FGO主要キャラ全員生存縛りRTA(1部) (でち公)
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キャラクリ

RTAは初めて書くので実質初投稿です


 皆さんはじめまして。フロムも真っ青な死にゲーこと人理焼却から始まる人理救済RTAはぁじまぁるよー!

(淫夢語録は)ないです。大丈夫だって、安心しろよ〜。

 

 えー本RTAの目的はFate/GrandOrder RPGの1部の主要キャラ全員生存かつトロフィー『スノードロップ』を獲得しつつ1部最速攻略を目指すことです。

 

 Fateのことを知らないと言う人もいるでしょうし、ここでは解説を交えながらやっていこうと思います。

 

 本作のFGORPGでは普通に攻略する場合必ずゲーム内時間で1年経ちます。どれだけストーリー特異点を最速攻略しようが、最終決戦の日にちと合わせるために早くクリアした分イベント特異点が発生します(24敗)

 

 自分がやった中で1番酷かった時は終局に行くまでに合計で50近くの特異点が発生しました。つまり最低でも1週間に1度は特異点が発生していた状態です。お前頭おかしいよ……。

 

 とまあ、そんな感じで最速攻略を目指す場合、特異点解決はできる限り遅くやった方がタイムは速いという矛盾した状態になっております。

 

 なので今回のRTAではストーリー特異点にゲーム内時間で1ヶ月はかけて攻略します。途中で発生する監獄塔なども合わせると9ヶ月になりますが、素材狙いでイベント特異点もやりたいので仕方ないね。やっぱりFGOは周回ゲーなんやなって……(諸行無常)

 

 まあ、チャート通りに行けば最速タイムを叩き出せるはずですので特に問題はありません。

 

 それでは早速キャラクリしましょうか。容姿は勿論ランダム。RTAじゃなければガッツリ時間をかけたいところですが、今回はRTAなのでスキップです。性別はもちろん男です。当たり前だよなぁ? 勿論、男を選ぶ理由もあります。今作では主人公にも隠しステータスというのがありまして男の場合筋力、耐久値に補正がかかり、女の場合魔力、敏捷値に補正が掛かるんです。

 

 最速だけ目指すなら女の方がいいのですが、今回はトロフィーの『スノードロップ』の獲得も狙っていきますので筋力と耐久値に補正がかかる男の方が有利なんですよね。

 

 名前は星崎 望幸(ほしざき もちゆき) 略してホモとします。

 

 それじゃあゲームスタートを押したところから計測開始です。

 

 はい、よーいスタート。

 

 ゲームスタートとともにみんな大好きキャラガチャのお時間です。

 

 今作では魔術家系か一般家系のどちらかがスタートと共にランダムで決まります。狙いは勿論魔術家系です。出なかった時点でリセ案件です。今回は更にそこからある魔術をスナイプする必要があります。

 

 そのある魔術とは『置換魔術』です。

 

 原作でも下位の魔術と設定されており、今作でも普通に使った場合はクソスキルです。何の役にも立ちません。ですが、置換魔術を専門とした家系で尚且つ変異を狙えばエインズワース家の置換魔術とタメ張れるレベルの屈指の強スキルになります。というわけでガチャです。

 

 頼む魔術家系かつ置換魔術専門でオナシャス! センセンシャル! 

 

 >あなたはカーテンから零れた朝日によって目が覚めた。

 >普通のベッドから起き上がると父親がいるであろう一階のリビングへ向かう。

 

 これは……リセ案件か? 

 

 >一階のリビングに着くとカイゼルひげを撫でながら鋭い目でこちらを見つめる父親の姿があった。

 

「望幸、昨日でお前に先祖代々伝わる置換魔術は全て教えきった。よく頑張ったな」

 

 や っ た ぜ ! 

 

 やりました! 魔術家系で置換魔術専門です。あとはこれで主人公の育成で置換魔術を変異させれば完璧です。いやー、2文目の普通という所から一般家系に生まれたのかと思いましたが、どうやら一般魔術家系のようですね。欲を言うなら一流魔術師の家系が魔力の質やら量的に良かったのですが、もうこの際文句は言っていられません(1596敗)

 

 それではここで魔術家系と一般家系についての説明をいたします。

 

 まずは一般家系のメリットデメリットについてですね。こちらの方は最大のメリットといえばほぼ確定で『藤丸立香』の幼馴染になれるという点です。

 

 原作主人公と幼馴染になった場合味方からの好感度上昇、幸運値など諸々のステータスに大幅な補正がかかります。特にこのゲームではサーヴァントからの好感度が大事なので幼馴染になっておけばクリア自体はやりやすくなります。

 

 加えて一般家系生まれですと筋力、敏捷、幸運に補正も掛かります。幸運に補正がかかる理由としては一般選考から選ばれるからなんですかね。

 

 デメリットとしては魔術の習得が困難になるといったところともう一つ、原作主人公が幼馴染になる事です。

 

 原作主人公が幼馴染になる事はメリットオンリーという訳では無いんですよ。正確に言うならRTAにおいては、というところを考えた場合なんですが。

 

 原作主人公と幼馴染になった場合のデメリットとして先程メリットとして挙げた通り味方からの好感度上昇に補正が掛かるんですが、それによって様々なフラグが乱立します。

 

 おまえギャルゲ主人公かよぉ!? って突っ込みたくなるくらい乱立します。

 

 加えて一番の問題が幼馴染が異性であった場合です。性別が同じならまだ良いんですが、異性であった場合、下手なフラグ建てると原作主人公が依存します。それはもうガッツリ依存されます(25敗)

 

 まあ、普通に考えたら仕方ないですがね。一般家系に生まれた原作主人公が人理救うなんてクソ重い十字架を強制的に背負わされた状態で幼馴染がいたら依存したくなるのも分かります。

 

 その上今回は男でやっていますので尚更依存されやすくなります。依存状態になった場合高確率でタイムロスすること間違いなしです。1部の変態走者はわざと依存させた状態で走る人もいるらしいですが……。

 

 続いて魔術家系。まずこちらのメリットとして魔術の習得、魔力量、質共に大幅な補正がかかります。上流階級になればなるほどその補正は顕著です。

 

 加えて耐久にも補正がかかります。なんでかって?(Fateにおける一般魔術師を見ながら)なんのこったよ(すっとぼけ)

 

 ぶっちゃけた話サーヴァントから見れば現代魔術師なんぞゴミもいいところですが手札が増えることは良いことですので個人的には魔術師推しです。ただし、魔術師ということで生存率が大幅に下がりますがね。あのレ//フ本当に許さんぞ……(8敗)

 

 続いてデメリットですが、先程申した通り生存率が大幅に下がります(68敗)理由としては序盤ではレ//フがそれ以外では敵対者が、加えて終盤に近づくと小便王に狙われやすくなるからです。

 

 マスター適性ある上にレイシフト適性もある魔術師とか不安要素の種でしかないのでそら摘んどくわって話ですよ。加えて確定で監獄塔送りされます。

 

 そして2つ目として原作主人公と幼馴染になる確率がかなりの低確率です。調べたところによると一般魔術家系でも1%らしいです。上流階級ともなれば0.5%らしいですね。そのため原作主人公と幼馴染にほぼなれませんので好感度上昇補正がかかりません。

 

 なので下手な動きをすると味方からぶっ殺されます。フロムか? というか疑念が湧いた時点で比較の獣に餌やることになるので全滅させられます。フロムだわ(28敗)

 

 加えて本RTAでは主要キャラ全員生存を目指しているので醜いもの見せた時点でナスビちゃんが救われないことが確定します(24敗)私は悲しい……(ポロロン)

 

 これだけ見ると魔術家系は地雷のように見えますがやはり切れる手札が増えるということはデカいですね。特にカルデアから供給が切れても多少なりともサーヴァントを維持出来るのはデカいです。

 

 しかも治癒魔術を覚えることが出来るのでサーヴァント戦ではかなり有利に事を運べます。言うなれば礼装を2つ着てるようなものですからね。なのでRTA向きの生まれと言えます。

 

 さて、長々と解説しましたが無事にスナイプも出来ましたのでさっさと変異させましょう。変異条件は既に割り出しているのでパパっとやって、終わりっ! 

 

 カルデアに行くまでには工事完了できるでしょう。

 

 さて、それじゃあ早速育成に━━

 

 >父親から話が終わったと同時に玄関のインターホンが鳴った。

 

 ん? 

 

 >あなたは玄関に向かって扉を開けるとそこに立っていたのは茶色の瞳にオレンジ色のクセのあるセミショートヘアで、アホ毛が生えており、本人から見て左側の髪を一房、シュシュで結んでいる女の子が立っていた。

 

 ヌゥン! ヘッ! ヘッ!(前振り)

 

「えへへ、遊びに来ちゃった!」

 

 >可愛らしくおどけた表情をする彼女はあなたの幼馴染である藤丸立香だ。

 

 

ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!(大迫真)

 




前々から構想を練っていたFGOの幼馴染ものです。

満足したので失踪します


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好感度システムについて

連続投稿なので実質初投稿です


 >可愛らしくおどけた表情をする彼女はあなたの幼馴染である藤丸立香だ。

 

 ……スゥゥゥゥ……(チラ見)

 

 >可愛らしくおどけた表情をする彼女はあなたの幼馴染である藤丸立香だ。

 

 ……スゥゥゥゥ……(ガン見)

 

 嘘やん……。こんなことってある? 1%ですよ? しかも異性とか更に確率低いはずっすよ。

 

 狂いそう……!(静かなる怒り)

 

 リセ……? これリセ案件ですか? 1週間も粘ったのに? またリセ? 

 

 ……いえ、このまま続行します! 

 

 ぶっちゃけここでリセとか心折れ……魔術家系で幼馴染持ちということで補正自体は大幅に掛かって凄いステになるはずですのでステだけ見れば無問題です! フラグ管理は少々面倒ですが、上手く管理しきれば大幅なプラスでタイム短縮に繋がるはずです。それに原作主人公が好感度しだいですが依存さえしなければさらにタイム短縮に繋がるので大丈夫です! 依存したら? アイアンマン! (ガン無視)

 

 >立香を家に招き入れると彼女は慣れた様子で2階に続く階段を昇りあなたの部屋に行く。

 

 あっ、これ結構好感度高いっすね……。

 

 ここで少し補足説明をします。

 

 原作主人公と幼馴染の場合ですが、幼馴染と言っても初期好感度に差があります。その初期好感度の差はいつから一緒だとか家の距離、家族付き合いなどの要素から決まります。

 

 一緒にいる時期は高い順に幼稚園、小学校低学年、小学校高学年、中学生。

 

 家の距離は隣、500m圏内、1km圏内、それ以上。

 

 家族付き合いは家族ぐるみの付き合い、よく話す、稀に話す、なし。

 

 この3つの評価の内の4段階評価から決まります。そしてこの評価による初期好感度の計算ですが、有志の情報に寄りますと乗算らしいです。

 

 乗算とかウッソだろお前と思われると思いますが、ぶっちゃけた話、最高評価でなければ元の値がかなり低いのでちょうどいい感じの初期好感度になるらしいんですよ。で、その問題の最高評価はその2番目の評価点数の10倍ですって。

 

 あ ほ く さ

 

 そして好感度システムについて説明します。好感度システムですが、これは主要キャラとサーヴァントの二つで大別しております。

 

 ざっくり説明しますと主要キャラからの好感度が上がればホモくんのステータスに対する補正が、サーヴァントとの好感度が上がればサーヴァント自身のステータスに対する補正がかかります。

 

 まあ俗に言う絆システムってやつですね。

 

 そのため好感度稼いでいくのが基本のムーブになります。ですが、1部例外キャラもいまして上げると特殊なフラグが立つキャラもいるんですね。

 

 分かりやすいキャラで言うならブリュンヒルデですね。好感度を上げ過ぎた場合かつマスターである場合、ブリュンヒルデに愛しい人(シグルド)と判定されぶっ殺されます(1敗)

 

 原作主人公もそのカテゴリに分類されます。原作主人公の場合はストーリー始まってから好感度を上げる場合ですと頼れる相棒ポジに成長するんですが、初期好感度が高ければ高いほど依存傾向が高いです。これは原作主人公のみ好感度システムが初期好感度と通常好感度の二つを掛け合わせたシステムの上にホモくん除く全キャラに言えることですが特殊ステータスとしてストレス値があるからです。

 

 ストレス値はRTAにおいてはラスボスよりもラスボスしてます。ストレス値が上がれば上がるほどデバフがかかりやすくなります。依存もそのデバフのうちの一つです。

 

 ストレス値は辛い目に遭ったり、怪我などにあったりすると上昇していきます。特に怪我に関しては放置すればするほど凄い勢いで上がっていくのでRTAするには注意が必要です(5敗)

 

 そのため治癒魔術を扱える魔術家系がRTA向きだと言ったのも理由の一つです。

 

 ちなみにストレス値を下げるにはお願いを聞く、イベントなどで発散させる、食事などがあります。特に有効なのがフォウ君をそばに居させてあげることですね。フォウ君が近くにいるだけでアニマルセラピーの効果でストレス値の増加軽減、ストレス値低下とかなり役立ちます。

 

 やっぱフォウ君は最高やな! 

 

 な訳ありません。ストレス値が高い状態のキャラに近づけるとまずいです。比較が始まっちゃうのでストレス値が高い場合は遠ざけなければいけません。愛らしいフォウ君ですが、やはり人類悪の一つですので取り扱い注意ということです(2敗)

 

 この事を踏まえて先程のテキストを読むと慣れた様子でと書かれていました。これは初期好感度の評価が高い証です。最低でも1つは最高評価がある事でしょう。

 

 まあ、1つだけなら何とでもなるので平気です。2つはギリギリ何とかなります。してみせます。3つは……ナオキです……。ぶっちゃけ最高評価3つは本当にごく稀で十分な情報が仕入れられてないブラックボックス状態なんですよね。

 

 とはいえ、流石に全て最高評価ということはありえないでしょう。それこそFGOガチャで☆5鯖を3枚抜きするような確率ですし。

 

 それじゃあ話を進めていきましょうか。

 

 >あなたの部屋に向かった立香を持て成すためにあなたはリビングに向かってお茶菓子と飲み物を取り出した。

 >2階に向かおうとするとあなたの母親が話しかけてきた。

 

「あら、立香ちゃんが来たのね。ならこれも持って行きなさい。あの子このお菓子が好きって立香ちゃんのお母さんから聞いたのよ」

 

 >あなたは母親からお菓子を受け取ると立香が待っている自分の部屋へと向かった。

 

 おっとこれは家族付き合いの方が最高評価でしたね。ワンストライクです。

 

 >あなたは自分の部屋を開けると立香があなたの持ち物の一つであるゲームをセッティングしていた。

 

「ゲームの方は既に用意しておいたよ。今日は負けないからね」

 

 >彼女はやる気満々と言った様子でこちらにコントローラーを手渡してきた。

 

 おや、いきなりミニゲームですか。これは運がいいですね。時々ミニゲームが発生するのですが、それをクリアするとそのミニゲームに対応したステータスかもしくはスキルポイントが1上昇します。

 

 ここで引きたいのはスキルポイントですねー。置換魔術の変異の為にスキルポイントを最初の段階でかなり稼がないといけないので。

 

 >あなたはコントローラーを受け取るとソファに座った。

 >どうやら今回のゲームはフェイトブラザーズのようだ。

 

 大乱闘ですね。これはまああたりの部類ですね。勝利した場合、ステータスの場合は敏捷が上がります。それじゃあサクッと勝って報酬を受け取って、イクゾ-! デッデッデデデデ!(カーン)

 

 >あなたは立香と戦い勝利した。

 >スキルポイント1獲得! 

 

「ぬあーっ! 負けたーっ!」

 

 おっ、スキルポイントを入手出来ましたね。これは幸先がいい。

 

「勝てると思ったんだけどなあ……」

 

 >負けてしまった立香は少し落ち込んでいるようだ。

 

 はい、この表記が出たのでストレス値が上がりました。と言っても今回のは特に注意する必要もありません。上昇幅がミリですし、次の行動時には完全になくなります。

 

 ですのでほっといてもいいんですが、好感度稼ぎに使えるので利用します。

 

 >あなたは先程母親から貰った立香の好きなお菓子を差し出した。

 

 仙豆だ、食え。

 

「あっ、これ私の好きなお菓子だ。覚えてくれてたんだ?」

 

 >立香はあなたからお菓子を嬉しそうに受け取ると頬張り始めた。

 >どうやら機嫌が戻ったようだ。

 

 これで原作主人公のストレス値はなくなって好感度が上昇したはずです。こんな事でも少しではありますが稼げるのでバンバン稼ぎましょう。稼ぎすぎには注意が必要ですけどね!(3敗)

 

 さて、特にイベントもなければ今日はこのまま終わりのはずです。

 

「あっ、そうだった」

 

 >立香は何かを思い出したように手をぽんと叩いた。

 

「ちょっと待っててね」

 

 ん? なんかイベントが発生しましたね。何があるんでしょう。

 

 >立香はあなたの部屋に取り付けられた窓に近づくとガラリと開けた。

 

 あっ……(察し)

 

 >そのまま向かいの家の窓を開くと立香は身を乗り出して反対の家へ窓から侵入していった。

 >どうやら立香の家は隣にあるようだ。

 

 ツーストライクです。窓経由して家に行けるとかギャルゲみてえなことしてんな、おまえな。

 

 ま、まあまだどうにかなる範囲です(震え声)

 首の皮一枚でギリギリ繋がってます。

 

 >窓から帰ってきた立香は手にアルバムを持っていた。

 

 これは……いや、そげなことは……。

 

「今日掃除してたら懐かしいものを見つけたんだ。ほら見て見て」

 

 >立香は持ってきたアルバムを広げるとあなたに見せてきた。

 >そこに載っていたのはかなり幼いあなたと立香が仲良く並んでピースしている写真だった。

 

 ま、まだ小学校低学年って可能性があるんで……(震え声)

 

「ふふ、懐かしくない? 幼稚園の頃の写真だよ?」

 

 スリーストライク! バッターアウッ! チェンジ! 

 

あああああああもうやだああああああ!!! (デスボイス)

 

 なんで?(疑問)

 なんで?(殺意)

 

 引きおかしいでしょ。なんで連続で低確率引き続けてるんですかねぇ……。こんなの絶対おかしいよ! もしかしてキャラガチャに成功した際の揺れ戻しかなにかですかね? 

 

 ……スゥゥゥゥ……。

 

 この状態ですとまず間違いなくリセ案件ですが……ここでオリチャー発動! このまま続行いたします!(2回目)

 

 さすがにこんなレアケースはそうそうありません。記録のためにもこのまま走ります。それにもしかしたらタイム短縮に繋がるフラグが発生するかもしれないダルルォ!? 

 

 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!(天下無双)

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 




ホモくん
類まれなる豪運と屑運を併せ持つ走者。

連続投稿で疲れたので失踪します


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育成について

連日投稿つまりは初投稿です


 初っ端からオリチャー発動した人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 もう幸先が不安になってますけど気にせずやっていきましょう。

 

 今回から育成期間に入ります。

 

 >あなたは置換魔術を使ってフォークとスプーンの位置を入れ換えた。

 >置換魔術の熟練度が上昇。

 >置換魔術のレベルが上がりました。

 >スキルポイントを1獲得! 

 

 最初はこれを目標のスキルポイントまで繰り返しますので特に代わり映えのない期間になります。というわけで倍速でいきます。超スピード!? 

 

 さて倍速している間にビルドについて少し解説しようと思います。

 

 ホモくんと立香ちゃんがカルデアに向かうのは高校卒業後の偽装献血イベントが発生してからなのですが、その期間は大体ゲームスタートから1ヶ月後です。ちなみにカルデアに向かうと言ってますが、実質拉致されます。おじさんやめちくり〜^

 

 その間にスキルポイントを使って置換魔術を変異させます。というか変異させないと所長がキボウノハナ-されます。なのでここからの育成は非常に大事です。

 

 ビルドについてですが、今回目指すのは耐魔型です。大麻でも対魔忍でもないです。

 

 このゲームをやっている人は知っていると思いますが、ぶっちゃけこのゲームの耐久と筋力ステはいらない子です。サーヴァントとの力の差がデカすぎますからね……。

 

 耐久をどれだけ上げてもサーヴァントからの攻撃をまともに食らえば1発でほぼ瀕死ですし、物理攻撃値を上げる筋力はサーヴァントの防御力をほぼ突破できません。

 

 変態ビルドの一つである脳筋YAMASODACHI型ならサーヴァントの防御力突破できますけど手間に比べてリターンが少なすぎます。でも戦闘が得意っていう兄貴にはおすすめするビルドですね。

 

 普通に安定してクリアしたいという兄貴には魔敏型がおすすめです。

 

 それで今回目指す耐魔型ですが、このビルドにする理由としてホモくんの置換魔術の変異に必要というのとトロフィー『スノードロップ』を効率よく取るためです。

 

 ホモくんの置換魔術の変異条件ですが、肉体置換と魂魄置換の取得です。この2つを取得した場合置換魔術が変異します。

 

 肉体置換についてですがこれは簡単に言えば対象の肉体を好きなように置換できるという魔術になります。変異後は基本的にこちらを使うのでとにかくこのレベルを上げることになります。

 

 肉体置換の便利なところとして擬似的な転移、怪我の置換などと凄まじい利便性を誇ります。

 

 擬似的な転移は魔術印を刻んだものであればそれと置換する事で出来るので移動や逃走などRTA向きの魔術と言えます。

 

 また怪我の置換も出来ますので立香ちゃん達含むストレス値のあるキャラが怪我をした場合、ストレス値がないホモくんに怪我を置換させることで怪我の放置も可能となります。タイム短縮に繋がるのでこれは使える時にはガンガン使いましょう。但しホモくんの体力には気をつけよう!(8敗)

 

 余談ですが肉体置換は敵サーヴァントにはほぼ効きません。なのでわざと致命傷負って置換するということは出来ません(2敗)はーつっかえ。

 

 追加で怪我の放置にちょっとした注意点があるのですが、ある特定のサーヴァントがいた場合、迂闊な放置が出来なくなります。

 

 具体的にはナイチンゲール、アスクレピオス、カーミラ、ヴラド三世、玉藻の前あたりですね。

 

 ナイチンゲールは言わずもがな。放置してたら治療()されます(2敗)

 

 アスクレピオスは無理矢理にでも治療しようとしてきます。なんならナイチンゲールすらけしかけてきます。お慈悲〜^(1敗)

 

 カーミラとヴラド三世ですが、この二人血の匂いに凄く敏感です。切り傷程度の小さな出血でも直ぐに見抜いてきます。なので下手打つと吸血される可能性があります(5敗)

 

 ですが、上記4人はちゃんと対策法があるのでまだ何とかなります。

 

 一番の問題は玉藻の前です。はっきり言って玉藻の前には対策の仕様がありません。TYPE-MOON最強格の設定を貰ってるだけあってめちゃくちゃです。特にマスターに関してはピカイチです。しかもクラスがキャスターな上に呪術EX持ちなので魔術による誤魔化しが効きません。そして何よりの問題がストレス値が高い場合、高確率で謎空間に監禁されます(25敗)

 

 ストレス値が下がれば解放されますがタイムロスなんてレベルじゃないです。(出るのに)まーだ時間掛かりそうですかね~?

 

 なので唯一の対策が彼女のマスターにならないという根本的な解決にもならない対策しかないです。

 

 ちなみに同じ理由で清姫とかやばいんじゃね? と思われそうですが、問題はありません。清姫に対しては嘘さえつかなければいいと言うのと清姫のマスターになるのはほぼ確定で立香ちゃんになるからです。

 

 次に魂魄置換ですが、これは肉体置換のスキル上げをしていくと解放されます。これはまあ、ぶっちゃけほぼ使いません。ですが、主要キャラ全員生存の為に必須スキルとなります。これの詳しい説明はカルデア入りしてすぐ使うことになるのでその時にしましょう。

 

 こういった理由でこの2つだけはカルデアに入る前に何がなんでも取る必要があります。

 

 また、そのふたつを効率良く取得するために治癒魔術を先に修得することをおすすめします。何故かと言うと現時点でスキルポイントを効率良く獲得するためにホモくん自身に置換魔術を使用するからです。また、その際に大幅にHPが削られますのでその回復用に治癒魔術を取る必要があるんです。

 

 えっ、なんでHPが削られるのかって? 置換魔術の代償ですね。置換魔術は変異前ですと繰り返す度に改悪されるクソスキルなので必然的に怪我がどんどん悪化していくんです。

 

 そしてもう一つ育成と同時にやっておくことがあります。それは神社への参拝です。何故これをやっておく必要があるのかと言うと確率で神性スキルが手に入るからです。なんで参拝するだけで神性貰えるんですかね……(困惑)

 

 貰えるのは神性の最低値であるE-ですが、後のことを考えると必須スキルとなりますので確実に取りに行きましょう。

 

 カルデアに入る前にやる事を纏めますと

 ・魔術鍛錬によるスキルポイント獲得

 ・スキルポイントの振り分けで治癒魔術、肉体置換、魂魄置換の取得

 ・神性の取得

 これら3つとなります。

 

 ステータスに関してですが、ステータス上昇の条件はそのステータスに対応した鍛え方をすればいいだけです。そして置換魔術使ってれば自然と耐魔型になります。つまりそれだけホモくんにはボロボロになってもらうということです。というかなってもらわないとHPタンクになれないので意地でもボロクソにします(漆黒の意思)

 

 おっと、説明しているうちに治癒魔術の取得に必要なスキルポイントが貯まりました。これでよりスキルポイントを稼ぎやすくなりましたね!(ド畜生)

 

 >あなたは治癒魔術を取得した。

 

 では治癒魔術も取得したのでさっそく置換魔術を使った高速レベリングをしていきましょう。

 

 >あなたは自身の腕にナイフを少し突き刺した。

 >じんわりと血が滲み出る。

 >HPが減少した。

 

 怪我をするのは少しでいいです。どのみち慣れないうちは置換魔術の代償ですぐ悪化して大怪我になりますので。

 

 >あなたは怪我をしている腕と反対の腕に置換魔術を使用し、傷の置換を行った。

 >置換魔術の熟練度が上昇した。

 >だが慣れない置換魔術だったので怪我が悪化した。

 >HPが減少した。

 

 後はこれをホモくんが死にかけるまでやるだけです。ちなみに置換魔術のレベルが上がれば上がるほど代償が少なくなるので更に回転率が増します。どんどん回転率上げてIKEA。

 

 ………………

 

 >あなたは怪我をしている腕と反対の腕に置換魔術を使用し、傷の置換を行った。

 >置換魔術の熟練度が上昇した。

 >だが慣れない置換魔術だったので怪我が悪化した。

 >HPが減少した。

 >視界がぼやけ、激しい頭痛に襲われ、耳鳴りが止まらない。

 

 はい、一回目の瀕死状態です。今のホモくんの状態は最初のちょっとした切り傷から悪化して全身から血を垂れ流している大怪我になっております。痛いですね……これは痛い……(確信)

 

 この状態で置換魔術を行うと死亡するので治癒魔術をかけましょう(1敗)

 ちなみにこのまま放っておくと失血死します(1敗)

 

 >あなたは治癒魔術を使用し、体の傷を少し治した。

 >治癒魔術の熟練度が上昇した。

 >HPが回復した。

 

 後はHPが完全回復する1歩手前までいったらまた置換魔術を使用して傷を悪化させます。これを魔力がスッカラカランになるまでやります。これをやれば置換魔術、治癒魔術、ステータス上げと纏めてやれるので超高効率の育成法です。

 

 魔力が切れたら近くの廃れた神社に行って参拝して一日を終えると言った動きをすればカルデアに入る前に全て取得できるでしょう。ホモくんがんばえ〜! 

 

 そうでした。ひとつ重要な事を言い忘れていましたが、この超高効率育成法はカルデアに入るとごく稀にしか出来なくなります。というのもカルデアに入ると基本的に立香ちゃんや主要キャラ達、サーヴァントと一緒にいることが多くなります。

 

 そんな環境下でこの育成法をしてバレた場合、魔術の使用を禁止されます。そのうえ常にバイタルチェックをかけられるようになるので怪我の放置が出来なくなります(6敗)

 

 特に最悪なのが幼馴染の状態の立香ちゃんが直接見た時ですね。立香ちゃんはストレス値はかなり特殊でストレス値の値によって味方サーヴァントにランダムで影響を与えるという特性があるのですが、その立香ちゃんのストレス値が一気にMAXになります。

 

 そして異常な数のデバフが発生します。

 

 その結果、高確率で人理が崩壊します(4敗)

 

 ちなみに私が見た人理崩壊ENDですと一般家系で耐久伸ばすためにHPチキンレースしてる時に立香ちゃんと遭遇したので立香ちゃんに発狂が入ってカルデアが崩壊した上にフォウ君が覚醒しましたね……。

 

 原作主人公の立場にいる立香ちゃんが発狂デバフにかかると契約している全サーヴァントに影響が出るので気をつけよう!(ゆうさくのテーマ)

 

 話をしているうちに魔力切れになりましたね。怪我がちょうど完治する様に調整していたので何も問題はありません。

 

 後は神社で参拝するだけです。というわけで近くの廃れた神社にイクゾ-! デッデッデデデデ!(カーン)

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 >あなたは廃れた神社に着いた。

 >鳥居の両脇に薄汚れた狐の像が設置されている。

 

 はい着きました。ちなみに神社で祀るものはランダムで決まりますが、今回はどうやらお稲荷様がいるところを見るに豊穣の神様を祀っているみたいですね。稲荷が入ってるぅ! 

 

 まあ、別に神社で何祀ってようが神性の獲得には何の影響もないので関係ないんですがね。あ、でも悪神は勘弁な!(1敗)

 

 それじゃあ早速参拝しましょう……と言いたいですが、その前に汚れたお稲荷さんを綺麗にしましょう。汚れた像が設置されている場合、綺麗に掃除をしてあげれば神性の獲得確率が上がりますのでやってて損は無いです。

 

 というわけで掃除の時間だゴラァ! 

 

 >あなたは薄汚れた狐の像を磨き始めた。

 >心做しか狐の像が喜んでいるように見える。

 >狐の像が綺麗になった。

 

 すっげえ白くなってる、はっきりわかんだね。

 

 これだけ綺麗にしたんだし、これは1発で神性獲得できますね間違いない……。それに幸運にも補正が掛かっているのでさらに倍率ドンです。

 

 というわけでみんな大好き参拝(ガチャ)の時間です

 

 オッスお願いしま~す(2拝)

 神性付与してくれよな〜頼むよ〜(2拍手)

 その分は……ギャラ出すんで(1拝)

 

 >あなたは賽銭箱に5円を投げ入れた。

 >あなたの頭に何処からともなく飛んできた石の欠片のような物が当たった。

 >HPがちょっぴり減少した。

 >あなたは石の欠片のような物を手に入れた。

 

 ダメみたいですね(諦観)

 

 これ瀕死の状態で行ってたら死んでましたね。どうやら今回のガチャは失敗のようです。なーにがいけなかったんでしょうかねぇ……(すっとぼけ)

 

 まあ、仕方がないので日を改めましょう。また明日来てやるからな……! 

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




(ガバ確認)……ヨシ!
連日投稿してしまったので失踪します。


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武器について

察しのいい読者が多いですね。僕はよく分かりませんけど(すっとぼけ)

そんなわけで初投稿です


神社に行ったら石を投げられる人理修復RTAはぁじまぁるよー!

 

遂にカルデア入りまで1週間を切りました。

 

今まで鍛錬したおかげでホモくんの置換魔術が無事に置換呪術へと変異し、余ったポインヨをその他諸々に振り分けたので工事完了です。

 

それにしても何なんですかねあの神社。石の欠片を3回もぶつけられたんですけど。ホモくんが何をしたって言うんだ。でも神性は無事獲得できたので大丈夫です!

 

さて今回の変異についてですが、魔術から呪術に変異したのはちゃんとした理由があります。

 

それは呪術についてのお話になるのですが、魔術が「そこにあるものを組み替えるプログラム」であるのに対し、『呪術』は「自身の肉体を素材にして組み替えるプログラム」であり、自身の体を使って行われる物理現象とされます。所謂ダキニ天法と呼ばれるものですね

 

ここで思い出して欲しいのがホモくんの扱う肉体置換と魂魄置換です。どちらも自身の肉体を使う魔術だったからこそ呪術へと変異するのです。

 

そしてこれこそが玉藻の前に対策が打てない理由でもあります。いくら呪術へと変異したからと言って最高クラスの呪術EX持ちの玉藻の前には逆立ちしても勝てません。

 

だから契約しない方がいいんですよね。呪術使えば簡単に看破されてしまうんで。まあ、キャスタークラスで来た場合が駄目なのでランサーやらバーサーカーで来た場合はギリギリ……うん、ギリギリオッケーです多分。

 

まあ、玉藻の前のことを結構扱き下ろしてますが、普通に考えれば彼女は当たり枠です。特に多数のサーヴァントと一緒に戦うので玉藻の前の宝具がエグいぐらいぶっ刺さります。魔力の無限供給とかチート染みた性能してますが、これでも本来の宝具の極一部しか引き出せてないだとか。

 

さて話はここまでにして今回の目的についてお話します。カルデア入りまで1週間を切ったのでそろそろ武器を手に入れる必要があります。これからの事を考えるとやはり武器はあった方がいいので購入しなければなりません。

 

ここで私がおすすめするのは銃です。

 

何故かと言いますとサーヴァント戦において牽制程度にはなるからです。サーヴァントの戦いは基本的に音速戦闘がデフォです。なので近接武器は自滅を覚悟しないと使えません。それが遠距離武器かつ音速の攻撃ができる銃がおすすめな理由ですね。

 

まあ、音速で行動できるサーヴァントにとってはなんの脅威にもならないでしょうが、それでもないよりマシです。ちなみにちゃんとエンチャントしなければただのゴミに成り果てます。サーヴァントに普通の物理攻撃は効きませんからね。

 

資金はそこら辺にいるチンピラ……もとい心優しい人達から寄付してもらった(巻き上げた)のと元から持っていた分をあわせれば銃一つに追加で値段次第で何か買えるでしょう。どうせ1週間後には使えなくなっちゃうのでパパーッと贅沢に使ってしまいましょう。

 

ちなみに日本で銃売ってるわけねーだろ! とツッコミが来そうですが何故か路地裏で売ってるやつがいます。この辺にぃ、いい武器商人が来てるらしいっすよ。じゃけん、夜行きましょうね〜。

 

>あなたは日の落ちた頃に繁華街の路地裏に入り込んだ。

>そこは表の明るい繁華街とは全く異なっており、1寸先も見えないと思ってしまいそうなほどの深い闇に包まれていた。

>しばらくその道を突き進んでいるとフード付きの黒いローブを被った人が佇んでいた。

>……何処と無く不気味な雰囲気だ。

 

おっ、開いてんじゃーん。

 

やっぱいましたね。彼奴です。何故かいろんな武器を売ってくれる謎キャラです。ちなみに登場するのはカルデア入り1か月前のこの期間のみです。それ以降は一切現れません。

 

「……」

 

>その人物に近づくと無言で武器を出し始めた。

 

おっ、サブマシンガンのMP5があるとかやりますねぇ! サブマシンガンはかなり有能です。持ち運びに便利ですし、連射できますので銃撃スキルが高くなくてもそこそこ当たります。下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってやつですね。

 

ええやん! 気に入ったわこれ、なんぼなん?

 

「14万」

 

14万?!(驚愕) うせやろ!?

 

お買い得ですねクォレハ……。普通でしたら倍以上の値段はしますが、セール中かなにかだったんですかね? 取り敢えず買いましょう。それから弾も購入します。9mmパラベラム弾ですね。弾速は遅いですが非常に安価ですし、ばら撒きメインで行くので問題はありません。

 

>あなたはMP5を手に入れた。

>あなたは9mmパラベラム弾×200を手に入れた。

 

人理焼却後の弾の補充方法ですが、ダヴィンチちゃんに弾を渡せば複製してくれます。さすが万能の天才やでえ! それから弾にも特殊効果を付けられるようになりますが、それについてはのちのち語らせてもらいます。

 

「おまけだ。これも持っていけ」

 

ん?

 

>あなたは妖しい光を放つ古びたナイフを手に入れた。

 

何かおまけで貰いましたね。んー、古びたナイフかあ……。ぶっちゃけゴミですね、いりません。ステ低いですし。とは言え貰えるものは貰っておきましょう。

 

ありがとナス!

 

さて、買うもん買ったので帰りましょう。余ったお金は立香ちゃんとのコミュを深める時に使えばいいでしょう。じゃ、俺商品貰って帰るから。

 

「……まいど」

 

■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

それでは早速改造していきましょう。ちゃちゃっとバラして強化の魔術を施していきます。こうすることで反動が少なくなり、自分自身にも強化を施せば片手でも撃てるようになります。

 

魔術印さえ施しておけば魔力を流すだけの1工程で発動可能ですのでやっておいて損はないかと。

 

さて次からが大変な工程になるのですが、先程買った9mmパラベラム弾一個ずつに置換呪術の印を刻んでいきます。

 

これをやっておけば撃った弾丸と置換を行うことで高速移動が可能となります。ただし壁に気をつけようね! 変なところで置換すると埋まったり激突したりして大ダメージを受けてしまいます。

 

検証するために一体どれだけのホモくんが犠牲になったことか……。

 

この際ついでですし、荷物整理もしておきましょう。いるものいらないものに分けていらないものはさっさと捨てて枠を空けてアイテム枠を増やしておきましょう。

 

真っ先に捨てるとしたらこの3つの石の欠片ですね。これだけでアイテム枠3枠消費してますし、こんなん特に使い道もなさそうですし捨てちゃいましょう。

 

>あなたは石の欠片のような物×3を捨てた。

>残念! あなたは呪われてしまった!

 

は?

 

>石の欠片のような物が手持ちに戻ってきた。

>石の欠片のような物が合わさり1つの石になった。

>あなたは呪いの石を手に入れた。

 

何だこのアイテム!?(驚愕)

 

え、てか呪いってなんすか。毎ターンダメージ受けます? ちょっとホモくんのステ確認します。

 

うん……? 状態異常にはかかってないみたいですね。HPも特に減ってるといったようなことは起きていません。じゃあ呪いってなんだよ。

 

ん? スキル欄に初めて見るスキルが書いてありますね。なになに、■■の恩寵……? 何か塗りつぶされてるせいで1部読めませんね。少し確認してみましょうか。

 

ふむ(攻略wiki確認)

ふむ?(2度目の確認)

(書いて)ないです。

 

えぇ……(困惑)

 

石の方はどうなんですかね?

 

……駄目みたいですね(諦観)

 

おかしいですね……? 最初を除けばガバもなく順調だったというのに。うーん、まあ、大丈夫でしょう! 特にマイナス補正を受けているという訳でもないですし、攻略には関係しなさそうなのでチャートにも影響しないでしょう。それにもしかしたら独自のルートを走れるかもしれませんし、やる価値はあります。

 

でも最後にもう一回石を捨ててみましょう。別のアイテムに変化したのでワンチャン捨てられるかもしれません。

 

>それを捨てるなんてとんでもない!

 

ダメかあ……。

 

完全に捨てられなくなってますね。まあこの程度ならガバのうちにも入らないでしょうし、問題ありません。捨てられないなら仕方ないので他のアイテムを整理していきましょう。

 

今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




次回からようやくほんへ突入です。

ほら(失踪しに)いくどー!


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カルデア入り

ようやくほんへスタートなので実質初投稿です。



 拉致から始まる人理修復はぁじまぁるよー! 

 

 ついに偽装献血イベが終わり立香ちゃんが拉致られたはずです。これでようやく物語がスタートします。準備期間中にホモくんに色々と仕込めたのでチャート通りにいけば4章まではサクサクいけることでしょう。いやあ、ようやくRTAらしいことが出来ますね。

 

 さて立香ちゃんが拉致られてカルデアに連れて行かれた頃合いですが、実を言うとホモくんは立香ちゃんが拉致られる数時間前にはカルデアに到着していました。

 

 理由は簡単です。オルガマリー所長の生存フラグを建てるための下準備をするからです。何をするかと言うと魂魄置換呪術を使用するための特殊な人形を作るためです。そしてその人形の素材に必要なのは対象者の体組織です。特に血液ならバッチグーです。

 

 とは言えいきなりオルガマリー所長にお乳……間違えました。血をくれー! って言うと好感度が阿呆みたいに下がります(1敗)

 

 なのでスムーズに血を手に入れるための下準備をするという訳です。で、その方法なのですが最初の説明会の時に必要な書類でオルガマリー所長の指を切ります。紙でも摩擦の力で小さい傷を作れるのでそれなら疑われずに血を獲得することが出来るんですねー。もう1つ理由がありますけども。まあそれはおいおい。

 

 ……今の話で察しの良い方は勘づかれてると思いますが、オルガマリー所長には一度完全に死んでもらいます。レフ爆弾を弄ろうとするとレ//フが絶対に勘づくんですよね。その時点でまあめんどいです。レ//フが本性現して襲いかかってきますから(1敗)

 

 撃退することも可能ではありますが、したらしたで彼奴はもっと面倒くさい状況に持っていきます。なのでさっさと進めるためにもオルガマリー所長には1度死んでもらう必要があるんです(無慈悲)

 

 全員生存縛りじゃないのかって? 最終的に生きてれば全く問題はありません。過程の中で死のうが最後に生きていれば無問題です。

 

 では早速オルガマリー所長のお乳を……血を貰いに行くために近くで作業をしている職員からオルガマリー所長に持っていく書類を強奪します。

 

 オラッ、書類よこせっ! 

 

「ん? ああ、手伝ってくれるのか。じゃあこれをオルガマリー所長に持って行ってくれ。所長は確か中央管制室にいるはずだ」

 

 >あなたはオルガマリー所長に届ける書類を手に入れた。

 

 はい、それじゃあ早速届けに行きましょう。できるだけ早い段階で血を貰っておかねば間に合いません。貰えなかった場合は仕方がないので所長の髪を拝借しましょう。少し不安定になりますが、魂魄置換呪術を起動させることは出来るので。

 

(中央管制室に)ほら行くどー。

 

 >あなたは職員の話を聞いて所長がいる中央管制室に向かった。

 >その途中、オレンジ色の髪をポニーテールにして纏めている男性と出会った。

 

 お、ロマニキとエンカウントしましたね。ロマニキは世界各地の神話伝承や魔術史に精通していますのでサーヴァント関連のフラグ管理をしたい時に話を聞いておけば管理しやすい良キャラです。最高かお前? 尚人理崩壊後は不眠不休で働き始めるので適宜休ませてあげたり、労わってあげたりなどしないとストレス値が上昇して過労でぶっ倒れます。おっす、大丈夫か〜?(心配)

 

 取り敢えずロマニキとのコミュを築きたいので話しかけます。

 

 >あなたはオレンジ色の髪をポニーテールにして纏めている男性に話しかけた。

 

「ああ、こんにちは。見ない顔だけどもしかして今日来た48人のマスターのうちの1人かな?」

 

 そうだよ。

 

「星崎望幸くんっていうんだね。ボクの名前はロマニ・アーキマン。このカルデアで医療部門トップを担当している職員なんだ。何故か皆からDr.ロマンと呼ばれていてね。呼びやすいし、君もそう呼んでくれて構わないよ。それから何か分からないことがあったらいつでも聞いてくれ」

 

 あーい。フラグ管理のためにたくさん利用させてもらいますねぇ! あ、でもその分のギャラ(大福)は払うんで。

 

 ロマニキの好感度上げは結構簡単です。こし餡の大福を上げれば割と簡単に好感度も上がりますし、ストレス値も減ってくれます。但し、ロマニキの好感度は一定の値になると急に上がらなくなります。ロマニキの過去を知っていれば仕方の無いことですが……。

 

 ちなみにロマニキの好感度上昇による補正は魔力です。上げといて損は無いのでどんどんあげましょう。

 

 さて、それじゃあ中央管制室に……

 

「……ん? すまないけどその腰に提げてるナイフ見せてくれないかな?」

 

 お? 何かロマニキが古びたナイフに反応しましたね。いやまあ、ナイフホルダーに入れてるとはいえナイフを持ち歩いてたら気になりますか。

 

 特に断る理由もないので素直に渡しましょう。

 

 >あなたはロマニに妖しい光を放つ古びたナイフを渡した。

 

「へえ……これはカフカース・ダガーだね。でも装飾がジャマダハルの物と酷似してる。それにしてもこのナイフ何か強い力が込められてるような……?」

 

 はえー、このナイフそんな名前なんすねぇ。ジャマダハルについては聞いたことがありますねぇ! インドで作られた武器らしいっすよ。これ触媒にすればワンチャンインド鯖が来るんじゃないすっかね? インド鯖はどれも当たり鯖なので狙っていきたいですねぇ! あ、1人例外はいましたね。

 

 それにしてもロマニキが妙なこと言ってますね。強い力が込められているだとか。まあ、なんかピカピカしてますし、そう思うのも分かりますけど一応覚えておきましょう。何かのフラグかもしれませんし。

 

 そろそろ中央管制室に行きたいんで返してもらっていいすか?

 

「ん、ああ、ありがとね。そのナイフはきっと君の助けになってくれるだろうからしっかり持っておいた方がいいよ。……それじゃあまた後でね」

 

 >あなたはロマニから妖しい光を放つ古びたナイフを受け取った。

 >ロマニは何処かに去っていったようだ。

 

 ははあ……。ロマニキの台詞から察するにこのナイフ何か特殊なスキルがあるっぽいですね。でも調べてもそのようなスキルは無いところを見るに隠しステータスか何かですかね? 

 

 ともあれいいことを聞いたので大事に持っておきましょう。

 

 ロマニキとのコミュも築けたし、中央管制室にイクゾ-! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 中央管制室に着きました。モブ職員から聞いた通りオルガマリー所長が説明会の準備をしてますね。早速書類を渡すのと目的を果たしに行きましょう。

 

 オルガマリー所長! お乳をくれー! 

 

 >あなたは白い髪に左サイドの髪を三つ編みにした女性に話しかけた。

 

「あなたは……ああ、マスター候補の星崎望幸ね。私はこの人理継続保障機関カルデアの所長をしているオルガマリー・アニムスフィアよ。それで何か用かしら?」

 

 お届けものです。サインは血判でいいっすよ。

 

 >あなたはオルガマリー所長に職員から受けとった書類を渡した。

 

「……これは説明会に使う資料ね。ありがとうございます。……痛ッ!」

 

 >オルガマリー所長は書類を受け取る際にどうやら紙で指を切ってしまったようだ。

 >切り傷から血がぷっくりと流れ出した。

 

 じゃあサイン貰いますねー。

 

 >あなたはオルガマリー所長の負傷した指の血を持っていた白いハンカチで拭い取り、治癒魔術をかけた。

 

 はい、ありがとうございます。これで目的のブツは獲得しました。

 

 そしてついでに言えばオルガマリー所長を怪我をさせたことにより好感度が低下しました。こうすることで最初のレイシフト時に居なくてもさほど問題にはなりません。それに好感度が低下してもこの後の展開からするとほぼ最大近くまで上昇するので無問題です。

 

「……ありがとうございます。それにしても見事な治癒魔術ね? 手馴れてるというかそんな印象を受けるわ」

 

 自分の体で何回もしてますからね。バッチェ慣れてますよ! それじゃあサイン貰ったんで帰りますわ。

 

 >あなたはオルガマリー所長に一礼して中央管制室から去った。

 

 さて目的のものは手に入れたのでオルガマリー所長の器作りを始めましょう。 と言っても最初からオルガマリー所長専用の器を作ってしまったら色々と疑われちゃうのであちらに移動した際にオルガマリー所長専用の器になるように調整した汎用器を作ります。

 

 作る場所の目安は付けてるのでそこに行きます。レ//フと出会う前にさっさと移動しておきましょう。

 

 ほらいく……

 

 >あなたの前からモスグリーンのタキシードとシルクハットを着用し、ぼさぼさの赤みがかった長髪で鼻が高く、にこやかに微笑んでいる男性とショートヘアーで片目が隠れるような亜麻色の前髪をしている白衣の少女が歩いてきた。

 

 ドードー! (絶滅鳥類)

 

 なんで会う必要があるんですか。はーほんとやめたくなりますよぉ。取り敢えずここは会釈だけして不自然のないように逃げましょう。

 

 ホモくんはクールに去るぜ……。

 

 >あなたはすれ違い際に会釈をすると男性の方から話しかけられた。

 

「おや、君は星崎望幸君だね? もうこちらに来ていたとは」

 

「あのレフ教授この人は一体……?」

 

「ああ、この人は今回のマスター候補の48人のうちの一人さ。話を聞いた限りではかなり優秀だそうだよ」

 

「そうなんですね」

 

 ふ○っきんれ//ふ。話しかけてじゃねーぞクソが(辛辣)

 

「と、自己紹介がまだだったね。私の名前はレフ・ライノール。ここの職員だ、これからよろしく頼むよ。ほら、マシュも挨拶をしなさい」

 

「はい、マシュ・キリエライトと申します。これからよろしくお願いしますね」

 

 ナスビちゃんはこれから宜しくな! レ//フさっさと真っ二つになって、どうぞ。

 

 じゃあ挨拶したんでここら辺でお暇させていただきますね。さよならー! 

 

 >あなたは二人と同じように自己紹介して最後に一礼すると移動を始めた。

 

「……」

 

 あー、やだやだ。何だって言った直後に遭遇するんすっかねえ……。しかも逃げる時にじっと見つめられてましたし、これどう考えても目をつけられてますね。おじさんやめちくり〜^

 

 レフと遭遇したことと此方を見つめられていた事から大方鬼ごっこフラグが建ちましたね。

 

 簡単に言えばこのカルデア爆破テロ仕掛けると同時にホモくんが生きている場合、レ//フがこのカルデアを彷徨いてホモくんを殺しに来ます。見つかった時点で戦闘に移るのでスニーキング安定です。一定時間の経過もしくは管制室への到達で消えます。ちなみにこの段階ではロマニキも立香ちゃんもレ//フとは絶対に遭遇しない仕様になっていますのでご安心を。

 

 注意事項ですが魔術を使うと一瞬で見つかるので使わない方が吉です(1敗)

 

 さて、それではさっさと見つかりにくい場所に移動して器の制作に移りましょう。そのために必要な素材は準備期間中に用意してありますし、制作にもそんな時間もかからないでしょう。作り終える頃には立香ちゃんが到着するのでその後は途中まで彼女と一緒に行動します。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




どうでもいい話ですけど九尾伝説の殺生石って3つに砕けたらしいっすね。いや本当にどうでもいい話ですけど。

じゃあこの辺で失踪しますんで……。


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懐く獣

まだ特異点Fにいってないから実質初投稿です。


 カルデア入りから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 いやあ、ようやくオルガマリー所長の依代が出来ましたね。持ち運びしやすいように片手サイズのお人形です。後はこれをあっちで最終調整してオルガマリー所長の魂を魂魄置換呪術で定着させてしまえば工事完了です。

 

 そしてカルデアに帰還さえ出来ればオルガマリー所長のクローンでもなんでも作って其方に魂を移し変えれば元通りになるのでオルガマリー所長の死亡は回避成功となります。

 

 さて時間も時間ですし、カルデアゲートの正面入口前に行きましょう。立香ちゃんがぐっすり眠ってるはずです。

 

 レ//フの野郎と会うことになりますが、どの道オルガマリー所長の説明会で会いますし、今会ったところで何も問題はありません。ですが、この人形だけは隠蔽してから行きましょう。

 

 変に勘づかれてしまってはオルガマリー所長の生存フラグがへし折れる可能性がありますので。隠し場所は爆破テロ後の管制室に向かう際に回収出来る位置に隠しておけばいいでしょう。

 

 それから甘味類を服の中に忍び込ませておきましょう。爆破テロ後は即座に管制室に向かって特異点Fにレイシフトするので甘味類を取りに行く時間が惜しいので。

 

 何故甘味類を持っていくのかと言うとやはりストレス値の問題です。初めてのレイシフト、加えて地獄のような有様となった冬木に行くので立香ちゃん達のストレス値が結構上がります。それを減らす為に甘味類を持っていくのです。あとは栄養補給用としての意味合いもありますが。

 

 カルデアの主要キャラ達は割と和菓子が好きな人が多いので武器調達の時に余ったお金を使ってかなりの量を買い込んでおきました。和菓子は物によっては長持ちしますしね。

 

 また、最初期のインフラが安定しない時期の食事を少しでもストレス値を上げないために他にもいろいろな食材を買い込んで持ってきております。インフラが回復するまではかなりギリギリですが、何とか持ち堪えられる量だと思います。

 

 とりあえずは多めに買い込んできた和菓子のうち足が早いものから持っていこうと思います。特異点F自体は直ぐに終わりますからね。

 

 なのでまあ、冷凍用に回す以外の生菓子、所謂饅頭やおはぎ、あんころ餅などのものを割と多めに持っていきます。これらはお腹にも溜まりやすいですし、満腹になったら少しは落ち着くでしょうしね。

 

 というわけで甘味類を服の中に仕込んだら移動開始です。ほら行くどー。

 

 >あなたはカルデアの入口前に向かった。

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 >あなたはカルデアゲートの正面入口前に到着した。

 >何やら床に倒れ込んでいる人とその人を起こそうとしている人と小動物がいた。

 >どうやら床に倒れている人はあなたの幼馴染である立香と彼女を起こしている人は先程出会ったマシュのようだ。

 

 正面入口前に着きましたね。予測通り立香ちゃんが床に眠ってます。霊子ダイブは慣れないと脳に来るらしいですからね。

 

 そして眠ってる立香ちゃんの近くにナスビちゃんとフォウくんがいますね。どうやら立香ちゃんを起こしてるようです。うーん、これを見るとようやく始まったって感じがしますね。

 

 >あなたが彼女達の方に近づくと小動物が真っ先に此方に気づいた。

 

「フォウフォーウ!」

 

 >小動物はあなたの顔に飛びつくとそのまま肩の方に移動し、まるでそこが定位置だと言わんばかりに寛ぎ始めた。

 

 ふてぶてしい野郎だなこの獣め。しかもちゃっかり尻尾をホモくんの首に回して振り落とされないようにしてますね。

 

「フォウさん? って、あなたは……」

 

 >此方を見るマシュの目が驚いたように見開かれる。

 

「えっと、望幸さんでしたよね? どうしてここに?」

 

 >あなたはそこで幸せそうに眠っている人が友達なので迎えに来たと説明した。

 

「なるほど、先輩と友達だったのですね」

 

「ん、んぅ……?」

 

 >そんな事を話していたからだろうか、立香が目を覚ました。

 >何度か目を擦り此方を見上げると驚いたような声を上げた。

 

「あーっ! 望幸! なんでここにいるの!?」

 

 >そんな言葉とともに立香はあなたに飛びつくように抱きついた。

 >結構な勢いがあったためあなたは危うく転びそうになった。

 

 悪質タックルやめてクレメンス。

 

 というか初期好感度が最大値だとこんな反応するんすね。通常であれば驚きはすれど飛びつくことはしないんですけどね。

 

 >あなたは抱きついてきた立香を引き剥がした。

 

「あー、せっかくの再会なんだからもうちょっとハグしててもいいじゃん」

 

「お二人は随分と仲良しなんですね。……ってフォウさんがそんなにも私以外の人に懐いているのは初めて見ました」

 

「フォウさん?」

 

「フォウ、キャーウ!」

 

 >フォウと呼ばれた小動物の鳴き声でようやくその存在に気がついた立香は驚いたような声を上げた。

 

「わ、初めて見る動物だ」

 

 >立香はフォウの頭を優しく撫でる。

 >フォウも撫でられるのが気持ちがいいのか目を閉じて受け入れていたが、不意にあなたの肩から降りてどこかへ去っていった。

 

「あ、何処かに行っちゃった。嫌がられちゃったかな?」

 

「いえ、そんなことは無いかと。むしろ気に入っていると思いますよ。フォウさんは私以外の人にあまり近寄らないので」

 

「そうなんだ」

 

「はい、これでフォウさんのお世話係が一気に2人も増えましたね。これはおめでたいことです」

 

 おっとフォウくんが逃げ出しましたね。ってことはレ//フの野郎が来た証です。はよ話進めて、どうぞ。

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなしに勝手に移動するのはよくないと……って、望幸くんもいるのか」

 

 >コツコツとブーツが地面に衝突する音を鳴らしながらこちらに来たのはレフだった。

 

 はい、レ//フが来たので後は親の顔より見た流れとなります。ぶっちゃけこの後は一緒に立香ちゃんと中央管制室に移動してオルガマリー所長の話を寝ることでスキップする大胆なショートカットをする立香ちゃんに便乗して逃げるだけなので倍速します。超スピード!? 

 

 その間にレ//フとの鬼ごっこについて軽く解説しようかと思います。

 

 前回申しました通り、レ//フはホモくんが生存している場合カルデア内を彷徨いていますが、その移動ルートにはパターンがあります。検証の結果そのパターンは全部で5種だと確認できています。なので基本的にレ//フのルートに被らないようなルートを行けば簡単に管制室に辿り着けます。

 

 ですが、どのルートにも絶対に被らないルートはありません。どのルートを行っても必ず何処かでレ//フが通るルートと被ります。

 

 なので最初の難関はそこですね。レ//フがいなければタイム短縮に繋がりますが、いた場合はタイムロスに繋がる可能性があります。そこを気をつけましょう。

 

 ですが安心してください。そこでロスすることはよっぽどスニーキングがド下手くそでない限り気づかれることがありません。

 

 何故かと言うとレ//フの視界の範囲ってクソ狭いんですよね。なんでかって? 爆破テロ後の状態なのでご満悦と言わんばかりにずっとニコニコしてますからね。変質者かおめー。

 

 なので視界がガバガバのガバです。レ//フの背後を取りさえすればずっと気付かれずに後をつけ回せます。なんなら斜め後ろ付近で踊っても見つかりませんでした。なんだよお前の視界ガバガバじゃねえかよ。伊達に節穴と罵倒されてるだけありますね。

 

 でも魔術を使うと超反応するのでやめようね! (1敗)

 

 おっと、説明している間に立香ちゃんがビンタを食らって外に叩き出されましたね。一応オルガマリー所長に軽く説明をして立香ちゃんのフォローをしてから彼女の付き添いをすると言って出ていきましょう。

 

 >あなたはオルガマリー所長に対して立香が眠ってしまった訳を説明して彼女の付き添いをすることを言った。

 

「そう、彼女は霊子ダイブが初めてだったから眠ってしまったと……。それは少し悪いことをしてしまったわね。分かりました、彼女の付き添いは貴方に任せます。ですが、送り次第必ずこちらに帰ってくるように」

 

 大丈夫だって、安心しろよ〜? しっかり帰ってくるからさ(大嘘)

 

 はい、所長の許可も貰ったので移動開始です。ついでに言えば爆破テロの時に稀に発生するイベントを防いでおきたいので。

 

 >あなたは中央管制室から出ていくと先程のビンタでようやく覚醒したのか、目をぱちぱちとしている立香の下へと向かった。

 

「……もしかして、寝てた?」

 

「はい。眠っていたかで言えばどことなくレム睡眠だった……ような」

 

 お、ナスビちゃんも来てますねえ! 唐突に現れたナスビちゃんに立香ちゃんがびっくりしてます。

 

「ああ、驚かせてしまってすみません。ですが、望幸さんが出ていった後に先輩の自室を知らないだろうと思いまして私が案内することになったんです」

 

 ……あっぶな。危うくガバるところでした。そう言えばホモくんは知りませんでしたね。こいつはうっかり。何も考えずに立香ちゃんを案内するところでした。

 

 ありがとナス! 

 

「先輩はファーストミッションから外されてしまったので自室待機を命じられています。ですので、自室への案内を私が――きゃっ!?」

 

「フォウ!」

 

 >唐突に現れたフォウにあなたは反応出来ず、先程と同じように顔に張り付かれた。

 

 やたらホモくんの顔に襲撃を仕掛けてきますね。なんなんだこの獣……(困惑)

 

「フォウくんが望幸の顔に……!」

 

「お、驚きました。何時もならフォウさんは私の顔に奇襲をかけ、そのまま背後に回り込み、最終的には肩に落ち着くのに……。本当に懐かれてるんですね」

 

「フォウって名前はもしかしてあなたが名付け親?」

 

「その通りです。特に理由はありませんが、直感でフォウという単語が浮かんだのです。ですが、それを見抜くとはさすが先輩。かなりの直感持ちと見ました」

 

 実際立香ちゃんすっごい鋭い時ありますからね。直感スキル持っててもおかしくないです。でもそれをホモくんに適用させないで……(切実)

 

「そんな話をしているうちに目的地に着きましたね。ここが先輩専用の個室になります」

 

 >あなたは立香の部屋へと辿り着いた。

 

 ロマニキがサボってる部屋ですね。マシュちゃんと別れた後すぐに恒例の爆破テロが始まるのですが、カルデアがすっごい揺れるんですよね。その時に落ちてきた瓦礫などで立香ちゃんやロマニが怪我をする可能性があるのでそれを防ぐ為にナスビちゃんに立香ちゃんの様子を見てから行く(大嘘)と言ってナスビちゃんを先に行かせましょう。

 

 >あなたは立香が心配なので少し様子を見てから向かうと伝えた。

 

「そうですか? 分かりました。所長にもそう伝えておきますね」

 

「キュー……キュ!」

 

「フォウさんも先輩を見てくれるのですね。それでは私はこれで。運が良ければまた会えるかと」

 

 >マシュはそう言うと管制室の方へと走って行ってしまった。

 >あなた達はマシュを見送ると立香の自室へと入った。

 

「はーい、入ってまー――ってうえええええええ!? 誰だ君は!? ここは空き部屋だぞ、ボクのサボり場だぞ!? 誰のことわりがあって入ってるんだい!?」

 

「ここが部屋だと案内されたんですけど……」

 

「君の部屋? ここが? あー……そっか、ついに最後の一人が来ちゃったかぁ……って、あれ? 望幸君じゃないか」

 

 オッスオッス! オルガマリー所長に場の空気が緩むから外されて拗ねたロマニキ元気してるぅ? ホモくんもサボりに来ましたよ。

 

「望幸この人知ってる人?」

 

 >あなたは立香から尋ねられたため、ロマニについて知っていることを話した。

 

「へえ、ここの医療部門のトップの人なんだ」

 

「なんだいなんだい!? 来たばっかりでもう友達になってるのかい!? くそぅ、ボクもそのコミュ力にあやかりたいぞぅ!」

 

 ロマニキは相変わらず拗らせてるっすね……。

 

 さて、この後の展開はロマニキとお喋りしているとレ//フの爆破テロが始まります。その時に一度照明が切れてしまうのでその瞬間が合図です。作り上げた礼装を纏って立香ちゃんとロマニキに瓦礫が落ちてきた時は置換呪術を使って守り抜きましょう。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




何処かの世界線ではレフの後ろでバジリスクタイム踊ってるホモくんがいるとかいないとか。

それじゃあ私も爆破テロに巻き込まれて失踪するんで……


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爆破テロ

続けての更新だオラァ! つまりは初投稿ということなのです!


 爆破テロから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 ロマニキからカルデアについての説明を聞いたり、ロマニキがフォウくんから哀れみの視線を受けた上に無視されたりなどがありましたが、進行に問題ないので無問題です。悲しいなあ……。

 

 まあ、それはそれとして先程ロマニキにレ//フから連絡が入ってきました。はい、つまりは爆破テロが始まります。そしてレ//フとの楽しい鬼ごっこの始まりです。

 

「お喋りに付き合ってくれてありがとう、立香ちゃん望幸君。落ち着いたら医務室を訪ねに来てくれ。今度は美味しいケーキぐらいはご馳走するよ」

 

 >ロマニはそう言うと立ち上がった。

 >その瞬間まるで狙ったかのように突如として明かりが消えた。

 

「なんだ? 明かりが消えるなんて、何か──」

 

 >ロマニの言葉をかき消すかのように爆発音が鳴り響いた。

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから退避してください。繰り返します。中央発電所、及び中央──』

 

 >緊急事態を知らせるアナウンスが流れる。

 

「今のは爆発音か!? 一体何が──」

 

 >再度爆発音が鳴り響いた。

 >それも爆発音からしてかなり近い位置が爆発したのだろう。

 >立香達がいる部屋にも亀裂が走り、グラグラと揺れる。

 >揺れたことによって落ちた瓦礫がまるで狙いすましたかのように立香とロマニの頭上へと迫る。

 

「うわぁっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 あー、起きちゃいましたねこのクソイベ。念の為一緒にいて良かったです。このまま直撃するとストレス値が上がる上に大幅なタイムロスが発生します。なのでそれを防ぐ為に置換呪術を使って落ちてきた瓦礫を近くに落ちている小さな物と入れ替えます。

 

 >あなたは降ってきた瓦礫に対して置換呪術を使用した。

 

「……? 当たってない?」

 

「もしかして望幸くんが助けてくれたのかい?」

 

 そうだよ、感謝していいっすよ。

 

「ありがとう、助かったよ。そうだモニター、管制室を映してくれ! 皆は無事なのか!?」

 

 >ロマニはあなたにお礼を言うとモニターに爆発したであろう管制室を映すように言った。

 >そしてモニターに管制室の様子が映し出された。

 

「ひどい……」

 

「これは──」

 

 >モニターに映ったものは轟轟と炎に巻かれる管制室であったものであった。

 >爆発の中心点だったからだろうか、無残にも辺りのものは抉り取られたかのような被害を受けていた。

 

 はーい、よーいスタート。

 

 このテキストが出た時点でレ//フとの鬼ごっこが始まりました。なのでさっきから人の肩で寛いでいたフォウくんを立香に渡してさっさと走りに行きます。

 

 時間は約1分半、その制限時間内に隠していた依代を取って管制室に向かわないといけません。その上レ//フとの鬼ごっこもあるので早めに行かねば間に合いません。

 

「あっ、ちょっと望幸くん──」

 

 ロマニキが何か言ってますが無視です。突っ走ります。

 

 >あなたは立香の部屋から出て少し離れた場所に時限式の魔術陣を描いた。

 

 さて、鬼ごっこの攻略法について解説しようかと思います。レフは決まったルートを歩き続けますが、もし出会ってしまった時の対処法についてです。前回申した通りレ//フは魔術を扱うとそれに超反応を示して魔術反応があった場所へと直行します。それを利用する事であっさり突破することが出来ます。

 

 やり方はとても簡単です。適当な場所に時限式の魔術を施してそれに誘導させればいいだけの話です。ここで注意して欲しいのが遠隔式の魔術です。遠隔式の魔術の場合、レ//フが反応するのは発動した魔術の方ではなく、起動時に術者の下で発動する魔術の方です。なので誘導する時は時限式のみにしておいて下さい(2敗)

 

 >あなたは依代人形を手に入れた。

 

 と、話をしているうちに人形を回収出来ましたね。残るは50秒。管制室にダッシュで向かいます。接触しなければ嬉しいんですが……。

 

 >何やら鼻歌のようなものが聞こえる……。

 

 うげ、エンカウントしましたね。爆破テロでご満悦状態のレ//フです。彼はこの時鼻歌を歌いながら移動しているので、彼が近づいてきた場合警告が表示されます。

 

 >あなたは近くの物陰に体を潜めた。

 

「さて、あの虫ケラは何処かな。管制室に行ったのを確認が取れていない以上、何処かで生きている可能性もある。あの虫ケラには確実に死んでもらわねば今後の計画に支障がでるだろう。魔力が観測出来れば良かったが……ちっ、あの瘴気がカルデア全体を薄く覆っているせいで奴の魔力が感知できないか。だがまあ、所詮は虫ケラ。他の爆弾で死んだとしても何ら不思議ではないか」

 

 残念生きてまーす。っと、そろそろ時限式の魔術陣が発動しますね。

 

「……? 今ほんの少しだけ魔力反応が感じ取れたな。向かってみるか」

 

 はい、さよならー。ついでに嫌がらせ魔術もしかけておいたので存分に味わうといいっすよ。走り去っていくレ//フの後ろから中指を立てながら手を振っておきましょう。

 

 さて後は管制室に向かってダッシュです。死ぬ気で走りましょう。

 

 >隔壁が閉まるまで残り40秒。

 

 突っ走ります。特異点Fに同行するために絶対についておかなければなりませんので。

 

 >隔壁が閉まるまで残り20秒。

 

 見えました。中央管制室です。遠目からですが立香ちゃんと瓦礫に下半身を押し潰されているナスビちゃんが見えます。走ります。

 

 >隔壁が閉まるまで残り10秒。

 

 カルデアスが真っ赤に染まりました。あと少しで閉まる証拠です。走ります。

 

 >隔壁が閉まるまで残り5秒。

 

 スライディングだオラアアアアア!!! 

 

『中央隔壁封鎖します。館内洗浄開始まであと180秒です』

 

「望幸!? 何でここに!?」

 

「望、幸……さん?」

 

 間に合いました。ギリギリでしたが何とかセーフです。立香ちゃん達の下に駆け寄りましょう。

 

 >あなたは立香達の下へと駆け寄った。

 >こちらを見つめる立香の目が涙で潤んでいるように見える。

 

 はい早速ですがストレスチェックです。ナスビちゃんは言わずもがな。立香ちゃんに関しても上がってはいましたが、ホモくんが来たことで少しは安堵したのでしょう。ストレス値が少しだけ減っています。

 

「……障壁、閉まっちゃい、ました。……もう、外に、は」

 

「……うん、そうだね。一緒だね」

 

「……」

 

『コフィン内マスターのバイタル基準値に達していません。レイシフト定員に達していません。該当マスターを検索中……発見しました』

 

 >燃え盛る中央管制室の中、無機質なアナウンスの声が流れる。

 

『適応番号47 星崎望幸 適応番号48 藤丸立香の2名をマスターとして再設定します。アンサモンプログラムスタート。霊子変換を開始します』

 

 >その言葉とともにその場にいる全員の体が少しずつ黄金の粒子へと変換されていく。

 

「……あの……せん、ぱい……もち、ゆき、さん。手を、握ってもらって、いいですか?」

 

 はい、この時ナスビちゃんの手を握るのは立香ちゃんが握ったのを確認してからにしましょう。ここで立香ちゃんより先に手を握った場合、ナスビちゃんが立香ちゃんのデミサーヴァントにならないので立香ちゃんの死亡率が一気に高まります。

 

 立香ちゃんを生き残らせるためには何としてでもナスビちゃんにデミサーヴァントになってもらわなければ困りますので。

 

 >マシュの願いに立香とあなたは何も答えずただそっと手を握った。

 >握られた手を見たマシュは死に向かっているというのに安心したような笑みを浮かべる。

 

『レイシフト開始まで あと3』

 

「……ねえ、望幸。なんでここに来てくれたの?」

 

『2』

 

「────」

 

『1』

 

「そっか、えへへ、なんだか嬉しいな」

 

『全工程完了 ファーストオーダーを開始致します』

 

 特異点Fにイクゾ-! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォーウ……」

 




ホモくんが何を言ったのかは皆様の想像にお任せします。

じゃあ私は特異点Fでスケルトン役するために失踪しますんで……


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特異点F編
特異点F


特異点Fが始まったので初投稿です。


 初めてのレイシフトから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 >あなたは気づけば燃え盛る廃墟も同然の街にいた。

 >あちこちから火の手が上がっているせいか、黒煙が至る所から上がっている。

 >その上どうやら骸骨のような化け物が辺りを彷徨いているようだ。

 

 えー、早速ですけど立香ちゃん達とはぐれました。手を繋いでたというのにホモくん1人だけ別の場所にレイシフトされました。一体何がいけなかったんでしょうかねぇ……。

 

 ま、飛ばされたもんは仕方がありません。それ用のチャートは組んであるのでこのまま進行します。

 

 とりあえず当面の目的としてはサーヴァントを呼び出すための依代である聖晶石を集めていきましょう。特異点Fのボスである黒王のことを考えると数の暴力で立ち向かう必要があるため出来れば3騎分の聖晶石は集めたいですねー。えっ? ボスはレ//フじゃないのかって? いやあ、実際戦えば分かります。この特異点Fのボスは黒王様です。いや本当に。

 

 あとは立香ちゃん用のサーヴァントも欲しいですし、拾える分は拾っておきましょう。一応は聖晶石が確定で落ちている場所は記憶しているのでそこを巡りつつタイムも考慮しつつある程度聖晶石が確保出来たら柳洞寺へと向かいます。

 

 柳洞寺に向かう理由としては今回はナスビちゃんの盾を利用出来ないため自力で召喚する必要があるので、優れた霊地である柳洞寺に行く必要があるんですねー。また、次の特異点のことを見据えるとアサシンを引きたいんですよね。

 

 で柳洞寺なんですが、stay nightの方でキャスターがアサシンを召喚したからか、柳洞寺で召喚するとアサシンの確率がアップします。なので次の特異点を円滑に進めたい場合は柳洞寺に行って召喚することをおすすめします。

 

 じゃあそういう訳で聖晶石を拾いにイクゾ-! デッデッデデデデ!(カーン)

 

 はい、というわけで倍速します。超スピード!? 

 

 特異点Fの攻略についてですが、気をつけることは黒王とシャドウバーサーカーのみです。他のシャドウサーヴァントは特に気をつけることはありません。強いてあげるなら狙撃をしてくるアーチャーくらいなものでしょうか。

 

 とはいえホモくんは人間なのでシャドウサーヴァントでもほぼ防戦一方となります。ですので出来るだけ早い段階で味方を増やしたいところですね。

 

 ですが、このホモくんはこと防衛戦や時間稼ぎには長けたビルドとスキル構成にしてあります。なので普通にある程度溜まってから召喚で構いません。シャドウバーサーカーはほっとけば勝手に魔力切れで消滅しますが、タイム短縮の為に利用します。……多分時間稼ぎくらいにはなってくれる……はず。

 

 スケルトン等の雑魚モブですが、無視しても素材狙いで戦っても構いません。ですが今回はRTAのため道中に遭遇した雑魚モブのみ倒していきます。この時近くの瓦礫の山からハンマーなどの鈍器が出ればいいのですが…… 。

 

 >あなたは周囲を探索して武器になりそうなものを探した。

 >何も見つからなかった。

 

 ダメみたいですね……(諦観)

 

 まあ、流石に期待はしていないので別に構いませんが。ちなみにですけど今回用意しているMP5は黒王戦までに移動で使うことはあれど戦闘で使うことは絶対にしません。弾丸は出来れば節約したいので。

 

 おっと、そんなことを話しているうちに1騎分の聖晶石が貯まりましたね。こいつはいいペースだぁ……。このまま残る2騎分の聖晶石を集めたいところですね。

 

 >あなたの背後からカラカラと何か金属を地面に引きずる様な音が聞こえた。

 

 ん? 

 

 >振り向くとそこにはカットラスを持った3体のスケルトン達があなたを見てケタケタと不気味に笑っている。

 >スケルトン達が襲いかかってきた! 

 

 うえー、スケルトンと遭遇しちゃいましたね。出来れば有効打である鈍器を見つけてから戦いたかったんですが、遭遇したもんは仕方ありません。殺しましょう。

 

 魔力は残しておきたいので強化魔術のみで行きます。

 

 >あなたは斬りかかってきたスケルトンを躱しつつ、頭部に向かってハイキックをした。

 >あまり効果はないようだ……。

 

 んー、減りはしますけどやっぱ鈍器に比べたらダメージ効率悪いっすね。この際そこら辺の瓦礫でも拾って殴りかかってみましょうかね? 

 

 ……ん? 瓦礫? 

 

 あるやんけ! 鈍器代わりになりそうなものがよぉ! 

 

 >あなたは呪いの石を装備した。

 

 オラッ、これが呪い(物理)の力だっ!

 

 >あなたはスケルトンの頭部に向けて呪いの石を振り下ろした。

 >スケルトンの頭部が粉々に砕け散る。

 >頭部を失ったスケルトンはグズグズに溶かされてしまったかのように消滅した。

 

 えぇ……(困惑)何だこの石……。ちょっと思った以上に頭おかしいっすね。個人的にはダメージ効率が少しでも上がれば良しと思ってんですけど。流石にワンパン、というかあんな死に方するとは思ってなかったです。普通霊子になって消えるのでは……? 

 

 >仲間が倒されたからか警戒したようにこちらから距離をとるスケルトン達。

 

 こんな殺され方するとか警戒して当たり前なんだよなぁ……。まあ、警戒して距離をとったのならばやる事はひとつ、逃げます! 

 

 >あなたはスケルトン達から逃亡した。

 

 特異点Fに限っていえばタイム優先なんで雑魚モブ相手に悠長に構っている暇はありません。無いとは思いますが変に時間をかけた結果、立香ちゃん達が合流する前に黒王戦に行ったとなれば目も当てられません。

 

 出来るだけ急いで味方サーヴァントを増やして立香ちゃん達と合流しようと思います。

 

 あと個人的な理由として走者としてのこの類まれなる直感が働きました。多分あれ使い続けてたら本当にやばいと言うか、何かこう……致命的なガバを起こしそうな気がしてと言いますか。兎に角あの石を武器にして使うことはよっぽどな時にしかないと思います。

 

 なので今回は代わりにロマニキからお墨付きを貰ったこの古びたナイフで戦ってみようかと思います。ロマニキ曰く強い力を感じるとの事でしたのでステ自体は低くても何か特殊な能力がある可能性がありますし。

 

 スケルトンには少々ダメージ効率が悪いかもしれませんが使うだけ使ってみましょう。と、そんな話をしていたら丁度ルート上にスケルトンが2体いますね。どうやらまだこちらに気づいていないようなので先制攻撃を仕掛けましょう。

 

 不意打ち攻撃は成功するとダメージ補正が1.5倍かかるので最初期の貧弱なステでも雑魚モブ程度なら簡単にワンパン出来ますので狙える場合は積極的に狙いましょう。

 

 >あなたはまだこちらに気がついていないスケルトンに対して古びたナイフで切りつけた。

 >その瞬間、古びたナイフから青い炎が巻き上がり2体同時に焼き尽くした。

 

 えぇ……(困惑)なんですかこの武器。ちょっとこれも頭おかしい性能してますね。まさか範囲攻撃持ちとは……。しかも火属性持ちです。

 

 エンチャントファイアってか。この見た目してノッブ(第六天魔王)の召喚触媒にでもなるつもりなんですかね。

 

 んー、でもまあ、ノッブなら割と許容範囲内なんですよねぇ。ノッブは気に入った相手に対して割と甘いところもありますが、それでも戦乱の時代の生まれなので多少の怪我についてはとやかく言いません。割とやりやすい部類ではありますかね。

 

 お、倒したスケルトンから聖晶石が3つもドロップしましたよ。ここでタイムを確認しておきましょう。……ふむ、多分今頃立香ちゃん達はキャスニキと遭遇している頃合いですね。

 

 一応そろそろ柳洞寺に向かいますか。柳洞寺には中ボス的役割のシャドウアーチャーがいます。そして柳洞寺には確定で聖晶石が落ちているのでそれを取れば3騎分の聖晶石が貯まりますね。

 

 さて、ここからはレ//フの時とは比較にならない程の鬼ごっこを始めます。

 

 何をしますかと言うと対シャドウアーチャー用にシャドウバーサーカーを誘導してぶつけます。シャドウバーサーカーは元々狂化によって理性がないところに更にシャドウというデバフによりもはや理性が欠片も残っていません。

 

 なので常に暴れ回っており、タゲ優先度が近くにいるものとなっていますので簡単に擦り付けられます。そしてこのシャドウバーサーカー、黒王除けばこの特異点Fで最強です。シャドウアーチャー相手にゴリ押しで勝つくらいには強いです。

 

 そんな奴と今からランデブーを始めます。普通に走って逃げるとすぐに追いつかれて殺されるのでここから漸く銃解禁です。逃げまくって柳洞寺におびき寄せます。

 

 それじゃあシャドウバーサーカーがいるアインツベルンの城に向かって行きましょうか。

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 はい、着きましたね。

 

 >あなたはもはや廃墟となった城に着いた。

 >何故だろうか、この城に着いてから寒くないはずなのに寒気を感じてしまう。

 

 しかももう察知してきましたね。相変わらず化け物染みた感覚してますねえ。それじゃあ本当の鬼ごっこの始まりです。

 

 >木々を薙ぎ倒しながら黒い靄を纏ったバーサーカーらしき存在が襲いかかってきた! 

 

「■■■■■■■■──ッ!!」

 

 >あなたは弾丸を放ち、その弾丸と自身を置換する事で驚異的な速度で追いかけてくるバーサーカーからギリギリの距離を保ち逃げ続けている。

 

 節穴のレ//フとは比較にならないレベルの鬼ごっこです。とりあえずは古びたナイフから発生する炎を撒きつつ必死こいて逃げましょう。追いつかれた時点で死にます。

 

 >あなたはバーサーカー目掛けて古びたナイフを振るい炎を飛ばす。

 >だが、その炎はバーサーカーの体を僅かに焼いただけでほんの少しの足止めにしかならない! 

 

 一応雑魚モブを不意打ちとは言え一撃で殺せるくらいの攻撃力はあるはずなんですけどねぇ。やっぱこのバーサーカー頭おかC。

 

「■■■■■■■■──ッ!」

 

 >バーサーカーは逃げるあなたに向かって近くの巨大な瓦礫を持ち上げて凄まじい速さで投げつけてきた。

 

 うおっ!? (飛び道具とか)まずいですよ!? 

 

 >あなたはすんでのところで弾丸と自身の位置を置換し、投げつけられた瓦礫を避けることが出来た。

 >避けられたことに腹を立てたのか、バーサーカーの速度が更に上昇し始めた。

 >あなたとバーサーカーの距離がジリジリと詰められていく。

 

 ファッ!? もうここで速度上昇ですか!? まだ柳洞寺まで半分あるんですけど!? 

 

 アカンこれじゃホモくんは死ぬゥ! 

 

 なんて言うと思いましたか! こちとら検証のために散々ぶっ殺されまくった走者ですよ。(速度が上がったバーサーカー相手でも逃げ切ることは)できらぁ! 

 

 今までは1発ずつ撃って弾丸の節約をしていましたがここからは連射しつつ、置換することで加速を引き起こして逃げ切ります。

 

 >あなたは置換呪術を絶え間なく行使する事でバーサーカーが縮めた距離を引き離していく。

 

「■■■■■■■ーッ!!!!」

 

 >バーサーカーは更に速度を増したあなたに対して周囲のものを手当り次第に投げつけていく。

 

 耐久ビルドなめんなよ! シャドウバーサーカー程度の攻撃なら捌ききってやろうじゃねえかよこの野郎!

 

 >あなたは猛スピードで飛んでくる飛来物を時に燃やし、時に躱しながらもバーサーカーからの距離を一定に保ちながら逃げ続けている。

 >何やら遠くに寺のようなものが見えた。

 

 キタキタキタキタァッ!! 鬼ごっこの終幕が近づいてきました。気張っていこー! 

 

「ちっ、バーサーカーめ。何故ここに……」

 

 >度重なる破壊音に気がついたのか、シャドウアーチャーが此方に向かってきた。

 

 オッスオッス! エミヤニキ! 後はオナシャス! センセンシャル! 

 

「何っ!? 行かせ──クソッ!!」

 

「■■■■■■■■■ーッ!!!」

 

 >あなたの背後で大気をも震わせるほどの衝撃と爆音が鳴り響く。

 >どうやらシャドウバーサーカーから逃げ切ることが出来たようだ……。

 

 ふぃー、無事に逃げ切りましたねえ。エミヤニキ、ホモくんを助けるために犠牲になってくれてありがとナス! ほんと正義の味方やでえ! 

 

 そういう訳で今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




???「ステイステイステイ! まだだっまだだっ! まだだって!」

ドロドロに溶かされた上に焼かれてしまったので失踪しますね。


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積み上げてきたもの

初のサーヴァント召喚回なので実質初投稿です


 ガチャから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー前回、正義の味方であるエミヤニキが決死の覚悟でバーサーカーを足止めしてくれたおかげでホモくんが無事に生き延びることが出来たという涙無しには語れない出来事がありましたね。

 

まあそんなエミヤニキの尊い犠牲の下なんとか無事に柳洞寺に辿り着くことが出来ました。

 

 >あなたはボロボロに壊れたお寺のような所に着いた。

 >門に刻まれた名前から判断するにここは柳洞寺というお寺らしい。

 

 それでは早速召喚する場所と聖晶石を探すために柳洞寺の中を探索します。

 

 >あなたは柳洞寺の中に入るために扉を開けた。

 

 おっ、開いてんじゃーん。

 

 さあガサ入れのお時間です。オラッ、聖晶石を出せ! 隠してるのは分かってるんだぞ。

 

 >あなたは周囲を探索した。

 >しかし何も見つからなかった。

 

 あれー? おかしいね、何も見つからないね? 

 

 いや本当になんで? いつもだったらこの辺りにあるはずなんですけど、全然見つかりませんね。記憶違い……? いやでも何回も通った道なので間違えてるはずはないと思うんですけどね。

 

 他の場所も見てみましょうか。

 

 >あなたは別の場所へと向かった。

 >あなたは周囲を探索した。

 >しかし何も見つからなかった。

 

 はい次ー。

 

 >あなたは別の場所へと向かった。

 >あなたは周囲を探索した。

 >しかし何も見つからなかった。

 

 次。

 

 >あなたは別の場所へと向かった。

 >あなたは周囲を探索した。

 >しかし何も見つからなかった。

 

 石どこ……ここ……? 

 

 次で見つからなかったら諦めて召喚に移ります。

 

 >あなたは別の場所へと向かった。

 >あなたは周囲を探索した。

 >穴が開いた床に何やら地下へと続く階段のようなものが見える。

 

 ん? 地下? そんなものありましたっけ? 柳洞寺の真下といえば黒王が待ち構えている大空洞があったはずですけど、そこに行くには洞窟の方から行かないと行けませんし……。

 

 ちょっと行ってみますか、もしかしたらなにか役立つものがあるかもしれません。それにタイム短縮になるかも。

 

 >あなたは地下へと続く階段を降りていった。

 >階段を降りると、そこには妙に広い部屋が拡がっていた。

 >そして部屋の中央部には何らかの菩薩らしき尊像がある。

 

 ふむ、探索してみましょう。

 

 >あなたは周囲を探索した。

 >あなたは聖晶石を3つ見つけた。

 

 お、やりましたねえ! これで3騎分集まりましたよ。とは言えこの場所他にも何かありそうなんですよね。特に中央部に鎮座している菩薩像とか特に。

 

 調べてみましょう。

 

 >あなたは菩薩らしき尊像を調べた。

 >調べた結果、この菩薩像は既存のあらゆる菩薩に合致しないことがわかった。

 >また、この菩薩らしき尊像からは妙な気配を感じる。

 

 ふむ、既存のあらゆる菩薩とは合致しない、妙な気配……。つまりは何らかのキーアイテムになりそうなものですね。詳しく検証してみたいところですが、今はRTA中なので断念します。

 

 一応セーブデータ自体はこまめに取ってあるので走り終えたら検証してみましょう。

 

 次は菩薩像の周囲を調べてみましょうか。

 

 >あなたは菩薩らしき尊像の周囲を調べた。

 >ボロボロになった尼僧服を発見した。

 

 尼僧服……? 尼僧服っていうと女の僧侶が着る服でしたっけ。ステはどうなってるんでしょう。案外いい性能してるかもしれませんし、良ければホモくんに着てもらいましょう。

 

 ……うーん、これ酷いステっすね。マジでただの服です。何の特殊効果もありませんし、補正も魔力を除いて全て最低値。いらないっすね。大方この柳洞寺の尼僧の誰かが着ていたんでしょう。

 

 探索はこんなもんでしょうか。

 

 それじゃあそろそろお楽しみの召喚に移りましょうか。ここなら敵襲を受けることもないですし安全に召喚できますしね。

 

 さてホモくんが英霊召喚陣を書いている間に今回狙いたいサーヴァントについてお話しましょうか。

 

 まずはそうですねー。何かとネタにされていますが、実際はかなり破格の性能をしている槍ニキですね。魔力消費が少ないのもいいですし、何よりほぼ必中のゲイボルグ。槍ニキ自身の戦闘技能も高いのでかなりの耐久性もあります。また、ストレス値も上がりにくく、上がっても戦闘させるだけで発散してくれるのでかなり優秀なサーヴァントと言えます。

 

 次にアサシン候補として槍ニキと同じく魔力消費の少ない佐々木小次郎、もしくはホモくんと同じ近代武器を使うエミヤなどですかね。

 

 佐々木小次郎は言わずもがな、ドラゴンスレイヤーと言われるくらいには次の特異点で大活躍してくれますし、エミヤはその合理性と手段の選ばなさからRTAにおいては大活躍してくれます。あと、ホモくんと装備がほぼ同じなのでホモくんのスキル上げにも使えますね。

 

 あとは、と言うよりも抑止力関係のサーヴァントにハズレはいませんね。最善のためならば多少の無茶も許容してくれますし、ストレス値も上がりにくい補正があるのでストレス値管理が楽です。

 

 今はこんな所でしょうかね。

 

 逆に引きたくないサーヴァントとしては前に話したサーヴァントは勿論ですが、他にもアサシンならジャックや酒呑童子、カーマなどがいますね。

 

 まずジャックですが、性能自体はかなり優秀なんですがフラグ管理がクソほどめんどくさいです。好感度が低ければ普通に解体されますし、逆に高すぎても懐に物理的に潜られて死にます(4敗)

 

 性能自体はアサシントップクラスです。対サーヴァント戦において特攻がかなり入りやすいですし、破格のNP効率&星出し性能とかなりいい性能をしています。スキル構成も回避に強化解除、CTの短い高回復と結構ありがたい構成となっています。

 

 次に酒呑童子。この子もフラグ管理が大変です。まず最初はあまり言うことを聞いてくれないんですよね。彼女の気質というか、鬼の性というか……。まあ、命令されるのがどうにも嫌いのようです。んで、好感度管理を失敗すると高確率で食われます。カニバられます(5敗)なので初心者の人にはあんまりオススメしないですねー。

 

 ああ、でも性能自体はかなり高いですよ。アサシンにしては珍しい全体宝具持ちの上に多様なデバフを撒けますし。使ってて結構楽しい子なんですよね。

 

 最後カーマ。軒並み当たり鯖しかいないインド鯖の中の唯一の地雷です。フラグ管理を失敗すると主人公が堕落して人理が崩壊します。いえ、主人公だけならいいんですが、他のカルデアメンバーも堕落させてしまうので特級の地雷鯖となっています(6敗)

 

 ああ、あとカーマを召喚した場合キアラを召喚する確率が上がるんですよね。そのビーストの特性でビーストが顕現した場合連鎖的に現れるって言うのがあるんですけど、カーマは元ビーストかつキアラとカーマはLRの関係なのでさらに呼び込みやすくなってるんですよね。

 

 キアラは言うまでもなくド地雷です。あいつヤバいって……。

 

 性能自体は元ビーストと言うだけあってトップクラスの性能をしています。魅了にガッツに回復とかなり便利なスキル構成になっております。その構成からかなり長い間耐久できるのがいいですねー。地雷鯖じゃなければ積極的に狙っていきたいところでしたね。

 

 さて説明している間に召喚準備が整いました。それでは早速皆さん大好きガチャタイムです! 

 

 >あなたは英霊召喚陣の中に聖晶石を全て投げ入れ、英霊召喚陣を起動した。

 >英霊召喚陣がバチバチと空気が爆ぜるような音を出しながら輝き始める。

 

 さあ、こい! 当たり鯖こい!

 

 >英霊召喚陣が強い光を放ち始めた。

 

 ちょっと待ってください。これはもしかして……もしかするかもしれませんよ。

 

 >英霊召喚陣が虹色に輝き始めた! 

 

 や っ た ぜ 

 

 うーん、この神々しい虹色。なんか芸術的。

 

 やっぱり積み上げてきたものが違いますからねえ。

 

 かー! つれェわー! 此奴はつれェわー! ここで大当たり鯖引いてWR出しちゃうかもしれないからなー! 走者としての格がまた上がっちゃうなー! 

 

 >あなたの耳に唐突に何かが砕けるような音が聞こえた。

 >そして突如として発生した目を潰すような光。

 >その余りの光量にあなたは目蓋を開けることが出来ない。

 

 ん? 

 

 >そして光が徐々に弱まると同時にあなたはまるで蛇に睨まれた蛙のように体が固まってしまった。

 

 あれ? なんかホモくんに行動不能デバフがかかってる。えっ、ちょ、ちょっと待って……。

 

 >光が収まり英霊召喚陣があった場所には3人の人影があった。

 >あなたは自分の身体を縛るほどの重圧を発生させているのはあの3人だと本能的に理解する。

 

 え、嘘でしょ? 嘘だよね? 嘘って言ってよ! 私が何をしたって言うんですか! 

 

「ご用とあらば即参上! 貴方の頼れる巫女狐、アルターエゴ顕現っ! です! ……なんてあの一尾の真似をしてみたが、妾の性に合わぬのぅ。まあ、何はともあれ今度こそ末永くよろしく頼むぞ、我がご主人様?」

 

「ふぅ……漸くあなたの下に来ることができましたね。私はカーマ、愛の神です。今度こそ愛の神を本気にさせた報いをちゃーんと受けてもらいますからね」

 

「アルターエゴ。殺生院キアラ。救いを求める声を聞いて参上いたしました。でも、ふふ……。あなたは相変わらず私のような女を呼ぶだなんて、なんという方なのでしょうね。私は生きとし生けるもの、有情無情の区別なく味わい尽くす魔性菩薩。これはもう、今度こそ地獄の底までお付き合いさせていただくしかありませんね?」

 

 >あなたの前に現れた3人はまるで聖母のような笑みを浮かべているというのに、どこか身の毛のよだつような笑みだとあなたは感じた。

 

 うわああああああ!! ふざけるな、ふざけるな! 馬鹿野郎ォォオ!! うわああああああ!!!! 

 

 ああ、(チャートが)きえる、きえる、うすれていく。たもてない、しょうき、をたもてない、なんでこんな、こんなことに、わるいことなんかなにもしてこなかったのに、なんで──やだ……いやだよぅ……こんなのひどい……あんまりだ……。




悪いことしたんだから報いは受けないとね?

盛り上がってきたので失踪します!



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為すべきこと

一日で感想300近くあるんですけど愉悦部潜みすぎでは……?

初投稿です。


 ビーストと行く人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー、前回ビースト三銃士を1発で引き当てるというとんでもない豪運を発揮してしまいましたね。そんなことしなくていいから……(懇願)

 

 取り敢えず結論から言いますと普通に考えたらこれリセ案件ですねクォレハ……。ビースト三銃士とかフラグ管理が複雑すぎて頭壊れちゃ〜^う。一応ビースト候補連れて走ってみた事はあるんですが、フラグ管理がえげつない量で要求されます。気が狂いそう……!(静かなる怒り)

 

 ですがこっからガバしなきゃビースト勢特有の高ステによる大幅なタイム短縮が狙えるので実質当たりです。当たりって言えば当たりなんだよ。(ウㅤン チ ー 理論)

 

 ちなみに一番危惧してた玉藻の前なんですが、何故かキャスターじゃないですのでセーフです。何か尻尾9本あるけど誤差だよ誤差。因みにアルターエゴの玉藻の前の攻略情報とか何も書いてなかったです……。悲しいなあ……。

 

 カーマは……うん、要はこちらが堕落しなけりゃいいんで。それにポンコツ属性入ってるからワンチャン……ワンチャンあるよね?(震え声)

 

 キアラ? ノーコメント! 

 

 というわけでいっそここまで来たらやってやろうじゃねえかよこの野郎! 半端ないところ見せてやるよ! 

 

 そういうわけでRTA、続行致します! (鋼の意思)

 

 さて、早速ですがサーヴァントを手に入れたのでまずは軽い交流をしましょう。要は好感度上げに行きます。ビースト相手だと好感度フラグは本当の意味で命取りになります。

 

 >あなたはサーヴァント達に自己紹介と現状説明をした後、力を貸してほしいと頭を下げた。

 

「ほほ、勿論構わぬ。元よりその為に顕現したのじゃしのぅ」

 

「はいはい、いいですよ。どうせあなたはそう言うだろうと思っていましたし」

 

「ふふ、私はあなた様のサーヴァント。あなた様は私の大切な契約者。いつまでもどこまでも、その関係に変わりはありません。ですから、ええ。あなた様がそれ(救い)を求めるならば全身を懸けてあなた様を導きましょう」

 

 やだ、なんか聞き分け良すぎて怖いんですけど……。おかしいね、ビーストってまともに言うこと聞かなかったはずだったのに。いや、仲を深めていけば聞いてくれるようにはなりますよ? でもそこまでするのにクソみたいなフラグ管理が必要だったですし。まあ、仲良くなっても相変わらずクソみたいなフラグは山ほどあるけどね! 

 

 まあ、言うこと聞いてくれるんなら別にいいや。取り敢えず今回の黒王戦についての解説をしましょう。

 

 このFGORPGで黒王は最初の難関としてよく取り上げられています。立ち位置的にはブラボで言うガスコイン神父、ダクソで言う犬のデーモンしかり慣れるまでむちゃくちゃやられます。

 

 なんでかって? 黒王は聖杯を魔力リソースとして扱ってるからですね。そのせいで劇場版HF並にモルガーンをぶっぱなす上に常時魔力放出してるせいでバサクレスでも筋力対抗ロールで簡単に負ける位にはヤバいです。

 

 慣れれば技量の低さや足の遅さから倒すことは出来るんですが考え無しに突っ込むとモルガーンぶっぱなされて蒸発します。

 

 それから攻撃範囲の広さも慣れないといけませんね。

 

 風王結界を剣に纏わせていないので避けるのは簡単なのではと思った人達もいるでしょうが、モルガーンを剣に纏わせて攻撃してくる時は攻撃範囲がめちゃくちゃ伸びてきます。死神代行みてえなことしてんな、おまえな。

 

 そのためギリギリで躱したと思ったら攻撃範囲が伸びてきてやられるというわからん殺しがざらにあります。

 

 なので黒王戦は基本的に遠距離で対応しましょう。遠距離戦では黒王の馬鹿力とわからん殺しは発揮されないので気をつけるのが宝具のみということになります。まあ、遠距離で戦うと宝具を連射してくるのでキツいことに変わりはないんですが……。個人的には此方の方が対処しやすいので遠距離戦で挑みます。

 

 ここまでがマスターも戦う場合の時の注意点です。次はサーヴァントのみが戦う時の注意点を解説しますね。

 

 基本的には後ろで指示出したりサポートをしてあげればいいんですが、黒王は時折此方を殺しにかかってくる時があります。特にマスターとサーヴァントの距離が離れた時が顕著ですね。サーヴァントの助けが間に合わないと判断してきた場合、魔力放出で物凄い勢いで突っ込んできてそのままぶった斬ってきます。殺意高スギィ! 

 

 なので援護する時は味方サーヴァントの背後で尚且つそれなりに近い位置を陣取ることを心掛けましょう。油断したらいつの間にか目の前に現れた黒王に斬られるなんてことはざらにありますんで。

 

 それから1番気をつけて欲しいのは宝具ですね。あまりにも味方サーヴァントの背後に陣取りすぎるとサーヴァントごと焼き払おうと通常のモルガーンより数倍威力の高いモルガーンを飛ばしてきます。なのでちょこちょこ味方サーヴァントの背後から外れつつガンドなどで隙を作って味方サーヴァントが戦いやすいように援護してあげましょう。

 

 それさえ守れば黒王は割と簡単に倒せます。

 

 まあ、チュートリアルボスで出すような強さじゃないですけどねえ! 

 

 以上が黒王戦の攻略の手順となります。

 

 さて、取り敢えず突っ込む前に武装の確認をしましょう。

 

 今ホモくんが持ってるのは古びたナイフと特殊改造MP5、それから呪いの……あれ? 呪いの石が消えてますね。なんでぇ……? 捨てようとしても捨てられなかった石がいつの間にか手持ちから無くなってます。うーん……? 

 

 まあ、考えても分からないことは見なかったことにしましょう。多分どっかに消えたんでしょ(適当)

 

 取り敢えず使えそうなものは古びたナイフと特殊改造MP5、後は聖晶石を集めていた時に同時にやっていた置換呪術の印を刻んだ小石を数十個ほど。MP5の弾は残り約140発くらいですね。エミヤニキがこっちに気がついて近寄ってきてくれたおかげでそこそこ節約出来ましたね。

 

 残り魔力も鍛えていたおかげでまだ大分余裕があります。宝具の1、2発くらいは何とかギリギリ撃てるでしょう。

 

 さて、後は立香ちゃん達がもうすぐここに来るはずなんでその時に合流して黒王戦に行きましょうか。

 

 ……もうすぐここに来るはずなんで。

 

 ……来ませんね? エミヤニキが生きてたところから考えるに立香ちゃん達がここにまだ着いていないと考えていたんですが……。

 

 そう言えば柳洞寺にいつもある場所に聖晶石がなかったすね。いや、まさかそげなことは……。

 

 >突如として爆発音にも似た轟音が辺りに鳴り響いた。

 >そして地震の如く地面がグラグラと揺れる。

 >あなたが今いる柳洞寺は既にボロボロであったため、今にも倒壊しそうだ。

 >早く脱出しなければ生き埋めにされてしまうだろう。

 

 ウッソだろお前。もしかして本当に立香ちゃん達黒王戦に突っ込んじゃってる? いや、だとしてもエミヤニキがキャスニキと戦わずにホモくんの方に来た理由が……。

 

『度重なる破壊音に気がついたのか、シャドウアーチャーが此方に向かってきた』

 

 あっ……。もしかして入れ替わりになっちゃった……? 

 

 うそだよぉ、普通そんなことってある? 

 

 ええい! こうなったらとっととこっちも大空洞に突っ込みます! 運が悪いと立香ちゃんがぶっ殺されて再走確定になっちゃうんで急ぎますよ! ほら行くどー! 

 

 >あなたはサーヴァント達にこの柳洞寺の真下にある大空洞へと向かおうと伝えた。

 >サーヴァント達からの返事を聞くとあなたは急いで倒壊し始める柳洞寺から出て、下にある大空洞へと繋がる洞窟へと向かう。

 >大空洞へと近づくにつれ、揺れと轟音が酷くなっていく。

 >時折発生する強い揺れに足を取られながらもあなたは必死に大空洞へと向かう。

 

 まだ大丈夫ですよね? 大丈夫だよねぇ!? ここで再走確定になったら赤っ恥かくんですけど! 頼む立香ちゃん生きててぇぇえええ!!! ああ、もう仕方ない! 置換呪術を使ってぶっ飛びます! 魔力とか弾とか色々と惜しいですけどそれを惜しんで死んでたらクソもありません! 

 

 >あなたはMP5を構え、弾丸を放つ。

 >そして置換呪術により加速して凄まじい速度で移動し始めた。

 >置換呪術によりあらゆる運動エネルギーを自身の加速に置換したため、あなたの体がギシギシと軋み始めた。

 >HPが減少した。

 

「あっ、ちょっと──」

 

 超加速してるせいでダメージ負い始めていますが、生きてさえいれば特に問題はありません。というわけで死ぬ気で加速してIKEA。

 

 >加速に次ぐ加速。

 >あまりの速さに肉体が悲鳴をあげ始める。

 >HPが減少した。

 

 耐久ビルドにしているのでまだHPは半分を切っていません。まだ加速できますね。しましょう。

 

 >あなたは更に加速した。

 >自身の肉体に強化魔術を施しているというのに自身の骨に罅が入っていくような嫌な音が聞こえる。

 >HPが減少した。

 

 HPが半分切りましたが、もうすぐ大空洞に着きます。

 

 >あなたは大空洞に辿り着いた。

 

 よっしゃ! 着きました! 

 

 >大空洞に辿り着いたあなたの目に入ったのは尻もちをついた立香と今にも剣を振り下ろそうとしているアルトリア・オルタの姿だった。

 

 ちょ、待ってぇぇええええ!! 

 

 >あなたは立香目掛けて銃を構えた。




楽しくなってきましたねえ!
多分次回は小説形式になると思われます

まあ、そんな感じなので失踪しますわ


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データが消えて書き直しになったので遅れました(特大ガバ)

初めての他視点なので実質初投稿です。


 星崎望幸が消えた。

 

 それは藤丸立香にとっては最悪と言ってもいい出来事だった。

 

 立香にとって望幸の存在は半身、いや比翼の鳥と言ってもいいほどだ。生まれた時から一緒だったからだろうか、立香にしてみれば望幸と一緒にいるのは当たり前の事だった。

 

 だからこそ、このカルデアに来た時に最初に望幸に出会えたことは立香にとっては何よりも安心出来ることだった。例え爆破テロのような出来事が起きたとしてもそれでも望幸と一緒であれば前を向いていけた。

 

 だが、この地獄のような街に着いた時には望幸は隣にいなかった。何処を見渡しても望幸の姿が見えなかった。それは立香にとっての精神的支柱であった存在が消えたことにより、立香が抑え込んでいた負の感情が溢れ出すことを意味していた。

 

 不安、焦燥、恐怖、悲哀。あらゆる感情がミキサーでかき混ぜられたかのように立香の心を大いに荒らしていく。やがてその荒れ狂う感情は1つの結論を出す。

 

 会いたい。

 

 ほんの一瞬だけ、全てを投げ捨ててでも望幸に会いたいと立香は思ってしまった。

 

「……先輩、どうかしましたか?」

 

「あ、ううん! 別になんでもないよ!」

 

 けれど立香はその強靭な精神力を以ってその感情に蓋をする。気づかれないように、なんでもないと振舞ってみせるのだ。

 

「それにしても望幸さんは何処に飛ばされたんでしょう。とても心配です」

 

「うん、そうだね。私も凄く心配なんだ。だから早く望幸を見つけよう」

 

 望幸が傍に居ないのは不安で仕方がないけれど、私はまだ大丈夫。だって望幸と約束したことを思い出したから。

 

「……そうだよね。早く、望幸を見つけないと」

 

 それからはマシュとオルガマリー所長と共に特異点の解決とともに望幸を探し始めた。その道中様々な事が起きた。

 

 まるで影法師のような姿で襲いかかってきたアサシンとランサー。狂ったように聖杯、聖杯と言って私達に攻撃を仕掛けてきたが、デミサーヴァントとなったマシュが撃退してくれたことで何とか助かった。

 

 けど、望幸は見つからなかった。

 

 人を石へと変える怪物、メデューサ。デミサーヴァントとなったばかりのマシュにとっては強敵であり、苦戦していたところをキャスターとして現界したクーフーリンの助けによってメデューサを撃破することが出来た。そしてその後キャスターが仲間になってくれた。とても心強いと思う。

 

 望幸は見つからなかった。

 

 キャスターが警戒しろと言っていたアーチャー。その人がいると聞いた場所に行ったがいなかった。不思議に思いつつも、柳洞寺と書かれた寺の中に何かないかと探してみたら何やら虹色に光る石を見つけた。取り敢えず拾っておこう。そうして寺の中を探索していたら何かが粉砕されるような轟音が鳴り響いた。

 

 その音と気配に反応したキャスターが今すぐ逃げるぞと言って急いで柳洞寺から出ていった。どうやら先ほどの音の正体はバーサーカーらしいとの事だった。

 

 ……望幸は、見つからなかった。

 

 そしてこの狂った聖杯戦争を始めたセイバーとの戦い。それが始まる前に宝具を使えないマシュを鍛えるとキャスターと戦った。その結果、マシュは宝具を使えるようになった。その姿を見たキャスターはこれなら大丈夫だろうと言って、一緒にセイバーが待ち構える大空洞へと向かった。

 

 …………。

 

「望幸……」

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 柳洞寺の真下にある大空洞に着いた。

 

「これが大聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない。なんでこんなものがこんな極東にあるのよ……」

 

 大空洞の中央に座す大聖杯を見てオルガマリーは愕然とした様子で呟いた。魔術師として優秀な知識を蓄えていたからこそ正しくその異常さを認識することが出来た。

 

『資料によると制作はアインツベルンという錬金術の大家だそうです』

 

 その大聖杯の補足説明を通信越しで行うロマニ。続けて説明をしようとしたが、それはキャスターによって中断された。

 

「悪いな、お喋りはそこまでだ。奴さんに気付かれたようだぜ」

 

 そう言ってキャスターが睨む先には禍々しい黒に染まった鎧と聖剣を携えたセイバー、アーサー王が此方を冷酷な目で睥睨していた。

 

 薄い金色の髪に色素の薄い肌、此方を冷酷に見つめる金色の目。そしてなによりも魔術師としてド素人の立香でさえ分かるほどの膨大な魔力がセイバーを中心に渦巻いていた。

 

「…………」

 

「なんて魔力放出……。あれが、本当にあのアーサー王だというのですか?」

 

「見た目は華奢だが甘く見るなよ。あれは筋肉じゃなく魔力放出でカッ飛ぶ化け物だからな。一撃一撃がバカみてぇに重い。気を抜けば上半身ごと持っていかれるぞ」

 

「ロケットの擬人化の様なものですね……。了解しました。全力で応戦します」

 

「──話は終わったか?」

 

 今まで黙って聞いていたセイバーが唐突に口を開いた。

 

「なぬ!? テメェ喋れたのか!? 今までだんまり決め込んでやがったのか!?」

 

「は、それももう聞き飽きた台詞だな」

 

 そういうセイバーはまるでこれから何を言うのか、何が起きるのかを知っているかのような態度であった。

 

「まあいい。黙っていたのは何を言っても見られているからだ。故に案山子に徹していた」

 

「ならば何故案山子に徹するのをやめた?」

 

 キャスターが抱いた当然の疑問。今の今まで案山子に徹していたと言うのならば、何故やめたのか。その疑問にセイバーは鼻で笑った。

 

「決まっている。貴様達が来たということは遅かれ早かれあの大馬鹿者がくるからだ」

 

「大馬鹿者だぁ……? テメェ誰のこと言ってやがる」

 

「それを貴様に教える義理はないな」

 

「ケッ、そうかよ」

 

 これ以上お前に話すことは無いとセイバーはキャスターから視線を切る。そして次にセイバーが見つめたのは後方に立っていた立香だった。

 

「試させてもらうぞ、藤丸立香。お前があの大馬鹿者の足枷にならぬかをな」

 

「え……? なんで私の名前を」

 

 当たり前の疑問。名乗ってもいないと言うのに何故か此方の名前を知っていたセイバー。然れどセイバーは最早言葉は不要と言わんばかりに全身から渦巻く魔力を滾らせて黒き聖剣を持ってこちらに襲いかかってきた。

 

「っとぉ! いきなりマスターは取れねぇんじゃねえの?」

 

 弾丸のようにこちら目掛けて飛んできたセイバーをキャスターがルーン魔術を用いて火炎を飛ばすことで牽制をする。

 

 だが、セイバーはそれをまるで知っていたかの如く見もせずに体を傾けることで簡単に回避する。そしてそのまま立香の方──ではなく、ルーン魔術を使用した事でほんの僅かに硬直したキャスターの方へとジェット機の様な速度で間を詰める。

 

「しまっ──」

 

「まずは貴様からだ、死ね」

 

 振り下ろされる聖剣。このままいけば確実にキャスターの肉体を切り裂くだろう。だが、それはシールダーたるマシュが許さない。

 

「させません!」

 

 キャスターとセイバーの間に割り込み、盾を用いてセイバーの聖剣をはじき返す。

 

「ほう……」

 

「悪ぃな嬢ちゃん、助かったぜ! アンサズ!」

 

 ルーン魔術により放たれた灼熱の炎弾は聖剣を上へとはじかれガラ空きとなったセイバーの胴体へと向かう。だが──

 

「エクスカリバー……」

 

 聖剣へ魔力の収束が異常な速さで、爆発的に膨れ上がっているのを感じ取ったキャスターはセイバーが何をしようとしているのか気が付いた。

 

「ッ!? 不味いっ! 嬢ちゃん逃げるぞ!」

 

「モルガーン!!!」

 

 セイバーに向かった炎弾は無理矢理体勢を立て直し、聖杯より供給された魔力を惜しみなく使ったセイバーの竜の吐息を思わせるような宝具によって容易く飲み込まれた。

 

 大空洞に巻き起こる容赦ない破壊の轟音。有象無象を消し去る慈悲のない破滅の熱線。直線上にあった全ての物がまるで飴細工のように融解していく。

 

「ふん、上手く躱したか」

 

「嘘でしょ……?」

 

 それを呟いたのは誰だったのか。いや、もしかすればキャスターを除いた全員が呟いたのかもしれない。

 

 セイバーが放った宝具による一撃はこの大空洞の岩壁を容易く貫き、大空洞へと繋がる道を新しく作りあげたのだ。

 

「おいおい! そんなに魔力をバカスカ使いやがってよ! ちったぁ自重しろや!」

 

「くだらん」

 

 その言葉とともに先程と同じように聖剣へと莫大な魔力が収束していく。そしてその矛先はキャスター達ではなく、先程の攻防で離れてしまった立香達へと向いていた。

 

「チッ!」

 

 それにいち早く気がついたキャスターは自身に強化のルーン魔術を掛け、セイバーへと近距離戦へと持ち込んだ。

 

 杖にも強化のルーン魔術を仕掛け、まるで槍のように扱うキャスター。その猛攻はランサークラスを思わせるが、本来のクラスではないためセイバーにいとも容易く防がれる。

 

「貴様はキャスタークラスではないのか?」

 

「剣を使うアーチャーだっているんだ。槍を使うキャスターがいたっておかしくはねぇだろ?」

 

「は、それもそうか」

 

 互いに軽口を叩き合いながらも幾度となく切り結び、火花が散る。だが、ランサークラスで呼ばれていないキャスターが徐々に力負けをして押し込まれ始めた。

 

「ぐっ……」

 

「そら、終いだ」

 

 幾度目かの斬り合い。その瞬間、セイバーは己の聖剣に宝具を纏わせた上に魔力放出を行い、キャスターを力技で岩壁へと叩きつけた。

 

「ぐぁっ……!」

 

 そして間髪入れずの宝具。岩壁へと叩きつけられたキャスターはその攻撃を凌げるはずもなく、膨大な熱量を誇る聖剣の一撃によって飲み込まれた。

 

「キャスター!!」

 

 思わず声を荒げる立香。

 

「他人の心配事をしている場合か?」

 

「え……?」

 

 先程までキャスターと戦っていたはずなのに、いつの間にか目の前に現れていたセイバーの姿を見て、立香は思わず尻もちをついてしまった。

 

 振り上げられる聖剣。まるで熱したナイフをバターに入れるかのように容易く両断されることは想像に固くない。

 

「藤丸!」

 

「先輩!」

 

 マシュとオルガマリーが助けようと此方に向かおうとするが、もはやこの距離では確実に間に合わない。己の未来を想像してしまった立香はきゅっと目をつぶった。

 

「……ふん、これで終わりだ」

 

 聖剣は無慈悲にも立香の体を袈裟斬りにしようと振り下ろされた。その瞬間、不意に立香はここに飛ぶ前のことを思い出した。

 

『──大丈夫、お前は必ず俺が守るから』

 

 そして1発の銃声が大空洞へと鳴り響いた。

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 来たるべき痛みに備えてぎゅっと目をつぶった立香。然れどいつまで経っても痛みは襲ってこず、寧ろ何だかとても安心するような温かさに包まれていることに気がついた。

 

 一体何が……? 

 

 不思議に思って恐る恐る目を開けるとそこには自分が会いたくて会いたくて仕方がなかった、星崎望幸が自身を守るように抱き締めていた。

 

「望幸……?」

 

「……大丈夫か?」

 

 そう言って無表情で、しかし目だけは心配そうにこちらを見つめる姿は間違いなく自分が会いたかった人だった。

 

 望幸は立香に怪我がないことを確認すると立香にあるものを渡してからゆっくりと立ち上がり、いつの間にか遠くにいたセイバーの方へと向き直る。

 

「ようやく来たか大馬鹿者め」

 

「……」

 

「久しぶりに会ったんだ。何か言ったらどうだ? ……って、ああそうか。今回は初めて会ったのか。いかんな、あの突撃女ほど私は覚えられる訳では無いからな。どうにも記憶が混ざってしまう」

 

 無表情で黙り込みつつも手に持つ銃器とナイフを構え、冷静にセイバーを見据える。その反対にセイバーはどういう訳か声を弾ませて嬉しそうに望幸に語りかける。だが、セイバーは唐突に顔を歪ませた。

 

「……まだ貴様は彷徨い続けているのか。様々なものを代償にしてまで何故そこまで彷徨い続ける? 痛覚すら失ったその肉体で何を求めている?」

 

 セイバーがそこまで言った所で立香はあることに気がついた。それは先程自分を庇った時に出来たのであろう傷口から血が溢れ、望幸の足元に赤い水溜りを作っていることに。

 

「…………」

 

「だんまりか。貴様はいつもそうだな。他者に対しては異常なまでに気にかける癖に自身のことになると病的なまで無頓着になる。……ああ、本当に反吐が出る。そんな事をするお前にも、『あの時』それに気がつけなかった私にも」

 

 そういうセイバーはまるで思い出したくもない過去を思い出した様に苦々しい顔を伏せる。そして伏せた顔を上げると聖剣を構えた。

 

「なあ、大馬鹿者よ。これ以上彷徨い続けると言うのであれば私を倒していけ。できなければ私がお前をここで殺す」

 

 そういうとセイバーは何処か寂しげに笑う。

 

「それが、今の私がお前にしてやれる唯一の事だからな」




それはそうと可愛い女の子の歪む顔っていいよね。いや別にそれがこの小説に関係するとかそういう訳ではありませんけども。ありませんけども。

ホモくんの置換呪術について勘違いされてる方が多かったので補足説明。

ホモくんの肉体置換は対象の情報を置換する呪術だったりします。つまりどういうことかというと、

A音速で飛ぶ弾丸
Bその場に静止するホモくん

この弾丸とホモくんを置換すると

A音速で飛ぶホモくん
Bその場で静止する弾丸

みたいな感じです。また、他にも一方的に置換することも出来ます。先程と同じように、

A音速で飛ぶ弾丸
B音速で飛ぶホモくん

だとすると

A弾丸
B音速で飛ぶ+音速で飛ぶホモくん

と言ったような感じで加速するのが前話でやっていた移動方です。なお強化魔術無しで使う即死する模様。

説明ができたので失踪します。


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戦闘

音速で飛ぶホモってなんだよ(哲学)

そんな事を思ってしまったので初投稿です。


 大空洞にて響き渡る銃撃音と金属同士がぶつかった時特有の甲高い音が鳴り響く。その音の正体は望幸が連射するMP5の弾をセイバーがいとも容易く全て叩き落とすことで発生する音であった。

 

「そんな豆鉄砲では私に傷はつけられんぞ」

 

「…………」

 

 挑発するように鼻で笑うセイバー。然れどそんな挑発など耳に入っていないかのように構わずセイバーに向けて撃ち続ける。そしてそれに痺れを切らしたセイバーが魔力放出を使い、一気に望幸へと詰め寄った。

 

「ふっ!」

 

 振るわれる聖剣。本来であれば容易く望幸を両断する程の威力を持つそれは望幸得意の置換呪術によって避けられ、空を切る。

 

 置換呪術によってセイバーの真横に立っていた望幸は剣を振るった事で隙ができたセイバーのこめかみに銃口を押し付け、引き金を引いた。火薬が炸裂する音とそれによって発生する鼻を突くような硝煙の匂い。

 

 こめかみに銃口を押し付けられたセイバーは銃弾を頭に受けた──なんてことは無く、望幸が引き金を引くよりも速く頭を銃口からズラし回避する。

 

 そしてそのまま望幸の胴体を両断せんと聖剣を振るう。だが、彼はそれを上体を逸らす事で回避する。そしてそのまま反撃と行きたいところだが、そこで英霊と人間との身体能力の差が如実に現れる。

 

 望幸が銃を構え、撃つよりも速くセイバーが上体を逸らしたことによって不安定な体勢になった望幸へ足払いを仕掛ける。

 

 転ばした所に聖剣を振るい、苦しまぬように一息に殺してやろうとそう思ったセイバーであったが、望幸はまるでそうすることは知っていたと言わんばかりに上体を逸らしたまま後ろに倒れ込むように飛び跳ねた。

 

「なっ!?」

 

 その結果、セイバーの足払いは空振りへと終わる。しかしそんな回避を取ってしまえば背中から地面に落ちて隙を晒すだけだとそう考えたセイバーの眼前に銃口が向けられていた。

 

 思わずその事実に一瞬惚けてしまった。こちらを見ずに、その上倒れ込む様な姿勢で滞空していると言うのに的確に此方の眉間を狙うなどと──。

 

「ぐっ……!」

 

 放たれた弾丸を間一髪といった様子で叩き落とす。だが、攻撃は防いだ。ならば後は地面に倒れ込み隙だらけになった望幸を斬ってしまえば──。そう考えたセイバーであったが先程と同じようにいつの間にか離れた場所で弾丸をリロードしている望幸の姿を見て思わず舌打ちをする。

 

『彼凄いな!? あのアーサー王の攻撃を見切れるのか!?』

 

 驚愕の声を上げるロマニ。その言葉にセイバーは何も知らぬ馬鹿がと心の中で悪態をつく。

 

 見切る? 馬鹿を言うな。

 

 あれはそもそも見えてすらいない。

 

 間を詰めた時もそうだ。あの大馬鹿者は確かに私を見失っていた。だと言うのに攻撃に反応してきたということはそれをやってくると知っていたからにほかならない。そしてそれを裏付けるように彼奴は此方を見もせずに続けて放った足払いを避けてみせた。

 

 それが意味することは──

 

「貴様、どれ程繰り返し続けている。もはや100や200などでは足らんだろう」

 

「…………」

 

「まただんまりか。本当に貴様という大馬鹿者は……!」

 

 腹の底からグツグツと煮え滾るような憤怒。それは望幸に向けられたものでもあり、同時に自分自身にも向けられていた。

 

 セイバーはその怒りのままに望幸へと斬り掛かる。だが、それも最初の時と同じように目の前から一瞬で消えたことにより空振りへと終わる。

 

「……なるほど、ようやく貴様の回避の種が分かった。私が叩き落とした弾丸と位置を置換しているのか」

 

 いつの間にか自身の背後に立っていた望幸を見て、彼が使った魔術の正体を見破るセイバー。

 

 地面に転がっていた弾丸を1つ拾い、そこに刻まれた印を観察する。

 

「だが、それはいつまで続けられる? 貴様の魔力とて有限だろう。そしてその印を刻まれている銃弾もな」

 

 確かにセイバーの言う通り魔力は有限だ。そして置換するための印も。だからこそデミサーヴァントであるマシュと共に戦うべきなのだが、マシュは動けずにいた。それは恐怖によって体が動かない、などと言う訳ではなく、セイバーと戦う直前に望幸から言われたのだ。

 

 立香と所長を守って欲しい、と。

 

 勿論それにはマシュも所長も立香も全員が反対していた。1人で戦っても勝てるわけが無い、サーヴァントですらない貴方が適うわけないと。けれど望幸はその問いにこう答えた。

 

「勝てないことと負ける事は別だ」

 

 彼が何を考えてそう言ったかは分からない。何かあのセイバーに勝つ策があるのか。そう思って彼の言う通り立香と所長を守ることに専念したが、見たところ彼の攻撃は通じず、セイバーの攻撃を躱すのに精一杯なように見える。

 

 やはり助太刀に──

 

 マシュがそう考えた瞬間、背中に氷柱を入れられたかのような悪寒が襲ってきた。その悪寒の正体は膨大な魔力が逆巻く聖剣を地面につき立てようとしているセイバーであった。

 

「だが、魔力切れを待つのも面倒だ。辺り一帯に散らばった弾丸を纏めて消せば貴様は置換することが出来んだろう」

 

「…………!」

 

 セイバーが何をしようとしたのか気づいた望幸は上へと向かって弾丸を放った。そしてそれと同時にセイバーは地面に聖剣を突き立てた。

 

 そして巻き起こる破壊の嵐。

 

「きゃあああああ!?」

 

「うっ……ぐぅっ!」

 

 聖剣を突き立てたセイバーを中心として大空洞の地面全体に亀裂が走り、その亀裂から焼き付くような魔力が迸る。セイバーを中心とした所からあらゆるものが吹き飛び、消し飛んでいく。

 

 仮にマシュが守らなければ立香もオルガマリーもこの世から消えていたことは想像に難くないほどの破壊であった。

 

「これで逃げ場はなくなったな?」

 

 地面にばら撒かれていた弾丸は先程の一撃で全て砕かれ、セイバーの言う通り空中に逃げた望幸は逃げ場を無くしていた。

 

 銃を撃とうと構える望幸よりも早く宝具の準備が完了していたセイバーは望幸に向けて聖剣を構える。

 

「……逝け、大馬鹿者」

 

 魔力が渦巻く聖剣の力を解放しようと振り上げ──

 

「私のマスターを虐めないでくれますかぁ〜?」

 

 横合いから飛んできた強烈な攻撃によって地面と平行線を描くほどの速度で吹き飛ばされた。そしてその速度を維持したまま岩壁へと叩きつけられ、岩壁に大きな罅が刻まれた。

 

「ぐっ……貴様は……」

 

「困るんですよねえ。私のマスターにそんな事をするなんて」

 

 手足に宇宙のような紋様と青い炎を纏い、セイバーを不敵な笑みで見下ろすのは望幸と契約したサーヴァントの1人である──

 

「ポンコツか」

 

「誰がポンコツですか!?」

 

 セイバーのあまりな言葉に思わず突っ込んでしまうカーマ。その姿に嘆息しながら現れたもう1人のサーヴァントは上から落ちてきた望幸を優しく受け止めて地面へと降ろした。

 

「はぁ……馬鹿な事をやらないで下さいませんか? それに貴方だけのマスターというわけでもないでしょうに」

 

 そう言ってカーマの後ろから現れたのは殺生院キアラであった。その姿を見たセイバーは思わず頭を抱えてしまった。

 

「あの大馬鹿者はなんというものを呼んでいるのだ……!」

 

「ふふ、随分と酷い言い草ですね?」

 

「貴様らを見ればそう言いたくもなろう。それで、もう1人はどうした?」

 

「あら、気づいていらしたんですのね」

 

 その言葉を聞いたセイバーは鼻を鳴らした。

 

「当たり前だ。ほんの一瞬とはいえ、馬鹿げた魔力を感じたのだ。それこそこの聖杯を凌駕するほどの魔力をな。となればそこの大馬鹿者がまた何かしら厄介な奴を引き寄せたのであろう? で、そいつは何処に行った」

 

「彼女は少々下準備に向かいましたよ」

 

「下準備……ああ、なるほど。そういう事か」

 

 キアラの下準備という言葉に眉を顰めたセイバーだったが、少し考えたのちに合点がいったと言わんばかりに納得した。

 

「それで? 黒い王様はどうするんですかぁ〜?」

 

「ふん、貴様ら2人を相手して勝てるとは思わんからな。潔く引くさ」

 

 煽るような物言いで言うカーマをセイバーは冷徹な目で淡々と事実を告げる。そして今までのことを思い出しセイバーは自嘲するかのように笑った。

 

「は、知らず、私も力が緩んでいたらしい。あの時躊躇したせいでこんな事になるとはな。私も大概あの大馬鹿者に執着していたということか。それに結局、どう運命が変わろうと私一人では同じ結末になってしまうのだな」

 

 そこまで言うとセイバーは1度大きく息を吐いて、望幸の方をなにか大切なものを見るかのような優しさの籠った目で見つめた。

 

「まあ、こうなってしまっては仕方あるまい。私もそちら側に行くとしよう。今度こそ大馬鹿者の、マスターの旅を終わらせる為にな」

 

 そう言うとセイバーは今まで纏っていた鎧と聖剣を消して紺色のドレス姿へと変わった。そして望幸へと近づくと自身が身に纏っていた服の装飾品の一部を渡した。

 

「必ず私を呼べ、いいな?」

 

 そう言ったセイバーの身体が黄金の粒子へと変わっていく。そして消える直前、まるでこれから悪戯をする童のような悪どい笑みを浮かべ、望幸の胸ぐらを掴んで強引に引き寄せた。

 

「──」

 

「なぁっー!?」

 

「あらあら……」

 

「ええ!? いきなり何して……」

 

 カーマ、キアラ、立香の驚愕の声が上がる中、セイバーは3人に対してしてやってやったと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべる。

 

「なに、唾付けというやつだ。ではな」

 

 言いたいことだけ言ってこの特異点から消失したセイバー。それはこの特異点Fで発生していた狂った聖杯戦争が幕を下ろしたことを意味していた。

 




どうしてそんなガバをするんですか?(現場猫並感)

感想読んで弾丸の回転も置換したら超級覇王電影弾をしながら音速でホモくんがカッ飛ぶのかと想像してしまいました。いくらなんでも酷すぎでは?

次回からまたRTA形式です。そんなわけで失踪いたします。


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帰還

今更ですけどUA30万お気に入り1万超えました。すごい(小並感)

そんなところで初投稿です。


 チュートリアルクリアから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 いやー、黒王は強敵でしたね……。最後普通に死にかけましたけど生きてるからガバじゃないです(鋼の意思)

 

 一応今のところチャート通りの流れではあるんですが、何か所々でちょっと訳わかんないフラグが乱立してましたね。なんでぇ……? 

 

 これもしかして変なルートに入ったんですかね? うーん、まあ、ええわ。許したる(寛容)分からないことは見なかったことにする主義なんで。

 

 それにしてもちょっと不味いっすね。黒王が最後の最後にとんでもないことしてくれたおかげで周りの目が凄いことになってます。特に立香ちゃんの目とかやばいです。なんだァ? てめェ……とか言いそうな目付きになってます。

 

 菩薩の拳でもされそうですねクォレハ……。

 

「フォウ! フォーウ!」

 

 >立香の肩に乗っていたフォウがあなたの顔に張り付くといつもの様にあなたの肩へと移った。

 

 おっと、またこの獣は人の顔に奇襲仕掛けてきましたよ。やっぱ(奇襲掛けるの)好きなんすねぇ。

 

 まあそれはさておき、今回の黒王戦でしたけどちょっとというか、かなり気になることが多かったですね。謎フラグが乱立してますし、サーヴァントと合流した瞬間戦いもせずに消えたのもちょっと気にかかりますね。

 

 いつもなら戦うんですけど……。まあ、元とは言えビースト2体同時に相手取るとか嫌に決まってますもんね。そこら辺が何かフラグに関与したのかもしれないっすね。

 

 ま、結果的にタイム短縮に繋がったのでOKです! 

 

 えーこの後なんですけど、まあ消化試合ですね。レ//フが登場して少しムービー、いわゆるトイレタイムが始まります。その後場合によっては少し戦うこともあるんですが、ぶっちゃけ人間形態で戦うという舐めプしてくるんで黒王よりクソ弱いです。なんなら一方的に嵌めることも出来ます。ホラホララッシュをレ//フの顔にやってあげましょう。

 

 >何処からかパチパチと拍手するような音が聞こえてきた。

 

 おっと、レ//フのご登場です。どの面下げてやって来たんだお前。

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。特に星崎望幸、貴様の生死を確認しなかったのは私の失態だよ」

 

 >にこやかな笑みを浮かべてあなた達の前に現れたのはレフ・ライノールであった。

 

 本当になあ!? お前の後ろにいたというのに、やっぱお前視界ガバやんけ。

 

「レフ教授!?」

 

『レフ──!? レフ教授だって!? 彼がそこにいるのか!?』

 

「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく──」

 

 >そこまで言ったところでレフ・ライノールの雰囲気が薄ら寒いものへと変わり始めた。

 >にこやかな笑みを浮かべていた顔は残虐性を思わせるような顔へと変貌した。

 

「どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

 正体現したね(土竜並感)

 

「マスター、下がって……下がってください! あの人は危険です……あれは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」

 

 ナスビちゃんがデミサーヴァントとなった事でレ//フの異常性に気づきますが、レ//フを精神の拠り所としていたオルガマリー所長の耳には届いていません。悲しいなあ……。

 

「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ! 良かった、あなたがいなくなったら私、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

 

 はい、オルガマリー所長がマシュの静止も聞かずにレ//フの元へと走りよっていきました。

 

「やあオルガ。元気そうでなによりだ。君も大変だったようだね」

 

 今聞いてもすっごい皮肉っすね。まあ良くもそんな心にもないことを言えたものだと感心します。

 

 それではムービーが終わるまで暇なのでオルガマリー所長の救出方法についてお話しします。

 

 ムービーが終わって動けるようになるのは所長が助けを求める辺りになります。その後即座にレ//フに攻撃を仕掛け、一時的にレ//フのヘイトを此方に向かせる必要があります。と言うのもオルガマリー所長に対してヘイトが向いている状態だと魔術などで干渉しても弾かれます。

 

 まあ、流石に魔神柱という格上の存在なので当たり前ですね。なので一時的に此方にヘイトを向かせて気を逸らすことで魔術などの干渉が通るようになります。その後は置換呪術によって所長を救出した後にレ//フ戦へと移ります。

 

 その後は消化試合ですね。サーヴァントで囲って凹るなり、嵌めて凹るなりなんなりしてぶちのめして一定のラインまで体力を下げると捨て台詞を吐いてこの特異点から撤退します。

 

 そこからは前から準備していた魂魄置換呪術の出番ですね。人形に所長の魂を置換して持って帰れば工事完了です。ただ調整などもしないといけないので特異点崩壊などのことも考慮するとレ//フを素早く倒す必要があります。

 

 煉獄ごっことか出来ないの悲しい……。

 

「生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう」

 

 >レフは聖杯の力を使って真っ赤に燃え上がっているカルデアスがある管制室の時空と繋げた。

 

 おっと、そんなことを言っているうちにレ//フが聖杯を使ってカルデアスがある管制室と繋げましたね。ということはそろそろ……ん? 

 

 スゥゥゥゥ……。

 

 気の所為ですかね? なんか見覚えのある9本の尻尾がカルデアスの影から見えるんですけど……。あっ、玉藻がカルデアスの影から顔を出しましたね。なんか此方に手を振ってきてるんですけど。

 

 あの子何してんの? 

 

「私の責任じゃない、私は失敗していない、私は死んでなんかいない……!」

 

 >レフから告げられた残酷な事実から目を背けるように、己に言い聞かせるように否定し続けるオルガマリー。

 

「アンタ、どこの誰なのよ!? 私のカルデアスに何をしたっていうのよぉ……!」

 

「アレは君の、ではない。まったく、最期まで耳障りな小娘だったなぁ、君は」

 

 >レフはそう言いながらオルガマリーを鬱陶しい蝿を見るかのような冷酷な目で見下す。

 >そしてレフはオルガマリーに向けて手を向けた。

 

「なっ……体が、宙に。何かに引っ張られて……」

 

 >オルガマリーの体が宙へと浮き少しずつ赤く染まったカルデアスへと近づいていく。

 

「言っただろう、そこは今カルデアに繋がっていると」

 

 >レフはそう言って嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。最後に君の望みを叶えてあげよう。君の宝物とやらに触れるといい。なに、私からの慈悲だと思ってくれたまえ」

 

「ちょ、何言ってるのレフ? 私の宝物って……カルデアスの、こと? や、止めて。お願い。だってカルデアスよ? 高密度の情報体よ? 次元が異なる領域、なのよ?」

 

「ああ、ブラックホールと何も変わらない。それとも太陽かな? 」

 

 あっ、玉藻が動き出しましたね。これってもしかして……。

 

「まあ、どちらにせよ。人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。遠慮なく、生きたまま無限の死を味わいたまえ」

 

「いや……いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんな所で死にたくない!」

 

 ……ムービー終了。動けるようになりました。オルガマリー所長を助けに行きましょう。

 

 >あなたはレフ目掛けてMP5を放った。

 

「ふん、このようなもので私が──」

 

「先程、面白いことを言っていたのぅ?」

 

「なにっ──があぁぁぁぁあっ!?」

 

 >レフは唐突に後ろから聞こえた声に驚愕しつつ振り向いた。

 >だが、振り向いた瞬間には魔術を使用していた腕を圧倒的な力で無理矢理引き千切られた。

 

 よぉっーし! 玉藻がレ//フを攻撃してくれたおかげでオルガマリー所長からヘイトが逸れました! 行けっ! ホモくん! 

 

 >あなたは先程レフが弾いた弾丸と位置を置換することでオルガマリーの近くへと移動した。

 >そしてオルガマリーに触れ、置換呪術を使用することによってオルガマリーにかかっていた魔術を別の物体へと移し替えることが出来た。

 >続けてあなたは置換呪術を使用することで立香にあらかじめ持たせていた印が刻まれた石と位置を置換する。

 

「えっ……? 私、助かったの……?」

 

 よぉーしっ! 後はレ//フを囲んでボコボコ作戦を……。

 

「ほほ、100に裂かれるか、焼き尽くされるかどちらが良い? ああ、何なら先程言っておったカルデアスとやらにお主を突っ込んでしまうのも良いな?」

 

「貴様ァッ……!」

 

 >玉藻はレフの必死の抵抗を叩き潰しながらまるで虫を殺す幼子のような無邪気さで残酷な提案をしていく。

 

 もう始まってる!(ホモガキ)

 

 なんかもう玉藻がレ//フを潰し始めてるんですけど……。レ//フ抵抗してますけど何も意味なしてないっすね。全部上から叩き潰されてる感ありますねクォレハ……。

 

「ふむ、そうさな。妾は寛大故にな。決められぬというのなら全てやってしまおうか」

 

 あっ、これはストレス値が上がる光景が広がりそう。というわけでホモくんセーブ! 

 

 立香ちゃんとマシュちゃんとオルガマリー所長のお目目を塞ぎます! ロマニ? 自分で塞げ! 

 

「わっ、何何!?」

 

「きゃっ!?」

 

「いきなり何をするのよ!?」

 

 >望幸が立香達の視界を抱きしめるような形で塞いだ瞬間、玉藻はレフを焼き尽くし100へとバラバラにした上で残った残骸をカルデアスの中へと叩き込んだ。

 

「ふむ、まあ、所詮は端末。この程度のものよな。さて我がご主人様よ、妾は此方で貴方様の帰りを待っておるでな」

 

 >玉藻はそう言って聖杯の力によって繋げられていた時空の穴を無理矢理閉じた。

 

「相変わらず出力がおかしいですねぇ」

 

「まあ、彼女は私達とは異なる方法で此方に来てますし、それくらいの差はあるでしょうね」

 

 はえ〜玉藻すっごい強い……。お陰様でタイムを大幅に短縮出来ましたね。特異点が崩壊するまでに多少の猶予はありますし、このうちにさっさと話を進めてしまいましょう。

 

 >あなたは早くこの特異点から去った方がいいということを立香達に告げた。

 

「カルデアに帰るって言ったって私はもう既に死んでるのよ!? あっちに帰ったら私の意識は消えるじゃない!」

 

 おっ、そうだな。で・す・がぁ、そんなあなたの為に魂魄置換呪術〜(ドラえもん)

 

 >あなたは懐から人形を取り出してオルガマリーにその人形について説明をする。

 

「この人形に私の魂を移せば消えることなくカルデアに帰れる……? でも、調整には私の体組織が必要って、私の体はもうないのよ? やっぱり駄目じゃ……」

 

 >そこまで言ったところでオルガマリーはあることに気がついた。

 

「そうよ! あなたは私が紙で切った指を治療する時に布で私の血を拭いていたじゃない! あれは今持ってるの!?」

 

 ありますねぇ! ありますあります! 

 

 >あなたはポケットに入れていた白い布を取り出す。

 >そこには確かにオルガマリーの血が付着していた。

 >それを見たオルガマリーは安堵からか地面へとへたりこんだ。

 

「それがあれば所長は消えずに済むんですか!?」

 

 そうだよ。

 

『望幸くん! 調整にはどれくらいの時間がかかる!?』

 

 そうですね……大体3分くらいですかねえ……。

 

『3分なんだね!? それなら特異点崩壊まで十分間に合う! こちらもレイシフト準備をしておく。魂の移し替えが完了したら教えてくれ!』

 

 あい〜。

 

 >あなたはそう言うと早速人形の調整へと取り掛かった。

 >特異点崩壊までのタイムリミットが迫る中、あなたは冷静に、しかし素早く人形に調整を施していく。

 >そして周りが固唾を呑んで見守る中、あなたは遂に調整を完了させた。

 

 これで完成ですねぇ! 後はオルガマリー所長の魂を突っ込んで工事完了です。

 

 >あなたは今もへたりこんでいるオルガマリーの手をそっと握り彼女の目を見つめる。

 

「ええ、いいわ。やってちょうだい」

 

 >その言葉とともにあなたは魂魄置換呪術を使用した。

 >オルガマリーの身体が黄金の粒子へと変換され、その粒子は吸い込まれるように人形の中へと移った。

 

 パパっとやって終わりっ! ロマニキ後はオナシャス! センセンシャル! 

 

『よくやってくれた望幸くん! こっちもレイシフトの準備は完了した。今から君たちを此方に引き戻す!』

 

 >その言葉とともに全員の身体が霊子へと変換されていく。

 >徐々に体が霊子へと変換されていく最中、不意に立香があなたの手を握った。

 

 お? なんだぁ? 

 

「望幸、私強くなるね。今回は望幸に守られてばかりだったけど、必ず望幸の隣に立って望幸を支えられるように強くなる」

 

 >立香は強い覚悟を宿した瞳であなたの方を見た。

 

「だから、カルデアに帰ったら私に魔術のことを教えて欲しいな」

 

 >あなたは身体が霊子へと変換されていく中、このカルデアに来る前のいつもの快活な笑みを浮かべる立香の姿を見た。

 >そしてあなた達はカルデアへとレイシフトした。




この作品の考察に関してですけど感想欄でバンバンやって貰って構わないです。Fateは考察で盛り上がる一面もありますし、なにより活性化すれば新しくFGORTAを書いてくれる人が増えるかもしれませんしね!自分以外が書いたFGORTAとかかなり興味あるんで(強欲)

そんなわけで失踪致します。


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特異点F攻略後

風古戦場いや……いや……(風クソ雑魚並感)。

初投稿です


 特異点F帰還から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー、特異点解決後にやることはドロップアイテム確認、スキルポイントの割り振り、各キャラのストレスチェック、コミュ、サーヴァント召喚、武器のカスタマイズなど沢山あります。

 

 特にストレスチェックだけは必ずやりましょう。やらないと次の特異点とかで大変な目に合います。

 

 なので今回は次の特異点であるオルレアンが見つかるまで上記のことをやって行こうと思います。

 

 まあ、その前にオルガマリー所長の魂を移してある人形をダ・ヴィンチちゃんに渡しましょう。その後はロマニキとダ・ヴィンチちゃんを交えてオルガマリー所長の肉体をどうするかの話し合いですね。ついでにストレスチェックも同時並行してやりましょうか。なのでホモくんの荷物から甘味類を持っていきます。あとどうせ話し合いをするのでロマニキを回収してからダ・ヴィンチちゃんのとこに行きます。

 

 と言うわけでロマニキのとこにほらいくどー。

 

 >あなたは移動中にフォウと出会った。

 

「フォーウ!」

 

 うーんこの獣。人の顔見るなりやっぱり奇襲仕掛けてきますね。ホモくんの顔から何か出てるんでしょうか。まあ、それはそれとして医務室に着きましたね。

 

 >あなたは医務室へと入っていった。

 

 お邪魔するわよ〜。

 

「うわっ、もう起きてたのかい?」

 

 >ロマニは驚いた様子であなたを見ていた。

 

「もう少し眠ってると思ってたんだけどこんなに早く来るとは思わなかったな。もしかして君には耐性があるのかなぁ? まあ、今はそれを考えててもしょうがないよね。それで此方に来たのはオルガマリーについてかい?」

 

 >あなたはロマニの質問に首を縦に振る。

 

 そうだよ。じゃけん早くダ・ヴィンチちゃんも交えて話し合いましょうね〜。

 

「よし、それじゃあレオナルドの所に行こうか。彼も交えて話し合った方が良いだろうしね」

 

 >ロマニはそう言ってあなたを連れてダ・ヴィンチと呼ばれる人のところへ連れて行った。

 

「やあ、レオナルド。今大丈夫かい?」

 

「おや、ロマニに……望幸くんだね? 丁度いい、私も君達に用があったんだ」

 

 >あなたの前にまるでモナ・リザが絵画から飛び出してきたような絶世の美女が現れた。

 

 親の顔より見たダ・ヴィンチちゃん。いつもお世話になっております。

 

「ふふ、驚いた……って訳でもなさそうだね。こんな絶世の美女相手に無反応とは。このこの」

 

 >ダ・ヴィンチはあなたのお腹を肘で突っついた。

 

「レオナルド、早速だけどオルガマリーのことについて話し合いたい」

 

「そうだね。私もその事で君達に用があったんだ。オルガマリー所長の肉体をどうするか、とかね。とりあえずはオルガマリー所長の魂が入ってる人形を見せてくれるかな」

 

 >あなたはダ・ヴィンチに人形を渡した。

 

「ほほーう、これはまた……。かなり複雑な術式だね。でもその分オルガマリー所長の魂は少しの劣化もなく完璧に移し替えてある。うん、これならオルガマリー所長の蘇生も簡単だろう。それにしてもよくこんなものを持ってたね?」

 

 >あなたはこれを持っていた理由について説明した。

 

「いざという時の身代わりになる? ……ああ、そういう事か! 確かに君の魔術と掛け合わせれば多少の怪我や呪いの類でもこの人形に移せるだろうからね。その人形なら少しの調整で魂の器となりえるか。この術式について詳しく話し合いたい所だけど今はオルガマリー所長のことについて話し合おっか」

 

「ここにはホムンクルスを作製する装置があるからオルガマリーの肉体の製作には問題は無いよね。問題はその肉体をどうするかって話なんだけど」

 

「私としては新しい肉体になるんだし、前の肉体をベースにしつつマスター適性やらレイシフト適性とかも入れた方がいいと思うんだよねぇ」

 

「ボクは元の肉体でいいんじゃないかと思うんだよね。その、彼女の性格だと特異点攻略が……。いや、まあ、ここで指揮官としてやってもらった方がいいと思うんだ。望幸くんはどう思う?」

 

 はい、ここで選択タイムです。ダ・ヴィンチちゃんの択を選ぶか、ロマニキの択を選ぶかでオルガマリー所長の今後が決まります。

 

 ダ・ヴィンチちゃんの択を選んでオルガマリー所長と一緒に特異点解決してもいいですし、ロマニキの択を選んでオルガマリー所長をカルデアに残らせるということが出来ます。

 

 ちなみにダ・ヴィンチちゃんの択を選んだ場合のメリットとして特異点攻略が安定します。但し、オルガマリー所長のストレス値はマッハです。

 

 ロマニキの択はレイシフト時の安定性が上がりますね。要は空中に放り出されることや別々に飛ばされることが少なくなります。加えてオルガマリー所長の生存率が上がります。まあ欠点と言えば戦闘に参加する人数が増えないので特異点攻略がダ・ヴィンチちゃんの択に比べ安定しないくらいです。

 

 ここではオルガマリー所長の生存率を少しでも上げておきたいので下を選びましょう。

 

 >あなたはロマニの案を推した。

 

「オッケー、それじゃあ所長の身体は元の肉体の方にしよっか」

 

 あ、そうだ(唐突)

 

 ダ・ヴィンチちゃんにお願いがあるんですけど、いいっすかぁ? 

 

 >あなたは懐からMP5の銃弾を取り出し、彼女に複製出来ないか尋ねた。

 

「任せたまえ。この天才に不可能はないからね!」

 

 ありがとナス! 

 

 それと追加でダ・ヴィンチちゃんに提案をしましょう。上手く行けば武器の改造案やら改良案やらを思いついてくれます。まあ、どっちも素材消費するんですけどね。素材の需要高い……高くない? 

 

 >あなたは武器の改造は出来ないかと聞いた。

 

「ふーむ、武器の改造かあ。君の使ってるのは確か……MP5だったかな? うん、エネミーから落とした素材を使えば改良出来ると思う。どうせなら銃弾の方も一緒に改良できるか試してみるね」

 

 やっぱダ・ヴィンチちゃんの……技術力を……最高やな! 

 

 >あなたの提案により武器の改造と銃弾の生成、改良が出来るようになった。

 

 最悪銃弾の生成だけでも良かったんですが、上手く武器の改造の方も出来るようになりましたね。ついでに銃弾の改良が来たのもでかいです。

 

 と言うわけでちょっとした解説です。

 

 エネミーからドロップする素材とQPをダ・ヴィンチちゃんに持っていけば、武器を改造して強くしてくれます。DPSも上がるので素材が余ったらドンドン持って行って強くしましょう! 

 

 そして銃弾の生成、改良ですが生成はQPのみで出来ます。改良の方は素材とQPですね。改良弾をここで引けたのはかなり有難いですね。

 

 改良弾は既存の弾丸に追加効果を付与することが出来ます。効果量の高さは素材のレア度に直結します。金素材の効果量は結構凄いっすよ。どんな敵にでもダメージを与えることが出来ます。ええ、「どんな」でもです。ゲの字にすら攻撃が通ります。流石どんな敵もスタンさせる魔術礼装を作製したダ・ヴィンチちゃんだぜ! 誇らしくないの? 

 

 まあ、RTAでは金素材とかバンバン使う富豪プレイは出来ないんで大人しく銅素材や銀素材で戦いましょう。

 

 個人的なおすすめ改良弾としては比較的簡単に入手出来る竜の牙ですね。これは純粋に弾丸の威力が上がります。また、竜の牙1個につき30発程度生成出来るのでコスパもいいです。なので序盤ではかなりお世話になるんじゃないでしょうか。

 

 さて、最後に2人のストレスチェックをしてから立香ちゃんの方に行きましょう。

 

 ふーむ、ダ・ヴィンチちゃんのストレス値は上がってないですね。ロマニキはやっぱり少し上がってますね。念の為持ってきた甘味類を渡して減らしておきましょう。

 

 >あなたはダ・ヴィンチとロマニに和菓子を渡した。

 

「うわあ、これボクの好きなこし餡の大福じゃないか! ありがとう!」

 

「おお、これはひよこ饅頭というやつだね。中々に可愛らしいじゃないか。ありがとうね」

 

 貴重な甘味類を貰えて嬉しいダルルオ!? だからさっさとストレス値下げて♡

 

 ちなみにダ・ヴィンチちゃんにも渡したのは好感度上げです。好感度が上がれば武器の改造や弾丸の生成、改良に必要なQPや素材が減りますからね。なんで? 

 

 それじゃあ次は立香ちゃんのマイルームに移動しつつ、今回の特異点Fで入手したスキルポイントを割り振っていきましょう。

 

 振るのは基本的には置換呪術と耐久ですね。6章の『アレ』を防ぐ為にはどっちもかなり上げとかないといけませんし……。魔力は必要に応じて振り分けると言ったところですね。一般人ルートですと敏捷などに振って逃げ足を鍛えるといいですよ。

 

 因みに振り分けの比率ですが、置換呪術6、耐久4と言ったところですね。置換呪術はレベルが上がれば干渉できる範囲が広がりますので。

 

 >あなたは立香の部屋に着いた。

 

 ノックしてもしもーし。

 

 >ノックをしてみたが返事はない。

 

 よし、じゃあ入りましょうか。ノックしたし入ってもかまへんやろ。

 

 >あなたは立香の部屋に入った。

 

「フォウ!」

 

 >フォウが尻尾であなたの顔を叩いた。

 

 ホモくんと立香ちゃんは幼馴染なんでいいんですー! 

 

 >立香はベッドで横たわっている。

 >どうやら眠っているようだ。

 

「……ゃ……し……いで……」

 

 >立香は何やら魘されているように見える。

 

 うん? これはストレス値がそこそこ高い時に発生するイベントですね。このまま悪夢を見続けると立香ちゃんのストレス値が更に上がるので優しく起こしてあげましょう。

 

 >あなたは立香の手を優しく包み込む様に握って名前を呼び掛けた。

 

 おはよー!!! カンカンカン!!! 起きて!!! 朝だよ!!!! すごい朝!!!! 外が明るい!! カンカンカンカンカン!!!!! おはよ!! カンカンカン!!! 見て見て!!!! 外明るいの!!! 外!!!! 見て!! カンカンカンカンカン!! 起きて!! 早く起きて!! カンカン! 

 

「……ぅん?」

 

 >立香はあなたの呼び掛けで目が覚めたようだ。

 >しばらくの間あなたの顔を見つめていると急に抱きついてきた。

 

 ファッ!? なんだお前!? 

 

「ごめんね……ちょっとだけ、ちょっとだけでいいからこのままでいさせて」

 

 >よく見れば立香の体が震えていた。

 

 うーん、これは相当BADな夢だったようで。ストレス値もそこそこ上がってますね。ここは要望通りにしましょう。ほらほら落ち着いて、どうぞ。

 

 >あなたは震える立香の背を優しく叩き、彼女を落ち着かせる。

 >しばらく経つと立香は落ち着いたらしく震えが収まった。

 >立香はあなたから離れると恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

「えへへ、いきなりごめんね? あんまり覚えていないんだけど凄く怖い夢見ちゃって……って、なんでここに望幸がいるの!?」

 

 えぇ……今更そこに反応するのか(困惑)

 

「むぅ、幼馴染とは言え女の子の部屋なんだよー? 今度からちゃんと私が起きてる時に入ってきてよね」

 

 おう、考えてやるよ。(考えるとは言ってない)

 

 さて早速ですが、立香ちゃんのストレスチェックのお時間です。まあ、初めてのレイシフトかつ殺されかけたというのもあって高かったのに加えて悪夢イベのせいで更に上がりましたね。一応先程の行動のおかげで多少は下がってますが、それでも高いです。

 

 なので立香ちゃんの好きなお菓子を上げましょう。

 

 >あなたは立香にお腹が減っていないか尋ねた。

 

「お腹? そう言われてみればお腹が減ったような……」

 

 おう、じゃあ(胃の中に)ぶち込んでやるぜ! 

 

 >あなたは立香にお菓子を渡した。

 

「あ、これ私の好きなお菓子だ。よく持ってたね?」

 

 沢山持ってきてるから遠慮なく食べていいっすよ。

 

 さて、立香ちゃんがお菓子食べてるうちに特異点Fからの帰還時に立香ちゃん強化フラグ立っていたので、それについてお話を。

 

 これは所謂原作主人公強化イベントです。特異点F攻略後から確率で発生するんですが、発生した場合立香ちゃんが魔術や武術について興味を示します。ちなみに確率は特異点が進むにつれ上がっていきます。特異点F後はそこそこ発生確率は低いはずなのですが、運が良かったですね。

 

 まあ、あくまで立香ちゃんは一般人なので魔術回路はゴミカスですが、少しでも覚えてもらうと多少の役割分担ができます。

 

 個人的な育成ですがガンドと攻撃強化魔術の訓練を重点的にしてもらいましょう。ガンドの訓練は命中率が上がり、攻撃強化魔術は倍率が上がります。どちらも有能な魔術なのでそのふたつをメインにガンガン上げていきましょう。特にガンドは立香ちゃんの生存率にも関わってくるので最優先事項です。

 

 おっと、立香ちゃんがお菓子を食べ終わりましたね。それじゃあ早速魔術の訓練についてお話だけしておきましょう。訓練自体は後でやります。だってこの後立香ちゃんを呼びにダ・ヴィンチちゃんがやってきますからね。

 

 >あなたは立香に魔術の訓練についての話をした。

 

「魔術の訓練だよね? うん、分かった。頑張って覚えてみせるよ。だからよろしくね、望幸」

 

 しょうがねぇなぁ(悟空)バッチェ仕込んでやりますよ。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




FGORTAが増えてるヤッター!

それはそうと古戦場が始まったので更新頻度が落ちます。許して!お兄さん許して!

じゃあそういうわけなんで失踪しますね!


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交流

今のグラブルは7:00~24:00まで古戦場、24:00~7:00までマルチ等という頭のおかしいスケジュールになってしまった……。これも古戦場期間に来た半額のせいなんだ……!

初投稿です。


 グランドオーダーから始まるRTAはぁじまぁるよー! 

 

 魔術の訓練の話を終えた後、ダ・ヴィンチちゃんに呼ばれ2人仲良く管制室にGOしました。その後ロマニから今後の事についてお話されます。

 

 まあ、要はこれから一緒に人理修復していこうね! 拒否権? 騙して悪いが仕事なんでな。働いてもらおう的な感じです。

 

 事が事なので仕方ないんですけどね。

 

 とりあえず話を聞くだけ聞いたので後はオルレアンが発見されるまで待ちます。とは言え実質最初の特異点に値する場所なので直ぐに見つかると思いますが、それでも一週間はかかるでしょう。なのでその間に立香ちゃんの訓練並びに武器の改造、サーヴァント召喚。後は本当にやりたくないですけど、サーヴァントとの交流ですね。

 

 ビースト連中との交流とか心こわるる^〜。

 

 とりあえずは立香ちゃんの戦力増強のためにサーヴァント召喚から始めましょう。

 

 立香ちゃんに引いてもらいたいのは防御に特化したサーヴァントか立香ちゃんに魔術を教えられるサーヴァントなどですねー。

 

 そういう意味ではレオニダス王とかメディアとかがいいですね! 後は此方と離れて飛ばされた時用に槍ニキや守護者連中がほしいです。私もそっちが欲しかった……。

 

 攻撃性能に関していえば、ホモくんが召喚した連中で事足りるというか過剰火力が過ぎるので耐久できる人達が尚更欲しいです。

 

 ちなみにホモくんが引くのはフラグ的に黒王と見て間違いないです。もっと火力が上がるんですがそれは……。

 

 石自体はクリア報酬で4騎分貰ってるので立香ちゃんには3騎、黒王確定ガチャになった上にビースト連中がいるホモくんには1騎で十分でしょう。

 

 さて、一応ダ・ヴィンチちゃんに召喚ルームの場所を聞いてから行きましょう。場所自体は知ってますが、こういうフラグはしっかり立てておかないといつ変なフラグが立つか分かったものじゃありませんからね。

 

 >あなたはここにはサーヴァントの召喚ができる場所があるのかを聞いた。

 

「勿論だとも。サーヴァントを召喚する部屋はあるからそこに今から案内しよう」

 

 >あなたと立香はダ・ヴィンチに連れられ召喚ルームへと行った。

 

「ここが召喚する部屋、通称守護英霊召喚システム・フェイト。特異点で縁を結んだ英霊か、もしくは君達自身に何らかの縁があればその呼び掛けに応じて来てくれるだろうね」

 

 はい、ガチャ部屋ですね。希望と絶望のごった煮部屋だぁ……。

 

 聖晶石については移動中にダ・ヴィンチちゃんから聞いてあるので立香ちゃんにささっと引いてもらいましょう。

 

 さあ、見せてくれ。主人公の運命力というものを! 

 

 >立香は召喚サークルの前に立ち、9つの聖晶石を投げ入れた。

 >召喚サークルの光帯が回転し、眩い光を放つ。

 >光帯が収束し誰かが現れた。

 

「よう。サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。この間は最後まで守れなくて悪かったな。ランサーとして召喚されたからにゃあ、今度は守りきってみせるぜ」

 

 槍ニキじゃないですかー! これは大当たりですね、間違いない。槍ニキは前に性能面で語ったのでそこは割愛しますが、自前の魔力が乏しい立香ちゃんにとっては大当たりのサーヴァントです。あと、特異点攻略は基本的にはサバイバル生活なのでサバイバル技能が高い槍ニキは凄い活躍をしてくれます。

 

 >続けて召喚ルームサークルの中からもう一人現れた。

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した。おや、拝みたくもない面をしたランサーもいるのかね」

 

「は、相変わらずの皮肉屋じゃねえか。それはこっちのセリフっていうもんだぜ」

 

 続けて当たりとは……。平時においての槍ニキとの相性は悪いですが、戦いにおいては普通に好相性なのでグッドです。その上エミヤニキは料理スキル持ちなので様々な食材から美味い飯を作ってくれるため、ストレス管理にも役に立ってくれます。いーなー! 

 

 >続けて召喚ルームサークルの中からもう一人現れた。

 

「サーヴァント、アーチャー。ケイローン、参上しました。我が知識が少しは役立てばいいのですが……。ともあれよろしくお願いします。あなたのため、力を尽くしましょう」

 

 げえっ!? 先生!!! 

 

 スパルタ鬼教師じゃないですかー! いや、当たりサーヴァントなんですよ? 武術も魔術も教えを乞えば分かりやすく教えてくれますし。ただちょっとスパルタが過ぎると言うか……。

 

 というか、どういう縁で立香ちゃんに呼ばれたんですかこの人。エミヤニキは守護者としての特性から考えると分かりますが、先生と立香ちゃん自体には縁が無いはずなんですよねぇ……。

 

 >ケイローンはあなたを訝しげな目で見つめている。

 

「何処かで……いえ、気のせいですね。しかし、どうにも私の霊基(からだ)が彼のことを……

 

 な、なんだよ。こっちをチラチラ見やがって。

 

「えっと、藤丸立香です。今人理が焼却されてしまって助けが必要なんです。だからどうか私達を助けてください!」

 

 >立香はそう言って深く頭を下げた。

 

「おう、大船に乗ったつもりで任せな!」

 

「無論だとも。そのために私はここに来たのだからね」

 

「ええ、勿論です。あなたを導いてみせましょう」

 

 はい、これで立香ちゃんと契約を結ぶことが出来ましたね。とりあえず立香ちゃんの訓練ですが、槍ニキと先生に体術の訓練をしてもらいましょう。魔術に関してはホモくんがメインで進めつつ、分からないことは先生に聞くといった感じでやりましょうか。

 

 エミヤニキは台所の管理を任せましょう。ホモくんがかき集めてきた食材などもまとめて押し付けます。

 

 それじゃあ次はホモくんの番ですね。

 

 >あなたは召喚サークルの前に立ち、聖晶石を3つ投げ入れた。

 >召喚サークルの光帯が回転し、眩い光を放つ。

 >光帯が収束し誰かが現れた。

 

 あれは誰だ!? 腹ペコ王か!? ジャンクフード狂か!? もちろん──

 

「ふん、漸く私を呼んだか。まったく、待ちくたびれたぞ。……それにしてもあの馬鹿共め。私の召喚に割り込もうとしてくるとは気が抜けん

 

 知 っ て た。

 

 まあ、フラグ的に見て確定ガチャだったしね。しかしまあ、予想していた通りアルトリア・オルタとはなぁ。ホモくんの火力がおかしい事になってますね。

 

 じゃあ後は各自サーヴァントとの交流タイムのお時間です。コミュ力お化けの立香ちゃんとしっかり絆を育んでもらいましょう。それじゃ、終わりっ! 閉廷! 解散! 

 

 >あなたはアルトリア・オルタを連れて召喚ルームから出ていった。

 

「……すみません、御二方少し聞きたいことがあるのですが──」

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 さて、サーヴァントとの交流の為にマイルームの目の前に来たわけですが……。なんでしょうね、こう嫌な予感がビンビンします。

 

 とは言え、いつまでも入らないわけにはいきません。というわけでゴーゴー! 

 

 >あなたはマイルームの扉を開けた。

 >そこには玉藻の前、キアラ、カーマの3人が各々好きな場所に座っていた。

 >あなたはマイルームの扉を閉めた。

 

 そっ閉じですよこんなん。マイルームとは心休まる場所じゃないんですかね……。なんであの3人教えてもいないのにマイルームに来れてるんでしょう。というか、交流自体は別個にするつもりだったんですけどねえ! 

 

 ビースト連中を同時にコミュするとか頭壊れちゃーう。

 

「何をしておるご主人様よ。はよう入らぬか」

 

 >あなたはマイルームから顔を出した玉藻の前に引っ張られてマイルームの中へと入った。

 

 強制連行やめちくり〜。

 

 >あなたがマイルームの中に入った途端、カーマとキアラからじっと見つめられた。

 

「待ってましたよ……って、黒い王様も来たんですか」

 

「ふん、当たり前だ。貴様らにマスターを任せていたらどうなるか分かったものではないからな」

 

「あら、随分な物言いですね」

 

「ささ、ご主人様よ。色々とあって疲れたであろう? 妾の尾に包まれてみるが良い。心地が良いぞ?」

 

「させるか」

 

 >あなたはアルトリア・オルタに抱きしめられるような形で引っ張られた。

 

「……あまり調子に乗っていると焼いてしまうぞ黒蜥蜴」

 

「は、やってみろ化け狐」

 

 ヤメロォ! (建前)ヤメロォ! (本音)

 

 フォウくんが災厄になっちゃうダルルォ!? 

 

 そうです、実を言うとサーヴァント同士でのいがみ合いでもフォウくんのカウンターは溜まります。なのでそこは特に気をつけないと行けません。軽い罵倒程度ならカウンターは溜まらないんですが、ガチ罵倒だと普通に溜まるので……。

 

 フォウくん、カウンターは溜まっちゃいましたか……? (震え声)

 

「フォーウ!」

 

 ……ヨシ! (現場猫)

 

 今のは軽い罵倒と判定されたようです。いやー良かった良かった。

 

 それにしてもこれだからビースト連中のフラグ管理はめんどくさいんですよね。元ビースト勢はステータスが異常に高いかわりに他サーヴァントと衝突する確率が上がります。先程のようなことなど日常茶飯事ですし、悪ければフォウくんのカウンターを溜めるレベルのことが発生します。

 

 シミュレーターが解放されたらそこで戦うなりなんなりさせればフォウくんのカウンターを溜めずに比較的安全に運用できるんですけど、現状、シミュレーターは解放されてないのでホモくんには仲介役になってもらう必要があります。運が悪いと宝具が飛んでくるので気をつけようね! (2敗)

 

 まぁ他にも気をつけることはあるのですが、それはまた今度お話ししましょう。

 

 では早速コミュ兼ストレスチェックを始めましょう。

 

 この時聞いておきたいのが好きなものと嫌いなものですね。英霊と言っても好みは千差万別です。なので好みを把握しておけばストレス値の管理がしやすくなります。好きなものでストレス値を下げたり好感度を上げたり、また嫌いなものを使って敢えて好感度を下げたりストレス値を上げたりなどの調整ができます。

 

 ただサーヴァントによってはガチの地雷があるのでそれには気をつけよう! (5敗)

 

 一応把握してはいますが、念の為にフラグ管理も含めて聞いておきます。

 

 >あなたはサーヴァント達に好きなものや嫌いなものはあるか聞いた。

 

「好きなものは富、権力、良き魂を持つ者かの。嫌いなものは自分自身の至らなさじゃな」

 

 そんなKBSトリオみたいなノリで言われても……。というか、何一つ役に立てる情報くれなかったですねこの玉藻。そんなもの渡せるわけねーだろ! 

 

「好きなものと嫌いなものですかぁ? ふふっ、本当は知ってるくせに。なので私は教えません」

 

(知ら)ないです。というのは冗談で好きなものは甘味類で嫌いなものはシヴァ系列の人達でしょ。調べましたからね、知ってますよ。まあ、しかしカーマは相変わらず捻くれてますね。

 

「好きなものですか……もちろん、皆様人間でございます。あ、おはぎも大好きです。後は童話でしょうか。とは言え私もいい大人なのでいつまでも好きという訳ではありませんよ。嫌いなものは素直ではない男性が大変気に入りません。特に自分自身も騙しきった上に勝手にいなくなるような人は大っ嫌いです」

 

 ははあ、つまりキアラにはおはぎをあげれば良さそうですね。後者に関しては素直なホモくんにとって無問題です。じゃけんキアラにはおはぎをあげましょうね〜。

 

「好きなものは、強いものだ。身体でも心でも構わない。反対に嫌いなものは弱いものだな。身体はともかく心が弱いものは見ていて辛い。……ああ、だが嫌いという程でもないが強すぎるのもどうかと思うようにはなったな」

 

 こう、なんでこう。あげられないものばっかり言ってくるんでしょうねこの人達。好感度調整が出来ないって言ってんだろ! いい加減にしろ! 

 

 まあ、アルトリア・オルタはジャンクフードでもあげておけばいいでしょう。あれは気に入っているようですし。

 

 とりあえずは玉藻には高級な嗜好品。カーマは甘味類。キアラはおはぎ。アルトリア・オルタはジャンクフードをあげれば良いと言ったところでしょうか。

 

 嫌いなものに関してはアルトリア・オルタは知っているんですが、他3人が微妙ですね。いざと言う時に高まりすぎた好感度をわざと下げることが出来ないのは辛い……辛くない? 

 

 ま、好みについては知れたので良しとしましょう。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




FGORTAもかなり増えてきましたし、1人くらい失踪してもバレへんか……。


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準備

古戦場は終わった!もういない!だけど半額はまだ終わらねえ!

必要な事書いてたら多くなりました。分けようかとも思いましたが、さっさと次の特異点に行きたいので無理やり圧縮しました。許して。

この話を投稿するのは初めてなので初投稿です。


 幼馴染強化イベントから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 やーこの1週間色々なことがありましたね。

 

 やたらホモくんにパンクラチオンをやりませんかと笑顔で誘ってくる先生にことある事に模擬戦しようぜと肩を組んでくる槍ニキとかカルデアに残ってる完全栄養食を消費してたら物凄い目でこっちを睨んでくるエミヤニキとか。なんだお前らホモか? 

 

 まあアレでしたね。先生と槍ニキがあまりにも誘ってきたのでタイムを考慮すると1回は受けた方がいいと思いまして受けたんですけど、悪化しましたね。なんでさ!? 

 

 今は目が笑ってない笑顔でパンクラチオンしましょうと言ってくる先生に何かすごい複雑そうな顔しつつも前よりも多く、そしてしつこく模擬戦に誘ってくる槍ニキ。槍ニキがあまりにもしつこかったんでビースト連中けしかけましたね。当たり前だよなあ? こっちにも次の特異点に向けての用意とかあるんですー! 

 

 ちなみにホモくんが消費してたカルデアの完全栄養食はエミヤニキに全部取り上げられました。もったいない……。

 

 ちなみに立香ちゃんの育成でしたが、1週間だけとは言え大英雄に先生という豪華すぎるメンバーに育成されてるのでメキメキと実力が上がってます。少なくともサーヴァント戦で瞬殺はされないくらいには強くなってます。生存率が大幅アップでうまあじですね。

 

 後、先生が時折開催するケイローン塾イベントは凄くうまあじです。幸運除いた全ステが成長するので開催されてたら積極的に参加しましょう。ちなみにホモくんは参加する度に先生にパンクラチオンされてました。ヤメロッテ! 

 

 魔術の方ですが、ガンドの命中率をメインに鍛えておきました。お陰様でどんな敵にも百発百中……とはいきませんが動いている存在にもそこそこの確率で当てられるようになりました。 や っ た ぜ ! 

 

 ちなみに立香ちゃん好感度はそこそこ上がりつつ、ストレス値はしっかりニュートラル状態まで下げ切りました。ただ、時々ストレス値が上がってる状態の立香ちゃんがいるんですよね。なんで? 

 

 一応その都度ストレス値を下げておきましたので今のところ変なデバフはかかっていません。

 

 次にホモくんのサーヴァントに関してですが、此方も好感度調整やらストレス調整などで色々と手こずりましたね。

 

 好きなんだろ? こういうのがさぁ! みたいな感じで好物を上げたら好感度は上がりましたが一緒にストレス値も上がりました。なんで? 

 

 好物を上げたのにストレス値が上がる意味がわからないですねクォレハ……。この死にゲーついにシステムもイカレ始めてるんですかね。

 

 まあ、上がったのは最初の1回だけでしたし、多分バグか何かだったんでしょう。

 

 また、ホモくん育成計画のうちの一つとしてダキニ天法を扱えるキアラ、呪術に関しての玉藻に訓練をつけてもらうことで効率よく置換呪術のレベル上げを行いました。

 

 次にカーマとアルトリア・オルタに関してですが、この二人には次の特異点でやってもらいたいことがあるのでそのための準備をしておきました。カーマに関してはワイバーン、アルトリア・オルタに関してはファヴニール関連ですね。

 

 ジークフリートの幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)を確実に当てるためにもアルトリア・オルタの仕事は特に重要です。

 

 それからカルデア職員のストレス値の方ですが、これはホモくんが事前に大量にかき集めていた食材達と料理スキルを持っているエミヤニキのおかげで大幅に低下させることが出来ました。

 

 何の用意もしてなかったらまともな食材が供給できる頃合までストレス値がほぼ下がらない完全栄養食しかないので職員のストレス管理が面倒臭いことになっていましたね。そのため立香ちゃんがエミヤニキ引いてくれたことは本当に感謝しかないっすね。

 

 流石主人公! えらい! 

 

 また次の特異点に向けての準備として刻印入り魔石やらお手軽置換人形やら弾丸生成やらと各種の仕込みを施しました。

 

 だいたいこんな所でしょうか。

 

 後はロマニキとダ・ヴィンチちゃんが特異点を発見してくれればすぐにでも行ける状態です。とは言えまだ報告に上がっていないので今日も通常通りのルーティンでいきます。

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 まずは立香ちゃんのところに行きましょう。この時間だとまだオフトゥンの中でもぞもぞしているので叩き起こしに行きます。

 

 >あなたは立香の部屋の前に着いた。

 

 この時、高橋名人ばりの連打をすることで立香ちゃんが起きる確率が大幅に上がります。

 

 >あなたは立香の部屋の扉をノックした。

 >返事はないようだ。

 

 ……ヨシ! (現場猫)

 

 じゃあ失礼するわよ〜。

 

 >あなたは立香の部屋に入り込んだ。

 >立香は布団を頭まで被って眠っているように見える。

 

 太鼓とかあったら真横で叩いて強制的に起こすことができるんですけどね。持ってないんで普通に揺さぶって起こします。

 

 りーつーかーちゃーん! 起きて起きてー! 

 

 >あなたは立香を揺さぶった。

 

「うぅ〜もう起きないと駄目なの……?」

 

 駄目です(ヤーマン)

 

 時間は有限ですからね。最大限有効に使いませんと。

 

 >立香は眠そうにしながらもベッドから起き上がった。

 

「おはよ望幸……。それじゃあ着替えるから外で待ってて」

 

 あい〜。

 

 >あなたは立香の部屋から出ていった。

 

 さてさてこの時間帯ですとちょうどナスビちゃんが来る頃ですね。ナスビちゃんとのコミュは耐久に補正がかかるのでちゃんとやっておきます。何せチャートにちゃーと書いてますので(激ウマギャグ)

 

 >あなたの前にマシュが現れた。

 

「おはようございます、望幸さん。先輩を起こしに来たのですか?」

 

 そっすよ。ちょうど今起こしたところなんで後ちょっと待ってくださいねー。

 

「はい! ……あの、先輩のことについてまた教えて貰いませんか?」

 

 毎回聞いてきますねこのナスビちゃん。まあ別にいいですけども。

 

 >あなたは立香について語った。

 

「なるほど、先輩はバレー部だったんですね! ……でもその、バレーというのは一体どういうものなんでしょうか?」

 

 この頃のナスビちゃんはあんまり物を知らないのですっごい無垢な子です。そんな子に変なことを吹き込むのはやめようね! (良心)

 

「フォウ! キャーウ!」

 

「きゃっ!」

 

 >どこからともなく現れたフォウがあなたの顔に奇襲をしかけてきた。

 

 ぶえーっ! なんだこの獣!? 人の顔に毎回奇襲をしかけてきやがってよぉ! フェイスハガーかなんかかお前!? 

