卑の意志を継ぐ者 (新グロモント)
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波の国編
01:祝福


何時もお世話になっております、作者です。

NARUTOで新作投稿を開始します^-^
色々と設定不足な感も否めませんが……鬼滅同様に見切り発進すればいけるだろうと
安直な発想を下作者がここにいます。

大事な事ですが……作者の独自解釈や偏見が大きく含まれますので
嫌な予感がする方は「閉じる」を推奨します。

感想や評価などは大変嬉しいのですが、
否定的なコメントやマイナス的な物は見ていて嬉しくないので
控えめでお願い致します。




 忍者……その名前の通りならば、堪え忍ぶ者。

 

 そんな言葉通りの忍者は、遙か昔や別次元に存在していたかも知れない。だが、この世界では違う!! その証拠に、忍者が住まう隠れ里などが良い例である。

 

 文明開化が進み、隠れ里と呼ばれた時代は既に終わった。人・物・金といった物流もあり、公然の秘密という奴だ。現代でいうと、国家機関の警察がパチンコの換金事実を知らないと言っているのと同じ位だ。その証拠に、一般人の大人に聞けば、誰でも隠れ里を知っている。

 

 文明開化された時代ではあるが、変わらない事もある……人権軽視だ。何処の世の中に、年端もいかない子供を世紀末も真っ青な殺しの世界に送り込むなどあるはずが無いと思うが――ここでは、ソレが当たり前であった。

 

 この世界の名は……NARUTO。

 

◇◇◇

 

 死と混沌が渦巻く絶望な世界に生を受けた一人の男……狭間(はざま)ボンドルド。だが、彼は絶望はしない。この世に生を受けた事には意味がある。その事を信じ、あらゆる努力を惜しまず、彼は成長をしていった。

 

 その成果もあり、彼は3代目火影に呼び出され昇格する機会を得た。

 

「狭間ボンドルド……今日、この時点をもって、特別上忍に任命する。これからは、更に精進するといい」

 

「ありがとうございます、3代目。しかし、宜しかったのですか? 私がいうのもアレですが……特別上忍に任命をする事がよく出来ましたね」

 

 狭間ボンドルドは、ある意味、問題児でもあった。

 

 まずは、その身だしなみ。顔を完全に隠した怪しい光を放つフルフェイスヘルメットに加え、真っ黒なコート、両肘には黒い筒のような物を付けていた。そして、忍びの証である額宛てを申し訳程度に首から下げている。木ノ葉隠れの里においても、彼ほど奇抜な格好をしている男は、ほぼ居ない。その風貌は、まさしく筋金入りのろくでなしと瓜二つであった――容姿も能力も。

 

 考え方によっては、忍者らしくないので……コレはコレで潜入任務を考えればアリである。

 

「お主程の医療忍術が使える者は、少ないからな。有能な人材がいつまでも中忍で居られると、困るのだよ。医療忍術が使える者が任務に同行していれば助けられた事例も数多く存在している。だからこそ、期待している」

 

「趣味と実益を兼ねた研究で忙しいので、何処までご期待に応えられるかは分かりません。ですが、本当に助けて宜しいのですか?」

 

 狭間ボンドルドは、3代目火影の言葉に違和感を覚えた。

 

 忍者という人的リソースの価値は高い。忍者達が依頼を達成する事で、その成功報酬が里の収入に直結する。よって、仕事をする忍者は、言わばサラリーマンと同じ働き蟻である。

 

「何が言いたい?」

 

「ただ、私が独自調査をした限り……ここ二年ほどで殉職した忍者の大半が、九尾事件で悲惨な過去を背負った者。付け加えて言えば、人柱力の子供を快く思っていない者達でした。遺族年金に加え、それなりの貯蓄もある事を把握しています。相続人が居ない場合、里が資産を――」

 

 世の中、不思議な事もある。

 

 九尾事件で、愛する妻子供を失った者達は数多い。時間が人を癒やすという言葉もあるが、その逆もある。何時か恨みを晴らす為に、ひたすら牙を研ぐ者達。そして、九尾を宿す子供が忍者アカデミーを卒業して下忍になる直前で、そういった強い意志を持った者達が綺麗に掃除されていった。

 

 当然の事だが、下忍になれば任務中の不幸な事故で死んでしまう事もある。任務中なら仕方ない。それが、忍者だ。

 

「それは知らなかった。酷い偶然(・・)もあるもんじゃな」

 

「えぇ、全くです。子供には、愛をもって接しなければいけないのに、恨みを抱くなど愛が足りませんね」

 

 狭間ボンドルドは、理解した。

 

 原作ジャンプ世界が故に、綺麗な部分しか表現されていなかった。しかし、裏ではこのような事情があったのだと。ジャンプ作品に言える事は、背景に等しいモブキャラは、紙くずのように死ぬという事だ。だが、その反面で主人公に近い存在は、モブ上忍が即死級のダメージであっても、かすり傷程度で済むという謎現象だ。

 

 この事象を彼は、"祝福"と名付けている。

 

 そして、今日までの彼自身が行っている研究の最大成果は"祝福"の譲渡だ。"祝福"の存在など、誰が聞いても首を傾げる物だが、確かに存在していた。

 

 なぜなら、狭間ボンドルドは、九尾事件で両親と妹を失い人柱力を快く思っていない一人であるからだ。そのおかげで、任務先で敵対忍者と何故か鉢合わせたり、任務帰りに何処の忍者か分からない者に襲撃される経験もした。だが、擬似的に"祝福"を得た彼の能力と実力を前に、格上であった敵対忍者や刺客は、今では彼のカートリッジとして活用されている。

 

「お主が言う"愛"と儂の"愛"が同じかは別として、概ね同意できるな。それでは、特別上忍になった最初の任務を言い渡そう。忍者アカデミーで卒業試験がある。下忍になる者達に対して心のケアをしてもらう」

 

「分かりました。アレがトラウマで任務に支障が出ると問題ですからね」

 

 表向きな忍者アカデミーの卒業試験は、分身や変化の術が出来る事となっている。だが、それは本当にスタート地点でしかなかった。担当上忍が付くとは言え、里の外で任務も行う事になる子供が敵対勢力に捕まる可能性がある。そういった場合に備えた訓練も同時に行われる。

 

 不幸中の幸いな事に、下忍の持っている情報の質が低い事や年齢も考慮され卒業試験(裏)で行われる内容は、ハニートラップ対策。思春期で異性を意識し始めた子供にとって、性的なトラップは極めて有効である。付け加えて言えば、木ノ葉隠れの里には、極めて優秀な血統の忍びが多い。種を守る為にもこの訓練は必須であった。

 

 隠れ里によって、色々な卒業試験がある。木ノ葉隠れの里では、『忍者に童貞と処女は存在しない』というのが常識だ。決して、例外は存在しない。

 

「お主が希望するならば、担当上忍の枠を用意してもよいが?」

 

「私は、ロリコンじゃないので止めておきます。担当上忍なんて、仕事内容や休暇面を考慮しても今の時期に枠が空いているとは思えません。特別上忍の様な若輩者が、3代目の権限で割り込んだとなれば、後ろ指を指されてしまいます」

 

 木ノ葉隠れの里において、担当上忍が下忍となる者からの要望シートを元に素晴らしいハニートラップの実技訓練をする事が慣わしになっている。影分身や変化の術を使えば、上忍にとっては朝飯前みたいな事だ。だが、これだけならば誰もトラウマなどにならない。

 

 当然、素敵なイベントの後は最悪なイベントが待っている。捕虜の人権などあってないような忍者の世界だ。性のはけ口となった場合を想定した訓練も当然だ。その訓練を行う専門の特別上忍が当然存在している。

 

 その一人が、秋道タカカズ!! 木ノ葉隠れの里の忍者にとって、恐怖の代名詞となっている。他にもクレイジーサイコレズという異名を持つ特別上忍もその任務に当たる。

 

 そんな酷い思い出から少しでも心身を守る為に、この度から狭間ボンドルドも加わる事になった。人柱力の卒業にあわせて、ケア態勢も整える事にするあたり、依怙贔屓である。

 

「わかった。話は以上だ」

 

「では、失礼致します。3代目」

 

 狭間ボンドルドは、一礼し火影の部屋を退室した。

 

 そんな彼の扱いを火影は真剣に検討する。かつての教え子である大蛇丸と同質の雰囲気があったからだ。勿論、忍術の腕前でいえば、狭間ボンドルドは大蛇丸には遠く及ばない。

 

 愛と平和の為、狭間ボンドルドの忍道が始まる。

 




◇原作との相違
一楽ラーメン屋の店主は、故人扱いです。
祝福持ちでしたからね!!

次回、卒業試験(裏)をお楽しみにしてください。


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02:卒業試験

忍者なんだし、この程度当たり前ですよね^-^


 幼い子供達は、夢と希望を携えて忍者アカデミーの卒業試験に挑む。そして、卒業試験(表)に見事合格した者達は、家族とその喜びを分かちあっていた。

 

 忍者に憧れる子供……チャクラを操り、正義を貫き、富と名誉が手に入ると本気で信じていた。その憧れは、決して間違いではない。忍者代表である火影などの一面だけを見れば、まさにその通りである。何処が堪え忍んでいるのかという疑問は、ココではおいておこう。俗物まみれの子供達が忍びの世界に一歩踏み込んだ。ソレが大事であった。

 

 子供達は、まだ知らない。

 

 忍者に一度なった者は、死ぬ以外で辞める事が出来ない事実を。年を取った忍者は、予備兵力扱いになる。更に、上忍などだった場合には生涯移動制限などが設けられて、里を離れる事を許されなくなる。無論、某3忍や3代目の様な年を取っても並の上忍が束になっても勝てないヤバイ級は別だ。

 

 

◇◇◇

 

 狭間ボンドルドは、任務を遂行する為に夜の忍者アカデミーに居た。

 

 下忍達が童貞と処女を卒業する記念すべき場所になる。そして、昼間の卒業試験(表)の合格者達が集められていた。

 

 名門と言われ数多の優秀な忍者を輩出する家にとっては、これから行われる内容について既に知っていた。だが、親達は何も伝える事が出来ず涙を流し可愛い子供を送り出す。ある親は今生の別れの如く涙を流し激励の言葉を贈る。ある親は、ボラギノールをそっと渡し送り出す。

 

………

……

 

 夜の学校というのは、無駄にテンションが上がる。その中でも、現状を正しく分析しようとする優秀な者もいた。

 

「なぁなぁ、シカマル。卒業試験が終わったのになんで、オレらが夜の学校に来なきゃいけないんだろう」

 

「さぁな。だが、ここに居る連中は全員卒業試験の合格者だけだ……つまり、2次試験があるという事だ」

 

 奈良シカマルは、親から渡されたボラギノールに何か深い意味があると考え続けた。きっと、何かヒントがあると。だが、経験値が少ない彼は回答に辿り着くまでは至らなかった。

 

 他の者達も周りとお喋りをしていると、集められた教室に幾人かの忍びがやってきた。

 

 その異質な雰囲気に飲まれるものも多く、皆が息を飲んだ。その突出した怪しい忍者が狭間ボンドルド。そのお陰で、昼間の卒業試験で不合格であった"うずまきナルト"が彼等と同じタイミングで入室した事に注目される事はなかった。

 

「こんな夜分遅くに、新たに下忍になった皆さんにお集まり頂き感謝致します。私は、特別上忍の狭間ボンドルド……今日は、皆さんの心のケアをする為にココに参りました。本当に君達のような優秀な下忍が多くいて嬉しい限りです」

 

 この世代の下忍達は、不幸中の幸いである。

 

 医療忍術が使える狭間ボンドルドがいるのだから、心のケアだけでなく例え尻の穴が裂けても翌日には元通りだ。

 

「同じく特別上忍の秋道タカカズ。お前達に堪え忍ぶ心得を教える」

 

 木ノ葉隠れの里において、恐怖の代名詞……忍者の身元確認を尻鑑定できるという極めて希な特技を持つ男だ。彼が知らない尻=他里の忍者と判断される。一芸特化どころか、一ゲイ特化タイプだ。

 

 馬鹿みたいな特技だが、本当に有能であった。そんな世にも恐ろしい男と倍化の術が合わさるという最悪な事態を誰が引き起こしたのだろうか。事の最中誰もが神を恨んだ。

 

 秋道チョウジだけが、ボラギノールが何を意味しているか理解してしまった。同族であるが故に、噂などを知っていたからだ。ここで声を上げて叫ばなかったのだけは、評価に値した。万が一、叫び散らす事になっていれば最初の被験者は彼になっていただろう。

 

「山中あかり、他の二人と同じく特別上忍よ。今日は楽しみましょうね」

 

  木ノ葉隠れの里において、クレイジーサイコレズと陰で言われる女性だ。山中一族という事で秘伝忍術で一般女性に乗り移り自慰行為を繰り返した事で度々厳重注意をされた人物。処罰されないのは、被害届が出されていない事と他里のくノ一を寝取る事に掛けては里随一だからだ。

 

 下忍達の不安を無くし心のケアをする事が仕事であるボンドルドは、皆の不安を解消するために、率先して動く。

 

「では、我々ばかり話していてもつまらないでしょう。何か質問がある人はいますか? では、うちはサスケ君」

 

「これから2次試験がある事は雰囲気でわかった。だったら、何故昼間の試験で不合格だったコイツがここにいる!!」

 

 今になって、他の者達もうずまきナルトがこの部屋にいる事に疑問に気がついた。首を傾げる者、実は合格していたと考える者など様々であった。

 

「そんな事ですか、簡単ですよ。火影の一存で昼間の試験は合格になりました。しかし、うずまきナルト君は本当に運が良いです。もし、下忍で先ほどと同じ事をしていたら無期懲役は確定でした」

 

 うずまきナルトは、唆されたとはいえ木ノ葉隠れの里の"封印の書"を盗み出した。発見が遅れて他里に渡った場合、その損害は計り知れない。火影とて擁護する事が難しい程に。だが、下忍でない一般人に"封印の書"が軽々と盗みだされたとなっては忍者の沽券に関わる事態である為、事件は闇に葬られた。

 

「ふざけるな!! そんな事がまかり通って良いはずがないだろう」

 

「おやおや、おかしい事を言いますね。別に、うずまきナルト君の合格に貴方の許可は必要ありません。あまり、文句が多いと君の合格が火影の一存で取り消されますよ」

 

 狭間ボンドルドが口にした内容に嘘偽りなど一つも無い。

 

 子供にとっては受け入れられない事も多々あるのは事実だ。だが、コレが社会の現実。お金が流通する世界において権力者の力とは絶対的である。

 

「さぁ、不安もあるでしょうが、大丈夫です。何も恐れることはありません」

 

 狭間ボンドルドの安心感のある声を聞きつつ、下忍達は幻術で眠りに落とされた。

 

 それから担当上忍が生徒を運び、幻術で心の欲望を全て聞き出す。そして、ハニートラップ訓練が始まりを告げる。

 

「そうだ、担当上忍の皆様、忍具の使用をお忘れ無く」

 

 狭間ボンドルドの優しさで忍具改め避妊具が用意されていた。

 

 

◇◇◇

 

 担当上忍によって、事が済んだ下忍達が次々と木ノ葉隠れの里の秘匿施設に運び込まれてきた。

 

 運び込まれてきた下忍達の苦痛に満ちた顔は文字通り一皮剥けた証拠。その反面、一部の担当上忍達は無駄にすっきりした顔をしている。まさか、金を貰ってこんな役得な仕事ができるとはといった感じであった。

 

「上忍の皆様、お疲れさまです。隣の部屋に軽食とお飲み物をご用意しております。後は、私の仕事ですので、ご安心ください」

 

「しかし、いつになってもこの卒業試験は嫌な思い出にしかならない。えーーと、メンタルケア担当のボンドルド特別上忍だっけ?正直、この試験が必要と思っているのか?」

 

 愛読書がイチャイチャパラダイスの男……巫山戯た雰囲気はあるが確固たる実力を持つ上忍のはたけカカシは疑問を呈した。だが、疑問を口にする割に随分と楽しんだ事は明らかであった。

 

 ただ、周囲に同意を求めて少なからずある罪悪感を減らす行為に過ぎない。

 

「無論必要です。同じ場所、時間、経験を共有する事で人は仲間意識を得ることができます。特に、カカシ上忍が担当する子達は大変特殊な育ちです。少しでも仲間意識を与える事は大変意味があると考えます」

 

 見た目からは想像できないほど立派な意見をいう挟間ボンドルド。その真摯な言葉に、はたけカカシは一定以上の信頼が置ける人物だと判断する。彼の人を見る目は確かであった。

 

………

……

 

「イヤァァァァァァーーー!!」

 

「おぉぉえぇぇぇぇ」

 

 目覚めた下忍達は、差はあれど誰もが叫びを上げた。そして、自らの体をペタペタと触り異常がないかを確認する。だが、下半身に感じる痛みや違和感から現実だと悟ると狼狽する。

 

 特に、女性の反応は酷い。発狂一歩寸前といった下忍もいる。

 

 ここで医療忍術が使える挟間ボンドルドの出番であった。そのメンタルケアの方法も既に決めていた。

 

「下忍の皆さん、卒業おめでとうございます。恐らく、少なからず気分が優れないでしょう。今から言う事を落ち着いて聞いて理解してください。先ほどまでの出来事は、忍者アカデミーの卒業試験です。これで、晴れて忍者のスタートラインに立ちました。おめでとう、君達は実に素晴らしい忍になるでしょう」

 

「ふ、巫山戯ないでよ!! あんな事をしておいて、よくもぬけぬけと。訴えてやる」

 

「春野サクラさん、里によって卒業試験は様々ですが……木ノ葉の里は、比較的良心的です。それに、忍者ならば誰しも通る道を経験しただけで訴えていては、キリがありません。あの程度の責め苦で辛いなど思っていては、敵に捕まった時にどうするんですか?」

 

「捕虜の扱いは、取り決めがあるのを知っているんだから」

 

「春野サクラさんは、物知りですね。ですが、その回答は予想済みです。ですから、敵側に捕まった末路をお見せしましょう」

 

 学校の体育館のような場所だと考えていた下忍達は、周囲の壁が解放され驚愕の景色を目にした。手足をもがれダルマにされた男女が拘束され、何十人も並ばされていた。頭にはプラグのような物を差し込まれ電流を流し込む様が今まさに披露された。

 

「ねぇ、幻術に掛けられているんでしょ!! お願いだから、そう言ってよ」

 

「いいえ現実です。ここは、尋問室。そもそも忍者に捕虜の人権などありません。あるのは、里の情報を抜かれるだけ抜かれ、あのようになる末路です。このような結末を回避する為にも、今回の卒業試験が活きる機会が必ずやってきます」

 

 ちなみに、手足がないのは木ノ葉隠れの里の忍者達が有効利用しているからだ。任務で怪我をする事があっても換えの手足がココで調達できる仕組みができあがっている。医療忍術の使い手として、移植の経験だけで言えば、里随一の挟間ボンドルドだ。

 

 下忍達は、先程までの不幸な出来事など目の前の事に比べれば些細な事だったと感じ取った。感覚が麻痺していた。更に言えば、目の前の最悪を回避する為の経験が積めたとなれば少しだけ心の活力が回復するという謎現象。

 

 自分より不幸な人間を見つける事で幸せを感じ取る。それにより、心をケアするという非常に有効なメンタルケア方法だ。

 




このノリでサクサク進めていきたい!!

次回は、忍者の沽券を守る大事なお仕事です。
忍者相手に嘘の依頼を言うとどうなるか……分かっていますよね(にっこり


オリ忍者の紹介※今後出番は、たぶんない。
 秋道タカカズ(イメージキャラ:阿部高和(くそみそテクニック))
 山中あかり(イメージキャラ:赤座あかね(ゆりゆり))


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03:可愛いですね

何時もありがとうございます!!




 下忍達は、挟間ボンドルドのメンタルケアのお陰で任務に忠実であった。担当上忍としても従順で勤勉な下忍が増えた事を大変喜ばしく思っている。年齢的に子供は自己の実力を過信して、毎年何件かは想像を絶する事故を起こす。

 

 だが、今年はソレが発生していない。

 

 そのお陰もあって里は平和そのものであった。こんな日々がいつまでも続けば幸せだと誰もが感じていた。だが、そんな平和を維持する為、絶対的な力が足りていない挟間ボンドルドは、忙しい毎日を送っている。

 

「優秀な母体が欲しいですね」

 

 試験管の中には、白い液体……里の有能な者達の遺伝子が詰まっていた。本来破棄されるべき物だが、挟間ボンドルド謹製の避妊具は中の液体を永久保存できるようにしっかりと設計されていたのだ。

 

 彼が欲するのは、三大瞳術。その中でも現実的に入手可能な写輪眼、白眼。無論、倫理観がある大人は、略奪などしない。安全で確実に手に入る方法があるならば、そちらを採用するのは当然だ。時間など些細な問題でしか無かった。

 

「足が着かない健康な母体。更には忍者……あぁ~、時期的に丁度良い駒がいましたね。彼女なら、元気なお子さんを産んでくれるでしょう」

 

 大事な遺伝子情報をしまう。忍術とは実に便利なものであった。口寄せの術を使えば契約した本人であればどこからでも呼び出せる。時空忍術万歳だ。更に、本人認証のトラップまで用意すれば大事な情報は盗まれず自爆させる事も出来る。

 

 その時、コンコンと彼の仕事部屋がノックされる。

 

 挟間ボンドルドの仕事部屋は、特殊であった。医療忍術が使える事で捕虜達から移植手術もよくやる事から外部に漏れないように里として対策されている場所。白眼でも覗く事ができない程、厳重に管理されている。

 

 緊急の依頼であっても、人が足を運ばないと来れない場所であった。

 

「鍵は解錠しました。中へどうぞ」

 

「挟間ボンドルド特別上忍。火影様より至急の依頼があるとの事でご足労お願い致します」

 

 貴重な医療忍術の使い手すら駆り出す木ノ葉隠れの里。人材不足は、よほど深刻な状況だと改めて理解する彼であった。

 

◇◇◇

 

 いつ来ても書類が山積みされている火影執務室。

 

 多重影分身の術という仕事効率を最高にする忍術を何故使わないのだろうか。自分と同スペックの能力を持つ分身を酷使できるだけでなく、消えても経験がフィードバックされるのだから使わない手はない。

 

「忍者とは、舐められたらお終いだと思わんか?」

 

「当然ですね。この業界では、舐められたら依頼が減るだけでなく、依頼料まで足下を見られます。税収が落ちれば、給与が減る。人材流出や質の低下にも繋がる最悪な事だと考えます」

 

 3代目火影の考えを態々と口にする。

 

 ぐぅの音も出ないほどの事実であった。里としては、依頼をくれるクライアントは大事である。だが、それは金づる的な意味である。

 

「誰もそこまで心中を口に出せとは言っとらんわい。つい先ほど、第七班……はたけカカシが担当上忍をしているチームから緊急の連絡があった。道中で他里の忍者に襲われた。依頼人が忍者からの襲撃される可能性がある事を十分知った上で、我々に嘘の依頼をしたという訳だ」

 

「おやおや、木ノ葉隠れの里の忍者も舐められた物ですね。万が一、上忍と未来ある下忍達が死んでしまったら総合的な損失は甚大でしょう。では、私に何をしろと?」

 

 万が一にも依頼人が無事で、周囲に『忍者に襲われる可能性があったから、低ランクの依頼で出したら本当に忍者の襲撃にあった。後付けで、差額分払うことで許して貰ったから、みんなもそうやって依頼料抑えた方が良いぞ』なんて情報が出回れば、里の沽券に関わる。他国の里からも馬鹿にされるのは間違いなかった。

 

「ケジメじゃよ。挟間ボンドルド特別上忍、お主に緊急の任務を言い渡す。第七班と合流し、敵対勢力の殲滅と忍者に舐めた態度を取った依頼主に地獄を見せてやれ」

 

「承りました。しかし、3代目も医療忍術の使い手に一般人に地獄を見せろなど。これでも医者ですよ」

 

「医療忍術がずば抜けて得意なだけで、他が苦手というわけでもあるまい。安心しろ、今回の依頼は存在しなかった事となった。つまり、正規な依頼では無い為、戦利品は全てお主の懐にいれて構わん」

 

「素晴らしい、実に素晴らしい。では、最高の働きをお約束致しましょう。そう言う事でしたら、援軍は私一人で構いません。取り分が減ってしまいますので」

 

 どの里にも言える事だが、援軍依頼に駆けつける忍者が少ないのは取り分が減るからであった。常識的に考えれば、数十人単位で援軍を出せば大体解決するのだが、報酬額には上限があるので、一人あたりの取り分が減る事態になる。

 

 挟間ボンドルドは、第七班の依頼任務であるタズナの護衛に関する情報を受け取った。瞬身の術を使い仕事へと向う。戦闘になる事は目に見えているため、カートリッジをフル装備し完全武装だ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、最高に気分が良かった。

 

「まさか、こうも早くチャンスが訪れようとは。しかも、火影からの許可の元で実験材料が手に入るなど僥倖です。先を……あれは」

 

木に巻き付けられ気絶させられた忍者が無様な姿を晒されていた。

 

 本来であれば、はたけカカシがいるのでこの程度の雑魚を血祭りに上げるのは簡単だ。だが、第七班である下忍達の事を考慮し、生かした状態で放置した。後で来る救援部隊の者達が回収するだろうと読んでの行為であった。

 

 しかし、忍者を武装解除もせず縄だけで縛るなど逃げてくれと言っているも同じ。目が覚めたら5秒と経たずに逃亡する。

 

 挟間ボンドルドは、手裏剣を取り出し忍者の股間を切り裂いた。そして、血が流れるが反応が無い事を確認する。安全確認を終えた彼は、忍者を触診する。

 

「なるほど、脊髄が破損していますね。情報を抽出するための脳だけを壊さず無力化するとは、良い手際です……意志があるのに動けないのはさぞ辛いでしょう。ですが、安心してください」

 

 これからの戦闘に備えて、材料を現場調達できるとは幸運だと感じていた。相手は、名の知れた抜け忍……備えは幾らあっても足りない。

 

 挟間ボンドルドは、空のカートリッジを取り出した。そして、助手を呼び出す。

 

「忍法口寄せの術!!」

 

 挟間ボンドルドが契約しているカツユを呼び出した。彼女こそ、挟間ボンドルドが長い時間掛けて口説き落とした助手である。呼び出されたカツユのサイズは2m程であった。

 

『ボンドルド様、今日は一体どういったご用件でしょうか?』

 

「貴方に会いたかったという理由では駄目でしょうか。貴方は、今日も可愛いですね、その白い肌につぶらな瞳……仕事を終えたら是非背中を流させて頂きたい」

 

 何処まで本気かと正気を疑うが、全部本気で言っている挟間ボンドルドであった。決して裏切らず、人に尽くすというカツユの心は素晴らしい。カツユとならば世界を変えられると本気で信じ、時間があれば呼び出して色々話していた。

 

 密かに、綱手以上に長時間呼び出していた。

 

『またまた、そんな事を言って仕事を手伝わせる気でしょう』

 

「えぇ、貴方だけが頼りなんです。お願いできませんか、カツユ」

 

『こ、今回だけなんですからね!! それと、背中を流す約束忘れたら駄目なんですからね』

 

「いい子ですねカツユ。勿論です」

 

 挟間ボンドルドは、優しく応えた。

 

 そんな様子は意識はあるが動けない忍者にしてみれば、絶望的。

 

 太陽が照らす中、二人の忍者がカートリッジへと姿を変えた。死んだ方がマシという言葉を体現した境遇の彼等は、忍者らしい末路である。

 




カツユってヒロイン属性あると思うんですよ。
寧ろ、作中で一番可愛いきがする。

忍者の世界ってコレでも優しいと思うよね。
きっと、原作でも裏側ではこんな感じだったはずw


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04:救いの手

いつもありがとうございます!!


 挟間ボンドルドは、少し悩んでいた。

 

 今後のためにも、どのタイミングで手を貸すのが一番美味しいのかと。原作キャラの成長には、しっかりとポイントが設けられている。少年期において、その一つがこの波の国での事件であった。

 

「うちはサスケ君が首を刺されたタイミングがベストでしょうかね」

 

 原作キャラ達との好感度は上げておいて損はない。最小の努力で最大の成果を手に入れる。それが、挟間ボンドルドの今回の方針であった。事実、現状のタイミングを考えてもソレしか選択肢がなかった。

 

 波の国への進入に際し、事前に合流していたら船に同乗できたのだが、そんな物はとうの昔に出航している。原作組達は霧隠れの抜け忍である桃地再不斬と第一回目の死闘をしている最中だ。

 

 第二回戦目で負傷するタイミングまでは時間がある。つまり、貧しい波の国を調査や観光をする時間程度はあるという事だ。貧しい国では飯を食うため、子供を売りに出す親も少なくない。つまり、親は金銭を得て、子は大事にされる家に貰われるというシステムが存在する。

 

「いいですね、お金で合法的に材料が手に入る国は」

 

 第二回目の戦闘はおおよそ1週間後……ソレまでの間に、金に物を言わせて物資を買い込む男が度々、波の国各所で報告された。だが、現金一括払いであったため、合法である事から誰も咎める者はいない。忍者とて、金を出せばお客様なのだ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドが波の国に入り、合法非合法問わず様々な物資を買い漁っていた。ソレを聞きつけた者達が金欲しさに色々と持って集まる。その中身には、道中で見つけた忍者の死体から剥ぎ取った物資や外来種の獣など様々だ。子供を売る者達がその何割かを占めた

 

 やる事がないからヤってできた子供を育てず売るという鬼畜外道だ。

 

「おやおや、どうしたのですか? みなさん、お集まりになって」

 

「忍者様、お願いです。どうか、この子を買ってくれませんか」

 

「うちの子も!! 祖父の代までは忍者でした。才能もきっとあるはずです」

 

 売られる子供達としては、この日が来たかと目が死んでいた。貧しい国が故にそういった事情をよく見てきた証拠である。

 

「少々予定数より多いですが、問題無いでしょう」

 

 挟間ボンドルドは、集まってきた子供を全て買い上げた。

 

 "祝福"の譲渡にはかなりの数を消費する。それに加え、母体として優秀な子供もいるかもしれない。金など新薬を作って売れば生活に困らない金額を稼げる男だ。

 

◇◇◇

 

 はたけカカシは写輪眼の反動で一週間程度、碌に動けない状態になっていた。

 

 次の戦いに向けて少しでも勝率を上げるべく、下忍達の修行を行っている。ある日の夕食時に、タズナの娘が思いの丈をぶつけた。父親を護衛している忍者だからこそ、多少の事は目を瞑っていたが、流石に限度というものがある。

 

「ねぇ忍者さん、町でちょっと噂になっているんだけど……貴方達と同じ額当てを持った怪しい格好の男が子供を買い漁っているって。いくら貧しい波の国だからって、子供を買わないでよ。大人として恥ずかしくないの!!」

 

「カカシ先生サイテーー!!」

 

「そりゃ、擁護できねーーてばよ」

 

「見損なったぜ」

 

 無実の罪で責められるはたけカカシとしては、理不尽であった事は言うまでも無い。松葉杖なしでは歩行も困難なのに、どうして女……しかも子供を買ってナニをするのだと。確かに、エロ本が愛読書である事から異常性癖である可能性は濃厚であったが、今回ばかりは無実である。

 

「まてまて、お前等!! 俺は、ずっとお前等の修行に付き合っていただろう。それに、忍者なら再不斬達の可能性だってあるのに、何で俺を疑う!!」

 

「えぇ~、だってカカシ先生の愛読書ってイチャイチャパラダイスってエロ本じゃん」

 

「そうよね~、それにカカシ先生は未婚だし。稼ぎがある上忍で未婚って、特殊な性癖があるとしか……」

 

「ノーコメントだ」

 

 ドンドンと立場が追い込まれていく、はたけカカシ。

 

 日頃の行動が物を言う。だから、誰も擁護できなかった。

 

「よーーし、わかった!! 明日は、修行の成果を見るための実技訓練とする。その忍者を捕まえるぞ」

 

 自らの立場を守る為、威厳を回復する為、第七班は原作にはない予定外の行動を取ることになった。

 

………

……

 

 翌日、第七班は聞き込みを開始し、僅か一時間で目的の人物を発見した。彼の周りには人だかりが出来ている。

 

「安心してください波の国の皆さん、お金には余裕があります。順番に購入しますので、焦らず並んでお待ちください」

 

「まだ、生後半年なんです。どうか、どうか……この子をお救いください」

 

 この母親は、波の国では子供が不幸になる事を理解していた。それどころか、あと何年生きられるかも分からない。満足な食事など母親もここ何年か取れていない。それなのに、赤子など育てるのは不可能。

 

 よって、藁にもすがる思いで挟間ボンドルドの元を訪れたのだ。

 

「さぁ、これをお持ち帰りなさい」

 

 1ヶ月は食べられるだけの金銭をポンと挟間ボンドルドは渡した。

 

 その様子を確認した第七班の者達は、自らの担当上忍に対して申し訳無い事をしたという気持ちで一杯だった。

 

「カカシ先生、疑ってごめんなさい。あの人、確か……挟間ボンドルド特別上忍でしたよね」

 

「その通りだ、サクラ。医療忍術のスペシャリストだ。だが、なぜココにいる」

 

 同じ里の忍者。それも医療忍術が使える者ならば、現状渡りに船だ。写輪眼の反動で動けない体の回復も改善できるチャンスが到来した。更には、修行での疲労回復にも効果がある事は間違いなかった。

 

 挟間ボンドルドが加われば、勝率があがる。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、少し甘く見ていた。

 

 貧しさが予定の数倍以上で、一度買い付けを始めたら、わらわらと大量の人が毎日訪れてきたのだ。それにより、原作組と桃地再不斬の第2試合が始まる前に見つかってしまった。

 

 彼は、人混みをかき分けて第七班の前まで移動する。

 

「これは、はたけカカシ上忍。このような所でお会いするなんて偶然ですね。お元気そう…では、なさそうですね」

 

「あぁ、少しばかり強敵が現れてね。今すぐ……は、無理そうだ。あの集団を捌いたら、俺達が拠点としている場所まで来て欲しい。話はそこでしよう」

 

「えぇ、分かりました」

 

 挟間ボンドルドは、買った材料に口寄せの契約をさせていた。これで、里に帰ってから呼び出すという算段だ。こうすることで、誰にもバレずに大量の材料を仕入れられる。忍者とは、卑劣であった。

 

………

……

 

 ハッキリ言って、挟間ボンドルドはタズナ家に歓迎はされていない。

 

 波の国で子供を買い漁った忍者だ。子供を持つ親として複雑な感情を抱くのは無理もない。それなのに家に招き入れたのは、護衛をしてくれている忍者からのお願いでもあったからだ。

 

「ご存じの方もいるかもしれませんが、自己紹介を。挟間ボンドルド、彼等と同じ里の特別上忍です。どうぞ、お見知りおきを」

 

 挟間ボンドルドの容姿は、第七班の忍者と比べても異質。忍者のマネをした変態と言われた方がしっくりくるレベルだ。

 

「本当に、この人も仲間なの? 忍者ってのは騙す事が本分みたいじゃない。敵だと思ったら実は仲間だったりとか……本当に大丈夫なのよね?」

 

「おやおや、手厳しいですね。私自身も他の方と比べて少々歪なのは理解しているつもりです。では、疑われるという事なので素直に引き下がりましょう。それでは、第七班の方、失礼致します」

 

 同じ里の仲間を見捨てて、この状況では何を言っても帰らないと思っていたタズナの娘は誤算した。護衛任務の手助けに派遣されたと考えていたのだ。

 

「ちょっと、アンタ!! 仲間を見捨てて帰るのかい」

 

「帰る?またまた、不思議な事を言いますね。疑わしい存在が近くに居るより離れた方が安心するでしょう。それに護衛の依頼を受けたのは第七班の方々です。私はただの旅行者とでも思ってください」

 

 はたけカカシの回復具合を把握できた挟間ボンドルドは、第2試合が近い事を理解した。それにターゲットの家も把握。後は、事が終わり次第、任務に移るだけだ。

 

 タズナの娘とのやり取りを見て、はたけカカシだけが何となく事情を察した。任務中の仲間を助けるのに金銭は発生しない。それは当然のことだ。だが、プライベートで負傷した怪我は、ソレは別だ。

 

「挟間ボンドルド特別上忍……俺の治療だと、幾ら掛かる?」

 

 はたけカカシは、担当上忍として存在しない任務を続行する事を選んだ。成長中の下忍をこの状況下で里に帰すのは今後のためにならないと判断したのだ。

 

「人が良いと身を滅ぼしますよ。事が終わった後に、私の邪魔をしないのであれば――この程度でお引き受けしましょう」

 

 挟間ボンドルドが提示した金額は、第七班が受け取る予定だった報酬金額の2倍であった。だが、はたけカカシの出費はソレだけに留まらない。下忍達にもポケットマネーから偽りの報酬を出す必要もあったのだ。

 

「はぁ~、足下見るね。追加料金も出すから、手伝いは?」

 

「ソレは出来ない相談ですよ、はたけカカシ上忍。私がここにいる意味を分かっておりますよね」

 

 第七班の任務は失敗しても構わない。なにしろ、依頼自体が存在しない。だが、ケジメ案件は失敗が許されない。不要な戦闘で負傷し、唯の民間人への粛正ができないなど忍者失格である。

 

「まぁ、多少上乗せして貰えれば、確実に殺せるタイミングで忍術がどこからか飛んでくる事はあるかもしれませんがね」

 

 はたけカカシは、3倍のお金を挟間ボンドルドに支払った。

 

 その様子に第七班や元依頼主達は怪訝な顔をしている。仲間同士なのに何故金銭のやり取りが発生するのかと。この後、どのように説明して取り繕うかと悩むはたけカカシであった。

 




困った人に救いの手を差し伸べる忍者……たまには、こういう忍者もいていいよね!!

タダで人助け(任務)を行う忍者:はたけカカシ
金を払って人を助ける忍者:挟間ボンドルド

両名とも似たもの同士だよ。



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05:火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

いつもありがとうございます。

サクサク進めるためにも、この位の濃度でお許しくださいね!!



 金を貰った以上、それ相応の働きをするのは忍者として当然。

 

 はたけカカシ上忍から金銭のやり取りがあったので、約束を破れば忍びとしての人生は終わる。挟間ボンドルドは、タイミングを見計らい確実に一匹を仕留める算段を立てていた。

 

 状況は、第七班側が圧倒的に優位。この場に木ノ葉隠れの忍者がもう一人存在しているとは、敵側は認識できていない。濃霧も加わり感知系の忍者でも第三者を見つける事は難しい。

 

 今現在、挟間ボンドルドは水溜まりに変化して、うずまきナルト達の戦いを観察している。その戦いの最中、うちはサスケは写輪眼を開眼する。戦いの中で進化を告げ続けるのは原作組だからなせる事だ。普段の弛まぬ努力が物を言うというあるべき姿を軽く超えていく。

 

 だが、覚醒したとしても現時点で敵との戦闘力の差は、歴然だ。最終的にうずまきナルトを庇い、うちはサスケが重傷を負う。

 

「なんでだよ、サスケ!! 近くに居るんだろう、挟間特別上忍!! 頼む、サスケを助けてくれーーー」

 

「ちっ、まだ仲間が近くにいるのか」

 

 白が周囲への警戒レベルを跳ね上げた。

 

 そのお陰で、周囲で唯一凍っていない水溜まりに目がとまる。ソレこそ、挟間ボンドルドが隠れていた場所である。バレてしまった以上、不意の一撃を狙う事が難しくなったので、仕方なく姿を現した。

 

「おやおや、いけませんね。確実に殺せるタイミングでというお約束でしたのに。まさか、同じ里の者に裏切られるとは考えてもいませんでしたよ。これは、大きな貸しです。うずまきナルト君」

 

「氷遁秘術・魔鏡氷晶!!」

 

 白は、感じ取った。

 

 残りのチャクラを全て消費してでも、この忍者……挟間ボンドルドを仕留める必要があると理解する。即座に、彼を囲むように氷の鑑がドーム状に展開される。

 

「その術は今まで散々観察させて頂きました。実に、素晴らしい忍術です。ですが、致命的なまでな弱点があります。急所のツボを狙う前提で殺傷能力が欠ける千本では、避けるまでもありません」

 

「だったら、試してあげるよ」

 

 チャクラを流す事で切れ味を増す物質がある。つまりは、チャクラを流す事で防御力を飛躍的に向上させる物質も存在している。挟間ボンドルドが全身に身につけている物は、チャクラを流す事で極めて硬質へと変わる。

 

 その結果、白の攻撃力では挟間ボンドルドの防御を突破する事は叶わない事実だけが残る。

 

 床に散らばる千本がまるで鉄の壁にでも当たったかのように落ちている。

 

「何を驚いているんですか? そもそも、下忍の人体を貫通できない程度の千本で私の防御を突破できる筈がありません。では、私の番です――火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 

 挟間ボンドルドが印を結び、術を発動させた。

 

 それは、彼の肘に備え付けられた筒内部で火遁の術を機械的に高圧縮して指向性を持たせて放出する。そこから放たれた火遁は赤い閃光となり目標物を貫く。その威力は、5cmの鉄板でも防げない。

 

 白の氷鑑を貫通させた。氷鑑に映る白は、胸元に大きな穴が空き吐血する。

 

「ごふぅ。後ろに攻撃が……流石、木ノ葉。卑怯」

 

「おや、真後ろに居たのが本体でしたか。この術、後ろにも発動できるんですよ。面白いでしょう」

 

 術は前方向に発動するという固定概念を破壊した初見殺しの術。それに、一点突破型の火力を防ぎ切れる人物は皆無である。この技の問題点と言えば、威力を再現する為に、すごく燃費が悪いという事だ。

 

 スポンという音と共に、カートリッジが一個破棄される。使い終わったカートリッジは、溶解し土に帰る。機密保持の作りは完璧であった。

 

「す、すげぇってばよ。あの忍者をたった一撃で!!」

 

「使用限界を迎えましたか。中古でしたから、仕方がありませんね。新しいのは、また用意しなければなりません。うずまきナルト君、仲間を抱えておきなさい。少し全力で殴ります」

 

 今の一撃で致命傷は確実だったが、死体を確認するまで手を抜かないのは鉄則。精密なチャクラコントロールが必須とされる怪力技。対象を殴る瞬間に、チャクラを一点集中する事で信じられないような破壊力を生み出す。

 

 白は、まだ死んでいなかった。胸元の穴から出血死するのを凍結させる事で延命している。機を狙い何とか、桃地再不斬の元へ駆けつけようとしていた。

 

「なぁなぁ、そいつもう死にかけているじゃん!! 」

 

「だから、殺すんですよ。先日、死を偽装された事を忘れたんですか?殺せる時に確実に殺しておかねば、忍者とは厄介な存在です」

 

 ズドンと大橋を揺らすほどの衝撃とコンクリートが十メートルを超えて粉砕された。

 

 挟間ボンドルドの全力の拳が白の頭部どころか肉体まで完全粉砕する。その拳は、橋の一部を大きく崩壊させた。

 

 白が女なら生き残る可能性はあった。実は、挟間ボンドルド……つい先ほどまで、白が男である事を忘れていた。種馬としても使えたが、従順でない存在は不要で不安な芽でしかない。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、うちはサスケの治療に入った。首から千本を抜き医療忍術で傷を癒やす。その際、血液サンプルの取得も忘れないのは当然だ。

 

「命に別状はありません。しばらくすれば、目を覚ますでしょう」

 

「ありがとうってばよ!! 挟間特別上忍!!」

 

「大人として当然な事をしただけの事。その内、うずまきナルト君が高等忍術を覚えたときにそれとなく教えてくれれば貸しはチャラにしてあげます」

 

 既に、多重影分身の術の印は見て盗んだ。

 

 忍者とは理論上チャクラが練れれば血継限界などの一部特別な術を除き、全ての術が使える可能性がある。つまり、飛雷神の術とか螺旋丸、穢土転生すら誰でも使える可能性を秘めている。だが、それには印が必要であった。正しい手順で印を組まなければ術は発動しない。

 

 ならば、知っている者から教えて貰えば良いという結論に至る。それら全てを手に入れられるポジションになる事が分かっているから、今から唾を付けておくというのが挟間ボンドルドの考えだ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、早く仕事に掛かるべく残った桃地再不斬に圧力を掛けに行く事にした。手を出すつもりはないとはいえ、相手の注意を引くには十分な存在感がある。

 

「はたけカカシ上忍。少々予定と変わりましたが、氷遁使いの少年を処理しました。更に追加報酬を頂けるのでしたら、お手伝い致しますが……」

 

「勘弁してくれよ。もう、大赤字なんだぜ。少しくらいサービスしろって」

 

 桃地再不斬と忍術の応酬を繰り返す、はたけカカシ。血継限界の少年相手とは言え、ほぼ無傷でいる事を高く評価した。

 

「分かりました。実力差的に負けないと思いますが、万が一の場合、困るのは事実です。では、お手伝いさせて頂きます」

 

 

◇◇◇

 

 はたけカカシは、挟間ボンドルドについて最近特別上忍になった者という程度しか知らなかった。勿論、同じ里にいる以上、奇抜な忍者が居る話は小耳に挟んだ事がある。医療忍術のエキスパートである事から、任務で怪我をした者達からは、変人だが腕は確かだと。

 

 事実、医療忍術により、はたけカカシの体調は万全になった。

 

 戦いにおいても、即興のコンビとはいえ上忍に合わせる事が出来る程だ。万年中忍だった者とは思えない。

 

「なかなか、動けるじゃない。本当に、特別上忍? 上忍に推薦しちゃうよ」

 

「私は持久力がないので上忍には向きませんよ……で、私が再不斬の動きを止められれば、確実に殺れますか?」

 

 はたけカカシは、持久力が無いのは恐ろしいまでの防御力が原因だろうと言いたかった。忍者とは普通攻撃を回避する事を前提とするが、挟間ボンドルドは違った。耐久する事を選んでいた。

 

「あぁ、一瞬でも止められたら確実に」

 

「分かりました。口寄せの術!!」

 

 挟間ボンドルドが人工的に作り上げた忍蟲のカッショウガシラ。サソリのような体に加え、複数の尻尾を持つ自然界に存在しない化け物だ。好物は人肉。この子は挟間ボンドルドとカツユが共同で作り出した子だ。

 

『パパ、こいつ食べてイイ?』

 

「勿論ですよ、ですが手強いので足止めだけでも構いません。トドメは、そちらにいる銀髪の忍者の方がやってくれます」

 

 はたけカカシは後で報酬の減額を頼もうと思っていたが止める事にした。

 

 忍犬や忍蛙は忍術を習得できる。中には、並みの忍者より有能だったりも普通にあった。チャクラが練れれば、生命であれば忍術が使える。

 

「化け物が増えたくらいで俺に勝てると思うなよ!! 水遁・水龍弾の術!!」

 

 忍蟲のカッショウガシラと鬼人と呼ばれた忍者の殺し合いが始まった。

 

 端から見たら、どちらが悪役なのか分からない構図である。化け物の攻撃を躱しつつ忍術で応戦する桃地再不斬。だが、決定打には至らない。

 

「挟間ボンドルド特別上忍。これって、俺の出番ある?巻き込まれて俺が死ぬのはイヤだよ」

 

「では、作戦を変えましょう。再不斬に対して、今殺してやると殺気をぶつけてください。隙が出来れば、あの子(カッショウガシラ)が仕留めてくれます」

 

「再不斬!! あの子の元に連れてってやるよ」

 

 忍者らしい作戦だと、はたけカカシは了承した。

 

 そして、千鳥まで使い『お前を殺す』という殺気を何度もぶつけ、致命的な隙を作り出す。最後は、カッショウガシラの毒を注入され、全身をバラバラにされた上で捕食された桃地再不斬。

 

………

……

 

 事が終わった所で、更なる問題がやってきた。

 

 桃地再不斬達の雇い主であった海運会社のガトーが忍者が使えないので、用心棒を大量に引き連れてやってきた。原作ではチャクラ不足で忍者達がマトモに動く事が出来ない状態だったが、現状は違う。

 

 怪我から復帰したうずまきナルトとうちはサスケもこの場には揃っている。

 

「サスケ、ナルト、サクラ。お前達で彼奴等全員制圧できるな?」

 

「なんで、私達がやらないといけないんですか!? カカシ先生がやってもいいじゃないですか」

 

 武装した用心棒を制圧しろと言われて春野サクラが抗議する。

 

 だが、対人戦闘訓練は大事であった。力加減を間違って殺しても問題にならないのだから、コレほど嬉しい訓練は存在しない。

 

「いや、だって……お前等、今回良いところ無かったぞ。最後くらい働こうよ。それに、挟間特別上忍にお願いする? そうなったら、俺どうなっても責任とれないよ」

 

 ミンチも残らない惨状はイヤだと考えた下忍達の心が一つになる。まさにチームワークだ。

 

「よし、ナルト!! 足手まといになるんじゃねーぞ!!」

 

「うっせーーってんだよ。お前の方こそ邪魔するんじゃねーぞ」

 

「こうなったらやけくそよ!! サスケ君の邪魔をするんじゃないわよ、ナルト」

 

 武装した一般人とはいえ、あれだけの数に無傷で対応する三人の連携は見事だった。

 

「良い生徒ですね、はたけカカシ上忍。チームワークという観点で見ても申し分ないと思います」

 

「そうでしょ? 俺の自慢の生徒ですから」

 

 ガトーとその用心棒達がなぎ倒されて行く様を見るタヅナ。そして、コレで全ての問題が解決したと、橋職人達が集められ盛大なお祝いの席が設けられた。

 




カッショウガシラは、メイドインアビスに登場する原生生物です。
どんな子かは、可愛い子なので調べたらでてくるかと^-^

ボンドルドが、任務のため準備体操を始めました。



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06:ケジメ

いつもありがとうございます。
GW最後の日という悲しい事実。


 波の国の橋職人達は、ガトー達が忍者によって撃退された事を受けて大いに喜んだ。これで橋を無事に完成させる事ができる。そうなれば、貧しかった国が豊かになり、他国同様にそれなりの生活が過ごせると信じて疑わなかった。

 

 だが、ココで大きな認識の差がある。別にガトー達を殺害したわけではない。自衛のために縄で縛っただけだ。それなのに、橋職人達は『俺達には木ノ葉隠れの里の忍者がついているんだぜ。これから邪魔したらどうなるか分かっているよな』といった風に勘違いしている。

 

 勿論、半永久的にBランク任務を発注してくれるのならば、例えガトーが新しい忍者を雇ったとしても対処する。

 

 波の国の宴会場では、木ノ葉隠れの里の忍者を英雄扱いし持てなしをしていた。こう言う場面では、うずまきナルトのようなお調子者がいる事を大変喜ばしい事だと、挟間ボンドルドは思っていた。彼には、あんな馬鹿ふざけで場を盛り上げる事は出来ない。

 

 一応主賓の一人である為、壁際で申し訳ない程度に座っている挟間ボンドルド。怪しさ極まる彼の元には、橋職人達も近付こうとはしなかった。そんな彼に、はたけカカシが酒瓶を片手に近付き、隣に座る。

 

「子供がいるとこういう宴会では助かりますね、はたけカカシ上忍」

 

「その通りだな。任務とは言え、世知辛いね~。彼奴等に見せるわけにもいかないから、任務開始時間を確認したくてな」

 

「お優しいのですね。忍者になれば、いずれこのような任務を行う事もあるでしょうが……時期尚早なのは確かです。折角、お集まり頂いているのでこの宴会後です。今後のガトーへの対応という名目で、関係者全員を招集するのは容易いですからね」

 

「わかった。それじゃあ、後腐れ無いように頼んだぜ」

 

 はたけカカシは知っている。生存者を一人でも残すと後々面倒な事態になる。恨みを持った生き残りが他里の忍者に殺しの依頼を出す。まさに、負の連鎖が発生する。

 

 それを未然に防ぐのも忍者の仕事。恨みは何も産まない。つまり、負の連鎖をココで断ち切れと上忍として、下の者に忠告した。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは宴会を楽しんでいるタヅナを探し出し、大事な話があると少し席を外させた。

 

「えーーっと、確か挟間じゃったかな。今回は、世話になった」

 

「仕事ですので、気にしないでください。ですが、まだ全てが終わったわけではありません。ガトーは、今も健在です。ですから、関係者一同に今後に向けて大事な話がありますので宴会後に全員集めて頂きたい。第七班の皆さんは、次の任務もあるのでココでお別れですが、私は旅行者です。多少皆様に、自衛方法を教えて帰ったとしても何ら問題はありません」

 

 忍者が今後に向けて自衛方法を教えてくれる。それも、タダとなってはタヅナ達は喜んで食いついた。

 

「そりゃ、ありがたいわ!! 孫も一緒でも構わないのか?」

 

「勿論です、子供でも出来る事は沢山あります。赤子には、私が魔除けのおまじないを掛けてあげましょう。何もないよりマシですからね」

 

 タヅナは、挟間ボンドルドの評価を改めた。胡散臭い忍者から、人情ある忍者へと変わっていた。こういう時、安心感を与える声色を持つ男は、強かった。

 

◇◇◇

 

 第七班がタヅナ達……宴会場の橋職人達にお別れをいう。

 

 子供なのによく頑張ったなど、高評価を得ていた。褒められるのは気分が良いらしく、しかめ面のうちはサスケですら、和らいだ顔をしていた。

 

「それでは、タヅナさん。我々は、次の任務がありますので一足先に失礼します」

 

「こんな夜なのに大変じゃな。まぁ、任務なら仕方がないの~。橋が完成したらいつでも遊びに来いよ!! その時は、もっと美味い物を食わせてやるからな」

 

 タヅナは、未来を見ていた。橋が完成し、木ノ葉隠れの里と良好な関係で安定した将来。だが、最初の一手目から誤っていた事に未だに気がつけていない。

 

「期待しているってばよ!! タヅナのおっちゃんもそれまで元気でいるんだぜ」

 

「さっさと行くぞ、ナルト」

 

「カカシ先生も早く早く!!」

 

 はたけカカシは、一礼した。そして、下忍達と一緒に波の国を後にする。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドが宴会場の壇上にあがる。

 

 騒がしかった会場が静まる。全員が雰囲気に飲まれたといって過言でなかった。集まった者達は、今後に向けて自衛方法を忍者直々に教えてくれるとの事で少し楽しみであった。もしかしたら、チャクラの使い方を覚えて忍者みたいな事ができちゃう!? といった感じで、大の大人でも期待感を露わにしていた。

 

「やぁ皆さん、よく来てくれました。今日は、一般人でも出来る自衛術を教えましょう。開始の前に、皆様お揃いで問題ありませんか? タヅナさん」

 

「勿論だとも!! 忍者から直々に教えて貰えるとなったら、誰だって駆けつけるわ。タダだしな!!」

 

 タヅナの言葉を挟間ボンドルドは信用していない。確かに、人数こそ増えて子供もいるが、コレで全員ではないだろうと予想はしていた。だが、解決策も分かっているので任務に支障はない。

 

 ガトーの所にいけば、橋職人達の情報など幾らでも分かると知っているからだ。

 

「それでは、皆さん。これから私が言うことをよーく聞いてください。まず、忍者とはあらゆる任務を請け負い遂行するプロ集団です。庭の草むしりから、暗殺まで何でも請け負います。上忍にもなれば、武装した100人のゴロツキがいても勝負になりません」

 

「なんだよ~、じゃあ、お前さん達を雇えって言うのか? 俺達は忍者の営業を聞きに来たわけじゃねーーぞ」

 

 そのように聞こえたのも無理はない。今後も危ない可能性があるので自衛手段は忍者に依頼するのが最適ですよと……だが、これは真理だ。ガトーは、国を牛耳るほどの海運会社だ。その資産は未だに健在。つまりは、金が尽きない限り幾らでも換えの忍者を用意できる。大金を積めば、暁のようなヤバイ級の忍者だって可能なのだ。

 

 タダの一般人が自衛術を磨いたところで焼け石に水にもならない。

 

「勘違いをなさらないでください。次がない貴方達に営業をする程、私は暇ではありません。なので、先に謝っておきましょう。自衛手段を教えると言ったのは嘘です。皆様には、少しでも納得して受け入れて欲しかったので、この場に集まって貰いました」

 

「???」

 

 皆が首を傾げる。何を納得して受け入れるのだと。

 

「安心してください。私は忍者の中でも良心的だと言われます。ですから、しっかりと説明を致します。先ほどまで居た第七班の任務は、忍者との戦闘が想定されてないCランク任務でした。ですが……」

 

 挟間ボンドルドは、偽りの依頼だった事実。木ノ葉隠れの里への想定される被害など懇切丁寧に教えた。現状、恩人にも等しい忍者達に対して、金がなかったとはいえ虚偽の依頼をしたタヅナを周りが責めた。

 

「だから!! 追加の差分は、橋が完成してから分割で納めるって話をしただろう。祝いの席で酒が不味くなる話をしやがって」

 

「残念ですがタヅナさん。現場レベルの人間で、それを許可する権限はありません。波の国の案件は、火影によりケジメ案件とされました。その為、依頼費用を分納して頂く必要はありません」

 

 ケジメ案件という言葉が宴会場に響き、ざわめきだした。

 

 それにいち早く反応したのがタヅナの娘であるツナミ。子供を抱きかかえて、会場の外へといち早く出ようとした。だが、挟間ボンドルドの影分身が既に出入り口を固めており、ツナミと子供のイナリの両名が確保される。

 

「おやおや、まだ話は終わっていませんよ。安心してください、"祝福"持ちである貴方達とタヅナさんのここでの安全は保証しましょう」

 

「み、みんな逃げて!! この人、私達を殺す気よ」

 

 ツナミの悲鳴で、集まった者達が我に返った。だが、忍者から逃げられるならば、そもそも護衛など雇わない。

 

「口寄せの術!! お腹が空いていたでしょう。タヅナ一家を除いて、全て平らげて構いません」

 

『パパ、大好き!! いただきまーーす』

 

 多重影分身により、何匹も呼び出されたカッショウガシラによって会場は地獄絵図となった。

 

「なぜじゃーー!! 殺すなら儂だけで十分だろう!! 娘や孫は許してやってくれ。頼む」

 

「機密保持のためです。木ノ葉隠れの里を、忍者を舐めたツケは支払って貰わねば困ります。貴方と関わりをもった人物は全て処理するように火影から直々に依頼されました。悔いるなら己の行いを悔いなさい」

 

 理由も知らずに死ぬより何倍も幸せであった彼等。最後の晩餐も最高に美味しかったのは間違いない。そんな幸せな最後を迎えられたのは、挟間ボンドルドが甘いからであった。

 

 波の国は、今日の時点で橋職人一家が一斉に行方不明になり橋建造が永久凍結された。その原因はガトーの海運業者と言われたが、ガトー本人も行方をくらませた事で世間を騒がせる。それにより、物流が滞り、貧しさに拍車がかかる。立て直しには、更に何年もの時が必要となる。

 

 唯一分かっている事は、霧隠れの抜け忍がガトーの元で仕事をしていたこと。つまり、全て霧隠れが悪いという結論に丸く収まった。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドが管理している施設。

 

 今から、"祝福"の譲渡が行われようとしていた。タヅナ一家の体には、血文字が記されている。そして、その者達を囲むように生け贄となる波の国の孤児達が何十人も寝かされていた。

 

「本当なら、忍者が持つ"祝福"が欲しいのですが……彼等は、流石は原作キャラ達です。手強いので、手頃な一般人から貰うようにしているんですよ」

 

「お願い!! お願いします!! 私はどうなっても構わないからイナリだけは!!」

 

「その程度の懇願で逃がすならば、そもそもあの場で殺していますよ。それに、若い子ほど強い"祝福"を持っています。出来ない相談です」

 

 挟間ボンドルドがチャクラを込めて丁寧に印を結ぶ。

 

「イヤだよ、死にたくないよ!! 助けてよ」

 

「儂が悪かった!! 生け贄にするなら儂だけにしろ!! 頼む、依頼料を惜しんだ事は本当に悪かった。何倍にもして必ず返すから」

 

 タヅナ一家が命乞いをする。

 

 だが、タヅナ一家のために生け贄になる者達からしたら、こいつ等より不幸なのは間違いなかった。見ず知らずの人間から"祝福"を抽出する為に燃料とされるのだから。

 

 "祝福"とは魂に宿る。魂を抜き取れる死神を呼び出し、その人間が持っている特別な部分だけを分けて貰う。勿論、死神とて手に入れた魂をタダで手放すほどお人好しではない。その供物として何十人もの人間を捧げる。

 

「屍鬼封尽(贄)」

 

 死神が存在し、ソレを扱う術がある事から研究の末に辿り着いた忍術。本来は、強敵を封印する術だが、これは違う。大量に生け贄を捧げる事で生け贄の中から一部を分けて貰おうという懇願系の術だ。

 

 言わば供物を捧げるので少しだけ取り分をくださいと言っている。これにより、術の難易度も制御もリスクも大きく下がっている。それに、呼び出された死神は原作で3代目が呼び出した物より下位の存在。だからこそ、挟間ボンドルドでも制御ができていた。

 

「死神様、今宵も供物を用意致しました。どうぞ、お納めください。そして、出来る事なら、そこの三名が持つ"祝福"を分けて頂きたくお願い申し上げます」

 

 生け贄の数をみて死神の口元が緩んだ。

 

 交渉成立した事で死神が生け贄達の魂を次々に平らげていく。その様子を目の当たりにするタヅナ一家。糞尿を漏らすレベルであった。

 

 忍者を舐めた一家がこの世を去る。だが、幸か不幸か、タヅナ一家が消えたとしてもこの世で騒ぐ者達は誰も居ない。

 




中忍試験までに少し、小話を挟もうかなと^-^

優秀な遺伝子もあるし、
波の国で仕入れた母体もある。

つまりは、そういう事です。



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07:独女

波の国編の完結になります。


 千手綱手は木ノ葉隠れの里において名門中の名門……初代火影の孫。

 

 血筋、才能、美貌といった全てを兼ね備えていたが、彼女は未婚のまま既に半世紀の時を過ごしていた。その気になれば、火影すら夢ではない地位であった。だが、何処で道を間違ったのか、彼女は今日も賭博で大損していた。

 

 大損に大損を重ねるあまり、賭博業界では『伝説のカモ』と呼ばれる程の知名度。今ではそこに酒まで加わり、手遅れ感満載の女性が出来あがる。

 

 そんな彼女の私生活は、一人の従者シズネとカツユによって支えられていた。

 

「いたたたぁ。あぁ~、昨日も飲み過ぎたね。カツユーーー、悪いけどお水持ってきて~」

 

 普段なら、『ツナデ様、お水をお持ちしました』と優しく声を掛けてくれる存在(カツユ)が不在。不思議な事に掃除も洗濯も溜まっていた。家事全般全てをカツユに依存している千手綱手。

 

「カツユが掃除も洗濯もしていないなんて珍しい。最後に会ったのはいつだったか……いててて。シズネーーー!! 水!!」

 

 隣の部屋で寛いでいた従者のシズネがようやく目が覚めた主人の為に行動を始める。

 

「もうお昼ですよ、ツナデ様。カツユ様が居ないからって掃除洗濯をサボったら駄目です」

 

「……待て、シズネ。カツユが不在になるなんて私は聞いてないぞ!! 居なくなったら、誰が私の分の掃除と洗濯をするんだ」

 

「そりゃ、ご自分でやられてはどうですか?」

 

 千手綱手も一人暮らしの経験くらいはある。だから、掃除洗濯は出来る。だが、やりたいとは思っていない。怠ける事ができるなら怠ける!! それが、彼女の生きる道だった。

 

「シズネ!! 私を甘く見るな。居ないならば、口寄せで来て貰えば良い。私は、カツユの優しさに何処までもつけ込むぞ。甘く見るな!!」

 

「駄目ですよ、ツナデ様。本日、カツユ様はデートなんですから。呼び出したら怒られますよ」

 

 千手綱手は、忍術で若い肉体を保っていたが幻聴が聞こえるようにまで老いたかと本気で思っていた。契約主ですらデートなんてした事がないのにデートだなんて、ありえないと信じられなかった。

 

「嘘をつけシズネ。私とシズネとカツユの独女三人衆の誓いを忘れたのか。我ら三人、生まれし日、時は違えども姉妹の契りを結びしからは、心を同じくして独身を貫き、彼氏持ちを救わずと誓っただろう」

 

「医療忍者として、駄目な発言をしていますよツナデ様。私にはまだ可能性がありますから、それに混ぜないでください!! それに、一体いつそんな誓いをしたんですか、全く記憶にありませんよ」

 

 シズネの記憶にないのは、今即興で千手綱手が思いついたからだ。独女生活も仲間が居れば怖くない。その仲間に勝手に引きずり込んでいる。

 

「よし!! ならば、カツユに聞いてみよう。シズネが聞いたデートも聞き間違いに決まっている。私とカツユの仲だ、付き合いだって一番長い。きっと、呼び出したら『ツナデ様、ちゃんとお掃除とお洗濯は小まめにしないと駄目ですよ。お昼ご飯は、消化に良い物をご用意致しますね』と言ってくれるに決まっている」

 

「なんか、嫌な予感がするな~。私は、ちゃんと言いましてからね。カツユ様がデートって……」

 

「口寄せの術!!」

 

 千手綱手は、自信を持ってカツユを呼び出した。

 

 カツユが雌として優れている事は彼女も知っている。だが、天元突破しすぎた母性が原因で2代目カツユがいつまで経っても誕生していない。某3忍が口寄せで呼び出す存在で、2代目がいないのはカツユだけであった。

 

 完璧すぎる女は敬遠される。それも、また真理である。

 

 白い煙が晴れた先には、マフラーを巻き、お弁当を携えた見慣れた口寄せ動物のカツユ。普段と違いそこはかとなくおめかしまでしており、完全にお出かけスタイルであった。

 

『まだ、待ち合わせまで30分も……なんだ、ツナデ様ですか。シズネ様、今日は用事があるので緊急の要件以外では呼ばないでとお願いしておりませんでしたか』

 

「わ、私はちゃんとツナデ様にもお伝え致しましたよ。カツユ様が今日はデートだと。でもツナデ様が信じてくれなくて」

 

「そ、そんなカツユ。私を裏切るのか」

 

 千手綱手は、涙まで流して崩れ落ちていた。信じていた独女に裏切られた。これでは、年齢=彼氏居ない歴の最高値が自分になってしまうと。

 

『どうしたんですか、ツナデ様。泣かないでください、私とツナデ様の仲ではありませんか。ささ、困った事や悩んでいる事があったら私に打ち明けてください。一人で悩むより皆で悩んで、解決策を考えましょう』

 

「その通りだな、カツユ。私の早とちりかも知れないのに迷惑を掛けた。シズネが、カツユがデートで家事洗濯と私のご飯を作ってくれないと聞いてな。そんな事ないよな」

 

『そうなんです!! 今日は、デートなんですよ。仕事報酬で大金が手に入ったからと、五つ星ホテルのスイートルームなんです。一度でイイから、泊まってみたかったホテルなんですよ。あ、そろそろ時間なのでシズネさん、後の面倒はお願いしますね。くれぐれも、呼び出さないでください』

 

「あ、はい。そこで魂が抜けたようなツナデ様には、よーーく言っておきます」

 

 千手綱手は、自らの数歩先どころか遙か先を歩むカツユに完全敗北した。

 

『あ、それと産休と育児休暇の届けです。どーーーしても、呼び出したいときは事前に一言伝えてからでお願いしますね』

 

「ちょーーーと、待ったぁーーーー!! カツユまだ戻るんじゃ無いわよ。デートなら百歩譲って許してあげるわ。でも、産休と育児休暇ってどういう事よ!! 」

 

『どうと申されましてもツナデ様。子()りですよ。もう、名前も性別も決めているんです。大きくなったら、ご紹介に参りますね』

 

 カツユが口寄せの術を解除してその場を去る。

 

 残された独女二人はいたたまれない空気が半端ない。完全に、トドメまで刺して帰るあたり、どこぞの忍者にそっくりだ。

 

「つ、ツナデ様お気を確かに。2代目カツユが産まれるんですから、良いニュースじゃないですか。ここは、大人の対応ですよ」

 

「そ、そうだな。そうと決まれば、盛大に祝ってやらねばならん!! 賭場でじゃんじゃん稼ぐぞ」

 

 人間と口寄せ動物とでは、違うという事で気を取り直したツナデ。

 

 だが、真実を知ったときツナデの心は耐えられるだろうか。

 




GWだからといって、張り切りすぎました。

次章は、中忍試験編です。


カツユは可愛い。これが真実。


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中忍試験編
08:同僚


いつもありがとうございます。

中忍試験までやってこれました。
試験管側の話なので、原作組に関しては漫画とかで補ってください!!


 波の国の任務から数ヶ月、挟間ボンドルドは医療忍者として日々の仕事をしていた。

 

 任務は怪我をした忍者の治療、病院で医師として里の人を治療、大名のアンチエイジング治療。命の危険がない任務ばかりであったが、金の入りは最高レベル。だからこそ、医療忍者は重宝され、医療忍者の心得というものが存在する程だ。

 

 仕事が終わり、カツユによる逆口寄せの術で秘密の施設まで移動する。そこには挟間ボンドルドの影分身が二人も働いていた。本体が通常業務をしつつ、影分身がカツユのお世話や胎児の状態管理、更に回収した「断刀 首斬り包丁」を新素材として活用する研究もされていた。影分身という素晴らしい術のお陰で成果は着実に積み上がっている。

 

 施設に到着したと同時に影分身達が分身を解除し経験をフィードバックする。そして、再度影分身する。

 

「ただいま、カツユ。いつ見ても素晴らしいです。生命の神秘をこの目で見られるとは」

 

『えぇ、ボンドルド様。少し、成長が早いですが他は普通の子と何ら変わりません。母胎となった子も優秀だったのでしょう!! ツナデ様が驚く顔が目に浮かびます』

 

 波の国で拾った赤髪(うずまき一族)の女が母胎として採用されていた。忍者の連中は出先で心の洗濯もする事も多い。そして、産まれた子供は放任され、本来優秀な忍者になれる存在が才能を開花せずに埋もれていく。

 

 実に勿体ない。

 

『ボンドルド様、本当に私の体内で育成する方向で良かったのですか?安全面を考えれば、人の母胎の方が……』

 

「あれらには、人間としての運用は想定していません。私達の子供なのですから、カツユの体内で育てて欲しいのです」

 

 

 育児に必要な部分だけをカツユが取り込み、カツユの体内で人工的に育て上げている。遺伝子として使ったのは、うちはサスケの物だ。そこに、カツユたっての希望で、挟間ボンドルドの遺伝子情報も組み込まれている。

 

 どんな子供に育つか今から楽しみで仕方がない二人であった。

 

「それより、何か食べたい物はありますか? 妊娠したら酸っぱい物が欲しくなると聞いた事がありましたので、柑橘類を持ってきましたよ。今、剥いてあげますからね」

 

 そして、ミカンをアーーンと食べさせる様は夫婦その物だ。

 

『ボンドルド様、名前を呼んであげてください』

 

「早く産まれておいで、プルシュカ」

 

 愛する我が子の誕生を待ちわびる両親がここにいる。

 

 

◇◇◇

 

 木ノ葉隠れの里は、中忍試験に向けて各国と調整や会場の準備で大忙しであった。会場となる里では、他国の忍者に万が一の事があれば国際問題となるため、普段以上に体制を整えている。

 

 この時期ばかりは、中忍以上の者達も任務の頻度が下げられて可能な限り里での待機が命じられていた。医療忍術が使える挟間ボンドルドは、試験の安全性を向上させる観点から中忍試験の救護班への所属を命じられた。

 

 そして、顔合わせも兼ねて特別上忍達と打ち合わせを実施している。同じ忍者とはいえ、名前程度しか知らない事は普通にある。

 

「俺は一次試験を担当する森乃イビキだ。拷問・尋問部隊隊長だ」

 

「アタシは二次試験を担当するみたらしアンコよ。それにしても、むさっくるしい連中ばかりね。花がないったらありゃしない。で、アンタは?」

 

「私は救護班の挟間ボンドルド。医療忍術が使えます。森乃イビキ特別上忍とは、仕事上で色々と」

 

 拷問・尋問で忍者が死なないように治療しながら行う事なども多かった。その手伝いに呼ばれるのが挟間ボンドルドである。持ちつ持たれつの関係であり、アカデミーの卒業試験のカウンセリングを手伝って貰ったり、移植用の手足を融通して貰ったりもしている仲であった。

 

「「「……」」」

 

 自己紹介が終わったら、静寂がその場を仕切る。

 

 こんなメンバーで会話など弾むはずもない。場を盛り上げるバカが誰も居ないから、当然の結果だ。

 

 みたらしアンコは、中忍試験を担当する特別上忍での紅一点……彼女としても少なからず男性側からのアプローチを期待していた要素はあった。そろそろ、婚期も考えなければいけない女性。特別上忍とは専門職が故に後方担当が多く安定した立ち位置だ。つまるところ、有能株がこの場には揃っていた。

 

「あんた達さ~……折角の打ち合わせなのに、何もないの!? 女性に気を遣って率先して話題を出すとか、なにかあるでしょ!! というか、挟間だっけ? その怪しい仮面くらい外しなさいよ。人前で失礼だと思わないの?」

 

「これは、私のアイデンティティですのでお気になさらずに。確かに、話題がないと場が持ちません。では、中忍試験で動く金の話とかいかがですか? 大名達がどこの忍びが優勝するかなどを賭けて裏で大金が動いています」

 

 中忍試験とは、下忍が中忍になる為の試験と言う名目だ。

 

 だが、そんな事の為だけに各国の忍者が遠くから開催国に赴く事はない。出場里側としては、有望な下忍が術と素顔を公然にさらすのだ。対抗策を検討される事もあるので、忍者として良い事など一つもない。初見殺しが出来なくなる。

 

 それなのに、こぞって出場するのは金だ。大名などが有望な忍者を輩出する里だと理解すれば、里の収入に直結する。だからこそ、派手で受けが狙える選手などが多く派遣される。

 

「あぁ、全くだ。その大名達の護衛に暗部もかなりの数が割かれている」

 

「ちっがーーーーう!! だれが、そんなつまらない話をしろって言ったのよ。ここに妙齢の女性がいるってのに、男共は気の利いた言葉一つ言えないの!? モテないわよ」

 

 いくら容姿が良くてもモテない女性にはもてない原因がある。そもそも、未だに男性に気を遣って貰える存在だと勘違いしている時点で既に駄目だ。攻めのスタイルで行かなければ未来は真っ暗だというのに。

 

「既婚者な上に、妻は娘を妊娠中ですのでモテる必要はありません。安心してください、みたらしアンコ特別上忍。私の手に掛かれば30後半になったとしても、今と変わらぬ肉体にして差し上げますよ……お金は頂きますが」

 

「結婚している上に、娘までとは初耳だ。それなら、祝いに……2、3体新しい個体を用意しよう。火の性質変化持ちでよかったな? 何時も世話になっているからな、誰にも言うなよ」

 

 森乃イビキにとって、挟間ボンドルドとの関係は良好だ。

 

 破棄予定の忍者がどうなろうと森乃イビキにとってはどうでも良い。物言わぬ廃人となった人形を渡すだけで、多少無理な要望も応えてくれる優秀な医療忍者が味方に付くなら安い買い物だ。

 

 男二人で楽しそうに会話する中、完全に取り残されたみたらしアンコ。原作のネームドキャラ。"祝福"を持つ身だが、代わりに独身の呪いでも掛かっているかの如く出会いがない女性である。

 

………

……

 

 中忍試験開始当日。

 

 各国から集まってきた忍者をみて挟間ボンドルドの感想は、想像以上に平均年齢が高いと思っていた。大の大人ですら中忍試験に挑んでいる様子は実に滑稽だ。アカデミーを卒業したばかりの原作組がそこに混ざっていると、下手すれば親子くらいの年齢差。

 

 救護班の控え室に移動しようと思った矢先、見覚えのある下忍……第七班が見えた。

 

「おーーい!! 挟間ボンドルド特別上忍ってばよ!! もしかして、俺等の応援に来てくれたの!?」

 

「馬鹿ナルト、そんなわけ無いでしょう。こいつ、目上の人への口の利き方がなって無くて、ごめんなさい」

 

 うずまきナルトと春野サクラ がお馴染みの馬鹿のやり取りをする。その様子を呆れた風に見ているうちはサスケ。彼等の仲は、良好であった。数々の任務をこなす事で着々と実力を付けている。

 

 その恐ろしいまでの急成長に嫉妬すら感じる者も多いだろう。

 

「私は、中忍試験の救護班として下忍の方達の治療に当たる事になりました。しかし、第七班は優秀ですね。もう、上忍に推薦されて試験を受けるなんて。頑張ってください、貴方達には期待しています」

 

 挟間ボンドルドは、原作組を見送った。

 

 彼等は気がついているのだろうか。アカデミーの卒業試験では、性的拷問の訓練があった。中忍試験合格……下忍の卒業試験が待ち受けている事を。森乃イビキと挟間ボンドルドによる物理拷問訓練だ。素晴らしい事に、今まで奇跡的に廃人を出した事がない。木ノ葉隠れの里の医療忍術のレベルの高さが証明されている。

 

 合格はゴールでは無い。通過点である!!

 

 




自己修復機能付きの防具ができれば生存率はあがるはず。

もうすぐ、忍者の収穫祭がまっている。大量にストックしておかねば。

※原作と違い、断刀 首斬り包丁は挟間ボンドルドの手中に収まりました。


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09:一次試験(裏)

何時もありがとうございます。

誤字脱字のご指摘も本当に助かっております!!


 中忍試験の第一試験が行われている最中、木ノ葉隠れの里の担当上忍達(カカシ・アスマ、紅)は仲よく小休憩していた。

 

 担当上忍といえども、中忍試験の内容については知らされていない。公平性を保つため当然だ。特に、開催里である木ノ葉隠れの里の担当上忍が事前にテスト内容を知っていたとなれば、後から各方面から突き上げられるだろう。

 

「正直、俺としちゃ……試験合格後の卒業試験の方が不安なだけどな。耐えられるかな~あいつ等。今回は、一次試験と同じくイビキが担当だからな」

 

「カカシの心配は当然だな。特にお前の班は、若すぎる。トラウマにならなければ良いんだがな。だが、卒業試験のサポートでボンドルドも付くって聞いたぞ」

 

「どんな人なの?イビキとボンドルドって」

 

 はたけカカシ、猿飛アスマ、夕日紅が送り出した生徒の試験合格を祈っていた。だが、それと同時に合格して欲しくないとも少なからず思っている。忍者である以上必要な訓練とは言え、大の大人ですら泣き叫ぶ卒業試験がある。

 

 担当上忍達だけで会話している最中、余った一次試験の用紙を破棄に向かう挟間ボンドルドが偶然通り掛かった。そして、名前が聞こえたので、それをネタに親交を深める事にした。

 

 "祝福"の強度を上げる実験でもある。原作キャラ達と接する事で"祝福"の強度が上がると彼は考えていた。

 

「これはこれは、担当上忍の皆様お揃いで。私の名前が聞こえましたが、ご用でしょうか?」

 

「悪いね、挟間ボンドルド特別上忍。別に悪口を言っていたわけじゃないんだ。ただ、下忍卒業試験について、ちょっと心配でね。うちの班、若い子が多いから」

 

「この人が……ボンドルド特別上忍なの? 夕日紅よ、よろしくね」

 

「よろしくお願いします、夕日紅上忍。下忍卒業試験について、担当上忍の方が危惧されるのも当然です。ですが、医療忍者の私がサポートしますから安心してください。治す前より完璧に仕上げます」

 

 女性である為、男二人より感性がまともであった夕日紅は全く安心できなかった。彼女も通った道だから分かるが、辛いという次元ではない。いっそ殺してくれと懇願する程の拷問であった。

 

 だが、その経験は幻術にも活きており、彼女の忍術を更に高めた事実は存在する。同じ経験を追憶させる事で忍者を無力化する。同じ里の者には効果は薄いが、他里の忍者にはそれなりの効果があった。

 

「アスマ、意見を聞きたいんだけど……卒業試験で担当を選べるなら、イビキと彼のどっちがマシだと思う?」

 

「そりゃ~、紅。医療忍者のボンドルドだろう。上忍になりたてのお前はあまり縁がないだろうが彼の腕は本物だよ。俺や同期も何回も世話になった事がある。手足がもげようが、元通りだ」

 

 本職よりはマシだろうという程度の猿飛アスマの回答であった。実際、どちらがマシかは両方の拷問を受けてみなければ誰も分からない。

 

「ボンドルド特別上忍……第八班全員とは言わないわ、せめて日向ヒナタだけでも貴方が担当してくれないかしら」

 

「いいね、じゃあサクラもお願いしようかな」

 

「ずりーーな。だったら、いのも頼むわ」

 

 担当上忍達が、全員便乗する形になった。

 

 挟間ボンドルドは、影分身が使えるので一度に複数人の拷問も可能だ。だが、同僚だとは言え、タダで請け負うのは宜しくない。ソレが立場上では、上の者からの依頼であってもだ。忍者が故に、安請負はだめだ。

 

「森乃イビキ特別上忍とは知らない仲ではありませんので、交渉できるでしょう。ですが、お互いの関係のためにタダとはいきません。都合の良い事に、白紙の札が300枚もあります。誰かが、起爆札に仕上げてくれたら、やる気も起きるんですけどね~」

 

「いいわ、分かったわよ。どうせ、試験中は暇だから作ってあげるわよ。但し、合格した際は絶対だからね。これアスマの分、こっちがカカシの分よ」

 

 さりげなく、両名に120枚ずつ配る夕日紅。分配率が可笑しい事に苦笑いをする皆であった。

 

「やっぱ、こうなるのね。まぁ、波の国の時と違って財布が傷まないからいいか」

 

「助かりました。私はチャクラ量が少ないので、これだけの枚数は大変でした。あぁ、それと時間が余った暇つぶしに今回の試験用紙をどうぞ。要らなかったら破棄してくださいね」

 

 挟間ボンドルドが去るのを確認した担当上忍達。

 

 受かると想定し、担当上忍達は黙々と起爆札を作成する。その合間、休憩中に試験用紙を見た担当上忍達は目が点になる。それもそのはず、アカデミー卒業以来、忍者は自己学習以外で学問を学ぶ機会がない。

 

 暇があれば体を休めたり、忍術や体術を鍛えてばかりいる。つまり、忍者の基本的な学歴は忍者アカデミー卒業となる。書類上であるが、下忍と学歴という面では上忍とて大差ないのが当たり前であった。

 

 忍者が忍者を抜け出せない原因の一つがそこに存在していた。

 

 

◇◇◇

 

 中忍試験といえども、戦闘が伴わなければ救護班の出番は存在しない。

 

 その合間に挟間ボンドルドは医務室で内職に勤しんでいる。その一つが、起爆札の作成であった。大口顧客が存在しており、木ノ葉隠れの里の暇な忍者は大方その大口客への納品を行っている。

 

 今、起爆札の内職が手を離れたので、次の内職を手がけていた。それが、コートの作成だ。

 

「まったく、外生地は黒、中は赤。後、雲の刺繍……可笑しいですね。どこかで見覚えのある服です。里の未来が心配です」

 

 某組織のコートは、製造元が木ノ葉隠れの里という驚愕な事実を発見し、挟間ボンドルドは里の危機管理能力が大変宜しくないと感じ取っていた。他里では手に入りにくい強靱な生地を使っているので、安く大量に作ろうと思えば依頼先が必然的に何処になるかは明白であった。

 

 暗殺などと違い、Dランク任務なので身元調査などは存在しない。

 

 手作業で丁寧にコートを仕上げていると、コンコンと医務室の扉を叩く音がする。

 

「開いていますので、どうぞ」

 

「失礼するわ、先生。手持ちの薬を切らしてしまってね。分けて欲しいのよ」

 

 草隠れの額当てをした蛇っぽい受験生が、薬を求めてやってきた。見るからに不健康そうな受験生を平常心で挟間ボンドルドは暖かく迎える。

 

 医師は患者を助ける者だ。一切の邪念をそこに持たせない……と、強靱な精神力で対応する。

 

「それはいけませんね。処方箋はありますか? 市販薬ならば、大体揃っています」

 

「言っても分からないでしょうから、勝手に貰っていくわ。………その服、あなたの?」

 

 蛇っぽい受験生が、縫いかけの暁コートを指さした。先ほどまでと打って変わって空気が一気に重くなる。

 

「これですか、内職です。今月までに10着作って納めないといけません。中忍試験の救護班は、報酬が安くて困ります。あぁ、内緒にしておいてくださいね。勤務中に内職は、規則違反なので」

 

「(里の愚かさに)呆れて物も言えないわ。それにしても、縫い目が雑よ。ここをしっかりと縫わないと全体的に歪になるわ。いいかしら、着る人間からしたら裏も表なのよ。裏側だからって手を抜くと、それは服として成立しないわ。ちょっと、そこを退きなさい。薬をもらったお礼に裁縫が何たるかを教えてあげるわ」

 

 蛇っぽい受験生は、マネキンを口寄せし、なぜか裁縫講座がはじまった。

 

 デザイン、パターン、裁縫と全ての行程を懇切丁寧に説明してくれた。挟間ボンドルドは、一言一句を覚える意気込みでこの時間で可能な限り学び取る。一方、教える側の蛇っぽい受験生も、想像以上に優秀な挟間ボンドルドの指導に熱が入る。

 

………

……

 

 気がつけば、かなりの時間が経過していた。

 

「あら、いけないわね。ついつい、熱が入ってしまったわ」

 

「いやはや、草隠れの方は知識が豊富で素晴らしい。大変勉強になりました。娘の服を作る時は、是非今学んだ事を実践します。里は違えど、貴方とは今後も良い関係でいたいものです。それと、これから試験だというのに貴重な時間をありがとうございます」

 

「そうね……だったら、まずは死なない事ね」

 

 蛇っぽい受験生が薬を持って、医務室を出て行く。

 

 挟間ボンドルドの蛇っぽい受験生への感想は、気が合いそうな面倒見が良い人であった。

 

 

  




次は、みんな大好きな二次試験……の舞台裏ですけどね!!

やっぱり、原作組と一緒に試験参加系の作品もおおいですが、
本作品はそういった事は無い予定です!!


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10:二次試験(裏)

いつもありがとうございます!!


 中忍試験の第二次試験は、木ノ葉隠れの里が保有している第44演習場で行われる。演習場を使ったサバイバル訓練であり、この試験からは死亡同意書にサインが必要になる。受験者同士の殺し合いは勿論、猛獣や現地生物に殺される事もある。

 

 第44演習場の広さは半径10kmもある。その面積は静岡県の島田市相当だ。このレベルの演習場が何個も存在しており、火の国の財政を圧迫している。年間の維持管理費を考えただけでも頭が痛い金額だ。里のスポンサー達である大名が口を酸っぱく軍縮を言うのも頷ける。

 

 そんな馬鹿みたいに広い演習場のゲートで、挟間ボンドルドは受験生を待っていた。みたらしアンコ特別上忍は、一次試験でもっと受験生が減る事を想定していたが予想が外れた。その為、演習場ゲートに張り付かせる忍者が足りなくなってしまい、救護班の彼まで駆り出される。

 

 カツユの夕食献立を考えていると、受験生……第七班が挟間ボンドルドが待つゲートに到着した。

 

「これは、皆さんお揃いで。一次試験合格おめでとうございます」

 

「ありがとうってばよ!! でも、なんでここに挟間ボンドルド特別上忍がいるの? 救護班って言ってなかったけ?」

 

 うずまきナルトは、救護班と聞いた事をちゃんと覚えていた。

 

 自らの班に怪我人が居れば出張してきてくれた事も理解できたが、そんな状況ではないので疑問を呈した。

 

「お恥ずかしい事ですが、下忍の皆様が予想より優秀でした。その為、ゲートを受け持つ試験官が不足してしまったんです。みたらしアンコ特別上忍の見積もり不足が原因です」

 

「救護班なのに大変なんですね。私達って、この演習場について何も知らないですが……教えてくれたりは?」

 

 春野サクラは、慰労の言葉を掛けると同時に情報収集を始める。忍者たるもの情報は命である。筆記試験と違い、この演習場については情報は公開されている。その為、挟間ボンドルドは教えても問題無いと判断した。

 

「開始時刻までの暇つぶし程度に少し教えてあげましょう。みたらしアンコ特別上忍から既に聞いているかも知れませんが、半径10kmある演習場です。この中には猛獣や大型の生命体が大量におり、独自の生態系を築いております」

 

「それは既に聞いた。他に有益な情報はないのか?」

 

 うちはサスケが情報公開を迫る。挟間ボンドルドは、そこまで中忍になりたいのか疑問でしかたがなかった。有能なのは間違いないので、急がなくても中忍になる事は間違いない逸材。担当上忍が付く時代にゆっくりと成長する方が、最終的に近道になると感じていたからだ。

 

「水も食料も現地調達できますので、そこは安心して構いません。所詮は演習場です。それ以上でもそれ以下でもありませんので……なので、演習場の成り立ちでも教えてあげましょう。ここの生物の大半は忍者が口寄契約出来なかったモノを放逐したモノの為、特別な生態系になりました。裏話としては、ココを試験会場にした事で大名達に演習場の破棄を突き返すため里ぐるみで動いています。その見返りで、どこぞの女性特別上忍の懐に大金が入っていたりと」

 

 酷い話だが、こんな使い道の無い演習場を選んだのは大名達から助成金を確実にもぎ取るためだ。みたらしアンコ特別上忍が、出所不明金を貰っている事実も存在している。全く、大人の汚い話であった。

 

「なんだそれ!! もしかして、俺等ってば、裏で動く金の為に命がけの試験をやらされてんのか!?」

 

「今頃、気がつきましたか うずまきナルト君。他にも、この中忍試験は裏で大名達が賭けをしています。第二次試験からは死者も出るとの事で安全地帯で優雅に楽しんでおりますよ。今の君達は、大名達を楽しませる駒でしかありません」

 

 監視カメラが無いところで色々と真実を教えてあげている綺麗な大人の挟間ボンドルド。そんな汚い世界を知り、真実に耐えきれない忍者もいる。そんな連中は、万年下忍で命の危険が無い綺麗な任務ばかりを担当している。

 

「大人って本当にどうしようも無いわね。でも、中忍になる為には通る道だから我慢するのよナルト。サスケ君だって、我慢しているんだから」

 

「おや? 春野サクラさんは勉強面では大変優秀なのでご存じだと思っておりましたが……別に、この中忍試験を受けずとも中忍になれる方法はありますよ。考えた事はありませんか? 年に二回しかない中忍試験、木ノ葉隠れの里ですら合格者の平均数は片手で十分です」

 

「あっ!! そうよ!! 人数が合わないわ」

 

 毎年、忍者アカデミーを数十人単位で卒業する。アカデミー卒業生には中忍以上の担当がついて任務に同行する事となる。毎年、中忍になる人数とアカデミー卒業生の数を鑑みて、スリーマンセルなんて構成は不可能。

 

 つまり、毎年二回の中忍試験以外に中忍になれる方法が存在している事を示唆している。

 

「くっそ、確かにその通りだ。何で、気がつかなかった」

 

「うちはサスケ君、気がつかないのも無理はありません。担当上忍の方が意図的に伏せていたんでしょう。中忍試験で合格者を出したら、大名達の鼻も高くなるので、担当した忍者には色々便宜が図られます。担当していた下忍が死んでも構わないと思わせるほどです」

 

 全員が全員そうだとは一概に言い切れない事実もある。だが、大名から直々に賞賛され、多額の金と叶えられる範囲の望を聞いてくれたりと様々な事も、また事実である。

 

 挟間ボンドルドの言葉を否定しようにも、理論的に成り立っており、嘘だと証明する術が下忍達には無かった。

 

「それで、肝心の中忍になる他の方法を教えてくれってばよ!!」

 

「勿論です。一つ目は経歴ロンダリング。簡単な話、暗部に入隊する事です。暗部を出る時は最低限中忍以上となります。これははたけカカシ上忍が詳しいでしょう」

 

「「「………」」」

 

「二つ目は他里への出向。同盟国へ何年か行く場合に、里はしれっと下忍であっても中忍として派遣します。その方が貰えるお金が多いですからね。無事に出向が終われば、そのまま中忍になります」

 

「「「……」」」

 

「三つ目はコネです。依頼などで大名などの里のスポンサーと親しくなり推薦を受ける事です。主にくノ一や医療忍者はこのパターンが多かったりします。理由は、言わないでも分かりますね?」

 

「「「…」」」

 

「四つ目はヘッドハンティング。有能な忍者は他の里からスカウトがあります。上忍待遇で里に来ないかという話です。まぁ、これは抜け忍扱いにもなるので余程実力がないとお勧めできません」

 

「もう、いいってばよ」

 

 中忍試験に一番意気込んでいた、うずまきナルトが挟間ボンドルドの話を止めた。知りたいと請われたから教えたのに、酷い対応である。

 

 他にも、任務中にビンゴブックに載るほどの忍者を捕獲したとか、偶発的にSランク任務に携わり貢献したとか、規定数以上のCランク及びDランク任務を行ったなど、方法は多種多様存在する。

 

………

……

 

 第二次試験が始まる時間になった。

 

 未だに心の活力が回復しきっていない第七班。だが、時間が止まるわけでもない。挟間ボンドルドは無慈悲に開始を告げる。

 

「皆さん、第二試験の開始です。貴方達には期待しています」

 

 挟間ボンドルドは信じていた。こういう場面は、主人公が馬鹿をやって皆のやる気を回復させる事を。だから、彼に出来る事は見送ることだけだ。

 




みんな大好き二次試験の始まりだ!!

