「NPCに毎日愛してるって言うと強くなるらしい」 (桃色パイソン)
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「NPCに毎日愛してるって言うと強くなるらしい」

 ナザリックのとある一室で二人の異形種が打ち込み作業を行っていた。

 片方は背中に翼の生えた鳥人。

 もう片方は輪郭揺らめく亡霊。

 二人はただ黙々と空中に浮いているコンソールを操作している。そんな中作業の単純さに飽きてきたのか鳥人の方が亡霊に対して話を振る。

 

「……あー、流石に飽きてきたなあ。ちょっと休憩するか、なあ後輩!」

 

「いいですけど、まだやることは残っているんですからねぺロロン先輩」

 

「わかってるよ、ちょっと休んだらまた頑張るって!」

 

「はぁ……それならいいですけど」

 

 コンソールをいったん閉じて背伸びをするようなポーズを取る鳥人は「ぺロロンチーノ」。彼はギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のメンバーであり本日はNPCの挙動やナザリックのギミックについて設定をしていた。

 

 そしてそれに付き合わされている亡霊はナザリックの新参者にしてぺロロンチーノの「後輩」であった。プレイヤーネームは別にあるのだが「後輩」という呼称が定着しつつある。本人は何となく嫌がっている。

 

 二人ともテーブルを挟んで向かい合うように座っており、ぺロロンチーノの方は休憩と同時にテーブルに足をのせ始める。一方の後輩はその行動を咎めるわけでもなく自身も疲れているのか机に突っ伏して寝ている。

 そんなグダついた空気の中ぺロロンチーノはあることを思い出す。

 

「なあ後輩、知っているか?NPCに毎日愛してるって言うと強くなるらしいぞ」

 

「……それどこのデマですか?」

 

「デマじゃねえっての!俺が所属してるサークルで噂になってるんだよ。強くしたいNPCに毎日愛してるって言うと強くなるってさ。それにさあ、この何でもありのゲームでならこれくらいの隠し要素があってもおかしくないだろ?」

 

「そう言われると否定は出来ないですけど……」

 

「そうだろ!」

 

 ぺロロンチーノは面白そうにその謎の噂を語っていく。二人が現在プレイしている「ユグドラシル」というゲームはとにかく未知なことが多い。それ故に発見されていないシステムがあったとしても何らおかしくはないのである。もしそれが本当だとするならばすごい発見であると言えた。

 

「誰か試した人がいるんですか?」

 

「……まあ、成功した奴はみたことないけどな。俺は話を聞いただけだしさ」

 

「面白い話でしたけど、それじゃあやっぱりデマみたいですね」

 

「いやいや、みんな試してないだけで本当のことかもしれないだろ?」

 

「どういうことですか?」

 

「考えてもみろよ、自分の作ったNPCに愛してるなんて言うやつどう思う?ちょっとキモいだろ?まあ、俺はシャルティアにはよく言うんだけども」

 

 後輩は一瞬ぺロロンチーノのシャルティア愛してる発言にうわ……という声を漏らすが、ぺロロンチーノのシャルティア愛はいつものことか、と切り替える。愛してると面と向かって言うのは、いくら相手が自分の作ったNPCであっても恥ずかしく感じるのではと思う。

 その姿を他のプレイヤーに見られでもしたら普通にヤバいやつだと思われることにも納得がいく。

 

「ぺロロン先輩はいつものことだとして、そう言われれば確かに気持ち悪いですね。それに毎日っていうのも大変そうです」

 

「そうそう!毎日やるっていうのも案外難しいんだよ。それこそ毎日ログインできる余裕がある奴か暇人くらいだろ?あと、どれくらいの期間愛しているといえば良いのかも分かんないからな。年単位ってこともありえる」

 

「年単位って……まあ、途中で飽きたり忘れたりしてしまいそうですね」

 

 この何でもありのユグドラシルであるならば年単位での隠しシステムが存在することもありえる。発見されないネタを仕込む意味とは一体何なのだろうか。二人はユグドラシルに対する謎を深めていくことになる。

 

「それでさ、俺たちでも検証してみないか?この噂を」

 

「……えー、俺は嫌ですよ。ただでさえ変人の集まりだと思われているアインズ・ウール・ゴウンでさらにそんな変態的なことしたくないですもん」

 

「変人の集まりってお前なあ……実は俺はもう試してるんだぜ!ここ二週間ずっとログインしてシャルティアに毎日愛してるって言ってるんだ!」

 

 ぺロロンチーノは腕を組みながらそう語る。一方の後輩は二週間やっても効果がなければ諦めてもよさそうなのになと冷静な判断を下す。

 後輩の考えるこの噂の真相はプラシーボ効果である。NPCに愛してるということで愛着がさらに湧いてきて強くなっていると勘違いしてしまうというものであった。だがそんなつまらない推測を言うとぺロロンチーノが怒りそうなので黙っておく。

 

「それで効果はあったんですか?」

 

「あったと言えばあったかも。シャルティアのことがもっと好きになったし。洋服とかも今度作ってやろうと思ったりした」

 

「まるっきりぺロロン先輩の心情の変化だけじゃないですか!もっとこう特殊なスキルやクラスが付いたとか、ステータスが変わったとかそういうのは」

 

