ヒーローから生まれた|敵《ヴィラン》 (shoon K)
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始まりの黒


LINEで友達と会話してた時に生まれた作品です。


世界人口の九割以上がなんらかの特殊能力『個性』を持つこの世界。その個性を悪用する(ヴィラン)と個性の登場により新たに生まれた者『ヒーロー』が日夜戦う、いわゆる内戦時代に生まれた私は地獄の環境で育った。

 

父母両方とも名の馳せた『ヒーロー』であった。父方の個性は【付与(エンチャント)】、自分又は武器に様々な効果を付与する個性で自分の武器に様々な効果を付与し戦うバランス型のヒーロー。母方の個性は【保護色】、自分と持つ物全てを周りの景色と同化させる個性で忍者の様に戦うヒーロー。私はそんな二人の下に生まれた。名のあるヒーローの子に生まれたから、当然期待された。

 

そんな私が天から授かった個性は【(ペイント)】。体から様々な効果を持つ絵の具を生み出す個性だった。作り出した絵の具の色に関わる物に付着すれば私の意志で自由自在に操る事も出来る。

そんな期待以上の個性()を持って生まれた私に周りは絶賛。当然その個性が発覚した時からヒーローになる為の英才教育を受けることとなった。

 

...周りから見れば私のことがうらやましくて仕方ないのだろう。私のことを勝ち組だとでも言うのだろう。

しかし私はそんな生活が大嫌いだった。考えても見ろ。今まで優しかった両親が突然鬼のように厳しくなり、周りの子達から嫉妬され、虐めを受けて、家に帰っても「世界最高のヒーローになるための躾」と称され虐待の様な訓練を受ける毎日。

私は必死に耐えてきた。親に文句の一つでも言えば個性を使って半殺しのような目に遭い、学校に行っても常に一人。そんな日々、そんな世界に対する「怒り」は私の中にダムのように溜まっていった。

 

そうして、あの日がやって来た。

 

中学三年。後一年後に雄英受験が迫っている日

いつものように虐待じみた訓練。やらなきゃ死ぬと思っていた私は死に物狂いで喰らい付き、ようやく父母の動きに追いついた。そしてついに二人を下す事が出来た。

その時の私の気持ちといったらもう、人生で一番と言えるほど嬉しかった。その時の私にとっては()()しかなかったからだ。

 

その後、息も絶え絶えの父が放った言葉で、私の感情に亀裂が入った

 

「俺達は、トップヒーローだ...ヒーローランク6位と3位だ...!!!戦場を知らんお前なぞに負ける訳がないだろォ!!!戦うしか能のない脳筋めがァ!!!!」

 

―なんで、一度も褒めてくれないの...なんで、ここまでやったのに...友達も、欲も、何もかも捨ててここまでやったのに...

 

「お前、親にここまでやるなんてな...傷害罪で訴えてやる。」

 

訴える...世間的に死ぬ...殺される...

 

「!...待て、()()()の様子がおかしい...」

 

そいつじゃない...私は...私だ

 

「黒くなってるわ!」

「不味いな、逃げるぞ!」

 

逃がすものか、私が()()()()()()で味わった地獄を、怒りを、今ッ!!!

 

―カエシテヤル

 

私の変化に動揺する父の首元を掴み、私の色を侵食させていく。

 

「ぐぇっ......」

「えっ...あなた!?」

 

この時点で父はもう、息を引き取っていた。黒に飲み込まれたのだ。

黒の効果は全てを飲み込む死の色。この色はこの時初めて出た色だったが私は困惑しなかった。

 

「......嘘...」

 

父の突然の死に崩れる母、私はその隙を逃さない。

 

「うぅ...」

 

母の首に黒く染まった左手で触れる

母は比較的優しい方だったがそれでも許せない存在だ。両親と言うだけで、ヒーローと言うだけで。許せない。万死に値する。

 

「...ごめんね...未来(みらい)...」

「!!」

 

だんだんと黒に侵食されていく母が口を開く

 

「...今、初めてわかったわ...私達の罪の大きさが...」

「ダマレ!!クチダケノコトバヲ...!!!」

「...そう、確かに口だけ...私は、私達は親としては(ヴィラン)そのものだった...」

 

今更、何が言いたい

 

「...自由に、生きなさい...私達が制限した分まで...どんな悪に染まってもいい...そうさせたのは私達だから...」

「ナラ...モウ、シネ」

 

絵の具の生成量を増やす。瞬く間に母の顔が黒く染まっていく

何か言いたげそうな顔だったが、これ以上同情されたくないので黒に染め上げた。もう母が動くことは二度とない。

永遠のお別れだ。

 

「......」

 

黒く染まった二人を見て、私からこみ上げてきた激情が静まっていく。

後悔なんて全く感じず、むしろ沸きあがってきたのは喜びだった。

 

「...自由だ...私は、やっと......」

 

やっとだ、やっと両親と言う呪縛から解放された。何にも縛られず、誰にも邪魔されない快適な生活が待っている

 

「...これからどうしようか...」

 

 

そう言いながら私は私は手から緑色の絵の具を生成し、両親だったモノが横たわる芝生に放つ。

すると芝生の形が変形し、両親だったモノを覆い被さっていった。

 

完全に姿が見えなくなったのを確認すると、無駄に大きい家の門の方へ、一歩一歩踏みしめながら進んだ。

とても、清清しい気分だった。







主人公 色村 未来(しきむら みらい)

個性:【(ペイント)
体から様々な効果を持つ絵の具を生み出せる、また生み出した色と同じ色のものに付着するとそれを自由自在に操れる。

明るい未来を、と言う意味で付けられた名前。しかし名付け親に全てを奪われた15歳

好きな食べ物 菓子パン、おにぎり。


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災厄の黒

いやはや、ヒロアカに関しては結構にわかなので既存キャラのセリフ、雰囲気がイマイチ理解出来てません。そこだけはご了承と言うか、勘弁してくださいよろしくお願いします


―両親を殺したあの日から1年が経過した。私はあの家に帰らずそのままヒーロー狩りを開始、ヒーロー飽和社会であるこの国日本のヒーローの3()()()1()をこの世から消した。

当然、ヒーロー頼りの社会は大荒れし、私という敵の存在が浮き彫りになる。被害にあったヒーローの死体が真っ黒に染まっている事から“黒き災厄”という通り名まで頂いた。気分は最悪だ。私はヒーロー(ヴィラン)を倒す勇者だというのに。

ただ、そんな勇者にもこの一年で変化が起きた。“黒”以外の色が出せなくなったのだ。私にも理由がわからないが別に困りはしない。

 

そしていつも殺る時には黒で体全体を覆い尽くす為顔がばれていない。故に今いるコンビニのような場所にも顔を出せるのだ。

コンビニに置かれている雑誌を一つ取る。その表紙には『“黒き災厄”の被害相続き、これからの社会の行方は!?』と大題的に私のことが取り上げられている。これに関しては私は必要な事だと思い静観している。こうやって取り上げる事によってヒーローになろうとする輩を減らす事が出来るからだ。

 

私によりヒーロー飽和社会からヒーロー過疎社会への道が刻一刻と迫っている。いいことだ。1年もヒーローを狩ったかいがあるもんだ。

 

「怖いよね~、“黒き災厄”」

「本当、わたし毎日怖くて眠れないもん」

「ウソッ!?大丈夫!!?」

 

...一般人には少し恐怖を与えているようだが。

 

「あ、あの...」

 

申し訳なさそうな男性の声が私の横から聞こえてきたので、雑誌を本棚に戻しそちらの方に視線を向ける。そこには気弱そうで深緑の髪の男がいた。

 

「も、もしかして...色村さん?」

「......」

 

緑谷出久、私の元クラスメイト。確かヒーローになるという夢を持つ男。無個性だというのに馬鹿な男

 

「もしかして、違いました!?あわわわ、すいません!!」

「...いや、私だよ。久しいな緑谷くん」

 

まさかこんな所でかつてのクラスメイトと遭遇するとは、世界もせまいものだよ。

 

「緑谷くん、君はちゃんと高校に入れたか?ヒーローになるって言ってたんだからもちろん雄英に入れたんだよな?」

 

最も忌み嫌う高校の名を自ら口に出す。しかたない。彼は勘がいいからこうやらないと感づかれてしまう。

私は、案外自制の効く方なんだなと思った。

 

「ああ、僕雄英に入れたんだよ!オ...個性が突然発現して、何とか入れたんだ。」

「...へぇ、凄いじゃないか。」

 

はぁ...いつか狩らなきゃいけないのか。

 

「...色村さん、聞きづらいんだけど......あの後どうやって過ごしてきたの?」

「ああ、ある人に拾われてね、それから普通の高校に通わせてもらってる。」

「そうなんだ!良かったぁ...」

 

全くの嘘だ。私はそんなに信頼できる人を持ち合わせていないし、欲しいと思っても作れない筈だ。

 

「...じゃあな、緑谷くん。これから行く所があるんだよ。」

「そうなんだ...じゃあメールアドレスだけ教えてくれないかな?あ、僕からはかけないからさ。」

 