作者の記憶と調べた情報だけで執筆するのも
限界になってきたので、Bookoffにでネタ集めもし無ければいけない。


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11:三次試験予選(裏)

 抜け忍が追われる理由はその体にある。強い忍者を育てる為に、隠れ里では秘薬などのドーピングを行っている。他にも、どのような毒に耐性持っているか、調べる事は多々存在する。

 

 中でも、価値があるのが血継限界を持った忍者の死体だ。例え死んだとしても、移植する事で他の忍者に能力が継承できる物も存在している。その有名な例が白眼や写輪眼だ。まさに、忍者の肉体とは宝物庫だ。

 

 よって、二次試験で死亡した他里の忍者は木ノ葉隠れの里によって丁寧に回収され、調べ尽くされる。救護班は解体し、サンプルを取得し、里の秘密を丁寧に紐解いていく。そして、元通りにする。3代目火影の言葉を借りるなら、死人の救護という事だ。

 

 これはAランク任務にも相当し、火影自らが解体・修復現場を視察する。

 

「これは重要な任務じゃ。彼等を知る担当忍者にすら感づかれないように元通りにして返す。挟間ボンドルド、元より綺麗にして返すのでは無く、元の状態で返すんじゃぞ。そこを忘れるでない」

 

「勿論です、3代目火影様。それと、なにやら表が騒がしいようですが、何かありましたか?」

 

 挟間ボンドルドを含む医療忍者は、誰しもが任務に忠実であった。顔色一つ変えずに次々に処理していく。だが、神経を使う作業でもあるので外が五月蠅いと作業効率と品質が落ちる。

 

 集められた受験生にメスを入れようとした所、心臓が動いている事に挟間ボンドルドが気がついた。第二試験で巻物を勝手に開封した愚か者であり、身動きが取れない状態にされていたところを回収されていた。

 

「中忍試験に大蛇丸が潜入した。暗部を多く動かしているだけじゃ。それと、息のある受験生は忍者として信用ができない連中じゃ。回収した他里の忍具があるから、今のうちに間引いてやれ」

 

 研究され尽くされた忍具も死体と一緒に返却される。木ノ葉隠れの里は実に優しい場所であった。忍具と死体を返してくれる里なんてほぼない。しかも、返却の際はお子様は優秀でしたが運が悪かったと火影直々に書状を送っているほどだ。

 

 そのお陰で、里で埋葬できると先方から感謝状すら届く事も多い。木ノ葉隠れの里のイメージ戦略は完璧であった。

 

「医療忍者に、身動き一つ取れない受験者を殺せとは3代目火影様は恐ろしい方だ」

 

「ふん、今更良心が痛むとでもいうのか? 医療忍者は研究と実力を上げる為、色々やってきたはずじゃ。特にお主には、本来禁書に分類される綱手が残した資料も解禁した」

 

 生きた忍者や人間の解剖。どうやれば、医療忍術の効率を高められるかなど人道に反する事は行ってきた。だから、今更受験生をこの手で殺すなど別段何とも思っていない挟間ボンドルド。

 

「私は思うのですよ。こう言う場合、集める段階で殺しておくべきだと思います。死を偽装され、万が一惨状が露見する方が困ると思います。そういう、手抜きをすると後で痛い眼をみると考えます」

 

「……そうじゃの。可能性は排除しておくべきだ。お主達が受験生に同情して見逃す事もあるかもしれん」

 

 3代目火影が指をパチンと鳴らすと、控えていた暗部が生きていた受験生にトドメをさす。里を守るという、強い意志……火の意志がそこには宿っていた。

 

◇◇◇

 

 3代目火影からの直々の特命を終えた挟間ボンボルドは、本来の業務に戻った。今まで患者が全く居なかったのに、三次試験予選で負傷者が大量発生していた。下手に怪我をさせるくらいなら、いっそ殺しておいて欲しいとすら思う程だ。

 

 挟間ボンドルドは音忍の腕も元通りに復元し、木ノ葉隠れの忍者も治した。そもそも、大蛇丸のスパイで木ノ葉崩しをする予定の連中を攻撃される側の里の忍者が治すってこと自体、理解不能な状況だ。

 

 暗部がしっかりと仕事をしていれば、拷問部屋に直行の連中だ。

 

「医療忍者は治療する事が任務ですが……担当上忍として、もう少し早く止めにはいれなかったのでしょうか。はたけカカシ上忍、猿飛アスマ上忍」

 

「いやーー、女同士のプライドを賭けた戦いだったものでな。後、サクラの後にサスケの事を頼むわ」

 

「だよな~。後に遺恨を残さないためにも止めるわけにいかなかった」

 

 春野サクラと山中いのの治療に当たっていた。医療忍術により外傷及び内臓へのダメージ、おまけで膜まで回復する。中でも肌と髪への治療は入念に行われた。彼女達二人が目覚めた時、肌と髪が元通り以上となっていれば大層喜ぶだろう。

 

「おや? そういえば二人は、イメージチェンジでもされたのですか? 私の記憶が確かなら、髪は長かったと思いますが……まぁ、治しておきましょう。不必要でしたら、後で美容室にでも行って貰ってください」

 

「おい、待てボンドルド!! アンタ、髪を伸ばせるって事はハゲも治せたりするのか?」

 

 猿飛アスマが重大な事実に気がついた。

 

 最近、生え際が後退してきた猿飛アスマは藁にもすがる思いだった。男はハゲと言うだけで女性からの評価が下がる。これから思い人と良縁になろうとする男にとって、ハゲ治療ができる医療忍者など千金にも匹敵していた。

 

「治せますよ。これでも医療忍術を買われて特別上忍になりました。ですが、私はハゲ治療の専門家にはなりたくないので、内緒です。個人的な依頼ならば、この位でお受けしましょう」

 

 挟間ボンドルドがAランク任務の報酬額を提示した。上忍ともなれば払えない額ではない。ハゲにならなくなるなら安い値段でもある。

 

「結構高いな。焼き肉を奢るとかじゃ駄目か?」

 

「私は、生え際が後退しつつある猿飛アスマ上忍が思い人に何の治療もしないままアタックしたとしても困りません。ですが、生え際が後退している男性と後退していない男性……どちらが魅力的でしょう」

 

「諦めろアスマ。挟間ボンボルド特別上忍は、こう見えて金に五月蠅い。値上げや気分を変えられないうちに支払った方が賢明だ。あ、俺は払うから頼むわ。最近、前髪で誤魔化してはいるが、気になっていてな」

 

 美容と健康は、医療忍術にも繋がる。

 

 そして、健康な肉体には健全な精神が宿る。つまり、挟間ボンドルドの精神は健全である証拠だ。

 




3代目火影ならこの程度はやってくれるはず。
忍者のトップに立つ一人だからね。


次は、三次試験まで一ヶ月くらいインターバルがありましたよね^-^



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12:休息時間(裏)

いつもありがとうございます。

感想本当にありがとうございます。
執筆意欲がわいてきて大変有り難いです!!


 中忍の三次試験に向けて、出場する受験生は己の技を磨く訓練を始める。そんな大事な時間を病院のベッドで過ごす事を快く思っていないうちはサスケが(くすぶ)っている。

 

 挟間ボンドルドははたけカカシからの頼みもあり、うちはサスケの治療に当たっていた。医療忍術で対応可能な箇所については完璧な仕上がりだ。

 

「相変わらず見事な腕だね。それで、ソッチの方もどうにかならない?」

 

「大蛇丸様謹製の呪印。医療忍術とは畑違いです。自然エネルギーを体内に取り込む為の物でもありますので、仙術使いに診て貰う方が早いでしょう。私でも不可能とは言いませんが、同じ呪印を持つアンコ特別上忍という尊い犠牲と長い時間を頂きたい」

 

「出来ないとは言わないあたり、凄いことなんだけどね。……で、なんで様付けなの? もしかして、挟間ボンドルド特別上忍もスパイだったりする?」

 

「抜け忍にこそなっておりますが、あの人が残した資料は里へ多大な貢献をしました。医療忍術の発展にも一役買っております。医療忍術の使い手として、万能の天才である人を尊敬しているに過ぎません。それが、例え抜け忍であってもね」

 

 大蛇丸の貢献度を考えれば、人体実験を行っていた程度で追い出される事は不自然だ。そもそも里主導、暗部主導などでその手の人体実験など何処でも行っている。場合によっては、一介の忍者ですら自己鍛錬のため行っている事だってある。

 

 はたけカカシとて、自らの所行で一つや二つ程度は心当たりがある。

 

 だが、大蛇丸の場合は時期とタイミングが悪い。4代目選出にあたり、出馬したが選挙で負けてしまった。つまり、里として火影という地位を餌に獰猛な蛇を飼い殺しに出来ない状況となった。

 

 大蛇丸推薦派の勢力を削ぐ為、通常ならば全く問題としなかった人体実験の責で呪印を用いて使い潰す計画を企てていた。その結果、大蛇丸の方が一枚上手で逃げ切る。

 

「そんな事はどうでも良い、カカシ!! さぁ、次はリーを見てくれ挟間ボンドルド特別上忍。ココの医者や他の医療忍者じゃ手に負えないとお前だけが頼りなんだ」

 

「分かっております。既にカルテは確認済みです。しかし、ロック・リー君は運が良いです。他里に遺体を返却する前でよかった。彼の体格に合う移植用の手足が里には豊富にあります。リハビリ期間は必要ですが、忍者を辞める必要はありません」

 

 大事な部下が忍者を続けられる。ただ、それだけでマイト・ガイは涙を流した。そして、挟間ボンドルドの手を握り、深く頭を下げてお礼を述べる。

 

 だれもが、忍者を止めるしかないと言う中、只一人移植する事で忍者を続けられると言ってくれたのだ。忍者の移植手術の難易度は高い。チャクラの流れる経絡という物が存在しており、正しく移植しなければ忍術使用に弊害が残る。

 

「ありがとう!! 本当に、ありがとう!!」

 

「頭を上げてくださいマイト・ガイ上忍。私は医師として当然の事をしているだけです。未成年の場合、本人だけでなくご両親の同意を取る必要があります。午後に時間を作りますので、ご参集をお願いしても?」

 

「任せておけ!! 」

 

 マイト・ガイはサスケの病室を飛び出した。

 

 挟間ボンドルドは移植手術をしなくてもロック・リーを治せた。だが、そんな事実をこの場にいる誰も気がつくことが出来なかった。

 

 原作キャラの最後まで生き残る一人。その手足に僅かでも魂が付着していれば、強い"祝福"を持っているに違いないと考えていた。

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、原作組達への治療を終えて次の仕事に取りかかっていた。

 

 この時期、彼は大変忙しい。影分身を里に残して本体は里の外……砂の国へと向かっていた。目的はその道中で野晒しにされている4代目風影の遺体。大蛇丸にとってすれば、研究価値が低いかもしれないが、挟間ボンドルドには宝の山であった。

 

「やはり、人海戦術しかありませんね。カートリッジの予備は多くは無いのですが、必要経費です。影分身の術」

 

 カートリッジが8個も消費され、20体を超える影分身が姿を現した。そして、発見された場合も考慮し、全員が音忍に変化する。元々、音忍の仕業なので化けていたとしても国際問題にはならない。

 

「カツユの逆口寄まで15時間です」

 

 感知系の忍者である挟間ボンドルドが一列にならび、隙間無い探索が開始される。火の国から数時間も調査し、砂の国の岩石地帯にさしかかった。そこからが大きな問題であった。

 

………

……

 

 木ノ葉崩しを想定し、砂の国の忍者達が国境沿いに集結していた。よって、感知系のボンドルドとはいえ、バレずに入国し砂の国を調査する事はできなかった。その為、次々と影分身達の経験がフィードバックされる。

 

 残り5体まで減らされた所で吉報がフィードバックされた。影分身の一人が風影の死体を確保し、保存処理をして遺体を隠す事に成功した。

 

「遺体は置いていくしかありませんか。回収は、後回しにしましょう」

 

 忍者足るもの機を逃さない。

 

 本来であれば、本体の挟間ボンドルドが遺体を巻物に収めて逃げ切る予定であった。だが、砂の国の忍者達を相手にこれ以上、場に留まるのは得策でないと判断する。彼は、木ノ葉崩し後になれば、砂の国への移動はフリーパス状態になるのを知っているので無理はしない。

 

「そういえば、この時期は温泉街に自来也様が来ておりましたね。帰り際にご挨拶に伺っておきますか。では、安全に帰るために。置き土産です――口寄せの術!!」

 

 挟間ボンドルドがチャクラを練り込み契約している"タマウガチ"を呼び出す。この子もカツユと一緒に人工的に作り出した口寄せ動物だ。真っ白なポメラニアンのような可愛い子である……サイズは3m程もあり、子犬とは程遠い大きさだ。

 

【パパ!! 呼び出すなら、砂漠は止めてって。毛が砂だらけになっちゃうでしょ】

 

「水場で綺麗にしてあげますので、少し砂の忍者相手に暴れてきてください。危なくなったら帰って問題ありません」

 

 タマウガチの頭をなでで、行けと命令するボンドルド。包囲網に穴が空いたところを挟間ボンドルドは抜けて、火の国への帰還を果たす。砂の国は、国境付近で大量に忍者の死体が出来たなど公開する事も出来ず泣き寝入りする結果になった。

 

 

◇◇◇

 

 温泉街のビルの上。

 

 自来也が夜風に当たっている。一人の来客――光る仮面を付けた挟間ボンドルド。

 

「相変わらず、怪しい奴じゃのぉ。ボンドルド」

 

「自来也様。事前に連絡を頂ければ盛大にお迎えを致しましたのに、私一人で申し訳ありません。それと、お元気そうでなによりです」

 

「やめぃ!! 自来也様とか、ミナトに似た声で言われるとゾッとするわい」

 

「……自来也先生、お帰りなさい」

 

 伝説の3忍である自来也と交流を深める為にも、4代目火影の口調をマネて話しかけていた。中の人が同じなのだから、この程度造作もない挟間ボンドルドであった。

 

「ミナ…。悪ふざけは、その程度にしておけボンドルド。で、何のようじゃ? お主が儂を慰労するためにここまで来るわけないだろう。それと、儂のことはガマ仙人と呼べ」

 

「やはり、ガマ仙人様は話が早くて助かります。取材に協力するので、高等忍術を教えて頂きたい。里の特別上忍では知り得ない忍術も貴方ならば多々ご存じのはず」

 

 印を知った所でその術が使いこなせるとは別問題だ。チャクラ性質なども関わってくるし、高等忍術が必ずしも強いというわけでは無い。だから、教えたところで自来也としては何の損も発生しない。

 

「医療忍術だって高等忍術じゃろう。綱手が不在の今、お主より優れた医療忍者はおらんと聞いている。悪いが医療忍術を昇華したいならば、綱手を頼れ」

 

「戦闘向けの忍術や特殊な忍術を知りたい。お恥ずかしい話ですが、娘がもうすぐ産まれるので英才教育をしようと思っています。ですが、木ノ葉隠れの里の卒業試験は親としては賛同できません。忍者アカデミーに入れる気はありません。私自身が教えるために覚えておきたい」

 

 自来也も木ノ葉隠れの里に受け継がれる卒業試験は身を以て知っている。だから、挟間ボンドルドの気持ちも理解できた。子を思う親ならば当然の答えだ。

 

「まぁ~、そう言う事なら……印やコツを教えるだけならいいか。どのみち、上忍にでもなれば情報が少なからず解禁されるから、少し早いか遅いかだけじゃろう」

 

「それは有り難い。そう言って頂けると信じて、最高級遊郭をご用意させて頂きました。貴方好みの女性も用意させて頂きましたので、今宵はお楽しみください」

 

 若かりし頃の綱手にそっくりに外科手術を施した女性や綱手をベースに色気を足したパターンなどを金で用意した挟間ボンドルド。師から最高の指導を得るため、最高の環境を用意するのは弟子として当然である。

 

 出費こそあるが、自来也の遺伝子情報も手に入るのだから安い出費だ。

 




次は、三次試験本戦!!

忍者の仕入れ時までもうすぐだ。尋問部隊からの中古払い下げも購入手配しておこないとは。新しい忍者が手に入るんだし、古いのはいらないよね!!

※原作と違い、サスケとリーが早期復帰しています!!
 そして、風影の遺体は砂隠れの里側で発見できなくなりました。


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13:水遁・月に触れる(ファーカレス)

何時もありがとうございます。

感想や誤字脱字ご指摘本当に嬉しい限りです。

執筆意欲になりますので、本当にありがとうございます。


 中忍の第三次試験本戦、大名達もこの目で試合を楽しむ為、会場のVIP席で優雅に楽しんでいた。だが、VIPばかりを守っていたのが原因で観客に偽装した敵勢忍者が紛れ込んでいるのにすら気がつかない。言い逃れできない杜撰な管理体制。

 

 他にも国境を越えて木ノ葉隠れの里周辺に大量の忍者が潜んでいる事すら発見できていない。ここまで用意が周到だと、木ノ葉隠れの里内部にも協力者が居る事を疑うレベルだ。

 

 試験に合わせて、木ノ葉崩しが行われる事を知っている挟間ボンドルドは、何時も通り通常出勤する。彼にとって、里にある家が崩壊したとしても痛手にはならない。大事な(カツユ)(プルシュカ)は、別の場所だ。数ヶ月巣ごもりしても足りる物資も買い込んでおり、原作通りに行かない場合に逃亡準備も整えていた。

 

 本戦は順調に進んでいる。

 

 その証拠に敗北した日向ネジと奈良シカマルの手当を挟間ボンドルドが行っていた。その付き添いには、彼等の担当上忍達(ガイ・アスマ)も同行している。

 

「いやー、医療忍術ってすげーーわ。怪我する前より調子がいいんだけど。俺より重傷だったネジの方もあっと言う間に治しているし……俺も本格的に覚えようかな」

 

「やめておけシカマル。医療忍術ってのは確かに便利だが、センスが問われる。今までのお前を見てきた限り、適性はないな。後、ボンドルド……(頭部生え際の後退)の治療だが、来週末あたりに頼んだぞ」

 

 大声で会話している場所が医務室で無ければ問題無いが、音量を控えるべきである。日向ネジは、治療を終えたが未だに寝たままだ。

 

「挟間ボンドルド特別上忍!! ネジは、大丈夫なんだろうな!! 腕前を疑っているわけじゃないが、何故目覚めない!?」

 

「治療した私の見解としては、日向ネジ君は九尾のチャクラで顎の良いところにクリーンヒットしました。治療は完璧です。無理に起こさず、自然回復させるべきだと判断します」

 

 九尾チャクラの影響と言われては、誰も強く出れない。上忍達は忖度できる人達であった。

 

「大事な事ですが、医療忍術を受ける前提で闘う事はお勧めしません。戦いの側に医療忍者がいる方が希なのを忘れないでください。こんな戦い方をしていたら、何時か死にますよ、この子達」

 

 それから、日向ネジを残して全員が会場へと戻っていった。白眼を持つ子供を挟間ボンドルドの側に置いて帰るなど、一定以上の信頼を勝ち取っている証拠。彼がその気になれば、白眼を持って他里に亡命する事も簡単だ。

 

 挟間ボンドルドは試験の様子を部屋で観察している。会場にはカメラが大量に設置されており、監視の目が光っている。カメラの一部は、他里の忍者研究のために試験の様子を全ての角度から収めていた。その映像を医務室でも確認できるようにしている。

 

 うちはサスケと我愛羅の戦いは、誰が見ても下忍レベルでない。観客席に居る額当てをした無能な忍者達は、下忍になって数年もしない連中に負けて心が折れないのだろうか。そういった意味では、本当に鋼の精神である。

 

 一般人にしても、この様子を見て楽しむより不安に思う気持ちはないのだろうか。刀や銃を持った人間より忍術が使える子供の方が圧倒的な殺傷能力を持っている。

 

「おや?……あぁ、制御室がやられましたか」

 

 幻術が始まったと思った瞬間、全てのカメラが停止した。

 

 音忍か砂忍か犯人は分かっていないが、手際の良さに挟間ボンドルドは木ノ葉隠れの里も見習うべきだと思っていた。監視カメラを完璧に潰すあたり、馬鹿では無い事の証明だ。

 

 初代、2代目、3代目の戦いを生で見られる機会など金を払っても不可能。しかも、忍術の応酬が見られる。挟間ボンドルドは、万が一に備えて事前に用意していたビデオカメラを片手に、もう片方の手には日向ネジを持ち、現場に向かうことにした。

 

 日向ネジに関しては、会場に居る一族にでも預ける算段だ。大切な眼はお前等で守れというスタンス。白眼を狙ってくる忍者もいるかもしれない。貴重な宝は持ち主(日向一族)に厳重保管して貰うという考えは正しいものだ。

 

………

……

 

 医務室を出て、うちはサスケ達が先ほどまで激戦を行っていた場を歩む異質な忍者……挟間ボンドルド。

 

 木ノ葉隠れの里の者達は医療忍者の重要性を知っているので、何故このタイミングで戦場に出てくるかと困惑していた。出来る事なら、医務室でずっと待機して仲間の救護をして欲しいと言うのが彼等の思いだ。

 

 日向の当主は挟間ボンドルドの片腕に抱えられた日向ネジを確認した。白眼を手土産に、音か砂に寝返る可能性を考え、即座に詰め寄った。

 

「きさま!! 白眼が狙いか!!」

 

「あぁ、良いところに来てくださいました。日向宗家でこの子を守ってくださいね。護衛も居ない医療忍者では彼を守るのは難しい」

 

「わかった。ネジはコチラで預かろう」

 

 木ノ葉隠れの里で最強と謳われる日向の……白眼に全く興味すらない様子に肩すかしを食らう宗家の者。お荷物を手放せた挟間ボンドルドは、足を速めた。急いで撮影を始めないと一世一代の場面を逃してしまうと。

 

 日向ネジの身柄を受け取った宗家の者達は即座にその場を離れた。

 

 大事な事だが、医療忍者とは敵側からしたら率先して潰しておく人物だ。負傷した忍者が何度も治されては冗談では無い。つまり、その場に居る砂と音の忍者は、優先的に挟間ボンドルドを狙う事になる。

 

 砂隠れの忍者が、試験会場を闊歩する挟間ボンドルドの前に立ち塞がる。そして、排除を始めた。

 

「馬鹿が死ねぇーーー!! 風遁・カマイタチの術」

 

「風遁・真空波」

 

 挟間ボンドルドは自慢の外装にチャクラを通わす。そして、敵の術をしっかりとカメラに収める。

 

 忍術に対する基本的な行動は、対抗術で相殺か回避だ。その両方をしない忍者など自殺者でしか無いので、下忍の担当上忍達は焦った。色々と世話になった優秀な医療忍者を失うのは大きな損失だ。

 

 だが、今からでは間に合わないと誰もが挟間ボンドルドの死を予想した。こんなことなら、誰か救護室に護衛を送るべきだったと。

 

 風の見えない刃による攻撃。その土埃が晴れた時、無惨な死体は何処にも転がっていない。あるのは、先ほどまで同様に歩みを続ける医療忍者だけ。

 

「殺傷能力が高い術だと完全には防げませんか。新素材で作った新しい外装に細かい傷が付いてしまいました。なので、貴方達の血で直させて貰います」

 

 大きくジャンプして、殴り掛かる挟間ボンドルド。極めて単調な攻撃である為、回避される。だが、その拳は忍者を狙ってなどいない。会場の地面に拳が当たり、ドコンと爆音が響き、地面が大きく割れ、捲れ上がる。

 

 木ノ葉隠れの里の医療忍者とは、中に巨人でも入っているのかと思わせる威力だ。

 

「距離を取れ!!」

 

 怪力忍者だと予想し、咄嗟に遠距離戦闘に変更するのは正しい判断。忍者は、なぜかジャンプして距離を取りたがる謎の行動がある。空中では体勢変更が極めて困難だという事を彼等は知らないのだろうか。

 

「素晴らしい。この木ノ葉崩しという極限状態の中でも忍者の判断力や術の威力が全く落ちない。ですが、行動が単調です。水遁・月に触れる(ファーカレス)――閉じろ!!」

 

 挟間ボンドルドが腕に付けている筒から漆黒の網が広がり、忍者達に襲いかかる。網の中に忍者達を捕らえた瞬間、『閉じろ』という命令が実行される。網が一瞬で閉じ、中に居た忍者は物言わぬ肉塊へと成り代わっていた。

 

 そして、網を伝って忍者の血液が挟間ボンドルドの外装に注がれる。血中に含まれる鉄分を外装が吸収し、元通りになっていた。




流石にGWも終わったので
投稿速度を緩やかにさせてクレメンス。

次回は、大蛇丸様に今年の抱負でも聞こうと思います!!


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14:混ぜるな危険

いつもありがとうございます。
感想も本当に嬉しい限りです!!


 大蛇丸の部下達が発動させた結界術の外で、挟間ボンドルドはビデオカメラを用いて撮影を開始した。その様子に、結界術が解けたタイミングで加勢に入ろうと考えている暗部達から睨まれる。

 

 奇妙な行動が大蛇丸の眼にも止まる。研究されない為、全ての監視カメラを使えなくした。だが、堂々と撮影されてはその意味も薄れる。何もせず待機している無能な暗部より遙かに厄介だと大蛇丸は感じていた。

 

「久しぶりね~、ボンドルド。貴方は、まだこんな里に居たのね。こんな無能な里にいるより、私の所に来ない? 待遇は保証するわよ」

 

「ご無沙汰しております、大蛇丸様。スカウトなら、私より有能な上忍達からにしてください。そうしないと、私が殺されてしまうでしょう」

 

 「それもそうね」と、大蛇丸は納得した。どう考えてもこの場で抜け忍になりますと宣言したら、横に居る暗部だけでなくはたけカカシも敵に加わるだろう。そうなれば、挟間ボンドルドは無事では済まない。

 

 大蛇丸は火影候補だけあって、当時の下忍から上忍までの全ての顔と名前を覚えている。性格面を除けば本当に火影に相応しい男であったのは間違いない。だからこそ、殆ど会話した事がない挟間ボンドルドの事すらしっかりと覚えていた。

 

「きさまぁ!! 敵に様を付けるだと!! 音のスパイか」

 

「何か問題でしたか? 例え敵の忍者であっても、尊敬する相手なら様を付けたとして問題とは思いません。それに、大蛇丸様は木ノ葉隠れの里で伝説の三忍と呼ばれた程の御方です。抜け忍となった事実はあれど、偉人である事実もあります。それに、考えてみてください……万が一、木ノ葉崩しが成功したら、大量の忍者が今後の身の振り方を考える事でしょう。どちらに転んでも問題無いようにするのが忍者ではありませんか?」

 

 暗部の連中は、挟間ボンドルドの言葉をよーーーく理解できている。

 

 忍界大戦の時にはよく見られた事象だ。規模こそ里レベルでは無いが、故郷の里の不利を悟り、小隊ごと有利な国に亡命。そういった連中が暗部にもいる。

 

「止めておけ!! 挟間ボンドルドは医療忍者だ。火影様の治療にも必要な人材だ」

 

「えぇ、だから撮影中の私をしっかり守ってください」

 

 タダで暗部3名の護衛を手に入れた挟間ボンドルド。これで安心して撮影できると喜んでいた。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは目の前の光景に興奮していた。

 

「素晴らしい、素晴らしいです。これ程、高レベルな忍術の応酬など戦争でも見れないでしょう。ただ、初代様と二代目様の動きがイマイチな気がします。二代目様が考案したという穢土転生を完璧にマスターできていないのか、改良の余地があるのかどちらかですかね」

 

「へぇ~。そこまで見抜けるなんて、流石ねボンドルド。無許可で撮影しているんだから、見逃す代わりに意見の一つでも聞きたいわね」

 

 3代目火影が死闘を繰り返す中、混ぜるな危険が相応しい二人の交流が始める。だが、誰も止めようとはしない。大蛇丸の気が変わって、初代と二代目と一緒に闘う事をすれば、三代目火影が更に窮地になるからだ。

 

 だったら、他の事に気を取られていた方が何倍もマシである。

 

「穢土転生のベースとなった忍者の質が作用しているとかは、考えられますか? 火影レベルを穢土転生するのに、並みの忍者で降ろせるとは思えません」

 

「残念ね。穢土転生の素晴らしいところは、生け贄によって左右されない事よ。下忍だろうと上忍だろうと、変わらない事など既に研究済みよ」

 

 穢土転生……二代目以外に使い手がいなかった高難易度の禁術。それに関する研究情報は価値があった。ビデオカメラの前だというのに、気前よく教えてくれる大蛇丸。大蛇丸は、自らを様付けして呼ぶボンドルドの事は嫌いでは無かった。尊敬していると言われて誰も悪い気などしない。

 

「では、意志を縛りすぎなのが原因ですね。穢土転生は忍者の固定概念を覆す術なのはこの目で理解しました。ですが、呼び出した穢土転生体に裏切られる事が無い様に制約で縛り付けていると推測します」

 

「……なるほど。命令を実行しようにも常に穢土転生体が反抗の意志を見せているから、制約と命令が常に行われているという事ね。あり得るわね~、初代と二代目を相手に三代目がここまで長持ちする訳がないもの。他には、何かないかしら?」

 

 自分では気づかなかった視点からのアドバイス。有能な忍者は相手の言う事を全否定しない。取り込むべき意見や視点があるならば、思考し必要可否を判断する。それだけの能力を大蛇丸は持っていた。

 

「今、起爆札で破損した初代様の肉体は中身が空洞ですよね? つまり、生前と比較しても体が軽いと考えます。外見こそ同じですが、中身がそこまで違えば当の本人達にとっては別人の体にも等しいでしょう。力が十全に発揮できない事があっても不思議ではありません」

 

「いいわね、ボンドルド。こういう有意義な話ができる相手が少なくて本当に困るわよね。どうやら、お喋りはココまでのようね。三代目にトドメを刺しにいかなきゃ」

 

 大蛇丸が草薙の剣を取り出し、遂に戦闘を始めた。

 

 大蛇丸を話術だけで長時間止めていた功績は大きい。暗部の連中も文句は言えなかった。その内容が、大蛇丸が更に強くなる可能性がある内容だったとしても。

 

◇◇◇

 

 大蛇丸が舐めプしなければ、三代目を完封できた。だが、原作通りに大蛇丸は窮地に陥り、その両腕を犠牲にした。その結果、結界術を解除し大蛇丸は部下と共に逃亡する。

 

 屍鬼封尽による攻撃が始まってから、初代火影の木遁が視界を遮るだけで無く、死神はカメラにも映らない。つまり……撮影している挟間ボンドルドの暇な時間は終わった。

 

「結界術が解けた!! 挟間ボンドルド、早く火影様の治療を。後の者は、大蛇丸を追えーー」

 

 暗部が格好良く大ジャンプしたところを大蛇丸の部下が糸で纏めて捕縛した。こいつ等は本当に何がしたかったのだろうか。結界術の外で待機していて、術が解けたら大蛇丸共々敵忍者を逃がす結果になった。

 

 実は、こいつらがスパイだったのでは無いかと疑うレベル。

 

「その為の私です。貴方達はもう少し働いてください。自分の仕事に取りかかります。生きてさえいれば、必ず助けましょう。私は医療忍者ですから」

 

 挟間ボンドルドは火影が倒れている場所に急いだ。

 

 現場には、穢土転生で使われた術の残りや火影のサンプルを手に入れられるチャンス。禁書の一部は、火影の血液が無ければ解錠できない物も存在している。

 

「おやおや、草薙の剣の一つが…ありませんか。猿魔に回収されましたか。三代目火影は、既に手遅れです。せめて、見た目くらいは綺麗に取り繕ってあげましょう」

 

 医療忍術を使っていると、他の忍達も火影の元を訪れた。そして、医療忍者が居ながら、なぜ火影を助けられなかったと責める者達も少なからずいる。だが、四代目と同じ封印術を使った事を知ると挟間ボンドルドを責める者も引き下がった。自らの魂を犠牲にして相手を封印する術という程度は里の忍者達も知っていた。

 

………

……

 

 3代目の葬儀が行われる中、挟間ボンドルドは自来也と会う。里の被害は甚大であり、負傷者の手当で医療忍者は近年稀に見る激務だった。

 

「これは、ガマ仙人様。もしかして、お手伝いをしてくださるんですか?」

 

「儂は医療忍術は専門外だ。用件は分かっておるじゃろう?」

 

 自来也が手を出してクイクイと催促する。

 

「お目当ては、三代目の戦闘映像ですか? それが、急ぐ余りテープを入れ忘れてましてね。録画に失敗していたんですよ」

 

「よく言いよる。暗部連中みたいにそんな言い訳で納得する儂だと思うなよ。ボンドルド、何が欲しい? 忍術は、もう教えてやるほどの物は残ってないぞ」

 

 自来也は挟間ボンドルドが用意した最高級遊郭の見返りに本気で忍術の印からコツを提供していた。人生であれほど楽しい時間を過ごした事は無いと言える取材だったので自来也に後悔はなかった。

 

「草薙の剣……一本は、猿魔が持ち帰ったのが分かっています」

 

「無理な要求を突きつけた後に本命を出す。交渉の基本じゃの~、いいから本命をいえ」

 

「妙木山に存在すると言われているガマの油。仙術を極める際に体に塗ると良いと言われる物だと聞き及んでおります。妙木山以外では、すぐに気化する事までは把握しておりますので、特別な容器をコチラで用意します」

 

 仙術を取得した忍者は、片手で足りる。すなわち、この油を武器に転用すれば如何なる強敵であっても、瞬く間に人間を止めさせる事ができる。これを兵器転用しないでどうする。

 

「どこで知ったかは知らぬが、お主は仙人になれる素質は無いと思うぞ。だが、それでよいなら交渉成立だ」

 

 挟間ボンドルドは、コピーしておいた三代目の戦闘画像を提供した。

 




今週はリアルが忙しくなることが分かったので、
更新は土日までお待ち頂けると幸いです!!

きりよく、中忍試験編まで終わったので、
次回からは、綱手様捜索編?的な感じのアレです。



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綱手捜索編
15:愛娘(プルシュカ)


何時もありがとうございます。

お休み予定でしたが、細かい事はゆるしてください。

感想及び評価本当にありがとうございます!!


 木ノ葉崩しは、里に甚大な被害をもたらした。だが、戦争は簡単には終わらない。木ノ葉隠れの里は、砂と音に降伏しない。大蛇丸が風影に化けていたとしても、砂の忍者が里を攻撃し、死者を多数出した事実は変わらない。

 

 やられたままでは面目が立たないので、選抜された報復部隊が結成されて音と砂へと向かった。風影が行方不明である為、原作と異なり全面降伏になるまで一定期間が生じる。どれだけ人的被害が出たか、計算したくないほどだ。

 

 最終的に木ノ葉崩し後、2週間で両国が火の国に全面降伏。木ノ葉隠れの里は、多額の賠償金と資源を手に入れる。最も、金があっても人材が居ないという窮地であった。

 

 他よりマシだとはいえ、木ノ葉隠れの里も窮地であった。これを機会に、現役引退する忍者が後を絶たない。他にも親族などが大怪我をしたので、長期休暇の申請も多い。今では、里に来る依頼書を処理する能力が平時の1/5程度しかなかった。

 

 こんな時にと誰もが思うが、この時こそチャンスであった。本来、忍者は退職や休暇取得が大変難しい。場合によっては、火影承認が必要になるからだ。だが、今のタイミングならば、火影不在である為、各部署に権限が分散している。すなわち、部署の承認だけで認可される。

 

 出来る忍者達は、このシステムを最大限に利用していた。

 

 挟間ボンドルドもその一人。長期休暇を取得するため申請書を携えて総務まで来ていた。しかも、受付に新人が居る時間を狙い撃ちにする。

 

「えーーと、挟間ボンドルドさんでしたね。休暇理由は、育児休暇。皆さん、この時期に狙い澄ましたかのように申請してきますよね。分かりました、承認します!! 」

 

「お連れの可愛いお子さんが……」

 

 総務の忍者が申請書を確認する。そこには、しっかりと名前が明記されていた。きょろきょろと周りを物珍しそうに見渡す、銀髪の子供。

 

「私、プルシュカ!! 挟間プルシュカっていうの!?ここが、パパの仕事場ね~」

 

「あまりはしゃぐと危ないですよ、プルシュカ。さぁ、里をゆっくり見学してから(大きな)ママの所に行きましょう」

 

 正式な休暇申請が受理された挟間ボンドルドは、愛娘を連れて里の観光へとくりだした。産まれて初めてみる外の世界は、プルシュカには何もかもが輝いて見えていた。

 

◇◇◇

 

 木ノ葉隠れの里に似つかわしくない格好をした可愛らしい子供――プルシュカ。だが、挟間ボンドルドの肩の上におり、父親も里に似つかわしくないので皆納得していた。彼女は、復興中の里を楽しげに見ていた。あれは、なんだ。これは、なんだろう。外の世界は彼女には大層面白い場所だった。

 

「ねぇ~、パパ。カツユママはどうして、変化していないといけないの?」

 

「ママは、一部の界隈では有名人。だから、外だとこうして変化をしていないと大変な事になるんですよ。それと、人が多い場所ではメーニャ(カツユ)ママと呼ぶ約束ですよ」

 

 プルシュカの帽子から、兎のような不思議生物が飛び出してきた。外でカツユを連れ歩くのは目立ちすぎる為、こうして変化している。可愛い我が子にいつでも付き添っていられるカツユも大満足であった。

 

『この日をどれだけ待ちわびた事か!! ほらほら、私とボンドルド様との愛の結晶を見て見て!! 可愛いでしょ』

 

「おやおや、メーニャも負けじと可愛いです。里の外に出る前に、ダンゴでも食べていきましょう。プルシュカもダンゴで構いませんか?」

 

 挟間ボンドルドの肩の上で満面の笑みを浮かべる少女。

 

………

……

 

 暁コートを着た先客(イタチ、鬼鮫)がいるダンゴ屋。挟間一家は何の躊躇も無く、彼等の近くの席に座る。

 

「パパは、何のお団子にするの?」

 

「ゴッホゴホ」

 

 プルシュカが挟間ボンドルドの事をパパと呼ぶと、客の一人がむせかえった。お茶が気管に入り苦しんで居る。

 

「おやおや、うちはイタチさんではありませんか。ご無沙汰ぶりですね。娘のプルシュカといいます。プルシュカもご挨拶なさい。里の抜け忍で、とっても強い忍者ですよ」

 

「へぇーーー、挟間プルシュカ。よろしく、オジさん。あと、そっちのオジさんも!!」

 

 子供から見れば、年上はだいたいオジさんであった。

 

「くく、私をオジさん呼ばわりは構いませんが、イタチさんまでオジさんとは将来性がある子供ですね」

 

 干柿鬼鮫も、オジさん発言に苦笑した。

 

「娘が失礼を。干柿鬼鮫さん、うちはイタチさん。娘の非礼のお詫びに、お代は私が受け持ちます。それに、ダンゴ屋の外で首を長くしてお待ちの方々も……」

 

 ダンゴ屋の外には、下忍の担当上忍者達(カカシ、アスマ、紅)が揃っていた。そして、中の様子を見て困惑している。S級の指名手配犯と談笑する幼女。更には、その幼女の父親が挟間ボンドルドだと知る事になった。

 

 はたけカカシと猿飛アスマは、男として挟間ボンドルドには負けていないと思っていた。独身で絶対自分の方が先に結婚すると考えていた。だが、既に子供まで居たことで敗北の味を知った男達。

 

◇◇◇

 

 水路のほとりで、妻と娘と一緒にくつろぐ挟間一家。

 

 火影同士の戦い程では無いにしろ、上忍とS級指名手配犯の戦いを観戦する。子供にとっては、派手な水しぶき、不思議な爆発と興味深いようだ。

 

『危ないから、あんまり近付いちゃだめよプルシュカ。ママ、貴方に何かあったら本体を動かしちゃうから』

 

「もう~、メーニャママは心配性なんだから。私だって、少しは忍術を使えるのよ。それに、何かあってもパパとママが守ってくれるもん」

 

「ははは、そうでしたね。ですが、忍術は人前で余り多用してはいけませんよ。目立ってもいい事はありません」

 

 と、常識を言った挟間ボンドルド。だが、目の前で人目も気にしない大技を使っている忍者達がいる。説得力の欠片も無い言葉になってしまった。

 

「すごーーい、すごーーい」

 

 プルシュカにとって、初めて見る忍者同士の殺し合い。その派手さに心が躍っていた。子供が忍者に憧れるのは、これが原因だ。

 

「楽しい時とは短いもの。勝負がつきました」

 

 万華鏡写輪眼の月読……精神世界の中で何度も殺されるという極悪非道の技。だが、木ノ葉隠れの里の忍者は忍者アカデミー卒業試験、下忍卒業試験、中忍卒業試験である程度の拷問耐性を持っている。それがなければ、はたけカカシも廃人になっていた可能性が濃厚であった。

 

 家族で一家団欒している所、はたけカカシを抱えた猿飛アスマが仲間と共に駆け寄ってくる。長期休暇中の同僚に仕事を持ち込んで来るとは、忍者とはブラック企業である。

 

「ボンドルド!! 良いところに居た。カカシを診てくれ」

 

「分かりました。それと、何時も申し上げておりますが、医療忍者を当てにしないでください。何時も側に居るとは限りません」

 

 挟間ボンドルドは治療を始めた。だが、外傷は殆どない。精神的なダメージよる昏倒だと直ぐに判明した。平常時の脈圧と心拍数に戻す事で回復を待つほか手立ては無い。

 

「ねぇねぇ、おばちゃんは私が治してあげるね。パパより上手にはできないけど、上手いんだから」

 

「おばちゃんって、私は……嘘でしょ。この子、掌仙術を!?」

 

 夕日紅は、戦闘で負った傷が癒えていくのを見て驚いた。高度な医療忍術を、こんな年端もいかない子供が使ったのだ。親が医療忍者だとはいえ、恐ろしい才能を垣間見る。

 

「はたけカカシ上忍の治療は終わりました。恐らく、かなり高レベルの幻術を食らったのでしょう。外傷ではなく、精神的な疲労から来る昏睡です。安静にしておけば直に目を覚まします。プルシュカ、実に素晴らしい医療忍術でした」

 

「私、パパの力になれた?」

 

「勿論です。貴方が娘で、パパは誇らしいです」

 

 見た目からは想像すらできない完璧な父親像を見せ付けられる上忍達。あの挟間ボンドルドがパパとか口にしている時点で幻術かと本気で疑い。必死で解をする皆。

 

「感謝するわ、ボンドルド特別上忍。まさか、こんな可愛い子に治療されることになるなんて思ってなかったわ。で、ダンゴ屋に居たと思ったら、何故こんな場所に? 子供を連れてくるような場所じゃないわよ」

 

「娘と里の観光です。遠出する前に、里を見せておこうと思いましてね」

 

 遠出。その言葉に首を傾げる上忍達。こんな大事な時期に医療忍者が里から出かけるなど許されるのだろうか。不眠不休で働く忍者も多い。加えて、S級の指名手配犯まで現れる始末だ。

 

「今、里は大事な時期なのよ!! 何処も人手が足りないのに数少ない医療忍者が居なくなるなんて」

 

「里に居れば安全という神話は崩れました。だからこそ、妻とプルシュカの安全を最優先に考えるのは間違いでしょうか。勿論、無許可の遠出ではありません。里から許可を頂いた上での正式な休暇です。一人の忍者である前に、私は父親。家族を大切にする事がそれほどまでに罪でしょうか」

 

 原作ネームドキャラは良心がある。そこを突けば、イヤとは言えない。なにより、夕日紅は猿飛アスマと恋仲であった。もし、ここで家族を捨てて仕事をしろといってしまえば、妊娠した場合でも仕事を休みませんと自らが宣言するなもの。

 

「パパ、ママの所に行けないの?」

 

 涙目で訴えるプルシュカ。空気を読んですかさずフォローするのは、流石は挟間ボンドルドの娘であった。芝居であっても、その様子に上忍達の心を抉るダメージが入る。

 

「そうなってしまうかも知れません。すみません、プルシュカ。次回は、ちゃんとママの所に連れて行ってあげます」

 

「この間も次回って。一体いつ、ママに会えるの。酷いよ、産まれてからずーーと(おおきな)ママに会った事ないのに、今回は絶対会えるって約束したのに」

 

 想像の斜め上を行く重い話に夕日紅はタジタジだった。そんな複雑な家庭事情など考えていなかった。話の流れ的に、プルシュカは挟間ボンドルドが一人で育てたと聞こえる。更には、実の母親は何かしらの事情で別の場所にいると。

 

「なぁ、紅。何も言わずに行かせてやるのが仲間ってもんだろう」

 

「ちょっと、アスマ!! なんで私が完全に悪者みたいに言うのよ。貴方達だって、少なからず同じ事を思っていたでしょう。私だって、そんな事情を知ってたら何も言わなかったわよ」

 

 誰も、泣く子とボンドルドには勝てなかった。

 




大事な事ですが…ストックはこれで無くなってしまった!!

土日まで本当にお待ちを。


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16:抜け忍

いつもありがとうございます。
感想本当に嬉しい限りです!!


 挟間ボンドルドが木ノ葉の里を出た頃、猿飛アスマは総務へと足を運んでいた。彼の狙いは、挟間ボンドルドが提出したという休暇申請書だ。

 

 卑の意志を継ぐ木ノ葉の忍者……その筆頭であった三代目火影。その火影の命令で、九尾事件の被害者であり、人柱力を快く思っていない連中は火影の息の掛かった手練れの忍者によって処理されている。

 

 猿飛アスマもそんな黒い事に手を染めている一人である。忍者である為、任務があれば例え女子供でも手に掛ける。立派な忍者であった。当然、立派な忍者は、正規の手順を踏まずに人様が提出した書類を確認する。

 

「アスマさん、困りますよ。部署が違う方が、書類を閲覧するのは越権行為です」

 

「わりーな。コッチも仕事なんでな。えーーっと、挟間ボンドルドの申請書は……休暇申請少し多くないか。里が緊急事態だってのに」

 

 挟間ボンドルドの書類なんて簡単に見つかると思っていた猿飛アスマの考えが甘かった。この時期だからこそ、大量に申請がある。そして、数十枚めくったところで、ようやく申請書を発見する事ができた。

 

 申請書に不備はない。だが、不備が無ければ、不備を作れば良い。簡単な事だ。

 

「あぁ、挟間ボンドルドさんの書類ですか。風変わりな方ですが、皆さんあの人くらい書類をしっかり作って欲しいです」

 

「ふーーん、中忍試験の時は妻が子供を妊娠していると言っていたな。挟間プルシュカね~」

 

 猿飛アスマの記憶が間違いで無ければ、年齢と子供の成長度合いが合わない。無論、常識では計れないのが忍者だ。血継限界や特異体質の可能性だって存在する。

 

「そうそう、休暇申請を出さずに里を出た忍者がどうなるか知っているか?」

 

「アスマさん、ワタシはこう見えて総務ですよ。知らないと仕事になりません……えっ、何ですかこの札束?」

 

 猿飛アスマは、ニッコリと笑った。

 

「これだけ多い休暇申請書だ。誰が申請に来たかなんて覚えてないだろう。金を受け取って忘れるか、物理的に忘れさせられるか選んで良いぜ。俺はどちらでも手間にならない。だが、賢いなら前者を薦めるね」

 

 今は亡き、父親からの仕事を引き継ぐ男。

 

 猿飛アスマは、挟間ボンドルドの書類に火を付けた。だが、総務もそれを止める事はできない。上忍の猿飛アスマ。猿飛というネームバリューは、未だに健在であった。

 

「――」

 

「交渉成立って事だな。大丈夫さ、何かあったら(お前等が)責任を取るから」

 

 猿飛アスマは、心の中で謝った。悪いな、恨みは無いが親父から依頼されている仕事は無期限なんだと。地獄で挟間ボンドルドが三代目火影に会えれば、息子がしっかりと任務を真っ当したと伝わる。言わば、メッセンジャーにするつもりでもあった。

 

 こうして、挟間ボンドルドの所に暗部の卯月夕顔が猿飛アスマによって派遣された。火影亡き今、暗部の権限を一時的に親族であった猿飛アスマが握っている。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、娘のプルシュカを"タマウガチ"の背に乗せて旅路を楽しんでいた。プルシュカにとって父親との初めての旅行……しかも、大きな母親(カツユ)に会う為であり、楽しさは倍増している。

 

「ねぇねぇ、パパ!! ママって本当にすごーーく!! すっごく大きいんだよね!?」

 

「えぇ、木ノ葉隠れの里で一番大きな建物と同じ程度のサイズですよ。それでも何十分の一程度ですけどね」

 

『全くです、未だに誰も完全に私を呼び出せた人が居ないほどなんです。でも、プルシュカちゃんなら出来るかも知れません。だって、ママとパパの子ですもん』

 

 娘の膝の上で抱かれるメーニャという謎生物に擬態化しているカツユ。彼女も大概親ばかであるが……うずまき一族とうちは一族の両方の血を兼ね備えた彼女ならば、チャンスはある。更に、挟間ボンドルドが加わる。足りないチャクラをカートリッジで補充すればいいという回答が既に出ている。

 

『パパ、ママ!! 僕の事も忘れたら駄目だからね!! 』

 

「勿論。貴方は、プルシュカの兄的ポジションです。兄は妹を守るんですよ」

 

 挟間ボンドルドは、"タマウガチ"を撫でる。犬のようにぶるんぶるん尻尾を振り、周辺の草木をなぎ払っている。大型の白い犬もどきに乗る美少女、それを見守る温かい両親。まさに、幸せの模範回答がそこにはあった。

 

………

……

 

 挟間一家が、宿場町へと歩いていると道中で身に覚えのある二人に出くわした。うずまきナルトと自来也だ。螺旋丸という高等忍術を習得する為、訓練をしていた。だが、高等忍術と呼ばれるだけあって、誰もが簡単に習得できる物では無い。

 

 知り合いに旅路で会って無視する様な人間ではない挟間ボンドルド。

 

「これはこれは、ガマ仙人様とうずまきナルト君ではありませんか。奇遇ですね、このような場所で術の特訓ですか?」

 

「ボンドルドか。……そっちのちっこいのは?」

 

 "タマウガチ"が自来也から距離を保つ。相手の間合いを察して、瞬時にプルシュカを連れて逃亡できる構えをしていた。勘が優れているだけあって、闘っても勝てない相手には逃亡が一番だと本能で理解している。

 

 自来也とて"タマウガチ"が危険動物である事は見ただけで分かった。少なくとも、現在のうずまきナルトでは太刀打ちできないだろうと。

 

「私、挟間プルシュカ!! よろしくね、おじいさん!! そっちの金髪のお兄ちゃんも」

 

「おじいさんって……儂ってそんなに年に見えるかのう? この白髪は、ファッションじゃ!! ファッション!!」

 

「よろしくってばよ。で、なんで挟間特別上忍がこんな場所にいるんの? もしかして、俺の治療をしてくれるとか!? それとも、あの波の国で見せてくれたスパラ何チャラって必殺技を教えてくれるとか!!」

 

 忍術が使える者ならば、誰もが憧れる必殺技。

 

 必殺技とは……その名の通り、必ず殺す技。

 

 相手を一撃で殺す事で、生存率を上げる。医療忍者は、最後まで生き残って仲間を治療する為、攻撃より回避が最優先とされる。だが、異色の医療忍者挟間ボンドルドは、防御力と回復力、それと必殺技で相手を殺す。

 

「うずまきナルト君も必殺技が欲しいという事ですか」

 

「そうだってばよ!! エロ仙人から教わっているけど、なかなか進まなくて……」

 

 挟間ボンドルドは、自来也の意思を確認した。修行途中に、外部から雑念を入れるのはよいのか判断に迷ったからだ。彼は、自来也との敵対の意志はない。強い者には巻かれるタイプである。

 

 行き詰まった修行の息抜きも兼ねて挟間ボンドルドの必殺技を披露する事になった。螺旋丸がどれほど優れた術であるかを他の術と比較し、理解させる事で修行へ熱を入れさせる算段を立てていた。

 

 だが、その時、第三者の気配。

 

「ボンドルド、お主の客人かの~?」

 

 挟間ボンドルドの前に、木ノ葉隠れの暗部が現れた。暗部の名は、卯月夕顔。

 

「抜け忍、挟間ボンドルド。殺す前に聞きたい事がある。砂隠れと共闘してハヤテを殺したのは本当か」

 

「実に面白い発言をなさいますね。休暇申請が受理されている忍者を抜け忍とは酷い物言いです。まぁ、その殺気から何を言っても無駄ですね。ガマ仙人様、必殺技をみせる代わりに正当防衛の証明をお願いしますね。では、うずまきナルト君……必殺技がどういう術かをお見せしましょう」

 

 自来也は、どちらにも加勢しない。

 

 忍者の世界、勝った者が正義である。それに、長い人生で彼はこのような状況など腐るほど見てきた。欺し欺されが忍びの世界。

 




時期的に忙しくて吐きそう……。
話が進まなくてごめんなさい。

必殺技とは、食らった時点で相手を殺す技で無ければならない。


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17:必殺技

いつもありがとうございます、作者です。

感想や評価をありがとうございます。
執筆に対する燃料で大変嬉しいです^-^

感想で、読者の皆様の「卑の意志」が垣間見れて本当の楽しい!!



 挟間ボンドルドは、考えていた。

 

 この状況において、誰が一番得をするのか。忍者という人的資源は価値がある。暗部と医療忍者……どちらも技術に特化した職だ。その両方を争わせる事でメリットがなければ、やる価値は無い。

 

「パパーー!! がんばってーー」

 

 父親(挟間ボンドルド)の勝利を疑わないプルシュカ。その声援に応えるかのように手を振る挟間ボンドルド。

 

「可愛い娘ね。そんな子の前で、父親を殺すのは気が滅入るわ」

 

「おやおや、ではお帰り頂いても構いませんよ。無理でしょうがね……闘う前に一つ聞きたい事があるのですが、いいでしょうか?」

 

 この時、挟間ボンドルドが一番聞きたかったのは、先ほどからハヤテと言っている人物が誰なのかだ。火に油を注ぐような発言だから、彼は大人の配慮をした。

 

「誰からハヤテの事を聞いたかなんて答えないわよ。暗部を舐めないで頂戴」

 

「その程度の事でしたら、おおかた推測が付いておりますので構いません。暗部の方は、暗殺特化の筈なのに、馬鹿正直に私の目の前に立っている事が不思議なんですよ。暗部の定義が乱れるとは思いませんか?」

 

 あたりが静かになった。誰もが思っていたはずの事だ。暗部という定義を乱した。それに、仮面を付けるより変化の術で姿を変えた方が暗部として良いのでは無いだろうか。視界を遮る仮面を付ける事で視野が狭くなる。更には、口から術を発動する忍術が軒並み使用不能になるのだから、本当に意味が分からない。

 

 どの系統の忍術にも言える事だが、半分近い術が口から発動する。

 

「……そんな事はどうでもいいのよ!! ハヤテの仇よ!!」

 

「貴方よりチャクラコントロールが優れている私に幻術など無意味でしょう」

 

 抜刀した卯月夕顔は、幻術と組み合わせた暗殺術を披露する。チャクラを纏った刀は、挟間ボンドルドを絶命させる為、首へと狙いが定まる。その速さは、暗部に恥じないものだ。

 

 彼女も幻術が解かれる事など予測済みであった。だが、身体能力で言えば確実に上だと思っており、解かれる僅かの間に倒すつもりだ。風の性質変化で強化された刀は、大木すら簡単に切り落とす。

 

 挟間ボンドルドが幻術を解除すると同時に、彼の首元からガンと分厚い金属に何かが当たる音がする。彼女は、なおも刀に力を入れる。しかし、どう頑張っても刀は挟間ボンドルドの外装を貫く事はできなかった。

 

「っ!! なんて、堅さをしているのよ!! 」

 

「ご自慢のチャクラ刀でこの程度ですか。それで、もう終わりですか? 折角、新調した外装です。暗部相手の戦闘データも欲しいので存分に試して頂いて構いません」

 

 挟間ボンドルドは、その場から一歩も動かなかった。

 

◆◆◆

 

 うずまきナルトの中で、忍者の定義が乱れつつあった。目の前で一方的に、忍術を使う暗部。そもそも、うずまきナルトの中では挟間ボンドルドは、医療忍者として助けてくれるいい人に分類されている。そんな彼をよく知らない暗部が攻撃していること自体快く思っていない。

 

「なぁなぁ、エロ仙人。なんで、挟間特別上忍は、一方的にやられているんだってばよ」

 

「はぁ~、見てわからんのか。あの暗部の術の威力を10とする。だが、ボンドルドの防御力は50だ。つまり、圧倒的な火力か手数でも無い限り、避ける必要なんてないって事だ」

 

『流石、自来也様。良い戦力分析です!! あの外装は、チャクラを流す事で飛躍的に防御力を向上させます。更に、鉄分を補給する事で自動修復も可能とした最強の鎧の一つでしょう。いっけーーー、ボンドルド様!!』

 

 メーニャが挟間ボンドルドの戦闘に興奮して思わず、地声で話してしまった。口寄せ動物が喋るナルトの世界においても、一番の美声を誇るカツユ。その声は、自来也とて聞き覚えがあった。

 

「今の声……お主、まさか!?」

 

「おじいさん、メーニャママの知り合い? えーーと、お外でママの本当のお名前は言っちゃ駄目ってパパが言っていたの。だから、おじいさんも言わないでね」

 

 自来也の中で、プルシュカという存在がより分からなくなった。メーニャと呼ばれている謎生物が、カツユであると確信した。だからこそ、カツユをママと呼ぶ少女は一体何者なのか。

 

 一つの最悪の可能性が自来也の中で浮かび上がった……綱手と挟間ボンドルドの間に産まれた子供ではないかという結論だ。それならば、カツユをママと呼ぶのも理解の範疇だ。酒とギャンブルに入り浸っている綱手が育児放棄したところをカツユが甲斐甲斐しく面倒をみる。そこからママと呼ばれるというストーリーが実にシックリときた。

 

「そ、そうか。わかった……で、プルシュカと言ったか。どうしてこんな所にいたんだったかな」

 

「大きなママに会いに行くの!! パパが言うには宿場町に行けば会えるっていうから。産まれてから一度も会ったこと無いから楽しみなの。きっと、会いに行ったら喜んでくれるよね」

 

 その言葉に衝撃を受けた自来也。なんていい子なんだ。産まれてから一度も会った事がない母親に会うのがそんなに楽しみだとは。外道に落ちたのは大蛇丸だけだとばかり思っていたが、もう一人の3忍にもお灸を据えなければと真剣に考えていた。

 

 

◇◇◇

 

 自来也とプルシュカが何故かフレンドリーになっている最中、父親である挟間ボンドルドは、卯月夕顔からの猛攻を耐え忍んでいた。

 

 卯月夕顔は、原作でも後半まで生き残る事が確定しているネームドキャラだ。所々で登場しており、"祝福"を持った存在だ。下手に殺し損ねるとより強くなって登場したり、窮地になると謎の助けが出てくる可能性がある。

 

 擬似的にとはいえ、同じ"祝福"を集めて取り込んで居る挟間ボンドルドは、手を抜かない。必殺技で確実に一撃で殺す考えだ。

 

 そして、ようやくその時がやってきた!!

 

 忍術の連発で一瞬怯んだ隙を狙い挟間ボンドルドは卯月夕顔を捕らえて、地面に押し倒した。マウントポジションをとり、印が組めないように両腕を足で潰す。

 

「がっ!!くっそ」

 

「うずまきナルト君、今から必殺技をお見せします。プルシュカは、遠くへ逃げておいてください。後は、分かっていますね」

 

 その言葉で全てを理解したプルシュカは、"タマウガチ"と共に凄まじい速度で遠ざかっていった。それが何を意味するか、他の者達には理解できない。

 

「挟間特別上忍、もう勝負はきまったってばよ」

 

「関係ありません。では、八門遁甲の強制解放をお見せしましょう」

 

 挟間ボンドルドは、ロック・リーの手術の際に八門遁甲の影響を入念に調査した。そして、外部から強制的に解放する方法を手に入れたのだ。その術の為に、貴い犠牲が大量に出たことは否定できない。

 

 極めて高度な医療忍術が出来る挟間ボンドルドだからこそ、可能とした技術。

 

 八門遁甲の全てに、針のように鋭くしたチャクラを順に差し込み強制解放する。八門遁甲を全て解放すると火影に匹敵する程の力を得られる代わりに、必ず死ぬという技だ。

 

「あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「苦しいでしょう。肉体が限界を超えたチャクラを絞りだそうとしているんです。ですが、安心してください、代わりに絶大な力が得られま――」

 

 挟間ボンドルドが台詞を言い終わる早く、遠くに逃げたプルシュカによって逆口寄せされた。タイムリミット付きで強化された卯月夕顔。初めての八門遁甲で激痛に悩まされながらも、あたりを見渡すが目的の人物は誰も居ない。

 

「こ、これが必殺技だっていうのかってばよ?」

 

「まぁ~、確かに必殺技じゃの。少なくとも、儂にはボンドルドのような事はできないがな」

 

 卯月夕顔は、何処に逃げたかも分からない挟間ボンドルドを探す術もなく、時間切れまで惨めな自分を哀れんで涙した。

 




そういえば、道中で暁とナルトが出会う話があったが……
ボンドルド達は関わらずママにあいにいきます!!(多分)






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18:医師

いつもありがとうございます。

感想評価本当に嬉しい限りです。


 木ノ葉隠れの里において、三代目が死んだ今、多大な権力を掌握しているのが御意見番の水戸門ホムラ、うたたねコハル。そして、木ノ葉の暗部養成部門「根」の創設者である志村ダンゾウだ。

 

 そんな三人が一介に集まっていた。

 

「挟間ボンドルドが勝ったようだな。それで、次も誰か送るのか? もしも、本気で奴を殺す気があるなら、「根」からも精鋭を出そう」

 

「不要じゃ、ダンゾウ。砂隠れと同盟が締結した状況で、不穏な種はこれで摘まれた。それに、挟間ボンドルドはこの状況になっても帰属意識は高いようだ。九尾の子とも、繋がりがあるようだから、抹殺対象から除外してもイイ頃合いだろう」

 

 水戸門ホムラは、里の維持を最優先に考えている。だからこそ、再同盟を組んだ砂隠れと問題になる種は摘んでおきたかった。その種というのが、暗部の卯月夕顔だ。中忍試験中に恋人を砂隠れに殺された。その復讐心は強く、いつ爆発するか分からない。

 

 御意見番という地位を活用すれば暗部の一人くらい亡き者にするのは難しくない。

 

 だが、それでは意味が無い。自らの手を一切汚さず、第三者が自発的に行動できるように場を整える。自らの評価を一切下げること無く事を解決させる。

 

「やはり、アスマに暗部の権限を一時的に持たせたのは正解じゃったな。ヒルゼンが死んでもなお行動してくれるのだから扱いやすいわい。総務には、此方から手を回しておこう」

 

 もう一人の御意見番であるうたたねコハルがお茶を飲みながら、猿飛アスマの行動を評価した。

 

 木ノ葉隠れの里では、九尾を宿す うずまきナルトを丁重に扱っている。目的は、ただ一つ……飼い殺しだ。その為、帰属意識を高めるのが大事な事だ。だからこそ、九尾に排他的な連中を少しずつ闇へと葬ったり、暗部から腕利きのはたけカカシを担当上忍として付けたり手筈を整えた。

 

 更には、うずまきナルトが思いを寄せる春野サクラが同じ班になった事も彼等の手の内である。

 

「九尾のチャクラを完全に制御下におけるならよし、おけない場合は例の計画を進める。ダンゾウ――分かっているな?」

 

「あぁ、分かっている」

 

 尾獣を使ったチャクラ爆弾の研究。その膨大なチャクラを破壊という一点利用する事で、周囲の環境ごとなぎ払う人型爆弾。人道に反する計画が裏では進められていた。原理は至って単純……起爆札の原理を尾獣で行う。

 

「アスマから聞いた情報だが、挟間ボンドルドがハゲ治療を行える。研究成果として提出はされておらん。不在の今、奴の家を隅々まで洗っておけ。チャクラ爆弾の研究もいざとなれば奴の責任にする。今のうちに証拠も仕込んでおけ」

 

「相変わらず人使いが荒い。この年になってからハゲ治療でもしたいのか。まぁ、「根」としては、当然請け負う。対価として、先日提出した予算に判子くらいは貰えるのだろうな」

 

 木ノ葉隠れの里は、人的資源は減少している。だが、金銭面では余裕があった。砂隠れと音隠れからの賠償金。更には、相続人が居ない死者の財産を没収。復興税などを掛けていた。

 

 卑の意志は、三代目亡き今も確実に受け継がれていた。

 

◇◇◇

 

 "タマウガチ"は、久しぶりに鮮度の良い人肉を食べられて大満足だった。忍者の肉は、栄養価が高く、口寄せ動物達には人気であった。その為、強い口寄せ動物は死後にその肉体を貰うという条件で契約する者達も居るほどだ。

 

 挟間ボンドルドは、卯月夕顔が死んでからしっかりと遺体を処理した。身ぐるみを剥いだ上で、口寄せ動物の餌として。

 

「パパ、暇~。まだ、着かないの?」

 

「そうですね~、近くの宿場町で一泊していきましょうか。ガマ仙人様やうずまきナルト君もこの先にいるでしょうからね」

 

 自来也達は、挟間ボンドルドが死体処理をしている間に先にある宿場町へと向かっていた。その道のプロが、忍者の解体ショーを披露してくれるのに見ないで先に行ったのだ。人体の仕組みを理解する機会だったのに、非常に惜しいことだ。

 

………

……

 

 宿場町の方へ進むと挟間ボンドルド達の前方から暁コートを着た二人組が駆けてきた。考えようによっては、万華鏡写輪眼が向こうからやってきたとも捉えられる。だが、その側にいる干柿鬼鮫という特級の存在が厄介であった。

 

 だが、娘の為にもこのチャンスを見逃さないのは父親である。

 

「おやおや、またお会い致しましたね。うちはイタチさん、干柿鬼鮫さん」

 

「こんな所にも木ノ葉の忍者ですか、ここは私がやりましょう」

 

 干柿鬼鮫が前に出る。こんな見た目の男だが、仲間思いのいい人だ。干柿鬼鮫以外の忍者がパートナーだったら、今頃は万華鏡写輪眼が奪われていただろう。

 

「ご安心ください。どうにも、私は木ノ葉隠れの里から抜け忍扱いされているので、フリーの忍者です。私は医療忍者ですから、うちはイタチさんを診てあげます。病人を放置しておくなど人道に反します」

 

「そっちの叔父(・・)さんは、体調が悪そうだね。パパは、凄腕なんだから診て貰えばすぐ良くなるよ」

 

 無垢なプルシュカの前に、良心派の暁二人は屈した。下手な事をすれば、娘共々殺すという事を条件に治療する事になった。

 

………

……

 

 研究施設から機材を取り寄せて、可能な限りの調査を行う挟間ボンドルド。あまりの準備の良さに、怪しさが倍増する。

 

「うちはイタチさん、貴方は殆ど眼が見えていませんね。視力を数字で表すならば0.02程度です。よく、そんな眼で戦えていましたね」

 

「あぁ、写輪眼があれどギリギリだがな」

 

 うちはイタチの眼は、瞳力を使う度に悪化している。その悪化を軽減する方法は、現代医学では存在しない。だが、目が悪いなら対応は実に簡単だ。

 

「視力低下の原因は、恐らく強すぎる瞳術です。このままでは、失明を避けられません。医師としては、早急な移植手術を勧めるのですが……貴方の目は血継限界の結晶です。瞳術を捨てる覚悟ができたら、いつでも声をかけてください」

 

「そうか、やはりどうにも出来ないか」

 

 挟間ボンドルドの医療忍術の腕前を知っていた為、うちはイタチも僅かな期待はしていた。掌仙術による治療で多少改善はしたが、根本的な問題は解決に至らない。

 

「ですが、目が悪いなら補助具を使えば当座の問題は解決します。一応、うちはイタチさんの視力に合わせた眼鏡を用意しました。後は、まだ世に公開していないコンタクトレンズなる忍具も……」

 

「えっ」

 

 うちはイタチにとって、寝耳に水であった。挟間ボンドルドから眼鏡という言葉を聞くまでその発想が無かった。失明しているわけで無いので、眼鏡で補えば当座は凌げる。その事実に今まで気がつかなかったのかと。

 

「良かったじゃありませんか、イタチさん」

 

「見て見てパパ!! このオジさん、パパと同じくらい背が高いの!? 」

 

 プルシュカを肩車する干柿鬼鮫。

 

 コンタクトレンズという忍具を眼に付けた うちはイタチ……最初に眼に飛び込んできたのが幼女を肩車している相方であった。あまりのシュールな光景に幻術を疑う。

 

「それで、お代は幾らほど払えば?」

 

「木ノ葉の里で貴方達の忍術に娘が大変喜んでいたので、そのお礼です。それに、医師として当然の事をしたまでです」

 

「ハッハッハ!! 聞きましたか、イタチさん。私も長い事、忍者をやっていますがここまで胡散臭い台詞は初めて聞きましたよ。あぁ、失礼……悪気は無いですよ。お金の代わりに、鮫肌の鱗を一枚差し上げましょう。お嬢さんの首飾りにでもしてあげてください。きっと、役に立ちますよ」

 

 干柿鬼鮫は、プルシュカの事を気に入ったらしく惜しげも無く、鮫肌の鱗を一枚剥ぎ取って渡してきた。

 

「プルシュカ、人から物を貰ったらなんて言うのかな?」

 

「ありがとう!! 鬼鮫オジさん」

 

 情けは人のためならず とは、この事である。いい事をしたら、巡り巡って自分に返ってくる。挟間ボンドルドは、仮面の下で最高の笑顔になっていた。




リアルが忙しいので来週の投稿がお約束出来ない状況。
なので、今回の投稿でしばらく許してください。


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19:冤罪

いつもありがとうございます。




 とある宿場町で三忍の一人である綱手は、迷っていた。悩みの種は、下忍の頃からの付き合いがあり、文字通り腐れ縁の大蛇丸から持ちかけられた交渉だ。大蛇丸の両腕を治す代わりに、最愛の恋人と弟を大蛇丸が蘇生させるという内容だ。

 

 死人を蘇らせるなど、不可能に近い。だが、二代目火影が開発した穢土転生の術について彼女は知っており、それを大蛇丸が会得していると考えた。

 

「どうしたものかな」

 

「考えるまでもありませんよ、綱手様。三代目を殺したと明言している大蛇丸を私達二人で殺れるチャンスです」

 

 綱手の従者シズネは、この機会を逃さない方針を提示する。

 

 綱手にとって、恩師である三代目を殺した大蛇丸は確かに憎い。だが、半ば里を捨てて長い時間放浪をしている彼女にとって、里への忠誠心など希薄だ。寧ろ、恋人と弟と一緒に新しい人生を歩めるのなら、それはそれで悪くも無いと考えている。

 

 そんな悩みをしている最中、居酒屋に奇妙な一行がやってきた。大人二人と子供二人。挟間一家は、この宿場町でうずまきナルト達と偶然出会い行動を共にする事になった。

 

「おやおや、本当に我々までご相伴に預かっても宜しかったので?」

 

「なーに、構わん。お目当ての人物は同じだろう。また、暁の連中に出くわすかもしれん。戦力は多いに越した事はあるまい」

 

「パパ~、早くお席についてご飯!! プルシュカ、お腹へったぁ~」

 

「エロ仙人、挟間特別上忍も早く飯にしようってばよ」

 

 聞き覚えのある声に思わず席を立った綱手とシズネ。そして、自来也と挟間ボンドルドと眼があう。

 

「自来也!! それに、ボンドルド。なんで、お前達がココにいる!?」

 

「これは、綱手様ではありませんか。探しましたよ」

 

 昼間に大蛇丸に会い、夜にはもう一人の三忍と出くわす。

 

 この時、綱手の中では挟間ボンドルドが何故ここに居るかという方が疑問であった。綱手とボンドルドの関係は、言わば師弟関係だ。医療忍術の開祖と言える綱手。その技術を一番吸収したのが挟間ボンドルドだ。

 

 かつての同僚と弟子。再会も束の間で、綱手の足下にポテポテと可愛らしい女の子が近付いてきて、足にしがみつく。

 

「なんじゃ、この子供は」

 

「大きなママ(を呼び出せる人)!! やっと、会えたぁぁぁ」

 

 状況を理解して、わざと言葉足らずで場を混乱させるプルシュカ。子供だから許される可愛らしい悪戯である。

 

 だが、いきなり知らない子供からママと呼ばれるのは女性側からしたら、困惑の極みだ。

 

「つ、綱手様!! いったい、いつ産んだんですか!? 旦那は誰なんですか!? 私達の誓いは? 裏切り者ーーー!!」

 

「落ち着けシズネ。お前は、私にずっとついて回っていたんだろう。そんな事が無かったこと位分かるだろう。私は、こんな子供を産んだ覚えはない」

 

「ひ、酷いよ。ママに会うのが楽しみでパパと一緒にここまで来たのに。プルシュカは、ママにとって要らない子なの?」

 

 涙目で情に訴えかけるプルシュカ。その騒ぎを聞いた周りの客からも、綱手は白い目で見られる。当然、自来也やうずまきナルトもそれに賛同する。ココまでの道中で、純粋無垢なプルシュカに一定以上に心を開いた二人。

 

「なぁ、エロ仙人。俺ってば知らない女性を悪く言うのは好きじゃ無いんだが、控えめに言って最低だってばよ」

 

「そうじゃの~、儂もあの言い方は無いと思うがな。綱手よ――遠路はるばる可愛い娘が訪ねてきたんだ。もう少し、言い方があるだろう」

 

 周囲に誰も味方が居ない綱手。日頃の行いが酒とギャンブル、そして借金漬けなら当然だ。

 

「プルシュカ、あまり綱手様を困らせてはいけませんよ。それに、初対面の人にはちゃんと自己紹介をするように言いましたよね」

 

「はーーい、パパ!! 私、挟間プルシュカ。木ノ葉隠れの里から、おっきなママに会う為にここまで来たの」

 

 その瞬間、綱手の中に衝撃が走る。自らをママと呼ぶ存在の名字が挟間。つまり、挟間ボンドルドの子供であるとようやく理解出来たからだ。

 

「おやおや、綱手様。今、必死でプルシュカの年齢から、当時の事を逆算されていますね。酒で記憶を無くす事も多いでしょうし、忍術で記憶を封印する事も出来ます。当てにはなりません」

 

 当然の事だが、綱手は無罪だ。そもそも、里を出て以来、挟間ボンドルドと会ったことすら無い。だが、忍術とは便利だ。記憶が操作できないと言い切れないのが事実。それを可能にするだけの技術を綱手は持っていた。

 

『ゆえちゅ』

 

 プルシュカの帽子の中から飛び出して、娘の手の中で現状を堪能するカツユ。同じミスを踏まないカツユは、声色を変えているので綱手はカツユの存在に気がつけない。

 

 掃除、洗濯、料理と一家に一台の口寄せ家政婦扱いされていた事に多少は思うところがあり、今の現状を見れたのでチャラにしてあげるカツユは優しい。

 

「この子供が、ボンドルドの子供?それになんじゃ、この不細工な生き物は」

 

「不細工じゃないもん!! この子は、メーニャママだよ!! おっきなママの代わりにプルシュカとずっと一緒に居てくれたくれたママだもん。酷い事言わないで」

 

 あたりが騒がしくなる。娘がはるばる会いに来たのに、知らぬ存ぜぬだけでなく、母親代わりの生き物に対して暴言を吐く。周囲の客からは酒が不味くなると苦情まで届き始めた。

 

「大丈夫ですよ、プルシュカ。パパが、貴方の事を更に愛しましょう。綱手様に、身に覚えが無いと言うのですから、仕方ありません。本当のママでは、無いのでしょう。本当のママは、メーニャ(カツユ)ママだけです」

 

「綱手よ、お主はいつからそんな薄情になったんだ。確かに、お主とあまり似ていないかもしれない。だが、この子には何の罪も無い。それなのに、遠路はるばる会いに来た子供を無碍にするなど、言語道断!! みてみろ、このボンドルドの父親っぷりを、お前には母親としての自覚はないのか?」

 

 責め立てる自来也。だが、綱手に自覚などあるはずもない。プルシュカの件で彼女が知る事など何もない。しかし、周りがここまで言うとなると、本当に記憶を自ら封印したのではないかと綱手は、考え始める。

 

 そうなると弟子であった挟間ボンドルドと肉体関係があったという事になる。素顔を知らない弟子とそんな関係になるだろうかと。この状況になっては、無いとも言い切れない。

 

 よって、綱手が出した結論は、とりあえずママに成りきってプルシュカを抱くことにした。母性が目覚めればきっと、我が子なんだろうと。

 

「そ、その悪かった。記憶に無くてな……ほら、プルシュカだっけ?ママだぞ」

 

『はぁ? プルシュカちゃんのママは、私ですよ綱手様。いっぺん死んでみる?』

 

 ママに成り代わろうとする綱手にガチ切れで本来の美声で殺意を表すカツユ。

 

 全ての真実を知る挟間一家。だが、知らない者からみたら、産みの親VS育ての親で子供を巡っての醜い争いに見えるだろう。

 

 




ボンドルドは、嘘なんて一つもいってない!!


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20:家族

投稿が出来ずに申し訳ありません。

感想や評価本当にありがとうございます!!

読者の皆様から、執筆意欲となる感想なども頂いているにも関わらずorz


 綱手は、カツユの声を聞き驚いた。

 

 蛞蝓の姿をしていないカツユを見るのが初めてであった。勿論、チャクラがあるので忍術が使えないという事は理論上無い。だが、一度もそんな素振りを見せた事はない。

 

 【蛞蝓 = カツユ】という固定概念が崩れそうになるが、綱手は必死に考えた。

 

「カツユが母親だと!? あぁ、分かった!! そのメーニャの母親がカツユなのか」

 

 綱手は、カツユが去り際に産休と育休届けを出した事を思い出した。

 

 つまりメーニャは、二代目カツユ。綱手の脳内では、綱手とボンドルドの子供がプルシュカとなっていた。どうして記憶を封印したから分からないが、深い事情があって思い出せないのだろうと察する。

 

 腐っても木ノ葉隠れの伝説の三忍と呼ばれ、千住の血を引く女だ。その子孫ともなれば、人質としての価値も計り知れにない。自らの記憶すら封印して情報が漏洩しないようにした可能性もあると考えた。

 

『どうしてそうなるんですか!! プルシュカちゃんは、私がお腹を痛めて産んだ可愛い可愛い愛娘なんです。それなのに、急に母親面で立場を乗っ取るつもりですか。これだから、卑の意志を継ぐ人達は~』

 

 カツユからしたら当然の反応だ。

 

 娘を紹介しに来たら契約者が母親だと名乗りをあげる。産みの親でも育ての親でもないのに、周りから言われてその気になってしまったのだ。カツユとしては面白くない。

 

「考えても見ろ、カツユ。ボンドルドは、人間。カツユは、蛞蝓。カツユが雌として類い希なる女子力を持っていたとしても、越えられない壁という物がある。医療忍術の開祖が言うのだから間違いない」

 

『綱手様、医療忍術は確かに素晴らしい物です。医療忍術だけでは、不可能かも知れません。ですが、お忘れですか? ボンドルド様は、忍術より科学方面の方が優れている事を。後、あんまり母親面していると契約を更新してあげませんよ』

 

「まぁまぁ、綱手様も落ち着いてください。カツユ様も。推測で物を言うより、ボンドルドさんに聞いてみましょうよ。で、正直……プルシュカちゃんは、誰の子供なんですか? ワンチャン、私って事はありませんかね」

 

 驚愕な事ばかりで一周回って、最初に冷静になったシズネ。

 

 伊達に、長年綱手に付き添って無理難題や事後処理をしてきたわけではない。伝説のカモと言われるまでになった綱手が今になってまで生きているのは、彼女がいたからである。

 

 普通、多重債務者である綱手に金を貸す業者などいない。それも、常識的に考えて忍者に金を貸すなど、ありえない。分身の術、変化の術など卑劣な術がおおい。一般人にしたら本人確認が出来ない。更にいつ死ぬか分からないご身分だ。貸す方のリスクが高すぎる。

 

 ならば、どうして綱手が借金が出来るのかというと、返済の実績があるからだ。だが、その返済を一手に請け負っているのがシズネ。綱手が次の宿場町という名の賭博場に行く前日に、金を巻き上げた連中から薬と幻術で金を回収し返済していた。

 

 だが、それだと大勝した賭博場の運営側が何時か気がつく可能性がある。勘の良い賭博運営側は、木ノ葉隠れの里の暗部が突入する。そして、罪を捏造して存在自体を抹消している。犯罪すれすれの後ろ暗い連中が何人死んでも、一般人からしたらどうでもいいので騒ぎにもならない。

 

 御意見番の後ろ盾を持つシズネならばこそ、出来る芸当だ。

 

「何度も言いますが、私の子供です。そして、カツユの子である事も間違いありません。何を勘違いされたか分かりませんが、綱手様は全く関係ありません」

 

 挟間ボンドルドの言葉に、今までの発言を顧みてマズイと考える自来也。

 

「……儂は、そうだと思っていたぞ!! いやーー、良かった。よくみれば、カツユに似た美声だしな。白い肌や可愛らしい性格なんてそっくりではないか。儂の見立てでは、後数年もすれば絶世の美少女、いずれは美女で間違いない」

 

「俺だって、分かっていたってばよ!! 流石に50代で出産はねーって事くらい常識だってばよ」

 

 自来也が挟間ボンドルドから真実を告げられて、華麗に掌を返す。母親としての自覚などと妄言を全て無かった事にして、カツユを褒めちぎる。それに便乗して、うずまきナルトも自らの罪を精算しようとする。

 

『二人とも分かっていますね。そうです!! プルシュカちゃんは、私の可愛い可愛い娘なんです。でも、娘はあげませんからね。欲しかったら、私の本体を倒してからにして貰います』

 

 場が和んだ。娘が母親似だと言われて喜ぶカツユ。

 

 だが、そんな場に取り残された綱手としては、文句の一つも言いたいところだった。だが、ぐっと耐える。カツユという存在は、綱手にとっても大事な存在。ココは、我慢するのが大人だと理解していた。

 

 冷静になりカツユの実子だと想定した場合、いくつかの問題のクリアが必須になる。綱手は、そこに気がついた。伊達に、医療忍術の開祖ではない。

 

「ボンドルド、貴様に聞きたい事がある。母胎はどこで仕入れた?」

 

「流石、綱手様です。カツユの実子だと確信した時点で、プルシュカの出生について当たりを付けましたね。母胎は、波の国で売り込まれた商品を使いました。足は着きません」

 

「貴様は、自分が行った事を理解しているのか? 生命への冒涜だぞ」

 

「二代目火影の穢土転生も同じでしょう。それに、綱手様とて似たような事は試された事があるでしょう。著者:千手綱手『今日の献立1000種』――忍術視点ではありましたが、実に興味深い研究成果でした」

 

 綱手は、嘗て忍界戦争で恋人と弟を失った。

 

 魂を口寄せして別人に転生させる事ができないか研究をしていた過去がある。赤子に対して魂を定着させる研究……それは、すなわち本来居たはずの魂を押しのける事を意味していた。

 

 赤子というのは、魂の定着が不安定であり研究材料としては最適解であった。

 

「貴様は、アレを読み解いたのか」

 

「おやおや、それほどまでにアレを解読できたのが疑問でしたか。これでも、綱手様の教えを学び、吸収し、発展させたと自負しております。安心してください、綱手様より人の命を弄んでおりませんよ」

 

 先駆者がいたので挟間ボンドルドの研究では、これ(・・)については死人はあまりでていない。寧ろ、最小限の犠牲で溢れる程の才能を持った娘を産みだした。

 

「カツユ!! なぜ、ボンドルドの研究に手を貸した!? 」

 

「カツユを責めないでください。愛した女性と子を成したいと思うのは不思議な事でしょうか。血は薄いですが、私の子です」

 

 挟間ボンドルドが両手を広げて、その存在を誇示する。そして、娘への愛を語る。その様子に、酒場の者達も耳を貸していた。

 

「薄い? ボンドルドの子ではないのか。まぁ、お前が子供を作れるわけも……」

 

 ゾクリ

 

 背筋が凍るような殺意に、綱手が言葉を止めた。それ以上、余計な一言を言っていたら間違いなく口寄せ契約が解除されていた。

 

 愛する夫を悪く言うような契約主など要らぬと考えるカツユ。

 

「綱手様、家族とは血のつながりのみを言うのでしょうか。私は、そうは考えません。慈しみあう心が愛する二人を家族たらしめるのです。血は、その助けに過ぎません。愛、愛ですよ綱手様。家族とは、他人同士が作り上げるものです。そこに人種や種族など些細な問題です」

 

「パパーー!! 二人じゃなくて、プルシュカもいれて三人で家族だよ~」

 

 父親の胸に飛び込んでくるプルシュカ。それを抱き上げて肩に乗せる挟間ボンドルド。

 

『そうでしたね、ボンドルド様とプルシュカちゃん。そして、私で家族です』

 

「えぇ、そうでしたね。私とした事がすみません、プルシュカ」

 

 パチパチパチ

 

 周囲から喝采される挟間一家。

 

 その演説を聴いた自来也、うずまきナルト、シズネも同様に拍手した。彼等の中では、挟間ボンドルドの株がストップ高。忍者という世知辛い職業のなかで、ここまで立派な父親は希有だ。

 

 だが、綱手だけが計算をしていた。大蛇丸と挟間ボンドルドの両名に味方して、美味しい何処取りできないかと。彼女は、まだかつての恋人と弟の事を諦めていない。彼女の前には、過去に出来なかった事を実現できる道が二つ用意されている。

 




ごめんなさい、リアルがくっそ忙しくて。
六月及び七月の投稿は絶望的です。

不定期投稿はあるかもしれませんが
一旦は生活を守るため、休載させてくだちゃい。


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21:大蛇丸

多少時間が出来たので、少しでも執筆を…。

ていたらくな作者で申し訳ありません><


 挟間ボンドルドは、忍者の前に一人の医師である。医師とは、治療する事が本分。医療行為に善悪の判断など持ち込まない。

 

 居酒屋で綱手達と別れた挟間一家は、帰り道で大蛇丸と出会った。いいや、大蛇丸陣営が待ち構えていたといった方が正しい。目的は、腕の治療だ。その為ならば、僅かな可能性にすら賭けていた。

 

 大蛇丸の傍らで控えている薬師カブト。彼は、挟間ボンドルドを必要以上に警戒していた。木ノ葉隠れの里に潜入していた際に、集まった情報だけを鑑みれば闘って勝てない相手ではない。その情報が真実ならば…。

 

「まったく、三忍が揃うだけでなく、ボンドルドまでここにいるなんてね。それに、さっきの話を聞いていたわ。カツユの子なんですってね」

 

「おやおや、これは大蛇丸様。木ノ葉崩し以来ですね。可愛いでしょう。ご挨拶しなさい、プルシュカ。この人は、歴代の忍者の中でもトップ10に入るほどのお方です」

 

 敬意を示す挟間ボンドルド。

 

 大蛇丸を警戒するメーニャ(カツユ)だが、挟間ボンドルドが問題無いと制した。大蛇丸は、忍者の中では極めて珍しい理性的な存在だ。それこそ、挟間ボンドルドと良い関係が築けるほどだ。

 

「私、挟間プルシュカっていうの!! パパが何時もお世話になっています。――おじさん、手を大怪我しているね。プルシュカだと、ちょっと無理かな」

 

 大蛇丸の手を確認し、手に負えないと判断する。プルシュカが、医療忍術の掌仙術を引っ込めた。

 

 だが、それが悪手。

 

 プルシュカの年齢で高度の医療忍術が使えるなど、大蛇丸でも想像できなかった。優秀な存在……次代の転生対象となり得る逸材。不幸中の幸いなのは、コンタクトレンズにより、写輪眼の存在が露見していない事だ。

 

「大蛇丸様、この子供……普通じゃありませんよ」

 

「その程度の事、言われなくても分かっているわ。――カツユとボンドルドの子供、欲しいわね。その年で、医療忍術を使えるなんて、才能の桁は埒外。でも、止めておきましょう。私は、どこぞの三忍みたいに、産まれたばかりの赤子を何人も犠牲にした様なゲス外道じゃないもの」

 

 大蛇丸は、何処の誰とは言わないが女性の三忍を非難した。

 

 大蛇丸の研究対象は、主に犯罪者や忍者を利用している。綱手の研究対象は、罪も無い赤子を利用している。人の命が等価と考えるならば、どちらもゲス外道。だが、両者ともアイツよりマシだと心の中で思っていた。

 

「おやおや、大蛇丸様の頼みと言ってもプルシュカは差し上げられません。大蛇丸様の目的は腕の治療の筈。そして、欲しい肉体はうちはサスケかうちはイタチでしょう」

 

『プルシュカちゃんに手を出したら、何処までも追いかけます。プルシュカちゃん、ママと一緒にそのオカマから離れましょうね。オカマがうつると大変です』

 

「失礼ね!! ボンドルド、あのカツユがこんなに失礼な性格になったのは、貴方が原因でしょう。カツユの()として、責任を取りなさい」

 

 大蛇丸は、抜け目がなかった。

 

 元より敵対するつもりもない。可能であれば味方に引き入れる。難しいなら利害関係を築くだけで十分だった。綱手に次ぐ医療忍術の使い手である挟間ボンドルド。更に言えば、大蛇丸同様に幅広い方向に才能を持った男だ。科学分野では、大蛇丸とて一目置いていた。

 

『夫……大蛇丸()は、分かっていますね!! ボンドルド様の妻は、わ・た・し!! よく見れば、大蛇丸様って男前ですね。腕なら夫のボンドルド様が診てくれますよ』

 

 凄まじい手のひら返し。大蛇丸もその変わりっぷりにチョロ過ぎてカツユが心配になるほどだ。だが、同時にその危なさに気がついた。深すぎる愛のため、万が一、身内に不幸があれば、愛が全て憎しみに裏返る。

 

 口寄せ動物の中で特別な地位にいるカツユ。その存在を滅ぼせる者が居ないとまで言われる。まともに闘えば、大蛇丸とて分が悪いレベルでは無い。

 

「なるほど、カツユを先に味方に付けましたか。綱手様程の技量はありませんが、大蛇丸様の腕を診せてください」

 

「分かっていると思うけど、下手な事をしたら殺すわよ」

 

「大蛇丸様。私は、医者ですよ。目の前に怪我をした人が居れば敵味方問わず助けるのは当然です。患者にやましい事など致しません」

 

「大丈夫なのですか、こんな胡散臭い医療忍者に診せて。私も医療忍術はそれなりの腕だと自負しておりますよ」

 

 大蛇丸に、自らの有能さをアピールする薬師カブト。確かに、彼は有能だ。その戦闘力の高さに加え、医療忍術まで使いこなす。伊達に、はたけカカシと同格と自慢するだけの事はある。

 

………

……

 

 それから、挟間ボンドルドは大蛇丸の腕を診た。

 

 例え、診た結果、何の成果が得られなかったとしても大蛇丸は挟間ボンドルドを責める気はない。駄目で元々だ。

 

「分かりきっている事かも知れませんが、これは封印術によって、腕の魂が封印されております。医療忍術でどうにかなるレベルではありません。その為、大蛇丸様が考案した転生術でも回復する事はできないでしょう」

 

「やはり、魂レベルになると私と同じ見解ね。だけど、この状況を はいそうですか と受け入れるほど私は甘くはないのよ。一つや二つくらいは解決案くらい提示できるでしょう。そうすれば、色々と融通してあげるわ」

 

 大蛇丸が水面下で挟間ボンドルドに取引を持ちかけた。数少ない理性的な忍者の二人。

 

 そんな大人の話し合いをしている最中、プルシュカは薬師カブトより医療忍術を活用しチャクラをメスの形に変形させるコツを教わっていた。美少女で誰にでも隔てなく接する事は、最強の武器だ。

 

 子供に自らの忍術を惜しみなく披露する。

 

「患者を治療するのが医師の務めです。大蛇丸様の両腕を封印したのは屍鬼封尽という封印術です。これは、うずまき一族に伝わる秘術。解呪方法が存在しない封印術など存在しません。毒と薬が表裏一体であるように」

 

「いいわね~、貴方はやっぱり凄く良いわ。今後、貴方達一家に危害を加えない事をこの場で約束するわ。その口ぶりからして、解呪方法は知らないのよね?」

 

 大蛇丸が、挟間一家に手を出さないと誓った。勿論、口約束。だが、決して破ることが無いと挟間ボンドルドは確信している。この手の輩は、約束は破らない。

 

「残念ながらそこまでの調査は出来ていません。しかし、屍鬼封尽の亜種といえる忍術ならば使えます。保証はありませんが、大量の生け贄と引き替えならば大蛇丸様の腕の一部を返してくれるかも知れません」

 

「最高よ、ボンドルド!! 今すぐに、その術を使いなさい。報酬は言い値を払ってあげるわ」

 

 さらりと爆弾情報を提示した挟間ボンドルド。売れる恩は、最高のタイミングで出すのが大事だ。

 

 綱手を頼ってきたら、まさかの事態に大蛇丸一同も驚愕だ。

 

「いえいえ、医者として当然の事をするまでです。患者が健康に戻る事こそ、医者として喜びを感じます。しかし、私が使える屍鬼封尽の亜種に使う生け贄は大蛇丸様達でご用意してください。今までの経験から……100人も捧げれば小指くらいは動かせる様にしてくれると思います」

 

「少し数が多いわね。腕が治るなら幾らでも生け贄くらい用意してみせるわ。とりあえず、直ぐにでも実験を始めるわ。その結果で定期的に私の治療をしにきなさい。医師なんでしょう」

 

「えぇ、では正規ルートで木ノ葉隠れの里に依頼をお願い致します」

 

 何をバカな事を言っているのだろうと思った一同だが……暁コートや暁の忍具を提供しているのが木ノ葉隠れの里なのだ。金さえ貰えれば、暗殺任務と暗殺対象の護衛任務の双方すら受けるのが里の方針。

 

 その事実を知った大蛇丸は火影にならなくて本気で良かったとすら思い始めていた。

 

 木ノ葉隠れの里を舐めてはいけない。忍者なのだから、依頼をえり好みするなどあるはずがない。金さえ貰えれば、何でもやる。

 

 




まだ仕事が忙しいですので、次回投稿予定が未定です><

次は、大きなママの登場!!