 

「フォウ!」

 

 >フォウはいい仕事をしたと言わんばかりに鼻を鳴らし、あなたの肩で寛ぎ始めた。

 

 本当にコイツふてぶてしいヤツだで。

 

 まあ、人の顔に毎回奇襲を仕掛ける獣は置いといてナスビちゃんを立香ちゃんとのコミュを深めさせる為に誘導しましょう。

 

 >あなたは自分に聞くよりバレーについて良く知っている立香に聞いた方がいいとマシュに言った。

 

「それもそうですね! 今度先輩に聞いてみます!」

 

 >そんなことを話していると扉が開き、中から立香が現れた。

 

「おはようマシュ。二人で何話してたの?」

 

「おはようございます先輩。えっと、先輩のことについて色々と望幸さんから伺っていました」

 

「え、私の事ー? 望幸、変なこと話してないよね?」

 

 やだなあ、そんなこと話すわけないじゃないですか。話したところで何の意味もありませんし。それよりさっさと朝食をとって訓練しましょうね〜。

 

 >あなたは立香の質問に首を横に振り、二人とともに食堂の方へと向かった。

 >食堂に着くと既にカルデアの職員達の何名かが食事をとっていた。

 >彼らはあなた達に気づくと笑顔で手を振ってきた。

 

「やあ、おはよう三人とも。これから朝食かい?」

 

「そうですよ。今日はどんなご飯なんですか?」

 

「焼き鮭定食だよ。これがまたすごく美味しいんだ」

 

「そうそう、この絶妙な塩加減がまた良いのよ。朝なのにすんなり食べれるのよ」

 

 >あなた達の周りに職員が集まると笑顔で朝食のことについて話している。

 

「それにしてもたまたま別の場所に保管されていた食材が大量にあって良かったよな。食料庫にあった食材は爆発のせいでほとんどダメになってたし、最悪あのクソッタレな味の完全栄養食で過ごさなきゃいけないと思ってたから、こうして美味しいご飯を食べられるのは本当に嬉しいことだよな」

 

「そうねえ……私もあの完全栄養食は御免こうむりたいわ」

 

「そんなにまずいんですか?」

 

 >立香は酷評する職員たちの様子から気になったらしく質問した。

 

「不味いな。味を度外視して作られた保存食だから本当に味が酷いんだ。イギリスのマーマイトの方が100倍美味いぜ」

 

「ちょっと、マーマイトとアレを比べるなんてマーマイトに失礼じゃない」

 

「おっと、それもそうだな。それじゃあ俺達はそろそろ行くよ。三人もしっかり朝食取るんだぞ」

 

「それじゃあね三人とも」

 

 >職員たちは手を振るとどこかへ去っていった。

 

「完全栄養食ってそんなに不味いんだね。マシュは食べたことある?」

 

「いえ、私もそれは食べたことはないです。ただ聞いた話によるとこれを食べるくらいなら石を齧ってる方がマシという噂は聞きました」

 

 >そんなことを話していると厨房の中から男が現れた。

 

「おや、マスターにマシュ、それに望幸ではないかね。今日の朝食は焼き鮭定食だ。小鉢は3種類の中から選んでくれ」

 

 >厨房から出てきたのはエプロンを身に纏ったエミヤだった。

 

 オッスオッス、エミヤニキ! 相変わらず母親みたいなことしてんねえ! そんなんだからママとか言われるんじゃないすっかね(辛辣)

 

「お新香、冷奴、ポテトサラダかあ。それじゃあ私はお新香にしようかな。マシュと望幸は何にするの?」

 

「えっと、それじゃあ私はポテトサラダで」

 

 ホモくんは完全栄養食で! ぶっちゃけホモくんに対して現状貴重な食材とか振る舞う必要ないんで。完全栄養食でいいです。ストレス値もないしね。というわけでエミヤニキ、完全栄養食を──

 

「ああ、そうだ。言っておくがこのメニュー以外は受け付ける気はないのでね。それからきちんと選んでくれ」

 

 >あなたは妙に怖い笑みを浮かべたエミヤにそう言われてしまった。

 

 ダメみたいですね……(諦観)

 

 仕方ないので冷奴でオナシャス! 

 

「ふむ、了解した。では少々待っててくれ」

 

 >エミヤはそう言うと厨房の中へと入っていった。

 

 さて待ち時間の間に立香ちゃん達とのコミュをしっかりして──うげ、先生と槍ニキが来てますね。すごい逃げたい。

 

 >あなた達の前にケイローンとクーフーリンが現れた。

 

「おはようございますマスター。それにマシュに望幸も」

 

「おう、おはようさん。今日の飯はなんだったんだ?」

 

「焼き鮭定食だって」

 

「へえ、焼き鮭か。いいねぇ」

 

 >ケイローンとクーフーリンはエミヤに定食を頼みにいった。

 >その後戻ってきたケイローン達とあなた達は他愛のない話をしながら適当な席へとついた。

 

「マスター、朝食の後に休息を取ってから武術の訓練を致しますがよろしかったでしょうか?」

 

「うん、今日もよろしくねケイローン先生、クーフーリン」

 

「おう、任せな」

 

「「ところで──」」

 

 嫌です(先手必勝)

 

「望幸も一緒にどうですか? 特にパンクラチオンでもまたやってみませんか?」

 

「坊主もどうだ? また模擬戦でもやろうじゃねえか」

 

 絶対嫌です。ホモくんにだってやるべき事はあるんです。というかアンタらと戦うと時間をすごい掛けながら戦う必要があるから絶対に嫌です。

 

 まあ、普通に拒否っても引かなさそうなんですよねこの2人……。どうやって逃げましょうかね。

 

「申し訳ございませんが、朝食後、マスターは私達と訓練を致しますのでまたの機会に誘ってくださいませんか?」

 

「そういうこと故、諦めると良い。それともまた焼かれてみるか? のう、青き槍兵よ」

 

 >いつの間にか現れたキアラと玉藻の前が2人の誘いを断った。

 

「ちっ、わーったよ。流石にまた焼かれるのは勘弁だ」

 

「ふむ、でしたらその訓練が終わった後などは──」

 

「その後は私達とやるべき事があるんですよねぇ。というわけで諦めて貰えますかぁ?」

 

「そういうことだ。マスターとは少し話し合う事がある。故に貴様らの訓練は後日にしろ」

 

 >今度はあなたの背後からカーマとアルトリア・オルタが現れた。

 

「なるほど、分かりました。そういうことでしたらまた後日ということにいたしましょう」

 

 お、良かった。すんなり引いてくれましたね。でもホモくんとそんな約束した覚えはないんですけどねえ? ま、ええわ。許したる(寛大)

 

 >そんなことを話しているとエミヤが料理を持ってきたようだ。

 

「待たせたね、先ずはマスター達の朝食だ。君たちの分はもう少し待っててくれ」

 

 >あなた達の目の前に置かれた焼き鮭定食はほのかに湯気が立ち昇り、食欲を刺激する香ばしい香りが漂っている。

 

 おーええやん。美味しそうちゃう? 

 

「おーすごく美味しそうだね。あ、でもどうしようか。みんなの分が来るまで待とうか?」

 

「いえ、先に食べてもらって構いませんよ」

 

「そう? それじゃあ先にいただくね」

 

 >あなた達は朝食を取り始めた。

 >その際、あなたは横からの視線を感じた。

 

 この視線間違いなく腹ペコ王だな! やっぱ食べたいんすねこのいやしんぼめ。たべりゅ? 

 

 >あなたはこちらを見ていたアルトリア・オルタに食べるかと聞いた。

 

「……いや、いい。それはお前が食うといい」

 

 ファッ!? ウッソだろお前。あの腹ペコ王が食わないとかバグか何かですか? ……まあ、考えても仕方ありませんし、見なかったことにしましょう。きっとバグだよバグ。

 

 >あなた達が食事を取っていると誰かがこちらに向かって走ってきた。

 >こちらに来たのはどうやらロマニだったようで走ったせいか息を切らせていた。

 

「はーっ……はーっ……。良かったここにいたんだね。食事中のところに悪いんだけど今すぐ管制室に来てもらえるかな?」

 

「ドクターそんなに焦ってどうかしたの?」

 

 おっ、これはもしかして……

 

「新しい特異点が見つかったんだ!」

 

 やりますねえ! ようやく見つけてくれましたか。これで漸くストーリーを進められるってもんですよ。

 

 というわけでキリがいいので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある城の中で地獄の業火と想起させるほどの炎が轟々と燃え盛り、その中央には全身が黒で染まった女性が立っていた。その近くにいたであろう辛うじて男性だと分かる人間はもはや炭と化していた。

 

「そう、そうなのね。あの馬鹿はまたやり直したのね。やめろと何度も言ったのにまたやり直して……」

 

 彼女は歯が砕けんばかりに噛み締める。その顔は憤怒に染まっており、最早憎悪とも言えるような表情になっていた。

 

「ああ、本当に憎いわ。憎くて憎くて堪らない。彼奴にあんな役目を押し付けた世界が。彼奴にあんな末路を迎えさせた魔術師共が。そして、彼奴を助けてやることが出来ない私自身さえも!」

 

 その憎悪とともに握り潰されんばかりに強く握り締めた旗のようなものの石突を地面に力強く叩きつける。するとまるで彼女の憎悪に呼応したかの如く周囲の炎がより一層強く燃え盛った。

 

 彼女を中心に辺り一帯は焼き尽くされ、あらゆるものが灰燼へと帰された。

 

「……私は彼奴と約束したもの。一緒に地獄に落ちるって。なのに1人で地獄を彷徨っている上に言うことも聞かなかった大嘘つきにはキツいお仕置きが必要でしょう」

 

 彼女はそう言って身の丈以上の旗を勢いよく振るう。すると今まで轟轟と燃え盛っていた炎が嘘のように消失した。

 

「覚悟しなさい、馬鹿マスター。魔女の恐ろしさをもう一度その身に刻んであげるわ」




魔女って誰なんでしょうね(すっとぼけ)

それにしてもFGORTAすっごい増えてますね。そして殆どの走者がロクなサーヴァント引いてなくて素直に草です。

それじゃあいい感じにRTA走者も増えてきましたし、私はここで失踪ということで……


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オルレアン編
オルレアンへのレイシフト


第1特異点が始まったので初投稿です。


 オルレアンから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー、ロマニキから特異点が発生したとの報告を貰いましたので一緒に管制室に向かうところですが、その前に準備をしてから行きましょう。

 

 あと、念の為に立香ちゃんに印を刻んだ石を渡しておきます。もしもバラバラに飛ばされたとしてもそれさえあればホモくんは立香ちゃんの元にすっ飛んでいけるので。

 

 管制室に着きましたら今は所長が不在なのでロマニキがブリーフィングをします。

 

「それでは早速ブリーフィングを開始しようか」

 

 >あなた達が管制室に全員揃ったのを見てロマニはブリーフィングを始めた。

 

「まずは……そうだね。キミたちにやって貰いたいことを改めて説明しようか」

 

 ここから先は倍速です。もう聞き飽きてるんだよなあ……。知らない人のためにざっくりと説明すると

 

 1つ、作戦の基本大原則である特異点の調査及び修正。

 2つ、聖杯の調査。

 

 以上、二点が主目的となります。

 

 またサブミッションとして霊脈を探し出し、召喚サークルの作成をすることですね。こちらに関しては補給物資の転送に関わるのでレイシフトしたら真っ先にやりましょう。

 

 ちなみにやり方は霊脈がある場所にナスビちゃんの宝具をセットすれば工事完了です。

 

 また、召喚サークルを設置することによって新しくサーヴァントを召喚できます。この時召喚されるのはその時代や場所に近しいサーヴァントがほとんどです。

 

 手が足りなければ現地で召喚しろということですね。

 

 それから、レイシフト時に連れて行くことの出来るサーヴァントは復旧作業を行っているカルデアの現状からすると1人までです。なので新しく増やしたい場合は召喚サークルを設置することでカルデアのサーヴァントを呼び寄せることができます。ちなみに復旧が完了すれば最大で6人まで連れていくことができます。アプリ版と同じですね。

 

 一応令呪を使えば召喚サークルを用いずとも呼び寄せることは出来ますが、出来れば令呪はブースト用などで使いたいので基本は召喚サークルを設置してから呼びましょう。

 

 今回は1人までですので立香ちゃんのストレス値のフォローなどから考えるとエミヤニキが良さそうですね。トレース、オォン! でいざと言う時には必要な物資を作る事も出来ますしね。

 

 それからベースキャンプの作成ですね。

 

 此方は立香ちゃんやナスビちゃん、その他サーヴァントの為ですね。特異点の中でそこそこ過ごしますので当然雨風を防げる場所が必要です。また、ベースキャンプにはストレス値を低下させたり、HPや魔力を回復させる効果もあります。

 

 これらの効果量はベースキャンプの質が高ければ高いほど上昇致します。

 

 まあ簡単に言えば原始的な洞穴生活するより文明的な家を拠点とした方がリラックス出来ると考えていただければオッケーです。

 

「見つかってそうそう申し訳ないが、ボクらも余裕はない。早速レイシフトの準備をするが、用意はいいかい?」

 

 この時、何か必要なものがあった場合などは準備をさせてくれとロマニキに言えば少しは待ってくれますので、準備がまだ終わってない人はしっかり準備をしてから行きましょう。

 

 ホモくんは準備は済んでるのでこのまま行きます。

 

「今回は望幸くんと立香ちゃん達用のコフィンも用意してある。レイシフトは安全、かつ迅速にできるはずだ」

 

 こんなことを言ってますけど大嘘ですからね。普通に空に叩き出されたりすることもあるんで過信するのはやめておきましょう。スパロボの90%並に信用できません。酷い時には敵の親玉の目の前に出される時もあります。ふざけんな! (声だけ迫真)

 

「特異点は今のところ合計で7つ観測されたが、今回はその中でもっとも揺らぎの小さな時代を選んだ。向こうに着いたら、此方は連絡しかできない」

 

 うっす。

 

「いいかい? 繰り返すけど、まずはベースキャンプになる霊脈を探すこと。その時代に対応してからやるべきことをやるんだぞ。では──健闘を祈る、望幸くん、立香ちゃん」

 

 >あなた達は用意されたコフィンに向かった。

 

「ねえ、望幸。頑張って人理を修復して私達の世界を取り戻そうね!」

 

 当たり前だよなあ? じゃけん、さっさと世界を救いましょうね〜。

 

 >あなたは立香の言葉に深く頷き、用意されたコフィンの中に入り込んだ。

 

『アンサモンプログラムスタート。霊子変換を開始します。レイシフト開始まであと3、2、1……』

 

 ま、最初の特異点ですし運悪く空に叩き出されても敵の親玉の目の前は流石にないでしょう。なのであっちに着いたら直ぐにベースキャンプを作って快適な生活を送れるようにしておきましょう。

 

『全工程完了。グランドオーダー実証を開始します』

 

 それじゃあオルレアンにイクゾ-! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 ……スゥゥゥゥ……。

 

 えー、オルレアンにぃ……レイシフト……したんですけどぉ。

 

「あら、せっかくの再会なのだから何か言ったらどうかしら馬鹿マスター?」

 

 >あなたの目の前で、冷酷な笑みを浮かべた黒い女性があなたの喉元に剣を突きつけている。

 

 なんか目の前にオルレアンのボスがいるんですよねえ……。しかも何かクラスが復讐者だし。なんで?

 

 ふざけんな! (声だけ迫真)

 

 ランダムリスポにも程があるダルルォ!? しかもまたホモくんだけですよ! なんかホモくんに恨みでもあるんですか!? 

 

 仕方がありません。こんな初っ端から令呪を切る羽目になるとか想定していませんでしたが、令呪を使って適当なサーヴァントを呼ぶ必要があります。

 

 ビースト連中全員呼んで邪ンヌをここで倒してもいいんですが、それだと時間神殿で大幅なロスが確定するためこの状態から逃げ切る必要があります。なぜなら魔神柱戦で特異点にて絆を結んだサーヴァントがいなければカルデア陣営だけで相手をすることになるからです。

 

 特異点攻略に時間をかけるのは絆を育むためでもあるんですね。なのでここで邪ンヌを倒すという選択肢はありません。どうにかして逃げ切る必要があります。

 

 そうなると足が速いサーヴァントがいいんですが……その、ホモくんのサーヴァント一番足が速いのってキアラなんですよね。

 

 で、その肝心のキアラの敏捷値はB+。邪ンヌはAです。瞬間的にはキアラの方が勝りますが、ここから逃亡するにしても聖杯を所持している邪ンヌにいずれ追いつかれます。つまりは普通に逃げるだけじゃ逃げ切れません。というか、そもそもの話邪ンヌはステお化けなんですよね。

 

 耐久と幸運のステ除いた全てのステがAを超えていますのでクソ強いし、凄い有能なんですよね。復讐者であることから攻撃に補正もかかりますし。唯一の弱点は経験の浅さからくる技量不足くらいなものでしょう。

 

 ステータスに元ビーストとしての補正が掛かったキアラでも聖杯を所持しているスーパーでスターの状態の邪ンヌからは逃げ切れません。どうにかして撒く必要があるんですが、呼ぶのキアラなんだよなぁ……。こうなったら殿にでもしましょうかね。

 

 ぶっちゃけた話どうやってもロクな事にならないのは確定しています。だってキアラだし……。とは言え呼ばない訳にはいきませんので呼びますけど。

 

 ですが──

 

 >あなたを見つめる黒い女性は手に持った黄金の杯をくるくると回している。

 >女性はあなたの様子を見て楽しげに笑っている。

 

 下手な事すると令呪を持った手を切り落とされる可能性がありますね。そうなると一時的に邪ンヌを怯ませる必要があるんですが……ふーむ、作られた存在であることをここで暴露しても意味ないですし。というか、いつもくっついてるはずのジルどこ行ったよ? 

 

 しかし、どうしましょう。隙がなさそうであれば1回リセしますかね? 

 

「一応言っておきますけど、ここであんたを殺すつもりは無いわよ」

 

 ええー? ほんとにござるかぁ〜? 

 

 どうせ殺さないよとか言って安心させたところにアゾる気なのでは? ホモは訝しんだ。

 

 >あなたは訝しげな目で目の前の女性を見つめ、それは本当なのかと尋ねた。

 

「ええ本当よ? それよりもあんたに聞きた──」

 

 隙を見せたね? 先手必勝不意打ちファイヤー! 

 

 >あなたは目の前の女性が瞬きをした瞬間に古びたナイフを手の中に置換し、それを振るうことで炎を飛ばした。

 

「ふーん、へえー、そう……」

 

 >だが、その炎は彼女が発生させた炎により容易く飲み込まれた。

 >そして続け様にあなたの古びたナイフに剣を振るい砕いた。

 >あなたは古びたナイフを失った。

 

 ああっ! ホモくんの装備がっ! とはいえこれは仕方ありませんね。コラテラルダメージと言うやつです。ぶっちゃけこれからは銃が主戦力なんでさほど使いませんし……。それに──

 

「私以外の炎を──」

 

 ホモくんのターンはまだ終了してないぜ! 

 

 >あなたは続いてスタングレネードを投げつけた。

 >そして劈くような爆音と目を焼く光量があなたたちを襲った。

 

「ぐっ、このっ……!」

 

 今のうちに退避、退避ーっ! 

 

 ついでに逃げ切る作戦を思いついたのでキアラを呼んで殿をしてもらいましょう! ホモくんが逃げきれたところでまた令呪で呼び寄せます。その後は立香ちゃん達と合流します。

 

 今回は立香ちゃん達との合流を最優先とします。

 

 という訳でカモン、キアラ! 

 

 >あなたは右手に描かれた獣の爪跡のようなデザインの令呪を発動させ、キアラを呼び出した。

 

「マスター1人だけ別の場所に飛ばされるなんて随分と運がありませんね? それで、私に何の──って、ああ、なるほど。そういうことでしたか」

 

 キアラ、後はよろしくぅ! できればぶっ倒さないでくれると嬉しいな! 

 

「ええ、分かっております。ここは私が抑えますのでマスターはどうか立香さん達と合流を」

 

「はっ、そんな事させると思ってるのかしら?」

 

 >その言葉とともにあなたに向けて炎が飛ばされる。

 

 殺さないって言ったじゃん! やっぱ此奴背後からアゾる気満々じゃないですか、やだー! 

 

「ええ、そうさせていただきますとも」

 

 >あなたに飛んできた炎は突如として発生した禍々しい黒の穴から出てきたとは思えぬほどの白く巨大な手によって握りつぶされた。

 

 キアラありがとナス! ホモくんクールに去るぜ……。という訳でこのまま立香ちゃんの下に移動です。本当に持たせておいてよかったー! 

 

 >あなたは置換呪術を使い、立香の下へと移動した。

 

「……さて、マスターは行かれました。何か私に聞きたいことがあるのでしょう、堕ちた聖女様?」

 

「ふん、随分と察しがいい獣だこと──」

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 >あなたは立香達の目の前に現れた。

 

 逃走成──ぐえー! 

 

「よかった、本当によかった……。また離れ離れになっちゃったのかと思って……!」

 

「フォウ、キュー!」

 

 >あなたは立香から腹部に向けてタックルを貰ったため、倒れこそしなかったものの大きくぐらついた。

 >その状態でフォウから顔に向けての奇襲を受けたため踏ん張ることが出来ずに倒れた。

 

『うえええ!? 望幸くん今どこから現れたんだい!? もしかして魔法使いか何かなのかい!?』

 

 お、この声はロマニキですね。

 

「ところでドクター。今回は安全にレイシフトできると言っておりましたが、望幸さんだけ別の場所に飛ばされていましたが、それは何故なんでしょうか? 説明してもらえますか?」

 

『マシュの言葉に凄い棘を感じるぞぅ! でも言い訳をするなら今回のレイシフトは何の問題もなかったんだよ!? なかったんだけど何故か望幸くんだけ何かに干渉を受けたみたいにレイシフト先が変わってしまったんだ』

 

「彼のレイシフトにだけ干渉を……?」

 

 それほんとかぁ? (疑惑の目)

 

 と、こんな無駄なことをして時間を浪費している場合ではありませんね。殿をしてくれたキアラを呼び戻しましょう。

 

 >あなたは令呪を用いてキアラを呼び出した。

 

「ちゃんと合流出来たようですねマスター」

 

 >現れたキアラは煤けた姿になっており、そこそこの傷を負ってしまったようだ。

 

 うっそぉ……最初の特異点でキアラがここまでダメージくらうの? なんか強い……強くない? それとも邪ンヌが途中で他のサーヴァントを呼び寄せて数の暴力戦法でもやったんですかね? 

 

 まあ、とりあえずは殿を勤めてくれたキアラの傷を治しましょう。

 

 >あなたは治癒魔術を使ってキアラの傷を治した。

 >キアラのHPが回復した。

 

「ふふ、ありがとうございます。このお礼はいずれ……」

 

(いら)ないです。いや本当にしなくていいから(懇願)こんな序盤でホモくんがゼパルことになるのは避けたいので。

 

 ま、ハプニングはありましたがしっかりリカバリー出来たので無問題です。後は霊脈を見つけてベースキャンプを設置すればオッケーですね。

 

 という訳で今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




堕ちた聖女と快楽天ビースト……。

閃いたので失踪します。



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認識

オルレアンを見返してたら遅くなったので初投稿です。


 ベースキャンプ設置から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 早速ですが今回はベースキャンプの設置に行きます。ベースキャンプの設置が早ければ早いほど特異点攻略も楽になりますので。

 

 最初の数日くらいは野宿をやっても構いませんが、それが続くと立香ちゃんとナスビちゃんのストレス値が上がります。

 

 立香ちゃんは元よりナスビちゃんも一応は生身の人間ですのでちゃんとした場所で休めないことにより、疲労が蓄積します。それによってストレス値も上昇する上に戦闘でもミスする確率が増えます。なのでベースキャンプ設置が遅れると大変まずあじです。

 

 取り敢えずは数日以内には良さげな霊脈がある土地を見つけたいですね。とはいえある程度の場所はピックアップしているので、今いる座標さえ分かればその座標から最も近い霊脈に向かいます。

 

 霊脈に向かわないと令呪も回復しませんしね。

 

 それから霊脈探しと並行して情報収集もします。情報収集する主な目的としては現地で召喚されたサーヴァントである冤罪先生やすまないさん、その他清姫やエリちゃんなどをかき集めるためです。

 

 サーヴァントはこのフランス全土に散らばってるので集めるのにそこそこ時間がかかります。まあ、立香ちゃんの運命力があれば最低でも半月で全員揃います。ですが、それ頼みに動くとフランスのあっちこっちを移動するはめになるのでRTA的にまずあじです。

 

 なので序盤は聞き込みをしつつ全サーヴァントの位置を把握できたらルートを定めます。その後は全員回収し、邪ンヌとの決戦となります。

 

 聞き込みの途中などでサーヴァントが見つかれば見つかるほどうまあじですね。こちらの戦力が増えるということなので雑魚エネミーも楽に処理できるようになりますし、バーサーク状態を付与された敵サーヴァントとも安定して戦えます。

 

 とりあえずは早めに冤罪先生とすまないさんを見つけたいですね。その2人を見つけ出せば敵に冤罪コンボ決めれるので。汝は竜! おまんも竜! 

 

 また姉を名乗る不審者に関していえばわざわざ探さなくてもあちらから寄ってきます。どこにリスポしても必ずと言っていいほど最初のワイバーン戦で現れます。運命感じるんでしたよね? 

 

 ま、そんなわけなのでまずは座標を知るために情報収集にイクゾ-! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 えー、近くにいたフランス兵の後について砦に着きました。本来ならフランス兵が恐慌状態なので戦闘に入ることになるんですが、なんとキアラが落ち着かせてしまいました。さすが元セラピスト兼聖人候補。それなのに魔性菩薩になるとか極端すぎるのでは……? 

 

 それから信用を得ることが出来たので今回の事情について聞かせてもらいました。話を聞いたところ、死者自体はいないが街への被害や怪我を負ったものの数が酷いとのことでした。また、その破壊を振り撒いているのは『ジャンヌ・オルタ』と名乗っているのだとか。

 

 んにゃぴ……なんでそう名乗ってるのか訳わかんないっすね。いつもであればジャンヌと名乗っているはずなんですが……。

 

「出会った当初はいきなり斬り掛かろうとして本当にすまなかった。こっちも色々なことがあったとはいえ、見慣れない格好をしていたというだけで判断するべきではないな」

 

「ええ、構いませんよ。何せ竜に襲われているのでしょう? そんな時に見慣れない装いをした人が現れれば警戒してしまうのも致し方ありません」

 

「そう言って貰えると助かるよ。それじゃあ俺はここで──」

 

 >あなた達と兵士が別れようとした途端、低い唸り声が砦中に鳴り響いた。

 

 来ましたね。ワイバーン戦もとい、竜の牙採取戦です。お前の牙全部へし折ってやるから見とけよ見とけよ〜! 

 

「クソッ! あのクソッタレ共がきやがった! 迎え撃て! ほらほら立て立て! ぼさっとしてんじゃねえ! 炭になったりあいつらの胃の中に行きたくないだろ!?」

 

 >彼の言葉に周囲にいた兵士たちが慌てて武器を構えだした。

 

『君たちの周囲に大型の生体反応! しかも、速い……!』

 

「目視しました! あれはまさか──」

 

「ワイバーン!?」

 

「はい。あれはワイバーンと呼ばれる竜の亜種体です。間違っても、絶対に、十五世紀のフランスに存在していい生物ではありません!」

 

『来るぞ!』

 

 はい、それでは早速戦闘開始です。と言ってもこちらにはエミヤニキと弱点取れるキアラがいるので高々ワイバーン如きにやられることはありません。マスターへのダイレクトアタックを除けばな! (2敗)

 

 一応ですがキアラには出来うる限り肉弾戦でやってもらうようにお願いします。流石に黒い穴から出てくる巨大な手とかをフランス兵が見ると邪ンヌと繋がっているのではと疑われる可能性があるので。疑われること自体別に構いはしないんですが、まだ情報を絞り切れていないので今不信感を抱かれるのは大変まずあじなのです。

 

 >あなたはキアラに出来うる限り肉弾戦で戦ってくれるようにお願いした。

 

「ええ、かしこまりました。万事私にお任せを」

 

 >その言葉とともにキアラはワイバーンの下へと一息で踏み込んだ。

 >キアラの拳がワイバーンを的確に捉えては粉砕していく。

 

「やれやれ、恐ろしいものだな彼女は。どれ、私も加勢しよう。マシュは討ち損ねたワイバーンの処理を頼む」

 

「まかせてください!」

 

 >エミヤの言葉とともに空に舞うワイバーンの眼球に的確に矢を打ち込み墜落させていく。

 >マシュはキアラやエミヤが討ち損ねたワイバーン達にトドメを刺していく。

 

「凄いなあいつら! おい、俺達もあのクソッタレ共をぶっ殺して全員で生きのびるぞ!」

 

 >彼らの活躍を見たフランス兵達の士気が向上! 

 

 あーいいっすね。大人数で戦う場合、味方がめぼしい活躍を上げると陣営の士気が上がります。士気が上がればその分攻撃性能が上がりますのでたいへんうまあじです。

 

 さてここではホモくんや立香ちゃんがやることはほとんどないです。やるにしてもガンドでワイバーンを打ち落とすかスタングレネード投げつけて叩き落とすくらいしかありません。

 

 一応ホモくんも倒そうと思えば倒せるんですが、ぶっちゃけ戦う人が足りないという訳でもないので安全策として味方の援護に回ればオッケーです。

 

 ということでホモくんは負傷者の手当や味方サーヴァントの援護に向かいます。立香ちゃんには基本的にマシュの近くでサーヴァントの援護をしてもらいましょう。こんなクソつまらんことで怪我されても困りますし。

 

 じゃあそういうことで立香ちゃんよろしくぅ! 

 

「うん、まかせて。望幸やケイローン先生達に教えてもらったことを今ここで発揮してみせるから!」

 

 >立香はその言葉ともに味方サーヴァントの援護を拙いながらもこなしていく。

 

 善き哉善き哉。この調子で立香ちゃんにはどんどん強くなってもらいましょう。

 

 それじゃあホモくんは負傷者の手当に向かいます。ちなみにフランス兵を助けると彼らからの好感度が上昇します。これにはメリットがあります。ざっくり分けますとフランス兵の信用が得られやすくなるというのと、物資をくれるという2つの利点があります。

 

 今回はどちらも時短のために必要なんで出来うる限り稼ぎます。

 

 さて、怪我をしているフランス兵は……そこそこいますね。これだけ数が多いと一人一人治していくのは効率が悪いので1度ホモくんに怪我を移しましょう。耐久が結構育っているので結構な人数の怪我を置換できることでしょう。

 

 はーい、怪我を見せてくださいねー。

 

「あ゙あ゙っ! くそ、いてえ、いてえよ!」

 

「すまねえ……こいつあのクソッタレ共の炎を食らっちまって酷い火傷を負っちまってるんだ」

 

 かまへんかまへん、治したるわ。

 

 ヒール! ヒール! (置換呪術)

 

 >あなたはケロイド状に焼け爛れたフランス兵の火傷部分を触り、置換呪術を発動した。

 

「あ……? 痛くねえ……?」

 

「おいおい、嘘だろ? 触っただけで怪我が治っちまった! おい、あんた……いや、貴方様! 他にも怪我をしちまってる奴らがいるんです! どうかそいつらも治してやってください!」

 

 いいよ! こいよ! 

 

「ありがとうございます! おい、手が空いてるやつは怪我を負った奴らをこっちに連れてきてくれ!」

 

 >フランス兵はそう言うと怪我を負った者を掻き集めはじめた。

 

 おおう、一気に負傷者が集まりましたね。こいつは僥倖。いちいち動く手間が省けました。それにしても黒いスポーツインナーを着ていて良かったですねー。傍目からじゃホモくんが怪我をしているなんて分かりませんし。

 

 もちろん顔なんかを怪我している人は治癒魔術で治します。ホモくんに置換したら1発でバレますからね。

 

 と、怪我を移しているうちにホモくんのHPバーがやばくなってきたので1度ホモくんの体を治しましょう。

 

 オッス、癒えてるか〜? 

 

 >あなたは治癒魔術を使った。

 >HPが回復した。

 

 バッチェ癒えてますよ! 

 

 はい、じゃあまたフランス兵の怪我を置換していきましょう。後はワイバーンが殲滅されるまで繰り返しとなります。この際ですしフランス兵の好感度を荒稼ぎしておきましょう。運が良ければワイバーン戦で途中乱入してくるジャンヌに対する負の感情を上手くコントロール出来るかもしれません。

 

「兵たちよ、水を被りなさい! 彼らの炎を一瞬ですが防げます!」

 

 >何処からか凛とした声が聞こえる。

 

 とかなんとか言ってたら来ましたね。さてどの道最速攻略のためにはある噂も流す必要もありますし、時短のためにガンガンやりましょう。ホモくんゴーゴー! 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 はい、ワイバーン戦終了です。フランス兵の怪我をほとんど治したお陰でこの砦のフランス兵からの好感度がかなり高い状態になっているはずです。

 

 さて、本来であれば姿を現した姉を名乗る不審者にフランス兵達が恐慌を起こします。そのため姉を名乗る不審者から情報を手に入れるためには彼女が近くの森に誘導してくれるので、一緒に付いていく必要があるのです。

 

 それについて行くと野宿をすることが確定になります。別にいいっちゃいいんですが、ここで好感度を稼いだので利用しない手はありません。というわけで姉を名乗る不審者の下に行きましょう。……まあ、HPが完全回復してないけどええやろ。恐慌が起こると面倒ですし、時間優先です。

 

「そんな、貴女は──いや、お前は! 逃げろ! 魔女が──」

 

 >あなたはその声に待ったをかけた。

 

 はい、逆転裁判始まりでーす。これから何をするのかと言うとフランス兵の認識をひっくり返します。そもそもの話、彼等が恐慌を起こす理由はジャンヌをジャンヌ・オルタだと認識しているからです。故にその誤った認識を叩き直します。

 

 >あなたは彼女は竜の魔女ではないということを彼等に告げた。

 

「な、何を言って──だって、あのお姿は俺達を導いてくれた聖女様なんだぞ! 俺たちがその姿を忘れるはずがない!」

 

 はい、そうですね。この時代で尚且つフランスにおいてはジャンヌは何よりも有名でしょう。なので姿は知っている人も多い。

 

 そう、姿()()()()()()()()()()

 

 ジャンヌとジャンヌ・オルタは肌の色、髪の色、目の色と姿形は似ていれど確かな差異があります。故にそこを攻めます。

 

 >あなたは竜の魔女と呼ばれる者の姿を見たことがあるか聞いた。

 

「……俺は見た事がある。確か銀の髪に、金色の目、そして死人のように青白い肌をしていた」

 

「俺もだ、見たことはある!」

 

「俺も!」

 

 いいゾ〜これ。ジャンヌ・オルタを見たことがある奴らがそこそこいるのはかなりのアドバンテージです。より簡単に認識をひっくり返すことが出来ます。

 

 >あなたはそんな彼らに問いかけた。

 >そこに立っている聖女の姿と一致しているのかと。

 

「た、確かに言われてみれば……」

 

「俺が見た竜の魔女と見た目は似ていても髪の色とかが全然違え」

 

 >あなたの発言により周りのフランス兵達にざわめきが起こった。

 

「だ、だが! 竜の魔女と呼ばれる女なんだからそのくらい変えることができるかもしれないだろ! 俺はそこにいる聖女様の皮を被った悪魔に騙されねえぞ!」

 

 はい、いい言葉がとんできました。特に悪魔と言う言葉が有難いですね。この宗教に対して活発であったご時世では悪魔についての話がそこそこあります。なのでそれを使いましょう。

 

 >あなたはそれこそが竜の魔女の狙いだと告げた。

 

「ど、どういうことだ……?」

 

 >聖女の姿を取ることで本当の聖女がもう一度あなた達のために立ち上がったとしてもそれの邪魔をすることが出来ると言った。

 

「だが、死者の蘇生なんて──」

 

 いいや、した事実はあるはずでしょう? ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 >あなたはイエス・キリストが復活したという事実があるということ、そしてそこから察するにこの事態を憂いた神により遣わされたのだと言った。

 

「だが、聖女様は確かに火刑に処された! そうなってしまえば肉体はおろか魂も燃え尽きる!」

 

 そう言えばこのご時世の火刑ってそう言う理論がありましたね。最後の審判までに肉体がなくちゃいけないだとか。

 

 ふむ、じゃあ彼らの信仰心を煽りますか。

 

 >あなたはあなた方の信仰する全能の神様はそれすらもひっくり返すことができるのではないのかと彼ら自身に尋ねた。

 

 意地の悪い質問だとは思います。それを否定してしまえば彼ら自身が己が信仰する神を全能に非ずと否定することに繋がるんですから。

 

「そ、そうか……。あの悪魔は俺達の聖女様を陥れるために……! そして聖女は神様からの遣い……!」

 

「俺はあの聖女様を見た時に最初からそうじゃないかと思ってたぜ!」

 

「うおおおおお!! 俺達の聖女、ジャンヌ! 虫のいい事だと分かっているが、もう一度、どうかもう一度俺達を導いてくれ!」

 

 はい、工事完了です。見事に認識をひっくり返すことが出来ました。後はこの噂をフランス全土に広げることでスムーズな移動ができます。

 

 ぶっちゃけかなり無茶苦茶なこと言っていますが、彼等からの好感度を稼いでいたということと今は藁にもすがる思いであるはずの彼等にとってはそれが真実だと思い込むに足りえたようです。

 

 そして民衆は多数の意見によって簡単に認識をひっくり返します。故に放っておいても多くの人達がジャンヌ=竜の魔女ではないことに気がつくでしょう。

 

 この噂を撒いて姉を名乗る不審者に聖女としての振る舞いを徹底してもらえば簡単にフランス兵からの好感度を稼ぐことができます。まあ、唯一の問題点としては邪ンヌが凄まじくキレ散らかす事くらいですが、どうせハッ倒すので構いません。

 

 また、情報がある程度集まるまではこの砦をベースキャンプとします。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




珍しくちゃんとRTAしてますねこいつ(ガバしていないとは言っていない)
ジャンヌ≠竜の魔女論について方々からツッコミがとんできそうですがこんな理由しか思いつかなかったんです。すまない、本当にすまない(ジークフリート並感)

責任取って失踪します。


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情報収集

今回は小説パート多め。
そういう訳で初投稿です。


 砦のベースキャンプから始まる人理修復RTAはぁじぁまるよー! 

 

 初のワイバーン戦でしたが、まあ予想通り簡単でしたね。何せ肉弾戦ができるゴリラ2人に狙撃兵がいましたからね。ナスビちゃんもケイローン塾に通っていたおかげで大分英霊としての力に慣れてきているようです。流石先生。一章の時点でナスビちゃんをここまで育てるとか誇らしくないの? 

 

 さて、立香ちゃん達と合流しましょうか。

 

「あっ、望幸ー!」

 

 >立香はあなたを見かけると手を振って近づいてきた。

 

「えへへ、見てた? 私、望幸とケイローン先生達に教えてもらった事をきっちり実行出来たよ!」

 

(見て)ないです。でも、しっかり実行できたのはえらい! 5000兆点上げましょう。この調子で指示通りに動いてもらいたいものですね。

 

『みんなお疲れ様。どうやらワイバーン達を殲滅することは出来たみたいだね。怪我とかはしていないかな? ()()()()()()()()()()()()()()からしてないとは思うけど一応聞いておきたくてね』

 

「私はしてないかな。望幸は?」

 

 >あなたはしていないと告げた。

 

 怪我なんかしてないから安心してくれよな〜頼むよ〜(大嘘)

 

 と、まあ実際のところは怪我してますがレイシフト中であればカルデアのバイタルチェック程度いくらでも誤魔化せるので無問題です。カルデアの中にいると誤魔化しが利きにくいのが嫌なところですけど。

 

「あの……」

 

 >あなたにジャンヌがやや目を伏せながら声をかけてきた。

 

 はい、いらっしゃい(NYN姉貴)

 

「先程はありがとうございました。あなたからの言葉がなければこうして皆に受け入れてもらえることは無かったでしょうから」

 

 >ジャンヌはそう礼を言って頭を下げた。

 

 あ、いいっすよ。こっちも必要なことだからやってるだけなんで。

 

 ま、それはそれとして仕草や視線から察するに居心地の悪さのようなものを感じてるっぽいですね。フランス兵を恐慌させないためとはいえ、出鱈目を言ったこともしくは立川の聖人のような状況になったことに対してでしょうかね? 

 

 ですがこれも人理のため。我慢してもらうとしましょう。それにどうせ修復すれば現地の人は何もかも忘れます。なので何やってもへーきへーき。

 

「ところでひとつ聞きたいのだが、君は竜の魔女を知っているような口振りだったが何故知っているのかね?」

 

 >あなたにエミヤが訝しむような目で何故竜の魔女を知っているのか尋ねてきた。

 

 ヌッ! 

 

 まあ、当たり前の質問といえば質問ですね。初日から本来知らないはずである竜の魔女についてホモくんが知っているわけですし。とは言え、今回はちゃんとアリバイを作ってあるので無問題です。

 

 >あなたはこの特異点に飛ばされた直後にジャンヌと瓜二つの竜の魔女らしき女性と出会ったこと、そしてその人が聖杯らしきものを持っている事について話した。

 

『ええええええ!? なんで君はいきなりクライマックスみたいなことになってるんだい!?』

 

「……」

 

 とばした本人が言いますかねそれ。

 

 ほらー、立香ちゃんやナスビちゃんが冷たい目でロマニキを見てますよ。

 

「……なるほど。それで君から見たその竜の魔女とやらはどうだったのかね?」

 

 見た目の話なら姉を名乗る不審者の2Pカラーっすね。まあ、アルトリア・オルタと似たような感じだったと伝えればいいでしょう。

 

 >あなたはエミヤに自分が見た通りのことを伝えた。

 

「ふむ、つまりはジャンヌの別側面、所謂オルタというわけか。ひとつ聞きたいのだがジャンヌ、君はこういう願望を少しでも持ち合わせているのかね?」

 

「──いえ、それだけは絶対にありえません」

 

 >エミヤからの問いにジャンヌはないと断言した。

 

「私は確かに彼らによって火刑に処されましたが、それでも私は彼らを恨んだことはありません」

 

「なるほど、民によって壮絶な最期を遂げたと言うのに恨み言ひとつ無いとは……。まさしくそのあり方は聖女と呼ばれるべきだろう。それから必要な事とはいえ不躾なことを聞いてすまなかった」

 

「いえ、構いません」

 

 話終わりましたね。それじゃあ早速情報を仕入れに行きましょう。ほらいくどー。

 

 >あなたは聞き込みをしてくると言ってエミヤ達から離れた。

 

「あ、待ってよ望幸ー!」

 

「私もお供します先輩!」

 

「それでは私も共に参りましょうか」

 

 >立香、マシュ、キアラの3人があなたに着いてきたようだ。

 

「…………」

 

「さて、彼女達も行ったことだ。もうひとつ聞いておきたいことがあるのだがいいかね?」

 

「はい、私に答えられることでしたら」

 

「──君は彼、望幸を見る時に()()()()()()()()()()()()()()

 

「……よく気が付きましたね」

 

「なに、私はアーチャーなのでね。これでも『目』はいいのだよ。それで、なぜなのか答えてくれないかね」

 

「それは──」

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 とある城の大広間にて竜の魔女と恐れられているジャンヌ・オルタ、そして彼女に呼び出された8騎のサーヴァント達が一堂に会していた。

 

「あなた方を呼んだのは他でもありません。あなた方にしてもらいたいことがあるからです」

 

「ふん、言わずとも分かる。何せ貴様から『()()』を与えられたのだ。余とカーミラは時が来たらあの者のところに向かえば良いのだろう?」

 

「ええ、そうですヴラド三世。但し──」

 

「カルデアの者達を殺さぬように、と言いたいのでしょう?」

 

「それもありますが、付け加えてあなた達にはあの馬鹿の魂の状態も見て来てもらいます」

 

「魂、ね。それは貴様も見たのだろう? 今更我々が見たところで何になる?」

 

 ヴラド三世が抱いた当たり前の疑問。その疑問に対してジャンヌ・オルタはこう答えた。

 

「私が欲している情報は客観的な情報です。私一人だけの視点では主観的な情報にしかなりえません。それに今のうちにあの馬鹿の状態を正しく知っておきたいというのもあります」

 

「随分と彼の事を大事に思っているようね。そんなに大事なのであればいっその事宝物のようにしまって(攫って監禁して)おいたらどうです?」

 

「──馬鹿言わないで頂戴。彼奴がそれくらいで止まるのならとっくの昔にやっています。寧ろそれは彼奴にとって悪手でしかありません。そんな分かりきったことを聞かないでくれます?」

 

 カーミラを睨みつけ忌々しそうに答えるジャンヌ・オルタ。

 

 それに対してカーミラはジャンヌ・オルタから与えられた『記憶』。そして自身が座から手段を選ばなかったおかげで持ち出すことの出来た『記憶』を思い返した。

 

「……それもそうですわね」

 

 僅かではあるが持ち出すことの出来たカーミラにとって宝のような『記憶』。『記憶』の中の人物は良く笑い、良く喜び、このような自分にさえ暇さえあれば構い、ほんの少し落ち込んだだけであってもすぐに気づき、励ましていてくれた。

 

 善き人というのを現したかのような、暗き闇の底に落ちた自分にさえ屈託のない笑顔を浮かべ手を差し伸べてきた人は今、ジャンヌ・オルタからの与えられた『記憶』によれば──

 

 そんな考えを打ち消すようにジャンヌ・オルタが他のものに指令を出した。

 

「サンソン、デオン、マルタ、アタランテ、ファントム。あなた達はこのフランスの各地に召喚されたサーヴァント達を出来るだけカルデアの者達の傍に誘導してもらいます」

 

「分かった。僕とデオンはマリーとアマデウスを見つけに行こう。……とはいえ、僕とファントム以外はまだ君から与えられた『記憶』の衝撃に放心しているようだね。あとから僕が伝えておくよ」

 

 サンソンはジャンヌ・オルタから与えられた『記憶』により、放心状態に陥っている三人を尻目に答えた。

 

「……ならば私はあの竜の娘達を見つけておこう。聞くに耐えぬ声で歌うがクリスティーヌ()が耐えてきたものに比べれば塵のようなもの。私もそれくらいは耐えてみせよう」

 

 ファントムは己の頭の中に思い描いた人を思い出し、少しだけ悲しそうに眉を顰める。そして決意にも似た光を目に宿すとぎゅうっと手を握りしめた。

 

「よろしい。最後にランスロット、あなたはヴラド三世達とは別の時にカルデアの者達と戦ってもらいます。理性がとんでいるとはいえ、仮にも円卓最強と謳われた騎士。彼らの成長を促すように戦うことは出来るでしょう?」

 

「Arrrrrrrrrrrrr!!!」

 

 理性無き狂戦士として呼ばれたランスロット。然れどジャンヌ・オルタの問いかけにまるで王から拝命を受けた騎士のように傅く。

 

 それを見たジャンヌ・オルタは己が持つ旗を掲げた。その姿はまるで──

 

「此度の人理修復を以って彼奴の旅を終わらせます。それこそが私達ができる彼奴への唯一の恩返しだと知りなさい!」

 

 ──彼女が忌み嫌っていた聖女のようであった。




ホモくんは一体何をやらかしたんですかね(鼻ほじ)
ジルの霊圧が消えてしまったので失踪します


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疑念

割と早めに書き上げられたので初投稿です。


 情報収集から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 倍速して約5日ほどかけてフランスの情勢について情報収集したところなんとめっちゃ近くに味方サーヴァント達が密集してることが判明しました。

 

 いい乱数引いてますねぇ! 

 

 いやーこれなら徒歩で移動したと仮定しても一週間もかからないうちに全員集め切ることが出来ますね。サーヴァントに担いで移動してもらえばもっと早く移動できます。

 

 それからこの砦で新たにカルデアからサーヴァントを追加しました。ホモくんはカーマ、立香ちゃんにはケイローンを呼んでもらいました。

 

 カーマを呼んだ理由はワイバーン戦とサーヴァント戦にてドスケベチェックもといキアラと掛け合わせた強制魅了戦法という台パン不可避コンボを仕掛けるためです。

 

 キアラとカーマが揃えば同性だろうがなんだろうが欲を持つ知性体である以上ほぼ確実に魅了されます。流石は愛を冠する獣。おっそろしい事この上ないですね。

 

 唯一抵抗できるとしたら立川の聖人のしっかり者の方か、もしくは冠位クラスで召喚されたキングハサンくらいじゃないですかね。

 

 冠位クラスではない場合でも魅了に対して100%の耐性を持っているんですが、キアラのスキルとカーマの宝具を掛け合わせればその耐性を確率ではありますが貫通することがあるんですよね。

 

 キングハサンの耐性を貫通するとか頭おかぴなるで(土竜並感)

 

 先生に関しては対サーヴァント戦で活躍してもらう為ですね。

 

 だって今回の敵サーヴァントは大なり小なりバーサーク化してますし? 思考が基本的に暴力! 暴力! 暴力! なBBBトリオに支配されてるせいで精密な動作が出来ずに動きそのものが粗いんですよねー。

 

 そのため先生やスカサハ師匠なんかの卓越した武を持つサーヴァントがまあぶっ刺さります。場合によっては完封する時もあります。

 

 やっぱり技術を使えなくさせる狂化はデバフなんやなって……(諸行無常)

 

 あと別の霊脈にてアルトリア・オルタ、クーフーリンを呼ぶつもりです。ここの霊脈はサーヴァントを2人召喚したら使用できなくなったので……。

 

 クーフーリンとアルトリア・オルタの2人にはファヴニール退治をしてもらいます。クーフーリンは生前から化け物狩りはしてますし、アルトリア・オルタは持ち前のクソ火力宝具でファヴニールを叩き落とす役割があります。後はダウンさせた後にすまないさんの幻想大剣・天魔失墜でファヴニールは哀れ爆発四散! ショギョムッジョ! みたいな流れでスマートに行くことが出来るでしょう。

 

 玉藻に関してですが……どーすっかなーあの子。情報がないせいでどういうスキル構成なのか宝具はなんなのかすら分かってないんですよね。ステの閲覧も出来なかったのでとりあえずはキャスターの時と同じと仮定していますが……。本当に不確定要素が多すぎるんですよ。ただ火力は高いってことは細切レフのお陰で分かりました。

 

 なので呼ぶにしても火力が必要になる終盤ですね。初手からポンポン呼べたらいいんですけど如何せんカルデアからの魔力供給が厳しくなりそうですし……。念の為宝具などの大量に魔力を消費する場合を除いて基本的にはホモくんのサーヴァントはホモくん自身から魔力を供給してますけど、ぶっちゃけ初期のカルデアの魔力事情からすると焼け石に水なんですよねー。ま、それでもやっておくに越したことはないでしょう。

 

 さて、味方サーヴァントの位置も判明してルートも決まりましたのでまずは1番近くにいるアマデウスとマリーを回収しましょう。その後はなんか運良く固まってリスポしたっぽいすまないさんと冤罪先生を回収、最後にドラ娘コンビですね。

 

 ドラ娘コンビを最後にするのは清姫対策です。あの子が近くにいる以上置換呪術による治療がしにくくなるんですよねー。カルデアのバイタルチェックは誤魔化せますけど目の前にいる嘘判定器の清姫には1発で見破られます。

 

 そうなるとRTA的に非常にまずあじです。リセとまではいきませんが、リカバリーが面倒なんですよねー。というわけで拾うのは最後です。

 

 >砦を散策していたあなたの耳に銅鑼を叩いたような音が聞こえた。

 

「またあのクソッタレ共が来たぞ! 全員配置につけ!」

 

 >フランス兵の怒号により砦内が一気に慌ただしくなる。

 >兵士達は武器や大量の水を用意して各自持ち場に付いた。

 

 おっと、竜の牙がまた来たようですね。それじゃあまたフランス兵の好感度稼ぎにイクゾ-! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 いやあ、今回も竜の牙もフランス兵の好感度もがっぽがっぽですよ。サーヴァントが増えたおかげで戦闘もより楽になりましたし、フランス兵の損傷も少なくなりました。お陰様でこちらも味方の援護などやれることが増えたので大変よろしいことですね。なので今回はフランス兵の怪我の治療及びホモくんのHP回復も最大まですることが出来ました。

 

 さて、ワイバーンを討伐しきった立香ちゃん達の慰労に行きましょう。

 

 >あなたは戦いが終わった立香達の下に駆け寄った。

 

 おっすおっす、お疲れさ──

 

「はぁーい、マスターちょっと失礼しますね?」

 

「少し確認させて頂きたいことがありますので」

 

 >その言葉とともにあなたはカーマとキアラの2人に拘束された。

 

 ファッ!? な、ななななん──!? 

 

 >あなたは自分を見る周りの目が険しくなっていることに気づいた。

 >特に立香はあなたのことをじっと見つめていた。

 

 なんだなんだ!? 一体これから何が始まるって言うんですか!? ホモくん何も悪いことしてない! 何だこのクソみてえなイベントは!? 

 

「それではすみませんが服の方を脱がさせていただきますね」

 

 >ケイローンがあなたの服に手をかけた。

 

 やめ、やめろぉー! この男色ギリシャ野郎め! 公衆の面前で羞恥プレイとか良くないって! あかんこれじゃUNEIに消されるぅ! 離せコラ! 離せコラ! 流行らせコラ! 

 

 >あなたは抵抗を試みてみたがキアラとカーマからの拘束からは抜け出せなかった。

 

 はっ! そうだ、置換呪術を──

 

 >あなたはケイローンによってベリベリという音とともに上の服を脱がされた。

 

 いーやー! おーかーさーれーるー! お前こっちのサーヴァントじゃねえダルルォ!? 

 

「……傷はないようですね?」

 

 あっぶね! 

 

 此奴らホモくんの傷の確認しに来たのかよ! いやー今回は全部治してて良かったですね。ナイス数分前の自分。運良くHPを全快にしていたおかげで助かりました。

 

 ふー、全く焦らせやがって……。

 

「ですが、あなたの服にはやたら血がこびりついているようだ」

 

 あっ……。

 

「このようなことをしてすみません望幸さん。ですが、あなたの性格を考えるとどうしても確認しておきたかったんです」

 

 >あなたに向けて頭を下げるジャンヌ。

 >しかしあなたを見つめる目つきは依然として険しいままだ。

 

 告発したのお前かよぉ!? いや確かにこんな無理矢理やろうとするなんてこの脳筋位しか考えないわな! そういうとこだぞジャンヌゥ! 

 

「それでぇ、聞きたいんですが、何故怪我をしていないはずのマスターの服にこんな血がこびりついているんですかぁ?」

 

 >カーマがあなたの耳元で艶めかしく囁く。

 

 言いくるめロール! 言いくるめてみせます! 

 

 >あなたはその血のほとんどはフランス兵のものだと答えた。

 

「ふぅん……? それにしては全体が血で濡れているのは何故でしょうか? お答えしてくれますかマスター」

 

 >訝しげな様子であなたに尋ねるキアラ。

 >それに対してあなたは怪我をしたフランス兵を運ぶ際や治療する際に付着したのだろうと答えた。

 

 どうだ!? 

 

「ねえ、望幸、私の目を見て答えて。本当に怪我はしてないの?」

 

 >あなたは立香の手で頬を挟まれることで顔を固定され、立香と互いに見つめ合う。

 

 ……ここはアレですね。少しは本当のことは言っておいた方がいいでしょう。ほら、99%の嘘に1%真実を混ぜ合わせることで嘘を信じ込ませることが出来ると言いますし。

 

 >あなたはほんの少しだけ怪我は負ったと伝えた。

 

「……本当に少しだけ?」

 

 ホントダヨーホモハウソツカナイ。

 

 >あなたは立香の問いかけに対して黙って頷いた。

 

「ロマニ、今彼のバイタルに変動はあったかね?」

 

『いいや、心拍数も呼吸も何も変わってないよ。少なくとも嘘はついてないんじゃないかな』

 

 ガッチガチに疑われてて草も生えませんよこんなの。……フォウくんカウンター溜まった? (震え声)

 

「フォーウ、フォウ!」

 

 >あなたはフォウに顔に飛びつかれてしまった。

 

 おいゴルルァ! 降りろ! 

 

 ……まあ、フォウ君的には今の疑惑は心配と判定されたおかげでカウンターは溜まらずに済んだみたいです。ヨカッタ-。

 

 じゃあもう疑いも晴れたことですし、さっさと離してクレメンス。

 

 >あなたはカーマとキアラに離してくれと伝えた。

 

「……色々釈然としませんが、まあいいでしょう」

 

「いきなり拘束なんてしてしまってすみません。ですがどうしても確認しておきたかったことですので」

 

 >2人はそういってあなたからそっと離れた。

 

 それじゃあ先生は早くホモくんの服を返してくれよな〜頼むよ〜。

 

 >あなたはケイローンから服を返してもらうと再度着直した。

 

 ふーむ、それにしてもこれは……リセ案件? けどセーブしたのはちょっと前ですし……。うーむこのまま突き進むかリセしてやり直すかどっちが後の時間に影響するか……よし、多分このまま続行した方がタイムは縮められるでしょう。

 

 それに今回は味方サーヴァントのリスポに恵まれたおかげで多少のガバは許容範囲内です。今回程度の小ガバなら最終的なタイムにさほど影響しないでしょう。つまりこのまま突き進んだ方がタイム的にはうまあじだと判断しました。

 

 というわけで続行です。

 

 さて、一悶着ありましたがそろそろこの砦には用はないので移動します。

 

 >あなたはここから移動しないかと提案した。

 

「望幸が話してた他のサーヴァントの人達を見つけに行くってことだよね? それなら私はいいと思うよ!」

 

「はい、そうですね先輩。もしかしたら私達の味方になってくれるかもしれません」

 

「とはいえ行く宛てはあるのかね?」

 

 ありますねえ! ありますあります! 

 

 フランス兵の情報を元に自作した地図にサーヴァント達がいるであろう場所を書き込んで分かりやすくしてみたので立香ちゃん達に共有しましょう。

 

 >あなたはフランス兵からの聞き込みでサーヴァントらしき存在がいる場所を書き込んだ地図を見せた。

 

「へえ? これサーヴァントがいる場所を示した地図ですか」

 

「1番近いのはラ・シャリテですわね。まずはここに向かうのですか?」

 

 >あなたはキアラの問いかけに対して頷いた。

 

 ここにマリーとアマデウスがいるみたいですし、さっさと拾いに行きましょう。あともしかしたら邪ンヌに召喚されたサーヴァント達と初戦闘になる可能性があります。場合によっては邪ンヌとも戦うかもしれませんね。

 

「この場所でしたら徒歩で移動したとしても一日もかからずに着くかと思います」

 

 ジャンヌからの移動時間も聞けましたし、あとはさっさとラ・シャリテに向かってマリーとアマデウスを拾うとしましょう。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




公衆の面前で脱がされるホモくん。此奴はひでぇや!

お詫びとして失踪します。


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彼らが見たものは

無人島生活で無事借金返済しきったので久しぶりの初投稿です。

今回はRTAパート一切無しです


 フランス中央部に位置するラ・シャリテ。かつては人が営む都市であっただろうことは想像にかたくないその街はもはや当初の状態など分からぬほどの廃墟へと変貌していた。

 

 この街を守っていた兵士たちが懸命に戦っていたのが伺えるように辺りに散乱した剣や槍。されどその必死の抵抗虚しく壊れ、拉げ、瓦礫の山と化した街にさしもの立香達も閉口してしまった。

 

「これは……」

 

「ドクター、生体反応を──」

 

 ほんの少しの希望も込めてマシュはロマニに生存者の確認をしてもらう。だが、現実はあまりにも無情であった。

 

『……駄目だ、この街には命と呼べるものは残っていない』

 

「そんな……」

 

 その事実に悲観している一行の背後からジャリッと音が聞こえた。もしかしたら生体反応から漏れた生存者か、そう考えて振り返った立香達。だが、そこにいたのは──

 

「骸骨兵……!」

 

 不気味な様子でケタケタと骨を鳴らし、彼女たちの希望を嘲笑うかのような骸骨兵。そんな様子を見て否が応でも嫌な想像が掻き立てられる。

 

 もしやこの骸骨兵はこの街の人達の──

 

 立香の脳裏に浮かぶ嫌な想像。だが、それを振り払うように望幸が先に行動を起こした。

 

「……蹴散らす」

 

 その言葉とともに望幸の銃口から吐き出される弾丸。それは立香達の目の前にいた骸骨兵の頭を的確に砕いていく。

 

「はいはい、仕方ありませんねぇ」

 

「ええ、了解しました。それからマスターはしっかり後ろにいてくださいね?」

 

「……ああ」

 

 その言葉とともに望幸のサーヴァントであるカーマとキアラも動き出し、周囲に潜んでいたのか、大量に現れ始めた骸骨兵を掃討していく。

 

「マスター、私達も後に続きましょう」

 

「……うん、そうだね。マシュ、エミヤ、ケイローン。あの骸骨兵達を倒そう」

 

 ケイローンから促され、立香は覚悟を決めて骸骨兵達の掃討を命令する。骸骨兵達に思うところがない訳では無い。だが、その気持ちに蓋をして立香は前に進む。

 

「ふっ!」

 

 ケイローン、エミヤから放たれる音速の矢は骸骨兵の頭を軽々と撃ち抜き、圧倒的な速度で彼らを殲滅していく。

 

 そして仮に2人が展開する弾幕を運良く突破できた存在がいたとしても──

 

「はぁっ!」

 

「はっ!」

 

 マシュとジャンヌが立香を守るため、近づいてきた骸骨兵達を打ち砕く。この鉄壁を思わせる守りにより立香は安全にそして援護に集中することが出来た。

 

 そうして殲滅完了まであと少しと言うところで不意に立香に影が差し込んだ。

 

 何が──

 

 そう思って空を見上げると血に飢えた獣のように目を血走らせて、鋭い牙を見せつけるように大口を開けて立香に目掛けて空から強襲を仕掛けてくるワイバーンの姿があった。

 

「……ひっ!」

 

 そのあまりの形相に思わず悲鳴を上げ、蛇に睨まれた蛙のように体が硬直してしまった立香。思わず脳裏に浮かぶ自分の凄惨な最期にじわりと目に涙が浮かぶ。

 

 けれど──

 

「──大丈夫」

 

 隣にいた望幸がいっそのこと機械を思わせるほどの無機質で無表情な顔に似合わぬ優しげな声で立香を落ち着かせる。

 

 そしてその言葉を示すように大口を開けて突っ込んでくるワイバーンに対して近くに散乱していた槍を蹴り上げて手に持ち、ワイバーンの口内に向けて弾丸を放った。

 

 音速で飛来する弾丸はワイバーンの口内目掛けて飛んでいき、そして望幸の得意とする置換呪術により弾丸は槍に変化した。

 

 その槍は大口を開けてしまったが故に柔らかい内側を露出させてしまったワイバーンの口腔を蹂躙し、臓物を引き裂き貫いていく。

 

 さしものワイバーンもその攻撃に耐えることは出来ず、目から光を失って立香達から少し離れた位置に墜落した。

 

「あ、ありがとう」

 

「……ああ」

 

 望幸はそう言うと彼のサーヴァントであるカーマとキアラに向けて命令を出した。

 

「カーマとキアラはワイバーンを頼む」

 

「いいですよぉ」

 

「承知致しました」

 

 その言葉とともに空から現れたワイバーン達をカーマは三鈷杵を自在に操り的確に撃墜していく。

 

 キアラは合掌、そして印を結ぶことで頭上に妖しく紫に光る巨大な玉を作り上げた。

 

「ではこうしましょう」

 

 キアラのその言葉と共に光の玉は無数に分裂し、光弾となってワイバーン達へと襲いかかる。無論、ワイバーンも逃げようとしたり、避けようとしたりするのだが、キアラが打ち出した光弾は逃げることも避けることも許さない。まるで蛇のようにワイバーンを執拗に狙うのだ。

 

 その様はまさに蹂躙と呼べるものであった。

 

 また、どういう訳かワイバーン達は先程まで狙っていたはずの立香達に目もくれずにカーマとキアラに殺到していく。その姿はまるで火の光に吸い寄せられた哀れな虫のようであった。

 

「魅了によってワイバーン達を自分達に集中させているのか。おかげで此方には目もくれず、実に殺りやすいな」

 

 その言葉ともに先程まで骸骨兵達の相手をしていたエミヤは殲滅が完了したのか、キアラとカーマに夢中になっているワイバーン達を横合いから狙撃する。

 

 剣を矢に変化させ、弓に番える。そしてギチギチと弦をしならせて放たれた矢は硬質な鱗で覆われているはずのワイバーンへ容易く突き刺さるどころか、貫通し近くにいるワイバーンすらもまとめて射殺す。

 

 そうしてあと少しでワイバーンも殲滅が完了すると言ったところで慌てた様子のロマニから連絡が入った。

 

『まずいぞ、サーヴァントの反応だ! 数は六騎! この速度はライダーでもいるのか? 兎に角物凄い速度で此方に近づいてる。明らかにこちらを認識して狙ってるぞ!』

 

 その先を言おうとしたロマニだったが、魔力を観測することによって敵サーヴァントの戦力を推測しようとしたところで、画面に表示された数値に絶句した。

 

『なっ、なぁ!? 立香ちゃん、望幸くん! 今すぐそこから逃げるんだ! いいか、絶対に戦ったら駄目だ! 敵の魔力数値があまりにも高すぎる。明らかに異常だ! 早く逃げるんだ!』

 

 そう提案するロマニであったが、ケイローンは上空を見据え手に持つ弓を引き絞った。

 

「──いや、もう遅いようですよ」

 

 その言葉ともに轟々と燃え盛る巨大な炎が立香達に目掛けて降り注ぐ。だが、その炎はケイローンの剛弓により掻き消され、そのままの勢いでケイローンが狙い撃った敵らしき存在に肉薄する。

 

 しかしその剛弓は無造作に薙ぎ払われた旗のような武器により狙いを逸らされた。金属同士がぶつかる鈍い音を響かせて明後日の方向に飛んで行った矢は大地を穿つ。

 

 恐るべきは逸らされても尚その威力を誇るケイローンの剛弓であり、そしてその剛弓を容易く薙ぎ払うことのできる敵サーヴァントの強さであろう。

 

 矢を弾き飛ばした者は長い髪を靡かせ、凄まじい圧を放つ巨龍の背から立香達を睥睨する者の姿はジャンヌに瓜二つの姿をしていた。

 

 だが、決定的に違うのはその身に纏う絶対零度を思わせるほどの冷たい敵意と地獄の業火ですら生温いと思わせるほどの荒々しく燃え盛る憎悪を併せ持つことだろう。

 

「あれが……ジャンヌ・オルタ……!?」

 

「──ええ、そうです。私はジャンヌ・オルタ。このフランスを滅ぼす者よ」

 

 圧倒的な気配に戦慄した様に呟く立香にジャンヌ・オルタは是と返した。まるでその名こそ自分を示す唯一絶対の名であるといわんばかりに。

 

 そしてフランスを滅ぼすという言葉に真っ先に反応したのはもう一人のジャンヌであった。

 

「何故、何故そのようなことをするのですか!?」

 

 そう叫ぶジャンヌをジャンヌ・オルタはまるで煩わしい羽虫を見るかの如く冷めた目で彼女を見据える。

 

「今回は聖杯によるバックアップを十分に受けていないのだから多少は覚えているのかと思いましたが……。どうやらその様子を見るにさほど覚えていないようね。彼奴に関する記憶の持ち出しは聖杯、ひいては抑止力による妨害を受けているという訳では無いということなのかしら。まあ、それは後で考えるとしましょう」

 

 ジャンヌの言葉を受け、何か考えていた様子を見せていたジャンヌ・オルタであったが、一度望幸の方に視線を送るとジャンヌの問いかけに対して改めて答え始めた。

 

「それで、何故そのようなことをするのか、でしたっけ? 簡単なことよ、憎くて憎くて堪らないからよ。このフランス……いえ、この世界そのものがね。故に滅ぼす。故に破壊する。それ以外に何か理由がいりますか?」

 

「──」

 

 ジャンヌ・オルタの瞳に映る余りに深い憎悪を垣間見てジャンヌは絶句する。その憎悪の深さを見て思わず本当にアレは私と同じ存在なのかと疑問を持つほどに。

 

「何故、そこまで……」

 

「ハッ、決まっているでしょう! 私はもう騙されない、もう裏切りを許さない、もう、置いてなど行かれない……!」

 

 音が鳴るほど歯を食いしばるジャンヌ・オルタ。そしてそれと共により一層深くなる憎悪と憤怒。だが、不意にジャンヌ・オルタは優しげな笑みを浮かべた。

 

「それに誰か一人を犠牲にしなければ存続出来ない世などいっその事滅ぼしてあげるのが慈悲というものでしょう? 故にそれこそが私の、ジャンヌ・オルタとしての救国方法です。まあ、あなたに理解される必要もされたくもないわ。憎しみも喜びも見ないフリをして、人間的成長を全くしなくなったお綺麗な聖処女様には特にね!」

 

「なっ──」

 

『いや、サーヴァントに人間的成長ってどうなんだ? それを言うなら英霊的霊格アップというか……』

 

 ジャンヌ・オルタの言葉に思わず突っ込んでしまったロマニに対してジャンヌ・オルタは不機嫌そうに眉を顰めた。

 

「──本当にやかましいわね。その口を閉じて黙ってなさい。じゃないと燃やすわよ?」

 

『!? ちょっ、コンソールが燃えだしたぞ!? あのサーヴァント、睨むだけで相手を呪うのか!?』

 

 通信越しに騒ぎ出すロマニを他所にジャンヌはもう一人の自分を見つめる。

 

「──貴女は、本当に“私”なのですか……?」

 

「……呆れた。本当に物分りの悪い田舎娘ね。ここまで分かりやすく演じたというのに。貴女が私? 笑わせないでちょうだい。私は私よ。この憎悪を理解できない貴女ではない」

 

 そこまで言ったところでジャンヌ・オルタは片手を挙げた。

 

「さて、話はここまでにしましょう。今まで雑魚相手で大して面白くもなかったでしょう? 喜びなさい、これから貴方達が戦う相手は強者です。きっと退屈なんてしないわ」

 

 その言葉ともに巨龍の背から3人の影が立香達の目の前に飛び降りた。

 

「ふん、ようやく余達の出番か」

 

「あら、随分と王様は張り切っている様子ね?」

 

「……2人とも当初の目的を忘れないでくださいね」

 

 闇に溶け込みそうなほど黒い貴族服を身に纏う槍を手に持つ男、茨を思わせるドレスを纏い、仮面を着けた女、羽帽子を被った男か女か分からぬほどの中性的な容姿を持つ剣士。その3人が立香達の目の前に降り立った。

 

 剣士の言葉に2人は嘆息しつつも望幸に向けて視線を向けた。そして思わず口を手で覆ってしまった。

 

「痛ましいにも程がある……だが──」

 

「あまりにも惨い……けれど──」

 

「「なんと美しい(歪んだ)輝き……!」」

 

 彼らは望幸が持つ魂の輝きを見て感嘆の息を吐いた。初めて見た頃とは比較にならぬほど歪み、壊れ、劣化している。されど、その魂の輝きは依然として変わってはいない。否、寧ろ洗練されていると言ってもいいほどであった。その目も眩む程の圧倒的な輝きに、死んだものであるサーヴァントは無意識的に惹かれてしまう。

 

 だが、それ故に2人は思わず顔を顰めた。何故ならその美しさは彼が今も尚苦しんでいる証でもあるのだから。

 

 なればこそ彼らが抱いた感情はひとつ。

 

「ああ、そうさな。これに関してだけは余も彼奴と同じ思いよ」

 

「ええ、そうね。私もそう思ったところだわ」

 

 そして2人の反応から望幸が今どう言う状態なのか、ジャンヌ・オルタから事前に知らされていた情報と掛け合わせることで正しく把握出来た剣士は剣を握る力が強くなる。そして同時に他の2人が抱いたであろう気持ちを抱き、その瞳に決意を宿す。

 

「ああマスター、必ず終わらせてみせよう」

 

 剣士が呟いたマスターという言葉はジャンヌ・オルタに向けてのものか、それともあるいはその視線の先にいる者に対してなのか。

 

 されど、変わらぬことはただ1つ。これより両陣営は譲れぬものの為に激突するということだけだ。




じゃあまた無人島生活するので失踪しますね


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赤く染まる剣

書いてたら邪ンヌがやばい事になったけどままええわ。
無人島でイースターの準備をしているので初投稿です。


 オルレアンでの初めてのサーヴァント戦から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー今回の敵サーヴァントはヴラド三世、カーミラ、デオンの3人ですね。邪ンヌは上からホモくん達の様子を見ているだけなので取り敢えず除外しておきます。仕掛けてくる様子も未だに見えませんしね。

 

 台詞から察するに邪ンヌは舐めプしてるのでしょう。一応こちらは倍の数はいるんですけどね! ホントそういうとこだぞ邪ンヌぅ! 

 

 ま、それはそれとして舐めプしてくれるのは此方としても有難い限りなので数の強みを活かした戦いをしましょうか。

 

 こちらはマシュも含めてサーヴァントが6人いるのに対してあちらは3人。つまりは2対1で戦わせることが出来ます。

 

 マシュの戦闘技術の糧になってもらいたいのでデオンには先生とマシュ、カーミラにはジャンヌとキアラ、残るヴラド三世にはカーマとエミヤで戦ってもらいましょう。

 

 ま、今回のサーヴァント戦は全員バーサーク化というの名の弱体デバフが掛かってるはずですし、戦い自体は簡単なことでしょう。特にスキルが防御よりの構成になっているデオンはRTAにおいては天敵でしかないので判断力を鈍らせるバーサークは最高のデバフです。邪ンヌちゃんサイコー! 

 

 そういうわけで立香ちゃんにもそんな感じでやるように伝えてさっさとやりましょう。

 

 >あなたは立香に考えた作戦を伝えると同時に自身のサーヴァントに指示を出した。

 

「うん、分かった! ケイローン先生とマシュは羽帽子を被った剣士の人をお願い! エミヤは槍を持った男の人を!」

 

「了解しましたマスター!」

 

 >あなた達の指示を受けてサーヴァント達は各自戦い始めた。

 

 それじゃあ後は隙を狙いつつ味方サーヴァントの援護をするだけの簡単なお仕事なので倍速します。超スピード!? 

 

 さて、この倍速の間にこの戦いの勝利条件について話しておきましょう。この戦闘は時間経過の敵サーヴァントのHPの一定の減少による勝利と敵サーヴァント撃破の2つの勝利条件があります。

 

 本RTAにおいては時間経過とHPの一定の減少による勝利を狙います。RTAなのになんで時間経過なんだよと突っ込まれるでしょうがこれにはいくつか理由があります。

 

 1つは敵サーヴァントを撃破した場合新たなサーヴァントが召喚されるため新たに対策を立てるのがロスに繋がる可能性が高いからです。

 

 ここで邪ンヌ率いる敵サーヴァントを壊滅させた所で邪ンヌが逃げ切ってしまえば聖杯によって新たなサーヴァントを召喚してしまいます。これによって本来此方が有利を取れるサーヴァントであったのが、撃破したことによって不利になるサーヴァントを召喚されてしまったためにロスになる、という可能性があるのです。なので今回は撃破はしません。

 

 2つめですが、此方は時間経過による野良サーヴァントもといこちらの味方になるであろうサーヴァントをこの戦いに介入させるためです。このイベント自体は確定で起きるようなので基本的にはサーヴァントと縁を結ぶためにも時間経過による勝利を狙った方がうまあじなのです。

 

 また邪ンヌがここに来ている以上、ここで邪ンヌをぶっ倒すことも可能ではあるのですが、終局で呼ぶためのサーヴァントとトロフィーのスノードロップを獲得するための縁はどれだけあってもいいのでここで倒すのはRTA的にまずあじなので邪ンヌは見逃します。

 

 時間経過による勝利のデメリットは獲得経験値が撃破時に比べ落ちるくらいですが、後ほど全員潰すので問題はありません。

 

 さて、話をしている間に終わり……終わ……。

 

 終わってねえな? 

 

 あれー? おかしいね? 終わらないね? 

 

 おかしいですね……本来であればバーサークしている鯖なんてケイローン先生などの様な高練度の技術を持ったサーヴァントがいればちゃちゃっとHP減らして終わるはずなんですが、見たところ減ってはいますが一定のラインまでは達していませんね。

 

 このままでもクリアは出来るとは思いますが、RTA的にはまずあじ以外の他でもないのでホモくんも参戦しましょうかね。

 

 取り敢えずは邪魔なデオンからやりますか。細身の剣なのでヴラド三世よりは調整もしやすいでしょう。イクゾー! デッデッデデデデ! (カーン)

 

 >あなたはデオンの方へ向けて走り出した。

 

「望幸!?」

 

「あいつ一体何をするつもり……?」

 

 妨害を行うなら動きを封じるガンドという手もありますが先程からガンドを避け続けてるあたり、ガンドについて警戒をしてるのでしょう。本当にバーサークしてるんですかねこれ。

 

 まあ、ですのでガンドをぶっぱなし続けるのは時間的には非効率なので他の策を弄します。

 

 先生とマシュの戦いを見たところデオンの剣捌きによって攻撃をいなされている場面が多いのでデオンの剣を封じる作戦でいきますかね。

 

 まー、たかがマスター如きがサーヴァントの動きを封じる事なんて無茶無謀でしかありませんが、やり方によっては少しの間ですが確実に動きを止める方法があります。ただ、調整に失敗すれば1発ゲームオーバーです。

 

 また、その少しの間にサーヴァントが倒してくれないとゲームオーバーになる可能性が高いですけど、まあRTA的には致し方なし。

 

 ではデオンが刺突の構えをとった瞬間突っ込みます。

 

 >あなたはデオンの動きを見計らっている。

 

デオンに向けて銃を……いや、あの角度だとデオンの手前になるわね。一体何を──まさか!」

 

 >デオンは剣を引き強く踏み込んだ。

 

 ここだぁぁぁっ! (シュルク)

 

「セイバー引きなさい!」

 

 >デオンは刺し穿つようにケイローンに向けて刺突を放った。

 >あなたは銃を放ち弾丸と位置を置換することでデオンの目の前に現れた。

 

「えっ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 >デオンの剣はあなたの腹部を貫いた。

 >HPが大幅に減少した。

 

「望幸さん!?」

 

「望幸、あなたという人は……」

 

「あの馬鹿……っ!」

 

 セーフ! 予測通りのHP残量です! ぶっちゃけやばい勢いでHPが削られましたが、耐久に振っていたおかげと位置の調整のおかげで平気です! ギリ致命傷ではありません! 

 

「う、嘘だ……なんで、こんな……」

 

 >デオンはあなたを刺し貫いて赤く染まった剣を見てただでさえ白い顔を更に蒼白くさせて動揺している。

 

 おっ、なんか動揺してくれてますね。此奴はうまうまですよ。ついでに少しでも拘束するためにデオンの手首をにぎにぎしてあげましょう。

 

 もう逃がさねぇからなぁ? 

 

 >あなたはデオンの手首を掴んだ。

 

「あ、ちが、そんなつもりじゃ……」

 

 はい、じゃあ動きは止めたので後はよろしくぅ! 

 

「う、あ、マス──あぐっ!」

 

 >ケイローンの放った矢がデオンの両肩を射抜いた。

 >デオンが後ろに大きく仰け反ったことによりあなたの腹部から剣が勢いよく引き抜かれる。

 

 うーん流石ケイローン先生。見事にデオンの両肩を射抜いてくれたのでこの場面ではもはや剣をろくに振るえないでしょう。撤退すれば邪ンヌが聖杯の力を使って治すなりなんなりすると思いますが、この場面での敵サーヴァントのHPをさっさと削っておきたいので構いません。

 

 剣もまともに振るえないセイバーなんてアーチャーからしてみればただの的でしょうし、ちゃちゃっとHP削ってもらいましょうか。

 

「望幸、その傷を早く治しておきなさい。治癒魔術は使えるのでしょう? それからあなたには後で説教です」

 

 うっす。ケイローン先生からの説教が確定しましたが、これも織り込み済みなので問題はありません。さて、ケイローン先生の言う通りちゃちゃっと傷を治しましょう。

 

 幸いなことに立香ちゃんはエミヤの方のサポートでホモくんが直接ぶっ刺された所を見ていませんでしたし、後でケイローン先生達から話を聞いたとしてもストレス値は直接見た時よりも上がり幅は少ないはずなのでOKです。

 

 ナスビちゃん? さて、なんのことやら……。

 

 取り敢えず傷を見かけだけでも治しておきましょう。完全に治癒するまでには時間はかかりますが、見かけだけでも治しておけば立香ちゃんのストレス値を抑制できますし。

 

 さて、デオンは──

 

 >デオンは震える手で赤く血に染まった剣を見て茫然自失となっている。

 

 お? なんかまだ動揺してますね。いい乱数引いてんねえ! 隙だらけというしかありませんね。

 

「あなたにも思うところがないわけではありませんが……討ち取らせてもらいます」

 

 あ、ケイローン先生討ち取るのはちょっと勘弁してください。

 

 >ケイローンは弓を引き絞り、未だ茫然自失となっているデオンの眉間に狙いを定めた。

 

「──はっ、そんなことさせるわけないでしょう?」

 

 >矢を放とうとした瞬間、ケイローンに向けて巨大な獄炎が降り注いだ。

 >ケイローンはそれを後ろに跳ぶことで回避する。

 

「ぐっ……!」

 

「セイバー、あなたは下がっていなさい。ここからは私が相手をします」

 

「……分かった」

 

 >ジャンヌ・オルタの言葉により正気に戻ったデオンは後ろへと下がった。

 

「さて、はじめましょうか」

 

 >武器を構えたジャンヌ・オルタを中心に溢れた魔力が獄炎のように辺りを焼き尽くす。

 

 は? ここで邪ンヌ参戦するの? うせやろ? 

 

「……ふっ!」

 

 >ケイローンからまるで機関銃のように連続して放たれた矢がジャンヌ・オルタへと迫る。

 

「こんななまっちょろい矢が私に当たるとでも?」

 

 >しかし、ジャンヌ・オルタの周囲に揺らいでいた獄炎が壁となることでジャンヌ・オルタに届く前に焼き尽くされる。

 

「今度は私の番ですね。我が憤怒、味わってもらいましょうか」

 

 あ、なんかやばそうな気がする! ホモくんは1度撤退させてもらう! 

 

 >ジャンヌ・オルタはケイローンへと手を向けると未だに空を泳ぐ巨龍すら容易く飲み込むであろうほどの巨大な獄炎を放った。

 

「私が守ります!」

 

 >マシュがケイローンの前で盾を構えたが、獄炎は盾ごとマシュ達を呑み込んだ。

 >その獄炎の熱量によって辺りの大地は融解し、まるで灼熱地獄を想起させる光景を作り出した。

 

「マシュ! ケイローン先生!」

 

 >獄炎に呑み込まれたマシュ達を見て立香が悲痛な叫びをあげる。

 

 嘘やろ? 邪ンヌクソ強くない? 聖杯ありきとはいえこんな強かったっけ? まあ、流石に今の一撃でやられはしないと思いますけど。

 

 って、エミヤがヴラド三世との戦いの隙をついて邪ンヌに向けて矢を放とうとしてますね。邪ンヌの性格的にケイローン先生達を倒したと思って油断してると思いますし、攻撃は当たるでしょうね。流石エミヤだぜ! 

 

「不意を突いたつもりですか?」

 

 >視覚外からジャンヌ・オルタの蟀谷に向けて放たれたエミヤの矢を難なくと手で捉えた。

 

 は? 

 

「ほら、返すわよ」

 

 >掴んだ矢をオーバースローの要領でエミヤに向けて投げ返した。

 >その矢の勢いはジャンヌ・オルタの獄炎をブースターにしてエミヤが放った時よりも疾い速度でエミヤの元へと向かう。

 

「ぬおっ!」

 

「ふん、余を相手にして他所を向くからだ。それにあの者は癪なことではあるが我らの中で最も強いぞ」

 

 >間一髪と言った様子で体を傾けて避けたエミヤだったが、回避をしたことで体勢を崩したところにヴラド三世の槍の刺突が迫る。

 

「ちっ、仕方ないですねぇ」

 

 >エミヤの心臓を貫こうとしたがカーマの操る三鈷杵が間に入ることにより、ヴラド三世の攻撃を防いだ。

 

「すまない、助かった」

 

 >エミヤはカーマに礼を言いながらヴラド三世から距離を取りつつ仕返しとばかりに矢による攻撃を仕掛ける。

 >だが、その矢はヴラド三世が操る槍によっていとも容易く打ち払われる。

 

 まって、まって? なんでこんな強いの? 特に邪ンヌやばくない? エミヤの矢を避けるんじゃなくて掴む? しかも見もしないで? その上相当な勢いがあったのに体幹が少しもブレてなかったよね? 

 

 これ、やばくない? タイム大丈夫かこれ? 

 

 >どこからともなく飛来してきたガラスの薔薇がジャンヌ・オルタ達目掛けて降り注ぐ。

 >しかしジャンヌ・オルタは旗を勢いよく振るうことで全てを打ち砕いた。

 

 うおおおおおお!! Vive La France(フランス万歳)!!! グッドタイミングです! 

 

「優雅ではありません。貴女はそんなに美しいのに血と憎悪でその身を縛ろうとしている。善であれ悪であれ、人間ってもっと軽やかにあるべきじゃないかしら?」

 

「……知ったような口を利かないで貰えますかマリーアントワネット」

 

 >あなた達を守るように白い髪を風に靡かせて現れたのは天真爛漫で慈しみと優しさに溢れた少女だった。

 

 やったあ! 条件クリアによる勝利です! この私に運は味方してくれている! (吉良吉影並感)

 

「貴女は私の名を知っているのね。それと何故そこまでの憎悪を抱いているのかしら?」

 

「宮殿で蝶よ花よと愛でられ、何も理解出来ぬまま首を断ち切られた王妃に、我々の憎しみが理解出来るとでも?」

 

「そうね、それは分からないわ。だから余計に知りたいの、竜の魔女」

 

「なに?」

 

 >ジャンヌ・オルタは怪訝そうな目でマリーアントワネットを見つめる。

 

「分からないことは分かるようにする。それが私の流儀ですもの。それとね、私が最も知りたいのは貴女が本当は何に対してそこまで怒っているかなのよ」

 

「──貴女は私の敵。ならば答える義理もありません。敵となるのであれば私は一切の容赦もなく焼き払う。ああ、ですがそこに隠れているサーヴァントも含めこの人数差は少々分が悪い。故に今回は引かせてもらいましょうか」

 

「おいおい、バレてたっていうのかい?」

 

 >そう言いながら瓦礫の影から現れたのは黒服に身を包んだ音楽家のような格好をした金髪の男だった。

 

 お、アマデウスや。本来でしたらアマデウスの宝具を使って逃げる予定でしたが、なんか流れを見るに邪ンヌが逃げようとしてますね。まあ、結局の所結果は変わらないのでどっちでも構いませんけど。

 

「この人数差で逃れられると思っているのですか?」

 

 >そう言ってジャンヌ・オルタに対して敵意を向けているキアラであったが、それを見てジャンヌ・オルタは不敵に笑う。

 

「ええ、思ってるわ。──何故なら私は竜の魔女。故にこんなことだって出来るのよ」

 

 >ジャンヌ・オルタが指を鳴らした瞬間、彼女を中心に巨大で尚且つ複雑な魔術陣が展開された。

 >そしてその魔術陣に尋常ならざる魔力が注ぎ込まれていく。

 

『まずいぞ!? その魔術陣は召喚に関するものだ! 早く止めなくちゃ──』

 

「ふん、随分と察しがいいのね? けどもう手遅れよ。この召喚陣は既に発動している。故にもう止められないわ」

 

 >魔術陣が一際強く光り輝いた瞬間、その魔術陣から先程殲滅したワイバーンの群れとは比較にならぬほどの大量のワイバーン達が我先にへと溢れ出した。

 

「さあ、こいつらと戯れておきなさいな」

 

 ウッソだろお前。邪ンヌこんな魔術使えたか? ジルならまだしもよお! 

 

 >あなた達は襲いかかるワイバーン達と戦いながらも空を泳ぐ巨龍の背に乗って悠々とこの場から離脱するジャンヌ・オルタをただ眺めることだけしか出来なかった。

 

 ええい、仕方ありません! 臨時で竜の牙の取り放題が出来ると思えばいいんです! やったらああああああ!!! 

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




デオンくんちゃんごめんな……。でも精神攻撃は基本だから仕方ないよね(決闘者並感)
それにしても早く4章まで進みたいところ。そんなことを思ったところで失踪します。


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森林の霊脈地

いいことがあったので連続初投稿です。


 サーヴァント戦終了から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 さて、無事にサーヴァント戦とワイバーン戦を切り抜け、近くにあった森林の霊脈地をベースキャンプにして先程であったマリーとアマデウスとコミュを取りながら過ごしています。

 

 ケイローン先生からのお説教に関してですが、RTA的にはまずあじなのでは? と思われると思います。ですが、そもそもの話ケイローン先生がお説教をしてくるのは余裕がある時だけです。流石にケイローン先生もやるべき時とやるべきでない時はしっかり把握出来てるため、お説教をする時はこういった休息時間の時にやってきます。

 

 こういった時間でしたらやることも特にないためタイムロスにはなりにくいです。なので思う存分説教してもらいましょう。

 

「いいですか? あなたは残されたたった2人のマスターであることをしっかりと認識してください。そもそもですね──」

 

『僕からも言わせてもらうけど望幸くんは無茶しすぎなんだよね! 今まで何の異常もなかったバイタルが突然滅茶苦茶になった時なんか僕の心臓と胃が持たないんだぞぅ! それから──』

 

「マスター? 私言いましたよね? 後ろに下がっててくださいと。ですのに何故前に出ているのですか? その上大怪我をされてしまうなどと──」

 

「フォウフォーウ! キャーウ!」

 

 >あなたはケイローン、ロマニ、キアラの3人に叱られ、あなたの頭に陣取っているフォウにべしべしと叩かれている。

 

 あーはいはい、何かケイローン先生だけじゃなくて3人に説教されてる上にフォウくんに叩かれまくってますけどスキップスキップ。これも速さのため、必要な犠牲です。ちゃちゃっとすっとばしておきましょう。

 

 そういえばこの時間帯であればそろそろ邪ンヌが嗾けてくる敵サーヴァントが来るはずです。

 

 それが誰なのか気になるところですね。取り敢えず先程戦っていたデオン、カーミラ、ヴラド三世は除外するとして流れ通りならばマルタ(ステゴロ聖女)。次点でマリーに執着しているサンソン(処刑人)辺りですね。

 

 まあどちらが来ようがこちらが有利を取れるので構いませんが……。

 

 っと、そうでしたそうでした。新しい霊脈地に来ましたしカルデアから新しくサーヴァントを呼び出しましょう。立香ちゃんのクーフーリン(槍ニキ)は確定だとしてホモくんはアルトリア・オルタかもしくは玉藻か。まあ、ぶっちゃけたところ選ぶのはアルトリア・オルタですけどね。

 

 玉藻を呼ぶと前にやった置換による治療がやりにくいことこの上ないですし、カルデアのバイタルチェックの誤魔化しも出来ないので。せめて呼ぶにしても最終局面辺りでしょう。

 

 それに今回の玉藻は実力が未知数なので不確定要素をかなり孕んでいるんですよねえ……。今のところタイムに関してはそこそこと言ったところなので、不確定要素が多い玉藻を導入したことでタイムロスしてリセットは怖いですし、今は安定をとってアルトリア・オルタを呼びますかね。

 

 >3人からの説教が終わった頃にあなたのもとへ立香がやってきた。

 >立香はあなたの膝の上に置かれている手にそっと手を重ねてあなたの目を覗き込むように見つめた。

 

 お、なんだなんだ立香ちゃん。君も説教か? 

 

「あのね、一つだけ約束して欲しいことがあるの。さっきの行動だってきっと望幸も何か考えがあってやってるんだと思う」

 

「先輩、それは──」

 

「どれだけ無茶をしてもいい。だけど必ず生きて。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 >立香は何か強い意志を灯した瞳であなたを見つめる。

 

 ……まあ、少なくともこんな所で死ぬつもりはないっすね。そもそも死んだらリセ確定ですし。なのでここはしっかり頷いておきましょう。上手くいけばストレス値を抑制できるかもしれませんしね。

 

 >あなたは立香の目を見つめ返して頷いた。

 

「ん、約束だからね」

 

 >立香はそう言ってあなたに向けて小指を差し出した。

 

 これなんすかね? 立香ちゃんはホモくんに何を求めてるんでしょうか(困惑)

 

「……もうっ! 指切りだよ指切り!」

 

 あー……ああ! はい、指切り! 割と子供っぽいところあるんすね立香ちゃん。そういう純粋なところがサーヴァントに気に入られてるところでもあるんですかね。

 

 >あなたは立香の小指に自身の小指を絡ませた。

 

「ふふっ、こうやって指切りしてると小さい頃を思い出すなあ……。望幸と約束事する時はいつもこうやってたもんね?」

 

 はえー、そうなんすねえ……。

 

 さて、ホモくんと立香ちゃんの幼少時代の事が少しわかったところでそろそろサーヴァント召喚に移りましょう。敵サーヴァントがやってくる前に召喚したいですしね。

 

 >あなたは新たな霊脈地に来たのだからカルデアからサーヴァントを呼ばないかと提案した。

 

「そうですね、敵の全容が分からない以上味方が多いに越したことはありません」

 

「私もケイローンに同意だな。それで誰を呼ぶのかね?」

 

 >あなたはクーフーリンとアルトリア・オルタはどうだろうかと提案した。

 

「まあ、確かに戦力として数えるならばあの男は特級のサーヴァントだが……」

 

 エミヤが渋ってますねー。まあ、クーフーリンとよく喧嘩するからね仕方ない仕方ない。でもこれ人理修復なんだよね……。というわけでクーフーリンとアルトリア・オルタを召喚します(無慈悲)

 

 ナスビちゃーん、盾貸してくださーいなー! 

 

「はい、設置ですね! 任せてください。どの辺に置きますか?」

 

 そーですねー……。じゃあここら辺でオナシャス! センセンシャル! 

 

 >あなたが指示した所にマシュが盾を置いた。

 

 ついでに獣避けの魔術でも張っておきましょうか。戦うとはいえ、どの道ここを拠点としている以上不在の間に畜生共に荒らされるのは勘弁願いたいんで。なんでこのゲームこんな所までリアルにしてんだ……? 

 

 >あなたが獣避けの魔術を描いている横でマシュがあなたの顔をしげしげと見つめている。

 

 この魔術が気になるんですかね? 

 

 >あなたはどうかしたのかと尋ねた。

 

「あ、いえ! 望幸さんがそうやってる所を見るとなんだか()()()()……? ううーん? なんて言えば分からないんですけど……えーと」

 

 >あなたに尋ねられたマシュは慌てたように手を振って答えるが、答えていくうちに自身が抱いていた感情がよく分からないといった様子で混乱していた。

 

 これ、前にも見たイベントですね。どういうフラグで発生するのかはよく分からないんですけど、このイベント自体が何かの引き金になるってこともなかったんですよね。まあ所謂発生するだけ無駄のクソイベっすね。

 

 そもそもナスビちゃんがホモくんに懐古の念を持つ意味が分かりませんし……。ギャラハッドの線から考えてもルート構築段階での試走した時にやったルートでならまだしも今回のルートではそっち関連は特にやってませんしね。

 

 ま、余談はさておき召喚サークルの設置も終わったのでクーフーリンとアルトリア・オルタを呼びましょうか。

 

 そんなわけで立香ちゃんを召喚サークル前に誘導してあげましょう。

 

 >あなたと立香は召喚サークルの前に立ち、カルデアにいるサーヴァントを呼び出した。

 

「おっと、ようやく出番か待ちくたびれたぜ」

 

「ふん、貴様に言いたいことはあるが先程叱られていたようだしな。私からは何も言わんでおこう。ただ帰ってからは覚悟しておくといい。1匹荒れ狂ってる奴がいたからな」

 

 一体誰が荒れ狂ってるんですかね? (すっとぼけ)

 

 まま、それはそれとして──

 

『休んでるところ悪いけどサーヴァント反応だ! 数は3騎! それからその後ろに特大の反応がある。皆急いで戦闘態勢を整えてくれ!』

 

 おっと、狙ったかのようなタイミングだぁ! まあ何にせよありがたいことこの上ないですが、3騎というのが気になるところ。あとロマニからの情報で特大の反応……というところを考えるにタラスク連れたマルタはほぼ確定でしょうね。

 

 ジークフリート(すまないさん)がいればタラスク相手に特攻取れるんですが……まあ、本体のマルタ潰せばタラスク消えますし、タラスクはクーフーリンとアルトリア・オルタ、エミヤで時間稼ぎをしてもらってその間に残るサーヴァントを潰しましょうか。

 

 >あなた達が周囲を警戒していると茂みを掻き分けるような音とともに木が圧し折られるような音が鳴り響く。

 

 わざわざまともに戦う必要もありませんし、出てきたところをアルトリア・オルタの宝具でぶっとばしましょうかね。あ、いやそれだと縁が結べないか……? んーまあ、とりあえずはいつでも宝具を撃てるようにしてもらっておきましょう。

 

 >あなたはアルトリア・オルタに宝具の準備をするように頼んだ。

 

「ああ、そういうことか。いいだろう、魔力を寄越せマスター」

 

 >その言葉とともにアルトリア・オルタの持つ黒き聖剣が妖しく輝きはじめる。

 

 これで準備はOK。敵対者だと判断した場合即座にぶっぱなします。さて誰が来ますかねー。

 

 >茂みを掻き分けて先に出てきたのは2人の大柄な男達だった。

 

「くっ、先回りされていたか……!」

 

「……いや、待ってください。どうやら敵意はなさそうですよ」

 

 んんんん? なんでジークフリートとゲオルギウス(冤罪カメラマン)が? 特にゲオルギウスは街を防衛してるはずでは? この人の性格上街を見捨てて逃走するということはありえないでしょうし……。

 

 >彼らの後方から地響きを鳴らし、木々を粉砕しながら何かがこちらに向かってきている。

 >そして現れたのは竜と亀の合いの子のような風貌をした亀のような竜とその背中に跨っている女性だった。

 

「本当にここにいるとはね……。まあいいわ」

 

 やっぱりマルタじゃないですかー! まま、ええわ。戦闘が始まった瞬間アルトリア・オルタの宝具ぶっちっぱで終わらせましょう。

 

 3騎の内、2騎がこちらの味方になるサーヴァントでしたらタラスク諸共ぶっとばせばいいだけの話ですからね。何せ戦力を割く必要はありませんし。

 

「──何者ですかあなたは」

 

 >旗の穂先を亀のような竜の上に跨る女に向けてジャンヌは問いただした。

 

「私の真名()はマルタ。あなた達を見極めるために此方に来ました」

 

『マルタ……? もしかして聖女マルタなのか!? ということは彼女が跨っているのはあの祈りで屈服させたというタラスクか!』

 

 まあ、どっちかって言うと祈り(物理)なんですけどね。おっかねえステゴロ聖女やでぇ……。聖人連中って基本的にゴリラの集まりなんですかね? 

 

「何故貴方のような方がそちらの味方をしているのですか?」

 

「──確認したいことがあるからよ」

 

「確認したいこと……?」

 

「ええ、ですがそれを言うつもりはありません。そして何よりも時間が惜しい。なのでさっさと始めましょうか。貴方達があの“()()()()”に届きうるのか。見極めさせてもらいます。──行きなさい、タラスク!」

 

 >その言葉とともに彼女はタラスクと呼ばれた竜をあなた達に向けて嗾けた。

 

 はいじゃあ敵対したんでね、宝具ぶっぱで終わりですわ。対ありでし──

 

「悪いが既にこちら準備済みなのでな。一撃で消し飛ばさせて──」

 

「悪いけれど、そうするだろうってことは()()()()()()()()が予測済みなのよ」

 

 >アルトリア・オルタが宝具を放とうとした瞬間、先程まで立っていた場所にヒビ割れを作りながらいつの間にかアルトリア・オルタの目の前に現れたマルタが拳を放つ。

 

「ぐっ……! この──」

 

 >風を裂きながら迫り来る拳を剣の腹で受け止めたアルトリア・オルタであったが、あまりの威力に大きく後方へと後退させられた。

 

 ファッ!? ちょっと待って! アルトリア・オルタがぶっ飛ばされたんですけどぉ! これ不味いっすよ! だってホモくんがいたのはアルトリア・オルタの真横ですよ!? 

 

「さて、と」

 

 あ、これ不味い。

 

 >マルタはあなたの方へ振り向くと同時にあなたの側頭部目掛けて猛烈な勢いの回し蹴りを放った。

 

 回避ー! 

 

「む、この動き……。なら──」

 

 >しゃがむことで回避をしたあなたに対してマルタは拳を上から放つ。

 

 置換でお祈り回避です! 

 

 >あなたは置換呪術を使うことによりマルタから大きく距離を取った。

 

 おっしゃ、お祈り回避成功──

 

「悪いけどあんたがどういう風に逃げるかも聞いてるのよ」

 

 >置換呪術により大きく距離を取ったはずだと言うのに既にあなたの目の前で拳を固く握り締めているマルタの姿があなたの目に映る。

 

 してないよ! さっきのフェイントかよ! ヴェアアアアアアア(フルフル)

 

「望幸!」

 

 >危機的状況のあなたの姿を見て悲痛な顔であなたに手を伸ばす立香。

 

 あかんこれじゃホモくんが死ぬぅ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──図に乗るなよ」

 

 >その言葉と共に横合いからとんできた黒き閃光がマルタへと襲いかかる。

 >だがマルタはそれを後方へ大きく跳躍することで回避する。

 

「かなり遠くまで飛ばしたつもりでしたが……」

 

「はっ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なるほど、それもそうです──ねっ!」

 

 >目にも止まらぬ速度で先程の黒き閃光を放ったアルトリア・オルタに対して攻撃を仕掛ける。

 >アルトリア・オルタはその猛攻を捌きつつも場所を変えるためか、マルタを誘導するように森の奥の方へと向かっていった。

 

 生きてるぅ〜↑ 生きてる、あっはっはっはっ! あー↑ 生きてるよ! (ONDISK並感)

 

 アルトリア・オルタの迫真の攻撃のおかげでホモくんが何とか生き残りましたね。いやよかったよかった。マルタの攻撃とかまともに当たれば一発で死にますよ。

 

 とりあえずホモくんが生き残ることが出来たので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




こっそり撒いた伏線に気づく勘のいい読者は好きだよ(大胆な告白)
ちなみに裏話だけどマルタさんの攻撃は当たっても死にはしない。ちゃんと加減はするからね。まあただ死なないってだけですけど。

それじゃあ失踪します!(大胆な失踪宣言は作者の特権)


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月下の密会

今回はRTAパート無しです。
今現在かなり昂ってるので筆が進みますね。

そんなわけで俺の最後の初投稿だぜーッ!受け取ってくれぇーッ!(シーザー並感)



 アルトリア・オルタとマルタは闇に包まれたように暗き森の中を互いに走り抜きつつも時折牽制するように攻撃を放つ。

 

「はっ、随分と素直に誘いに乗ってきてくれたものだな!」

 

「ええ、何せマスターに聞かれたら不味そうだもの──ねっ!」

 

 黒き聖剣によって生み出された魔力弾はマルタの顔へと迫るがマルタはそれを拳に魔力を纏わせて難なく打ち払う。逸れた魔力弾は辺りの木々へと当たると爆発を引き起こし、地面を焦げ付かせる。

 

 反撃とばかりにマルタはアルトリア・オルタに向けて拳を放つがその一撃はいなされ、逸れた一撃が地面を砕く。

 

「それはどっちのマスターだ?」

 

「決まってんでしょ──あの子(望幸)のことよっ!」

 

 マルタは続け様に薙ぎ払うように蹴りを放つがアルトリア・オルタはそれを宙返りの要領でひらりと避ける。その下ではマルタの蹴撃により発生した風圧が前面の木を大きく凹ませていた。

 

 それを見たアルトリア・オルタはあの攻撃には当たりたくないものだと思いながらも、空中にいる状態で聖剣に魔力を纏わせ黒き閃光を放つ。

 

 だがその攻撃をマルタは高く跳躍することで回避し、そのままの勢いで空中にいることで逃げ場のないアルトリア・オルタの腹を殴り抜く。

 

「甘いな」

 

 その言葉とともにアルトリア・オルタはマルタの拳が接触した瞬間、己の体を自ら回転させ威力を逃がした。そしてそのままの勢いでマルタの首目掛けて聖剣の斬撃を放つ。

 

「っと、危ないわね!」

 

 しかしマルタはそれすらも回避した。猫のように体を捩り、あろう事か聖剣を掴みそれを使って更に高く上空へと舞う。そして──

 

「ハレルヤッ!!」

 

 気合一閃。

 

 天高く舞ったマルタはその位置からの踵落としをアルトリア・オルタに放った。その速度は言うに及ばず。ギロチンを想起させるほどの威力を以ってアルトリア・オルタに迫り来る。

 

「チィッ!!」

 

 その攻撃をアルトリア・オルタは魔力放出による空中でのブーストにより間一髪で避ける。目標を失ったマルタの踵落としは大地に叩きつけられ爆音とともに小規模のクレーターを作り上げる。

 

 発生した砂煙を払うように手を振って中から現れたマルタはほんの少しだけ楽しげな笑みを浮かべていた。

 

「今のは当たると思ったんだけどね」

 

「はっ、聖女の名が泣く威力だな。本当は拳闘士ではないのか?」

 

 皮肉を言うアルトリア・オルタにマルタはイラッとしたのかやや眉を顰めた。

 

「うっさいわね。祈りだけじゃ解決しない事だってあるのよ」

 

「それは聖女と崇められた貴様が言う台詞か?」

 

 嘆息しながら聖剣を肩に担ぐアルトリア・オルタ。然れどその瞳は油断なく目の前のマルタを見据えている。そして一瞬ブレるほどの魔力放出を使った速度で近づき、聖剣に魔力を纏わせた状態で横薙ぎに一閃。

 

マルタはその一撃をアッパーカットによって打ち上げようとして──

 

「──ふっ!」

 

 マルタは上体を後ろに反らすことで避けた。そしてその目に映ったのは破壊の嵐であった。アルトリア・オルタはあの一撃に己の宝具を乗せて放っていたのだ。それ故に絶大な破壊力を伴っていた。もし仮に迎撃していたのであれば間違いなく上半身が持っていかれていただろうことは疑いようはない。

 

 マルタは上体を反らした体勢から後方転回の要領でアルトリア・オルタの顎に向けて蹴りを放つが、それはアルトリア・オルタが体を少しだけ反らした事により不発に終わる。

 

 そうして二人はしばらくの間、一進一退の攻防を続けながら彼らがいた場所から離れた場所にある森林の中の開けた場所に出た。

 

「さて、ここなら良いでしょう。私、あんたに聞いておきたい事があるのよ」

 

「ほう、それは何だ?」

 

「単刀直入に言うわよ。あんたは()()()()()()()()()()()()?」

 

「……」

 

 その問いにアルトリア・オルタは思わず黙り込んでしまった。

 

「恥ずかしい話だけど私はあの子に関しての記憶を殆ど失って──いや()()()()()()って言う方が正しいわね。それをジャンヌ・オルタが自身の記録から持ち出したものを見たことで思い出すことは出来たわ。けど、それでも全てじゃあないのよ」

 

「なるほど、それで私か」

 

 その話を聞いてアルトリア・オルタは合点がいったと様子で頷いた。

 

「ええ、あなたは()()()()()()()()()()()()()()()だもの。だから教えなさい。あの時──マスターの周囲に不可思議な魔術陣が現れた時何が起きた?」

 

「それは……」

 

 言い淀むアルトリア・オルタであったが、マルタはそんなことは関係ないと言わんばかりに続ける。

 

「忘却補正のランクAを持つジャンヌ・オルタですらその時の記憶がほとんどなかった。まるで何かに毟られたかのようにね。ジャンヌ・オルタは最初は抑止力によるものだと考えていたみたいだけれど、キアラの話を聞いてそれは違うと判断したみたいなのよ。何せキアラもカーマもビーストであるはずの彼女達ですら記憶を剥奪されていた。特にゲーティアの方は念入りに奪われてるみたいね」

 

 マルタがそこまで告げたところでアルトリア・オルタはふぅ、と軽く息を吐いて聖剣を霊体化させた。

 

「先に言っておくぞ、私も詳細な内容は覚えてはいない。精々がお前達よりも多少知っている程度だ。それでもいいか?」

 

「構わないわ」

 

「なら話そう。だがその前に──おい、マーリン。()()()()()()()()()()()。私達の周囲に幻術と防音の魔術を張っておけ。あの馬鹿に勘づかれると不味いからな」

 

 アルトリア・オルタが虚空に向けてそう言うと何処からともなく彼女達の周囲に花弁が舞い始めた。そして彼女達を中心に薄いドーム状の膜が張られると忽然と姿を消した。いや、正確に言うならば見えなくなったと言うべきだろうか。

 

 それを確認したアルトリア・オルタはマルタの方へと改めて向き直る。その表情は月明かりに照らされているだからだろうか。どこか悲しげな様に見えた。

 

「さて、何から話そうか──」

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「私が覚えているのはこのくらいのものだな」

 

「……なるほどよく分かったわ。注意すべきはマスターの瞳が赤く染まった時ね」

 

「ああ、そうだ。しかし彼奴の蒼い瞳が完全に染まり切る前であれば防ぐことも出来る。だが、彼奴が何を以ってそれをやめるのかを判断しているのかが未だに判明していない」

 

 アルトリア・オルタはお手上げだと言わんばかりに肩を竦めてため息を吐く。

 

「分かったわ。それと一応聞いておきたいのだけど、今は他のサーヴァント達も覚えている子もいるけどそれに関して思い当たることは?」

 

「それはマーリンだろうな。私も魔術に関しては然程詳しくない。故に何をしているのかは分からんが、聞いたところによると()()()()()()()()()()()()()()

 

「……そう言えば彼奴冠位のキャスターだったわね」

 

 今更ながらに思い出したことに思わず顔を顰めるマルタ。あのどうしようもないロクデナシが冠位だと言うことに今一納得がいかないと言った様子であった。

 

 そして同時にある事に気がついた。

 

「彼奴はあの魔術陣が何か分かるんじゃないの? 仮にも冠位のキャスターなんでしょ?」

 

「──いや、それが()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんですって?」

 

 耳を疑うような言葉に思わず聞き返してしまったマルタ。仮にも冠位のキャスターが何一つとして分からない魔術式があるのかという当たり前の疑問。その疑問に答えるようにアルトリア・オルタは話を続けた。

 

「どの知識と照らし合わせても欠片たりとて合致しない。そもそもアレは本当に魔術なのかと言っていたな」

 

「そもそもの話、魔術ではない可能性があるということね。あーもう、本当に我がマスターながら面倒なことをしてくれるわね」

 

「全くだな」

 

 2人は互いに顔を見合わせて苦笑した。

 

「それで、貴様はこれからどうするつもりだ? 戦うと言うのであれば相手をするが」

 

「いや、悪いけれど私はここで引かせてもらうわ。ジャンヌ・オルタにも話しておかないといけないしね──って、ああ……タラスクには悪い事をしちゃったわね」

 

 己が呼び出したタラスクの気配が消えてしまったことに申し訳なさと寂寥感を感じつつも、自分が為すべきことのために立ち止まってはいけないのだと知っているからこそ彼女はジャンヌ・オルタが待っているであろう城へと帰らなくてはいけない。

 

 そして身体を霊体化させる直前にマルタはアルトリア・オルタの方を向いた。

 

「こっちも教えておくことがあるわ」

 

「なんだ?」

 

「ティエールに向かいなさい。そこに清姫とエリザベートが行くようにファントムが誘導してるわ」

 

「了解した。マスターにも伝えておこう」

 

「あとあの子──ジャンヌ・オルタと戦う時はジークフリートを連れてきておきなさいな。あの子は捻くれてるくせに根は真面目なもんだから1人で全部背負おうとするのよ。まったく……ほんと誰に似たんだか」

 

「ジークフリートだと?」

 

 ジークフリートを連れてこいという言葉に思わず疑問を抱くアルトリア・オルタ。ジークフリートを連れてこいとは一体どういう事なのか、ファヴニール関連かと思いはしたが、憶測ではあるが戦う場所はきっとあの城内だ。

 

 ならばそんな狭いところでファヴニールを戦わせるのは愚の骨頂。いくらあの突撃女と言えどそんなことはしないはずだ。

 

 ならば何故──? 

 

 思考の渦に呑まれかけたアルトリア・オルタであったが、続くマルタの言葉に頭を上げた。

 

「それからこれは忠告ね。あの子、尋常じゃないくらい強いわよ。それこそあなた達カルデア陣営が総出でかからないと負けるんじゃないかしら?」

 

「──何だと?」

 

「伝えておくのはそのくらいかしら。それじゃあ今度は本気で戦いましょうね」

 

 そう言ってマルタは手をひらひらと振ると霊体化して何処かに消えてしまった。そしてそれとともに今まで張られていた薄いドーム状の膜も消える。

 

 残ったアルトリア・オルタはマルタの話に考えるべきところは山のようにあるが、今はマスターである望幸がいる場所に戻るべきかと判断して彼の下に向かう。

 

 マルタが教えた総出でかからないと負けるという言葉。それはキアラやカーマ達ビースト適性を持つ者達ですら今のジャンヌ・オルタには手を組まないと負けるという事を表している。

 

 一体彼奴は何をしたというのか。

 

 その疑問だけがアルトリア・オルタの胸中をぐるぐると回り続けていた。

 




ホモくんは一体なんなんですかねぇ……。
そしてやっぱ裏でなんかやってたキアラ。それと同時になんか凄く強いらしい邪ンヌ。マーリンはこっちでも過労死枠。もっと働け(無慈悲)
これはガバる(未来予知)

シャボン玉のように儚く散ったので失踪します


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狂える騎士

まさかのLB5章でホモくんにとんでもない縁が出来てしまったので初投稿です。



 ティエールから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 アルトリア・オルタから話を聞いたところエリザベートと清姫はティエールにいるとのことでしたので、5日間くらい掛けて向かいました。その間にジークフリート及びゲオルギウスからコミュ目的で話を聞いたんですよね。

 

 そしたらどうやら2人は元々別の追っ手から逃げてたらしいです。ジークフリートはアタランテ、ゲオルギウスはマルタからとの事でした。加えてゲオルギウスは本来であれば街の人々の避難が終わるまで守りきるつもりだったらしいんですけど、マルタが相手をしていたからか街の被害は建物だけであって人に対しては全く危害が加わってなかったそうです。

 

 バーサーク状態でも無辜の民を蹂躙しないとかこれは水辺の聖女ですね。誰ですか、ゴリラとか言った人は。

 

 それからジークフリートの呪いに関してですが、ゲオルギウスとジャンヌが揃っちゃったのでぱぱっと解呪して終わりっ! こんなスムーズに行くとは思いませんでしたね。

 

 ジークフリートの呪いの解呪はこのオルレアンでは良くグダるんですよね。ジークフリートの呪いを解く前にジークフリートがやられたり、ゲオルギウスがやられたり、弱体化したジャンヌがやられたりと……(10敗)

 

 今思うと敵よか味方でグダってますねクォレハ……。真の敵は味方だった……? 

 

「その、巻き込んでしまってすまなかった。偶然とは言えもしかすれば死んでしまうかもしれない目に遭わせてしまった上にこの身を蝕んでいた呪いまで解呪してもらって本当にすまない」

 

 相変わらず腰低いっすねこの人。

 

「ううん、気にしないでよジークフリート。それに特異点修復を手伝ってくれるんでしょ?」

 

「俺に出来ることといえば戦うことくらいだからな。それに俺が呼ばれたのも何か理由があるのだろう。ならば俺を助けてくれた君達に手を貸すのは英雄として当然の責務だ」

 

「うん、ありがとうね。だから今度はジークフリートが私達を助けてくれるんだからそれでおあいこだよ」

 

 >立香はジークフリートを気遣うように満面の笑みを浮かべる。

 

 うーん、このコミュ力よ。流石は英雄から神霊まで仲良くなれるコミュ力お化け。もうジークフリート達と仲良くなってるのは素直に草です。

 

 まあ此方としては嬉しいことこの上ないですけど。その調子でサーヴァント達との縁をより深く、より強固なものにして欲しいものです。私が求めるエンディングのためには沢山の英霊達と立香ちゃんが縁を結んでもらわないといけないですからね。

 

 >マリーがあなたの服の裾を引っ張った。

 

 お、なんか用でもあるんすかね。もしかしてドラ娘コンビでも見つけましたか? 

 

 >あなたはマリーにどうかしたのかと尋ねた

 >だが、マリーはあなたの瞳をじっと見つめるだけで何も言わない。

 

 ええ……? なんでメンチ切られてるんですかね(困惑)ビビるわぁ(兄貴並感)

 

「一目見たときから思っていたのだけど()()()()()()()()()()のようにキラキラして綺麗ね! あの蒼空のように澄んでいて何だか心が惹かれちゃうわ」

 

 そう……(無関心)

 

 えっ、何これだけ? こんなクソしょうもな……いえ、まあいいでしょう。マリーがこういう事言うのは良くあった事ですから。しかしマリーがこういう事を言うのは好感度がそこそこに高い証なんですよね。そんなに話してないのにこれとは人懐っこいにも程があるのでは? 

 

 まあそれはさておき、アマデウスに何か聞こえないか聞いておきましょうか。これをしておくことでドラ娘コンビの発見率が上がるんですよね。何故かと言うとアマデウスはあのコンビの喧嘩を聞くに耐えない雑音として認識します。加えて何か聞こえないかと聞いておくことでアマデウスは周囲の音に意識を向け始めるんですよ。

 

 あとは分かるね? (ド畜生)

 

 >あなたはアマデウスに何か聞こえないかと聞いた。

 

 運が良ければアマデウスが1発で見つけてくれます。今までのタイムから鑑みるに失敗が許されるのは大体4回ほどですね。それを越したらリセットです。ですが、発見率自体は相当高いので1発で見つかっても何らおかしくはありません。

 

「ふむ、そうだ……うげえ!! 何だこの酷い雑音は! こんな音1秒たりとも聞きたくないぞ!」

 

 >アマデウスが唐突に頭を振り乱し始めた。

 >どうやら彼の耳に何かが聞こえたようだ。

 

 おっ、この反応はあのコンビが近くにいることを表していますね。1発で見つかってくれたのは僥倖です。とりあえずその音がどこからするのか聞いておきましょう。

 

 >あなたはその音が聞こえる方向を聞いた。

 

「そんなものあっちに決まってるだろうっ! というか待ってくれ。僕はあっちになんて行きたくないぞ!」

 

 あ、そう。じゃあ行きますか。

 

 >あなたはアマデウスが指し示した方角に向かおうとして──不意にあなたに影が差し掛かった。

 

 ん? 

 

「ちぃっ! どけ坊主!」

 

 >クーフーリンがあなたを突き飛ばすと共に襲いかかってきた何者かの攻撃を弾いた。

 

「ああ、ああ……。我が愛しきクリスティーヌ。未だ終わりなき旅を巡るのか。ああ、愛しいクリスティーヌ。何故、何故……」

 

「てめえアサシンか? それにしちゃあバーサーカーみてえに話の通らねえ野郎だが……」

 

 >あなたに襲いかかってきた者を卓越した槍捌きを以って弾き返すクーフーリン。

 >それによって襲撃者はあなた達から大きく距離を取らされた。

 

 ファッ!? ントムじゃないですかー! さっきまでいませんでしたよね? いや、アサシンってことを考えてもこの面子相手に気付かれずその上真正面からホモくん襲える訳が無いんですが……。

 

 ファントムは一体全体どうやって現れたんですかね? 

 

 考えられるところとしては邪ンヌの聖杯による空間転移、もしくは彼女が令呪を保持していると言うのであればそれによる──ああっ! しまった! 

 

 いくらあのポンコツ臭漂う邪ンヌとは言え、いくら何でもファントム1人をぶつける訳が無い! となると──

 

 >あなたは後ろにいるマシュに対して立香を守るように指示、その後己のサーヴァントに対して周囲の索敵を頼んだ。

 >その直後、あなたの背後からガリガリと何か硬いものを引きずるような音が鳴り響いた。

 

「マスター、頭を下げろっ! 」

 

 ヌッ! 

 

 >あなたが頭を下げたと同時にその頭上をアルトリア・オルタの聖剣が通り過ぎた。

 >そして金属同士がぶつかった時のような鈍い音が鳴り響いた。

 

「Arrrrrrr……」

 

「貴様は──」

 

「Aaaaaaaurrrrrrrrrrr!!!!!」

 

 >狂ったように雄叫びを上げる狂戦士がアルトリア・オルタに襲いかかる。

 

 げーっ! ランスロット! NTR騎士じゃないですかー! いやまあ、此奴はいい。個人的な話ですけどランスロット、と言うよりも円卓勢とはルートを模索してる時にこいつらの生前含めてクソほど戦ったことあるんで! 円卓勢に関しては大体動きの癖は読めてますのでむしろ戦いやすいんです。

 

 まあ、なんでそんな戦い慣れてるの? って聞かれたら6章をどうにか短縮できないかと思って色々と試した時に敵としても味方としても相当な回数戦ったからなんですけどね。ブリテン……うっ、頭が……。

 

 と、まあそれはいいです。ただ問題は──

 

「望幸! 右に避けなさい!」

 

 はい先生! 

 

 >先程まであなたが立っていたところ目掛けて大量の矢が降り注ぐ。

 

 ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!! なんでホモくんばっかり狙うの! ホモくん何かしたァ!? (半ギレ)立香ちゃん狙われるよりはマシですけども! (全ギレ)

 

「アタランテ……!」

 

「ケイローンか」

 

 >建物の上からケイローンを睨みつけるはアタランテと呼ばれる者だった。

 

 うげっ! アタランテじゃないすか!? 

 

 個人的にギリシャ鯖苦手なんですよね。特にアポロンとかアルテミスとかの神霊の連中。あいつらに絡むとろくな事にならないんですよ。

 

 どのルート走ってもホモくん見るなりやたら構い倒してくるのがRTA的にまずあじもまずあじで仕方ないんです。特にアポロンはね……ショタ認定した上で構ってきますからね。目腐ってんのかあいつ。

 

「何故貴女がそちら側に? 本来の貴女であればそちらにつくはずがないでしょうに」

 

「ああ、そうだな。本来であれば私がこちらにつくことは無い」

 

「ならば──」

 

「だが、私にも成すべきことはある。私にとっての()()()()()のためにな。故にここで私達と戦ってもらうぞ」

 

「なるほど……貴女にも譲れぬものがあるということですか。ならば相手になりましょう」

 

 >これ以上言葉は要らない、そう示すかのように二人は互いに矢を放ち相殺させあう。

 

 何だよぉぉおお!! もぉぉおお!! またかよぉぉおお!! (進撃並感)

 

 ちくしょう! 何奴も此奴もホモくんばっかり狙いやがって! なんだお前らそんなにホモくんのこと好きなのか!? 

 

 もうやめたくなりますよこのゲーム。ですがまあ、マスターを狙うのは当然ですしね。そう、これは当然の事なんですよ。断じてこの死にゲーの確率がイカれてるって事じゃないから(震え声)

 

 さて、それでは戦闘開始です。

 

 早速全サーヴァントに指示、と言いたいところですが折角なので立香ちゃんにもマスターとしての経験値を積ませましょう。雑魚モブ戦では何回もやってもらっていましたが、サーヴァント戦ではまだまだ少ないので。

 

 とりあえず立香ちゃんにはこの中では比較的弱いファントムの相手をお願いしましょう。サーヴァントに関しては相性を考えるとキアラを貸す感じで。

 

 >あなたは立香に仮面を付けた男の相手は任せたと告げた。

 

「──! うん、任せて! クーフーリン、マシュ! 行くよ! エミヤはケイローン先生の方をお願い!」

 

「了解ですマスター! 戦闘行動開始します!」

 

「任せなァ!」

 

「了解したマスター」

 

 >続いてあなたはキアラに対して立香のサポートを頼んだ。

 

「承知致しました」

 

 よし、それじゃあホモくんは戦い慣れてるランスロットを──

 

「ところでマスター。くれぐれも無茶はしないようにお願いしますね」

 

 おう、考えてやるよ(考えるとは言っていない)

 

 キアラが何か釘を刺してきましたが此方が無茶じゃないと思えば無茶にはならないので遠慮なく戦います(暴論)

 

 まあ、とはいえ必要に迫られればと頭に付きますがね。

 

 さて取り敢えずはカーマをアタランテの下に向かわせましょう。ここでなんでカーマをアタランテなのよ? 普通ランスロットじゃないのかと思われると思います。

 

 ですが、アルトリア・オルタの性質上彼女は仲間と戦うことに対してはそこそこ相性が悪いのです。というのも彼女は技量が落ちた分、力技で解決しようとします。それこそ宝具で周囲一帯ごと敵を薙ぎ払ったりなどがいい例でしょう。なので彼女を十全に活かすのであれば基本は1人で戦わせておいてマスターは彼女の隙を埋めるようにサポートするというのが1番いいと思います。

 

 なので此方はランスロットの阻害行動を徹底して行います。幸いランスロットの癖は読めてるのでそこそこの確率で阻害行動は成功するでしょう。百発百中とはいかないのが流石円卓最強と言うべきなんでしょうけど。

 

 >あなたはカーマに対してアタランテを倒すように頼んだ。

 

「はいはい、けどマスター? 前のようなことをしたらどうなるか、分かっていますよね?」

 

 んにゃぴ……よく分かんないっすね。

 

 カーマも忠告してきましたが、無視です。速度優先なのは(RTA的に)当たり前だよなあ? それに傷付くのはホモくんだけなのでへーきへーき! 

 

 それから残るジャンヌ、ジークフリート、ゲオルギウス、マリー、アマデウスにはドラ娘コンビを見つけてきてもらいましょう。アマデウスの耳を頼りに向かってもらい、道中の敵はジークフリート及びゲオルギウスで排除。防御役としてジャンヌ。いざという時の逃走にはマリーの宝具を使って逃げてきてもらいます。

 

 >あなたはジャンヌ、ジークフリート、ゲオルギウス、マリー、アマデウスに対してここにいる筈の清姫とエリザベートを探してきてくれと頼んだ。

 

「あの雑音の方に向かえって言うのかい!? そんなの──」

 

「ええ分かったわマスター! アマデウスあなたの耳が頼りなの、どうか案内してくれないかしら?」

 

「勿論だともマリー!」

 

「アマデウスさん……」

 

 >綺麗な手のひら返しをしたアマデウスに対してジャンヌがどうしようも無いものを見る目でアマデウスを見ていた。

 

 なんかあっちは面白いことになりそうですが、残念ながらホモくんはランスロットとの戦闘です。

 

「Arrrrrthurrrrrrrr!!!」

 

「ちっ、気が違えてもその技量は健在か。厄介な事だな」

 

 >ランスロットがそこらに落ちていた何の変哲もない剣を手に持つとその剣が一気に侵食されていく。

 >鉛色に鈍く光る剣は光を吸い込むように黒く、そしてその黒の上を血管のように赤いラインが無数に走り脈動している。

 

 出た、騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)。手に持ったものが武器であるならば何であれ宝具化する宝具でしたっけ。あれ本当に羨ましいっすよね。今のホモくんには近接武器がないので接近されたらキツイんですよねー。なのであんなふうに身近な武器を持っただけで宝具化するとか羨ましいにも程がありますよ。

 

 この戦い終わったらドラ娘コンビ回収ついでにホモくんの新しい近接武器でも拾いましょうかね。出来れば使い慣れてる剣あたりで。ここがぐだイベなら真っ先に刀拾うんですけどね。カッコイイし、ステ的にも強いからね! 

 

 それはさておき──

 

「ハァッ!」

 

「Aaaaaaaaaaa!!」

 

 >アルトリア・オルタが攻撃を仕掛けるがそれはランスロットの狂っているとは思えぬほどの技量により容易く受け流される。

 

 やっぱり技量の差でアルトリア・オルタが押されてますねー。まあ、その技量の差を埋めるために援護するんですけどね。

 

 というわけでまずはアルトリア・オルタを魔術で強化しつつ鍔迫り合いをしたらその隙を狙ってガンドをぶっぱなしましょうか。

 

 >あなたは魔術を使い、アルトリア・オルタの筋力値を強化した。

 

 元より高い筋力値を更に底上げすることで攻撃力を跳ね上がらせます。敏捷値に関しては低いところを補っても効率が悪いので長所を伸ばす方針でいきましょう。

 

「いい援護だマスター!」

 

「Arrrrrrrrr!?」

 

 >アルトリア・オルタの聖剣と激突した途端、本来であれば同等の筋力を有していたランスロットをアルトリア・オルタ自身の魔力ブーストとマスターの筋力強化の魔術、その2つが掛け合わさることでランスロットを地面と水平になる程の速度で強引に吹き飛ばす。

 >続けてアルトリア・オルタは吹き飛んで無防備になったランスロット目掛けて宝具、エクスカリバーモルガンを放つ。

 

 おほーっ! ホモくんの魔力がゴリゴリ減るんじゃあ〜。流石燃費最悪のサーヴァント。カルデアの援護があるとはいえ、魔力を鍛えていなかったら後2、3発撃ったらガス欠になりますね。

 

 まあホモくんは魔力も鍛えているんでまだまだ平気ですけど。

 

 ま、如何にランスロットと言えど空中にいるんじゃあ方向転換は無理でしょう。ガハハ、勝ったな! 

 

 >ランスロットは迫り来る黒き極光に対して冷静に手に持っていた剣を地面に突き刺してそれを軸にすることで空中で方向転換を図り、アルトリア・オルタの宝具を回避。

 >そしてその勢いを利用したままあなたの下へ凄まじい勢いで接近してきた。

 

 ハァン!? 曲芸師か何かかお前!? しかもアルトリア前にして何でこっち狙ってきたんだよ! あっち執着してる筈だろ! ホモくん虐めもいい加減にしろ! 

 

 今から置換呪術を使っても発動する前に攻撃が当たるし、えーとそうだ1発で武器が壊れると思いますけど受け流しを狙いましょう! 

 

 周りに剣とかの近接武器は……ないです。

 

 嘘やろ? あかん、ホモくんが死んだ! この人でな──穀潰し! 

 

「マスター!」

 

 >アルトリア・オルタの悲鳴にも似た声が響き、ランスロットがあなたを斬り捨てようと剣を構え──

 

 わりぃ、俺死んだ(海賊王並感)

 

()()()()!」

 

「Aaaaurrrrrrrr!?」

 

 >立香が放ったガンドがランスロットへ命中することでその動きを止めた。

 

 立香ちゃんありがとおおおお!! 

 

 しゃあっ! これは好機です! 

 

 立香ちゃんのガンドがランスロットの動きを止めてくれました。そしてランスロットはホモくんを狙ったことによりガンドの呪いが解けるよりも早くホモくんが()()()()()()()()()()()()! 

 

 というわけで、アル! 

 

 >あなたはアルトリア・オルタに対して宝具を上空に放つ様に指示をした。

 

「……っ! ああ、ああ! 了解した()()!」

 

 >あなたは上空に銃を構え、弾丸を放つと同時に未だガンドの呪いが蝕むランスロットの体に触れ、置換呪術を使用した。

 

「卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め──」

 

 >アルトリア・オルタの聖剣に魔力が収束していくと共にランスロットは空高くに放り出され──

 

 

 

「エクスカリバーモルガーン!!!」

 

 

 

 >アルトリア・オルタが発動させた聖剣の黒き極光に断末魔諸共に呑み込まれた。

 

 拙者、勝ち申した。ランスロットに勝ち申したよ。いやまあ、立香ちゃんの援護無かったら死んでましたけどね。

 

 立香ちゃんサイコー! ふぅー! 流石原作主人公! 

 

 というわけで今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。




このままの設定で行くと2部でもホモくんがやらかしそうだなと考えて笑ってます。特に愉悦成分が増し増しになりそうで……。

LB5も終わったので失踪します。


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逆鱗

古戦場が終わりましたので初投稿です



 NTR騎士の退場から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 ランスロットを空中に飛ばしてからのアルトリア・オルタの宝具により退場させました。まあ、ランスロットが消えたところを視認した訳じゃないですけど、いくら円卓最強と言えど何も無い空中から避けることは出来ないでしょう。

 

 つまりはホモくんとアルトリア・オルタの勝ちです。なんで負けたか明日までに考えて───

 

「Aaaaaaaa……!」

 

「嘘でしょ……?」

 

 は? 

 

 >あなたから少し離れた場所で甲冑を脱ぎ捨てたランスロットが剣を構えて立っている。

 >怪我らしい怪我は見当たらず、その事に立香は絶句していた。

 

 ちょっと待って。ランスロット退場してないやん! どうしてくれんのこれ(憤怒)

 

 マジでなんで生きてるの……? (困惑)

 

「……ガンドによる拘束が宝具が当たる瞬間に解け、その後すぐに己の甲冑を脱ぎ捨てそれを足場にして直撃を回避したのか」

 

 ウッソだろお前!? そんな事曲芸師でも出来ねえよ! あーもうこのNTR騎士の穀潰しめ! 狂化してるくせに技量が全く衰えてないのがホントクソ。敵に回ると嫌なことこの上ないなこの野郎。おじさん(遅延行為)やめちくり〜。

 

「Aaaaa……rturrrrrrrrr!!!」

 

 >ランスロットは怒号を挙げてアルトリア・オルタに襲いかかった。

 

「いいだろう、今度こそ叩き潰してくれる」

 

 まあ一応まだ猶予はありますし……。ここで確殺すれば実質プラスなんで何が何でもここでランスロットを仕留めます。とりあえずアルトリア・オルタに強化魔術によるバフとランスロットにガンドなどのデバフをバンバン撒いてとっちめてやりましょう。

 

 今まではお遊びだったんだよ! (YMN)

 

 >あなたはアルトリア・オルタに対して筋力と魔力の強化魔術を使用した。

 

「いい援護だ望幸。だがまだだ。もっと私に魔力を回せ」

 

 しょうがねぇなあ〜(悟空)

 

 置換呪術も交えてドンドンやっちゃいましょう。置換呪術を組み合わせた儀式魔術を発動させてランスロットの動きを一時的に封じた上で更にガンドによる二重の拘束。その後アルトリア・オルタの宝具を今度こそぶち当てて仕留めます。

 

 バーサーカーなんで対魔力Eなので儀式魔術が有効なんですよ。しかも効果の軽減もほとんど出来ないんで。セイバーの身で現界しなかったことを呪うがいいぞランスロット。

 

 >あなたはランスロットやその周囲の地面に向けて的確に弾丸を放つ。

 

 さて、ここでホモくんが儀式魔術の準備をしている間に儀式魔術についての説明をしましょう。

 

 そもそも儀式魔術とはなんなのか? という質問ですがこれは簡単に言えば効果値が物凄い高い魔術です。ちなみにこれは誰でも使えます。なので魔術師ルートであれば使う機会は……まあ、そこそこある……あったらいいなあという感じですね。

 

 何故こんなことを言うのかと言いますとぶっちゃけた話瞬間契約ならまだしも儀式魔術は理性が吹っ飛んでるバーサーカー位にしか当たらないんですよ。

 

 儀式魔術はその特性上、時間を必要とします。例えば長々と地面に術式を描く必要があったり、数分間詠唱し続けなければならなかったりと。はっきり言って一対一じゃあほぼ使い物になりません。

 

 また、魔力を通す必要もあるので魔力感知に引っかかりやすいんですよね。なのでキャスタークラスがいるとまず解呪されたり、逆に術式を乗っ取られてカウンターされたりします。キャスタークラス以外でも割と気づかれることが多いので儀式魔術は丸見えの地雷とも揶揄されます。

 

 それ故に理性のないバーサーカークラスくらいにしか使われないんですよね。何せ理性吹っ飛んでるので儀式魔術に結構気が付きません。

 

 それから現状、この辺りには魔力がかなり散らばっているんですよね。そりゃあまあみんな戦ってますからね。その分魔力が辺りに拡散するというもの。それが儀式魔術のカモフラージュになるんですよね。

 

 と、話をしている間にホモくんが術式を描き切りましたね。後は術式の中心地点にホモくんをセットして刻印を刻んだ弾丸に魔力を通すと擬似的な魔術陣の完成です。

 

「これは……おい、バーサーカー気をつけろ! 何か仕出かすつもりだぞ!」

 

 >アタランテがランスロットに対して忠告をする。

 

 おっと流石アタランテ。ケイローン先生と戦ってるのにこれに気がつくとは目敏いものですね。ですが、もう遅い。この術式は既に起動してますからね。

 

 後は──ホモくんを囮にするためにランスロットの攻撃対象を置換呪術で入れ替えて此方に呼び寄せれば……

 

「Aaa……? Aaaaaaaaaa!!??」

 

「待て、貴様──」

 

 >アルトリア・オルタと斬り結んでいたランスロットが絶叫を上げながらあなたへと迫る。

 

 良し、後は置換呪術で魔術式の外にある刻印を刻んだ弾丸と入れ替えれば……あ、やば。ちょっとタイミングズレた。

 

 >ランスロットの剣があなたの首をほんの少し切り裂いた。

 >HPが少し減少した。

 >あなたの首から血が零れ落ちる。

 

「望幸……首から血が!」

 

「首……望幸さん早く、早く治してください!」

 

 >あなたの首から流れ落ちる血を見て立香とマシュが顔を青褪める。

 

 うーん、ちょっとガバりましたね。まあええわこの程度。ランスロットが無事に術式の中央地点に到着したので呪術式拘束魔術を起動しまして、と。

 

 >魔術陣の中央にいたランスロットに対して数多の魔術陣が発生し、その動きを封じる。

 

「Arthurrrrrrrr!?」

 

 はい、ダメ押しのガンド。今度こそ消滅してもらいましょうか。

 

 >あなたは拘束から抜け出ようと藻掻くランスロットに対してガンドを当てた。

 >ランスロットは膝を突いてその場から動くことが出来ない。

 

「……!?」

 

 さて、アルトリア・オルタさんやっちゃって──ん? 

 

 >アルトリア・オルタを中心に莫大な魔力が収束し始めた。

 >アルトリア・オルタ自身の魔力が、周囲に散らばっていた魔力が、果ては大気中の魔力ですらアルトリア・オルタの周囲を渦巻くように収束していく。

 >それはまるで竜の怒りを彷彿とさせる光景だった。

 

「貴様──」

 

 んん? 気の所為ですかね? なんかアルトリア・オルタのストレス値が一気に最大値になって特殊なデバフが発生してるんですけど……。

 

 いや、気の所為じゃねえわこれ。なんで? なんでいきなりストレス値が一気に最大値に? ホモくんが怪我を負ったから? いや、それだと何回かホモくん怪我してますからそこでストレス値が最大値になるはずです。なら何がトリガーになったんですかね……? 

 

 まさかフラグまでイカれたりしてねーだろうなこの死にゲー。

 

 それよりもアルトリア・オルタに入った特殊デバフは何ですかね。発狂とかが入ったら軽く再走案件なんですよね。発狂デバフはこちらの言うこと聞かなくなる上に敵味方関係なしに攻撃し始めるんですよ。その上確率で周囲のサーヴァントに発狂を伝播させるクソデバフ。下手するとこのデバフのせいで壊滅するとか普通に有り得ますからね。

 

 ですがまあ、見た限り発狂デバフの可能性はかなり低そうですね。発狂入ってたら既に攻撃してますし。この感じですと激昂……ですかね? 

 

 あー、やっぱりですね。アルトリア・オルタに激昂デバフがかかってます。激昂デバフなら割と問題ないです。寧ろ特殊デバフの中では当たりの部類です。

 

 激昂デバフの特徴は幸運と耐久を除く全ステを1段階上げる代わりに耐久を2段階下げて一時的にマスターの命令を聞かなくなるんですよ。それこそこちらが令呪を切るか敵をぶっ殺すまではずっと激昂してる状態です。

 

 それなので特殊デバフの中では一応当たりです。発動しないのが一番良いんですけどね。ま、今回はランスロットを完全に拘束してるので激昂デバフ入ってても無問題なのでこのままアルトリア・オルタにトドメを刺して貰いましょう。

 

「──巫山戯るなよ貴様ァッ!!!」

 

 >アルトリア・オルタの雷鳴をも想起させる憤怒と共に周囲に渦巻いていた魔力の全てが聖剣へと収束していく。

 

 なんか急に音が聞こえなくなったゾ(鼓膜破壊)

 

「よりにもよって円卓の騎士である貴様が彼奴の首を飛ばそうとしたのか!? それがどういう事なのか、いくら理性が飛んでいようと分からんはずがなかろうがァッ!」

 

 >アルトリア・オルタが振り上げた聖剣に最早異常とも呼べる程の魔力が収束していく。

 >その影響でアルトリア・オルタを中心に立っているのも辛いほどの暴風が吹き荒れる。

 

『そんな、嘘だろ……? この魔力数値は周囲一帯全てを消し飛ばしても可笑しくはない! 今すぐアーサー王に止めるように……ってもうダメだ! 宝具の発動準備が終わってる!』

 

「どうすればいいんですか!?」

 

『こ、こういう時はマギ☆マリに相談だ! きっと何かいい解決策をくれると思う!』

 

「色々とダメじゃないかなロマン!?」

 

『返信が来たぞぅ! えーと、「助かることを祈りましょう」だって。うわあああああ!? マギ☆マリにも見放されてるぅ!?』

 

「ドクターはもうダメです先輩! 当てになりません!」

 

 >アルトリア・オルタの聖剣から天を穿かんばかりの黒焔が吹き荒れ始める。

 

「──卑王鉄槌、極光は反転する」

 

「おいおい……何だありゃあ……?」

 

 >クーフーリンの言葉に釣られるようにこの場にいるほとんどの者が思わず空を見上げてしまった。

 >何故なら聖剣から溢れ出た魔力が空に立ち上り亀裂を生み始めているからだ。

 >雲は散らされ、蒼かった空は聖剣により黒く禍々しく染まる。

 

「──光を呑め」

 

 >それは光を呑む昏い闇だった。

 >それはブリテン島を守るために顕現した魔竜ヴォーティガーンの息吹を越えた形容し難い何かだった。

 >それは敵を滅ぼすことに特化した一撃であった。

 

「──約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

 >斯くして爆発的に膨れ上がった極光はランスロットへ向けて落とされた。

 >極光の一直線上にある何もかもがその一撃を阻む事は出来ず、一瞬で蒸発させられる。

 

「Arrrrr……thurrrrrr……」

 

 >まるで裁きを待ち受ける罪人のようにランスロットは膝を折ってただその一撃を受け入れた。

 >そしてその一撃はランスロットの霊基を蹂躙した。

 >莫大な熱量を以って焼き尽くし、霊子の欠片も残さずに滅する。

 >臨界を迎えた黒き極光は膨れ上がり、行き場を失った魔力の奔流は全てを破壊せんと拡がり──

 

■■o ■■■■■n■s t■■■■ s■■■s sur■■■

 

 ──不意に耳障りなノイズ混じりの声が聞こえ、酷く底冷えするような神威が辺りを満たした。

 

「えっ?」

 

 >その声は誰が上げたのか。

 >もしくはこの場にいる全ての人間が上げたのかもしれない。

 >破裂寸前だった黒き極光はまるで最初から無かったかのように虚空へと掻き消えた。

 

『魔力反応消失……? あの莫大な魔力が急に無くなったぞ。クソッ、先程の魔力の嵐のせいか其方を映すことができないか。マシュ、立香ちゃん、望幸くん、今其方で何があったんだい!?』

 

「い、いやそれが今何が起きたのか私達にも分からないんです。急にアルトリア・オルタさんの宝具が霧散して……」

 

『霧散? そんな馬鹿な、此方の観測データでは何も起きてない。魔術の痕跡すら見つかってないぞ。それなのに今にも爆発寸前だった魔力が急に霧散するなんてどういうことだ?』

 

「今の気配──いや、ここは引くか。バーサーカーもアサシンもやられてしまったようだしな。ああ、そうだケイローン。忠告はしたからな。其れだけは気をつけろよ」

 

「待ちなさいアタランテ! あなたは何を──何処まで知っているのです!」

 

「悪いが其れは今教えるべきじゃないのでな」

 

 >アタランテはそう言うと最速の英霊たるアキレウスにも勝るとも劣らぬ速度で戦場を離脱した。

 >一先ずは終わった戦闘に思わず安堵の息を吐いた立香は怪我をしているあなたの方へ振り向いた。

 

「望幸、首の怪我は大丈夫なの?」

 

 ……へーきへーき! ホモくんのHP残量はまだまだあるんでね。それに戦闘も終わったことだし、治癒魔術で治せば問題ないってそれ1番言われてるから

 

 >あなたは立香の問いに対して首を縦に振り、首の怪我を治癒魔術により回復させた。

 >HPが回復した。

 

「おい、望幸。首の傷が完全に治せたのか見せろ」

 

 >あなたの下へやってきたアルトリア・オルタが先程まで血が流れていた首の傷が無くなったかを確認する。

 

 しょうがねぇなあ〜(悟空)ほらほら、傷一つないダルルォ!? なので安心して、どうぞ。

 

「……確かに傷は塞がってるようだな。なら、いい」

 

 お、アルトリア・オルタのストレス値が少しだけ下がりましたね。加えて特殊なデバフも消えましたし、とりあえずはOKですかね。

 

 とは言ってもアルトリア・オルタのストレス値は依然高いままなので後でご機嫌取りする必要がありますけどね。

 

 さて今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……気のせいだよね? 一瞬望幸の瞳が──」

 




Qなんでアルトリアあんなに怒ったの?
A竜の逆鱗と地雷を同時にぶち抜かれたから
Qつまり?
Aトラウマを刺激したホモくんがいちばん悪い

撒いたものを早く回収したいけどここでは回収できないもどかしさ……

あっそうだ(唐突)
実を言うとRTAパートより小説パートを書くのが好きなんですよ。なのでRTAパート減らして小説パートを多めにしたいなって思ってたり……だめ?(アンケ発動)

アンケ発動した所で失踪します


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邪竜百年戦争決戦前

書くこと書いてたら長くなりました。RTA小説にあるまじきTNPにしてしまった所で初投稿です。



 今度こそランスロット討伐から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回何とかランスロットを仕留められましたね。多少のガバはありましたが、ここでランスロットを仕留められたのはデカいです。何せこの特異点で最も技量が高いのはランスロットでしょうからね。その上サーヴァントとしても普通に強いし。

 

 ぶっちゃけこの特異点で邪竜ファヴニール除けば最強までありますからね。

 

 ……そう言えば、邪竜ファヴニールと言えば一体いつになったら出てくるんですかね。本来だったらジークフリートの呪いが解けた時点で出てきてもおかしくないはずなんですけど一切見てないですね。

 

 仮にこの特異点で邪竜ファヴニールが出てこないルートになっていたとしてもそれだとジークフリートがはぐれとして召喚されている理由が分からないんですよね。ジークフリートがはぐれとして召喚されている以上、必ずと言っていいほどファヴニールは存在しています。なのでこの特異点の何処かにファヴニールはいるはずなんですけどね? 

 

 今のところファヴニールのフの字すら見かけてませんし……。うーん、これは一体どういうことなんでしょうか。

 

 まあ、出てこないなら出てこないで時短になるんで有難いから構わないんですけど。

 

 >遠くから慌てた様子でこちらに駆け寄って来たジャンヌ達の姿が見えた。

 >その後ろにはどうにも見覚えのないボロボロになっている2人のサーヴァントらしき存在がいた。

 

 おっ、ドラ娘コンビ見つけてきたんすね。これは有能ですね。ワンチャン見つからなかったって可能性も無きにしも非ずだったんで。

 

「皆さんご無事ですか!?」

 

「ってあら? 望幸さんったら首の方から凄い血が出てるじゃない!」

 

 もう治ってるんでへーきへーき! ってこの会話さっきもしましたね。

 

 >あなたはマリー・アントワネットに怪我は完治していることを伝えた。

 

「あらあら、そうなの。けどそれ程血が出てるんだもの。さぞかし痛かったはずでしょう?」

 

 痛かったんじゃないっすかね? (他人事)

 

 まあ、それはどうでもいいのでさっさとドラ娘コンビを紹介してくれよな〜頼むよ〜。

 

 >あなたは後ろの何故かボロボロになっている二人のことについて尋ねた。

 

「ああこの2人は先程争ってるのを見かけてな。そこで声をかけさせて貰ったんだ」

 

「ジークフリート殿の言う通りです。ただ些か頭に血が昇っていたようでしたので少々灸を据えさせてもらいましたが」

 

「僕はもうあんな酷い雑音を二度と聞きたくないぞ……」

 

 あぁ〜いいっすね〜。これはいい時短です。と言うのもドラ娘コンビとの遭遇時には良く戦闘が起きるんですよ。なので今回みたいに二手に別れて片方が勝手にイベントを処理してくれるのはRTA的にウッーウッーウマウマです(Caramell dansen)

 

 それじゃあ立香ちゃんを清姫にさっさと安珍認定して貰いましょう。汝は安珍! 立香は犠牲になったのだ……。速度を求めるRTAの犠牲にな。

 

 >2人があなたを視界に捉えた瞬間、驚いたように目を見開いた。

 

「──安珍様……?」

 

 安珍だとふざけんじゃねぇよお前! ホモくんだろォ!? 

 

 と言うか何でこっちを安珍認定してんだオラ(鋼龍)安珍候補ならホモくんの真横にいるダルルォ!? 

 

 >あなたは自分は安珍という者ではないと告げた。

 

「──そう、ですね。貴方は安珍様ではありませんね。申し訳ございません。ただ貴方の雰囲気が私の知る安珍様ととても似ていたものでして。その目を離せばいつか消えてしまいそうな雰囲気がとても」

 

 分かればヨシ!(現場猫) というわけで縁を結ぶのは立香ちゃんにしてくれよな〜頼むよ〜。いやマジで頼みますよ。それにしても目を離せば消えるとは一体なんのこったよ。

 

 で、エリザベートは何してるんですかね? なんか凄い百面相してるけどさ。にらめっこでもします? ホモくんの表情筋はほぼ動かねえけどなあ!? にらめっこは真顔最強ってそれ一番言われてるから。

 

「むー、まあ色々と言いたい事は山ほどあるわ。けど、そうね。これからよろしく頼むわよ子犬──ってちょっとぉ!」

 

 >あなたは突然背後に現れたカーマに引っ張られ、あなたにより掛かろうとしてきたエリザベートを綺麗に躱してしまった。

 >そのせいでエリザベートはバランスを崩してこけかけた。

 >その様子をカーマは意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

「あら、すみません。何だかとてもイラッとしたので。ついうっかり」

 

「嘘つきなさい! あんた本当に──」

 

「はいはい、じゃれ合うのもそこまでにして下さいませんか?」

 

 >いがみ合う寸前だった二人の間にキアラが割って入った。

 >キアラはカーマに対して非難するような目を向けるとカーマはそれに対して肩を竦めた。

 

「仕方ありませんねぇ? もう少しおちょくりたかったんですが」

 

「あんた、本当に捻くれてるわね……。あんたのマスターもそんな捻くれ屋といるんじゃあ疲れるんじゃないの?」

 

「はっ、悪いですけど、この人は私のそういう所も知ってて受け入れてくれてますから」

 

 >カーマはエリザベートの言葉を鼻で笑うとあなたの背中側からまるで抱きしめるかのように手を首に回して顎をあなたの頭の上に置く。

 

 ホモくん挟んで喧嘩するのやめちくり〜。

 

 というかこういう会話は休息時間にやって欲しいんですよね。今時間割く暇あったらこの街で武器探ししたいんですよ。ほら、ホモくんの近接武器はこの特異点に来た時に邪ンヌにぶっ壊されたじゃないですか。なのでいざというとき用の保険の武器が欲しいんです。

 

 出来れば剣か若しくは槍ですね。刀はあれば尚良しですが改造手段のない現状じゃあ使いにくいですし、ここはフランスですからね。無い物ねだりしても意味はないのでそこそこ耐久値の高い剣か槍を探しましょうかね──ってそうだ。今回はエミヤがおるやんけぇ! 

 

 エミヤの投影は便利ですがこちらで改造出来ないのが痛手ですね。まあそこら辺はバランスが取れているのでいいと思いますが。エミヤの投影武器を改造出来たらエミヤは人権化しますからねえ……。

 

 ではエミヤに武器を投影してもらいましょう。

 

 いずれはゴリゴリに改造した武器を作るつもりなのでちゃんとした武器を見つける必要はありますが、今は必死になって探さなくてもいいのはうまあじですね。

 

 >あなたはエミヤに対して武器を作って欲しいと頼み込んだ。

 

「む? それは構わないが……。ただ一つ確認しておきたい。それは何のためにだ? 悪いが君が前線に出るようなら作るつもりは無い」

 

 そりゃ、自己防衛の為でしょう。流石に近接武器を手にしたからってサーヴァント相手に近接張れるほどホモくんはまだ強くないですからね。……まあ、一応やろうと思えばやれる手段はあるっちゃあるんですが、現段階のホモくんの耐久では耐えきれずに死ぬでしょう。対策はありますが、それでもリスキー過ぎて余程のことがない限り使わないでしょう。

 

 >あなたはいざという時のための保険として欲しいからと言った。

 

「ふむ……それならば良いだろう。ただ、君は残されたたった二人のマスターだということを忘れないでくれたまえよ。君の命は君が考えているよりも重い」

 

 おっ、そうだな(適当)

 

 それよりも早く武器をくれよな〜頼むよ〜。

 

「ではどのような武器がいいかね? ある程度の融通は利かせることは出来るが」

 

 取り敢えずは耐久値を意識して西洋剣がいいでしょう。日本刀は耐久値がクッソ低いから改造前提の武器なんですよ。なので今回は無難にロングソードを頼んでおきましょう。槍も魅力的ではあるんですが、如何せん今回の相手は邪ンヌ。あちらも旗を槍のように扱ってくるので同武器では些か分が悪いんですよ。なので今回は剣が良さそうですね。

 

「了解した。出来るだけ耐久性の高いロングソードか。……こんなものでどうだろうか」

 

 >あなたは無骨なロングソードを手に入れた。

 

 ふむふむ、ホモくんの要望通りに相当耐久の高いロングソードを作ってくれましたね。流石エミヤ。こういう物が足りないって時ほど頼りになりますね。じゃけん今後もガンガン頼りましょうね〜。

 

「ところでマスター。聞いておきたいんですが短剣はどうしたんですかぁ? 此方に来てから1回も使われてないようですけど」

 

(もう短剣は)ないです。

 

 >あなたは短剣は壊されたことをカーマに伝えた。

 

「へ、へぇー? 壊されちゃったんですかぁ。そうですかぁ……」

 

 ふざけんじゃねぇよお前! 何ストレス値上げてんだオラ! 今の会話のどこにストレス値が上がる要素あんだよ!? 

 

 サーヴァントから直接貰ったものが壊れたならまだ分かりますよ。けどあれは武器商人から貰ったものダルルォ!? 何の因果でカーマのストレス値が上がってんだこの死にゲー! ほんとやめたくなりますよぉ〜。

 

「望幸って剣って使えるの? 確かクレー射撃部だったよね?」

 

 ヌッ! 

 

 はえ〜ホモくんクレー射撃部に所属してたんすね。今知ったわ。で、まあ剣が使えるか否かでいうと使えますね。剣術のスキル自体は獲得していませんが、扱うこと自体は何の問題もありません。

 

 そもそも剣術スキルなどは攻撃倍率やら命中倍率、武器使用時の防御倍率のその他諸々の補正に関わるぐらいですからね。無くても使えることは使えます。でもスキルの補正はマジで有能なんで取れる時には取っておきたいですね。

 

 >あなたは立香の問いに対して頷いた。

 

「そうなんだ。あっ、それじゃあカルデアに帰ったら私にも教えてくれないかな? 私も少しくらいは扱えるようになった方がいいと思うんだけど」

 

 うーん、この申し出自体はありがたいんですが、今下手に近接武器を扱えるようにしたら立香ちゃんが敵サーヴァントに突撃する可能性もあるんですよね。立香ちゃんは本当にいい子なので味方がピンチになると本当に武器片手に突っ込んでくる可能性があります。

 

 なので今回の申し出はありがたいんですが、ここは心を鬼にして断りましょう。申し訳ナス! 

 

 >あなたは立香に今は魔術と体術の方を集中した方がいいと伝えた。

 

「そっか……。まあ、そうだよね。今はその2つに集中した方がいいよね。少しでもいいから望幸の力になりたかったんだけどなあ……」

 

 うぐぅ……。いや、でも駄目です。下手に前に出て死なれたら元も子もありません。主要キャラの中では立香ちゃんがダントツで死亡率が高いんですから、それを上げるような真似は駄目です(ヤーマン)

 

 さてと、ぶっちゃけた話これでもう邪ンヌの討伐に必要な事は玉藻召喚を除いて揃いました。幸いにもこの街には霊脈が通ってるみたいなので玉藻を召喚すれば邪ンヌ戦に突入します──と、言いたい所ですが今はホモくんを除くほとんどの人の疲労がピークです。

 

 むりやり行っても敗北する可能性は高いので一度休息を取ってからコンディションをちゃんと整えてから行きましょう(3敗)

 

 強行軍は本当に不味いっていうのを散々味わいましたからね。そこら辺はちゃんと留意するつもりです。取り敢えずはホモくんは休息時間の間に玉藻召喚とアルトリア・オルタとカーマのご機嫌取り。ついでにこの街で使えそうなものがないか探索をしましょう。

 

 >あなたは一度休憩を取らないかと提案した。

 

「そうですね、その私も少し疲れちゃいましたし、休みを取れるなら取りたいです」

 

『うん、僕もマシュの意見に賛成だな。休みは取れるうちに取っておくべきだ。近くに休憩を取るに良い場所があるみたいだからそこまでの道を教えとくよ。そこについたらこちらからも支援物資を贈るね』

 

 それじゃあ休憩所にイクゾ-! 

 

 移動中の間にこれからのことでも話しますかね。今回のオルレアンは現状のタイム的に見るとかなりいいです。結構な所を短縮できたので、この調子で終局の果てまで突っ走ることが出来れば最高ですね。なんなら最速記録たたき出せるかもしれません。

 

 ただ、今回のオルレアンは少し不可思議なことが多いんですよね。ジークフリートやゲオルギウスが同時に現れたこと然り、ジル・ド・レェが未だに現れてないこと然り、未だにサンソンがホモくん達の目の前に現れてないこと然り。そして何よりも邪ンヌがファヴニールを引き連れてかかってこない事が不思議で仕方ないんですよ。

 

 何故なら今のフランスでは噂話を積極的に広めたので邪ンヌはジャンヌ・ダルクの姿をした偽物という話が出回ってます。この状態なら邪ンヌがキレて襲いかかってきてもおかしくはないんですけど、現状襲ってきたのは最初の一回だけですし……。まあおかげで組んでいたチャートの至る所を短縮できているので文句は無いですが。

 

 どういったフラグが関係してこの状況を作り出してるのか結構興味があるので再走するはめになったら一度検証してみますかね。

 

 >あなた達は休憩を取るのに適した場所を見つけた。

 

 おっと、話をしているうちにロマニが教えてくれた休憩所に着きましたね。それじゃあまずは今の血濡れの服を着替えてからアルトリア・オルタとカーマのご機嫌取りにいきましょう。

 

 カーマは手持ちの食料の甘味をいくつか渡せばいいとして、アルトリア・オルタはどうしますかね。ジャンクフードは流石に支援物資の中にはないでしょうし……。仕方ない、こういう時は直接本人に欲しいものややって欲しい事がないか聞いてみますか。

 

 そういう訳なんだけど、お前どう? 

 

 >あなたはアルトリア・オルタに何か欲しいものややって欲しい事はないか聞いた。

 

「む……。そうさな、ならばカルデアに帰ったら頼むとしよう」

 

 うっす、了解です。それじゃあカーマは甘味な。

 

 >あなたはカーマに甘味を渡した。

 

「いや、ちょっと待ってくれませんかね!? 黒い王様と私の対応の差が激しくないですか!?」

 

「はっ、お前と私では信頼の差が違うのだポンコツ」

 

「はーあー? 誰がポンコツですか!? マスターさん、私にもカルデアに帰ったら言うこと聞いてもらいますからね!」

 

 えぇ……? まあいいか。変なことでなければある程度のお願いは聞きましょう。

 

「あら、でしたら私のお願いも聞いてもらいましょうかマスター?」

 

 キアラはちょっと……。変な事じゃなければいいですけど、キアラだしなあ……。取り敢えず釘だけは刺しておきましょう。

 

 >変なことでなければとあなたは条件付きで承諾した。

 

「言質は取りましたからね? うふふ……」

 

 いや本当に頼みますからね? お願い聞いた結果再走になるとか嫌ですよ。せめて再走するなら特異点で再走したいっす! 

 

 さてと、一応はサーヴァントのご機嫌取りは終わったのでこれから玉藻を召喚しましょう。色々と不確定要素はありますが、オルレアンでの最終決戦に向けての戦力は多いほどいいんで。

 

 というわけで玉藻を召喚してターンエンドだ! (決闘者並感)

 

 >あなたは召喚サークルを用いて玉藻の前を召喚した。

 

「漸く妾の出番かの。長らく会えんで寂しかったぞご主人様よ」

 

 そうですね。来て早々ですけど玉藻には探索の護衛ついでに性能確認も行います。というわけで玉藻さんや探索に付いてきてくれます? 

 

 >あなたは玉藻の前に来て早々に悪いがこの辺りの探索をしたい為、護衛として付いてきてくれないかと尋ねた。

 

「それがご主人様の願いならば構わんぞ? ああ、だが後で妾にも報酬としてカルデアに帰ったらお願いを聞いてもらおうかの」

 

 しょうがねぇなあ〜(悟空)

 

 玉藻からも承諾を得たので探索に行きます。それじゃあ皆はしっかり休息を取って英気を養っておいてくれよな! 

 

 ほらいくどー。

 

 さてさて、取り敢えずは何かいいものは無いですかね? 改造用の武器とかでもいいんですけど、あんまり耐久の高い武器はないでしょうね。なので武器探しや素材探しは軽くに留めて玉藻の性能検証を主にしていきましょうかね。

 

 というわけで雑魚モブが湧いてるであろう場所にGOです。具体的には少し離れた場所にある平原ですけど。

 

「む、ご主人様よ。街の外に出るのか?」

 

 そっすね。ちょっと気になる事があるんですよぉ。お前の性能がなぁ!? 

 

 >あなたは少し気になる事があると言った。

 

「ふむ、気になる事か。ご主人様の事だ。何かあるのであろう。であればこの玉藻、ご主人様とならば何処へなりともお供させていただこうかの」

 

 ふーむ、尾が9本あるとは言え玉藻は玉藻ですね。割とほいほい言うことを聞いてくれるのは有難いことこの上ないです。これで監禁とかしなければベネなんですがねえ……。まあ、そこら辺はストレス値をしっかり見ていきましょうかね。

 

 というわけで平原に到着です。うーん、思った通りウェアウルフやらワイバーンが湧いてますね。というか思ったより多い上に殺しあってますけど。

 

 じゃあ本格参戦ということで玉藻に殺ってもらいましょう。

 

 >あなたはあそこにいる奴らを倒せるかと聞いた。

 

「む? あれを消せばいいのだな? よし、任せるといいぞご主人様よ」

 

 お、これは頼もしい発言ですね。それじゃあ適当にいくつかのモブの気を引いて──

 

「燃え尽きよ」

 

 >玉藻の前が指を鳴らすとウェアウルフとワイバーンの群れの中心に極大の火柱が立ち上がった。

 >突然の出来事に戸惑いながらも本能的に死を感じたウェアウルフとワイバーンは急いでその場から逃げようとする。

 >だが、彼らが逃げ切るよりも速く火柱はその範囲を広げて何もかもを呑み込んでいく。

 >火柱が収まった頃にはそこにいたはずの群れは全て消滅していた。

 

 えぇ……? なんだこの、何この火力? 宝具ならまだしもあれ宝具じゃないよね? 一撃で群れを消し飛ばすとかどういう火力してんだこの狐。普通じゃないぞこいつ。というかこいつもアルトリア・オルタと同じで仲間と一緒に戦える性能じゃなさそうなんですけど? でも宝具は多分あれですよね。味方にバフを撒くやつだよね? 

 

 矛盾してんぞこの狐。

 

「こんなものかの。どうじゃ、褒めても構わんぞ? 具体的には妾の頭を労わるように撫でるとかのう!」

 

 あ、うん。そうっすね凄いっすね。

 

 >あなたは玉藻の前の言う通りに彼女の頭を撫でて褒める。

 

「んぅ……やはりご主人様の手は温かいのう」

 

 うーむ、これはちょっと予想外です。いや、嬉しい誤算ではあるのですが、ここまで玉藻の性能がやばいとは思っていませんでした。ウェアウルフが混ざってる以上、三騎士のクラスもいたはずなのにそれでも雑に薙ぎ払える火力はやばいですね。序盤なので敵のレベルが低い事を加味してもそれでもあの量を指パッチンで壊滅させられるのはやばいです。

 

 この攻撃範囲だと味方諸共焼き殺しそうですよね。範囲を絞ることは出来るんですかね? 

 

 >あなたは攻撃範囲を狭めることは出来るのかと尋ねた。

 

「む? 勿論できるぞ。特定の者のみ焼くことも出来るし、呪うことも出来る。纏めてやった方が楽ではあるがのぅ」

 

 強い(小並感)。何だこの狐どうなってんだ。いやでもこの死にゲーが何の罠もなくこんなクソ強いサーヴァントを存在させるはずがありません。めちゃくちゃ強いサーヴァントなんて奴らは大多数が扱いに困るヤツらばかりなんです。特にギルガメッシュやらオジマンディアスなんかの特級のサーヴァントなどがいい例です。

 

 なのでこの玉藻にも何か必ずと言っていいほどのド級の地雷があるはずです。それを踏まないように気をつけないといけませんね。特にこの玉藻がストレス値MAXからの発狂デバフ貰ったらどう足掻いてもリセットしかありませんよ。これは少し玉藻の扱いを考える必要がありますね……。

 

 まあそれはさておき、取り敢えず落ちてる素材を集めましょうか。色々と焼き焦げてますけど、使えそうなものは拾っておきましょう──ってんん? 

 

 >焼き焦げた平原の中央にこの場には似合わない一つも焦げがない美しい刀が鞘ごと突き刺さっている。

 

 なんだアレ。何か如何にもな武器があるんですけど。というか何で刀がこのフランスにあるんだよ。流石の私でも怪しみますよ。でも気になるのは事実です。少し見てみますか。どれどれ? 

 

「なんじゃこの刀は……」

 

 >刀を見た玉藻の前が驚いたように目を開いた。

 

 うわ何だこのステ。クッソ強いですねこれ。でもさあ、こんな如何にも訳ありですよみたいな武器とかちょっと手に取るの躊躇うんですけど……。

 

 あと個人的にこの刀はなんと言うか何処ぞの「 」の体現者を思い出しますね。彼女は……うんまあ、色々と手のかかる面倒くさい子ですよ。サーヴァントになったらなったで自由に動かせる器を得たせいか現世を楽しんでますし。ああ、でもアルトリ──謎のヒロインXの強制的なブレーキ役になるくらいには強いんですよね。まあ、そこは「 」の体現者ですからね。それくらいは出来なくちゃって感じですけど。

 

「 」といえばあの子もか。生まれながらに「 」と繋がり、そして獣に堕とされた子ですね。「 」に繋がってる奴らはどうにも面倒な子達が多いんですよねー。まあその分上手く扱えば強力なんですけど。

 

 ま、余談はこのくらいにしておいてこの刀をどうするかですね。んーまあ、拾っておいても構わないでしょう。ステだけ見ればつよつよ武器ですし、改造しておいて人理修復の終盤辺りに立香ちゃんにあげましょう。きっと役に立つでしょうし。

 

 まあそれに「 」の体現者が召喚に応じる事は、あちらから望まない限りないでしょう。特にあの子はその生まれから何かに執着することはありませんし……。他に刀を扱う和鯖の中で地雷なのは頼光くらいなものでしょうし。全体で見れば地雷触媒になる確率は低いでしょう。なので拾っておいても問題は無いと思います。

 

「ご主人様よ、その刀を持っていくのかの?」

 

 >あなたは玉藻の前の問いに対して首を縦に振ることで肯定の意を示した。

 >あなたが刀を握ると刀の纏っていた雰囲気が少しだけ柔らかくなったのを感じた。

 

 さてとやることはやりましたし、立香ちゃん達の疲労が抜けたらいよいよ邪ンヌの本拠地を叩きに行きましょう。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




アンケートを見た感じ小説パートと言うよりも他視点パートは増やしても良さそうですね。とは言え、増やしすぎるとRTA詐欺になっちゃうので特異点修復の時はRTAパート多めに修復後の幕間を他視点多めにしようかと考えてます。

そこら辺は実際にやってみながら調整しようと思います。あと一応アンケートは暫く置いておくのでそれの経過も見ながら決めますね。

沢山書いたので失踪します。


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託される想い

ゴールデンウィーク初の投稿なので初投稿です



 泣いても笑っても最後のオルレアンバトルから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー今回漸く邪ンヌの本拠地にカチコミしにきました。後は邪ンヌの首と聖杯を取れば特異点の工事完了です。

 

 カルデアの支援物資から弾薬も多少補給できたのでこれから起きるサーヴァント戦、もといボスラッシュを一気に切り抜けていきますよ、いくいく。

 

 とはいっても味方サーヴァントに押し付けてホモくん達はさっさと邪ンヌが待ち構える最奥に行くんですけどね。ここは任せたぜ! 

 

 さてここでカルデア陣営とはぐれ陣営、邪ンヌの陣営のサーヴァントのうち誰が残っているかの再確認をしましょう。

 

 カルデア陣営はマシュ、ケイローン、エミヤ、クーフーリン、カーマ、キアラ、アルトリア・オルタ、玉藻の計8名。

 

 はぐれ陣営はアマデウス、マリー、ジークフリート、ゲオルギウス、清姫、エリザベート、ジャンヌの計7名。

 

 よって味方陣営は併せて15名となります。

 

 邪ンヌ陣営は邪ンヌ、マルタ、アタランテ、デオン、カーミラ、ヴラド三世、後は確認出来ていませんがいると仮定してジル・ド・レェとサンソンの計8名となります。

 

 こちらの数の方が圧倒的に有利ですね。ただ、邪ンヌ戦には多くのサーヴァントを分配したいんですよね。というのも要はこの特異点、邪ンヌをぶっ殺してしまえば残るはジル・ド・レェだけなので一瞬でカタが付きます。なので味方陣営には邪ンヌを除いた敵サーヴァントを倒してもらう必要は無いんです。要はこちらに来させないように時間稼ぎさえして貰えればいいんです。全員で敵サーヴァント圧殺してもいいんですけど、それすると終局でろくに縁を結べず詰む罠がありますからね。

 

 そこらへんを加味して出来うる限りいい感じになるようにしていきたいですね。まあ、ただ一部のサーヴァントはほぼ確定で戦う相手が決まりますけども。

 

 例えばエリザベートは敵にカーミラがいると必ずカーミラと戦います。サンソンやデオンはマリーやアマデウスなどといった感じですね。なのでそこら辺はもうどうしようもありませんので最初からそのつもりで行きましょう。

 

 >あなた達は聳え立つ城の正門前に着いた。

 >この城には素人目でも分かるほどの膨大な魔力が渦巻いている。

 

「ほお……随分とまあおっかねえ魔力が渦巻いてるもんだ」

 

「おや、まさか君ともあろう者が臆しているのかね」

 

「抜かせアーチャー。この程度で俺が臆するかよ」

 

 これは間違いなく聖杯がありますね。いやー良かった良かった。これで邪ンヌとすれ違いになったとかあったら笑いどころじゃなかったですからね。

 

「う……」

 

 >魔術の素人である立香でさえも感じることが出来る膨大な魔力反応につい立香はほんの少し後ろに後退りしてしまう。

 

 む、これは露骨なフラグですね。これを見逃すと立香ちゃんが聖杯を持った邪ンヌと相対した時にその威圧感からストレス値が上昇します。そして運が悪ければ恐慌デバフが発生する可能性があるのでここはしっかりケアしてあげましょう。

 

 >あなたは立香の頭を乱雑に撫でた。

 

「わわっ!」

 

 >急に撫でられた事に立香は驚きつつもあなたからの励ましを聞いた立香は落ち着きを取り戻した。

 

「うん……。そうだよね、私と望幸ならきっと大丈夫だよね」

 

「私も微力ながら先輩と望幸さんの助けになれるように頑張ります!」

 

「フォウフォーウ!」

 

「ふふ、ありがとうねマシュ、フォウ。よーし! 気合い入れていこう!」

 

 これで立香ちゃんは大丈夫そうですね。

 

「あの、戦う前に一つだけ宜しいでしょうか?」

 

 >気合いを入れ直したあなた達に清姫が話しかけてきた。

 

「あなた達の名前を改めて私に教えてくれませんか?」

 

 おや、なんですかねこのフラグ。名前の方は教えてたはずなんですけどまた教えて欲しいとは一体……。初めて見るフラグですね。うーん、ここで変な縁ができるのは嫌ですし、けどここで答えないのは清姫のストレス値に関わりそうですし答える一択なんですよね。

 

 まあ、なので先に立香ちゃんからしてもらいましょう。こういうのは先に言った方が縁が結ばれるっておばあちゃんが言っていた……(天道総司)

 

「えと、私の名前は立香。藤丸立香だよ」

 

 名前確認ヨシ! (現場猫)

 

 >あなたは清姫に自分の名を改めて教えた。

 

「はい、はい……。藤丸立香様に星崎望幸様ですね。この清姫、その名前を確かにこの魂に刻ませてもらいました」

 

 なんか重いんですけど……。まあ重いのは清姫のデフォだし考えていても仕方がありませんね。それでは邪ンヌにカチコミ仕掛けましょうか。

 

 おーい磯野! 野球しようぜ! 

 

 >あなた達は城の正門を開いた。

 >そこには数えるのも億劫な程のワイバーンの群れが待ち受けており、ワイバーンで城内を埋めつくしていた。

 

 ファッ!? なんやこの数多すぎやろ。取り敢えずカーマとキアラの魅了で一箇所に集中させてジークフリートと玉藻の攻撃で数を減らしましょう。

 

 >あなたは味方のサーヴァントに対して指示を下した。

 

「では私からイきましょうか。カーマ──」

 

「いちいち言われなくてももうやっていますよ」

 

 >キアラの生みだした白濁色の魔力弾とカーマの蒼く燃え盛る炎がワイバーン達の中で最も多いところに目掛けてとんでいく。

 >そして着弾と同時に弾け、それに向かってワイバーン達が殺到し始める。

 

「ジークフリート! お願い!」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 >ジークフリートは立香の言葉を受け、その魔剣に魔力を装填する。

 >圧縮された魔力は魔剣を蒼く輝かせる。

 

「──幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

 >真名解放とともに、柄の真ん中にある宝玉がせり出し、剣から膨大な魔力が火柱のように立ち昇る。

 >大上段で振りかぶられた魔剣は、蒼の極光となって眼前の敵陣を焼き尽くす。

 

 ビュ-ティフォ-……。さすが竜殺し。ワイバーンがゴミのようだァ。そしてここで欠かさず追撃です。玉藻よろしくぅ! 