携帯か、持ってはいるが、彼に教えたくはない。もし私の正体が彼にばれたらと思うとゾッとする

なので丁重に断っておいた。緑谷は残念そうにして最後に「またどこかで」とだけ言ってコンビニを後にした。何も買わない辺り端に私を見つけたから来ただけなのかも知れない。

 

「......さて、」

 

これから行く所があるというのは本当。世間に名が知れすぎた私には当然、裏社会の者から仕事が入ってくる。私自身の目標達成と生活を支える為にそういった仕事は積極的に受けている。おかげで今は貧乏な暮らしをしていない。適当なアパートの個室で暮らせる程度には。

さて余談が過ぎてしまった。今日の仕事は最近流行りの“敵連合”からの呼び出しだ。内容は本拠地にて話すらしい。事前に住所は渡されているので道には迷わないだろう。さて、のんびりと行くとしよう

 

 

 

 

              ★○△

 

 

 

 

夜の街は好きだ。町を照らす淡い光が私の汚れた心を照らしてくれているみたいで。

...だが、そんな美しい夜の街を鮮血で染め上げたいとも思う。

 

やはり、私の心はあの日から壊れたんだな、と思わされる。

 

「...お迎えに上がりました。」

 

黒いもやのかかった男が私の前に姿を現す

 

「ああ、予定の時間より早いな。今からそちらに伺おうかと思ったのに。」

「いえいえ、相手はかの“災厄”様ですからね。私共が出来る最大のおもてなしをしろと言われましてね。」

「そうか。ならもう行こう、せっかくおもてなしして頂けるというのだから乗っておこうじゃないか」

 

「...かしこまりました、では参りましょうか。」

 

黒いもやが面積を広げ、やがて私を包み込んだ。おそらくワープ系の個性。敵には回したくないな。

もやに入って数秒で先程いた場所とは全く違う場所に到着した。見た感じカフェ店内のような感じで、重い空気がこびりついている。

そして、何人か人がいる。女子高校生、全身タイツ、オカマ、爬虫類、手だらけの男とずいぶん個性的な面子だ。

 

「...黒霧、コイツが“災厄”か?」

「ええ、間違いありません」

 

手だらけの男にもやのかかった男が一礼する。おそらくこいつがボスだ。

 

「へー!思ったより可愛いな!!ブスじゃねェか!」

「...私もムキムキの豪傑かと思ってましたが、私と同じくらいの女の子でびっくりしました!」

「...俺はステインの意思を継ぐ者...」

「全然関係ないわよスピナーちゃん」

 

それぞれがそれぞれの反応をする。私のイメージだと敵連合はただのチンピラ集団でまとまりがないものとばかり思っていたがそうでもないらしい。

印象はさておき、今は仕事の時間だ

 

「さて、本題に移ろう。今回は私にどんな仕事を?ギャラは高いぞ?」

 

私のその問いに対し手だらけが答える。

 

「...近々雄英高校にて“雄英夏の林間合宿”がある。俺達は選りすぐりのメンバーをそろえた“敵連合開闢夜行隊”で奇襲し、とある生徒を拉致し、ブラックリストに載せた雄英生を殺す。あんたを雇った理由はその作戦を確実に成功させる為に開闢隊に入ってもらう為だ。報酬はそれなりの額を出す。これでどうだ。」

「いいだろう」

 

即答、周りの空気が一瞬強張った

 

「...?どうしてそんなに驚いているんだ?」

「いや、そんなに簡単に引き受けてくれるとは思いませんでしたから」

「いや、一石二鳥なんだよ。私にとって。」

「...一石二鳥?」

 

「私の最終目的はこの世界からヒーローという職業をなくす事。そのためにはオールマイトの討伐、ヒーロー科名門校の殲滅、残党ヒーローの駆除の三つが最低条件だからね。かの雄英高校の経歴に泥を塗れると考えたら気持ちが良い。あと卵共も綺麗さっぱり掃除するのも快楽でしかない。逆に金なんか要らないくらいだ。わざわざそんな機会をくれるだなんて感謝の言葉しか出てこないよ。さて、どんな殺し方をしてあげようか...全員の首だけ斬って大きな木に飾り付けしてやろうか、四肢をもぎ取って体だけの状態にしてナイフをつきつけて殺されるという恐怖を味あわせながら殺すのも良いな...フフッ」

 

私の語りには敵連合のメンバーでさえも顔を青ざめさせる。その時点でどれだけ平和ボケした連中なのかがよくわかる。

突然奥の方にあったモニターが砂嵐を起こしだした

 

 

『......やはり、僕と同等の評価を得ているだけはあって狂った考え方をしているね。色村未来。』

 

「.........何故、私の名前を知っている。」

 

「...先生、あんたの力は必要ない。」

 

『ああ、ごめんよ弔。』

 

敵の先生となりうる存在、考えれるのはただ一人。

 

「..オールフォーワンか。まさかこんなチンピラ集団に加担しているのか?落ちたものだな」

「...消すぞ?」

 

弔と呼ばれた手だらけの男が怒りをあらわにする。だがそれに萎縮するわけでもなく淡々と話し続ける

 

「まあ、あなたが関わっている時点で事の重大さを物語っている。あなたはそれほどまでに憎いのか?この世界が?」

『君にも同じ事が言える。トップヒーローだった両親を殺し、それから名のあるヒーローを次々と狩って行った君にもね。』

 

「...そうだな。私も憎いよ、この世界が。だから一度壊す、そして次の世界こそ誰の悲しむ事のない理想郷にする。そういえば敵連合の目的は聞いていなかった。弔くんと言ったかな、教えてくれないか。私も加わる前に知っておきたい。」

 

そう聞くと弔は心底嫌そうに

 

「......世界を混沌に陥れる」

 

...そうか、私とは少し違うがその道までの過程は同じ、なら()()()までは協力してやろう。

 

「わかった。力を貸そう、改めてよろしく。敵連合。さあ、黒霧といった男の方、私を元の場所へ帰してくれ。」

「おや、あなたの個性は使わないのですか?」

「ああ、私の個性は今制限がかかっててな。幼少期ほどの汎用性は無いんだよ、何故制限がかかったのかは今でもわからないが。」

 

「...死柄木弔、よろしいので?」

 

「......さっさと送れ」

 

「了解」

 

すると先程のように黒霧のもやが私を包み込む

 

「夜襲の時間になったら私の元に黒霧を送ってくれ、どうせ住所はバレているだろ?」

 

「...チッ」

 

完全に霧に覆われる前に見れたのは手の上からでもわかる弔の嫌そうな顔だった

 

 

 

 

 

 

 

 




彼女にも当然裏表があります。出久に見せたような母性?あふれる感じが表ですが完全に素ではありません、演じているだけ。
色を封印した理由としては単純にチート過ぎかなと。肌色なんて生成したらどの人間も操られてしみますからね。もちろん緑も使えなくなっています。


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絶望の黒

この話でA組、B組の何人かは死にます。


二日後、とりあえず渡された資料を丸暗記した私の元に黒霧が現れた。と言うよりかは迎えに来た。

何か持っていくものはないのですかと聞かれたので100円ショップで買った安いマスクだけだと答えた。顔バレはしたくない。いや、全員殺すのだから意味は無いか。

そうして黒霧の中に入る、このもやもやしたワープ方法には慣れないな。

 

「さあ、着きましたよ。」

 

黒霧から出てみると目先にはアマゾン級の森があった。この国にもこんな秘境があったのかとつい感心してしまう。

 

「...おでましか、災厄の。」

「......フフ、そうだな。私も気持ちを切り替えねばならない。こんなに美しい森を愚者どもの血で染め上げるのだから」

 

私は顔にマスクを着け、“個性”で全身を染め上げる

 

「ああ、待って、マスク着けるんだったらこっち着けて。」

 

メンバーの一人のマスタードと言う敵からガスマスクを渡された

 

「何故?」

「僕の個性が“ガス”だからさ。吸っちゃうと大変だからね」

「わかった、ありがとう。」

 

 

「虚に塗れた英雄たちが、地に堕ちる」

 

さて、駆除の開始だヒーロー(ヴィラン)

 

 

        ★★★★★★

 

 

黒という色は夜戦で非常に活躍できる。黒が夜の暗さと同調し、保護色的な役割を果たす。私的には保護色は嫌いだが戦場ではそんな甘ったるい事を言ってられない。

森の中を抜き足で駆け回り、気配を探す。卵は完全に浮かれてる筈だから気配を察知しやすい。

 

すると近くで叫び声が聞こえた。私は茂みに隠れ、そちらの様子を伺うとそこには茂みから顔を出す骨みたいな男と女子が二人いた

 

「あー…びっくりした……梅雨ちゃん大丈夫なの?」

「ケロ、私はそういうの平気よ。」

 

肝試し

 

雄英に入ってまですることか?違う。雄英はヒーロー名門校だ、そんな場所でこんな甘ったるい事をやっているのか?

無性に腹が立つ。私が目的の為に死ぬ気で殺っていた間、コイツ等はこんなお遊びが出来る余裕を持って生活していたのか?

