コードギアス転生って誰でもハードモードじゃね!? (女神)
しおりを挟む

第1話 アリエスの日常

皇歴2009年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

 

帝都ペンドラゴンに存在するペンドラゴン皇宮・アリエスの離宮の中庭では、二人の幼い男女が走り回っていた。正確には、6歳ぐらいのお転婆な妹を9歳ぐらいの心配性な兄が追いかけている状態である。そんな幼い兄弟を離宮の窓から見守っているのが二人の母である。そしてもう一人庭先の木の上で子猫よろしく丸まっているのが二人の兄妹の弟であり兄にあたる子供である。

 

そんな家族のひと時に執事が主人たる女性に来客を知らせる。

その来客は、白髪で屈強な体に純白のマントを纏い全身白の服装で現れる。彼こそこの帝国最強の名を冠する"ナイトオブワン"『ビスマルク・ヴァルトシュタイン』である。

 

「いらっしゃい。ビスマルク」

 

窓際で子供達を見ている女性、兄弟たちの母である『マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア』皇妃は、執事に案内されて部屋に入ってきたビスマルクに聖母のような笑みを浮かべて歓迎する。

 

「マリアンヌ様、失礼いたします」

 

ビスマルクがお辞儀をしながら挨拶をする。よく見ると顔の至る所に細かい傷が付いている。

 

「レレーナに用があるのね」

 

「マリアンヌ様には、すべてお見通しなのですね」

 

「当然よ。我が子のする事ぐらい把握済みよ」

 

ビスマルクが今日アリエスの離宮に来たのは、マリアンヌの次男でレレーナ・ヴィ・ブリタニアが皇宮内に設置した悪戯と言う名の殺戮装置の数々について本人に直接注意を行う為である。それらの罠は、どれも常人であれば死んでしまう様なものばかりであった。

 

それらの罠をビスマルクが他の皇族・貴族が掛かる前に自分で掛かり撤去して来たのである。そのお陰でビスマルクは、ボロボロになったので服を着替えてからアリエスの離宮へ来たのである。帝国最強のナイトオブワンすらボロボロになる程の罠が皇宮内に設置されていたのだ。

 

これはまずいと考えビスマルクが直接来たのだが、マリアンヌの慈愛に満ちた笑みを見るとその気も削がれるというものであった。まぁ罠を仕掛けた当の本人は、木の上でひなたぼっこに勤しんでいるので少しイラっと来ているのだが。

 

「あの子の悪戯を受けてその程度の傷で済んでいるのは、さすがナイトオブワンね」

 

「恐れ入ります。常人であれば死人となっている所でしょう」

 

ビスマルクは、思い出す。

足首の高さに張られた凧糸を切ると後頭部に向けて飛んでくるコンクリートの弾丸。

ドアノブに付けられた象を即死させる毒針。

廊下に落ちていた現皇帝の記念メダルを拾うとメダルの下から吹き出してくる毒ガス。

中庭に出るとナイトメアフレームのアサルトライフルによる精密射撃などの多種多様な殺戮装置の数々を。

 

やはり一度しっかりと注意すべきだと思う。

 

「ごめんなさいね。あの子も悪気はないの」

 

悪気が無いのに、あの様な殺戮装置を皇宮内に大量に設置するだろうか。

 

「日頃のストレス発散とストレスの原因を排除しようとしているだけなの」

 

"だけ"と言うよりも全てであろう。マリアンヌは、皇妃であるが出自は平民であった。それ故に他の皇族や大貴族からは、蛇蝎(だかつ)の如く嫌われていた。当然マリアンヌの子供たちであるレレーナや兄妹たちも嫌われており酷い虐めを受けていた。

そこでレレーナが思ったのが「死人に口無し」である。

ビスマルクはレレーナの性格を知っているので罠がレレーナの設置したものであると分かったが、別の者であれば犯人の特定は不可能であっただろう。それほど狡猾な罠であった。

 

「殿下方の現状は知っておりますが、殺してしまいますと後々煩わしい事になりますので」

 

「えぇ。私も煩わしいのは面倒だから、貴方が罠を撤去してくれて感謝しているわ」

 

「はっ!」

 

ビスマルクは、思う。体を張って罠を撤去してよかったと。

 

「レレーナには、私からしっかり言っておくわ。それで今回は、許して頂戴」

 

「御意」

 

ビスマルクは、礼をして辞して行く。

 

「さて、レレーナ!こっちいらっしゃい!」

 

マリアンヌが木の上でひなたぼっこをしている我が子を呼ぶ。

 

「むむ」

 

木の上で小さな塊がムクリと動く。

 

「"むむ"じゃないわよ。早くいらっしゃいレレーナ」

 

マリアンヌが急かすと、レレーナと呼ばれた小さな塊が木の上から降りてテクテクと歩いて来る。

 

「なんですか母上」

 

その子供は、ブロンドヘアの直毛でロイヤルパープルの瞳。女の子の様に線が細い体。100人が100人美人と答える容姿の子供である。

 

「レレーナ、悪戯をするのは構わないけどバレない様にしなさい」

 

ビスマルクが聞いたら「そう言う事ではありません!」と叫ぶであろう内容を我が子に言うマリアンヌ。

 

「ビスマルクにバレてしまいましたか」

 

レレーナは、腕を組み右手の人差し指と親指で自身の顎に添えて考えるポーズをとっている。

実際レレーナの悪戯をレレーナの仕業と見破るのは、難しい。目撃者も無く、指紋などの痕跡も一切残さない様に設置されているので普通は気付かれないだろう。ただビスマルクは、レレーナの癖を知っていたので悪戯がレレーナの仕業だと見破ったのである。

 

「レレーナ。ビスマルクは、貴方の悪戯の癖に気付いているから見破られるのよ。次からは、他人の癖を使って擦りつけなさい」

 

この様にレレーナの悪戯に対して、マリアンヌが助言をして助長してしまうのでレレーナが悪戯を辞めないのである。と言うよりも今までのレレーナの悪戯だとビスマルクが思っているモノの中には、マリアンヌが仕掛けたものも存在したがビスマルクは気付いていない。

母は、息子よりも上手であるのだ。

 

レレーナとマリアンヌが話していると其処に走って近づいてくる影が二つ。

 

「レレーナお兄様!また悪戯をされたのですか!?」

 

一人は、レレーナと同じ色の髪をした妹の"ナナリー・ヴィ・ブリタニア"である。

 

「レレーナ!また悪戯をして来たのか」

 

二人目は、レレーナと同じ様に直毛で黒髪である兄の"ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア"である。

 

「そうだよ。でもまだまだ母上には、敵わないよ。もっと精進して最高の悪戯をしてみせるよ」

 

「流石です!お兄様」

 

ナナリーは、お兄様フィルターによってレレーナの殺戮装置の悪戯すらも兄の素晴らしい芸術作品程度の認識になっているのである。

 

「いや辞めなさい。それからナナリー、レレーナの殺戮装置は流石に危険だよ」

 

一方ルルーシュの方は、弟の悪戯を正しく殺戮装置として認識しているので辞めさせる様に努力をしているが結果は思わしくない。と言うより母と妹が助長するので悪戯が過激化しているザマだ。

昔は顔面に墨が掛かったり、顔面に小石が飛んでくる程度であったのに、今では殺しにくるので流石に危険だとルルーシュは認識している。

実際の所ルルーシュもレレーナに毒されている。顔面に石が飛んで来るのも十分に危険である。

 

「レレーナ、悪戯も程々にしないとダメだぞ。ユフィに何かあるとコーネリア姉上が鬼の形相ですっ飛んで来るから」

 

「あぁ。ユフィ姉様は、悪戯避けれなさそうだもんね」

 

ルルーシュの意見を聞いてユフィが掛からない様な悪戯を作ろうと決めるレレーナ。

ルルーシュの受難は、これから始まるのである。

ビスマルクの受難は、これからも続くのである。

 

 




あとがき

次回
『僕。』
レレーナに転生しコードギアスの世界で生きていく。
そんな彼について


読んで頂きありがとうございます。
久しぶりに書いたものですが、宜しければ評価ならびに感想のほどよろしくお願いします。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 僕。

コードギアスってどの陣営に転生しても人生ハードモードですよね。


皇歴2009年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

 

こんにちは、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの次男 レレーナ・ヴィ・ブリタニアです。

ここは、ペンドラゴン皇宮の中にあるアリエスの離宮内の僕の自室です。

僕には、前世の記憶があります。自我が芽生えた時にはすでに前世の記憶というものを持っていて、当時は非常に混乱した挙げ句に高熱を出してしまいました。

その結果、僕は体の弱い子供だと周囲に思われている様で、皆非常に甘やかしてくれます。

それでも前世の記憶のおかげか増長する事はないですが。

結果、皇族として非常に珍しい慎ましい人だと使用人に思われていて、良い皇族になると期待されています。

 

この話し方は疲れるから、生前?の話し方に戻すね。

 

一方で母マリアンヌは別の方で期待している様で、僕にはギアスの適性が非常に高く備わっているらしく、母は実験が成功したと喜んでいた。

まぁ詰まる所、小説であった遺伝子操作を行なってギアスの発現率を高めていたんだろう。

遺伝子操作に関しては、前世でもデザイナーズベイビーと言われるものがあったので、どの世界でも考えるのは同じかと思わされた。

 

母は、僕のギアスの適性が高いことは喜んでいたが、体が弱いことを嘆いていた。だからこそ妹のナナリーを作ったのだ。親としてはまぁ酷い人だが、良い母を演じるその演技力は凄まじく、演技だとは感じさせない。

 

その母の血を受け継いでいる僕も演技力はそこそこで、一度たりとも前世の記憶を持っている事を悟られていないはずだ。

まぁ、前世の記憶などと言うものを持っていると思う奴なんて、初めから居ないんだろうけど。

 

そんな状態で兄ルルーシュと妹ナナリー、そして母マリアンヌと使用人の人たちで生活してきたが、ルルーシュ兄様本当にいい人!!

母もいい人だけど、あれは演技だから。

それに対して兄様は、本当に素でいい人。苺くれるし、勉強教えてくれるし、ナナリーが生まれてお転婆具合に手を焼いている中でも僕のこと気にかけてくれるし、優しいし、イケメンだし、カッコイイしで凄いんだよ!

…失礼。

 

僕は、初めルルーシュの弟転生とか幸運だと喜んだのです。

あのルルーシュの弟で、容姿端麗で皇族だよ!

「人生勝ち組じゃん!」と思ったんだけど、よく考えればこれってアリエスの悲劇の際にナナリーの役を僕がする事になるのではないかと思い直したときは、恐怖でどうにかなりそうだった。その後ナナリーが生まれて一安心したのだが、今度は妹のナナリーが撃たれるのだと思うと、これまたすごい複雑な気持ちになる訳ですよ。赤ん坊の頃から知っている妹が傷付くのは、想像するだけでも心苦しい。

 

今は夜で、側から見れば僕は部屋で静謐(せいひつ)なひと時を過ごしている様に見えるかもしれないが、実際は自身の心臓の鼓動が早くなって煩く感じるほどに緊張している。想像するだけでこれである。当日になればどうなるか想像もつかない。実際、ナナリーが居るからといってナナリーが撃たれるとは限らず、未来は未定である。

 

というか、この世界に転生するって結構ハードだよね。

 

ブリタニア…圧倒的実力主義と貴族主義、生まれがモノを言うけれど何処に生まれても過酷。

日本…戦争の後奴隷、生きられる気がしない。

ユーロブリタニア…将来展望なし。戦争最前線!

ユーロピア…衆愚政治、圧倒的不利な戦況。

中華連邦…安定の虫けら扱いの民衆。

オーストラリア…永世中立という名の空気。どういう国か分からない。

ジルクスタン王国…戦士国。

 

だからこそ僕は、自分が生き残るための生存戦略を立てる事にしました。

 

まず僕の目標。

 

1.ルルーシュとナナリーと3人で仲良く暮らす。ゼロレクイエム断固反対!!

 

やっぱり兄弟仲良く一緒に暮らせるのが良いよね!平和が一番だと僕は思うよ。

お先真っ暗だけど…気にしちゃ負けだ!

 

2.五体満足に生き残る。

 

今の現状では、難しいかも知れない。ナナリー…どうしよ。

 

3.出来れば原作の人達に会いたいなぁ

 

ミレイとかカレンとかC.C.とかレイラとかアキトとかオルフェウスとか美男美女に会いたいよね!

扇さん?知らない人ですね。

反省しててもダメです。

 

まぁ、こんな感じの目標を掲げてこれから先生きて行こうと思います。

目標遂行のためには、先ずは肉体作りと体力作り、そして知恵をつける事である。勉強は母や兄様に教えてもらいながら家庭教師と共に行い、体の方は母とビスマルクに教えてもらう事になっている。

ビスマルクとは悪戯の件で面識が出来た。僕のことを如何にかしようともがく様は、さしずめ父親の様である。

ちなみに、本人にそう言ったら「私とマリアンヌ様の子!?」と呟き暫く呆然した後に、「私が殿下を立派な皇帝へとしてみせます」と言っていた。

その発言は不味いだろうと思うが、おかげで色々と教えてもらえるので結果オーライと言う事で。

 

ビスマルクが母を慕っているのは原作知識で知っているが、まさかここまでとは…。

二人の関係は、存外長く。

皇帝である父と母の関係と同じぐらいの長さである。

 

父と母の関係が変わったのは、皇歴1997年5月6日起きた『血の紋章事件』の時である。

この時に母とビスマルクの関係も変わって行った。

当時皇帝に即位したシャルルに対して、叔父であるルイ大公が反乱を起こしたのである。その際にナイトオブラウンズがビスマルクとマリアンヌ以外全員が反乱側に加担した。これは、反乱の首魁(しゅかい)たるルイ大公の老獪なる策によるものであった。

 

ルイ大公は、貴族たちの自尊心や功名心を煽り、さらに利益で釣って反乱に加担させて行ったのである。本人もここまで裏切ってくれるとは思っておらず、驚いていたらしい。

 

お陰で皇室間の大規模闘争となったこの事件で、シャルルは反乱勢力を粉砕し、権力基盤を磐石のものとした。その事件の最中に、シャルルはマリアンヌにプロポーズしていた。凄い馴れ初めである。

 

結果、マリアンヌが皇妃となったのでラウンズはビスマルク一人となり、同僚であったマリアンヌはビスマルクにとって守るべき皇族となった。

 

よし、難しい事を考えたら眠たくなってきたし、ルル兄様とナナリーと一緒に寝るか。そうと決まれば早速ルル兄様の寝室へ行ってきます。

 

 

 

–––––––––––おかしい。

何故僕はここに居るのだろう。

ルル兄様たちと一緒に寝たはずなのに、どうして僕は何処ぞの研究所の様な場所で起きているのだろう。

まさかな…。

 

「おはよう。目が覚めた様だね」

 

僕は、何も聞いてない。見てない。

扉の方にブロンドヘアの白い服を着た子供が居るなんて見てないし話しかけられてない。

 

「あれ?挨拶出来ないの」

 

知らない。何も聞こえない、見てない。

 

「ころs「お早う御座います」うん。お早う」

 

この人、マジで怖いわ。勝手に拉致しておいて殺すとか。

いやまぁ、拉致してる様な人間が人殺すのは、普通か…。

この人、ギアス嚮団の嚮祖だもんね。

 

「僕のことは覚えてるかな」

 

V.V.が聞いてくるが、最後に会ったのは1歳の時の検査の時だから普通覚えてないよ!僕覚えてるけど!

しかし覚えてると可笑しいから、ここは知らないふりをしよう。

 

「うん?」

 

首をコテと傾けて知りませんアピール。唸れ僕の演技力!!

 

「まぁ、普通覚えてないよね、うん。じゃあ改めて。初めまして、僕の名前はV.V.」

 

V.V.伯父様、容姿と声は可愛いけど本当にやばい人だから会いたくなかった。

 

「突然ここに来てビックリしてるよね。大丈夫、怖い事は何もないよ」

 

そう言って優しく微笑んで来るV.V.。

いえ、あなたの存在そのものが恐怖でしかありません。

側から見れば天使の笑みも、真実を知っている僕にとっては悪魔の笑みにしか見えない。

 

「今日ここに来てもらったのは、君に用があったからなんだ」

 

あたかも僕が自発的にここに来たかのように言うのはやめてほしい。誘拐してんだから。

まぁ、そんな事言える訳もなく丁寧に対応する。

 

「用ですか?」

 

「うん。」

 

そうですか。

 

 

 

帰りたいなぁ。

 

 




あとがき

首魁…首謀者、張本人
老獪…色々な経験を積んでいる、悪賢い
静謐…静かで落ち着いている事
蒙昧…暗い事、転じて知識が不十分で道理にくらいこと

次回
『御引越し』

感想を書いて下さった方々、ありがとうございます。
これからも読んで頂ければ幸いです。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 御引越し

皇歴2009年 ギアス嚮団

 

目の前にいるのは、金色の長髪の合法ショタな伯父にして秘密結社『ギアス嚮団』の嚮主である"V.V."である。

一見可愛い容姿をしているけど、全てを知ってしまった者としては恐怖しか感じない。

どうしよう。

 

そもそも、僕がここに来る事は結構不味いんだよ。ギアスの事がバレたらどうなるか分からない。

なぜなら僕ってギアスが自然発生?したから、その事でギアスの研究材料にされる可能性が高いんだよなぁ。

自然発生の原因は、大凡見当がついてる。

原因は、僕がデザイナーズベイビー的存在であると同時に、ギアスユーザーの両親、そして子供時代にいったギアス嚮団の紋章付きの扉で見た骸骨さん。

特に骸骨さんは、怖かった。子供だから泣く事しか出来なかったけど、お陰で母マリアンヌからは、初めての場所に行って泣いている臆病な子と認識されてしまった。

どうせ僕は怖がりですよ。

 

そう言う事だから、V.V.と関わるのは嫌なんだよなぁ。何もなくても嫌だけど。

 

「僕に用とは、何ですか?」

 

「うん。レレーナ、僕に隠してることあるよね」

 

「…何のことでしょう?」

 

何!?隠してる事って。まさかギアスが使えることがバレた!?

 

「隠し通せると思ってるの?」

 

やっぱりギアスの事か!確かにコードユーザーであるV.V.には、何かギアスを感じる力があるのかもしれない。

どうしよう。殺される?人体実験?絶対無理!

どうする。

 

「君だよね、シャルルの天然ロールをストレートにしたのは」

 

「…」

 

そっちかぁ。確かにシャルルのロールをストレートにする悪戯をしたのは事実だけど。

それでお兄ちゃんが出てくるか。

 

「君だよね」

 

「…僕です」

 

「どうしてそんな事するの?」

 

えっ!何、説教されるの?

 

「シャルル泣いてたよ」

 

あのシャルルが泣いてたの。本当に?

ちょっと見てみたかったな。

 

「シャルルのアイデンティティー無くしたら可哀想でしょ」

 

確かにあれは、シャルルのアイデンティティーかも知れないけどあれいつも朝にセットしてるんじゃないの!?天然なの!?

 

「人が嫌がる事したダメだってママに教わらなかった?」

 

教わってないですね。

僕のママにそんな一般的な常識はございません。

と言うか、言ってる事は正しいのにすごく納得がいかない。

人体実験や人殺しをして何とも思わない人が言う事かそれ?

鏡見てから言えよ。

 

「何?言いたい事があるの?」

 

「何でもありません」

 

怖いよ。そんな目で見ないで、ちびりそう。

 

「もうしちゃ駄目だよ」

 

「はーい」

 

「…本当に分かってる?」

 

分かったよ、分かってるよ!

僕だって命が大事だよ!シャルルの髪型とか僕の命、比べるまでもないよ!

 

「勿論です!」

 

「まぁ、いいか。じゃぁ本題ね」

 

えっ!?本題、これが本題じゃないの?やっぱりギアスのこと気づいてる?

 

「大丈夫、怖い事はしないよ。今はね」

 

今は!?本当に勘弁してよ!やっぱV.V.鬼畜だわ!!

 

「なにを、するおつもりで?」

 

「少し検査をするだけだよ」

 

「検査?」

 

「うん。その検査が終わった後は、すぐ帰してあげる」

 

「…どんな返礼をいただけるので?」

 

「…君、怖がりの癖に案外図々しいんだね」

 

うるさい。タダ働きは、御免蒙る。

ちょっとぐらいお礼の品があってもいいだろ?

 

「…」

 

「…分かったよ。好きな物を用意してあげる」

 

「ありがとうございます!」

 

「その代わり、しっかりと検査させてもらうからね」

 

「身体に害がない範囲でお願いします」

 

流石にお礼の品を貰っても体がボロボロだったら意味が無いからね。"命大事に"をモットーに生きてますから。

 

「じゃぁ逝こうか」

 

なんか字が違う気がする!!!

やっぱこいつ僕のこと殺すつもりだろ!!!

 

 

 

____________________________________

 

 

あれから、体の隅々まで調べられた。もうお婿に行けない。

検査の後は、少し嚮団内のギアス被験者の子供達と時間を過ごした。

ロロとかオルフェウスとかエウリア、トト、クララなんかも居た。ロロとオルフェウス、エウリアとは少し話したけど、ロロさんもう少し心開いてよ。僕が一人喋ってるみたいで、側から見たら痛い奴だと思われちゃう。

オルフェウスの「可哀想な奴」と言わんばかりの目で見られた僕の羞恥を、少しは慮って欲しかった。

 

因みに、オルフェウスとエウリアと話している時のクララの形相と言ったら本当に怖かった。

僕が、君に何をした?なんで嫉妬と憎悪の瞳で僕を睨んでくるんだ!

 

怖かったからさっさと嚮団を後にしたよ。

 

ブリタニア本国に帰国した時は、"黄昏の間"を通って皇宮に帰った。

黄昏の間に入った際、父シャルルと母マリアンヌが待っていた。そしてマリアンヌに手を引かれてアリエスの離宮へ帰った。

因みにV.V.から貰ったお礼の品は、"いつか僕がほしいと思ったものをくれる"という権利。シャルルの前で約束の確認をしたから破らないと思う。

…破らないよな?

その後、シャルルはV.V.と何か話している様子だったが、内容までは聞こえなかった。

 

「レレーナ、検査の結果はどうだった?」

 

マリアンヌがさっきの検査について聞いてきた。多分後でシャルルから聞くだろうから、嘘を付く必要は無い。

まぁ、僕も詳しい結果内容は聞かされていないんだけど。

 

「特に体に異常は無いとのことでした」

 

「そう。それは、良かったわ」

 

「はい!母上」

 

マリアンヌよ、もう少し安心した顔とか嬉しそうにしなよ。普段演技うまいんだから、何もなかった残念とか思わないで欲しい。

V.V.相手に生きて帰ってきた事を褒めてほしいぐらいなのに、検査結果にがっかりされるなんて。

そんなことを思いながら帰っていたら離宮に着いたようだ

 

「おかえり!レレーナ!!」

 

僕が帰って来たことに気付いたルル兄様が駆け寄って来て出迎えてくれた。ナナリーは、今お勉強中だから後で挨拶しておこう。

 

「レレーナ、体は大丈夫だったか?」

 

「はい、ルル兄様。検査の結果、特に悪い所も無いとの事でしたので大丈夫です」

 

「そうか、良かった。でも無理しちゃダメだぞレレーナ。何かあれば僕を頼るんだぞ」

 

「はい」

 

見たか?皆の衆。ルル兄様のこの優しさ、尊さを。今のブリタニアにこの人以上の善人は存在しないと断言してもいい程優しい御仁である。

本当にかっこいい!!!

まじ"オールハイル・ルルーシュ"!だわ。地獄の果てまで付いて行きます!ルル兄様!!!

 

 

 

 

 

そんな事を言っていた時期がありました。

 

 

今現在、僕がいるのは何とまたまたギアス嚮団。

何でかって?

簡単だよ。母マリアンヌが暗殺されたからだよ。その際にナナリーは、目と足を不自由にした。そしてルル兄様とナナリーは、日本へ留学と言う名の人質として送られた。なのに何故僕が此処居るかと言うと、V.V.によってこちらに拉致されたのだ。

あの人ほんとに拉致が好きだよね。反人道的でクズ野郎じゃねーか。

全く、見た目子供だけど中身ジジイなんだから子どもばっか誘拐すんじゃ無いよあのロリコン・ショタコンが!!

 

 

失礼。

でもまぁ、生きてることに自分自身安堵してる。ナナリーは、原作通り目と足を不自由にしたけど命はある。僕も五体満足で生きてる。

僕は、日本にも送られていない。土蔵の中に押し込められてないし、戦争に巻き込まれない。

兄と妹がそんな目にあうと言うのに、巻き込まれない事に安堵してる自分は、本当に醜いなと思う。

 

ギアス嚮団はギアスの研究と暗殺者の育成を行なっている場所だ。いざという時は、僕のギアスを使って逃げればいい。

相手は、何処を攻撃して来るかわからない軍隊じゃ無い。

体感時間を止めるギアスと相手に命令を強制させるギアス、筋力増強ギアス、相手の体を遠隔操作するギアス、そしてギアスの効かない冷酷バケモノ…。

 

あれ、もしかして逃げられない?無理かな?

いやオルフェウス達が原作で逃げれたのだから行けるか?

あっ!でもあの時最終的にエウリアがプルートーンに殺されてるじゃん!!!無理無理無理。

生き残れる気がしない。どうすればいい。

 

温室離宮育ちの僕に石造りの小部屋に硬い布団という新居は、流石に身体に堪えるよ…。

 




あとがき
 
次回
 『嚮団』

感想・評価下さいました方々有難うございます。
今後とも頑張って参りますので、よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 嚮団

皇歴2011年 ギアス嚮団

 

僕が嚮団へ拉致されてから数年が経過した。

此処にきてからいろんな検査を受けV.V.とギアスの契約をするはめになった。けれど僕がギアスユーザーである事が、バレた様子はない。バレなかった理由は、わからない。

本当にバレてないかは分からないけど、何も言ってこないと言うことはそうなんだろう。

 

さてこの半年の僕の生活は––––––

6:00に起きて歯磨きと顔を洗う

6:30に朝食を食べる。

7:00から健康診断を受け

8:30から座学を受け

11:50から昼食取る

13:00から定期検査して

13:30から戦闘暗殺技能教習を受け

17:00から殺人実技訓練する

18:30から検査検診を受ける

19:00から夕食を取る

20:00からお風呂

20:30から自由時間

22:00に就寝

 

なんて健康的な刑務所生活…殺人訓練は、健康的では無いな。しかしまぁ、こんな生活を数年していると頭がおかしくなりそうだ。

ロロやクララ達がおかしくなったのも頷ける。寧ろオルフェウスやエウリアが正常を保てるのがおかしいと思える。

 

そんなオルフェウス君たちは、もうじき嚮団から脱出するみたい。まぁ僕は、付いて行かないけど。

付いて行った暁には、ハンガリーの田舎の村でオルフェウス達を追ってきた"プルートーン"によって殺されかねない。エウリアを助けてやりたいけれど僕のギアスは、"KMF"には効果無いんだよ。

 

「どうしたの、レナ。こんな所で体育座りして」

 

淡いピンク色の髪をした少女が僕の顔を覗き込んでくる。少女こそオルフェウスの恋人たるエウリアその人である。

 

「何かあったのか?レナ。お腹痛いのか?」

 

エウリアの隣で同じ様に僕の事を心配してくれる金髪に翠色の瞳を持つイケメン–––––––オルフェウスである。

 

「うんん。午後の悪戯を考えてるの」

 

まさか貴方達が脱走した後の事を考えてるなんて言えないし。この二人に誘われたら、例え地獄の片道切符だと分かっていても付いて行ってしまいそうだから知らないフリをします。

ナナリーの時もそうだけど本当に僕って意気地なしのクソヤローだと思う。

目の前の少女が殺されるかもしれないのにそれを言わず自己保身に走っているのだから。こんなに優しくて良い子のなのに・・・。

 

「…又悪戯か」

 

「…この前みたいな悪戯は、危ないよ」

 

知ってるぞその目。ルルーシュ兄様が、悪戯がバレてマリアンヌにアドバイスされてる僕を見る時の目だ。

それにしてもエウリア。昨日の悪戯のターゲットは、嚮団の研究員だよ。君に対して厭らしい目を向けてたロリコンだよ。「イエス・ロリータ・ノータッチ」と言うロリコンの鉄の掟を守れない屑だよ。君に注射する時に、痛がる君を見て興奮する変態だよ。

 

…本当に優しいなエウリアは。

 

「この前の悪戯は、流石に不味いだろ」

 

「そんな事ないよ。彼のコレクションをV.Vに見せただけだよ」

 

「正確には、女子達の肌色の写真集をギアスの実験データとしてだろう」

 

「しかも研究員からの報告書として嚮主様に見せる畜生ぶり」

 

「エウリアのデータは、全て削除しておいたよ」

 

「良くやった」

 

オルフェウスに頭撫でられたよ!やったよ!