「ないよ。でも可愛くはなってると思う」

 

「なるほど……なるほどぉ……」

 

 そんなのお前の感じ方次第だろとはツッコまない。

 

「だから後輩も実験に参加してくれよ。実は俺、明日はどうしても外せない用事が一日中あってさ、ログインできそうにないんだ。二週間連続記録が途切れちゃうから他の誰かに変わってもらおうと思ってさ」

 

 後輩は後輩であるために頼みごとがしやすいから頼まれたんだろうなと自分で推測する。

 

「それで俺ですか…………」

 

「それにお前はアインズ・ウール・ゴウンに来てから毎日欠かさずログインしてるだろ。そこまで熱心なやつなら続けられるんじゃないのかと思ってさ」

 

 確かに自分はこのギルド「アインズ・ウール・ゴウン」に加入してからは一日でもログインを欠かしたことはない。だがそれは単純に暇だからである。

 現実での後輩は富裕層でもなければ貧困層でもない云わば中間だ。

 決して高給取りではないがこのご時世には珍しい超白い企業に勤めている。

 だからこそ余った時間をユグドラシルで過ごすことが出来ている。

 

「えーと……普通に嫌です。キモいですし、自分のNPC持ってないですし、作る気もありませんから……」

 

 後輩は自分のNPCを持っても作る気もなかった。理由は単純にめんどくさいのもあるが、現在のナザリックの戦力は十分にあるために余計なNPCを作る必要がないというのも理由の一つであった。

 

「自分の作ったNPCは言うなれば我が子同然!好きだと言って何が悪いんだよ!」

 

「じゃあ、たっち先輩がセバスに好きって言ってたらどう思いますか? 絵面も考えて下さいね」

 

「…………いや、それは」

 

「それか、ウルベルト先輩がデミウルゴスに好きって言ってたらどうですか?」

 

「…………だから、男同士はずるいじゃん」

 

「まあ、そういう事です。俺としても毎日言いに来るのは面倒くさいですし、信憑性に欠けることに付き合うのも馬鹿らしいってもんですよ」

 

 完全論破であった。これが現実世界であるならばぺロロンチーノの顔はぐぬぬといった顔になっているであろう。

 

「あーあ、もしお前が引き受けてくれるなら欲しがってた素材分けてやってもよかったんだけどなぁ」

 

「え!?マジですか!」

 

「マジマジ!この前たまたまドロップしてさ。自分で使うのももったいないから取っておいたんだけど、この実験に付き合ってくれるなら譲ってやっても良いんだけどな」

 

「はぁ……仕方ないので付き合ってあげます。別に素材が欲しい訳じゃないですけど。それと前払いですからね」

 

「分かりやすいなあ」

 

 後輩は現金であった。

 ぺロロンチーノは早速アイテムボックスから素材を取り出し後輩に渡す。嬉しそうにそして大事そうに素材を抱える後輩を見てぺロロンチーノも何となく嬉しくなる。後輩が素材をしまったところで本題に入る。

 

「よし!それでどのNPCを使って実験するんだ?」

 

「え?シャルティアじゃないんですか?」

 

「途中から思いついたんだがウチのシャルティアは既に強いから効果がないのかもしれない。だから100レベル以外のNPCで実験してみよう!」

 

 その後二人はどのNPCにするか話し合う。

 がただでさえ癖の多い奴らが作った癖の多いNPCであるためになかなか決まらない。というか決められないでいた。

 

「……それじゃあ、五大最悪と100レベルNPCと非戦闘員以外ですね」

 

「まあ妥当なところでプレアデスあたりだろうな。それでどれに『毎日愛してるって言う』のを試してみるんだ?」

 

「そうですね……それじゃあ――」

 

 

 

【どれを選びますか(分岐点)】

 

→『メガネのデュラハン』

 『性悪人狼』

 『ドSドッペルゲンガー』

 『汚いスライム』

 『眼帯オートマトン』

 『人食いアラクノイド』

 『アインズさん』

 




↑アンケートじゃないです
この後、実験を続けてる状態でユグドラシルが終わります

2キャラくらい書いてすぐ終わります 


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→『性悪人狼』

「そうですね……それじゃあ――ルプスレギナにします」

 

「へぇー、なんで?デザインが好みとか?」

 

「あ、それはないです。……うーん、なんでって聞かれても……別に理由はないですけど、まあ強いて言うならルプスレギナのクラスってクレリックですよね?それならもしステータスに反映されずに強くなった場合でも回復魔法の回復量とかで変化がわかりやすくなるんじゃないのかなーって」

 

「うゎ、面白みの欠片もない理由。男ならもっと顔で選ぶとか、体で選ぶとかそういうのはないのかよ!」

 

「何で怒られてるんですか俺……」

 

 とりあえず二人は今日の作業を実験のために急いで終わらせる。

 後輩としては正直あまり今回の実験に気乗りはしない。レア素材に釣られてしまったのは確かであるが、よく考えれば毎日実験をするのはそれなりに苦痛なのではと。まあ、引き受けてしまった以上はやるだけであるが。

 