―許せない

 

私は湧き出る怒りを何とか抑えつつ、抜き足で骨男に近寄る、熟練のヒーローならこの時点で違和感を感じて身構えるが、そこは卵。身構えもせずヘラヘラ笑っている

これほど殺りやすい仕事は無い

 

至近距離まで近づいた後、両腕で骨男の顔を抱きしめる

 

死ぬんだ、最期くらいはいい思いして終わりたいだろう?

 

黒死(ブラック・アウト)

 

骨男の顔から黒を広げていく。最初は抵抗するように動いていた体も一度ビクンと大きな痙攣を起こした後、動かなくなった

 

「骨抜!?」

 

真っ黒に染まりピクリと動かなくなった彼を見て隣にいたクラスメイトが叫ぶ

見えていなかった、もう一人いた。これはマズイな。

どんな個性かわからない以上、速度で勝負するしかないと判断した私は咄嗟に彼女の首に触れようと()()

 

「うぅ...」

 

触った(殺った)と思ったら、私の手は長い舌に触れていたのだ

 

「梅雨ちゃん!?」

「ケロ...拳藤さん、お茶子ちゃん、触れては駄目よ...」

 

この咄嗟の行動に対応できる卵がいたとは...素直に賞賛する

だが、それだけ。舌を伸ばせる個性と、触れたものを死に追い込む個性では優劣の差があり過ぎるのだ

 

「死ね」

 

触っている舌を握り締め、絵の具の生産量を倍にする、それだけで長い舌は真っ黒に染まり、徐々に彼女の肌へと浸透していった

色が侵食するにつれ、彼女の動きが鈍くなる。惜しかった。ヒーローさえ目指さなければこんな事にならなかったのに。

 

やがて彼女の全身は黒で包まれた。つまり死んだ

 

顔を青ざめさせて何も言わない女子二人に対して、告げる

 

「彼女等はもう二度と動かないよ、黒に染まったからにはどうあがいてもね。...ヒーローになると言う事は()()()()()()。いつ死んでもおかしくないのさ。」

 

告げられた言葉を彼女等は理解した途端、膝からガクリと崩れ落ちた。そう、私はこの絶望に染まりきった顔を見るのが好きなんだ。ああ、この表情を永久保存したい......ナイフを持ってくればよかった...。

 

「...さない」

 

茶髪の女子の方が何かを発した

 

「許さない!!」

 

彼女は地面に手を付けた後両手を合わせる、するとそこらに転がっていた石やら岩やらが浮かび上がる。なるほど、物を浮かせる個性か。なら話は早い。

物を浮かすと言う事は浮かせる間に多少の隙が出来ると言う事だ。触れば勝ちの即死系の私の個性ならその隙に触った時点で終わらせられる

...だが、それでは面白くもなんとも無い。だから少し遊ぼうか

 

個性を解除する。身に纏っていた黒は全て滴り落ち、私の服、髪本来の色が現れる。

 

「つぶて流星群!!」

 

浮かび上がった数多の石、岩が無差別に降り注ぐ。まるで豪雨だ。

だが、落ちてくるのは岩。何をどうやってもかわすことの出来ない雨とは違う。

 

「フッ!!ハッ!!!おりゃァ!!!」

 

落ちてくる岩を全て掌低で破壊する。砕け散る大岩が傘の役割を果たし、小粒の石から身を守ってくれるのだ

 

「嘘...いなされてる......」

 

「...君等は敵と戦ったことがあるのか?」

「...私たちB組は無いけど...A組はある。」

 

「もし私と戦っている連中にA組がいるとするならば、今まで何をしてきたんだと言いたい。」

 

ピクリと茶髪の女子が反応する、この反応からしてA組だな。

 

「たった今、クラスメイトを二人も私に殺されて!!それでもただ見ることしか出来ず!!!後から怒りの感情に身を任せ個性を乱雑に扱っているお前にだよ!!!」

 

手を合わせ個性を発動している女子目掛けて大振りのパンチを顔に打ち込む、すると女子は緊張の糸が解けたようにその場に倒れこみ、ピクピクと痙攣を起こし始めた。

 

まさかこれだけで死んだのか、と思いながら倒れた女子に近づき脈を図る。脈は正常だったので気絶しているらしい。

 

「.........あらら、堕ちちゃった。これでは何も聞けないな。」

 

期待はずれにもほどがあるが、たかが高校生だ。生ぬるい世界を生きてきた同年代はこんなものなのだろう。

 

「で、最後に残った君はどう処理してやろ...ん?」

 

いない。どこにもいない。逃げたか?いやヒーローの卵がそんな事をするはずが無い。

まあいいさ、生きる時間が延びただけ。何をしようと無駄。せいぜいあがけ。

 

......やる事がなくなったのでとりあえず気絶させた女子の体を弄る。何か鋭利なものを持ってはいないかと期待したが。何も持っていなかった。

仲間の誰かに貰うか?いや、スピナーのやつはでかすぎるから使えないし、マスタードは銃......あ、ヒミコなら持っているかもしれない。そうだ、あいつなら持ってるな!!

 

「...せっかく見つけたと思ったのにもう終わってましたか、つまんない。」

 

―何と言うタイミング、どうやら私は神に愛されているのかもしれない

 

「ヒミコ、私にナイフを一本くれないか?」

「どうしてです?」

 

「見ろ、この生きのいい少女を。」

 

ヒミコを誘導し、先程気絶させた茶髪女子を見せる。資料によるとヒミコは血まみれでボロボロの子が好みらしい。血まみれではないがボロボロだ。お気に召すのではないだろうか

 

「うわぁ/////美味しそう....ちうちうしたい...えへへへ......」

「そうか、なら今から首を切り落とすから一本ナイフをくれ。そしたらちうちう出来るぞ」

「いや、顔は欲しいのです」

 

懐にある六本のナイフのうち一つを取り出し、茶髪女子の額に切れ込みを入れる。

 

「血で真っ赤の顔を見ながらちうちうするのが最高なのです。」

 

うん、言ってる事がサイコパス。いや私もか。

 

「じゃあ好きなだけちうちうしていいから、し終わったら私に預けてくれ。ちうちうしている間だけは守ってやろう。」

「本当ですか!えへへへへ.../////」

 

 

フフフフ...ヒーロー共の絶望しきった顔を拝むのが楽しみだ




梅雨ちゃんを殺すかは正直迷いました。原作でも結構重要な立ち位置にいるキャラクターですが、ここですっぱり切る事にしました。

追加で押絵(雑手描き)でも載せておきましょう


【挿絵表示】


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分散する黒

 

本当、トゥワイスの個性って便利だな。私を()()()()()()()()()()()()

本物は誰かって言われたらそりゃあ私だろ?まあこんな事考えてる時点でね。

分身に通信機を持たせたんだ。だから常に情報を交換し合っていると言う訳さ。まあ、つい先程分身のから雄英生徒二人を殺し、一人をトガヒミコと共に虐めているという報告があった。

まあ、仕事をしてくれていて助かる。トゥワイスは本当の仲間にしたいレベルで有能だな。

 

本物の私は分身荼毘と共に行動し、現在宿舎前。肝試しをしているとの報告があったから恐らく中にいるのはプロヒーローぐらいだろう。私達の目的はそいつらの足止め。まあ、殺してもいいよな。

 

「...聞いておきたい。」

 

突然、分身荼毘が聞いてくる

 

「何だ。」

「アンタ、この仕事が終わったらどうするつもりだ。」

「そりゃあまた別の仕事を請けるだけさ。私は私の目的の為に動くだけ。」

「そうか。だがいつか命を狙われるぞ。」

「何故?」

 

分身荼毘は手に青い炎を宿す

 

「裏の社会にもお前の事を快く思わないものがいるからさ」

 

「...へぇ、君もその一人かい?」

 

右手を黒く染め上げ、告げる

 

「...いや、むしろありがてぇ存在だ。ステインの意思に心酔する者としてはな。それより、見ろ。」

 

荼毘が私の後ろを指差す。向いてみれば首にマフラーっぽいのを巻いた男が立っていた。風格からしてプロだ。しかも一番戦いたくない奴。

 

「―イレイザー、ヘッドか...確か見られたらやばいんだったな。」

「何人だ、お前等。既に二人以上は情報が回ってきている」

 

個性発動...出来るな。やるなら今だ。

 

「荼毘、私の前に立て」

「了解」

 

手を大の字に広げ、私の前に仁王立ちする。これでイレイザーの視界から外れることが出来た

 

「“黒津波(ブラック・ウェーブ)”」

 

最大出力の絵の具で擬似的な津波を作り出す。その高さは宿舎の二倍はあると言えばこの技の凄さがわかってもらえるかも知れない

 

「無念のまま死ね...イレイザーヘッド!!!」

 

黒の絵の具の大津波が宿舎ごとイレイザーヘッドを襲う、浴びれば死のこの技を避けた者は

 

「そんなもんで死んだらヒーローは務まらん。」

 

「何ッ...くああ!!!」

 

いつの間にか私の後ろにいたイレイザーヘッドにマフラーで体を巻かれ、その場に拘束させられてしまう。個性で何とかしようとしたが発動できなかった。もがいてもマフラーが硬くてどうにもならない

イレイザーヘッド...久々に強者と巡り会えたかもしれない

 

「―吐け、お前らは何人いる。目的は何だ。」

「お前だよ」

 