3忍の大戦が終われば、サスケのがけ忍に@@


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22:身から出た錆

 家族揃って高みの見物を決め込む挟間一家。

 

 今、木ノ葉隠れの伝説の三忍と言われた者達による死闘が始まっていた。ボンドルドの膝の上にはプルシュカがおにぎりを食べながら、忍術の応酬を見て学び取っていた。

 

「ね~、パパ。大きなママは、まだ~?」

 

「プルシュカ、もうすぐです。もうすぐ、綱手様が呼び出してくれます。血のトラウマで今でこそ動きが鈍いですが、それも間もなく終わるでしょう」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトに絶対的な信頼を持っていた。世界の修正力が綱手を復活させると。そうでなければ、ここで全てが終わってしまう。

 

 昨日、宿場町で100人を超える行方不明者が出たというイレギュラーがあったが、全ては順調に進んでいる。それが世界が求める流れだ。

 

 その証拠に自来也は、綱手によってしっかりと一服が盛られていた。綱手の脳内プランでは、第一計画が大蛇丸による穢土転生、第二計画が挟間ボンドルドによる転生術の開発だ。どちらに転んでも障害になりえる自来也の排除に動いていた。

 

「ボンドルドー!! お前も手伝わんかい。今の儂じゃ、少しばかり荷が重い」

 

「ガマ仙人様、動きが悪いと思ったら……綱手様との夜戦で一服盛られましたかな。それと、大蛇丸様と敵対する事はお断りさせていただきます。折角、家族に手を出さないとお約束いただいたのです。私個人としては、どちらの側が勝利しても問題ありません」

 

 自来也の動きが悪いのは、挟間ボンドルドが言うとおり綱手が一服盛ったことが原因だ。自来也程の忍者に有効な毒など、早々に手に入らない。超がいくつも着くほどの凄腕忍者が、単純な罠にはまったのだ。自業自得だ。

 

 流石の自来也も否定できなかった。文字通り綱手の体をはった行動のお陰で自来也は、本来の何分の一の実力しか出せていない。本調子ならば、今の大蛇丸など瞬殺だった。

 

………

……

 

 うずまきナルトの身を挺した行動に感化された綱手は、トラウマを克服した。そして、揃って口寄せの術を行使する。呼び出されたのは、三忍の象徴とも言える口寄せ動物。

 

 カツユ、マンダ、ガマ親分である。睨み合うマンダとガマ親分……だが、カツユだけがソワソワと周りを窺っている。

 

『久しぶりじゃの~。ちょうど蛇革の財布が欲しかったところだ』

 

『食うぞゴラァ!!』

 

 これから激戦になろう試合会場にボンドルドがプルシュカを肩に乗せて近付く。プルシュカは眼をキラキラとさせていた。本当に大きな母親を眼の前にして興奮が抑えられない様子だ。

 

 勿論、ボンドルドの隠れ家には2m級のカツユならばいるが、この大きさは規格外。

 

「ママ!! すごーーーい!! プルシュカも乗せて乗せて」

 

「これほど大きなカツユを呼び出せるとは流石は綱手様です。さぁ、メーニャも情報連携をしてあげてください。あちらのカツユも待ち望んでいるようです」

 

『ちょっと、ガマ親分さん。娘がいるんだから禁煙して頂けますか。全く、大人なんですから、その位の配慮くらいして欲しいものです』

 

『娘って、お前……そのちっこいのが娘?』

 

『ざまーねーな。怒られてやがる。で、大蛇丸――あのちっこいのは本当にカツユのガキか?』

 

 メーニャが大きなカツユと融合し、分裂してからの情報が共有される。ボンドルドの妻として、プルシュカの母としての記憶と経験が引き継がれ、カツユが更に進化を遂げる。生命としての規格が完全にそこら辺の生物から逸脱している存在だ。

 

 そして、情報統合された後に再びリニューアルされたメーニャが戻ってくる。

 

「その通りよ。あの仮面を着けた黒ずくめの男が夫。敵対関係じゃないから、巻き込まないようにね。カツユが本気で敵対すると厄介よ」

 

 マンダとしても信じられない光景であった。

 

 あのカツユが子持ちになったのだ。蛇と蛙は犬猿の仲だが、蛞蝓とは別にそうでもない。それに、巷では紳士で通っているマンダだ。子供の前で母親を攻撃するほど外道ではない。

 

『カツユ、今回は見逃したる。子供の前で母親を攻撃するほど、腐っちゃいねー。ほら、プルシュカといったか、カツユの背中にでも乗ってよーーく戦いを見てやがれ!! 俺様が勝利する様子をな』

 

「ママ、あっちでお話しよう。おっきなママと沢山話したい事があるの。プルシュカ、この日のために一杯勉強もしてきたんだよ」

 

 大きなカツユの足下でプルシュカが母親に抱きついていた。微笑ましい様子に戦いが一時中断するほどだ。

 

 だが、後方に下がろうとするカツユを止める存在……綱手がいた。対外的にも一戦交えていないと立場的に辛い。仲間に一服盛った以上、それをこの機に挽回しておかねば、今後に憂いを残す可能性があった。

 

「駄目だ、カツユ。この場で自来也に協力して大蛇丸を討つ!!」

 

『そういいつつ、昨日は自来也様に一服盛っていましたよね。そして、都合が悪くなったからといって、何事も無かったかのように味方するのはどうかと思います。綱手様、物事には引き際というのがあります。呼び出して頂いた事は大変ありがたく、出来る事ならその恩に報いたいのですが……やらかしすぎです。自分のケツは自分で拭いてください』

 

「あ、はい」

 

 綱手も何も言えなかった。確かに、いいとこ取りしようとして色々とご破算になっている。それを無理矢理無かった事にしようとしたが、理性的なカツユの前には出来ない相談だった。

 

 そんな様子を見ながらボンドルドは、うずまきナルトの治療を粛々と行っていた。シズネも主人である綱手がカツユから正論を言われて謝る様が情けなくなっていた。なにより、喪女同盟の筈なのに、いつの間にか自来也と一夜を共にしていたなど許しがたい裏切りをされていたのだ。

 

 その結果、呼び出したカツユに見放された綱手は、単身で大蛇丸と闘う事になる。

 

◇◇◇

 

 乱戦の結果、原作通り大蛇丸が撤退する結果になった。だが、戦いが終わった後の方が大問題であった。

 

『いやーーー、ママはプルシュカちゃんとボンドルド様と一緒に暮らすの!!』

 

「えぇい!! いい加減に戻れカツユ。チャクラを無理矢理引き出しすぎだ」

 

 眼に入れても痛くない愛娘との別れを拒否するカツユ。その可愛らしい姿にボンドルドが妻を宥める。

 

「大丈夫です、カツユ。何処にいても貴方を思う心は変わりません。プルシュカも同じです。私が呼び出したカツユは、今色々と手が離せないので送り返せておりませんが、今後は定期的に情報連携をするようにします」

 

「そうだよ、ママ!! もう少ししたら仙術を学びにママの実家に遊びにいくから待っててね!! 大好きだよママ」

 

 挟間ボンドルドが呼び出しているカツユは、今大事な調整作業で忙しいのだ。

 

『ママも大好きですよ、プルシュカちゃん。わ、分かりました。代わりに~、祈手(アンブラハンズ)が完成したら、最初にウチに配置してくださいね!! 約束ですから』

 

「えぇ、勿論そのつもりです。カツユに寂しい思いはさせません」

 

 大きなカツユのお腹を優しく撫でる挟間ボンドルド、愛の溢れる行為に彼の株価が更に上がる。つまり、そんな株価の高い存在を部下として扱う事で自らの株価も相対的に上げようと模索する綱手がココに誕生した。

 

 挟間ボンドルドを優遇する事でカツユを間接的にコントロールする。それこそ、綱手が取る道だ。

 




綱手捜索編は、これで終了!!
次は、木の葉隠れの里でサスケが抜けるあたりです!!

追忍部隊がなぜでなかったのか、
そこら辺を作者の独自解釈でいけたらと思っております。

※追忍部隊隊長は、秋道タカカズ!!
 木の葉の「黄ばんだ閃光」と呼ばれ、卑猥針の術を使う凄腕忍者です。下忍卒業試験で腸内マーキングがされており、どうなるかは分かっていますよね?
それだから、木の葉隠れの里では抜け忍がすくないんです。


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サスケ奪還任務編
23:五代目


投稿間隔が延びており申し訳ありません><
スローペースですが、がんばりますのでよろしくお願い致します。


 木ノ葉隠れの里は、五代目火影の就任を里を挙げて祝っていた。

 

 伝説の三忍の知名度は、一定世代以上には凄まじい。なにより、同じ伝説の三忍である大蛇丸への対抗馬として期待されていた面も大きい。特に、綱手が里に戻ると同時に自来也まで里に復帰するともなれば、安心感は倍増だ。

 

 元よりスペックの高かった綱手は、その手腕を十全に発揮した。彼女の当面の目標は、確固たる地位の確立だ。火影になったとはいえ、その命令に従わない忍者が多ければ意味が無い。つまりは、実績を積む事が大事だ。

 

 そこで利用されるのが三代目火影時代に駄目だった点を改善するという内容である。政権交代などでよくある手法だ。前任者達の駄目な部分を直しましたという事でお手軽に実績が積める。寧ろ、それを考慮されて幾つか改善できる点を残して世代交代がされている。

 

 当然、綱手一人では実行が難しいため、選ばれた人材達が個々に執務室で特命を受けていた。呼び出された一人に、挟間ボンドルドも含まれている。

 

「ボンドルド、病院勤務は今この場をもって終了だ。今の作業は全てシズネが引き継いで対応する。これからは、利回りの良い往診をメインで働いて貰おう」

 

「なるほど、確固たる地位を確立するために手頃な功績から付け替えていく作戦ですか。理由の説明と見返りはあると思って宜しいのでしょうか? 綱手様」

 

 医療忍者として、病院に勤め様々な抜本的改革を行っていた挟間ボンドルド。その体制をそっくりシズネに付け替えて我が物にする計画であった。シズネに付け替える理由は、単純に見栄えの問題だ。綱手に長年使えた女性の医療忍者が、医療体制の抜本的改革を行い成功したという方が聞こえが良い。

 

 勿論、分かる者には分かるが……そんな忍者は全体の内の数パーセントも居ない。

 

「無論だ。今や里の忍者不足は、致命的だ。退役忍者の復帰と産休の者達の復帰も検討している。その為には、医療体制が完備されており働きやすい環境を整えていると宣伝もする必要がある。その医療体制のトップがボンドルドでは胡散臭いだろう」

 

「なるほど、一理ありますね。綱手様や私では、イメージ戦略としてはお世辞にもよくないでしょう。私達に比べれば、シズネさんの方が庶民的で受けがいい。で、見返りの方は?」

 

 ぐぅの音も出ないほどの正論だ。

 

 だが、元忍者がその程度の情報に踊らされて復帰するとは、挟間ボンドルドは到底思えなかった。ブラック企業を勤め上げて、生きて退社した人材が今頃復帰するのにはメリットが足りないと。

 

 その事については、綱手も百の承知だ。だが、そのブラック企業に孫や息子がいるならば話は別だ。子供の葬式を挙げたい親なんて居ない……火影の権力を持ってすれば、最前線や危険な任務に忍者を送り込むことなんて簡単な事だ。

 

 退役忍者で腕がそこそこあった者達は、火影に肩を叩かれて、『子供は可愛いよな』と心を折る一言で泣く泣く復帰を始めていた。里の復興のため、血の涙も無い行為――だが、それができてこその火影だ。

 

「三代目火影や御意見番がボンドルドに行ってきた事に関しての正式な謝罪及び慰謝料の支払、挟間プルシュカへの医療忍術の手ほどき、禁術の全面解禁」

 

「一見大盤振る舞いに見えますが……実質、禁術の全面解禁しか旨味が無い事は綱手様も分かっているでしょう」

 

 謝罪や賠償など、今までの事を鑑みれば当然だ。プルシュカへの医療忍術指導など、挟間ボンドルド自身でも十分教える事が出来る。指導とは聞こえはいいが、実質プルシュカを人質にしたいだけだ。往診をさせる為、裏切らない担保を求めている。

 

「だが、有無言わさず成果を奪われるよりマシなのは分かっているだろう。今は、里がピンチ。これを機会に、各方面の成果を吸い上げて火影就任後の成果として活用する」

 

「それで、手を打ちましょう。ゴネて、今朝に水死体で見つかった忍者みたいにはなりたくありません。但し、プルシュカへの医療忍術の手ほどきは不要です。娘は、往診に連れて行きます。里にいるより、外で見聞を広めた方が良いでしょう」

 

 挟間プルシュカは、挟間ボンドルドの研究成果の結晶だ。調べれば色々と、活用できると綱手は考えていた。かつての恋人と弟を復活させるに当たり、全てを他人の手に任せるなど愚かな行為だ。その為、プルシュカを調べ上げたかった。

 

「それならそれで、構わん。では、最初に任務を言い渡す。とある患者(・・・・・)が、両腕を大怪我したので挟間ボンドルドに治療して欲しいと依頼があった。定期的に往診して欲しいとの事だ」

 

「おやおやおや、私の記憶が確かなら似たような症状の患者を診察した気がします。いいえ、邪推はいけませんね」

 

 色々と経由して、本来の依頼人が分からないようになっている。だが、この内容をみてどこの誰からの依頼か分からない綱手ではなかった。しかし、報酬額や里にとって有益な情報を提供するなど非常に好条件であるので、快諾する事にしていた。

 

「馬鹿者!! 忍者が依頼をえり好みしてどうする。忍者とは、耐え忍ぶ者だ……どんな内容の依頼であれ、適正な金を支払うならば、黙って仕事を遂行する。それこそ、あるべき姿だ」

 

「実に、実に素晴らしい考えです。以前の綱手様からは、考えられないような発言。しかし、私はそれに賛同します。使える者は、師を殺した者すら活用する。貴方の忍道は、()の意志を正しく継いでおります」

 

 挟間ボンドルドは、卑の意志が正しく継承されている事を確認した。

 

 里を守り、発展させるためにはこの程度の意志を持たねば、不可能。歴代の火影達がそれを証明している。すなわち、綱手は、正しく火影の仕事を全うしている。

 

 翌日、木ノ葉隠れの里の恐怖の代名詞と言われる追忍部隊隊長――"木ノ葉の黄ばんだ閃光"が出立したと盛大に告知された。表向きな理由は、長期休暇の忍者達の安否確認等。だが、真の目的は、早期に任務に復帰させる事だ。

 

 誰もが正規の手順で取得した長期休暇だから、何の心配も無いと思っていたが……挟間ボンドルドが正規手順で長期休暇を取得したにも関わらず抜忍扱いされ暗部が差し向けられた事も公表された。

 

 それの相乗効果により、本当に長期休暇扱いになっているのか不安になり真っ青な顔をして木ノ葉隠れの里に戻ってくる忍者が列をなした。

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、里からの任務で両腕を大怪我した人の治療にとある場所まで出向いていた。そして、患者の容態を丁寧に診る。今後の方針や薬を処方する。

 

「綱手様は、やはり火影に相応しい。最小労力で最大の成果を持ってくるのですから、血は争えないと言う事なのでしょう」

 

「綱手は、昔から計算高い女よ。私の治療も分かった上で、ボンドルドを派遣しているのだから火影という存在が真っ黒すぎて笑えてくるわ。そうそう、里に帰ったら綱手に渡しておいて欲しい物があるから頼めるかしら?」

 

 大蛇丸の腕は、順調に回復に向かっていた。生け贄さえ揃えば直ぐにでも回復できそうだが、流石に数十万単位の生け贄になりかねないので、大蛇丸とて簡単ではなかった。

 

「勿論。但し、大蛇丸様の往診後、もう一件往診依頼があるのでそちらを終えたらになります。背中に何本も棒が刺さった栄養失調の患者、半身が潰された過去を持つ患者、視力が異常に悪い上に内臓に致命的な病気を抱えた患者などがいるブラック企業の健康診断です」

 

「……大丈夫なのかしら、そんな企業。早く転職した方がいいと勧めてあげなさい」

 

 大蛇丸の意見に賛同する挟間ボンドルド。だが、その企業が元勤め先だとまでは気がつけなかった。

 

 それから、有能忍者達は有益な情報交換を行った。そんな中、挟間ボンドルドはプルシュカが弟妹が欲しいと言っていたのを思い出し、さりげなく大蛇丸に女性への転生を勧める。

 

 将来的に、うちはサスケを手中に収めた時、才能あるうちは一族をその体で産み育てて乗っ取った方が安全で効率的だと勧めたのだ。

 




サスケ*大蛇丸の子供なら、プルシュカの異母兄弟でもあるはず!!
ワンチャンありだよね。


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24:健康診断

お久しぶりです。
ゆっくりですが再開していこうとおもいます。


 挟間ボンドルドは、ブラック企業・暁の健康診断を終えてその結果に苦悩するばかりであった。苦悩の種となっているのは、診断結果が測定不能レベルが殆どだからだ。特に、不死コンビについては、何で生きているのか、研究者の血が騒ぐレベル。

 

 寧ろ、死んだ肉体が動いていると言う方が医師からすれば正しいとすら言えた。

 

「長門さん、背中に刺さっている支柱を除去しましょう。それから、栄養のある食事をすれば改善が見込めます。恐らく、肉体に刺さっている支柱を電波塔代わりにリモート操作し、忍術を行使していると推測できます。このような非効率且つ危険な事は医師として認められません。より安全で効率の良い方法をご提示致します」

 

「っ!! 初診でそこまで分かるなんて……」

 

 長門の力の秘密の一端を診察で暴く危険な医療忍者。というのが、長門の恋人的ポジションの小南の意見であった。だが、それ以上に長門の現状を改善できるならば、多少のリスクは背負う覚悟もある。

 

「安心してください。患者の個人情報は守りますよ。それと、チャクラを本人が負担する術もよろしくありませんね。恐らく、長門さん一人のチャクラで全てのリモート個体分を負担しているのでしょう。フルダイブシステムとカードリッジシステムを組み合わせましょう。お値段はしますが、どうしますか?」

 

 挟間ボンドルドは、自らの研究にも役に立つ長門に目を付けた。そして、彼を救うという事を前面に出して、あらゆる情報を抜き取り研究に役立てるつもりでいる。

 

「言い値を払おう」

 

「これからも木ノ葉隠れの里とは、よろしくお願いしますね」

 

 暁と太いパイプで結ばれる木ノ葉隠れの里。これにより、暁トップである長門の為、事実上、木ノ葉隠れの里との同盟でもあった。敵対勢力と裏で協力関係を築き、表では敵対勢力討伐に向けて軍備拡張を行うという恐ろしい火影が世には存在する。

 

 伊達に、卑の意志を継ぐ者ではなかった。

 

………

……

 

 それからも、ボンドルドは暁メンバーの治療や健康状態改善に尽力した。その間、プルシュカはメンバーから忍術指導を受けるという、凄まじい経験値を獲得する。可愛い子供に優しいのは忍者とて同じであった。

 

「アンタの娘だっけ?なかなか、芸術を理解してやがる。アレは近い将来、確実に化けるぞ」

 

「私もそう思います。では、デイダラさんの健康診断結果ですが、虫歯がありますね。歯磨きはした方が宜しいかと思います」

 

 他の暁メンバーにも聞こえるこの場所で虫歯指摘をするだけでなく、歯磨きをしてくださいなど、彼のメンバーとしての地位を貶めに入っている様なものだ。

 

 医師の言葉に、デイダラは一瞬考えたが歯磨きをしていないなどあり得ないと結論に至った。

 

「おぃおぃ、いつオイラが歯磨きをしていないだって!? ヤブ医者が。この歯並びを見て見ろ!!」

 

「あぁ、誤解をさせてしまい申し訳ありませんね。口の方じゃなくて、手の方です。貴方は、手にも歯があるでしょう? 歯磨きをしていないようでしたので、歯垢が溜まってます。後で、除去して差し上げます」

 

 デイダラも思わず手を見つめる。確かに、彼も歯ブラシはその手で持ったことはあった。だが、手に歯ブラシをするという行為をしたことはなかった。なぜなら、そのような事を考えた事すら無かったからだ。

 

「ほら、プルシュカちゃん。あんな汚いデイダラに術なんて教わる必要ない。イタチおじさんが教えてあげるからアッチへ行こう」

 

「そうですね。あぁ、私は水遁系を教えてあげますよ」

 

 うちはイタチと干柿鬼鮫が、プルシュカを連れて行った。紳士チームに連れられて、順調に成長を果たしていくプルシュカ。彼女の眼と才能、チャクラ量をもってすれば再現できない術はすくない。

 

 こうして、暁のメンバーの健康状態を改善し、木ノ葉隠れの里と暁は蜜月の関係へと進んでいく。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、任務を終えて木ノ葉隠れの里へと帰還した。結果報告に、火影の元を訪れていた。

 

 大事件が起きたかのように騒がしい。

 

「以上が、任務の成果です。非情に良好な関係が築けました。しかし、なにやら騒がしいですね。何か問題でもありましたか?」

 

「ボンドルドは、今帰ってきたばかりだから知らぬか。うちはサスケが里抜けした。その手引きをしたのが、音隠れの者だ」

 

 その言葉を聞いて、ボンドルドは理解した。だが、優秀な彼は真相をこの場で暴露しない。

 

「木ノ葉隠れの里には、外部から侵入を拒む結界がありましたよね。確か、暁の侵入で暗号も変えたとか」

 

「その通りだ」

 

 正規ルートを利用しない場合には、このような暗号が必要になる。つまり、現状暗号を知る者は暗部やトップ、それに準じる一部の者だけだ。最近変えたばかりの暗号が即座にもれるはずがない。

 

 つまり、侵入者は解除の暗号を何かしらの手段で知っていたという事になる。

 

「ここに来る前に病院に寄ってきました。なんでも、どこぞの忍者相手に重傷を負ったとか。……不思議ですよね。普通目撃者は殺すのが鉄則なのに」

 

「その通りだな」

 

 敵地に侵入してくる忍者が、目撃者を生存させるなどあり得ない。勿論、助っ人が来たなど状況的にトドメをさせなかった場合もあるが、その場合は里の警備が更に厳重になる可能性も考えて、一時撤退するはず。

 

「そういえば、某両腕の診察をした患者に封書を渡しましたが、その中身はなんだったんでしょうね」

 

「機密情報だ」

 

 挟間ボンドルドは、中身が里の結界に関する情報と里の警備情報だと当たりを付けた。更には、不殺の条件でもあったのだろうとも考えた。

 

「うちはサスケ君が自主的に里抜けしたと。この状況を意図的に作り上げたならば、天才ですね。里側に一切の問題が無く、全ての責任を彼一人のせいにして最大の利益を得る。遅かれ早かれ、こうなるならば高く売れる内に売ってしまうとは」

 

「何を言っているか分からんな、ボンドルド。私は、里の者達を大事に思っておる。その証拠に、追跡部隊もしっかりと出した」

 

 その追跡部隊がほぼ下忍のみで構成されている。非番の上忍もいるというのに。名目は、里の警備とかで、特定の連中しか動けない状況を作っている。

 

 ただし、それだけでは後でバッシングが恐い為、同盟国に対して助っ人も要請していた。

 

「では、私はどうすれば宜しいでしょう?」

 

「長期任務ご苦労だった。数日は年休で構わん。小さい子供が居る家なのだから、その位の配慮はする。しっかり家族サービスをするんだぞ」

 

 卑の意志を継ぐ者…火影は、しっかりと部下の休みを確保する有能であった。

 

 

 




こう言う展開ならば、あのときに下忍しか居なかったのも納得できるかなと><


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25:医療行為

 木ノ葉隠れの里の火影である綱手は、部下のフォローも忘れない。病院に担ぎ込まれた上忍二人の見舞いもしっかりと行う。通常の警邏コースから外れ、自主的に広範囲をカバーしていた者であっても、上に立つ者として労いの言葉を掛ける必要があった。

 

「特別チームを作って、当たるべきです」

 

「俺達上忍二人が居ながら…」

 

 そのような事は綱手としても分かっている。分かっていて、下忍のみで構成しているのだから、同じ事を何度も言われたくはなかった。ボンドルドの様に確信しているわけではないが、今回の選抜に疑問を感じる輩を抑える必要があった。

 

「私とて馬鹿ではない。手は打ってある」

 

 上下社会が厳しい忍者業界とは単純だ。上の者がこれ以上追求を許さぬ姿勢を出せば、勝手に下が思い違いをする。何より、火影が既に手を打っていると言っているのだから安心するのも当然だ。

 

 それが、暁及び大蛇丸と友好関係を築き上げ、同盟国から戦力を抽出しあわよくば抹殺して戦力低下を狙うなど……恐ろしい手だ。

 

 そんな病院の一室に真っ黒い服を着込んだ男…挟間ボンドルドが現れる。

 

「おやおやおや、綱手様ではありませんか。偶然ですね」

 

「ボンドルド確か、貴様には休暇の指示を出したはずだが」

 

 今回の一件が一段落するまで大人しくさせる予定で休みを出したが、病院に足を運ぶとは思っていなかった。

 

「綱手様、私は医師ですよ。患者がいるなら、治さないといけません。里は人手不足と今仰っていたじゃありませんか。それとも、綱手様自身が治療を?」

 

 医療忍術に長けた綱手が病院にきて、上忍二人と世間話をして帰るなど異常事態である。人手不足ならば、医療忍術を使って直ちに上忍を現場復帰させるのが筋であった。なにより、今回の敵と交戦経験があり生き残ったのだ。追加要員としてこれ以上の助っ人は早々いない。

 

 だというのに、おかしな事だ。

 

 医療忍術で右に出る者が居ないと評判高い火影の綱手が何もしない。これでは、裏が有りますと言っているようなモノだ。

 

 そして、その事に綱手自身も気がついた。流石にこの場に来て治療行為をしないのはおかしい。ボンドルドの言葉で上忍達もその事を考え始めた。一介の上忍二人の見舞いに組織のトップが現れる。医療忍術のスペシャリストが何の医療行為もしてくれない。

 

「無論、そのつもりだ。一人はコッチが診る。もう一人は任せたぞ」

 

「えぇ、勿論です」

 

 本当は、病院に必要な薬品を取りに来ただけのボンドルド。その道中で綱手を見かけたため、様子を見てみたら怪しい行動をしていたので助け船を出した。

 

 ボンドルドが病院から出たのと同じ位のタイミングで、サスケ奪還に向かった下忍達が重傷で帰ってきたが、用事が済んだ病院に休みの者が長居するのは良くないと帰路についた。

 

 

◇◇◇

 

 病院で一仕事を終えた挟間ボンドルドは、秘密の施設へと戻った。

 

 そこには、幾つもの円柱型のガラスケースが並んでいる。その中には、人間が浮かんでおり生命維持が行われ、着々と成長している。

 

 その様子をカツユとプルシュカが見回る。母と子が手を繋いで、歩く場所としては些か後ろ暗さがあるところだ。

 

『あらあら、みんな大きく成長してますね』

 

「ねぇ~、ママ。これがパパの研究のアンブラハンズ?」

 

 プルシュカは、ガラスケースの中身をよく観察した。だが、高度な研究である為、まだ幼い彼女には理解しきれない。

 

「おや、プルシュカも興味がありますか。彼等は、私のスペアです。暁に健康診断にいったお陰で更に研究が捗りました。もう間もなく完成しますよ、私だけの忍術……精神隷属(ゾアホリック)が」

 

『流石、ボンドルド様です。この子達の育成も私が管理しておりますので万全です。安心してください。安定供給できるシステムができましたら、湿滑林にも同じ施設を建造しておきます』

 

「えぇ、そちらは頼みましたよ。必要な機材は、手配しておきます。久しぶりの休みです。家族水入らず、過ごしましょう」

 

 火影からの命令で家族サービスをしろと言われたのでそれを素直に遂行する部下。

 

 今頃病院は、運び込まれてきた重傷の下忍治療に一人でも有能な医療忍者が欲しいところだが、知ったことではなかった。

 

「わーい、ママ。パパと一緒にお風呂にはいろう。それから一緒に料理して、一緒にねるの!みんなで川の字になろうね。プルシュカが真ん中だからね」

 

「それは、良いアイディアですね。休みをくれた綱手様に感謝しないといけません」

 

『え!? あの綱手様がボンドルド様にお休みをくれたんですか。きっと、良くない企みがあって墓穴でも掘ったんでしょうね。ですが、後で甘い物でも差し入れに行ってあげます』

 

 契約している口寄せ動物にすら、そのように言われる始末の真っ黒な綱手。だが、どちらにしろ公式にトップから休みが貰えた以上、その恩返しを律儀に行うカツユは偉かった。

 

 そんな家族の時間を過ごしている最中、木ノ葉隠れの里にある挟間ボンドルドの家には、定期的に忍者が訪れていた。追撃部隊が想定以上に重傷であった為、その治療に優秀な医療忍者が必要であり、下忍の担当上忍が幾度となく訪れている事を彼等は知るよしもない。

 

 後々、火影の勅命で休暇をエンジョイしていた事を知ったら担当上忍達はどのように思うだろうか。

  




次は、『サスケ君、貴方がパパになるのよ』をお送りする予定です。


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26:貴方がパパになるのよ

 サスケ奪還失敗。

 

 その報は、木ノ葉隠れの里中に直ぐに伝わった。うちは一族として注目度が高く、中忍試験でも期待のルーキーと目されていた為、注目度は抜群であった。人の悪い噂ほど伝達する速度は凄まじく、翌日には里の誰もが知る事になっていた。

 

 だが、この任務はそもそも成功する事はない。

 

「ねぇ、パパ。里中が抜け忍の話題で持ちきりなんだけど、どうして里抜けが成功したの?パパだって、里抜けしないのに」

 

「簡単な事です。うちはサスケ君の利用価値より大蛇丸様との秘密裏の同盟の方が価値があったからですよ。綱手様と大蛇丸様との取引内容は、把握していませんが予想は出来ます。わかりますか?プルシュカ」

 

 うちはサスケの目的は、力を付けて兄であるうちはイタチに復讐を果たす事だ。その為には、現状のままではどうやっても勝てない。視力低下を眼鏡で補い、挟間ボンドルドが定期的に医療忍術と外科的手法でうちはイタチに治療を施している。つまり、弱っていないうちはイタチは強い。

 

「うーーーん、イタチ叔父さんへの復讐でしょ。勝てるはずないじゃん。私だって、手も足も出ないんだから……わかった!!大蛇丸様に忍術を教わりにいったとか!?」

 

「50点です、プルシュカ。うちはサスケ君は、大蛇丸様の元で忍術を学ぶついでにパパになるんですよ。一族復興という大義を果たすため」

 

『大蛇丸様は、写輪眼が欲しくて色々動いていましたよね。人から奪うのではなく、産み育てる方向に動くとは仲よくなれそうです。仕方ありませんから、私がママ友になってあげます。今度、伺ったときに契約してきますね』

 

 人は変わる者だ。

 

 あの大蛇丸がママになろうとしている。この話を誰が信じるだろうか。大蛇丸の元親友である自来也ですら、想像できないだろう。いいや、仮に大蛇丸自身から「今は私が産んだ子を育てているのよ」と、言われたとしても誰も絶対に信じない。

 

 そんな異常事態を引き起こした張本人……挟間ボンドルド。彼の一言で、大蛇丸は奪うより養殖するという手段にでたのだ。一族も復興できるし、平和的な解決方法ともいえる。

 

 

◇◇◇

 

 新たな力を求め、大蛇丸の元を訪れたうちはサスケ。

 

 うずまきナルトに勝利して、呪印の力も手に入れて気分は有頂天であった。兄への復讐が可能となる近道にいま彼はいるのだ。それを本人も十分理解している。

 

 大蛇丸もその様子を確認し、気味悪い笑みを浮かべる。

 

 全ては計画通りであった。

 

 うちはサスケは、抜け忍となった。これで彼の退路は断たれたも同然である。彼が頼れるのは今現在大蛇丸以外に存在しない。何より、彼が望むモノを全て提供出来るのだから、お互いがwin-winな関係となるのは疑いようがなかった。

 

 この日の為、万全な準備を整えている大蛇丸。挟間ボンドルドから提供されたうちはサスケの身体データや、異性の好みの情報から彼の性癖に100%マッチした容姿を準備し、転生を行った。

 

「俺は、何だってやる。早く、忍術を教えろ」

 

「焦る気持ちも分かるわ。でも、まずはお互いをよく知ることから始めましょう。サスケ君の目的は、うちはイタチの抹殺。それを実現する為の力を得ること、コレに相違はないわね?」

 

 うちはサスケは、今更何を確認するのだと思っていた。だが、何より彼が疑問に思っていたのは、以前あった時と容姿が変わっていた事だ。黒髪ロングで大和撫子…更には巨乳と……性癖にドンピシャであった。しかも、程よい香水の良い香りがしており、中身が大蛇丸だと知らなければ、ヤバかったとすら思っていた。

 

「あ、あぁ。その通りだ」

 

「次に、一族の復興も果たしたい。コレも間違いないわよね?」

 

「当然だ」

 

「分かったわ。やっぱり、私達はお互いに良い関係が築けそうね。妊術(にんじゅつ)がそんなに知りたいのならば、教えてあげるわ。安心しなさい、天井の染みを数えている間に終わらせてあげるから。こう見えて、舌技には自信があるのよ。天国を見せてあげる」

 

 ガチャリ

 

 二人しか居ない部屋に大蛇丸が鍵を掛ける。

 

 頭脳明晰な優等生でムッツリすけべのうちはサスケだったが、まだ正確に状況を理解しきれない。いいや、脳が理解を拒んでいるといった状況だ。服を脱ぎ徐々に大蛇丸の美しい裸体が披露される。

 

 この状況を正しく理解出来る存在など誰もいない。

 

「なぜ、服を脱いでいる?」

 

「あら?ここまでやって分からないの? サスケ君、貴方がパパになるのよ」

 

 何かを得る為には、何かを失わないといけない。そんな言葉をうちはサスケは思い出しながら天井の染みを数え始めた。

 

 

 




誰も不幸にならない…いい話だ。

次からNARUTO疾風伝に時代は飛びます。
青年期編だよね。

暁と大蛇丸とズブズブの木ノ葉隠れの里。
大蛇丸の元で妊術(にんじゅつ)と忍術を学ぶ日々のサスケ…大体原作どおりだな。


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風影奪還編
27:Sランク任務


疾風伝編がやっと開始した。




 風影である我愛羅が暁に捕まった。

 

 その事実を聞いた火影の綱手は、頭の中で計算する。表向きには、同盟国である砂隠れの里を助けるという行為は必要だ。そして、それに派遣されるのが、たったの三人。

 

 五大国のトップが武装勢力に拉致され、救出に関する助力を他国に懇願し派兵される人数ではなかった。そもそも、三人程度なら砂の国に旅行している木ノ葉隠れの里の忍者より少ない。

 

 本当に、体裁だけ整えただけと言える。

 

「プルシュカは元気か、ボンドルド」

 

「勿論ですよ。先日もお会いになったでしょう。それでどのようなご用件でしょうか?」

 

 挟間ボンドルドは、火影の執務室に呼ばれていた。二人しか居ない執務室で、態々里のトップが、部下の子供の話をする。これから真っ黒な話をしますと告げていると同じだ。それも、断ればどうなるか分かっているなと言う示唆とも受け取れる。

 

「挟間ボンドルド、貴様にSランク任務を与える」

 

「特別上忍には、荷が重い任務です。誰かと組むのでしょうか?」

 

 Sランク任務、国家機密レベルの任務で通常は上忍などが複数人で対応する事が当たり前だ。それを、特別上忍一人とは、酷い選抜である。特別上忍とは、専門技術を持つ中忍である。決して、上忍から選抜されたスペシャルな人材ではない。

 

 勿論、上忍に昇格するにあたり試験を受けて合格する必要があるため。一概に中忍と上忍の力関係がその通りでは無い事例もある。

 

「秘密を知る者は、少ない方が良い。なにより、上忍は色々と出払っていて数が足りん」

 

「往診先のブラック企業が、特別な儀式を行うので三日三晩の警護依頼をどこかの里にしたと言っておりました。しかも、上忍スリーマンセル部隊を複数も……結構な支払をしたと、先方のトップがぼやいておりました」

 

 S級犯罪者とはいえ、三日三晩集中しないといけない儀式をこなしつつ、命を守るのは大変な事だ。だからこそ、企業は社員を守る為、警備を外注する。それを請け負ったのが、木ノ葉隠れの里だ。

 

 だからこそ、同盟国へ派遣されるのが、うずまきナルト達の三名だけ。

 

「ボンドルド、貴様は往診先の企業で見聞きした情報を漏洩するな。我々はその費用も貰っている。で、貴様に与える任務だが、砂の国の小さな集落を幾つか潰して貰おう。しかも、木ノ葉隠れの里の仕業と分からぬようにだ」

 

「……なるほど。砂隠れの里は、暁により打撃を受けている。そこに他国からの攻撃があれば、風影奪還より国防を優先せざるをえなくなると。生死不明の風影より国防を優先させる算段ですか。里のスポンサー達である大名ならば、手を出さずとも国防を優先させるでしょう。その後押しという事ですか」

 

「この程度、五大国なら何処でもやっておる。それに、貴様の往診先は金払いが良い。いつでも、ニコニコ現金払いだ。それに、あれほど有能な忍者を必要なときに傭兵として使えるのだから、これ以上の費用対効果は存在しない」

 

「素晴らしい考えです。忍び一人を育てるのに掛かる経費を考えれば外注する方が安上がりです。なにより、死んでも外注ならば里への被害は実質0。更には、悪名も全て暁が背負ってくれる」

 

「暁?……何度も言わせるな、顧客先の情報を漏らすなと」

 

 コレが大人の世界。卑の意志を継ぐ者のやり方だ。二代目様もあの世でニッコリしているに違いない。

 

 表では同盟国を助けつつ、裏では切り崩しへの協力を惜しまない。

 

 

◇◇◇

 

 春野サクラは、砂隠れの里に到着して早々に、カンクロウの解毒作業を行っていた。

 

 カンクロウは、暁の一人であるサソリから毒を受けており、瀕死の重傷となっていた。しかも、その毒が砂の里の忍びでは解毒不能。それほどまでに、高度な技術で作られた毒であり、一朝一夕でどうにかなるレベルではない。

 

 そもそも、解毒とは毒の成分分析を行い、時間を掛けて対処法を模索するのが本来の方法だ。

 

 だが、春野サクラは、一瞬の診察で毒に当たりを付けて対処方法まで分かっていた。その様子に砂の里の医療忍者達も驚きを隠せない。優秀という言葉では片づけられない。

 

「この毒…いいえ、なんでもないわ。私が言った物を大至急用意してください」

 

 綱手の元で修行したからこそ、彼女はこの毒に見覚えがあった。毒と薬は表裏一体……つまり、毒の出所が綱手であると彼女は疑念を抱く。だが、そんなことは無いと彼女は、その疑念を振り払う。

 

 暁コートを提供しているのも木ノ葉隠れの里。

 起爆札などの軍事物資を提供しているのも木ノ葉隠れの里。

 医療忍者を派遣し暁の健康管理をしているのも木ノ葉隠れの里。

 特別な儀式の護衛をしているのも木ノ葉隠れの里。

 

 それだけに留まらず忍者とは後ろ暗い仕事を大量にしている。だが、そのような事実を知らない限り、綱手の下で学んだ事と暁の毒を結びつける事は、綺麗な任務しか経験がない彼女にはまだ難しかった。

 




よし・・・原作通り!


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28:額当ての正しい使い方

 挟間ボンドルドは、火影よりSランク任務を受領した。

 

 そして、下準備も兼ねて秘密の施設へと足を運ぶ。そこで、彼の愛娘であるプルシュカが暁コートを着て何やら怪しげな儀式に参加している。

 

「儀式は順調ですか?プルシュカ」

 

「パパ。お帰りなさい。うん、順調だよ」

 

 伝説の三忍や暁メンバーから忍術指導を受け、プルシュカはメキメキと頭角を現してきた。同年代では、まず間違いなく最強クラスである。超一流の指導を受け、才能もあり、血継限界もある。

 

「それは良かった。私は少しSランク任務で里から離れます。定期的に連絡はしますので、何かあればママを頼るんですよ」

 

『ボンドルド様、プルシュカの事は任せて置いてください。プルシュカちゃん、カートリッジを追加しました。チャクラ消費を気にしないで良いですからね。そんな儀式、直ぐ終わらせてママと遊びましょう』

 

 最年少で暁メンバー入りを果たしたプルシュカ。暁の現役メンバーも、見ず知らずの野郎を追加するくらいなら、往診の際に医師が連れてくる才能豊かな子供をメンバーにした方が良いという結論に至った。

 

 当然だが、その存在はメンバー以外にはバレていない。そもそも、あんな目立つコートを着て歩くことは無いからバレるはずもない。なにより、こんな年端もいかない子供が暁のメンバーなんて誰が信じるだろうか。

 

「頼みましたよ、カツユ」

 

 挟間ボンドルドは、愛妻(カツユ)愛娘(プルシュカ)と別れ、同盟国へと足を運ぶ。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、口寄せ動物――ベニクチナワを呼び出した。その背に乗り、風の国を目指す。今回の任務で大事な事は、決して木ノ葉隠れの里の仕業とバレない事だ。

 

 よって、忍術で変装するだけでなく一度他国を経由する事で、犯人を特定できないようにする事が大事だ。

 

「地理的に考えて、岩隠れの里の仕業に見せるべきでしょうね」

 

『じゃあ、進路は北西。落ちないようにね』

 

「えぇ、気遣い感謝します」

 

 挟間ボンドルドは、ベニクチナワを優しく撫でる。

 

 空を移動できる貴重な口寄せ動物である。見た目は大きなナマズだが、コレで何故空中を移動出来るのか謎な生物だ。

 

 岩隠れの里の額当てを付ける。正直、挟間ボンドルドはこの行為に意味があるか謎であった。こんな額当てなんて戦争で幾らでも手に入った。今回のような任務に備えて各国が他国の忍者の死体から略奪した品がいくつもある。

 

 だが、なぜか…忍者達はこの額当てで、相手の里を特定する。それが嘘である可能性を考えない。確かに、暁のようなS級犯罪者であっても、抜けた里の額当てを付けるなど謎な現実はあった。

 

 それを逆手にとるやり方――むしろ、コレこそが額当ての正しい使い方だ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、どのような方法で任務を遂行するか考えていた。彼が持つ忍術は、類を見ないほど特異だ。だからこそ、下手に忍術を使えばそこから足が付く可能性がある。態々他国を経由し、警戒網を潜って風の国に潜入した事が全て無駄になる。

 

 しかし、ヒッソリと集落が幾つも壊滅しただけでは、注意を引きつけられない。今回の任務の目的は、陽動による暁の支援だ。彼の元に砂隠れの里の精鋭が向かわないように注意を引きつける必要がある。

 

「つまり、メッセンジャー以外は皆殺しにしろと言うことですか。火影様は、私が医療忍者であるのを忘れているかと思いそうです。ですが、コレも仕事です」

 

 この日の為に、挟間ボンドルドはカードリッジをフル装備。彼の重装甲を貫通し、ダメージを与えられるであろう風影は既に居ない。更に言えば、風の国周辺にある集落では守備をしている忍者など居ないも同然。

 

『掃除が終わったら、食べていい?』

 

「構いませんよ。では、終わったら呼びますので待っていてください。少し、大きな子を呼び寄せます」

 

 挟間ボンドルドは、対人特化といっても過言でない忍術が多い。その為、広く浅い広範囲殲滅の忍術は不得手といえる。だが、それならば得意なモノを呼び寄せれば良い。だというのに、忍者とはなぜか自前で何でもやりたがる者がおおかった。

 

 ベニクチナワを戻し、空から自由落下を楽しむ挟間ボンドルド。超重量装備の男が空からダイレクトエントリーをしてくるのだから、落下地点の建物が程よく崩壊する。

 

 ズドンという鈍い音と共に、地響きが鳴り渡り、集落の者達が何事かと駆け寄ってくる。建物崩壊による砂埃が開けると、岩隠れの額当てを付けた平凡な風体をした男が現れた。何処にでもいそうな感じ…それが大事である。

 

「い、岩隠れの忍びだ!!」

 

「おやおやおや、ようこそと歓迎はして頂けないのですね。悪く思わないでくださいね。口寄せの術――リュウサザイ」

 

 スポーン

 スポーン

 

 挟間ボンドルドのカートリッジが二本失われる。莫大なチャクラを食らう口寄せ動物。現時点で、彼が単独で呼ぶ事が可能な最大戦闘力の一角。見た目だけで言えば、スタイリッシュな巨大キリンというのが相応しい。だが、衝撃を受けると破裂する毒の鱗を持つ。

 

 忍者にとって壁一面の的みたいなリュウサザイ。当然、現地防衛に当たる者や偶然居合わせた忍者などは応戦する事になる。それが運の尽きとも知らず。

 

『パパ、そこ、巻き込まれる』

 

「問題ありません。装備の耐久テストです。鉄分も十分補給可能ですので、遠慮は不要です。それに、目立つように派手でなければ砂隠れの里が襲撃に気がつけないでしょう。そうそう、多少は撃ち漏らしてよいです。メッセンジャーは必要ですから」

 

 岩隠れの里が暁襲来に合わせたかのように襲撃してきたと情報が伝達される。現地勢力の鎮圧と報復部隊が即座に結成され、砂隠れの里は木ノ葉隠れの里の思惑どおりに動く事となった。砂隠れの里上層部は、岩隠れの里と暁とのズブズブの関係を疑い始める。

 

 そんな原因の一端を作った挟間ボンドルド討伐にテマリ率いる砂隠れの精鋭部隊が派遣される事になる。

 




テマリって『祝福』持ちですよね。

次話『その身体…是非欲しい』
まじ、性的な意味なしで言葉が似合うのは彼以外いないでしょう。


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29:その身体…是非欲しい

 死とは、これ以上苦痛を与えられない。当然な事ではあるが、コレを理解できる者は少ない。そもそも、死んだ方が楽になれるだとか想像すら出来ないだろう。だが、カートリッジに詰め込まれたチャクラ持ちは、理解していた。

 

 無駄に優秀過ぎる挟間ボンドルドの医療忍術も相まって、何日も意識を保ち生きながらえてしまう。しかも死ぬまでチャクラを吸い上げられる。本来、人間は死を恐れて全てを出し切ることはできない。だが、肉体という殻が壊れ、死を望むカートリッジ達は挟間ボンドルドが望む以上のチャクラを振り絞る。

 

「こんなことなら、大蛇丸様にもご同伴願うべきでした。これだけの生け贄があれば、更に体調が改善できたでしょうに。まぁ、妊婦を戦場に連れ出すのはよろしくありませんね。仕事と家庭の両立で大変でしょうから」

 

 血の匂いと焼ける集落。大災害にでも見舞われたかのような、惨状だ。せめてもの救いは、生き残りが僅かにいること。彼等は、生き残っただけで全ての運を使い切った。

 

 挟間ボンドルドが生き残りの頭蓋骨を切開し、脳に針を差し込みグチャグチャといじくり回す。

 

「あっあぁ」

 

「安心してください。私は医師ですので、拷問はしません。ですが、体に聞くのは得意な方です。避難所の場所を教えてください」

 

 どの集落にも避難所が備えられている。敵勢力が来た場合に、味方が来るまで逃げ隠れする場所だ。部外者には見つかりづらい場所にある。そこには、女子供などが避難している場合が多く、大抵の者は敵にこの場所を死んでも教えない。

 

 なんせ、家族の生死が掛かっている。だから、時間を掛けずに体に…脳に聞いている。

 

 グチャグチャ

 

「あっあ……しゅ、集会場の…ゆ、ゆかした」

 

「定番ですね。『祝福』を回収するだけ、痛みを感じる事は無いでしょう。それに、目撃者は必要ですから、大丈夫ですよ。運が良ければ、生き残れます」

 

 突然の忍者襲撃でも生き残った。普通これだけでも運が良いことだ。つまり、生き残れるだけの何かを持っているという事になる。それは、運なのか『祝福』なのか。挟間ボンドルドは後者であると考えている。

 

 世の中、生き残るべき人間が生き残る。そんな者達から、『祝福』を回収する。

 

 リュウサザイによる広範囲殲滅で壊滅状態に追い込む。

 ベニクチナワが建築物を食い散らかすついでに、金品も回収する。

 挟間ボンドルドが勇敢にも立ち向かってくるチャクラ持ちを倒し、尋問してからカートリッジに加工する。そして、避難所で『祝福』の回収。

 

 全くもって、忍者らしい仕事だ。

 

 そんな事を繰り返し、5つめの集落で遂に砂隠れの里の精鋭部隊が挟間ボンドルドに追いついた。

 

 

◇◇◇

 

 テマリは、大名達が危惧していた事態が本当に発生した事に悩んでいた。

 

 彼女は、こんな絶妙なタイミングで襲撃してくる敵など居ないと考えていた。泥沼の殺し合いに発展する可能性があるから、やるからには全滅させるという覚悟が必要になる。

 

 だが現実に、国境付近の集落が幾つも壊滅させられたという報告が届き、彼女の計算に狂いが生じた。彼女は、里の上層部が国防優先の為、風影奪還の主体を他国に任せている事を抗議していた。

 

 つまり、彼女の立ち位置は『里上層部の命令で泣く泣く国防を優先させられた悲劇の女』『弟思いの良い姉』であった。

 

 更に言えば、風影奪還が成功し他国からの攻撃が無ければ、上層部と事を構える考えがあった。『里の長を他国の忍びが助ける事態になった事を責めて、総入れ替えする』算段まである。風影奪還が失敗したならば、『砂隠れの里の忍者がいれば、成功した可能性があったと上層部を一掃する』算段もある。

 

 だというのに、本当に他国からの攻撃があったらその二つのやり方が使えなくなる。この戦いで勝っても負けても里上層部の言う事が正しかったとなり、上層部の権力が増す。現状テマリは、負ければ死ぬ、勝っても里上層部の権力が増して、立場が悪くなるという負のスパイラルに嵌まる。

 

 大事な事だが、里の権力者達の世代は、人柱力を良く思っていない。それに、我愛羅という存在自体を嫌っている人間も多い。物理的な力があるからこそ黙って従っていたが、抑止力の風影はいない。ならば、我愛羅の支持基盤を削ぐ機会が今であるという上層部の結論。

 

 それが、危険な最前線に風影の姉であるテマリが向かわされた最大の理由だ。

 

「警戒を怠るな。敵勢力の排除より、人命を優先しろ」

 

「分かりました。――テマリ様!! あそこに人が」

 

 テマリの部下が、正面から歩いてくる一人の忍者を発見した。岩隠れの額当てを付けた忍者。砂隠れの精鋭部隊を前に臆する事無く現れる。

 

 臨戦態勢にはいりテマリが前にでる。

 

「一体何が目的でこんな事を!分かっているのか」

 

「勿論です。あぁ、素晴らしい。貴方からは強い『祝福』の気配を感じます。その身体…是非欲しい」

 

 風貌から想像できないほど異質な気配を漂わせる岩隠れの忍者。それに、忍者の後方にいる巨大な口寄せ動物。部隊を二つに分けて対応をする事を決める。

 

 大事な事だが、忍者業界……どの里の上層部も黒い奴は多い。当然、その息が掛かった者が精鋭部隊にもいる。出来すぎる弟を持った彼女の運命は、これから決まる事になる。

 




若すぎる革新派のトップなんて、旧体制の者達は望んでないのよね!


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30:雷遁・明星へ登る(ギャングウェイ)

 挟間ボンドルドが印を組む。使用忍術は土遁をメインにして闘う。そもそも、変化の術を使っているとはいえ、中身は黒い鉄仮面を付けた状態に変わりはない。つまり、口から使用する忍術は軒並み使用できない。

 

 だが、彼にとっては問題は無かった。驚異的な防御力と自己再生機能を持つ外装。更に、鮫肌の鱗を分析及び培養し、外装に取り込む事でチャクラ吸収機能まである。対忍術兵器としてはこれ以上のものは早々ない。

 

「土遁・土流壁。悪いですが、貴方には興味がありません」

 

 挟間ボンドルドの戦略は実に簡単だ。敵小隊を纏めて相手にする必要はなく、各個撃破していくというやり方だ。土の壁を利用し分離、その上で逃げ場がない直線的な空間で一体一の状況を作り上げる。

 

 本来防御に利用される事が多い土流壁を有利なフィールド造りに利用する方法だ。

 

「自分ごと閉じ込めてどうする。逃げ場がないぞ!! 風遁・風の刃」

 

 密閉空間で確実に殺したと相手が思うほど……その術は完璧であった。自ら目がけて走ってくる敵に確実に命中した。だが、相手の勢いは止まらない。即座に離脱しようにも忍術で土壁を崩壊させるか、迫る敵を攻撃するかで迷いが生じる。

 

「判断が遅いです。初手で逃げれば可能性がありましたが、残念です」

 

 砂の忍者が、クナイで迎撃をする構えだ。だが、医療忍者としてチャクラコントロールに極めて優れており、瞬間火力で言えば綱手を上回る事も出来る程の男を止めるには足りなかった。言うならば、クナイ一本でダンプカーの衝突を止められるかという事だ。

 

 クナイは、挟間ボンドルドの拳にぶつかった瞬間に砕け散り、砂隠れの忍者の肉体を四散させた。その勢いは、人間一つでは止まらず土壁に当たり、作り上げたフィールドを全壊させる。

 

 土壁が崩壊し、光が差す場所に現れる挟間ボンドルド。

 

 それを待っていた砂隠れの忍者達は、警戒レベルを引き上げた。無傷で仲間を一人殺したのだ。しかも、戦い始めて一瞬の出来事であった。

 

「テマリ様、口寄せを倒しに行った者達が戻るまで時間を稼ぎましょう」

 

「――それは無理だ。未だに交戦している気配がない。道中でやられたとみて間違いないだろう」

 

 壁一面の的とも言えるリュウサザイ。だが、その影に複数のタマウガチが配置されており、近付く忍者が居れば襲いかかる手筈だ。部隊を分けたことが裏目に出ていた。そもそも、あんな目立つ的が囮である事を考えないのは忍者としてどうなのだろうか。

 

「おやおやおや、どうしたのですか? 私を捕らえないのですか? 砂隠れの忍者は、優しいのですね」

 

「捕まえるとも。だが、その前に一つ聞いておきたい事がある。貴様、どうやって砂の国に潜入した。暁の事もあって、警戒は厳重に行っていたはずだ」

 

 テマリは時間稼ぎにでた。現状の部隊では、目の前の忍者を拘束する事が難しいと判断。最悪、逃げられる可能性もあるので応援を手配するように仲間に指示する。その意図を汲んで一人がその場から離れていく。

 

「簡単な事です。革新的な風影には、敵は多い。その敵とは、外だけに限らないという事ですよ。風影が無事ならば、貴方がココに派遣される事もありませんでした。それが良い証拠です。心当たりがあるはずですよ」

 

「っち。これだから、上層部のやつらは」

 

 挟間ボンドルドは、いかにもありそうな事を口にした。組織のトップとは、旧体制であれ、現体制であれ、敵はいるものだ。実際、木ノ葉隠れの里ですら、内輪もめは多い。だから、それっぽい事を言えば、相手が勝手に深読みしてくれる。

 

「あぁ、言い忘れましたが彼……お仲間が行った方向にも私の口寄せが」

 

「ギャーーーーー」

 

 並みの忍者では、タマウガチに傷をつける事すら難しい。未来予知並みの気配察知能力に上忍でも振り切れない速度で追いかけてくる獰猛な存在だ。

 

「テマリ様、もしかして私達は待ち伏せされていた……という事でしょうか」

 

「その通りですよ。ですが、安心してください。貴方も直ぐに仲間の元へ送って差し上げます」

 

 テマリの部下が不安げに口にしたその言葉に、答えを教える挟間ボンドルド。

 

 異質な岩隠れの忍者を相手に、最適解を考えるテマリ。文字通り並みの忍者では歯が立たない。当然、テマリとて確実に勝てるとは言えなかった。だが、テマリは不思議と落ち着いている。

 

 彼女は自分の事を良く理解している。なんだかんだで生き残る…謎の強運。過去から今に至るまで、危機的状況に何度も陥ったが全て生き残ってきた。仲間は、なぜかクナイが当たって絶命する事もおおいが、彼女は違った。

 

 クナイが当たっても何故かかすり傷。軽傷より酷い怪我をした事など、産まれて片手も無い。通常の忍者ではあり得ないレベル。

 

 だからこその過信。優れた忍者である事は間違いない。実力もある。だが、それを支える『祝福』という存在を彼女は理解できていない。これから、彼女が闘う相手は、『祝福』を集め、その身に宿した挟間ボンドルドという存在だ。

 

 つまり、『祝福』というアドバンテージが意味をなさない。

 

「いいか、私がコイツを足止めする。その間に、応援をよんできてくれ」

 

「――わかりました、テマリ様。ご武運を」

 

 唯一残っていた仲間の一人を逃がす。そして、立った一人残ったテマリであった。

 

 その様子に挟間ボンドルドは理解に苦しむ。そもそも、敵対勢力の排除に来たのに逃げ帰る始末。更には、自らがその場に残るなど自殺行為だと思わないのかと。一人で、部隊をほぼ壊滅させた相手に何故そこまで自信がもてると。

 

「闘う前から逃げ出すなど弱腰ですよ。雷遁・明星へ登る(ギャングウェイ)

 

 応援を呼びに下がった砂隠れの忍者に対して、容赦なく忍術を放つ。光が壁に乱反射してターゲットを追う。

 

「風遁・掛け網!!」

 

 瞬時に技の特性を理解したテマリが、広範囲の風遁で明星へ登る(ギャングウェイ)の進路を遮る。だが、吹き飛ばした岩や建物の残骸で更に反射を繰り返しターゲットを追い続ける。

 

「無駄です、この術は、ターゲットに当たるまで自動追尾です」

 

「くっそ!! ――っ、まさか、今の忍術にそのよく分からないネーミングセンス……貴様、岩隠れの者じゃないな。雲隠れの里の者だな」

 

 彼女がそのような理解をするのも無理はない。極めて高度な雷遁に加え、術へのネーミングセンスが独特であった。それこそが、雲隠れの里へ共通認識。だからこそ、思い違いするのも無理はない。

 

「おやおやおや、一体何を根拠に。しかし、これで、貴方を逃がす訳にはいかなくなりました。さぁ、抵抗してください。私の『祝福』がどの程度まで強化されたかテストをしたい」

 

………

……

 

 その日、砂隠れの精鋭達が戻る事はなかった。後に残された現場には、多数の忍具とテマリの物と思われる血痕が残っていた。だが、何処を探しても死体はない。この日、砂隠れは風影だけでなく、その姉も命を落とす。残念な事に風影ほど『祝福』の強度が高くない彼女に救いは無かった。

 

 だが不幸中の幸いな事は、生存者が一人だけおりテマリの末路を知る事が出来たというものだ。その生存者から、岩隠れを装った雲隠れの仕業である可能性も伝えられ、砂隠れはより混沌の時代へと突入する。

 




次話で風影当たりの話を挟んで、ビックダディサスケ編かしらね。


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31:祈手(アンブラハンズ)

 テマリの『祝福』が奪われ命を落とした時、別の場所でサソリの命が尽きた。

 

 ナルト達…主に春野サクラと砂隠れの相談役チヨの手によって、希代の傀儡師であったサソリを撃破した。本来の実力を考慮すると、達成する事が不可能な偉業。だが、春野サクラが居たからこそ達成できた。

 

 そんな素晴らしい忍術の戦いをしっかりとその目に収める第三者がそこには居た。戦いが終わり貴重な戦利品が散らばるそこに足を踏み入れる存在――青白く光る線が入った仮面を付けた者。

 

 当然、戦いが終わった瞬間を待ってましたと言わんばかりの登場に春野サクラやチヨが警戒する。

 

「安心しろ、私はグェイラ。旦那……挟間ボンドルドの依頼でこの場に来た」

 

「サクラ、気を抜くでないぞ」

 

 異質な存在にチヨが疲労困憊の身体を起こす。暁コートや額当てを付けていない事から忍者でない事は理解出来ていた。だが、一般人でもない事も同時に理解していた。

 

「まって、チヨ婆様。彼の言う事が本当なら味方です。ボンドルド特別上忍は、綱手様の一番弟子で私の兄弟子に当たります。幾つか質問させて、ボンドルド特別上忍の子供の名前は?」

 

「警戒心が強いね。挟間プルシュカ、銀髪の可愛い女の子だ。ペットのメーニャと何時も一緒にいる。コレで満足かい?」

 

 完璧な回答であった。それも当然だ、全て事実である。この戦いの全てを記録に収める事こそが彼の目的だ。更に言えば、現場に残ったサソリの忍具……これだけで万金に値する。

 

「えぇ、できれば援軍として来て欲しかったわ」

 

「無茶いうな。とりあえず、物資補給と治療くらいはしてやれる。あんた等は他にもやる事があるんだろう」

 

 口寄せの術で届けられた物資を春野サクラが受け取る。そして、医療忍術による治療を受けた。高度な忍術で普通であれば、忍者で無い者が使える事は無い。だが、彼女は兄弟子である挟間ボンドルドが送ってくれた者ならば使えてもおかしくないと考えてしまった。

 

………

……

 

 治療と補給を受けた春野サクラとチヨ。万全な状態には程遠いが、通常行動が行えるレベルには十分回復した。

 

「ふむ。良い腕じゃな、忍者でない事が信じられない程だ」

 

「コレでも、旦那から色々と教わっている身なもんでな。婆さんも年なんだから無理するなよ。若くねーんだから生命力なんて分け与えたら死ぬぜ」

 

「分かっておるわい。世話になったな若いの」

 

「助かりました、グェイラさん。挟間ボンドルド特別上忍には、後でお礼に伺わさせて頂きます」

 

 木ノ葉隠れの里からの応援はなかったが、兄弟子からの応援に春野サクラは心底感謝した。そして、ナルト達を追ってその場を後にする。

 

 二人が完全に見えなくなったのを確認し、グェイラは祈手(アンブラハンズ)を口寄せした。この場に残る貴重な品々を全て回収する。だが、砂隠れの里として譲れない一線もあるだろうから、そこを配慮しての清掃作業だ。

 

「サソリの本体だけ残して、後は全て回収。封印忍術と転生忍術・己生転生…全く、旦那が喜びそうなものが沢山だな」

 

 チャクラを完全に封印する術など素晴らしいという他ない。忍者であれば、誰にでも有効打になる。転生忍術も同じだ。つまり、誰かを犠牲にすれば誰かを復活させられるなど、卑劣様が開発した穢土転生に勝るとも劣らない。

 

………

……

 

 風影が死んで蘇り慌ただしい日が過ぎ去った。そして、木ノ葉隠れの里の忍者達が無事に帰還を果たす。それから、数日後、春野サクラは挟間ボンドルドの家にお礼をもって現れた。

 

 一般人の出自である彼女ならではの行為であった。律儀にお礼をしにいくなど、汚い忍者の発想ではない。

 

 そんな彼女が、とある家の前で足を止める。そして、玄関の表札を確認する。何度も…。

 

「ここよね。それにしても、大きな家ね~」

 

 おおよそ豪邸と言っても過言でないサイズの家であった。普通の忍者の稼ぎでは到底不可能といえる不釣り合いの家。数々の医療特許などを持っている挟間ボンドルドは木ノ葉隠れの里の中でも上から数えた方が早いくらいに金を持っている。

 

 ピンポーンとチャイムを鳴らす。兄弟子の家にお礼に来ただけだというのに、緊張する春野サクラ。

 

「はーい。誰ですか?……サクラお姉ちゃん~!!無事に帰ったのね。グェイラから話を聞いたけど大変だったんだよね。上がって上がって」

 

「これは、春野サクラさん。任務お疲れさまでした。どうぞ、上がってください。直ぐにお茶を入れましょう」

 

 プルシュカが元気に春野サクラを迎える。そして、その後ろには鉄仮面を被った兄弟子である挟間ボンドルド。彼も優しい声で迎え入れる。

 

「パパ、私が淹れるの!!」

 

「おやおや、そういってこの間は、渋いお茶を作ってしまいませんでしたか」

 

 お客様の前で良い格好をしたいプルシュカが微笑ましいと思い、苦笑する春野サクラ。彼女もこんな理想的な家庭を持てればと思ってしまう……そう、うちはサスケと。

 

 だが、彼女はまだ知らない。ビッグダディサスケという男のことを。

 




次は、遥かなる再会編ですね。

勃った一人のムスコで一族復興を果たした男……男だから出来る方法で復興するとは漢気がありますよね。

何でもヤるといったからは、本当に何でもヤらないとね。


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遥かなる再会編
32:疑い


 綱手は、此度の大蛇丸接触に向けての人選に悩んでいた。

 

 春野サクラが持ち帰った情報――暁のサソリが大蛇丸の所に潜入させていたスパイと密会する予定がありその時間と場所だ。実に余計な情報であった。そもそも、火影として大蛇丸とは秘密裏の同盟関係が築かれており、そのような情報を持ち帰られても扱いに困る。

 

 だが、無視も出来ない。

 

 ここで大蛇丸の所に誰も向かわせなければ不信感が募る。火影としての地位を守り、中の不満を外に向けるためにも大蛇丸には表向きは敵でいてもらわねば困る。それが綱手の出した結論だ。

 

 そこで何度も火影に呼び出されたことがあり、裏事情を知っており、ナルト達へ同行を許してもおかしくない人物が火影の執務室に呼ばれる。

 

「挟間ボンドルド、カカシ班に同行して影ながらサポートしろ」

 

「どちらをでしょうか?綱手様」

 

 この場合、ナルト達をサポートしてサスケ奪還に協力しろなのか、大蛇丸側をサポートして密約がバレないようにしろなのか、どちらなのかと聞いている。

 

 勿論、挟間ボンドルドは答えなど分かりきっていた。呼ばれた人選を考えれば当たり前の事だが、口にだして相手に言わせる事が大事だ。ハッキリとしない命令で後から認識齟齬があっては宜しくない。

 

「ちっ、大蛇丸の方だ。同盟関係が露見しては色々とマズイからな。カカシ班には、貴様が追加要員で配属される旨も伝えている。医療忍者が二人体制となるが、相手が大蛇丸ともなれば、多少人数が多くても問題ない」

 

「そうですね。大蛇丸様の所には、綱手様からの出産祝いなども色々あるでしょうから、万が一の場合には全て廃棄しておきます」

 

 あの大蛇丸から出産しましたと年賀葉書を貰った時は、綱手も冷静ではなかった。しかも、写っているのが悟りを開いたかの様な仏面のサスケとなのだから、意味が分からなすぎて知恵熱を出したほどだ。

 

 ちなみに、その年賀状は、挟間ボンドルドの元にも届いた。流石、忍者業界の常識人の大蛇丸であった。そのお返しに、綱手も挟間ボンドルドも出産祝いも届ける仲である。

 

 子供が出来れば人が変わるというのは、良くある事だ。

 

「あぁ、だからこそ貴様を選んだ。今回、カカシ班はカカシが入院のため、火影直轄の暗部を代理として付ける。貴様も知っている人物だが、任務にあたり名をヤマトと命名したから覚えておけ。また、『根』から一人新人もカカシ班に増員される。あのダンゾウからゴリ押しされた。分かっていると思うが、気をつけろ。場合によっては、貴様の判断で処理して構わん」

 

「分かりました。大蛇丸様には事前に電話で詳細を伝えておきます。しかし、Sランク任務に続いて、またSランク任務ですか。そろそろ、信頼できる暗部に一人くらい真実を伝えて、使える駒を増やして頂きたいですね。私とて、暇では無いのですから」

 

 今回のSランク任務は、挟間ボンドルドに限って言えば危険が全く無い任務でもあった。年賀状を送り合う知り合いの家にお邪魔しに行くだけ。往診で何度も行ったことがあり今更である。

 

 挟間ボンドルドは、火影の執務室を後にする。そして、またSランク任務で家を空ける事を家族に説明する事に頭を悩ませる。少しは家庭持ちに配慮し、働き方改革をすべきでは無いかと彼は真剣に考えていた。

 

 

◇◇◇

 

 カカシ班の新しいリーダーに任命された火影直轄の暗部であるヤマト。彼は此度の任務における人選を確認し、胃痛を感じる。己を含んだ5人小隊。

 

 火影直轄暗部のヤマト。

 九尾の人柱力のうずまきナルト。

 暗部養成機関『根』の新人サイ。

 火影・千手綱手の弟子の春野サクラ。

 

 これだけの人選でも正直意味不明といえるレベルだ。普通の小隊では、まずあり得ない。問題児をここまで一点に集めた構成など面倒を見る方の胃がすり減る。

 

 今回はそれに加えて、綱手に次ぐ医療忍術の使い手である挟間ボンドルドも加わる。ヤマトにとって、彼が唯一の癒やしであった。常識人……任務経歴からも実力十分で、病院での勤務態度も素晴らしく患者からの信頼も厚い。暗部の任務柄、彼の世話になった忍者も数多く、その手腕を高く評価されていた。

 

 だが、そんな彼に対してヤマトは特別任務を火影より受けている。

 

「挟間ボンドルド特別上忍が大蛇丸と繋がっている証拠を押さえろか。嘘だと信じたいが、木ノ葉崩しの時には様付けで呼んでいたとか。分かるよ、声に反して何故か異様な雰囲気があって、胡散臭いのはさ。はぁ、いやだな~」

 

 仲間が世話になった事がある医療忍者を疑わなければいけない。しかも、挟間ボンドルドは綱手の一番弟子でもあると周知の事実。つまり、綱手本人が一番辛かろうという事をヤマトは思っていた。

 

 だが、綱手は万が一に備えて全ての罪を挟間ボンドルドに着せる下準備を整え始める。知りすぎた忍者は、使い道があっても扱いに困る。挟間ボンドルドには、木ノ葉隠れの里と大蛇丸との繋がり抹消を依頼し、裏では挟間ボンドルドが大蛇丸と繋がりがある証拠をあつめろと命令する。

 

 後日、思いも知れぬ所から大蛇丸と木ノ葉隠れの里の繋がりが露見したときに、挟間ボンドルドがやっていたと責任を押しつける。ヤマトが何も見つけられなければ、それはそれでよいと汚い計算をしている。

 

 勿論、挟間ボンドルドを切るという行為は綱手にとっても危険な事であるのは承知している。場合によってはカツユと致命的な仲違いになる。しかし、そこは卑劣様と同じ血族の腕の見せ所だ。

 

 そんな事情など知らず任務を真っ当する意気込みをしているヤマト。彼の元に、黒装束の鉄仮面――挟間ボンドルドが現れる。

 

「おやおや、待たせてしまいましたか、ヤマト隊長。お元気そうで何よりです」

 

「お久しぶりです、ボンドルドさん。何時も仲間がお世話になっています」

 

「気にすることはありません、同じ里の仲間ではありませんか。我々が日々安全な暮らしを送れるのは、暗部の方々が支えてくれているからこそなりたっています。それに、私のような古い人間にできる事は、未来の里を担う有能な忍者に助力するくらいなものです」

 

「ははは、そうですね」

 

 圧倒的な人格者の発言。そんな人間を疑わなければいけないとは、嫌な任務だと本気で思うヤマトであった。

 

 

 




再開編もサクサク頑張るぞ……年末の合間に頑張る!!

ナルトのSSって基本的にどこあたりまでやるのが一般的なんだろうか。


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33:温泉宿

 カカシ不在にも関わらず、カカシ班という謎の班名。上忍の名前を冠した班名にすれば、誰もが仲良くなれるのならば苦労などしない。

 

 事実、班員達の仲は最悪に近い状態であった。

 

 大人の意見で言えば、里抜けして仲間を傷付けて大蛇丸の所に自主的にいった忍者をいつまで仲間だと思っているのかと、問い詰めたい所だ。だが、多感な年齢であるナルト達にそれを言わないのは、大人の忖度だ。

 

 しかし、サイはその事を平然と言う。正論が常に人間関係をよくする答えではないという事を彼は理解していない。正論は人を傷つける。そのおかげで、サイは春野サクラに殴られる始末だ。

 

「君等ね~、これ以上揉めると本当に檻にぶち込むよ。天地橋までもう余り時間が無い」

 

「良いではありませんか、ヤマト隊長。まだ、お互い顔を合わせたばかりです。こうなると思いまして、近くの温泉街に部屋を用意しておきました。少し休まれて考えを巡らせてみてはいかがでしょう」

 

 頭を抱えるヤマトに挟間ボンドルドが助け船を出す。

 

 風呂に入り、同じ飯を食べれば多少なりともお互いの距離が縮まると言うアイディアだ。ありきたりだが、若者には意外と効果がある。同じ場所で、同じ行動をする事で仲間意識を植え付けるという方法だ。

 

 本来ならばヤマトからタイミングをみてこの提案をする予定であった。食事に自らのチャクラを含んだ木片を混ぜる事で何処にいても追尾可能にする仕込みをしたかった。

 

「でもよ~、挟間特別上忍。そんな時間なんて」

 

「大丈夫ですよ、うずまきナルト君。一日くらいゆっくりしても時間的な猶予はあります。今すべき事は少しでも、任務の成功率を上げる事です……違いますか? 直ぐに仲よくなれなど言いません。しかし、お互いの良いところを見つけ、尊重する事はできるはずです。当然、春野サクラさんとサイ君もですよ」

 

 現カカシ班で子持ちの大人の意見だ。

 

 だが、言われたことの正しさはナルト達も分かっていた。仲違いしたままでは、任務失敗に繋がる。千載一遇のチャンスを不意にしたくないのは、この場に居る全員の思いだ。

 

「挟間ボンドルド特別上忍がなんと言おうとも、サイがサスケ君を侮辱した事だけは許せません」

 

「それで構いませんよ、春野サクラさん。人には誰しも譲れない一線があります。ですが、サイ君にはサイ君の良いところもあります。今回の事で先入観をもって接しないようにしてください。人は、変われるのですから」

 

 険悪なムードが緩和する。そして、温泉街で一泊する為、カカシ班が足を運ぶ。

 

………

……

 

 人の金で食べる飯は美味しい……だが、ヤマトだけは宿泊先の宿を確認し財布事情を考えた。流石に、全額を挟間ボンドルドに出させるわけにはいかず半分は出そうと思っていたが、その半分ですら怪しかった。

 

「あの~、ボンドルドさん。本当に、この宿に泊まるんですか?」

 

「えぇ、そうですよ。プルシュカも気に入っており重宝している系列店です。それに、ココの温泉は、疲労回復と美容にいいとカツユのお墨付きです。あぁ、お代は気にしないでください」

 

 暗部の給料も安いわけでは無い。後ろ暗い任務で命をかけるのだから、それ相応の収入がある。だが、任務が無いときの給料は察しの通りだ。面が割れないため、表の仕事ができない。その為、一発の仕事でどかんと稼ぐ……カニ漁船的な感じだ。

 

 

◇◇◇

 

 ナルト達は、最上級の待遇を受けて大満足していた。任務が大蛇丸絡みだと忘れるレベル。そして、楽しい食事時にとある議題が持ち上がる。

 

「なぁなぁ、サクラちゃんは挟間特別上忍の顔って見たことあるの? いっつも、仮面被っているじゃん。食事だって俺等と別だしさ~」

 

「そういえば、見たこと無いわね。私に修行を付けてくれた時も何時も付けていたわ。でも、綱手様も知らないみたいよ。ヤマト隊長は、知ってますか?」

 

「いいや、僕も知らない。でも、別にいいんじゃないかな。カカシ先輩だって、履歴書の書類とかマスク姿だし。仮面を付けていたとしても大差ないと思うよ」

 

 流石に、一切素顔を晒していない忍者は、木ノ葉隠れの里では彼しかいなかった。管理する里側としては、何度か問題に取り上げて素顔で履歴書を作ろうとしたが、本人が断固拒否。遂には、大名の介入まであり仮面有りで問題無しに落ち着いた。ハゲ治療やアンチエイジングなどを餌にされては大名とて彼の側に付くのは当然の帰結。

 

「うーーーん、見たい。隠されるほど、気になるってばよ」

 

「止めておきなさいよ、ナルト。隠しているのも事情があるんでしょう。あんまり失礼な事をするとここの宿代ナルトだけ自腹にされるわよ」

 

「素顔なんて大した問題じゃないよ、ナルト君。忍者ってのは場合によっては、名前すら偽る必要があるんだから顔が何だって言うんだ」

 

 本名より偽名を名乗る事の方が多く、書類に本名を書けなくなりそうな元暗部は言う事が違う。 




ナルト君が九尾の力に目覚める。

妊婦に対して暴力は良くありませんよね、少年誌ですから!!


