、突然」

「決勝、そんなに楽しみか?」

「当たり前やろ⁉ チャンピオンが決まる瞬間をこの目で見られるんやから! 

「そっか」

 

 

 ベンチから起き上がり、テーブルの上に置いておいた6個のボールをベルトにつけながら、レッドは申し訳なさそうに言った。

 

 

「たぶん、あんまりいいものじゃないよ」

「へ?」

 

 

 マサキの肩を叩き、レッドは控室を出て出場出入口へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンリーグ決勝戦専用バトルフィールドの中央に一人の男があがった。彼はマイクを持ち、コホンと咳払いしてから言った。

 

 

『これより第9回ポケモンリーグ決勝戦を開始いたします!』

『『『『わああああ!!!』』』』」

 

 歓声。

 ドームの外まで響き渡るほどの大歓声の中、男は続けた。

 

 

『改めまして、私は決勝の審判を務めさせていただくミスターうるちと申します。では、さっそく選手の紹介といきましょう! Aブロックよりマサラタウン出身のレッド選手! Bブロックより同じくマサラタウン出身のリーフ選手です!』

 

 

 二人が両サイドからフィールドへと上がる。リーフは今まで見せたことのない真剣な眼差しでレッドを見つめ、その彼はいつもと変わらない態度。

 そんな二人をフィールドの外、一番バトルが見える位置にグリーンとブルーが戦いの行く末を見守っている。

 

 

『さぁ始まりました! 第9回ポケモンリーグ決勝戦! 司会はボク、通りすがりのバトルお兄さんと解説のオーキド博士でお送りします! 博士、よろしくお願いします』

『こちらこそ、よろしく頼む』

 

 

 また会場の設置された司会解説席からの実況解説。

 そして、この会場のレッド側の席で、彼の彼女でもあるナツメがひっそり見守っていた。本来であればジムリーダー専用の部屋が用意されているのだが、わざわざこの『R‐1』の席を取ったのだ。だがどういう訳か、隣の席が4つ空いているのだ。

 まあ気にせずレッドに視線を向ける。

 思わず念話でも送ろうとかと思ったが、邪魔をしては悪いと思ってやめた。まあ昨夜一緒に過ごして、言いたいことは言ったから問題はないのだが、彼女としてちょっとらしいことをしてみたいと思ったのだ。

 

 

「あの~R‐2って、ここで会ってますか?」

「そうだが」

 

 

 声の方に向くと、そこには長身の黒髪の美女がいた。白いワンピースに白い帽子、そして日傘。どこかのお嬢様だろうか。それよりも、胸がデカい。白とか関係なく、無駄に強調している。

 

 

「では、失礼して」

「……」

「すみません。R‐3ってここで合ってますか?」

 

 

 再びの来客にそうだと答えるナツメであるが、どこかで見たことのある女だ。

 白衣を着ている女……こいつか。レッドの姉を気取っている女は。

 たしか、ナナミと言ったか。

 

 

「それなら私の隣ですから、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 

 まったく、決勝戦がもう始まっているのになんで今更来るんだ。と、胸の中で愚痴るナツメであるが。

 

 

「失礼します。R‐4はここ……あらあら、ナツメさんではありませんか」

「なんだ、エリカか」

「おほほ。奇遇ですわねぇ?」

「ああ。本当に奇遇だなぁ!」

 

 

 二言交わしてエリカも席に着く。

 一体なんだと言うのだ。ナツメは頭がどうにかなりそうだった。

 

 

「あ、あのぉ……」

「ん? どうしたんだ」

「あーるの5ってここですか?」

「あ、ああ。そうだよ」

「えへへ。やっと着いたね、ラッちゃん」

 

 

 コラッタを抱えた少女がそのまま椅子に座る姿は、なぜかほっこりと和んだ。

 するとルール説明を改めて説明し終えた審判が告げた。

 

 

『では、両者合意と見てよろしいですね⁉ それでは、第9回ポケモンリーグ決勝戦! ポケモンバトルぅーースターートぉーー!!』

 

 

 さらに歓声が沸き起こる。

「レッドぉ、がんばってーーー!」と、どんなに言えたらいいかとナツメは照れくさそうに下を向く。私は、あいつの彼女だ。だから、そういう応援をしたって何ら問題はない。問題はないが、すごく恥ずかしい。

 だが、そんな事を平気でやってのける女が、隣にいた。

 

 

「レッドく~ん、お姉さんが見てますよ~。がんばれ~」

「……失礼」

「はい?」

「私のレッドとどういう関係で?」

「はぁ……? ただ私はあの子のお姉さんとして、レッドくんを応戦してあげているだけなのですが……」

「は? レッドくんのお姉さんポジは私! なんですけどぉ! あなた誰ですか!」

「私ですか? 私は通りすがりのハナダのお姉さんです」

「オホホ。隣の方達は煩くて堪りませんわね。レッドー、ファイトですよー」

「お前もだ、エリカ。気安く私のレッドの名前を呼ぶな」

「あらあら~? そうなんですかぁ? でも、私が誰を応援しようと勝手だと思いますわー」

「くっ。こいつ言うに事を欠いて、よくも抜け抜けと」

「あ、お兄さんだぁ! がんばえー!」

『『『!?』』』

「あらー。レッドくんったら、こんな小さい子まで手を出していたなんて。お姉さん、ちょっと悲しい……」

「だから、お姉さんは私だって言ってるじゃないですか⁉」

「それにお嬢様キャラも被っているのですが、どうしてくれるのですか?」

『『『(こ、こいつらうるせぇ……)』』』

 

 

 応援どころではない彼女達の周りの来場客の想いは一つ。

 そして、ちょっかいを出すことすら疲れたナツメは幼児退行していた。

 

 

「れっどぉーがんばえー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 審判の合図で互いに一匹目を繰り出す。

 

 

「コンコン、お願い!」

「……いけ、フシギバナ」

「え⁉」

「なに?」

「うそぉ⁉」

 

 対面するキュウコンとフシギバナ。素人から見ても有利なのはリーフ。しかし、レッドを知る者達はそのフシギバナに驚く。

 

 

『おーっと! 第一戦はキュウコン対フシギバナだ! これはリーフ選手に有利です!』

『……あやつ、いつのまにフシギバナなど持っておったんじゃ?』

 

 

 リーフは顔を横に振って気持ちを切り替える。すぐに指示を出そうとするが。

 

 

「おー怖い怖い。戻れ、フシギバナ」

「ちょっ!」

『レッド選手! すぐにフシギバナを戻しました! やはりほのおタイプのキュウコンはきついのか⁉」

「カメックス」

「ええ⁉ 今度はカメックスなの⁉」

「レッドのやつ……」

 

 

 次に現れたカメックスに驚くブルーと何かに気づくグリーン。リーフは指示を止めるわけにもいかずキュウコンに言った。

 

 

「コンコン、ほのおのうず!」

 

 ──キュウコンのほのおのうず 

 ほのおのうずはダメージを与え続けながら交代できなくする技。こうかはいまひとつでも、その間にこちらが交換してダメージを与えればいい。リーフの指示はうまく次に繋いでいた。

 だが。

 ──しかしうまくきまらない! カメックスはすでにボールに戻っている

 

 

『これはどういうことですか、オーキド博士』

『うむ。ほのおのうずは相手を拘束している間は交代ができないんじゃが、レッドは攻撃が放たれる前にカメックスをボールに戻したようじゃ』

『ですが、先程からレッド選手は交代しかしていませんが』

『一体何を考えておるんじゃ……」

 

 

 レッドがカメックスを戻し、三回目のボールを投げる前にリーフが叫ぶ。どうやらレッドの態度に納得がいかないようだ。それは審判のうるちも同様でレッドに警告を促す。

 

 

「レッド選手! 次も一度も技を出さずポケモン交換をするなら、戦いの意志がないと見なし失格とします!」

「ふざけてるのレッド! わたしが相手だからって!?」

「別にふざけてはいない。ただ、ちょっとした憂さ晴らしだ」

「憂さ晴らしって……」

「安心しろ。交代するのはこれで最後(・・)だ」

「は?」

「蹂躙しろ、リザードン」

「リザァアア!!」

『な、なんだこれは──⁉ 黒い……黒いリザードンです! オーキド博士これは⁉』

『うむ。あれは色違いリザードンじゃ』

『色違いですか?』

『ああ。報告は少ないが最近色違いのポケモンが発見されていると報告を受けておる。しかし、あのリザードンは色違いであると同時に変異個体じゃな。炎の色が赤ではなく蒼じゃ。こりゃあ、珍しい……もしかしてレッドのやつ』

「あいつ、根に持ってやがる」

 

 

 フィールドの外にいるグリーンが言った。それを聞いたブルーが問う。

 

「それってどういうことよ?」

「レッドはな、ポケモンを貰わずに旅に出たんだ」

「……うそでしょ?」

『そうなんですか、博士?』

『う、うむ。ヒトカゲはグリーン、フシギダネはリーフ。そしてゼニガメをと思ったんじゃが……』

「あれ、いつの間にかあたしに矛先が向いてる?」

『いま博士の評価がだだ下がりですね』

『わしは悪くないんじゃよ……。それにレッドならトキワの森ぐらい平気じゃし』

 

 

 外野が勝手に話を進めてる中、レッドはリーフに言った。

 

 

「別にいまだに根に持ってるわけじぇねえから」

「うそつけ!」

「だがな、リーフ。そろそろ切り替えないと……終わっちまうぞ」

「──! コンコンよけ──!?」

 

 

 ──リザードンのきりさく! きゅうしょにあたった! キュウコンは倒れた

 それは一瞬だった。リーフがキュウコンによけろと命じる前に、リザードンは一気に彼我の距離を詰め、キュウコンを切り裂いた。

 

 

「きゅ、キュウコン戦闘不能!」

「い、一撃で……」

「もう一度言うぞリーフ。俺はもう交代はしない。つまり、リザードンだけでお前と戦う。もしお前がリザードンを倒せれば、お前の勝ちだ」

「レッド選手! それは大会のルールに──」

 

 

 うるちがレッドに忠告を促すがそれを手で制した。邪魔をするな、そう言っている。

 

 

「ふざけないでよ! 何様のつもり⁉」

「ふざけていないさ。それにこいつとの約束なんだ」

「約束?」

 

 

 レッドは頷いて言った。

 

 

「こいつは群れから拒絶され、一人ぼっちだった。だから俺は言った。見返してやりたくないか、お前を捨てた仲間や同族を、世界中の奴らをってな。そのためにこの舞台は最適だ。世界が見ている絶好の機会だ」

「……ギャラちゃん!」

「ギャラドス、か。相性ではお前が有利。ああ、そうだ。リーフ、一つ教えておいてやる」

「……なに?」

「このリザードンはな、俺の手持ちで一番強いぞ」

「っ! ギャラちゃん、なみのり!」

「点ではなく面か。悪くない」

『水がないこのフィールドでこれだけのなみのりを⁉』

『うむ、よく育てられとる』

 

 

 フィールドを覆いつくすほどのなみのりがリザードンを襲い掛かる。しかし、リザードンは動かない。首を動かし、主の指示を待っている。それに対してレッドはたった一言だけ伝えた。

 

 

「お前に任せるよ」

「リザァ!」

 

 

 リザードンはなみのりに向かって突貫。誰もが自殺行為だと思ったが、リザードンはなみのりを突き抜けギャラドスの前に姿を現し、彼の主のように雷が宿った拳を奮った。

 ──リザードンのかみなりパンチ! こうかはばつぐんだ! ギャラドスはたおれた。

 

 

「ギャラドス戦闘不能!」

「そんな。避けるでもなく、あのなみのりの中を通ってくるなんて……」

「水は確かに弱点だ。だが、ある程度は克服できる。死ぬ気で鍛えれば」

「お願いカイさん! いわなだれ!」

 

 

 ──カイリューのいわなだれ! こうかはばつぐんだ! リザードンは落ちた岩で身動きが取れない! 

 

 

『ストーンエッジより命中力のあるいわなだれを選んだか。さらにリザードンの足を封じる。うむ、よく考えたのう』

『さすがに4倍ですから、あのリザードンと言えど……』

 

 

 いわなだれによって確かに大ダメージを負ったリザードンであるが、その顔は依然変わらず余裕を見せている。

 レッドはただ技を伝えるわけでもなく、リザードンの名前を呼んだ。それだけでこの二人には通じるのだ。

 ──リザードンのしっぽをふる。 岩は弾き飛ばされた。

 

 

「かみなりパンチ!」

 

 

 今度はカイリューがリザードンに向けてかみなりパンチを繰り出す。リザードンもまた翼を広げ、空に向けて飛んだ。

 ──カイリューのかみなりパンチ! 

 リザードンはそれを紙一重でかわし、カイリューの背後に回り込み体を掴んだ。

 ──リザードンのちきゅうなげ! 

 空中で縦に円を描きながら地上へと叩き落し、さらに急降下。

 

 

「トドメだ。ドラゴンクロー」

 

 

 ──リザードンのドラゴンクロー! こうかはばつぐんだ! 

 

 

「カイリュー戦闘不能!」

「そんな、カイさんでも止まらないの……プテちゃん!」

「久しぶりだな、プテラ」

 

 

 レッドが久しぶりに出会ったプテラに挨拶をすると、プテラもまた大きく声をあげた。リザードンは再び上昇、空中対決となった。

 

 

「プテちゃん、ちょうおんぱ!」

「絡め技で来るか。だが、それも対策している」

 

 

 ──プテラのちょうおんぱ。リザードンはこんらんした! 

 混乱状態というのはとても不思議なところがある。混乱していても、一応トレーナーが何かを言っていることは理解しているのだ。ただそれが分からないため、自分を攻撃する。ならば、前もってその対処法を体に叩きこめばよかった。

 リザードンは頭を抱えつつ地上へ落ちる。そう、自ら飛ぶことを止めて落ちた。そして、そのまま頭をフィールドに叩きつけた。

 ──リザードンのこんらんがとけた! 

 

 

『あれって有りなんですか?』

『あいつ、どんな教育しておるんじゃ……』

「空から引きずり降ろせ」

「リザァ!」

 

 

 再び上昇してリザードンとプテラのかえんほうしゃ対決が繰り広げられる。赤と蒼のかえんほうしゃが飛び交う空の戦場は観客たちを魅了している。しかしリザードンにそんな舞を演じているつもりはない。かえんほうしゃ対決には圧倒的リザードンに分があり、プテラではほのおタイプのリザードンには劣ってしまう。

 炎を吐きながら肉薄するリザードンは途中、プテラのかえんほうしゃを浴びながら強引に距離を詰めた。プテラの尻尾をつかみ、ぐるぐると回しながら地上へ落とすと最大級のかえんほうしゃを食らわせた。

 特大の蒼炎がプテラを包み込み、それはリザードンが攻撃を止めるまで続いた。しかしリザードンが攻撃を止めるということは、プテラを倒したということになる。

 かえんほうしゃがやみ、煙が晴れる。そこには体の一部にやけどを負ったプテラ。

 その状態を見て審判が下す。

 

 

「プテラ戦闘不能!」

「さあ、残りは二匹」

「……まだチャンスはある。お願い、姐さん!」

「ラッキー(かかってこいや、このトカゲ野郎)」

「出たか、ピンクの悪魔」

「わたしの姐さんをそんな風に呼ばないで」

「知らないってのは時として罪だよなぁ」

『ここでリーフ選手ラッキーを投入です! しかし、ラッキーを使うトレーナーは珍しいですね』

『確かにポケモンセンターにいるジョーイさんのパートナーとして有名じゃ。しかしわしも現役時代では使っておったぞ。なにせ、耐久力が高いからのう』

『あ、手持ちに資料によりますと。リーフ選手と戦ったトレーナーの半分はラッキーで止まっているようです』

 

 

 ラッキーは耐久力と特防力の高いポケモンである。しかし同時にその入手手段はサファリゾーンのみで、さらに出現率は低い。それを捕まえたリーフはまさに豪運の持ち主と言える。

 だが、ラッキーの恐ろしさはその進化後と後に手に入るアイテムが素のラッキーを強化した。レッド自身、あの有名な『ハピで止まります』や『桃色(ピンク)の悪魔』と呼ばれていることは知っていた。まあ廃人ではないため、その詳しい経緯は知らないが対処法はいくつか覚えていた。

 そしてリーフがラッキーに指示する技も、およその見当がつく。

 

 

「姐さん、かたくなるからのちいさくなる×たくさん!」

 

 ──ラッキーのかたくなる! ちいさくなる! ぼうぎょりょくとかいひりつが限界まであがった! 

 すでにラッキーの姿はイシツブテよりも小さい小石ほどの大きさになる。その姿をレッドもリザードンも捉えてはいる。が、そこにかたくなるという防御をあげる補助技を使って補うことで、運よく当たっても耐えられる。さらにたまごうみを使えば体力を回復できる。

 リーフはこのまま持久戦に持ち込む考えだ。

 

 

「あれだ。俺もあれにやられた」

「リーフったら、見た目に反してえげつないわねぇ」

「しかもラッキーは水技も覚える。これはわからなくなった」

 

 

 確かに持久戦に持ち込めばリザードンに勝てる。それは間違いないとレッドも同意する。何だかんだで、リザードンの体力は半分くらいは削れているだろう。なみのりにいわなだれ。どれも悪くはなかった。

 

 

「その戦法は見事だよリーフ」

「姐さんはわたしの手持ちで一番の壁役。リザードンは確かに強いけど、このラッキーは簡単には倒れない!」

「そうだな。たしかにそうだ。だけどな、リーフ。俺だって悪魔対策はしていなかったわけじゃないんだ」

「は?」

「俺も育てたよ。ハナダの洞窟にいるラッキーの内一匹を捕まえ、鍛え上げて完成させた……まさに悪魔を」

 

 

 そう。初代においてラッキーはハナダの洞窟でも出現する。レッドのブートキャンプにおいて、一番手こずらされたのがラッキーでもある。そしてレッド自身、特訓用と称してラッキーの群れの内とても根性のある一匹を捕まえて鍛え上げたのだ。

 そのラッキーは今ではハナダの洞窟の番人として存在している。

 

 

「だから対処法も知っている。リザードンじわれだ!」

 

 

 右足を相撲の四股踏みのようにフィールドに叩き付ける。この特別フィールドは簡単には壊れない作りになっている。だがそれでも、フィールドが裂け大きな揺れを起こしている。

 ──リザードンのじわれ! ラッキーは身動きが取りづらくなった。

 その戦法はサカキと同じだった。トレーナーの身動きをとめ、次の一手さえも封じる。それはポケモンにも有効だ。

 

 

「あいつの真似をするのは癪だが、まずは動きを止めた。そしてふみつけだ!」

 

 

 ふみつけ。それは初代から存在した技で、ちいさくなるを使用したポケモンに二倍のダメージを与えることができる。ある時期からちいさくなるを使用したポケモンに対して必中にはなったが、こちらではそんな都合のいいことは滅多にないだろう。

 そのためのじわれである。

 ちいさくなったラッキーはフィールドが崩れたことにより身動きを封じられまともに動くことができなくなってしまった。そして、自身を何かの影が覆ったことに気づいた時には、遅かった。

 ──リザードンのふみつけ! 

 一回だけではない。何度も、何度もふみつけた。それぐらいしなければ、この悪魔は止まることを知らない。

 そしてひんしになったのか、ちいさくなるを解いたラッキーが現れた。

 

 

「ら、ラッキー戦闘不能!」

『ラッキー戦闘不能により、リーフ選手の手持ちは残りは一匹! おそらくフシギバナでしょう!』

『まさか、レッドのやつここまで強くなっておるとは……』

「……お願い、バナちゃん!」

 

 

 リーフは最後のポケモンであるフシギバナを出した。勝敗はすでに明白、観客たちもリザードンとレッドの勝利を確信している。だが、リーフの目は最後まで諦めてはいなかった。

 

 

「これで最後だ。いくぞ、リーフ」

「──バナちゃん! ソーラービーム!」

「リザードン、かえんほうしゃ」

 

 

 ──フシギバナのソーラービーム! 

 ──リザードンのかえんほうしゃ! 

 衝突する二つのエネルギー。フィールドの中央でぶつかり合うエネルギーは、だんだんとリザードンのかえんほうしゃがソーラービームを押していく。

 

 

「頑張ってバナちゃん!!」

「ば、バナァ!!」

 

 

 リーフの想いに答えるべく気合を入れたフシギバナ。しかしその顔に余裕の文字はない。対してリザードンの勢いは止まることを知らない。

 そしてだんだんと蒼炎が緑を燃やし尽くした。

 

 

「バナちゃーーん!!」

 

 

 蒼炎に焼かれたフシギバナの立派な花は焦げた。だがフシギバナは倒れず、意識を失いながらも立ち続けた。

 そして──審判が判決を言い渡した。

 

 

「フシギバナ戦闘不能! よって勝者、マサラタウンのレッド!」

『決まったーーー!!! 第9回ポケモンリーグ決勝戦、優勝は……マサラタウンのレッド選手だーーー!!!』

 

 

 実況の後に続くように巻き起こる歓声。勝利を祝うために風船や花びらが、とにかくこの興奮をぶつけるかのように持っている物を投げまくる。

 レッドはリザードンをボールに戻しリーフの下へ歩いた。彼女もフシギバナを戻して、今にも泣きそうな顔を必死に堪えていた。

 そんな彼女にレッドは現実を突き付ける言い方をした。

 

 

 

「リーフ。これが俺のいる場所だ。これが俺の見ている世界だ……リーフ?」

「う……」

「……う?」

「うわぁーーーん! 負けちゃったよーーー! 勝ってレッドを手に入れるつもりだったのにぃ!」

「──は?」

 

 

 大声で泣き叫ぶながらその場にへたり込むリーフを見下ろす。

 

 

「ぐす、バトルに勝てば合法的にレッドをわたしのものにできる完璧な計画がぁ!」

「人が知らぬところで、お前はなんて恐ろしい計画を立ててんだよ……」

「だって、非合法だと色々面倒じゃない!」

「威張るな! たくよぉ……。おい、グリーン。お前の妹だ、何とかしろ」

「……お、俺に妹なんていない」

「うわぁ……。ブルー、お前も何か言ってやれよ」

「バカねぇリーフは。こういう時は既成事実を作って責任を取らせればいいのよ。あと負けたら自分を差し出すとか、あたしみたいに愛人契約を結ぶとか」

「だからちげぇって言ってんだろぉん⁉」

「最低だなレッド」

「バカレッド最低」

「レッドってば最低」

「お、お前らなぁ……!」

 

 

 今にも怒りで拳を奮いそうになる右手を左手で抑えることに成功するレッドに、スーツを着た一人の男性が声をかけてきた。

 

 

「レッド選手いえ、チャンピオンのレッドさん。まずは優勝おめでとうございます。これからその功績をたたえるために、記録の間へ案内させていただきます。こちらへ」

「あ、ああ。お前ら、後で覚えてろよ」

 

 

 グリーンは鼻で笑い、リーフは下まぶたを引き下げて怒りを露わにし、ブルーに至っては高らかな笑いの声をあげてレッドを見送った。

 決勝会場を出てざっと5分ぐらいだろうか。それほど遠くない場所にその記録の間へと案内された。

 

 

「ここから先は一部の人間のみが立ち入ることを許された場所。チャンピオン、どうかこの部屋の奥で殿堂入りを。それがチャンピオンだけに与えれた権利であり称号でもあります」

 

 

 部屋に入ると後ろでドアを閉める音が聞こえたが振り返ることなく進む。部屋は薄暗いが床にはライトが非常出口を案内するかのように行く先を示していた。

 部屋の奥には一つの端末があった。ボールを収める6個のくぼみ。置く前に辺りを見回せば、歴代のチャンピオンの銅像とそのポケモン達のデータが投影されている。そこには知った人間もいた。

 

 

「……オーキド博士がチャンピオンなんて設定あったか? まあ、どうでもいいか」

 

 

 興味がないのか手持ちの6匹を台に置き、レッドは物足りなそうに呟いた。

 

 

「こんなにも普通のバトルで満足できないなんてなぁ……」

 

 

 あの男に言われた言葉が脳裏に蘇る。弱者との戦い、命を懸けた戦いばかりを繰り返してきた。だからお前は私には勝てないんだと。だからあの日から本来のポケモンバトルに専念した。相手の行動一つ一つを想像し、常に先を読む戦いをしてきた。

 だが、結果はこれだ。

 リーフが弱いんじゃない。バトルがつまらないんじゃない。

 あの感覚、一瞬でも気を許せば命を落とすような緊張感。ミュウツーや多くの野生ポケモン達と拳を交えて感じたポケモンとの対話と自然との一体感。ナツメやサカキのような強者との戦いでぶつかり合って感じる両者の思想、信念、執念。

 そして仲間達と共に戦うことでしか生まれない絆。

 そうだ。俺は、俺自身が、仲間であり家族でもあるポケモン達と一緒に戦えないことが……もどかしい。

 ──ポケモン達の記録が完了しました

 どうやら、終わったようだ。

 あの男との戦いを思い出しながらレッドは天を仰ぎ言った。

 

 

「サカキ、お前ともう一度バトルがしたいよ」

 

 

 ──スピアー  レベル/90

 ──ピカチュウ レベル/88

 ──リザードン レベル/92

 ──フシギバナ レベル/86

 ──カメックス レベル/85

 ──カビゴン  レベル/83

 ──殿堂入りおめでとう! 

 

 

 ──『レッド』 レベル/30

 ──残ったおこづかい 0円

 ──ポケモン図鑑 みつけたかず152 つかまえたかず24

 ──評価 24とかほんま……つっかえ やめたらポケモントレーナー? 

 

 

 

 

 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンリーグ決勝会場特別来賓室。

 そこは協会が特別な人物を招いた時に使われる部屋。招かれるのは協会本部役員やスポンサーが主になっている。

 そこには4人の男女が決着のついたバトルフィールドの上で言い争っている少年少女達を見下ろしていた。

 4人の内、眼鏡をかけた女がマントを身に着けている男にたずねた

 

 

「で。どうするの彼?」

「今はまだその時ではない。時間はまだある。ゆっくり見極めればいいさ」

「フェフェフェ。下手に近づけば警戒されちまうかもしれないからねぇ」

「その通り、彼は危険だ。だからこそ、こちらも油断はできない」

「それもそうね。それにあなたとは相性いいんじゃない?」

「……」

「もう。体格に似合わず不愛想なやつなんだから」

 

 

 四天王。それはチャンピオンを守る存在であり、挑戦者を待ち受ける壁。

 しかし暗闇の中でひっそりとチャンピオンに向けて牙を研いでいた。

 チャンピオンである彼──レッドに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンリーグから一か月後──

 ジョウト地方、キキョウシティにあるキキョウジム。そこの門下生である鳥使いの青年が、一人の挑戦者に対して上から目線で対応していた。

 それも当然であった。

 挑戦者の格好があまりにも不審者だったからだ。ベージュ色のポンチョ、所謂足元まであるマントコートを羽織り、頭もターバンを顔まで巻き付けていて目だけしか正体が分からないのだ。

 

 

「お前みたいな不審者野郎がジムリーダーと戦うなんておこがましいぜ! いけ、オニスズメ!」

「……ラプラス」

「へ?」

 

 

 ──ラプラスのれいとうビーム! こうかはばつぐんだ! オニスズメはたおれた。

 ──鳥使いはおこづかい810円を渡した。

 バトルを終えると、部屋の奥からジムリーダーらしき男が鳥使いを怒鳴った。

 

 

「まったく、何をやってんだ!」

「は、ハヤテさん⁉ ち、違うんすよ! お、俺はあの不審者を……」

「不審者だと? まったく、うちの門下生が失礼をした。お前も相手の力量が分からぬうちはまだまだ」

「……おい、バトルしろよ」

「ああ、そうだった。私はここキキョウジムを任されているハヤテだ。チャレンジャー、君の名は?」

 

 

 ジムリーダーが問うと、男が口元だけ露わにすれば口角がぐんと引きあがり、まるでよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに告げた。

 

 

「俺か? 俺は……マサラタウンのレッドだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 第1章完

 

 

 




レッドが戦わないと戦闘がすげー単調だと思った。
そしてレッドにバトル症候群というなの満足病が発病。まるでサカキがヒロインみたいだぁ

補足
見つけたかずが152なのは最後がサ・ファイ・ザーだからです。データは???状態ですが。それ以外は一応画面外ですべて見ていたという設定です。
捕まえた数はミュウツーや三鳥、あとイーブイの進化先も含めました(レッドが捕まえる+所持をした)。ただ肝心の数字に関しては本当に偶然です。
御三家9 スピアー1 ピカ1 カビゴン1 プテラ1 イーブイ4 ギャラドス1 伝説4 ラプラス1 ラッキー1
多分これで合ってるはず。見逃していたら報告お願いします。

最後のハヤテはハヤトの父です。ポケスペには出ますがゲームに出てたかはもう覚えてないです。


一応次の投稿はしばらくお休みをいただきます。多分今月中には再開します。
まあ自分としてはある程度書き溜めしてからの毎日更新がいいかなと思っているのですが、皆さんはどうでしょうか?
ちょっと意見を聞かせてもらえたらと思ってます。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一発ネタ サカキちゃんの野望

注意 TS要素とちょっとしたネタバレあり


謎の勢力によってレッドとサカキにホモ疑惑をかけられた私は、急遽これを覆すべくよくわからないものを書き上げた(混乱)



 

 

 第一話 「誕生 サカキちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 それは多分、きっと大分先の未来。

 カントー地方某所にあるロケット団のアジトにて、ボスであるサカキは私室にて作業をしていると、突如中隊長のケンが慌てた様子で部屋に入ってきた。それでも手を休めず、サカキは冷静に対応する。

 

 

「どうした」

「さ、サカキ様! つ、ついに完成しました!」

「完成? 開発部に何かを依頼した覚えはないが……」

「医療班がついにやったんですよ! サカキ様の病を治す治療薬が!」

 

 

 説明しよう。ある時期からサカキは謎の病に侵されてしまい、先は長くないと医師からも宣告されてしまうのだ! それを何とかしようと組織の医療班も必死に開発に取り組んでいたのだが、今まで一度も成功した例はなかったのである。

 

 

 

「それは、本当なのだろな?」

「は、はい! 医療班主任でもあるメガネ様も、今回はかなりの確率で成功すると仰っております」

「……いいだろう。メガネを呼べ」

「は!」

 

 

 数分後。ケンが連れてきた医療班主任であるメガネがケースを持ってやってきた。身長は平均並、服装は白衣。あとは眼鏡が無駄に光っていることであろうか。

 メガネはサカキの前にケースを置いて中身を見せた。そこには一本の瓶が収められている。大きさは栄養ドリンクほどのものだろうか。

 サカキは信用はしているが、思わずたずねた。

 

 

「メガネ」

「はい、サカキ様」

「本当にこれで私の病が治るのか」

「そうです。今まで世界中の文献や部族に伝わる秘伝。さらには最先端医療とあらゆる治療法を試してまいりましたがすべて失敗に終わりました。しかし、これは新たに発見された粒子を元に制作しました。効果は保証いたします」

「ちゃんと実験はしたんだろうな?」

「もちろんです。イシツブテに投与したところ、たちまちアローライシツブテになったほどですから」

「それは……成功といっていいのか?」

「大成功です」

 

 

 手に持つ治療薬を見る。にわかに信じがたい。だが、イシツブテがアローライシツブテになったというなら、それは確かに信じていいのかもしれない。

 飲むか悩んでいると、メガネが催促するかのように言ってくる。

 

 

「さあ! サカキ様、ぐいっとどうぞ!」

「……いいだろう。部下を信じるのも、ボスである私の仕事だ」

 

 

 グイっと一気に飲む。するとたちまち体中が熱くなるのを感じる。まるで、かえんほうしゃによって全身を炙られているかのようだ。

 

 

「ぬぅううう!」

「耐えてくださいサカキ様! これを乗り切れば無事病が治るはずです!」

「おぉおお⁉」

 

 

 苦痛に悶えるサカキの叫びが響き渡る。外に控えていたケンが慌てて部屋に入る。

 

 

「サカキ様⁉ 一体どうされたのですか⁉ メガネ主任サカキ様は⁉」

「ケン殿。ごらんなさい。あれがサカキ様です」

「え……えーーーーっ⁉」

「──うるさいぞ」

 

 

 あれ程熱かったのがいまはだんだんと熱が引いていくのを感じる。同時に体がとても軽く感じるのがわかる。それに胸の苦しみもない。メガネの言う通り成功したようだ。

 閉じていた目を開くと、今まで違って景色が見える。

 おかしい。こんなにも自分の目線は低かっただろうか。目の前にいるメガネとケンがやけにデカく見える。

 

 

「おい。お前らはなぜそんなに大きいのだ?」

「いいえ、サカキ様。我らが大きくなったのではなく、サカキ様が小さくなられたのです」

「何を訳の分からないことを……」

「こちらを」

 

 

 何処から出した手鏡を渡されて自分を映す。そこには女がいた。それも、幼い少女だ。見た目から推測して、10歳ぐらいだろうか。

 

 

「誰だ、この幼女は」

「サカキ様です」

「ケン、これは誰だ」

「えーと、サカキ様です」

「……ふざけるな!」

 

 

 サカキ様ご乱心中。

 その後。なぜあるのか分からないが、学校の制服のような服を着ることになったサカキ。しかも人生初めてのスカートを履いている割には意外と落ち着いている。下着類もすべて四将軍であるアテナが用意した。

 いつもの椅子に座るサカキであるが、あまりにも背丈が足りないので適当に座布団でかさ増しすることで、いつもの目線になった。

 

 

「で、説明しろメガネ」

「これはいわゆる幼女化です」

「見れば分かる」

「実を言うと、我々が発見した新粒子『TS粒子』の副作用かと」

「待て。副作用があったのか?」

「はい。TS粒子には損傷した細胞を治す効果があることがわかりました。そしてそれを傷ついたイシツブテに試したところ、たちまち傷は治りさらにはアローライシツブテになりました。ただ……」

「もしや」

「はい。それはオスのイシツブテだったのですが、投与したらメスになっておりました」

「つまりだ。それを知っていてわたしに飲ませたのか、お前は⁉」

「サカキ様。一つ言わせてもらいますと、サカキ様の病は報告した通り治療法が今の世にはありませんでした。しかも不思議なことに、この病は男性にしか発病しないという奇病。すなわち、女性になれば治ると私は気づいたのです!」

「な、なるほど。結果論ですが、確かにサカキ様の病は治っている。間違いではありませんね」

 

 

 ケンまでメガネに同調して勝手になっとくしている。わたしだけか、正常な思考をしているのは。

 サカキは呆れて大きなため息をつき、二人に言った。

 

 

「わたしの病が治ったのはいい。だがこれでは、わたしの──(ネタバレ防止の自主規制)に会えんではないか!」

「お待ちくださいサカキ様」

「なんだメガネ。これ以上なにを言うつもりだ」

「サカキ様の──様はまだ複雑なお年頃です。さらには自分の父親が悪の組織と知ってさらに困惑しております。これが男性ならば複雑ですが、今は女性です。父親より母親の方がより心を開いてくれると思いませんか?」

「う、うむ。確かに一理ある……そもそも、なぜわたしが母親になるのだ⁉」

「女の子になってしまったからでは?」

「まあ、そうなりますよね……。それに女性になり、さらに若さも取り戻したわけですから。ある意味役得では?」

「ならお前も飲め」

「いやぁ、ボクは突っ込まれるのはちょっと……」

「お前の下半身事情など知るか」

「ですがサカキ様。これはチャンスでもあります」

「チャンス、だと?」

 

 

 メガネは自慢の眼鏡をくいっとかけ直すと言った。

 

 

「我らが宿敵であるレッドにも勝てる見込みがあるということです」

「な、なぜそこでレッドの話になるのだ」

「え? だってサカキ様ってレッドのこと殺したいほど好きなのではないのですか?」

「ケン。お前はちょっと黙ってろ」

「とりあえずサカキ様。レッドと戦ってみてはどうでしょうか。きっと突然のことで不意を突けるかもしれません」

「い、いや。わたしは堂々と戦ってレッドに勝ちたいのだが……」

「やっぱり好きなのでは?」

「黙ってろケン」

 

 

 今の鬱憤を晴らすべく、サカキはケンに手元にあったケースを投げつけた。だが、肩力が衰えているのか途中で落ちた。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってヤマブキシティの市街地。そこの歩道をレッドとナツメはイチャイチャしながら歩いていた。

 

 

「ねぇレッド」

「なに、ナツメ?」

「最近、平和よね」

「そうだな。平和が一番。ラブアンドピースだな」

「でも、最近よく他の地方によく行くよね……。なんで?」

 

 

 たった一言。その一言を聞いて一瞬にしてレッドは凍り付く、

 

 

「せ、世界平和のためだよ……」

「ふーん。本当は会いに行ってるんじゃないの?」

「べ、弁明すると、俺から行ってるわけじゃないよ?」

「私ね? 最近レッドを甘やかし過ぎたんじゃないかなって思うの」

「平和が一番……」

「なら平和的に解決しましょうか」

 

 

 ナツメの手にサイコパワーが宿り始めると、二人の前に突如大声をあげながら小さな黒い長髪の幼女が現れて宣言する。

 

 

「レッド! わたしと戦え!」

『『……』』

「無視するな!」

「あら可愛い子。どこの子かしら?」

「どけナツメ。お前に用はない」

「やだこの子。教育がなってないわね……」

「子供相手にムキになるなよ……で、君。どこの子かな?」

「わたしはサカキだ! さあ、戦えレッド!」

「ハハハ。サカキとか、ちょっと笑えない冗談だ」

「その気がないならこっちから行くぞ! 死ねレッド!」

 

 

 ──サカキはドサイドンをくりだした! 

 ──ドサイドンのアームハンマー! 

 

 

「ナツメ!」

「きゃっ!?」

 

 

 ──レッドのメガトンキック! 

 ナツメを庇いながら左足でドサイドンのアームハンマーに対抗するレッド。その衝撃波が周囲の建物のガラスを割り、人々が慌てて頭を抱えて隠れる。

 

 

「このドサイドン……本当にサカキなのか?」

「ようやく気付いたなレッド。病を克服したわたしは、今までのようにいかないぞ!」

「なんで幼女になってるのかは別として。いいだろうサカキ!」

「そうこなくては!」

 

 

 サカキはいっしょうけんめい戦っている! 

 ──レッドのデコピン。 サカキちゃんに大ダメージだ! 