瞬間、荼毘の蒼炎がイレイザーを焼き飛ばす。だが、マフラーは焼けていなかった。合金製なのか?コレ。

 

「荼毘、よくやった。引き続き燃やしてくれ。そうすれば()()()()()

「...言ったな、頼むぞ。」

 

イレイザーヘッドの個性は“抹消”視た者の個性を一時的に消せる個性、個性ありきのこの世界では珍しい個性。だが、この個性は多対一には向いていない。視た者の個性を一時的に消せるとはいえ複数の個性を消す事は出来ない筈だ。しかも私達の個性は両方とも発動型で視界を遮断できる個性。ただでさえ厄介な個性持ちを二人も相手にするのだ。

 

個性発動を確認...発動可能。

 

荼毘の蒼炎に気をとられているうちに個性を発動、黒を縛られている体全体から発生させ私を縛るマフラーに付着させる。そして私自身にもいつもの倍以上の量の黒を纏わせる。もし視られた時、私の姿を認識できないようにする保険である

多量に発生させた黒は瞬く間にマフラーを染め上げ、イレイザーヘッドに伸びている方へ侵食を始める

 

この黒がイレイザーヘッドに到達したその時、勝ちが確定する

 

「無様だよなぁ、雄英は。オールマイトが教師となり、ヒーロー社会で絶対的な信頼を得たというのにこうも問題を起こしてよ」

「......」

「俺たちがここに来て、すでに生徒を()()()()()()()()()()()()。閉校以上の罰を受けるんじゃないか?」

 

「何だと!!?」

 

「全く、最高峰がこのザマでこれからのヒーロー社会は大丈夫なのか。オールマイトはどうした、ステインが認めたヒーローが何故いない!?」

 

「お前に言う必要があるか。」

 

マフラーで荼毘を拘束、見事に縛り上げられた荼毘は地面に押し倒された。

 

「吐け、殺したとはどういうことだ。」

「心配か、イレイザーヘッド。生徒が」

 

荼毘がはぐらかすと同時にイレイザーが荼毘の左腕を折る

 

「次は右腕だ、足までかかると護送が面倒だ。合理的に行こう。」

「焦ってんのか、おい?」

 

...あと少しだ

 

「俺等が()()()()()時点で意味がある。“黒き災厄”のおかげで戦果も得れたしな。」

「何...!!?」

 

―もう少し

 

「ははっ...そうだ、()()()が見たかった...」

「......マズい!!」

 

「冥土の土産に教えてやる。お前が拘束した()()()がそうだ」

 

―終わりだ

黒がマフラーを通しイレイザーの服に付着した。私の絵の具は同じ色だと効力も上がるということをこの一年間で学んだ。黒服を着ているイレイザーが終わる(死ぬ)のは時間の問題だ

 

「ぐおお!!」

 

イレイザーは荼毘を押さえてた手を離し、荼毘の上に倒れこみ、もがき始める。荼毘人形も道連れになってしまったが本物じゃないし大丈夫だろう。

 

「...チッ!」

「戦闘はいかに不利を押し付けるかで決まる。イレイザー。この編成はお前がいると判断したからだ。それにマフラー(こんな物)

 

やっと効力が利いてきた。マフラーが簾ていくのがわかる。無事に拘束が外れたので私はむくっとその場に立ち上がる

...だが、イレイザーの様子が()()()()()()。普通の輩なら悶え苦しんで死ぬと言うのに、こいつは静かだ

 

だが、原因はすぐに判明した

 

「...さすが、私を視たことで黒の効果を一時的に無くしたか。すまん荼毘。お前の死が無駄になるかもしれん」

 

本当に死んだと思わせる為にそれっぽく言っておく。

 

「マジ?...まぁいいや。」

 

「これでもプロなんでね。」

 

「だが、抹消の効果が切れれば再び地獄の苦しみを味...うぉ!!!」

 

イレイザーが殴りかかって来たので反射でかわした

 

「レディに殴りかかるとは...それでもヒーローかい?」

「危険だ、お前をこれ以上野放しには出来ない」

 

「はは...私からしても君は危険だ、それに」

 

言いかけてイレイザーの頭に回し蹴りをお見舞いしてやる。もろに受けてしまったイレイザーはそのまま後ろに吹き飛んでいった

 

「近接戦闘もお手の物なんでね...覚悟しな。」

「ぐっ...ハァ...色々吐いて貰うぞ。」

 

私に吐かせられる余裕は見れないが...プロヒーローだ。本気で行こうか。

 

 

 

 




未来の個性の天敵はイレイザー含め思いつく限り四人いますね。


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躊躇の黒

大分期間が開きました。すみません。けどあと2、3話で林間合宿は終わらせようと考えています


若干腐敗した合金布を構えたイレイザーと私は見合っている中、私はこの戦闘を無傷で終わらせる一つの解が浮かび上がっていた

そもそもの話、私はイレイザーと戦う必要なんて無い。対象を“視る”ことで個性を消せる相手なら、()()()()()すればいい。

あんな事を言って置いて逃げるのかと言われそうだが、どうせ死ねば関係なくなる。合理的だよ。

 

「...隠密ヒーロー“クノ一”は知ってるかい、イレイザーヘッド。」

「.........」

 

完全に戦闘態勢に入った彼は何も答えない。だが私は喋り続ける

 

「彼女の個性は“保護色”、身の回りの景色に同化出来る個性。」

 

私は捕縛布を構えるイレイザーに話す

 

「ただ周りの景色と同化出来る()()の彼女が、何故国内有数のトップヒーローの座にたどり着けたのだろう。」

 

後から聞くと言わんばかりに少し腐敗した捕縛布を私に向かって放ってきた。

驚くほど正確に私の腕を捕らえようとした、が私の方が速かった。

 

「うぐっ、おおお...!!!」

 

後ろに回った私は彼の頭を両腕で捕らえ、動けないように固定する。逃げるつもりだったがやはり私の英雄としてのプライドが許さなかった

 

“色村流忍道(しのびみち)・抜き足”

 

「答えは彼女自身の誰かを守りたいと言う強い思いから生まれたこの技だよ。“抜き足”は本来、音を立てず移動する歩行術、彼女はそれをアレンジして“気配を消した高速の移動術”に変えてしまった」

 

「..何故...お前がそれを...」

 

わかりきった質問をしてきたので素直に答えてやる事にした

 

「私が彼女の実の子供だからだ。その技を引き継いでも不思議じゃない。そして」

 

拘束した箇所から顔を覆いつくすほどの絵の具を放出する

 

「私は“最高傑作”。親の戦闘スタイルは全て扱えるまで鍛えられた。」

 

絵の具はイレイザーの顔をあっという間に覆いつくした。本人の生命力が高いのか覆われて数秒はもがいていたが、たちまち動かなくなり私にかかる体重も大きくなった。

 

「...どうやら私の見込み違いだったようだね、イレイザーヘッド。」

 

もう数えていないほど殺してきたプロヒーローの名前にイレイザーヘッドが刻まれた瞬間だった。

さて、私の分身に連絡するか...

 

 

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

 

「おいおい、やられちまったぞ荼毘!勝ったぞ!」

「...今回はお前()の言うことは正しいな。」

 

木の影でこっそり見ていたが俺の分身はあっという間に殺されてしまった。ただアイツは俺の分身を殺したイレイザーヘッドを圧倒的な個性で倒したし、見たこともねェ体術で対応して殺した。ゾクッとしたね。

...それはそれとして、だ。

 

「俺を増やせ、トゥワイス。」

「ああ!?雑魚を増やした所で意味ねェだろ!任せろ!!!」

 

気持ち悪い液体から再び俺が生まれる。何度見ても気持ち悪い。

 

「...宿舎の裏に逃げ出した生徒がいる筈だ。燃やしてこい」

「......ああ」

 

今回生まれた俺は素直なタイプだった。さっき“黒き災厄”と共闘してた俺は結構捻くれた奴だったからな。

分身がとことこ歩いていくのを見送った俺はそいつと反対側の道に向かって歩き出した。

 

「おい!どこ行くんだよ!!」

「俺たちは俺たちで殺すんだよ、特にこのビラに載った奴をさがすぞ。」

 

「おいおい、私も混ぜろよ!」

 

その声の主に肩に手をポンッと置かれた。振り向かなくてもわかる。

 

「...お疲れ、“黒き災厄”」

 

「それはこっちのセリフだよ荼毘。君がいたからイレイザーを楽に倒せたんだ。」

「そりゃどーも」

「おいおい!俺も忘れるなよ!忘れろ!!」

「はは、そうだなトゥワイス。お前の手柄だよ。...で、そのビラを見せてくれよ。」

 

無言で紙切れを渡す。それを快く受け取った災厄は中身を見て少し驚いていた

 

「...何かあったか。」

「いや、私の元クラスメイトがいるんだよ。しかも小中で三人。」

 

「Ohhhhh!!そいつはやり辛いな、殺しちまえ!!」

 

「...この子等は君たちに敵連合に任せるよ。その他は消してあげるから。」

 