昔は、良くルルーシュ兄様に頭を撫でて貰っていたけど『アリエスの悲劇』以降生存確認すら出来てない状況で、頭撫でられたのは久しぶりだよ。

やっぱり褒められるのは、嬉しいね。

 

「…私のデータもあったんだ」

 

「うん。スリーサイズからシャワー室の中の写真まで」

 

「あのクソヤロー。絶対殺す」

 

「もう死んでるでしょ」

 

そう。かの研究員は、昨日V.V.によって直接物理的に処罰が下された。当然、それ以降彼を見た者はいない。

自分のせいで人が死んだにも関わらず罪悪感が全く感じないのは、彼がクズだったからかそれとも嚮団での殺人カリキュラムのせいか。

エウリアを見殺しにする事は、納得いかないのにかの研究員は気にもならない。

 

「…ねぇ、レナも見たの?」

 

「当然。見たからある事に気付いたんd「殺す」なんでっ!?」

 

待ってくれオルフェウス!さっき褒めてたじゃん!

アレか!「俺以外がエウリアの裸を見る事は許さん!」って言うやつか!

不味い、殺される!?

 

オルフェウスが短刀を逆さ持ちで斬りつけてくる。それをバックステップで躱しオルフェウスの手首を掴むレレーナ。すかさず右膝でレレーナの腹を攻撃しようとするオルフェウス。

腕を離し距離を取ろうとするが、オルフェウスは膝を伸ばし蹴りを入れる。

まともに腹に蹴りを受けたレレーナは、後方へ後ずさる。

 

本気で殺しに来てる!!!

レレーナは、そう思った。このままでは、本格的に危ないので慌ててエウリアに助けを求める。しかしエウリアは、いつの間にか側に来ていたクララとお話をしていた。一瞬クララがこちらを見た事に気付いたレレーナ。

 

「…あのヤロー」

 

その時のクララの顔をレレーナは、後にこう語る。「邪魔者は、死ね」と言う言葉を表したようなゲスい顔であったと。

 

「余所見と随分余裕だなレナ!」

 

「ギャァあああ!」

 

オルフェウスとレレーナの仁義なき戦いは、その後V.V.が止めに来るまで続いた–––––––––––。

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「本当に酷い目にあった」

 

「悪戯も程々にね」

 

「納得いかないです。僕がエウリアのデータを削除してあげたのに…」

 

現在僕は、オルフェウスとの仁義なき戦いをV.V.の仲裁のおかげで3発ほど殴られるだけで…3発も殴られる形で終えてV.V.と二人である研究室に向かっている。正直、オルフェウスに殴られた場所はもう痛く無いけど納得がいかない。

なんで僕が…。

 

「まぁいいじゃない。研究員の方なんか君のせいで死んじゃったんだよ?」

 

まるで自分は関係ないみたいな風に言ってますが、殺したのあなたですよ。て言うか僕のせいって気付かれてる?

 

「気付かれない訳ないでしょ」

 

「筆跡も指紋もトレースしてあの人に変装して他の研究員を通して提出したのに」

 

おかしいな。結構頑張って変装して指紋筆跡も変えたからバレないと思ったんだけど。

 

「相変わらず無駄に変装のクオリティ高かったね」

 

「あれ?ひょっとして見られてました?」

 

「うん。メイクしてる所からバッチリ」

 

気付いててあの人のこと殺したの?やばい奴じゃん。知ってたけど。

 

「何?」

 

「何でもありません」

 

V.V.がやばい奴である事は、だいぶ前から知ってるから今更だけど。面白半分で殺されたあの研究員は、ご愁傷様。

 

「歩きながらだけど要件を言うね」

 

「今日はまだ悪戯してませんよ」

 

「ブリタニアに帰らない?と言うよりも帰って欲しいんだけど」

 

 

 

【朗報】俺氏、大監獄"ギアス嚮団"よりの出所を申し渡される!!!

 

 

 

やりました!レレーナ・ヴィ・ブリタニア、母が殺され兄妹達と離れ離れにされ母を殺した下手人に人体実験されて早数年。漸く解放される日が来ました。正直脱走以外でこの場所から出られる日が来ると思いませんでした。生きてこの場所から出て帰れるんですね…。

V.V.とか言う永遠のショタでサディストでど畜生な嚮主。まさに梟雄(きょうゆう)。悪党の中の悪党にこんないい事が出来るとは、僕はあなたの事を見くびっていました。本当に良かった。

 

しかし此処で大喜びしたらこのサディストの気が変わるかも知れない。此処は、慎重に対応すべきだ。

 

「…どうしたんですか、急に?」

 

「前々から思ってたんだけどね。君此処での生活向いてないと思うんだ」

 

いや、寧ろこんな人体実験される生活が向いてる人って誰ですか!?

しかもこちとら温室離宮育ちのボンボンだぞ!こんな過酷な生活エンジョイできる訳ないだろ!

 

「…向いてはないでしょう」

 

「うん。だから出て行って欲しい」

 

そう言ってV.V.が僕に頭を下げる。この人が他人に頭下げられる事に、そして凄く切実に出て行って欲しいと思われている事に驚く。

人にこんなに「出て行って欲しい」と言われたのは初めてで、結構ショックを受けている自分がいる。

 

そもそもこの人なら邪魔になった段階で殺しそうなものだけど、殺そうとは考えなかったんだろうか。何だかんで甥っ子だから見逃された感じ?

分からん。

しかし出て行けと言うならば出て行こう。此処に留まるのは、危険だ。最終的にルル兄様によって殲滅される嚮団に留まれば巻き込まれて殺される可能性が高い。あるいは、ルル兄様に対しての交渉のカード扱いされる可能性もある。早々に此処を離れるべきだろう。

 

「という訳だから、宜しく」

 

「はい、分かりました」

 

「じゃあ明日PM7:30に黄昏の間に集合ね」

 

待って明日帰るの!?準備できる訳ないじゃん。家具や服、雑貨、本、PCとかが多くあるのに用意できないよ。

 

「服は、持って行って。家具とかは、ブリタニアで再購入して」

 

待ってあの家具は、デザイナーズチェアーやデザイナーズベッド、高級マット、高級ソファーとすごいお金が掛かってるのに持って行けないの!?

 

「あのベッド。僕まだ殆ど使えてないんですけど」

 

「仕方ないよ。こんな場所であんなベッド用意したら子供達が寄ってたかって来るのは、明白でしょ」

 

「…」

 

「そもそもあの高級家具達は、何処から持ってきたの?」

 

「通販で…」

 

「…。」

 

嚮団への配送は、無理だろうなと思いながらも物は試しと挑戦してみたら届いてしまったのがこの高級家具達なのだ。

レレーナ自身中華連邦の配送屋スゲェとなったが、それ以上に商品の写真よりも実物が金ピカしていたのは衝撃であった。

 

そして嚮団でその家具達は、凄く悪目立ちしている。今までコンクリート剥き出しの小部屋に金ピカな家具達が設置されているのは、場違いであるが子供達にとって初めて見るもの、肌触りなのだ。子供達が居座るのも当然であった。中には、オルフェウスやエウリア、ロロ、クララなども混ざっておりレレーナは購入以降一回しかベッドで寝ていない。

趣味の悪そうなベッドだったが寝心地は大変素晴らしく、レレーナは殊の外気に入っていた。

 

「まぁ家具は、諦めて。どうせ向こうでは、アリエスの離宮で暮らすんだから要らないよ」

 

「確かにそうなんですけど…」

 

「宜しくね」

 

「それじゃぁ、引越祝いに何か戴けます?」

 

「相変わらずがめついね。お祝いなんて自分から求める物じゃないよ」

 

そんな事言ってもV.V.に対して恩を売っておきたいし。

あっ!そうじゃん。プレゼント貰えば良いじゃん。

 

「もう直クリスマスですしその祝いも兼ねてくださいよ」

 

「…はぁ、本当に図々しく育って」

 

「この前の欲しいもの何でもくれると言うお願いも込みで!お願いします!」

 

これで2つ3つV.V.からプレゼントが欲しい。

 

「何が欲しいの?」

 

「オルフェウスとエウリア」

 

この二人は、原作でこれから嚮団を脱出する。でもハンガリーで捕捉され村ごと殲滅される。そしてエウリアはそこで殺され、オルフェウスは復讐に囚われ苦しい戦いを強いられる事になる。

知らなければ何とも思わないけど知ってしまっている以上助けれる様に行動しよう。

二人を助ける事が出来れば、ブリタニア本国へ帰国した後に僕の理想を叶える為に行動できるかもしれない。

 

「…そう来たか」

 

エウリアは、現状ギアスが発現している様子がないので問題無いだろうがオルフェウスは、自身の姿声などを誤認させる事が出来る暗殺向きのギアスを発現させているので難しいかもしれない。

でもこの二人は、嚮団に来てから本当によくしてくれた。皇族としての生活を送っていた僕に嚮団のモルモット生活は、思いの外ストレスで参っていた。そんな僕を二人は、精神的に支えてくれたのだ。お陰で今も元気にやれている。さっきの理不尽な喧嘩だって意外と楽しい。生きている事を実感できる。ルル兄様やナナリー同様、オルフェウスとエウリアも僕は好きみたいだ。ルル兄様とナナリーの時は、何も出来なかったけど…。

だからこそこの二人を何とか助けてあげたい。自分のエゴだけれども、二人は何とも思ってないかも知れないけれども、僕はこの大きな恩を二人に返したいと思っている。

 

「エウリアは、兎も角。オルフェウスは、優秀な人材だから引き抜かれるのは困るなぁ」

 

確かにオルフェウスは、優秀だ。V.V.にとっていずれ外で活動できるギアスユーザーとなるであろうオルフェウスは、手放したく無いのかも知れない。しかし此方も譲れない。

 

「クリスマスプレゼントでエウリア。前回の検査の返礼及び引越祝いでオルフェウスお願いします」

 

「僕が君にあげたギアスの分は」

 

「勝手に押し付けたんじゃ無いですか!」

 

「じゃぁ返してくれるの?」

 

「嚮団を出ますよ」

 

「生活費も出してるよ」

 

「…」

 

 

 

 

あっ。これダメかも…。

 

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

「本当に僕も甘いね」

 

「何か仰いましたか?嚮主様」

 

「いや、何でも無いよ」

 

V.V.が呟いた内容は、側使いの嚮団の神官には聞き取れなかった。しかしV.V.の表情からは喜色満面であった。

 

 

 




あらすじ

次回
 『大人の話』

前回誤字報告をして下さった方有難う御座います。
久しぶりの更新となりました。
コメント評価して下さった方々有難う御座います。
今後も更新していきたいと思っているので何とぞ宜しくお願いします。


喜色満面…喜びの表情を抑えきれず、顔じゅうに溢れ出てる様
梟雄  …残忍で強く荒々しい人。悪党の首領


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 大人の話

明けましておめでとう御座います!!
今年も宜しくお願いします!!


皇歴2012年 Cの世界

 

そこは、夕暮れ時の様な陽の光がさす天空の神殿。この神殿は、人の心と記憶が集まる世界に存在する。V.V.たちはこの世界を"集合無意識""Cの世界"そして"神"と呼んでいる。

V.V.とその双子の弟シャルル・ジ・ブリタニア、その妻マリアンヌたちは、『神を殺す』計画の為にこの神殿の形をした『アーカーシャの剣』を長年掛けて開発したのだ。

 

その"アーカーシャの剣"に二人の影が延びる。

 

一人は、世界三大勢力の筆頭『神聖ブリタニア帝国』の第98代皇帝"シャルル・ジ・ブリタニア"。

身長190cm以上で恰幅が良く威厳のある顔、そして何より特徴的なのが白髪の(たてがみ)ロールである。嘗てレレーナによってストレートにトリートメントされた髪は、見事なまでのロールへと戻っていた。

 

一人は、超常の力『ギアス』を研究し歴史の裏に隠れる秘密結社"ギアス嚮団"の嚮主を務めるV.V.。

皇帝シャルルの双子の兄にしてレレーナの伯父にあたる。しかしその姿は、未だに10代前半に見える。シャルルを皇帝にする為に数多の暗躍を行い、弟を守る為に人為らざるモノになる事を躊躇わなかった生粋のブラコン。

 

二人は、アーカーシャの剣の上で並んで佇んでいる。

 

「兄さん、宜しかったのですか。レレーナを嚮団から出して」

 

シャルルは、V.V.が自身と亡き妻マリアンヌとの子供を嚮団から出すと決めた事が不思議であった。

シャルルは、知っていた。

V.V.がマリアンヌを殺した事を、そしてレレーナを使ってギアスの研究を加速させようとしていた事を。V.V.は、マリアンヌ暗殺の事は何も知らないと嘘をついていた。嘘のない世界を作ろうと約束したにも拘らず。そうまでして何かを望んでいたのだろう。

だからこそ不思議であった。

V.V.がレレーナを嚮団から出そうとする事に、一体どんな思惑があるのかと。

 

「うん。僕は、レレーナを甘く見ていたみたい」

 

「…」

 

「これ以上レレーナを嚮団に置いておいたら、嚮団を乗っ取られかねない」

 

「それ程ですか!?」

 

シャルルは、V.V.のレレーナに対する評価の高さに驚く。V.V.は、ブリタニア皇族故か不老不死のコードユーザーであるが故か、他者に対して見下した様な見方をする事が多い。そんな兄がレレーナの事を評価している。

 

「僕がレレーナにあげたギアス『全知全能(The Almighty)』」

 

「確か未来を改変(・・・・・)するという能力だと聞きましたが」

 

「うん。僕も初めはそう思ってたし、レレーナ自身もそう思っていた節がある」

 

「でも本当は、レレーナが想像した力を発現させる力だった」

 

「!?」

 

シャルルは、レレーナのギアスの力を聞かされ驚愕する。ギアスの力は、本来一人につき一つであり能力はその人の本質や願いを表すと思われる。だからこそレレーナのギアスが異常である事がわかる。

シャルルは、過去を変えたいと願った。

C.C.は、他者に愛されたいと願った。

レレーナは、一体何を願ったのか、何を願ったら想像した力を発現する力を発現できるのか。

 

「…想像した力を発現するとは、どういったものなので」

 

「正確には、嚮団の子供達のギアス能力を使えたり全く知らない能力を使えたりとかかな」

 

「…」

 

「少なくともロロやクララ、オルフェウス、アリス、サンチア、ルクレティア、そしてシャルルとビスマルクのギアスも確認できているよ」

 

「!?」

 

まさか自身やビスマルクのギアスをコピーされているとは。

いつの間にどうやって自分達のギアスを知ったのかと言う思いを抱く。

さらに複数のギアスを使えると言う事実。複数のギアスを使えるという事は、あらゆる超常の力を使う事ができるという事。

それは、まさに––––––––––––––

 

「…全能」

 

「そう。神にも等しい力を持った怪物」

 

「兄さん、何故レレーナを本国に返す必要があるのです」

 

シャルルは、考える。確かにそれほどの力を持ったレレーナを嚮団へ置き続けるのは、危険だろう。しかしだからと言って帝国本国へ返しても本国で力を付けてしまっては、それはそれで危険である。一思いに嚮団で殺してしまった方が自分達の計画の為には、良いのではないか。むしろV.V.ならば適当な理由を付けて暗殺をし事後報告だけして来るのではないかとすら思える。

何故…。

 

「…」

 

言ってはいないが、V.V.自身実際にはレレーナを何度か暗殺しようとした事がある。しかしレレーナのギアスの前には、全てが無駄であった。

基本的にレレーナの使っている"未来を改変"する力は、不特定多数の未来を見て最も自分の為になるもしもの未来を選択出来る力でありそれは、未来を見る事が出来るのと同義なのである。

自分が死ぬ未来を見たらそれを回避する未来を選択し生き永らえ、ヤバい薬を盛られそうになればその薬を未来で壊し自分に盛られない様にして、さらに薬を盛ろうとした研究員を悪戯の対象(抹殺者リスト)に加える。それが嚮団へ来てからのレレーナの生活であった。

 

「さっきも言ったけどこれ以上嚮団へ置いておけば嚮団そのものを奪われ僕達の計画も達成出来なくなる可能性が高い」

 

「…」

 

「そしてレレーナを暗殺しようにも未来を選択し改変できる能力の前では、あらゆる暗殺方法が無意味になる」

 

「兄さん自身であればレレーナのギアスであったとして未来を見る事も改変する事が出来ないのではないですか」

 

シャルルは、コードユーザーであるV.V.であればギアスが効かないのではないかと提案してみる。

実際にレレーナのギアスをもってしてもV.V.の未来を見る事は出来ない。

しかし–––––––––––––––

 

「確かにレレーナのギアスでも僕の未来を見る事は、出来ない。でもレレーナ自身の未来を見る事は、できる」

 

つまりいくら暗殺者であるV.V.の動きを察知出来なくても、自身が死ぬ未来を見る事が出来る。そして自身が殺される際に下手人の姿を見られればその人物に対して警戒を行い下手人を先に殺せばいい、見る事が出来なければ見れないギアスで見れない相手–––––コードユーザー–––––––を想定すれば良い。という事になって一度も暗殺は成功しなかった。

 

成功していればレレーナの帰国の話はないのだけれど。

 

「ならば遅効性の毒や致死率の高いウイルスを用いれば良いのでは?」

 

「レレーナの未来を見る力は、力の一端であって全てじゃない。レレーナの未来を改変する力は、複数の未来を見た上で自分にとって最も都合のいい未来を作り選択出来るもの」

 

「…」

 

「わかりにくいよね。簡単に言うと致死率の高い毒を盛られたとしても、何かしらの事象によって助かる未来とそのまま死んでしまう未来がある。

 

『右手でリンゴを掴み食べる未来』と『左手でリンゴを掴み食べる未来』の様に。

仮に右手に毒を塗られていれば『右手でリンゴを掴んで食べる未来』を選択した瞬間にTHE ENDとなる。しかし『左手でリンゴを掴んで食べる未来』を選択すれば毒を喰らう事はなく、その時はTHE ENDとなる事はない。これがレレーナの未来を見る力。

そして仮に毒を盛られて体を蝕まれたとしてもレレーナは、『毒の耐性を奇跡的に持っていて重体にならない』と言う未来を作り選択出来る」

 

「!?」

 

「レレーナを殺す事は、事実上不可能なんだ」

 

「な、何か弱点の様なものは、無いのですか?」

 

「分からない。正直僕じゃ手に負えない存在だよ」

 

シャルルは、思う。"兄さんの手に負えない"存在をどうやって自分は手懐ければいいのだと。

 

「でも心配しないでシャルル。レレーナは、扱いを間違えなければ大丈夫だよ」

 

レレーナが聞けば「僕は危険物か!」とツッコミを入れるであろうセリフをV.V.が口にする。

 

「扱いですか?」

 

「そう。今回嚮団を出る際に強請られてね、ギアスユーザーを二人引き抜かれる事になってね」

 

「ギアスユーザーが二人…」

 

レレーナ一人ですら受け入れに右往左往しそうになっているのに、他に二人もギアスユーザーがブリタニア本国へ。その上自身の住むペンドラゴン皇宮へ来ると言う事にシャルルは、らしくなく自身の顔が引き攣るのが分かった。

 

「一人は、自身の姿声を他人に誤認させるギアス。暗殺任務に向いている能力者だね」

 

「暗殺…」

 

シャルルは、自身がレレーナに好かれていないであろうと思っている。彼の母をみすみす暗殺された挙句、暗殺者であるV.V.に対して何も出来ないでいるのだ。その上彼の兄と妹(ルルーシュとナナリー)を実質人質として日本へ送り攻め込んで死なせた事になっているのだから。レレーナが自分を嫌いにならない理由が無いのだ。

そんなレレーナが暗殺技能を持った仲間と共に本国へ帰ってきた場合、間違い無く自分に対して暗殺者を差し向けて来るだろう。

ギアスユーザーの暗殺者など悪夢以外の何物でも無い。

 

「大丈夫だよ、シャルル。レレーナは、そんな短絡的な事をするような子じゃ無い」

 

「…」

 

「情けは味方、仇は敵也」

 

「?」

 

「レレーナが以前言っていた言葉なんだけど、あの子は恩を仇で返すような子じゃ無い」

 

「しかし…」

 

「だからこそ今回あの子が嚮団を去る際に二人のギアスユーザーを引き抜く代わりに、僕が指定した人間を10人暗殺してくれる事になった」

 

「10人暗殺ですか」

 

「うん」

 

「だからシャルル。レレーナの事宜しくね」

 

V.V.は、弟シャルルの方を見上げて楽しそうに笑う。

それを見てシャルルは思う、自分の兄は少し見ぬうちに変わったと。レレーナに関わって変わったのだと思った。レレーナに対して少し嫉妬した。自分の兄に対して影響を与える事が出来た事に。そして気付く。

マリアンヌを殺され嘘を吐かれ、兄に対して失望した。憎悪した。それでも自分は、兄を家族として大事に思っているのだと。

兄が楽しそうに笑っている。

これからレレーナが帰って来る。

シャルルは、密かに願う。自分が11人目の暗殺対象(ターゲット)にならぬ事を…。

 




新年明けましておめでとう御座います。
本年も宜しくお願いします。

感想くださった方ありがとう御座います。
今後とも頑張っていきたいと思いますので応援宜しくお願いします。
感想・評価も宜しくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 ブリタニア帝国

皇歴2013年3月28日 アリエスの離宮

 

「誕生日おめでとう!レナ!」

 

「おめでとう。レナ」

 

「ありがとう、二人とも」

 

今日は、僕の誕生日。そして就職する事になった。その為今日は、嚮団から引き抜く事に成功したオルフェウスとエウリアと3人でいつもより少し豪華な料理を食べている。

普通の皇族であれば多くの貴族や皇族、文化人、官僚、軍人などがお祝いに駆け付けるであろうが、生憎僕にはそんな風にお祝いに駆け付ける者は居ない。この場所に居るのは、3人だけ。使用人すら居ない。

昔、まだマリアンヌやルルーシュ兄様、ナナリーが居た頃は、後援貴族のアッシュフォード家を筆頭に貴族や軍人が多く訪れていた。オデュッセウス第1皇子やギネヴィア第1皇女、シュナイゼル第2皇子などの誕生日に比べればはるかに少ないがそれでも今日よりは列席者が居た。と言うよりも今日が居なさ過ぎなだけであるが…。

 

そもそも嚮団から帰って来た僕が2011年から二年間どうしていたかと言うと。

 

遡る事二年前–––––––––

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

皇歴2011年

 

嚮団から『Cの世界』を経由して神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴンへ帰国した。ペンドラゴン皇宮の"玉座の間"へビスマルクの先導で行き、シャルルへ帰還の報告を行う。

シャルルがV.V.と『Cの世界』で何を話したかは知らないが、碌な事を話していないであろう事は見当が付く。なにせシャルルが異様にこちらを警戒しているのだ。

帰還報告で謁見した際に"ナイトオブワン"のビスマルクに元"ナイトオブツー"のベアトリス・ファランクス帝国特務局総監さらにギアス嚮団の神官達がシャルルの両側に整列していた。

 

凄い眼力で僕を睨み付けてくるシャルルは、本当にV.V.に何を言われたのだろうか。

 

「…良くぞ戻ってきたレレーナ」

 

そう言うならもっと嬉しそうな顔しなよ。凄く不本意だと顔に出てますよ。

全く、子供じゃないんだからもっと社交辞令が上手くならないと皇帝辞めた後苦労するよ。やめるときは、死んだ時なんだろうけど、この人の場合。

それでも日本人をもっと見習うべきだと思う。ここまで露骨に嫌そうな「お帰り」は、聞いた事がない。

 

「お久しぶりです、父上。レレーナ・ヴィ・ブリタニア本日帰国いたしました」

 

スッと片膝をつき玉座に頭を垂れる。我ながら上手く出来たと思うがシャルルたちは、全く反応しない。

正直気が重い。

 

「お主の帰国を嬉しく思う。今後のことは、ビスマルクに伝えさせる故今日はもう休むが良い」

 

そう言うとシャルルは、玉座を立ち上がりさっさと玉座の間を出て行ってしまう。それに続いてビスマルク以外の者達もいそいそと出て行ってしまう。

本当に歓迎されていないなと思う。

 

「ご無事の帰国、このビスマルク嬉しく思います」

 

シャルル達が出て行った後、ビスマルクが僕に近づいてそう言った。ビスマルクの顔には、少し緊張感が表れていた。シャルルといいビスマルクといい何をそんなに警戒しているのか分からないが、此方としては今後の僕たちの生活を保障して貰えれば良いので無茶する予定は無いのだけどね。

 

「これからレレーナ殿下が生活される事になるアリエスの離宮へご案内致します」

 

「またあそこに住めるんだ。他の二人も一緒だよね?」

 

「はい。嚮団より来た他の二人もご一緒です。その方が殿下も居心地が良いだろうと陛下が仰っておられました」

 

「それは、感謝しないとね。まぁ後援貴族も居ないのにあんな広いところで三人生活だと施設管理だけで大忙しだろうけど」

 

「ご安心下さい。既に我が家の者達が掃除等を行い、殿下をお出迎えする準備は、整っております」

 

「そっか、ありがと。なら行こうか」

 

そう言った後に僕は、玉座の間を出る。その後ろをビスマルクが付いてくる。これから住むアリエスの離宮は、以前家族で住んでいた場所であり皇宮内の道も以前と同じなので迷う事は無い。しかも途中から馬車なので間違う事も無い。

 

唯一の懸念は、道中で他の皇族貴族にバッタリしないかどうかだろう。

貴族は、まだいい。精々出会い頭に嫌味をネチネチと言ってきて殺したくなるだけだろう。問題は、皇族だろう。母マリアンヌは、騎士侯であったが出自は、平民であった。その為に他の皇族や貴族からは、快く思われておらず大変嫌われていた。側から見ても凄い嫌味を常に言われていた。

 

まぁしかし、そう言った有象無象の者達を一切気にせず凛とした態度で向き合っていた母マリアンヌは、なんだかんだ思う所はあってもカッコ良かった。ルル兄様やナナリーは、そう言った嫌味や嘲笑を気にしていたし、僕自身すごく不快であって顔を顰めることが良くあった。そういう顔をすると「どうしたの?」と薄笑いしながら言ってくる皇族や貴族達を思い出すだけで地獄に叩き落としたくなるが、後々煩わしくなるので悪戯は、程々にするように以前ビスマルクに言われている。アドバイスをくれる母も居らず、話を聞いてくれるルル兄様達も居ない。

その上にオルフェウスとエウリアを嚮団から引き抜く際にV.V.より出された条件を遂行する為に忙しくなるので愚人供の相手をしている暇は、無いのだ。

まぁ実際貴族達は、僕より宮廷政治や暗躍に優れた者ばかりなんだけれども。性格が本当に悪い!