 

 

 

「いったーーーー⁉ デコピンは卑怯だぞレッド!」

「卑怯って。お前がそれを言うかよ……」

「ちょっとレッド。なに手加減してるのよ」

「だってよ。サカキとは言え、幼女を殴るのは常識的にどうよ?」

「くそぅ! 子供だからって手加減したなレッド⁉」

「なあサカキ。お前、さっきから精神が体に引っ張られてねぇか?」

「しょ、しょうがない。今日のところはこれで引き揚げてやる! 次こそはお前を殺ちてやる!」

「噛んだ」

「噛んだわね」

「う、うるさい! いくぞドサイドン!」

「ドッサイ!」

 

 

 そしてサカキはドサイドンに抱えられて二人の前から消え去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 場所は戻りロケット団アジト。

 サカキは先程の戦いで、自分の身体以前とは違うことをメガネに伝えた。

 

 

「ほう弱体化ですか。恐らくそれは幼女化によって体がリセットされてしまったのでしょう。今のサカキ様は、一般的な少女と同じくらいの力と体力しかないと思われます」

「また一から鍛え直さなければならぬのか……」

「ですが、逆に考えれば以前よりも強くなれる可能性があるということ。今は前向きに考えましょう」

「ふっふっふ。待っていろレッド。お前を倒すのはこのわたしだ!」

「やはりサカキ様はレッドのことが好きなのでは?」

「黙ってろケン!」

 

 

 サカキの代わりにドサイドンがケンを殴り、彼は星となった。

 

 

 

 

 

 

 

 つづかない

 

 




……多分熱中症だな。きっとそう。
サカキちゃんのモデルはシャナか地獄少女のあいちゃん。あるいはぱにぽにのレベッカか?
まあ好評というか、続きを望む声があれば書く……と思う。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 金銀に紅と藍を添えて
ところでレッド殿はどちら派で? 我々は全員きのこ党ですよ


お待たせ。
9日間しか更新できないけどいいかな?


 

 

 

 

 

 ジョウト地方にあるキキョウシティ。そこにはマダツボミの塔と呼ばれる場所がある。

 ここはその名の通り手持ちのポケモンは全員マダツボミであり、トレーナーはみな坊主という変わった場所。まあそんな修行僧の中にもちゃっかしホーホーを手持ちに加えている不届き者もいたりはする。

 塔の中央で揺れている柱は巨大なマダツボミの体だと言われているが定かではない。

 またここは修行の場としても有名な場所で、毎年多くのトレーナーが座禅、瞑想、煩悩を祓うためにここを訪れることもある。

 ここ最上階でもう3日間も座禅を続けている彼もその一人だった。

 塔の管理者であり、坊主達の師でもあるコウセイはその職務を一時放棄していた。それは何故か。コウセイから見ても彼はある意味で異常だったからだ。彼だけではない。彼の手持ちポケモン8匹のポケモン達も全員瞑想をしている。

 コウセイも一日目は警策を持ってその役目を果たしていたが、常人とは思えないほどの集中力で一度も喝を入れることはなかった。ただ手持ちポケモンの内、カビゴンだけがしょっちゅう寝ようとしたので喝を入れたが効果はなく、代わりに彼のポケモンであるスピアーがその槍で喝を入れていた。

 ここにいる坊主や修行に来るトレーナーでさえ、これほどの男はいない。コウセイの隣に立つ弟子が師に問う。

 

 

「コウセイ様。あの方はもうすでに3日間飲まず食わずで瞑想に入っておりますが、一体何を考えているのでしょうか?」

「分からぬか弟子よ。きっと悟りを開かれるまでその眼を開けることはないのじゃ」

「そう、なんでしょうか……! あ、師よ、見てください! あの方の目が」

「おお、ついに悟りを……」

 

 

 男はポケモン達をボールに戻し、ゆっくりと二人の前に向かって歩いてきた。コウセイの前に立つと、両手を合わせてお辞儀をした。彼らもまた頭を下げた。

 実りがあったかとコウセイは尋ねた。

 

 

「どうでしたかな、レッド殿。悟りは開かれましたか」

「コウセイさん。ええ。かなりの時間を有しましたが、無事悟りを開くことはできしまた」

「差し支えなければお聞きしてもいいですかな?」

「はい。きのこたけのこ戦争にいずれ終わりがくる、そう視えました」

「な、なんと。それは真ですかな」

「はい。途中とある謎の勢力が参戦しますが、そこには勝者がいました」

「そ、それはいつ分かるのですか⁉」

 

 

 弟子が冷静を欠いてレッドに問う。

 

 

「恐らく、今から22年後にはすべての決着が着くかと」

「これは長生きせねばならんな」

「して、レッド殿。その謎の勢力とは一体……」

「その第三勢力の名は……アルフォート」

「それはまた強そうな名前ですな」

「ところでレッド殿はどちら派で? 我々は全員きのこ党ですよ」

 

 

 弟子の禁断の質問にレッドは堂々と答えた。

 

 

「たけのこ党」

「そう、ですか。レッド殿はてっきりとこちら側だと思っておりましたが、残念です」

「例え思いは違えど、目指す場所は同じ。改めて、ご指導ありがとうございました」

「どうか良い旅を」

 

 再度手を合わせて礼を言うレッド。例え派閥が違えど、マダツボミの塔全員は旅の成功を祈り込めてお辞儀をしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 キキョウシティにある路上カフェで、彼らは3日ぶりの食事を楽しんでいた。ここはポケモンも同伴が可能なカフェであり、小型から大型のポケモン一緒に楽しむことができる所だ。店も個人ではなくチェーン店らしい。

 店員や他の客は誰もがレッドに注目した。手持ちのポケモンもそうだが、ポンチョにターバンを巻いている不審者が堂々とコーヒーを飲んでいる姿は何ともシュールである。さらに一か月前のポケモンリーグの中継は全国に流れている。お隣のジョウトなら『え、あれレッドさん?』、『まさかそんなはずないわ』、『でも、あの黒いリザードンは……』とこそこそと話声が聞こえてもおかしくはない。

 レッドは一杯3000円もするブルーアイズマウンテンを飲みながら、テーブルの上でご飯を食べるピカチュウとイーブイを眺める。

 この旅の目的は三つある。

 一つはブルーを攫ったポケモン。恐らくホウオウだと思われるがその情報を集めること。同時に可能ならこちらの伝説のポケモンに接触すること。

 特に三犬に関しては焼けた塔の地下にいるはずだ。金銀発売当初、三犬はホウオウとルギアに仕えているイメージだったが、ルギアに仕えているのはカントーの三鳥というのが映画で描写された。ならばホウオウの状況を知っているのは三犬である。たぶん難易度で言えばルギアが一番簡単だろう。羽はないが、うずまき島にいることは間違いないのだ。

 二つ目はポケモン達の育成と自身への修行である。手に入れてからあまり育成できなかったイーブイとラプラス、それとストライクの集中トレーニングが目的だ。ストライクは単にグリーンのストライクがカッコイイのと、ハッサムにしたいからである。

 なによりも問題はイーブイだった。実験の後遺症で未だにうなされることがある。そのための治療とトレーニングだ。

 三つ目はジョウトを単純に旅をしてみたいからである。お隣だし、色々と見て回りたいと思ったからだ。

 

 

「けど、ブイ。本当にいいのか? 一つの進化先じゃなくて、全部に進化できるようにしようなんて」

「ぶいぶい!」

 

 

 テーブルの上にいるイーブイに尋ねれば、彼はやる気に満ちた目をして返す。そう、本当はどれかに進化させるつもりでいたのだ。オーキド博士からも進化をすれば、体が安定しうなされることもなくなるだろうと。

 しかしイーブイはそれを拒んだ。それも俺の力になるために、すべての進化先を会得してやろうと。

 ついそんなイーブイが可愛くて頭を撫でてやると、隣でピカチュウがポケギアを持って教えてくれた。

 

 

「あ、そうだったな。ちゃんとナツメに連絡しないと」

 

 

 ポケギア。実を言えば普通に今まであったらしいが一回も見たことがない。登録されている番号はナツメはもちろん、グリーン、リーフ、ブルー、ナナミ、エリカ、カツラ(研究所)、マサキ。あと、ハナダのお姉さん。男女比がおかしいのは気のせいだろう。

 ナツメの番号を選択し電話をかける。案の定ワンコールで繋がった。

 

 

「おーいナツメー、元気かー」

『レッドぉ……3日も声が聞けなくて、私は死んじゃうよぉ』

「ははは。大袈裟……じゃないか、うん。でも、今日連絡がくるって未来予知でわかってんだろ?」

『うん』

「即答かよ」

『まだキキョウシティ?』

「そうだよ。なんで?」

『レッドが可愛い子といるのが予知で視えたから』

「大丈夫だって安心しろよ~」

『信頼してるわよ。でも、どうせ引っ掛けてくるのが分かってるから、こうして忠告してるんでしょ』

「あっはい」

『それじゃ、またお昼に電話するから』

「うん。わかった」

 

 

 通話を切って小さな息をはく。けしてため息ではない。ピカチュウとイーブイに目を向ければ、口角を広げてニヤニヤしていた。

 

 

「ピカピカ(お熱いね、このこの!)」

「ぶいぶい(新婚みたいですね)」

「人をおちょくるんじゃないの。それにしても……」

「あのゴールドって子のことっすか?」

 

 

 話の間にカビゴンが飯をほおばりながら言ってきた。

 

 

「そう。あのチンピラの小僧が、まさかゴールドとはなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 4日ほど前。

 トージョウの滝を超え、ワカバタウンに着いた頃のことである。

 

 

「ああ。いまワカバタウンに入ったよ。え、どんな感じかって? んー、道行く人がみんな俺を見ている」

『それはそうよ。その恰好なら特にね』

 

 

 カントーを出た時からポンチョとターバン装備のレッドの格好は、どこへ行っても目立っていた。それでも本人は気にすることなく歩いている。

 

 

『確かウツギ博士がいる研究所に寄るんだっけ?』

「そ。博士からのお使いでな。まあ資料の入ったデータを渡す簡単な仕事だ」

『はぁ。私もレッドと一緒にジョウトに行きたかった』

「しょうがないだろ? 協会からロケット団に関わってたっていう疑惑をかけられてるんだから」

 

 

 ロケット団が壊滅し、ポケモンリーグが終了した後。ポケモン協会はレッドを含めたロケット団と戦ったトレーナーや、被害にあった人間から首謀者を特定するため聴取をとらされた。

 幹部は誰だ、ボスは誰だ、その目的は等々長い質問をされた。当然答えは全部濁した。ナツメのためでもあり、今後のためでもあったからだ。それと、サカキに関しては個人的に執着しているというのも理由の一つではあった。

 それにレッド自身、ポケモン協会について少しきな臭い感じがしてならなかったというのが一番の要因であろう。

 

 

『そんなの過去の話よ』

「はいはい。いいから、ちゃんとジムリーダーらしくしてろって。お土産にいかりまんじゅう勝ってきてやるから」

『おいしいの、それ?』

「さぁ?」

『まあいいわ。それじゃあ、一日三回のラブコールには絶対出ること』

「わかってるよ」

『うん。大好きよ、レッド』

「俺も大好きだよ」

 

 

 ナツメ成分を声で補充するレッド。旅に出る際にナツメから言い渡された条件が一日三回以上の電話であった。本人は特に気にしておらず、むしろ聞いていないといけない体になりつつあった。

 

 

「さてと。ウツギ博士の研究者はっと……ん?」

 

 

 するとどこから声が聞こえる。それはだんだんと近づいきて、思わず後ろを振り返った。

 

 

「オラオラーどけどけー! ゴールドさまのおとおりだーい!」

「……ごーるど……ゴールド⁉」

 

 

 思わず二度も口に出してしまった。そのゴールドを名乗る子供はスケボーを巧みに操り、その肩にエイパムを乗せていた。

 そのまま避ければ彼は通り過ぎるだけでよかったのだが、何故か道端に転がっていたイシツブテと衝突し、宙へとその身を投げ出してしまった二人、ゴールドとエイパムを軽々とキャッチし、二人を掴んだまま挨拶をするレッド。

 

「うあぁあああ⁉」

「よっと。平気か?」

「あ、ありがとうっス。その……おじさん」

「おじさんだと? ふざけんじゃねぇよお前! お兄さんだろォ?」

「い、いや、どうみても変な格好してるじゃないっスか! 助けてもらっておいて、こんなこと言うのもあれだけど、すごく変だぜ!」

「変じゃない、カッコいいと言え。それと俺はまだ11歳だ。ところで、このエイパムだが」

 

 

 助けてからというもの、エイパムはレッドの体の上でとてもはしゃいでいた。幸いなことに悪戯をしてこないのは助かっているが。

 

 

「珍しいな、エーたろうがここまで他人に懐くなんて」

 

 

 エイパムの頭を撫でやると、とても喜んでいるのか笑顔を浮かべている。どうやらこのエイパムは、彼にとても懐いているようだ。

 肩にいるエイパムをそのままゴールドへと返してレッドは言った。

 

 

「そのエイパム、きみにすごく懐いているな。大切にするといい」

「あったりまえだぜ! オレのエーたろうは最高の相棒だからな!」

「ところでゴールド。この辺りにウツギ博士の研究所があると聞いたんだが、場所を知らないか?」

「博士? ああ、たしか町の郊外にそんな研究所があるっスよ」

「郊外? ああ、町に入る時に見えたアレか。ありがとうゴールド。また、いつか会おう」

「おじ、お兄さんの名前なんて言うんだよ。人の名前は勝手に知っておいてそれはないぜ!」

「俺か? 俺の名はレッドだ」

「れっど? はて、どっかで最近聞いたような?」

 

 

 腕を組んで必死に思い出そうとするゴールドに苦笑しながら、レッドはウツギ博士の研究所へと向かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在──

 

 

「しかし、キキョウジムのジムリーダーがハヤトじゃなくてハヤテってやつだったけど、もしかして親父か?」

 

 

 メタ的なこと言えば、金銀が始まる前のジムリーダーならば何ら不思議はない。ゴールドからしても、恐らくまだ10歳にはなっていないだろうし、旅立ちの日はまだ先だろう。

 それにしてもエイパムをすでに持っているとは。自分とは大違いだ。

 

 

「普通は御三家もらったり、すでに持ってるやつが大半の中、ポケモンを持っていないだけでイジメられたのは俺ぐらいだろうな。HAHAHA!」

「それ、笑ってごまかすことなのだろうか。とカビゴンは思った」

「ピカ(で、次どこいくんだ?)」

「そうだな。とりあえずはつながりの洞窟を通って、ヒワダタウンだな。といっても、お目当てはウバメの森にいるセレビィなんだが」

 

 

 セレビィ通称ときわたりポケモン。その名の通り時を渡れる力を持つポケモンだ。ゲームではその入手手段が非常に限られていて、当時でゲットできたトレーナーは極少数であろう。世代を重ねごとに公式から度々テコ入れがあって手に入れやすくはなった。

 

 

「でも、セレビィって映画だとたくさんいたような……。もうだいぶ前だから覚えてないや」

 

 

 映画のラストでたくさん登場したのはまだ覚えている。ただ、今考えると別の時間軸のセレビィが一つの時間に集まった、という可能性もあるのではと思えて仕方がない。

 またセレビィの上位互換でもあるディアルガも存在するが、シンオウなんてどうせすぐには行かないだろうから後回しだ。

 ホウオウや三犬、ルギアも重要ではあるが、特にセレビィはその特殊な力のため特に優先度が高かった。できれば本人と会って話をしたいところである。

 

 

「よし。そろそろ行くぞお前ら」

『はーい』

 

 

 ポケモンをボールに入れて伝票をもって会計にいく。レジのお姉さんが伝票を見ながらレジに数字を入力していく。その割には長いような気がする。

 

 

「えー合計で14万3000円になります」

「14万⁉ うせやろ!」

「間違いありません。お客様のカビゴンが次々とおかわりなさっておりましたし。それによくいるんですよ。カビゴンからつい目を離して金額を見たら驚かれる方」

 

 

 なんということか。まさかポケモンフードがこんなにも高いとは。

 しかし問題ない。俺はチャンピオンだ、リーグで優勝した賞金がある。と、思って財布を除いたら半分もなかった。レッドは忘れていた。賞金なんて使い道がないと思って、大半をナツメに預けておいたのを。

 中々会計をしないお客に対して、お姉さんは催促しはじめた。

 

 

「お客様。まさか、お金がないなんてことはありませんよね?」

 

 

 怒っている。それもすぐに警察を呼ぶ構えだあれは。

 仕方がない。こういう時のための奥の手を使おう。

 

 

「あ、請求はカントーにあるヤマブキシティのヤマブキジムのナツメにお願いします……」

 

 

 その日の昼頃。レッドは人生で初めて、ポケギアの前で土下座をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カン、カン、と氷を削る音が薄暗い部屋に響き渡る。

 男はただひたすらに彫る。そこに感情はない。ただ思い描いたモノだけを彫るだけだ。ただ一心に、これを彫っているときだけは何も考えずにいられる。

 そこに雑音が混じる。

 傍に置いておいた通信機が鳴ったからだ。

 

 

『報告します。微弱ではありますが、また反応を示しています』

 

 

 通信機の電源を切り、氷ノミとハンマーを置く。

 

 

「おかしい。先月の月の満ち欠けからまだそんなに経っていない。いや、理由などどうでもいい。チャンスがまた来たと前向きに捉えるか」

 

 

 すると目の前に頭がない氷の人形が、男が座る椅子ごと載せると立てかけておいたマントと仮面をつけ、デリバードに乗ってウバメの森へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 




こんな感じでジョウトぶらり旅がスタートです。
一話一話が短いのは許して……。
それとこの旅で生死をさまような戦いなんてありません! ゆるふわです!
それに僕はシリアスなんて書けません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ははーん。さてはお前、氷使いだな?

 

 

 

 

 

 

 キキョウシティを旅立ってから1日半。つながりの洞窟を通ってヒワダタウンについてすぐにジム戦を挑んだレッドは苦戦もせずに突破。そのままウバメの森へと向かう。

 森に入って数分。レッドは森の異変に気づいた。

 

 

「なーんか、変だ」

「──」

「お前もそう思うかスピアー」

 

 

 スピアーは言葉を話せない。手持ちの中で一番長い付き合いのあるスピア-とは、言葉などなくとも簡単に互いの言いたいことが伝わる。こいつは森で育った。だからこそ、何かを感じているのだろう。

 ウバメの森はトキワの森同様にジョウトで一番広い森である。生息している野生ポケモンは多いだろうし、カントーのようにロケット団がこちらにポケモンを逃がしているとも考えにくい。

 ポケモンが騒いでいるというよりも、森自身が何かを訴えていると感じる。まるで異物が入り、それに対して出て行けと言っているような。あるいはその逆で、助けを求めているのかもしれない。

 

 

「多分……こっち、か?」

「──」

 

 

 レッドが示す方向にスピアーもうなずくと、彼が先行しその後に続く。

 目的地は定かではないが、おそらくこの森の中心に向かっているのだろう。そこには祠があるはずだ。

 

 

「気づいているか」

「──」

 

 

 槍を構えることで答えるスピアーを横目に森を見渡す。視線だ、それも殺気が込められたポケモンのだ。ウバメの森に出てくるポケモンは虫ポケモンが大半だ。しかし、どう見ても虫ポケモンだけが発せられる殺気ではない。

 

 

「手を出すなよ。俺がやる」

 

 

 ──あっ! 野生ポケモンが一斉に襲い掛かってきた! 

 ──レッドのいかく! 野生ポケモンに取り付いてた何かが消えた! 

 いかくによって倒れたポケモンに近寄る。デルビル、アリアドス、クヌギダマ、ヘラクロスといったポケモンが多数いた。

 

 

「ゴース系か?」

 

 

 ゴースト使いのトレーナーには、その特性上人やポケモンを操る者が存在するという。特にゴースを含めた進化系は特に使用率が高いと聞く。それにこの子たちは野生だ。誰かの手持ちのポケモンから盗んだポケモンではない。

 つまり野生ポケモン達を番犬代わりにしているのか。この先へ通さないように。

 レッドは倒れているデルビルにたずねた。

 

 

「何か覚えてるか?」

「がう……」

 

 

 どうやら分からないらしい。他のポケモン達も気づいたら先程のような状態になったと言う。

 目的のために平気でポケモンを利用する悪がいる。

 これは、見過ごすことはできない。

 

 

「お前らはこの森から離れた方がいい。また同じ目に遭うかもしれないからな」

 

 

 レッドの言葉に納得したのか、ポケモン達は新たな住処を探しに去っていく。

 彼を見送り先に進んで10分ぐらいだろうか。少し開けた場所にでると、予想通り祠があった。

 そしてその祠の前には、大柄で黒いマントを付けた変な奴がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「あんた誰?」

 

 

 声が聞こえ思わず振り返る。そこにはポンチョと頭にターバン巻いた人間がいた。声からして男なのはわかるし、恐らく若いポケモントレーナーだということはすぐに理解できた。

 問題は、どうしてここにいるかだ。祠を中心とした周囲には野生ポケモンを操って侵入者を撃退しろと命じてあるのに、どしてこいつは何食わぬ顔でここに立っている? 

 

 

『出てけ。ここから立ち去れ』

 

 

 ボイスチェンジャーを使って話す。普通の人間ならこの声を聞いただけで恐れ逃げ出す。だというのに、男は逃げるどころか近づいてくる。

 

 

「なあ、あんた誰って聞いて──」

『立ち去れぇ!』

 

 

 デリバードが作り出した無数の氷槍を男に向けて放つ。こいつは手強い、手加減など無用だ。真っ直ぐ氷槍は男の心臓へと目がけて飛んでいくが、それは一匹のスピアーによっていとも簡単に弾かれた。スピアーは主を攻撃して激怒したのか、こちらにその槍を向けている。

 

 

「ははーん。さてはお前、氷使いだな? いいぜ。こっちもそれで相手しやるよ」

「きゅーい!」

 

 

 男はそう言うとスピアーをどこかへ下がらせ、ラプラスを出してきた。

 そのラプラスを見て思わず過去の記憶が鮮烈に蘇る。

 

 

(ラ・プリス、ラ・プルス……)

 

 

 駄目だ。今は忘れろ。目の前にいる奴を倒すのだと自分に言い聞かせる。

 状況はこちらが有利だ。こんな草むらでラプラスは的だ。対してこちらのデリバードは空を飛べる。相性ではいまいちかもしれが、地の利はこちらにある。

 早速デリバードに指示をとばす。

 

 

『やれ、デリバード!』

 

 

 ──デリバードのでんこうせっか! 

 まずはでんこうせっかで距離をつめ、かわらわりでダメージを与える。ラプラスと戦うのは少し思う所があるが、私のではない。

 距離を詰めるデリバードに対して男のラプラスはれいとうビームを地面に向けて撃った。

 ──ラプラスのれいとうビーム! 

 れいとうビームを撃ちながらできた氷の表面をすべってデリバードから距離を取るラプラス。男もまた、ラプラスの背に移動していた。

 そして気づけば、辺り一面が凍ってしまい、アイススケートのようなリングが出来てしまった。幸いなのは、祠には何もしなかったことだろう。

 

 

『デリバード!』

 

 

 さらに指示を与える。しかし、デリバードの攻撃はことごとく避けられてしまう。ただスケートのように移動し、そのヒレを杭のように使うことで柔軟な動きをしている。いくら森の中で比較的開けていると言え、小さなフィールドの上で華麗に攻撃をかわしながらデリバードを翻弄する姿は美しいとさえ思ってしまった。

 だがおかしなことに、男は先程のれいとうビームをしてから指示を出さない。

 

 

「お前、強いな」

『……』

 

 

 男の言葉に一々反応することはない。次の一手を考えるために沈黙を保つ。

 

 

「けどそれだけだ。恐怖をまったく感じない」

『ならば、その身を以て恐怖を与えてやろう!』

 

 

 ──デリバードのれいとうビーム! 

 最大級のれいとうビーム。こいつの威力は高い。例えどんなポケモンでも防ぐことはできまい。できたとしてもそれは伝説のポケモンぐらいだろう。

 

 

「ラプラス」

「きゅー!!」

 

 

 ──ラプラスのれいとうビーム! 

 氷対氷。衝突する巨大なエネルギー。

 その光景を見て驚かずにはいられなかった。

 互角。

 そう、我がデリバードのれいとうビームと互角の威力を持っているのだ。デリバードとは長い付き合いだ。だからこそ、年季が違う。そこら辺の若いトレーナーやジムリーダーはおろか、四天王そしてチャンピオンですら我がデリバードの前では無力に等しい。

 だというのにこいつは何だ。

 一体どんな育成をして、長年積み上げたデリバードと同じ場所に立っているのか。

 そしてぶつかり合う巨大なエネルギー同士がついに爆発。爆風によって白く冷たい煙が体を包む。

 爆風から顔を守るために構えていた腕を下すと、目の前に煙を裂いて男が迫っていた。

 ──???のメガトンキック! 

 

 

(直接来たか──!)

 

 

 咄嗟に右腕で守る。

 ──バリィ! 

 庇った右腕にヒビが入った。ありえない、デリバードとウリムーで作ったこの体は自動で凝固と分解を繰り返す。並みの炎では溶かすことは叶わず、ヒビを入れることも容易ではない。

 なのにただの蹴りでヒビが入るなど認めることなどできるわけがない。

 だが、今のでこの体の秘密を知られてしまったと考えるべきか。自ら肉弾戦を持ち込むトレーナーだ。先程の一撃で、この体の違和感に気づいたかもしれない。

 それに、相手のポケモンがあの二匹だけとは考えにくい。

 一瞬祠に目を向ける。反応は今までよりは弱い。ならば、無理に留まる必要はないはず。まだチャンスはある、ここで死んでは元も子もない。

 

 

『デリバード!』

 

 

 こちらに戻ってきたデリバードの背に乗りウバメの森を脱出する。一度だけ男の方を見たが、彼は追ってくる気配がまったくなかった。

 あれは危険だ。

 トレーナーとしての直感が告げる。関わるな、関わればすべてが無駄に終わるぞ、と。同時にある答えも得てしまった。

 アレに勝てるビジョンが見えない。こちらが一手打とうとすれば、その先の一手を打ってくる。あんな強さを誇るトレーナーが無名なはずがない。四天王あるいはチャンピオンと同等なはず。

 ならば余計に計画への支障をきたす。

 

 

『願わくば、二度と会いたくはないな』

 

 

 思わず口にしてしまう程、嫌な相手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 謎の変質者が去り、レッドはラプラスを褒めながら頭を撫でていた。

 

 

「よしよし。初めての実戦にしてはよくやったぞ」

「きゅいきゅい!」

「けど、俺抜きでやったら負けてたかもな」

「きゅーい! きゅーい!」

「え? 負けるはずがないって? どうかなあ。あのデリバードマジで強かったから、今のお前だと勝率3割あるかないかかな」

「きゅー」

「そう落ち込むなって。まだ成長途中なんだからこれからだよ、これから」

「きゅ!」

「さてと。リザードン、森を焦がさないように氷を溶かしてくれ」

「リザァ!」

 

 

 辺り一面を氷漬けにしてしまったので、ちゃんと後片付けをしないとここら一帯に住んでいるポケモンに迷惑がかかるし、なにより自然を傷つけてしまったのだ。これぐらいは当然の行いだ。

 すると下がらせていたスピアーが両手にどこかへ弾いて飛んでいった氷槍を持ってきた。

 

 

「ふむ。見た目はただの氷、だよな。リザードン、尻尾こっち向けて」

「リザァ?」

 

 

 例えるならタバコに火をつけるライターのようなものだろうか。リザードンの尻尾の炎に氷槍を近づける。するとどうだ。まったく溶けないのだ

 

 

「んー。何かの特殊能力で作った氷か? えい」

 

 

 チューペットを折るような感覚で氷槍を真っ二つに折ると、折れたところ同士が引き合ってまた一つになった。

 

 

「やべぇ。これ科学の時間だ。俺バカだからわかんねぇ。くそ! ここにマサキがいたらなぁ!」

 

 

 ない物ねだりをしてもしょうがないとすぐに切り替え、自分なりに実験を試す。

 レッドはストライクを出すと、一言命じた。

 

 

「ストライク。本気で斬れ」

「……!」

 

 

 縦一閃。

 ストライクの鎌が氷槍を綺麗に斬り裂いた。その断面を見ながらレッド評価を下した。

 

 

「まぁまぁ」

「……ホっ」

 

 

 思わず安堵するストライク。

 

 

「ふむふむ。斬られたと認識されないぐらいの速度で斬ればいいわけか。じゃあ、最後。リザードン、本気のかえんほうしゃ」

「リザァアア!!」

 

 

 森に炎を引火しないよう、高く空へ放り投げた。リザードンの全力で放つかえんほうしゃを浴びる氷槍は、次第にその形を崩し完全に溶けた。

 

 

「えーと。生半可な攻撃だと再生。斬られたと認識されないぐらいの速度だったらそのまま。で、リザードンレベルのかえんほうしゃなら溶ける、と。ふむん。どうせこれ、自由自在に形も変えそうだな」

「──」

 

 

 スピアーがレッドに何かを訴えた。

 

 

「ん? ああ。つまり、ちょっと面倒な相手ってだけ」

「──」

「まとめると。ポケモンは多分伝説並みに強くて、トレーナーもすげー強いけど、全然怖くないってだけ。いや、トレーナーは弱いか。あの変な体だし」

 

 

 レッドの弱いは生身で戦えないトレーナーをさす。しかしだからと言って貶しているわけではない。肉体面より頭脳。こちら側ではなく、普通のポケモントレーナーとしては頂点に近いほどの指示と統率を兼ね備えているに違いない。

 

 

「それにしても、問題はなんでセレビィを欲しがってるってことか。時間移動したいのはわかるが」

 

 

 時を行き来する力を手に入れて、どこで何をするかが焦点になってくる。ただこれもカントーでのロケット団との戦いと同じで、すでに自分が知っている知識と違っていることにある。

 時間軸で言えば、初代と金銀の間の時間だからああいうのが居ても不思議ではないはずだ。問題はこれを、誰が解決するかということにある。

 

 

「見て会って戦ってから言うのもアレだけど、めんどくせぇよ俺。ナツメと悠々自適に過ごしたいだけだし。けどなぁ、ブルー絡みの可能性もあるし……」

 

 

 その場で腕を組んでどうするか悩むレッド。

 ブルーとは出会ってから色々あったが、今では幼馴染として助けてやりたいと持ってる。彼女が何故連れ去られたのか、一体誰の計画によってそうなったか。気になると言えばなる。

 現状分かっていると言えば、絶対に数年の間にジョウトではそこまで大きな問題は起こらないということ。あのゴールドが本当に金銀のゴールドであるならば、やどんの井戸、いかりの湖でロケット団が事件を起こすはず。

 仮にあの仮面の男がロケット団にしろ、第三勢力にしろ、ゴールドやこちらのジムリーダーが動くはずなのだ。カントーと同じ正義のジムリーダーであるなら。

 結論──

 

 

「よし。とりあえず、この旅で分かることだけブルーに伝えて、あとは知らん! 本当に困ってたら手を貸すという形にする! 別に俺がいなくたって問題ないだろうし」

「きゅいきゅい」

「ん? どうしたラプラス」

 

 

 ポンチョを引っ張って何かを教えるラプラスの視線の先には祠が。それもカラータイマーのように光っては点滅している。気になったので祠の前まで歩いていき、恐る恐る祠に手を触れた。

 

 

「──」

 

 

 瞬間、断片的な映像が頭に直接流れ込んできた。

 子供の頃、いじめられたのをいじめ返している自分──

 シルフカンパニーでナツメとキスをしている二人──

 トキワシティでサカキと死闘を繰り広げている光景──

 知っているような4人と戦っているポケモン達──

 誰かがピカチュウと一緒に旅をしていた──

 どこかの森でたくさんの人とポケモンがいた──

 巨大な争いを止めようとしている二人がいた──

 小さな子供が泣いていた──

 どこかで因縁の戦いをしていた──

 他にも多くの映像が流れ込んできた。過去、現在、未来。どれも断片的でちぐはぐな映像。思わず気持ち悪くなって祠から手を離した。

 突然の出来事で、つい現実逃避したくなり祠に向かって叫んだ。

 

 

「ふ、ふざけんじゃねぇぞ⁉ そうやって俺に未来をみせて、そういう風に思考誘導してるんだな⁉」

 

 

 根拠などない。ただ、これを見せればお前はこうするだろう? そう言っているような気がしてならない。

 だが思い通りになると思うなよ。誰が期待通りのことをするものか。

 祠に背を向け、レッドはずかずかと歩きながら鬱憤を晴らすように叫ぶ、

 

 

「絶対に手を出さねぇからな! お前らで勝手に解決しやがれ! こんな所にいられるか、俺はコガネシティに行かせてもらう!」

 

 

 森を出るまで二度と祠の方角には目を向けないレッド。

 しかしレッドは知らない。その自分が取る何気ない行動の一つ一つが、この世界にとって大きな影響を及ぼすことを。

 

 

 

 

 

 




セレビィ「計画どおり」
レッドくんはちょっとバカなので、今回のことはどうせその内忘れてしまいます。


速報。原作第三章のラスボス。レッドと戦ったせいでレッド以外の図鑑所有者およびジムリーダーがもっと弱く見える模様。
そもそも原作からしてこのデリバードともう1匹のウリムーが強い。ディアルガにマウントとれるウリムーって言っても信じてくれないだろうけどね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼は伝説の超ブイズ使いのアキヤマさんだよ

 

 

 

 

 

 エンジュシティ。そこはレッドからすれば、ある意味では前世でのあの町に近い風景が広がっている。ホウオウの巣とも言われているスズの塔に隣の焼けた塔。そして歌舞練場である。

 レッドもエンジュジムをとっとと終わらせ、この歌舞練場を見に来ていた。舞妓さんの踊りに合わせて踊るイーブイ達。

 それはとても癒しであり、兎に角可愛いのだ。

 

 

「舞妓さんもキレイだぁ……。あ、ナツメに聞かれたらお仕置きされるわ」

「なに。別にいないんだから、もっと素直になればいいさ」

「それもそうか。で、あんた誰?」

「酷いな。さっき、ぼくをぼこぼこにしただろ?」

「あ、マツバか。ごめん、ジムが暗くて全然見えなかった」

「それはすまなかったよ、チャンピオンのレッド」

 

 

 思わずターバンがちゃんと巻けてなかったと思ってつい確認したがちゃんと巻いている。マツバはそんな自分に答えを教えた。

 

 

「これでも千里眼で見えてたんでね。それにきみの手持ちを知らない程、無知なジムリーダーじゃないさ」

「はぇー、すごい便利そう」

「そうでもない。かなり集中力を使うし、まだまだ修行中だ」

「何か千里眼で見たいもんでもあるの?」

「ああ。ホウオウをいつかこの目で見てみたいんだ」

 

 

 レッドはそれとなく相槌を打った。

 

 

「いつか見れるといいね」

「ああ。……お、今度は支配人の舞だ。これは見物だぞ」

「は? 支配人?」

 

 

 すると舞妓さんとイーブイ達が舞台から降りると、別のイーブイ達が現れる。もちろん、エーフィーにブラッキーもいる。

 自分が知らないイベントに驚くレッドの前に、さらに驚愕すべき光景が現れた。

 イーブイの……衣装らしきモノを着た男が舞っていた。それも舞妓さんと同レベルの舞をだ。もしや、あれが支配人なのだろうか。思わずたずねた。

 

 

「だぁれ、あれ?」

「知らないのかい? 彼は伝説の超ブイズ使いのアキヤマさんだよ!」

「あんたも誰だよ!?」

 

 

 マツバではなく隣に座る謎の青年が答えてくれたが、まったくの初対面である。しかし、声だけはどこかで聞いたことがあるような気がした。

 

 

「ボクは通りすがりのバトルお兄さんさ! ほら、見てごらん。アキヤマさんのブイズの舞だ!」

「アキヤマのブイズの舞を見られるなんて、レッド。君は運がいいぞ!」

「……」

 

 

 舞台の中央でイーブイが踊り、次にブースターや他のブイズと交互に踊りながらセンターを交代する中、その後ろで支配人のアキヤマの衣装が一瞬にしてセンターのブイズの衣装になるという摩訶不思議な光景を目の当たりにする。

 思わず周囲を見渡す。誰もがアキヤマの舞に見とれているのだ。奥にいる舞妓さんですら「流石アキヤマさんどすえ」とか聞こえる。

 なんだ、俺がおかしいのか。

 確かにアキヤマの舞は文句がないものだ。だがどうしてか、それを認めてしまったら負けたような気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって歌舞練場の稽古部屋。

 

 

「で、なんで俺歌舞練場の稽古部屋にいるわけ?」

「何を言ってるんだいレッドくん! アキヤマさんから直々に指導してくれるなんて、これ以上の名誉はないよ!」

「いや、何でバトルお兄さんも一緒にいるんですか? 俺名乗ってないよね?」

「え、隣のマツバさんが言ってたからそうかなって……」

「そ、それもそうだよな。うん」

 

 

 何ともペースが掴みにくいバトルお兄さんと二人きりの空間に閉じ込められること5分ほど。入り口の襖を開けてアキヤマとブイズ達が現れた。

 

 

「いやぁ、お待たせしてすまないねぇ」

「あのーどうして俺をここに? ていうか帰っていいですか?」

「君には同じイーブイ使いの波動を感じたからね! ささ、君のイーブイを早く出してくれたまえ! もう待ちきれないよ!」

「は、話が通じない……」

 

 

 観念してボールからイーブイを出す。目の前にいる同族達に会えて喜ぶイーブイにアキヤマは一目見ただけで、自分のイーブイの特殊な出自を見抜いた。

 

 

「この子、訳ありなんだね。とても苦しい思いをしてきた目をしている。だが、君と出会ったことで今はとても楽しいようだ」

「分かるんですか?」

「当たり前だよ。アキヤマさんはポケモン研究において、イーブイの第一人者だよ? 最近発見されたエーフィとブラッキーだってアキヤマさんが最初に進化させたんだからね!」

「ま、マジかよ……」

「ははは。そんな大したことはしていないよ。ただボクは、この子達の声を聴いているだけなんだ」

 

 

 それは本当だろうとレッドはすぐに信じた。彼のイーブイ達を見ればわかる。あの子らは彼に絶対的な信頼を置いている。誰ひとりとして嫌な思いをしていない。アキヤマといることが、彼らの幸せなのだと感じる。

 

 

「でも、その衣装を着る意味は?」

「これを着ることで、よりこの子達の気持ちがわかるのさ!」

「は、はぁ……」

「ところで、レッドくんのイーブイは何に進化させる予定なんだい? おじさん、すごーく気になるぅ!」

 

 

 アキヤマが向ける満面の笑みを初めて気持ち悪いと感じながらも、レッドはイーブイの複雑な事情を話した。

 

 

「ううぅ、なんて主人想いのイーブイなんだ! わかった、このアキヤマがそのお手伝いをしようじゃないか!」

「い、いえ結構です。自力でなんとかするんで……」

「まあまあ。ここはアキヤマさんの力を借りようよレッドくん。折角伸ばしてくれている手を掴まないのはよくないよ」

「というわけで、まずはこのイーブイの衣装を着るんだ! ポケモンとトレーナーの心が一つになった時、きっと道は開ける! さぁさぁさぁ!」

「やめろー! 離せー!」

「往生際が悪いよレッドくん!」

 

 

 ──レッドは逃げ出した! しかし、バトルお兄さんからは逃げられない! 