いくら“黒き災厄”でも元クラスメイトを殺すのは心にくるらしい。ヒーローを腐るほど殺しても心の芯にはまだ淡い光を持ち続けているようだ。

...俺はそんな物、とっくの昔に消えたな。

 

「...じゃあ、やっぱり私は単独で行動するよ、じゃあね君たち。」

「えー、一緒に行動しようぜ?さっさと消えろッ!!!」

 

「...じゃあな、来いトゥワイス。」

 

俺はトゥワイスを引っ張って林の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

 

想定内と言えば想定内だ、彼等がヒーロー科に入っていた事は。

緑谷くんは悲しむだろうな。以前会った時は未だに私を尊敬のまなざしで見ていたからなあ。

爆豪とはそもそも話したことがない。だから彼を殺すのには戸惑いなど無い

 

...()とは、会いたくない。()()()を思い出してしまう。

 

 

「......殺り辛いなぁ。」

 

 

 

これほど殺す事を躊躇する日は、今日が最初で最後だろうと私は思った。



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黒の友達

何かめっちゃハショッた感凄いですが許して欲しいです。



「もういいのです、十分楽しんだのです。」

 

ヒミコの為に周囲を警戒して早三十分、ようやく彼女は女生徒の体を堪能し終えた。

楽しまれた後の女生徒の体が気になったので見てみると、真っ赤だった。服を脱がされ、色んな所が露になった彼女のからだの彼方此方に注射器で刺したような刺し痕やナイフで切られた痕が幾つもあった。

私が最後に見た時にはまだ赤みがあったが、血の気が引けたように肌は真っ青。見るに耐えないような無残な姿だったが、顔だけは最初の傷以外の傷はなく、他の部位と比べると綺麗に残されていた。

 

「...いいね、サイコーだ。」

 

最早芸術品と呼べるまでに鮮やかで美しいそれに私は思わず感嘆の声を漏らした。ああ、カメラを持っていればこの美しい姿を永久保存できたというのに。

 

―だが、美しいものはすぐに散る運命。この美しさが灰になっていくのなら、美しいうちに壊してしまうのがいい。

 

「...ナイフを。」

 

そう言うとヒミコは腰に携えていたナイフを私に手渡す。首を切るにはちょうどいい大きさだ。

 

私は何の躊躇もなく、女生徒の首にナイフで切れ込みを入れた―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情けない。自分が。

 

A組の子が殺されて、自分も殺されると思ったから逃げて来た自分が情けない。

 

ぼやける視界、よろよろになった足が私の心境を物語っていた。

 

罪悪感が、私の足を引き摺るんだ。何で逃げた、何で見捨てた、お前はそれでもヒーローか、と語り掛けてくる。

 

一つ一つの声が、鋭利な刃物の一撃のように私の心に深く刺さってくる。もう私は、語る資格が無いんだ。ヒーローと。

 

「おっ、人質用に良さそうなのいるじゃん。()()()()()。」

 

その言葉を最後に私の体は言うことを聞かなくなった。

四肢が動かない、視界もぼんやりしていてよくわからない。

 

「...おっ、あのカラス君もいいし、何より目当ての爆豪君までいるじゃあないか。さて、“未来”ちゃんに連絡するか。」

 

 

―ああ、また私は、皆に迷惑を掛けてしまう...

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

獣道を歩いていた私はコンプレスの報告を受け、指定の場所に向かう事にした。

分身にも連絡してみた所、そのすぐ近くにいるから合流しようとのことだ。

 

ただ、生徒の一人をバラバラにしたという事だけは聞きたくなかったが。

 

 

「うるっせえなぁ!!!糞デク!!!」

 

 

聞き覚えのある声がしたのでそこの草むらに身を潜めた。この声は爆豪だ、昔はよく緑谷くんをいじめていたな。彼にもいよいよその罰が下る時だ。

 

―まあ、ヒーローの卵なんだし当然か。

 

胸元にしまっている通信機の電源を入れる。

 

「今爆豪たちの真後ろにいるぞ、コンプレスは今どこにいる」

《おう、丁度対極側にいるぜ。》

「そう、なら今から分身と私で彼等を牽制する、お前は隙を見計らって爆豪を捕らえろ。気になる奴がいたら貰っていけ」

《オーケー、じゃあな。》

 

そこでコンプレスとの通信は切れた。

 

「...と言う事だ、私。」

《ああ、私にはちょうど()()()()がある。今から行くか?もちろんヒミコは隠れててもらうがな。》

「ああ。やるぞ。私だからやろうとしてる事、わかるな?」

《ああ。任せとけ。》

 

ここで全員との通信が途絶えた。行動開始の合図だ。

 

まず“個性”で親指に微量の絵の具を生成する。おおよそ大さじ一杯くらいの量だ。

これをデコピンの要領でカラス頭の生徒の隣にいる黒い奴に飛ばす。動体視力はいい方なんでね。当てるのは造作も無い事。

 

「うっ...う、ウガアア!!」

黒影(ダークシャドウ)!?どうした!?」

 

―へぇ、黒影(ダークシャドウ)君か。いいねぇ。操りやすそうだ

 

「グオ゛あ゛ア゛ア゛ア゛アアアア!!!!」

「くそ...黒影(ダークシャドウ)が」

 

みるみる巨大化していき、化け物サイズに成長させる。そして緑谷君を担いでいる生徒を緑谷君ごと鷲掴みにし、余った片腕で紅白イケメンを弾き飛ばす。

 

そうして、分身が彼等の前に姿を現した―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすが原点(オリジン)、簡単に雄英生を拘束した。まあ、私でもそうしたが。

ターゲットの爆豪だけ自由にしてあるが、こいつに関しては私に対処しろと言う事だろう

 

私は草むらからスタスタと爆豪の元まで歩き、仁王立ちする

 

「...何だよテメェ。」

 

相変わらず生意気で舐めた態度をとる糞野郎だ。お前には一度絶望を味わってもらわなければ。

その意味も込めて、手土産として爆豪に向かって例のブツを放り投げる。キャッチした彼はそれを見て驚愕の言葉を漏らす

 

 

「...ん、だよ、これ...」

「......ヒーローになろうとした者の末路だ。首から下は探せ。まあ...」

 

爆豪がビー玉サイズの球体になる。

 

「探す時間なんて、無いんだけどな!」

 

空気を読まないコンプレスさんのご登場、か。まあいいや。任務を遂行できればそれでいいんだから。

 

「さてさて、品定めの時間だな。」

 

コンプレスが黒影(ダークシャドウ)の手の中の二人をみて品定めをする。......が、その目に適う人材はいなかったらしく、懐からビー玉を一つ取り出した。そしてそれを、彼等に向かって投げつけた。

 

「緑谷!!」

 

黒影(ダークシャドウ)の手の中で彼を背負っているマスク君が緑谷君をその多い手でどこか遠くに放り投げた。どうやら彼のことだけは助けるつもりのようだ。

 

「障子くん!!!」

「...俺はいい、行け!俺の分まで救ってやってくれ!」

 

「はは、泣かせるじゃんかよ、解除。」

 

コンプレスが右手を鳴らし、解除。

その中から私の個性である“黒”が大量に含まれていた

 

避ける事のできない彼にまるでシャワーを浴びるかのように付着。みるみる黒が彼の体を侵食して行き、しだいに全身を覆いつくした。

さようなら、名も知らぬ雄英生。最後の行動には感動したよ。今までの生徒の中で一番ヒーローだったよ。

 

「...終わったか、私。」

 

陰で黒影(ダークシャドウ)を操作していた原点(オリジン)が出てきた。

 

「ああ、まあ、この首はあんまり使えなかったが...ほら、お前にやるよ。」

 

黒影(ダークシャドウ)の本体、その黒い顔からでもわかるレベルで青ざめ、目尻に大粒の涙を溜め、完全に恐怖の表情の男の目の前に、顔がちゃんとカラス頭に向き合うように置いてやる。

 

「う、麗花......嘘だ...ああ、俺は、俺はぁ!!」

「泣くなら、俺達のアジトで泣け。」

 

横からコンプレスが個性で彼を圧縮する。

 

「「見込み有りだったのか?」」

「ははは、揃って同じ事言うんかい。」

 

「確かに、今のは強そうだった(小並感)」

「俺もあんなカッコいい個性がよかったなァ!!いらねェよ!んな気色悪い個性!!」

 

今の出来事をすべて見ていた体で話しながら荼毘とトゥワイスが草むらから出てきた。

 

「...あれ、他の奴等はどうした?」

「ああ、俺等と後マグ姉、スピナー以外は全員やられてるな。」

「私は負けてないのです。」

 

あ、ヒミコのこと忘れてた。

 

「ああ、だがヒミコは何もしてないよな。」

「いやいや、見てくださいよこの血の量を!あの子の変身なら一生出来そうな位採ったのです!!」

「いやいやそれは私の戦績だろ!?」

「わーたーしーでーすぅ!」

「あはは、まあ許してやれよ、私。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒミコと分身が揉み合いを始めたので静止しようと向かった時の事だ

 

 

「...さて、皆様、帰還しますよ。目的は果たしたのでね」

 

黒霧だ。彼が出てきたということはどうやら死柄木弔が“よし”と判断したという事だ。

黒い霧に包まれる直前、私の分身が「ちょっと待った。」と静止を掛けた。

 