 

そうこう考えていると『セントダーウィン通り』沿いにあるアリエスの離宮へ到着した。

 

"セントダーウィン通り"は、皇族の離宮が建ち並ぶ通りであり、元々は皇族の私道であった。現在も皇室の許可無く通行することは出来ない。アリエスの離宮もこの通り沿いに存在している。

 

アリエスの離宮の正門前を抜け車寄せに馬車が止まり玄関前に降り立つ僕とビスマルクを迎えてくれたのは、ヴァルトシュタイン家の執事とメイド、そしてオルフェウスとエウリア達でだった。彼らは、玄関の両端に整列し頭を下げた状態で僕らを迎えてくれる。オルフェウスとエウリアだけは、面白そうに興味深そうにそう言った状況を見ていた。

辺りを見回すと数年間家主がおらず手入れがされていなかったにも関わらず、埃や汚れが全くと言って良いほど見当たらず、玄関から見える庭には雑草などが一切なく草木は確りと手入れされていた。こう言った状態を見ると自分がブリタニアの皇族だという事を嫌という程感じる。

 

皇宮内では、同じ皇族でも母の身分や位を意識せざるを得なくて自身が同じ皇族であるという事を忘れそうになるが、外では自分もまた皇族で他の人達と違うのだと感じる。地位があり、名誉があり、そして責任がある立場なのだと思い知らされる。と言うよりも勘違いしそうである。自分が選ばれた人間だと。今でも若干これが当たり前だと思えてしまう事に、僅かながらの恐怖とこの世界に馴染めていると言う安堵が心に存在する。

 

「じゃぁ、これから宜しく–––––––––––」

 

これからこのアリエスの離宮で過ごすのかと思うと少し楽しみだと思っていたんだけれど、この後すぐにビスマルクの言葉を聞いて絶望した。

 

「殿下、来週より『ボワルセル士官学校』へ入学して頂きますので、ご準備の程を宜しくお願い致します」

 

「…え」

 

「私は、明日もう一度参りますので本日は、ゆっくりとお身体をお休めください」

 

「ちょっ!?」

 

ビスマルクが一方的に来週の事を告げるとそそくさとアリエスの離宮を後にした。

 

「レナ!」

 

ビスマルクが乗った馬車が車寄せから出立するのを見送る形になった僕は、背後から近付いてくるオルフェウスとエウリアに気付かなかった。エウリアに背後から飛び付かれ身体が前に倒れそうになるのを右足で支えながらエウリアの方へ顔を向ける。

 

「エウリア!いきなり飛び付かないで!ビックリしたよ!」

 

「気を抜きすぎよレナ」

 

「そうだな。レナなら気付けただろう」

 

オルフェウスは、ギアスの力の事を言っているのだろうが、ここでは執事やメイド達が居るので"ギアス"と言う単語を使わないようにしているようだ。その判断は、正しいと思う。もしギアスの事を言えば、幾ら子供だろうと頭がおかしいと思われかねずこの場所に居るのが難しくなりかねないからだ。

 

「常日頃から見てる訳じゃないんだよ、オルフェウス兄さん」

 

「まぁ確かにそうだろうな」

 

「それにしても以前は、こんな大きな場所に住んでいたの?」

 

「そうだよ。母様とルル兄様、妹のナナリーと使用人とかと一緒に住んでたんだよ」

 

「本当に皇族だったのね」

 

「今も一応皇族だけどね」

 

二人には、嚮団を抜ける際に僕の出自について説明して一緒に嚮団を出ないかと提案した。最初は、二人とも驚いていたけど勝手に脱出するリスクとここで合法的?に脱出するメリットを説いて一緒に来て欲しいとお願いした。それは、もう凄いお願いした。必死にお願いした。

お願いの甲斐あって二人は、一緒にブリタニア帝国へ来てくれる事になった。

意外にもV.V.が二人を後推してくれた。僕が二人を引き抜くにあたっての条件や本国での僕の扱いについて説明してた。一瞬「コイツ本当にV.V.か!?」ってなったけど、その後凄い殺気をぶつけてきたから本物だと理解した。

 

説明を聞いた後、二人とも凄い顔で僕の事を見てた。

「どうしてそんな無茶をしたのか」や「一人でやろうとするな」など、もぉ本当にこっぴどく怒られた。正直この世界に転生してから初めて本気で怒られたような気がする。強くてニューゲームな状態の僕は、人に怒られるような事をする事がなく母のマリアンヌも自由にさせてくれたので本当に怒られない。だからだろうか少し本気で怒られた事が少し嬉しかったのは僕が子供に戻ったからかな?

二人が僕を心配して怒ってくれている事が分かっているので嬉しいんだろうね。結局二人には、今後は何かあったら相談する事手伝わせる事などを約束させられた。

人に心配されるのは、嫌じゃないね。

 

「これからどうする?」

 

「レナは、来週から士官学校という場所に行く事になるんだろ」

 

「そうだね」

 

エウリアとオルフェウスと共にアリエスの離宮の僕の部屋へ向かって歩いている途中で、これからの事を考える。

ビスマルクの話では、僕はボワルセル士官学校へ行く事になる。士官学校ということは、僕は軍人になれと言うことだろう。後援貴族がいない僕にとって自分の力だけで生きていかなければならない。要職に就けるほど力も無い。だからこそ軍人として出世することで要職に就き、他の貴族達に害される事も無くなるだろうと言う考えなんだろう。

僕が実力行使で皇族や貴族を殺さないように離れさす目的もあるのかもしれない。

 

「まぁ、後援貴族のいない僕が力を持つには、自分の力で出世できる軍の方が都合がいいんじゃない」

 

「そう言うものなの?」

 

「嚮団のそとの事はレナの方が詳しいだろうから任せるが、何かあればちゃんと言うんだぞ」

 

「はーい!」

 

「本当に分かってるのか…」

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

それから士官学校へ通い軍事学の社会科学的分野の安全保障学や戦争学、軍事行政学、戦略学、戦術学、統率論、さらに軍事工学、軍事心理学、軍事地理学などを勉強した。正直言ってレレーナ・ヴィ・ブリタニアのポテンシャルが高過ぎて余裕であった。

さすがマリアンヌの息子でルルーシュ兄様の弟だと思った。勉強すればするほどスポンジの様に知識を吸収できた。

おかげで飛び級で二年で士官学校を卒業した。

 

因みにオルフェウスも同じボワルセル士官学校へ入学し同じ年に卒業しました。オルフェウス本当に有能!

エウリアは、アリエスの離宮の管理と施設管理と経営学、経済学などを離宮で勉強し、片手間で僕の指示に従って株の売り買いをして資産を作ってもらっていた。二年間で結構稼がさせて貰った。

未来を見るギアスを使えば株価を表す折れ線グラフの先を見ることができ、最安値で株を買い最高値に近い所で売り儲けを出すことが出来る。ギアスの無駄遣い?有効利用です。

 

まぁそうやってそれぞれこの二年間を生活していた。

 

「レナ!オルフェウス!学校卒業おめでとう!」

 

「ありがとうエウリア!」

 

「ありがとう!エウリア姉さん!」

 

エウリアが僕の誕生日をお祝いしてくれた後に卒業に関してもお祝いしてくれた。オルフェウスは、少し頬を染めて恥ずかしそうであったがからかうと後が怖いのでやめておく。彼の扱い方は、ここ二年間で学習した。嚮団の時よりもお兄ちゃんらしくなった。

ちょっと小っ恥ずかしいけど嬉しいものである。

 

「二人は、これからどうするの?」

 

エウリアがこれからの事を僕の分のサラダをお皿に取りながら聞いてきた。

 

「俺は、明日からビスマルクのもとで騎士としての訓練を受ける事になっている」

 

オルフェウス、仮にも義理の親を呼び捨てって…。オルフェウス・ヴァルトシュタイン、それが今のオルフェウスの名前である。

 

初めオイアグロ・ジヴォンという男がオルフェウスをジヴォン家で預かりたいと言ってきたが、ジヴォン家は『メル・ブリタニア』の後援貴族で下手をしたらオルフェウスをメル家に奪われかねないので丁重にお断りした。

確かオイアグロは、オルフェウスの叔父に当たる人だったはずだから、同じジヴォン家の男として捨てられたオルフェウスに思うところがあるんだろう。僕には、関係ないけど。

 

そのオルフェウスも士官学校を飛び級で卒業したのでビスマルクの直属部隊に勧誘された。オルフェウスは、将来的には僕の選任騎士に就く事を目指してくれているので頑張ってもらいたい。本当にありがとう!オルフェウス!!!

 

「オルフェウスがレナの騎士になってくれたら私も安心だわ」

 

「だろ」

 

「二人は一体僕をなんだと思っているの」

 

「士官学校の入学式で教官のカツラを吹き飛ばした人が何か?」

 

「いえ。何でもないです」

 

確かに入学式でカツラを吹っ飛ばしたのは僕だ。だけどあれは、故意じゃない。貴族の後援を受けている態度のデカい学生がうざったかったので、体育館のステージで証明書を受け取った後に其奴の証明書が入った筒を後ろから突き飛ばし、飛ばした先にカツラの教官がいらっしゃったのだ。

僕の代わりに態度の悪いその学生が教官に怒られ、学生指導室へ引きずられて行った。日頃の態度が悪いから言葉を信じて貰えないんだよ。

 

「あの時、バルトシュタイン卿が天を仰いでたよ」

 

「あぁあの全身真っ黒だった不審者」

 

「父兄席に居たな」

 

ビスマルク…なんでお前がそこに居る。あと父兄席で「マリアンヌ様。レレーナ殿下は立派に育っておりますぞ」と号泣するんじゃない!おかげで僕の後ろにナイトオブワンが居ると思われて学校生活は、比較的健やかに過ごす事が出来た。それは、感謝してるよ、うん。

 

「僕の方は「殿下!!!御卒業!おめでとう御座います!!!」…。ジェレミア卿か」

 

僕が自分の事を話そうとしたらそれを遮る暑くるs熱の籠った声が僕らの部屋に響き渡る。

 

「このジェレミア!心より!心より!お祝い申し上げます!!!思い返せば殿下がボワルセル士官学校へ入学された日!その日は、その年一番の快晴であり前日の大雨が嘘の様な青空でありました!まさに天気すら殿下を祝福するかの様で!このジェレミア感動のあまり目から大粒の雨が流れてしまう程でした!そして入学式では、不届き者を見事撃退され帝国最強と名高いビスマルク・ヴァルトシュタイン卿すらも感動のあまり涙を流しそうになり天を仰いでおられました!!!」

 

「…あれって喜んでたのか?」

 

「どちらかと言うと嘆いてた方かな」

 

「さらに学校では、常に最優秀な成績を収められ史上初の二年での飛び級を成し遂げられました!!!」

 

「オルフェウスも一緒にだけどね」

 

「当然だ」

 

「二人とも流石よ」

 

その後もジェレミアの僕へ過大な賛美は続き最終的にオルフェウスによって物理的に止められた。そこで漸く冷静さを取り戻したジェレミアは、自分が許可もなくアリエスの離宮へ立ち入ってしまった事に気付いた。そこで再び僕に対して謝罪の言葉の嵐が起きる。正直長いよ。

 

「もういいよ、ジェレミア卿」

 

「しかし殿下!」

 

「レナがもういいって言っているだろ」

 

「オルフェウス!貴殿がそんな事を言ってどうする!?貴殿は、いずれ殿下の騎士になろうというのに殿下の警備に関してちゃんと考えんか!」

 

「問題ない、不審者だったら入った段階で殺している」

 

「貴殿の様な子供に殺される程このジェレミア・ゴットバルトは、弱くはないぞ」

 

「どうかな、あんたの様な熱しやすい男など直ぐに制してやるよ」

 

「何をぉお!!!」

 

「やるかぁあ!!!」

 

いつの間にかオルフェウスとジェレミアが二人で喧嘩を始めたので、僕はエウリアと一緒に夕食を続ける。

正直オルフェウスとジェレミアは、結構仲がいいと思う。ああやって会うたびに喧嘩をしているが何だかんだで楽しそうであるし、オルフェウスは年上の同性とああやって絡むのはジェレミアが初めての様だから楽しんでいる節がある。

まぁ実際二人の実力は、手段を選ばずに殺し合いをすればオルフェウスが勝つ可能性がない訳ではない。しかし正面から騎士として戦えばジェレミアが勝つだろう。まだ子供のオルフェウスに負けるほどジェレミアは、弱くない。騎士としては、間違いなく一流である。

 

「結局レナはどうするの」

 

エウリアがさっきの続きを聞いてきた。

 

「僕は明日から機密情報局へ入局する事になったよ」

 

そう。僕は、士官学校を卒業し明日からブリタニア皇帝直属の諜報機関『機密情報局』へ就職する事になりました。

 

なんで?




次回
『E.Uへ』

感想、評価して下さった方々ありがとう御座います!
今後とも頑張っていきたいと思いますので応援宜しくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 E.Uへ

三連休のおかげで早く書けたので投稿しちゃいました




皇歴2013年 帝都ペンドラゴン

 

今僕は、皇帝直属の諜報機関『機密情報局』が入っている庁舎に来ている。

入局式を終えた後に同期となる人達と挨拶を行い、新人研修を受けた。3ヶ月程の新人研修で情報収集技術としてヒューミントとシギントについての研修、エージェントの獲得方法、護身術、KMF操作技術、監視術の研修そして拷問耐久訓練を行なった。

 

僕って皇族だよね?

皇族が拷問耐久訓練するの?

 

士官学校やギアス嚮団で拷問耐久訓練をやって来たけど、本当にキツかった。

まぁでも一度やった事のある訓練は、他の人より余裕ではあった。拷問耐久訓練中の指導官が化け物を見る様な顔で僕を見ていたのは大変遺憾である。

確かに嚮団での訓練の方が苛酷だったの事実だ。特にV.V.がする時は、悲鳴が上がるのは当たり前、途中から心を閉ざしてしまう事が多々あった。その経験が役立ったのは、嬉しい様な悲しい様な…。

 

そして今日、今後の配属先について辞令が出される。

同期の面々と講堂に集まり正式に行政本部長より言い渡されるのだ。既に僕以外の面々は、新たな配属先が決まり直立不動で整列している。

 

「レレーナ・ヴィ・ブリタニア殿下!」

 

「ハイ!」

 

「貴殿をユーロピア作戦部諜報第1課への配属を命じる!」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

「貴官らの健闘を祈る!」

 

行政本部長から辞令を受けてそれぞれが講堂から出て行く。僕も自身に与えられたデスクに戻った。

そして頭を抱えた。

 

なんで僕が最前線勤務!?

敵国で諜報任務とか、皇族のする事じゃないだろ!

 

いや確かにルル兄様やナナリーは、これから戦争ふっかける国に実質人質として送られたのも異常だと思うけど、諜報員として送るのも如何かと思う。これがブリタニアか…。

せめて大使館付きとかにして欲しかった。

 

ブウウウ、ブウウウとデスクの上に置いていた携帯端末が音を立てて振動した。端末を手に取り開くと、ビスマルク・ヴァルトシュタインと表示されていた。携帯に出ると直ぐに庁舎の正門前に呼び出されて、特務局職員にそのままペンドラゴン皇宮へ連れて行かれた。

 

連れて行かれた先で”皇帝"シャルル"、特務総監"ベアトリス"、ナイトオブワン"ビスマルク"が待っていた。

 

「レレーナよ、貴様はユーロピアに派遣される事になったそうだな」

 

「はい」

 

そりゃあ皇帝直属の機情構成員で皇族の人事なのだ、皇帝に話が伝わるのは当然だろう。シャルルが知っている事は、不思議じゃない。しかしそんな他人事の様に言わんでも…。こっちは結構絶望的状態で困惑しているのに。

 

「殿下。思う所もありましょうが、殿下が嚮主V.V.との約束で暗殺する対象があと3人残っております」

 

「そうだね士官学校時代に国内の対象を七人始末したから、後3人だね」

 

「残りの3名は、外国におりますので軍に所属すると暗殺を遂行するのに何かと不便でしょうからと」

 

「あぁなるほど、配慮して頂き有難う御座います」

 

確かにV.V.からオルフェウスとエウリアを引き抜く条件として出された暗殺対象者10人の内7人は、すでに始末したが残りの3人は外国の政治家や軍人なので今の状態では、手を出せないのだ。特に『導師』というE.U.の裏の実力者は、とても手を出せる状況では無い。まず居場所が分からない。

そういう意味では、E.U.での諜報任務は自由時間もあり導師の捜索、暗殺に時間を割けるかも知れない。此方に配慮した人事だったのだ。

 

「来週からユーロピアに潜入する事になるのだ。速やかに支度をして見事役目を果たしてみよ」

 

「イエス・ユア・マジェスティ」

 

全く遺憾ではあるが、此方に配慮して貰った以上此方も全力で任務を全うしなければいけない。

E.U侵攻に役立てる様に頑張りましょう。

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

アリエスの離宮

 

シャルル達との面談を終えて機情の庁舎へいったん戻り荷物をまとめてアリエスの離宮へ帰ると、オルフェウスとエウリアが食事の準備をしながら待ってくれていた。

そこで来週からE.Uへの諜報活動をしに行く事を伝えた。二人とも驚いていた。僕も驚いたよ。

 

「しかし皇族が敵国で諜報活動とか正気とは思えないな。レナ、お前本当に皇族か?」

 

「皇族の筈なんだけどねぇ」

 

「オルフェウスも一緒について行ってあげられないの?」

 

「下っ端の諜報員にお付きが付いてたらおかしいでしょ」

 

「何かあったらどうする。やっぱり俺も」

 

「大丈夫だよ。いざとなればギアスもあるし」

 

僕のギアス全知全能をもってすれば諜報任務は、問題なく遂行できるだろう。

 

問題は、導師の暗殺任務の方だ。

導師は、"双貌のオズ"においてオルフェウスが暗殺ミッションを受けたターゲットである。E.Uの影の支配者として長く君臨しE.Uの政財界の上層部から絶大な信頼を得ている人物であり、ギアスの事を知っている謎の人物でもある。占星術師を名乗り盲目でありながら相手の運命や本質を見抜くことができる。オルフェウスがギアスを使い他者へ変身しているにも関わらず、その正体を看破しオルフェウスを捕らえ拷問を行なった事や未来が分かっている様な事を言っている事からギアス嚮団の関係者である可能性が高い。

機情ですら正確な情報が入手出来ない謎の人物である。そんな彼の暗殺を行わなければならないとは、ほとほと困ったものである。

 

「レレーナ殿下!ユーロピアに赴任されると言うのは、本当でありますか!?」

 

また熱い男が来た。

 

「ジェレミア卿、また勝手に…」

 

「ジェレミア!入る時は、ちゃんと確認しろと言っているだろ!」

 

僕は、ジェレミアの登場に眉間を抑える。

オルフェウスは、いつもの様にジェレミアに注意を行なっているがジェレミアには、響かない。

 

「殿下!お一人で敵国に潜入など危のうございます!このジェレミアがご一緒致します!」

 

「あっ結構です」

 

「イエス・ユア…、何故ですか!?」

 

荒ぶってるなぁジェレミア。でもさっきも言ったが下っ端の諜報員にお供がいたらおかしいだろ。

 

「俺もさっきから同行すると言っているんだが、許可してくれないんだ」

 

「何を言っているオルフェウス!それを説得するのが貴殿の役目であろう!!!」

 

「分かってる!だからさっきからレナを説得しているんだ!邪魔をするな!」

 

「何をぉお!ならば何方が殿下に同行するか今ここで決めようではないか!!」

 

「いいだろう!俺が貴様を倒してレナの護衛をする!!!」

 

またまた始まったオルフェウスとジェレミアの真剣勝負。「私の為に争うのはやめて」と言わなければならないかな?

柄じゃ無いね。何方かと言うと「争え、勝った方を大事にする」かな…違うな。

 

「また始まったね」

 

「オルフェウスもジェレミアもなんだかんでお互いの事を認めてるんだろうね。いつも楽しそうだ」

 

「本当にね」

 

「まぁ、どっちが勝っても連れて行けないけどね」

 

「どうして?」

 

「向こうに行ったらまた大学にでも行こうと思う。そこで中央に近づけそうな子供を使って政治家や官僚に接近しようと思ってね」

 

「二人がいると出来ないの?」

 

「オルフェウスはともかく、ジェレミアはスパイを疑われるだろうね」

 

常識的に考えて子供と大人だと子供の方が疑われ難い。確かにオルフェウスを連れて行ってもいいんだが、彼を連れて行くとエウリアが本国で一人になってしまう。他の皇族や貴族達がどう動くかわからない上に、V.V.が本当に何もしてこないのか分からない。

だからこそオルフェウスには、本国に残ってもらいエウリアとアリエスの離宮を守ってもらいたい。

その事をエウリアに伝える。

 

「なるほど、つまり私が心配なのね」

 

「そりゃねぇ。オルフェウスとエウリアには、出来れば幸せになって欲しいからね」

 

「ふふ。ならこうしましょう」

 

「?」

 

エウリアが何か思いついた様に嬉しそうに笑う。

 

「オルフェウス!ジェレミア卿!ちょっと来て!」

 

エウリアが二人に声を掛けると二人が武器を納めて此方に戻ってくる。二人は、エウリアが何か嬉しそうにしているのを見て僕同様に首を傾げる。

 

「どうかしたのかエウリア?」

 

「どうしたのだ?」

 

「あのねレナは、私が心配でオルフェウスを連れて行けないらしいの。だからオルフェウス以外の人に私を守ってもらってオルフェウスにレナを守ってもらうのは、どうかな」

 

「エウリアが心配?」

 

「エウリア嬢は、しっかりとしておられると思いますが?」

 

二人は、どう言うことなのかと聞いてくるので先ほどエウリアに伝えた事を伝えた。勿論ジェレミアが居るので、V.V.の事は隠したが、それでも皇宮内での僕の立場を言えば二人も他の皇族や貴族がエウリアを害そうとする可能性がないとは言えない事に気付く。

 

「確かにエウリア嬢が一人で残るのは、危ないやも知れませんな」

 

ジェレミアは、自分がレレーナの赴任先を知った理由を3人に伝える。

ジェレミアは、皇宮内で他の皇族貴族達がレレーナがE.Uへ赴任するのは実兄のルルーシュやナナリーと同じで人質的役割であり皇帝の勘気に触れたのだと言われていたのだ。そのため居ても立っても居られずジェレミアは、アリエスの離宮へ赴いたのである。

 

「言い触らしているのは、ギネヴィア姉様かカリーヌ辺りだろう。ヴィ家の事がとことん嫌いのようだからね」

 

「でも如何してそんな事を…」

 

「士官学校を飛び級主席で合格した事と機情への入局で殿下の評価は上がっております。その上ナイトオブワンのヴァルトシュタイン卿が、殿下の後見をしております。そのため一部貴族の中で、殿下を支持しようと言う声が出てきております」

 

「具体的には」

 

「ゴットバルト家」

 

「…」

 

「まぁ、分かってはいた」

 

「他!」

 

「元貴族でありますが、ヴィ家の元後援貴族の"アッシュフォード家”」

 

「ルーベンか」

 

ルーベン・アッシュフォード。母マリアンヌの後援貴族であり爵位を没収された後もそれ相応力を持っている爺さんである。現在は、先の『アリエスの悲劇』で警備上の責任を負い当主の座を息子に譲り、隠居をしてエリア11でアッシュフォード学園の理事長に収まっている。しかし隠居をして尚強い力を持っており、アッシュフォード家の動向には確実にルーベンが関与していると思われる。

ルーベンが僕を支持する…。アリエスの悲劇で被った汚名を返上する為かな。それともルルーシュ兄様の為?善意は無いだろうな。

考えても分からない。

 

「…他には?」

 

「後は、軍部に居るマリアンヌ様を支持していた者達かと」

 

「…最前線勤務で皇族や貴族の邪魔が入れば僕達の命が危ないんだけどね」

 

皇帝直属の機密情報局とはいえ、皇族や大貴族と繋がりのない者が居ないとは限らない。敵国に居る諜報員ならば敵国に情報を流すだけで自分の手を汚さずに始末出来る。僕の様な後ろ盾のない皇族なら外交交渉にもならないだろう。敵国で一生刑務所かなぁ、無理だな。

 

「申し訳ありません。軽率な行為でした」

 

ジェレミアが殊勝に頭を下げて謝罪を口にする。それを見たオルフェウスが「全くだ」と言ってジェレミアをジト目で見る。それに気づきジェレミアは、「くっ」と声を漏らす。

 

「まぁいいよ。僕は、ジェレミア卿を信頼しているから」

 

僕がそう言うと「おぉ!殿下!なんと寛大な!!!」とジェレミアが仰々しく応えマシンガン讃美を行おうとする。するとエウリアが手を叩きながらその流れをぶった斬る。

 

「ハイハイ、そう言うのいいからこれからの事言うわよ!」

 

「イ、イエス・マイ・ロード!」

 

「なんかエウリア、肝っ玉母ちゃんみたい」

 

「何か?」

 

「何でもないです」

 

迫力凄いよ、エウリア。

 

「ゴホン。それでどうするんだエウリア?」

 

オルフェウスが咳払いをし、話題を元に戻す。

エウリアを、ブリタニア帝国で一人にするのは危ないから、オルフェウスは連れて行けないとするレレーナを、説得する妙案をエウリアが提案する。

 

「簡単よ。まずレナがユーロピアに行くまでの間にレナの味方になる人を見つけるの」

 

「味方?」

 

「それならばこのジェレミアが!」

 

「ジェレミア卿は、配属先があるでしょ」

 

そう、ジェレミアがよくアリエスの離宮を訪れているので勘違いしそうであるが、彼は既に24歳で軍に所属しているので本人が言うほどレレーナやエウリアを守ると言うことは、難しい。それを指摘され「そうでした」とガックリと膝をつく。

 

「それでレナには、準備期間の一週間でレナの信用できる味方を作ってもらうわ」

 

「一週間で信用できる人は、出来ないよエウリア」

 

「その方法は、後で考えるとしてレナが新しく作った味方に私を守ってもらいオルフェウスには、レナを守ってもらう。どう?」

 

エウリアさん、それギアス使って味方作れってことですね。ジェレミアが居るから具体的に言わないだろうけど、ギアスかぁ。

余り使いすぎてシャルルやビスマルクを刺激したくないけど、仕方ないかなぁ。

 

「オルフェウス、どう思う?」

 

「やり方次第だろ」

 

「そうだね…。ふぅ、エウリアの案を採用して、味方でも作るかな」

 

ギアスを使えば確実だしね。さて、そうと決まれば誰を味方に引き入れるか…。

 

「…殿下、味方に引き入れる者、このジェレミアにお任せ頂けませんか」

 

「ジェレミア卿に?」

 

「ハイ」

 

ジェレミアが神妙な表情で此方を見ている。先ほどの事を気にしているのかとも思ったが、ジェレミアは、原作でも此処でもその忠誠心を疑うまでもない。皇族と祖国に絶対の忠誠を誓うこの男が、皇族である僕の不利になる人物を推薦する事はないだろう。いざとなればギアスを使えば完璧だ。

 

「いいだろう。任せるよジェレミア卿」

 

「イエス・ユア・ハイネス!」

 

さてさて誰を推薦してくるかな…。

でもジェレミア、本当によくヴィ家の人間に協力しようと思うね。他の皇族・貴族達に目を付けられかねないのに…。

その忠誠心は、賞賛に値するよ。

僕だったらまず出来ないと思う。小心者だし。

 

僕の新しい味方は、ジェレミアに任せて僕は、E.U.へ行く準備でもしよっと。

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

皇歴2013年 / 革命暦224年 E.U. ルクセンブルク州 ルクセンブルク市

 

僕が、ブリタニア本国を離れて1ヶ月がたった。機情の潜入先として選んだのは、ルクセンブルク州だ。

ルクセンブルクは、南にフランス、西と北にベルギー、東にドイツが存在している。その為ルクセンブルクでは、英語やフランス語、ドイツ語といったE.U.の主要言語が全て通じる場所であり、さらに州策として金融と情報通信分野が産業振興を図っているので、E.U.における放送メディア産業の中核を担う場所となっている。

E.U.の情報を収集するなら国際金融センターとメディア等を抑えるのが妥当だろうとオルフェウスと共にこの場所に拠点を置いた。

 

「レナ。拠点も戸籍も作ったが、これからどうする」

 

オルフェウスが今後どうするかを尋ねてきた。

 

E.U.へ潜入してから真っ先にしたのが戸籍を作る事である。しかし情報化社会において、ハッキングによる偽造は簡単であるがリスクがある。その為アンダーグラウンドで闇取引されているモノを購入して戸籍を確保した。

電子通貨が一般的になっているE.U.では、偽札等が使用出来ないので他人のIDを拝借して支払った。拝借した人ごめんね。

その後E.U.市民としてルクセンブルク市の郊外に一軒家を購入して拠点にした。更に念の為に複数のアパートや平家を別名義で購入しといた。

 

「まずは、E.U.の機密情報を探る為に何処を攻めるかだけど…」

 

「俺たちで探るのは、時間と労力を使う割には成果が期待出来ないだろ」

 

「そうだね。だからこそ調査をするのは、他の人に任せよう」

 

「他?」

 

「そう。ジャーナリストと言う民主主義の代弁者なる人たちにね」

 

「だがどうやって調べさせるんだ?」

 

「まずは小さい出版会社を手に入れよう。後は、適当に煽れば火がつくだろう」

 

「…なんか本当に適当だな」

 

そんな事言ったってねぇ。複数のモニターを使いながらPCで株式の売買を行ってお金を稼ぎながら思いつく事なんてたかが知れてるよ。

 

「政治家に近づけば機密情報がある場所の情報なんかも手に入るだろうからね」

 

「40人委員会だったか、E.U.の政治の意思決定機関は」

 

「そう、もうじき委員の半分が任期満了で入れ替わる。それに一枚噛もうかなと」

 

選挙があると言う事は、委員にとってお金が必要。さらにライバルの醜聞は欲しいだろう。選挙で負ければ無職になる。今後の生活の為にも委員として豪勢な生活の為にも、みんな必死だ。彼らにとっては、人生の岐路といっても良いだろう。間違いなく利用できる存在だ。

 

「オルフェウスは、これから買収する出版会社に記者として入って貰って委員の醜聞を探してくれる?」

 

「脅しの材料だな」

 

「交渉のカードだよ」

 

脅しだなんて物騒なこと言わないでよ。僕が悪い人みたいじゃないか。

 

「似たような物だろ」

 

「うぅぅ」

 

だって導師が何処にいるか分からない以上知っている人に聞かなきゃダメでしょ。政治家なら政財界の情報も知っているだろう。

早く導師達を暗殺しなきゃV.V.がどう動くか不安だ。

 

「ふっ。それでレナは、どうするんだ」

 

「ここに行くよ」

 

僕がオルフェウスに見せたのは、ある大学のパンフレット。

E.U.では、上位に入る大学で原作ではインド人の天才少女"ネーハ・シャンカール"が卒業したのもこの大学である。

 

「E.U.総合工科大学?」

 

「うん!」

 

E.U.で確りと地盤を作って諜報活動をして行こう。五体満足で生き残る為に慎重に確実にしなければね。

その為には、たとえ子供であったとしても子を想う親だとしても利用させて貰おう。

 

 




次回
『諜報活動始めました』

感想、評価、誤字報告して下さった方々有難う御座います!