 そして強引にイーブイの衣装を着せられたまま半日が経過した。

 ──おめでとう! イーブイはエーフィとブラッキーの進化を身につけた! 

 

 

「Congratulation! スゴイよレッドくん! まさか半日でできるなんて!」

「ブラッキーの条件のせいで夜まで待たないといけませんでしたからね」

「ぜぇぜぇ……。もう着ない。絶対にこれ着ない!」

「えーいいと思うけどなぁ。動きやすいし」

 

 

 腰をくねくねさせながら快適に過ごせることをアピールするバトルお兄さんに対して、レッドは二度と着ないことを胸に誓っていた。

 いや、彼の言う通り通気性、伸縮性に優れてとても着心地がいいのは本当なのだ。

 

 

「いやぁボクもレッドくんに触発されて、またイーブイの可能性を見出せそうだよ!」

「と、言いますと?」

 

 

 バトルお兄さんが言った。

 

 

「うん。実はね、僕はまだイーブイにはまだ進化の可能性があると思っているんだ。エーフィとブラッキーは昼夜に進化したけど、けしてレベルは高くない。進化の条件を満たしているとは思っていなかった。でも、最近学会でポケモンとのなつき度によって進化するポケモンがいるなんて話題があってね。実際この二匹がそれに該当したんだけど」

 

 

 

 どうやらイーブイの第一人者というのはあながち嘘ではないらしい。現にレッドはあと三つ進化先があるのは知っている。だが、内二つは特殊な環境下での進化。もう一つは……何かをしてフェアリー技を覚えさせればよかったはず。

 それもカントー、ジョウトでは絶対に満たせない条件。だが、この人ならそれすらやってのけてしまいそうな気がする。

 

 

「兎に角。ボクのイーブイへの愛はまだ止まらないってことだね! 

「流石アキヤマさんだ!」

「ところで……」

 

 

 レッドは話の間に割って入ってバトルお兄さんにたずねた。

 

 

「お兄さんって、普段なにしてんの?」

「ボクはね……立派なフリーターなんだ! あ、サインほしいならあげるよ?」

「あ、いらないです」

 

 

 即答で拒否したらいじけたので、結局サインをもらうレッドであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 朝一番で焼けた塔へ向かうことにしたレッド。

 150年ほど前に火事で焼けたとされているこの塔は、以前はスズの塔と同じで九重の塔であったと言われている。現在でもここが撤去されていないのは、未だに神聖な場所だと重んじられているか、過ちを繰り返さないための戒めであろうか。彼からすればここはライバルとのバトルイベント、そしてライコウ、エンテイ、スイクンとの邂逅イベントの印象が大きい。

 レッドはもう覚えていないが、この焼けた前の名称は「カネの塔」と呼ばれており、ホウオウと対の存在であるルギアがここに飛来していたのではないか、そう語るキャラクターが存在している。

 彼はそうとは知らずに焼けた塔へと侵入する。一応入り口の手前までは観光目的で見ることは可能になっているが、それ以上中に進むことはできない。できるだけ壊さないように細心の注意を払って焼けた塔の地下へと向かう。

 しかし、あるのは焼け崩れた塔の残骸と岩ばかり。

 

 

「……いないな。どう見ても」

 

 

 ならばもうこのジョウト地方を走り回っていることになる。その割には気配を感じたことは今のところ一度もない。伝説のポケモンは普通のポケモンと違ってオーラ、まあ存在感が違うのでわかりやすいのだが。

 仕方がないので一階へ戻る。そこで入った時には感じなかった妙な気配を感じ取った。

 

 

「ん? イシツ……じゃない、ただの岩か」

 

 

 てっきり擬態していたイシツブテ、ゴローン辺りかと思ったのだが変哲もない大きな岩であった。しかし不思議なことに、この岩から何かの意志みたいなものを感じる。試しに叩いてもうんともすんとも言わない。かわらわりでもしようかと思ったけど、やってはいけない気がして思いとどまる。

 

 

「……俺ではどうにかできない。つまり、俺がやる必要はないと言うこと。よし、アサギシティへ向かおうそうしよう」

 

 

 内心、ウバメの森の祠で見た未来に叛逆してやったぜと鼻を高くするレッドであるが、その行動こそが正しいとは本人も知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




突然ですがちょっとネタバレありきの相談です。
イーブイをリーフの石とかこおりの石で進化させるのはありですかね。まあこのイーブイ自由に進化できるっていう原作基準の設定なんですけど。
ニンフィアについてはまあゲームではなくポケモン世界目線で考えると、なつきに切り替わって、フェアリー技を覚えさせるって感じでいいはず。
または一度シンオウにいって進化させたあと、触媒として使用する形にしようと思ってます。
理由としては石を触媒にすることでイーブイの負担を減らすという目的があります。
あともれなくレッドくんがそれっぽいガントレットを装備します。
けして、指パッチンがしたい訳ではないです。 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

使うポケモンは、シャキーン! ……は、はがねタイプです⁉

ポケモンカードのミカンの絵いいよね。




 

 

 

 

 アサギシティ。そこは多くの船が出入りする港街。

 レッドは初めてこの光景を見て心を打たれたものだ。ゲームではあっさりとしてる街かと思えば、現実になるとこうも化けるのかと思い知らされたからだ。まず船の量が思った以上に多い。ジョウトではここが他の地方を繋ぐ拠点と考えれば当然であった。それに企業の支店だろうか、立派な建物や倉庫も多く並んでいる。

 なので街に入れば地元民よりも、仕入れにくる業者や、船乗りが多く目立つ。

 試しに船の行先を見れば、カントーのクチバとの便も当然あった。ゲームでは一瞬だったが、リアルにもなると数日はかかるらしい。

 そしてレッドは目的であるアサギジムを難なく突破してジムバッジを貰ったのだが……。

 

 

「いやあ、さすがはチャンピオンです。御見それいたしました」

「こちらこそ、手合わせありがとうごいました。ところで……」

「なんですか?」

「先程からこちらを見ているあの子は誰ですか?」

「あの子? ……ああ。あれは家の次期ジムリーダー候補の一人で、ミカンと言うのです。おーい、ミカン。こちらへ来て挨拶をしなさい」

「……え、ミカン⁉」

 

 

 

 柱の後ろでひょっこりと顔を出していたミカンは、てくてくとこちらに歩いてくる。金銀よりもちょっと幼いが、記憶に残っている白いワンピースを着ていた。

 うん、かわいい。

 そう素直に思うレッド。

 

 

「は、はじめまして、ミカンでしゅ! あ、噛んじゃった……」

「ははは。チャンピオンに会えて緊張しているんですよ」

「こちらこそ初めまして、ミカンちゃん」

 

 

 手を差し出すと頬を赤く染めながら握り返すミカン。

 なんだ、この可愛い生物は。

 

 

「そ、その、ポケモンリーグすごいバトルでした!」

「あ、ああ。ありがとう」

 

 

 個人的にはあんまりすごいバトルというよりも蹂躙のイメージが強いのだが、そこは素直に黙っておくことにするレッド。

 すると突然ジムリーダーが「あとは二人でごゆっくりー」なんて言うもんだから、二人きりになってしまう。

 とりあえずジムのバトルフィールドに腰かける二人は、そのまま世間話を続けた。

 

 

「そう言えば、ミカンちゃんはジムリーダーを目指してるんだって?」

「はい! 毎日勉強とポケモン達と鍛錬を積んでます!」

「へー。ジムリーダーになるのって頭も使うんだ」

「当然ですよ。ジムの経営とか、街の会合にだって出るんですよ? ジムリーダーはそのまま街のリーダーでもあるんですから」

「俺、頭使うの向いてないからジムリーダーは無理だな。目指さないけど」

「でも、レッドさんはバトルでの戦術とかちゃんと組み立てるんじゃないんですか?」

「え?」

「え?」

 

 

 互いに首を傾げる。

 レッド自身、戦いの中で頭を使っているというよりは直感に近い。相手の先の先を読んで戦いに挑んでいる。ただ普通のポケモンバトルでは本当に普通なのだ。タイプ相性もまだ把握できている世代なので、それに対応したポケモンを出せばいい。なによりも手持ちのポケモン達のレベルはすでに90前後。この世界のポケモンバトルにおいてレベル差は絶対ではないとはいえ、それでもこの差は大きい。

 

 

「えーと、俺の戦い方は参考にしない方がいいってこと。ミカンちゃんは、ミカンちゃんの戦いをすればいいんだよ」

「そういうものなんですか? わたし、レッドさんからアドバイス貰えたらなって」

「戦いのアドバイスは無理でも、ポケモンのアドバイスはできると思う」

「本当ですか⁉ えへへ。みんな出てきて!」

 

 

 ボールを投げると現れたのはコイルが二匹。トゲピーが二匹、メリープが一匹、そして最後にイワークだった。

 

 

「あれトゲピー持ってるんだ」

「よく知ってますね! この子達とても仲がいいんですよ」

「エアスラッシュ……白い悪魔。う、頭が……」

「?」

 

 

 将来、一時期暴れまわったと言われるトゲピーの進化先を思い出してしまった。

 よく観察して見ると、このトゲピーはオスとメスのようだ。実際の所、育て屋に預けなくてもタマゴは生まれるのだろうか。

 

 

「あと、メリープのアカリちゃん! 可愛いと思いませんか⁉」

「アカリちゃん……へ、へぇー。この子がねぇ……」

 

 

 まさか灯台のデンリュウことアカリちゃんが手持ちになっているとは……。しかしアサギは、鋼専門のジム。先ほどのジムリーダーもレアコイルやいわポケモン使っていた。門下生はコイルにイシツブテだったのを見て、どこかおかしいとは思っていたのだ。

 

 

「一つ聞きたいたいんだけど、エアームドとかはいないのかい? ジョウトは鋼タイプが少ないとはいえ、コイルやレアコイルだけっていうのは……」

 

 

 疑問をそのままミカンに伝えるレッド。しかしミカンの表情はよく分かっていないようで、彼女の口から予想外の返答がされた。

 

 

「はがねってなんですか?」

「え? だって、コイルって電気と鋼だろ?」

「もー、レッドさんったらわたしをからかってるんですね? コイルは電気タイプですよ!」

「……もしかして、まだ鋼って認知されてないのか」

「ほぇ?」

 

 

 鋼だけではなくフェアリーもと考えるとその線は大きい。現にポケモン図鑑が151匹のまま更新されないのも分からなくもない

 ではどうするかという問題なのだが、別に教えたって影響ないと判断しミカンに鋼の特性について教えた。

 

 

「へぇー! いわとこおりとは相性がいいんですね」

「そう。で、炎と格闘、それと地面タイプの技に弱いんだ」

「レッドさん、まるでポケモン博士みたいです!」

「まあ、ちょっと詳しいだけだよ」

 

 

 

 あとフェアリータイプなんて新種もあるよなんて言えるわけもない。それに鋼タイプに関しては本当に少ない。エアームド、フォレトス、ハッサム、ハガネール、レアコイルの五種のみ。本当に少ないのだ。

 ふとあることに気づく。ハッサムとハガネール。自分の手持ちにはストライク。ミカンにはイワーク。

 

 

「あ、交換できるじゃん」

「え? 何をですか?」

「実はイワークもね、進化できるんだよ」

「えー! レッドさん、わたしをおちょくってるんでしょー」

「ほんとほんと。あとストライクもね」

 

 

 グリーンのストライクに嫉妬して自分も育てているが、最終目的はもちろんハッサムに進化させることであった。そのために必要なメタルコートも当然入手している。なぜか偶然にも二つも。それと入手経路については秘密である。

 懐から丸形のお弁当箱のようなものをミカンに見せると、やはり同じ感想を抱いた。

 

 

「お弁当箱みたいですね」

「まあね。で、これをイワークに持たせてみて」

 

 

 互いにメタルコートを持たしてボールに戻す。で、このあとが問題なのだ。

 

 

「これでどうするんですか?」

 

 

 そう。こちらの交換の仕方は全くと知らないのだ。前世では通信ケーブル(死語)を使っての交換だったのだ。そこで以前クチバでのことを思い出す。ポケモンだいすきクラブの会長のケーシィがロケット団に盗まれて、その間にユンゲラーになり進化したフーディンがいたことがあった。

 ならば、普通に手渡しをすればいけるのかもしれない。

 

 

「そ、そのね? 俺、ポケモン交換するの初めてなんだ……」

「じゃあわたしがレッドさんの初めての相手なんですね!」

「うん……なんかえっちぃな、それ」

「?」

「じゃあ、俺のストライクをミカンちゃんに」

「わたしのイワークをレッドさんに」

 

 

 するとボールの中が光って馴染の音が脳内で再生された。

 ──おめでとう! ストライクはハッサムに。イワークはハガネールに進化した! 

 進化を確認して互いのポケモンを再び返してボールから出した。

 

 

「おぉぉ。やっぱカッコいいぜハッサム」

「わぁ! イワークがこんな姿に進化するなんて。レッドさん、この子の名前は?」

「ハガネールだよ」

「ハガネール……。改めてよろしくね!」

 

 

 ミカンの言葉にハガネールは笑みを浮かべているのがわかる。頭を撫でてほしいのか、首を……首を? まあ首を垂れて撫でてもらっている。なんだかひんやりとして気持ちよさそうだ。

 しかし笑顔は束の間。ミカンは急に暗い表情に変わってしまう。レッドはどうしたんだいとたずねた。

 

 

「レッドさんの言葉が本当ならまだはがねタイプも、この子も世間的には認知されてないんですよね?」

「そうなるね」

「だったら、この子が見世物みたいになっちゃうかなって」

 

 

 なんと純粋な子なのだろうか。ただ進化して浮かれている自分とは大違いだった。しかし彼女の言うことも一理ある。現にリザードンもヒトカゲ時代に群れを追われて孤独だったのだ。鋼タイプが世間に普及し、ハガネールがもっと発見されれば物珍しい眼差しを向けることは少ないだろう。

 だからレッドは提案した。

 

 

「じゃあ、ハガネールの体に岩を纏ってイワークみたいにすればいいんじゃないかな。そうすれば、ちょっとした変異個体のイワークだと思われるかもよ」

「あ、それはいいですね!」

「すぐには無理かもしれないけど、数年したらきっと過ごしやすい環境になるさ」

「そうですよね。それまでわたしもがんばります! ところでレッドさん。そのハッサムは新しいパーティーとして育ててるんですか?」

 

 

 ミカンは首を傾げながら聞いてきた。ポケモンリーグを見たと言っているので、ストライクはパーティーにいなかったからそう思ったのだろう。

 レッドは隠す気はないので素直に教えた。

 

 

「実は前にお世話になった人にプレゼントをしようかと思って」

「えー。それって彼女さんじゃないんですか?」

「違うよ」

 

 

 そこはハッキリと断るレッド。ミカンも女子なのか、恋バナになるとぐいぐいと迫ってくる。ついでも体も密着してくる。

 

 

「じゃあ彼女さんでもないのにどうしてですか?」

「詳しくは言えないんだけど、ちょっと人間関係でトラブルがあってね。その人はまあ、すごい美人なんだ。だから色んな男に付きまとわれてて困ってるって聞いてね。だからそのボディーガードとして送ろうかなって」

「いいなあ」

 

 

 まるで自分も欲しいのか指を唇に当ててねだるミカン。

 

 

「どうして?」

「だって、レッドさんからプレゼントなんて羨ましいじゃないですか! しかも! レッドさんが育てたポケモンですよ!? わたしだってその、男の人からプレゼントもらいたいです……」

「じゃあプレゼントしようか?」

「いいんですか⁉」

「別に減るもんじゃないし。そうだな、ジムリーダーになったらそのお祝いでプレゼントするよ」

「わかりました。わたし、ぜっったいに、ジムリーダーになります!」

「あはは。きっとミカンちゃんならなれるよ」

 

 

 激励を送りながらミカンの頭をぽんぽんと撫でるレッド。

 

 

「えへへ」

「あ、そうだ。もしジムリーダーなったら、バトルする前に言って欲しい口上があるんだけど」

「口上、ですか?」

「うん。ざっとこんな感じで……」

 

 

 レッドは簡単にミカンに教えると、そのままバトルフィールドに立って実演してみせた。

 

 

 

「よ、よく来ました。わたしが使うポケモンは、シャキーン! ……は、はがねタイプです⁉ こんな感じですか? ちょっと恥ずかしいです……」

「とんでもない。すごくカッコイイぞ!」

「そ、そうですか? しゃ、シャキーン!」

「あーいっすね!」

 

 

 後に3年後に開かれるジムリーダー対抗戦でもこれを披露するのだが、まさかこれ以上の爆弾発言をするとはこの時のレッドの目を持ってしても見抜けなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。アサギシティにあるホテルにて。

 レッドはベッドの上に置いたポケギアに向けて土下座していた。理由は言わずもがな。

 

 

『で? 弁明は?」

「ありません」

『ミカンって言ったっけ? その子』

「はい」

『私、言ったよね。可愛い子と一緒にいるのが視えたって』

「言いました。ていうか、なんでそれが今日だってわかるの?」

『QMK(急に、未来予知が、来た)よ』

「なんか、前より力増してない?」

 

 

 自分も限界を超えて多少力が増えたのだ。ナツメも例外ではないだろう。ただ、これ以上強くなられると、勝てないので勘弁してほしい。いや、両方の意味で。

 

 

『恋する女は強いのよ、レッド』

「で、俺にどうしろと? この前の請求書の件は多めに見てもらったけど、今回はもちろん……」

『ダメよ。女絡みだから許さない』

 

 

 即答でした。見えないのをいいことにがっくしと首を前に倒す。

 

 

『そうね。本当なら私を抱きしめながら、眠るまで愛を呟いてもらうのだけれど……』

「それはそれで寝れないんじゃ……」

『決めた。今ここで、大声で私への愛を叫んで」

「叫ぶの? 普通に言うんじゃなくて?」

『そう大声でね』

 

 

 愛を叫ぶことに問題はない。だが、大声となるとどうしても躊躇してしまう。それにこのホテルは安宿で壁は薄いのだ。

 どうすればいいかと苦慮しているレッドには、ポケギアから聞こえてくるナツメの薄ら笑いに気づいていない。

 だがここで否定していまえば、ナツメへの愛を疑われることになってしまう。それだけは絶対に嫌だ、ていうか嫌われたら生きていけないかもしれない。

 なら、やるしかない。腹をくくり勢いよく膝を叩いて立ち上がるレッド。

 

 

「できらぁ!」

『え……⁉

「聞きたいなら、聞かせやるよ! ナツメ! 好きだァー! ナツメ! 愛しているんだ! ナツメェー! 初めて会う前から好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない! ナツメの事はもっと知りたいんだ! ナツメのことをはみんな、ぜーんぶ知っておきたい! ナツメを抱きしめたいんだァ! 潰しちゃうくらい抱きしめたーい! ナツメッ! 好きだ! ナツメーーーっ! 愛しているんだよ! 俺のこの心の内の叫びをきいてくれー! ナツメーー! 君と出会ってから、ナツメを知ってから、俺は君の虜になってしまったんだ! 愛してるってこと! 好きだってこと! もっと俺に振り向いて! ナツメが俺にもっと振り向いてくれれば、俺はもっと君に夢中にだってなれるんだ! 優しい君なら、俺の心の内を知ってくれて、俺に応えてくれるだろ! 俺は君を俺のものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを! 誰にも邪魔をすることはできない! 恋敵がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる! でもナツメが俺にそういうのよくないよって言ってくれれば、俺は戦いません! 俺はナツメを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします! 力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます! キスだけじゃない! ここから君に尽くします! それが俺の喜びなんだから! 喜びを分かち合えるのなら、もっとふかいキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます! ナツメ! 君がシロガネ山の頂上で素っ裸になれというなら、やってもみせる! ……はぁはぁ、伝わった?」

『う、うん。すごく、伝わった……。私も、レッドのこと愛してるっ!』

「俺も愛しているんだ、ナツメぇ!」

『レッド!』

「──お客様。少しよろしいでしょうか?」

「あ、はい」

 

 

 まったく、互いの愛を再確認している神聖な時間を邪魔されてしまった。ドアを開ければ数人のホテルマンがおり、後ろにはゴーリキーとカイリキーが控えていた。

 

 

「お客様。先程の愛の告白、我々一同大変感動いたしました。近隣の方々からも大きな拍手をいただいております」

「い、いやぁ……」

「ですが! それはそれ、これはこれ。大変他のお客様に迷惑ですので出て行ってください。あ、料金はお返しします」

「……はい」

 

 

 これが後のアサギシティで伝説となった『ナツメに愛を叫んだ漢』として一躍有名になる。後にポケウッドで映画したとかないとか。

 なお、カントーにある某ジムリーダーと同名であることから因果関係を噂されたが、本人は特に否定しなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。タンバシティのダンバジム前。

 タンバジムの前に立つレッドは、その入り口の前でジムの看板を見上げていた。

 

 

「ジムってよりは……まんま道場だよなあ。たのもー」

 

 

 道場らしくそれっぽい言い方で呼んでみると、続々と空手家が現れた。

 

 

「なんだ貴様!」

「その恰好は……」

「どう見ても不審者!」

「つまり──」

「道場破りだな⁉」

「──え?」

『『『『『せいやーーーっ!!!!!』』』』』

 

 

 相変わらずのポンチョとターバン姿。これを不審者ではないと言い張るのは無理があった。

 ──空手家達が襲い掛かってきた! 

 ──レッドは無意識にカウンターをしてしまった! 

 ──おおっと、空手家達は吹き飛ばされてしまった! 

 

 

「あ、つい……」

「ほう。見事なカウンター!」

 

 

 突然奥から上半身裸の格闘家ジムリーダーのシジマが現れると、レッドのカウンターを見て評価を下しながらその剛腕を奮う。

 ──シジマのメガトンパンチ! 

 ──レッドのメガトンパンチ! 

 両者のメガトンパンチが炸裂し、その衝撃波でレッドの顔を覆っていたターバンが吹き飛び素顔が露わになる。

 

 

「む。貴殿はチャンピオンのレッドではないか」

「そういうあなたはシジマ殿で?」

「うむ。しかしいくらチャンピオンとはいえ、いきなり道場破りとは如何なものか」

「いや、おたくのお弟子さんが勝手に襲い掛かってきて……」

「ガハハ! それはすまん! こいつらも悪気があってやったわけではないのだ、許してやってくれ」

「いや。こっちにも非があるからなんとも言えないんで、お相子ですよ」

「そう言ってもらえるとオレも助かる。で、レッドはどうしてここに?」

 

 

 目的はジムバッジだけではなく、ここでの修練を学ぶことが目的だと語る。生まれてこの方、独自で鍛錬を積んできたものの、それは武ではなくただの喧嘩殺法みたなもの。武術とはほど遠い。

 カントーのヤマブキにもあるが、どうせジョウトに行くんだからここタンバシティで鍛えてもらおうと。

 

 

「まさかチャンピオンがオレを頼ってくれるとは! これほど名誉なことはないな!」

「で、門下生として加えてもらえますか?」

「もちろん構わん! 先程のメガトンパンチ、中々のものよ! しかしレッド、オレの修業は生半可なものではないぞ? なにせ、ただの素人ではないのだ。それなりに辛い修行が待っているぞ?」

「望むところです」

「その意気やよし! そういえば、レッドもマサラタウンの出身だったな」

「ええ。そうですがなにか?」

 

 

 シジマはふと思い出したのか、やけに懐かしむような眼をしながら言った。

 

 

「なに。あいつもオレの下で修業してたからな!」

「えーーーっ⁉ あいつが遠い場所で修行してたのってここだったのかよぉ⁉」

「おう! 糞生意気な小僧だったな。ガハハ!」

「その割には体つきがそれほどではなかったような?」

「目に見えるだけが強さではない。あいつの心と精神がなによりの修行の成果。いずれは、オレと戦う日もあるだろうさ!」

「なるほど。勉強になります!」

「よーしレッド! まずはこのオレと組手だ! さあかかってこい!」

「オッス!」

 

 

 弟子たちは語る。それはもう組手というよりガチの殺し合いなんじゃないかと。メガトンパンチで吹き飛ぶ壁に屋根。初めて見る師匠の本気の戦い。それについてくるチャンピオン。

 組手は優に一時間以上は超え、これは止まらないと思った弟子たちであったが、シジマの奥さんの怒号で組手は終了。その後二人して土下座して折檻された。

 なお、翌日は道場の修理で費やし、修行が始まったのはタンバシティについて二日後のことであった。

 

 

 

 

 

 




レッドの初めて(ポケモン交換)はミカンちゃん(意味深)

はい。本作最大のイチャイチャでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私はホウオウと違って人間に捕まる間抜けではないからな!

 

 

 

 あれから一ヶ月後──

 タンバシティの小さな港にある桟橋で、レッドはシジマを初めとした弟子達と別れの挨拶をしていた。

 

 

「師匠お世話になりました」

「この一ヶ月よくオレの修行に耐えた! 柔道、剣道、合気道に加え槍や棍、棒術もお前に叩き込んだ! まあどれも初段ギリギリの腕前だが並大抵の奴なら問題ないだろう。だが、お前の一番の武器はなんだ⁉」

「無論、この拳!」

「なら見せてみろ!」

「覇ァ!」

 

 

 ──シジマのメガトンパンチ! 

 ──レッドのメガトンパンチ(という名の何か)! 

 拳と拳がぶつかり合う。その衝撃で風が舞い、海にも衝撃が走り水しぶきが舞う。

 最初に出会った時と同じ光景。しかし、あの時と違うのはシジマの顔が引きつっていることだ。

 

 

「見事だレッド。同じメガトンパンチとはいえ、その拳はすでにオレの遥か高み。師として嬉しく思うぞ!」

「押忍! ありがとうございます!」

 

 

 頭を下げ、一ヶ月分の感謝を伝えながら、脳裏に修行の日々が蘇る。指立て伏せ、片腕懸垂、タンバの海岸でカビゴンを背負ってのランニング、目隠して飛んでくるイシツブテやゴローン、ゴローニャを叩き飛ばしたりと辛くも充実していた日々を思い出す。

 しかし漢に涙の別れは似合わない。

 レッドは桟橋の傍で待っていたラプラスの背に乗り、別れを告げた。

 

 

「お前ら! 達者でな!」

『『『押忍! レッドさんもお元気でー!』』』

 

 

 こうして長きに渡るタンバでの修行の日々は終わった。

 

 

 

 

 ラプラスの背に乗って海を渡ること30分ほど。恐らくジョウトでは有名なうずまき島の前までやってきた。ゲームでは一マス程度のうずしおであるが、こちらではそうはいかない。それなりに大きな渦潮で、生身で泳いでいたら命を落とすことになるほど危険だ。船なら平気とも聞くが、ポケモンはどうなのだろうか、と考えるレッドであったが面倒になったのかリザードンを出してそのまま島に渡った。

 

 

「さてと。ルギアはいるんだろうか」

 

 

 ゲームでいう所の四つあるうずまき島の右上に上陸したレッドはそのまま洞窟内へ。一応ルギアを捕まえるルートがこの右上の島だったのは覚えていた。ただこちらでは、地下深くには一つの洞窟として繋がっているのではないかと想像はしてみたものの、確証はないので比較的安全なルートを選んだのだが。

 

 

「どうするか。あなをほるで一気に下までいくか」

 

 

 恐らくそれが一番早いルート。

 しかし二次災害が怖いのでやめる。例えるなら某ゲームで直下掘りしてマグマダイブといったところか。

 流石にそれはまずいと思ったのか、レッドは大人しくルギアがいるフロアを目指した。途中には滝があったが、横にある出っ張った岩を踏み場に軽々と昇っていくので大した障害ではなかった。

 洞窟内を進んでいくうちになんとなく見覚えがあるような感じがしてきた。先ほどの滝もそうだし、もしかしたらルギアが近いのかもしれない。

 少し目を閉じて周囲一帯のポケモンの氣を探る。イメージとしては小さな光が数多く存在する中、一際大きな光がある。これがルギアなのは間違いない。そしてそれはすぐそこだ。

 人ひとりが通れるような道を抜けると、今までとは比べ物にならない暗闇の世界が広がる。さすがにこれ程となると、レッドの目でも見通すことはできない。

 腰からピカチュウのボールを投げて言った。

 

 

「ピカ、フラッシュ!」

「ピ、ピカチュウ!」

 

 

 閃光。

 それは一瞬にして洞窟内を明るく照らしたと同時に、レッドとピカチュウの前に巨大な存在が立ちはだかり、二人を見下ろした。

 突然のことにピカチュウは驚きレッドの後ろへ隠れてしまうが、その主は動じることなくこの島の主でもあるルギアを注視していた。

 

 

 

「ルギア、でいいんだよな?」

 

 

 レッドは警戒することなくたずねた。

 ルギアほどのポケモンだ。自分が来ることはすでに気づいていたはず。それに、ここに入ってきた時点で攻撃をしてきたもおかしくはなかった。それをしないと言うことは、ルギア自身にもこちらに対して何かを求めているのかもしれない。

 そしてその考えは的中した。

 すでに慣れ親しんだエスパー特有の念話が頭に届いた。

 

 

『認められし者よ。なぜここに来た』

「理由は簡単さ。お前と話がしたくて来たんだ」

『話? 私と何の話がしたいのだ?』

「単刀直入に聞くんだけど、ホウオウについてなんだ。多分5年ぐらい前かな。それぐらいの時期にあいつ変じゃなかった?」

『私が外に出るのは数えるほどだが、あいつは私と違って常にこの大空を駆けている。だからこそ、このジョウトにいるときは存在を感じることができる』

「つまり?」

『君の言うように、その時期は確かにおかしかった。何処かへ旅立ったかと思えば、こちらに戻ってきたり。それが何度かあったのを覚えている。だが、ある日のことだ。巨大な力をあの塔で感じた。そして再びあいつは何処かへ消えた』

「あの塔って……エンジュにあるスズの塔か? だけど、巨大な力ってなんだ?」

『恐らく、あいつに仕える者達の力だろう』

「エンテイ、ライコウ、スイクンか」

 

 

 そうだとルギアはうなずいた。しかしレッドはそこである事に気づいた。

 もしそれが本当なら、その三匹はどこへ行ったのだ? ジョウトにはおそらくいない。ならば、ホウオウを追ってどこかの地方にいるなら納得ができなくもない。だがいまいち分からない。仮にホウオウがその当時捕まえられていて、それを解放しようとして三犬が何かをした。それで解放されたホウオウが何処かへ行き、三犬も消えた。スズの塔はホウオウの巣のようなものだ、とどこかで聞いたことがある。仮にそうだとするなら、帰るべき場所で三犬は待っていてもおかしくない。それこそ、ゲームのように焼けた塔とか。

 

 

「ん? 焼けた塔?」

 

 

 そう言えば、焼けた塔の一階に変な岩があったような気がする。結局自分ではどうすることもできないので、そのまま放置してきたのだが。だけど、ポケモンが岩になるわけがない。伝説のポケモンが突然イシツブテになるなんてどうかしている。新種のイシツブテの方が納得できるものだ。

 

 

『どうした?』

「いや、こっちの話。けどルギアのおかげで今の状況は掴めたよ。多分だけど、今のホウオウは普段通りだってこと」

『そうか。それなら私も安心できる。我々の力は強大だ。だからこそ、こうして誰も寄り付かないところにいるのだから』

「同族として謝罪するよ。ところで、最初に俺のこと認められし者って言ったけど、どういう意味なんだ?」

『君の中にあるサンダーの証がそうだからだ』

 

 

 言われて胸の辺りに力を集中させる。すると胸から「雷の玉」が現れ、これかとたずねる。

 

 

『そう。それはサンダーの力の一片。それだけでも強大なエネルギーとなり、ポケモンはおろか人の身が持つにはあまりにも危険な代物だ。だが、それを君に託したということは、サンダーは君を認めたということだ。いや、認めたというよりは信頼の証なのだろうな』

「あいつは一緒に旅をして、共に戦った家族だからな。俺もあいつを信頼してる」

『ふっ。共に戦うとは面白い。だが、以前はそうだった。人とポケモンも共に戦う時代もあった。本当に大昔の話だが』

「そうか、うんそうだよな。そういう時代もあるもんな。兎に角、俺にはレッドって名前があるんだ。レッドって呼んでくれ」

『わかった、レッド』

 

 

 何となく自分の名前を言ってくれて照れるレッドは頬を掻いた。

 けど、これからどうするかと頭の中で考えだす。肝心のルギアとの対話とホウオウについての情報は手に入った。あとは残りのジム戦をしてカントーに帰るだけになる。

 

 

『ところでレッド。私からも君に伝えたいことがある』

「ん? なんだ?」

 

 

 念話であるが言葉には不安を感じられる。それにルギアが真剣な顔つきをしている。そうレッドは感じ取った。

 

 

『ジョウトいや、この世界全体に大きな不安を感じるのだ』

「不安?」

『以前にもあったのだ。それは大きな災害、人間同士の争い、それに近いもの感じる。先のホウオウの話、もしかしたらまだ終わってないのかもしれない。それにこのジョウトやカントーにも近い内に何かが起ころうとしているような気がしてならないのだ』

「待って、それフラグじゃ……」

『フラグ……?』

「い、いやこっちの話だ。しかしカントーって言われても、俺がロケット団を一応壊滅させたんだが。まだ何かあるとは思えないんだが……」

『杞憂ならいいのだ。だが、それ以上に私自身にもその危険が迫っている気がしてならない。ホウオウの事もある、杞憂にしておくにはまだ早いと思っている』

「ルギア。俺が言う権利なんてないが、人間は欲望の塊みたいなものだ。そしてルギアをはじめとした伝説のポケモン達の力は、人間にとっては魅力的すぎるんだ。自分の野望を叶えるための道具として。最初は俺もサンダーを捕まえたよ。その力を借りて戦ったりもした。だから気づいたんだ。人が持つには危険だと。サンダーは一緒にいたいと言ってくれた。けど、俺はそれを拒んだ。お前達は自由であるべきだって言って」

 

 

 その最たる例がおそらくルビー・サファイア、ダイヤモンド・パールの物語であろう。グラードンとカイオーガ、ディアルガとパルキア。どれも伝説のポケモン中では一線を画す。だがそれ以上に、この世界を創造したアルセウス。きっとそれを狙う存在もいるだろう。

 それはきっとこの先に現れるであろうマグマ団やアクア団のようなそれぞれの悪の組織。ジョウトにはゴールドがいた。ならば、ホウエンにもいずれルビーやサファイアがその時代の主人公達が現れるだろう。きっと彼らがその問題を解決するだろうが、俺は俺なりに勝手にやる。

 この前のウバメの森にある祠で見せられた未来。そんなこと知るか。そんな都合よく俺が動くと思っているなら大間違いだ。俺は、勝手にやらせてもらう。

 

 

「ルギア。俺はポケモンが好きだし人間も好きだ。そしてこの世界が好きだ。だからこそ、その調和を乱そうとしている奴がいるなら、例えそれが人間やポケモンだろうと戦うぜ」

『レッド。君は……変わった人間だな。こうして、当たり前のように話している時点でそうだが』

「よく言われますねぇ! いや、胸張って言うことじゃないか」

『君は人とポケモンを繋ぐ存在か、はたまた別の存在か。だが、レッドならどうにかしてしまいそうな気さえする。……レッド、これを君に授けよう』

 

 

 するとルギアの翼から一枚の羽根を渡された。ぎんいろのはねだ。

 

 

『いつかそれが君を導いてくれるだろう』

「嬉しいけど、やっぱこれってフラグだって……」

『?』

「ところでさ、ルギアはここを出るのは数えるほどだって言ったけど、ぶっちゃけどこへ行くんだ?」

『かつてはホウオウと同じ地に私も降りていたのだが、落雷によってそこは焼け落ちてしまったのだ』

「え、それって焼けた塔じゃん」

 

 

 レッドはもう覚えていないが、スズの塔と対になるカネの塔が今の焼けた塔だということを。そこはホウオウと同じようにルギアが降り立っていた場所でもあった。

 

 

『まあ、なんで建て直してくれなかったのかと当時思ったりはしたが、いまは特に気にしていない』

「そ、それは辛いっすね。じゃあ今はどこへ行くんだ? やっぱ海の中を泳ぐのか?」

『私だって空を飛ぶぞ。実はこれは私だけが知っているのだが、カントーにある島にちょうどいい所があってな。たまにそこへ行ってエネルギーを貰っているのだ』

「はぇー。そのエネルギーが食事の代わりみたいなものか」

『うむ。そうなるな』

「でも、カントーにルギアがいるなんて噂とか伝承も聞いたことないけど」

『目立たぬよう夜中に活動しているからな』

「なるほど。それなら分からねぇな。ははは!」

『私はホウオウと違って人間に捕まる間抜けではないからな!』

 

 

 洞窟内に二人の笑い声が響き渡るが、まさか数年後。あんな事になるとは、ルギアの目を持ってしても見抜けなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




いま第三章書いてるけど、多分半分は消化したはずなのにいつ書き終えるか自分でもわかないっていう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ま、イーブイは癒し係だからしょうがないピカねぇ(ピカピカ)

最近短くてごめんなさいなのですわ


 

 

 

 チョウジタウンにあるチョウジジムは町の中にはなく、その郊外にある割れた大地の下にあるという変わったジムであった。

 見た目はイグルーを巨大にしたもので、まさに氷の家そのものともいえる。そのジムのバトルフィールドもまた氷で作られたアイスフィールド。フィールドの周囲には氷で作られたポケモンの彫刻がずらりと並んでいる。

 そしてこの城の主、ジムリーダーであるヤナギ。彼は車椅子に座り、その手に杖を持ってバトルをしていた。

 が、それも今さっき終わった。倒れているのは彼のジュゴン。立っているのはチャレンジャーであるチャンピオンのサンダース(・・・・・)であった。

 ヤナギはジュゴンをボールに戻してチャンピオンのレッドに謝罪した。

 

 