 

「うむ、ちと加減が面倒じゃが任せよ」

 

 >あなたからの指示を受けた玉藻は背後に巨大な計8つの火球を作り出す。

 >その一つ一つにとんでもない魔力が込められてるのが分かる。

 

「──呪相・炎天」

 

 >放たれた8つの焔はジークフリートの宝具を受けてもなお生き延びていたワイバーンの下へ行き、ドーム状の火炎となり範囲内にいた全てのワイバーンを呑み込んだ。

 >爆風も熱波すらも此方には届かず、されどその炎の中にいるワイバーンのみを的確に焼き尽くす。

 

「こんなものか──む? これは……」

 

 >しかし炎が消えた場所には焼き尽くされたはずのワイバーン達が無傷で存在していた。

 

「これは──なるほど倒した傍から湧いてきてるのですね」

 

「面倒くさいったらありゃしませんねぇ」

 

 あ ほ く さ

 

 無限湧きとかまともに相手するだけ無駄じゃないですか。こういうのは多分どこかに術式の核になる物があるはずなのでそれを壊さないと延々と湧き続けるんでしょうね。

 

「──皆さんここは私に任せて先に行ってください。幸いにも相手は竜種。ならば竜殺しの聖剣アスカロンを持つ私ならば食い止めることは出来るでしょう」

 

「いや、私も残ろう。こういった多数を殲滅する戦いは得意なのでね」

 

「それはありがたい」

 

 お、流石ゲオルギウスとエミヤ。この二人がここは任せて先に行けをしてくれるそうなので甘えさせていただきましょう。

 

 >あなたは2人に任せたと言った。

 

「ああ、任せてくれ。さて、道を開ける。一気に駆け抜けてくれよ?」

 

 >エミヤはそう言うと弓を投影し、捩じれた剣を矢に変換して弓を引き絞る。

 

「──我が骨子は捻れ狂う(I am the bone of my sword)

 

 >限界まで引き絞られた矢はその場に存在するだけでも周囲の空間を削り取る。

 

「──偽・螺旋剣(カラドボルグ)!」

 

 >放たれた矢は音速を遥かに超え、周囲の空間ごとワイバーン達を削り殺した。

 

「行け、マスター!そして勝ってこい!」

 

「みなさん行きなさい! ここは私達が抑えきってみせます!」

 

「頼んだよ、エミヤ! ゲオルギウス!」

 

 >あなた達はエミヤが作り出した道を突き進み、次の階へと移動した。

 

「さて、背中は任せるが宜しいかねゲオルギウス殿」

 

「無論です。私の背中も任せましたよ」

 

 >階段を駆け上がった先にはコートを纏った男が剣を構えて佇んでいた。

 

 うお、やっぱりいたんですねサンソン。という事はジル・ド・レェもやっぱいるんですかね。ジル・ド・レェ所か海魔の一匹も見当たらないですけど。

 

「やあ、そろそろ来る頃合いだと思っていたよ」

 

「サンソン! あなたサンソンじゃない!」

 

「君とはやはり宿業で結ばれているようだね、マリー。さて、僕にもやらなければいけない仕事はある。だからさ、戦おうかマリー。僕は処刑人として君の首を刎ねる」

 

 >そう言ってシャルル=アンリ・サンソンは剣を構える。

 >その顔は氷を思わせるほどの冷酷さで、それでもどこか温かみを感じる笑みを浮かべていた。

 

 お、漸くここでサンソンが登場ですか。どうやら相変わらずマリーにご執心みたいですし、ここはマリーとアマデウスに任せましょうかね。

 

「なら僕もここに残ろう。マリー1人だと心配だからね。卑怯とは言うなよ、サンソン?」

 

「言わないさ。君ならそうするだろうとも思っていたからね」

 

「うわ、妙に素直だ。気持ち悪い。……というわけでだ。ここは僕とマリーに任せて先に行くといい」

 

「そうね、少しの間だけどあなた達と過ごした日々は悪くなかったわ。先に行って頂戴なマスターさん達。そしてあの黒いジャンヌをお願いするわね」

 

「うん、マリーちゃん達も必ず勝ってね」

 

「ええ、もちろんよ」

 

 >あなた達はマリーとアマデウスにサンソンの相手を任せて先に進んだ。

 

「それじゃあ始めようか。マリー、アマデウス。サーヴァントとして処刑人として君たちの首を落とす」

 

「ははっ、逆にはっ倒してやるぜサンソン」

 

「んもう、アマデウスったら! でもこの戦いが終わったらいつか皆でお茶会をしましょうね。ね、サンソン」

 

「──ああ、そうだねマリー。いつかそんな夢みたいな日を彼等と過ごしてみたいものだ」

 

 >扉を開けるとそこにはアタランテが弓を持って佇んでいた。

 

 ここはアタランテですか。ならまあ、十中八九相手になるのはケイローンでしょう。同じギリシャ鯖で何かと縁がある2人ですからね。

 

「来たな、カルデアの者達よ。もはや加減はせん。決着をつけるとしよう」

 

「マスター、ここは私にお任せ下さい。そしてこの特異点に終止符を打ってきてください」

 

「ケイローン先生……うん、お願いします!」

 

 >そう言って前に出たのはケイローンであった。

 >彼は剣呑な光を灯してアタランテを睨み付ける。

 

 ケイローンVSアタランテですか。どちらも弓の扱いは超絶技巧の持ち主ですからね。どっちが勝つんでしょうか。

 

 ま、邪ンヌ戦にさえ乱入されなければどちらでも構いませんけど。

 

 それじゃあ次の場所にイクゾ-! 

 

 >あなた達は扉を開いて奥の部屋へと進んだ。

 

「アタランテ、あの時の続きを話してもらいましょう」

 

「……いいだろう。但し私に勝つことが出来たのならと条件は付くがな」

 

 >扉を開いた先にはこの特異点で最初に相見えたサーヴァントの一人であるカーミラが佇んでいた。

 

 お、カーミラですか。となるとここはエリザベートですね。

 

「……来たわね。ならもう話すことはないわ。潰して差し上げます」

 

「子犬達、ここは私に任せなさい」

 

 うむ、読み通りですね。やはりエリザベートが立候補しました。というわけでエリザベートに押し付けてホモくん達は次の場所へと進みましょう。

 

「分かった……。けど負けないでねエリちゃん!」

 

「当たり前じゃない。あの辛気臭い顔殴り飛ばしてやるんだから! 子犬達も負けるんじゃないわよ!」

 

 >あなた達はエリザベートに任せて次の階へと進んだ。

 

「……我ながら随分とムカつくこと。何も知らないくせに希望はあるのだと信じて疑わないその顔。ああ、ムカつくったらありゃしないわ。だから磨り潰してあげましょう。愚かな私よ」

 

「はっ、やれるものならやってみなさい!」

 

 >階段を上った先にはこの特異点で最初に相見えたサーヴァントの一人であるヴラド三世が待ち受けていた。

 

 おっと、ここはヴラド三世が相手ですか。

 

「ふむ、この時が漸く来たか。ならば始めよう。最早我らの間に言葉なぞ不要。さあ来るがいいカルデアの者達よ」

 

 ふむ、ヴラド三世ならばここはクーフーリンでしょうね。同じ槍使いとして、そして太陽神ルーの子であるためドラキュラであるヴラド三世には特攻が入りますし。

 

「おうよ、ここは俺に任せな! 嬢ちゃん達は次に進め。そんでちゃんと勝ってこいよ」

 

「勿論だよ。クーフーリンも絶対に勝ってね!」

 

「おう! きっちり勝ってやるさね!」

 

 >あなた達はクーフーリンに任せて奥の扉を開いて次の場所へと進んだ。

 

「さあ、始めようぜ。テメェとは同じ槍使いとして一度腕を競い合ってみたかったからよ」

 

「よかろう、余の護国がための槍。その身を以って味わうがいい」

 

 >扉を開いた先に待っていたのはデオンとマルタの2人だった。

 

 む、ここは二人なんすね。じゃあ誰にやってもらいましょうかね。マルタはアルトリア・オルタで確定してますけどもう一人は──

 

「来たわね、あんた達。この奥にはあんた達が倒すべき存在であるジャンヌ・オルタが待っているわ。だからとっとと行きなさいな。けど──」

 

「僕達は君達の道を塞ぐつもりは無い。だからこの扉を開いて進んでいくといい。けど──」

 

「「星崎望幸だけは通すつもりは無い」」

 

 なんでさ!? 

 

 ホモくんが何したって言うんだよオルルァン! 何か名指しされるとか思ってもないんですけどぉ!? かーっ! 今まで結構順調に進んで来れたと思ってたんですけどねぇ……。

 

 仕方ありません。名指しされてしまった以上はこの二人を倒さない限りホモくんは奥には進めないでしょうし、即効で潰す必要があります。

 

 という事でアルトリア・オルタと玉藻の二人を起用しましょう。高火力編成です。互いにソロ向けの性能ですが、玉藻は遠距離からの攻撃と支援ができる筈なのでアルトリア・オルタの動きをそこそこ邪魔しないで戦えるはずでしょう。

 

 そんで立香ちゃん達には先に進んでもらいます。運が良ければホモくん達が辿り着く前に邪ンヌをぶっ倒してくれる可能性もありますし。あとその確率を少しでも上げるためにもキアラとカーマの二人にも立香ちゃんと共に行ってもらいましょう。

 

 邪ンヌといるのであればですけどジル・ド・レェの二人に対して六人で戦う上に元ビーストが二騎もいますからね! ガハハ勝ったな! 風呂入ってくるわ! 

 

 というわけで立香ちゃん達には先に行ってもらいましょう。

 

 >あなたは立香に対して先に進むように言った。

 >そしてキアラとカーマの二人にも立香に付いて行くよう指示した。

 

「……うん、分かった」

 

「かしこまりました。ですがくれぐれも無茶はなさらぬようにお願いしますね、マスター」

 

「二人共マスターの事は任せましたからね」

 

 >立香達は扉の方へと進んで行く。

 >そして扉を開いて奥に進むその直前に立香はあなたの方へと振り向いた。

 

「望幸、必ず勝って。勝って皆でカルデアに帰ろう」

 

 >あなたはその言葉に力強く頷いた。

 >それを見た立香は今度こそ扉を潜り抜けて、ジャンヌ・オルタが待ち受ける奥の部屋へと進んで行った。

 

 さてと、それじゃあ戦いましょうかね。

 




俗に言うボスラッシュ。本当は一人一人に焦点当てて書きたかったけどそれやると滅茶苦茶長くなっちゃうから断念しました。悲しい。
マルタとデオンがホモくんを食い止めるのは訳があったり。
ホモくんは力をためている……。

なんやかんやで失踪します


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竜の魔女との問答

タグに独自設定と独自解釈を追加しました。
小説パートを書いたので初投稿です。


 ジャンヌ・オルタは城の最奥に存在する玉座に腰掛けてとある事について考えていた。

 

「キアラからの情報とアタランテからの情報、そして私自身が持つ情報。これらを統合してもやっぱり彼奴の力、そして目的が分からないわね……」

 

 ジャンヌ・オルタが今までやっていたことは、救いたいと心から望んでいる者についての情報収集だった。フランスの事などどうでもよかった。無論、復讐者として現界している以上、フランスに対する恨みはある。たとえそれが作られた物であったとしても、その復讐心だけはジャンヌ・オルタという存在を証明する物なのだから。

 

 だが、今のジャンヌ・オルタはそれ以上の憎悪を抱いている。それは彼に惨たらしい結末を迎えさせた唾棄すべき腐れ外道の魔術師達であり、彼にあのような役目を押し付けた世界そのものが憎くて憎くてたまらない。

 

 だからこそその憎悪を晴らすためにジャンヌ・オルタは彼の迎える結末を回避させ、役目から解放させる事が目的なのだ。例えば人理が滅ぶ事で彼が救われるのならば喜んで人理を滅ぼそう。

 

 けれど、彼はそんな事では決して救われない。幾度人理を滅ぼそうが彼が背負っている役目からは解放させてやることが出来ない。

 

 故にジャンヌ・オルタは知らなければならない。彼の望みと力の根源を。それこそが彼を救う唯一の方法だと思っているが故に。

 

「キアラからの情報では彼奴の今回の動きから考えるとカルデアの全員が生き残る事を目的としている。けど、それともう1つ何か他の目的もあるように感じる、か」

 

 カルデアの全員が生き残る事を目的とするのは分かる。彼奴自身、元はとんでもないお人好しだった。だが、もう1つの目的とやらが全く分からない。

 

 しかし、その目的とやらがある意味で最大の狙いなのだろう。でなければ全員生き残って人理修復を成した事もあるというのにもう一度やり直す意味が無い。

 

「アタランテからの情報では彼奴の目がほんの一瞬赤く染まった時、自身と近しい神の力を感じたと言っていたわね。ただ、同時に()()()()()()()()とも」

 

 矛盾した内容にジャンヌ・オルタは思わず舌を打つ。

 

 近しいのに最も離れた力。

 

 それこそが彼の力の根源なのだろう。

 

「ギリシャの神で時間に関与するのは確か……クロノスだったかしら。けど仮に彼奴がその力を持っていたならばケイローンが気づかないはずがないわね」

 

 ギリシャ神話における時間を司る神。カオスから生まれたとも元は川の神であったともされる神の一柱。農耕の神にして大神ゼウスの父であるクロノスとは異なる少々変わった同名の神だ。

 

 だが、仮にその力を持っていたとしたら神授の知恵を持つケイローンが真っ先に気がつくだろう。

 

 そうなると彼の力の根源はクロノスではない。

 

 仮にアタランテから得た近しいのに最も離れた力という情報を抜きに考えた場合ならばどうだろうか。

 

「他神話でぱっと思いつくのが北欧神話の運命の三女神」

 

 死を意味するウルズ、起きつつあることを意味するヴェルダンディ、これから成されるべきのことを意味するスクルドの三女神、通称『ノルンの女神』。

 

 彼女らの権能は過去未来現在を司る。故に彼の力の根源に当てはまりそうではあるが──

 

「これも違うわね。仮に彼奴が三女神の力を使って過去に逆行していたとしても逆行するたびに姿が変わる理由が分からない」

 

 他に思い当たる時を司る神々を考えるが其のどれもが彼の力の根源と一致しない。そうなると彼の力は時間には関与しないのかとも考えたがそうなると彼はどうやって過去に移動しているのかという話になる。

 

「仏教では確か輪廻転生という概念があったわね。あれは過去に行けるのかしら? それも記憶を継承させたままで」

 

 それについても少し考えてみたが、それも違うだろうということに気がついた。仮に輪廻転生しているのであればカーマが気づく。仮にもあれはインド神話における神の一柱。加えてかの聖人とも関わりがある。

 

 ならば彼奴が輪廻転生による過去への逆行をしていたのであれば気がつけるはずだ。

 

「やっぱりそうなると鍵になるのは私の奪われた記憶と彼奴の魂が摩耗する理由ね」

 

 ジャンヌ・オルタ自身、その時に何が起きたのかは覚えていない。マルタからの情報だと彼奴の目が赤く染まって周囲に魔術陣が現れたそうだが……。思い出そうとしてみるもやはり思い出すことが出来ない。寧ろ、思い出そうとする度に頭が割れそうなほどの激痛が走る。

 

 まるで()()()()()()()()と言っているように。

 

「……本当に癪に障るわ」

 

 ジャンヌ・オルタの憤怒に呼応するかのように彼女を中心に獄炎が広がる。それを見たジャンヌ・オルタは少しばかりのため息をついた。

 

「まだ完全には取り込めていないわね。幸い彼奴らが来るまでに時間がある事だし、出来る限り取り込むことに集中しておきましょうか」

 

 彼女はそう言って目を瞑る。深く深く自身の力の奥底まで沈み込むように。彼女が次に目を開けるのは彼女が待ち望んでいる時だろう。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 立香達は後ろから聞こえる轟音に振り返る事はせず、ただ我武者羅に前の扉に向けて走っていた。望幸の事が心配じゃないと言えば嘘になる。本当は望幸と一緒に戦いたかった。けれど、それでも確かに望幸は、望幸達は私達に託してくれた。

 

 だからこそ、その期待に応えなくてはいけない。竜の魔女を打倒し聖杯を持ち帰る。ただ其れだけを考えて立香は突き進む。

 

 そして扉を開いたその先に『竜の魔女』はいた。

 

 焼け焦げた室内の奥に位置する玉座に座り静かに目を瞑っていた。彼女自身の肌の白さも相まっていっその事それは死んでいるかのように思えた。

 

 けれどそれは違う。彼女を中心に渦巻く焼け付くような魔力が彼女の存命を現していた。そして彼女は気怠げな様子で目を開けた。

 

 瞬間、凄まじい熱量が立香達を襲った。

 

 いや、正確に言うのであればただ視線を向けられただけだと言うのにこの身を焼き尽くす様な熱量に襲われたと錯覚させられたというべきだろう。

 

「ようこそ、カルデアの人達よ。待ち侘びていましたよ」

 

 彼女は玉座からゆっくりと立ち上がるとその身から膨大な魔力を滾らせて剣と旗を手に出現させた。漏れ出る魔力は獄炎へと変わり、床を舐めるように焼き尽くしていく。

 

 そんな現象から立香を守るようにジャンヌ・ダルクは前に立つ。

 

「私は……貴女に問わなければなりません」

 

「ふぅん? お綺麗な聖女様が問いたい事ね?」

 

 瓜二つの容姿をした彼女達はまるで鏡合わせの様に向かい合う。けれど決定的に違うのはジャンヌ・オルタは酷薄な笑みを浮かべ、ジャンヌ・ダルクはそんな彼女相手に迷いながらも、然れど何処か確信を持った瞳で彼女に問いかけたことだ。

 

「貴女は、貴女は本当に『私』ですか?」

 

 前と同じ問い──では無いことにジャンヌ・オルタはすぐに気がついた。故に彼女はジャンヌ・ダルクの言葉を待つ。

 

「ここに来るまでに色々と考えてはいたのです。けれどやはりここに来て確信しました。仮に貴女が私の別側面と言うのなら──」

 

 ジャンヌ・ダルクは言葉をそこで区切り、ジャンヌ・オルタを嘘偽りは許さないとばかりに強く見つめ、決定的な一言を放った。

 

「──貴女は何に対してそのような強大な憎悪を抱いているのですか?」

 

「はっ、そんなもの決まっているでしょう。私の憎悪は私を裏切ったフランスに──」

 

「いいえ、それは嘘ですね。いえ、正確に言えば恨んではいるのでしょう。ですが、それよりも貴女は別の何かに対して遥かに強い憎悪を抱いているのでしょう?」

 

「───」

 

 確信を持ったジャンヌ・ダルクの言葉に、ジャンヌ・オルタは驚愕で動きが止まった。然しそれも一瞬のことで即座にジャンヌ・ダルクに反論する。

 

「はっ、何を言い出すかと思えば……。私がこのフランス以上に強い憎悪を抱く? 何を根拠に言っているのです。笑わせないでくれますか」

 

「根拠ならあります。私達はここに来るまでに様々な街に行きました。その中には当然貴女から襲撃を受けた街もあります。けれどどの街にも怪我人はいても死亡した者は一人もいなかった」

 

 その言葉に反応したのは立香であった。

 

「ま、待ってよジャンヌ! 死亡した人が一人もいなかったならラ・シャリテでの出来事はどういうことなの?」

 

 確かにあの時、ロマニからは生存者反応はないと聞いていたはずだ。ならばその時に死亡した人がいるのではないかとそう考えた立香であったがそれはジャンヌ・ダルクとキアラの双方によって否定された。

 

「いえ、立香さんあれは偽物です。恐らく本物の市民は既に逃げ切った後なのでしょう。だから街には生存者の反応がなかった」

 

「ええ、ジャンヌさんの仰る通りです。あれは魔力と聖杯の力によって生み出された最初からそうであると決められた怪物です。断じて死んだ人達を使った怪物ではありません。それに仮に死体を使ったのであれば生ける屍(リビングデッド)となっているはずです。立香さん、()()()()()()()()()()()?」

 

 そう言われて立香は初めて気がついた。確かに今考えれば妙にも程がある。キアラの言う通り、死んだ人達を利用したのであれば、白骨化するまでの時間の関係上どうやったって生ける屍が少なくともいなければいけない。だと言うのに、自分達は一体足りとてそれを見かけることはなかった。

 

 そしてそこでふと立香は気づいた。初めてワイバーンと遭遇した時、あのワイバーンは余りにも必死な形相で襲ってきていたことに。

 

 仮にワイバーン達が人を喰らっていたのであれば、あんな必死な形相で立香を襲ってくるはずがない。あんな、飢えた顔では。

 

 なら、本当に──? 

 

 そこまで考えが思い至った所で突然ジャンヌ・オルタは額手を当てて笑った。まるで可笑しくて可笑しくて仕方がないといった様子で笑う。

 

「はは、はははは、あっははははははははは──!」

 

 そうして一頻り笑いきった後にジャンヌ・オルタは何処か自虐的な笑みを浮かべた。

 

「あーあ、そんなことで気が付かれるなんて思ってもいなかったわ。私もあの馬鹿に毒されてたのかしら」

 

 そう誰にも聞こえない程の声量で呟くジャンヌ・オルタ。けれど何処かその様子は嬉しそうであった。

 

 ジャンヌ・オルタは少しだけ愉しげな笑みを浮かべながら改めてジャンヌ・ダルクの質問に答えた。

 

「いいでしょう。そこまで目敏く気がついたご褒美としてほんの少しだけ教えて差し上げます」

 

「なら、改めて聞きましょう。貴女は一体何者なのですか?」

 

「私はあんたよ。聖女ジャンヌ・ダルク。正確に言うのであればとある人物が聖杯に願ったことで生まれた本来有り得るはずのない存在。まるで泡沫の夢のように脆い存在がこの私、ジャンヌ・オルタよ」

 

 告げられた言葉に思わず絶句してしまった立香。仮にジャンヌ・オルタの言う言葉が本当ならば彼女という存在を作った人物がいるはずだ。ならばその人物こそがこの特異点においての黒幕。

 

 その考えを読んだようにジャンヌ・オルタは話を続けた。

 

「ああ、一応言っておきますけれど私を作った人はもうこの特異点にはいません。何せ私が焼き尽くしましたから。ねえ、お優しい聖女様。あんたなら分かるんじゃないかしら? 誰が私を作ったのか」

 

「……ジルですね」

 

「正解です」

 

 だが、そうなると新たな疑問が湧いて出てくる。

 

「貴女は何故ジルを殺したのですか?」

 

 そう尋ねたジャンヌ・ダルクに対してジャンヌ・オルタは少しだけ悲しそうな、然しそれ以上の憤怒を込めて話した。

 

「彼奴は……ジルは何者かによって精神を汚染されていましたから。そしてそれに気がついていたジル本人の願いによって私はジルを焼き殺した」

 

「何ですって?」

 

 それに反応したのはカーマであった。彼女は怪訝そうな表情を浮かべてジャンヌ・オルタに問いただした。

 

「あの人、精神汚染のスキルを持っていたはずですよね? それもとびきり強力な。それを上書きする程の精神汚染なんて誰がやれるって言うんですか?」

 

「それについては私も分かりません。けど何らかの存在が干渉してきたのは確かでしょうね」

 

「清姫、あなた嘘の判別ができましたよね。嘘をついている様子は?」

 

 その言葉に対して清姫は首を左右に振った。

 

「いいえ、彼女は今まで本当の事しか言っていません」

 

 その言葉にカーマは思わず舌を鳴らす。

 

 今回の特異点は余りにも不可思議なことが起き過ぎている。ジャンヌ・オルタが言うジル・ド・レェの精神汚染を貫通して更に上書きするように精神を汚染する何者かの存在、アルトリア・オルタが激昂した理由、そして何よりもカーマ自身も感じとれた自身という神に対して余りにも近く、それでいて最もかけ離れた酷く無機質で冷たく悍ましい神性とノイズのかかった謎の言語。

 

 どれをとっても不可解にも程がある。こういう時、あの探偵さえいれば分かったのかもしれないが、無い物ねだりしても仕方が無いか。

 

 そこまで考えたところで不意にジャンヌ・オルタを中心に異常な量の魔力が渦巻き始めた。

 

「さて、お喋りはここ迄です。私が本当に憎悪しているものを知りたいのであれば私を打倒してみなさい」

 

 そう言ってジャンヌ・オルタは剣と旗の両方を持ち、立香達と明確に敵対する構えを取る。

 

 彼女の周囲に渦巻く魔力が獄炎の様に揺らぎ、そこに立っているだけで骨まで焼き尽くされかねない程の熱量を放ち続ける。

 

「私は竜の魔女『ジャンヌ・オルタ』! 其れこそが私を示す唯一無二の名だ! カルデアの者達よ、人理を救ってみせるというのならこの程度の理不尽跳ね除けてみなさい!」

 

 そう言って燃え盛る焔の中で愉しげな笑みを浮かべながら、縦にぱっくりと裂けた瞳孔で彼女は立香達を睨みつける。

 

 ──斯くして第一特異点での最後の戦いが始まる。

 




ポンコツな邪ンヌも良いけどカッコイイ邪ンヌが好きです。なのでこの邪ンヌは魔改造されてます。
そういうの嫌いな人は要注意な!(後出し)
すまないさんが息してないけどちゃんと活躍させるから許し亭許して

主人公どこ……ここ……?

主人公が失踪してしまったので私も失踪します。


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清姫の覚悟

連続初投稿だぜいぇーい!



 最初に攻撃を仕掛けたのはジャンヌ・オルタであった。

 

「まずは小手調べよ。この程度の攻撃、簡単に凌ぎきってみせなさいな」

 

 彼女は膨大な魔力を旗の石突部分に集中させ、床に思いっきり叩き付ける。瞬間、彼女の周囲に揺らいでいた獄炎がまるで巨大な津波の様に変わり立香達へと襲いかかる。

 

 はっきり言ってこの程度、などと言えるレベルを遥かに超えた攻撃であった。範囲も威力もどちらもとっても並の英霊の宝具以上の威力だ。

 

「皆さん私の後ろに!」

 

 故にその攻撃に真っ先に反応したのはジャンヌ・ダルクであった。彼女は立香達の前に立つとジャンヌ・オルタと同じように黄金に輝き始めた旗の石突部分を床に叩きつける。

 

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!」

 

 彼女の持つ旗から溢れ出る光が立香達を守る防護壁へと変換される。こんな切迫した状態であるにも関わらず思わず美しいと感嘆の息を漏らしてしまう程、彼女が作り出した光景は神秘的だった。

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

 

 そしてジャンヌ・オルタの放った獄炎が立香達を守る防護壁ごと呑み込んだ。あまりの熱量に大理石で出来た城の床は融解し、ドロドロとマグマのように赤く粘り気を帯びた物へと変貌する。

 

 ジャンヌ・ダルクが宝具を発動していなければ、この攻撃で全員がやられていたかもしれないとそう思わせるには十分すぎるほどの一撃であった。

 

「くっ……ぅぅぅ!」

 

 だが、彼女の宝具は同胞を守るための防御に特化した宝具だ。いくら弱体化したとはいえ、それでも立香達には傷一つ付けさせなかった。

 

 だからこそ、それがいけなかった。ジャンヌ・ダルクは余りにも防御することに傾倒しすぎていた。後ろに立つ者達に被害が及ばないようにジャンヌ・オルタの攻撃を一人で受けてしまった。

 

 故に彼女は気づけなかった。

 

 燃え盛る業火の中からジャンヌ・オルタの手が這い出てきたことに。

 

「なっ──!?」

 

「防御に傾倒し過ぎて私が接近してたことに気づかないなんて、本当に甘っちょろいわね」

 

 ジャンヌ・ダルクの顔を目掛けてジャンヌ・オルタは掌を向ける。その際に集まる魔力は先程の比ではなかった。誰もがジャンヌ・ダルクが殺されてしまうことを想像する。だが、それでもそれを許す者はいなかった。

 

「させるかっ!」

 

 ジャンヌ・オルタに攻撃を仕掛けたのは竜殺しのジークフリートだった。彼は誰よりも早くジャンヌ・ダルクの危機に気が付き、彼女を守るために業火の中から現れたジャンヌ・オルタに斬り掛かる。

 

 その際に未だに燃え盛る業火の中に身を投じてしまったが故に、業火は彼の体を容赦なく蹂躙した。ブスブスと身体中から肉が焦げるような音を出しながらも、彼は一切怯むことはなかった。

 

 ──ああ、けれども悲しいことに其れすらもジャンヌ・オルタには通用しなかった。

 

 彼女はまるでそうしてくる事が分かっていたようにジークフリートの大剣による攻撃をもう片方の手に持っていた旗の柄の部分を使って垂直に受け流した。

 

「なんだと!?」

 

「この連中の中で最も戦い慣れてるのは貴方なのよね。なら、先にやるべき事は貴方を潰す。その為に今の攻撃はブラフだったの」

 

 彼女は完全に受け流された事によって無防備な姿を晒してしまったジークフリート目掛けて金属製の旗が撓るほどの速度を以てして弱点である彼の背中に叩きつけた。

 

「ガッ───!?」

 

「ジークフリート!」

 

 ジークフリートは弾丸のように打ち飛ばされ、城の壁に激突する。轟音を響かせながら城の壁を崩壊させる程の速度で吹き飛ばされたジークフリートに思わず立香はジャンヌ・オルタが近くにいるというのに其方の方を向いてしまうという愚策を犯す。

 

 そして勿論それを見逃すジャンヌ・オルタではなく、必然的に次の攻撃対象になるのは立香であった。

 

「余所見とはいい度胸じゃない。ただの凡人である貴女が他に気を配れるほど余裕があると思っているのですか?」

 

 振り上げられた黒い剣は凡人である立香の体を両断する位わけないことは簡単に予想できる。そしてだからこそこういった場面では彼女は必ず動くとジャンヌ・オルタは読んでいた。

 

「先輩は私が守ります!」

 

「はっ、その威勢だけは買ってあげるわ。けどね、実力が伴っていなければただの虚勢にしか過ぎないの──よっ!」

 

 ジャンヌ・オルタは剣を振り下ろす直前に攻撃対象を立香ではなくマシュの盾に切り替える。そして彼女は渾身の一撃をマシュの盾に叩き付けた。

 

 真正面から受けたにも関わらず吹き飛ばされてしまいそうな程の衝撃にマシュは思わずくぐもった呻き声をあげる。だが、それでも確かに受けきってみせた。

 

 ──だと言うのにマシュの本能の警鐘が喧しいくらいに頭の中で鳴り響いていた。

 

()()()

 

 ジャンヌ・オルタがそう呟いた瞬間に黒い剣に内包されていた莫大な魔力が獄炎として解放される。圧縮されていた獄炎は行き場を得たことで歓喜の声を上げて空気すらも蹂躙していく。

 

 故に起きたのは零距離からの大爆発に他ならない。当然不意を打たれたように増した圧力にマシュは1秒足りとも耐えきることは出来ず、守るべき存在である立香を守れずに吹き飛ばされた。

 

「きゃあああああ──!?」

 

「マシュ!」

 

 思わず飛ばされたマシュの方を見ようとした立香であったが──

 

「また余所見? そうやって隙をさらけ出して誰かに守って貰うつもりなのかしら。それがマスターである貴女がやることですか?」

 

 耳元で囁かれた言葉に思わず直接心臓を掴まれたような錯覚を覚えた。

 

 首元に当てられた、焼き尽くされんばかりに熱い灼熱の中には不自然な位にひんやりと冷たい感触があり、それに息が詰まり、上手く呼吸することが出来なかった。

 

 恐る恐ると言った様子で声の方向に顔を向けるとそこにはジークフリートを潰し、マシュを吹き飛ばしたジャンヌ・オルタが立香の首元に黒い剣を突きつけて、絶対零度を想起させる酷薄な笑みを浮かべて立香を睥睨していた。

 

「貴女が本来すべき事はそういうことじゃあないでしょう。サーヴァントと共に戦うマスターであるのならば全体を俯瞰し、サーヴァント達に的確な指示とサポートをしなければならない。それをやろうともしないなら部屋の隅で無様に震えて蹲っておきなさいな」

 

 そう言ってジャンヌ・オルタは唖然とした様子で彼女を見上げる立香に対してまるで路傍に転がる石を蹴り飛ばすような気軽さで、されど当たれば死は免れないだろうことは予想に難くない程の威力を持った蹴りを放つ。

 

「させると、お思いですか!」

 

 しかしそれは清姫が確かに防ぎきった。骨が軋む痛みと共に荒い息を吐いてなお清姫は立香を守るためにジャンヌ・オルタの目の前に立つ。

 

「旦那様は──いえ、()()()には傷一つ付けさせません!」

 

「へえ、いい度胸してるじゃない。けど、貴女如きが私に勝てるとでも?」

 

「確かに私では貴女に敵わないでしょうね。ですが──」

 

 先程の一撃を防いだだけで息も絶え絶えな様子の清姫にジャンヌ・オルタは事実を言う。

 

 確かにジャンヌ・オルタの言う通り、清姫では万が一にも勝つことは出来ないだろう。例え死力を尽くしたとしても決してジャンヌ・オルタには届くことは無いと清姫自身もそう思っている。

 

 けれど、けれど──! 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 清姫の霊基が、心が、魂が叫ぶのだ。今度こそ守りきってみせると! 

 

 かつて彼等を昔の想い人と重ねて見てしまっていた愚行を償う為にも、そして何よりも今度こそ皆で笑って終わらせる為にも例え己の霊基を犠牲にしてでも立香を守り通し、そしてかの竜の魔女に一撃を与えるのだと清姫は己に誓いを立てる。

 

 そしてその誓いこそが嘘を許さない清姫に力を与えた。その誓いを真にすべく彼女の霊基の奥底から湧き出てくる力を以てしてジャンヌ・オルタを立香から少しでも離れさせるために遠くに押し飛ばす。

 

「立香様。貴女を、貴方達の先を照らす道にこの清姫はなってみせます。そして私は決して貴方達を傷付けない。──たとえ我が身が人の言葉を解さぬ竜に堕ちようとも!」

 

 霊基に漲る魔力を張らせ、清姫は唄うように、されど決死の覚悟を以って言霊を紡ぐ。

 

「転身──」

 

 吹き荒れる蒼い炎の中、清姫の体がベキベキと異音を奏でながら体を変質させる。それは安珍・清姫伝説の通りに人である彼女の体を竜へと変化させる宝具であり、清姫の妄念の強さのみでその身を最強の幻想種へと変貌せしめる想いを力に変える宝具。

 

「──火生三昧!」

 

 吹き荒れる蒼き炎の中から大蛇のような竜が現れる。もはやこの姿になった清姫には決して言葉は通じないだろう。けれど一つ確かに言えることはこの竜は絶対に立香達に敵対することはないということだ。

 

「あっはははははは!」

 

 それを見たジャンヌ・オルタは思わず笑う。けれどそれは決して侮蔑や蔑みを含むような笑い方ではなく、むしろ逆の良い物を見たと、美しい物を見たと言わんばかりの歓喜を込めた高笑いであった。

 

「──いいじゃない清姫! あんた最高よ! ()()()鹿()()()()()()()()()()。ええ、私だってそういうのは嫌いじゃないわ。寧ろ最っ高に好きなのよ!」

 

 ジャンヌ・オルタは不敵に笑いながらも最早人語すら解さぬ竜へと堕ちた清姫を見て上機嫌な様子で武器を構える。

 

「見せてみなさい清姫! アンタの覚悟の程を!」

 

 武器を構えるジャンヌ・オルタに対して声にならぬ咆哮を上げて蒼き炎を身に纏い焼き尽くさんと突進を仕掛ける清姫に対してジャンヌ・オルタがした行動は回避でも防御でもなく、真っ向から迎え撃つ事だった。

 

「ぉ、ぉおおオオォォッ!!」

 

 乾坤一擲。

 

 ジャンヌ・オルタは自身の周囲に渦巻く魔力を自身の最も信頼する武器に注ぎ込み、清姫の突進を真っ向から受け止める。ガリガリと勢いよく床を削りながらも少しずつ清姫の突進の勢いを削いでいく。

 

 ──けれどけれども! 

 

 覚悟を決めた清姫の力はそんなものでは無いと清姫の霊基自身が叫ぶのだ! 

 

「──────ッ!」

 

「何っ!?」

 

 劈くような咆哮を轟かせ、その身に纏う蒼き炎を自身すらも焼き尽くすほどの火力を以てしてジャンヌ・オルタを更に押し込み始めた。

 

「こん、のォォオオッッ!!」

 

 更に力を加えるジャンヌ・オルタ。然れどそれ以上に清姫の力は爆発的に膨れ上がる。故にジャンヌ・オルタに清姫の決死の一撃を止められる道理はなく、彼女は清姫という名の竜に呑み込まれた。

 

 城の壁に激突すると同時に大爆発を引き起こし、城の最奥に位置するこの部屋から空が見えるほどの大穴を空けるほど威力の捨て身の一撃を放った清姫の霊基はひび割れていき、その身体は黄金の霊子へと変換されていく。

 

 誰が見ても分かる。先程の捨て身の一撃で清姫の霊核は粉々に砕け散ったということに。

 

『立香……様……。私はここで、お別れです……。けれど、どうか……あの悲しき魔女に……勝って……ください』

 

 その言葉を残し、清姫の霊基は虚空へと溶けるように消えていった。

 

「清姫……」

 

 そしてそれと同時に穿たれた城壁の穴から体に決して少なくない傷をつけたジャンヌ・オルタも現れた。その様子はとても嬉しそうで、堪らないといった表情だった。

 

「ええ、ええ! 見せてもらったわ清姫! 確かにあんたの決死の一撃は私の霊核に届きうるものだったわ! ──けど、それでも私の方がまだ上だ! 私はこれだけじゃあ倒れない!」

 

 体に傷を負っているというのに、清姫が決死の一撃を敢行した前よりもその身に莫大な魔力を滾らせるジャンヌ・オルタ。

 

 その姿に以前の立香なら恐れ怯え、その身を震わせていただろう。

 

 ──けれど、今の立香に怯えも震えもない。

 

 あるのはたった一つ。

 

 ──あの竜の魔女を必ず倒してみせるという覚悟だけだった。

 

 その瞳に強き意志を秘めてジャンヌ・オルタと立香は改めて相対する。

 

「へえ、いい目をするようになったじゃない。なら示してみなさい。あんたの覚悟を!」

 

「ああ、嫌という程見せてみせるよ。だって私は皆に託されたんだ!」

 

 立香はそこで自分の両頬を甲高い音が鳴るほど強く叩き、気合いを入れ直す。奇しくもその行動は遥か昔、とある人物がやっていた行動と全く同じだった。

 

「私は必ず()()()()()()()に勝ってみせる!」

 

「──はっ、やってみろ! ()()()()ァッ!」

 

 互いに互いを完全に敵と見定めた二人は様々な想いを抱いて激突する。片方は譲れぬ願いの為、片方は託された想いの為。両者共に死力を尽くして戦うのだろう。

 

 これより始まるのは人理修復を懸けた戦いではなく、ただの意地と意地とのぶつかり合いだ。勝つのは一人、敵よりも強い意志を秘めた者のみこそ勝者となる。

 

 

 

 

 

 

 ──だがそれは同時に彼女達にとって望まぬ終わりを告げる可能性もあるということを彼女達は今はまだ知らない。

 




ジークフリートの活躍どこよ?おかしいな?
なんか書いてるうちに清姫に焦点がいっちゃったよ。
でも清姫と邪ンヌをいい感じにカッコ良く書けたと思うのでOKです!
第一特異点が終わる前までにジークフリートのカッコイイ所を書いてみせるから(震え声)

いい感じになってきたので失踪します。


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竜の魔女

ジャンヌ・オルタを思いっきり改変してるので苦手な人は見ないことをおすすめします。

注意書きをしたところで初投稿です。


 遅延害悪コンビ戦闘後から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 いやー遅延害悪コンビもとい、マルタデオンのコンビは強敵でしたねー。いやマジで強かったですね。開幕でアルトリア・オルタの宝具ブッパでタイマンに持ち込まなければもっと時間がかかったこと間違いないでしょう。

 

 というのもマルタは玉藻に優位に立てますし、デオンは技量が低くなったアルトリア・オルタとは相性最悪ですからね。それこそ玉藻だと神性が仇となって被ダメが増えますし、アルトリア・オルタに至っては宝具を連射することで無理やりゴリ押しで突破するしかデオンの防御を突破できませんし……。

 

 まぁですので初手宝具ブッパで無理やり分断させて頂きました。後は玉藻がデオンに、アルトリア・オルタがマルタと言った感じで相手をして貰えれば楽でしたね。

 

 玉藻が予想以上に強いことも相まってデオンを速攻でゴリ押しで押し切りましたからね。遠距離攻撃に特化している玉藻相手だとさしものデオンも分が悪かったんでしょう。

 

 サポートしようにも玉藻の攻撃が激しすぎてホモくんは何も出来ませんでしたし、アルトリア・オルタの方は接近しすぎて下手にサポートすれば反撃食らうことは予想出来たので放置していました。

 

 まあ、なのでホモくんは何もやること無かったですね。ですので出来るだけ速攻で邪ンヌの待ち受ける部屋に突撃できるように近くで棒立ちしてたら唐突にホモくんがお腹辺りを押さえたんですよね。

 

 で、何事かと見てみればホモくんはどうやらお腹が空いてたみたいです。お前はこんな状況でも腹が減るのか……(困惑)

 

 まあよくよく考えてみればホモくんこの特異点に来てからまともな食事取ってませんからね。まともな食事は立香ちゃん達に気づかれないようにこっそり回しておきましたし。

 

 なので持ってきた食糧を食う……ことはなく、ホモくんの魔力を置換呪術によって自身の生命エネルギーに変換することで空腹を満たしておきました。

 

 置換呪術はこういう代用ができるから狡いんだよなぁ……。ちなみにホモくんの生命エネルギーもといHPを魔力に変換することも可能です。ただどちらも変換効率にロスがあるのでホモくんが飲まず食わずに生きれるのは持って一ヶ月といったところでしょう。まあ普通に考えたらロス無しで変換出来たらバランス壊れちゃーうので当たり前ですが。とはいえホント便利ですね置換呪術。

 

 因みにですが、置換呪術のスキルツリーは鍛えるととんでもない事が出来ます。それこそ特級クラスのサーヴァント相手にホモくん一人でタイマン張れるくらいの超強化が出来ます。

 

 が、何の対策もせずにそれやるとホモくんの体が弾けて死にます(5敗)

 要はその強化にホモくんの体が耐えきれないんですね。なのでそこをどうにかして補う必要があります。しかしそれで対策したとしても使いまくれば普通に爆発四散して死にますし、長時間維持し続けるとホモくんが光になって消滅します(12敗)

 

 RTAにおける置換呪術の成長過程で必ずそのスキルは取ってしまいますが、使わなければ問題ありませんし、使うにしてもタイム的に余程追い込まれた状況でもない限り使いません。それか終局でのゲーティア戦くらいですかね。

 

 そう言えばお腹を押さえたその直後にデオンが消滅してましたね。今まではギリギリの所で玉藻の攻撃を捌き続けてましたけどなんかあったんすっかね。

 

 さてさて、余談はここまでにしてそろそろ邪ンヌがいる部屋に突っ込みましょう。出来ればホモくん達がマルタとデオンを倒している間に立香ちゃん達が邪ンヌを倒してくれるのがベストでしたが、まあ倒しきれてないのは仕方がないですね。これも想定内です。

 

 というわけで、早速邪ンヌの部屋に突撃……しません! 

 

 というのもですね。このまま突っ込むとまず間違いなくムービーが挟まります。普通に突っ込めばロスにしかなりませんが、ここである事をして突っ込むとムービーをカットできます。

 

 それが何かといいますと──

 

 >あなたはアルトリア・オルタに宝具を発動して扉を吹き飛ばすようにお願いした。

 

 宝具で扉をぶっ飛ばすことなんですよね。どうやら扉に触ると問答無用でムービーが始まる事が検証した時に発覚したのでその扉を吹き飛ばすことでノンストップで戦闘に移れるんです。某はBANZOKU! 

 

 ただこの時アルトリア・オルタの宝具の直線上に立香ちゃんがいるとリセ確定です。多分マシュが守ってくれるでしょうが、その後経過を考えると激マズ以外の他でもないのですぐリセットしましょう。じゃあ安全策取れよとも言われると思いますが、カット出来た時のうまあじが大きいのでやります(鋼の意思)

 

 ま、今までやって見たところ立香ちゃんが宝具の直線上にいたことは検証含めて1回もなかったので平気だと思いますがね。通常プレイで遊んでた時には1回だけありましたけど。

 

「む? あの扉をか? それは構わんが……望幸、お前の魔力は持つのか?」

 

 >あなたはその問いに対して首を縦に振った。

 

 カルデアのサポートとホモくんのビルドのおかげで一応はまだ撃てますね。ただ今の状態だと宝具は今から撃つ一撃を除いて撃てて3~4発が限度なのでそこら辺には気をつけていきましょう。

 

 というわけでアルトリアオナシャス! センセンシャル! 

 

 >アルトリア・オルタはあなたの命を受けて聖剣に魔力を装填する。

 

「エクスカリバーモルガン!」

 

 >放たれた黒の極光は正面にあった扉を容易く破壊し、あなたはその破壊されて瓦礫と化した扉をの上を進む。

 

 さぁて、立香ちゃんは何処まで削ってくれましたかね? キアラとカーマも付けましたし、そこそこ削ってくれたんじゃあないでしょうか。

 

 運が良ければ瀕死一歩手前もありえますよ。なのでここはお祈りポイントです。さあ、邪ンヌの体力は如何に……? 

 

 >濛々と煙が舞い上がる中あなたはジャンヌ・オルタと立香が戦っているであろう部屋に踏み込んだ。

 >部屋の中に入るとそこそこ傷は見受けられるものの未だ健在のジャンヌ・オルタと既に満身創痍で床に倒れ伏している立香率いるサーヴァント達の姿とボロボロになっても瞳に力強い光を灯している立香の姿があった。

 

 ファッ!? 立香ちゃん達負けとるやんけ!? なんでこんな……なんで負けてんの??? 

 

 こっち元ビースト連中ぞ? なんでビーストがたかが一介のサーヴァントに壊滅させられてるんですか! 

 

「ぐっ……やってくれるわね……! まさかいきなり宝具を放ってくるとは……」

 

「ほう? 望幸、貴様はこの突撃女が扉の正面にいたことを分かっていたらしいな」

 

 いや別にたまた──ええそうですとも! いやね? 私もRTA走者の端くれですし? この位はね? 

 

 しかしまあ、今の台詞から察するにジャンヌ・オルタはアルトリア・オルタの宝具をくらった上でHPバーが半分も切ってないんですねえ……。

 

 で、反対に立香ちゃん達は清姫が欠けて、キアラとカーマは普通に瀕死、ジークフリートとジャンヌはまあそこそこ。ナスビちゃんが最もHPが高いという感じなんですね

 

 いやあ……ちょっとおかしいんちゃう? 

 

 なーんで元ビースト連中が瀕死になってるんですかねぇ……。それこそ序盤も序盤の特異点のボスとはいえ、普通でしたらこのメンバーでしたらこんなボロボロにされるはずがないんですけどね。

 

 いくら立香ちゃんがサーヴァント戦に慣れてないにしてもこの状況は流石におかしいです。おかしいと言えばビースト連中もですね。いくら聖杯持ちの邪ンヌと言えどこの人数相手に真っ向から押しつぶされたとは考えづらいですし……。

 

 まあ、予想するに立香ちゃんやナスビちゃんを護って瀕死になったって所なんでしょうか。それなら仕方ないよね(兄貴並感)

 

 そう言えば先程からロマニ達からの連絡が無いですね。まーた魔力に阻まれて連絡取れなくなってるんでしょうか。ま、カルデアの通信障害はいつもの事だし、多少はね? 

 

 さてと、それじゃあ頑張ってくれた立香ちゃん達を労りつつホモくんとバトンタッチです。立香ちゃんありがとナス! 

 

 >あなたは疲労と痛みからか膝を突いて荒い息を吐いている立香の頭を軽く撫でて感謝を告げた。

 

(邪ンヌ討伐に)イクゾ-! 

 

 >あなたは立香達を守るように前に出ると自身のサーヴァントであるアルトリア・オルタと玉藻に指示を出した。

 

「いいだろう、あの突撃女は随分と潰しがいがあるからな。踏み潰してくれる。それと望幸、背中は任せるぞ」

 

「それがご主人様の命令ならばこの玉藻喜んで引き受けよう」

 

 とりあえずは最初にアルトリア・オルタだけで邪ンヌ相手に時間を稼いでもらいます。その間に玉藻に味方のHPを回復してもらいます。即ち玉藻の宝具の一つである水天日光天照八野鎮石の発動ですね。

 

 それの発動さえすればフィールドを玉藻の陣地に塗りつぶせるので、維持さえ出来れば味方のHPと魔力を常時回復出来るクソ強ムーブを簡単に構築できます。

 

 玉藻はタイマンが弱い分集団戦がクソほど強いですからねえ……。なんかこの玉藻は出力がおかしいですけど。

 

 さてさて、それじゃあ玉藻の陣地作成が終わるまでアルトリア・オルタと一緒に戦いましょうかね。

 

「待って……望幸。私も一緒に戦う……!」

 

 >ふらつきながらもしっかりと立ち上がって立香はあなたの横に並び立つ。

 

「私は託されたんだ……。だから、望幸だけに戦ってもらうわけにはいかない」

 

 えぇ……? なんか立香ちゃんの覚悟がガンギマリ状態なんですけど。うーん、これは清姫が逝った時になんかイベントでも発生したんですかね? 

 

 どちらにせよこうやって立ち上がってくれるのは有難いんですが、そんなボロボロの体じゃあねえ? 

 

 ぶっちゃけ邪魔ですよね。変に突っ走って死なれても困りますし……さりとてここで立香ちゃんに下がっておくように言っても多分というより十中八九引かないでしょうね。立香ちゃんはそういうタイプのキャラですし。

 

 それこそかなり根気強く説得しないと下がってくれないでしょう。なので今回は敢えて立香ちゃんはホモくんと共に戦ってもらいましょう。

 

 ぶっちゃけ説得している暇あったら邪ンヌを殴った方が速度的にいいでしょうからね。なので今回は一緒に戦ってもらいましょうか。

 

 >あなたは立香に勝つぞと言った。

 

「うん、勝って皆一緒にカルデアに帰るんだ!」

 

 というわけで対戦オナシャス! センセンシャル! 

 

 >あなたはジャンヌ・オルタに向けて銃撃を放つ。

 >だが、その攻撃はジャンヌ・オルタによって簡単に撃ち落とされる。

 >辺りにかなりの数の銃弾が散らばった。

 

「そんななまっちょろい弾が当たるか!」

 

 まあ、でしょうね。強化弾でもないただの弾丸ではサーヴァント相手には力不足もいい所です。が、ぶっちゃけホモくんがやることは早い話嫌がらせなんですよね。

 

 なのでそれはもうイラつくことのみをやっていきます。具体的にはアルトリア・オルタに攻撃しようとした瞬間に横合いから弾丸撃って邪魔します。

 

 うへへ、害悪ムーブかまして台パンさせてやるよ。

 

 それではアルトリア・オルタに少しだけタイマンしてもらいましょう。まあ、とは言ってもホモくんも嫌がらせのために結構近くまでに行くんですけどね! 

 

「はぁっ!」

 

「はん、そんな力任せの一撃なんて──ちぃっ!?」

 

 >剛直に振るわれたアルトリア・オルタの一閃。

 >その剣の軌道を見切り弾こうとしたジャンヌ・オルタだったが突如として剣の軌道が変わった。

 >いや、正確に言うのであればアルトリア・オルタが突然ジャンヌ・オルタの背後に現れていたのだ。

 >突然の出来事にも関わらずジャンヌ・オルタはその攻撃に対してギリギリで反応し、アルトリア・オルタの一撃を受け止めた。

 

 これぞクソムーブですよぉ……。ぶっちゃけた話アルトリア・オルタの技量が落ちて脳筋プレイになったんだったらこっちがそれを補って上げれば良いだけですからね。

 

 具体的に言うとホモくんがアルトリア・オルタの後ろにくっついて様々な位置に置換します。なのでまともな打ち合いなんてさせません。これも速度のため、卑怯とは言うまいな。

 

 そしてこの状況で動くのが立香ちゃんなんですね。

 

「ガンド!」

 

「あっっぶないわねえ!」

 

 >ジャンヌ・オルタがアルトリア・オルタの一撃を受け止めて動きが止まった瞬間に間髪を容れずに立香のガンドが放たれた。

 >だが、それにもジャンヌ・オルタは反応し、アルトリア・オルタに加えられた力の流れを受け流して距離を取る。

 

 うわっ、避けやがった。おかしいですね? いつもの邪ンヌだったら当たってもおかしくなかったんですが……。って、まずい! 

 

「暖かくしてあげるわ、冷血女」

 

 >アルトリア・オルタに向けられる手の平。

 >そこに辺りに渦巻いていた焔が収束していき、爆発と錯覚するような勢いの焔がアルトリア・オルタに迫る。

 >然れど、アルトリア・オルタはその場から動かなかった。

 >何故ならば彼女は自身と共にいるマスターを信頼しているからだ。

 

「……望幸」

 

 はいはい、てったいてったーい! 

 

 >あなたは迫り来る焔がアルトリア・オルタを飲み込む前にアルトリア・オルタと共に別の場所に置換して移動する。

 

「甘いっつーの!」

 

 >だが、それを予見していたかのように移動した場所に即座に切り込んでくるジャンヌ・オルタ。

 

 なんとぉ!? 

 

 反応早すぎやろ。どうなってんだよ。とは言っても、マルタも反応してましたしね。それならそれで対処すればいいだけなんで。

 

 >あなたは置換呪術を連続発動する事でジャンヌ・オルタの攻撃を回避する。

 

 見切られるんでしたら見切られる前提で動けばいいんですよ(脳筋並感)

 具体的には連続で飛ぶことによって見切りの意味を無くします。

 

 はい、じゃあ回避出来たんでね。アルトリア・オルタにもう1回突っ込んでもらいましょう。オラ行けっ! 

 

 >あなたの指示に合わせてアルトリア・オルタは魔力放出を使って一瞬でジャンヌ・オルタとの間を詰める。

 

「クソッ……やり辛いったらありゃしないわね」

 

「はん、そうだろう。何せこちらはマスターがいるのだ。貴様にはいないマスターがな?」

 

「……上等じゃない」

 

 >ジャンヌ・オルタとアルトリア・オルタは激しい剣戟を繰り広げる。

 >そしてその間に玉藻の前の宝具の準備が整った。

 

 お、来ましたね。これで今までダウンしてたサーヴァントが前線に参加出来ます。それと同時にアルトリア・オルタには1度下がってもらって固定砲台となってもらいましょう。

 

「──ここは我が国、神の国、水は潤い、実り豊かな中津国(なかつくに)。国がうつほに水注ぎ、高天(たかま)巡り、黄泉(よみ)巡り、巡り巡りて水天日光我が照らす。豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)八尋(やひろ)の輪に輪をかけて。これぞ九重(ここのえ)天照(あまてらす)……!」

 

 >玉藻を中心に荘厳なる神威と強大な魔力で満たされる。

 

 んん? こんなん……でしたっけ? まあいいわ、多分同じでしょう。

 

「この感じ……クソッ、させるかっ!」

 

「おっと、貴様の相手は私だぞ」

 

 >宝具の発動に気がついたジャンヌ・オルタが妨害しようと玉藻の前に向けて攻撃しようとした瞬間に、アルトリア・オルタがその間に割って入る。

 

 ナイスセーブ! 

 

「──水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)

 

 >玉藻の前の宝具が発動したことによって世界が塗り潰される。

 

 んん? おい待てェ、こんなの知らないんですけどぉ!? 

 

 >呪詛によって常世の理を遮断し、肉体と魂の活性化による治癒促進、そして聖杯にすら劣らぬ無限の魔力供給が始まった。

 

 待て待て待て待て! これ固有結界じゃないですかー! 

 

 >加えてあなた達を守るように死霊の軍団が湧き始めた。

 

 ファッ!? なんか本来なら敵モブになるはずの死霊がなんか味方モブになってるんですけど!? やだ怖い……ライダー助けて! このパーティにライダーいなかったわ。

 

 ま、まあいいでしょう(震え声)

 

 なんか予定にない効果まで出てますけど味方ですし……。何よりジャンヌ・オルタを数の暴力戦法できるようになりますしね! 

 

 ガハハ、勝ったな! 風呂入ってくる! 

 

「……ちっ、面倒にも程があるわね」

 

「ほう、面倒とな。まるでこの程度のことどうとでも出来ると言いたげよな?」

 

 >宝具を発動した本人である玉藻の前がジャンヌ・オルタを傲慢不遜極まりない口調で見下す。

 

「はっ、そりゃそうでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 >その言葉と共に死霊の群れがジャンヌ・オルタに向けて殺到する。

 >しかしその全てが地獄の炎すら生温いと言わんばかりの煉獄の炎で焼き尽くされる。

 

 は? 

 

「見せてあげるわ。本当の『()()()()』をね」

 

「……っ!? マスター! 早くその場から離れてください!」

 

 >その言葉に真っ先に反応したのは玉藻の前の宝具で回復して動けるようになったキアラだった。

 >あなたはキアラの言葉に反応して立香やアルトリア・オルタ達と共に後方へ下がる。

 

──()()()、其れは万物万象あらゆるものを焼き尽くす滅尽の炎。されど今はたった一つの願いの為に我はその炎を振るおう

 

 >ジャンヌ・オルタを中心に今までの比較にならぬほどの魔力と炎が収束していく。

 

「この気配はまさか……!」

 

 >ジャンヌ・オルタから発せられる気配に反応したのはジークフリートだった。

 >その気配はジークフリートが誰よりも知っている相手であり、彼にとっては切っても切れぬ相手なのだから。

 

──()()()、其れは世界を焼き尽くす憎悪の炎。されど今はたった一人の愛する人の嘆きと悲しみを拭うために私はその炎を振るいましょう

 

 >ジャンヌ・オルタから発せられる魔力と炎はもはや爆発的にまで膨れ上がる。

 >聖杯を使い、完全なる竜種を取り込んだ彼女の体は更に変質していく。

 

 

 

邪竜変生(ニーベルング)──

 

 

 

 >ジャンヌ・オルタの黄金の瞳は竜種のような魔性の輝きを灯し、彼女の背からは竜の翼が広がり、太く、されど鞭のように靱やかで強靭な尻尾が生える。

 >歯はあらゆる物を容易く噛み砕けるであろう程の鋭さを誇るものに変化し、彼女の四肢は竜種の様に堅牢な、されど何処か艶めかしさを感じる黒い鱗に包まれ、その先からはどの刃物よりも鋭いと感じさせられる鋭利な爪が展開される。

 

 

 

 

 

 

──悪竜顕象(ファヴニール)

 

 

 

 

 

 

 >ここに完全なる竜の魔女が降誕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──は? 

 




次回、大怪獣戦争もといSAN値直葬祭りです。

オルレアンのRTAパート描ききったら立香ちゃん視点でホモくんが突入してきた部分を書こうかなと思ってます。多分ね!

Q.ジャンヌ・オルタの奴って悪竜現象じゃないの?
A.ジャンヌ・オルタはファヴニールを聖杯の力+自身の自己改造EXスキルによって完全に取り込んだので悪竜現象とは別種のものに変化しました。このための独自設定。

盛り上がってきたところで失踪します。


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竜の魔女の恐ろしさ

書いてたらなんかとんでもない事になりましたがそれでも私は初登場です。
※初投稿と間違えました。お詫びに失踪します。


 序盤のボスが第二形態を持つクソゲーから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー、なんかね。邪ンヌって第二形態とかあるんすね。初めて知りました。

 

 いや、これ本当にどうすんだよ。今までこんなこと無かったのに……! こういう本走の時にこんな事になるなんてやめてくれよな〜頼むよ〜。

 

 まあ、普通に考えたら再走案件です。当たり前ですよね、なんか強くなってる可能性高いですし。

 

 ですが、もしかしたら第二形態の方が弱いという可能性も無きにしも非ずですし、何より特異点恒例のはぐれサーヴァント探しをかなり短縮出来たのもあってタイム的にはまだ、というか結構ギリギリですけど続行ラインなんですよね。これでサーヴァント探しに手間取ってたら問答無用で再走案件でしたね。

 

 まあ、そういうわけですので邪ンヌが弱くなってる可能性を信じて続行します! (ウ ン チ ー 理 論)

 

 >竜人、そうとしか表現出来ないジャンヌ・オルタの姿を見て立香達は絶句していた。

 

「うそ……」

 

 私もうそ……って言いたいですね。こんなの序盤のボスがやっていい事じゃねーだろ! いい加減にしろ! 

 

 まあ、一応こっちは玉藻の宝具発動で永続リジェネと魔力回復があるんで即死しない限り平気だとは思いますが。取り敢えずは殴ってみますか。実際に戦わないと分かりませんし。

 

「アッ、ハハハハ──!」

 

 >ファヴニールと融合したジャンヌ・オルタの全身から放射している妄執と喜悦、そして狂乱の気配。

 >圧倒的な力から齎される全能感に大哄笑を上げる。

 

「いい、いいじゃないこの感じ! 堪らなく愉快で仕方ないわ!」

 

「ありえない。まさかファヴニールを取り込んで尚自我を保てているなど……!」

 

 >それを前にジークフリートの中では驚愕の思いが止まらなかった。

 >先程までのジャンヌ・オルタも十分に驚異的な存在であったが、望幸達が合流した事により自身の体力と魔力を十分に回復させることが出来た。

 >だが、それを差し引いても今のジャンヌ・オルタは絶望的な存在だと、かつてファヴニールと戦ったことのあるジークフリートだからこそ本能的に理解していた。

 >それと同時に何故自分がこのような場所に呼ばれたのか、猛る衝動と共に改めて理解した。

 >生前から続く因縁に爆発寸前の闘志と殺意をジークフリートは強く自認する。

 

「マスター、君は後ろに下がっていてくれ」

 

 うわっ、ジークフリートの声めっちゃ低い。怖っ……。というかホモくんの事マスターとか言ってますけどあなたが仮契約してたの立香ちゃんじゃなかった? 

 

 まあ、でも一応はその通りなので素直に後ろに下がりましょう。

 

 >ジークフリートは自分でも驚く程の低く威圧的な言葉を発した。

 >きっとファヴニールという宿業の敵である存在が現れたが故の結果なのだろう。

 

「ふ、ふふ……怖いわね竜殺し」

 

 >ジークフリートの全身に漲る殺意と闘志を見てジャンヌ・オルタは愉快そうに笑う。

 >取り込んだファヴニールの因子がジークフリートという怨敵に恐れを抱いているというのと同時に今度は負けんと膨大な怒りと殺意を抱いているのがよく分かる。

 >並の英霊などでは容易くその波動に飲まれてしまうほどの純然たる狂気の波動。

 >然れどジャンヌ・オルタは其れすらも踏み潰し、己という自我を強く保つ。

 

「でもいいわ。この力が何処までの物なのか、あんたで試してあげる」

 

「ああ、良いだろう。ここで再度滅ぼしてくれる」

 

 >次瞬、吹き荒ぶ開戦の咆哮。

 >開幕から出し惜しみはなしだと放ったジークフリートの幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)をジャンヌ・オルタは悠然と同威力の煉獄の炎を以てして焼き尽くした。

 

 あ、これまずいな? このままじゃあジークフリートが負けるぞ。

 

 と言うのもですね、ジークフリートの宝具は連射性に富んだ宝具なんですけど、今のジャンヌ・オルタは多分それ以上ですね。何せジークフリートの宝具相手に彼女は宝具を使用せずに相殺してますし。

 

 これはまずい。

 

「アッハハハハハ──! そら、こういうのはどうかしら!」

 

 >大哄笑するジャンヌ・オルタが間髪を容れずに先程と同威力の、されど数十程の煉獄の炎を圧縮した黒剣をジークフリートに殺到させる。

 

 ほらね? 仕方ない、一旦ジークフリートを助けます。多分、というかこれは確信に近いものですけどジャンヌ・オルタを倒すにはジークフリートは必要不可欠です。

 

 彼女を討ち滅ぼすにはジークフリートの宝具を何としてでも当てる必要があります。いや、より正確に言うのならジークフリートの剣を突き立てる必要があるというところでしょうね。

 

 というわけでジークフリートを連れて回避しましょう。

 

 >あなたはジークフリートの肩を掴むと同時に玉藻の前達がいる場所まで転移した。

 >次瞬、先程まであなた達がいた場所に大爆発が連続して引き起こる。

 

「すまない、助かった──」

 

「ハハハ──! まだよ、まだ私はこんなものじゃあない!」

 

 >ジークフリートがあなたに礼を言う前にジャンヌ・オルタが更なる攻撃を発動する。

 >空に浮かぶ数百の黒剣、そのどれもが先程の威力のものを優に超えていると確信させるには十分な熱量を放っていた。

 >そしてその黒剣は己が獲物を食い尽くさんと暴力的なまでの気配を携えてあなた達に襲いかかる。

 

「蜥蜴ごときが図に乗るでないわ」

 

 ふぁっ。

 

 >だが、同時にそれと全く同威力の炎と氷塊を玉藻の前は展開して射出する。

 >激突した瞬間、互いに爆発を引き起こし余波だけで思わず呻いてしまうほどの衝撃波があなた達を襲う。

 

 玉藻つっよ……! やっぱこいつ普通の玉藻じゃないぞ!? 

 

「ご主人様よ、下がっておれ。妾がアレの相手をしよう」

 

「はっ、上等じゃない! 塵すら残らず焼き尽くしてあげるわ」

 

「笑わせるなよ下郎。妾を焼き尽くすだと? 身の程を知れ……!」

 

 >ジャンヌ・オルタと玉藻の前、どちらも全身が総毛立つ程の殺意を迸らせて眼前の敵を焼き付くさんと尋常ならざる数の炎を殺到させる。

 >だが、何よりも恐ろしいのはあのジャンヌ・オルタは一秒ごとに己の限界を突破し続けている。

 >今でこそ玉藻の前が優勢ではあるがそれも次第に拮抗し、やがては追い抜かれてしまうだろう。

 >そう思えてしまうほどにジャンヌ・オルタという存在の力の格が爆発的に跳ね上がり続けている。

 

 コレまずいなぁ!? 

 

 とりあえず今は玉藻が時間を稼いでくれる間に作戦会議のお時間です。ホモくんの手持ちやら現存しているサーヴァントを加味して速攻であの邪ンヌを討滅するチャートを組み立てる必要があります。私のおチャート様どこ……? 

 

 というわけでジークフリートを連れて立香ちゃん達の元に向かって作戦会議します。

 

 >あなた達は玉藻の前がジャンヌ・オルタを抑えている間に立香達のもとに駆け寄る。

 

「望幸、怪我はない!?」

 

「望幸さんご無事ですか!?」

 

 バッチェ平気ですよ! チャートは平気じゃないですけどね! (ヤケクソ)

 

 いや本当にどうしましょうか。多分ですけどあの邪ンヌにはただ攻撃するだけでは何も通用しない可能性が高いでしょうしね。聖杯による強化、ファヴニールという極上の完全なる竜種を取り込んだ事による強化に加えて、ティアマトと同ランクの自己改造を持つアレ相手にジークフリートの宝具や剣で刺し穿つ以外のまともな戦法は通用しないと考えた方がいいかもしれません。

 

 つまりは此方も何らかの方法を以て同じ土俵に上がる必要があります。そうでないと勝ち目はきっとない可能性が高いです。

 

 一応念の為ジークフリートにファヴニールの事について聞いてみましょう。もしかしたらそこに何かの突破法があるかもしれません。

 

 >あなたはジークフリートにファヴニールに何らかの弱点はあったかと聞いた。

 

「……いや、すまないがファヴニールにそういったものは存在しなかった。強いて言うなら圧倒的な力を持つが故に人間を判別出来なかったと言うのもあるが……彼女はそれを克服しているだろう」

 

 うせやろ? 弱点ないの? いや、竜種っていう弱点はあるでしょうけど。

 

「まて、竜殺し。ならお前はアレをどうやって倒した?」

 

 >当然の疑問をジークフリートにぶつけるアルトリア・オルタ。

 >確かに彼女の言うとおり、ジークフリートという英雄はファヴニールを倒したという実績を持つ。

 >なればこそ、そこに希望があるように思えた。

 

「その、すまない。俺はあの時の戦いのことをあまり覚えていないんだ。死力を振り絞り、限界の遥か先を超えてその果てに俺は自分でもどうやって勝ったのか分からない程の偶然の勝利を得たんだ」

 

 うーんこの何の為にもならない話よ。まあ、でも一つ分かったことはありますね。詰まるところジャンヌ・オルタに勝つには真っ向からぶっ潰すように力押しでなければ勝てないということです。

 

 さて、ならどういう風にいくべきか……。

 

 理想を言うならカーマとキアラで魅了コンボをかまして一時的に行動不能になった瞬間に立香とホモくんのガンドを二重掛けして動きを完全に止めてそこにアルトリア・オルタの宝具を放ち、彼女の周囲に存在するであろう魔力障壁をぶち破ってその隙に間髪を容れずにジークフリートの宝具をぶちかます……と言ったところでしょう。

 

 けど、これを実行するには膨大な魔力が必要となります。多分カルデアの供給だけじゃあ間に合わない。玉藻が展開している宝具を以てしてギリギリと言ったところでしょう。

 

 けど、同時にこうも思うんですよねぇ。このゲームがそんな甘いはずがないって。あの邪ンヌが弱体無効を持っていたらこの作戦は一貫の終わりです。何せ作戦の根幹であるキアラとカーマの魅了が通らなくなる。

 

 そうなった場合、誰かが邪ンヌをその場に食い止める必要があります。

 

 その相手にキアラとカーマは適さないでしょう。なぜなら彼女達は回復しているとはいえ、あまりにも傷を負いすぎている。そして彼女達は種が割れている上に邪ンヌに惨敗している。ならばあの邪ンヌにぶつけても敗北する可能性が高い。

 

 かと言ってジャンヌをぶつけても駄目でしょうね。今の弱体化しているジャンヌでは多分数秒しか持たない。例え宝具を発動したとしても馬鹿げた火力を誇る邪ンヌ相手では旗の耐久が秒で溶ける。

 

 マシュは論外です。彼女には立香を守るという大役があります。それは同時にジャンヌにも言えることですが。

 

 不味いですね。これは非常に不味い。どうすれば邪ンヌを倒せる? 今のホモくんの手持ちで──? 

 

 うん? これ、()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 今のホモくんの手持ちにはこの特異点に来てから一度も使わなかった身代わり人形があります。そしてこの場に展開されている玉藻の宝具。それと()()()()()()()()()()()()()

 

 ……よし、決まりました。こんな序盤で使うつもりは一切ありませんでしたが、キアラとカーマの魅了が通じなければこちらも切り札の一つを切ります。

 

 多分、そちらの方が時間短縮にもなるでしょうが、同時に多大なデメリットも存在します。ですが、ここはやるべきです。いや、やらなければなりませんね。だってこれRTAですし。

 

 ま、魅了が通じさえすれば使わなくて済むんで良いんですけどね。

 

 さて、取り敢えずは今思いついた作戦を切り札のことを伏せて立香ちゃん達に話しましょう。

 

 >あなたはジャンヌ・オルタを打倒するために考えた作戦を立香達に話した。

 

「そうですね、多分それしか彼女に打ち勝つ方法はないかと」

 

「ええ、私がやる事は彼女を堕落させればいいと言うことですね? 上等じゃないですか、それでこそ私の領分というものです」

 

「それじゃあ私とジャンヌさんは先輩達をジャンヌ・オルタさんからの攻撃から守ればいいんですね。了解です、このマシュ・キリエライト。命に変えても守ってみせます!」

 

「ええ、そうですね。貴方達は私達が傷一つつけさせません」

 

「私が露払いをせねばならんと言うのが正直気に食わんが……まあいい。貴様の決めたことだ。私はそれに従おう」

 

「はは、随分と大役を任されてしまったな。だが、その期待には必ず答えてみせるとも。ああ、竜殺しの名にかけて必ずな」

 

 >あなたの考えに皆が賛同し、誰も彼もが己が成すべき事を覚悟を持って事に挑む。

 >されどただ一人と一匹の獣だけが不安そうにあなたを見つめていた。

 

「ねえ、望幸……。それ大丈夫なんだよね?」

 

「フォウ、フォーウ……」

 

 >フォウが心配するようにあなたに擦寄る。

 >そんなフォウをあなたは安心させるようにわしわしと撫で付ける。

 

 大丈夫だって、安心しろよ。成功すれば全てが上手くいきますしね! だから、ほらほらそんな泣きそうな顔しないでくれよな〜頼むよ〜。

 

 >あなたは立香にただ一言大丈夫だと言う。

 >けれど立香はそれでも不安そうな顔であなたを見つめる。

 

「本当に? だって今の望幸、とっても怖い顔してるよ?」

 

 これだからこの人間は……。

 

 こういった時に妙に鋭いんですよね立香ちゃんは。ええ、どの周回でもそうでした。それが少々面倒なところでもありますが、そこが彼女のいいところでもありますからね。そんな彼女だからこそビーストIVであるキャスパリーグが懐いたんでしょうけど。

 

 >あなたは再度立香に大丈夫だと言う。

 

 さて念には念を押して言いましたし、これで大丈夫でしょう(慢心) 

 

 駄目なら駄目で後でフォローすればいいので構いませんし、失敗したら再走するだけだしな! 

 

 というわけで玉藻と交代でーす! ぶっちゃけた話、ホモくんが切り札を切る前に玉藻がやられてしまったらどう足掻いても勝てなくなっちゃうので急いで後ろに下げる必要があります。

 

 >あなた達はサーヴァント達と共に玉藻の前が必死に抑えているジャンヌ・オルタとの戦いに身を投じた。

 

「ハハハッ! こんなものですか!?」

 

「ぐっ……調子に乗りおって……!」

 

 >既に玉藻の前とジャンヌ・オルタとの力関係は逆転し始めており、玉藻の前が押され始めていた。

 >ジャンヌ・オルタが放つのは最早当初の頃とは比較にならぬ黒剣の暴威だ。

 >数千にも及ぶ黒剣弾雨、そのどれもが街一つ軽く灰燼へと帰せる程の熱量を放つ。

 >それに対して玉藻の前は体に無数の傷を負いながらも、されど決して後ろにいる守るべき存在の為に一歩も引かず、決して黒剣の雨を通しはしなかった。

 

 ちょっと待って。突っ込みたいことは山ほどありますけど、邪ンヌの強化幅がおかしい事になってるんですけど!? 

 

 ええい、ですがこの際構っていられません! 玉藻を後ろに飛ばします! ここで死なれたら本当に困りますんで! 

 

 >あなたは玉藻の前の横に立つと彼女を労わるように良く頑張ったと告げて彼女を遥か後方に転移させるために呪術を起動させる。

 

「待って、待ってくださいご主人様──」

 

 >玉藻が何か言う前にあなたは玉藻を問答無用で転移させる。

 >そしてそれは同時にあなたを守っていた盾がなくなることを意味していた。

 >あなたに向けて襲いかかる数千の黒剣弾雨。

 

 よーし、まずは一つ目の切り札です。ホモくんのHPを大幅に魔力に変換します。そして同時にこちらに向かって襲いかかる黒剣の全てに置換呪術を仕掛けます。ええ、要は豊潤な魔力で本来触らなければいけないという制約を省略して目に映る全ての黒剣を遥か遠くに置換するのです。減ったHPは玉藻の宝具が展開されてる限り回復するので問題ありません。

 

 >あなたはHPを大幅に削り、膨大な魔力を生み出した。

 >そして襲いかかる黒剣の全てを遠く離れた場所に転移させた。

 >遅れて極大の爆発が引き起こる。

 >あまりの破壊力に地面が揺れ、破滅的な衝撃波と爆風が襲いかかる。

 

──我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

 

 >だがそれはジャンヌ・ダルクの宝具によって完全に防がれる。

 >神の御業を体現する聖なるベールはそよ風一つすら通さない。

 >そしてその一撃目を防ぐと同時にキアラとカーマが同時に飛び出す。

 

「行きますよカーマ!」

 

「はっ、合わせなさいよキアラ!」

 

「へえ、いいじゃないやってみなさいよ。そらやれ、今やれ。やらなきゃあんたらはここで死ぬだけよ?」

 

 >ジャンヌ・オルタが指を鳴らすと共に先程同じ数千の黒剣が空に展開される。

 >それを放たれればキアラとカーマは一瞬で塵になるだろう。

 >されど彼女達は後ろにいるマスターを信頼している。

 >故に彼女達は迷わず突き進む。

 >そして黒剣の雨が放たれた。

 

 はい、もっかい転移な! でもこれ以上はさすがにキツイ! なので上手く魅了が入ってくれることをお祈りしましょう。

 

 RTA走者の祈祷力が試されますねクォレハ……。

 

 >蹂躙せんと放たれるそれは彼女達のマスターであるあなたが置換呪術を再度発動させ、遥か後方に転移させる。

 >多大な生命力を一気に消費したあなたはぐらりとふらついて地面に膝をつく。

 

 ぬぐっ……やっぱり連続発動はかなりホモくんに負担をかけてしまいますね。とは言え、二射目も完全に防ぎ切りました。

 

 勝負はここからです。

 

──人に三魂七魄(さんこんしちはく)あり。すなわち十種の神宝なり。汝、己が仏性を悟らんとするなら、内なる悪を見据え、もって涅槃(ねはん)に至るべし

 

──さあ、情欲の矢を放ちましょう。もはや私に身体はなく、すべては繋がり虚空と果てる! 永久に揺蕩え、愛の星海

 

 >キアラはカーマのサポートに全力に徹するために真言を唱え、カーマは全身の魔力を振り絞り正真正銘最後の宝具を解放する。

 

──オン アビラウンケン ソワカ!

 

──恋もて焦がすは愛ゆえなり(サンサーラ・カーマ)

 

「ハハハッ! いいじゃない!」

 

 >キアラの真言がジャンヌ・オルタの弱体耐性を下げて、カーマの『身体無き者』『惑わす者』としての性質が強く表れた宝具がダメージは入らずとも確かにジャンヌ・オルタを蕩かして魅了する。

 

 よっしゃあ! 魅了入りましたね! 

 

 オラ行くぞ立香ちゃん! 

 

 >あなたと立香は熱に浮かされたように潤んだ瞳で棒立ちしているジャンヌ・オルタに対して同時にガンドを発動させ、更に強く彼女という存在を縛りつける。

 

「──ガンド!」

 

「ぐぁっ……」

 

 拘束OK! 

 アルトリア・オルタの宝具発動オナシャス! 

 

「ああ、任せろ望幸」

 

 >あなたの呼び掛けに答えるようにアルトリア・オルタは周囲に満ちている魔力を吸い尽くして聖剣に込めていく。

 >そしてジャンヌ・オルタの周囲に渦巻く魔力障壁をぶち破らんと黒き極光がジャンヌ・オルタへと放たれる。

 

──約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)!」

 

 >地を砕きながら突き進む破滅の極光は確かにジャンヌ・オルタの魔力障壁に罅を入れ、そして粉々に砕け散らした。

 

 よし、立香ちゃん今です! ジークフリートに令呪を切って! 

 

「ジークフリートに令呪を持って命ずる! 竜殺しの伝説を果たして見せて!」

 

「──ああ、この名にかけて果たして見せよう」

 

 >ジークフリートが正面に構えたバルムンクから莫大な量の蒼き光が零れ、天を貫かんばかりの極光が出現する。

 >それはかの竜を殺しせしめた竜殺しの一撃。

 >竜という種に対して絶大な威力を誇る竜殺しの魔剣。

 >その名を──

 

──幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)

 

 >令呪と玉藻の前の宝具とカルデアからの魔力供給による贅潤な魔力供給、そして真エーテルによって限界まで高められた蒼き竜殺しの光が未だ身動きの取れぬジャンヌ・オルタを飲み込んだ。

 

 よっしゃあ! 作戦成功です! これなら流石の邪ンヌも沈んだでしょ──

 

 >しかしその未だ衰えぬ蒼き光をぶち破り、無数の煉獄の黒剣がキアラとカーマの霊核を刺し貫き、打ち砕いた。

 

「そんな……」

 

「嘘……でしょ……?」

 

 >突き刺された急所から命の源である血を噴き出すと目から急速に光が消え、彼女達の体が黄金の粒子となって消える。

 >打ち消された蒼き光の中から確かに傷を負ってるジャンヌ・オルタが現れた。

 >だがその傷も竜種の再生能力、そして聖杯からの無尽蔵の魔力供給によって癒えていく。

 

 うそやん(絶望)

 

「そんな馬鹿な!? あれほどの宝具を連続で食らって無事でいられるはずがない!」

 

「確かに痛かったわ。事実、一瞬死にかけましたし。ええ、ですがそれで?」

 

 >策に策を弄して弱点すらついた渾身の一撃を食らってもなおジャンヌ・オルタはそれがどうかしたのか嗤う。

 >確かに弱点をついた、互いを信頼し、後続へとバトンを繋いで与えた一撃だったのだろう。

 >事実その一撃にジャンヌ・オルタの霊核は揺らいだ。

 >だが、それだけだ。

 >その程度ではジャンヌ・オルタを打ち倒すにはまるで足りない。

 

「弱点をつく? 生前の死因? はっ、そんな事実──」

 

 >嗤う、嗤う。

 >ジャンヌ・オルタはあなた達の決死の努力を尊いとそう思いながらもそれだけでは私は倒しきれると思うなと大哄笑を上げる。

 

「──踏み潰して超越してしまえばいいだけの事よ!」

 

 >破綻した理論、彼女が言っていることはとどのつまり生前の死因による弱点など気合いなどという曖昧なもので覆してしまえばといいと言う子供ですら言わない馬鹿げた理論だ。

 

「だって、ねえ? そうでしょう望幸。それはあんたの得意分野じゃない。だからそう、きっと今の状況だって覆せる切り札があるのでしょう?」

 

 >そう言ってジャンヌ・オルタは恍惚とした瞳で、熱に浮かされたような瞳で、愛おしい者をみるような瞳で、大切な財宝をみるような瞳であなたを見据える。

>彼女はあなたがここから覆せる何かを持っているともはや妄執と狂気に満ちた領域で信じて疑わない。

 

 ……仕方ありませんね。ここでオリチャー発動します。こっちも邪ンヌに対抗するための切り札を使わせてもらいましょう。

 

 >あなたは手に持つ刻印を刻んだ魔石に対して置換呪術を発動させた。

 >そしてあなたの手に現れたのは聖杯とあなたの持ち物の一つである身代わり人形だった。

 

 ──数ある切り札の一つを見せてやろうじゃないか。なあ、ジャンヌ・オルタ?

 




これでまだ序盤のボスという。終局とかどうなるんですかねこれ(他人事)
まあ何とかなるやろ(魔法の言葉)
それとなんかもうトンチキ地味てきたけどまあいいです。そして次回ついにホモくんもはっちゃける。皆のSAN値は直葬される。

えっ、今までのはオリチャーじゃなかったのかって?なんのこったよ(すっとぼけ)

ジャンヌ・オルタは何を考えてこんな事をしているのか。それはオルレアンが終わったら明らかになります。

そんなことを言い残して失踪します


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竜の魔女との一騎打ち

最初期の頃のように更新頻度を戻したい所と思ったところで初投稿です。



 今も尚、爆発的に跳ね上がり続けているジャンヌ・オルタの暴力的なまでの魔力と力の気配に星崎望幸は決して臆することなく、彼女を対面する。

 

「ああ、そうだとも。お前の言う通り切り札ならある。故に──」

 

 置換呪術を行使したことにより望幸の両手に聖杯と彼が作りあげた身代わりの人形が顕現する。無論、その手に持つ聖杯はジャンヌ・オルタが今手に持っている聖杯などではなく、彼等が最初の特異点で手に入れた大聖杯そのものだった。

 

「──数ある切り札の一つを見せてやろうじゃないか。なあ、ジャンヌ・オルタ?」

 

 瞬間、普段の望幸からは考えられぬほどの殺意が迸る。それは彼より圧倒的に強いはずのジャンヌ・オルタですら全身が総毛立つ程の殺意の奔流だった。

 

 彼は一体何をするつもりなのか──? 

 

 誰しもが疑問を深める中、2つの聖杯が揃ったことにより奇跡的に空間が安定したのか、立香達とカルデアの通信が繋がった。

 

『よかった、繋がった! マシュ、立香ちゃん、望幸くん生きてるかい!?』

 

「ドクター!」

 

 慌てたようなロマニの声。それだけでカルデアでも異常事態が起きたのが容易く察せられる。

 

『ごめん、色々と言いたいことはあるけれど手短に言うよ。どうやってかは分からないけど君達のところに回収したはずの大聖杯が転移させられた!』

 

 焦燥した様子でそう言うロマニ。それがどれだけ不味いことなのか、そして同時にどれだけ異常な出来事なのかを魔術に触れてまだ日の浅い立香は真に理解することは出来なかった。

 

 故に彼女は今起きていることをありのままに伝えた。

 

「それなら望幸が今手に持ってるけど……」

 

『どうやって!?』

 

「えっと、置換……魔術? っていうのを使ったんじゃないの?」

 

『ありえない! そんなことが有り得ていいはずがない! だって、今はレイシフト中だぞ!?』

 

 魔術について詳しいロマニだからこそ、望幸が成し遂げた異常性に気がついた。また、それ故に激しく混乱し始める。それもそうだろう、確かに置換魔術というものは手元のものを入れ替えて遠くから物を引っ張ってくることは出来る。

 

 ああ、だがしかし──

 

『君達は今過去に逆行しているんだぞ!? それを現代のカルデアから引っ張り出してくるなんてそれこそ魔法に──いや、単独でレイシフト出来るほどの力量がなければ不可能だ!』

 

 正しくそれはロマニの言う通りだった。

 

 レイシフトによって過去に逆行している望幸が、仮に何かのアイテムをカルデアから引き寄せるにはカルデアのレイシフトと同じ様な事をしなければならない。だが、そのレイシフトは数多の魔術師や優れた技術家がいて漸く成り立つ魔術だ。それも場合によっては失敗する可能性も多分に含む。

 

 だと言うのに彼は単独でそれを成し遂げた。詰まるところ──

 

 ──彼は単独でレイシフト出来るという事に他ならない。

 

 それは有り得ていいことではない。現代の一介の魔術師にしか過ぎない彼がそんな偉業を成し遂げていいわけが無いのだ。

 

 その事実に混乱するロマニを他所に珍しく焦った様子のダ・ヴィンチに通信が切り替わった。

 

『立香ちゃん聞きたいんだけど望幸くんは大聖杯の他に何を持ってる!?』

 

「えと人形……?」

 

『ああっクソっ! 悪い予感が的中してしまった! 彼があの人形を新しく作成していたところを見ていたというのに、あの人形の持つ効果を知っていたというのに!』

 

 ダ・ヴィンチは激しく後悔する。何故なら彼はその聡明なる頭脳で気づいてしまったのだ。もはやカルデアの計測器では碌に観測できなくなったジャンヌ・オルタという特級の怪物相手に全員が疲弊しているこの絶望的な状況下で彼が、望幸がその絶望を覆す為にイカれた行動をしようとしていることに。

 

『立香ちゃん今すぐ望幸くんを止めるんだ! なんだっていい! 殴ってでも彼がしようとしていることを妨害するんだ! 放っておけば彼は──』

 

 ダ・ヴィンチだけが気がつくことが出来た。やってしまえばもう二度と取り返しのつかないことになることを。そしてそれを立香達に伝える前に──

 

「──術式起動『肉体置換』」

 

 ──望幸が術式を起動させてしまった。

 

『──人として破綻してしまう!』

 

 次瞬、彼の手に持っていた大聖杯がどす黒い光となり、その光の粒子が彼の心臓へと吸い込まれる。そして次に起きたのは彼の手に持つ人形が木っ端微塵に弾け飛んだ。まるでその様は望幸が本来辿るべき結末を肩代わりしたようだった。

 

 そして異変はそれだけに収まらない。彼の澄んだ蒼い空のような美しかった蒼い虹彩は血と臓物をぶちまけたような極彩色の赤に変わり、白かった強膜は光すら反射しないほどの闇のような黒に染まる。

 

 それと同時に一瞬にして莫大な魔力を注ぎ込まれた彼の魔術回路が暴走する。全身の至る所に赤い紋様が走り、まるでその回路はどこか歪な魔術陣のような形を取っていく。

 

 そして聖杯が本来持っていたそれ一つで特異点を作り上げるほどの膨大な魔力が、星崎望幸という存在に牙を剥く。

 

 コップが大海を収めきれないように、無理に入れてしまえば器に罅が入り、砕けてしまうように、彼の肉体の至る所が拉げ、捻じ曲がり、断裂し、砕かれる。辺りに夥しい血をぶちまけながらも彼は苦悶の声一つ漏らさない。それどころか逆に彼の暴走する魔術回路を掌握し始め、全身に作り出される傷をその聖杯の魔力を使った治癒魔術で強引に治していく。だが、その程度で聖杯の魔力が収まりきる訳がなく、治した傍から彼の肉体が弾け始める。

 

 ──故に彼は更なる魔術の行使を行う。

 

「──術式起動『魂魄置換』並びに再度『肉体置換』」

 

 彼が今やっている事はジャンヌ・オルタがやった自己変生そのものだ。彼女は聖杯の力と自身のスキルである自己改造を用いてファヴニールという完全なる竜種を取り込み新たに自己変生した。

 

 それと同じように彼がやっているのは大聖杯そのものを取り込み、その力と彼の本領である呪術が最も得意とする肉体を素材にして組みかえるという事象で新しく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 聖杯の魔力に耐えられないのであれば耐えられるように作り替えてしまえばいい、魂が砕かれるというのであればその魂を補強してしまえばいいと、とち狂った理論でそれを実行する。

 

「やめろ望幸! そんな事をすれば貴様は死んでしまうんだぞ!?」

 

 失敗すれば当然の事だが死んでしまう。当たり前の事実に彼のサーヴァントであるアルトリア・オルタは止めにかかる。だが──

 

「クソッ! 頼む、やめてくれ! もう貴様を、あなたを失いたくないんだ! あの時のような絶望を私は味わいたくない!」

 

 ──彼の周囲に渦巻く膨大な魔力が障壁となり、アルトリア・オルタを近づけさせない。

 

 アルトリア・オルタは必死に、狂乱したように発生した魔力障壁に向けて聖剣を振るう。だが、悲しいことに傷の一つも付けることが出来ない。そしてまた、アルトリア・オルタの悲痛な叫びも今の望幸に届くことは決してなかった。

 

「ジャンヌ・オルタはそれを成し遂げた。ならば俺に出来ない道理は無い」

 

 あいつに出来たのなら俺にもできるのだと巫山戯た理論を掲げながら人の身では聖杯の欠片を取り込むことですら死に値するというのに彼はそれを丸ごと取り込み続ける。問題が起きた部位からその都度修正し、再度作り直す。

 

 そんな無数の自己変生と共に遂に彼はそれを成し遂げた(人として破綻した)

 

「これで同じ土俵だぞジャンヌ・オルタ」

 

 そう言って望幸はその身からもう一つの特異点とも錯覚させる程の強大な魔力を滾らせ、ジャンヌ・オルタの方へと歩み寄る。

 

 迸る闘志と殺意を抑えもせずにジャンヌ・オルタと対峙する。そしてまた、それを浴びたジャンヌ・オルタも歪な笑みを浮かべ望幸と同じように莫大な闘志と殺意をぶつけ合う。

 

「さあ、私を倒してみろ。望幸ィィイッ──!」

 

 次瞬、轟き荒ぶ開戦の号砲──己の悲願を叶えんと謳いあげながら黒剣を振るうジャンヌ・オルタに、望幸は粛然と己の獲物である二振りの剣を抜き放つ。

 

「ァァアアア、ハハハハハハ───!」

 

 激突する両者の剣が絶大な衝撃波を発生させる。その余波だけで薄氷が割れるように砕け散る大地と空間。全身から煉獄の炎を振り撒いて、喜悦と狂気に歪んだ大哄笑をジャンヌ・オルタは上げる。

 

 撒き散らされる煉獄の炎は次第に無数の黒剣へと変貌していく。玉藻と戦った際の出力さえ、有り得ないほどの速度で一秒ごとに超え続ける。

 

 常に進化し続けることによって発生する全身を駆け巡る万能感。

 

 それがジャンヌ・オルタの脳髄を蕩かす。滂沱の涙を流してしまいそうな程の溢れ出す感動に包まれながらも、上空へとノーモーションで転移し、当たり前のように空間に立つ望幸を見上げる。

 

 彼は己の腕を敢えて中途半端にテクスチャの狭間に置換する。それによって本来ならば有り得てはいけない事象が起きることにより、彼の腕から破壊の振動が引き起こり始める。

 

 増幅と反発、それを毎秒数百万と馬鹿げた回数で繰り返し、あまつさえその振動を束ねるという物理法則を無視した技を発動させた。

 

 地震のエネルギー量に匹敵する無色の破壊光がジャンヌ・オルタを粉砕せんと迫り、彼女もまた全力以上の全力を魂を燃やして絞り出し、大地を砕いて空へと飛翔する。

 

「いい、いい、いい、いい! 最高じゃない! 私はこんな夢の様なことを求めていたのよ!」

 

 放たれるは数千を超える黒剣弾雨と直径にして100mは優に超える極大の煉獄の火球。対象を穴だらけにした上で更に灰すら残らず焼き尽くす気なのか。ソドムとゴモラの破壊に等しい暴虐の具現の前に、逃れる場所など存在しない。

 

 否、回避が出来たところで避けてしまえば後ろにいる立香達を巻き込んでしまう。何せ今の彼女の放つ攻撃はそれ一つ一つが大軍規模の威力を誇る。

 

 故に、避けるなど愚策も愚策。

 

 真っ向から消し飛ばすのみと彼も魂を轟と燃やし始める。

 

「消し潰す──!」

 

 空間をも揺るがす大激震──増幅と反発を繰り続けた果てに放たれる魔震が、数千を超える飽和攻撃を真っ向から消滅させていた。

 

 加えてもはや千里眼じみた観察眼で立香達と自分に直撃する黒剣のみを見抜き、無駄なくそれらを消滅させながら前へ前へと突き進む。彼の進撃は止まらない。

 

 そして焼き尽くさんと空から墜ちてくる煉獄の火球を彼はたった一刀のもとに斬り捨て消滅させた。

 

 ──実体なきものが斬れぬと? 

 

 笑わせるな、斬れぬと思うから斬れんのだ。そこに実在するというのであれば森羅万象総じて斬れるのだと彼は信じて疑わず。そしてまたその馬鹿げた思考が彼という存在の格を爆発的に跳ね上げ続ける。

 

 まるで慣れているかのように実体なきものを斬り伏せ、超高速でジャンヌ・オルタに向けて疾走する。

 

 そして再度激突するジャンヌ・オルタと望幸。

 

 力に技に経験、執念。あらゆる要素を総動員させ戦闘力をぶつけ合い、破綻者達は火花を散らして殺意と殺意を応酬させる。

 

「ハハハハッ──! やるじゃない! 炎を斬って消滅させるなんてあんたイカれてるんじゃないの!?」

 

「お前が言うなよジャンヌ・オルタ」

 

 繰り返してきた世界の中であのような攻撃は何度もあった。そしてその度に何度も死に絶えながら知恵を振り絞り、最終的には踏み潰したのが彼という存在だ。積み重ねてきた戦闘経験の密度が違う、質が違う、桁が違う。

 

 例えジャンヌ・オルタが彼と同じ鉄火場を経験しようとも、サーヴァント、更にいえばビーストやハイサーヴァントなどの格上達と死闘を演じた経験値だけはどう足掻いても敵わない。

 

 己の願いの為に世界を幾度もやり直して駆け抜け続けた彼の歴史と研鑽は、どれだけ摩耗しても劣化する事など何一つとして有り得はしない。

 

 寧ろこの戦いも己の糧とし、爆発的に膨れ上がり続けるジャンヌ・オルタという存在に凄まじい速度で追いすがり始める。

 

 そしてまた其れを斬り結ぶことでジャンヌ・オルタは理解し、それが嬉しくて堪らない。斬り結んで、破壊の振動を纏う刀で血肉を抉られ、煉獄の炎で灼きながら歓喜に縺れる舌を動かす。

 

「ああ、そうよね。あんたはそう言う存在だもの」

 

 一度そうだと決めたら全てを捩じ伏せてでも邁進する彼の瞳の輝きがジャンヌ・オルタという存在を一心に映し続ける事に喜悦が止まらない。

 

「けど今は、今だけは私だけを映しなさい。決して余所見なんてさせないんだから──!」

 

「戯けた事を抜かすなよ。ジャンヌ・オルタ」

 

 狂喜に乱れるジャンヌ・オルタを冷ややかに見つめながら、然れど彼女の言うとおり彼女だけをその瞳に映し続けて彼は得物を殺意を以て振るう。

 

 だがそれはジャンヌ・オルタの狂喜に溢れる狂乱に火を注ぐ。焦がれに焦がれた存在から敵意と殺意、そして薄らと彼の中で揺らぐ反吐の出るような慈愛を機敏に感じ取り、ジャンヌ・オルタの内に存在する憎悪の炎が更に莫大な勢いで膨れ上がる。

 

「ハハハハッ──!」

 

 猛り狂った狂笑を上げながらジャンヌ・オルタの振るう剣速はもはや捉えることすら出来ぬ領域にまで到達しはじめる。振るう剣速に音が追いついて来られず、遅れて響き渡り続けるほどの速度。

 

 ──だというのに彼はその全てを的確に撃ち落とし、更には反撃だと二振りの剣を空に走らせ、ジャンヌ・オルタの血肉を抉り、滾る生命を削ぎ落とす。それによってジャンヌ・オルタから溢れ出した血が彼を濡らしていく。

 

 無論、ジャンヌ・オルタとてやられっぱなしな訳でもなく、跳ね上がり続ける彼の力に応じて出力を上昇させる。彼女の生来の負けん気の強さのみで壁を軽く超えてみせるが、今回ばかりは相手が最悪だった。

 

 何せ相手は彼──ジャンヌ・オルタが焦がれてやまない存在にしてぶっちぎりの破綻者だ。

 

 同じことが出来ない道理はなく、それどころかジャンヌ・オルタが壁を一つ超える度に彼は二段、三段飛ばしで壁を乗り越えていく。それ故にジャンヌ・オルタと彼の力量の差はいつ抜かれても可笑しくない状況に陥っていた。

 

 力には力で、技には技で。切り札を新たに生み出せば、彼も即座に対応した上にそれを起爆剤として更なる領域へと駆け上がり続ける。それに加えて彼の膨大な戦闘経験が幅を利かせているからこそ、ジャンヌ・オルタが押され始めているのだ。

 

 神造兵器を余りに長く保有しすぎたがために女神に成り果てた者との死闘。並びに、神霊に匹敵する存在を無数に相手取りなおかつその親玉であるビーストとの殺し合い。これに加えて様々な強者達と戦いに戦い続けた。そのどれもが容易だったことはなく、だからこそ経験としては極上だ。何かを成すと決めた彼がそんなものを無駄にするはずがない。

 

 故に彼という存在が格上との殺し合いに長けているのは、そういう事に他ならない。

 

 対して、ジャンヌ・オルタは英霊になって日が浅い。英霊として座に登録された彼女が経験を積むにはあまりにも時間が足りない。無論、彼と共に数多の死線や修羅場を潜り抜けては来たが、それは当然の事ながら彼にとっての一部でしかない。

 

 そして何よりも彼女がこの力を手にしたのが今回が初だと言うこと。いくらか調整はしてみたが、それでも未だに扱いきれない。故に彼女にとって最も足りない時間という点が、彼という存在の後塵を拝する結果に繋がっているのだ。

 

 けど、しかし──それがなんだと言う? 

 

「その程度で私が諦めるかァァッ──!」

 

 関係ないしどうでもいい。だって今、求めた夢が叶っているのだ。神なぞクソ喰らえと唾を吐くジャンヌ・オルタだが、それでも確かに奇跡は此処にあると信じて疑わない。

 

 願って願って願って願って、狂おしいほど求め続けて、追いかけ続けて掴み取った奇跡の一瞬がこれなのだと理解している。協力してくれたサーヴァント達の想いを無駄にしないためにも、その程度のことで諦めて無駄にしていいはずがない。

 

 たとえ何かの間違いだとしても、願いに願ったこの大願が成就すると言うのならばどんな地獄でも喜んで突き進もう。

 

「そうよ、今こそ──」

 

 やるべき事はたった一つ。

 

「長い旅路に終止符を打ってみせる。私があんたの全てを塗り潰すんだッ!」

 

 己が魂へ刻み込まんとする宣誓と共に、彼女の内に潜む邪竜の力と彼女が所持している聖杯が共鳴し合う。

 

 鳴動する大気、空間すら歪ませる程の熱量を誇る煉獄の炎が波打ち流動し始めた。加えてその炎に溶け合うように猛毒が混ざり始める。赤く赤く燃え盛っていた炎はいっその事幻想的なまでに美しい紫水晶(アメジスト)の色へと変貌していく。そして恐ろしい事にその猛毒の炎はそこに存在するだけ空間すら殺していく。

 

 彼はその様を見て、呆れ、嘆息し、同時に赤く染まった瞳を万華鏡のような煌びやかなものへと変化させ、滅尽の意志でその瞳を染め上げる。

 

「離れろ立香。どうせ碌なことにはならないだろうからな」

 

 まるでこれから先に起こる事象を知っているかのような口振りで、2人が激突する前にジークフリート達によって待避させられていた立香に対して更に離れろと告げて彼は決着をつけるべくジャンヌ・オルタの方へと踏み出した。

 

 己の目的の邪魔となる一切合切全てを根こそぎ踏み潰すべく。

 

「「行くぞォォッ──!」」

 

 激突する臨界点を遥かに超えた言葉に出来ぬほどの激情。

 そして第一特異点の竜の魔女──ジャンヌ・オルタの本領がついにその牙を剥き始めた。

 




トンチキにはトンチキをぶつけんだよ!

伏線回収できたり、新たに撒けたりできたので僕、満足!(一本満足バー)
ちなみにホモくんが今回何をやったかと言うと自分の心臓に大聖杯を溶け込ませて生きる魔術炉心に変化させて、溢れる魔力を使って肉体と魂をその魔力に耐えきれるようにひとでなしとなりました。尚、大聖杯は過去に汚染されていたものとします。

次回で終わるといいなあ……って感じ。

なんでこんなトンチキ合戦してるんだろうとか思いつつこれにて失踪させていただきます。


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託し託された意志

次回で終わるといいなあと言ったな。あれは嘘だ。
コマンドーした所で初投稿です。


 ジャンヌ・オルタが吼えると同時に紫水晶色(アメジスト)の紫毒の業火が強大な竜へと形取り、周囲の空間を歪めて殺し尋常ならざる速度で彼を飲み込み腹に納めて、すかさず空へと飛翔する。

 

「──ッ」

 

 先程生み出した煉獄の火球を遥かに超える巨大な竜が殺意を持って空を泳ぎ出す。

 

 恐るべきはジャンヌ・オルタの適応力だろう。彼女はこの土壇場でそして尚且つ新しく手に入れた力さえも完全に掌握せしめた。故に先程までのジャンヌ・オルタとは比べ物にならぬ程により強く、より威烈な霊基へと変貌を遂げる。

 

 ファヴニールの力を完全に掌握しきった彼女は以前の時よりも出力も、効果範囲も、対応力の何もかもが桁違い。

 

 紫毒の業火を唸らせて彼を飲み込んだ竜ごと串刺しにせんと紫毒の業火を紫水晶色の剣へと凝縮して射出する。

 

「燃えて燃えて燃え尽きろォォッ!」

 

 そして今、紫毒の竜に飲み込まれた彼は現在進行形で破滅を味わい続けていた。彼女の憎悪と比例して跳ね上がり続ける熱量。灰すら焼き尽くさんと襲い来る熱波に触れるだけで死へと誘おうとしてくる猛毒。

 

 さらに当然の事ながら身動きが取れない状態の彼に牙を剥く紫毒の剣群が、何百という数を伴って常時射出され続けている。頭蓋に心臓に喉に目に、全身のあらゆる急所を目掛けて殺到する殺意の奔流。

 

 誰もがやり過ぎだと思わせるオーバーキルを行いながらも、ジャンヌ・オルタは何があってもその手を緩めるつもりは決して無かった。彼という存在を知っているが故にその様な愚挙は犯さない。

 

 ──だって、ああそうだろう? 

 

「あんたは絶対に諦めない」

 

 それこそが彼を現すただ一つの言葉。

 

「そうなったあんたは邪魔な障害も他者の想いも何もかもを捩じ伏せて止まらない私が焦がれた人なのだからッ!」

 

 だからこそ彼は──

 

「ハァァッ──!」

 

 ジャンヌ・オルタの想いも周囲の想いも何もかもを捩じ伏せてひた走る。ブレーキなぞとうの昔に壊れ、ハンドルは無くなった彼にできることはただアクセルを踏み続けることだけ。他者が何を思おうが関係ない。己の目標の為だけに彼は何もかもを破壊しながら突き進む。

 

 竜の腹を引き裂いて現れる彼の姿はもはや人とは言い難く、そしてまたその全身から溢れ出す破壊の振動が空間を揺るがし続けるその姿がより拍車をかけていた。

 

 そして轟く無色の破壊光。エミヤが作り出したロングソードに膨大な魔力と振動を込めて奔る刃がその刀身ごと空間を破壊する。

 

「カハッ──!」

 

 ロングソードを代償に振り抜かれた破壊の振動に壊せぬものなどなく。堅牢な鱗で包まれていたジャンヌ・オルタの体を空間ごと真っ二つに破壊する。

 

 腰から真っ二つにされたジャンヌ・オルタの断面から血と臓物の花が咲き乱れる──ものの。

 

「ア、ハハハ──! この程度で私が終わるかァァッ!」

 

 自身の中の()()()()()()()()()()()とともに完全にズレてしまう前にジャンヌ・オルタは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まだ終われない、まだ目的を達成しきれていないと獰猛に笑いながら彼女は軽やかに戦闘を続行する。

 

 上空で身動きの取れない状態の彼を猛毒の業火で焼いたからと言ってそれがなんだと言うのだ。その程度で今の彼が死ぬものか。

 

 ああなった彼はその程度では止まらないと信じているからこそ、ジャンヌ・オルタはそれを見越した上で紫毒の剣を絶え間なく掃射し続けていた。

 

 そしてまた、彼女は更に限界を超え始めた。

 

 己の背中に生えた翼をはためかせて彼がいる空へと飛翔し、加えて弾丸の様な速度で彼に向けて殺到する紫毒の剣を踏みつけて更にその速度を上げ始めた。

 

 加速、加速加速加速──! 音速の壁なぞ優に超え、衝撃波を撒き散らしながら彼女は彼に接近する。

 相対する彼と比肩するべく、彼女もまた至高の領域へと到達して彼の下へと飛翔する。空間を捻じ曲げながら突き進むそれはもはや人間とは決して呼べない。ファヴニールすらも超越する彼女は更なる領域へいかんと無限の覚醒に手をかけ始める。

 

「私は必ずあんたという存在に届いてみせる!」

 

 その想いに比例するように彼女の攻撃速度が跳ね上がり始める。第一宇宙速度にすら届き始めた彼女の怒涛の連撃にさしもの彼も全てに対応出来ず両腕が切り落とされる。

 

 空を舞う両腕、もはや万事休すかと思われたが──

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女が放ち続けていた紫毒の剣の位置を的確に置換することによって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。仮止めするまち針のように紫毒の剣を利用し、聖杯の力を以って己の肉体に癒着させる。

 

 当然彼の体を致死の猛毒が蝕み始めるが、知ったことかどうでもいい。彼はただ滅尽の意志のみを灯らせてジャンヌ・オルタが覚醒したように、彼自身もまた更に己を超越し始める。

 

 先程までは二振りの剣の手数があったからこそ対応出来ていた。けれどその内の一振りは先程の攻撃に耐えられず壊れてしまった。ならばもう対応出来ないと? 

 

 否、それこそ否だと彼は常の無表情を崩して獰猛に嗤い始める。

 

 二振りの剣で対応出来ていたのであれば話は簡単、今までの倍の──否、十倍の速度で対応すればいいのだと巫山戯た発想とともに聖杯が其れを成し得る為だけの強化を施し始める。

 

 赤熱し始める魔術回路を赤く輝かせてその残光を残してジャンヌ・オルタを上回る勢いで加速していく。彼もまたあの程度で彼女が斃れる訳が無いと知っているからこそ、更なる迎撃行動へ移行している。

 

 不屈の闘志を輝かせながら人の身で神域へと踏み込み始めた彼は刀を神速で振るって振るって振るい尽くす。袈裟斬り、逆袈裟斬り、唐竹割り、右薙ぎ、左薙ぎ、逆風。

 

 ジャンヌ・オルタを両断せんとあらゆる経験を総動員して尋常ならざる速度で的確に斬り続ける。瞳に宿る滅尽の意志で彼女という存在を射抜く。

 

「ぐぅッ……!」

 

 そしてついに、無数の斬撃の果てに彼の攻撃がジャンヌ・オルタへと届いた。彼女の血肉を削り取る破壊の振動を纏った斬撃。その威力は彼女はおろか、自らも分解させられる程の威力を持って彼の斬撃が唸りを上げる。

 

 ──ああ、だがしかし。

 

 悲しいことにここで人と英霊の基礎ポテンシャルの違いが如実に現れてしまった。

 

 彼が刀を振るうよりも早く、彼の肉体がついに悲鳴を上げ始めた。彼の両腕の骨は粉々に砕け散り、肉はズタズタに断裂して噴水のように血をブチ撒ける。皮一枚でギリギリ繋がっているという惨状が彼の肉体に引き起こる。

 

「──計算を誤ったか……」

 

 如何に聖杯と呪術を以って肉体を改造したと言えど彼の元の肉体は脆弱な人の肉体であったことに変わりはない。要は早い話、彼のあまりにも速すぎる進化と成長に肉体の方が先に音を上げてしまったのだ。如何に強靭な精神を持つ彼であってもそれを動かす為の肉体がこうなってしまえばどうしようも無い。

 

 皮肉なことに彼にとって必要なのは肉体が精神に追いつくまでの時間という事だったのだ。

 

 そして当然、その隙をジャンヌ・オルタが見逃すわけもなく、彼の心臓目掛けてその鋭い竜爪を奔らせる。

 

 けれど、ああそうだとも──

 

「「させるかァァッ!」」

 

 ──彼は決して一人ではない。

 

 渾身の力を以ってジャンヌ・オルタの竜爪を上へと弾き飛ばすアルトリア・オルタ。続いて彼からジャンヌ・オルタを引き剥がすようにジークフリートが剣を振るってジャンヌ・オルタを吹き飛ばし、その隙にジャンヌが彼を守るために遠くに引き離す。今の一合でジャンヌ・オルタとの彼我の差を痛い程に理解したがそれでも尚彼女は、彼女達はジャンヌ・オルタという特級の存在に立ち向かう。

 

「へえ、やるっての?」

 

 それに対してジャンヌ・オルタは決して少なくない憤怒と憎悪をその身から零す。そしてそれに呼応するように彼女の周りに紫毒の業火が揺らめき出す。その業火の熱に当てられるだけでアルトリア・オルタ達は猛毒に汚染される。

 

 目や口などの身体中の穴から血を零して崩壊していく霊基に全身を激痛で苛まれながらも彼女達は決して彼の前から引こうとはしない。

 

「無論だ、私は望幸のサーヴァントだからな。今度こそあいつを一人で死なせやしない!」

 

「はっ、上等じゃない。けど、今のあんたらが私に相手に勝てるとでも思ってるの?」

 

 それは純然たる事実だ。今のジャンヌ・オルタ相手に彼女達は勝つことは決して出来ない。それは先程の一合で痛感している。

 

 ──しかしそれがなんだと言うのか。

 

 勝てないからと、負けてしまうからと言ってそれが立ち向かわない理由には決してなりはしない。

 

「今の貴様に勝つには今を生きる望幸に頼るしかない我が身がとてつもなく呪わしい。せめて望幸と共に戦えるほどの力があればと今ほど悔やんだことはない」

 

「けれどそれは私達が彼を一人で戦わせていい理由にはなりません!」

 

 例え数秒程度しか稼げなくとも、彼がその間に傷を少しでも癒せるというのであればその数秒に命を懸けてみせよう。

 

 そうさ、何故ならそれこそが──

 

「次代のために希望を残すのが英雄の役目だからだァァッ──!」

 

 ジークフリートはそう吼えて彼を守るために己の意志でその剣を振るう。猛毒に体を蝕まれて滅びゆく身体を鞭打って更に激しくさらに猛々しくジャンヌ・オルタに向けて斬撃を放つ。

 

 分かっている、分かっているとも。戦いに生きたジークフリートだからこそ、今のジャンヌ・オルタには絶対に敵わないということが。たとえ奇跡が起ころうが今の彼女はそれすらも超越して捩じ伏せられてしまうというのが。

 

 そんな彼女に勝てるのは正しく彼女と同じ、奇跡すらも超越できる存在である己のマスターしかいないのだと。

 

 悔しい、悔しくて悔しくて仕方がない。俺も彼等のようになれればとそう思いながらジークフリートは剣を我武者羅に振るう。

 

「ォォオオオオオッッ──!」

 

 その決死の猛攻をジャンヌ・オルタは涼しい顔で捌き切り、ぐらぐらと煮え滾る憎悪と憤怒を以てジークフリートの霊核を撃ち抜かんとその竜爪の一撃を奔らせる。

 

「ごはっ──!」

 

 だが、その一撃はジャンヌ・ダルクがその身を犠牲にすることで確かに防ぎきった。霊核が貫かれたことにより霊基が保てなくなる。

 

 されど胸へと突き刺さるジャンヌ・オルタの手を離すまいと口から大量の血を零しながらもがっちりと抱き抱える。

 

「今の、弱体化してしまった私にはせめてこれくらいしか出来ません。ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「良くやったジャンヌ・ダルク!」

 

 ジャンヌ・ダルクがその身を賭して生み出したほんの僅かな隙を最大限に活用すべく、アルトリア・オルタは聖剣に周囲の魔力と己の魔力、そして己を構成する霊基をも注ぎ込んで最大最強の一撃を放つ。

 

──約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)

 

 零距離で放たれた黒き極大の光がジャンヌ・ダルクごとジャンヌ・オルタを呑み込む。地を砕き、空間すらも湾曲させるほどの一撃を放った彼女の体はその反動に耐えきれずに消えていく。

 

 それでも彼女は全身が消えるその時まで宝具を放ち続ける。

 

 大切なマスターのために。これから傷ついてしまうことが分かっているからこそ、今は少しでもその傷を癒してもらうために全身全霊を注ぎ込む。

 

 そしてこの特異点が修復出来た暁には、ここに来る前に彼と約束した叶えて貰う願いは何にしようかとほんの些細な幸せを脳裏に浮かばせて──

 

「ァァアアアアッッ──!」

 

 ──残る霊基を全て魔力へと変換して己の宝具に注ぎ込む。

 

「ジーク……フリィィトォォッ!」

 

 消える直前に残されたジークフリートに全ての望みを託して彼女は消滅する。そしてまた、その想いを託されたジークフリートはその身に身震いしてしまう程の決意の炎を灯して己の宝具を大上段に構える。

 

──邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る

 

 そんなジークフリートにジャンヌ・オルタが生み出した紫毒の剣が無数に殺到する。やらせるものかと殺意を以て放たれるそれはジークフリートの霊核はおろか、全身のあらゆるところを串刺しにしていく。

 

 ──だが、それがなんだという。

 

 霊核が砕かれようが、全身を串刺しにされて致死の猛毒に侵されようがそんな事など、彼女達に託された想いに比べればなんということはない。

 

 全身に走る痛みを無視して、それどころか己の何もかもを代償にして本来であれば連射性に富む筈の宝具を、たった一撃に全てを注ぎ込む。

 

 魔力に命、そして覚悟と想いすらも注いで注いで注ぎ尽くして悪竜を殺す宝具を発動する。

 

 天に轟かせるほどの真エーテルの奔流。滅びの蒼き光がジャンヌ・オルタを照らす。当然そんな攻撃食らってやる義理などないと回避行動に移るが──

 

ガンド!

 

 ──その瞳に涙を浮かばせて、泣きそうな表情で此方を見つめる立香が震える身体を押さえ付けてジャンヌ・オルタに目掛けてガンドを放つ。

 

 ジャンヌ・オルタは彼女が震えて何も出来ないと踏んでいたからこそ予想外の一撃を放たれたことによりその回避行動は失敗に終わる。

 

 怖かっただろうに、恐ろしかっただろうに。それでもそんな心を押さえ付けて援護をしてくれた立香に対してジークフリートは感謝の念を送る。

 

 ──ありがとう、()()()()()()()()()

 

──幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)

 

 正真正銘、最後の一撃。あらゆるものを注ぎ込んだジークフリートという英雄を象徴する最強の宝具が滅びの光を伴って空間ごとジャンヌ・オルタを押し潰した。

 

 極大の爆発と共に空間をも揺るがす振動がこの固有結界の世界を満たす。

 

 けれど、それでも尚彼女は──

 

「──まだだァァッ!」

 

 またしても()()()()()()()()()()と共に爆炎の中から現れる。その身に無数の傷を負いながらも更にその強さは増していく。窮地に陥れば陥るほど、其れを打開するために彼女という存在はより強くなっていく。

 

 そんな姿を黒に染まりつつある視界の中で既に消えかかっているジークフリートは苦笑を浮かべる。これ程の覚悟を以てしても届かないのかと、そう思いながらも彼は既に次代に希望を残すための手は打っていた。

 

「マスター……。不甲斐ないことだが、俺はここで消える」

 

 もはや五感は死に絶え、何も聞こえないし、何も見えない。

 

 ──けれどそうだ、確かにこの魂が感じている。

 

「だからせめて、俺は君の未来の為に()()()()()()()()()()()

 

 ──己の後ろに立つ全て照らし灼き焦がす程の至高の光を。

 

 故にジークフリートは己の最も信頼するそんな彼の為に、絞りカスになってしまった残る自分の全てを宝具へと注ぎ込み彼に託す。

 

 英雄は光となって消滅する。されど、その後には必ず希望があるのだ。

 

「──ああ、お前達の意志は俺が引き継ごう」

 

 彼は地面に突き刺さるジークフリート達が託した意志を引き抜き、二振りの剣を構える。万華鏡のように煌びやかに光るその瞳はそれを手にした事で彼本来の何処までも透き通った蒼空を想起させる瞳へと変化する。

 

 想いを託し託され受け継いでいく尊き光。彼等の意志から感じる暖かな魔力を感じながら彼は更に竜へと近づき始めたジャンヌ・オルタと改めて相対する。

 

「──決着の時だ、ジャンヌ・オルタ。地獄の底に叩き落としてくれる」

 

「やってみろォォオ──!」

 

 彼等が決死の覚悟で稼いでくれた時間。その時間を一秒足りとも無駄にすることはなく、彼は己の肉体を精神と完全に同調させた。

 

 その身から滾る破滅的なまでの力と些細ではあるが、それでも何よりも暖かく尊い力。その二つを合わせて彼はジャンヌ・オルタと火花を散らせて激突する。

 

 ──託し託された想いを胸に彼等は駆け抜ける。

 




ブレイクゲージって所謂「まだだ!」なのでは?ボブは訝しんだ。

なんか色々とやってしまってますがネタは出し惜しみはするなと偉大なるオダセン聖も言ってるだえ。
なのでこれから先の展開も明日の自分がどうにかしてくれると信じましょう(丸投げ)

そんな話をしたところで失踪します。


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邪竜百年戦争終結

燃え尽きたぜ……真っ白にな……。
灰になったところで初投稿です。



 ジャンヌ・オルタへの死の宣告とともに彼は馬鹿げた速度で彼女へと肉薄する。それに対してジャンヌ・オルタは脳髄をぶち壊されたような歓喜の衝撃を感じるとともに戦闘空間全域を埋め尽くすほどの紫毒の業火を展開する。

 

 されど彼は止まらない。熱波を斬り捨て、猛毒を斬り捨て、業火を斬り捨ててただ愚直にジャンヌ・オルタのみをその蒼き瞳に捉えて突き進む。

 

 ──ああ、そうだ。その瞳だ。その瞳こそが私が焦がれて焦がれ尽くしていたものなのだ。

 

 そんな彼を今独占できているのは私しかいないのだという事実がジャンヌ・オルタの力の格を青天井に跳ね上がらせる。

 

 そして無論、そんな彼女を滅殺すべく彼も己が魂を熱く激しく輝かせて──

 

「「オオオオオオォォッッ──!」」

 

 後はもう言わずもがなと言うやつであろう。

 

 永続する進化と成長、そして覚醒。互いに願いを果たさんがために飽きることなくぶつかり合い、その度に彼等は新たな領域に至らんと限界突破を繰り返し続ける。

 

「───ッ」

 

 その破滅的な光景に立香はもう何も言えなかった。

 

 この特異点での幾度の戦いを経験した彼女でも二人の戦いから感じる衝撃の桁が違った。今まで争い事とは無縁の存在であった立香ですらはっきりと肌で感じる事が出来る殺意と闘志、そして燃焼している命。

 

 そしてジャンヌ・オルタは兎も角、立香にとって大切な幼馴染にして半身とも言える存在の彼は今、その存在が神域へと手を掛け始めていた。

 

 激突する度に大震する空間と焼き尽くされる大地。二人の死闘に巻き込まれたありとあらゆるもの全てが余波だけで崩壊していく。

 

 冗談でも比喩でもなく固有結界の世界が壊れかけていた。

 

 耐えられるのは今もまた進化と成長を繰り返し続ける破綻者である本人達だけ。彼らの闘いを支える世界の方がもはや限界に達している。もうやめてくれと、命乞いをするかのように世界は軋みをあげて断末魔を発しているが──

 

「まだだ、まだこの程度で斃れる事などありはしないッ──!」

 

 当然の様に彼等はお構い無しの躊躇なし。互いに互いしか眼中に在らず。1度決めたからこそ一切揺るがぬ破綻者達のイカれた意思のみで願いをその手に掴むまで彼等は朽ちず止まらず振り返らない。ただ未来のみを目指して踏破し続ける。

 

 その様を見て立香の中に生じた感情は恐怖──なんてものではなく、悔しさと自身に対する怒りのみであった。

 

 彼と一緒に戦うと言ったのに、皆に託されたと言うのに何なのだこの様は。指を銜えて闘いの余波から発生する衝撃からマシュに守られて、ただ大切な彼が命を燃やして戦っている様を安全な場所で見ているだけ。援護しようにも彼等の速度はもはや立香では捉えることが出来ず。だからこそ、何もしてやれることがない。

 

 ──悔しい、悔しい、悔しい! 

 

 血が滲むほど己の拳を強く握り、立香は自身の無力感に打ち震える。そんな彼女を慰めるようにフォウは彼女の肩に上り、流れる涙を舐めとる。

 

 そしてフォウもまた、その瞳に彼等の戦いをその魂に刻みつけるように瞬き一つせずに見つめ続ける。何故なら本能的に理解しているからだ。

 

 ──見逃すな、彼等の美しい魂の輝きを見逃しては決してならぬ。そうだ、だってそれこそが私が、私がやらねばならぬと思ったことなのだから。

 

 そして、そんな彼女と一匹の獣の想いを置き去りにして決戦は続行していく。

 

 即死しかねない致命傷を山ほど叩き込む二人の破綻者達。一人はこの程度で殺られるはずがないと盲目的に、狂信的に信頼しているから。一人は何もかもを踏み潰して踏破した終局の果てに求め続けた願いがあると信じて、必ず殺すと滅殺の意志を込めて咆哮する。

 

「──あぐッ」

 

 そしてまたそれによって徐々に徐々に。

 

「──カハッ」

 

 時間経過に伴って均衡が崩れ始めた。ようやく現れた明確な優劣の差、彼が本格的にジャンヌ・オルタを踏み潰しにかかった。

 

 何故彼が彼女を圧倒し始めたという理由については、別段特別なことは何もない。相性によるものだのそんなややこしいものなどではなく、シンプルな理屈のみが唯一の物差しとして君臨している。

 

 それはどちらがより強いかという、子供のようにシンプルな概念。

 

 より修練を積んできた側へと軍配が上がるというのが彼等にとっての勝利条件であり、そしてそれ故にジャンヌ・オルタは彼に敵わない。

 

 格上相手との戦闘経験という質の差に、繰り返し続けた戦いの数の差という量の問題が現れ始めている。

 

 本来であれば英霊と人間の基礎ポテンシャルの差によってその差を埋められたのかもしれないが、ジークフリート達が決死の覚悟で時間を稼いでくれたお陰でもはや彼の肉体は英霊と比較しても何ら遜色のないものへと仕上がっている。

 

 虚空へ走る無数の斬撃。ジャンヌ・オルタを以てしても捌ききれない斬撃の雨が彼女の肉体を斬り裂いて、彼の体を赤く染めあげる。

 

 それに対してジャンヌ・オルタは歪な笑みを浮かべながらも吼える。

 

「まだよ、まだ私はッ──!」

 

「いいや、お前の滅びは既に観測でき(見え)た」

 

 そう言って蒼い瞳を輝かせながら更に彼は斬撃の速度を上げて滅殺せんと唸りを上げる。ジャンヌ・オルタが上の領域へと至る度に彼はさらにその上の領域へと加速度的に至り、その差は悲しい程に開き始める。

 

 何せ彼は彼女が焦がれてしまったぶっちぎりの破綻者。なればこそ、そういった事に関しては彼は圧倒的なまでに上を行く。故にもうあと一歩届かない。

 

 何とかすべしと気概を吼えても、当然彼も気概を吼えてその差を突き放していく。距離は一切縮まらぬまま、茨道をただ一人で踏破していく焦がれた彼の背を彼女は歯噛みするように睨む。

 

 ──認めない、認めたくない。彼を一人で突き進ませて堪るものか。そのために私はこのような賭けに出たのだから。

 

──全ての邪悪をここに

 

 そして遂に彼女は正真正銘、最後の一撃を繰り出すべくその身に莫大な魔力を集中させる。彼女の周囲に渦巻いていた紫毒の業火もあらゆる悪性の何もかもが彼女の身に飲み込まれていく。

 

 それを見て彼もまた同じように刀身に限界まで魔力を装填する。真エーテルにより蒼く光り輝くバルムンクと反対に終末の滅びの光のように紅く輝く刀。

 

──これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮

 

 渦巻く紫毒の業火と煌めく蒼き瞳。互いに互いを喰らうべく一切合切情け容赦のない破滅の一撃を放つ。

 

──吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロントメント・デュ・ヘイン)

 

 そして遂にジャンヌ・オルタが己の宝具を解放した。戦闘空間全域に広がる紫毒の業火とそして串刺しにせんと天から、大地から大量に生える致死の猛毒を含んだ紫水晶の煉獄の剣が、さながら審判の業火の如き様相を以て彼に襲いかかる。

 

 そしてそれに対して彼は回避するわけでも、防御するわけでもなく、身震いするほどの殲滅の炎を己の瞳に滾らせてその業火の中へと突き進む。

 

 紫毒の業火を斬り伏せ、天から襲いかかる煉獄の剣を撃ち落とし、大地から串刺しにせんと彼に目掛けて殺到する煉獄の剣を恐るべき威力を誇る震脚を以て全てを打ち砕く。

 

「ハ、ハハ」

 

 その姿があまりにも、そうあまりにも眩しくて。初めて会ったあの日と全く変わらない輝く光の意志を纏っているものだから。そしてそんな貴方だったからこそ──

 

「私は──」

 

 遂に彼女の渾身の宝具を突破されて、無数の斬撃が無防備な彼女を襲う。その体に致命傷を負って彼の全身に余すことなくその血飛沫をぶち撒ける。それでも彼女はただ良かったと安心したかのように穏やかな笑みを零した。

 

 もうぴくりとも動かぬ体を地に伏せて、地面を夥しい血で赤く染めあげながらもその胸中は穏やかさに満ちている。

 

 完全に凌駕された事実以上にその胸を埋めるのは協力してくれた者達への感謝とそして己の大願が最後の最後で完全に成就してくれた事による安堵だ。

 

 彼ならきっと私を踏破するのだろうと信じ続けていたからこそ、そしてその信頼通りに彼は私を踏破してくれた。それが何よりも嬉しくて、そしてだからこそ溢れる感謝が止まらない。

 

 この特異点での様々な出会いや自身の願いに賛同してくれた皆に、そして彼とまた会えて心底良かったと思う。

 

 結局こうして敗北してしまったのは悔しくもあるし、残念でもある。だがそれでも自分が考えつく限りの計画を立てて、そしてそれを達成することが出来た。例え、己の体を改造して真に竜になってしまおうともそれに対して悔いなどない。

 

 故にならばもう抵抗するなど無粋だろうと、今まで不屈の意思で立ち上がり続けた彼女は疲れたように全身の力を抜いた。

 

 全力をぶつけて、その上で踏破されたのであればもはや思い残すことも悔いもない。そう納得して、己が辿るべき末路へ視線を向ければ──。

 

 そこには己という邪竜の血で全身を濡らした、決して屈することの無い彼がその蒼い瞳で自分を見つめてくれていたのだから。

 

「ああ、そうね……やっぱり私は、貴方のことを──」

 

 ジークフリートから託されたバルムンクを振りかぶり、討つべき自分を見下ろす決意は微塵も揺らぐことはなく。

 

「──愛してるわ」

 

 さあ、来てくれと万感の想いを込めて告げた瞬間、竜殺しの光輝が墜落してきた。放たれるは、悪竜を殺した竜殺しを象徴する一撃。

 

 世界に轟く蒼き極光は竜の魔女を露と散らせ、激闘は終わる。されど、竜の魔女は消える直前に己は賭けに勝ったのだと不敵に笑う。

 

 様々な想いが交錯し、託し託されてきた尊き意志。きっとそれは彼等にとってかけがえのないものであり、魂の奥深くまで刻み込まれた愛すべき思い出となることだろう。

 

 斯くして第一特異点邪竜百年戦争オルレアンでの出来事は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 >あなたに三件の報告があります。

 >トロフィーを獲得しました。

 

 >邪竜百年戦争を終わらせた者

 >竜の魔女を超越せし者

 >邪竜を討滅せし者

 >限界を超えた者

 >スターチス

 

 >以上のトロフィーを獲得したことにより新たなるスキルを獲得しました。

 

 >不死の肉体

 >竜の魔女の呪い

 >竜の因子

 >毒耐性

 

 >特異点修復により以下のスキルが成長しました。

 >置換呪術D→置換呪術C+

 >治癒魔術C→治癒魔術B

 >神性E-→神性D

 

 >詳細は各自スキル欄をご覧ください。

 >報告を終了致します。




良い最終回だった……(自画自賛)

正直に告白すると当初はこんなトンチキ合戦するつもりはなかったんです。ただいくら序盤のボスと言えどさっくり殺られるのはなんか違うと思って書いてる内にトンチキ化しました。なんでこうなったし。
ちなみに今回のMVPは誰がなんと言おうと二人の戦いを支え続けた玉藻ちゃん。やっぱ良妻賢母は最高やな!

ここからは裏話ですけど邪ンヌの狙いはホモくんに不死性を付与することだったり。そのために竜の血に耐えられるだけの体になってもらわなければいけなかったので苦肉の策でホモくんが自己変生するのを待ってたとかなんとか。呪いはどっちの読みでしょうね。

一章を書き終えたので失踪します。


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オルレアン後の幕間1

オルレアン後の幕間書くのは初めてなので初投稿です。



 もはやRTAとはいったい……から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー前回も前々回もでしたけど散々奇声を上げちゃってごめんなさい。でもあんなことになるとか分かるわけねーだろ! いい加減にしろ! (逆ギレ)

 

 まあ、視聴者兄貴達の誰もが気になってると思う続行するのかという話ですが、結論から言いますと続けます。

 

 は? 

 

 と思われる兄貴達もいるでしょう。反対の立場なら私も言います。ですが、ちょっと待っていただきたい。兄貴達は前回の獲得スキルとスキルの成長率を見ましたか? 

 

 はい、端的に言って序盤で取っていいスキルではありませんし、スキルの成長率も異常です。ホモくんが邪ンヌと一騎打ちしたのもあるんでしょうが、それでも阿呆みたいな成長率を誇ってます。

 

 このゲームはご存知の通りスキルの成長率はマジで塩っぱいんですよね。だと言うのに前回の上がり幅は驚異の二段飛ばしですよ。置換呪術に限って言えば3段飛ばしですね。はっきり言って破格の上がり幅です。本来なら一段ずつ上がっていくのが普通で相当運が良ければ二段ですね。それなのに今回のスキルの成長率はどれも二段階以上すっ飛ばして上がってます。

 

 これは今までの試走の中でも終盤の方でしかお目にかかれないような上がり幅でしたね。ですので走り続けていれば高確率で実質最高クラスのA+++に到達する可能性もありますし、さらに運が良ければEXに届くかもしれません。

 

 これが一つ目の続行理由ですね。

 

 2つ目はあのスキル群です。とりあえず分かるスキルからざっと説明しますね。

 

『不死の肉体』ですけどこれは名前通りの効果ですね。ホモくんの耐久に大幅な補正が掛かります。ただ本来入手するには完全なる竜種の血を浴びる必要があります。なので本当でしたらもう一つのスキルである『悪竜現象』があってもおかしくは無いんですが、どうやらスキルの説明を見る限り邪ンヌと混ざったせいで『悪竜現象』は入手しませんでした。

 

 まあ、その分効果の方も落ちてるんですが、それでも通常プレイする分ならまず死にませんし、雑魚モブの不意打ち食らっても死ぬことはほぼ無いに等しいでしょう。ただ心臓やら脳天やらぶち抜かれれば低確率で死にます。

 

 サーヴァント戦においては有能ではありますが、それでもまだきついですね。サーヴァント相手では不死の肉体の効果が薄まります。つまり心臓と脳天どちらかを抜かれた時点でほぼほぼ死にますね。ただその代わり回復力が尋常ではないのでそこさえ抜かれなければ戦えますね。

 

 次に『竜の因子』ですね。これは単純ですね。アルトリアが持つのと同じようにホモくんの魔力値と魔力の自然回復力に大幅な補正が掛かります。そしてホモくんに竜属性も付与されますね。

 

 なので今のホモくんに竜特攻攻撃やられたら十中八九大ダメージを食らうでしょうね。死ぬかどうかは当たり所次第と言った所でしょうか。ちなみに獲得条件は完全なる竜種の討伐、もしくはワイバーン種の1000体討伐で入手可能です。

 

 まあ、そんなデメリットもありますが総合的に見れば大幅なプラスです。特にホモくんは耐久と魔力を重点的に鍛えているんで今回の二つのスキルはどちらも大当たりです。

 

 そして『毒耐性』についてですけど、これはまあ普通に取れるスキルですね。かくいう私も四章の霧対策に三章で獲得するつもりでしたし。毒耐性はその名の如く毒に対する耐性がつきます。ただその効果量は立香ちゃん程ではありません。

 

 立香ちゃんは完全に無害化しますが、ホモくんの毒耐性はあくまで減衰でしかありません。なので静謐ちゃんから接吻されまくったら普通に死んでしまいます……(不夜キャス並感)

 

 毒を完全に無害化したいなら毒耐性の上位スキルを入手する必要がありますね。ただRTA的には毒耐性で十分なので無理に取りに行くつもりはありません。ちなみにこれの取得条件は毒状態を自然治癒で治した場合に取得できます。

 

 そして『竜の魔女の呪い』なんですが、これがいまいちよく分からないですね。テキストを読んでもかなりふんわりとしたことしか書いてないのでどのような効果があるのかがはっきりとは分かりません。ただ見た限りではメリットデメリットのどちらもあるみたいです。

 

 まあその詳細が不明なんですけど……はーつっかえ! 

 

 ちなみに第一特異点を完走した感想ですが、色々と予期せぬ事態が起こりすぎですね。おかげで本来なら第六か第七あたりで切るつもりだった手段を使っちゃいましたし……。加えて邪ンヌの謎の超強化フラグも事前に発見していなかった痛かったですね。もう少し試走してみるべきだと痛感しました。

 

 ですが、最終局面を除けば多少のガバはあっても全体的に見ればかなり良い走りができていましたね。なので第一特異点は詰めようと思えば更に詰めれる可能性は大幅にありますね。ただこのRTAは1部全体を通したRTAなのでいくつかの特異点でガバしたとしても最終的に最速叩き出せば問題ありません(ウ ン チ ー 理 論)

 

 そしてこのRTAの数少ないいい所って各特異点毎にチャートがきっちり分けられることなんですよね。それこそ一部の特異点を除けば必須スキルは無いので特異点毎にチャートを組めるんです。なので致命的なガバでもしない限りどこかでガバってもリカバリは割と容易なんですよね。

 

 なのでこういった要因も含めて続行してもいいかと判断しました。

 

 さてそれでは早速次の特異点であるセプテムに向けての準備をしましょう。まずはダ・ヴィンチちゃんの所ですね。早速今回の特異点で入手した素材の一部を持って行きましょう。

 

 >あなたはダ・ヴィンチの下に向かった。

 

 オッスオッス! ダ・ヴィンチちゃん元気ぃ〜? 

 

「はーい、誰だ……」

 

 >ダ・ヴィンチは扉を開いて入ってきたあなたの顔を見るといつものような柔和な笑みが消えて、怒ったような顔つきになる。

 

「……望幸くん、ロマニも私も再三言ったよね? 今の君の体はかなり不安定な状態なんだから今は安静にしてなさいって。なのになんで君は安静にしてないんだい?」

 

 RTAしてるからです(迫真)

 まあ、それはそれとして頼み事があってきたんですよ。具体的に言うなら銃の改造と特殊弾薬の生成をして貰いましょう。

 

 >あなたはMP5を取り出すとダ・ヴィンチに渡して改造と弾丸の生成を頼んだ。

 

 素材とQP貢ぐから作ってくれよな〜頼むよ〜。出来れば弾丸の威力重視でオナシャス! センセンシャル! 

 

「……君は本当に」

 

 >あなたが渡したものをみてダ・ヴィンチは頭が痛いとでもいうように目頭を揉む。

 >そして嘆息混じりにあなたが渡してきたものを受け取るとダ・ヴィンチはあなたの依頼を引き受けた。

 

「あのね、君のそういう所は私達も助かってる部分はある。けどね、君はもう少し自分の身を大切にするべきだ。君が帰ってきた時なんかこっちはてんやわんやだったんだよ? 従来の人の体からは思いっきり逸脱した強度になってるし──」

 

 あ、これ話が長くなるやつですね。他にもやらなきゃいけない事があるんでここいらで失礼させて貰いましょう。ほな、また……。

 

 >あなたは喋り続けるダ・ヴィンチに気づかれないように外に出ていった。

 

「──というかだね、君もう二度とあんな強化をしたらダメだぞ? じゃないと──っていない!? ああもう! 本当にあの子は!」

 

 それじゃあ次は召喚ルームへ行きましょう。探索とクリア報酬でそこそこの数の聖晶石を貰えたのでいくつかは魔力リソースとして取っておきますが、二騎くらいサーヴァントを召喚しましょう。

 

 この時、特異点で拾った刀はちゃんとマイルームに置いてきましたのでこれが触媒になる心配はありません。つまりはホモくん自身の縁とオルルァンの縁での縁召喚となります。

 

 >あなたは召喚ルームへと向かった。

 >その道中で立香と出会った。

 

「あ、望幸……」

 

 お、立香ちゃんじゃないですか。なんか目に見えて元気がないですね。しかもそれを示すようにストレス値も高いですし。ふむ、これは後でガス抜きしてあげないといけませんね。

 

「望幸、もう大丈夫なの?」

 

 そうだよ(大嘘)

 

 ホモくんは頑丈だからへーきへーき! 具体的に言うなら頭と心臓ぶっ飛ばされない限りはほぼ死なないんで。本当に人間かそれ? それじゃあ、ホモくんは鯖召喚してくるんで。

 

 >あなたは平気だと立香に告げて召喚ルームに向かう。

 >そしてあなたの後ろを立香が追ってくる。

 

 ????? 

 

 なんで立香ちゃん追ってきてるんです? ……ああ、そう言えば立香ちゃんもまだ鯖召喚してませんでしたね。ならホモくんがやるついでに自分もやろうという魂胆ですか(納得)

 

 >あなたは立香に一緒にサーヴァントを召喚するのかと聞いた。

 

「え? ああ、うん。そうだよ。私もまだしてなかったから望幸と一緒にやろうと思ったんだけど、駄目?」

 

 しょうがねぇなぁ〜(悟空)

 

 立香ちゃんが誰を呼ぶのか気になりますし、一緒に行ってみましょうかね。出来れば強くて癖なくてストレス管理が面倒じゃないサーヴァント呼んで欲しいですね(強欲)

 

 >あなたは立香の問いに了承すると立香の手を取って召喚ルームへと向かった。

 

「ふふ、やっぱり変わらないなぁ……」

 

 こうやってお手手繋ぐだけでも立香ちゃんの好感度は上がってくれますので、しっかり稼いでいきましょう。いや、立香ちゃんの好感度管理は本当に大事ですからね。彼女に嫌われたらサーヴァントとの交流がクッソキツくなるんですよ。だから立香ちゃん虐めるのはやめようね! 

 

 >あなた達は召喚ルームへと到着した。

 >あなたは中に入ると各機能をセットして何時でも召喚ができるようにした。

 

 親の顔より見た光景。

 

 さてさて、まずは立香ちゃんから引いてもらいましょう。何故かと言いますと清姫対策です。ゲームの仕様だと思いますが、特異点修復後の一回目のガチャで必ず出てきます。なので、清姫回避するためにまずは立香ちゃんに引いてもらう必要があるんですね。

 

 というわけでほらほら、引いてどうぞ(ゲス顔)

 

「それじゃあ私から呼んでくるね」

 

 >立香は召喚サークルの前に立ち、6つの聖晶石を投げ入れた。

 >召喚サークルの光帯が回転し、眩い光を放つ。

 >光帯が収束し誰かが現れた。

 

「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参上した。──ああ、そうだ俺は今度こそ君達を最期まで護り通してみせよう。それこそが俺の今の願いだからな」

 

 ジークフリート! 何故ジークフリートがここに……確定ガチャは? 確定ガチャじゃなかったのか? ジークフリート! 

 

 え、マジでなんでジークフリートが来てんだよ、おい。清姫なんで来てないんだよオルルァン! 

 

 ま、まあいいでしょう。ジークフリートはめちゃくちゃ当たりサーヴァントです。何せ強い、ストレス管理楽、言うことちゃんと聞いてくれると言うことなしの欠点なしです。ヒュー、流石竜殺しだぜ! 

 

 >続けて召喚ルームサークルの中からもう一人現れた。

 

 次は流石に清姫でしょう。だって清姫だよ? 来ないはずないじゃないですか。

 

「サーヴァント、ルーラー。ジャンヌ・ダルク。またあなた達にお会い出来て本当に良かった。あなた達の旅路は私が必ず最後まで護り通してみせます」

 

 は? 

 

 何でジャンヌ・ダルク? 清姫は? ねぇねぇ清姫は? なんであの子来てないの? えっ、まさかこれ私が引いた時に来るパターンですかこれ。うせやろ? 

 

「ジークフリート! ジャンヌ! また会えて嬉しいよ!」

 

 >立香が二人とまた出会えたことが嬉しいと言わんばかりに彼等に抱きつく。

 >そしてまた二人もそんな立香を大切なものを扱うように優しく受け止めて暖かな笑みを浮かべる。

 

 あ、立香ちゃんのストレス値が減りましたね。まあ、実際問題あの二人には特異点で立香ちゃんは散々助けられてましたからね。なのでストレス値が減るのも納得ですね。とは言え、それでもやはり不安が残りますので後でちゃんとケアしてあげないといけませんね。所でなんで二人はこっちを見てるんですかね? ホモくんもやれと? ガチャがあるからまた今度な! (やるとはいってない)

 

 ……さて、とそれじゃあ私も引かなくてはなりませんね(震え声)

 

 >あなたは立香と入れ替わるように召喚サークルの前に立って聖晶石を6つ投げ込んだ。

 >召喚サークルの光帯が回転し、眩い光を放つ。

 >光帯が収束し誰かが現れた。

 

「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました。──あんただけは絶対に私と一緒に堕ちてもらうんだからね!」

 

 邪ンヌぅ! お前が来るんかい! いや、まあ散々殺し合いしましたし、来てもおかしくないというか、来るだろうなあとは思っていましたけど。(縁が)太すぎるっピ! 

 

 じゃあ次で清姫が来るんですかね? まあ、今までは清姫が来なかったことなんてなかったですし、十中八九来るでしょう。

 

 >続けて召喚ルームサークルの中からもう一人現れた。

 

「セイバーのサーヴァント、両儀式。召喚に応じ参上いたしました。──ふふ、何だかこの口上もとっても懐かしいわ。そして同時にとっても悲しい。()()()()()()()()()()()()

 

 は? 

 

 いや、いやいやいや、まだ君とは縁結んでないでしょうが! オガワハイムまだ行ってねーぞ!? 一体何が起きてるんです!? どの縁から辿ってきたんだこの子? えっ、刀? あの? いや、いやいや有り得ないでしょ。だってオルレアンにあったやつだよ? いや、まあ確かにやたら不自然だったし、やたらステ高かったけどさ。

 

 でも今回ここに持ってきてないんですけど!? 

 

「あら、あらあら、はじめましてよね? ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──はっ、よく言うわね。()()()()()()()。でもまあ、戦力が高いに越したことはありませんね。ええ、こちらこそよろしく」

 

 >ジャンヌ・オルタと式は笑顔で握手する。

 

 おっと、どうやら考え事をしているうちに邪ンヌと式が握手してますね。よくよく考えたらどちらも当たりサーヴァントではあるので問題は無いですね。それにまあ、サーヴァント同士で仲良くなってくれるのは有難いですよね。何せ時折勝手にストレス値を減らしてくれますし。

 

「ほら、行くわよマスター。あのお気楽聖女と一緒の空間にいるとか反吐が出ますので」

 

「そうね、行きましょうマスター。そしてあなたのお話を聞かせてくれないかしら? 私、あなたと色々とお喋りしたいの」

 

「あっ、ちょっと待ってよ。私も一緒に行く!」

 

「ははは、なら俺も共に行こう。君達と色々と話をしたいからな」

 

「もう、オルタったら。私も皆さんと一緒に話をしたいんですからそんな事言わないでくださいよ!」

 

「ついてくんな!」

 

 >あなたは二人に引きずられる様に召喚ルームの外に連れ出される。

 >その後ろから立香達も後を追うように出てくる。

 >特異点で殺し合った仲だというのに、それを感じさせないほど彼等は笑顔で溢れていた。

 

 いや、まあこの後サーヴァントや立香ちゃんと交流するつもりだったので構いませんけども。取り敢えずは自鯖の中で1番ストレス値が高い玉藻からやっていきましょうかね。それが終わり次第セプテムの準備をしていこうと思います。

 

 そんなところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




清姫はどうしたのかって?彼女は、ね……(目そらし)
式が来た理由?霊基再臨4で分かる

後は適当に鯖目線やら立香ちゃん達カルデア目線からのホモくんとの交流をいくつか書いたら最後にRTAパートしてセプテムに突っ込めたらなあって希望を語ったところで失踪します。


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オルレアン後の幕間2

今回は短めなので初投稿です。



 

 ──晴れのち雨──

 

 玉藻に貸し与えられた部屋、そこに極小の固有結界が張られていた。外からは全くもって予想出来ないほどに中は広く、豪華絢爛とも言うべき広大かつ荘厳な宮殿に作り替えられていた。

 

 無論、こんなことをしてカルデア側が気づかないはずがない───なんてことは無く、玉藻自身の能力も相まってこの空間は特殊な空間になっているため、カルデア側からは全く気がつくことの出来ない領域となっている。

 

 仮にこの部屋に誰かが入って来ようとしても、この空間の支配者である彼女が許可をしない限りこの空間に入ることは出来ず、彼女が本来貸し与えられていた部屋がただただ広がるだけであろう。

 

 そんな固有結界とも取れるような特殊な空間を作り出している本人はその宮殿の中央で寛いでいる──わけでもなく、その宮殿の隅の方で更にその空間を改造した四畳半の和室という何だかもうとんでもなくミスマッチな空間になっているが、そこにいる『二人』は全く気にしている様子はなかった。

 

 一人はこの空間の支配者である玉藻、そしてもう一人は彼女のマスターである星崎望幸であった。

 

「ふむ、こちらの方はもう良かろう」

 

 九つの尻尾をゆらゆらと揺らしながら彼女は台所で料理を作っているため、あちらこちらに忙しなく動いている。そんな彼女を彼は何も言わず、ただ目の前に置かれたちゃぶ台の前で静かに正座して彼女の方を見つめていた。

 

 まあ、これは何をしているのかと言うと、彼が彼女に何かやって欲しいことや欲しいものは無いかと聞いた時に、彼女が望んだものが彼との一時の休息だったのだ。彼もそれに対して快く頷いたところ、この空間に連れてこられて料理を作るのでここで少し待っていて欲しいと彼女からそう願われたため、彼は何もせずただじっと慌てながら台所を行ったり来たりしている彼女の後ろ姿をじっと見つめているのだ。

 

 そうこうしていると彼女が御盆に拵えた料理を乗せて運んできた。彼女が作ったものは味噌汁、白米、塩鮭の切り身、玉子焼き、お新香という如何にもな日本食であった。

 

「その、待たせたのぅ」

 

 持ってきた料理を彼の目の前に置いた彼女は少しだけ不安なのか、手を何度も弄ったり、尻尾を落ち着きなさそうにゆらゆらと揺らす。

 

「ご主人様は日の本の生まれであろう? ならば、食べ慣れたものが良いと思ってこの様な料理を拵えてみたんじゃが……」

 

 彼女の心を表すように揺れる尻尾、其れを尻目に彼は合掌して「いただきます」と言ってから彼女が作った玉子焼きを口に含んだ。

 

「ど、どうじゃ……? 口にあったかの……?」

 

 忙しなく動く狐耳に、不安げに揺れる尻尾。そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、彼はたった一言──

 

「うん、美味しいと思う」

 

 ──そう彼女に伝えた。

 

「そ、そうか! それもそうよな、何せ妾が丹精込めて作ったものじゃからの。美味い以外なんてこと自体ありえんものよな!」

 

 その言葉を聞いて彼女は今までの不安はどこへやら、不安げに揺れていた尻尾は喜びを体現しているかの如く激しく揺らす。その質量も相まってそよ風を起こすくらいには激しく振るっている。

 

 彼女自身その行いに気がつけばはしたないと言うであろうが、喜びからか彼女はそれに気がつくことはなく、そしてまた彼もそれを指摘するつもりは毛頭になかったため、彼女が落ち着くまで彼女の尻尾は激しく揺れていた。

 

 その様子を彼はどうしてか目を細めて、そしてまた彼女が作った料理を食べ進めていった。その途中、彼は自分だけが食べるのが気になっていたのか、彼女に尋ねた。

 

「玉藻、君は食べないのか?」

 

「む、妾か? よいよい、ご主人様が食べているのを見ているだけで妾は満たされるからの」

 

「そうか」

 

 そう言って彼女はニコニコと微笑みを浮かべながら彼が食べている姿をじっくりと眺める。それに対して彼もそう言うならと納得して彼女が作った料理を食べて進めていく。

 

 とは言ったもののやはりと言うべきか、一人で食べているのとそれを見られるというのは一般的に考えると気まずい。故に彼もそう感じたのかは分からないが、彼は徐ろに残っていた最後の玉子焼きを箸で掴むと玉藻に向けて差し出した。

 

 それを見た玉藻は困惑した様子で彼と玉子焼きを交互に見る。

 

「ご、ご主人様?」

 

「食べるといい。きっと美味いはずだ」

 

 そう言って彼は更にずいっと玉藻に向けて玉子焼きを更に近づけた。それに対して彼女はあーだのうーだのと言って悩み出す。

 

 実際の所、彼が図らずともあーんをしてくれた事に関しては凄く嬉しい。なんなら自分も気づかない内に尻尾が犬のようにちぎれんばかりに激しく揺れている。

 

 とは言え、だ。やはりこう、ああも邪な思いも何も籠っていない透き通った蒼空の様な蒼い瞳で此方をじっと見つめられると照れてしまう。

 

 それに今気づいたのだが、彼が今玉子焼きを差し出しているのは彼も使った箸だ。そしてその箸で自分が食べれば必然的にそれは間接キスというものになってしまうわけで……。

 

 いや、何も今更接吻一つにキャーキャーと喧しく喚く程の生娘でもあるまいし、そのまますました表情で食べれば何の問題もないというのは分かっている。分かっているのだが──。

 

 玉藻はちらりと目線だけを彼にやる。そして彼と目が合った途端また目を伏せてしまう。

 

 ──ああ、そうだとも。白状しよう。彼の何者にも染まらない目を焼くほどの魂の輝きと澄んだ蒼空を想起させるあの蒼い瞳に見つめられてしまうとどうしようも無く気恥ずかしくなってしまう。それこそ生娘のように。

 

 ちらりちらりと何度も彼と彼の使った箸を交互に見つめていると、彼もその視線に気がついたのか自分が差し出している箸を見て、ああと何か納得したように頷いた。

 

「すまない、配慮に欠けていた。今新しい箸を──」

 

「いっ、いやその必要は無い!」

 

 彼が箸を引っ込めようとした所で玉藻は慌ててその玉子焼きを口に含んだ。その行動に彼は珍しく目を白黒とさせたようにほんのりとだが驚いた表情を見せた。だがそれもほんの一瞬のことで瞬きをした次の瞬間にはまたいつもの凪いだような無表情へと切り替わっていた。

 

「───」

 

「どうだろうか、きっと美味しいはずだ。とは言えこれは俺が言える台詞では無いな。何せこれは君が作った料理なのだから」

 

 そう言うと彼は綺麗に食べ切られた食器たちを纏めて台所へと片付けようとする。

 

「──あ、よいよい。それは妾が片付けるからの。ご主人様はもう部屋に戻って休むが良い。沢山食べたから一息付きたかろう?」

 

 だがそれは玉藻が強引に手で制し、纏められた食器たちを彼が何か言う前に台所へと運んでいった。まるでひったくるように持っていかれたことに対して目をぱちくりとさせた。

 

 そして彼は台所へと食器たちを運んでいく玉藻の後ろに姿を見ながら礼を言った。

 

「ありがとう玉藻。それとご馳走様でした」

 

「──うむ、次はもっと腕を磨いてご主人様を驚かせる程の美味な食事を提供しよう」

 

「そうか、それは次が楽しみだな」

 

 玉藻はそう答えながらも振り返ることはなく、彼が使った食器たちを流し台の上に置いていく。そして彼もまた、彼女のそんな後ろ姿を見ながらまるで煙のようにその場から消える。

 

 玉藻は彼がこの場から転移し、気配が無くなったのを感じると食器棚から彼が使っていた食器とお揃いの食器を一つ取り出してその中に少しだけ余っていた味噌汁を注いで啜った。

 

 そして彼女の瞳からポロポロと堰を切ったように大粒の涙が零れ始めた。

 

 ──良かった、本当に良かった。こんな顔ご主人様には決して見せられない。ご主人様が出ていくまで我慢出来て良かった。

 

 瞳から溢れる雫は頬を伝い、流し台へとポタリポタリと幾つも落ちて濡らしていく。鏡面のように綺麗に磨き上げられた流し台には今の自分の顔がどれほど酷いことになっているかよく分かる。

 

 溢れる涙を拭っても拭っても止まることはなく、逆に止めようとすればするほど涙が溢れてしまう。考えてみれば分かるはずだと言うのに、それでもそんな現実から目を背けた結果がこの様だ。はっきりと直視せざるを得ない現実を突きつけられてしまった。

 

 脳裏に浮かぶ彼が料理を食べた時の感想。

 

 ご主人様はきっともう──。

 

「──ははは……この味噌汁、少々塩っぱくなりすぎてしまいましたね」

 




バッドコミニケーショォォォン!(これが言いたかっただけ)

感想貰って気づいたんですが、ホモくんの現ステやら邪ンヌのステやら立香ちゃんのステやら何やらの詳しいステータス表記いります?必要そうなら章毎にステータスとか置いておこうかと悩んでるんですが。
取り敢えずアンケート設置しておくので良ければどぞ。

そして欲望に走った結果がこれだよ。だからアタシたちには酒がいるんだ(マリーナ並感)

そんなことを語ったところで初投稿です


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オルレアン後の幕間3

最初没にしようかと思ったけどやっぱ槍ニキとの絡みは欲しいよねと個人的に思ってしまったので初投稿です



 

 ──槍にて語る──

 

 特異点攻略と共にカルデアの復旧作業も同時に行っていたおかげでシミュレーターが復活した。それを聞いたランサーもとい、クーフーリンは星崎望幸との戦いを望んだ。

 

 理由はほんの少ししか記録として残すことが出来なかったが、それでも記録からオルレアンでの二人の戦いを見てしまったからだ。ともすれば猛犬と呼ばれるようになった彼の血は大いに滾った。

 

 何せクーフーリンが聖杯戦争に参加している理由は強者との戦い。ともすればあれほどまでに魂を揺さぶられ、骨の髄まで焼かれ、脳髄を焦がされてしまうような戦いを見てしまったのならばもう抑えは利かない。

 

 何が何でも戦ってみたいというケルトの戦士として当たり前の欲求が鎌首を擡げていた。しかし、だ。流石のクーフーリンとて現在の状況であんな戦いをやろうとは誘えない。何せ彼はたった二人だけのマスター候補。もしこんな所で怪我でもして次の特異点に行けなくなってしまえば目も当てられない。

 

 ならば戯れる程度の手合わせでもしようかと考えた──が、それは無理だ。己の闘争心はよく知っている。手合わせだと考えていてもあの戦いを見せられた後ではきっと抑えが利かずに半ば殺し合いじみた戦いになるのは目に見えている。

 

 故に彼はどうしたもんかと悶々と過ごしていた直後にこの発表だ。シミュレーター内であれば余程の事がない限り現実の肉体に何かしらの損壊が与えられることも無い。ならば心ゆくまで戦えるではないかと考えついたクーフーリンはそれはもう本当にしつこく彼を戦いに誘った。

 

 話をすれば戦いに誘い、挨拶をすれば戦いに誘い、果ては目を合わせただけで戦いに誘って来る始末だ。さしもの彼も珍しく顔を崩して嫌そうな顔をしてしまうほどの鬱陶しさ。何度かキアラやカーマなどを嗾けられたがそれでもクーフーリンは諦めなかった。

 

 仮に英雄王ことギルガメッシュがいれば「盛りのついた犬よな」と盛大に罵倒されるくらいには彼にラブコールを送っていた。

 

 その結果、彼は条件付きでクーフーリンとのシミュレーターでの戦闘を許可した。

 

 最初はその条件に難色を示したクーフーリンだったが、それでなければやらないと彼に言われてしまったため、不承不承と言った様子でその条件を飲んだ。

 

 そして舞台は移り──

 

「一応聞いとくが『アレ』はやらねェんだな?」

 

「ああ、『アレ』は早々使えるものでは無い」

 

 シミュレーターにて再現された昼下がりの平原。鬱陶しいくらいに空を照らす太陽に何処までも蒼く澄んだ空。

 

 クーフーリンは己の得物であるゲイ・ボルグを構え、彼は片手にあの刀を、そしてもう片方の手にはどういう訳か槍を持って草を切るように揺らしていた。

 

「はっ、最初やりあった時に妙な違和感があったんだが、やっぱりてめェはそっちの方がしっくりくるぜ」

 

「そうか」

 

『えーと、それじゃあ念の為改めて説明させてもらうよ。このシミュレーターでは現実の君達の情報を元に君達の器を再形成させてもらった。だから君達は現実ととなんら変わりはない。そして今回の目的としては望幸くんの体がどう変化したのか計測するため。なので望幸くんのバイタルが危険水準に達しそうになったら悪いけど此方から問答無用で接続を切らせてもらう。いいね?』

 

「おうよ」

 

「ああ」

 

 ロマニから今回の表向きの趣旨を伝えられ、両者共に頷いた。だが、クーフーリンにはもう一つ目的があった。

 

 無論、彼との戦いもそのうちの一つだが加えてもう一つ。最初に手合わせをした時に感じた尋常ならざる違和感──いや、より正確に言うのならば既視感とも言うべきものだろうか。

 

 クーフーリンはそれを見極めるために彼と戦う。

 

「───」

 

 静寂。風に揺られて擦り合う木の葉の音だけが二人の間に満ちる。そして──

 

「そらァッ!」

 

 最初に動いたのはクーフーリンだった。獣の如き瞬発力で残像すら残らぬ程の速さを以って彼との間合いを一瞬で潰す。そしてその勢いを乗せたまま空気ごと切り裂きながら鋭い刺突を繰り出す。

 

 なんの躊躇いもなく脳天に向けられて放たれた轟速の刺突は、彼の刀を以ってまるで水を突いたかのような何の手応えも感じないほどに綺麗に流された。

 

 そして当然その隙を見逃す彼ではない。反対に持っていた槍をクーフーリンの心臓目掛けて穿つ。受け流されたせいで大きな隙を生み出されてしまったが故に回避不能──斯くもそれは常人であったのならばという前提が付くが。

 

 クーフーリンはランサーの特徴である最速の英霊としての性能を遺憾無く発揮する。やったことは至極単純、回避不能の刺突を彼は更にそれを上回る程の速度を以って体を捩り皮一枚のところで回避した。

 

「──ふっ!」

 

 そしてそのまま空気ごと蹴り飛ばす程の威力で彼に向けて回し蹴りを放つ。だが、それは置換により転移することで回避された。

 

「はっ、てめェあの時既に魔術を仕込んでやがったな?」

 

「駄目だったか?」

 

「いいや、構わねえよ。お前さんの本領はどちらかと言うと魔術師側だ。なら前準備くらいは無いとフェアじゃねえだろうからよ」

 

 クーフーリンの脳裏に浮かぶのは最初に対峙していた時手持ち無沙汰に槍で草を切って散らしていた姿。

 

 彼の魔術の発動には基本的に自分の体を介する必要がある。そして彼がよく使う転移の種である刻印は言わば彼の体の延長線として扱う為のもの──とクーフーリンは予測をつけていた。

 

 その刻印をあの時散らした草に既に付けていたのだろう。そして草は風に揺られてそこそこの範囲に散っていた。それが意味するところは──

 

「長引けば長引く程こっちの不利になるな」

 

 アンサズで草を焼き払ってもいいだろうが、それならばそれで彼は焼かれないものに刻印を刻むだろう。例えば、今二人が立っている大地などや石など。

 

 時が経てば経つほど彼の魔術の効果範囲がより広がっていく。そして行き着く先はもはや彼が何処から出てくるのかも分からぬ、範囲すら絞り切れない中での神経をすり減らしながらの戦いだ。

 

 ──なるほど、随分とまあ嫌らしい搦手を使ってくるもんだ。

 

 故にこれを突破するには辺り一帯を焦土に変えるほどの威力を持つ宝具を放つか、若しくは彼が盤面を整え切る前に押し切るかの二択になる。

 

 そこまで思い至ったところでクーフーリンはまるで獣のように獰猛な笑みを浮かべる。

 

「はっ、上等じゃねえか。それでこそ滾ってくるつーもんだ」

 

 ミシリ、と全身の筋肉が軋むような音を立てると共にクーフーリンは彼に向けて先程よりも更に速い速度で接近する。

 

 彼もそれに即座に反応して転移を持って距離を取る──

 

「甘ェよ!」

 

「むっ」

 

 ──が、転移した瞬間にはクーフーリンが目の前にいた。

 

 彼は少しだけ目を見開いてクーフーリンが突撃と同時に仕掛けてきた猛攻を刀と槍の二振りを以て全て捌いていく。

 

 クーフーリンが何故転移したはずの彼の目の前にいたのか。それは実に単純なことだった。

 

 クーフーリンが対策として導き出し、そして実行したのはたった一つ。転移したのであればその都度走って追いつけばいいと言うなんともまあケルトの戦士らしい脳筋──もといケルト流の対策だった。

 

 そんな力業で無理矢理解決していく姿は正しくケルトの大英雄としかいいようがない。というか、普通ならそんなこと考え付かない。

 

 クーフーリンは戦士として研ぎ澄まされた嗅覚と直感を以って彼が何処に転移したのか、もしくは何処に転移するのかを瞬時に割り出して自慢の俊足を以て彼との間合いを常に潰し続ける。

 

「ハ、ハハハ───! 良いじゃねえかよ、坊主。俺とこんなに打ち合える魔術師なんぞそういねェ!」

 

「そうか」

 

 互いの打つ手を読んで読んで読み尽くして、常に相手の先を取り続ける。クーフーリンは今までの戦士として蓄えてきた膨大な経験とそして彼との今までの僅かな戦闘を総動員して彼がどう動くか先読みしてそれを潰すように攻撃を仕掛ける。

 

 だが彼もまた、まるでそれを知っているかのようにクーフーリンの猛攻を尽く捌いていく。時に受け流し、時に避け、時に僅かな合間を縫って反撃をしたりと的確にクーフーリンの先の動きを潰していく。

 

 ──その動きにどうしてかクーフーリンは強烈な既視感を抱いていた。

 

 何故かは分からない。けれど何故か分かってしまう。

 

 知らないのに知っているという矛盾を抱きながらもそれを頭の片隅に追いやって彼との戦闘をただただ楽しむように没頭する。

 

 幾度の斬り合いと共に無数の火花がまるで夜空に輝く星のように煌めく。そしてその果てに──

 

「───」

 

 ついに彼の槍がクーフーリンの頬を切り裂いた。浅くとも確かに頬から口元へ血が流れ落ちる。それをクーフーリンは舐め取って──今までに無いほどの獰猛な笑みを浮かべた。

 

「──クッ、ハハハ!」

 

 クーフーリンの中に流れるケルトの血が騒ぎ始めた。全身の血液がまるで沸騰したと錯覚するほど滾り始め、それに呼応するようにクーフーリンの速度が更に跳ね上がり始めた。

 

 刺突刺突刺突──! 

 

 ふざけた速度で、そして馬鹿げた量の刺突が彼に襲いかかる。それを表現するのならば雨だろうか? いやいや、雨なんて言葉ではもはや足りない。それを形容するのならば滝という言葉の方が余程似合っているだろう。

 

 それに対して彼は後退し、避ける──わけでもなく、真正面から槍の滝を粉砕しにかかった。槍の動きの流れを見極めて地を這うように躱し、時に火花を散らしながら迎撃し、体に細かい無数の傷を付けながらも突き進んでいく。

 

 そしてついにクーフーリンの刺突に合わせて刀で彼の槍を大きく上に弾き上げる。当然クーフーリンの懐はガラ空きになり、それを狙うように彼は地面が砕けんばかりの力強い踏み込みで彼の心臓を穿たんと槍を走らせて──

 

「甘ェよ、坊主」

 

 クーフーリンは弾かれた勢いをそのままに槍を素早く回転させて槍の石突で彼の槍を空へと弾き飛ばした。空へくるくると舞う槍を尻目にクーフーリンは獰猛に笑う。

 

 かの英雄はランサーとして最も名高いと言ってもいいほどの英霊だ。ともすればそんな彼の槍捌きは他のランサークラスと比較してもズバ抜けて高い。故に彼ではクーフーリンの槍の技量には今一歩及ばない。

 

──突き穿つ(ゲイ)

 

 既に彼はクーフーリンの宝具の範囲内。加えて武器を弾き飛ばされた影響で体勢を立て直すことも出来ていない。故にクーフーリンは己の紅き魔槍を回避出来るはずは無いと踏んで、本来ならするつもりもなかった宝具を勢いのままに開帳せんと魔槍に紅き魔力を迸らせて──

 

「その言葉そっくりそのまま返そう」

 

 目の前から彼が消えた。

 

 これは彼が得意とする置換を用いた転移だと言うことに即座に気がついた。だが、辺りを見渡しても何処にもいない。

 

 何処に行ったと思考を高速回転させながら周囲を見渡していると、不意に己に影が差し掛かった。

 

「上かっ!」

 

 空を見上げるとそこにはクーフーリンが思っていた通り、彼は空に打ち上げられた槍のすぐ側にいた。

 

 普通に考えれば彼が槍と位置を置換したというのならばまだ分かる。だが、槍は彼と一緒に空に舞っている。であるのであれば彼が槍と位置を置換したということでは無い。ならば一体どうやって回避した? 

 

 その疑問のままに彼が先程まで立っていた所を見るとそこには血に濡れた石が転がっていた。そこでクーフーリンは漸く気がついた。

 

「はっ、そういうことかよ」

 

 彼の魔力の動きには注意していたつもりではあった。だがあの時、あの刺突の滝を掻い潜る時に彼は回避と同時に刻印を刻むための石を刺突の影に隠れて拾っていた。そして自身の血液を付着させて魔術を起動せずに血を刻印として付着させていたのだ。

 

 そして槍を空へと弾き上げる瞬間、それと同時に空へと放り投げたのだろう。道理であっさりと上に弾くことが出来た訳だ。

 

 ──さあ、どう攻撃してくる? 

 

 槍を掴んで空から串刺しにするつもりなのか、はたまた己のもう一つの宝具のように投擲してくるつもりなのか。そう予測しながら彼がどう動くか見ていると不意に己の師匠であるスカサハの姿と被った。

 

「ふっ!」

 

 天空にて高められた魔力を足先に集中させてオーバーヘッドキックの要領で槍の石突を蹴り飛ばして爆発的な速度で迫るそれは正しくそれはスカサハがやっていた──

 

「──ッッぶねェ!」

 

 ──爆砕。槍が地面に突き刺さると共に小規模のクレーターが発生すると共に轟音と砂煙が盛大に撒き散らされる。

 

 ほんの一瞬、僅かに見とれて動きが止まってしまった。だが、それでもクーフーリンはその隙をカバーして空からの槍の襲撃を後ろに大きく跳ぶことで回避した。仮に当たっていればまず間違いなくやられていただろう。

 

 だがこれは同時にチャンスでもある。滞空している今ならば──まて。

 

 彼奴は今どこにいる──!? 

 

 ほんの一瞬目を離した隙に先程の位置から消えており、辺りを見渡そうとして──背後から凄まじい寒気に襲われた。振り向かなくても分かる。間違いなく、彼奴は後ろにいる。

 

 故にクーフーリンが取った行動は槍を地面へと突き刺して棒高跳びでもするように更に上へと跳躍することだった。そして遅れて先程までの己の心臓の位置に空気ごと刺し殺すと言わんばかりの速度の槍が突き出されていた。

 

 あちらからしても咄嗟の回避で見失っても可笑しくないというのに彼はクーフーリンが空へと回避したのをきっちりと視界に入れていた。

 

 クーフーリンの紅き瞳と彼の蒼き瞳が互いに交錯し、そしてクーフーリンはもう一つの宝具を開帳した。

 

 それはもとより投擲する為のモノだった。狙えば必ず心臓を穿つ槍。躱すことなど出来ず、躱し続ける度に再度標的を襲う呪いの宝具。それこそが生涯一度たりとも敗北しなかった英雄の持つ破滅の槍。ランサーの全魔力で打ち出されたソレは防ぐ事さえ許されまい。

 

 躱すことも出来ず、防ぐことも出来ない因果逆転の呪い。放たれてしまえばそれでお終い。

 

 ──故に必殺。

 

──刺し穿つ(ゲイ)

 

 ああ、だからこそ彼はそれだけを最も警戒していた。なればこそ、だ。何よりも警戒していたお陰で彼はそれに対してコンマ単位で反応した。

 

「知っていたとも。お前がそうするだろうことはな」

 

 クーフーリンが完全に宝具を解き放つよりも速く、彼はクーフーリンを切り捨てんと唸りを上げながら刀を振るう。

 

「はっ、奇遇だな。俺もだよ」

 

 だかそれはクーフーリンも読めていた。彼奴ならばきっとそうするだろうというどこか確信めいた予測と共に彼は宝具の発動を中止した。元より今のはただのブラフ。本命はカウンターだ。彼の攻撃に合わせて突き穿つつもりでいたのだ。

 

 神速の刺突と轟速の斬撃。互いに互いを倒さんと必殺の思いを込めて放たれたそれは今日一番の衝突であった。衝撃波が草原を揺らし、大気を震わせ、砂煙を撒き散らす。

 

 そして砂煙が晴れたそこには互いに互いの首へと己の得物を突き付けている二人の姿があった。

 

「──こりゃあ引き分けか」

 

 クーフーリンはそう言うと彼の首に向けていた槍を下げる。そして彼もまたクーフーリンと同じように刀を下げた。

 

 決着は引き分けという結果に終わってしまったが、それでも十分に満足出来た。そしてまた、知りたいことも戦ったことでよく分かった。

 

 戦いが終わったのならばもう用はないとシミュレーターから退出しようとする彼の後ろからクーフーリンは話しかけた。

 

「なあ、望幸」

 

「なんだ」

 

「強くなったな」

 

「──そう、だろうか」

 

 彼はまるで消えそうなほど小さな声でそう呟くとシミュレーターから消え去った。それを見届けるとクーフーリンは地面へと座り込んだ。

 

 ──ああ、よく分かった。この既視感も何もかもが彼奴と戦ったことでよく分かったとも。

 

 彼奴の歩法も槍捌きの殆ども知っている。何せあの動き方はスカサハが、フェルグスが、そして何よりも俺自身が教えたであろう動きだ。

 

 記憶には少しも残っていない。それでも分かる。分かっちまうのさ。何せ俺はケルトの戦士だ。戦っちまえば彼奴の動きの中に様々な流派の動きの中にケルトの流派もしっかりと混じってるのが感じ取れた。それもただの付け焼き刃じゃない。長いこと積み上げ続けてきた者特有の染み付き方だった。

 

 彼奴はきっと戦いの天才だとかそういった存在じゃなかったんだろう。なのにあの歳とはちぐはぐな100年やそこらでは足りない程の濃密なまでに永い時間の中で武を磨き続けてきた者のようなものを感じ取れた。つまりはきっとそういう事なのだろう。

 

 そんなもの戦っちまえば直ぐに分かったさ。

 

 ──ああ、そうだ。だからこそ、だからこそお前に問いたかった。

 

「なあ、望幸。お前さんの何がそこまでお前を突き動かしてんだ」

 

 それに答えるべきは相手は既にここに居らず、空を見上げれば空は何処までも蒼く澄んでいた。

 




槍ニキと絡ませたらなんか自然と戦ってました。まあでもこれがケルト流の挨拶っぽいし……。是非もないよネ!それはそうとこの二人どっちも本気で戦ってはなかったりする。槍ニキはルーン使ってないし、ホモくんは言わずもがな。

槍ニキの宝具ってあれ発動してしまえばほぼ即死みたいなガッチガチのチート宝具だし、対策するのは当たり前なんだよなあ……。そして他者視点からのホモくんの戦い方は基本害悪。

5章がめんどくさい事になりそう。主にケルト勢のせいで。

適当に語ったところで失踪します。


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オルレアン後の幕間4

書かなきゃいけない他視点が多い。
でも他視点の話が多すぎればRTAじゃない。
ならどうすべきか。
逆に考えるんだ、2本立てにしてしまっていいさと。

そんなわけで初投稿です。



 ──誰かの言葉──

 

 カルデアのとある一室で所長代理を務めている医療チームリーダーのロマニと万能の天才であるダ・ヴィンチはとある資料を見て頭を抱えていた。

 

「この数値は……」

 

「異常。そうとしか言い様がないね」

 

 彼らが見ていたのは先程の星崎望幸とクーフーリンとのシミュレーションで始めた模擬戦時の星崎望幸のバイタルデータを現していたものであった。

 

「オルレアンでの最終決戦ではほんの一部のデータしか見れなかったけど、改めて今回の模擬戦でよく分かったよ。現代の魔術師程度がかのアルスターの光の御子と引き分けに持ち込めるなんて本来ならありえない事なんだ」

 

 ダ・ヴィンチの言葉にロマニは頷く。何故ならばサーヴァントと現代魔術師の力の差は彼が痛い程に理解している。

 

 仮に神代の魔術師が全力で強化すれば多少は戦えるだろう。しかし、だ。それでもかのクーフーリンには決して引き分けに持ち込むことすら出来ない。不意をつくことはできるだろうが、ただそれだけ。

 

 クーフーリンという英雄なら即座にそれに対応することだろう。ならば、なぜ彼はクーフーリン相手に引き分けたのか──? 