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34:天地橋

 挟間ボンドルドは、温泉宿から大蛇丸へ連絡を行ってから天地橋へとナルト達と赴いた。何事も、報告・連絡・相談が大事だ。大蛇丸は、木ノ葉隠れの里のお得意様でもあり、入念な打ち合わせも怠らない。

 

 出産を控えた妊婦――オロチママ。

 

 大事な時期だというのに、遠路はるばる来たナルト達に会う為、足を運ぶ。そもそも、サソリの死亡は既に連絡済みである為、来ないでもよいのにきてくれる。

 

 ヤマトが橋の中腹当たりに辿り着くころ、橋の向こうからフードを被った者が一人現れる。

 

「一体、どんな人が大蛇丸のスパイなのかしらね」

 

「あぁ、だが直ぐに分かるってばよ」

 

「顔を出し過ぎて、見つからないでください」

 

 春野サクラ、うずまきナルト、サイがそれぞれ訳も分からないことを口走る。

 

 少し考えれば答えが出てもおかしくない。伝説の三忍とも言われた大蛇丸が、スパイの潜入など許すはずも無い。怪しい人物を自由行動させるような頭が緩い忍者なら、木ノ葉崩しを計画及び実行する事など不可能。

 

 大蛇丸の側近的なポジション、比較的に自由行動が可能、大蛇丸の目を欺ける、大蛇丸の研究が理解出来る……といった条件を付けて絞っていけば答えは出る。

 

「恐らく、スパイは薬師カブトさんです。以前に、木ノ葉崩しで大蛇丸様と一緒に抜け忍となった。むしろ、彼以外に居ないでしょうね。そんな有望な忍者がいたならば、木ノ葉崩しの際に連れてきているはずです」

 

 挟間ボンドルドの言葉に、ナルト達一同が思考する。

 

 あり得ない選択肢ではなかった。寧ろ、考えれば考えるほどしっくりくる人選。そして、ヤマトがスパイと接触する。フードが取れて顔が現れた。

 

「本当にカブトだってばよ。ぜってー、捕まえてサスケの情報を吐かせてやる」

 

「いいわね、ヤマト隊長の合図で一気に行くわよ。サイと挟間ボンドルド特別上忍も」

 

 薬師カブトの実力が高いのは、この場に居る全員が承知していた。過去にはたけカカシと対峙した時、同程度の実力があると公言もしていた。十分に脅威に値する。だが、あの頃とはナルト達も違う。

 

 それに加えて、木遁忍術が使えるヤマトや医療忍者の挟間ボンドルドまで居るこの状況だ。絶好の機会ともいえる。

 

「申し訳ありませんが、私は辞めておきます。あの大蛇丸様が、薬師カブトをここまで単独行動させるとは思えません。確実に、泳がされているとみて間違いないでしょう。綱手様やうずまきナルト君はご存じでしょうが、私は大蛇丸様と個人的な契約を結んでおりお互いに敵対しない事となっておりますので」

 

 うずまきナルトはこの時になって思い出した。木ノ葉崩しの後に、次期火影として綱手を探しに行った際の出来事を。挟間ボンドルドは、明言していた『大蛇丸様と敵対する事はお断りさせていただきます。折角、家族に手を出さないとお約束いただいたのです。』と。

 

 当然、綱手も知っていながらの人選であり、ここで挟間ボンドルドが手を貸さないのは何ら問題ではない。人選をした綱手に全ての責任がある。

 

 春野サクラにとっては、初耳であった。兄弟子が、あの大蛇丸と個人的な取引をしていたなんて。しかも、綱手やうずまきナルトも知っていると。期待の戦力が早速戦力外になる。だから、思わず仲間を本気で締めあげる事になっても不思議ではなかった。

 

「本当なのナルト!! 正直に答えなさい」

 

「苦しいってばよ。綱手のばーちゃんを火影に迎えに行った時に言ってたけどよ~、今はそんな場合じゃないのだろう挟間特別上忍」

 

「うずまきナルト君、大事な事を伝えていないのはいけませんよ。大蛇丸様が愛娘(プルシュカ)に手を出さないとの条件で敵対をしないと約束したのです。貴方達にとってうちはサスケ君が大事なように、私には彼より娘の方が大事です」

 

 娘の安全の為と言われて、文句を言える人は少ない。

 

 うずまきナルトと春野サクラは、プルシュカの事を知っている。だからこそ、娘を危険にさらす可能性を前提で手を貸してくれなど鬼畜な発言はしなかった。

 

「でも、大蛇丸が約束を守るなんて保証はないんじゃないかな」

 

「サイ君が言う事は、尤もです。しかし私は、大蛇丸様の人間性を信じております。こちらから約束を破らない限り、あの方は約束は守りますよ……さぁ、皆さん出番ですよ。ヤマト隊長が先ほどから、なんで来ないんだよって目で見ていますよ」

 

 挟間ボンドルドが信じると言っても、ナルト達は大蛇丸の事を全く信用できていなかった。流石に、この件に関しては認識が一致する事は難しい。

 

 

◆◆◆

 

 うずまきナルトは、挟間ボンドルドが言った通りになったと思った。大蛇丸本人がこの場に現れる緊急事態。

 

「遅いよ君達!!何で合図を無視するの。僕一人じゃこの二人相手は無理があるって。で、ボンドルドさんは?」

 

「彼なら来ませんよ、ヤマト隊長。なんでも、大蛇丸と取引しているとかで」

 

 サイの発言にヤマトは、驚いた。そして、後方を確認すると、倒れた木に腰を掛けて、コチラを眺めている挟間ボンドルドがいた。状況から考えて、綱手が言っていたとおり、木ノ葉を裏切って大蛇丸と内通していたと思われても仕方が無い。

 

「酷いわね。折角、私が自ら出向いてあげたのに、よそ見なんてしていたら死ぬわよ。それに、ボンドルドも来ているなら挨拶くらいしたらどうかしら?目上の人に失礼じゃない」

 

 圧倒的な存在感を放つ大蛇丸。

 

 挟間ボンドルドは後方で待機しているつもりだったが、呼ばれたからにはご挨拶に伺うのは礼儀であった。そして、ナルト達と同じ位置まで移動する。

 

「失礼しました、大蛇丸様。誤解を招かないように後方で待機しているつもりでしたが、ご挨拶もしないのは失礼でした。お元気そうでなによりです。綱手様からの依頼で、(大蛇丸様の)サポートをしろと言われております」

 

「相変わらず綱手は、人使いが荒いわね。人材はもっと大事に扱わないといけないわ。で、ナルト君達は何の用だったかしら?」

 

 うずまきナルトは、挟間ボンドルドと大蛇丸が自分たちなど居ないかのように会話を続ける事に苛立ちを感じていた。そして、意図せず九尾のチャクラが漏れ始める。

 

「サスケを返せ!!」

 

「あぁ、そう言うことね。ナルト君は分かってないわね、サスケ君を余程殺したいのかしら」

 

 大人はその言葉の意味を良く理解していた。

 

 うちはサスケは、他国の忍者に攫われたのではなく自主的に抜けた。そして、木ノ葉隠れの里の忍者だけでなく、修行の一環で他国の忍者も負傷させている。つまり、うちはサスケが何事も無く里に戻るのは不可能。存在だけで戦争の火種になる。

 

 だからこそ、良くて写輪眼を剥奪された上で死ぬまで地の底。それ以外は、他国への配慮も兼ねて死刑だ。無論、今までの事を帳消しにする程の功績があれば別だが……S級犯罪者と一緒に行動を共にして、犯罪の片棒を担ぐ事しかやっていない。

 

 彼を擁護する者は、うずまきナルトと春野サクラくらいだ。担当上忍であったはたけカカシですら、我が身可愛さに擁護しない。

 

 そんなのは子供には理解出来ない。感情の赴くまま、うずまきナルトは大蛇丸に飛びかかる。

 

「いけません、うずまきナルト君。妊「ふざけるなぁーー!」に手を上げるなんて」

 

 挟間ボンドルドが、妊婦を気遣う言葉が彼の叫びでかき消された。九尾チャクラを纏った大ぶりの攻撃が、大蛇丸に直撃してしまう。

 

 本来、今の一撃でも並みの上忍ならば五体バラバラとなっている。だが、大蛇丸の『祝福』は桁違いであった。お腹の中にあるもう一つの命が持つ『祝福』までその身に宿しており、敵からの攻撃は絶対に致命傷にならないという強力なパッシブスキルを手に入れていた。




親友の子供を宿している妊婦を容赦なく攻撃する主人公…いけませんね。

オロチママは原作同様に強いです^-^



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35:二重の『祝福』

 大蛇丸とうずまきナルトの戦いが始まると、挟間ボンドルドは影分身を残し、移動する。九尾チャクラの余波で巻き添え負傷した春野サクラの治療の為だ。妹弟子への優しい配慮。

 

 そして本体は、九尾チャクラを纏ったうずまきナルトと大蛇丸の戦いを目で見て、ビデオ録画する為に向かった。そして、ヤマトがいる特等席の近くに場所を構えた。

 

 そこで、二重の『祝福』が産んだ奇跡を目の当たりにしている挟間ボンドルド。

 

 一撃一撃が環境を破壊する程の威力を秘めている九尾チャクラの攻撃。腕を振るえば、地面が砕け、衝撃波で木々がなぎ倒される。同じレベルの事を実行するには火影クラスの実力が必要になり、消費されるチャクラ量も相応になる。

 

 そんな攻撃を何度も身に受けて実質無傷でやり過ごす大蛇丸。

 

「ほぅ、これはこれは興味深い。二重に宿した『祝福』が大蛇丸様にもたらしたのは、チャクラの絶対量向上だけでなく、死ねなくなるモノだったのです」

 

「何を言っているんだ、ボンドルドさん」

 

「見て分かりませんか?うずまきナルト君の一撃一撃は、生身の忍者が耐えきれるレベルを遙かに超えております。失ったはずの手足も生えてきます。致命傷となるはずのダメージはこれで9回目ですが、少々疲労した程度で済んでいます」

 

 忍者の戦いというより、大怪獣の戦いと言うに相応しい。

 

 ヤマトとしては、大怪獣の戦いであっても止めなければならない。それを可能とする木遁があり、カカシ代理となった最大の理由でもある。隙さえあれば、九尾チャクラを封印できる。

 

「くそ、なんて戦いだ。これじゃ隙を見つけるなんて」

 

「ヤマト隊長が、何故、そのような事で悩むか理解できません。大蛇丸様にお願いすれば良いのではありませんか?大蛇丸様は、うずまきナルト君の実力を測りたいだけです。キリの良い所で隙を作って貰えるようにお願いすれば叶えて頂けますよ」

 

 大蛇丸とて、長々と実力を測るつもりは無い。機を見て、うずまきナルトの処遇は木ノ葉隠れの里側に任せる気でいた。彼の性格上、手伝えとは言わない。だが、こちらからお願いすれば、「仕方ないわね~」と言って、なんだかんだで引き受けてくれる。

 

 本当に出来た人間だ。

 

「言えるわけ無いでしょ!」

 

「言えますよ。ヤマト隊長がうずまきナルト君の事を心配しているのならば急いだ方が良いです。医療忍者の視点から言わせて貰えば、制御できていない九尾チャクラは心身に重大な負担を掛けています。最良の治療を約束致しますが、生きていなければ治せません」

 

 人間が扱えるチャクラの質ではないのは、上忍にでもなれば分かる。それに、皮膚がはげ落ちて、出血したのをヤマトも確認していた。負傷と再生を繰り返せば、寿命を削る事になる。

 

 よって、部下の命を守るという事を優先するならば、ヤマトが頼るべきは大蛇丸である。頭を下げて、声に出してお願いするだけで、部下の命が救えるのならば安い買い物だ。

 

「お、大蛇丸。ナルト君を……」

 

「いけませんよ、ヤマト隊長。大蛇丸様は、目上の方です。それにお願いする立場ですので、言葉遣いには気をつけた方がよろしいかと。ヤマト隊長の忍道は、プライドと部下の命……どちらが重たいんでしょうね。大丈夫です、私がしっかりと証言します」

 

 挟間ボンドルドの言葉の誘惑。声色も相まって、恐ろしい程に心に響く。カカシ班の隊長代理として、成すべき事はなんなのか。答えは一つしか無かった。

 

「大蛇丸様!!ナルト君を止めてくれ」

 

 木ノ葉隠れの里……火影直轄の暗部にして、今現在はカカシ班の代理隊長。木遁使いの忍者が大蛇丸に様付けしてお願いをする瞬間がビデオに収められた。

 

 当然、その声は大蛇丸にも届く。

 

「仕方がないわね。見ようによっては、私の息子からのお願いだから叶えてあげる。とりあえず、あのチャクラを凌いで隙を作ってあげるから、後は任せるわよ」

 

「ヤマト隊長にとっては、大蛇丸様はある意味パパみたいなものでしたか。これは失礼しました。様付けなんて不要でしたね」

 

 過去はパパ。今はママ。時代を先取りすぎたトランスジェンダーの申し子である大蛇丸。そんな偉大な親を持つヤマトは誇っても良い。

 

「えっ!? なんでそうなるんですか!? 僕と大蛇丸は、血の繋がりなんてありませんよ」

 

「家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか?私はそうは考えていません。慈しみ合う心がヒトを家族たらしめるのです。血はその助けに過ぎません。愛です、愛ですよヤマト隊長。それに家族とは他人同士が出会い築き上げるものなのですよ」

 

 ヤマトの木分身が精神負荷により崩壊してしまった。木分身は、リアルタイム通信が可能な珍しい能力であり、同時進行で本体ヤマトが倒れ込んでいた。近くに医療忍者の春野サクラがいなければ、任務続行が出来ないレベル。

 

 

◆◆◆

 

 春野サクラは、急に倒れかけたヤマトを支えた。体温の低下、瞳孔が開き、過呼吸になったのを把握し、即座に医療忍術で治療に取りかかった。

 

「ヤマト隊長!! いいですか、ゆっくり深呼吸してください。大丈夫です」

 

 スーーーハーーーと、ヤマトが春野サクラの指示に合わせて呼吸を整える。そして、落ち着いたところで挟間ボンドルドの影分身に文句を言う。

 

「ボンドルドさんのせいですよ!! あんなこと言われたら、誰だって体調を崩しますよ」

 

「あちらで何があったかは知りませんが、どうやらヤマト隊長の出番みたいです。九尾のチャクラを纏ったうずまきナルト君の肉体は、草薙の剣ですら貫通できませんか。私の外装より堅いとは、じっくり研究したいものですね」

 

 ヤマトから苦情を言われる挟間ボンドルドの影分身。

 

 そして、大蛇丸が約束通り、ナルトをヤマトが居る場所まで直送する。草薙の剣を使って運ぶなど贅沢な使い方だ。

 

 九尾チャクラを纏った痛々しい姿のうずまきナルトを見て、春野サクラは心を痛めた。うちはサスケを助けるためとはいえ、自らをここまで犠牲にして力を行使する。そこまで、追い詰めてしまった一端は自らにあり、謝ることで多少なりとも心の負担を軽くしたいと。

 

 だが、理性を失っているうずまきナルトには届かない。理性を失った怪獣の前に無防備で飛び出すなど自殺行為をする春野サクラは、仲間の手によって傷を負う事になった。彼女が倒れたと同時に、うずまきナルトを追ってきた挟間ボンドルドが合流した。影分身が分身を解いて即座に情報連携を行う。

 

「間に合いませんでしたか。水遁・月に触れる(ファーカレス)!閉じろ。4本も尾を出した状態の九尾相手に長くは持ちません、ヤマト隊長。封印をお願いします」

 

「分かってますよ、ボンドルドさん」

 

 九尾チャクラを纏ったうずまきナルトを拘束する忍術。頼りになる医療忍者だが……大蛇丸をパパと認識させたことだけは一生許さないと心に誓うヤマトであった。

 

 




年末年始、年度末は忙しい。
投稿頻度は、ご容赦ください。

そろそろ
ビックダディ・SA・SU・KE
にご登場願わないとね。





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36:贖罪

 挟間ボンドルドは九尾チャクラで負傷した春野サクラを治療する。その治療で彼は、傷の治りが遅い事に気がついた。挟間ボンドルドの腕が鈍ったとかそう言う次元ではない。本来10秒と掛からず完治させられるのに、何かがチャクラの流れを邪魔している。

 

 その興味深い事象に、挟間ボンドルドは感動していた。今までに見たことがない負傷。是非、解剖して原因を究明し、治療方法を確立したいと考えた。延いては人類のためになる。

 

 妹弟子である事実が、春野サクラの命を救った。少なくとも、人として運用がされている彼女を医療の発展の礎にすることはない。

 

「ナルト君はこっちで封印します。サクラの事は頼みました」

 

「勿論です。その為に、私がいるのですから。封印が終わり次第、うずまきナルト君の治療にも掛かりましょう」

 

 挟間ボンドルドは、九尾チャクラを封印し持ち帰る事にした。九尾チャクラともなれば封印するには高度な技術が必要になる。だが、自来也がイタチの天照を封じた巻物を彼は買い取っていた。今ではそれと同等の封印術を使いこなせるに至る。

 

 春野サクラより丁寧に抽出した九尾チャクラ。経絡系に残滓すら残らないように抜き取る技術は神業。そして、医療忍術が正常に作用し春野サクラの状態が改善した事を確認した。

 

「すごい。さっきまでの違和感が消えました」

 

「どうやら完治しましたね。一緒にうずまきナルト君の治療をしましょう。推測の域を出ませんが、体内に残留していた九尾チャクラは時間経過でも消え去ったでしょう。今回は、後続の任務もあり急ぎますので抜き取りました。違和感があったら、いつでも言ってください」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの治療にあわせて細胞の採取も忘れない。同じ九尾チャクラによる負傷であっても、春野サクラと異なり医療忍術が阻害されない。

 

 尾獣チャクラの特性なのか、人柱力の特性なのかなど調べる事は幾らでもあると、挟間ボンドルドは今から楽しみであった。そして、挟間ボンドルドは今後の事も考えて、うずまきナルトの精密検査を行う。同じ事態を防ぐ為、君の身体を守る為と言われれば誰も断る事はできない。

 

………

……

 

 カカシ班のサイが大蛇丸と共に消えた。連れ去られたのでは無く、自ら付いていった。つまり、コレは重大な裏切り行為だ。仲間の輪に片足を突っ込んだ所でのこの状況。

 

 ヤマトとしても、想定していたケースの一つではあったが頭が痛い。

 

 『根』出身の新人であるから特別な任務を受けている事は考えていた。だが大蛇丸に同行を許される程の任務だとは考えてなかった。つまりは、里を裏切って大蛇丸と繋がっているのは『根』の可能性が高いという事だ。

 

「状況から察するに、連れて行かれたというより付いていった可能性が高いですね。あの大蛇丸様が同行を許したとなれば、相応の手土産があったとみるべきです。大蛇丸様の信頼を買えるほどの」

 

「不味いな。里の機密情報が大蛇丸の手に落ちるなんて」

 

「どうすんだってばよ」

 

 長年、各国の指名手配を逃れてきた大蛇丸。見失ったら最後、探すのは困難だ。大蛇丸から芋づる式にうちはサスケを見つけるというナルト達の企みも崩れ始めた。完全に徒労に終わると。

 

「また、振り出しに戻るなんて……サスケ君」

 

「それなら大丈夫だよ、サクラ。こんな事もあろうかと、食事に僕のチャクラを仕込んだ木片を混ぜておいた。これで何処にいても探し出せる。バレない距離を保って追うよ」

 

「流石ヤマト隊長!今まで良いところが無かったけど、俺ってば見直したぜ」

 

 失礼な事を平然と言う うずまきナルト。九尾チャクラを纏った時の記憶が無いなら仕方が無い事だが………野宿しないで済んだり、九尾チャクラを押さえ込んだりと一番の功労者である事は間違いない。だが、子供はそこまで配慮しなかった。

 

………

……

 

 大蛇丸が潜伏しているアジトまで到着したナルト達。

 

 バレないように地下から潜入し、うちはサスケを探す事になった。だが、広いアジトである為、分散する事になる。効率的な方法だが、大蛇丸の拠点だとリターンよりリスクが勝る。

 

 挟間ボンドルドは、アジトに居る子供達や面倒を見る保母さん達を事前に避難させるように事前連絡済みだ。万が一、避難が間に合っていない場合には挟間ボンドルドが保護して後で送り届ける事にもなっている。

 

 勝手を知る大蛇丸のアジトを隅から確認をしていく。綱手との繋がりが分かる物的証拠の破棄。うちはサスケの子供が隠れて残っていないかなど。

 

「全く、子供を作りすぎるのも大変ですね。まぁ、大蛇丸様の事ですから、抜かりは無いでしょう。問題なのは、あのお二方。非力になったとはいえ、何か残している可能性もあります」

 

 サスケの一族復興。その一族は、音隠れの里へと安全に輸送される。多すぎる子供と母親。面倒を見る保母さん達と一緒にだ。

 

 

◆◆◆

 

 挟間ボンドルドがナルト達と一緒にアジトに来る数日前。

 

「やはり、ボンドルドは使えるわね。そう思いませんか」

 

 大蛇丸の機嫌は良かった。両腕が完治しただけでなく、挟間ボンドルドとの共同開発した新忍術が思いの外、有用であったからだ。

 

 術の基本は、穢土転生。そこに、挟間ボンドルドが魂を別の肉体に定着する術式をアレンジ。つまり、生前の姿を取り戻す事をせず、別の肉体に魂を定着させる。

 

「儂等を復活させて何をさせる気かと思ったが……変わったな大蛇丸」

 

「まさか、穢土転生をこのように改良するとはな。だが、悪用される事を未然に防ぐ事が前提ならば大した物だな」

 

 赤髪の美女と銀髪の美少女。

 

 うちはサスケの子供達の面倒を見る保母さんだ。

 

「お二人に褒めて頂けるとは、他に自慢できそうね。経絡系を持たない肉体ですが、子育ては重労働。肉体能力は、上忍クラスです。ヒルゼン(・・・・)スキーさん、ハシラマ(・・・・)ックイーンさん」

 

 大蛇丸の腕の魂を取り戻したついでに、初代火影と三代目火影の魂も死神から回収していた。穢土転生の危険性を考えれば、初代火影と三代目火影を乱用されるくらいなら、受肉させて呼び出せないようにしようというアイディアだ。

 

 受肉には、一般人の遺伝子とウマの遺伝子を掛け合わせて作った特別製の肉体。チャクラが練れない身体である為、忍術に対する抵抗が0であり大蛇丸から逃れる事は不可能。

 

 第二人生をスタートさせた火影達。生前に人を殺しまくった事を考えれば、コレは償いとも言える。彼女達の贖罪の人生はこれから始まった。

 

 




米シャワーさんがTSしたら……マダラ似ていると記事をみてこの設定は使えると反映しましたわ。

サイゲのアレとにているけど名前も違うし、名言しなければセーフでとおらないかしらね。怒られたら変更か削除の予定です><


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37:ビックダディサスケ

 挟間ボンドルドは、カツユを口寄せして人海戦術で物的証拠の隠滅を謀る。念には念を入れて、アジトごと焼き尽くす算段で各所に火薬や油を撒き散らす。掌サイズにまで小さくなったカツユは、実に可愛らしい。愛らしい声から育ちの良いお嬢様である事が伝わる。

 

「忙しいところ、手伝っていただき大変助かります、カツユ。子供達と保母さん達は無事でしたが、まさか留守電の削除を忘れているとは、大蛇丸様も抜けておりますね。カツユがいち早く気がついてくれて本当に助かりました」

 

『そうですよね。でも、ツムギちゃんだけがパパから離れるのを嫌がっていたみたいです、だから、サスケ君と一緒にいると思います』

 

 うちはツムギ……大蛇丸とうちはサスケの待望の第一子。産まれながらにして写輪眼を開眼している。その為、大蛇丸としても期待している子供だ。だが、子供を持てば人が変わる事は良くある。大蛇丸が望むレベルの器になった時、母としてどうするかは正直誰も知るよしはなかった。

 

「おやおや、うちはサスケ君と一緒という事は、カカシ班の皆様ともご対面という事になります。彼等がうちはサスケ君を真の仲間だと思うのならば、祝いの言葉でも贈るでしょう」

 

『そうですよね。それはそうと……ヤマト様がボンドルド様の動向を知る為、木分身をだしているようですが、どうしましょう』

 

「留守電情報以外は、証拠は残っていませんでしたので問題ありません。カツユは引き続き、火薬と油のセットをお願いします。大蛇丸様が引き上げると同時にアジトを破棄したと思わせます」

 

 その時、ズドンとアジトに地響きがはしる。震源の場所へ足と運ぶ挟間ボンドルド。その道中でナルト達と合流を果たす。合流後に、サイの目的がサスケの暗殺である事を連絡され、彼は狙いをサイに定めた。

 

………

……

 

 通路の開けた先にサイを見つけ、春野サクラが動こうとしたところを挟間ボンドルドが止めた。

 

「落ち着いてください。サイ君の扱いは私に任せてください。火影様よりこの件に関して特命を受けておりますので、うちはサスケ君を暗殺など絶対にさせません、彼にはそれ相応の報いを受けてもらいますので安心して私に任せてください」

 

「離してください、私の手で殴らなきゃ気が済みません」

 

 春野サクラは、殴っただけで許してあげる。もはや、そんな事態ではない。火影直轄の暗部情報を渡していた事は事実として分かっている。書類は本物。里に戻ったとしても重罪は確定だ。

 

「安心してください。春野サクラさんが殴る位は、生かしておきます」

 

「ちょ、ちょっとボンドルドさん。まさか!?」

 

 ヤマトは気がついた。だが、既に時は遅い。

 

 挟間ボンドルドの手がサイにターゲットをあわせた。彼の腕に備え付けられた筒から飛針の様な暗器が銃弾並みの速度で発射される。忍者が投げる手裏剣の様な生ぬるい速度ではない。更には、細く鋭くこんなモノを実質回避不能。

 

「私は、火影様よりサイが不穏な動きをした場合、排除するように命じられております。本件に関しては、独自権限を有しております」

 

「なぁ、ちょっと待てってばよ。なんなんだよあれ!」

 

「これは、シェイカーといって薬物を仕込んだ針を相手に飛ばす絡繰りです。安心してください、余程当たり所が悪くない限り死ねません(・・・・・)。人間性を喪失しただけですので、どうぞ殴ってあげてください」

 

 シェイカーが飛ばす針は、刺されると同時に体内に薬品を注入する仕組みになっている。注入される薬品は仙術チャクラの修行で助けると言われる「妙木山」、「湿骨林」、「龍地洞」の三箇所から彼が個人的な伝手で手に入れた劇薬。その効力は、人間を別の生物に変える事が出来るモノであり、仙術チャクラを極めた者でなければ致命傷だ。

 

 先ほどまで人間の形をしていたサイ。だが、脇にシェイカーの針が刺さってから数秒もせずに別の生き物に変わり果ててしまった。まさに、必殺技だ。

 

「そ、そんな何もここまでやらなくても」

 

「何を仰いますか春野サクラさん。彼は、里の裏切り者。ですが、うちはサスケ君に対しては、火影様から特に命令を受けていません。だから、安心してください。さぁ、あの光の先に貴方が望む未来が待っていますよ」

 

 裏切り者のサイの末路と愛するうちはサスケを比較する事など春野サクラには必要がなかった。どちらが大事かと言われれば後者であると即答できる程に。そして、何年も会えなかった彼に会うため、春野サクラは光が注ぐ場所へと走った。

 

 走った先が天国であると信じて。

 

「ボンドルドさん、一応聞きますが……サイを元通りには出来ますか」

 

「そう言うことを前提にしていませんでしたので、不可能です。後で、私が回収しておきますので火影様には予定通り暗部を処理したとお伝えください。うずまきナルト君も早く行ってあげてください。うちはサスケ君があそこにいるかもしれません」

 

 うずまきナルトと同じくヤマトも走って行った。

 

 

◆◆◆

 

 春野サクラは、光が差す場所へと足を運ぶ。大蛇丸のアジトの一部が崩壊し、外から光が差し込むその場所へと。サイが奇っ怪な生命体に変わり果ててしまったが、彼女にとってはサスケの方が優先であり、気にとめない。

 

 そして、見上げた先に愛していた男……ビッグダディとなったうちはサスケがいた。

 

「さ……さすけ君?よね」

 

 春野サクラが驚くのも無理はない。うちはサスケは、とても同世代とは思えないほど大人びていた。うちはイタチを若干若くしたような風貌であり、苦労人なのか顔の皺と目元のくまがよく目立つ。

 

「ぱ~ぱ」

 

「あまり大きな声を出すな。子供が泣くだろう」

 

 抱っこ紐で子供を抱いている男性。世間一般的にはイクメンと呼ばれる存在。若いのに子育てと忍術修行の両方をこなすとは、エリートの血筋は伊達じゃ無い。

 

「ね、ねぇサスケ君。もしかして、その子……サスケ君の子供じゃないわよね」

 

 春野サクラは、認めたくない現実を直視する。子供の瞳が写輪眼であっても、愛した男の子供だとは信じたくなかった。写輪眼ならば、彼の兄であるうちはイタチの可能性もある。

 

「そうだ、俺の子だ。俺は大蛇丸の所で一族復興を成し遂げ。イタチを殺す力を付けた」

 

 春野サクラの心にトドメを刺しに掛かるうちはサスケ。彼には、人の心が無いのだろうか。だが、追い打ちを掛けるかのようにオロチママまで登場する。

 

「サスケ君、危ないから子供は私が預かって置くわ」

 

「まぁま」

 

 子供が母親に抱きしめられた。

 

 丁度その時、ヤマトとうずまきナルトも到着する。大蛇丸が子供を抱きしめるその姿は、敵側からみれば赤子を人質にとっているようにも見える。実の母親が実の子を抱いているだけなのに、何故か不安になる。

 

「嘘よ、サスケ君。お願いだから嘘だと言って大蛇丸が母親だなんて」

 

「さ、サスケ。一体、この二年間にナニがあったんだってばよ」

 

「みんな落ち着け、これは幻術だ。幻術解除を早くするんだ」

 

 幻術ならば酷い内容だったで済む。だが、現実なのが更に酷い。

 

 すでに、サイが成れ果てと化している事などナルト達の頭の片隅にも残っていなかった。一時期は仲間として行動していたのに酷い忍者だ。

 

「ナルトも居たのか。ナニがあっただと……この二年、俺は一族復興のため、4桁に迫る女を抱いた。今じゃ、子供の数は300人を超えた。どうしたナルト。笑えよ」

 

「わ、わらえねーってばよ」

 

 サスケのやつれ具合を見れば、笑えない。健康状態は良いのは分かるが、色々とすり減っている感が否めなかった。

 

「さ、300人って。嘘でしょ、大蛇丸だけじゃなくそんなに沢山」

 

「さ、サクラちゃん!!」

 

 全身の力が抜け落ち、体重すら支えられなくなった春野サクラ。うずまきナルトが支えて何とか体勢を保つ。

 

「おやおや、みなさん何故固まっているのです。貴方達の仲間が子供を授かったのですよ。あたらしい命がこの世に産まれた。祝ってあげるのが、仲間ではないでしょうか。おめでとうございます、うちはサスケ君、大蛇丸様。可愛らしいお子様ですね」

 

「ふん、誰かと思えばボンドルドまで来てたのか」

 

「ありがとう、ボンドルド。でもね、もうすぐこの子にも弟が産まれるのよ。祝わせてあげるわ」

 

 うちはサスケと大蛇丸は、挟間ボンドルドと面識もある。アジトでも話すし、出産にも立ち会った。だが、建前上、敵対している雰囲気をだした。

 

「ま、まってよサスケ君。大蛇丸が妊娠しているって嘘よね。だって、大蛇丸は男じゃない――あれ、じゃあツムギちゃんは誰が産んだの」

 

「あぁ、今はサスケ君の子供を産むために女に転生しているのよ。安心しなさい。コレが今の本当の姿よ」

 

 自らトドメを刺されに飛び込む春野サクラ。

 

 大蛇丸が今現在うちはサスケの子供を妊娠中で、先ほどまでその状態で闘ってたという驚愕の事実を知ることになる。そして、何より、大蛇丸の姿が黒髪ロングの巨乳大和撫子で登場し、女として敗北を経験させられた。

 

「あぁ、もうダメ。私こんなの耐えられない」

 

 震えた手で自らの頸動脈にクナイを近づける春野サクラ。だが、挟間ボンドルドが手を押さえて、医療忍術で気絶させる。

 

「冷静さを欠いていますので、眠らせました。コチラから突然の訪問をしたのに恐縮ですが、仲間が何もしないうちから潰れてしまいましたので、帰らせて貰えないでしょうか」

 

「まったく、貴方達は何をしにきたのよ。人様のアジトに無断で忍び込んで破壊活動して帰るなんてテロリストよりたちが悪いわ。だけど、争いは胎児や育児にも悪いから帰してあげるわ、感謝しなさい」

 

 不要な争いなど誰も望まない。木ノ葉隠れとしても目的通り、スパイと接触してアジトまで特定した最低限の任務は果たしている。

 

「勝手に決めんな!!俺はサスケを連れ帰るって決めてんだよ」

 

「落ち着きなさい、うずまきナルト君。今やうちはサスケ君は沢山の妻と子供を支える身です。それを我々の一存で連れて帰るなど、貴方は家族を引き裂きたいのですか。うずまきナルト君なら分かるはずです、両親がいない子供のつらさを」

 

 うずまきナルトの中で急激にうちはサスケを連れて帰る気が失われていく。

 

 子供には親が必要だ。親が居ない苦労を誰よりも知っているうずまきナルト。もう、あの頃には戻れないラインまで来ている。それを初めて理解したときであった。

 

「サスケ!! お前がなんて思っていても俺はお前を友達だと思ってる。だから、いつでも頼れよ」

 

「ウスラトンカチが、人の気もしらないで。勝手にいつまでも待ってろ」

 

 うちは夫妻が立ち去った。

 

 だが、いい話で終わっている感じこそすれど、木ノ葉隠れがやったことはどう見てもテロ行為。その代償でサイが成れ果てとなり、春野サクラが精神的なダメージで戦線離脱。ヤマトの大蛇丸に様付けする動画が残される。

 

 代理隊長ヤマトの初の任務で、隊を半壊させた。

 




再開編はいったん終了ーー!!
次は、暁の不死身コンビ編であってますよね。


どこかで音隠れの里だけの新ギャンブル……競バをご紹介したいと思っています。
ハシラマックイーン
ヒルゼンスキー
トビラマテイオー
ミナトブルボン

元火影達の熾烈な争いが見れるチャンス。
二代目の卑劣なステップが炸裂しそう。
そして賭け事が大好きな五代目も見学にくるとか、ありじゃないかな。



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飛段・角都編
38:出動


やっと不死コンビ編><
ジャンプ名作だけあって、飛ばし飛ばしでも長いよ!!



 綱手は、久しぶりに真面目に忍術の腕を磨いていた。火影の仕事もあるのに、勤勉さが素晴らしいと周りの者から賞賛され、やはり火影には綱手が相応しいとすら思わせていた。

 

 彼女の手元には、挟間ボンドルドが里に提出していた研究資料。特に、アンチエイジングに関する物を優先して確認していた。その成果を習得する為、心血を注ぐ。

 

「それにしても、ボンドルドさんは流石ですね。この研究資料だけでも、お金になりますよ。でも、本当にやるんですか綱手様」

 

「当たり前だ、シズネ。ボンドルドの奴め……肝心な所だけは、資料に載せてない。抜け目が無い奴だな。だが、一応形にはなった。後、シズネもあまり人聞きの悪い事をいうな。火影として、倫理的に許されない研究をした忍びを罰するだけだ。今まで、里の為と思い目を瞑ってきたが目に余る」

 

 挟間ボンドルドは、大名達に気に入られており強い後ろ盾がある。だが、それは、アンチエイジングなどの大名達が求める物を提供できるという一点に尽きる。仮に、それを他の者ができるならば、価値は半減する。

 

 秘密を知りすぎた者は、権力者にとって不都合だ。ここら辺で、今まで色々と精算できていなかった里の不都合な事件も纏めて、上乗せ精算するつもりだ。

 

 大名達も綱手が挟間ボンドルドの代わりを出来るならば、手助けすることはない。

 

「一応お聞きしますが、綱手様。プルシュカちゃんは……」

 

「子供に罪は無い。私の養子として迎えるつもりだ。あの才能は、失うには惜しい。――それで、ボンドルドの研究施設がどこにあるか掴めたか? ダンゾウにも協力して貰っているのだから、見つかりませんでしたでは許さないがな」

 

 暗部養成機関『根』としても、後ろ暗い研究を多くやってきた。溜まりに溜まった罪をなすり付けて精算したかったので、火影の案に便乗していた。そして、研究施設にある色々な成果も略奪したいと考えてもいる。

 

 黒と黒が混ざり合って、もはや漆黒となっている。

 

「幾つか候補を絞りました。ここまで絞るのも大変でしたよ、カツユ様もいるので尾行も命がけですよ」

 

「安心しろ、ボンドルドが死んだ後に突入する手筈も整えている。カツユに説明するための台本も準備済みだ。シズネ、奴は色々と知ってはいけない事を知っている。これは、火影として涙を飲んでの決断だ」

 

「一体、ボンドルドさんは里のどんな秘密を知ったのか、教えてはくれないんですね」

 

 シズネは知らなかった。

 

 綱手が暁や大蛇丸と水面下で繋がっている事。その橋渡し役を火影からの勅命で挟間ボンドルドが担当していた事を。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドの秘密の施設――イドフロント。

 

 木ノ葉隠れの里の家は、ダミーであり、基本的には挟間家はこの施設で暮らしている一家だ。失礼な来客が多い家で暢気に暮らすほど愚かでは無い。挟間プルシュカもその事を良く理解している。

 

 だが、そんな暮らしでは外で友達など出来にくい。だからこそ、父親として挟間ボンドルドは、友達を用意した。砂隠れの相談役が己生転生という素晴らしい忍術を披露してくれたお陰だ。

 

「パパ、レグ(サソリ)が何処に行ったかしらない? 今日は、一緒に遊ぶ予定だったんだけど、見つからなくて」

 

「おやおや、約束を破るとはいけませんね。下の階で身体をいじくっているようです。折角、可愛く繕ってあげたのに気に入って頂けないとは残念です」

 

 挟間ボンドルド謹製の人傀儡……レグ。

 

 大蛇丸の所に卸している競争バのプロトタイプだ。だが、サソリに気を使い人間より機械寄りにカスタマイズしてあげるという優しさを出してあげていた。

 

「可愛いのにね。絶対に前の身体よりかっこいいと思うのにな~」

 

「時間が解決してくれるのを待ちましょう。レグにも第二の人生を楽しんで頂きたいものです。私は、これから新しい小隊での任務があります」

 

「ねぇ、パパ。私も付いて行ったらダメ? もう、足手まといにならないよ」

 

「そうですね、そろそろ頃合いでしょうか。バレないように付いてくるのでしたら構いませんよ。必要ないかも知れませんが、一人護衛を付けます。この祈手(アンブラハンズ)は信頼できる者です。外に居る間は貴方を守ります。プルシュカももうじき一人前のレディです。どうか貴方自身の目で確かめて下さい。卑の意志を」

 

『大丈夫です、何かあればママもプルシュカちゃんを守りますからね』

 

「メーニャママも一緒に行こうね。レグは……足遅いから、今度お外に連れてってあげよう」

 

 この日、挟間プルシュカは初めて父親の任務に同行を許された。当然、他の小隊員にばれないようにという大前提だ。普段から、暁や大蛇丸と訓練しているプルシュカが初めて里の忍者のレベルを知る機会となる。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、火の国で尾獣探しをしている暁討伐部隊のアスマ班に編入される。火影曰く、既に元守護忍十二士の地陸が殺された事で火の国の威信に賭けて、人手不足にもかかわらず総勢20小隊も出動が余儀なくされた。

 

 実に怪しい出動だ。表向き同盟国である風の国からの要請や大蛇丸案件ですら一部隊しか動かさなかったのに、今回は20小隊。これだけの部隊を動かすのには、金だけでなく上役達の承認も必要だ。つまり、それだけの事が裏で動く事態。

 

 余程、知られたくない事を一緒に掃除する予定だと挟間ボンドルドは想定した。そして、概ね予定通りだと仮面の下で笑顔になる。




あること無いこと罪が上乗せ精算。

火影「貴様は知りすぎた。だまして悪いが、仕事なんでな 死んでもらおう」


PS:
怒られなければどこかで、音隠れの里……大蛇丸杯をやろうかな。
そして、サクモクロスにカリンチャンも音隠れの里で実装させなきゃ!!
毎月100億両稼げるキラーコンテンツ。
各国からお金を合法的に巻き上げる音隠れの里……金で忍界を支配するしかないわ。

サクモクロス…はたけサクモとかおったよね。
カリンチャン…大蛇丸の部下にカリンとかおったよね。


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39:疑わしきは…

 暁の目的は、尾獣。当然、忍び里としても一発逆転の秘密兵器でもある為、存在は隠匿されている。万が一、人柱力が殺されてしまえば、戦争での切り札が一枚減る。だから、暁も地道に情報を集めて、探している。

 

 大国である火の国であるならば、九尾以外にも存在している可能性を考えて虱潰しに行動するのは正しい判断だ。だが、そこで問題が生じる。暁には、木ノ葉隠れの里の抜け忍が多く所属している、もしくは所属していた。

 

 伝説の三人の一人大蛇丸やうちはイタチ。特に、大蛇丸に至っては四代目火影候補にまで名前が挙がっていた。彼の性格上、里の機密である尾獣について調べていないはずが無い。その為、知っていれば暁所属時代に、情報が伝わっている。

 

「これは、切られましたね」

 

 誰にも聞こえないレベルの小声で挟間ボンドルドが呟く。

 

 火の国で暁が最初に忍寺「火ノ寺」を襲撃した事が、可笑しいことだ。人柱力は基本的に不発弾的な要素から、嫌われることが多い。その為、人づてに噂を聞いて回れば、より可能性が高い場所へ行ける。長年、尾獣を探している暁が効率的な探し方を知らないはずが無い。

 

 つまり、今回の忍寺「火ノ寺」襲撃は、誰かに差し向けられた可能性が高い。そこに尾獣の情報を持った者がいるとか、偽情報を。それを可能にする人物は、暁とコネクションがあり、火の国で警備状況を把握もしくは操作できる者である可能性が極めて高い。

 

「そういえば、ボンドルドさん。アンタの得意忍術は?」

 

 奈良シカマルが作戦立案の為、皆の得意忍術を確認する。

 

 どこからどう見ても医療忍者の挟間ボンドルドに、得意忍術の確認は不要のはず。下忍試験や中忍試験の時に医療忍者として色々と会う機会もあったのに、信じて貰えていない。

 

「医療忍術ですよ、奈良シカマル君。おや、不思議そうな顔ですね」

 

「シカマル失礼だぞ、ボンドルドさんは見た目は奇抜だが医療忍術の腕は抜群だ。治療を受けた俺が保証するぞ」

 

 見た目が奇抜というのがフォローになっているか微妙であった。治療されている時からそんな風に思っていたとは、医師に対する感謝の念は彼等にはないのだろうか。

 

「すまねー。以前にナルトがすげーー忍術使うって言ってた気がしたから。医療忍者なら基本戦いは俺等に任せてくれ」

 

「シカマル。ボンドルドは、ただの医療忍者じゃないぞ。上忍クラスと仮定して頭数に入れておけ。暁相手だ、使える戦力は使う前提でいろ」

 

「ですが、アスマ先生。医療忍者は」

 

「構いませんよ、奈良シカマル君。私とて、木ノ葉の忍びです。多少なりとも、戦いの心得はあります」

 

 この時、アスマの心の中では第一関門突破と思っていた。

 

 五代目火影からの密命である挟間ボンドルドを戦死させるという任務。幸いなタイミングで暁が火の国にきており、奴らとの戦闘ならば名誉の戦死も不思議では無い。それに加え、猿飛アスマは、父親である猿飛ヒルゼンから託された思い――『九尾事件の被害者であり、人柱力を快く思っていない連中を人知れず闇に葬る』事を遂に果たそうとする。

 

 その思いを託した本人が、近隣の里でバ車ウマのような扱いを受けて、元気に過ごしているなど猿飛アスマは知るよしもない。

 

「そうか、分かった。なんか重武装そうだし、サクラの師匠でもあるらしいから怪力とかあるんだろう。期待してるぜ」

 

 挟間ボンドルドは、勿論と答えた。

 

 そして、火の国に来た暁が誰かを考察する。暁は、持ち回りが決まっている。土地勘が大事でもあり大体は出身国やその周辺国が多い。各国で文化や文明レベルに異次元の差がある為、他国の人間はどうしても悪目立ちする。そもそも、暁コートで相当目立っているのに、これ以上目立つと目も当てられない。

 

 そもそも、あんな目立つコートを着て移動しているのに未だに発見できない木ノ葉隠れの里の忍者は無能といえる。

 

………

……

 

 地陸の遺体が無いと言う事から、換金所を目指すことになったアスマ班。そこで、挟間ボンドルドは誰が来たか理解した。組織運営において、金管理を担当している不死コンビ。暁側に慢心でも無い限り、現状のメンバー構成では勝率が0に近い。

 

 そして、目的のトイレ兼換金所に部隊が到着した。外には、暁コートを着た目立つ男が一人座っている。

 

「常々疑問に思っているのですが、暁を全国指名手配すればスムーズに発見できるのではないでしょうか。あれだけ目立つ特徴があれば一般人に懸賞金でも出せば簡単かと」

 

「そいつは無理だぜ、ボンドルドさん。一般人に幻術が掛けられたら通報の嵐で収拾がつかなくなる。じゃ、作戦を説明するぜ。もう一人が何処にいるか分からねーが、一人で居る今がチャンスだ」

 

 奈良シカマルが暁討伐に向けての作戦を伝達する。詰まるところ、作戦の肝となるのは奈良シカマルの秘伝忍術である影縛り。この忍術は、下手をすれば卑劣様の忍術に比肩する能力だ。

 

 影縛りで拘束したら一瞬のうちに相手を殺せば全て片が付く。チームで行動しているときにこの秘伝忍術が味方に居ればどれだけ心強いことか。

 

 

◇◇◇

 

 猿飛アスマは、暁の連中が適度に強い事を期待していた。可能ならば倒したい。それが無理なら痛み分け……挟間ボンドルドを犠牲にして撤退に持ち込みたい想定でいる。その為に、奈良シカマルが彼の班に配属されていた。

 

 敵ごと足止めして貴い犠牲作戦。

 

 暁ほどの難敵ならば、普通にあり得る展開だ。近接戦ができる奴が接敵して、纏めて動きを止めて、二人纏めてさようなら。一人一殺で行くスタイルならば最上のやり方。

 

 だが、様子見の最初の行動で暁を一人串刺しに出来てしまう。不死身である為、攻撃を避けるという事に疎い飛段だからこそ、成功した。

 

「いっちょあがり」

 

「いってぇーなーー。なにも……あぁ、木ノ葉隠れの連中か。全く、先生(・・)も連れてきやがって」

 

 だが、飛段は死なない。

 

 死ねないという特異体質。その上、奈良シカマルを超える術を使う事が可能だ。相手の血液を体内に取り込む事で、何処に隠れていても確殺可能な凶悪な能力。

 

「もしかして、俺等の先輩だったりしますかアスマ先生?」

 

「こんな教え子が居てたまるか、シカマル。今、誰をみて先生と言った?聞くことが増えたな」

 

 飛段の口の軽さが災いした。

 

 先生という単語が誰を示すのか、現状構成で考えれば怪しいのは奈良シカマルを除く全員だ。忍術的な教師という意味での先生、後は医者的な意味での先生。額当てが他国である為、怪しいのは後者となる。

 

 つまり、後者であれば、怪しいのは挟間ボンドルド以外に存在しない。

 

 奈良シカマルは、同じ里の忍びを疑いたくは無かったが挟間ボンドルドへの警戒レベルを引き上げる。最悪、敵と想定して動く必要があると。

 

「あぁ、飛段さんは私の患者です。最近は、ご出張が多いとかで診れておりませんでしたね。お元気そうで何よりです」

 

「どういうことです!? 挟間ボンドルド特別上忍」

 

「私は医者です。医師として、病に苦しむ人がいれば誰であっても助ける。それが医師として取るべき道ではありませんか。それに、木ノ葉隠れの里のダンゴ屋だって、暁に食事を提供していたでしょう。それと何ら変わりはありません」

 

 別段不思議な事では無い。木ノ葉隠れの里で食事をして帰った暁もいる。その際、飯屋に罪はあるかといえばない。医者が患者を診ることも同じレベルの話だ。仕事を真っ当しただけの事。

 

「そんな言い訳が通じるはずないだろう。暁を診ていたなんて」

 

「神月イズモさん。私は、飛段さんが暁だとは今初めて聞きました。医師は患者の事情に深入りはしません」

 

 ブラック企業の社員としか、一応聞かされていない。だから、挟間ボンドルドの発言に嘘偽りは無い。一言も、火影からの勅命で診察にいったなどと言わないのは、守秘義務を守る紳士だからこそだ。

 

「どうします、アスマ先生。暁を相手にしたまま、挟間ボンドルド特別上忍を拘束しておくのは難しいぜ」

 

 シカマルの不安は当然だ。ただですら未知の能力を持つ暁相手に、敵味方不明の者を抱えて戦えるはずが無い。後ろから攻撃される可能性もある。

 

「ボンドルド。事が終わるまで、拘束されていろ。暁相手に何もしなければ、疑いが晴れたとして上にもしっかり報告する。コテツ、ボンドルドを拘束してつれてこい、シカマルの影縛りが効いている間に」

 

 はがねコテツは、挟間ボンドルドに幾度も治療を受け信頼をしていた。だからこそ、彼の疑いを晴らすためにも涙をのんで、拘束を承諾した。事が終われば無罪放免。その証明には、幼なじみである神月イズモと一緒に証言するつもりだ。

 

「すみません、ボンドルドさん。後で必ず解放しますので、今だけは……」

 

「気に病むことはありません、どうぞ気の済むままにしてください。また、事が終わりましたら診察に来て下さいね。はがねコテツさんは、尿酸値が高い健康診断結果でした。生活指導が必要ですよ」

 

 患者一人一人の事をしっかりと覚えている男。

 

 大人しく拘束され、猿飛アスマの前に連れて行かれる。

 

「てめぇーら、いい加減に拘束を解け。おぃおぃ、先生も素直に拘束されんなよ。俺には分かるぜ、下水を煮込んだような臭いがプンプンしてやがる」

 

「飛段さん、人は信じる事から人間関係が築かれます。私は、猿飛アスマさんを信じております。身の潔白を証明するためにもここは大人しくしておくのが得策でしょう。さぁ、これでよろしいですか?」

 

 本来、暁を拘束する為に用意されたチャクラを封じる鎖。これに巻かれては、伝説の三忍であっても抜け出すのは難しい。

 

「悪いな、ボンドルド。戦場において、疑わしき者は……とりあえず、殺しておくのが一番安全なんだぜ、悪いな」

 

 猿飛アスマが言う事は正しい。拘束から抜けられる場合もある。敵か味方か分からないなら、潜在的な敵として処理するのが正しいことだ。忍者なら誰でもやってきたこと。

 

 チャクラ刀に可視化できる程ハッキリと刃が見える。猿飛アスマは、綱手から事前に聞いていた通り、挟間ボンドルドの外装の付け目……特に頸元を狙う。動く相手ならば、狙うのは困難だが、拘束された相手ならば猿飛アスマのレベルならば、一撃でスパッとやれる。

 

「アスマーーー、まてぇーー」

 

 奈良シカマルが止めに入るが無駄な事だった。彼は、暁の一人を拘束しており、動ける状態ではない。更に言えば、位置的に彼だけが気がついた……茂みに見覚えのある子供と付き添いの仮面を付けた変人が居る事を。

 

 スパン

 

 鋭い風音と共にボトリと鈍い音がした。地面に転がる紫ラインが入った鉄仮面。猿飛アスマは、目の前で死なない忍者を見たことから念には念を入れて死体処理も始める。綺麗な切断面の頸元から火遁で中をこんがり焼き始めた。

 

「これで、万が一もない。次は貴様の番だ飛段」

 

 死なない忍者の倒し方としては間違っていないが、仲間の忍者にここまでやれる忍者はあまりいないだろう。しかも、子供が見ている前で。

 

 

 




愛する者を失う悲しみ……万華鏡写輪眼を満たすには十分ですよね。

不死コンビが、不死トリオになるときが来た!


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40:真実

 火影率いる直轄暗部と志村ダンゾウ率いる『根』の合同作戦。表に出せない不祥事などの一斉精算。更に言えば、挟間ボンドルドが蓄えている莫大な財産、特許をこの機に押収。犯罪者から巻き上げた財産を里の為に使いますという建前だ。

 

 その作戦開始の合図――挟間ボンドルドの名誉の戦死情報が届く。現場で死を確認した後に、影分身が戻るという方法。

 

「切り札を使わせたのだ、それ相応の見返りは期待しているぞ」

 

「無論だ。しかし、カツユに幻術を掛けるとは余程の切り札だな」

 

 志村ダンゾウが保有しているうちはシスイの万華鏡写輪眼が有する能力――『別天神』。最強の幻術とうちはイタチですら認める。幻術に掛かったことすら、掛けられた本人は認識できない。その幻術とカツユのリアルタイム通信能力を利用して、全てのカツユが幻術の支配下に落ちる。

 

 挟間ボンドルドは、暁との戦闘による名誉の戦死。ボンドルドが死に、カツユという厄介な存在を誤魔化せるのならば、子供であるプルシュカ程度なんとかなる算段であった。優秀な子供など火影をやっていれば過去に嫌と言う程見てきた。

 

 父親を暁との戦いで失った子供、その子供を火影が引き取り育てるという美しい美談。その美談の裏では、莫大な金と特許がおまけで付いてくる。更には、将来が約束されたかのような優秀なプルシュカという忍者までいるのだ。一粒で三度美味しいってレベルでは無い。

 

「ダンゾウ様、入り口の掘り出しに成功しました。合図でいつでも突入可能です」

 

「よし、施設はなるべく無傷で抑えろ。目撃者は中に居る物は全員殺せ……それでいいな、綱手姫」

 

「構わん。証拠の仕込みはコチラでやっておく。明日には、里の気に入らない連中の何人かが辞職して実質我々には被害はない。だが、プルシュカという子供には手を出すな。私の養子にするつもりだ」

 

 挟間ボンドルドの秘密の施設イドフロントが、里の暗部総出で見つけられてしまう。複数の候補地がある中で白眼を用いて、見通せない場所がここという実に単純だが合理的な見つけ方だ。

 

 そして、里の腐敗掃除作戦が開始された。

 

 

◇◇◇

 

 春野サクラは、空元気で過ごしていた。長年会いたかった思い人には会えたのだが、既に子持ちのパパとなっていれば誰だって凹む。年上とかで無く、同級生がそんな状況だ。どのように感情を整理したら良いか彼女は分からない。

 

 部屋に篭もる時間が多くなり、時間が経つのが異常に早いと感じる日々を送っていた。たまに、うずまきナルトの修行の様子を確認しにいくが、その位のことしかやっていない。

 

 里が慌ただしい日の昼に、彼女の部屋の窓をコンコンと叩く口寄せ動物――手乗りサイズのカツユが訪れてきた。口には手紙を咥え、目から大粒の涙を流している。

 

「カツユ様!? 一体、どうしたんですか」

 

『サクラ様~、ボンドルド様が!ボンドルド様が殺されてしまいました。これは、生前ボンドルド様が自身に万が一があった場合に渡してくれと頼まれていた物です』

 

 その言葉は、春野サクラにとっても衝撃的な物だった。兄弟子である挟間ボンドルドの死。自身にも色々と修行を付けてくれたり面倒を見てくれた大人の男性。父親のような安心感があり、年上の男性で一番素敵な人は誰かと言われれば挟間ボンドルドと答えるくらいには彼女は信頼していた。

 

「一体誰なんですか!! 誰が殺したんですか」

 

()です。この目でしっかりと見ました。しかも、プルシュカちゃんの目の前でなんて酷すぎる。あぁ、プルシュカちゃんがボンドルド様に駆け寄ってパパって泣いてます』

 

 カツユの能力を知っている春野サクラ。現在、どこかで暁と挟間ボンドルドが闘っていた。その結果、死亡した……しかも、父親を子供の前で殺すゲス外道がその場にいると。あんな幸せそうな家庭を壊す暁。その事を彼女は許せない。

 

 第二の師匠からの手紙をカツユから受け取る春野サクラ。手紙内容は、カツユも知らない。むしろ、見ては効果がなくなると言われていた。決して、光に当てて透かしてみたりしていない。

 

「なんて酷い、私も直ぐに向かいますカツユ様」

 

『でも、手紙を……』

 

「移動しながらでも読めます!! 場所は何処ですか」

 

 春野サクラは、直ぐに準備を整えて部屋を後にする。そして、手紙を読み始める。

 

【拝啓、春野サクラ様

 

 この手紙を読まれているという事は、私の身に何かがあった事でしょう。何も問題はありません。来るべき時が来ただけです。

 

 貴方は優秀な忍者です…だからこそ、お願いがございます。私が切られる事態になったということは、綱手様に勝算があってこそでしょう。つまり、カツユの眼を欺ける方法が用意されているはずです。カツユを見て違和感があったら、解除をお願いします。

 

 勿論、タダとは言いません。

 

 火影の執務机、その袖机二段目が二重底になっております。解除キーは、綱手様の元恋人の名前『DAN』です。そこに貴方が知りたい真実があります。生きているうちは守秘義務を守りますが、死んでしまえば無効ですから。

 

 勿論、この件に関して強要はしません。何もしないことも選択の一つですし、報酬だけ受け取るのも構いません。私は、貴方の生き方を尊重します。

 

PS:

 音隠れの里で行われる新事業の参加チケットをご家族分含めて同封しておきます。是非、お越し下さい。()でお待ちしております。】

 

………

……

 

 春野サクラは、読み終えて足を止めた。心臓の音がハッキリ聞こえるほど、嫌な重圧がのしかかっている。この手紙の内容は、挟間ボンドルドが木ノ葉隠れの里によって謀殺された事を示していた。

 

 そして、綱手と挟間ボンドルド仕込みの医療忍術でカツユを徹底的に診察する。

 

『何事ですか、サクラ様。今は、そんな診察を受けている暇なんて』

 

「必要な事なんです、カツユ様。挟間ボンドルド特別上忍からの手紙を読みました。私だって馬鹿じゃありませんから、意味を理解しました……カツユ様に異常があったら、あの手紙は全てしん………じ…っ」

 

 僅かな違和感。だが、そんな違和感にカツユが気がつけない事が不思議だと春野サクラは思った。

 

『どうしたんですか、サクラ様』

 

「カツユ様、今ここ以外で何処に居ますか。具体的には誰と一緒にいますか」

 

『プルシュカちゃん と 綱手様ですよ。でも、後はボンドルド様の施設にもいます。あれ?なんで綱手様とダンゾウ様が施設の近くに……あれ?あれ?』

 

 違和感を理解しようとする力と、都合の良い解釈で誤魔化そうとする力がせめぎ合っている。本来このような事態などあり得ない。最強の幻術は伊達じゃ無い。だが、カツユという生命体も規格外だ。だからこそ生じた矛盾。

 

「カツユ様、適当な理由を付けて、綱手様の所から戻って下さい。それから、治療を始めます。挟間ボンドルド特別上忍が信じた私を信じて下さい。必ず治します」

 

 春野サクラにより、体内のチャクラの乱れを正常に戻されたカツユ。一度正常な思考ができれば、その思考を分裂体にフィードバックする。そして、静かになったカツユは、一言だけ綱手に向けて言葉を発して、去って戻っていった。

 

『小娘が』

 

と。

 

………

……

 

 火影執務室のざるな警備。開放的な窓からの侵入も容易で、双眼鏡があれば書類も覗き放題という謎の立地。今日に限っては、子供でも誰に止められること無く侵入可能だった。暗部は総出で任務にあたり、暁襲撃で20小隊も無理に捻出したため、ほぼ無人。

 

 春野サクラは、そこで機密書類を見つけた。

 




次話……あなたの愛があれば私は不滅です

大蛇丸様のスパイって各国にいるんですよね^-^


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41:あなたの愛があれば私は不滅です

 床に転がる鉄仮面。切り離された肉体からは、焼け焦げた匂いがする。

 

 アスマ班の者達も流石にやり過ぎだと思っていた。状況的に、暁と秘密裏に繋がっていた可能性はあった。だが、無抵抗で拘束されたのだから最低限の扱いはあるべきだ。それなのに、綺麗な死体を持ち帰る事も出来ない悲惨な状況。

 

 快楽殺人犯でもあった飛段であってもドン引きする。

 

「人の心とかないんか」

 

 飛段がアスマ班の皆に言い放つ言葉。本来であれば、お前が言うなと奈良シカマルですら文句を言う。だがこの時だけは言えなかった。言う資格がなかった。

 

 挟間ボンドルドを殺している暇があるならば、飛段を殺す為に動くべきであったが既に遅い。トイレで換金を終えた角都が現れる。そして、木ノ葉隠れの忍びに拘束されている飛段と床に転がっている挟間ボンドルドの遺体を確認した。だが、状況や忍術の跡から犯人が飛段でない事を察する。

 

「仲間割れか。どうせ、余計な事を口走って先生が死んだ口だな。いつも、口数が多いと言っているだろう」

 

「ち…がくねーけどよ。だけど、無抵抗の先生を子供の前で無惨に殺すようなこいつ等が悪いに決まってんだろう」

 

 子供の前で。

 

 角都も気がついた。涙目で近寄ってくる子供の存在。暁の二人も普通の子供ならば見向きもしない。だが、見知った子供で忍術指導までした子供ならば話は別だ。最年少で暁入りした天才児。

 

「うそ…パパ…」

 

 その目には涙を流し、何時もの明るい笑顔が消え失せている。いくら才能があっても、年相応な女の子だ。大好きな父親を目の前で失い平然としていられるはずがない。

 

「木ノ葉隠れの連中は、碌でなしが多いらしいな。先生を殺したのは、賞金首か。ちょうどいい、コイツの金で豪勢な墓でも建ててやろう」

 

「金に五月蠅い角都も子供には甘ちゃんだな。おい、そこの護衛。プルシュカを連れて離れていろ。直ぐにかたづけてやっから」

 

 血も涙も無い連中だと言われる暁。だが、一般人を狙うテロリストという訳では無い。狙われるのは、人柱力や賞金首、忍者など一般人以外がターゲット。その為、真っ当な職業の人達にとっては暁も里の忍者も変わらぬという事だ。

 

「おぃ、どうすんだよアスマ先生。なんか、コッチが悪者みたいになってんぞ」

 

 奈良シカマルが言う事は概ね正しい。

 

「パパ…返事して…パパ」

 

 挟間プルシュカの悲痛な叫び。少しでも人間の心が残っているならば、心にくるモノがあるだろう。父親の首を抱いて泣く。そんな彼女の帽子から出てきたメーニャも涙する。

 

『ボンドルド様』

 

「お願い…パパ。ひどい…ひどいよぉ」

 

 深い悲しみが挟間プルシュカを襲う。脳内にチャクラが分泌され、そのチャクラの流れが彼女の眼に影響を及ぼした。コンタクトレンズの下にあった写輪眼の模様が変わり、万華鏡写輪眼へと変化する。

 

「パパ…パパぁ…つらい…お願い…あたしを置いていかないで」

 

 泣く子には誰も勝てない。

 

 暁が目の前に居るというのに、アスマ班は動けない。影縛りの持続時間を考えれば、ここで動かなければ勝利のチャンスが減る一方だというのに。

 

 暁側からしてみれば、挟間プルシュカが父親との別れに満足するまでは何もする気はない。子供が悔いを残さないようにと大人の判断だ。

 

「くっそ、くっそ、なんでこうなったんだよ。アスマ隊長、あんたがボンドルドさんを殺すから」

 

「言うなコテツ。だが、アスマ隊長の判断も戦時下では間違っては無かった」

 

 神月イズモとはがねコテツが父親の頭を抱きしめて泣く子供の姿をみて心をやられる。しかも、その一端を自分たちが担ったともなれば当然だ。

 

「おちつけ、お前達。さっきから暁の連中が言っているだろう先生と。挟間ボンドルドは暁と通じていた。つまり、暁予備軍か協力者だった。俺等には何の責任も無い。任務を真っ当しただけだ」

 

「……その通りだ。アスマ先生の言うとおりだ」

 

 猿飛アスマの言葉に賛同する奈良シカマル。

 

 計算高い奈良シカマルは、賛同するしか無かった。隊のモチベーションは控えめに言って最悪だ。だと言うのに、暁二人が残っているこの状況。生存率を上げる為にも、嘘でも良いので挟間ボンドルドが敵側の陣営だったという事で乗り切るしか無い。

 

 当然、元担当上忍である猿飛アスマは奈良シカマルの性格を知っている。生き残る為に、挟間ボンドルドを悪役に仕立て上げ仲間の士気を保つという策にのってくると信じていた。これが猿飛アスマ一人なら効果は薄い、だが作戦参謀である奈良シカマルも賛同するならば事態は多少変わる。

 

「初めてだぜ。邪神様の生け贄に捧げたら、邪神様が腹を壊しそうだと思ったのは」

 

「奇遇だな、飛段。換金できない位にバラバラにしたいと思った賞金首はお前が初めてだ。それより、そこの護衛、早くプルシュカを連れて下がっていろ」

 

 挟間ボンドルドが信頼のおける者といったプルシュカの護衛――ビドゥー。

 

 その彼が、ゆっくりとプルシュカに近付き挟間ボンドルドの頭部を持ち上げる。挟間プルシュカも何事かと思ったが、それを受け入れて頭部を渡す。

 

 頭部を受け取ったビドゥーは、後ろを向きベリベリと鉄仮面を引きはがした。その音に何事かとアスマ班も暁も注目する。そして、カポとヘルメットを被る音がする。

 

 ビドゥーの身体が膨れあがり、背中から裂け始めた。そして、尻尾のような物が服を破り中身が露わになる。その背中を見たプルシュカは、眼を大きく開く。そして笑顔を取り戻した。

 

「パパ!!」

 

「パパですよ、プルシュカ」

 

 愛娘に答えるように優しい声。

 

 確実に殺したはずの挟間ボンドルドが目の前で復活した。その様子を見ていたアスマ班、暁も流石に驚いた。

 

「パパ…!! よかった…!!」

 

「どこにも行ったりなんかしません。あなたの愛があれば私は不滅です」

 

 娘を抱き上げる父親。微笑ましい光景だ。

 

 メーニャ(カツユ)も、その光景に感動し涙を流す……同時に、自らが幻術の支配下にあった事を知ったが、愛する夫と愛する娘の素晴らしい光景の前では些細な事であった。

 




年末の寒い時期、皆様身体を壊さないようにしてください。
作者久しぶりに体調不良で午前中死んでました。

読者の愛があれば作者も不滅です。
皆様いつも、感想や評価有り難うございます。


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42:時間切れ

 数の有利が無くなった。奈良シカマルは、この状況をどう乗り切るか高速で思考する。何よりマズイのが、殺したと思っていた挟間ボンドルドの謎の生還。医療忍者として、里の忍者の健康管理まで行っていた事もある男だ。

 

 言い換えれば里全ての忍者のデータを持っている。

 

 この状況、挟間ボンドルドの取る道は複数存在している。ある意味選びたい放題。

 

「秘伝忍術の影真似の術ですか、よろしければ外しましょうか?飛段さん」

 

「なんだ、先生はコッチに加勢してくれんのかよ。しかし、先生も俺等と同じなら同じって言ってくれよ。てっきり、死んだと思っただろう。後!! あんまガキに心配掛けんな。わかったな」

 

「これで墓を建てる費用が浮いた」

 

 アスマ班としては最悪の事態。忍術を知られているという事は対抗策もセットだ。暁レベルの者達に術の詳細が漏れれば、同じ手はほぼ効かなくなる。

 

「シカマル!! 絶対にボンドルドを生かして返すな。里の情報が全て筒抜けになる」

 

「死んでも蘇るような奴をどう殺せって言うんだよ。それに、この状況で簡単にやれるかってんだよ」

 

 猿飛アスマの言うとおりだ。挟間ボンドルドが持つ木ノ葉隠れの情報を欲しがる隠れ里は多い。引き込む事で戦争になったとしてもそれ以上のリターンが見込める。なにより、綱手レベルの医療忍術の使い手が里に来るのならば両手を挙げて歓迎する所だろう。

 

「その巫山戯た能力、あんた何なんだよ。同じ里にいて、それだけの能力を持っているなんて聞いた事もないぜ」

 

「忍びが手の内を全て晒すのは良くありませんよ、奈良シカマル君。私は、挟間ボンドルド。今や、綱手様に切られた一介の忍者にすぎません。それにしても、君達は本当に素晴らしい。私たちに足りない試練をもたらし――プルシュカを完成に導いてくれました。試練は愛をより深くします」

 

 挟間ボンドルドが長々話している間に誰も動かない異常事態。歴戦の忍者である角都にすらその影響がおよんでいた。通常であれば、話している隙をみて、奈良シカマルを襲い最低限、影真似の術を解く程度の働きはしていた。

 

「ねぇパパ。なんでみんな動かないの? ねぇねぇ、私が闘っても良いよね。パパの仇だもん」

 

「恐らく、アスマ班に強い『祝福』持ちがいる事が原因でしょう。角都さん、飛段さん、プルシュカも混ぜて宜しいですか?」

 

「構わないがやり過ぎるなよ。出来れば死体の原型くらいは残しておけ。換金できなくなる」

 

「マジかよ。丸焦げになってたら治してくれよ」

 

 暁メンバーが普通に子供であるプルシュカを戦いに混ぜることを承諾する。その理解不能なやり取りがアスマ班の思考を混乱させた。最悪、プルシュカを人質にして、挟間ボンドルドだけでも何とかしたかったが、想定外。

 

「プルシュカ。あちらに居る人相の悪い二人組、神月イズモさんとはがねコテツさんは、気持ち狙わない程度にしてください。よい『祝福』が取れそうですので」

 

「えぇ~そうなの? じゃあ、パパを殺した髭の人は?」

 

「飛段さんの獲物です。角都さんは、プルシュカの攻撃で残った人で好きな方をどうぞ」

 

 挟間ボンドルドは、医局に勤めていた医療忍者。定期検診では採血もあり、その検査を担当した事もある。彼の研究資料にはその血液もある。名門と呼ばれた者達の血液を彼が保有しているのは当然で、その中には猿飛アスマの血液も含まれる。

 

 それを口寄せして、挟間ボンドルドは飛段に手渡した。当然、木ノ葉隠れの者達には見えないようにして。

 

「おぃおぃ、随分と用意が良いな先生。これってもしかしなくてもアレか」

 

「そうです、アレですよアレ」

 

 その様子にアスマ班の連中は一歩さがり、集合する。このフォーメーションならば、どのような事態にでも対応できるという自信が彼等にはあった。

 

「パパ見ててね!! 火遁・業火滅却」

 

 うちは一族とうずまき一族の血を引いている挟間プルシュカが得意とする火遁。圧倒的チャクラ量も秘めており、術一つ一つの完成度も教科書に載るレベルであった。

 

 子供が使う忍術だと、内心甘く見ていたアスマ班の者達。だが、印を結ぶ速度が目で追えず、火遁の規模が横にも縦にも信じられない規模。うちはマダラと同じレベルにまでは至っていないが、0.5マダラ並みの規模だ。

 

「すっげー威力だな。こりゃ、ジャシン様への生け贄は無理だな」

 

「全くだ。これじゃあ、死体が残るかどうか」

 

 ぼさっと見ているだけの飛段と角都。普段からの行動ではあり得ない。死んでも死なないような忍者がこの場に三人もいる。だからこそ、本当に死ぬのを確認するまでは、攻撃の手を緩めるべきではない。どのような方法で生き返ってくるか検討も付かないのだから。

 

「飛段さん、サクッとお願いします。きっと、死んでいません。この程度で死んでいるならば、貴方達と対面した時点で死体になっています。お二人とも何故この絶好の攻撃の機会に手を緩めるのですか?」

 

「その通りだな。この火の中でも俺の硬化なら耐えうるか」

 

「減った心臓はコチラで補充しますので、お願いします。私も手伝いますので」

 

 敵を目の前にして手を止める現象。それを強制的に進める挟間ボンドルドであった。暁の二人が本来の実力を十分に発揮すれば、アスマ班の連中に勝ち目は無い。格下虐めなどせずに、全力で殺しきる…これが対『祝福』持ちへのベストアンサーだ。

 

 挟間ボンドルドから受け取った猿飛アスマの血液を舐めて、儀式を進める飛段。

 

 肉体を硬化させて、業火滅却の中を進み敵陣特攻を仕掛ける角都。

 

 扇ぐだけで暴風を生み出す忍具…テマリの遺品である鉄扇まで持ち出して、盛大に火遁を援護する挟間ボンドルド。

 

 火と風の相乗効果で辺り一面が火の海と化す。

 

 父と娘のコラボ忍術とも言える。そんな馬鹿げた火力の前では、生き残る事すら困難。全てをなぎ払い死体すら残らない筈――本来ならば。だが、アスマ班は誰一人欠ける事無く生き残った。

 

 奈良シカマルが影真似の術を使い仲間を覆った。土遁を使おうが、水遁を使おうが全てをなぎ払える攻撃であったが、影という謎の特性を上手に活用し生き残る。その代償に、ほぼ全てのチャクラを使い切るが、生き残っただけ上出来だ。

 

「嘘!? 生き残った」

 

 挟間プルシュカが驚愕する。得意とする火遁における最大忍術を使い、挟間ボンドルドからの援護もあった。だというのに、無傷で生き残る異常者達に。

 

「驚くことはありません、プルシュカ。これが『祝福』なのですから、今度は良く狙ってください。大雑把な狙いでは、彼等には届きません。そういう絡繰りが世に存在しているのです」

 

 『誰かに当たればいいや』では、決して攻撃が当たらぬ埒外の存在達。だが、確実に狙いを定められる忍術ならば話は別だ。それが、飛段の忍術。

 

「すっげーーな、先生の言ったとおりじゃねーか。だが、その運もここまでだ。貴様は、呪われた!! さぁーーーて、どこからやってやろうか」

 

「パパって物知り。じゃあ、これだったらいいのね。風遁・真空玉」

 

 挟間プルシュカが大きく息を吸い込む。そして、チャクラを混ぜ込んだ風の弾丸が飛段の急所を何度も打ち抜く。心臓、膵臓、肝臓、腎臓、肺…人間が必要とする主要臓器全てにダメージを与え、不死身でなければ確実に死ぬ。

 

「いってーーな。なんて事をすんだよ。折角の儀式が台無しじゃねーーか」

 

 神聖な儀式が台無しになって嘆く飛段。

 

 仲間割れかに思えたその光景を目の当たりにしたアスマ班。もしかしたら、敵を騙すなら味方から理論で、実は挟間ボンドルドが味方であったと淡い期待をしてしまう。

 

 だが、そんな都合の良い現実は訪れない。接近してきた角都に構えていた猿飛アスマに襲い掛かる即死級ダメージ。

 

「ごふぅ」

 

 全身から血を流し、地面に伏した猿飛アスマ。

 

 猿飛アスマの行動不能を確認し角都は狙いを変える。チャクラ不足の奈良シカマルでなく、神月イズモを狙う。圧倒的タフネスを利用した物理攻撃による打撃。その攻撃が、神月イズモの腹部に直撃し、20メートルほど後方に吹っ飛んだ。

 

「なるほど、先生の言うとおりだな。雑に狙わず、一人一人を確実に殺す気でやらねばいけないな。俺とした事が、悪い癖で手加減するところだった」

 

 肋骨が粉砕された神月イズモは立ち上がることも出来ない。本来あるべき実力を発揮した暁の力はこのレベルであった。じわじわなぶり殺すなどナンセンス。

 

 残されたのは、はがねコテツと奈良シカマル。だが、どう考えても明るい未来は待っていない。実力差的に考えて、チャクラ不足で碌に動けない奈良シカマルを置いていったとしても逃げ切れる可能性は低い。

 

 対策を思考するはがねコテツの元に神月イズモを回収した挟間ボンドルドが近寄る。

 

「安心してください、神月イズモさんはまだ生きております。ですが、私は貴方の身体も是非欲しい」

 

 はがねコテツが知る挟間ボンドルドからは考えられない速さ。腕ではなく尻尾を使った攻撃。想定外の攻撃であった為、はがねコテツは防ぐ事も出来ず地面にたたき付けられ、意識が飛びかける。

 

「くっそっ」

 

「おかしいですね、今のは攻撃の瞬間にチャクラを放出したのに五体満足とは。やはり、よい『祝福』をお持ちのようです。逃げられては面倒ですので、大人しくしてもらいます」

 

 挟間ボンドルドが数カ所を軽く撫でただけで、はがねコテツは大人しくなった。

 

 挟間ボンドルドの新しい身体には、とてもよく見える眼が付いていた。そんな、どこぞの里最強と言われる一族の眼と精密チャクラコントロールが可能な技術が合わされば、点穴を利用してチャクラを封じる事など造作も無い。

 

 戦利品の神月イズモとはがねコテツを連れて帰ろうとする挟間ボンドルド。残る一人である奈良シカマルの扱いをどうするかと角都は考えた。

 

「おい、まだ残って居るぞ」

 

「そのようですが、時間切れです。お互いに彼を狙わなかった…いいえ、狙えなかったと言う事が全てを物語っております。彼は、今の我々では手に余るという事です」

 

 前の肉体を回収し帰り支度をする挟間一家と暁の元に木ノ葉隠れの増援が都合の良いタイミングで到着する。更には、同時に暁トップからの最優先の帰還命令。

 

 だが、アスマ班の唯一の生き残りである奈良シカマルと木ノ葉隠れの増援達も見送ることしか出来なかった。強敵が自ら帰ると言っているのだから、引き留める必要など何処にもない。

 

 

◇◇◇

 

 大蛇丸は、取り乱すママ友カツユを落ち着かせていた。錯乱していた原因が挟間ボンドルドの死だと聞かされる。そして、いち早く穢土転生で生き返らせようとする。正直、あのレベルの人材を悪用されては、大蛇丸にも不都合であったし……なにより、天才には同じレベルで会話ができる良き理解者は必要だと思っていた。

 

「まったく、こんなサービスしてあげるなんて滅多にないんだからね」

 

『……あれ?でも、この肉体って』

 

「なに、何か文句あるの? ボンドルド(・・・・・)ルフの身体じゃ不満っていうのかしら。ボンドルドが作った身体よ」

 

『いえ、でもその身体だとチャクラが…』

 

「後で良い体を用意してあげるわ。それまでの仮初めの肉体よ。安心しなさい……いくわよ、穢土バ生の術!!」

 

………

……

 

 一向に復活の兆しが無い。つまり、魂が浄土にないと言う事になる。

 

「カツユ。本当に、ボンドルドは死んだのよね?」

 

『えぇ。ですが、愛の力で今蘇りました。愛って素晴らしいですよね、大蛇丸様』

 

 なんでも愛で片付けるんじゃ無いわよと怒りたくなる気持ちを抑える大蛇丸とママ友カツユの可愛らしいやり取りが音隠れの里であった。

 




木ノ葉隠れの里の様子をやりましょう!!

あぁ、そうだ。暁の皆様にレグをご紹介しなければ。逆口寄せすれば、まだ無事のはず。

書いておいて、言いたくないのですが…ボンドルドルフってくっそ言いづらい。


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43:悲報

 木ノ葉隠れの里に悲報が轟く。

 

 三代目火影の子供である猿飛アスマの殉職、医療忍者であり民からの信頼が厚かった挟間ボンドルドの裏切り。この二つにより、里は大きく荒れる。

 

 だが、忍者という職業である以上、死はつきまとう。今まで殺してきた人数を考えれば、死んで当然。少なくとも、猿飛アスマに殺された他里の忍者の家族達はそう思っている。だから、誰しもが悲しんでいるわけでも無い。

 

 それに、猿飛アスマは、一介の上忍だ。だというのに、里を上げての葬儀となった。実におかしな話だ。このレベルの葬式を誰かが死ぬ度に挙げては、年中葬式で何も出来なくなる。元火影の子供だからといって贔屓は良くない。

 

 それに、この盛大な葬式費用を誰が負担する。誰もが里負担――つまり、里の血税だとおもった。だが、素晴らしい事に違う。亡き猿飛アスマの貯蓄から出されている。木ノ葉隠れの里の暗黙のルールで死んだ忍者の財産は里の財政に回る。勿論、相続者が居ない場合に限る。

 

「シカマルが名乗り出てくれて助かったな」

 

 火影の執務室で、綱手がぼやく。

 

 猿飛アスマの恋人であり、今現在妊娠中の夕日(・・)紅。彼女へ猿飛アスマの殉職を告げる仕事を奈良シカマルが請け負った。猿飛紅ではなく、夕日紅。つまり、猿飛アスマの財産を継ぐ権利もない旨の報告も一緒にだ。

 

 もう少し早く婚姻届をだして受理されていれば、遺族年金や財産などが転がり込んだ。だが、現実は違う。彼女は、これからお腹の中の子を一人で育てる必要がある。子育てには金が掛かる。勿論、くの一である彼女が復帰すれば、養うことも可能だろう。だが、小さい子供がいるのに死が伴う仕事はリターンよりリスクが大きい。

 

「しかし、良かったのですか綱手様。アスマさんの財産をおわけしないで」

 

「それは出来ない相談だ。彼女だけ特別扱いしては、今までの連中や今後の連中分までくいっぱくれるだろう。紅なら問題無い。若くて美人だ……好色な大名達が相手の安全で高額な任務でも回してやる。それが、火影として助けられる最大限の事だ」

 

 大名達へのご機嫌とりは火影としても大事な仕事。その一環であるのが慰安任務だ。

 

 だが、綱手にとって今は猿飛アスマの死より大きな問題があった。挟間ボンドルドを殺し損ねていたという事実。これでは、『根』の精鋭や火影直轄暗部まで動かしたのに成功には程遠い。

 

「シズネ。ボンドルドの施設から押収した物の分析は進んでいるか。後、メディアへの対応もだ」

 

「はい。特許未申請の薬物も沢山あり、今現在医療チームが総出で精査及び検証をしています。効果が確認取れ次第、特許を取得します。加えて、S級犯罪者として指名手配された事により、木ノ葉隠れの里時代に取得した特許並びにその利権を接収しました。これだけでも、里の年間予算近くなる試算です」

 

「順調だな。罪の無い赤子の死体が幾つも出てきた件、初代の墓荒らしの件、写輪眼の献体が見つかった件なども忘れずにリークしろ。メディアには金を握らせておけ、大衆を味方に付ければ嘘も真実になる」

 

 綱手は、挟間ボンドルドの施設…イドフロントに関する資料に再度目を通す。薬物や現金など、目先の金になる物は多々見つかった。人体実験をしていた形跡なども見つかった。だが、何処を探しても遺体はない。それに、挟間ボンドルドの武装も同じだった。

 

「後、綱手様。『根』の者達が対峙したという子供の絡繰りですが……やはり、『根』も捕獲していない様子です。我々が奪ったのでは無いかと、抗議や探りが入っております」

 

「あの封鎖で逃げられるはずも無い。となれば…逆口寄せか。少しでも私が調べられれば、何か分かっただろうが。これでは骨折り損のくたびれもうけではないか」

 

 挟間ボンドルドは殺せず、プルシュカは確保できない、蘇生したと報告があった忍術などの秘術に関する情報もでてこない。

 

 不幸中の幸いなのが、挟間ボンドルドが木ノ葉隠れの忍者達の前で、神月イズモとはがねコテツを負傷させて持ち帰った事だ。これで、挟間ボンドルドが何を言おうとも犯罪者の戯言となる。

 

 唯一、奈良シカマルという現場での真実を知る者がいるが、無駄に頭が良いため真実を言うことが常に正解では無い事を彼はよく知っている。だからこそ、綱手は奈良シカマルを高く評価している。

 

 

◇◇◇

 

 春野サクラの耳にも当然、猿飛アスマの殉職と挟間ボンドルドがS級犯罪者となった報告が入った。一昔前なら、この新聞記事を鵜呑みにしていた。

 

 だが真実を知っていたとしても、行動が起こせるかは別だ。

 

 春野サクラには家族が居る。仲間も大事だが、それ以上に家族が大事だ。里に不利益な事があれば、一族郎党纏めて処理する程度、平然とやるのが木ノ葉隠れの忍者だと理解した。今まで直視しないようにしてきたが、これが忍者の現実。一度、忍者という業界に足を踏み入れればそうなるのが当然であった。

 

 その為、猿飛アスマの葬式に参列しても何か裏があるんじゃないかと常々思うようになってしまった。火影執務室に呼ばれて、『ボンドルドの事は忘れろ。お前だけが後継者だ』と激励されたが、空元気で頑張りますとしか答えられなかった。

 

 今でこそ、うちはサスケの件や挟間ボンドルドの件で傷心しているで通せている。だが、いつまでも綱手の眼を誤魔化せると思っていないのも事実だった。

 

「やっぱり、気持ちの整理を付けなきゃダメね」

 

 兄弟子が残してくれた家族分のチケット。行き先は、音隠れの里。タイミングは微妙だが、傷心旅行と親孝行など理由を付けて、春野一家は木ノ葉隠れの里を出発する事にした。

 

 

◇◇◇

 

 音隠れの里の新事業へ快く参加をして貰うため、大蛇丸と挟間ボンドルドは新しい仲間に自身の状況と愛した恋人の状況を正確に伝える。

 

 火影の采配で慰安任務に、妊娠している恋人が付くなど許せるはずもない。世の中の大名にはクズも多く。寧ろ、そういった女性を好む傾向もある。金に困ったくノ一がどんな末路になるかは同じ忍者として知らぬわけでもない。

 

 実際、そう言う女性を買う男性忍者もいる。そういった、実経験があるからこそ、自分の恋人にはそうなって欲しくないと思っていた。自分がやる分には良いが、やられるのはダメだというやつだ。

 

アスマ(・・・)イヤベガさん、選ぶのは貴方の自由です。私は強制も強要も致しません」

 

「わかった。お前達の為、文字通りバ車ウマの如く働く。だから、彼女とお腹の子供に俺の稼ぎを届けてくれ。どうか、頼む」

 

 第二の生を与えられた元忍びが、泣きながら土下座する。

 

 遠くで過ごす家族のため、姿形は変われど尽くすとは美しい限りだ。

 

「えぇ、素直なのは良い事よ。しかし、ボンドルドも人が悪いわよね。自分を一度殺した相手を転生させるなんて」

 

「おやおや、おかしなことを言いますね大蛇丸様。私は、嘗ての同僚に恋人と子供を助けるチャンスを与えたと思っております。さぁ、貴方のお仲間をご紹介しましょう。先人達にここでの過ごし方を良く聞いて下さい」

 

 挟間ボンドルドがそういうと、部屋に同じく二度目の生を与えられた元お仲間が集まってきた。何処に出しても恥ずかしくない美少女、美女達。そして、左から準備紹介していく。

 

ハシラマ(・・・・)ックイーンさん」

 

トビラマ(・・・・)テイオーさん」

 

ヒルゼン(・・・・)スキーさん」

 

ミナト(・・・)ブルボンさん」

 

サクモ(・・・)クロスさん」

 

 開いた口がふさがらないアスマイヤベガ。親近感がありすぎて、もはや脳が理解を拒んでいた。

 

「みなさん、仲よくしてあげて下さい。今日から、お仲間になりましたアスマ(・・・)イヤベガさんです。ここでの生活に慣れるまでは……ヒルゼンスキーさん。面倒を見てあげて下さい」

 

 見つめ合うヒルゼンスキーとアスマイヤベガ。そして通じ合う。お互い堕ちるところまで堕ちたなと。

 

 

 




第10班…君達を待っておりました。さぁ、隠れていないで、どうぞ顔を見せて下さい。


PS:
この中で仲間はずれが居ます。
仲間はずれはダメだと思うんですよね。

奈良シカダイ君
山中いのじん君
秋道チョウチョウさん


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44:挟間一家

 S級犯罪者として全国指名手配をうけてしまう挟間ボンドルド。そんな彼が足を運んだのが、音隠れの里だった。三日三晩の儀式という長丁場に娘のプルシュカが参加するのだから、安全な場所が必要だった。

 

 仮にも隠れ里の長である大蛇丸の拠点ともなれば、おいそれと木ノ葉隠れの追忍達もこれない。つまり、ここにいれば必然的に大蛇丸とその里の忍者が守ってくれる。当然、タダではない。

 

 差し出されたのが、アスマイヤベガという新しい金を生む卵。

 

「なに、もう行くの?」

 

「えぇ、一箇所に長居してはご迷惑をおかけします。今回の一件は、プルシュカが自分で戦いに参加したのですから、最後までやらせたいというのは親心という物です。何より、実戦経験を積めると言う事に、大きな意味があります。その為、暁の皆さんと暫く行動を共にするつもりです。経験値は、師の弔い合戦をするために、勝手に来てくれるでしょうから」

 

 大蛇丸は、別に挟間ボンドルドが居座っても構わないと思っている。挟間ボンドルドの隠れ家として最有力となるのは、どのみち音隠れの里だ。

 

「そういう事なら構わないわ。しかし、ボンドルドじゃなくてプルシュカが暁だとは私も想定してなかったわ。暁コートなんて目立つ物なんて着なければ誰も分からないわよね……なんで、私も着ていたのか謎だわ」

 

 大蛇丸は、挟間ボンドルドが、木ノ葉隠れの任務で暁と繋がりを持った事を知る。だが、情報を求める事はしない。暁側に大蛇丸の情報を漏洩していなかった事から、必要なら自力で集めるから不要と言い切った。

 

「同感です。では、次に来るときはまた別の手土産を持って参りますね。……あぁ、そういえば、一つだけ大蛇丸様にお伝えし忘れておりました。暁のサソリを覚えておりますか?」

 

「えぇ、一応コンビを組んでいたから覚えているわ」

 

 挟間一家が音隠れの里に連れてきたのは、挟間ボンドルド、挟間プルシュカ、メーニャ(カツユ)レグ(サソリ)のメンバーだ。大蛇丸としても見慣れないレグの存在は気にしていた。

 

「サソリをレグの身体に転生させました。どうでしょう、暁メンバーにも大人気でしたよ」

 

「貴様ぁぁぁ、大蛇丸にそれは教えるなとあれほど言っただろう」

 

 

 怒っているようだが、全然恐くない。寧ろ微笑ましいとすら思える。

 

 尾獣封印の儀式でプルシュカがレグをサソリだと暁メンバーにも紹介した。誰もが信じなかったが、デイダラとサソリだけが知るやり取りなどを証言することで皆が信じた。そして、デイダラが『サソリの旦那!! 随分可愛らしくなったじゃねーか。いいや、これが本体だったのか』とあのイタチですら一瞬吹き出していた。

 

 そのお陰で精密さが求められる儀式が失敗しそうになる大惨事。結果、挟間ボンドルドが責任を取る事になり、サソリの代わりに儀式に参加して尾獣を封印する事になる。

 

「くっくっく、これがあのサソリなのね。よかったじゃない、あっちのバ体達と比べたらましよ。で、この身体、動力は何で動いているの?気になるわ」

 

「火力です。天照――消えない炎という永久機関を利用しています。うちはイタチさんの瞳術なので、タダなんですよこれが」

 

 レグは自らの動力源が何であるかは気になっていた。チャクラを持たぬ肉体である事は理解していた。だからこそ、何で動いているのだと。電力という可能性はあったが、充電をした記憶が無い為、その可能性は捨てていた。そして、知らされたのが暁の同僚であったうちはイタチの瞳術だったのだ。

 

「そんな危険な動力で動いているのか。大丈夫なんだろうなボンドルド」

 

「心配無用ですよ、レグ。その身体の設計は私が一から行っております。貴方の最高傑作の人傀儡にも劣らぬ自信があります」

 

 ベクトルは違えど、同じ天才である大蛇丸が考える事は近かった。

 

「なにそれ、つまりイタチ君がいれば里の電気代が実質無料になるってことじゃない。もう、彼の目には興味はないわ。大型の火力発電施設を建造しておくから、連れてきなさい」

 

「今度、お声を掛けてみます。ほら、プルシュカもそろそろ出発しますので、大蛇丸様に赤ちゃんを返してあげなさい」

 

 大蛇丸とサスケの第二子をプルシュカが抱っこしていた。赤子の可愛さを自慢げに見せ付けてくる大蛇丸。本当に人は変わるものだ。

 

「ねぇねぇ、大蛇丸様。その子の名前はなんて言うの?」

 

 プルシュカが、子供の名前を大蛇丸に訪ねる。生後一ヶ月も経たない赤子。そろそろ名前があってもよい頃合い。こういう時、父親であるうちはサスケは無能だった。打倒うちはイタチといって、修行をする日々。産まれた子供に興味はあれど、名前を付けるセンスが無い。

 

「ボンドルド、光栄に思いなさい。貴方にこの子を命名させてあげるわ」

 

「それは光栄です。では、男の子……最強になるように願いを込めて――『ブロリー』」

 

 うちは最強の男となるうちはブロリー。その栄誉ある名付けの親となった挟間ボンドルド。

 

 かっこよく去って行くが、春野一家が音隠れの里に来る事を伝え忘れており、数時間後に出戻りしてくる事態となった。

 

 

◇◇◇

 

 元アスマ班――通称第10班のメンバーが木ノ葉隠れの里を出発しようとしていた。だが、その事に事前に気がついていた綱手によって、止められる。

 

「シカマル、お前はコチラで再編成した小隊に組み込む。そして、しっかりとしたプランを立てて行かせる」

 

「後で増援を送ってくれればいいっすよ。俺等の連携で既に作戦も立ててありますから」

 

 猪鹿蝶と名が通るレベルの連携。だが、連携でどうにかなるレベルの相手でなければ、意味を成さない。圧倒的な暴力を前に連携が崩れれば終わる。連携を前提とした戦いはそれだけ危うい。

 

 ミスが一つも許されない。

 

 綱手としては、今は一人でも貴重な戦力を無駄にはできない。中途半端な戦力では、暁や近くに居るであろう挟間ボンドルド、挟間プルシュカを止められない。

 

「小隊はフォーマンセルからだ、三人では規定未満だから許可できない。戻れシカマル。これ以上、里の規律を破る事は…」

 

「だったら、俺が第10班に加わればいいんですよね。それで、どうですかね」

 

 機を見計らったかの如く、はたけカカシが現れた。

 

 第10班メンバーの『祝福』がこの場を乗り切るため、助っ人を呼び寄せた瞬間だ。あの朝に弱く、担当上忍となった初日から遅刻するような男が、ここにいる。同僚の死など暗部時代から見飽きるほどあった男が今回に限って現れる。

 

「カカシおまえ。――わかった。ただし、暁だけで無くボンドルドやプルシュカも敵だと思え。暁に関しては分からんが、挟間一家の情報ならば分かっている事は全て教えてやる。一回で覚えろ」

 

 新生第10班が結成された。

 

 そして、挟間ボンドルドと挟間プルシュカの情報が共有された。それを聞いたはたけカカシは早まったかも知れないと思う。

 

 防御不可能な火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 4本の九尾チャクラ状態のナルトを拘束する水遁・月に触れる(ファーカレス)