思った以上に誤字が多くて驚きました。申し訳ありません。
今後は、出来るだけ無くすように努力いたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 新しい出会い

皇歴2013年 革命暦224年 E.U.

 

レレーナが、E.U.総合工科大学へ編入して4日が経った。僅か11歳の子供が入学して来たことに、大学中が驚愕に包まれた。

何せこの大学史上最年少合格者であったからだ。ただ最年少合格という栄誉な称号は、レレーナの価値を上げるものであると同時に周りからの妬み嫉みの感情を向けられる事になった。

その為、大学でレレーナは、浮いた存在となり大学内での交友関係を広げるのに苦慮する事になった。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

「はぁ」

 

ふと、溜息が出る。大学へ編入して4日が経過したにも関わらず、未だに友人を作る事が出来ず交友関係が広がらないのだ。これでは、学生を使って政治家や官僚、そういった人物に接触できる人物に出会うという目的が果たせない。

そんな事を考えながら大学内の廊下を歩いている。大学での勉強は、そこまで難しくない。ブリタニアで学んだ事が大半である。ただ唯一違うのは、民主主義についてとそれに伴うブリタニア帝国についての事である。

 

E.U.でのブリタニア帝国は、すごい極悪国家として語られている。まず皇族や上級貴族が格下の貴族や平民を蔑み、中級貴族は平民を慰み者にし、下級貴族は平民を区別し、平民はナンバーズを見下して自分達の優位性を示している。こういった歪みが帝国を侵略国家へと誘っているのだと声高々に批判している。さらに帝国では、皇族などの後援貴族が軍需企業の役員であったり会長である場合が多く企業利益を求めて他国へ侵攻しているのだと書かれている。帝国臣民の皇族・貴族への不満を外へ逸らしてさらに企業利益を貴族が求めて侵略戦争をしているのだと教科書に書かれている。これを読めばブリタニア帝国は、ひどい国だと思う。尤も皇帝以外は、そういった考えがあるだろうから否定出来なくて苦笑いするしかなかった。

本当に酷い国だよブリタニアという国は。

 

「さてさて本当にどうしようか」

 

E.U.の上層部に繋がりを持つには、それ相応の身分の子供が必要なのだ。しかし相応の身分の子供と会う事も難しい、接触出来なければギアスも掛けられない。何処の国でも身分ある人間と言うのは、勿体ぶる事が好きなようだ。

これからの予定を考えながら歩いていると廊下の角を曲がった際に誰かにぶつかった。そしてそのまま後ろに倒れそうになった時に誰かに腕を掴まれ倒れずに済んだ。

 

「えっと、有難うございます」

 

僕の腕を掴んだ人は、青い瞳に青い髪で後ろで三つ編みをしたイケメン。顔を見た時に「あっ」と声が漏れた。

 

日向アキト。

『コードギアス亡国のアキト』の主人公でヨーロッパ生まれヨーロッパ育ちの日本人(人種的な意味)である。彼の一族は、ギアスに関わりのある一族であり、兄である日向シンは髑髏と契約する事でギアスを得て一族を皆殺しにしてしまう。本来であればアキトも死ぬ筈であったが、何故か生き残ってしまったと言う設定だったか。

アキトの能力は、高く優れた戦況判断能力と身体能力でKMFを携帯用対物火器で倒してしまうほどであり、KMFの操作技術に至っては特殊な状態とは言え、四大騎士団のエース級やアシュレイから「化物」「死神」と呼ばれるほどである。彼を味方に引き込めれば非常に強力な戦力となるだろう。

 

「すみません。考え事をしていて確り確認をしていませんでした」

 

取り敢えずぶつかってしまった事を謝罪する。

 

「いや、此方も気付かなかった。すまない」

 

アキトは、そう言うと僕に頭を下げて謝罪して来た。そして僕が怪我をしてないか確認してくれた。

どう見てもまだ子供だけど、確かアキトは、皇歴2017年の段階で17歳だから今は、13歳という事になる。だけど対面しているアキトの様子は、大人びていてクールな感じがする。

なんか少女漫画みたいな出会いだな、これ。

 

「いえ、本当に此方こそすみませんでした。僕"レレーナ・ランペルージ"と言います。後々何かあれば連絡して下さい」

 

「日向アキト。分かった、じゃぁ」

 

「っ!?」

 

僕が頭の中でアキトの評価とこれから彼をどうするかで悩んでいると、彼は早々にここを去ろうとしてしまい焦って彼の腕を掴んでしまった。

正直アキトに会えた事で僕は、少し興奮していた。色々言われているが僕自身『亡国のアキト』は、結構好きでアキトとレイラを推していた。イケメンと美女、メシウマだったなぁ。

おっといけない、これは人によるんだった。

 

「…何」

 

「…いや、ちょっとお茶でもしない?」

 

なんで僕は、初対面の人間をお茶に誘ってるんだ…。これじゃ、ナンパじゃん。ダメだ、思った以上に僕は、アキトに会えて冷静さを欠いてる!

落ち着け!レレーナ・ヴィ・ブリタニア!アキトの僕への印象を良くしておかないと!!!

 

「…その歳でナンパか?」

 

「ちがっ!?」

 

「すまない。俺は、そっちの毛色はないんだ」

 

「僕も無いよ!!!」

 

誤解だ!

クソ、不味いぞ!これじゃ第一印象酷いだろ!どうする!?

 

「ふっ、冗談だ」

 

なん…だと…。

無表情で鼻で笑われた。

僕は、アキトに遊ばれたのか…。コイツ、焦る僕を見て楽しんでいやがったな!

 

「お茶しに行くのか?」

 

「…うむ」

 

「うむって、揶揄って悪かった。だから機嫌を直せ」

 

クソ!こんな子供でイケメンだから微笑む姿すら様になってやがる!気が立って口が悪くなったね。フゥ、落ち着こう。

と言うよりもアキトってこの段階で、こんな性格なの?

レイラ達と出会ってから性格が明るくなった訳じゃないのか、どうなってるの?

 

「お詫びにお茶を、奢るよ」

 

「自分の分くらい出すよ」

 

「子供なんだから無理するな」

 

「君もでしょ!」

 

「お前よりは、年上だ」

 

「ぐぬぬ…」

 

このイケメン、ルル兄様やオルフェウスとは、また違うイケメンだ。真顔でツッコいどころのある様なない様な事を言いやがる。

全く仕方ないから奢られる事は、納得しよう。しかしアキトのこの性格は、どうなっているんだろう。それにこのアキトをどうやって此方側に引き込むかと考えながら、アキトと大学の中にあるカフェへと向かう。

 

「それで、どうして俺を誘った?」

 

「迷惑だった?」

 

「いや。だが不思議には、思っている」

 

そう言ってアキトは、視線を周辺へ動かす。それを見て気付いた。ここは、E.U.の大学であるから西欧人が多い。しかしアキトは、日本人であり黄色人種であるので正直目立つ。しかもアキトは、名前から日本人である事が分かっている。そして現在日本人は、ブリタニア帝国によって祖国を占領されイレブンと呼ばれている。

E.U.でも何故か日本人は、敵性国民とされ既に差別の対象にされている。意味が分からないが、大方E.U.の国民の憂さ晴らしの為の生け贄なのだろう。そして今アキトは、周辺の人間に嫌な目を向けられている。

僕も見た目は、E.U.の人間と同じで白人系だからそっちと同じに思われているのかも––––––––––

 

「ぶつかったお詫びとボッチ卒業かな」

 

「ボッチ?」

 

「僕、ブリタニアから来た上にこの年齢だから誰からも相手にされないんだよ」

 

「ブリタニア?」

 

「そう、お家争いでこっち送られたんだ」

 

嘘は、言ってないぞ。皇位継承権争いで後援貴族のいない僕が力を持つには、自分で力を付けなければいけない。その為に機密情報局へ送られたのは事実だ。それで任務でE.U.へ派遣されたんだから。

 

「貴族だったのか」

 

「貴族じゃないね。貴族じゃないけど偉い人の息子だよ」

 

「…そうか」

 

そんな話をしていたらカフェに着いた。窓側の席に向かい合う形で座りメニューを注文する。

 

「それでボッチのレレーナは、一体こんなイレブンに何の用だ?」

 

「ボッチ言うな!」

 

人が気にしている事を…自分で自虐として言うなら兎も角他人に言われると心穏やかじゃないぞ!

全く、無表情で目だけ楽しんでやがる。アキトってこんな性格だったのかなぁ。確かにレイラを揶揄って楽しんでいた事もあったかも知れないけどなぁ。

 

「ふぅ、あと僕がブリタニア人だからってイレブンなんて言わなくて良いよ」

 

「いや、イレブンでいい。E.U.で生まれて育ったが、E.U.人ではない。そして日本人とも言えない。何者でもないんだ俺たちは」

 

法律的には、彼らはE.U.の人間だろう。民族的には、所謂日本人なのだろう。ハーフとかダブルとか言われる混血の人達にも当てはまる事もあるだろうけど、日本人であって日本人でない、E.U.人であってE.U.人でないそんな中途半端さが本人と周りに壁を作り、本人の帰属意識を曖昧にしてしまう事もある。自分が何者なのか分からなくなっているのだろう。

 

ただ話的に重いよ…。そもそも子供に話す内容じゃないだろう、それ。

 

「この大学に来ているんだから分かるだろ」

 

「心を読むな」

 

なんで機情の諜報員の僕が、子供に心を読まれているんだ。ダメじゃん!

 

「目は口ほどに物を言うというやつだ」

 

「日本の諺だね」

 

本当に気が緩んでるな。ちゃんと引き締めないと、此処は敵国、下手したら死ぬ。

それからアキト、日本の諺を使ってる時点で日本人だと思うよ。

 

「これくらいの諺は、誰でも知っているだろ。お前だって知っているじゃないか」

 

「僕は、日本が好きだからね。それから「お前」じゃなくてレレーナ・ランペルージだよ。親しみを込めてレナと呼んでくれ」

 

「レナか、ブリタニア人なのに日本好きとは、変な奴だな」

 

「ブリタニアの国是は、差別ではなく弱肉強食だよ。日本だからどうのって言うのは、国是を曲解している奴だけだよ」

 

実際個人の技量に関わらずブリタニア人だからと言って自分まで日本人よりも優秀だと言う輩は、多い。しかし日本人の中にも優秀な人間は、多い。そもそも人種や国籍に関わらず優秀な人は多いんだ、小さい事で国益を損なう事は無いだろうに。

自信を持って言える、有能人間は人種や民族に関係なく登用すべきであると!!!

 

「本当に変わった奴だなレナは」

 

そんな感心した目で見られると照れるなぁ。

 

「感心した目は、向けてないぞ」

 

コイツ…。

 

「まぁ、これから友達としてよろしく」

 

僕って分かりやすいのかなぁ?でもそれだと諜報活動とか無理じゃね?どうすんだよ、これ––––––––いやアキトが異常に他人の心を読むことが出来るんだろう。そう言う事にしておこう。

そんな事を考えながらアキトに向けて手を出し握手を求める。

 

「今日会って友達か?」

 

「何事も"始めまして"があってその先があるんだよ。いつ会ったかは、友達になるのに関係ないよ」

 

「…そう言うものか」

 

アキトが一瞬周囲を見た。僕やアキトを「子供の癖に」や「生意気だ」とか「イレブンが」などと陰口を言って妬み嫉みの視線を送ってくる。正直いい気はしない。

そしてそれを見たアキトを見て何と無く分かった気がした。僕もアキトも此処に居場所が無いんだと。努力しても認めて貰えず差別され余計に嫌われる。心が少しずつ蝕まれていく感じである。人の悪感情に長く晒されると心が荒むんだよ。だからそんな無表情になるんだ…。

 

僕もブリタニアのペンドラゴン皇宮で皇族や貴族達と過ごしていた時は、あいつらの陰湿な嫌がらせや陰口で殺したくなる事が結構あった。

アキトは、ただでさえ一族が皆殺しになっていて精神状態が良好とは言えない上に、こうやって差別に晒されてきたなら心を閉ざすのも分からなくない。

 

「仲良くしよね!アキトくん」

 

「アキトでいい」

 

フッとアキトが笑い、僕の手を握り返してくれた。うん、やっぱりこの歳でもアキトは、イケメンだ。アキトと友達付き合い出来るのは、楽しみだ–––––––––

 




次回
『諜報活動始めました』

感想、評価、誤字報告して下さった方々有難う御座います!
今後とも頑張っていきたいと思います!
応援してくだされば幸いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 諜報活動始めました-前編

皇歴2013年 革命暦224年 E.U.総合工科大学

 

アキトと友達になって数週間。今僕は、大学内にある8畳程の教室にいる。その教室の入り口から右手奥の壁側に机があり机の前の壁にモニターが数台掛けられており、そのモニターに株価やE.U.内の政治・経済・軍事ニュース、ブリタニア帝国のニュース、ユーロブリタニアのニュースなどが映っている。僕は、その机の前に座りPCとモニターを比べながら今後の計画を立てていた。

この教室は、元々ある教授のゼミ用の教室だったが教授は今部屋の隅で黙って自分の仕事をしている。その両目は、薄っすらと赤く光っているから僕の邪魔になる事は、ない。

 

2日前に僕とオルフェウスが拠点にしていた場所がE.U.の"国内治安総局"と"対外情報総局"と呼ばれる情報機関に家宅捜索を受けた。しかも一箇所だけでなく、複数のダミーの拠点も押さえられたのだ。

具体的には、7つあった拠点の内6つが押さえられた。正直言ってかなり焦ってしまった。何せその6つの拠点は、其々本国の機密情報局、帝国国防省国防情報局、ユーロブリタニア参謀情報部に伝えていた拠点なのだ。そして残った1つの拠点がオルフェウスと二人だけの拠点だった。

 

情報局や情報部に報告していた拠点が全て制圧されたのが偶然かそれとも誰かが意図的に情報を漏らしたのか分からないが、少なくとも用心に越したことはないと少し調べてみたら、案の定情報のリークがあったようだ。

ユーロブリタニア参謀情報部から対外情報総局へ情報が送られ、其処から国内治安総局へ情報提供が行われたらしい。

 

ただ今回のリークに機密情報局が関与していることは、ほぼ確定している。

如何にE.U.の情報部が優秀であろうと皇帝直属諜報機関にスパイを入れるのは、不可能であろう事は明白だ。当然、本国と対立構造を持つユーロブリタニア系の人間も機情局に殆ど配置されていない。それこそ僕と同じ前線勤務の者ぐらいだろう。しかし機情局の情報が流出した事は、間違いない。

となると考えられるのは、

1それぞれの情報機関からE.U.へ情報が流れた

2機密情報局内にスパイがいて国防情報局と参謀情報部の情報にアクセスして情報を流した

3国防情報局内にスパイがいて参謀情報部へ情報がリークされてそれがE.U.へ流した

4参謀情報部内にスパイがいてそれぞれの情報を不正に取得しE.U.へリークした

などの色々な可能性があるが、一番可能性があるのは機情局内にいるスパイが参謀情報部を通してE.U.へ情報をリークしていた線だ。ただしスパイは、E.U.のスパイではなくブリタニア本国のスパイだろう。

正確に言うなら反ヴィ家の皇族・貴族だろうと。僕の情報をリークする所はそこぐらいしか無いと思う。実際如何に皇帝直轄であろうと、そういった皇族や貴族の皇位継承争いに無関係でいられる者は少ない。機情局の幹部の中にも他の皇族の後援をしている貴族が存在する。当然そうなると皇族・貴族達からしてみたら皇位継承権を持つ後ろ盾のない僕は、サクッと暗殺出来る程度の存在だろう。そういった貴族が皇族の意思か皇族への忖度かで僕の情報を売ったのだろう。僕をE.U.に始末させる為に…。

 

そう考えると物凄く不愉快だ。

背中から刺されたような感じ、裏切られた気分だ。まぁ実際どうかは、まだ分からないが何かしらの事があったのだろう。だから此方も何か対応をしないといけないだろう。

だけど今は、まだ何もできない。こんな屈辱を味合わせられて何も出来ない事が歯痒いが、今は暗殺任務とキャリア形成の為にこの任務を遂行しなければいけない。

 

だけど情報をリークしたクソヤローは、いつか必ず見つけ出して地獄へ落としてやろう–––––––––––––––––

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

皇歴2013年 ウズベキスタン共和国カシュカダリヤ州カルシ カルシ・ハナバード空軍基地

 

日も沈み辺りが真っ暗となり目視では、数m先も見通す事は出来ない。そんな暗闇の中を二つの陰が動く。

 

「やっとここまで来れた」

 

「流石に時間が掛かったな」

 

僕とオルフェウスは、ウズベキスタン カシュカダリヤ州にあるウズベキスタン共和国軍の空軍基地に潜入している。

何故ならこの基地に僕がV.V.から出された指令の暗殺対象が、来る事が分かったからだ。暗殺任務は、好きではないがこれも致し方ない。

 

「ターゲットは、何処だろう?」

 

「基地司令部庁舎3階西側の角部屋らしい」

 

「今回も簡単かな」

 

「帝国貴族逹よりかは、難しいだろ」

 

数年前にボワルセル士官学校在籍中に暗殺したブリタニアの貴族は、愛人関係のメイドにギアスを掛けて毒物を飲み物に盛り毒殺した。別の貴族院議員を暗殺する際には、議員と対立していた議員の秘書にギアスを掛けて両議員諸共自爆させた事もあった。用心深く欲深い軍人を暗殺する時は、車の運転手にギアスを掛けて谷底へ車ごと落ちて貰う等して徹底的に自分が表向き関わらない形で暗殺を実行していった。

 

「ターゲットと繋がりのある人物を探すのは大変だね」

 

「直接やるか?」

 

「しょうがないね。関係ない人間に一々ギアスを掛けても無駄だしね」

 

そんな事を言いながら基地司令部庁舎の見取り図を見て侵入ルート決める。

 

「僕は、変装して正面から行くよ。警備室を抑えて監視カメラを無効化したらオルフェウスには、ターゲットに化けて貰って時間を稼いでもらうでいい?」

 

「構わない、時間は?」

 

「5分」

 

「了解」

 

僕が言った時間にオルフェウスが応答する。なんかスパイみたいでカッコイイ!

スパイは、僕なんだけど。

まぁ今回も簡単に片付くでしょ–––––––––––––––––と思っていた時期が僕にもありました。

 

現在僕は、オルフェウスと一緒に基地内の廊下を走っている。背後から機関銃を撃ってくる兵士に追い掛けられながら。

 

「なんでこんな事になるの!?」

 

僕は、叫ぶ!そして走る!背後から近づいて来る敵兵から逃げる為に!

 

「レナが遺体を目撃されるのが早過ぎたんだ!」

 

「いやぁ、遺体を隠すのに時間が掛かっちゃって!」

 

「全く!油断するなよレナ!」

 

「ハーイ!左の角から7秒後に3人!」

 

「了解!」

 

僕は、オルフェウスと話しながら全力で走る。その際にギアスで先を見て敵がどこから出て来るか見て、オルフェウスと対処しながら脱出を目指す。しかし集中してギアスを使えないので、未来を見る事ぐらいしか出来ないのが惜しい。

 

「折角ターゲットをスムーズに始末したのに」

 

「仕方ないだろ。次失敗しない様にしよう」

 

「うん。次の角を曲がった先に6人!」

 

「手榴弾だな」

 

そういってオルフェウスは、手榴弾を僕に渡す。受け取ったそれをピンを抜いた状態にし角に目掛けて投げる。手榴弾は、壁に当たり角を曲がった先に弾かれ転がっていき敵兵の足元に辿り着く。

 

「手榴弾!?」

 

「退避!!!」

 

角の先でそう言った叫び声が響く。その直後、角の先で大きな爆発音と黒い煙、火薬の匂い、焦げ臭い匂いが周囲に広がった。僕たちは、その角を通り過ぎ倉庫に辿り着いた。倉庫の扉を閉めて鍵を掛ける。

倉庫の中には、見覚えのある兵器が鎮座していた。

 

「なんだこれ?」

 

オルフェウスが鎮座している兵器を見て首を傾げる。イケメンだ。

違う!そんな場合じゃ無い。

鎮座している兵器は、戦車の車両部分に胴体が乗せられ両腕が大砲になっている一人乗り用の新型機動兵器の試作先行機『パンツァー』である。これは、E.U.が対ブリタニア戦におけるグラスゴー対策として開発している兵器で所謂KMF擬きだ。

コイツの情報は、僕も持っている。E.U.の情報機関に拠点を抑えられた際に情報収拾をし、その中にコイツの情報が入っていたのだ。

恐らく今後E.U.の主力になるであろう『パンツァフルメン』の旧型と言った所だろう。ちょっと形が似ているし…。

 

「パンツァーだね。E.U.の次期主力兵器だよ」

 

「これでKMFに対抗しようと考えているのかE.U.は!?」

 

「そうだよ」

 

「品位を疑うなコイツは」

 

兵器に品位もへったくれもないでしょ。まぁ確かにKMFの方が遥かにかっこいいけど!

いつか僕らもKMFの専用機を貰える様に頑張るけど!今はこのダサいKMF擬きでこの状態を脱しないといけないんだからね!

 

「まぁ、コイツでどうにかするか」

 

「そうだよ、オルフェウス」

 

そう言ってオルフェウスとそれぞれパンツァーに乗り込み起動する。正直初めて乗る機体なので操作が心配だがなんか感覚的に出来るだろうと思った。操作方法は、一応パンツァーのデータを手に入れた時に見て覚えた上に今も敵が入って来る前に操作方法をいろいろ試している。

オルフェウスも今の内に操作を完璧にするつもりだろう。マニュアルすら見ずに動かし始めているのだから流石オルフェウスだ。

と言う事でオルフェウスも大丈夫だろう。

 

さてさっさと終わらしてE.U.へ戻りたいね–––––––––。




次回
『諜報活動始めました-後編』

やっぱ頭脳戦見たいのを描くのって難しいですね…。

感想、評価、誤字報告して下さった方々有難うございます!
今後とも宜しくお願いします!

<E.U.組織>
●対外情報総局
・国内外で他国及びテロリストの工作諜報活動を妨害し、また他国及びテロリストへ工作諜報活動を行う
・国防省の直轄組織
※フランスの対外治安総局をモチーフにした本作オリジナルです
●国内治安総局
・国内での広域捜査や防諜活動を主任務とする
・内務省の外局
※フランスの国内治安総局をモチーフにした本作オリジナルです

<ブリタニア帝国組織>
●帝国国防省
・ブリタニア帝国の陸海空軍を傘下に収め、陸海空軍の各省の統括組織
※米国国防総省をモチーフにした本作オリジナル
●国防情報局(DIA)
・帝国国防省の諜報機関で主に軍事情報を専門に収拾、調整する機関
・国防情報局長官は、バスクチャ宮にある軍統合本部の偵察作戦支援を担当する幕僚である
・帝国国防省の内局


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 諜報活動始めました-後編

皇歴2013年 ウズベキスタン カルシ・ハナバード空軍基地

 

カルシ・ハナバードはウズベキスタン共和国南部に在る空軍基地であり、対ブリタニア帝国戦における後方支援基地としての役割も有している。この基地に昨日の昼頃から政府要人が視察する事となった。視察は極秘で、要人が来訪する事を知っていたのは軍の高官と基地司令部の司令と警務部隊の精鋭チームだけである。よって基地要員としては、要人を狙った暗殺が起きる事など寝耳に水であった。しかし現実として既に要人は暗殺され、この基地に配備されていたE.U.の最新型機動兵器の先行試作機が敵方に奪取された事実は如何にもならない。

 

「まだ敵を排除する事は出来ないのか!」

 

「ダメです!敵はパンツァーを完全に使い熟しています!」

 

「たかが子供の乗る機体2機!何故止められない!?」

 

基地司令部では基地司令がレーダー要員と口論をしていた。当初司令部内部では要人が暗殺された事で困惑が広がり、更に下手人が子供二人組みである事で更にそれが広がった。それでも子供二人、簡単に事態は解決できると司令部の要員は考えていた。しかし蓋を開けてみれば、子供二人はE.U.から対ブリタニア用として貸し出された新兵器を奪い、基地内部を縦横無尽に駆け回り、破壊の限りを尽くしている。基地の警備部隊だけでは足りないと一般兵士達まで動員しているにも関わらず、未だに事態は終息していない。

 

「敵機A!航空機格納機へ向かっています!」

 

「!?」

 

「ば、爆撃機はまだ出撃出来ないのか!?」

 

「ダメだ!滑走路が壊されて出撃出来ない!」

 

「対地攻撃用VTOLは!?」

 

「敵機Bによって全滅させられました!」

 

「クソ!」

 

司令部内部ではレレーナとオルフェウスに鹵獲されたパンツァーによって齎される事態に悲鳴が上がっていた。喧騒に包まれ一部の者は錯乱してしまい、自身の業務もままならなくなってしまっている。基地司令ですらまともに対応策を示せず、前面にある巨大モニターに次々と映る基地の損害情報を見送っていた。そして思ってしまう、自分達は一体何と戦っているのだと。

 

司令部が混乱し、真面に指示を出せなくなっている状況でも現場の兵士達は必死に鹵獲された2機のパンツァーを破壊しようと戦いを挑む。しかし挑んで行った者から順にレレーナとオルフェウスによってこの世から永久退場させられる。しかもレレーナが駆るパンツァーは基地の兵士達を甲高い笑い声を上げながら蹂躙していき、兵士達の心を砕いて行った。まさに悪魔のような存在に兵士達には見えていた。

ある者は腰を抜かして動く事が出来なくなり、ある者は泣き叫びながら神に許しを請い、ある者は武器を捨て仲間を見捨てて逃げてゆく。しかし、悪魔は彼らを一人足りとも逃さなかった。

 

「ばっ化け物め!来るな!来るな!」

 

そう言って自分の持つ機関銃をパンツァーに向けて乱射する。しかし機関銃程度ではパンツァーの装甲に穴を開ける事は叶わない。そして悪魔によってその存在を認識された兵士は、悪魔の右手より放たれる銀の弾丸によって文字通り四肢を割かれ、八つ裂きにされて死んで行った。悪魔はその人であったものに一瞥もくれず次の獲物を刈り始める。その姿はさながら全てを破壊し尽くす"破壊神"の様だった。

 

ただレレーナ自身はそんな事を考えている暇は無かった。

何せ常時ギアスを使用し未来を見て敵を粉砕していき、パンツァーの精密操作で神経をすり減らしていたのだ。さらにパンツァーは基本大人が操作する為、子供の体であるレレーナでは足がペダルに届かなかったり、操縦桿を動かすのに体全体を使わないといけなかったりと、かなり体力を消費していた。子供時代に車の運転席に座った時のアクセルやブレーキに足が届かない様な感じで体全体を使わなければ操作できないのである。

その上試作機はグラスゴーの試作機同様まともな空調機器がついておらず、コックピット内はまさに灼熱地獄の様な暑さだった。

レレーナは全身の毛穴から汗が吹き出した様な汗をかき、その中で複数の敵と命のやり取りをしていた。人間極限状態になると最後は笑えてくるらしい。その笑い声が兵士達にとっては悪魔の笑い声の様に感じるのだがレレーナにそれを意識する余裕はない。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

さっきから敵がワラワラと基地内部から出て来て本当に面倒。このクソ暑いコックピット内に長時間篭って全身を使いパンツァーを操縦しているのだ。イライラを通り越して最早笑えてくる。人を殺しながら笑っているって、改めて考えるととんでもない狂人だなと…。

これじゃまるで大量殺戮だ。

 

「いい加減に諦めて降伏してくれればいいのに」

 

ついそんな事が口から漏れる。自分は何時からこんなに無情な人間になってしまったんだろう。そう思う反面、この状況でも果敢に挑んで来る敵の兵士達を愚かで弱い奴だと思う自分もいる。ブリタニア皇族として或いは、戦争優位国の人間として負けが分かっている戦いで何故命を賭けるんだと思う。自分が分からなくなる。ただやらなければ殺される。故にやられる前に殺す。そして気付けばこちらに向かって来る者も逃げる者も居なくなり、瓦礫と物言わぬ屍だけが彼方此方に転がっていた。

 

「大丈夫か?レナ」

 

口から漏れた言葉を無線で聞き、オルフェウスがこちら来る。すでにオルフェウスが向かった先の敵施設及び航空戦力は無力化して来たようだ。予想よりも大分早い。大方、僕の方を心配して早めに終わらせて来たんだろう。オルフェウスのパンツァーはよく見ると傷だらけである。

人に心配されるのは嬉しいものだ。ブリタニア皇族に転生してから他人に心配される事はよくあったが、下心無しに僕自身を心配してくれたのはルルーシュ兄様とナナリー、オルフェウス、エウリアだけだったと思う。

…ジェレミアも入るかな?