 

 考えられるのひとつ。

 

「──聖杯の力、か」

 

「だろうねえ。あの子はきっとあの聖杯に願ってしまったんだろうね。オルレアンでの状況下ではそうするしか方法がないと悟ったからこそ、彼はサーヴァント相手に戦えるように肉体そのものをサーヴァントと比較しても何ら遜色のないものに改造したんだろう」

 

 力が、魔力が、速さがサーヴァントに劣るのならその差を埋めてしまえばいいと考えついた彼が行ったのは万能の願望器である聖杯による自己改造だったのだろう。事実、聖杯にはそれほどの力は十分にある。

 

 願うだけでその差を埋められるであろうに彼はあろう事か、聖杯そのものを自身の心臓に埋め込んでいる。それがどれほどの事なのか、魔術師ならばすぐに気がつくであろう。

 

「今の彼の体はかなり不安定だ。ともすれば今何も起きていないのが奇跡と感じられるくらいにはね」

 

 ダ・ヴィンチの言う通りだろう。何せ彼は心臓に通常の魔術炉心とは正しく桁が違う超抜級の魔術炉心が埋め込まれている。そんなもの心臓に原子炉を埋め込んでいるのと同義だ。

 

 加えて厄介なのは聖杯の性質だ。

 

「そのまま取り込んでしまったのかが原因か分からないけれど、多分彼の心臓に埋まってる聖杯の願望成就の機能はまだ完全には失われていない」

 

 辿り着いた結論にロマニは思わず爪を噛む。仮にこれが時計塔の魔術師達に知られればどうなるか。そんなもの言うまでもない。

 

 良くてホルマリン漬け、悪ければ全身を弄られた上に研究資料か、もしくは英霊召喚の触媒として全身をバラバラに分解されてしまうだろう。

 

 何せ今の彼は生きる聖杯そのもの。加えて非常に稀有な事に通常の置換魔術とは異なる特異な置換魔術。そして偶然なのかは分からないが彼が召喚するサーヴァントの殆どが通常の聖杯戦争ならば確実に優勝出来るほどの力を持つ者達ばかり。

 

 ともすればそんなもの達と縁を結んでいる彼という存在はどれだけ召喚触媒として適しているのか。魔術師という存在ならばまず間違いなく彼の肉体を欲するだろう。

 

 何故なら呼べば勝てるサーヴァントをほぼ必ずと言っていいほど召喚できる。であるのならば聖杯戦争での優勝を狙う魔術師ならば垂涎ものだ。

 

 魔術師というのは基本的には己の事しか考えない外道の集まりだ。己が根源に至るためなら一般人がどうなろうと構いはしないし、どれだけの被害が出ても構わない。そんな連中が彼という存在を知れば手を出さないはずがない。

 

「レオナルド。人理修復後の彼の、いや2人の情報は何処まで誤魔化すことが出来る?」

 

「……一応聞いておくけど何をする気なんだい?」

 

「そんなもの決まってる。まだ成人してもいない二人が人理を守る為に尽力してくれるなら、僕達は大人として彼らを守らなくちゃ駄目だろう?」

 

「ははは、言うようになったねロマニ。子供のような君からそんな言葉が出てくるなんて驚きだ。それにやたら信頼してるように見えるけど?」

 

「それはお互い様だろ」

 

「違いない」

 

 互いに顔を見合わせて一頻り笑うとレオナルドはいつもの微笑を消して真剣な表情で望幸と立香のデータを見つめる。

 

 経歴、バイタルデータ、魔術適性などのその他諸々を加味しながら何処は誤魔化せるか、何処は真実のままにしておくか。時計塔の魔術師すらも騙せる程のものに出来るかを人類最高峰の頭脳を以てして思案する。

 

「立香ちゃんなら問題はない。彼女の経歴やバイタルデータなら巻き込まれた一般人といくらでも誤魔化せる。けど問題は──」

 

 そう、彼だ。

 

 立香は彼という隠れ蓑があるお陰で誤魔化し方ならいくらでもある。けれど反対に彼だけは誤魔化すのが難しい。

 

 まず1つ目、経歴だが彼の魔術家系は200年と非常に浅い。となればこれは非常にまずい。ある程度の格があれば多少は真実を握り潰せるだろうが、彼の家にはその格がない。

 

 そして2つ目、バイタルデータに関しては誤魔化しにくいというのが事実だ。勿論偽ったデータを提出してもいいだろうが、仮に彼のバイタルデータをあちらが取れば一瞬でその偽りがバレてしまう。

 

 そして何よりも問題なのが──

 

「彼の心臓に宿る聖杯をどうするかだ」

 

 あれだけはどうしたって誤魔化しようがない。見る者が見れば一発でわかるほどだ。あれを隠蔽するとなるとそれこそ摘出でもしない限り無理だろう。

 

「ロマニ、一応聞くけど彼の心臓に宿った聖杯の摘出は可能かい?」

 

 その言葉にロマニは力なく首を横に振る。

 

「無理だ。あの聖杯は完全に望幸くんの心臓と一体化している。それを取り除くとなると彼の心臓諸共取り出すしかない」

 

 予想通りの返しにダ・ヴィンチは思わずため息をつく。

 

 当たり前だ。こんな事など初めから分かってはいた。彼の心臓と聖杯が混ざってしまった以上取り出すことは出来ないのだと。

 

 ──しかし、だ。ただそれだけで諦める理由にはなりはしない。万能の天才と呼ばれた自分がたかがこの程度の理由で彼を外道の食い物にさせてたまるか。

 

 必ず騙しきってみせる、必ず守りきってみせる。

 

 とはいえ、その方法はどうやったものか。ダ・ヴィンチは椅子に座り、背もたれに盛大に体重を預けると天井を見上げた。

 

 そしてまた、ロマニもダ・ヴィンチと同じように深い思考の中に潜り込み、そして無意識的にポツリと呟いた。

 

「あーあ、こういう時に何でも解決してくれるのような神様がいたらなぁ……」

 

「あー、そうだね。そんなご都合主義の塊みたいな神様がいたらいーねー。機械仕掛けの神みたいなさあ。でもそんな存在いないんだから私達は私達なりに考えるしかないんだよロマニ」

 

「良いじゃないか、こんな浪漫のある願いを語るくらい。だって僕は──」

 

「──Dr.ロマンだものって?」

 

「……僕の台詞を取らないでくれるかい?」

 

「そんな親父ギャグ考えてる暇があるならちゃんと考えたまえよ」

 

「はいはい」

 

 互いに軽口を飛ばし合うと、先程と同じように彼を守る為にはどうすればよいのかと諦めずに思考に耽ようとして──ふと誰かの言葉が脳裏に過った。

 

「「──人は諦めなければ願いは叶うと信じているのだから」」

 

 ふと二人の口から同時に零れた言葉。口にした瞬間、どうしてか懐かしくて、同時に誰かがよく言っていたような気がする。思い出そうにもその人の姿は凄くぼやけていて、名前も顔も思い出せない。

 

 けれど何故だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──とても、大事な人だった。そんな気がしてならないのだ。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 ──あなたのための魔術講座──

 

 カルデアにある星崎望幸のマイルームにて立香は頭からぷすぷすとまるでオーバーヒートをしてしまったかのように頭を抱えて目を回していた。

 

「うう、こんなに覚える事あるの……?」

 

 立香の目の前にあるのはまるでタワーのように聳え立つ魔術の本に各神話体系を纏められたノート、加えて英雄譚。それは他でもない彼の私物であった。

 

 確かに立香は言った。もっと魔術に対して正しい認識を持ちたいと。もっと魔術を上手に扱えるようになりたいと。

 

 彼にそう言って返ってきた返事がこのタワーだった。

 

「ああ、そうだ」

 

 そもそも魔術とは神の御業の再現である。神の専売特許である奇跡や神秘を人間でも扱える様に劣化させたのが魔術だ。

 

 故に魔術を正しく認識し、正しく扱う為にはソロモンが確立させた魔術回路を用いて、マナやオドを動力源として物理現象を引き起こす、神を介在しない方法論を理解すること。

 

 そして各神話における神の奇跡とはどのようなものだったのかを把握すること。

 

 この2つが重要となる。

 

「立香、同じ魔術でも起源が異なればその魔術における対処法はどうなる?」

 

「え、えーと確か……起源が変われば対処法も異なる?」

 

「正解だ」

 

 彼はそう言うとケルト神話について纏めたページを開いて立香に見せた。そこにはバロールの魔眼というものが書かれていた。

 

「あ、これ知ってる。なんか凄い目なんだよね?」

 

「……ああ」

 

 ──バロールの魔眼。

 

 それはケルト神話における最凶の魔眼として有名だろう。一度見つめられれば神であろうと問答無用で呪殺する最悪の魔眼だ。

 

「出来る出来ないは置いて例えばこれを魔術で再現した場合、対処法がかなり多い」

 

「何で?」

 

「この魔眼への対処法の説が些か多いからだ」

 

 有名どころで上げればブリューナクだ。だが、それ以外にも民話によってはゲイ・アッサル、タスラムなどと様々な方法でその魔眼は潰されている。

 

「だが神秘の特性上、効果のみを目当てに発動された場合はどう対処すればいいのかは分かりやすい。立香ならどれで対処する?」

 

「えーと……ブリューナク?」

 

「何故それを選んだ?」

 

「……パッと頭の中に浮かんだから」

 

「それでいい」

 

 立香は恥ずかしそうに顔を赤く染めるが、実際の所その選択は正解なのだ。なぜなら魔術の威力には信仰、所謂知名度補正がより密接的に関わってくるからだ。

 

 例えば世界中で10人くらいしか知らないような起源を使った魔術を使用しようとする。そうすれば確かに対処はほぼ不可能となる。

 

 が、反対にその程度の信仰では殆ど何も出来ない。発動したのかさえ知覚出来ないほどの弱い魔術となる。そうなれば起源に合わせた対処でなくとも簡単に弾くことが出来る。

 

 だが反対に世界中の誰もが知っているような起源を使った魔術ならば知名度補正により効果が大きく上がる。場合によってはその起源に合わせた対処法でしか防げない威力になるだろう。

 

 しかし、それは起源に合わせた対処法をされればその伝承をなぞる様に確実に防がれるという事でもある。

 

 つまるところ有名であればあるほど威力は上がるが同時に対策もされやすく、反対にマイナーであればあるほど威力は下がるが対策はされにくいということだ。

 

 その事を立香に伝えると彼女は納得したように頷いた。

 

「そっか、だから各神話の勉強が必要なんだね」

 

 そう言って立香は積まれたノートを巡るとそこには随分と分かりやすく様々な起源やそれに対する対処法について纏められていた。

 

 どの英雄はどういった死因で亡くなったのか、どの神はどういった理由で死んだのか。それ以外にも悪魔、天使、死徒などについての対策が事細かに書かれていた。

 

 そしてペラペラと頁を捲ると不意に立香の目に止まったものがあった。

 

「獣……遊星……アルテミット……それにこれは──?」

 

 そこだけが異常だった。他の頁は全て簡潔に分かりやすく描かれているというのに、そこだけはほんの少しの空白もなかった。

 

 どの項目も異常な程に書き込まれていた。どうすれば攻撃を防げるのか、どうすれば倒せるのか、何をしたらいけないのか。そんな馬鹿みたいな情報量が立香の目を襲う。

 

 まるで実際に体験して試したかのように詳細な対策方法が羅列されている。その事に立香は少々違和感を覚えつつも、立香は自身が最も気になっていた最後の頁を開こうと──

 

「立香、そろそろ実践を想定した魔術訓練をやろう。立香は頭で覚えるよりも体で覚えた方が身に染み付きやすいだろう?」

 

「えっ、ああ、うん。私としてもそろそろ体を動かしたいと思ってたし、そっちの方が嬉しいかな」

 

 彼に声を掛けられて立香は今まで読んでいたノートをパタンと閉じた。

 

 実を言うと立香としても座学だけではなく、身体を動かしたいと思っていた。なので彼からの申し出はとても嬉しかった。何せこの立香、はっきり言って座学はあまり得意ではない。

 

 なのでストレスを発散させる意味合いも兼ねて実践訓練というのは大変ありがたい。そうと決まれば早速と言わんばかりにストレッチを始めた。

 

 そして辺りを見渡したところで改めて気がついた。

 

「あれ……? 望幸の部屋にこんな花なんかあったかな」

 

「この部屋にはあまり物が無かったからな。誰かが飾ってくれたんだろう」

 

「へえ……その人はきっといい人なんだろうね。これなんて言う花なのかな?」

 

「スターチスと言うらしい」

 

 花瓶に活けられた色鮮やかなスターチスのおかげで彼の無機質で殺風景な部屋にほんの少しだけ人間味を感じさせる暖かさがある。

 

 立香の言う通り、この花を置いた本人は良き人物なのだろう。斯くも置いた本人が聞けば顔を真っ赤にして否定しそうではあるが。

 

 立香は自分の幼馴染をこうして想ってくれている人がいるということにまるで己が事のように喜びで胸が満ちる。

 

「んふふ」

 

 上機嫌な様子で鼻歌混じりにストレッチをしていると不意に妙に棘棘としたものが見えた。

 

「ねえ、望幸。あれってさ──」

 

 彼は立香が指を指した方を見ると、そこに置いてあったものを見てそれについて説明した。

 

「あれは軽度の傷なら治せるからな。それにいざと言う時には食用にもなるし、魔術の実験の時に少々使うこともある」

 

「あー、そういえば私アレのヨーグルト一時期沢山食べてたなあ……。ねえねえ、今度あれを少し貰ってもいい?」

 

「ああ、構わない」

 

「やった! エミヤに言ったら多分作ってくれると思うからその時は私と望幸とマシュの三人で食べようね。エミヤの作る料理すっごく美味しいからダ・ヴィンチちゃんやロマンにも後で持っていこうっと」

 

「……ああ、そうだな。俺もエミヤの料理は美味しかったと思う。だからきっとロマニもダ・ヴィンチも喜んでくれるはずだ」

 

 立香はその棘棘とした物体をつつきながら、いつかエミヤに作って貰うつもりのデザートに想いを馳せる。

 

 あの食感といい、あの甘さといい、何故だか立香の味覚にクリティカルヒットした。それ故に一時期毎食デザートとして食べていた時期があったのだ。

 

 ……まあ、当時の彼に呆れたものを見る目で見られた上に食べ過ぎたせいでもういいやとなってしまい、それからはあまり食べなくなってしまったのだが。

 

 やりすぎはいけないのだと立香はその時改めて実感した。

 

「そういえば、これなんて名前だったかな?」

 

「ああ、確かそれは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──アロエだ」

 




ロマニとダ・ヴィンチちゃんの雑談にホモくんと立香ちゃんのお勉強会だから平和だな!()
それから他視点であと一話分書いたらRTAパートに戻ります。

最近は読みやすい文が書けるようになりたいなと思って匿名で短編投げてたりするので遅くなったりしてます。

それじゃあ失踪します。


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オルレアン後の幕間5

今回で一先ず他視点が終了するので初投稿です。



 ──愛の神、堕落の神──

 

「ねえ、マスターさん。私と一緒に休憩しましょう?」

 

 カーマは何かの作業をしていた望幸に対して背中から覆い被さる様に首に手を回し、耳元で甘く囁く。ともすればその囁きはかの聖人を堕落させんとした時のようにカーマなりに割と本気で彼を蕩かせようとしていた。

 

(まあ、断られるでしょうね。彼の意志は彼奴に匹敵するくらいに揺らぐことがないですし)

 

 そもそもの話、カーマが彼に対してこう言ったのは休息を取らせる目的なのだ。何故なら彼はオルレアンでの特異点修復が終わった後からまともな休息を取っていない。

 

 まるで何かに急かされているかの如く常に彼は何かしらの事をしている。その様を見ていたカーマは睡眠はしっかりと取れているのかと、ふと心配に思って皆が寝静まった頃に彼の部屋に侵入した事があった。

 

 そしてそこで見たのはまるで死体の如くピクリとも動かないでベッドの上で横たわる彼の姿だった。胸が上下しているところから呼吸はしているのは分かったが、それでも身動ぎ一つすらせずに普段の彼からは想像もつかないようなか細い呼吸音だけが聞こえてきた。

 

 カーマからしてみればそんな状態になる迄動いている彼の体が心配だった。その上彼はオルレアンでの出来事もある。ともすれば尚更心配になるというものだ。

 

 そんなこと口が裂けても彼に言うつもりはないが。

 

 さて、どうしたものか──

 

「ああ、構わない」

 

「ですよねー。あなたは──って、ええ!? いいんですか!?」

 

 ──どうしよう、考えてた流れと違う。

 

 本来であれば断った彼に対してオルレアンで言うことを一つきいてくれるって言いましたよね? とかなんとか言って無理矢理にでも休息を取らせるつもりだったのだ。

 

 もしかしてこれが噂に聞くデレ期という──

 

「今しがた作業も終わったからな」

 

「……」

 

 知ってた。ええ、知っていましたとも。でも少しくらい期待させてくれてもいいじゃないですか!? 

 

 都合良く作業が終わって荷物を片付けている彼にそんなことを言えるはずもなく、カーマは随分と悶々とした気持ちを抱いていた。

 

 そんなカーマの気持ちを知らない彼は荷物を纏めるとカーマの方を向いてその蒼い瞳でジッとカーマの瞳を見つめた。

 

「それで、休憩を取ると言ったが何をするんだ?」

 

「マスターさん、休憩の意味分かってますか?」

 

 休憩を取ると言ったのに何かをしようとする彼の言葉に思わずカーマは頭が痛くなる。彼はあれか、動かなければ死ぬマグロか何かなのだろうか。

 

 これは早いところ此方がやることを決めなければ彼は何かしら働こうとするだろう。それ自体はいい事なのだろうが、いくらなんでも限度というものがある。

 

 ──ゆっくりと体を休められて、尚且つ何かすること。

 

 何がそれに当てはまるのか考えていると不意に自身が持っていた櫛が目に入った。

 

(そういえば前にマスターさんに髪の毛をといて貰ったことがありましたね)

 

「なら、私の髪をといて貰えますか?」

 

「ああ」

 

 カーマは自分の櫛を彼に手渡すとその長い髪を更にちょっぴりと長くしてくるりと後ろを向いた。

 

 ──別に髪を伸ばした他意はありません。いや本当にありませんから。

 

 まるで誰かに言い訳をするかのように心の中でブツブツと呟いている彼の手が自身の髪に触れてきたのが感じ取れた。それに少しだけ胸を高鳴らせながらも決して表情には出さないように努めて冷静な表情を保つ。

 

「失礼する」

 

「ええ、丁寧に扱ってくださいね?」

 

「ああ」

 

 彼は受け取った櫛を使ってサラサラとしたカーマの髪を優しくといていく。髪にダメージがなるべくいかないように先に毛先からとく彼の優しさに気がついたカーマは胸中に何とも言えぬ感情が湧き出てくる。

 

 とても擽ったいような、そして決して不快ではない温かな気持ちにカーマの頬が少しだけ緩む。

 

「カーマ」

 

「なんですかぁ?」

 

「オルレアンでは色々と助かった。ありがとう」

 

「……直ぐにやられちゃった私に対する嫌味ですか?」

 

「いや、君達が必死に戦ってくれたからこそ俺達は間に合ったんだ。だからとても感謝している」

 

「ふ、ふーん。褒めたって何にも出ませんよーだ!」

 

 純粋な瞳で此方を見つめてくる彼からまるで逃げるようにカーマは顔を逸らす。

 

 こうやっていつも馬鹿正直に感謝を伝えてくるものだから彼と話すと色々と心臓に悪い。それになんと言ってもあの蒼の瞳だ。

 

 自分の瞳とは対を成すあの蒼の瞳で見つめられるとどうにもこう自分という存在をまるで見透かされているかのような気になってしまう。けれどそれが決して不快という訳ではない。どこか優しさを含むその視線が堪らなくむず痒いのだ。

 

 そういえば、あの色の瞳は何かしらの意味を持っていたはずだった。

 

 それはこちらの神話、所謂仏教にも通ずるものがあったはずで、更にひとつ似たような特殊な能力があったような──

 

「カーマ」

 

「……はい? なんですか?」

 

 もう少しでそれについて思い出しそうなところで彼から名を呼ばれた。

 

 彼はカーマの髪を優しくときながらもまるで宇宙のような美しさを示すその髪の色にどこか懐かしそうな目で見つめる。

 

『君の髪は綺麗だな』

 

「───っ」

 

 その言葉にカーマの心は大いに掻き乱された。涙腺が緩み、思わず目尻から涙が溢れ出そうになる。けれど決して涙を零さぬように歯を食いしばって必死に耐えていた。

 

 ──もう随分と前のことになる。

 

 今の容姿とは全く違う彼ではあったが、その綺麗な蒼い瞳だけは絶対に変わらなかった貴方が、まだ人間らしく様々な感情を見せていた貴方が、私に向けてよく言ってくれた褒め言葉だった。

 

『まるで宙のようで凄く綺麗だ』

 

『へえ? マスターさんはこんな私が綺麗だと、好きだと言えるんですか?』

 

『うん、好きだ』

 

『───っ。よくそんな恥ずかしい台詞を堂々と言えますね』

 

『好意とは真っ直ぐに伝えるものだと教えてもらったからな』

 

『誰がそんなことを……』

 

『それはもちろん──』

 

 ──ああ、駄目だ駄目だ。これ以上は本当に耐えきれなくなる。

 

 最早幾度廻ったのかも分からないほどに魂を、感情を、記憶を摩耗してしまった彼の成れの果て。そんな今の彼と記憶の中にある彼を比べてしまう度に己の力不足を深く呪う。

 

 何度手を伸ばしても届かない背中にサーヴァントとなったこの身を呪っただろうか。

 

 何度血溜まりに沈む彼の姿を見て己の力不足を嘆いただろうか。

 

 何度会う度に磨り減っていく彼の魂を見て泣きたくなっただろうか。

 

 ──そうだ、だからこそ私は、(カーマ/マーラ)は嘆くだけで終わらせないために神々の目を盗んでまで彼の下に顕現したのだ。

 

 使えるのは一度きり、それも使ってしまえば自分がどのような結末を迎えるかなどとうに知っている。

 

 けれど──

 

「ねえ、マスターさん。少し後ろを向いてくれます?」

 

「ああ」

 

 後ろを向いた彼の首に手を回して優しく包み込むように抱き締める。今の顔は決して彼に見せられたものではないから。

 

「カーマ?」

 

「今は黙って私に抱き締められといてください」

 

 ──構わない。

 

 あの日から決めたのだ。絶対に私が彼の旅路に終止符を打ってみせる。そして彼が迎える結末を捻じ曲げてみせると。

 

 ──だって、そうでしょう? 

 

「もう完全に、貴方は私の中なんです。絶対に逃げられないし、逃がしません……。それだけは忘れないでくださいね? マスターさん」

 

 かつてあなたが私に愛することの喜びを思い出させたのですから、絶対にその責任は取ってもらいます。思い出させるだけ思い出させてさよならなんて絶対に許しません。

 

「蕩ける位の愛で貴方を私に溺れさせてあげます」

 

 だから貴方もいつかのあの日のように私を愛してくださいね? 

 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 ──竜の魔女の捜し物──

 

 ジャンヌ・オルタは今、カルデアの中をフラフラと彷徨い歩いていた。それは別に迷ったという訳では無い。

 

 確かにカルデアはやたら広い。初見の者ならばほぼほぼ確実に迷子になること間違いなしであろうが、ジャンヌ・オルタにとっては勝手知ったるなんとやらというやつである。

 

 何せカルデアには散々来ている上に、復讐者としてのクラススキルもあるため一度覚えてしまえば忘れようがないのだ。

 

 そんな彼女が何を探しているかと言えば──

 

「黄金の林檎のなる木、ねえ……?」

 

 オルレアンにてアタランテが彼女と、そしてケイローンにこっそりと伝えていたものだ。そして同時にそれを見つけ次第燃やすか伐採しろとも言っていた。

 

 黄金の林檎と言えばアタランテ自身とも縁が深い。そんな彼女がそれほどのことを言うのであればきっと何かしらの出来事があったのだろう。

 

 故にジャンヌ・オルタはカルデア中を隈無く探し回っているのだが、結果としていえばそんなものなど一切見つからなかった。

 

 そもそもそんなものがカルデアに生えているというのであればすぐにでも気がつくだろう。だが、それでも見つからないということは誰も気が付かないような場所にあるということを示しているはずだ。

 

 そう思ってカルデア中を歩き回っているのだが、林檎の木どころか木の一本も見つかりはしない。

 

「黄金の林檎と言えばギリシャ神話に北欧神話のがあったわよね」

 

 黄金の林檎、即ちそれは北欧神話における神の食物、もしくは不老不死を象徴する果実だ。そしてそれは同時にギリシャ神話におけるアムブロシアーと同一視されることもある。

 

 アムブロシアーと言えばかの大英雄アキレウスが不死になる際に軟膏として塗ったことが有名だろう。神の食物であるが故に高い不死性を持つ其れを塗ることで不死の肉体を手に入れることが出来る。

 

「それをアタランテが忠告するってことは実際にこのカルデアのどこかにそれが実在するってことよね。効果が同一であれ、そうでないにせよ……ね」

 

 さてどうしたものか、と呟くジャンヌ・オルタの目の前に彼女と同じくカルデアを探索していたケイローンが目の前に現れた。

 

「おや、貴女の方は見つかりましたか?」

 

「いいえ。それよりアンタはどうなのよ」

 

「残念ながら」

 

 そう言いながら申し訳なさそうに眉を下げるケイローンを他所にジャンヌ・オルタは頭をガシガシと掻き毟った。

 

「仮にも神授の叡智をもつ賢者様が見つけられないってわけ?」

 

「申し訳ありません。文字通りカルデアの部屋全てを調べてみましたが、それらしき痕跡はひとつも見つかりませんでした」

 

「いーわよ別に。アンタが分からないんだったら私にも分かりゃしないわ」

 

 壁に背を預けて考え事に耽けるジャンヌ・オルタにケイローンは少々躊躇いながらも話しかけた。

 

「あの、すみませんが貴女は覚えてらっしゃるんですよね?」

 

「……あぁ?」

 

 考え事を中断させられたせいか、もしくはその質問にか、はたまた別の要因があったのか。それを計り知ることは出来ないが、ジャンヌ・オルタはケイローンにそう聞かれると随分と分かりやすく不機嫌そうな顔になった。

 

 彼女の感情を示すように周囲一帯の気温が上がり始める。ジリジリと焼き焦げそうな程の熱量に晒されても尚ケイローンは怯まずに己が最も知りたい情報を持っている彼女に対して問いただした。

 

「アタランテもそうでしたが、貴女は彼について何処まで覚えていらっしゃるんですか?」

 

「……チッ」

 

 ジャンヌ・オルタは不機嫌そうに舌打ちをすると周囲を見渡した。そしてケイローンと自分しかいないことを確認すると視線だけを彼に向けた。

 

「悪いけど教えるつもりはないわ」

 

「……何故ですか?」

 

「何故? 何故ですって?」

 

 ジャンヌ・オルタはケイローンの質問を鼻で笑った。

 

「世の中には知らなければ幸せな事だってあるのよ。それはアンタだって重々承知の上でしょう?」

 

「そうですね、貴女の言っていることは確かに正しくもあります。けれど、それでも私は知りたいのです。彼を見る度に私の霊基がまるで失った大切な何かを取り戻せと叫んでいる。そんな気がして他なりません。だから私は知りたいのです」

 

「……ハッ」

 

 ケイローンが訴えかける切実な願い。だが、それでも彼女はその願いを叶えようとはしなかった。

 

 願いを一蹴し、知らないのであればそのままでいればいいと彼について詳しく知っているが故に彼女はケイローンに語らない。

 

 ──否、語れない。

 

「お断りします」

 

「……ッ! 何故ですか!」

 

「彼奴の事をそう思ってるからよ。そんな奴に教えられる訳が無いでしょう。特にアンタらのような奴にはね」

 

 そう言うとジャンヌ・オルタはもう話すことは無いと言わんばかりに背を預けていた壁から離れてケイローンの目の前から霊体化してこの場から消え去る。

 

 残されたケイローンは手が白くなるほど強く拳を握り締め、暴れ出す感情を必死に抑えていた。

 

 失った大切な何かを知ることが出来る機会だったというのに、それを逃してしまった。その事実にケイローンは強く打ち震える。

 

 何故、何故こうも笑わない彼の顔を思い出す度にこうも心が掻き乱される。

 

 記録上は初めて会ったはずの彼が笑っていないだけで何故こうも悲しくなる。

 

 分からない、分からない、分からない! 

 

 神授の叡智を持ち、賢者として呼ばれた自分が何一つとして分からないなどとんだお笑い草ではないか。ならばその原因たる彼に直接聞けばいいでは無いかとも思う。

 

 だがそれは神授の叡智が、そして何よりも己の霊基がそれだけはやめろと何かを恐れるように叫んでいるのだ。

 

 ──知りたかった、思い出したかった、覚えていたかった。

 

 様々な想いがまともな思考が出来ないほどに頭の中をぐちゃぐちゃに掻き乱していく。あまりにも強く拳を握り締めてしまったことで皮膚が破れ、血が流れ出してもそれにすら気がつく事が出来ない程の感情の激流に揺さぶられる。

 

 そんなケイローンの後ろ姿をジャンヌ・オルタは何処か申し訳なさそうな目で一瞥する。

 

「悪いわね、ケイローン。今はまだ駄目なのよ」

 

 ジャンヌ・オルタはそう言うとまたカルデアを歩き回り始めた。黄金の林檎のなる木を探しに行く──訳でもなく、その件の人物である彼を探しに行くために。

 

 なぜ彼を探しに行くのかと言うと、黄金の林檎のなる木とはまた別に一つ気になることが新たにできたのだ。

 

 彼とはカルデア全域を探しても一度も遭遇しなかった。行き違っただけかとも最初は思ったが、そうではないとジャンヌ・オルタはほとんど勘ではあるがそう考えていた。

 

 恐らくだが、このカルデアで誰も知らない場所にいる。もしくは彼は今このカルデアに存在していないかのどちらかだ。

 

 そう考えたのは彼女が幾度となく繰り返してきた中で何度かそういう事があったということであり、そしてもう一つ。

 

 ──彼女は彼に関するとある記憶を保持している数少ない存在でもあるからだ。

 

 ジャンヌ・オルタはカルデアに取り付けられている巨大な窓枠に肘を乗せると偶然にも夜空に煌めく星々が見えることに気がついた。

 

「……相変わらず綺麗ね」

 

 宇宙に煌めく綺羅星を眺めてジャンヌ・オルタは此処にはいない彼の事を想う。

 

「ねえ、望幸。アンタは今何処にいるのよ」

 

 そう呟く彼女の傍にはデュランタの紫の花が生けられていた花瓶が星々の光に照らされて美しく輝いていた。

 

 

 

 




またもや伏線回です。

大体サーヴァントに何かしらの地雷を埋め込んでますねこのホモ……。
邪ンヌは邪ンヌで1番やべーいこと知ってるし、あるサーヴァントも知ってる。
あとカーマちゃんのこと調べてたら愛情ブラックホールとか言われてて草生やしました。

黄金の林檎、所謂AP林檎ですね。検索した限りでは特に設定もないようですし、好き勝手設定足したろの精神で設定もりもりにしました。

次回は軽くホモや立香ちゃん達の軽い経歴やら所持スキルやステータスなんかを書く予定です。

セプテムの大まかな流れの構想は練れたので頑張って書きますよー。あと所長については忘れてないから安心していいっすよ。

それでは失踪します


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各人物 ノ 詳細情報 ヲ 取得中……

ハツトウコウデス。



 >────── ヘノ アクセス 開始……………………。

 

 >……。

 

 >…………。

 

 >………………。

 

 

 

 >セキュリティ ガ 解除 サレマシタ。

 

 >Void Vortex(虚空の渦) ノ 起動 ヲ 確認……。

 

 >プロトコル "All for one(全にして一)" ノ 発動 ヲ 確認……。

 

 >特殊開示用 データベース ニ アクセス……完了。

 

 >全情報 ノ 開示 ヲ 申請……否認。

 

 >一部情報 ノ 開示 ヲ 申請……承認。

 

 >取得 シタ 情報 ヲ 表示 シマス。

 

 

 

 

 

 

 

 

【真名】藤丸立香(ふじまるりつか)

 

【性別】女性

 

【身長・体重】158cm・45kg

 

【属性】善性・中立

 

【ステータス】筋力E- 耐久E 敏捷D 魔力E+ 幸運A+

 

【保有スキル】

 

 毒耐性(EX):あらゆる毒性を防御する対毒スキル。但し、呪いや精神干渉などに対する耐性はない。

 

 レイシフト適性(EX):レイシフト適性驚異の100%。その適性率の高さ故か「寝て夢を見る」ことによって「夢」を介し、イベントの度にコフィン無し・存在証明無し・カルデア無干渉でレイシフトのように別世界に顕れて干渉することが出来る。

 

 パンクラチオン(D):ケイローン直伝のパンクラチオン。ケイローン曰く筋はいいとの事でまだまだ発展途上。パンクラチオン使用時攻撃力がやや上昇

 

 マーシャルアーツ(D):星崎望幸が東洋武術の基礎中の基礎を教えたことで発現。基礎中の基礎しか教えられていないため本来ならランクはE相当だが、ケイローンやクーフーリンの教えによりランクに補正がかかっている。低確率で物理攻撃の威力を倍化する。

 

 魔術知識(D):星崎望幸とクーフーリンが合同で魔術について解説したことで魔術に対する正しい知識をそこそこ覚え始めてきている。自身が発動する魔術にやや補正がかかる。

 

 星の輝き(EX):星に認められた者にのみ発動するスキル。その星に存在する限り運命という形で強烈なバックアップを受ける。

 

 魂の縁(EX):【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【使用可能魔術】

 ガンド:敵を一時的に行動不能にさせる。

 全体強化:味方全体の攻撃力を上げる。

 単体強化:味方単体の攻撃力を上げる。

 応急処置:味方単体のHPを回復。

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【解説】

 カルデアに所属している人類最後のマスター。

 一言で評価するのならばただの凡人。

 魔術礼装が無くては基礎中の基礎である強化の魔術すら使えない。だが、それは一般家庭生まれであることを考慮すれば妥当な所だと言える。

 

 評価すべきはその精神性。

 一般人らしく人並みに恐怖も感じる。時に立ち止まり、後ろを振り返りもする。だが、それでも彼女はまた歩み始める強さを持つ。

 また、彼女の在り方として善も悪も全てそのまま受け入れる。故に英霊、反英霊に問わず彼女の在り方を好ましく思うものは多いだろう。

 

 星崎望幸とは幼馴染関係にある。

 赤子の頃より共に居たおかげか、彼の事は大変好ましく思っている。

 また、彼に関しては全幅の信頼を置いており、彼の言うことは割かし素直に聞いてくれるだろう。だが、裏を返せばそれは危ういものである事にほかならない。

 

 ──彼女という存在はいつの日か、人類史における希望そのものとなるだろう。

 

 

 

【CLASS】復讐者

 

【マスター】星崎望幸

 

【真名】ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕

 

【性別】女性

 

【身長・体重】159cm・44kg

 

【属性】混沌・悪・人

 

【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A+ 幸運E+ 宝具EX

 

【クラス別スキル】

 

 復讐者(C):攻撃を受けた際の魔力上昇率が高くなる。恨み・怨念が貯まりやすい。オルレアン修正後と人を殺していなかったため、やや恨みが薄い。

 

 忘却補正(A+):時がどれほど流れようとも、彼女の憎悪は決して晴れない。たとえ、世界が幾度となく廻ろうとも。

 

 自己回復(魔力)(A+):復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。聖杯の願望で生み出されたためか、特級の回復量。

 

【固有スキル】

 

 自己改造(EX):聖杯による特級改造。聖女を完全反転させ、混沌・悪にまで堕としめている。

 

 竜の魔女(EX):邪竜百年戦争で猛威を振るったスキル。低級の竜種を支配下に起き、旗の一振りで操る事が出来る。同時に規格外の騎乗スキルを兼ねているため、竜種に騎乗することすらも可能。

 

 うたかたの夢(C):個人の願望、幻想から生み出された生命体。本来であれば願望から生まれたが故に強い力を保有するが、同時に一つの生命体としては永遠に認められないというスキルだが、後述するスキルにより大幅にランクが下がった。だがそれ故に彼女は一つの生命体として確かに世界から認められた。

 

 千古不変を謳う強欲竜(EX):邪竜ファヴニールを取り込み完全に融合したことにより、彼女という存在は個として確立された。彼女自身の精神性と完全なる竜種の特性が合致する事により、彼女は決して変わらぬ存在へと昇華された。然れど、彼女は全てが終わった時にはたった一人の愛しい人の横で眠りにつきたいとそんなささやかな願いを抱いている。

 

 魂の縁(B+):【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【宝具】

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロントメント・デュ・ヘイン)

 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大補足:100人

 復讐者の名の下に、自身と周囲の怨念を魔力変換して焚きつけ、相手の不正や汚濁、独善を骨の髄まで燃やし尽くす。

 

邪竜変生(ニーベルング)悪竜顕象(ファヴニール)

 ランク:EX 種別:対人宝具(自分) レンジ:0 最大補足:1

 自身の体をファヴニールという素体を使って肉体を大幅に改造、そして自己変生を発動する。各ステータスを大幅に上昇させ、自身の煉獄の業火にファヴニールの持つ致死性の猛毒を付与させる。

 また竜としての身体的特徴も肉体に現れるため鋭い爪や牙、鞭のように撓る強靭な尾、空を翔る翼などその姿は正しく「竜の魔女」そのものであろう。

 

【現在の権限では表示不可】

 

【解説】

 

 とある人物から聖杯に願われて誕生した本来であればオルタとも言えない泡沫の夢。

 性格は冷酷かつ威烈。それに加えて高慢で過激、根暗で卑屈な毒舌家でもある。

 そんな彼女の攻撃的な性格とは裏腹に深層心理には「誰かを信じ、また信じられたい」純粋さと「裏切りを怖れ、心を閉ざす」臆病さという背反した二つが入り混じっている。

 それは彼女の元となった人物であるジャンヌ・ダルクの完璧な聖女せしめる異常とも呼ぶべき鋼の精神力を得る前の、ただの「村娘」であった頃のジャンヌ・ダルクにある意味最も近いと言える存在になったことを示している。

 ただの人形であったものが人となる。それはきっと素晴らしく尊いものなのだろう。

 そんな彼女を信じ、その怒りと哀しみを受け止める者がその名を呼ぶ限り、彼女は復讐を成す「竜の魔女」として現界する。

 

 カルデアに関しては少々思うところがあるようだが、それでも彼女なりに気に入っているようだ。普段は自分の部屋に籠っていることが多いが、時折マスターの部屋へと赴く時がある。

 

 マスターに対しては複雑な感情を向けている。それは怒りでもあり、悲しみでもあり、嬉しさなど様々なものではあるが、それでも彼女は憎悪だけは向けることはないだろう。

 

 ──彼女にとっての終わりは近い。それが、どのような結末であれ。

 

 

 

【CLASS】セイバー

 

【マスター】星崎望幸

 

【真名】アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕

 

【性別】女性

 

【身長・体重】154cm・42kg

 

【属性】秩序・悪・人

 

【ステータス】筋力A+ 耐久A 敏捷D+ 魔力A++ 幸運D+ 宝具A++

 

【クラス別スキル】

 

 対魔力(B):闇に染まった事でランクダウンしたが、それでも三節以下の詠唱による魔術を無効化し、大魔術・儀礼呪法など大掛かりな魔術を持ってしても傷付けるのは困難。

 

 騎乗(-):暴走状態のため精妙に操る事は不可能となり実質失われている。

 

 

【固有スキル】

 

 直感(B) :暴走状態で理性を保つために外界への注意がおろそかになり、ランクダウン。

 

 宵闇の星(A):【現在の権限では表示不可】

 

 魔力放出(A):無尽蔵に供給される魔力によって本来のランクを保っている。また、防御力も強化されている。武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。魔力によるジェット噴射。アルトリア自身の筋力は人並みだが、すべての行動をありあまる魔力で強化する事で数多くの敵を打ち倒してきた。

 

 カリスマ(E):闇に染まった事でランクダウン。恐怖で従えるため、統率力は上がるが兵の士気は極めて低くなる。

 

 適合者(A++):彼女は【編集済み】に適合した。故に彼女はある種の例外的な存在へと昇華され、そしてそれは彼女が人類にとっての最終兵器であることの証明となっている。

 

 魂の縁(A+):【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【宝具】

 

風王結界(インビジブル・エア)

 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1個

 セイバーの剣を覆う、風の鞘。

 幾重にも重なった空気の層により、不可視の剣へと変えている。だが、オルタと化した彼女は自らの聖剣を隠す気は全くないらしく、隠蔽目的で使う事は余程のことがない限りないだろう。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人

 生前のアーサー王が、一時的に妖精『湖の乙女』から授かった聖剣。

 セイバーオルタが使う場合も真名などに影響はなく、同じ銘の『約束された勝利の剣』。

 ただし、使い手の魔力を光に変換、集束・加速させるという作用の影響で、剣身や放たれる極光も黒く染まっている黒い極光の剣。自らの魔力を制御せず、思うままに聖剣を振るうため、魔力の粒子は光ではなく、光を呑む闇となってしまった。その有様は、ブリテン島を守るために顕現した魔竜ヴォーティガーンの息に近い。

 

 また、彼女の特性上魔力供給さえ出来ればこの宝具を連発して放つことが出来る。その時の威烈な攻撃性は正しく竜の怒りそのものであろう。

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【編集済み】:【現在の権限では表示不可】

 

【解説】

 聖杯の呪いに侵され、非情さに徹しきった騎士王の側面。

 暴君らしい傲岸不遜な言動を貫くが、根っこがアルトリアなので悪党ではない。

 また属性も「善」から「悪」に反転したものの「秩序」属性は維持しているので、規律やイメージは生真面目に守ろうとするので、むしろ平時のアルトリアよりも王者然としている。

 機嫌が良ければ鷹揚に接してもくれるが、“怒りの体現者”としての側面があるため、そうした王者としての寛容さは滅多に見せない。

 

 基本的に敵以外の対人関係でも傲岸不遜の毒舌家である事には変わりはない。しかも直感スキルのためか妙に真を突いた発言が多いため、相手は大体言い返せない。

 

 その対象は自他を選ばず、オルタ化した自身に対して自虐的な言を吐くこともある。同じオルタ化したジャンヌ・オルタとは共感するところもあり、そしてまた少しだけ彼女を羨んでいることがあるらしい。

 

 マスターである彼との関係は少々ややこしい。というのも彼女にとって彼は【現在の権限では表示不可】でもあり、【現在の権限では表示不可】してしまったという深い罪悪感を抱いている。

 

 そしてその出来事故に彼女は彼の首に対する怪我に大きく反応してしまう。

 

 彼女はもう二度と彼を一人で戦わせるつもりは無く、彼が長く生きられるように足掻くのだ。何故ならばそれこそが彼女にとっての誓いでもあり、願いでもあるのだから。だが、その願いは必ずしも叶うとは限らない。

 

 ──望むものであれ、そうでないにせよ、終末は必ずやってくるのだから。

 

 

 

【真名】星崎望幸

 

【性別】男性

 

【身長・体重】183cm・78kg

 

【属性】謔ェ諤ァ繝サ荳ュ遶

 

【ステータタタタタたたたたtatata縺溘◆縺溘◆】

 

 

 

 

 

Error! Error! Error! Error! Error! Error! Error! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 WARNING!  WARNING! 

 

 

 

 

 

 >不明 ナ ユニット ガ 接続 サレマシタ。

 

 >システム ニ 深刻 ナ 障害 ガ 発生 シテイマス。

 

 >直チ ニ 使用 ヲ 停止 シテクダサイ。

 

 >強制停止申請……否認。

 

 >不明 ナ ユニット カラ 攻撃 ヲ 受ケテイマス。

 

 >■■■■ ノ データ ノ ウチ 八割 ガ 消去 サレマシタ。

 

 >強制 シャットダウン ヲ 開始 シマス。

 

 >Void vortex(虚空の渦) ヘノ 接続 ヲ 切断。

 

 >特殊 プロトコル Disorder(無秩序) ヲ 起動。

 

 >強制 シャットダウン マデ 残リ 五秒。

 

 >…………………………四。

 

 >……………………三。

 

 >………………二。

 

 >…………一。

 

 >……零。

 

 >全 プログラム ヲ 終了 イタシマシタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今はまだ余計な事に首を突っ込むべきではないし、突っ込んだ首の行く末を知るべきでもない。

 

 

 

 終末装置が傍にいるのだから。

 

 




過去一番と言うくらい頭を悩ませて書いてました。全キャラ書こうと思ったけどそんなの書いてたら文字数がえぐい事になるので小分けにすることにしました。
えっ、ホモくんのステータス?
まあ、皆ホモくんのステータス当てにならないからいらないって言ってたしね(ニッコリ)

しかしまあ、ハーメルンはいろいろと進化してますね。これからは頑張って色々と使ってみようと思います。
それから普通に読んだ人は後で読み上げ機能を使ってみてみると面白いことに気がつくかもしれないっすよ。

書き溜めするので失踪します。


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セプテム編
セプテムに向けて


書き溜めするとか言って全くしてないのに投稿したので実質初投稿です。



 セプテム開始前から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 今回もセプテムに行く前の下準備をします。とは言ってもオルレアンが終わった直後から色々と準備はしていたんでやることはあと少しなんですけどね。

 

 とりあえず現時点で出来ているのをざっくり纏めてみました。

 

 ・銃の強化改造。

 ・特殊弾薬の生成。

 ・加工用聖晶石の確保。

 ・置換呪術で使う素体。

 ・近接武器の強化改造。

 

 今はこのくらいですね。

 

 は? 万能回復アイテムこと金林檎はどうしたんだよと言われるかもしれません。

 

 そう突っ込まれるのは当たり前のことです。私も同じ立場だったらそう突っ込みますね。何せ探していましたし。

 

 えーまあ、結論から言うと見つけることが出来ませんでした。カルデア中を駆けずり回ってみたんですが、どうやらカルデアの中にはないようです。もしくは、金林檎が生える木がある部屋がまだ出現していないかのどちらかですね。

 

 セプテムが終わり次第、また探してみますが今度はカルデアの外も軽く散策してみようかと思います。

 

 外に生えるわけねーだろ! いい加減にしろ! 

 

 と、突っ込まれること間違いなしでしょうかが、実を言うとあれ外に生えていることもあるんですよ。いやあ、外にあった時はさすがに我が目を疑いましたね。

 

 人理修復中でもカルデアの周囲なら歩くことが出来ますが、1歩でも踏み間違えれば即死します(12敗)

 

 そんなクッソ危険地帯に生えるというものですから生命の神秘には驚かされますね(白目)

 

 さて、なら何故今取りに行かないのか? と聞かれるかもしれませんがぶっちゃけた話2章、所謂セプテムでは使わないんですよね。

 

 いやまあ、あるに越したことはないんですけど、どちらかと言うと4章以降までに取れれば構いませんし、なにより2章はかなり特殊な流れになることがあります。

 

 それについては後々説明致しますが、とりあえず今は仮に特殊な流れになった場合の対策を取るために準備をしなければなりません。

 

 そういう訳で準備しにイクゾ-! (デッデッデデデデ!)

 

 というわけで聖晶石を持ってホモくんをマイルームにシュウゥゥゥッッ──! 超! エキサイティン! (ツクダオリジナル)

 

 はい、というわけでまずやるのは聖晶石を便利アイテムに加工することです。皆様の知っての通り聖晶石はそれひとつで全滅した英霊達を全員復活の上、魔力もMAXにしてくれる合法チートアイテムです。その上ホモくんの体力やスタミナも回復してくれます。

 

 ちなみに立香ちゃんには効果は無いので気をつけようね! (1敗)

 

 まあそんな合法チートアイテムを更に便利に使えるようにしようぜ! ということですね。具体的にはスーパー強化アイテムにしたり、一時的に無敵時間が付与される蘇生薬とかを作ります。

 

 まあ、加工したらホモくんにしか効果がないんですけどね! 

 

 実際、加工した聖晶石がサーヴァントにも使えたらそれこそガチのチートになりますからね。とは言っても基本はサーヴァントに戦ってもらうのでそれが活躍することはほぼありません。

 

 じゃあ何故そんなものを用意する必要があるのか? 

 

 それはですね、先程少し触れましたがセプテムは少々特殊な話になる可能性のある特異点になる可能性があるからです。と言うのもの登場するサーヴァントの中にアルテラがいるからです。

 

 はい、あのアルテラです。

 

 サーヴァントとして登場してくる分には大分マシですが、問題はアルテラが巨神の方で来た場合ですね。

 

 皆さんご存知の通り、セプテムはあのレフがアルテラを呼ぶイベントがあるのでかなりの確率でボスとしてアルテラが立ちはだかります。そしてフラグによっては何を血迷ったか、レフは白き巨神の残骸を用いてアルテラを召喚する時があります。

 

 そうなった場合、まず間違いなくアルテラが呼ばれる上に高確率で巨神が出てきます。クソゲーかな? 

 

 正直な話、巨神が来てしまったら現地サーヴァント、もしくはカルデア側のサーヴァントにアルトリアか、それかそれに準ずるサーヴァントがいない限り再走案件になります。

 

 いなくても倒せる事には倒せますが、滅茶苦茶時間がかかる上に条件次第では詰みゲーになるので諦めて再走した方が心の安寧を保てます。

 

 ちなみにセプテムは別名ヴェルバー見本市とも呼ばれていますね。ひっどい渾名ですが、実際にヴェルバーシリーズの全員が登場することのできる特異点なので、周回を重ねれば全ヴェルバーシリーズを見ることが出来ます。

 

 レフが巨神の残骸を用いたせいなのか、もしくは別のフラグのせいなのか分かりませんが他のヴェルバーシリーズが反応してしまうことが極稀にありますからね。いい加減にしろよこの虫野郎! (決闘者並感)

 

 まあ、現れたらクソゲー待ったナシの戦いにしかなりませんけどね! 

 

 余談ですが、個人的にはヴェルバーシリーズの中で1番戦いやすいのがヴェルバー02ことアルテラですね。耐性とか考えるとクソゲーであることには間違いないんですけど、他のヴェルバーシリーズに比べれば大分マシです。

 

 概念、魂に関与してくるとか序盤の時点では防ぎようのない攻撃してくるのやめろや! (43敗)

 

 その点、アルテラはまだ良心的なんですよね。アルテラの攻撃は物理的なものですから。序盤でもまだ防ぐ方法は少しではありますけれどあることに間違いはありませんし。

 

 まあそれでもクソ耐性に周囲の生物の巨大化+凶暴化はやめて欲しいですけど。

 

 そういう訳でして、ヴェルバーシリーズが出てくる可能性もあるため出てきても構わないようにホモ君には1度死んでも大丈夫なように準備をしてもらいます。

 

 そのための聖晶石、聖晶石。あと……そのための死亡偽装? 

 

 まあ、ヴェルバーシリーズなんて全体を通してみればそんなに出るわけでもないので、準備しても徒労に終わる可能性もありますが、やっておいて損は無いのでちゃんと準備しておきましょう。

 

 ……出ないよね? (震え声)

 

 基本的には死なない方が味方のストレス値も上がらなくて済みますけど、時と場合によっては一回死んだ方がタイム短縮を狙える可能性もあるのでその場合はホモくんには容赦なく死んでもらいましょう(無慈悲)

 

 さてそれでは早速聖晶石の加工へと移りましょう。

 

 >あなたはマイルームに入ると鍵を閉めた。

 

 こ↑こ↓大事です。

 

 今からやるのは立香ちゃんが見れば卒倒しかねない事なので、勝手に入って来れないようにしっかり鍵を閉めて起きましょう(1敗)

 

 なんならサーヴァントも入って来れないようにした方がいいです。とは言え、令呪を使ってしまうと疑われてしまうのでこの程度にしておきましょう。

 

 >あなたはマイルームに誰もいないか確認した。

 >……誰もいないようだ。

 

 周囲確認よしっ! (現場猫並感)

 

 溶岩水泳部のうち誰かが自分のサーヴァントですと良く入り込んでいることもありますのは周知の事実だと思いますが、時折誰かがいる時もありますので周囲確認はやりましょうね。

 

 さてさて、先ずはホモくんの強化アイテムからの作成を始めましょう。

 

 >あなたは聖晶石を一つ手に取るとそれを粉々に砕いた。

 >砕いた聖晶石をすり鉢に入れてゴリゴリと音を鳴らしながら粉末状になるまで擦っていく。

 >そうして出来たのは虹色の光る粉末であった。

 

 怪しい粉末だぁ……。

 

 鼻から吸ったらとんでもない絵面になるから興味本位で吸うのはやめよう! (ゆうさくのテーマ)

 ……ちなみに鼻から吸っても効果は発動されます(実証済み)

 

 >あなたは虹色に光る粉末をあなたの魔力が溶け込んだ魔術溶液に入れて溶け切るまで混ぜた。

 >虹色に光る液体に自分自身の血を入れて混ぜるとその液体は見るものを引きずり込むような魔性の魅力を放つ虹色に輝く液体へと変化した。

 

 はい、これでホモくん専用の強化アイテムの完成です。あとは適当な小型の容器に入れれば完成です。

 

 本来なら魔術溶液ではなく魔術髄液の方が効果値は高いのですが、素材の関係上そこは妥協せざるをえませんでした。

 

 因みにですが魔術髄液を使用した場合は魔術髄液を入れていた容器に入れて骨髄にぶっ刺して使った方が効果値は高いですが、今回のですと心臓に直接打ち込んだ方がいいでしょう。

 

 何せホモくんの心臓には現在大聖杯も埋まっていますし、それに置換呪術を使えば刺さなくても直接心臓にこれを送り込めるのでお手軽でいいですね。

 

 ……まあ、置換呪術を使うとその特性上容器の中の液体が本来心臓にあったはずの血液と入れ替わるのでちょっとグロいことになりますけど。

 

 さてお次はホモくんの弱点である心臓の強化に移りましょう。

 

 >あなたは上着を脱いで上半身裸になると自身の鳩尾に手を添えて──

 

 あっ、これから結構グロい絵面になるので苦手な人は目を閉じてた方がいいですよ(激遅注意喚起)

 

 >一気に体内へと深く刺しこんだ。

 >あなたの鳩尾から大量の血が噴出する。

 >HPが減少した。

 >パッシブスキル:不死の肉体が発動。

 >HPが回復した。

 

 うーん、地獄絵図。

 

 ホモくんの血で床が真っ赤ですね。これを立香ちゃんやサーヴァントに見られたらストレス値が上がる所の騒ぎじゃなくなるので見つからないために鍵を閉める必要があったんですね。

 

 ……来てないよね? 

 

 誰かが来る前にパパっとやって終わりにしたいので早速ホモくんの改造手術を始めましょう。

 

 >あなたは鳩尾に突き刺した手を心臓へと向けて体の中に手を潜り込ませる。

 >それに伴いあなたの体から更に血が噴出する。

 >HPが減少した。

 >自動回復によりHPが回復した。

 

 不死の肉体様々ですね。本来なら序盤では耐久値不足で行えない改造手術ですが、オルレアンで手に入れたことによって不死の肉体の自動回復でゴリ押しで改造手術を強行できるのは最高ですね。

 

 加えてホモくんは呪術使いでもあるので肉体改造に関していえば得意分野でもあるので安心して出来るのがまた嬉しいところです。

 

 >あなたは聖晶石を片方の手で取ると心臓に溶け込んだ大聖杯に更に混ぜ込ませるために置換呪術を発動した。

 >聖晶石が黄金の粒子へと変化し、心臓に溶け込んでいる大聖杯と融合し始めると同時に聖晶石を持っていた手に大量の血が出現し、あなたの手と床を更に赤く染めあげる。

 >大聖杯と聖晶石が融合した事によってあなたの心臓が脈動すると共に莫大な魔力があなたの全身の魔術回路を無理矢理拡張し始める。

 >その反動によりあなたの全身から大量の血が噴出する。

 >目から、鼻から、耳から、口からありとあらゆる穴から血が噴出し、それでも尚足りぬと言わんばかりに全身の至る所の血管を食い破り血が溢れ出る。

 >HPが大幅に減少した。

 >パッシブスキル:不死の肉体が発動。

 >死亡を回避。

 >自動回復によりHPが回復した。

 

 えっぐーい! (サーバル並感)

 

 ホモくんの部屋が猟奇殺人でも見ることの無いくらい血みどろになってますね。人の致死量になる血の量を遥かに超えてるのやべえよやべえよ……。これは立香ちゃん達には見せられませんね。地獄すぎる……。

 

 ま、不死の肉体のスキルがあるんで死なないから問題はありません。寧ろこの調子でどんどん改造していきましょう。

 

 >あなたの全身に魔術回路が誰が見てもはっきり分かるほどに浮かび上がり、尚且つその魔術回路は紅く輝いている。

 >そしてその魔術回路はあなたの身体を侵食するように体の隅々へとその紋様を広げていく。

 >HPが減少した。

 >自動回復によりHPが回復した。

 

 いい感じですね。ホモくんの心臓に存在する大聖杯に溶け込ませるように聖晶石を置換したので、これでホモくんは聖晶石がある限り死んでも蘇生出来るようになりましたし、副次効果でホモくんの魔力ステータスも結構成長してくれましたね。

 

 とりあえずはこんな感じですかね。一度心臓に聖晶石を溶け込ませてしまえば聖晶石を持っている限りそれを使えばホモくんは死んでも蘇生できるようになるので便利でいいですね。

 

 さてと、ロマニ達が来る前に急いで後処理をしましょう。いつもの感じで行きますとホモくんのバイタル変動を発見したロマニ達がすっとんでくるので急いで部屋を片付けなければいけません。

 

 >魔術回路が落ち着いたようで身体から紋様が消えたのを確認するとあなたは置換呪術を使い、部屋中に飛び散った血の大部分を部屋に備え付けられていた洗面台の排水溝の中へと直接転移させた。

 >残された血をフラスコの中の空気と置換して入れ替える。

 >それが終えるとあなたは脱いでいた服を着て、虹色に輝く液体を懐にしまった。

 

 工事完了です。

 

 いやあ、やはりホモくんの血液だったら置換呪術はホモくんの体を経由しなくていいのは相変わらず最高ですね。こういう時に急いで後処理出来るので。

 

 ちなみに全ての血を排水溝に流さなかったのは少々訳があります。というのも、あれ程までに大量の血が部屋中に飛び散ってしまえばどうしても血の匂いというものが残ります。

 

 それをカバーするためにフラスコの中に血を入れる必要があるんですね。

 

 >あなたの部屋の扉を誰かが慌ただしくノックした。

 

「望幸くん今部屋の中にいるかい!? いるんだったら返事をして欲しい!」

 

 お、タイミング良くロマニ達が来ましたね。あまり待たせてしまうとロマニ達が無理矢理開錠して部屋の中に入ってきてストレス値が一気に上がり始めるので急いで出ていきましょう。

 

 >あなたは部屋の鍵を開けるとそこには焦燥したような顔で立っていたロマニとダ・ヴィンチ、そして彼等に着いてきたのか両儀式がいた。

 

「望幸くん、身体に何か異常はないかい!?」

 

 >慌てたようにあなたに尋ねるロマニに対してあなたは左右に首を振ることで否定の意を示した。

 

「いきなり来てすまないね。けど君のバイタルが突然異常な速度で乱れ始めたから何かあったのかと思って急いできたんだ」

 

 身体に異常なんかないです(大嘘)

 

 まあ、予想した通りロマニとダ・ヴィンチちゃんのストレス値が上がってますね。特にロマニがかなり上がっています。

 

 とは言ってもストレス値が振り切れてる訳でもないですし、予想通りの上昇幅なので問題ありません。それにホモくんに何も無いと分かれば勝手に下がるでしょうしね。

 

 ただ、問題は──

 

「ねえ、マスター? 本当に何も無かったのかしら」

 

 この子なんだよなあ……。

 

 >あなたを心配そうに青に輝く瞳で見つめるのは両儀式であった。

 

 あー、本当にどうしましょうか。千里眼持ちがいないだけマシですが、それでも根源接続者であるこの子は厄介にも程があります。

 

 仕方ありませんね、適度に真実を話しつつ重要なところは話さないで適当に煙に巻きましょう。

 

 >あなたは部屋の中で次の特異点に向けての準備をしていたところだと話した。

 

「特異点に向けての準備? 望幸くん、君は何を作ろうとしていたのかな」

 

 >あなたはロマニに魔術で使用する人形を作ろうとしていたところだと話した。

 

 嘘は言っていません。実際これから作ろうとは思っていましたしね。

 

「なるほど、あの人形か。良ければ中に入れてもらってもいいかな? 実を言うと私はあの人形の制作過程に興味があってね」

 

 しょうがねぇなあ〜(悟空)

 

 実際こうして言われてしまえば入れる一択しかありません。断ることも出来ますが、そうしてしまうとダ・ヴィンチちゃんが無断で侵入してくる可能性ができるので、それを防ぐ為にもここは敢えて中に入れましょう。

 

 >あなたはダ・ヴィンチに構わないと告げると三人を部屋の中に入れた。

 

「うっ、この匂いは……」

 

 >噎せ返るほどに濃い血の匂いに思わずロマニは手で口を覆う。

 

「……望幸くん、本当に何も無かったんだよね?」

 

 >疑いの眼差しであなたを見つめるダ・ヴィンチにあなたは頷いた。

 >その問いにあなたはなんなら身体を見せても構わないと言った。

 

「そうだね、なら少し触診させてもらおうかな。出来るだけ服を脱いでくれるかい?」

 

︎︎ 見たけりゃ見せてやるよ(震え声)

 

 >あなたはダ・ヴィンチの言う通りに服を脱いだ。

 

「それじゃあ失礼するね。ロマニ、君も手伝ってくれ」

 

「了解」

 

 >二人に触診されている最中、両儀式は周囲を軽く見渡すとある場所へ向けて歩き出した。

 

 ん? 

 

 >両儀式が向かったのは洗面台のある方角だった。

 

 おまっ、そこはっ、ちょぉっ──!  

 

 >そして洗面台の側まで来るとその隣に立て付けられている浴室の中に入っていった。

 

 セェェェフッッ!  

 

 あっぶね! 置換呪術ルートを見つける前は改造手術を後処理の観点から浴室でやっていたのでいつも通りの場所でやっていたらやばかったです。本当に今回は置換呪術に救われましたねクォレハ……。

 

 それにしてもあの子はなんで浴室に……? 

 

 >両儀式は浴室から出てくると今度はトイレの方へと向かった。

 

 あ、なるほど。ただ単に部屋の中全体を見るために彷徨いていただけですねこれ。一応あの子なりにマスターのために部屋に何か異常がないのか探しているんでしょう。

 

 嬉しいけど今だけは勘弁な! 

 

 >両儀式は何も見つけられなかったようでトイレから出てくるとテーブルの上に置いてあるあなたの血液が入ったフラスコの方へと向かった。

 

「ねえ、マスターこれは?」

 

 >触診されているあなたに血液で満たされたフラスコについて両儀式が質問してきた。

 >それに対してあなたはそれは人形作成をする時に使うものだと言った。

 

 嘘は(ry

 

 実際、ホモくん専用の人形を作ろうとすると血を媒介にする必要がありますので。

 

「そうなのね」

 

 >両儀式はそれだけ言うと備え付けられていたベッドに腰掛けるとあなたの血液で満たされたフラスコをぎゅっと包み込むように握って俯いた。

 

 んー? ストレス値が微妙に上がってる……? 

 

 いや本当に微妙なんですが上がってはいますね。ただそれも少しの時間経過で消える量しか上がってないので注意を払う必要はなさそうです。ただなんで今ので上がったんでしょうね? 

 

「……うん、触診した限りだと身体のどこにも異常はなさそうだね」

 

「そうなるとなんでバイタルがあんなにブレたのかって話だよねぇ。あのブレ方は常人なら確実に死んでるようなブレ方だっただけに心配になってきたんだけど……。まあ、なにか身体の異変に気がついたのなら直ぐにでも私かロマニにでも言ってくれたまえ」

 

(その時は)オッス、お願いしまーす! 

 

 あっ、そうだ(唐突)

 

 ついでに好感度上げとストレス値調整も狙っちゃいましょうよ。オラッ! 贈り物攻撃を食らえっ! 

 

 >触診を終えたあなたは普段の服に着替えると部屋の収納に入れていたいくつのかお菓子をロマニ達に渡した。

 

「これは……豆大福だね。いいよね、日本の和菓子は。見た目もさることながら味もすごく僕好みの味なんだよね。まあ、それはともかくとしてありがとう望幸くん」

 

「それにしても君ってもしかしてお菓子好きなのかい? 私達にやたらお菓子をくれるけど、部屋に常備してたりする? もしそうなら今度私達とお茶会でもしてみないかい?」

 

「それはいい案だねレオナルド。僕とレオナルド、望幸くんと立香ちゃんにマシュ、そしてマリーや他のみんな……カルデアにいる全員と一緒にそうしてみたいものだね」

 

「まあ、その為には早く所長の体を元通りにしてあげないといけないけどね。とは言っても所長の体が安定するのはもう少し先になりそうだ」

 

 おっ、そうだな(適当)

 

 ロマニが何やらお茶会したいみたいですけど、まあ行けたら行きますよ。ええ、善処しますとも。

 

 それはさておき、さらっとダ・ヴィンチが所長の体の事について触れてましたね。話を聞く限り3~4章辺りに所長の体が完全にできあがるっぽいですね。

 

「それじゃあ望幸くん僕達はそろそろ帰るけど、何かあったら直ぐに僕達に相談するんだよ? 例えどんなに些細な事でもね」

 

「ロマニの言う通り、何かあったら直ぐに頼ってきてくれたまえよ。この万能の天才が君の悩みをちょちょいと解決してあげよう!」

 

 >そう言ってマイルームから出ていった二人をあなたは手を振りながら見送った。

 >そして遅れながらも両儀式も手に持っていたフラスコをテーブルの上に置くと立ち上がり、マイルームから出ていこうとして扉近くまで行くと不意にあなたの方へと向き直った。

 

「ねえ、マスター。あの二人の言う通り、どんなに些細な事でもいいから決して一人で抱え込まずに何かあったら直ぐに私達に頼ってちょうだいね」

 

 >そこまで言うと両儀式は一旦言葉を区切り、深く息を吸うと青に輝くその瞳で同じ色を持つあなたの瞳をしっかりと見つめた。

 

「私は、私達は貴方の味方ということを決して忘れないで欲しいの。……それじゃあね、マスター」

 

 >その言葉を最後に両儀式は今度こそマイルームから出ていった。

 

 うーん……? なんだか妙にホモくんが悩み抱えてるみたいな感じになってますけど、そんなこと一切ないと思うんですけど(困惑)

 

 それにそもそも結構頼ってると思うんですけどね。特にダ・ヴィンチちゃんには装備関連で。これ以上何を頼れと言うんでしょう。

 

 まあ、それはさておき今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

「ねえ、マスター。いつの日か、あなたが本当に望んでいる願いを私に聞かせてちょうだいね。絶対に叶えてみせるわ」




ヴェルバー見本市とかいうこの世の終わりみたいな言葉。
そして早速手に入れたスキルで好き勝手やらかしてるホモくん。邪ンヌはそんなことさせるために頑張ったんじゃないと思うんですけど(名推理)

そんなことを言ったところで失踪します。


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様々な想い

遅くなりましたので初投稿です。


 セプテム出発前から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 今回はセプテムに連れていくサーヴァントの選別とロマニ達とのミーティングが終わり次第早速特異点にシュウゥゥッッ───! していきます。

 

 というわけでさっさと起きて立香ちゃんの部屋に突撃するぞー! 

 

 >あなたは目を覚ますと首元にやたらふわふわしたものが存在していることに気がついた。

 >それはどうやらあなたが寝ている隙にベッドに潜り込んできたフォウであるようだ。

 

 あら〜^

 

 また潜り込んできてますねこの獣。オルレアンが終わってからというものホモくんの寝床によくいるんですよね。まるで忠犬みたいだぁ……。なお中身。

 

「ンキュ?」

 

 >あなたが体を起こすと同時にフォウも目が覚めたらしく目をシパシパとさせながらあなたを見上げる。

 

 おや、どうやら目が覚めたみたいですね。だからといって別に何かあるという訳でもないのでさっさと着替えて立香ちゃんの部屋に行きますよーいくいく。

 

 >あなたはフォウを軽く撫でるとベッドから立ち上がり、カルデアの制服に着替え始める。

 

「……フォウ」

 

 >着替えが終わると肩に乗ってきたフォウを連れてあなたは立香の部屋へと向かった。

 

 道中でナスビちゃんも拾えればグッドなんですけどねー。まあいなくても放送で呼ぶなりなんなりすればナスビちゃんならすぐに来ますからね。立香ちゃんは……ナオキです。

 

「怖い……見る……ですか?」

 

「あんまり……てはいない……けどね。……てるのは……だけ……伸ばして……かなくて、私の…………大切だった……が消……。それだ……か……てないの」

 

 >立香の部屋の中から声が聞こえてきた。

 >声を聞く限りどうやら立香とマシュであることに間違いは無さそうだ。

 

 お、二人揃ってますね。これは運がいい。それでは早速突入して行きましょう。

 

 デトろ! 開けロイト市警だ! 

 

 >あなたはノックをするとすかさず中に入り、柏手(かしわで)を鳴らす。

 

 レイシフトの時間だゴルァ! 

 

「わひゃあああああ!?」

 

「きゃああああああ!?」

 

「フォウ! フォー!」

 

 >突然の音に驚いて立香とマシュが大きな声を上げる。

 >またあなたの行動にフォウが文句があるらしく何度もそのふさふさとした尻尾であなたの頭を叩いてくる。

 

 はいじゃあ、混乱しているうちにさっさと二人を管制室に連れていきます。

 

 ちなみにですが今回このような入り方をしたのは二人が話していたからですね。いや別に話すこと自体は問題ないのですが、今回のケースだと長々と話されてしまってはタイムロスになる可能性も無きにしも非ずなので無理矢理中断させるべく、音を鳴らして入るということをしました。

 

 後は混乱しているうちに連れて行けばろくに反応しないまま連れ出せるからですね。誘拐犯みたいですねこれ……。

 

 まあ、特に問題は無いのでやりますけど。

 

 >あなたは二人の手を掴むと彼女たちが混乱しているうちに管制室へと向かっていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ望幸! いきなりどうしたの!?」

 

「わ、わわっ……」

 

 どうもこうもないのでさっさと管制室に行きましょうね〜。

 

 >あなたは管制室に行こうと二人に言った。

 

「か、管制室? もしかして特異点の事?」

 

「私はまだ特異点の存在証明が安定化できたとは聞いていませんが……」

 

 >困惑している二人を他所にあなたは二人の手を引いて管制室の中に入る。

 >あなたが目指す先には椅子に身体を預けてグッと伸ばしているロマニがいた。

 

「んー……。よしっ、そろそろ立香ちゃんに望幸くん、それにマシュを呼ばないとね」

 

 む、ナスビちゃんはどうやらまだ聞いてないみたいですね。とは言っても今までの経験上、今日辺りに特異点イベが発生するのはほぼほぼ確定事項ですし、ささっとセプテムに突入しておきたいんですよね。

 

 というわけで……

 

 オッハー! (クソデカボイス)

 

 >あなたはロマニの後ろに音もなく立って挨拶をした。

 

「それじゃあ──って、わああああああああああ!?」

 

 >あなたが背後に突然現れたように感じたロマニは驚きのあまり椅子から転げ落ちた。

 

 相変わらず一発目は高確率で驚きますねー。それはさておきロマニを驚かしたのは少し訳があります。

 

「なななな、なんだいなんだい!? 何でもう三人ともいるんだい!?」

 

「あはは……おはようロマン」

 

「おはようございますドクター」

 

「あっ、うんおはよう皆……ってそうじゃなくてだね!?」

 

 >思わずその場の流れに流されてしまいそうになったロマニだが、何故三人がここにいるのかと言う当たり前の疑問を抱いた。

 

「えっと、私達は望幸に連れてこられたんだけど……」

 

 >そう言いながら立香はあなたの方をちらりと見る。

 >あなたはその視線に気がついてここに来た理由を説明した。

 

「特異点の存在証明の安定化に成功したのかを聞きに来たって……。まあ、うん丁度昨日の深夜辺りに安定させることに成功したよ」

 

 あっ、ふーん(察し)

 

 驚かせて心を揺さぶったことでロマニが口滑らせましたね。

 

 はい、そうです。今回ロマニを驚かせたのは彼の口を滑らせるためにやったのです。ロマニは動揺していれば時折ポロッと口を滑らせるので今回のように知っておきたいこと言ってくれましたね。

 

 ここで聴き逃してはいけないのはロマニが深夜辺りに安定させたという事です。これを言ったということはつまりロマニは今オーバーワークをしている状態で全く体を休めていません。

 

 つまりこれを放っておくと高確率でロマニが過労で倒れます。そうなると少々面倒なので釘を刺しておく必要があるでしょう。

 

 >あなたはロマニに深夜辺りということはちゃんと体を休めているのか? と聞いた。

 

「え? ……あ。……いや、大丈夫大丈夫。その日はたまたま深夜まで作業してたけどいつもはしっかり寝て身体を休めているよ」

 

 嘘つけ。絶対嘘だゾ。

 

 >あなたはそう言う割には目の下に隈が見えると伝えた。

 

「えっ、嘘だろ!? しっかり隠せてたと思ってたのに!」

 

 嘘だよ(ブラフ)

 嘘は良くないってそれ一番言われてるから(特大ブーメラン)

 

 >あなたは嘘だと告げた。

 

「だ、騙したな!?」

 

 そうだよ。

 

 >あなたはロマニにしっかりと休息を取って欲しいと言った。

 

「そうだよ、ロマン! それで倒れちゃったらどうするの?」

 

「い、いやぁ〜大丈夫だよ。自分の体のことは自分がよく分かるから。限界を見極めることくらいできるよ。それに僕はドクターでもあるんだからね」

 

「ドクター、日本の諺に医者の不養生というものがあるそうですが」

 

「……」

 

 ロマニの顔がすごい引き攣ってて草が生えますよ。

 

 まあ三人に勝てるわけが無いからね。仕方ないね。

 

 と、まあ立香ちゃん達からも援護射撃を貰えたのでちゃちゃっと丸め込みましょう。

 

 >あなたはロマニが倒れられたらカルデアはどうにもならなくなると言った。

 

 いや実際問題、臨時の所長になっているロマニがぶっ倒れたら特異点関連での話がマジで進み辛くなります。ダ・ヴィンチちゃんもいるので少しくらいは進みますが、やはりロマニがいるのといないのとでは目に見えて差が出てしまいます。

 

 なのでしっかりと序盤の内に釘を刺すことが大事なんですね。

 

「……うん、分かった。肝に銘じておくよ」

 

 ほんとぉ? (疑惑の眼差し)

 

 >あなたはもし嘘をついたら気絶させてでも休ませると少し脅迫するように言った。

 

「あ、あはは……大丈夫。倒れないように疲れたらちゃんと身体を休めるよ。僕だってそんな風にやられるのは嫌だからね」

 

(確認)よし。

 

 とりあえずはこれでロマニはしばらくの間は無茶をしなくなるでしょう。ですが時が経つにつれてまた無茶をしだす可能性もあるのでその時はホモくんが言った通り気絶させて無理矢理休息を取らせるか、もしくは睡眠薬をサッー! (迫真)するかの二択ですね。

 

「……さて、ちょうど皆揃ってるからこのまま次の特異点に向けてのミーティングをしようか。おーい、ダ・ヴィンチ! 眠いのはわかるけどそろそろ起きなよ」

 

 >ロマニがそう言って様々な書類で埋め尽くされた机の方に声をかけた。

 

「ん……んん? ああ、なんだい。もう皆揃ったのかい?」

 

 うおっ、ダ・ヴィンチちゃんいたのか。書類の山に埋もれてて全く分からなかったゾ……。まあ、ダ・ヴィンチちゃんがいるのは毎度のことですから構いませんけども。

 

「いやぁ、すまないね。ここの所オルレアンから持ち帰った聖杯の解析にかかりっきりでね」

 

 >そう言いながらダ・ヴィンチは大きく口を開けて欠伸をする。

 

「そろそろミーティングを始めようか。それじゃあ今回の特異点についてなんだけど──」

 

 ここからは親の顔より見た説明が流れるので倍速しましょう。超スピード!? 

 

 それでは倍速しているうちに今回のミーティングについてざっくりとですが纏めておきました。

 

 ・時代は古代ローマ。

 ・聖杯の場所は不明。

 ・歴史に対してどういう変化が起きたのかも不明。

 ・やるべき事は前回のオルレアンと同じ。

 ・敵対サーヴァントと中立サーヴァントの見分けは現時点で不可能。

 ・みんな無事で帰ってきてね! OK? 

 

 OK! (ズドン)

 

 だいたいこんな感じですね。

 

 では説明も終わりましたし、レイシフトする所まで一気に倍速で流して──うん? 

 

 ちょっと待ってください。なんかロマニが特殊な台詞を言ってますね。

 

「あと、これだけは伝えておくね。今の古代ローマの観測精度はかなり不安定だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どちらが原因にせよレイシフト先のローマは明らかな異状を示している。それもオルレアンの時以上にね」

 

 おい馬鹿やめろ。厄介なフラグを建てるのをやめてもろて。

 

 明らかにセプテムは通常ルートではない可能性が高いですね。下手すりゃ巨神ルートに突入してませんかねこれ。

 

 いや、まあ巨神ルートは巨神ルートで特殊なルートになるので上手く立ち回ることが出来れば通常ルートより遥かに速く終わらせることが出来るので良いと言えばいいんですが……。

 

 仮に巨神ルートだとすると今のホモくんが契約してるサーヴァントですとかなり相性が悪い子が多いですね。

 

 巨神はその伝承から神性持ちに対して特攻が入ります。なので玉藻、カーマはまずアウト。

 

 キアラは……どうなんでしょう。

 

 女神変生のスキルもありますけれど神性自体は持っていないので特攻対象には入っていなさそうですが……。ただキアラは人造の神になった事もあるのでそこを加味すると微妙なところですねー。

 

 それになにより気をつけないといけないのは巨神の場合、ホモくんは神性持ちなので大ダメージ必至なんですよね。立ち回り次第ではいらんところでぽっくり死んでしまうでしょう。

 

 まあとりあえずは安牌を取ってアルトリア・オルタを連れていきましょうかね。

 

 何だかんだ色々と語りましたが、巨神が出てくる確率は相当低いですし、そもそも現時点で影響があるのならば更に確率低いでしょうしね。

 

 何せ初っ端から巨神が出てくる訳がありませんし。

 

 おっと、そろそろレイシフトの時間ですね。

 

「皆無事に帰ってくるんだよ。プログラム・スタート!」

 

 >ロマニの掛け声と共にレイシフト装置が起動する。

 

 後はレイシフトするのを眺めるだけですので今回はここまでとなります。ご視聴ありがとうございました。

 

『アンサモンプログラム スタート。霊子変換 を 開始 します』

 

「ねえ、望幸」

 

 >あなたの隣に立つ立香がそっと手を握ってきた。

 >まるで決して離しはしないとでも言わんばかりにあなたの手をぎゅっと握る。

 

『レイシフト 開始 まで あと 3 2 1 ……』

 

「今度こそ私は君の──」

 

 >立香の口から無意識的に零れた言葉。

 

『全工程 完了。グランドオーダー 実証 を 開始 します』

 

 >だがレイシフトによる音に掻き消され、あなたの耳に届くことはなかった。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「また……()()()()()()

 

 幾度となく感じ取れた嫌な感覚にこれで何度目なのだろうかと褐色の肌の少女は昏い瞳で独り言ちる。

 

「貴様ァッ……!」

 

「何だ、まだ息があったのか」

 

 そう言って褐色の少女は足元に目をやるとそこには身体を上下半分に切り落とされたレフ・ライノールが悪鬼の如き面貌で褐色の少女を睨みつけていた。

 

「何のつもりだ……!」

 

「言ったところで()()()には何も分からないだろうが、私には私なりの願いがある。それを叶えるにはお前達が邪魔だっただけの事だ」

 

 だから召喚された直後に斬ったのだと褐色の少女は言外にそう言っていた。

 

 そして褐色の少女はレフ・ライノールがまた何かを言う前に余りにも昏い瞳で彼を見下ろし──頭を踏み砕いた。

 

 完全に破壊されたレフ・ライノールの身体は黄金の粒子となって消えていく。

 

 だがそんなことなど興味はないといった様子で一瞥すらくれずにある一方だけをじっと見つめていた。

 

「なあ、マスター。もういいだろう。君はもう十分に頑張ったんだ」

 

 褐色の少女は愛おしい存在に語りかけるように優しく言葉を紡ぐ。

 

「私は君が苦しんでいる姿をもう見たくない」

 

 脳裏に過ぎるのはもう名前も、姿すらも思い出すことの出来ない誰かだった。思い出そうとする度に頭が割れる程の痛みが襲いかかる。

 

 だがそれでも褐色の少女は自身が覚えているとある記憶を思い出していく。それはまるで自分を戒めるかのように。

 

『ぐぅッ……!』

 

 ──大切な人だった。

 

『ガッ、ぁぐッ!』

 

 ──そんな人が出会う度に欠けていった。

 

『まだだ……まだやれる……』

 

 ──どれだけ傷ついても狂気的とも言えるほどに前に進もうと必死だった。

 

『……ちくしょう』

 

 ──もう見たくなかった。

 

『……()()()()

 

 ──もう聞きたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ゛ あ゛ ぁ゛ ぁ゛ あ゛ あ゛ ぁ゛ あ゛ あ゛ ぁ゛ あ゛ ! ! ? ? 

 

 

 ──大切な貴方があの異質極まりない魔術陣らしきものの中央で聞くに堪えない悲鳴を上げるのを。

 

 褐色の少女は今も尚襲いかかる常人なら発狂してもおかしくは無い程の激しい頭痛に苛まれても深く、深く自身という存在にその記憶を刻みつける。

 

 褐色の少女はうっすらと目尻に涙を溜めながらも自分が為さねばならないと覚悟を決めた。

 

 嗚呼、そうだとも。例え恨まれたって構いはしない。嫌われたって構わない。

 

「私は──」

 

 大切で愛おしい貴方を……

 

 

 

 

──()()()()()()()

 

 

 

 

 それだけが私が君に出来る精一杯のことだから。

 




出落ちしたレ//フですが、実を言うとホモくん達を本気で殺しにかかろうと先に準備してました。
まあ、褐色の少女に出会い頭にレ//フされたんですけど。

それにしても褐色の少女とは一体……(すっとぼけ)


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宙から堕ちてきたもの

二章はある程度は原作の流れ沿わせるつもりですが、かなり乖離しかねないので初投稿です。



 セプテム突入から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 今回は遂に古代ローマにレイシフトします。

 

 ちなみにセプテムは大体のルートは主に軍団戦がメインのバトルになりますので連れていくサーヴァントが対軍宝具以上の範囲攻撃を持っていると結構楽に進めることが出来ます。

 

 なので今回最初に連れてきたのはホモくんがアルトリア・オルタ、立香ちゃんがナスビちゃんとクーフーリンとなります。

 

 アルトリア・オルタは対城宝具持ちというのとアルテラ対策でクーフーリンは言わずもがな。一人で数千から数万の軍勢を撃退する逸話持ちです。

 

 ……改めてクーフーリンを評価するととんでもないっすね。

 

 さてと、それではそろそろ到着すると思うので到着したら急いで周辺を探索してネロを探しに行きましょう。

 

 >あなたはレイシフトを無事に終えて目を開けるとそこには本来ならば緑豊かな大地が拡がっていたはずの土地がまるで何か災害でも起きたかのように周囲一帯が荒野と化していた。

 

 は? 

 

 は? (二度見)

 

 ちょっ、ちょっと待ってください。私の目が正常に機能しているのならなんかとんでもない文字が見えたんですが。

 

「なに……これ……?」

 

「一体何が起きて……」

 

 >余りにも凄惨な光景に立香達は口元に手を当てて絶句していた。

 >地面は陥没し、木々はなぎ倒され、草花は根ごと散らされていた。

 >まるで何か巨大なものが暴れていたかのような痕跡だ。

 

『馬鹿な……この時代でこれほどの規模の戦いが起きた記録なんてないはずだ。一体このローマに何が起きてるんだ……?』

 

 すぅー……。

 

 いや、まだです。まだそうだと決まったわけじゃないですから(震え声)

 

「おい、あっちから戦の音が聞こえやがる。それにこいつはァ……」

 

「仮にこの光景を作った者と戦っているのならば急いだ方がいいだろうな。どうする望幸?」

 

 いやあ……どうするもこうするも多分戦ってるのはネロ率いる軍でしょうし、行くしかありません。

 

 ただ、この光景は既視感が凄いんですよね。それもすっごい嫌な方向で。

 

 本当は行きたかないですけど行きましょう。

 

 >あなたは行こうと言った。

 >4人はそれに頷くと戦っているであろう方向へ向かった。

 >そしてそこで見た光景は───

 

「負傷したものは一度下がれ! 決して無茶をしようとするな! 我らが斃れれば愛するローマが蹂躙されるものとしれ!」

 

 >()()()()()()()()相手に奮闘している深紅と黄金の意匠の少数部隊を率いる女性であった。

 

 

ゴミカスゥゥゥ! 死ねぇぇええええ! 

 

 

『マシュ! そちらで今何が起きているんだい!?』

 

「深紅と黄金の意匠の少数部隊が巨大な異形の群れ相手に戦っています」

 

『巨大な異形だって? 大凡の大きさは?』

 

「小さいもので約5m、大きいものですと10m以上はありそうです」

 

『……少数部隊の今の状態は?』

 

「歳若い一人の女性がほとんど一人で敵を相手取っています。……ですが、かなり疲弊していて押し切られてしまうのも時間の問題かと」

 

 >マシュの言う通り深紅の女性が巨大な異形相手に大立ち回りをしていた。

 >だが、それによって疲労も凄まじく、薔薇を思わせる顔に玉のような汗を零していた。

 

 はぁーっ! 

 

 もう嫌っ! 私が何をしたって言うんですかねえ!? 本番中にこんな低確率ハードモード引いてんじゃねえよオッラァァン! 

 

 何だって初っ端から巨大化した原生生物がいるんですかねぇ!? お前ら基本中盤以降から出てくるだろうがよっ! 

 

 えー、経験したことのある皆さんならご存知の通りあれは巨神が存在している時に発生する敵です。

 

 ローマ付近に住んでいた原生生物が巨神の影響を受けて巨大化+凶暴化した結果、あのような通常の姿からかけ離れた異形の生物となり、ローマ軍と戦います。

 

 このまま放っておくと初期のネロでは押し切られて死亡することは目に見えているので助太刀しに行きましょうか。

 

『……なるほど、オルレアンの時同様にありえない生物が発生しているって訳だね。それなら──』

 

「あの人達を助けよう!」

 

 >立香の溌剌とした声に皆が頷いた。

 

「はい、私も先輩の強気な方針に賛成です。フォウさんも湧き立っています」

 

「キューウ! キュキュ、キュ!」

 

「カカッ、いいね。昔を思い出すぜ」

 

「……ふむ、おい望幸。お前は余り前に出過ぎるなよ」

 

 >サーヴァント達はその身に宿る魔力を滾らせて闘志を燃やす。

 >そして最速の英霊たるランサーが巨大な異形の群れの横っ腹に食らいついた。

 

「ハハハッ、滾ってくるな! オラ、いくぜぇぇ!」

 

 >朱槍を巧みに扱い巨大な原生生物を突き殺し、刺し殺し、時にはその強靭な健脚を振るい蹴り殺す。

 >突然の襲撃に怯んだ巨大な異形であったが、殺戮衝動に身を任せてクーフーリンを圧殺すべく殺到し始める。

 >だがそれでもクーフーリンは笑っていた。

 >獰猛に、享楽的に、目を爛々と輝かせながら向かい来る異形を見据える。

 >そして一斉に飛びかかる異形達を───

 

「ハッ、その程度じゃあ俺を殺すにゃ到底足りねぇよ」

 

 >クーフーリンの身体がその場から掻き消えると次の瞬間には穴だらけにされた異形達と更に群れの中心部へと食い込むクーフーリンの姿があった。

 >その姿は正しく一騎当千の、いや一騎当千という言葉すら役不足だった。

 >まるで意志を持った嵐のように敵陣の中を縦横無尽に駆け回り蹂躙し続けるその様に押されていたローマ兵達は希望を見出す。

 

「全員あの槍兵に続け! だが決して無茶だけはするなよ!」

 

「「「オオオオオオオ!!!」」」

 

 やっぱクーフーリンの性能おかしいんだよなぁ!? 性格よし、器量よし、戦闘力よしとマジで言うことないですからね。

 

 クーフーリンを引き当てた立香ちゃんが羨ましいです。

 

 まあ? ホモくんのサーヴァントだって戦闘力だけみれば引けを取らないですけどね! 

 

 ……まあ、性格とかその他諸々地雷ばっかですけど。

 

 言ってて悲しくなってきましたね。アルトリア・オルタにも行ってもらってささっとこの群れを潰しましょう。

 

 >あなたはアルトリア・オルタに目をやると彼女はコクリと頷いてその禍々しく黒に染まった聖剣に暴風を纏わせた。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)

 

 >吹き荒れる暴風の鉄槌。

 >異形達を凄まじい速度で吹き飛ばし、激突させ合う事で粉々に打ち砕き致命傷を与えていく。

 >そして討ち損ねた異形達は──

 

「そらァッ!」

 

 >クーフーリンが一匹も逃さずに串刺しにしていく。

 

 こ れ は ひ ど い 

 

 いつ見ても思いますけど、この二人本当に強いよなあ。アルトリア・オルタは結構な範囲攻撃技を持っていますし、クーフーリンはその卓越した槍捌きとスピードで瀕死の雑魚モブを一瞬で狩ることができるので相性もそこそこ良いんですよね。

 

 ただまあ──

 

「うおっ!? おい、セイバー! 俺まで巻き込もうとしてんじゃねえ!」

 

「貴様ならこの程度避けられるだろう?」

 

「この野郎……」

 

 ランサー特有の幸運の低さがね……。かなり低いから時折アルトリア・オルタの範囲攻撃に巻き込まれるっていう悲しい事件が起きちゃうんですよね。

 

 うーん、クーフーリンは本当に幸運さえ高ければなあ……。

 

 って、うん? ネロの後ろに一匹敵がいますね。しかも死んだふりしてる上に乱戦の中なのでネロも気がついてないっぽいですね。

 

 ほっといたらネロが背後から殺されかねませんし、確殺入れておきましょうかね。

 

 >あなたは此方に迫って来る異形達を大盾で殴り付けて吹き飛ばしているマシュに立香のことを頼むと言って、深紅の女性の下へと駆け出した。

 

「あっ、はい。って、望幸さん!?」

 

 死んだふりをする雑魚モブは攻撃がクッソ痛いのでできる限り遠くからチクチク刺すのが有効的です。が、今回に限ってはネロがあと少しで雑魚モブの攻撃範囲に入りそうなので此方がわざと攻撃範囲内に踏み込むことでターゲットを此方に向かせてネロに攻撃がいかないようにしましょう。

 

「む、貴公は──?」

 

 >あなたは斃れている異形に近づくと共に空に向けて刻印が刻まれた魔石を放り投げた。

 >そしてあなたが深紅の女性の手を掴んで後ろに引いたと同時に今まで斃れていたはずの異形が怨嗟の唸り声を上げて勢いよく立ち上がり噛み殺さんと牙を剥いた。

 

 いやあ、この攻撃何も知らなければワンパンで殺される可能性があるくらいにはめっちゃ痛いんですよねえ(3敗)

 

 特に乱戦状態でやってくるのが滅茶苦茶いやらしいですね。いきなり背後から殺られるってことも珍しくはないですし。ちなみにそんな事をしてくるからか、この雑魚モブはクラスで言えばアサシンに該当します。

 

 なのでキャスターの魔術で死んだフリしてる奴をそのまま遠くからぶっ飛ばして本当の死体に変えてあげましょう。まあ今回はいないので出来ませんけどね! 

 

 >あなたは噛みつかれる瞬間に置換呪術を発動し、未だに空にある魔石と位置を入れ替えることでその奇襲を回避した。

 

 さあ送ってやるよ地獄に! (倒置法)

 

 >腰に帯刀していた刀を鞘から抜き、首に目掛けて勢いよく刀を振るう。

 

 うぉえ馬鹿め! 死ねぇ! (闇野)

 

 >振り抜かれた刀は異形の首を刎ね飛ばし、頭部を失った身体からまるで噴水のように血が噴き出して力なく倒れた。

 >暫しの思考と共に深紅の女性はその力強い瞳であなたを見つめると何かを決めたかのように頷いてあなたの背後を守るように背中合わせで剣を構える。

 

「──後ろは任せるぞ」

 

 後はネロが不意打ちなんかで殺されないようにホモくんがカバーするように立ち回れば良さそうですね。

 

 というわけで後は戦闘が終了するまで倍速です。超スピード!? 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「剣を納めよ、勝負あった! この戦い、我らの勝利だ!」

 

「「「オオオオオオ!!」」」

 

 >この戦を切り抜けることが出来た安堵からローマ兵達は勝鬨を挙げる。

 

 ふむ、タイム的には中々に良いですね。今までの平均タイムよりも早めに終わらせることが出来ました。

 

「して貴公達。もしや首都からの援軍……というわけでもなさそうだな。それ程までの武勇を持つのであれば、少なからず余の耳にも届く。それに──」

 

 >深紅の女性はあなたをちらりと見ると目を伏した。

 

 お、なんだぁ? 何かホモくんに気になることでもありましたかね。

 

「──いや、なんでもない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。褒めて遣わすぞ。首都ローマに帰ったら報奨を期待するが良い」

 

 >何故だろうか、彼女はにこやかに話しているというのにあなたは今背筋に直接氷柱を入れられたような強烈な悪寒が走った。

 >何かに狙われているような、誰かがあなたを見つめている気がしてならないのだ。

 

 あっ、これ不味い! 

 

 >あなたは本能的に心臓に宿る聖杯の魔力を無理矢理引き出すとその膨大な魔力と引き換えに自身の周囲にいた全ての人達を遥か彼方へと置換呪術を使って転移させた。

 >その反動として腕の一部が拉げ、出来の悪い玩具の蛇のように捻られた。

 >HPが減少した。

 

 あーあー! もう最悪なんですけど! 

 

()()()()()()()()()()()()()()!? 

 

 >瞬間、空から全てを破壊してしまえると本能的に理解出来る程の絶大な魔力を帯びた破壊の奔流があなたを滅ぼさんと迫って来る。

 

 回避間に合うかこれ……? 

 

 >あなたは急いで置換呪術を用いて転移をしたが、ほんの一瞬だけ破壊の奔流に接触してしまった。

 >あなたは内側から破壊されるような感覚を感じた。

 >口から夥しい量の血の塊を吐き散らかした。

 >HPが大幅に減少した。

 

 ヒエッ……(絶句)

 

 ちょっと掠っただけでホモくんのHPが8割近く持っていかれてる……。このまま立香ちゃん達と合流すると唯でさえ上がってそうなストレス値に更に追い打ちを掛けそうなので見た目だけ治して合流しましょう。

 

 見た目さえ治せればパッシブスキルの不死の肉体のオートリジェネで勝手に治りますしね。

 

 >あなたは治癒魔術を使って傷を癒した。

 >HPが回復した。

 >パッシブスキル:不死の肉体が発動。

 >HPが回復した。

 

 それじゃあとりあえずは見れる体になったので立香ちゃん達と合流しましょうか。

 

 >あなたは一瞬、少しだけふらつきながらも立香達の下へと向かった。

 

 おっす、(場の空気)冷えてるか〜? 

 

 >立香があなたを視認した途端まるで飛びつくようにあなたの下へと走り寄ってきた。

 

「望幸、怪我はないの!? 何処か身体に異常とかない!?」

 

 >慌てている。

 >明らかに立香は取り乱しているようであった。

 >あたふたと慌てながらあなたの身体に異常がないかと心配そうに頻りに聞いてくる。

 >その様はまるで何かに怯えているようにも見えた。

 

 バッチェ、冷えてますよ! 

 

 ちらっと見た限りでは何かお通夜みたいな空気になってませんでした? 魔力のパスが繋がっているアルトリア・オルタ以外はホモくんが死んだと勘違いでもしたんすかね。

 

 それにしても立香ちゃんがプチパニックですね。まあ、これに関してはカルデアのバイタルチェックを利用して安心させましょう。

 

 >あなたは立香に対してどこにも怪我はないと言った。

 >心配ならロマニに聞いてみるといいとも言うと、立香はロマニにそれが本当かどうか聞き出した。

 

『うん、魔力の乱れはあったけれど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ。だから怪我はしていないはずだよ』

 

「そっかぁ……良かったよぉ……」

 

 >あなたの胸に顔を埋めるように抱き着く立香はぷるぷると震えている。

 

 あらら、やっぱり立香ちゃんは初期好感度の高さから結構なストレス値の上昇がありますね。そして順に高いのはアルトリア・オルタ、ナスビちゃん、クーフーリン……ネロも? 

 

 うん? なんか少しだけですけどネロのストレス値が先程に比べて上がってますね。

 

 ふーむ、これは先程の攻撃のせいでストレス値が少々上がったんでしょうね。

 

 何せネロはこのセプテムでは英霊ではなく、この時代に今生きている生者ですからね。なら、先ほどの死を連想させるような攻撃にストレス値が上がるの仕方がないでしょう。

 

「すまない、これで()()()()()そう……貴公に助けられてしまったな。礼は必ずする故、楽しみに待っておくがよい。では遠慮なく余の後に付いてくるがいい。我がローマにて極上の報奨を授けよう」

 

 >そう言うと深紅の女性はそうするのがまるで当たり前と言わんばかりにあなたの手を取るとあなた達を連れて首都ローマへと向かい始めた。

 

 ……? 

 

 いやまあ、いいか。

 

 何で手を繋いだのか分かりませんが、ネロは割と気分屋な所もありますからね。多分今回もそういった気分だったのでしょう。

 

 というわけで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




一体誰に見られてたんですかね(震え声)

そしてちょっぴり不穏なネロちゃまにバイタルを誤魔化してるホモくん。

前回失踪し忘れてたので今回はしっかり失踪します。


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ローマ皇帝

キャストリア見てとんでもないことになったので初投稿です。



 死にかけてから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 えー前回巨大化した原生生物をクーフーリンとアルトリア・オルタでしばき倒しまして、その結果ネロに報奨を与えられるとのことでほいほいついて行くことになりました。

 

「ところでお前達。異国のものに違いなかろうが、どこの出身なのだ?」

 

 >ブリタニアでもないし、東の果てという訳でも無さそうだと呟く深紅の女性。

 

「カルデアです」

 

 >そんな深紅の女性の問いに答えたのは立香であった。

 

 まあ、確かにこの集団はパッと見どこの出身なのか全く分かりませんからね。みんな髪色違うし、何だったら目の色も違うので。

 

「カルデア……ふむ、カルデアか」

 

 >立香の言葉を受けて深紅の女性は何か考え事をするかのように口元に手をやった。

 

「どこかで聞いたような──」

 

 >深紅の女性が何かを呟こうとする前に前方から砂煙を上げてこちらに近づく集団がいた。

 

 は? 

 

 おいおい、またですか。今回やたらしつこいですね。うーん、これも巨神が影響してるんでしょうか……。まま、ええわ。許したる(寛容)

 

「お話はそこまでです。新たに先程戦っていた存在がやって来ました!」

 

「ええい、鬱陶しい! 余の玉音を妨げるとは不届きなっ。 ゆくぞっ、カルデアの者達!」

 

 >深紅の女性はそう告げると真っ先に巨大な異形目掛けてその手に持つ芸術品を思わせる剣で斬り掛かり始めた。

 

「……先輩、なんか私達いつの間にか仕切られてますね」

 

「あはは……」

 

 >マシュの言葉に思わず苦笑いをする立香。

 >だがどうしてか嫌な気持ちは全くしない。

 >それは彼女が持つ天性のカリスマが由来しているのだろう。

 

 まあネロは皇帝ですからね。ああいう風に他者に命令することに慣れているからか、気がついたらいつの間にかどんどん引っ張っていきます。

 

 それはいい事ではあるんですが、厄介事にも平気で巻き込んでくるのはNG。

 

 と、まあそれはさておき戦闘です。

 

 先程と変わり映えしなさそうなので倍速です。超スピード!? 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 >巨大な異形との戦いにもひと段落が付き、これでようやく落ち着ける。

 >そう思ったの束の間、ロマニが慌てたような声を上げた。

 

『みんな気をつけてくれ! サーヴァントの反応を検知した。10秒後には君達と接敵する!』

 

 お、これはおそらくカリギュラことカリおじですね。ここはある意味巨神ルートでどの段階に入っているのか確認出来るのでぜひ戦闘しましょう。

 

「──我が、愛しき、妹の子、よ」

 

「伯父上……!」

 

 >現れたのは黄金の鎧に深紅のマントを風に靡かせる偉丈夫。

 >しかしながらその深紅の目は狂気に飲まれていた。

 >殺意と加虐心をその深紅の目に狂気的なまでに孕ませている彼は深紅の女性をただ一点に見つめている。

 

「いや……いいや、今は敢えてこう呼ぼう。如何なる理由かさ迷い出でて、祖国に滅ぼさんとする……!」

 

 >深紅の女性は偉丈夫を気丈に睨みつける。

 >その目には少しの迷いがありながらもそれでも目の前の男を確かに敵として見定めている。

 

「カリギュラ!」

 

 >深紅の女性がその名前を叫んだ途端、通信機越しに息を呑むような声が聞こえた。

 

『待ってくれ、今彼女はなんと言った? 伯父上。そう言ったのか?』

 

「はい、確かにそう聞こえました。この時代に生きる人間が、サーヴァントと血縁……?」

 

 ふぅむ……このカリギュラ。見たところシャドウサーヴァントではありませんね。そうなると巨神に取り込まれてはいないということになります。

 

「うだうだ話すのはそこまでにしておきな。奴さんは世間話を楽しめるような精神性はしてないように見えるぜ?」

 

 >クーフーリンの言う通り、カリギュラと呼ばれた男はいつこちらに襲いかかってきてもおかしくはない程の殺意をこちらに向けていた。

 

「この時代に来て初のサーヴァント戦だ。覚悟を決めな、マスター」

 

「う、うん……。まだ慣れないけど頑張る!」

 

 >立香の言う通り、彼女は未だにサーヴァント戦に慣れていないのだろう。

 >目線は忙しなくあちこちへと移動するし、体も小刻みに震えている。

 >だが、それでも確かに以前の時より遥かに彼女は成長している。

 >決して日和らずに狂気と殺意に漲る敵サーヴァント相手に恐怖を感じながらも立ち向かうことのできる勇気を持っているのだから。

 

 あぁ〜いいっすね〜^

 

 立香ちゃんの精神性がいい方向で成長しています。これから先の事を考えると狂気と殺意に漲る程度の敵でへっぴり腰になられては困りますからね。

 

 それにしても妙に立香ちゃんの精神の発育が頗る良くないですか? この段階ならまだ日和っててもおかしくは無いんですがね。

 

 ……もしかしてホモくんのサーヴァントのせいか? 

 

 ほぼビーストの集まりだからなぁ……。四六時中ビーストの気配に当てられとけば精神が成長するのはある意味当然とも言えるでしょう。

 

 嬉しいような、嬉しくないような……。

 

「余の、振る舞い、は、運命、で、ある。滅びよ、その、命。滅びよ、その、体」

 

 >狂気に飲まれていた瞳が何処か虚ろなものへと変わると不意に視線を深紅の女性からあなたへと向けた。

 >……不気味だ。

 >あなたはそう思わざるをえなかった。

 >狂気が消え、ただ殺意だけが残った視線があなたを射抜く。

 

 ん? 

 

 

()()()()()()

 

 

 >次瞬、カリギュラは今まで首ったけであったはずの深紅の女性の脇を尋常ならざる速度で通り抜けあなたへと襲い掛かる。

 

「なにっ!?」

 

 初手マスター狙いとかバーサーカーにあるまじき戦法マジでやめてもろて。つーか、ネロの方行けよ! ネロに首ったけのはずダルルォ!? 

 

「やらせると思うか?」

 

 >襲い掛かるカリギュラを弾き飛ばしたのはあなたのサーヴァントであるアルトリア・オルタであった。

 >アルトリア・オルタは油断なくカリギュラを見据え、その身に荒々しい魔力を纏わせる。

 

「お前が何をどうしようが至極どうでもいいがな。私のものにそう簡単に手を出せると思うな」

 

「なぜ、だ。なぜ、抵抗、する」

 

「愚問だな、私は此奴のサーヴァントなのだ。ならば、マスターを守るのは当然だろうが」

 

「……()()()()()()()()()()()?」

 

「全て承知の上だッ!」

 

 >アルトリア・オルタは吼えると共に魔力をまるでジェット噴射の様に噴かせてカリギュラに肉薄する。

 

 がんばえ〜あるとりあ〜! 

 

 そのまま理性のないバーサーカーなんか斬り伏せて戦闘を終わらせてくれ! 

 

 >斬り伏せると言わんばかりに袈裟斬りに振るわれた聖剣。

 >それに対してカリギュラは──

 

「フッ!」

 

 >まるで狙っていたかの如く聖剣の横腹を拳で叩き、聖剣の軌道をズラす。

 >そしてカリギュラはアルトリア・オルタのガラ空きになった腹部へ向けて強烈な殴打を放った。

 

 は? 

 

 おいマジでバーサーカーにあるまじき行動ばっかしてんじゃねえ! ていうか、このままだとアルトリア・オルタが子宮パンチされそうなんですがそれは……。

 

 いかん、ここでアルトリア・オルタを潰されるのは非常に不味いです。こうなったらホモくんが身代わりになるか──? 

 

「甘い」

 

「なにっ!?」

 

 >だが、アルトリア・オルタは勢いよく弾かれた聖剣の力の流れを利用して腹部へと向けて放たれた拳を回転することで紙一重で躱す。

 >そしてカリギュラの目の前に手を翳すと──

 

「ハァッ!」

 

 >黒き魔力の奔流がカリギュラを飲み込んだ。

 

 ヒューッ! 信じてたぜぇ、アルトリア・オルタァッ! 

 

 いやあ流石ですね。トップサーヴァントの名は伊達ではないのです。いいぞぉ! (パラガス)

 

 ……それにしても先程チラッと確認できましたが、カリギュラは汚染されてるみたいですね。

 

 はい、ではここで汚染とはなんぞやという兄貴達に向けて巨神ルートについての説明をしたいと思います。

 

 巨神ルートはその名の通り、巨神が登場するルートとなります。その都合上シナリオの何処で現れるかによって従来の流れとは色々なところが異なりますが、今回の場合ですとどうやらカリギュラのマスター権はレフではなく、巨神が持っていると考えていた方が良いでしょう。

 

 なぜそう判断したかと言うと先程の流れでカリギュラの胸元に霊子収集体(ヴォイドセル)に汚染されたもの特有の紫と発光する黄色またはオレンジ色の奇妙な紋様が刻まれた状態になっていました。

 

 それにより彼は巨神の尖兵となっています。加えて厄介なのが侵食されたものは大なり小なり霊子が強化されます。

 

 つまりは通常のサーヴァントとは思えないくらいに強くなっているということです。二章でこれとかクソゲーかな? 

 

 ま、巨神に侵食されていますと思考が破壊行動に偏るので隙を突くことは割と容易いんですけどね。そこら辺は救済措置として置かれているんでしょうか。

 

 それにしても巨神がマスター権を握っているということは、レフはもしかして……。いや、うんまあアルテラが出てる時点で何となくそんな予感はしてましたけど。

 

 思わずレフに憐憫を感じちゃうね(嘲笑)

 

「ぐっ……。この、程度、で!」

 

「遅いッ」

 

 >ジェット噴射の要領でカリギュラの側面に回ったアルトリア・オルタは強烈な蹴撃を彼の横っ腹に放つ。

 >もはや人を蹴ったとは思えぬほどの轟音を鳴り響かせると共にカリギュラはまるで弾丸のように地面と平行になるほどの速度で蹴り飛ばされた。

 

「……存外、やる。だが、余は、これしきで、倒れぬ」

 

「ちっ、後方に跳んで衝撃を逃したか。つくづくバーサーカーとは思えん動きだな」

 

 >凄まじい威力の蹴撃を食らったはずのカリギュラであったが、それでも彼はまるで何も効いていないかのように首をコキコキと鳴らしながら悠然と立っている。

 >そしてその視線の先にいるのはアルトリア・オルタ──ではなく、今も尚あなたを見つめていた。

 

 カリギュラのホモくんに対する殺意高くない? あれか、ネロとお手手繋いでたのがカリギュラ的にアウトだったんでしょうか。

 

 まあ、ネロを狂気に飲まれながらも溺愛してるほどの伯父馬鹿っぷりですからね。ホモくんの事を可愛い姪に付いた悪い虫か何かと思ってるんでしょう。

 

「……時間、か」

 

 >カリギュラが不意にそう呟くと膨れ上がっていた殺意がまるで空気の抜けた風船のように萎んでいった。

 

「さらば、だ。我が、愛しき、妹の子。そして、異邦の、者よ。覚えておけ──」

 

 >カリギュラの身体が透けて消える直前にあなたと目が合った。

 

「余は、お前の、魂を、必ず、破壊する」

 

 >カリギュラはそう告げるとこの場から完全に消え去った。

 

 カリギュラさあ……。ホモくんに対する殺意ヤバない? まさかネロと手を繋いでいただけでこんなにもターゲッティングされるとか思ってもなかったんですけど! 

 

「伯父上……」

 

『霊体化して移動したようだ。退散した、といったところかな。お疲れ様。様子からしてバーサーカーのクラス……なのかな? 仮にバーサーカーだとしたら自ら退避するとは考えづらいけど……。もしかしてマスターが存在するのか?』

 

「む? 姿は見えねど声はする。ふむ、魔術師の類でもいるのか?」

 

『魔術をお分かりとは話が早い。そう僕達はカルデアという組織の──』

 

「まあどうでもよい」

 

『酷くないかい!?』

 

 >少しだけ格好付けて自己紹介を紹介しようとしたロマニを深紅の女性はばっさりと一言で撃沈させた。

 >深紅の女性は改めてあなた達に向き直ると威風堂々たる立ち振る舞いであなた達を労い始めた。

 

「皆見事な働きであった。改めて、褒めて遣わす! 氏素性を尋ねる前に、まずは余からだ。余こそ──」

 

 >深紅の女性はまるで演劇のように胸に手を当て己の名を告げる。

 

「ローマ帝国第五皇帝、ネロ・クラウディウスである!」

 

 あ、立香ちゃんがなんか凄い微妙な顔してますね。なんかそんな気はしてたなあ、みたいなそんな顔です。まあ、アルトリアもいますしね。歴史では男と言われていたネロが女でもアルトリアという前例がある以上、そんなに衝撃的ではないんでしょう。

 

「む、何故そこな大盾の少女しか驚いておらぬ。余だよ? 余はローマ皇帝だぞ? もっと驚くというのが筋というものであろう!」

 

 いやまあ……アルトリアがね……? 

 

 >この場にいるマシュを除いたカルデアメンバーがちらりとアルトリア・オルタに視線を向ける。

 

「む、なんだ貴様ら。何か私に言いたい事でもあるのか」

 

「いや、そんな別に……」

 

「あるんだな? あるんだろう、素直に言ったらどうだ。ん?」

 

「……ップ」

 

「おい、ランサー。貴様今笑ったか?」

 

「いやいや、笑ってなんざ──どわぁっ!?」

 

 >アルトリア・オルタはクーフーリンが何かを言う前に斬り殺すと言わんばかりに斬りかかった。

 >それを間一髪のところで避けたクーフーリンは洒落にならねえと言わんばかりにアルトリア・オルタから大きく距離を取る。

 

「いきなり何しやがる!?」

 

「そこになおれランサー。腹が立ったから今すぐ膾斬りにしてくれる」

 

「暴君かてめぇは!?」

 

「暴君だとも」

 

 >クーフーリンの抑止を一切聞かずに襲い掛かるアルトリア・オルタにあなた達は思わず苦笑してしまう。

 >早く止めねばこのままだとクーフーリンがカルデアに還ってしまうかもしれないためアルトリア・オルタに止めるように伝える。

 

「おい望幸、なんだその目は。……ああ、もう分かった分かった。仕方があるまい」

 

「ふぅ、助かったぜ坊主。ありがとうな」

 

「──この特異点の修復が終わった後で膾斬りにしてやる」

 

「おい、坊主。あいつに令呪使って止めてくれねえか?」

 

 いやあ、流石にこんなことで令呪を使うのはちょっと……。まあ兄貴がギャグでもシリアスでも死ぬのはFate名物だし仕方ないね。

 

 そんなところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




現在公開されているキャストリアの設定を見つつこの小説のアルトリアの設定見て思ったんですが、色々と被っとる──!

正味な話、こんな事になるとは思いもよらなんだ。
キャメロットとか小説のラスト辺りが色々とやばい事になってしまった。
どうしよう。

仕方が無いので失踪します。


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歪み

お久しぶりの初投稿です


 そこに入った瞬間、立香は驚きの余り息を呑んだ。

 

「見るがよい、しかして感動に打ち震えるのだっ! これが余の都、童女でさえ讃える花の都である!」

 

「……っ」

 

「みんな笑ってる……」

 

 ネロの後を追って着いた都市は今まで何度も恐ろしい思いをしたであろうことは間違いないだろうに、それでもそこで暮らす人々は笑顔を絶やしてはいなかった。その事に立香は驚いていた。

 

 辺りを見渡せば大道芸をやって周囲を笑顔にさせる者もいる。溌剌とした声で商売を行う者もいる。決して不安を抱いていないという訳では無いだろうにそれでも彼らは皆そんな不安を吹き飛ばそうと元気に振舞っているのだ。

 

 ──この国の人達は凄いなぁ。

 

 立香は純粋にそう思った。

 

 仮に自分が同じ状況に陥ったとして彼らのように振る舞うことが出来るのだろうか。恐怖を感じながらもそれでも必死に今を生きようとすることが。

 

 胸に生じた不安から無意識的にちらりと望幸の方を見た。

 

(あれ……?)

 

 普段変わらない無表情ではある。一見して興味も何も無いのだろうと思ってしまいそうではあるが、幼馴染の立香にはなんとなくだが、この国で暮らす人々を見つめる目がどことなく優しい気がしたのだ。

 

 その青空のように輝く瞳も相まってその姿はまるで──

 

「ん、どうかしたか?」

 

「あっ、ううん。何でもないよ!」

 

「そうか」

 

 立香は慌ててそう言って彼から目を逸らす。いくら幼馴染と言えど見惚れてた、なんてそんな恥ずかしいことは立香には言えなかった。

 

 立香が悶々とした気持ちを抱いている中ネロは果物を売っている屋台に近づくとその中から一つ林檎を手にした。

 

「店主よ、この林檎一ついただくぞ?」

 

「へいらっしゃ……ああっ、皇帝陛下! どうぞお持ちください。陛下とローマに栄光あれ!」

 

 ネロは店主から戴いた赤く熟れた林檎にそのまま齧り付くと満足気な表情を浮かべた。

 

「うむ、うむ……これは実に良い林檎だな」

 

 シャリシャリと音を鳴らしながら食べるネロは立香達の方へと視線を向けるとお前たちもどうだと聞いてきた。

 

「やや行儀は悪かろうが戦場帰り故に気にするな。戦場疲れには甘い果物が効果的だ」

 

「なら、俺にも一つ林檎を貰えるか?」

 

「うむ、構わんぞ」

 

 その言葉に反応したのは望幸だった。ネロはもう一つ林檎を手に取ると彼に渡そうとする。

 

 ──瞬間、不意に望幸の横顔が誰かと被って見えた。

 

 絹のように艶のある白い髪に赤く輝くルビーのような宝石の如き赤い瞳のよく分からない誰か。輪郭や顔立ちはぼやけて良く分からず、せいぜい分かるのが髪の色と目の色だけ。

 

 艶のある黒髪に快晴の空を思わせる青の瞳を持つ望幸とは正反対にも程があるというのに、どうしてか立香はその人が彼の横顔と被って仕方がなかった。

 

 ──もう少しで思い出せそうな気がする。

 

 記憶の奥底に沈められていた記憶を掘り起こそうとじっと望幸の横顔を見ていると不意に現れた誰かとぶつかってしまった。

 

「おっと、ごめんよぉ?」

 

「わわっ、こちらこそ──って、あれ?」

 

 いた筈だ。そう、確かにそこにいた筈なのだ。だと言うのにぶつかったであろう人は辺りを見渡しても影すら残っていなかった。

 

 思わず首を傾げているとその様子に気が付いたマシュが立香の方へと近づいてきた。

 

「どうかしましたか先輩?」

 

「ああ、うん。今ね、人にぶつかったと思ったんだけど周りにぶつかった人が見当たらなくてね」

 

 そう伝えた瞬間、マシュはとても不思議そうな顔で立香を見つめた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「へっ?」

 

 ぶつかりそうな人はいなかった? 

 

 それは一体どういう事なのだろうか。現に私は誰かにぶつかった。当たった感触からしてもそれが幻とは思えない。だが、マシュの言う通りならばそもそも私の周りには人がいなかったという事になる。

 

 なら私がぶつかったのは一体──? 

 

 そこまで考えたところで立香の背中にじわりと嫌な汗が吹き出る。

 

「……ねえ、ロマニ。私達の周辺にサーヴァントか何かがいないか分からないかな?」

 

『ちょっと待ってね。……うん、サーヴァント反応は特にないかな』

 

「クーフーリンは?」

 

「いんや、俺も特にこれといった気配は感じなかったが……」

 

 立香に尋ねられたクーフーリンは左右に首を振る。カルデア側からの観測にも戦士として超一流のクーフーリンの気配察知にも引っかからないのであれば、あれは立香の思い違いであったと考えた方が余程納得がいく。

 

 ──だが、それでも立香は何かが喉に引っかかるような感じがしてならなかった。

 

 声からして男ではあると思う。だが、それ以上に不思議なのは全身を襲った寒気と尋常ではない忌避感だった。あの一瞬、ぞわりと全身が総毛立った。

 

「それじゃあロマニ、他に何か変わったこととかない?」

 

『他に変わったことと言えば……って、うん? 珍しいな、望幸くんのバイタルに少し乱れがある。立香ちゃん、今望幸くんはどんな様子か教えてくれないかな』

 

 ロマニにそう言われて立香が視線を望幸の方へと向けると、そこには珍しくしょんぼりした様子の彼の姿があった。とは言っても幼馴染の立香だけに分かるような微妙な表情ではあるのだが。

 

「ちょっと落ち込んでるのかな」

 

 その原因はなんだろうとじっと望幸の方を見つめていると、彼が手に持っているのが林檎ではなく洋梨であることに気がついた。

 

「……もしかして林檎が貰えなくて落ち込んでる?」

 

 もしそうだとするのならばよく無愛想な奴だと勘違いされている彼にもあんなにも可愛らしい所があったのだなと思われる事だろう。

 

 何せ林檎が貰えなくて若干落ち込んでいるのだから。

 

 彼の新たな一面が見ることができたと落ち込んでいる彼には悪いが立香は内心喜んでしまう。

 

『へえ……望幸くんって林檎が好きだったんだね。ならいつも色々な和菓子貰ってるお礼に僕も彼にいくつか林檎をあげようかな』

 

 ロマニがなんとなしにそう呟くとその言葉に真っ先に反応したのは望幸ではなく、アルトリア・オルタであった。

 

「おい、一応聞いておくがそれは金色に輝く林檎ではないだろうな」

 

 彼から少し離れた所にいるアルトリア・オルタは彼に聞こえないぐらいの小声で尚且つドスの利いた声でロマニに問い質すという何とも器用なことをして聞いてくる。

 

『いやいや、流石にそんな金色に輝く林檎なんてもの持ってないよ。僕が彼にあげるつもりなのはそこらで売られている極一般的な林檎だよ』

 

「ふん、ならば良い」

 

 アルトリア・オルタはそう言うと最早話すことは無いと言わんばかりに望幸の方へと向かっていった。

 

 その後ろ姿に立香は苦笑しながら彼女もまた微妙に落ち込んでいる彼のもとへと走り寄る。この特異点を無事に修復することが出来たのなら彼の好物であろう林檎を使ったお菓子でも振舞ってみようかなと考えて。

 

「あれ? そう言えば私──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 望幸の横顔を見て何かあったような気がしたが、まあいいかと立香は一人納得して彼の後について行く。きっと忘れるということはさほど大切な事ではなかったのだろう。

 

 そう考えた立香は何やら望幸と話しているネロとの会話に混ざるべく彼等の話を聞く。

 

「さて、ひとつ聞きたいのだがそなた達は余を助けるのが目的とそう言っていたな?」

 

「ああ、そういう事になる。俺たちの求めるものは聖杯と呼ばれる特別な力を持った魔術の品だ。その聖杯が今の異常な事態を引き起こしている。故にそれを回収出来ればこの異常事態は自ずと終息するだろう。……ん?

 

「突拍子のない話だと思われるでしょうが、凡そ望幸さんの言う通りです」

 

 その言葉を受けてネロは何やら考える素振りを見せる。

 

「いや、不思議と違和感はない。だが、その聖なる杯というのは……妙に気にかかるというか。いや、何でもあるまい。余の杞憂であろう。いつかそんな悪夢を見たような気がしただけだ」

 

 ネロはそう言うと左右に首を振って、いつも通りの天真爛漫で華のような笑顔を浮かべる。

 

「よし、話の続きは余の館にてゆっくりやるとしよう──って、む? あの者達は何処へ行った?」

 

 ネロにそう言われて立香達は今気がついた。先程までいた筈の望幸がいつの間にかいなくなっている。いや、望幸だけではない。彼のサーヴァントであるアルトリア・オルタもいなくなっていた。

 

 一体何処に──

 

 そう言おうとした途端、市場の方から何かが空から落ちてきたような轟音が鳴り響いた。

 

「う、うわああああ!? 怪物が出たぞぉぉおお!」

 

 市場から悲鳴が上がった。

 

 加えて悲鳴の主は怪物と言っていたことからこのローマに来てから初めて戦った異形の巨大生物が来たということだろうことは簡単に予測がついた。

 

「何っ!? 余のローマで、余の民に対して何たる事を! 参るぞ!」

 

「先輩、私達も行きましょう! 市民が襲われています!」

 

「うん! クーフーリンも力を貸して!」

 

「おうよ、任せな」

 

 悲鳴のした方へ人波を掻き分けて急行するとそこには──

 

「こんなものか」

 

 空から来たであろう約10mはあろう大きさの怪鳥が首を切り落とされた死体となり、そのすぐ側にいる剣を血に染めたアルトリア・オルタの姿、そして血を浴びてしまったのか血みどろになっている望幸の姿があった。

 

「そなた達は何故ここに──いや、今はそれはいい。怪我人はおらぬか?」

 

 ネロは近くにいた市民に話しかけると、市民は恐縮しながらもネロの質問に対して答えた。

 

「は、はい。私達には怪我はありません皇帝陛下。そこに立っている御二方が、あの怪物が暴れる前に倒してくれたおかげで被害もさほどありません」

 

「ふむ、そうか。ならば良い。凡そ予測はつくが、これは何が起きた結果こうなったのだ?」

 

 ネロがそう聞くと市民は少々歯切れ悪くもポツポツと語り始めた。

 

「私の目には速すぎてなにが起きたかは詳しくはわからんのですけど、あの怪物が空から落ちてきて暴れようとした途端、彼らが怪物と同じように空から落ちてきたと思ったら怪物の首が落ちていたんですよ」

 

「成程な、二人共被害が出る前に倒してくれたことを感謝するぞ。だが、あれにいつ気が付いた? それにどうやって空から一緒に降ってきたのだ」

 

 それは当然の質問と言えるだろう。先程まで一緒に横に歩いて喋っていたというのにいつの間にか離れており、その上市民を襲ってきた怪鳥を被害が出る前に倒しているのだ。

 

「話をしている時に偶然上空にいたのを見つけてな。後は俺の魔術を使って移動しただけだ」

 

「……ふむ」

 

 何の気なしにそういうが、ネロには妙な引っ掛かりがあった。偶然上空にいたのを発見したと言ってはいるが、対処するまでが異常とも言える程に早い。

 

 ──まるで予め分かっていたかのように行動している。

 

 考え過ぎと言われればそこまでだが、ネロにはそういう風に思えて仕方がなかった。それに加えてこの妙な既視感だ。

 

 今まで見たことも無い事態だというのに、何故か知っているような気がしてならない。そしてそれが一番当てはまるのが目の前に立つ青年──望幸と名乗る者だ。

 

 分からない、分からないが何故だか彼のことを知っている気がする。

 

 彼らがこのローマを助けに来たということはネロの直感とこの既視感も相まって間違いはないだろう。だが、目の前に立つ彼を見る度どうしようもない不安に駆られるのだ。

 

 彼はこのローマで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とネロは漠然とした不安と共に懸念を抱いている。

 

(ここで問い質してみるのも良いが……)

 

 ネロは彼の顔をじっと見てみるが、返ってくるのは機械的なまでに一切の感情を浮かべない無表情であった。その容貌に何処か胸の奥に小さな痛みを感じる。

 

(……いや、問い質すのはよそう。余の直感がそれはまずいと訴えかけておる)

 

 そう決めるとネロは彼から視線を切り、自分の持つ館へ行くために付いてくるようにカルデア一行に伝える。

 

「まあよい、余の民が無事であったのだ。それに感謝こそすれど他の何かを思うことなどありはせん。では改めて余の館へ来るが良い。今のローマの詳しい話はそこでするとしよう」

 

 ネロがそう言うと館の方へと足を運ぶ為に体を翻したその瞬間、ネロの横を黒いフードを被った何者かが通り過ぎた。

 

「……っ!?」

 

 ──瞬間、強烈な既視感を感じた。

 

 知っている、知っている知っている知っている! 余はあの者の匂いも、身に纏う雰囲気さえも何もかも知っている。

 

 ネロは急いで後ろを振り向くがそこには何事かと驚いた様子の立香達しかいなかった。

 

 気のせいか? いや、そんな馬鹿なことがあるか。アレを余が忘れるはずが──

 

「──む? 余は今何を……」

 

 ズキズキと急に痛み始めた頭をネロは抑えこむ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「……ん、心配かけたなもう大丈夫だ盾の少女よ」

 

 ネロはそれだけ言うと今度こそ館の方へと歩き出した。

 

 何かを忘れてしまったような気がする。だが、思い出そうとしてもノイズが走ったかのように鮮明に思い出すことが出来ない。余が忘れたものとは一体なんだったか、そう考えるも忘れたということはさほど大事という訳でもあるまいとネロは一人納得した。

 

「さあ行くぞカルデアの者達よ! 余の後について参れ!」

 

 溌剌とした声を上げるネロの後を追って立香達は今度こそ館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ろ姿を遥か遠くの建物の屋根で黒いフードを被った何者かがじっと見つめていた。

 

「立香ちゃんの記憶が戻りかけているのは予測出来ていたが、まさかこの時代のネロの記憶まで残り始めていたとはね。お陰様で俺が出張ることになるとはね」

 

 これも因果の歪みって奴かねと黒いフードを被った者はため息を吐きながらそう呟く。そしてその黒いフードの影から薄らと見える赤の瞳は彼女達に何処か優しさを含んだ視線を向ける。

 

「フフ、彼奴も上手くやってるみたいだし、俺達も舞台から落伍した者らしく他の連中にバレないように裏方に徹そうかね」

 

 黒いフードを被った者は愉しげな笑みを浮かべると黒い霧がその者を包み込み、そして晴れた時にはまるで最初からそこに誰もいなかったかの如く何も無くなっていた。

 




ネロが望幸くんに林檎をあげなかったのはなんか物凄い嫌な感じがしたからという理由で林檎をあげなかったり……。

これはRTAなのか、勘違いものなのか…。 タイトル詐欺小説みたいになってきた真夏の夜、加速するRTAはついに危険な領域へと突入する。

キャストリア爆死したメンタルで古戦場回したので完全にメンタルが潰れました`( °꒳° )´

遅くなって申し訳ないので失踪させていただきます。


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館にて語る


いつも誤字報告をしてくれる人達と感想をくれる人達に感謝を込めて初投稿です。



 

 ローマの現状説明から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 さて、無事ネロの館に着いて彼女から現状のローマについての情報をいくつか貰いました。まあ、大凡の流れは分かるので倍速します。

 

 ではネロちゃんが喋ってる内に今回のローマの現状について三行で説明しますね。

 

 ・異形が発生し始めたのは約1週間ほど前。

 ・戦ってみたけど戦力差がデカすぎて勝てない。

 ・異形の他に人も混じってる。

 ・これ無理ゾ。

 

 まあ大体こんな感じですね。えっ? 三行で説明出来てないじゃないかって? 誤差だよ誤差誤差。

 

「ああ、そうであった。真相は定かではないが巨大な人型らしき姿を見たと民衆から声も上がってきておる。単なる噂かもしれんが一応伝えておくぞ」

 

「巨人……なのかな?」

 

『うーん、この時代に巨人がいるとは聞いたことがないなあ……。それにあの巨大な異形は一体どこから来たんだろう? あれほど大きいのなら何処から来たかなんて分かりそうなものなんだけどな』

 

 巨神ですねぇ! 

 

 まあこんなこと言ったら何で知ってるのと怪しまれるので言いませんけども。まあ、今までの試行回数から考えるに今後の流れ的には巨神の痕跡を探索、その後調査してから巨神との戦いという感じではないでしょうかね。

 

 まあ、その前に巨神が現れたら色んな意味で終わりですけどね! 

 

 ルート壊れちゃぁぅ。

 

「余もいくつかのポイントに斥候を放ってはみたが、いずれも戻っては来ておらぬ。出処さえ分かればそこを一気に叩くのだが……」

 

 >ネロはそれに、と話を続けるがその表情は何処か沈んでいるように見えた。

 

「……いや、何でもない。さして気にかける事ではなかろう。あんなもの単なる妄言にしかすぎぬ」

 

 >ネロはそう言うがそれは何処か自分に対して言い聞かせるようにも見えた。

 >それに気がついたのは立香だった。

 

「何か気になることでもあったの?」

 

「何でもな……いや、そうさなここは語るべきか。先刻、共にある男を目の当たりにしたであろう。奴の名はカリギュラ。貴公たちが来る前に余の軍勢をあの異形共とともに屠った男。このローマに仇なす大逆者にして、この、余の……」

 

 >ネロは言葉に詰まっていた。

 >それもそうだろう。

 >なぜならその男はこのローマの元皇帝にしてネロにとっての──

 

「……伯父、なのだ」

 

 おじさんやめちくり〜。

 

 いや本当にカリおじはさあ……。味方になると運用にそこそこ困るし、敵になったら敵になったで一番嫌なタイプのサーヴァントなんですよねぇ。

 

 何が嫌かってカリおじの宝具です。カリおじの宝具効果はスキル封印と宝具封印の妨害系というバーサーカーにしては珍しい宝具ですが、問題はそこではありません。

 

 一番の問題は宝具効果の一つである、空から投射される月の光を通じて自身の狂気を拡散する、広範囲型精神汚染攻撃。

 

 これ言ってしまえば、強制的にストレスゲージをMAXにしてストレス値において最悪と名高いデバフの一角である発狂を発動させるんですよ。

 

 これを使われてしまった場合、本RTAは殆ど詰みになってしまいます。何せ宝具とスキルを封印された上に狂気という名の発狂デバフをバラ撒いて来ますからね。立て直しが殆ど利きません。

 

 素で精神干渉を無効化できる存在がいればいいのですが、生憎と今回のサーヴァントにはそういう存在はあまりいません。

 

 しいてあげるのならば、「  」に接続している両儀式くらいのものでしょう。

 

 両儀式は接続しているものがものなので狂気を無効化することができます。そして宝具である直死の魔眼により概念として存在するものすら殺せる彼女は味方の弱体効果を殺すことで擬似的に弱体解除ができます。なので、いざとなったら使われた瞬間に式の宝具を使えば良さそうですが、ワンテンポでも遅れると最悪の事態になります。

 

 なのでカリおじには宝具を使わせないことを優先してやるべきです。

 

 なお余談ですが、ホモくんはストレス値という概念がないので発狂はせずにただ単に一定時間魔術が使えなくなるだけです。まあそれでもクソほどきついですけどね!? 

 

 ちなみにいくつかの試走でローマ勢と人理修復をした事があるんですよね。勿論、その時にカリおじも一緒にいたんですが、凄く運用方法に悩みましたね。何せ、カリおじの宝具効果である狂気は敵味方関係なしですし、加えて宝具が発動できるのは月が出ている夜の間だけですし……。

 

 まあそれでも神祖ことロムルスやらDEBUことカエサルやらネロなんかと一緒に出撃して上手いこと戦ってましたけどねえ。

 

 当時のホモくんは置換魔術ではなく、エミヤと似た投影魔術でやっていたんですよね。

 

 ただ、やはりと言うべきでしょうね。当時のホモくんではエミヤみたいな投影魔術を行使することは出来ませんでした。エミヤみたく見た事のある剣の宝具を投影することが出来れば良かったんですけど、ホモくんが出来たのは近代兵器の投影だけでしたね。

 

 勿論込められる神秘がクソほど薄いのでサーヴァントに対する有効打にはならず、アサルトライフルやらSMGなんかを大量に投影して近付けさせないために弾幕を張りまくるか、爆弾を大量に投影してボマーするかのどちらかでしたね。

 

 まるで何処ぞの魔術師殺しみたいなムーヴしてましたね。

 

 まあ、その時は最後の最後でホモくんが心臓ぶち抜かれて死んでしまったんですけど。その時のホモくんには不死性スキルや耐久スキルがなかったので今回のホモくんみたく、無茶があんまり出来なかったんですよね。

 

 結局ローマ関連のいくつかのトロフィーをゲットしてその時の試走は終わっちゃいましたね。確かトロフィー名は……「七つの丘」と後は「999本の薔薇」でしたかね? 

 

 他にもあったとは思いますが現状思い出せるのはこれくらいですね。

 

 話が逸れましたね。取り敢えず今度カリおじに出会った場合、全力で殺しにかかります。出来れば昼に出会うのが望ましいですが、ダメならダメで宝具が発動される前にアルトリア・オルタの宝具を連射してでも倒しに行きましょう。

 

 おっと、話しているうちに結構話が進んでいますね。

 

「口惜しいが、もはや余の力だけではローマに仇なす者共はどうにもならん。故に、だ。貴公たちに命じる、いや、頼もう!」

 

 >ネロはあなた達を力強い光の灯った瞳で見つめる。

 

「──余の客将となるがよい! 代わりに聖杯とやらを入手するその目的、余とローマは全力で後援しよう!」

 

 しょうがねぇなぁ〜(悟空)

 

『それはこちらとしても願ってもない申し出だ。恐らくボクらの目的は共通ではある』

 

「そうですね、先輩達はどう思いますか?」

 

「うん、協力しようと思うよ。望幸もそれでいいよね?」

 

(協力)やりますねぇ! やりますやります! 

 

 >あなたは立香の問いに対して黙って頷いた。

 

「うん、分かった。クーフーリンも力を貸してね」

 

「おうよ、俺はマスターの槍として存分に腕を振るわせてもらうぜ」

 

「……望幸、私に対しては何かないのか?」

 

 >少しだけ拗ねた様な様子であなたの方を見るアルトリア・オルタ。

 >どうやら放置気味になっていたのが嫌だったのかもしれない。

 >あなたはそんなアルトリア・オルタに対してアルトリアの力が必要だ、と言った。

 

 何だこの王様!? 寂しがり屋かぁ〜? 

 

 いやまあ、実際アルトリアは根っこは素直で負けず嫌いの何処にでもいるような少女なんですよね。ただそれを今まで戦場を駆け抜けてきた騎士としての誇りで覆うことで表面化させないだけで。

 

「……ん」

 

 >アルトリア・オルタはそう言ってそっぽを向いた。

 >そっぽを向いて表情は伺えないが、心なしかアルトリア・オルタの耳が赤くなっているような気がする。

 

 うーん、この反応よ。自分から仕掛けておいて赤面するところとか生前から本当に変わりませんね。騎士然とした振る舞いを続けていたのと根っこは乙女なせいで赤面しやすい上にヘタレ。

 

 ここら辺はオルタ化してもあんまり変わっていないんだねぇ、王様は。

 

 そんなんだからグランドクソ野郎ことマーリンに弄られまくってたのでは……? 

 

「……んんっ!」

 

 >二人の間に流れる微妙な雰囲気をネロは払うかのように咳をして、全員の視線を集める。

 

「兎に角だ、貴公達の協力に感謝するぞ。この戦いに決着がついた暁には貴公達の望むものを何でも与えよう。……ああ、姿の見えぬ魔術師殿にも何か用意した方が良いかな?」

 

 ん? いまなんでもって言ったよね? 

 

『いいえ、ボクのことはお構いなく。彼らの寝床さえ確保していただければ充分です。時に皇帝陛下、レフ・ライノールという名に聞き覚えはありますか?』

 

「ふむ」

 

 >ネロはその名前を聞くと口元に手をやって自身の記憶を探り始めた。

 

「……いや、聞いたことはないな。何者だ?」

 

「私達の時代の魔術師です。彼はカルデアを、人類の全てを裏切りました」

 

 >言葉の端に棘を感じるような言い方ではあるが、その声音は何処か悩んでいるような、そんな複雑な心境が混じったようにマシュはネロに伝える。

 

 いやあ、やっぱりナスビちゃんは良い子ですよねぇ。実際に裏切る所も目の当たりにしていると言うのに、それでも自分を育ててくれた内の一人であるからこそ負の感情をぶつける事が出来ていないんですよ。

 

 そんな彼女だからこそ厄災の獣が懐いたんですかね? 

 

「魔術師、か……。そうさな、それならばあの異形共が現れる少し前までは強大な魔術を操る輩が最前線で我が軍を蹂躙している様を生き残った兵士が見かけたと聞いた」

 

 あっ、ふ〜ん(察し)

 

「今は現れていないということか?」

 

「そうだ。異形共が現れてからぱったりと見かけなくなったのだ」

 

 >アルトリア・オルタの問いに対してネロはそう答える。

 >それを聞いた立香はその魔術師がこの事態を引き起こしているのではないかと考えた。

 

「あの、もしかしてこの事態ってレフが引き起こしたんじゃないかな? 化物達が現れてから見なくなるなんて何だかとても怪しく思うし……」

 

「ふむ、立香の言うことは間違ってはおらんと余も思う。だが、これは勘なのだがこの事態はそれだけではないと思うのだ」

 

「まあ、そうだなァ……。仮に俺がレフって野郎だったらあのバケモン共を召喚したとしても戦の何処かにゃいるぜ」

 

 >クーフーリンの言うこともまた正しい。

 >レフ・ライノールがあの異形達の召喚主だとすれば、周囲のどこかにいなくてはいけないはずだ。

 

 皆議論していますが、これほぼ確定的にアルテラにレ//フされてますねぇ! 

 出オチマンの癖に出オチにすらなれない魔神柱がいるってこれマジ? 

 

 あ ほ く さ

 

 やめたらこの仕事? そんなんだからゲの字にお使いも出来ないのかと言われるんだよなあ……。まあ、画面外でやられているのはRTAの都合上大変ありがたいのでレ//フ君にはこのままでいてもらいたいですねぇ! 

 

『判断するには材料が足りないけれど、可能性はありそうだね。皇帝陛下一つお願いが』

 

「申してみよ」

 

『彼等を出来うる限り前線に置いて貰えませんか?』

 

「余は構わんが……貴公達は良いのか? 最前線になるぞ」

 

 >ネロはあなた達にそう聞く。

 >……最前線ともなるときっと想像を絶する程に激しい戦いの連続となるだろう。

 >辛い目にもあってもおかしくない。

 >ネロはそれでも良いのかとあなた達に問うているのだ。

 

 ここは頷く一択ですね。一応断ることも出来ますが、そうすると周囲からの評価も上がりづらいですし、何よりストーリーの進行が遅いですから。

 

 >あなたはネロの問いに対して少しの躊躇いもなく頷いた。

 

「なら私も一緒に行くよ。望幸だけ最前線に行かせる訳にはいかないから」

 

「ええ、そうですね。それにカルデアの皆さんをあの様な目に遭わせたレフ教授とは決着を付けなくてはなりません」

 

「あいわかった。その願い、ネロ・クラウディウスが必ず叶える。貴公達が仇敵を討ち果たすこと、余もローマの神々と神祖に願うとしよう」

 

 さてと、そろそろですかね? 

 

 >今後の方針が決まった直後に息を荒げながら一人の兵士が部屋に入ってきた。

 

「恐れながら皇帝陛下に申し上げます! 首都外壁の東門前にて、異形の集団が突如襲来してきました! 東門守備隊だけでは抑えきれません!」

 

「……むう、本当に空気の読めぬ連中よな。カルデアの者達よ、先刻の手腕をもう一度奮ってもらう時が来たようだ。その戦いが終わった暁には戦時中故に普段通りの宴とは言わんが、それでも贅を尽くした宴を開くことを誓おうではないか」

 

『立香ちゃん、望幸くん、マシュ。決して無茶だけはしないようにね。先程と同じようにいつサーヴァントが出てきてもおかしくはないんだから』

 

 >立香は一度目を閉じて大きく息を吸う。

 >今でも戦いとなると心の奥底から恐怖が湧き出てくる。

 >それでもそんな恐怖に負けないように心を落ち着ける。

 >大丈夫、大丈夫。

 >私は一人じゃない。

 >マシュが、クーフーリンが、アルトリアが。

 >そして何よりも望幸が傍にいるんだから。

 >立香はふーっ、と大きく息を吐いて目を開くと──

 

「出撃しよう、皆!」

 

「はい!」

 

 >立香の声に皆が頷く。

 >目指すは首都外壁の東門前。

 >襲来してきた異形達を退ける戦いが始まる──! 

 

 ああ〜ええやん! 気に入ったわ! 

 

 立香ちゃんの精神が良い方向に向かってますね。この調子でドンドン成長してほしいところですが、懸念すべき所もいくつかあります。

 

 そこはおいおい此方で修正していきましょうかね。

 

 キリがいいので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 





ちょっとした裏話ですが、ローマ勢との試走中で仲が一番良かったのはとある理由からネロではなく神祖様だったり。多分ローマ!とか一緒に言ってたと思う。

どちらにせよホモくんにはクソデカ感情がとんでくる。

ちなみに今メンタル面で一番やばいのは立香ちゃん。均衡が悪い方向に崩れれば間違いなくホモくんに依存する。だって立香ちゃんが平静を装えてるのホモくんが隣にいることが前提条件ですからね。

いなくなったら?知らんな(目そらし)

初投稿したので失踪します。


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東門防衛戦


無言初投稿。



 

 セプテム東門防衛戦から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 今回の東門防衛戦ですが、ぶっちゃけて言うとセプテム屈指の戦闘時間を誇る防衛戦となります。具体的に言うと最大で昼から夜までですね。馬鹿かな? 

 

 幸い東門防衛戦には敵サーヴァントは来ませんから雑魚を蹴散らすだけでいいので、如何に効率よく蹴散らすかのみを考えていきましょう。

 

 規定量の雑魚エネミーを倒せばその時点で戦闘が終了するので対軍宝具持ちなどの一気に消し飛ばせるタイプの宝具を持つサーヴァントがここでは重宝しますね。

 

 今回はアルトリア・オルタとクーフーリンというどちらも対軍宝具持ちなので防衛戦という名の殲滅戦では大活躍してくれますね。

 

 >あなた達が東門についた時、異形達に押されながらもそれでも一歩も引かずに戦い続けるローマ兵達の姿があった。

 

「お前達! 我らが突破されれば陛下が愛する民や我らの愛する者達がこのクソッタレ共に蹂躙されるとしれ!」

 

「常に互いにカバー出来るように立ち回れ! このクソ共は厄介なことに我らより数段強靭だ。だが、決して倒せぬ敵ではないのだ! 我ら東門守備隊の底力を見せつけるぞ!」

 

「「「オオオオオオオオ!!!」」」

 

 >東門守備隊の隊長であろう男が味方の士気を上げんと気概を吼える。

 >それに釣られるようにローマ兵達も吼える。

 >そうだ、守るんだ。

 >こんな奴らに俺達の愛する国を蹂躙されてなるものか。

 

 >───例え限界を迎えても守り続けるんだッ! 

 

 >本来なら既に蹂躙され尽くしててもおかしくはない程に異形達と彼等の力の差は明確だ。

 >だが──

 

「絶対に行かせねぇ……!」

 

 >既に死んでいてもおかしくはない程の傷を負ってもなお異形に組み付いて味方が殺しやすいように敵に張り付く兵士がいた。

 

「ごっ……!」

 

「くたばれぇぇえぇぇええ!!!」

 

 >もはや味方の盾にくらいにしかなれないと判断した兵士は躊躇いもなく味方を庇った。

 >そんな崩れ行く仲間を振り返りもせずにありったけの感情を込めて急所に剣を差し込む兵士がいた。

 

 えぇ……? (困惑)

 

 覚悟ガンギマリ兵士が今回多い……多くない? それに敵もめちゃくちゃ多いですね。まあ、今回に限って言えば敵は多少は多い方がいいので問題ないんですけど。

 

 だって素材も経験値もそこそこ貰えますしね! 

 

 さてと、とりあえずはアルトリア・オルタやクーフーリンには適当に蹴散らしてもらいましょう。

 

 その間にホモくんはオルレアンの時と同じく、味方陣営の回復に行きますよ〜行く行く。

 

 >あなたはアルトリア・オルタに異形達を倒すようにお願いすると急いで怪我をしているローマ兵達の下へと向かう。

 

「あっ、おい───」

 

 ローマ兵達の好感度稼ぎの時間と置換呪術のレベリングの時間だオッラァァン! 

 

「くそ……いてぇ……」

 

「ごぼっ! ぐぇっ……!」

 

「おい、しっかりしろ! こんな所で死ぬんじゃねえよ! 結婚したい相手がいんだろ!?」

 

 おっふ……。なんかこのローマ兵士は盛大なフラグを立ててたみたいですね。まあへし折るんですけど。

 

 というわけでオルレアンと同じく置換呪術で傷を回収してもっかい戦線に出てもらいましょう。モブとはいえ数の力は偉大ってそれ一番言われてますし、人間は群れる事で強くなるって聞くし、多少はね? 

 

 >あなたはローマ兵の傍に駆け寄り傷口にそっと手を当てる。

 

「あっ、おい、いきなり何をして──」

 

 >あなたは置換呪術を発動した。

 >HPが大幅に減少した。

 >パッシブスキル:不死の肉体が発動。

 >HPが回復した。

 

 はい、次。

 

「……ぁ? 何だ? もう痛くねえ。俺はァ死んじまったのか……?」

 

「馬鹿野郎死んでねえよ! 首都から来た援軍の人が治してくれたんだよ!」

 

 >あなたは他にも傷ついているローマ兵の下へ駆け寄り彼らが負った傷を全て置換呪術によって自分の体へと移し替えていく。

 >HPが大幅に減少した。

 >パッシブスキル:不死の肉体により死亡を回避。

 >HPが回復した。

 

 不死の肉体スキルがあるから回復魔術も使わずに片っ端から移せる傷は移してますけど、今だけで本来ならホモくんが3~4回ほど死ねるレベルのダメージを受けてますね。

 

 ですが、RTAにおいては何の問題はありません。

 

 どんどん傷を移してレベリングしていけ〜? 

 

 しかしまあ、やっぱホモくんの服が血で汚れていくのは何とも言えませんね。やはりここは立夏ちゃん達に気が付かれる前に一度適当な雑魚をブラボ並の血飛沫上げてぶっ倒して血を浴びないといけません。

 

 なので上手い具合にやられかけてるローマ兵辺りを助ける感じでぶっ倒せると好感度稼ぎと誤魔化しが出来て効率がいいんですよね。

 

 まあそこそこ激しめの戦いですしすぐ見つかるでしょう……っと、もういましたね。

 

「▅▅▂▂▅▂▅▂!!!」

 

「ぐっ……この……!」

 

 >熊のような姿をした四つの目を持つ異形が食い殺さんと血走った目で涎を垂らしながら必死に盾で食い止めているローマ兵にその強靭な四肢で掴みかかる。

 >ローマ兵も必死に抵抗しているがその圧倒的な体格差と力の前に次第に押され、食われるのも秒読みとなっている。

 

「クソッ! クソォッ! 死んでたまるかってんだ!」

 

 んふふ、いい感じですね。

 

 ローマ兵くんが迫真の抵抗をしているおかげで異形のタゲがこちらに向いていないので今なら盛大に即死技を叩き込めそうです。

 

 >あなたは熊のような異形の心臓目掛けて銃弾を放つ。

 >雷鳴を思わせるかのような炸裂音と共に銃弾は熊のような異形の身体へと食い込む。

 

「▅▅▂▂▅▂▅▅!?」

 

 >突然発生した胸の痛みに大きく怯む熊のような異形ではあるが、その分厚い筋肉と毛皮により銃弾は心臓まで到達していないだろう。

 

 ま、ここら辺は想定内ですね。強化弾使ってないですし。さてさて、ここからが置換呪術のエグいコンボが出来ますね。モツ抜きしてやるからなぁ!? 

 

 >あなたは置換呪術を発動した。

 

「▅▅▂▅▅▅▅!?」

 

 >瞬間、熊のような異形に突き刺さっていた銃弾とあなたの位置が入れ替わりあなたは敵の体内に埋まった腕に強化魔術を発動させ掻き乱す。

 >そして熊のような異形が暴れる前にあなたは力強く脈打つ心臓に触れると渾身の力で握り潰し、そして勢いよく引きずり出した。

 >あなたは全身に生暖かい血を浴びるのを感じながらも引きずり出したまるで割れた水風船のように潰れた心臓をべシャリと音を立てて投げ捨てる。

 

 ああ〜たまらねえぜ(投稿者変態呪術師)

 

 やっぱ時代は即死叩き込めるモツ抜き何だよなぁ。まあ、サーヴァントとかには一切出来ませんけどね。対魔力で防ぐことも出来ますし、そもそも銃弾が当たらないと意味ないわ仮に当たっても引き抜く前に反撃貰いますしね。

 

 悲しいなあ……(諸行無常)

 

 >あなたは振り返ってローマ兵に大丈夫かと尋ねた。

 

 ほらほら好感度上げるんだよあくしろよ。

 

「ヒッ!? だ、大丈夫だ! ありがとう助かった!」

 

 >明らかに怯えた様子のローマ兵はそれだけ言うと急いで別の場所へと走っていった。

 >ローマ兵を怖がらせてしまったようだ……。

 

 ウッソだろお前。好感度上がるどころが減ってるんですけど?? 

 

(気が)狂いそう……! 

 

 なーにがいけなかったんですかねぇ(土竜並感)

 

 ちゃんとタイミング見計らってあと少しで死にそうって時にいい感じに救出出来たと思うんですが、ローマ兵くんはどうやらホモくんのことを怖がってしまったようで。

 

 どうして……(現場猫)

 

 まあ、切り替えていきましょう。とりあえず目に付いた怪我人を治しつつ、適度にピンチになってる味方を助けるというムーブをしつつ、立香ちゃん達には殲滅を主にやってもらいましょう。

 

 >あなた達が必死に戦っている最中、不意に腹の底から揺さぶれるような重い音が戦場に聞こえた。

 

「なっ……あっ……?」

 

「嘘だろ……」

 

 >ローマ兵達が見上げたその先には全長30mはあろう程の巨大な猪らしき姿の異形が現れた。

 

 ファッ!? 

 

 お前どっから来てんだよ!? さっきまでいなかっただろ! いい加減にしろ! 

 

 はー、今回はいないかと思ってたんですがね。

 

 はい、あれは巨神ルートを走ったことのある人はご存知の通りクソデカ猪くんこと巨大魔猪です。しかも霊子収集体に汚染されているので通常巨大魔猪とは比べ物にならないくらいに強いです。

 

 攻撃範囲がクソデカな上に攻撃力も高い、加えて体力まで多いという三拍子揃った正直な話相手にしたくない敵トップクラスです。

 

 というよりもあのデカさはマジで厄介なんですよね。雑に突進されるだけでもこっちの被害は甚大なので、被害が出る前に倒す必要があるでしょう。

 

 ちなみに倒せなかったらそのまま首都に行って住民を根こそぎ食われるので何が何ででも防ぎましょう(1敗)

 

 取り敢えずは一度立香ちゃん達と合流しましょうかね。

 

 >あなたは立香達に合流すべく、一度空に向けて銃弾を放った。

 >そして置換呪術を発動し、上空へと転移すると立香達がローマ兵達を避難させるべく巨大な猪を食い止めている姿が見えた。

 

 おっ、いましたね。

 

 あちらに行くついでに魔猪からのヘイトを稼いでおきましょうか。

 

 >あなたは自身に強化魔術を施すと魔猪目掛けて銃を連射し、その全ての速度を置換呪術により己の速度へと置換する。

 >音速を優に超える速度に強化魔術を施しているあなたの体がギシギシと嫌な音を立てながら軋む。

 >HPが減少した。

 

 狙うは生物の中でも柔らかい部位の目玉です。

 

 >まるで流星の如く空を駆けながらあなたは巨大な魔猪目掛けて刀を構えて突き進む。

 

 ユクゾッ! ナントニンゲンホウダンッ! 

 

 >そしてあなたは轟音と共に寸分違わず巨大な魔猪の左眼に激突した。

 

「▅▅▂▅▅▅▂!!!」

 

 >あまりの衝撃に魔猪はその巨大な図体を大きく傾けさせる。

 

 オラァン! 二度と光を見れない体にしてやるぜ! 

 

 >あなたは二度、三度と何度も刀を魔猪の眼に目掛けて振り下ろし続ける。

 >あまりの激痛に魔猪はあなたを吹き飛ばさんと身体を大きく揺さぶる。

 

 ホモくんのライドォ……テクニックを舐めないで頂こう! 気合いでひっつくんだよォ! (無茶ぶり)

 

 >それでもなお必死にしがみついて攻撃を仕掛けるあなただが、遂には魔猪が地面に渾身の力で顔を叩きつける事で大きく弾き飛ばされた。

 >中々に強烈な勢いで弾き飛ばされたが、あなたは何とか衝撃を和らげて上手く着地することが出来た。

 

 ダメみたいですね……(即落ち二コマ)

 

 まあ、左眼潰せましたしまずまずと言ったところではないでしょうか。

 

「望幸!」

 

 >血塗れのあなたの姿を見て青ざめた表情で立香が走りよってきた。

 

「大丈夫なの!? 死んじゃ嫌だからね!?」

 

 >立香は涙目になりながらもケイローンから教わったであろう治癒魔術を使って必死にあなたを治そうとする。

 

 あらら、これはガバですね。

 

 立香ちゃんの目の前に血塗れで落下しちゃったからなんかパニック状態になってますね。しかもストレス値も急上昇してます。

 

 とりあえず言い訳をするだけしてこれ以上のストレス値の上昇を防いでカバーしておきましょう。

 

 >あなたは立香に全て返り血だから平気だと言う。

 

 大丈夫だって、安心しろよ。

 ホモは正直者って言うし、多少はね? 

 

「本当に? 本当に怪我してない? 嘘ついてないよね? だって望幸──」

 

『立香ちゃんの気持ちもわかるけれど望幸くんは嘘を言っていないよ。その証拠に彼のバイタルは正常な値を示し続けてる。精々が心拍数が上がっている位だけどそれも今の状況から鑑みるに正常の範囲内だ』

 

 >ロマニの言葉を受けて立香は引き下がった。

 >……それでもあなたの事が心配な様でチラチラと何度か視線を寄越してはいるのだが。

 

「しかしまァ、随分と派手な登場をしたな坊主」

 

 >クツクツと喉を鳴らして愉快そうに笑うクーフーリンではあるが、あなたを見つめるその紅の瞳はスっと細められていた。

 

「先程の攻撃……望幸、お前何をした?」

 

 速度を重ねて突撃しました! 

 

 こう言ってみるとケツワープか何かかな? 壁抜け出来そう(小並感)

 

 実際にやるとただ単に壁にめり込むか赤い染みになるだけですけどね(32敗)

 

 >あなたは置換魔術の応用で攻撃しただけだとアルトリア・オルタに言う。

 >それを聞いたアルトリア・オルタはほんの少しだけ怪訝そうな表情を浮かべるが、すぐに元の冷徹な表情に戻る。

 

「皆さん話はそこまでです。あの巨大な猪が今にもこちらに襲いかかってきそうです」

 

 >マシュの言う通り、左眼を失った巨大な魔猪が興奮したように立香達を──特にあなたに対して強烈な殺意を抱いて睨みつけている。

 >いつ攻撃を仕掛けてきてもおかしくはないだろう。

 

 おー、思った通りホモくんに凄いヘイトが寄ってますね。まあ、左眼を潰しましたし当たり前と言えば当たり前何ですが。

 

 さて、キリが良いので今回はここまでとなります。次回は巨大な魔猪の攻略戦です。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 





いきなり目の前で敵にモツ抜きをして血塗れになった見知らぬ人がこっちを見てきたらそらだって怖いわっていう。

今回の章は立香ちゃんの精神をガンガン揺さぶっていきたい。つまりはホモくんが大体酷い目にあう。まあRTAにおいては主人公が酷い目にあうのはいつもの事ですし……(諸行無常)

なんとなく失踪させていただきます。


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砕かれた欠片

あーでもないこーでもないと書き直し続けてたら一ヶ月たったので初投稿です。


 突如として現れた巨大な魔猪。

 

 仲間であるはずの異形ごと踏み潰しながらこちらへ──より正確に言うのならば望幸の方へと悠然と歩みを進める。

 

 残された右目には純然たる殺意と憤怒の意思を輝かせながらそれでも突っ込んでこないのは彼のそばに居る存在があったからだ。

 

「さて、どう殺るかね」

 

 クーフーリンはその紅の瞳をスっと細めて眼前の敵を見据える。

 

 怪物狩りなど飽きるくらいにしてきた。どれだけ強かろうが、どれだけ恐ろしかろうが彼にとっては一切合切関係がない。

 

 ──敵ならば殺す。

 

 凍土のように冷たい鏖殺の意思だけを纏って槍を構えながらも自身のマスターである立香とそしてその横にいる血塗れの望幸をその視界に入れる。

 

「立香、怪我はないか?」

 

「ちょっと擦り傷があるだけだよ。このくらい大丈夫!」

 

「ん、そうか。だが治せるものは今の内に治しておくべきだ」

 

 そう言って彼は魔術を行使する。ほんの一瞬浮かび上がる魔術陣をクーフーリンは決して見逃すことは無かった。

 

(……やっぱり、か)

 

 魔術師としてのクラス適性を持つクーフーリンは気付くことが出来た。彼が扱う魔術はかなり巧妙に偽装されてはいるが、それでもルーン魔術を修めているクーフーリンを誤魔化しきることは出来なかったのだ。

 

(ありゃあ()()()()()()()()()()()()()()()()()だ)

 

 彼が治癒魔術を使っているところは見たことがある。だが、今回立香に使用された魔術はそれではなかった。

 

 クーフーリンの脳裏に過ぎるのは彼が得意としている置換魔術。先程の魔術で当てはまるのならばそれしかないのだが、クーフーリンは己の知識の中にある置換魔術とは大きく異なっていることに気がついていた。

 

(スカサハなら分かるかもしれねえが……)

 

 自身の師ならば彼が何の魔術を行使しているのか理解することが出来ただろうが、クーフーリンには彼が今扱った魔術は自身のどの知識にも当てはまらない異常極まる魔術という事くらいしかわからなかった。

 

 ──しかしまァ……。

 

 彼奴は随分と立香には甘いものだと思う。それほど彼にとって立香が大事ということなのか。まあ、どちらにせよやる事は変わらない。

 

「楽しい楽しい怪物狩りの時間だ」

 

 そう呟いて──その言葉ごとクーフーリンは残像を残すほどの速度で魔猪へ肉薄する。

 

 一瞬で間を詰めたクーフーリンは朱き魔槍を魔猪の足首の腱を切断すべく空を裂きながら振るう。

 だが、魔猪の分厚い毛皮とそしてその身に纏う魔力が生み出した壁のようなものによりギシリという鈍い音を立てて止められてしまった。

 

「ほお……」

 

 小手調べではあったがそれでもそこいらにいる異形程度ならば簡単に斬り殺せる威力だった。だが、この魔猪はどうやら想像以上に硬いということが分かった。それもルーンを使わなければまともな傷は付けられないようなものなのだと。

 

 対して攻撃を食らった魔猪はクーフーリンをまるで鬱陶しい虫をみるかのような目で見下すとその巨大な足を振り上げて勢いよく踏みつけを行った。

 

 轟音と共に揺れる大地。

 

 蜘蛛の巣状に大きく陥没した大地が先程の一撃がどれほどの威力だったのかを物語っていた。

 

「ハッ、随分と楽しめそうだ」

 

 足が振り下ろされる時点で既に攻撃範囲内から離脱していたクーフーリンはその手に持つ魔槍に朱き魔力を迸らせて獰猛に嗤う。

 

 クーフーリンは空にルーン文字を描く。其れが示すは野牛。即ち野牛の如き力強さと勇猛さを術者に与える自己強化に属するルーン魔術であった。

 

「──行くぜ」

 

 そう呟いた瞬間、朱い残光が大地を駆けた。

 

 大地が抉れる程に力強く踏み込んだクーフーリンは正しく最速の英霊の名に違わない速度で魔猪へと肉薄する。その速度はあまりにも速く魔猪では全く目で追うことが出来なかった。

 

 凄まじい速度で接近し、先程は攻撃が通らなかった場所へ再度槍を振るう。

 風ごと抉り抜く様な速度で放たれた槍の一撃は容易く魔力の壁を突破し、その下にある毛皮を切り裂いて血肉を削り取る。

 

「▅▅▂▂▅▅▂▅!?」

 

 突如身体に迸る痛みに魔猪を絶叫をあげる。鼓膜が破れそうなほどの大音量で叫ぶ魔猪に流石のクーフーリンもその端正な顔を歪める。

 

 そしてその隙を狙ったかのように魔猪は足を振り上げるとクーフーリン目掛けて情けも容赦もなく鉄槌の如く足を振り落とした。

 

 先程とは比較にならない程の巨大なクレーターが出来上がる。巻き込まれた異形達は地面を赤く彩る塗料と成り果てた。

 

「クーフーリン!」

 

 さすがのクーフーリンでもあんな一撃を食らってしまえばと最悪な想像が浮かんだ立香の悲鳴が辺りに響く。

 

「心配すんなマスター。この程度の奴に殺られる俺じゃねえ!」

 

 空高く跳び上がったクーフーリンはまるで朱き流星の如く朱い魔力の残光を残しながら魔猪の脳天目掛けて強襲を仕掛ける。

 

 激突と共に轟音が鳴り響く。呪いの朱槍がバチバチと火花を撒き散らしながら魔猪の魔力の壁の中でも一層分厚い頭部の壁に少しずつ食い破っていく。

 

「▅▅▂▅▅!!!」

 

 魔猪は負けずに己が頭部に魔力を集中させて防御を固める。

 

 ──だがそれは間違いなく悪手でしかなかった。

 

「アルトリア」

 

 望幸がそう呼べば既にアルトリアは己が聖剣に馬鹿げた規模の魔力を収束させていた。そしてジェット機の様な速度で大地を踏み砕きながら魔猪の横っ腹に肉薄する。

 

 それに気がついた魔猪は急いで魔力を回して防御を固めようとはするが、頭部で槍を突き立てるクーフーリンがそれをやらせはしない。

 

 魔力の壁がほんの少し薄くなった瞬間、それを見抜いたクーフーリンが更に強く槍を突き立てる。ビシビシとまるでガラスに罅が入るような音を鳴らしながら肉を抉りとらんとジワジワと迫り来る。

 

 ──間違いなく詰みだ。

 

 馬鹿げた威力を誇るアルトリア・オルタの攻撃を何の防御もなしに受ければ容易くその身を滅ぼされることは間違いないし、かと言ってアルトリア・オルタの攻撃の防御に魔力を回せば脆弱になった魔力の壁をクーフーリンは突破し、その頭蓋に呪いの朱槍を突き立てることは間違いない。

 

 これで終わりだと誰かがそう思った瞬間──

 

「クーフーリン! アルトリア! 上だッ!」

 

 望幸の焦ったような声が響いた。

 

『不味いぞ!? 上空から高魔力反応だ!』

 

 続けてロマニが、いやカルデアの職員全員から焦った声が聞こえてきた。

 

『皆、急いでその場から離れて! あんな……あんなもの当たってしまえば塵一つ残らず消滅させられてしまう!』

 

 その言葉に立香達は空を見上げて絶句した。

 

「嘘……」

 

「あ、れは……」

 

 空から堕ちてきたのは魔術の素人の立香にすら分かるほどの破滅的な迄の魔力が込められた破壊の奔流であった。

 

 それもこの特異点に来て最初に見たものとはまるでに比較にならない程に巫山戯た魔力量と規模の攻撃だ。30mは優に超える魔猪がまるで米粒のようだ。

 

 カルデアの職員の誰かが逃げてと言ったが、そんなもの無理だろう。今から逃げたとてあれから逃げ切れるわけが無い。

 

 ローマ兵にも異形にも誰も彼もに等しく絶望が襲いかかる。

 

 誰かがもう終わりだと呟いてその手に持っていた武器を落とした。

 異形達はパニックになったように散り散りに逃げ出し始めた。

 

「チィッ!」

 

 それでもアルトリア・オルタとクーフーリンは決してその絶望に膝を折ることはなかった。

 

 アルトリア・オルタはその聖剣の一撃を魔猪から空から堕ちる破壊の奔流へ向けて解き放ち、クーフーリンは其れをサポートするようにルーン魔術による支援をアルトリア・オルタに施す。

 

 黒の極光が破壊の奔流とぶつかった瞬間、衝撃波がこの場にいる全員を襲った。

 

「先輩っ! 望幸さんっ! 私の後ろへ!」

 

 マシュが二人を庇うために襲いかかる衝撃波に歯を食いしばって盾を構える。

 

 ただの余波だけで大地は砕け、近くにある木々は全て薙ぎ倒された。人はまるで塵屑のように吹き飛ばされ、逃げ惑う異形達の中には衝撃波を近距離で食らったが為に身体を粉砕される者もいた。

 

 無論、魔猪とて例外ではない。

 

 ただの余波だけで魔力の壁がまるでクッキーの如く容易く砕け散り、分厚い毛皮と筋肉で覆われた天然の鎧はまるで紙切れのようにズタズタに引き裂かれた。

 

「────!!!」

 

 悲鳴ごと押し潰される。今すぐこの場から逃げ出したいと本能は轟々と叫ぶが、体が言うことを聞かない。

 

 そして魔猪すらもそんな状況なのであるからクーフーリンとアルトリア・オルタはもっと悲惨だ。

 

「ぐっ、ぅぅぅ……!」

 

 アルトリア・オルタは身に纏っていた鎧が砕けていくのを実感しながらも決して魔力を込めるのを止めることはしなかった。

 

 反動で体から血を吹き出しながらも決して威力を弱めることはしない。想像を絶する痛みが全身を襲っているというのにそれでもアルトリア・オルタの瞳からは決して光が消えることは無かった。

 

 寧ろ更に益々輝き始め、それに呼応するかの如く黒き極光の威力を増大していく。

 

「ぐっ、がァ……!」

 

 そしてそんな彼女をサポートするクーフーリンは彼女以上に傷が酷い。ルーン魔術による結界を張り続けて衝撃波からアルトリア・オルタを守り続けるが、それはあくまでアルトリア・オルタだけだ。

 

 キャスタークラスではないクーフーリンでは自分も守れる規模の結界を作ればこの衝撃波の前では濡れた障子紙の如く容易く突き破られるだろうことは予想出来ていた。

 

 だからこそクーフーリンはアルトリア・オルタにだけ結界を張ることで強度を高め、己の魔力を結界の維持に費やすことだけに集中していた。

 

 故にクーフーリンは至近距離でその衝撃波を何の防御も施さずに喰らい続けていた。

 

 全身が八つ裂きにされたような激痛を感じながらも今あれに対抗出来るのはアルトリア・オルタの宝具だけだと理解しているが故に捨て身の覚悟でサポートをする。

 

 全身から血飛沫を撒き散らし、血反吐をブチ撒けても決して結界の維持を止めることは無い。朦朧とする意識の中でただの意志力のみで立ち続けている。

 

 だが、無情にも破壊の奔流は徐々に徐々に黒の極光を呑み込み粉砕し始めた。

 

 圧力が増し始める破壊の奔流は更に威力が膨れ上がっていく。そして遂には黒の極光を呑み込んで──

 

ikisutuyz uodik

 

 何処からかノイズ混じりの言葉のような何かが辺りに響き渡った。

 

「え?」

 

 呆けた声を上げたのは誰だったか。立香か、もしくはマシュか。はたまたこの場にいる誰もが上げたのかもしれない。

 

 空から堕ちてきた破壊の奔流が突如として不自然な程に軌道を変えた。

 

 どこに? 

 

 それはマシュ達の方へ──より正確に言うのならば星崎望幸の方へと明確な殺意を持って堕ちてきていた。

 

「マスター! 嬢ちゃん!」

 

「望幸ッ!」

 

 アルトリアとクーフーリンの焦ったような声が聞こえるがその声はマシュの耳には届くことは無かった。

 

 まずいまずいまずい──! 

 

 マシュは瞬間的に理解してしまった。自分ではあれをどう足掻いても防ぎ切る事が出来ないということに。だからと言って大切な二人を見捨てて逃げるのか? 

 

 ──いいや、否だ。

 

 そんな事するくらいなら死んだ方がマシだとマシュの心が、マシュに宿る英霊の力が声高々に叫びを上げる。

 

 たとえこの身が滅びようとも絶対に先輩と望幸さんだけは守りきってみせると覚悟を決める。

 

「私が、私が絶対に守りきってみせます!」

 

 ガゴンッと大きな音を立てて大盾を地面に突き刺して衝撃に備える。

 

 空から堕ちてくる破壊の奔流はアルトリア・オルタの宝具を受けて多少なりとも勢いは弱まれど、それでも脅威であることには変わりはない。

 

「真名、偽装登録──」

 

 全身に魔力を回せ。

 どれだけ驚異的な力だろうが心を奮わせ続けろ。

 絶対に二人を守るんだ。

 

「宝具、展開します……!」

 

 空から迫る膨大な熱量を帯びた破壊の奔流。まともに受ければ滅びは必定。けれどもはや受け切るしか後ろの二人が助かる方法はないと知っているからこそマシュに撤退という二文字はない。

 

疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)ッ!!

 

 迎え撃つように展開される薄緑色の結界。マシュの守るという気持ちに呼応してより強固に、より堅牢な不可侵の盾として顕現する。

 

 そして遂に破壊の奔流と不可侵の盾が激突した。

 

「ぐっ、ぅぅううう……!」

 

 まるで隕石が衝突したような轟音を鳴り響かせながら破壊の奔流は薄緑色の結界を打ち砕かんと唸りを上げる。

 

 そんな破壊の奔流にマシュは必死に対抗する。

 

 大地が砕けんばかりに深く足を突き刺して一歩たりとも後退はせず、むしろ負けるものかと歯を食いしばって決して揺らぐことなき大樹の如く後ろにいる二人を守り続ける。

 

 しかし、ああやはりと言うべきなのか。

 

 徐々にではあるが、破壊の奔流が薄緑色の結界に少しずつ罅を入れ始めた。ビキビキと音を立てながらあと少しで砕けてしまう。

 

 やっぱり私では駄目なのか。諦観がマシュの心を支配しようとしたその時──

 

「令呪を以て命ずる──負けないで、マシュ!」

 

「先、輩……」

 

 立香の右手に刻まれた爛々と紅く輝く令呪がマシュに更なる力を与える。それは苛烈なものではなく、立香の人となりを表したかのような暖かな力だった。

 

 後ろを振り向くと恐怖を感じているのか目尻に涙を浮かばせて身体を震わせながらも自分のことを信じてくれている先輩の姿とこんな状況でも相変わらずの無表情で、けれど何処か自分の事を心配しているかのような望幸さんがいた。

 

 ──ああ、私が今ここで負けたらこの二人まで一緒に死ぬことになってしまうのか。

 

 そう思った瞬間、マシュの脳裏に誰かが映った。

 

『ギャラハッド、どうかアルトリアの事を頼む』

 

『マシュ、どうか立香を支えてあげてくれ』

 

 ザリザリとまるでテレビの砂嵐のようにその人の顔は隠されていて見えはしないけれども、その人はとても大事な人だった。守りたかった人だった。一緒に生きたかった人だった。

 

 そうだ──

 

「私は……私はっ、()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 マシュの折れかけていた心に火が灯る。そしてそれに呼応するかのように罅が入り、壊れかけだった薄緑色の結界がまるで時を巻き戻したかのように修復されていき、そしてほんの一瞬白亜の城壁のようなものが顕現した。

 

 それを見た望幸はほんの少しだけ驚いたかのように目を見開くとその口元に優しげな笑みを浮かべ、マシュの背中に手を当てて魔力を供給し始めた。

 

「マシュ、俺は君を信じるよ」

 

「──はいっ!」

 

 負けられない。そうだ、負けてたまるものか。あんな思いを抱くのは二度とごめんなのだから。だから今やるべきことはたったひとつ。

 

 ──私の大切な人達を死んでも守りきることだッ! 