 八門遁甲の強制開門による必殺。

 シェイカーという謎の投擲忍具…当たれば即、成れ果てとなり人間性を喪失。

 暗部クラスの攻撃では傷を付けるのも困難な外装。

 綱手にも比肩する怪力と医療忍術。

 特異な口寄せ動物"タマウガチ"。

 三すくみの一角である口寄せ動物"カツユ"。

 死んでも蘇る転生忍術。

 里の忍者全員の身体情報や忍術情報。

 祈手(アンブラハンズ)という私設部隊。一人は医療忍術の使い手だとの情報。

 

 これだけのことが最低限、木ノ葉隠れの里が把握している挟間ボンドルドの情報だ。

 

「あの~僕、挟間特別上忍の事はよく知らないんだけど……特別上忍より上忍の方が強いんだよね? カカシ先生なら楽勝だと思っていいんだよね?」

 

「と、当然だろうチョウジ」

 

 無理な笑顔を作るはたけカカシ。きっと、楽な戦いにはならないと考えていた。だが、はたけカカシも何だかんだで生き残り今まで過ごしてきた強者だ。今回も何とかなると甘く考えている節はあった。




娘のために、暁に同行する父親。
年齢的に保護者同伴は必須ですよね。


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45:die10班

 挟間一家は、飛段と角都の両名と合流を果たした。そして、一緒に木ノ葉隠れの里を目指す。目的は、九尾の人柱力だ。だが、いくら暁とは言え、警戒されている木ノ葉隠れの里に押し入って人柱力を確保できるとは思っていない。

 

 戦争とは数だ。無勢に多勢で来られては、不死身コンビであっても後れを取る。対里を相手に出来る忍者は、世の中にそんなに多くは無い。

 

「なるほど、じゃあ、木ノ葉隠れの里の忍者を誘い出す為に目立つところを歩いているのね」

 

「そうですよ、プルシュカ。木ノ葉隠れの里といえど、忍者という資源には限りがあります。特に、今回の騒動は他国も察知しているでしょうから、動かれている里も多いでしょう。以前のように20部隊も動かすのは不可能です。我々は、うずまきナルト君が釣れるのを待っていればいいんです」

 

 飛段と角都にしても、戦力が増える事はメリットであり歓迎していた。それが、娘の保護者的な立ち位置での参加であってもだ。

 

「ぎゃっははは、見ろよ角都。あのサソリがこんなに可愛くなりやがって。完全にガキじゃねーーか」

 

「あまり、からかうな。飴でも食うか、サソリ」

 

「うるさいぞ。お前達も死んだら同じ目に遭うかも知れないからな。せいぜい、今の生を楽しんでおけ。コチラ側にきたら、俺が先輩だからな」

 

「サソリじゃなくて、レグ!! 何度も言わせないでよ。おじさん達もあんまりレグをからかったらダメだからね」

 

 完全に弟を守る姉のポジションのプルシュカ。

 

 新しい肉体となったサソリとしても既に諦めていた。チャクラの無い肉体では出来る事はすくない。資金があれば、人傀儡くらいは作れるだろうが、現在進行形でS級犯罪者の仲間扱い。自身が置かれている状況を考えれば、大人しく挟間一家に匿われている以外生き残る道は無かった。捕まれば、喜んで解剖する連中が五万といる世界だから。

 

「おぃおぃ、俺はまだおじさんなんて呼ばれる年じゃねーぞ」

 

「そんなに若く見えたか。おじさんで構わないぞ」

 

 まるで仲の良いグループが旅行しているような雰囲気。だが、その構成メンバーがほぼS級犯罪者。

 

 そんな彼等を見つめる一匹の鷹がいた。

 

………

……

 

 背後から伸びる影。全員を同時に拘束できるチート能力。だが、能力の使い方がダメだ。この能力をうちはマダラや千手扉間が持っていたら、どれだけ有用な使い方を思いついただろうか。

 

「プルシュカ」

 

「分かってるよ、パパ」

 

 無論、暁メンバーもその程度の事には気がつく。回避と同時に飛んでくる起爆札付きのクナイ。幼い子供でもあるプルシュカにも容赦なく投げつけられる。その事から、挟間ボンドルドは、綱手からタダの子供ではないという情報が伝わったと把握した。

 

 結果、飛段が武器で防ぎ一部欠損。角都が硬化で防ぐ。挟間ボンドルドとレグは、持ち前の頑丈さでそのまま受ける。プルシュカだけが華麗に回避してみせた。

 

 追い打ちの二撃目はなかった。奈良シカマルが計画した緻密な作戦とずれてしまったからだ。起爆札をまともに受ける事やあのタイミングで回避される事は想定していなかった。計算高い者ほど、イレギュラーの事態に弱い。

 

 そんな奇襲もほぼ360度を見渡せて透視能力まである白眼の前では無意味。挟間ボンドルドは、流石は木ノ葉隠れ最強と自負する日向一族の肉体だと思っていた。

 

「おやおやおや、ご挨拶も無しにいきなり攻撃されるとは。どうしたんですか、そんなところに隠れて。どうぞ顔を見せて下さい。はたけカカシさん、奈良シカマル君、山中いのさん、秋道チョウジ君」

 

「先生が言ってたあの髭の教え子達か。俺等も舐められたもんだな。たった一小隊しかこないなんて」

 

「同意だな。だが、気をつけるべきは写輪眼のカカシだけだ。後は、雑魚。今度は死ぬなよ飛段」

 

 第10班側としては、想定していた事態の一つだった。暁側に情報が漏れており、敵討ちのハードルが上がる。

 

 奇襲が通じなかったことで第10班が続々と姿を現してきた。そして、両者が対峙する。真っ先に口を開いたのが、はたけカカシであった。

 

「なぜだ。なぜ、あんたが里を裏切った!! ナルトやサクラだってあんたには心を開いていた。五代目の教え子なんだろう。なぜなんだ」

 

「少しは綱手様から教えて頂けているものと思っていましたが……あの方も人が悪い。もしかして、奈良シカマル君からも何も伺っていないのですか?あの場にいらっしゃったのに」

 

「揃いも揃って、木ノ葉隠れには馬鹿しかいねーのか。先生はな、自らの無実を証明する為に無抵抗で捕まったのに、髭に殺されたんだよ。そうだったよな?ガキ」

 

 飛段から告げられる真相。

 

 そのような情報は、第10班のメンバーは奈良シカマル以外知らなかった。

 

「そんなの嘘よ!! だって、調書じゃ挟間特別上忍が暁と関係があったから、仕方なくって…そうよね、シカマル」

 

「僕もそう聞いたよ。シカマルから」

 

「まずい!! これ以上、アイツラの話を聞くな」

 

 はたけカカシは察した。

 

 今回の一件の全貌を。だが、真実を知りすぎてはいけない。知りすぎた者の末路が今目の前にあるのだから。暗部で知りすぎた者達を殺して回った事がある男は違う。

 

「術の相性的に、はたけカカシ上忍は飛段さん。奈良シカマル君は、角都さん。山中いのさんは、プルシュカとレグ。秋道チョウジ君は、私が担当しましょう。お望み通り、分かれて闘ってあげます。さぁ、始めましょう」

 

 飛段も角都も猿飛アスマとの戦いで『祝福』を経験している。手加減や手抜きなどを無意識で行わされるという謎の現象。更には、都合の良いタイミングで助けが来るという。これに対抗する為、最初から本気の本気だ。

 

 

◇◇◇

 

 その頃、木ノ葉隠れの里では、換金所にいた男に対して尋問を行っていた。

 

 この一件が裏社会に大きな影響を与える。換金所という存在は、公然の秘密。換金所の運営は、五大国に存在する裏社会が共同運営している実態があった。

 

 他国に渡る前に忍者の死体を回収したい場合などに、高額な懸賞金を掛けて回収するといった事が換金所経由で行われている事もある。だからこそ、国内に何カ所も換金所があり、隠れ里もその存在を容認している。

 

 だというのに、木ノ葉隠れの里は、暗黙の協定を裏切った。

 

 つまりは、今後裏社会経由で木ノ葉隠れの里は忍者の遺体回収が出来なくなる。暗黙とは言え協定を裏切ると言う事は、報復が待っている。裏社会とて、舐められたらお終いだ。他国でも暗黙の協定を裏切られては、やっていけなくなるので、みせしめが必要。

 

 火の国警備網が漏洩、裏社会からの高額な暗殺依頼などが他国に流れ、歓楽街の質は低下、裏社会から大名達への献金額も大幅に減少、危険薬物などを裏で仕切っていた者達がいなくなり無法地帯と化す。

 

 後ろ暗い商売の忍者が裏業界の連中と仲よくしないでどうするのかと、卑劣様が五代目の側にいたら言っただろう。

 

 裏社会を舐めたツケは、必ず支払うことになる。

 



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46:奇跡は起きないから奇跡という

 戦いが始まると同時に、本気の角都により即座にメンバーが分断された。そして各々が担当する相手と対峙する。

 

 挟間ボンドルドの相手は、肉弾戦特化の秋道チョウジ。彼自身も決して弱くない。術中に相手が嵌まればまず勝てるだけの一撃必殺を持っている。だが、それだけだ。

 

 秘伝忍術というのは、極めて強い。だからこそ、尖った才能を更に伸ばす者が多い。しかし、それで勝てるのは二流の忍者までだ。一流の忍者に戦法がバレていては勝利の道は遠のく。

 

「正直申し上げますと、秋道タカカズさんが来られたらどうしようかと思っておりました。あの四代目にも勝るとも劣らない時空間忍術の使い手である木ノ葉隠れの"黄ばんだ閃光"。まさに、彼こそが秋道一族が産んだ傑作だと思っております。ですが、ここに来たのが君でよかった、秋道チョウジ君」

 

「僕だって、戦えるんだ。アスマ先生の仇を討つんだ」

 

 誰もがその名を悪い意味で知っている秋道一族の最高傑作。だからこそ、そんな男と比較されたら誰だって劣等感を抱く…かもしれない。

 

 秋道タカカズは、四代目火影から個人指導を受けて時空間忍術の才能を開花させた。おかげで、他国の忍びからは、"閃光"が来たと報告がされた場合、"綺麗な方"か"汚い方"かと言われる始末。

 

 そんな汚い方がうずまきナルトの両親を隠した原因の一端も担っていた。汚い方の閃光を育てた綺麗な閃光……どれだけの男性が痔の被害になったか数えるのも億劫だ。当然、そんな男を育てた四代目は里の男達から恨まれていた。だというのに、四代目は被害にあわず、綺麗な嫁まで貰う始末だ。だからこそ、子供の安否を考えて、四代目の子供であると知られるのはまずかった。

 

「お前の忍術は聞いている。当たらなければ問題無い。肉弾針戦車!!」

 

 秋道チョウジが、髪の毛を針のようにして、肉体を回転させる。そして、左右に移動しながら挟間ボンドルドとの距離を詰める。挟間ボンドルドの火遁を警戒しての行動ならば正しい。正面からきては、ただの的だ。

 

 だが、本人はくそ真面目なのだろうが左右に動かれたところで、移動速度はたかがしれている。この程度の動きで的を外すようなら忍者などやっていない。今までの敵ならば、持ち前の謎の幸運で、何故か全ての攻撃が外れたり、その回転力に弾かれただろう。

 

 しかし、直進してこない肉弾戦車に意味など無い。

 

「では、試させて貰いましょう。火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 

 発射と着弾がほぼ同時のこの技。身体能力が向上しているこの肉体で外しようがない一撃であった。綺麗でも汚くもない一筋の閃光となった光が全てを焼き尽くす。一点集中された火遁を防ぐには羅生門クラスの防御が求められる。

 

 だが、当たらない。確実に捉えた瞬間に放たれた火遁・枢機に還す光(スパラグモス)であってもだ。

 

 秋道チョウジが転がっている地面が偶然にも陥没。その影響で、掠る程度で終わってしまう。

 

「だから言っただろう。当たらなければどうということはないって!! くらえぇーーーー」

 

「これは興味深い。本人を守る為、環境へも作用するのですね。では、これはどのように回避されるのでしょうかね」

 

 秋道チョウジの肉弾戦車が挟間ボンドルドに当たる手前で、彼は地面に沈んだ。

 

 地を這う肉弾戦車には、極めて有効な忍術…土遁・黄泉沼。嘗て、自来也がプルシュカへの教育用に残した映像から学んだ忍術であった。この術は、術者の力量で規模も深さも変わる。秋道チョウジが沈んで窒息するくらいの深さは十分にあった。

 

 挟間ボンドルドは長々と会話していたわけではない。チャクラをしっかりと練り込んで、秋道チョウジが回転するタイミングで印を結んで術を行使していた。白眼でも無い限り、相手の印を確認する方法は彼にはない。

 

 ボコボコと沼の表面に気泡ができる。

 

 沼の下では、秋道チョウジが異変に気がついて大急ぎで浮上してきていた。沼の底に付けば、勢いに任せて這い上がれたかも知れないが、人間息を止められる時間は限られている。何より沼地だ。通常の水中と違う事を考えると早々に這い上がる方向にシフトしなければ溺れ死ぬ。

 

「ぶっは……死ぬかと…おも」

 

 這い上がってきた所に秋道チョウジの額にコツンと何かがあたる。

 

 今までの優しい敵達ならば、這い上がってきてから闘う準備が整うまで待ってくれていた。だからこそ、秋道チョウジも水中にいる時に攻撃されなかった事を不思議に思わないでいたのだ。

 

「この距離で外れるようでしたら、是非貴方を研究したい」

 

 ゼロ距離での火遁・枢機に還す光(スパラグモス)。これで外れるようなら、もはや神が味方していると言っても過言でない。だが、彼の『祝福』は、諦めない。近くで闘っていたはたけカカシが何故か飛段の猛攻をかいくぐってクナイを投げてきた。

 

 良くある事だ、ここでクナイを止めると何故か秋道チョウジが生き残る。だが、起爆札でも傷が付かない防御を誇る挟間ボンドルドの外装がある限り、避ける必要性は発生しない。つまり、死を回避する術は無い。

 

「チョウジ!!」

 

「火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 

 手や足、もしくは腹部などであったなら万が一にも助かったかも知れない。だが、医療忍術でも頭部を破壊されては助ける事は不可能だ。それは、もはや医療忍術の領域にはない。

 

 黄泉沼が赤く染まる。それは、本当に地獄にある沼のようだ。

 

 カツン

 

 はたけカカシが投げたクナイが挟間ボンドルドにあたる。だが、傷一つ付かない。今まで数々の窮地の仲間をクナイ一本で救っていたはたけカカシも驚いていた。

 

 奇跡は簡単には起きないから奇跡という。

 

「飛段さん、しっかりとはたけカカシ上忍のお相手をしていてください。ダメですよ手を抜いたら」

 

「わりーな、先生。苔で足を滑らしちまってよ~。つか、そっちはもう終わったのか。じゃあ、とっとと加勢してくれ」

 

 一人一人とこの世から存在が消えていく木ノ葉隠れの忍者達。ミイラ取りがミイラになる時は、そう遠くないかもしれない。

 

 




山中いのさんとかもいい『祝福』もってそうだよね。(にっこり)



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47:戦略的撤退

 挟間ボンドルドが対はたけカカシ戦に参加を決めた頃、山中いのも同じく浄土へと導かれていた。1対1なら、術成功と同時に即自害という大前提で秘伝忍術――心転身の術で、挟間プルシュカに勝利するチャンスはあった。

 

 それを封じるためにも、レグがいる。どちらかが、術に嵌まれば即座に本体を殺すという作戦。これをやられたら、心転身の術などただの自殺行為だ。

 

「パパ、こっちも終わったよ。褒めて褒めて」

 

「本当にいい子ですね、プルシュカ。聞くまでもありませんが、抜かりありませんかレグ(サソリ)

 

「大丈夫だ。なぜか、突風とかで攻撃が当たりにくかったが、確実に頭部を粉砕した」

 

 挟間ボンドルドは、仕事を終えた愛娘を撫でる。忍者たるもの殺しの経験は必要だ。いざという時に躊躇するようなら、致命的なミスをうむ。

 

 本来ならば『祝福』回収のために、生かしておく事もあり得た。だが、その考え自体が間違っている。『祝福』持ちが集まれば、集まるほど敵側に都合の良い展開になるのは今までの事実が物語っている。

 

 それに、大蛇丸と良好な関係を築いている挟間ボンドルドとしては、遠出することを前提にすれば別に生きている献体は必要は無かった。遺伝子情報を持ち帰り、大蛇丸に穢土転生をして貰った上で『祝福』を回収すれば済む。その位を朝飯前で手伝ってくれる程度にはズブズブの関係であった。

 

 その為、今回も血液や髪など遺伝子情報をしっかりと回収済み。後は、どっかで敵国の忍者でも捕まえれば、お手軽に『祝福』が強化できる。

 

「そっちも終わったのかよ。角都ーーー!! 俺等だけだぜ終わってないの。お前はただのガキ相手にいつまで掛かってんだよ」

 

 防戦一方だとはいえ、本気の角都相手に今の今まで凌いでいる奈良シカマル。並みの上忍では、ここまで生き残る事すら不可能だ。だと言うのに、致命傷を負ってはいなかった。なぜか、外れる雷遁、火遁、水遁、風遁。偶然木々が倒れてきて助かったり。はたけカカシのクナイで命を助けられたりとギリギリで生きていた。

 

「我々がはたけカカシ上忍を倒さない限り死なない仕組みなんでしょう。明らかに致命傷の威力だと思われる忍術でもかすり傷で終わっています。これは何かしらの絡繰りがあって然るべきだと思いませんか」

 

「はぁ?そんな訳ねーーだろ。先生も変な事を言うね~」

 

 挟間ボンドルドの言葉を否定する飛段。

 

 だが、レグ(サソリ)だけが思い当たる節があった。祖母であるチヨと春野サクラという即席コンビに倒される異常事態。毒霧や毒針も全てが無意味だった。手順を確実にこなさなければ死なない奴は確かに存在している…彼の中でも何か確信めいた物があった。

 

「いいや、俺はボンドルドの意見に賛成だ。俺は、その手順を間違ってやられてこのざまだ。今思えば、あれは異常だ。俺の毒針が、婆が操っていたとはいえガキ相手に掠りもしない」

 

「レグはお人形動かすの上手かったもんね。サクラお姉ちゃんじゃ、絶対にレグには勝てないもん」

 

 一度殺された事がある経験者の意見は大事だ。暁メンバーも元メンバーの意見を尊重する。

 

「くだらん妄想だと言い切りたいが……信じるだけの根拠はあるな。いいだろう、俺はこのままガキを追い詰めておく。その間に、写輪眼のカカシをお前達で殺せ」

 

 角都としても、いくら秘伝忍術を持つ中忍とはいえここまで手間取るとは考えていなかった。過去に幾度も血継限界や秘伝忍術をもった忍者と戦い勝利を収めてきた。時には火影クラスとだってやり合ったキャリアがあるのに、今ではそれが通じない。だからこそ、角都も挟間ボンドルドの意見に賛同した。

 

 はたけカカシ戦前に団結する暁メンバーと挟間一家。

 

 はたけカカシに人生何度目かの窮地が訪れた。彼にしてみれば、よく分からないダメージ共有忍術を使う不死忍者―飛段、お前なんで特別上忍なんだよと突っ込みたくなるレベルの不死忍者―挟間ボンドルド、理解したくないレベルの火遁使いの子供―挟間プルシュカ、おまけで謎の絡繰り人形―レグといった、キワモノ達が相手になる。

 

 普通に考えて、撤退レベルだ。

 

 まさに、天運尽きたかと思ったとき、助けが現れる。

 

「待つってばよ!! 」

 

 はたけカカシと奈良シカマルの窮地に駆けつけた木ノ葉隠れの応援。

 

 第七班のヤマトとうずまきナルト、第八班の犬塚キバと油目シノと日向ヒナタの混合部隊。その人選は火影が直接行い、今までの任務経験や生存率からこのメンバーなら必ず生きて帰ってくると信じて送り込んでいた。

 

 だが、上忍はヤマト一人。

 

「はぁ~、またガキばっかりじゃねーか。一体、木ノ葉はどうなってんだ。大人は子供の後ろに隠れてますってか。本当に気にくわねー里だな」

 

「おやおやおや、これは皆様お元気そうで何よりです。そういえば、この間の健康診断結果を確認されましたか? 一人一人に最適な改善施策を書いておきました。次の健康診断までには、必ず実践しておいてくださいね」

 

 大人の飛段が、木ノ葉隠れの真っ黒さに切れ始める。普通に考えて、S級犯罪者の元に経験値が低い子供を送るなど、殺して下さいと言っているようなものだ。これでは、里長が快楽殺人犯と言われても間違いでは無い。そうなったら飛段は同類と言う事になるが…それだけは断固拒否する構えだ。

 

 対して挟間ボンドルドは、優しい声で子供達に声を掛けた。その諭すような声で警戒心が抜けてしまう程に。

 

「どうしてだってばよ。どうして、挟間特別上忍が暁なんかに入ったんだよ。俺は、あんたのこと尊敬していたんだ」

 

「うずまきナルト君、誤解しております。私は、暁メンバーではありません。そうですよね、飛段さん」

 

 うずまきナルトが誤解している事を丁寧に解きほぐそうとする挟間ボンドルド。その間に、はたけカカシがしれっと仲間が多い場所へと移動するせこさを見せた。

 

「先生には、暁に来ないかと声を掛けたが断られた。まったく、何処情報だよ、先生が暁って。勝手に嘘をばらまいて先生の評判を下げるんじゃねーよ。殺すぞ」

 

「だったら、なんでアスマ先生を殺したんだってばよ」

 

「いや、何でと言われましても、我々猿飛アスマさんには何もしてませんよね?寧ろ、殺されたのは私の方です。後、何もしていない飛段さんは、木ノ葉隠れの里の忍者に串刺しにされました。それが真実ですよ、うずまきナルト君」

 

 挟間ボンドルドから告げられる真実。猿飛アスマには確かに何もしていない。

 

 嘘など一つもない。

 

「なぁ、ナルトどうなってんだ。挟間ボンドルド特別上忍が特に嘘を言っている気配はないぞ。赤丸もそう言ってる」

 

「……じゃあ、なんで木ノ葉隠れの仲間を襲ったんだよ」

 

 うずまきナルトの中で聞いていた話と食い違ってきたと感じでいた。だが、うずまきナルトは木ノ葉隠れの忍者だ。どちらの言葉に重きを置くかは決まっている。

 

「むしろ、猿飛アスマさんが、彼等二人に私を殺すように指示しています。娘を置いて死ぬわけにもいきませんので、自衛の意味で反抗させて貰いました。まさか、自衛もせずに娘共々死ねとうずまきナルト君は仰るのですか?」

 

「ちげーーよ。挟間特別上忍程の実力があれば、もっとやりようはあったんじゃないかって事だよ」

 

「一度は私を殺し、二度目も殺そうとしてきた彼等を寛容な心で迎え入れろと…でしたら、貴方達も我々に寛容な心があっても良いのでは無いでしょうか? 敵対する者には寛容な心を求めるのに、自らはその心を持たないのでは話にならないでしょう」

 

 話は平行線となる。

 

 こっちは殺すが、お前等は殺すなという鬼畜ルールの適用を求められて納得する馬鹿など居ない。実力差があれば見逃すのが筋だとでも言いたいのだろう。

 

 そうこうしている間に奈良シカマルも仲間達に合流してしまった。つまり、はたけカカシが敢えて黙って居た秋道チョウジと山中いのが死んだ事が必然的に分かってしまう。今までは、奈良シカマルと一緒に闘っていたと思っていただろうが、違うという事に。

 

「貴様等もいつまでも喋っている。雑魚が増えた所で……ほぉ、九尾が釣れたか」

 

「その通りですが、今はタイミングがよろしくありません。撤退しましょう、彼等も奈良シカマル君と同じですよ。手順が必要です……口寄せの術・ベニクチナワ」

 

 一部小隊だけなら闘う選択肢はあった。だが、ピンチになれば更に仲間が増える無限ループになる前の撤退。敵前逃亡とも言えるが、これは戦略的撤退。

 

「ちっ帰るのかよ。俺、いいところなかったじゃん。いつかお前等全員をジャシン様の生け贄にしてやるからな」

 

「今日は、先生の顔に免じて生かしておいてやる。次回は、確実にお前等を殺す」

 

「じゃあね~みんな!! 追ってきたらダメだよ~。命は普通一つしかないんだから」

 

 飛段、角都、挟間プルシュカが別れの挨拶をする。

 

 木ノ葉隠れのメンバーとしては、ここで死に物狂いで殺し合うか、見送るか悩みどころだ。既に仲間が二人も死んだ。更には、挟間ボンドルドが不信感という種を植えて帰った。この状況で闘っても碌な事にはならない。それ故に彼等も見送る。

 

 別れ際に挟間ボンドルドはある事を思い出した。そして、うずまきナルトと向き合う。

 

「あぁ、うずまきナルト君。君に伝言を頼まれていたのを忘れていました。よく、聞いて下さい。『ナルト、今は会いに行けない。だが、俺達(・・)はいつもナルトの事を思っている。後、この身体になって妻の目線が痛い。お前はこっち側にくるなよ』だ、そうです」

 

 元々、ナルトの父親である波風ミナトと挟間ボンドルドは声が似ているともっぱら評判だった。そのため、声マネまでしての伝言を承る優しい男であった。

 

 当然、意味不明な伝言であり聞いていた者達で正しく理解出来た者は誰も居ない。

 




次は、自来也VSペイン・サスケVSイタチ編らしいけど…関係ないところはサクッと終わらす予定です。
もしくは、閑話でちょいと時間を稼ぐかもしれない。
自来也Tがブルボンと温泉に行く話とか…師弟が同じ湯に入るとかナニも不思議は無い。


そして、飛段・角都編が終わったのでいったん休憩!!
ここまで駆け足だったので、年末年始は少し休養をとりますわ。(多分)






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自来也・サスケ編
48:音隠れの里


新年明けましておめでとうございます。


 S級犯罪者になった挟間ボンドルド。定住する事無く各地を転々としていた。木ノ葉隠れの時代では、年休をとるのも一苦労であり長期休暇するようなら、抜け忍扱いされて暗部を差し向けられた事も彼にはあった。

 

 だからこそ、この機会に娘である挟間プルシュカと妻であるカツユと家族旅行を楽しんでいる。S級犯罪者が気軽に旅行が出来るかと、挟間ボンドルドも一時期は心配していた。だが、蓋を開けてみれば何ら問題はなかった。

 

 そもそも、S級未満の犯罪者も多くいる世の中だ。そんな連中ですら普通に国を移動する。宿にも泊まる。金さえ払っていれば、誰もお咎めするような事は無い。

 

 大事な事だが…S級犯罪者を捕まえるなら、賞金首になっている忍者を捕まえた方が遙かに金になる。S級犯罪者を捕まえたところで貰えるのは名誉ぐらいなものだ。だったら、金が貰える賞金首の方が良いに決まっている。

 

「パパ~、あっちで綿飴が売ってたから買って買って」

 

『こらこら、甘い物ばかり食べたら虫歯になっちゃいますよ』

 

 挟間プルシュカの帽子から顔を出すメーニャ(カツユ)が小言を言う。縁日でのご定番の台詞であり、娘が出来たら一度は言ってみたかった台詞であった。言うだけ言って満足したので、メーニャ(カツユ)は満足顔でリンゴ飴をむさぼっていた。

 

「えぇ、構いませんよ。カツユも何か欲しい物はありますか?」

 

『欲しい物……あれは? 見てください、ボンドルド様。あそこにある射的の景品は、自来也様の新作"ウマぴょいパラダイス"です』

 

 暁調査という名目で、音隠れの里に来ている自来也。元暁メンバーである大蛇丸がトップをやっており、現役暁メンバーである挟間プルシュカも良く立ち寄る里だから調査対象として間違いでは無い。

 

 そこで、死に別れした弟子と再会し、親睦を深めるために温泉旅行に行こうとするのも無理は無い。だが、それを実現する為には、数居る強豪バ体を打ち破ってレースで何度も一位を取らなければならない。今では、大蛇丸との過去も清算し、第二の人生をトレーナーとして過ごすのも悪くないと思っている自来也がいた。

 

「あの方もお忙しいですね。忍者やったり、トレーナーやったり、本を書いたり。どれも一流の才能があるのだから、勿体ない」

 

「自来也のおじさん? 忍者としては凄いんだけど、プルシュカのお風呂まで覗こうとするから……ちょっと苦手かな」

 

『よし、殺しましょう!!私の可愛いプルシュカちゃんにつく悪い虫は居ない居ないしてあげますわ。伝説の三忍が何だって言うんですか。文字通り伝説にしてやります。いいえ、それじゃダメですね。勝手に作った自来也様の娘でもけしかけますか』

 

 自来也の実力は、挟間プルシュカも認める程であった。一時期は忍術の師と仰いだこともあり、強くなったからこそ分かる……自来也が頭一つ抜けて強い忍者であると。

 

「問題ありません。そのうち、長門さんの情報が自来也様の耳にも入るでしょう。彼の初見殺しには、自来也様でも対応はできません。その時は、女風呂を覗かないでも良い身体にしてさしあげます」

 

 挟間ボンドルドは、娘と手を繋ぎ縁日を楽しむ。

 

 

◇◇◇

 

 木ノ葉隠れの里では、日夜葬儀が行われていた。

 

 うずまきナルト達が暁と対峙して無事に帰還した頃から、徐々に忍者の損耗率が右肩上がりになる。暁による被害ではなく、通常任務での損耗であった。

 

 今現在、裏社会の総意で木ノ葉隠れに対して報復を行っている。そこに便乗して、暁が挟間ボンドルドのアドバイスに則り切り崩しに掛かっていた。うずまきナルトの同期や知り合い達を賞金首にする。これにより、任務中に金に困った犯罪者や他国の忍者達に襲われる事になり、死亡する事態。

 

 大事な事だが、忍者とは畑で取れるわけでは無い。長い年月を掛けて育てる必要がある。それを、芽が出る前に刈り取られては大損害。木ノ葉隠れの里の規模でも由々しき事態として、千手綱手も頭を悩ませていた。

 

「今月に入って、15件だぞ!! 水の国や雷の国での任務ならまだ分かる。だが、国内や同盟国の砂の国での死亡事故はおかしいだろう。シズネ、調査結果は」

 

「はい。木ノ葉隠れの忍者…大半の人物に賞金が掛けられている事が判明致しました。平均して、下忍に1000万、中忍2000万、上忍3000万です。その為、他国の忍者や犯罪者から狙われております」

 

 その言葉に、綱手は耳を疑った。賞金首にするシステムは存在している。それを取り仕切っているのが裏社会であり、つい先日その出先機関の者に拷問を掛けて廃人にした事を思い出した。だが、それだけだ。それだけの事で、木ノ葉隠れの里と一戦交えるなど裏社会としてもリスクが高いからやらないだろうと綱手は思っていた。リスクとリターンが合わない。

 

 世の中には、面子のために採算を度外視する連中だっている。そんな連中に、5影クラスが多数所属する暁が特記戦力の提供、挟間ボンドルドが遺体と引き替えに資金提供をすれば、裏社会の連中は喜んで木ノ葉隠れの情報を賞金稼ぎや他国にリークする。

 

「この忍者らしからぬやり方は、ボンドルドも裏にいるな。だが、それだけの資金力は奴にもないはずだ……口座は凍結済みだったな」

 

「ボンドルドさんのことですから、どっかの大名にでも裏で囲われてた可能性もあるかなと。なんでもやれる人でしたからね~。あ~ぁ、プルシュカちゃん可愛かったな~。……後、控えめに言って、マズイですよ綱手様」

 

 シズネも具体的にどうまずいか説明しなかった。忍者損耗率もマズイ要因の一つだが、何より挟間ボンドルドの罪状に疑念の声が出てきたからだ。長年、木ノ葉隠れの里に尽くしてきた医療忍者が、無実の罪で犯罪者扱いされているのでは無いかと声が上がってきた。

 

 事実、暁との戦闘で死者がでた山中一族は、一族の女子を失う発端となった挟間ボンドルドの罪状について真相を求めて火影に情報開示の請求をしていた。無論、こんなことは火影として認められないので却下する。頭の中を覗かれては、暁を支援していた事や大蛇丸との同盟までバレてしまう。それは許されない。

 

「頭を覗かれない限り証拠は出てこない。証拠の仕込みも完璧だ、どの機密書類を盗み見ても奴の犯罪にしかならん。私と暗部、それとシズネ自らが仕込んだ事だ。まさか、手抜かりでもあったのか」

 

「ありえません。とりあえずは、任務のローテーションなどを色々と組み替えて対応をしてみます」

 

 綱手やシズネでも、挟間ボンドルドの資金源には気がつけなかった。音隠れの里での新事業……そのレースの興行収入で莫大な利益を上げており、大蛇丸と二人で山分けしている。まさか、自国の元火影やトップクラスの忍者達の稼ぎが里の首を絞めているとは、誰も想像できなかった。

 

「そういえば、シズネ。暗部の者から聞いた話だが、音隠れの里から定期的に金の振り込みがあったくの一がいるとか。大蛇丸と繋がりが深い音隠れの里からの謎の入金、これは怪しいよな」

 

「えぇ、おかげで慰安任務をしないでも親子暮らせる程度の収入にはなっていましたね」

 

「暁方面は、ボンドルドに全面的に罪を被せた。大蛇丸方面でも少しは必要だとは思わないか」

 

「はぁ~、分かりました。手配しておきます」

 

 大名と蜜月な関係が求められる昨今、大事な慰安任務を断る元くノ一など火影の権力の前では風前の灯火だ。折角、助け船と称して、妊娠中の未亡人くノ一という属性モリモリで大名達に売り込んだ綱手の計画が全て水の泡となった。その理不尽なツケを精算するつもりでいる火影がいる。

 

………

……

 

 音隠れの里に到着した春野サクラ一家。

 

 その発展している里を見て驚いた。木ノ葉隠れの里と比較しても何十年も先を行った設備投資がされている。他にも、国外からの人の受け入れにも積極的である事も発展を助けており、各国の情報が集まる場所にもなっている。

 

「今日のレースは、トビラマテイオーとハシラマックイーンが出バだってよ」

 

「本当かよ。また、二代目の卑劣なステップが見られるのか」

 

「馬鹿言うなよ、ハシラマックイーンは印を結ばず斜行出来るんだぞ。負けるはず無いだろう」

 

「いいや、それ反則だからな」

 

 春野サクラは、通りすがりの男達の会話を聞きどこぞで聞いた事がある名前だなと思っていた。里をあげての振興事業がそれだと当たりを付けた。

 

 だが、本当に春野サクラが気がつかなければいけなかったことは他にある。結構な数の女性がうちはの家紋入りの服を来ている事に。更には、そういった女性の子持ちの頻度が凄まじく高い事だ。

 

 その時、近くで揉めている一組の男女がいた。その片方が、この場に春野一家を招待した男…挟間ボンドルドであった。

 

「おぃ、てめーーボンドルド!! なんだ、この身体は巫山戯てんのか」

 

「おやおや、お気に召しませんでしたか。アグネスデイダラ(・・・・)さん。その衣装、良くお似合いですよ」

 

「ふざけるんな。俺は、うちはイタチと決着を付けなきゃいけないんだ。こんな身体で、どうしろってんだよ」

 

 死んだはずの兄弟子が平然と他国の里にいる。更には、美少女と揉めていれば、春野サクラも混乱する。

 

「なるほど、つまりどのような形であれうちはイタチさんと同じ土俵で勝負出来れば今の立場に納得して走って頂けるんですね」

 

「あぁ?まぁ、そうだな」

 

「分かりました。貴方が快く走れる環境をご用意する事を約束しましょう。近日中に、うちはサスケ君が感動の再会を果たすでしょうからね」

 

 うちはサスケ。その名を聞いて春野サクラは、安堵した。この里にいれば、やはりうちはサスケに会えるのだと。

 

 そして、挟間ボンドルドが春野サクラに気がついた。バ体の女性との会話を終えて春野一家と対面する。

 

「これは、春野一家のみなさん。ようこそおいで下さいました。春野キザシさん、腰痛は良くなりましたか。春野メブキさん、音の里はあちらより寒いですので関節痛にならないように温かい格好をしてくださいね」

 

「挟間ボンドルド特別…いいえ、ボンドルドさんは、両親の事をご存じなんですか?」

 

「当然です。私は患者一人一人の事をしっかりと覚えております。春野サクラさん、色々と聞きたい事もあるでしょう。後で、大蛇丸様も含めてお話をしましょうか」

 

 大蛇丸同席という事で、春野サクラは悩んだ。

 

 その事を読み取って、挟間ボンドルドは伝説の三忍の一人でミナトブルボンの尻をなで回そうとしているトレーナーを同席させる配慮をした。

 

 そこで聞かされる真実とうちはサスケの現状。

 

 うちはサスケの抜け忍は全て仕組まれていた事、挟間ボンドルドが無実だった事、うちはサスケが万華鏡写輪眼の為に大蛇丸と部下のカリンを切ってプチ家出した事。大蛇丸は当然無事として、カリンはバ体のカリン(・・・)チャンとして転生し、うちはサスケと仲よくヤっているなど。

 

 そんな頭が悪いような状況を全て理解して飲み込んだ春野サクラは、両親を音隠れの里に永住させる事を決める。その上で、大蛇丸と仲よく握手をして木ノ葉隠れの里へと帰ることを決意した。

 

 その帰りの道中の宿で、気を利かせた兄弟子が彼女の思い人を誤って彼女と同じ部屋に泊めてしまう不手際をしてしまう。同室に年頃の男女が泊まって何事も無いはずが無く……春野サクラは、誰が本当に信じるべき相手かよく理解した。




自来也とイタチには、申し訳ないけど早々に退場願う!

次回、うちはサスケが遂にイタチの真実を知ってしまう。
そして、すぐさま音隠れの里で働く事になる。


PS:
退役した バ体 忍者
通称 退バ忍!!

「お前の父ちゃん退バ忍」と罵られることにる夕日紅の子供。
ナルトも同じか。


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49:あれら(・・・)は人間としての運用はしておりません

次話をサスケ編にしようと思っていましたけど、アレはイザナギで無かった事になりました!
順番的に、先に自来也編だったようでしたので。


 雨隠れの里。そこは、暁の表のトップである長門が居る場所でもあり、火の国、風の国、土の国と国境が接しており、日夜大国の脅威に晒されている。その為、戦時には大国の戦場となる事も多い。

 

 だからこそ、雨隠れの里に平和をもたらした暁のトップであるペインこと長門は神として崇められている。長門の主治医を務める挟間ボンドルドも雨隠れの里においては、VIP待遇であった。医療忍者と言う事もあり、雨隠れの里で彼の世話になった患者は数多く、雨隠れの里において、黒い医師と呼ばれていた。

 

 黒い医師こと、挟間ボンドルドは長門の定期検診のため、雨隠れの里を訪れている。診察の時には、万が一に備えて傍らには小南が控える。

 

「最近は、よく眠れているようですね。もう少し、リハビリを続けたら歩ける程度には回復するでしょう。後、六道システムの方もアップグレードしておきたいので何か希望はありますか?」

 

「……感謝しているわ、先生。最初こそ、胡散臭いと思っていたけど、長門がここまで持ち直しただけでなく、歩ける望みまで出てきたなんて」

 

 長門が健康になるにつれて、小南も挟間ボンドルドの事をある程度信用をしていた。更に言えば、ペイン六道を長門単体で行わずAIを組み込む事で長門の負担も激減させていた。また、カートリッジシステムも取り込まれており、長門の僅かなチャクラだけでも運用を可能としている。

 

「そうだな。これなら、必ず世界を変えられる!!改めて聞くが、暁に入る気はないか。先生も今ではお尋ね者だと聞く。暁に入れば、組織としてサポートできる」

 

「長門さん。私のような一介の医師を高く評価して頂いた事に感謝しております。ですが、そのお話はお断りさせていただきます。表だっては手伝いませんが、プルシュカのサポートという立ち位置でなら助力します。未成年の子供ですから、父親が多少出しゃばっても構わないでしょう」

 

 暁のマスコット的存在の挟間プルシュカ。殺伐とした暁メンバーを力で無く愛嬌でまとめ上げられそうな唯一の人材。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、貧しい国での紳士的な活動を止める事は無かった。スラムや孤児達が集まる所にいって、恵まれない子供達に救いの手を差し伸べる。特に、雨隠れの里では、大国に囲まれる地理的な問題から戦争孤児も多い。

 

 他にも水源が豊富であり、大国による緩衝地帯の維持を目的とした人道支援がある。その支援物資のおこぼれにあやかろうと国境付近には、そういった者達が良く集まる。

 

「大国の緩衝地帯であるこの国。私は、ここに忍界の次世代を切り開くに相応しい子供達を見つけに来ました。私は挟間ボンドルド、雨隠れの里では黒い医師と呼ばれています。忍界に踏み居る事も厭わない勇気ある子供達…どうぞ、一歩前へ」

 

 挟間ボンドルドの優しい声色。それに加えて、黒い医師として知名度がある。老若男女問わず治療をしており、その名声は子供達も知るほどであった。だからこそ、そんな大人に付いていって将来は人の為になろうと思う子供も多い。

 

 親が忍者だったのに、碌な教育も受けられずこんな場所で腐るくらいなら大人に付いていこうと思う者が沢山居る。

 

 そして、何人もの子供達が明るい未来を目指して一歩前へと進み出た。

 

「さぁ、みなさん。籠にお乗り下さい。ご安心下さい。道中は、全て私達が護衛致します」

 

 籠に乗せられた子供達の目的地は、雨隠れの里の地下に建造されたボンドルド謹製の六道システムがある場所。そして、挟間ボンドルドの研究施設の一つでもある。そんな雨隠れの里の最奥に連れて行かれて、日の目を見れる事などあり得ない。

 

 機密の塊のような場所だ。

 

 そこで働く忍者は、全てペインを信仰している。死んでも口を割らないような厳選された人材がいる。だが、そんな連中であっても、良心の呵責があった。連れてこられた子供達をみて、挟間ボンドルドに進言する。

 

「何を考えているんです!あんな数の人間を雨隠れの里の最奥に…それも国外の子供達まで…」

 

「今更どうしたのですか。経絡系を持つ子供達のここへの立ち入りを進言したのもその為ですよ」

 

 カートリッジに詰めるという行為は、目立つ場所ではよろしくない。人目に付かない場所が理想的だ。だからこそ、こんな地下で行われる。それに、この場所ならば六道システムへのカードリッジ補充もスムーズに行う事が出来るため、一石二鳥であった。

 

「しかし、大人の忍者や犯罪者ならともかく。子供達はその…人道的に…」

 

「なら、心配ありませんよ。あれら(・・・)は人間としての運用はしておりませんのでご覧になります?」

 

 カートリッジシステムについては、挟間ボンドルド以外詳細を知る者はここにいない。ここにいる者達ですら、チャクラを外部供給可能とするシステムとしか認識していない。そのため、謎の箱はチャクラを温存できる電池みたいな物だと思っている。

 

 その中身が、現物であるとは彼等の想像の斜め上をいっていた。

 

 

◇◇◇

 

 自来也は、音隠れの里を涙を飲んで後にし、暁の拠点として怪しいとされる雨隠れの里へと潜入をはたした。彼にしてみれば、ある意味思い出のある隠れ里。

 

 教え子達がいた里、三忍と呼ばれる切っ掛けとなった忍者がいる里。

 

 そんな感傷に浸りつつ、自来也の調査は進んだ。内乱が既に終わっておりペインと名乗る男が平和をもたらしたと情報を得た。そして、ダンゴ屋にあったお土産でとんでもない物を見つけてしまった。

 

「ペイン、天使様、黒い医師。きな臭いの~。あの山椒魚の半蔵が既に死んでいるとは信じられん。それに、この不気味な鉄仮面のキーホルダー。これが黒い医師だと~。こんな奇抜な仮面を被った男がボンドルドの他にい……る訳ないか」

 

 勝手にお土産のキーホルダーとして、売られている男――挟間ボンドルド。これほど特徴的な男が二人もいたら、世界が悲鳴を上げてしまう。思わぬ所から、挟間ボンドルドと暁の繋がりがバレてしまった。

 

「お待たせしました、お団子です。あれ?もしかして、おじさんも黒い医師様に診察を受けに来たんですか」

 

「いや~、実はそうなんじゃよ。最近、腰が悪くての~。で、その黒い医師様とやらは凄腕なんじゃろう。儂よりいい男だったり?」

 

 自来也の中では、挟間ボンドルドが暁の一人でほぼ内定していた。つい先日まで、音隠れの里で一緒に話しており、トレーニングの相談までしていた仲だった事を思い出していた。

 

「そりゃ、凄腕ですよ。うちのお父さんの腰痛を触れただけで治してましたから。顔は、分かりませんが、声から分かります。あれは絶対に良い男ですよ。はぁ~、既婚者じゃなければな~」

 

「そうか。その黒い医師様とやらの側には、同じ位奇抜な格好をした銀髪の少女がいなかったか。後、メーニャとかいう美声の謎生物も一緒だったとか」

 

「お客さん、もしかして黒い医師様のお知り合いですか。その通りですよ~」

 

 自来也は、戦闘となった際に勝てるか考えた。挟間一家を相手にした場合、勝率は悪い。一人ずつならば、負けない自信がある。だが、仮に勝利したとして懸念事項はカツユの存在だ。

 

 カツユが暴走した場合止める術など無い。つまり、拘束して説得し、落としどころを見つけるという線で行かなければならない。挟間ボンドルドや挟間プルシュカを生きて捕獲するとなると難易度は跳ね上がる。

 

「どうしたもんかの~。黒い医師がボンドルドなら、天使はプルシュカといったところか。プルシュカが予言の子という可能性もある。今なら、間違えた道は正せるはずだ」

 

 暁で職場体験中の挟間プルシュカをそこまで心配してくれる大人。そんな歴史に残るような立派な忍者にも死期が迫ってきていた。

 




……そういえば、暁の不死コンビをいつ退場させようか迷うわ。
まだ、サソリとデイダラしか死んでない。

※バ体ネタの音隠れ里日常編は、ギャグパート的な位置づけですのであしからず!
 そして、自来也とイタチを早く音隠れにご招待してあげたいですわ。




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50:自来也豪傑物語

 挟間ボンドルドは、雨隠れの里に暁の調査に訪れた自来也にご挨拶をする為、小南と自来也の戦いの場に足を運んだ。

 

 そこには、自来也に油塗れにされて髪で縛られている小南がいる。

 

 挟間ボンドルドの登場に、自来也もやはりそうだったかと言う顔をする。

 

「これは、自来也様。数日ぶりですね。先ほど、腰の具合が悪いと情報を得ましたので、ご挨拶も兼ねて治療をさせて頂こうと思いましたが…お取り込み中でしたか。親子ほど離れた妙齢の女性――小南さんを油塗れにして拘束しているなんて。そういった事がしたければ、ご相談頂ければ幾らでもご都合して差し上げましたのに」

 

「どうして、お前のような立派な忍びが暁なんぞに荷担する。もし、暁に荷担している原因が、木ノ葉隠れの里にあるというなら儂が何とかしてやる。プルシュカの将来も考えれば、手を引くなら今しか無い。ボンドルドが暁だという事は、何処にも漏れてはいないはずじゃ」

 

 挟間ボンドルドは、何故か暁といつも勘違いされる。S級犯罪者として指名手配されており、暁と一緒に登場したら当然の事だ。

 

「違いますよ、自来也様。木ノ葉隠れの里でも伺っていたと思いますが、私は暁ではございません。誘われましたが、全てお断りしております。そうですよね、小南さん」

 

「何度も誘っているのですが、断られています。まぁ、人は見た目が10割とも言いますから、誤解するのも理解できます」

 

 自来也が挟間ボンドルドと小南の双方をよくよく観察する。そして、嘘偽りでない事を理解した。だが、それならそれで何故この場に居るのかが謎になってしまう。木ノ葉隠れの情報で暁メンバーと行動を共にしているとあったが、ここまで暁の中枢に部外者が居る事などあるのか、などと思考を巡らせていた。

 

「では、なぜボンドルドまでここにいる」

 

「あぁ、私は暁の主治医も務めておりますから。元は、木ノ葉隠れの任務で彼等の健康管理をしておりました。今では、一人の医師として彼等の健康管理をしております。暁の方々は、本当に健康に難がある患者が多くて困ります」

 

 大蛇丸と秘密裏に繋がっていた事は自来也も把握はしていた。大蛇丸と和解した際にそういった話題を飯のネタにして盛り上がった事を思い出した。だが、まさか、暁とも関係があったとは寝耳に水。

 

「綱手め、見境がなさ過ぎだろう」

 

「同感です。それと、暁が利用している忍具の大半も木ノ葉隠れの里から納品されている事実もあります。見方によっては、暁は木ノ葉隠れの里とズブズブの関係です。表沙汰になれば、五大国を揺るがす事態になるでしょう。だからこそ、表に出る前に綱手様が派遣できる最大戦力である自来也様がここに導かれたかと」

 

 うちはイタチが、干柿鬼鮫と一緒に闘う前提で勝率が5割と言い切った相手の自来也。立ち回り次第で一人で暁を壊滅する事も可能とする特記戦力であった。

 

「………知りたく無かったの~。そんなこと。だが、儂は、これでも木ノ葉隠れの忍びじゃ。例え、綱手にどんな思惑があったとしても儂は暁の行動を止めねばならん」

 

「そうですか、では頑張って下さい。私は、争いごとは苦手ですので高みの見物をさせていただきます。ちなみに、ペインは強いですよ。戦闘データを取るためにも奮戦を期待しております」

 

 挟間ボンドルドは、開発した六道システムの実戦データを期待していた。どのような状況にも対応できるようにと設計開発された。挟間ボンドルド謹製のAIを積み込んだ時代を先取ったシステム。

 

「後は、こちらで引き取ろう。先生は小南と一緒に下がっていてくれ。口寄せの術!」

 

 長々と会話している隙に長門の畜生道がその場に現れる。油を洗い流すカニを口寄せして、選手交代を果たす。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、娘の挟間プルシュカを連れて高みの見物をしていた。雨隠れの里に現れた世界トップクラスの忍者である自来也。それに対峙するのは、暁でも最強の一角であるペインこと長門だ。

 

 挟間一家と同じ場所に小南も退避してきており、戦いの行く末を見守っている。

 

「パパ、自来也のおじさん凄いね。初見でペイン三人を相手に勝つなんて。それに、仙人モードも使えるなんてパパや大蛇丸様が凄い忍者っていうのがよくわかったわ」

 

『シマ様とフカサク様が仙人モードのサポートをしていますね。――閃きました!私もプルシュカちゃんと融合すれば』

 

 メーニャ(カツユ)が後で妙木山に行って二人に融合方法を聞こうと考えていた。仙人モードは、挟間プルシュカも会得できていない。

 

「あまり、過保護過ぎるのもダメですよ。ほら、自来也様がコチラに眼を向けました。手を振って応援をしてあげましょう」

 

 片腕を失った状態でペイン六道を相手に勝利を収めるなど事実上不可能だ。忍術の肝となる印は基本的に両手で結ぶ必要がある。印が結べない以上、自来也の忍術はほぼ全て封じられたも同然。

 

「頑張れ~自来也おじさん。もし、勝ったらプルシュカのお風呂を覗いたこと許してあげるから」

 

『くっ、プルシュカちゃんが許してあげるなら仕方がありません。私も勝てたら許してあげます。負けたら、去勢しますからね』

 

 

◇◇◇

 

 油断した結果、左腕を失った自来也は完全に追い詰められていた。現状、彼に残された道は逃亡か死のいずれかしか無い。

 

 目の前には、ペイン六道が揃っている。そして、少し離れた場所には挟間一家と小南。そんな中、挟間プルシュカの明るく可愛い声とカツユの美声での応援。

 

『なんじゃ、自来也ちゃん。あんな幼子のお風呂まで覗いているのか。それに、この気配……カツユ様か』

 

『嘘こくなや、とうちゃん。カツユ様がこんな場所に……おったわ。どういうことや』

 

「あぁ、お二人はご存じありませんでしたね。あそこに居る長身の黒い服の男が、カツユの旦那で挟間ボンドルドといいます。そして、横にいる銀髪の少女が二人の娘で挟間プルシュカ。敵ではありませんが、味方でもありません。詳しい事情は、ここを切り抜けたらお話いたします」

 

 二大蝦蟇仙人は、今すぐにでも詳しい事情を知りたかった。

 

 超常の存在であるカツユが結婚しており子供まで居るなど、なんでそうなったか詳しく知りたいと思うのは当然だ。しかも、そんなカツユの娘のお風呂を覗くなど、失礼極まりない行為をした自来也。生きて帰ったのならば、お祝いを申し上げるついでに、自来也の無礼を詫びなければと本気で思っている二人であった。

 

 それから自来也は奮闘した。

 

 片腕が無い状態でペイン六道相手に一人を完全に破壊する偉業を果たす。更には、その遺体を木ノ葉隠れに持ち帰らせる事に成功するなど、その功績は計り知れない。その対価が命であっても帳尻が取れるほどだ。

 

 今や、自来也の背中には何本もの支柱が刺さっており心臓も止まる寸前。最後に、ペイン六道の秘密に気がついたがそれを伝える術が無かった。

 

 そんな死に際の傍らに、挟間ボンドルドがやってくる。

 

『貴様!挟間ボンドルドとかいったな、自来也ちゃんに何をする気だ!!』

 

「ご安心下さいフカサク様。彼の教え子が居る場所に送って差し上げるだけです。フカサク様もご存じのミナトさんが居るところです」

 

 完全にトドメを刺しに来たと誤解されてしまう挟間ボンドルド。間違っては居ないが、知らない者が聞いたら完全に勘違いするのは無理も無い。

 

『何が安心出来るか!自来也ちゃんが何かを伝えようと…よし、分かった』

 

 最後の気力を絞って自来也は、フカサクの背中にダイイングメッセージを記す。その行動を、邪魔をしないのは挟間ボンドルドが敵でも味方でもない証拠だ。

 

………

……

 

 それから暫くして、木ノ葉隠れの里に自来也の訃報が伝えられた。それと同じくして音隠れの里で新たな生を享受する者がいる。

 

 その傍らに立つのは、挟間ボンドルド。

 

「お体の方は、いかがでしょうか」

 

「いや、何となく予想はしていたが……もう少しどうにかならんかったのか」

 

 新しい肉体は、何も不備などない。だと言うのに、不満がでると言う事に挟間ボンドルドは悩んだ。本人が望む望まぬは別として、生き返るだけで無く、若返りまではたした。それは、本来どのような対価を支払っても手に入らない事の方が普通だ。

 

「これで女風呂を覗く必要もありません。ご希望されておりました弟子との温泉旅行も可能になりました。それと、昔を思い出せるように一部髪の毛も白くしております。何がご不満なのでしょうか?」

 

「儂は、男として女風呂を覗く事やあの抜群の肉体の弟子と温泉旅行に行きたかったんだよ。下の方に大事な物が無いだろう大事な物が!!」

 

 大事な物はちゃんとついている。無論、バ体としてのだが。

 

「それに関しては諦めて下さい。バ体は全て女性体しかありません。これからは、第二の人生をお楽しみ下さいメジロジライヤ(・・・・)ンさん」

 

 忍界でのお勤めを終えた伝説的な忍者がまた一人、音隠れの里にログインした。 




サスケ お前は俺にとっての新たな光だ!!

タカデーース というチームを結成しているサスケ君が遂に兄と対面。

視力問題が眼鏡で解決し、肉体的な不調も治ったパーフェクトイタチさんの出番ですな。



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51:幻術ではなく現実なのが最悪なんだぜ

いつもありがとうございます!



 挟間ボンドルドは、長門の健康診断を終えてから音隠れの里に戻って直ぐに暁の裏のトップであるトビに呼ばれる。うちはイタチとうちはサスケの兄弟喧嘩があるので、その後始末という名の治療のお手伝い。

 

 視力問題を眼鏡で解決し、内臓にあった致命的な病も挟間ボンドルドの手腕で一年以上前に解決していた。今では、生気が満ちあふれており全盛期以上の仕上がりとなっている。まさに、パーフェクト・イタチ。

 

 対するは、伝説の三忍と呼ばれた大蛇丸の元で数々の術を学び、たった数年で忍界上位に位置する実力を身につけたうちはイタチの弟。更には、忍術を学ぶ最中、たった一人で現在進行形でうちは一族を起こした精豪でもあった。今は、子供の数は350人を超えた。あまりの規格外の子供の数で里で管理している住民情報システムを特注せざるを得なくしたビッグダディ・サスケ。

 

「ゼツさん、余り近付くと流れ弾が当たりそうなので、このあたりで待機していて構いませんか」

 

「あぁ、そうだね。で、ボンドルドは、どちらが勝つと思う?俺は、イタチだと思っている」

 

 普通ならば、誰もがうちはイタチと答える。だが、うちはサスケとて負けてない。この日の為に大蛇丸を切って、子供の眼を万華鏡写輪眼に開眼させたのだ。その移植手術を挟間ボンドルドが行った。だが、その事実を暁の者達は知らない。

 

 万華鏡写輪眼持ちのパーフェクト・イタチ。永遠の万華鏡写輪眼持ちビッグダディ・サスケ。瞳術の性能でいえば、うちはサスケに軍配があがる。

 

「お互いが、うちはイタチさんに賭けては勝負になりません。私は、うちはサスケ君に賭けましょう。そうですね、負けた方が次回の飲み会費用を全部持つというのはどうでしょうか」

 

「協調性の無い連中だが、他人の金で飲み食い出来るとなると集まるからな。まぁ、その程度ならいいだろう。プルシュカも参加するだろうから、貸し切り、禁煙だな。あぁ、サソリ……今はレグだっけ連れてきていいから」

 

 中間管理職のポジションのゼツ。チームが上手に回るように気配りを忘れない常識人だ。忍具の準備やアジト確保、タイムスケジュール管理、各里の動向なども全てまとめて仕切っている。

 

「えぇ、では勝負の行く末を見守るとしましょう。ゼツさんは、これからあそこに?」

 

「そうだよ。あそこに行けるのは俺くらいしかいないからね。一緒に来るかい?」

 

「お気になさらないでください。私は、ここからでもよく見えます。そろそろ、試合のゴングがなりそうです。行かれるのでしたらお早めに」

 

 狭間ボンドルドの白眼には、しっかりと現地の様子が見えている。なにより、万華鏡写輪眼持ちが二人もいる戦いに割り込むなど、お断りだというのが本音だ。

 

「ねぇパパ~。イタチ叔父さんが勝つと思うんだけど、なんでイタチ叔父さんに賭けなかったの?」

 

「単純に賭けを成立させるためですよ。それに、案外うちはサスケ君が勝つかもしれません。なんせ、彼の『祝福』は、うずまきナルト君に比肩しています」

 

 うちはサスケ程数奇な人生を送っている者は数十年に一人レベルだ。そんな男が悲願を達成するためあらゆる努力をしてきた。その努力の成果をここで見せるとき。

 

◇◇◇

 

 うちはイタチは、弟であるうちはサスケがついに自分の元までやってきたことに歓喜していた。木ノ葉隠れの里の上層部の命令で、両親や一族をすべて殺してまで救った弟。あのころとは見違えるほど力をつけてきた。

 

 これならば、忍界で十分にやっていけるとすら、うちはイタチに思わせるほどの仕上がりを見せていた。

 

「久しぶりだなサスケ。随分と、老け……大人びたな。お前はその写輪眼でどこまで見えている?」

 

「写輪眼?何を言っているイタチ。お前に言われた通り、同じ万華鏡写輪眼を持ってきてやった。そう、俺のこの眼に見えているのは、あんたの死にざまだ」

 

 万華鏡写輪眼というパワーワードは、うちはイタチに動揺をもたらした。

 

 既に開眼しているならば、彼の目的が半分以上達成されている事になる。つまり、わざわざ嫌われ役をやっている意味が半分ほど意義を失う。

 

「そうか、お前も開眼したのか。うずまきナルトを手にかけたのか」

 

「この眼は、俺の娘……ツムギの眼だ。俺たち親子の力でお前を倒す!!」

 

 天才うちはイタチの頭脳をもってしても、なかなか理解できない状況。仮に、これがうちはサスケの戦略というならば、うちはイタチもべた褒めしただろう。

 

 大事なことだが、うちはイタチは音隠れの里の事情を何も知らない。

 

「そ、そうか。お前が所帯を持ったか。お前の亡骸を届けてやる。最後に妻の名を聞いておこう」

 

「―――大蛇丸だ」

 

 答えるまで長い時間がかかるだけでなく、苦い顔をして妻の名を告げるうちはサスケ。

 

 大蛇丸は、家事万能、才色兼備など誉め言葉を並べればいくらでもある天才だ。肉体は永遠に若いままで希望すればどのような女性にも転生してくれるという素晴らしいオプションも兼ね備えている。

 

 つまり、苦い顔をして妻の名を言うこと自体失礼だ。子供の育児にろくに関わらず、修行に明け暮れ、必要になったら金だけもっていくという事をうちはサスケはやっている。事実、プチ家出して組んだチームの活動資金やメンバーですら元々は大蛇丸の持ち物だ。

 

「サスケ。こういう場で冗談を言うものではない」

 

「ちげーーよ。本当のことだよ。お前のせいで俺は大蛇丸と一族再興する事になったんだよ。だが、そんな自分も悪くないと最近思えるようにはなった」

 

 里より大事な弟が、あろうことか大蛇丸と子供を作って一族再興。二人の間に産まれた子供の眼を万華鏡写輪眼にして自身に移植までしてやってきたうちはサスケに、うちはイタチは本気で気分が悪くなってきた。

 

 ここまで弟を追い詰めてしまったのかと。

 

 だが、天才うちはイタチ。この冗談のような状況が幻術である可能性に気が付いた。世の中には、幻術にかかったことすら気が付けない別天神という物もあるのだから。

 

「俺相手にここまでの幻術をかけるとは、強くなったなサスケ」

 

「馬鹿かイタチ!幻術ではなく現実なのが最悪なんだぜ」

 

 うちはイタチとうちはサスケの幻術勝負がこれから始まる。

 

 兄と弟……女の趣味は似ていた。つまり、弟の趣味にストライクな容姿となっている大蛇丸との夜伽を幻術で兄に当てつける外道が生まれる。うちはイタチは、嘗ての恋人が大蛇丸に上書きされた悪夢を見せられて嘔吐する。




原作では吐血ですが、ここではパーフェクト・イタチさんなので嘔吐になっております。

さて、サクサク進めるぞーー!!


50話を超えた…ここまできてやっと疾風伝の折り返し地点くらいだよね。


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52:終焉

 決して解ける事が無い幻術……という名の現実をうちはイタチに直視させたうちはサスケ。弟の成長を喜ぶ反面、申し訳なさで胸が張り裂けそうな兄がいた。そんな兄の恋人との思い出を大蛇丸との淫靡な日々に上書きをして、恋人を思い出す度に大蛇丸の影をちらつかせる事に成功した弟は、卑の意思を継ぐに相応しい。

 

 全ては身から出た錆だとは言え、事の真実を知った際にうちはサスケへのダメージも計り知れないだろう。

 

 卑劣な幻術のお陰でコンディションが絶不調になったうちはイタチ。先手は、うちはサスケが勝利を収めた。だが、試合に勝って勝負に負けた感は否めないのが実情だ。

 

「「火遁・豪火球の術」」

 

 ぶつかり合う二人の忍術。お互いが得意とする忍術であり、その威力は並みの上忍を遙かに上回る。長く続くその忍術……互角だと思われてたが、徐々にうちはサスケが押し始めた。

 

 絶不調のコンディションによる吐き気が原因で火遁が続かない。口を媒介にした忍術には致命傷となる。ついには、切り札の一つを使う事になる。

 

「天照!」

 

 まだ負けるわけにはいかない、うちはイタチ。負けそうになったので、印を結ばず、口も使わない忍術を使う。全てを焼き尽くす黒炎がうちはサスケの豪火球の術を焼き尽くす。

 

 

◇◇◇

 

 うちはイタチが天照を連続使用する。燃やしたい物にピントが合うだけで発動する回避不能の術。だが、遮蔽物も無い見通しの良い場所を走るうちはサスケに直撃をさせられない。

 

 そんな様子を見ていた挟間プルシュカは疑問に感じる。

 

「パパ、なんで天照があの状況で外れるの?」

 

「それが『祝福』という物です。うちはイタチさんが外しているので無く、何かしらの力が作用しているのですよ。仮に、天照が当たるとするならば、うちはサスケ君が対応できる算段が付いた時だけです」

 

 常識では考えられないような発言であった。だが、挟間プルシュカはそれを理解して受け入れる。絶対である父親挟間ボンドルドの言葉だからだ。

 

 聞き分けの良い子供の頭を撫でる父親。

 

「真剣勝負なのにズルっ子だな~。じゃあ、パパならそんな相手をどうやって倒すの?」

 

「幾つか方法はあります。同レベルの『祝福』持ちをぶつける事です。うちはサスケ君なら、うずまきナルト君が適任でしょう。他は、自分自身に殺させる(・・・・・・・・・)方法なんかもあります」

 

 挟間ボンドルドは、常々考えていた。万が一、自分が最高峰の『祝福』持ちと闘う場合どうするべきか。一撃必殺の忍術もその為だ。何度も攻撃が当たるなどとは思っていない。だが、それでも無理な場合、どうやって殺すか。

 

「自分自身に――あっ、わかった!!卑劣なお姉ちゃんが教えてくれたアレを使った方法でしょう。だから、不屈の花園に」

 

「何処で聞かれているか分からないので、大きな声で喋ってはいけませんよ。戦いが終わるまでの間に、飛び散った天照を回収しておきます。レグの動力強化や大蛇丸様ご待望の発電所などに使えるでしょう」

 

………

……

 

 雨が降り雷鳴が鳴り響く中、天照をかき集める挟間一家。永久機関とも言える黒炎は、万華鏡写輪眼の瞳術の中ではイマイチとも言える能力だ。だが、平和利用と考えればその効果は素晴らしい。下手をすればこれを求めて戦争が起こってもおかしくないレベルの品だ。

 

 そんな瞳術を生み出す万華鏡写輪眼にレグも興味を抱く。技術者肌が強い彼にしてみれば当然だ。

 

「ボンドルド。確か、プルシュカも万華鏡写輪眼だったよな。どんな能力なんだ?」

 

「知りたいのレグ~。仕方ないな。誰にも教えちゃ駄目だよ」

 

 挟間プルシュカは、やっと聞いてくれたと嬉しそうな顔をする。実に子供らしい。そんな子供の自慢話に付き合うレグも挟間一家に馴染んできたと言える。元々常識人であり、どこぞのバ体となって走っている元相棒と比べれば今は天国だと認識した事も要因だ。

 

「上昇負荷を掛ける事よ!発動時に私を中心とした半径100メートル圏内にいた全ての人間(・・・・・)が対象になるわよ。発動時の各々の座標が高低差の起点になるから、発動時はレグも気をつけてね。あれ?でもレグは対象になるのかな~、試してみる?」

 

「嫌にきまっているだろう。で、具体的にはどうなるんだ?」

 

 挟間プルシュカがレグに眼の事を話していた事を初めて知った挟間ボンドルド。身内に対しては口が軽くなるのは彼の娘らしい事であった。

 

「レグに写輪眼の事を話してしまったのですね。まぁ、数十年もすればさほど珍しい物でも無くなるでしょうが、万が一がありますので内緒にしてくださいね。それと、術の詳細を話すのはよろしくありません、プルシュカ。その内、披露する機会もあるでしょうから、楽しみにしていてください。プルシュカの万華鏡写輪眼の瞳術なら恐らく、殺せない人間はほぼいません」

 

 ピョンピョンはねる忍者にとっては、絶望的と思える能力であった。

 1m上昇で軽い眩暈・吐き気。

 2m上昇で重度の眩暈・吐き気・頭痛。

 3m上昇で平衡感覚の消失・幻聴・幻覚。

 4m上昇で全身への激痛と穴という穴からの流血。

 5m上昇で全感覚の喪失と意識の混濁・自傷行為。

 6m上昇で人間性の喪失・死。

 7m上昇で確実な死。

 

 だが、能力使用中は常時チャクラを消費し続ける。その条件は、自らにも適用される為、場合によっては即時解除しなければ自らが危なくなる。3m上昇すると、1mと2mの両方の負荷も掛かるため、一気に飛び上がった忍者は大体死ぬ事になる。尤も、それを回避するための特別な装置でもあれば別だが。

 

 

◇◇◇

 

 うちはサスケは、麒麟まで使わされてチャクラは既に限界近くまで消費していた。だが、確実に直撃させた回避不能の忍術…だったが、回避できないなら防御すればいいと言わんばかりにうちはイタチは防御して見せた。

 

「これがなければやられていたな。本当に強くなったなサスケ。今度は俺の最後の切り札を見せてやろう。須佐能乎だ。月読と天照、二つの能力を開眼したときに手に入れた。サスケ、お前の術はこれで終わりか。隠している力があるなら出し惜しみは無しだ。ここからが本番だ」

 

 虚空より現れるチャクラの巨人……うちは一族に伝わる万華鏡写輪眼持ちにしか使う事が出来ない絶対防御を誇る存在。

 

「みくびるなよ。お前だけが須佐能乎を持っていると思うな!!っ」

 

 須佐能乎の存在は、うちはサスケも知っていた。娘の眼を移植した際にしっかりと手に入れている。そして、今使おうとしたタイミングで体内に封じていた大蛇丸の一部がうちはサスケの思いに呼応する。

 

 プチ家出する際に切った大蛇丸の一部を体内に封印して、回復力などを向上させていた。人・物・金だけでなく身体までむさぼっているうちはサスケ。もはや紐というレベルをとうに超えていた。闇堕ちするのも当然ですと、この場に挟間ボンドルドがいたら言っただろう。

 

『私が力を貸してあげるわ。私が必要なんでしょうサスケ君。イタチに復讐するんじゃなかったの。さぁ、私の力を解き放ちなさい。そうすれば』

 

 うちはサスケの身体から、白い巨大な蛇が現れる。大蛇丸の八岐の術だ。夫を守る妻……そう見れば美しくもある光景だ。

 

「この感じ、大蛇丸の八岐の術か」

 

 うちはイタチは、須佐能乎を使い何本も大蛇の首を落とした。そして、最後の蛇の口から、黒髪ロングの美女が現れる。しかも、ヌルヌルでだ。

 

 そんな美女を見て、うちはイタチは嘗ての恋人を思い出した。これも、うちはサスケの卑劣な幻術の影響だ。

 

「助けに来たわよ、サスケ君!これを機会にサスケ君の身体を……もう頂いていたわね。美味しかったわ、お義兄さん」

 

 ブチ

 

 冷静沈着の天才であるうちはイタチを切れさせるのには十分であった。無造作に、須佐能乎が持つ十拳剣で大蛇丸を貫く。そして、呪印ごと消し去る。うちはイタチの最後の懸念事項であった、大蛇丸の呪印を消しさった。

 

 だが、今後どうしようか彼も迷っていた。当初の予定が簡単に消化できた事が原因だ。本当なら、ギリギリの戦いをして死ぬ事で弟の万華鏡写輪眼を開眼させる予定だったが、全てが狂っていた。

 

 予定もうちはサスケも。

 

 チャクラ残量もある為、再度強くなって帰ってこいといって立ち去ろうかとも考えていた。

 

「イタチ、大蛇丸ばかり目がいっていたな。これが俺の須佐能乎だーーー!!」

 

「なに!?」

 

 いつの間にか、うちはイタチの背後に回り須佐能乎を使っての奇襲。その憎しみが篭もった鋭い拳が、うちはイタチの須佐能乎を貫いた。そして、うちはイタチの身体に中指が貫通する。

 

 人間、巨人の中指が肉体を貫通して生きていられるほど丈夫ではない。うちはイタチは死ぬ間際、小さな声で「すまなかったサスケ」と本音を弟に伝えた。

 

………

……

 

 うちはサスケとうちはイタチが両者倒れる現場。勝者と敗者。生者と死者。

 

 大きな砦ほどあった建物が崩壊する程の忍術での戦い。これが、たった二人の人間がおこした惨状だとは信じられない程だ。

 

「ボンドルド、仕事の時間だよ。うちはサスケは、最低限の治療で構わない。うちはイタチの遺体については、綺麗にしてからコチラに渡してもらう」

 

「後遺症が残らないように丁寧に治療をしておきます。うちはイタチさんの遺体の処遇についても、正しくお願いしますね。死ねば仏といいます。後、賭けは私の勝ちです。干柿鬼鮫さんは、必ず来てくれるように念押ししてください。紹介したい女性が居ると言ってね」

 

「碌でもない事を考えてる? まぁ、いいけどね」

 

 盛大な兄弟喧嘩が幕を閉じた。

 

 そして、うちはサスケは目覚めてから知る事になる。兄がひた隠しにしていた真実を。

 

 

 数日後、バ体達が住むとある里の居酒屋にて。

 

 集う犯罪組織の紳士達。五影会談を上回る戦力がこの場に集まっているとは誰も思わない。

 

レグ(サソリの旦那)……すまなかった。あの時は、笑い飛ばしてしまった」

 

「気にするな、アグネスデイダラ(・・・・)。お前の境遇に比べれば俺はマシな方だ。戦える身体だしな」

 

 お互い過去を清算して新しい道を進み始めた元芸術コンビ。そして、その反対側には天才コンビが、感動の再会をしていた。

 

 絶対に出席しろと言われて飲み会に参加した干柿鬼鮫。その隣に座る女性を見て、驚愕する。干柿鬼鮫が、挟間ボンドルドを見て理解した。こいつ、やりやがったなと。

 

「どうした、鬼鮫。そんなにおかしいか」

 

「お体に触りますよ…イタチ(・・・)ワンさん」

 

 何年も付き合いのあるコンビが訃報から僅か数日で生還して会えるなど、忍界の常識は変わりつつあった。干柿鬼鮫も触診する事で脈拍などを確認し嘘では無いとさとる。

 

 そんな暁メンバーの強い結束に素晴らしいと感動している挟間ボンドルドがそこにはいた。 




自来也・サスケ編もこれで終了です。

次は6尾はアニメオリジナル?かな。
飛ばして、ペイン来襲編です!
だが、ペインだけが行くとは誰も言っていない。

PS:
いつもありがとうございます。
誤字脱字が多くて申し訳ない。
ご指摘頂いて確認次第直ぐ反映をさせて頂いております。




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ペイン来襲編
53:妙木山


 挟間ボンドルドは、暁からの要請で治療を行った対価を持ってある場所へと足を運んでいた。同行者である挟間プルシュカは、父親との遠出に喜んでいる。当然、メーニャ(カツユ)も家族旅行といった気分でウキウキであった。

 

「ねぇ、パパ。この迷いの森って全部焼き払ったら目的地まで一直線になるんじゃないの?」

 

「難しいでしょう。これは、結界忍術が森全体に作用しております。森を焼き払ったとしても目的地が現れる事はないでしょう。我々は戦争をしにきた訳ではないので、正規ルートを進みましょう」

 

『大丈夫です、ボンドルド様、プルシュカちゃん。ここには、300年ほど前に来たことがありますので、道くらい覚えています』

 

 その割に先ほどから同じ道をぐるぐる回っている。

 

 カツユは300年といったが、実は500年以上前のことだ。それだけ時間が経てば道など変わり果てている。だが、300年も500年も普通の時を生きる人間なら、どちらであっても大差はない。

 

 挟間一家の目的地は、大ガマ仙人が住む妙木山。挟間プルシュカに仙術の修行を付けて貰うついでに、融合方法を聞くために足を運んできた。カツユも色々と試したが、どうしても融合が上手くいかずコツを聞きたいし、仙術の修行に関してはガマ仙人達が一枚上手であるとカツユも認めていた。

 

 それからも結局迷い続けて、森の中で一夜を過ごす事になる挟間一家。

 

 だが、山でのキャンプというのは子供にとっては楽しい物だ。テントを張ったり、飯盒でご飯を炊いたり、寝袋で寝たりと実に良い思い出となる。

 

………

……

 

 翌日、挟間一家が進み始めたが直ぐに先頭を進んでいたメーニャ(カツユ)が足を止めた。印を付けた場所に戻ってきている。

 

「ママ~、もしかして迷子?」

 

『たかが数百年で様変わりした、この森がいけないんです!!こうなったら奥の手です。プルシュカちゃん、少し大きめの私を呼び出してください。全ルートに分裂して正解を割り出します』

 

 全てのルートに向けて分裂体を使って攻略していく、力業。カツユのリアルタイム情報連携能力があるから出来る技だ。どんな迷路であっても全てのルートを網羅できる人海戦術ならば突破できる。

 

 呼び出される巨大なカツユ。年々徐々に大きなカツユが呼び出せるようになっており、現時点で数年前に綱手が呼び出した程のサイズを超えていた。

 

「気をつけてくださいね、カツユ。何かあったら直ぐに戻ってください」

 

『はーい。少しだけ待っていてください』

 

 奥へ奥へと分裂して進んでいくカツユ。不正解のルートを進んだ分裂体がドンドン後ろから戻ってきた。そして、正解をカツユから聞いて挟間ボンドルド一家は確実に迷いの森を攻略していった。

 

 歩き始めて30分程度で開けた場所へと抜けた。

 

 生態系が完全に人間が住む場所と異なる蝦蟇たちの暮らす里。そこには、蝦蟇たちが温かい日差しの中、ぬくぬくと暮らしていた。蝦蟇達は、数百年…下手したら千年ぶりくらいの正攻法で里を訪れた来客に気付かない。

 

「素晴らしい。一体どのような生態系ならばここまで植物は大きく育つのでしょうか」

 

『ボンドルド様、何を言いますか。ウチ(湿骨林)だって、この位の植物あります!ボンドルド様とプルシュカちゃんが永住出来るように、設備だって充実しているんですよ。どうしてもというなら、一角に妙木山の雰囲気を再現した体験コーナーだってつくって差し上げます』

 

 夫がよその家を褒めた事に嫉妬するメーニャ(カツユ)。そのなんとも可愛らしい嫉妬が微笑ましく、挟間プルシュカが抱きしめた。

 

「大丈夫だよ、ママ。私は、ママの家が大好きだもん。パパだってそうだよ」

 

「えぇ、その通りですよ。ここには、家族旅行ついでの仙術修行に来ただけです。そんな可愛らしい嫉妬をするカツユは可愛いですね。まずは、里長にご挨拶に伺いましょうか」

 

 娘に抱き上げられて、夫に頭を撫でられてご満悦に浸るメーニャ(カツユ)。その情報がリアルタイムで全てのカツユに伝わり、そこ代われ合戦が裏では始まっていた。

 

 挟間一家が目指すは、一番大きな建物。出来る事なら、道中で話の分かる蝦蟇がここへ来た目的を聞きに来てくれることを願っていた。こういう時、挟間ボンドルドの容姿は実に役に立つ。程なくして、不穏な侵入者として挟間一家は大ガマ仙人の元へ行くことになる

 

………

……

 

 うずまきナルトは、仙術の修行に励んでいた。自身の力量不足を認識し、師の自来也が辿った道を進んでいた。修行の最中、フカサクの元に急な知らせが届く。

 

 一体、どうすべきか長く生きたフカサクでも迷った。

 

「ナルトちゃん。お主……挟間ボンドルドという男を知っておるか?黒い鉄仮面を付けた黒装束の大男じゃよ」

 

「知ってるけど~、最後にあった時は暁の連中と一緒だった。一体、どうしたんだってばよ」

 

「そうか。実は、今そいつが大ガマ仙人様の所に来ておる」

 

 うずまきナルトは、その言葉を理解するのに時間がかかった。

 

 木ノ葉隠れの里から一ヶ月はかかると言われる僻地。うずまきナルトは、自身が何処にいるかも正確には把握していない。そんな前人未踏の地とも言えるこの場所に、知っている忍者……しかも、自衛のために暁と行動している世にも珍しい男が来ている。

 

「なんで、挟間特別上忍がこんな場所にいるってばよ。もしかして、俺の中の九尾が……いや、だが暁じゃねーって言ってたからな」

 

「安心せい。ナルトちゃんが狙いなら、そもそもご丁寧に大ガマ仙人様の所に挨拶なんぞいかんじゃろう。儂は、これから万が一に備えて母ちゃんと同席せなあかん。一緒にくるかの?」

 

「行くってばよ。行って、色々と話を聞かなきゃならねー事が沢山あるんだ」

 

「わかった。但し、相手は大ガマ仙人様のお客人という立場じゃから、くれぐれも早まった行動はするなよ。後で話す機会を設けてやる。だから、こっそり後ろで話を聞くだけじゃいいな」

 

「わかったってばよ」

 

 普段、書類を読むのも嫌ううずまきナルトだが、挟間ボンドルドがS級犯罪者として指名手配された件に関して色々と調べた。だが、どの書類を確認しても整合性は取れており、全てが犯罪者にたる証拠が揃っている事が彼にも分かった。

 

 だが、それでもうずまきナルトは直接話して、真実を聞きたいと思っている。

 

◇◇◇

 

 大ガマ仙人、その両脇には二大仙人フカサクとシマが万全の態勢で構えていた。未来を見通す大ガマ仙人が問題無しといって通した事もあったので、挟間一家が客人扱いになっている。

 

「えーーーと、誰じゃったかの」

 

「お初にお目に掛かります。私は、挟間ボンドルド。何処にでもいる普通の忍者です」

 

「初めまして!私は、挟間プルシュカよ。ねーね、未来が見えるんでしょう。プルシュカの未来ってどうなってる!?」

 

『こらこらプルシュカちゃん。そう言うことは、ご挨拶の後でお願いしましょうね。こうして対面でお会いするのは、300…いいえ500年ぶりくらいでしょうか。カツユです』

 

 挨拶は基本中の基本。

 

 こういうとき、子供という存在は実にありがたいものだ。特に挟間プルシュカのように明るく天真爛漫な性格であれば、相手の懐にすぐにとびこめる。挟間ボンドルドでは出来ない事だ。

 

「そうじゃった、そうじゃった。よくぞ、遠くから来られた。迷いの森を抜けてきた者と会うのは久しぶりじゃ。えーーー……何の用じゃったかの」

 

「二つございます。一つ目は、プルシュカに仙術の修行を付けて頂きたい。二つ目は、フカサク様とシマ様のお二人が自来也様と融合なさった方法をカツユに教えて頂きたい」

 

 挟間ボンドルドは、妻と娘の願いを叶えるため、遠い果ての地まで来た。

 

「なんで、儂がそんな事をせなあかん」

 

「自来也ちゃんは、お前達の事を敵でも味方でもないと言っておったが私は信じとらん。あん時、お前が自来也ちゃんに助力していれば死なんかったかもしれんのにな」

 

 自来也を子供の頃から知っているフカサクとシマの意見は、当然だ。挟間ボンドルドは、自来也の危機的な状況の中で、唯一手を差し伸べられる人物だった。だが、何もしなかった。これが、彼等が挟間ボンドルドを拒む理由だ。

 

「今の二つのお願いを飲んで頂けるのでしたら、自来也様のご遺体を貴方達にお返し致します。本人(・・)も故郷である妙木山の地へと望んでおります。後は、お二人に渡してくれと頼まれたサイン入りの新刊"ウマぴょいタクティクス"もお渡しします」

 

 自来也を埋葬できなかった事は、フカサクとシマも気にしていた。そんな状況で、立派な最期を遂げた自来也を丁寧に埋葬できる機会が降ってわいてきた。フカサクとシマがお互いに目で通じ合う。悪くない条件だと。

 

「えーーとお主……だれじゃったかの」

 

「挟間ボンドルドです」

 

「そうじゃった。わだかまりもあるだろうが、ボンドルドの頼みを聞いてやってくれ。儂の夢では、自来也がこの男の近くで颯爽と走る姿を見た……女装姿で。おぞましい夢では、そう見えた。きっと、本人に頼まれたのも本当の事じゃろう」

 

 挟間ボンドルドは、大ガマ仙人が噂に聞く通りの力を持っている事を再認識した。そして、未来を見通すその目を是非とも調べたいと思う。こんなことならば、三つ目の条件で大ガマ仙人の未来を見通す力も調べさせて欲しいと言うべきであったと思っていた。

 

「ですが、大じじ様。仙術の修行にこんな子供など前代未聞です。あの修行でどれほどの者がカエルになった事か」

 

「その通りじゃ、大ボケじじい。何を考えとる」

 

「それでしたら、ご安心ください。プルシュカは、一時期は自来也様に忍術を指導して頂いておりました。親の私が言うのもアレですが、才能は十分あると考えています。それに、うずまきナルト君も一緒に修行する者がいた方が、比較対象もあり捗るかと」

 

 挟間ボンドルドの口からでたうずまきナルトという言葉。

 

 木ノ葉隠れの里から逆口寄せで妙木山に来たため、うずまきナルトがここに居る事を知るものは少数だけだ。だというのに、今、妙木山に来たばかりの男が知っているとなれば警戒する。

 

 気配は消えており、探知用の結界忍術でも使わぬ限り見つからない場所にいるうずまきナルト。だが、白眼が持つ千里を見通す透視能力で丸裸にされる。

 

「………(なぜ、ばれたってばよ)」

 

「どうしたんですかそんな所にかくれて、どうぞ顔を見せてください」

 

 後ろを向き、両手を広げて優しく人を迎え入れるポーズをする。そして、警戒しつつ姿を現すうずまきナルト。

 

「少し痩せましたね。後で、私の元に来て下さい。健康診断のついでに、うずまきナルト君の質問に二つ答えてあげます。何を聞くか、よく考えておいて下さい。おおよそ、うずまきナルト君が知りたがっている事の全てを知っていますが、全ては教えて差し上げません」

 

 医療忍者として綱手に匹敵する男がうずまきナルトの健康も診てくれるし、更には何でも二つ答えてくれるという特大なお土産まであれば、フカサクとシマも受け入れるしか無かった。




ナルトが聞きそうな質問……やはり、両親の事と自来也の事がベターかしらね^-^


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54:おれって、ほんとバカ

 話の分かる蝦蟇達のお陰で客人扱いで妙木山に留まる事を許された挟間一家。挟間プルシュカはメーニャを連れて、妙木山の観光へと出かける。挟間ボンドルドは娘を見送り、フカサクとシマの家にうずまきナルトと共にやってきた。

 

 挟間ボンドルドが答える質問は二つのみ。質問の仕方が大事だ。その事をガマ仙人達は良く理解している。だが、うずまきナルトは正しく理解出来ていない。彼にとって、情報とは価値が低い……なぜなら、いつも欲しいタイミングで欲しい情報が転がり込んでくるからそういった事に関しては素人同然だ。

 

 うずまきナルトの中では、挟間ボンドルドが二つとは言っていたが聞けば幾らでも教えてくれるとすら思っていた。実際、彼の経験からすればそうだった。敵ですらべらべらと情報を教えてくれるのが常であり、それを当然だと思っている。

 

 だからこそ、うちはサスケが里抜けした時も時間が有り余っていたのに自ら動いて情報収集をしなかった。周りが勝手に調べて教えてくれるのを常に待つという受け身姿勢。その結果、二年もの歳月がたった。大蛇丸に関して自身で動いて調べていれば、もっと早く再会もできていたはずだ。

 

「さぁ、プルシュカに快く修行を付けて頂くためにも何でも聞いて下さい。但し、質問は二つだけです。何が聞きたいか決まりましたか、うずまきナルト君」

 

 ここに移動するまでの間に、うずまきナルトも色々と考えた。だが、碌でもない質問で大事な機会が潰れる事を察したフカサクが入れ知恵をする。

 

「じゃあ、一つ目。挟間特別上忍が知っていて、俺が知らない情報にどんなのがあるか教えてくれってばよ。二つ目の質問は、その情報から選ぶ事にする」

 

「どうじゃ、いい案じゃろう。さぁ、お主が知っている事を洗いざらい教えて貰おうか」

 

 シマは、どんな情報が出てくるか漏れずに書き留めるように筆記用具を準備して構えていた。

 

「勿論です。私の主観で、うずまきナルト君が知りたいと思われる情報から並べていきます。"うちはサスケ君の最新情報"、"春野サクラさんの秘密"、"ペインの正体"、"ペインの六道システムの詳細"、"自来也様の最新情報"、"うずまきナルト君のご両親の情報"、"木ノ葉隠れの里の闇"、"暁の構成メンバーの情報"、"暁の目的"、"音隠れの里の情報"、"綱手様の情報"。おおよそ、この当たりかと。知りたい情報はございましたか?」

 

 どれも他では手に入らない一点物の情報ばかり。ここから選べなど酷だと言える。挟間ボンドルド以外にも同じような情報を知っている者は確かに居る。だが、大蛇丸だったり、暁の裏のトップであるトビだったり、死んでも情報を教えないような連中ばかりだ。

 

「どうするナルトちゃん。儂なら"ペインの六道システムの詳細"を選びたい。なぜ、この男が知っているかは分からんが、嘘を言うような奴でもないじゃろう。だからナルトちゃんが選ぶといい」

 

「え、選べねーーーってばよ!!なんなんだよ。その情報量。本当に何者なんだよ挟間特別上忍は。なぁなぁ、挟間特別上忍……選ぶのにもう少しだけ情報を開示してくれってばよ。勿論、タダとはいわねーー。俺がプルシュカに螺旋丸を教えてやるからよ~」

 

 悪くない取引であった。螺旋丸は、プルシュカですら会得仕切れていない高難易度の忍術。螺旋丸とはうずまきナルトが尤も得意とする忍術であり、その者から直接指導を受けれるとなれば更に強くなる。印を結ばず使える数少ない忍術であり、その価値は高い。

 

 だが、ここで甘い顔はしないのが挟間ボンドルド。

 

「おやおや、うずまきナルト君は取引上手ですね。では、プルシュカへの螺旋丸指導とその首飾りを妙木山に居る間だけ私に貸して頂けるのならば、うずまきナルト君が望む情報二つに対して、もう少しだけ教えてあげます」

 