「そういえばこの実験のこと誰かに報告したりしますか?だったら、俺すごい恥ずかしいんですけど」

 

「それなら黙っててやるよ!あ、でも一応モモンガさんには一言言っておくか」

 

「そうですね。モモンガ先輩になら別に恥ずかしくないです」

 

 雑務を終わらせた二人は早速、ルプスレギナの所へと向かう。居場所はたぶん第九階層であろう。とりあえず円卓に行くとプレアデス達は6人セットで居た。ついでにメッセージを使ってモモンガさんも呼びつける。

 呼んだらすぐ来てくれるモモンガさん。

 

 転移のエフェクトが発生し、そこからギルド長モモンガが出て来る。

 

「ナザリックの存亡に関わる重大なことって何ですか!一応スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンも持ち出してきました!」

 

「……ぺロロン先輩何て言って呼び出したんですか」

 

「てへペロ」

 

 その後実験の内容とそこまで重大ではないことをモモンガに説明する二人。

 案の定ペロロンチーノは怒られていた。

 実験の内容に関してモモンガはかなり懐疑的である。まあ内容が内容だけに信じてもらえないのも仕方がないと言える。

 

「話は分かりました。ただし、正直胡散臭い感じがしますね。後輩君は本当に毎日愛してるなんて言うつもりですか?」

 

「……いや、まあ、そうあらためて言われると何かやりにくいんですけど」

 

「モモンガさん……ユグドラシルの醍醐味は何ですか?未知を楽しむことでしょ!俺たちがもしこの実験を成功させたなら本当の意味でユグドラシルを楽しめたと胸を張って言えるんじゃないのかよ!せっかくなら楽しんで行こうぜ!」

 

「!?……その通りですぺロロンさん!俺楽しむことを忘れてました!実験を応援します!」

 

「じゃあ、モモンガさんもパンドラに出来るだけ愛してるって言ってください。俺もシャルティアに出来るだけ言うんで」

 

「!?」

 

 モモンガに衝撃走る。他人がやる分には良かったが自分がやるとなるとそれなりに苦痛であった。だが応援すると言ってしまった手前引き下がる訳にもいかない。仕方なくこの実験に参加することになったのだった。

 

「それじゃあ愛してる同盟発足ということでいいですか?」

 

「……はい」

 

 露骨にテンションが下がるモモンガ。

 

「仕方ないですね。ただし三人だけの秘密ですからね」

 

 ここにユグドラシルの謎に挑戦することを決めた三人が集まった。

 そして第一回の愛してる発言に移る。

 ぺロロンチーノもシャルティアの元へ、モモンガもパンドラの方へ行ってしまった。後輩的には一人の方がマジみたいで嫌だった。

 

「さ、言うか」

 

 さっさと終わらせようとルプスレギナの前へ立つ。

 あらためて見てみると可愛いらしいデザインをしているなと思う。赤い三つ編みの髪形に褐色の肌と快活そうな見た目をしている。そして何より金色の目が彼女の種族である狼人を主張していて可愛らしいと思った。

 後輩は胸の中で獣王メコン川に謝罪しながらそっと一言呟こうとする。

 

「あ……あい……あいし……ああああああ!きっつ!」

 

 この場面を誰かに見られてるのではという不安が突如後輩を襲う。

 ゲームなので顔色は変わらないが、現実の世界の後輩の体には変な汗が流れていた。そもそも誰も見てないとは言ったものの、他のプレアデス達は横にいたりするのでそれも気に障った。

 

「ちょっとあっち行ってて……」

 

 コマンドを使い他のプレアデスを反対側の壁際に移動させる。

 こんなことで焦ってたらこの先どうなるんだと安請け合いした自分に腹が立つ。

 愛してるなど親にも言ったことなどなかった。さっさと言ってしまおう。

 

「……愛してる」

 

 そう一言呟く。

 口から出してしまえば楽なものであった。

 肩の荷が下りたのか円卓の自分の椅子に座りながらルプスレギナを見る。

 NPCなので顔色は変わらない。後輩はそんなものだよなと机に突っ伏す。

 

 

 

 そして同じ頃。

 

「シャルティア愛してるぞおおお!」

 

「はぁ……パンドラ……愛してるぞー……」

 

 後々にこの愛してる発言を偶然聞いてしまった他のギルドメンバーが引いてしまったという話はまた別の話であった。

 

 

 

 

 

 

「あー、そんなこともありましたね」

 

「ありましたねって……モモンガ先輩!俺は今でも検証してるんですよ!」

 

「まだやってたんですか……俺はパンドラ相手だったんで正直結構嫌だったんですよね。まあ後輩君が来た時だけは形式上だけは言ってましたけど」

 

「まあ、それは仕方ないですね」

 

 二人は円卓の間で隣り合う席に座りながら過去の思い出を振り返っていた。

 愛してる同盟発足から数年、今日はついにユグドラシルの最終日になってしまった。あれから毎日欠かさず愛してる発言を繰り返していた後輩。

 

「何と言うか一回習慣化してしまうと、言わないと落ち着かなくなってしまったんですよね。寝る前に歯を磨くみたいな感じで」

 