 

「ああぁぁああぁあぁああッッ!!!」

 

 打ち砕かんと唸りを上げていた破壊の奔流がマシュの叫びと共により強固な守りへと変貌した結界に逆に押し込まれて始めた。

 

 何もかもを破壊し尽くす力を押し返すことで逆に奔流そのものが破壊されていく。

 

 あれほど巨大であった破壊の奔流はもはや見る影もなく痩せ細り、死を予感させる力はまるで感じられない。

 

 そして遂に破壊の奔流は完全に消滅した。

 

 後に残るはほんの少しの静寂と不可能と思われた二人を守りきるという偉業を成し遂げて荒く息を吐くマシュの姿だった。

 

「はあっ……はぁっ……!」

 

「──っ! マシュ!」

 

「わわっ! 先輩?」

 

 そんなマシュに立香は勢いよく抱きついた。その胸に宿る様々な感情が荒ぶっているかのように立香はマシュをぎゅうっと強く抱き締める。

 

「私達を守ってくれてありがとう!」

 

「……ええ。先輩達を守れて本当によかっ──」

 

 そう言葉を続けようとして──

 

『立香ちゃん! マシュ! 望幸くん! 急いでそこから離れて!』

 

 ロマニの切羽詰まった声が聞こえた。

 

「え?」

 

 そうしてマシュの口から漏れた言葉は空から再度堕ちてきたものに掻き消された。

 

「嘘……なんで……」

 

 震える声でそう呟く立香だが現実はあまりにも無情だった。空から堕ちてきているのは先程と全く変わらない規模の破壊の奔流。

 

 どうしようもない絶望が二人に襲いかかった。

 

 気力も魔力も何もかもを絞り出したマシュではもはやあれをもう一度防ぎ切ることは不可能だ。アルトリア・オルタもクーフーリンも先程ので疲弊していて抑えきることは出来ないであろうことは想像に難く無い。

 

 ──もう終わりだ。

 

 立香の心にその言葉が過って──

 

「大丈夫、今度は俺が守ってみせる」

 

 ──後ろから優しい声が聞こえた。

 

 二人は振り返る事すら出来ずに誰かに後ろから触られると一瞬のうちに視界が切り替わり、何処か離れた場所へと転移されていた。

 

 誰がやった? 

 

 そんなもの決まってる。

 

「望幸っ……!」

 

 立香は急いで先程までいたであろう場所に目を向けるとそこにはホッとしたような笑みを浮かべて立香とマシュの事を見つめている彼の姿があった。

 

「望幸さん!」

 

 マシュと立香は彼の下へ駆け出そうと手を伸ばして──彼は破壊の奔流に微笑を浮かべたまま飲み込まれた。

 

 轟音と共に大地は底が見えないほどに抉られ、近くにいたものは全てが塵屑のように吹き飛ばされる。

 

「あ、ああ……」

 

 声が出ない。

 足に力が入らない。

 自分が今どこに立っているのかも分からない。

 

 立香とマシュの心の内がじわりじわりと絶望に満たされる。

 

 守ると誓ったのに。

 一緒に生きて帰ると約束したのに。

 

 ボロボロと二人の瞳から大粒の涙が零れ始めて──

 

「立香、マシュ」

 

 背後から聞こえた声に二人はバッと振り返った。

 

 そこに立っていたのは間違いなく死んでしまったと思った星崎望幸だった。怪我のひとつもなく少しだけ居心地悪そうに此方を見つめている。

 

 そんな彼に立香とマシュはまるで突撃するかのように勢いよく抱きついた。

 

「よかった……よかったよぉ……!」

 

「望幸さん……生きてて、本当に良かった……!」

 

 痛いくらいに抱き締める二人に彼はまるで幼子をあやすかの様に頭を優しく撫でる。

 

「大丈夫、俺は()()()()()()()()()()()()()()

 

 優しくそう呟きながらもその目はこちらに向かってくるアルトリア・オルタとクーフーリンへと向けられていた。

 

「おい、坊主。お前何をした?」

 

「あの魔猪に攻撃を仕掛けた時に刻印をついでに刻んでいたんだ。後はあの奔流に飲まれる前に位置を置換しただけだ」

 

 結構ギリギリだったけどな。

 

 そう言って苦笑する彼にクーフーリンは何とも言えない苦い表情をする。

 

(嘘は言っていねえだろうが……)

 

 そう確かに彼は嘘をついていないとは思う。現に先程までいたはずの魔猪の姿は消えており、そこから彼が現れたのも実際に見た。

 

 だから彼が言っているのは本当に正しい、はずなのだが……。

 

 何なのだろうか、この胸に残る痼のようなものは。

 

「おい、怪我とかはしていないだろうな」

 

「ああ、大丈夫だよアルトリア。そうだろう? ドクター」

 

『えっ、ああうん。バイタルから見ても怪我はしていない……はずだ。でも──』

 

「ほら、まだ残党はいるからとっとと倒して皇帝陛下に良い報告をしに行こう」

 

 そう言って彼はまた一人で残っている異形の下へと駆け出し始めたものだから慌ててアルトリア・オルタは後を追い、それにつられる様にマシュとクーフーリンも後を追う。

 

 立香もまた後を追おうとして──不意に足元に虹色に光る何かが落ちていることに気がついた。

 

「……()()()()()()?」

 

 しゃがんで拾い上げて見ればそれは粉々に砕け散った聖晶石の欠片のようなものにも見える。何でこんなものがこんな所にと思う立香だったが、離れていく皆の姿を見てポケットにその欠片を入れると慌てて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな様子を見つめる黒いフードを被った何者かが愉しげな笑みを浮かべていた。

 

「フフフ、まずは第一工程完了ってところかな。器の再錬成も済んだことだし、次は……おっと、もう嗅ぎ付けて来たのか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

黒のフードを被った何者かは呆れたように苦笑して、その体が黒い靄に包まれる。そして黒い靄が晴れるとまるでそこには最初から誰もいなかったかのように姿が消えていた。

 

──その数瞬後、花弁が舞った。

 




目星に成功したけどアイデアに失敗した立香ちゃん(TRPG並感)
撒き散らされるガバの芽。殺意が高すぎる遊星の尖兵に裏方で何やら動いてるロクデナシの人でなし。

過去の因縁が太すぎるっピ!

そんなこんなで失踪します。


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君に希望あれ

久しぶりの初投稿です。


 死んでから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、怒りのアルテラビーム二連射をされて無事ホモくんが消滅しました。巨神ルートは大体殺意高いけど今回はこれ迄よりも格段に殺意高いですね間違いない……。本当にクソだな。

 

 なので皆さんご存知石コンテをさせていただきました。誰もノーコンクリアするとか言ってないしいいんだよ、上等だろ(人間の屑)

 

 まあ、実の所本RTAでは少なくとも一回は死ぬつもりでした。何故かというと一度死んでゲームオーバーになってから石コンテするとどうやら耐久に補正が掛かるんですよね。恐らくは死にゲーであるこのゲームの救済措置の一種なのでしょう。

 

 ステータス上は特に変化はないのですが、今後の耐久ステータスの上昇幅が約1.3倍ほどには上がります。

 

 そんでもってこのRTAはあの「スノードロップ」の取得を目的としているので耐久は高ければ高いほど取得成功率が大きくなるんですよね。

 

 最低でも7章までにはA以上は取らないとスノードロップの獲得の為の事前準備で詰む確率はかなり高くなります。運が良ければ詰まずに進めるかもしれませんが、安定したムーブを取るなら耐久Aは欲しいですね。

 

 なら初っ端から死んだ方が良くね? と思われるかもしれませんが序盤で下手に耐久を上げすぎてしまうと一部気絶などでショートカットできる場面が素受けしても気絶しないというタイムロスに繋がる可能性があるので少なくとも最序盤で石コンテするのはRTA的にはおすすめできません。

 

 ですので今回死んだのは想定外ではありますが、耐久の成長を気をつければ問題ありません。ええ、ないと言ったらないんです。石コンテしたおかげでデスベホマもしましたしね。……本当は4章辺りで死ぬつもりでしたけど。

 

 ではこれからの動きになりますが、東門防衛戦が終わったのでこれからネロの所に戻って歓待を受けます。古代ローマというだけあって食事が滅茶苦茶豪華なので此処がストレス値の下げ所さんです。

 

 エミヤがいるとは言え、カルデアの食事事情ってかなり悲しいことになってますからね。ですのでこの際いくつかの食材もカルデアに送ってあげましょう。エミヤが喜んで調理をしてくれることでしょう。

 

 やっぱエミヤってアーチャー(弓兵)じゃなくてバトラー(執事)では……? 

 

 さてそんなわけで宴の準備をして待ってくれてるネロの下へイクゾ-! 

 

 >あなた達は戦いで疲れた体を引き摺って宴の準備をして待っているネロの下へと向かった。

 >領事館の入口に向かうとそこに立っていた兵士があなた達を見るなり破顔して駆け寄ってきた。

 

「お待ちしておりましたカルデアの皆様。我らの街を守ってくださりありがとうございます。このご恩は必ずやお返し致します。……それではネロ陛下が皆様をお待ちです。どうぞ、お通りください」

 

 >兵士は深々と頭を下げると領事館の扉を開けてあなた達を中へと案内した。

 >領事館の中を進んでネロと会話した部屋に向かうとそこには所狭しと言わんばかりに並べられた料理とネロがムフーと自慢気に胸を張りながらあなた達を出迎えた。

 

「先輩先輩! 大量の料理が並んでいます!」

 

「うわぁ……本当に凄い……」

 

 おお、相変わらず何度見ても大量に料理やら果物が置かれてますね。カルデアに転送しまくって職員達の好感度上げやロマニ達のストレス値をガンガン下げましょう。

 

 それにしてもマシュは凄いはしゃいでますね。まあ、カルデアの環境だとこんなに大量の料理は見た事がないからでしょうね。

 

「ご苦労であったな。此度の戦については部下達から聞いておる。随分と激しい戦いであったようだな。戦時中ゆえ以前の様にとはいかんがそなた達の英気を養う事は出来るであろう」

 

 >そう言うとネロはあなた達を手招きする。

 >あなた達はその好意に甘えて有難く食事を摂る事にした。

 

 セプテムはこうしたストレス値を下げるイベントがあるのがいいですよね。おかげでストレス値の管理がしやすいのなんの。というわけで明日にはエトナ火山に向かってポータルを設置するでしょうし、その時にカルデアに此方で獲得した食材を幾つか転送しましょう。

 

 ふへへ、カルデア職員の好感度が上がる未来が見える見える。

 

 ぶっちゃけた話、ホモくんはストレス値はないですし、食事をさほど摂る必要もないのでホモくんが食べる分も全てカルデアに送りたいのですが、流石にそこまでするとマスターに対して何やかんやで甘い玉藻が何かしら言ってきそうなのでここはホモくんにも少しは食べてもらいましょう。

 

 下手に会話発生させるとタイムが伸びちゃうから仕方ないね。

 

 じゃあ取り敢えず林檎でも……って、ありませんね。なんで林檎がないんですかね!? (半ギレ)さっきからホモくん林檎を食べれなさすぎでしょ。

 

 個人的には置換呪術による魔力変換効率は林檎が一番良いと思うので食べれたら良かったんですけどね。まあ、ないものねだりしても仕方がないので他のものでも食べてどんどん魔力に変えてしまいましょう。

 

 勿論、魔力が溢れるのはもったいないので並行していくつかの刻印を刻んだ石に魔力を篭めていきましょう。いざという時のちょっとした爆弾になります。サーヴァントからしてみれば爆竹のようなものですが、異形には普通に有効的な手段となるので。

 

 それじゃ、席について食事を取りましょうか。まあ、席と言ってもこの時代ですとベッドに寝転がりながら食すスタイルなんですがね。

 

 >あなたは適当な場所に座り込んだ。

 

 よーし、何から食べましょうか。出来る限り魔力の変換効率がいいものがいいですね。具体的に言えばカロリーがあるものが。

 

 >あなたが座ったのを見て立香があなたの右隣に、反対にはマシュがあなたの横に座り込んだ。

 

 んん? 立香ちゃんが横に来るのは分かりますけどなんでマシュまでホモくんの横に? 立香ちゃんの横に来るものだと思ってたんですけどね。

 

 というか、立香ちゃんも立香ちゃんで距離近いっすね。ホモくんと立香ちゃんの間が1cmあるかないかという位に近いんですがそれは……。

 

 >あなたの視線に気がついた立香は少し照れたように頭を撫でた。

 

「あはは……近くてごめんね? でも、今日は色々とあったからせめて今だけでも望幸の近くにいたくて。……駄目かな?」

 

 >あなたは構わないと伝えると立香はまるで花が綻ぶような笑みを浮かべた。

 

 しょうがねぇなぁ(悟空)

 

 ま、立香ちゃんはホモくんが本当にアルテラビームに飲まれて死んだとは知らないとは言え、アルテラビームに飲まれた所は見たので精神が結構ギリギリなんでしょうね。

 

 実際、ホモくんが消し飛んだ直後なんてストレス値MAXになるギリギリまで上昇してましたし。

 

 そら、幼馴染が死んだ瞬間見れば未だ凡人の立香ちゃんだとショックを受けますよね。まあ、これからも度々立香ちゃんに対してショックを与えると思いますけど(無慈悲)

 

 多分、マシュもショックを受けて近くにいるんですかね。恐らくはシールダーとしての性質、或いは彼女の中にいる彼の気質に引っ張られているのか。ま、それならそれでどうでもいいんですがね。中身に引っ張られてるくらいならマジで問題ないです。何せ()()ホモくんと彼は一切の縁はありませんからね! 

 

 まあ、マシュもホモくんが怪我をあまりしなければ安心してまたいつも立香の横に戻ることでしょう。フラグ管理失敗したら立香と一緒におはようからおやすみまで一緒にいることになりますけどね(6敗)

 

 ですが、私は腐っても走者です。フラグ管理を完璧にこなしてギリギリを攻めていきますよ。それに一番怖いのはマシュじゃなくてビースト勢と根源勢だからね。デフォで閉まっちゃう勢なのほんとさぁ……。

 

 それにしても……立香とマシュのストレス値が高いですね。それにアルトリア・オルタもそこそこな数値をしています。クーフーリンは他の三名に比べてみれば差程高くはありませんが、低いという訳ではありません。

 

 今回の食事で多少は下がるでしょうが、如何せんそれでも高い状態にある事が予想されます。

 

 うーむ、まあ、今はまだ昼過ぎですしエトナ火山に行くとしても最速で明日でしょうし、ここは一つ丸一日使ってストレス値を下げて万全の状態に整えることにしましょうか。

 

 というわけで先にロマニに明日の予定について話しましょう。

 

 >あなたはロマニに通信を繋げた。

 

『おや、どうしたんだい望幸くん』

 

 >あなたは明日の予定と今日は立香達を休ませたいということをロマニに話した。

 

『うん、僕としてもその意見には賛成かな。流石にあれほどの激闘の後なのに、何の休みもなくターミナルポイントの設置をしに行けというのも酷な事だろうしね』

 

 >あなたはロマニに礼を告げると明日、ターミナルポイントを設置したら此方で得た食材を幾つか転送する事を告げた。

 

『本当かい!? いやあ、それは本当に嬉しいな。僕達も君達が美味しそうに食べているところを見てて食べたいとは思ってたからさ。ふふ、それじゃあ明日を楽しみに待っておくよ』

 

 >ロマニは嬉しそうにそう言った後、それに付け足すようにあなたに語りかける。

 

『望幸くん、君もお腹いっぱい食べるんだよ。君の食事についてエミヤくんや君のサーヴァントからも良く相談されてるからね』

 

 >ロマニはそれだけ言うと「それじゃあね」と言って通信を切った。

 

 あー、エミヤならホモくんの食事については突っ込みますよね。何せホモくんカルデアでは一日一食しか食べませんから。それだけ食べれれば置換呪術で賄えちゃうのが悪いよ。

 

 ……まあ、少なくともカルデアの食料事情が安定するまではエミヤやロマニ達には悪いですけどホモくんの食事量が増えることは無いでしょう。ストレス値のないホモくんからしてみれば食事なんてマジで時間の無駄ですしね。必要最低限取ればOKなのです。

 

 それからロマニには明日の予定と今日は自由に過ごしていいとの許可を貰いました。後はネロに街を探索する許可を貰って立香ちゃん達と「探索」に行きましょうか。

 

 はい、それでは「探索」についての軽い仕様を説明させていただきます。

 

 このFGORPGでは特異点のいくつかのポイントで探索という行動を起こせます。この探索についてなのですが、良い事尽くしです。

 

 まず第一にストレス値の大幅な減少を見込めるということです。探索には様々なイベントが発生します。それの種類によっては大きく上がったストレス値を下げる事が出来るでしょう。

 

 ただし、探索に行くタイミングが悪いとストレス値が爆増します。特にまだ序盤の立香ちゃんやマシュは凄まじく上がります。この特異点で例を挙げるのなら異形達によって壊滅させられた街に探索に行くとその悲惨さにストレス値が上昇してしまいます。

 

 ストレス値が上がったからと言って脳死で探索するのはやめようね! (22敗)

 

 ですが今回はこの街を守り切ったのでそういったイベントが発生することは無いでしょう。寧ろ、この街の住人達からお礼を言われたりして下がるイベントが発生しやすいと言えます。

 

 それから2つ目ですが、此方は運が絡みますが時折探索に出かけた者達は何かしらのアイテムを拾ってくることがあります。

 

 クッソ有能なアイテムを拾ってきたりすることもあれば、何も拾ってこないこともありますがそこは運ですね。

 

 何、私の豪運なら何かしら良い物を拾ってきてくれるでしょう。何せ私のサーヴァントの尽くが高レアですし。

 

 ……全員が問題児ということに目を瞑れば、ですけど。

 

 ま、まあ、それはさておいて取り敢えずネロに伝えましょう。

 

 >あなたは食事をしているネロにこの後に街を探索したいことを伝えた。

 

「うむ、良いぞ。貴公等の顔を見ればこの街の民達も安心するであろう。出来れば余も貴公達と共に出かけたかったのだが、余には他にやるべき仕事がある。非常に、非っ常に残念だが、貴公達だけで楽しんでくるが良い」

 

 >ネロはそう言うとあなたと立香にローマ帝国のシンボルが刻まれたネックレスを渡した。

 

「もし何か欲しいのがあるのならばそれを見せると良い。余の関係者という事が一目で分かる故、我が民達も貴公らに融通してくれるであろう。斯くもこの街を救った英雄には必要のないものかもしれぬがな?」

 

 >そう言ってネロはお茶目な笑みを浮かべてあなた達にウィンクをする。

 

 >あなたは「ローマ帝国のシンボルが刻まれたネックレス」手に入れた。

 

 よし、これでこの街で殆ど無料でお買い物が出来ます。これとこの街を防衛したという実績が合わさればこの街にあるものであれば殆どのものを買うことが出来るでしょう。

 

 ……まあ、この街で買えるものって大したものは無いんですけどね。なので今回の使い道はサーヴァントのご機嫌取りくらいですね。特にアルトリア・オルタ。

 

 立香ちゃんと一緒に回ろうかと思いましたが、アルトリア・オルタのストレスの溜め込み具合を見るにホモくんはアルトリア・オルタと一緒に巡った方がいいでしょうね。

 

 アルトリア・オルタの好物の観点から見てもこの豪奢な食事ではストレス値の下がりも低いですし、それに散らばって探索した方が効率がいいでしょう。

 

「ね、望幸。よかったらこの後私達と一緒に街を探索しない?」

 

 ゔっ……。そりゃあ立香ちゃんなら誘いますよね。断るのは非常に心苦しいですが、ここは心を鬼にして断りましょう。

 

 >あなたは立香の誘いを断った。

 

「そっか……。残念だけどまた今度一緒に街を観光しようね!」

 

 >そう言う立香は何処か落ち込んでいるようにも見える。

 

 うぐぅっ……! ごめんね、本当にごめんね。機会があったら今度は絶対に一緒に観光するから許して。そして今上がったストレス値をどうか下げてもろて。

 

 後は適当に食事が終われば街にお出かけするだけなので倍速で行きます。見所さんは特にありませんしね。

 

 超スピード!? 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 食事を終え、立香達は各々街に観光へと出かけていた。

 

「はぁ……やっぱり望幸も一緒に観光したかったな」

 

「あはは……私も望幸さんと話したかったですけど望幸さんは何か用があるみたいでしたし、仕方がないですよ」

 

「んー、それは勿論分かってるんだけどね」

 

「フォウ、フォウフォーウ!」

 

 立香はマシュに対して苦笑しながら街を歩く。

 

 ──理解はしている。彼はただの凡人である自分とは違い魔術師だ。ともすればこういった特異点ではやることが多いのだろう。

 

 彼の武器のメンテナンス然り、魔術道具の準備などなどはっきり言って今の自分ではどうやっても手伝うことが出来ない。

 

 それに彼は昔から何処か秘密主義的な所がある。自分の事については深くは語らないし、基本的に無表情がデフォルトだから感情の機微が分かりにくい事も尚のことそれに拍車をかけている。

 

 幼馴染である自分は彼が無表情であっても今まで経験から何となく感情が分かることもある。実際、先程の誘いを断られた時も本当に申し訳なさそうであり、一緒に行けないことを残念がっていたようにも見えた。

 

(……なんて、私の希望的観測が過ぎるかな?)

 

 けれど、本当にそう思ってくれていたら嬉しいなと思う。

 

 後これは個人的なことだが、彼は今おそらくアルトリアさんと二人っきりなんだろう。それが自分の乙女心的なものにもやっとくる。

 

 だって、アルトリアさん凄い美人さんだし。

 

 あんな美人さんと一緒にいたらいくらあの望幸でも思わずときめいてしまうのではとほんの少しだけ危惧を抱いて──即座に否定した。

 

(何だろ……望幸が誰かにときめく姿が予想出来ないや)

 

 よくよく考えれば彼のサーヴァントは物凄い美人揃いだ。その上誰もが系統の違う美人。そんな人達が彼の傍に良くいるのに、肝心の彼はその事について何の素振りも見せていない。

 

(まあ、でも望幸って多分誰かを好きになったら一途だろうなー)

 

 これも勘ではあるが、彼は誰かを好きになったらずっとその人の事を想い続けるんじゃないかと思う。

 

 そんなどうでもいいことを考えていたらマシュから声が掛かった。

 

「あの、先輩?」

 

「ん、どうしたのマシュ?」

 

「良かったらなんですけど先輩達について教えてくれませんか?」

 

「私達について?」

 

「はい、今思えば私は先輩や望幸さんのことについて全く知らないなと思いまして。良ければ先輩達の昔話を聞きたいんです」

 

「キュ!」

 

「ほら、フォウさんも先輩達について知りたいと仰ってます!」

 

 フォウを両手で抱き抱えて立香に詰め寄るマシュに立香は苦笑する。

 

「ん、そうだね。それじゃあ私と望幸の思い出を語ろうかな」

 

 そう言って立香は過去に想いを馳せる。アルバムを開いて昔を懐かしむように記憶の引き出しを空けて人理が焼却される前の大切な過去をマシュ達に語り始めた。

 

 彼の昔の話をしては驚くマシュの様子を見て立香は笑った。特にマシュは昔は彼が今とは別人かと疑うくらいには表情豊かだったということに驚いていた。

 

 正直その気持ちは分かる。今の望幸は全然表情が動かないから表情が豊かだったよと聞いても想像がつかないのだろう。

 

 だから、マシュと1つを約束をした。この人理修復の旅が一段落着いたら昔のアルバムを見せるって。そこにはマシュやカルデアの皆が知らない彼がいるから。きっと皆今の望幸と昔の彼の違いに驚くだろう。

 

 そんなことを語っていると立香は不意にある出来事を思い出した。

 

 ……ああ、そうだ。私、凄く大切な思い出があるんだ。

 

 中学生の頃に彼に連れて行ってもらったあの白く輝く花畑。

 

 凄く綺麗だったな……。夜だった事もあって満天の星がその花を照らしてまるでその花が淡く輝いているように見えたんだ。凄く神秘的な場所だったんだ。

 

 あの花の名前は……なんだったかな。

 

 ああ、そうだ、『スノードロップ』だ。

 

 彼が教えてくれた数少ない彼の好きな物。この花の花言葉が好きなんだと彼は綻ぶような笑顔を浮かべてそう言っていた。

 

 確か花言葉は「逆境の中の希望」だったはずだ。

 

 ……どうせなら私もその花を育てて咲いたら皆みたいに望幸にプレゼントしようかな。きっと喜んでくれるはずだ。

 

「よし、それじゃあこの街の観光ついでに種があるか探してみようかな」

 

 そんなことを誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いて立香はまたマシュと話しながら街の中を観光する。

 

 悲壮感など露ほども感じさせないローマの民達と交流を深め、この街を守れて良かったと心の底からそう思う。色んな物をお礼と称して大量に渡してくるローマの人達には流石の立香も困ってしまったが。

 

 そんなハプニングもありつつもこの街を観光していると、不意にとある裏路地に続く道が目に入った。

 

「先輩? どうかしましたか?」

 

「フォーウ?」

 

「──えっ、ああうん、なんでもないよ」

 

 突然固まった立香を心配そうに見つめるマシュとフォウに立香はなんでもないと返す。だが……

 

「ごめんっ! ちょっとここで待ってて! すぐ戻ってくるから!」

 

「えっ、あっ、先輩!?」

 

 ──どうしてもあの裏路地が気になる。

 

 立香は己の直感に委ねて裏路地へと入り込む。本来ならこんな危なさそうなところは立香は入ることはない。だが、どういう訳か。今はこの裏路地に入るべきだと己の勘が騒いでいた。

 

 そして人が誰もいない薄暗い裏路地を探索しているとふと道路の端に真っ黒なフードを被っている誰かがいた。

 

 ……露天商なのだろうか? 

 

 何処となく不気味な雰囲気を漂わせるその人物に立香は意を決して話しかけた。

 

「あの……」

 

「……いらっしゃい」

 

 話しかけて返ってきた声は低い男の声だった。これだけ近づいてもフードを深く被っているせいなのか顔は分からないが低い声から判断するに男の人だろう。

 

「あの、ここって何を売ってるんですか?」

 

「……武器だ」

 

 そう言って露天商が出したのは多種多様な武器だった。一体どうやってこれほどの量を収容していたのかと疑問に思うほどに大量に出してきた。

 

「……このご時世だからな。身を守る武器は大事だ」

 

「すっごい大きな怪物もいますからね」

 

「……ああ、そうだ。所でアンタは武器を持っていないのか?」

 

 そう言われて立香は気づいた。

 

 ──そういえば私、何も武器を持ってないや。

 

 望幸であればサブマシンガンや刀など色々と武器を持ってはいるが、自分は全くの無手だ。ケイローンやクーフーリンからは色々と教わってはいるものの武器は何一つとして持っていなかった。

 

(私もいざという時は少し位は抵抗出来るように武器を持ってた方がいいよね?)

 

 そんなことを考えていると立香が武器を持っていない事を察した露天商が小さくため息を吐いた。

 

「……やはり持っていないんだな」

 

 露天商はそう言うとゴソゴソと自身の荷物を漁ると一つの剣を取り出して立香に差し出した。その剣はエメラルドが装飾としていくつも付けられており、その価値は計り知れないことは立香でも容易く想像についた。

 

「……これをやる。アンタでも簡単に扱える代物だ」

 

「私、お金持ってないのでこんな高そうなもの貰えないですよ!」

 

「……構わない。この街を救ってくれた礼だ」

 

 そう言って露天商は立香にその剣を無理矢理押し付け、いくら立香が返そうとしても受け取ることはなかった。

 

「ええと、それじゃあ有難く貰いますね」

 

「……ああ」

 

 露天商はそれだけ言うと今まで広げていた大量の武器を仕舞い込み、ゆっくりと立ち上がった。そして懐を漁って何かを取り出すと立香にソレを手渡した。

 

「……おまけだ。これも持っていけ。必ず役に立つ時が来る」

 

 そうして立香の手に渡されたのはどこまでも()()()だった。

 

 それは本来この時代にあってはならない代物だ。この時代では開発されているはずのないそれを何故この人は持っている? 

 

 その疑問が浮かぶ前に──

 

「……黒い銃身(ブラックバレル)。その贋作ではあるが、威力はオリジナルのそれと変わらない。一発きりだが弾丸も込めてある」

 

 露天商の手が立香の顔を覆い隠す。

 

「立香、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──その疑問は闇に飲まれてしまったかの如く消えていき、気づけば裏路地から出ていた。

 

「あれ……? 私、いつの間に表に出てきたんだっけ?」

 

 さっきまで裏路地で露天商の武器商人さんと話してて、それで確か武器を貰ったような……。

 

 そんなことを思いながら自分の手を見るとそこにあったのは燦然と輝くエメラルドが散りばめられた剣だった。あと一つ、何か持っていたような気もするが特に持ってもいないし、気の所為だろう。

 

「あ、いました! おーい、せんぱーい!」

 

 魚の小骨が喉に刺さっているかのような違和感を感じていた立香だが、自分を慕う後輩の声を聞いて気づけばその違和感すらも忘れてしまった。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 誰もいない裏路地にて真っ黒なフードを被った露天商が膝をついて蹲っていた。

 

「ぐっ、がァっ……ゴボッ」

 

 内臓が潰れ、捻れるような音が裏路地に鳴り響き、ボチャボチャと夥しい量の血を吐いていた。

 

「黒い銃身の複製……。やはり相当堪えるな……っ!」

 

 ふーっ、ふーっ、と荒い息を吐きながら露天商は壁に寄りかかる。

 

 黒い銃身を複製する為に術式の反動でこの体はボロボロに壊されていた。身体は術式によって破壊され、魔術回路も複製した黒い銃身により殆ど壊された。

 

 回復に徹すれば多少は治るだろうが、次に己の術式を使えば確実に死に絶えるだろう。いや、死に絶える程度では足りない。恐らくは完全消滅するはずだ。

 

 そんなことを考えながら露天商は少しずつ潰れた内臓を修復していく。そしてある程度は修復して動けるようになった所で裏路地の奥からコツコツと足音が鳴り響いた。

 

「やあ、(タワー)。随分と酷い目にあってるようだね」

 

 クツクツと薄気味悪い笑みを浮かべながら塔と呼ばれた露天商に近付いてくるのは全身から色素が抜けきったような男だった。

 

「……俺をその名で呼ぶな死神(デス)

 

 その男を視認した瞬間、塔と呼ばれた露天商は即座に銃を引き抜き自身が死神と呼んだ男の頭を何の躊躇いもなく吹き飛ばした。

 

 散らばる脳漿。漏れ出た血液が石畳を赤く穢していく。ビクンビクンと痙攣した魚のように跳ねる頭のない死体を先程撃ち殺されたはずの死神と呼ばれた男が何事もなかったかのようにぐちゃりと踏み潰して現れた。

 

「おいおい、いきなり酷いな。早い男は嫌われるぜ? ──って、ああ、分かった分かった。もうふざけないからソレ引っ込めてくれよ、戦車(チャリオット)

 

「チッ……」

 

 両手を上げて降参のポーズを取る死神に露天商は不愉快そうに舌打ちを鳴らしながらも死神を取り囲むように空中に展開されていた無数の砲門をしまい込んだ。

 

「それで立香ちゃんに黒い銃身は渡せたかい?」

 

「……ああ、それから認識阻害もかけて立香の内側に隠しておいた。あれなら時が来るまで誰も気づかないだろう」

 

「それは重畳。これで俺達の終末もまた一つ前進した」

 

 クツクツと上機嫌そうに喉を鳴らして死神は笑う。そんな彼の様子を見て不愉快そうに露天商は顔を顰める。

 

「さて、これで君の仕事は終わりだ。後は帰って終末に向けて備えなよ。俺もこの特異点でやるべき事はしたから次の特異点に移るつもりだ。それにこのまま長居しとくと()()()()()()()()()()()()()なんでね」

 

 死神はそれだけ伝えると闇に溶け込むようにその身を消失させた。恐らくはもうこの特異点から去ったのだろう。

 

 それを認識した露天商は深く息を吐いて過去を思い浮かべる。

 

「ネロ、カエサル、カリギュラ、ロムルス……。あまり言葉にはしたくないが、今思えば俺が彼等と共に旅をしたのは運命って言うやつだったのかもな」

 

 薄暗い裏路地から和気藹々と活発に賑わうローマ市民の様子を見て露天商は独り言ちる。

 

 ──ローマに栄光を、カルデアに祝福を、そして……。

 

 その言葉は誰に届くわけでもなく、薄暗い裏路地の中で霧散して消えていった。




久しぶり書いたら書き方忘れててめちゃくちゃ長くなって実質二話分の長さになりました。そして絶対にやると決めていた武器商人さんの出現。

裏で色々と蠢き、立香が若干しっとりし始めてる最中、ホモくんは呑気にアルトリアと二人で街を観光していました。なんでこんなに危機感ないんですかねコイツ。最後の塔だの戦車だの死神だの何だの言ってるのはアルカナを見てもろて(投げやり)

久しぶりに初投稿したので失踪します。


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いざガリアへ

無言初投稿


 エトナ火山に向かってから始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、ホモくんと立香ちゃんが別々に探索を終えました。それで探索で得た報酬なんですが……えー、まあ、はい。

 

 ホモくんは何の成果も得られませんでしたぁっ……! 

 

 マジで何かないかとウロウロしてましたけど何もいいものはなかったですね。アルトリア・オルタのストレス値は最低値まで引き下げましたけど、戦闘に役立つアイテムなどは何も無かったです。

 

 ですが! 

 

 ホモくんが何の成果も得られなかった代わりに立香ちゃんが何と高レアアイテムと謎のスキルを引っ提げて帰ってきました。

 

 流石主人公、運命力がカンストしてるだけあります。

 

 それでは立香ちゃんが持ってきたアイテムですが、一つは護身用の剣ですね。ただ未鑑定状態なので名前が未だに不明です。

 

 ですが、この武器はとんでもないバフ持ちです。

 

 なんと回復不可の魔術が掛けられてるんですよね。正確に言えば一定の条件を満たした薬剤ならば回復できるみたいですが、製作難易度から言って相手にメディアのようなキャスタークラスがいない限り回復不可と言い切っても問題ありません。

 

 そしてこの武器の更に強い所は一定以下の魔術を全て弾きます。

 

 普通こんな宝具レベルの武器は最終盤辺りでしか取れないんですがね。どうやってこんな序盤も序盤なこの特異点から見つけてきたんだ……? 

 

 ただ一つ気になる点といえば、この剣を見た時ロマニが少し動揺していたことですね。もしかしてロマニと何か関係があったりするのでしょうか? 

 

 まあ、その辺は鑑定して名が判明すれば分かることです。

 

 取り敢えずその剣はお守りとして立香ちゃんに持ってもらいましょう。魔術を弾くのは強いので、魔術に対して何の対抗も出来ない立香ちゃんには最高のお守りです。

 

 次に立香ちゃんが取得してきた謎のスキルなんですが……これ何なのでしょうね? 

 

 ■■■■と書かれていて完全に塗り潰されています。ホモくんのスキルにも■■■の恩寵という一部塗り潰されたスキルがありますけど、立香ちゃんのは全て塗り潰されちゃってますからね。

 

 流石に予測が立てられないですね……。まあ、悪いスキルじゃなければ良いんですけれど。

 

 それでは探索の報酬の報告が終わった所でエトナ火山へと到着したところで漸くほんへです。

 

 >あなた達はエトナ火山にある霊脈に辿り着いた。

 >しかし、そこには先客がいたようだ。

 

『死霊系の怪物!? しかもとんでもない数だ。自然発生して湧いたにしても多過ぎる!』

 

 >通信越しにロマニの驚愕の声が聞こえるようにあなた達がポータルを設置しようとしたところには夥しい数の死霊達が霊脈に群がっていた。

 >恐らくは異形の怪物から逃げてきた個体も混ざっているであろうことが推測できる。

 

 多いと言えば多いですが、この程度の死霊の集まりならアルトリア・オルタとクーフーリンでどうとでもなりますね。それにホモくんも殲滅を手伝えばすぐに終わる事でしょう。それから後の時間短縮のためにここは念入りに殲滅しましょう。

 

 完全に殲滅すればターミナルポイント設置後の戦闘を省けます。

 

 では戦闘開始です。

 

 開幕にアルトリア・オルタの宝具ぶっぱしたい所ですが、霊脈に何かあっても困りますし今回の戦いは宝具無しで行きます。

 

 被害の少ない宝具持ちなら気にせずぶっぱしてもいいですが如何せんアルトリア・オルタは火力が高すぎます。

 

 なので高ステによるゴリ押しでぶっ倒しましょう。

 

 それでは倍速で戦闘です。特に見所もありませんしね。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「戦闘終了。これでターミナルポイントの設置が出来ますね」

 

 >全ての死霊を殲滅したところであなた達は早速ターミナルポイントを設置をした。

 

「ターミナルポイント設置完了です。これでこの時代でも戦力の補充が出来ますね」

 

 よし、それじゃあ早速ホモくんが持ってきたこの特異点で取れた食材をターミナルポイントを通してカルデアに送りましょう。そこそこの量の食材を集めたので少しの間は食料に余裕が出来るはずです。

 

 >あなたはターミナルポイントに大量の食料を置くとカルデアに転送した。

 

『……うん、ありがとうね。こっちに君達が集めてくれた食料が無事に届いたよ。後、望幸くんには追加で弾薬を送っておくね。戦いが連続して続いてるから残りの弾数も少ないだろ? ……ああ、そうそう。ダ・ヴィンチちゃんが幾つか特殊な弾丸を開発したみたいだからそれも送っておくね』

 

 マ? ダ・ヴィンチちゃん最高すぎません? 

 

 追加弾薬補充出来るのは嬉しいですし、その上幾つかの特殊弾丸が無料で貰えるとは……。控えめに言って最高ですね。

 

 何が貰えますかねー……っと、おおこれは……。

 

 >あなたはMP5の弾薬を手に入れた。

 >あなたは特殊弾丸:偽神殺しを手に入れた。

 

 蛮神の心臓を使った特殊弾丸ですね。これ神性持ちに対して特攻が入るから使い勝手が良いんですよね。……こんなものを渡してくるって事は巨神との戦闘避けれそうにないなぁ。

 

 大体こういう高レア素材から作られた物を渡される時って何かしらヤバいのと戦ってますし、今回のルートからしても巨神との戦闘は不可避でしょうね。

 

 レフが生きてたらレフに使ったかもしれませんが、多分巨神に壊されてるだろうし。

 

 あれ、でも何周目かで彼奴復活した事あったような……? 

 

 ……やめだ、やめ。巨神との戦闘の後に魔神柱戦とか考えたくないです。まあレフだから勝てない事はないですし、それになによりこっちには秘密兵器の根源接続者の式ちゃんいますもんねー! 

 

 まあ、そうは言ってもそんなにホイホイ根源の力は使わないでしょうけどね。いくらサーヴァントの肉体を得たとは言え、根源の力をフルに使うにはサーヴァント如きの霊基では出力不足にも程があります。

 

 せめて冠位か、あるいはビーストか……ああ、あと終末装置もか。そこまでの霊基ならば或いはって感じでしょうね。

 

 ただまあ──終末装置の霊基を持った根源接続者は碌なものじゃないが。

 

 おっと、話が脱線しましたね

 

 それではターミナルポイントも設置しましたし、カルデアから追加戦力を呼びましょう。さて、誰を呼びましょうか? 

 

 強さで言うのならまず間違いなく式ちゃんは入ります。根源接続者はやはり格が違います。その上、直死の魔眼持ちですからね。ただまぁ……一つ問題がありまして、根源接続者は何をしでかすか分からないという事です。

 

 ビースト勢もまあまあ何しでかすのか分かりませんが、根源接続者はそれに輪をかけて分かりません。ま、根源に接続してるような奴の動きを読もうとするのが間違いです。

 

 根源接続者はガバの塊なので。

 

 次点でやはりジャンヌ・オルタですかね。単体宝具持ちということとアヴェンジャーとしての性質、そして聖杯によって造られたという特異な出生によりステータスが高い為、ボスに対しての火力がピカイチです。

 

 何気に強化無効付与と呪い持ちなのでギリギリで耐えた相手をスリップダメージで落とし切ったり、厄介なバフをミスらせたりと便利です。

 

 まあ、アルトリア・オルタと相性が悪いのが難点ですけど……。

 

 カーマ、玉藻、キアラは巨神との相性は最悪なので今回の特異点ではお休みですね。次の特異点で働いてもらうことにしましょう。特に玉藻にはしっかりと働いてもらいます。

 

 補給の出来ない海上でガンガン魔力回せる玉藻が刺さらない訳が無いので。

 

 さて、とりあえず安牌を取ってジャンヌ・オルタを呼びましょうかね。……いや、待てよ? どうせなら式ちゃんも呼びますかね。

 

 式ちゃんいれば最悪な盤面が来たとしてもワンチャンひっくり返すことも出来ますしね。それに魔術師ルートでやってるので一般人ルートでは中々出来ない自分自身の魔力を使って召喚するということも出来ます。

 

 魔力についてもホモくんの心臓そのものが超抜級の魔力炉心なので問題ないです。ここでホモくんが自分で呼ぶべきなのは魔力の燃費が悪い式ちゃんですね。

 

 根源の力はアルトリア・オルタよりも燃費悪いですからね。

 

 立香ちゃんは誰を呼びましょうかね。怪物殺しの達人であるクーフーリンはいますし、ここは多人数に強いエミヤでも召喚してもらいましょうかね? 或いはこのパーティは攻撃に傾倒しすぎているのでそれをカバーできるジャンヌを呼ぶのもいいです。

 

 ふーむ、相性を考えるにエミヤが丸い気がしますが……。

 

 いやでもエミヤにはカルデアで調理してもらってスタッフ達のストレス管理をして貰いたいんですよね。まあ、ジャンヌとジャンヌ・オルタは相性が悪いですけど最悪ではないのでジャンヌにしてもらいましょうかね。

 

 というわけで立香ちゃんに誰を召喚するつもりか聞いた後にジャンヌで無い場合はジャンヌをオススメしましょう。

 

 >あなたは立香に誰を召喚するつもりなのかと聞いた。

 

「うーん、ちょっと悩んでるんだよね。ジークフリートかジャンヌのどっちかかなぁと思ってるんだ。ちなみに望幸は誰を呼ぶつもりなの?」

 

 >立香の質問にあなたはジャンヌ・オルタと両儀式の二人を呼ぶつもりだと答えた。

 

「えぇっ!? 二人も召喚するのは無理じゃ──って、そっか。望幸魔術師だから自分でも召喚出来るんだ。なら私はジャンヌがいいかな?」

 

 お、誘導するまでもなかったですね。こういう地味なタイム短縮はのちのちに響く……。

 

 >あなたはこくりと頷くとロマニにジャンヌ・オルタと両儀式、ジャンヌ・ダルクを召喚することを話した。

 

『ん、了解。ただ今のカルデアの電力だと一気に三人呼ぶのは無理だから望幸くんは誰か一人自力で召喚しないといけないわけだけど大丈夫かい?』

 

 >あなたはこくりと頷いた。

 

 それじゃ先にターミナルポイントを経由して式ちゃん呼びましょうか。

 

 >あなたはターミナルポイントに手を翳して魔力を送り込むとカルデアと繋げて両儀式を呼び出した。

 >召喚サークルがクルクルと回転し、それが収束するとそこには両儀式が立っていた。

 

「ん……漸く貴方の役に立てるのね。任せて頂戴、貴方が前に出る必要がない位には頑張るわ」

 

 根源接続者が張り切るのほんとやめてもろて。張り切った根源接続者ほど怖いものは無いんだよなぁ……(108敗)

 

 根源の姫様みたく何もかも台無しにするのはやめてね? ちなみに高性能AIも呼んでないぞ。月での出来事といい、人理修復のこといい、いざとなったら盤上ひっくり返すどころか土台からぶち壊すの本当にやめて欲しい。

 

 その度にどれだけ進んでようが全部やり直しになっちゃう。

 

 それじゃあ後はジャンヌコンビを呼ぶだけですね。

 

 >あなたは続けてジャンヌ・オルタを呼び出し、立香も同じようにジャンヌ・ダルクを呼び出した。

 

 よし、召喚も終わった事だしとっととネロがいる場所に戻ります──なんかジャンヌ・オルタの機嫌悪くない? 

 

「……なんです?」

 

 >腕を組んであなたをじっと睨むジャンヌ・オルタにジャンヌ・ダルクは苦笑いをしてあなたに耳打ちをした。

 

「あの子ったら一番最初に呼ばれなかったのを少しむくれてるみたいなんです」

 

「聞こえてるわよ能天気女! そんなわけないでしょうが! 人の気持ちを勝手に捏造するのやめてくれます!?」

 

「相変わらず仲がいいねあの二人……」

 

「良い訳ないでしょう! お目目腐ってるんじゃないんですか立香ァ!」

 

 >ジャンヌ・ダルクを燃やそうと追いかけ回すジャンヌ・オルタと逃げ回るジャンヌ・ダルクの姿を見て笑う立香。

 >その様子をアルトリア・オルタとクーフーリンはやれやれと嘆息していた。

 >その光景を両儀式は何処か眩しいものを見るかのように目を細めて見ていた。

 

 おぉう……セットで呼ぶとやっぱりこうなりますか。まあ、とっとと領事館に帰りたいのでジャンヌ・オルタを落ち着かせましょうか。

 

 >あなたは未だにジャンヌ・ダルクを追いかけ回すジャンヌ・オルタの名を読んだ。

 

「……分かったわよ」

 

 >若干ムスッとしているが、それでもあなたが伝えたいことは伝わったらしく渋々といった様子で追いかけ回すのやめて貴方の隣へと戻ってきた。

 

「いやまて、何サラッとマスターの横に陣取っている。そこは私の定位置だぞ」

 

「はぁ? 早い者勝ちに決まってるでしょうが。そもそもあんたの定位置とか決まってるわけないでしょう。頭沸いてるの?」

 

「──潰してやろうか」

 

「──灰にしてあげるわ」

 

 >魔力を昂らせてバチバチと火花を散らす二人を尻目にいつの間にかあなたの隣にやってきた両儀式があなたの手をそっと引く。

 

「ほら、領事館に帰るのでしょう? なら急ぎましょうマスター」

 

「あっ、貴様──」

 

 >アルトリア・オルタが何かを言う前にあなたの手を握った両儀式が楽しそうに駆け出す。

 

 何だこの……何だこれ? 巨神が存在する特異点にいるとは思えない位には平和ですね。ほらほら、緊張感持ってほら。日常パートかと思った瞬間、ビーム飛んできたとかあるんだから(2敗)

 

 てなわけで注意して下山していきますよ〜イクイク。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 結局何もイベントは起こらず、無事領事館に戻ることが出来ましたね。素晴らしい……。快適に進めると気分がいいです。

 

 さて、戻ったところでとっととネロに会ってガリアに行きましょう。

 

「む? おお、戻ってきたか──って、人が増えておらぬか?」

 

 >あなた達はネロの下に向かうと最初は笑顔で出迎えたネロが見知らぬ者を見ると訝しげな目付きで見てきた。

 >あなたはネロに彼女等はカルデアからやってきた援軍である事を話した。

 

「ふむ、援軍とな……?」

 

 >ネロはそう言うとジャンヌ・オルタ、ジャンヌ・ダルク、両儀式の三人を観察するようにじっくりと見ると分かりやすく破顔した。

 

「うむ、良い! そこな双子は余でも分かるほどに良い戦士だ。もう一人の方もカルデアからの援軍ということはこの者らに負けず劣らずの強者なのであろう?」

 

「ちょっと誰がこの能天気女と──むぐっ」

 

 はーい、ジャンヌ・オルタは事態がややこしくなるから黙ってようね。君がジャンヌ・ダルクの双子と言われるとキレるのは理解できるんだけどさ。

 

 >あなたはネロに向かって何かを言おうとしたジャンヌ・オルタの口元にそっと手を当てて口を塞ぐ。

 >突然口を塞がれたジャンヌ・オルタはムスッとした瞳であなたをジッと見つめるが、やがては諦めたように目を伏せてあなたの手を口元から外した。

 

「さて、帰ってきて早々すまぬが余はこれからガリアへ遠征を行おうと思う。無論、余、自らが出ねば意味が無い。ガリアにも貴公らのように怪物相手に戦えるものがいることにはいるのだが、その者達に任せっきりにすることは出来ん」

 

 >ネロは何処からか地図を取り出すとガリアへ行軍する為のルートをあなた達に見せる。

 

「目的としては怪物達に苦戦する配下を助けつつ鼓舞するのが目的だ。そしてもう一つ少々きな臭いことになっている事があってな。その事実確認もしに行く」

 

 >そこまで言うとネロは一度言葉を区切り、あなた達を力強い瞳で見つめる。

 

「望幸、立香、マシュ。貴公等には供を頼みたい。余と共に来てくれるか?」

 

 >じっと見つめるネロを他所にロマニはあなたと立香だけに聞こえるように通信を飛ばしてきた。

 

『望幸くん、立香ちゃん。僕個人としての意見だけれどガリアには一緒に行った方が良いと思うよ。皇帝陛下から戦況の詳細を貰って状況を把握した限りだとガリアは今あの謎の怪物達との戦いにおける最前線の一つだ。それに此方に来てから初めて戦った敵サーヴァントもいる可能性も高い。恐らく皇帝陛下が言っていたきな臭い事というのは彼らサーヴァントの事だろう。勿論、危険は伴うだろうけれど……君達はどうするんだい?』

 

 >その言葉に貴方はほんの少しの躊躇いもなく頷いて、ネロに同行する旨を伝えた。

 

「私も一緒に行きます。もちろん、命を大事にしながらね?」

 

 >命を大事にしながらね? と言う時だけ立香はあなたの方を見た。

 >どうやら立香はあなたを心配しているようだ。

 

 大丈夫。安心しろって。

 

『いのちをだいじに』とかRTAする上では当たり前なんだよなぁ……。大体の事では死んだら死んだだけ時間も資源もロスするから死なないことは大事ってそれ一番言われてるから。死んで短縮出来るならやりますけど。

 

 それにまあ、死ななければ問題はないという事だけなのでホモくんには瀕死にはなってもらいますけどね(無慈悲)

 

 それに体力の減り具合によって火力が上がる火事場スキルやら逆境スキルを取るためにもこの特異点ではガンガン瀕死にしていきますよ〜イクイク。

 

 火事場も逆境も背水系スキルなので火力上昇値が渾身系のスキルに比べると凄く高いんですよね。やっぱ火事場の馬鹿力は偉大なんやなって……。

 

 それにホモくんと背水スキルは相性がいいですからね。タゲ取りやすいですし、味方の怪我を自分に移す事も出来るのでお手軽に背水状態に出来るのが強いのです。

 

「決まりだな! 皇帝自らの遠征である! 直ちに支度せよ!」

 

「はっ!」

 

 >ネロの凛とした号令が下ると兵士達は慌ただしく動き始めた。

 

 では、ガリアへの出発フラグを建てたところで今回はここまでとなります。ご視聴ありがとうございました。

 





グラブルしてたら前回の投稿からもう二ヶ月経ってました。時の流れ早いもんじゃけぇ……。と、まあ、言い訳はここら辺にしておいて今回で立香ちゃんとんでも武器を拾っています。

そんなとんでも武器を拾ってきたのは立香ちゃんの運命力か、あるいは……

失踪でございます。


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叛逆者

初投稿です


 ガリア到着から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回ガリアに向けて出発という事で領事館を発ちました。それでまあ、ガリアに向かう道中ビームが飛んでくることはなく、なんとか無事にガリアに到着することが出来ました。

 

 精々あったイベントと言えば立香ちゃんが落馬しかけたので馬に乗ることを拒否しましたが、それをホモくんが説得してホモくんと二人乗りしたくらいですね。

 

 いらんとこで体力消費しなくていいから……(良心)

 

 ちなみに立香ちゃんに何故馬の操作が出来るのか尋ねられましたが、魔術家系だからでゴリ押ししました。魔術家系なんだから馬くらい乗れなくちゃなぁ!? (暴論)

 

 実際はルートを模索してる時にブリテンで色々あって馬に乗る機会が多かったからなんですけどね。馬の操作のコツはそこで把握しました。

 

 ドゥンスタリオンとラムレイは儂が育てた(後方親父面)

 

 まーとは言ってもそのルートは大失敗したんですけどねー。当初の目標を達成出来なかった上に当時のホモくん死んじゃいましたし。

 

 それはさておきようやくガリア到着です。つまり現地サーヴァントとの合流となります。今回は巨神戦となる訳ですが、カウンターとなるサーヴァントはいるんですかねー? 

 

 それともいつも通りの面々なんでしょうか? 

 

 >ガリアにある野営地に到着したネロは到着するや否や人が最も多い場所へと赴き、声を張り上げた。

 

「皇帝ネロ・クラウディウスである! これより謹聴を許す!」

 

 >数多くの人達が賑わう野営地の中でネロの声は不思議と良く聞こえる。

 >ネロの声を聞いた兵士や民達はお言葉を謹聴すべく姿勢を正し、ネロの方を見る。

 

「是より余も遠征軍の力となろう。一騎当千の将もここに在る! 故にこの戦い、我等に負ける道理はない!」

 

 >ネロは一度そこで言葉を区切るとスゥ、と息を大きく吸い込んだ。

 >そして目を大きく見開くと今まで以上に胸を張り、声を張り上げた。

 

「余と、愛すべきそなたたちのローマに勝利を!」

 

「「オオオオオオオ!」」

 

 >地を揺らしていると錯覚するほどの雄叫びが野営地に木霊する。

 >その雄叫びを聞いてマシュは驚いたように目を見開いていた。

 

「凄い歓声ですね……。これが全盛期の皇帝ネロのカリスマなんでしょうか」

 

『そうなんだろうね。しかし、これほどまでのカリスマを誇る皇帝が晩年には……。いや、やめよう。過去に生きる人間に未来を知らせない。それが方針だ』

 

 ……まあ、そうですね。過去に生きる人間に未来を知らせない。それはいい方針ですからね。仮に自身の未来が人理定礎によって定められてしまったのならどうやっても回避出来ない結末ってことになっちゃいますし、それを知ってしまったら、ね。

 

 ──ああ、けれど変えられない未来に価値はあるのか?

 

「キュー……?」

 

 >フォウがあなたの肩に飛び移り、心配そうな声を上げながら励ますかのように頭をあなたの頬に擦り付ける。

 

 お、フォウくんが甘えてきましたね。あざとい! あざといぞぉこの獣め。よしよし。

 

『む、この反応……マシュ、立香ちゃん、そこに──』

 

「おや、思ったよりもお早いお越しだったね、ネロ・クラウディウス皇帝陛下。それでえーと、そっちの子達が噂の客将かな? 見かけによらず強いんだってね」

 

 >快活とした声を弾ませながら此方にやってきたのは何処か母親のような優しい雰囲気を纏った女性と筋骨隆々の巨躯を持った大男だ。

 

 ブーディカにスパルタクスですね。今回は特に変わりはなさそうですねー。

 

「遠路遥々こんにちは。あたしはブーディカ。ガリア遠征軍の将軍を努めてる」

 

「ブーディカ……?」

 

「うん、そう。元ブリタニアの女王ブーディカ。それでこっちのでっかい男が……」

 

「──ぬはっ!」

 

 >ブーディカが紹介しようとした大男があなたを見るや否や常に浮かべていた微笑から一転、まるで獣のように鋭く尖った笑みを浮かべてドスドスとあなたの前に地面を揺らしながらやって来る。

 

 もしかしてこれマズイ奴……? 

 

「ちょっ、スパルタクス! 駄目──」

 

 >ブーディカがスパルタクスと呼んだ大男を静止しようとするがそれよりも早くスパルタクスは木の幹の様な太い腕であなたを掴み……

 

「おお、おお、おお! ()()()()()()()()()()! 私は君を歓迎しよう!」

 

 >まるで父親が幼い子供にするかのようにあなたの脇を持って高く持ち上げた。

 >或いは持ち上げたままくるくると上機嫌そうに回る姿はお気に入りの玩具を手に入れた子供か。

 >どちらにせよ、スパルタクスからは敵意といったものは感じ取れなかった。

 

「ぬははっ! 良い、良いぞ! ()()()()()()()()()()()。されど今は素晴らしき叛逆者である! なればこそ、共に剣を振るおう! 我等と共にこの国に蔓延る圧制者達と戦い抜こうではないか!」

 

 >上機嫌そうにくるくると回るスパルタクスの様子にブーディカは目を見開いて驚き、マシュや立香はスパルタクスの余りにも理解の通じない言葉にフリーズしていた。

 >一方でジャンヌ・オルタやアルトリア・オルタは各々武器に手を掛けていたが、それもスパルタクスの様子を見て拍子抜けしたようにため息を吐いた。

 

 ちょ、待って……凄い勢いで回るせいで……ウォォォ……! 

 

「うわぁ、珍しい事もあるもんだね。まさかスパルタクスがここまで喜んでて襲わないなんて……」

 

「あの、あのあの! 今はそんなことよりも振り回されてる望幸を助けてあげないと──!」

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 いやぁ、死ぬかと思いましたね。立香ちゃんが止めてくれたおかげで漸くスパルタクスも落ち着いてくれましたけど、立香ちゃんが止めてくれなかったら回転しすぎてグロッキーになるところでしたよ。

 

「望幸大丈夫……?」

 

 >立香は心配そうに尋ねる。

 >それに対して振り回され続けてふらふらするが、大丈夫だと話した。

 

「あはは、ごめんね? スパルタクスがあんなにも喜ぶのは初めて見たからさ。ついつい止めるのが遅れちゃった。それで、えーとあなた達は……」

 

『これは失礼。自己紹介をしておこう。ボクはロマン。そして……』

 

「マシュ・キリエライトです」

 

「藤丸立香です!」

 

 >あなたは自己紹介をした。

 

 ホモです、よろしくお願いします。

 

「名前は聞いてるよ。あの化け物相手に大立ち回りしたともね? それから随分と気にいられてるとも。ね、皇帝陛下?」

 

「……」

 

 >ブーディカにそう訊ねられたがネロはその端正な顔を歪めて頭を抑えていた。

 

「ネロ陛下?」

 

「……ん、ああすまぬ。余は少し疲れたようだ。ブーディカ、客将達を頼む。余からも戦況について教えてはいるが、現地にいる貴公の方が詳しかろう。ガリアの現在の戦況について教えてやってくれ。余は少々床に就く」

 

「分かったよ。この子達はあたしに任せといて」

 

「ああ、頼んだぞ。それから望幸達もゆっくり休むといい」

 

 >ネロはそれだけ伝えるとフラフラと気分が悪そうに体を揺らしながら皇帝専用のテントの中へと消えていった。

 >そんなネロの後ろ姿をブーディカは心配そうに見つめていた。

 

「さて、それじゃあ──」

 

「申し上げます! 敵怪物が現れました! それから一部軍のような格好をした斥候部隊も発見しました」

 

「化け物に斥候部隊か。斥候部隊に追撃は?」

 

「敵兵の離脱速度に追い付けていません。このままでは離脱されてしまう可能性があります」

 

『あっ、本当だ。野営地から離れる一団あり! けど、これは化け物達に跨っているのか……? 到底人が出せるような速度じゃないぞ。このままだと僕達の情報が持って行かれるぞ!』

 

 うえ……結託してるのか。あるいは神祖のカリスマで異形達を従えてるんですかね? ロムルスならワンチャンヴォイドセルに侵されて凶暴化した原生生物を従えても可笑しくないんですよね。

 

 それにしても斥候部隊を逃す為に異形もぶつけて来るか。これは二手に別れるべきですね。一番マズイのは斥候部隊に情報を持って帰られる事ですし、ここはホモくんが斥候部隊を殺しに行きますかね。

 

 ……それに立香ちゃんに人殺しをさせるのは、ね。

 

 ストレス管理が面倒ですし、それならストレス値のないホモくんがコロコロした方がずっと楽でいいです。立香ちゃんが不必要に辛い目に遭う必要は無いのだ。

 

 さて、それじゃあ──うおっ!? 

 

「ぬははっ! 行くぞ、マスターよ! 逃げ惑う圧制者達に我等の愛を伝えようではないか!」

 

 >そう声高々に宣言したスパルタクスはあなたを肩に担ぐや否やドスンドスンの重い足音を鳴らしてその巨体からは想像出来ぬほどの速度で離脱する斥候部隊を追撃しに行く。

 

 あー誰か助けてえええぇぇぇ……! 

 

「……取り敢えず私達は逃げた斥候部隊の追撃に行くわ。立香、あなたは野営地に侵入しようとする化け物達の相手をしてちょうだい」

 

「ああ、もう! 何なのですかあのバーサーカー! 私のマスターを攫うなんて本当にいい度胸してますね」

 

「本当に彼奴は相変わらず変なのに好かれるな……」

 

 >両儀式、ジャンヌ・オルタ、アルトリア・オルタの三人は走っていったスパルタクスを追いかける。

 >残された立香達は唖然としながらも野営地に入ろうとする化け物達と奮闘する兵士の声が聞こえると気を取り直してすぐ様応援に駆けつけた。

 

 

 

 

 >猛追するスパルタクス、その巨漢から必死に逃げる斥候部隊。

 

 これ追いつけない事はないでしょうけど、少し時間がかかりそうですね。それはRTA的にまず味なのでスパルタクスの速度を上げて逃走する斥候部隊の前に出て、後ろから来てるアルトリア達と挟み撃ちしましょうかね。

 

 >あなたは未だに自分を担いで走るスパルタクスに作戦があると耳打ちをする。

 

「おおっ! 分かったぞマスターよ! 汝の力を逃げる圧制者達に存分に見せつけてやろうではないか!」

 

 >大声を上げて喜ぶスパルタクスを他所にあなたは冷静に銃を取り出す。

 

 これやると味方もダメージ受けるけどまあ、スパルタクスだし喜ぶでしょ。ホモくんもダメージ受けるけどな! 

 

 >あなたはMP5を連射する。

 >発砲音が連続して鳴り響くが、全て敵に命中する前に突如として速度を失い地面に落ちる。

 >だが、その代わり──

 

「ぬおおおっ! 良いっ! 良いぞぉ! ぬははっ! 力が漲るようだ! さぁ、圧制者達よ我が愛を受け取り給え!」

 

 >先程まで逃げる斥候部隊よりも僅かに速い程度のスパルタクスの速度が飛躍的に上昇する。

 >ミシミシと骨が軋み、ぐちゅりと肉が潰れる音が鳴るがそれも瞬きの間にスパルタクスは回復し、それどころか先程までよりもより巨大に、より強大な筋肉となって逃げる斥候部隊を猛追する。

 

「クソッ! どっちが化け物だよ!」

 

 >尋常ならざる速度で追い縋る人の身を遥かに超えた巨漢に追いかけられる斥候部隊の1人が悪態を吐く。

 

 分かる。なんなら異形共よりスパルタクスの方が怖いまであるだろこれ。

 

「行くぞッ! マスターよしっかりと掴まっているがいい!」

 

 >次瞬、スパルタクスの足の筋肉がミキミキと異音を立てながら膨張する。

 >そして砲弾が着弾したのかと思わせるほどの轟音を立てて天高く跳躍した。

 

 うおおあああ!? 

 

 やばいやばい! この高さ落ちたら今のホモくんだと打ち所によっては普通に死ぬ高さだ。

 

 振り落とされたら洒落にならない! 

 

 >あなたは振り落とされないようにがっちりとスパルタクスの体に手を回した。

 >そして天高く跳躍したスパルタクスは轟音と土煙を盛大に立てながら逃げていた斥候部隊の前へと着地する。

 

「さあ、今こそ叛逆の時だ。我が愛を受け取るが良い圧制者よ!」

 

 >菩薩のような笑みを浮かべながらその巨体さ故に地響きを鳴らしながら迫るスパルタクス。

 >斥候部隊もその姿を見て観念したのか、覚悟を決めた様子で武器を構えた。

 >あなたもそれを見てスパルタクスの体から手を離してそっと地面に降りる。

 

 死ぬかと思ったゾ……。

 

 敵もお覚悟キメたみたいなので戦闘開始です。

 

 スパルタクスは何か命令を出すより彼自身の直感と戦闘経験から来る予測で戦ってもらいます。下手に干渉しちゃうとバーサーカーなのもあって彼は戦い難いでしょう。

 

 ホモくんはスパルタクスの援護と斥候部隊をコロコロしつつ、時間を稼ぎながら戦って後ろからやってくるであろうアルトリア達と合流を目指します。

 

 合流しきったら殲滅ですね。

 

 >あなたは銃を構えて斥候部隊に放つ。

 >だが、銃弾が斥候部隊を貫くよりも速く化け物達がその身を盾にして斥候部隊を守る。

 

 む、やっぱり結託してますねこれ。つーかマジかぁ。凶暴性増してるはずの原生生物が人間を守るってことはマジで神祖がカリスマで従えてる可能性がありますね。

 

 巨神と神祖のコンビかぁ……。これはキッツイなぁ。

 

「ぬぅん!」

 

 >スパルタクスの剛腕から振るわれる無骨な鉄の棍棒が化け物共を吹き飛ばす。

 

「く、くそっ!」

 

 >目の前で化け物達が吹き飛ばされた斥候部隊の一人が悪態を吐きながらも棍棒を振るったことで無防備になったスパルタクスの肉体に槍を刺す。

 >だが──

 

「は、ぁ……?」

 

 >スパルタクスに槍を突き立てた斥候部隊の一人が呆けた声を出す。

 >それもそうだろう。

 >何故ならばスパルタクスの肉を引き裂き、刺し抜いたはずの槍の穂先が盛り上がるスパルタクスの筋肉によってへし折られ、あまつさえ刺したはずの傷が筋肉が更に膨張することで傷を塞いだのだから。

 

「さあ、愛を受け取るのだ」

 

「や、やめっ──ぎゃああああ!?」

 

 >呆けた様子の敵兵をスパルタクスは優しく抱き上げて、渾身の力で抱き締めた。

 >所謂ベアハッグ、或いは鯖折りと言われる技だ。

 >熊よりも強靭な肉体を持つスパルタクスがただの人間に向けて放ってしまえば、それは間違いなく絶死の一撃となる。

 >ゴキベキと骨が砕かれ、肉が潰れ、兵士を絶叫を上げる。

 >だが、それも一瞬のことで声を上げることもなくなり、だらりと力が抜けた敵兵をスパルタクスは解放する。

 

 うわぉ……これ立香ちゃんいたらやばかったな。

 

 >そんなスパルタクスに向けて2頭の化け物達がその鋭い牙を立てんと大口を開けて噛み付こうとする。

 

「ぬははっ! 良いぞ!」

 

 >だが、その内の飛び掛かる一頭をスパルタクスはその牙ごと顎をアッパーカットによって打ち砕く。

 

 ほい、援護っと。

 

 >反対から迫っていた化け物はあなたが放つ弾丸が目を貫き脳を抉ることによって生命活動を停止させる。

 

 お、クリティカル入りましたね。

 

「全員でかかれ! 相手は未だ二人だ! 物量で押せば──ぎゃっ!?」

 

「愛、愛、愛!」

 

 >指揮官だと判断されたのか、全体に指示を出そうとした敵兵はスパルタクスの無骨な棍棒の上段から繰り出された一撃により叩き潰された。

 >人が上から潰されて死ぬという異常な死に方を見た敵兵は及び腰となる。

 

 敵兵可愛そう……。でも戦争だからね。足掻いて死ね(豹変)

 

 >今にも心が折れそうな敵兵に向けて銃弾を放とうとするが、それよりも速くスパルタクスが敵兵達を蹂躙する為に動き出す。

 

 ふむ……? まあ、銃弾も勿体ないしここは温存しておきますか。っと、アルトリア達も来ましたね。それじゃあホモくんは戦う必要もないかな。援護に徹しましょう。

 

「散りなさい」

 

「ふっ!」

 

「ハァッ!」

 

 >スパルタクスを警戒して前面しか見ていなかった敵兵と化け物達は後ろから強襲を仕掛けてきたアルトリア達に反撃することも出来ずに一斉に屍と化す。

 

 まあ、後は作業かな。スパルタクスによって殆ど瓦解してましたし、そこに援軍が来たとなればもう終わったようなものでしょう。

 

 >両儀式達が合流したことにより、化け物達と敵兵は瞬く間に駆逐された。

 

 戦闘終了──じゃない! 

 

 >空が蒼く光る。

 >敵を倒し終えた瞬間の隙を狙われて放たれた破壊の奔流があなた達を焼き尽くそうと空から迫り来る。

 

 ああ、もう面倒くさいな!? 全員ワープで飛ばして退避を──

 

「大丈夫よ、マスター。私を信じて頂戴」

 

 >破壊の奔流からあなたを守るように立ち塞がった両儀式はそっと刀を構える。

 >一度閉じて開いた瞳は蒼く輝いている。

 

直死──」

 

 >迫る破壊の奔流。

 >相対するは両儀式。

 >傍から見れば圧倒的に不利な構図だ。

 >けれども、あなたは両儀式を信じていた。

 

両儀の狭間に消えなさい

 

 >振るわれる一閃。

 >破壊の奔流は幕引かれたかのように露と消え去った。

 

 Fooooo! 

 

 流石は式ちゃんだぜ! 直死の魔眼持ちの根源接続者は伊達じゃない! ぶっちゃけ直死の魔眼は根源の力からしてみればおまけもいいところだけど、あるとやっぱり便利ですよねぇ。

 

 ま、それはさておき敵は全滅させて情報を持って帰るのを阻止できたので立香ちゃん達のいる野営地に帰りましょうかね。

 

 ……あれ、それにしても今回のホモくんのキルスコア低くない? 化け物一体だけじゃん。うーん、経験値がまず味ですねクォレハ……。

 

 まあええわ許したる(寛大)

 

 どうせ、この特異点ではクソほど戦うでしょうしね! 

 

 というわけでキリがいいので今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 




やはり筋肉は全てを解決する――!

そう言えば評価者が1000人超えてました。こんな亀投稿の作品にこれだけ投票してくれて感謝。感想もモチベの上昇に繋がっているので本当にありがたいものです。もっとくれ(強欲)

感謝の失踪をします。


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星が照らす者

あけおめ

今年初の投稿なので実質初投稿です


 

 多くのものが寝静まる夜。立香は中々寝れずにいた。明日はガリア奪還の為に激しい戦いになるであろうとネロもロマニも皆も言っていたから早めに寝て体力を回復させないといけないことは分かっていたのだが、それでも寝れずにいたのだ。

 

「うー……よし、ちょっと外で焚き火に当たってこようかな」

 

 そう言うと立香は休んでいたテントからマシュを起こさないように外に出た。そして夜の肌寒さを感じながらも寝ずの番をしている人達が焚いている焚き火の近くに行くと適当なところに座り込み、この二つ目の特異点に来てから起こった様々なことを思い出していた。

 

 いきなり凄いビームみたいなものが飛んできて望幸が死んじゃったと思って泣いてしまったし、歴史上で男だと思われていたはずのネロ皇帝は凄く可愛い女の人だった。でもまあ、望幸も言っていたけど男だと言われてたアーサー王も女の子だったし案外驚くべきことじゃないのかもしれない。

 

 もしかしたらこれから先も男だと伝わってるのに女の子でした! っていう英霊と出会う事もあるかもしれない。特に織田信長とか。

 

 そんな事を考えながら立香は腰に差していた剣を怪我をしないようにゆっくりと引き抜いてじっと見つめた。

 

 顔は忘れちゃったけど路地裏にいた武器商人さんから貰ったエメラルドの散りばめられたとても高価そうな剣。私が持っていても使えないしと望幸に渡そうと思ったらそれはお前が持っていた方がいいなんて言って結局私が持つことになったけど、こんなもの私が持ってても意味はあるのかなと思ってしまう。

 

 しばらくの間炎の光によって照らされる刀身を眺めていた。そしてある程度眺めて満足したので剣を鞘に入れて腰に差す。

 

「もうすこし眠くなるまで火に当たって──ん?」

 

 不意に視界の端に捉えたのは何処か離れた場所に行こうとしている望幸の姿だった。いつもだったら寝ているというのにもしかして彼も寝れなかったのだろうか? 

 

 そんなことを考えながらも立香は彼の後を追いかけた。

 

「こんな夜更けに何処に行くんだろう?」

 

 立香はそんな疑問を抱きながらもどんどん駐屯地から離れていく彼の後を追いかけて──気づけば駐屯地までそこそこ遠く人気のない所まで来てしまった。

 

 そして肝心の彼はと言うと急に立ち止まって空を見上げていた。その後ろ姿を立香はどうしてか隠れてジーッと見ていた。

 

 出て行って何をしてるの? と聞けばいいだろうに何だかそうする事も憚られてその青い瞳で空を見つめる彼を見つめていて──不意に瞳だけを動かして此方を見た彼の青い瞳とバッチリ目が合ってしまった。

 

「……立香、こっちに来るか?」

 

「うっ、バレちゃった……」

 

 おずおずとした様子で物陰から出てきた立香を彼はふっと柔らかい笑みを浮かべて手招きした。

 

「望幸は何をしていたの?」

 

「見ての通り空を見ていた」

 

 そんなことを言いながらどこから取り出したのかシートを引くとそこに座るように立香を誘導した。そしてこれまた何処から出したのか、小さな小鍋といくつかの食料を用意してパチンと指を鳴らすといつの間にか組まれていた薪に魔術で火をつけた。

 

「今日は一段と星がよく見えるだろう?」

 

「あ、ホントだ」

 

 雲一つなく空を彩る様に星が煌めいていた。月並みな表現だが、宝石箱を引っくり返したと言うのが似合う程に綺麗だった。

 

 ──ただ少しそんな綺麗な空に輝く白い光輪が邪魔だったけれど。

 

「望幸ってよく空を見てるよね。天体観測が好きなの?」

 

「好き……んん、どうだろうな。そんなこと考えた事がなかった。ただ、こんな星空を眺めてると少し昔のことを思い出すんだ」

 

「ふぅん……。ああ、そうだ。昔のことと言えば私と望幸が行ったあの花畑の時もこんなに綺麗な星空だったよね」

 

「───」

 

「目の錯覚なんだろうけど星の光に当てられて花が淡く輝いて見えてさぁ。凄く幻想的だったもんね」

 

 昔を思い出してニコニコと笑う立香は彼の様子に気がつかなかった。

 

「──立香、あの場所を覚えているのか?」

 

「うん、勿論! だってあの場所は私にとって大切な思い出の場所なんだもん。忘れるわけないよ」

 

「そう、か」

 

「ね、望幸。人理修復の旅が終わったらさ、またあの花畑に行こうよ」

 

「……あぁ、そうだな。全てが終わったらまた君と行きたいなぁ」

 

 そう呟く彼の声は何処か震えているように感じて、そこでようやく立香は彼の様子に気がついた。横を向いて彼の様子を伺うと星空を眺める彼は何処か遥か遠い昔を思い出しているようで、そしてその青い瞳に強い光が灯ったようにも見えた。

 

「望幸……?」

 

 心配そうに見つめる立香に彼は誤魔化すように質問をした。

 

「なあ立香、君にとっての運命とは何かを俺に教えてくれないか」

 

 突然の質問に驚きつつも立香は少しだけ考える。だが、特にこれといったものが思い付かなかった為、うーっと唸っているとその様子を見た彼は少しだけ笑った。

 

「今思い付かないんだったら無理に答える必要は無い。そうだな……この人理修復の旅が終わる最後の時にでも立香の答えを聞かせてくれ」

 

「……ちなみに望幸は?」

 

「俺か? 俺は、そうだな──」

 

 彼はまた星空を眺めてほんの少し間を置いてから答えた。

 

「──この世で最も嫌いな存在かな」

 

 そう言って何処か吐き捨てる答える彼の姿に立香は心臓が掴まれるような思いだった。だって、初めてこんなにも彼が苦しそうで憎々しげな顔をしていたから。

 

「望幸──」

 

「なんてな、冗談だよ。驚いたか?」

 

 その言葉の通り一瞬で先程までの表情が消えて薄く笑う彼の顔を見て、立香は目を見開いて固まった。

 

「こ、このっ……!」

 

「俺の演技も中々のものだろう?」

 

「もうっ! 本当にもう!」

 

 心配した気持ちを返して欲しい。

 

 そんな風に怒る立香に彼は笑いながら謝ると火にかけて沸かしていたものをコップに注ぐと立香に渡した。

 

「ほら、これでも飲みなよ。どうせ寝付けなかったんだろう?」

 

 立香は渋々といった様子で怒りを収めて彼からコップを受け取ると仄かに湯気が立つそれをちびちびと舐めるように飲み始めた。

 

「……気になってたんだけど何処からコップとか鍋とか用意したの? 私がこっそり付いてきた時何も持ってなかったよね。もしかして望幸がよく使ってる置換魔術?」

 

「ん、これか? 此奴は虚数──あーいや、そうだな……。まあ、そんなものだ。置換魔術で遠くにあるものを取り寄せてるのさ」

 

「ふぅん、そうなんだ……あ、これ美味しい」

 

「はは、口にあって何よりだ。一応其奴は安眠効果もあるから飲んで暫くしたらぐっすり眠れるだろう」

 

 彼はそう言いながら自分のコップにもそれを注ぐと立香と同じように少しずつ飲み始めた。そして訪れる静寂の時。鳥と虫の鳴き声が響く中、立香達はしばらくの間星空を眺めていた。

 

 明日、ガリアに攻め込むというのにそんなことを微塵も感じさせないほどに穏やかな時間が二人の間に流れていた。

 

 そして暫くすると立香に眠気が一気に襲ってきた。彼の渡してくれた飲み物の効果もあるのだろうが、一番の要因はやはり彼と一緒に過ごせた事で知らず知らずのうちに張っていた緊張の糸が緩んだのだろう。

 

「ん……」

 

「眠くなったのか」

 

 最近は不安で睡眠が十分に取れる事が少なかったが故に立香は答えるのが億劫になるほどの睡魔に襲われていた。その様子を察知した彼は少しだけ嘆息した後、立香の頭に手を置いた。

 

「おやすみ立香」

 

 その言葉を最後に立香は意識を失った。

 

 肩に寄りかかるように規則正しい寝息を吐きながら眠る立香を彼はそっと起こさないように頭を膝の上に誘導するとパチンと小さく指を鳴らす。

 

 それだけで今まで彼らの周りにあった小鍋や焚き火の痕跡すらも綺麗に消え去った。

 

 膝の上で眠る立香の頭を優しく撫でながら彼はフッとちいさく息を吐く。そして立香の瞼の上にそっと手を置いた。

 

「せめて今だけでも良い夢を」

 

 その言葉と共に彼はゆっくりと立香を起こさないように持ち上げるとそのまま駐屯地へと戻って行った。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 朝、テントの隙間から入ってくる光で立香は目が覚めた。

 

(ん……何だかこんなにぐっすり眠れたの久しぶりかも……)

 

 最近は不安で中々眠れなかった。何せ本格的な戦争だ。人と人同士が殺し合う中、少し前までただの一般人であった立香には今の現状はあまりにも重い。

 

 それに今回の特異点では大切な幼馴染である彼が死んでしまったと思ったのだ。あれは彼が上手くどうにかしてくれたからこそ私も彼も生き残ることが出来た。けれど、二度目はないかもしれない。

 

 そう思うと不安で中々寝付けなかった。マシュやロマニ、ダ・ヴィンチちゃんなんかにも心配されていたが、大丈夫だと偽ってずっと気を張りつめていたのだ。

 

 けれど、昨日の夜に望幸と二人で話して、不安が完全になくなったとは言えないけれどそれでもかなり不安は取り除けた。そして──

 

(ん? あれ、私昨日どうやってテントに帰って……?)

 

 寝ぼけていた頭が徐々に覚醒し始める。

 

 今抱きついているものは何だろう? マシュにしてはちょっと硬い。フォウくんにしてはモフモフしてない。あ、でもこの匂いは安心する──

 

 そこで立香は完全に目が覚めた。

 

 パッチリと目を開けた先にいるのは青く輝く瞳で此方を見つめている望幸がいた。

 

「おはよう、立香」

 

「な、なななんで? どうして望幸が此処に?」

 

 顔に血が集まるのを感じる。いや、別に望幸と一緒に寝るのは構わないし、なんなら昔は一緒に寝てたことも沢山あるから別にいいんだけれども。変な寝顔してなかったかな? 寝相悪くなかった? 涎とか垂らしてないよね? 

 

 あわあわと慌てている立香を他所に望幸は更なる爆弾を投下した。

 

「どうしても何も君が離してくれなかったからなんだが」

 

「ぁぁぁぁぁ……」

 

 何となく思い出してきた。昨日確か暖かく感じてた物から離れたくなくて何かにしがみついていた覚えがあったけどまさかそれが望幸だったなんて……。

 

 もう無理。恥ずかしすぎて死んじゃう。

 

 あまりの羞恥から真っ赤になった顔を彼から隠すように手で覆っているとどういう訳か、彼はまるで包み込むように抱き締めてきた。

 

「聞いた話によると人間はこうして抱き合うと落ち着くらしいが……。どうだ、落ち着くか?」

 

「確かに落ち着くけど! これはそうじゃなくてぇ……」

 

「ん、ならやめるか?」

 

「……もうちょっとこのままで」

 

 朝早くて寒いだけだから。別にこれは欲に負けたとかそんなのじゃないからと誰に言い訳しているのかと尋ねたくなるほどに心の内であーだこーだと理由を付けて彼に抱きつくのを立香は正当化していた。

 

 そうしてしばらく時間が経って──立香は彼の胸に埋めていた顔を上げると彼の青く輝く瞳を見た。

 

 いつ見ても綺麗な瞳だと思う。澄んだ青空のような、或いは夜空に浮かぶ星のような輝きを放つ青い瞳。吸い込まれてしまいそうになるほどにその瞳を眺めているとその視線に気がついた彼は同じように私の瞳を見つめてきた。

 

「どうかしたか?」

 

 そう聞かれたけれどまさか見惚れてましたなんてそんな小っ恥ずかしいこと言えるはずもなく、かと言ってまともな思考ができていない状態の頭から納得させるような言い訳は思いつかず、反射的に自分が何処か心の内で思っていたことを喋ってしまった。

 

「あの、偶にで良いからまたこうして一緒に寝てくれる……?」

 

 言ってから何を言ってるんだと気付いた。これならまだ正直に話した方が良かったんじゃないかと思ってしまう。

 

 やっぱり今のなし──そう言おうと思った瞬間

 

「分かった。それが君の望みならば」

 

 何の躊躇いもなく彼は了承した。

 

 ほんの少したりとも考える素振りも見せずに即答したため立香の心は色々と乱れた。

 

 快諾してくれたことは嬉しい。これでやだとか言われたらショックで一日は沈んでいただろう。しかし、しかしだ。なんの迷いもなく即答するというのはいただけない。

 

 もしかして女として認識されていないではと疑ってしまうのだ。幼馴染とはいえ常日頃一緒に居すぎた弊害かもしれない。だからと言って離れる気は微塵もないんだけれども。

 

 少しくらいは迷って欲しかったなと思ってしまう。乙女心って存外面倒臭いのだ。彼はそんな事は知らないんだろうけど。

 

 などとそんなことを心の内でボヤきつつも、此方のテントに近づいてくる足音に二人は気がついた為、身体を起こして身支度をする。

 

「うむ! 良い朝だな二人共!」

 

 快活な声を上げてテントの中に入ってきたのはネロだった。

 

「そなた達に伝えるべき事があってな。まず一つ、これは薄々気づいておったが連中はどうにもあの化け物達を操る術を持っておる。そして二つ、『皇帝』を名乗る愚か者の所在地が判明した。恐らくは化け物達を余の愛するローマに解き放った連中の一人であろう」

 

「連中の一人ってことは他にも皇帝を名乗る人がいるってことですか?」

 

「ああ、まだ情報を探っている段階だが、この化け物達を操っている者がいる。そして其奴は今しがた所在地が分かった『皇帝』を名乗るものでは無いことは確かだ」

 

「……なら、今俺達がすべき事は所在地が判明した『皇帝』を倒すことか」

 

 そういう望幸は先程までのふんわりとした気配は消え失せて何処か寒気を感じるほどの無機質な表情でネロにそう尋ねた。

 

 その言葉にネロはこくりとただ頷いた。

 

「そうだ。どうにも其奴は『皇帝』を名乗るだけあってただの兵では歯が立たん。そして我等は悪戯に兵を消費するわけにもいかんのだ。であるのなら我等が率先して仕掛けるしかないというわけだ」

 

「了解した。後で他の奴らにも伝えておく」

 

「うむ、よろしく頼むぞ。ところで──」

 

 話が終わり、望幸が戦の支度をしようとした所でネロがずずいっと彼に近づいた。そしてその非常に整った顔を彼の顔に近付ける。ともすればその距離はキスでもするのではないかという程に接近していたのだが、彼は変わらず無表情を貫いていた。

 

 その事実にネロは眉を寄せる。そして何を思ったか、その白魚を思わせるような華奢な指で望幸の頬を摘みグイッと口角上げた。

 

「──そなたはもう少し表情を変えたりせよ。余のような絶世の美女がこうも近づいているのだぞ? そこは照れたり頬を緩ませたりするべきであろう! 表情が全く変わらんから余は色々と心配だぞ?」

 

「……善処する」

 

「する気ないであろう!? これだからそなたは──」

 

 目を逸らす望幸に騒ぎ始めるネロを他所に立香は思わず首を傾げた。

 

(望幸、そこそこ表情が変わるような……?)

 

 確かに彼は無表情であることは多い。けれど、ネロが心配するほど表情が変わらないものだろうか? 現に昨日の夜なんかコロコロと表情を変えていた。

 

 ネロの言葉に立香は少し違和感を抱きつつも、彼がもっと表情豊かになってくれれば嬉しいからいいかと一人納得した。

 

 そして立香は未だにあの手この手で彼の表情を変えようと奮闘しているネロとその奮闘虚しく無表情でネロを見つめる彼の二人を何とか諌めてマシュ達の元へと向かった。

 




Tips:『彼』は演技が上手。
『彼』のヒミツ:立香に対しては甘い。
立香のヒミツ:実は独占欲が強め。


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カエサル戦(前)


古戦場前なので初投稿です。


 

 喧騒と殺戮で塗れた荒野にて一人の男が目を閉じ、何かを待っていた。

 

 その男はよく言えばふくよかな、悪く言えば太った体をしておりとてもでは無いが、戦える見た目ではない。けれど、その身から溢れる覇気が見かけ通りの実力ではないことを示していた。

 

 そんな男に荒い息を吐きながら一人の兵士が駆け寄ってきた。

 

「申し上げます、皇帝陛下。敵軍の攻勢が増した──と、前線から早馬がありました。僣称──」

 

「良い、()()()()()()()()()()()とも。ネロ率いる小部隊が進撃しているのだろう?」

 

「はっ、仰る通りでございます。恐らくは皇帝陛下の仰っていた『特別』な敵将が部隊にいるものかと」

 

「だろうな。良い、貴公はもう下がれ。その小部隊にも何もせんでいい、放っておけ」

 

「は……」

 

 兵士は深く一礼すると何処かへと去っていった。恐らくは戦線に加わったのだろう。そんな兵士を尻目に皇帝陛下と呼ばれた男は深く嘆息した。

 

「……カルデアが此方に来るまでは数と質共に上回る我等の方が圧倒的に優位であった。だが、カルデアが来た途端にこれだ。ひっくり返せるはずのない戦力差を容易くひっくり返すか。ここまで来ると『世界』そのものが味方に付いてるとしか思えんな。……いや、或いは──」

 

 

「──これこそが因果の歪みというものなのか」

 

 

 そこまで言うと男はゆっくりと目を見開き、遥か遠くを見つめる。その視線の先には自らが待ち望んでいたカルデア一行がいた。

 

 軍を蹴散らし、化け物を薙ぎ払いながら快進撃を続けるカルデア──マスターである藤丸立香と星崎望幸を愛おしい子を見るような目で眺め、そしてサーヴァントに混じりながら化け物達を殺し続けている望幸の姿を痛ましい者を見る目で見ていた。

 

「───。いや、今は確か星崎望幸と名乗っているのだったか。お前は、何処に向かうつもりなのだ。サーヴァントの相手はサーヴァントにしか務まらぬ。ならば、その理から逸脱するお前は何だ。何に成るつもりなのだ」

 

 かの御方に守られ、保護された数少ない記憶の破片に浸りながら思い浮かぶ記憶はかつてのマスターの姿だ。最早顔すら思い出すことは出来ぬが、それでもマスターと紡いだ思い出は確かにここにある。

 

「破壊することでしか己の価値を示す方法を知らぬ手のかかる子だった。けれど、不器用ながらも世界を愛し、守ろうとする子であった。……私がセイバーとして召喚されたのはこの為だったのだろう。知らねばならん、あの子が何に至るつもりなのかを。弁舌ではなく、剣にて今のあの子を推し測らねばならん」

 

 そう言って彼は剣を抜き、その身に魔力を走らせる。それに呼応するが如く、彼の体を侵食していたヴォイドセルが妖しい輝きを放つ。

 

「……来たか」

 

 その言葉と共に化け物の群れを鏖殺し、兵士を蹴散らしたネロ達が男の目の前に立つ。

 

「待ちくたびれたぞ。いつまで私を待たせる気だ。しかし、だ。私が待つ甲斐はあったというものだ」

 

 彼はそう言ってネロへと目を向けた。

 

「──ああ、やはり美しいな。うむ、それでこそ世界の至宝でありローマに相応しい。我らの愛しきローマを継ぐ者よ、名前は何と言ったかな」

 

 その堂々たる振る舞いと溢れんばかりの覇気にネロは一瞬言い淀んだ。

 

「沈黙するな、戦場であっても雄弁であれ。それとも、貴様は名乗りもせずに私と刃を交えるか。それが当代のローマ皇帝の在りようか? さあ、語れ。貴様は誰だ。この私に剣を執らせる貴様の名は」

 

 先程よりも圧力の増す彼に今度はネロも負けじと堂々と名乗りを上げた。

 

「──ネロ。余は、ローマ帝国第五皇帝。ネロ・クラウディウスこそが余の名である。僣称皇帝、貴様を討つ者だ!」

 

 その名乗りに男は深く笑みを浮かべる。良いものを聞いたと言わんばかりの笑みを。

 

「良い名乗りだ。そうでなくては面白くもない」

 

 そして今度はネロから視線を外し、カルデア一行──立香達へと目を向けた。

 

「そこな客将達よ。遠き異邦から良く参った。お前達も名乗るがいい」

 

「藤丸立香です」

 

「マシュ・キリエライト。マスター藤丸立香のサーヴァントです」

 

「……星崎望幸だ」

 

「うむ、うむ……良い名だ。マスターとサーヴァント、従来の関係とは些か異なっているがそれもまた良い──うん?

 

 何か納得した様な様子を見せる男は藤丸立香から星崎望幸へと視線を移し、ピタリと固まった。

 

「ううむ、これはまたなんとも……。厄介、なんて言葉で片付けられる範疇を超えているな。いくら何でも過剰戦力が過ぎるのではないか? いや、もしくは彼女らが必要なだけの何かがこの人理修復にあるということか?」

 

 何かブツブツと呟いてはいたが、やがては呟くのをやめて剣を構えた。

 

「まあ良い。ここまで来たのだ、我が黄金剣『黄の死(クロケアモース)』を味わっていくがいい」

 

「言うな、黄金は余のものである! 黄金劇場を作り上げし、このネロの!」

 

「はは、その意気だ。マシュ・キリエライト、お前はマスターをよく守れよ?」

 

「……この戦いが終わったら聖杯について知っていることを吐いてもらうぞ」

 

「いいだろう。ならばその代わり私に力を見せてみろ星崎望幸。よく戦えば私が教えてやっても良い。さあ──此処へと進め、既に賽は投げられた。お前達の力を私に証明しろ!」

 

 その言葉と共に男はその図体には見合わぬほどの素早さでネロへと肉薄し、斬り掛かる。

 

「ぐぅっ!」

 

 咄嗟に剣でガードしたネロだったが、その異常極まる膂力によりガードした剣ごと弾き飛ばされた。地面と水平に吹き飛んでいくネロを望幸は受け止め、魔術によってその衝撃を緩和させる。

 

 当然、その隙を見逃すはずはなく尋常ならざる速度で距離を詰めると纏めて両断せんとばかり剣を振るう──が。

 

「むっ」

 

 その攻撃は横合いから乱入してきたクーフーリンによって弾かれる。

 

「シィッ!」

 

 そして体勢を崩した瞬間に空気ごと切り裂くような強烈な突きを男に向けて放つ。だが、それは不利な体勢にも関わらずいとも容易く男が叩き落とした。

 

 間髪入れずにその首叩き落とそうと剣を振るおうとしてその場から飛び引いた。その直後先程まで立っていた場所から業火が燃え盛る。

 

「ほお、これは恐ろしいな」

 

「チッ、そんな余裕を見せておいてよく言うわね」

 

 丸焼けにしようと炎を放ったジャンヌ・オルタは余裕の表情でそう語る男に舌打ちする。

 

「──上か」

 

「ふっ!」

 

 男はちらりと視線を上に向けると強烈な一撃を頭上へと放つ。上空から奇襲を仕掛けて来たアルトリア・オルタの聖剣と衝撃波が出る程の打ち合いが始まった。

 

 アルトリア・オルタと激しい剣戟を交わしつつも涼しげな顔で捌きつつ、加勢に入るクーフーリンとジャンヌ・オルタの攻撃すらも危なげなく躱す。

 

『おいおい、嘘だろ!? あの三人を同時に相手してまだ余裕があるって言うのか!』

 

 驚愕の声を上げるロマニ。それもそうだろう、少なくとも今目の前にいるふくよかな男がそれほどの技量を持つとは思えなかったのだ。

 

「ふぅむ、とはいえ流石に多勢に無勢か。ならば──」

 

 男はパチンと指を鳴らす。

 

「▅▂▅▂▂▅▅▅!!!」

 

 声にならぬ雄叫びを上げて異形の化け物達がそれぞれに襲いかかる。

 

「チィッ!」

 

 三人は同様に舌打ちをして突如として現れた化け物への対応を余儀なくされる。

 

「さて、これで少しは時間が稼げるだろう」

 

「……式」

 

「ええ」

 

 その言葉と共に式は縮地を使い、一気に間を詰めると刃を振るう。しかし、それすらも見切っていると言わんばかりに軽やかに躱して彼の持つ黄金剣を打ち付け大きく吹き飛ばし、ついでと言わんばかりに先程の三人を襲わせた化け物達よりも多い数の化け物を嗾けた。

 

 無論、そんな化け物など根源接続者である式の敵ではない。だが、問題はその数と纏めて殺されない為に少数ずつ襲いかかってくるという明らかに時間稼ぎを目的とした波状攻撃で、それに式は否が応にも足を止めることになった。

 

「……ふぅ、流石に疲れるな。とは言えこれで数の力には頼れまい。ならばどう出る?」

 

 これでジャンヌ・ダルクやスパルタクス、ブーディカがいればまだ何とか数の力で優位に立てたのかもしれない。だが、その三名はネロ達率いる小部隊の兵の援護に向かっている為に頼ることは出来そうになかった。

 

「知れたことを! ならば余が討つ。それだけだ!」

 

「援護しますネロさん!」

 

「──それは悪手だぞ」

 

 斬り掛かるネロをひらりと躱し、シールドバッシュを仕掛けてきたマシュをその黄金剣で真っ向から弾き飛ばした。

 

「あぐぅっ!」

 

「言ったはずなのだがな。()()()()()と」

 

 その言葉と共に男の姿は掻き消え、次の瞬間には立香の目の前で剣を振り上げていた。

 

 それに対して立香は目を見開いて避けようと足を動かそうとするが、それだけ。一般人とサーヴァントとでは天と地ほどの差がある。

 

 立香の足が動くよりも速く剣が振り下ろされ──その腕に強烈な蹴りが放たれて剣の軌道が逸らされた。

 

「ほう、やるな。今の一撃、明らかに人間の範疇を超えている。それがお前の魔術か?」

 

「教えるとでも?」

 

 その言葉と共に望幸は彼の顔面目掛けて蹴りを放つ。だが、それはいとも容易く防がれた上にそのまま足を掴まれてしまった。

 

「それもそうだな。ならばこれはどうだ?」

 

 男は掴んだ足を万力の如き握力で締め上げ、逃げられぬように上へと持ち上げて体勢の崩れた望幸の身体へと剣を振るう。そして肉と骨を断つ感覚を感じると共にその手にずっしりとした重みが発生した。

 

「ほう」

 

 斬り殺したと思ったはずの手の中には望幸は既におらず、代わりに持っていたのは半分に叩き切られた小柄な化け物だった。

 

 では、望幸は何処に? 

 

 そう思い顔を上げると既に立香を抱えてマシュの傍に退避していた。

 

「位置の入れ替え……いや、そうなると先程の蹴りの威力の説明が付かんな──むおっ!?」

 

「こんのっ!」

 

 彼の魔術について考察していた男は化け物の群れを食い破ってきたジャンヌ・オルタによって強烈な一撃を叩き込まれた。

 

 鋼鉄で出来た旗がしなるほどの威力でその立派な腹に叩き付けられた男は地面に何度もバウンドしながら吹き飛んでいく。

 

「……ぐっ、想定していたより早いな。もっと手こずるものと思っていたのだが」

 

「ええ、ええそりゃそうでしょうとも。こっちだって昔のままじゃないのよ」

 

 化け物達の血に塗れながら業火を迸らせるジャンヌ・オルタの姿は正に竜の魔女に相応しい姿だった。そんな姿に男はさして攻撃が効いた様子も見せずに不敵な笑みを浮かべながら悠然と立ち上がる。

 

「それは()()()()()()だ。とは言え、これ以上時間をかけていればあれ等を倒し切ったサーヴァントと合流されるか。そうなるといずれ殺られてしまうかもな?」

 

 そう軽口を叩く男にマシュを苦虫を噛み潰したように顔を顰める。

 

「それほどの強烈な剣と技量を誇っておいてどの口で……」

 

『流石はセイバーのクラス……。相当の手練のサーヴァントだな、彼は』

 

「化け物か……。くっ、偽の『皇帝』の癖に……っ!」

 

 多数のサーヴァントを一人でいなし続け、あわや立香を殺す直前までいった彼にネロ達は戦慄する。

 

「いいや、違うぞ。ネロ・クラウディウス。私もまた皇帝の一人だ。尤も私の頃にその称号はなかったが。……と、ああそうだったな。私は名乗りを上げておらんかったか」

 

 いかんいかんとそうボヤきながらその立派な腹──もとい胸を張りながら彼は己の名を告げる。

 

「お前たちの勇気に評し、我が名を告げよう──」

 

 

「私はカエサル。即ち、()()()()()()()()()()()()。それが私だ」

 

 

 その言葉にネロは衝撃を受けたようで面食らったように呆けた。

 

「それ、は……初代皇帝以前の支配者の名……。いや、しかし過去に死した者が、まさか──」

 

「いいや、理解しているはずだネロ・クラウディウス。既にカリギュラと遭遇しているのだろう? ()()だ。私も、奴もな」

 

「──っ」

 

 絶句するネロを他所にカエサルはちらりと後ろを見る。

 

(もうじき突破されるな。まだ語り合いたいところだが、長々と話していれば私の役目を果たすことすら出来んか)

 

「さて、私に一撃を入れた褒美だ。聖杯がどこにあるかについてだけは教えてやろう。聖杯は我が連合帝国首都の城にある。より正確に言えば、その最奥にいる()()()()()()()()()()()と言うべきか」

 

「女性……?」

 

 その言葉に立香は疑問符を浮かべる。

 

「おっと、悪いがこれ以上のことを教える気はないぞ。褒美の時間は終わりなのでな。さて、お前達を苦難の道に導くのは趣味ではない。が、この程度超えて貰わねばこの先にある絶望を乗り越えることも出来んだろう」

 

『っ!? 何だこれは! 彼の周囲にある空気中の魔力が彼を中心に渦巻いてる。馬鹿な、こんな事があるのか!?』

 

 計器を観測していたロマニが焦った声を上げる。

 

「ここからは本気だ。黄金剣も偶には全力で振るってやらねば哀れに過ぎると言うものだ」

 

『気をつけて! 今の彼は魔力量だけで言うのなら神霊にすら匹敵する! くそっ、明らかに異常だぞこれは!』

 

「私は私の役目を果たす──」

 

 凄まじい量の魔力が大理石で覆われた白き腕に集まり、その桁違いの量の魔力が彼の豪華な服を引き裂いていく。そしてその破れた服から覗くのは真っ白な素肌──ではなく、まるで何かに汚染されたかのように紫色に染まった肌で、その上に脈動するかのようにオレンジ色の奇妙な紋様が点滅していた。

 

 恐らくはそれこそが彼の膨大な魔力の正体なのだろう。

 

「私は見た、私は来た──」

 

 溢れんばかりの膨大な魔力を解放し、物理的な圧力さえ感じるほどの覇気をぶつけ、カエサルは高らかに宣言する。

 

ならば後は勝つだけだ!

 

 皆が皆、これからからが本番なのだと気を引き締める中、ただ一人星崎望幸だけは彼の宣言に紛れるように隠すように持った聖晶石を片手に小さく嗤った。

 

 彼の瞳の先にあるのは──。

 





Tips:聖晶石は英霊の核となる。
Tips:聖晶石は擬似霊子結晶と呼ばれる。
Tips:ヴォイドセルは霊子収集体と呼ばれる。
Tips:ヴォイドセルは移植できる。


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カエサル戦(後)

古戦場のボーダー壊れちゃったので初投稿です。


 カエサルにとっての勝利条件とは何か? 

 カルデアに対して勝つことか? 

 

 ──違う。

 

 ネロ率いる軍勢を叩き潰すことか? 

 

 ──違う。

 

 星崎望幸を殺すことか? 

 

 ──違う。

 

 カエサルにとっての勝利条件は勝つことでも殺すことでもない。

 

 星崎望幸について『知る』ことだ。それこそが彼にとっての唯一の勝利条件にして他ならない。

 

 カエサルは己が星崎望幸を殺してもどうにもならないことを知っている。ああ言った馬鹿は殺した程度では止まりはしない。

 

 馬鹿は死ななきゃ直らないというが突き抜けた馬鹿は死んでも直らないというのが、彼を通してよく理解出来た。とうの昔に自分の命など投げ捨てているような馬鹿をいくら殺したところで止まるはずがない。

 

 だからこそ、彼を止めるとするならば全ての原動力である魂そのものを消滅させる必要がある。

 

 その為にカエサルは彼を知らなければならない。

 

 全ては遊星の方舟に座する巨神が彼の全てを滅ぼす為に。

 

 扱う魔術、思考、動き……何もかもを暴き、巨神に託す。それこそがカエサルの勝利条件だ。その為にこの身を巨神の力に侵食させた。

 

 彼の全てを引き出す為にはこうするしかないのだと理解していたが故に。

 

「行くぞ、カルデア。私が見定めてやる!」

 

 その言葉と共にカエサルは凄まじい速さで駆け出す。それに対してジャンヌ・オルタは当然の様に反応し、迎撃した。

 

 鋼鉄の旗と黄金剣が瞬きの間に幾度となく交差し、火花を散らす。互いの得物が衝突する衝撃で大気を震わせるほどの威力で剣戟を交わす。

 

「……っ」

 

 パッと見ではあるがほんの僅かではあるが押しているのはカエサルだろう。

 

 マスターが聖杯を宿す星崎望幸ということと彼女自身がファフニールの力を宿しているとしてもカルデアに呼ばれたサーヴァントである以上、特異点に存在していた時よりかは些かステータスが落ちてはいるが、それでも高水準のステータスを誇るジャンヌ・オルタ。

 

 こと筋力で言えばA+になっている彼女がカエサルに対して力負けをしていた。本来ならば人間空母とすら揶揄されるほどの桁違いの力を持つジャンヌ・オルタに対してカエサルが押しているのは彼が巨神の力──即ち、ヴォイドセルをその身に宿していることが起因する。

 

 ヴォイドセルは生物の凶暴性を増す特徴がある。故にそれに侵されているカエサルも当然、凶暴性が増している。加えてヴォイドセルの霊子収集体という特性も合わされば彼の筋力は元の優秀な筋力なのも相まって瞬間的にA++にさえ匹敵する。

 

 膂力の差だけで言えばジャンヌ・オルタが一方的に打ち負けてもおかしくはないのだが──

 

「ぐっ、ぬぅ……! やるな、麗しき乙女よ」

 

「ハッ、文字通り()()()()()のよ」

 

 ──今まで積み上げてきた技術がカエサルに対して喰らい付ける理由だった。

 

 復讐者としてその身を窶してからずっとずっと覚えてきた。何度繰り返そうと何度負けようと何度、彼が目の前で死んでいこうとも。

 

 ずっと、覚えて……その度に抱いた憤怒も絶望も何もかもを全て自分の糧にしてきた。

 

 自分より強い奴はいると知ったからそんな奴らにも負けない為に力をつけた。他の奴に頭を下げてまで武術を磨いた。武術だけでは駄目だったからと魔術も学んだ。

 

 その全てはたった一人の為に──

 

「私は彼奴のサーヴァントなのよ」

 

 最初は僅かなりとも押していたカエサルが少しずつではあるが、ジャンヌ・オルタに押され始める。

 

 カエサルの動きに対応してきたジャンヌ・オルタは剣をいなし、時に弾き、カエサルの身に少しずつ手が届き始める。

 

「ふはっ、良いな。ああ、実に良い。だが──」

 

「あぐっ!?」

 

 あと少しで手が届くという所で突如としてカエサルの力が激増した。今まで打ち合えていたというのに呆気なくジャンヌ・オルタはその旗ごと斬り飛ばされた。

 

 弾丸の如く吹き飛んでいくジャンヌ・オルタを即座に反応した望幸が受け止めたと同時に不自然な程に速度が消失し、彼が着地したと同時に彼の足元の地面が軽く罅割れた。

 

「ジャンヌ、大丈夫か?」

 

「……っ、ええ問題ないわ」

 

 ジャンヌ・オルタをゆっくりと地面に下ろした彼の姿を見ながらカエサルは先程の現象について考察する。

 

(彼奴が受け止めた瞬間、かなりの速度で吹き飛んでいた竜の魔女がその場で停止したな。普通ならば空中で受け止めたなら共に吹き飛んでいく筈だが……気になるのは足元の罅割れか)

 

「ジャンヌ、今のは……」

 

「彼奴、急に力が増したわね。……いえ、ただ増しただけならまだ対処が出来るわ。それが出来なかったのは──」

 

「魔力を吸収したから、そうだろう?」

 

「……ええ、そうよ。打ち合った瞬間、明らかに力が抜けるのを感じたわ」

 

(ふむ、流石に気づくのが早いな。竜の魔女は流石といった所だが、彼奴は恐らく最初からこれを知っている)

 

 その事にカエサルは内心舌打ちをする。つまり彼奴は遊星の巨神と戦ったことがあるのだろう。ここの特異点か、或いは別の場所でか。

 

 その事実にカエサルは歯噛みする。

 

 どれだけ繰り返した。どれだけやり直した。どれだけ戦い続けた。どこまですれば人の身でああも成り果てる? 

 

(まだ彼奴に対する情報が足りん。少々骨が折れるが出し惜しみはしておられん)

 

 カエサルはヴォイドセルを活性化させる。周囲の魔力を喰らい、己が物とすることで一介のサーヴァントとしては破格の力を得る。だが、当然それには代償が伴う。

 

 ビキッと何かが罅割れる音がする。カエサルの体に掻き毟るような激痛が走るがそれを無視して剣を構えた。そして──その姿が掻き消えた。

 

 ジャンヌ・オルタですら咄嗟に反応出来ぬ程の超高速移動により望幸の後ろへと回り込む。

 

「──!」

 

 だがジャンヌ・オルタはそれに反応した。当然、誰を狙っているのかも気がついた。故に守ろうと行動を起こすが其れよりも速くカエサルの剣が振るわれる。

 

 その剣は彼の無防備な背中に吸い込まれて行き──空を斬った。

 

「何っ!?」

 

 気付いていない、見えていない。その筈だというのに彼は反応した。特級のサーヴァントであるジャンヌ・オルタですらギリギリで反応出来た位だというのにただの人間であるはずの彼が咄嗟に屈んで避けていた。

 

 背中に目でも付いているのか? 

 

 そう疑うもそれも束の間、振るった剣に彼の指先が掠った瞬間、剣はその場に完全停止した。カエサル自身がその場で止めたと錯覚するほどに余りにも違和感なく止まった。

 

 その事象にカエサルは呆け──腹に強烈な衝撃が走った。

 

 メキリと嫌な音が彼の脚から聞こえると共に放たれた後ろ蹴りは風を切り裂かずに風ごと蹴り飛ばし、カエサルの腹に当たった瞬間、行き場を失った風が爆ぜた。

 

「カハッ……!」

 

 何度も何度も地面にバウンドしながらみっともなく地面に転がることで漸く止まった。

 

(ぐっ……そうか、そういう事か)

 

 口から血が溢れ、腹に激痛が走るがそれでも立ち上がって彼の足を見てみれば予想していた通り、一見分からないようにカモフラージュされているが彼の足はへし折れて変形していた。そして己が剣を見れば、僅かにだが彼の魔力が付着していた。

 

 その魔力をカエサルはヴォイドセルによって吸収しつつも、早くもへし折れて変形していた足が治り始めていくのを見て嘆息する。

 

「お前が扱うのは置換魔術か。従来のそれとは大きく異なるが、効果だけで見れば随分と似通っている」

 

 唐突に消えたのは位置を置換することで入れ替えたからだ。

 人の身では到底出し得ない速度を出せるのは速度を置換することで入れ替えたから。

 先程の強烈な蹴りは己の剣の全ての威力を触れることで入れ替えたから。

 

 ──イカレている。

 

 少なくとも聖杯から得た知識の置換魔術とは異なりすぎている。突然変異の何かだろうが、アレは少なくとも置換魔術の範疇に収まりきっていない。何かまだ隠しているはずだ。

 

 得た情報を念話で己の味方全員に共有しつつも、カエサルは鋭い視線を彼に送る。

 

(彼奴は何をするつもりだ……?)

 

 ヴォイドセルを宿しているからか、魔力の流れが良く分かる。彼の心臓を位置するところにそれこそ大聖杯クラスの超抜級の炉心があることも。

 

 だからこそ分からない。

 

 そこまでして何をするつもりなのかが。少なくともあんな事をしなくても人理修復自体は果たしていた。なら何が理由でああまで力を必要としている? 

 

 彼のサーヴァント然り、彼の在り方然り、余りにも不自然なことが多すぎる。そこまでして力を求める理由は何だ。

 

 知らねばならん。彼奴を理解する必要がある。

 

 ──そうでなければ、何か致命的なことを引き起こしかねない。

 

 そんな妙な確信がカエサルにはあった。

 

(見たところ痛覚は機能していなさそうだ。人としての感覚も失われていると言ってもいいだろう。なら他にも何かしら失っている可能性もあるか……)

 

 へし折れた足に対してまるで気にしておらず、痛みで顔を歪めることも無い彼の姿を見て、痛ましく思いつつも今回で最後にするのだと己に活を入れる。

 

「ふーっ……」

 

 深く息を吐き、そして急加速する。地面が抉れ、一部が吹き飛ぶ程の踏み込みで望幸を肉薄する。だが、それに対応してきたジャンヌ・オルタがカエサルを弾く。

 

 彼らと交差した瞬間、不意に望幸と目が合った。

 

「ガンド」

 

 鳴り響く発砲音と弾丸の如く急加速して飛んできた呪いがカエサルの足に命中する。藤丸立香のガンドとは些か異なる完全に妨害のみに特化したガンド。

 

 それは痛みはまったくない、だがわずかな時間ではあるが当たった足が全くと言っていいほど動かなかった。

 

 当然、そんな隙を皆が逃すわけが無い。

 

「ハァッ!」

 

「やぁぁっ!」

 

 動きの止まったカエサルに対してネロが剣を振りかぶる。マシュがその大盾をぶつける。だが、渾身の一撃と言えるその攻撃をカエサルは防いだ。

 

 ネロの剣を黄金剣にて受け止め、マシュの大盾をその大理石の腕で止めた。

 

 地面が陥没するほどの衝撃を彼は確かに受けきったのだ。

 

「そのまま抑えときなさい!」

 

 ジャンヌ・オルタはそう吠えて旗の穂先を向けてカエサルに向けて突進する。さしものカエサルもジャンヌ・オルタの攻撃を何の対処もせずに受ければ流石に死ぬ。

 

 だから──

 

「ふんッ!!」

 

 ──今まで蓄積させた魔力を解放した。

 

 荒れ狂う魔力の嵐が抑え込んでいたマシュとネロの力をほんの少し弱めた。そして抜け出してジャンヌ・オルタを迎撃する、その瞬間──

 

「ガンド!」

 

 今まで全く警戒すらしていなかった藤丸立香から飛んできたガンドがカエサルに命中する。星崎望幸のガンドとはまた違う、妨害ではなく、威力に特化したガンド。

 

 ケイローンの教えとクーフーリンのルーン魔術により密かに強化されたガンドはカエサルに対して少なくない衝撃を与えた。

 

 意識外からの攻撃により思わずよろけたカエサルをジャンヌ・オルタの旗の穂先は確実に捉えてその体を貫いた。

 

「此奴……!」

 

 その言葉を漏らしたのはジャンヌ・オルタだった。

 

「ぐっ……流石に痛い、なァッ!」

 

 カエサルは当たる直前で身を捩り、霊核を破壊されるのを避けたのだ。カエサルは体に旗が突き刺さったまま、全身に力を込めて回転斬りの要領でマシュとネロを弾き飛ばし、ジャンヌ・オルタは旗を手放してギリギリの所で回避する。

 

(時間がない……! これ以上時間を掛けると他のサーヴァントも合流する。それに私自身の体も持たん)

 

 荒い息を吐きながらも剣を構えるカエサル。彼の耳にはヴォイドセルを使えば使うほどビキビキと罅が入る音が聞こえていた。

 

 端的に言えばヴォイドセルの出力に対してカエサルの霊基が耐えきれていないのだ。

 

(魔術は理解した。動きも分かった。そしてまだ何かを隠していることも分かった。なら、私がすべきは……)

 

 荒い息を整えて己の体に魔力を回す。

 

『気をつけて! 今まで以上に魔力が高まっている。宝具を打ってきてもおかしくはないぞ!』

 

 ロマニの忠告に全員が気を引き締めてカエサルを睨む。

 

「──宝具解放

 

 静かに呟かれた言葉が溢れ出る魔力を突進力へと変換する。

 

 カエサルが疾走する先にいるのは──マスターである星崎望幸だ。

 

「余が行かせると思うな!」

 

 一直線に走るカエサルに対してネロは刃を振るう。それに対してカエサルは何もしなかった。

 

 反撃も迎撃もすることはなく、甘んじて斬撃をその身で受けた。血飛沫が舞う、斬られた傷がジクジクと痛むが構いはしない。

 

「なっ──」

 

 驚愕するネロを置いてカエサルは猛進する。

 

「私は来た」

 

 呟きながら望幸へ迫る最中、今度はマシュがその行く手を阻む。

 

「ハァァッ!」

 

 渾身の力で振った大盾がカエサルの肉体を貫く。豪奢な服が見る影もなく破れ、血に染まる。肉体に風穴が空いたというのにそれでもカエサルの速度は一切緩まない。

 

「私は見た」

 

 再度呟く。もはやカエサルの瞳には彼しか映ってはいない。遅かれ早かれくたばる運命だと知っていてこの力を受け入れた。

 

 それでも良かった。彼に受けた恩があったからだ。我が最愛の妻に引き合わせてくれた。例え瞬きの間に過ぎないとしても穏やかな時間を過ごすことが出来た。

 

「燃えろッ! 骨まで焼けてしまえッ!」

 

 ジャンヌ・オルタの憤怒の炎が襲い掛かる。それを大理石の腕を盾にすることで無理矢理突破する。それでもカエサルの体は焼け爛れた。酷い所は炭化すらしている。

 

 構わないとも。己の宝具は初撃を当てるだけだ。

 

 半身が焼け落ちた程度、なんら問題は無い! 

 

 炎の渦を突破して彼の正面に来た。最早、剣の射程に入るまで阻むものは何も無い。

 

 悲鳴が上がる、恐らくは藤丸立香のだろう。

 必死の形相で此方に迫る影が見える、きっと彼を守る為に現界したサーヴァント達だ。

 

 けれど──

 

「ならば次は勝つだけのこと」

 

 ──私の剣が届く方が早い! 

 

 彼の表情は変わらない。何の感情も映さない硝子玉の如き無機質さでカエサルの剣を眺めていた。その姿にカエサルは酷く心が痛んだ。

 

 けれどその心ごとカエサルは彼を叩き斬る。

 

黄の死(クロケアモース)

 

 その言葉と共に彼は後ろへと下がる。だが、もう遅い。

 

 カエサルの黄金剣は彼の体を確かに斬り裂いた。そして起きるのは無尽の斬撃。

 

 カエサルの宝具は己の幸運判定を失敗するまで行い、成功した数だけ斬撃を見舞わせるというものだ。それ故に近接戦闘においては見敵必殺の威力を誇る宝具である。

 

 相手が微塵になるまで金色の猛撃は止まらない。

 

 ──そう、()()()()()()()

 

「なっ!?」

 

 カエサルは驚愕に目を見開いた。確かに斬った。今も斬っている。なのになぜ、此奴は私の懐にいる──!? 

 

 どういう理屈か、星崎望幸は微塵になるまで斬られる筈の連撃から抜け出しており、カエサルの懐に潜り込んでいた。

 

 ありえない、ありえるはずがない。よしんば躱せたとしても黄の死に当たった以上、斬撃は自動的に命中する。だから抜け出せても黄の死から抜けられるはずがないのだ。

 

 ならば何故──? 

 

 疑問に思って自分が刻んでいるものを見れば、そこには刻印の刻まれていた化け物の亡骸があった。

 

「まさか──」

 

「これで終幕だ」

 

 ゴキリと彼の手から骨が鳴る音がする。見れば彼の腕には尋常ならざる魔力が集まっていた。そして放たれた貫手はジャンヌ・オルタが空けた風穴からカエサルの霊核を捉えた。

 

「ご、ハッ……」

 

 口から大量の血が零れ落ちる。ボタボタと落ちる血が己の体を突き刺したままの彼の顔に掛かる。

 

「アリガトウ、これで俺はまた前に進める」

 

 カエサルの耳元で彼はそう嘯く。

 

「何を、言って──いや待て。お前は何を、した?」

 

 絶えず聞こえていた体が罅割れる音がいつの間にか止まっていた。まさかと思い、突き刺した彼の腕を見てみると己の体を侵食していたヴォイドセルが彼の体に移動していく。

 

「やめろ」

 

「……」

 

 ヴォイドセルが抜き取られていく。霊基が通常のものへと戻されていく。

 

「やめろ馬鹿者」

 

「……」

 

 彼は答えない。ヴォイドセルは彼の体を通して彼の持っていた聖晶石へと移っていく。何とかしなければとカエサルは突き刺さった腕を引き抜こうと掴むが、力が入らない。

 

「それは、お前が扱うべきものじゃないんだぞ」

 

「……」

 

 ヴォイドセルによって見えるようになった魔力の流れを見てみれば汚染された魔力も彼の心臓──より正確に言えば聖杯へと注がれていく。

 

「分かってるのか、それはお前を更に苦しめるだけだ。だから、やめろ。それを私の方に戻せ。お前が背負うものじゃない」

 

「……」

 

 答えない。

 

 そして最早抵抗すら出来なくなるほどにヴォイドセルも魔力も抜かれてカエサルは漸くここで一つ思い違いをしていたことに気がついた。

 

「待て、お前が使う魔術は本当に置換魔術か?」

 

「……ハ」

 

 彼はその返答として浅く嗤った。もはや言葉も出せぬほどに魔力を抜き取られたカエサルは激しい後悔に襲われていた。

 

 知るべきではあった。だが、彼にそれを使わせるべきではなかった。恐らくジャンヌ・オルタですらこれの異常性に気がついていない。

 

 否、気付けるはずが無い。直接やられているからこそ、そして聡明なカエサルだからこそ気が付けたのだ。

 

 これは……この力は──

 

「それではサヨウナラ」

 

 その言葉と共に霊核が砕ける音がした。霞む視界、崩れ落ちる肉体。そんな中、カエサルはこの事実を伝えなければと沈み込む意識の中、必死に抗っていた。

 

 けれど……

 

(……? まて、何を伝えれば──)

 

 ──抜き取られた。

 

 何かは分からない。けれど確実に今ソレを抜き取られた。座に持ち帰ることすらも許されないというのか。

 

(クソッ……)

 

 カエサルが手を伸ばして見たのはその手に血で濡れ、変色した聖晶石を片手に呟く彼の姿だった。

 

「この程度の濃度と量じゃ足りないよ。せめてあと一騎分と少しは欲しいな。まあ、目星は付いてるが」

 

 聖晶石を立香達に気が付かれぬように虚数空間へと放り込み彼女達の方へと向かう彼の後ろ姿を最後にカエサルはこの特異点から完全に消滅した。

 




まだセーフ


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形ある島


初投稿です


 

 カエサル討伐から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、無事に強化カエサルを撃破することが出来ました。いやあ、カエサルはRTAの視点から見ると割と面倒な存在だったりするんですよね。

 

 特によく舌が回るのでほっとくとすっごい喋ります。ですからその分時間をロスしてしまいがちなので蛮族よろしくサーチアンドデストロイ(ヒャッハー!)するのが一番いいのです。

 

 そのおかげで大した問答もなく、ささっと討伐出来ました。それにヴォイドセルを奪えましたので更にホモくん強化が捗ります。

 

 まあ、とは言ってもヴォイドセルでの強化は割とリスキーなんでこのまま無事に特異点攻略が済めばやらない方がいいでしょうね。

 

 ヴォイドセルはその特性から無制限に魔力を取り込みかねないので下手なビルドだと肉体が耐え切れずにパーンと弾けます。

 

 なので安牌を取るなら使わない方がいいです。でも今回は巨神ルートなので使わないといけない可能性もあるかもしれない。後ホモくんの心臓には大聖杯が埋め込まれてますからね。普通よりも魔力の許容値が多いのです。なので破裂して死ぬ可能性も通常時よりも低いというわけでヴォイドセルを集めているというわけですね。

 

 備えあったら嬉しいなというわけです。

 

 さて、次の目標ですが神霊であるステンノに会いに行きます。話を聞いた所いるのは確定してますからね。

 

 それでは形ある島まで倍速……と行きたいところですがここで一つ、一部の会話を短縮することが出来る仕様があるのでそれを是非それを使いましょう。

 

 >あなたは古き神がいると噂されている地中海の島に行くためにネロが操縦する船に乗ろうとする立香を呼び止めた。

 

「なぁに?」

 

 >立香は首を傾げながらあなたの下に駆け寄ってきた。

 

 皆さんご存知かもしれませんが、ネロが操縦する船はワイスピも真っ青なトンデモ運転です。そんな船に特に耐性もない一般人である立香ちゃんが乗り込むとそれはもうグロッキーな状態になります。

 

 それの回復に時間が取られるのでそれを防ごうという訳ですね。

 

 手段は色々とありますけど今回は魔術師ルートですので魔術師ならば大なり小なりできるはずの強化魔術を立香ちゃんに施します。これが一番速い上にお手軽です。

 

 >あなたは船酔い防止のために立香に強化魔術を施した。

 

「ん、ありがと。船酔いしちゃったら大変だもんね」

 

 >立香はあなたにお礼を言うと一緒に船へと乗り込んだ。

 

「では行くぞ、出航だ!」

 

 一応念の為に立香ちゃんが船から落ちないように手を握って掴まえときましょうか。落ちるわけないじゃんと思われるかもしれませんがごく稀にあるんですよ。立香ちゃんが吹っ飛んで海ぽちゃする時が。ワケワカンナイヨ-! (1敗)

 

 それではここからはネロがクレイジースタントをするだけなので倍速です。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 着きました(満身創痍)

 

 強化魔術を施したおかげで立香ちゃんがグロッキーにはなりませんでしたけどそれなりにフラついてますね。あんなん、只の人間が耐えられる動きじゃありませんから仕方ないね。事実、強化魔術を施してない兵は完全グロッキーで死にかけてますし。

 

「望幸に強化魔術掛けてもらわなかったら絶対酷い状態になってた……」

 

「あはは……確かにあの運転はちょっと……」

 

『強烈な体験だったみたいだね。立香ちゃんのバイタルを通してどれだけのものなのか、こっちにもよく伝わったよ。とは言っても望幸くんは何も変動がなかったんだけど。……いや待てよ? 立香ちゃんのバイタルにはそこそこの変動があったけど望幸くんのバイタルは特に変動がなかったし、案外そんなに大変って訳じゃ──』

 

「ドクターも体験する?」

 

『遠慮しようかな!』

 

 >失言を零したロマニに対して立香が恨みが籠ったような声で脅しをかける。

 

 そらそうよ。

 

 ホモくんはそういったバステが効かないのは当然なんだよなぁ。カスが効かねえんだよ(無敵)

 

 まあ、実際問題こんなんでいちいち足止めされたらTNPが悪いですからね。仕様的にもバイタルが変動しないのも当然でしょう。

 

 さて、そんなこんなで島に到着したわけですが……そろそろかな? 

 

『……! みんな、サーヴァント反応だ。それもこっちに近寄って来ている』

 

「何だ、またも敵襲か? この島も既に連中の手の内に落ちていたか」

 

 >ロマニは計器に観測された反応を見ていたがやがてこれは只のサーヴァントの反応ではないことに気がついた。

 

『いいや、これは……サーヴァントではあるが……。何だ、違う。正常なそれとは些か違う。これは何だ?』

 

 >困惑の声を上げるロマニを他所にソレは現れた。

 

「ええ、そうよ。普通のサーヴァントではないもの」

 

 >そこにいたのは目の覚めるような美少女──などと言う括りを遥かに超越した美貌を誇る少女だった。

 

「御機嫌よう、勇者の皆様。当代における私のささやかな仮住まい、形ある島へ」

 

 >美貌、声、仕草……どれをとっても人間のソレを超越した存在に兵士達は息を飲んだ。

 >気を強く持たねば一瞬で虜にされるであろう人外の美に立香達でさえ、僅かとはいえ感嘆の息を漏らす。

 

「あら、あらあら……ふふ。此度はどんな勇者が来るのかと思いましたのに……」

 

 >少女はゆっくりと立香達の方へと歩み寄り、彼女達を庇うかのように前に出ていた星崎望幸の前に立った。

 

「残念だわ、既に少し混ざってしまったのね。もしも、純粋なままだったのなら……ふふ」

 

 >何処か妖しげに微笑む少女にあなたはえも言われぬ不安を覚えた。

 

 女神による骨抜きRTAでも始めるおつもりで? 馬鹿野郎! 俺はホモだぞ! (天下無双)

 

「ああ、そう言えば私の名前を教えてなかったわね。私は女神──名はステンノ。ゴルゴン三姉妹の一柱。古き神と呼ばれるのは好きじゃないのだけれども、私の美しさは時間によるものではないもの。好きに呼んでくださいな」

 

『……信じ難い事だが彼女が言ってることは恐らく事実だ。この反応はダウンサイジングされているとは言え神霊だよ。しかもかのギリシャ神話の女神なんて正真正銘の古き神そのものじゃないか』

 

 ロマニが驚いている様ですが後はいつも通りの流れでステンノがご褒美と称して洞窟の中にいるキメラをけしかけてくるのでそこまで倍速です。

 

 ギリシャ神話の神々はホントさぁ……。

 

 さて、今回のステンノからご褒美もとい試練についてですけれども今回はホモくんが立香ちゃんと一緒に行くつもりはありません。

 

 というのもですね、マシュや立香ちゃんの戦闘経験値が足りてないんですよ。ちょっとばかり強い奴と戦い過ぎててまともに戦えてなかったので今回のキメラ戦を利用して少しでも戦いの経験値を積んでもらいましょう。

 

 まあ、あとは……恐らくいる可能性があるタマモキャットに時間を取られない為ですね。タマモキャットは本当に自由人……狐? なので振り回されやすいんですよ。

 

 しかも下手したらここで縁を結んじゃう可能性もあるのでなら、立香ちゃんに縁を押し付け……ゲフンゲフン。既にホモくんには玉藻がいるのでね、立香ちゃんと縁を結んでもらおうというわけです。

 

 タマモナインが集結するのは月の聖杯戦争だけで十分だ。内ゲバが酷すぎるからね……。あんなハチャメチャなフラグ管理など余はもうしとうない! 

 

 おっと、そんなこんなでどうやら洞窟に突入することが決まったようですね。さて、立香ちゃん達にどうやって言いくるめをしたものか……。

 

 普通に試練があるから立香ちゃん達だけで攻略してきてとは言えませんし、ふーむ。

 

「ああ、そうそう。悪いけれどこの子を少し借りるわね」

 

 >ステンノの言うご褒美を取りに行こうとするあなた達に向けてステンノが立香に向けてそう言った。

 

「えっと、望幸を?」

 

「ええ」

 

 >困惑した表情を浮かべる立香とは反対に見惚れるような微笑を浮かべるステンノ。

 >その無言の圧力に立香はタジタジといった様子だ。

 

 おや、これはちょうどいいタイミングですね。これに乗らない手は無いです。

 

 >あなたは立香を助ける為に立香達だけで行ってこいと言った。

 

 ついでにジャンヌ・オルタとアルトリア・オルタもついて行かせましょう。もしもと言う時の保険です。まあ、クーフーリンにジャンヌとマシュがいるので万が一もないとは思いますけど保険はかけておくことに損は無いので。

 

 とは言え、全員送り出すとホモくんがサーヴァントもいない状態で一人だけでステンノと一緒にいることになってしまうので能力だけで見るなら最強格の式ちゃんにはいてもらうことにしましょう。

 

 おじさんが来ても式ちゃんなら普通に勝ってもおかしくないですからね。護衛としてはバッチリです。

 

 >あなたはジャンヌ・オルタとアルトリア・オルタに何かあった時のために立香達について行って欲しいというと二人は渋々といった様子で頷いた。

 

 いってらっしゃーい。

 

 >あなたは立香達が洞窟の中に入っていくのを見届けると先程からあなたへ視線を投げかけていたステンノの方を向いた。

 

 で、何の用ですかね。

 

 >その瞬間、ステンノはあなたの顔をその白磁の陶器のような細い両腕で優しく──されど決して逃げれぬ様に掴まえると先程まで浮かべていた微笑とは比較にならぬほどの魔性の笑みと言って差し支えないほどの微笑みをあなたに向けた。

 >そんな笑みを向けられたあなたはどうしていいのか分からず困惑しているとステンノは少しだけ愉しげな様子であなたの顔から手を離した。

 

「……うふふ、本当に惜しいわぁ。頑張っているあなたには蕩けるように甘い終わりを与えようかと思っていたのだけれど……。けれどそうよね。()()()()()()()()()()()()

 

 もしかして今魅了しようとしました? 

 

 え、なんで……? (困惑)

 

 いや、まあうーん。女神の気まぐれと言うやつなんですかね。ステンノだしなぁ。突飛な行動はいつもの事ですし。

 

 >困惑しているあなたの様子を愉しげに観察しているステンノから両儀式があなたを抱えるように胸に抱き締めて引き離した。

 

「あら、嫉妬? 貴女、随分と可愛げがあるのね」

 

「……」

 

「ふふっ、そんな怖い顔で睨まないでくださいな。私、か弱い女神ですもの。貴女と戦うなんてとてもとても……」

 

 >そう言って酷く意地の悪い笑みを浮かべるステンノに両儀式は深いため息を吐いた。

 

「あんまり私のマスターにちょっかいをかけないで頂戴」

 

「ええ、これ以上手を出したら怖い神様にも怒られてしまうもの。今日のところはここで勘弁してあげるわ。……でもね?」

 

 >ステンノは両儀式にまるで蛇のようにするりと近づくとあなたに聞こえぬほどの小さな声で両儀式の耳元で囁いた。

 

「彼は決して貴女だけのマスターじゃないのよ」

 

 おーん、なんというか。こう、根源接続者と神がああも接しているのは何かゾワゾワするというか。背筋に薄ら寒いものが走るというか、ガバの気配がするというか……。

 

 引き離すか? でもそれで何かあったらもっとガバに繋がりそうだしなぁ。

 

 >何かを伝えたステンノはふわりと身を翻してあなたの方へと振り向くとそのまま極々自然な様子であなたの腕を絡め取った。

 

「それじゃあ、彼女達がご褒美を持って帰って来るまでの間エスコートしてくださいな」

 

 >ステンノはそう言って世の男性が骨抜きにされること間違いなしな可憐な微笑みを浮かべてあなたへと迫る。

 >だと言うのにあなたはその微笑みに何処か末恐ろしいものを感じて思わず無意識に頷いてしまった。

 

 ン゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙。強制連行イベント! ステンノと仲を深めろってことですね。オリオンも言ってるけど女神に気に入られると本当にろくな事がないんですよ。

 

 でもやりますけどね! 

 

 ついでに欲を言うなら何か触媒に近いものが欲しいです。え、女神と契約とか厄ネタすぎない? と思われるでしょうが、安心してください。召喚には触媒を使いません。

 

 オケアノスでエウリュアレに手っ取り早く信頼して貰う為に貰いたいだけです。ステンノはエウリュアレでもあるので彼女から何かを下賜されるだけで信用されやすいんですよね。

 

 まあ女神の気まぐれで台無しになることもありますけどね(3敗)

 

 というわけで先の特異点を見越してステンノの好感度稼ぎを頑張りますよー! 稼ぎすぎには注意だけどな! (6敗)

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 いや、立香ちゃん達遅くない??? 

 

 試練の洞窟に入ったのが大体昼頃だったから夕方までには帰ってくるだろうなとは思っていましたけど、もう夕日が沈んで空に月が登ってきてるんですけど。

 

 しかも満月やんけ。嫌だわぁ……。

 

 あ、ちなみにステンノとはコミュ成功しましたよ。楽しく話せたな! ヨシ! (現場猫)

 

 一応彼女が身に付けていた物を貰うことに成功したので次回のエウリュアレとのコミュの成功率が高まりましたね。

 

 あの特異点だとエウリュアレが1番大事ですからね。信用を早めに得ることが出来ると事がスムーズに運びやすいのです。

 

 話は戻りますが、個人的に満月は苦い思い出があるのであんまり好きじゃないんですよねぇ……。主に真祖というか、月の最強種のせいで。うっ、トラウマが。

 

 そ、それにしても夜ということはカリギュラにはかなり気をつけないといけませんね。夜、しかも満月ともなれば彼の宝具はその効果を十全に発揮します。

 

 彼の宝具は言ってしまえばストレス値爆上げ+宝具、スキル封印の完全に妨害に特化した宝具なんですよ。バーサーカーがもつ宝具じゃねぇだろぉ! というツッコミを置いといてまあ、これが厄介極まりない。

 

 ストレス値のないホモくんには大した効果を発揮しませんが、耐性の無いサーヴァントや立香ちゃんに対して効果抜群です。

 

 特に終盤の立香ちゃんなら兎も角序盤の立香ちゃんじゃねえ……。心構えが出来てない立香ちゃんじゃあ簡単に揺さぶられてストレス値爆増からの発狂コンボが来るからね。

 

 なので大体の人達はここでストレス値の洗礼を受けるんですね。そして同時に如何にストレス値管理大切なのかということと戦線崩壊した戦いがどれだけ厳しいものになるかを知ることになります。

 

 狂化が付与された味方陣営の同士討ちほど惨いものはないよ……(2敗)

 

「あら、彼女達帰ってきたみたいね」

 

 >ステンノが向ける視線の先には酷く疲れた様子で所々ボロボロになって薄汚れている様子の立香達が此方に向かってきていた。

 

 お、帰って──ええっ!? 

 

 お、えぇ? なんで? クーフーリン、Wジャンヌ、アルトリア・オルタにマシュ迄行って何でそんなボロボロなの? 

 

 いや、今はそんなことよりも立香ちゃんの治療を早くしないと! 

 

 >あなたは疲労困憊といった様子で此方にやってくる立香の方へ向かうと立香に怪我の有無について来た。

 

「あ、ううん。平気だよ。ジャンヌとマシュが守ってくれたから怪我一つしてないよ」

 

 ほんとぉ? 怪我を隠してストレス値が増えるとかやめてよ。特に今はカリギュラが襲ってくる可能性が高いんだから。

 

 うぅん、やっぱり不安だ。置換呪術を使って立香ちゃんの今の状態をホモくんに移してしまおうかな。とりあえず治癒魔術を掛けるふりしながら置換呪術でササッと移しましょう。

 

 本人が気がついていない怪我とかも移せば治るし気付けますからね! 

 

 >あなたは念の為にと言って立香に向けて治癒魔術を放つ──と同時にこっそりと置換呪術を起動させる。

 >立香とあなたの状態が入れ替わる。

 >あなたは少しだけ疲れた。

 

 ん、怪我は本当になかったようですね。いやぁ、良かった良かった──

 

「わふん」

 

 >あなたは何故かとても嫌な予感がした。

 

 あっ、これまずい。

 

「何やら懐かしい匂いを感じてもそっと寄ってみれば我が愛しご主人を発見! 一万年と二千年前からあなたのそばに侍る良妻キャットなタマモ属。良妻であり良きペットでもありながらご主人に限りお値段なんと無料の良心価格なのだナ。──ところでご主人今、何をした?」

 

 ほあぁぁぁぁ──!? 

 

 やっば、キャットがおるやん。というか、相変わらず頭が飛んでるねー。昔から思ってたけど何言ってるか理解出来んのよな。

 

 >あなたは突然目の前に現れたエプロンを纏った玉藻と瓜二つなサーヴァントの姿に面食らった。

 

「むむん、何故黙っているのかワン? ご主人の声が聞けぬのはキャット的には大分悲しいのだナ。悲しみのあまり玉ねぎを微塵に切り尽くしてしまう位には泣いてしまうのだ。はっ、もしやこれは待てをされているのだな? これには良妻フォックスであるキャットも待ちの姿勢。でも待てが長すぎると流石のキャットも痺れを切らして完売である。具体的に言うと肉球界揉荼羅(にくきゅうかいもんだら)をご主人のほっぺに展開する」

 

『わっ、ちょっ──』

 

 >そのぷにぷにとした柔らかそうな肉球をあなたに見せつけるようにワキワキと動かしながらあなたの顔を挟もうとする玉藻と瓜二つの女性。

 >そんな最中、何処か焦ったようなロマニの声が聞こえた瞬間──

 

『……駄狐。それ以上妾のご主人様に迫ってみよ。その尻尾、引きちぎって焼却してくれる』

 

 >地獄の底から響いているかのような恐ろしい声色で警告する玉藻の前が通信に現れた。

 

「む、このいけ好かない声はオリジナルだな。だが、ご主人を目の前にしたキャットには恐れるに足らず。勇往邁進あるのみなのだ。それにご主人はオリジナルだけのものではないと月は言っている。ご主人の隣は常に1人! このタマモキャットのものなのだナ!」

 

 おっふ、玉藻とキャットが争ってますね。まあ、当たり前ですけど予見はしていました。タマモナイン揃ってる時の内ゲバヤバすぎましたからね。

 

 ですが、今は渡りに船です。争ってる内にホモくんフェードアウトさせていただきます。逃げるんだよォ! 

 

 >あなたは玉藻と言い争っているタマモキャットと自称した女性からそっと距離を置こうと音も無く立香の方へと行こうとした。

 >が、それを阻むようにオルレアンで出会ったエリザベートがあなたの前に立ち塞がった。

 

「また会ったわね子犬! 私がいなくて寂しかったんじゃないかしら!」

 

 ガアアアアア!! 

 

 今度はエリザベートかよ! イロモノ枠はキャットだけでお腹いっぱい何ですけど。

 

「……ハッ、あまりの情報量に戸惑ってしまいましたがマスター、敵性生物が2体です。トカゲか竜か、或いはアイドルか。兎も角蹴散らしましょう」

 

「うん、蹴散らそうか」

 

『そうだそうだ、どうせろくな事しないから早めに撃退しておこう!』

 

 >マシュの提案に立香と別の通信機で話しかけてきたロマニが賛同する。

 

 ここら辺マジで無慈悲で草生える。オルレアンでカッコイイとこ見せてくれたとは言え、決戦前とか割りと大変な目にあったりしましたからね。主に歌とか。

 

「ちょ、またそのリアクション!? 可愛くないヘンな子ジカ!」

 

「先輩、望幸さん! ヘンな人にヘンって言われました!」

 

 >ぎゃあぎゃあと姦しく騒ぎ立てるエリザベート達。

 >それを何処か面白そうに眺めるステンノに若干イラついた様子のジャンヌ・オルタとアルトリア・オルタ。

 >反対にクーフーリンやジャンヌ・ダルクは苦笑していた。

 

 そう言えばちょっと気になることがあったんですよね。高々キメラ程度なら圧殺出来る程度のサーヴァント引き連れていったのに何でこんなにも時間がかかったのかっていう。

 

 立香ちゃんの戦闘における指揮経験が少ないとはいえ、アルトリアにWジャンヌ、その上クーフーリン迄いてここまで遅くなるのはまずありえないんですよね。

 

 ちょっと聞いてみますか。

 

 >あなたは騒ぎに混ざり出したネロを他所に立香に随分と時間がかかったようだけど、どうかしたのかと尋ねた。

 

「あ、うん。それがね──」

 

 >立香から話を聞いたところによると洞窟の最奥には何故かキメラがいたということ。そしてそのキメラを撃破したらそのキメラが溶けて、ドラゴンらしき生物へと変貌した。

 >その上、そのドラゴンらしき生物が非常に強く苦戦を強いられたとの事だった。

 

 は? ドラゴン? この特異点に? 

 

 いやいや、嘘だろ? この特異点に出現する幻想種なんて精々がワイバーンくらいで上位種としてもキメラ位しかいないはずなんだが……。

 

 あ、いやそうか。

 

 恐らくはワイバーンか何かがヴォイドセルに侵食されて変化したのか。多分その可能性の方が高いですね。

 

 あー、そっかそっか。ワイバーンの変種が出てくる可能性があることすっかり忘れてましたね。ワイバーンの変種とか全然遭遇しないから存在ごと忘れてましたわ。

 

 ま、それを思い出せたので今後はそれも念頭に──

 

『っ!? 皆、騒いでるところ悪いけれどサーヴァント反応だ!』

 

「「「「?」」」」

 

『あっ、ごめん! 此方に海から猛烈な速度でやってくる新しいサーヴァントの反応だ!』

 

 皆サーヴァントだからね。この反応になるのは仕方ないね。というわけでカリギュラがようやく来ましたね。

 

 出来れば日の出てるうちに戦いたかったんですけど……まあ、この人数差です。カリギュラ一人じゃどうにもならんだろ。

 

 適当に数の暴力でボコボコにしてついでにヴォイドセルをちょろまかしましょう。運が良ければカリギュラでヴォイドセルが溜まり切る可能性があります。

 

 というわけでキリがいいので今回はここまでです。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 





キャットの口調のエミュが難しすぎる……。
それにしてももうちょっと話を短縮した方がいいんですかね。まだ二章半分で50話超えてるRTAとか見たことないよ。


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カリギュラ戦

砂箱に収監されていたので初投稿です。



 ──それは海より現れた。

 

 巨大な水飛沫を上げて海から飛び出してきたのは、この特異点に来て最初に襲ってきたサーヴァントであるカリギュラ。

 

 カリギュラはその端正な顔に水を滴らせながらも藤丸立香達の前へとやって来ると、前と打って変わって理性的な光を瞳に宿していた。

 

「余は果たさねばならぬ」

 

「伯父上……!?」

 

 驚愕の声を上げるネロ。それもそうだろう、何せネロ達は船でここまで来たというのにカリギュラは恐らく泳いできたのだ。

 

 それも息一つ乱さずにここまでやってきた。

 

 たったそれだけでカリギュラがどれだけ人間離れした存在なのかが分かる。

 

(まずい……ここで兵をぶつけても悪戯に消耗させてしまうだけだ)

 

 ネロはそう考え、兵を少し後ろへと下げた。

 

「あら、ふぅん……絡め取られてはいないのね。ああ、でもこれは随分とまあ……」

 

 カリギュラの首元から覗く紋様を見て何かを察したステンノが独り言を呟く。

 

「余は使命を果たさねばならぬ」

 

 カリギュラは再度そう呟く。それはまるで己に刻み付けるように、本能に刻むように強く言葉を発する。

 

「カエサル様は使命を果たされた。ならば余もまた果たす。果たさねばならぬ」

 

 三度そう呟いた時、彼の瞳に宿っていた理性的な光は消え失せ、代わりに今までとは比較にならぬほどの狂気的な光を宿して野獣の如き眼光で立香達を睨みつけた。

 

 その異様な雰囲気と形相に背中に冷たいものが走る。

 

「余の、振る舞いは運命である」

 

 カリギュラの濡れていた体から蒸気が立ち上る。高まり続けた魔力が熱という形を持ってカリギュラの体から放たれているのだ。

 

 蜃気楼のようにユラユラと彼の周りの景色が歪む。

 

「来るぞ! 全員構えよ!」

 

 ネロがそう叫ぶと同時に──! 

 

「汝等の力を、証明しろォォォオオオオオオ!!!」

 

 カリギュラが弾丸の如く星崎望幸目掛けて突進する。

 

「させません!」

 

 それをマシュが横合いから無理矢理弾こうと盾を叩きつける。しかしそれはカリギュラも同じように放った拳の一撃が盾ごと弾き飛ばす。

 

「くぅっ!」

 

 盾を上へと大きく弾かれたマシュはカリギュラを前にして致命的な隙を晒す。だが、その隙を埋めるようにクーフーリンの鋭い槍の一撃が放たれた。

 

「おいおい、アンタ本当にバーサーカーか?」

 

「ォォオオオオ!!」

 

 クーフーリンの放った槍の一撃を槍の横を軽く押すことで逸らしたカリギュラはそのままクーフーリンへと肉薄し、右のストレートを放つ。

 

 ゴウッ! と風を切るような音を響かせて拳はクーフーリンへと迫る。しかしそれはクーフーリンが上へと蹴り上げることで失敗へと終わる。

 

 間髪入れずにクーフーリンがそのままカリギュラを蹴り飛ばした。

 

「硬ェッ……!」

 

 蹴り飛ばしたはずのクーフーリンの足が痛むほどに彼の体は硬かった。蹴った感触としては鋼鉄……いや、それ以上の硬度を誇る何かといった具合だ。その上、尋常なく重い。

 

「……魔力による肉体の硬質化か?」

 

 星崎望幸はそう呟きながらカリギュラへ向けて撃鉄を起こす。カチャリと音を立てながらMP5の銃口がカリギュラを捉え、そして火を吹いた。

 

 それに対してカリギュラは何も反応しない。ガードをすることもなく、ただただその銃弾を受け止めた。

 

 結果はカリギュラの肉体の頑強さに銃弾が潰れてそこいらに散らばるだけだった。

 

「滅びよ、滅びよ、滅びよ! その魂!」

 

 カリギュラは星崎望幸へと向けて突進する。地を砕きながら突き進む野獣が如き荒々しさに望幸はただそれをじっと見つめ──ジャンヌ・オルタの名を読んだ。

 

「ジャンヌ」

 

 ジャンヌ・オルタはそれが何を指すのか把握すると旗を強く握りしめてその身から溢れる煉獄の炎を昂らせる。

 

「ええ、任せなさいな」

 

 ジャンヌ・オルタへ多大な魔力が回される。そして回された魔力を片っ端から炎へと変換することで炎の海と化した呪いの焔がカリギュラへと殺到する。

 

 黒炎はカリギュラを飲み込みその肉体を骨まで焼き付くさんと轟々と燃え盛る。

 

 だが、それをカリギュラは強引に突破した。

 

 勿論、呪いの炎によって焼かれたが故に肉体の硬質化はさして意味をなさず、身体の所々が焼け爛れてはいるものの、ヴォイドセルによってかき集めた多大な魔力が異常な速度で肉体を回復させる。

 

「ウォォォオオオ!!」

 

 大砲を想起させる拳が望幸へと向けて放たれるが、それはすでに回避準備を整えていたために易々と回避される。

 

 そしてカウンターとばかりに彼はいくつかの発砲音と共に置換呪術を使用することで弾丸の速度を拳へと上乗せし、空気ごとカリギュラを殴り抜く──が、カリギュラはそれを紙一重で回避した。

 

「おぉ?」

 

 惚けた声を出す望幸とは反対にカリギュラは彼から一度大きく距離を取る。

 

 ヴォイドセルによって強化されたサーヴァントならば仮にあの攻撃を受けたとしても大した痛手にはならないだろうと判断するだろう。ましてやバーサーカーであるはずのカリギュラならば尚のことだ。

 

 では何故回避することを選んだのか? 

 

 至極簡単な事だ。

 

 カエサルが消滅する直前に送られてきた最期の言葉──星崎望幸に触られるなという言葉があったからである。

 

 故にカリギュラは彼に触られる事を現在何よりも警戒している。

 

 触る時は一撃で絶命させる時か──或いは己の切り札を切る時かのどちらかだ。

 

「フゥゥゥッ……」

 

 少し体が痛む。見れば己の体を先程の呪いの炎が蝕んでいた。構わないとも。この程度の痛みどうということは無い。

 

 焼けた傍から肉体を回復させれば動きに支障はない。

 

 むしろそれでいい。痛みがあるからこそ狂気に陥りながらも致命的な所までには落ちない。ギリギリのところで持ちこたえることが出来る。

 

 そして落ちきらないが故にカリギュラの狂気は加速する。その加速する狂気は攻撃性へと変換され、より強靭にカリギュラの肉体性能を底上げさせる。

 

「ォォオアアアア!!」

 

 破壊の乱撃が立香達を襲う。一挙一動が大砲を超えた威力の破壊力伴う攻撃に手を焼かされる。クーフーリンなどの武芸の達人からしてみればバーサーカーとなったカリギュラの攻撃など粗雑極まりない。

 

 だが、その肉体強度による被弾を恐れもしない力任せな戦い方に下手な攻撃をしようものならまず間違いなく致命的な一撃を貰うことになるだろう。

 

 故に立香達は攻めあぐねていた。

 

 だからこそ──

 

「アルトリア、宝具を解放しろ」

 

 濁流の如き魔力がアルトリア・オルタに回される。それは本来アルトリア・オルタが宝具を放つのに必要な量を超えたものだ。

 

 当然、そんな魔力を一気に回せばどうなるか。

 

「グッ……ごふっ……」

 

 本来、星崎望幸の魔術回路は並より少し秀でてる程度の代物だ。それを大聖杯という魔力炉心と竜の血を浴びたことで得た不完全な不死の肉体の頑強さに無理を言わせて魔力を振り絞っているのだ。

 

 大聖杯という魔力炉心があれどそれだけの大量の魔力を一気に放出するには彼の魔術回路の強度が足りない。それを無視して回せばどうなるか。

 

 当然、魔術回路が悲鳴を上げる。

 

 その結果として彼は口から少なからず血を吐いた。恐らく痛覚がまともに機能していたならば発狂死したであろうほど激痛も襲っているはずだ。

 

 アルトリア・オルタはそれを理解して──歯を強く食いしばって宝具を解放する。

 

「地に落ちる時だ……!」

 

 聖剣から空を貫くほどの巨大な黒き魔力の奔流が立ち上る。破壊力だけで言うのであれば間違いなくトップクラスの威力を誇る聖剣の一撃がブリテンの魔竜の息吹としてはカリギュラに向けられる。

 

約束された(エクスカリバー)──

 

「ッ、ウガァァアア!」

 

 カリギュラがアルトリア・オルタへ向けて走る。無傷では避けれないと判断したが故に、ならば発動する前に殺すと地を砕きながらアルトリア・オルタへ猛進する。

 

 そして放たれた拳はアルトリア・オルタの端正な顔へと迫り──

 

──勝利の剣(モルガン)

 

 あと僅かという所で聖剣が振り下ろされた。

 

 魔竜の息吹はカリギュラを飲み込み、島を焼き尽くし、正面にある海を割った。

 

 アルトリア・オルタの正面が焦土になるほどの威力にカリギュラは消滅したと確信して──不意にアルトリア・オルタの頭上に影がかかる。

 

 そこにいたのは半身を失いながらも聖剣の爆風を利用して今も尚荒く息を吐く望幸へ向けて残った拳を振り上げて襲いかかろうとするカリギュラの姿だった。

 

「何たる執念か……!」

 

 戦慄とした声を上げるネロ。あれほどの重傷を負いながらもそれでも尚彼を殺そうとする己の伯父の姿に戦々恐々とする。

 

 だが今はそれよりも望幸の身が危ないと判断したネロは咄嗟に──けれど()()()()()()()()()()()()()と確信を抱いてその手に持つ原初の火(アエストゥス エストゥス)をカリギュラに向けて投げ飛ばし、彼の名を呼んだ。

 

「カリギュラ!」

 

 それはカリギュラにとっては抗えぬ声だ。彼が何よりも愛している姪の声。その声が己を名を呼んだが故に今最も目を向けるべき彼から目を逸らし──眼前に迫ってくる原初の火を反射的に叩き落とした。

 

 それがあまりにも致命的だった。

 

「ハハ」

 

 酷薄な笑い声が聞こえた。

 

 己の失態に気がついて即座に彼に目を向けて──ゾッとするような()()()()()()()()()()()()()()()()と目が合った。

 

 次瞬、彼の魔力を纏った腕が半身を抉られるほどの巨大な傷から霊核を握り締めた。

 

「ガッ……グァァッ!」

 

 脳が茹で上がるほどの激痛が走る。あまりの痛みに思考が纏まらない。けれど、それでもと残る力を振り絞り拳を上げる。

 

 だが……

 

「ああ、悪いけど君の持つ()()……全部貰おうか」

 

 全身を襲う虚脱感。振り上げた拳を振り下ろすもそれはまるで赤子のように弱々しく彼の体を叩くだけだった。

 

「やめ……ろ……!」

 

 脳が茹で上がるほどの激痛に狂気が抑制されたのか、カリギュラの理性が蘇る。同時に自分が今何をされているのかも理解した。

 

 自身の体を汚染していたヴォイドセルを霊核から直接彼の体に移し替えている。そう、汚染されたもの全て彼の体に移し替えられているのだ。

 

 そんなことをすればどうなるのか──

 

「大丈夫、安心しなよ。君が背負うべきものじゃなかったはずのものは全て俺が背負うから」

 

 ガリガリと己の体を汚染していたヴォイドセルが削られるのを感じながら、まるで幼子をあやす様な酷く優しい声色でそう言う彼の言葉を聞いたカリギュラは──激怒した。

 

 拳を振り上げて彼の顔に叩き付ける。

 

「ふざ……けるな……!」

 

 叩く拳はあまりにも弱々しく決して彼にダメージを与えられるという訳でもないのに何度も何度もその顔に拳を叩き付ける。

 

「余が背負うと、決めたものを……汝が、勝手に背負うなッ……!」

 

 叩き付けていた拳は止まり、今度は彼の顔を包み込むように掴み、互いの赤い瞳が交錯する。

 

「これは、余のものだッ!」

 

 弱々しく小さく掠れてもなおその声は正に皇帝らしい傲慢さが見えるほどに堂々した声であり、カリギュラの皇帝としての矜恃が垣間見えた。

 

 彼はそれを何処か眩しいものを見るように目を細めて──更に強く削り始めた。

 

「……ごめんな」

 

 そう謝る彼は先程よりも速くカリギュラの体を侵すヴォイドセルを取り込んでいく。それはまるで一刻も速くカリギュラの体からヴォイドセルを引き剥がそうとしているかのようだった。

 

 ──だからこそ、カリギュラは覚悟を決めた。

 

 これ以上、己が背負うべきはずだったものを彼に背負わせてなるものかと己の体を構築する魔力すらも己の最大の切り札を発動させるための薪として焚べる。

 

 カリギュラの切り札──それは彼の持つ逸話が昇華された宝具。

 

 残された僅かな魔力では本来の威力の宝具とは比べ物にはならないほどの効果しか発揮しないだろう。寧ろ発動出来るかすら怪しいものだ。

 

 けれど、構わない。

 

 彼に背負わせてしまうくらいであれば、宝具の発動に失敗して無為に消滅した方がまだマシだ。

 

 けれど、そう、けれども……

 

 己が狂気を通して思い出せ藤丸立香。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

宝具解放──

 

「ッ! 立香ァ! 目を──」

 

 空に浮かぶ満月がカリギュラの狂気を投射する。それは酷く弱々しく宝具とは決して呼べないものだ。サーヴァントは愚か、兵士ですら少しふらつく程度のものへと成り下がっているだろう。

 

 それでも……

 

我が心を喰らえ、月の光(フルクティクルス・ディアーナ)

 

 満月の光が藤丸立香を照らす。

 

 藤丸立香という少女に向けて放たれた月の狂気の光が彼女の内に潜む狂気と共鳴し、ありもしない幻影を見せる。

 

 頭を抱え、過呼吸を引き起こし始めた彼女に己を振り払い駆け寄る彼の姿を見届けるとカリギュラの体は崩壊していく。

 

 その最期にふと彼の内側からとても見知ったような、けれどやはり知らないような力を感じた。ただ、その力を感じて無意識に呟いた。

 

「ディアーナ……?」

 

 それを最期にカリギュラは光となって消滅した。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「あ」

 

 死んだ、死んだ、死んでしまった。

 

「ああ……」

 

 首が落ちて死んだ、頭が潰されて死んだ、体が真っ二つなって死んだ、四肢をもがれて死んだ、串刺しにされて死んだ、下半身が消し炭になって死んだ、ぐちゃぐちゃになって死んだ、バラバラになって──

 

 みんな、みんな私を庇って死んでしまった。

 

 大切な、私の大切な彼が、私の目の前で何度も死んだ。

 

「やだ、やだやめて……」

 

 目の前で何度も死んでいく彼に向けて手を伸ばすが虚空を掴むばかりで彼に触ることすら出来ない。どれほど手を伸ばした所で夜空に浮かぶ星のように届かない。

 

「やだよ……」

 

 立香の心にピシリと罅が入り始める。

 

「──私を置いていかないで」

 

 彼を求める指先は虚空を切り、全身が冷たく暗い深海に沈んでしまったかのように凍えていく最中──

 

「立香」

 

 ──とても暖かいものに包まれた。

 

「あ……?」

 

 涙でぼやけた視界の先にいたのは手の届くことのなかった彼だった。彼が、生きて私の顔を心配そうに覗き込んでいた。

 

「立香、大丈夫だよ」

 

「望幸……ちゃんとここにいる?」

 

「ああ、ちゃんとここにいるよ」

 

 ぎゅうと強く彼の体を抱き締める。彼の体温を感じて彼の心音を聞いて漸く彼が生きてここにいることを実感した。

 

「望幸、私を置いていかないでね」

 

「……ああ」

 

「約束だからね、置いていったら何処までも追いかけてやるんだから」

 

「それは勘弁願いたいな」

 

「やぁだ」

 

 そう言って立香は彼の体に顔を埋める。こうでもしないとまた彼に届かなくなりそうで怖かったのだ。

 

 嫌だ、絶対に嫌だ。もしも彼を失うなんてことがあってしまったら私はきっと耐えられない。恐らく彼を失ったらもう私は立ち上がれない。だって、彼がいるからこそ今の私があるんだから。

 

 彼を失った私は、それはもう私であって私じゃない。

 

「強く、ならないと」

 

 先程見たのはカリギュラの宝具による幻影のはずだ。けれど、その幻影が現実にならないという理由はない。

 

 もしかしたら彼が私を庇って本当に死んでしまうことになるかもしれない。

 

 そうなったら私は私を許せない。

 

 魔術も知らない一般人なんだからとか、そんなの関係ない。強くなって強くなって、彼に庇ってもらわなくてもいいくらいに強くならないと。

 

 彼が死んだら私は()()()()()()()()()()()()後悔するだろうから。

 




死合には負けて勝負には勝ったカリギュラ。尚、立香ちゃんの気付けに失敗したらリセだった模様。

ホモくんのDIEジェストを見せられた立香ちゃん。しかも死因が全部自分のせいとかこんなん見せられたら気が狂うで。

だから立香ちゃんにホモくんのDIEジェストを見せる必要があったんですね(メガトンコイン)


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炎門の守護者

 

 カリギュラ撃破から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、ステンノの試練をクリアしてその褒美として連合軍と異形達の情報を教えて貰うことになりましたが、その最中にカリギュラが襲いかかってきたので撃破致しました。

 

 まあ、宝具使われて立香ちゃんが発狂したんですけどね! クソがっ! 

 

 いやあ、どうにも立香ちゃんは何かしらの幻影を見たらしく、不定の狂気を発症しかけたんですよね。発症直前で気付けに成功したので何とかバッドステータスが発生せずに済みましたが、恐らくホモくんが目の前で死にかけるなりすると間違いなく発症しますね。爆弾つけられちゃった……。

 

 気付けをした時の立香ちゃんの反応を見るに恐らく「依存症」が発症しそうなんですよね。

 

 まあ、まだ殺人衝動や自殺衝動なんかのクソオブクソのバッドステータスに比べれば大分マシとは言え、依存症はねー……ちょっと対処が面倒なんですよね(6敗)

 

 依存症はその名の通りに何かに依存してしまうんですけど、大体は人に依存することが多いです。これがマシュや一部を除いたサーヴァント辺りに依存するのならばまだ楽なんですけど、問題はホモくんに依存した場合なんですよね。

 

 依存症の特徴として依存したキャラと依存されるキャラ双方に行動制限のバッドステータスが生じます。それが単独行動不可デバフですね。

 

 より正確に言えば単独行動自体は出来ますけど、そうした場合依存する側のストレス値が爆上がりします。近くにいないせいで不安になってストレスを感じるということですね。やばい(小並感)

 

 これによって単独行動が封じられた場合、RTA的には激マズです。英国料理より不味いです。ブリテン時代のアルトリアでもギャン泣きするレベルで不味いです。

 

 まだ一人では危ない序盤だとさして痛手にはなりませんが、中盤後半辺りにこのバッドステータスが発症すると泣く泣く再走確定となります。もう一回遊べるドン! (絶望)

 

 RTA的には4章辺りから単独行動が増えますからね。

 

 しかし、このバッドステータスですが段階にもよりますが、治すことは出来ます。依存症を持っている状態でストレスをかけ続けると再度発狂して永続回復不可のバッドステータスに変わりますが、最初期の状態だと1章クリア、もしくはイベントクリアなどのある程度の期間一緒にいることで依存症を治すことが出来ます。

 

 確実なのはメインストーリーを1章クリアすることですね。そうすれば確実に治ります。反対にイベントシナリオだと確率ですね。

 

 ま、なんだかんだ言いましたけど立香ちゃんは発症していないのでホモくんが目の前で死にかけたりしない限りは大丈夫でしょう。

 

 巨神ルートなのが不安材料ですが何とかなるなる、多分ネ! 

 

 さて、それでは連合首都の位置も判明したので一度首都ローマへと帰ります。

 

 それで今までの周回からの経験上、首都ローマに到着する前に誰かしらのサーヴァントが現れます。これは敵だったり、味方だったりと様々ですがそこそこの確率でスパルタの王ことレオニダスが出てくることが多いですね。

 

 全力で縁を結びたいので是非来て欲しいものです。ホモくんのサーヴァントは火力に極振りしすぎてて防御がちょっと、いやかなり低すぎるので……。

 

 >あなた達が首都ローマに向けて帰還している最中、荒れ果てた土地に立ち塞がるように誰かが立っていた。

 

 お、来ましたね。誰かな、レオニダスだといいんだけど。

 

 >道の真ん中で仁王立ちするのは屈強な肉体を持つ黄金の兜を被る男だった。

 

 きたああああああ! レオニダスだ! 全力で縁を結べ! こっちを見たな! なら俺と縁ができたってことだ! 

 

『皆気をつけてくれ。彼からサーヴァントの反応がする』

 

 >ロマニの言葉にあなた達は気を張り直し、相手の出方を伺う。

 >そんなあなた達に対して目の前の男は何処か悩んだ様子を見せて、そしてあなた達をもう一度見回したところで何かを決心したかのように構えていた槍の穂先を下ろした。

 

「貴様、何者だ」

 

「……私はスパルタの王、レオニダス」

 

「レオニダス……? かの伝説の炎門の守護者レオニダスか! まさか蘇ったのは皇帝だけではなかったのか」

 

「この異常事態だし、何が起きても不思議じゃないと思うよ」

 

「む、それもそうか」

 

 >立香の言葉にネロは納得したように頷く。

 >よくよく考えて見れば訳の分からない化け物や古の神なども現れたのだから皇帝以外の過去の人物が蘇ったところで誤差のようなものだ。

 

「それで貴様は何故余の前に立ちはだかる。まさかとは思うが……」

 

「いえ、それならばお気になさらず。今の私はただのはぐれ者。貴方達と事を構えるつもりはない──そのつもりでした」

 

 お、これもしかして……

 

「貴方達と私が戦うことにさしたる意味は持ちません。何せ、こちら側に私が守りたいものはなかった、守るべき存在はなかったのですから。……ですが私がここに来た意味、私が呼ばれた意味。それが今ようやく理解出来ました」

 

 >レオニダスはその身から魔力を昂らせると槍の穂先をマシュへと向ける。

 

「構えなさい、盾の少女よ。貴女に盾兵とは何たるかを、スパルタの守りの極意を教えて差し上げましょう」

 

 や っ た ぜ ! 

 

 マシュの強化イベが来るとは激ウマですよクォレハ。流石はレオニダスだぜ! 今回は敵対関係でもなく、味方でもないまさかの中立でしたけどマシュに訓練を施してくれるとは……。

 

 やっぱりレオニダスは良いサーヴァントなんだよなぁ。

 

 守ることに特化しているサーヴァントなのでマシュの指南役には凄くいいんですよ。デミサーヴァントになったばかりの序盤のマシュは力を貸してるギャラハッドから多少なりとも技術を無意識的に受け継いでいるとは言え、まだまだひよっこもいい所です。

 

 それをレオニダスなどの盾を扱えるサーヴァントが訓練して上げるとマシュの盾の技術の上昇に補正がかかって強くなりやすいんですよね。

 

 後、レオニダスのカウンター宝具がマジで強い。タイミングを間違えなければ少なくとも敵サーヴァントをほとんど落とせるくらいにはカウンター宝具の火力は高いです。

 

 さて、そんな有能サーヴァントであるレオニダスがマシュに盾兵として何たるかを教えてくれるみたいなので待機で良さそうですね。

 

 マシュはねー、とっとと立香ちゃんをしっかり守れるようになって貰わないといけませんから。『スノードロップ』獲得の為にも、ねぇ? 

 

 後は訓練が終わるまで倍速ですね。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「そうです、盾の少女よ。貴方は引いてはいけません。地面に根を張るが如くどっしりと構えて敵の攻撃を受け切るのです」

 

「は、はいっ!」

 

「よろしい。まだまだ甘いところはありますが、一先ずは及第点といったところでしょう」

 

 >幾度目かの打ち合いの末、レオニダスは納得がいったのか槍の石突を地面へと付ける。

 

『ひとついいかなレオニダス王』

 

「構いません」

 

『こうまでしてくれるということは貴方は人理側のサーヴァントなのかい? もしそうなら貴方も私たちと共に行動してくれないだろうか』

 

 >ロマニの提案にレオニダスは残念そうに首を横に振った。

 

「申し訳ありません。私ははぐれとなった身ではありますが、私を召喚してくれたマスターへの恩義というものがあります。ですので貴方達と共に戦うことは出来ません。さて──」

 

 >不意にレオニダスの魔力が上昇する。

 >高まる魔力に呼応するかのごとく兜の炎が轟々と燃え盛る。

 

「それではこれを以て最後の訓練と致しましょう。盾の少女とそのマスターよ。全力で私を打倒しなさい。私の亡骸を超えていきなさい。私程度超えてもらわねばこの先で待つ存在に手も足も出ないと知りなさい」

 

 >高まり続けた魔力はやがて宝具として発現した。

 >1人2人と彼の後ろに半透明のスパルタ兵達が現れる。

 >やがて300人ほどのスパルタ兵が現れると彼らは己を鼓舞するかの如く槍の石突を地面に何度も叩きつける。

 

Molon labe(来たりて取れ) !」

 

 

「「「Molon labe(来たりて取れ) !」」」

 

 

 >レオニダスの号令に呼応するかのようにスパルタ兵達も声を張り上げる。

 >大気を揺るがしていると錯覚するほどの声量に立香とマシュは圧倒されながらも覚悟を決める。

 

「マスター、指示を!」

 

「うん、任せて!」

 

 >あなたはその二人の後ろ姿をただジッと見つめていた。

 

 はあー!? これホモくん参加不可のバトルなんですけど!? しかもホモくんの操作が受け付けないんだけどぉ!?

 

 何で……って、ああクソッ! そういやさっきのレオニダスの言葉にはホモくんは指定していませんでしたねぇ! 