 初代火影が残したと言われる尾獣を抑える力がある石の首飾り。そんな謎の力を秘めた石が、木遁や写輪眼が無くても尾獣を制御できる可能性を秘めているとなれば、研究者の血が騒ぐ。知っている情報を少し開示するだけで借用できるなら安い物であった。

 

「まじか!流石、挟間特別上忍。話が分かるってばよ。じゃあ、"ペインの六道システムの詳細"について、もう少しだけ教えてくれってばよ。後……サクラちゃんの秘密を」

 

 本当は、"春野サクラさんの秘密"を一番知りたかったうずまきナルト。思春期であり気になる女性の秘密が知れる機会があるなら、欲望に忠実になる。なにより、今回はナルト自身が対価を出す事で挟間ボンドルドと取引をしたのだからフカサクとシマも文句は無かった。

 

 うずまきナルトの本命の質問は、"春野サクラさんの秘密"。だが、それだとあからさますぎるので、一つ目の質問にそれっぽいものを持ってきていた。大事な事だが、"ペインの六道システムの詳細"が本命の質問を隠す為のカモフラージュになっていない事を彼は気がついていない。

 

「"ペインの六道システムの詳細"は、死体をチャクラでリモート操作するシステムの事です。今の最新鋭六道システム開発者は、私です。"春野サクラさんの秘密"は、彼女は妊娠一ヶ月です」

 

 知りたがっていた情報の詳細を少し教えただけだというのに、挟間ボンドルド以外は目が点になっている。過度な情報で人は殴れる…殴られた人は、何が何だか理解出来ずフリーズする。

 

「理解が追いつかないから、待ってくれってばよ。ちょっと、外の空気吸って落ち着いてくる」

 

「そうして下さい。私は、コチラのお二方とお話しております。後、よければプルシュカに昼食のため戻るようにお伝え頂けると助かります」

 

 わかったといい、退室していくうずまきナルト。

 

 それから、無言となる部屋の者達。挟間ボンドルドとガマ仙人達。双方、ほぼ他人に近い者達なのだから、共通の知り合いであるうずまきナルトが不在となれば会話など弾まない。

 

「多くは言わん。だが、これだけは覚えておけ。世の中には、開発したらいけなかった術もある。例えば、二代目火影が考案した術全般じゃ。お主が作ったという六道システムの同列じゃよ」

 

「フカサク様、それでは二代目様の存在そのものをご否定されていますよね。彼女が聞いたら怒りますよ」

 

………

……

 

 暫くして、うずまきナルトがプルシュカを連れて戻ってきた。もう、蝦蟇たちと仲良しとなっており、コミュ力の高さは挟間ボンドルドを遙かに上回る。

 

「それで、何が聞きたいか決まりましたか?」

 

「あぁ、サスケの事も確かに知りたい。だが。アイツの事はなんかそのうち分かる気がする。他も大体そんな気がした。だから、サクラちゃんの秘密について教えてくれってばよ。何か困っているなら俺でも助けになるかもしれねーし」

 

 完全にいい男ポジションになっているうずまきナルト。この場合、どうでもいい男とか都合の良い男というのが正しい。

 

「おやおや、女性の秘密を知りたいとは。私から聞いたとは内緒にしてください。春野サクラさんは、一ヶ月前にうちはサスケ君と再会し、その日のうちに妊娠しました。お腹の子どもの父親は、うちはサスケ君です。彼にとっては、えーーと381人目のお子さんです」

 

「さすけぇ」

 

「それと、春野サクラさんは木ノ葉隠れの機密情報でうちはサスケ君の里抜けの真実や私が追放された真実を知りました。その為、安全な音隠れの里にご両親を移住させて、私同様に大蛇丸様と仲良い関係です」

 

「嘘だってばよ…だって、サクラちゃんは、サスケとあんなに会いたがっていたんだぜ。この間だって、暁に邪魔されて会えなかったが、サスケを見つけに……」

 

「演技ですよ。女性とはそういうものです。私もその場におりましたが、実に見事な演技でした」

 

 第七班で実は自分が仲間はずれだったと知る事になったうずまきナルト。思い人と親友の為に頑張っていたと思ったら、一人相撲をしていたと今知った。彼の心のダメージは計り知れない。

 

 うずまきナルトは自身が泣いている事にすら気がついていない。

 

「おれって、ほんとバカ」

 

 この時、謎の電波を受信した日向ヒナタがいた。今この時こそ、絶好のチャンスだと。彼女の『祝福』もこの世界最高峰の一つである。

 

「ねぇ、パパ。ナルト兄ちゃん、泣いてるよ……大丈夫よ!サクラ姉ちゃん以外にも女性なんていっぱいいるんだから。男は、失恋して成長するのよ。ほら、元気出して」

 

「ぐすん、すまねーーってばよ。そっか、俺失恋したんだな。サスケとサクラちゃん……お似合いじゃねぇか。でも、一言くらい俺に言ってくれてもいいじゃねーかよ。俺達、同じ第七班の仲間だろう」

 

 見ていていたたまれない光景であった。

 

 フカサクとシマも、第七班の者達について詳細こそ知らないが話の流れで察した。親友が思い人と結ばれて子供まで作っていた。自分は完全に道化となっていた事に今気がついたと。

 

どうすんじゃよ、この状況。儂等の手に余るぞ。お前(挟間ボンドルド)のせいなんだから、何とかしろ。ほれ、誰か居るだろう、ナルトちゃんの事を大事にしてくれそうな女子の一人や二人。紹介してくれるなら儂からも何かやる。見てるだけで、こっちまで泣きたくなるわ

 

フカサク様、私にそのような都合の良い知り合いは――あぁ、条件にぴったりの方がおりました。訳あって直接会わせる事はできませんが、電話ごしで会話くらいなら。ですが、万が一の場合、倫理的な問題が少々

 

何でも構わん、やれ!儂が全責任を持つ(・・・・・・・・)。このままじゃ、仙術の修行にも影響がでるわ

 

分かりました、とても美人で気立てが良く、ナルト君を大事に思ってくれるお方です

 

 うずまきナルト……失恋した傷心を新たな出会いで癒やす事になる。まるで、父親のように全肯定してくれるその存在は、日向ヒナタの見えないライバルとなる日も訪れるかもしれない。

 

 新しい出会いを導いた挟間ボンドルドは、フカサクから仙術チャクラを体外に追い出して、仙術モードを強制解除する謎の棒を貰う事になった。

 




さて、そろそろ、暁が木ノ葉隠れの前でスタンバっていますよね!
ペイン、不死コンビ……おまけで挟間プルシュカの参戦があるかもって程度の予定です。

PS:
わたしって、ほんとバカと言わせたかった…。


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55:親子の縁

 蝦蟇の隠れ里である妙木山で快適に過ごしている挟間一家。元々、カツユの実家である湿骨林でも過ごせていた者達である為、適応力は高かった。土地を借りて家を建てて、そこに研究機材まで持ち込んでいる。

 

 挟間プルシュカが修行する最中、挟間ボンドルドは研究に心血を注いでいた。

 

「これで完成です。フカサク様から頂いた物が存外役に立ちました」

 

『流石、ボンドルド様です。早速、プルシュカちゃんにも新しいお洋服をお渡し致します。ふふふ、プルシュカちゃんのデビュー衣装、素敵です』

 

 挟間ボンドルドの外装である暁に至る天蓋。チャクラ吸収機能、自己再生機能、チャクラによる硬化機能など夢とロマンが詰め込まれた物に、新しい機能が加わった。仙術チャクラの制御機能と尾獣チャクラ抑制機能。

 

 仙術チャクラの制御機能は、過剰に摂取している仙術チャクラを体外に自動排出する事で仙術モードを自動で維持できる優れた機能。

 

 尾獣チャクラ抑制機能は、謎の石の成分分析を行い尾獣チャクラに反応する物質を培養し取り込む事に成功。それを利用して尾1本分の力を押さえ込む事を可能とした。

 

 デザインこそ異なるが、挟間プルシュカの外装も挟間ボンドルドと同じ機能を有している。

 

「そうしましょう。プルシュカの修行もそろそろ大詰めです。次の仕事もありますので、そろそろお別れのご挨拶をしましょう」

 

『そうでしたね。しかし、長門さん達もバカなんでしょうか。なんで、暁コートで木ノ葉隠れの里に空から入ろうとする計画を立てるんですか。普段着で顔のとげとげを化粧で隠して入れば楽なのに』

 

 自称隠れ里でもある木ノ葉隠れの里。当然、一般人や忍者の出入りも多いが……里へ続く扉は何時も開放されており、誰でも受け入れている。入り口に関所も無い為、フリーパスで入る事が可能だ。

 

 だから、抜け忍であったうちはイタチや干柿鬼鮫が平然とダンゴ屋で食事ができていた。

 

「ですが、これもお仕事です。暁の木ノ葉隠れの里潜入のアドバイザーとして手を抜くわけにはいきません。それに、あそこは『祝福』の宝庫でもあります。木ノ葉隠れの里には、追放された時に色々と略奪されましたので、少しはお返しを頂く必要があります。それに、師であった綱手様へお別れのご挨拶もできておりませんでした。丁度良い機会です」

 

『あぁ、そういえばそんな方もいらっしゃいましたね』

 

 嫌な事を思い出したといった感じだ。やらかした事を考えれば当然であり、今現在は口寄せ契約も更新されておらず、既に他人といった状態だ。もはや、伝説の三忍として残っているのは事実上、大蛇丸だけとも言える。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドの元で健康診断とメンタルケアを受けるうずまきナルト。当初こそ、何か良からぬ事をするのでは無いかとフカサクとシマの監視もあった。だが、両名の診察や蝦蟇達の診断もして、怪我や病気を治療する内に信頼を勝ち取った。

 

 医師という職業は、人から信頼を勝ち取るという事に関してはチート能力だ。

 

 挟間ボンドルドは、手元にある診断結果を確認する。

 

「利き腕の経絡系に僅かな傷がありましたので治療をしておきました。極小のチャクラによるものです。忍術の弊害だと思われますが、同じ術を使われた場合には綱手様クラスの方に精密検査をしてもらってください。九尾チャクラを持つうずまきナルト君の自然治癒能力でも限界があります」

 

「ありがとうってばよ。確かに、少し楽になった気がする。やっぱ、挟間特別上忍はすげー。ところで、お願いがあるんだけど~。今晩も30分でいいから電話を貸してくれってばよ。絶対にこっちから掛けるって約束してるんだよ」

 

 傷心のうずまきナルトのメンタル回復の為、彼を全肯定して優しくしてくれる女性を紹介した挟間ボンドルド。その結果、案の定ド嵌まりしてしまっていた。

 

「修行で疲れているでしょうし、早めにお休みになる事をお勧めしますよ。ここ最近毎日ではありませんか」

 

「だってよーー!電話って、挟間特別上忍の家にしかねーんだから仕方ないじゃん。ここ、ド田舎なんだから。じゃあ、今日の電話は我慢するからミナトさん(・・・・・)の写真とか持ってない?」

 

 ある程度責任を感じている挟間ボンドルドは、仕方なくうずまきナルトの求める写真を見せた。選ばれた写真のチョイスが、自来也が彼の父親と肩を組んでいるものであった。

 

 そして、真実を教えてあげようと思った。ここら辺が潮時であると。そうしなければ、この先は地獄になる。

 

「お名前を教えて頂けたのですね。自来也様の横に写っている勝負服を着ているのが、貴方のお父上ですよ」

 

お乳上(・・・)って……そんなの分かってるてばよ。しかし、挟間特別上忍もそんなことを言うんだな、意外だったぜ。って、横にいるのエロ仙人じゃねーかよ」

 

 そして、しれっと懐に写真をしまい込んでうずまきナルトは去って行った。著者自来也のエロ本には、お乳上という単語がでる回もあり、うずまきナルトはエロイ言い回しを良く理解していた。

 

 退バ忍(退役してバ体となった忍者)の子供の頭が、残念な事になっているとは知らず、これで肩の荷が下りたと挟間ボンドルドは本気で思っている。

 

 

◇◇◇

 

 挟間プルシュカが修行に加わってから幾らかの月日が経過していた。忍者の中には、子供でも並みの大人より強い者がいる事をフカサクも知っていた。だからこそ、挟間プルシュカも同じであると考えていたが、想像の遙か上をいっている事を知る。

 

 停止状態での仙術モード移行をうずまきナルトと同レベルの期間で習得をしていた。その合間には、螺旋丸も教わっており実質的にはうずまきナルトより短い期間で完成に至っている。

 

 常に傍らで母親であるメーニャが見守っている。だから、間違っても虫を食べるような事は起こらない。

 

『どうです、どうです!私達のプルシュカちゃんは、凄いでしょう』

 

「全く、会得できない者の方が多いというのにこの年で仙術モードを覚えるとは。カツユ様、この子はもしかしたら予言の子かもしれませんぞ」

 

『あ、そういうの結構なので』

 

………

……

 

 真面目な話をしようと思ったところを完全に切られたフカサク。忍びの世に変革をもたらす存在になり得るとフカサクは思っていたが、この返しは考えていなかった。

 

「待ってくだされ。これは真面目な話なんですぞ、カツユ様のお子様であるプルシュカちゃんは本当に忍びの世界に変革をもたらす子かもしれません」

 

『だから、結構だといっているんです。プルシュカちゃんは自由に生きて欲しいんですよ。人の人生は短い物です。そんな中で縛られて生きるなんて可愛そうじゃありませんか。忍びの世に変革?そんなに変革が欲しいなら、私が本体で5大国を転がって横断しますよ』

 

 変革どころでは無く滅亡するレベルの大惨事。力業で変革を止められるカツユが言うと説得力があった。

 

「そうか、すまなかった。確かにカツユ様の言うとおりじゃわ。話は変わるが儂と母ちゃんもプルシュカちゃんとなら融合もできるから、三位一体でやるスタイルはどうじゃ。あの子の忍術センスなら問題無かろう」

 

 両肩にフカサクとシマ。頭部にカツユを交えた最強の融合仙人モード。事実、それは可能であった。融合を教える上で試行錯誤した上での挑戦でそれが実現している。

 

『両肩にフカサク様とシマ様ですよね。もっと、サイズが小さくないと見た目が~』

 

「あぁ、そうじゃったの。自来也ちゃんクラスの体格なら我々も比較的小さくみえるんだが、プルシュカちゃんサイズだと不格好か。一旦は、口寄せ契約だけ母ちゃんと一緒にしておくかの。ナルトちゃんといい、将来が期待できる子供達に会えた事が最大の収穫じゃったわい」

 

「ほんと、ええ子なんだけど……私が作った料理にだけは一切口を付けないのが納得できんさかい。ナルトちゃんは、あんなに美味しそうに食べるのに」

 

 虫料理を旨そうだと感じ始めたうずまきナルト。自身も人間じゃなくなってないかと本気で心配しており、挟間ボンドルドの健康診断で人間判定された事が彼の心の支えの一つでもあった。

 

 そんな保護者達であるフカサク、シマ、カツユが話している元に仙術モードでの組み手を終えたうずまきナルトと挟間プルシュカが戻ってきた。お互い泥まみれで切り傷や打撲傷が目立つ。

 

「ママ、見てた見てた!今日は、10本中2本もナルトお兄ちゃんから取れたよ」

 

「どんどん追いつかれている感があるってばよ。それに、プルシュカも本気じゃなさそうだし」

 

 お互いに本気を隠した組み手で、プルシュカ相手に8割の勝率を誇るうずまきナルトが凄いのか、うずまきナルト相手に2割の勝率を誇る挟間プルシュカが凄いのかどっちもどっちであった。

 

 だが、挟間プルシュカはハッキリとうずまきナルトの異常性を理解した。影分身の術は、チャクラを均等に分ける特性がある。それなのに、うずまきナルトに至ってはそのマイナスとも言えるリスク無しで術を行使していた。

 

 チャクラ量が多い挟間プルシュカであっても、影分身は余程の時しか使わない。僅かなダメージで消えてしまう分身に残チャクラの半分も持って行かれるなど効率が悪い。本来、実戦で使うのでは無く、経験値のフィードバックを目的とした潜入任務や修行でしか使い道が無い。

 

 

 

 その翌日、挟間一家は当初の目的を果たした為、次の仕事に向かう事にする。お世話になった蝦蟇たち全員に挨拶して回る営業行為も忘れない。フリーの忍者となった挟間ボンドルドは、こういう横の繋がりが大事であるとよく分かっている。

 

「うずまきナルト君、お借りしていた首飾りはお返し致します。それと、これが彼女への直通電話番号です。いいですか、電話は監視されておりますので話す内容には気をつけてください。相手にも生活があります、電話は多くても二日に一回、夜の決められた時間に30分までです」

 

「分かった。色々とありがとな!」

 

 親子の縁を繋ぐ手伝いをした。親子愛が正しい形となった事に喜びを感じている挟間ボンドルド。

 

「プルシュカちゃんが一緒なら、また来てもいいぞボンドルド。儂も里の蝦蟇たちも世話になった事は感謝しとる。見た目は胡散臭いのがいけないが、腕は確かじゃった」

 

「えぇ、良く言われます。フカサク様もシマ様もお体にはお気を付け下さい。何かありましたら、依頼としてならお受け致します。フリーの忍者ですから、次会う時は敵かもしれませんけどね」

 

 忍者故に、昨日の敵は今日の友という事もある。また、その逆もある事はフカサクもシマも承知の上だ。それが、忍びの世の常だ。

 

「またね~、フカサク様、シマ様!!何かあったら絶対に呼ぶから、その時は一緒に闘ってね~。後、年なんだから無茶はしないこと」

 

『短い間でしたがお世話になりました。そのうち、湿骨林にも遊びに来て下さいね』

 

 うずまきナルトと蝦蟇達に見送られた挟間一家。

 

 逆口寄せで呼ばれた先で待つ暁と合流し、木ノ葉隠れ潜入計画を立てる事になる。

 




木ノ葉隠れの卑の意思を見せて貰いましょう!
綱手様、今参ります。


PS:
少しリアルが忙しくなり、更新が遅くなるかも知れません。
すみませぬ。






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56:暁来襲

忙しすぎて、執筆が進まなくて申し訳ないです。


 木ノ葉隠れの里では、人材不足が深刻化し始めていた。裏社会との関係性も改善できず、任務の度に他里の忍者や賞金稼ぎとの衝突が発生している。対暁にも備える必要がある昨今、火影として綱手は最善を尽くすことが求められる。

 

「シズネ、交換留学者へは手厚い歓迎をしてやれ」

 

「承知してます。後、OB達の再雇用、国境警備の外注に関しても順調に進んでいます。これで、人材不足は何とかなりそうです。ただ、財政的に少し辛い所ですね」

 

 綱手が取った策は、大きく三つだ。

 

 一つは、忍者という人的資源が現役世代で枯渇しているなら退役忍者達を再雇用する事を正式に決めた。退役中忍や退役上忍などの者達が里の危機にぬくぬくと年金生活をしており、暁問題が解決するまで安価なシニア雇用を始めた。無論、拒否権などは与えない。拒否した場合には親族が危険な最前線行きになる。

 この策の一番素晴らしい所は、シニア雇用の費用が年金と同額である為、実質的な里への負担はない。更に言えば、雇用保険を適用していないので殉職した際、遺族年金が存在しない事だ。つまり。死ぬまで働くか死ねと言っている。

 

 二つ目は、交換留学だ。現役世代が自里に少ないなら他里の忍者を受け入れるという考え。実際、過去に何度か行われた事もあったが忍界大戦などで形骸化された風習になっている。だが、木ノ葉隠れの里にとって、これは一種の賭けだ。現在、木ノ葉隠れの里の殆どの忍者が賞金首にされており他里の忍者を受け入れる事は危険きわまりない。だから、比較的安全な砂隠れの里に提案を持ちかけていた。

 酷い事に、木ノ葉崩しの件や風影救出の件などを持ち出して、1対10のレートでの交換留学を行わせていた綱手。現役の中忍クラスが数十人単位で増えるという手品のような事をしている。大事な中核戦力を引き抜かれる砂隠れの里としては、こんな常軌を逸したレートなど受け入れたくは無かった。

 だが、綱手はここぞとばかりに風の国の大名達にアンチエイジングという喉から手が出るほどの取引材料を持ち出した。当然、大名達は綱手からの提案をほぼ丸呑み。50歳を超えているにも関わらず20代の美貌を保つ火影が自らの若さを他者にも与えるというのだから、権力者はここぞと力を行使する。

 そのおかげで砂隠れの里からは、カンクロウら上忍も含めて交換留学で木ノ葉隠れの里に来ていた。

 

 三つ目は、他里の忍者に自国の国境警備をやらせることで人材を里に集中させていた。小さい忍び里の足下を見た外注を行う。流石に現場監督には最低限一人は、木ノ葉隠れの里の忍者を置いているが、配置されるのがシニア雇用のOBだ。安価で最前線に送られて、部下は他国の忍者という恐ろしい状況が出来上がっていた。

 

「指揮権がこっちにあるので構わん。暁の目的はナルトである可能性が高い。つまりだ、木ノ葉隠れの里が戦場になる事も考慮しておく必要がある。砂隠れの忍びには我々の盾となって貰う。アイツラも暁へ一矢報いる機会が与えられるのだから本望だろう」

 

「こういってはあれですが、砂隠れも踏んだり蹴ったりですよね。大蛇丸に先代を殺された事を契機にドンドン弱体化してしまって。大きな声じゃ言えませんが、同盟国というより属国化し始めてますよね」

 

 シズネの言葉は、誰もが感じている事だ。

 

 その原因を作ったのがほぼ全て木ノ葉隠れの里である。

 

「私は火影だ。木ノ葉隠れの里を守る為ならどんな事でもやる。それが火の意思だ」

 

 その犠牲に他里がなっても、やるときはやる女だ。

 

◇◇◇

 

 自らの盾にOBや他里の忍者を活用し、人的損耗を最小限に抑えようと画策する木ノ葉隠れの里に対して、潜入計画を立てる暁。そのアドバイザーとして、狭間ボンドルドが会議に参加していた。

 

 本来であれば、うちはイタチがこの任をやるのだが忍者としての生を終えた者にまでそれを強要する事はない。その役を代わりに担うのが、木ノ葉隠れ出身の狭間プルシュカになる。勿論、子供であるため、その保護者が代わりを務めるのは当然の責務だ。

 

「先生は、里の正面玄関から堂々と入れというが、結界に探知されるのではないか」

 

「その点は、問題ありません。あの結界は不正入場する人向けです。正規に門を通る人へは何ら障害にはなりません。実際、他里の忍者が普通に正面から出入りしても、誰も止めません。畜生道が潜入後に逆口寄せで呼べばいいだけです」

 

 信じられないという雰囲気が漂っている。だが、事実なのだから仕方がない。雨隠れの里のように厳格に管理している方がレアケースであり、普通の里はこの程度である。そうでなければ、中忍試験の時に大蛇丸の潜入など許していないはずだ。

 

「わかった。では、小南、飛段、角都、プルシュカと先生でいく。俺が中に入って逆口寄せで呼ぶ。俺と小南で情報収集。プルシュカと先生は、木ノ葉隠れでペイン六道の回収。飛段は、先生から貰った血液を使って好きなだけ儀式で殺せ。角都は、万が一に備えて、飛段の護衛をしつつ切り離した地怨虞で里の重要施設を狙え」

 

 一般人に紛れての行動。木ノ葉隠れの里にある宿をツアー会社経由で借りており、企業の慰安旅行として里への侵入をする準備も整っていた。宿を拠点にこっそりと情報収集と六道回収、暗殺を行う。

 

 まさに完璧に近い布陣であった。

 

「私は、ここに残るわ。先生のお陰で、木ノ葉隠れの里に近付かなくても六道の操作は十分に行える。それに、カートリッジの交換対応や長門の護衛がいるわ」

 

 ボンドルド謹製の六道システムは、旧式と比べてリモート操作可能な範囲が格段に広くなっていた。既存のインフラ設備を利用したチャクラの送受信システムが完成しており、電気が開通してない程の辺境でも無い限り長門が出張する必要はない。

 

 長門の護衛と聞いて挟間ボンドルドは、それが必要か疑問でもあった。既に歩けるほど回復した肉体に加え、輪廻眼の持ち主……パーフェクト・長門だ。いざとなれば、離れている六道を切り捨てて本人が闘えば勝てる者は少ないだろう。

 

「おやおやおや、では減った戦力をどうしましょうか。トビさんが個人的にお誘いして、八尾を狩りに行っているうちはサスケ君達の合流を待ちますか?私としては、あのうちはイタチさんを倒したうちはサスケ君なら戦力として申し分ないと考えています」

 

「そういえば、トビの奴がいねーじゃねぇか。つーか、うちはサスケだ~。そんな奴を誘ったなんて聞いてねーぞ。確か、イタチの弟だろう?なんで、そんな奴が俺達に協力するんだよ」

 

「落ち着け、飛段。その話ならば、お前が寝ていた会議で連絡があった。そもそも、護衛が必要ならトビにやらせればいい。計画変更するのに代案を持ち出さないなど会議を舐めているのか。時間の無駄をさせるな」

 

「小南、俺の計画に変更は無い。他の者達と一緒に木ノ葉へいけ」

 

「貴方がそこまで言うなら、分かったわ」

 

 しぶしぶと了承をした小南。

 

 そして、始まった……暁創設以来初めての社員旅行が。

 

………

……

 

 隠れ里とは何だったのかと定義を確認したくなる木ノ葉隠れの里。そこに、風の国からの観光ツアーに紛れてペイン六道の一つ……畜生道が潜入をしていた。髪を下ろして、化粧が施されており、何処に出しても恥ずかしくない美少女である。

 

「本当に、ザルな警備だ……口寄せの術!!」

 

 ポポポンと煙があがり、続々と暁メンバーが狭い個室に呼び出される。

 

 ペイン六道まで同時に呼び出されており、完全にプライベートスペースにまで食い込む感じの密着具合。

 

「せ、せまいよ~ぱぱ。長門さん、もっと考えて呼んでよね!」

 

「今だけだ、我慢しろ。受付から貰っている部屋の鍵を渡すから、後は予定通りに動くぞ。先生とプルシュカは同室でいいだろう。飛弾と角都も同室……嫌な顔をするな、護衛するのだから同室なのは当たり前だろう」

 

 各々が部屋の鍵を受け取り、行動を開始した。

 

 挟間プルシュカは、部屋についてから挟間ボンドルドに質問をする。

 

「パパ、そういえばさ~。長門さん達って、何の情報を集めるのかな?私達の仕事とは別口なんだよね」

 

「そういえば、何も仰っていませんでしたね。きっと、私達には伝える必要がない事だったんでしょう」

 

 暁での会議の場で、一言でもうずまきナルトの居場所を探すなどと言っていれば、目的地が木ノ葉隠れの里から妙木山になっていた。

 

 

◇◇◇

 

 その頃、暁の会議をサボっていた干柿鬼鮫は、音隠れの里にいた。

 

「いい仕上がりです、イタチ(・・・)ワンさん。その調子で坂路を後5本、できますね」

 

 などと、旧友との仲をちゃくちゃくと深めていた。その傍らには、某三忍の一人が執筆した"ウマぴょい"シリーズが握られている。副業規定が存在しない暁には、干柿鬼鮫を止める権利はなかった。




さて、色々と回収させてもらいましょう!



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57:パパ活

 他国の忍者が入り交じり、挟間ボンドルドが知っていた頃とは様変わりしていた。特に夜にもなれば、飲み歩く忍者達で問題も多く発生する。里の警邏部隊も忍者同士の問題には不介入と決めており、当人達での解決を望んでいた。

 

 その為、変化の術で姿を変える必要はあるが暁コートでも着ていない限り出歩いても問題はない。

 

 夜の街を変化の術を使い堂々と歩く挟間ボンドルドと挟間プルシュカ。

 

「ねぇ、パパ。畜生道って、前のパパの職場にいるのかな?」

 

「病院ですか。確かに病院には、霊安室や検死室などがありますから可能性はあるでしょう。しかし、今回の件、病院とは関係無い為、捕虜がなぜか突然死した時に検死する方の部屋でしょうね」

 

 捕虜の取り扱いは、各国との協定で決まっている。だが、突然死した場合などは、木ノ葉隠れの里が責任をもって遺体を綺麗にしてから元の里に送り戻すデリバリーサービスを行っていた。三代目火影である猿飛ヒルゼンが始めたデリバリーサービス事業だ。当然ながら、上忍や中忍で生きて帰れた者は、100人中2人も居ればいい方だ。

 

 当然な事だが、既に挟間ボンドルドは白眼を用いて遺体を確認済み。里を丸裸に出来る眼は本当に素晴らしい。他里の忍者が欲しがるのも納得の一品であった。

 

「そうなんだ。ねぇ~パパ、お腹減った。仕事前に何か食べていこうよ~」

 

「食事ですか――?あぁ、素晴らしい。やっと、理解出来る域にまで達しました」

 

 挟間プルシュカからの夕食の要望に対して、答えとなっていない回答をする挟間ボンドルド。だが、彼はこの時初めて違和感に気がつく事ができた。

 

「どうしたの、パパ?早くいこうよ~」

 

「プルシュカ、今までも食事前に仕事をした事が何度もありました。私の記憶にあるかぎり、プルシュカが自分から仕事より食事を優先した事はありません。確かに、おかしな事ではありませんが……何故、今、この時なのでしょうか?」

 

 子供が夜に食事を食べる事は当然だ。育ち盛りの子供に食事を食べるなと言っている訳ではない。だが、大事なのは、なぜ今回の任務で初めてそのような事を言い出したかという点に尽きる。

 

「だって、この道は食事処がいっぱいあるよ。てっきり、パパもそのつもりだからこの道を通ったのかな~って思って」

 

「こう言う場合、裏通りの最短ルートより人通りが多い方が目立たないと思ったのですが……なるほど、『祝福』の影響ですね。恐らく、我々が食事をした場合には何故か遺体が移動されていたり、不思議に強い上忍が現場に居合わせたりするのでしょう」

 

 今、遺体を回収されたら不利になるという事で誰かしらの『祝福』が作用していると挟間ボンドルドは認識した。事実、検死解剖を正しく終えるには明日の朝まで掛かる。なにより、今検死室には戦える忍者が誰も居ない状況であり、このまま挟間一家が訪れたら結果は火を見るより明らかだった。

 

「パパ。でも、それだと他の人達も同じ状況になっているんじゃないのかな?確か、今晩から動くスケジュールだったよね」

 

「そうですね。今から戻ってこの事を伝えるにしても、何かしら邪魔がはいるでしょう。でしたら、我々だけ先に仕事を終えて他に合流すべきか……これも、罠なのか。理解してもなお選択を迫るとは。一体これは、誰の『祝福』なんでしょうか」

 

『くっくっく、私には分かります。この腐敗したような感じ、あの小む…じゃなかった。綱手様ですよ。ボンドルド様、こんなこともあろうかと私の分裂体達が暁の皆様に付いておりますので、その情報を共有しました……が、少し遅かったようです』

 

 メーニャ(カツユ)経由で、他の暁メンバーの状況が共有される。

 

 飛段と角都がルームサービスで食事をしていたところ、部屋にGが出たためテーブルをひっくり返した。その拍子に、血液が入った瓶を割るだけに留まらず、名前のシールに醤油やソースなどの液体が付着して誰の物か判断できなくなっていた。

 

 小南は、部屋の風呂場で身体を洗っている最中になぜか水道が止まり泡塗れ。水遁が使えないので、泡を落とせない状況となりそのままカビカビとなってしまった。当然、紙分身などは使えない。

 

 長門は、火の国のインフラ工事の影響で一部区間で停電が発生しておりペイン六道が木偶の坊となっていた。お陰で、口寄せで小南の泡も洗い流せず、一人雨隠れで右往左往しているらしい。

 

「これは酷い状況です。飛段さんと角都さんは、まだ動けそうですがメインとなる長門さん達が動けないとは。プルシュカ、私達は直ぐに動きます。夕食は、これで我慢して下さい」

 

「これ、行動食4号。あんまり、美味しくないよ~」

 

 行動食4号は、挟間ボンドルドが作った長期任務にも対応した兵糧丸の一種。保存食としても優れた年単位で持つ食料であり、栄養バランスも完璧な商品だ。だが、これだけ素晴らしい品なのに、売れ行きが芳しくない。味の事を二の次にしており、食べた者の感想は壁の味がするとの事。

 

『私は好きですよ、行動食4号!行動食4号は、ボンドルド様の味~』

 

「私だって、食べれるもん!行動食4号は、パパの味~」

 

 行動食4号は、パパの味~。行動食4号は、ボンドルド様の味~。といって、我慢して食べてくれる子と妻は偉い。だが、自他共に認める味が二の次の保存食が自分の味と言われる挟間ボンドルドの心境は微妙であった。

 

 次からは、保存性や栄養だけでなく味を第一にした兵糧丸を作ろうと決意する。

 

………

……

 

 木ノ葉隠れの里に潜入した暁の中で、いち早くスマートに任務をこなすため動き始めた挟間一家。だが、その道中を拒むかの如く、様々な厄災が降りかかる。

 

「パパ、この先工事中だって」

 

「私達は、忍者です。その程度の障害は、飛び越えます」

 

 忍者は、足にチャクラを集中する事で壁だろうが水面だろうが、お構いなしの存在だ。工事現場など迂回せずとも通り抜けられる。

 

………

……

 

 更に進んだ先では、忍者同士が一触即発の雰囲気。両名とも中忍以上であり、場合によっては、周囲を巻き込んだ大惨事になる。

 

「パパ、砂隠れの人と木ノ葉隠れの人が路上の真ん中で大げんかしてるよ」

 

「時間の無駄です。木ノ葉隠れは私がやります。砂隠れを制圧できますね、プルシュカ」

 

 喧嘩に割り込み、挟間ボンドルドが木ノ葉隠れの忍者の点穴を的確に付く。チャクラを止めると同時にそのまま意識を沈めた。同時に挟間プルシュカは、砂隠れの忍者に幻術を掛け、身動きが止まった瞬間に顎を殴って脳震盪を起こさせた。

 

 その鮮やかな喧嘩の止め方に周囲が称賛する。

 

………

……

 

 パパ活疑惑で職質にあったり、砂隠れの忍者に知り合いだと間違われたりと、あらゆる足止めがされる挟間一家。そして、ついに手が尽きたのか……今度は、産気づいた妊婦まで現れる。

 

 挟間ボンドルドの記憶の限り、産婦人科などは開いていない時間。寧ろ、出産を控えた妊婦が何故出歩いているのかとすら思っていた。本来なら、挟間ボンドルドも気に掛けない……だが、知り合いならば話は多少変わる。それも、バ車ウマの如く働いている夫を持つ女性ならば。

 

「おやおやおやおや、どうなさいましたか夕日紅さん。こんな夜更けに女性が一人で外を出歩くのはよろしくありませんよ。今の木ノ葉隠れの里は、他里の忍者も多くおります。どうぞ、早く病院にお戻りください」

 

「だれ? 知り合いだったかしら……でも、関わらない方がいいわよ。私に関わると、貴方も木ノ葉隠れに居づらくなるわよ。っ、お願いもう少しだけまって」

 

 お腹を大事そうに支える夕日紅。

 

 どうやら向かっている先は病院らしいが、色々と複雑な状況を抱えていると察した。

 

「なんで、出産を控えているのに病院にいないの?それに、顔色も悪いわよ」

 

「夕日紅さん、少し失礼しますよ。安心して下さい、私はこれでも医師です。苦しんで居る人を見捨てる事はできません。さぁ、困っている事があるなら話して下さい。知らない人にならば言える事もあるでしょう」

 

 挟間ボンドルドの言葉に反応して、夕日紅が触診を素直に受けた。医師というチートは何処でも役に立つ。僅かな触診だけで、食生活がボロボロである事がわかる。更に言えば、衣服の質もよくない。元上忍とは、とても思えない。

 

 暁の任務の事もあったが、挟間ボンドルドはコチラを優先する事にした。この状況だ……これ以上、強引に進んでも更なる厄災が起こり妨害されると理解する。『祝福』による妨害だと理解出来ても、回避できることとは別問題であった。

 

 それから、挟間ボンドルドは医療忍術を使いつつ夕日紅の話を聞く。

 

「大変でしたね。謎の仕送りのせいで、口座が止められて生活苦。更には、口座凍結解除と引き替えに、大名達へ特別任務とは……」

 

「お姉ちゃんは、なんで里抜けしなかったの?こんな状況になってまで」

 

 挟間プルシュカが純粋な疑問をぶつける。だが、酷なことだ。お腹に子供を抱えて逃げ切れるはずも無い。子供を産んだ場合は、産まれた子供を守る必要があり、彼女には選択肢など無いも同然。

 

「私は、貴方達(・・・)と違って弱いのよ。お願いよ、この子だけは助けたいの。私はどうなってもいいから」

 

「おかしいですね。変化の術は完璧だったはずです。話を伺うに、この件は私達も無関係というわけではありませんから、構いませんよ。まさか、この年でプルシュカに助産の経験を積ませる事になるとは思いませんでした。さぁ、私の手をお取り下さい」

 

「ありがとう。それと、変化の術を使うなら口調も変えなさい。貴方を知っている人から聞いたらバレバレよ」

 

 辛そうながらも助かったと思う夕日紅。そんな彼女をみて、挟間プルシュカとメーニャが威張り倒す。

 

「感謝しなさいよ、パパ活のお陰で助かるんだから」

 

『そうですよ、ボンドルド様のパパ活は偉大なんですから』

 

「貴方達、パパ活って意味知ってる?」

 

 その日の夜、挟間ボンドルドのパパ活のお陰で夕日紅は一人の女の子を出産した。同時に、暁メンバーは結局何も出来ずに一晩を無駄にして、翌朝から行動を開始する事になる。僅か半日、されど半日の差がこれからの暁の活動に大きな影響を与える事になる。

 

 

 




原作と違って少し紅先生の出産早いけどいいんや。
生え際が後退していないアスマさんがやらかしたんや。


PS:
スカーレットって緋色らしいよね。
紅色も似たような物だとは思いませんか?
ダイワスカーレット()

夫婦が離ればなれって、作者はいけないと思います。


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58:(貴方のせいで)里のピンチ

リアル都合で投稿が遅くて申し訳ない。


 木ノ葉隠れの里に夜襲を掛ける計画が頓挫した暁。何が嬉しくてS級犯罪者で全国指名手配されている忍者が、真っ昼間に騒ぎを起こさないといけないのかと、挟間ボンドルドはその事を早朝のミーティングで議題に持ち上げた。

 

 だが、結果はこれ以上時間を無駄に出来ない。どんな障害があろうとも我々は負けないという事で真っ昼間に五大国の一つである火の国……その隠れ里である木ノ葉隠れの里に強襲を仕掛けることになった。

 

 多数決の民意で決まった事に文句など言わずに、素直に仕事に向かう挟間一家。昨日とは打って変わって、何ら妨害されない。素直に、捕虜が謎の死を遂げる建物へと足を運んでいた。

 

「私が提案した警備体制やパスワードの規則性を今も利用しているとは。前任者がS級犯罪者になっているという認識が希薄すぎます」

 

 建屋は、捕虜の命を守る為、外からの侵入には強固だ。捕虜になる忍者もそれ相応の事をやって捕まっている為、恨みを買っている。だからこそ、里の忍者から守るという体裁で人気の少ない場所にある。中の警備も多くは無い。

 

 金庫にしまってあったマスターキーを手にした挟間ボンドルドは、娘を連れて目的地へと着々と進んでいた。不法侵入には、警報が鳴り暗部が駆けつける場所でもあるが、正規手順で進む彼等には全く役に立たない警備システムだった。

 

「パパは、見てるだけだからね。ここからはプルシュカの仕事なんだから」

 

「分かりました。あなたの輝きを私に見せてください」

 

 父親の言葉に、やる気に満ちる挟間プルシュカ。

 

 命の取り合いとなる実戦。訓練では格上ばかり、実戦では格下ばかりであった挟間プルシュカにとって、木ノ葉隠れの里とは実によい実戦場所であった。嬉しいことに他里の忍者もおり、殺気を含んだ様々な忍術を経験できる機会だ。

 

 その時、建物全体が揺れた。

 

『ボンドルド様、どうやら長門さん達の総攻撃の余波のようです。それと、綱手……様の呼び出しが五月蠅いんですが、どうしましょうか』

 

「火急の用事なんでしょうから、是非行ってあげてください。既に契約が切れていたとしても長年付き添った仲である事は変わりません。それに、行けば里の情報を色々と教えてくれるでしょう」

 

 後々のことを考えて挟間ボンドルドは、綱手の元へ行く事を勧めた。『祝福』を回収するに際し、目的の人物が何処にいるか分かる方が都合が良いからだ。回収する目星は彼の中で既に決まっていた。

 

………

……

 

 検死室の前まで来た挟間一家。挟間ボンドルドは既に中がどのような状況か理解しているが口を出さない。娘の仕事なのだから、余計な事を言わずに見守るのが父親の仕事だと思っている。

 

 気合いが入っている挟間プルシュカが、検死室のドアを開けた。そして、元気な声で挨拶をする。戦であっても、憎い相手であっても礼儀を重んじるのがニンジャであると、東の小国で出会ったニンジャから挟間プルシュカは学んだ。

 

「ドーモ。コノハノサトノニンジャ=サン。挟間プルシュカです。ペイン六道を回収にきました~」

 

「こ、こんにちわ。お嬢ちゃん……挟間って、確か前にいた抜け忍の?」

 

 検死室の中には、検視官とその護衛をしている犬塚ツメと犬塚キバ。忍犬使いの二人が詰めていた。犬が本体なのかと言いたくなる忍術使い。決して弱くない。寧ろ、同数の忍者相手では勝ち越せるだけの実力がある。

 

「母ちゃん!!その子の後ろだ」

 

「これは、ご挨拶が遅れてしまいましたね。お久しぶりです、犬塚ツメさん、犬塚キバ君。忍犬達も見る限り健康状態は良好のようですね」

 

 挟間ボンドルドの登場に犬塚親子は焦っていた。匂いに頼った感知は、種が割れていれば対策を打つのは簡単だ。挨拶抜きでの初手殺し合いならば、確実に一人は死んでいた状況だった。

 

「ワンチャン!!ほら、お手だよお手」

 

『はい、お手』

 

 挟間プルシュカの帽子の中から、飛び出してお手をするメーニャ(カツユ)。忍犬の様な知的生命体にお手を許すのは危険だ。毒針でも仕込まれたら、形勢逆転される可能性すらありえる。

 

「もう、ママったら焼きもち焼いて~可愛いんだから。大丈夫よ、プルシュカは強いんだから!」

 

「私は、手を出しません。お二人とも手を抜いていると、直ぐに死んでしまいますよ」

 

 ジャイアントキリングの経験がある者ほど、己はその対象にならないと考えている事がある。事実、犬塚キバは過去に何度も上忍クラスを倒すという経験をしており、少なからず慢心があった。

 

 挟間プルシュカを観察して、いち早く危険に気がついたのは犬塚ツメの方だった。濃厚な死の匂いを感じ取る。即座に印を結び迎撃にはいる。

 

「黒丸!!牙狼牙」

 

「はい、土遁・おろし金の術」

 

 土遁・土陸返しを挟間プルシュカが改良した忍術。直進してくる相手に床板をおろし金のようにして迎え撃つ技だ。物理攻撃に対して耐久度は高いとは言えないが、回転してくる敵に対しては絶大な破壊力を持つ。

 

 相手は、人体を抉って貫通する殺人忍術を使っているのだから、メタ忍術で対抗する事は倫理的に反しているとは言えない。人間と犬がミキサーに掛かってミンチになってもだ。

 

「ぎゃーーー」

 

「くぅーーーん」

 

 両腕がミンチになったタイミングで何とかおろし金から逃れる事ができた犬塚ツメと黒丸。先手は、確かに犬塚ツメであった。だが、術を確認してから発動した挟間プルシュカの方が強い…唯それだけの事だ。

 

 写輪眼の洞察力を持って、メタ忍術で対処する……これぞ、挟間プルシュカが尤も得意とする方法だ。最小の力で最大の成果を得る。

 

「母ちゃん!!この野郎、赤丸!!」

 

「酷い、野郎じゃないよ。それに、おばちゃんが殺そうとしてきたから、やり返しただけじゃない。なんで、自分達は殺すのに相手には不殺を求めるの?おかしくない?まぁ、いいけどね」

 

「キバァァァ!あんたは逃げて応援を呼んできなさい」

 

 母親は助からないと理解する犬塚キバ。だが、母親を見捨てて逃げることはできなかった。それに、犬塚キバ自身も逃げられるとも思っていない。そもそも、犬塚一家は逃げ場が無い密室を意図して戦場に選んでいたからだ。

 

 ここにペイン六道の一人が居るため、仲間が回収に来た時に備えて密室での戦闘が得意なこの二人が選ばれている。周囲の壁の強度も高いため、貫通力がある忍術持ちである犬塚キバでも手こずる。

 

「私は、パパと同じで死にかけの獲物を目の前にしても手を抜かないのよ。火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 

 挟間プルシュカの肘に装着された筒から放出された全てを焼き尽くす熱線。犬塚ツメの心臓を貫通して背後にあった壁から外の景色が見えるほど綺麗に全てを焼きつくす。忍者の中には、心臓を刺しても死なない奴も存在しており確実に殺すならば頭部を破壊すべきである。

 

「プルシュカ、減点一です。次は頑張りましょう。さぁ、犬塚キバ君……貴方の出番ですよ」

 

「はーい、でも、的が大きな身体の方が当てやすいのよね。パパみたいに慣れればちゃんと当たるよね」

 

「安心してください。すぐに、貴方の同期達が居る場所へプルシュカが送って差し上げます。その身の『祝福』を頂いた上でになりますから、少しは長生きできますよ」

 

 犬塚キバは、今まで、下忍なのに中忍や上忍をバリバリ倒して里の尋問部隊に引き渡していた。敵側からしたら、何故下忍如きに負けるのかと謎であったが、いざ負ける側に回ると、世の理不尽を理解した。

 

 この日、第八班のメンバーで初めて戦死者がでた。

 

 

◇◇◇

 

 綱手は、中々口寄せの術で出てこないカツユに苛立ちを覚えていた。里全体に暁が襲撃をしており、今こそカツユの治癒力を使い、命を助けた恩を売りまくるチャンスだと思っていた。万が一、火影の座を退いたとしてもこの恩があれば安泰になる。

 

「口寄せの術!!」

 

 大きな煙が吹き出して、建物サイズのカツユが呼び出された。本当なら嫌々であったが、愛する夫の言葉を聞き呼び出しに応じていた。

 

『はぁ~、なんですか綱手……様』

 

 火影直属の暗部から見ても、嫌々に口寄せに応じたという感が分かった。そもそも、素直に応じるなら一度の呼び出しでくるはずなのに、五度も呼んでようやく来た。本来、口寄せ契約を結んでいれば強制的に呼び出せるのにこの状況だ。

 

 つまり、火影直轄暗部達には分かってしまった。カツユと火影の間で口寄せ契約が切れていることを。だが、それを口に出すバカはいない。

 

「これから、木ノ葉にいる全て(・・)の忍びや一般の者達も含めて全員につけ。私のチャクラを受け取り全員の怪我を治療しろ」

 

 温厚なカツユであったが、呼び出しに応じたお礼すらなく、命令形での指示。本来なら聞く耳も持たないが、裏で挟間ボンドルドとリアルタイム通信をしており、その依頼を承諾する事にした。

 

 そして、お望み通り暁を含む全ての忍者について、チャクラ補給と治療を行う事にした。当然だが、暁レベルの攻撃だと並みの忍者は即死だ。だが、並みの忍者の攻撃では暁はかすり傷…よって、どうなるかは、分かりきったことだ。

 

 綱手のおかげで、長門は神羅天征を三回は全力で打てる状況になってしまう。一発目は、カートリッジ消費、二発目は綱手消費、三発目は自力のチャクラ消費。

 

『どうやら、(貴方のせいで)里のピンチみたいですね』

 

「いいから、さっさとしろ」

 

『分かりました』

 

 カツユは分裂して指示通り里の全ての忍者と一般人に付くことにする。そして、暁メンバーがこれ見よがしにチャクラを無尽蔵に使う。ペイン六道のチャクラまで代わりに負担してくれるとは火影と暁の関係は、意図せずズブズブであった。




さて、騒ぎに紛れて貰える物は貰いましょうか!


PS:

音隠れにお住まいの卑劣様がバ体となっても卑劣な忍術を開発しております。
「自分の金でやるのは初めてだったが、互乗万馬券の術」
といった音隠れの閑話でもやろうかとおもいます。


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59:あ…ありのまま、今起こった事をお話します!

 木ノ葉隠れの里の各所で悲鳴が鳴り止まない。建物は崩壊し、火災も発生していた。そんな中、忍者は協力して襲撃犯である暁の討伐にある程度(・・・・)頑張っていた。勿論、里に忠誠心がある者ならば死をも厭わない。

 

 だが、考えて欲しい。現状、里の為に死んだ者達へどのような事を火影がしてきたか……既に噂程度は出回っている。だからこそ、下手に死ねない。死ねば残された家族が酷い目に遭う可能性がある。つまり、死ぬ気で闘うのでは無く、死ぬ気でやり過ごす方向にシフトしている。

 

 事実、忍者達だって分かっている。重大な事件というのは、往々にして数名の突出した忍者が解決する。だから、周りで適当にやり過ごす事こそが正しい忍道であると。彼等が今待ち望んでいるのは火影から派遣されたカツユではない。この事件を早期に解決してくれる忍者の派遣だ。

 

 交換留学してきた砂隠れの忍者やOB忍者達は、ある程度頑張っている。だが、カツユ経由で火影のサポートを得ている暁というS級犯罪者に太刀打ち出来るような者が里に何人も居るはずが無い。

 

 そんなやられ役の忍者達を見て、情けないと思う立派な木ノ葉隠れの忍者も居る。その名は、猿飛木ノ葉丸。エリート一族に産まれた将来を約束された存在。その彼の戦いを近くでじっくり観察しているのが挟間ボンドルドだ。

 

 挟間一家は、予定されていた仕事を完了した事を暁に連絡をして、自由行動が許可された。元々、木ノ葉隠れの里から犯罪者認定された身である為、思うところもあるだろうから好きにしろと。

 

『ボンドルド様、暗部養成部門『根』も今回の一件に介入してくる模様です。綱手……さまから『根』の者達にも付けと。能力が割れたら直ぐに連絡します、また居場所も逐一教えますね』

 

「頼みましたよ、カツユ。プルシュカ、貴方は地獄道と猿飛木ノ葉丸君のどちらが勝つと思いますか?」

 

「地獄道。勝てるはず無いじゃん。だってパパが作ったペイン六道システムって、私でも苦戦するもん。もし、あんな鼻水垂らしてそうな子供が勝てたら、晩ご飯は嫌いなピーマンだけでもいいわ」

 

 ペイン六道の一つである地獄道。能力的に戦闘向けではないが、木ノ葉隠れの里を警備していた中忍クラスをばったばったと倒している。AI機能が搭載されており、息の根をしっかりと止めるサービスも忘れない。その為、近くには彼の家庭教師を務めていた特別上忍エビスの亡骸が転がっている。

 

 今、その地獄道によって何かを尋問されている猿飛木ノ葉丸。死ぬ5秒前である状況で、助けに来る忍者はいない。救援にくる忍者がいれば、カツユが気がつけるが反応を検知できずにいる。

 

「では、私は猿飛木ノ葉丸君に賭けましょう。もし、私が賭に負けたら晩ご飯にはプルシュカが好きな物を作ってあげます」

 

「えっ!?」

 

『えっ!?』

 

 完全に勝利を確信していた挟間プルシュカと全ての忍者を監視していたカツユが思わず、驚きの声を上げた。

 

 地獄道に捕まっていたはずの猿飛木ノ葉丸が突然消えた。この現象は影分身しかあり得ない。だが影分身ならば今までに幾度も消滅する衝撃を受けていた事もあり、その説明が出来なかった。挟間プルシュカの写輪眼を持ってしても、いつ影分身と入れ替わったか判別はできていない。

 

 カツユにしてみても、猿飛木ノ葉丸には付いていた。だからこそ、それが本体である事は疑わない。だが、地獄道に捕まっていた肉体が消えたと同時に別の場所に自らが出現する謎事象を経験した。

 

『ぼ、ボンドルド様。猿飛木ノ葉丸君の『祝福』を回収する前にお伝えしておきます。私は、今、彼の『祝福』をちょっぴりですが体験しました。い…いや…体験したと言うよりまったく理解を超えていましたが……。あ…ありのまま、今起こった事をお話します!』

 

 あまりの出来事にカツユも動揺を隠せなかった。

 

『私は、彼に付いていたと思ったらいつの間にか消滅して別の場所に再出現していました。な…何を言っているか分からないと思いますが私も何をされたのか分からなかった…。頭がどうにかなりそうでした。幻術とか体術による超スピードとかそんなチャチなもんじゃ断じてありません。もっと、恐ろしいものの鱗片を味わいました』

 

 地獄道を通じて、長門自身も驚いていた。確実に本体を捕らえていたはずなのに、実は影分身でしたという……忍術に精通しているからこそ、影分身などではないと言い切れるだけの自信が長門にはあった。そして、長門もこれこそが、挟間ボンドルドが言っていた『祝福』であると肌で感じた。

 

「安心してください。プルシュカと私の二人で彼を捕らえて『祝福』の回収をします。プルシュカ、猿飛木ノ葉丸君を捕らえるまでに邪魔が入らないように全てを排除してください。手伝ってくれたら、ピーマンじゃなくてニンジンで許してあげます」

 

「任せてパパ!!プルシュカ本気でやるから」

 

………

……

 

 猿飛木ノ葉丸は、うずまきナルトから教わった螺旋丸で何とかペイン六道の一つを倒す事に成功して安堵していた。高難易度の術を連発したため、彼のチャクラは既に底を突いている。

 

 近くに倒れているエビスや里の忍者を救えなかった事を一人悔やむが……だれも、彼を責める事は無い。だが、万が一、優秀な医療忍者が近くにいれば助かるかも知れないと、疲労困憊の身にムチを打ち助けを呼ぶ為、立ち上がった。

 

「早く、医療忍者を呼びに行かないとなコレ」

 

「おやおや、医療忍者をお捜しですか。猿飛木ノ葉丸君。偶然にも、私は医療忍者ですので宜しければお話を伺いましょうか」

 

 猿飛木ノ葉丸が振り返ると手の届く距離に、黒い鉄仮面を付けた黒装束の男がいた。その身体には何処にも身分を表す忍者の額当てが付いていない。その為、里在住の医療忍術が使える一般人という事になるが、猿飛木ノ葉丸の本能がそれを否定した。

 

 そして、思い出す。以前にニュースで見た木ノ葉の里が出したS級犯罪者の顔を。普通、犯罪者の顔なんてよっぽど恨みでも無い限り覚えていない。だが、黒い鉄仮面に紫の縦ラインが入った男なら記憶にも鮮明に残る。

 

 逃げようとした瞬間、手をしっかりと握られた。

 

「離せ!!誰かぁぁぁーー、ここにS級犯罪者がいるぞーー」

 

「点穴を突いても消えない。なるほど、今度こそ本体ですね。あぁ、叫んでも無駄ですよ。S級犯罪者が居る場所に誰が好んで来るんですか。里全体に暁が攻撃を仕掛けているんですから、里を守る為に頑張れる忍者は既に出払っていますよ。寧ろ、S級犯罪者が居る場所から遠ざかっているらしいですよ……カツユから聞くに」

 

 猿飛木ノ葉丸は、暁に対して行動に出られた勇気は素晴らしい。だが、後先考えない行動がどのような事に結びつくのかをよく考えるべきである。

 

「わ、わかった。俺を人質にするんだろうコレ。俺はこう見えて三代目の孫なんだから」

 

「それに何の価値があるんですか?三代目が凄いだけであって、貴方には何の価値も……いいえ、ありましたね。貴方が持つ『祝福』を貰いに来ました。大丈夫ですよ、これでも何百とやってきたので手慣れたものです。ほんの数秒で痛みすら与えません」

 

 挟間ボンドルドが印を結んで魂を献上するため死神を呼び出した。そして、死神の姿が見えてしまった猿飛木ノ葉丸は恐怖ですくみ上がった。これから死ぬ事を直感しており、救いは無い事も同時に理解する。

 

 死を目の前にした猿飛木ノ葉丸は、ペイン六道の一つを倒した事を誇って死ぬ事が出来る…ある意味、忍者として里を守って死ぬんだと一定の理解を示した。

 

『ボンドルド様、地獄道の治療も完了しました。あ、猿飛木ノ葉丸君。貴方の年でペイン六道の一つを倒せるなんて凄いですよ。でも、うちのプルシュカちゃんの方がもっとすごいですけどね』

 

 猿飛木ノ葉丸……火影から遣わされたカツユが実は暁の治療も行っていた事実をいち早く知り、五代目と暁の関係に勘づく。だが、それを誰にも伝える事が叶わず、この世を去った。これにより、猿飛一族の血を引くのは先日産まれたばかりの女の子だけとなる。

 

 

◇◇◇

 

 木ノ葉隠れの里内で暁と闘う為、広範囲の忍術で応戦するのは理解出来る。だが、忍術による流れ弾による被害で負傷者が増えるという二次被害が発生していた。

 

 一般人(・・・)や子供の避難を優先するため、元忍者などはその優先対象とはならない。それに、夕日紅の出産情報を知る者は現状、挟間一家だけだ。そして、今その事実を知る者が一人増えた。

 

「紅先生も早く避難を……って。子供?」

 

 奈良シカマルは、妊娠中の夕日紅を避難所に連れて行くために来た。だが、困った状況になった。妊婦なら、一人に気遣えば何とかなる。だが、産まれたばかりの子供が側に居ては戦火の中を連れて行けるのだろうか。

 

「シカマル、貴方は里の為にいきなさい。私の方は大丈夫だから」

 

 夕日紅には計画があった。今ならば、自分に向けられていた監視の目が無い。子供を連れて遠くの国に行くならば今しか無かった。子供は小さく危険が伴うが、今後子供に地獄を見せるくらいならば今のチャンスを不意には出来ない。

 

 幸いな事に音隠れの里に自分を支援してくれている人が居ることは分かっていたので、事情を話して身を寄せる気でいた。

 

「でもよ、そんな身体じゃ動けないだろう。おれが避難所まで連れて行くから大人しく待っててくれ」

 

「シカマル!貴方は、木ノ葉の里の忍者なのよ。今何を優先すべきか考えなさい。私と子供の事を思ってくれるなら、早く行って頂戴」

 

 挟間ボンドルドが夕日紅に渡した薬は、数日分。産まれたばかりの子供を音隠れの里まで連れて行く日数には不足しているが、道中の病院で何とか都合をつける予定だ。

 

「………わかった。だが気をつけてくれよ」

 

 S級犯罪者が襲ってきている里で、応戦しているこの状況でどう気をつけろというのだろうかと夕日紅は思っていた。近くで、秋道チョウザが倍化の術で闘っており、どれだけの人間が下敷きになっているか彼はしらない。

 

 倍化の術で一緒に大きくなる服を身につけている秋道チョウザ……彼の服の染みに、もうすぐ彼女の染みが加わる事になる。




もうちょと、里で色々と回収してから話が進む予定!!
『根』の参戦で、信楽タヌキも死んで貰いますわ…さらばBORUTO世代。

里での若干の時系列は、おおめにみてね!


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60:ゲス外道

 親しき仲にも礼儀あり。それに乗っ取り、挟間ボンドルドは長門が操る天道と一緒に、嘗ての恩師にご挨拶に行く事にした。過去現在含めて色々とお世話になっている身として、最低限の筋は通すべきだと考える。

 

 その道中、巨人が転がったかのような惨状が広がっていた。周囲にあった建物は、崩壊しており、その残骸が彼方此方に飛び散っている。まだ、避難が終わっていないのにこれほどまでの広範囲に被害を出す忍術を使うとは、木ノ葉の里の忍びは人の命をなんだと思っているのか。

 

 Q.逃げ遅れた人の命について、どう思いますか?

 A.どうせ暁に殺されるんだから、忍術に巻き込んだとしても結果的に同じでしょ。(肥の意思)

 

『ボンドルド様、あそこの鉄筋の下に夕日紅さんと夕日ミライちゃんが。残念ですが、秋道チョウザさんの忍術で下敷きになって……私の治療では、せいぜい延命が限界です。子供の方は、夕日紅さんが庇ったこともあり無事です』

 

「おぎゃーおぎゃー」

 

 周りの騒ぎが大きすぎて誰にも子供の泣き声が届かない。医師として苦しんで居る人を見捨てるわけにはいかない…と言っている挟間ボンドルドは、人知れず命の炎が尽きそうな夕日紅を瓦礫の下から救った。

 

 だが、医療忍術でどうこうできるレベルではない。下半身が既に切れており、カツユの治癒力でギリギリ生きているだけだ。そんな夕日紅は、最後の力を絞ってチャンスを待っていた。救ってくれた人には悪いが、自らの全てを掛けて幻術に落として子供だけでも救わせる気でいる。

 

 だが、幻術を掛けようとした相手が挟間ボンドルドであると知り、行動を止めた。

 

「最後に言い残す事はありますか?夕日紅さん」

 

「こ、子供を……。ねぇ、死んだらアスマに会えるかしら」

 

 夕日ミライを挟間プルシュカが抱き上げた。助産した初めての子であり、多少思うところは彼女にもあった。

 

「大丈夫よ!プルシュカが、ミライちゃんの面倒を見てあげるから。でも、死んだら髭のおじ……お姉さんには会えないと思うな」

 

「こらこら、ペットじゃ無いのですから安請負はダメですよ。しかし、情操教育の一環としては良いでしょう……数日程度になると思いますがね」

 

 この状況下でも平然としている挟間一家に子供を預けられた事こそが夕日紅にとって最後の『祝福』であった。

 

「ありがとう」

 

「いいえ、医師として当然の事をしたまでです。それと、どのような形であれアスマさんにお会いしたいという希望……叶えて差し上げましょうか?無論、対価は頂きますが」

 

「全てを……私に出来る全てを貴方に捧げるわ挟間ボンドルド」

 

 まさに即答であった。全てを失いかけたこの状況。もはや失う物など彼女はないと思ってる。子供が救われて、アスマと再会できるならば来世を全て捧げてもいいと思っている。

 

「その言葉が聞きたかった」

 

 安心し緊張の糸が切れた夕日紅は、そのまま息を引き取る。悲しい事に、誰にも知られずに瓦礫の下敷きとなって死ぬ。

 

『埋葬致しますか?』

 

「いいえ、後で(・・)本人に埋葬先を聞きましょう。もしかしたら、宗教的な事から火葬とかだったら、失礼になりますからね。封印術を施して持ち帰ります」

 

「パパ、プルシュカは先に赤ちゃん連れて帰っていいかな?一足先に、髭のお姉ちゃんの所に行きたいな~」

 

 赤子を連れて逆口寄せでは、影響が未知数である為、移動は地道に陸路となる。今の木ノ葉隠れの里の状況をしれば他国の忍びが押し寄せてくる可能性もある。普通の子供ならば行かせないが、普通で無いのが挟間プルシュカだ。

 

 既に、口寄せの術でタマウガチを呼んでおり、帰る気満々だ。

 

「構いませんよ。但し、産まれたばかりの赤子はデリケートですのでカツユに包んで貰ってくださいね」

 

「分かったわ、パパ!!それじゃあ、先に帰っておくからね~」

 

 元気に手を振って、去って行く挟間プルシュカ。それを見送ってから、カツユもある事に気がついた。

 

『露骨に暁の戦力を遠ざけられましたね。夕日紅さんを死に晒して、彼女の『祝福』を悪用して、プルシュカちゃんを遠ざけるとは……やりますね小娘(綱手)の『祝福』』

 

「仕方ありません。では、急ぎましょうか。アレは、今を逃すと手に入る機会がない貴重品ですので」

 

………

……

 

 どこもかしこも戦場となっており、特定の人物を探すのは一苦労だ。だが、カツユナビゲータのお陰で、時間ロスを発生させない。これも綱手が暁側にもたらした恩恵の一つだ。

 

 挟間ボンドルドは、長門の天道が闘っている場所が目的地。その周囲には、戦いに敗れた忍者達が生き埋めになっている。その中に、意識はあるがやられたフリをして嵐が過ぎ去るのを待つ魂胆の連中もいる。そんな連中にも、カツユは指示通りしっかりと治療を行いチャクラを消費させていく。

 

 その一人に、はたけカカシも含まれていた。だが、彼は里に忠実な犬である為、本当に命を賭けて戦っていた。お陰で天道の能力を火影に知らせる為、そのチャクラを限界近くまで消費して仲間を援護した。

 

「流石は、長門さん。コピー忍者として名高いはたけカカシさんを倒すとは。彼も相当な強者だったのですが…」

 

「何も問題無い。これだけのバックアップがあって、負ける方がおかしい。で、先生は何の用事だ?プルシュカと一緒に帰ったと思ったが」

 

「貴重な物資回収と火影様にご挨拶をと思いまして。これでも、五代目火影様は師でもありました。不幸な行き違いがありましたが、ご挨拶もなしに別れるのは失礼かと」

 

 挟間ボンドルドは、チャクラ減衰により仮死状態となったはたけカカシの元へと足を運んだ。カツユを経由してのチャクラ補給のお陰でギリギリ生きている。仮死状態であった為、ペイン六道システムが死んだと誤認識しておりトドメが刺されていない。

 

 だが、暁でもない挟間ボンドルドは必要以上に手を汚さない。

 

 はたけカカシの左目の箇所に軽く触れた。そして、来る途中に回収した鮮度の良い死体の左目と入れ替えておく。これで彼の最大の目的は達成される。挟間ボンドルドがこのSSR万華鏡写輪眼を入手できる唯一の機会であり、それを見事に成し遂げた。

 

 そして、写輪眼を確認して大事に懐にしまい込む。この時、長門ですら見切れぬ早業での入れ替えであり、挟間ボンドルドの元に万華鏡写輪眼がある事を知る者は誰も居ない。

 

「では、いくぞ。後で大技をやるから、挨拶をしたら直ぐに撤退しろ。プルシュカは、ただの子供ではないが、親がついているべきだ。里の異変を感じて、出払っている者達が戻ってくる可能性もある」

 

「確かにその通りでしたね。分かりました、挨拶を終え次第、プルシュカを追いましょう。皆様もちゃんと帰ってきてくださいね。次の飲み会の幹事は、長門さんなんですから」

 

「そうだったな」

 

 次回の飲み会に、ターフの側を走っている先生を呼ぼうかと考えていた長門がここに居た。

 

◇◇◇

 

 想定以上のチャクラ消費に徐々に老化が目立ってきた綱手。まるで、火影クラスが何人も術を乱発しているかの如く感じている。だが、それだけ激闘で、暁側を追い詰められていると考えれば悪くもなかった。

 

 そして、火影がいるその場に、暁の長門と挟間ボンドルドの二人が訪れた。両名の登場に火影直轄暗部が即座に反応して迎撃態勢を取る。綱手も相手の方を向き、顔を確認する。

 

「お前は……」

 

「お久しぶりです綱手様。今は三忍も貴方だけだ。少し貴方と話がしたい。先生は、悪いが俺の後にしてくれ」

 

「勿論です。私の用件は、長門さんの後になります」

 

 綱手は、危険を承知で火影直轄暗部を下げようかと思った。暁に軍事物資を売っていた事や挟間ボンドルドが知る数々の秘密事項を知る者が増える可能性が有り、非常に悩ましい選択を迫られていた。

 

 それからは、大国が小国を食い物にしているとか。ナルトを守れるかなど色々と重要な話があった。だが、綱手は最終的にうずまきナルトを使った力業での解決をすると暗に示唆して話が終わる。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドの番が回ってきた。

 

「綱手様、私達の間に色々な行き違いがあり、袂を分かつ結果になってしまいました。最後にご挨拶ができず申し訳ございません。ですが、これからは貴方に師事された医療忍術で一人でも多くの人を幸せにしていきたいと思っております。それと、プルシュカも元気ですのでご安心ください。最後に、貴方が一番ご懸念されている事でしょうが……忍者は信用が第一です。私はこの里で知り得た情報は、人様には教えませんのでご安心を」

 

「貴様!どの面下げて私の前に顔を出せた。何が、安心しろだ、出来るか。安心させたいなら、この場で死んでいけ挟間ボンドルド!貴様が、里の忍者に懸賞金を掛けたのは分かって居るぞ。一体何の恨みがあるんだ。カツユまでたらし込みやがって!!アレは、私のものだぞ」

 

 周囲で話を聞いていた火影直轄暗部達も恨みが無いはず無いだろうと思っていた。事実、彼等も例の挟間ボンドルドの秘密施設であったイドフロント襲撃に参加しており、色々と挟間ボンドルドを貶める手伝いをした者達だ。

 

 感情にまかせて言葉を口にする姿は、まるで年寄り。実年齢を考えれば、どこぞの相談役である老害達にも近いから無理もない。だが、カツユ自身が聞いているそばでそれを言う事がどんな結果となるかすら、考えていない。

 

 口は災いの元である。

 

『実家に帰らせて頂きます』

 

 カツユの冷徹な言葉が響く。既に、綱手のチャクラ残量は枯渇目前であり、最後の最後で暁メンバーのチャクラを満タンまでチャージして帰って行った。口寄せ契約したものたちを大事に扱わない典型的なパターン過ぎて草すら生えない状況。

 

「先生……うずまきナルトの場所が割れた。もうここには用事が無い」

 

「おや、長門さんは、うずまきナルト君の居場所が知りたかったのですか。その事を教えて頂けたのでしたら、お答えしましたのに。妙木山で仙術の修行をしております」

 

 長門は、今まで会議で一言でもうずまきナルトの居場所を調べに行くと伝えたかどうかを考えた。だが、思い出せばそんなことは誰にも伝えていなかったと気がつく。そもそも、暁は尾獣を集めており、木ノ葉隠れの里に行くという事は必然的に人柱力を探しに行くと理解してくれるものだと考えていた。

 

「過ぎたことは仕方が無い。先生は予定通り避難を。飛段と角都には、衝撃に備えるように連絡をしておく」

 

「それでは、綱手様。どうぞ、私の傑作であるペイン六道システムをご賞味下さい。欠点や改善点にお気づきの場合は、ご連絡頂ければ謝礼をさせて頂きますよ。幸い、懐事情は温かいので」

 

 挟間ボンドルドは、ベニクチナワを口寄せして背にのる。まだ、木ノ葉隠れの里では見せた事がない飛行能力を持つ希少な口寄せ動物だ。

 

「ボンドルド!!」

 

「おや、お別れの挨拶ですか綱手様」

 

「地獄に堕ちろ、このゲス外道が」

 

 師からの冷たい言葉に心を痛める挟間ボンドルドがここにいた。

 

 そして、忍界においても最大級の破壊力を持つ忍術…神羅天征が里に直撃する。

 




最低限の物資の回収が終わった!!
ペイン襲撃編……どないしようかな。

余り長くなるとあれだから、後1.2話挟んでから次の章へ行きますわ!

そういえば、ヒナタ様の眼って高純度の白眼とか聞いた事があるような気がする。




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61:仙人モード

 己のチャクラや寿命を消費しない為、何も考えずに放つことが出来る最大威力の神羅天征。その威力は、里に大穴を開けるに留まらず全ての建物を消し飛ばした。里の外郭には、崩壊した建屋が瓦礫となって押し寄せる。

 

 あんな瓦礫の中に今まで死んだふりをして瓦礫に埋もれていた連中も大半は、今ので死んだ。怪我をして休んでいた連中も大半は死んだ。無事だった奴も大半は死んだ。

 

 たった一撃で大国の隠れ里を崩壊させるに至る忍術は、正に最強だ。

 

 眼下が更地になっており、その中央付近に何かが逆口寄せされる。色々と縮尺がおかしいが、遠目でもはっきりと分かるレベルの大カエルだ。その頭部には、うずまきナルトがおり既に仙人モードを発動している。

 

 完全に殺るきモードだ。

 

 だが、超常の力である仙術を身につけても火影クラスが何人も相手では辛いといえる。うずまきナルトに対峙するのは、ペイン六道、小南、角都、飛段というメンバーだ。カートリッジの補充に小南が帰りそうだったが、帰るくらいならここで援護した方が良いと言う正しい答えに行き着いた。

 

「長門さんのカートリッジ残量が0ですね。自前のチャクラだけで、目的は達成できるか見物です。さて、帰る前にもう一仕事しても良さそうです」

 

 カツユが実家に帰る宣言をした際に、ボンドルドに付いているカツユの分裂体を残して、皆本当に帰った。その為、カツユナビゲータが使用できなくなる。だが、こんな時に役立つのが白眼だ。瓦礫を透視する事で誰が埋もれているかがよく分かる。

 

 そして、瓦礫の下にいるピンクの髪を発見した。その状況をみて挟間ボンドルドは不思議に思っていた。春野サクラが持つ『祝福』は、強大だ。神羅天征の爆心地に棒立ちしていても死なないレベルだと挟間ボンドルドは思っていた。

 

「……あぁ、そういう事でしたか」

 

 更に白眼を使い挟間ボンドルドは、春野サクラが瓦礫に埋もれた原因を理解する。彼女の背後には、綱手を含む火影直轄暗部がいた。その為、背後にいる者達の壁役となる事で彼女が被害を被っていた。

 

 更に周囲を見渡すと、知った顔がチラホラと瓦礫から顔を覗かせ始めた。あれだけの衝撃波と瓦礫の雨あられを無傷や軽傷で済ます恐ろしい連中だ。そんな連中こそ、飛段の呪術で確実に始末したかったと彼は思っていたが願いは叶わなかった。

 

 挟間ボンドルドはベニクチナワに指示して、春野サクラが埋もれる瓦礫近くへと移動した。その様子を眺める忍者もいたが、暁コートを着ていない為、多少怪しかろうと味方であろうと誤認する。幸いな事に、砂隠れの忍者やOB忍者などが入り交じっている状況だ。知らない忍者が敵だとは限らない。

 

 敵の唯一の目印が暁コートであり、それを着用している連中が今里の大穴の中心にいるのだから、こんな瓦礫だけしか無い場所にいるなど誰も思わない。更に言えば、瓦礫をどけて人命救助に励んでいるとなれば、もうどこからどう見ても味方である。敵地で、自らに都合の悪い人間には会わずに、平然と好きに行動出来る……これが『祝福』の力だ。

 

 瓦礫の下から春野サクラを救い上げる挟間ボンドルド。

 

「おやおや、妊娠中だというのに瓦礫の下で隠れんぼですか。いけませんよ、貴方が思っているより胎児というのは母親の健康状態に大きく依存するものです。大蛇丸様と私の研究結果ですので、間違いありません」

 

「あの、なんで居るんですか?木の葉隠れの里ですよ、ここ!? 知っている人が見ていたら大変な事に」

 

 動揺する春野サクラ。世話になっている兄弟子の存在が里にバレた場合、どうやって逃亡を補助しようか考えていた。両親の事、うちはサスケの事などもあり、突き出すなど選択肢には存在しなかった。寧ろ、木ノ葉隠れの里に入る手伝いを頼まれたら二つ返事で了承する。

 

「ご安心下さい。既に、綱手様へのご挨拶もしてきました。その帰り道で、妹弟子が瓦礫の下敷きになっていれば助けるのは当然です。なんせ、同じく瓦礫の下敷きになって死んだ夕日紅さんも居るくらいですから…人知れず死ぬというのは悲しいものですよ」

 

「紅先生が!?なんで、避難所に行かなかったんですか?」

 

「彼女は、里への背信行為が疑われておりました。監視の目が無い今こそ里抜けしたかったのでしょうね。ご存じないのですか?彼女の口座は止められて生活苦。口座凍結解除の条件は、大名達への慰安任務です。この忍界では、女性の一人子育ては過酷すぎます。特に、この木ノ葉隠れの里ではね」

 

 他人事では無いのが春野サクラであった。お腹に抱える子供を無事に育てる為には、苦労するだろうと思っていたが、想像の遙か上をいく。春野サクラは、夕日紅とは縁が薄い。同期繋がりで多少は知っていたが、まさかそんな酷い状況になっているなど露程も知らなかった。

 

「ボンドルドさん、私の友達の話なんですが……もし、抜け忍の子を妊娠した女性が居たとして、その子供を育てるとした場合に木ノ葉隠れの里と音隠れの里だとどちらが育児に向いていると思う?」

 

「音隠れの里ですね。あそこは、小国ながら経済規模は火の国に匹敵しております。音隠れの里長は、大変良識のある方で仕事と家庭の両立を目指して様々な働き方改革を実施して、数々の成果をあげています。貴方も音隠れの里の空気を肌で感じて分かっているはずです」

 

「ボンドルドさん、私は役に立ちますよ。ボンドルドさんが不在のおかげでもありますが、医療忍術の腕は、綱手様に次ぐと言われています。今なら、私そっくりな死体を一つ用意してくれる事と時が来たら逆口寄せして貰えるだけで雇えますがどうですか?」

 

 自らの長所を売り込む春野サクラ。既に、腹は決まっていた。現在の木ノ葉隠れの惨状と夕日紅の惨状……子育てに不向きな要素しか揃っていない。このままでは、お腹の子を人質に何をさせられるか分かったものではなかった。産まれた後も、子供を人質に飼い殺しにされる可能性すらある。

 

「それは、大変喜ばしい。春野サクラさん、貴方は特別なのですよ。貴方が本気で音隠れの里に行きたいと思えば、必ず叶います。それが『祝福』というものです。つまり、貴方が望まれた時点で、答えは決まっているという事です。一週間で貴方と寸分変わらぬ死体を用意しておきます」

 

 挟間ボンドルドは、春野サクラについては死んでから招待をする予定であった。その為に、某火影達同様の専用の身体まで用意していたのに、これでは他を探すのが大変になってしまうと思っていた。

 

 だが、春野サクラが忠実な手足となり働くというのならば、それ以上の効果がある。彼女は、まだ自分の価値に気がついていない。彼女の能力を考えれば、何処の里だって手を広げて歓迎する。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、春野サクラと会話をしている間に一体何が起こったと言いたくなる状況に混乱していた。仙人モードのナルトが暁4人と死闘を繰り広げていると思ったら、『根』の精鋭と志村ダンゾウが長門を除く暁を本気で抑えていた。

 

 志村ダンゾウの部下である油女トルネと山中フーの能力が初見殺しであり、角都と飛段を確実に押し始めた。小南も援護に加わるが、志村ダンゾウの忍術は殺傷能力が高く、相手に対応した忍術を的確に使用できる強者だ。なにより、隠していた眼や腕を解放して、短期決戦で殺しに来ている。誰かが致命傷をおったら、イザナギで無かった事にされては、勝てるものも勝てない。

 

 暁を一方的に攻め倒す『根』の姿に人々は、何時も陰気な連中でよく分からない奴らだったが、実はいい奴らじゃんと思い始める。

 

「まさか、志村ダンゾウさんが切り札まで持ち出してくるとは。ですが、うずまきナルト君の方は、既定路線みたいですね。少し危険はありますが、アレも今を逃すと入手が困難ですからね。カツユ、私の仙人モードはどの程度維持可能ですか?」

 

『三分です。それ以上は、暁に至る天蓋での制御ができません』

 

「やはり、プルシュカのようにはいきませんね。ですが、十分です」

 

 うずまきナルトがペイン六道に捕まり、それを助けるために日向ヒナタが単独で天道に挑む。どう考えても無理な勝負だ。命を捨てに行くようなものであり、誰もがそれを眺めていた。日向の者ですら、宗家の娘を助けに向かわないという状況なのだから、責められる者はいないだろう。

 

 あの戦場に行けば、戦いにすらならずに死ぬのは明白だ。

 

 日向ヒナタは、何度も地面にたたき付けられて、ついにはうずまきナルトの目の前で天道に串刺しにされる。その瞬間を見たうずまきナルトは、怒りの余り九尾チャクラを解放する。

 

 チャクラ解放による衝撃波の中、挟間ボンドルドがその震源地へと足を運んだ。

 

「先生か、まだ帰ってなかったのか。それに、随分と毛深くなったな」

 

「これはお恥ずかしい。私の仙人モードも自来也様と同じく完璧ではありませんので、多少不格好になります。ですが、性能は折り紙付きです。少々、物資回収をしてから帰ろうかと思いましてね」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの目の前で日向ヒナタを担ぎ上げた。だが、それが暴走しているうずまきナルトにとって敵対行動と認識される。六本の尾となったうずまきナルトの速度は、近くで見ていたら消えたかと錯覚するレベル。

 

【ガガガァァァァァァァァ】

 

「今は、貴方の相手をしている暇はないのですがね。そうそう、うずまきナルト君。実は、私は『祝福』で強化されておりましてね。そんな暴走状態の攻撃では、なかなか当たりませんよ」

 

 うずまきナルトが、挟間ボンドルドを攻撃しようとした瞬間、片足が地面にめり込み攻撃が外れる。地面は、九尾チャクラに耐えられるほど強固には出来ていない。だからこそ、足にもチャクラを巡らせて、しっかりと足場を固めなければならない。

 

 足を取られて藻掻いている隙を見て挟間ボンドルドはフカサクを回収する。まだ両名とも息が有り医療忍術による治療で回復へと向かう。その際、手間賃として、日向ヒナタの純度の高い白眼が、ボンドルドの白眼と入れ替わるなどハプニングがあったが、忍界では眼に関わる良くある事故の一つだ。

 

【グオオオオオオオオオオ】

 

 地響きが鳴り、うずまきナルトが尾獣玉を生成し始めた。高純度のチャクラであり、まともに食らえば、挟間ボンドルドの外装すら貫通して殺せるレベルだ。

 

「おやおやおや、回避すれば春野サクラさんに直撃ですよ」

 

『ボンドルド様、今アレを殺せば止められますが……』

 

 チャクラの濃度的に、危険を感じたカツユが助言をする。今のうずまきナルトを確実に止める手立てを一つだけ挟間一家は保有している。まさに、切り札である。

 

「切り札というのは、別の切り札があって初めて使う物ですよ。6本なら仙術で相殺も出来るでしょう。長門さん、この一撃は私が防ぎますので後はよろしくお願いしますね」

 

 長門は、分かったとうなずきこれから始まる戦いに備えた。チャクラを練り上げて、致命の一撃を与える準備を始める。

 

 挟間ボンドルドが右腕を相手の方に向けて手の平を大きく広げる。

 

「後でオーバーホールが大変そうですね……仙法・火葬砲!!」

 

 全てを焼き尽くす火遁・枢機に還す光(スパラグモス)の上位互換に当たる必殺の一撃。その威力と範囲は、込めるチャクラにより何処までも上がる。

 

 仙法・火葬砲と尾獣玉の直撃で、木ノ葉隠れの里には更に大穴を開ける事になった。その破壊的な攻撃のぶつかり合いで発生した衝撃波を利用して挟間ボンドルドは戦線離脱に成功する。

 




里での激戦は、アニメ版をみてね!
そして、『根』の初見殺し達に尽力により、暁の多数に退場を願おう!
これで、ダンゾウは木ノ葉の英雄にのし上がれる。
火影の椅子は座り心地は最高でしょう。


PS:
バ体 ハルノサクラさんの肉体が無駄になってしまった。



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五影会談編
62:暁


 当初の目的を達成した挟間ボンドルドは、家族と優雅な夕食を音隠れの里で食べていた。音隠れの里にも、木ノ葉隠れの里が暁襲撃で甚大な被害がでたと噂が出回る。独自の情報網を持っている大蛇丸は既にその事を把握しており、挟間ボンドルドへの事情聴取等は発生しなかった。

 

 そして、木ノ葉隠れ襲撃後の初の定例会議の時間になる。時代を先駆けたソーシャルディスタンスが出来ている暁。彼等のリモート会議に現れたのは、トビ、干柿鬼鮫、挟間プルシュカと保護者の挟間ボンドルドの4名。

 

 暁の半数に近い勢力を木ノ葉隠れに当てて、全員が殉職するなど考えられない事態だ。特に、長門は輪廻眼が有りペイン六道というチート能力まであるのに、負けるはずが無い…と誰もが思った。

 

 長門の最後の死に様は、うずまきナルトのだってばよ!空間に巻き込まれて謎の改心。それからの外道・輪廻転生による大量蘇生による自滅だ。だが、彼は大事な事を忘れている。死んだ者が復活するなど、あらゆる状況が整ってないと出来ないという事だ。

 

 木ノ葉隠れでの死者は、大半が神羅天征による死だ。瓦礫でズタボロになって死んだ者達に魂が戻ってきたとして五体満足になるかといえば違う。即座に死に戻る。

 つまり、地獄道によって、魂を抜かれて完璧な状態で蘇生されなければ意味を成さない。大事な事だが……人間は心臓が停止してから数分以内に蘇生しないと脳に酸素が行き渡っておらず重大な障害を抱える事にもなる。更に言えば、病院では鮮度のいい死体から使える部分を切り取って重傷者に分け与えるなどもしている。

 

 つまり外道・輪廻転生で無事に生き返れた人数は、片手で足りる。長門は満足して死んだのだろうが、死ぬより生きて里に貢献した方が幾分もマシな結果を生んだ。

 

「長門は死んだ。そして、小南は暁を裏切ったため、俺が始末した」

 

「嘘でしょ。あの状況で何で負けるの?だって、パパが作ったペイン六道システムだよ。飛段さんや角都さんも居たのに。本当にパパ棒付いているのかしら」

 

「くっくっく、パパ棒とは初めて聞きましたね。まぁ、何名かは無くす事になるでしょうね。それにしても、貴方達は今のトビをみて何も思わないんですね?もしかして、知っていましたか?」

 

 暁のムードメーカーを務めていたトビが、いきなりボスオーラを発揮している。だが、挟間一家は気にしてはいない。誰がボスであっても大して興味はない。

 

「表のトップが長門さんで裏のトップがトビさんだったというだけでしょう。私達一家にとっては、どちらにせよ些細な問題です。あぁ、もし雨隠れの里にいらっしゃるのでしたら逆口寄せしてくださいね。ペイン六道システムは、他国に接収される前に回収しておきます」

 

「いいだろう。どのみち貴様に頼もうと思っていた。挟間ボンドルド、貴様にはこれからも暁への貢献を期待している。無論、タダとはいわん。プルシュカが欲しがっていた六道仙人が残した芭蕉扇をくれてやる」

 

 挟間プルシュカの万華鏡写輪眼との相性を考えれば悪くは無かった。吹き飛ばしによる上昇負荷。なにより、身内に甘いのが挟間ボンドルドだ。娘が珍しく欲しいという品であり、その為なら多少のことならやってもいいとおもっている。

 

「勿論、構いませんよ。トビさんは、私に何をさせたいのですか?」

 

「ペイン六道システム。10万人に対応したシステムに改修しろ。必要な戦闘データなら俺が提供する。期限は、五影会談が終わるまでだ」

 

 挟間ボンドルドは、酷いクライアントだと思っていた。数名にしか対応していなかったシステムをいきなり10万人規模に対応したシステムに作り直せという。もはや、システムの基本設計からやり直す作業であり、本来ならばお断りする案件だ。

 

 だが、忍びの世界においては、便利で危険な術が存在している……多重影分身だ。自らと同じ知力を持った存在を多数用意できるので、全員が阿吽の呼吸で仕事が出来る。カートリッジもある為、多少無理すれば数十人単位で挟間ボンドルドが現れる事になる。

 

 まさに、狂気の絵面だ。

 

「報酬は前渡しでお願いします。すぐに仕様を詰めましょう」

 

「やったーー、パパ大好き!!」

 

 挟間プルシュカが喜び父親に抱きつく。娘を優しく撫でる父親……だが、娘のために激務に挑む父がそこには居た。

 

 それからも、暁の会議は燃え上がる。人員不足にうちはサスケ率いる鷹を引き入れるとか、八尾捕獲に失敗した尻ぬぐいに捕獲に向かう事など。つまり、現状暁のメンバーの行動は、このようになる。

 

 暁のトップであるトビは、うちはサスケ率いる鷹と一緒に五影会談へ。

 干柿鬼鮫は、うちはサスケの尻ぬぐいで八尾回収。

 挟間一家は、ペイン六道システムの大改修。

 

 挟間ボンドルドは、このシステム改修を早期に解決する方法に当たりをつけた。10万人に対してあらゆる状況に対応したAI補助は、難しい。だが、有人操作ならばそれが可能である。つまり、カツユが分裂して湿骨林から10万人全員を操るという物……これを仮称でペイン六道システム改めシビュラシステムと定めた。

 

 こうして、戦力低下した暁の戦いが五大国に挑むという無謀とも思えるチャレンジが始まろうとしていた。

 

 

◇◇◇

 

 音隠れの里。その最奥にある場所にて、第二の人生を歩み始める者がいた。魂の定着が確実なものとなり、目を開ける。死からの蘇生……目覚めた者は確かに死んだ記憶があった。思い出した記憶は、我が子を託した記憶。

 

 彼女は頬を伝わる涙を拭き、周囲を見渡した。

 

 控えめに言って天国とは言いがたい状況。見慣れない器具があり、拷問器具に見えないこともなかった。逃げるという選択肢が彼女の中で浮かび上がる。手足の感覚を確認して、彼女は初めて違和感に気がつく。

 

 軽いと。それどころか、肌の艶やハリが10代といっても差し支えないレベル。体つきも変わり、まるで別人の肉体のようだと感じていた。

 

「ここは、もしかして天国なのかしらね」

 

「いいえ、天国ではありませんよ。ですが、貴方の望みが全て叶うから、ある意味天国かもしれません」

 

 バ体となった彼女が声の方へ振り向くと、暗闇の中で光る紫色のラインがあった。一種のホラーであり、多少ちびってしまうのは挟間ボンドルドが悪い。

 

「驚かさないでよ!もう一回死ぬかと思ったじゃない。いいわ約束通り、何でもするわよ。で、あれから何年経ったの?せめて、大きくなったミライを遠目で見るくらいは許してくれるんでしょうね」

 

「色々と誤解があるようですが、貴方が死んでから三日ですよ。まずは、ここの責任者として状況をご説明した後に、生まれ変わった猿飛アスマさんもご紹介します。ミライちゃんなら、今は彼女が面倒を見ていますよ。やはり我が子は可愛いらしいですね」

 

 生まれ変わった彼女が誤解するのも無理は無い。挟間ボンドルドは転生忍術が使える事は彼女も知っている。だからこそ、それを己にも行使してくれたのだと思っていた。だが、転生忍術のような高度な忍術をぽんぽん使えるとは想像できず、最低数年の時を経過していると思い込んでいた。

 

「本当?本当にアスマここに居るの?それにミライも?」

 

「えぇ。これから貴方の状況を説明致します。ダイワ(スカーレ○ト)さん。そうそう、同席されるナガト(・・・)ブライアンさんは、貴方の同期になりますので仲よくしてあげて下さいね」

 

 挟間ボンドルドの粋な計らいにより家族がまた一つになる。将来、夕日ミライの授業参観にパパとママの参加でなく、ママとママの参加になるという学校ですら想定出来ていない事態が発生する。

 




ボンドルドがカブトの代わりにゼツ強化をするんです!