「私の任務は終わったんだ。だからトゥワイス、私を壊してくれ。」

 

確かに分身は役目を終えた。だから彼女は終わろうとしているのだ。人としての生を。いや、私としての生をかな。

「本当にいいのか?」と聞くと、「ああ、私はヒーローの卵を駆除できた時点で満足だ」と返された。

その返答を聞いたトゥワイスが彼女に触れようとした時

 

「嫌です。」

 

ヒミコが声を上げた。

 

「...初めての友達なのです。」

「本物の私に構って貰えばいいじゃないか、大して変わらないぞ?あいつと私は。」

 

その一言でヒミコは目尻に涙を溜め、ギュッと分身に抱きついた。

 

「嫌です..嫌です!」

 

分身があわあわし出し、助けを求めるように私を見た。だが、助けるような真似はしない。

 

「女の子を泣かせるなんて最低な事、私がするわけないよな?」

「うっ...」

 

まあ、分身がいればもう敵連合に呼ばれる事が無くなり、私の自由時間(ヒーロー殺しの時間)が増える。

その為にも彼女にはいて貰わないといけない。メリットしかない。

 

私の言葉が存外に刺さった様子の彼女はハァッと大きい溜め息をついた後、ヒミコの頭に手を置いた。

 

「わかったわかった。私は消えないから。だから泣かないで、これからも一緒にいよう。」

 

小さい子供をあやすように優しい声色で彼女の頭をなでる。その行為で何かが決壊した彼女は分身の腕の中で声をあげて泣き出したのだ。

ヒミコは多分、私のように親からも、誰からも愛情を、心の篭った言葉を受けなかったのだろう。だからかな。年甲斐もなく声をあげて泣いているのは。

 

「...見せ付けてくれるじゃねェか。“黒き災厄”とは思えないな。」

「私がやったわけじゃない。分身がやったんだ。私の場合は相手がヒーローと名乗るなら女でも殺すつもりだよ。実際殺してるしね。何百人単位で。」

 

トゥワイスが生み出す別人格の私とは違う。ヒミコのように凍った()()()奴とも違う。私の心は―

 

「...もう、壊れたんだよ。」

「あ?なんか言ったか?」

 

もう何も言うつもりの無い私は黒霧に早くワープするように急かす。彼は「そうですね」と言って個性を発動し始めた。

私より先にワープゲートに飲まれていく分身とヒミコを見て、今日は後で絶対何人かヒーローを殺すと決意した。



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狂気の黒

ボロボロになった体に当たる風を感じながら僕は叫ぶ

 

「くそっ...くそォオオオオオオおお!!!!」

 

守れなかった!!轟くんを!常闇くんを!!障子くんを!!!かっちゃんを!!!!

何にも守れなかった!!!!為す術なく飛ばされて!!障子くんと常闇くんを残してしまって!!!麗花さんも殺されて!!!!

―大事なことが、なにも出来てないじゃないか...!!!!

 

「僕がもっと強ければ...マスキュラーに苦戦して無ければ...!!!」

 

こんな事にはならなかったのに!!

 

「ぐぶぅ!!」

 

後悔、怒りに追い遣られている内に顔から地面に衝突。

敵との戦いのダメージが蓄積していた僕は簡単に気を失った...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日が経過。契機の今日まではずっと敵連合のアジトに居た為、世間の情報が全然入ってこない。テレビとかはあったにはあったが、見なかった。それより面白い事をやっていたからだ。

 

今、私達の目の前には三つの椅子に拘束された雄英生三名がいる。爆豪、カラス頭、後一人雄英生がいる。爆豪は死柄木によって何度もスカウトの話を持ちかけられているが、他の二人は放置、食事こそ食べさせているが死んだように生気を失っている。

 

死柄木は中々爆豪が話を聞かない事にイラついたのか、他の二人に目を向け、こう言い放った。

 

「おいコンプレス、余計なのも持ってくるな。食費が増えるだろ。」

「いやいや、この女の子は知らないけどそこのカラス君は中々強い個性を持っている。だから連れてきたのさ。」

 

「確かに、自らの影を操っていた。私が個性で暴走させた時、膨大なエネルギーを発していた。」

 

「「...操った?」」

 

私の言葉に爆豪とカラス頭が反応した。

 

「君達に私の個性を知る権利は無いんだ。あまり口を開くなヒーローの卵の分際で。」

 

ギロリと彼等を睨み付ける。カラス頭は青ざめたが、爆豪は()()反応をした。

 

「テメェ...まさか、色村..か?」

 

...あ~あ、ばれちゃった。何でかな、声かな?見た目かな?口調は変えてるつもりなのにな。

 

「死柄木、コイツは殺していいか?」

「んだとテメェ!!!」

 

「待て待て“黒き災厄”、爆豪君には交渉をするためにわざわざ掻っ攫ってきたんだ。」

 

「“黒き災厄”...まさか、色村のことか!?」

「お前は黙れ爆豪、死柄木、こいつは絶対に敵にはならない。」

 

「は?何でお前がそんな事わかるんだ。」

 

私は知っている、コイツは中学の時からずっとずっとずっとヒーローになるとほざいていた事。そしてヒーローらしからぬ行為も行っていた事を。

 

「...コイツは私の元クラスメイトでな、その時からずっとヒーローになるんだとか、オールマイト以上稼ぐとかそんな事を言っていた。そして()()()()をちょくちょく行っていた事も。そして昔、とあるクラスメイトにこう言ったんだ、俺はオールマイトの勝つ姿に憧れたと。そこはもう曲げないと。そんな固い決意を抱いた男が敵になると思うか?」

 

死柄木は考える素振りを見せる。

...そして、私の言い分に答えた。

 

「お前等の努力が無駄になる。とりあえず拘束は解除して話だけはする、それで交渉決裂した時お前の手で殺せ。」

 

「...分身。二人がかりで見るぞ、爆豪は危険人物だからな。」

「はいはいわかってるわかってる、ヒミコ、ちょっと離れるからな。」

 

私も分身も個性を展開。ジーパンに色を滲ませて、そこから黒を発生させて塒状に体に巻き付かせた。この個性の恐ろしさを知るカラス頭は「うわぁぁああああああああ!!!!」と叫びだした。五月蝿いな。

 

塒色・噛付(とぐろしき・かみつき)

 

私の体に巻きつく黒が蛇の顔の形に変わり、カラス頭に噛み付いた。“黒”と言う名の猛毒を持つ蛇の頭から徐々に徐々に彼を黒く染め上げていった。あまりの痛みに彼は口から泡を吹き出し気絶。顔は染め上げない程度に“黒”を入れ込み、蛇の頭を爆豪に向けて言い放つ。

 

「選択を間違えれば()()()()()()()()が待っている。よく考えろよ爆豪。」

 

「......クソッ...」

 

荼毘が爆豪に近づいて拘束を解いた。恐怖映像を見せた後だというのに彼は何の気負いも感じさせないような立ち上がり方をした。

 

「...と、言う事だ爆豪君、君に関しては調べがついているんだよ。」

 

死柄木はそう言って一枚の写真を彼に見せた。彼は目を大きく開ける。全員に見えるように見せたので私も見たが、少し驚いた。

そこに移っていたのは、緑谷くんのヒーローノートを爆破して、投げ捨てる爆豪の姿が移っていた。

 

「君はあれだろ、その強い個性で生まれてきたから周りに持て囃されて育ってきたんだろ?だから力を持たない者を見下す癖が付いたんだ。」

「うるせぇぶっ殺すぞ!!」

 

そこで私は蛇の頭に爆豪を甘噛みさせた。

 

「ぐぁああああああああああ!!!んぐぅぅうう!!!」

 

爆豪が噛まれた右腕を押さえようとするがなんと歯を食いしばりその激痛に抗って見せた。

コイツの前では一度も見せた事が無いのに本能で触れてはいけないと察したか。やはり才能あるなコイツ。

 

「...おい。」

 

死柄木に睨まれる。

 

「ああ、ただ一言でも俺はヒーローになるのをやめて敵になりますって言えば抜いてやるから。」

「ク..ソがぁ...!!!」

 

屈辱だろうなぁコイツは。なりたいモノを諦めなければ殺されるという状況下で、しかも今まで下だと思っていた私に殺される事になるなんて。

かつて威張り散らしていた姿を思い出せば非常に滑稽だ。

 

「...ならいい、続けるぞ。君は()()()こちら側の人間だ。君はこのヒーロー社会が窮屈だと思った事があるだろう?」

「......」

「そこで何も言えないならあるって事だ、一緒に壊そうこの世界を。ヒーロー志望の爆豪勝己君?」

 

「.........寝言は、寝て死ねェ!!!」

 

瞬間、死柄木の顔が爆豪によって爆破された。顔につけていた手が吹き飛ばされるほどの威力だ。

 

塒色(とぐろし)「待て」...」

 

「俺達の戦いは“問い”なんだ...ヒーローとは、正義とは何か、この社会が正しいのか今一度国民一人ひとりに考えてもらう。」

「俺達は...事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに拒絶されてきたんだ...君ならそれを―」

 