 

 ふぁっきゅー。

 

 立香ちゃん大丈夫かな。一応あっちにはクーフーリンとジャンヌ・ダルクがいますけどそれでも人数差ヤバいしな。……でもネロもいるし何とかなるか? いや、なってもらわないと困るんですけど。

 

 まあ、流石に死にかけるような目にあったら操作可能になるでしょう。というわけで立香ちゃんがんばえ〜! 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)

 

 >決め手となったのはクーフーリンの宝具による一撃であった。

 >因果逆転の呪いはレオニダスの心臓を穿ったという結果を作り出した。

 >如何に優れた防衛術を誇るレオニダスであろうと権能一歩手前の因果律の操作には届かなかったのだ。

 

「……お見事です。どうかこれから先も()()()()()()()()()()()()()()──」

 

 >その言葉を最期にレオニダスは黄金の粒子となり、この特異点から消滅した。

 

 無事に何とか勝ってくれましたね。所々危なげな所はありましたけどそこはクーフーリンやジャンヌ・ダルクが上手くカバーしてくれました。

 

 いや、本当に大した怪我もなく勝ってくれてよかった。

 

 それにしても何故こうも本番に限って知らないルートが出てくるんですかねぇ!? これが走者の運命とでも言うのか……。そんな屑運発揮しなくていいから(懇願)

 

 まあ、今後再走する時にこういうことがあったということを知れたのは良かったですけど。それにしてもタイムがなぁ。リカバリー出来る範囲ではありますけど……うーん。

 

 まあ、この特異点をクリアしてからタイムと成長率を見て続行するか決めますかね。

 

 それではキリがいいので今回はここまでとなります。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は少し確かめたいことがあるんだ」

 

「……はぁ、それで私は何をすればいい?」

 

「はは、話が早くて助かるよ。僕は彼の本質が知りたい。その時に邪魔をされたくないんだ」

 

「あの集団相手にお前とあのバカを二人きりにしろと? 随分と無茶を言う」

 

「出来るだろう? 僕の信じる君なら」

 

「──10秒だ。今ある戦力と情報を全力で使って10秒だと思ってくれ」

 

「十分!」

 



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繋ぐ想い

ちょっと長いです。



 ──実に厄介な事だ、とネロは内心舌打ちをした。

 

 ガリアへと凱旋し、遠征軍の将軍である荊軻と呂布との合流も無事果たせた。そしてステンノから聞き出した連合軍首都へ向けて進軍したところまでは良かった。

 

 問題はそこからだった。

 

 幾度となく化け物達から襲撃され、息つく暇もなく戦闘ばかりで将軍達はまだしも己の兵達は明らかに疲弊していた。

 

 化け物達は少数でしかやってこないとは言え、どんな時にだって現れては襲撃するのだ。化け物相手では容易く殺されてしまう一般兵達の気が休まらずに軍全体が非常に殺気立っていた。

 

 これならばまだ一気に大量の化け物達が襲いかかってきた方が幾分かマシというものだ。それに加えて雰囲気に当てられてか些か血の気の多いスパルタクスや呂布が興奮状態にある。

 

 仮にこの状況で敵を認識したのなら恐らく呂布とスパルタクスは殲滅するまで敵を追撃するだろう。

 

 連合軍の首都で彼等の力を発揮してもらおうと考えている為にそれは非常にまずい。ここで彼らが暴走して敵を深追いしてしまえばかなりの痛手だ。

 

 幸いなのは彼──星崎望幸の傍にいればあの二人も多少なりとも落ち着くところだろう。それでも気休め程度にしかなりはしないが……。

 

「厄介だな。敵は明らかに此方の特記戦力のことを認識しておる。それも性格までもだ」

 

 一体どこから情報を仕入れたのか。暴走しやすい彼等の闘争心をこうまで的確に煽ってくるとは。

 

 敵の狙いは特記戦力であるスパルタクスと呂布を引き剥がすことと軍の兵達の気力と体力を削ぐことなのだろう。

 

 その為にこうして何度も何度も化け物達を襲撃させているのだ。

 

 普通の軍ならば悪戯に兵を消耗させるだけのこのような事などしない。だが、奴らは普通ではない。我らでは決して御せぬ化け物達をこうも上手く制御している奴らだ。今までの常識は通用せんということだろう。

 

 或いはもっと別の狙いがあるのか。

 

 どれだけ考えてもこれと言って納得のいく理由が見つからない。ローマの破壊は大前提であるとして何か、そう何かもっと他のことも狙っているような気がする。

 

 例えば、そう──どうしてか目が離せない彼とか。

 

 彼はよく敵に狙われている。彼等を率いているのだから当然と言えば当然だが、それでもやたらと狙われている。無論、彼自身が前線に立とうとしているのも理由の一つではあるのだが……。

 

 そしてもう一つ、自分自身ですら困惑しているのだが、彼に対して原因不明のどろどろと酷く濁った黒い感情を抱いていた。

 

 憎悪だの殺意だのそういった感情では決してない。ないのだが、なんだ? この感情は。ふと気を抜いてしまえば良からぬ想像が脳裏を過ぎるのだ。彼を──

 

『……し、正しい……が行き届いてるぞ! チクショウ!』

 

「流石にこれはマシュが正しいかな!」

 

 この緊迫した状況下に似つかわしくない楽しそうな声がネロの耳に届いた。

 

「む、なんだ? 何の話をしているのだ。お前達はいつも楽しそうだな。余も混ぜるが良い」

 

「こら、遊んでる暇はないでしょうに。ほら、また敵が来たわよ」

 

『あっ、本当だ。前から敵性反応あり! サーヴァント反応はないから通常兵力だね』

 

「むぅ……。まあ良い、まずは蹴散らす! 余の後に続け!」

 

 ブーディカからの注意を受けて前方から多数の化け物達が我先にとローマ兵達を喰らうべく襲いかかってきた。だが、それも見飽きたというもの。先程から散々襲われては殺し尽くしているのだ。

 

 今更恐れる事など──

 

『まずい! 後ろからも来てる! それも前方から来てる数よりも更に多い!』

 

「なにっ!?」

 

 まずいことになったと思わず舌打ちをするネロ。何せ後ろには暴走からの戦線離脱を警戒して配置していたスパルタクスと呂布がいるのだ。

 

 平時の彼らであれば、多少なりとも言うことは聞く可能性があったかもしれないが、何度も消化不良の戦いをさせられ、戦闘欲求を昂らせた状態の彼らではまず間違いなく命令を聞かず暴走してしまう。

 

 かと言って後ろを対処しようものなら前から来る奴らに兵を蹂躙されるだろう。ただの人間と化け物では如何ともし難い力の差がある。それを容易くひっくり返せるのは将軍の位を戴いている者くらいだ。

 

 敵はどうしてもスパルタクスと呂布を我らから引き剥がしたいと見える。

 

「チィッ! 余は前を叩く! 藤丸立香! お前達は余と共に来い! そして星崎望幸、後ろは任せるぞ!」

 

「了解!」

 

「はいっ!」

 

「ああ」

 

 ネロの命令通りに立香達を引き連れて前から来た奴らを叩き、望幸は後ろから来た奴らを撃滅していく。

 

 今だ拙いところはあるが、それでも上手くサーヴァントに指示を飛ばして化け物達を倒す立香。それとは反対にこなれた様子で指示を出しながら自分も化け物達を鏖殺する望幸。

 

 両名の健闘もあって何とか倒しきれそうで──そしてだからこそ、今まで散々兵力をぶつけてきた軍師がそのほんの緩んだ隙を突かないはずがない。

 

『サーヴァント反応だ! 凄まじい速度で接近してるぞ。これは……ライダークラスか! 皆、気をつけて──』

 

 ロマニの悲鳴にも似た警告が終わるよりも速く、それはネロの軍の横っ腹から盛大に噛み付いた。

 

「ハハッ、人手が足りないとは言え我が軍師も随分な指示を出すものだね! まさか()()()()()()()()なんて言うなんてさ!」

 

「あなたは──!」

 

 重厚な足音を鳴らしながら馬に乗って勢いよく突っ込んでくるのは赤毛の端正な顔立ちをしたサーヴァントだった。

 

「駆けろ! ブケファラス!」

 

 主の命令を受けたブケファラスは任せろと言わんばかりに更に速度を上げて直線上にいたブーディカへと突っ込む。当然、反撃しようとするブーディカだったが、それよりも早くブケファラスの前蹴りが腹部へとめり込む。

 

「か、ッ──!」

 

「ブーディカ!」

 

「ごめんね、一緒に来てもらうよ!」

 

 あまりにも重い蹴りがめり込み、ただでさえ朦朧とした意識が追撃で繰り出された赤毛の少年の殴打が顎先を掠めたことにより脳が揺らされたブーディカは呆気なく意識を失う。

 

 そしてその隙にブーディカを馬の背中に乗せた赤毛の少年は一気に戦線を離脱しようとするが──

 

「行かせると思うな」

 

 当然の如くそれを読んでいた望幸がブケファラスの目に向けて弾丸を放つ。上に乗っている赤毛の少年よりも足であるブケファラスを潰そうという至極単純な狙い。だが、そんな分かりやすい狙いなど当然相手も読めている。

 

「いいや、行かせてもらうよ」

 

 赤毛の少年が振るう剣が弾丸を弾いた。弾かれた弾丸は上空へと飛んでいき──望幸の十八番である置換呪術による位置の置換によって一気に距離を詰めた彼は後ろでぐったりと気絶しているブーディカへと手を伸ばす。

 

「ブケファラス!」

 

 だが、その手は主の命令によって更なる加速をしたブケファラスと巧みな手綱技術にによって虚しく空を切ることになった。当然、追いかけようとする望幸だったが……

 

「僕にかまけてて良いのかな?」

 

 後方から聞こえた咆哮のような雄叫びによってその追跡は強制中断されることになった。

 

 雄叫びの発生元はストッパーたる彼がいなくなったことにより思うがままに暴走を始めた呂布とスパルタクスの両名だった。彼らは追わなくてもいい逃走した化け物達を殺すべく追撃を始めていた。

 

 それに視線を向けたほんの一瞬の間に赤毛の少年は彼に更に化け物達を嗾けて戦線から離脱する。

 

「クソッ! 斥候隊、追跡しろ! ブーディカを取り戻す!」

 

 ネロの号令が轟く。そしてその通りに斥候隊が逃走する赤毛の少年を追跡しようと馬を駆け出す──

 

『はぁっ!? 嘘だろ! まさかこんなタイミングで新たなサーヴァント反応だって!? しかも新規の召喚だなんてどうなってるんだ!』

 

 ロマニの悲鳴が響く。

 

 いつの間にか化け物達の血で形作られた召喚陣は渦巻く魔力で光り輝く。そしてその光が収束した瞬間、そこに現れたのはあまりにも……そう、あまりにも異様な巨人の如き大男だった。

 

 全身を真っ黒に染め上げた大男の口から蒸気のような白い吐息が漏れる。

 

「後は任せたよ、我が未来の宿敵(ダレイオス3世)

 

 ダレイオス3世と呼んだ大男の横を赤毛の少年は通り過ぎて駆けていく。ほんの一瞬目を合わせただけであるというのにダレイオスは何かを感じ取ったようでその両手に戦斧を構え、大気をビリビリと震撼させる雄叫びを上げた。

 

「ウォオオオオオオオッッ!」

 

 その異様な迫力に兵士は呑まれる。だが、藤丸立香は……マシュは呑まれなかった。

 

 恐れも恐怖もある。けれど、まだ平気だと心を奮い立たせる。これならまだ第一特異点で戦ったあの時のジャンヌ・オルタの方が恐ろしかった。

 

 それを知っているからこそ、立香とマシュは恐れずダレイオスに相対する。

 

「敵性サーヴァントです! マスター、指示を!」

 

「任せて!」

 

 その姿を未だに執拗く化け物達に襲われては殺し尽くしている彼は我が子の成長を喜ぶ親のような目で彼女達を眺め──そして迫り来る化け物達へ剥き出しの殺意をぶつけた。

 

 ──さあ、死ね。今死ね。ここで死ねとあらん限りの殺意とともに尋常ならざる速度で殺戮の限りを尽くす。その様はまるで一体どちらが化け物なのかと言いたくなる光景だった。

 

 そうして瞬きの間に彼の前に立ち塞がる化け物達を轢殺すると彼は立香達の前に出た。

 

「いいや立香、お前はブーディカをネロと一緒に救いに行け。その方が効率的だろう」

 

「ォォオオオオ!」

 

「此奴は俺に任せてくれ」

 

 大上段から振り下ろされる戦斧を身を捩ることで最小限の動きで回避する。そうして出来た攻撃の隙を付いて彼はダレイオスの腹に強烈な蹴撃を放つ。

 

 接触と同時に魔力を爆発させ、無理矢理後方へと吹き飛ばしたが、まるでダメージは入っていない。聖杯の力を使っているのならば兎も角、それを利用していない彼の攻撃が狂戦士たるダレイオスに通用するはずがないのも道理である。

 

 故に──

 

「式」

 

「ええ、任せて頂戴」

 

 ──彼が切れる手札において最強である彼女を切るのは至極当然の事だろう。

 

「ネロ、ブーディカを救うといい。今度こそ他ならぬお前の手で」

 

「──!」

 

「さあ、行け!」

 

「……っ、任せる! 決して敗れるでないぞ!」

 

 ネロはそう言い出して駆ける。無論、それを見逃すほどダレイオスが易しいはずもなく、当然の如くその戦斧を振り下ろす。

 

 しかしそれもまた、読めていたことだと言わんばかりの彼の命令を受けた式がその刀で逸らす。見当違いの方へと振り下ろされた戦斧は大地を叩き割るほどの威力があった。

 

 もしもそれが直撃していたのなら迎える結末は言うに及ばず。されど、ネロは決して振り返らない。何故ならば当たらないと確信しているから。信頼する彼等が負けるはずがないのだと信じているからだ。

 

 その証拠にダレイオスの振るう戦斧は全て式と望幸の手によって捌かれ続ける。当たれば致命傷になるであろう一撃を的確に躱し、捌き続ける様はまるで舞闘のようだ。

 

「立香、お前も早くネロと共に行け。彼女と共に戦ってやってくれ」

 

「……でもっ!」

 

 何故だろうか。今のところ彼等が負ける想像がつかないというのに、どうしてか立香は何か引っ掛かりを覚え、不安を抱いていた。

 

 素人目から見ても負ける要素なんて絶対にないと理解しているというのに立香の直感は己の幼馴染に対して警鐘を鳴らしていた。

 

 或いは彼が死んでしまった幻影を見たせいでそれを重ねてしまったのか。

 

 ……分からない。けれど、この不安感はどうしても拭えなくて──

 

「立香、()()()

 

「……っ」

 

 ──懇願するように自分に託す彼の姿に言葉を失った。

 

 その瞳には信頼しかなかった。君ならば出来ると無条件かつ莫大な信頼が宿った光が雄弁に語っていた。

 

 立香自身もそうした方がいいと言うのは気付いていた。二手に別れた方が決戦を控えている今、最も効率が良いだろう。分かっていても……それでも尚、嫌がったのは彼の心配が勝ったからだ。

 

 けれど、けれど彼からああまで願われたのならば……

 

「分かった。けど無茶はしないでね」

 

「……ああ、善処しよう。それからマシュ」

 

「は、はいっ!」

 

「立香を守れるのはお前だけだ。どうか彼奴のことを守ってあげて欲しい」

 

「──もちろんです!」

 

 それだけ言うと彼はダレイオスと向き直る。彼の溢れる闘志と殺意に当てられてダレイオスは更にその暴威を示す。狂戦士らしく殺意のままに攻撃する様は実に恐ろしい。

 

 けれど、そんな狂戦士を式は軽くいなし、その隙をついて望幸が置換呪術を用いて放った猛烈な速度で激突した岩が大きく退かせる。

 

「振り向かず突き進め」

 

 彼の言葉通りに立香達は走る。後ろで尋常ならざる轟音が鳴り響いても決して振り返らずネロ達の後を追う。きっと彼なら大丈夫だと未だ拭えぬ不安を押し殺してブーディカを救う為に仲間と共に駆ける。

 

 望幸はそんな彼女達の後ろ姿を見送ると大男へと向き直り、魔力を昂らせ魔術回路を起動させる。

 

 心臓から根のように広がる魔術回路が淡く赤く光る。

 

 心臓から末端へと徐々に広がるそれはまるで侵食しているかのようだ。大聖杯より過剰供給された魔力が彼のサーヴァントに力を漲らせる。

 

 並の魔術師ならば瞬く間に干枯らびるほどの魔力供給。されどそれほどまでの魔力供給をしていても尚、彼は顔色一つ変えず敵のみを見据える。

 

「始めよう」

 

 次瞬、地震と錯覚するほどの大規模の揺れが発生する。

 

 溢れるほどの魔力を存分に振るい強烈な震脚で地面を陥没させ、大地を揺らしてダレイオスの体勢を崩す。

 

「フッ!」

 

 その間隙を式が逃すはずもなく──ダレイオスの首に銀色の閃光が煌めく。放たれた斬撃。しかしそれを狂戦士の膂力を以って横薙ぎに振るった戦斧が強引に弾き飛ばす。

 

 爆音と共に迫り来る死を振り払ったダレイオスはお返しだと言わんばかりに圧し切るかのように渾身の力で戦斧を振り下ろす。

 

「ォォォオオオオ!」

 

 天から墜落する流星の如く。

 

 振り下ろされた戦斧は式を薪のように切断せんと頭上へと迫る。常人ならばその圧力に為す術なく叩き切られるだろう。そんな暴威を伴う戦斧に式は凪いだ海のように焦りひとつも見せずに冷静に刃をそっと這わせてあらぬ方向へと逸らす。

 

 そして返す刃で逆袈裟斬りによってその鋼のように硬質な肉体を斬り裂く。

 

 血が大地を染める。

 

 決して浅くはない傷がダレイオスに痛みを感じさせ──

 

「ウォォオオオオオ!!」

 

 ──絶叫の雄叫びが戦場に轟く。

 

 彼の足元から腐った腕が、白骨化した腕が次々と生えてくる。大地から次々と現れる死者の群れ。まるで質の悪いホラー映画さながらの光景だ。

 

 そしてそれを発動した彼は恐らく騎獣であろう戦装束を纏った巨大な戦象の背に跨り此方を睥睨する。彼こそがローマを襲った化け物達の親玉なのだと言われれば思わず信じてしまいそうになる程にその姿はあまりにも恐ろしかった。

 

 この不死者の群れの正体こそがダレイオス3世の持つ宝具──名を「不死の一万騎兵(アタナトイ・テン・サウザンド)

 

 彼の生前の軍隊の逸話が宝具として昇華し、文字通りの不死の軍隊へと変貌させた。殺しても殺しても一万にも及ぶ不死者の群れは尽きない。

 

 その様は正しく不死の軍隊の名に相応しいだろう。

 

 数の暴力を正しく再現した宝具は単純故に強力無比だ。一万にも及ぶ不死の軍隊を無策で相手にする訳にもいかず、術者本人を殺そうにもダレイオスは不死者の群れの中央──加えて騎獣に跨っていることから非常に手を出し難い。

 

 但し、それは彼が十全に力を振るうことが出来る状況か或いは敵対するサーヴァントが並の相手ならばという条件がつく。

 

 詰まる所……

 

「ハァッ!」

 

「燃え尽きろ!」

 

 ダレイオスにとって星崎望幸はあまりにも相性が悪すぎたのだ。

 

 左右から放たれた黒の極光と煉獄の炎が不死者の群れを蹂躙する。黒の極光が不死者の群れを容易く食い破り、追随する煉獄の炎が極光から逃れた不死者達を片っ端から灰へと還す。

 

 彼の持つサーヴァントは防御においてこそ不安な面が見られるものの攻撃力という一点においては随一だ。故にダレイオスの得意とする数の暴力が質の高さによって蹂躙されてしまった。

 

 加えてダレイオスがもしもはぐれサーヴァントととしてではなく、正式にマスターを得ていたのであれば消滅した兵を召喚という形で補填出来たのかもしれないが、生憎彼はたった今召喚されたばかり。

 

 魔力の供給源たるマスターは存在せず、自前の魔力でどうにかやりくりするしかなかった。しかも狂戦士の霊基で呼び出されたこともあってその魔力消費はあまりにも多すぎる。ともすればこのまま即座に自滅しかねないほどに。

 

 敗北必死の戦いだと狂戦士でありながらもかつて王であったが故に本能的に理解した。

 

 理解しているのだが……

 

 ──それがどうした、とダレイオスは傲慢不遜に笑う。

 

 相性最悪? 敗北必死の戦い? 

 

 笑わせる。そんなものが止まる理由になるものか。何せその程度で止まるには()()()()()()()()()。数が質に負けることなど散々我が宿敵によって味わわされてきたではないか。

 

 そしてなによりも──

 

「ウォォオオオオオオオ!!!!」

 

 ──我が宿敵に情けない姿を見せられるものか。

 

「これは……」

 

 自壊覚悟でダレイオスは号令を下した瞬間、不死の一万騎兵の動きが変わる。

 

 王の号令により数の力で押していただけの彼等が肉体同士を結合させ、悍ましき死の河へと変貌する。ギチギチと不快な音を鳴らしながら氾濫した死の河はお前もこちらに来いと誘うように望幸達に迫る。

 

 骨と腐肉で出来た悍ましい肉の柱が地面を削りながら突き進む。人一人簡単に握り潰せそうな程に巨大な白骨化した手が地面を揺らしながら獲物を求める。

 

 潰し潰されながら前へ前進する様は正しく不死の軍隊だ。

 

「チッ、纏めて蹂躙してくれる! 魔力を回せマスター!」

 

 アルトリアの声に望幸は応えるように魔力を供給し、宝具を発動させる。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)

 

 収束された魔力は極大の極光となり、直線上にあるあらゆる障害物を破壊しながらダレイオスへと迫る。しかしそれはダレイオスに直撃する直前に庇うように現れた複数の巨大な白骨化した手がその身を盾に防いだ。

 

 そして宝具を発動したことにより隙だらけとなったアルトリアに悍ましい肉の柱がその身をドリルのように回転させながら削り殺さんとばかりに迫る。

 

 肉の柱はアルトリアの頭上からまるで磨り潰すようにその身を高速回転させて激突する。砂塵を撒き散らしながら地面に穴を開ける姿のなんと恐ろしいことか。直撃すれば変わり果てたミンチとなってしまうこと間違いなしだろう。

 

 ──当たればの話であるが。

 

 アルトリアは潰される直前、マスターである彼によって抱き抱えられて回避していた。安全地帯へと避難した彼はアルトリアを下ろすと式へと目を向ける。

 

「式、あの巨大な不死者達は()()()()?」

 

「ええ、もちろん」

 

「ならアレは任せる」

 

 その言葉に式は嬉しそうに頬を弛めながら日本刀を構えて躊躇いもなくその身を死の河へと突貫させる。自殺行為としか思えないそれは煌めく銀閃と呆気なく両断されていく不死者達によって否定される。

 

 式が刀を振るう度に悍ましい肉の柱は死に絶え、醜悪なる白骨化した手は容易く砕け散る。

 

 アルトリアのように聖剣の極光を放っていないのに、ジャンヌ・オルタのようにあらゆるものを灰燼へと還す煉獄の炎を持っていないのにただの一振りで殺せてしまうのは彼女の持つ魔眼──即ち直死の魔眼が十全に機能しているからである。

 

 式の魔眼は最高峰のものであり、概念ですら殺しかねないそれが高々不死者の概念を付与された程度の兵士を殺せないはずもなく、次々と殺害していく。

 

 なればこそ数を減らし、王であるダレイオスを守る不死者が少なくなったが故にアルトリアの宝具は今こそ輝く。

 

「アルトリア、宝具を解放しろ」

 

 その命令にアルトリアは頷き、宝具をもう一度発動させる。

 

卑王鉄槌、旭光は反転する。光を呑め──

 

 先程とは比較にならないほどの魔力が供給され、聖剣に収束される魔力が黒く輝き出す。まるで臨界寸前の龍の吐息のように今か今かと解放の瞬間を待ちわびる。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)

 

 聖剣に押し込まれていた極光が解放の声を聞き、歓喜の声を上げるかのように守りの薄くなったダレイオスへと肉薄する。

 

「ォォォオオオ!」

 

 しかし、それはまだだと吼えるダレイオスの咆哮により残っていた不死者達が壁となることで致命傷には至らなかった。

 

 まだ終わらんとまだ戦えると吼えるダレイオスだったが、ダレイオスを守る為の不死者達が消えていった事はあまりにも致命的だった。

 

 ──だってほら、()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 それも凄まじい火力を誇る宝具を持った竜の魔女が。

 

「これで終幕だ。──ジャンヌ」

 

 煉獄の炎が憎悪の咆哮を上げる。

 

「報復の時は来た……!」

 

 炎が空を舞い、巨大な火柱が天に轟く。周囲を赤く染め上げるそれは正しく地獄の具現だ。主の号令を待ち侘びる炎は舌なめずりをするように地を這う。

 

これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮──

 

 ジャンヌ・オルタが旗の穂先をダレイオスへと向けた。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

 ダレイオスを守る不死者達がジャンヌ・オルタとダレイオスの直線上にいない今、もはや煉獄の炎を抑える術はない。巨大な火柱を上げながら大地を焼いて獲物を求めて獰猛に突き進む。

 

「ウォオオオオオ!!!」

 

 対してダレイオスはその戦斧に炎を纏わせて迫る炎に向けて振り下ろす。僅かにでも生き残る可能性があるのならばと生き汚くとも抗おうとする。

 

 だが、そんなダレイオスの炎をジャンヌ・オルタの憎悪の炎が容易く呑み込んだ。彼女の抱く憎悪はもはや計り知れないものであり、宝具でもなんでもない属性付与による炎では土台無理な話だったのだ。

 

 燃え盛る業火はダレイオスという標的()を得たことで更に轟々と燃え盛る。だが、灰すら燃やし尽くそうとする業火にダレイオスはそれでも尚生きようと足掻く。

 

 しかしそんな足掻きすらも嘲笑するようにダレイオスの背後から数多の槍が串刺しにする。霊核を貫かれ、磔刑に処されたダレイオスに最早逃れる術はなく、轟々と燃え盛る業火が彼の全てを焼き尽くした。

 

 宝具を連続で3連発したのは流石の彼も少々堪えたようで最後方にて重苦しい息を吐く。

 

 故に──

 

「ここまでは全て読み通りだ」

 

 ──戦場に男の声が響く。

 

「さあ、行けライダー!」

 

「おうとも!」

 

 誰かが反応するよりも早くブケファラスに跨った赤毛の少年が望幸に肉薄する。そして突然の奇襲でありながらも回避しようとする彼の胸ぐらを掴みあげてサーヴァント達から一気に距離を離す。

 

「ぐっ、ぅ……!」

 

「頼んだよ我が軍師!」

 

 遥か後方に控えていた軍師と呼ばれた黒髪の男へと赤毛の少年は迫り、それに対して男は手に持っていた軍扇を彼に向ける。

 

これぞ大軍師の究極陣地──石兵八陣(かえらずのじん)

 

 天から墜落する八つの石柱が己の主ごと彼の周りを囲い込む。そうして仕上げに幾何学的な模様が刻まれた蓋が落ちることにより己が主諸共、彼を封鎖空間の中へと閉じ込めた。

 

 

 その様子を見届けた黒髪の男は煙草を一服すると己に突き刺さる三つの視線へと目を向けた。

 

 殺意で人を殺せるというのならば己は今どれだけ死んだのだろうかとため息を吐きながら吸い終えた煙草を地面へと投げ捨て火種を足で踏み潰す。

 

「さてここからが私の正念場だ。錚々たる顔ぶれではあるが、私にも軍師として……彼の臣下としての意地がある」

 

 男が手を挙げると認識阻害により隠していた兵達が次々と現れる。敗北を喫することは目に見えているが、それならそれで負け方というものがある。

 

「弱者なりの戦い方というものを見せよう」

 

 己が主の願いを叶える為に、最早なりふり構わない軍師がアルトリア達に牙を剥く。たとえ蹂躙されようとも最後の最後まで抗おうと決意を秘めて眼前の敵を睨む。

 

「……頼んだぞ、ライダー」

 

 小さく呟かれた言葉は誰にも届かない。荒野に吹き荒ぶ風に飲まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と手荒な真似だったけど許して欲しいな。こうでもしないと君と二人きりになれないと思ってね」

 

 恥ずかしそうにはにかむ赤毛の少年。その表情は並の人間ならば骨抜きにしてしまうだろう。そんな紅顔の美少年を彼は睨み付ける。

 

「ブーディカは……立香達はどうした」

 

「んー、今頃適当な砦に寝かせてきた彼女を奪還した頃じゃないかな? 少し強い程度の怪物しか配置してなかったし、君が心配するほどでもないと思うよ。そこに割ける戦力もなかったしね」

 

「そうか」

 

 張り詰めていた彼の気がほんの少し緩む。それは安堵によるものか、赤毛の少年には判断は付かないけれど恐らくはそうであろうと若干己の願望が入り混じった判断を下した。

 

「そうだ、名乗りが遅れたね。()()()()()()()()()()()()僕の名はアレキサンダー。将来征服王イスカンダルとして君臨するものだ。良ければ君の名前も教えてくれないかな?」

 

「星崎望幸」

 

「うん、うん……いい名前だ」

 

 感慨深く頷くアレキサンダーは朗らかに笑う。

 

「叶うのならば君ともっと言葉を交わしたいけれど、その時間もないし、君もそれは望まないだろう? だから──」

 

 アレキサンダーは腰に帯剣していた剣をゆっくりと引き抜くとその切っ先を彼へと向けた。

 

「──分かりやすく戦いで語ろうか。そしてどうか君の持つ可能性を僕に見せてくれ……!」

 

 笑顔を浮かべるアレキサンダーに彼はここに来て漸く持ち込んで来ていた剣をその手に出現させる。そして身震いするほどの尋常ならざる決意が秘められた双眸がアレキサンダーを射抜く。

 

「──見たいというのなら是非もない。お前の望むものかは知らんが……ああ、見せてやるとも」

 

 戦いの火蓋は切られた。

 




先生のデスマーチ続行……!


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星に祈る

 石兵八陣とは巨岩で構成された陣であり、侵入した者たちを迷わせ死に追いやる諸葛亮孔明が保有する軍略の極みに至った宝具である。

 

 諸葛孔明の十八番である「奇門遁甲」を利用した地理把握・地形利用・情報処理・天候予測・人心掌握の五重操作からなる軍略の奥義にして最終形態というべき閉鎖空間。

 

 地の理を把握し進軍・撤退の有利を読み、地形を利用して敵軍の進軍・撤退を阻み、現在・過去・未来の三点をつぶさに予測し次なる手を打ち出し、風と雲の流れを読んで天候を予測して利用し、人間の思考と心理に精通してその心と考えを操作する。

 

 だが、その恐るべき宝具よりも諸葛孔明という軍師が恐れられた最大の所以は、その莫大な知識を適切な判断能力に反映させた頭脳にある。

 

 原典である『三国志演義』では、夷陵の戦いで敵対していた呉軍の陸遜は、敗走する蜀軍を追撃していたが、異様な殺気を放つこの陣に逃げ込まれたため、これ以上の進軍は不可能と判断して撤退したという逸話が有る。

 

 諸葛亮孔明という英霊の宿主である黒髪の男──ロードエルメロイⅡ世はこれを「移動する魔術工房」と評価していた。

 

 その石兵八陣をロードエルメロイⅡ世は殺傷性を排除した代わりに外からも内からも出られないように改造したものを作りあげた。

 

 殺傷性が消えた分、その耐久性は折り紙付きで魔術の極致である固有結界にすら匹敵するだろうと自負している。

 

 そんな封鎖空間内にて黒と紅の残影が激しく虚空に激突する。

 

 殺意と共に散華しながら花火のように散り行く様は、実に絢爛華麗だ。息の合わさった攻防の連続は演舞なのではと錯覚させるが、互いが宿す力を撒き散らし、当たれば死に至る攻撃がそれを否定する。

 

「はははっ! 凄い、凄いなぁ! 人の身でまさかこうまで僕に喰いついてくるなんて! これが人が持つ秘めたる力って奴なのかな!」

 

 アレキサンダーは機嫌良く高らかに笑う。肉体性能で劣る彼が平然と食らいついてくる姿は中々に異様だ。こちらのあらゆる攻撃を全て的確に捌き、動きを先読みしているかのように攻撃を当ててくる。

 

「もしかしてあれかな。君、千里眼でも持ってる?」

 

「さあ、なっ!」

 

 アレキサンダーの斬撃を下から斬りあげることにより軌道を逸らし、返す刃で袈裟斬りを放つ。しかしそれはアレキサンダーの純粋な身体能力のみによって容易く回避される。

 

 しかし回避されるのは織り込み済みで彼は更に前進し、アレキサンダーに喰らいつく。そしてもはや何度目かも分からない激突。

 

 彼はアルトリアのように魔力をブースターとしてロケットのような推進力を得たまま剣を叩き付ける。それに対してアレキサンダーは純粋な身体能力のみによって鍔迫り合いへと持ち込んだ。

 

 ギリギリと互いの剣が軋みをあげる。底冷えするほどの無機質な殺意と子供のように無邪気な意志が衝突する。

 

 そして最初に動いたのはアレキサンダーだった。彼の剣を弾きあげると唐突に頭突きを繰り出した。

 

「そらっ!」

 

「ぐっ……!」

 

 強烈な頭突きに脳が揺れる。ふらりと体勢が崩れた瞬間にアレキサンダーは膝蹴りを打ち込んだ。大きく吹き飛ぶ彼にアレキサンダーは深い笑みを浮かべた。

 

「凄いな、あれを避けるんだ」

 

 少なくともサーヴァントの力で膝蹴りを入れたものなら骨くらいは粉砕出来る。だが、感じたのは軽く触っただけのような感触だった。骨くらいは砕こうと力を込めて放ったが、接触した瞬間に衝撃が全て消失したのだ。

 

 大きく吹き飛んだ彼が着地した瞬間に地面にひび割れが発生したところを見てアレキサンダーはなるほど、と内心納得した。

 

(これがカエサルの言ってた彼の異質な置換魔術って奴なのかな。うぅん、確かにこれは少し変だ。魔術に対してあまり詳しくない僕でもおかしいことは分かる)

 

 何事もなかったかのように剣を構えて此方を睨み付ける彼にアレキサンダーは掌に雷を発生させる。

 

「それじゃあ、次は少し本気で行くよ」

 

 バチリと雷が空気を焼く。

 

 アレキサンダーはヘラクレスとアキレウスを祖とする英雄だ。なればこそ彼はゼウスの雷霆を扱うことが出来る。

 

 本家本元には敵わないだろうが、それでも雷は雷だ。まともに当たれば即死するだろうそれをアレキサンダーは何の躊躇いもなく使用し彼に放つ。

 

 大気を焼きながら彼に向かって瞬きの間に到達する雷は着弾する直前に不自然なまで捻じ曲がり、近くにあった岩に激突し、木っ端微塵に粉砕する。

 

「これ、は……」

 

 唖然とするアレキサンダー。彼は決して外すつもりなどなかった。それこそ本当に当てるつもりで放った。無論、彼ならば必ず対処するだろうと信頼をしていたが故に放ったものだが……今の事象がまるで理解が出来なかった。

 

 いっその事、最初から外すつもりで放ったと考えた方がまだ納得のいく事象だった。

 

「余所見とは随分と余裕だな」

 

 その隙を彼が見逃すはずもなく──気づいた時には懐に潜り込んでいた彼が剣を振るう。そっ首を叩き落とそうとする無情の殺意がアレキサンダーを襲う。

 

「くっ!」

 

 咄嗟のところで体を傾けて回避するアレキサンダー。だが、それすらも此奴ならば躱すだろうと一切の迷いもなく信じていた彼はコンマ1秒ほどのタイムロスもなく、更に斬撃を叩き込んだ。

 

 それをアレキサンダーは己の筋繊維が悲鳴を上げているのを自覚しながらも強引に放った横薙ぎの一撃が絶死の斬撃を打ち払った。

 

 弾かれた彼の剣が空を舞う。くるくると回転しながら己の頭上を飛んでいく剣にほんの一瞬視線を向け──ミシリと筋肉が膨張する音がアレキサンダーの耳に届いた。

 

 目を向けた先には彼がまるで獣の爪のように己の胸を抉らんと構えていた。常識的に考えれば素手でサーヴァントの魔力障壁を突破して霊核を砕くなどと無理だろうとアレキサンダーの明晰な頭脳が結論を出すが──直感が最大級の警鐘を鳴らしていた。

 

 彼が今まで振るっていた剣より……魔術よりもあれが()()()()()()()()だと本能が叫んでいた。

 

 だからこそアレキサンダーは──

 

「ゼウスよ!」

 

 自傷覚悟の雷で己ごと周りを焼き払った。

 

「ぐうぅゥァァア──ッ!」

 

 皮膚が焼け爛れる、肉が焼ける、骨が焦げつく。

 

 痛みに絶叫を上げながらもそれでも耐えて活路を見出す。ぶすぶすと体から黒煙を出すほどの怪我を負ってもアレを貰うよりかはマシだとアレキサンダーは己の自爆を食らったであろう彼を見て──乾いた笑いが漏れた。

 

「嘘だろう?」

 

 爆心地にいたと言うのに、決して回避出来る筈がないと言うのに……彼が負った怪我は先程攻撃しようとした手が多少火傷していたくらいだった。

 

 そしてそれもまた異常な回復力によって痕も残らず修復された。

 

 彼は弾かれて突き刺さっていた剣を拾い上げると変わらず無機質な殺意と身震いするほどの決意が秘められた双眸で荒く息を吐くアレキサンダーを睥睨していた。

 

 ここにきてアレキサンダーは漸く彼の異常性を正しく理解した。

 

「これならまだ未来予知をされてた方がマシだね」

 

 膨大な量の経験に裏打ちされた未来予知を超えた予測に似たナニカ。

 加えて幾千幾万もの戦いで得たであろう戦闘技術。

 

 そして何よりも恐ろしいのは絶体絶命の状況下でも平時と一切変わらない冷静さで微塵の躊躇いもなく突っ込んでくる勇気だ。

 

 命を投げ捨てる蛮勇? いいや、違う。あれはそんな生易しいものじゃない。

 

 例えコンマ数mmズレれば死ぬ状況だとしても彼はここならば当たらないと己の経験則に基づいて叩き出した結果に狂気じみた信頼を持って平気で踏み込んでくるだろう。

 

「ふーっ……」

 

 故にアレキサンダーは己の甘い考えを全て捨てた。

 

 あの彼女が本気で殺そうとしている彼にそもそも加減をするというのが間違いだった。一介の人間がサーヴァントには敵わないという常識は今の彼には当てはまらない。

 

 あれはほんの一瞬の隙をついて此方の喉笛を噛み千切る存在だ。なればこそ、全身全霊を以って彼と戦おう。()()()()()()()()()()()()()()()己の目的である彼の本質を見極めきれない。

 

 それは今も尚、この封鎖空間の外で絶好の機会を作り上げた我が軍師の努力の全てを否定する行為に他ならないが為に。

 

「加減はなしだ。本気で行こう」

 

 大気を焼き払うゼウスの雷がアレキサンダーの周囲に満ちる。アレキサンダーの肉体を満たす魔力が唸りを上げる。

 

 もはやこれから始まる戦いを言葉にしたところであまりにも陳腐で──

 

 両者の宿す決意に揺らぎはなく──

 

 二人は言葉を交わさずに激突した。

 

「「オオオオオオオ──ッッ!!!」」

 

 剣がぶつかる度に火花が舞う。封鎖空間内を瞬く間に荒らしていく。殺傷性を失った代わりに耐久性が大幅に上昇したはずの石兵八陣が二人の激突の度に軋み始める。

 

 激突の度に天井知らずに跳ね上がり続ける両者の出力。斬り結ぶ度に魔力が上昇し続ける。雷で肉体が焼け焦げるのすらもはや気に止めない──否、そもそも知覚すらしなかった。

 

 宿主の感情に呼応するように聖杯が際限なく魔力を注ぎ込み、肉体を更に強化していく。そしてそれはどういう事か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 光は万物に平等に降り注ぐように──彼と感応して聖杯は無差別に強化を施す。

 

 なればこそ、その差が最も出るのは肉体性能だ。

 

 サーヴァントと一介の魔術師ならば肉体性能は圧倒的にサーヴァントであるアレキサンダーに軍配が上がる。肉体の損壊すらも一切の考慮をしない万能の願望器はアレキサンダーと彼の肉体を破壊しながら出力を上昇させ続ける。

 

 故に最初にその限界が来るのは当然の如く──彼だった。

 

「ぐっ、ゥァッ……!」

 

 出力に対して彼の肉体性能が追いつけなくなった。激突の度にどこかしらが破損する。

 

 剣を振るった腕が衝撃に耐え切れず関節部が砕け散る。

 

 高速で移動する度に強化魔術すらも突破した圧力が肉を潰す。

 

 そもそも冷静に考えれば、これまでの強化に耐え切っていた事こそが奇跡どころか異常なのだ。

 

 人の体はそれほど頑丈に出来てはいない。いくら幼い少年のサーヴァントとは言え、一介の魔術師がそう何度も打ち合えるわけもないのだ。それが強化されていくサーヴァントとなれば尚更の事だ。

 

 故に彼の体の方が先に自壊していくのは当然の道理で──

 

「ハァッ!」

 

 ──アレキサンダーが彼の体を切り裂くのもまた当然の道理だ。

 

 煌めいた刃は彼の体を的確に斬り裂いて血を噴出させ、臓腑が零れ落ちる。大量の血を噴出しながら余りの衝撃に大きく吹き飛ばされた彼が大地を赤く塗り上げる。

 

 そこまでして漸くアレキサンダーは()()()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

 血溜まりに沈む彼と血に濡れる己の剣を何度も見て、冷静になった。それと同時に己の為した所業にアレキサンダーは大いに混乱していた。

 

 今更ではあるが、アレキサンダーは彼を殺すつもりなど一切なかったのだ。ただ見極めるつもりで戦っていたというのに何をどうすればこうなる。

 

 何故自分は彼を殺した? 

 

 どれだけ自問自答しても答えは出てこない。ただ分かるのは戦っていたあの瞬間、己の思考は間違いなく焼き尽くされていた。

 

 自壊しながら戦う彼の姿を視認した時点で止まるべきだったのに止まるという思考すら湧かなかった。

 

 何故、どうして──と疑問で思考が埋め尽くされて、ハッとした。

 

 今はそんなことよりも彼の治療をしなければと血溜まりに沈む彼に駆け寄ろうとして──

 

「──まだだ」

 

 ──聖杯が大暴走を開始した。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 アレキサンダーと彼を閉じ込めてから一体どれだけの時間が経ったのか。想定よりも多くの時間を確保出来たとは思うが……それは己の願望なのかもしれないとロードエルメロイⅡ世は何処か自嘲したように失笑する。

 

「これで終わりね」

 

 直死の魔眼を輝かせながら残った最後の駒を斬り捨てて此方を見つめる根源接続者に対して、もはや呆れを含んだ笑いしか出なかった。

 

 あの手この手で無数の策をぶつけて何度も不利な状況を作り上げたというのに持ち前のフィジカルのみで策を全て潰されてしまった。

 

 これだから常識外れの奴は嫌なんだと内心愚痴を吐いた。

 

 あの馬鹿も根源接続者も魔法使い共ももう少し常識に従え。

 

 そんなことを考えながらゆっくりと此方に向かってくる三人のサーヴァントを見つめて、どうやって時間を稼ぐかと考え始めた。

 

「貴方を殺せばアレは消えるのかしら?」

 

「さて、どうだろうな? あれは耐久性を大幅に引き上げたものだ、私が死んだとしても残るかもしれんぞ?」

 

 大嘘である。

 

 流石に術者本人が死ねばあれも消えるだろう。けれど少しでも悩んでくれればこっちとしては御の字だ。

 

「そう……でも最悪私が殺して消滅させればいいわね」

 

 微塵も悩まずに結論を出した式にエルメロイは卒倒しかけた。

 

 ──これだから根源接続者は……! 

 

 なまじ何でも出来てしまうが故に下手なブラフにも引っかからない。どうとでもなると理解しているが故に思案するということがない。

 

 純粋な力押しのみでどうにかしてしまう根源接続者は軍師である彼にとって最も苦手とするものだ。何せ仕掛けた罠も策も全て無意味と化す。

 

 軍師泣かせもいいところだ。

 

 ここで終わりかと覚悟して──それでも消滅する最期の時まで宝具の維持をしてやろうと最期まで足掻こうと決意する。

 

 だが、その決意は石兵八陣から発生した異常現象によって砕かれた。

 

「──は、ぁ?」

 

 最初に気づいたのはエルメロイだ。唖然とした声を上げて目の前にまで近付いてきた式を無視して己の宝具に目を見張る。

 

 それに釣られるように式が、アルトリアが、ジャンヌ・オルタが目を向けるとそこにあったのは黒い、あまりにも黒い穴だった。

 

 その黒い穴は出現と同時に石兵八陣の八つの石柱を砕き、そして火山の噴火を思わせるほどの衝撃と共に石兵八陣の蓋を消し飛ばした。

 

「ガァアアア──ッ!」

 

 そうして苦痛の悲鳴と共に飛び出してきたのはアレキサンダーだった。一体何があったというのか、彼の片腕が欠如していた。

 

 そしてその黒い穴から石片を踏み砕いて現れたのは彼だ。

 

 間違いなく彼の筈だ。

 

「──一次(ファースト)改良(シフト)終了」

 

 燃え滾る熱情を宿した瞳。絢爛と輝きを放つ銀色の魂。正しく彼を象徴するものだ。だと言うのに──彼から放たれる言葉には一切の熱がなかった。

 

 淡々と、冷徹に、目の前の障害を排除すると言わんばかりにアレキサンダーに突き刺さる無色の声音だけが本来の彼と全く一致しなかった。

 

「クソッ()()()()()()()()()()……!」

 

 血反吐を吐きながらも立ち上がるアレキサンダーをよく見れば腕だけでなく脇腹もごっそりと欠落していた。動く度に臓腑と血が零れ落ちていく。

 

「我が軍師! 彼女に伝えろ!」

 

「ライダー?」

 

「僕はもう無理だ! ()()()()()()()()()()!」

 

「待て、ライダーそれは一体どういう──?」

 

「彼を追い詰めるなと、彼を退化──いいや、()()()()()()と伝えろ! ああっ、クソ! 僕とした事がなんて失態だ!」

 

 アレキサンダーはそう言って彼に飛び掛かる。それに対して彼は瞳に秘める熱情はそのままにアレキサンダーの攻撃を精密機械よろしく最適解を出し続けて捌ききると隙だらけになった彼の抉られた脇腹から素手で霊核を掴んだ。

 

「ごぶっ……」

 

 瞬間、アレキサンダーを襲う激痛。そして勢いよく血を吐くとそれが彼の顔を赤く染めた。

 

「ねえ、望幸。君は、さ……勇者にだって、魔王にだってなれる可能性の持ち主だ」

 

 力の入らない手で彼の頬に優しく手を添えると熱情を秘めた瞳を覗き込む。どうか、どうかその輝きを失わないでと願うから──

 

「だから、せめて君が勇者になってくれるよう僕は願い続けるよ」

 

 その言葉を最後にアレキサンダーの霊核が砕かれた。

 

「──我が心臓(聖杯)の中で眠れアレキサンダー」

 

 黄金の粒子が彼の心臓部に吸い込まれる。そして全ての粒子が吸い込まれると今度はロードエルメロイへとその視線を向けた。

 

「残るはお前か」

 

「……いいや、私の役目はもう終わったよ。彼が消えたのなら私がここに存在する意味もないしな。大人しく自主消滅するさ」

 

 その言葉の通りエルメロイの体が黄金の粒子へと変換されていく。それを確認した彼は興味が失せたように視線を切った。

 

(ライダー……お前があの馬鹿に何を見たかは知らん。だが、全て伝えたぞ。お前が私に思念も含めて伝えてきた全てを。だから、後は頼んだぞ──遊星の巨神)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ああ、私が全てに決着をつけよう。ここを彼の旅の終局とするために」

 




漸く2章の終わりが見えてきました
まだ2章なの……?


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決戦に向けて

古戦場お疲れ様でした



 征服王リリィ撃破から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回我等が過労死軍師殿の策により無事ホモくんが嵌められて征服王リリィことアレキサンダーと一騎打ちする事になりましたが、何とか撃破することが出来ました。

 

 やっぱり聖杯ブーストは最高だぜ! 結局ゴリ押しが一番強いんだよなぁ……。

 

 さて、前回の戦闘で皆さんも理解出来たと思いますが、ホモくんは何故耐魔ビルドなのかと言いますとそのうちの一つが聖杯ブーストを行う為でした。

 

 結局のところ現代魔術師がサーヴァント相手にどうこうしようとなると聖杯で自己ブースト掛けまくった方が勝率も高いし、効率がいいんですよね。

 

 ただ聖杯ブーストは高倍率な分、肉体に掛かる負荷が滅茶苦茶にデカいです。それこそ際限なく自己ブーストし続けるとパワーに耐えきれずに肉体がぶっ壊れていきます(27敗)

 

 やっぱ人間の体って脆いんやなって……。

 

 なのでここで活きるのが耐魔ビルドなんですよね。ホモくんの耐久性を上げることによって聖杯の自己ブーストに耐えられるようにし、魔術師なので魔力ステを上げることによって更に高倍率にして行く事ができます。

 

 強化魔術で耐久性も多少は補えますけどやっぱり素の耐久は少しでも欲しいですからねー。やりすぎたら自滅することには変わりはありませんが。

 

 ちなみに別のビルドの話になりますが、例のYAMA育ち型筋敏ビルドを作成したことがあるんですけど、凄く面白かったですよ。

 

 強化魔術を専門とした魔術家系かつYAMA育ちというかなり珍しい生い立ちが発生したのでその子で色々と動かしたんですけど、最終的にサーヴァントどころか魔神柱を殴り殺せる狂気のゴリラ幼女が爆誕しましたね。

 

 その時はケイローンだったり、ディオスクロイのポルクスだったり、李書文などに色々と格闘術を教わってステゴロ殺法をフル強化した上で聖杯ブーストと強化魔術を掛けて超高倍率の筋力から放たれるステゴロ殺法で敵を全員殴り殺して突き進みましたからね。

 

 やはり暴力……暴力は全てを解決する。

 

 当時のホモくん──じゃなくてレズちゃんは年齢は立香ちゃんと同い年でしたけど見た目幼女な上に喋り方もぽやぽやしてた子だったのでギャップが凄まじかったですね。

 

 信じられるか? その幼女ゲーティアの顔面殴り飛ばしたんだぜ。

 

 ま、最終的に耐久力が足りなさ過ぎて自分の火力に負けて死んじゃったんですけどね。耐久力不足には気をつけよう! (ゆうさくのテーマ)

 

 さて、話はここまでにして話を進めていきましょう。

 

 >あなたが戦闘が終わり一息ついていると慌てた様子のロマニが通信してきた。

 

『望幸くん大丈夫だったかい!?』

 

 はい、別に大した怪我はないですよ。

 

 >あなたはロマニの質問に対して小さく頷いた。

 

『そっか、それは良く──ないねぇ!? 凄い怪我してるじゃないか!』

 

 怪我……? 

 

 確かにHPは減ってますけど7割くらいは回復してるので大した怪我は無いと思いますが……。

 

 >あなたはロマニの言っている意味が分からず首を傾げていた。

 

『いや、あるからね!? 肩から腰にかけてばっさり斬られてるじゃないか! 服破けてるよ!?』

 

 あっ、そういえばそうだった。怪我は治せても服は治せませんからね。しかも致命傷だっただけにそこの傷だけはまだ治りきってないんですよね。

 

 いや、言い訳をさせてください。ホモくんってプレイヤーキャラなだけにHP1でも通常時と全く変わらない動きをすることが出来るのと置換呪術のせいでそこそこHP減ってる状態がデフォルトなので忘れてたんです。

 

 >あなたはこれくらい大した怪我ではないとロマニに言った。

 

『よぅし、分かったぞ。僕と望幸くんの認識の齟齬が酷いことがね! 望幸くん、それは普通に大怪我の部類だからね? 帰ってきたらちょっと色々とお話しようか』

 

『あっ、それはちょっと賛成かな。私も望幸くんには言いたいことがあってね』

 

 >騒ぎ立てるロマニの横からダヴィンチが入ってきた。

 

『望幸くん、君また聖杯の力を使っただろう?』

 

 あー、これ……パターン的に特異点解決後にお説教というの名の注意事項説明かな。

 

 >あなたはダウィンチの質問に対して素直に頷いた。

 

『素直でよろしい。聖杯の力を使うな、とはこの状況下だと言えないけれど、それでも出来ることならあんまり使わないことだ。聖杯の力は人の身にはあまりにも強大だ。使い過ぎると聖杯の力に肉体が耐えきれなくなって壊れてしまうよ』

 

 おっ、そうだな(実証済み)

 

『だから帰ってきたら少し検診をしようか。君の体にあった礼装も作成したいからね。ロマニと一緒に君の帰りを待ってるよ。……ちゃんと無事に帰ってくるんだよ』

 

 おう、考えてやるよ(考えるとは言ってない)。

 

 礼装作成は嬉しいんですけど、説教という名の注意事項説明がゲロマズ展開なので出来る限り圧縮したい……したくない? 

 

 そんな皆様の為に〜! 

 

 気絶ショートカットがありますねぇ! ありますあります。

 

 気絶というのは瀕死状態、或いは頭に強い衝撃を受けた際に発生する状態異常の事なんですけど、それを利用して長い注意事項をある程度圧縮することが出来るんですよね。

 

 流石に注意事項を飛ばすことは出来ないので最低限の説明だけで済むように気絶という状態異常を悪用します。

 

 気絶状態でカルデアに帰還するとカルデア帰還後のイベントがホモくんが目を覚ますまでストックされるんですよ。それで目を覚ました直後に一気に始まるのでそういった面倒な会話を圧縮して一気に進められるんですよね。

 

 代償として一部キャラのストレスゲージが増加しますけど、まあコラテラルダメージというやつです。RTAの為だから仕方ないね。

 

 >あなたはダウィンチと約束を交わすとふぅ、と息を吐いた。

 >どうやら思っていた以上にスタミナを消費していたらしい。

 >そんなあなたの下にサーヴァント達が集まってきた。

 

「マスター怪我の様子を見せてくださらない?」

 

 えっ、やだ。この程度の傷なら放置してればリジェネで治りますし、魔力を使ってまで回復するのは無駄が多いので……。

 

 >あなたは断ろうとしたが、蒼く輝く瞳を向けて凄む式に何も言えなかった。

 >あなたは渋々といった様子で上着を脱いだ。

 

 あ、駄目? そう……(諦め)

 

「……酷い怪我」

 

 >服を脱いだことで顕になった傷に式は顔を悲しげに歪めた。

 >一番酷いのは肩から腰まで袈裟斬りでバッサリと斬られた傷だが、他にもよく見ればかなりの量の傷があった。

 

「おい待て、何だこの傷は」

 

 >アルトリア・オルタは苦々しい顔をしていた。

 >傷の量もそうだが、付けられた傷がかなり酷いのだ。

 >内側から破裂したように外側に向けて弾けた傷が元からそこにあったであろう傷跡を吹き飛ばしていた。

 >雷撃模様のケロイド状になった傷が至る所に走っていた。

 

 あー、まあアレキサンダーと戦ってればこうなりますよねぇ。物理攻撃も痛いけど雷撃が痛すぎるんだわ。

 

「……早く治すわよ」

 

 >沈痛な面持ちでジャンヌ・オルタはあなたの体を治療する。

 >些か拙い所は見受けられるが、治癒魔術を用いてあなたの体を治していく。

 

 下手に抵抗したら余計タイムロスになるか。ならここは任せましょうかね。それに新しい礼装に着替えておかないとなぁ。流石にこの姿を立香ちゃんに見せるのは気が引ける。

 

 恐らく……というか、絶対ストレスゲージが増える。ただでさえ、割とストレスゲージがカツカツなのにこれ以上増えるのは溜まったものじゃありませんからね。

 

 それにしてもジャンヌ・オルタって応急処置使えました? いや、まあジャンヌ・オルタは勤勉なところがありますから練習してるなら使えてもおかしくありませんけど。

 

『……望幸くん、準備はしておくから帰ってきたらすぐに治療しよう』

 

 >あなたの怪我の応急処置をしているサーヴァントたちの姿を見たロマニが通信越しに提案してきた。

 

 おっ、そうだな。どうせホモくん瀕死の状態で担ぎ込まれるだろうからその時はロマニにはその腕を存分に奮ってもらいましょう(ド畜生)

 

 帰還後の回復手段が確立したので今回は無茶していいってお達しも来たことですからね! 

 

 >あなたはロマニに分かったと伝え、応急処置を施してある程度の治療が終わると新しい礼装に腕を通して着込んだ。

 

 さて、後はさっさと立香ちゃん達と合流しましょう。

 

 >あなたはロマニに立香達の居場所を尋ねた。

 

『えっと、立香ちゃん達の位置はここだよ。そっちに情報を送っておくね』

 

 >あなたはロマニから送られてきた情報を元に立香達に合流する。

 >だが、その道中は非常に重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

 なんでこんなに空気が重いんですかね……(困惑)

 

 誰一人欠けずに勝てたんだから普通に喜ぶべき場面では……? 勝利したのにストレスゲージが増えるとかおフ〇ックですわ! おクソですわ!

 

 いや、無駄にイベントが起きないからタイムロスしにくいと考えればこれもいいかも……しれなくもないかもしれない。

 

 >そうしてあなた達は立香達との合流地点に到達するとそこには沈んだ様子のネロがいた。

 

 おっと、これは……。

 

 >あなたは立香に近寄ると一体どうしたのかと理由を聞いた。

 

「あ、望幸……。えっとね、ブーディカを救出した所までは良かったんだけどそこに連合軍の首魁──ロムルスってサーヴァントが現れて……それでネロがショックを受けたみたいで急いで撤退したの」

 

 ふむ……? ちょっと珍しい展開ですね。いつもなら連合帝国の首都でロムルスと会うんですけどまさかロムルス自らネロに会いに来るなんて。

 

 まあ、今回の巨神ルートは恐らく既にレフがレ//フされてるのでレフの支配下にないロムルスが自由に動いた結果なんですかね。

 

 どちらにせよ、タイム的に見れば大分デカイです。セプテムRTAの鬼門の一つはロムルス出現によるネロのやる気の強制低下、それによって起きる撤退ですから。

 

 最終的には立ち直って再突撃するとは言え、些か無駄が多すぎるんですよね。場合によっては撤退しないようにその場で鼓舞するか、或いは退けない状況をつくるかのどちらかにしようかと思っていたのでそれをしなくてもいいのは本当にありがたいです。

 

 いやあ、こういうのはあれですが、レフがいないと本当に上手く回りますね。やっぱレフはタイムの敵なんやなって……。

 

 さて、このままネロを意気消沈させ続けるのもあれですし、さっさと立ち直って貰いましょう。ついでに立香ちゃんも連れてね。こっちはコミュ力お化けがおるんやぞ! 

 

 意気消沈した皇帝がなんぼのもんじゃい! 

 

 >あなたが立香と共にネロの下へ向かうとそれに気がついたネロが明るく振舞ってどうかしたのかと聞いてきた。

 >けれどやはり何処か無理をしていると感じられるネロにあなたは直球に話を聞きに来たと言った。

 >それに対してネロは驚いたような表情を浮かべて──仕方ないかと近くに座るように指示した。

 >そうしてポツリポツリと己の内心を吐露し始めた。

 

「……お前達には情けない姿を見せてしまったな。これまでにも、伯父上やカエサル殿が現れた際にもそれなりに情けない姿を見せてしまった気もするが、今回ばかりは少し堪えた。神祖が現れたのを見て余の今までの歩みはもしや誤りではとほんの一瞬思ってしまったのだ」

 

「それは……」

 

「──だが、だがな。余は思うのだ。神祖はきっと間違えている。あの化け物達を従え、民を心酔させる姿は正しく偉大なるローマそのものだ。

 けれど、誰も笑みを浮かべてはおらんのだ。心酔する兵も民も誰一人として笑みを浮かべてはおらん。常に気を張りつめておる。

 笑い声さえない国があってたまるものか! ならば……余が……余がすべきことは……」

 

「ネロは間違ってないよ。ううん、むしろ私は正しいと思う。だから、突き進むべきだよ。皇帝らしく何処までも傲岸に後悔のないように突き進むんだ」

 

「私も先輩と同意見です。このローマに来て私は色んな人と出会ってきました。皆さんはどんなに苦しい状況下でも笑顔でいらっしゃいました。だから、笑顔のない国なんてあっていいはずがありません」

 

 おっ、ホモくんも励ませと? 

 

 しょうがねぇなあ〜(悟空)

 

 >あなたは今自分が思っていること全てをネロに伝えた。

 >その言葉を聞いてネロは驚いたように何度も瞬きをして──そして最後に大きく笑った。

 

「ふ、ふふ、ふはははは! そうか、ああそうさな! 望幸、それはお前の言う通りだ。ああ、余とした事が大事なことを忘れていた──決めたぞ、立香、マシュ、望幸」

 

 >一頻り笑ったネロは立ち上がるとあなた達に先程までの何処か覇気のない瞳ではなく、ネロ本来の力強い瞳であなた達を見た。

 

「余は最早何が相手であろうとも迷うことはない。余は、余のなすべきことを果たそう! それを果たしてこそ余は伯父上にも、カエサル殿にも……そして神祖にも胸を張れるのだからな」

 

 >立ち上がったネロはあなた達に手を差し伸ばした。

 

「最後の決戦の時まで余と共に来てくれるか。立香、マシュ、望幸」

 

「勿論!」

 

 >あなた達はネロの手を掴むと威勢よく応えた。

 

「うむ。では、行くとしよう!」

 

 ネロが立ち直ったということでキリがいいので今回はここまでです。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 



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今を生きる皇帝

 

 荊軻が入手した侵入経路から荘厳なる連合帝国の首都の絢爛たる城に辿り着いた立香達は困惑することになった。人の気配がまるでしないのだ。

 

 ここに辿り着くまで数多の兵士や化け物達と戦ってきたというのに、最重要拠点であるこの城には兵士が存在しない。時々化け物達は襲いかかってくることはあるが、それもさして脅威になるものでもない。

 

 これならばまだ外の方が脅威だったと言える。

 

「こりゃあ罠か?」

 

 クーフーリンがそう呟くのも当然の事だろう。あまりにも不自然だ。最も守るべきであるこの場所が最も手薄というのはあまりにも不自然だ。なればこそ、罠があるのではと疑うのも至極当然のことだろう。

 

「いや、余はそうは思わぬ。恐らく神祖はそういった事をせぬ。考えられるとすればそもそも守る必要がないのか……或いは兵士が邪魔になるのか?」

 

「それこそ意味が分からないけどね。戦争で兵が邪魔になることなんてある?」

 

「普通ならば考えられません。ですが相手は聖杯を保有しています。ならば私達の常識は捨てるべきでしょう」

 

 ネロの疑問に救出されたブーディカとジャンヌ・ダルクが答える。ジャンヌ・ダルクは常識は捨てるべきだと論じた時に横目で非常識の塊である望幸を見た。

 

 彼もまた聖杯を保有している。それも心臓に溶け込んでいる世界に穴を穿つ機能を持つ大聖杯──超抜級の魔力炉心を宿した彼は常識の埒外にある。

 

 ならば聖杯を保有する敵もまた常識の埒外にあることをしてくるというのは念頭に入れておくべきだ。

 

「ふむ……兵が要らぬほどの何かがあるということか。例えば我等全員を相手にしても問題ないと豪語出来るほどの何かが」

 

 荊軻の言葉に皆一様に考え込む。

 

 この人数のサーヴァント全員を相手にして戦える者とは一体誰だ? 

 

 あまりこのような事は言いたくはないが、この人数差に高水準に纏まった力を誇るサーヴァントが多いネロ率いるローマ軍相手では、余程の存在でない限り瞬殺されるだろう。

 

 加えて言うのなら相手は聖杯を保有しているが、それはこちらも同じなのだ。彼の心臓に宿っているという相違点はあるが、条件自体は同じだ。

 

 故に尚更理解ができない。

 

 ここまでの差があって尚、それを容易く埋めることが出来る何かがあるということを。

 

 そうして暫く話し合い──立香達は一際豪奢な扉の前に辿り着いた。

 

『この扉の先に巨大な魔力反応と聖杯の反応がある。何が起きるか分からないから皆気をつけて──』

 

「フッ!」

 

『ちょっとぉ!?』

 

 ロマニが全員に注意喚起をする前に、彼が何の躊躇も無く扉を蹴り破った。蹴り破られた扉は物凄い勢いで回転しながら玉座へと吹き飛び──まるで煎餅でも砕くかの如く容易く粉砕された。

 

「随分と荒々しいな。だが良い、それも許そう」

 

 猛烈な速度で吹き飛んだ扉を粉砕した張本人──神祖ロムルスが立香達を出迎えた。

 

「待っていたよ、我が愛し子達(ローマ)

 

「うむ、余は来たぞ! 誉れ高くも建国を成し遂げた王、神祖ロムルスよ!」

 

 そう言ってネロは胸を張って前へ進む。

 

 正直な話、今でも神祖の庇護下に下りたいという気持ちは消えたわけでもない。もしも、もしも許されるのならば連合の皇帝となり、全てを委ねてしまいたいという甘い欲望があるのもまた事実だ。

 

 しかし、だ。

 

 もはやそれは許されない。たとえ神祖が、ローマが許そうともその決断だけは誰でもないネロ自身が許さない。

 

 自分でさえ信じきれなくなった己を立派な皇帝なのだと、お前は素晴らしいのだと認めてくれた彼らがいる。そんな彼等の期待を裏切るのはこの偉大なるローマの皇帝に相応しい所業であろうか? 

 

 いいや、否である。

 

 それこそ目の前に雄大に立つ神祖ロムルスに……今までの皇帝達に顔向けが出来やしない。

 

 故にネロは胸を張るのだ。

 

 ロムルスを偉大なる神祖として敬愛しながらも、今この世においては間違っているのは貴方なのだと、己こそが正当なるローマ皇帝なのだとネロは己を鼓舞する。

 

 そうして前へ出たネロに、ロムルスは先程までの父親の如き慈愛の眼差しとは一変し、正しく神祖ロムルスとしての神威すら混じった威圧を向けた。

 

 思わず膝を折りたくなるような威圧に、それでもネロは威風堂々とした立ち振る舞いを崩すことは無い。それどころか、寧ろ神祖の威圧を受けてより勇ましくネロは歩みを進める。

 

 それを見てロムルスは目を細めた。

 

「……良い輝きだ。ならば今一度聞こう。さあ、教えておくれ、お前の答えを」

 

「神祖ロムルスよ。あなたがどれほど偉大なのか、余は今改めて実感した。けれど、やはり貴方は間違っている」

 

「……」

 

「余がそう思ったのは簡単なものだった。神祖、貴方がどれほど偉大であろうとも貴方はすで己が生に幕を下ろした人だ。

 役が終わった演者が舞台に再び上がらぬのと同じように、既に終わりを迎えた過去の存在が現代を生きる者達に変革を齎そうとするのは余りにも無粋だろう」

 

 何故ならば──

 

「今を変える者はいつだって今を生きるものでなくてはならぬ! たとえそれが偉大なる貴方が相手であろうとも余はローマ帝国第五代皇帝として、余の全霊を懸けてそれを証明しよう!」

 

「許すぞ、ネロ・クラウディウス。私の愛、おまえの愛で見事蹂躙してみせよ」

 

 ロムルスは一度そこで言葉を切ると、その真紅の双眸でネロの後ろに控えていたカルデアを見た。

 

 そしてほんの少しだけ、安堵の息を漏らした。

 

 藤丸立香、マシュ・キリエライト、星崎望幸。彼等三人が誰一人として欠けていない。そして何よりも彼が──星崎望幸がまだ人として存在していることにロムルスは何よりも安堵していた。

 

 如何に心臓に聖杯が埋まっていようとも、肉体に竜の因子が組み込まれていようとも彼は依然として人間だ。燦然と輝く銀の魂はかつてよりも曇っていようとも放つ光に一切の衰えはない。

 

 ならばこそ、ならばこそ……今ここで彼を滅ぼしてしまうのが最善だとロムルスは再認識した。

 

 彼が堕ちるその前に誰よりも人に焦がれた彼を人のまま終わらせてやるべきだ。

 

 その為にもこの歪み腐敗した因果を終わらせよう。

 

 それが私の──否、この特異点で散っていた者達の切なる願いなのだから。

 

「見るがいい。我が槍、すなわち──」

 

 幾度となく紡いだ言葉。だがそれも今日で終いだ。次は決して訪れさせぬ。

 

「──私の愛(ローマ)が此処に在ることを!」

 

 大樹の幹のように太く立派な腕がゆっくりと動きだし、背負っていた槍の長柄を掴み、巨大な紅い房を備えた不思議な形状の槍を構えて突貫した。

 

「敵性サーヴァントが接近。想定クラスはランサー。戦闘に突入します。マスター、指示を!」

 

「さあ、行くぞマスター。おまえの思うがままに」

 

 そうしてロムルスとネロ達は激突した。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

「オオオオオオ!!!」

 

「やぁぁあ──ッ!」

 

 裂帛の気合──それと同時にロムルスの槍とそれを弾いたマシュの盾から火花が飛び散った。

 

 そしてそれによって生じた僅かな隙にネロが剣を振るう。隙を突かれてロムルスの懐に滑り込んだ剣は──しかし、それ以上に素早く強靭なロムルスの振り下ろしによって容易く防がれる。

 

 そしてロムルスは振り下ろした体勢のままにネロに向けて勢いよくタックルを仕掛ける。まともに喰らえばただの人間であるネロは即死するであろう威力のそれにブーディカが割り込みその盾でもって防いだ。

 

「くぅ──ッ!」

 

 しかし、ロムルスのその恵まれた体格から放たれたショルダータックルの威力は殺せても勢いまでは殺しきれなかった。故にブーディカはネロと共に大きく後ろに吹き飛ぶ。

 

 それを認識した望幸がカバーに動き、二人を空中で捕まえて壁に激突することだけは避けた。

 

「ごめんね、助かったよ」

 

「問題ない」

 

 その様子を観察するロムルスはその大樹のような大きく太い腕を更に膨張させて槍を握り締める。そして追撃を仕掛けようとして──

 

「おい、そいつにばっかり集中してていいのか?」

 

 ──クランの猛犬が噛み付いた。

 

 呪いの朱槍が幾千もの軌道を描きながらロムルスへと肉薄する。

 

 ロムルスは自身に襲いかかる槍の軌道を冷静に的確に見極めると弾き、叩き落とし、時には避けて全て捌くとクーフーリンに向けて鋭い刺突を放つ。

 

 しかしそこはクーフーリン。

 

 そんなものは読めてるんだよと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべて地面に槍を突き立てて空へ飛ぶことで槍の一撃を回避する。

 

 そして生物が対応し辛い真上からの攻撃──すなわち頭上からロムルスに強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

「ふむ」

 

「何っ!?」

 

 だが、恐るべきはロムルスの肉体だろう。

 

 クーフーリンの蹴りを見極めるだけに飽き足らず、あろう事か掴み上げて背後から気配を消して音もなく近づいてきていた荊軻に叩き付けた。

 

「ぐぁ……!」

 

 纏めて吹き飛ばしたロムルスは二人を一瞥すると近くにいたジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタに向けて突貫した。

 

 ジャンヌ・ダルクに向けて強烈な振り下ろしを繰り出す。ジャンヌ・ダルクはそれを何とか防ぐ。

 

 ロムルスの槍とジャンヌ・ダルクの旗が衝突した瞬間に床がひび割れ、極小規模のクレーターが発生する。ギリギリと異音を鳴らしてロムルスは片手であのジャンヌ・ダルクを押さえ付けると、空いたもう片方の手で無防備にガラ空きとなったジャンヌ・ダルクの腹部に強烈な殴打を繰り出した。

 

「カハッ!」

 

 ジャンヌ・ダルクの口から空気が漏れる。苦悶の声を上げるジャンヌ・ダルクにロムルスは駄目押しと言わんばかりに回し蹴りを放ち、彼女を大きく吹き飛ばした。

 

「シィィッッ!!」

 

 深く短い吐息と共にジャンヌ・オルタの渾身の一撃がロムルスに放たれる。それに対してロムルスは真っ向から弾き返すというわけでもなく、むしろその逆。

 

 放たれた渾身の一撃を受け流し、隙だらけとなったジャンヌ・オルタの腹部に鋭い槍の刺突を放つ。最早こうなった以上、回避することは出来ない。

 

 ロムルスの槍がジャンヌ・オルタを貫くと誰もが確信して──

 

「令呪を以て命ずる。避けろジャンヌ・オルタ!」

 

 後方から響いた彼の声によって回避不能の一撃をジャンヌ・オルタは回避した。

 

 令呪による絶対回避により不可能を可能に捻じ曲げて攻撃を回避したジャンヌ・オルタは今度こそ渾身の一撃を叩き付けた。

 

「燃え尽きろ!」

 

 激突の瞬間、ジャンヌ・オルタは憎悪の炎を滾らせてロムルスの肉体を燃やしにかかる。渾身の力でその場に縫い付けられたロムルスの肉体をじわじわと炎が焼いていく。

 

「温い」

 

 しかし、爆発的に跳ね上がったロムルスの魔力が炎を消し飛ばし、押さえつけていたジャンヌ・オルタを弾いた。

 

「どんな力してんのよ……!」

 

 これでもジャンヌ・オルタは自分の力はそこんじょそこらの奴には負けないと自負している。元から優れた筋力に邪龍の力が加わっているのだからその自負も当然の事。

 

 そんなジャンヌ・オルタをロムルスは弾き飛ばしたのだ。

 

 ……凄まじいの一言に尽きる。

 

 これほどのサーヴァント達を相手にロムルスはたった一人で互角以上に立ち回っていた。今までの皇帝達とは余りにも格が違う。

 

 力も技も格も全てにおいて別格だ。

 

 そしてこれでいて彼は未だ真骨頂を発揮していないというのだから驚愕だ。

 

「……これでも足りぬか」

 

 だと言うのにロムルスはそう呟いた。

 

 これで足りない? 一体何が足りないというのだ。これだけのサーヴァント達を蹴散らしているというのに足りていないわけがないだろう。

 

 そうは思ってもロムルスはそんなことは微塵たりとも思っていない。

 

 故に更にロムルスの魔力が跳ね上がる。上昇し続ける魔力を示すように先程よりも速く、強くロムルスは戦闘を続行する。

 

 叩き付け、振り回し、粉砕する。まるで嵐そのもののようにネロ達を蹂躙する。このままではどう足掻いてもジリ貧だ。

 

 だからこそ、彼がついに後方から前へと進み始めた。

 

「ようやくか」

 

 それを待っていたのだとロムルスはほくそ笑み──

 

「いざ、ローマへ」

 

 槍を掲げ、宝具を解放した。

 





ロムルスはアルテラも知らないホモくんの辿った末路の一つを覚えてます。その末路がガチやばなので本気で殺しに来てます。その結果がこの強化。しゃーないね。


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共鳴

いつも感想を読ませてもらってますし、励みにもなってます。
あと、誤字報告も凄く助かっております。


 

 ロムルスの宝具──『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)

 

 宝具としては樹木操作の能力を有しており、真名解放の際には槍が大樹として拡大変容し「帝都ローマの過去・現在・未来の姿」を造成、怒濤の奔流で対象を押し流す質量兵器である。

 

 それをこのような狭い玉座の間で発動しようものならどうなるか。

 

 ──至極単純、あらゆる逃げ場が潰される。

 

「これは……」

 

 大樹と化したロムルスの槍が玉座の間を埋め尽くさんと四方八方にその幹を伸ばす。こうなってしまった以上、逃げ場は存在しないため正面から打ち破ることを強制される。

 

 まるで濁流のように押し寄せるそれに彼は何も感じてはいなかった。このままいけば押し潰されて死ぬと分かっているだろうに僅かも取り乱していない。

 

 ただ冷静にゆっくりと銃に弾丸を装填する。

 

「ジャンヌ・オルタ、アルトリア、式、こっちへ来てくれ」

 

「何か策でもあるわけ?」

 

「ああ」

 

 傍にやってきたジャンヌ・オルタとアルトリアに式を確認すると、装填が終わった銃をこちらに向けて流れてくる樹木に対して撃った。

 

 鈍い音を立てながら弾丸は樹木に命中するが、まるで意味などなかった。撃った傍から急成長する樹木に弾丸は取り込まれ即座に元通りとなる。

 

「ジャンヌは手を出してくれ。アルトリアは砲撃の準備、式はジャンヌとは反対の手を」

 

「……何をするつもりなのよ」

 

「──正面から打ち破る」

 

 彼はそう宣言するとジャンヌ・オルタと式の手を掴み、己を飲み込み、絞め殺そうと濁流のように迫ってくる樹木を観察する。

 

 そして……

 

「ジャンヌ・オルタ、炎を撃て。それも出来る限り巨大なものを4つ程だ」

 

 このまま正面からぶつけたとしても少しくらいは怯むだろうが、突破は無理だろう。無論、アルトリアの宝具を加味してもだ。

 

 彼の魔術を使って中に炸裂させるのか? 

 

 しかしそうだとしても果たしてそれで威力は足りるのかと疑問は抱かずにはいられないが、それでもジャンヌ・オルタは彼の命令のままに現状放つことの出来る最大火力の火球を4つ作り出すと襲い掛かる樹木の波に放った。

 

 彼がそれを視界に入れた。

 

「ぐ、ゥァッ……」

 

 その瞬間キィィィンと妙に甲高い音が鳴り響く。その音の発生源は彼だった。珍しく苦悶の表情を浮かべながらも火球を凝視し続けている。

 

 目から、口から、耳から血が流れ始めても構わず凝視し続ける様にジャンヌ・オルタは嫌な予感が過ぎる。そしてそれは式も同様で……いや、式の表情はジャンヌ・オルタよりかもある種悲壮なものだった。

 

「まさか──」

 

「──access(接続開始)

 

 ゴポリと彼の口から血の塊が零れ落ちる。落ちた血の塊は音を立てて地面に落下して赤い水溜まりを作り上げる。

 

 カリカリと何かを引っ掻くような、或いは何かを書き上げているかのような音が聞こえる。

 

 彼の足元に蒼銀の魔術陣が展開される。それは今まであらゆる魔術行使を一工程で済ませていた彼が初めて見せた魔術だった。

 

 少なくともジャンヌ・オルタはこれが何なのか理解出来ない。あまりにも複雑怪奇な文字と構成で描かれていく異様な魔術陣。覚えている限りの記憶を引っくり返してもどれとも一致しない。

 

「術式駆動──!」

 

 蒼銀に光る魔術陣が一際輝くと彼は何かを握り潰すような動作と共にジャンヌ・オルタが放った火球が消滅した。次瞬、ロムルスの放った宝具が大爆発を引き起こした。

 

 まるでそれはジャンヌ・オルタの火球が爆発したかのような現象だった。

 

「アルトリア、駄目押しに撃ち込め」

 

「ああ」

 

 言いたいことも聞きたいことも山ほどある。だが、この千載一遇のチャンスをみすみす逃す馬鹿な真似は決してしない。

 

 聖剣に魔力を装填、圧縮。そしてアルトリアの得意とする魔力放出により砲撃と化した聖剣の一撃が直線上にあるあらゆる障害物を破壊して突き進み、巨大な樹木に大きな風穴を空ける。

 

 連続して起きる大爆発。玉座の間を押し潰す勢いで広がっていたロムルスの宝具は立香達に命中することはなかった。

 

「ふーっ……」

 

 ロムルスの発動した宝具を貫通し、彼まで最短かつ一直線の道が出来た。故に彼は前へ進み始める。砕けた木の残骸を踏み潰し、あらゆる障害を排除して突き進む。

 

 ああ、本当に──

 

「おいで」

 

 ロムルスは手を広げて彼を迎え撃つ。

 

 なんと酷い様なのだ。

 

 彼の瞳に宿る熱情は全てを焼き尽くしてもなお止まらぬ不屈の意志。前へ進むという意思のみが彼の全てを支配していた。

 

 それは一見して人として素晴らしい在り方だと認識してしまうが、彼のそれは度が過ぎる。何せ彼からは前へ進むという意志以外の全てが欠落しているのだ。

 

 後退することも、立ち止まることも……果ては周りを見回すということすらも欠落している。常に前のみへ進み続けようとする様は最早壊れ果てた破綻者そのものだ。

 

 ……痛ましいにも程がある。

 

「もう、終わりにしても良いだろう」

 

「……」

 

 その言葉に彼は何も喋らない。かわりにただひたすらに無機質な殺意を込めて武器を構え、剣と銃を殺意のままに突き付けた。

 

 それが彼の意志を雄弁に語っていた。

 

 その様を見てロムルスは手のかかる子を見るかのような慈愛の篭った眼差しと苦笑を浮かべて槍を構えた。

 

 そして彼等は再度激突した。

 

「ヌゥン!」

 

「フッ!」

 

 ロムルスの振るう槍を式が弾く。その間隙を縫うように放たれた弾丸がロムルスの眼球を穿たんと迫り来る。それを弾き、躱して宝具の樹木操作能力を使用してまるで手足のように木々を動かして襲わせる。

 

「燃えろ」

 

 それをジャンヌ・オルタの炎が燃やし、時には爆発して押さえつける。

 

 加えて……ああ、またほら。

 

「術式、駆動」

 

 蒼銀の魔術陣が輝く。まるで彼の魂のように燦然と煌めいている。そしてジャンヌ・オルタの炎の消滅と共にロムルスが操っていた樹木の一部も消滅していく。

 

 仮にも宝具の一部である樹木を削り取るように消滅させているのだ。何かしらの代償があるのだろう。彼が蒼銀の魔術陣を起動させる度に血が零れ落ちていく。

 

「ふーっ、ふーっ……」

 

「マスターそれ以上は……」

 

「問題、ない」

 

 式が諌めるが彼はまるで聞き入れようとはしなかった。寧ろその逆で、肉体に活性アンプルを打ち込んで加速的に発動させていく。

 

 全身の穴という穴から血を流してでも前へ進もうとする様のなんと惨いことか。

 

 痛ましい、痛ましすぎる。だからもう──

 

「眠るといい」

 

 ピシリと彼の足元の床から罅が入る。

 

 そして槍のように突き出してきた樹木が彼の腹部を強烈に打ち据えた。

 

「ぐぅ、ォォォオオ!」

 

 猛烈な勢い吹き飛ぶ彼にロムルスは更に追撃をする。肉が潰れ、骨が砕けた彼に樹木がするすると彼の体に巻き付いて締め上げる。

 

「望幸!」

 

 立香の悲鳴が上がる。

 

「望幸さん!」

 

 マシュが必死の形相で締め上げる木々を破壊しようと動こうとするが、彼はそれを手で制してまた蒼銀の魔術陣を発動させる。

 

「術式……駆動」

 

 彼を締め上げていた木々が消滅すると同時に解放された彼は大量の血をブチ撒けた。

 

「ぐっ、ごぶっ……」

 

 床が赤く染まる。短時間に血を失いすぎたせいか、彼の顔色は死人のように真っ白になり、手足が震えていた。それを彼は二度目の活性アンプルを打ち込んで黙らせた。

 

 空になった活性アンプルが入った容器を投げ捨てると血に濡れた口元を拭う。そして強化魔術を発動させ、肉体を補強し、無理矢理にでも体を動かす。

 

「式、俺の事はもういい。自分の身は自分で守れる」

 

「けれど……」

 

「俺を守るよりもネロのサポートを頼む。俺もサポートに徹する。……それにロムルスと決着をつけるのは俺じゃない。本当に決着をつけるべきはネロだ」

 

 ちらりと彼はネロに視線を寄越して、そしてまた目の前に雄々しく立つロムルスを油断なく見据える。

 

「これはネロが越えなければならん試練だろう。なればこそ、俺では駄目だ。無論、立香達でもな」

 

 ネロが──いいや、ローマを統べる皇帝がこの戦いに決着をつけなくてはいけない。その為にネロは、ローマは今まで頑張ってきたのだから。

 

 なればこそ、ここでカルデアが幕を引くというのは余りにも無粋に過ぎるだろう。

 

 デウス・エクス・マキナのような結末など誰も求めていやしない。今求められているのは、たとえどれほどみっともなく泥臭いものであったとしてもネロ自身の幕引きなのだから。

 

 故に──

 

「さあ……見せてくれネロ・クラウディウス。君の輝きを」

 

「──うむ、余の勇姿に存分に刮目するが良い!」

 

 原初の火を手にネロ・クラウディウスは前に出る。

 

「ふむ……」

 

 ロムルスはそれを意外そうな目で見ていた。

 

 ロムルスはてっきり彼が戦うと考えていたのだ。何せ今までずっと彼が、或いは彼女が戦っていた。何があろうと、どう足掻こうとも最後には必ずその身を戦火に晒す。

 

 であるのならば、今の彼は何を考えているのか。

 

 他者を頼るようになったか? 

 

 いいや、否だ。

 

 彼の瞳は未来しか映していない。

 

 寧ろ、前よりも悪化していると言えるだろう。過去や今の一切合切を薪や石炭のように焚べて未来へと突き進み続ける歪んだ信念が宿っている。

 

 凡そ人の善性というものだけをかき集め、煮詰め、改悪したような常人にとって毒にしかならない猛毒の光。

 

 そんな彼が他者に己のことを任せるかと言えば否定せざるをえない。なればこそ、考えつくのはたった一つ。

 

 ──それが必要な事だから。

 

 それしかあるまい。

 

 何かを狙っているというのならば、是非もなし。その策ごと粉砕しよう。ロムルスはそう判断して対峙するネロへと視線を向ける。

 

「行くぞっ!」

 

「ああ、おいでネロ」

 

 走る、走る、走る──! 

 

 ネロはただ真っ直ぐにロムルスに向かって走り続ける。

 

 ロムルスの操る樹木が右方からネロを轢殺せんと迫るが、それを式が切り裂く。左方からきた樹木はマシュが盾で押し潰し、ジャンヌ・ダルクが旗で殴り飛ばす。

 

 しかしそれでも尚勢いは全く衰えない。何せロムルスが操るのはローマそのものだ。単純に物量が違う。桁が違うのだ。

 

 破壊した傍から溢れていくそれに対してはネロは恐れはしない。

 

 だって、信じているから。

 

「行きなさい、ネロ!」

 

 ブーディカの声が聞こえる。

 

「行け、ネロ!」

 

 荊軻の声が聞こえる。

 

「行って、ネロ!」

 

 そして立香の声が聞こえた。

 

 なればこそ、何を恐れることがあろうか。今、この場に何よりも信頼する彼らが援護してくれるのだ。故に余は前だけ見ていればいい。

 

 それに何よりも──

 

「ここはっ! 余のローマである!」

 

 ──偉大なるローマ皇帝がローマを恐れるものか。

 

「──!」

 

 その姿にロムルスは目を見開いた。

 

 その瞳に宿す決意はこの戦争が始まってから最も強いものだった。そしてその決意は何処か彼と似通っていた。

 

 明日を掴むと決意したものの瞳だ。ネロ・クラウディウスのそれは彼のような狂気を秘めてはいない。あくまで真っ当な人間のそれだ。

 

 それに対してロムルスは感動と尊敬の念を覚えた。

 

 歴戦のサーヴァントや彼と比較すればネロは間違いなく弱い。今を生きるネロはただの人間である以上、どうしてもサーヴァントや人間離れした強さを誇る彼と比べるとどうしても劣っている。

 

 だと言うのにその瞳には絶望は一切なく、希望があった。それも全てを焼き焦がすような破滅を含んだ猛毒の光ではなく、全て優しく照らすような……ローマの光があったのだ。

 

 その感動と尊敬の念を胸にロムルスはネロと全力で激突した。

 

「ハァッ!」

 

「ぬぅん!」

 

 原初の火と国造りの槍が火花を散らす。

 

 常識的に考えれば膂力で遥かに劣るネロが負けるのが道理だ。何せサーヴァントの中でもトップクラスの膂力を誇るジャンヌ・オルタですら敗北するほどの力だ。

 

 当然、打ち合えるわけもなく、そのまま剣ごと叩き潰される──そのはずだった。

 

「援護する」

 

 背後に控えていた彼が常識を踏み躙り、非常識を常識へと昇華させる。

 

 目に見えぬほどの極細の魔力で紡がれた魔力の糸がまるでサーヴァントに繋がるパスのようにネロへと接続される。

 

「瞬間強化」

 

 その魔術と共にネロの身体能力に大幅な強化が施される。大聖杯を通して流された魔力の量は規格外であり、発揮する効果もまた同じく規格外。

 

 単なる人が一時的にとは言えサーヴァントであるロムルスに迫るほどに強化されていた。

 

 加えてどういうわけか、この時代のネロは何者からか強烈なバックアップを受けていた。

 

 それが今までネロが化け物たちと渡り合い、人の身でサーヴァントのような魔力を発露していた理由でもある。そしてその二つの強化が奇跡的なまでに噛み合った結果──

 

「むぉっ!?」

 

 ──ロムルスを弾きとばした。

 

 そして体勢が崩れたロムルスに彼が放つ嵐の如き弾丸の雨が襲い掛かる。四方八方、真上から真下まで様々な方向から弾丸が襲いかかる。

 

 弾いた傍から不自然に軌道がねじ曲がり再度襲い掛かる弾丸はまるで血に飢えた鮫のようだ。加えて同時に張り巡らされる無数の斬撃達。

 

 あろう事か、彼は弾丸の嵐と神経が擦り切れるような繊細さが必要な他者への強化魔術を大聖杯という超抜級の魔術炉心を介した上で発動。そしてそれを同時に維持しながらこれほどまでの斬撃を繰り出し続けているのだ。

 

 それだけの無茶を通せば当然代償は支払われる。

 

 あまりの演算量に脳が焼き切れかけ、そのダメージが瞳からの血涙という事象を引き起こしている。

 

 それでも尚、彼は止まらない。むしろ更に、もっとだと言わんばかりに破滅の見えている結末に向けて落ちるように加速し続ける。

 

「なんという……!」

 

 その様にロムルスは震撼する。

 

 星崎望幸という存在の戦闘技量の質以前に、血涙を流し続けるその瞳に宿る執念に圧倒される。

 

 彼の瞳にはロムルスを映しているように見えてまったく映していない。ロムルスという個人ではなく、踏破すべき障害としか認識していないかのような身震いするほどの無機質さと勝利を必ず掴もうとする尋常ならざる執念。

 

「それ以上無茶を通せばどうなるか、分からぬお前ではなかろう」

 

「だからどうした。お前達に勝つには無茶を通さねばならんだろう。むしろ、この程度の代償で俺が止まるとでも? 抜かせ、俺は決して止まらん」

 

 その宣言通りに命と魂を燃料にして彼は前進し続ける。勝利を得る為ならば自分の肉体如きがどうなろうと知ったことではないのだ。

 

 斬撃の密度が上がる、弾丸の密度が上がる、ネロに施す強化魔術の精密さが上がる。跳ね上がり続ける負荷に脳は最早茹で上がっている。

 

「……っ!」

 

 血を流しても戦い続ける彼だけには無茶はさせんとネロは剣を巧みに操ってロムルスに斬り掛かる。しかし、悲しいかな。

 

 急激に跳ね上がった己の身体能力にネロは振り回されていた。故にどうしても隙が生じてしまう。そしてその隙はこの戦いにおいてどうしようもなく致命的だ。

 

 弾丸と斬撃の嵐を掻い潜ったロムルスの攻撃がネロの間隙を突いて迫る。しかしそれを彼が撃ち落とす。だが、当然そんなことをすれば今度は彼に隙が生じる。

 

 それを理解しているからこそ彼は更に己の体に無茶を強いる。ブチブチと筋繊維が千切れるような音と共に無茶な迎撃を幾度となく繰り返す。そしてその度に彼の体から血が吹き出す。

 

 血を流し続ける彼の姿にネロは下唇を強く噛む。自分がもっと強ければ彼にこれほどまでの無茶を強いることもなかっただろうかと後悔の念が満ち始める。

 

 激しすぎる戦闘に戦士ではなく皇帝であるネロはついていけてないのだ。彼にサポートをしてもらって漸く戦いの土俵に立てている。

 

 けれどそれだけだ。

 

 この数瞬の間にも幾度となく彼に庇われている。致命傷になりかねない攻撃を庇われ、隙を作って貰ってもあと一歩が届かせられない。

 

 彼が血を吐くたびに、彼が傷を負うたびに己の非力さを呪わずにはいられない。

 

(余にもっと力があれば──!)

 

 故にこそその願いは……

 

ああ、良いぞ? 力を望むのならば余がくれてやろうではないか

 

 ……最悪な形で叶えられる。

 

『どうなってる!? なんでネロ陛下から霊基反応が確認できるんだ!』

 

 ロマニの悲鳴に近い声が上がる。

 

 この時代のネロにはどういうわけか魔力反応があったことは出会った頃から知っていたが、それでもサーヴァントから発せられる霊基反応はなかった。

 

 だと言うのに今の彼女からは霊基反応を検知した。

 

 それも一瞬ではあるがとてつもなく巨大な霊基反応を。仮にその霊基がそのまま出現したのならば今のカルデアの全勢力をかけても打倒出来ないと思ってしまうような何かが顔を覗かせたのだ。

 

 その霊基はネロという器に流れ込み、彼女という存在を更に数段飛ばしで跳ね上げた。

 

「いかん!」

 

 ロムルスはその流入を止める為に動くが──

 

「見るが良いこれが余の黄金劇場──すなわち」

 

 何処からか現れた薔薇の花弁がネロの周囲を舞う。

 

■■■■黄金劇場である!」

 

 酷いノイズが混じった声が響く。まるで世界がその声を認識したくないと言わんばかりに。

 

 そして豪華絢爛な黄金劇場が周囲を塗りつぶし、その黄金劇場には到底似合わぬ禍々しい光を放つ天蓋が展開された。

 





ネロがロムルスを撃破するのを狙ったら特大ガバが舞い込んできたの巻

どうして……


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偽りと本質

 

 時はロムルスが宝具を発動させた頃まで遡る。

 

 その頃、カルデアの管制室は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 

「バイタル観測班、望幸くんの状態は!?」

 

「バイタル大幅低下! 危険領域(レッドゾーン)に突入しかかってます!」

 

「魔力反応は!」

 

「大幅に上昇しています。平常時の二倍……いいえ、もう三倍まで膨れ上がってます! それも依然として上昇中。こんなの彼の魔術回路が持ちません!」

 

「クソッ、聖杯が反応しているのか?」

 

「いえ、聖杯に反応はありません。ですが、この反応は……?」

 

 カタカタと忙しなくキーボードを打ち込み、常に彼の生体情報の更新と入手を繰り返す。その度に目まぐるしくモニターのグラフが変化する。

 

 常に跳ね上がり続ける魔力反応。それは既に近代の英霊の魔力を超えて中世辺りの英霊まで跳ね上がっているが、このままの上昇速度だと下手をすれば古代にすら手が届きかねないほどだ。

 

 それ故に聖杯に溜め込んだ魔力を解放しているのかと思えば、どうやらそういう訳でもないらしい。

 

 彼のバイタルを観測するスタッフが注目したのは魔力の供給元だった。

 

 仮にこれが彼の心臓にある聖杯からの供給ならば反応は当然心臓付近にある。だが、反応があったのは彼の令呪が刻まれた右手とその足元だ。

 

 特異な反応を示しているのは獣の爪痕らしき模様の令呪だが、それよりも特大の反応を示しているのは彼の足元だ。

 

『───』

 

「……っ?」

 

 それが何なのか探ろうとする前に事態はさらに悪化した。

 

 式とジャンヌ・オルタと手を繋いだ彼の足元に唐突に蒼銀の魔術陣が展開されたのだ。次瞬、彼のバイタルは更に悪化。危険領域に突入し、魔力の上昇速度が更に跳ね上がった。

 

「ロマニ!」

 

「今解析してる!」

 

 そう言ってロマニは彼が()()()で展開した蒼銀の魔術陣の特性から効果まで丸裸にすべく解析をする。しかし──

 

「なんだこの術式……()()()()()()()()()()()!?」

 

 より正確に言えば知っているものは確かにある。あるのだが、それ以上に知らないものが多すぎる。解析はまだ完了していないとはいえ、ロマニはどんな魔術であれ術式を見れば大体は分かると自負している。

 

 だが、今見て分かるのは恐らく術式の全体の1割にも満たないほどだろう。

 

 その異常性はロマニのことをよく知るダヴィンチにも伝わった。

 

「ロマニ、今分かる範囲でいいから特性と効果を教えて」

 

「特性は恐らく接続。けど、効果はなんだ……? 簒奪いや、剥奪? ううん違うな、これは蒐集……収穫か!」

 

「特性が接続で効果が収穫? なら彼は何かに接続してそれから魔力を収穫してるということなのかな」

 

「恐らくは。けど問題は何に接続してるかなんだ」

 

 そう言ってロマニは正体不明の魔術陣の解析を進める。だが、解析をどれだけ進めても出てくる情報の全てが未知だ。……もはやこれは人類の扱う魔術と言うよりも──

 

 

 

 ──神々が扱う権能に近い。

 

『術式駆動』

 

 ぞわりと悪寒が背中を駆け上る。その悪寒の発生源である彼を見れば、口から大量の血を吐き出して式からそっと手を離し、襲い掛かる樹木に獣の爪痕のような模様の令呪のある右手で握り潰すような真似をした。

 

 その瞬間に蒼銀の魔術陣は一際強く輝き、襲い掛かる樹木の一部を消滅させた。

 

「は……?」

 

 宝具が、爆発して消滅した。

 

 強力な攻撃による消滅ではなく、ただ空を握り潰すような事だけで一部とはいえ宝具が消滅した。まるでそれはジャンヌ・オルタが放った火球が辿るはずの末路を置き換えた、ような──! 

 

「トリスメギストスとラプラスのリソースを一部を割いてもいい。分析班は事象分析してくれ。バイタル観測班は望幸くんの状態はどうなってるか教えて!」

 

 己の予測が正しければあれは──

 

「だ、駄目です! 望幸くんのバイタルの正確な観測が出来ません! 魔力反応が強大すぎるせいで他の観測結果にすら影響が出てます!」

 

「今までの望幸くんの魔力反応の基準値を一時的に変更して。今の状態を基準値に。その状態で再度観測!」

 

「で、ですがそんなことをしたら──」

 

「──構わぬ、ある程度のブレと再観測の間のご主人様の保証は妾が補完しよう」

 

 そう言って後ろからそのスタッフの所にやってきたのは玉藻の前だった。荒れ狂うように出鱈目な結果を叩き出し続けるバイタル値を酷く悲しげに見つめながらも彼女は正しく規格外と呼ぶべき呪術を幾つも展開してレイシフト中の彼の存在を保証し、その都度大幅にブレる観測結果を適宜修正していく。

 

 その術式にスタッフは感嘆の息を漏らしそうになったが、今はそんな場合ではないと思考を切り替えて彼のそもそもの設定を書き換え始めた。

 

 カタカタと高速でタイピングする音が響き渡る中、玉藻は映像に映る何度も血を吐きながら術式を発動させて樹木を消滅させていくマスターをじっと見つめていた。

 

 ──もう、嫌なのです。

 

『ぐっ、ごぶっ……』

 

 血で床を真っ赤に染め上げる。それとは反対に彼の顔色は死人のように白くなっていく。それを誤魔化すように活性アンプルを打ち込んで無理矢理体を動かしていく。

 

 もう自分の命すら惜しいとは思っていないのだろう。だから平気で自分の命を使い潰せる。痛みだってもう分からないから止まることすら出来なくなってしまった。

 

『いつも頑張ってくれてる玉藻にちょっとしたご褒美をあげよう』

 

 ざりざりとかつてマスターと初めて出会った■での記憶が蘇る。

 

『あのぅ、頬を引っ張らないで欲しいんですけど』

 

 笑って、泣いて、喜んで、怒って──

 

『いった! 本当に痛いって……あの、玉藻? もしかして怒ってる? いやでもあれは必要な事だったから──いひゃい!』

 

 けれどもう──

 

『少し痛む程度だから問題ないよ』

 

『ううん、大丈夫! 痛くないから』

 

『……大丈夫、痛みはない』

 

 次第に貴方はそれを不要と判断して切り捨ててしまって──

 

『……ああ、この程度何ら問題ない』

 

 貴方は独りで進み始めてしまった。

 

 ただ真っ直ぐに前だけを向いて走り出した。立ち止まらず、後ろも振り返らず、足元すら見ないでひたすらに未来へと向けて私を置いていってしまった。

 

 ──もう嫌なのです。

 

 一人は嫌。貴方が手に届かないところに行ってしまうのが狂いそうになるくらいに嫌だ。いっそのこと全てから隔絶したあの空間の中で二人でずっと一緒に暮らしたいと願っている。

 

 けれど貴方はそれを許容しない。

 

 だからここに来たのだ。全てに終止符を打つ為に。

 

「──もう、()を一人にしないでくださいね」

 

 誰にも聞こえないくらいの小さな声で玉藻はそう呟く(願う)

 

 

 

 

「変更完了しました! 望幸くんのバイタルを再観測します!」

 

 そうして再観測され正常に映し出された彼のバイタルはあまりにも酷いものだった。

 

「──っ」

 

 言葉を失うとはこの事だろう。バイタルデータが映したものは今すぐにでも安静かつ治療を施さなければ死んでしまうであろう値だった。

 

 それを確認したロマニはやはりかと苦い顔をした。聖杯のゴリ押しで発動したのか、或いはまた別の方法でそれを発動したのかは判断がつかないが彼のやった事を考えれば当然のことだ。

 

 あれは最早魔法の領域──いや、()()()()()()()()()()()()()だ。

 

「ロマニ、その表情から察するに望幸くんが何をやったのか、分かったんだろう?」

 

「あくまで憶測だけどね」

 

 ロマニはそこで一旦息を吐くと今度は彼の情報を漁り始めた。そして彼の魔術の情報を全て映し出すとその全てに目を通していく。

 

「彼がさっきやった事は事象の置き換えに近いものだ」

 

 事象の置き換え、それすなわち──事象改変。

 

「置換魔術……彼の一族はそれでどうやって根源に至ろうとしたのか理解出来た。だからこそ彼の情報は少なかったんだ。だって恐らく()()()()()()()()()()()なんだから」

 

 ロマニはカタカタとキーボードを打って前所長でしか開けないように厳重に秘匿されていたファイルを妙な確信を持って開いた。そこにあったのは彼の──星崎望幸の本当の生態情報が記載されているファイルだった。

 

 そしてそこに映し出された彼の本当の魔術属性は……

 

「おいおい、これは何の冗談だい」

 

 ──魔術属性:火、虚数、無。

 

 ダヴィンチの頬が引き攣る。火はまだいい、それ自体はダヴィンチも知っていた。だが、問題は残りの属性だ。

 

 虚数と無、どちらか片方だけでも封印指定ものだと言うのにその両方が揃っている。こんなことが時計塔の連中に知られればまず間違いなく彼は封印指定になるだろう。

 

 ……ああ、そうか。だから彼の一族は彼を秘匿する事にしたのか。

 

 何せ彼の一族は歴史が浅い。魔術協会の命令には決して逆らえないだろう。だからこそ本拠地を日本にし、目立たないようにただの学生のように振る舞わせていた。そしてカルデアに向かわせて協会の手を届きにくくさせたのだろう。

 

 そしてそれは恐らく前所長であるマリスビリー・アニムスフィアが存命だった頃から画策していた。彼は時計塔のロードだ。時計塔の内情はよく知っているだろう。そんな彼を味方につけ、時計塔の手が届かないように徹底させた。

 

 その見返りとして彼の一族はマリスビリーに彼の生態情報と虚数に関する情報……そして魂に関する情報を提供していたのだ。

 

 それを裏付けるように本当の彼の生態情報が載せられていた秘匿されたファイルを見ていけば、マリスビリーが欲しがっていたであろう情報が事細かに記載されていた。

 

「彼が肉体を操る事が得意なのも魂に干渉する事が出来るのも全ては一族の悲願のために生み出されたからなんだろう」

 

 何故彼の一族は置換魔術をわざわざ極めようとしたのか、如何なる手段で根源へと至ろうとしたのか。それは──

 

「世界からの排斥……つまりは世界の裏側に行くこと自体が目的だったんだ」

 

 世界からの排斥による肉体消滅を経て魂のみで裏側に移動する。そうしてしまえばこちら側から根源を目指すよりも遥かに到達しやすいだろう。

 

 何せあちら側はこちら側よりも遥かに根源に近い。

 

 それは普通に考えれば到底叶うようなものでは無い。だが、彼が生まれてしまった。一族の最高傑作とも言える異常な属性と肉体を持った彼が。

 

 故にその悲願に手が届くことがわかってしまった。そして悲願を叶えるべく教育を施し、出来上がったのが決して死を恐れない彼だ。

 

 最初から死ぬ為に生まれた存在なのだから、死に対する忌避感なんて邪魔なだけだろう。痛みも感情もまた同様。そんな機能など必要ない。

 

 幸いな事に感情だけは幼馴染の立香がいた事により多少なりとも育っていたことだろう。もしいなければ恐らく目も当てられないことになっていたはずだ。

 

 その事実に到達した時、ロマニとダヴィンチは露骨に眉を顰めた。

 

「反吐が出るね」

 

「まったくだよ」

 

 二人はそう吐き捨てると彼に個別で通信を繋げるために機械を動かした。が、どういうわけか失敗した。全く繋がらないのだ。ならば立香も繋がらないのかと言えばそれは違った。

 

 立香には正常に繋がったというのに何故か彼だけが繋がらない。

 

 一体何故──? 

 

 その疑問が浮かぶよりも早く魔力計測器がアラートを鳴らした。そして計測の結果、三等惑星クラスの魔力反応が僅かな間だが示され、それと同時に大規模の霊基反応がネロ・クラウディウスに確認できた。

 

「どうなってる!? なんでネロ陛下から霊基反応が確認できるんだ!」

 

 ロマニの悲鳴にも近い声が上がる。明らかな異常反応。これでもし先程の莫大な魔力の持ち主が敵対関係にある存在ならばまず間違いなくカルデアは敗北する。

 

 いくら彼でも三等惑星規模の魔力を持った相手が敵になったのなら勝てるわけがない。

 

 どうする──!? 

 

 焦りを感じながらも必死に打開策を考えるロマニに更なる悪い情報が入った。

 

「ロマニ! 望幸くんが!」

 

 悲鳴に近い声を上げるダヴィンチが指差す方向に目をやればそこには彼とネロの間に繋げられていた魔力糸を通してネロ側から絡みつくように、決して逃れられぬように魔力が彼に絡みついていく。

 

 そしてそれは彼の心臓に少しずつ入り込んでいくのが確認出来た。

 

「まずい!」

 

 ロマニは咄嗟に立香に向けて通信を繋げようとした。

 

 だが──

 

■■■■黄金劇場である!

 

 それよりも早く酷いノイズ塗れのネロの声が響くと共に発動した固有結界に類似した大魔術によって全員の通信が遮断されてしまった。

 

 どれだけ試行しても繋がらない。完全に通信が遮断されたようだ。

 

 ……こうなってしまえば彼に今すぐネロと繋がっている魔力糸を切れと忠告することも出来ない。最早彼の無事を祈ることしか出来ないのだ。

 

 通信が出来ない以上、ロマニ達からは何も出来ることがない。その事実に放心したようにロマニは背もたれにずるずると寄りかかるしかなかった。

 





ロマニは優秀なのでカエサルが気づいたホモくんの魔術の正体に気が付きました。尚、全部判明した訳じゃない模様。

ついでにマリスビリーが隠してる情報のことも知ってたので開けてみればホモくんの経歴が書かれてました。INT高さ故にアイディア成功したせいでSAN値直葬ですわよ!

玉藻も相変わらず色々と重い。まあ、女神の別側面だしね。そら重いわ。


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ローマ皇帝


長らくお待たせしました。


 

 果たして最初に声を出したのは誰だったのか。

 

 敵であるロムルスか、或いはこの異常性を正しく理解しているマシュか、それとも世界を塗り潰すという大偉業を初めて見た立香か。

 

 もしくは全員かもしれない。

 

 ネロの全身から解き放たれた魔力と共にネロの作り出した黄金劇場は現実を侵食し、この場にいる全員を劇場の舞台上へと問答無用で引きずり込んだ。

 

「これは……」

 

 豪華絢爛たる黄金劇場。

 それはネロという存在を象徴するように一目見ただけでその美しさに感動に打ち震えるものだ。

 

 だと言うのに、これは何だというのか。

 

 空があまりにも禍々しい。世界の終焉が始まるかのような、滅びしか感じ取れない程に禍々しい黒天。

 

 これがネロ・クラウディウスの心象だとでも言うのか? 

 

 馬鹿な、それこそありえない。ああも眩しく光り輝く彼女の心象がこれほどまでに終わっているなどと──! 

 

「ぐっ……!」

 

 最初に力なく膝から崩れ落ちたのはネロの最も近くにいた望幸だった。

 立つことすらままならないようでぐったりと座り込む彼に立香は急いで駆け寄り肩に手を回してその場から引き離した。

 

 それと同時に立香は気付いた。

 

 ──望幸の体、凄く熱い。

 

 体温が高すぎる。

 服越しに触れているにも関わらず火傷しそうなほどに彼の体は熱されていた。

 

 無茶を通した代償?

 それとももっと別のものなのか。

 

 立香にはその判断がつかないが、流石の立香でもこの熱量は不味いと理解出来た。

 

 ──急いで彼の体を冷やさないと。

 

「……立香、俺はいい。自分で動けるからお前は自分の安全を──」

 

「嘘つき、全く動けないでしょ。その状態の望幸を放っておくなんて私は嫌だよ」

 

「だが、それでお前に危険が及べば俺は……」

 

「あーもう、うるさい! 黙って私にしがみついてて!」

 

「……」

 

 ぴしゃりと立香は彼を黙らせると急いでクーフーリンの下へと向かった。

 

「クーフーリン、ルーン魔術で体温を下げたりすることとか出来ない!?」

 

「マスターそいつは少し難しいぞ。キャスターの俺なら兎も角ランサーとしての俺は細かい調整があまり効かねェ。ましてや人間の体温の調整をルーン魔術でやれば下手すりゃ凍え死んじまう」

 

「そんな……」

 

 返ってきた言葉に立香は頭を抱えた。

 

 この状態の彼を放置しておくなどまずありえない。

 服の上から触っても火傷しそうな熱を放っているのだ。

 常識的に考えてこのまま放置すれば彼は死に至るかもしれないし、そう出ないとしても重度の障害が発生するのは間違いないだろう。

 

 その為には何がなんでも彼の体を冷やさなくてはいけない。

 

 けれどこの場所には体を冷やせる場所はありはしない。

 一体どうすればと必死に思考を回転させる。

 その思考を遮るようによろけながらも彼が前に出た。

 

「クーフーリン、冷やすことは出来るのだろう。ならばそれで構わない」

 

「……話を聞いてたか坊主。下手すりゃ凍え死ぬかもしれねえ──」

 

「──俺は死なない……! こんな所で終わるつもりはない」

 

 そう言って食い気味に否定する彼は表情は己が生き残ることを確信しているように見えた。

 加減はするとはいえサーヴァントの、それもクーフーリンのルーン魔術だ。

 

 それを前に彼はなお生き残るという。

 

 そこまで啖呵を切ったのならば是非もない。

 

「なら、耐えきってみろよ坊主」

 

 クーフーリンがルーン魔術を起動させる。

 それはI(イサ)のルーン。

 氷を意味するルーン魔術だ。

 それによって周囲の温度が一気に冷え込んでいく。

 

 ならばそれを直接仕掛けられている彼は? 

 

 当然身体の芯まで凍えていく。

 吐き出される息を白く、毛先に霜が降りていく。

 

 しかしそれは一瞬のことだった。

 

 彼の身体から大量の水蒸気が発生した。

 

 彼のやった事は至極簡単だ。

 

 体温が下がり過ぎて凍え死ぬというのであれば、上がれば良いと、火の魔術を行使して体表面に高熱の空間層を生成。

 それと同時に冷却に必要な分だけの熱を取り込むことで体温の調整をしていた。

 

「……っ?」

 

 だが、それは非常に繊細なコントロールを必要とするものだ。

 ほんの少しの変調で容易く崩れ去る。

 

 徐々に徐々に体温が下がり始めていく。

 致命的なものにはなりはしないものの体温低下による睡魔が襲いかかる。

 

 それを見ていた式はため息を吐いた。そして──

 

「流石にこれは見逃せないわよね」

 

 虚空に向けて刀を抜いた。

 煌めく銀閃がぷつりと目に見えぬ極細の魔力糸を断ち切ったのだ。

 

「チッ、まあ良い楔は打ち込んだ。ふふ、ああ楽しみだ」

 

 次瞬、コントロールを取り戻した彼は驚異的な速さで効率的に熱を放出し、危険水準を大幅に超えていた体温を無事に正常なものへと戻すことに成功した。

 

「……助かった」

 

「おう、礼はマスターに言いな」

 

「ああ、そうだな」

 

 そう言って彼は立香の方へと向き直ると深く頭を下げた。

 

「俺の無能さ故にお前を危険に晒してすまなかった。……それから、助けてくれてありがとう立香」

 

「うん、どういたしまして。ああ、でも──えい」

 

 そう言って立香は彼の両頬をグイッと思いっきり引っ張った。

 

「お前が怒るのも当然の事だ。気の済むまで責めて貰ってもかまわな──」

 

「望幸、いい加減にしてね? いくら望幸自身でも望幸の事を悪く言うのは私は許さないよ」

 

「だが……」

 

「だがじゃない」

 

「──分かった」

 

 そう言って渋々といった様子で立香の言うことに従う彼の様子を見てクーフーリンは意外そうな顔をしていた。

 

「……あいつ、マスターの言うことにはそれなりに聞くのか」

 

 クーフーリンはまだ長い付き合いというわけではないが、それでもこれ迄過ごしてきた期間と幾度か手合わせをした経験からあれは相当な頑固者だと思っていた。

 いいや、事実今もそう思っている。

 

 そしてそれは間違いではないのだろう。

 でなければサーヴァントやロマニ、ダヴィンチといった上司に当たる者から注意を受けてもいざとなれば平気で自分の身を危険に晒すわけがない。

 

 その上、彼奴は英霊に──もしくは神霊並に意志を貫いていける存在だ。

 

 だからこそ、彼奴を本気で止めるのならば実力行使で無理矢理黙らせるしかないと思っていた。

 思っていたのだが──

 

「それから私が偉そうに言えることではないけど望幸はあまり前に出ないで欲しいんだ。少なくとも私はそんな状態で前に行って危険な目にあって欲しくない」

 

「どうしてもか?」

 

「うん、どうしてもだよ」

 

「……善処しよう」

 

「善処じゃ駄目ですけど!?」

 

「……」

 

「あっ、顔を逸らすなー!」

 

 ぷいっと立香から顔を逸らして距離を取ろうとする彼に対してそんなことは許さないとばかりに開いた距離以上にぐいぐいと間を詰める立香。

 

 それを見てクーフーリンはどうしてか安堵の息が零れた。

 

「あの、望幸さん。体の方は大丈夫なんですか?」

 

「ああ、さして問題はない。今のところはな」

 

 未だに立香と目を一切合わせようとしない彼は無理矢理顔を固定しようと捕まえようとする立香をひょいひょいと身軽な動きで躱しながらそう答える。

 ジャンヌ・オルタに取り込まれたとは言え、ファヴニールの竜血を浴びたからか、その回復速度は常人のそれとは目に見えて違う。

 そう理解してはいるのだが、マシュの顔から曇りは取れない。

 

 短い付き合いではあるが、それでも分かってしまう。

 不安なのだ。

 この人は自分を何処までも押し殺せてしまう人だから。

 この場にいる誰にも悟らせない程に自分を押し殺し続けて──いつかは本当に自壊してしまうのではないかと、どうしても不安が拭い切れない。

 

「あのっ、私じゃ頼りないかもしれませんけどっ! それでも先輩と望幸さんを守れるように頑張りますので……だから──」

 

「──大丈夫」

 

 気持ちだけが先走って言葉が上手く纏まらないマシュに彼はマシュにでも分かるくらい微笑ましいものを見たように笑っていた。

 

 そう、彼が笑っていたのだ。

 

「マシュは頼りになる。それは立香にとっても、俺にとっても」

 

 そう言い切る彼の瞳にはマシュに対する信頼しかなかった。

 今まで何度も頼りない姿を見せてきたというのに、デミサーヴァントになっても周りに来る他のサーヴァントに比べれば雲泥の差だった。

 

 けれど、そんな自分を彼は信頼している。

 

 まるでずっと長い間、付き合っていたかのような……そんな深く固い信頼だけが彼の瞳に存在した。

 

「……少し休む」

 

 戦いが始まってから常に起動し続けていた彼の魔力回路から光が消えると同時に彼自身から漏れ出ていた魔力も消えていく。

 

「そうしときなさいな、少なくとも私は今のあんたを前に出すつもりはないわ。……本当なら前に出させたくもないのだけれど」

 

「そこだけは突撃女に同意しよう。それに──今の彼奴なら私達が出る必要もないだろう」

 

 そう言うアルトリア・オルタの視線の先にいたのは『あの』神祖ロムルス相手に一歩も引かない所か、徐々に徐々に押し始めてすらいるネロの姿だった。

 

 これがネロが成長した結果──ならば良かっただろうが、アルトリア・オルタが覚えている限りではネロの宝具はこんなにも禍々しさがあるものではなかった。

 

 それに先程から何処かピリピリとした雰囲気を醸し出す式の様子からも異常事態が起きていると察することが出来る。

 

 そして先程彼の魔力から感じた微量な違和感。

 何かしら厄介な事が発生したとしか考えられない。

 

 ……警戒はしておくべきだろう。

 

 いつ何が来てもいいように。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 ロムルスは現在、ネロ相手に劣勢を強いられていた。

 

 ネロの華奢な腕からは想像も出来ないほどの剛剣。

 一度打ち合うだけで手が痺れるような感覚すら覚える。

 ネロが強くなったというのはあるだろう。

 だが、一番の原因はそれではない。

 

「ぬぅ……!」

 

 ネロだけが強くなったのであればまだ対処出来る。

 此方の姿とは言え、ネロ一人に押されるほど神祖は弱くない。

 

 ならば何が原因なのか? 

 

 この劇場に引き摺り込まれてから発生する永続的な弱体化──即ち、己のローマがネロのローマに喰われていることが原因だった。

 

 宝具の力を振るおうにも展開されているネロの劇場がそれを妨げ、満足に振るうことも出来ない。

 

 加えて──これだ。

 

「はぁぁっ!!」

 

「ふんっ……!」

 

 打ち合う度に己の力が失われるのを強く感じる。

 膂力が失われる、敏捷性が衰える。

 

 ネロの宝具は元来そういうものだとは知っているが、それでもこれほどまでに早く力が削られるのは──

 

「……ふむ」

 

 あちらは力が増す一方でこちらは力が下がる一方だ。

 

 今はまだ己の武により喰らい付けてはいるが、時間が経過すればするほどにその差は如実に現れ敗北は濃厚なものになるだろう。

 

 敗色濃厚──結構。

 

 それで諦めるつもりは到底ない。

 

 これまでのローマ皇帝達が連綿と繋げてきたように己もまたバトンを次へと繋ぐのだ。

 我が身はローマなれば──! 

 

「ぬんっ!」

 

「くぅぅっ!」

 

 ロムルスの槍が僅かに紅く光る。

 それと同時に互いの武器を打ち合った瞬間、ロムルスの槍がネロの剣を大きく吹き飛ばした。

 

 ネロの剣が空を舞う。

 

 膂力も敏捷性も魔力も既にネロが勝っているというのに、今やあらゆる肉体性能が劣っているはずのロムルスの一撃に耐えるどころか、たった一撃で剣を弾き飛ばされた。

 

 そして──淡く光る紅の残光がネロを襲う。

 

「チィッ──!」

 

 それをネロは高く跳躍することで未だに空中に舞う剣を回収すると同時に回避する──が

 

射殺す百頭(ナインライブス)──」

 

 ぞわりと全身が総毛立った。

 

 これはまずいと、一撃でも喰らうなと生存本能が大警鐘を鳴らす。

 紅の残光が空中で逃げ場のなくなったネロに襲いかかった。

 

 

──羅馬式(ローマ)

 

 

 赫耀の流星群がネロに落ちた。

 

「むっ、ぁああああああ!!」

 

 弾く、弾く、弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く──! 

 

 一発でも当たるな、当たれば根こそぎ持っていかれるぞと本能が警告する。

 本来ならば弾く度に赫耀の煌めきは失われていくはずだというのに、弾けば弾くほどその煌めきは激しさを増す。

 

 ──ああ、本当に……! 

 

 ()ちていく己とは違い、空から此方を睥睨する神祖様は何と輝かしきことか。

 そんなことを思っていられるほど、余裕がないと理解しているのに、それでもかの神祖の姿を見て誇れずにはいられない。

 

 神祖様はこんなにも素晴らしい方なのだと、こんなにも偉大な方なのだと誇らしくて堪らなくなる。

 

 だから、だから──! 

 

「余はっ! 余こそがっ!」

 

 そんな貴方に誇れるような皇帝でありたいと願うから──! 

 

「ああ、見せておいでネロ」

 

 原初の火の名を冠するネロの真紅の剣が燃え盛る。

 この禍々しい天蓋を焼き払うようにそれはより強大に、より燦然に輝きを放つ。

 

 刮目せよ、これこそローマ帝国第五代皇帝の輝き──永遠の栄華を謳うローマを示す皇帝の一撃なり! 

 

 

招き揺蕩う黄金劇場(ネロ・クラウディウス)である!」

 

 

 紅の流星と皇帝の炎が激突する。

 

 この世界の終わりを想起させる禍々しき天蓋を繁栄の光が塗り潰す。

 そしてほんの少しの拮抗の後──

 

「見事!」

 

 皇帝の炎は紅の流星を飲み込み、禍々しき天蓋を焼き払った。

 そして瞬きの間にも満たぬ僅かな一瞬、繁栄を謳歌する絢爛たる黄金劇場が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まあ、良かろう。繋がりは作れたのだからな」

 

 



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■星の紋章

 

 ロムルス撃破から始まる人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、ネロがロムルスの猛攻を打ち破って大技を叩き込みました。

 思わずやったか!? と言いたくなりますが、我慢しましょう。

 

 まあ、実際のところは霊核を焼いたと思うので撃破はしていると思いますが、ロムルスだしなぁ……。

 恐らくは即死はしてなくて消滅するまでいくらかの時間があるでしょう。

 

 はっきり言って時間の無駄ですが、ほっとけば消える状態のサーヴァントに死体蹴りするのはカルデアとサーヴァントの両方から信頼が消えていきますからね。

 

 我慢ですよ、我慢。

 

 >ネロの一撃によって発生した炎が鎮火する。

 >炎が消えた先には全身から黄金の粒子が漏れ始めているロムルスの姿があった。

 

 ほらね。

 

「見事だった」

 

 >ロムルスは敗北したというのに何処か晴れ晴れとした表情でそう告げた。

 

「堕落を切り捨て繁栄を示すその姿、正しくローマである」

 

「神祖様……」

 

「ネロ、忘れるな。ローマは永遠であること」

 

 >成長した子を見守る父の様な笑みを浮かべてそっとネロの頭を撫でる。

 >そして今度はあなた達カルデアの方へと向き直った。

 

「お前達もまた見事であった。指揮に些かの不安は見受けられるが、及第点ではある。だが、これからの旅では更なる苦難が待ち受けている。故に精進せよ、後悔を抱かぬためにも」

 

 >ロムルスはそう言うと立香の方へと視線を移した。

 

「藤丸立香」

 

「は、はい」

 

「強くなれ、お前が真に守りたいと願うものはお前の掌から容易くこぼれ落ちる存在だ」

 

 それはそう、人理修復って本来一歩ミスったら即終了するようなクソ難易度だからね。

 ま、その為にホモくんがいるんですけどね? 

 

 主要キャラ全員生存させつつ人理修復するって決めてるから。

 

「これから先はお前にとって苦しいものになるだろう。目を塞ぎたくなる光景が広がるかもしれん、己の力不足に何度も嘆くことになるかもしれん」

 

「……それは──」

 

「それでも多くの艱難辛苦を乗り越え、終局の果てに至れ。お前が守りたいと願うものはお前にしか守れぬ」

 

 >まるで父のように優しく諭すロムルス。

 >それに何か思うところがあったようで立香は黙り込んでしまった。

 

 あんまり立香ちゃんに重荷になることを言わないでくれよな〜頼むよ。

 立香ちゃんは責任感強いから背負い込ませちゃうとキャパオーバーしても平気な素振りして潰れちゃう。

 メンタル管理が面倒になるから本当にやめてクレメンス。

 

 というか、何かホモくんさらっと人理修復からハブられてません?? 

 今のホモくんでは人理修復を果たすには力不足と申すか。

 

 やはり暴力……暴力は全てを解決する──ので遠回しにホモくんにも力をつけろと言ってますねクォレハ……。

 

 >ロムルスの体から漏れ出す黄金の粒子が増える。

 >消えるのは時間の問題だろう。

 

「星崎望幸……だったか」

 

 おっ、なんだなんだ? 

 ホモくんにも精進しろとでも言うんですかね。

 

「お前は立ち止まり、振り返る事を覚えることだ」

 

 やだよ(即答)。

 これはRTAだからそんなことしてる暇ないんだよなぁ。

 安易なタイムロスは許されない。

 ……安易なタイムロスってなんだよ、タイムロス自体許されんわ。

 

「……お前が歩んできた旅路は決して消えることはない。我等の想いが今も続いたようにこれから先出会うもの達との想いも続いていくのだ」

 

 知ってる知ってる。

 だからこそ終局で皆来てくれるわけだしね? 

 

「想いは消えぬ。ローマがそうであるように、誰かが抱いた気持ちが完全に消え去ることはない。理解しろとは言わぬ。……ただ知っているだけで良い。縁は、夢の灯火は決して消えぬこと」

 

 >そう言い終えると共にロムルスの体が透けていく。

 >消える直前に彼は不敵な笑みを浮かべて大哄笑する。

 

「さあ、これからお前達に我等の最後の試練を始める!」

 

 あっ……(察し)

 

 >ロムルスの足元に紋章のような魔法陣が広がる。

 >それは英霊召喚の際に描く陣と非常に酷似していた。

 >故にこれは誰かを召喚するものであるとあなたは理解した。

 >そして同時に今から召喚されるものが聖杯を所有していることも。

 

 ここで来んのかよ。

 しかも聖杯あるってことはやっぱりレフは死んでる可能性が高いですね。

 ……うーん、でも、なんかなぁ? 

 

 今までの傾向からして初手でぶっ殺されたって言うのに何も対策せずにまた来るって気はしないんですよね。

 まあ、レフだからやってもおかしくないよと言われたそこまでなんですけど。

 

「超えてみせよ! 示してみせよ! この程度の終わりなど乗り越えられるのだと我等に証明してみせろ!」

 

『ああっ! 漸く繋がった! 色々と言いたいことはあるけれど、先にこれだけは伝えておくよ!』

 

 >召喚陣が一際強く輝いた。

 

来るぞ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「我等の(試練)を踏み越えて行けい! さもなくばここで果てるが良い!」

 

 >召喚陣から轟音が鳴り響き、城の床を砕いて巨大な白い手が現れた。

 >そしてその白い手は誰も反応出来ないほどの速度で迷いなくあなたを捕らえに来た。

 

 ふぁっ!? 

 

 また誘拐されるとかホモくんは桃姫か何かでと言いたいけど、タゲを吸いまくるホモくんの敵対心やばいから仕方ないね。

 どうせ回避したところで行くところは変わらないだろうしね。

 それならもうさっさと誘拐された方が目的地に早く行けるんだよなぁ(諦め)

 

 >そして白い手があなたを掴む直前──

 

「マスター!」

 

 >ただ一人だけ反応したアルトリア・オルタがあなたに巻き込まれるように一緒に白い手に捕まった。

 >一緒に捕まったというのにアルトリア・オルタは何処かホッとしたような様子だった。

 

 あら? 不意打ちみたいなものだったからホモくんだけ連れ去られると思ってましたけど、アルトリア・オルタも来ましたね。

 これは嬉しい、アルトリア・オルタいるなら何とかなるでしょ。

 なってもらわないと困るとも言いますけど。

 

「──貴方を一人で行かせはしない」

 

 >彼女は笑っていた。

 

 うん? アルトリア・オルタの好感度ってこんなに高かったでしたっけ? 

 そんなに稼いだつもりはなかったですけど──って、ああそういえばホモくんは絶対に心が折れないからですかね? 

 まあ、操作している以上折れるとか折れないとかそもそもそんな機能は無いんですけど。

 

 それならそれで好都合だからOKです。

 

 >あなた達を掴んだ白い腕は決して離さないと言わんばかりに強く握り締められていた。

 >脱出することは叶わないだろう。

 

「望幸! アルトリアさん!」

 

 あ、立香ちゃんが慌ててるなぁ。

 手でも振っておきましょうかね? 

 まあ、振る腕は捕まっているせいでないんですけどね。

 それよりも──

 

 >召喚陣からもう一つ新たな腕が出てきた。

 >それは大きく振り被ると城の壁を突き破り、城の外へとはみ出していた。

 >ぞわりと背筋が凍る感覚がした。

 

 はい出た開幕ブッパ。

 二章ボスがやっていい行動か? 

 チュートリアルでもやってくるし、やってもええか(感覚麻痺)。

 そもそもそれ言ったら遊星の巨神が二章のボスとか一番ダメですけどね。

 

『く、来るぞ!』

 

「マシュ! ジャンヌ! ブーディカ! 宝具をお願い!」

 

 >あなたと立香がマシュとジャンヌ・ダルクに宝具を使用することを伝えたのは同時だった。

 

「は、はい……! 宝具展開します!」

 

「ええ! 分かりましたマスター!」

 

「仕方ないねぇ!」

 

 >城を更地にするほどの破壊力を持つ振り抜かれた掌が迫る中、マシュ達は宝具を展開した。

 >迫る白い手があまりにも恐ろしい。

 >こんなもの防げるのかと思ってしまう。

 >けれど守らなければ捕まっている二人も他の仲間達も死ぬ。

 >死を予感させる白い手が城を破壊しながら宝具を展開するマシュ達へと迫る。

 

 ──悪いな、我が妹よ。

 

 >消え入るような声が聞こえたと同時にマシュ達を守るように樹木が生える。

 >白い手に激突した樹木はあっさりと破壊されたもののその勢いを大幅に削った。

 >そしてマシュ達の宝具と白い手は激突し、衝撃波が何もかもを粉微塵に吹き飛ばした。

 

 来たわね。

 立香ちゃん達は……まあ三重に宝具を重ねていますし、それにこのセファールはまだまだ幼体みたいなんですよねぇ。

 

 だから攻撃は防ぎ切れているはずです。

 問題はホモくん達ですね。

 現状二人揃ってとっ捕まってますし、呪術を使おうにも城にしかけてた刻印が刻まれた石なんかは全部吹き飛ばされています。

 

 >ガラガラと先程までは存在していた城の瓦礫を押しのけていつの間にか発生していた地面の穴から少しずつ白い手の持ち主が現してくる。

 >──ソレは生物として語るのならあまりにも巨大だった。

 >かつてこの特異点で出会った巨大魔猪が小さく思えるほどに。

 >今出ている上半身だけで城と同じくらいなのだ。

 >ならば全身が現れたならそれは一体どれほどの巨体を誇るというのだろう。

 

 このままここにいたら握り潰されるのでささっと脱出しましょう。

 

 刻印もない、銃も撃てないこの状態でどうにか出来るのかと言われればできます。

 今までホモくんが血を盛大に散らしてきたのはこの時の為です(大嘘)

 

 >あなたは握り締められて身動きが取れない中、何とか手を動かしてアルトリア・オルタの体に触る。

 >そして撒き散らされた己の血を媒介にあなたは呪術を起動した。

 >瞬間、視界が切り替わる。

 >あなた達は白く巨大な何かの手の中から眼前に移動していた。

 

 おっと、思ったより距離が近かったですね。

 血を媒介にすると入れ替え位置がランダムなのであんまり使えないんですけど、こういう緊急時には使える……かもしれないですね! 

 

 >白く巨大なソレが何なのかを認識出来たのは頭頂部周辺に不気味に輝く巨大な瞳を見た時だった。

 >真っ黒な目に赤く輝く虹彩という怪物の瞳でありながら、その瞳の形は紛れもなく『人』であった。

 >故に名を付けるのであれば巨人──であろうか。

 

「─────────ッ!」

 

 >巨人が吼える。

 >叫ぶ声は空間を大きく震わせるほどに恐ろしさを感じる。

 >──けれど何故だろう。

 >歓喜と悲哀という相反する感情が混ざっているかのように聞こえた。

 >巨人の赤い瞳があなたに向けられる。

 

「───────」

 

 >そして先程の空間を震わせるような咆哮とは違う声をその口から漏らして──あなたに向けてその巨大な手を叩きつけた。

 

 セファール戦開始です。

 

 >あなたは叩きつけるように振り下ろされた手を弾丸をばら撒きながらアルトリア・オルタの手を掴んで回避する。

 

 セファール戦の解説についてですが、特に難しいことはありません。

 流れをざっくりと説明するなら両手にはめ込まれている核を叩いて大ダウンを誘発させて、セファールの鳩尾に埋め込まれている中心核を破壊するだけです。

 ね、簡単でしょう? 

 

 ……ただまあ、セファールの核以外には攻撃が通らないというのとセファールが穴から這い出てこないようにする為のタゲ取りDPSチェック、加えて妨害として呼ばれるセプテムに来てから何度も戦っている異形達を相手にする必要がありますが。

 

 ちなみにセファールが穴から完全に出てきた場合はアルトリアがいないとほぼ詰みです。

 大ダウンを誘発させる核は手にしかない上に、中心核に攻撃が通るのは大ダウン取った時だけですからね。

 ギミックをガン無視して叩けるのは聖剣を完全解放したアルトリアだけです。

 

 それじゃあ今から立香ちゃん達と合流出来るまでホモくんとアルトリア・オルタの二人だけでの戦いとなります。

 

 アルトリア・オルタがあぼーんしたらリセになるのでホモくんには全部ターゲッティングを吸ってもらいます。

 その為の置換呪術()ですからね。

 

 ホモくんにはひたすらタゲ取りと挑発をしつつ、不死の肉体のパッシブによってリジェネする体力は全て魔力に変換していきます。

 一発食らったら体力が最大だろうが1だろうが即死なんで体力リソースは削れるだけ削って全部魔力に回して火力を取ります。

 

 変換ミスってあっ、ちょっと逝くッ♡とかならないようにしましょう(6敗)。

 

 それでは次回はセファール戦になります。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 





私は曇らせが好きです(突然の性癖暴露)
なのでホモくんには全方位地雷になってもらいます。


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手繰るもの破壊するもの


新年あけおめです


 

 ヴェルバーの尖兵と戦う人理修復RTAはぁじまぁるよー! 

 

 前回、遊星の巨神ことセファールが城を丸ごとぶっ壊して地下から這い出てきました。

 序盤も序盤の二章でセファールが出てくるとかこれマジ? 

 

 人理修復の難易度高すぎんだろ……。

 

 と驚いたところからスタートです。

 

 >深い穴から上半身のみが出ているというのにその大きさは空を見上げるほどに巨大だ。

 >これが仮に穴から這い出てきてしまったのならどうしようもないと本能的に理解出来てしまうほどに。

 >白い巨人の赤い瞳があなたを捉えている。

 >……逃がす気はなさそうだ。

 

「───────!」

 

 >白い巨人の声が響く。

 >そして巨人は手を持ち上げて──大きく横に薙ぎ払った。

 >大地を削り取りながら巨大な手が迫る。

 

 やはりこの形態だと攻撃が大振りなのが多いので回避しやすくていいですね。

 まあ、回避に使える魔術とかなければ滅茶苦茶シビアになりますけど。

 

 >あなたは先程ばら撒いた弾丸と位置を置換することで攻撃を回避する。

 >あなた達が姿を消した場所に一拍遅れて大規模な破壊が撒き散らされる。

 >大地は抉れ、植物は消し飛び、人の営みの象徴が崩壊していく。

 

「────────!」

 

 

 >巨人の背後へと移動したあなた達を背中に目があるのかと思うほどにほんの少しのタイムラグもなく巨人は捕捉する。

 >そして巨人が歌うように吼えた。

 >ぞわりと全身が総毛立った。

 >何か、何かとてつもないものがやってくるとあなたは確信した。

 

 うわ、これはハズレ行動ですね。

 これやってる間、腕のコアが現れないからガチでクソ行動なんですよねぇ。

 

 >今も尚、高速で移動し続けているあなたを捕捉するように足元に方陣が展開される。

 >次瞬、空から黄金の柱と形容するしかない光があなた目掛けて降り注いだ。

 

 うーん、この殺意よ。

 ホモくんよりアルトリアの方が巨神にとっては脅威の筈なんですけどねぇ!? 

 何でホモくんばっかり狙う必要があるんですか。

 ……マスター殺せばサーヴァントも消えるから仕方ないね。

 

 それにしてもこの攻撃は本当にまず味ですね。

 銃弾ばら撒く暇もないし、ひたすら置換呪術を行使し続けて避け続けないといけないのでばら撒いた弾丸と魔力がゴリゴリ削れるので。

 

 ホモくんが聖杯と融合してなかったらこれされ続けるだけで魔力を枯らされて死ぬんだよなあ。*1

 

 だからオルレアンで聖杯と融合する必要があったんですね。*2

 

『望幸くん聞こえるかい!?』

 

 お、ロマニだ。

 安否確認をしに来たんだと思いますけど、見ての通りホモくんは命懸けの鬼ごっこするくらいにはピンピンしているので立香ちゃん達の安否確認を優先することでキャンセルさせましょう。

 

 >あなたはロマニの言葉に頷くと立香達は無事なのかどうかを聞いた。

 

『……ッ、ああ、立香ちゃん達は無事だ。けれど、先程の強力な一撃のせいで態勢を整えるまでに少し時間がかかると思う。今はもう目を覚ましているけど立香ちゃんが気絶してしまってね』

 

 マ? 

 

 あーでも巨神の攻撃だしなぁ……。

 覚醒済みのマシュならまだしも序盤も序盤のマシュだと流石に巨神の攻撃はキツいか。

 

 でもジャンヌもブーディカも宝具を同時展開したはずなんだけどな。

 うーん、このイカレ火力よ。

 

 防御系宝具を三枚丸ごとぶち抜いてぶっ飛ばすとかどういう火力してんだよ。

 

 でもまあ死んでないならヨシ! 話聞いた感じ欠損したり後遺症が残るような大怪我をしているような訳でもないですしね。

 

 ……死んでさえいなければホモくんの置換呪術で悪さすれば立香ちゃんには傷跡一つ残さないようにすることが出来ますから。

 

 そのかわりホモくんは酷いことになりますけど。

 

 >雨の如く降り注ぐ黄金の光。

 >その一撃一撃はアルトリアのエクスカリバーに今一つ劣るが、問題はその量だ。

 >当たれば人間一人消し炭にすることなど容易い威力の光が数千数万と降り注ぐ。

 >あなたはアルトリア・オルタの手を握って絶え間なく呪術を行使して光を回避する。

 >瞬間的に消費された魔力量があまりにも多く魔術回路が焼けるような熱を放ち、口からほんの少しの血が零れる。

 

 魔術の連続行使で魔術回路がオーバーヒート起こしてホモくんにダメージ入ってるみたいですね。

 まま、この程度の微量のダメージなんて鼻くそみたいなもんですよ。

 被ダメージと永続リジェネの回復量が釣り合ってるので回復魔術使わなくてもいいですし。

 

 ま、巨神の攻撃喰らえば即死なのでHPが満タンだろうがミリ残しだろうが関係ないんですけどね。

 

 うーん、このクソボス感よ。

 

 しかしまあ、銃を撃って刻印弾をばら撒く隙がありません。

 転移した所を予測したように打ち込んでくるの反則過ぎない? 

 

 ……やっぱこの方陣がビーコンの役割になってるみたいですね。

 時間いっぱいまで逃げ切るとこの方陣は勝手に消滅しますけどそれだとどう足掻いてもまず味にしかならないので呪術で悪さします。

 

 要はこの方陣ってホモくんを対象に取ってるだけなのでそれを置換すればタゲ移し出来るんですよねぇ。

 

 というわけで巨神の力に引き寄せられた異形に行動の終わり際にタゲ移ししてアルトリア・オルタの宝具で反撃します。

 

 >降り注ぐ光の中あなたはこの付近に異形の化け物達の反応はないかとロマニに尋ねた。

 

『ある、あるよ! 近くに一際大きな反応がある!』

 

 >ロマニはそう言って反応が示す場所をあなたに共有した。

 

 お、本当だ。

 割と近くにいるみたいなのでさっさと移して反撃しましょう。

 

 >あなたはアルトリア・オルタに宝具をいつでも撃てるように準備するように指示するとロマニから送られた位置情報を元にその反応が示す場所へと光を回避しながら近づいていく。

 

「……何か策があるということでいいんだな?」

 

 >あなたの指示に頷いて聖剣に込める力が増していく。

 >ギチリと軋む音すら聞こえるほどに聖剣の柄を強く強く握り締めるアルトリア・オルタの表情はバイザーで覆われて窺うことは出来ない。

 

 やる気満々のようで。

 さて、最大火力を打てるようにアルトリア・オルタ以外のサーヴァントのパスを一度閉めて一時的に魔力の殆どをアルトリア・オルタに集中させます。

 

 聖杯直結アルトリア・オルタの馬鹿火力を味合わせてやるぜ! 

 

 ついでに攻略フラグ建築の為にロマニに手のコアが出現したら教えて貰いましょう。

 

 >あなたはロマニにあの巨人の手の中に四角いコアのようなものが現れたら教えて欲しいと伝えた。

 

『手のコア……? いや、そうか、そうだね! 確かに時々出現しているアレを宝具で叩ければ何かしらの反応があるはずだ。隠すからにはあの巨人にとって弱点みたいなものなんだろう。よし、分かったこっちの方でも反応を探っておくよ! 並行して解析をしておいて何か分かり次第すぐに伝えるよ!』

 

 フラグ建築ヨシ! 

 

 別に報告なしでぶちかましても良いんですけどフラグを立てておいた方が立香ちゃん達にも情報共有が早く済むのでやり得です。

 

 さて、反応がある場所に近づいて来ましたが……うわキッショ、なにあのもやもやしてるクソデカミミズみたいな奴。

 いや、でもどっかで見たようなビジュアルですけど……何だったかなぁ? 

 

 いや、というかそもそもこんな雑魚MOBいました? 

 

 少なくともそこそこ経験しているヴェルバー襲来イベントで現れる侵食された雑魚MOBでこんな奴見た記憶ないんですが。

 

 ……ま、考えても仕方ないのですれ違いざまに方陣のタゲ移して身代わりになってもらいましょう。

 なんて卑劣な技なんだ。

 

 >あなたは光を避けながら発見した黒い靄が掛かった化け物に肉薄する。

 

 迎撃されると思うのできっちりそこは回避してタゲを移しましょう。そうでないと叩き落とされた所に敵ごと光に焼かれてYOU DIEDされますので。

 ヒカリニナレ-!! 

 

 >あなたが接近していることに気が付かなかったのか、異形の化け物はあなたに対して反応を示すことはなかった。

 

 こんなあっさり接近できるとか罠じゃないかと疑うんですけど。

 このゲームがこんなに優しい措置を取ってくれるわけないだろ! いい加減にしろ! 

 

 唐突な即死トラップが牙を剥いてくるって知ってるんだぞ。

 お前本当に気がついてないんか? *3

 

 とは言え、罠だと思ってももうやるしかないのも事実です。

 罠なんて踏み超えればいいんじゃ! 

 なお死亡率。

 

 >あなたは呪術を起動させるべく、黒い靄に手を突っ込み異形の肉体へと干渉する。

 

 お、これ本当に何も罠がない感じ──

 

 >瞬間、あなたの身体に異変が起きる。

 

 ですよねー。

 そらそうよ、こんなの見え見えの罠に決まってますよね。

 まあ、引っかかるんですけど。

 死ぬ以外は問題ねぇ! 

 

 >令呪が刻まれた手が莫大な熱を持つ感覚がした。

 >だが、熱いという感覚はしない。

 >寧ろ体の底から冷えていくような、そんな感覚があなたを襲った。

 

 うげ、魔力減少デバフか? 

 平時ならさして気にするようなデバフではありませんが、今は少しでも魔力が欲しい状況なんですよね。

 

 けれど、死ぬよかマシです。

 コラテラルダメージとして受け入れましょう。

 

 >そしてあなたの心臓がキュッと締められたような感覚に陥ると共に口から血が零れた。

 >あなたは体力が少し削られた。

 

「おいマスター! 大丈夫なのか!?」

 

 全然違った。

 ただのスリップダメージじゃないですかヤダー! 

 あ、でもそんなに痛くない。

 総ダメージ量が二割持っていかれたくらいですかね? 

 

 ……いや、この一瞬で二割持っていかれるとか相当頭おかしい削り方してるな? 

 

 >あなたは血を吐きながらも呪術を起動する。

 >あなたを執拗に追いかけていた方陣は異形を捕捉する。

 >そして背後から迫ってきていた全ての光が急激な方向転換をすると四方八方から異形へと殺到する。

 

 よし、チャンス到来。

 

 >数多の光が異形を焼き尽くすとともにあなたは呪術を起動させる。

 >ほんの一瞬の暗転、そして目の前にいたのは先程まであなた達がいた場所へと視線を向けている巨人の姿だった。

 

『手の中にコアの再出現を確認! 望幸くん今だ!』

 

 アルトリア・オルタの最大火力喰らえオラッ! 

 

 >あなたはアルトリア・オルタの名を叫んだ。

 >その呼び掛けに応じるようにアルトリア・オルタの聖剣に膨大な魔力が集中する。

 >聖杯を宿していても燃費が悪いと断言するほどのアルトリア・オルタの宝具。

 

 

 

 

 

 

「──宝具解放

 

 

 

 

 

 

 >星の聖剣の旭光が煌めいた。

 

 

*1
8敗

*2
メガトン構文

*3
疑惑の眼差し





割ともう性癖が爆発寸前ですけどまだ力を溜めておきます。


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残骸


置換魔術が出てきたの笑っちゃった
ホモくん????


 

 

 

『立香はさ、最近楽しいことはあった?』

 

 まるで顔が黒い油性ペンで塗り潰されたように顔が認識できず、声すらもノイズ塗れで上手く聞こえない。

 けれど、この人の声はノイズ塗れであっても心地が良かった。

 

 魔性のような人を堕とすような声でも思わず平伏したくなるような神性を含んだ声でもないただ本当に安心するような、聞いていて心が暖まるようなそんな声の人。

 

『あはは、確かにそうだね。大変なことばっかりで何かを楽しむ暇なんてなかったかー』

 

 いつもより高い視点で高らかに笑う誰かを眺めていた。

 

『けど、こんな大変な時だからこそ私は立香に何かを楽しんで欲しいなぁ』

 

 ……本当に何が楽しいのか誰かの表情はころころと変化していると分かるほどに喜色に富んだ声色だった。

 

『辛いって気持ちは理解出来るよ。何で■がって言いたくなるもんね。こんな重いものなんて背負いたくなんてないし、今すぐにでも投げ捨てられるなら投げ捨てたいよね』

 

『でもね?』

 

『役目なんかの為に心を押し殺して透明にする必要なんてないんだよ。私は立香にもーっともぉーっと感情を出していってほしいな』

 

 手を広げてくるくると踊るように回る。

 

『私ね、君の色が大好き。色んな色で溢れてて……綺麗な色もそうじゃない色も全てひっくるめて大好きなんだ。あ、でも一番好きなのは──』

 

 いつの間にか遠く離れた場所で踊っていた誰かは広げていた手を後ろに回して見惚れるくらいに優しい笑みを浮かべていた。

 

『──君が幸せな時に溢れる白が大好き!』

 

 ……浮かべていた、そんな気がするんだ。

 

『だからね、私はその為にいっぱいいーっぱい頑張るよ。立香には幸せでいてもらいたいから。それに悲しかったり、辛くなったら私がいっぱいぎゅーってしてあげるね! 私のハグはアビちゃんとかゴッホちゃんとか皆に評判がいいんだぞー!』

 

 そう自慢しながら後ろで組んでいた手を広げてハグをしようとにじり寄ってくる誰かに何だか照れて逃げてしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あぁ、見つかっちゃったかぁ。ごめんね、私失敗しちゃった。君を泣かせちゃった。泣かせたくなんて、なかったのに、ずっと幸せで、いて欲しかったのに……』

 

 命の色が溢れていた。

 

『ごめんね、ごめんね……もう、泣いてる、君をぎゅーって、抱き締められなく、なっちゃった』

 

 必死に止めようと頑張ったけど止まらなかった。

 

『私、が、失敗した、ばかりに、君の心から、大切な、色を、消しちゃった』

 

 赤子の様に抱えられるくらいに小さくなってしまった。

 

『でも、大、丈夫、きっ、と──』

 

 赤が世界を染め上げる。

 終わりを告げるカーテンコールがやってくる。

 

『──次の私は上手くやってくれる筈だから』

 

 赤に染まったきみは引き攣ったような不器用な笑みが浮かべ、歯車の音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 

「──先輩っ!

 

「うっひゃあああああ!?」

 

 耳元で叫ばれた大声に思わず吃驚して飛び起きた。

 慌てて声のした方向に振り向くとそこには心配そうな表情を浮かべたマシュがいた。

 

「おはようございます先輩、一先ず目覚められて安心しました」

 

「私、気絶してた……?」

 

「はい、それはもうばっちりと」

 

 気絶した要因を思い出そうと未だにぐらつく頭で暫く考え込んで思い出したのは城の床をぶち抜いて現れた巨大な白い手だった。

 

 城そのものを揺らしながら床をぶち破りまるで蚊を払うかのような動作で薙ぎ払われた手には──どうしようもないくらいの死があった。

 

 白い手が薙ぎ払われるその直前に咄嗟にマシュとジャンヌ、そしてブーディカに宝具を使わせることで何とか助かった。

 あと一瞬でも遅ければ、誰かが欠けていたら……恐らく私達はこの世に存在していなかっただろう。

 

 ちらりと目を令呪が刻まれた手に落としてみれば──令呪が一画消費されていた。

 無意識下で使用した令呪でのブーストもあってなお、英霊3人による防御を貫通するほどの威力。

 

 明確な死が喉元まで来ていたという事実に立香は今になって恐怖した。

 死を拒絶する生への執着から体がぶるりと震えて──気づいた。

 

 ──そうだ、望幸は? 

 

 ジャンヌ・オルタや両儀式はいるというのに辺りを見回しても望幸とアルトリア・オルタだけがいない。

 ほんの一瞬、最悪の予想が脳裏を過ぎるがジャンヌ・オルタや両儀式がまだここに存在していることと取り乱していないことからきっと大丈夫だろうと立香は思い込むことにした。

 

『立香ちゃん無事かい!?』

 

 カルデアからの通信から聞こえたのはロマニ──ではなく、珍しいことにダヴィンチからだった。

 

「ちょっとくらくらするくらいだけど私は大丈夫だよ」

 

『そっか、でも一応バイタルチェックだけはさせてね。……うん、本当に大丈夫そうだ』

 

 バイタルチェックを終えたダヴィンチは安心したようにホッと息を吐いた。

 ほんの僅かな時間とはいえ気絶したのだ。

 何処かしらに異常が出てもおかしくはないと危惧していたのだ。

 

「……ダヴィンチちゃん、望幸は大丈夫だよね?」

 

 そんなダヴィンチの心配を他所に立香は彼の安否を尋ねた。

 

 姿が見えない、彼の声が聞こえない、彼の気配がしない。

 それだけの事で先程まで喉元まで来ていた死への恐怖を思わず忘れてしまうほどに心配だった。

 

『今のところは大丈夫だよ。けど、早く彼の下に向かった方がいい。今、望幸くんは最も戦ってはいけない敵とアルトリアと共に戦っている』

 

「それって──」

 

 その先を問う前に答えは現れた。

 

 

「─────ッ!!!」

 

 

 物理的に体が揺らされるほどの声が直撃した。

 

「あぐっ──!?」

 

 脳が揺れる、本能が今すぐここから逃げろと叫んでいた。

 

 声だけであれは駄目だと本能が、遺伝子がそう叫んでいるとしか思えないほどの拒絶感が立香を襲った。

 声だけでそれほどまでの拒絶感なのだ。

 ならば姿を見てしまえばどうなるのかは言うまでもない。

 

 けれど、悲しいかな。

 

 人間とは視覚に頼る生き物だ。

 見てはいけないと理解しているのに現状の脅威を正しく把握すべく視線は自然と声がした方へ向いた、向いてしまった。

 

「────」

 

 白い巨人と目が合った。

 刹那にも満たないほどの僅かな時間で立香は理解した。

 あれは正しく格が違う存在だと。

 

 オルレアンで見たファヴニールを喰らったジャンヌ・オルタよりも恐ろしい存在などいないとそう思っていた。

 けど違った。

 

 遺伝子に刻まれた白い巨人への恐怖が立香の思考を停止させ、呼吸すらも忘れさせた。

 

「──おいおい、ありゃあ……」

 

 永遠とも思える刹那の中で固まった立香を再起動させたのは驚愕に満ちたジャンヌとクーフーリンの声だった。

 

「セファール!?」

 

『セファール……セファールだって!? そんな、なんでそんな存在がこの時代に存在しているんだ! いや、そもそもどうやって──!』

 

 焦るダヴィンチの様子が他のスタッフにも伝播したのか、カルデア側の様子が騒がしい。

 異常事態が発生していることを薄らと察しつつも現状を正しく把握出来ていない立香はこの中であの巨人について知っているであろうジャンヌに対して尋ねた。

 

「あのジャンヌ、セファールっていうのは……」

 

 立香の問いにジャンヌは重苦しい表情で話し始めた。

 

「マスターは捕食遊星ヴェルバーというのはご存知ですか?」

 

 捕食遊星ヴェルバー……確か望幸が纏めてくれたノートに書かれていた記憶がある。

 記述されていた内容は覚えきれていないが、確か文明を喰らうものと書かれていたはずだ。

 

 それをジャンヌに伝えるとこくりと頷いた。

 

「概ね合っています。時間がありませんので簡略して伝えますが、セファールはヴェルバーが星の文明に対して侵略と破壊を行い、破壊した文明を吸収する為の尖兵(アンチセル)と呼ばれる存在です。放っておけばこのローマどころか世界そのものを破壊してもおかしくはありません。それほどまでにセファールという存在は脅威的な存在です」

 

「そんな……」

 

 告げられた真実に衝撃を受けた。

 

 人理は焼却され、今まさに世界が滅びかかって手一杯だというのにそれを後押しするようにセファールという世界の破壊者が出てきた。

 

 まるで世界そのものが終わることを望んでいるかのようだ。

 

「ただ……あのセファールは明らかに弱体化しています。おそらくですが考えられる原因として聖杯による召喚が関連しているのでしょうけれど……」

 

 ジャンヌは歯切れが悪くそう言う。

 

「あの、ふと疑問に思ったのですが、そもそもそんな存在を聖杯で召喚することは可能なのでしょうか?」

 

「……不可能です。セファールを聖杯で、ましてや召喚術式で呼べる訳がありません。ですからそこが不可解なんです」

 

『つまりはセファールを召喚出来るほどの存在があったということになるね。……まったく、いよいよきな臭くなってきた。裏に確実に誰かがいたってことだ。立香ちゃん、気をつけなよ。私はあれを倒してもそれで終わるような気がしない』

 

「うん」

 

『いい返事だ。とは言え、セファールを倒さないとどうにも出来ない。そこで一つ聞きたいんだけど、ジャンヌは今まで話から察するにセファールと戦った経験があるということでいいのかな?』

 

「ええ、ここではない場所で一度だけ」

 

『その時にどうやって倒したか教えてくれないかな』

 

 ダヴィンチにそう言われてジャンヌは座に記録された記憶を読み解いていく。

 

「大前提としてセファールには魔術や武器といった文明が栄えた事で扱えるようになった技術──術式とでも言い換えましょうか、それらが通用しません。それどころかその術式を喰らい傷を治し、装甲を更に厚くする自己強化を扱えました」

 

 武器も魔術も効かないという特性──一見すると無敵のようにも思えるがジャンヌの瞳から希望が失われていない以上対抗策はあるということに他ならない。

 

「ですが一つだけ、セファールには僅かに吸収できるものの無効化出来ないものがあります。それこそが純粋な魔力による力押しです」

 

『純粋な魔力による力押し……宝具による攻撃と解釈してもいいのかな?』

 

「その解釈で大方問題ねぇが一応攻撃自体は魔力を込めた攻撃なら大体通りはするぜ。だが、彼奴は胸の核を破壊しない限り倒れねぇ。……問題は胸の核は外皮以上に頑丈で宝具でしかダメージが通らねぇってことだがな」

 

『クーフーリン、もしかして君も戦ったことが?』

 

「おうよ。つーか何ならそこの嬢ちゃんと一緒に戦ったし、なんなら坊主と契約してるキャスター……あーいや、今はアルターエゴか? 兎も角そいつも戦ってたはずだぜ」

 

 クーフーリンの指すアルターエゴとは玉藻のことであり、その事を聞いたダヴィンチは玉藻を呼び寄せてセファールの対策について話し合い始めた。

 通信越しに何やらダヴィンチと玉藻が話し合っている声が聞こえていたが、不意に玉藻がジャンヌとクーフーリンに話しかけた。

 

『おい、一つ聞いておきたいのだが……お主達はセファールと戦う時に共に戦った者達を覚えているのか?』

 

「あ? そりゃ当然だろ。あんな戦いを共にした奴を忘れるわけねぇだろ」

 

「ええ、まあ。座に記録として持ち帰っていますし、私も忘れるなんてことはありません」

 

 二人の返事を聞いた玉藻は何処か躊躇うように、けれどやがて決心したように尋ねた。

 

『なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

「「は?」」

 

 あの激戦を共に切り抜けた戦友を忘れるはずもないというのに当時のマスター達を忘れることなどもっとありえないだろう。

 だって、彼奴達は……彼奴は……

 

 

 ──()()()? 

 

「あ、れ……? おかしい、ですね、確かに共に戦って……?」

 

「あ、あぁ? いや、いやいやいやありえねぇだろ。覚えてるはずだ、忘れるはずがねぇよ」

 

 覚えてる、覚えている、覚えているはずだ。

 座に記録を持ち帰ったはずだ。

 記録が消えたなんてことはありえない。

 だから、覚えている。

 

 ……ああ、そうだそうだった。

 

 思い出した。

 

 彼奴はとんでもなく諦めの悪い奴で、呆れるほどのお人好しで、妙に歴史に詳しくて、変に頭が回って、突飛な行動をし始めるような困ったマスターだった。

 

 何だ、やっぱりちゃんと覚えているじゃないか。

 

 そうだともあんな事を忘れるわけが──

 

 

 

 

 

 

 

 ──じゃあ、()()()()()()()()()()()() 

 

 ぐるぐると思考が回る、世界が回る。

 どれだけ思い出そうとしても声どころか、顔も思い出せない。

 そもそも本当に存在していたのか? 

 本当はあの困ったマスターただ一人だけじゃないのか? 

 

 そう考えた方が自然だ。

 記録として持ち帰っている以上忘れているなんてことはありえない。

 

 なら、この違和感は何だ? 

 

 思考が坩堝にハマり始めて──

 

『いや、いい。今は忘れるが良い。話すべき状況でもなかった』

 

 ──指が鳴る音がした。

 

『セファールの対抗策についてだが、妾が此方から魔力供給のサポートをしよう。そちら側にいればそれこそ消費なぞ気にせずに宝具を放てるだろうが、カルデア側からの援護ゆえ宝具による魔力消費を抑えられる程度として考えておけ』

 

『それだけでも十分に助かるよ。今のカルデアに多数のサーヴァントが大量に宝具を放てるほどの魔力はないからね。……ところで君のそれを発動するのに魔力は足りるのかい?』

 

『問題ない、ご主人様から魔力を分けて貰い、其れを呼び水にする。カルデア側からも拝借するが微々たるものであろうよ』

 

『オッケー、なら私がセファールの方へナビゲートさせてもらうね。ロマニが今付きっきりで望幸くんの事をサポートしているとは言え、セファール相手にサーヴァント一騎と彼だけで戦うのはあまりにも無謀だ』

 

 その言葉に立香とマシュは静かに頷いた。

 星の文明を破壊し尽くせる存在を相手に戦うというのならばあまりにも心もとない。

 直接戦っている彼はそれを理解しているだろうし、納得もしているだろう。

 

 けれど、たったそれだけの事で彼が諦めるわけがないというのは分かりきった事実だ。

 彼は諦めが良く、同時に諦めが悪すぎる。

 

 諦めることを捨てた彼は必ず無茶無謀を通す。

 自分自身さえも対価にして必ず目的を達成する。

 そうした結果がオルレアンで起きたあの結末だったのだから。

 

『それじゃあ早速セファールの方へ──ッ!?』

 

 その瞬間、またしてもセファールの咆哮が轟いた。

 

「───────ッ!!!!」

 

 セファールの周囲一帯に雨の如く降り注ぐ黄金の光。

 幸い、セファールとある程度の距離がある此方には何の被害もないが、彼がいる場所は──! 

 

「急ごう!」

 

『いや、駄目だ立香ちゃん! マシュの後ろに隠れて!』

 

「チッ」

 

 ダヴィンチの急な制止の声が焦る立香の足を止めた。

 何で、とそう尋ねるよりも早く今まで黙っていたジャンヌ・オルタの舌打ちが立香の耳に響いた。

 

 立香が反応するよりも早く何処からか現れた異形の化け物が大口を開けて自身を喰らおうとその鋭利な歯を覗かせて──ジャンヌ・オルタによる魔力ブーストを乗せた強烈な殴打による一撃が異形の化け物の横っ面に突き刺さり、化け物の上半身が消し飛んだ。

 

 残された下半身はあまりの衝撃によりバラバラに引き千切れ吹き飛ばされ、地面の染みへと変えられた。

 

「……彼奴はこうなることも分かっていたのかしらね」

 

 誰にも聞こえないくらいに小さな声でジャンヌ・オルタはそう呟くと今しがた殺されかけた立香の方へと視線を向ける。

 

「アンタに死なれたら困るのよ。だから、仕方ないからアンタの事を私が守ってあげる。後ろに下がってなさい立香」

 

 ジャンヌ・オルタが旗を振るうと共に周囲に業火が撒き散らされ、木々を燃やし草花を灰にする。

 そして隠れ場所を燃やされたことによりそれらは現れた。

 

「────」

 

『こんな数一体何処から……! いや、そもそもどうやってセンサーを掻い潜ったんだ』

 

 現れたのは大小様々な無数の化け物達。

 草木の陰に隠れていたなんて言うにはあまりにも多すぎる。

 そして、何奴も此奴も何処か様子がおかしい。

 

 目に宿る光はあまりにも虚ろでだらしなく開かれた口からボタボタと涎を零している。

 理性が消え、意識が残っているのかと疑問を抱く程に感じられる意思が薄い。

 

 明らかに異常な様子の化け物達を相手に僅かに口角の上がったジャンヌ・オルタの口元から竜種の如き鋭い牙が覗き──

 

 

──全員燃やすわ

 

 

 ──直後、無数の炎の柱が立ち昇った。

 





元から厄ネタ塗れだったホモくんがガチの厄ネタの塊になっちゃった……。
どう足掻いてもホモくんが地雷にしかならなくて頭抱えますよ。

これは責任取ってホモくんには四肢をもがれて貰わないといけませんねぇ。
ORTくんホモくんの腕一本持っていきなさい。
立香ちゃんの精神大丈夫なんですかねこれ。


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あまりにも遅く


お久しぶりです


 

 炎がキメラのように変化した獅子を焼いた。

 力任せに振るわれた旗が焦点の合わない四本腕のワーウルフを爆散させた。

 引き絞られた矢のように抜き放たれた貫手が腹に濁った単眼を持つスプリガンのその単眼ごと腹をぶち抜き、胴体を真っ二つに両断する。

 

 幻想生物の頂点に君臨する竜種を幻視する程の大暴れを見せるジャンヌ・オルタ。

 

 しかしそれでも異形の化け物共は数を減らさない。

 

「チィッ……どんだけいるのよ此奴ら!」

 

 殺しても殺しても次から次に湧き出てくる化け物達に苛立ちを隠せない。

 こんな所で手をこまねいている場合では無いのだ。

 

「これだけの数が隠れていたとは考えにくいし、何処かに発生源があると考えた方が自然かしらね」

 

 翼爪が異常発達したワイバーンの首を刎ね飛ばし、肥大化した筋肉によって3m程の巨体に醜く成長したゴブリンの肉体をまるで熱した包丁でバターに刃を通すが如く頭頂から股下まで容易く叩き斬る両儀式がそう予想する。

 

「だとするなら発生源はどこにある? 言っちゃあ何だが、此奴ら一方から来てるって言うわけでもなさそうだぞ。周りにうじゃうじゃと湧き続けてるし……なっ!」

 

「最悪、発生源は複数あると考えておく方が良いだろうな。それにっ、この数は少し異常だっ! セファールとか言う奴に全く近づけん!」

 

 クーフーリンの鋭い刺突が無数の化け物達の心臓を纏めて穿ち、豪快に振るわれたネロの剣が仕留め切れなかった化け物達を確実に仕留めていく。

 

「そこをッ、どいてください!」

 

「はぁっ!」

 

 マシュが迫る敵に大盾を叩きつけ吹き飛ばし、その隙をついてジャンヌが旗を大上段から脳天に振り下ろして機能停止させる。

 

 一秒でも早くここを突破してセファールを相手にたった二人で戦っている彼等の下へ駆けつけなければならないと、そう思っているのに──

 

「いくら何でも多すぎる……!」

 

 無尽蔵に湧き出しているとしか思えないほど倒した傍から湧き続けてくる化け物達に立香達は焦りを感じていた。

 

「ダヴィンチちゃん! 何か分からない!?」

 

『今解析が終わった! 君達の周囲に一際大きな3つの魔力反応がある! 恐らくそこに召喚陣がある筈だ。それを壊さないと化け物達は連鎖召喚され続けるよ! 場所は──!』

 

 告げられたポイントは全部で3つ。

 どれも別々の離れた位置にあり、全員で一つずつ潰して回るというのは安牌ではあるが、とても効率的とは言えない。

 ならば分かれて各個破壊すべきだろう。

 

「ここは分かれてそれぞれ破壊しよう!」

 

「ええ、そうね。私もそれがいいと思うわ」

 

 立香の案に賛同する式。

 それに追随するように他のサーヴァント達も頷く。

 

「なら二手に別れるわよ」

 

「二手に? 三手に分けてそれぞれ破壊した方がいいんじゃ……?」

 

 ジャンヌ・オルタの提案に疑問の声をあげる立香。

 効率という面で考えてみれば当然の事である。

 二手に分かれて破壊しても一つは残ってしまう。

 その一つを全員で集まって破壊するにしてもどうしても遅くなることは明白だろう。

 

 それに今は一刻を争う。

 あの巨神とたった二人で戦う彼らにいち早く加勢する為にも可能な限り効率的に行くべきだ。

 

 そう考える立香に対してジャンヌ・オルタは目を細めて呆れたような表情を浮かべる。

 

「戦力を分配し過ぎればそれだけアンタが危険に晒されるわ。立香、アンタはアンタのサーヴァントの生命線なの。なら多少なりとも効率を捨ててでもアンタの守りを固めるべきよ」

 

「でもそれだと望幸が──ッ!」

 

「藤丸立香、アンタに何かあればそこで全てが終わるのよ」

 

「ッ!?」

 

 細められた黄金色の瞳が立香を捉えた。

 縦に大きく裂けた竜種のような瞳孔が自分を捉えて離さない。

 

 ジャンヌ・オルタに見つめられている。

 

 たったそれだけで本当に竜に睨まれていると錯覚するほどの圧力に立香は身体どころか声の一つも出すことが出来なかった。

 

「アンタはまだ弱いわ。多少なりとも鍛えたんでしょうけど、それでも素人に毛が生えた程度でしかない。アンタは彼奴じゃないのよ。……式、行くわよ」

 

「あら、私だけでいいの?」

 

「この程度であれば十分でしょう?」

 

 そう言って去っていくジャンヌ・オルタを尻目に立香は先程の言葉がリフレインしていた。

 

 彼女が指す彼奴とは彼の事だろう。

 

 そんな事言われなくても理解している。

 私は望幸のように強くはない。

 魔術は全然扱えないし、知識もない。

 武術だってまだろくに扱えない。

 

 何処を切り取っても藤丸立香という平凡な存在はマスターとして彼に遠く及ばない。

 

 分かっている、分かっているともそんなこと。

 

 それでも、望幸は私にとって大切な幼馴染なのだ。

 きっと彼はまた無茶をする。

 大怪我をして、倒れそうになっても心が折れない限り前へ進もうとするだろう。

 

 だから、それがどうしても嫌なのだ。

 

 彼が御伽噺のような英雄のような偉業を達成する度に私の中から彼という存在が零れ落ちていく感覚に襲われた。

 このまま放っておけば彼が手の届かない存在になってしまうといった漠然とした不安に襲われる。

 

 そしてその焦燥はこのローマに来てから──あの巨神を見てから更に強くなっている。

 

 ジャンヌ・オルタの言うことは正しい。

 私がここで倒れれば間違いなく全てが終わるだろうということも。

 私が倒れればサーヴァントの皆も強制的にカルデアに還されてもおかしくはないし、そうなれば望幸はあの巨神を相手に一人で戦うことになる。

 

 それだけは絶対に避けなければならない。

 彼女も口こそ悪いが私を心配しての発言だということは理解している。

 

 だから、ジャンヌ・オルタの言う事に従うべきなのだ。

 

 焼け焦げるような焦燥に歯噛みしながらも、今はほんの僅かな時間でも惜しいと判断してジャンヌ・オルタ達とは別のポイントの場所へ向かおうとした。

 

「ねえ、マスター。ちょっとお姉さんに一つ任せてくれない?」

 

「ブーディカ? えと任せるって何を──?」

 

「お姉さんさ、マスターがあの子の下にすぐにでも行きたいって気持ちは分かるんだよね。だからそのお手伝い。それにこんな若い子が頑張ってるんだからお姉さんも頑張らないとね! ──だから、もう一つの召喚陣はお姉さんに任せて」

 

 親指を立ててニッと笑うブーディカ。

 

「む、無茶だよ! 一人で破壊するなんて危なすぎる!」

 

「そうだぞブーディカよ! 余もそんなことは認めぬ!」

 

「あー、大丈夫。流石に私も一人じゃ無理って言うのは理解してるから」

 

「なら──!」

 

「それにこんな大きな戦いに彼等が気づかない筈がない」

 

「えっ、それは──?」

 

 誰のこと? とブーディカに尋ねようとして──

 

 

 

 

 ウォォオオオオオオオオ!!! ”

 

 

 

 獣の如き雄叫びが戦場に鳴り響いた。

 

「ぬはっ、ぬははは! 圧政者が至る所に! よろしいならば今こそ反逆の時である!」

 

「▅▂▂▅▅▅▂▅▅!!!」

 

 土煙を上げながら化け物達に激突する雄々しい筋肉──スパルタクスと呂布。

 二人の剛腕から繰り出される一撃は強力無比であり、さしもの化け物達も堪らずといったようで文字通り叩き斬られ、殴り飛ばされていた。

 

「スパルタクス! 呂布!」

 

 二人の姿を見た立香は歓声をあげた。

 その姿を見てブーディカはフッ、と微笑んでくしゃりと立香の頭を撫でた。

 

「あの二人はお姉さんがどうにか指揮を執るからさ、もう一つの召喚陣は任せてくれる?」

 

「……っ、負けないでね?」

 

「ふふっ、勿論! 君に勝利を運んでくるよ。だって私は──勝利の女王だからね」

 

 そう言ってブーディカは立香にウィンクをして暴れ狂うスパルタクスと呂布の指揮を執り、周辺の化け物達を蹴散らしながらもう一つの召喚陣の方へと向かっていった。

 

 その後ろ姿をほんの数秒ではあるが、それでもしっかりと目に焼き付けて立香は己のサーヴァント達の方へと振り返った。

 

「行こう皆!」

 

 立香の号令に残されたマシュ、クーフーリン、ジャンヌ、ネロは威勢良く返事を返し、残った召喚陣へと向かった。

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 走る、走る走る走る走る走る──! 

 

 ただただ一心不乱に、ただただ目標に向かってひた走る。

 クーフーリンとネロが切り込み隊長として先陣を切って化け物達の群れに突破口を開いて深く切り込んでいく。

 スピードを一切緩ませることなく化け物達の群れを食い散らかしていく様はまるで鮫のようだ。

 

 そして後ろから立香へと肉薄する化け物達はマシュとジャンヌが決して寄せ付けない。

 大盾で殴り飛ばし、その御旗で周囲の化け物ごと巻き込んで吹き飛ばしていく。

 

 スピードを落とさぬように常に全力で走るのは中々辛いものがあるが、それでも泣き言はいっていられない。

 一刻も早く彼の下に駆けつける為にも必死にその手足を動かしていた。

 

『召喚陣に大きな反応がある! 恐らく召喚陣を守護する存在だ! 気を引き締めて!』

 

 目視できる距離に存在する召喚陣──どこか英霊召喚陣にも似たそれが妖しい輝きを放っており、際限なく化け物達を呼び出していた。

 

 そして立香達が接近したからか、一際大きく輝くと仲間であるはずの化け物達を潰しながら現れたのはステンノにご褒美と称され戦わされた竜と瓜二つの姿だった。

 

「あれは……」

 

 ただ少し変わっているのは何処かワームのようなそれになっているという事くらいだろうか。

 

「こんなところで──ッ!」

 

 時間が1秒でも惜しいと言うのに──! 

 

 苦戦必死の強敵の出現に立香は思わず歯噛みする。

 手間取ってなどいられない、今も尚巨神の方から耳を劈くような破砕音が此方にまで轟いているのだ。

 巨神の一挙一動で大地が揺れている。

 

 そんな相手にたった二人で今も戦い続けている。

 早く、早く駆けつけないと。

 

「マスターッ!」

 

 先頭を走るクーフーリンが叫んだ。

 

「俺に令呪を使いなァッ!!!」

 

 そう言い残してクーフーリンは更に加速する。

 ワームのような竜に対してまるで戦場を駆け抜ける颶風の如く、道を阻むもの全てを抉り穿ち一直線に駆け抜けていく。

 

 立香にはクーフーリンが何をするのかは分からない。

 それでもクーフーリンがああも啖呵を切ったのだから──

 

「令呪を以て命ずる──()()()、クーフーリン!」

 

 掲げた右手に宿る令呪が輝き、クーフーリンに破格の支援を施す。

 それを受けてクーフーリンは笑みを浮かべる。

 

 ──悪くない、寧ろ誇らしささえある。

 

 勝て、ただそれだけの為に使われた令呪。

 マスターが己を信頼し、切り札である令呪を切ったのだ。

 

 なら──! 

 

「期待にゃあ応えねぇとな」

 

 ここで応えずして何が英雄か。

クーフーリンは更に加速すると同時に複数の原初のルーンを起動させる。

 

 宝具のランクを上昇させ、筋力を過剰なまでに引き上げる。

 そこに加えて令呪による多大なる支援が加わる。

 

 竜までにもはや阻むものなど存在せず、一本道が切り開かれた。

 そして英霊すらも見失うほどの速度で加速し──後方へと大きく跳躍した。

 

 握り締めるゲイボルグからミシリと軋む音が鳴るほど強く握り込み、魔力を全て注ぎ込む。

 

「ッ、マスター! ネロさん! 早く私の後ろに!」

 

 理性の薄い化け物達ですら思考が停止するほどの莫大な魔力。

 立香の目から見てもはっきり認識出来るほどにクーフーリンの持つゲイボルグに強大な紅い魔力が渦巻いている。

 

 そしてそれに漸く気がついたワームのような竜が鋭く尖った先端の口を開いてブレスを放とうと魔力を収束する。

 

 だが──

 

「この一撃、手向けとして受け取るがいい……!」

 

 

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)

 

 

 

 投げたと認識するよりも速く投擲されたゲイボルグが竜が収束させていた魔力ごと竜の体を真っ二つに引き裂き、地面へと着弾する。

 

 その瞬間、大爆発を引き起こした。

 

「きゃっ!」

 

「くぅぅっ……!」

 

 吹き荒れる爆風が化け物達を蹂躙し、弾け飛んだ礫がまるで散弾銃の如く身体中に穴を開けて瞬く間に骸へと変えていく。

 千切れ飛んだ肉片が周囲に撒き散らされて漸く収まった頃には立っているものはマシュの盾の裏に隠れた立香達以外、何一つとして存在しなかった。

 

「ふーっ……」

 

 勢いよく手元へと戻ってきたゲイボルグを掴み、クーフーリンは火照る体から熱を逃がすように口から蒸気を吐き出す。

 

 ──そこそこの無茶を重ねたが……まあ、これくらいならまだまだ戦闘可能だな。

 

 投擲した反動で震える手を抑え込み、此方に向かって走ってくるマスターである立香に向けて快活な笑みを浮かべて手を振る。

 

「どーよ、マスター?」

 

「凄かった!」

 

 興奮したように目を輝かせてそう言う立香に喉を鳴らして笑う。

 

『いや本当に凄いね!? 今の一撃で守護者どころか周辺の敵と召喚陣を纏めて消し去ったぞ』

 

 レーダー上に周辺の敵性生命体反応は殆ど存在せず、いたとしても今の一撃から運良く逃れ切った数体ほどだ。

 これならば無視しても支障はないだろう。

 

『他の場所は──うん、全部破壊成功だ! これで君達を阻むものはいない! だから──』

 

『ダヴィンチ!』

 

 通信越しに聞こえたのはロマニの悲鳴のような声だった。

 酷く焦燥した声でダヴィンチの名を呼ぶロマニに立香は何事かと身構えた。

 

『ロマニ?』

 

『立香ちゃん達は今はどんな状況!?』

 

『ああ、それなら今から望幸くんの下に向かわせるつもりだよ』

 

『なら早く! ()()()()()()()()()()!』

 

 ただならぬ様子でそう叫ぶロマニに彼が大変な状態になっていると察した立香達はダヴィンチが指示を下すよりも早く巨神の下へと急行する。

 

 そしてその道中、アルトリア・オルタの宝具であるエクスカリバーの光が空に放たれたのを視認した。

 莫大な魔力の奔流が巨神の右手にぶつかり大爆発を引き起こし、巨神は大きく仰け反った──が、あまりにも速く、あまりにも強力な一撃を振り下ろした。

 

 振り下ろされた拳が大地震を引き起こし、土砂を空へと巻き上げる。

 

 爆撃と錯覚するほどの威力に一瞬、唖然としすぐさま気を取り直して彼の下へと駆けつける。

 先程の疲れさえも忘れて走り、辿り着いた時に立香の目に最初に移ったのは彼の後ろ姿だった。

 

「望幸──」

 

 無事だったんだね! とそう声上げようとして立香は気づいてしまった。

 

 

 

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ビーストがこっちにも来てニッコニコです


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交錯


GW初の投稿は1万4千字となりました
短いのより長いのがええやろ精神で分割せずに投げますね。
……いいよね?


 

 立香は左腕を失った彼の姿を見た時、脳の許容量を容易く超えるような感情の濁流に襲われた。

 

 心配、恐怖、怒り……あらゆる感情が洪水のように溢れ、あまりの情報に卒倒しかけたほどである。

 けれど、そんなことをしている暇はない。

 

「望幸っ!」

 

 一刻も早く彼の傷を治さなきゃと彼の方へと駆け寄り──彼と目が合った。

 何処か驚いたように僅かに目を丸くする彼は次第に自分の土に汚れた姿を見てか、険しい表情になった。

 

「立香、無事──だったんだな。良かった、怪我はないか?」

 

 その言葉に立香はグッと歯を噛み締めた。

 

 傷なんかない、あったとしても擦過傷程度で今気にするようなものではない。

 そんなものよりも腕を失うという重傷を負っている彼の方が問題だろうに。

 

「今は私の怪我なんかよりも君の怪我の方が大事だよ!」

 

 声を荒げてそう言うが肝心の彼は何処か要領を得ない様子でほんの僅かに首を傾げてふと思い出したように自分の左腕があった場所を見た。

 

「これか。なら、何も問題ない。既に止血はしてある」

 

 肩より先が消失してしまったそれを一瞥して本当に何でもなさそうに言う彼に立香は声を失った。

 常識的に考えればそれは重傷以外の何物でもない。

 いくら止血をしているとは言え、迅速な処置を施さねば致命的なものへと成り果てることは医学に詳しくない立香でも容易に察することが出来る。

 

「問題大ありだよ! だって腕が、腕がないんだよ!?」

 

「……?」

 

 それの何が問題なんだ? と言わんばかりの怪訝な表情を浮かべて彼はああと、一人納得したように頷いた。

 

「すまない、立香。最初に言うべきだった。魔術でこの怪我は治せるよ」

 

「……本当に?」

 

「ああ、本当だ。治癒魔術で欠損した四肢を再生した事例もちゃんと存在する。だから大丈夫」

 

「ちゃんと元に戻るんだよね?」

 

「ああ、ちゃんと左腕が生え──再生するよ。ただ、こんな状況じゃあ出来ないからな。早く聖杯を確保しよう」

 

 そう言う彼に立香はホッと一安心した。

 自分が知らないだけで魔術には失った四肢を治すような凄い魔術がある。

 それなら、私なんかよりも遥かに魔術に詳しくて凄い人たちの集まりであるカルデアの皆ならきっと望幸を元通りに治してくれるはずだ。

 

 その為にも今は一刻も早く目の前の巨神を倒して、この特異点を修復しなければと意気込む。

 

『望幸くん、立香ちゃんにちゃんと説明した方が……』

 

「ロマニ、頼むよ」

 

『……っ、分かった』

 

 やる気に溢れている立香には聞こえぬようにロマニと望幸はやり取りをしていた。

 立香にはただ左腕がなくなったとしか分からぬように巧妙に幻視の細工が施されていた彼の左腕は内部から爆裂したように弾け飛んで抉られた傷口になっており、そしてその傷口は真っ黒に焼け焦げていた。

 

 こうなった理由はただただ単純で、巨神の片腕を破壊した代わりに反撃を受けた彼が全てのダメージを左腕に置換して自切したからである。

 

 故に本来であれば傷口はまだ綺麗なものになるはずだったのだが、巨神の一撃はあまりにも強すぎた。

 許容量を容易く超える攻撃のダメージを全て肩代わりさせられた彼の左腕は完全に自切に成功するよりも早く爆弾の如く炸裂した。

 

 弾け飛んだ骨肉が自切しきる前の彼の体を蹂躙し、特に左腕の方はあまりの衝撃に抉られたような傷になってしまった。

 

 巨神の一撃でアルトリア・オルタと共に死ぬよりはマシだと咄嗟に判断した彼が行ったダメージコントロールは確かに上手く作用し、これ以上ないほどの成果をあげた。

 

 だが、その代償として彼は左腕を失い、治癒魔術に魔力を割くよりも早く行使できる火の魔術によって彼は自身の傷口を焼き潰して塞いだのだ。

 ロマニやアルトリア・オルタが止める暇すらなく、まるで何度も行ってきたように慣れた手つきで応急処置を施した。

 

 だが、何よりの問題は彼の左腕がちゃんと元に戻る保証はないということだ。

 彼の言う通り、治癒魔術で四肢の欠損を治したという事例はある。

 だが、それは卓越した治癒魔術の使い手がいて漸く出来る技だ。

 応急処置で自分の左腕を焼き潰したこともそうだが、今のカルデアに彼の欠損を癒せるほどの人員が、余裕があるのかと言えば正直な所存在しない。

 

 可能性としては彼のサーヴァントである玉藻の前くらいだろうか。

 だがカルデアは彼女のことを詳しく知らない。

 

 もしも、もしも彼女が彼の左腕を治せるというのならロマニは彼女に頭を下げてお願いするつもりだ。

 その為ならばリソースの許す限り惜しみなく協力すると誓おう。

 

()()()()()()

 

 何気なくそう呟く彼にロマニは心臓が止まる思いだった。

 普通に考えれば先程アルトリア・オルタの宝具に直撃し、力なく垂れ下がる巨神の左腕を見てそう言ったのだろうが、ロマニには今度は自分の右腕を犠牲にするのかとそう思ってしまった。

 

「アルトリアはもう一度宝具をいつでも撃てるように準備しておいてくれ」

 

「……ああ」

 

 そう返事をするアルトリア・オルタ。

 だが、バイザーによって顔を隠されているというのにその声色だけで酷く沈痛な顔をしているというのが、察せられる。

 

 巨神から繰り出されたカウンターの一撃。

 本来であればサーヴァントである己がどうにか対処をしなければいけないはずだった。

 けれど出来なかった。

 宝具を発動した硬直を狙われたから仕方ない、なんて言えば彼の左腕は元通りになるのか? 