「本当にすみません。せっかく来ていただいたというのに、バトルもジュゴン一匹でお相手してしまって」

「気にしないでください。体調が優れないなら仕方ありませんよ。それに無理を言ってバトルをしてもらったのは自分ですから」

「そう言ってもらえると助かります。しかしチャンピオンの手持ちにサンダースがいるとは。てっきりピカチュウで来るかと思っておりましたよ」

「え、ああ。まあ、今この子を育成中でして」

「なるほど。チャンピオンになるとポケモンの育成も普通のトレーナーとは違うようで」

「まあ……ちょっと特殊なトレーニングをしてますんで」

「いやはや。私みたいな老いぼれには、ハードなトレーニングはきついですからねぇ。あ、忘れていました。どうぞ、アイスバッジです」

「ありがとうございます。では、これで失礼させていただきます」

「はい。お気をつけて」

 

 

 

 チャンピオンが氷でできた床を当たり前のように歩いていく(・・・・・)のを見届ける。彼は扉を開けると、こちらに一礼してから扉を閉め去っていく。

 それを確認したヤナギの表情は今までの弱々しくも温厚な顔から、冷たく鋭い顔つきになる。同時に傍に控えていたデリバードと、あえて出さなかったウリムーを膝の上において撫でる。

 

 

「どう思うデリバード」

 

 

 ヤナギがたずねるとデリバードはその意図がハッキリと分かっているのか、コクリと縦にうなずく。

 どうやら間違いないらしい。あのチャンピオンのレッドが先日のラプラスの使い手。なるほど、それならばあの強さも納得できる。服装もあの時のポンチョを纏っていたのでもしかしたらとは思っていた。

 ただ、生身で襲いかかって来たのはさすがの自分も驚いたが。

 演技力があると思ってはいないが、おそらくか弱い老人を演じられたつもりだ。それにこうして車椅子にも乗っている。これからあの仮面の男を連想するのは難しいはずだ。

 そのためにデリバードも隠して身を潜めていたのだ。もし、気づかれたときに先手を取って始末できるように。

 ただ。例えこちら先手を取れたとして、デリバードはチャンピオンに勝てるだろうかと思ってしまった。人間がポケモンに敵うわけがない。が、従わせることはできる。現にホウオウを従え各地から有能な子供を攫わせたのだ。自分にはその力があると自負している。

 しかし、純粋な力ではどうだ。仮初の体を使わなければ満足に動くこともできず、戦うことすら敵わない。

 

 

「デリバード。お前はあの小僧に勝てるか?」

「……」

 

 

 デリバードは戸惑っているのか答えられずにいた。額に汗が浮かび、どこか恐れているように見える。それでもう一度たずねた。あの小僧は恐ろしいかと。

 

 

「!」

 

 

 力強くうなずくデリバードに少し驚く自分がいる。人がポケモンを恐ろしいと感じることはあるだろう。人はどうやってもポケモンには敵わないのだから。だが、ポケモンが人間を恐れる。それは初めてのことだった。

 

 

「マサラタウンのレッド。アレは危険すぎる。だが、今はダメだ。まだ……」

 

 

 計画の要であった二枚の羽根はあの小娘に盗まれ、再度手に入れようにもあの三犬どもによってホウオウは解放されてしまった。肝心のルギアはまだ所在が掴めない。自力でセレビィを捕獲しようにも、何度も失敗している。

 やはり例のモンスターボールが必要になるか。

 だが製造法は未だ見つからず、知ってそうな人間はいるが肝心の材料もない。

 今後の計画のために、カントーを拠点で活動していたロケット団の残党の確保を始めているが、はたして使えるかどうかもわからない。まあ、いい隠れ蓑にはなるだろう。

 

 

「何とかしてあの小僧をどうにか遠ざけなければ」

 

 

 気づけばヤナギにとって一番の障害が、自分の歳の半分も生きていない少年へと向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 チョウジジムを出たレッドは、渓谷を氣を使った俗にいう舞空術を使い地上に向かって上昇していた。これもタンバシティでシジマの指導の賜物であった。

 なんでも師曰く、いつも戦う際は無意識に使っていたらしい。なのでそれを実際に把握してしまえば、あとは体が普段から慣れているので簡単に氣のコントロールができるとのこと。つまりこれによって、何度も死ぬ経験をしている割には何とかなっていた原因が判明したのである。

 一応氣の力と雷の玉のエネルギー供給を受けながらなんとか飛ぶのがやっと。以前はサンダーが居たので簡単に空を飛ぶことができたが、やはり彼の存在は大きかったのだと実感する。まあ空を飛ぶ感覚はあるので、これから練習をすれば空中戦も可能になることだろう。

 レッドは地上にたどり着くと、チョウジジムの屋根を見下ろしながら言った。

 

 

 

「やっぱ今から殺るか……」

「ブイブイ⁉」

 

 

 いきなり物騒なことを言うレッドに思わずイーブイがボールから飛び出した。

 

 

「何だイーブイ。お前は気づかなかったのか?」

「ぶ、ブイ?」

 

 

 主が何を言っているのかわからないイーブイのために手持ちのポケモン達が全員現れると、代表でカビゴンが教えた。

 

 

「おいらは場所までわからなかったけど、マスターを狙っていたポケモンが隠れてたんよ」

「ブイ(え、マジ⁉)」

「きゅーい(わたしは気づいてた)」

「サムサム(オレは分かってた)」

 

 

 手持ちの中では比較的新入りであるラプラスとハッサムはうんうんとうなずきながら言う。自分だけ気づかなくて落ち込むイーブイに、ピカチュウがその小さな手で叩きながら慰めた。

 

 

「ま、イーブイは癒し係だからしょうがないピカねぇ(ピカピカ)」

「ブイブイ(いつのまにそんな係になったの)⁉」

「ちょっとイーブイを甘やかし過ぎたのは置いておいて。スピアー、やっぱこの前のヤツか?」

「──」

 

 

 こくりとうなずくスピアー。彼はこのメンバーの中では一番手慣れている。一度会った相手の気配や力量などはちゃんと覚えている。だからこそ、レッドは非合法のバトル……いや、いつもの戦いにおいてスピアーに絶対的な信頼を置いている。

 

 

 

「氷使いだからもしかしてとは思ったけどな。体調不良でジュゴン一匹とかぜってーウソだろうし。まあ、多分デリバードか。あいつの殺気は心地よかったから久しぶりにゾクゾクしたんだが……」

 

 

 恐らく、こちらが何かを言った瞬間あのデリバードが仕掛けてくるつもりだったのは間違いない。互いに顔はバレていないが、こうしてこちらが気づいたのだから向こうも察したはずだろう。そのためにわざわざイーブイをあらかじめサンダースにして戦わせたのだ。

 

 

 

「ま、服装は相変わらずだったから、絶対にバレるとは思ってたけど」

「マスターって本当に堂々としてるからなあ」

「にしてもどうすっかなぁ。あの仮面の男がヤナギのじじいってわかったけど、下手したら俺が犯罪者になる。つまりそれはナツメに迷惑がかかる。それは避けないと不味い」

 

 

 

 ただでさえ今のナツメはポケモン協会に睨まれているので、真面目にジムリーダーをしなければならない。さらにナツメとの関係は何だかで知れ渡っているため、自分が何かを仕出かせば彼女にその矛先が向けられることになる。

 

 

「それに協会のヤツ等、俺のことも怪しんでるんだよなあ。不正とかロケット団と組んでるんじゃないかって」

 

 

 

 不正に関しては恐らくポケモンリーグですべての試合を一匹で終わらせたことだろうか。実際にリーグ終了後に改めて実力を示せと言われて、協会が用意したエリートトレーナーとバトルしたが、面倒だったのでリザードンで全員沈めた。その顔はとても認めたくないような顔をしていたのを今でもハッキリと覚えている。偶然近くにいたイシツブテを投げてやろうかと思ったぐらいだ。

 とにかくそれをやってようやく納得し、チャンピオンとして再度認めた形になった。まあ、チャンピオンなんて肩書なんて別にいらないとはレッドの口癖にもなっている。

 後者に関しては、ナツメが原因だ。ナツメがロケット団の幹部だったことは、多くの証言から得られてはいたのだろう。しかしマチスやキョウと違って、直接現場に出向いた回数は限られている。さらにチャンピオンである自分が彼女のロケット団との関与を濁し、さらに付き合っているのだから疑われるのも当然であった。

 

 

 

「それに、俺が勝手に解決しても仕方ないだろう。ブルーだって個人的にケジメを付けたいだろうし」

 

 

 

 それに未来のこともある。ここで俺が潰してしまえば相手の思うつぼ。なら、ここは手を引くのが正しい判断のはず。

 

 

 

「ふ。命拾いしたな、ヤナギ。お前の相手はきっとゴールドか他のやつらだろうぜ……」

 

 

 また未来に叛逆してやったと息巻くレッドは、そのままフスベシティへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 





悲報 エースのレッド選手。占いで今日は登板しない方がいいと言われ、出場せず。

一応勝てるか勝てないかと言われたら……負けるんかな?
まあいい勝負はする、です。
多分デリバードとリザードンの空中戦にはなるけど、レッド君は氷相手はちょっと分が悪く、地の利がヤナギにあるためです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう金銀どころかルビサファ始まってるよぉ……なんなのこの世界

この前三章が終わる気配がないと言ったが気づいたら終わったでござるの巻


 

 

 

 

 ジョウト地方某所。

 カントーを旅立って早半年が経過した。

 すでにレッドは最後のジムであるフスベジムを攻略しており、これでジョウトのジムバッジをすべて制覇したことになる。ちなみにタンバジムに関しては修行を終えた際に貰っている。

 お土産のいかりまんじゅうも大量に購入し、道中にあるシロガネ山でも軽く下見してから帰ろうと計画していたときのことである。

 頭上を一匹のポケモンが飛んで行ったのだ。それも一瞬でハッキリとは見えなかったが、その特徴的な翼は脳裏にしっかりと焼き付いていた。

 

 

「ファッ⁉ ぼ、ボーマンダ⁉」

 

 

 本来はホウエン地方にいるであろうボーマンダが、何故かここジョウトにいる。群れではないことから単独でこのジョウトに来たのだろうか。恐らくそれは珍しいことではないのだろう。他の地方のポケモンも、何らかの理由で移動をしたりすることもあるはずだ。

 レッドはついそのボーマンダが気になりFR号を出してその後を追う。リザードンを出して追わないのは警戒させないためと、何処へ向かっているのかを突き止めるためである。

 最初は森、次には森を抜けて草原へ。気づけば人工物があるところにたどり着く。しかしそこはレッドが知らない場所。マップにも載ってない、例えるならばゲームの画面外に存在する街や施設だろうか。

 

 

「なんでボーマンダがこんな所に……」

『キャアアア!!』

 

 

 幼い少女の悲鳴が耳に入る。

 つい足を止めた自分に舌打ちしてその声の場所へとFR号を走らせる。距離にして僅か数分。レッドの目には思いがけない光景が目に入る。

 それは一人の少年が手持ちのポケモン三匹でボーマンダと戦っている光景だった。その三匹はポチエナ、ラルトス、エネコ。どれもホウエン地方にいるポケモンだ。だが、ボーマンダのレベルはどう考えてもレベル50以上。対してポチエナ達は進化はしていないため正確なレベルは分からないが、10台に入ってるかないかだろう。それだというのに少年はボーマンダから逃げることなく、的確な指示を出して立ち向かっている。

 手を出そうとした時にはボーマンダは怖気づいたのか別の所へ飛んで行った。レッドもすぐに少年と少女の下へ駆け寄る。

 

 

「君たち大丈夫か⁉」

「……」

「ひっぐ……くす……」

 

 

 二人の前に立てば少年は立ち尽くし、少女は泣いていた。レッドは状況が状況なので、目の前の光景が怖くて少女が泣いているのだと思った。

 気づけば少年のおでこから血が流れているのに気づく。急いで顔を撒いていたターバンの布を千切って少年の頭に当てる。

 

 

「少年平気か?」

「……あ……うん」

 

 

 ボーマンダを撃退したというのに少年の顔は暗い。しかしそれよりも出血がまだ止まらない。生憎医療キットは持っていないのだ。日々の鍛錬の成果が出ているのか、そう簡単には傷を負えない体になってしまっている。

 どうするかと頭を悩ませていると、少し離れたところで爆発音が聞こえる。その方向へ目を向ければ、天に向けてあるポケモンが飛んでいくのが見えた。

 

 

「しぇ、神龍⁉ じゃなくてレックウザ!? ここはジョウトだぞバカ野郎! いいか少年、ここにいるんだ。大人達が後で来るはずだからな!」

 

 

 二人の傍にいてあげたいが、状況が状況だけにそう言ってられなくなった。FR号をボールに戻し助走をつけてその施設へと高くジャンプして向かう。

 空の上から見た状況では、内側から破られたらしく辺りには高そうな機械が見えた。これから推測できることはただ一つ。

 ここではレックウザが保管あるいは管理されていたということ。理由は大方ポケモンの研究とかを名目にしているのだろう。

 サンダー達やルギアの件もあるレッドにはただ怒りしか湧いてこない。拳を握り締め、情報を手に入れるために施設へと侵入する。未だ混乱状態のためかまだ見つかっていない。

 瓦礫が転がっているがすぐにかなり大規模の研究室へとたどり着く。物陰から覗き込めば、そこには先程のボーマンダが。さらにはここの研究員と思われると職員数名と、知っている人間が二人。

 

 

(センリとオダマキ博士⁉ なぜここに……)

 

 

 センリはまだわかる。主人公はジョウトからホウエンへと引っ越してきたのだ。センリがまだジョウトにいても不思議ではない。だが、なぜオダマキ博士がここにいるのかがわからない。

 そこでレッドはあることに気づいた。

 先程の少年と少女。その時は慌てて気づかなかったが、もしかしてあの二人がルビーとサファイアで、兄妹かあるいはそれぞれの子供か。あの容姿だとゴールドより幼い。予想だが5歳あるいは6歳あたりだろう。

 

 

「こ、これは一体⁉」

 

 

 

 すると新たな人物が登場した。それも二人の人間で、見覚えがあった。背の低い眼鏡をかけたアフロ頭。あれはポケモン協会の理事長だ。それに隣の老人は……テッセンか? 

 ホウエン地方にあるキンセツシティジムリーダー、使用ポケモンは電気タイプ。ホウエンのジムリーダーがなんでジョウトに。

 

 

「なんてことだ! あのポケモンが逃げ出したのか⁉ だが、どうして……」

「──それは、私の責任です」

 

 

 センリが声をあげた。おそらくセンリはどうしてボーマンダがここに来てしまったのか分かったのだろう。つまり、あの少年がセンリの息子だ。

 しかしそれも酷というものだ。一人の少女を守るために立ち向かい、そして撃退しただけだというのに。自分の子供を守るために、彼は父親としての役目を果たそうとしているのだろうか。

 物心ついた時には両親がいなかった自分にはわからない感覚だ。まあ前世のこともあるので、理解はできるが。

 そろそろ退散すべきか。そう思った時には一歩出遅れていた。

 

 

「おい! 貴様何者だ⁉」

「やべ!」

 

 

 ──レッドのギガトンパンチ! 

 咄嗟に床に拳を叩きつけて粉塵を起こしてその場から飛び去る。

 僅かな時間で多くのことが起き、たくさんのことを知ったせいか頭の中がおかしくなる。レッドはとりあえず、この場所から遠ざかることだけに専念し空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 カントー某所。

 あれから空を飛んでいたレッドであったが、結局飛行時間は15分程しかもたず、その後はいつものようにリザードンの背に乗って移動していた。気づけばジョウトを過ぎ、シロガネ山を通過しカントー領空に入ったところだ。

 とりあえず、目下の課題は飛行時間を延ばすことだろうか。新たな訓練メニューを考えているとポケギアが鳴った。相手はナツメだとわかるとすぐに出た。

 

 

「あ、ナツメ。どうした?」

『どうした、じゃないわよ。さっきから電話してたのに出ないんだもん』

「ごめんちょっとあって。それで?」

『ポケモン協会から出頭命令よ。何でも、チャンピオンであるあなたに紹介したい人間がいるって』

「なんで今更。ていうか、何で直接連絡してこないんだよ」

『だってレッド。あなたポケモン協会の番号着信拒否してるじゃない。だから私が代わりに連絡しろって言われたのよ。それと理由は知らないわ』

「あ、そうだったわ」

 

 

 一瞬、あの施設に居たことがバレたのかと思って冷や冷やしたが取り越し苦労だったようだ。しかし紹介したい人間とは誰だろうか。まったく想像がつかない。

 

 

『で、今どこにいるの?』

「いまカントー領空。あと数時間したら着くよ」

『わかった。じゃあ待ってるからね』

「うん。じゃあまた」

 

 

 通話を終えてふと悩んだあと、連絡先からある番号にかける。かけて数コール以内にその相手は出た。

 

 

「あ、俺俺。今から会えない? え、そうそう二人きりで。ちょっと頼みたいことがあるんだよ。うん、今どこにいるんだ? ふーん。じゃあ今から行くわ。ああ、じゃあまた」

 

 

 電話を切ってリザードンに新たな目的地を告げる。

 ふうと小さなため息をついたあと、普段からは考えられないほどの弱々しい声をあげた。

 

 

「もう金銀どころかルビサファ始まってるよぉ……なんなのこの世界」

 

 

 ゴールドから始まり、ウバメの森で会った仮面の男が実はヤナギで、なぜかボスキャラになってること。終いにはルビーとサファイアにトドメのレックウザ。

 なんでジョウトでこんなにたくさんのことが起こっているのか。まったく訳がわからないよ。

 レッドは混乱している。なぜ、こんな面倒な世界になっているのかと。さらに拍車をかけるのは祠で見せられた未来。

 

 

「もうさ、俺がどうこうしようがもうどうにかなってるじゃん……」

 

 

 なのでもう考えないことにした。下手に考えると余計に混乱してしまう。物理(そのままの意味)には強いが頭はよくないのだ、自分は。

 しかしそれよりも、レッドには一つ許せないことがあった。

 この世界の調和を乱そうとするなら、例えそれがポケモンや人間だろうと容赦はしない。

 

 

「マジでポケモン協会潰そうかな……」

 

 

 それが本当かどうかは、彼のポケモン達にしかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 セキエイ高原・ポケモン協会本部にあるサーバー室。ここにはカントーとジョウトのポケモンあずかりシステムの本体が置いてある。それだけに室内は広く、コード類や電源ケーブルなどが入り乱れている。

 二つの地方を管理しているだけあってそれは巨大で、マサキが開発して実装されて以来トレーナーの数だけ利用者は多い。24時間常に稼働し、多くの利用者がポケモンを預けてはボックスから出している。

 そして逆を言えば、このメインサーバーのハッキングに成功してしまえば預けているポケモン達を自由自在に操れるということでもあった。そのためポケモン協会本部でもこのフロアは特に警戒が厳重になっているのだが、すでに一人の少女によって侵入されていた。

 白い上着を羽織っているが、下には黒いノースリーブ型のワンピースを着ている少女ブルーによって。

 

 

「へっくし! うーやっぱり寒いわね……」

 

 

 上着は着ていて多少はマシなのだが、下がとても寒くて時折あたる冷房の風でスースーしてしょうがない。

 文句を垂れながらも自前のミニノートパソコンを巧み操り作業を進めていき、何でこんな所で仕事をしているのかを思い出す。

 

 

 

 数日前。

 突然ポケギアから連絡が入った。相手はレッドでその時は珍しいこともあるなと思って出た。なにせ、レッドから連絡が来ることは少なく、どちらかと言えば彼をからかうためにこちらから連絡することが多かったからだ。

 電話に出れば頼みたいことがあるから今すぐ会いたいとのこと。どうやらジョウトから帰ってきたらしく今カントーにいるとのことで、すぐに場所を指定して会うことにした。電話を切ってまず思ったのが、二人きりで会いたいと言ったことだった。

 これはちょっとドキッとした。

 いつもはナツメと一緒にいる彼がそういうことを言うとは。さては本当に愛人契約を、なんて思ったりもしたが頼みがあると言っていたのですぐに笑いながら否定した。

 そして一時間もかからないうちに、リザードンに乗ったレッドが現れた。

 

 

「よ、久しぶり」

「そりゃあ半年も経ってるもの。で、頼みって何? しかも二人きりでなんて。今から逢引でもするの?」

「お前は本当におませさんだな。まあ、今から言うことを聞いてくれたらしてやらんでもないが」

「……冗談でしょ?」

 

 

 ブルーは動揺しながら言った。

 

 

「マジだよ。そんぐらいのことをしてもらうし、それなりの対価は必要だろ? それともこのジョウト土産のいかりまんじゅうで手を打つか?」

「いらない」

「即答かよ。美味いのに」

 

 

 そう言いながら一口で大きい饅頭をほおばるレッドをどこか可愛いと思ってしまったブルー。ワザとらしい咳払いをして、その頼みの内容を聞いた。

 

 

「で、何をしてほしいの?」

「ちょっとポケモン協会に潜入してある情報を盗ってきてほしいの」

「……ごめん。言ってる意味はわかるけど、納得いかないことがあるわ」

「なにが?」

「あんた、半年前にポケモンリーグで言ったことを忘れた訳じゃないでしょうね? もう悪いことをするな、日の当たる所を歩けって。それを言った本人が、またあたしに手を染めろって言うの?」

 

 

 別に怒ってるわけじゃない。ただレッドの本心が知りたいだけだった。なんで今更犯罪を起こせと頼むか。あの公の場で、オーキド博士にも言われて犯罪には手を染めないと誓ったのだ。まあ今でも裏で色々やってはいるが、悪いことはしてない。

 問われたレッドは平然と答えた。

 

 

「バレなきゃ犯罪じゃねぇし」

「……呆れた。あんたがそう言うとはね」

「一応言っておくけど、俺だって警察に色々とマークされてるんだぜ?」

「なんで?」

 

 

 それは初耳だった。いい子、とまではいかないがレッドは自分程手を汚していないはずだが。

 

 

「えーと。ヤマブキシティ外壁の破壊疑惑と、市街地での破壊活動」

「あー。あったわね、そんなこと」

「全部ロケット団の仕業だって言い張ったけど」

「間違ってはないわよね……?」

「で、話を戻すけど。手を染めろ云々に関してはまあしょうがない、すまん、ごめん。けど、お前しか頼めないんだよ。こういう裏の仕事。俺だと目立ちすぎるし、バカだからソフト面には弱い。それにナツメは巻き込みたくないし」

「彼女はダメで、あたしなら良いってこと? 都合がよすぎない?」

 

 

 ナツメの名前を聞いて少し目つきと態度がきつくなるブルー。

 何だかんだで、自分の女が大事なのだろうと、だから自分のような犯罪者には打って付けと言う訳か。

 

 

「何でそんなにイラついてるのかはわからんが、俺はお前を信頼してるから頼んでるんだよ。巻き込んで申し訳ないとは思うが、頼れるのがブルーしかいないんだ。頼む」

 

 

 頭を下げるレッドを見る。少しキツイ言い方をしたのは自分でも反省している。少し私情……嫉妬が混じったのは確かだからだ。

 結局、こいつはバカで正直者なのだ。頼れるのが自分だけというのも今なら分かる。グリーンやリーフ、オーキド博士にジムリーダー達。彼らには守るべきもの、背負うべきものが多すぎる。ナツメに関しても、今はロケット団であることを疑われないために真っ当にジムリーダーとして活動していると聞く。

 そう。自分には失うモノがないのだ。守るべきものはあるが、あの子はジョウトだし知っている人間などいないから問題ない。レッドはそれを何となく分かってるのだ。何よりも自分はどこにも所属していない。だからこそ信頼できるのだと。

 ブルーはため息をついて一つ、あることを質問した。

 

 

「仮に、あたしがヘマして捕まったら……助けてくれる?」

「助けるぞ。俺は身内とポケモンと自然に優しいレッドさんだからな」

「ははっ、なにそれ。……ほんと、惚れた女の弱みってやつかしらね」

「なんか言った?」

「バカレッドって言っただけよ。で、このブルーさんに何を盗んできて欲しいの?」

「それは……」

 

 

 

 

 

 

 現在。

 ──ここ最近のポケモン協会の理事長のスケジュールと極秘資料。主にポケモン研究について

 レッドに頼まれたのはその二つだった。

 このサーバー室にはポケモンあずかりシステムだけではなく、ここポケモン協会にあるパソコンとも繋がっているため、すべての情報がここに集まってくる。世にいる犯罪者はポケモンにしか目を向けない。それにこういうセキュリティをしっかり対策をしているところは少ないため簡単にサーバーに忍び込める。

 それに半年前のポケモンリーグで、この協会本部を下見しておいたのが幸いしているのもあった。なので簡単に建物に侵入できたし、現在進行形で見つからずに作業ができてる。

 

 

「えーと、あったあった。これね。会長のスケジュール表は」

 

 

 恐らく理事長秘書のデータだろう。ご丁寧に分刻みでスケジュールが書かれていた。適当にここ半年分をコピーし、次の作業に入る。

 問題はここからだ。極秘研究となると、やはりセキュリティは今までと違って強固だ。だが伊達に一人で生きていきた訳ではない。これぐらいのセキュリティならばいけるはず……よし、もうちょっと……いけた。案外簡単だった。

 

 

「えーと、うわ。結構あるわね……」

 

 

 画面を見ればずらりと数字や文字が表示されている。とりあえず検索をかけてみることに。レッドからもしもの時のと言われたメモを取り出す。

 

 

「れっくうざ? なにそれ。まあいいわ……レックウザっと。あ、出た」

 

 

 なんでレッドがこのことを知っているのかはあとで聞くとしてデータをコピーする。あとは侵入した痕跡を残さず撤収の準備に入る。すると、耳に着けていたイヤホンにぷりりから合図が来た。

 

 

「どう? 終わったかしら?」

『ぷりぷり~』

「ありがと。じゃあメタちゃんと一緒にこっちへ戻ってきてね」

 

 

 プリンのぷりりとメタモンのメタちゃんには予めあることを頼んでいた。下調べでレッドと会う前に謎の時間が割かれている情報を手に入れたので、二人にその場所と録音装置を持って探してもらっていたのだ。声からしてどうやらうまくいったようだ。

 ポケギアに表示されている時間を見る。そろそろレッドが理事長と会見するころだろうか。

 

 

「あとはレッドと合流するだけね」

 

 

 後片付けをすませ、ブルーは協会の女性職員の服装に変装してサーバー室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




次で二章は終わりです。
今回はポケスペの時間軸を調べていてそれを参考にして書きました。
あとブルーも活躍させてあげたかったというのもありますけどね。

原作でこの話を読んでて、どうやってレックウザ捕まえてんだよwwwと思ったのは私だけではないと思う。

ちなみにレッドくんは恐らくこの年で12歳。ゴールドが8歳。ルビーとサファイヤは6歳という計算です。
まだ12歳。なんなんだこいつ……(ドン引き)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日本一いや、世界一やお前!

次回から第三章です。


 

 

 

 セキエイ高原ポケモン協会本部。

 ポケモン協会理事長から出頭命令を受けたレッドはここ協会本部にやってきた。協会本部に訪れるのはこれが初めて。中に入ると真っ先に思い出したのが、よくドラマや映画などで見る会社の一階フロアだった。

 普通なら受付にアポイントの確認を取るのだろうが、生憎レッドはチャンピオンである。つまりVIPといっても過言ではなかった。現に正面ゲートを抜けて数歩歩いただけで、どこかの秘書らしき女性が声をかけてきた。

 

 

「チャンピオンお待ちしておりました。理事長室へご案内します」

「頼むよ」

 

 

 秘書に案内されてエレベーターの前で立ち止まる。エレベーターを待っていると、隣が開きそこから最近知った人間が出てきた。

 

 

「センリ、さん?」

「え? あなたは……チャンピオンのレッドさん」

「さんはよしてください。どうしてあなたがここに」

 

 

 ワザとらしく彼にたずねると、秘書が慌てて止めに入る。

 

 

「チャンピオン、理事長がお待ちしておりますので──」

「あのアフロなんか待たせてればいい。で、センリさんはどうしてここに?」

「い、いえ。ただ私も協会と話があっただけです。では、家族を待たせているのでこれで」

 

 

 一礼してセンリは去っていく。どうやらブルーが事前に手に入れた情報には彼が関わっているようだ。レッドはそのままエレベーターの中で待たせている秘書の下へ歩き理事長へと向かった。

 理事長室は多分協会のかなり上の方にあるらしい。その階にたどり着くと秘書の後ろに付いていく。

 

 

「こちらです」

「どうも」

 

 

 扉を開けてもらい中に入る。そこには理事長と四人の知っている人間がいた。

 

 

「やっと来たかレッド君。君はチャンピオンなのだから、こちらの連絡にはちゃんと出てもらいたいんだが」

「知るか。で、何の用だ? まあ、契約更新って雰囲気じゃないな」

 

 

 協会には不信感しかないレッドにとって、どうしても態度が表に出てしまう。それでも理事長は話を続けた。

 

 

「こほん。レッド君、改めて紹介しよう。彼らは四天王。ジムリーダーより強く、そしてチャンピオンを守る存在だ。本当はもっと早くに紹介する予定が、君が旅に出てしまった所為で今になってしまった」

「……どうも」

 

 

 理事長が一人一人紹介するが言われなくても知っている。

 氷使いのカンナ。かくとう使いのシバ。ゴースト使いのキクコ。ドラゴン使いのワタル。特に最初と最後にはとても苦しめられた覚えがある。

 しかし実際に相対すれば、カンナはスゴイ美人のお姉さん。シバは筋肉モリモリマッチョマン。キクコは胡散臭い婆さん。ワタルは……中二臭い。

 

(だがなんだ、この感覚は)

 

 四人いや、シバを除いた三人が笑顔でこちらを見てくるその視線。まるで、見定めるかのように見ている気がしてならない。しかしこの感覚を自分は知っているような気もする。だがなぜか思い出せない。レッドは戸惑いながらもワタルに手を差し出しながら言った。

 

 

「えーと。よろしく」

「こちらこそチャンピオン」

「ジョウトに行ってフスベシティにも行きましたよ。やっぱりドラゴン使いが多いですね」

「……どうしてそれを私に? 私はフスベシティ出身ではないが」

「あれ、そうだったんですか? てっきりドラゴン使いだからそうかと」

 

 

 慌てず平静を装って対応するが、内心バレてないか不安でしかない。

 四天王ドラゴン使いのワタルはフスベシティの出身である。それが金銀で明かされた情報であるはずだというのに、フスベシティ出身じゃない? じゃあお前どこ生まれだってことになる。だがこれ以上踏み込むのは危険だと思いやめた。

 最後にずっと沈黙していたシバが握手を求めてきたのでそれに応じた。

 

 

「──」

「──」

 

 

 ただの握手。されどその一瞬に、全力で力を入れて握ってくる。それだけで互いのことがわかった。彼はポケモントレーナーである前に武闘家だ。正直、自分と似たような人間だろう。だからだろうか、シバとは仲良くやれそうな気がする。

 

 

「挨拶をすませたなら帰っていいか?」

「はぁ。わかったわかった。君にチャンピオンの責務というのを求めても無駄のようだしね」

 

 

 チャンピオンの責務とかなんだよと口に出さずツッコむ。四天王を倒してきたトレーナーと戦えばいいだけの簡単なお仕事ではないのか。ジムリーダーが街のリーダーとして会合などにも出席するのだから、チャンピオンにもそういう仕事があるのだろうとは推測できるが。

 そのまま五人に背を向けて部屋を出るレッド。扉を閉めるまで、あの突き刺さる視線は消えることはなかった。

 エレベーターを降りて一階に着くとそのまま出口へ向かう。そこに女性職員が自分の隣に並び一緒に歩く。彼女が変装したブルーということはすぐに分かった。レッドは顔を向けず言った。

 

 

「成果は?」

「大成功ですわチャンピオン」

「そう言われると、秘書を持つのも悪くないな」

「あら。やはりそういう関係をお望みで?」

「ちゃかすな。ほら、いくぞ」

「おほほ」

 

 

 協会の外に出た二人は、そのまま人目のつかない所でリザードンの背に乗ってセキエイ高原を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 協会内にある空き部屋に、レッドと別れた四天王の四人がそこにいた。シバは興味がないのか、腕を組みただ目を瞑って沈黙を保っている。

 カンナが窓の外を眺めるワタルに言った。

 

 

「あの子、気づいてたわね」

「フェフェフェ。伊達にチャンピオンじゃないってことさ。それにしても面白いガキだねぇ。チャンピオンとはいえ、あそこまで協会に盾突く態度をとるってのはさ」

「協会が裏で色々とやってるの知ってるんじゃないかしら? 噂じゃ来る災害に備えてっていう名分らしいけど」

「協会もロケット団とそうそう変わらないってことだねぇ。そうなると、アタシらに協力してくれそうな気もするけどねぇ」

「どうだろうな。それと、どういう意図があって俺の出身地のことを聞いたのか。それは気になる」

「フスベシティはドラゴン使いで有名だもの。不思議ではないわ」

「従妹ならいるがな。だが、それを否定した時の一瞬見せたあの反応は引っかかる」

 

 

 カンナはそれについて興味がないのか、話の矛先をシバに向けた。

 

 

「シバはどう思ってるの? 握手した時に何か通じ合ってる気がしたけど?」

「……あいつはポケモントレーナーである前に、漢だとわかった。それだけだ」

「男……? そんなの当たり前じゃない」

「カンナもまだまだだねぇ。ま、武闘家としての血が騒いだんだろうさ」

「ふーん。で、ワタル。まだ静観をするつもりなの?」

「ああ。まだ計画は準備段階。ここで勧誘して断られてしまえば、俺達の夢がそこで潰えてしまう。ならば、計画の最終段階になったところで誘えばいいさ」

「もし断られたら?」

 

 

 カンナがたずねると、ワタルの口角がぐんと上に引きあげられ、獲物を狩る目した表情をつくっていた。

 

 

「その時は消せばいいさ。チャンピオンのレッド、アレさえ消せばあとは雑魚だ。ジムリーダーなど四天王の敵ではない」

「ふふふ。チャンピオンを守るどころか、チャンピオンを狩る。皮肉よね」

「そういう訳だシバ。しばらくは好きに動いて構わない。その時になったら、分かっているな?」

「……好きにしろ。俺は勝手にやらせてもらう」

 

 

 最後まで興味を示すことなく、シバは部屋を出ていく。

 

 

「精々最後の時間を過ごすことだ。チャンピオンのレッド」

 

 

 窓の向こうに広がる光景を眺めながら、三人は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモン協会からカントーにあるブルーの隠れ家に移動したレッドは、着くなり彼女が盗ってきた情報を確認していた。時間的には10分はたっただろうか。

 ブルーにはそれが退屈で仕方がなかった。

 椅子に座って机に肘をつきながら、こんこんと指で机を叩くだけしかすることしかない。目の前のレッドは見たことない真剣な顔つきでミニパソと睨めっこ。一言も喋らないのだ。

 

 

「ねぇ」

「んー」

 

 

 意外。普通に声をかければ返事を返した。

 

 

「そろそろ教えてくれない? 一応それを盗ってきたのはあたしなんだけど」

「知らない方がいいよ」

「どうして?」

「面倒ごとを抱えているのに、さらに余計な面倒まで抱えることになるぞ」

「それは……勘弁かも。でも、レッドはいいの?」

「俺はいいの」

「変なの」

 

 

 彼の言い分も分からなくもない。自分には目的がある。それを達成するために今も調査をしているのだ。だからこれ以上面倒ごとに巻き込まれるのは、確かにこちらとしても困る。

 だがレッドのことだ。自分だけで背負う気なのだろう。

 彼は優しい。だから依頼した時に言ったように巻き込みたくないと言ったのだ。現にロケット団との戦いも、表ではリーフやグリーンが活躍していたが、実際の所はレッド一人で片付けたようなもの。あのシルフでの戦いもそうだ。どうやってあの鳥ポケモンを倒したかは知らないが、現にナツメを倒してロケット団を壊滅させた。それが答えである。

 

 

「このスケジュールとさっき聞かせてもらった会議の会話からして、センリはジムリーダー試験を受ける事になってたのか。うーん、となるとテッセンが代表でこちらに来ていた、というなら筋が通るか。オダマキ博士は……知人とかの関係になるのか?」

「誰よその、センリとかテッセンって」

「その内分かる」

「あーはいはい」

「五年の試験剥奪ってことは、五年後にスタートするってことだよな? つまり、その間に金銀が……」

 

 

 先程からぶつぶつと独り言を始めるレッド。勝手に喋り、それに納得している姿はなんとも奇妙だ。自分のおかげで色々と分かった割には、自分の存在が蚊帳の外にいる気がしてならない。関りたくないというのは本音だが、どうしても性分なのか気になって仕方がない。とりあえずは聞き耳を立てることにするブルー。

 

 

「でも、カントーでも悪いことが起きるって言ってたし……」

「え、またロケット団でも出るの?」

「秘密」

「もう! ちょっとは教えてくれてもいいじゃない!」

「だから関わると面倒ごとになるって言ってるんだろぉん⁉ お前のためでもあるの!」

「そ、そんなストレートに言われると、結構照れるわね」

「ちょ、いきなり照れるなよ。誤解されちゃうだろ」

「あたしは誤解されてもいいんだけど」

「はぁ……。 あ、ところでこれ。他になんかデータ入ってる?」

 

 

 ミニパソを持ってレッドは聞いてきた。特にこれと言って大事なデータは入っていないので素直にそう伝えた。するとバチッと電流が走り、ミニパソから黒い煙があがった。

 

 

「ちょっとそれあたしの商売道具よ⁉」

「証拠隠滅しとかないとな。それにあとで新しいの買ってやるから、許せって」

「……なんか、さっきからレッドの手のひらで躍らされてる感じがするわ」

「気のせいだろ? でさ、話変わるんだけど。お前が連れ去られてからのこと教えてほしいんだけど」

「そ、それは……」

 

 

 すぐには返事をすることはできなかった。あの日々は、自分にとってあまりいいものではない。確かに今の自分がこうして生きていられるのも、あの頃の修行のおかげでもある。だがそれでも、忘れたい過去の一つだ。

 

 

「嫌なら別にいいんだぞ? 無理に聞こうってわけじゃ」

「ううん。あんたなら、いいかもね」

 

 

 

 始まりは6年前。謎のポケモンに攫われた私はある場所へと連れていかれた。その際に、そのポケモンのクチバしと脚の爪がとても深く印象に残ってそれがトラウマになり、以来鳥ポケモンを見るたびにそれを思い出してしまうようになった。

 たどり着いた私を待っていたのは、謎の仮面をつけた男だった。彼は私に似たような仮面を付けさせた。

 

 