 

「大丈夫だよ。そっちも終わったみたいだね」

 

「あぁ。後は、司令部だけだ」

 

「じゃぁ其処を落としてさっさと終らせよう」

 

「分かった」

 

そう言うと二人で基地司令部のある庁舎へ戻り、司令部に向かって両腕に付いている52口径120mm滑腔砲を放つ。何度も放つ。結果司令部はすっかり瓦礫の山となり、司令部要員は攻撃の最中に庁舎の外に逃げ、降伏した。

その降伏した者達は全員を拘束して一箇所に纏めて放置した。彼らはすっかり意気消沈して怯えながら俯いていた。

 

「終わったな」

 

「そうだね。これでやっとE.U.へ戻り任務を続けられるよ」

 

「まぁ、増援が来るまではここに居なきゃ行けないがな」

 

「まだまだ時間は掛かるだろうね」

 

「寝てていいぞ、レナ」

 

「オルフェウスこそ疲れてるでしょ?寝ていいよ」

 

「レナよりは、体力もあるしギアスも使ってないから大丈夫だ」

 

「そう言われると反論できないなぁ」

 

「なら寝なさい」

 

「ぐぬぬ」

 

口でオルフェウスに勝てる事は稀なんだ。今回も正論で言い負かされた。

僕の方が年下で体力でも劣りギアスも使用していたのだから、僕の方が疲れているのは明白だ。けれどオルフェウス一人に監視と警戒を任せて寝るのは、いくら図太いと定評のある僕でもどうかと思ってしまう…。何かいい方法は無いだろうか。

 

「レナ、こう言う時は素直に甘えれば良い。これからは、お互いに助け合いながら生きて行こう」

 

「助け合いながら…」

 

「全部自分一人でやろうとしても失敗するだけだ。今レナがすべき事は体を休める事だ。監視と警戒は俺に任せろ」

 

まっすぐとこちらを見てそう言うオルフェウスに僕は息を飲む。イケメンが真剣な眼差しでこちら見ているのだ。

仕方ない、今回はオルフェウスの案を採用して先に僕が休んで後でオルフェウスと交代しよう。

 

「…分かった。ならお言葉に甘えて、先に休ませて貰うよ」

 

「分かったならそれで良い」

 

「その代わり途中で交代ね。2時間で交代だからね!」

 

「分かった分かった。全く」

 

僕が妥協案を出した事で、オルフェウスも納得し仕方ないと言わんばかりの目で此方を見ている。しかしやっぱりお互い疲れているのだ、全部任せるのは良くないと思うんだ。

 

本当はギアスを使って捕虜を警戒に充てたいが、ここは離れていてもE.U.の勢力圏でどこで『時空の管理者』が見ているか分からない。あのよく分からない美女に目を付けられたら五体満足で生き残れないかも知れないから、なるべく使いたくない。特にスマイラスの側はいけない。時空の管理者を利用して友と言っていたレイラの父親である『ブラドー・フォン・ブライスガウ』議員を暗殺しているのだから。かなりスマイラスと時空の管理者は近い存在なのだろう。全くもって面倒極まりない。

 

そんな事を考えながらパンツァーの胴体の上に座り眠りの態勢に入ると、オルフェウスがさり気なくブランケットを掛けてくれた。本当にイケメン。

 

「ゆっくり休め」

 

「…うん」

 

最後にそう言って僕の瞼ゆっくりと閉じて行く。思いの外簡単に寝れてしまう事に驚き、そしてオルフェウスがいる事に安心感がある事に気付く。やっぱりオルフェウスとエウリアは、僕にとって特別なのだと改めて思った–––––––––––––––––

 

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

「起きろレナ。迎えが来たぞ」

 

オルフェウスの声が聞こえるなぁ。もう2時間か…うーん。

 

「むむ」

 

「“むむ”じゃない」

 

おぉ、懐かしいやり取り。お母様とよくやったやり取りだ…。

あぁ起きなきゃ、見張りの交代だからね。…なんかやけに明るいな。

 

「オルフェウス?」

 

「朝だ」

 

朝?

 

「…朝!?」

 

「迎えも来たぞ」

 

「なんで!?どうして!?」

 

なんで朝まで僕は、寝ているの?あれ?起きれなかった…だと。

 

「疲れてたんだよ。起こしても起きなかったんだから」

 

「うわぁ、嘘!」

 

「ぐっすり眠れただろ?」

 

「…うん。ごめんね」

 

「構わない」

 

構わなく無いんだよなぁ。起こされたのに起きれないって言うのは、流石に命のやり取りをしているのに致命的だよ。

 

「心配しなくても、レナは俺が守ってやるから」

 

「…エウリアの守りもあるのに大変だよ。自分の身は自分で守らなきゃ」

 

「エウリアは本国でレナが手を打っただろ?それにレナの『全知全能(The Almighty)』は万能ではあるがレナ自身が万能な訳では無いんだから一人で全てこなすのはさすがに無理があるだろ」

 

確かに全知全能はあらゆるギアスを使用できる上に『ワイヤードギアス』と呼ばれる先天性のギアスなので契約の影響を受けない。そしてV.V.と契約でさらに力を増大させてた。本来であれば一度に一つのギアスしか発動出来なかったにも関わらず、契約後は一度に二つの能力を使えるようになったのである。簡単に言うと『ザ・パワー』を使いながら『ザ・スピード』を使えると言うことである。自分で言うのも何だがチートである。

それでもギアスを使用する僕自身の体がそれについて行かないのだ。体力的にも精神的にも…。

 

「もっと成長すればマシに成るんだろうけどね」

 

「まだ11歳だろ」

 

「オルフェウスは、13歳だね」

 

「あぁ、お兄ちゃんだろ?」

 

「そうだね」

 

そんな優しい笑みで見られると照れるなぁ。でもこう言う会話は、本当に貴重なんだ。

そんな事を考えていると"ラチェット”率いるブリタニア軍第4師団第401大隊がカルシ・ハナバード基地にやって来た。ラチェットたちは基地に来て驚いた顔をしていた。何せ自分たちが救援に呼ばれ来てみたら既に敵の基地は瓦礫の山と化し、司令官達の身柄も拘束された状態だったからだ。特に驚いた顔をしていたのはローゼンクロイツ伯爵だった。僕も驚いた、何でお前が居んだよ。

 

ローゼンクロイツ伯爵。

こいつはTVアニメでルルーシュ兄様が皇帝時に行なった改革に反対し、ジェレミアに鎮圧された貴族の一人だ。この世界では反ヴィ家の貴族の一人でギネヴィア・ド・ブリタニアの後援貴族をしている。

 

事の次第をラチェット達に説明している時、多くの将兵達は驚愕したり、怪訝な表情を浮かべたりしていた。ただローゼンクロイツは苦虫を噛み潰したような苦悶の表情を浮かべていた。大方僕を助けて恩を売り、都合の良いように利用したいと思っていたのだろう。あわよくば此処で殺されてくれればラッキーみたいに考えていたに違いない。それとも救出作戦時にドサクサに紛れて殺すつもりだったのかも知れない。そう簡単にお前達の思い通りなると思うなよ。拠点の情報をリークした奴も含めて、必ず全員に引導渡してやる––––––––––

 

 

 




次回
『帝都狂乱-序』

コメント、投票、お気に入り登録して下さった方々、有難う御座います!
特にコメント、高評価、お気に入り登録は、励みになります!
また誤字報告して下さった方々有難う御座います!これからも間違い等有りましたらよろしくお願いします!

<用語>
『ザ・スピード』
・”コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー”に登場するアリスのギアス能力
・過重力で相対的に超高速を得るギアス

『ザ・パワー』
・”コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー”に登場するダルクのギアス能力
・なんか凄い力(筋力?)を発揮できるギアス

<人物>
●ラチェット
・小説でブリタニア第4師団長で将軍
・ウズベキスタンで黒の騎士団・中華連邦連合軍と交戦した

●ローゼンクロイツ伯爵
・アニメ版において名前だけ登場
・設定は、本作オリジナル


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間1 特別な日

少し遅いですが、お気に入り登録2000人突破記念!


皇歴2011年 神聖ブリタニア帝国 アリエスの離宮

 

僕が、ギアス嚮団からブリタニア帝国へ帰国を果たしてボワルセル士官学校へ入学して暫くして。今日僕は、オルフェウスとエウリアに日用雑貨品や士官学校で使うノートや筆記具、破れた服を縫う為の裁縫道具などを購入しに行って貰い、ジェレミアを密かにアリエスの離宮へと招いていた。

僕とジェレミアは、離宮の中のリビングで向かい合うように立っている。

 

「ではジェレミア卿。卿に特1級命令を言い渡す」

 

僕が腕を後ろに組み、胸を張って仰々しくそう言うと「イエス・ユア・ハイネス!」とノリ良く答えてくれるジェレミア。ノリが良いぞジェレミア!

因みに特1級命令は皇帝が出す勅命を指す言葉であり、原作では準1級命令と言うものをシュナイゼルが出していると思われる。つまりこの言動は、真面目に考えれば不敬罪に問われかねない発言なのだが、今回のニュアンスでは「それぐらいの気持ちでやってね」と言う事である。

 

「本日は、我が兄姉オルフェウスとエウリアの誕生日である!よってサプライズの誕生日パーティーを執り行う事が決定した」

 

「つまり自分もパーティーの準備をせよとの事ですな」

 

「その通り!最高のパーティーを執り行う為に、卿の協力が必要不可欠である!心せよ!」

 

「このジェレミア・ゴットバルト!ご期待には全力で!!!」

 

そう言ってジェレミアは、早速誕生日パーティーの会場を設営し始める。

元々この企画は僕とエウリアとで考えたのだけど、そもそもオルフェウスもエウリアも自分の誕生日を知らないのだ。だから初めは、誕生日パーティーではなくて別の記念パーティーにしようかとも話し合ったのだけれど、誰もが持っている誕生日を祝えないのは寂しいと思い誕生日パーティーにする事にした。まぁオルフェウスは、オルドリン・ジヴォンと双子なので調べれば分かるのだけれど、それをするとエウリアの誕生日だけわからないと言う事に成ってしまい僕の心持ちが悪い。

 

もちろんオルフェウスの誕生日のことは、オルフェウスとエウリアに話したが「知らなくて良い」とオルフェウスに言われたので伝えてない。多分エウリアを気遣ったのだと思う。エウリアは、気にしなくて良いと言うが、そうはいかない。親しい仲だからこそ、使うべき気遣いもあるだろうと僕は思う。

で、まぁオルフェウスの誕生日もあやふやに成ってしまったので、じゃぁ新しく誕生日を作りましょうと僕が提案しエウリアがそれに乗ったのが今日なのである。

 

さてジェレミアがせっせと会場を設営している間に僕も料理の方を作りますか––––––––––––。

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

今私とオルフェウスは、帝都ペンドラゴンで1番大きなショピングモールに来ている。因みに交通手段は、レナがオルフェウス用にと買ったサイドカー付きバイク。買ったのだけど、レナが買ったバイクを改造してオルフェウス用にして最早別物とかしている。レナは機械工作も得意なようで、士官学校でもその才能を遺憾なく発揮している。

 

教官のパソコンにウイルスを仕込みテスト前日に試験問題が生徒全員にメールで配布させたり、授業用のグラスゴーを居住性抜群に改造したり、傲慢な先輩が搭乗するグラスゴーの操作パッドを変更して右足を動かすと左手が動くような設定にして落第させたりと才能の無駄遣いでは?と思わなくもないが、レナは才能に満ち溢れている。優しい子なんだけど…。

 

「親しいやつ以外には、エゲツない事をするがな」

 

「そうなのよねぇ…うん?」

 

「全部口に出てるぞ、エウリア」

 

「え!?は、恥ずかしい!」

 

独り言をブツブツと言ってたと思うと恥ずかし過ぎて顔に熱がたまるのが分かる。

 

「それでレナの機械工作がどうかしたのか?」

 

顔を赤くしている私にオルフェウスは、可笑しそうに聞く。

手を繋いで並んで歩いているので、私がブツブツ言っている内容は、全て彼に聞こえていたのだろう。

 

「今日乗ってきたあのバイク本当ならオルフェウスでも乗るの難しいでしょ?レナの機械工作が役に立つ事もあるんだなぁと思って」

 

「あぁあ、何時もはよく分からない物ばかり作っているからな、レナは」

 

「パソコンは、まだ分かるんだけど」

 

「蓄電池にソーラーパネル、小型の火力発電機、小型ラジコンロボット、小型無人航空機、人工知能の開発とかな」

 

「あの子は、一体どこに向かっているのかしら」

 

「まぁ悪戯では、士官学校で役立ってるぞ」

 

レナは、士官学校でも悪戯をしているらしい。ギアス嚮団でもあの子は、悪戯と称して実験対象の私達に酷い事をする研究者などを色んな意味で抹殺していた。学校でもそんな事をしているのかしら?

 

「そんな危ない事は、してないぞ。俺も見ているからな、精々ドローンで教官のカツラを飛ばしたり、試験問題を流出させたり、ラジコンロボットで女子風呂を覗く手伝いをしたり」

 

「女子風呂?」

 

「あ!」

 

「どう言う事?」

 

本当にどう言う事!?あの子そんな事してたの?オルフェウスなんで止めないの!?まさか貴方も一緒になって覗いてた訳じゃないでしょうね!

 

「ご、誤解だ!エウリア!覗いてない!覗いてない!」

 

本当に珍しくオルフェウスが狼狽している。

この様子だと本当に覗いていないのだろう。まぁジト目で見てしまうけど。

 

「た、確かにレナは、ラジコンロボットにカメラを搭載して女子風呂に突撃させて男子生徒の覗きを手伝おうとしたが、女子風呂に入って待ち構えていたら風呂の中に男の教官が素っ裸で入ってきて全員膝を着いて見るのを辞めていた!」

 

「…男子風呂に突撃してたって事?」

 

「…いや、女子風呂だった」

 

なんで女子風呂で男の教官が入浴してるのよ!大丈夫かしらその士官学校…。

 

「その教官は、その後クビになったから大丈夫だ」

 

「ナチュラルに心読むのやめて…」

 

「口に出てる」

 

「…またかぁ」

 

思った事が口に出るのは、良くないわね。

あぁ、だから私嚮団でも「スパイには、君向いてないね」と言われていたのか。確かに思った事を口にする諜報員や工作員は、居ないわね。

てっきりギアスが使えないからだと思ってたわ。

 

「まぁこの話は、帰ったらレナに説教して終わりね」

 

「…すまんレナ」

 

「オルフェウス?大体何であなたレナを止めないのよ?お兄ちゃんでしょ!」

 

「いやまぁ、そのぉ」

 

ええい!歯切れが悪い!こんなオルフェウス初めて見た。

でもまぁ、普段の冷静でかっこいい大人の感じも好きだけど、こう言うオドオドしてるのも新鮮で可愛いなと思ってしまう私は、相当オルフェウスの事が好きなんだろう、何んか自覚すると恥ずかしいなぁ。まぁ今問い質すのが先にね。

 

「その?」

 

「…買収されました」

 

買収!?まさかお金貰ったの?

 

「何を貰ったの」

 

「…バイク」

 

あれかぁ。今日乗って来たやつね。うーむ役立ってるわね。仕方ない、私も恩恵を受けていた訳ね。

くっ、レナに上手くしてやられたわね。今日この場所にパーティーの為の時間稼ぎを依頼したのも、オルフェウスならバイクを使うと読んでのことね。私も使えば説教は、ないだろうと考えた訳だ。

 

「でもどうしてバイクで買収されたの?バイク好きだったけ?」

 

「エウリアと二人で出掛けるなら何か足があった方が良いだろうと思って…」

 

うん、好き。

 

「そういう所も好きよ」

 

「ありがとう」

 

素直にそう言うとオルフェウスは、少し頬を染めながらそう返してくれた。多分私も似たような顔をしているのだろう。

なんか周りから生暖かい目で見られるから早く買い物を終わらせて帰りましょう!

 

「うん!じゃっ早く買い物をしてデートでもエスコートして貰おうかしら」

 

「ふっ、喜んでMy Princess」

 

オルフェウスがそう言って私の手の甲に口付けをする。

なんて様になっているのだろう。かっこいい…なんか私の反応レナに似てきたかしら––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

ジェレミアが会場の設営を終えて既に完成している料理を机の上に運んで並べてくれている。皇族や大貴族のパーティーみたいにすごい量の料理がある訳ではなく、一般家庭でする様なパーティーなのでマリアンヌが健在であった時程も品数は無い。

そもそも僕が自分で作っているのでそんな品数を作れない。でもまぁ喜んでもらえる様に頑張って作りましたとも。

 

そんな感じで準備をしていると、エウリアからもうすぐ着くと連絡があった。

程なくしてオルフェウスとエウリアが帰宅した。

 

「お帰りに~オルフェウス!エウリア!」

 

「ただいまレナ」

 

「ただいま」

 

僕の言葉にしっかりと「ただいま」を返してくれる二人。家族っていいねぇ。

挨拶を終えた後、オルフェウスが日用雑貨を倉庫や収納に片付けエウリアが食材を僕と一緒にキッチンへ運ぶ。

 

「お疲れエウリア、デートはどうだった?」

 

「やっぱり気付いてたのね」

 

「バイクはその為だからね」

 

「女子風呂を覗いた件については、後でお説教ね」

 

「うぇ!?オルフェウス、それも言ったの!?」

 

何で言ったんだオルフェウス!?そんなこと言ったらエウリアの評価が下がっちゃうじゃん!

 

「口を滑らせたわ」

 

「…」

 

オルフェウス。

 

「レナ」

 

「ごめんなさい」

 

だってあの教官が…。しかしここで言い訳をすれば説教が長くなる。

ここは、耐え時だ。

 

「まぁこの話は、後にして準備は出来た?」

 

「勿論」

 

「なら私がオルフェウスをリビングへ連れて行くわ」

 

「了解」

 

さてさてサプライズパーティーの始まりだ–––––––––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

パンパンとクラッカーの音がリビングに響く。クラッカーから出た銀テープは、先ほど扉から入ってきた金髪のイケメンの頭にも引っ掛かっている。

金髪のイケメンは、目を開いて驚いた表情をしていて驚かす事は、成功した様だ。

 

「オルフェウス!エウリア!誕生日おめでとう!!!」

 

「おめでとう!オルフェウス、エウリア嬢!このジェレミア心からお祝い申し上げる!」

 

僕とジェレミアが二人に祝いの言葉を送ると、オルフェウスはさらに困惑した様子で僕とエウリアの方キョロキョロしている。勿論オルフェウスの気持ちもわかる。そもそもオルフェウスもエウリアも自分の誕生日を知らないので今日が誕生日と言われてもピンと来ないのだろう。

 

「ふふ、驚いたオルフェウス?」

 

「あ、あぁ」

 

「実はね、オルフェウスの誕生日はレナが調べて分かったらしいけど、オルフェウスが私に遠慮して聞かなかったでしょ。だからそれだとあなたの誕生日をお祝い出来なくなってしまうし、レナはオルフェウスと私の誕生日をお祝いしたいと言ってくれてるから、貴方が貴方の誕生日を知るまでは、私と同じ今日を誕生日にしてお祝いしましょってレナと話したの!」

 

「え、あ、そうか」

 

「嫌だった?」

 

「いや、そんな事は無い。嬉しいよ」

 

「良かった!」

 

エウリアは、本当に嬉しそうにしてオルフェウスの手を引いて料理が並べられた机の席に着く。オルフェウスも心成しか嬉しそうだったのでサプライズパーティーは、成功だろうか。

 

「この料理、全部レナが作ってくれたのよ!」

 

「全部レナが、凄いな」

 

「でしょう!」

 

「あぁ、ありがとうレナ」

 

「喜んでもらえて良かったよ」

 

部屋の装飾は、ジェレミアがした事も伝える。すると「ありがとうジェレミア」とオルフェウスがお礼をジェレミアに言う。相変わらず呼び捨てなのね、オルフェウス。オルフェウスの礼に続きエウリアも僕とジェレミアにお礼を言ってくれた。

 

「しかし何故今日が二人の誕生日になったのですか?」

 

「あぁ、それはね」

 

「今日は、俺とエウリアが初めて施設で出会った日だからだろ?」

 

エウリアが、ジェレミアの質問に答えようとすると、それを遮りオルフェウスが答えを言う。

 

「え!?覚えてたの?」

 

「当たり前だろ?」

 

「さすがオルフェウス」

 

そんな話をしながらみんなで食事を始める。

 

「でもごめんねオルフェウス。勝手に決めちゃって」

 

「いや、エウリアと同じって言うのは嬉しいよ」

 

「でも本当の誕生日じゃ無いよ?」

 

エウリアとしては、本当のオルフェウスの誕生日をお祝いしてあげられないのが申し訳ないのかもしれない。気を遣われた事で少し後ろめたく感じているのかもしれない。オルフェウスは、そんな事気にしていない様ではあるが…。

よし、そんな二人にこの言葉を贈ろう。

 

「みんな同じさ、“自分が生まれた日が何時か”なんて覚えている人なんて居ない」

 

「…」

 

「ただ自分が信頼する人が告げる日を、そのまま信じるしかないんだ。本当かどうかは、問題じゃない。“自分の誕生日を知っている”それ自体がすでに幸せなんじゃ無いかと僕は思うんだ」

 

「…知っている事が」

 

「だから今日僕は、二人が生まれてきてくれた事を嬉しく思うし、心からお祝いするよ。誕生日おめでとう。オルフェウス、エウリア」

 

「ありがとう、レナ」

 

「あぁ、ありがとうレナ」

 

そんな事を話しながら後々どんちゃん騒ぎを起こして賑やかに二人の誕生日を過ごした。途中からビスマルクが来てオルフェウスとエウリアに誕生日プレゼントを渡してきたり、ジェレミアがお酒を飲んでブリタニア国歌を熱唱していたり、届出人不明のオルフェウス宛のプレゼントが贈られてきて騒ぎになったり、日が暮れて中庭で打ち上げ花火を打ち上げたら警備の人間がすっ飛んで来たりと楽しい日になった。

 

あとオイアグロ、匿名でプレゼントを贈るなら剣にジヴォンの紋章を彫るな!