「その例えはどうなんですかね……それで総評として効果はあったと言えますか?」

 

「……あったと言えばありました。心の問題ですけど少なくとも俺がこうして最終日まで続けられたのも、モモンガ先輩とこの実験があったからだと思います。ぺロロン先輩もさっきまで来てくれてましたし」

 

「それは……そうですね。効果があったと言えると思います」

 

 ほとんどのギルドメンバーが辞めてしまった。それは仕方のないことだし、どうしようもない事だとモモンガも後輩も分かっている。ただ今日は最終日ということもあり、何人かのメンバーは顔を出してくれた。

 タブラはアルベドの最後の設定を変えに、ヘロヘロは愚痴をこぼしに来たりした。その中の一人にぺロロンチーノもいたのである。

 

「さて、後少しで終わりますけどどうしますか?」

 

 後輩はモモンガに尋ねる。

 モモンガは明るい声で答える。

 

「最後ぐらい玉座の間に行きましょう……それとせっかくなら出来るだけNPCも集めて盛大に終わりますか」

 

「あの、NPC集めて防衛とかは大丈夫なんですか?」

 

「ここまで来たらもう侵入者もいないでしょう。それにぺロロン風に言うならば、せっかくなら楽しんで行こうぜ!ってやつですよ」

 

 後輩は何も言わずOKサインを出す。

 

 玉座に出来るだけ沢山のNPCを集めた二人。全部のNPCは入りきらなかったがそれでもかなりの数が集まっていた。一体一体に思い出がある。だから集めてくることだけでも十分に楽しかった。

 百鬼夜行のNPCを眺めながらモモンガが話す。

 

「大体集めましたね……」

 

「そうですね……何か感動しそうです」

 

「今日は――」

 

「?」

 

「今日はしないんですか?実験は」

 

 

 モモンガは意地の悪そうな声でそう問いかける。

 後輩はその問いに思わず笑ってしまった。

 

 

「あはは!NPC集めた後にそれ言うんですか?言いますよ!最後ですもんここまで来たら言います!」

 

 もう何年も続けてることだった。

 だから慣れた……とは言えないけども違和感なく言える。

 

 ルプスレギナを自分の前に立たせて今日の実験を始める。

 

 

「愛してる」

 

 

 モモンガの前だったが恥ずかしさはない。

 それはこれが最後であるとモモンガも後輩も分かっていたからかもしれない。

 ルプスレギナの顔は変わらない。これを続けて良かったと思う後輩。

 

 一瞬の沈黙の後にモモンガが後輩にある提案をする。

 

「最後ぐらい何か褒美でもあげたらどうですか?」

 

「……そう言われてもクレリック用の装備は何も……ああ、これで良いか」

 

 それはぺロロンチーノから貰った素材で作った指輪だった。

 余った素材で作ったために性能はあれだが、記念品としていつもアイテムボックスを埋めていた。最後ぐらい出番をやるかとルプスレギナに装備させてやる。

 

「……最後だからな」

 

 そして後輩はモモンガの座っている玉座の横に立つ。

 あと少しで彼らは消える。

 

「モモンガ先輩、もうほとんど時間ないですけど言っておくことはありますか?」

 

「……あー、そうですね……楽しかったです」

 

「俺もです」

 

 最後は笑って終われたことに感謝しながらその時は来た。

 

 

 

――0:00:00……

 

――0:00:01,2,3,4……

 

 

 

「「ん?」」

 

 後輩とモモンガは一瞬、何が起こったのか分からなくなる。これはユグドラシルの続編が出たということか?いや、それにしては事前情報がなさすぎる。延期?それともロスタイムか?

 分からないが続いていることだけは確かである。

 

「あの!」

 

 後ろから誰かに呼ばれた後輩はふと振り返る。

 そこにいるのはこれまでずっと愛していると言って来たルプスレギナだけだ。

 だから一瞬信じられなかった。

 

「え?なに?」

 

「あの!……この指輪は……その、結婚してくださるということ……ですか?」

 

「ちょっと待って…………今モモンガさんと話すから」

 

 顔を赤らめながらほんの少しだけ頷くルプスレギナ。

 後輩はモモンガの元へ行きこそこそ話を始める。

 

「あの、聞いてました?今の話?」

 

「あ、はい。結婚のことですよね?したらいいんじゃないですか?」

 

「いや、そうじゃなくて今の状況ですよ!何でまだ続いてるんですか!?」

 

「ふふ、それならもう考えがまとまってますよ!たぶん俺らがずっと愛してるって言って来たことを運営が察知してサプライズを仕掛けてるんですよ!せっかくだからこのイベントを楽しんだらどうですか?」

 

「それは流石に無理があるんじゃ……いや、俺もそれくらいしか浮かばないですけど……だとしたらモモンガさんもパンドラと……何でもないです。じゃあ、ちょっと行ってきます」

 

 再びルプスレギナの前に立った後輩。

 

「じゃあ、します。結婚」

 

「ほんとっすか!?ほんとにほんとっすか!!」

 

「うん、いいよ。俺独身だし」

  