「マスクド・チルドレン。それがあたしたちに付けられた呼称」

「待て。お前だけじゃないのか?」

「ええ。知っている限りあと五人いたわ。それぞれ二人一組のペアを組まされ、あたしには自分より幼い男の子とペアになったわ。その子、シルバーとあたしは自然と姉弟同然の間柄になった。自分の両親の顔も忘れ、支え合えるのがあの子しかいなかったの」

 

 

 シルバー。今もあの子はジョウトで独自に調査をしている。あの子は自分より幼いせいか、家族のことなど自分以上に覚えていなかった。ただあの子が持っていた「SILVER」と縫われたハンカチが、唯一の自分のルーツだった。

 あの子は見た目は一見クールだけど、とても感情的な面がある。だから少し不安なところもあるが、カントーでレッド達のことを知り、シルバーにも背中を押されカントーへと一人でやってきたのだ。

 少し感傷に浸っていると、目の前のレッドが目を丸くしていて硬直していた。ブルーは構わず話を続ける。

 

 

「仮面の男の手駒となるよう教育を施されたあたしたちにとってあの日々は、今でも忘れたくても忘れられない過去。特にあいつからはポケモンの知識、主に進化について叩き込まれたわ。そのおかげか、自然と知らないポケモンでもなんとなくどうすれば進化するのかわかるのよ。オーキド博士にも相談したら、化える者じゃなってよくわからないこと言われたけど」

「化える者、ね……」

「あたしたちにはそれぞれ一匹のポケモンが渡されたの。それがプリンのぷりり」

「やっぱ俺ぐらいじゃん。ポケモン持ってなかったの」

 

 

 そう言うとレッドは不貞腐れはじめた。ブルーは苦笑して続ける。

 

 

「昔はね、ニックネームをつけようとしたらあの男に殴られたの。それもトラウマだった。あいつはポケモンを道具だって言って。けど、シルバー同様ぷりりもあたしにとっては大事な家族だった。だけど、こっちに来てカメちゃんや他の子達を仲間にしてもまだぷりりだけはニックネームで呼べなかったの」

「でも、今は呼んでるじゃん」

「ええ。あんたやグリーン、リーフのおかげね。だから感謝してるの」

「……そっか」

「うん。話を戻すけど、四年間アイツの下で生きてきたわ。けど、あたしはその四年間を費やして脱出計画を考えたの。そしてシルバーと共に脱出したわ。おまけにあの男からあるモノを盗んでね」

「あるモノ?」

「これよ」

 

 

 レッドに二枚の羽根を見せた。一つは金色、もう一つは銀色の美しい羽だ。なんでアイツがこれを大事にしていたかは、今でも分かっていない。

 

 

「レッド?」

 

 

 羽を見せると、レッドは立ち上がりいきなり私を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

「ブルー、お前最高っ!」

「え、え!? ちょ、ちょっとレッド⁉」

 

 

 あまりにも感動してブルーを抱きしめてしまう。

 こんなにおかしなことがあるか。金銀時代のライバルであるシルバーがブルーの弟になっていて、さらに重要なアイテムである二枚の羽もすでに持っている。状況はどうも見てもこちらが有利だ。

 二枚の羽根がこちらではどんな力があるのかはわからないが、それでもあの仮面の男の目的である何かを足止めしているのは間違いない。

 

 

「日本一いや、世界一やお前!」

「え? そ、その、ありがと……」

「ところで、いまそのシルバーって何歳?」

 

 

 レッドは抱きしめながらブルーにたずねる。距離にして拳一個分ぐらいの距離だろうか。ブルーは顔を赤く染めながら答えた。

 

 

「たぶん、今年で8歳のはずだけど……」

「つまりあと三年……」

「ちょっと、それっとどう意味よ」

「ブルー。お前は胸を張っていいぞ。なんならお姫様抱っこしてやろうか⁉」

「今あんたにその胸を潰されてるんだけど……ばかレッド」

「ん? ああ、すまない。つい嬉しくてな!」

「あっ……」

 

 

 ブルーを解放すると、どこか名残惜しそうにこちらを見るが、レッドは構わず話を続ける。

 

 

「だがホウエンはどうするか。今行っても仕方がないし、当分はカントーに留まるか」

「なによ。あんたまたどかに行くつもり?」

「まあ、いずれな」

 

 

 そこでレッドはブルーに自分がジョウトで得た情報を渡すか悩み始めた。彼女が言う仮面の男とはまさに自分がウバメの森で対峙した男で、チョウジジムのジムリーダーであるヤナギだ。だが今こここで教えてしまえば、きっと彼女は一人で先走ってしまうだろう。

 三年だ。恐らく金銀の物語が始まるまで三年ある。

 だが、ルギアのいうカントーで起こるであろう不穏な気配。それを確かめてからでも遅くはない。三年経って何も起こらなければそれでいいし、起こればカントーにいる間はなんとかしよう。

 きっとその時になればゴールドやシルバーが何とかするだろう。そのために必要な情報はブルーに伝えれば問題なし。自分はホウエン地方へと先手を打つために旅に出よう。

 問題はナツメをどう説得するかだな。

 

 

「ブルー、改めてお礼を言うよ。本当にありがとう。お前が天使に見えてくるよ、マジで」

「……なんか色々とはぐらかされてる気もするけど……まあいいわ。じゃあ約束の逢引もとい、デートお願いね」

「……あ、そうだったな」

「もしかして誤魔化そうとしたでしょ?」

「ソンナコトナイヨ」

「おほほ。じゃあそうね……〇日はどうかしら?」

「その日か。そういえばナツメがその日は何か用があるって言ったし、うん。その日でいいぞ」

「言質を取ったからね。うふふ。これは当日が楽しみね~」

「?」

 

 

 何故かやけにご機嫌になったブルーを見て、レッドはただ首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

 

 第2章完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンリーグから約二年後。

 カントー北西部。オツキミ山某所。

 一人の男が巨大な岩を足に乗せ、片手倒立腕立てをしている。岩の重さは軽く一tは超えているに違いない。一歩間違えればそのまま岩の下敷きになるが、彼はバランスを崩すことなく腕立てを続ける。

 男の名はレッド。二年前ポケモンリーグで優勝しチャンピオンとなった男。そんな彼の近くに一人の大柄な男が近寄って声をかける。

 

 

「精が出るなレッド」

「11451、4……シバ、か。ふん!」

 

 

 ──レッドのギガトンキック! 

 重りにしていた岩を蹴り上げげると腕を曲げ、まるでバネのように宙に跳び岩を粉砕した。地上に降りると、フシギバナのつるにかけておいたタオルを吹きながらシバの下へ歩み寄る。

 

 

「益々技に磨きかかっているな」

「シバのおかげだよ。ここは修業にはもってこいの場所だ」

「そう言ってもらえると俺も紹介した甲斐があるというものだ」

 

 

 笑顔で言うシバにレッドも笑顔で返す。

 一年半前。四天王との初顔合わせのあと、シバから共に修行をしないかと誘いがきた。レッドは一人で鍛えるのも限界があると気づき、喜んで彼の提案を受け入れた。四天王である前に武闘家でもある彼との修業は、タンバシティでの日々を思い出すほど実りのあるものだった。着実に自分の技量が上がっているのだと実感できる。

 それは自分だけではなく、ポケモン達もそうだ。ここは一目にはつかず、オツキミ山でもさらに奥にある場所であるため遠慮なく力を発揮できる場所だった。二年前よりも確実に強く成長したはずだ。

 ただポケモン達は強くなったのは分かるが、肝心の自分自身が強くなったという感覚だけはあまりなかった。

 技量をあげることはできても、根本的な強さはあまり変わりない。これが自分の限界かとレッドは最近思いつつも、修業に打ち込んでいた。

 

 

「どうだ。一戦手合わせでもするか?」

「いいね。やろうか」

「……いくぞ!」

「おう!」

 

 

 互いに拳を構えると、一気に距離をつめる。そして常人では成し得ない高速の拳と拳のぶつかり合いがはじまった。

 ──シバのれんぞくパンチ! 

 ──レッドのれんぞくパンチ! 

 身長はシバのが高く、一見レッドを押しているようにも見えなくもない。が、それは違う。押すどころから押し返す勢いだ。

 

 

「ウーハァ────!!」

「だだだだだだだ!!」

 

 

 時間にして10秒ほどだろうか。重い拳と拳の打撃音が響き渡ると、互いに再度距離を取る。

 

 

「また速く、そして重くなった!」

「へへへ。まだまだこれからだ!」

 

 

 再び距離を詰める。互いに渾身の右ストレートを繰り出そうとしたその時、突如シバが地面に両膝をついて頭を抱えうめき声をあげる。

 

 

「う、うぅぅぅ!!」

「ど、どうしたシバ──ッ!」

 

 

 ──レッドのギガトンパンチ! 

 レッドは突然シバに向けて拳を飛ばす。が、彼ではなく地面を粉砕した。後ろに跳んで避けたシバの方に視線を向ける。そこにはまるで別人になったようなシバがこちらに敵意を向けている。

 意識が、ない? 

 突然の異変にも冷静にシバの状態を観察するレッド。だが同時に新たな気配を三つ感じ取ったのと、声が聞こえたのは同時だった。

 

 

「いきなりに友人に殴りかかるなんて、酷いんじゃないかしら。ねえ、レッド」

「カンナか! それに……」

「フェフェフェ」

「久しいなチャンピオン」

「……」

「キクコ、ワタル……」

 

 

 四天王と対峙していま、ようやく気付いた。

 一年半前。初めて会った時に感じたあの感覚。あれは、久しく忘れていたものだ。かつてトキワシティでサカキと命をかけたバトルで常に感じていたあの感覚。

 これは、殺気だ。いま自分は、カントー四天王全員から殺気を向けられているのだ。

 それ即ち、彼らが敵だということの証。

 そしてこれが以前ルギアが言っていたカントーで起こる異変だということに、いまのレッドに気づく暇などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同日。

 ヤマブキシティにあるヤマブキジムの近くにある一軒家に、この街のリーダーであるナツメは住んでいる。約二年にも及ぶジムリーダーとしての活動及び奉仕活動により彼女は街の住民から信頼を得ることができた。

 今は愛する彼、レッドの帰りをリビングでイーブイと共に待っている。

 最初は彼のイーブイと折り合いが悪かった。それもそのはずで、ロケット団時代の事を覚えているためか、最初はこちらに怯えていた。だがエーフィになることでナツメのサイキックを感じったのか、心を開いてくれた。

 以来、レッドからイーブイ、エーフィの育成を頼まれた。エスパーには同じエスパーをということらしい。実際彼の言い分は正しく、声を出さずとも念話で簡単に通じ合っている。だが、実際に声を出す方がより親しみを感じている。

 

 

「はやくレッド帰ってこないかしら。ね、ブイ」

「ブイブイ!」

 

 

 はしゃぐイーブイはまるで自分の代わりにはしゃいでくれているかのようだ。けど、不安が一つあった。

 ここ最近変な予知を視るのだ。

 場所は分からない。でも確かにレッドが戦っているのだと分かった。戦況はどちらかと言えば、レッドが押されているように視えた。

 だから先日も、いや予知を視てから毎回言うのだ。

 気を付けてねと。

 レッドは言う。俺は死なないよ、と。

 信じている。彼は負けない。彼は誰よりも強いのはこの身を持って体験している。

 だからこそ、不安になった。あんな光景を視て余計に。

 

 

「まだかなぁ、レッ──!」

「ブイ?」

 

 

 ──プッツン。

 例えるならそれは張り詰めた糸が切れるような音。

 それは私とレッドを繋ぐ糸。

 それが切れる。

 つまりそれはどちらかに生命の危機、または死が訪れたこと。

 自分は無事だ。ならば、それは──

 

 

「うそよ、うそよね……レッド」

「……ブイ?」

 

 

 イーブイには分からなかった。エーフィになっていれば同じ感覚を共有できたかもしれない。だが、素の状態では分からない。

 だからイーブイは、泣き崩れるナツメをただ見ているだけしかできなかった。それに気づいたのは、エーフィになって彼女とシンクロした数分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




かかったな! いまから3章じゃい!
でも、次は短編なんじゃよ。

速報 レッド選手。物語の主導権を握ったと勘違いし裏で暗躍する模様。なお……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

短編集その1

どれも短いのでまとめたものです。一応本編とリンクしてます。

あと感想で誰ひとり心配してなくて草



 

 

 

 

 その1「マサキえもん」

 

 ジョウトからカントーに戻って早半年が経過した。

 レッドは親友という名の何でも屋であるマサキの家に突撃訪問をしていた。

 

 

「マサキえもーん! ちょっと頼みたいことがあるんだけどぉ~」

「レッド! いい加減もっと静かに入ってこんかい!」

「いいじゃん。どうせ一人なんだし」

「余計なお世話や。で、今回は何の用や?」

「ちょっとぉ、作ってほしいものがあるんだけど」

 

 

 そう言ってレッドは手書きの説明書をマサキに見せる。

 マサキはそれを見てレッドに不満顔をして言う。

 

 

「なんでお前は自分では作れない割には、こういう設計図の図面だけは上手く書けるんや」

「知らなーい。で、これ作れる?」

「んー。これ手甲っていうやつか?」

「どちらかと言うとガントレット」

「ちなみに、どんなモノを希望してるん?」

「えーとな。簡潔に言うと、頑丈でポケモンの攻撃でも耐えられる素材。あと軽量で通気性が備わってるやつ」

「また無理難題な注文を押し付けてくるやつやな……」

 

 

 文句を垂れながらもマサキは図面と向きあい、うーんと唸りながらもしっかりと頭の中ですでに仕事を始めている。

 マサキは善人だ。もっと言えば良い人。なのでこういう頼み事は断れないことは明白で、レッドはそれを知りつつも頼れるのが彼しかいないのだ。もっと言えば、友達は彼しかいない。

 グリーン? 彼はライバルだから……。

 

 

「ところで、この手の甲にある……この所々あるへこみはなんなん?」

「あ、それ? 石嵌めるとこ」

「石?」

「そ。ポケモンに使う進化の石。そうだそうだ忘れた。あとさ、石の加工職人っているの?」

「まあいなくはないで。アクセサリーとしてそういう職人がいるって聞いたことある。けど、進化の石って加工できるんかいな」

「さあ? ちょっとでも原型が残ってればいけるんじゃねぇの?」

「また適当なことを。でもこれ、数がやけに多いな」

「とりあえず現存する石全部嵌める予定だから」

「……なあ、レッド」

 

 

 いきなり冷静になってマサキは言った。

 

 

「これを嵌めても、ポケモンの技は使えへんで」

「ちげぇよ! 俺じゃなくてポケモンのサポートアイテムとして使うの!」

「そうなんか。てっきりこれで指パッチンでもするのかと思ったわ」

「何それ。あとさ、FR号のメンテとついでにブースターの取り付けたのむわ」

 

 

 そう言ってレッドはFR号が入ったボールを机の上に置くと、マサキはため息をついてさらに呆れた顔をした。

 

 

「ついでのレベルとちゃうやろ……」

「あ、金は心配するな。ちゃんとリーグの優勝賞金がたんまりとあるぞ! 足らなくなったら……ナツメにか、借りるから……」

「ヒモやな。完全に」

「だって、ジムリーダーの給料ってすげーいいんだもん。俺チャンピオンだけど、ほぼ無職だし」

「協会から給料もらってるんやないの?」

「嫌われてるからな、俺」

 

 

 レッドは知らないが、ちゃんと協会から給料は出ている。彼がそう思っているだけで、ちゃんと口座もあるし通帳もある。ただ本人がそれを知らないだけなのだ。

 ちなみに管理をしているのはナツメだったりする。

 

 

「……ほんま、バカやなレッド」

「じゃあ頼むわ!」

 

 

 そう言ってレッドはマサキの家を後にした。

 その後もマサキからの定期報告では、ガントレットと石の加工にはかなりの時間を要すると言われた。結局ガントレットの完成の目処が立ったのは、それから1年以上も後のことだった。

 

 

 

 

 

 その2「サミュエル・L・ジャクソン」

 

 カントーに戻ってきたレッドはナツメと共にハナダシティへと訪れていた。

 理由は簡単で、ここに来る目的など一つしかない。ただしナツメはとても反対し、こうやって彼女が付き添うことでようやく許可が下りたのだ。

 街の中心から少し離れた場所にある一軒家。その家の前にある花壇に水をあげている一人の女性を見つけると、レッドはナツメにホールドされていた腕を払って走り出した。

 

 

「あ、レッド⁉」

「お姉さーん!」

「ん? あ、レッドく~ん!」

 

 

 レッドを見るや、お姉さんも駆けだして抱き合う。最初に出会った時はレッドのが少し背が小さかったが、今では彼の方が彼女の背を抜かしたことによって、よりそれらしく見えてしまう。現にお姉さんの豊満な乳房がレッドの胸板によって潰れている。

 二人が抱き合う姿はまるで、離れ離れになっていた男と女が再会をしたようなもので。所謂感動的な再会なのだが、それをよく思わない者もいる。

 

 

「離れなさい、よ!」

「あ」

「あらぁ」

 

 

 ナツメはレッドを引き離すと自分のモノだと言わんばかりに腕をからめる。そんなナツメを見てもお姉さんの笑顔は崩れることなく、むしろその光景を喜んでいるかのように見える。

 

 

「予知で見たから分かってはいたけど、なんでレッドはあの人に抱き着くの!? 抱き着くなら私で間に合ってるでしょうが!」

「い、いや。体が勝手に……」

「言い訳しない!」

「えぇ……」

「相変わらずお二人の仲が良くてお姉さんも嬉しいです」

「くっ。隙がなさすぎる……」

「うふふ。ところで、今日はどんな用事で来たの? レッドくん、旅に出てたって聞いていたけど」

「そうそう。この子をお姉さんにプレゼントしようと思って」

「この子?」

 

 

 レッドは一個のボールを投げると、そこにハッサムが現れる。それを見てナツメもお姉さんも驚く。なにせ、まだ世間にはあまり知られていないポケモンでもあるからだ。

 

 

「こいつはハッサム。ほら、フシギダネを貰ったからお姉さんポケモンいないでしょ? 前に色々と困ってるって言ったから。俺が育てたから、ボディガードとしてお姉さんを守ってくれるよ」

「レッドくん……お姉さん、嬉しいわ。私のことをそんなに気にかけてくれたなんて……」

「お姉さん」

「レッドくん」

「はい抱き着かない」

「あ」

「あらぁ」

 

 

 また抱き着こうとする二人をナツメが間に入ることで今度は止めることに成功する。それからはレッドの前に立ち、二人の間に入って会話を続ける。

 するとお姉さんが思い出したように二人に待つよう告げると自宅に走っていく。待つこと数分。玄関が開かれると、そこには先程のワンピースではなくチャイナドレスなんだかよくわからない衣装を着て現れた。

 上だけを見れば至って普通なのであるが下半身がマズい。腰から下、特に足の露出がとてつもないのだ。ニーハイソックスを履いているのが余計に妖艶な彼女の存在を引き立てる。そもそも下着を身に着けているのかさえ怪しい。

 ナツメは我に返ると後ろにいるレッドを見た。

 チャンピオンだというのに、この男は手で鼻を抑えていた。というより、鼻血を止められていなかった。

 

 

「お、お姉さん。それは一体……」

「これはね、私の戦闘服なの」

「せ、戦闘服⁉」

「いや、それはおかしい」

 

 

 冷静なナツメがツッコミ入れた。

 

 

「レッドくんと別れたあと、私は二度とあんな目に遭わないように護身術の一環として棒術を習うことにしたの。そしたら才能があってね? 先生にもすごく褒められちゃったの! ほらぁ」

 

 

 巧みにその棒を操るお姉さんに見惚れるレッドに対し、ナツメは無駄に師範代クラスの腕前であること見抜いて呆れていた。たまにポールダンスみたいな動きをして見せれば、レッドはさらに鼻血を吹いて倒れた。そんな彼氏を、光が消えた目で見下すナツメ。

 しかもよく見れば、それはただの棒ではなく三節棍だった。どういう仕組みなのか上下に引けば間に鎖があって、ヌンチャクのようにも扱えるそれを彼女はカンフー映画に出てくるような動きをしてみせる。

 

 

「ねぇ。それ棒じゃなくて三節棍よね? 本当は」

「はい? 棒ですよ、これは」

「いや、絶対に三節棍」

「?」

「もういい」

 

 

 どんなに言おうと納得してはくれないとわかると、ナツメはそれ以上の説得はしなかった。倒れていたレッドが気づけば立ち上がっており、それでも未だに鼻を抑えながら言った。

 

 

「ちょ、ちょっと俺、マサキのところ行ってくる!」

「あ、レッド!」

 

 

 ──レッドは逃げ出した! 

 

 

 

 

 残された自分とお姉さん。

 正直に言えば、私は彼女が苦手である。歳は彼女とそう大差ないはずで、普通にため口で話せるはず。しかしどういう訳か。先程の光景が物語っているように、流れをすべて彼女に持っていかれてしまうのだ。

 しかもレッドは彼女に逆らえない、というより抗えないというべきか。ポケモンで言うなら常にメロメロ状態というやつ。人のことは言えないように、自分も彼女には抗えない気がしている。

 常に優しい笑みを浮かべているように見えるが、それを向けているのはレッドだけのような気がする。

 レッド曰く、一夜限りの関係だったというが本当だろうか。それにしては幼馴染いや、おしどり夫婦のような関係に見える。

 すると、お姉さんがこちらに近寄って言ってきた。

 

 

「ナツメさん」

「な、なんだ……」

「たぶん、勘違いされていると思うのでお伝えしておこうかと」

「か、勘違い?」

「はい。私はナツメさんからレッドくんを盗ろうなんて、これっぽっちも思っていませんよ」

「……へ? う、うそだ。私は騙されないぞ⁉」

「確かに私はあの子と一夜を共にし、肌と肌を重ねました。あの子を好きではない、愛していないと言ったら……うそになるかもしれません。ですが私は、ただレッドくんのお姉さんでいられるだけで……それだけでいいんです」

『お姉さんは私なんですけどぉ⁉』

「何か聞こえたような」

「気のせいですよ」

 

 

 突然謎の電波が飛んできたが、二人してなかったことにする。

 

 

「それに私は嬉しいんです。レッドくんがナツメさんを紹介しに来てくれて」

「まあ、相手のご家族に挨拶しにいく感じだった……うん」

「つまりですね、私はレッドくんが幸せならそれでいいんです。それに──」

「?」

 

 

 するとお姉さんは目前まで歩み寄ると、そっと耳元で囁いた。

 

 

「あの子の心の中に私という存在がいる。それだけでいいんですよ」

「うわぁああああん! レッドぉーーーー!!」

 

 

 私は逃げ出した。

 だって、すでにレッドの中にはお姉さんがいるから。だから私は、この人に絶対に勝てないんだ。そう悟って逃げ出した。

 

 

 

 

「あらあらあらぁ。ナツメさんったらかわいいですね」

 

 

 今度はお姉さんが残され、彼女はレッドから渡されたハッサムに目を向けた。先程のやり取り見ていたはずなのだが、意味がわかってないような表情をしていた。

 

 

「ハッサム……と呼ぶにはちょっとかわいそうですね。何かニックネームをつけてあげないと」

「──!」

「そうですねぇ。ハッサム……ハッサム……サム……あ、そうだ! サミュエル・L・ジャクソンにしましょう!」

「!?」

「よろしくね。サミュエル」

「……ハッサム!」

 

 

 中々表情を掴み取れないハッサムであるが、意外と気に入ったようだとお姉さんは思った。

 

 

 

 

 

 その3「友達0人」

 

 ある日のこと。

 マサラタウンにあるレッドの家は、意外にもまだ使用されていた。ナツメと付き合うことでここはもう用済みとなった。そう思っている人間も多いだろう。しかし意外にも、彼はこの家にちょくちょく帰っている。

 所持金を除けばこの家を含めた土地が彼の財産ということになる。名義もすべて自分の名前になっているので、彼はこれらがレッド個人がいたという証として持っておくことにしたのだ。

 と、言うのは建前。ここはレッドにとっての城であり宝物庫。

 つまり彼女がいながらも、こうしてお宝をここに保管しておける最後の聖域なのだ。

 今も自分の私室にて、旅立つ前に保管しておいたお宝を探して床に出しているのだが……。

 

 

「お、おかしい。いつの間にか、俺のお宝本がお姉さん本と幼馴染本にすり替わっている……」

「あ、それね。わたしとお姉ちゃんがすり替えておいたの」

「きゃぁああ!」

 

 

 振り向けば何故かリーフがいた。レッドは慌ててお宝を隠すが、すでに手遅れである。

 

 

「男の部屋に勝手に入るなよぉ⁉」

「レッドだって、わたしの部屋に入るじゃん」

「それはお前が来いっていうから……」

「まあそれはどうでもいいんだけど」

「よくない! で、なんだよ。急に現れて」

 

 

 何故か互いに正座で話し合うことになった二人。リーフを見れば、とても真面目な顔をしているのが見て取れた。

 

 

「お願いがあるの」

「お願い?」

「私を……鍛えてほしいの!」

「え~。まぁとりあえず、理由だけ聞く」

「私はレッドに勝って、レッドを手に入れたいの。はい、これが理由」

「それを聞いて、はいわかったってうなずける訳ないじゃん!」

 

 

 どうやらまだポケモンリーグで負けた際に言ったことを諦めていないらしい。

 レッドは思った。これはあれだと。バトルに勝った際に手に入るおこづかいの代わりに、自分を手に入れようとしているのだと。

 

 

「えーだめぇ?」

「だめ」

「じゃあレッド関係なく、わたしを鍛えて」

「結果は変わらないのでは?」

「違うよ。わたしを鍛えることで、レッドの土俵に立てる人間が増えると思えばいいんだよ」

「ハハハワロス。イシツブテも投げられないようなリーフには無理ですって」

「投げられるよ、わたし」

「なん……だと……?」

 

 

 そんなバカなことがあるわけないとレッドは否定する。旅立つ前によくリーフと遊んでいたから知っている。こいつはそんな重たいものなんて持てたことはないはずだと。

 しかし衝撃の事実をリーフの口から知る。

 

 

「だってレッドって友達いないよね? でもわたしはいるの。だからよくイシツブテ合戦してたし。あ、これでも負けたことないから」

「ちょっと待って。ライフ(心)で受けるにはちょっと辛い……」

「レッドってさ、何故かこの町でいじめらっれ子だったよね。何故か」

「ふん。だから喧嘩で負けたことはないぜ」

「だから友達いないんだよ。で、話を戻すけど。わたしを鍛えてくれる?」

「例えだけどさ、お前……殴れるの?」

「痛いからヤダ」

「……それでも鍛えてほしいと?」

「イエス!」

 

 

 殴るのが無理。じゃあ蹴るのだって無理。となると思い当たる攻撃方法は一つ。

 レッドは実際にやりながら言った。

 

 

「じゃあ……はたくとか?」

「こう?」

 

 

 ──リーフのはたく! レッドに小ダメージだ! 

 ぱちーん。と、容赦なくリーフはレッドの頬をはたくと、彼は床に倒れた。

 

 

「ぶったな⁉ お姉さんにもぶたれたことないのに!」

「あの人がレッドをぶつことなんてありえるのかなぁ……。でも、これいいね! シュッシュッ!」

「それを毎日欠かさずにやれば、まぁ強くなれるんじゃない? 知らんけど」

「うんわかった! ありがとーレッド! 大好き!」

「へいへい。さてと……うーん、やっぱ幼馴染本でも貧乳ばっかじゃん」

 

 

 邪魔者がいなくなったことで、再びお宝の鑑賞会を開くレッド。

 しかしレッドは忘れていることがあった。

 リーフもまた自分と同じマサラの血を引いていることを。

 

 

 

 

 

 

 おまけデータ

 ハッサム/サミュエル・L・ジャクソン

 レベル/70

 備考 

 レッドがグリーンのストライクに嫉妬してカントーのとある場所で捕まえた子。

 旅に出る前にハナダの洞窟でブートキャンプをして強くなった。特訓内容はひたすら岩を斬れ(技を使わずに)。そのため何度も何度も岩を斬っていたら、いつのまに斬られたことすら気づかないレベルの斬撃を会得した。レッド曰く、まぁまぁ。

 なお、ボディガードにしてはレベルが高すぎる模様。

 

 ハナダのお姉さん

 レベル/3(上限??)

 能力 お姉ちゃんパワー

 

 リーフ

 レベル/5(上限?0)

 技 はたく

 

 ナツメ

 レベル/27(上限30)現在 シルフ決戦時レベル/25

 能力 エスパー

 

 

 

 

 

 




気づいている人もいるかもしれないけど、ハナダのお姉さんがあまりにも他のキャラを食う勢いなので、たぶんエリカとナナミはこのままフェードアウトすると思う。
本当はもう一個短編をやろうかと思ったけど、挫折しました……許して許して……

それと第三章は引き続き更新します。
ただ第四章以降は書き溜めをして毎日更新をするか分かりません。
暑すぎてモチベがね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章 怒りの逆襲
彼女、きっと売れ残るタイプですね。間違いない


悲しいですがレッド君が死んでしまったため、これらからはボクっ子少年が主人公です!


 

 ポケモンリーグから二年後。

 マサラタウンにあるオーキド研究所にて、その主であるオーキドはポケモン図鑑をメンテナンスしている。しかしその顔はパソコンとテレビを交互に行ったり来たり。それを孫娘であるナナミが注意する。

 

 

「おじい様。作業をするか、テレビを見るかどちらかにしてくださいね。怪我をしても治してあげませんよ?」

「そう言わんでくれナナミ。いまからちょうど彼女のインタビューが始まるんじゃよ」

「彼女?」

 

 

 首を傾げながらナナミはテレビの方に顔を向けた。画面の右上にはシンオウTVとある。

 

 

『今からチャンピオンであるシロナさんにインタビューを始めたいと思います! シロナさん、今回も防衛成功ですね! どうですか今のお気持ちは?』

『まあ四天王を倒しただけの実力はあった、かしらね。けど、一匹に倒されているようではまだまだね。でも筋は悪くない。なので、これからの成長を期待してます』

 

 

 シロナの傍に控えるルカリオは、当事者である割にはあまりテレビに映ることが好きではないのか、あまりいい顔をしているようには見えなかった。

 

 

「へぇ。一匹だけで倒すなんて、まるでレッドくんみたい」

「何を言ってるんじゃ。レッドよりすごいんじゃぞ? レッド達と同じ歳ぐらいに旅をし、そしてチャンピオンになってから今日までずっとその座を守ってきたのだ!」

「それはすごいですね。でもおじい様。なんでそんなにシロナさんのこと詳しいんですか?」

「彼女はトレーナーであると同時に考古学者でもあってな? シンオウにはわしの先輩であるナナカマド博士がいて、彼女は彼の教え子でもある。だから発表会などで度々交流があったんじゃよ」

「そうなんですね。あ、一つ気になったんだけど。あのルカリオの顔が赤い部分。資料で見た時は黒かったような?」

「ああ。そのことについてわしも昔聞いたんじゃよ。なんでも進化前のリオルのときに、木の実か何かを磨り潰して染み込ませて赤にしたんじゃと。それが進化したら、そのまま顔の黒い部分が赤くなったらしいぞ。あと昔からの癖で、手にバンテージを巻くようになったとか」

 

 

 適当に相槌を打ちながら再びテレビの方に目を向けると、女性レポーターのためかそういう話を切り出した。

 

 

『ところでシロナさんには気になる方などいないのですか⁉ 世界中の紳士淑女の皆様方も、とても気になっていると思うのですが!』

『そうねー。まあ……私より強くて、ポケモンにも負けない人かしらね』

『え、何それは……。ところで、その腰に着けている赤い帽子は何ですか?』

『ああ。これは私の大切な──』

 

 

 ブチッとテレビの電源が落ちる。どうやら作業に取り掛かるためにオーキドが消したらしい。ナナミが最後のシロナの言葉を思い出し、辛辣に吐いた。

 

 

「彼女、きっと売れ残るタイプですね。間違いない」

「お前は何を言ってるんじゃ……。お前だってレッドばかりに構ってないで、そろそろいい加減彼氏でも連れてくるとか……」

「レッドくんより弱い人嫌です」

「そりゃあ無理じゃろ……」

「レッドくんで思い出したけど。それ、あの子のポケモン図鑑ですよね?」

 

 

 今オーキドがメンテナンスをしているのは、レッド、グリーン、リーフ、ブルーが持つポケモン図鑑と同じ型のはず。新しく作ったという話をナナミは聞いたことがなかったからだ。

 

 

「そうじゃ。あやつ、ジョウトへ旅に出る前に渡しに来たんじゃよ。もういらないとか言いおって! こんなにハイテクマシンは他にないというのに! まあ捕まえた数はともかく、見つけた数は登録しているすべてのポケモンが記録されておる。にしてもこの??? ってなんじゃ。なんかバグってるしのう」

「じゃあなんで今更メンテナンスを? それにその画面の設計図は……新しい図鑑、かしら?」

「そうなんじゃよ。いま、各地にいる博士らと話をしてな? レッド達のような若者を選び、図鑑を託そうかという話があるのだ。そのために今新しいのを設計中なんじゃよ」

「それが最近話しておられた、図鑑所有者ということになるんですね」

「うむ」

 

 

 腕を組み、鼻を高くしてオーキドはうなずいた。

 

 

「そう言えば何か書いてませんでした? なんか……○○な者、みたいな?」

「それか。まぁ、図鑑を持つトレーナーには内なる才能があるのではないか、そう思ってな。現にブルーから話を聞いて、あの子は進化の知識が豊富であるし何よりもそのタイミングを自分で操作できる。だから『化える者』と例えたんじゃ」

「ふーん。じゃあレッドくんは?」

「あいつか? あいつはなぁ……まさに『戦う者』なんじゃが……些か物騒すぎ──」

 

 

 するとオーキドのパソコンが電話の着信のような音が鳴る。応対すると、そこには隣のジョウト地方にあるワカバタウンで研究しているウツギ博士だった。

 

 

「おおウツギくんじゃないか。どうしたんじゃ?」

『オーキド博士! 実はここ数日で野生ポケモン達におかしな行動があって……!」

「おかしな行動? 具体的にどんな行動なのだ?」

『はい。ここ数日各地にいる研究員やレンジャー達の報告で、野生のポケモン達が次々と住処を離れていると連絡があったのです。最初はよくある群れだけの移動かと思ったのですが、それが群れ関係なくある場所へ向けて大移動しているのです』

「ある場所? それは……」

『それは博士がいるカントー地方です。正確な位置まではまだ把握はできてないのですが、間違いなくカントー地方です』

「なんと⁉ だが、こちらのポケモン達には特に異変はないが」

『そうなんですか? とりあえず続報が入り次第お伝えします』

「うむ。頼んだぞ」

 

 

 通話を切るとオーキドはマウスを動かしてメールを開く。主に各地方にいる博士との研究報告や、カントーのあらゆる場所に出向いて生態系を観察している研究員からのメールが届くことになっている。

 ナナミも気になってオーキドの後ろからモニターを覗き込む。上から順に新しいのが届いていて、その研究員の担当はハナダ方面だった。メールを開くと、先程のウツギ博士の言っていた同じ内容が書かれている。

 

 

「ふむ時期は数日前。カントーとジョウトで一斉にポケモン達がある場所を目指している、ということか? しかしどうして……」

「おじい様。野生ポケモン達にはトレーナーといるポケモン達よりも、ポケモン本来の野生本能が高いはず。ならば」

「彼らはその本能で何かを感じ取った? しかし一体何を──」

 

 

 その時。研究所の扉をがりがりと何かが引っかいて、まさに扉を開けろと言っているかのようだ。二人にはその行動に見覚えがあった。

 

 

「もしかしてピカ? レッドくんかしら!」

「おお。これはナイスタイミングじゃ! レッドなら何かわかるかもしれん。待っておれ。いま開けてやるかのう」

 

 

 オーキドは特製のゴム手袋をはめる。こうしないとドアノブからピカチュウの電流が流れてきてしまうからだ。

 だが扉をあけたそこにはレッドの姿はなく、二人は視線を下に向けると、そこにはボロボロに傷ついた彼のピカチュウだけがいた。

 

 

「ピカ⁉」

「おじい様、早くボールに入れて回復を!」

「う、うむ。そうだな」

 

 

 空のモンスターボールに入れて回復装置に置く。外から見れば、徐々にだが傷が癒えていくのがわかると、改めて冷静になったナナミが言った。

 

 

「おじい様。もしかしてレッドくんの身に何かあったのでは……」

「そうかもしれん。とりあえずわしはジムリーダーやすべての機関に連絡を──」

「こんにちわ~」

「え? きみ、いまは取り込み中だからあとで」

 

 

 突然ドードーに乗った麦わら帽子を被った少年が研究所に入るや否や、ドードーから降りて回復装置を止めるとピカチュウをボールから出す。慌てて二人が彼を止めようとするが、少年がピカチュウを抱きしめるとみるみる傷が癒えていく。

 

 

「よし元気になった!」

「ピカ!」

「じゃあ行こうかピカ!」

 

 

 二人を無視して少年とピカチュウは外を出ようとするが、それをオーキドが止める。

 

 

「ま、待つんじゃ!」

「はい?」

「きみは一体誰なんじゃ⁉ それにいきなりやってきて、勝手に去るとは! 事情を説明せんか!」

「そんなことを一度に言われても」

「おじい様。少し落ち着いてください。……どうしてあなたはレッドくんに何があったか知ってるの?」

「何かがあったのは知っています。それが何なのかは分かりません」

「じゃあどうしてピカを? きみはこの子をピカと呼んだわ。それは彼を知る者にしか知らないこと。さらに言えば、あの子のポケモン達は余程のことがない限り他人に心を開くことはないの。今のピカの様子から見ても、あなたに心を許しているように見えるわ」

「それは……言えません。けど、ボクはピカと一緒にレッドさんを助けるためにここに来たんです!」

「話にならん!」

「おじい様⁉」

 

 

 オーキドは少年の話に耐え切れず、懐からボールを投げオニスズメを出した。

 

 

「レッドはチャンピオンじゃ。そしてその強さに誰も勝てはせんかった。わしの孫であるグリーンやリーフでさえも。お主にはトレーナーとしての強さを感じぬ。そんなお主が、レッドを下した相手に勝てるわけがない! それでもレッドをピカと共に救いに行くというなら実力を見せ、このバトルを終わらせてみよ!」

 

 

 ナナミは額に汗を浮かべながら少年を見た。年老いても元ポケモンリーグ優勝者。その実力はまだ健在だ。

 どう戦うか。オーキドも目を離さず彼を見る。

 そして少年はそれに応じた。ドードー対オニスズメ。少年はドードーにふきとばしを命じ、オーキドはオウム返しを命じる。彼はさらにふきとばしを命じ、互いにダメージが入ることはなく防戦一方。

 次に少年はドードーに走れと命じる。オニスズメの周りを走り始めると。時計回りに何週もすると、それを追いかけていたオニスズメの目が回りそのまま地上へと落下するのをピカチュウが受け止めた。

 

 

「ハイ! 言われた通り、バトルを終わらせました!」

「な……」

「おじい様の負けですよ」

「ナナミ! しかしだな⁉」

 

 

 未だに意固地になっているオーキドを制し、ナナミは少年に再度問いかけた。

 

 

「きみの名前は?」

「すみません。言えないんです」

「そっか。けど、レッドくんを助けるのは本当なんでしょ?」

「はい!」

「うん。なら、これを持って行って」

 

 

 少年にかつてレッドが持っていたポケモン図鑑を渡す。

 

 

「レッドくんのポケモン図鑑よ。もし彼に会えたら、これを渡して」

「わかりました!」

 

 

 育ちがいいのか、少年はしっかりと頭を下げた。そしてドードに乗ってピカチュウ共に走りさる。

 オーキドはまだ納得がいかないのか、まだ不服そうな表情をしている。

 

 

「ナナミ。本当によかったのか?」

「おじい様も見たはずですよ。レッドくんのピカが、見ず知らずの少年に懐いている。それだけでも託す理由にはなります」

「それはいい。だが、問題は彼自身じゃよ」

「と、いいますと?」

「あのバトルでわかった。あの子は純粋じゃ。優しすぎると言ってもいい。その優しさがあの子の旅を困難にするやもしれん。それにピカの傷を治したあの力。あの子もまた、そういう運命なのかもしれんのう」

「運命……」

「ナナミよ。グリーンに文を頼む。恐らくリーフも一緒じゃろう。いまはわしらはわしらなりに出来ることをしよう」

「はい」

 

 

 それから30分ほど経ち、グリーンとの連絡手段であるピジョットがマサラタウンを飛び立った。とある理由でパソコンおよびポケギアでの連絡を絶ったことで、すぐに連絡が行きわたらないのが欠点ではあるが文句は言ってられない。

 そして各都市のジムリーダー達に連絡が入る。

 チャンピオンのレッドが消息を絶った、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 カントー某所の山岳地帯。

 グリーンは崖の上で妹であるリーフを見下ろしていた。彼女は大きな岩の前に立ち、その右手を振るう。

 ──リーフのはたく! 