そしてやっと、五影会談編!

だけど、五影会談はサスケーーーがメインなので、ダンゾウが死ぬ当たりしか絡まない予定です。

「ヒルゼン、次は儂の番のようだ」とか「何処まで行ってもお前には追いつけなかった」とか言っているからね。

ご期待に応えなきゃいけないかと。


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63:今や常識に左右されない新しいアプローチが試されるべきと考えます

 意識不明の五代目火影綱手に替わり、新たな火影が選出される。

 

 六代目火影は、志村ダンゾウ。暁襲撃に際し、危険を顧みず闘う姿が里の者達に感動を与えた。更には、飛段と角都の両名を討ち取った功績は大きい。その為、大名からの推薦だけでなく、上忍衆からの支持もある程度集まっていた。

 

 そして、六代目火影志村ダンゾウは、うちはサスケの抹殺許可を正式に認める。挟間ボンドルドには、即日抹殺許可を出していたが、うちはサスケに至っては今まで穏便な扱いであった事が謎だが、誰もそれには突っ込まなかった。

 

 挟間ボンドルドは、純度の高い白眼を肉体にじっくり馴染ませながら体を休めていた。そして、木ノ葉隠れの里の情報をカツユ経由で聞きながら、思いを巡らす。今現在、カツユが木ノ葉隠れの里の復興状況を逐一監視しており、抜ける情報は抜き取っている。

 

「志村ダンゾウさんは、今の木ノ葉隠れの里で火影になっても一文の得にもならないのに。火影という立場こそ、まだ影響力はそこそこ残っていますがそこまで欲しい椅子には私には思えません」

 

『そうですよね。今や木ノ葉隠れの里より音隠れの里の方が上回っている事も多いので、五影の入れ替えも現実的です。ボンドルド様、はたけカカシさん含めて著名な忍者達は大体無事でした』

 

 カツユは、挟間ボンドルドが座れるほどのサイズになっており夫を文字通り支えていた。尻の下に敷かれて当の本人は満足そうであり、微笑ましい光景だ。その傍らで、娘の挟間プルシュカがカツユに抱きついたまま寝ている。

 

「しかし、トビさんは本当に5大国相手に戦争を仕掛ける気なんでしょうかね。10万人いたとしても、有象無象の集まりでは意味がありません。各国にいる強力な『祝福』持ちならば一人で100人くらいは倒しそうです」

 

『そうですよね。私が、コントローラで操作するにしても元のスペックに差がありすぎると勝てるものも勝てません。ボンドルド様、この白ゼツさんの構成要素……これじゃあ下忍にも劣りますよ。こんなの数を揃えたところで役に立ちません」

 

 挟間ボンドルドは、カツユが調べた白ゼツの詳細な資料に目を通した。人型である為、人間と近い要素で作られているかと思えば全く違っている。人間と違い痛みなどで動けなくなる事がないが、これといって強いとも言えない。

 

 一部特殊な能力こそあるが、時間を掛ければ挟間ボンドルドや挟間プルシュカでも一人で殲滅可能と言ったレベルの相手であった。

 

 だが、長所と短所は見方を変えれば逆転する。つまり、何事も使いようである。

 

「つまり、多少雑に扱っても白ゼツは死なないと言う事です。この構成要素に白リンを混ぜ合わせて白ゼツそのものを爆弾にしましょう。人型であるからといっても、人間として運用をする必要はありません」

 

『それは盲点でした。流石は、ボンドルド様。負けそうになったら自爆で相手ごと倒すんですね』

 

「今や常識に左右されない新しいアプローチが試されるべきと考えます」

 

 挟間一家がシステム改修に加えて、恐ろしい計画を立てている事をトビや黒ゼツたちは知らなかった。全てを知ったときは、引き返せない所まで来ており彼等は前に進むしか道は残っていない。

 

………

……

 

 トビがうちはサスケと合流する少し前。

 

 うちはサスケ……(大蛇丸)を娘の前で殺して、娘に万華鏡写輪眼を開眼させた。それから目を奪い、妻の財布と部下を引き連れて実の兄を殺した。その兄は、実は善人である事をトビから聞かされる。

 

 そして、何を思ったのか暁に一時編入して雲隠れの里を襲撃。それから、木ノ葉隠れの里を潰しに行くという。この時代で彼ほど、色々とやらかしたのに無事に生きている人間は居ない。

 

 未だに、産まれた何百人の子供達へ養育費の支払いすらしない。更には、未だに殺した妻の財布で生活を送っており、流石に何時か後ろから刺されるんじゃ無いかと鷹のメンバーは心配していた。

 

 そして、口座残高が少なくなってきたため、音隠れの里に電話で催促する。

 

【大蛇丸、明日までに500万両を俺が持ち出した口座に振り込んでおけ。木ノ葉隠れの里を襲撃するのに忍具を揃える必要がある】

 

【分かったわ。でも、偶には帰ってきて子供に顔を見せて頂戴ね。ツムギもブロリーも貴方と会うのを楽しみにしているわ】

 

 最後に自分の元にいれば良い大蛇丸としては、うちはサスケの行動に制限など掛けない。実に男らしい女だ。

 

【気が向いたらな。それと、感知タイプの忍者が欲しいから、これから言う場所に送れ】

 

【感知タイプね……サスケ君が殺したカリンがそうだったけど、使えそうなのはいないのよね】

 

 万華鏡写輪眼のガチャのために、カリンにもうちはサスケは手を出していた。そして、カリンチャンとなり、いまではターフの側にいる。

 

【そういえば、プルシュカが感知タイプね。いいわ、ボンドルドに話をつけてあげる。でも、手を出したらダメよ。あの子には、こわーい父親と母親がいるんだからね】

 

【大蛇丸、お前は俺を何だと思っている。俺が子供に手を出すような男にみえるか】

 

【そりゃ、見えるわよ。だって、抱いたでしょ?何人も】

 

 大蛇丸の言葉を否定しようにも、否定できる要素がなかったうちはサスケ。大蛇丸がうちはサスケの為に様々なタイプの女性を用意した中には、特殊な事例もあった。だが、思春期のやりたい盛りの男に餌を与えれば結果など分かりきっている。

 

【当時、拒否権が無かった俺にどうしろって言うんだよ。お、俺が悪いってのか…?俺は…悪くねえぞ。こんなことになるなんて知らなかった!誰も教えてくんなかっただろっ!俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇっ!!】

 

【やっぱり、プルシュカに話を持っていくのやめておくわ。万が一がある以上、危険は犯せないわね。感知タイプなんて居なくても大丈夫よ、頑張りなさい】

 

 電話が切られて、うちはサスケは乱暴に受話器を置いた。その様子に、鬼灯水月と重吾は鷹の行く末を心配する。既に、雲隠れの里を襲った事から全国指名手配の仲間入りをしている。

 

 この状況下でスポンサーでもある大蛇丸にあそこまで強気に出られる根性が謎過ぎて恐かった。しかも、それを許容している大蛇丸の器の広さに脱帽する。彼等が知る大蛇丸ならば、今の台詞を聞いただけで八つ裂きにしてくるような男だった。

 

 その翌日、鷹はトビと合流して五影会談へと足を運ぶ事になる。

 

 

◇◇◇

 

 遠野カタスケには、夢がある!!

 

 ()木ノ葉隠れの里の忍者にして、現音隠れの里のトレーナー。彼が作り上げた退バ忍スーツの売れ行きは、概ね好評であった。従来の忍者が着る防具服は、防具の意味をなさない。

 

 だが、彼が作った退バ忍スーツは時代を先取っていた。どのような環境にも耐えられて、一定以上の防御性能をほこり、動きを阻害しない。まさに、忍者達が待ち望んだスーツであった。デザイン的に男性が着るのは厳しいってレベルでは無いが、命とプライドを天秤に掛ければ優先するほうは決まっている。

 

 "黄ばんだ閃光"の異名を持つ忍者は、退バ忍スーツを愛用しており男性側の宣伝塔として頑張っている。師と弟子で同じスーツを宣伝するなど本当に仲がいい限りだ。

 

「そう!!これぞ、我が師である挟間ボンドルドさんと共同で開発した夢の科学()具。私は、人を幸せにする科学()具をより多くの人に使って欲しいのです。そう思いませんか、ミナトブルボンさん」

 

「その理念は素晴らしいです。遠野トレーナー」

 

 ミナトブルボンの元トレーナーは、今はバ体となっている。だから、今では後任として遠野カタスケがミナトブルボンのトレーナーを務めていた。そして、彼女を使って、夢の科学()具を大々的に宣伝している。

 

 大蛇丸が認めるレベルの天才であり、何があっても絶対に外に放出する気が無いことを彼はまだ知らない。だからこそ、彼の夢を叶える為に大蛇丸は支援を惜しまない。

 

 

 




五影会談編はサクサク終わらすぞ!

ダンゾウさんが早く親友に追いつきたいと言っているからね。


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64:連合結成

忙しくて投稿が出来ておらず申し訳が無い。


 挟間ボンドルドが請け負った仕事は順調に進んでいた。10万人の白ゼツを人間爆弾へと改修し、カツユがリモート操作出来るようにシビュラシステムの構築も順調に進んでいた。

 

 挟間ボンドルド自身が多重影分身を使い、祈手達も同じく多重影分身を使う事で60人体勢で行うデスマーチでの開発。意思疎通が完璧だからこそ、できる離れ業であった。その作業の最中、挟間ボンドルドの耳に五影会談の情報が飛び込んでくる。

 

 うちはサスケが五影会談襲撃により、めでたくS級犯罪者の仲間入りをはたした。そして、同行していた鷹のメンバーも当然仲よくS級犯罪者になる。もはや、木ノ葉隠れの里だけの問題に留まらないため、鷹メンバーのS級犯罪者に対して取り下げをする事は5大国と中立国の鉄の国…この六カ国から承諾を得ることが必要になる。

 

「事実上、私と異なり彼の犯罪者認定を取り下げることは不可能でしょう。どれだけの功績があれば、恩赦がでるのかわかりません。世界を救うレベルの功績になります」

 

『片道切符だと思っていましたが、よくあの場から逃げられましたよね。トビさんの時空間忍術は、忍界最高峰みたいです。そういえば、うずまきナルト君がうちはサスケ君に恩赦を求めて、雷影に会いに行きました。この戦争って、彼が『祝福』を使ってサスケ君の恩赦を勝ち取るために起こったとかありませんよね~、まさかね……ありませんよね?ボンドルド様』

 

 カツユの斬新な推理。だが、うちはサスケが持つ『祝福』は、うずまきナルトにも匹敵する。その為、うちはサスケが恩赦を望まない限り、一方的になる事はない。

 

「うちはサスケ君の『祝福』がうずまきナルト君に劣っていれば、その可能性はあります。ですが、彼等の『祝福』は同等ですのでその可能性はほぼありません。そろそろ、トビさんが合流する時間ですね」

 

 暁の拠点に時間ピッタリにトビが時空間忍術で移動してくる。事前に電話連絡して時間通りにくるブラック企業暁の裏のトップは、意外と律儀であった。今や、彼の手札は少ない。五影に対して忍界大戦を宣言した手前、既に後には引けず社員を大事にするようになってきている。

 

「うちはサスケと鷹メンバーの治療を頼むぞ。派手に暴れた割には、五影を誰も倒せないとは口惜しいな。だが、五影相手の戦闘で積んだ経験は大きい。サスケが自然回復するまで待っていては時間の無駄だ。ダンゾウが里に帰るまでに始末をつけたい」

 

 トビにとって、挟間ボンドルドは実に便利な駒だ。

 

 暁の業務を理解しており、あくの強いメンバーからの信頼も厚い、暁に足りない医療忍者、しかも大体の事が出来る高水準なレベルの忍者だった。暁の勧誘を断っても何もされないのは彼くらいである。他の連中は、暁に入るか死ぬかの二択になる。

 

「無論、喜んで治療致しましょう。状態を確認しないと何とも言えませんが一時間以上かかる事はありません。それで、五影会談はどうなったのですか?うちはサスケ君が大暴れしたようですので、延期か中止のいずれかでしょうか」

 

「いいや、五影会談は無事に終わった。第四次忍界大戦を宣言してきた。五影達は対暁に忍界初めての連合軍を結成する。素人目にも結束力は、高くは無い。今まで積み上げられた過去の因縁が多すぎる」

 

 トビの言う通りだった。特に、砂隠れの里は他里に対して懐疑的だ。今まで支援要請を無視されただけでなく、風影がピンチの時に岩隠れの里による襲撃を受けている。その際に、姉であったテマリを失った。

 

 全ては、五代目火影の陰謀だ。砂隠れの里側は、岩隠れの里が冤罪を主張しているが、いまだに信じてはいない。事実、岩隠れの里は暁を利用してきた事が五影会談で明言された事から、信憑性が増したというものだ。

 

 だからこそ、砂隠れの忍者達は、あわよくば戦争に紛れて暗殺も辞さない考えでいる。そういった考えの末端忍者は多数居るため、戦争では目の前の敵だけじゃ無く周囲の暫定味方にも気を配る必要がある。

 

「それが忍者ですから仕方がありません。昨日の敵は今日の友……という言葉がありますが、現実的には難しい。上からの指示であっても、素直に割り切れる者達も多くは無いでしょうね」

 

「だろうな。世間話もここまでだ。サスケの治療は俺の異空間で行って貰う。忙しいところ悪いが、終わったら少し付き合って貰おう。どうせ、無傷ではダンゾウには勝てないだろうから、医療忍者は側に居た方がいい」

 

 医療忍者として、うちはサスケが志村ダンゾウを倒すのに同行する事になった挟間ボンドルド。忙しいところ悪いという奴は、絶対に悪いとは思っていない。忙しくてもやれるよなという言葉の言い換えに過ぎない。

 

「トビさんの頼みならば仕方がありません。志村ダンゾウさんの忍術には興味がありましたからね。死んだはずなのに生き返る……まるで、転生忍術みたいな謎が多い術でした」

 

「ほぉ~、あのダンゾウがそんな忍術を。そういえば、プルシュカは何処に行った?鉄の国の土産を渡そうと思ったが……まぁいい。カツユ、現地の特産品を一通り買ってきたから皆で食べると良い」

 

『あら~、何時も悪いですねトビさん。プルシュカは、トビさんのオモチャ(万華鏡写輪眼)が気に入って、遊び疲れて寝てます。慣れないと扱いが難しいですよね』

 

「だろうな、アレ(芭蕉扇)の扱いは難しい。便利な反面、チャクラ消費が凄まじいからな」

 

 挟間ボンドルドは、木ノ葉隠れの里で手に入れたSSR万華鏡写輪眼を挟間プルシュカに与えた。これで、片眼は永遠の万華鏡写輪眼となりノーリスクで神威が使える。その試運転も兼ねて、芭蕉扇と神威と上昇負荷と仙人モードを掛け合わせた戦い方を模索していた。

 

 おかげで、トビ相手であっても攻撃を当てられるメタユニットだ。暁においてほぼ最強の地位に彼女は上り詰めていた。

 

「休める時に休んでおけ、第四次忍界大戦ではプルシュカにも大役を任せたい。では、ボンドルドは、治療に掛かれ」

 

 挟間ボンドルドは、神威空間で鷹メンバーの治療を行った。鬼灯水月と重吾は、自分達が置かれている状況を理解すると、大蛇丸に捕まっていた時代がどれほど幸せだったか思い起こすようになる。

 

 働かずして、衣食住の全てが提供される。研究と称して多少の血液検査や忍術調査こそあるが、破格の待遇。希少性が認められれば、子孫を残すため異性が宛がわれる事もあるため、大蛇丸の研究所にいる忍者達は基本的に喜んでモルモットをしている連中ばかりだ。むしろ、そんな噂を聞いたニート志望の血継限界持ちなどが、自ら売り込みに来る事もしばしばある。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、鷹メンバーの治療を終えて神威空間で呼ばれるのを待っていた。うちはサスケも肉体は治りきっている為、今では大人しくチャクラ回復に努める。

 

 そんな空間に乱入者が現れた。

 

 新たに神威空間に入ってきたのは油女トルネ。しかも全身が紫になっており、致死性の蟲を使った絶対殺すモード。この異空間という逃げ場があるようで無い場所に、こんな奴を繰り込んでくるとは鬼畜もいいところだ。

 

 ナノサイズの蟲を操り遺伝子レベルで細胞を破壊する忍者を倒す方法…それは、コチラも原子レベルで相手を消滅させればいい。

 

「もしかして、私に殺させるつもりで送り込んだのでしょうかね。トビさんもお人が悪い」

 

「っ、ここは……お前は、挟間ボンドルド!何故ここに」

 

「仙法・火葬砲」

 

 仙人モードに移行している挟間ボンドルドは相手が行動に移す前に必ず殺す技……仙法・火葬砲を放つ。神威空間にどんな影響があるかなど考えていない。油女トルネが自爆覚悟で猛毒を散布するより幾分かマシであるのは確かであった。

 

 それから程なくして、第二陣として山中フー。だが、コンビネーションプレイを基本とする彼の戦闘力は低い。秘伝忍術を使えるとは言え、目の前に仙人モードの挟間ボンドルドがいる。

 

 そんな彼が最後にみたのは、挟間ボンドルドの鉄仮面から繰り出される紫色の閃光――雷遁・明星へ登る(ギャングウェイ)

 

 

◇◇◇

 

 第四次忍界大戦が宣言されていようが音隠れの里は平常運転中だ。そんな平和の里で、ハシラマックイーンは財布を落として困っていた。

 

「くっ、これでは昼飯が…」

 

 その様子を近くで見ていたトビラマテイオー。彼女は、姉が何故財布を無くした程度で困っているか理解に苦しむ。

 

姉者(ハシラマックイーン)……もしかして、自分の金で飯を食っているのか?正気か?」

 

「正気も何も、当たり前だろう。そうだ、トビラマテイオー。悪いが昼飯代を貸してくれ」

 

 トビラマテイオーは、財布を持っていれば金を貸すことは吝かでは無かった。だが、抑も彼女は財布を持たない。正確に言えば、持つ必要がなかった。

 

「金など無くても昼飯にありつける方法がある。まぁ、見ていろ……美貌とはこう使うんだ」

 

 トビラマテイオーが金を持ってそうな無害な大名に目をつける。大名達の目的は、最近音隠れの里で一大ブームを巻き起こしているバ体達のレース観戦だ。各国の大名達も集まるため社交の場として活用されつつもあった。

 

「ねぇねぇ、大名~。さっき、僕のレース見てくれていたよね。折角だから、もっと僕たちの事知って欲しいな~。ちょうど、お昼時だしご飯でも食べながらさ……今なら、ハシラマックイーンも一緒だよ」

 

「メスガキがいい気になりおって、何でも好きな物を喰わせてやるぞ」

 

 やったーと、腕に軽く抱きついて相手をその気にする。その様子をみた、ハシラマックイーン……過去は卑劣と言われ、今では卑しい奴になったわと思うばかりであった。

 




最近、ナルト二次がそこはかとなく増えてきて嬉しい限りです。

正式な六代目火影は、写輪眼のないカカシですかね。
この場合、コピー忍者のカカシが異名になるのかしら。



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65:志村ダンゾウ

 挟間ボンドルドは、うちはサスケのついでとして神威空間から出される。彼にしてみれば、見てるだけであり手伝う気はなかった。現在の雇い主であるトビの意向で手助けしろというなら話は別だが、そういう事ではない。

 

 うちはサスケが復讐への手伝いを申し出ない限りトビとて動くつもりは無い。下手な手伝いは、遺恨を残す。最悪の場合は、次に持ち越せるように神威を使って逃げて再戦させる。それだけの事を可能とするのがトビの時空間忍術だ。

 

「ちっ、ボンドルドまでいるとはな。暁でないのが今も同じならば、里に戻る気は無いか?儂ならば貴様に掛かっている全ての罪を取り下げられる」

 

「お気持ちだけで十分です。今や、私はフリーの忍者。雇い主である……うちはマダラさんを裏切るような事はできません。それに、今の木ノ葉隠れの里に戻っても、旨味がありません。私は医療忍者ですので、後方でお二方の戦いを観戦させて頂きます」

 

 挟間ボンドルドの目的は、志村ダンゾウが使う高レベルの風遁の術とうちはの禁術といえるイザナギであった。都合の良い現実で世界を上書きする術など、他には存在しない。術のリスクとして、イザナギを使用した写輪眼が失われる。この失われる写輪眼というのが大事なポイントだ。

 

 本来、万華鏡写輪眼開眼者しかイザナギを使う事が出来ない。常識的に考えて、開眼した万華鏡写輪眼が失われると誤解されがちだ。だが、その盲点をついたのが、志村ダンゾウ。腕に仕込んだ写輪眼に術のリスクを肩代わりさせている。

 

 若干の原理こそ違うが、挟間ボンドルドのカートリッジと酷似していた。今は、音隠れの里では人体の一部だけを複製するクローン技術が存在している。天然物の写輪眼が掃いて捨てるほどある為、大蛇丸はこの技術を不要と判断していた。それを拾い上げたのが挟間ボンドルドとカツユの二人だ。

 

 このクローン技術は医療に革命をもたらす。臓器移植での拒否反応を気にする事なく、命が救える技術で有り、活用の幅は無限大だ。但し、使い方を間違えば危険な技術でも有り、その管理は厳重でなければならない。だからこそ、人里離れた湿骨林にある挟間ボンドルドの研究施設で管理される。

 

 後ろに下がって見学している挟間ボンドルドの元にトビもやってきた。

 

「ここなら誰も聞いていない。ボンドルド――本当の所、お前は何処まで知っている?月の眼計画を聞いても驚く様子はなかった。お前達一家は、幻術に何かを期待しているとは到底思えない」

 

「何処までという定義が曖昧ではありますが、少なくとも…トビさんの本名くらいまでは知っています。私は、診察した事がある患者の事を忘れません。無限月読については、正直素晴らしいと思っています。ですが、期待はしておりません。家族の幸せは私の力で勝ち取ります。人から与えられた幸せは、愛ではありません」

 

 挟間ボンドルドは本気で素晴らしい計画だと思っている。だが、素晴らしいと思っているが賛同しているかは別問題。

 

「隠せている自信はあった。気がついたのはお前が初めてだ」

 

「健康診断をしなければ、私とて貴方だとは気がつきませんでした。幻術も使わず別人になれるのは素晴らしい才能です。私は、幻術を使ってもプロからはダメだしされました」

 

 挟間ボンドルドとトビが世間話をしている最中も、うちはサスケは必死に頑張っていた。志村ダンゾウを幾度も殺すが、イザナギによって全て無かった事にされる。だが、大蛇丸の元で長年修行を積んだうちはサスケも伊達じゃ無い。志村ダンゾウが幾度も術を行使する事で、カラクリに気がつき始める。

 

「あれは、木遁……どうやら、木ノ葉隠れの里は犯罪組織と仲よくするのが好きらしいな」

 

「此方を見ても大蛇丸様の情報は売りませんよ。大蛇丸様とは個人的な取引をしておりますので、ご容赦下さい。信用第一の職業ですので…だからこそ、暁も私を買って頂けているのでしょう」

 

 永遠の万華鏡写輪眼を備えているうちはサスケ。娘の眼のお陰で、志村ダンゾウに対して優位に立ち始めた。志村ダンゾウの腕にある眼が6個も閉じてる。つまり、イザナギを使える回数は後4回……それまでに志村ダンゾウはうちはサスケを倒して、この場から逃げ帰る必要がある。

 

 五影会談でやらかしたとは言え、火影という地位はまだ剥奪されていない。対暁で奮戦したこともあり、上忍衆達からの票を纏めれば正式な火影となれる。忍び連合の特需を利用して、木ノ葉隠れの里を復興させる気でいた。

 

 五代目火影とは天と地ほどの差がある程に里を思っている男だ。五代目が志村ダンゾウであったなら、時代は変わっていただろう。少なくとも今の木ノ葉隠れの里のような惨状にはなっていない。

 

「そうだったな。まぁ、今となってはどちらでもいい。お前達一家は、暁の貴重な戦力である事に変わりは無い。鬼鮫が戻ってきたら改めて今後のプランを伝える。お前が表に立つ気が無いのは知っているが、無理矢理にも引きずり出すぞ。これから始まる忍界大戦は、過去とは違う。敗北が許されない連合側は、死に物狂いになるはずだ」

 

 通常の戦争であれば、落としどころというのは用意されている。そうでなければ、どちらかが全滅するまで戦争する事になってしまうからだ。その落としどころが今回の忍界大戦における最大のポイントだ。

 

 暁側としては、どのような被害を出しても最後に立っていれば勝利となる。だが、忍び連合側は、それではダメだ。戦争というからには、勝利して得る物がなければならない。暁側を倒して連合側が何を得るのか……命を賭けた戦争で得られるのは名誉と基本給。

 

「医療忍者を皆さんは何だと思っているのでしょう。私のような半端者が戦場に立っては、無駄な混乱を招きます。代わりに、私が戦場に加わるより効果的に連合側の足を引っ張りましょう」

 

「ほぉ、どうやるんだ?アイディア次第では、裏方でも構わんぞ」

 

「簡単ですよ。5大国と鉄の国……計六カ国しか参加していない連合ですよ。常日頃、大国の被害を被っている小国達が今こそ立ち上がるべきだと思います。積年の恨みを晴らす機会ではありませんか」

 

 挟間ボンドルドの考えにトビは、その手があったかと驚いていた。大国の周辺には、小国が乱立している。対暁で使える忍びは戦力として捻出される事になる。つまり、国防がおろそかになる。

 

「採用だ。ゼツに大国の防衛網が薄い場所を調べさせて、周辺諸国に無償提供しよう。で、他には?」

 

「無限月読を大衆受けするように宣伝して、潜在的な味方を増やします。そもそも、忍び連合に参加する大半の忍者が無限月読について、良く理解していません。よく分からないからこそ、危険だから排除しようなどとおもうんです」

 

 挟間ボンドルドは、トビに伝えた。幻術より酷いのが現実であると……つまり、都合の良い幻術を永遠に見られる夢のシステムとして人々に提供する。この術が発動すれば、英雄になり美女を侍らせて暮らす事だって可能だ。望めば失った家族にすら会えると。

 

 大事な事だが、人は高みを目指さず低い方に流れるのが大半だ。それも低い方が楽で美味しい思いができるならば尚更のこと。

 

「確かに、そんな使い方も出来るには出来るが……それで本当に潜在的な味方が増えるのか?」

 

「確約します。世の中、死んでから家族に会えるような希な人達も確かに居ますが……そんなものはレアケースです。現実と変わらない夢ならば、夢で過ごしたいと思っている者達は沢山居ますよ」

 

「なるほどな……あ、サスケの方は終わったようだな。いかん、あれは裏四象封印術!!サスケ、ダンゾウから離れろ」

 

………

……

 

 志村ダンゾウは、最後まで本当に木ノ葉隠れの里を思い死んでいった。彼の最後の言葉は――

 

「ヒルゼン、次は儂の番のようだ、何処まで行ってもお前には追いつけなかった」

 

 その思いに感銘を受けた挟間ボンドルド。封印術の射程ギリギリで志村ダンゾウに声を掛けた。

 

「分かりました。私、挟間ボンドルドが貴方の願いを叶えて差し上げましょう。しばしのお別れです」

 

 志村ダンゾウは直感した。うちはサスケより、挟間ボンドルドを巻き込むべきだったと。だが、もう間に合わない。

 

 こうして、志村ダンゾウのファーストライフは終わりを迎えた。

 

 

◇◇◇

 

 六代目火影がはたけカカシに決まった頃、元六代目火影最有力候補であった者が、新たな生を授かっていた。

 

 暗闇の中で目覚めた彼女は、ここが死後の世界かと一定の理解を示す。暗く冷たいその場所は、まるで前世の業のようだと。

 

 その証拠に、目の前に紫色の光る縦ラインがあった。

 

「ご気分はいかがですか?メジロアルダンゾウ(・・・・)さん。名門に相応しいバ体をご用意させて頂きました」

 

「何が目的だ」

 

 だが、それに答えたのは挟間ボンドルドでは無かった。彼の旧友である元男だ。

 

「無駄じゃよ。ボンドルドに目的なんぞないわ。全く、お前までこっち側にきよって。なんだ、そのおぞましい者を見たような顔は……分からぬか、ヒルゼン(・・・・)スキーじゃよ」

 

 こうして、音隠れの里では着々とバ体達が増えていった。彼女達が、無限月読の広告塔になり、都合の良い夢 (意味深) が見られるとの事で潜在的な暁の味方が増えつつある。

 




次は、

「やめておけカカシ、そんな術は……え!?お前は、その眼」

がいいかな。


PS:
暁では、この度の忍界大戦で傭兵を募集しております。
対価として、無限月読の特等席をご用意しておりますので、奮ってご応募ください!!

未来は君の手で掴め。
※勝ち馬に途中で乗り換えた方にも席をご用意しております。



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66:やめておけカカシ、そんな術は……

 志村ダンゾウがセカンドライフを送る少し前。

 

 うちはサスケに敗れた志村ダンゾウの遺体をトビが回収。目的は、うちはシスイの万華鏡写輪眼。だが、それを見て挟間ボンドルドは一つ思ったことがあった。

 

「おやおや、私は連れて帰って頂けないのですね。まぁ、うちはサスケ君の治療もありますから仕事は致しますが。さぁ、うちはサスケ君こちらへ」

 

 連れてくるだけ連れてきて、自分だけ帰る雇い主に若干のクレームを入れたいと思う挟間ボンドルド。アジトまでの距離はそこまでないとはいえ、挟間ボンドルドとてS級犯罪者である。裏事情などを何も知らない、名誉のためだけに死をも厭わない優秀な忍びがいたら戦いになる。

 

「あぁ、頼んだ」

 

 素直に治療を受け入れるうちはサスケ。今の彼の状態は、瞳力の使いすぎで一時的に視力が低下している。他にも、チャクラの使いすぎという事もあり倦怠感がある。医療忍術では、肉体的な不調は治せるがチャクラ不足はどうしようもない。

 

「トビさんが一人帰ってしまったので、アジトまでは私がお送りしましょう。それまで、チャクラ回復に努めて下さい」

 

「ボンドルド、貴様のチャクラを俺に分けろ。どうやら、お客さんの登場だ」

 

 志村ダンゾウを倒した場に来たのは、春野サクラであった。音隠れに両親を移住させて、大蛇丸と握手までし、うちはサスケの子を妊娠しており、挟間ボンドルドの配下になった女だ。

 

「サスケ君!! それに、ボンドルドさん」

 

「安心して下さい。うちはサスケ君、彼女は私の部下です。表向きは、木ノ葉隠れに所属しておりますが、有事の際にはコチラ側です」

 

 挟間ボンドルドは、次に会った際に渡そうと思っていた約束の物を懐から取り出した。巻物に封印されているのは、春野サクラの完全コピー体。白ゼツの能力も活用して作った為、綱手クラスの医療忍者でも無い限り違和感には気がつけないほどだ。

 

 春野サクラは報酬を受け取り、うちはサスケの治療の手伝いに入る。

 

「事情は後で聞く。サクラ………ありがとう」

 

「いいのよ、サスケ君。貴方が無事なら」

 

 たった一言だったが、うちはサスケの感謝の気持ち。それだけで、春野サクラは10年は戦える。子供を妊娠させて、碌に生活費も渡さない、更には怪我したときにだけ頼っているにも関わらず、この一言だけでだ。

 

 そんな夫婦の時間も終わりが迫る。

 

 挟間ボンドルドの白眼には確かに、ここに迫ってくる新たな存在を発見していた。世界最高峰クラスの日向ヒナタの白眼は、実に便利な道具だ。有象無象の白眼とは異なり、何か明確な目的をもって白眼を使うと、勝手にその場所を透視してくれる。その気になれば、砂漠に落としたコンタクトレンズすら見つけられるだろう。

 

「夫婦の再会に水を差すようで申し訳ありませんが、はたけカカシさんがコチラに迫ってきております。春野サクラさんの事が露見するのは、まだ尚早です。とりあえず、揉めた結果、うちはサスケ君が春野サクラさんを殺す感じで行きましょう。大丈夫ですよ。お互いに強力な『祝福』を持っています、はたけカカシさんが間に合うように祈れば、本気の殺意でも防がれます。最悪の場合でも、私がいますので死ぬ事はありません」

 

 春野サクラが事を起こすならば、忍界大戦中が理想的だ。戦争中ならば、忍者が一人程度行方不明になったところで気に掛ける余裕などない。

 

「ボンドルド、貴様を信じるぞ。俺は、殺す気でやる……サクラ、お前も本気で俺を止めろ」

 

「分かったわ」

 

 誰が見ても疑わない様にするための本気の戦い。殺意がなければ、はたけカカシの眼は誤魔化せない。仮に、節穴の眼となった彼でも、その戦闘経験はある。手加減などしていては、要らない不信感を与えてしまう。

 

………

……

 

 はたけカカシは絶妙なタイミングで春野サクラを助ける事に成功した。まるで、近くで出待ちしていたかのようなタイミングでの登場。そして、彼がうちはサスケに放った台詞は…堕ちたなサスケであった。

 

 堕ちるところまで堕ちたのは、木ノ葉隠れが主な原因であり、その次代火影である彼が口にしてはブチ切れるのも当然。更には、暗部出身者であり志村ダンゾウとも深い関係だ。

 

 しまいには、うずまきナルトまで合流を果たす。彼も同じく、ギリギリのところで春野サクラを助ける神業を見せた。現れる瞬間まで、挟間ボンドルドの白眼を持ってしても認識できない程であり、正にその場に突然出現したといっても過言ではなかった。

 

 うずまきナルトは、挟間ボンドルドを見て実に申し訳なさそうな顔をする。

 

「挟間特別上忍……この間はすまねーーってばよ。あの時は九尾に意識が飲まれててそれで。だから、決して俺の意思でやったわけじゃねーーってばよ」

 

「分かっておりますよ、うずまきナルト君。私と君の仲じゃありませんか。あぁ。そうでした君に渡して欲しいと彼女から頼まれていた物がありました。チョコはお嫌いではありませんでしたよね?」

 

 挟間ボンドルドは、綺麗にラッピングされたハート型の箱をうずまきナルトに投げた。そこには、彼の母親が愛を込めてと書いた手書きのプレートが添えられている。

 

「これって、もしかして……」

 

「そうです。このご時世で世間のイベントを皆様忘れがちですが、彼女(クシナ)は忘れておりません。大事な君の為に、手作りだそうです」

 

 完全に取り残される他の者達。だが、時間稼ぎには十分であった。はたけカカシの出現とその他メンバーが来た事で簡単には逃げ切れないとトビの元へ連絡が届き、お迎えが到着する。

 

 そして、チョコを大事にしまい込んでうずまきナルトは真面目にうちはサスケと向き合う。思いの丈をぶつけて、必ず友達として木ノ葉隠れの里に連れ帰ると明言する。正に感動的な瞬間だ。

 

 だが、今現在うちはサスケは、S級犯罪者の中でもトップだ。五影会談襲撃に加え、暫定六代目火影を殺している。そんな奴を、里に連れ帰るなどして無事で済むはずが無い。木ノ葉隠れの里は、各国の協定で決められた捕虜が謎の変死を遂げる場所。S級犯罪者なんて、捕縛された事実すら闇に葬られる。

 

 その事実を知るからこそ、春野サクラは涙を浮かべた。

 

「ナルト、あんたは…」

 

 そんなことをしたら、うちはサスケが死んでしまう。絶対に殺される。それは、仮に火影にうずまきナルトが就任しても同じ事だ。暁襲撃を撃退した里の英雄の一人である志村ダンゾウの命を奪った事は、木ノ葉隠れの里において彼の事情がどうであれ、既に手遅れだ。

 

 はたけカカシもうずまきナルトの言葉を聞き決意した。

 

「マダラは俺がここで処理する」

 

 はたけカカシ……暁襲撃により仮死状態となった事が原因で、瞳力が低下していた。里に残っていた医師の診断では、写輪眼のような特殊な眼についての正確な情報を知る者は少なく、ろくな診断はされていなかった。すなわち、様子見しましょうとなっている。

 

 はたけカカシとしても視力が低下した訳でもなく生活に困らないので、問題視はしていない。いざとなれば、きっと写輪眼が戻ってくると信じていた。彼も強い『祝福』があり、今まで何だかんだで色々とやり過ごしてきていた。

 

 今こそ、写輪眼が復活の時と意気込んでチャクラを眼に集中させる。

 

「神威!!」

 

「やめておけカカシ、そんな術は……え!?お前は、その眼」

 

 トビは見てしまった。はたけカカシの左目に、大事な写輪眼が影も形も無い事を。これには、トビも驚いた。何時かは回収する予定であった眼が行方不明。しかも、当の本人はそれに全く気が付かず、神威とか格好良く瞳術をつかおうとしているのだから、笑うに笑えない。

 

「どうしましたトビさん、早くうちはサスケ君を連れて帰りましょう」

 

「少し黙っていろ、今はそれどころじゃ無い。カカシ!お前は、左目を何処にやった?そうだ、写輪眼の事だ。まさか、今まで気がつかなかったのか?」

 

「まだ、ダメだったか。仮死状態の後遺症で一時的な物だ……と、聞いている」

 

「ボンドルド、少し診てやれ。木ノ葉隠れの里にいるヤブ医者では役にたたん」

 

 暁の協力者のポジションである挟間ボンドルド。彼に対して、はたけカカシを診てやれという程、トビは焦っていた。はたけカカシの言うとおりならば、問題は無い。だが、本当に行方不明ならば由々しき問題だ。

 

「構いませんよ。安心して下さい、診察するだけですので」

 

「わかった。だが、変な事をしたら分かっているな」

 

 はたけカカシもそれを受け入れた。あまりに敵が動揺するので、本当に写輪眼が無くなっている可能性を考え始めた。勿論、敵の診療を受けるという不安はあるが、相手はあの挟間ボンドルドだ。診察する医療忍者として彼ほどの適任者はそうそういない。

 

 挟間ボンドルドの診察は数秒で終わる。

 

「はたけカカシさん、良い知らせと悪い知らせのどちらから聞きたいですか?」

 

「良い知らせからで……」

 

「左目に仮死状態の後遺症は確認出来ません」

 

「わ、悪い方の知らせは!?」

 

「残念ながら左目は、写輪眼ではありません。ただの眼です。仮死状態になったことで写輪眼が喪失した事例などは私は聞いた事がありません。うちは一族の死後は遺体も含めて一族が回収しておりましたので私でも診る機会がありませんでした。他の可能性としては、誰かに抜き取られたという可能性もあります。木ノ葉隠れの里は……五代目火影の暁対策で他国の忍者も多数いました。戦火に紛れて秘伝忍術などが外部流出したと、裏世界では有名な事です」

 

 裏世界のブラックマーケットでは、木ノ葉隠れの里からの流出品が多くある。各国の者達が色々と買い漁っている事実もある。はたけカカシは、自分の眼もそういったマーケットに出回ったと信じた。

 

「カカシ、次会うときまでに必ず眼を取り戻しておけ。いいな、絶対だぞ」

 

「それでは、皆様。寒い日が続いておりますので、お体には気をつけてください」

 

 暁メンバーを見送った木ノ葉隠れの里の者達。

 

 はたけカカシは、写輪眼を失った事実を知る。

 うずまきナルトは、サスケに思いの丈をぶつけ、チョコを持ち帰る。

 春野サクラは、夫と再会し、兄弟子から報酬を受け取る。

 

 表向きこそ無事だが、第七班は崩壊寸前だ。




ついに忍界大戦編にいきます!
ナルト…長編人気漫画だけあって長いですわ。

完結作品がすくないのも納得がいくほどに。


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忍界大戦編
67:諸外国連合


何時も誤字脱字ありがとうございます。

やっと新章に突入です。


 第四次忍界大戦。5大国に加え中立国の鉄の国による対暁との戦争。周辺諸国としては、興味が薄い案件であった。戦争に誘われても、勝利したときの旨味が無い。負ければ世界存亡の危機と言われているが、大国達からお声が掛からない。

 

 周辺諸国達側からすれば、これを機会に色々と大国へ譲歩させる事も考えていた。戦力や物資提供に協力するから、色々と便宜を図れと。だが、大国達は頭を下げるどころか、戦費捻出を要求する。

 

 大国の言い分としては、今こそ一致団結して犯罪組織暁を打倒し、世界を救うと。だから、後方支援を周辺諸国に期待するとの事だ。無論、音隠れの里がある国もその周辺諸国に含まれている。

 

 つまるところ、現在絶大な経済力を誇り安定した平和を維持している音隠れの里に対して、これでもかと言う程の戦費負担を求める脅迫状が届いていた。その金額は、木ノ葉隠れの里を二度復興出来る規模の金で有り、色々と上乗せされているのが手に取るように分かる。

 

 そんな下らない脅迫状が届いたため、挟間ボンドルドは音隠れの里で大蛇丸に呼び出されていた。その目的は単に愚痴を言うためだ。

 

「おやおや、これは随分な物言いです。忍び連合とは、何処と闘う連合なのか疑いたくなりますね」

 

「自分達が始めた戦争の戦費負担を押しつけるなんて、完全に舐められているわ。で、こんな脅迫状を容認した国なんてあるのかしら?」

 

 音隠れの里だからこそ、支払能力がある。だが、他の国では到底不可能な金額である事は明白だ。しかも、負担金額だけ書かれており、詳細が何も載っていない。誰も頼んでいない戦争を勝手に始めて、物資と金を集める連合は悪でしかなかった。

 

 暁だって、戦争物資を手に入れる為には金をしっかり払っていた。その金は自分達の労働で稼いだお金で有り、真っ当な組織に見えるほどだ。

 

「そんな善意の塊みたいな国があれば、拝んでみたい物です。しかし、忍び連合側の言い分も一理あります。人的損耗を請け負うのは確かに大国側です……勝手に始めた戦争ですが」

 

「本当に迷惑するわ。私はね、暁が起こす戦争とか興味が無いのよ。無限月読で全人類が幻術に掛かるとか、是非見せて欲しいくらいだわ。忍術である以上、対抗策の一つや二つ用意もしている。そんな大技は、尾獣のチャクラを利用したとしても何度も出来ないはずだわ。失敗すればそれまでのはず。闘うより、防ぐ方に専念すればいいだけのこと」

 

 忍術を極めたいと思う大蛇丸にとって、無限月読も研究材料の一つとしか思っていない。だから、暁が勝っても負けても音隠れの里には何ら関係はなかった。

 

「流石は、大蛇丸様です。では、またお会い致しましょう」

 

「ボンドルド、これを忘れているわよ。折角、うちの可愛い子達が作ったプロモーションなんだから、大いに活用しなさい。私は、いつまでも大国気取りの愚か者達に嫌がらせでもしてくるわ。最近、実戦から少し離れちゃったから、感覚を取り戻すついでに手狭となった国土を広げるわ」

 

 対暁に対して忍び連合が結成されたように。対忍び連合に対して、周辺諸国が秘密裏に会談を設ける事になる。その議席には、大蛇丸が座っていた。そして、周辺諸国への情報提供者として暁側から挟間ボンドルドも議席に座る。

 

 敵の敵は味方理論。周辺諸国にとって、暁とは一筋の光であった。

 

………

……

 

 忍び連合に不満を持ち対忍び連合として、秘密裏に会合が開かれていた。その開催場所は、世界一平和な里であり、自称中立の音隠れの里だ。

 

 そこに集まったのは、音の国(音隠れの里)を議長として、湯の国、雪の国、月の国、鬼の国、波の国であった。国によっては、防衛費の関係から隠れ里を持たない国も多い。

 

 ピンチをチャンスに変える。誰が言った言葉かは既に定かでは無い。だが、その通り、例年大国に怯えていた小国にとって、暁という存在はまさに蜘蛛の糸。仕事を依頼すれば、確実に最大成果を持ち帰ってくれる優れた者達。

 

 そんな連中が今度は大国相手に忍界大戦をしてくれるのだから、どちらを応援したくなるかは言うまでも無かった。勿論、暁側が無限月読という世界規模の幻術を使うための戦争であることは小国も知るところだ。

 

 だが、それならば回避策は実に簡単であり、それを実行しない大国に苛立ちを覚えている。小国達がかねてから訴えている忍界大戦を簡単に終結させる方法は……

 

「人柱力であるうずまきナルトとキラービーを殺して、尾獣の復活時間を稼げばいいだろう。二人の犠牲で、世界が救われるのだから決して悪い判断ではあるまい」

 

「その通りだ。膨大なチャクラを使う忍術ならば、九尾と八尾が欠けた段階で計画がご破算する」

 

「その通りだ。たった二人を守る戦争で何人を殺す気だ。なにより、あんな桁違いの戦費を負担したら、国民の何割かが死ぬぞ。それほどまでに、二人には価値があるというのか」

 

 各国から選出された者達が意見を交わす。当然の意見だ。二人を守る戦争より、二人を殺して問題を先伸ばしにすべきで議会は纏まりつつあった。時間稼ぎとしてはこれ以上の作戦は無い。なにより、尾獣復活までの時間で残った暁を包囲殲滅すればいい。それで、全ての問題は解決する。

 

 だが、尾獣を有する木ノ葉隠れの里と雲隠れの里が猛反発するのは目に見えている。

 

 その場を取り仕切る議長である大蛇丸が口を開く。

 

「貴方達は、バカなの?こんな下らない会議で私の時間を無駄にさせないで頂戴。大国の目に余る行動は今に始まったことじゃないわ。確かに、大国が人的損耗を引き受けるというのだから一定の理解はしてあげるわ。でも、これを一度飲んだら同じ事を何度もやってくるわよ。こんな最低の前例は作るべきではない」

 

「その通りです、大蛇丸様」

 

「全くです」

 

 誰もが大蛇丸の意見に賛同した。経済規模が大国に匹敵し、伝説の三忍と名高い大蛇丸がトップを務める里だ。小国達が議長に推すのも当然。大蛇丸の意見で全てが決まる会議である。

 

「別に私は戦争がしたいわけじゃないのよ。でもね、人に舐められるのは大嫌いなの。だから、今日は特別にゲストを招待したわ。先ほどから、私の横の席に座っている彼、知らない人もいるだろうから紹介しておくわ。S級犯罪者にして、暁に協力しているフリーの忍者……挟間ボンドルドよ。彼から、プレゼントがあるらしいから受け取りなさい」

 

「ご紹介にあずかりました挟間ボンドルドです。幾人かの方には、お会いした事がありましたね。お手元に、大国の防衛網の書類。フリーの忍者……主に里を追われた犯罪者や諸事情で抜け忍となりたいと考えている有能な者達を纏めたリストがあります。誰だって、金にならない戦争より待遇が良い国を選びますよ」

 

 挟間ボンドルドの元には犯罪者になっても、アンチエイジングの依頼が届くこともあり見知った顔が幾人も居た。火影に頼むと色々と無理難題を言われる為、小国は挟間ボンドルドを頼っている。

 

 そんな信頼における人物が、各国の防衛網や使える忍者の情報を提供してくれたならばやることは一つしかない。好待遇で大国の忍びを引き抜き、その者達を主軸にして国土を広げる。

 

 小国のこの行動は、確実に大国の忍び連合の足を引っ張る懸念材料となる。具体的には、当初予定していた戦力の2~3割は防衛に当てる必要がでてくる。それで十分足を引っ張れる。

 

「おやおや、私は多少は文句を言われるかと思っておりましたが……」

 

「勝っても負けてもどのみち大国に痛い眼を見せられるなら構わん。それに、あの無限月読体験版は、素晴らしかった~。表だって言えんが、暁の方が仁義というものがよく分かっている」

 

「同感じゃな。暁には、色々と安価で助けて貰った。挟間ボンドルドにも、妻の病気を助けて貰った恩がある。情けは人のためならず……儂は礼には礼で応えるぞ」

 

 無限月読体験版をその身で味わった小国代表者達の気持ちは決まっている。勝っても負けても、損はしない。大蛇丸もその身で体験して既に対抗策を構築しており、音隠れの里は安泰であった。

 

………

……

 

 忍び連合が周辺諸国に送った後方支援の依頼は、悉く拒絶された事を影達は知る。パワーバランスを維持する為、人的損耗が諸外国に望めないなら経済的な打撃を与える作戦が実らなかったのだ。

 

 勿論、実るはずも無い。影達は、国家に蔓延る腐った蜜柑を良く理解していない。そいつらが自分の利益のために、予定されていた金額に賄賂など取り分を上乗せしていたから、恐ろしい金額になっている。

 

 忍び連合は、忍界大戦で諸外国に金の無心をしたら断られただけで無く敵を作る。そして、国家防衛のため、戦力の2割強を割くことになりスローペースの戦争準備となった。




暁側の戦力が 薬師カブトさんが居るときより落ちているから、連合戦力も削がないとね!
穢土転生がないから、この位は許されるはず。


次、鬼鮫さんには申し訳ないけど、ソッチの余裕はないのよね。
いよいよ開戦ですわ。
挟間プルシュカが、マダラポジで多数相手に華麗に立ち回るしか無い。
つまり、それと時を同じくして、マダ※さんが……メイクデビュー。

PS:
来週は忙しいので更新ペースが衰えます!



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68:盤外戦

 忍界大戦の戦火が切られようとしていた。五大国の大名から正式に認可された忍連合ではあったが、大きな問題がある。暁の拠点が判明していない事だ。だというのに、着々と物資を集め、忍者を集め、大名達を戦火から遠ざけるなど様々な事を行っている。

 

 此度の忍界大戦は、普通とは違う。暁というテロ組織が相手で、国家に所属していない。つまり、何処を攻め落とせば勝利となるかが明確でない。相手がテロ組織の場合は、組織を壊滅させる他なかった。

 

 それに加え、忍連合は規模が大きすぎる為、情報漏洩がどうしても発生する。これは防ぎようが無い。つまり、今主力部隊が何処にいるかなど簡単に分かる。

 

「ボンドルド、俺は確かに勝つためには何でもやれと言った。だが、忍界大戦を宣言した立場としてこれは……ありなのか」

 

「一騎当千の暁とはいえ、数の暴力とは恐ろしい物です。それに、同じ土俵で闘って忍連合の参謀長奈良シカクに勝てるとは思っていません。同じ土俵で勝てぬならば、盤外戦をやるのが理想的です。少数精鋭という点を最大限に活かす戦争ですよ」

 

 忍連合に参加する者達が、全て雲隠れの里に集結している。今回の総大将が雷影なのだから、ある意味当然かもしれない。しかし、5大国の端にある国家に移動するのにどれだけの手間と労力が掛かるか分かっていない。

 

 だからこそ、暁は土の国の端の端であるド辺境に陣取った。そして、トビの神威空間を利用して、先行リリースした白ゼツを5000体ほど連れてきてそれっぽく見せている。土遁を用いて立派な拠点まで構えており、どこからどう見ても重要拠点に見えていた。

 

 その情報は、忍連合にも伝わる。忍連合側としては、判断に悩む案件であった。場所が遠すぎる。一部隊を派遣するにしても、一騎当千の暁だ。下手な戦力では、各個撃破されてしまう。

 

「白ゼツの量産拠点さえ押さえられなければ勝ち確定か……構わん。俺は、この際不要なプライドなど捨てる」

 

「えぇ、勝てば問題ありません。その為に、出来る努力は全てします。道中の諸外国も今では、通過を許容しておりますが時間の問題です。人は、食べなければ生きていけません。6万人規模の忍者が足並み揃えてここまで来るのに最短でも一週間はかかるでしょう。その間に、伸びきった補給線をじわじわ削ります。トビさんの忍界最高峰の時空間忍術……期待しております」

 

 挟間ボンドルドは、敵主力と正面からぶつかる必要はないと思っている。狙うは、補給部隊、医療部隊、司令塔の三つ。忍連合側も当然警戒しているが、長期移動の間に隙は幾らでもできる。神威を利用した、ヒットアンドアウェイ作戦だ。

 

「なかなか、酷い作戦だなボンドルド。物資不足に陥った忍連合が、民間人相手に徴収しようにも簡単にはできない。なんせ、各国の忍者が集まっている連合だからこそ、その国に所属している忍者は必ずいる」

 

「その通りです。最初は小さな事でしょうが、物資不足が加速すればそれだけ酷い事になる。満足に食べることも出来ず、命を賭けて戦えるなどあり得ません。人は、大義だけでは生きていけない生き物ですから」

 

………

……

 

 忍連合側は、暁の重要拠点が判明した事を喜ぶ。そこには、うちはマダラと挟間ボンドルド、白ゼツが数千体も確認されていた。それに加え、地中からチャクラを吸い上げる謎の儀式も確認される。

 

 だが、場所が地の果てだ。雲隠れの里からどんなに急いでも一週間はかかる。拠点を設置してから、色々準備も考えると十日から二週間が妥当な所だ。だが、忍界大戦であり大名達から許可を得ての忍連合だ。

 

 ここで、遠いから行かないなどという選択肢などない。そんなことをすれば、今すぐにでも連合が瓦解する。下手をしたら、集まった忍者同士で過去の鬱憤を晴らすために殺し合いをする可能性もある。

 

「全軍でいくしかあるまい。暁相手に戦力の小出しは、各個撃破される恐れが高い。それが罠であっても、この儂が正面から全て吹き飛ばす!!」

 

 雷影の鶴の一声で全軍が動き出す。だが、それしか出来ない。

 

 風影の演説のお陰で士気も高く、道中で大きな問題は発生しなかった。それこそ、数日が経過して諸外国を大人数で通過して大国を通り過ぎ、地の果てまで進む。その最中、多少の軍事物資が人知れず行方不明になるが戦時下では良くある事だ。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、トビが忍連合から神威を使って集めてきた軍事物資を周辺諸国へ配った。忍連合の物資を使って、周辺諸国が大国を攻める。実に良く出来た構図だ。そして、その作戦もいつまでも続かないのは分かっているので、暁側は次の作戦に移行する。

 

「後、二日もすれば忍連合の先行部隊が到着するでしょう。白ゼツさん達には、申し訳ありませんが、その能力を使って一人一殺を期待しています。安心して下さい、シュビラシステムのバックアップとカツユのリモート操作によりある程度は戦えます。自爆のタイミングはコチラで行います」

 

「効率的なのは分かるけど、ボンドルドって僕たちの事を何だと思っているの?」

 

「白ゼツさんを人として運用はしておりません。大丈夫ですよ、貴方が死んでも代わりはおりますから」

 

「ねぇ、パパ。私の出番は!?そろそろ、待ちくたびれた~」

 

 敵主力を可能な限り潰す事が挟間プルシュカの役目であった。年端もいかない子供にそんな大役を言い渡す当たり、トビもなかなか酷い男だ。

 

「まだですよ。士気と体力があるときに、挑む必要はありません。もう少し疲れた時……それも夜襲が一番です」

 

 挟間ボンドルドの白眼が忍連合の総攻撃を確認した。

 

 挟間一家はトビの神威空間へと移動し、残された白ゼツ達が一人一殺の自爆特攻を仕掛ける。そのお陰で誰が死んだか分からない状況になったタイミングで、数十名の白ゼツが入れ替わりで忍連合に参加した。

 

 

 

 遙か遠い地で白ゼツが頑張っている最中、トビ含む挟間一家は、水の国へと足を運んでいた。今度は、水の国に拠点を築き、忍連合を誘い込む作戦だ。当然、忍連合はこれで暁の意図に気がつく。

 

 だが、気がつかれたからといって止まらない。戦争とは一度動き出したら簡単には止まらない。それも、世界の存亡を賭けた戦いだ。止められるはずが無い。

 

「次は、白ゼツさんを一万体使いましょう。先の戦いの倍の数を動員する事で、連合も戦力を分断しにくくなるはずです。カツユ、連合側の被害はどの程度ですか?」

 

『はい、3000人程度です。やはり、自爆機能が割れてから露骨に近接を避けられました』

 

 カツユの報告に挟間ボンドルドは満足した。5000人を消費して3000人を倒せたのなら悪くは無い。白ゼツは現在進行形で量産中であり、忍連合に潜んだ白ゼツが医療忍者や補給部隊を巻き込んで死ぬのだから。

 

「ボンドルド、この作戦だと連合にはまず負けないだろう。だが、尾獣はどうするつもりだ?」

 

「彼等は、強い『祝福』を持っております。時期が来れば勝手に来てくれます。我々は、勝利の為、少しでも連合を削り優位な場を整えます」

 

「そういうものなのか。多少の計画変更は必要だが、連合をすり潰す事に関しては納得だ。このまま、じわじわとなぶり殺しにしてやる」

 

 1万人の白ゼツを使い拠点を建築しつつ、忍連合が大移動してくるのを待つだけの暁の戦法。これを止めるには、忍界最高峰のトビと同じレベルの時空間忍術が必要になる。数名なら飛雷神の術で飛ばせるが、大軍レベルではどうしようもなかった。

 

 忍連合は、こうしている間にも士気と物資と金を徐々にすり減らしていく。更には、母国が周辺諸国から襲撃を受けて、国土を奪われているなど聞きたくない情報も入り、連合の屋台骨が崩れるのも時間の問題であった。

 




暁の白ゼツ製造拠点って、薬師カブトが居たからバレてた気がする。つまり、いないから今はバレていない!

そして、水の国は陸続きで無い。忍びって水の上歩けるけど、船が途中で沈没したら大変だよね。


PS:
忍連合って原作だと8万人?くらいだったみたいなので、自国防衛のため2万人程度減った感じにしております。周辺諸国がきな臭いので。


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69:忍連合

 水の国とは実に素晴らしい立地をしている。周囲が海に囲まれており、陸路での移動が不可能である為、他国からの侵入を自然が防いでくれている。そんな場所に、暁の重要拠点が発見される。土の国同様にチャクラを吸い上げる謎の儀式も行われており、忍連合としても可能な限り、早く処理をしたかった。

 

 だが、土の国から水の国までの距離が長すぎる。

 

 暁の目的が忍連合の疲弊にあるのは明白で有り、移動してもまた逃げる可能性がある。時空間忍術である逆口寄せを活用したスムーズな行軍方法も検討される。だが、逆口寄せとは諸刃の剣だ。戦後を考えれば、他国の者と契約など出来ない。

 

 更に、相手は写輪眼を持つうちはマダラ。口寄せする者が幻術に掛かったら、火口の真上で口寄せされる危険性もある。そうなれば、立て直しが出来ない。分かっていても使えない手であった。

 

 忍連合が右往左往している間にも、水の国で暁の拠点が堅牢になっていく。地元民を雇って、24時間体勢で拠点を作っている。地元民達は、戦時下の重税で生活苦。だからこそ、懐事情が温かい暁の元で精一杯働いている。

 

 病気の者がいれば、挟間ボンドルドが治療に向かい現地民の信頼を確実に勝ち取る。医者で有り、優しい声を掛けるだけで人心を掌握できる男だからこそ出来る事だ。

 

 建築中の拠点にて、挟間ボンドルドはトビと会議を行っていた。

 

「国元に残っていた忍びが入り込んでいるが、こいつらは始末してもいいのか?ボンドルド」

 

「表向きしっかりと働いているので無視して宜しいかと。どうせ、忍連合と共に捨てる拠点ですので、幾らでも調べて貰いましょう。むしろ、一万体の白ゼツや我々を見せる事で忍連合は来ざるを得なくなります」

 

 挟間ボンドルドが一番心配しているのは、トビの時空間忍術が何かしらの方法で封じられる事だ。それをやられてしまっては、敗北する。相手もその手の研究はしてくるだろうし、何時か実現されてしまうかもしれない。

 

 よって、そのような事態にも備えて敵兵力を更に減らす必要があった。

 

 今後の計画を話していると、白ゼツが仕事を終えて戻ってきた。彼こそ、誰よりも忍者らしい忍者である。隠密行動において、類を見ない能力を持っている。

 

「ボンドルド、全て指示どおりやってきた。相変わらずやり方が、酷いね。でも、火の国だけでよかったの?他の国から来るかもよ」

 

「6万人の大所帯を道中も維持するには、大国を使うしかありません。それに、小国では大規模輸送を可能とする術がありません。必然的に候補は絞られます」

 

 挟間ボンドルドが考えるような常識的な事は、敵の参謀も当然分かっている。だが、減り続ける士気と物資と金。忍連合を承認した大名とて、いつまでも見続けているはずもない。

 

 早急に戦果が必要だ。

 

「トビさん。できれば、干柿鬼鮫さんを帰還させて欲しいのですが。海上戦において、彼を上回る忍びはまずおりません。彼が居れば、この遠征で忍び連合を2割は削れるでしょう」

 

「それは出来ない相談だ。奴は、今も潜入任務を行っている。代わりに、白ゼツを追加で5000体ほど連れて帰ってくるから好きに使え」

 

 完全に消耗品扱いされる白ゼツ。暁への貢献度は、正に彼がトップである。

 

「白ゼツさん、世の中には人間魚雷と言われる爆弾を人が抱えて敵主力に殴り込む戦術があります。幸いな事に白ゼツさんは水中で生存可能な体を持っております。ここまで、お伝えすればお分かりですよね?」

 

「この人でなし!!」

 

 既に、火の国で停泊中の船舶には白ゼツ達が潜んでいる。彼の隠密能力は、高純度の白眼でも無い限り見抜けない。それほどまでに完璧な隠密だ。

 

………

……

 

 忍連合。土の国にある辺境の地に辿り着き、世界の命運を賭けた戦いが始まって、僅か30分もせずに暁拠点が制圧された。若干の犠牲こそあったが、全体的に見れば被害も少なく完全勝利だと言える。

 

 だが、どの部隊からもうちはマダラや挟間ボンドルドを仕留めたと報告が上がらない。そして、忍連合による暁拠点の徹底検証が行われて二時間後。五影の元に緊急の知らせが届く。

 

「水の国でうちはマダラと挟間ボンドルドが確認されただと!」

 

「こりゃ、ゲリラ戦法じゃな。儂等連合に対して、これほど有効的なやり方はないの」

 

 綱手の言葉に、土影が反応した。土影は、暁が正面からやり合わない方法をとった時点でじり貧だと理解する。その上で、最初に選ばれたのが土の国で良かったと思った。老練な忍者だからこそ分かる事もある。この先、連合が行く先々でどんな事になるかを。

 

「ふざけるなーーーーー!!暁の連中は戦争をなんだと思っている。これが第四次忍界大戦など俺は断じて認めん。認めんぞーーー!!」

 

 怒り狂う雷影。彼のような気質の忍者は、真っ向勝負を好む。そして、強敵には敬意を払う武人だ。だから、このような忍者らしい戦いをする者が大嫌いだ……忍者なのに。

 

 五影達に策を献上する必要がある参謀は胃が痛くなる。奈良シカクの頭脳を持ってしても、6万の大軍を一瞬で土の国の辺境から水の国へ瞬間移動させる事など出来ない。そのような忍術も存在はしていない。

 

「作戦参謀としては、暁がチャクラを吸い上げる儀式を行っている為、追うしかありません。現地に着くまでに、逃亡を防ぐ手段を考えておきます」

 

 奈良シカクは、逆口寄せについて話題に出さなかった。最終手段としてはありだが、今の状況では危険過ぎた。瞳術に優れた写輪眼を相手にそれを逆利用されては戦争ではなくなる。

 

 忍連合は、再び6万人を連れて土の国から火の国へ入り海岸沿いまで一週間掛けて移動した。その間、忍連合に所属する忍者からは、何のために集結したか分からなくなり始める者もいた。

 

 土の国では、5000体の白ゼツしかいなかった。つまり、6万人いるのに戦いに参加したのは最前線にいる一部だけだ。後方にいた者達は、第四次忍界大戦で走ることしかやっていない。これでは、やるせない気持ちになるのも当然だ。緊張がうすれて、酒や女に手を出す者も出始める。

 

 長旅の末、疲れた体を癒やす時間もなく、忍連合は船旅をする。

 

 火の国にある船舶を総動員しての大移動だ。人生において、船に乗った経験がない者もおり、初めての船旅は船酔いという地獄を見る。大型船舶ならば多少はマシだが、6万人規模を輸送できる船など無い為、漁船なども総動員される。

 

 火影達や参謀本部、医療忍者などは大型船舶で優雅な旅。寝床も飯も用意されており、体を休めるには十分。代わりに、一般忍者達は、狭い漁船で囚人以下の扱いを受ける。飯は出ないし、揺れるし、狭い……そんな場所では体など休まらない。居るだけで体力が失われていく。

 

 なにより、水しぶきがかかり海風も当たるので、体力が奪われていく。

 

 そんな状況の中、海に二つの影が立っている。暗闇の中でもハッキリと光る紫色の縦ライン。その光を見た者は、感謝の念すら抱いた。

 

 忍界大戦で恋い焦がれていた思い人である暁にようやく会えたのだ。地の果てから地の果てに移動し、囚人扱いを受けた苦労が今報われると。

 

 静かな夜の海に響き渡る。

 

 二大仙人蝦蟇であるフカサクとシマ、カツユの三位一体の完成形仙人モードを使う唯一の子供……挟間プルシュカの名乗りが。

 

「みんな、初めまして。私は挟間プルシュカ。こう見えても暁の一員なのよ。だからね、本気を出さないとすぐに死んじゃうんだから」

 

 

◇◇◇

 

 挟間プルシュカが忍連合を襲撃する少し前。

 

 夜の海に投げ込まれたくノ一が一人居た。男所帯の忍連合の中にも女性は存在しており、通称くノ一と呼ばれている。命を賭けた忍界大戦で二週間以上も碌なストレス発散もできない。加えて、狭いすし詰めの船内で間違いが起こる事もあった。

 

 夕日紅の様に男の下半身に悪い姿をしているくノ一は、少なからず居る。当然、イライラさせられた男達が遂に限界を迎えた。一人くらい減っても戦死扱いに出来る。小隊長レベルまで囲い込んで上手に報告すれば事は簡単に済んだ。

 

 何より、死ぬのは他国のくノ一……これに尽きる。この言い訳がまかり通る。

 

 そんな夜の海に捨てられた様子を見てしまい襲撃の機会を逃したのが挟間一家であった。水中にいた白ゼツが海から拾い上げたが息絶えている。

 

「せめて、故郷の地に埋めて差し上げましょう。死ねば仏です。さぁ、プルシュカ……敵は畜生に落ちた獣以下です。手加減はいりませんよ」

 

「わかったわ、パパ!!口寄せの術。フカサクさん、シマさん」

 

「いいか、ジライアンちゃん。このコーナーは……なんじゃい、こんな夜更けに口寄せなんぞしよって」

 

「ダメだって父ちゃん。脚質的に…あらまーープルシュカじゃねーか」

 

 何やら、指揮棒を持ったフカサクが誰かと何かの作戦会議をしていたようだ。

 

 口寄せされた二大蝦蟇仙人のフカサクとシマ。契約しているのだからこのような事もあり得る。これが、旧自来也だったら二人に深夜に呼ぶなと殴り倒されていた。だが、可愛い子供ならば別だ。年寄りとは、可愛い女の子に弱い。

 

「ちょっと、悪い人達がいるから懲らしめたいの。だから、力を貸して~いいでしょう。プルシュカのデビューなんだからさ。ママも合わせて三位一体で行きたいの」

 

 フカサクは、挟間プルシュカの話を真剣に聞いていた。カツユとフカサクとシマの三位一体での融合……それで得られる恩恵が必要な程の敵とは一体なんなのだと。

 

「本当ならこんな時間には働かんのだが、ええわ。ボンドルドには父ちゃんを助けて貰った恩もあるさかい」

 

「ありがとうございます、シマ様。敵は忍連合と言われるならず者達の集まりです。周辺諸国に要らぬ戦費負担を求め、今仲間であったはずのくノ一に性的暴行を加えて海に捨てていました。見るに堪えない見下げた連中です」

 

 嘘など一つも言わない真摯な挟間ボンドルド。

 

 俗世には興味が薄い蝦蟇仙人ではあったが命の恩人であり、口寄せ契約を結んでいる挟間プルシュカのためならば、手を貸すのも吝かでは無かった。蝦蟇仙人にとっては、忍連合が敵なのか味方なのかはどうでもいい。契約者が第一である。

 

「わかった。行くぞ母ちゃん」

 

 挟間プルシュカの両肩にフカサクとシマ。頭部にメーニャ(カツユ)を併せ持つ仙人モード。これも一種の仙人モードの完成形。知能がある口寄せ動物が自然エネルギーを溜める事により、動いていても仙人モードへの移行が可能となっている。




汚い忍者の連合は、きっとこんな感じでしょう。
この程度は、当然ですわね。


PS:
※さんがチラチラとコチラを見ておりますわ。
※「認めよう。長距離において、貴様の右に出る者は…」



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70:夜襲

リアル都合で投稿間隔がのびて申し訳ありません。

何時も誤字脱字ご指摘大変助かっております。
改めてこの場でお礼をさせて下さい。

ありがとうございます!


 海上戦。霧隠れの里以外で経験した事がある忍者は、極めて少ない。水遁使いが多く、まさに彼等の独壇場であった……はず。しかし、忍連合である為、不慣れな忍者達も我先にと夜の海へと駆けだした。

 

 戦果が欲しかった。誰もが、我先にと前へと出る。暁と名乗ったからには、子供であろうとも手柄には違いが無い。だが、彼等の認識は甘い。月明かりしか無い海上で敵はたったの二人。代わりに味方は数百人単位、時間と共にもっと増える。敵が正面に居るならば、幾らでもやりようはある。

 

 しかし、そんなのは最初だけだ。

 

 挟間プルシュカが大きく息を吸い込む。そして、必勝への布石を放った。戦場において、感知タイプ以外の忍者は、目視でしか相手を認識出来ない。極めて優秀な感知タイプならば、知らないチャクラを感じれば取れる。だが、忍連合6万人のチャクラを覚えているなど人間業ではない。

 

「火遁・灰塵隠れの術。それじゃあ、パパ。どっちが多く倒せるか競争だよ」

 

 完全に視界がふさがれる忍連合。周囲に敵しかいない挟間一家にとっては、出会う者は全て敵であり、やりたい放題だ。加えて、カツユによりリアルタイム通信でお互いの位置や大技を確認出来るため万が一にも同士討ちは発生しない。

 

「えぇ。では、カツユにカウントをお願いしましょう。パパに勝てたら、明日のお昼は好きな物を作ってあげますよ」

 

「やったーー。負けないんだから~。火遁・龍焔業火」

 

 挟間プルシュカが大量の火炎と共に敵陣に殴り込む。プルシュカの眼にはハッキリと敵の位置が見えていた。仙人モードで感知能力も強化されており、フカサク、シマ、カツユも各々が敵の位置を把握して忍連合を倒し始める。

 

 フカサクとシマが舌技で忍連合の忍者を責め立てる。二人が狙っているのは足場だ。チャクラを足に集中して、忍者達は浮いている。大型の口寄せ動物を貫通し、ペインにすら早いと言われた攻撃だ。視界が塞がれたこの状況で、並みの忍者ではそれを防ぐ術はない

 

「誰か助けてくれ足がぁぁぁ…」

 

「感知タイプはまだか!敵は何処にいる!」

 

 灰燼の中、怒号と悲鳴が止まない。本来、大軍である事を有効活用し、一方的に責め立てるはずが乱戦に持ち込まれると使えない。

 

 三位一体の仙人モードになって本気の本気で挑んだ初の試合は、挟間プルシュカにとって消化試合になりかけていた。全力で忍術を使うだけで、数十人が消し炭になっていく。

 

『仕方がありません。プルシュカちゃんレベルを相手に出来る忍びなんて、それこそ準影クラス以上ですよ』

 

「本当にみんな弱々だね。そんなんじゃ、戦争に勝てないよ。でも、プルシュカは手を抜かない。パパからも油断はするなって言われてるしね」

 

 幾人もの忍者を海の藻屑にした挟間プルシュカの元にたどり着けた男がいた。奇襲部隊長のカンクロウ。砂隠れの里において強い『祝福』を持つ一人だ。そして、彼の手札にあるのが暁からの戦利品。

 

「いい気になってんじゃねーーぞ。とっておきを見せて」

 

「はいはい、神威」

 

 カンクロウが蠍と書かれた巻物を取り出した瞬間、口寄せされる前に片腕ごと神威空間に飛ばす。敵に自慢したい気持ちは分かるが、秘密兵器を出すまで待ってくれる親切な敵ばかりでは無い。カンクロウが今まで出会った忍者達が優しすぎただけだ。

 

 挟間一家が持つ切り札の一つ。

 

『レグさんにお土産が出来ましたね。あぁ、もう邪魔なんで死んで下さい。仙法・高圧舌歯粘酸』

 

 岩をも溶かす酸が高圧縮され横薙ぎに放たれる。カンクロウは勿論、プルシュカを包囲しようと徐々に集まってきた忍者達が真っ二つにされる。派手に動くプルシュカの元に忍連合の主力達も集まり始める。

 

 実の娘に群がる敵軍に変化の術を使ってこっそり混ざる挟間ボンドルド。そして、後方から最大人数を巻き込むようにして、仙法・火葬砲が夜の闇を切り裂く。これにより、キルカウントが挟間ボンドルドの方に傾く。

 

「パパ!!それずるいーーー」

 

「狡くはありませんよ。私の仙人モードは、プルシュカと違って長くありませんし三位一体も使えません。何事も効率重視です」

 

 挟間ボンドルドが拗ねる娘の頭を撫でる。

 

 徐々に灰燼が晴れ忍連合の第一部隊が到着する。彼等は船酔いと疲労から、コンディションはお世辞にも良くない集まりだ。中距離攻撃部隊であり、理想的な距離であるにも関わらず忍術を使えなかった。

 

 挟間一家の周辺には、死体も多いが生存者もいる。

 

 そんな彼等を巻き添えにすれば、多少なりともダメージを与えられる可能性もある。しかし、現状生きている仲間ごと攻撃しては今後の士気に直結する。戦果は欲しいが、残るうちはマダラ討伐に向けては、仲間を見殺しにするのは出来ない選択であった。

 

 少なくとも部隊長クラスの判断では。

 

「ダルイ隊長!何を迷っているんですか、今すぐ総攻撃をしましょう」

 

「ダメだ。あそこには、まだ仲間が生きている」

 

 戦果が欲しい忍者は多かった。

 

 この暗闇の中、誰が生きているかなんて分からない。それに、敵国の忍者ならばどうせ死んでも問題にはならない。

 

「どのみち、下手に生きて他人の足を引っ張る奴なんて邪魔なだけだ。纏めて殺るぞ!!」

 

 秋道チョウザが超倍化の術を使う。見た目からは想像できないが感知タイプの彼は、挟間一家の場所目がけて巨大なこぶしを振り下ろす。巨体になる事で質量が増加する。そこから繰り出される攻撃は凄まじい威力だ。

 

 だが、巨体化したという事は、的がでかくなると言う事でもある。

 

「なんで、身につけている物まで大きくなるの?さようなら、どのみち一族のデブの人……シェイカー影分身の術!!」

 

 挟間プルシュカの腕に備え付けられた発射機構から人を成れ果てへと変貌させる飛針が飛ぶ。それを影分身させる事で数十個に変化をさせて近づく敵を一網打尽にする。忍者のように鍛えられた者達は、一本程度刺さったくらいでは死ねない。

 

 忍連合は、仲間を見捨てられない。下手に殺すより何倍も足を引っ張る効果がある。元人間であった仲間を見捨てられるのか、人間の姿をしていないとはいえ綱手という最高峰の医療忍者がいるのだから治療の可能性も僅かにはある。

 

 だが、挟間ボンドルドでも治すことを前提に作った兵器ではない。最低限でも作るのに掛かったのと同じレベルの時間……年単位の時間が必要になる。それまで、成れ果てとなった人間の面倒を見れる者などいない。

 

「素晴らしい忍術の使い方です。何事も工夫が大事。五影達も駆けつけてきそうなので一旦引き上げます。カツユ、準備の方はできていますね」

 

『勿論です。白ゼツさん、申し訳ありませんが死んで下さい』

 

 火の国と水の国の中間地点。夜の海で大量の負傷者を抱えた今の状態。そこに、新たな被害が加わる。忍連合に紛れ込んでいた白ゼツが医療忍者を巻き込んで自爆。更には、船に隠れていた白ゼツ達が一斉に爆発し、大量の物資と共に幾つもの船を沈没させる。

 

 ズドドドッドーーン

 

 と、夜の闇に響く音と衝撃。燃えながら沈む船を忍連合の者達は、見守ることしかできない。その隙に、撤退の準備を始める挟間一家を拒むかのように最速で駆けつける男がいた。

 

「パパ!!雷影のおじさんが来たよ」

 

「流石に速いですね。どうやら、口寄せはさせてくれないようです」

 

 全身から雷が迸る雷影。その顔から誰から見ても怒り心頭なのが窺える。煮え湯を飲まされ続けていたこの状況で、暁が自ら来たのだから何があろうと最速で駆けつけてきた。もはや、戻ったところで医療忍者も物資も戻らない……ならば、敵を一人でも殺す事が大事だとよく分かっていた。

 

「貴様等ーーーー、生きては帰さんぞぉぉぉ」

 

『トビさん到着まで30秒との事です』

 

 物資強奪に励んでいるトビが、雷影の登場で緊急出動する事になる。トビの時空間忍術の厄介さは、忍連合側も理解している。トビがきたら確実に逃亡される。だからこそ、最悪相打ちすら覚悟にいれている雷影。

 

「雷影様相手に30秒は長すぎますね。分かっていますね、プルシュカ」

 

「勿論よ、パパ。フカサクさん、シマさん、あれをお願いね~」

 

 挟間ボンドルドの仙人モードは3分が限界だ。既に2分が経過しており、仙人モードなしでは挟間ボンドルドでは雷影に勝つことはできない。

 

 よって、雷影相手にやる事は一つだった。

 

 挟間ボンドルドと挟間プルシュカ、変化の術を自らに掛ける。集結している忍連合に飛び込み、分身の術で何人も見かけ倒しの影武者を作り上げた。集団に紛れても顔を変え続け、分身の術で誰が誰だか分からない状況を作り上げる。

 

 初歩的な忍術である分身の術。だが、その最弱の術ですら使い方次第で影相手に十分な時間を稼ぐ事が可能となる。

 

「正々堂々と闘えぇぇぇぇーーー暁ーーーー」

 

 怒り狂う雷影。だが、それでも彼はまだ冷静であった。巻き添え覚悟でやれば、挟間一家に手が届いたかも知れない。だが、忍連合総大将がそれをやってはお終いだ。

 

 ゲロゲロロロロ

 

 集結した忍連合のどこからか響く蛙の鳴き声。聴覚を利用した二大蝦蟇仙人が誇る最強クラスの幻術――魔幻・蝦蟇臨唱。数百人を相手にも作用する。そして、幻術に掛かった者達が続々と海へと沈んでいった。足へのチャクラを維持出来なくなり、溺死コース。

 

 トビのご到着により挟間一家がいつでも逃亡出来る準備が整う。そこに遅れて火影も登場する。

 

「待てボンドルド!少し話がある」

 

「土影様の塵遁をこっそり構えている状態での会話は難しいですね。また、近いうちにお会いしましょう」

 

 仙人モードの感知範囲は、伊達じゃ無い。そんな卑劣な闇討ちなどは、見通されていた。

 

………

……

 

 忍連合が居た場所から離れた陸地で、挟間ボンドルドが逆口寄せで部下を呼び寄せた。

桜色の髪を持つビックダディ・サスケの子を妊娠している元木ノ葉隠れの里の忍者……春野サクラ。

 

「ありがとうございます、ボンドルドさん。きっと、この襲撃だろうと思っていましたので現地に遺体も残してきました。で、私は何を手伝えばいいんですか?」

 

「お気持ちだけで十分です。妊娠されている方を戦争に巻き込むような事はいたしません。音隠れの里までお送り致しますので、ご家族とお過ごし下さい。ご両親に早く顔をお見せしてあげて安心させる事が、私からの最初で最後の部下への命令です」

 

 ホワイトカンパニーに生まれ変わった暁は、入社して直ぐに産休に入っても怒らない。木ノ葉隠れの里だと妊娠中であろうが駆り出される事は間違いない。特に、春野サクラほど優れた医療忍者ならば、そうなる。下手に産休の気配を漂わせたら、事故に見せかけて腹パンで大惨事が起こる可能性もある。

 

「私では役に立てませんか?」

 

「その通りです。今日限りでクビです。木ノ葉隠れの口座は、火影様が直ぐにでも差し押さえするでしょうから、退職金は現金支給です」

 

 挟間ボンドルドが春野サクラの能力に応じた退職金を巻物に封じて渡す。これで、旦那の収入が無かったとしても親子二人で10年は暮らせる金額。春野サクラは、その気遣いに感謝するが、挟間ボンドルドとしても善意だけでこんな行為をしているわけではない。春野サクラの強い『祝福』が連合側にあっては不都合なので、遠ざけたいという目的もしっかりとあった。

 

 そんな兄弟子の思惑など知らず、ただただ感謝する春野サクラ。これも挟間ボンドルドが集めた『祝福』の影響だ。

 

◇◇◇

 

 薬師カブトは有能であった。大蛇丸の片腕とまで言われている彼の存在が、挟間ボンドルドの登場で薄れてしまっている。その事を彼も十分理解しており、挽回のチャンスを狙っていた。

 

 そして、薬師カブトは挟間ボンドルドに追いついた。挟間ボンドルドにしか作れなかったバ体を新規に作る事に成功する。その成果を大蛇丸にも褒められて、今その肉体に新しい命が吹き込まれた。

 

「やっとか、長門のガキを上手く成長させたようだな」

 

「まさか、貴方を穢土バ生の術で蘇らせる事になるとは。貴方のバ体は特別製です。生前に似せて作っておきました」

 

 大蛇丸により新しい生を与えられた者は、絶妙に聞き覚えのあるようなないような術に混乱していた。そして、自らの状態を良く確認する。

 

「お前、俺の生前の姿を知っているというのか。それに、穢土バ生の術だと?輪廻転生の術ではないのか」

 

 黒い髪、片眼を隠し、漆黒のドレスを着たバ体。生前の姿とも色々な点で似ており、他のバ生達とは異なり、そこはかとなく前世と似ている特別製だ。

 

「おぉ?久しいの、マダラ(・・・)イスシャワー。どうした、そんな鳩が豆鉄砲を食らったよう顔をして。それにしても、何故お主だけ生前の面影がある特別製なんだ」

 

「妙に馴れ馴れしいこの感じ、貴様……まさか!?」

 

 永遠のライバル。二度目の生において、こんなにも早く再会が出来るとは予想していなかった彼女。

 

ハシラ(・・・)マックイーンじゃよ」

 

「ハ、ハシラマーーーー」

 

 マダライスシャワーが飛びかかり、キャットファイトが始まる。なんとも平和的で微笑ましい光景であり、その光景を卑劣なステップ使いは録画し、後で飯のタネにしようと考えていた。

 

 




そろそろ、忍連合を立て直せる程の強力な『祝福』持ちが合流するかもしれない。

PS:
※さんもログインをさせてみました。
トビさんは、きっとこれも見越して計画を立ててますよね!?
信じていますからね。


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71:成り代わりの術(極)

 挟間一家による夜襲で忍連合は、甚大な被害を被った。死者約1800名、負傷者500名という土の国で白ゼツ5000名と闘った時より被害は少ないが、たった二人の忍者と白ゼツ爆弾が起こした事件にしては大きすぎた。

 

 中でも死者1800名に含まれている医療忍者が大きな問題となる。忍連合に同行していた医療忍者で生き残ったのが20名にも満たない。生き残った者達も重傷であり、場合によっては長期離脱となる。その事実を、忍連合にいる忍者達も知る事になる。

 

 戦場で怪我をしても碌な治療を受けられない現実が出来上がった。

 

 だが、忍連合の窮地はそれだけではない。今すぐにでも影達は決断しなければならなかった。医療忍者も物資も不足したまま強行してでも水の国へ駆け抜けるのか、火の国まで引き返して再準備をするのか。

 

 後者を選んだ場合には、水の国を見捨てる事になる。その結果、霧隠れの里の忍者達が海上で何をするか分からない。しかし、今回含めて二度の戦いで全軍の約1割近い人数が減ったとは言え、忍連合はまだ5万5千人程度もいる。それを支えるだけの物資が水の国で補充可能なのかという疑問もあった。

 

 それを検討する会議が海上で行われようとしていた。参加者は、雷影、風影、火影、土影、鉄の国のミフネに加え、水影が大名達の護衛で雷の国にいる為、全権代理で青が参加していた。

 

 そして、真っ先に口を開いたのが雷影だ。

 

「会議を進める前に確認しておく。確か、挟間ボンドルドは医療忍者であり直接戦闘力は高くない……そうだな、火影?奴と挟間プルシュカと名乗った子供は、儂に匹敵しかねない速度だった。あれが、特別上忍だとか巫山戯た事はもはやどうでもいい!隠していることがあるならこの場で全て吐け」

 

「それには俺も同感だ。挟間プルシュカと名乗る子供にカンクロウが殺された。少なくとも、そこら辺にいる子供に負けるような者ではない。我々は、連合として行動しているのだ」

 

「早いとこ情報を吐いた方がいいぞ。そもそも、なぜあれほどの奴がS級犯罪者として指名手配されておる。儂独自の調べじゃ、大名達からの評判も上々だったぞ。ある日突然、木ノ葉隠れの里で背信行為が発覚したそうだがな……それも本当かどうか」

 

 雷影、風影、土影からいいように言われる火影。

 

「この際だから正直に話す。奴は、里の機密を知りすぎた。だから、口封じも兼ねて志村ダンゾウと組んで謀殺しようとして失敗して今に至る。挟間ボンドルドと挟間プルシュカについて、私が知っている全てを提供する」

 

 全てと言いつつ、暁や大蛇丸との関係は一切語らない火影。だが、挟間ボンドルドの転生忍術や口寄せ動物の詳細、挟間プルシュカがカツユの娘であり自らが医療忍術を指導した事などが伝わる。

 

 だが、その情報は古かった。だからこそ、雷影は火影の信頼度を下げる事にする。

 

「挟間プルシュカと名乗った子供、両肩にガマが付いていた。あれは、木ノ葉隠れの者からの情報で、二大蝦蟇仙人と呼ばれるフカサクとシマである事は分かっている。なぜ、その情報が貴様の口から報告されない。二大蝦蟇仙人と言えば、三忍の自来也、うずまきナルトと親しいのは分かっている」

 

「だからどうした雷影。口寄せ動物が誰と契約していようが私の知ったことではない。確かに、フカサク様とシマ様とは知らない仲ではないが親しいわけでもない。それにだ、今はこんな所で長々としている時ではない。早く進むか引くか決めるのが先決だろう」

 

 それ以上は、誰も火影を責める事はできなかった。

 

 貴重な医療忍者でありその分野の最高峰の一人。これからも続く戦いにおいて、不可欠の人材。自里の忍者を優先的に診る事も可能である彼女の機嫌をこれ以上損ねるのは、得策で無いと。

 

「当然進むしかあるまい。その為に、儂等は連合を組んだ」

 

「だが、現実的に連合を維持する為の物資が海に沈んだ。船も殆ど残ってない。行くも地獄、退くも地獄なのは間違いない。口寄せで空が飛べる者を優先的に水の国へ送ろう。あちらから船を出して貰えれば多少は楽になるはずだ」

 

 雷影の言葉に風影も賛同した。火影としてもこの流れを期待していた。そして、決して忍連合の大事な決定には口を出さず乗っかる。失敗すれば、雷影と風影のせいにし、成功すれば賛同しただろうと上手に乗っかるつもりで居る。

 

 この会議、誰も言わないが水の国に着くまでに更に死者が出るだろうと誰もが分かっている。チャクラが足らずに海に沈む者が出る。怪我が悪化して倒れる者も出るだろう。

 

 こうして、忍連合の海上大進軍が始まった。水も食料も体力もチャクラもなく、死なないために気合いでの行軍。忍連合をすり潰すのに相応しいやり方だ。

 

 水の国へと進軍を始める忍連合の行く手を阻むかのように……白ゼツ機雷が登場し、一人一殺の鬼畜兵器が登場する。夜の海を見通せる程優れた者は少なく、数万人も居れば誰かが機雷を踏み抜く。

 

 こうして、彼等が水の国に辿り着く頃には更に死者が3000人ほど増えていた。今から、精根尽き果てた体で1万人の白ゼツとうちはマダラと挟間プルシュカ、挟間ボンドルドと闘う事になるかと思うと気が重いと感じる忍者が増えてきた。

 

………

……

 

 水の国における物価上昇率は500%に達しようとしている。水の国に着いた者達は、飲まず食わずを経験し、忍連合は当てに出来ない。己の身を守れるのは己だけである事を再認識させられていた。

 

 保存が利く食料を買い込み巻物に封じる者達が現れる。それも当然の結果だ。

 

 水の国としても忍連合を維持する為、物資を集めるが本来の値段で買えなくなり想像以上の出費となる。その負担は、連合持ちであっても負担金額が各国に重くのしかかる。

 

 そんな浅ましい光景に挟間ボンドルドは、満足していた。

 