「うるっせぇんだよ!!さっきからゴチャゴチャゴチャゴチャ!」

 

再び爆豪が死柄木に飛び掛った事に分身がいち早く反応、彼の両腕を手で拘束し馬乗りになって地面に押し付けた。

爆豪は分身を物凄い形相で睨み付けるが分身はなんら怯む事無く睨み返した。

 

「...言った筈だぞ、()()()()()。選択を間違えるなと。」

「フッざけんじゃねぇぞ!!!()()()ァ!!!」

 

拘束された手が大爆発を引き起こした。部屋中が爆煙に飲まれ、視界が遮られる。

 

「分しうぐっ!!!」

 

「...立場逆転って感じか、なぁ色村ァ!!?」

 

やがて煙が晴れると、私の上に爆豪が馬乗りして眼前に爆破する腕を突き付けていた。

 

「......死柄木、交渉は決裂でいいのか?」

 

私をギラリと睨み付ける爆豪は無視して、問う

 

「...その様子じゃあな、自由にしろ。」

 

よし、なら殺すかな。

 

「テメェ...今までどこで何をしてたッ!!?」

「答える義理があるか?」

 

そう返すと爆豪は左手を天井に向けて爆破した

 

「テメェの立場わかってんのか!?なぁ!!?」

「そっくりそのまま返そう。」

 

口内に黒を生み出してプッとつばを吐き、右腕に付着させた。

 

「ッ!!!ぐああ...!!!」

 

只でさえ痛いであろう右腕にさらに絵の具を付着させたんだ。もっと叫んでもいいんだが。

 

「テメェェッ!!!!」

 

天井に向けた左腕を私の顔に向けて勢いよく飛ばしてくるが、黒く染まった右腕で左腕の前腕を掴ませて静止させる。右腕全体を黒く染めていた黒が掴んでいる前腕から広がり始める。

 

「ガァああああああああああ!!!!」

「私に対して優位に立てるわけがないだろ馬鹿が。」

 

地面に転がり込んで苦しみ出したので拘束は解けた。さて、後は嬲り殺すだけだ

 

「お前は最初から死柄木のいう事を聞いておけばこんな事にはならなかった。」

「テ..メェ...いったいどんな..個性だよ...」

 

......冥土の土産に教えてやってもいいな。どうせ死柄木はAFOに聞いてるだろ。まあ念の為に確認するが。

 

「私の個性はAFOから聞いてるか?死柄木」

「...とんでもチート個性だってな。」

 

ならいいや、教えちまえ

 

「個性“色”、体から様々な効果を持つ絵の具を生成、操る事ができる。全ての色に共通するのは、生み出した絵の具と同じ色のものに付着させた場合、それを自分の意思で操れるようになる。たとえそれが生きててもだ...爆豪、何か違和感を感じているんじゃないか?自分の手に。」

 

「......個性が...使()()()()。」

 

「そう、黒の効果は“死”、あらゆる物を死に追い込める。個性も同様、ただ発動系の場合は発動箇所を染めなければならないし、異形に関しては全身を染め上げなければならない。カラス頭君みたいな影とかそういう実体が曖昧なものに関しては消す事は出来ないが...まあ、お前の場合は手だけだからな。ちなみに今私が黒を抜き取ってもお前に“爆発”が返って来ることは無いんだよ。」

 

私の説明に爆豪だけじゃなく連合の奴等も声を上げて驚く。

 

「他の色は今は使えないからね、どんな効果だったか忘れたな...あ、ならこれがお前にとって気絶する事よりも酷い拷問だな!」

 

悶えている彼に近づき、両腕から“黒”を抜き取った。彼は急いで個性発動確認をするが......発動しなかった

 

「...嘘..だろ...?」

 

彼は自分の手を何度も何度も地面に付けたり壁に叩き付けたり私の方に向けて来たりするが、何の変化も無い。

 

「何でだよ...俺の、俺の個性だぞ!!!何で...」

 

がくりと、その場に力なく項垂れた爆豪の肩に手を置き、言ってやった

 

「これが、お前が散々馬鹿にしてきた“無個性”だ...」

 

顔から生気をどんどん失っていく爆豪。それをみた私は今どんな顔をしてるだろうか。

―笑ってるんだろうなぁ...狂ったように、無邪気に、嬉しそうに!

 

「...あは、あはは、アッハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

無様だ!あんなに粋がっていた爆豪が、“無個性”だ!!恵まれた個性で全てを下に見下していたコイツが、無個性!!!

 

「お前は、これから!今まで散々見下してきた没個性“以下”の存在、無個性の爆豪勝己くんとして生きていくんだよ!」

 

あぁ~、堪らない!コレだよコレ!クックックック...

 

「...黒霧、適当な場所に送ってやってくれ、この“無個性”くんを!」

「あなたが“黒き災厄”と呼ばれる所以を改めて理解できた気がしますよ...」

 

項垂れてピクリとも動かなくなった爆豪を、黒霧は個性で飲み込んだ。

 

「...俺は、敵連合は、とんでもない奴と手を組んだのか...」

 

死柄木から中々の高評価を頂いた。いや~気持ちよかった!最高だよ、ああいうプライドの塊を地獄のどん底に叩き落とすのは。

 

「...やりすぎじゃないか、原点。」

「は?何だ分身、お前ならわかる筈だろ?ヒーローと名乗るもの全てに死を与え、新たな世界を築く為の過程さ。」

「......私は...そこまではしたくはない。殺してやる方が良かったと思うんだ。」

 

私の顔に青筋が走る。

―何だコイツ、分身の癖に粋がるな。

 

そう思った時には分身の首を締め上げていた。爆豪の爆発で大分カタが来ていた様だ、ドロドロに溶けていっている。

 

「ああっ!!ああ...嫌、嫌ぁああああああ!!!」

 

ヒミコが絶叫、そのまま事切れたかのように倒れこみ気絶した。普段の私なら多少は罪悪感が出ているだろうが、今は一切の情も無い。

―分身は死にたがっていたじゃないか。ならこうやって死なせてやるのが分身に対する礼儀というものだろ?

 

「...わかったんだ、私が、色を取り戻す方法が...」

 

分身が放ったその言葉に私はありえないと返す。実際どれだけ色を生み出しても出てきたのは黒ばかり、何度も何度も試して出来なかった事が分身に出来るとなったら溜まった物じゃない。

―だが、次の瞬間、私は目を見張る事になる。

 

「...“白”..だと...!!」

 

そう、分身のドロドロに溶け出していた体から“白”が生み出されていた。やがて白は彼女の体を覆い付くし、全長二メートルくらいの球体となったのだ。

やがて球体は、どんどん人型の形に戻っていき、色を取り戻した無傷の状態の姿の分身が私の目の前に立っていた。

 

「......どういうことだ、分身。」

「私は理解したよ、多分、いや恐らく()()()を原点が取り戻せる事はないよ。」

 

「.........」

 

生意気な口を叩くコイツにイライラして、おもわず蹴り飛ばした。思いっきり壁にめり込んだそれは再び白い球体と化す。

 

「敵連合、あれはお前等にやる。私とは気が合わないみたいだ。」

「......お前、」

「わかってる、今回の報酬は無しでいい。壁を壊したから私の報酬に当てる予定だった金で直しといてくれ。じゃあな、私は帰るよ。送ってもらわなくて結構だ。帰り道でちょっと気持ちを整理してくるから。」

 

私はこのカフェの出口に手を掛ける。

 

「ヒミコには謝っといてくれ、悪かったって。」

 

そう置き台詞を残してドアを開けたのとピザーラ神野と言う所の宅配が来たのは全く同じタイミングだった。




夏休み終わって欲しくねェ...


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漆黒(ダークネス)

新キャラ、新技登場します。一応新キャラ含め今現在この物語に登場しているオリキャラ全員のプロフィールを後書きに記載しました。


ボロボロのドアに手を掛け、扉を開ける。開けた先には忍者のような格好のヒーロー、世間体ではエッジショットと呼ばれるトップヒーローが立っていた。

そして部屋奥、死柄木達がいる所から轟音が発生した。どうやら彼等ヒーロー達は何らかの方法で敵連合の居場所を特定したようだ。

...そして私は運がいい。こいつは...

 

「...未来ちゃん、なのか...?」

「そうです、お久しぶりですね伸也さん。」

 

こいつは私の母の()()。母の華麗な戦闘法に見惚れて以来よく私の家に来て母に稽古を付けて貰っていたからよく知ってる。時々私も一緒に稽古を付けて貰っていたから。

 

「何故君がこんな所に!?と言うか今までどこにいたんだ!!」

「ああ、親切な方に拾われまして...それで今まで何不自由無く住まわせて頂いたんですよ。後、何故こんな所にいるのかと言うとですね...」

 

咄嗟の嘘を言ってやろうと思ったが、コイツは以前の私を知っている存在だ。しかも身近にいたから簡単な嘘は直にばれてしまう。

ならばどうするのが正解か。

 

...簡単だ、永遠に黙らせればいい。

 

「...ちょっと、こっちに来ていただけませんか?やっぱりその...私個人の問題なのであまり他人に知られたくなくて...」

 

そう言って彼の手をとって奥に入ろうとしたが、彼はそのまま動かない。

それどころか私が握った手を引っ張り出して引き寄せたのだ。

 

(ち、近...)