 

まぁ、本当に忘れられない楽しい5月15日になった––––––––––––––––。

 

 




次回
『帝都狂乱-序』

コメント、高評価、お気に入り登録、有難う御座います!
今後とも宜しくお願い致します。

今回はまぁ甘い話になりました。

5月15日
『オズの魔法使い』を執筆したライマン・ブランク・ボーム氏の誕生日です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 帝都狂乱-序

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

「これより"決闘の儀"を始める!両者前へ!」

 

闘技場の中央で高らかに宣言する帽子をかぶり白と薄紫のストライプ柄の服とズボンを身に付けている男。

その男の声に従って闘技場中央へ歩を進める二人の影。

一方は、30代くらいの背の高い優男。優しげな顔の割にしっかりと鍛えられた肉体は、服の上からでもよく分かる。腰には、二本の剣を携えゆっくりとした足取りで闘技場中央へ向かう。

 

もう一人は、10代前半の様な子供であり体も未だ発達段階の未熟なものだった。金髪で後ろ髪を編んでいるその子供は、誰が見ても美少年でありその立ち振る舞いから高貴な子供である事は、すぐに分かる。誰が見ても場違いなその子供は、しかししっかりとした歩みで闘技場中央へ進みまっすぐと対面の男の顔を見た。

 

「両者!正々堂々一本勝負!始め!!!」

 

帽子の男の宣言と共に金髪の子供が、対面の男に斬りかかる。その速度は、常人では捉える事すら難しいものであった。しかし対面していた男は、その一太刀を自身の持つ二つの剣を胸の前で交差させて受け止める。受け止められた金髪の子供は、それでも冷静に次の行動へ移る。鍔迫り合いの要領で反動をつけて後ろに飛び下がり、剣を構え直す。そして再び初撃を上回る速度で攻撃を繰り出す。その上初撃とは違い何度も何度も攻撃を仕掛ける。それを受け流し受け止め躱すを最小限の動きでやってみせる男。戦いを見て観客は、この決闘のレベルの高さに言葉を失う。二人の実力は、まさに一流の騎士だ。

 

「くっ」

 

「…」

 

一人は、ブリタニア帝国の下級貴族でありながら裏ではブリタニア皇室に忠誠を誓い一切の汚れ役を引き受ける『プルートーン』の首領を務める"ジヴォン家”の当主オイアグロ・ジヴォンである。

オイアグロは、ブリタニア屈指の剣術家でありその実力はナイトオブラウンズに勝らずとも劣らないものである。そしてギアスの事も知っているブリタニアでも極めて少ない人物の一人でもある。

 

「これ程の実力とは…」

 

そんなオイアグロと対等に戦う金髪の少年に観衆の目は向く。その剣技は、オイアグロに劣らぬものでスピードに至っては、オイアグロを凌駕していた。そして側から見ていては分からないが、剣を交えるオイアグロは、はっきりと感じていた。子供が振るう剣にしては異常に重く、それが自身の知る『超常の力』によるものだと…。

 

神聖ブリタニア帝国第17皇子レレーナ・ヴィ・ブリタニア。

オイアグロを相手に、剣を交える金髪の少年の名前。元ナイトオブシックスにして『閃光のマリアンヌ』『不死身の魔女』と呼ばれていた皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの次男であり、現状確認されているヴィ家唯一の皇子である。その剣技は、亡きマリアンヌを彷彿とさせるものがありシャルルやビスマルク、コーネリアにとって懐かしさすら感じさせるものであった。

 

そもそも何故レレーナとオイアグロが戦っているのかと言うと、それは1週間前に遡る–––––––––––––。

 

 

 

レレーナとオルフェウスは、ウズベキスタンでの暗殺任務の後E.U.へ戻り機情局と国防情報局(DIA)、ユーロブリタニア参謀情報部からの情報リークについて調査を行なった。丁度いい事にウズベキスタンでの捕虜の中にE.U.の対外情報総局(FIGD)の諜報員がおり、その人物から『ザ・リフレイン』を使って記憶を読み取りFIGDの他の諜報員や暗号について情報を集める事が出来たのだ。

その結果ユーロブリタニア参謀情報部より情報がリークされた事が分かった。その上機情局の情報までもユーロブリタニア参謀情報部からリークされていた事が判明。

 

レレーナは、ユーロブリタニアへ向かい機情局の情報をどうやって入手したのかを探った。

 

当然レレーナのユーロブリタニアへの訪問は、内密に行われていたので調査は難航した。しかし参謀情報部監察室の人間にギアスを掛けて調査を代行させる事で情報は、思った以上に早く集まった。

 

結果として機情局の情報を参謀情報部へ流したのは神聖ブリタニア帝国第1皇女『ギネヴィア・ド・ブリタニア』の後援貴族であるバレッタ子爵だった。この貴族は、大陸系貴族でありユーロブリタニアに近い事は、公然の秘密である。

そしてギネヴィア自身、ユーロブリタニアの宗主であるヴェランス大公の息子と結婚しており娘が今年生まれている。その為彼女は、本国とユーロブリタニアの関係を改善しようと躍起になっている。又自身が皇帝になる為にユーロブリタニアの支持を必要としており、情報のリークはその為の点数稼ぎの一面もあった。

 

国防情報局(DIA)の情報を参謀情報部に流したのも本国の貴族だった。ただし此方は、大陸系ではなく神聖ブリタニア帝国第5皇女『カリーヌ・ネ・ブリタニア』の後援貴族をしている男だ。ギネヴィアもカリーヌも反ヴィ家の皇族で、その後援貴族達が命令か忖度かで情報を流していたのだ。

 

そしてローゼンクロイツ伯爵は、"レレーナがウズベキスタンへ向かった"と言う機情局からの情報を入手したギネヴィアが、軍統合本部へ圧力を掛けて増援として派遣させたようで、通信記録から捕虜となったレレーナを事故に見せかけて暗殺する様に命じられていた様だ。だからこそ基地に到着した際に、全て終わっていた事に苦悶の表情を浮かべていたのだ––––––––ギネヴィアにどうやって報告するかについて考えていたのである。

 

こういった情報を入手したレレーナは、一度本国へ戻り本国の情勢を自身の目で確かめようと考えた。

 

しかし本国へ帰国しアリエスの離宮へ戻ったレレーナを待っていたのは、オルフェウスを連れて行こうとするオイアグロであった。ヴァルトシュタイン家の養子となっているオルフェウスをオイアグロは、ギネヴィア達と結託してビスマルクを説得しジヴォン家に引き込む事にしたのである。

図らずもウズベキスタンでの報告を受けていたギネヴィアは、レレーナとオルフェウスの強さについて知る事となった。その為、レレーナの力を削ぐ為にオルフェウスを奪い取りオイアグロに恩を売り、あわよくば自身の力としたい思惑があった。又自身の力にならずとも、家族をテロによって失った妹『マリーベル・メル・ブリタニア』の力になればと考えたのだ。

 

が、この事案がレレーナの逆鱗に触れた。

自身の抗議を無視しエウリアを悲しませた事でレレーナは、遂に実力行使に出る事を決意した。レレーナは、真っ先にビスマルクに斬りかかり負傷させてしまう。結果レレーナは、内密にアリエスの離宮で謹慎するする事が決定した。しかしレレーナは、今までシャルルやビスマルク、V.V.への配慮の意味も込めてギアスをあまり使用して来なかったが、この一件でその枷が外れてギアスを多用する様になる。

 

そして事件が起きる。ある大貴族が自身の邸宅から勤め先の会社へ向かっていた際に暴漢に襲撃され重傷を負わされたのである。この事件は、流しの犯行で犯人の特定には時間が掛かっていた。捜査機関が怨恨、通り魔の両方で捜査をするも犯人の足取りさえ掴めなかった。そうこうしている内に第2第3の事件が発生する。そしてさらに事件は過激化して行き、とうとう皇妃の一人までもが襲撃され重傷を負ってしまった。

 

事態を重く見た帝国特務局は、事件の捜査を捜査機関から特務局へ移し警備と捜査を行う。

すると特務局は、ある事に気付く。襲撃された皇妃や貴族には、共通点があったのだ。

 

襲撃された皇妃、貴族は、ヴィ家に対してキツく当たっていたのだ。所謂反ヴィ家と呼ばれる勢力だった。特務局がその事実に気付いた時には、機情局の人間が皇妃や皇族の警護と言う名目で堂々と皇妃や皇族貴族達を監視していた。

 

監視している理由の一つに今回襲撃された皇妃、貴族達に機密情報漏洩の嫌疑が掛けられていたからである。

 

既に皇族や皇妃、その親衛隊から多くの苦情が機情局や特務局へ寄せられていたのだが機情局は、一切そういった苦情を受け取らなかった。それどころか皇族貴族たちは、より厳しい監視下に置かれ現場では、親衛隊と機情局とで衝突が多発していた。当然苦情は、特務局へ集中し状況打開の為にベアトリス・ファランクス特務総監は直接機情局長官を糾そうと考え機情局庁舎へ向う。

 

当初ベアトリスは、ナイトオブワンであるビスマルクにも意見を聞きたいと思っていたのだが、襲撃事件はビスマルクも含まれていたのだ。しかもビスマルクは、この数日間ですでに50回以上襲撃をされていてろくに仮眠を取る事も出来ない状態であった為、意見を聞くのを見送りにしたのである。だからこそベアトリスが機情局庁舎を訪れたのである。

 

しかしそこでベアトリスは、衝撃を受ける。

 

初めは、少し違和感を感じた程度であったが長官と会談をしている内に長官の言葉の端々に襲撃された皇妃や貴族への嘲笑の様なものが感じられたのだ。さらによく長官を観察すると、長官の目が薄っすらと赤色がかっていた事に気付く。ベアトリスは、サーと血の気が引いて行くのを感じた。慌てて会談を終えて庁舎を出ようとした時にさらなる衝撃を受けた。よくよく周りを見ると庁舎の警備員や受付、案内人、すれ違う職員、誰を見ても皆薄っすらと目が赤く光っているのだ。ベアトリスは、機情局が何者かのギアスによって制圧されている事に気付くも時すでに遅しであった。

 

「こんにちは、ベアトリス特務総監」

 

後ろから聞き覚えのある声を掛けられ振り返る。振り向いた先に立っていたのは、帝国の皇子にして機情局の現役の諜報員レレーナ・ヴィ・ブリタニアだった。レレーナは、現在ナイトオブワンに斬りかかった為にアリエスの離宮で謹慎中の筈である。にも関わらずレレーナが堂々と機情局庁舎内に居るという事は、機情局を制圧したと思われるギアスユーザーは、レレーナであるとベアトリスは考え付く。

 

レレーナのお気に入りがビスマルクの養子となっており、最近ジヴォン家に連れて行かれた事は、ベアトリスも把握していた。ビスマルクもベアトリスもそれを止める事はしなかった。それの報復が、今回の事件なのだと考えてしまう。

 

「…殿下」

 

「ふふ。何もそんなに怖がらなくてもいいでしょう」

 

ベアトリスは、今でこそ特務総監の地位にいるが元々は帝国最強の騎士の一人ナイトオブツーであり様々な苦難苦境を超えてきた。それでも今レレーナから発せられる異様な威圧感に膝をついてしまう様な、逃げ出してしまいそうな自身に驚いたと同時に、そうさせるレレーナに対して恐怖を感じていた。

これ以上一緒の空間には、居られないと思い足早にその場を離れようとするが周囲を機情局の職員に囲まれ身動きが取れない。

 

「殿下、これは一体どう言う事でしょうか?」

 

「何、要件はすぐに終わりますよ。ここで気付いたことを忘れて貰おうと思いまして」

 

「何を!?」

 

「レレーナ・ヴィ・ブリタニアが刻む!偽りの記憶を!」

 

レレーナの瞳から赤き光が飛び立ち、その光はベアトリスの瞳に吸い込めれて行く。そこでベアトリスの意識は途絶える。

 

ふと意識が戻った時、ベアトリスは既に機情局から特務局へ戻る車両の中に居た。そしてペンドラゴン皇宮でビスマルクと出会い機情局で得た情報を共有する。その際にビスマルクから機情局の様子を聞かれ特に変わった様子は無かった(・・・・・・・・・・・・・)と伝えたのだった––––––––。




次回
『帝都狂乱-破』

コメント・評価・誤字報告有難う御座います!
今後ともよろしくお願いします!

<ブリタニア帝国人物>
バレッタ子爵
・断章『ゼロの男』に登場したデラ・バレッタの両親(本文では父親を指す)
・設定は、本作オリジナル

<ギアス>
『ザ・リフレイン』
・ナイトメア・オブ・ナナリーに登場したマオのギアス
・相手のシナプスサーキット(脳を含む全神経)を認識・改編する力
・対象者の記憶を呼び起こしループさせたり、相手のシナプスサーキットに集中して心を読む事ができる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 帝都狂乱-破

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

帝都ペンドラゴンでは、現在厳戒態勢が敷かれている。数日前より大貴族や皇妃が何者かに襲撃される事件が多発し、その上未だに犯人が特定されていないからだ。襲撃された皇妃や大貴族は、特務局の捜査により所謂反ヴィ家派閥である事が特定されているが、一人だけ当て嵌まらない人物が存在した。

 

それが帝国最強の騎士ナイトオブワン-ビスマルク・ヴァルトシュタインである。彼は、ヴィ家のマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアと血の紋章事件以前よりの付き合いを持っておりマリアンヌとは、親しい間柄であったのだ。しかし彼もここ数日の間に何十回も襲撃を受けている。ナイトオブワンとして全て自ら撃退しているが、流石に昼夜問わず襲撃を受ければ心身共に疲労が溜まっていた。

 

今彼は、帝都ペンドラゴンにあるナイトオブラウンズが使用して居るインバル宮で彼自身ににあてがわれている執務室に居る。そして今ペンドラゴンを騒がせている連続襲撃事件について考えた–––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

ビスマルク自身襲撃されながらも今回の一連事件について調査し考えていた。そして大凡の答えに辿り着いた。

 

「どうやってこの問題を終結させるか…」

 

今回の一連事件は、間違いなく自身が敬愛するマリアンヌ様の次男であるレレーナ殿下が主犯である。レレーナ殿下は、現在アリエスの離宮で謹慎をしておりナイトオブラウンズが3人で監視をしている事は知っている。しかしレレーナ殿下が、主犯である事は間違いない。と言うよりも離宮で謹慎しているかどうかすら怪しい。ギアスを使えばどうとでもなる。

 

事の発端は、オルフェウスを無理やりジヴォン家の養子とする為に実質拉致しレレーナ殿下の抗議を聞き流した事で間違いない。そしてそれに対する報復が、この一連事件だ。いや、勿論私のミスではあるが…どうしたものか。

 

既にその事案に関わっていたギネヴィア第1皇女やカリーヌ第5皇女、ジヴォン家そして私自身に関係する貴族達が悉く襲撃され重傷者も出ている状態だ。死者が出ていない事は、幸いであるがいずれ出るであろう事は間違いない。レレーナ殿下は、こういった場面で容赦する様な性格をしていない事は、幼少期から知っている自分が一番よく知っている。

 

「一番妥当なのは、オルフェウスをレレーナ殿下にお返しする事であるが…返したからといって、事態が終結する事はないだろう」

 

仮にもしオルフェウスを返すことで事態が終結した場合、事件の背後にレレーナ殿下が居たことが公然の事実となってしまう。そうなると今後他の皇族貴族から恨み買ってレレーナ殿下方が生活し難くなってしまうからだ。保身に()けたレレーナ殿下なら必ず事件と自分は、関係ないという事にするだろう。例え当事者達がレレーナ殿下が主犯だと考えても大衆にまでその事実が、出てこないようにする為に違うと言い張るはずだ。

 

またギネヴィア皇女殿下方も何かしらの報復に出る可能性が高く、事態の沈静化には容易為らざるものがある。レレーナ殿下とギネヴィア皇女殿下方の両方の顔を立てる方法を考えなければいけない。

 

「シュナイゼル殿下か…」

 

咄嗟に帝国の若き宰相シュナイゼル・エル・ブリタニア第2皇子に相談する事も考えたが、シュナイゼルはビスマルクから見ても優秀であり常に優しげな仮面を着けているので何を考えているのか計りかねる時があるのだ。それ故に相談する事を躊躇ってしまう。

 

しかし時は、一刻を争う事態だ。恐らく既に機情局は、レレーナ殿下の手に落ちているだろう。その上、帝国特務局もレレーナ殿下によって因果を含められている可能性は高い。何故ならベアトリスが襲撃事件での機情局の対応について質しに行った帰りしなに情報共有の為に話せば、機情局では特に何も無かったと言うのだ。

 

この事件では、間違いなく機情局とレレーナ殿下が関わっている。何故なら皇族や大貴族を襲撃する事件が多発している時に、情報漏洩の摘発を始めたからだ。何もないとは、思えない。そしてそれに気付けぬベアトリスでは、ないのだ。つまりベアトリスは、気付けなかったのか、忘れさせられたのか、敢えて何も言わなかったのかと言う事になる。忘れさせられた可能性もあるが、最悪取り込まれた可能性も無くは無い。

 

そうなった場合、機情局と特務局がレレーナ殿下についていると言う事でありそれは、主君であるシャルル陛下にとって脅威になり得ると言う事だ。

 

もしそうなっていた場合、ナイトオブワンとして皇帝陛下の騎士として自分だけでも守らなければいけない。

 

ただ、そうは言っても現在進行形で自分が襲撃されている状態では、シャルル陛下を守る事も難しい。

しかも襲撃をされている理由が、「妻を寝取られた」「娘を弄んで殺した」「息子がパワハラで自殺した」「父が…」「甥が…」と外聞が悪い内容ばかりなのだ。彼等とは一切面識がない。にも関わらず彼らは、「私が」と言う。その上彼等は、自分が言っている事が絶対正しいと思っている。

 

実際は、お前の妻は幼馴染の男と駆け落ちしているだろう!お前の所は娘じゃなく息子だろ!お前の息子は受験鬱で今も引き篭もって居るままだろ!お前の父は!お前の甥は!私は全く関係ない!!!なのに何で私の事を恨んでいるんだ!?風評被害も甚だしい!!!

 

いや、勿論分かってはいるが。恐らく記憶を書き換えられたか、思い込んでいるかのどちらかだろう。そんな事が出来るのは、帝国広しと言えどシャルル陛下とレレーナ殿下だけではないか。そして自分にこんな仕打ちをするのは、間違いなくレレーナ殿下だ。全知全能(The Almighty)を使えば、シャルル陛下のギアス能力を使用する事も容易いだろう。オルフェウスの事では、確実に自分も恨まれているだろう。

 

考えが甘かった…。オルフェウスにとってジヴォン家は生家であり、オルドリンとオイアグロは血縁者であるのだ。一緒にいた方が良いだろうと考えたのだが、レレーナ殿下にとってはいけなかった様だ。マリーベル殿下のメル家は、ヴィ家とも関係が良好でジヴォン家はその後援貴族。ヴィ家の悪い様にはならないだろうと考えたが、レレーナ殿下はエウリアと呼ばれる少女の心情を優先した。その上ギネヴィア皇女殿下なども関わった所為で政治的な意味を帯びてしまった…。その結果がこの騒乱だ。

 

自分だけならまだいいが、シャルル陛下にまで累が及ぶのは防がなくてはいけない。

 

「とにかくレレーナ殿下を抑えなければ…」

 

だがいい方法が思いつかない。下手に接触すればレレーナ殿下のギアスが飛んでくる可能性があり、面と向かって会うことすら憚られる。いや寧ろ真っ先に斬りかかられた際にギアスが使われなかった事は、幸いであった。

 

「ジヴォン卿と一度話した方が良いだろうな」

 

ビスマルクは、今後のことでオイアグロと会って事態打開策を考える事にした。しかし彼は、知らない。既にオイアグロ率いるジヴォン家にもレレーナの魔の手が迫っており、危機的状況になっている事に。

 

日が暮れ辺りが真っ暗となり街灯の光が街を照らすようになった時、ビスマルクがインバル宮を出てオイアグロの元に行こうとした。それと時を同じくしてペンドラゴンで更なる事件が発生する––––––––。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

ビスマルクが、インバル宮からジヴォン家の屋敷に向かおうとしている時、時を同じくして神聖ブリタニア帝国第5皇女カリーヌ・ネ・ブリタニアは、視察先の劇場から自らが住む離宮への帰路についていた。

 

「カリーヌ様、明日は午前よりホテル・グレートペンドラゴンでの親善パーティーがございまして、午後2時よりギネヴィア皇女殿下との会食が用意されております」

 

「こんな時に親善パーティー?」

 

「こう言った時だからこそ、貴族達と結束して行こうと言う事だと思われます」

 

カリーヌは、乗っているリムジンで対面の席に座っている執事が明日の予定を淡々と言う事にイライラしていた。今自分たちの後援をしている貴族や企業の役人達が次々と襲撃されているのだ。中には、自身の母も襲撃され重傷を負わされているのだ。こんな時集まってパーティーなど警戒心が無さ過ぎるのではないかと思ってしまう。

 

「ご安心下さい姫様。姫様は、この身に代えて私が守ってみせます」

 

カリーヌがイライラしている理由がわかる、彼女の選任騎士『ダスコ・ラ・クレルモン』は彼女を安心される為に口にしてハッキリと伝える。自分が守る故パーティーに参加して欲しいと。

カリーヌ自身が、自分も襲撃されるのではないかと不安に思っており、それ故にストレスからイライラしているのだ。その上機情局があからさまに護衛名目で自分を監視している事もストレスの原因となっている・

 

「はぁあ…ダスコしっかり守ってね」

 

「イエス・ユア・ハイネス。この命に代えても」

 

カリーヌの隣の席に座っているダスコは、体をカリーヌの方へ向け頭を下げる。

 

「では、明日のパーティーには参加の方向で宜しくお願いしたします」

 

カリーヌは、思う。この執事、今日はやけに図太くはないだろうか。そして同じ事をダスコも思っていた。昨日までの執事は、どちらかと言うとカリーヌの機嫌を損なわないように最大限の配慮と言葉遣いをしていたが、今日は少し皮肉混じりなような気がしていたのだ。

 

「今日は、どうかされたんですか?」

 

ダスコが思い切って執事に聞いてみる。すると執事は、赤みがかった瞳でダスコを見て薄っすらと笑みを浮かべて見返してきた。その笑みを見てダスコは、ゾッとした。そして本能的にカリーヌを抱いて車から飛び降りる。すると直後に先程まで乗っていたリムジンが運転手と執事を道づれにして爆発する。

爆風からカリーヌを守るように体勢をとった為にダスコの体には、強烈な衝撃が襲う。

 

「ぐっ!?」

 

「キャッ!?」

 

爆風が収まりダスコがカリーヌを離すと、二人は立ち上がるが先程まで乗車していた車が燃え盛る様を見つめる事となった。運転手と執事は、まず助からないだろう。そう思っていると護衛車から護衛の者達が降りて来て二人の安否を確認する。

 

「ご無事ですか!?カリーヌ殿下!クレルモン卿!」

 

「大丈夫だ!直ぐに新しい車を手配してくれ!皇女殿下を早く安全な場所へ避難させるんだ!」

 

「い、イエス・マイ・ロード!」

 

ダスコが駆け付けてきた護衛の者達に手際よく指示を出す、それに答え機敏に対応を始める護衛の者達。それを見ても未だカリーヌは、放心状態のままであった。そんな主君の状態を確認するとダスコは、彼女の前に立ちしっかりと目を見て先程伝えた事をもう一度伝える。

 

「姫様は、私がお守り致しますので安心して、私にお任せ下さい」

 

「ダスコ…」

 

「大丈夫」

 

カリーヌは、第5皇女である。しかし年齢的には、未だ10歳とレレーナやナナリーとほぼ同い年なのだ。当然こんな年齢では、まともに人に害されそうになった事など無くまして殺されかけた事など一度も無い。レレーナからして見れば「何でやねん!」とツッコミを入れたくなる程、順風満帆な生活を送って来たのだ。

そんな彼女が、今日初めて本気で殺されそうになった事で恐怖のあまりまともに思考する事すら出来なくなっているのだ。

 

そんな主君を落ち着かせようと必死に宥めるダスコ。すると再びダスコに本能が警鐘を鳴らす。

 

「伏せて!」

 

ダスコがカリーヌを抱き地に伏せる。すると突然銃声が辺りに響き護衛の一人が倒れる。倒れた護衛は、血を流し絶命した。カリーヌがその遺体を見て小さく悲鳴をあげる。

 

「イヤァア!」

 

「姫様!見てはいけません!」

 

ダスコがカリーヌを抱きしめ視界に遺体が入らないようにする。すると再び銃声がなり近くにあった車両に銃痕がいくつも作っていった。

 

「敵襲!」

 

「皇女殿下を守れ!」

 

護衛官たちが、銃を取り出し銃撃してくる襲撃者に対して、車や街路樹などを盾にして反撃をする。護衛官は、ハンドガンとサブマシンガンで対抗するが襲撃者は、アサルトライフルなどを中心にして武装しているので火力で差が出ている。

 

「閃光弾!」

 

護衛官の一人が車の中から閃光弾を撃つピストルを取り出し、それを空に向けて放つ。すると発射された弾は、光を放ちながらゆっくりと落下してくる。閃光弾の光を受け道路を挟んだ反対側に複数人の人影が浮き上がる。その人影の中に筒状の物を持っている人間がいる事にダスコは、気付く。

 

「RPG!」

 

ダスコの叫びと共に襲撃者の一人がRPGを発射する。放たれたロケット弾は、真っ直ぐに護衛官達が盾にしている車に向かい大きな爆発を起こす。

 

「ぐあぁあ!」

 

爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる護衛官の叫び声が辺りに響く。さらに燃え盛る車から放たれる光によってダスコや護衛官たちの位置が襲撃者に丸分かりになってしまう。

 

「車はまだか!?」

 

「現在応援と共にこちらに向かっております!」

 

「ぐっ、あと何分で到着する?」

 

「あと7分です!」

 

護衛官たちの会話を聞きながらダスコは、思案する。如何にしてカリーヌを助けるか。このままでは、ジリ貧でカリーヌを守りきる事は出来ないだろう事は、明白であった。そんな時、ふと視線を向けた先にこちらをジッと見ている人影に気付く。

その人影は、全身を覆う外套にフードを目深に被った人物だった。身長的にまだ子供の部類だろう。襲撃者たちの中で唯一武器を持たず攻撃をしてこない様子からダスコは、そのフードの人間が襲撃者のリーダー又は連絡員だろうと予想をつける。あのフードの人間を撃てば襲撃者たちは、撤退してくれるだろうか…。

 

「ぐっ!?」

 

「なんだ貴様!?」

 

突如、襲撃者たちの方から叫び声が聞こえてくる。ダスコがよく見ると、襲撃者たちの中に真っ白な外套を纏い、金色の刃を持つ大剣を振るう大男が見えた。その大男の登場に護衛官たちは、歓声を上げる。

その大男は、帝国では知らぬ者なしと言われる帝国最強の騎士ビスマルク・ヴァルトシュタインであった。

 

「ヴァルトシュタイン卿!」

 

「クレルモン、皇女殿下を連れて離脱しろ!此処は、私が食い止める!」

 

「しかし!?」

 

「目的を履き違えるな!卿の任務は!?」

 

「!」

 

「行け!」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

ビスマルクからの叱責を受けてダスコは、自身の主君を姫抱きにして移動を始める。ダスコに続いて護衛官たちも移動を初めて襲撃者たちから距離をとる。そしてビスマルクが連れてきた護衛たちと合流して撤退を始める。ダスコたちは、ビスマルクが向かっていたジヴォン家に向かい保護されることとなる。

それからビスマルクによって襲撃者たちは、悉く討ち取られ事件は終息する。

その遺体の中にフードを被った外套の人間は、含まれていなかった––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

襲撃事件の現場から少し離れた場所にある路地を進む一つの影。その影は、襲撃現場にいた全身外套に包まれフードを目深に被っている人物である。その人物は、暗闇の中で携帯を使って会話をしていた。

 

《やぁ、首尾はどう?》

 

「目標を始末する事は、出来なかった様だ」

 

《そっか、なら仕方ないね。ごめんね態々ユーロから来てもらって》

 

「気にしていない。それより此方こそ余り役に立てなくて済まない」

 

《それこそ構わないよ。元より脅し半分だからね。それに君には、だいぶ役立って貰ったから感謝してるよ》

 

「そうか。済まないがもう戻らないといけない」

 

《うん、分かってる。後は、彼が上手くするだろう。…帰る前に一度こっちに寄れるかい、アキトにもお土産が必要でしょ?》

 

「分かった」

 

《なら待ってるよ、おやすみシン》

 

「あぁ、おやすみレナ」

 

そう言って後にシンと呼ばれた男は、携帯を閉じポケットにしまう。その後一言も発せず暗闇の中に溶けていった。

 

帝都の狂乱は、まだ終息する気配を見せていない––––––––––––。

 




次回
『帝都狂乱-急』

コメント、誤字報告、お気に入り登録有難う御座います!
今後とも宜しくお願いします!