 ルプスレギナは泣きながら抱き着いてくる。

 その瞬間、玉座にいた全てのNPCが一斉に歓声を上げる。

 モモンガも凝った演出だなと思いながら席を立ち歓声に参加した。

 

 二人が転移したことに気付くまで残り3分を切った。

 

 

 

 

 

 

「父上……私も……」

 

「え?」

 




とりあえずルプスレギナにしました。長かったので分割 次はルプスレギナ視点
『メガネのデュラハン』も一回書いたんですけど暗くて病んでたのでやめました


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『性悪人狼』→

別視点なだけで特に変化はないです


 ナザリック第九階層の円卓の間では6人の異形種メイド「プレアデス」が待機状態で立っていた。彼女たちの役割は第十階層への侵入者を迎撃することであるのだが、そもそも第九階層まで到達できる侵入者自体がほとんどいない。そのため彼女たちは日がな一日立ったままで終わることがほとんどだ。

 

 ただ彼女たちはそんな毎日を暇だとは思っていない。

 それが至高の御方々達から受けた使命であるのだから。

 

 プレアデスの次女にして人狼のクレリック「ルプスレギナ」もまたこの変わらない日々に何の疑問も持っていなかった。

 

 

 あの日までは。

 

 

 いつもと変わらずに第九階層で姉妹達と待機していた時のことだった。至高の存在ぺロロンチーノとその「後輩」が円卓の間に仲良く現れたのである。ちなみに後輩は後輩としか呼ばれていないのでプレアデス達は本名を知らない。ギルドメンバーの2/3も本名を覚えていない。本人も本名で呼ばれてもピンとこなかったりする。

 

 その少し後に後れてモモンガが登場する。

 

「ナザリックの存亡に関わる重大なことって何ですか!一応スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンも持ち出してきました!」

 

 プレアデスに緊張が走った。

 だがすぐにそれは誤解であると分かった。

 

「すいません、モモンガさんそれはほぼ嘘なんです」

 

「なっ!ぺロロンチーノォオ!」

 

 プレアデス達も思わず胸をホッとさせる。

 その後にぺロロンチーノが怒られ、そしてモモンガ、ぺロロンチーノ、後輩の三人は何か会議を始める。ルプスレギナは話の内容が気になったが聞こえない所にいたために何を話しているのかは分からなかった。

 

 そして話が終わったのか後輩を残して残りの二人はどこかに転移していく。

 

 後輩は少しウロウロとしてプレアデスの前を言った行ったり来たりした後に、何か覚悟を決めたのかルプスレギナの前に出る。

 

 そして、

 

「あ……あい……あいし……ああああああ!きっつ!」

 

(!?大丈夫ですか!)

 

 何かを言いかけて地団駄を踏む後輩。ルプスレギナは後輩のことを心配する。

 後輩が頭を抱えて落ち着きを取り戻すと、他のプレアデス達に対して反対側の壁際に移動するように指示を出す。

 そして再度ルプスレギナに向かい合うように立つ後輩。

 

(あの……何か御用でしょう――)

 

「……愛してる」

 

(へ?)

 

 そう呟いた後輩は、肩の荷が下りたのか円卓の自分の椅子に座りながらルプスレギナを一目見ると、机に突っ伏してしまう。

 

 ルプスレギナは心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。

 

(いま愛してるって……えっと……まじっすか!?……いや、でも聞き間違いって可能性も……どうしよう、もう一度聞いてみるべきっすかね?……う、何度も聞いたら不敬だろうし、それに私の勘違いだったら恥ずかしいっす……顔に出てないと良いっすけど……)

 

 ルプスレギナは自分の興奮が後輩にばれないか心配になる。

 ただし、後輩視点ではルプスレギナはただのNPCであるために変化はわからない。ただ照れているのは二人とも一緒である。

 

 

 

そして同じ頃。

 

(ぺロロンチーノ様愛してるでありんすううう!)

 

(モモンガ様……いえ、父上!私も愛しておりますぅう!)

 

 ちなみに後輩のこの愛してる発言は反対側にいたプレアデス達にもばっちりと聞かれていたために、ルプスレギナは姉妹達から質問攻めにあったのはまた別の話であった。

 

 

 

 そしてルプスレギナは悶々とした状態で次の日を迎える。

 翌日の夜になると後輩はモモンガと一緒に円卓の間に来ていた。

 

「お互い変なことに関わっちゃいましたね……」

 

「そうですね。それにモモンガ先輩の場合自分の痛い黒歴史に向かって愛してるを言わなきゃないので大変ですね」

 

「痛い黒歴史とか言わないでもらえる!?」

 

「あ、すみません」

 

 後輩を円卓まで送った後にモモンガもまた自分の作業をするためにどこかに行ってしまう。残された後輩は再びルプスレギナの前に立つ。

 

 ルプスレギナも昨日の一件から後輩に対して何か思うものがあるのか、思わず固まってしまう。あくまで平静を装うように努力する。

 

(な、何か御用でしょうか後輩様)

 

「愛してるぞ」

 

(ひぇ!?あ、あ、あの昨日に続きからかいになるのは、その、お、お止しになってくださらないっす……あ……でしょうか?)

 

「うーん、効果がまだ分かんないよなあ……はぁ、もう一回言っとくか」

 

(えっ!)