 高さ3メートルほどもある岩が、たった一振りのビンタによって粉々に消し飛んだ。

 同時にピジョットが声をあげてグリーンの前で止まると、足で掴んでいた筒を渡す。ピジョットをボールに戻し筒に入っている手紙を読む。

 

 

「……レッドのやつ。また面倒に巻き込まれたな。リーフ!」

「ふー。どうしたのグリーン?」

「とりあえずマサラタウンに帰るぞ」

「どうして?」

「レッドが消息を絶った。原因は不明だ」

「……わかった」

「意外と冷静なんだな」

 

 

 もっと取り乱すかとグリーンは思っていた。だが現にリーフは至って冷静。いや、静かな怒りの炎を燃やしているのがわかる。

 

 

「レッドがやられるほどの相手ってことは、かなりの手練れってことだもん。冷静にもなるよ」

「そうだな。さあ行こう」

「うん」

 

 

 リザードンとプテラを出して二人は故郷であるマサラタウンへと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




伏線を張るだけ張っておくスタイル


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

えー。人間がポケモンと戦えるわけないよ!

ほんと誤字脱字多くてごめんなさい。

あと前回のシロナですが、私はその時が来るまでネタバレ防止のため一切お答えしません。
それでも読者の皆さまが色んな予想をされるのは嬉しいのでどんどんしてもらってオッケーです。
例えその中に答えがあってもお答えはしませんが。
(といっても、大分先の話だからまいったねこれは……)


 

 

 

 

 

 

 

 

 ハナダシティにあるマサキの小屋。

 重い体を引きずりながらもマサキは自分の家へと何とか帰ることができ安堵する。家を出る前は皺一つなかったシャツがボロボロで、あちこち泥まみれになっている。さらに自作ではあるが、ポケモンの生態調査の目的で作った機械も不運に見舞われ川の底に消えてしまった。

 大きなため息をついてソファーへと飛び込む。

 マサキは先日のトキワの森で起きた出来事が未だに忘れられずにいた。否、忘れられる訳がないのだ。まさか調査の出先で親友であるレッドが消息を絶ったなどと、一体誰が信じられるというのか。

 

 

「あいつは……負けへん。絶対に死んでなんかあらへん」

 

 

 自分は評論家で科学者だ。ポケモンバトルはずぶの素人。それでもレッドが誰よりも強いのはマサキは知っている。ポケモンリーグでの戦い。どんなに強いトレーナーであろうと、彼ほどの強さを持った人間を自分は知らないのだ。

 トキワの森で出会った少年イエロー。イエロー・デ・トキワグローブ。彼と共にレッドを襲ったと思われる四天王のカンナから逃れる際に言った名前。

 イエローはレッドのポケモンでもあるピカと、彼の図鑑を持って行方を追っているらしい。一言で言えば不思議な少年だった。ポケモンを癒し、その言葉が分かるのだ。ポケモントレーナーならそんなの当たり前とレッドはよく言うが、実際は何となくしか分からない。正確にポケモンの言葉が分かるトレーナーは少ない。エスパータイプのようにテレパシーで話すなら別ではあるが。

 

 

「そうや、あれ……」

 

 

 動きたくない体に鞭を打ち作業場へ向かう。作業台にある大体横幅50センチほどのケースを開ける。

 そこには以前レッドから頼まれたガントレットが収められていた。彼の注文にあったポケモンの攻撃や耐熱等、さらに通気性などいった細かいオーダーを満たすには1年以上も時間を費やした。特に苦労したのは素材だった。ポケモンの攻撃に耐えられる、そんな素材など簡単に手に入るわけがない。

 そんな時だ。ある仲買人が以前シルフカンパニーが開発した新素材がある。そう連絡を寄越したのだ。実際にその商品の実験資料を送ってもらい、これならレッドの条件に見合うと喜んで取引した。そこからこうして形をするのにさらに時間を要したのは、本業である評論家や大学への派遣講師としての仕事が立て込んでいたからである。

 しかし依然として石の加工屋は見つかっていない。

 

 

「これがあれば、レッドは今でもわいの所に遊びに来たんやろうか……」

 

 

 情けないことを言うなと自分の頬叩く。

 ちょっと痛いがおかげで目が覚めた。自分にしかできないことをしよう。マサキはパソコンの前に座り、管理者権限を使ってポケモンあずかりシステムへとアクセスした。

 

 

 

 

 深夜。

 タマムシジムにてエリカはパソコンを通じてカスミと連絡を取り合っていた。

 

 

「やはりそちらでも同じ現象が?」

『そうなの。オーキド博士の助手と一緒にハナダの洞窟に見に行ったけど、ポケモン達は一匹もいなかったわ。あそこはレッドの警告で周囲一帯を立ち入り禁止していたし、仮に密猟者だとしてもあそこの野生ポケモン達は強いから全員を捕まえるなんて絶対に無理よ』

「博士は野生としての本能が何かを動かしていると言っていました。だからと言って、いくら隣のジョウト地方でも同じ現象が起きるとはにわかに信じがたい」

『ええ。それにこの一連の不可解な現象が、レッドが消息を絶った後だと仮定するなら……』

「ポケモン達は何かを知っている。カスミ、ポケモン達の足取りは掴めたのですか?」

 

 

 たずねるとカスミは顔を横に振った。

 

 

『多分大規模なテレポートだと思う。レッドが言うにはかなりのポケモンが住んでいたって話だから

 、移動すれば足跡ぐらい残ってると思ったんだけど……』

「わかりました。となると、手がかりはレッドのピカチュウ共に旅をしている少年のみ」

『そうなるわね。また何か分かったら連絡するわ』

「お願いします」

 

 

 通信を切って一息つく。

 レッドが消息を絶ったと知ってからそれなりに日は経った。けれど、それでもまだ動揺している自分がいると、エリカは未熟な自分を恥じた。

 状況はあまりよろしくない。チャンピオンのレッドが消息を絶っただけでも一大事だというのに、問題はその背後にいる謎の敵。そしてたった一人の人間消えただけでこんなにも騒ぎが大事になる事態になっている。

 逆に言えば、それだけ彼の存在が大きいということ。

 ただ不可解な、あり得ないことが一つある。それは、彼の恋人でもあるナツメの存在であるとエリカは感じていた。今では友人のような間柄ではあるが、レッドとの仲はこちらが妬むほどの仲。それにエスパーである彼女ならば、この事に気づていないはずがないのだ。

 連絡をしても出てはくれず、ヤマブキに赴こうにも状況がそれを許さない。誰かに使いを頼むか悩んでいるエリカの下に、ノックもせずに侍女の一人が慌てて入ってきた。

 

 

「エリカ様! 大変でございます!」

「落ち着きなさい。一体どうなされたのですか?」

「近隣住民かの連絡で、このタマムシ西郊外でレッド様らしき姿が目撃されたと!」

「なんですって⁉ わかりました。もしもに備えて精鋭たちを率いて私自ら出ます。あなたはタケシ、カスミ、カツラに連絡を」

「か、カツラ様もですか?」

 

 

 侍女の歯切れが悪くなるのも仕方がない。元ロケット団の研究員と知ればこうもなる。だがレッドのおかげで彼は正義のジムリーダーとしてこちらに迎え入れたのだ。こういう時に活動すれば、彼の印象も少しはよくなるだろう。

 

 

「そうです。では頼みます」

 

 

 エリカは部屋を飛び出し、精鋭たちに連絡しながら動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じころ。

 レッドのピカチュウ共に彼を探す旅にでた少年イエロー・デ・トキワグローブ。彼は現在タマムシシティ西郊外で野宿をしていた。

 イエローは眠るたびにピカチュウを見る。眠っているようですぐにうなされて起きることが最近多いのだ。現に今も悪夢にうなされて跳び起きた。

 

 

「また悪夢を見たのかい?」

「……」

 

 

 優しくピカチュウを抱きしめるイエロー。彼は優しく言った。

 

 

「ねえピカ。眠れないなら話をしようか」

「ピカ?」

「うん。ピカがボクを信じて一緒にレッドさん探す旅に出てくれて嬉しいと思ってる。だけど、ボクはピカやレッドさんのことを全然知らないんだ。だから教えてくれないかな?」

『……マスターは、レッドはバカなんだ』

「ば、ばか?」

 

 

 いきなり予想外のことで驚くイエローは思わず呆気にとられた。

 

 

『誰よりも強くて、もっと自由に生きられるのにレッドはみんなのために生きてる』

「みんなのため? それってボクたち人間のこと?」

 

 

 ピカチュウはふるふると顔を横に振った。となるとポケモンのことだろうか。そうたずねるがそれも違うと言われる。

 

 

『全部。人間もポケモンもこの世界も』

「全部って。ボクは一度しか見ていないけど、レッドさんは確かにすごいよ? あの凶暴なミニリュウを大人しくさせたんだから。けど、なんでそれが世界まで広がるの?」

『レッドは口では嫌がってるけど、本当は分かってるんだ。それが自分のやるべきことなんだって』

「やるべきこと……」

『イエローはレッドと似てる。優しいし自然を愛してる。けどイエローは、本当は戦いたくない。ポケモンを傷つけたくないんだろ?』

「やっぱり……分かっちゃうよね」

『うん。でもそれが悪い訳じゃない。みんながイエローみたいな考えだったら、こんな事は起きてない。ううん。そう考えるから起こしてしまう』

「どうして?」

『ぼくらを傷つけさせない世界を作るためだからだよ』

「……でもレッドさん言ったよ。自分が悪い子になれば、ポケモンも悪い子になる。つまり人間がいけないの?」

『分からない。けど、そこには必ずポケモンが関わってしまうんだ。良い面でも悪い面でも。だからレッドは戦うんだ』

「ボクは……」

『イエロー。きみのその力はきみ自身の力なんだ。そして戦うことを、傷つくことを恐れてはいけないよ』

「甘いのかな、ボク」

『今はいいかもしれない。でもいつかはそうなる時が来る。それにレッドは傷つくことは恐れなかった。それはポケモンと戦う時もそう』

「えー。人間がポケモンと戦えるわけないよ!」

 

 

 突然重い空気が変わる。あれ程思い悩んでいたイエローの顔に光が戻った。それを話したピカチュウは信じてもらえないことに戸惑っていた。

 

 

『本当だって! レッドは自分でポケモンと戦うんだよ!』

「またまた~。いくらレッドさんだって、そこまで──」

「そうでしょうか。レッドなら、それぐらいやってのけるかもしれませんよ?」

「⁉」

 

 

 イエローは突然の来訪者に驚きつつも、ピカチュウを守るように抱きかかえてその女性と向き合う。

 

 

「あ、あなたは誰ですか!」

「私はエリカ。このタマムシシティを任されているジムリーダーです。あなたのお名前は?」

「い、イエロー……ピカ?」

 

 

 腕の中にいるピカの気持ちを感じ取った。これは暖かい感情。ピカはこの人を知っているのか? 

 イエローは警戒を解かずエリカを睨む。しかし彼女は優しい笑みを浮かべたままだ。

 

 

「これでもレッドとは友人の間柄です。まあ初対面の人間を信じろと、無理は言いません。が、ピカは分かっているようですね。うふふ」

「レッドさんの友達? け、けど、それがどうしてここに?」

「実はこの西郊外でレッドらしき人物を目撃したと連絡があったのです。ですがもしもの時に備えて、こうして私とタマムシの精鋭部隊と共に足を運んだわけです」

「レッドさんが!?」

「ピカ⁉ ……!」

「ピカどうしたの⁉」

『レッドだ!』

「え!?」

『これレッドの匂いだ。レッドに決まってるじゃないか!』

 

 

 イエローの腕からピカチュウは飛びだすと一人で走り出しイエローもそれに続く。

 

 

「一人じゃ危ないよ!」

「あ、待ちなさい! 私達もあとを追いますよ!」

 

 

 ピカチュウを先頭に大勢の人間が夜の森を駆けた。一人の少年を探すために。

 

 

 

 

 

 ピカチュウが匂いをたどって数分。息をあげながらピカチュウは周囲を見渡す。このはずだ、自分の嗅覚を頼りにここまで来たので間違いないはず。

 遅れてイエローとエリカ達が追いつくと、目の前の茂みがから見慣れた少年が現れる。

 

 

「よ!」

「あ、レッドさん!」

「レッド。よかった無事だったのですね……」

「……!」

 

 

 探し人が見つかり喜びの声をあげるイエローとエリカ。しかし、肝心のピカチュウだけ様子が変だ。地面に足をついて尻尾をピンと張り、まるで威嚇しているようだった。

 

 

「ピカピカ!」

「ぴ、ピカどうしたの? レッドさんなんだよ?」

「ピカピ!」

 

 

 イエローの力はポケモンと触れ合う距離でなければ使うこともできなければ、ポケモンの声を聞くこともできない。今の状況において、イエローはピカチュウの言っている言葉を理解できていないのだ。

 そんな状況の中、エリカは涙を流しながらレッドの下へ駆け寄ると、さらにピカチュウの声が大きくなる。それを見てイエローはようやく理解した。

 

 

「エリカさんダメだ!」

「え──?」

「ちっ」

「うっ──」

 

 

 駆け寄ってきたエリカにレッドは突然腹に拳を叩きこんだ。突然のことで構えることができなかったエリカは、そのままレッドに拘束されてしまった。

 

 

『エリカ様⁉』

「ははは! ざまぁないぜ。なあ? ジムリーダーのエリカさんよぉ!?」

「あ、あなたは……レッドではありませんね……」

「レッドぉ? 誰それ? オレは……りかけいの男だ!」

「な!」

 

 

 りかけいの男。そう彼が名乗ると、変装を解いて素顔を露わにした。

 

 

「オレが着ているこの全身ストッキングには、そのレッドの匂いを染み込ませている。それでピカチュウをおびき出そうとしたってのに、勘がいいのか正体に気づきやがった」

「ピ~カ!」

「おっとやめとけよ。これには闇市で仕入れた特製の絶縁機能もついてる。電撃を食らうのはこの女だぜ?」

「卑怯です!」

「卑怯大いに結構。だからこそ、こういう使い方もする」

「きゃ!」

 

 

 りかけいの男はエリカを地面に倒し彼女の頭を踏みつけて、ピカチュウに対して要求したきた。

 

 

「こいつの頭を潰されたくなきゃピカチュウ、お前がこっちに来い。そしたらこの女は解放してやる」

「な、ダメだピカ!」

「……」

 

 

 しかしピカチュウはイエローの言葉に耳を貸さず、自らりかけいの男に近寄ると彼に耳を掴まれてしまう。

 

 

「ピカを離せ!」

「なんだお前。こいつの何なんだよ?」

「ボクはイエロー・デ・トキワグローブ! そのピカチュウのおやだ!」

「おやぁ? 笑わせるぜ。そのおやの言うことすら聞いてねぇじゃねえか!」

「そ、それは……」

「それでも返してほしけゃ……力づくで奪い返してみな!」

 

 

 ガラガラ、パラス、ペルシアンを出しイエローに襲い掛かかると、イエローが攻撃を避けている隙に彼はペルシアンにまたがり街の方へ逃走した。

 

 

「ぴ、ピカ。こうなったら、総力戦だ」

 

 

 イエローもまた自分のポケモンであるコラッタとドードーを出し彼を追うためにドードーが駆け出すのを、エリカが止める。

 

 

「待ちなさい! その子達ではあの男には……。それに他のポケモンは⁉」

「いたけどみんな逃がしました」

「どうして!」

「それはボクの目的は図鑑を埋めることではなく、レッドさんを救うことです! 側にいるのは仲良くなれる何匹かでいい!」

 

 

 エリカの制止を振り切ってイエローを乗せたドードーはりかけいの男を追うために走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やはりあんな乱暴な男よりボクっ子少年のがいいのでは……?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さあ、あの子を騙った罪をその身で味わいなさい

どっかの誰かがいないとこの物語は平和ですね!


 

 

 

 

 

 りかけいの男を追ってタマムシ中心街にたどり着いたイエローは、先行した彼の罠に嵌まってしまっていた。

 夜中ということもあって視界は悪く、戦いなれしていないイエローにとってこの状況は仕方ないことだった。ペルシアンのいやなおとによって方向感覚を狂わせ、ガラガラのホネブーメランの攻撃を受ける。姑息な作戦であるが、このビルが並ぶ街中では有効な戦術であった。

 それでもイエローに諦めるという文字はない。

 

 

「ぐ……ピカは、この僕が……助けるんだ!」 

「ヒーヒヒヒ。威勢だけはいいな。だがいつまでそれが持つかな⁉」

 

 

 相手はいやなおとで位置を分からなくして、ガラガラのホネブーメランでひたすら距離を保っている。攻撃しようにもこちらは位置がわらかず、いやなおとによって立っているのがやっと。

 ならばどうするか。

 ──そして戦うことを、傷つくことを恐れてはいけないよ。

 ピカの言葉を思い出す。

 ──最後までポケモンを信じるんだ。そうすれば、ポケモンはきっとその気持ちに応えてくれるよ。

 あの人の、レッドさんの言葉を思い出す。

 そうだ。いまがその時のはずだ。でなければピカを助け出すことなんてできない。

 イエローは外に出していたコラッタとドードーをボールに戻す。

 

 

「ラッちゃん、ドドすけ。ピカを頼んだよ」

 

 

 再びガラガラのホネブーメランが迫ると、イエローは避けるのではなく自ら当たりにいった。

 

 

「バカか⁉ 自分から当たりに行きやがった!」

 

 

 そしてそのままホネブーメランが戻ってきて、ようやく異変に気づいた。ホネブーメランに釣り糸の端のボールが二個ついているのだ。

 

 

「な⁉ ホネブーメランにボールが!」

 

 

 ボールが付いていたことによって本来の軌道からはずれ、ガラガラの手に骨が戻ることはなくそのままりかけいの男を顎に当たると、ボールからコラッタとドードが現れて追い詰める。そしてそのまま掴んでいたピカチュウの手を離してしまった。

 

 

「しまった!」

 

 

 ピカチュウは倒れているイエローの下に駆け寄り声をかけている。りかけいの男はもう一度ピカチュウを捕まえようと動くが、それをさせない者達が現れた。

 タケシ、カスミ、カツラ。そして追いついてきたエリカが四方を囲んでりかけいの男を追い詰めた。

 

 

「さあ観念しろ!」

「アンタには色々と吐いてもらうわよ」

「……む⁉ いかん!」

「こうなったらお前ら全員道連れだ! と思わせて!」

 

 

 りかけいの男はホネブーメランにどくのこなを付けさせると、ガラガラに渡して投げさせた。ホネブーメランはそのままジムリーダーの包囲網を潜り抜けた先にいるイエローへと向かう。

 

 

「ヒーヒヒヒ! お前は死ねぇ!」

「イエロー!」

 

 

 どくのこなを人間が浴びればそれは猛毒と変わらない。イエローの傍にいるピカチュウが攻撃するが、骨にも絶縁対策がされており弾かれてしまう。ピカチュウはイエローのために自らを犠牲にして盾になろうとする。

 が、突如一人の女性が間に割って入ると、彼女が持つ三節棍によって叩き折られてしまった。

 謎の女性にその場にいる全員の視線が集まる中、エリカが驚きの声をあげた。

 

 

「お、お姉様⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 あの子がタマムシシティに現れた。

 その情報を得た私は急いでタマムシシティに向かうことにした。だが同時にそれは嘘の情報だと分かってはいても、自分はいかなくてはいけないのだと思った。

 理由は簡単。

 あの子……レッドくんの名を騙る悪い子がいるからだ。

 ならばあの子のお姉さんとして、その不届き者にお仕置きしなければならない。それがお姉さんとしての使命なのだ。

 タマムシシティに着けばすでに大騒ぎの渦中になっていた。急行するために歩く足を速める。場所は匂いで分かる。これは確かにあの子の匂いだ。だがその中に確かに混じる下種の匂いもした。本当に汚らわしい。

 まったく。困ったものです。

 本物と偽物の区別がつかない人々に呆れつつも、小さな少女に放たれた骨を叩き折った。

 

 

「お姉様⁉」

 

 

 呼ばれたのでそちらに視線を向ければエリカさんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁ。エリカさんお久しぶりですね」

「そ、そうではなくて。どうしてここに……?」

「どうして? はて、可笑しなことをおっしゃいますね。私はお姉さんとして、レッドくんを騙る不届きものをお仕置きに来たのです」

「お、お仕置きって……」

「あれ、あの人……」

「カスミ知ってるのか?」

「たしか……ハナダで有名な人だったような……」

 

 

 張り詰めていた空気がお姉さんの登場によって和らぐ。しかし問題のりかけいの男は邪魔をされたことに怒りを露わにし、今度はその矛先を彼女に向けた。

 

 

「なんだてめぇ! 急に現れやがってよぉ!?」

「この下種が。レッドくんの姿や匂いで誑かしても、この私には通じません。さあ、あの子を騙った罪をその身で味わいなさい」

「ヒーヒヒヒ! よく見ればすげぇ美人! だったら計画変更だ。もうピカチュウなんて知ったことかよ! ガラガラ!」

 

 

 今度は殺すまいとどくのこなではなくしびれごなを骨に纏わせる。そうはさせまいと、エリカをはじめとしたジムリーダーが応戦に入るが彼女はそれを止めさせた。

 お姉さんは耳についているイヤリングに手を伸ばす。それは小型化したモンスターボールであった。ボールを元の大きさに戻し、ポケモンの名前を呼びながら投げた。

 

 

「お願いしますね。サミュエル」

 

 

 ボールが開きボンと煙があがる。しかしそこには何もいない。それを見てりかけいの男は腹を抑えながら笑った。

 

 

「ヒーヒヒヒ⁉ ポケモンなんていねぇじゃねえかよ⁉ お嬢様は大人しく家で紅茶でも飲んでればいいんだよ!」

「──すでに終わってますよ?」

「へ──」

 

 

 ──ハッサムのつじぎり! 

 それは一瞬であった。滑らかな光線描きながらパラス、ペルシアン、ガラガラそしてりかけいの男を斬り、ハッサムの姿はすでに彼らの背後にあった。

 斬られたことに気づくことなく倒れるりかけいの男達を見下ろしながらお姉さんは言った。

 

 

「一応みねうちです。それと一つ訂正を。私は紅茶派ではなく、あの子と一緒でコーヒー派です」

 

 

 お姉さんはそのまま倒れているイエローの下へ歩みよると、側にいたピカチュウを優しくなでる。

 

 

「久しぶりですね。ピカ」

「ピカぁ~」

「おお。あのレッドのピカチュウがあんなにも懐いている! 彼女は一体……」

「お姉様です。ええ、お姉様なんです」

 

 

 驚くカツラにエリカが代わりに答えた。

 

 

「ピカ。あなたはこの子と一緒にレッドくんを探すのですか?」

「……ピカ!」

 

 

 一度イエローの顔を見て、そうだと新たに覚悟を決めた顔をして答えるピカチュウ。それに優しい笑みで返すお姉様は続けて言った。

 

 

「途中からですが見ていましたよ。この子が自らを犠牲にしてあなたを救おうとしていた。それは簡単にできることではありません」

「ああ。確かにそうだな」

「最初はこんな子に大役を任せて不安だったけど、それは間違いだったみたいね」

「身を挺してポケモンを助ける。レッドのようなことをする」

「まだまだ危なっかしい子ですが」

 

 

 彼女の言葉に続いてジムリーダー達イエローの行動を称賛する。誰もが信用していなかった。見ず知らずの少年にピカを預け、レッドを探す旅に出したなどと簡単に信用できるわけがなかったのだ。

 イエローの体を起こしながら、お姉さんは倒れているりかけいの男を見て言った。

 

 

「その偽物が着ている上着。それは確かにあの子の物です」

「なんと⁉ では、この男はレッドの居場所を知っているということか!」

「だがどこなんだ。そもそも、なんでこいつはピカチュウを攫うような真似を?」

 

 

 タケシが言う。それも問題だが、一番知りたいのはレッドの居場所だとカツラが言うとガーディを出した。

 ガーディはりかけいの男の匂いを嗅ぐと、北の方を向いて高らかに吠えた。

 

 

「タマムシの北……方向的にはハナダよね?」

「──オツキミ山です」

「お姉様。どうしてそう言い切れるのですか?」

「待て。彼女の言う通りかもしれない」

 

 

 気づけばカツラは小さな顕微鏡を使って何かを見つけて言った。

 

 

「月光線。これは月の石に帯びている特別なものだ。これが取れる場所と言えば」

「確かにオツキミ山だ!」

「と言うことはレッドはオツキミ山にいた。それをこの男がレッドの上着を手に入れたという訳か」

「ならば急いでオツキミ山に……皆さん離れてください!」

 

 

 エリカが叫ぶ。すると倒れていたりかけいの男が浮かび上がり、体の周りに黒い霧が纏わりついてる。まるで霧に首を絞められているのか悶え苦しみ始めると、それを止めようとジムリーダー達がポケモンを出す。

 タケシのゴローンがりかけいの男を掴み、カスミのオムナイトのみずてっぽうで霧を祓おうとする。するとお姉さんの腕の中で眠るイエローが目を覚ます。

 

 

「ん……あれ、ボク」

「目が覚めましたか?」

「お姉さんは……誰ですか?」

「私ですか? 私はレッドくんのお姉さんです。しかし目覚めたばかりのあなたに言うのも酷ですが、状況はまだ終わっていません」

「え⁉」

 

 

 飛び上がってようやく今の状況を把握するイエロー。そんな彼にお姉さんは付け加えるように言った。

 

 

「恐らく口封じですね」

「なんで分かるんですか?」

「余程あの男に知られたくないことがあるのでしょう。──エリカさん。あの霧の正体は」

「ええ。ゴース、ですわね」

「ならばガーディの高温の息吹で!」

 

 

 ガーディが放つ息吹がゴース目がけて放たれる。だが、そのすぐ傍にあった木の枝の上に野生のキャタピーがいた。これではガーディの攻撃に巻き込まれてしまうのを、咄嗟にイエローが自分の身体の一部でもある釣り竿を奮る。糸の先にはピカチュウが入ったボールがあり、ガーディの攻撃に巻き込まれる前にピカチュウがキャタピーを救った。同時にガーディの高温の息吹によってゴースは吹き飛び、地上に落ちるりかけいの男。

 

 

「な、なんと。あの状態で野生のキャタピーを助けるとは。イエローくん、よくそんな体で行動した。見直したよ。改めて名乗ろう。私はグレンジムのカツラだ」

「俺はニビジムのタケシ」

「ハナダのカスミよ。みんなレッドを助けるために動いているわ」

「え……あの」

 

 

 カツラに続いてタケシやカスミが挨拶をしている中、エリカがお姉さんの隣に立ちりかけいの男を見ながら言った。

 

 

「どう思いますお姉様」

「分かることは、この男を使ってピカを攫おうとした。しかしそれが失敗し、今度は口封じということでしょうか。となると、今回の黒幕は──」

「はい。ピカに知られたくないことを知られている。ですがピカはレッドがいる場所を知っているはず。それを教えないということは」

「ええ。恐らく一時的な記憶喪失でしょう。それだけ壮絶だったということです。……あら。まだ終わってないようですね」

「え⁉ そ、そんなまだゴースが!」

 

 

 吹き飛ばしたはずのゴースが再びりかけいの男に纏わりつくと、今度は攻撃をしかけてきた。

 その時何処からか技を叫ぶ声が聞こえた。

 

 

「姐さんたまごうみ!」

 

 

 ──ラッキーのたまごうみ! 

 ラッキーのお腹のたまごが放たれて周囲を明るく照らすと、纏わりついていたゴース本体が露わになる。そこに火球がゴースを貫いた。そして今度こそりかけいの男は起き上がることはなかった。

 

 

「ゴースは吹き飛ばしなどで払うよりも、その本体にある核を破壊しなければ意味がない」

「そのリザードンはグリーン! ならば、いまのラッキーのたまごうみは」

「はーい。リーフちゃんです!」

「あらぁ。リーフちゃんじゃないですか。お元気そうで何よりです。でも、どうしてここへ?」

「マサラタウンにいたんだけど、タマムシから連絡を貰ってね。それで駆けつけたの」

「それとこのゴースを操っていた者のこと話していたようだが、それは恐らく四天王のキクコだ。俺は以前ヤツと戦ったことがある」

「わたしは知らないんだけどねー」

「四天王! ジムリーダーを凌ぐ実力を持った四人で、チャンピオンの盾って言われてるあの四天王のよね?」

「それがなぜそんなことをするんだ?」

 

 

 カスミとタケシがグリーンにたずねる。

 

 

「さあな。だがわかるのはチャンピオンのレッドが、それだけ四天王にとって邪魔な存在だったってことだろう。俺もキクコと戦って以来、パソコンやポケギアでの連絡を絶った。キクコ自身はおじいちゃんの孫である俺達が目的らしいしな」

「なぜかわたしのところには来ないけどねーおかしいねー」

「それとお前」

「ぼ、ボクですか?」

 

 

 グリーンはイエローの前に立つと、厳しい言葉を浴びせた。

 

 

「四天王はお前が思ってるより手強い相手だ。ポケモンを守るのはいいが、優しさと甘さをはき違えるな」

「ちょっとグリーン。それは言い過ぎよ」

「ならばリーフ。あいつだったらどうしてた?」

「……ゴースをあの男共々自分で何とかしてたわね。アハハ……」

 

 

 リーフの乾いた笑い声につられて他の者たちの顔も何かを思い出したのか、否定できない素振りをして顔を横に向けていた。お姉さんだけは嬉しそうにニコニコしているのだが。

 

 

「つまりアイツを助けるには、それだけの力が必要ってことだ。まあ、精々頑張るんだな」

「待ってください! ボクも連れて行ってください! レッドさんを助けるために、ボクを鍛えてください!」

「……好きにしろ」

「──はい!」

「素直じゃないんだから」

 

 

 兄であるグリーンのツンデレにリーフは肩をすくめた。旅立つイエローにタケシとカスミがゴローンとオムナイトを託している中、グリーンはリーフに言った。

 

 

「リーフ。お前はどうする?」

「ごめん。先に行ってて。ちょっと寄るところあるから」

「わかった……行くぞ」

「はい!」

 

 

 飛び立ったリザードンを見送り、リーフはお姉さんにあることをたずねた。それを聞いて彼女は表情を崩さす静かに教えた。

 

 

「はい。彼女はあれからずっとジムにこもっているそうです」

「そうですか……」

「行くの?」

「はい。お姉さんはその……」

 

 

 リーフの問いに顔を横に振る。それには彼女も少し驚いたらしい。てっきりすでに会いに行っているかと思っていたからだ。

 ならば行って確かめないと。リーフはプテラを出してその背に乗って「行ってきます」と、お姉さんに告げてヤマブキシティへと飛んでいく。

 残されたお姉さんはふと北の方角。レッドがいると思われるオツキミ山の方へ向くと、一瞬だけ大きく瞼を開く。そしていつものような笑み浮かながら小さく笑い始めた。

 

 

「あらあらあらぁ。となれば私はハナダに帰りましょうか。うふふ」

 

 

 誰にもその意味を悟られることなく、彼女は夜のタマムシシティへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タマムシシティにある商業ビルの屋上で先程からの茶番劇を見ていた四天王のキクコは、通信機でカンナと連絡を取り合っていた。

 結果から言えば作戦は失敗である。偶然オツキミ山を訪れたあのりかけいの男を使い、逃げ出したピカチュウを捕まえて連れてこい。そう金で釣ったはいいが、所詮はコソ泥。まったく使い物にならなかったのだ。

 そしてりかけいの男を始末するのも失敗に終わり、彼らによって身柄を確保されてしまったことをカンナに問われる。

 

 

『でもいいの? あの場所を知っている人間よ』

「フェフェフェ。まあ構わんさ。目覚める頃には作戦は始まっている。どちらにせよ、手遅れさね」

『そう、ね。けど問題はあのピカチュウよ。アレは捕まえるなり、始末するなり早くした方がいい』

 

 

 その言い方にはどこか引っかかる。まるで怯えているようだ。それはキクコにも分からない話ではなかった。だからあえて聞いた。

 

 

「怖いかえ、カンナ」

『ええ。本当に恐ろしいわ。ピカチュウもそうだけど、あのレッドが』

「だが奴は死んだ。お前が仕留めたはず」

『そうよ! 完全に氷漬けにした。それでも恐ろしい。キクコ様だって見ていたでしょ? 私達の攻撃を食らってもなおピカチュウを逃し、あの男とリザードンとスピアーは歯向かった。そして一人になっても、その身が氷によって侵される直前までたった一人で戦った。そして一人で私達の戦力を3割、全部で6割も削られてしまった』

「予想外の痛手なのはわかる。それはワタルも承知の上で挑んだ。そうじゃろ?」

『わかってるわよ。でも、私が躊躇わず最初から氷漬けにしておけばよかったと思うと……それに頭から離れないのよ。あの最後の言葉が』

「今は忘れることだね。それと、あのイエローと一緒にいた男の正体は掴めたのかい?」

『え、ええ。それなりに有名だったからすぐにわかったわ。あれはポケモン評論家のマサキよ。場所はハナダの岬』

「なら一応始末はしておこうかね。色々と探られても困る」

 

 

 一匹のゲンガーに指示を出す。このゲンガーを通じてシバの手持ちポケモン達に命令をだす。ただ一言。

 マサキを始末しろ──

 これだけで済む。シバは協力といっても、この過激な作戦に反対していた。だから都合のいい時だけ(?)操らせてもらっている。

 

 

『一度私は島に戻るわ』

「ワタシも戻るかね。ワタルがクチバへ行くと言っていたことだし」

『そう。じゃあまた』

「さて。本当に死んでも忌々しい男だね。フェフェフェ」

 

 

 カンナとあの時の話を折り返した所為か、あの日のことが脳裏に蘇る。本当に忌々しいと思う。やはりあのオーキド同様、嫌な人間が生まれる町だ。マサラタウンという町は……。

 

 

 

 

 

 




ハナダのお姉さんにはね、お姉ちゃんパワーがあるんだ。
つまりそういうことである。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お前だから言おう。レッドは死んではいない

原作すべてを描写できないので一部端折りますね!(いつも通り)

あと名前しか出ないヤツがいるらしいですね。ほんと誰ですかね?