<人物>
●ダスコ・ラ・クレルモン
・カリーヌの選任騎士
・双貌のオズでは帝都に落とされたフレイアからカリーヌを救った騎士
・オルフェウスとも数度戦った仲

<建物>
●ホテル・グレートペンドラゴン
・ブリタニア帝国の帝都ペンドラゴンの5つ星ホテル
・本作オリジナルホテルです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 帝都狂乱-急

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン皇宮 玉座の間で、皇帝シャルルは、ビスマルクと二人で密談を行なっていた。

帝都の混乱具合を見てシャルルは、如何にしてレレーナの気を鎮めるかを考えていた。双子の兄のV.V.の話では、レレーナのギアスは自身の想像した力を発現する力だと言っていた。そしてビスマルクから報告で、レレーナが自分の『記憶改竄』のギアスを使用している可能性もある。機情局は、既にレレーナによって制圧され制御下に置かれており、特務局もギアスによる侵食を受けている。その上一部貴族は、大逆罪の名の下に粛清が行われ始めている。

自分の知らぬところで機情局が、機情局の情報や国防情報局の機密情報を不正に流出させていた貴族やその関係者を逮捕しようとしたのだ。しかも逮捕者リストの者達の多くは、逮捕時に抵抗もしくは逃亡を図ったとしてその場で射殺されている。この異常な事態となっても機情局から此方に上げてくる報告は、普段と変わらず平凡な報告書だけであった。こう成ってくるとシャルルも流石に機情局で何かあったと考えるのは、当然の帰結であった。

 

本来であれば、政治などと言う俗事は一切他人に任せるが、今回はそういう訳にはいかなかった。皇帝直轄の情報機関である機情局は、皇帝以外の権限が及ばず宰相府や宮内省、帝国特務局を持ってしても干渉は難しいからだ。つまり事態打開のためにシャルルに機情局を問い質して欲しいと言う陳情が、宰相府を中心に多数上がっているのだ。既に現役の皇女までもが襲撃される事態となっているので、事は一刻を争う状態なのだ。特に粛清された貴族の後援を受けていた皇妃皇族たちからの陳情が多く、その筆頭はギネヴィア・ド・ブリタニアであった。

 

「ビスマルク。カリーヌを襲撃した賊について何かわかった事はあるのか?」

 

「カリーヌ様を襲撃したのは、陛下の覇権主義に反発するテロリストグループの構成員である事が機情局からの報告で判明しております」

 

「機情局からか」

 

カリーヌを襲撃したのは、反シャルル主義派組織と呼ばれるシャルルの覇権主義に反発する者達であると、結論付けられた。理由としては、襲撃者の遺体の中に機情局や司法省広域捜査局がマークしていた主義者が含まれていたからである。この事から広域捜査局は、昨今の帝都混乱に乗じての皇女暗殺未遂事件として捜査を開始した。機情局もこの捜査に協力する事に成っているのだが、シャルルは何か釈然としない。そしてそれは、ビスマルクも同じであった。

 

「本当にただ皇族を狙った暗殺未遂と思うか?」

 

「分かりません。捜査機関では、そう言う事と成っておりますが」

 

「ビスマルクの見解は?」

 

「私個人の見解としましては、今回の襲撃は恐らく狙いはカリーヌ様ではないかと」

 

ビスマルクは、襲撃された現場に運良く駆け付けたがもしビスマルクが駆けつける事が出来なかった場合、カリーヌは殺害されていた可能性が高いと考えている。理由は、襲撃された場所が丁度護衛部隊が最も離れる場所であり、護衛が少なくなる場所でもあったからである。勿論、警護の仕様上仕方ない事であったがこの情報を知っているのは少ない。にも関わらず今回襲撃を受けたという事は、襲撃者は事前にその事を知っていたのではないだろうか。すると警護をしていた『ネ・ブリタニア』の者か、警護騎士団の中に襲撃者に内通する者が居たという事になる。そうなればほぼ間違いなくカリーヌは殺害されていただろう。一方で襲撃者達の中には、やけに護衛の者達を攻撃する者が多く、若しかすると狙いは護衛の方だったのではないかと思えなくも無かった。

 

「狙いが護衛の場合か…」

 

「レレーナ殿下にとってオルフェウスは、将来の自分の騎士でありました。それを奪われた腹いせに相手の騎士や護衛、後援者を狙ったとも考えられます」

 

「そうなるとやはり主犯は、レレーナか…」

 

「捜査機関の捜査では、遺体の中に当局が把握している主義者が混じっていたので犯人グループは、陛下に反発するテロリストグループではないかと疑っている様です」

 

「襲撃者の中に主義者が居たと言うが、当然機情局も把握していたのであろう」

 

「はい。機情局もマークしていたと報告を受けています」

 

「つまりレレーナも知る機会があったと言う事だな」

 

「…」

 

ビスマルクにそれを答えることは、難しい。何故なら今回の襲撃事件は、レレーナが裏で糸を引いていると言う証拠は何も無い。レレーナは、現在アリエスの離宮で謹慎中であり、ラウンズ3人が監視に当たっているのだ。彼らの話では「レレーナ殿下は、一度も外に出ておられない」との事だ。

当然ギアスを用いれば、誰にも見られる事なく外出する事は造作もない。レレーナには、犯行動機があり手段もある。しかし繰り返しではあるが、証拠がない。と言うよりも捜査をしている所がレレーナの息が掛かっているのだ、証拠など出るはずがない。証拠がなければただの推論、捜査機関は動かない。シャルルの強権を持ってすれば逮捕も処刑も出来ない事も無いが、まず間違いなく抵抗をされ『血の紋章事件』以上の惨事を招くだろう。迂闊に何かを言う事は、出来ない。

 

「レレーナ以外に誰がいる?」

 

シャルルにも、ビスマルクの考えていることは分かる。しかしレレーナ以外に居るとは、シャルルには思えなかった。

ビスマルクにも答えられない。

シャルルを守る立場にいるビスマルクは、下手に動くとシャルルがレレーナの攻撃対象になる可能性がある事を意識している。

 

「陛下。仮にレレーナ殿下が主犯であったとしても殿下自身が認める事は、無いでしょう。また事件の切っ掛けと思われる、オルフェウスをレレーナ殿下にお返しになっても終息はしないかと。その為、まずオルフェウスを返し、その後に機情局に犯人を逮捕する様に勅命を出されれば、レレーナ殿下が犯人を用意されるのでは、ないでしょうか?」

 

「レレーナ自身に事態の終息を命ずるか…」

 

「レレーナ殿下が主犯であった場合ですが」

 

「違った場合は?」

 

「最悪のケースですな」

 

そうこの対応は、レレーナが主犯であり全てがレレーナの管理下にあるからこその話である。レレーナでない場合、帝国は誰かも分からぬ襲撃者に攻撃されている事になるのだ。まぁその場合でも最後は、レレーナが粛清を行うであろうが…。

 

「…違う可能性も考慮すれば嚮主V.V.に御相談する方が宜かと」

 

「…そうだな。ギアスユーザーが犯人であった場合兄さんに依頼をした方が良いな」

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

皇歴2014年 アーカーシャの剣

 

シャルルとV.V.そしてマリアンヌが計画している神を殺す計画『ラグナレクの接続』。その神を殺す兵器たる『アーカーシャの剣』に二人の影が伸びる。

一人は、金髪で髪が地面に届きそうな程伸びている少年。もう一人は、同じく金髪で後ろ髪を編んでいて背中中央まで伸びている子供。

 

「叔父上、こんな所に呼び出して一体何の用ですか?」

 

髪を編んでいる子供。レレーナ・ヴィ・ブリタニアが自身の叔父であり、ギアス嚮団嚮主V.V.に問う。

 

「分かってる癖に」

 

「念の為ですよ」

 

レレーナは、穏やかな笑みを浮かべながらV.V.方を見る。その笑みに緊張や怒りといった感情は、見えず何を考えているか分からない。

 

「シャルルが困ってるんだ」

 

「帝都での混乱でですか」

 

「うん。単刀直入で聞くよ?犯人は君かいレレーナ?」

 

「いいえ。僕は違いますよ」

 

「僕は、嘘が嫌いなんだよ?」

 

V.V.は、殺気を放ちながらレレーナに言う。

しかしレレーナは、何ともないと言わんばかりに澄ました顔でV.V.を見返す。その後苦笑を浮かべて口を開く。

 

「嘘じゃないですよ。僕()違います」

 

「…じゃぁ君が知っている事を教えて?」

 

「良いですよ。でも僕今欲しいのがあるんですよ」

 

「またか」

 

「僕としては、父上に手を出すつもりは無いので叔父上には、必要ない情報ですけどね」

 

V.V.としては、レレーナと敵対するつもりはない。レレーナがシャルルに手を出さないならば、態々レレーナのお願いを聞く必要は無い。ただシャルルから頼まれた上にマリアンヌの件で後ろめたさも有るのでシャルルの頼みは、なるべく聞いてあげたいと思ってもいる。

 

「…はぁ、何が欲しいの?」

 

「僕としては、オルフェウスを取り戻せたら良いんですけど、同じような事がまたあったら嫌なんでチャンスが欲しいんです」

 

「チャンス?」

 

「オイアグロと"決闘の儀"を行う許可が欲しいんです」

 

「あぁ、なるほど」

 

決闘の儀とは、神聖ブリタニア帝国に古くから残る伝統の儀式であり、皇族や貴族がお互いに何かを掛けて剣で戦う儀式の事である。現在でも皇帝の許可の下、皇族や貴族が行われている。

レレーナは、決闘の儀でオイアグロからオルフェウスを取り戻すつもりなのだ。そしてあわよくばオイアグロをその場で刺殺するつもりなのだとV.V.は考えた。

 

「良いよ。シャルルに取り成してあげる」

 

「ふふふ。有難う御座います。では、帝都で襲撃事件を起こしている犯人でしたね」

 

「そう。誰?」

 

V.V.は、レレーナから犯人を聞こうとするがレレーナが口にしたのは全く違う事であった。

 

「僕は、彼にギアスを与えたんです」

 

「!?」

 

「物は試しだと思いまして」

 

「そんな事!?」

 

V.V.は、レレーナの話を聞いて驚愕する。確かにギアスやコードは、未だ分からない事が多く謎の力である。しかしコードユーザーでも無いギアスユーザーが他者にギアスの力を与えるなど聞いた事がない。もしそれがレレーナの全知全能(The Almighty)の力の範囲内だとしたら、只でさえ手に負えないレレーナが更に手に負えない存在になってしまう。

 

「あぁ、ただ叔父上みたいに新しいギアスを発現させたのではなく、僕のギアス能力の一つを貸してあげたんです」

 

レレーナのギアスは、幾つものギアス能力を使う事ができるものだ。その中の能力を貸すと言う事は、任意能力を与えるのと同じでありそれはV.V.が契約して新しいギアスを発現されるよりも遙かに効率的に優秀な駒を作る事ができる。

 

「ただその間は、僕はギアス能力を一つしか使用出来なくなる上に常時ギアスを発動状態になってしまうんですけどね」

 

いや、それでも充分だろうとV.V.は思う。

 

「…どんなギアス能力を貸してあげたの」

 

「父上と同じ他者の記憶を改竄する能力を」

 

やはりかとV.V.は、思う。シャルルからの報告では、帝国特務局総監であるベアトリスがギアスを受けた可能性を指摘していた。その際にベアトリスは、記憶を消された又は、操作された可能性があるとビスマルクは指摘して事を聞いていた。

記憶を操作すれば他者に自分への忠誠を誓わせる事も、自分の存在を消す事も出来る。今回の帝都で襲撃を行なっている者が、そのギアスを使って計画を立てていたとすれば捕まる事は、まず無いだろう。

 

「また面倒な能力を与えたね」

 

「簡単な能力では、直ぐに制圧されてしまうと思いまして」

 

「…」

 

「ふふふ」

 

レレーナは、さも愉快であると言わんばかりの顔でV.V.を見る。V.V.は、久し振りにレレーナの異常さを自身の目でまざまざと見る事となった。

 

「結局誰に渡したの?」

 

「アレクセイ・アーザル・アルハヌス卿ですよ」

 

「…誰?」

 

アレクセイ・アーザル・アルハヌスは、帝国で要人警護を専門とする警護騎士団(ガーズ)の騎士団長であり、反皇族主義を掲げる主義者の一人であった。彼は、あくまでも反皇族でありブリタニア帝国自体を嫌っている訳では無いので、植民地政策について何かを言っている訳では無い。こう言った考えの主義者は、意外にもブリタニア内で一定の勢力を持っており仲間を集めるのに苦労する事は無い。

そして要人警護専門の警護騎士団なだけはあり、要人の行動と言うのは非常によく分かっていた彼は、うまく皇妃や貴族達を襲撃していったのである。

 

「随分と御誂え向きな人物を選んだね」

 

「本当にいい人物を僕の監視に付けてくれました」

 

説明を聞きV.V.は、頭が痛くなる様だった。駒を与えたのは、シャルル達の方だった様だ。

もう少し身辺調査をしっかりとしてからレレーナの側に置かないと、色々な意味で危ないじゃないかとV.V.は思う。

 

「処分は、君に任せてもいいの?」

 

「いいですよ。事が終わり次第に」

 

「分かったよ」

 

V.V.としては、当初考えていた以上の成果があったので良かったが、やはりレレーナは"危険だなぁ"と思いながらも”面白い"とも思いながらアーカーシャの剣を去っていくレレーナの後ろ姿を眺めていた––––––––––––––。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

僕は、今ペンドラゴン皇宮からアリエスの離宮へ向かう車に乗車している。警護に付いているのは、機密情報局の者達である。今僕が乗っている車の運転手も機情局の職員の一人であるヴィクトルだ。当然ヴィクトルにも、ギアスを掛けている。

 

彼には、『ザ・ソウル』を使っていつでも体を乗っ取れる状態にして『絶対遵守』で完全に制御下に置いている。『ザ・ソウル』は、母マリアンヌのギアスでギアスを発動するとその人の身体を乗っ取り自在に扱う事ができる様になる。『絶対遵守』は、我らがルル兄様の将来のギアスであり、目を見た人物に一度だけ絶対の命令を出すこ事ができるギアスだ。

 

今回の件で、僕はかなり無理をしている。最近では、オルフェウスに任せる事まで自分でする様になっているので手が足りない。その為アレクセイの計画を監視する役として、ユーロブリタニアから日向シンを呼んでカリーヌ達の襲撃事件の現場に行って貰った。

 

シンとの関係は、僕とオルフェウスがウズベキスタンで任務を終えた後に情報リークに付いて調査する為に、ユーロブリタニアへ行った際に出会って以来である。

 

シンからの報告では、アレクセイは僕の要請を無視して当初の予定に無かったカリーヌ襲撃を行った。皇族を狙えば後の計画に響くから止めるようにと言っておいたのに…ここで始末しても良いけど、まだ彼にはやって貰う事があるし。まぁでも、後でお仕置きが必要だね。

 

V.V.には言っていないが、ギアスを貸す力は実はかなり効率が悪い。これは、僕が意識的にギアスを貸し続けなければいけないのだ。つまり僕がギアスの発動を止めると自動的にアレクセイも使用できなくなるのだ。アレクセイがギアスを使い続ける為には、僕がギアスを貸す力を発動し続けなければいけない。この事は、アレクセイも知らない事である。僕は、彼の事を信用も信頼もしてないしね。

 

まぁしかしこれで、V.V.とシャルルへの牽制にもなるだろう。ギアスユーザーを一人とは言え作る事が出来る力があれば、迂闊に僕へ仕掛けて来ないだろう。本気だったら分からないけど…。

 

「殿下」

 

「うん?」

 

「皇帝陛下より決闘の儀の開催の許可が出ました」

 

助手席に座っているビスマルクが前を向いた状態でそう言った。多分振り向くとギアスが飛んでくると思っているのだろう。それに運転手も護衛も全員が機情局の人間であるので警戒しているのかも知れない。ただ甘いよビスマルク。

 

ギアスは、結界型や命令型、憑依型などで命令型、憑依型の多くは、目を合わせる事で発動できる。しかし中には、声を聞かせる事で命令を出す事ができるギアスもある。『コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS』に登場する主人公のライが使用するギアスは、声を聞かせた相手に自分の命令に従わせる事ができるギアスである。

これを用いれば、今ここでビスマルクを従わせる事が出来るが、シャルルやV.V.をこれ以上刺激するのは良くないと思うからしない。

 

「そっか、それは良かった」

 

V.V.との会談は、本当に何時やっても緊張する。今回も僕は、なけなしの演技力を使ってV.V.と相対していた。殺気をぶつけられた時なんかチビリそうだったけど、何事も相手が居る事では常に相手より優位である事を相手に見せなければいけない。常に余裕な笑みを浮かべてこちらの底を見せない様にする。何時もシュナイゼルがしている事だ。

 

「これでオルフェウスを取り戻せるよ」

 

「決闘の儀が開催されたからと言ってジヴォン卿が、オルフェウスを掛けるとは限りませんよ。それにそもそもオイアグロが決闘の儀を受けるかも分かりません」

 

「そうだね。だからアレクセイには、もう少し頑張って貰わなくちゃね」

 

「?」

 

僕とエウリアからオルフェウスを奪った彼らには、それ相応の報いを受けて貰わなくちゃね。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

レレーナとV.V.との会談が行われた翌日。

ジヴォン家の人間は、慌ただしく動き邸宅は人の出入りが激しくなっていた。何故この様な状態になっているかというと、きっかけは一本の電話であった。

 

《マリーベル・メル・ブリタニアとオルドリン・ジヴォンを預かった。返して欲しければ近日中に決闘の儀を行い、衆人環視の中でレレーナ・ヴィ・ブリタニアを殺せ》

 

その電話を受けてジヴォン家当主は、急遽マリーベルとオルドリンの捜索を行った。しかし彼女達が外出先で誘拐された事が分かっただけであった。

ジヴォン家と特務局の護衛は、襲撃時に抵抗をしたが数の暴力によって押し切られてしまっていた。機情局は、前日に皇帝の勅命を受けて監視と言う名の護衛を外していたので戦闘には、参加する事はなかった。

 

オイアグロは、1日かけて捜索を行うも二人を見つける事が出来なかった事を受けて、皇帝に謁見を願い出る。幸いすぐに謁見が叶った。そしてオイアグロは、異例ではあるが謁見当日に皇帝に対してレレーナに対して決闘の儀を執り行う許可を欲した––––––––––––––。

 

 

 




次回
『帝都狂乱-結』

コメント、誤字報告、評価有難う御座います!
今後とも宜しくお願いします!

<組織>
●司法省広域捜査局
・帝国全土で捜査を行う警察機構
・複数の州を跨いで発生した事件の捜査を行う組織
・日本で言う所の公安警察に該当する

今後の予定について少しお伝えしたいと思います。
『第14話帝都狂乱-結』『第15話狂乱の裏側』の2話を投稿した後、句読点の勉強及び調整を行います。よって16話以降の話は3月上旬になる可能性があります。楽しんでくださっている読者の皆様申し訳ありません。
詳しくは、活動報告の方をご覧下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 帝都狂乱-結

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

神聖ブリタニア帝国の中枢、ペンドラゴン皇宮謁見の間。

その場所には、普段から多くの貴族役人達が皇帝の歓心を買おうと思って集まっている。そんな中で注目を集めている人物が二人。

一人は、今日謁見を求めて来てそれが叶った下級貴族当主オイアグロ・ジヴォン。もう一人は、先日ナイトオブワン"ビスマルク・ヴァルトシュタイン”に斬りかかって謹慎処分となり今日解除された第17皇子レレーナ・ヴィ・ブリタニアである。

 

そして今、謁見の間は、響めきが起きていた。オイアグロがレレーナに対して決闘の儀を申し込み皇帝に許可を願い出たのだ。当日に皇帝の裁可を得ようとするのは、異例であるがそれ以上に下級貴族が皇族に決闘の儀を申し込む事は、異例な事であった。

 

さらに周囲を困惑させたのが、レレーナが決闘の儀を拒否したのだ。自分に利益が無いと、にべもなく断ったのだ。

オイアグロは、レレーナはオルフェウスを取り戻す為に受けると思っていたが、それが叶わなかったことに驚いた。レレーナは、オルフェウスの事を取り戻そうとしないのかと疑問に思いながら、このままではマリーベルとオルドリンが危ないと 必死にレレーナへ決闘の儀を申し込むも取り付く島もない。

いっそ周りが哀れむ程、オイアグロは焦燥していた。レレーナが自分を見る目は、道端に転がっている石ころを見る様などうでもいいと言わんばかりで、決闘の儀にもこれぽっちも興味を示さない。

ギネヴィアやカリーヌがオイアグロに味方する形で決闘の儀を受ける様に言うも嘲笑で返される。オイアグロの心は、少しずつ絶望に染まって行く。

 

尊敬する姉を殺す事になり、せめて娘のオルドリンと息子のオルフェウスを救いたいと思うもその手段が自分には無い。二人の為だと少し強引に事を運べばオルドリンとマリーベルを危険に晒し、殺す対象であるレレーナに懇願するしかない状況となる。オイアグロは、自身の弱さを呪うしかなかった。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

オイアグロの焦燥した顔を見ると少し心がスカッとした。僕の抗議を無視してエウリアを悲しませた元凶の一人。

万事予定通り、アレクセイにマリーベルとオルドリンを誘拐させ解放の条件に僕と決闘の儀をして殺す事を提示した。僕の方から決闘の儀を申し込んでもオイアグロが受けるとは、限らない上にオルフェウスを賭けるとも思えない。ならば向こうから賭けてもらう必要がある。

 

結果は、上々。オイアグロは、必死に決闘の儀を受けて欲しいと懇願してくる。愉悦だったが、同時に不快でもある。

オイアグロは、未だにオルフェウスを賭けてこないのだ。企業の利権やお金、騎士の名誉と言った僕にとっては、どうでも良い事ばかり賭けてくる。その上、ギネヴィアやカリーヌが騎士ならば挑まれた決闘は、受けるのが礼儀だと宣ってきた。

 

「僕は、騎士ではなく皇族であり機情局の諜報員ですから、それには当てはまりませんね」

 

「あんたそれでも男なの!?」

 

「女は良いですねぇ。襲撃されても自分は泣いとけば良いのですから。楽なお仕事ですね」

 

「なんですって!」

 

「弱肉強食のブリタニアに弱い皇族は必要ないでしょう。さっさと皇族など辞めてしまわれた方がよろしいのでは?」

 

「あんただってジヴォン卿の挑戦を受けないなんて臆病者じゃない!」

 

「何故メリットも無い試合を受けねばならないのです?時間の無駄ですよ」

 

本当にあぁ言えばこう言うとお互いに思っているだろうけど、部外者が口を挟むな!これは僕とオイアグロの真剣勝負なのだから–––––––。

 

「レレーナ殿下。どうか、どうか伏してお願い申し上げます」

 

オイアグロがとうとう謁見の間で土下座までしてお願いしてきた。これはちょっと驚いた。ここには、多くの皇族貴族が居る。そして皇帝の御前でもある。これは、ジヴォン家の名誉に関わる事だ。

しかしそれだけこの男にとってあの二人、もといオルドリンとオルフェウスが大事なのだろう。それだけは、認めてやる。

 

「レレーナ。ジヴォン卿が此処までしておられるのだから、受けて上げられないかな?」

 

「そうだな。レレーナ、卿の騎士では無いと言う事は尤もだが、皇帝陛下の御前で此処までしているのだから受けてやらないか?」

 

シュナイゼルとコーネリアまで参戦してきた。これじゃまるで僕が悪者みたいだ。

皇帝の御前でこういった揉め事は、よく無いのだがシャルルもビスマルクも何も言わない。二人は、これが茶番である事を知っている。僕は、決闘の儀は受ける。それは、決定事項なのだ。ただ条件は、吊り上げないとね。やられた分は、倍以上にして返すが僕のポリシーだよ。

 

「そうは言いましてもお二人共、何故ジヴォン卿が此処まで決闘の儀に拘っているかご存知ですか?」

 

「…いや私は知らないが、兄上は?」

 

「いや、私も知らないな」

 

シュナイゼルとコーネリアは、ギネヴィアとカリーヌの方を見るが二人はオイアグロの方を見ておりシュナイゼル達の視線に気付いていない。

 

「ジヴォン卿、皆様にお教えに成っては如何ですか?それともギネヴィア姉上かカリーヌが説明されますか?」

 

まぁ当然3人共黙りである。そらそうだろう。

皇族を守るべき貴族が自身の後援する皇族を守れず、他の皇族を害そうとしているとは言えまい。そしてそれを利用して僕を排除しようとしていたとも言えない。テロリストにしてやられた貴族とテロリストを政争に利用しようとした皇族、これは皇帝の前で言える者は帝国広しと言えど居ないだろう。実質テロリストに屈したなど弱肉強食のブリタニアで認められる訳が無い。

 

「では代わりに私が説明しましょう」

 

「!?」

 

オイアグロが目を見開いてこちら見る。

 

「そもそもの原因は、昨日の午前にマリーベル姉上とジヴォン家次期当主オルドリンが何者かに誘拐された事です」

 

そう言えば謁見の間に響めきが起きる。シュナイゼルやコーネリアはおろか、シャルルやビスマルクも驚愕の表情を浮かべている。当然この情報は、極秘でありジヴォン家は限られた者にしかこの情報を伝えていない。機情局は、ジヴォン家にもモグラを送っているのであっさりとこの情報を入手する事が出来た。

と言うよりも誘拐は、僕が命じた事だから始めっから知ってたけどね。

 

「誘拐犯は、ジヴォン卿に決闘の儀で僕を殺せば二人を解放すると言ったそうです、だからこそジヴォン卿は、急遽僕に決闘の儀を申し込んで来た」

 

「!?」

 

「なんだと!?それは本当かジヴォン卿!?」

 

「…」

 

コーネリアに問い詰められても何も言えないオイアグロ。それを見て本当だと皆が悟った。

後援する皇族と姪っ子の為に他の皇族を殺す。それに納得できる人間が何人いようか。テロリストに抗して守るべき皇族を見殺しにするか、屈して別の皇族を殺すか。どちらにせよ皇族が死ぬ。テロリストからすればどちらでも良いのだろう事は、誰でも分かる。それが分からぬ皇族貴族は、この場には居ない。

 

「…僕は、命を賭けるんだよ?それに対してお金や名誉?そんなチンケな物で僕が釣れると?随分と安く見られたものだ」

 

「…申し訳有りません」

 

「何を賭ける?」

 

「私の命を「要らない。そんな安物」っ!?」

 

「父上の御言葉にもあるだろう。人は、平等ではない。僕と君の命が等価?有り得ないよ」

 

命なんぞ賭けられても何の得にもならない。せめて自分の全てとかにしろよ…。

 

「勿論、オルフェウスだけじゃ足りないよ。元々僕のモノなんだから」

 

僕が欲しいのは、僕の命に似合うものだよ!

提示出来ないなら、僕が要求しちゃうよ。

 

「出せないかい?」

 

「…」

 

「なら僕が要求しよう。決闘の儀を受ける条件は、オルフェウスとジヴォン家の次期当主の座の二つで手を打ってあげよう」

 

「!?」

 

再び謁見の間で響めきが起きる。

ジヴォン家の次期当主の座。一見下級貴族の当主の地位だと思われるかも知れないが、その実ブリタニア皇族の為に破壊、諜報、暗殺などを行う特殊部隊『プルートーン』の隊長を務めているのがジヴォン家の当主なのだ。つまりジヴォン家の次期当主の座を寄越せとは、プルートーンを自らの指揮下に置かせろと言う事である。僕が欲しいのは、それだよ。ブリタニア国内で権力争いをするならば、プルートーンを抑える事は絶対必要であろう。

 

「そんな事認められる訳が!?」

 

「父上の裁可があれば問題無いのでは?」

 

「っ!?」

 

ギネヴィア、此処は専制君主国家で、皇帝が決めた事は絶対だ。勿論無茶は出来ないが、決めてしまえば何も言えまい。

 

「父上、この二つの条件を認めて頂ければ決闘の儀を受けようと思います」

 

「…オイアグロ・ジヴォン、貴様はどうする」

 

「…っ。承知しました」

 

「ジヴォン卿!」

 

オイアグロがジヴォン家次期当主の座とオルフェウスを賭ける事に承諾すると、ギネヴィアがオイアグロの名を叫ぶ。

 

「良かろう。神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの名の下に、レレーナ・ヴィ・ブリタニアとオイアグロ・ジヴォンの決闘の儀の行う事を認める!」

 

『イエス・ユア・マジェスティ』

 

シャルルが宣言すると僕とオイアグロは、シャルルに礼をする。

オイアグロ。先ずは君からオルフェウスを取り戻すとしよう。そろそろ本当にエウリアを見るのが忍びない。僕も寂しい。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

謁見の間での出来事の翌日。午前より決闘の儀の開催地となる競技場(スタジアム)には、既に観戦希望の多くの観衆が集まっていた。今度の決闘は、ブリタニア帝国の歴史の中でも珍しい皇族対貴族の闘いなので注目度が非常に高い。又皇族や大貴族の中には、今回の決闘の裏側を知っている者もおり、レレーナ・ヴィ・ブリタニア殿下の命とマリーベル・メル・ブリタニア殿下の命が天秤に掛けられている状態でどちらの皇族が死ぬ事になるのかを見ている者も存在した––––––––––––––。

 

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

もう直ぐ僕とオイアグロの決闘が始まる。既に僕もオイアグロも競技場中央に向かい合って闘い合図が出るのを待っている。

オイアグロは、二本の剣を帯剣し目を閉じ集中している様だ。オイアグロの心中は、穏やかではないだろう。なにせどちらが勝っても皇族が死ぬという結果に変わりない。テロリストからしてみれば何方でも良いのだ。それはオイアグロも分かっている、既に彼は負けているのだ。だからこそこれ以上負ける訳にはいかないのだろう。

 

一応僕の予定通り。これで少しはお灸を据えれただろう。後はこの決闘で勝ってオルフェウスとジヴォン家当主の座を手に入れて宴は終わる。

でも大丈夫だよオイアグロ。君は最後、僕に感謝する事になるんだから。

 

僕とオイアグロが、向かい合いその中間地点に審判役の男が立つ。

 

「これより”決闘の儀”を始める!両者前へ!」

 

その声と同時に僕とオイアグロが中央へ近寄る。

 

「両者!正々堂々一本勝負!始め!!!」

 

審判の宣言と同時に僕は、全知全能(The Almighty)の『ザ・スピード』を使用してオイアグロに高速で近付き剣を振り下ろす。それをオイアグロは、二本の剣を顔の前でクロスさせ受け止める。一太刀で決められるとは思っていなかったが、あっさりと受け止められるとは思わなかった。ちょっと悔しい…。

 

オイアグロは、僕の剣を受け止めた後に右手の剣を横一文字に振るう。それを僕は、鍔迫り合いの勢いで反動をつけて後ろに下がる。僕が飛び下がり地面に足が着いたと同時に、オイアグロが左手の剣で僕に斬りかかって来る。それを両手で持った剣で受け止める。

大人と子供の体格差があり、どうしても僕が飛び下がる距離よりもオイアグロの踏み込んで来る距離の方が長く逃げきれない。そして力でも大人と子供の差が出て来る。しかしそれを覆す力を僕は、持っている。オイアグロが斬りかかって来た際に『ザ・パワー』を用いて受け止め押し返す。その後オイアグロが後ろに下がったと同時に今度は、初撃を上回る速度で僕がオイアグロに斬りかかる。何度も何ども角度を変えて打ち込む。但し打ち込む剣の位置は、必ず同じ場所だ。