 

「愛してるぞ」

 

(二回も!?二回も言ったっす!これもう絶対に愛してるって……ああああ!?……ど、どうすれば、あ、あの、その、気持ちは嬉しいっすけど……私ごときが至高の御方とその……そういう関係になるのは……)

 

 自分のノルマを終えた後輩はその場を去っていく。二回目ということと誰もいないこともあり照れは無い。一応、しっかりと聞こえているか確認するために二回言ったのだが、それがルプスレギナにはかなり効いた。

 

(愛してるって言って……早々に立ち去られた……これは、愛してるの答えはいらないってことっすか!?答えは絶対にイエスってことっすか!?そんな……もちろん、至高の御方からの仰せとあらば従うっすけど!……でも、そんな急に言われても準備というか……その、取り合えず急すぎるっす!)

 

 一人テンパっているルプスレギナを他のプレアデスが宥める。

 二回目ということもあり言い逃れは出来なかった。

 ルプスレギナも覚悟を決めるのであった。

 

(うぅ……これはもう受け入れるしかないっすかね……何か恥ずかしいっす)

 

 ただし明日から毎日言われることまでは予測出来てはいない。

 

 

 

 

 

 

 あれから数年の月日が経っていた。

 その中でモモンガと後輩を除くほぼ全員のギルドメンバーが辞めていってしまった。NPC達は怯えた。至高の御方々が消えて行ってしまうことに。自分の創造主が来なくなることに。

 

 ルプスレギナもまた他のNPC同様に怯える日々を過ごした時期もあった。もしかしたら愛していると言ってくれているこの日々が終わるんじゃないかと。それでも後輩は一日も欠かさずに来てくれた。そのことが嬉しい反面怖くなっていく。

 

 そして最終日前日、後輩はルプスレギナの前でつい弱音を漏らしてしまう。

 いつも通り第九階層に来た後輩はルプスレギナに向かい話す。

 

「愛してる……」

 

(私も愛しております……だから、ずっとここに来てください……)

 

「ふぅ……これも明日で最後か……」

 

(明日で最後!?どういうことっすか!まさか、他の至高の御方々と同様にお隠れになるんじゃ……嫌っす……そんなの!嫌っす!嫌だ!嫌だ!……愛してるんじゃなかったんすか!私のことを好きになってくれたんじゃなかったんすか!……お願いします!何でもしますから……愛してるって言いに来てくださいっす!)

 

「はぁ、寝るかな」

 

 

 

 

 ルプスレギナは次の日まで泣いていた。

 明日で最後……その通りならばもう愛されていないということ。

 捨てられてしまうということ。

 姉妹に慰められても一向に心は晴れない。一番恐れていたことが起きるのだからそれも仕方ない事なのかもしれない。

 

 翌日はモモンガと後輩はずっといてくれた。

 昨日、後輩が零した言葉に信憑性が増してくる。本当に今日が最後で、別れのために来てくれたのではないかと。その証拠にこれまで来なくなっていた至高の御方も顔を出している。

 

 そして日付が変わる直前になり、玉座に出来るだけ沢山のNPCが集められた。

 

(……うぅ……うう)

 

 泣きたい気持ちであったが至高の御方の前で恥は晒せない。

 

 集められたNPCの中で自分だけが前に呼ばれる。

 

 ルプスレギナを自分の前に立たせると後輩は実験を始める。

 

 

「愛してる」

 

(愛してるならもっとお側にいてくださいっす!)

 

 

 一瞬の沈黙の後に、モモンガが後輩にある提案をする。

 

「最後ぐらい何か褒美でもあげたらどうですか?」

 

「……そう言われてもクレリック用の装備は何も……ああ、これで良いか」

 

 それはぺロロンチーノから貰った素材で作った指輪だった。

 

 余った素材で作ったために性能はあれだが、記念品としていつも後輩のアイテムボックスを埋めていた。最後ぐらい出番をやるかとルプスレギナにプレゼントされる。指輪はルプスレギナの手に渡った。

 

(!?……これって……)

 

「……最後だからな」

 

 

 

 その瞬間、ルプスレギナの脳内は高速で思考を開始する。

 そして出した答えは

 

 

 

(最後って言うのは……恋人の関係が最後ってことで、け、結婚して欲しいってことっすか!?まさかこれまでのことは私の勘違い……それじゃあ、この指輪は……これはプロポーズとしか考えれないっす!でも、一応確認を……大事なことっすからね!)