 

もはや唇が当たるか当たらないかの距離まで引き寄せられて、少し緊張してしまう。いつもは逆の立ち位置なのだが...私も女なんだなと思わされる。

 

「君は何かを隠している。そうだね。しかもとても重要そうな事を。」

 

...萎えた。もっとロマンチックな事言えよ。ここまでして聞く事かそれ。まあ隠し事しかないですけど。

 

「...隠してると言えば、どうしますか。」

 

「総員!構えろ!!」

 

彼の後ろにいた武装隊が私と彼を囲んで銃を構える。そしてその隊の奥から刑事のような男が歩いてきた

 

「...詳しく話してもらえるかい。」

「それは武装隊を使ってまですることですか。しかも私は“かもしれない”としか言ってないですからね」

「そうだ。君はこの時間、この場所敵連合の本拠地の建物から出てきたと言うだけでも十分敵連合に関与している可能性がある。所まで同行願うよ。」

 

...ムカつく奴だな。こういう奴が社会の上位に位置するから穢れたんだ。この社会は。

 

「だがとりあえず個性確認をさせてもらうよ。暴坂(あばさか)、出てこい。」

 

刑事がそう言うと後ろの方から警官が一人出てきた。冴えない顔をしている新米って感じだ。

 

「...はい......来ましたけど。」

「一応説明しておくよ、彼の個性“露呈”で君の個性、出生、その他もろもろを一気にここで解明させてもらうからね。」

 

不味い!!それは!!!今まで隠し通してきた事柄全てがこの冴えない奴の手によって明かされてしまうのか!?

 

―やらせるか

 

黒津波(ブラック・ウェーブ)!!」

 

私を中心に巨大な黒い津波が生み出され周りを襲う。この技は私の技の中でも最低コストかつ多くの敵を殺せるので重宝している。

 

瞬く間に津波が周りを黒く染め上げた...()()()()()()

 

「フゥ...」

 

その場所は炎のドームに覆われており、やがてその炎が解かれる。その中には大勢の武装隊とヒーローが構えていて、この炎を作り出したであろう男が一歩前へ出た。

 

「...蒸発させたのか...さすがはNO.2。」

「これぐらい造作もない。」

 

...分が悪いな。エンデヴァーにエッジショット、よく見れば相性最悪なシロクモまでいる...

 

「...お前等は、どんな正義を掲げてる。」

 

時間を稼ごうと言葉を投げかけたが、無視。エンデヴァーに至ってはそのまま個性の勢いで突進してきた。

両腕に黒を纏い、それを受け止める。()()()()()()黒の効果で衝撃等は全く感じず、ただキャッチボールのボールを受け止めたくらいの感覚だ。

 

「ヒーローなら私の、“黒き災厄”の個性ぐらい十分理解している筈だ。」

「......ああ、だが今さっきのでその個性の弱点は理解した。」

 

そう言うと同時に彼の体は私を覆いつくさんと燃え上がった。私も危機を察知し、全身を黒く染め上げる。

...が、徐々に周りの熱気により私の黒が蒸発を始めた。触れたもの全てを殺す黒であろうと殺しきるにはその対象と同じ体積かそれ以上の体積量の黒を生成しなければならない。熱気なんて不特定なものを殺すなんて事実上不可能。

 

「...やるじゃないか、私の個性の短所にさっきの技で気づくなんて」

「仕留める、“プロミネンスバーン”ッッ!!!」

 

エンデヴァーが大の字になり、超至近距離でその高温度の業炎を私に放射する。

 

最も彼の体に近かった私の右手はあっという間に灰と化し、命の危険を察知した私は、()()()()()ことにした。

 

「―“漆黒(ダークネス)”」

 

黒しか出せないなら、黒を極めればいい。その考えにたどり着いたのは一年前。そしてこの状態を初めて使ったのは母を、両親を殺したあの日。

自らの精神力を削る代わりに何者にも負けない...

 

 

―至高ノ...イロヲミセテやル

 

 

体の奥底から全ての臓器、血液、細胞の色を統一させる。爪先、結膜、口内どころか下の先までもが細胞レベルで黒く染まりあがる。それだけなら精神力を削るほどでもないが、そこまでして得た力は...ほら、目に見える。

 

「なっ!!」

 

炎が、現象が黒く染まり、()()()()()()()()エンデヴァーに襲い掛かる、炎のすぐに対象全体に広がり燃え上がるという性質に黒の効果が交われば、染め上げるよりも早く死を与える殺人兵器と化す。しかも支配力はさらに強力なものと化し、どんな色のものでも一度染めれば自由自在に操れる。

 

プロミネンスバーンは私に触れている部分から徐々に黒炎と化し、その支配を広げていき、やがて発現元であるエンデヴァーに近づいて行った。

 

「―オわリダ。」

「...くっ。」

 

あと一歩という所でエンデヴァーは炎を解除し、後ずさりした。が、黒炎は消えず、私の周りを舞う。

 

「...キサまラハ、わタシヲ“アク”とキメつケるが、ソモそモ“セイギ”のテイギトハナんダ」

 

エンデヴァーを含む目の前に立つ者たちを睨み付け、言う。

 

「“雷雲(サンダークラウド)”ッ!!」

「“灼熱熱拳ヘルスパイダー”ァ!!」

 

威圧を掛けたつもりだったが二名のヒーローが個性を発動して一歩前に出る。ヘルスパイダー、雲両方とも黒炎で打ち消してやる。

そして雷雲を使ってきた“モクモクヒーロー・シロクモ”が私を睨み返す。

 

「...お前達のような世間を、平和を脅かす敵から、皆の!子供達の笑顔を守る!!それが俺の“正義”であって、生涯掲げるスローガンのような物だ!!」

「オールマイトを超える。ただそれだけだ。」

 

「....イイナ、ダガ、オマエラガカカゲルニはオオキスギダ。」

 

左手の一指し指をクイッと上に上げる。黒津波(ブラック・ウェーブ)で辺りに飛び散った黒が、絵の具の槍を無数に生み出した。

 

「“千本の槍・黒死槍(ブラック・サウザント)”」

 

それらが二人目掛けて飛び掛るが、シロクモは自らが生み出した雲で身を守り、エンデヴァーは先程と同じように蒸発させた。

 

「ワタシハ、イチドセカイヲオオキクツクリカエル。ダカラオマエラ二はソノタメノギセイ二ナってモラウ。」

「必ず捕らえる!皆の為に!!」

「お前こそ、オールマイトを超える為の糧となれ。」

 

戦いは、佳境へと―




暴坂恭一
年齢:24歳
身長:178cm
好物:ラーメン
何かハッキリとしない顔立ちで面倒くさがりの新米刑事。その個性の有用さから採用された。


個性:“露呈”
目を合わせたモノの出生、育ち、心境、身長等を瞬時に理解出来る。
ただし一度使用すると三時間のクールダウンが必要。






モクモクヒーローシロクモ:雲山響(くもやま ひびき)

年齢:26歳
元雄英生。身長:168cm、
白髪の天パ、
好物:わたあめ、うどん、オムライス
人一倍正義感が強く、大の子供好き。ただ自分の身長が平均身長を下回っていることに関して少し不満を持っている。


個性:雲
自分が雲に変化、また手のひらから生み出す事が可能。生み出した雲は普通の雲よりも外部から水分を吸収しやすく、その特性で絵の具に含まれる水分を吸収するという荒業で主人公の攻撃を防いだ。
また、雨雲や雷雲を生み出せるのでそれを攻撃に転用したり、一対一なら周りを生成した雲で辺りを覆い一時的な蜃気楼状態を作り出し、相手の視界を奪った中で戦うといった戦法で戦う。




色村未来:“黒き災厄”
身長:165cm
好物:菓子パン、おにぎり
トップヒーローの両親から生まれた子。その個性の強さに幼い頃から虐待じみた訓練を受け、精神崩壊。明るい未来を、と言う意味でつけられた名前は皮肉に変わってしまった。

個性:“(ペイント)

体から様々な色の絵の具を生み出し、自由自在に操る事が出来る。その絵の具は色によって様々な効果を発揮し、現在詳細が判明しているのは死の色“黒”のみ。“白”も作中で登場しているが、詳細は不明。そしてモノの本来の色と同じ色の絵の具でそのモノに付着させると、そのモノの意思関係なく自らが支配権を得、自由自在に操れる。尚、一度自らの絵の具で対象を染めたあと、もう一度絵の具を付着させる事でもそのモノの支配権を得る事は可能である。

漆黒(ダークネス)
使用者の精神を削る事で色に付与されている効果を極限まで引き出した状態。
全ての効果がワンランク上がり、死の効果は触れた面積を無視して対象を葬り、支配能力は一度放出した色はもう一度同じ色の絵の具を付けなくても操る事が出来る。モノに対する支配は通常時と同様、同じ色の絵の具をそのモノに付着させるか、一度染め上げた物にもう一度同じ色を付着させるかのどちらかの過程を達成しなければならない。



オリキャラはこれからも何名か登場する予定です。モブ枠も含まれます。










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