 

僕が、攻勢に出てオイアグロが防戦一方になる。

それでもオイアグロも一流の騎士。防戦になりながらも的確にカウンターを行なってきて、あと一歩踏み込ませてくれない。

その事は、さすがと言う他ない。

 

ギアスを用いて自身のスピードとパワーを上げて、更に未来線を読む。これほどドーピングを用いてもオイアグロを押し切れないのだから、この世界の騎士という生き物は怪物だとつくづく思う。

 

「くっ」

 

僕の剣がオイアグロの頬を少し掠める。

今のは少し入ったと思った。

 

オイアグロは、少し距離を取る為にバックスッテプで後ろに下がる。

 

「これ程の実力とは…」

 

お互いに打ち合いの中で相手の力量を把握し、これからの戦い方を思考する。オイアグロは、僕の力量に驚いている様子だ。そして此方を油断なく見据えてくる。恐らく僕がギアスを使用している事に、薄々気がついているのではないかな。

 

「やっぱり強いね」

 

「恐れ入ります」

 

オイアグロは強い。これは認めざるを得ない。

だけど僕は、ここで勝たなければいけない。オルフェウスとエウリアの為に僕が目指す理想郷を作る為に。

腕の立つ相手には、精神面での攻撃が有効だと誰かが言ってたから試すしかないね。

 

「これだけ剣が立つんだから、さぞ姉の存在は不愉快だったんじゃないかい?」

 

「…そんな事は、ありません。私は、姉の事を尊敬しておりました」

 

「なのにその尊敬していた姉を君は、殺した」

 

オイアグロの姉オリヴィア・ジヴォン。

オルフェウスとオルドリンの生みの母親であり、その実力はナイトオブラウンズに勝らずとも劣らないと評される程であった。

そんな彼女が死ぬ事になったのは、ある事件が切っ掛けであった。

 

「あの爆弾テロ事件が起きたせいで、君の姉は心を壊す事になった」

 

「っ!?」

 

フローラ・メル・ブリタニア。

マリーベル・メル・ブリタニアの母であり、数年前に爆弾テロによって命を絶たれたブリタニアの皇妃の一人だ。

この事件は、爆弾を持った子供を一人の少女が離宮内に招き入れた事によって起きたとされており、その招き入れた少女がオリヴィアの娘オルドリン・ジヴォンだとされたのだ。故に特務局は、プルートーンの隊長であり母であるオリヴィアに娘オルドリンを殺害するように命じたのだ。しかしオリヴィアは、真相を知っていた。いや真相というには、余りにも小さい事だろう。

 

特務局の報告書では、爆弾を所持した子供を離宮内に招き入れたのはオルドリンとされていたが、実際にはマリーベルであり皇女の過失によって引き起こされたのだ。事実を隠す為にシャルルは、マリーベルの役を別の人間にさせるように命じたのだ。

 

「守るべき皇族の為に、娘を生贄に捧げるように命じられた君の姉は娘を殺すことが出来ず、使命と情の間で翻弄され心を壊した」

 

「何を」

 

「君の姉もあんな死に方をする事になるとは、思ってもいなかっただろうね。家の伝統に則って息子を捨てたのに、その上娘までも…哀れなものだ」

 

「貴方に何が…!?」

 

僕の剣が再びオイアグロを捉える。今度は、左腕を掠める。

オイアグロ。僕の全知全能(The Almighty)の中には、アニメ版マオの『心を読む』ギアスも含まれている。君の心は、手に取るようにわかる。

後悔、悲しみ、虚しさ、そして憤りが君の心を占めている。

 

「姉を助けたかったんだろう?」

 

「!?」

 

「壊れていく姉が惨めで苦しそうで、何より変わり果てていく姉を見たくなかったんだろ?」

 

「くっ」

 

「たとえその後オルドリンに恨まれたとしても、二人を守りたかったんだろう?」

 

オイアグロは、本当は優しい性格なのだろう。苦しんでいる姉を見ていられなかった。

僕には、出来ない事をした彼を僕は非難しないしむしろ賞賛すらするだろう。自分が後悔すると分かっているのに、姉と姪を助ける為に実行に移したのだ。それでも利用させて貰うよ。僕の勝利の為に–––––––––––––

 

「でも本当は、疎ましく思っていたのだろう。男であるが故に当主になれなかった。実力はあるのに–––––––––」

 

「っ!?」

 

「だから殺したんだろう。君の独りよがりの為に、娘から最愛の母を奪った訳だ」

 

「このっ!?」

 

オイアグロが集中を乱して右手に持っている剣を大振りで横一文字に振るう。

 

「!?」

 

僕は、それを左手で持った皇族用にデコレーションされたゴテゴテの鞘で受け止める。オイアグロの剣は、木の部分にめり込み金属の装飾品に当たって止まっていた。それに少し動揺を見せるオイアグロ。当然その隙を見逃す手は無い。

 

「隙だらけだよ」

 

「しまっ」

 

僕は、右手で持った剣を上段から振り下ろす。それをオイアグロは、左手で持った剣で受け止めようとする。しかし僕の剣は、オイアグロの剣を叩き折ってオイアグロの左肩から胴体を切り裂く。決闘が始まってから同じ場所ばかりに打撃を与え罅を入れて折れやすくしていたのだ。まぁこんなにうまく折れてくれるとは、思わなかったが…。

 

オイアグロは、斬られた箇所から血飛沫を上げて前のめりに倒れ込む。その目には、僅かな光しか宿っておらず、まるで何かに懺悔するかの様な瞳であった。

 

「咄嗟に半歩後ろに下がった様だね。もし下がってなかったら左肩から下を切り落としてたのに…」

 

「うぅ」

 

「ごめんねジヴォン卿。僕は、勝つ為なら何だってする。…僕、君の姉の事は殆ど知らないんだ。だからごめんね」

 

「…」

 

「オルフェウスは、返して貰うよ。それじゃ」

 

そう言って僕は、倒れ臥すオイアグロに背を向けて出入場口へと向かう。

 

「しょ、勝者!レレーナ・ヴィ・ブリタニア殿下!…救急隊急げ!」

 

審判の声が会場に響き渡る。これにより僕とオイアグロの決闘の儀は、閉幕する。そして帝都での騒動も終わりを告げることになる。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

決闘の翌日に司法省広域捜査局が、マリーベル・メル・ブリタニア皇女とオルドリン・ジヴォンを無事保護した事が伝えられる。また広域捜査局は、今回の皇族貴族襲撃事件の首謀者として警護騎士団(ガース)の団長である“アレクセイ・アーザル・アルハヌス”を指名手配した。

後日機情局からの情報提供を元に広域捜査局が、潜伏先を突き止めその場所へ踏み込んだ。しかし既にアレクセイは、毒を服用し死亡していた。

捜査の結果、自ら毒を服用したと思われ逃走の末に自殺したものと見られる。その為広域捜査局は、被疑者死亡の状態で送検する事となった。

これにより皇族貴族襲撃事件は終息し、後に『帝都狂乱』と人々に呼ばれる様になった。

 

 




次回
『狂乱の裏側とその後』

コメント、誤字報告、評価ありがとうございます!
今後とも宜しくお願いします!

新型コロナ(コビット19)が猛威を奮っていますが、皆様健やかにお過ごし下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 狂乱の裏側とその後

皇歴2014年 神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン

 

オルフェウスがオイアグロに拉致されてからレレーナは、すぐに行動を開始した。

まず始めにレレーナは、機情局へ赴き機情局長官と副長官、副長官補にギアスを掛ける。その後長官の朝礼で幹部達にもギアスを掛ける。さらにその後幹部達がそれぞれの部署で行う報告会などで職員達にギアスを掛けていった。

 

そしてその後にビスマルクに抗議に行く。そしてそこで、ビスマルクに斬りかかった。これは、この後レレーナが計画した帝都狂乱に伴い自身のアリバイ作りが必要であったからである。

 

帝都での狂乱が、レレーナの起こした事であると分からない様にする事が目的であり、その為に公的組織に見張られる事が最も効果的であるとレレーナは考えたのだ。そうすれば、多くの帝国貴族、軍人、臣民は、レレーナが関係なく別のテロリストによるものだと考えるだろう。レレーナは、オルフェウスを取り戻してもその後の生活に影響が出るのを極力避けたかった。なるべく平穏無事に生活したいレレーナは、敵を増やしたくなかった。

元々敵は多いが、テロを起こしたとなると軍人や臣民からも攻撃される事になり生活しずらくなる恐れがあったからだ。

 

その後アリエスの離宮で謹慎する事になったレレーナは、機情局の職員をマリアンヌのギアス『ザ・ソウル』を用いて体を乗っ取り、次の暗躍を始める。

 

反ヴィ家と言われる大貴族や企業の役人たちの不正の現状証拠をアレクセイ達に送り襲撃させる。そしてレレーナ自身の諜報活動の邪魔をしていた貴族等に関して機情局を使って摘発し、抵抗すれば射殺も辞さなかった。

 

こう言ったレレーナによる復讐こそが、今回帝都で起きている動乱の正体である。この事を知っているのは察している者も含めて、ほんの僅かであった––––––––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

謁見の間での一件の夜。既に時刻は22:00を回っていた。

今レレーナは、帝都ペンドラゴンでも有数の高級ホテルのスイートルームに居る。一緒に居るのは、帝国一の美女でもなければ帝国一の女優でもない。そもそも男である。

騎士として凛とした姿勢で油断無く椅子に座る姿は、さながら名門貴族の当主の様な威厳があった。彼は、帝都での要人警護を専門に行う警護騎士団の団長アレクセイ・アーザル・アルハヌスである。

 

レレーナは、アレクセイに全知全能(The Almighty)の能力でギアスを貸す事に成功した。

正確には、レレーナが目を合わせた相手にレレーナが指定したギアス能力を一時的に貸す能力を作ったのだ。当然デメリットもある。貸している最中レレーナは、常時ギアスを発動している状態になる。その上そのギアス能力を貸している間、その能力をレレーナが使う事は出来ない。更にレレーナのギアスは、一度に二つまでしかギアス能力を発動できないので、貸している最中レレーナは一つしかギアス能力を発動できないのだ。V.V.やC.C.の様なコードユーザーとのギアスの契約には、劣るが指定したギアス能力を他人が扱える様になるのは、忙しい時に戦力を瞬時に増強したい時には便利な能力だ。

 

今回アレクセイには、レレーナから『記憶改竄』のギアス能力を貸出されている。そのギアスを使いアレクセイは、今回の襲撃事件を起こしているのだ。そもそも警護騎士団とは、要人警護をする組織なだけあり帝国皇族に対して非常に忠誠心が高いのだ。アレクセイが異常なだけである。そんな彼らを利用しようと思うと正攻法では、無理だ。そこでアレクセイは、記憶改竄の力を使い彼らを主義者に変えた。そうすれば後は、簡単である。そのまま襲撃事件を起すのみだ。

 

そしてレレーナとアレクセイは、共闘関係にある。

 

「予定通りオイアグロは、僕に決闘の儀を挑んで来た。そしてそれは、承諾された」

 

「おめでとう御座います殿下」

 

「いや、君のお陰だよ」

 

赤いカーペットの上に黒い三人掛けのソファーがコの字に置かれ、その内の手前側にレレーナが座り対面にアレクセイが座っている。二人の間には、優雅な時間が流れていた。二人は、ティーカップを手に持って紅茶を楽しみ、先にレレーナがカップに口をつけ紅茶を飲む。それをアレクセイは、目を細めて見ている。

 

「後は僕がするから、君はもう手を引いていいよ」

 

レレーナがそう言うとアレクセイは、静かに首を横に振る。

 

「うん?」

 

「残念ながら殿下は、今日この場にて主義者と反ヴィ家の人間に毒を盛られお亡くなりになるのですから」

 

「何をいっ、ぐぁあ!」

 

アレクセイの言葉に聞き返そうとしたレレーナだが、突然喉を抑えながら呻き声を上げる。そしてソファーの上で踠き苦しむ。そんなレレーナを見ながらアレクセイは、口を開く。

 

「申し訳ありませんレレーナ殿下。しかし殿下が悪いんですよ、殿下が皇帝の息子だから」

 

アレクセイの言葉を聴ききる前にレレーナは、動かなくなる。目は虚ろで何も写していない。そんなレレーナを見てアレクセイは、自身の紅茶を飲み干した。そして椅子から立ち上がり窓へと近づく。そして其処から見える帝都の夜景を一望した。

 

「これでレレーナ殿下が決闘の儀でジヴォン卿に殺される事は、無くなった。約束通りマリーベルとオルドリンも始末出来る、悪く思わないで下さいレレーナ殿下」

 

窓に反射しているアレクセイの顔は、歓喜と狂気に染まり左目には赤いギアスの紋章(・・・・・・)が浮かび上がっていた。

 

「この異能の力があれば、たとえ相手が、皇帝であろうとシュナイゼルであろうと敵ではない。私達の理想のブリタニアを作る事ができる!」

 

アレクセイは、初めレレーナに協力して帝国に仇なす貴族達を排除する事を目指していた。しかしレレーナから異能の力ギアスを貸され、部下や他人の記憶を改竄し続けてきた結果、彼の心は大きく歪んでしまったのだ。アレクセイは、次第に他人を信用出来なくなっていき、等々この力を自身に与えたレレーナが別の人間にも異能の力を与える可能性を考え、レレーナも排除する事にしたのだ。しかし––––––––––––––––

 

「その理想を、君が見る事はないよ」

 

「!?」

 

アレクセイは、突如背後から掛けられた言葉に驚愕する。それは、先程アレクセイ自身が毒殺したレレーナのモノであった。確認する為に振り向こうとした時、体の中に違和感を感じた、その後、凄まじい痛みがアレクセイを襲う。体の中が焼けるような、グチャグチャにされるような痛みを感じ、アレクセイはそのまま体の力が抜ける様に倒れる。

倒れ様に後ろを見たアレクセイは、再び驚愕する。そこに居たのは、間違いなく先程毒殺したレレーナであったからだ。

 

「な…ぜ…」

 

「何故?自分が苦しんでいる事がかい?それとも僕が生きている事がかい?」

 

「…」

 

「君が苦しいのは、君が毒入り紅茶を飲んだから。僕が生きているのは、死んでいないからだよ」

 

「毒…を…のん…だは…ず」

 

「毒?何の事だい?僕は、ここに来てから何も口にしていないよ(・・・・・・・・)?」

 

アレクセイには意味が分からなかった。先程レレーナは、間違いなく毒入り紅茶を飲んでいた。そして踠き苦しみながら絶命した筈だった。

 

「そもそも僕は、君が毒を入れるのを見ていたからね(・・・・・・・・・・・・・・・・)。飲む訳ないじゃん」

 

「馬鹿な、確か…に、死んだ…はず…」

 

アレクセイは、そう言って先程レレーナが座っていた席を見る。しかしそこには、何も無かった。レレーナの遺体はおろか、レレーナが踠き苦しんだ際に出来た染みや皺すら其処には存在しなかった。

 

「な…に…」

 

「君が見た死体というのは、これの事かい?」

 

レレーナがそう言ってアレクセイに右手を出す。その右手には、先程まで何も無かった。にも関わらず、いつの間にかグッタリとしピクリとも動かない虚ろな目をしたレレーナ自身が存在した。

 

「!?」

 

「可笑しなものだ。君にギアス(異能)を、貸してあげたのは誰だった?如何して記憶改竄以外のギアス(異能)がある事を考慮しない?…いや考慮した結果が暗殺だったのかな?」

 

「…」

 

「見せてあげよう。これが『完全催眠(The Complete hypnosis)』だ」

 

そう言うとレレーナが右手で持っていたグッタリとしてピクリとも動かない死んだ筈のレレーナが、まるでガラス細工の様に砕け散った。すると中から先ほど無かった剣が現れ、床に突き刺さる。

 

「なん…だと…」

 

「有する力は、完全催眠。この力は、目を合わせた相手の五感を支配し、以降僕が能力を発動する度に何度でも相手を支配する事ができる」

 

「!?」

 

「この力を持ってすれば、沼地を花畑に見せる事も蝶を龍に見せる事も出来る。君は、僕の支配下に居たんだよ」

 

「あり…え…ない。私と…は、一度も…目を…合わせて…い…ない」

 

アレクセイは、レレーナから異能の力を貸されて以降一度もレレーナと目を合わせていない。それは、記憶改竄の力が完全催眠と同様相手の目を見る事が条件だからだ。レレーナが意識的に目を合わせない様にしており、アレクセイ自身もそれを理解していたからこそ今まで一度も合わせてこなかった。にも関わらず目を合わせる事で発動するギアス(異能)の支配下にいるとは、どう言う事なのだとアレクセイは思った。そんなアレクセイの心情を計ったかのように、レレーナは口を開く。

 

「逆に聞くが、僕が最初に君に力を貸してあげた際に、僕と目を合わせただろう?」

 

「!?」

 

アレクセイは、今日何度目かも分からぬ驚愕をする。そして全てを察してしまう。

 

「私を…信用…して…いなかった…のか」

 

「そうだね。用心は必要だろう?それに、僕は君にダスコ・ラ・クレルモンを始末する様に言った。だが君はカリーヌ諸共殺そうとした。皇族に手を出せば事態がややこしくなると言ったのに…僕が用意したカリーヌの執事を記憶改竄で自爆させるなんて酷いねぇ」

 

レレーナは、アレクセイに皇族へ手を出すのを控えるように言っていた。皇族へ手を出すと、後の計画であるマリーベル誘拐の障害になる可能性があったと言う事と、皇族保護の名目で否応無しに帝国は全力で対応する事になるからだ。つまり今後の計画に支障をきたす可能性が高く悪手だと判断したからである。

 

「それに、さっき言っただろう?「君が僕の紅茶に毒を入れるのを見ていた」って。君が裏切る事など初めから知っていたよ」

 

「!?」

 

レレーナは、『全知全能《The Almighty》』の中でレレーナが最も多用する"未来を見て改変する力”を使い、アレクセイに力を渡した後に彼がどうするのかを見ていたのだ。故に彼が自分を殺そうとする事など、初めから知っていたのである。それでもレレーナは、彼を利用した。切り捨てても心が痛まない駒として。

一応皇族には、手を出すなと言ってみたが、結局未来は変わらなかったので此処で切り捨てる事が決まったのだ。

 

「覚えておくと良い。目に見える裏切りなどたかが知れている、本当に恐ろしいのは目に見えぬ裏切りだよアレクセイ君」

 

「…」

 

「それに借りた物は、返すのが道理だよ」

 

レレーナのその言葉を聞いたのを最後に、アレクセイは絶命する。

 

そんなアレクセイを見てレレーナは、何とも無いように携帯を出し別の部屋に待機していた機情局の人間を呼び出す。

 

「あとは任せるよ、カルタゴ」

 

「イエス・ユア・ハイネス」

 

レレーナは、カルタゴと呼ばれた男に後の事を任せて部屋を出る。そして明日執り行われる決闘の儀に備えてアリエスの離宮へ戻って行ったのだった。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

皇歴2014年 帝都ペンドラゴン アリエスの離宮

 

レレーナとオイアグロの決闘が終わった当日の夜。オルフェウスが、機情局の職員に付き添われてアリエスの離宮へ帰ってきた。

 

「心配を掛けたな、二人とも」

 

「オルフェウス〜!」

 

「オルフェウス!」

 

オルフェウスがアリエスの離宮へ帰って来ると、玄関でレレーナとエウリアがオルフェウスに抱き着く。二人同時に抱きつかれて、オルフェウスは支え切れずに後ろに倒れ込んでしまう。しかし、そんな事御構い無しにしがみ続けるレレーナとエウリア。目に涙を溜めてオルフェウスに抱き着くエウリアと、涙をボロボロと流しながらしがみ付くレレーナ。

そんな二人を見て、いかに二人に心配を掛けたかを感じるオルフェウス。そしてオルフェウスは、二人の頭を仕方ないなと言う様な顔で優しく撫でる。その光景は、まさしく家族の様であった。

 

二人に散々泣かれたオルフェウスは、二人と共にリビングへ向かう。そして久し振りにエウリアの料理を、3人で和気藹々と話しながら食べる。その後、レレーナと一緒にお風呂に入りレレーナの頭を洗ってやる。お風呂を上がってからは、寝室で所謂川の字で寝る。既にレレーナが真ん中で眠りに付いている状況で、左右を挟むオルフェウスとエウリアは今回の件について話をしていた。

 

「今回、レナ凄く頑張ったのよ」

 

「みたいだな。帝都では随分と暴れた様だし、決闘の儀ではオイアグロ相手に殺し合いを演じる事になった様だしな」

 

オルフェウスは、ジヴォン家に連れて行かれて直ぐにオイアグロを殺そうとするも及ばず、結果ジヴォン邸で軟禁状態となってしまったのだ。オイアグロの実力を体験したオルフェウスにとって、レレーナがオイアグロと決闘をすると言うのは心配で仕方なかった。そして無事にレレーナが勝った事に安堵していた。

 

「無理させたな…守るって言ったのに」

 

オルフェウスは、眠っているレレーナの寝顔を見ながらそう口にする。

 

「また助けて貰っちゃった」

 

「エウリアも心配かけたな」

 

「私は、何も出来なかったわ」

 

今回エウリアは、オルフェウスを連れ戻す為に何かをしようとするも何も出来なかった。本来であればそれは、可笑しな事ではない。しかしレレーナが行動しているにも関わらず、自身は何もしていない事に悔しさと苛立ちを感じざるを得なかった。

 

「普通はそうだ。レナが凄いんだよ、だから自分を僻むなエウリア」

 

「でも」

 

「俺も本当は、レナを守る側なんだ。なのにまた助けられた。嚮団から助けられ、居場所を与えられたのに」

 

「オルフェウスは、騎士として立とうとしているわ!それにレナと一緒にE.U.で諜報活動をしているじゃない!」

 

オルフェウスもエウリアもレレーナに大きな恩を感じている。だからこそ二人ともレレーナの為に何かをしたいと思っているのだが、なかなかレレーナのいる場所は難しい場所で、役に立つのも難しいと二人は思っていた。今回の一件でも自分達の力不足を感じざるを得ず、どうすればいいのかと自問自答をするオルフェウスとエウリア。

 

「エウリア。少なくとも俺は、君がいる事に支えられている。だからこれから二人で出来る事を増やして行こう」

 

「…そうね、何時迄もウジウジしてられないものね。私も頑張るわ!オルフェウス!」

 

「あぁ、頑張ろう」

 

「む…む…」

 

オルフェウスとエウリアが、レレーナを挟んで今後頑張ろうと意気込んでいると眠っているレレーナが寝言を漏らす。それを見てオルフェウスとエウリアは、顔を見合わせて笑みを浮かべる。

今日、アリエスの離宮には久し振りの団欒があった––––––––––––。

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

帝都ペンドラゴン 宰相府 宰相執務室

 

神聖ブリタニア帝国の若き宰相シュナイゼル・エル・ブリタニアが仕事をしている場所が、帝都ペンドラゴン皇宮にある宰相府である。この場所でブリタニア帝国の重大政策等が思案されて、帝国全土で法律等が反映される事になっている。この場所こそが帝国の中枢と言っても過言はない。

 

帝都狂乱の主犯とされるアレクセイが自殺した事が判明した当日の夜、宰相執務室で二人の男が内密の話し合いをしていた。

 

一人は、宰相執務室の主。フワリとした金髪で淡い紫色の瞳を持つ帝国第2皇子シュナイゼルである。

もう一人は、シュナイゼルの最側近の軍人でありブリタニアの伯爵位を持つ貴族でもある、明るめの茶髪に水色の瞳を持ついろんな意味で中性的なカノン・マルディーニである。

 

「シュナイゼル殿下。今回の帝都狂乱に関する報告書です」

 

そう言ってカノンがシュナイゼルに、昨日終結した帝都狂乱に関する報告書を机の上に提出した。それを手に取りシュナイゼルは、報告書を読んでいく。そして数分で報告書を読み終わった後に、報告書を机の上に戻す。

 

「ふむ、やはり妙だね」

 

「はい、機情局の動きに不審な所が多々見られます」

 

「うん、それにレレーナの動きにも妙な所があるね」

 

「レレーナ殿下ですか?」

 

「あぁ」

 

カノンのレレーナへの印象は、まさしく悲劇の皇子と言った所だ。

数年前に起きたアリエスの悲劇で母マリアンヌを失い、自身は意識不明で2、3年程病院のベットの住人となっていた。その間に同母兄妹達は、皇帝の勘気に触れ戦争直前の日本へ人質同然に送られた。そして戦争が起きて、二人の皇族は死亡した事となる。実際には遺体は見つかっていないので推定でしかないが、当時10代前半の子供二人まして妹は目と足を不自由にしておりとても戦時を生きて行けるとは思えない。故に死亡したものとしてブリタニアでは扱われている。レレーナが目を覚ました時には、レレーナは独りぼっちになっていたのだ。

 

「レレーナの噂は知っているかい?」

 

「噂ですか?」

 

ここ最近ブリタニア帝国では、アリエスの悲劇はマリアンヌ皇妃ではなくレレーナ殿下が狙われたのだと噂するものが居るのだ。その為皇帝は、レレーナを隠しテロリストたちから守っていたのだとされているのだと言う者も存在する。だからこそ入院中のレレーナは、面会謝絶だったのだと。

 

その証拠にレレーナが意識を取り戻した時に、レレーナの側には正体不明の子供が二人存在していた。意識不明で動けなかった筈なのに一体何処で二人の子供と知り合ったのか?実は、この二人の子供は皇帝直属の配下で、レレーナの守り役だったのではないかと、だから子供を無理矢理連れて行ったジヴォン家とド・ブリタニア家に対する仕置きを今回行なわれたのではないかと言われている。帝都狂乱は、皇帝の勘気に触れた貴族達に対する粛清であったのだと噂されているのだ。

 

シュナイゼルにとってこの噂は、気になるものであった。あの俗世にこれっぽっちも興味を持たない自身の父であり、皇帝であるシャルルが一人の息子の為に今回の様な粛清を行うだろうかと疑問に思ったのである。

実際シャルルは何もしていない。しかし噂とは本当に無責任なもので、それが事実であるかは関係ないのだ。

 

だからこそシュナイゼルには、見極める必要があった。

 

「彼の事をもう少し調査してくれるかい?」

 

「分かりました。では幻影の毒(ファントム・ヴェノム)に調査を命じます」

 

「あぁ」

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

帝都ペンドラゴン ブリタニア皇宮 玉座の間

 

ブリタニア皇帝が執務を行うブリタニア皇宮の中心部。

シュナイゼルがカノンと密談をしているのと時を同じくして玉座の間で、皇帝シャルルとその騎士ビスマルクが二人で話していた。

 

「オルフェウスは、レレーナ殿下の下に帰ったようです」

 

「そうか」

 

ビスマルクは、シャルルにオルフェウスが帰った事を報告する。

 

「しかし今回は、久々に肝が冷えたわ」

 

「私が思慮が足りなかったばかりに、申し訳ありません」

 

「よい。現状あれの事を最も理解しているであろう兄さんですら手に負えんのだ」

 

「はっ」

 

「しかし何もしない訳には行くまい」

 

「監視を付けますか」

 

「うむ」

 

「しかし普通の者では、監視にはならないのでは?」

 

「適任者がおる」

 

ビスマルクからしてみれば、ナイトオブラウンズですら力不足だろうと思えるレレーナの監視任務。それを行える適任者とは、一体誰なのか皆目見当も付かなかった。

 

「入れ」

 

シャルルがそう言うと、玉座の間の大扉が開き一人の少女が現れる。その少女を見て目を見開いて驚愕の表情を浮かべるビスマルク。

玉座の間に入ってきた少女は、妖艶な表情を浮かべてシャルル達の下に歩いてくる。

 

「レレーナの監視は任せるぞ、マリアンヌ」

 

「えぇ、あの子の事は私がしっかり見ておくから安心して頂戴。ふふふ」

 

 




次回
『はじめてのお使いinアゼルバイジャン』

お気に入り登録4000人を超えました!ランキングにも載りました!
有難う御座います!読者の皆様のお陰です!

コメント、評価、誤字報告も有難う御座います!
今後とも宜しくお願いします!

お気に入り登録者数4000人記念話『ルルーシュ兄様の受難』を近日公開致します!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。