 

 

 

「あの!」

 

 

 

 後ろから誰かに呼ばれた後輩はふと振り返る。

 そこにいるのはこれまでずっと愛していると言って来たルプスレギナだけだ。

 

「え?なに?」

 

「あの!……この指輪は……その、結婚してくださるということ……ですか?」

 

「ちょっと待って…………今モモンガさんと話すから」

 

 顔を赤らめながらほんの少しだけ頷くルプスレギナ。

 やはり結婚というからにはモモンガ様の許可がいるのかと納得する。

 

 再びルプスレギナの前に立った後輩。

 

「じゃあ、します。結婚」

 

「ほんとっすか!?ほんとにほんとっすか!!」

 

「うん、いいよ。俺独身だし」

 

 ルプスレギナは泣きながら抱き着いてくる。

 その瞬間、玉座にいた全てのNPCが一斉に歓声を上げる。

 モモンガも凝った演出だなと思いながら席を立ち歓声に参加した。

 

 後輩はよく出来てるなと感心する。

 

「愛してるっすよ!」

 

「あ、それ、俺のセリフだ。覚えてるなんてすごいな」

 

「当たり前っすよ!もうどこにも行かないで欲しいっす!」

 

「続けてプレイしろってこと?」

 

 

 

 

 

 

「息子よ……お前の気持ちは嬉しいが……私達は親子だぞ!」

 

「!?」

 




もうちょっとだけ続くか 他のキャラを書きます。


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『性悪人狼』END

続きましたがこれで『性悪人狼』は終わりです


「愛してるっすよ!」

 

「あ、それ、俺のセリフだ。覚えてるなんてすごいな」

 

「当たり前っすよ!もうどこにも行かないで欲しいっす!」

 

「続けてプレイしろってこと?」

 

「プレイ!?このまま続けて!?いえ、あの、そういうことも後々望んでおられるならばしてあげたいっすけど……あ!私がしてもらう方っすか……そうではなくて!とりあえず最初がこんな衆人環境は恥ずかしいというか……その……色々とまずいっす!」

 

 ここで後輩違和感に気付く。

 抱き着いてきたルプスレギナの体の感触がダイレクトに伝わってきているのである。それにユグドラシルでは感じなかった嗅覚もある。それによく考えれば自分達へのサプライズにここまで作りこんだものを用意するだろうか?

 

 後輩が自分達を祝福してくれているNPC達に目をやる。全員表情や声があるのだ、もちろんいま自分に抱き着いてるルプスレギナを含めて。

 抱き着いていたルプスレギナからそっと離れる。

 

「……あ」

 

 少し残念そうな顔をするルプスレギナ。

 落ち着け。落ち着くんだ。よく考えればこんなのイベントじゃないことくらいすぐ分かりそうなものなのにまったく気がつかなかった。モモンガ先輩が余計なことを言ったからなのもあるが、迂闊だったのは確かだ。

 

 というかいつまで浮ついてるんだモモンガさん!出来もしない口笛まで吹こうとして!ここはまず状況把握だろと後輩は考える。

 

「ルプスレギナ、ちょっとモモンガ先輩に相談があるから行ってくるわ」

 

「……プレイの相談すか」

 

「プレイ?いや、何かいつもと違う感じがしない?ってNPCに言っても分かんないか。イベントは嬉しいけど何か怖くなってきたし、ユグドラシルの公式サイトも確認したいからそろそろ戻ろうかなって」

 

 後輩の戻るという言葉に反応するルプスレギナ。戻るというのは至高の御方がいる別の世界「現実」に帰るということ、それはNPCの間では共通認識である。そしてそこにお隠れになることも。

 

 ルプスレギナの行動は素早かった。後輩を逃がさないために背中と腰にへばりつく。絶対に逃がすものかという強い執念を後輩は感じた。

 

「な!そんなのだめっす!」

 

「ちょっと!何してるんだよルプスレギナ!離れて!」

 

「絶対に嫌っす!たとえ不敬であろうとも、もう離れ離れになるなんて嫌だから!だから絶対に離すわけには……い、いかないっす!」

 

 背中から聞こえるルプスレギナの声は震えていた。きっと泣いているのであろう。それまで歓喜していたNPC達もルプスレギナの叫びを聞いたからなのか何も言えないでいる。

 モモンガさんも異変に気付いたのかGMコールなどを使用しようとしているみたいだった。

 

 NPCが動けないでいる中プレアデスの長女であるユリだけは妹であるルプスレギナの行為を咎めようとする。

 

「そこまでよルプスレギナ!それ以上は――」

 

「何といわれようとも絶対に!絶対に隠れさせるにはいかないっす!」

 

「わかった……戻らないから。だからルプスレギナももう泣くな。ユリも俺なら大丈夫だから、怒ってもいないし。ほら一旦、降りろ」

 

 そう言うと後輩はゆっくりとしゃがみルプスレギナを下ろす。へたり込むように地面に座って泣いているルプスレギナの頭を、子供をあやす時のように撫でる。モモンガは玉座に座っている状態で《メッセージ/伝言》を使用し、後輩に話しかけてきた。

 

「《メッセージ/伝言》を使用してみました。聞こえますか?」

 

「はい、それでモモンガ先輩何か分かりましたか?」

 

「……正直何も分からないですね。GMコールも使えませんし。とりあえず近場にいたセバスに外の様子を確認させに行かせました。たぶん信じられないことではあるんですけど……ゲームが現実になったか、現実にゲームの方が入り込んでしまったか……はたまたは別のパターンか……正直全く予想は出来ないです」

 

「……どのパターンにせよ俺、結婚してしまったんですけど。しかも愛してるって言った事バレてるようなんですけど。死にたいぐらい恥ずかしいんですけど」

 

「いいじゃないですか……俺なんて骨と玉だけになってしまいましたよ」

 