 

 いいや、元通りになるはずがない。

 あの時動くべきだった、反撃を警戒すべきだった。

 突き飛ばしてでも、この身を呈してでも彼を守るべきだった。

 

 そんなことすら出来ずに己は彼にまた守られた。

 これではあの時と──

 

「……この腕についてはあまり気に病むなよ。寧ろ、此奴相手に腕一本で済んだのは僥倖だろう」

 

 そう言って彼は残った右腕でアルトリア・オルタの頭を乱雑に撫でた。

 

「勝って、帰るんだろう?」

 

「そう、だな。さっさと倒してあの女狐にでもその腕を治してもらえ。あの女なら出来るだろう」

 

「ああ、帰ったら頼んでみるよ」

 

 その言葉を皮切りに彼等はもう一度、巨神との戦いに身を投じた。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

 セファールは──アルテラは一切変わらぬその表情の裏にて苦虫を噛み潰したような思いだった。

 彼がエクスカリバーを使って己のコアを破壊しに来るのは読んでいた。

 

 だからこうしてわざと隙を晒して……左腕を潰してまで確実に彼の命を一撃の下に刈り取るつもりだった。

 だってそれが、今のアルテラに出来る精一杯の恩返しのつもりだったから。

 

 苦痛を感じなくなったとしても、それでも怪我をした時の不快感は残るはずだ。

 体の一部がなくなればそれは大きなストレスにだって繋がるはずだ。

 だから一撃で、痛みも不快感も何もなく、その魂ごと砕いて彼の全てを終わらせるつもりだった。

 

 けれど、そうならなかった。

 

 直撃とまではいかずともただの人間を殺すにあまりある一撃を叩き込んだはずだったのに彼は刹那の迷いすらもなく、自分の左腕を犠牲にして生き残っていた。

 

 その瞬間の光景をアルテラは決して忘れることはないだろう。

 

 ──全ては私の責だ。

 

 彼に永遠の安寧を。

 

 その想いを抱いてここまで来た。

 その為に皆に協力をお願いして私はもう一度この姿へと成り果てた。

 

 失敗は許されない。

 

 皆が想いを繋いでこの状況を作り出したんだ。

 私が私でいられるように手を尽くして、彼を破壊するという彼等にとっても苦渋の決断をしてくれた。

 

 だから、私は勝たねばならない。

 そうでなくては合わせる顔がない。

 

「────ッ!」

 

 彼が、あんな、あんな惨たらしい最期を迎えるなんてあっていいはずがない。

 あんな、酷く虚しい最期を迎えさせるくらいなら恨まれたっていい、嫌われたっていい。

 

 誰も彼の最期に気が付かず、死を悲しまれることもなく、彼の死を、彼の生を辱めるような真似をされるくらいなら私が今ここで──! 

 

──────(破壊する)!」

 

 その叫びは嘆きのように戦場に木霊する。

 そしてその嘆きに呼応するようにアルテラの上空に魔術陣が展開され、今までとは比にならぬ程の破壊の光が溢れ始める。

 アルテラにすら容赦なく降り注ぎ続ける破壊の光はまるで光の槍の如く。

 光槍は爆発すら起きずにあまりの鋭さから大地に深く突き刺さり、深い大穴を無数に作り上げた。

 

「うわ、うわわわっ!」

 

 光槍が降り注げば降り注ぐ程に立香達の足元は不安定になり、移動も覚束なくなっていく。

 そして何れは動ける場所もなくなってしまい、光槍に貫かれるのも時間の問題だろう。

 

 確もそれはアルテラが──セファールが何もしなければという大前提ではあるが。

 

「くそっ!」

 

 光槍が降り注ぐ中、巨神の右腕が横薙ぎに振るわれる。

 

 大地を削りながらその巨大極まる質量で破壊せんと立香達に迫る。

 だが、そう易々と殺されるつもりは彼にだってない。

 

 鳴り響く一発の銃声。

 それと共に立香達は大地ごと遥か上空へと投げ出された。

 

「えっ、えぇ!?」

 

「はぁっ……はぁ……!」

 

 一体何が起きたのか? 

 

 答えは至極単純、彼が視界に入った立香達を大地ごと上空へ撃った弾丸の位置と速度を置換したのだ。

 本来であれば出来るはずのない大規模転移。

 それを彼は持ち前の魔力と聖杯の魔力を掛け合わせることで強引に成し遂げた。

 

「流石にこれは堪えるな……!」

 

 範囲をろくに指定せずに入れ換えた結果、立香達が立っていられるほどの大地ごと置換するという力業になったが、そのおかげでセファールは彼等を見失っていた。

 

 未だ空高く飛翔し続ける立香達だが、そう間もなく落下するだろう。

 

「立香、先に伝えておく! このまま上空から奇襲を仕掛けてセファールの右腕のコアを破壊する! コアの破壊はジャンヌ・オルタの宝具でやる。立香達にはジャンヌ・オルタに右腕までの道を作ってあげて欲しい!」

 

「それは分かったけど……。でもどうやってコアを出現させるの? 攻撃した時にしかコアは出ないんでしょ? 流石に警戒されると思うんだけど」

 

 立香の言う通りだ。

 流石のセファールとて馬鹿ではない。

 相手が何かしらの行動を起こしたのであれば弱点である右腕のコアを守るために防御態勢くらいは取るだろう。

 

 ならばどうやってコアを露出させるというのか。

 

「それは勿論──俺が囮になる」

 

「だっ、駄目! 望幸が囮になる位なら私がやるよ!」

 

 その言葉に立香は反射的にそう叫んだ。

 当たり前だ、大怪我をしている彼をどうして囮になど出来るというのか。

 彼と生きて帰る為に戦っているというのにここで彼を囮にするなどわざわざ殺されに行くのを指を銜えて見ているようなものではないか。

 

 そんなことは絶対に許可できない。

 彼を囮にさせるくらいならば自分がやった方がまだいい。

 

 そんな立香に対して彼は苦笑しながら首を左右に振った。

 

「立香、彼奴は──セファールは聖杯を宿しているからか俺に首ったけみたいだ。だから囮になるなら俺が一番効果的だ。そして多分、右腕のコアを破壊するチャンスはそう何度もない。きっとこの奇襲に失敗すればセファールは警戒を更に強めるだろう。下手をすれば俺達だけが消耗していって負ける可能性だってある。だから、さ──」

 

「──俺が行くよ」

 

「う、ぅぅうう──ッ!」

 

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。

 認めたくない、行かせたくない。

 だって、それが一番危険なんだって分かるから。

 これ以上望幸を危険な目に遭わせたくない。

 力も知恵もない私がそれを言うのは傲慢だって分かってる。

 他にいい案だって思いつかない。

 

 きっと、望幸が言っている作戦の方が一番可能性が高いってことも理解出来ている。

 

 でも納得が出来ない。

 

「……立香、右手の小指を出して」

 

「……?」

 

 彼の言われるがままに小指を差し出すと彼は自分の小指するりと絡めてきた。

 

「指切りだ、俺はこんなところで死なない。ちゃんとみんなで帰ろう」

 

 まるで子供の約束。

 けれどそれは立香にとってはあまりに懐かしく、そして馴染みの深いものだった。

 

「……ちゃんと無事に帰ってきてね」

 

「うん」

 

「怪我もしたら駄目だからね」

 

「それはきついなぁ。……でも、うん。君を心配させない為にも頑張ろうかな」

 

 そうしてゆっくりと契りを交わして、立香は名残を惜しむように絡めていた小指を解いた。

 

「ああ、そうだ立香。クーフーリンの宝具は使えそうか?」

 

「クーフーリンの? ……私は大丈夫だけど、クーフーリンは大丈夫かな」

 

「出来そうだったら宝具の準備だけするように頼むよ」

 

「分かった。けど、何をするの?」

 

「セファールの胸のコアを、彼女の心臓部を破壊する」

 

 クーフーリンの宝具は因果逆転の呪い。

 一度発動してしまえば心臓へ必中する呪いは類まれなる幸運でしか回避することは出来ない。

 それほどまでに強力な宝具ではあるのだが、それはあくまで彼の刺突のみに適用される。

 

 クーフーリンのもう一つの宝具の方は召喚陣を吹き飛ばした投擲するものだ。

 あれも心臓に必中するという効果こそないものの槍に込められた魔力が尽きるまで対象を追い掛け続けるという効果がある。

 

 恐らく彼が言うのは後者の方だろう。

 

 刺す方の宝具ではそもそもセファールの胸元まで潜り込まないといけないため相当厳しい上に恐らくだが破壊力が足りない。

 そうとなれば破壊力に特化した投擲する方の宝具ではあると思うのだが……。

 

「クーフーリン、ちょっといい?」

 

「あん? どうしたよマスター」

 

「あの、さっき見せた宝具はもう一回使える?」

 

「……あれか。そりゃあ撃てと言われたら撃てるが……さっきみたいな威力は期待できねえぞ。ありゃ令呪と下準備ありきの一撃だ。セファールならまず間違いなくそれに気がついて防御してくるだろうよ」

 

「撃てるんだな? なら問題ない。セファールの胸のコアを確実に破壊するためにはそれが必要なんだ」

 

 そう言い切る彼にクーフーリンはその赤い瞳をスッと細めて見る。

 

「……ほぉ、坊主に作戦があるって事でいいんだな?」

 

「ああ」

 

「よっし、なら任せるぜ。タイミングはどうする?」

 

「アルトリアの宝具を撃ったその数瞬後、僅かにタイミングをズラして発動させて欲しい」

 

「同時じゃなくていいのか?」

 

「ああ、そっちの方が好都合なんだ」

 

 そう言うと彼はクーフーリンの宝具であるゲイボルグへと目を向けた。

 

「すまないが、仕掛けの為に印だけ付与しても?」

 

「おう、別に構わねえぜ」

 

 クーフーリンはゲイボルグを望幸の方へと差し出すと、彼はほんの一瞬切っ先を触った。

 

「ありがとう、これで充分だ」

 

「お、おお? 今でのいいのか」

 

 クーフーリンは彼が触った場所を凝視してみるが特に変わった様子は見受けられない。

 それどころか本当に印をつけたのかと疑問に抱くほどクーフーリンから見ても魔術的な印は見つからない。

 

「さて……これ、そろそろ墜落するな」

 

「えっ」

 

 彼は突然そんなことを言い放った。

 だが、言われてみれば当然である。

 あくまでここは彼が呪術を用いて地面ごと上空へとぶっ飛ばしただけである。

 故に頂点まで上がりきれば()()()()()()()()()()()()()──

 

「うひゃああああああ!?」

 

 物凄い勢いで立香達は地面に目掛けて落下し始めた。

 

「マシュ、立香を抱えといてくれ」

 

「えっ、はっはい!」

 

 マシュとて割といっぱいいっぱいではあるのだが、マスターである立香を衝撃から守る為に彼女を抱え込んだ。

 

「それじゃあ、色々と頼んだよ立香」

 

 そして一発の銃声が鳴り響き、立香達はセファールから少し離れた安全な位置へと転移された。

 残されたのは術者である彼──ともう一人、彼のサーヴァントである式だった。

 

「……()()()()

 

「ええ、私まで彼方に送る必要は無いでしょう?」

 

「お前にもジャンヌの補助をして欲しかったんだがな」

 

「あら、それならあの子達で十分だと思うのだけれど。……それに貴方は囮をするのでしょう? だったらサーヴァントの一人くらいは連れていかないと安全ではないし、そもそもマスター一人で特攻だなんて怪しまれるのではなくて?」

 

「それもそうか。それじゃあ──背中は任せるよ」

 

 彼は苦笑すると今もなお落下する大地の端へと立ち、セファールの頭上目掛けて銃を構えた。

 そして引き金を引き──まるで隕石のような速度で大地がセファールに突っ込んでいった。

 

「───!」

 

 セファールがそれに気がついたのは己を覆う影に気がついたからである。

 咄嗟に上空を見てみれば引き剥がされた大地が己目掛けて降り注いできた。

 咄嗟に残った右腕を振るい、それを砕くことに成功した。

 

 攻撃が来た以上、先の一撃で死んだ訳では無かったのだと警戒を強めて周囲を見回した瞬間──! 

 

「セファール!」

 

 声が上空から聞こえた。

 見上げてみれば彼が先程砕いた大地の破片に紛れて空から落ちてきていた。

 その後ろには彼を守るように共に落下している一騎のサーヴァントがいた。

 

 周辺にある瓦礫を足場に器用にも移動する彼とサーヴァントに狙いを定めて拳を振るおうとした時、サーヴァントの蒼く輝く瞳が此方を捉えていた。

 

 瞬間、セファールの背中にぞくりと氷柱を入れられたかのような寒気が走った。

 

 彼奴もまた聖剣の担い手と同じく己を殺せる存在なのだと本能で理解した。

 確実に殺したと判断出来るのは己の拳による攻撃だ。

 だが、下手に殴ればどうなるか分かったものでは無い。

 

 故にセファールが取った手段は至極単純。

 

「─────!」

 

 収束させた魔力による砲撃である。

 ヴォイドセルによる霊子収集、並びにそれを極限まで圧縮し、前方へと解放。

 怒れる軍神の一撃にすら匹敵するそれは熱線の如く。

 瓦礫を瞬く間に融解させ、彼等を飲み込まんと直進する。

 

 そしてその熱線は──あっさりと式の手によって両断され、霧散した。

 

 それを見てセファールは更に警戒度を引き上げる。

 己の放った魔力砲撃に対して拮抗する素振りすら見せず、たったの一振りで霧散させるなどそう易々と出来るものではない。

 

 ──魔眼か。

 

 今もなお蒼く輝く彼女の瞳を見て、セファールはそう判断を下した。

 

 魔力砲撃を突破した二人は更に加速するようにセファールに迫る。

 瓦礫を足場に跳躍し、彼の呪術により更に加速。

 時折猛烈な速度で飛んでくる瓦礫をセファールは鬱陶しげに払いながら、ならばこれはどうだと上空へと展開していた魔術陣から光槍を彼等に殺到させる。

 

 数が数だ。

 さしもの式とてこの量は捌ききれまいと踏んだ──が、彼等に向けて殺到していたはずの光槍はどういう訳か目標から逸れて周辺の瓦礫へと向かっていった。

 

 これが彼等が報告してくれた星崎望幸が扱う置換魔術──に酷似した何らかの魔術か。

 

 攻撃対象を置換することで攻撃を逸らした? 

 

 だが、それにしては何かが引っかかる。

 なるほど、確かに言う通りだ。

 これは置換魔術に似た何か──いや、彼の扱う魔術が作用した結果、偶然にも置換魔術という事象に似ただけなのか。

 

 ……記録を参照しても類似事項は特にない。

 

 であるのであれば──魔法? 

 

 まさか、流石にありえないだろう。

 これが魔法というには些か常識が足り過ぎている。

 

 ならば、置換魔術を元に開発された彼オリジナルの魔術ということなのだろうか。

 

 セファールは高速で思考を回しながらも接近してくる彼等に対して右腕を勢いよく振るい、暴風を引き起こす。

 人程度の大きさならば容易く彼方へと吹き飛ばすほどの暴風を前に彼等は無防備に体を晒し──()()()()()()

 

「──────!」

 

 風の影響を受けていない、と言うよりもこれは……! 

 

 暴風を加速力に変換──否、置き換えているのか。

 

 向かい風であるはずの暴風を追い風に置き換えているのか、或いは暴風が持つ力そのものを加速力に置き換えているのかは分からない。

 

 だが、彼の魔術は間違いなく従来の置換魔術という括りから逸脱している。

 

 暴風の加速を得て、殺人的な速度へと加速した彼等にセファールは刹那の瞬間、どう迎撃するべきか悩んだ。

 魔力による遠隔攻撃か、或いは相打ち覚悟で拳を振るうか。

 

 砲撃による攻撃は間に合わぬと判断したセファールは右腕に力を込めてしまった。

 

 その刹那の時間が、セファールの命運を分けた。

 

「──これは我が憎悪によって磨かれた魂の咆哮

 

 意識外からの強大な魔力反応。

 咄嗟に目をそちらに向ければジャンヌ・オルタが右腕のコアに向けて旗を向けていた。

 

 宝具の発動──それもあの魔力量から察せられる威力なら間違いなく己のコアを砕けるだろう。

 振り向き様に腕を振るえばそれだけでジャンヌ・オルタの宝具発動の阻害は出来るだろう。

 だが、そんな隙を晒せば今もなお此方へ墜落するように迫ってくる彼等に殺られてしまう。

 

 ジャンヌ・オルタ達のことも警戒していたつもりだった。

 だが、目標である星崎望幸と己を殺しても何らおかしくもない両儀式という存在が周囲への警戒を怠らせた。

 魔力反応を極限まで殺していたジャンヌ・オルタを知覚することが出来なかった。

 

「ッゥ───!」

 

 ジャンヌ・オルタはまだ宝具発動まで至れていない。

 ならば、周囲に点在するヴォイドセルで侵食した原生生物達をぶつけて僅かにでも発動を遅らせる。

 

 セファールの号令に反応した化け物達が宝具を構えるジャンヌ・オルタに殺到する──が。

 

「そうはさせません!」

 

 ジャンヌ・オルタを守るように飛び出してきたジャンヌとマシュ、クーフーリンが化け物達を鏖殺する。

 

 駄目だ、これでは宝具の発動の阻害が出来ない。

 コアは確実に破壊される、今からの防御態勢は間に合わない。

 

 なら──

 

 コアを破壊されてでも彼を殺す! 

 

「─────!」

 

 渾身の力を込めてあらゆる文明を破壊する巨神の一撃をたった一人の人間に向けて放った。

 振るわれた剛腕に大気すら逃げられず大気ごと彼等を殴り抜いた。

 

 手に伝わる何かを砕いた感触。

 生き物を、魂を確かに砕いた。

 だと言うのに──! 

 

「令呪を以てジャンヌ・オルタへ命ずる──!」

 

 何故彼はジャンヌ・オルタの傍にいる!? 

 

「コアを穿て──ッ!」

 

 令呪によるブーストを受けてジャンヌ・オルタの宝具の威力が跳ね上がる。

 

 地獄を赤く染め上げる業火が噴出する。

 遍く全て呪う魔女の災禍の槍が至る所から串刺しにせんと勢いよく射出される。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

 竜の魔女の憎悪の具現たる宝具が巨神の右腕のコアを呪いで染め上げ、業火で焼き尽くし、災禍の槍が刺し貫き、砕き切った。

 

「───────」

 

 脳髄まで焼き尽くすような激痛にセファールの体が揺れる。

 隠されていた心臓部のコアが露出する。

 

 負ける、負けてしまう。

 彼等の尽力に何も返せないまま私は負けてしまう。

 彼を、愛しい人を救えない。

 それどころか、彼がより苦しむ道を選んだと知ったまま何も出来ずに負けてしまう。

 

 駄目だ、それだけは駄目だ。

 あの最期を迎える可能性だけは何としてでも摘み取らなくてはいけない。

 

 両腕は最早使い物にならず、彼の周囲を守るように展開しているサーヴァント達がいる以上、原生生物達に殺させることも出来ない。

 

 けれど、まだ、まだ手はある──! 

 

「──────ッッッ!!!!」

 

 倒れそうになる体に活を入れて、気合いのみで体を立たせる。

 そして世界を震撼させる咆哮を上げて──空に描いた魔術陣が激しく明滅した。

 

 今までのような量による攻撃は駄目だ。

 それでは彼の魔術によって逸らされてしまう。

 ならば、ならば──! 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 残る魔力を全て魔術陣へと注ぎ込み、取り込んだ聖杯の魔力すらも注ぎ込む。

 

『不味い、不味い不味い不味い不味い──! この規模は洒落にならない! ここら一帯所か、連合帝国軍が占拠していた土地が全て吹っ飛ぶ魔力量だぞ!?』

 

「何だと!? どうにかアレを防ぐ手立てはないのか! あの魔術の発動を妨害するとか出来ぬのか!?」

 

『無理だ! あれはもう既に発動している! 阻害したところで発動したという事実はどうにもならない!』

 

「そんな、ここまで来て──!」

 

 立香達の悲痛な声が響く。

 彼の得意とする置換魔術で逸らしたところでこれほどの規模の攻撃ならば差したる意味を持たない。

 ジャンヌダルクやマシュの宝具でもあの規模の攻撃は防ぎ切れない。

 

 ──詰みだ。

 

 誰もがそう思っているというのに──

 

「アルトリア、宝具発動準備。クーフーリンも頼んだ」

 

 彼だけは常と変わらぬまま。

 凪いだ湖面のような静けさを保ったままのように落ち着き払った様子だった。

 

「令呪ありきで私の宝具をぶつけたとしてもこの威力は……」

 

「いいや、アルトリアの宝具は作戦通りセファールのコアにぶつける」

 

「だが、それではあれは防げんぞ」

 

「大丈夫──だって、ほら。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 そう言って彼は少し笑って前に出ると獣の爪痕の如き令呪が輝く右手を上へと掲げた。

 その瞬間──

 

 

ぬはははははァッ!

 

 

 地響きと共に此方へと哄笑しながら走ってくる筋肉──もとい、スパルタクスが満面の笑みを浮かべていた。

 

「「「スパルタクス!?」」」

 

「おお、おお! 私が、このスパルタクスがこの地に呼ばれた意味がようやく分かったぞ。何たる暴威、何たる圧政! 弱者を守る事こそがこのスパルタクスの誉れならば──!」

 

 スパルタクスは狂気に満ちた笑みのまま土煙を上げて突っ走る。

 その後ろには疲労困憊といった様子のブーディカが肩で息をしながら追いかけていた。

 

「ちょ、ちょっと、待って……スパルタクス……もしかして、君も?」

 

 ぜぇ、ぜぇ、と激しく息切れをしながらそう問いかけるブーディカであったが、当然の如くスパルタクスの耳には届いていない。

 

 いや、実際は届いていたのかもしれないが、高揚しきっているスパルタクスには無意味である。

 

「ブーディカさん大丈夫ですか!?」

 

「ゲホッ、ちょっと、もう、無理」

 

 慌てて駆け寄ってきた立香達の前でブーディカは立ち止まり、何度も大きく深呼吸を行う。

 そしてブーディカの息が整ってきた頃、立香達は気付いた。

 

「……あの、呂布は?」

 

 とてつもなく目立つはずの巨体を持った呂布がいないのだ。

 まさかまた化け物達に釣られてどこかへ行ってしまったのだろうかと考えていた矢先にブーディカから衝撃の答えが返ってきた。

 

自爆した

 

「!?」

 

「いやぁ、何か幻聴が聞こえたのか知らないけどあの召喚陣のド真ん中で急に雄叫びを上げて自爆しちゃって……おかげであの数の敵を捌けたんだけどさ」

 

「!?!?」

 

 たははーっと笑うブーディカを他所に立香達は驚きを隠せなかった。

 

 えっ、自爆? なんで? というかどうやって? 

 

 当然の思考である。

 ……まあ、恐らく何処かの眼鏡をかけたイマジナリー外道軍師が「呂将軍、そこで自爆です!」などと呂布に囁いたのだろう。

 

 自爆した呂布も大変満足そうにサムズアップをして散っていったような気がするものだからそれを間近で目撃していたブーディカは何とも言えない表情を浮かべた矢先に今度はスパルタクスが目を輝かせて巨神に向けて突撃し始めたのだ。

 

 ブーディカは何だかよく分からないがこの流れは非ッ常によく知っている。

 

「おお、我が叛逆の同志にして我がマスターよ! 今こそ我等の叛逆を示すときである! さあ、反撃の狼煙をあげようではないか!」

 

「よし来た」

 

 スパルタクスと望幸の二人は何か察するものがあったのか、目だけで作戦を語っていた。

 立香にはよく分からない世界である。

 

 スパルタクスは掲げられた彼の令呪が刻まれた右手にハイタッチをすると大いに笑った。

 

「簡易契約完了」

 

「ぬぅぅううう! 力が滾るゥ! 今こそ叛逆の時である!」

 

 スパルタクスが彼の右手に触れた途端、簡易的にパスを繋ぎスパルタクスへの魔力供給が始まった。

 その魔力供給を受けてスパルタクスの筋肉はピクピクと喜びを示すように痙攣していた。

 

 そしてその勢いのまま突っ走るスパルタクスは一度跳躍し、深く深く腰を下ろして地面が陥没するほどの踏み込みを行い──空へと飛翔した。

 

 おお、なんと勇ましきかなスパルタクス。

 今や誰も彼もが彼に注目している。

 

「暴威による救いを是とする圧政者よ! 汝がその力を彼等に──守るべき弱者に振るうというのなら私が相手になろう!」

 

 高らかに叫びながらもはやはち切れんばかりに膨張する魔術陣に向けて飛翔する。

 それをセファールは、アルテラは唖然として見上げていた。

 

「令呪よ──彼の叛逆に導きの星を」

 

 令呪によるサポートを受けてスパルタクスはまるで導かれるように魔術陣に向けて更に高く飛翔する。

 

「何故ならばこのスパルタクスは弱者の盾となり矛となる者であるからだ! さあ、刮目せよ、これこそが我が叛逆──我が魂の輝きである!」

 

 魔術陣から破滅の引き金が引かれる。

 連合帝国軍が占領した土地全てを吹き飛ばすほどの威力の滅びの奔流が全て殺し尽くすべく地上へと落ちていく。

 

 それに相対するはたった一騎のサーヴァント。

 誰がどう考えても敗北するのは目に見えているというのに──彼の目は勝利への確信で満ちていた。

 

 勝利することを疑っていない、己ならば成せると心の底から信じている。

 何故ならばこの背中には守るべきもの達がいるのだから。

 

 故にスパルタクスは疑わない。

 己の叛逆の輝きを見せつけるようにこの命を燃やし尽くすのだ。

 

「グッ、ぎぃっ……ぐぅっ、は、は、はははは!」

 

 あの破滅の一撃に対してスパルタクスは弱点である頭部から突撃した。

 瞬間、瞬きの間に全身の骨が砕かれ、肉が拉げる感覚がした。

 それでも最期の時まで笑うのだ。

 

 スパルタクスの宝具の性質は非常に特異なものだ。

 敵から負わされたダメージの一部を魔力に変換し、体内に蓄積する。

 加えてこの魔力の変換効率は、スパルタクスが死に瀕すればするほどに上昇する。

 

 死んでしまえば意味はなく、かと言って普通に受け切れる攻撃では効果が薄い。

 その性質上、扱いが非常に難しいものではあるのだが、今、この瞬間において彼の宝具は遺憾無く効果を発揮していた。

 

「がぁっ、は、は、ははははァッ!」

 

 直撃してしまえばどんなサーヴァントとて消滅は免れない滅びの光を頭から受けてなおスパルタクスは高らかに笑う。

 

 スパルタクスはお世辞にもトップサーヴァントとは言い難い。

 であるにもかかわらず、何故こんなにも耐えることが出来るのか? 

 

 それは酷く単純で彼を英雄たらしめたもの。

 

 気合い(ガッツ)と──そして何よりも後ろに守るべきものがいるからだ。

 

 さあ、魅せよスパルタクス。

 我が魂の輝き、叛逆の咆哮を。

 

 これこそが我が宝具(誇り)──

 

 

我が愛は爆発するゥ!

 

 

 ──疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)である! 

 

 滅びの光を押し返すほどの大爆発が遥か上空で巻き起こった。

 滅びの光を押し返し、空に描かれた魔術陣に罅を刻み──遂には完全に砕ききった。

 

 空に輝いたスパルタクスの一撃はまるで星の輝きの如く眩いものであった。

 

『魔力反応消滅……ほ、本当に相殺しちゃった……』

 

 ロマニの唖然とした声が立香達の間で響き、そしてそれは絶望が希望へと変わったことを意味していた。

 

「さあ、これで幕引き──終幕だ」

 

 彼の右手に宿る最後の令呪が輝く。

 

「アルトリア──我等の敵を討て!」

 

 アルトリアの宝具に、かつて巨神を打ち倒した聖剣が唸りをあげる。

 

啼け、地に落ちる時だ(束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流)……!

 

 星の聖剣から黒と金の魔力が溢れ出る。

 星の天敵たる巨神を討つのだと完全解放された聖剣の光が空まで照らすように輝く。

 

 この特異点に幕を引く聖光が満ちていく。

 

 それを前にアルテラは──

 

 まだ、何も成せていない! 

 まだ何も報えていない! 

 

 まだ、まだ私は終われない! 

 

約束された──

 

 掲げられた星の聖剣。

 

 

──勝利の剣!

 

 

 放たれた星の息吹が巨神へと迫り──アルテラは最後の力を振り絞るように壊れた両腕を地面へと叩きつけてその衝撃によって身体をずらす事でコアへの直撃を防いだ。

 

 それでも体の半分以上は消し飛んだ。

 ほんの僅かな延命くらいにしかならないだろうが、それでも出来ることはある。

 

「言っただろう、終幕だと」

 

 彼の前に勢いよく飛び出してきたのはクーフーリンだった。

 宝具を投擲する構え取り、胸のコアを破壊する為の魔力を練り上げている。

 

 ──問題ない、いくら死に体と言えどゲイボルグの直撃くらいならば耐えきってみせる! 

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)

 

 投げ放たれた呪いの朱槍。

 それを前にアルテラは覚悟を決めて迎え撃った。

 

 

 

 

「──access(接続開始)

 

 じわりと世界が滲んだ。

 

connect

 

 がそれを照らした。

 

rewrite

 

 ■■は置き換わる。

 

 

 

 

「ガッ───!?」

 

 なんだ、これは。

 何がどうなっている? 

 

 なぜ、なぜ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!? 

 

 確かに躱したはずの聖剣の光。

 けれど、どういう訳か聖剣の光がアルテラの背後から核を貫いたのだ。

 

 混乱するアルテラの目の前に着弾する呪いの朱槍。

 本来であれば対象に当たるまで追撃するはずの朱槍はその効果が失われたようにアルテラに追撃することなく、持ち主のクーフーリンの下へと帰っていった。

 

 黒く染まっていく視界の中、彼を見てみれば口元から大量の血を吐きこぼしていた。

 きっと彼が何かしたのだろうというのは分かる。

 

 なら一体何をした? 

 

 アルテラは考える一体彼が何をしたのかを。

 彼は一体どんな魔術を──現象を引き起こしたのかと。

 

 ……躱したはずの聖剣の光、効力を失った呪いの朱槍、()()()()()()()()()()──? 

 

 あ、と声が漏れた。

 アルテラは気付いた、気付いてしまった。

 彼の扱う魔術が、変異した置換魔術がどう変わったのかを。

 

 もしそうなのだとすれば……。

 

 アルテラの顔が青ざめていく。

 だって、もしも、もしもこれがそうなのだとするとこの特異点で彼が瀕死になってしまったら……。

 

 数多の異形の死骸、ヴォイドセル、そして聖杯。

 

 ──材料が揃いすぎている。

 

 そこまで気がついた時、アルテラの目に映ったのは──彼が藤丸立香を庇い、殺したはずのレフ・ライノールに背後から胸を貫かれていた姿だった。

 

「やだ、だめだ、ます、たぁ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだよ、まだ耐えてちょうだい」

 

「こ、子イヌが死んじゃうわよ!? それでもまだ行っちゃ駄目なの!?」

 

「ええ、まだ駄目よ。あの子に気付かれたら駄目。その時点であの子は警戒してしまう、取り返しがつかなくなってしまう」

 

「うぅ、でもぉ……」

 

「まあまあ、茶でもシバいてのんびり待つのが良いのだな」

 

「……寧ろ何であんたはそこまで落ち着いてるのよ。私、真っ先にあんたが出ていくんだと思ってたんだけど?」

 

「むふん、キャットを侮って貰っては困るのだワン。これでもキャットは待てと言われたら待てる健気に尽くす良妻系忠犬キャットなのだ」

 

「……本当は貴方がいの一番に飛び出したいでしょうに。偉い子なのね」

 

「勿論だワン! キャットは待つことにはもう慣れたのだ。何せ1万年と2千年前から愛するご主人のこと待っている故」

 

「……そうね、ずっと、待っていたものね」

 





ヒューッ!流石レフだぜ!
心臓をドスッと一突きして致命の一撃とは最高だな!
そのせいで地雷が全部爆発したんですけど???

以下、読み飛ばしてもらって構いません。

すごく長い時間掛かりましたがセプテムが漸く終わりそうです。
これも感想や評価、誤字報告などをして下さる皆様のお陰です。
それがモチベとなってエタらずに済んでいます。イイネクレ-
今後ともエタらないように書いていくので評価や感想などの餌を定期的に投げてください(承認欲求モンスター)
セプテム終盤ということで漸く全員の情緒をグチャらせてくるホモくんもかけそうでニコニコです。
ちなみに今回のセプテムで一番情緒をぐちゃぐちゃにされるのはもちろん立香ちゃん……ではなく、ロマニです。
うぅ……ロマニ、絶対吐かせてあげるからね……!
お前ん家のストレス管理ガバガバかよォ!?
ところで本家にドラコーが来ましたけどあれって、クラスビーストなんですってね?ふーん^^
人理くんも大概ガバガバ。


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星が堕ちていく

 

 巨神が星の聖剣に呑まれて沈む。

 コアを貫かれ、その巨体はピクリとも動かない。

 

 カルデアはセファールに打ち勝ったのだ。

 

「〜〜っ! やったね、望幸!」

 

「ゲホッ、ゴホッ! ……フヘェェ」

 

「わ゛───っ!? 大丈夫!? 大丈夫だよね!?」

 

 満面の笑みで彼の方へと駆け寄った立香は盛大に噎せて喀血する彼に驚愕する。

 

 やはり無理をしていたのだと立香は顔を顰めながら、魔術による応急処置を施す。

 魔術をろくに扱えない立香の治癒魔術では微々たる効果にしかならないが、それでもないよりマシだろうと懸命に魔術を発動させた。

 

 淡い緑色の光が彼の体を包むとほんの少しだけ、彼の表情が和らいだような気がした。

 

「ありがとう、少し楽になったよ」

 

「うん、どういたしまして。……まだ、辛いよね? 帰ったらドクター達にちゃんと治してもらおうね」

 

「ああ、そうだな。そのためにも聖杯を回収しようか」

 

「あ、うん! そうだよね、私回収してくる!」

 

 確かにその通りだと、倒れた巨神の方へと駆け寄ったその時───

 

立香ッッ!!!

 

 酷く、焦ったような彼の叫び声が聞こえた。

 

 何だろうと思って振り返ると今まで見たことがないほどの必死な形相で此方に向かって走る彼──そして()()()()()()()()()()()()()

 

「お見事お見事。いやはや、まさかコレすらも倒してみせるとはね」

 

 ねっとりと耳に絡みつくような不快な声。

 この声の持ち主を私は知っている。

 

「そのしぶとさにはいっそ寒気すら覚えるよ。……とは言え、セファールを破壊したカルデアの戦力だけは評価を改めねばならんな。──その為にも役立たずの藤丸立香、()()()()()()()()()()()()

 

「え──?」

 

 これから何が起きるのか、そんなことも分からないまま藤丸立香の人生は幕を閉じようとして──視界が暗転した。

 

 肉が裂ける音、骨が砕ける音、大量の血が地面に落ちる音が酷く鼓膜を揺らした。

 理解が出来ない、したくない。

 目の前の現実を受け入れたくない。

 

「ハ、ハハハ、ハハハハハハ!」

 

 レフ・ライノールの悪魔のような高笑いが響く。

 愉快で仕方がないと言わんばかりの喜悦の籠った笑い声が。

 

「まさか本当にこんな役立たずを庇うとはなぁ!? 実に滑稽で愚か極まりないよ──星崎望幸」

 

「ぐぅっ──!」

 

 私が先程まで立っていたはずの場所で、望幸がレフ・ライノールに胸を貫かれていた。

 

「しかし、腕の欠損のみならず内臓のほとんどを損傷──いや、そもそも形を保っているものがほぼ存在しないと言うのに良くもまあ何食わぬ顔で生きていられるものだ」

 

 その生き汚さには吐き気を催すよと、刺し貫いた手で嬲るように彼の体内を掻き回す。

 ぐちゅぐちゅと耳障りな水音が響く。

 

「ふっ──!」

 

「おや、まだ攻撃するほどの気力があるのか」

 

 レフの眉間へと銃を突きつける彼。

 しかし、その行為はあまりにも呆気なく──

 

「やはりイレギュラーとは言え塵は塵か、あまりにも醜悪だ。さっさと死んでくれないか?」

 

 彼が引き金を引くよりも早く振り抜かれたレフの裏拳が彼の頭部へと突き刺さる。

 そしてゴキリと骨の砕ける嫌な音と共に彼の首が不自然な方向へと曲がり、彼の体から力が抜けていく。

 

「お、あったあった。ではもう君は不要だ。醜悪な存在同士一緒に仲良くするといい」

 

 何かを引き千切るような音と共に彼は異形の化け物達の死骸の山へと投げ捨てられた。

 あまりにも強く投げられたからか、死骸の山へと激突した彼は雪崩込んできた死骸に呑み込まれていく。

 

「さて、これで聖杯の回収は済んだ。残る聖杯も回収する──前に、不穏分子である君達も掃除していかねばな」

 

「お前──っ!!!」

 

 嘲りの笑みを浮かべるレフに凄まじい速度で肉薄し、ありったけの憎悪を込めて旗を振るうジャンヌ・オルタ。

 

「殺す、お前だけは絶対にここで殺す」

 

「はっ、マスターを失ってもなおここまでの出力を誇るとは恐ろしいものだ。だが、自惚れにも程があるな。君のような紛い物の英霊が私を殺せるとでも?」

 

「死ねッ!」

 

 猛攻を仕掛けてくるジャンヌ・オルタを前にレフは大きく後方へと下がる。

 

「良いのかね? そんなに魔力を消費してしまえば彼と契約している君はあっさりと消えてしまうだろう。何せ、君達サーヴァントに魔力供給をする為の彼の心臓──聖杯は私の手の中にある……うん?」

 

 ジャンヌ・オルタに見せつけるように先程彼から引き千切った動かない心臓を見てレフは気付いた。

 

「これは心臓ではないな。先程心臓を抜き取ったつもりだったんだが……なるほど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 呪術とは一般的に自身の肉体を素材として組み替えることで発動する魔術だ。

 故に彼はレフに体内を弄られていた時に肉体操作の技術を用いて臓器の位置を入れ替えたのだろう。

 

 反撃したのもそれを悟られない為だったのか。

 

「は、本当に反吐が出るな。だが、あの傷に加えて首をへし折ったのだ。どのみち生きてはいまい」

 

「ちっ」

 

 そう吐き捨てながらレフは怒りで冷静さを欠いたジャンヌ・オルタの僅かな隙を突いて蹴り飛ばした。

 一度立香達の方へと大きく下がったジャンヌ・オルタは未だ衰えない所かますます燃え盛るような殺意をレフへとぶつけている。

 

『レフ、君は確かにあの時死んだはずだ。何で、生きているんだ?』

 

「この声は……ロマニか? 愚かな事だな、あれで私が死んだと思っていたのか?」

 

『……細切れにされ、カルデアスへと放り込まれたはずだ』

 

「はっ、なるほど。だから死んだと思ったということかい? あの程度で王の寵愛を受けた私が死ぬはずがないだろう。それに私が死んだというのなら──()()()()()()()()()()?」

 

『……っ』

 

 嘲笑するレフにロマニは口を噤んだ。

 

「それにしてもやはり英霊というのは愚図ばかりだな。此方に来てそうそう切り札の1つを使わされる羽目になった。本来であれば使うつもりもなかったんだがね」

 

 倒れた巨神の方へとレフは一瞬目を向けるとそう吐き零した。

 

 特異点Fにて玉藻によって八つ裂きにされたレフは万全を期す為に一度だけ蘇生する魔術を仕掛けていた。

 使うつもりなどなく、最初から本気で潰す為に最強のサーヴァントである破壊の化身、アルテラを召喚したというのに召喚してそうそう命令を下す前に叩き斬られ、王より授かった聖杯も奪われた。

 

 何たる恥辱。

 怒りに震えながらもゆっくりと体を蘇生させ、カルデアを壊滅させるべく情報収集に徹していた。

 情報を集めている時、実に役に立った白髪の男がいたが……まあ、この有様だ。

 既に死んでいることだろう。

 仮に死んでいなかったとしても己が手を下すまでもなくいずれ死に絶える。

 

「さて、私も早々に帰りたいのでね。悪いが此処で全員死んでもらおう。ああ、そうそう藤丸立香、君に一つだけ謝罪と感謝をさせてくれ」

 

「なに、を──?」

 

「先程は君を役立たずと呼んですまなかったね。君は役立たずなどではなかった。何せ──星崎望幸を殺す為に大変役に立ってくれたんだからなァ! ありがとう、藤丸立香! ギャハハハハハハァ──!」

 

 言葉を失う立香にその無様な姿を見てけたたましく笑うレフ。

 嘲笑って、嗤って、笑って──彼の体が靄に包まれ、本来の姿へと変化する。

 

 吐き気を催す邪悪が靄の中から姿を現す。

 不倶戴天なる人理の敵──

 

「では改めて自己紹介をしよう。私はレフ・ライノール・フラウロス! 七十二柱の魔神が一柱! 魔神フラウロス──これが王の寵愛である!」

 

「なんと言う醜さだ……! 今まで見てきたどんな異形よりも吐き気がするぞ!」

 

「そうか? そうかもなぁ! だが、()()()()()()()貴様らを滅ぼすのだ!」

 

 大地に突き立ち、空を穢す無数の目を携えた醜悪なる巨大な肉の柱が立香達を見下した。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 ──死が溢れていた。

 

 影の中で左腕を失い、胸に穴が開き、首は折られてピクリとも動かない。

 されど影は独りでに蠢いていた。

 影の中から虹色の液体が入った注射器のようなものが現れる。

 

 それは彼がこの特異点に来る前に作製していた劇薬。

 

 蠢く影はそれを動かない彼の心臓へと直接突き刺し、劇薬を投入する。

 瞬間、死んでいてもなお脈動していた心臓が更に激しく脈動する。

 空いた胸の穴から大量の血が吹き出していく。

 

 死骸の山が赤に染まる。

 じわりじわりとまるで零れ落ちた血が意思を持っているかのように死骸の山を侵食する─否、それだけではない。

 

 これでは足りないと言わんばかりに零れた血が更に周囲の化け物達へと絡み付く。

 

「──?」

 

 足元へ纏わりつく血に化け物達は不思議がり、次の瞬間声すら挙げる暇もなく、影へと呑み込まれた。

 

 ──進めましょう、戻しましょう。

 

 光を失った彼の瞳に光が戻る。

 

 ──時計の針を進めましょう、時計の針を戻しましょう。

 

 チクタクチクタク、時計の針は鳴る。

 

 ──螺子を巻いて、歯車を回しましょう。

 

 捻れ、折れた首が異音を立てながら元通りに。

 

 ──虚ろは世界へ、世界は星へ。

 

 青の瞳から赤の瞳へ、赤の瞳から虹の瞳へ。

 

 ──丈夫になった器に相応しい中身を注ぎましょう。

 

 死骸は消え去り、影は穴の中。

 でも足りない、これじゃあ足りない。

 核となるものが足りない。

 

『は、悪食にも程があるな』

 

 未だに動かない彼の目の前に現れたのはこの特異点で見かけたワームのような竜だった。

 

『しかしそれでは足りんのだろう?』

 

 竜から少女のような、妖艶な女性のような声が聞こえてくる。

 影は竜を見つめていた。

 

『こんな所で終われぬのだろう? 良いぞ、余は勇者が好きだ、足掻くものが好きだ。その終わりの果てを看取るのが好きだ。だが、だがな?』

 

 竜が彼の顔を覗き、影は竜を見ていた。

 

『お前だけは()の道連れになってもらう』

 

 竜は笑みを浮かべ、影は竜を笑う。

 

『寂しいではないか、虚しいではないか。看取る者が誰もいないなど。故に契約だ、()の名を呼べ。()が力をくれてやる。代わりにお前の終わりは余のもので、()の終わりはお前のものだ。終わりを看取る者同士、最期くらいは我儘を言っても良かろう?』

 

 竜は頭を差し出して、影は血だらけの手を伸ばした。

 

『さあ、さあ、さあ! 獣の名を呼べ! お前の口から獣の名を呼ぶのだ! そうすれば()はお前に力をくれてやる!』

 

 影は口を開いた。

 

 ──核があった。

 

 影が竜に覆い被さり、血がまとわりつく。

 

『なっ!?』

 

 ──照らしましょう、照らしましょう、照らして、照らして、照らせ、照らせ、照らせ照らせ照らせ照らせ照らせ! 

 

 竜が藻掻こうとする前に影が竜を潰した。

 潰された竜に血が、死骸が、遊星が纏わりついた。

 

『ま、待て! 力をやるとは言ったがそこまでくれてやるとは言ってないぞ!?』

 

 血を混ぜて、影を混ぜて、死を混ぜて、獣を混ぜて、遊星を混ぜよう。

 溶けて、融けて、解けて──決して分かたれぬ一つへと。

 

『あっ、あっ、あっ。コラ、止めぬか!』

 

 結合し、反発し、殺し合い、喰らい合い、やがては一つへと。

 

『あ゛っ────!? 此奴、余の力を結構毟って行きおった! えっ、これ余のせいか?』

 

 胸の穴から影が溢れ、千切れた左腕へと纏わりつく。

 そして人ならざる歪な竜の腕が生えた。

 全てを拒絶するかのような鋭く研がれた刃物の如き逆鱗のみで構成された醜悪な竜の腕。

 だが、変化はそれだけでは治まらなかった。

 

 ブチブチと音を立てて太く強靭な尻尾が生えていく。

 

 彼の──星崎望幸の体は文字通り組み替えられていく。

 人ならざる化け物へと。

 

『むぅぅ……だが、これ以上ないほどの楔か。余を呼んだ時は覚悟しろ。毟られた以上にお前から搾り取ってやる。ああ、そうだ、これだけは言ってやらねばな──』

 

 今もなお体を作り替えながら彼はゆっくりと体を起こした。

 

──おはよう、我が愛しの星よ

 

 虹の瞳は赤の瞳へ、赤の瞳に星が宿る。

 妖しく輝く鮮烈な赤のコアを手に彼は立ち上がった。

 此方を映す悲哀と絶望に揺れる瞳を受けながら。

 

星、満ち始め。世界、微睡み

 

 チクタクチクタク。

 

虚へと帰結する

 

 ()()()()()()()()()

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 フラウロスと立香達との戦いは熾烈を極めていた。

 それはレフが魔神フラウロスとしての力を完全解放したことによるものと、立香達がロムルスから休む暇なく連戦を強いられていたからであり──

 

「…………」

 

 残されたマスターである立香がショックから未だに立ち直れていないことが何より問題だった。

 

 自分がいたから、自分が一人で動いたから彼は死んでしまった。

 

 目の前で胸を貫かれ、首をへし折られた。

 

 その光景が目に焼き付いて離れない。

 肉を裂く音が、骨が砕ける音が耳にこべりつく。

 

 私のせいだ、私が弱いせいで、私が、私が、私が……。

 

 幾度となく繰り返される記憶。

 彼の胸に空いた穴から覗く内臓が、首が折れた彼の瞳から光が消え、力が抜けていく姿が消えない。

 

 何故彼が死ななければならなかったの? 

 

 ──私を庇ったからだ。

 

 何故彼が死ななければならなかったの? 

 

 ──私が弱かったから。

 

 なんで私は今生きているのだろう。

 本当に生きるべきは彼だったはずなのに。

 なんで足手まといの私が生き残って、彼が死ななければならなかったんだ。

 

 繰り返される自問自答に立香の心が悲鳴を上げていた。

 体がとても寒い。

 カルデアに来た時よりも体の芯から凍えているようだった。

 

 まるで半身を失ったようで、心に決して埋まることのない大きな穴が空いてしまったようで──身体中の熱が抜けていく。

 

 このまま凍えてしまえば、また彼に会えるのだろうか? 

 

 藤丸立香の心が折れていく──その瞬間、アルトリアが立香の胸倉を掴み上げた。

 

「いい加減気をしっかり保て藤丸立香!」

 

「……」

 

「いつまでそのような無様を晒すつもりだ! そうして腑抜けて彼奴が拾った命をわざわざ捨てるのか!?」

 

「……」

 

「それに──なぜまだ気づかん!? 我等はまだ消えておらんのだぞ!」

 

「……ぁ」

 

「そうだ、我等はまだ消えていない。魔力供給が途絶えていない! なら、彼奴は、望幸はまだ生きていることの証左だろうが!」

 

「いき、てる?」

 

 何処か自分に言い聞かせているようなアルトリアの言葉に、立香の瞳に僅かな光が灯る。

 

「生きている! 生きているとも! 生きていなければ我等はここにいない! だから我等が今やるべき事はただ一つ。あの気色の悪い肉の柱を殺して彼奴を治療してやる事じゃないのか!?」

 

 生きてる、生きている。

 彼はまだ死んでない──なら、私が今すべきことは。

 

「……ごめん、アルトリア」

 

 立香は自分の両頬を思い切り叩き、大きく息を吐いた。

 アルトリアの言う通り彼がまだ生きているのならやるべき事はひとつだ。

 

 ──レフ・ライノールを今度こそ完膚無きまでに破壊する。

 

 立香の瞳に確かな光が宿る。

 けれどそれは今までのような穏やかで暖かな光ではなく、昏く焼き尽くすような激しさを伴った光だった。

 

「それからありがとね。私はもう大丈夫だから」

 

「……そうか、ならいい。二度と私に手間を取らせるな」

 

 そう言ってアルトリアは立香から手を離すとフラウロスへと向き直る。

 冷徹な殺意に満ちた瞳を向けて聖剣に魔力を収束させる。

 

「藤丸立香、今ばかりはお前の指示に従ってやる」

 

「うん、ありがと。それから早くレフ教授を──()()()()()()()()()

 

 立香とアルトリアの二人はフラウロスの方へと向き直り、そしてアルトリアは凄まじい速度で突貫した。

 

「ハハハ! 怒りに飲まれて動きが単調だなァ!?」

 

 フラウロスの無数の瞳から光が放たれると共に光の柱が乱立し、爆発を引き起こす。

 それを見て避けきれないと判断したアルトリアは爆風に対して剣を振るい、爆風に切れ込みを入れるという離れ業をやってのけて、ダメージを必要最低限に抑え込みフラウロスの無数にある瞳に聖剣を突き立てようとする。

 

「ハァッ!」

 

「手緩いぞ」

 

 瞳を潰そうとした瞬間、フラウロスの瞳全てがアルトリアを凝視し、妖しく輝く──

 

「ガンド」

 

「なんっ──ぐぅぉおおおおおっ!?」

 

 コンマ数秒にも満たない麻痺。

 けれど目を一つ潰すには十分過ぎる時間だ。

 

 突き立てた聖剣が眼球へと深く突き刺さり、そして傷口を広げるように乱雑に引き抜いた。

 吹き出る血飛沫にアルトリアは汚物を見るような蔑んだ顔をして近くに存在したもう一つの目を蹴り飛ばして後ろへ下がる。

 

「ぐぅぅ──っ! やってくれたな、藤丸立香!」

 

 忌々しげに睨むフラウロスに対して立香は早鐘を打つ心臓を落ち着かせ、恐怖で震えそうになる体を抑えつける。

 睨まれるだけで思考が麻痺するような恐怖に駆られるが、それでも恐怖を抑えつけて、今自分が出来ることをする。

 

 そして一刻も早くフラウロスを片付ける。

 

 その為には──! 

 

「そっちばかり見てて良いのかしら?」

 

 魔力を必要最低限まで抑え込み、気配すらも極限まで殺したジャンヌ・オルタがアルトリア・オルタが潰した目の死角から忍び寄り、旗を振りかぶる。

 

「馬鹿が! お前程度の英霊にこの私が気づかんと──うっ!?」

 

「ガンド」

 

 またしてもフラウロスの動きが止められる。

 勿論、ジャンヌ・オルタがそんな隙を見逃す訳もなく、フラウロスの巨体が衝撃で折り曲がる程の威力の叩きつけがフラウロスの目を潰す。

 

「燃えなさいな」

 

 加えて、発火。

 目の水分が瞬く間に蒸発させられる火力で以って目が焼かれた。

 

「ぐぅぅううううう──ッ!?」

 

 フラウロスは苦しみにもがきながらもその巨体を鞭のようにしならせ、体当たりを仕掛けるが既にその場から離脱しているジャンヌ・オルタに当たることはなく、虚しい風切り音が鳴り響くだけだった。

 

「鬱陶しい、鬱陶しいな藤丸立香ァ! 英霊の背後で怯えることしか出来ん足手まといが──ッ!」

 

「そうだね、あなたの言う通りだよ」

 

 私は彼のように強くはない。

 前に出て、英霊達と戦えるような強さもなければ便利な魔術によるサポートだって彼に遠く及ばない。

 カルデアから支給された礼装がなければ魔術だって扱えない足手まとい。

 だから英霊達に戦ってもらってその後ろで控えておくことしか出来ない不甲斐ないマスターだ。

 

 そんなマスターだったから彼をあんな目に遭わせた。

 

「でも、後ろで怯えてばかりの足手まといでも出来ることはある」

 

 敵はフラウロスただ一柱だ。

 動きをつぶさに観察しろ、瞬き一つしただけで反撃の機会が失われると理解しろ。

 地に根が生えたように動けないフラウロス相手にならばそれが出来る。

 

「行きます!」

 

 マシュが大盾を持ってレフへと突貫する。

 それに合わせるようにクーフーリンが、ジャンヌが追撃を繰り出す。

 それを見て立香はもう一度手を銃の形にしてフラウロスに向ける。

 

「間抜けが! このフラウロスがそう何度も同じ魔術をくらうと思うな! こうして対魔力を上げてしまえば貴様如きのガンドなぞ効くわけがなかろう!」

 

 フラウロスの瞳が忙しなく動くと同時に体表面に薄らと魔力障壁が展開される。

 確かにフラウロスの言う通り、こうやって対策されてしまえば立香の動きを拘束するガンドは意味をなさない。

 

 だから──

 

「全体強化!」

 

 ──ガンドなんて使うはずがない。

 

 分かりやすいブラフに乗ってくれたフラウロスには感謝だ。

 これがケイローン相手ならば即座に看破され、魔術を阻害されて不発に終わったことだろう。

 

 マシュ、クーフーリン、ジャンヌの全体的なステータスが一段階引き上げられ、突如として加速した彼らにフラウロスは反応が遅れて攻撃を許してしまう。

 

「猪口才な……!」

 

 これが通用するのもフラウロスが慢心し、藤丸立香を脅威として看做していない今だけだ。

 今の自分ではやれる事が限られている。

 故に対策されてしまえばあっという間に役立たずになる事だろう。

 

 そうなる前に──魔神フラウロスを完全に撃破する。

 

「鬱陶しいぞ、死に損ない共が。何たる醜悪さだ。見ているだけで目が腐る」

 

「あら、だったら全部焼いて消毒してあげるわよ?」

 

「ほざけカスがッ! これ以上好き勝手出来ると思うな!」

 

 フラウロスを中心に莫大な魔力が集中する。

 

『強力な攻撃が来るぞ!』

 

「ジャンヌ、宝具を! マシュもお願い!」

 

「任せてください!」

 

「はい、マスター! マシュ・キリエライト、宝具を展開します」

 

 大きく後ろへ下がり、フラウロスの攻撃に対してジャンヌとマシュが同時に宝具を展開する。

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)

 

疑似展開/人理の礎(ロードカルデアス)

 

 強力な防護宝具にフラウロスの魔力を収束した砲撃が極太の光線となって激突する。

 マシュの宝具、疑似展開/人理の礎によって衝撃の大部分を吸収され、吸収しきれなかった攻撃もジャンヌの宝具によって完全に防がれた。

 

 そして爆炎の中を突破し、フラウロスへと切り込んでいく式とネロ。

 

「ふっ──!」

 

「ここで散れッ!」

 

「舐めるなァッ!」

 

 迫る式とネロの剣に対して防壁を張り、反撃で殺してやると意気込むフラウロス。

 術式を練り上げ、障壁を張る──その瞬間。

 

「その首を──いや、命を頂戴しようか」

 

 背後から声が聞こえた。

 

不還匕首(ただ、あやめるのみ)

 

 ひらりと短刀が舞い、フラウロスの背後に致命の一撃が突き刺さった。

 

「ガァァァアアアッ!?」

 

 激痛、そして凄まじい不快感。

 即死こそしないものの全身に回る毒がフラウロスの思考を掻き乱した。

 故に障壁は展開されず──式とネロの斬撃がフラウロスの体を切断した。

 

「荊軻!」

 

「すまない立香。出るタイミングを窺っていたら遅れてしまった」

 

 フラウロスの背後から現れたのは暗殺者のサーヴァント、荊軻だった。

 

「貴様……一体どうやって……!」

 

「ん? 不思議なことを聞くのだな。私は暗殺者の英霊だぞ。姿も気配も消してお前を確実に殺せるタイミングを窺っていただけだよ」

 

 お陰でとんだ大失態を犯してしまったが、とそう呟きながら短剣にこびりついた血を拭う。

 そして今までとは見る影もないほど弱った姿を見せるフラウロスに冷酷な目を向ける。

 

「……魔神とは毒では死なないのか」

 

「は、は、貴様ら凡百の英霊如きの毒でこのフラウロスが死ぬものか」

 

「そういうものか──なら死ぬまで刺し続けるだけだな」

 

 短剣の切っ先を向ける荊軻。

 その瞳には情など一切ない冷めきった殺意だけが浮かんでいた。

 

 荊軻による不意の一撃と式とネロによる斬撃をまともにくらったフラウロスは確かに弱っている。

 けれど、あと一手足りない。

 フラウロスを確実に殺し切るための後一手が。

 

 立香は思案する。

 先程は全体強化をマシュ、ジャンヌ、クーフーリンのみに限定したが、今度はこの場にいるサーヴァント全員に付与するべきかを。

 

 先程礼装を使用したばかりで、全体強化のリキャストはまだ終わっていない。

 ガンドのように低燃費かつ立香でも撃てるような簡易魔術ならば礼装のアシストありで連続二回くらいならばギリギリ撃てる。

 

 だが、全体強化の使用する魔力は礼装によるアシストがあっても相当にきついものだ。

 発動自体は礼装が補助してくれるだろう。

 だが、使用する魔力だけは補ってくれない。

 リキャストが終わらなければ自前の魔力でどうにかするしかないのだ。

 

 立香の魔力は雀の涙だ。

 今の魔力量では全員分足りるか、もしくはギリギリ足りないかどちらかだ。

 

 だが、一刻も早く彼を助ける為にやるべきだと判断して全体強化を使用する為に魔力を練り上げる。

 

「ぅっ、ぁ───!」

 

 瞬間、頭が万力で締め付けられたかのような痛みに襲われた。

 転げ回りたいほどの痛みが立香を責め立てる。

 呼吸が荒くなり、心臓が早鐘を鳴らす。

 

 痛い、痛い、痛い──でも、私がやらなくちゃ。

 

 チカチカと視界が明滅する。

 鼻から血が吹きこぼれ始める。

 

 激痛に必死に耐えて練り上げた魔力を解放する──! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──藤丸立香の成長を確認

 

 ──戦闘による成長を予測

 

 ──……今回の戦闘ではこれ以上の成長は見込めません

 

 ──藤丸立香の魔力欠乏による後遺症の発生率17%

 

 ──後遺症による今後のチャートの乱れが発生

 

 ──藤丸立香のこれ以上の戦闘を許可できません

 

 ──これ以上の時間の浪費は認められません

 

 ──迅速な対応を要求します

 

 

「これ以上は時間の無駄だ」

 

 

 駆動音が鳴り響き、莫大な魔力がある一点に収束する。

 フラウロスと比較するのも烏滸がましいほどの大規模の魔力が収束し、注ぎ込まれていく。

 

「何だ──ッ!?」

 

 まるでブラックホールのように周囲の化け物達のみを引きずり込むナニカ。

 虚無が如き暗黒の穴に引きずり込まれ、その全てが分解され魔力へと変換される。

 

『凄まじい魔力反応だ、それに霊基反応だなんて! まさか今からサーヴァントでも召喚されるとでもいうのか!?』

 

 暴風が収まると同時に穴が消える。

 そしてそこにいたのは──

 

「何で、何であんたが……」

 

 ジャンヌ・オルタの声が震えていた。

 

()()()()()姿()()()()()()()()()()!」

 

 ──引き千切れていたはずの左腕は醜悪な竜の腕へ、太く強靭な尻尾が苛立ったように大地を叩き付け、綺麗な青の瞳は最早見る影も無く、赤と黒のみで構成された化け物の瞳へと成り果てた彼がいた。

 

 今まで取り乱した様子がなかったジャンヌ・オルタが尋常ではない様子で頭を抱えて取り乱していた。

 まるでこんなことになるはずじゃなかったのにと嘆く様にその瞳からポロポロと涙を零している。

 

「……は、醜いな、醜すぎるぞ星崎望幸。そんな無様を晒してまでまだ生きると? そこは死んでおけよ、人として。いや、そもそも何故死んでいない?」

 

 フラウロスはその智慧故に彼の身に何が起きたのかを理解した。

 理解をした上で初めて彼に憐憫の情を向けた。

 

「ヴォイドセル」

 

 彼がそう呟くと掌に妖しく輝く赤いコアが出現する。

 そのコアから渦巻く魔力はあまりにも異常だ。

 人の身であれを取り込んでしまえば間違いなく死に絶える──だと言うのに。

 

「レフ・ライノール、ひとつ聞きたいんだがお前は──」

 

 胸に空いた穴へと躊躇いもせずに放り込み、彼は化け物へと堕ちていく。

 

 胸の穴は塞がり、彼の体から色が抜けていく。

 そう思わざるを得ないほど彼の肌は真っ白に、髪も徐々に徐々に白へと染まる。

 

 変わらないのは化け物であることへの証左たる赤と黒のみで構成された瞳だけ。

 

「──()()()()()()()()()?」

 

 彼の体から異音は鳴り止まない。

 彼の体の変化が止まらない。

 彼は今もなお、身体を組み替え続けている。

 

 星崎望幸が化け物へと堕ち切るまで後──。

 





セプテムで失うのは左腕──ではなく、人間性でしたの巻。
竜、遊星、ビースト、神性、その他諸々……こんなにごちゃ混ぜにされてホモくん良く人の姿保ってるな。

まあ、これから純粋な人じゃなくなるんですけど。

助けて玉藻ー!


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魔星


古戦場許すまじ



 

 星崎望幸のその異様な姿から見て分かる通り、カルデアの証明機器から観測される彼の反応は異常だった。

 

「新たな霊基反応あり! 発生場所は──望幸くん!?」

 

「嘘だろ!? なら今の彼はマシュと同じデミサーヴァントになってるとでも言うのか!?」

 

「い、いや、これは違うぞ! デミサーヴァントとはまた異なる──というか、何だこの霊基反応は!?」

 

「望幸くんのバイタルグラフが正しく観測出来ません! 異常値を更新し続けているせいで計器の反応が狂っています!」

 

 カルデアは混乱に陥っていた。

 彼のバイタルが危険領域に突入したかと思えば次の瞬間にはその全てが反転して異常な数値を示し続けていた。

 

 加えて、彼から発せられるシグナルから読み取れる情報は、彼が竜であり、神であり、遊星の化身であり──未だに解明できぬ異常存在である、という事だった。

 

 今特に反応が強いのは竜の因子だ。

 次点で遊星の因子、その次に解明不能の因子と来て漸く人の因子となっている。

 しかし、人の因子は今も減少し続けている。

 

 このまま進んでいけばまず間違いなく彼は人の姿ではいられなくなるというのがカルデアの職員全員の見解だった。

 

「望幸くん! 望幸くん! 聞こえているだろう!? 頼むから今すぐそれを止めてくれ! そんなことをしたらダメだ! 人に戻れなくなってしまうんだぞ!!!」

 

 ロマニは必死に呼びかけるが、最早彼にはロマニの声など届いていない。

 時間が経つにつれて彼という人間が人間でいられなくなっていく。

 

 星崎望幸という人間が終わってしまう。

 

「玉藻! あなただったらあちら側に行って彼が止めることが出来るでしょ!?」

 

「煩い! それが出来るのであれば既にやっておる!」

 

「なら何で──」

 

()()()()()()()()()()! どれだけ座標を確定させても次の瞬間には全く別の物へと擦り変わっておる! せめて、せめてご主人様以外の標があれば……!」

 

「ならマシュの盾で召喚サークルを展開させるのは如何でしょうか?」

 

 焦った様子の玉藻とカーマの間に入ってきたのは今この場において頼りになるであろう深き智慧を持つケイローンだった。

 

「ケイローン殿、それはつまり召喚という形であちら側に飛ぶということだろうか?」

 

「ええ、大まかに言えば。私達がこのカルデアに召喚された時と同じようにマシュの盾を使えばあちら側に行けるかと」

 

 エミヤの質問にケイローンは肯定する。

 

「だが、魔力の問題はどうする? 龍脈がなければ特異点側では召喚を行うなどとてもじゃないが──いや、そうか聖杯か」

 

「その通りです。今、あちら側には二つの聖杯とそして彼等がぶつかりあったことによる散らされた大量の魔力があることでしょう。それを利用すればサーヴァント一騎分位の召喚はできるはずです」

 

「いや、それでは足りん」

 

 ケイローンの案を否定したのは他ならぬ玉藻自身だった。

 力無く首を左右に振る玉藻は悔しそうに唇をかみ締め、手を強く握る。

 

「妾を呼ぶには高々一騎分の魔力ではまるで足らん。それで呼ぶにはご主人様自体が妾を求めてくださるか──或いは妾を呼べる程の触媒があるかのどちらかでなければ……」

 

 此処に来て玉藻の霊基の規格外さの弊害が現れた。

 サーヴァントを一騎呼ぶ程度の魔力量ではあまりにも足らないのだ。

 導の灯火にはなり得ない。

 何故ならば玉藻という規格外の霊基がその灯火を自身の輝きで消してしまう。

 

 強すぎる光が弱い光をかき消してしまうように、サーヴァント一騎分の魔力量の灯火では玉藻がそこに存在するだけで光を消してしまう。

 

 ──どうする? どうすればいい? 

 

 思考をぐるぐると高速で回すが良案は思いつかない。

 ご主人様自身が私を呼んでくださればすぐにでも駆けつけることが出来よう。

 けれど、ご主人様はそれをなさらないだろうということは今までの経験則から理解している。

 

 ご主人様はきっと今日ここで人であることを止めるつもりだ。

 

 なら、それの障害に足りえる私を呼ぶ事など決してありえない。

 

 だからご主人様が私を呼ぶ以外の方法で私があちら側に赴かなければならない。

 単独顕現を用いた移動は座標が乱れ続けて捕捉できない以上、下手に飛べば時間軸と座標のどちらからもズレた位置に飛ぶ可能性だってある。

 そうなれば絶対にご主人様を救えない。

 

 マシュの盾による召喚サークルの設立ともう一つ、私を呼べる程の触媒があれば……! 

 

 だが、玉藻を呼ぶ程の触媒となればそんじょそこらの触媒では到底使えない。

 それこそ殺生石クラスの特級の触媒か、或いは分け身である自分自身が呼ぶしかない。

 

 大切なご主人様は今も人から離れ続けているというのに、私は何故此処で何も出来ずに指をくわえて見ていることしか出来ないのだ。

 

 こうならない為にこの姿で来たのではなかったのか。

 

 いくら思考を回せども良案は思いつかず、時間だけがただ無為に過ぎていく。

 大切な人が人から化け物へと堕ちていく姿をただ見ていることしか出来ない。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 星崎望幸が色を失った。

 

 ヴォイドセルによる汚染だとか、数多の化け物を取り込んだことによる反動だとか理由は多々あるのだろうが、立香が異形の姿へと変貌していく彼を見た時に一番最初に浮かんだ考えがこれだった。

 

「随分と醜い姿になったものだな。そうして節操なしに取り込めばどうなるかなど考えずとも分かることだろうに。それとも何だ? それすら理解出来なかったのかね?」

 

 フラウロスは眼前に立つ星崎望幸に対してそう吐き捨てる──あまりにも生き汚く、滑稽なほどに醜悪な姿だと。

 神経を逆撫でするように罵倒し、これで怒るなりなんなりして精神が乱れば御の字だとそう思うフラウロスだが、顔色一つ、眉すらピクリとも動かずに此方を見ている彼に挑発は効果がないかと内心舌打ちをする。

 

 悍ましい程に感情の機敏を感じ取ることが出来ない。

 まるで、己の人間性と一緒に心も捨てようとしているかのようだ。

 

「それにしてもヴォイドセル、ね。たかが人間如きがセファールの真似事でもするつもりか?」

 

 そう問い掛けるフラウロスだったが彼は応えない。

 

 フラウロスの言う通り、彼はヴォイドセルを用いてセファールの真似事をしているのだろうか。

 そう思ってしまう程には彼の体色はセファールのそれに酷似していた。

 異なる点を上げるとするのならば彼の方がより白いというのと──()()()()()()()()()()()()()()

 

「口もないのに随分とお喋りだな。そんなに喋りたければ家に帰ってお仲間と喋ったらどうだ? ……それとも家に帰れないからここで喋っているのか」

 

「貴様……」

 

「どちらにせよ、お前の事など然したる興味もないが。だからまあ──」

 

 彼の魔力が急激に膨れ上がり、体に刻まれた紋様が妖しく輝く。

 

「──今すぐに消えてくれ」

 

 瞬間、彼の竜の左腕から極太の光線がフラウロスへと向けて放たれた。

 大多数の化け物達を魔力へと変換し、聖杯に溜め込んだ魔力をヴォイドセルが汚染。

 セファールの特性でもあった破壊したものを魔力へと変換し吸収する力が光線そのものに宿り、大地ごと砕きながらフラウロスへと迫る。

 

「この程度ッ!!」

 

 セファールの放つ攻撃と同質の物ではあるものの、威力に関して言えばセファールと比べ物にならない程に弱々しい。

 故にこの一撃を防ぎ切り、返しの魔術で殺してしまえばそれで終いだ。

 

 フラウロスの目が輝くと同時に五重の魔力障壁が展開された。

 そして激突。

 

 まず障壁の一枚目が瞬きの間に破壊された。

 砕けた障壁を魔力へと変換し、それを吸収した光線は更に威力を高め、二枚目の障壁に牙を突き立てる。

 ガリガリと障壁が削られるような音と共に二枚目も突破、続く三枚目も同じように削り突破。

 四枚目に差し掛かった時、漸くその勢いは衰えを見せた。

 

「ぐっ、ぬぅぅぉぉおおおお!!」

 

 最後の魔力障壁と光線がぶつかり凄まじい量の火花が散らされる。

 下手に気を緩めればあっという間に障壁を食い破ってくることだろう。

 

 想定以上に火力が高い。

 

 十全の状態ならば完璧に防げる自信はある。

 だが、こうも傷を負った状態では些かキツい。

 防ぐことは諦め、被害を最小限に抑える方に移行すべきか? 

 

 一瞬にも満たないほんの僅かな思案──魔神柱としてのスペックを発揮したコンマ数秒の思考だったというのに。

 

「あっ?」

 

 その僅かな隙の内に星崎望幸の位置が反転した。

 

「ガアアアアアア!?」

 

 式とネロが切り裂いた刀傷を抉るように光線が背後から捩じ込まれた。

 

 正面に展開していたはずの光線ごとフラウロスの背後へと置換し、正面に張られていた強固な魔力障壁を無視してフラウロスの肉体をヴォイドセルが汚染する。

 

 侵食、そして破壊。

 内部機構をズタズタに蹂躙し、汚染した傍から分解して純粋な魔力へと変換しようとヴォイドセルはフラウロスそのものへ干渉する。

 

「グッ、ギィィ……!」

 

 犯し、壊し、飲み干す。

 フラウロスという存在そのものが魔力へと変換されて星崎望幸というの名の聖杯に注ぎ込まれようとする。

 

「どうかただ無為に、そして速やかに消えて欲しい」

 

 魔神柱としての対魔力を高めることでヴォイドセルによる侵食速度を抑えているが、そう長くは続かない。

 であるのであれば──! 

 

「グゥゥ────ッ!」

 

 ブチリと肉が千切れる音ともにヴォイドセルに侵食されていた肉体の一部をフラウロスは切り落とした。

 切り落とされた肉片はあっという間にヴォイドセルによって侵食され、魔力へと分解された。

 

「お前も存外に生き汚いな」

 

「はっ、はっ、はっ。ほざけ……貴様如きにこの私が敗れるものか……!」

 

 変換された魔力を回収し、更に彼の体の自己改造は進んでいく。

 その身を戦闘へと特化させるべくより頑強な肉体に、そしてそれを動かす為の炉心(心臓)もまたより強大なものへと変貌させる。

 

 スッ、と彼が己の胸を指先でなぞればそれだけで影がまるで彼の胸の内から染み出してきたかのように溢れる。

 

炉心改装──材料指定:竜種

 

 立香達にも聞こえるほど一際大きな心臓の音が鳴る。

 そしてキィィィンと大量の空気を取り込むような音が聞こえた瞬間、彼の魔力量が倍以上に膨れ上がった。

 

「変換効率は最低か。まあ、まだ火は焚べられていないから仕方がない」

 

 そうボヤく彼にフラウロスは絶句する。

 魔力回路を用いずにただ呼吸するだけで魔力を生成する。

 そんなことが出来るのは幻想種の中でもひと握りしかいない。

 

「まさか貴様……心臓を竜の炉心へと作り替えたとでも言うのか!?」

 

「材料はそこらに転がっていたからな。そいつ等を取り込んでしまえば己の肉体の一部になるということだ。そして己の肉体の組み換えは呪術の最たるものだろう?」

 

 まあ、質は最低だからそれ相応の量が必要だったがと吐き零した。

 

 呼吸によって空気を取り込み、それによって得られるエネルギーを全て魔力へと変換する竜の炉心。

 脈動する度に魔力を生成し、それに反応するように彼の胸と背中に刻まれた紋様が赤く光る。

 

 そしてまた、得た魔力によって彼の自身の体もより化け物へと寄っていく。

 

 竜の爪はより鋭く、長く。

 竜鱗は分厚く、硬く。

 尾はより太く、強靭に。

 瞳孔は縦に大きく裂ける。

 

 未だ肩までしか侵食していなかった竜鱗は肩から胸へと生え始めていく。

 竜鱗が全身に回った時、それこそが星崎望幸という人間が終わる時なのだろう。

 

「貴様は……本当に人間か?」

 

 フラウロスは思わずといったふうに言葉が漏れた。

 今のこの姿を見て──という訳ではなく、彼自身が持つ技量と心の在り方を見てそう思ってしまったのだ。

 

 人から化け物に変貌するなどとてもではないがただの人間では到底耐えられるものではないだろう。

 自分が自分で無くなるのだ、たとえ強烈なまでの自己を持っていたとしても……いや、持っているからこそ自分が自分で無くなるという恐怖は人一倍味わうことになるだろう。

 

 一手間違えれば自我を失くし、正真正銘の単なる化け物と成り果ててもおかしくはない。

 

 それを恐怖の中で一手も間違えることもなく、今も尚自己の改造を施している。

 それもあらゆる異物を混ぜた上でだ。

 

 やっていることは燃え盛る火の中で特級の爆弾を作っているのと変わらない。

 

 ──あまりにもイカレている。

 

「星崎望幸、貴様は、貴様だけは今ここで必ず排除する! あってはならん、存在していいはずがない! 人が辿る一つの結末がこんな様などと!」

 

「そうだな」

 

 フラウロスは魔力を練り上げ、周囲一体を火の海に変えるべく魔術を構築する。

 火力、攻撃範囲共に今までのものとは比較にならぬ一撃。

 発動してしまえば自分自身さえも焼いてしまうだろうことは容易に想像がつくが……それでも星崎望幸はここで殺さねばならぬ。

 

 胸の奥底から湧き上がってくる使命感──或いは義憤に駆られたようにフラウロスは魔術を発動させる。

 

「燃え尽きよ!」

 

 乾坤一擲。

 

 生命体の存続を許さぬ光の柱が乱立し、自分ごと焼き払う。

 襲い来る激痛、だが星崎望幸を殺せるのであればとフラウロスは魔術を弱めるどころがより強化していく。

 

「望幸! お願い、避けてぇッ!!!」

 

 藤丸立香の悲鳴のような懇願にも似た声が聞こえる。

 乱立する光の柱は星崎望幸へと迫る。

 躱そうと思えば魔術なりなんなりを発動させればきっと躱せるだろう。

 

 だが、彼は回避行動を取るどころか一歩たりとも動くことはなかった。

 

 何故ならば彼の背後には立香がいたから。

 フラウロスは彼ならば必ず藤丸立香を庇うと予測して彼と藤丸立香が一直線上に重なるように魔術を発動させたのだ。

 

 躱せば藤丸立香は死ぬ。

 よしんばサーヴァントが庇ったとしても直撃した瞬間に攻撃範囲が膨れ上がり藤丸立香を巻き込む。

 

 そうなれば即死は免れても重傷は免れない。

 そうならない為には藤丸立香がいる場所よりも前でこれを受けねばならない。

 それこそ丁度──今彼が立っている位置くらいがギリギリ藤丸立香に被害が及ばない位だろう。

 

 つまりフラウロスが魔術を発動させた時点で藤丸立香を庇うのなら後ろに下がるという選択肢も回避するという選択肢も消えている。

 

 光の柱が迫る中、彼は首だけをゆっくり立香の方へと向けると出来うる限り優しく微笑んだ。

 

「大丈夫、俺はこんなところで死なないよ」

 

 光の柱が彼を飲み込むその直前──胸と背中に刻まれた紋様が『()()』した。

 

「みんなで生きて帰るって君と約束したから」

 

 光の柱は彼を飲み込み、直後に爆発と共に大量の炎が空へと巻き上がる。

 瞬間的に加熱させられた大気は竜巻を引き起こし、地面を巻き上げ、炎を纏った火災旋風へと変貌する。

 

「ぅあ──!?」

 

 離れた位置にいる立香ですら思わず呻くほどの熱風。

 肌を焼くような熱量、ならばその中心にいる彼は──? 

 

 最悪な未来を想起し、彼の名を叫び掛けた瞬間、火災旋風が一点に収束していった。

 渦を描いて徐々に徐々にその規模を縮小していく火災旋風はやがて消滅し、焼け焦げた大地だけが残った。

 

「星崎望幸、貴様……」

 

 焼け焦げた大地の中心にあるのは真っ黒に焼け焦げた星崎望幸の姿──のはずだった。

 いや、事実彼は焼け焦げて全身が真っ黒に染まり、ピクリとも動かない。

 だと言うのに何故今も彼から魔力の波動を感じる? 

 それも先程よりもずっと強大な魔力の波動を。

 

 フラウロスは先程からゾワゾワとした悪寒が止まらない。

 

 何か、何か致命的なミスをしたのではないか? 

 

 そしてその思考は決して間違いではなかったのだとフラウロスを思い知ることになる。

 

炉心起動──太陽炉

 

 バキバキと罅割れていく音を立てて焼き焦げて黒に染まった彼の皮膚が剥がれ落ちていく。

 同時に吹き出すのはかつてカルデアに充満していた覚えのある瘴気──によく似た白い靄だ。

 

 白い瘴気は彼の体を覆い、焼き焦げた皮膚を破壊していく。

 そして剥げた皮膚から現れたのは先程よりも白へと染まった純白の竜鱗だった。

 

 異変はそれだけで終わらない。

 

 彼の背中がボコボコと歪に膨れ上がり、皮を引き裂き、肉と骨を砕きながら突き破って出てきたのは竜の翼のようなものだった。

 自身の体躯以上に巨大な翼が体内からどうやって生えてきたのかと問いただしたい気持ちはあるが、それ以上に不可解なのがその翼の形状にあった。

 

 幻想生物ではあるが、竜とて生物であることには違いない。

 であれば、翼にも血と肉はある故に一目見れば生物の物だと認識出来るはずだ。

 

 だが、彼の翼はとてもではないがそうは思えない。

 

 無理矢理形容するならば戦闘機。

 機械じみた作りの翼は誰がどう見ても生命体が持っていいものでは無い。

 

 翼の先は一流の刀匠によって磨き研がれたように鋭い切っ先に。

 浮力を得る為に存在するはずの翼膜は存在せず、代わりにジェット機のような噴射口がズラリと並んでいた。

 

まダ、足りなイ……? なラ──

 

 ノイズに塗れた機械音声のような声。

 

龍脈置換

 

 彼の足元が輝き始める。

 何が起きたのか、それを理解するのはあまりにも簡単なことで、誰もが理解したくないものだった。

 

「彼を中心に龍脈が発生したとでも言うの……? いや、違うこれはまさか別の場所から龍脈そのものを持ってきた……?」

 

 大地が脈動し、まるで星が彼に魔力を惜しみなく注ぎ込むように龍脈が彼を中心に拡がっていく。

 

「貴様、()()()()()()()()()()!?」

 

 星崎望幸は答えない。

 

「有り得ない、有り得てたまるものかこんなものが!」

 

 フラウロスは発狂したように喚く。

 有り得てはいけない、ただの人であったはずの星崎望幸が──! 

 

龍脈侵食:ヴォイドセル

 

 彼の頭上に天使の輪のような、或いは光帯にも似た光を放つ輪が出現する。

 滅茶苦茶だ、滅茶苦茶にも程がある。

 あまりにも()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 高々、十数年しか生きていない人間が……否、人間がやっていい範疇をとうに超えているのだ。

 

虚ろは世界へ、世界は星へ

 

「ここで死に絶えろ星崎望幸! 貴様はあってはならん存在だ! 何故そこまで終わりきっている!? 何故そこまで終わっていて存在できている!」

 

 狂ったようにフラウロスは魔術を叩きつけるが、先程の一撃と今までの戦闘により消耗したフラウロスの魔術では有効打を与えることすら出来はしない。

 

 当たった傍からヴォイドセルによる侵食が発生し、魔力へと分解される。

 もはやフラウロスは星に届かない。

 どれだけ必死に手を伸ばしても星は遥か遠く、天上にて輝き始めた。

 

「何故だ、何故そうなる! 貴様の先にはまるで未来がない! 何なのだ貴様は! 何故、何故そうも──!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星は虚ろへと導く

 

 ガコンと音を立てて翼が変形し、まるで砲台のように全ての噴出口がフラウロスへと向けられた。

 そして龍脈からかき集めた魔力を収束させ、砲撃を放たれる。

 

「ぁ───」

 

 魔神柱としてのフラウロスを容易く飲み込めるほどの魔力砲撃は断末魔をあげることすら出来ずにフラウロスを消滅させた。

 後に残るのは砲撃によって削られた大地と彼の足元に広がる乾ききった砂漠のようにサラサラとした大地だった。

 

ちょっト、疲れタ。でも、まだ終わっテない

 

 彼の頭上に出現している光帯がくるくると回転する。

 それに反応するように魔力が嵐のように吹き荒れ、彼の体もまた変化する。

 最早倒すべき敵すらいないと言うのに彼の体の変異は止まらない。

 

 人から化け物へと転がり落ちていく。

 

「やめて、やめてよ望幸!」

 

 立香は必死に彼に近づこうとするが、彼を中心として吹き荒れる魔力嵐のせいで近づくことすら叶わない。

 弾き飛ばされ、吹き飛ばされ、手を伸ばすことしか出来ない。

 

 けど、それでも諦めたらダメだと必死に手を伸ばす。

 

 そんな立香を彼はジッと見つめて──

 

近づかないデ

 

 初めて明確な拒絶を示した。

 

「え、あ、何で……?」

 

 更に強く吹き荒れる魔力嵐に立香は手を伸ばすことすら出来なくなった。

 

今加減するのが難しいから危なイ、後色々ト不安定……喋り過ギ? どーせ暴風で聞こえないでショ

 

 吹き荒れる暴風のせいで彼の言葉が上手く聞き取れない。

 けれど確かに自分は彼に拒絶されたのだという事だけは理解出来た。

 

 ……考えてみれば拒絶されるのも当たり前だ。

 

 だって彼がああなったのは私が原因なんだから。

 私が弱かったから、私が足手まといだったから彼はああならざるを得なかったんだ。

 

 だから彼に嫌われたって仕方がないんだ。

 

 けれど──

 

暴風で聞こえないのは立香モ? ……あっ

 

 それでも彼が化け物に堕ちるのを黙って見ていていいわけが無い! 

 

 手を伸ばすことすら叶わないほどの暴風だとしても、私は必ず彼の下へと辿り着いてみせる。

 何度吹き飛ばされたって諦めてたまるものか。

 ここで諦めたら私は私を許せない──! 

 

 吹き荒れる暴風の中へと体当たりをするように突貫し、そして当たり前のように巻き上げられた石や土が体に叩き付けられる。

 

 正直に言って泣きそうなくらいに痛い。

 けど、望幸は私以上に苦しんで痛かったはずだ。

 だからこの程度耐えてみせる。

 

うーん、困っタ。凄く痛そウ。か、可哀想だけど一回マシュの所に吹き飛ばス? ……うぅ、ごめんネ

 

「きゃっ!?」

 

「先輩!! 大丈夫ですか!?」

 

 更に中へと踏み込もうと瞬間、彼が拒絶したかのようにより強く吹き荒れた暴風が私の体を持ち上げて吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた先に偶々マシュがいたおかげで大事には至らなかったが、また振り出しに戻ってしまった。

 

「助けてくれてありがとうマシュ。でも、私行かないと」

 

 支えてくれたマシュに礼を言って、またあの嵐へと向かおうとする。

 

「待ってください先輩! 確かに望幸さんを助けたいという気持ちは分かります。私だって今すぐにでも助けに行きたいです。けど、無策で行ってもまた弾き飛ばされるだけなんですよ!?」

 

「そう、だね。確かにマシュの言う通りだ。けど、それでも私は──」

 

 無策で突っ込んでもまた弾き飛ばされるのだろう。

 何度やっても無駄な結果に終わって、ただ時間だけが浪費されていくのだろう。

 

 だからと言って有効な策を考える時間はあるのだろうか? 

 

 ううん、無い。

 

 これはただの直感だ、数多の情報から導き出した予測では無い。

 藤丸立香のただの勘でしかない。

 

 それでも彼ならきっとという悪い信頼がある。

 

 私達が策を立てる間に彼はきっと化け物に堕ち切る。

 手を出してこないのならと、今よりも更に速く自己改造を済ませるだろう。

 

 なら、無策だろうと何だろうと彼が自己改造に集中出来ないようにあの嵐の中に突貫するべきなのだと……そう、私の中の何かが叫んでいる。

 

「ごめん、マシュ。確かにマシュが言ってることは正しいよ。でも、それでも私が行かないと駄目なんだ」

 

「先輩……」

 

 覚悟なんて疾うに済ませてるだろう藤丸立香? 

 彼はこの特異点で腕を失った、人間らしさを失ってしまった。

 

 なら私だって何かを失ったとしても彼を助け出すんだ。

 

 だって──

 

「私は望幸の幼馴染なんだから」

 

 足掻くことを諦めるな。

 神祖ロムルスだって言っていたじゃないか。

 私が真に守りたいと願うものは私の掌から容易く零れ落ちると。

 

 人理だって守りたい、けどそれと同じくらい……ううん、それ以上に私は彼と共に生きていたいんだ。

 

 化け物としての彼ではなく、人としての星崎望幸と。

 だから私は絶対に諦めないし、絶対に阻止してみせる。

 

 みんなで生きて──無事に帰ってみせるんだ。

 





立香ちゃんの直感通り、作戦立てる為にホモくんを一時的に放置してたら速攻で化け物堕ちしてました。
放置しなかったら侵食速度は緩やかになってすぐには化け物にはなりません。
ホモくんの口調がおかしいのは仕様です。

Q.RTA的に強化イベを中断させられるのはチャート通りなん?
A.(玉藻がいる時点で)はい。目標の値までいけばいいので。
つまりどっちに転んでもホモくんのチャート通りです。
人の心無いんか?
そんな贅沢なものうちには無いよ……


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落陽来たりて(紡いだ想い)


久しぶりのRTA視点です



 

 フラウロス撃破から始まる人理修復RTAはーじまーるよー! 

 

 前回ホモくんの強化を進めたことによってレフことフラウロスを撃破することが出来ました。

 ぶっちゃけレフに背後から致命の一撃された時は死んだかと思いましたね。

 

 まあ投げ飛ばされた先にヴォイドセルに汚染済みの化け物達の死体の山があったのでむしろ強化イベに繋がりましたけど。

 これがRTA走者の運命力って奴ですガハハ! 

 

 正直ヴォイドセルに関しては実用レベルまでの因子回収はできないかなぁと諦めていたんですが、セファールが雑魚を大量召喚してくれたおかげで規定量集まったのは激アツ展開でしたね。

 あれがなかったらマジで集めきれませんでした。

 

 さて、現在の状況なんですがホモくんのステータスに新たな項目が追加されています。

 HPバーと魔力バーの下にあるなんかやたら禍々しい色をしたこのバーですね。

 

 これはホモくんの侵食率を示すものでして、これがMAXになると無事ホモくんは脱人間宣言してから化け物になります。

 

 今回ですと私が意図的に竜に似通った存在にする為に竜の因子を沢山集めてたので進化先は竜種に似たナニカということになるでしょう。

 オルレアンでワイバーンを狩ったのはこのためです(大嘘)。

 

 ここで一つ注意しておきたいことがあります。

 

 それは侵食率のメリットデメリットです。

 

 まず大前提として侵食率というのはヴォイドセルや異形化、悪竜現象等のイベントをこなした時に発生するものです。

 要は人間から別のものと変貌する時に発生するものだと思っていただければ。

 

 それで侵食率が高まれば高まるほどに異形化は進み、ある一定の値まで行くと元の姿に戻すのに莫大な時間と魔力が必要となるか、侵食状態によっては二度と元の姿に戻れなくなるというのが特徴です。

 

 特に100%に到達するとあらゆる手段を尽くしても人には戻れません。

 聖杯を使用してもです。

 

 これは何故かと言われますと、スキルの一つである無辜の怪物に似たパッシブスキルに変化するからなんですね。

 

 無辜の怪物のデメリットで似たような例をあげるなら沖田総司の病弱なんてものが該当するのではないでしょうか? 

 彼女の病弱スキルも聖杯では消すことが不可能ですので。

 

 じゃあ侵食率100%になると二度と人の姿になれないのか? 

 いいえ、これも違います。

 

 人に戻ること自体は出来ませんが、人の姿になることは出来ます。

 英雄譚などにもあるように化け物などが人の姿に化ける技能──所謂擬人化という奴ですね。

 それを使えば人の姿になることは出来ます。

 種族は変わりませんけど……。

 

 ここまで話したところでメリットデメリットの話をしましょう。

 

 まずメリットに関してですが、自キャラのステータスが幸運を除いて爆発的に跳ね上がります。

 一段階上昇が当たり前のこのゲームにおいて脅威の三段階上昇です。

 最低でも二段階は上昇します。

 

 まあ、人間なんていう貧弱な存在から竜種など上位存在に変化するので当たり前と言えば当たり前の上昇なんですけど。

 

 自キャラが強くなればなるほどに特異点の攻略は安定しますし、進化先によっては特異点の高速移動なども出来るようになるという夢のようなメリットがあります。

 

 ここまで聞くとクソ強メリットでガンガン侵食率上げた方がいいやんと思われるでしょうが、これデメリットも相応に重いです。

 

 まずカルデア所属のNPCを除いた友好NPCの好感度がバチクソに上がりにくいです。

 場合によってはマイナスからのスタートとなります。

 まあ、見た目どう見ても人間じゃない上に垂れ流してる力が化け物由来のものですからね。

 

 血に飢えた表情を浮かべているグリズリーと仲良くしろと言われているようなものです。

 身の危険を感じ取って仲良くなるどころじゃありません。

 

 二つ目は侵食率によって敵から滅茶苦茶狙われます。

 特に善性が高いサーヴァントほど狙ってきます。

 殺しにくるサーヴァントもいれば拘束してこようとしてくるサーヴァントなど反応は様々ですが、通常時に比べて明らかに被ターゲット率が上がってます。

 敵対心が通常時より50%位は増加しているじゃないでしょうか。

 

 まあ、化け物は英雄と相容れない存在ですからね……仕方ない仕方ない。

 

 んで、三つ目のデメリットが一番ヤバイです。

 何と発生するイベントの種類と進行度によってはカルデアを離反して敵対します。

 これ考えたやつ馬鹿かな? 

 

 まあそうなった時点で人としての自我も肉体も何故カルデアと一緒に戦っていたのかも忘れて完全な化け物になったということですのでどう足掻いても人理の敵になるのは確定です。

 なのでカルデアと敵対するのも宜なるかな。

 人理を修復する為に頑張ってたのにいつの間にか人理を破壊する側になっていたなんてなぁ……。

 

 というわけで侵食率はメリットも大きいですが、デメリットもそれ相応に大きいのでご利用は計画的に、ということですね。

 

 あ、あと一つだけ伝え忘れていましたが、侵食率で発生するイベントは大体カルデア組のストレス値を上昇させることが多いです。

 ゲージ管理を見誤って発狂されないように気をつけよう! (32敗)

 

 今回のゲージ調整は……まあなんとかなるやろ! 

 

 現在のホモくんは見た目だけで言うなら竜に似通った特徴を持った人間……人間? のような状態です。

 ざっくり言うならドラコーの姿と酷似してますね。

 禍々しさと醜さはこっちが上ですけど。

 

 それで先程態々狙って竜に似せていると言いましたが、これに関しては純粋に全体的に強化する場合の効率が竜種が最も良いからです。

 伊達に地球の最強種族してないんやなって。

 

 他にも水中や陸上に特化した種族もありますけど、やっぱり制空権が一番大事ですよ。

 古事記にも制空権は必ず取れと書いてある。

 

 あとは何と言っても竜の炉心ですね。

 生きているだけで魔力を生み出す公式チート性能なので聖杯持ちのホモくん相性最高なんですよね。

 

 これで生み出した魔力を聖杯にどんどん突っ込んでいけば今までのように魔力をちまちま集めなくてすみますからねー。

 ホモくんがこれから先取得するであろう魔術は燃費悪すぎて聖杯一つの出力じゃあ足りない可能性が高いんですよね。

 

 なので竜の炉心というサブ動力炉を付けることで安定性を増加させるんですね。

 ……本音を言えば何処かの特異点で二つ目の聖杯を入手してデュアルコア運用したいところ。

 

 まあ、こんだけやらかしてしまえば警戒されるのは目に見えているので暫くは大人しくしておきましょう。

 

 さて、現在の状況ですが──

 

 >あなたから発生する魔力嵐が吹き荒れ、立香達を近づかせることを許さない。

 

 風の音ヤバすぎて声が何も拾えねえ〜! 

 

 ずっとボボボボボ!!! みたいな音しか聞こえませんよ。

 こんな所までリアルにしなくていいから。

 

 んーまあ、これに関して言えばあんまり危惧するような事でもないんですよね。

 ホモくんの侵食率を今のうちに上げておくのが今回の目標なので。

 

 ですが立香ちゃん達なら突破してきてもおかしくはないので、目標達成するまでの間出来る限り妨害しなければなりません。

 

 >汚染侵食率10%超過。

 >あなたは自身の体が人から離れていく感覚に襲われている。

 

 お、10%超えたことでホモくんの人間離れが本格的に進められるようになりましたね。

 

 今までの経験から考えるに今の立香ちゃん達はホモくんの救出を第一にしている事でしょう。

 そうなればホモくんの下に辿り着いてホモくんを気絶させるなりなんなりしなければこの汚染は止まらない……と考えているはずです。

 

 であるのであれば此方もそれ相応の抵抗をしなければならない──と考えるのが普通ですが、今回はRTAですし、現時点で立香ちゃん達カルデアと敵対とかしたくないので立香ちゃん達に対しては遅延行動こそすれど攻撃行動はあまり行いません(やらないとは言ってない)。

 

 特に立香ちゃんが大怪我とかしちゃったらロスも良いところですからね。

 攻撃行動をするにしてもマシュを除いたサーヴァント位にしましょう。

 死んでもこの特異点から退去するだけだしね(人間の屑)。

 

 なので最低目標は今の竜の炉心よりも高性能な竜の炉心が出来上がる20%、欲張るのなら基本性能が大幅強化される60%に行きたいですね。

 ちなみに20%超えなかったらリセです(真顔)。

 

 ま、それまでは龍脈から魔力回収しながら肉体改造に勤しみましょう。

 この為の肉体置換です。

 

 >汚染侵食率15%超過。

 >あなたは心臓が熱く燃えたぎるような感覚に襲われている。

 >そしてそれを証明するかのように胸が赤く光る。

 

 お、心臓の改造──というよりも動力炉が改造されている合図ですね。

 まあ、この調子なので20%は絶対越えられますね。

 だからこその最低目標なのですが。

 

 >あなたの魔力に反応するようにあなたの周りに渦巻く魔力嵐の勢いは更に増す。

 >大地を引き剥がし、草木を薙ぎ倒す様子はまるで大型の台風のようだ。

 

 うーん凄まじい風量、マジで風の音しか聞こえません。

 

「望……! 今……に……!」

 

 >そんな嵐の中、無謀にも立香達が此方に向かう姿が見えた。

 

 ま、来るよね。

 とは言ってもこの風量です。

 その速度は亀の歩みでしかありません。

 一歩ずつ着実にと言えば聞こえはいいですけどね。

 

 立香ちゃん達が此方に到達した時点で敗北確定です。

 まあこれ自体は此方側が抵抗を一切しないので当たり前なんですけどそれまでに侵食率をガンガン上げていきましょう。

 

 唯一の不安材料はホモくんの肉体改造が呪術由来のものなのでそれを抑え切れるどころか、ホモくんの術式に干渉して侵食率を下げられる可能性すら持っている呪術EX持ちの玉藻ですが……カルデアに置いて来ているのでホモくんをどうこうすることは出来ませんし、この特異点で彼女を呼べる存在である玉藻キャットは形ある島に置いてきましたからね。

 

 仮に来たところでホモくんは遊星の因子を持っているので遊星の因子を活性化状態にしておけば相性最悪な玉藻では上手く干渉できない可能性が高いです。

 

 遊星の因子に干渉して不活性状態に出来そうなのは遊星の尖兵たる巨神としてのアルテラですが……既にぶっ潰しているので問題なし! 

 

 その巨体さ故にか未だに頭とか完全に消え切ってないですけど、金色の粒子は出ていますからそのうち消えるでしょ。

 

 そして生きているだけで魔力を生み出せる竜の炉心と龍脈から魔力を吸い上げていけば侵食率はガンガン進められます。

 

 あ、でも竜の魔女であるジャンヌ・オルタならワンチャン竜の炉心に干渉できるかもしれませんね。

 まあ、ヴォイドセルによって侵食させた龍脈があるので問題ありませんけど。

 

 ……用意していたチャート通りに進んで安心安心。

 

 これならセプテムという特異点自体の攻略タイムは遅くなっていても総合的に見れば好タイムを狙えること間違いなしです。

 

 美しい……これほどのチャートなどそうそう見ることは出来ないでしょう。

 

 これこそRTA! これこそ走者というものです! 

 

 ガバガバRTAとは口が裂けても言えませんね──いえ、言わせません! 

 

 >汚染侵食率20%超過。

 >ドクンと明らかに今までの心臓の音は異なる感覚がする。

 >呼吸をするだけで、息をするだけで今までとは段違いな程に魔力回路に魔力が張っていく。

 

 勝ったッッッ!!! セプテム完ッッ!! 

 

 >魔力が滾る、全身が熱く燃え盛っているかのようだ。

 >漏れ出た魔力が白い瘴気へと変換され、あなたの周囲に三重の魔力障壁を展開させる。

 

 最低目標は達成出来たので後は安心して侵食率を上げていけますね。

 ついでに漏れ出た魔力が勿体ないので遅延要素として魔力障壁を展開しておきましょう。

 

 立香ちゃん達ならこの程度の魔力障壁なんて叩き割って来ることでしょうが、それでもこの魔力嵐の中です。

 それ相応の時間がかかることでしょう。

 

「──斬る」

 

 ん? 

 

 >両儀式の刀が振るわれた。

 >ただそれだけで魔力嵐は崩壊していく。

 >渦巻いていた暴風の障壁は制御を失ったようにあちらこちらに四散する。

 >両儀式の蒼く輝く瞳はあなただけを映していた。

 

「望幸ッ!」

 

 ゲェ──ッ!? 直死の魔眼!? 

 

 いや、そうか、そうだよな! 概念すら殺せる直死の魔眼なら魔力嵐くらいぶった斬れるわなぁ! 

 だが、魔力嵐はあくまでホモくんが龍脈から魔力を吸い上げることによって副次的に発生するもの。

 つまり嵐が収まるのは一時的なものに過ぎない。

 

 >汚染侵食率25%超過。

 >……酷く、気分が悪い。

 >あなたは自分の体がもう二度と純粋な人へと戻ることはないだろうと確信した。

 

 ヨシ! これでホモくんの体に各因子が完全に定着したので直死の魔眼を用いて因子破壊を狙おうにもホモくんと同化してしまった以上、完全な排除はできません! 

 

 何故なら強引な因子破壊をするということはそれ即ちホモくんを殺害するということに他なりませんから。

 抑制は出来ても完全な破壊は根源の力でも使わない限り無理ですし、根源の力を行使すればその時点でこの特異点から強制退去させられるでしょう。

 

 それを理解しているからこそ直死の魔眼しか使っていないわけですからね。

 

「走れッ! 少しでもこの嵐が止んでいる間に彼との距離を詰めるんだ!」

 

 >荊軻の掛け声に反応するかのようにマシュが立香を担いで一気に距離を詰める。

 >だが──

 

 ふふん、ここで魔力嵐の再発生です! 

 龍脈から魔力を回収しているだけで溢れた分の魔力が嵐になっているだけですからね。

 当然、復活も速いんですよ。

 

 >あなたを覆うように再度暴風が吹き荒れる。

 

 とは言え、このままではまーた式にぶった斬られて終わりなのでちょーっと邪魔しますか。

 

 >汚染侵食率30%超過。

 >あなたは一瞬、ぐらりとフラついた。

 >今も尚ずっと爆発的に跳ね上がる魔力の制御が乱れたのだ。

 

 >あなたの置換呪術が勝手に発動した。

 

 んげ、デメリットの自動発動引いちゃったか。

 なら、ちょっと大きめの岩をいくつか飛ばすように修正して──っと、直死の魔眼を嵐に向けてあんまり使えないようにしたいですね。

 

 一発(複数)だけなら誤射かもしれない……! 

 

 >引き剥がされた小石が巨岩へと置換され、近づく立香達に迫る。

 

「ハァッ!!」

 

「フッ!!」

 

 >しかしそれは当然の如く立香を守るように展開されているサーヴァント達が粉々に打ち砕く。

 

 よしよしいいぞいいぞ。

 この調子でガンガン遅延行為していきましょう。

 

 >汚染侵食率35%超過。

 >何だか体の様子がおかしい。

 >特に下半身に力が入らないのだ。

 >あなたは膝を折るようにゆっくり崩れ落ちた。

 

「望幸! 待ってて、絶対に助けるからッ!!」

 

 >人から堕ちていくあなたの耳に立香の声が響く。

 

 お、ついに来ましたわね? 

 50%超えたらホモくんは上半身、或いは下半身のどちらかが完全に化け物に変わります。

 今回はどうやら下半身だったようで。

 

 行動制限デバフが掛かったのはホモくんが今竜へと変性しているからです。

 要は蛹みたいなものです。

 

 ホモくんの下半身の中身を一度完全に溶かして竜のそれへと変性させるのでしょう。

 とは言え、油断は出来ませんね。

 

 この調子だと立香ちゃん達は暴風域を突破して魔力障壁へと辿り着くでしょう。

 そうなればサーヴァント達が全員いる立香ちゃんが有利です。

 

 ……いっそのことサーヴァントを削るか? 

 

 ホモくんがガッツリ直接攻撃するというのはちょっとヤバいのでここは暴走している感じで……虚数空間を用いた攻撃をしますかね。

 

 あれです、黒桜がやってた対サーヴァントに特化した攻撃。

 ちょうどホモくんも聖杯持ってますし、聖杯の機能の一つであるサーヴァントの分解機能を使えば似たようなことは出来るでしょう。

 

 >あなたの影が独りでに蠢き、まるで影そのものが竜のような、されど獣のような歪な形を取り始めた。

 

「──ッ! おい、全員アレに絶対に触られんな! 絡め取られたその時点で強制退去させられるぞ!!」

 

 >蠢く影を見たクーフーリンが焦った様な声を挙げる。

 

 ああ、そう言えばクーフーリンはこれ知ってるんでしたっけ。

 となると、アルトリア・オルタもか。

 

「お主はアレが何か知っておるのか!?」

 

「ああ、よく知ってる! ありゃ特級のサーヴァント殺し──聖杯の分解装置だ! サーヴァントである以上、アレに触られたら強制的に魔力に分解されるぞ!」

 

 >汚染侵食率40%超過。

 >足の感覚がもうない。

 >そもそも足が本当に存在しているのかすら、分からない。

 >あア、気分が悪イナ(最高ダ)

 

 40%超過! 

 未だに障壁割られてないし、こりゃ60%は余裕で行けそうですね。

 

 >形の崩れた歪な影の竜がボコボコと膨れ上がり、4つの触手の如き尾が生える。

 >そしてその尾は立香が率いるサーヴァントへと餌を求めるピラニアのように殺到する。

 

「来たぞ!」

 

 >殺到する尾にサーヴァント達は必死に抵抗する。

 >本能のままに動いているからか、動き自体は非常に分かり易く速度もさほど速くはない。

 

 全力に殺しに掛かるのはやばいのである程度は簡単に対処出来るようにしておきましょう。

 あと、これやっとけばホモくん自体が抵抗しているムーブにもなるので。

 

「意外とッ! 動きが分かりやすいッ! ものだねッ!」

 

「それだけ彼も抵抗しているということ──ではないかッ!?」

 

 >ブーディカや荊軻を筆頭に迫る4つの尾を的確に捌いている。

 >だが……。

 

「クソ、切がないわね!」

 

「口を動かしている暇があるなら手を動かせ突撃女!」

 

「私より倒してから言いなさいこの冷血女!」

 

「抜かせ! 私の方が多く倒しているに決まっているだろう!」

 

 >倒しても倒しても切がないのだ。

 >尾の強さ自体は100戦して100戦勝つ自信はあるほどに弱い。

 >だが、実体が虚数空間である以上物理的な排除が意味をなさない。

 >倒した傍から新たな尾が生え、立香達へと迫るのだ。

 

「──ここ!」

 

 >幾度目の撃破か分からぬ程の殺戮を得て、荒れ狂う暴風の中、両儀式は居合抜きのように刀を抜き放ち一直線上に重なった4つの尾を纏めて斬り殺した。

 >しかし、当然の事ながら撃破したところで正体が実体を持たぬ虚数空間である以上、4つの尾は平然と復活する──はずだった。

 

 クソッ、敵に回すと本当に厄介だな根源接続者は! 

 これで直死の魔眼持ちというのもキツい。

 

 >直死の魔眼によって死の線を絶たれた影の竜はぶるりと体を震わせると体の形を保てずにグズグズに溶けて崩れ落ちた。

 >そして両儀式は返す刀でもう一度魔力嵐を殺した。

 

「突撃女!」

 

「分かってるわよ!」

 

 >暴風が止み、影の竜も消えたほんの僅かな瞬間で、ジャンヌ・オルタとアルトリア・オルタは同時に宝具を発動させる。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)

 

 >燃え盛る地獄の業火に包まれた魔竜の息吹は瘴気で編まれた一枚目の魔力障壁を容易く突破し、二枚目の魔力障壁へと激突する。

 >だが、そこまで。

 >一枚目の障壁で威力の大部分を殺されたせいで二枚目の障壁を割ることは出来ず、罅を入れることが精一杯だった。

 

「硬すぎるでしょうが……!」

 

 >汚染侵食率45%超過。

 >思考が纏まラナイ。

 >視点ガ可笑シイ。

 >何ダカ、トテモ目線ガ高イ。

 

 キタキタキタキタ! 

 下半身の変性が始まった! 

 50%超過すればホモくんの下半身は完全に竜のそれへと変わります! 

 

 ……ケンタウロスの亜種かな??? 

 

「嘘……!」

 

「駄目、駄目です! 望幸さん! それ以上は──ッ!」

 

 >立香達の顔が絶望に染まる。

 >じわりと涙が滲む。

 >けれど現実はあまりにも無情で──彼の変異に伴い、影の竜がまた這い出て来ようとしていた。

 >そして同時にアルトリア達が罅を入れた魔力障壁すらも罅が修復されようとしていた。

 

「マスターッ!! 絶対にあの大馬鹿者を助け出せよ!」

 

 >その言葉を最後にクーフーリンは残像すら残さないほどの速度で加速し、そして身動きの取れない空中へと身を投げ出した。

 >それはクーフーリンの持つ最大火力の一撃。

 >高まる魔力に反応した影の竜がクーフーリンへと喰らいつこうとその顎を大きく開く。

 

「クーフーリン!? 駄目、そんな事したら──!」

 

「ここで死んでもカルデアに還るだけだ! 俺の事よりマスターは前に集中しろ!」

 

 >クーフーリンは槍が軋むほどに強く握り締め、己の体を維持する為の魔力すらも槍へ込める。

 >()()()()()()()()()と、最低限槍を投げられる程度の魔力を残して他の全てを宝具に注ぎ込むのだ。

 >だが、そんなクーフーリンに対して影の竜は無慈悲にも喰らいつく──! 

 

「ぐっ……!」

 

「たはは……こりゃキツいね……!」

 

 >影の竜の顎に捕らえられたのはクーフーリン……ではなく、そんな彼を守るように彼の前に現れた荊軻とブーディカだった。

 

「荊軻、ブーディカ!」

 

「ごめんねー! お姉さん達はこれ以上は役に立たないからさ!」

 

「だが、せめて肉盾くらいにはなれるだろうと思ってな」

 

 >竜の顎に捕らわれたブーディカと荊軻の体が黒く染まり、体が崩れていく。

 

「ちゃんと助け出しなよ、マスター」

 

「ああ、お前ならきっと出来るさ」

 

 >その言葉を最期に荊軻とブーディカは笑みを浮かべてこの特異点から完全に消えてしまった。

 

 

──ぶち抜いてやる

 

 

 >二人のサーヴァントを喰らった影の竜は、残りのクーフーリンを喰らおうと大口を開けた──瞬間。

 >既に臨界を超えて宝具をチャージ(NP300%)したクーフーリンの宝具がその強靭な体から放たれる! 

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)

 

 >放たれた呪いの朱槍は眼前の竜の撃ち抜き、魔力障壁の僅かな罅へと突き刺さる。

 >アルトリア・オルタとジャンヌ・オルタの宝具を合わせて漸くぶち抜けるほどの堅牢さを誇る魔力障壁。

 >普通であれば如何に破壊力に特化したクーフーリンの宝具と言えど突破は難しい。

 >しかし、彼女達が付けた罅の中心点に寸分違わず突き刺さることで槍が杭の役割を果たし、魔力障壁に罅が広がっていく。

 

ぶち抜けぇぇぇええええ!!!

 

 >大爆発と共に二枚目の魔力障壁が砕け散った。

 

「行け、マスター! 彼奴を救って来い! きっと、助けられるのはお前だけだ!」

 

「任せて!」

 

 >その返事を聞いたクーフーリンはニッ、と笑うと黄金の粒子へと変換され消滅した。

 

 二枚目突破! 

 侵食率はもう50%行くか。

 

 >汚染侵食率50%超過。

 >アア、ヨク分カラナイケレド……何ダカトテモ眩シイモノヲ見タ。

 

 良し! 下半身の変性完了! 

 一旦ここで安定を取ってセーブするか……? 

 いや、どうせここまで来たのならタイムを取りましょう! 

 

 3枚目の障壁をぶち抜いたところでホモくんを人に戻す手段なんかないしなガハハ! 

 行けるとこまで突き抜けるぜ!! 

 

 >残る最後の魔力障壁。

 >だが、それは今まであったどの障壁よりも分厚く堅牢そうなものだった。

 

「……っ! 望幸さんの体が!」

 

 >悲壮に染まる声を挙げるジャンヌ・ダルク。

 >魔力障壁を一枚隔てた先にいるのは最早人としての下半身は消え去り、本来の竜の頭部が存在する場所の代わりに人の上半身をくっ付けたような異形な姿をしたあなたの姿だった。

 

 やっぱりこれケンタウロスでは? 

 この姿でケイローンにおそろっちだねとか言ったらどうなるんですかね。

 

 ……後ろ蹴りか、パンクラチオンで〆られそうですね! やめとこ! 

 

「どんな姿でも望幸は望幸だよ。だから、今度は私が君を助けるんだ」

 

 覚悟を決めている立香ちゃんは相変わらずかっこいいねぇ! 

 でも、この魔力障壁ぶち抜けるんですかね? 

 最後の一枚というだけあってメタクソに硬そうなんですけど。

 

 ま、変性が終わり次第自動的に消えるでしょうから安心ですね! 

 何が安心なんだよはっ倒すぞ(豹変)。

 

「……酷いわね、斬るにしても混ざり過ぎてて線が見えにくいわ」

 

「だったら正面から力技でぶち破るしかないでしょう?」

 

『待って、下手に力押しでやるのは危険だ。この魔力障壁からヴォイドセルの反応がある。一撃で破壊できるほどの威力でぶち壊すか、もしくはヴォイドセルに干渉出来る何かがないと宝具で散った魔力を吸い取って更に強化されかねない』

 

「……っ、なら全員一斉に攻撃を──!」

 

「そうしたら彼奴の前で全員が隙を晒すことになるぞ。少しは頭を冷やせ突撃女」

 

 ウハハ! そらもう無理よ! 

 可能性があるのは式くらいですが、直死の魔眼対策に色んなものをごちゃ混ぜにして線を見え難くしています。

 まあ、あくまで見難いだけなので時間をかければ普通に突破できるでしょうけど。

 

 けどその時間さえあれば十分です! 

 理想の60%はやっぱ余裕でしたね! 

 

 うーん、素晴らしいチャートだぁ……! 

 

 >汚染侵食率55%超過。

 >竜の体の胸に当たる部分が裂けたような感覚がする。

 >目を向けてみればそこには大きく裂けた口らしきものが見えた。

 >異形だ、これ以上にない化け物だ。

 >けれど、ああ──

 

 >俺ニハ似合イノ姿ダ。

 

 >あなたはそう思った。

 

 はい、55%突破。

 いい感じにホモくんも人間を辞められましたね。

 竜の体に大きく裂けた口! 4つの尾にジェット機みたいな翼! 

 

 うーん、いくらなんでも混沌すぎる。

 ごちゃ混ぜにしすぎたか? 

 ……まあいいか、これからの新生ホモくんをよろしくなぁ! 

 

 さてさて、60%目前になりましたし、60%達成したらタイムと今後のチャートの為にも障壁を解除して立香ちゃん達と適当にバトって負けましょうかね。

 

 これぞ完璧なRTA。

 ガバガバRTAとか言った奴は悔い改めて? 

 

 ガハハ──

 

なら、私が破壊しよう

 

 >倒れていた巨神の方から声がする。

 >一体誰だと咄嗟にその声の方へと視線を向ければそこにいたのはまるでセファールの右腕を人間大のサイズで移植したかのような右腕を持った少女だった。

 

「あなたは──」

 

「マルスとの接続開始。火神現象(フレアエフェクト)超過使用。軍神よ、我を呪え。宙穿つは涙の星」

 

 >あなたの頭上に三層の魔法陣が展開され、高速で回転し始める。

 >グズグズに溶けきった理性がほんの僅かに働いたあなたは魔力障壁を最大限まで硬化させる。

 

 ──は? 

 

「私は失敗した。けれど、最悪の未来だけは破壊させてもらう。そうでなければ私は死んでも死にきれない」

 

「……どの面下げてと言われるだろう。けれど、それでも私は──」

 

「君に幸せになって(人であって)欲しいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトンレイ)

 

 >魔法陣より旭光が天から流れ落ちる落涙の如くあなたに目掛けて飛来する。

 

「▅▅▅▂▅▂▂▅▂!!!」

 

 >もはや人の言葉すら忘れて獣の如く叫ぶ。

 >竜の炉心で生成した魔力を、龍脈から吸い上げた魔力を全力で魔力障壁へと回す。

 >罅が入る傍から魔力で強引に修復する──が、アルテラが放ったのは戦神達の怒りそのもの。

 >神々の権能そのものだ。

 >故に──! 

 

 む、無理無理無理! 

 流石にこれは無理! 

 だってこれ権能だよ!? 

 個人に向けて放つようなもんじゃないだろ! 

 

 てか何でこんな火力高いの!? 

 遊星に対する怒りをホモくんにぶつけるの反対! 

 八つ当たりとか神々のする事じゃ──あ、そういやホモくんは()()()()()()()()()()()()()()()()()! しかもセファール由来のものを。

 

 そらダメだわ! 

 そりゃあ戦神達もお前セファールの関係者かってなってガチギレするわ! 

 

 防ぐのは無理だから被害を軽減させる方向にシフトしまーす! 

 

 ていうかなんでアルテラが生きて……()()()かよおおおおお!? 

 クッソ、道理でセファールの頭だけ残ってたわけだ! 

 史実でもセファールが死んだ後アルテラは頭脳体として存在したからね! 

 

 分かるかこんなもん!!! 

 

 >──魔力障壁が突破される! 

 

 虚数潜航ォォオ!!! 

 退避退避ー! こんなもん防げるか! 

 

 >あなたは魔力障壁が破壊される刹那の瞬間に影を纏い、虚数の中へと潜り込む。

 >だが、虚数に潜り込んだあなたを神々の怒りは逃しはしない。

 >虚数に潜り込む最中のあなたにアルテラの宝具は追尾し、そして虚数を貫通して激突する! 

 

 ひょわああああHPが! 

 滅茶苦茶高かったHPが! カスみたいに吹き飛ばされるゥゥ──ッ! 

 

 いや、でも生きてる! 

 ホモくんナイス食いしばり! とっても偉い! 

 

 >あなたは歯を食いしばって今の一撃を耐えた。

 

 これ魔力障壁と虚数潜航での軽減なかったら食いしばり貫通して死んでてもおかしくなかったな。

 つーか、アルテラいるのか……うーん、やばいなこれ。

 

 ──よし、殺しとくか。

 

 >虚数から這い出てきたあなたは全身から黄金の粒子が流出しているアルテラに対してありったけの魔力を収束させる。

 

「──ッ、耐えたのか今の一撃を! 何処までやればそれほどまでに──」

 

 ごめんね、本当に悪いんだけどチャート崩壊の可能性は摘まないといけないんだ。

 消えかけの最中だけどここで完全に消えてくれ! 

 

「▅▂▂▂▅▂▂▂▅▅▅!」

 

「させませんよ!」

 

 >フラウロスをも消し飛ばした魔力砲撃を前に出たのはジャンヌ・ダルクだった。

 

「何故とは聞きません! どうしてとも聞きません! ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! それだけで十分です!」

 

 >クルクルと回した御旗を勢いよく突き立てる。

 

主の御業を此処に──我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!

 

 >襲来する魔力砲撃を前にジャンヌ・ダルクは一切臆することなく正面から対峙する。

 >そして渾身の声で叫んだ。

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)

 

 >天使の祝福によって味方を守護する結界宝具と魔神柱を一撃で消し飛ばした魔力砲撃が激突する。

 >周辺のもの全てを薙ぎ倒し、破壊する魔力砲撃を前にジャンヌ・ダルクの宝具は揺らぎはしない。

 

 >絶対に防ぎきってみせるという強いジャンヌ・ダルクの意志が折れない以上突破することなど出来はしない! 

 

 あっあっあっ! 

 ちゃ、チャートが、私の完璧で無敵のおチャート様が……! 

 

 い、いやでも流石のジャンヌ・ダルクと言えど宝具の連射はできないだろ? 

 だったら第二射をぶっぱなして今度こそ──! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今!」

 

「オッケィ! 任せて!」

 

 今度は何!? 

 

「子犬ー! 私の歌を咽び泣きながら聞きなさい!」

 

 うげぇっ!? エリちゃん!? 何度も出てきて恥ずかしくないんですか!? 

 

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)

 

 

Laaaaaaaaaaaa!!!

 

 >唐突に現れたエリザベートの独特な歌があなたの脳を混乱に陥れる。

 

 うるさァッ!? 

 

 距離が離れてるから威力はないに等しいけどいくら何でもうるさ過ぎる! 

 つか、これホモくんのターゲットがエリザベートの方向いてない? 

 

 ……本能!! ホモくん今理性ほとんどないから野生動物みたいな感性しているせいでピカピカ光ってうるさいエリザベートの宝具に釘付けになっちゃってるのか! 

 

 えっ、嘘こんなことある? 

 こんな仕様初めて知ったんだけど? 

 

 ていうか、さっきエリザベートとステンノが見えたってことはもしかしなくても……。

 

 あっ、あぁ……! 

 

 わ、私の完璧なチャートが壊れたぁぁぁ!!!

 





次回でセプテム完結です。


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太陽はまた昇る(繋いだ絆)


再走は致しませんの?
ここでオリチャー発動です!(悪あがき)



 

 暴走した望幸の魔力砲撃をジャンヌ・ダルクの宝具によって一度は防ぐことが出来た。

 だが、間髪入れずに今度は竜の体の胸に該当する部分に出来たパックリと大きく開いた口に魔力が収束していくのが見えた。

 

 マズい、とそう本能的に理解するも防ぐ手段が思いつかなかった。

 万事休す──そう思われた瞬間。

 

「今!」

 

 その声は決して大きくはなかった。

 けれど、それでもこの鉄火場全体に響き渡る程、澄んでいて誰もが魅了されてしまうような声だった。

 

 そして立香はその声の持ち主が誰なのかをよく知っていた。

 

「ステンノ! それに──」

 

「オッケィ、任せて!」

 

 エリザベート! と喜色に富んだ声をあげようとして、エリザベートの手にあるものを見て立香は口をヒクつかせた。

 

 マイクだ、『()()』エリザベートがマイクを持っている。

 

「子犬ー! 私の歌を咽び泣きながら聞きなさい!」

 

 ──スゥッ、とエリザベートが大きく息を吸い込んだのを確認した瞬間、ネロを除いた立香達は今が危機的状況下にあるのにも関わらず全員が耳を塞いだ。

 

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)

 

 次瞬、エリザベートはもう片方の手に持っていた槍を地面に突き立て、魔法陣らしきものを展開させる。

 そして魔法陣からカラフルな色の光とともにチェイテ城が召喚される。

 その様はまるでチェイテ城そのものがミラーボールのようであり、明らかにテンションが最高潮に達しているエリザベートのデスボイスが放たれた。

 

Laaaaaaaaaaaa!!!

 

 距離が離れているお陰か物理的な被害こそ出ていないが……その、あまりにも酷い。

 耳を塞いでいるのにそれを貫通してくるエリザベートのデスボイスに精神が削られる思いだった。

 

 そのデスボイスを向けられている望幸と言えば──何処か興味を抱いているかのような、或いは呆然としているかのように魔力収束をやめてエリザベートの方を見ていた。

 

 動きを止めてジッとエリザベートの方へと視線を向けている彼に騒音に紛れて近づく一つの影。

 

「前に会った時はあなたの強靭な理性のせいでフラれてしまったけれど、()()()()()()()()()()?」

 

 悪戯な笑みを浮かべて未だ人の体から脱しきれていない彼の上半身の方へと詰め寄るステンノ。

 両手を彼の首に回した時にようやくステンノの存在に気がついた彼は抵抗の為か顔を彼女から思い切り逸らした──が。

 

「駄目よ、ちゃんと私を見なさい」

 

 どう足掻いても逃げられないようにステンノは彼の額に自分の額がくっつくほどの距離までその顔を近づける。

 薄い紫の瞳と濃い赤の瞳が交錯する。

 

「ふふ、本当にあなたって子は……一途で素直な子ね」

 

 脳髄を溶かす甘く蕩けるような魔性の声が鼓膜を震わせる。

 物憂げな視線を投げかけ、その身をしなだれかける。

 完成した「偶像(アイドル)」「理想の女性」として生まれ落ちた女神としての能力をただ一人を魅了する為だけに全力を注ぐ。

 

 それに反応してか、彼の体から白い瘴気が溢れ始める。

 当然、体に密着しているステンノにも瘴気は侵略を開始する。

 

 影の竜のようなサーヴァントを魔力へと分解する機能こそないものの、ヴォイドセルと呪いが混じりあったそれは神であるステンノにとっては耐え難いものだ。

 

 それでもステンノはその表情を一切揺るがすことはなく──

 

女神の微笑(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)

 

 ──瘴気が彼の視界を遮るよりも早く宝具を発動させた。

 

「────」

 

 彼の動きがピタリと止まった。

 まるで大量の情報を一気に流し込まれてフリーズしたかのようにピクリとも動かず大人しくなったのだ。

 

 それを確認したステンノはついに限界が来たようで彼の首から手を離して落下し始めた。

 

「ステンノ!」

 

 それを立香はステンノが地面に激突しないように身を滑り込ませ、受け止め──切れずに自分がクッションの役割を果たすことで彼女が地面に激突することを防いだ。

 

「あいたた……」

 

「あら、ありがと」

 

「ううん、こっちこそ。本当に来てくれてありがとう。でも、どうやってここが? あの島から此処までって凄く遠いよね?」

 

「ふふ、それはね、あの子が私があげた物を大事に持っていたからよ。あんな姿になっても大切に保管してるんだもの。本当に素直でいい子だわぁ」

 

 そう言って頬を上気させ、妖艶に微笑むステンノの姿に立香は何故かほんの一瞬胸がもやもやとしていた。

 何故? こんな危機的状況下で彼を助けにわざわざ来てくれたのに? 

 

 それは立香自身も気付くことの出来ない小さな小さな独占欲というもの。

 端的に言えば、彼が他の女性からの贈り物を大切にしていたと聞いて嫉妬してしまったのだ。

 

 とは言え、今はそんな感情など些事に過ぎない。

 彼をどう助けるべきか、それこそが今の最重要項目だろう。

 

「──とは言え、私の魅了もそう長くは持たないわね。私の魅了が効いたのも彼が油断していたというのと本能が強く表に出ていたからに過ぎないもの」

 

 本当に可愛い子だわ、とそう呟いて彼の方を見るステンノ。

 

 事実、ステンノの言う通り動きを止めていた彼の体が少しずつ動き始めている。

 ステンノをずっと見つめていたはずの瞳は時折近くにいる立香の方を見ていたりと少しずつ、少しずつステンノの魅了から脱却を始めていた。

 

「ほらほら、彼を助けたいのでしょう? なら、悠長に構えている余裕はないわよ? それこそ、私の魅了が解けたらもう二度と魅了はかからないでしょうしね」

 

「でも、どうやって──」

 

「その為に足りなかったものは私がちゃんと用意してきてあげたわ。……こんなにしてあげるのは特別よ?」

 

 足りなかったもの──? 

 

「とぉ──うッ!!」

 

 そう疑問を抱いた瞬間、元気のいいハキハキとした声が立香の頭上から聞こえた。

 そしてその声の主は立香とステンノの目の前にヒーロー着地をするとゆっくり立ち上がり、不敵な笑みを浮かべてこう言った。

 

「タマモナインが一人! タマモキャット参上! なのだワン!」

 

 現れたのはカルデアに在籍している玉藻と瓜二つの女性──ではあるのだが、言動や行動が似ても似つかぬほど奇天烈なタマモキャットであった。

 

「……ご主人、今度こそキャットは助けてみせるのだナ」

 

 ここに彼を助け出す駒は全て揃った。

 であるのであれば後は彼を助け出すのみ──! 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 彼の動きはまだ止まっている。

 だが、それもそう長くは無いことは彼から溢れる瘴気の量が証明していた。

 

「どれ、ここは一つキャットがじゃれついてやるのだ」

 

 ステンノの魅了対策のためにか彼の目元を完全に覆った白い瘴気。

 それの溢れた一端が迫るタマモキャットに向けて放たれる。

 

 それに対してタマモキャットは鋭く尖った爪を振るう。

 たったそれだけで白い瘴気はあっさりと霧散する。

 

「ニャハハハ! 甘い、甘すぎる! まるで綿飴のように! ん? 人参の方が甘いカ?」

 

 白い瘴気は彼の刻まれた呪いが溢れて出てきたもの。

 バーサーカーになりEランクまで下がったとは言え、彼女の大元はランクEX(規格外)の呪術の到達点に至った存在。

 故にその分体として生まれた以上、高々溢れた程度の呪いを散らす事なぞ赤子の手を捻るよりも容易い! 

 

 襲い来る瘴気を爪で散らし、今だ本調子ではないのか大きな動きを見せない彼に対して手を伸ばし、竜の体に触れた。

 

「──むっ!?」

 

 そして触れたと同時にタマモキャットは飛び跳ねる猫の如く大きく後ろへと下がった。

 毛を逆立て尻尾を2倍の大きさまでブワッと膨らませた彼女は信じられないものを見る目で彼を見た。

 

「何も混ざっていない──!?」

 

 タマモキャットはまず竜の体に触れたと同時に呪術による解析を行った。

 この現象が呪術によって引き起こされた現象であるのであれば抑制が出来るはずだと肉体の解析を行ったところ彼の内部で起きている現象に絶句した。

 

 竜の因子、遊星の因子、人の因子、オリジナルの因子──そして正体不明の謎の因子。

 

 その全てが同じ体に存在しておきながらも何一つとして混ざっていなかった。

 全ての因子が最初から独立して存在しているせいであまりにも彼の体は混沌としている。

 

 これで因子同士が混ざり合った結果、このような事象を引き起こしたというのならまだ手のつけようはあっただろう。

 

 何故なら混ざり絡み合った結果、その事象が起きたというのならその一つ一つを紐解いていって、互いに干渉しないように隔離した上で抑制、或いは封印といった形を取れば自ずと彼の体は元に戻るはずだ。

 

 だが、最初から何も混ざっておらずそれぞれが独立した状態で互いに干渉しあって今の現象を引き起こしているのだとすれば解いて抑制する行為が意味をなさない。

 

 それにもう一つ──

 

「分化している……のか?」

 

 彼の体の中で特に強い反応を示すものが二つあった。

 一つは彼の上半身の心臓部に当たる場所、もう一つは竜の体の心臓部に当たる場所だった。

 

「聖杯 is 何処だワン!? それとも聖杯に倍加の術でも使ったのか? ううむ、何と恐ろしき所業。聖杯錬金術とはこのキャット恐れ入った」

 

 そう吠えるタマモキャットに立香達は困惑していたが、タマモキャットの言葉の真意を理解した玉藻はロマニに尋ねた。

 

『ご主人様の体をもう一度調べろ! 恐らく今のご主人様には核が二つ存在している!』

 

『わ、分かった! 解析班、望幸くんの体から強い魔力反応を示す場所を探して!』

 

『は、はい!』

 

 通信越しに管制室のメンバーたちが慌ただしく動き始める。

 カタカタと機械を動かす音が響き、その数秒後に現れた結果にロマニ達は息を呑んだ。

 

『これは──』

 

『聖杯の反応がするのは上、下の方は特異な反応こそあるもののまだ聖杯の反応は欠片もない……なら──』

 

 表示された結果は彼の心臓に当たる部分が二つあるということだった。

 そして上半身側の心臓の反応が徐々に弱まっていることから彼は今、心臓を新しいものへと作り替えている。

 それこそ、化け物の体にふさわしい悍ましく強靭な心臓へと。

 

 故に心臓が二つあるも同義である今の彼の出力は不安定ではあるものの凄まじいものとなっている。

 だからこそ、魔神柱としての姿になったフラウロスを一撃で消し飛ばせたのだろう。

 

『盾の娘! 召喚サークルを設置しろ!』

 

「え、えぇ!? 此処で、ですか!? 設置したところで龍脈がない以上──」

 

『あるであろう! ご主人様が作り替えた龍脈が!』

 

 玉藻の一言にあっ、と声が漏れた。

 そうだ、今この場には龍脈が存在する。

 彼が置換魔術を用いて強引に作り替えた龍脈が。

 

 ならばそれを用いれば召喚サークルの設置は可能だ。

 

『駄狐! お前が妾を呼べ!』

 

「にゃにおう!? このキャットにオリジナルを呼べと申すか!?」

 

『お前しか妾を呼べるやつがおらぬ!』

 

「そう言ってご主人を独り占めするつもりだな!? そんな暴挙はお天道様が許してもこのキャットが許さん! ……キャットもお天道様だからお天道様もやっぱり許していないワン!」

 

『言ってる場合か! お前も妾の分体ならば此処にいる意味を理解しているのであろう!?』

 

「む、む、むむむ〜!」

 

 その言葉にタマモキャットは嫌そうに、本当に渋々といった様子で黙り込んだ。

 タマモキャットとて理解しているつもりだ。

 

 此処に私が呼ばれたのはきっとこの時の為なのだと。

 

 それに──ご主人の幸せはキャットの幸せでもある。

 彼が幸せでいてくれるだけでいい。

 この思いだけは今も昔も変わらない。

 

 ならば、ご主人の幸福とキャットが我慢すれば済むことなど天秤に掛ける必要すらないだろう? 

 

 そう自分に言い聞かせてマシュが設置した召喚サークルへと歩み寄った──瞬間。

 

 キィィンと耳障りな金属音が鳴り響いた。

 

 その音の正体は彼がステンノの魅了を振り切るために魔力生成しようと空気を大量に吸引し始めたことだった。

 

「早く! あの子もう振り切るわよ!」

 

 ステンノがそう警告すると同時にタマモキャットがマシュが設置した召喚サークルへと飛び込むと、召喚サークルが唸りを上げて回転を始めた。

 

「▅▅▂▅▂▂▅!」

 

 悲鳴のような雄叫びと共についにステンノの魅了を振り切った彼がその翼を大地へと叩きつけようと振りかぶり、それと同時に召喚サークルが一際強く輝く。

 

 そして爆砕音が鳴り響いた。

 

 大量の魔力が込められた翼の噴出口を叩き付けた瞬間、臨界ギリギリまで溜め込まれていた魔力を解放。

 その結果、逃げ場を得た魔力は爆発という現象を引き起こしたのだ。

 

 今の一撃で爆風があらゆるものが吹き飛ばし、叩き付けられた大地には大きなクレーター……が出来上がっているはずだった。

 

「──ご主人様!」

 

 翼を抑え込んでいたのはカルデアより召喚されたタマモキャットの大元の存在──玉藻の前だった。

 

 正直なところ玉藻がこの地に召喚されるのと彼が攻撃をしたのは同じタイミングであった。

 玉藻は召喚と同時に防御術式を展開したが、それが展開されるよりも彼は早く振り下ろしていた為、間に合うかどうかはギリギリだったのだ。

 

 だが、ほんの僅かな一瞬、攻撃が緩んだことを玉藻は見逃さなかった。

 あの刹那の瞬間があったからこそ防御術式を十全に機能させた上で防ぐことが出来たのだ。

 

 つまり彼の意識はまだ残っている。

 あの状況下で未だ自分を見失っていない。

 

 ──ならば、彼を元に戻す手段は存在する。

 

「してオリジナル、ご主人をどう戻す?」

 

「核に干渉して分離させる」

 

「……オリジナルもしや耄碌しているのか? ご主人の状況は共有しているはずだが」

 

「戯け、知っておるわ。今のご主人様の核は二つあり、その内の一つに聖杯が今単独で存在している。なら、そこは十分隔離場所になるであろ?」

 

「───!」

 

 その言葉にタマモキャットは何かに気がついたようなハッとした顔を浮かべる。

 

「──つまり何を意味する?」

 

「……」

 

 分かったような顔していながら何一つとして理解していないタマモキャットに顔には出さないが玉藻は一瞬かなりイラついた。

 

「聖杯の本来機能のひとつに魂を集積する機能があるだろう。そこに細工を施して檻へと変える。そしてご主人様の人以外の因子を全て聖杯へ移すことで人の因子の減少を止めるということよ」

 

「ふむん、キャット粗方理解。つまり聖杯ポリスにご主人の因子以外を全て逮捕してもらうということだナ?」

 

「……まあ、それで良い」

 

 要は聖杯という外付けHDDに人以外の因子を入れ込むことで星崎望幸という本体容量を軽くするということだ。

 そもそも人の因子が減少傾向に見られたのは他の因子によって圧迫された容量を確保するために一番役に立たないであろう人の因子から排除されていったからだと睨んでいる。

 

「まずは核に干渉せねばな」

 

「よし来た! ではこのキャットがご主人に甘えてその動きを止めてくれよう!」

 

 そう言うやいなや勇猛果敢に彼に飛びつくタマモキャット。

 当然、彼女を迎撃する為に攻撃を開始する彼であったが──明らかに動きが鈍い。

 

 槍のような翼の先端をジェット噴射により加速させ、タマモキャットへと放つが……放つまでに明らかにタイムラグが存在している。

 

 加速こそ速いものの撃つまでが遅いのであれば攻撃を避けるなど造作もなく。

 

「キャット肉球チョーップ!!」

 

 翼による刺突をひらりと身を捩るだけで躱したタマモキャットは彼の顔を覆う瘴気に爪を突き立て、瘴気を僅かに散らす。

 

「む? 先程よりも密集しているのか? まるで団子のようだナ!」

 

 驚くキャットの頭上に影が落ちる。

 見上げればそこにあったのは凄まじい速度で落下してくる巨岩だった。

 一体どれほどの速度で落としたのか、僅かに赤熱しながら落ちてくる燃え盛る巨岩。

 

「呪相・氷密天」

 

 しかし、それを玉藻が即座に呪術により氷の弾丸を射出し鎮火、そして続く竜巻により細かくバラして遠くへと吹き飛ばす。

 そのまま流れるように竜の体に触り、核へと干渉する──が。

 

「ぐっ!?」

 

 触れた玉藻の手が強制的に弾かれる。

 

()()()()()()()()! 厄介な──っ!?」

 

 大きく開かれた竜の顎に魔力が収束する。

 際限なく高まり続け、圧縮された魔力に火の元素を付与し、生命を焼き尽くす竜の息吹へと姿を変える。

 

「──────」

 

 零距離から放たれる熱線は玉藻を焼き尽くすべく炎を照射する──が、玉藻はそれを一息に握り潰した。

 

「温い」

 

 炎を握り潰すという常識外れの現象を引き起こしながらも今度は動きを止めるべく、呪術を操り影を縛ることで彼の動きを強制的に停止させる。

 

駄目、それじゃあ足りない

 

 しかしそれはヴォイドセルによる術式の侵食、そして魔力へと分解し破壊することで術式を崩壊させる。

 瘴気に包まれた彼の目に値する部分から赤い光が玉藻を見つめる。

 

汚染侵食率60%超過──基本性能大幅向上。外装増設

 

 彼の影が盛り上がり、彼の体に纏わりつく。

 そしてそれは太く強靭な竜の腕のような形を取った。

 

「▅▂▂」

 

 引き絞られた矢のように突き出された竜の腕は玉藻を狙う。

 玉藻はそれを後ろに飛んで避け、狙いが外れた竜の腕は強烈に地面を叩いた。

 瞬間、地震のような揺れが発生する。

 

「駄狐! 一度下がれ!」

 

「むっ、了解」

 

 タマモキャットが飛び引いた瞬間、残った竜の腕がタマモキャットがいた場所を空間ごと薙ぎ払う。

 その強烈な一撃で突風が吹き荒れ、直撃すれば死は免れないということが即座に理解出来た。

 

「……ふぅ」

 

 玉藻を一度大きく息を吐いて後ろに控えていた立香達へと目を向ける。

 

「藤丸立香、ご主人様の体は妾が調律し、元に戻す。お前達はその間に動きを抑えて欲しい」

 

「うん、任せて!」

 

「そして──アルテラ、今の貴様は味方……という認識で良いか?」

 

「……ああ」

 

「そうか、ならその腕で遊星の因子に干渉は出来よう?」

 

 そう言って玉藻はアルテラの右腕──セファールの右腕をそのまま持ってきたかのような右腕に目を向ける。

 

「短時間なら可能だ」

 

「なら問題ない、貴様は遊星の因子を抑制しろ。その間に妾が肉体を調律する」

 

 そう言って玉藻は正面へと向き直った。

 先程よりも更に変異が進み、より歪に、そして全身から大量の瘴気を吹き出す彼の姿を見据える。

 

 そして──立香達は一斉に突き進んだ。

 

「▅▂▅▅▂▂▅▅▅」

 

 竜の体に存在する口が咆哮をあげて熱線が放つ。

 それを玉藻はもう一度握り潰し、影縛りを行う。

 しかしながら、当然それは僅かな間で破壊される。

 

 その僅かな間で立香達は彼へと肉薄する。

 

 竜の腕がサーヴァント達を薙ぎ払おうと大気ごと殴りつける。

 

「こんなものっ!」

 

 振るわれる竜の剛腕をジャンヌ・オルタは同じ竜の怪力を以って上へと蹴り上げる。

 体勢を崩した彼にアルトリア・オルタと両儀式は追撃を仕掛ける。

 

「ハァッ!」

 

「ふっ!」

 

 振るわれる二刀は影によって形成された竜の腕を斬り飛ばす。

 斬り落とされた竜の腕は元の影へと戻り地面に染み込んでいく。

 が、それもすぐに新しい竜の腕が形成される。

 

 そしてもう一度竜の腕が振るわれようとした──が。

 

 マシュの大盾の叩き付けとネロの斬撃が竜の腕を動かぬように縫い付ける。

 

『明らかにさっきより動きが鈍い……。望幸くんが手加減している、のか?』

 

『出来る限りは、だろうけどね!』

 

 ロマニとダヴィンチは彼のバイタルを常に更新し続け、何かあれば即座に報告出来るように観察を怠らない。

 その甲斐もあって、誰よりも早く彼が次にやろうとしていることに気がついた。

 

『翼の方に魔力が集中してる! 彼、飛ぶ気だぞ!』

 

 キィィンという何度目かの甲高い金属音が鳴り響く。

 大量の空気が吸引され、生み出された魔力が翼へと集中する。

 噴出口からチロチロと炎が盛れ始め、今まさに飛び立とうとした瞬間。

 

「やあぁ──ッ!」

 

 彼の体を駆け上がり、大きく跳躍したジャンヌ・ダルクが翼に強烈な打撃を与えた。

 次瞬、翼が大爆発を引き起こし彼の体が地に伏せた。

 

「────!?」

 

 混乱した様子の彼だったが、ジャンヌ・ダルクの打撃によって発生した衝撃が翼の内部で臨界寸前の魔力が暴発させたことで噴出口がボロボロに崩れ、そのダメージによって上手く立ち上がることが出来ていない。

 

 そんな彼を守るように瘴気と影が彼の体を覆う。

 

「鱗剥がしの時間だワン! まな板の上の鯉のようにつるつるにしてやろう!」

 

 飛びかかったタマモキャットが影も瘴気も纏めて散らす。

 

キャットキャットキャーット(カットカットカーット)!」

 

 残像が見えるほどに素早く爪を振るい、瘴気も影も全て剥がしきったその瞬間、アルテラが竜の体にある核へ向けて剣を突き立てた。

 

「アルテラ!?」

 

「いや、そのまま核まで突き立てろ! 核を逃せぬように直接干渉する」

 

 立香はアルテラの突然の凶行に声を上げるも玉藻はもっと深くまで突き立てろと言い放つ。

 

 ブシュブシュと大量の血を吹き出してくるが、それでもと剣を押し込みながら竜の胸を開き、核を露出させる。

 だが、当然そんなことをすれば大人しくしているはずもなく4つの尾がアルテラを排除するために串刺しにせんと迫る。

 

 それに気がついたジャンヌとネロ、そしてマシュとアルトリア・オルタが尻尾を弾き飛ばし押さえ付けた。

 

「……っ、見えた!」

 

 斬って、刺して、抉って、開いて──大量の血に塗れながらも漸く核を発見した。

 彼が立ち上がった時に最初に取り込んだ禍々しく赤いコアが内部で脈動していた。

 

 危機に反応した胎動するコアの()が開き、ブルリと震えると大量のヴォイドセルを照射。

 敵対する全てを破壊せんと広がるが、アルテラはそれに何ら構うことなく右腕を突っ込んだ。

 

 当然、ヴォイドセルはアルテラの右腕へと絡みつくが、彼女の右腕はセファールだったもの。

 であれば、ヴォイドセルの指揮権を強奪するのはあまりにも容易い。

 

 ヴォイドセルを強制的に抑制状態へと移行させ、振りまく粒子を抑えていく。

 

「玉藻!」

 

「分かっておる!」

 

 遊星の因子を停止させたアルテラの呼びかけに応えて玉藻も彼のコアを握る。

 一瞬引き抜けるかと力を入れてみたが、抜ける気配はなかった。

 彼の体に根を張っているかのように絡みつくコアに内心舌打ちをしながら術式を起動させる。

 

──分かて、離れて、あるべき姿へと

 

 竜の体が轟音を立てながら崩壊していく。

 マシュ達が必死に押さえ付けていた4つの尾も動きを止めてボロボロと形が崩れていく。

 彼の体を完全に覆っていた溢れていた瘴気が薄れ、薄らと彼の輪郭が見えてくる。

 

「藤丸立香! お前がご主人様を引き抜け!」

 

「う、うん!」

 

 瘴気が消えていく彼の体に抱きついて、グッと引っ張り上げる。

 竜の体が崩れ、その中に彼の足があるのが見えた。

 これなら──っ! 

 

「う、うぅぅ───ッ!」

 

 ぎゅっと二度と離さないようにしがみついて上へと引っ張りあげようとするが、竜の体そのものが彼を逃がさないようにしがみついているかのようだった。

 

「りつ、か……はな、れて……」

 

 彼の掠れた声が聞こえたと同時に立香の頭上に影が掛かる。

 何がと見上げれば崩壊していく竜の体の一部が竜の頭部を形取り、彼を奪おうとする立香を噛み砕くべく口を開いて突貫する。

 

「おれ、は……いい、から……」

 

「良くないッ! 絶対に離さないんだからッ!!」

 

 迫る竜の顎。

 それを前に立香は絶対に離さないと言わんばかりに更に強く彼を抱き締める。

 

「──ええ、それでいいわ。あなたはそれでいいの」

 

 そんな立香の前に立つのは戦う力など持たないステンノだった。

 

「絶対に離しちゃダメよ?」

 

 そう言って誰もが見惚れるような微笑をたたえて、彼女の魅了を込めた魔弾を竜へと向けて射出する。

 だが、サーヴァントとなり多少なりとも戦う力をつけたと言っても彼女の本質は庇護されるべき存在というもの。

 

 竜に大した傷もつけられずほんの少し怯ませた程度で僅かな時間程度しか稼ぐことは出来なかった。

 

 だが、それで十分だった。

 

「寝ときなさいッッ!!」

 

 空から強襲したジャンヌ・オルタが竜の頭を掴み地面へと思い切り叩き付けた。

 押さえ付けられた竜の頭はならばと、口内に魔力を収束させ、撃ち抜かんとするがそれすらも──。

 

「私に従えッ!」

 

 ジャンヌ・オルタの竜の魔女としての力が竜の因子に働きかけ、動きを強制停止させる。

 収束していた魔力は霧散し、竜の頭もボロボロと崩れて魔力へと還っていく。

 

「あら、ありがと」

 

「アンタの為なわけあるかッッ!」

 

 これでもはや立香の邪魔を出来る存在はいない。

 よって今こそ──! 

 

「ん、んん──ッ!」

 

 抱き抱えていた彼を勢いよく引き上げる。

 彼の下半身に絡みついていた竜の体はボロボロと崩れながらも彼へと纏わりつこうとするが、ジャンヌ・オルタによる竜の因子の抑制、アルテラによる遊星の因子の抑制、玉藻がコアへと干渉し続けることで力を失い崩壊が止まらない。

 

 そして立香はついに彼の体を完全に体を引き上げた。

 

「望幸っ! 良かった──」

 

 瞬間、完全に崩壊した竜の体が形を持たぬ影の津波へと変化し、立香ごと彼を飲み込もうと襲い掛かる。

 立香は咄嗟に彼の頭を抱え込み、自分が盾になるように覆い被さる。

 

 影が立香諸共に彼を飲み込む──その瞬間。

 

「──これが名残の華よ」

 

 両儀式の刀が影を斬り裂いた。

 

 直死の魔眼によって斬り裂かれた影は音もなく崩壊してただの影へと変わる。

 

「仕上げだ!」

 

 玉藻は摘出したコアを封印するべく術式を刻む。

 

「邪悪なるものよ、聖なる杯の中で深き眠りにつくがいい……!」

 

 禍々しく光っていたコアは力を失ったように輝きを失い、コアを囲むように出現した無数の焔に押し潰されるように砕かれ、欠片となったものも残さず焔が呑み込んでいく。

 

 そして完全な焔の玉へと変化したそれはゆっくりと彼の体に溶け込むように消えていく。

 

 焔を吸収した彼の目がゆっくりと開かれる。

 汚染によって赤く染まっていた瞳は青く、何処までも澄んだ青へと戻っていた。

 

「……本当に無茶、するなぁ」

 

 何度か瞬きした後、自分を抱き抱えている立香をジッと見つめると彼は苦笑しながらそう言った。

 

「えっと、確かこういう時は……ごめんなさい? あぁ、いや、違うか──」

 

「──助けてくれて、ありがとう」

 

「うん、うん……!」

 

 立香は涙を零しながらもう一度強く、強く……もう二度と離さないと言わんばかりに強く抱き締めた。

 

「──夜明けか」

 

 夜が明け、希望に満ちた日が昇る。

 彼女達が紡いだ想いと繋いだ絆が引き寄せた大団円を祝福するように太陽は暖かく照らす。

 

 ──落陽来たりて、太陽はまた昇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 >あなたに4件の報告があります。

 >トロフィーを獲得しました。

 

 >連合帝国軍を打倒した者

 >遊星を討滅せし者

 >魔神柱を討滅せし者

 >獣を喰らい、竜を喰らう者

 >星に至る者

 >999の赤い薔薇と1の黒い薔薇

 

 >以下のトロフィーを獲得したことにより新たなるスキルを獲得しました。

 >竜の炉心B+

 >遊星の呪い

 >星満ちる刻

 >三位一体

 >ネ?????? 

 

 >特異点修復により以下のスキルが成長しました。

 >置換呪術C+→置換呪術B++

 >虚数魔術D+→虚数魔術B

 >神性D→神性C

 

 >特定のスキルとトロフィーを獲得したことにより新たなるルートが解放されました。

 >詳細はステータス欄からご覧下さい。

 >報告を終了致します。

 

 

 





セプテム編完結!

大変長い時間がかかりましたが、セプテム編が完結したのは評価や感想、誤字報告してくださった皆様のおかげです。
一時期モチベがヤバな事になって本当に失踪しかかってましたけど、感想を呼んだりしてモチベが復活してまた書くことが出来ました。
それからこんな拙い文章を読んで下さり本当にありがとうございました。

評価と感想をお待ちしてます。


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セプテム後の幕間1


ロマニ……約束の時だよ、いっぱい出せオラッ!
今回は8千字とちょいと短ぇですの


 

 斯くしてカルデアは聖杯の回収に成功し、特異点を無事に修復することに成功した。

 大元の歪みを修復したことで残るはオルレアンの時と同様に細かな歪みを時間がある時に修正していけば完璧に修正することが出来るだろう。

 

 

 めでたしめでたし──で終わればどれほど良かったのだろうか? 

 

 

「医療班は機材を手術室に! 他の職員は──いや、治癒魔術を少しでも扱える人も来て! 今少しでも人手が欲しい! それからダヴィンチ!」

 

「分かっているとも!」

 

 力には代償が伴う。

 それがより強力であればあるほどに代償もまた。

 

「絶対に死なせるもんか! 何があったとしても君は助けてみせる」

 

 ガラガラと音を立てて手術室へと緊急搬送されているのは意識を消失した彼──星崎望幸だった。

 血は一滴も流れていない。

 青白く染まった顔さえなければただ眠っているだけのように思えてしまうだろう。

 

 彼の腹部が異常なまでに凹んでいなければの話だが。

 

 内臓が殆ど存在していないのではないのかと疑ってしまうほどに凹みきった腹部。

 それを証明するかのように今の彼の体重はあまりにも軽すぎる。

 

 恐らく平均的な成人男性の体重の半分もないだろう。

 

 ロマニ率いる医療班は特異点の修復を終えて戻った直後に倒れた彼を手術室へと搬送するとオペを開始する。

 此処には治癒魔術を得意とする者、名医と呼んでも差し支えないほどに優れた医者などの魔術と科学、どちらにも富んだ人材が揃っていた。

 

 糅てて加えて呪術のスペシャリストである玉藻の前、そして殺生院キアラも呪術的側面から彼の状態を把握するべく手術へと参加している。

 

 だからきっと大丈夫──カルデアにいる誰もがそう思っていた。

 

 それが間違いだったと知るのは彼の体を開いた瞬間だった。

 

「ゔっ」

 

「ぐ、ぷっ……!」

 

「……」

 

 凄惨な光景など慣れていたはずの魔術師が口元を押さえ、吐き気を催した。

 名医と呼べるほどに人体について詳しく把握している者達は彼の現状を正しく把握した上で現実を受け入れることが出来なかった。

 玉藻は、キアラはそれを見て酷く顔を歪めた。

 

「何だこれは……何でこんな……」

 

 手術台の上で眠る彼にも負けないほど顔を青白く染めたロマニが言葉を零す。

 

「……何処から手をつければ」

 

 暴かれた彼の中身。

 それはどうしようもないほどに手遅れだった。

 

 溶けているのだ。

 

 内臓の殆どが液状化し、僅かに残った臓器も出鱈目に繋がれていた。

 生きていることが奇跡──なんてレベルではない。

 死んでいなければおかしい。

 生きていること自体が間違えていると、一瞬でも脳裏を過ってしまった。

 

 それでもなお彼が生き長らえているのは──

 

「聖杯、か」

 

 溶けて、出鱈目に繋ぎ合わされた臓器の中で傷のひとつもなく今も尚力強く鼓動している彼の心臓──即ち聖杯が彼の死を許していない。

 聖杯が存在しているからこそ──聖杯が彼の死を認めないからこそ彼は死んでいない。

 

 否、死ぬ事を許されない。

 

 ……ふと、脳裏に過ぎる。

 

 今ここで心臓を抜き取ってしまえば彼は楽になれるのではないだろうかと。

 

 つい先程までは何としてでも生かしたいとそう願っていたはずなのに現状を正しく理解した今、彼をここで死なせてあげた方が良いのではないかと──一瞬でもそう思ってしまった。

 

 けど、それでも彼は……今のカルデアにはなくてはならない存在だ。

 人理が焼却され、レフ・ライノールによって数多の職員やマスターの命が奪われた今、魔術師でありながら藤丸立香と同等のレイシフト適性を持つ彼を失ってはならないのだと、カルデア代理所長としてのロマニは決断した。

 

「……死なせない」

 

 それが彼にとってどれほどの地獄を味合わせる事になるのかを理解しながらロマニは彼の治療を開始した。

 

 溶けきった内臓は全て取り替え、出鱈目に繋がれた内臓は正しい形へと繋ぎ直す。

 

 文字にすればその程度のことではあるが、実際に彼の治療を終えたのは手術を開始してから38時間を超えた頃だった。

 

 絶やすことなく治癒魔術を掛け続け、彼の全身の血液を総取替するほどの輸血を行い、ぶっ通してで行われた大手術。

 本来ならば100%失敗しているであろう手術が成功したのは彼に宿る聖杯と呪術について造詣が深い玉藻とキアラの尽力が大きいだろう。

 

 聖杯は彼の死を許容しない。

 故に死ぬ事が出来ない彼の肉体は徐々に徐々に元の形へと戻ろうとする性質があった。

 それを玉藻とキアラが呪術によって干渉することでより速く、そして的確に肉体をあるべき姿へと戻るように誘導させる。

 

 それが功を奏した。

 彼女達の尽力がなければ更に長い時間が掛かったであろうことは想像にかたくない。

 

 手術を終えて彼の容態に異常があった場合、即座に気がつけるようにと様々な機械が取り付けられた彼の姿はあまりにも痛々しい。

 そしてまた、そんなに彼に寄り添うように時間があればずっと傍に居続ける立香の様子もまた。

 

「望幸」

 

 立香は彼を前に多くを語らなかった。

 ただずっと彼の名前だけを呼んでは眠る彼の様子を時間の許す限り眺めていた。

 涙が枯れるほどに泣いたのだろう。

 いつもの快活さは消え失せ、泣き腫らした瞳は親とはぐれ不安に揺れる幼子のようだった。

 

 それを影から見ていたロマニは誰にも気が付かれることのない人気のない場所へと移動して──思い切り吐いた。

 

「ゔっ、お、ぇ……!」

 

 びしゃびしゃと吐瀉物が口元を押さえていた手を汚す。

 胃酸によって喉が焼ける、ツンとするような刺激臭が鼻を突く。

 けれど、そんなことに気がつけないほどにロマニは焦燥していた。

 

「はーっ……はぁ……」

 

 罪悪感で気が狂いそうだった。

 気が狂えればどれほど楽だっただろうか。

 

 吐き散らした吐瀉物を片付ける余裕すらなく、膝を抱えて身を縮こまらせる姿はまるで罰に脅えて震える子供そのものだ。

 

「僕が、僕が……あの時、あんな事を願わなければ……」

 

 意味の無いもしもだと理解している。

 こんなことをしている暇があるのなら一刻も早く彼が元に戻れるように手を尽くすべきだと理解している。

 

 けれど、それでも思わずにはいられないのだ。

 

「う、ぁぁ……」

 

 ボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。

 

 これは罰なのか? 

 

 思い起こすのはカルデアにやってくる前の記憶。

 マリスビリーと共に聖杯戦争を勝ち抜いて、勝者として聖杯に願いを叶えてもらった。

 ただの人になりたいと──かつての私は願った。

 

 力を失い、ただの人としてこの世に受肉して……終末を垣間見た。

 

 この世の終わりそのものを体現したかのような光景を最後に私はただの人である僕へとなった。

 何の力も持たないただの人──それに憧れていたはずなのに最後に見せられたあの光景によって僕の運命は決定された。

 

 終末を知ったものの責務を果たさなければならない。

 

 終末を防ぐ為だけに今まで生きてきた。

 慣れない体でこの世界で藻掻くように生きて、それでもあの未来を知ったものとして他人をあまり信用せず、今の自分でも対抗策を打てるように生前よりもずっと頭を回して生きてきた。

 

 もし、あの時聖杯に願わなければと思ったことは一度や二度じゃ足りない。

 けれど、それでもと前を向いて進むことを止めなかった。

 必死に生きて生きて生き続けて……彼等を見た時に初めて運命なのだと思った。

 

 藤丸立香と星崎望幸──異例のレイシフト100%の適性値を持つ二人。

 彼等がこの状況下でカルデアにやってきたのは運命としか思えなかった。

 

 特に星崎望幸の存在は大きかった。

 彼自身の実力も高く、まるでこういった状況に慣れているかのように冷静に判断を下すことの出来るとても頼りになる魔術師。

 だと言うのに彼はあまりにも魔術師らしくなかった。

 

 今まで彼の事を注意深く観察しているからこそ分かったことではあるが、あの子は根っからのお人好しだ。

 藤丸立香のように分かりやすいお人好しというわけではない。

 彼女のように表情がコロコロと変わるわけでもなく、機嫌に応じて分かりやすく声の色が変わったりなどもしない。

 

 けれど、あの子はこの極限下の状況でずっと他人のことを気にしていた。

 落ち込んでいる職員や塞ぎ込んでいる職員がいればさりげなくフォローしたり、或いはフォロー出来る人にお願いしていたりと動いていた。

 

 僕だってそうだ。

 

 落ち込んでいる時に有無を言わせずに好物の饅頭を口の中に突っ込まれたり、マシュやダヴィンチ、立香ちゃんの所に引き摺り回されたことだってあるけど、そういう時は決まって僕が沈み込んでいた時だった。

 

 ──そんな優しい彼を化け物になるように追い込んでしまった。

 

「僕がもっとしっかりしていれば」

 

 彼を無条件で信頼していた罰なのだ。

 彼ならば、と信じすぎていた。

 

 今までの常識をひっくり返して、絶望を撥ね返してきた彼ならばきっと大丈夫だと危機的状況下であったとしてもそう無意識に思い込んでいた。

 

 その結果がこれだ。

 

 彼は人であることを捨てて抗った、抗わせてしまった。

 そして僕が聖杯に人になりたいと願った罪の帳尻を合わせるように聖杯は彼を化け物へと仕立てあげた。

 

 自己嫌悪と罪悪感で気が狂いそうだった。

 けれど、僕は狂ってはいけない。

 

 だって、今の僕は所長代理だから。

 今のカルデアを引っ張っていくためにも僕が狂うことは許されない。

 

 だから、だから……今の僕に何が出来る? 

 

「……望幸くんは死ぬことはない。目が覚めないのはバイタルグラフから予測するに肉体と中身の整合性を取っているんだろう。話を聞くに今の望幸くんの心臓──聖杯には多種多様の因子が封印されているから、それによって影響を受けた肉体が、うぶっ……ふぅ、壊れないように、かつ現時点で力を最も発揮出来るように構築が進んでると考えていいはずだ」

 

 膝を抱えて蹲り、状況整理の為に口に出す。

 

 彼が人から逸脱していくという事実に胃酸がせり上がってくるが、それを無理矢理飲み干して思考を回す。

 呪術による肉体改造──僕の専門ではないけれど、それでも知識としては十分に存在する。

 それに僕なんかよりも呪術に対してもっと詳しいキアラと玉藻の両名が共に彼に何かがあれば動くであろうことは想像にかたくない。

 特に玉藻の方は彼に執着している様子すら伺える。

 

 そんな彼女達がそれを見逃しているというのなら、今はそれが必要だと判断しているからだろう。

 

 カルデアの所長代理としての僕の意見としては彼が強くなるということは歓迎だ。

 魔術師である彼が強くなれば強くなるほどそれだけ人理修復の安定性が増す。

 だが、ロマニ・アーキマンとしては許容出来ない。

 彼の人外化は認められない、認めたくない。

 

「今なら彼の人外化は阻止出来るはずだ。なら僕がやるべき事は望幸くんと立香ちゃんのサポートと並行して彼を元に戻す手段を確立すること」

 

 聖杯によって僕が人へとなり、彼は人外へと成り果てた。

 であるのならばこの事象は不可逆ではなく可逆である証明だ。

 故に彼を人へと戻す手段は必ず存在する。

 

 決して手遅れなんかじゃないと己を鼓舞しなければ潰れてしまいそうだった。

 

「過去の文献を漁ろう。幸い、此処にはそういった仄暗いものは存在するだろうし……。ああ、でもそうなるといくつかの資料をサルベージしないといけないなぁ」

 

 気が滅入るねぇ、とボヤきながらロマニはゆっくりと立ち上がる。

 彼を、望幸くんを人に戻す。

 どんな手段を取ろうとも彼を元に戻さねばならない。

 

「は、ははっ、はははっ……」

 

 そこまで思考を回して思わず口から乾いた笑い声が漏れ出た。

 それは彼に対して──ではなく、人に戻すと決意している(地獄を歩ませようとしている)愚かな自分に対しての嘲笑だった。

 

「……なんで、望幸くんなんだ」

 

 罰を受けるべきは罪を犯したものだけだろうに。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 ダヴィンチの工房──最近になってようやくカルデア爆破テロ前の状態へと戻すことのできた工房でダヴィンチは椅子に座りながらなにか考え事をしていた。

 

「……何か、戻った?」

 

 立香達が帰ってきた時は瀕死の状態になっていた彼のせいで気がつかなかったが、手術を終えて一命を取り留めたことが出来たことで多少の余裕と落ち着きが戻ったダヴィンチはふと、自身の異変に気がついた。

 

 正確には把握出来ていないのだが、自身に何かしらの違和感があるのだ。

 いや、より正確に言えば自身に違和感があることに気がついたと言うべきなのか。

 

「うーん? 何だろうこの……妙な感覚は」

 

 何かが自分の下に戻ってきたという感覚がある。

 だが、何故かそれ以上に欠けているという感覚が強い。

 

 強いて言うならあまりにも大きく欠けすぎていたが故にそれを欠けていたと認識出来なかったが、一部が元に戻ったことで漸くソレが欠けていたと認識出来た……そんな感じだろうか。

 

 欠落していた、それもかなり大きな何かが。

 だが、その欠落しているものが分からない。

 

 力……は違うか、サーヴァントとしての力は十全に機能しているし、知識の方も欠落しているとは感じていない。

 

 ──気の所為か? 

 

 思わず首を傾げるが、やはり違和感がある。

 何か、何かを忘れているような……だが、何を忘れているという? 

 

 カルデアに召喚された頃の記憶は全て存在する。

 生前の記憶だって問題ない。

 知識が何か欠落しているという感覚もなく、かと言って何か大事な事を忘れている……という感覚もまあ、ないだろう。

 

「まあ、これだけ考えても分からないのなら一度情報を整理してからやるべきだろうねぇ。……そういえば、最近はずっと忙しくて芸術活動が出来なかったし、偶には何かを描いて発散するのもいいかな」

 

 そういうや否やダヴィンチは久しく使っていなかったパレットとキャンバスを取り出して設置する。

 そしてキャンバスの前に腰を落ち着けると無心で絵を描き始めた。

 

 ……こうやって芸術活動に勤しんでいると頭の中のもやもやが全て明瞭になっていく。

 この感覚をダヴィンチはこよなく愛していた。

 

 淀みなく手が動き、一人の人物を描き始める。

 誰がモデルというわけでもない、ただ頭に浮かんだものを絵に投射するように一心不乱に手を動かして形へとしていく。

 

 ──立香ちゃんとマシュの事が心配だ。

 

 彼が瀕死の状態で此処に緊急搬送された時の取り乱し方は尋常なものではなかった。

 特に立香ちゃんに関して言えば下手に彼がこのまま亡くなれば後追いすらしかねないと思わせるほどの取り乱し方だった。

 

 今は手術が成功して一命を取り留めたということもあって二人とも落ち着いているが、それでも不安定な様子は多々見受けられる。

 

 マシュはいつにも増して鬼気迫る様子で最近復活させたシミュレーターに篭もり続けている。

 心配になって様子を見てみればケイローンやエミヤ、クーフーリンと言ったサーヴァントに戦いの教えを乞うているようだった。

 

 恐らくは先の特異点で力不足を痛感した──というよりも自分が足手まといだったと感じてしまったのだろう。

 

 だが、あれに関しては仕方がないというのがダヴィンチの見解だった。

 何せ相手はあのセファールだ。

 一級のサーヴァントですらまともに戦えばまず勝ち目がない相手にデミサーヴァントになってまだ2ヶ月と少しのマシュがまともに戦えるわけがない。

 

 聖杯による顕現であるが故に大幅に弱体化はしているのだろうが、それでも元は神々すら蹂躙したような存在だ。

 よって勝てたこと自体が奇跡なのだ。

 

 奇跡ではあるのだが、マシュにそう伝えたとしても彼女は納得しないだろう。

 何故ならば、あのセファールを相手に抗えてしまった彼がいるから。

 

 つくづく規格外。

 

 サーヴァント相手に戦えるだけでもおかしいというのに、セファールを相手に一歩も引かず、か細い勝利の糸を手繰り寄せた手腕。

 一歩ズレれば即死するような状況で心が揺らぐことすらなく、的確に追い詰めて勝利を得る胆力。

 

 そんな彼がいるからこそ、マシュは何を言われようとも納得はできないのだろう。

 

 何故ならば基礎スペックだけ見ればデミサーヴァントであるマシュが全て上をいくからだ。

 そう数値上で語るのならばあの時の彼のスペックはマシュにすら遠く及ばなかった。

 

 詰まるところ、彼は純粋な戦闘技能と今までの経験だけでセファールに抗い、そして勝利をもぎ取ったのだ。

 故にマシュと彼の間に存在したのは単なる戦闘技能と経験の差。

 

 だからこそマシュは今、奮起しているのだろう。

 足を引っ張りたくないと思うから先達である他のサーヴァントに頭を下げて訓練をつけてもらい、少しでも助けになれるようにと必死なのだ。

 

「……でも気になるのは彼が何処でそんな経験を積んだか、なんだけどね」

 

 戦闘にはあまり詳しくないダヴィンチから見ても異常と言えるほどに彼は戦いになれている。

 

 ──魔術師だから? 

 

 いいや、否だ。

 魔術師だからという理由では到底足りない。

 魔術師である以上、大なり小なり戦闘技能を磨くことはあるだろうが、望幸くんの年齢ではとてもではないが釣り合わない。

 

 じゃあ何かしらの聖杯戦争に参加した? 

 いいや、それも否だ。

 そもそもそんなことをしているのなら確実にカルデアのパーソナルデータに記載されている。

 

「……思えば望幸くんのこと何も知らないなぁ」

 

 分かっているのは立香ちゃんに負けず劣らずのお人好しな所と無表情で感情がないのかと思いきや案外感情豊かな子だと言うことくらいだろう。

 

 どうやってそこまでの戦闘技能と経験を得たのかとか、置換魔術をどういうふうに扱っているのかとか色々聞きたいことはある。

 

 でもそれだけじゃない。

 

 もっと、もっと彼の色んなことを知りたいと思うのだ。

 

「……今度立香ちゃんやマシュ、それからロマニも呼んで皆でお茶会みたいなことをしてみるのもいいかもね。彼、立香ちゃんにはすっごい甘いから彼女が誘えば来てくれる可能性が高そうだし」

 

 大事にしているのだろうなとは思う。

 彼は周囲によく気を配る子ではあるけれど、それ以上に幼馴染である立香ちゃんのことを良く見ている。

 だからこそ、彼女の危機に関しては人一倍敏感なのだろう。

 

 そのおかげで……或いはそのせいであの悲劇に繋がった。

 

 胸を貫かれ、頚椎を砕かれたあの姿は流石にもう二度と見たくない。

 それから、生きる為には必要だったのだとしても竜と素直に形容し難いあの姿も。

 

「彼が起きたらいっぱい褒めて、いっぱい叱って……色々とお話をしないと、ね?」

 

 だから早く起きるんだよ、とダヴィンチは呟く。

 

 このカルデアにいる誰も彼もが彼の目覚めを待ち侘びている。

 何だかんだで彼の世話になっている職員は多いのだ。

 聞けば彼、職員の頼み事を色々と聞いていたり、メンタルケアもどきみたいなこともやっていたみたいだし。

 

「……出来た出来た。ふふ、やっぱり芸術活動に勤しむのはいいな。心も体もすっきりするね」

 

 いつの間にか完成していた絵を見てダヴィンチは微笑む。

 

「うんうん、中々に良い出来じゃないか。さて、これは何処に飾ろうか。アトリエに飾っておくのもいいが……いや、うんそうだな。この絵は此処がいいか」

 

 ダヴィンチは完成した絵を額縁に飾り、工房の片隅に設置する。

 そして完成した絵を改めて眺めると気恥ずかしそうに頬を掻いた。

 

「いやあ、我ながらなんというか……気持ちが先走りしすぎちゃったかなぁ? でも、うん、本当にこんな未来が待っていたら嬉しいねぇ」

 

 ダヴィンチが無意識に描いていたのはカルデアでお茶会をしているものだった。

 そこにいるのは自分やロマニは勿論のこと、望幸くんも立香ちゃんもマシュだっている。

 

 そして──オルガマリーもまた。

 

 笑っていた、皆が幸せそうに笑っていた。

 ああいや、彼だけは笑っている様子が思い浮かばなくて相変わらずの仏頂面だったけれど、それでもいつもの仏頂面よりかは柔らかい表情をしていた。

 

 オルガマリーも含めた全員でのお茶会。

 それが実現出来たのならどれほど素晴らしく、どれほど幸せだろうかとダヴィンチはそんなに夢想に胸を馳せる。

 

 そしてそんな夢を実現させるためにも今からもっと頑張らねばなるまい。

 

 その為にもまずは──新しい礼装でも作ってみようか? 

 

 どんな性能にするか、どんなデザインにするかなどと考えながらダヴィンチは図面を描き始める。

 その視界の片隅に自分が描いた幸せな結末を映して。

 





ロマニは人から化け物に転落したホモくんのことを絶対引きずるよなぁと考えてます。
ホモくん自身がそれを望んだにせよそうじゃないにせよ、聖杯を使って化け物堕ちするのはロマニの過去を刺激するには十分だと思うので。
過去の存在である自分が受肉して人となったことで今の時代に生きるホモくんが人から転落して化け物になるとかゲロぶち撒け案件ですわよこれ。
仮にロマニその道を選ばなければホモくんが化け物堕ちしなかったかもしれないと考えられるのがロマニの精神的に最悪でしてよ。

今のロマニは小心者だけど優しい人ですので、それが巡り巡って自分を傷付けるのですわ。
ロマニが図太かったら、或いは魔術師然とした性格だったらそんなこともなかったでしょうに。
まあ、これも人になったおかげというわけですわね。

狂いたくても立場的に狂えないというのは美しい。
発狂するような狂気に犯されながらもそれでもと、未来を掴もう足掻くのはもっと美しいことですわ。
それにロマニにはまだまだ縋りつける希望がありますの!