 

タマムシシティでの一件から一時間後。

リーフはプテラに乗ってヤマブキジムの前までやってきた。一応自宅にも寄って見てきたが、明かりはなく人の気配もない。ならばお姉さんの言うようにジムにいることになる。

扉の前には休業中の張り紙。

だがそんなことなど気にも留めず扉を開ける。意外、ではなかったが鍵はかかってなかった。何度か訪れたことがあるが、このジムはテレポート装置がありそれを使ってジムリーダーがいる部屋へと行くことになっている。

しかし一般の挑戦者は知らないが、ジムリーダーへと直接いけるテレポート装置が隠してある。そこへ乗ってリーフはこのジムの主であるナツメの下へ行く。

 

 

「……明かりぐらい……点けないの?」

 

 

薄暗いバトルフィールドのジムリーダーが立つべき場所にいるナツメへと問いかけた。

彼女は座禅を組んでいた。それも宙に浮いて。いわゆる瞑想というやつだろうか。その傍らには彼女の手持ちであるユンゲラーから進化したフーディンが控えている。

 

 

『リーフ。お前が来ることは予知でとうに知っている』

 

 

口ではなく頭に直接念話が届く。リーフは驚くことなく対応する。

 

 

「じゃあ要件は分かってるんでしょ?」

『ああ。お前だから言おう。レッドは死んではいない』

「なら何であなたは動かないの?」

『その時ではないからだ』

「その時?」

『いずれわかる。そこで役者が揃い、すべての決着がつくだろう。だからこうして能力を最大限に高めている』

「……分かったわ。もう何も言わない」

 

 

それが答えだとリーフは納得した。

彼女が言うその時というのはそう遠くない未来。もしかすればあと数日で起きるかもしれない。だからああして戦う準備をしている。ならば自分もグリーンと合流して、あのイエローという少年を鍛えなければならないだろう。

ナツメに背を向けて再びテレポート装置に足を置こうとするが、一つ気になることを思い出したずねた。

 

 

「ねえ。これだけは教えて。レッドのブイ、ナツメのところにいたよね? 今はどこにいるの?」

 

 

すぐには返事は返ってこない。数秒経って再び念話が届いた。

 

 

『いまはボールの中だ』

「そう。ありがとう」

 

 

礼を言って今度こそヤマブキジムを後にした。

 

 

リーフが去って少し後。ナツメは何日も閉じていた瞼をゆっくりと開けた。それに気づいたフーディンが心配そうにこちらを見ているのに気づき、口角を少し上げて平気だと言う。

そして再び瞑想に入ろうと瞼を閉じる前に、久しぶりに口で言葉を発した。

 

 

「ブイ。もうレッドに会えたか?」

 

 

戦いは近い。そのためにナツメは瞑想へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

イエローがグリーンとの修行の後クチバシティでロケット団と戦い、さらに四天王の一人であるワタルと交戦している少し前。

ハナダの岬にあるマサキの小屋。そこに一人の少女――ブルーが入り口の前に立ち、堂々とピッキングして中に入る。

不用心ねぇ。ま、普通はこんな所に誰も来ないか。

ハナダシティから離れた位置にあるこの岬には、特にこれといって見るべきものはない。観光地としては機能しないし、彼のような評論家で科学者でもある人間には静かでいい場所である。

 

 

「お邪魔しまー……へ?」

 

 

ドアノブ引いて忍び足で一歩踏み出そうとしたとき、何か糸のようなものに引っかかってしまう。同時に部屋に明かりつくと、大声で叫びながらこの家の主であるマサキが突撃してきた。

 

 

「またきおったか、この盗人めーーー!!」

「カメちゃん!」

「ぐへ⁉」

 

 

咄嗟に投げたカメックスのお腹に頭をぶつけそのまま後ろに倒れるマサキ。状況がいまいち把握できないブルーであるが、暴れられても困るのでそのまま縄で拘束した。

それからすぐにやっと正気に戻ったマサキが、盗人がブルーだと気づくと再び怒鳴り散らす。

 

 

「な、ブルーかいな! 今度は何を盗みにきたんや!?」

「失礼ね。まだあたしは何も盗んでないわよ」

「へ? そ、そんなわけ……でも、お前さんなら同じところに二度も来るわけない、か?」

「ようやく落ち着いて考えられるようになったわね。あたしの要件を話す前に、その話を聞かせて頂戴」

「……先日のことや。朝を普通に起きたらわいの作業場からあるモノが盗まれたんや」

「あるモノ? なによそれ」

 

 

しかし彼はすぐには言わなかった。自分だからではなく、盗まれたヘマをした自分を責めているのだ。それだけ大事なものだろうか。ブルーはただ彼が言うのを待った。

 

 

「……レッドから、頼まれたもんや」

「レッドから⁉」

「けど、これを知ってるのはわいとレッドの二人だけ。あとは材料を集める際、知り合いにそれとなく話しただけや。それに使い道も他人が使えるもんやない。だからアレを盗んだところで価値なんてないんや」

「マサキ。あなた何を作ったのよ」

「ガントレット」

「ガントレット? あの腕にハメるやつ? そんなモノをレッドはどうして……」

「わからん。ただポケモンのサポートアイテムとして使うとは言っておった。けど肝心の石が嵌め込まれてないんや」

「石? もしかして進化の石のこと?」

「察しがええな」

「まあ、ね。でもレッドが進化の石を使うポケモンって……!」

 

 

一つだけある。進化の石を使うポケモンをレッドは持っている。しかもそれが正しければ、自分がここに来た目的と関係があるのかもしれない。

 

 

「マサキ。あたしがここに来たのはあなたの力を借りるためなの。あなたが作ったあずかりシステム。そこに管理者権限でレッドのボックスへアクセスしてほしいの……ちょっと聞いてるの?」

 

 

自分が来た目的を話すと、何故かマサキは俯いて暗い表情をしていた。声を震わせながら、マサキは予想していなかった言葉を言った。

 

 

「ないで」

「え?」

「レッドのボックスからポケモンが引き出されていれば、そこから逆探して足取りを探ろうとしたんやろ?」

「え、ええ」

「けど無理や。もうわいが調べた。レッドのボックスは空っぽや。利用記録も調べた。それも一回、ボックスを開設したときだけや」

「う、うそでしょ⁉ あたしだってボックスは使ってるのよ」

「そう思うやろ? よくよく考えればレッドはそんなにポケモンを捕まえとらん。それに普通のトレーナーがボールを六個しか持たないのに、あいつは平然と腰にたくさんボールをつけておった」

「じゃ、じゃあイーブイはどこにいるのよ? レッドの手持ちで進化の石を使うポケモンはあの子だけよ!?」

「ナツメのところやろ。仮にレッドが一緒に連れて行ってなければやけど」

 

 

誤算だった。もっとレッドのポケモン事情を把握しておくべきだったと自分を責める。ただナツメのところとなると難しい。今は時間が惜しいのだ。ヤマブキジムまで行ってる暇は今ないし、こうしてここにいるだけでも危険だ。

だが疑問がある。そのガントレットを一体誰が何のために持って行ったのか。そして二人しか知らないことをどうやって知り得たのか。

さらに第三勢力がいるってこと?

敵は四天王だけはない。そうなればこちらが圧倒的に不利だ。こうやって裏をかく行動をしなければ、四天王を翻弄することもできない。

ただ今はここを離れることが優先。ブルーはマサキを縛っていた縄を解いた。

 

 

「マサキ。いますぐここから離れるわよ」

「は? なんでや」

「あんたバカ? イエローと一緒にいるところを四天王に見られたのよ? あなたも標的の一人になってるわけ」

「なんでそれを知ってるんや?」

「だってあたしがイエローを旅に出させた張本人ですもの。詳しくは時間がないから言えないけどね」

 

 

そう。イエローはこの戦いにおいて重要な意味を持つ。まさに切り札と行ってもいい。だがあの子には力がない。四天王と戦うに必要な純粋な力、そして経験が足りなすぎる。だから旅を通して成長させるのが目的で、あとはあの子に注目を集め裏で自分が動きやすくするためでもあった。

 

 

「とにかく今は時間が惜しいの。だからここから――!!」

「なんやーー⁉」

 

 

突然の襲撃。

何かが小屋を粉砕し、月明かりが二人を照らす。

攻撃が来た方へ眼を向けると、そこには伸ばした足を戻しているポケモンがいた。

 

 

「サワムラー⁉ ちっ、ほら言わんこっちゃない!」

「せやかて! おい、あいつ逃げるで⁉」

「――! マサキも捕まって。カメちゃん!」

「わいもかいな⁉」

 

 

カメックスのハイドロポンプを推進力にしてブルーとマサキは逃げたサワムラーを追う。

恐らく一撃で仕留められなかった時点で作戦は失敗したのだろうとブルーは睨んだ。さらにマサキだけではなく、自分というイレギュラーの存在。

移動しながら反対側にいるマサキが突然たずねる。

 

 

「しかしわからへん。なんでお前はあのイエローに任せたんや? 不思議な力があるのは知ってる。だがブルー、どうしてお前はそれを知ったんや?」

「いいわ教えてあげる。あの子は、イエロー・デ・トキワグローブは唯一四天王のワタルと戦える存在だからよ」

「唯一? それってあの子が持つ力と関係あるんか」

「ええ。あの子の力は10年に一人現れると言われる『ポケモンの心を読み、癒す』ことできる存在なの」

「じゃあワタルと戦える理由ってまさか」

「伊達に科学者やってないわね。そうワタルもまたトキワで生まれた人間なのよ」

 

 

それは偶然だった。ジョウトで調査しているシルバーがワタルという四天王が巨大な鳥ポケモンを手に入れようとしている。その情報の過程でワタルがトキワの力を持つものだと知り、さらに対抗するには同じ力を持つ人間が必要だと。

 

 

「情報を得たあたしは行動に移そうとしたわ。けどその直後にレッドのピカがトキワの森に逃げるのを目撃したの。でもそこで見失ってしまった代わりにあの子に出会った。あたしがイエローにたずねると、あの子はコラッタにその力を使って聞いたのを見て確信したわ。この子がトキワの力を持つものだとね」

「そうなんか。でもまだあんな少年にそないな大役を任せるなんて」

「少年? イエローはね、女の子よ」

「はぁあああ⁉」

「正体を隠すのと、女だと舐められるからってあの帽子を渡したのよ。結果的にはすぐにイエローの名前がバレたけど」

 

 

あれ程念を押して自分の正体を明かしたのは呆れてしまった。まあ、根がとてもいい子だから長く持たないことは覚悟してはいたが。

 

 

「じゃあ今の段階でまだレッドは」

「ええ。これでも並行してレッドのことも探していたけど無理だったわ。なによりあたしの誤算はレッドがいないということよ。こういっちゃアレだけど、レッドの力があればもっと事態は早く片付けられたはず」

「だけど、そのレッドがすでに四天王にやられてしまった」

「ええ。過程はどうであれ、結果から言えばレッドは四天王と戦い敗れた。あたしたちにとって大きな痛手よ」

「……」

「とにかくこのままサワムラーを追うわよ。罠にしろ、こっちも情報は欲しいからね!」

「ああ!」

 

 

 

 

 

翌日。

ワタルとの戦いでみがわりの応用で、サーフボードを作り出すことに成功したピカのなみのりに乗ってイエローはグレン島へと向かっていた。

しかしイエローの表情は暗い。それは先日戦ったワタルの言葉が頭から離れないからだった。

 

 

『ポケモンが暮らせる理想郷をつくるために人間を排除する。それが俺の目的だ』

 

 

そう言い切った四天王のワタルをどうしてもイエローは憎めなかった。やってることは確かに酷いことだ。現にレッドさんに手をあげ、各地で被害を受けている人もいる。でも元を辿れば、すべてはポケモン達のために行っていることだ。

だからと言ってそれを素直に受け入れることはできない。

ボードの先端で操縦するピカに思わず聞いた。

 

 

「ねえピカ。ボクはワタルが悪い人には見えないよ。確かに酷いことをしているのは分かってる。けどそれも全部、きみたちポケモンのため。ボクは迷ってる。だから未だにラッちゃん以外の子たちの進化をキャンセルしているんだ。まだ戦う覚悟が、ボクにはないのかな……」

『イエロー』

「レッドさんならどうするのかな」

『その問いにレッドは答えを出していた気がする。まだ思い出せないけど。でも』

「でも?」

『レッドは戦ったよ。それが答えだと思う』

「……うん。あのレッドさんが戦ったなら、そうなんだろうね」

 

 

ならばボクは自分なりの答えを見つけなければならない。多分、そうしないとワタルと戦うことなんてできないと思うから。

 

 

「さあ行こうかピカ! カツラさんに会いに行こう!」

「ピカ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後。グレン島にあるカツラの秘密研究所。

カツラに案内されたイエローはカプセルに入った不思議なポケモンを見る。どうやら眠っているようだ。

でもこんなポケモン見たことないや。

ふと足元にいるピカチュウを見ると、まるで久しぶりにあったような素振りをしている。気になったけど、何となく躊躇ってしまい聞くことはしなかったイエロー。

 

 

「さて。改めてようこそ。私の秘密研究所へ」

「はい。でも、どうしてボクをここへ?」

「うむ。危険を承知で連絡をしたのは、そろそろオツキミ山に向かったタケシから連絡があるからなんだ」

「そうなんですか!」

「ああ。ほら、噂をすれば……」

 

 

イエローにはどれも同じに見える機械であるが、カツラがそのボタンの一つを押すと巨大な画面にタケシが映し出された。背景は岩ばかり。しかしよく見ればタケシの顔はあまりよくない。そのことにカツラも気づいたのかたずねた。

 

 

「どうしたタケシ。レッドはいたのか?」

『カツラさん。結果から言えばレッドはいない。だが、これを見てくれ』

「これは……」

「凄まじいな」

 

 

それはまるで映画でみたような戦いの痕のようだった。いや戦いではない、まさに戦場と言っていい。地上に壁にクレータが多くでき、まるで隕石でも降ってきたかのようだ。

 

 

『間違いなくレッドはここで四天王と戦ったのは間違いないんだ』

「だが本当に何もないのか? レッドがいた痕跡すらも残ってないのか?」

『痕跡、と言えばいいのか。明らかにおかしな痕跡はあったよ。これだ』

 

 

画面が切り替わる。それは大きな穴だ。ポケモンが撮影しているのか穴の上までいくと、今度は下まで撮影した。

 

 

『見えるか? あの穴の下。それにこの穴の周りがおかしいのを』

「ん? 掘った穴にしてはおかしい。まるで何か……そう、下から火山が噴火したかのように溶けている?」

「で、でもなんでそこだけ?」

『わからない。先程下にも降りたが、その中心から上に向けて炎技が放たれたかもしれない。だがこれほどの威力を出せるポケモンは知らないぞ』

「タケシ。他に何か手がかりはないのか?」

『一つだけ。偶然見つけたんだが、恐らく鳥ポケモンの羽が落ちていたよ。それも一匹や二匹じゃない。』

「しかしそれだけでは……そうか。そう言いたいのかタケシ」

「カツラさん。どういうことですか?」

 

 

途中から事情を知らないイエローには二人の会話はすでに未知の領域と化していた。鳥ポケモンの羽と言っても、オツキミ山にだって少しはいるのではないか。そんなレベルの想像しかできないのだ。

 

 

「実はレッドの消息と同時にカントーとジョウト地方の野生ポケモンによる大移動があったのだ。そしてつい最近、その移動していたポケモン達が元の住処に帰ってきたという報告がオーキド博士からあった」

「つまり……野生ポケモン達はレッドさんの場所は知っていた。だけど、もう元の住処に戻っているということは!」

『そうだ。レッドはまだ生きている可能性が高い!』

「だが一体どこに。そして何故我々の下へ帰ってこないのか。それがまだ分からない」

『ああ。俺ももう少しここで……なんだアレは⁉』

「どうしたタケシ!」

『ニビから煙が上がっている。何かあったのか⁉』

 

 

同時に穴の映像から遠くに映るニビシティの映像に切り替わる。確かに遠くから煙が上がっているのがこちらでもわかった。すると今度は別の通信が入る。相手はカスミで、彼女もタケシ同様に慌てている。

 

 

『カツラさん大変! ニビにハナダ、そしてタマムシが攻撃を受けているわ! 恐らくこれは――』

「な、カスミ⁉ どうしたんだカスミ!」

「カスミさん⁉」

 

 

カスミからの連絡が途切れ、タケシも自分の町へと向かうために映像がきれた。カツラは少し腕を組んで悩むと、テーブルの上に地図を広げてイエローに説明を始めた。

 

 

「イエローくん。これは推測だが、四天王が本格に動き出したかもしれん」

「じゃ、じゃあ助けにいかないと」

「いや、これは陽動だ。戦力をカントー本土に割くのが彼らの目的だろう。そして、逆に言えばこれは好機。奴らも私が本土へ救援にいくと予想しているはず。その裏をかくんだ」

「でも四天王の居場所はまだ」

「独自の調査でおおよその見当はついている。カントーの地図にも載っていない島。その名をスオウ島。ここが奴らの本拠地だ。時間がないから私ときみの二人で乗り込む」

「ボクたち二人で……」

「厳しい戦いになるがこちらだってきり――ぐっ!」

「カツラさん!?」

 

 

突然右腕を抑えて倒れるカツラにかけるイエロー。その時初めて白衣の袖からあるモノが見えた。右腕だけ何かで縛っているのがわかる。手に怪我しているのかと思ったが、どうやら右腕全体に何かを抱えているようにだ。

するとカツラは大丈夫と言って地図を丸めてイエローに渡す。

 

「私は少し準備してから行く。イエローくんは先に行っててくれ。現地で合流しよう」

「はい! いくよピカ!」

「ピカ!」

 

 

 

 

 

 

イエローが去るのを確認したカツラは、右腕を抑えながらカプセルに入った我が子をみた。

 

 

「ふふふ。俺も連れてけ、そう言うのだろうミュウツー」

『ああ』

 

 

先程まで寝ていたミュウツーがゆっくりと瞼を開けながら念話を送ってくる。このカプセルはマスターボール同様の効果がある液体が入っている。こうすることで、右腕のミュウツー細胞を抑えることができているのだ。ただそれも、少し進行を遅らせる程度であるのだが。

 

 

『それに感じる』

「感じる? 何をだ?」

『強い力だ。それも最近感じた力に似ている』

「まさか、それがレッドだと言いたいのか?」

 

 

しかしミュウツーは頭を横に振った。

 

 

『分からない。似ているようで違う。だが何かが目覚めたのは間違いない』

「それも気になる。だが、今はスオウ島に行こうか……息子よ!」

『ああ!』

 

 

 

数時間後。

イエローは夕方頃すでにスオウ島に上陸し、動きやすい夜を待っていた。そしてそんな時、空からブルーとマサキが降ってきた。

どうやら二人もこのスオウ島に四天王がいることを掴みやってきたらしい。自分とカツラだけだと思っていたイエローは二人の合流に喜んだ。

ただイエローは知らないが、ブルーが渡したその麦わら帽子に発信機がついているので、それを追って来たのだとブルーが言うはずもなかった。

その後イエローはブルーのプリンに乗って島の反対側へと向かう。道中ポケモン達の見張り辺りをうろついていたが、何とか反対側にある入口へとたどり着くとそこには彼らを待つ人物がいた。

 

 

「お、やっときた」

「ちょっと、あんたリーフじゃない。じゃあグリーンも?」

「ええ。先に中で待ってるわ。本当はイエローを待ってたんだけど、ブルーはともかくマサキまで一緒なのは驚いたけどね」

「リーフさんお久しぶりです!」

「イエローも元気そうね。どう? 前より強くなったかしら?」

「ま、まぁ……。で、でもリーフさんとブルーさんって本当に似てますよね」

「そうやな。わいも前から思ってた。けど、姉妹じゃないんやろ?」

『当たり前でしょ』

 

 

二人の声がはもる。どうやら本当に姉妹ではないらしい。こんなにも似ていた姉妹ではないというんだから、世の中不思議なものだとイエローは思った。

そう言えばリーフさんの格好グリーンさんに似てるや。

以前は普通の服装だったのに、今はポンチョを纏っている。イエローはつい気になってたずねた。

 

 

「リーフさん。それどうしたんですか?」

「あ、これ? まあちょっと気合を入れるためにね。機会があれば見せてあげるわよ。それじゃあ行きましょ。みんなが待ってるわ」

「みんな……?」

 

 

少し歩いてその先に明かりが見えた。そこにはカツラとグリーン。そして見知らぬ三人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……第4章を書き終えたと言ったらどうするかね?

あ、そうだ(唐突)
次回からいつものポケモンに戻ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

わたしはレッドの彼女よ!

そういえば今日は8月10日ですね。
深い意味はないよ?


 

 

 

 イエロー達がリーフと合流した直後。

 現在カントーにあるジムリーダーがいる都市にのみ四天王から襲撃を受けている中、攻撃を免れているマサラタウンにてオーキドはパソコンから各都市に呼びかけるが、誰もそれに応答することはなかった。

 

 

「すでに四天王の総攻撃が始まっておるのか……!」

「おじい様大変です! 外に来てください!」

 

 

 ナナミに言われ慌てて研究所の外へ出る。そこには各都市から煙があがっているのが見える。しかしナナミが言うにはそれではなく、西の空を指をさした。

 

 

「あれです!」

「な、なんじゃアレは? 隕石いや、それにしては角度が違うが……」

 

 

 空を見上げれば、そこには4つの流星が飛んでいる。

 

 

「綺麗。でも、あの方角は」

「ああ。間違ってなければ間違いなく、あれはスオウ島に向かっている」

 

 

 幸運を呼ぶのか、それとも不吉の前兆なのか。ただスオウ島に向かったイエロー達を信じるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マチス、キョウ、カツラそれに……ナツメ! あんた今更──」

 

 

 彼らを見て一番に声をあげたのはブルーだった。イエローから見ても、今の彼女は少し正気じゃないと気づく。それも一人の女性、ナツメと呼んだ女性にだ。素直にきれいな人だと、同じ女性として思った。長い黒髪はとても煌びやかで、まさに大人の女性のオーラというやつを放っている。

 

 

「ブルーか。まあ落ち着け。この時のために私は待っていたのだからな」

「待っていたって。それにマチスとキョウよ! こいつらロケット団じゃない⁉」

「え⁉」

 

 

 ロケット団。それはイエローでも知っていた。二年前のシルフカンパニーの事件はまだ記憶に新しいし、故郷であるトキワの森をおかしくしたのも彼らだという。

 それを聞いて思わず身構えた。

 

 

「落ち着けブルー。お前の言う通りロケット団とは色々とあるが、今は協力関係にある」

「グリーン。それってどういうことよ?」

「なに。俺達も四天王が気にくわねぇってだけだ」

「左様。元々カントーは我らロケット団が支配するはずの場所。余計な真似はさせん!」

「先に言っておくが、私はもうロケット団を抜けた。こいつらがどうしてもと言うんで連れてきただけだ。まあ戦力としては十分だからな」

「よく言うぜ」

「ふん。女になり丸くなったようだな」

「それ以上言えば、お前らから潰してやるぞ?」

 

 

 見せしめなのか、近くにいたイシツブテ……によく似た岩が粉々になる。

 

 

「おー怖い怖い」

 

 

 ナツメという人が元ロケット団なのはにわかにまだ信じられないでいるイエロー。だがそれを裏付けるようにピカチュウがナツメの胸に飛び込んだ。

 

 

「ぴ、ピカ⁉」

「ピカ……そう。辛かったわね」

「!」

 

 

 ピカチュウに語りかけるその顔は、先程とはまったく違う顔だった。本当に優しい人なのだこの人は。それにあのピカがあんなにも心を許しているのが遠目からでもわかる。

 

 

「でも大丈夫よ。もう少しでまた元通りになるわ」

「え、それって……」

「ほら。今はあなたのおやはあの子なのでしょう? 助けてあげなさい」

「ピカ!」

 

 

 ナツメに言われてイエローの下へ戻るピカチュウ。思わずナツメを見ると、ピカチュウに向けた優しい笑みを浮かべていた。けどそれも一瞬で、すぐに先程のキリっとした真面目な顔に戻った。

 

 

「さあお喋りはここまでにしましょう。フーディン!」

 

 

 フーディンの手に念力で作り出されたスプーンが人数分作られ、それが各々の手にわたる。

 

 

「これは運命のスプーン。そのスプーンに強く思い、念を込めなさい。そうすればフーディン がその念を受け、運命のスプーンで相手を決めるわ」

 

 祈る。レッドさんを助けるために、四天王との戦いからもう逃げるわけにはいかない。

 そして運命のスプーンが曲がった。

 一組目。イエローとカツラ。

 二組目。グリーンとキョウ。

 三組目。リーフとマチス。

 四組目。ブルーとナツメ。

 そしてただ一人マサキのスプーンだけが曲がっていなかった。

 

 

「な、なんでわいだけ曲がらんのや!」

「戦う意志のない者や組むべき相手がいないときは曲がらない。つまりはそういうことだ」

「がはは! まあいい。お前は俺とこい! いくぞ、リーフ」

「ちょっと命令しないでよマチス」

 

 

 マサキを担ぎ上げると、マチスは勝手に4つの道の一つに向けて歩き出しリーフもそのあとを追う。続いてキョウとグリーンも無言で歩き出し、ブルーとナツメは互いに納得がいかない顔をしながら移動をはじめる。

 

 

「我らも行こうかイエローくん」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 マチスを先頭にリーフとマサキが洞窟を進んでいく。行きはそこそこいい感じだったのが、突然マチスが不機嫌になって嫌な空気になったのでリーフが彼にたずねた。

 

 

「ねぇマチス。なんでそんなに機嫌が悪いのよ?」

「うるせぇ! オレのジムがあるクチバであんなことをされて怒らないわけないだろうが!」

「ロケット団の癖によく言うわねー」

「ふん。何とでもいえ。だがな、本当はクチバで四天王を誘い出す計画があのイエローっていうガキに潰されちまったんだよ!」

「イエローごときに潰されるなら、四天王にだって潰されるって」

「まぁまぁ。リーフもそう煽らんといて……」

「ちっ。ん? おい、あれを見ろ」

 

 

 マチスが歩みを止めて言った。

 狭い洞窟から出ると今までと違って広い空洞に出る。しかし下には薄汚い水が行く手を阻む。あるのは岩の橋でできたそれを渡らなければならないようだ。

 足場が悪いため一歩踏み外せば下へ落下してしまう。それでもマチスはどんどん先へと進む。

 なんだろう。この感覚。

 マチスの後ろを歩いていたリーフは何かを感じ取った。

 はじめての感覚ではないのは分かる。稀に感じることがあったこの強い人と出会うたびに頭の中のセンサーというべきものが訴えてくる。考えるより先に手がマチスの腕を掴んでいた。

 

 

「どうした?」

「待って。誰かいる」

「なんやて!?」

 

 

 目の前に白い霧が漂うと、その奥から下だけ道着を履き、上には筋肉という服を纏っている男がその手の両端にモンスターボールが付いたヌンチャクを持って現れた。

 

 

「ほう。オレの気配に気づいたか。若いのにデキるな。だがまだ正確にコントロールできていないようだ」

「お前は……四天王だな」

 

 

 マチスが睨み、モンスターボールを構えながら言う。

 

 

「如何にも。オレは四天王のシバだ」

「ちょうどいいぜ。お前らを倒したくてうずうずしてたんだ。まずはこのオレ様が──」

「待って」

「リーフ?」

「なんだよ邪魔すんな」

「わたしがやる」

「いや、ここはお前よりオレのポケモンの方が」

「ダメ」

 

 

 マチスの言うこともわからなくはない。自分のポケモンは半分が大型のポケモンで、この繋がった岩の橋では不利。対してマチスはレアコイルといった浮遊しているポケモンを有している。シバのポケモンが分からない以上、マチスで様子を見るのが作戦としては正しいと言えば正しい。

 だが、そうはいかない。そのために今日まで修業してきたのだ。

 マチスの前に出て、纏っていたポンチョを投げる。

 

 

「り、リーフ。その服は……」

 

 

 それは今までの可愛い女の子らしい服装ではなかった。

 白のレギンスパンツに黒のアンダーギアの上にジャケットを羽織り、さらに足首まで垂れている腰マント。手には赤のグローブを身に着けたリーフの姿が現れた。それを見たシバの口角が上がる。自分とは別の形であるが、それを戦装束だと気づいたのだろう。

 

 

「改めて名乗るわ。わたしはリーフ……マサラタウンのリーフ!」

「お前もマサラタウンの……。いいだろうリーフ。そして戦う前に教えよう。ここの下にある水は脱出困難な水性粘液。さらにこの岩の橋はただの岩ではない」

「……そうか! どこかで見覚えがあると思ったら、これはイワークなんやな! だがそれではお前が有利やないか!」

「勘違いするな。このシバ、そのような姑息な手は使わん。このイワークはここに住む野生のポケモン。互いに条件は同じ。この極限の状態でこそ、真の実力が問われる。オレが求めるのは、心を熱くさせてくれる戦い!」

「いいじゃない。なら初めにバナちゃん!」

「バナァ!」

「──!」

 

 

 自分の後ろにフシギバナを出すと、この洞窟全体につるを延ばしてネットをつくった。これで戦いの反動でマチスとマサキが落ちることはない。

 

 

「卑怯、とは言わないわよね?」

「ハハハ! それも一つの戦術よな。ならばこちらも!」

 

 

 ヌンチャクを操ってボールから出したのはサワムラーとエビワラー。どうやら相手はかくとうタイプ専門らしい。だが突然、後ろにいるマサキが叫んだ。

 

 

「そ、そのサワムラー! さてはお前がわいの家を襲撃したんやな!」

「……オレのサワムラーが、お前の家を?」

「しらばっくれるな!」

「マサキ、今は黙ってて。そのことは後よ。さぁシバ。やりましょうか……」

「いいだろう! エビワラー!」

 

 

 二体の内エビワラーが迫る。まるでボクシングのように構えながら距離を詰め、右手にほのおのパンチ、左手にかみなりパンチを宿らせる。僅かな動作だが、よく見れば分かる。

 ──エビワラーのほのおのパンチ、かみなりパンチ! 

 どっち……? 

 エビワラーの距離はもう目前。だがリーフはまだ動かない。

 

 

「リーフ!」

 

 

 マサキが叫ぶ。だが動かない。

 何もしてこないリーフにエビワラーは警戒しつつも、その左のかみなりパンチを出した。

 

「──!」

 

 

 紙一重。

 重心を右に少しずらし、最小限の動きでかみなりパンチを躱ししてその右手を振った。その振りはまさに神速であった。

 ──リーフのはたく! 

 パンッ! その音だけが鳴ると同時にエビワラーはマチス達から見て洞窟の左側へ吹き飛ばされ、壁に激突した。

 速すぎて見ることすらできなかったマチスとマサキであるが、シバだけはその一瞬を確かに捉えていた。

 

 

「見事。その若さでそこまでの領域に至るとは」

 

 

 激励を送りながらエビワラーをボールに戻し、その体を震わせながら彼は高らかに笑う。

 

 

「ハハハ! まさかレッドのような男いや、強者(つわもの)が他にいたとは。嬉しい、嬉しいぞリーフ!」

「レッドを知ってやがるのか⁉」

「よく言うで! 四天王が寄ってたかってレッドを!」

「二人とも黙って!」 

『は、はい……』

 

 

 戦いはまだ続いている。それを邪魔するのは例え仲間であろうと許されることではない。なによりリーフはいま、自分の力を確かに実感している。故につい口角が上がってしまう。自分もレッドのように戦えるのだと。それがリーフには嬉しくてたまらなかった。

 けど、二人の言うようにレッドの件もある。シバは武闘家であり礼儀も弁えている。そんな男がこんな非道な事をするのか。

 

 

「レッドは以前言っていたわ。修業仲間ができたんだって。それはあなたね? シバ」

 

 

 シバは無言でうなづいて答えた。

 

 

「それがどうして。あなたは卑怯なことをする男ではないはずよ!」

「そうだリーフ。オレもあの日、いつものようにレッドと──うっ、また頭が──」

「シバ……?」

 

 

 ぐったりと両腕が垂れると、ゆっくりと顔をあげる。そこにシバの意識はなかったとリーフはすぐに感じ取る。そしてカイリキーを出して、サワムラーと共にこちらへ襲い掛かってきた。

 

 

「マチス、マサキをお願い! 姐さん!」

「ラッキー!」

 

 

 ──ラッキーのかたくなる! 

 ──カイリキーのからてチョップ! 

 カイリキーの腕は4つ。そして四天王のポケモンとなれば、その4本の腕を駆使して同等の威力を持ったからてチョップを放つ。

 だがリーフのラッキーもまた普通ではない。あのレッドのリザードンすら何度もふみつけを行いやっと倒れた悪魔。その程度の攻撃ではラッキー倒すことは不可能に近い。

 むしろ──

 

 

「り、リキィ⁉」

 

 

 以前よりも強度は上がっている。

 カイリキーの技を防ぎさらには骨にヒビを入れてやった。

 しかしまだサワムラーがいる。本来は足を主軸に戦うポケモンだが、シバのサワムラーは腕も脚同様に伸ばすことができる。リーフを捉えようと両腕を延ばそうするが、彼女は右腕を横に振った。

 ──リーフのエアスラッシュ! サワムラーは倒れた! 

 風の刃によって奥へとサワムラーは吹き飛ばされた。

 

 

「レッドの言葉を借りるなら、これもはたくの応用ってやつね。まあ聞こえてないだろうけど」

「リーフのレッド化が止まらなくてヤバい……」

「オレ達いらねぇんじゃ……」

「うぉおおお⁉」

「リーフ気を付けろ! シバの野郎が突っ込んできたぞ!」

 

 

 手持ちのポケモンを全部出し切ったのかは分からない。だがシバはとにかく吶喊しながらこちらへ向かってきた。

 

 

「四天王の癖に操られてるんじゃないわ、よ!」

「ハァーーーー!」

 

 

 ──シバのメガトンパンチ! 

 ──リーフのはたきおとす! 

 シバの突き出した右手のメガトンパンチを文字通りはたきおし、再度攻撃の体制に入った。

 ──リーフのおうふくビンタ! シバに大ダメージ! 

 シバの頬に何度もビンタをし続けるリーフを見て震えるマチスとマサキ。

 

 

「お、おい。マサラ出身のヤツはみんなああなのか?」

「わ、わいに聞かんといてな……」

「か弱い女かと思ったら、メスゴ──」

「なんか言った⁉」

「言ってないデース!」

「マチスがキャラ崩壊しとる……」

 

 

 マチスが原因なのか、リーフは未だにシバを叩く右手を止めることはなかった。手を止めたのはシバが正気(リーフ基準)を取り戻した時だった。

 

 

「お、オレは一体……」

「あなたは意識を失っていたの。誰かに操られてまるで人形みたいにね」

「そうだ。あの時も、レッドの戦っている最中に急に激痛がはしって……。それから何度も同じことがあった」

「シバ。どうしてあなたのような人が四天王に協力を?」

「……最初はワタル達の思想に同意していた。だが、その過激なやり方にオレは反対だった。だからなのだろうな。恐らくキクコがオレを操っていたのだろう。目的を知るオレを見逃すはずがないからな。いや違うな。オレは強者と戦いたかっただけなんだ」

「シバ……。じゃあレッドの行方をあなたは知らないのね」

「ああ。そして俺にもう戦う気はない。リーフ、お前の勝ちだ」

「でもあなたは操られていて」

 

 

 しかしすでに決意が固いのかシバを顔を横に振って拒んだ。

 

 

「それでもオレの負けだ。リーフ、お前と戦えて誇りに思う。だがお前はレッドとどういう関係なのだ?  同じマサラタウン出身と聞いてもしやと思ったのだが」

 

 

 シバからの問いにリーフは堂々と答えた。

 

 

「──わたしはレッドの彼女よ!」

「堂々とウソをつくんやない!」

「こうやって外堀を埋めていけばいいってブルーも言ってた!」

「あ、あいつ……」

「ハハハ! まあいい。リーフ、お前に一つ頼みがある」

「頼み? 別にいいけど」

「もしレッドに会ったら伝えてくれ。今度こそ誰にも邪魔されない所で拳を交えようと。では、さらばだ。マサラタウンのリーフよ」

「シバ!」

 

 

 背を向け別れを告げるシバは白い霧と共に消えてしまう。マチスとマサキはリーフに駆け寄り言った。

 

 

「で、これからどうするんや?」

「皆と合流するに決まってるでしょ。マチスも文句ないよね?」

「悪いがオレはオレで動くぜ。四天王の一人は倒した。ある意味ノルマは達成したからな」

「全部わたしがやったんだけどぉ」

「ふん。ま、生きてたらまた会おうぜ」

 

 

 数体のレアコイルで作り出した電磁バリアに乗ってマチスはどこへ行く。残された二人は先を目指すために前に進む。

 

 

「しかしたまげたで。まさかリーフもレッドみたいなことになるとは」

「だってレッドのヤツ面倒だって言ってこれしか教えてくれないんだもん」

 

 

 シュッとはたくをやって見せるが、やはりマサキには見えないのか目を丸くしていた。

 

 

「とにかくわたし達と同様に他の皆も四天王と戦ってるはずよ。急いで合流を──!」

「どうしたんやリーフ?」

 

 

 思わず上を見上げた。そこは洞窟の天井しかない。だが確かに感じる。シバの時よりも正確に強い力を感じるのだ。

 

 

「何かが……来る」

 

 

 直後、島全体を大きな揺れが襲った。

 

 

 

 

 

 

 




リーフの戦闘服のイメージはリリカルなのはヴィヴィオのバリアジャケットですかね多分。
赤いグローブが乙女ポイントです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私も……トキワのトレーナーだ

ちなみに言い忘れていましたが。
グリーン・キョウ対キクコ戦は展開に違いがないので全カットです。



 

 リーフ達がシバと戦いを始めたころ、イエローとカツラもまた別の場所で戦闘を開始していた。場所は洞窟内ではなく、洞窟の外。それも火山の火口付近。

 何故そうなったか。それはカツラが出したポケモンミュウツーと戦うために、ワタル自らがこの戦場へと導いたからだ。

 

 

「ははっ! プテラちょうおんぱ!」

「バリアだミュウツー!」

 

 

 ──プテラのちょうんぱ! 

 ──ミュウツーのバリア! 

 カツラが左手を掲げれば、ミュウツーもまた左手でバリアを張る。ちょうおんぱとは相手を混乱させる技。だがこの世界ではその音自体が武器となる。音波の攻撃を防いだ衝撃が当たり一面に広がる。

 

 

「ミュウツー!」

『──!』

 

 

 ミュウツー細胞を通じて彼の指示に従いミュウツーはカツラとイエローをそのまま浮かせ、空中にいるプテラへとバリアを張りながら突進をしかける。そのままバリアの攻撃を食らったプテラから投げ出されたワタルはプテラを戻し、二体のハクリューを出した。

 

 

「む⁉」

「風を呼べ! 雷雲を呼べ!」

 

 

 すると二体の周囲に風が吹き荒れ、雷が発生する。今度はこうそくいどうをすると、風と雷を纏いながらカツラたちに襲い掛かる。

 

 

「まるで風神と雷神だ!」

「言い得て妙だなイエローくん。ハクリューには天気を操る力があるというが、あいつはそれぞれにその能力を持たせているんだ。さすが四天王と言うべきだ。だが!」

 

 

 カツラの言葉にミュウツーはうなずくと、イエローを肩に乗せて左手で支えながら、その分のリソースをカツラを浮かせるための念力にまわす。そしてバリアを解き放ち技を放つ。

 

 

 ──ミュウツーのサイコウェーブ! 

 

 

「ほう! サイコウェーブで竜巻を作り出したか。なるほど、では気象対決と行こうか!」

「うぉおお!」

『!』

 

 

 ハクリューの力は確かに強い。だが力比べならミュウツーに分があると踏んだカツラは集中し、ミュウツーに指示を送る。

 力を増したサイコウェーブの竜巻は二体のハクリューを飲み込んだ。この中はまさに蟻地獄でそのまま中心へと引きずりこもうとするが、二体のハクリューが円になりそのまま突撃をしかけてくる。

 

 

『ちっ!』

 

 

 ミュウツーは咄嗟に竜巻を解いて、カツラとイエローを抱えて下がる。

 

 

「下がっていいのか? プテラ!」

 

 

 ──プテラのとっしん! 