「あ、それは……何と言うかご愁傷さまですね」

 

「それじゃあ、取り合えず敵に回すと大変な階層守護者達から話を聞いて情報を集めましょうか。たぶん味方だとは思いますけど確認しないことには安心できないですからね」

 

「そうですね。そう言えばパンド――」

 

「はい!それじゃあ早速聞いていきましょう!」

 

 

 

 その言葉を最後にモモンガは玉座を立つ。玉座の前に集められたNPC達は全員膝をつき臣下の格好を取る。

 後輩はモモンガは何と言って忠誠を確かめるのか気になった。

 

「今日は後輩とルプスレギナのプロポーズ&結婚報告のために集まってもらい感謝する。ここで各階層から代表して階層守護者らから一言を頂きたいと思うのだが……どうだろうか?」

 

 どうだろうかじゃねえよモモンガ先輩。何勝手にプロポーズ&結婚報告、そして結婚式に持ち込もうとしてんだよ!もっとこう忠義を問うとかそういうのがあるだろ!後輩は心の中で吠える。

 しかし余計なことを言うとまたルプスレギナが泣くかもしれないのでぐっとこらえる。

 

 ちなみにヴィクティムとガルガンチュアは仕事により仕方なく欠席。

 

 

 

 一番手はシャルティア、だったのだがどうも様子がおかしかった。

 黙ったまま何かをこらえている様であった。そしてついに

 

「……ぺロロンチーノ様ぁあああ!どうして置いていったでありんすかぁあああ!」

 

「シャルティア……」

 

 後輩はそう言えばぺロロンチーノも出来るだけ実験に参加していたことを思い出す。シャルティア的には捨てられたと思っているのかもしれない。

 

「泣くなシャルティア……ぺロロンチーノはお前を捨てたりなどしていない……かならず見つけ出して連れてきてやる。な、後輩!」

 

「あ、はい。俺も何となくですけどぺロロン先輩はまた出てきそうな感じはします」

 

 シャルティアは涙で喋れないために無言で頷くと下がっていく。

 

 

 二番手のコキュートスが前に出る。

 

「後輩様、御結婚オメデトウゴザイマス。私ガ言ウノモ何デスガ幸セノ溢レル温カイ家庭ヲオ築キニナルヨウ心カラオ祈リイタシマス」

 

 自分の属性とかけたちょっと小粋なジョークを交えてきた。

 後輩とモモンガはコキュートスのキャラに少し驚いた。

 

 

 三番手のアウラとマーレが前に出る。

 

「「ご結婚おめでとうございます。おふたりで力を合わせて明るく幸せなご家庭を築いてください」」

 

 ここに来てやっと忠誠が分かるコメントを貰う。アウラとマーレが仲良く声を合わせて喋る姿は可愛らしかった。後輩は横でルプスレギナが「双子も良いっすね……」とつぶやいた気がした。

 

 

 四番手のデミウルゴスが前に出る。そして何故か既に泣いていた。

 

「デ、デミウルゴス大丈夫か?」

 

「あまりにおめでたいことに感極まってしまい……申し訳ございません。後輩様、ルプスレギナご結婚おめでとうございます。お二人のご子息を心よりお待ちしております」

 

 泣くほどのことかと思うが忠誠は感じ取れた。そして横でまたルプスレギナが「がんばるっす……」とか言ってる。おいおい、何を頑張るつもりだよと後輩は思う。

 

 

 五番手のアルベドが最後に締めに入る。

 

「御結婚おめでとうございます。後輩様とルプレギナの人生の門出を心からお喜び申し上げます。あとモモンガ様愛してます」

 

「……ん?よし!全員の思いは伝わった。本日の集いはこれで終わりとするが、私と後輩はナザリックに残るので心配しなくともよい!それでは持ち場に戻れ」

 

 

 後輩もやっと一息つく。後はセバスの情報を聞いた後に調べることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 後輩とモモンガは再び円卓で二人きりになり、会議という名目の愚痴の言い合いをしていた。

 

「あれから何も進展なしですか」

 

 セバスの情報や様々な実験を試し分かったのは、ナザリックと自分達が転移してゲームが現実化したということだった。

 

「まあ、いいじゃないですか。後輩君は可愛いお嫁さんも貰えたんですから」

 

「急すぎるんですよ。俺としてはもっとこう時間をかけていきたかったんですけど。それにメコン川先輩に合わせる顔もないですし」

 

「もう会えない可能性もあるんですから、合わせる顔もなにもないじゃないですか」

 

「モモンガさんは元気そうで良いですね……あ!そういえばパンドラとはどうなりました?」

 

「親子だと言って押し通しましたよ。流石に結婚はしたくないので……。まあ、可愛いやつといえば可愛いやつなんですけどね」

 

「いま可愛いと仰いましたか?」

 

「言ったが……まさか!?」

 

 後輩の体が変化してパンドラズ・アクターになる。

 後輩の許可を得てモモンガの気持ちを探るために変身していたのだ。

 

「父上!私も愛しております!」

 

「はぁ……俺も愛してるぞー……」

 

 モモンガの根負けである。

 




次のキャラは全く考えてないです


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