きっとホモくんの人外化は止められるはずですし、人に戻すことが絶対出来ると信じていますの!

蛹の羽化を無理矢理止めた結果なんて知れていますのにねぇ?

それはそれとしてアンケートです。
ホモくんの過去の回想、所謂試走だったりチャート確立の為の調査だったりをしてる頃のお話とかを番外編として断片的に入れ込もうかと考えてます。
ちなみにあってもなくても本RTAには何の影響もありません。
精々が過去のホモくんのやらかしが分かったりする程度です。


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セプテム後の幕間2

 

 セプテムクリアから人理修復RTAはーじまーるよー! 

 

 前回玉藻が出てきた時点で侵食率の方は無理だと判断してルート開拓の方へと舵を切りましたが、概ね成功しましたね。

 不測の事態にも狼狽えず用意していた別チャートへと着地させることが出来ましたので満足です。

 

 では今回何をしたのか? という解説ですが、要はホモくんが迎えるべきエンディングの為に必要なスキルを取りに動いた感じですね。

 トロフィーの『スノードロップ』はそれはそれはもうめんどくさい条件下で取得となりますのでホモくんの人外化は必須条件でした。

 他にも様々な条件があります。

 全て解説するとなるとそれだけで多くの時間を取るので今回はこの特異点で行った3点だけ説明します。

 

 まず1つ目が先ほども挙げたようにホモくんの人外化です。

 

 擬似英霊になる、というのも手段の一つではありますがそれだけでは到底足りないですし、要求スペックがクソほど高いので極一般的な英霊のステータスだと届かない可能性があります。

 ですので今回は平均ステータスの高い竜の方へと舵を切りました。

 英霊化するなら混ぜた方が便利で強いですしね。

 成長率も高いですが、立香ちゃん達の成長の機会も奪いかねない程にクソバカスペックなのでそこは要調整ですね。

 

 2つ目は多種多様な因子の回収です。

 

 途中凄い量の化け物達の死体をかき集めましたよね? 

 あれはホモくんの体を治すというのもありましたが、因子回収という目的もありました。

 大量の因子の回収は正直に言ってデメリットの方が強すぎて通常プレイではまず要りませんし、やるだけ無駄ですが、『スノードロップ』の獲得の為にはほぼ必須です。

 

 多種多様な因子を回収すればするだけその属性が付与されるので特攻対象になりやすいという致命的な弱点を抱えることになりますが、ホモくんの呪術である魂魄置換と肉体置換による呪いの質を高める為に必須なのです。

 

 加えて大量の因子を蓄えることで内部構造を複雑化させることで玉藻による侵食率の低下を抑える効果も見込めます。

 今回は60%から30%まで低下させられましたが、最低目標20%を十分に超えているので良しとしましょう。

 駄目だったらリセットでしたね、ハハ。

 

 3つ目はホモくんを気絶させやすくするためです。

 大量の因子回収はそれだけでホモくんの肉体に多大な負荷を掛けます。

 そもそも負けることは確定しているので如何に素早く負けさせるかというのがRTA的には重要視されます。

 出来うる限り特攻対象を増やし、ホモくん自体に負荷を掛けることで時間をかけずに敗北させることを狙いに行きました。

 

 ぶっちゃけあの流れになってしまうと立香ちゃんの運命力と合わさってほぼほぼ負け確ですし、抗えないこともないですが抗っても旨みがそこまでありません。

 

 なので後隙やら発生がバチクソに遅い技ばっかり使う必要があったんですね。

 

 そもそも勝つ動きをするなら叩きつけからの薙ぎ払いコンボではなく、叩きつけで地面を振動させて飛翔爆撃コンボか飛翔ゲロビで大体焼き払うことが出来ますからね。

 侵食率60%も超えてるホモくんなら火力も十分なので玉藻は無理でも他は落とすことは出来たでしょうし。

 

 玉藻に関してもタイマンかつガチガチに害悪戦法とメタを張り続ければ勝てなくはない……かもしれません。

 現時点でやる意味は皆無ですが。

 

 と、まあ今回のセプテムでのやるべき事は達成しました。

 

 ですのでここからは特異点攻略後恒例のストレスチェックと管理です。

 

 ロマニ辺りはストレスが爆増してるでしょうけど、所長がいないということとホモくんの人外化が進行したことでロマニのストレス値が特殊条件を達成したことにより、ストレス値が限界になっても発狂しなくなりました。

 

 これによりロマニの精神を酷使無双することが出来るようになりました。

 好感度稼ぎも兼ねて多少のストレス管理はしますが、ロマニはある程度雑に扱っても大丈夫です。

 既に何度か試験済みですので安心して酷使出来ますね! (ド畜生)

 

 >……目が、覚めた。

 >体に妙な違和感を感じる。

 >ベッドから起き上がり、自分の体を見てみるとまるで色素を失ったかのように自分の皮膚が真っ白になっていた。

 

 お、白化現象が始まりましたね。

 ホモくんの人外化が始まると同時に発生するイベントなんですけど、ぶっちゃけただホモくんの見た目が変わるだけでRTAには何の影響もありません。

 

 この白化現象についてなんですけど簡潔に説明するならばエミヤの魔力回路が焼き付いた結果、褐色になったようなものに近いです。

 厳密には少々違いますが、ホモくんの魔力回路を酷使するのと人外化を同時に果たすことで全身から色という色が抜け落ちて真っ白になっていきます。

 人の因子が完全に消え去ると目以外の色も完全に消え去ってモノクロになりますね。

 

 まあ、早い話侵食を分かりやすく可視化したものになります。

 

 >あなたはベッドから体を起こした。

 

 はい、それじゃあ漸く動けるようになったのでまずはホモくんの状態を確認をします。

 玉藻に色々と弄られた可能性は高いので現状確認は本当に大切なのでね。

 

 ……ふむふむ、ホモくんの外見自体は前と然程変わっていませんね。

 精々が体が薄ら白くなって、後遺症として左目が人外化した時の不気味な瞳になっているだけです。

 

 後は──バフ……というか、RTA的にはデバフである侵食抑制が永続で付けられてますね。

 んー、やっぱり玉藻に付けられましたかぁ。

 

 この侵食抑制というバフですが、名前の通り侵食率を抑制してくれる効果となります。

 効果としては侵食スピードを40%低下といった感じですね、強い……。

 

 まあ、永続バフとは言っても消去不可ではないので条件次第で消せるんですけどね。

 ただすぐに消すとイベントが発生して余計ロスするので暫くは付けたままでいます。

 

 どの道4章までは侵食率イベントはガッツリ進みませんでしょうしね。

 3章は材料となる敵がね……。

 5章も5章で大概何もないですけど、とあるルートでクトゥルフ方面にアプローチ出来るので、ちょっとだけ冒涜的な存在を回収出来る可能性があります。

 

 なお、外神と接触したらもれなくジ・エンドです。

 アビーちゃん夢の国体験ツアーは不味いですよ! (5敗)

 

 ホモくんは外神を直視しようが、接続されようがストレス値そのものが存在しないので発狂とかしないんですけど、立香ちゃん達カルデア組がもれなく発狂しちゃうんですよね。

 

 独占欲を発揮したアビゲイルには気をつけよう! 

 

 話はさておき、ステータスも十分確認出来たので早速部屋の外に……出ることはせずに、ベッドの傍に備え付けられている呼び出しボタンを押しましょう。

 

 >あなたは枕元に設置されていたボタンを押した。

 

 部屋の外に出歩いても特に問題は無いんですけど、その場合まーた何処かに集合しなければならないので今回のような出来事が起きた時はこのボタンを押した方が時短になります。

 何か皆集まりますからね、緊急ボタンかな? 

 

 >ボタンを押して数分もしないうちに慌ただしく走っているような足音が聞こえてくる。

 

「望幸くんに何か異常があっ……たの、かい……?」

 

 >走ってきたのだろう、息も絶え絶えな様子のロマニが酷い顔で部屋に入ってきた。

 >その後ろにはダヴィンチやマシュ、そして立香もいることが確認出来た。

 

 おっ、よかったよかった、ちゃんと全員揃ってますね。

 

「望幸くん……」

 

 やあロマニ! 元気にして……なさそうですね! 

 相変わらずこのムーブ後のロマニの精神状況は最悪だと見て取れます。

 

「う、うわぁぁぁぁぁん! 望幸ぃ……っ!」

 

 >あなたが起き上がっている姿を視認した立香がロマニの後ろから飛び出して強く、強くあなたを抱き締めた。

 >不安だったのだろうか、あなたに抱きついている立香の体は小さく震えていた。

 

 ごめんねぇ立香ちゃん。

 分かってはいましたが幼馴染ルートだとホモくんに何かあった時の立香ちゃんの精神的負担がデカすぎるんですよねえ。

 でも慣れて貰わないといけません。

 この先のホモくんはもっともっと過酷な状況に身を置くことになります。

 

 そうなった時に一々ホモくんのことで精神をすり減らして欲しくないんですよね。

 ……でも、立香ちゃんは優しい子だからなぁ。

 絶対気に病んでしまうんですよね。

 

 >あなたは震える立香を抱き返して幼子をあやすように頭を撫でた。

 

 よーしよし、ホモくんは生きてますからねー。

 立香ちゃんが気に病む必要は無いですからねー。

 

「良かった、良かったよぉ……目が、覚めてくれて……」

 

 >涙でしゃくり上げる立香の背中を落ち着かせるようにゆっくりと優しく叩く。

 >その最中、此方を揺れ動く瞳で見つめるマシュと目が合った。

 

 おっと、マシュも結構なストレスを溜め込んでますね。

 

 >あなたはそんなマシュに向けて手招きをした。

 

 抱擁は手っ取り早いストレス緩和の手段でもあります。

 特にこういった場面では効果絶大なので惜しむことなくやってあげましょう。

 なおタイミングと相手を間違えるととんでもない事になる模様。(25敗)

 

 >手招きされたマシュはふらふらと足を縺れさせながらも立香と同じようにあなたにしがみついた。

 

「望幸さん、ごめんなさい……。私、何の役にも立てなくて……っ」

 

 >嗚咽を零すマシュをあなたはあやしながらもその言葉を否定する。

 

 マシュはちゃんとあの状況下でも立香ちゃんを傷一つ付けずに守ってくれましたからね。

 それだけではなまるです。

 偉いぞー凄いぞーデミサーヴァントになってまだまだ日が浅いマシュが他のサーヴァントもいたとはいえ、立香ちゃんを守りきったのは大金星でしょう。

 

「私が、私がもっと強かったら……望幸さんがそんな目に遭う必要はなかったかもしれないじゃないですか」

 

 >マシュの言葉にあなたはもう一度首を左右に振り、否定した。

 >これは自業自得なのだと、マシュがどれだけ強かったとしてもあの状況下では自分は必ずこうしたと告げる。

 >……何故ならばあの時はそれこそが最善策だったと判断したからだ。

 

 実際、あの場にはマシュよりも遥かに強いサーヴァントも沢山いましたからマシュが彼等と同じくらい強かったのだとしてもホモくんがこうなるのは既定路線にすぎません。

 それこそ両儀式という根源接続者さえもあの場にいてこうなったのですからマシュがいくら強くてもホモくんの人外化は確定です。

 

 ……まあ、そもそもチャートに組み込まれているので人外化しないのはまず有り得ませんけどね。

 でも、人外化は本来なら4章で行う予定でした。

 こうして前倒しで行えたのも巨神ルートが発生したからなんですよね。

 

 4章で人外化を行うと常にギリギリの綱渡りをし続けることになるのでこんな序盤で人外化出来たのは僥倖でした。

 お陰様でホモくんの耐久力も上がって4章で浸食率を大幅上昇……もとい、材料回収を沢山しても良さそうです。

 

 とは言っても最初からかっ飛ばしてやったら玉藻に邪魔されるのは目に見えているのでそうならざるを得ない状況を作る必要があるんですよねー。

 まあ、ゲの字が出てくることは確定事項なので幾らでもピンチを作り出せることでしょう。

 

 具体的には魔神柱使って悪さします。

 これもRTAの為……卑怯とは言うまいな……。

 

「自業自得って……」

 

 >縋るように泣いていた立香が震えた声で呟いた。

 >あなたは立香達に対して、あの特異点で最後の最後に大変迷惑を掛けたことを謝罪した。

 >レフ・ライノールを倒す為、そして生き長らえる為にみっともなく足掻いた結果、多大な迷惑をかけた。

 >よりにもよって立香達に牙を剥いたのだ。

 >……その責任は取らねばならないとあなたは深く反省していた。

 

 というわけでね。

 恒例のアレをしましょう。

 

 >あなたは立香とマシュから少し離れ硬い床に正座をすると病み上がりで悲鳴を上げている肉体を無視して土下座を敢行した。

 

 最上級の謝意を示すDOGEZAです。

 プライドは投げ捨てるもの。

 ホモくんのプライドなんてあってないようなものです。

 

 ……話を重くさせて謝罪すれば時短出来ちゃうんですよねぇ。

 

「ちょ、いきなり何を──っ!」

 

 >すまなかったと、深く深く頭を下げる。

 >床に額が付くほどに頭を下げてあなたが今示せる最大の謝罪を行う。

 >それほどのことをしたのだと、あなた自身そう思っていた。

 >特に藤丸立香を危険な目に遭わせたことは何よりも許せなかった。

 >守る為に得た力で立香を襲ってしまえば一体何のために強くなったというのだ。

 

「望幸、やめて」

 

 >愚かしい、呪わしい。

 >ただひたすらに無力な自分が呪わしいのだ。

 >人であることを捨てきれず、半端な姿を晒すなどと浅ましいにも程がある。

 >浅ましい、浅ましい、浅ましい……! 

 >挙句の果てにその浅ましさから立香を危険に晒し、剰え味方であるはずのマシュやサーヴァント達にすら襲いかかったのだ。

 

「ねえ、望幸。お願いだから謝らないで」

 

 >……それは出来ないとあなたは立香の言葉に首を左右に振った。

 >自分が仕出かした事の大きさは理解しているつもりだ。

 >故に謝罪で済む話ではないが、それでも謝らねばならないのだ。

 

「違う、違うんだよ望幸。望幸が悪いならもっと悪いのはきっと私だよ」

 

 >その言葉にあなたはピタリと動きが止まった。

 

「私、望幸の負担にしかなってない。マシュにも望幸にも守られて、挙句の果てに望幸がそんな目に遭わないといけないくらいにまで追い込んで……」

 

 >はっ、はっ……と立香の呼吸が荒くなっていく。

 

「強くならなきゃって決めたのにまるで変わってなかった。ケイローンやクーフーリン……それに望幸にだって訓練をつけて貰ったのに何も変わっていなかった。だから、だから……謝罪するべきは私で、悪いのも──」

 

 >違う。

 >立香は何も悪くない。

 >だって立香は一般家庭の人間なのだ。

 >魔術師としての『責務』を果たす様な訓練を受けていたわけではない。

 >ただの……優しい女の子なのだ。

 

「なら望幸だって──!」

 

 >それも違うのだ。

 >何故ならば星崎望幸という存在は何処まで突き詰めようが魔術師でしかない。

 >魔術師として生きる未来しか存在していないのだ。

 >だと言うのに本来ならば魔術師である己が背負うべき人理修復という重責を一般家庭の人間である立香にも背負わせてしまっている。

 

 >だからこそ、私は浅ましく、無力で愚かな自分を恥ずかしく思う。

 

「……っ」

 

「ぅ、はいはーい! お話は一旦ここまで! 望幸くんも病み上がりな上に起きたばっかりだから疲れてるだろうしね。お話はまた望幸くんが元気になってからでいいね?」

 

「う、うん……分かったよダヴィンチちゃん」

 

「マシュもそれでいいよね?」

 

「……」

 

「マシュ?」

 

「……ぁ、えっと、はい。私もそれで大丈夫です」

 

「はいはい、それじゃあ皆解散! 私とロマニは望幸くんのメディカルチェックをするからちょっとだけ残るけどね! まあ、彼の結果はちゃんと君達にも伝えるさ。だからしっかり帰るんだゾ? 特に扉の反対側にいる君達もね」

 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「……うん、皆ちゃんと帰ったかな」

 

 扉の前から気配が完全に消えたことを確認して、その上で一応念の為に扉を開けて周囲も確認したが、影も形も見えず、式神だったり魔術などの怪しいものも目視できる限りでは存在しなかった。

 

 扉の前に待機などしていないで中に入れば良かったのでは? と思わなくもないが、仮にカルデアが契約しているサーヴァント全員が来ていた場合、この部屋に入りきらないからサーヴァント達は外に待機していて良かったのかもしれない。

 

「──それで、望幸くん」

 

 扉を閉めてベッドから身体を起こして座っている彼の方へと向き直る。

 

 ……酷い瞳の色だ。

 片方だけではあるが、瞳の全てが反転して狂った色彩を放っている。

 彼のサーヴァントである玉藻が抑え込んだがそれでも彼の中に宿る呪いに近しい力が彼の体の変異を引き起こした。

 

 結果として彼の左目は人の物から外れたものへと変わってしまった。

 

「体の調子はどうだい?」

 

 そう聞くと彼は自分の体を確かめるようにゆっくりと体を動かし、そして魔力回路を励起させて不調がないかを調べた。

 

「さして異常は感じられない。むしろ前に比べて力が漲るくらいだ」

 

「……もう、全部治ったと?」

 

「ああ、少なくとも俺はそう思う」

 

「ごめん、ちょっと触診させてね。ほら、ロマニも手伝って」

 

「えっ、ああうん。そうだね、望幸くんちょっと調べさせてもらうね」

 

 彼の体を触診し、異常がないか調べたが……全くと言っていいほど異常が見つからなかった。

 断裂した筋肉も、砕けた骨も全て完治していた。

 普通ならば完治するまでに数年を要する傷がたった一週間も掛からずに治るなどと魔術があったとしても考えられない結果だった。

 

「触診した限りだと異常はまるで見つからないね。でも、触診だけだと流石に心配だから後で精密検査をしようか」

 

「そうだね、それが良さそうだ」

 

 恐らくは何も異常はないとは思うが、彼は怪我を隠すような事をする子だ。

 万が一にも怪我を隠していたら大変困る。

 ロマニとダヴィンチはお互い顔を見合せて今後の予定を詰めていく。

 

「ところで望幸くん、その……体に異変がある、よね?」

 

「これのことか」

 

 ロマニが目を伏せて遠慮がちに尋ねると彼はそっと左腕を持ち上げた。

 一見するとただの普通の左腕だが、彼が魔力を流した次の瞬間、あの特異点で見られた醜悪な竜の腕へと変化した。

 

「……ッ、やっぱり」

 

「一部ではあるが、竜……竜? の肉体へと変化出来るようだ。とは言え、あくまで一部。加えて変化出来るのは一つの部位だけだ。全身を竜に変えることは出来なさそうだ」

 

 背中から鋼鉄の翼が生えたり、頭頂部に光輪が出現したり、4つの尾が生えたりと目まぐるしく彼の体が変化する。

 だが、彼の言う通り一つの部位しか変化出来ないようで先程彼が変化させた左腕は元の人間の腕へと戻っていた。

 

「それは彼女達が抑え込んでいたはずじゃ……」

 

「抑え込まれてはいるとも。これはあくまで滲み出た力と魔術を合わせて使ったからこそ起きる変化……だと思う」

 

「肉体置換、だったかな。一応聞くけどそれ大丈夫なのかい?」

 

「暴走という意味なら問題ない。人の意識を消されるほどの侵食は感じない。恐らくだが玉藻達が一定のラインを超えないように制限しているのだろう」

 

「ん? 人の意識を消される?」

 

「あっ」

 

 聞き捨てならない言葉が聞こえて彼の方を見てみれば明らかにしまったといわんばかりの顔をして、此方から顔を逸らしていた。

 

 へぇ、ふぅん、ほぉーん? 

 

「ちょーっと詳しく聞かせてくれるよねっ?」

 

 ロマニと一緒にどういうことか彼に吐かせる為に詰める。

 

「私の見解ではアレは幻想種の強大な力に呑まれた結果、意識が飛んで暴走していたと思っていたんだけど……どうやら違うようだね?」

 

「人の意識が消える……ってことは、あの時の君は正真正銘の竜になっていたということかい? ごめん、詳しく話してくれる? 知っていることと分かってること全部」

 

「……う」

 

「悪いけど、僕はそんなものを見過ごすことは出来ない。ただでさえ、君には無茶をさせすぎている」

 

 ロマニと私の問い詰めるような視線に根負けしたように彼はポツポツと話し始めた。

 

「あの時に限った話だが、人の意識と化け物──竜としての意識の異なる精神が同時に存在していた。だが、同じ器に異なる精神を保有することは余程相性が良いか、格の差がない限り器の主導権を握る為に潰し合いが始まる」

 

 人と竜、どちらの格が高いのかと言われれば問われる迄もない。

 

「加えて混ざったのは竜だけじゃない。混ざったその分だけ潰し合いはより苛烈になる。結果として俺の人としての意識は争いに負けて消滅しかけた。……消滅しなかったのは玉藻──いや、()()()()()()? 兎に角消滅しかけた人の意識は保護されたことで消滅を免れた、ということは覚えている」

 

 斯くも仮に人の意識が消滅したところで星崎望幸であったことには変わりがない以上、時間経過で精神の潰し合いは融合へとシフトする。

 そうして統合された意識群はまた星崎望幸としての輪郭を生み出して『()()()()』として新たに再臨する。

 

 ……その為の魂魄置換だ。

 

 星崎望幸の魂が存在する限り、魂に刻まれている情報から精神の複写を行い、肉体の自我を塗り潰す。

 そうすれば元通り、人間であった頃の星崎望幸の再現が可能だ。

 

 だからこそ、あの時賭けに出たのだ。

 

「「…………」」

 

 その話を聞いて私とロマニは絶句した。

 言葉が続かなかったのだ。

 

「きみ、は──」

 

 死をまるで恐れていない。

 いや、そもそも恐れるということ自体を分からないようだった。

 

 死への恐怖──いいや、そもそも恐怖という感情自体が欠落しているようにしか思えない。

 生まれの問題か? 悲願を背負った子に対する教育の成果か? 

 

 いいや、いいや、これはそんな生易しいものじゃないだろう。

 

 生の渇望という生物が持って当たり前の渇望を有していない。

 自分の死をなんとも思っていない、思えないのだ。

 彼にとっては死という事象も当たり前のこと。

 私達が常日頃から呼吸をすることに何も疑問を抱かないように彼は自分の死にあまりにも無頓着だ。

 

「何が君をそこまで……させているんだい?」

 

 絞り出すような震える声でロマニは質問を投げかける。

 

 その質問に初めて彼はきょとんとしたような表情を浮かべた。

 

「約束を果たすため、カルデアを守るため、立香を元いた場所に帰すため──何よりも立香に幸せに生きて欲しいから」

 

 だから死力を尽くす。

 だから無茶を通す。

 

「それこそが立香を巻き込んでしまった一人の魔術師としての果たすべき責任だろうから」

 

 その為ならば自分の命だって捧げられる。

 

「あ、勿論人理修復を円滑に行う為でもある。……本当だよ?」

 

 はは、と小さく笑う彼の瞳はあまりにも輝いていて天に満ちた星々のようだった。

 それはまるで彼の善性を証明しているかのような輝きで──

 

 

 ──死にたくないと、生にしがみつく臆病で醜い自分(ロマニ・アーキマン)を照らし出されたような気がしてどうしようもなく吐き気を催した。

 





曇らせ書くの苦手マンです。
心理描写が納得いかなさすぎて全然書けませんでしたわ。

ロマニとホモくんはある意味対極の存在ですが、同時に多くの共通点が存在あったりなかったり。
ちなみにホモくんは大概立香ちゃんに対する想いがヘヴィですが、立香ちゃんも負けず劣らず大概です。
いつかそれも書けたらいいなぁ。

ちなみにこの場に妖精眼持ちいたらマジの地獄でしたわよ!


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セプテム後の幕間3

 

 彼が起きてから一週間が経過した。

 その間にも彼のバイタルチェックや体の調整という名目でのシミュレーターでの肉体性能のチェックなどと様々なことをしていた。

 中でも度肝を抜かされたのは彼の自傷行動の躊躇いのなさだろう。

 

 前に解析のために竜鱗を求めたのだ。

 だが、当然それはあくまで自然と剥がれたものとかで良かったし、そうも伝えた。

 だと言うのにわざわざ腕を変形させて生えた鱗をその場で引きちぎるわ、挙句の果てにドン引きしていた様子を何と誤解したのか、彼は頭上で輝く光輪を掴むとバギンッと硬質な音を立てて砕いてその欠片を渡してきたわでてんやわんやだった。

 

 達観したような目でその光輪触れるのね、とは誰が言った言葉だったか。

 

 案の定と言うべきか、光輪を砕いた彼は目に見えて具合が悪そうにしていた。

 斯くも一時間後には光輪は復活して元気にシミュレーターで暴れ回っていたが。

 

 ……本当に変わってしまったのだなとは思った。

 

 あの子は必要ならばそういう事をするというのは前々からそうだったが、ここまでは酷くなかったはずだ。

 一応立香ちゃんの前では控えてはいるのか、かなり大人しくなっている、なっているが……。

 

 それでもシミュレーターなどの疑似戦闘訓練ではその様子があまりにも顕著だ。

 敵を倒す為ならば平気で斬られ、殴られとお構いなしだった。

 その代わりにどのエネミーも反撃の一撃で必ず殺しきっている。

 

 確かにシミュレーターで現実の肉体には何の影響もないものだ。

 だからこの動きはシミュレーター限定の動きだ──

 

「なんて、そう言えたら良かったんだけどねぇ……」

 

 やる、絶対にやる。

 彼ならば必ずそうするという確信がある。

 

 彼はあくまでシミュレーターだからこそ出来る動きだ、なんて言っているけれど事と場合によってはやるだろう。

 その事を他の子達も薄々勘づいてきているのか、彼との接触時間も増えてきている。

 

 彼のサーヴァントは勿論だが、特にマシュと立香ちゃんは前と比較しても明らかに多くなっている。

 

 何をするにしても大体誰かがそばにいる。

 その内の一人は必ずと言っていいほどマシュか立香ちゃんだった。

 

「彼も随分とまあ罪作りな子だ──っと、漸く解析結果が出たね。どれどれー?」

 

 彼の竜鱗に加えて光輪の解析情報がディスプレイにずらりと表示される。

 成分、硬度、魔力含有量……様々な情報に逐一目を通して彼を人に戻すことが出来るような手掛かりはないかと目を通す。

 

「……彼の鱗凄いな。聖杯の魔力も含まれてるからかなぁ? こっちで少し手を加えてやれば竜の牙と逆鱗の代替素材になるかも」

 

 素材に含まれる豊富な魔力もそうだが、何よりも霊体──エーテルとの親和性が異常に高い。

 少なくとも魔術師であるのなら喉から手が出るほどの素材だろう。

 

 エーテルとの親和性が高いということはそれ即ち礼装作成に適しているということだ。

 糅てて加えて彼の鱗は曲りなりとも竜だ。

 決してワイバーンなどの劣化個体ではない純粋な竜種としての鱗。

 その付加価値は計り知れない。

 

 そこまで考えてダヴィンチは顔を曇らせた。

 

「これ、絶対魔術協会から捕捉されるよね 」

 

 聖杯を宿している時点でも大分アウトよりだと言うのにそれに加えて希少な虚数と無の魔術属性にいくらでも生産できるであろう現代に蘇った純粋な竜の鱗。

 間違いなく封印指定からのホルマリン漬けのフルコースだ。

 

 ……いや、まだそのくらいで終わるのなら温情か。

 

 最悪は()()()()()()()()()()()()()()()()()()、或いは実験体として好き勝手弄ばれるか。

 どちらにせよ、これを知られれば最悪な未来を辿ることは想像にかたくない。

 

「どうやって騙し通すべきかなぁ……。データベースの改竄は勿論として職員全員との口裏合わせ、それから報告書もいくつかフェイクを混ぜる」

 

 魔術協会を騙し通すなら二重三重では足りない。

 嘘がバレても別の嘘で真実を覆い隠す位にはしておかねば確実に看破してくるだろう。

 加えて直前に改竄するのは駄目だ。

 

 直近で弄った場合、痕跡を消したと思っても消しきれなかった場合のリスクがデカすぎる。

 であるのならば今、この時人理修復を行っている最中に偽装するべきだ。

 

 当然、本当の記録は残すが、それは共有のデータベースではなく、独立した個別のデータベースに厳重に保管する。

 

 だが、それらを完璧にこなしたところで一番の問題は──

 

「望幸くんの体、だよね」

 

 ダヴィンチはうんうんと唸りながら思考の海に没入する。

 

 今の彼はパッと見は人間に似ているが、その内面はあまりにも不安定だ。

 玉藻とキアラによって抑え込まれてはいるものの、仮に2人の抑制が効かなくなったら彼の人外化は一気に進行して手遅れになることは想像に難くない。

 

 であるのならば、今。

 今こそが絶好の機会だ。

 彼が無茶をして玉藻達の抑制が外れる前に人外化の進行条件の発見と症状緩和、それから人へ戻す手段を模索しなければならない。

 

 それ故に彼の体組織を取得したのだが……

 

「本当に何なんだこれ……?」

 

 万能の天才である自分の知恵を以ってしても彼の細胞は余りにも意味不明だった。

 初めて見た細胞組織が多すぎるのだ。

 人体解剖学にも精通している以上、未知の細胞組織であろうと今までの経験と知識からある程度は予測できる自信はあったが、彼の細胞はあまりにも未知が多すぎる。

 

 サーヴァント達にも協力を得てサーヴァント達の細胞組織も手に入れて比較検証をしてみたり、実際に培養してみたりと様々な手法で調べてみたが分かったことと言えば、彼の細胞はあまりにも混沌としすぎているということだった。

 

 まず一つに彼の細胞は他の細胞との類似点がとても多い。

 神、竜、獣人、亜人は勿論のこと、挙句の果てには骸骨兵に恐らくだが、亡霊に近しい存在の細胞だって存在した。

 

 この時点でもう意味が分からない。

 神、竜、獣人、亜人はいい。

 あまり良くはないけれどまあ、まだいい。

 骸骨兵、これも大分納得出来ないけど良いだろう。

 

 亡霊、これが一番意味が分からない。

 

 まず亡霊の細胞組織とは何だ? 

 自分でも言っていて意味が分からないが、類似反応だと亡霊が一番近かったのだ。

 亡霊に肉体なんかないだろ、あったとしてもそれは魔力の塊でしかない。

 もしやそれが細胞組織になってるとでも言うつもりなのか? 

 

 益々意味がわからない。

 

 仮にエーテルが細胞組織に変化しているというのならそれはもう私達サーヴァントと同じ枠組みに入っている。

 なら今の彼はサーヴァントか? と聞かれれば首を横に振らざるを得ない。

 

 少なくともダヴィンチは彼の事をサーヴァントと認識することが出来ないのだ。

 

「うーん、仮に望幸くんと同じ事に耐えられる人がいたとしてもこうなるかなぁ? 普通だったら異なる因子同士が争いあって滅茶苦茶な形になると思うんだけど……」

 

 相性の悪い存在同士が同じ体に存在して喧嘩をしないなんてことがありうるだろうか? 

 いいや、それはない。

 実際に肉体を得て、思考ができるならまだしも細胞単位の話ならばほぼ本能しか残らない。

 であるのならば、外敵と判断して駆逐するはずだ。

 

 それこそ体にウィルスが侵入してきた時と同じ免疫反応と似た反応を示して殺し合う。

 

「となると……やっぱり望幸くんの体が特殊って仮定した方がしっくり来るんだよね」

 

 ダヴィンチは彼の精密検査の結果が書かれた書類をペラペラと捲っていく。

 常人とはかなり異なる数値を示しているものはあれど、今の彼の状態から考えるに十分予想の範囲内だ。

 

「望幸くんがまた誤魔化した? ……ううん、それはない。だってあの時は玉藻やキアラの他にも彼のサーヴァントや立香ちゃんのサーヴァントの何人かも顔を出してた。そんな状態で誤魔化そうとすれば絶対に誰かしら気がつく」

 

 ダヴィンチ自身は彼の体が特殊なのではと疑っているが、検査結果は予想の範囲内でこれと言って気になるところが存在しない。

 

「んー、これで何か分かれば彼の体をどうにかこうにかして人間に戻せたりするんじゃないかって思ってるんだけどなぁ」

 

 彼の特異性の解明が出来れば、そこを足掛かりとして彼を元に戻すことも可能な筈だとダヴィンチは睨んでいる。

 何故ならば玉藻達が彼の中で暴れ狂う多種多様な因子を抑え込んだことで症状が緩和したのだ。

 故に彼の変異は不可逆ではなく、可逆であることは既に証明されている。

 

 だがしかし、呪術において頂点に君臨しているであろう玉藻とそれに及ばずとも追随しているであろうキアラの両名を以てしても封印という形をとるしかなかった彼を変異させている因子群。

 少なくとも呪術によるアプローチは厳しいと言わざるを得ないだろう。

 魔術師として名を馳せた存在──それこそメディアやモルガンと言った超抜級の魔術師と話し合えたのならと思うが、無い物ねだりをしても意味はない。

 

「ロマニとまた話を詰めて──って、そうだ。ケイローンやクーフーリンも交えて話してみようかな」

 

 ケイローンはその神授の智慧から言うに及ばず、クーフーリンもランサークラスでの召喚と言えど、原初のルーンを扱えることには変わりない。

 であるのならば、彼等とも話してみることで何か得られる事もあるだろう。

 決まりだ、今度予定を空けておいて貰おう。

 

 なら、それ迄に少しでも情報を集める為にも彼の変異についてもう少し調べてみよう。

 

 そうと決まればとダヴィンチは今度は彼から採取した砕けた光輪の破片を取り出してまじまじと見つめる。

 

「……あれからそこそこ日は経つけどまだ光り続けてる」

 

 彼があの日に無理矢理砕いて渡して来た光輪の破片。

 渡されてから日が経つというのに未だに光輪の輝きは衰えない。

 淡く光り続ける光輪を調査して分かったことと言えば凄まじい神秘を秘めているということと魔力効率が最適化され、魔力ロスがほぼ0に近いということ──そして。

 

「こんな見た目をしておいて触れるんだよね」

 

 彼の光輪はまるで銀河のような形をしていた。

 この破片だってそう。

 まるで銀河を直接砕いたかのように小さな星々が破片の中に輝いていた。

 

 当然、こんな形をしているのだから普通は触れるものではないと考えていたが、予想に反してあっさりと触れることが出来た。

 しかし、触った感触はほとんどない。

 

 確かにそこにあるのに、そこにないような感じがする。

 

 当然そんなものなのだから成分調査をしても尽くが未知の物質──暗黒物質と言ってもいい代物だった。

 

「……仮に、そう仮に彼の光輪が暗黒物質によって形成されているものなのだとしてこれは一体どこから来た?」

 

 遊星の化身を取り込んだから? 

 

 一部はそうかもしれないけど、全部がそうとは言えない気がする。

 じゃあ他に何がある? 

 そうやってダヴィンチは思考を回して──ふと思い出した。

 

「無属性……?」

 

 彼の魔術適性の一つである無の属性。

 有り得ないのに物質化するもの。

 それが表面化された事によって現れたとするのなら……。

 

「ちょっと待てよ、彼の起源は何だった?」

 

 ダヴィンチが個人的に作りあげ、何度も何度も読み直し、少しだけ草臥れた彼に関する調査書をペラペラと捲っていく。

 一度彼のことをもう一度ちゃんと知るべきだと思って、カルデア中の書類をひっくり返して調べた。

 

 そこに書かれていたのは非常に稀有な起源。

 

「あった……これは──」

 

 起源:星

 

 これが彼の起源──混沌衝動。

 ふと脳裏に過ぎるのはセプテムでの彼が引き起こした大魔術──龍脈そのものを別の位置から置換するという荒業。

 

 龍脈とは大地に流れる魔力の軌跡──言い換えれば「星」の鼓動だ。

 

 そしてある人物曰く、『どんな人間も起源に従って魔力を引き出すことができる』と言う。

 ならばもしや彼は……。

 

「いや、いやいやいや流石に、だろう? アルテミット・ワン(星の最強種)じゃないんだ。そんな滅茶苦茶なこと出来るわけが」

 

 そう言いかけてキュッと口を閉じた。

 

 道理を蹴り飛ばし、不可能をこじ開け、無茶無謀を踏み潰して突破してきたのは彼だ。

 なまじ実績があるだけに絶対にと強く否定出来ない。

 

「あー……うん、無理! 私一人で抱え込める案件じゃないよこれ! ロマニは絶対巻き込むとして他の子達も巻き込もう」

 

 一度考えていたことを全て放り投げてダヴィンチは椅子に凭れ掛かる。

 淡く光る光輪の欠片を上に持ち上げて様々な角度から眺めているとふと疑問を抱いた。

 

「望幸くんって自分の起源を知ってるのかな?」

 

 何気なくそう呟いたが、もしも、そう……。

 もしも仮に彼が自分の起源を知らなかったのであれば──

 

「あ、駄目だこれ以上考えると胃が痛くなる。やめやめ!」

 

 光輪の欠片を保存容器に戻すとダヴィンチはシミュレータールームへと足を運ぶ。

 また無茶なことをしていないだろうかと、何かと心配をかける世話のかかる彼のもとへと。

 

 

 保存容器に入れられた光輪の欠片は淡く光り続ける。

 

 ──ダヴィンチは未だ気がつかない。

 

 そもそも彼の光輪は銀河を模したものなどではないことに。

 欠片に存在するのは単なる星ではないことに。

 

 彼の起源は「星」である。

 なればこそ、彼の頭上にて輝く光輪が模しているのは銀河などではなく──光輪の欠片に宿る煌めきは渦を巻いていた。

 




地球でもなく、月でもなく、彗星でも遊星でもない。
彼は星である。
つまりはそういうことなのです。


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セプテム後の幕間4

 

 鯖召喚から始まる人理修復RTAはーじまーるよー! 

 

 というわけで早速ですが今回はみんな大好きサーヴァント召喚のお時間です。

 ホモくんがぶっ倒れたせい(自業自得)でホモくん自身の調整だったり、カルデア職員などのNPC達のストレス除去だったり、金リンゴ探しなどで遅くなりました。

 

 今回引くのはホモくん2回で立香ちゃんも2回となります。

 

 本来ならホモくん一回でいいんですが、セプテムで色々とやらかしているので立香ちゃん達カルデア組からせめて2人は召喚しろとのお達しでした。

 RTAの為まともに拾えていない石の貯蔵が消えていく……。

 

 ちなみに特異点を隈なく探索したり、クリア後の特異点に残った微妙な歪みを修正する、などとサブクエストをクリアしても石は貰えるのでまともにやれば特異点で縁を結んだサーヴァントを全員呼び出せるくらいのことは出来るんですよ。

 

 ……まあ、フラグ管理がバチクソに面倒なので本RTAではやりません。

 なお、サーヴァント全員召喚すると最後の座から全員集合の所がカルデアからやってくるとかいう面白ムービーに変わります。

 

 リソースどうするの問題はありますが、特異点で獲得した8つの聖杯に加えてイベント特異点での+α、好感度次第ですけど古代王コンビやら発明家コンビが徒党を組んでくれることもあるので割と何とかなったりします。

 

 そこまでやるとほぼ勝ち確……というか、どうやれば負けるのか分からないレベルの力量差になるので勝てないと嘆く人はちゃんと石を回収してガチャを回そうね! 

 

 ……まあ、その時のホモくんはゲの字を倒したはいいけど、本人が色々とやらかしすぎて魔術協会に出向からの魔術協会爆破崩壊endになりました。

 後にも先にも初めてですよ、あんな終わり方。

 

〜閑話休題〜

 

 早速だがガチャのお時間だ! 

 

 >あなた達はロマニとダヴィンチに引き連れられて召喚ルームへとやってきた。

 

「それじゃあ今回も新しくサーヴァントを呼んでもらうけど……どっちから先にやる?」

 

 ここは立香ちゃん一択です。

 大体こういう時はホモくんにとっての地雷鯖は真っ先に来ますからね。

 その点、立香ちゃんは地雷処理班として物凄く優秀なので是非とも先に立香ちゃんに引いてもらいましょう。

 

 どんなサーヴァントだろうとこっちには人類最後のマスターである藤丸立香ちゃんがいるんだぞ! 

 そりゃもう完璧で究極のコミュ力でイチコロですよ。

 

 それにほら、余り物には福があるとも言いますし、最後に引けば良いサーヴァントが引けるかもしれない……ッ! 

 

 フラグ管理が面倒なサーヴァントは本当に嫌なんですよ〜! 

 そういうサーヴァントに限って滅茶苦茶強かったりしますし。

 

 文字通りのパワープレイ(ゴリ押し)やめろ。

 

 >あなたは立香と話し合った結果、立香から召喚することになった。

 

「立香ちゃんが先に召喚するんだね? 良し、それじゃあ早速だけど召喚サークルの方へ進んでくれ」

 

 >ロマニの誘導に従い、立香は召喚サークルの方へ進み緊張した面持ちで合計6つの聖晶石を投げ入れた。

 >聖晶石が召喚サークルに飲み込まれ、3つの円環を描く。

 >多大な魔力を吹き荒らしながら3つの円環は高速で回転する。

 

 ローマ組の誰かは必ず来そうですよね。

 特異点で結構な縁の結び方してましたし、それこそロムルスとか来てもおかしくないです。

 個人的にローマ組の中で立香ちゃんに来て欲しいのはネロですかね。

 

 ……いやほら、立香ちゃんがネロを呼んだ場合は絶対面倒なことにはなりませんし。

 ホモくんはちょっと、というかかなりビースト三銃士を引いた前科がデカすぎるので。

 

 しかもネロは、なぁ……? 

 

 アルターエゴならまだしも最悪の場合ビースト霊基で召喚されることが判明してますからね。

 ビーストでビーストを倒すとはこれ如何に。

 勝った方が我々の敵になるだけだとかになったりしません? 

 

 なので立香ちゃんがネロを召喚してくれれば、ホモくんが事故る原因が減るんです……ッ! (切実)

 

 >3つの円環は一瞬大きく膨張し、その後一気に収縮する。

 >そして光の柱が立ち上がりその中に人影が現れる。

 

「ブーディカだよ、よろしくね。ふふ、気軽にブーディカさんでもいいよ? ……ううん、むしろ君達にはもっと気安く呼んで欲しいかな」

 

 >光の中から現れたのはセプテムでも大変お世話になったブーディカだった。

 

 お、ブーディカですか。

 セプテムクリアの確定召喚枠ですね。

 初手でエミヤを引けなかった人達もここで確実にブーディカを引けるので、食事事情で困っていた人はキッチンにブーディカを配属させることで職員のストレス緩和を狙いましょうね。

 

 ……じゃあ、オルレアンの確定枠である清姫が来なかったのはマジで何なんだよ。

 

 >ブーディカはニコニコと笑顔を浮かべながらマスターである立香の下へ駆け寄り、そっと手を伸ばす。

 

「これからよろしくね、ブーディカ!」

 

「うん、いい返事だ。お姉さん頑張っちゃうぞー!」

 

「……お姉さん?」

 

 おう、そこの目を輝かせてる聖女、まだ水着にジョブチェンジするのは早いですよ。

 ジャンヌ・オルタもギョッとした目で見てんじゃん。

 やめろっ……本当に姉なる者になるのはやめろっ! 

 

「はい、君も」

 

 >立香やマシュ達と一通り挨拶を済ませたブーディカは今度はあなたの方へ手を差し出した。

 

 えぇ……ホモくんも? 

 マスターである立香ちゃんに挨拶したんだからホモくんにはいらなくなぁい?? 

 ま、抵抗する意味はないので素直に握手に応じますけど。

 

 >あなたは差し出された手を掴んで握手をした。

 

「……本当に沢山苦労してきたんだなぁ」

 

 な、何か手つきがねっちょりしてる! 

 どうしてホモくんの手を撫で回す必要があるんですか?? 

 

「うん、それじゃあ今日からよろしくね! マスターも君もお姉さんがいっぱい甘やかしちゃうぞー?」

 

姉、甘やかす……」

 

「な、なんでこっち見るわけ?」

 

 おっと不味い、こっちのジャンヌがワープ進化して姉なる者になってしまう。

 ……まあ、姉なる者にワープ進化しても立香ちゃんとジャンヌ・オルタを生贄に捧げれば大丈夫やろ。

 今回のホモくんは別にジャンヌのマスターでも何でもない訳ですし。

 

 必要な犠牲でした、分かりますね? (陳宮並感)。

 

 分かりたくないかなぁ……。

 

 >ブーディカが立香の後ろに移動すると同時にまた3つの円環が回転を始める。

 >凄まじい勢いで回転する召喚サークルは膨大な魔力と共に虹色に輝き始める。

 

 激アツ演出! 

 流石立香ちゃん持ってるねぇ! 

 ん、あれ? でもネロって金回転じゃなかったっけ? 

 

 ……スゥ─────ッ

 

 ま、まだそうと決まったわけじゃないし。

 ブライトか水着の可能性だって十分あるし。

 なんだったらアルターエゴの可能性だって……いや、特殊演出なかったし、それはないか。

 

 ……まだだっ! まだ諦めないぞ! 

 

 それでも、それでも俺達の立香ちゃんならきっと──ッ! 

 

 >爆発的に跳ね上がる魔力は最高潮に達し、まるで噴火の如く光の柱が立ち上がる。

 >光の柱の中から現れたのは──

 

「……アルテラ。フンヌの裔たる軍神の戦士、だ。私の力が必要ならばいくらでも貸そう」

 

 だめだね、だめよ、だめなのよ

 

 アルテラ、アルテラかぁ。

 運用に癖はあるけど火力はピカイチで大当たりの部類だけども……! 

 今は、今だけはネロが来て欲しかった……! 

 

 まあ、ここでゴネてもしゃーないので切り替えていきましょう。

 ホモくんが絶対引くとは決まってませんからねっ! 

 

 ……あの、ところで何でアルテラさんはやたらと挙動不審なんでしょうか。

 視線があっちこっちいってるってはっきり分かんだね。

 なんで? (困惑)

 

 >アルテラは何処か落ち着かない様子で忙しなく視線をあちこちに向けたり、指先を弄っている。

 >……何かあったのだろうか? 

 

「──アルテラ」

 

「な、何だ立……いや、マスター」

 

「んっ」

 

 >落ち着かない様子を見せているアルテラに対して立香はブーディカにして貰ったようにアルテラに向けて手を差し出した。

 >差し出された手を見てアルテラは目を丸くする。

 >そしてほんの少しだけ迷ったように手を空にさ迷わせて恐る恐る立香の手を握った。

 

「これからよろしくね、アルテラ。私は無力だけど、それでも皆で前に進む為に君の力を貸してほしい」

 

「……あぁ。そうか、そうだな。皆で前に進むためか。うん、分かった。どうか私の力を存分に使って欲しい。きっとマスターならそれが出来るだろうから」

 

 ク、クリティカル引いてる……(ドン引き)。

 会話一発目からクリティカル引いて絆Lv上昇してるのやべえよ。

 ホモくんはさ、今までの経験があるからそれが出来てもおかしくないけど、立香ちゃんそういうの何もないよね? 

 

 これが主人公力……! 

 ホモくんとの格の違いってのを教えられちゃったね。

 うう、だからこそ立香ちゃんにはネロ引いて欲しかったな(地雷を押し付ける屑)。

 

 >握手を終えたアルテラを立香は背中を押してあなたの前まで連れてくる。

 

「ほらっ、望幸も」

 

 これいる? 

 ……まあ、今後の円滑なコミュの為にいるか。

 

 >あなたは簡易的な自己紹介をして手を差し出した。

 >差し出された手をアルテラは暫しの間、ジッと眺めてそして壊れ物を扱うように優しい手つきで恐る恐る握り返した。

 

「よ、よろしく頼む」

 

 マジで何でホモくんに対してオドオドしてるの。

 ホモくん何もしてないと思うんですがそれは……。

 あ、いやあれか? ホモくん封印されてるとはいえ今遊星の力あるからな。

 

 それを感じ取って警戒してる──感じではなさそうだし……ああ、ファラオ的なアレか。

 もしかして遊星の力を感じ取って急に生えてきた弟とか思ってたりする? 

 

 ファラオも太陽に縁があったりすると弟妹認定してくる時あるからね。

 似たようなもんなのかなぁ? 

 

 姉なる者に妹を名乗る不審者、加えて母を名乗る者、果てはおばあちゃん名乗ってくる奴とかいるし、サーヴァントが急にファミパン()してきても驚かないぞ。

 

 >あなたはアルテラとの握手を終えると立香に代わり、召喚サークルの前に立った。

 

 こんなにもガチャしたくないと思ったのは初めて。

 割と見えてる地雷がある上に、その地雷が核地雷だからね、怖ぇよ。

 

 どうにかしてネロを引かない方法がないものか。

 いや、普通のね? ネロなら全然構わないんだけど、アルターエゴとかビーストが来たら色々とまずいというか、今敵対してるゲの字がビーストである以上、別種のビーストをカルデアに引き入れるとか激ヤバ案件というか……。

 

 どうにかしてやばい方のネロを回避する方法は──

 

 

 

 

 ──瞬間、脳裏に過ぎるセプテムでの出来事

 

 せや、そういえばホモくんステンノから褒美として服の一部貰っとったやんけ。

 それ触媒にして回せば一先ず初手は回避出来るはずだ。

 

 >あなたはかつてステンノから貰った服の装飾の一部を影から取り出して召喚サークルに聖晶石と一緒に放り込む。

 

 そして連続で回すことによって連鎖召喚でネロをスルーする! 

 完璧な作戦ですね、触媒を存分に擦り散らかしていきましょう。

 

 >聖晶石が召喚サークルに飲み込まれ、3つの円環を描く。

 >多大な魔力を吹き荒らしながら3つの円環は高速で回転する。

 >3つの円環は金色に光り輝き、膨れ上がった魔力が一点に収束し、光の柱を立ち上げる。

 

 計算通り、かんぺき〜! 

 

 ま、これがRTA走者ってものですよ。

 リスク回避に長けてるっていうの? 

 見えてる地雷は避けりゃあ関係ねえんだよ! 

 

 >光の柱から現れたのは息を飲むほどの完成された美である少女──ステンノだった。

 

「ふふ。私を現界させるだなんて、本当に見てて飽きない面白い子ね。私を呼んだのだからこれからも私を飽きさせないでくださいね、マスター?」

 

 よっ、顔面宝具! 

 肩車して爆走すると広範囲に即死ばら撒く兵器に変わる女神様サイキョー! 

 でもあれって魅了由来のものだから魅力が効きにくい敵に対しては刺さりにくいんだよな。

 

 ……でも安心して欲しい。

 何とうちには魅了のスペシャリストであるキアラ&カーマがいる! 

 組み合わせればどんな奴だって魅了してみせるぜ! 

 最悪の組み合わせかな? 

 

 今ならゲの字にもハニトラ出来るかも……! 

 

 >ステンノは無垢であどけない──されど何処か妖艶で獲物に対して舌なめずりをしている姿を幻視させる笑みを浮かべてあなたに近寄ってきた。

 

 まあ、今のホモくんほど面白生命体いないからね。

 女神様の目を引くのもしゃーなしな珍獣やってる。

 でもさあ、そんなに気に入らなくてもいいよ。

 

 オリオンも言ってるけど、マジで、女神は、やばい! 

 

 ……所持サーヴァントの半数以上女神なホモくんは今更かぁ。

 

 それじゃあ握手しましょうね。

 はいはい、握手握手! 

 

 >あなたはステンノの手を取り、どうかこれからよろしく頼むと頭を下げた。

 

「……ええ、はい。どうかこれから末永くよろしく、ね?」

 

 言い方ァ! 

 見ろよ、カーマがとんでもねえ目でこっち見てるぜ! 

 玉藻に関しては感情という感情が抜け落ちたかのような無表情だ、ありゃもうダメみたいですね。

 キアラは……まあ、いつも通り微笑をうかべてるね。

 

 >あなたと握手を終えたステンノはあなたの隣に当たり前のように居座るとあなたの手を握った。

 

 楽しんでるね、この女神様。

 まあいいか、これからよろしくなぁ! 

 

 ……さて、それじゃあここでガチャは終わりということで──って言いたいけど駄目だよね。

 

 >……3つの円環が廻った。

 

 あ、もう不穏。

 

 >その瞬間、召喚サークルが焼き切れたように光が消えた。

 >3つの円環は弾け飛び、サークルの中央から血の塊にも似た赤黒い球体が浮かび上がる。

 

 だめだね(2回目)。

 

「なぁっ……!? この反応は……!」

 

「不味いっ! 管制室聞こえるッ!? 今すぐ召喚ルームの電源を落として! 魔力供給を断つんだ!」

 

『や、やっています! 既にやっていますが……! 反応が消えません! むしろどんどん膨れ上がって……!』

 

 >赤黒い球体から今までに感じたことのない程の魔力が吹き荒れる。

 >燃え盛る焔のように轟々と勢いを増し──

 

「っ、ご主人様ッ!!」

 

 >──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 >目を胸に向けてみれば血のように赤い糸があなたの胸を貫き心臓に直接絡みつくように中身を弄られていた。

 >あっ、とあなたの口から声が零れた。

 >未だに正体を現さないサーヴァントと深く、誰よりも深く縁を結ばれている感覚がする。

 >ドグンッと心臓が力強く脈動する。

 

 はー……おわおわり。

 よりにもよってだろ、マジでさぁ! 

 

 >玉藻が、キアラが、カーマが、あなたのサーヴァント達が赤い糸を切断せんと肉薄する。

 

「それを斬っては駄目!」

 

 >それを制止したのは他の誰でもないステンノだった。

 

「その糸はもうこの子に深く絡みついているわ。そんな状況でそれを破壊すればこの子にどんな影響があるか分かったものじゃない」

 

「なら、妾が解呪する。要は縁を確固たるものにする為に絡めとっているのだろう。であれば──!」

 

 >玉藻があなたに絡みつく赤い糸に触れ、呪術を起動させる。

 >しかしそれは──。

 

「此奴ッ……ご主人様の聖杯に直接干渉を!」

 

 >絡まった糸を解くように慎重に呪術によって解呪を行うが、糸が絡まっている先はマスターであるあなたの心臓。

 >即ちブラックボックスと化した聖杯だった。

 >糸が絡まる速度以上で下手に解呪を行えば封印が緩む可能性が高い。

 >そうなった場合のあなたの末路を想像して玉藻は躊躇した。

 >……してしまった。

 

は、はは

 

 >赤い糸が溶けるように消えていく。

 >力強く脈動する心臓を抑え、荒い息を吐いた。

 >あなたは全身の力が抜けてしまって床へと座り込んでしまった。

 

ハハハハハハハハ!」

 

 >血の塊のような赤黒い球体が弾け飛び、洪水のように吹きこぼれた魔力が人の形を取った。

 >次瞬、吹き荒れる魔力の嵐にあなた達はどうしようもないと直感的に理解してしまった。

 >これは無理だと、理解してしまったのだ。

 

「ああ、ああ! ようやくだ! ようやく……!」

 

 >暗闇の中に浮かぶ深紅の双眸があなたを見下ろしていた。

 >その視線を受けてあなたの心臓が一際強く跳ねたのを感じた。

 >親愛、情愛、友愛、仁愛……あらゆる愛がごちゃ混ぜになったような混沌とした瞳があなたを捉えて離さない。

 

 獣の奏者(走者)ってかぁ? 

 やめてよね、本当に。

 人理くんちょっとガバガバすぎますよ。

 もうちょっと仕事してどうぞ。

 

 あーマジでどうすんだよこれェ……。

 多分ホモくんはドラコーにカルデアを通した契約じゃなくて直接契約をされたせいで気絶するだろうし……目が覚めたら勝手にフラグ進行してどうにかなってないかな。

 

 どうにかなれーっ! 

 

 >視界が霞む。

 >自分の胸に宿る聖杯から魔力を搾り取って顕現した其れはいつの間にかあなたの顔に手を添えていた。

 >浮かぶ感情は喜悦か、或いは愉悦か。

 >セプテムで会ったネロを幼くしたような少女の笑みが消えゆくあなたの意識の中でも鮮明にこびりついていた。

 

「ようやく、手に入れたぞ」

 

 これだからガチャは悪い文明。

 やはり破壊すべき。

 

 ……はー、まあいらっしゃいドラコーちゃん。

 君でビーストは4体目だ。

 いっそのことビーストマスター目指してみます? 

 まあ、冗談ですけど。

 

 冗談ですけど!!! 

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

「余の黄昏を照らす星よ」

 

 ネロに似た幼い少女は自身の胸の中で眠りについた彼を見て歓喜に打ち震えていた。

 あの日からずっとずっと、追いかけ続けてようやくこの手に触れることが出来た。

 

「契約の破棄は許さぬぞ、我がマスター」

 

 だが、まだだ。

 まだ、足りていない、まだこれじゃあ物足りない。

 本当に欲しいのはその先の先。

 或いは果てと呼ばれるもの。

 

 余は知っている、余は覚えている。

 果てに座するお前を。

 今は、それだけが欲しいのだ。

 欲しくて欲しくて堪らないのだ。

 

 赤子の癇癪にも似た暴れ狂う獣の欲望がたった一人に向けられている。

 その異常性を正しく理解しながらもそれでいいと不遜に笑う。

 

 だが──

 

「今は此方が先か」

 

 ──ちらりと周りに視線を向けてみれば何奴も此奴も戦闘態勢になっていた。

 くだらない、どうでもいい、食指すら動かぬ。

 

「……ネロ、だよね?」

 

 立香が震える声でそう尋ねる。

 だが、尋ねている立香自身でもこの退廃的な雰囲気を醸し出す少女とあの天真爛漫で太陽のような輝きを放つネロとはまるで一致しない。

 

「ふはっ……ああ、そうだとも藤丸立香。余はネロでもある。だが今はドラコーとでも呼ぶが良い。ソドムの獣、ドラコーと」

 

 自身の魔力に当てられ、子鹿のように震える立香を見てドラコーはせせら笑う。

 かつて我がマスターと共にあれほど勇ましい姿を魅せた此奴も今はまだ幼さがある。

 それが勇者へと育つ姿も見ものではあるが、今はそれはいいだろう。

 

「ソドムの獣……」

 

「ああ、そうだとも。もっと分かりやすく言えば……ソドムズビースト、人理を喰らう堕落と繁栄の獣──貴様ら人理の防人の不倶戴天の敵よな?」

 

「……っ」

 

「喜べ、カルデア。お前達はとんでもない当たりを引き当てたのだ」

 

 そう、ビーストのまま余は此処に顕現している。

 

「はっ、随分と殺気立っているなぁブーディカ? だが、良い。今の余はお前が憎むローマそのもの故その殺意も正しかろうよ」

 

「その子から離れなさい」

 

 深い、深い焦げ付くような憎悪を孕んだ殺気と共にブーディカから剣を向けられる。

 本当は今すぐにでも斬りかかりたいだろうに。

 それをしないのは今も余の胸の中で眠っているマスターがいるからか? 

 

 ……藤丸立香も大概だが、余のマスターも大概人たらしよな。

 

 仕出かしている事の酷さは圧倒的にマスターに軍配が上がるが。

 

「ま、良かろう──と言いたいところだが、やはり駄目だ。此奴は既に余のものであるが故にな。誰にも渡すつもりはないぞ?」

 

 ようやくだ、ようやく手に入れたのだ。

 それを如何して易々と手を離すことが出来ようか。

 

「盗人猛々しいな、そもご主人様が貴様のような輩に靡くとでも?」

 

「……ああ、貴様もいるのか駄狐。ふむ、我がマスターながら人付き合い、いや獣付き合いももう少し考えて欲しいものだな」

 

 玉藻とドラコーの間に一触即発の不穏な空気が流れる。

 ピリつくような殺意と魔力が両者の間で鬩ぎ合い、そしてあっさりとそれは霧散した。

 

「まあ、ここで殺し合う必要もなかろう。ご主人様はそれを決して望まぬ」

 

「余波で死なれても迷惑よな。……仕方あるまい。そら、藤丸立香」

 

 そう言ってドラコーは名残惜しそうに胸に抱えていた彼を立香へと手渡した。

 立香が彼を受け取るとドラコーから隔離するようにサーヴァント達がドラコーの前に立ちはだかった。

 

「随分と警戒されたものだな」

 

 ドラコーはそう言いつつも何処か興味がなさげであった。

 事実、あまり興味がないのだろう。

 立ちはだかるサーヴァント達には目もくれず、その視線の先にあるのはやはりというべきか。

 

「ソドムズビースト……この人理焼却には君が関わっているのか?」

 

「余が? まさか。すでに幾度となく貪り尽くしたのだ。今更人理をどうこうしようという気など欠片も存在せぬ」

 

「何……?」

 

「この世界の人理に手を出すつもりはないと言っているのだ。……ああ、獣の戯言故信じられぬか?」

 

 ロマニの問いにドラコーは揶揄うように喉を鳴らして笑う。

 だがまあ、信じられぬのも仕方がないだろう。

 ビーストは人理を滅ぼす者、これは絶対だ。

 

 そんな存在がビーストクラスのまま顕現したというのに、人理に欠片も興味がないと言う。

 これを嘘と言わずに何と言うのか。

 

 しかし、それでもドラコーにとってはそれは事実だ。

 今のドラコーはこの世界の人理をどうこうしようという気はない。

 喰らえというのなら喰らってもいいが、別に進んで喰らおうとは思わない。

 

「ふむ、ならば自己強制証明(セルフギアスクロール)でも結ぶか? 余は構わんぞ。魔術師にとってはそれが最大限の譲歩なのであろう?」

 

「……本気で言っているのかい?」

 

「無論だ、余は今それほどまでに人理に興味がない」

 

「なら、ならどうして──ビーストクラスで顕現したんだ」

 

 それは当然の疑問と言えた。

 人理を喰らうビーストクラスで顕現しながらも人理に敵対することはないという。

 むしろドラコーの様子からして人理側に付いてもいいとすら思っている節さえ見える。

 

 だと言うのに肝心のドラコーは驚いたように目を丸くしていた。

 

「む? おい、まさか気がついておらんかったのか? それとも目を逸らしていたのか? 余がビーストクラスで顕現できたのは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の人理は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からに決まっておろう」

 

「……はぁ?」

 

 誰かが震えた声でそう言葉を漏らした。

 人理が、人理の天敵であるビーストにすら助けを求めねばならないほどの異常事態が起きているからだと? 

 

 ありえない、ありえてたまるかそんなことが。

 

「まずだな、そもそもいくらでも作れる聖杯程度で巨神──セファールを呼び出せるのか?」

 

「劣化コピーの個体ならば呼べたか? 馬鹿を抜かせ、それこそセファールが呼び出されればその時点で劣化の有無に関係なく地上に存在する全てが滅び去るだろう。かつての神々すらも喰らい尽くした真性の化け物だぞ」

 

「それを高々特異点を発生させる聖杯程度で召喚する? 土台無理に決まっておろう。セファールを召喚するだけでもキャパオーバーで壊れてもおかしくなかろうに剰えサーヴァントを呼び出し、無制限に魔力を吐き続けられるものか」

 

「そもそも仮に、そう仮にセファールを呼び出すことが出来るほどの聖杯だったのだとしても不安定な状況にあるとは言え抑止が、ガイアがそれを許容するか? いいや、するわけが無い。その恐怖を知っているからこそ確実に阻止する。セファールの完全顕現など許すはずがない」

 

「なら何故──」

 

「簡単な事だ。それどころではないからだ」

 

 それどころでは、ない? 

 

「ああ、そうだ。セファールに構っていられるほどの余裕がない。それ以上の何かがあったからこそ、劣化コピーとは言えセファールの召喚を許した。……お前達にも何か思いつくことはあるのではないか?」

 

 その言葉を最後にカルデアの全員は押し黙った。

 特にロマニやダヴィンチは思い当たる節が多すぎた。

 

 例えばオルレアン──人理修復難易度で言えば最低値に当たるはずだった。

 けれど蓋を開けてみればどうだ? 

 

 邪竜を喰らい、剰え自我を残して莫大な魔力と暴威を振り翳したジャンヌ・オルタというイレギュラーが存在した。

 あの場で全滅したとしても何らおかしくはなかった。

 そうならなかったのは現地にいたサーヴァント達が手伝ってくれたということと幾重にも重なった幸運、そして彼の自爆じみた狂った行動のおかげだった。

 

 セプテムだってそう。

 無制限に湧き続けるヴォイドセルに侵略され凶暴化した化け物達、連合帝国軍を名乗るかつてのローマの皇帝達、セファールの顕現、レフ・ライノール……72の魔神の名を騙る魔神柱の顕現。

 

 どれか一つでも苦しい戦いになったであろうそれが全て同じ特異点内で発生した。

 これらがたった一つの聖杯で成し遂げられるのだろうか? 

 

「まさか、今回までだと楽観的な考えはしていまい? 余がビーストとして顕現出来てしまった以上、終末は──破局は必ずやってくる。お前達が望むにせよ、望まないにせよな」

 

 堕落と繁栄を謳う獣は心の内でほくそ笑む。

 滅びに向かう人理──或いは、()()()()()()()()()()()()()()

 どちらにせよどうしようもない絶望と苦難の連続が続くのを知っている。

 

 けれども黄昏を照らす星は足掻き続けるのだろう。

 他ならぬ星見の天文台を照らし、進むべき道へと導く為に。

 その旅の終着点で、その果てにこそ──

 

 

 

 

 ──共に終わりを看取ろう

 





堕落の獣は果てを見た。
届かぬ星に手を伸ばし、夢は醒めた。
時は経ち、かつて夢で手を伸ばした星は今、この手の中に。

つまり大概拗らせてるってこと。


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セプテム後の幕間5

3章の大方の流れが漸く決まりました
ついでにタグも追加しました


 

 サーヴァント召喚の日から数日が経過した。

 望幸くんもサーヴァント召喚してから一時間もしない内に目を覚まし、その後の後遺症も見受けられなかった。

 

 そこは素直に喜ぶべきだろう。

 

 問題はやはりネロ……いいや、ビースト霊基で召喚され、ドラコーと名乗っている彼女だろう。

 今の所不審な点は見受けられない。

 寧ろ大分大人しい上に必要なことだと理解をすれば大抵の事は引き受けてくれていた。

 

 だが、ビーストはビーストだ。

 

 どれだけ人が良さそうに見えたとしても完全に信用することはまだ出来ない。

 ……これからも警戒するに越したことはない。

 

 立香ちゃんや望幸くん達はある意味とても純粋な子だ。

 現にビーストであるドラコーとはもう仲を深めており、疑うなんてことは一切していない。

 

 あんまりにも警戒心が無さすぎて少し心配になったが、彼等はきっとそれでいいのだろう。

 ああいう人柄だからこそ英霊達は──私達は彼等を好ましく思うのだ。

 手を貸したいと、そう思うのだ。

 

 だから、疑うのは私の役目。

 

 まだ子供である彼等ではなく、大人である私がやるべき事だ。

 

「とは言っても、怪しいところが全くと言っていいほどないんだよねぇ」

 

 問題行動は特になし、マスターである彼の不利益になるようなことはしていない。

 本当にビーストか? と疑いたくなるほど酷く従順。

 寧ろ、彼が呼んだサーヴァントの中では最も大人しい。

 

 ……偶に毒を吐くのが玉に瑕だが、一癖も二癖もあるサーヴァントと比べれば可愛いくらいのものだろう。

 

 ビーストでありながら何故あそこまで従順なのか、ダヴィンチには分からないが、ドラコーが時々話してくれる事より恐らく平行世界の彼と何かあったのだろうと推察していた。

 

「……平行世界、かぁ」

 

 もしもの世界。

 薄々勘づいていたことだが、彼に関与するサーヴァントの一部は初対面であるはずの彼に執着している様子が見えた。

 つまりは彼等もまた平行世界の一部の記憶を保持しているということなのだろうか。

 

 ……座に刻むほどの記憶。

 

 それは一体どれほどの強い感情だったのだろうか? 

 

 ダヴィンチには分からない。

 何故ならば自分は座に刻んだ記憶など存在しなかったから。

 彼らがどんな思いで、どんな感情を抱いてここにやって来たのか。

 

 それをおいそれとは聞きがたい。

 

 サーヴァントが英霊の座に刻むほどの記憶というのは苛烈かつ強烈なものだ。

 人によっては絶対に触らせたくないと宝物のようにしまい込む者だっている。

 そういった記憶は英霊にとっての逆鱗のようなものなのだ。

 

 出来れば話して欲しいとも思うが、下手に小突いて起爆されるのはもっと困る。

 現状は放置──彼女達が話してくれるようになるのを待つというのが最善手だろう。

 

「でも正直聞いておきたいよねぇ……彼に何があったのかとか、さ」

 

 予想はつく。

 座に刻むほどの記憶なのだ、何かしら彼に良からぬことが起きたのだろう。

 だからこそ聞いておきたい。

 

 けれど、そんな記憶を不容易に触るべきでないとも思っている。

 

 悩ましい、実に悩ましい……。

 

 堂々巡りする思考に思わずため息をついた──その時、工房のドアがノックされた。

 

 ああ、このノック音は──

 

「望幸くんかい? 入ってもらって構わないよ」

 

「失礼する」

 

 入ってきたのは目下の悩みの種である望幸くんだった。

 

「やあやあ、今日はどうしたのかな?」

 

「礼装の作成について話をしたい」

 

「ふむ? というと君の礼装についてかな?」

 

 体が文字通り色々と変質してしまったのだ。

 変異した体ではいつもと同じように動くという訳にもいかないのだろう。

 だからこそ、礼装による補助を欲している。

 加えて礼装作成について一家言ある自分に聞きに来た……ということだろうかとアタリをつけたが、それは彼が首を左右に振ることで否定された。

 

「俺の礼装ではなく、立香の礼装についてだ」

 

「立香ちゃんの?」

 

 こくりと頷く彼を尻目に思案する。

 

 さて、立香ちゃんの礼装作成という話だが……今の彼女が何を欲しているのだろうか。

 こう言っては失礼だが、立香ちゃんの魔力回路、質は共に一般人並み。

 レイシフト適性が飛び抜けているだけで、それ以外の魔術適性は一般家庭の子らしく何も無い。

 

 だからこそ、彼女の礼装はかなり特殊だ。

 基本は一工程のみで発動するように、かつ魔力さえあれば一言で自動発動するように想定されて作られた一般家庭の魔術師向け設計となっている。

 

 カルデアの技術をかき集めて作った戦闘服だが……彼からしてみれば何か問題があったということだろうか? 

 

「基本設計に関しては問題はない。寧ろ立香にはぴったりだ。だが、やはりあれはあくまでレディメイド──出来合い品でしかない。立香の少ない魔力をより効率的に運用できるように立香だけの礼装を作成したい」

 

「ふむ」

 

 確かに、と彼の言葉に納得する。

 立香ちゃんが今着ているカルデア制服及びカルデア戦闘服はあくまで支給品だったもの。

 汎用性は高いが、立香ちゃんに完全に適したものであるとは言い難い。

 

 幾ばくかの余裕が出てきた今なら立香ちゃん専用に改良するのは賛成だ。

 

「いいね、確かに君の言う通りだ。余裕が少し出てきた今だからこそリソースは惜しみなく吐くべきだ。けど、君が態々それを言いに来たってことはそれだけじゃないんだろう?」

 

 彼女専用の礼装を作ると伝えるだけならそれこそ立香ちゃん本人が来ればいい。

 そうでなく、彼が来たというのは魔術についてのより深い知識が必要だから。

 魔術師の彼の視点から見た時に欲しい何かがあったということだ。

 

「カルデア戦闘服に設計されているオーダーチェンジについてだが、あれに俺の魔術を組み込みたい」

 

「というと?」

 

「現状のオーダーチェンジは立香を中心に近くにいるサーヴァント同士の位置を入れ替えるというものだろう?」

 

 オーダーチェンジ──置換魔術によって似たような現象を連続で引き起こせる彼がいるおかげで然程使われていないが、場合によっては戦況を簡単にひっくり返すほどの効力を発揮する魔術だ。

 ただ位置の入れ替えという見方によっては瞬間移動にも似たソレは魔力消費が極端に大きいというデメリットを持つ。

 最適化されたカルデア戦闘服であっても立香ちゃんが使うと仮定した場合、一回の戦闘で一回使えれば御の字くらいだろう。

 

「普段の位置の入れ替えだけならば俺で事足りる。だが、立香の傍に必ず居られるという保証は無いというのはオルレアンでもよく理解した。そこでだ、大前提としてカルデア戦闘服の魔術の回転率自体を上げる。その上で、オーダーチェンジに俺の魔術を組み込んで対象範囲を広げる」

 

「ふむ……確かに魔術の回転率を上げることは出来るし、君の魔術を流用するというのならオーダーチェンジの改良もできるね。ただ、対象範囲を広げるっていうのは距離を広げるってことでいいのかい?」

 

「勿論、それもやる。けど、もう一つだけ機能を追加する」

 

「……それは?」

 

「入れ替え対象を特異点にいるサーヴァントだけじゃなくてカルデアにいるサーヴァントも対象にする」

 

「それは……無理だろう」

 

 彼の提案は普通に考えたら無理な代物だ。

 ただでさえ、カルデアから特異点にサーヴァントを送り込む行為は魔力をバカ食いする。

 それこそ、態々現地の龍脈へと赴いてマシュの盾をアンカー代わりにして召喚しなければならないほどだ。

 

 聖杯を持っている彼ならば可能かもしれないが、立香ちゃんの魔力量ではいくら効率化したところで発動出来ない。

 それほどまでにカルデアと特異点間での移動は魔力消費が激しい。

 

「普通にやればまあ、無理だろう。だからこそ俺の魔術を組み込む」

 

「……話を聞かせてもらえる?」

 

「カルデアと特異点間での位置の入れ替えの魔力消費は凄まじいのは間違いない。だからそこに縛りを入れる。通常のオーダーチェンジとは異なるものとして使えるのは一回の戦闘につき一回まで、かつ呼べるのはカルデア戦闘服に紐付けを行った一騎のみ」

 

 予めカルデア戦闘服に入れ替えを行うサーヴァントを設定しておくことで魔力消費量を減らし、回数を一回に限定させることで殆ど使い捨てと同じような扱いが出来るか。

 

 確かにそれなら魔力消費は格段に抑えられるだろう。

 けど、それだけでは足りない。

 カルデアから特異点にサーヴァントを呼ぶにはどうしても目印となるアンカーが必要となる。

 

 それこそがマシュの盾と龍脈という存在であり、戦闘中ではそれに頼ることは出来ないだろう。

 

「アンカーについては?」

 

「そこは俺の魔術で代用する」

 

「そんなことも出来るのかい?」

 

「出来る……というよりは出来るように改良した」

 

「改良したって、何気なく言ってるけどさぁ」

 

 思わず呆れたように嘆息する。

 

「参考になる見本が見れたからな」

 

「……そんなものあったかな」

 

「玉藻が似たようなことをやっていただろう」

 

「えっ、あれのこと!?」

 

 彼が言っているのは恐らくセプテムで最後に玉藻がもう一人の自分をアンカー代わりにカルデアから特異点にレイシフトした時のことだろう。

 濃密な魔力や戦闘によって荒れに荒れたあの場でもマシュの盾の他にもアンカーを用意したことで移動に成功した。

 

 確かに暴走状態にあったとはいえ、彼はそれを見ていた。

 見てはいたが……! 

 

「あれを解析して俺の魔術に組み込んだ。少なくともそれを応用すれば一騎のみならカルデアと特異点間の入れ替えは十分に可能だ。後はそれをどう効率化させていくかだが……それについては君と話を詰めたい」

 

「……」

 

 あの擬似レイシフトを見ただけで学習したと言うのか。

 知らないはずだ、分からないはずだ。

 だって彼はその手の分野を専攻している訳でもない、レイシフトについて詳しく知ろうとすらしていなかった。

 だというのに剰えそれを自分の魔術に平然と組み込んでるなんて……! 

 分かってはいたつもりだけど、その若さで持てる技術力じゃないだろう。

 

 そりゃあ言葉に形容することすら出来ない天才ってのは時折現れたりする。

 けれどそういう奴らだって必ずと言っていいほど下地というものが存在する。

 どんな天才にだって知識と経験は必要不可欠なものだ。

 

 既知を未知に当て嵌めていけるからこその天才であり、未知を未知のまま正解へと持っていけるのは──

 

「ダヴィンチ……?」

 

「えっ、あ、ああ! いいとも! 一緒に礼装を作成しようじゃないか! それに……君とは一度膝を突き合わせて話をしてみたかったしね」

 

 思えば私はまだ彼について知らない。

 勿論暇があれば話をしたりもするし、偶に彼のバイタルチェックだってやったりもする。

 

 けれど、彼個人について知っているのは書類に書かれていたことだけ。

 

 知るべきだ──少しでもいい、ちょっとずつでもいい。

 彼が今までどのように生きてきてきたのかを。

 彼が何を知っていて、何を知らないのかを。

 

 私は知るべきなのだ──カルデアの職員として、レオナルド・ダ・ヴィンチ一個人としても。

 文章だけではなく、ただの口伝だけではなく……。

 

 星崎望幸という人間について知らなくてはならない。

 

「そうだね、それじゃあまずは──」

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「礼装については話通りで頼む。費用と素材は勿論こちらで受け持つ。……あと、これが俺から分離した魔力結晶だ。好きに使ってくれて構わない」

 

「……うん、ありがとう」

 

「それじゃあ、また。何かあったら呼んで欲しい」

 

「うん、それじゃあね。気をつけて帰るんだよ」

 

 そう言って彼は工房から出ていく。

 そして工房の扉が閉める直前、彼は此方に振り返るといつも通りの何を考えているのか読めない仏頂面で口を開いた。

 

「その、ダヴィンチはどうだったか分からないが、俺は君と話せてとても楽しかった。凄く有意義な時間だった。だからまた話をしてくれると嬉しい」

 

 それだけ矢継ぎ早に言うと扉を閉めてそそくさと帰って言ってしまった。

 暫く彼が去っていった扉を眺めていたが、背もたれにグッと寄りかかった途端、全身の力が抜けた。

 

「……私だって君と話すのは楽しかったさ」

 

 実際にこうして二人きりで話してみれば、彼の人となりがよく分かる。

 見ているこちらが微笑ましくなるくらい善良な子だ。

 立香ちゃんやマシュと同じくらい優しい子で常に此方を気遣っている様子だって見受けられた。

 

 何より彼の知識量は凄まじかった。

 こと彼の専攻している置換魔術に関しては私以上の知識があるだろうことは言葉の節々から感じ取れた。

 話せば話すほど彼の知識量には驚いたものだし、それ以上に打てば響くような会話に心を癒された。

 

 だけど……。

 

「過去の記憶の欠落、かぁ」

 

 より正確に言えばカルデアにやってくる少し前までの記憶から昔の記憶が一切なかったのだ。

 いや、実際に彼が覚えていないとは言っていないが、彼の昔の話になった時、彼の口数は途端に激減した。

 

 加えて、数少ない過去の話でも「だった」「らしい」などとまるで他人事のように自分の事を話す彼の姿に思わず閉口しかけた。

 聞けば聞くほど彼は自分の過去のことについて喋れなくなっていって……ついには黙り込んでしまった。

 

 その時の彼の顔を見て声を出さなかったのは我ながらよく我慢したものだと思う。

 

 思い出せなくなっている過去に彼は悲観的な表情を浮べる訳でも無く、ただただ申し訳なさそうな表情を浮かべて此方を見ていたのだ。

 

 ……何で君がそんな申し訳なさそうな顔をするんだいと叫びたかった。

 

 謝るべきは私達だ。

 彼一人に多大な負担を強いた私達こそが糾弾されるべきで、彼は被害者でしかないじゃないか。

 

「普通に考えればあんな無茶を通した後の代償なんてあって当然だったじゃないか」

 

 一体いつから記憶が無くなり始めたのだろう。

 セプテムから? それともオルレアン? もしかしたら特異点Fからかもしれない。

 

 ……彼は無茶を通した結果、自分の過去を失った。

 それだけじゃない。

 人であることも失って──その果てに彼は未来も無くすだろう。

 

 このまま彼に負担を強い続ければ、彼という人間の命が尽きることなんて容易に予想が付く。

 いいや、それだけじゃあない。

 仮にこの人理修復の旅を生き残ったとしても彼は必ずと言っていいほど確実に、時計塔の連中にその身柄を確保されるだろう。

 

 過去を失い、未来を失い、今を失い、人ですらなくなり──その死後すら辱められる彼に一体何が残されるという。

 何も残されないではないか。

 

「……こんなこと、一体誰に話せるんだ」

 

 話せるわけがない。

 

 先の騒動で彼に親しい者達は精神的にかなりの限界が来ている。

 特に立香ちゃんやロマニなんてあと少しでも彼に何かしらのことがあれば容易く精神が崩壊しかねない程だ。

 

 ……表面上はまるで何もなかったのように振舞っているけれど、人目のつかないところで胸を押さえて泣いていたり、陰で自責の念から吐いていることを私は知っている。

 

 そんな彼らに今の彼の状態をどうして言えようか。

 

「……ああ、本当どうしてこんなに彼ばかりが苦しまなくてはいけないんだ」

 

 苦々しく吐き捨てた言葉は虚しく空に溶けて消える。

 一人で抱え込むにはあまりにも重すぎて、けれど他の誰にもこんなものを背負わせるわけにはいかない。

 

 ロマニもマシュも立香ちゃんも他の職員にだって話せない。

 

 これは私だけが抱えるべきなんだ。

 

 

 ■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 藤丸立香はここ最近夢見が頗る悪かった。

 具体的な内容は思い出せないが、朝目が覚める度に寝汗をぐっしょりとかいて、えも知れぬ不安に襲われていた。

 

 どんな夢を見たのか思い出せないのに、その夢が自分にとっては死ぬほど辛いものだと直感的に理解出来てしまう。

 寝る度に、夜が来る度に悪夢に襲われ、眠るという行動が酷く億劫になってしまった。

 けれど、寝ないということは出来ない。

 

 人は寝なければ必ず破綻する。

 悪夢を見ると知っていても寝なければならないという事実も立香の心を蝕んでいた。

 

 何故このような悪夢を見るようになったのか。

 

 そんなもの分かりきっている。

 望幸だ、彼をセプテムで失いかけたことが原因なのだ。

 だって今でもふとした瞬間にあの時の光景を思い出して臓腑に氷塊を突っ込まれたかのように全身が冷えるのだ。

 

 彼は生きている、彼はここにいる。

 

 そう分かっていてもふとした瞬間に思い出して、心が悲鳴を上げる。

 彼の姿が見えないと消えてしまったんじゃないかと不安になる。

 彼が傍にいなければ無意識に彼を探してしまう。

 

 ……こんなにも私は脆かったのだろうか。

 

 彼は死んでいない、彼は確かにここにいると分かっているのに。

 

「……っ」

 

 心臓が強く脈打つ、嫌な汗がじわりと滲み出す。

 

 ──ああ、まただ。

 

 今はもう皆寝ている時間だ。

 だというのに布団を被って幾ら目を瞑っても動悸は激しくなる一方で、耐えようと服に皺ができるほど強く強く握り締める。

 

 けれど、ああ。

 

「望幸……」

 

 やっぱり無理だった。

 足手まといにならないように強くなると決めたというのに。

 

 布団をどかし、むくりと体を起こして寝間着のまま廊下へと出る。

 廊下のひんやりとした冷たい空気が体を蝕み、体がぶるりと震えた。

 

 目的地は私の隣の部屋だ。

 すぐ側にあるというのにその距離ですら今の私には果てしなく遠く感じる。

 それでも突き動かされるように歩みを進めて部屋の前に辿り着いた。

 

 そして扉のパスワードを打ち込み、部屋の中に入ると彼がいた。

 寝台の上で静かに眠る彼の姿を見て漸く体と心が落ち着きを取り戻す。

 

「良かった」

 

 そう無意識に呟いた。

 すぅすぅと小さく聞こえる彼の呼吸音、静かに上下する胸。

 

 彼はちゃんと生きていて、確かにここにいる。

 

 それを実感した途端、安堵から床に崩れ落ちた。

 そしてそのまま私は床を這うように彼にゆっくりと近づき──

 

「ごめんね」

 

 そう、小さく謝って彼の寝台に潜り込んだ。

 

 ……暖かい、先程までの凍えるような寒さがゆっくりと溶けて消えていく。

 彼の体温が、彼の息遣いが感じ取れて心に安寧が齎される。

 

 少しだけ、少しだけだから……落ち着いたらちゃんと自分の部屋に戻るから。

 明日にはちゃんといつもの私に戻っているからと、誰かに言い訳をして目を閉じた。

 

「んん……」

 

 その時珍しいことに彼が寝返りを打って私を抱え込むように抱き締めてきた。

 抱き枕と勘違いしたのか、或いは抱え込むには丁度いいと思ったのか分からないけどぎゅう、と抱き締めてきた彼の心音が聞こえてきた。

 

 ドクンドクンと力強く鼓動するその音が今は何よりも心地良かった。

 彼の体温と匂いも相まって心の底から安心してしまい、気付けば抗い難い睡魔に襲われた。

 

 まずいなぁって思うけれど、ここからもう出たくなくて。

 気が付けば私は酷くあっさりと眠りに落ちていた。

 

 ──大丈夫、私達はそばにいるよ。

 

 眠りに落ちる直前、そんな声が聞こえてきて私の意識はプツリと途切れた。

 

 その日、私は悪夢を見ることなく久しぶりにぐっすりと熟睡することが出来た。

 

 ……まあ、久しぶりにぐっすりと熟睡することが出来たということは必然的に彼よりも後に起きてしまったということで──

 

「おはよう立香」

 

 朝目が覚めたら煌めく宝石のような彼の瞳と超近距離で目が合った。

 何だったら少し前に顔をやれば彼とキス出来そうな距離だ。

 

「んぅ……? あっ!? ごっ、ごごごごめんっ! 寝惚けてたというか、ちょっと安心しちゃったというか……!」

 

「……」

 

「すっ、すぐに起きるね! あはっ、あはは……! いやー寝惚けて部屋を間違えちゃったかな──」

 

「立香」

 

「ハイ」

 

「今度から眠れない時は一緒に寝る?」

 

「……う、是非お願いします

 

 ──私、こんなにも意思が弱かったかなぁ!? 

 





カルデア戦闘服改:彼とダヴィンチによって藤丸立香専用の礼装へと改造された戦闘服。
魔力効率が段違いに跳ね上がり、外付けの小型魔力タンクを追加したことによって魔術の回転率が劇的に向上した。
具体的に言えばカルデア戦闘服の全てのCTが3T短縮、オーダーチェンジは5T短縮されている。

このホモ叩く所か小突いただけで埃がボロボロ出てくるんですけど。
ちなみにホモくんはマジで自分の過去を知らないだけで別に記憶を失ったとかはなかったりする。
……記憶を薪に出来るんだったらするでしょって?それはそう(無慈悲)

次回はお試しでホモくんの過去の周回の話です。
今のホモくんではなく、レズちゃんだったり別のホモくんの話になります。
過去話は長々としてもアレなので取り敢えず一話完結形式で。

その後は3章突入かなぁ。


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断章ㅤ力の記録


一話完結にすると宣言した頑張りました。
約23000字となります。
今回はゲの字の顔面ぶん殴った子の話です。


 

 >……■■ ヘノ アクセス ヲ 開始。

 >セキュリティ ガ 解除 サレマシタ。

 >Void Vortex(虚空の渦) ノ 起動 ヲ 確認。

 >剪定事象 ノ 境界記録帯 ヘ アクセス中……

 >アクセス成功。

 >「燃え尽きた流星群」 ヘ アクセス ヲ 開始……

 

 

 

警告

 

 

 >閲覧権限 ヲ 持タナイ 閲覧者 ハ 即座 ニ 処分 サレマス。

 >適切 ナ 権限 モ ナシ ニ アクセス ヲ 続ケレバ 霊長 ノ 絶対殺害権 ガ 行使 サレマス。

 

 >アクセス ヲ 続行 致シマスカ? 

 

 >……Yes

 >BCハザード 作動。

 >……生命徴候 ノ 継続 ヲ 確認。

 >制限解除。

 

 

 >ようこそ 閲覧者様。

 >剪定事象より記録の一部のサルベージが完了しました。

 >「力」の記録の断片を閲覧しますか? 

 >……かしこまりました。

 

 >A-type 「(パワー)」の記録を再生します。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 はい、よーいスタート。

 

 

 

特異点F

 

 初めて見たそいつはなんともまあ、愛らしい少女の姿をしていた。

 思わず目を細めたくなるほどの輝きを放つ魂に吸い込まれてしまいそうな位、綺麗な瞳。

 触れてしまえば壊れて消えてしまいそうな──まるで雪のような少女だ。

 

 どうしてか、初めて見たというのにその少女には妙な懐かしさと親近感があった。

 

 召喚されて名を告げると彼女は腕を組んでうんうんと悩み出した。

 

「む、むむむ……何て呼べばいい?」

 

 名前、名前か。

 

「好きに呼べばいい」

 

 どちらの名で呼ばれても構わない。

 

「んん……ならエーちゃんで」

 

 好きにしろ──と言いかけて耳に届いた矢鱈と可愛らしい名前にギョッとした。

 

「エ、エーちゃん? ま、待て流石にそれは──」

 

「むふ、それじゃあエーちゃんこれからよろしくね」

 

「おい、我はその名を許したつもりは──!」

 

「ほらほらエーちゃん早く行こー」

 

「話を聞けマスタァーッ! 手を引っ張るなぁぁ!」

 

「急げ急げー立香達が危ないかも〜?」

 

 その見た目からは想像もできないほどの強い力で手を引かれた。

 ……初めてだった。

 手を引かれたのも、こんなにも柔らかい人の手に触れたのも。

 我がどういう存在なのか正しく理解していて尚、恐れもしない生命に出会うのも。

 

 ──何故、私は此奴に呼ばれたのだろうか。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「やっほ、立香。大丈夫ー?」

 

 手を引かれ、駆け込んだ先の洞窟で全身がボロボロで息も絶え絶えな様子の男……恐らく話に聞いていたもう一人のマスターと呼ばれる存在と大盾を持った少女、そして杖を持った神性を身に秘めたきな臭い男。

 

■■(パワー)! 良かった、生きてたんだ!」

 

 ……あとは、ああ、此奴か。

 この特異点の元凶とも言うべき存在は。

 黒い甲冑を纏った騎士然とした女──赤き竜の化身か。

 

「勿論、■■(パワー)はとても強いので。それで──うん、黒い王様はやる気満々だね?」

 

 ふふんと胸を張る我がマスターに対して赤き竜の化身は苦虫を噛み潰したような渋面をした後、此方を見てまた顔を歪めた。

 

「──っ、またとんでもないやつを呼んだものだ、なっ!」

 

 舌打ち混じりにその手に持った聖剣を抜き放ち、黒い旭光が大地を削りながら我がマスターへと突き進む。

 正直ここでマスターがくたばったとしても一向に構わないが、まあ、折角呼ばれてここに来たのだ。

 早々に帰るというのもつまらなかろう。

 

 故に放たれた旭光と同等の威力の魔力砲撃を放ち、相殺する──と、しまった。

 流石にいきなりこの量の魔力を搾り取ってしまえば貧弱な人間は死んでしまうか? 

 

 だが、マスターの表情は微塵たりとも揺らいでいない。

 ……出涸らしにならずに済んだかとホッと安心した。

 

「うわっ、危ない。むむ、初手宝具は中々に殺意が高い。それじゃあ相手になってあげるー。エーちゃんがね?」

 

「我!?」

 

「勿論。あ、サポートはするので」

 

 確かにサーヴァント同士の戦いの間に人間が割り込める訳が無い。

 故に我が戦うのは当然の理だが、釈然としない。

 胸中に若干のモヤモヤを抱えつつもマスターの前に出て構える。

 

「〜〜っ、はぁ、まあいい。出力は大幅に下がっているけど、特に問題なく殺せるだろう。ほら、来るがいい赤き竜の化身。格の違いというのを教えてやる」

 

 本来持っている力の大部分を抑え付けられているが、高々化身程度、相手にもならぬだろう。

 

■■(パワー)さん! 私も一緒に戦います!」

 

「ん〜、ならマシュは私と立香を守ってくれるー? 攻撃の余波が飛んできたら■■(パワー)は兎も角立香が死んじゃうかもしれないので。盾兵として信頼してるねー?」

 

「は、はいっ! マシュ・キリエライト、全力でお二人をお守りします!」

 

 黒い騎士然とした女は覚悟を決めたように剣を構えて、此方を見据える。

 ……僅かな静寂の後、我と彼奴は激突した。

 決着は一瞬であった。

 

 

第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン

 

 この特異点に来てからというもの竜の紛い物に、竜ではあるが現象ではない──いわば竜として中位に当たる竜の気配が至る所から感じ取れた。

 

 特に竜のなり損ない。

 あれは鬱陶しい。

 竜の姿を模倣しているというのにあまりに貧弱、加えて群れているというのも気に食わん。

 本能でしか動けんのも醜悪さに磨きがかかっていよう。

 

 ……ああ、また来たか。

 これで何度目だ。

 

「話の途中だがワイバーンだ!」

 

「急に何を言い出すんだ?」

 

「ロマニの台詞を盗ってみました、ぶい」

 

『いや確かに言おうとした所だったけども……! というよりもよく気がついたね? まだ遠い場所にいるんだけど』

 

■■(パワー)は目がとても良いので」

 

『目がいいで済ませられる距離じゃないと思うんだけどなぁ』

 

 我がマスターとマスターが所属しているカルデアに在籍しているドクター……確かロマニと言ったか? 

 ワイバーンほどではないとは言え、此奴にも少々鬱陶しさを感じる。

 嫌い、というほどでもないが、何処か気に食わぬ。

 

 ……恐らくこの男に何かあるな。

 

 まあいい、何かあったとしても敵対するなら思惑諸共に踏み潰す。

 願いがあるのならその願いを叶えさせなくさせるだけだ。

 

 だがまずは──

 

「……はぁ、来てるんだったらさっさと迎撃態勢を取るぞ。ほら、マスター。お前は我の後ろに下がっていろ」

 

「はーい」

 

 この空を埋めるなり損ない共の始末が先だ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 この特異点で数多の竜のなり損ないを殺した。

 ファヴニールという竜も我が殺し切るつもりでいたが、それはマスターに止められた。

 マスターとてファヴニール程度なら我でも殺し尽くせると理解しているはずだが、それでもマスターはこの特異点に在留していたジークフリート──竜殺しの英雄にその任を任せたようだ。

 

 ああ、だがしかしあれは傑作だったな。

 

 竜殺しが我を認識した途端、血相を変えて剣を構えた。

 我を見て身構えるのは仕方あるまい。

 だが、敵対する以上は──と、魔力を回そうとした時にあのマスターが焦ったように我等の仲介をしたのだからな。

 

 ……ふふ、愉快だ。

 

 アレが慌てふためく姿などそうそう拝めまい。

 

 その後は我と竜殺しは距離を取った。

 ま、当然であろうな。

 我は然して気になりもせんが、竜殺しであるジークフリートは話が別だ。

 頭では理解しても本能が嘯くのだろう。

 

「ああ、なんて……なんて幼いの」

 

 そして竜殺しの呪いを完治させた後に今回の特異点の元凶は現れた。

 ファヴニールという竜を聖杯の力と自身の能力を合わせて支配下に置いて従えていた。

 

 その女は我がマスターを見て、目を見開き身体を震わせていた。

 

 ……ああ、此奴もか。

 

「痛みも、苦しみもなく……一瞬で燃やし尽くしてあげるわ」

 

 マスターに向けられる激情の嵐。

 愛憎入り混じった特大の感情と執着がマスターにぶつけられていた。

 

「ここで全部終わらせてあげるわ──ジル!」

 

「ええ、全てこのジルにお任せを」

 

 ワイバーン、海魔、シャドウサーヴァント、ファヴニール。

 

 数多の敵がたった一人を撃滅すべく、一斉に襲い掛かる。

 矮小な人の身には余る絶望の津波に──けれど、表情は一切歪むこと無く、我がマスターの瞳は我に向けられていた。

 

「エーちゃん」

 

 ……ああ、仕方あるまい。

 命令を受けるのは癪だが、我はまだ生きていたい。

 この首枷を外し、自由を得られるまでは──その時が来るまでは仕方がないからお前に従おう。

 

「お前達の願いは叶わない」

 

 ふぅ、と小さく息を吐いて全身に魔力を巡らせる。

 願いは叶えさせない、お前達の悲願はここで潰える。

 

 故に、絶望したまま潰れろ。

 

 

第二特異点 永続狂気帝国セプテム

 

 活気あるローマの人々が暮らす街。

 何奴も此奴も戦時中だと言うのに呑気に馬鹿面を晒している。

 そんな街中を我はマスターに連れられ歩いていた。

 

「エーちゃん、ほら次あっち行こ」

 

「分かった──分かったから手を繋ぐな!」

 

「ほら、はーやーくー、はーやーくー!」

 

「ああ、こら、分かったから。一緒に行くから」

 

 全く……何故我がマスターは我と平然と手を繋ぐのか。

 我の恐ろしさは知っているはずだ、我の強さだって散々目の前で見せつけた。

 それでも何故怖がらない。

 

 そんな内心とは裏腹にマスターはローマ市民を嬉しそうに眺めていた。

 ニコニコ、ニコニコと何が楽しいのか嬉しそうに笑っている。

 

「んふふ、凄いねぇこのローマの街は。皆、不安だろうにそれでもその感情を表に出してない。きっと、ネロちゃんがどうにかしてくれるって信じてるんだろうねぇ」

 

 ネロ──ローマの皇帝。

 此奴も此奴で随分と面倒な気配がする。

 寂しがり屋、甘えん坊……愛を貰えずに育った子のように飢えている。

 本人すら知覚出来ていないその腹の底に渦巻く感情がどれだけ狂ったものか。

 

 此奴が今回の元凶では無いことに未だに驚きを隠せん。

 

「む? そうであろうそうであろう! そなた、もっと余を褒めても良いぞ!」

 

「偉いぞー凄いぞー! 本当にいっぱい頑張ってきたんだね。ネロちゃんが積み上げてきたものがきっと今の皆の笑顔を作ってるんだね」

 

「お、おぉ? そ、そこまで言われると余でも照れるぞ」

 

「むふ、いっぱい頑張ったネロちゃんには■■(パワー)がいっぱい撫でてあげるので。よしよし」

 

「……そなたの手は、何だかとても安心するな」

 

 我がマスターは屈んだネロの頭を両手でわしゃわしゃと撫でていた。

 かなり乱雑に撫でられているというのにネロは嬉しそうに目を細めてマスターの手を堪能していた。

 

 そうしてネロが満足するまで一通り撫で倒したマスターの矛先は今度は立香達へと移った。

 

「これが■■(パワー)の癒しパゥワァー……。立香とマシュも撫でてあげるー」

 

「ウェッ!? い、いや俺は──うわわわっ」

 

「待っ、待ってください■■(パワー)さん! わたっ、私は大丈夫──ひゃあああああ!?」

 

 マスターは立香とマシュの二人に飛び付き、ニコニコと笑いながらネロと同じように撫でていた。

 立香とマシュも最初は恥ずかしそうにしていたが、撫でられている内にマスターが撫でやすいようにゆっくりと身をかがめ、頭をマスターに預けていた。

 

 ……ふん、我がマスター相手に随分とまあだらしない顔をして。

 

「むふー、満足。……さて、と」

 

 ネロ、立香、マシュの三人を散々撫で倒したマスターは満足したように息を吐くと今度は此方に目を向けた。

 

「エーちゃん」

 

「……何だ」

 

「いつもありがと」

 

 そう言ってマスターは少し背伸びをして我の頭に手を置いた。

 

「……っ、我の頭を気安く撫でるな」

 

 先程の三人のように激しく撫で回すのではなく、優しく撫でてきた。

 ……温かい、こんなにも人の手はこんなにも温かいものだったか? 

 

 自分の手を触ってみるが、温かいとは感じない。

 寧ろその逆でどちらかと言うと我の手はほんのりと冷たかった。

 

 ……温かいな、マスターの手は。

 

「んふ、それでもいつも頑張ってくれてるお礼くらいはね?」

 

「……ふん」

 

 そうして撫でられて……だがこれ以上好き勝手されるのは御免蒙る。

 マスターから距離を取り、顔を背ける。

 これ以上は付き合ってられんからな。

 

「ありゃりゃ、離れちゃった」

 

「さっさとこの特異点の元凶を潰す。そうすればこんな所からさっさとおさらば出来るだろう」

 

「……んひひ、素直じゃないんだー」

 

 何を言う。

 我は最初から素直だとも。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 魔神柱フラウロス、そう名乗って醜悪な肉柱に変身した男──忘れていたが、特異点Fでも最後にしっぽを巻いていたレフがボロ雑巾の様な姿で地面に倒れ込んでいた。

 

「そら、どうした? もう喋らなくていいのか? 聞きもしていないのにベラベラ喋っていただろう?」

 

「き、貴様ァ……!」

 

「惰弱、脆弱……所詮使い走りではこの程度。これならあの時にきちんと殺してやっておくべきだったか」

 

 魔神柱──魔神と名乗る割には強いとは思えなかった。

 事実そう苦戦もせずに潰せた。

 これなら特異点Fで殺し切っておけば、態々こんな所で戦う必要もなかっただろう。

 

「舐めるなよ、人理の影法師如きが! 良いだろう、ならば貴様らには絶望というものを見せてやる! さあ、人類の底を抜いてやろう! 七つの定礎、その一つを完全に破壊してやろう!」

 

 さて、どうやって殺すかと考えながらレフに近づくと、奴は懐に隠していたであろう聖杯を掲げ、願いを述べた。

 

 ……我を前に願うか。

 

「来たれ、破壊の大英雄──アルテラよ!」

 

 聖杯から現れたのは今までのサーヴァントとは一線を画する力を有した者だった。

 加えて──どうにも此奴からは宙の香りがする。

 

「ハ、ハハ、ハハハッ! これで貴様らは終わり──」

 

「黙れ、今すぐ私の前から消え失せろ」

 

「あ?」

 

 レフが反応するよりも速く振るわれたアルテラの剣はいとも容易くレフを真っ二つに斬り裂いた。

 大量の血と臓物を地面にぶちまけるレフであったものを尻目に我はアルテラの持つ剣に目がいっていた。

 

 ──これは、アレスの気配? 

 

「わーお、真っ二つ。出オチってやつ?」

 

「こら、マスター。ちゃんと後ろに下がっていろ。あれは少々厄介だ」

 

 そんな事を考えているとマスターが我の後ろからひょっこりと顔を出して真っ二つになって死に絶えたレフをジッと見ていた。

 

 ……まったく、貧弱なマスターならマスターらしく後ろに下がっていればいいものを。

 そうして身を危険に晒せば我も一緒に消えてしまうのだ。

 

 その辺に関して今度話した方がいいかもしれん。

 

「……マスター? あぁ、そうか、そんなにも……」

 

 アルテラはマスターという言葉にピクリと反応した。

 虚ろだった瞳に光が宿ると同時に酷く強い感情が渦巻いていた。

 

 何だ? 此奴もか? 

 

 幽鬼のような足取りでフラフラとマスターの方へと歩み寄るアルテラの前に我はマスターを守るように一歩前へ出た。

 

「宙より来た飛来者の残骸か……。残骸と言えど同じ出自、先の奴より少しはマシだろう」

 

「……どけ、私の邪魔をするな」

 

「それはこちらのセリフだ。我の邪魔をするならここで殺す」

 

 ここでマスターを殺されても困るのだ。

 我はまだ完全に自由にはなれていないのだから。

 故にその野望を邪魔するというのなら、我の前に立つということがどういうことなのかその体に刻んでやろう。

 

 

 

第三特異点 封鎖終局四海 オケアノス

 

 ゼウスに連なる者、傲慢なるもの。

 罪なるかな、咎なるかな、悪なるかな。

 裁かねばならない、罪を導かねばならない。

 

「ふー……!」

 

「どうどうエーちゃん。落ち着いて」

 

「落ち着いている、落ち着いているともマスター。だから離してくれマスター。何すぐに終わる。ゼウスに連なる者を排除するだけだ」

 

 アルテミス、そしてアポロン。

 どちらもオリュンポス十二機神に名を連ねる者。

 即ちゼウスに連なるものだ。

 

「んもーエルバサみたいなこと言い始めてるよ」

 

「そいつもゼウスに連なるものか?」

 

「違うよー? ほらほら落ち着いてー」

 

 マスターに正面から抱き止められる。

 幼子をあやす様に背中を優しく叩かれる。

 邪魔だ、邪魔だ。

 我の邪魔をするというのなら弾き飛ばせばいい、殴り飛ばせばいい。

 

 力で以て我が前から排除すればいい。

 

 そうは思えど残った理性がマスターに力を振るうことを拒絶する。

 駄目だ、駄目だと──ここでマスターを殺してしまえば我は二度として自由を得られないぞと理性が嘯く。

 

「う、ううううう……!」

 

「わーお、すっごい嫌そう。んー、これはちょっと、仕方なし?」

 

「殺す……殺す……殺す……」

 

 だが、目の前にいるのは我にとって不倶戴天の敵。

 特に女神は嫌いだ。

 例え運命の女神でなかったとしても──! 

 

「エーちゃん」

 

「何だ、マスター。彼奴ら殺していいのか」

 

■■(パワー)の目をよく見て」

 

 マスターに顔を掴まれ、強引にマスターの顔へと向けられる。

 

 マスターの宙に煌めく星の如き瞳と目が合った。

 

「はぁ……?」

 

水瓶を満たせ──■■(テンペランス)

 

「急に、何を……、……」

 

 膨れ上がった憎悪が萎んでいく。

 パンパンに張り詰めた風船から空気を抜いたように荒ぶる心が萎んでいく。

 抜けていく、抜け落ちていく。

 

 憎悪が、怒りが──私の感情が何処かへ流れていく。

 

「落ち着いた?」

 

「……ああ、まあ、自分でも不思議な位には」

 

 荒波だっていた心はいつの間にか湖面のように静かに。

 激情に焼かれていた脳はあっさりと冷却された。

 ……何かされたのか? 

 

「ん、それじゃあ後は■■(パワー)の影に潜っとく?」

 

「そうする。今は、顔を合わせたくない」

 

 考えるにしてもここではないな。

 少なくともアルテミスにアポロンが傍にいては抑えられるものも抑えられん。

 

 マスターの言う通り、泥の状態に戻り彼女の影へと沈み込む。

 

「はーい……それじゃあテミテミとアポアポももうこっちに来ても大丈夫だよ?」

 

「あ、あなたまたとんでもない奴を呼び出したわね……? 怪我させられたり、酷いこととかされてない?」

 

■■(パワー)ちゅわぁぁぁん! んーショタじゃないのがちょっと残念だけど、あどけない幼さのあるこの姿もまた良し! さあさあ、この私をハグして──ぐほぉッ!?)

 

 影から我の体の一部を形成し、マスターに飛び込んできたアポロンの憎き顔面に魔力弾を叩き込み、吹き飛ばす。

 

「我のマスターに触るな、穢れる」

 

「ア、アポロン様ーっ!」

 

 ふん、マスターが羊臭くなるなど死んでもゴメンだ。

 

「んーん、エーちゃんは■■(パワー)に良くしてくれてるよ?」

 

 そうだ、我はマスターに暴力を振るったことなどありはせぬ。

 だと言うのにこの女神はなんてことを言うのか。

 やはり女神は好かん。

 

「そ、そうなのね──ピィ」

 

「お、おぉ、此奴がこんなに脅えてる姿は初めて見たな。嬢ちゃん、アンタのサーヴァントは一体何なんだ?」

 

「エーちゃん? んー、■■(パワー)に聞くよりテミテミの方が詳しいと思うよ?」

 

「あー……そりゃそうなんだろうが──グベェェエエエ! ちょ、ちょっとアルテミスさん!? 止めて、抱き潰さなアッ───!」

 

「うぅ……! ■■(パワー)ちゃん、私何かあったら絶対に力になるからね! でも、今は、今だけは心の準備をする為にちょっと時間を頂戴!」

 

「……行っちゃった」

 

 物凄い勢いで何処かへ走り去っていったアルテミスとそのお供である熊のぬいぐるみ……いや、あれはオリオンか? 

 アレも難儀なものだ。

 斯くももう二度と帰ってこなくても構わないが。

 

 

 ◆

 

 

 聖杯を所持しているイアソン、そしてその傘下にいるサーヴァント達。

 取り分けヘラクレスという存在は厄介だ。

 十二の試練、狂化されてもなお揺るがぬ武技。

 成程、あれは英雄だと我でも理解出来る。

 

 故に聖杯を奪取するためにも先にヘラクレスをどうにかせねばならんだろうと話し合いをしていた。

 

「ヘラクレスは■■(パワー)とエーちゃんに任せて。立香とマシュはイアソン達をお願い、ね?」

 

「本当に大丈夫なのか■■(パワー)?」

 

「んふ、立香、■■(パワー)とエーちゃんを信じて。大丈夫、必ず勝つよ。ただ、そうだね。確実に仕留める為にも出来ればイアソン達から引き離したい」

 

「……我ならヘラクレスが相手であろうと正面から潰し切れる」

 

 ヘラクレスがどれほど勇猛であろうと、どれほど強力であろうと、我にとっては脅威とは言いきれない。

 それこそ真正面から十二の試練を持つヘラクレスを打ち破ることだって可能であろうとも踏んでいる。

 

「それでも、だよ。万が一がある。そしてヘラクレスはその万が一を引き当てる事の出来る大英雄だもんね。たとえバーサーカーだとしてもそれを成し遂げる意志力がある。なら万全を期す為にもイアソン達の援護は受けさせたくない」

 

「……お前がそうまで警戒する相手か?」

 

「うん、この特異点で最も脅威となるサーヴァントだと思ってる。けど──」

 

 にひ、と笑う。

 マスターの目に宿る感情は──ああ、本当に。

 

■■(パワー)とエーちゃんなら絶対に勝てる」

 

「……分かった。マスターであるお前がそう言うなら従おう。それで、引き離すとは言ってもどうする? こう言ってはなんだが我がこちらにいる以上、彼奴らも警戒はするだろう」

 

「ふっふっふー、■■(パワー)は天才なので名案があります。それにはエウエウの力も貸してもらわないとなんだけど──わぁ、凄い顔。でも、怒ってるわけじゃない?」

 

 エウリュアレ──女神の一柱でもあるが、ゴルゴーンと深い関わりのある彼女に対する気持ちはかなり複雑だ。

 だがまあ、他の者に比べればまだマシだ。

 

「……従うと言った以上お前の決定には従う、従うから顔をムニムニするな」

 

「エウエウもそれでいい?」

 

「ええ、私は構わないわ。けど、何をするつもり?」

 

「んー、まあ、立香もマシュもエーちゃんも命を懸けて前線張るなら■■(パワー)も命を張らないと、ね?」

 

 

【第四特異点】

 

 魔術王の脅威を何とか振り払い、疲弊しきった我がマスターが地面にへたり込みながらもなにやら納得がいかなさそうに唸っている。

 

「んむ、んむむむむ……」

 

「どうしたマスター」

 

「何か■■(パワー)だけ魔術王に滅茶苦茶ボロクソに言われた……」

 

「ああ、アレか。傑作だったな。散々罵倒された挙句最後にはお前こそが人類という存在の愚かさの象徴だと罵られたからな」

 

 この我からしてもそこまで言うか? と思わざるを得ないほど、我がマスターはボロクソに貶されていた。

 魔術王のヘイトの八割は我がマスターに向けられていたのではなかろうか。

 

 それほどヘイトを向けられていてもなお切り抜けた我がマスターもやはり何処かおかしい。

 特に魔術王の魔術に干渉し、剰え弾き飛ばしたなどがな。

 

 我とてその程度可能だ。

 だが、我がマスターは我のような存在では無いはずだ。

 しかしそれでも確かに致死の攻撃を弾き、その身を守った。

 

「むぅ……■■(パワー)、ちょっと遺憾。人類はそんなに愚かじゃない。エーちゃんはどう思う?」

 

「さぁな」

 

 そんなマスターの事が気にならんと言えば嘘になる。

 嘘になるが、それよりもまずは──

 

「しかしそんなことよりも、だ」

 

 スッ、と目を細め愚かな我がマスターへと詰め寄る。

 

「マスター、何故あの時前に出た? 危険だと分かっていたはずだ。一歩間違えれば死んだとしてもおかしくはない。そもそもマスターの命は我の命でもあると言っていたはずなのだがな? ん? 何か理由があるのなら言ってみればいい」

 

 魔術王の攻撃範囲が拡大し、その中にもう一人のマスターである藤丸立香にも被害が及ぶ──そんな時にあろう事か、この愚か者は我に助けを請わず、魔術王の魔術でその身を焼かれながらも藤丸立香を守っていた。

 

「はぅ……いやぁ、でも立香が危なかったし……」

 

 ……気に食わん。

 

「マシュがいただろう、それにあの場には我とていた。仮にあの場でマスターが身を呈して立香とやらを守らなくてもいくらでも防ぐ手段などあった」

 

「うぅ……」

 

「……はぁ、いいか、マスター。再三言っておくがお前の命は我の命でもある。お前が生きねば我も生きられん。理解したか? したのならもう二度とあのような行為はするな」

 

 マスターが死ねば、契約している我も消滅する。

 それは許し難い。

 我はまだ自由を得ていない、この首枷を外せていない。

 だから死なれては困る。

 マスターには生きていて貰わなければいけない。

 

「うむむぅ……それは、まあそうだけど……」

 

「ほう? つまり、何か。これだけ詰められてまだ懲りてないと?」

 

 我だけでなく、カルデアの全員からあれほど詰められても尚も歯切れの悪い返事しか返さぬマスターに少々苛立つ。

 

 何故だ、何故嫌がる。

 精々我の背中に隠れて日々平穏に生きればいいものを。

 我に縋って生を謳歌すれば良いではないか。

 それの何が不服なのだ。

 

「いやいや、違うよ!? ■■(パワー)だって皆に迷惑を掛けたいわけじゃないよ! ……でも、■■(パワー)はそれが必要ならやらないと。ううん、やらないといけないの」

 

「……」

 

「ま、そういうわけなのでエーちゃんが嫌ならマスター権を立香の方に移さないとね。立香ならきっとエーちゃんを受け入れるだろうし」

 

「ふ、ふふ……そうかそうか……」

 

 ほう、ほほぉ? つまりなんだ? そういう事か? 

 

「エ、エーちゃん?」

 

()()()()()?」

 

「あっ」

 

 安心しろマスター。

 お前のその願いはもう叶わない。

 

 

 

第五特異点 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

 

 愉快、実に愉快だ。

 まさか我がマスターが斯様な姿に成り果てるとはな。

 

「うむー」

 

「クッ、ククク……随分と愛らしい姿──いいや、毛玉になったなぁ我がマスター?」

 

 バスケットボール大の大きさのまん丸毛玉の謎生物が我がマスターであるとは誰も思うまい。

 ふふふ、本当に愉快だ。

 まさかマスターにこんな弱点があるとはな。

 

「うむむ!」

 

「フォーウ! キャウ! (特別意訳:ここに来てマスコット枠の強力なライバルの出現だと……!?)」

 

「うみゅー、みゅ!」

 

 獣の幼体とマスターがじゃれあい──いや、これは取っ組み合いか? 

 まあどちらにせよ、互いの姿が愛らしいせいでどう見てもじゃれあっているようにしか見えん。

 

 ……ふ、ふふ、マスターが負けたか。

 

「マ、マスター! フォウさんと■■(パワー)さんがとても可愛いです! ■■(パワー)さん! その、お触りしてもよろしいですか!?」

 

「みゅ」

 

失礼しますッッッ!!

 

みゅー!?

 

 マシュに対して嫌と返事したような気もするが、それが分からないマシュはマスターの返答を是と捉え、物凄い速度で手を伸ばし、マスターの体を堪能していた。

 

「ふわあああ……凄くモフモフです! フォウさんの毛並みに負けずとも劣らないモフモフ感覚……! これが新感覚のモフモフなのですね!」

 

「落ち着いてマシュ、語彙力が壊滅状態になってるよ。……ところで■■(パワー)、俺も触ってもいい?」

 

「……みゅ」

 

「ありがと! それじゃあ触るね!」

 

みゅみゅー!?

 

「うおっ……これはまた癖になる感覚……スゥゥゥ───

 

 ……そんなに、なのか? 

 

「みゅ! みゅ!」

 

 仕方がなく、そう仕方なく──お腹に顔を埋められ、短い手足を一生懸命にバタつかせてあんまりにも嫌がっている様子のマスターに助け舟を出すべく、立香とマシュから私のマスターを取り上げる。

 その際、酷く残念な顔をしていたが、仕方があるまい? 

 

 これは私のマスターなのだから。

 

「……はぁ、ほらもう良いだろう。我のマスターを返せ──本当にふわふわしてる……」

 

 マスターを抱き上げた瞬間、私の知らない感触が私を襲った。

 これは、なるほど……あの二人が気に入るのも分かる。

 

「みゅ!? うむむぅ!!」

 

 身体を弄られているマスターが抗議の声を上げるが、そんなものは聞こえんとばかりに無視してその毛並みを堪能する。

 非常に柔らかく手触りも良い。

 

 だが、何よりも私が気に入ったのは──

 

「……ふ、ふふ。マスターの命が我が手の中にあると思うと今までに感じたことがないほどにいい気分だ。生かすも殺すも正に我次第、といったところだろう?」

 

「……みゅ!」

 

 マスターの命が私の手の中にあるという事実だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「む、むむむ……本当に酷い目にあった。エーちゃんもマシュも立香もサーヴァントの皆もか弱い■■(パワー)の体を無遠慮にまさぐってくるなんて……」

 

「あ、あはは……本当にごめんね、触り心地が良かったからつい」

 

 明らかにがっくりと項垂れている姿のマスターにマシュや立香、その他サーヴァント達が謝りに行っていた。

 ……まあ、自分の体をあれこれ触られるのは嫌だろうな。

 

 私? 当然謝らん。

 

『本当にずるいぞぅ! 僕だってちょっと触ってみたかった──』

 

「ロマンー?」

 

『ハハハ! いやいや本当に女の子の体をベタベタ触るだなんて許し難いね! いや本当にね!』

 

『でも実際、なんであんな姿になったんだい? 私としてはとっても気になるんだけど』

 

 ダヴィンチが言った言葉は確かに我としても気になる。

 人であるマスターがわざわざ別の生物の姿を模倣する必要があったのか? 

 

「んー、魔術王との戦いでちょっと力を使いすぎたから? 少しでも失ったものを早く取り戻すためにあの姿になったってのが本当のところ。所謂■■(パワー)の省エネモードって奴。体が小さい分消費するエネルギー量も少ないから色々と立て直しやすい」

 

『なるほど……。でも、それって変身してるようなものだから逆に疲れそうな気もするんだけど?』

 

「んと、さっきも言ったけどあの状態は省エネ──生物で言うところの休眠状態に近い形態だから変身に使うエネルギーより回復するエネルギーの方が大きい。今の人間状態に比べてもね?」

 

 何も術をかけていない状態の今よりあの状態の時の方が効率がいい? 

 ふむ、確かにマスターの言う通り体が小さければその分だけエネルギー消費量は相対的には少なくなる。

 だが、心臓への負担は大きくなる。

 

 身体のでかいものはその分だけ心拍数は下がり、体の小さいものはその分だけ心拍数は上がる。

 故にエネルギー効率は良くともその分だけ身体に負担はかかる。

 ……いや、マスターは休眠状態に近いと言っていたか。

 

 ならば、体にかかる負荷は極限まで下がっている──と考えていいのか? 

 ……またあの姿になった時はマスターに悟られぬように心臓の音を聞いてみるか。

 

『なるほどなるほど……ねえ、■■(パワー)ちゃん──』

 

「いや」

 

『まだ何も──』

 

「や」

 

『くぅ──! 本当に残念だ!』

 

「そんなことより早く行こー。いよいよ最終決戦だからね!」

 

 マスターには長く生きてもらわなければならないからな。

 

 

 

第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット

 

「まったく、何奴も此奴も気色の悪い……。我がマスターを見れば頭を抱えて苦しみ出すわ、譫言のように何かを呟いているわでここまで酷いとは思わなかったぞ。仮にも騎士と名高い円卓の騎士であろう?」

 

 もううんざりだ、何奴も此奴も私のマスターを見れば気色が悪いくらいに執着して。

 お陰様で砂漠越えも初代ハサンが住まう幽谷の谷に行くにしても何処にでも現れては邪魔をしてくる。

 

 何よりも嫌なのは私のマスターを通して別の誰かを見ているということだ。

 

「むー……でも、実際どうしたんだろうね?」

 

「……マスターには心当たりはないのか」

 

 あそこまで執着されるとなると何かしらマスターとの関係性があると見るのが妥当だ。

 

■■(パワー)? んー、■■(パワー)にはないかな! だって■■(パワー)は初めて会うし……」

 

「──嘘ではない、か」

 

 しかし、マスター自身は会ったことはない。

 初めて出会うという。

 それが嘘をついてるようには見えず、本心から言っているようにも見える。

 

「むむっ、エーちゃん酷い。■■(パワー)は割と正直者だよ」

 

「ふっ……割と、か?」

 

「なぁに?」

 

 割と、割とね。

 そうだろうな、お前は嘘を言ってないし、正直者ではある。

 だが、本当のことも言ってない。

 そうだろう? 私のマスター。

 

 私がどれだけお前と共に過ごしてきたと思っている。

 

「……いいや、何でもない。ほら、この特異点での最後の戦いだ。お前の顔の力で厄介な敵であるはずの円卓の騎士はあっさり無力化出来たからな。体力魔力共に万全だ。さっさと叩き潰してカルデアに帰ろう。砂と埃だらけでシャワーを浴びたい」

 

 だが、いいさ。

 お前がどれほど私に隠し事をしていようと、最後にはお前の全てを私が暴くのだから。

 

■■(パワー)の顔の力って……むー、言い方に悪意を感じる」

 

「ククッ、なに、褒めているとも。事実お前のお陰で楽になったからな。ガヴェインも立香達が抑えているし、我等を阻む者は誰一人として存在しない。早々にケリをつけねばな」

 

「まあ、そうだね。早く行こっか」

 

 未練たらしく執着する騎士共も全て鏖殺する。

 例えマスターがお前達と関係があったのだとしても最早関係ない。

 お前達の手からマスターはすり抜けている。

 

 お前達の願いは叶わない。

 

 だから、後は貴様だけだ。

 この特異点に来てからずっとずっと目を向けていた貴様だけ。

 

 なあ、女神ロンゴミニアド。

 

「来たか、カルデア──の、ます、たぁ……?」

 

 ……ああ、ほら見ろ此奴もだ。

 感情が抜け落ちたような顔から考えられないほど、私のマスターを見て動揺している。

 他ならぬ目で追っていたというのに直視し、対面したことでもう逃れられなくなってしまった。

 

 ──その瞳に執着の色が濃く現れ始めている。

 

「ほら見ろ此奴もお前の顔を見て怯んでいるぞ」

 

「言い方ァ! ■■(パワー)そんなに酷い顔してるかな!?」

 

「……ははっ、まあ、我は好ましく思うぞ」

 

「む、むむっ、むむむっー!」

 

 むすっ、と頬を膨らませて怒るマスター。

 それを見た獅子王は更に強く苦しみ始めていた。

 

「あっ、ぐぅっ、頭が……ッ!」

 

 割れるような痛みが襲ってきているのだろう。

 脳が炸裂したかのような痛みがあるのだろう。

 制御出来ないほどの暴れ狂う感情に心と体が乱されているのだ。

 

 それはこの特異点で現れた全ての円卓の騎士がそうであったからな。

 

「……本当に凄いなお前の顔。仮にも女神の精神に大ダメージを与えてるぞ」

 

「帰ったら覚えとけよぅ……」

 

「は、違う、違う違う違う違う! わた、私は知らない! 私は、私にはっ! そんな騎士はっ!」

 

 マスターが喋れば喋るほどに。

 マスターが表情を変えれば変える程に。

 獅子王は常の平静が崩れ取り乱している。

 

 顔を両手で覆い隠し、それでも溢れた涙が手のひらからこぼれ落ちていく。

 なあ、お前は何を知っていて、何を思い出している? 

 

「……ここまで来るといっそ哀れだな。早々に殺してやるのが慈悲か?」

 

「ん、そうだね。早く寝かせてあげよ」

 

「グゥゥゥ──ッ! やめろっ! やめろやめろォッ!」

 

 今も両の眼から涙を零しながら耐え難い記憶の濁流に襲われていてもなお、その痛みを振り切りその手に持つ()()()()()を構え、我に憎悪と嫉妬の籠った目を向けてくる。

 

「その声で! その顔で! その姿で! 私の前に立つなァッ! 私から……私の大切なモノを奪うなァッ!」

 

 ……は、良い顔をするようになったじゃないか。

 前の時よりも今の方が余っ程良い。

 

「ほお、振り切ったか。そのままでいれば楽に死ねたものを。……来るがいい、女神ロンゴミニアド」

 

 マスターに向ける執着の感情。

 それはこれまで出会った来たサーヴァント達よりもあまりにも強く、重い感情だ。

 大切だったのだろう、愛おしかったのだろう。

 

 だが、もうお前の手の中にはマスターはいない。

 マスターはお前の手の中からすり抜けて私の手の中にいるのだ。

 

「神を裁く現象としてお前も裁いてやる」

 

 たとえ昔、マスターがお前のモノだったのだとしても。

 

「お前の願いを否定してやる」

 

 もうマスターはお前のモノではない。

 

「マスターは私だけのモノだ」

 

 

 

第七特異点 絶対魔獣戦線 バビロニア

 

 

 

 夜がふけ、朝へ向かう束の間の時間。

 私とマスターはウルクと冥界を繋ぐ大穴の前に立っていた。

 大穴の中からは災害を想起する破壊音とそれに抗う立香達の声が聞こえた。

 マスターの読みが正しければティアマトは全てを押しのけて冥界から這い出してくる。

 

 冥界からティアマトが再度這い上がってくればそれこそ正真正銘本当の終わりだ。

 私の性能自体、ティアマトに負けるとは思わないが、どうしても出力差というものがある。

 

 故にこそ我等はあの激闘に参加をせず、唯ひたすらここで待っていた。

 全てはティアマトをもう一度冥界の底に叩き落とすために。

 

 そしてこれは待っている間のほんの些細な時間のことだ。

 

「なあ、マスター」

 

「なぁにエーちゃん」

 

 ウルクと冥界を繋ぐ大穴の淵に座っているマスターに話しかけるとマスターはいつものように私に笑顔を向けてきた。

 

「……お前は、この人理修復の旅が終わればどうするつもりだ?」

 

 気になっていた。

 旅が終わりに近付くにつれて、否が応にも旅の終わりの先を考えさせられた。

 普通に考えれば旅が終われば私は消え去るだろう。

 元より人理修復の為に召喚されたのだ。

 故に人理修復を果たせば私が消えるのは道理だ。

 

 ……なら、私が消えた後のマスターはどうなるのだろうか。

 

「もう魔術王に勝つつもりでいるのー?」

 

「勝てるだろう、私とマスターがいれば。それにマシュや立香、彼奴らに、お前に付き従うサーヴァント達もいる。なら負けることなどないだろう」

 

 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべるマスターに何を当たり前のことを聞いているのだろうかと思いながらもそう答える。

 私がいて、お前がいて、彼奴らもいる。

 なら負けることなどあるわけがない。

 

 それに──

 

「お前はもう勝つ算段がついているんだろう?」

 

「……んひ、内緒」

 

 ほお、内緒か。

 ここまで健気に付き従ってきた私に対して内緒というのか。

 ふぅん? 

 

「……」

 

「そんなに見つめてきても内緒なのは内緒だよー」

 

 んべっ、と舌を出しながら私の圧に負けて顔を逸らす。

 ……駄目か、こうなるとマスターは絶対に言わん。

 それは今まで過ごして来てよく分かっている。

 

「はあ、分かった分かった。……それで、お前はどうするつもりなんだ?」

 

 だがまあ、どう勝つつもりなのかなどは正直どうでもいい。

 問題はその後のこと。

 マスターは全てが終わったあと、どうするつもりなのかということだけだ。

 

 どんな答えが返ってくるのかと思いながらマスターの顔を見た。

 

 その時のマスターの顔はとても言い表せるものでは無かった。

 ただ一つ言うのなら昔の私に似ていたような、とても遠い所を見るような顔だった。

 

「──そう、だねぇ。どうしよっか」

 

「……? 何も考えてないのか」

 

 返ってきたのは予想だにしない答えだった。

 マスターのことだからてっきり世界中を旅するだとか美味しいものを食べ歩くとかそんな俗な願いをするものだとばかり思っていた。

 

「うん、考えてなかったし……考えたこともなかったなぁ」

 

「勝つ算段も付けているのに、か?」

 

「うへ、勝つ事だけを考えてたからねぇ。その後のことなんてなーんにも考えたことなかったや」

 

「……そうか」

 

 マスターも……何も考えていなかったのか。

 

「エーちゃんは?」

 

「私?」

 

「うん、エーちゃんはこの旅が終わったらどうしたいの?」

 

「……私、は──」

 

 ……何がしたいのだろうか。

 前は自由になれれば人理がどうなろうがどうでもいいと思っていた。

 でも今は人理修復が終わって消滅するのは──本当に嫌だがそれでもまあ、仕方がないと納得出来るかもしれなくなった。

 

 でも、もしも、もしも──私に終わりの先が許されるというのなら……。

 

「私はサーヴァントだからな。お前が行くところが私の行くところになるだろう」

 

 そう言うとマスターは驚いた様に目を丸くした。

 

「──■■(パワー)と? んふふ、意外。エーちゃんの事だから受肉して自由になるって言うのかと思ってた」

 

「……考えつかなかったな。そうか、受肉……聖杯が幾つもあるのだから私でも受肉出来るかもしれんのか。ふふっ……いい事を聞いた」

 

 受肉、受肉か。

 今まで考えもしなかったが、それもいいな。

 受肉をすれば私は本当の自由を得られる。

 マスターに縛られることもないし、自由に空を飛んで自由に行きたい場所に行ける。

 

 ……私がマスターを連れて世界中を自由に旅することができる。

 私もマスターと一緒に美味しいものを食べて生きていくことが出来る。

 

「うわーっ!? エーちゃんが悪い顔してるー! やっぱり今のなし! 聞かなかったことにして!」

 

「はは、今願ったな?」

 

「願ってない!」

 

「いいや、願ったとも。ならばお前の願いは叶わない。私は絶対に覚えておくからな」

 

 ああ、そうだ忘れるものか。

 私は私の叶えたいと思った願いを漸く見つけられたのだ。

 その願いの為にはお前が必要不可欠なのだ。

 

「む、むむ……口は災いの元とはこういうこと……!」

 

 その小さい両手で口を塞ぐ真似をするマスターを見て思わず破顔する。

 

「ふ、ふふふ……! 良し、この旅が終わった後の楽しみができた。これからも私に付き合ってもらうぞマスター」

 

「……やーだよっ! そうなる前に■■(パワー)は逃げるもんねーっ!」

 

 なあ、マスター私がお前を逃がすわけがないだろう? 

 何故ならばお前はもう私の手の中にいるんだから。

 

「願ったか?」

 

「願ってない!」

 

 軽口をぶつけ合う今の時間がずっと続けばいいのにと柄にもなくそう思ってしまった。

 

「まったくもう……ほら、早く行こエーちゃん! そろそろティアマトが冥界から這い出してくる頃合いだから宝具で叩き落とすよ! そうすれば後は王様の宝具でドカーンしたら■■(パワー)達の勝ちだ!」

 

「ああ、行こうかマスター」

 

 きっとお前となら私は何処までも飛んで行けるから。

 

 

 

終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン

 

『やはり、この座に到達したかカルデアのマスター。そして我が計画における最大の──』

 

『──特異点(イレギュラー)

 

『私はずっとお前のことを見ていた』

 

『誰よりも未来のないお前がみっともなく足掻く様を』

 

『最初から果てに存在するお前が人類の為に無様に足掻く様を』

 

『現象そのものにすら縋り付き、あらゆる障害を突破する愚かな貴様の姿を見ていたとも』

 

『お前達ならばここに到達すると私は確信していた』

 

『だからこそ、お前達の旅はここで終わる。お前達という存在の死を以て人理焼却は完了する。我等の悲願はここに成就する』

 

『最早お前達は私に敵わない。足掻く事を諦め、ただただ終わりを受け入れろ』

 

「ふ、ふふ……■■(パワー)に終わりを受け入れろ、だなんて面白いこと言うね」

 

 息も絶え絶えの様子でマスターはそう言うが、誰がどう見ても強がりでしかない。

 

『……何がおかしい。お前が信頼していたサーヴァントは最早何も為せぬ。お前が信頼していたもう一人のマスターとそのサーヴァントは立つことすら出来ん。私の脅威足りうるのは特異点たるお前だけだ。だがもうそれも終わりだ』

 

『私はお前達の旅路を見て常に解析をし続けた。如何に現象たる竜を従えようとも時間さえあれば我等は如何様にも対応出来た。だからお前の最も信頼するサーヴァントはそこで膝を突いているのだ。だからお前が守りたかったカルデアのマスターと盾の娘はそこで倒れ伏している』

 

『全ては私の演算通りだ。故にお前はここで終わる』

 

 ああ、全く以てその通りだった。

 魔神王を称するこの獣は私達に対して徹底的にメタを張り続けていた。

 どれだけ私が力を振るおうとも、どれだけマシュが力の限り戦おうとも彼奴はそれを見越してきていた。

 常に私達が不利になるように立ち回り、機械の如き冷徹さを以て私達の弱点を突き続けた。

 

 勝てなかった、届かなかった。

 

 あれほど豪語しておきながら私は負けた。

 

「……」

 

『諦めよ、お前の旅路の終着点はここだ』

 

「──ふ、ふふふ、ハハハハハ!!!」

 

 サーヴァントは皆倒れ、座から駆け付けたサーヴァント達とて此方に加勢に来ようとも魔神柱が邪魔をしてたどり着けない。

 絶望的な状況だというのにマスターは高らかに笑っていた。

 傷だらけの体で立ち上がり、魔神王と正面から向き合った。

 

『何故笑っていられる? それとも気でも狂ったのか?』

 

 それは当然の疑惑だ。

 こんな状況でマスターだけで何が出来るというのか。

 けれども、マスターの瞳にはまったく諦めの光はなくて──

 

「ねえ、■■■■■。あなたは最初から見誤ってたんだ。本当に見るべきものを軽んじてたんだよ」

 

『……何だと?』

 

「君と初めて会ったあの時、■■(パワー)は力を見せた。だから君は■■(パワー)を最も警戒した。それは正しいよ、もしも君が■■(パワー)を警戒していなかったらその時点で君の負けは必定だった。でもさ──」

 

 ガコンッ、と歯車が回る音が聞こえる。

 マスターが零した足元の血が姿を変えて赤い魔法陣を描いた。

 

「──別に■■(パワー)は全部の力を見せた訳じゃないんだよねぇ!」

 

 魔法陣が輝き、空間が軋みを上げ始めた。

 ……何だ、これは。

 

『……っ! 何が出来る! 特異点とは言え、たった一人の貴様が私に対して何が出来るという!』

 

 魔神王も同じ想いなのだろう。

 言葉では強がっているが、明らかに異質な魔法陣の存在に混乱している。

 知らない、分からない、見たことがない。

 

「うん、だから見せてあげる。■■(パワー)の罪を、私達の罪過を」

 

『いいだろう! そこまで言うのならここでお前の秘策ごと打ち破りその希望諸共お前を打ち砕いてやる!』

 

 そう宣言するマスターに何故か私は焦りを覚えた。

 このままでは駄目だと、取り返しがつかなくなるぞと私の何かが叫んでいた。

 

「マスター……ッ!」

 

「エーちゃん」

 

「まだ、まだ私は戦えるッ! お前と一緒ならどこまでだって──」

 

 そうだ、私はお前のサーヴァントなのだ。

 霊核だって砕かれていない、魔力だってまだある! 

 だから、だからぁ……! 

 

「今までありがとね」

 

「───」

 

 その言葉に私は時が止まったように体が固まった。

 

■■(パワー)は嬉しかったよ。エーちゃんと過ごせて。きっと、エーちゃんにとっても■■(パワー)にとっても瞬きをする時間にも及ばないくらい短い時間だったのかもしれないけれど、それでも楽しかった……嬉しかったんだ」

 

「何を、何を言っている……?」

 

 その先を言わせてはいけない。

 

「いつか言ったよね。■■(パワー)はそれが必要ならやらないといけないって。それが今なの」

 

「まて、まってくれマスター」

 

 それを口にさせたら──! 

 

「だってそれが──■■(パワー)の生まれた意味だから。■■(パワー)はこの時の為だけに生きてきたんだから」

 

 声が、出なかった。

 体が動かなかった。

 それがマスターの生まれた意味? 

 それがマスターが生きてきた意味? 

 

 そんな、そんなのまるで私と一緒じゃないか。

 

 悲鳴すら取り上げられた喉が声を出そうとしても、掠れた音すら出てこない。

 ただまるで酸素を失った魚のようにパクパクと口を動かすことしか出来なかった。

 

「立香、マシュ……大好き」

 

 マスターはそう言って倒れていた二人を抱き起こしてぎゅっ、と力いっぱいに抱き締めていた。

 

「そしてごめんね、■■(パワー)は今から立香達に呪いを残す。これから先はいっぱい辛いことがあるかもしれない。けれど、それでもどうか──■■(パワー)の分まで生きてね」

 

「待ってください、そんなまるで遺言のような……」

 

「きっと他に方法があるはずだ! だからそんな事言わないでくれよ!」

 

「……んひ、ごめんね?」

 

「謝るくらいなら……!」

 

 いつの間にか抱き締めていたはずのマスターが二人の傍から離れていた。

 二人はそんなマスターに向けて手を伸ばすけれど、その手がマスターに届くことはなかった。

 指先すらも届かず、二人の手は空を切った。

 

「そしてフォウ──ううん、キャスパ。マシュのことお願いね」

 

「フォーウ……」

 

「うん、ありがと。やっぱりキャスパはいい子だね」

 

「キュ」

 

 マスターはフォウの頭を一撫ですると、ゆっくりと正面へ──魔神王へと振り返った。

 

『……遺言は済んだか』

 

「うん、待っててくれてありがと。お礼に──■■(パワー)の本当の力、見せてあげる」

 

 ──起源融解。

 

 ──■■招来。

 

『これは……っ! なるほど、お前はそういう──!』

 

 拡がり続ける魔法陣。

 この空間すら侵食を始め、至る所に亀裂が生じる。

 マスターを中心に何もかもが壊れていく。

 

「節制解除──()()()()()()

 

 そしてそれはマスターですら例外ではなかった。

 膨れ上がった膨大な魔力が彼女の体を蹂躙し、壊していく。

 それでもその痛苦に顔を歪めることはなく──

 

『良かろう! ならば私もお前に敬意を表して最大にして最強の一撃を以てお前を終わらせてやる!』

 

「――虚ろに描けよ、我等の終末を。我等は罪過を背負うもの」

 

 この人理修復の中で初めてマスターは魔術師らしく詠唱を唱えた。

 

『ではお見せしよう。貴様らの旅の終わり。この星をやり直す人類史の終焉。我が大業成就の瞬間を!! 第三宝具、展開──』

 

「我は力を司るもの。あらゆる障害を砕き、あらゆる命を壊すもの。壊せ、壊せ、壊せ──それこそが我が罪過なのだから」

 

 ──唄うように、嘆くように。

 

『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの──さぁ、芥のように燃え尽きよ!』

 

「創世と破壊は繰り返され、全ては虚ろへと帰結する」

 

 ──怖気の走る力がマスターというの器の全てを満たす。

 

 

 

誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)

 

 

終幕──■■■■■■■■■

 

 全てを灰燼に帰す人類終了を告げる光の帯がたった一人に向けて放たれ、そしてそれに対してマスターは赤熱化した拳を振るった。

 

 そして──■■の拳が極大の熱線に触れた瞬間、熱線に罅が入った。

 触れた箇所から罅が一気に熱線へと拡がり、砕かれ光の粉となって消えていく。

 純粋な物理威力によって砕かれたのでなく、寧ろこれは概念的に破壊されたような──

 

『……ッ! 馬鹿な! ありえん! 人類史全てを熱量に変換した一撃だぞ! それを、それをたった一振りで砕くだと!?』

 

 魔神王の顔が驚愕に染まる。

 それはそうだろう、人類史全ての熱量がたった一人によって砕かれたのだから。

 

 けれどその代償はあまりにも重く……。

 

 魔神王の宝具を防いだ反動でマスターの左腕はガラスのように変質し、砕け散っていた。

 否、それだけじゃない。

 砕けた左腕の先から徐々に徐々に体が崩れ落ちて行っている。

 

 だというのに、マスターは嬉しそうに笑っていて──

 

「立香──■■(パワー)が全部の障害を薙ぎ払ってあげる。■■(パワー)が君達の道を切り開いてあげる」

 

『──ッ! いや、まだだ! まだ終わらん! 一度で駄目ならもう一発──!』

 

■■(パワー)を前に撃てると思う?」

 

 音もなく超加速するマスターに魔神王は目を見開き、咄嗟に数多の魔神柱を肉盾にすることで攻撃を防いだ……はずだった。

 

『速い──ぐあァッ!』

 

「無駄だよ、どれだけ魔神柱を重ねてももう■■(パワー)には届かない。■■(パワー)にはそれはもう意味をなさない」

 

 幾多にも重なった魔神柱を蹴り砕き、魔神王の腹に強烈な一撃を叩き込んだ。

 衝撃が魔神王の体内で炸裂し、その威力に周囲の空間がヒビ割れ、大気が鳴動する。

 反動でマスターの足が砕け散った。

 

 壊れていく、消えていく。

 私の大切なマスターが。

 

『ありえん、ありえんありえんありえんッ! こんな所で終われるものか! 我が悲願が、こんな所で潰えるというのか! 何処で間違えた! 一体どこで──!』

 

「ふふ、エーちゃんの前で願ったのが間違いだったんじゃない?」

 

『……だが、まだ私の優位性は──!』

 

「そうだね、それでもまだ君の優位性は揺らがない。何故ならばネガ・サモンと七十二の数字の魔術があるから。だからそれ──」

 

 残った最後の拳を強く握り締める。

 

「壊すね?」

 

『ガッ、グゥアアアアアッッ!? 馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な──これすらも砕けるというのか……!』

 

 音すら置き去りにして放たれた拳は確かに魔神王の顔の芯を捉えて、彼の全身にヒビが入る。

 その衝撃にマスターと魔神王は互いに大きく吹き飛び地面に激突する。

 

「んふ、■■(パワー)の勝ち!」

 

 そう言ってガラス化して砕け始めていく右手を掲げて、マスターは悪戯気に笑った。

 そんなマスターの元へと私は這うように体を引き摺って近寄ってもう半分しか残っていないマスターの体を抱き上げた。

 

「マスター、もう体が……」

 

 ただでさえ軽かったマスターの体がもう、重ささえ感じ取れないくらいに軽くなっていた。

 あ、あぁ……どうすればいい……? 

 どうすればマスターを助けられる? 

 

「エーちゃん」

 

 その優しい声に私はマスターがこれから何を言おうとするのか理解してしまった。

 

「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 嫌だよ、■■(パワー)! 私はお前がいたから、お前が一緒に生きてくれたから……!」

 

 そうだ、私は■■(パワー)がいたら良かったんだ。

 一緒に生きていたいと初めて願えたんだ。

 

「エーちゃん」

 

「そうだ、私の霊基を使えば! 私の全てを魔力に変えれば──」

 

「エーちゃん」

 

「嫌だ! 聞きたくない!」

 

「エーちゃん」

 

■■(パワー)……嫌だ、私を置いていかないで。私をひとりにしないで。わたしといっしょにいきてくれ──」

 

 そう言葉にして、全身から血の気が引いた。

 私は今、なんと言った? 

 私は今、なんと願った? 

 

「あ、ち、違っ、違うんだ■■(パワー)。わた、わたし、そんなつもりじゃ……ねがったつもりじゃ……」

 

 反願望機たる私が願えば、それはもう二度と叶わない。

 だから、もうマスターは……。

 喉が渇く、視界が回る、私の世界が壊れていく。

 

 前が見えなくなるほどの大粒の涙が零れ、大切な■■(パワー)の顔を濡らしていく。

 大切な■■(パワー)の死が決定付けられてしまった。

 

「エーちゃん、ありがとう」

 

 だというのに■■(パワー)は微笑んでいて、元は柔らかかったはずの硬い手で私の涙を、私が怪我をしないように拭った。

 

「う、あ……ます、たぁ……?」

 

■■(パワー)はね、最初からここで終わるつもりだったの。だからエーちゃんが願ったとしても変わらなかったの」

 

「やだ……」

 

 嘘だ、最初から死ぬつもりだったなんて嘘だ。

 だって約束したじゃないか。

 

「エーちゃんにはいっぱい迷惑をかけたし、いっぱい頼ったよね。だからね? これは■■(パワー)が最期にエーちゃんに贈るお礼」

 

「さいごなんていわないで」

 

 人理修復が終わったら私に付き合ってもらうって約束したじゃないか。

 それを破るつもりなのか、■■(パワー)

 

「はい、これどーぞ」

 

「せいはい……?」

 

 ■■(パワー)が懐から取り出したのは大量の魔力が込められた聖杯だった。

 

「んひ、■■(パワー)実はとっても悪い子なのでカルデアから掠めてきちゃった。……それには■■(パワー)の魔力をずっと込めてきたから、エーちゃんの願い一個くらいは叶えられるよ」

 

「……でも」

 

 私にはそれは使えない。

 

「そうだね、エーちゃんには厄介なソレがあるもんね。だからそれも■■(パワー)が一部だけ持って行ってあげる。──水瓶を満たせ

 

 私の呪いとも言えるソレが■■(パワー)に流れ込んでいく。

 

「……全部持っていけたら良かったんだけどね」

 

 直感的に理解する。

 ■■(パワー)が持っていったことで私はもう、何かを願うことが出来る。

 きっと他の者とは比較にならぬほど苦労するだろうけど、真っ当に願って、真っ当に願いを叶えられるのだと。

 

「あ……まって、■■(パワー)

 

 そうだ、ならこの聖杯に■■(パワー)が生きるように願えばきっと、生きられるはずだ! 

 ■■(パワー)が死なずに済むんだ! 

 

 だから、だから──! 

 

「そしてこれが■■(パワー)がエーちゃんに贈れる最後の贈り物」

 

『テュフォン・エフェメロスに令呪を以て命ずる──』

 

 砕けた手に残った最後の令呪が輝く。

 それはまるで■■(パワー)の命の最期の輝きのようで……。

 

「おいていかないで!」

 

『自由に生きて』

 

 咄嗟にその手を掴もうとして、■■(パワー)の体は粉々に砕け散ってしまった。

 大切な■■(パワー)とのパスが消えてしまった。

 愛しい■■(パワー)との繋がりが消えてしまった。

 

「───」

 

『……死んだか。私も見誤っていたということか。特異点たる■■(パワー)という存在の力を。だが、それでも私はここに生きて存在している。ネガ・サモンを失い、七十二の数字の魔術を壊されようともあくまでそれは一時的なもの。お前達を殺し、修復に専念すればこの傷も癒えよう。お前達もあの者の後を追うといい』

 

 誰かが何かを喋っている。

 うるさい、うるさい……! 

 

「黙れ、もう喋るな」

 

 砕けて結晶のように小さくなった■■(パワー)の欠片を掻き集めてグッと自分の霊核へと押し込んだ。

 ああ、そうだ──■■(パワー)

 

 私達はずっと一緒だ。

 

『──!』

 

「霊殻変移──テュフォン」

 

 肉体が溶けていく。

 大切な■■(パワー)の欠片を一つ足りとも置いていかないように私達は混ざり合う。

 

 私は何があろうともお前だけは置いていかない。

 

「お前の願いは叶わない──否、叶わせない」

 

 だけどその前に──

 

「無常の中で死んでいけ」

 

 ──魔神王、お前の何もかもを否定して壊してやる。

 

 

 

 

 

 

 >……再生終了。

 >……お疲れ様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぷちッ!うぅー、風邪?」

 

「いやぁ、僕達に風邪の概念はないんじゃないかな?」

 

「それもそっか……。死神(デス)は今から?」

 

「はいはいそうですよ〜?(パワー)ちゃんが頑張って特異点に仕込んでくれたのでね!今からまた調整のお仕事です!」

 

「ん、がんばー。また過労死しないでね?」

 

「はっはっは、しないように気をつけ──ぐっふぇ……!」

 

「あ、死んじゃった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……エーちゃん」

 





この後、エーちゃんとボロボロの立香くん達が意地でもゲの字を撃破しましたの。
結局の所、ゲの字が本当に警戒するべきはパワーちゃんではなく立香くん達でしたの。
立香くん達がぶっ殺された時点でパワーちゃん的には終了でしたので。
ちなみにパワーちゃんが遺した聖杯を取り込んでテュフォン・エフェメロスとして再臨を果たしたエーちゃんはゲの字を撃破した後、何処かに飛んでいきましたの。
一体どこに飛び去ったんですかね?

テュフォンが癖にぶっ刺さりまくりましてよ!
あと純粋にレズちゃんことパワーちゃんとクソほど相性がよろしいので相棒ポジに抜擢しました。
エフェメロスは食われる為に作られた存在で、パワーちゃんは死ぬ為に作られた存在ですので……うーん、相性ばっちり(外道)

テュフォンはエミュがとても難しくてこれで正しいのかと不安になりながらも書いてましたの。
おかげで本来なら1万字程度で収めるつもりが倍の2万とちょっとを超えてしまいましたわ……。
とは言え、エミュがまだまだ甘いところもあるので感想お願いしますわ!
他の方からのデュフォン像を学んでテュフォンエミュを高めたいので!

それはそれとしてマスターと仲を深めて最後の最後にマスターに生きて欲しいという願いを思わず口に出してしまった結果、どうやってもマスターの死が確定してしまって絶望するテュフォンちゃんはお可愛いことではありませんこと!?(闇のお嬢様)

あ、そうそう書くにしても過去パートはこんな感じになりますの。
頻度としては章が終わる事に一話と考えてますわ。
というわけで以上を踏まえて改めてアンケですの!
協力お願いしますわ〜!


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オケアノス編
嵐の前夜



生存報告ぅ!



 

 金リンゴを見つけてキレ散らかしてから始まる人理修復RTAはーじまーるよー。

 

 前回サーヴァントや職員、立香ちゃん達と仲を深めつつ、礼装作成などやることが多すぎる下準備をしている最中にようやく金リンゴがなる木を発見することが出来ました。

 

 あった場所はカルデアのとある区画の一室でした。

 カルデアを隅々まで探索したのに見落としでタイムロスじゃん、再走して? と言われそうですが、あった場所があった場所でした。

 

 金リンゴがあった場所はランダム部屋でした。

 うーん、お排泄物ですわね。

 

 ランダム部屋とはカルデア全域にポップするかつ、生成タイミングが完全ランダムです。

 一度発見出来れば後はずっと固定されるのですが、見つけるまで基本運です。

 

 ランダム部屋生成になることは確率としては低い方の筈なんですが、屑運引きましたね……。

 なぜ本走で運ゲーに尽く敗北しているのか、コレガワカラナイ。

 

 獣は引き当てるし、根源接続者は普通にいるし……何だこのRTA!? 

 

 オルタコンビがただの癒し枠になってるのこれもうただのギャグでは? ボブは訝しんだ。

 普通だったら扱いにくい枠に入るはずなんだけどなぁ……。

 他がヤバすぎるせいで相対的に危険度が下がってるの正直草です。

 

 >あなたはふと自分の体が重いことに気がついた。

 >動けない、というわけでもないが、いつもに比べて体が動かしにくい。

 

 おっと、ホモくんの起床イベが発生してますね。

 さては誰か布団に潜り込んできましたかね? 

 泣きました、私は走者でホモです。

 

 うーん、まあ、確率で考えるなら立香ちゃんですかね。

 ここの所ストレス値が乱高下してるので安定させる為にもそこそこの頻度で添い寝を行っています。

 でも、結構な頻度でやってるから現状で取れるイベスチルは大体回収してると思うんですけどね。

 

 まだあるにはありますけど、条件達成してないし……。

 まま、このまま考え続けても仕方ないのでそれじゃあ答え合わせといきましょう。

 

 キアラだけはやめてくださいっ! (5敗)

 

 >眠りから目が覚めたあなたはゆっくりと瞼を開けると視界を埋め尽くすほどの赤が存在した。

 

「ああ、なんだ。もう起きたのか」

 

 >あなたの胸の上に体を押し付けるように横たわっていたのはドラコーであった。

 

 何故うちのサーヴァントはホモくんとゼロ距離で見つめ合うのが好きなのか。

 過去の試走の時とかもそうですけど、何故サーヴァントの皆はこのアホみたいな距離感してるんですかね。

 

 特に竜系のサーヴァントの距離感はバグの域でヤバいです。

 

 メリュ子にいぶきんはまあ、酷い。

 メリュ子は言うに及ばず、いぶきんに関しては蛇の執着の強さも含まれてるせいで召喚してからずっと引っ付いてくる辺り相当でしたね。

 当時のホモくんが好みどんぴしゃじゃったか……。

 次点でわえちゃんですかね。

 

 わえちゃんは……よく分からん! 

 あれもう厄介ファンの域だろって突っ込みたくなるくらいには混沌としてますね。

 試練と称して厄介事をぶつけてくる事自体はいいんですよ。

 わえちゃんの試練ってクリアしたら成長ボーナスかかって強くなりやすいですし。

 

 ただあの子もあの子で時たま過保護な時があったけど、あったんだけど──敵にもマスターであるホモくんにもキレ散らかしてたからなぁ。

 いや結局わえちゃんが全部ぶっ殺して解決しましたけど。

 

「救いがない! 報われない! わえそういうの嫌いじゃ!」

 

 とか何とか言って、本当に珍しくホモくんを保護しようと動いていましたからね。

 でも定期的に達するわえちゃんは正直怖いよ。

 

 エーちゃんは竜種にしては距離感普通だったけど、後々バグり始めましたからね。

 まあ、クソ強いし扱い間違えなければほぼ勝ち確まで持っていける位強かったので使い倒して絆もすっごい上がりました。

 

 まあ、ホモくん──レズちゃんでゲの字相手に何処まで抗えるか、マシュとロマニの代わりになれるのかというテストも兼ねた特殊ビルドの試運転だったのでどれだけエーちゃんとの絆を上げてもリセするんですけどね。

 

 ちなみにレズちゃんの試運転は大成功でした。

 試した所、マシュの代わりにゲの字の宝具を防ぐことは出来ましたし、ロマニの代わりにゲの字の特性の一時破壊も可能だと知れたのはデカかったです。

 概念干渉系はやっぱつえーよ。

 でもトロフィー獲得は出来なかったので結局もう一度練り直す必要がありました。

 

 やっぱりスノードロップは鬼門ですね。

 獲得難易度がおかしいだろ。

 

 閑話休題。

 

 それでドラコーはどうしたんですかね? 

 

 >あなたは未だに胸の上に横たわっているドラコーに何か用か尋ねた。

 

「……チッ、余がこうしているのだからもう少し動揺すればいいものを。……まあいい、何、次の特異点には余を連れて行けという話に来ただけだ」

 

 あーなるほどなるほど、要はサーヴァント関連のランダムイベですね。

 これ、時折サーヴァント側から特異点に連れて行って欲しいという依頼が出るんですけど、それを受けると絆レベルの上昇に補正が掛かります。

 受けなくても問題ないことも多いですが、一部キャラなど絆レベルがダウンするので基本的には受けた方がうま味です。

 

 それでドラコーを連れていくかなんですけど……次の特異点がオケアノスだった場合は連れていきましょうか。

 絆レベルも上がりますし、何よりオケアノスだった場合は海フィールドですから。

 

 ドラコーとは相性がいい上にオケアノスでの主戦場となるのは海戦ですので。

 そらもうドラコーに津波を起こしてもらって船ごと沈めるのが手っ取り早いでしょう。

 

 厄災は海より来たるってねぇ? 

 

 その言葉の通りドラコーには大暴れしてもらいましょうか。

 ……というか、次の特異点は経験値的にあんまり美味しくないのでさっさと終わらせるに限るんですよね。

 旨みが大きい敵と言えばヘラクレスと魔神柱くらいですし。

 

 よってオケアノスの特異点だった場合はガチの布陣で轢殺します。

 具体的には獣候補全員引き連れて必要最低限のコミュだけこなして質と数の暴力で轢殺します。

 

 すまんな、イアソン。

 

 >あなたはドラコーの願いに次の特異点次第ではあるが、可能な限り連れていくように心掛けると返事をした。

 >そんなあなたにドラコーは満足したように鼻を鳴らしてあなたの体の上からゆっくりと名残惜しむように身体を引いた。

 

「ではな、約束を破るなよ」

 

 >ドラコーはその言葉を最後にあなたの部屋から出ていった。

 

 さてそれではホモくんも移動しましょう。

 昨日の時点で新しい特異点観測のフラグ自体は建てていたのでちゃちゃっと突撃しますわよ〜! 

 

 >あなたは身支度を済ませて部屋の外へ出た。

 >……となりの部屋から扉が開く音が聞こえた。

 

「……あ、望幸」

 

 >どうやら偶然にも立香と同じタイミングで部屋を出たようだ。

 

 お、立香ちゃん──ストレス値たっか!? 

 えっ、えっ!? なんで? 何でこんなに高いんですか? 

 

 昨日特異点観測フラグ立てたついでに立香ちゃんのストレス値も限界まで下げきって最高のコンディションにしたはずなのにたった一晩で全部台無しになってますけど?? 

 

 >よくよく立香の顔を見てみれば泣き腫らしたように目が腫れ、赤くなっていた。

 

 うーん、悪夢イベント……なのかなぁ? 

 でも発生しにくいように色々と対策してたんですけどね。

 もしかしてまた屑運引いてます? 

 

 と、とりあえず管制室にいくまでに立香ちゃんのケアをしてストレス値を落とせるところまで落としましょう。

 ついで原因解明の為にそれとなく探りを入れます。

 

 >あなたは立香の方へ向かうとどうかしたのかと尋ねた。

 

「あ、えっと……ううん、何でもない。なんでもないよ」

 

 >泣き腫らした目で気丈に振る舞う立香の姿はあまりにも痛々しい。

 >少し小突いてしまえば、きっと彼女を奮い立たせている心が一気に崩れてしまうだろう。

 >あなたはなんでもないと笑う立香の姿にそんなことを感じた。

 

 うひゃー、本当に限界ギリギリですよってご丁寧に教えてくれてますね。

 無理矢理聞き出す……のは色々とリスクが高いですし、変に拗れて地雷踏んだら目も当てられません。

 となると、まあ仕方ないのでこうします。

 

 >あなたは立香の顔に優しく手を添えるとそのまま彼女の額に自分の額を合わせた。

 

「あの、望幸……?」

 

 >立香、とあなたは彼女の名を呼ぶ。

 >言いたくないのなら詳しく聞かない。

 >けれど、どうしても耐えきれないと思ったのならどうか誰かを頼ってほしい。

 >俺じゃなくてもマシュでもドクターでもダヴィンチにでも……君のサーヴァントにでも。

 

「……うん」

 

 こういう地雷が面倒な時は他人に丸投げします。

 やはりこの手に限る(この手しか知りません)。

 でも出来る限りガス抜きはしますわよ! 

 変に高いまま他の人達にガス抜きさせて失敗して大爆発は目も当てられないので。

 

 具体的には魔術で精神抑制をして、気が触れないようにいらんものを削っていきます。

 本当に魔術って便利っすね(外道)。

 

 立香ちゃんの魔術耐性ざぁこざぁこ♡

 

 本当に雑魚過ぎて心配になってきますね……。

 ゲの字のタゲはホモくんに集中させるつもりですけど、邪視なんかのチャチな魔術じゃなくてガチの呪いかけてきたらあっさりお陀仏しそうなので多少は魔術耐性をつけさせましょうかね? 

 

 ま、そこら辺は追々として取り敢えずお手手繋ぎながらロマニのところに向かいましょう。

 

 >あなたは落ち着いた立香に今からロマニの所に行くから一緒に行くかと尋ねた。

 >あなたは頷いた立香の手を握るとロマニがいるであろう管制室へと一緒に向かった。

 

 フラグも結構立ちましたし、そろそろ次の特異点の情報が来てもいいはずです。

 順当に行けばオケアノスですが……イベント特異点が来てもおかしくはないです。

 

 トンチキイベだけはやめてくれよなー。

 

 >そして管制室へと到着し、中に入ると案の定と言うべきか、そこにはロマニとダヴィンチ、それに加えてマシュが何やら忙しそうに機材を弄っていた。

 >入ってきたあなた達にいち早く気がついたマシュ、それからロマニが疲れたような様子で声を掛けてきた。

 

「先輩! 望幸さん! おはようございます! 今日はよく眠れましたか?」

 

「やあ、二人とも。相変わらず仲が良さそうで何よりだ」

 

 うーん、カルデアの労働環境ってば本当にブラック。

 いや、ブラック超えて漆黒ですわね……。

 ちらっと見ただけでもわかりますけど、ロマニってばオーバーワークで過労死一歩手前まで行ってますね。

 

「おや、おやおやおや! 望幸くんに立香ちゃんじゃないか! ちょうど良かった、此方に来てくれないかい?」

 

 >ロマニの横から出てきたダヴィンチはあなた達の手を掴むととあるモニターの前へと誘導した。

 

「セプテムで戦った魔神柱……七十二柱の魔神を名乗る者について覚えているかい? その魔神柱について解析をしていたところなんだけれど……これ、見えるかい?」

 

 >映し出されたモニターに出力されていたのは現在ダヴィンチ達カルデアチームが解析を行ったであろうデータ群だった。

 

「七十二柱の魔神、そしてレフ・ライノールが言っていた王の寵愛……これらの事から私達は一つの推測を立てた。即ち、人理焼却を行ったのは一体誰なのかってね」

 

「七十二柱の魔神、魔神であるレフ・ライノールが敬愛しているであろう王を自称する存在。それだけ分かれば答えは自ずと絞れてくるんだけど……立香ちゃんは誰か分かるかい?」

 

 >ロマニからの質問に立香はしばし押し黙り、そして顎に手をやって考えをまとめていく。

 

「え、と確か……七十二柱の魔神ってあの有名な悪魔達のこと、だよね? 別名は──ソロモン七十二柱。その魔神達が王と呼称し、敬愛するってことは……」

 

 >思考を回していた立香が答えに辿り着く。

 

「……ソロモン王?」

 

 せいかーい! 

 立香ちゃんも賢くなったね、これも日々の勉強の成果かな? 

 

「そうだ、あの古代イスラエルの王にして魔術世界最大にして最高の召喚術士ソロモン。それが絡んでいると睨んだんだ。睨んだんだけど……ロマニ、君は違う意見なんだろう?」

 

「うん、正直なところを言うとね。そもそも七十二柱の魔神なんて空想上のものだ。実際に魔神なんて存在しない。最新の見解ではアレらは七十二の用途に分かれた使い魔に過ぎない」

 

「そうだね、役割がきっちりと分かれていることから天使の起源ではとも言われている。けれど、名乗った以上は無関係ではないんじゃないか? 例えば──そう、レフか或いはレフの後ろにいる親玉が例の王様を召喚したとかさ」

 

「……その可能性はなくもないけれど、それでも七十二柱の魔神とは信じ難いな」

 

「どうして? 実際に立香ちゃんや望幸くん達は戦って、そのデータが此方にも残っているだろう?」

 

「だからだよ。送られてきたデータは確かに“悪魔”と言われるにふさわしい数値だった。伝説通りすぎるくらいにね。そもそも悪魔の概念は彼の王よりもずっと後の時代に誕生したものだ」

 

「え、えーと?」

 

 あぁ、立香ちゃんがついにお話についていけなくなってきてる。

 とは言え、これは仕方ないですね。

 立香ちゃんはケイローン達に色々と教わり始めたとはいえ、まだまだ若輩者。

 つまりは有名所でも知らないことの方が圧倒的に多い。

 概念系列の話は色々とめんどくさいからな! 

 

 >あなたは要は悪魔の概念が誕生していないはずの時代のソロモン王が使役する使い魔があのような禍々しく現代人でも理解できるような魔神然とした姿をしていることがおかしいという事を立香にも分かるように噛み砕いて説明する。

 

「うん、望幸くんの言う通りだ。加えて仮に彼の王が英霊となったのなら彼の宝具はもっとシンプルで尚且つスマートなものになるはずだ」

 

 本人が言うと説得力がありますねぇ! 

 

「というわけで今の所私達は人理焼却の親玉はソロモン王を騙る何者かではないかと推測しているんだ」

 

「とは言え、まだ憶測の域は出ないからね。魔神についても今は詳しい事は言えないかな。もう少し情報が解析出来たらまた伝えるよ」

 

 この魔神についてのあれこれについてのフラグなんですけど、次の特異点がオケアノスの場合上手くやれば殆どカット出来るんですよねぇ。

 まあ、そのカット方法がイアソンを生贄に魔神柱を召喚! からの魔神柱素材を回収するといういつもの外道コンボなんですけど。

 

 ほな魔神柱を召喚する前に宝具装填するね……(開幕即死を狙う走者の鑑)。

 魔神柱素材はあっちでもそうですけど、本当に美味いからな! 

 もっと落とせバルバトス。殺したかったけど死んで欲しいわけじゃなかった。

 人類悪を素材にしか見てない奴が人類悪じゃないってマジ? 

 

「さて、唐突だけど立香ちゃんと望幸くんは船酔いとかは大丈夫かな?」

 

 あ、これは……。

 

 >あなたと立香は揃って頷いた。

 

「それはよかった。それなら安心だ。いざとなったら中枢神経にも効く酔い止めを用意しとこうと思ってたからね」

 

「フォウ! キャーウ! フォ!」

 

「おや、フォウくんも行く気なのかい。何だかとってもやる気に満ち溢れてて頼もしいね。……君がいると皆の精神状態も安定するし、無茶をしようとする望幸くんをいざとなったら蹴り飛ばしてでも止めてくれるかな」

 

「フォウ!」

 

 >任せろ! とでも言っているかのように胸を張るフォウにあなたはジッと視線を向ける。

 

 フゥン、何だかロマニに先に釘を刺されてますけどたかが獣の幼体如きの蹴りに屈するほどホモくんはヤワな作りはしてないんだよなぁ。

 まあ、今回はちょっと釘を刺されすぎて釘バットみたいになってるので余程じゃなければ後ろに控えておくつもりですし、そもそもオケアノスだからなぁ。

 

 いいとこアルゴノーツ全員集合+αでしょう。

 

 巨神とかいう序盤で戦う敵じゃないやつに比べたらマシだなマシ! 

 後、主戦場が海戦なのでドラコー連れてけばあっさり攻略出来そうですよね。

 主に津波ブッパで。

 

 それに加えて今回は獣連中全員で出撃するので質と数の暴力でささっとクリアします。

 通常オケアノスはうま味が少なすぎる上に無駄に時間を取るんや……。

 

「マシュも首根っこ掴んでもいいから飛び出しそうになったら抑えてね!」

 

「え、えーと、私に出来ることでしたら……?」

 

 >ロマニの言葉にマシュは困惑しながらも了承する。

 >その際横にいた立香とあなたは互いにちらりと目を合わせて苦笑した。

 

「飛び出したら駄目だからね?」

 

 うーん、この子供扱い。

 人間初心者のロマニにこうも扱われるのは心外では……? 

 

「さて、それじゃあ次の特異点は1573年、場所は……見渡す限りの大海原だ」

 

「海、ですか?」

 

「うん、特異点を中心に地形が変化しているようでね。具体的に“ここ”と決まっている場所という訳ではなさそうだ。その海域にあるのはぽつぽつと点在している島だけ。その原因を至急、解明して欲しい」

 

 >あなた達はロマニの言葉に了解! と声を上げて了承する。

 >ふと、何か気にかかることがあったのかマシュがおずおずとした様子でロマニに質問する。

 

「あの、一つ気になったのですが、転送される時に海の上、ということはありませんよね? 私は水泳のトレーニングは受けていませんし、先輩も泳ぎが得意ではなかったですよね?」

 

「大丈夫! そこに関してはちゃんと考慮してあるよ。流石に転送した時に壁の中にいるってことはないし、万が一海の上に転送されたとしても──」

 

「じゃじゃーん! デカラビア風デザインの浮き輪だよ。なかなかにかっこいいだろう?」

 

 >必要以上に刺々しいヒトデのような浮き輪を持ってきたダヴィンチにマシュは顔を顰める。

 

「……ドクター? 先輩と望幸さんの安全が懸かってるんですよ?」

 

「ハ、ハハ……ごめん流石にジョークだよ、ジョーク。特異点出発前だから和ませようと思ってね。レイシフトの際は勿論万難を排して当たらせてもらうよ」

 

 >マシュにしては珍しく低い声で問い詰められたロマニは降参するかのように両手を上げて苦笑する。

 

 この後のオチが見える見える。

 どうせ海の上にいないけど上空か僻地に飛ばされるってオチですよ。

 オケアノスのトラブル率は馬鹿高いですからね。

 90%を信用してはいけない(戒め)。

 

 ほな、ホモくんは乗り物になるんで。

 モルカーならぬホモカーですよ、最悪だな。

 

「それじゃあ各自準備が出来次第僕に話しかけてくれ。特にサーヴァント達との話し合いなんかもあるだろうからね! その間僕達はレイシフトの際の調整をしておくよ」

 

 >そう言ってロマニとダヴィンチは所定の位置に戻って何やら機械を弄り始めた。

 

 まあ、ホモくんが最初に連れていくのはドラコーと決まっている以上特にあれこれする必要はないですかね。

 準備に関してもフラグ進行と共に終わらせてるので特にすることはなし。

 今回は金リンゴがあるからな! 

 やりたい放題──は駄目なので大人しく魔力タンクしておきましょう。

 

 立香ちゃんに関してはそれとなくケイローンを連れていくように誘導します。

 アルゴノーツにぶっ刺さりますし、そうじゃなくてもオケアノスは色々と知識が必要な場面が多いですから。

 船の強化とかあるし。

 

 というわけでキリがいいので今回はここまでとなります。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──海が荒れる、高波が全てを押し流し、吹き荒ぶ暴風が何もかもを薙ぎ払う。

 

「ああ、クソッ! 此奴は駄目だねぇ! まともにやり合ってらんないよ! 野郎共ズラかるよ! 風に乗って離脱するんだ!」

 

 海上に響き渡る砲撃音──しかしそれが意味を成すことは無かった。

 まるで幽霊船に攻撃をしているかのような手応えのなさ。

 どれだけ大砲をぶち込んだところでまるで堪えやしない。

 

 だと言うのに──

 

「──っ!」

 

 ──響き渡る砲撃音。

 

 お返しだと言わんばかりに放たれた砲撃は此方に着実にダメージを蓄積していく。

 これ以上は本当にマズイ、一方的に嬲られてばかりで海の底に沈められるのも時間の問題だ。

 

「ちんたらやってないでさっさと帆を張りな!」

 

「マジで言ってるんですかい!? この嵐の中帆なんて張ったら船ごと吹き飛びますよ!」

 

「そりゃあいいね! このまま馬鹿面晒して海の底に沈むよりかは空に飛べば沈むこともないだろうさ! 海賊だって空を飛んでみたいと思うことはあるさね」

 

「毎度の事ながら姉御は滅茶苦茶言いますね!? もう浮き始めてますよこのペリカン!」

 

 帆を張った瞬間、沈み始めていた船がその船体を上へと上昇させる。

 高波も相まって本当に船が空中に浮かんでいるようだった。

 

「今アタシの船のことなんて呼びやがった!?」

 

「ハインド、ゴールデンハインド号っす! オラ、新入り共海の藻屑になりたくなきゃしっかり船にしがみついときな! 何、こういう時ほど姉御の豪運は頼りになるからな。姉御を信じてりゃ生きて帰れる! だからこんな所で死ぬんじゃねえぞ!」

 

「ハッ、そうさ。人生は常にギャンブルってね。なら、アタシはアタシの運を信じるのみさ! 全員船に掴まっときなぁ! 一気に離脱するぞ!」

 

 風を過剰すぎるほどに受けたゴールデンハインド号はまるでロケットのようにこの海域から一気に離脱する。

 暴風によってミシミシと軋み、マストに亀裂が生まれるがそれでも一か八かに賭けて突き進む。

 

 どうせ、このまま手をこまねいていたら砲撃で沈められるんだ。

 ならば足掻いて僅かな可能性に賭けるものだ。

 生きてりゃ儲けもの、上手くいけば船も無事で万々歳。

 

 分の悪い賭けほど燃え上がるのは海賊の性だろう? 

 

「……ああ、けれど──この借りは必ず返すよ」

 

 ゴールデンハインド号の船長である女性はほんの一瞬、後ろを振り返り忌々しげに睨み付ける。

 この嵐の中、平然と佇む謎の海賊船を。

 

 その視線を受けてか、或いはこの嵐の中に帆を張るという自殺行為じみた気狂いの所業を見てか海賊船の船長らしき大男は不敵に笑う。

 

「……この大渦の中を逃げ延びたか。英霊でもないというのに信じられん。だか──クヒッ、クハハハハ! それでこそフランシス・ドレイク、伝説は真実だった!」

 

 大男は降り頻る大雨の中、濡れそぼった髪の毛を掻き上げ──そして一切の感情を感じ取れないほどの無表情へと戻る。

 

「──なんてこんな時じゃなきゃあ、もっと純粋に喜べたんだろうけどなァ……」

 

 ジクジクと己の心を苛む痛み。

 あまりにも不愉快なソレに苛立ちが募る。

 英霊としてこの場に召喚された時より生じた謎の痛み。

 ぽっかりと心のどこかに大きな穴を空けられたかのような寒々しさ。

 

 それとは反対に業火のように燃え盛る憤怒。

 

 ──ああ、知っている

 

 これが何なのかは知らない。

 

 ──この痛みが何なのか、よく知っている

 

 どこの誰だか知らないが随分と舐めた真似をしてくれたものだ。

 

 ──この痛みは、宝を奪われた痛みだ

 

「コケにしやがって、絶対に赦しはしねぇ。海の果てまで追い詰めてやる」

 

 何が奪われたのかは分からない。だが、これは間違いなく俺にとって大事な大事な宝だったってことだけは分かる。

 

「海賊から宝を奪ったことを後悔させてやる。なあ、そうだろ?」

 

 憎悪と怒りを隠さずに後ろを振り返れば自身と同じように、或いはそれ以上に身を焦がしている二人の海賊がいた。

 

 ──嵐が吹き荒れる。

 

 





一体何髭なんだ……。
案の定オケアノスもハードモードです。


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