 それもただの突進ではない。その鋭く鍛え抜かれた刃物と化した翼を向ける。

 

 

「ミュウツー!」

『わかっている!』

 

 

 念力で作り出したスプーンでプテラの攻撃を受け止め弾く。

 

 

『守ったら負ける。攻めるぞ!』

「構わん──ぐっ」

 

 

 膝をつくカツラを気にも留めずミュウツーはプテラと応戦する。一見薄情にも見えるが、彼にはミュウツー細胞を通してそれが分かっている。

 自分達には時間がないのだと。

 それを知らないイエローがカツラを心配しながら進言した。

 

 

「カツラさん一旦距離を置きましょう! ワタルはカツラさんがミュウツー共に接近戦をしかけてくるのをあえて受けています。これではカツラさんの体がもちませんよ!」

「分かってる。そんなことは、分かっているんだイエローくん」

「え?」

「私は、私とミュウツーは離れて戦うことが出来ないのだ。この右腕に移植したミュウツー細胞がそれをさせない。遠く離れてしまえば、こいつは私の腕からいずれは命を奪い取る。逆にミュウツーもそうだ。これのせいで満足に戦えない。だから共に戦わなくてはならないんだ!」

「カツラさん」

「いいかイエローくん。ワタルの戦いをしっかりと見ておくんだ。私達には時間がない。もってあと僅かだろう。その限られた時間の中でワタルを倒せればいい。だができなかった時はイエローくん、きみがやるんだ」

「わかりました」

「そのためにプテラを頼むぞ!」

「はい! いくよピカ!」

「ピカ!」

「むっ。プテラ!」

 

 

 カツラの読み通りワタルはピカチュウに反応した。ワタルはレッド戦っている。ならばそのピカチュウの強さも分かっているはずだ。だからこそ、無視などはできず対応に目を反らす。

 

(分かっているな? チャンスは一度だ)

 

 その言葉に横目でカツラを見ながらうなずくミュウツー。そして予想通りワタルはピカチュウに食いついた。そして集中し、攻撃すべき場所のイメージをミュウツーに送る。

 

 

「うぉおおお!」

『──!』

「なに!?」

 

 

 ミュウツーが持っていたスプーンがゴムのように伸びはじめ、ワタル目がけて飛んでいく。そして形状をフォークのように形を変えて、腰にあるボールの開閉スイッチに狙い定める。

 

 

「ここだミュウツー!」

 

 

 エネルギーをフォークの先端へと集中し、残りの3つのボールの開閉スイッチに手をかけて……破壊した。その余波でボールは地面へと転がり落ちる。

 

 

「やっ……た──」

「カツラさん!』

『はぁはぁ……』

 

 

 タイムリミット、その時が来たのだ。そして限界まで精神を集中した反動でそのまま意識を失ってしまったのだとイエローは気づく。

 同時にワタルを見た。彼もあの攻撃の余波で地面に横たわっている。ボールを見ればヒビが入いっている。つまり、これでワタルは新たなポケモンを出すことはできない。

 

 

「勝った。勝ったんだ!」

「フフフ……フハハハハハ! 喜ぶのはまだ早いぞイエロー」

「な⁉」

 

 

 ボロボロのマントを捨て立ち上がるワタルの顔に敗北というものはなかった。むしろ先程と同じで勝利を確信しているように見える。

 

 

「流石だよ。ハイパーボールは現存するボールの中でもそれなりの強度を誇っている。それを壊すとは素直に称賛する。だが!」

 

 

 パチンと指を鳴らすとプテラが翼の先端でボールを破壊した。一瞬驚くがそれは空のボールだ。ポケモンは最初から入ってなかった。

 

 

「だ、ダミー……」

「いや違う。すでに残りのドラゴン達はもう出ている!」

 

 

 突然の揺れ。地面を割って地下からカイリュー、ギャラドスが姿を現した。

 

 

「最初お前達をここに出したのはこいつらさ。改めて紹介しよう。白竜(ハクリュー)海竜(カイリュー)凶竜(ギャラドス)翼竜(プテラ)。これが四天王ワタルの竜軍団! さぁどう戦う!」

「くっ」

 

 

 イエローがどう戦うか考えていると、隣にいたミュウツーがワタルに向けてスプーンを向ける。だがそれはギャラドスによって防がれてしまう。そして情けを与えるようにミュウツーに言う。

 

 

「ふふ。いいのかご主人様は? お前らの繋がりを知らないと思ったか? 先程の戦いでわからない俺ではない。確かにお前なら俺と戦えるだろう。だがそこのカツラはどうなるかな?」

『──』

 

 

 そうだ。二人は離れれば離れるほど命を蝕む。イエローは倒れているカツラに目を向けた。今の攻撃でうめき声をあげている。それだけの苦痛を伴っているのだ。

 ミュウツーはカツラの声を聞くと素直にボールの中に戻り、イエローの傍へと転がる。

 カツラさんを傷つけないためなんだね。

 ボールの中にいるミュウツーに問いかけると、彼はうなずいた。

 もうここには自分一人しかいない。ブルーさん、グリーンさん、リーフさんがいつ来るかもわからない。ならば──

 

 

「うぁあああ!」

「来るか」

 

 

 ボールを投げる。ピカチュウ、ラッタ、キャタピー、オムナイト、ゴローン、ドードー。これがイエローのポケモン達でありそう戦力。

 

 

「どれも進化していないのか」

「そうだ。毎回キャンセルしてきた!」

 

 

 託されたレッドのポケモン図鑑の機能である進化キャンセルを使ってラッタ以外のポケモン達はずっとキャンセルしてきた。

 他のトレーナーが見れば舐められたものだと侮蔑の眼差しを向けるだろう。だがワタルは笑って言う。

 

 

「ははは! 面白いやつだ。よかろう、だが手加減はしない! 本当に戦う意思があるなら付いてこい!」

 

 

 カイリューの背に乗って火口付近へと向かうワタルを追いかけるイエロー達。

 だがそこである光景を目にする。二匹のハクリューとプテラに手を当てると、そこに暖かい光があふれる。

 

 

「そ、そうか。だからブルーさんはボクを選んだんだ」

 

 

 あの人は何処かで知っていたんだ。ワタルもまたトキワの出身であり、自分と同じポケモンを癒す力を持っているのだと。でなければ自分みたいな少女にこんな旅はさせないだろう。そしてワタルと戦うために自分を送り出したのだ。

 共に走るみんなに目を向ける。そこに恐れはない。自分と一緒に戦ってくれる覚悟があった。

 そしてワタルを追いかけてたどり着いたのはスオウ島の火山の火口。下を見ればマグマがぶくぶくと沸かしたお湯のように沸騰している。ここにいるだけかなり熱い。

 

 

「ふふふ。最後の戦いに相応しい舞台だろう? さぁいくぞカイリュー!」

 

 

 ──カイリューのかいりき! 

 カイリューが砕いた岩がイエローに襲い掛かる。さらに砕けいたところから溶岩があふれ出る。それすらも襲い掛かってくる。

 

 

「ドドすけつつく! ラッちゃんいかりのまえば!」

 

 

 ──ドードーのつつく! 

 ──ラッタのいかりのまえば! 

 二体の攻撃にカイリューはまったく動じていない。まさに蚊に刺された程度にしか思ってないのだ。体を捻るだけで二体を吹き飛ばす。

 

 

「ゴロすけとっしん! オムすけみずてっぽう! ピーすけいとをはく!」

 

 ──ゴローンのとっしん! 

 ──オムナイトのみずてっぽう! 

 ──キャタピーのいとをはく! 

 しかしどれも先程と変わらない。今度はしっぽをふるだけで薙ぎ払われた。あまりにも不甲斐ない戦いにワタルが言った。

 

 

「悪あがきはよせ。ドラゴンのこの鎧のような固い皮膚に小手先の技は通用せん」

「くっ」

「それとも今更尻尾を巻いて逃げるか? イエロー!」

 

 

 倒れているラッタを抱きかかえながらイエローはカイリュー見た。そこであることに気づく。少し、ほんの少しだけお腹の模様が違う。人で言うなら痣のようなものだ。ワタルの言う通りなら誰かがあそこにダメージを与えたんだ。ならばあそこだけ皮膚がまだ完治していないはず。

 隣にいるピカチュウに手を当てて指示を送るとピカチュウはすぐに駆け出した。

 

 

「逃げるわけない! ピカ!」

「なにっ⁉」

 

 

 ──ピカチュウのこうそくいどう! アイアンテール! 

 こうそくいどうで距離をつめて跳び、空中で一回転しながらお腹にある痣にアイアンテールを叩きこむと、再びイエローの所に着地する。

 

 

「──!」

「やっぱり、そこはまだ治りきっていないんだ!」

「ちっ。よく見抜いたな。まだレッドから受けた傷が癒えてないところを狙うとは」

「れ、レッドさんが!?」

「ピカピ⁉」

「ふふふ。そうだろうなピカチュウ。お前は一人逃げ出したから知らないのも無理はない。お前の主は大した男だったよ。最後の一人になっても我ら四天王軍団のポケモン達に一人立ち向かい、我が最強の僕であるカイリューをも倒して見せたんだからな! だが感謝するんだな。レッドのおかげで我らはその傷を癒すために少しの時間を必要とした。まあほんの少しだけだがな」

 

 

 称賛の中に怒りが混じっているのが確かに伝わる。自分のポケモンが傷つけられたのだ、怒らないわけがない。

 だからこそ、納得がいかない。

 

 

「そんなあなたが! どうしてこんなことをするんですか!? どうしてカントーを滅ぼそうとするんですか⁉」

「滅ぼすのではない。このワタルが創り変えるのだ! 身勝手な人間を排除して、ポケモン達が住みやすい環境を作るために!」

「違う! そんなことは間違ってる! たしかにあなたの言うように人間の勝手で住処を奪われ、食料を求めるポケモン達が大勢いるのを見てきた! だけど人間だけを排除するなんて決定権、あなたにも誰にもないんだ!」

「だまれ!」

「ボクもあなたと会った時にそれを言われて悩んだ。理由はどうであれ、あなたもまたポケモンのために泣く人なのだと。だけど、そのためにポケモンに人殺しをさせるの⁉ 目的のために利用するの⁉ そんなの、他の人達と変わりはしない!」

「自分だけが綺麗な手をしていると思ったか⁉ 俺もまたすでに手を汚している。そんな俺の夢にこいつらは、我らが四天王は共に戦ってきた!」

「ボクは戦うことがキライだ。傷つけあうのもキライだ。だけど、時には戦わなくちゃいけない時があるんだと知った。旅の中でボクは大勢の人を見てきた。良い人も悪い人も大勢いた」

「だからなんだ? 良い人間だけを選べと言うのか?」

「違う! あの人は、レッドさんは言った。親が悪いことをすれば、ポケモンも悪い子になるって。だからそうならないようにすればいい、声をかければいい。そうすれば、いつかそんな人達はいなくなる!」

「そんなの綺麗事だ!」

「そうだよ! だからこそ現実にしようと人は頑張るんだ! あなたは人間を身勝手といった。だけどボクは思う。人間もまた自然の一つ! ポケモンと人間と自然。この三つはどれも共に支え合っているんだ! だからどれか一つが欠けちゃダメなんだ!」

「あの男と──レッドと同じことを言うか!!」

「え?」

「カイリューだいもんじ!」

 

 

 ──カイリューのだいもんじ! 

 カイリューから放たれた大文字がイエロー襲う。

 

 

「うぁあああ!」

「これはただのだいもんじではない。エネルギー源はこのマグマ! そのまま火山に飲み込まれろ!」

 

 

 立っていた岩が崩れマグマに落ちようとしてた時、なみのりをしたピカチュウに助けられるイエロー。

 

 

「このマグマの上でなみのりとはな。さすがレッドのピカチュウか。だが俺は上を取っているぞ!」

 

 

 ──カイリューのはかいこうせん! 

 ──ピカチュウの10まんボルト! 

 縦横無尽に迫るはかいこうせんを的確に対応するピカチュウ。

 その中でイエローはワタルと戦う決意をしていても、未だに心のどかに優しさという甘さが残っていた。自分と同じトキワの力を持つ者が、大量虐殺などをしてほしくない。そのためにこの戦いを終わらせなければならない。

 ミュウツーが入ったボールを手に取り、あの時の戦いを思い出す。

 

 

「ピカ!」

「ピ!」

 

 

 ピカチュウにミュウツーのような竜巻は起こせない。だがこの下はマグマ。高速で回転し続ければできるはずだ。

 

 

「頑張れピカ!」

「逃げ回ってばかりでは意味が──な⁉」

「今度はこの溶岩でアレを再現する! いっけぇえええ!」

 

 

 巨大なマグマの渦を作り出し、マグマの蟻地獄を作って引き寄せる。

 

 

「降伏してください! これ以上あなたに町の人々を攻撃させたくないんです!」

「勝ったつもりかイエロー⁉ このワタルを、なめるなぁあああ!」

「な、渦を突き破って⁉」

 

 

 マグマの渦を破って突進をかけるワタル。だがそのままカイリューごとマグマに飲み込まれた。

 

 

「わ、ワタル? やったの?」

 

 

 静かだ。ただマグマが湧き上がる音だけが聞こえる。このままいても仕方がない。そう思った時、上にいたキャタピーが糸を垂らしてくれた。そのまま糸を使って火口を脱出して再度下を除くイエロー。

 結局最後まで分かり合うことができなかったな。

 勝利したはずなのに浮かれた気分になれない。下にいるカツラと合流するために歩こうとするが、ピカチュウがなぜか動かず火口を覗いている。

 

 

「ピカ? ……ん、あわ?」

「──! ピカピ!」

「な、ワタル⁉」

 

 

 そこには巨大な泡で包まれた中にギャラドスと二匹のハクリュー。そしてワタルがこちらを見ていた。

 そして大量の泡が襲い掛かるが、突然泡が視界から消えた。

 

 

「な、消え──がっ!」

 

 

 泡の一つが右腕に当たり折れた。痛みを抑えながらキャタピーの糸で即席のギプスを作る。

 

 

「あれはバブルこうせん。泡を作って溶岩から身をも待っていたのか。だけど、どうして消えるんだ……」

 

 

 そうか光の三原色。

 そこで泡に3つの色があることに気づいた。赤、青、緑の3つの色をしたバブル光線が交錯ししてまじり合うことで無色になる。さらに昇り始めてきた太陽の反射する透明球となって襲ってくる。だが手品が分かってもどうするべきか。

 考えても仕方がない。まずは動くんだ。

 イエローは火口の途中にある出っ張りに飛び降りた。そしてキャタピーの糸を火口内部に糸を張る。

 

 

「ほう。何かしてくるつもりか」

「みんな頼む!」

 

 

 見えない泡の攻撃に対抗する。そのためにはラッタの敏感な髭が感知し、それをピカチュウに伝え迎撃。電気が通りやすいようにオムナイトの水が糸にあらかじめ湿してある。そして、こちらに向けたその一瞬をつく。

 

 

「今だ!」

 

 

 ゴローンがドードーを巨大泡に向けて投げ飛ばす。

 ──ドードのドリルくちばし! 

 確かにドードーのくちばしは泡を捉えた。だが貫くまでは至らなかったのだ。

 

 

「この状況で即席のトラップを作るとは。やるなイエロー。だが悲しいな……進化しなかったツケが回ってきたな! それではパワー不足だ!」

「うわぁあああ!」

 

 

 再び見えないバブルこうせんがイエローを襲う。

 

 

「なに⁉」

「え?」

 

 

 だがイエローは生きていた。それも第三者の登場によって。間一髪のところだっため、すでにボロボロのイエローはその人に言った。

 

 

「だ、誰ですかあなたは? 助けて、もらって感謝します。けど、ワタルはトキワのトレーナーでないと倒せないんです」

「──」

「だから、ボクがなんとかしなくちゃ……え?」

 

 

 立ち上がろうとした体を、その人は肩においてボクに言った。

 

 

「心配するな。私も……トキワのトレーナーだ」

 

 

 真っ黒いスーツを身に纏ったおじさんが僕の目の前に立っている。彼は言った。同じトキワのトレーナーだと。だけど、こんな人見たことがない。

 隣にいるピカチュウが鳴いている。声からして警戒している。まるでその人を知っているかのように、ピカチュウはその人に叫んでいるとイエローは感じた。

 

 

「お前は……」

「それにここへ来たのは私だけではない」

「え?」

「貴様、それはどういう……!」

「フフフ。噂をすれば」

「あれは……隕石?」

 

 

 イエローとワタルは共に空を見上げた。スーツの男は分かっているのか澄ました顔をして見向きもしない。

 4つの隕石がこのスオウ島上空に落ちてくる。いや、違う。落ちてくるのは一つ。他の三つの隕石はそれぞれ別の方角へ飛んでいく。つまりは隕石ではない

 そして残った一つ。よく目を凝らせばそれは、巨大な炎の塊だった。

 それは猛スピードで落下しスオウ島の麓に墜落した。

 

 

「まさか──」

 

 

 それが何かだという事に気づいたワタルに、男は口角を鋭く上げて言った。

 

 

「その、まさかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




スーツの男。一体何者なんだ……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さあ来いカンナ! このブルーが相手になるぞ!

なんかサカキに対して誤解があるので補足。
サカキはスーパーでも伝説でもないよ
あくまで普通のポケモントレーナー枠で、レッドの宿敵なだけだよ()


 

 

 熱い。

 体中が燃えるように熱い。

 まるで燃え盛る火の中に身を投じているかのようだ。

 冷たい。

 体中が凍えるように冷たい。

 まるで巨大な氷に閉じ込められているような、極寒の地でその身を常に晒しているかのようだ。

 息が荒い。胸が苦しい。体が痛い。

 もうやめてくれ、休ませてくれ、もう動かないでくれと悲鳴をあげているようだ。

 だが断る。

 例え地獄の業火に焼かれようとも、絶対零度によって体を凍らせられようとも、止まるわけにはいかない。

 アクセルグリップを握る右手に力が入る。よく溶けないなと自分を褒める。そうしなければまとも意識を保ってられない。一瞬でも気を抜けば、鉄の馬は瞬く間に原型を失くしてしまうだろう。

 今は夜だというのにまともに夜空を見ることも、夜風にあたることもできない。そもそも見える色は赤一色。

 

 

『『『ギャーオ!!!』』』

 

 

 どうやら目的地についたらしい。

 

 

「──ハハッ」

 

 

 思わず抑え込んでいた本心が漏れた。

 わかる、分かるぞ。この下だ。このエネルギー、この力の波動は紛れもなくあの女だ。他の奴らも殺したいほどに憎いが、まずはあの女だ。アイツだけはしっかりとこの前の落とし前を付けさせてやる。

 

 

「ありがとう。ここでいい」

 

 

『『『ギャーオ!!!』』』

 

 

 運んできてくれた三鳥が三方向にそれぞれ別れ飛び立つ。

 さながら自分はヘリによって輸送されていたコンテナのようなものだ。連結の役目を担っていた三鳥がいなくなれば、このまま真下へと落下する。

 そう。それでいい。方角はこのままだ。

 イメージする。一点、このまま周りを炎で囲いながら地上になる岩や土を溶かしながら落ちればいい。そこにいるはずだ。

 近くに彼女が居るのが分かる。それが目印だ。

 ──……フレアドライブ! 

 同時に左のグリップを握る親指にあるスイッチを押す。後部に取り付けられたブースターが点火し、火を噴きだして加速しながら落下する。

 

 

「いくぞ──」

 

 

 状況はどうであれ、人生初めての高度数百メートルからのパラシュート降下ならぬバイク降下を開始した。

 

 

 

 

 

 

 イエロー達と別れたナツメとブルーは互いに口を開くことなく洞窟を進んでいた。先頭を歩くナツメの背中にブルーは、敵意とは違った眼差しを向けている。

 それは怒りなのだろう。

 レッドのことを誰よりも理解し、繋がっている彼女が今になってようやく動いた。本当ならもっと早く対応できたはずで、そうすればこんなにも大事にならずに済んだのではないか。考えれば考えるほど余計にイラついてくる。

 そんなブルーの頭の中を読んだのか、ナツメは振り返らずに言う。

 

 

「今は目の前の戦いに集中しろ。お前を守ってやれるほど、いまの私は冷静ではない」

「冷静ではない? 今頃になって表舞台に出てきていうセリフがそれ?」

「何とでも言うがいい。私にも目的がある」

「目的?」

「ブルー」

「な、なによ」

 

 

 ナツメは行き成り足を止めてこちらに振り返った。普段とは違う、以前ロケット団の時にいた時のような冷たい表情をしていた。

 

 

「これでも私はな、ブチ切れ寸前なんだよ。つまりそれがどういうことか。レッドに好意を抱いているお前にも分かるだろう?」

「あ、あたしは別に……」

「──レッドがカントーから帰って来てから、度々お前と密会していたのは知ってるんだぞ」

「……なんのことかわかんない」

 

 

 ば、バレている。いや、これは自分が悪いのではない。どちからと言えばレッドの方に問題がある。自分が連れ去られた事件に関してレッドは訪れるたびに手伝ってくれたし、あとは暇だからと言って勝手に転がり込んできたり……いや、後者が7割だった。

 

 

 

「まったく。あいつは私という女がいながらふらふらと別の女の所に行きおって。そもそもブルー。お前のその格好も原因の一つだ。今は一枚上着を羽織っているが、お前は露出が多すぎる」

「あら嫉妬? 持たない者の嫉妬は心地がいいわねーおほほ」

「調子に乗るなよ。レッドはああ見えて……ん?」

「どうしたの? って、これは」

「ジムバッジだ。どうしてここに」

 

 

 まるで祭壇に収められてるかのようにジムバッジがあった。ナツメがそれに手を触れようとした時、洞窟内に女の声が響き渡った。

 

 

「それを知る必要はないわ!」

「お前は……」

「四天王のカンナ!」

 

 

 奥からパルシェンに乗ったカンナが堂々と現れた。思わず構えボールを手にしたとき、それを前にいたナツメが止めた。

 

 

「ちょっとどういうつもり?」

「言ったはずだ。私には目的があると。それがあの女だ」

 

 

 尋常ではない殺気をカンナに向けるナツメに、思わずブルーは後ずさる。気づけばナツメの体から念力の波動が溢れ出て、その力の大きさに洞窟が揺れ始めている。

 

 

「お前だな、レッドを手にかけたのは?」

「流石エスパー。そういうことまで分かるのかしら?」 

「瞑想をして極限まで力を高めれば、少しの間だけ過去の予知で見た光景を深く覗くことが出来る。そしてレッドが見ていた光景にお前がいた」

「あらそう。けど意外ね。レッドのことを調べていく内にあなたとの関係も知ったのだけれど、ショックのあまり寝込んでいると思っていたのに。存外薄情なのかしらね」

「確かに泣いたさ。一日中涙を流し声を枯らした。私は以前からある予知でレッドの身に何かが起きることを知っていた。だがレッドは大丈夫と言っていた。私もそうだった。あいつが死ぬはずがないと」

「けど死んだわ」

「いや。レッドは死んでいない」

「どうしてそう言い切れるのかしら? 私は確実にレッドを殺したわ」

「簡単だよ。私とレッドは運命の赤い糸で繋がっている。故に! 赤い糸は絶対に切れることはない!」

「……」

 

 

 胸を張って言いのけるナツメにカンナはどこか気の抜けた表情をしていた。いい感じの流れだったので黙っていたブルーが口を開いた。

 

 

「ナツメって、案外ロマンチストなのね」

「ふん。さあお喋りはここまでだ。覚悟しろカンナ。簡単には死なせんぞ」

 

 

 増幅するナツメのサイコパワーによって辺りにころがる氷の岩や氷柱がカンナに向けられる。だがカンナは慌てるどころから余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

「怖い怖い。けどこちらとしては助かるわ」

「戯言を」

「……ナツメ!」

「なに⁉」

 

 

 ──ゲンガーのふいうちからのふういん! ナツメは力をふういんされてしまった! 

 その瞬間、宙に浮いていたナツメが地面に尻もちをついて落ちた。

 

 

「いたっ……ハァッ!」

 

 

 まるで落ちたことをなかったことしにして、カンナに腕を向けて力を解き放つ。

 ──ナツメのサイコキネシス! 残念。力をふういんされているせいで技が出せない! 

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 

 表情を崩さずにナツメは後ろにいるブルーの背後に回り、何事もなかったかのように叫ぶ。

 

 

「さあ来いカンナ! このブルーが相手になるぞ!」

「ちょっとあんたねぇ⁉」

「くっ。やはりレッドの言ってたように、こういう時のために体を鍛えておくべきだった……」

「つっかえ! 本当に使えないわねあんた⁉ やっぱあんたよりあたしの方がレッドと相性がいいのよ!」

「はぁ? 相性抜群ですぅ。私とレッドの体の相性は効果抜群ですぅ。悔しいか? 悔しいだろうなブルー。お前が好意を抱いている男は、すでに私とそういう関係なのだよ!」

 

 

 煽るように言ってくるナツメにカンナに向けるべき敵意が彼女に向いてしまう。だが落ち着けと何度も言い聞かせ、一言だけ口に出して落ち着く。

 

 

「腹たつぅ……」

「敵が目の前にいるのに随分と余裕ね。まあこのゲンガーはキクコ様が念のためにおいてくれた子。本来はふういんなんて覚えないけど、そこはあの人ね。そしてこの子を倒さないとふういんは解けない。そして──」

 

 

 すると手に氷の人形が現れる。形から見て自分とナツメのように見えた。

 

 

「これはルージュラのれいとうビームで作り出した氷の人形。そしてこの人形に口紅で印をつけると……ほら」

「なっ⁉」

「あたしたちの手首に氷の手錠が⁉」

「ふふっ。この人形に印をつけられた者は、そこに氷の枷がつくの。本来はじわじわと全身を蝕むのだけれど、あなた達相手には使わない。ああそれとこれを奪うなら気を付けなさい。もしもこれが壊れでもしたら、その部分がそのままあなた達に反映されるわ」

 

 

 なんとか氷を叩こうにもあまりにも頑丈で壊れそうにない。さらに炎で溶かそうにも、互いにそれができるポケモンはいない。何故か落ち着ているナツメは目を大きく開いた。何かに気づいたらしい。

 

 

「そうか! これだな? 予知で見たレッドを縛っていたモノの正体は」

「ご名答。そうね……これから手を下す前に話してあげるわ。冥途の土産にはちょうどいいしね」

 

 

 そしてカンナは語る。この一連の騒動であるその始まりの戦いを。

 

 

 

 

 




短いけど肝心の戦いは次だぁ。
ナツメがなんでこんなにポンコツかと言うと、こうやって弱体化させないとナツメ一人で終わるから。
そのためにこの日までに瞑想をして力を高めていたんですねぇ(他人事)
だけど本当にカンナ一人に拘らなければ、相手を視界に捉えずとも気配を探って心臓の動きを止めてはい終わり!閉廷!以上解散!の流れになる。
この作品において人類最強候補の名は伊達ではないのです。なおその扱いはお察し。

あとゲンガーの件は演出上の処置なので大目に見てください……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

こいよ四天王。戦い方を教えてやる

 

 

 

 

 崖の下でこちらを見上げている少年レッドを見下ろす。共に競い合っていたシバがキクコによって操られ、我ら四天王を前にして焦りが見えるようだ。

 

 

「四天王が揃って俺に何の用だ!」

 

 

 彼の問いにシバ以外が不敵な笑みを浮かべながらレッドを見る。そしてリーダーであるワタルが代表して伝える。

 

 

「単刀直入に言おうかレッド。俺達の同志になれ」

「……なに?」

「レッド。お前もポケモンを愛している人間だからわかるだろう。この世はポケモンにとって住みずらい世界になったと思わないか?」

「環境汚染のことか?」

「それもその一つだ」

 

 

 意外だったとカンナは思った。

 チャンピオンになるのだからその実力は知っているが、シバとの修行を見てしまえばきっと脳筋なのだろうと思っていたからだ。

 ワタルはさらに付け加えるように続けた。廃棄された建設途中の建造物や、その過程で生まれる有毒ガスや産業廃棄物。それによって住処を追われるポケモンや、体を蝕まられることで命を落としてしまうポケモンもいる。

 幼い頃私のパウワウもそれで命を落としかけた。それを偶然通りかかったキクコに助けられて今に至る。

 

 

「だからこそ俺はこのカントーから人間を排除し、ポケモンが安心して暮らせる理想郷を創る!」

「大層な理想だな。だがそれを謳う男がシバのような男を操ってまでするのか!」

「シバも最初は賛同していたさ。だが我々の過激な作戦には反対だった」

「それで洗脳かよ。趣味が悪いぜ」

「ふん。何とでも言うがいいさ。さあ返答は?」

 

 

 少なからず私はこのレッドという男に期待はしていた。彼はある意味真にポケモンとこの世界を理解しているのではないか、そんな考えをさせるからだ。

 ポケモンバトルで傷つくのはポケモンだけ。トレーナー自身が鍛える人間などシバのような武闘家、それに彼のような少し変わった人間ぐらいだろう。

 

 

「──まったくお笑いだ」

「何?」

「お前は……いや、お前らのような思想を抱くやつらは口を揃ってやれポケモンのため、やれ理想郷なんて言葉を出す。所詮貴様らも大義名分を盾にしてポケモンをその手段のための口実に使うことしかできないんだよなぁ⁉」

「ふん。否定はしないさ。それでもポケモン達は俺の声に答えてくれた。ポケモン達もそれを望んでいるんだぞ?」

「そんなのクソくらえだ。お前達がそれを行えばどうなる? 戦いだよなぁ? お前達を止めようとトレーナーとそのポケモン達が傷つく。そしてその先にあるのはなんだ? 破壊の跡だろうが。ポケモンも人も傷つけ、さらには自然をも壊す! ワタル、一つ教えてやるぜ。人間もまたこの自然の一部。そして人間が人間を、そして世界を裁こうなんて権利ありはしない! まあ……あるとすればこの世界を創造したやつだろうがな」

「それがお前の返答か」

「お前がこのカントーでそれを行うっていうなら……ここで潰す。こいよ四天王。戦い方を教えてやる」

 

 

 挑発しながらレッドは手持ちのポケモンをすべて出した。スピアー、ピカチュウ、リザードン、フシギバナ、カメックス、カビゴン、ラプラス。一人と七体のポケモン。どれもこちらへ敵意を向けているのが分かる。これは殺気だ。ポケモン達は主に呼応して殺気をこちらへ放っている。

 ならばとこちらも軍団を登場させる。

 氷の軍団。闘の軍団。霊の軍団。竜の軍団。数にして200は超えているだろう。過剰な戦力だ。どれも後のカントー侵攻で使うポケモン達である。それだけレッド達を警戒しているということだ。

 

 

「戦う前に最後に一つ聞こう。レッド、サカキはどこだ?」

「──」

 

 

 サカキの名前を出すと表情が変わった。さらに鋭く尖った目をした。

 

 

「なぜサカキについて聞く?」

「ふふっ。俺の計画にどうしてもサカキが持つジムバッジが必要でな? しかしロケット団が壊滅したあとヤツが最後に姿を現したのはお前の前だ。そしてその戦いにお前は勝った。言え、サカキはどこだ」

「ふん。隠すつもりはないが教えてやる。バッジを期待してるなら無駄だ。俺は持っていないし、さらに付け足せばサカキに勝ったなんて一度も思ったことはない。ヤツとの戦いは俺の負けなんでな。だが、なぜジムバッジを欲しがる?」

 

 

 その問いを聞いてキクコがあるモノをレッドに見せた。

 

 

「フェフェフェ。これのことは知ってるだろ?」

「それはエネルギー増幅器! そうか、どうやってその理想とやらを実現しようとしてるかと思えばそういうことか!」

「そう! 俺も7つまでバッジを集めていてな。あとはサカキが持つバッジのみ。それが揃ったとき、その巨大なエネルギーで俺はある存在を操り、ポケモンの理想郷を創るのだ!」

「……結局お前もそっち側か」

 

 

 レッドは先程とは違って落ち着いた声で言う。だがどこか冷たさを感じる。

 

 

「その力は身に余るものだって言うのによォ!」

「悪いがレッド。お前の存在は危険すぎる。だから……ここで果てろ!」

「いくぞ!」

 

 

 ぶつかり合うレッド達と四軍団の戦いが始まった。

 ──レッドのフォルムチェンジ! レッドはライジングスタイルに変化した! 

 雷を纏いながらレッドとそのポケモン達は駆けだす。彼の指示がなくともポケモン達は自分の意志で戦う。

 ──フシギバナのつるのむち! 

 フシギバナが出せるすべてのつるが空中にいるドラゴン軍団や宙に浮いているポケモン達を捕らえる。そしてそのつるをピカチュウが渡り宙を舞う。

 

 

「バナァ!」

「ピカ!」

 

 

 ──ピカチュウの10まんボルト! 

 ピカチュウの10まんボルトが広範囲に電撃を与える。

 

 

「ガメェ!」

「きゅー!」

 

 

 ──カメックスのハイドロポンプ! 

 ──ラプラスのれいとうビーム! 

 地上にいるワンリキー、ゴーリキー軍団をカメックスのハイドロポンプで吹き飛ばしながらそのままラプラスのれいとうビームで凍らせる。

 

 

「リザァ!」

 

 

 そして空中ではフシギバナのつるから逃れたドラゴン軍団をリザードン一匹で相手をしている。例えるならそれは一対多勢によるドッグファイトだろうか。数体のカイリュー ―を先頭にハクリューにプテラがリザードンを追撃する。だがあの黒竜はいくらワタルのドラゴン軍団と言えど相手になっていないようにも見える。

 加速をかけて上空へ急上昇する。それを追撃しようと何十体というドラゴンが追いかける。数体のドラゴンがそのまま攻撃を放つが当たらない。そしてリザードンはある一定の高度でインメルマンターン、縦方向にUターンし追撃していた先頭のカイリューの一体の頭を掴み地上へと急降下する。

 予想外の行動に一歩遅れて他のドラゴン達が追撃を再開しようとすると、そこにいつの間にか追随していたスピアーがその槍を構えた。

 ──スピアーのどくどく! きゅうしょにあたった! ドラゴン達はもうどく状態になった! 

 一発で葬るのではなく、確実に猛毒にしてじわじわとトドメをさすつもりらしい。

 一方リザードンに頭を掴まれたカイリューはそのまま地上へと叩きつけられ、

 ──リザードンのかえんほうしゃ! 

 そのまま巨大な蒼炎によって燃やされる。

 そしてレッド。彼の相手をしているのはキクコのゴーストポケモン達。ゴーストとは即ち霊。本来であれば人が触れることができない存在。事前の調査でレッドの事を調べた結果、キクコのゴーストポケモンが相手として適任だと分かり対応させているが。

 

 

「フンッ……おらぁ!」

 

 

 ──レッドのライジングパンチ! ライジングキック! 

 近づくゴースやゴーストを殴っては蹴り倒していく。そしてシバの闘の軍団の一部隊をまとめているカイリキーがレッドに4本の腕を構えながら迫るが、あの巨体にどこにそんな動きができるのかと思われるカビゴンが割って入った。

 ──カビゴンのヘビーボンバー! 

 相手より重たいほど威力が増す技。カイリキーの体重は平均130㎏に対し、カビゴンの体重は460㎏の約3.5倍、つまり想像以上のダメージが出る(こちらではゲームの処理ではない)。

 

 

「ぶっとべッ! あっ、ゴン!」

 

 

 カビゴンの攻撃でそのまま背後の崖に激突するカイリキー。

 戦いながらレッドはこちらに中指を立てる。

 

 

「俺達を殺したきゃ、この数倍は持ってこいや!」

 

 

 手を止めることなく、たった一人と七体のポケモンに我ら四天王の軍団が翻弄されている。しかし我らに焦りはない。

 

 

「フェフェフェ。調子に乗ってる小僧に灸をすえてやるかい?」

「あれをやるのかしら?」

「ああ。陣形を保て」

 

 

 レッド達を中心にそれぞれの軍団が四方を囲む形に移動する。

 

 

「なんだ?」

 

 

 突然の行動にレッドは少し動揺しているように見えたのか、思わず苦笑した。さぁ驚け。これで貴様は終わりだ。ワタルの合図でそれは放たれる。

 

 

『氷・闘・霊・竜の陣!』

 

 

 我ら四天王一撃必殺の攻撃。これを受けて立っていられるポケモンはおろか、人間は存在しないだろう。

 

 

「おおおおおお!!」

 

 

 ──レッドの電磁バリア! 

 レッドを中心に広がる電磁バリアが四方から来る攻撃を受け止める。だがどんどん押し込まれる。これが一つなら問題なく防げただろうが強力な4つの攻撃を防ぐのは不可能に近い。

 

 

「終わりよ」

 

 

 勝利を確信して呟く。

 そしてバリアは破れ巨大なエネルギーが彼らを覆った。衝突したエネルギーの閃光が眩しくて思わず腕で目を覆う。

 

 

「この陣を使うのは想定外だったが……まあいい」

「こちらもかなりの戦力を減らされたわ。これでは後の作戦に影響が出るかもね」

「そうだねぇ……ん?」

「どうしたキクコ?」

「……本当に人間なのかい。あの小僧は」

「まさか」

「……化け物めっ」

 

 

 視線の先。爆発の中心部。そこに信じられない光景が広がる。煙が風によって流されると、彼らの姿がはっきりと見えた。立っている。あの攻撃を食らってもなお、あの男は立っていた。

 だがそれはレッドだけではない。倒れていたリザードンもボロボロであるがゆっくりと立ち上がり、スピアーも浮上してさらに一番軽傷であったピカチュウも起き上がる。

 レッドも相当の深手を負っている。全身が薄黒く焦げており、まるで人間だと証明するかのように頭から真っ赤な血を流している。普通ではないが明らかに早い呼吸をしているのが肩の動きを見ればわかった。

 

 

「おい」

 

 

 ワタルがキクコに命じると、彼女はシバの手持ちであるイワークに指示を出す。シバとその手持ちのポケモンはすべてキクコがゲンガーを通じて操っているのだ。

 直後、下から地響きが起こる。

 

 

「──!」

 

 

 それが自分の真下だとレッドはすぐに気づいたが遅い。地下からそのままレッドを捕らえたイワークは、そのまま真っ直ぐ正面にある崖へと彼をぶつけようする。彼はイワークの顔に張り付きながら地面に向けて足を踏ん張ろうとするが止まらない。

 

 

「ぐぅうう──!」

 

 

 結局イワークを止められず壁に激突し、小さなクレータができたその衝撃で上から岩が落ちてくる。

 

 

「さすがにアレでは──な!」

 

 

 非常識にもほどがある。

 全長約9メートル、体重210㎏の巨体を掴み持ち上げている。

 

 

「おぉおおおおおお!!!」

 

 

 ──レッドのたたきつける。

 何度もイワークを叩きつけたことによってその頭が取れる。そんなことを気にすることなくイワークの頭を放り投げた。

 

 

「ハァハァ……!」

「ちっ。手こずらせる」

「まったく往生際が悪いねぇ」

「ほんと嫌な子よ」

 <