「もう一押し、二押しと言ったところです。忍連合が策を講じる前に、影分身を残して次へ移動しましょう。彼等は、長く水の国に滞在する事になるでしょうから」

 

「二人の実力がここまで高いとなれば、影分身よりもっと良い物を使う。開戦当初は、一抹の不安もあったが忍連合相手にここまで一方的な事ができるとは思っていなかった。尾獣は、まだ手に入っていないが時間は幾らでもある。よくよく思えば、暁の尾獣集めは長期プロジェクトだったからな」

 

 挟間一家とトビが、豪勢な昼食を味わっていた。忍連合は、一部心ない忍者のお陰で明日食べ物にありつけるか怪しい者も多い中、有り余る物資で英気を養う。

 

「ママ、あーーーん。ママの大好きなピーマンよ」

 

『ダメですよ、プルシュカちゃん。好き嫌いしたら……だ、ダメですって。そんな顔をしてもママは……。あーーーん』

 

 涙目で訴える可愛い娘には、勝てないのが母親だった。微笑ましい家族の姿に、トビも良い家族だなとぼそっと言う。

 

「で、ボンドルド。あの春野サクラとかいう小娘を音隠れの里まで送ってやったが、本当に逃がして良かったのか?コチラの事情を……知らないな」

 

「えぇ、その通りです。それに彼女は私の個人的な部下であり、先日クビにしました。我々は少数だからこそ今の動きが可能です。無駄に人を増やす必要はありません」

 

「良いだろう。ボンドルドも想像以上の働きがあったからな。今後も期待している」

 

 挟間ボンドルドと挟間プルシュカのチャクラを吸い取り白ゼツが二人に成り代わる。過去に、暁がうちはイタチと干柿鬼鮫を完コピして木ノ葉隠れの忍者を足止めした術だ。生きている忍者と相当量のチャクラが必要なのだが、生け贄となる忍者は港に腐るほど居るため、材料には困らない。

 

 忍連合は、今度こそ逃げも隠れもしない挟間ボンドルド(成り代わり)と挟間プルシュカ(成り代わり)を相手に全力を出す事になる。1万人の白ゼツ爆弾があろうとも、前へ進み続ける未来が待っていた。

 

 

◇◇◇

 

 水の国に到着した忍連合は、なんとか二週間維持できるだけの物資を集める事に成功した。先遣部隊が、暁の拠点で挟間ボンドルドと挟間プルシュカを確認する。これは、またとない機会であり、即座に参謀へ連絡が届く。

 

 そして、参謀達が考えた対トビの秘策が実行される。

 

「結界班の配備を急げ!今回で絶対に仕留めるぞ」

 

 敵味方問わず時空間忍術を封じる大結界忍術。結界に閉じ込める事では無く、結界内での特定忍術を押さえ込むという物であり、五大国の英知が集まって開発された対トビのメタ忍術だ。

 

 元々、雷の国で対"綺麗な閃光"に開発が進められていた術であり、今完成に至る。万能な忍術など存在せず対時空間忍術には強いが、誰でも出入り自由の結界となっている。つまり、外に出られたらそれでお終い。

 

 帰りの海路を安全に帰るためにも忍連合は、出し惜しみ無しの全力。火影達も最前線に立ち、包囲殲滅に挑む。初戦の拠点制圧より被害が大きくなろうとも、暁の確固たる戦力がここでそげるのならば安い買い物だと。

 

 そんな大軍の正面には、仙人モードの挟間ボンドルドと挟間プルシュカの両名。忍連合の白眼をもっても100%本人だと判定された。

 

 大軍を前に挟間ボンドルドが大事な事を口にする。

 

「切り札がこれだけだと負けますよ。プルシュカ、時空間忍術が封じられていますのでアンサラーは使えませんが、上昇負荷を解禁します」

 

「本当!!やったぁーー」

 

 上昇負荷の対象にしてから、絶妙にジャンプで回避できる火遁・業火滅却を使う事で殺すというやり方。原理を知らねば、誰でもジャンプで避ける。無駄なチャクラを使わずに避けられる攻撃は避ける……それが忍者には染みついた行動だ。

 

「すみませんね、プルシュカ。分身とはいえ、貴方までここで使い捨てるような事になってしまいました。お付き合い頂くフカサク様とシマ様にも深い感謝をいたします。後で、本体の方にはお礼を届けさせます」

 

「いいのよ、パパ。付き合って貰っているのは私の方なんだから、しっかり見ててね一人前のレディになった証拠を」

 

 白ゼツの成り代わりの術は、武装まで完全コピーする優れもの。カートリッジフル装備の仙人モードの二人が死に物狂いで忍連合と正面からぶつかる。

 

 たかが二人、されど二人……家族愛の力を忍連合は体験する事になる。




あの特別製の成り代わりの術って、白ゼツさんも絡んで居るとおもうんですが正しかったかな。でも、違ってもそう言うことで!
本人チャクラを使うので大量生産は不可ですぜ・・・流石に、この術はマジで汚い。


PS:
時空間忍術神威のちょっとした応用で、魔剣アンサラーって可能だと思うんですよ。
懐かしい技だけど、知っている人いるかしら^-^


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72:貴方達の旅路に…溢れんばかりの…祝福と呪いを

 

 5万人を超える忍連合と真っ向から衝突する挟間一家。忍連合側も前回の夜襲で学んだ。近接戦闘で乱戦に持ち込まれれば不利になる。可能ならば、中距離・遠距離で討ち取りたいところだ。

 

 距離を詰めてくる挟間一家に、土影オオノキが前面に立つ。

 

「塵遁・原界剥離の術」

 

「仙法・火葬砲」

 

 お互い必殺の一撃であり、術同士が相殺される。土影という忍連合を支える一角を倒す事は暁側にとって有利に働く事は間違いない。その為に挟間ボンドルドは、一騎打ちなど想定しない。

 

 挟間一家がやる事は、乱戦に持ち込み忍術に使用制限を掛けることだ。なんせ、時空間忍術が封じられているのだから暁側も相手の忍術を封じる動きにでるのは当然だ。

 

「まさか、相殺されるとは。そっちに行ったぞ風影!」

 

「そうはさせないんだから!風遁・真空連波」

 

 挟間プルシュカが風影の行動を妨害し、風影と土影を100m圏内に捕らえることに成功した。初見で万華鏡写輪眼の能力―上昇負荷の特性を見抜くのは不可能。挟間一家は、この場で影を最低一名は殺したいと考えている。忍連合の最高戦力を削げば、それだけで士気がだだ下がりになる。

 

「私の眼と感覚では、お二人とも本体です。プルシュカの方は?」

 

「同じだよ、パパ!」

 

 砂分身とか岩分身とかそんな術ではない。塵遁と絶対防御の砂を確かに確認した。だが、影クラスともなれば、謎のイザナギ現象が発生する。それでも、やってみる価値はあると思い挟間ボンドルドは、娘の万華鏡写輪眼を解禁する。

 

 その能力の範囲に挟間ボンドルド自身もいるが問題ではない。だからこそ、敵はその能力の特性を理解するのに、更に混乱する。まさか、敵味方問わずに作用する術だとは考えにくいと思うからだ。

 

 挟間プルシュカの眼が万華鏡写輪眼へと変わった。だが、その眼の変化は、コンタクトレンズによりバレることはない。

 

「プルシュカは、地上の敵を。私は、上空の土影と風影を狙います……雷遁・明星へ登る(ギャングウェイ)

 

「油と風遁をお願いね。火遁・業火滅却」

 

「任せておけプルシュカちゃん」

 

「油は父ちゃん、風はまかせとき」

 

 挟間プルシュカが、3mという絶妙な高さに調整した業火滅却を維持しつつ敵陣に特攻を仕掛ける。忍連合の中には土遁で炎を防ぐ者もいるかもしれないので、そういった逃げ方をした者達をすり潰していく。

 

 だが、大半は皆ジャンプして回避をする。忍者ともなれば5mの垂直ジャンプすら可能だ。3mの炎に対して、安全を考慮して4m程度以上は誰もが飛ぶ。だが、4mというのは、上昇負荷の対象となった者には致命傷となる。

 

能力の負荷の効果。

 1m上昇で軽い眩暈・吐き気。

 2m上昇で重度の眩暈・吐き気・頭痛。

 3m上昇で平衡感覚の消失・幻聴・幻覚。

 4m上昇で全身への激痛と穴という穴からの流血。

 5m上昇で全感覚の喪失と意識の混濁・自傷行為。

 6m上昇で人間性の喪失・死。

 7m上昇で確実な死。

 

 鍛え抜かれた忍者であっても、経験したことがない苦痛が襲い掛かり碌に動けなくなる。飛び上がった忍者達がボロボロと地面に自由落下していきそのまま火に飲まれて死んでいく。

 

 その様子に忍連合側は何かしらの術かと想像するが、理解は出来なかった。この上昇負荷は、「発動時に挟間プルシュカを中心とした半径100メートル圏内」がネックとなっている。その為、挟間プルシュカが一度術を切って、再度発動するまではターゲットになっていなかった者は効力の対象とはならない。

 

 だが、効力の対象となった者は術が切れるまで何処にいてもその対象となる。

 

「この雷遁、自動追尾か……うっ」

 

 土影が雷遁・明星へ登る(ギャングウェイ)を避けるために3m上昇した。突然襲い掛かる不調に、土影であろうとも忍術が維持できなくなる。落ちるだけの存在となった土影に挟間ボンドルドは狙いを定める。

 

 挟間ボンドルドの武装や忍術については、風影も事前ミーティングで知っていた。だからこそ、次放たれる忍術が分かっており、それを回避する為に動く。うずまきナルトの九尾チャクラを纏った状態ですら拘束する程の水遁。そんな者を人間に使ったら、圧力でバラバラになってしまう。

 

「水遁・月に触れる(ファーカレス)……閉じろ」

 

「土影ーーーー!!」

 

 落下する土影を囲う様に展開される挟間ボンドルドの忍術。だが、風影の砂が土影を拾い上げ、上空(・・)へと持ち上げた。下から狙われた術に対して上に逃げるというのは正しい判断だ。だが、それが決定打になる。落下したポイントより更に2メートルほど上まで持ち上げた事により、再度1m~3mの上昇負荷に加え、4mと5mの上昇負荷まで追加される。

 

 何が起こったか理解できない風影。唯一分かっているのは、土影が息をしていないという事だけだ。鍛え上げられた若者でも昏倒するレベルの上昇負荷を短時間で何度も与えるなど、鬼畜の所行。

 

 その様子は、しっかりと他の忍者達にも目撃されていた。挟間ボンドルドと挟間プルシュカの存在は注目されており、全ての挙動に注目が集まっている。だからこそ、風影が助けたとおもったら、実は土影にトドメを刺していたなんて状況も見逃されることはない。

 

 この状況を利用するのが白ゼツだ。混乱に乗じて、忍連合側の忍びと入れ替わっている。その中には、岩隠れになりすました者もおり、白ゼツが成り代わりの術の本当の使い方を披露する。

 

「やはり、砂隠れはこの機会に土影様を亡き者にする気だったんだな!!俺は、見ていたぞ、助けるふりをしてトドメをさした瞬間を」

 

「砂隠れは、我々岩隠れが風の国境付近の村を襲ったなど、ありもしない罪を捏造し里の評判を露骨に下げてきた悪だ。土影様はな、誤解は解けるといってお前達が何と言っても笑って許されたお人だぞ」

 

「風影様がそんなことするはずないだろう。むしろ、岩隠れの連中が暁とグルじゃないのかよ。海上での死者……岩隠れだけ露骨に少なかったのを知らないとは言わせないぞ」

 

「毎年毎年、岩隠れが原因でどれだけの被害が砂隠れに出ていると思っている。風影様をこれ以上侮辱するなら暁の前にお前等から殺してやる」

 

 両者の忍者が言い争う。だが、全て成り代わりの術で変化している白ゼツ達だ。しかし、周囲の者達はそれを知らないし、共感を得られる言葉を多々並べる。言い争いはヒートアップして、ついには成り代わりをしている白ゼツが、両者の陣営の忍者を襲う。

 

 飛び交うクナイや起爆札。

 

 その状況をみて咄嗟に風影が砂を使い拘束に走るが、無駄であった。捕まった者は、起爆札を使い自爆し、風影が圧殺したかのような演技を披露する。

 

「落ち着け皆の者!!」

 

 風影が誇る絶対防御の砂が、忍連合を拘束するのに大量に使用される。つまり、この時、防御が手薄となる。その隙を見逃すほど挟間プルシュカは甘くはない。風影に注目がいった隙に必殺の一撃を準備していた。

 

 忍連合が、凄まじい熱量を感じたときには既に遅かった。

 

「ナルトお兄ちゃんから教わったとっておきだよ!!仙法火遁・螺旋手裏剣」

 

 螺旋丸に火の性質変化を加えた挟間プルシュカ必殺の一撃。当たれば、超高温で相手を焼き尽くす。砂による絶対防御であれ、中身の人間が人間の範疇である限り耐えられる限界温度は決まっている。

 

 風影は、投げられた火遁・螺旋手裏剣を見て死を悟った。死んだはずのカンクロウやテマリが手招きしている幻を見る。だが、砂隠れの未来のため、まだ死ぬ事はできないと風影は覚悟を決めた。

 

 大量の砂によるガードは間に合わない。だったら、土影を盾にして術を早期に発動させて逃げれば良いという事に閃く。その考えは正しかった、何かしらの目標に当たることでその周囲を巻き込んだ火炎地獄が出来上がる。

 

「悪いな土影。砂隠れの未来のためだ」

 

 土壇場で覚醒する風影。己の命と死んだ命……どちらに価値があるかは明白だ。

 

 土影バリアを利用し、挟間プルシュカの必殺の一撃をギリギリ回避に成功する風影。その勇姿を目に焼き付けた岩隠れの忍者達。

 

「素晴らしい。機転の利かせ方、忍術に対しての洞察力、どれをとっても一流です。やはり、貴方は風影に相応しい」

 

 称賛する挟間ボンドルド。その称賛とは裏腹に、命が助かった風影の忍連合における立場は確実に悪くなりつつあった。

 

………

……

 

 やはり、無勢に多勢。白ゼツ爆弾も活用して大軍を相手にしていたが、挟間ボンドルドと挟間プルシュカのチャクラも限界を迎えていた。仙人モードが解けた頃合いで、雷影と火影が前線に現れて、挟間一家を追い込んだ。

 

 その結果、火影が息絶えそうなボンドルドに声を掛ける。挟間ボンドルドの現在の状況は、上半身と下半身が分かれておりいつ死んでもおかしくない。

 

「ボンドルド。貴様が、化け物に変えた者達を戻す方法を教えるならば、プルシュカの命だけは保証してやる」

 

 挟間ボンドルドの横には、血を吐いて死にかけの娘がいた。仙人モードを使い切った状態で雷影と一戦を交えて、生きているのだから称賛に値する。対峙した雷影とて、無傷ではない。これを年端もいかない子供がやったのだから、称えられるべきだ。

 

「ははは、パパ。ごめんね、負けちゃった。ねぇ、パパ。私、パパの力になれたかな」

 

「勿論です。プルシュカ、よく頑張りましたね。後の事は、パパに任せてもう寝てなさい。おつかれさまです」

 

 忍連合と影達に囲まれた状況で挟間プルシュカが息を引き取った。娘を抱き寄せる挟間ボンドルド。そして、集まった忍連合へ精一杯のエールを送る。

 

「どうか…どうか貴方達の旅路に…溢れんばかりの…祝福と呪いを」

 

 挟間ボンドルドも同じく息を引き取った。その瞬間、湿骨林を中心とする地震が発生した事を知る者はこの場には居なかった。

 

 両名の遺体の変化に一番早く気がついたのは火影。崩れ落ちる様に遺体がボロボロになり、中から全くの別人が出てくる。挟間プルシュカとは似ても似つかない子供と知らない男。

 

 勝ちどきを上げる忍連合に対して、この事実は情報封鎖される。数千人の死者と土影を失う激戦で倒したのが影武者でしたとか、冗談にもならない。

 

 

◇◇◇

 

 忍連合が初めての戦果を挙げたと喜びをあげる最中、忍連合に新たな情報が飛び込んだ。暁の重要拠点が風の国……主に貴重な水源がある場所で発見された。そこには2万人の白ゼツ、うちはマダラ、挟間ボンドルド、挟間プルシュカが確認されたと。

 

 耳を疑う報告だった。挟間一家は、忍連合が大量の死者を出して討ち取ったはずなのにと。ここで影武者などだったと影達は報告を出来ないため、転生忍術で生き返った事にする。次は、時空間忍術だけでなく、転生忍術も封じる秘策をもって確実に倒すと。

 

 だが、忍連合は今や5万人を下回った。土影を失った事により、連合の結束がほぼ崩壊に近い状態。帰りの海路で襲われるのは明白。更には、砂隠れに反感を抱いている岩隠れの忍者を大量に国内に引き入れる不安が砂隠れにはあった。

 

 忍連合が出立を決めた前日、風影が土影バリアを使い窮地を逃れた映像が世界に公開される。更には、忍連合が物資を買い漁ったお陰で水の国の物価上昇率が異常値になった事や海路でくノ一を暴行して海に捨てた事実などが露見する。

 

 その悲惨な事件で亡くなったくノ一に対して故郷である雷の国で丁重に埋葬される映像が流れる。そこには、暁メンバーのトビ、挟間ボンドルド、挟間プルシュカが手を合わせる様子も一緒にだ。

 

 暁の目的はどうあれ、一般人視点で言えば良識があるのはどちらなのかは明白であった。

 




鬼鮫さんにはログアウトして頂き、八尾と九尾を忍連合に合流させようかしら。
そして、ログアウトした鬼鮫さんも走る事に…。


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73:サスケェ

明日からまたリアルが忙しいので…今のうちに先行して投稿です。


 忍連合が水の国を出立し、風の国を目指している頃。

 

 うちはサスケが率いる鷹が木ノ葉潰しを実行に移していた。兄の仇として、里の上層部である相談役の二人がターゲット。こんなご時世であっても、相談役達は己の権力を使い一定数の護衛をつけている。

 

 だが、戦時下であり大量の忍者が戦争に参加している事もあり練度は高くはない。そんな連中が、精鋭たる鷹メンバーに勝つことは不可能だ。様変わりした木ノ葉の里はすっきりしており、文字通り木ノ葉が潰れた後になっている。

 

「サスケ、木ノ葉隠れの里ってもう潰れてない?」

 

「関係無い。相談役の二人は生きていて、大蛇丸から二人が隠れていそうな場所も聞いているから、虱潰しに行くぞ」

 

 復讐の手伝いも大蛇丸がしており、身も心も大蛇丸の物となってしまっているうちはサスケ。だが、彼はその事を自覚していない。鬼灯水月は、そんなサスケの状況に同情すると同時にお幸せにと思っている。

 

 史上最悪のS級犯罪者集団鷹……五影会談を襲撃した事もあり、その危険度は暁に匹敵するとされている。だと言うのに、木ノ葉隠れの里をフード一つで歩く姿に誰も反応しない。日々を生きる事が精一杯な里の者達は他人に無頓着になってきていた。

 

 うちはサスケ達が道中を歩いていると、忍連合と暁の忍界大戦の話題が彼の耳にも入る。

 

「ねぇ、聞いた?まだ、戦争が終わらなくて増税されるみたいよ」

 

「そうなの?この間も、水の国への遠征費用とかで臨時徴収があったじゃない。いつになったら戦争が終わるのかしらね」

 

 里に残った主婦達が今後の生活に不安を感じている。そして、近くのテレビから流れる最新情報に鷹メンバーも注目していた。

 

『臨時ニュースです。忍連合は、水の国にあった暁の拠点を制圧し現地の平穏を取り戻したと発表。そして、新たに発見された風の国の拠点を制圧すべく、移動を開始したと情報が入りました』

 

『続いて、暁側からの声明が届いておりますのでお伝え致します。初めまして皆さん、私は挟間ボンドルド。フリーの忍者で暁に雇われた者です。この度の忍界大戦、忍連合側の非道な行いを止めて頂きたい。雲隠れ所属のくノ一が海上で忍連合の方に性的暴行を受け殺害されて遺体を海に投棄した一件、我々は大変心を痛めております。他にも、死んだ仲間を盾にするやり方など、貴方達に人の心は無いのでしょうか?』

 

『他にも、木ノ葉隠れの忍者の方が「どのみち、下手に生きて他人の足を引っ張る奴なんて邪魔なだけだ。纏めて殺るぞ!!」などと言い、味方ごと攻撃しておりました。戦争にも最低限の礼儀というものがあると私は考えております』

 

 証拠映像付きで流される非道な行い。そんな連中が国を跨いで大移動してくるのだから、何処も警戒心を最大にする。終いには、忍連合に国家を通過する許可を出さない国まで現れ始める。

 

『最後に、これを聞いている全ての皆様にお伝え致します。暁では、忍連合と闘う忍者を募集しております。手始めに、待遇といたしまして無限月読における特等席と今の倍の給金を約束します。無限月読は、幻術世界ではありますが、本人にとっては現実と変わりません。死んだ家族、恋人に会いたい貴方。英雄願望をもつ貴方。理想の女性と添い遂げたい貴方。我々は、そんな貴方の味方です。応募方法は、火の国を通過中に忍連合の忍者の首を一つ取ることです。そんな事をしたら捕まると考えているでしょうが大丈夫です。我々の仲間が時空間忍術で貴方を回収します』

 

 無駄に人心掌握するのが上手い声で人々に語りかける挟間ボンドルド。正直、だれがそんな口車に乗るかと鷹メンバーは思っている。

 

 だが、ボッチ忍者には魅力的な提案であった。成人となっても恋人がいなくて、任務をこなして毎日を過ごすだけの忍者だって数多く居る。そんな連中にとって、金の使い道など酒と女とギャンブルくらいだ。確かに、一時的には気が紛れるが……未来に漠然とした不安を抱えている。

 

 そんな連中にとって、無限月読は麻薬みたいなものだ。望む夢を現実として永遠に見ることができる。世界より自分の未来の方が大事だと思っている者達にとっては、まさに最高の報酬だ。

 

 忍連合では、命の危険がある忍界大戦での報酬など全く期待できない。だが、暁は違う。人材を大事にして、潤沢な物資と金がある。最高の医療も準備されている。耐え忍ばない忍者は、このチャンスを見逃さない。

 

「あっちはあっちで頑張っているようだな。俺達は、はやく相談役の二人をやるぞ。こんな里に居るだけでイライラしてくる」

 

「おちつけ、サスケ。俺達もS級犯罪者として指名手配されているんだ。もう少し、慎重に…」

 

 重吾の意見などを聞くようなうちはサスケだったら、犯罪者になどならない道もあっただろう。うちはサスケは、大蛇丸から貰った資料を基に相談役二人を追い詰めていく。里の機密書類の部屋や忍術資料がある部屋、戦時物資がある部屋など色々とまわる事になり、大蛇丸の指示どおり全て回収してまわるうちはサスケは良いように使われていた。

 

………

……

 

 木ノ葉隠れの里の相談役…水戸門ホムラとうたたねコハル。二人は、忍連合を支える為、色々な施策で金を集めていた。その方法の殆どが、金持ちからの徴収では無く広く浅く集める方法。公平感こそあるが、負担する側からすれば重い。里が債券を発行すれば良いのだが、決してそのような事はやらない。

 

 そんな、二人の元に魔の手が迫る。

 

「いまだに成果を上げない忍連合に、大名達は苛立ちを覚えている。あいつらは、金が無限にあると勘違いしているのか」

 

「分かっている。戦死者の預金口座から強制徴収できる法案が明日通る予定だ。それで、当面の問題は解決出来る」

 

 残された家族への金など無い。その金すら、集金して忍連合を維持する金へと変わる。死後に家族がどうなったかなど普通知るよしなど無い。無論、この法案は内密に実行される。前線に知られれば、士気が落ちるからだ。

 

 その話を扉越しに聞いていたうちはサスケは、本当に嫌気が差す。こいつ等を殺す事は復讐でもあるが、実は里への最大の貢献になってしまうのではないかとすら感じている。

 

 扉を切り裂きダイナミックな登場をするうちはサスケ。相談役の二人は、うちはサスケの姿をみて逃亡しようとするが、志村ダンゾウと違い前線を離れてから長く、彼等に機敏な動きはなかった。当然、最前線で殺し合いに勤しんでいるうちはサスケから逃れる事など不可能。

 

「お前達に最初で最後の質問だ。うちはイタチに一族を皆殺しにさせたな」

 

「素直に答えた方がいいよ。今のサスケは、こえぇぇよ。何をするか本当に分からないから」

 

 鬼灯水月のフォローはまったくフォローになっていない。どうせ、殺す事には変わらない。楽に死ねるか苦しんで死ぬか、彼等の素直さに掛かっている。

 

「……ダンゾウが喋ったのか。いいや、イタチが喋ったのか。だから、早く殺しておけと」

 

「どうせ、全部知っているのだろう。その通りだ。木ノ葉隠れを守る為、イタチに一族を殺させた。お前も忍者なら分かるだろう。里を守る為だった」

 

 水戸門ホムラとうたたねコハルの二人が素直に話す。だが、彼等が生き残る道は存在しない。

 

「分かった。イタチと同じ瞳術で死ね。そして、あの世で兄に詫びろ……天照!!」

 

 煉獄の炎に焼かれる相談役達。こんな彼等でも、今現在は忍連合を支える大切な存在。大国における指示役が欠ける事により忍連合への影響は計り知れない。

 

 なによりあの世で詫びるなど、実現不可能。いい加減、うちはサスケは子供の顔を見に里へ帰るべきだ。そして、里の現実に眼を向けて誠意に向き合うべき。兄が数百人にも及ぶ甥や姪の生活を支えるため、死ぬ気で走っており労るべきだ。

 

 

◇◇◇

 

 水の国からの帰りにおいても、行き同様に夜襲が行われた。忍連合も警戒していた事と挟間一家が参加していなかった事から大きな被害は出ていない。大型船が数隻、物資と共に沈むだけで済む。人的被害がないだけマシなのか、物資が減って人が減らないから最悪なのか、忍連合は判断に迷う。

 

 そして、火の国の玄関口について、木ノ葉隠れの里で相談役の二人が天照により殺害された事を知る。その犯人は目撃情報からうちはサスケ率いる鷹である事も判明していた。これにより、うちはサスケは、歴史史上初のSS級指名手配となる名誉を飾る。

 

 その報告を聞いた火影は。

 

「ッチ。要らん時にでしゃばって、必要な時に居ないとか老害も極まったな」

 

 誰が聞いているか分からないこの状況で、本音を口にした火影。それを聞いた上忍達は苦笑いしか出来ない。

 

 




そろそろ、サスケェさんの状況も知りたいと思いまして。


PS:
暁側で闘われる方を募集しております。
今なら、設定シート通りの無限月読をご提供致します。
席に限りがござますので、奮ってご応募下さい。


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74:準備

リアルが色々あって投稿が出来ず申し訳ございません。

いつも、ありがとうございます!


 5大国が度重なる大遠征により疲弊した頃合いを見計らい、周辺諸国が次代の覇権を賭けた戦いを始める。暁が勝てば、人類皆仲間。忍連合が勝てば周辺諸国は今まで以上に立場が苦しくなる。ならば、今こそ立ち上がるべきだった。

 

 周辺諸国が足並みを揃えて、5大国の国土を奪い始める。周辺諸国は、この時の為に溜めてきた物資や資金を使い始めた。周辺諸国の忍者の中には、5大国の里を追われて犯罪者になった者達も多くおり、正社員雇用を条件に第二の人生を歩む。周辺諸国の筆頭に立つのが音隠れの里を保有する国家であり、先頭に大蛇丸がいる。圧倒的な美貌とカリスマを兼ね備えた存在で、どこぞの連合とは異なり、一致団結していた。

 

 見方を変えれば、第四次忍界大戦中に第五次忍界大戦が勃発したようにも見える。

 

 これには、忍連合も対応しないわけにはいかなかった。忍界大戦に勝利しても国が無くなっていては意味が無い。大名達も碌に戦果を挙げない忍連合の一部を国土防衛するようにと厳命する。だが、そんなことをやっていたら勝てる忍界大戦も勝てなくなる。

 

 次の主戦場となる風の国には、二万の白ゼツとうちはマダラ(トビ)、挟間ボンドルド、挟間プルシュカがいる。主犯格を誰一人倒していないのに忍連合は、土影が落とされ、2万人近い忍者を失っている。

 

 残された4影と4万人で更に厳しい戦いをする必要があるのに1万人以上を引き抜こうとする大名に忍連合は、対応に悩まされていた。断るのは簡単だ。だが、そうなれば金と物資が止められるのは明白な事。それでは、暁側の思う壺となる。

 

「風の国で必ず仕留める!そして、その足で国に帰ればいい。それまでは、自国に残してきた忍び達で何とかさせろ」

 

 雷影の発言は尤もだった。このような事態に備えて、忍連合に参加予定だった二割近い戦力を防衛に回している。暁との忍界大戦が終わるまでは何とか持ちこたえて欲しいのが彼等の要望だ。

 

 だが、その暁との戦いが難航を極めている。一番の理由は物資不足にある。風の国では、数万の忍者を支えるだけの物資は出せない。国土の大半が、砂漠と荒野が続く荒れ地であり、現実的に不可能。

 

 近隣の火の国では、相談役が暗殺された事により内輪揉めが発生し、物資供給に遅れが生じている。

 

 近隣の岩の国では、土影ガード事件以来、風の国と岩の国の関係が過去最悪となっており忍連合内でも目を離せば殺し合いになりそうな雰囲気があった。忍界大戦が終われば秒で宣戦布告する準備までしているとの噂まであるほどだ。だから、物資を風の国まで届ける要請をしても、一向に届かない。

 

 水の国は遠く、雷の国が必死で頑張っているが、水の国同様に遠いし限界もあった。つまり、忍連合としては風の国で暁を完膚なきまでに叩かなければ、自然消滅の危機を迎えている。

 

「人柱力を守る戦いなどとは言ってられん。あの二人は確実な戦力であり、敵を引きずり出す要でもある。もはや、動員せざるを得まい。それに、ナルトは強い。決して、足を引っ張ることはないだろう」

 

「その意見には、私も同意する。認めたくないが、このままでは暁に勝つことはできないだろう。それに、ボンドルドの奴に時間を与えると何をしでかすか分からん」

 

 風影と火影の意見に集まった者達が皆同意した。

 

 相手が逃げない状況を作り上げるしかない。暁の目的が尾獣であるならば、八尾と九尾を敢えて前線にもってくる事で暁側の主力を留められると忍連合側は想定した。そうなって貰わねば困るのも現状だ。

 

 暁側が本当に持久戦を行い忍連合が戦線維持が出来ず、自然消滅するまで待たれては忍連合側に勝利はない。忍連合が解散後に、個々に狙われるのが一番辛いからだ。暁側にいるうちはマダラ、挟間ボンドルド、挟間プルシュカと大量の白ゼツを一国で止められる自信が雷影も火影もなかった。

 

「いいだろう。八尾と九尾、水影も全て次の戦いで動員する。大名の護衛は、残った者達にやらせる。暁側にもその情報が伝わるように報道機関に連絡するぞ。それと、討ち取った干柿鬼鮫を水の国で埋葬する映像を流せ。あちらがイメージ戦略にでるなら、コチラもやらねばなるまい」

 

 雷影の意見に全員が頷く。次で本当に最後にすべく忍連合が纏まった。

 

………

……

 

 風の国に建築されつつある暁の拠点。

 

 水源を押さえたため、風の国に国防として残されていた忍者達が取り戻そうと必死に向かってきたが、トビ、挟間ボンドルド、挟間プルシュカの三人を前に全員が捕獲されカートリッジへと変換される。

 

 今回、暁の拠点には忍連合から抜けてきた者達30数名も合流をはたしており、なかなか賑わっている。数万人の連合から、たった30数名しか暁に寝返らなかった。だが、数の問題ではない。そのような事態が発生したという事実が大事。

 

 これから忍連合は、いつ仲間に寝首を掻かれるか注視しなければならない。

 

 今後に向けて、挟間ボンドルドは娘と一緒にトビと会議をしている。そんな中、テレビ放送で忍連合から暁宛と思われるメッセージが流れる。忍連合が暁の干柿鬼鮫を倒し、敬意を払って故郷の水の国へ埋葬すると。

 

 干柿鬼鮫の実力を知る挟間プルシュカは、素直に驚いた。誰よりも、尾獣捕獲が上手く、実力も突出していた優しいおじさんが亡くなってしまったと。

 

「トビさん。干柿鬼鮫さんの合流が叶わなそうです。それにしても、戦線に人柱力をですか……忍連合は八尾と九尾を隠すのを止めたようですね」

 

「そのようだな。戦場に八尾と九尾が出てくるなら好都合だ。今度は俺も前線で闘う」

 

 トビは、自信満々に言うが忍連合が彼専用に対策として特別な結界忍術を用意している。神威が使えないトビなど、飛べない豚みたいなものだ。すり抜ける事が前提の戦いが染みついており、今から戦い方を変えるのは難しい。

 

「じゃあ、私とパパで結界忍術部隊を襲えば良いのね!」

 

「いいや、それには及ばない。砂嵐で足止めを食らっている忍連合には、この拠点に残された白ゼツ以外の全てを投入する。数にして一万程度だが、混乱に乗じて結界班と物資を潰す程度ならやりとげるだろう。今は、お前達も休んで次の戦いの準備をしておけ」

 

 結界忍術などは、医療忍術同様に才能が求められる分野になる。簡単に換えがきかない。今回のような時空間忍術を封じる特化型ともなれば習得にも時間が掛かる。

 

 更に、今回は暁に寝返った者達から結界班の情報も手に入っているので、狙い撃ちで一万の白ゼツが地中からのダイレクトアタックを決める。

 

「分かりました、お言葉に甘えさせて頂きます。それで、次の戦い……恐らくは最終決戦でしょう。我々は、八尾と九尾のどちらが担当でしょうか?」

 

「むしろ、聞いておきたい。どちらなら、確実にやれる?」

 

 トビの言葉に挟間ボンドルドは考えた。

 

 八尾と九尾、どちらも強力な存在だ。それに加えて、忍連合には雷影、火影、水影、風影に加えて、数万の兵力もある。それらを同時に相手にしながら、人柱力を確実に()れというだから、悩むのも当然だ。

 

 彼等が持つ『祝福』は、強大だ。手が届く位置にいるが、どちらがより確実かと言えば……挟間ボンドルドの答えは決まっている。

 

「念のためですが、確実に()れる方で宜しいのですね?」

 

「あぁ、その通りだ。残った方を俺がやる」

 

「でしたら、うずまきナルト君の方を担当しましょう。」

 

 その言葉を聞いたトビは、分かったと言い計画を練り始める。そして、各々が最終決戦に向けた準備を始める。

 

 

◇◇◇

 

 音隠れの里。新事業の主軸となっているバ体達の心身を守る為には、有能な医療忍者が必要となる。だが、色々とデリケートな問題を抱えている彼女達を任せられる医師は少ない。

 

 薬師カブトというその資格にたり得る男もいたが……男であるが為、却下される。よって、そこのポジションに就いたのが元木ノ葉隠れの里の忍者で、ピンクの髪をした凄腕の医療忍者……春野サクラであった。

 

 数年は働かずして暮らせる金はあったが、せめて兄弟子が関わっていた事業の手助けをと思ってこの職に就いた。事実、何度か出会うこともあり会話も出来ている。医療忍術などの指導も受けており、メキメキと頭角を現している。

 

コハル(・・・)ウララさん、足に熱が篭もっております。走った後は定期的に冷やして下さいね」

 

「わかった」

 

 一人目の診察を終えて、バ体を送り出す。彼女は、色々な特徴が春野サクラと似ており、二人並んでいたら姉妹に見えなくもない。

 

「次のホムラ(・・・)チヨノオーさん。どうぞ、中に入ってきて下さい」

 

 そして、次の患者が入ってくる。

 

………

……

 

 春野サクラは、何人も診察して思った。なんか、どこかで会ったことがあるような親近感がある患者が多いなと。特に、イタチ(・・・)ワンが春野サクラの前で、「すまない」って泣き崩れてしまい、春野サクラもテンパってしまった。

 

 そして、彼女の親友であるキサメ(・・・)イショウドトウが「お体に触ります」といって、連れて行ってしまう出来事もある。

 

 そんな理解に苦しむ職場ではあったが、充実した日々を送る。やり甲斐のある仕事と産まれてくる子供と愛する家に帰ってこない夫。

 

 そして、恩人である挟間ボンドルドのため、精一杯働いている。

 




そろそろ、最終決戦に突入!

サスケェ君が最終決戦で出てくる事が無い可能性がある!
だが、サスケェ君だから仕方ないか。


PS:
オビトも早く音隠れの里に呼んであげたいよね。
トレーナーは、彼女しかいませんよね。
会いたいなら会わせてあげます。


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75:卑遁・飛雷神の術

 忍連合側は、二人を守る為の戦争といって始めた忍界大戦の宣言があったにも関わらず、二人を導入した事で現場は混乱していた。二人を守る為に、開戦当初には6万人も居た忍者も既に4万人程度にまで落ち込んでいる。

 

 道中の度重なる白ゼツ爆弾攻撃で、物資がない。数万人規模を支える水源などは、風の国にはなく、水の補給は水遁が得意な者達が死ぬ気で頑張って維持している。お陰で何人もの忍者がチャクラ不足で潰れて、悪循環の理想系になっている。

 

 水遁などは口から水を吐く術であり、くノ一達に男忍者達が群がる気持ち悪い映像がニュースでも流れており、忍連合のイメージ低下に繋がった。

 

 空腹に加え、過酷な風の国の環境。そこに、成り代わりの術で潜んでいる白ゼツが殺人や暴行を行う事で忍連合内は、悪意に満ちていた。その為、合流してきたうずまきナルトでも白ゼツの存在を感知できない。忍連合に植え付けられた猜疑心は、増える一方だ。

 

 そんなギスギス忍連合は、風の国を移動するだけで数百人にも及ぶ仲間の骸を出す。そして、念願であった暁側の拠点へと辿り着く。それからは、陣営を構築して最終決戦に挑む準備をしていた。最前線には、目立つ餌として八尾のキラービーと九尾のうずまきナルト。

 

 4万人規模の敵陣営を眺める暁陣営。

 

「いつ、攻めてくると思うボンドルド」

 

「早ければ明日の昼。遅くとも明後日でしょう。忍連合の食料物資は、底をついておりますので一刻も早く全軍で襲い掛かりたいと言うのが本音だと推測します」

 

 挟間ボンドルドの予想は当たっている。移動して直ぐに攻め込む事は、忍連合側はできなかった。作戦本部も作らないといけないし、最終戦に向けて旨い飯を出す必要もあった。最後の晩餐になるかもしれないのに、飲まず食わずで死闘に挑む事など人はできない。

 

「パパ~、こっちも準備できたよ」

 

「こっちも準備は終わったよ。流石に疲れたよ。僕達が人間だったら過労死してたよ。しかし、本当に使えるの?不発した起爆札だよアレ」

 

「問題ありません。不発の原因は、込められたチャクラ不足です。だからこそ、それを補う儀式をしていたのではありませんか。他にも利用はさせて頂いておりますが」

 

 挟間プルシュカと白ゼツが最終決戦に向けての準備をしており、それが完了した。暁側とて、八尾と九尾に加え4影と数万の軍勢を相手にして暢気にお茶を飲んでいたわけではない。

 

 雨隠れの里で小南が使った6000億枚の起爆札。その内の0.1%に不良品があり、爆発していなかったので回収し、再利用して地中に埋め込んでいる。進軍して来た忍連合がその上に集まった瞬間に一斉起爆する手筈となっている。その威力は、長門が全力で放つ神羅天征にも匹敵する。

 

 全ては、このための布陣であった。

 

「ボンドルド、お前に一つだけ言っておくことがある。俺は、お前達一家に感謝している。これは嘘偽り無い言葉だ」

 

 仮面を外したトビが挟間ボンドルド、挟間プルシュカに感謝の気持ちを伝えた。

 

 暁という五影クラスが集まる組織が、今では数名にまで減ってしまい忍界大戦にも不安が残る状況であった。だが、挟間一家の尽力で拮抗どころか優位な状況。その功績は、今まで尾獣を集めた元メンバー達にも引けを取らない。

 

「こちらこそ、貴方を含めた暁メンバーには、とても良くして頂きました。プルシュカがここまで成長できたのも、貴方達が居てこそのものです。念のためではありますが、八尾も強いですが本当にお一人で大丈夫ですか?必要でしたら、祈手をお付けします。この特別製に引けを取らない者ですので、足を引っ張る事はありません」

 

「ボンドルドが連れてきたあの訳の分からない連中か。戦いの邪魔になるから不要だ。それに、俺も切り札と言える物を持っている。八尾程度には負けんよ」

 

 キラービーをトビが担当。

 うずまきナルトを挟間ボンドルドが担当。

 4影と忍連合主力を挟間プルシュカと白ゼツが担当。

寝返り組と白ゼツが作戦本部強襲を担当。

 

 その際には、挟間一家も切り札を使う気でいる。負けられない戦いである為、使える手札は多い方が良い。

 

………

……

 

 うずまきナルトは、忍連合に合流して初めて忍界大戦の状況を聞く事になる。雷の国で修行をしている最中、数万人が殉職している。その原因が、尾獣を宿すうずまきナルトとキラービーを守る為であったのが、彼にはショックであった。

 

 もっと早く呼んでいれば救えた人は多かったかもしれない。

 

「どういうことだってばよ!なんで、こんな状況になるまで俺達を……それに、サクラちゃんが殉職したって本当なのかよ」

 

 この数万に及ぶ被害が挟間ボンドルドと挟間プルシュカと白ゼツの三名によって引き起こされた被害だと知り驚いていた。うずまきナルト自身も彼等の実力が高い事は知っていたが、ここまでの被害を出せるとは思っていなかった。

 

「本当だ。遺体も確認して、火の国で埋葬も行った」

 

「嘘だろう。だって、この間……あっ。なんでもねーってばよ」

 

 数日前、うずまきナルトは二日に一度の電話の約束を守って、ある人に掛けていた。そこで、確かに聞いた……主治医の名前を。

 

 そして、察してしまう。

 

 SS級犯罪者となった親友と春野サクラが一緒に暮らすには、里に所属する忍者では不可能だ。だからこそ、この機会に死を偽装して抜けたのだと。今のうちはサスケの輝かしい犯罪履歴は、世界を三度くらい救う功績がない限り打ち消せない。

 

 その手引きに、誰が居るかも大体理解する程うずまきナルトは成長していた。

 

「でだ、ナルト。お前には最前線に行って貰うのだが……挟間プルシュカを知っているな?なんでも、螺旋丸を教えたとか」

 

「あぁ、仙術修行を一緒にしていた。でも、幾ら強かったっていっても、そんだけの人数をたった二人でやれんのか」

 

 うずまきナルトの疑問に、風影が答えを言う。

 

「戦場では精々2000人の死者が出た程度だ。だが、戦争とは闘う事だけが全てじゃない。その準備に至るまで全てが戦争だ、ナルト。奴は、ソコをついてきた。俺達の補給線、夜襲など満足に実力を発揮できない環境を整えてきている。結果的に、それが響いて数万人の死者へと繋がっている。実際、風の国での戦争も同じだ……忍連合として、ここが分岐点。これ以上は戦争継続能力がない。だからこそ、お前達を守る戦争ではあったが、こうして最前線に立たせる事になった」

 

「わかったってばよ。……それと、サスケはどうなったんだ?」

 

 春野サクラが安全な場所に移ったならば、きっと一緒に暮らしていると信じているうずまきナルト。

 

「情報の確度は、低いが……周辺諸国側の傭兵として、支払の良い仕事を優先的に受けているらしい。5大国ではSS級犯罪者として指名手配中だが、周辺諸国では国を救う救世主扱いとなっているらしい」

 

「サスケェーーー!!お前、何やってんだよ」

 

 その通り、ナニしかやってない。

 

 だが、そんなうずまきナルトの悲痛な叫びは、親友には届かなかった。

 

 

◇◇◇

 

 風の国から遙か離れた地にある湿骨林。そこは、挟間一家が契約している口寄せ動物達が暮らす楽園。そんな楽園は階層構造になっており、人が到達するのは困難な場所だ。

 

 通称第四層と呼ばれる一角にある美しい花が咲く場所……不屈の花園。そこは、クオンガタリと呼ばれる挟間ボンドルドが契約している群生型の口寄せ動物がコロニーを作っている。定期的に運び込まれる忍者などを餌にして数を増やす、とても理性的で賢い子が沢山居る。

 

 他にも同じ階層には、タマウガチなどが生活している。遊びに来た挟間プルシュカがボールを投げると走って取りにいく可愛い犬みたいな子達だ。

 

 更に下にあるのが第五層であり、挟間ボンドルドが持つ最大の研究施設。ここで、祈手達が暮らしており、様々な研究も同時に行われている。研究の補佐には、カツユの分裂体も参加しており、祈手達と日々充実した生活をしていた。

 

 第六層以降にいるのが、カツユ本体やリュウサザイ達。カツユは、世界最大の口寄せ動物であり、規格外の超常生命体。彼女が動けば、世界が滅びると言われる事も納得がいくレベル。彼女が、冗談で肉弾戦車をした時には、尾獣ですら逃げるしか選択肢がとれない。

 

 だが、最強故の悩みもあった。未だかつて、誰もカツユを完全な形で呼び寄せた事が無い。チャクラ消費量が尋常で無く、不可能だとされていた。

 

 今日までは。

 

『なにも口寄せの術に拘る必要はなかったわ。卑劣な彼女の術を使って飛べば良かったのよね。その為のチャクラも地脈から集め終わったわ。待っててね、ボンドルド様、プルシュカちゃん。母は強いんだから~、みんなも良いわね?』

 

『パパのために頑張る』

 

『早くお腹いっぱい食べたいな』

 

 暁が各拠点で行っていた謎の儀式は、全てこのためであった。地脈から集めたチャクラをカツユの元に集める。そして、湿骨林に住まう者達がカツユ本体に包まれて、時空間忍術で跳躍する。

 

 カツユ本体、タマウガチ60体、リュウサザイ10体、ベニクチナワ15体、カッショウガシラ25体というカツユ含めて111匹ワンチャン改め、原生生物達が家族を救うため大集結する。

 

『卑遁・飛雷神の術!!』

 

………

……

 

 挟間ボンドルドと挟間プルシュカは、暁の拠点の外に出て待っていた。予てより、色々と準備はしていた挟間一家。カツユ本体をどうやったら外の世界に呼び出せるか。

 

 本来ならば、風の国でなく、火の国で呼び出そうと思っていたが忍連合側の都合に合わせてここが最終決戦の地となる。

 

「パパ、くるよ!」

 

「えぇ、分かっています」

 

 超巨大質量の超長距離跳躍による物質移動。時空間の揺らぎが誰にでも感じ取れるレベルにまで達していた。人一人が移動するのとは訳が違う。巨大な山が一つ飛んでくる……そんな感じだ。

 

 だからこそ、その様子は忍連合側からも観測され、目の前に立ちふさがる白く巨大な生物に度肝を抜かれる。

 

『ふぅ、数百年ぶりの外の空気です。お待たせしました、ボンドルド様、プルシュカちゃん』

 

「カツユに皆さんまで遠いところ、助かります。忍連合側も全てを出し切る様ですから、私達も全てを出さねば失礼というものです。戦争が終わったら、ゆっくり過ごしましょうね」

 

「ママーーー、大きい!!ねね、上に昇って良いよね!?ダメって言っても昇るから」

 

 挟間プルシュカが元気にカツユを駆け上がるが、一向に上へは到着しない。それほどでかいのだから。味方であればこれほど心強い存在は居ない。敵からしたら絶望しかないだろうが、そんなことは挟間一家の知るところではなかった。

 

 

 




呼べないなら飛んできて貰おう作戦です。
帰りも同じ手法で帰るか、歩いて帰るんです。


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76:なぎ払え

 綱手は、暁側がこの地を主戦場として選んだ事を喜ぶと同時に危険視もしていた。挟間ボンドルドが何の考えも無く、闘うとは思っていなかったからだ。案の定、最悪な事態が発生してしまう。

 

 遠目でもハッキリと分かる程の巨大なカツユを確認して、綱手は驚愕する。完全体カツユを呼び出すなど、どのような方法を用いたのか分からなかった。なにより、そのサイズが規格外だ。歩くだけで天変地異となる存在で、忍連合に所属する者達の心を砕くには十分だった。

 

 あんなサイズの口寄せ動物に対応できる忍術など誰も持ち合わせて居ない。

 

『忍連合の皆さん。聞こえておりますか、私は挟間ボンドルド。我々は、無限月読に招待する人を無闇に減らしたくはありません。その証拠に、カツユを貴方達の真上に呼び寄せなかったのです。暁側では、開戦までの期間限定で一緒に闘う仲間を大募集しております。さぁ、今すぐ憎い敵国の忍者の首をもって、我々の元へ来て下さい。上からの命令ではなく、ご自身の運命はご自身で決めるべきだと思います。我々は、考える事ができる人間なのですから』

 

 カツユを拡声器代わりにして忍連合側へ仲間募集を掛ける挟間ボンドルド。カツユの存在で心が折れた者達も多い。そのやり方に作戦本部は、後手に回る。今すぐにでも開戦して否応なく闘わせる事が理想形だが、作戦なしで開戦しては無駄な死者が増える。

 

 真っ先に動いたのは火影である綱手。

 

「大至急、影達をたたき起こして対応会議をするぞ。部隊長や上忍達は、脱走者がいないか監視を怠るなと厳命。脱走者は、容赦なく殺せ。逃げた時点で敵だ」

 

 綱手が暗部に厳命した。だが、4万人もの忍者達が全員聞いている放送だ。空腹も限界に来ており、絶望的な敵が現れた。本気で、どちらについた方が生き残れるか考える者達が増える。

 

 今の連合の状況から故郷に帰っても碌な報酬はない。それどころか、周辺諸国からの侵略があるので、その防衛戦に回されることは明白だ。命がけの戦争の報酬が、次の忍界大戦では話にならない。

 

 忍者の中にも判断が速い者もいる。その為、朝日が昇るまでの間に、忍連合側は200名を超える脱走者と300名を超える死者を積み上げた。逃亡者を追った者達が挟間ボンドルド達に捕まりカートリッジへと生まれ変わる。忍連合側は、長引けば脱走兵が増えると理解して、準備半ばで開戦を余儀なくされた。

 

………

……

 

 忍連合側は、昨晩の脱走もあり崩壊寸前。一応、最後の晩餐は配られたが十分な食事はなく、カンパンが最後の食事になった者もいる。だが、不幸中の幸いだったのが、飲み水(・・・)だけは十分にあった事だ。

 

「トビさん、私が用意した水は連合側に置いてきて頂けましたか?」

 

「あぁ。だが、なぜ敵に塩を送る?……いいや、そんな性格じゃなかったな。毒か?」

 

「毒ではありません。あれは、水もどき(・・・・)です。正式名はないのですが、湿骨林の奥地に生息している水に擬態している生命体です。優れた感知系か白眼がなければ、見抜けません。一度飲めば体内から肉体を変異させる生物ですよ。煮沸しても除去は不可能です」

 

 カツユという特級の存在に注目がいっている隙に、トビが物資を色々と入れ替えてきた。重要物資の水に対して、このような行為をする。トビは、挟間ボンドルドが味方で良かったと本気で思う。

 

「相変わらず酷い手口だな。貶しているわけではない、褒め言葉だ」

 

「それほどでもありません。では、開戦前に最終通達を行いましょうか。水もどきを解毒する方法は、私しか知りません。なので、最後の仲間募集を掛けましょう。そろそろ、体調が悪くなってきた者も出たはずです」

 

 挟間ボンドルドの読み通り、朝方に体調を崩す者が出始めた。下痢に嘔吐、耐えがたい腹痛と……食中毒かと疑われたが、薬では一向に回復はしなかった。医療の知識がある者が診たが原因が特定できない。

 

 そして、綱手に報告が上がる直前で、挟間ボンドルドからの放送が忍連合側に届く。声明の内容は、以下の通りだ。

 

『下痢、嘔吐、腹痛などの症状がある人は、水もどきに寄生されております。この生物は、生命に取り憑いて肉体を作り替えてしまう特性があります。感染すると数日で肉体が作り替えられて、手遅れになります。ですが、その前に適切な処置をすれば問題ありません』

 

 その声明を聞いた忍連合の者達は青ざめる。そして、同じ釜の飯を食った者達で体調不良となった者が居ないか確認し出す。だが、病は気からという言葉がある。このような事実が出回れば、例え普通の水を飲んだ者でも気分が悪くなる。

 

『極めて優秀な感知タイプの方や白眼を持つ日向一族の方ならば水を良く確認すれば分かると思います。私は、その処置方法を知っております。綱手様、私はこの処置方法を発見するのに三週間掛かりました……もう一度だけお伝え致します。暁側では、忍連合と闘う仲間を募集しております。これが本当に最後の機会です。戦争に勝っても死んでは意味はありません』

 

 最後の晩餐を文字通り、最後の晩餐にしてしまう暁側の非道な行い。だが、忍界戦争であり、忍者が毒を使うのは当然のことだ。開戦を二時間後に控えたこのタイミング。確実に命惜しさに寝返る者達が出てくると、影達は確信した。

 

 

◇◇◇

 

 雷影は、生まれて初めて理解する。怒りが限界突破したら逆に冷静になれるという事を。挟間ボンドルドの忍者らしいやり方に、冷静な対処をしている。

 

「火影。あの巨大生物カツユは、お前の異名でもある蛞蝓で間違いないな。今では、契約が打ち切られて、挟間ボンドルドの妻であると」

 

「あぁ、確かにそう言ったな。カツユの情報も昨日渡した以上の事はなにも無いぞ」

 

 カツユの情報を知れば知るほど、対処方法が分からない作戦本部達。あんな生命体を相手にどう闘えば良いのか、逆に教えて欲しい程であった。

 

 そんな中、渡された資料を確認している風影が火影に質問する。

 

「世界を七日で滅ぼしたとか、冗談みたいな情報も真実なのか。後、うちはサスケが木ノ葉隠れの里の機密情報を周辺諸国に漏洩させていると、暗部から緊急連絡があった。その中に、暁襲撃に伴い風の国にある集落を襲うという極秘計画もあった。これらは真実か?」

 

「前者は、カツユが酒に酔ったときに漏らしていた事だ真相は流石にわからん。後者は、言うまでも無く事実だ。金払いの良い暁に、挟間ボンドルドを派遣したのは私だからな。だが、それがどうした?どの里でも似たような事はやっているだろう」

 

 バレてしまったからには開き直るしか無い火影。だが、木ノ葉崩しと称して戦争を仕掛けた経験もある砂隠れの里としては、これに関して強くは言えない。一応、援軍も送って貰い、命を助けられた事実もある。

 

 つまり、±0である。

 

 この忍界大戦が終われば、冷戦状態になることは必須であった。険悪となりつつあった4影の作戦会議に、突然割り込んでくる者がいる。

 

「で、伝令!巨大生物に大きなチャクラの反応を感知しました。八尾や九尾の尾獣玉にも近いとの事です」

 

………

……

 

 開戦までの僅かな時間。まだ、裏切る事に対して、心の整理が出来ていない忍連合に対して、挟間プルシュカが動く。挟間プルシュカの師の一人である自来也が得意としていたコラボ忍術。当然、師に出来て弟子が出来ない道理はなかった。

 

 完成形仙人モードで母親の上に昇りチャクラを練り上げる。それに呼応して、カツユも足場からチャクラを吸い上げて体内で圧縮を始めた。

 

「ママ、準備はできた?」

 

『エネルギー充填率100%!ふっふっふ、外来種(尾獣)なんて愛の力の前には無力だと教えて差し上げます』

 

 カツユが口を開く。ソコには、高圧縮された光り輝くチャクラが周辺を照らす。忍連合の最前線に八尾と九尾が出てきたが、大人と子供くらいのサイズ差。

 

「連合本部へ直撃を狙って下さいね。どうせ、祝福持ちが集中している場所ですから、直撃はできないでしょうが……運が良ければ影の一人くらいは殺せるでしょう」

 

 挟間ボンドルドは、娘と妻のコラボ忍術を特等席で眺める。そして、挟間プルシュカとカツユも挟間ボンドルドに良いところを見せようと気合いをいれる。

 

 暁側から開戦に先立ち、挟間プルシュカの号令で先手が放たれた。

 

「なぎ払え!」

 

『親子のコラボ忍術!プロトンビーム』

 

 カツユの口から放たれたビーム。忍連合陣営を左から右へと閃光が走る。一部は、八尾と九尾が何本もの尾を犠牲にして弾く事に成功するが、その他の着弾地点からは尾獣玉が着弾したかのような大爆発が発生する。

 

 暁側に寝返った忍者達は、その光景を眼にして尾獣なんて化け物は可愛い物だと思った。尾獣は、封じられている人柱力を殺せば少なくとも復活までのインターバルは稼げる。野良の尾獣だって、過去に影達が捕まえた実績もあるから人間でも倒せる範疇だからだ。

 

 この時、惑星最強の在来種カツユの実力が歴史に名を刻む。

 




ナルト世界って後半につれて、大怪獣戦争になるからね。
コラボ忍術の威力も特段おかしくないはず!

さて、そろそろ、正々堂々と殺し合いを始めましょう。


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77:魔剣アンサラー

リアル都合で更新が遅くなっており申し訳ありません。
年度末などは色々と……月月火火水木金が毎週のように続いており。


 カツユによる盛大な開戦の狼煙。その効果は絶大であった。たった一度の攻撃が地形を変える程であり、人がゴミのように消し飛んだ。忍連合の総兵力4万の約半数が消滅する。今までは、総力戦において人数が多い方が有利だと思われていたが、完全に同数。怪我人などを考慮すれば、忍連合の戦える人の数は、暁側の同数以下になってしまっている。

 

 生き残った忍者達は、自らの陣営を確認するが酷い有様。人や物資は吹き飛び、作戦本部は倒壊して指揮系統は皆無。頼みの綱であった尾獣は、尾を何本か犠牲にしている。

 

 忍界の核兵器とも言える尾獣を遙かに上回る存在が立ちふさがっている。人柱力が来たからと言って、あの桁はずれた存在に勝てるビジョンを浮かべる事が出来ない忍者は多かった。

 

 そんな中、忍連合内部に成り代わりの術で潜んでいた白ゼツが、息のある忍者の首をはねて叫ぶ。

 

「俺は、今からでも暁側に寝返るぞ!! 生きたい奴は俺に続けーーー」

 

 その煽りは実に効果的。混乱に乗じて、寝返るならば絶好の機会だった。それに、死に損ないの忍者なら手を貸すふりをしてトドメを刺すのは容易い。今ならば、追い忍が来ることもない。

 

 忍連合側に植え付けられた悪意は芽吹き始める。信じられるのは自分だけ。自分の身を守れるのも自分だけ。誰かが守ってくれるわけではない。

 

………

……

 

 そんな悪意満ちた忍連合の混乱を利用するのは、暁側として当然だった。トビが寝返り組を作戦本部に送り込む。それから、プルシュカと湿骨林の愉快な仲間達を忍連合の本陣営に送り届ける。

 

 挟間プルシュカのコンディションは、絶好調。挟間ボンドルドより、全力を出す許可も出ており、あらゆる忍術が解禁されている。四影を相手にするのに、出し惜しみなどもっての外だ。

 

 忍連合側は、目の前に突然現れた湿骨林の愉快な仲間達を目の前にし、蛇に睨まれた蛙となる。口寄せ動物は、多種多様だ。中でも一番多いのが、術者のサポートをする能力を有するタイプになる。つまり、全体的に見れば、口寄せ動物たちの戦闘力は低い。だが、湿骨林から連れてこられた者達は、ぶち抜けて戦闘力特化タイプばかりであり、忍連合側はそれを肌で実感していた。

 

 そんな湿骨林の原生生物達から一歩前にでる挟間プルシュカ。

 

「私ね、パパとママの事が大好きなの。パパは、皆の為に色々な薬を作って沢山の人を助けたわ。ママもそんなパパを支える為にいっぱい頑張ってたの。でも、忍者の人は、パパに対して酷い事をしただけでなく、殺そうとしている。だから、私もこれから酷い事をするけど、悪く思わないでね」

 

 挟間ボンドルドが作った新薬で命が助かった者達は、数多い。将来も考えれば、この戦争で死ぬ人数より多くの命を救う。殺した数より救った数が多い忍者など希有だ。だが、そんな事実を知る忍者は、挟間ボンドルドについて詳しく調べた作戦参謀達位だ。

 

 忍連合になんとなく参加している忍者達からすれば、露程も知らない情報だ。第1部隊隊長である雲隠れの忍者であるダルイも知らない。腐りかけている忍連合の中では、雲隠れだけが組織としてしっかりと行動ができており、ダルイは挟間プルシュカの隙を狙っている。

 

 子供とて、容赦はしないのが一流の忍者である。

 

「雷遁・黒斑差」

 

 ダルイの十八番である忍術。雷遁の中でも極めて威力が高く、殺傷能力も抜群だが……当たらなければどうという事は無い。黒豹の形をしたチャクラが挟間プルシュカに当たるが、透過する。他の忍者達も目の錯覚かと考え、得意忍術を使うが全てすり抜ける。

 

 湿骨林の原生生物達は、挟間プルシュカからターゲットが変わった瞬間、持ち前の危機察知能力で瞬時に離脱して、各々が狩り場へと向かう。殺気に対する反応速度が尋常で無く、中忍レベルでは追う事すら困難であった。

 

 その出来事に、現場にいた忍者達に絶望感が漂う。全ての忍術や体術が透過するという状況には、彼等は身に覚えがあった。事前情報では、うちはマダラの能力だと言われる隔絶した特殊能力。そんな、類を見ない能力の使い手が二人も存在するなど想定外。

 

「す、すり抜けた。マダラと同じ能力なのか」

 

「そんな能力が世の中に二つもあってたまるか。マダラが幼女に変化している方が可能性が高い」

 

 忍連合の推測が飛び交う。あの歴史に名を残すうちはマダラが幼女姿でパパとかママとか口走るなど非現実的。うちはマダラが転生して、別の場所でライバルと切磋琢磨している可能性の方がまだあると言う物だ。

 

「うーーん、30人とちょっとか~……もうちょっと人が多い場所で使いたかったけどいいかな」

 

「忍術で相殺しろ!出来なければ死ぬぞ。水遁を使える物は前に出ろ」

 

 誰かが叫んだ。その彼は、水の国で挟間プルシュカの忍術を目撃した事がある。挟間プルシュカの火遁で焼け焦げた者、逃げようとして化け物へと変貌した者、それを思い出させた。

 

 防いでも膨大な熱量で焼け焦げて死ぬ、回避したら化け物にされる……ならば、対抗する術は一つであった。忍術を忍術で相殺する他ない。それは、挟間プルシュカと対峙した際の正解の一つである。ただし、同じ攻撃が行われるならばという注釈もつく。

 

「パパから教わった時空間忍術"神威"のちょっとした応用よ」

 

 火、水、風、雷、土などのチャクラ性質の外にある時空間忍術。それに対抗するには、同じ時空間忍術しかない。時空間忍術とは、口寄せ契約に使われる忍術であり基本的に口寄せの術=時空間忍術と認識されている。だが、一部の天才達は、時空間忍術にそれ以外の使い道を示した……その代表例が逆口寄せや飛雷神の術などの物質移動。

 

 しかし、SSR万華鏡写輪眼の能力は、神威空間に物質移動させる事が出来る。つまり、細く鋭く一部空間を吸い込み閉じる事で物質を容易く切断する二次元の刃とする事が可能。物資を取り込む量を極めて少なくする事で広範囲の空間をマス目状に分割可能となった。

 

「「「「「水遁・水流壁」」」」」

 

 大勢の忍者が、水遁による壁を形成する。忍連合が収集したデータ上、挟間プルシュカが得意とする忍術は火遁だと知れ渡っており、妥当な対応だ。相手は一人、尋常で無い火力の火遁であっても一点集中で防げば何とかなるという密集形態での布陣。

 

「パパとママの痛みを味わって………魔剣アンサラー!!」

 

 挟間プルシュカの前方に次元を切り裂く刃が走る。水遁の壁を切り裂き、背後にいた忍者達を細切れに切断した。切断されるまで、忍者達は己の状況が正しく認識できていない。視界がずれた事でようやく自分が斬られた事に気が付いた。

 

「すみません、雷影様。俺はここまでのようです」

 

 肉体が分割されて崩れていく最中、長である影へ思いを言葉に出来る忍び。それだけで、十分立派な最期であった。

 

 ダルイ含む第1部隊が事実上、挟間プルシュカと湿骨林の愉快な仲間達により壊滅した。

 

………

……

 

 4影達は、カツユと挟間プルシュカのコラボ忍術を無事にやり過ごす。キラービーとうずまきナルトが盾となり、風影の絶対防御で全員が無傷……影達だけは。だが、守る者を厳選したお陰で、作戦本部の者達は瓦礫の下敷きとなり相当数の死者がでた。

 

 更には、挟間プルシュカ襲来による第一部隊が壊滅した報告もなされる。

 

 4影達の行動は決まっている。敵の数を確実に減らす。未だに、誰も主力を討ち取れていない状況であり、忍連合陣営に突撃してきているならばこれ以上の好機は存在しない。

 

 雷影が無事な者を捕まえて指示をだす。

 

「九尾と八尾を最前線から引き戻して、プルシュカの討伐に向かわせろ。儂達も合流して、各個撃破する」

 

「無理です、雷影様。キラービー様は、うちはマダラと交戦に入ったと連絡がありました。同じく九尾のうずまきナルトは、挟間ボンドルドと交戦しております」

 

 その報告に影達は考えた。

 

 誰から討ち取るべきかという選択。八尾と九尾の実力は、忍界最高峰クラスで簡単には負けない。だからといって、万が一があってはいけない存在達だ。

 

「ここは、挟間プルシュカから討ち取るべきだ。上手く生け捕りに出来れば、挟間ボンドルドとカツユを押さえ込める。先の戦闘で能力も割れている。私達が全員で迎え撃てば、勝てない相手でもない」

 

 火影の意見を誰もが一考し、承諾した。強くても子供。更には、その父親と母親を押さえ込める鍵となるならば、相手の戦力を大きく削ぐ事ができる。最善の一手だ。

 

 影達が挟間プルシュカ討伐に出かけた留守の隙に、暁側に寝返った忍者達が作戦本部及び感知部隊の生き残りを皆殺しにする事件が発生する。仲間のふりをして、サクッと殺していけば実に容易い仕事。

 

 

◇◇◇

 

 音隠れの里において、戦時中であっても平和の祭典は行われる。長距離ステイヤー達の熱い死闘が観客達の心に響く。

 

 レースの勝者は似非お嬢様風なバ体。そのライバルは、ハナ差で敗れてしまう。だが、双方が全力を尽くした素晴らしい試合であった。勝者が敗者を見下すような事は行われない。

 

 お互いがお互いの実力を認め、試合後には握手を交わす。そんな、美しい姿が大スクリーンに映し出されていた。

 

「認めよう。長距離において、貴様の右に出る者はいない」

 

 漆黒の衣装に身を包んだステイヤーが、ライバルに告げる。ライバルも笑顔で応える。そんな美しい世界が忍界とは遠いようで近い場所にある。

 

 

 




挟間プルシュカと影達が決着したら、ボンドルドとナルトのお話の予定です!

ここに来て更新がほぼ週次レベルとなり申し訳ありません。


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78:須佐能乎

投稿が遅くなり申し訳ないです。


 挟間プルシュカの猛進も生き残りの上忍達の死に物狂いの抵抗で、第一部隊と第二部隊の壊滅、第三部隊の半壊で留まった。暁側の被害としては、湿骨林の原生生物1割と白ゼツが2000人ほどだ。

 

 もはや、戦争という観点で言えば、敗北に等しい被害が出てしまっている。その被害を食い止めて、忍連合を勝利へ導く為に4影達は挟間プルシュカの前に立ちふさがる。年端もいかない子供相手に、大国トップの影が4人も集まる。状況だけ聞いたなら、余程影達が無能か、忍連合の忍者達の質を疑うレベルだ。

 

 完成形仙人モードを維持し続けられる挟間プルシュカ。影達を前にしても、動揺はしない。確実に勝つためのプランを練る。両肩にいるフカサクとシマ、頭上のカツユも付いており挟間プルシュカの戦闘経験を補うには十分なアドバイザーもいる。

 

「ふーーん、子供相手に大国の影達が総力を挙げてくるんだ~」

 

「認めたくないけど、貴方は私達より強いわ。だから、四対一でも卑怯だとは思わないでね」

 

「同感だ。お前は、敵で無ければ忍界に名を残す忍者になっただろう」

 

 水影と風影が挟間プルシュカの実力を素直に褒める。水影自身は、直接挟間プルシュカの実力を見たわけではないが、目の前にして肌で感じるプレッシャーがあった。気を抜けば一瞬で死ぬ…そう感じさせるほどの実力差がある。

 

「闘う前に一つだけ言っておく。降伏しても、捕虜扱いはしない。貴様は、儂の部下達を殺しすぎた」

 

「落ち着け、雷影。プルシュカ……今からでも遅くは無い。戦いを止めて、コチラ側に戻ってこい。マダラに無理やり従わされていたという事で何とかしてやる」

 

 火影は、なんとか武装解除をさせようと試みる。当然、無条件降伏したところで助けるつもりなど更々無かった。封印術で雁字搦めにしてしまえば、挟間ボンドルドとカツユに対する切り札となる。それこそ、第四次忍界大戦における最大の功績となり、木ノ葉隠れの里の火影として色々と暁に便宜を図っていた事を帳消しにする事も容易いという浅ましい考えであった。

 

「出来ない事を口にしない方が良いと思うわよ。せめて苦しまずに殺してあげるわ。魔剣アンサラー」

 

 完成形仙人モードの挟間プルシュカは、敵の悪意を感じ取る事もできる。当然、綱手の思惑など、分かりきっていた。だからこそ、交渉の余地などない。影達を甘く見ていない挟間プルシュカは、初手から全力で殺しに掛かる。

 

「舐めるなよプルシュカ。子供は大人しく言う事を聞いていればいい」

 

 綱手は、挟間プルシュカの術の特性を理解していた。道中にあった死体から術の特性についておおよそ見当が付いており、それに真っ向から対抗できるのも自分だけだと分かっている。

 

 全てを透過する術と全てを切断する術は併用不可能だと、綱手は気が付いておりピンチをチャンスに変える。他の影達が射程外へ緊急回避する最中、一人だけ真っ向から立ち向かう。

 

 百豪の術による創造再生を使う事で強引に魔剣アンサラーを突破した。鋭利すぎる切断面である為、創造再生による即時回復で凌ぐ力業。綱手でなければ不可能な対応策だ。

 

「う、嘘でしょ!」

 

『プルシュカちゃん!』

 

 想定外の対応策に、挟間プルシュカが驚く。ガマ仙人達も対応が間に合わず、カツユが娘の名を叫ぶ。綱手の拳が無防備状態で当たれば、即死する。経験不足がここにきて致命的な隙をうんだ。

 

 術が直撃して確実に殺したという思い込みからの慢心。

 

「慢心のし過ぎだ!私の名誉のため死ねぇぇぇぇ」

 

 綱手の全力の拳。影達の誰もがよくやったと内心で火影を褒める。完璧なタイミングでの攻撃。避ける事は間に合わない。綱手の怪力を知るからこそ言える……あの破壊力を防げる術など、ほぼ無いと。

 

 その綱手の拳は、挟間プルシュカを前にして壁に阻まれる。その壁は、人間の肋骨のような形状をしており、チャクラの集合体。影達は、そのチャクラ集合体には身に覚えがあった。

 

 周辺諸国で英雄にまで上り詰め、5大国では地上最強最悪の犯罪者として名高いうちはサスケが五影会談襲撃でみせた――須佐能乎。

 

「凄いわね。まさか、これを使わされる事になるとは思ってなかったわ。正直、あまり使いたくなかったのよね~。ママに負担が掛かるから」

 

『問題無いわ、プルシュカちゃん。本体からチャクラなんて幾らでもひっぱってくるからね。それはそうと……小娘じゃなかったわ、綱手……さ……ま。さっき、私の娘に死ねとか言ってましたよね。当然、覚悟出来てますよね?』

 

 カツユは、娘を殺そうとした者にも様をつけなければならないのか。非常に悩ましいとおもいつつ、歯があれば奥歯が砕け散るほど噛みしめただろう。年頃の娘に悪影響がない様にできる限り綺麗な言葉で話しかけている。

 

「馬鹿な、須佐能乎はうちは一族しか使えないのではないのか。なぜ、写輪眼でもないプルシュカが使える?」

 

「そんな事は自分で考えたら?風影の人、私の絶対防御と貴方の絶対防御……どっちが強いか比べましょう。ちなみに、私は須佐能乎の中から、魔剣アンサラーもつかうし、仙法・螺旋火遁手裏剣もつかうし、魔幻・蝦蟇輪唱もつかうし、上昇負荷も使うわ」

 

 影達は四対一を卑怯ではないと言った。

 

 ならば、絶対防御の内側から即死忍術を使っても特に卑怯でもない。これは、殺し合いにおける正しいやり方である。

 

「須佐能乎がどうした!儂は、あの小僧の須佐能乎をぶち壊した。あの術は、圧倒的な火力で突破できる事は証明されとる。儂が先陣を切るからお前達も続け。数の有利で押すぞ」

 

 雷影の言葉は、正攻法過ぎる。須佐能乎を破る手段は、純粋な火力押しだ。火影クラスが複数人もいるのだから十分可能。だが、それも一点に火力が集中出来る場合に限られる。

 

「四対一って卑怯じゃないんだよね。だから、聞きたいんだけど~須佐能乎を使う影分身と使わない影分身……どっちと闘いたい?多重影分身の術!!」

 

 挟間プルシュカが多重影分身の術で本体込みで20人に分かれる。当然、チャクラが均等に持って行かれる事になるが、減った分のチャクラはカツユから補充され、影分身達も本体同様に最大値までチャクラが回復するというおぞましい状況。

 

 どこぞの卑劣様は、言っていた……禁術は多用すべきでないと。本当に卑劣様が開発した術は碌な事にならない。それは、歴史が証明している。

 

「いや、それは卑怯だと思うわ」

 

「俺もそれには同感だ」

 

「いい加減にしろ火影!お前等の里が開発した忍術だろう」

 

「なんでもかんでも私のせいにするな!悪いのは全部二代目だろう」

 

 水影、風影、雷影、火影が各々意見を言う。確かに、火影という役職に就いた連中が原因で色々と事態が悪化しているのは事実である。第四次忍界大戦が終了した際には、火影という役職をこの世から抹消してやろうと本気で影達は思った。代々火影達が碌な事をしないのは、歴史が語っている。

 

 永遠の万華鏡写輪眼を片眼しか保有していない挟間プルシュカの須佐能乎。うちはマダラが使う完成体須佐能乎には及ばなくともその半分程度の力は有している。それが20人も居れば、忍界最高峰の影を倒すのに過剰戦力となりえる。

 

 死ぬまでに何人の影分身を倒せるかのゲームが始まった。だが、チャクラをカツユから無尽蔵に補給可能となっている挟間プルシュカ。彼女が何時でも影分身で残機を増やせる事を影達はまだ気が付いていない。

 

………

……

 

 影達が奮闘する。だが、一対一ならまだしも四対一のこの状況では、限界だった。理不尽なまでの即死級忍術の連続を相殺するだけでもチャクラがごっそり減る。綱手による回復を期待したいところだが、綱手自身も影達を盾にして後ろからチマチマ回復する事しかできない。

 

 医療忍術としては最高峰の使い手だが、この場においてはどの影よりも劣る。勿論、回復役は極めて重要だが……全てが即死忍術である為、回復は必要としない。

 

 そこで、戦いの天才である風影がある事に閃く。

 

「そうか!火影ガードを使えば、大体の忍術は防げるではないか。創造再生もあるから簡単には死なないだろうからな」

 

「よせ、バカ!本当に死ぬだろう」

 

 肉壁とされる方としては冗談でもない提案だ。確かに、創造再生により死ににくい。医療忍術も相まって、魔剣アンサラーですら耐えられる程だ。

 

「風影、儂が許可する。構わんやれ!魔剣アンサラーとやらは、観察さえ怠らなければギリギリ回避できる。あの無駄に追尾してくる仙法・螺旋火遁手裏剣にたたき付けてやれ」

 

「すみません、火影様。気休め程度ですが、私の溶遁でコーティングしておきます」

 

 水影のコーティングと風影の砂で拘束されて、肉壁扱いとなった火影。相手の忍術潰しには、完璧な方法だ。これぞ、忍界最高峰の影達が集まったコンビネーションプレイである。

 

 大事な事だが、その様子は白ゼツにより録画され大国全てに放送されている。この影達の素晴らしい連携プレイや忍連合の悲惨な裏切りなども全てだ。その放送内で、年端もいかない子供に影達がズタボロにされ戦闘不能に追い込まれる姿は、大国で国家防衛の為残された忍者達の心をへし折るのには十分だ。

 




原作マダラと同じ事をさせてみようかなと^-^

そろそろ、主人公?のボ卿のご様子に移ろうかと思います。



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79:わかるってばよ

時系列はちょっともどって、プルシュカが忍連合と戦い始めた位になります!


 挟間プルシュカが忍連合と戦い始めたのと同じ頃、挟間ボンドルドの元にうずまきナルトがやってきて主戦場のど真ん中で対峙する。その近くでは、トビとキラービーが同様に対峙しており、双方の主戦力が戦場に出揃う。

 

 第四次忍界大戦において、絶対的な勝利を信じて疑わなかった忍連合側の悲惨な状況は、うずまきナルトとて理解出来ている。悪意と憎しみが渦巻いており、崇高な目的を持つ暁側の方が美しいと彼は理解していた。

 

 九尾チャクラモードを会得したうずまきナルトにとって、挟間ボンドルドは間違いなく格下の相手だ。それなのに、自身の正面に堂々と本体が居る事に彼は不思議に思っていた。

 

 そんな様子を見かねた挟間ボンドルドが、うずまきナルトに声を掛ける。

 

「どうしたのですか? うちはマダラさんも、プルシュカも戦いを始めましたよ。どうぞ、本気で来て下さい。仙人モードに引き続き、新たに会得した九尾チャクラモードの実力。是非見たい」

 

「止めてくれってばよ。俺は、挟間特別上忍と話し合いに来たんだ。今からでも、遅くねーー。こんな戦争、止めてくれ」

 

 うずまきナルトにとって、挟間ボンドルドは父親のような存在で恩人である。困った時にはさり気なく力を貸してくれたり、アドバイスをしてくれたり、春野サクラを助けてくれたり、うちはサスケの事も上手に取りなしてくれたし、全肯定してくれる特徴的な耳の女性を紹介してくれたりと。

 

 あげればキリがない。「尊敬する忍者は?」と聞かれたら、挟間ボンドルドと言える程、うずまきナルトにとって挟間ボンドルドは大きな存在になっていた。

 

「おやおやおや、何を仰いますか。既に話し合いで解決する時点はとうの昔に過ぎ去っています。私やプルシュカは、忍連合側にとっては第四次忍界大戦における主犯格の一人です。貴方がどのような権限を持っていたとしても、恩赦はありえません。私は、妻と娘を守る為にもこの戦争に勝利せねばなりません」

 

「わかるってばよ」

 

 うずまきナルト。今まで数多の格上の強敵を戦いの最中に成長し、撃破してきた。時には、『わかるってばよ』という謎の一言で、敵を改心させてきた。そして、今度もその方法を利用するつもりでいる。

 

 この方法にうずまきナルトは絶対的な自信があった。木ノ葉隠れの里を襲った長門を改心させて、命を対価とした外道輪廻転生まで実行させるに至ったのだ。長門は、世界平和のために何年も忍界で闘い、亡き友の思いを成就するために生きてきた男だ。それをたった数十分で改心させるに至る。だからこそ、その自信があるのも当然だ。

 

 だが、その言葉は挟間ボンドルドの心に何も響かない。むしろ、その程度の『わかるってばよ』で改心するなら暁側で忍界大戦などに参加しない。これも挟間ボンドルドが集めた「祝福」が、別天神にも比肩しうるうずまきナルトの洗脳紛いに強力な「祝福」を防いだ為に実現できた流れだった。

 

「いやはや、恐ろしいですね。これほどの「祝福」を身に宿していても一瞬、心が揺らぎそうになりました。それで、折角なのでお聞かせ頂きたい。何が、分かっているんですか?」

 

「そりゃ、挟間特別上忍が綱手のばーちゃんに裏切られて。後、色々な資産を没収されたり……木ノ葉隠れの里に尽くしていたのに酷い事をされて心を痛めた事だってばよ。後は、九尾の襲撃で家族を失ったことなんかも。だから、分かるってばよ。俺も色々と…」

 

 うずまきナルトは、事前に書類上で知った情報を並べた。そして、共感する言葉である『わかるってばよ』を言う事で解決すると信じて疑わない。九尾とすら和解を成功させたが、同じ手は挟間ボンドルドには通用しない。

 

「既に心の整理はつけております。その程度の安い言葉で改心すると本気で思っているのでしょうか。私が戦いを止めれば、恐らくカツユもプルシュカも行動を止めるでしょう。ですが、それは死を意味します。うずまきナルト君は、私に妻と娘をこの手で殺せと言うのですか?」

 

「そうじゃねーーってばよ。なにか、きっと方法はあるはずだ。挟間特別上忍なら、もっと良い方法を知っているんじゃねーかよ」

 

 うずまきナルトの経験上、身近に天才である奈良シカマルなどがいた為、大体の問題は周りが解決してくれた。アイディアが無くても、分かるってばよの一言で相手を改心させて、元敵に解決策を考えて実行させる事をし続けてきた。

 

「もう少し実りのある話が出来るかと思いましたが、残念です。ですが、どうしてもこの状況を改善したいというのでしたら、一つだけ方法があります。うずまきナルト君、大人しく九尾を渡して頂けないでしょうか?安心して下さい、死んでも新しい体で蘇らせる事を確約致します。忍界とは離れた場所で、新しい家族と暮らせるように手配もしましょう」

 

「…………そ、そんな手にはのらねーーってばよ。でも、家族ってのはまだ早いってばよ。物には順序があるってばよ」

 

 うずまきナルト、この時ばかりは本当に悩んだ。思わず、挟間ボンドルドの手を取ってしまうほど悩んだ。第四次忍界大戦の状況……万が一勝利したとしても、周辺諸国と第五次忍界大戦が控えている。どう考えても、人柱力が最前線で敵主力と当たる必要があり、無事で済む保証はない。

 

 耳が特徴的な彼女が居る里は、音隠れの里である。つまり、敵国となる。うずまきナルト自身、彼女がいる里に手を挙げられるかと言われれば未だに答えは持っていない。寧ろ、ここで挟間ボンドルドの手を取って、死んだ事で身を隠して第二の人生も選択肢の一つだとは分かっていた。

 

 憧れの火影という立場は、今となっては他国から忌み嫌われる存在となってきており、正直就きたいとは思っていない。

 

 そんな思いを抱きつつも、うずまきナルトが忍連合側で頑張っているのは、亡き父親である波風ミナトの思いを九尾の封印を解く時に知ったからだ。その精神世界で四代目火影の凜々しい姿の父親が今でもうずまきナルトの脳裏に焼き付いている。

 

「闇すらも及ばぬ忍界にその身を捧げ、挑む者に世界は全てを与えるといいます。生きて死ぬ。呪いと祝福のその全てを旅路の果てに何を選び取り終わるのか。それを決められるのは 挑むものだけです」

 

「どういう意味だってばよ?」

 

「私とうずまきナルト君。どちらかが死ぬまで闘いましょうと言う事ですよ。安心して下さい。死後のサポートは手慣れたものです。忍者は、死んでからが本当の戦いの始まりだと言う事を教えて差し上げます」

 

 うずまきナルトの強さは別格だ。だが、その別格の強さ故に闘える者は少ない。トビが九尾の担当では、確実に説得された上にうずまきナルトを更に高みへと押し上げてしまう。だからこそ、挟間ボンドルドが一番適任だった。格下相手の勝率がすこぶる悪いうずまきナルトのキラーユニットになる。

 

 何かを察してか、うずまきナルトの中にいる九尾が前面に出てきた。

 

『ナルト!嫌な予感がする。こう言う輩は、何かをさせる前に確実に、完璧に、殺しておけ』

 

 九尾の言葉に反応して、挟間ボンドルドに付いていたカツユが喧嘩を買った。

 

『肉体を持たない外来種のくせにいい気にならないでくださる。私と娘の攻撃すらマトモに防げなかったくせに何が最強の尾獣?冗談は、でかい態度だけにしてくださいね。ざこざーーこ♡ 九尾?今尻尾が6本しか無いんですけど、どうしたんですか?もう、改名して六尾って名乗った方が良いんじゃないんですか?』

 

 カツユと挟間プルシュカのコラボ忍術で八尾と九尾の尾を数本削り取った。もちろん、時間経過で回復するだろうが、それには長い月日が掛かる。その切れた尾は、トビが外道魔像に喰わせている。

 

「カツユ、ソコまでにしておきなさい。お陰で準備は整いました」

 

「準備って!?こうなったら、挟間特別上忍を止めて、この戦争を終わらせてやるってばよ」

 

 時間制限付き仙人モードを解放する挟間ボンドルド。対峙する うずまきナルトは仙人モードの更に上をいく九尾チャクラモードを使い、お得意の多重影分身を使う。

 

「全く、この白眼を以てしても見抜けぬ影分身とは厄介ですね。まぁ、どうせ最後の一体になるまで当たり判定は出ないでしょうから変わりはありませんか。うずまきナルト君、貴方へ確実に攻撃を当てる方法を一つ教えてあげましょう」

 

「俺だって昔と比べて強くなっているんだ。簡単に攻撃なんてあたらねーーよ」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの多重影分身が千手扉間が開発した術とは似て非なる物だと思っている。仮に、開発者がうずまきナルトの術をみたら、アレは儂が開発した術とは別物だと言い切るレベルだ。

 

 だが、そんな術にも対抗手段は存在する。

 

「小南さんが残してくれた起爆札6億枚を使った術です。火遁・起爆炎陣!!」

 

「こんな紙切れで俺は止まらない」

 

 地中に埋められた6億枚の起爆札が一斉にうずまきナルトの影分身達に襲い掛かる。津波の様に押し寄せあっという間に、うずまきナルト自身と影分身達を飲み込んだ。周囲の環境ごと消し飛ばす攻撃ならば、当たらぬ道理は無い。

 

 何が起こったかうずまきナルト自身も理解が追いつかず、張り付いたのが起爆札だと理解する前に一斉起爆が始まった。第四次忍界大戦の主戦場でうずまきナルトを中心とした場所に、長門が全力で放った神羅天征を超えるクレータが生まれる。

 

 その爆風と爆音は戦場に響き渡り、忍連合側に更なる絶望感を与える事になる。

 

 

 



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80:禁術を不用意に使うべきではありません

 6億枚の起爆札を使った忍術。単発忍術規模で言えば、第四次忍界大戦における最大クラスだ。影クラスであってもその中心地にいれば肉片すら残らない。そんな事は忍者であれば誰もが容易に想像が出来る。

 

 事実、爆発の震源地には巨大なクレータが形成されている。その中心地に何一つ残っていない。しかし、その中心地に向かって歩みを進める挟間ボンドルドの姿があった。

 

 何一つ残っていない中心地ではあるが、挟間ボンドルドには一つの確信があった。この程度で死ぬならば、既に殺されていると。理不尽紛いの「祝福」を持っているうずまきナルトを正攻法で倒すには、並大抵の努力では不可能だ。それこそ、6000億枚の起爆札を同時に使って地図を書き換える程の威力を不意打ちで当てない限り難しい。

 

 震源地に辿り着いた挟間ボンドルド。カツユも周囲を警戒する。遠くに居る本体も蟻の子一匹逃さぬように監視を怠っていない。

 

『やりましたか?あの爆発を直撃させたのです、私だって相当削られますよ』

 

「おやおや、気が早いですよカツユ。私としては、尾の一本でも削れればいいと思っております。下手をすれば無傷ですよ」

 

 仙人モードの感知にすら掛からないうずまきナルト。更には白眼を使っても姿形すら確認出来ない。その異常性に挟間ボンドルドは一つの仮説を立てた。

 

 うずまきナルトの「祝福」に妨害されて感知不能となる可能性は十分にある。だが、白眼に至っては、日向ヒナタからの戦利品であり彼女自身の「祝福」が少なからず宿っている。その眼を通じてうずまきナルトを見失うなどあり得ないのでは無いかと。

 

 ようするにだ、最初から影分身(笑)でした。本体は別の場所にいますという答えだ。これこそが最悪の展開だ。六億枚の起爆札を使って、倒したのが影分身のみとかイカサマもいい加減にしろと言うレベル。

 

『ボンドルド様、影も形も気配もありません』

 

「うずまきナルト君を我々の常識で計ってはいけません。影分身が一人でも生きていれば、それが本体となる。それが彼だけが使える忍術です」

 

 うずまきナルトを殺すには、影分身を全て殺す必要がある。1匹でも生きていれば100匹は居ると思えとは良く言った言葉だ。真面目に忍術を修行している忍者からすれば、巫山戯るなと言いたくなるだろう。

 

 何も知らない者が聞いたら冗談だろうと思う事だが、それを裏付けする事象が発生する。今まで何もなかった空間に突如うずまきナルトが出現。挟間ボンドルドの真下の地中から螺旋丸を片手に飛び出してきた。

 

「油断大敵だってばよ!」

 

「全く、理不尽な忍術ですね。ですが、予想の範疇ですよ」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの攻撃を避けて鋭利なツメとなった左手で彼を貫いた。その瞬間、ポンっと煙の如く消える。そして、消えた影分身の代わりに突然三人の影分身が出現した。しかも、今度は風遁・螺旋手裏剣を準備した状態での登場だ。

 

 これには、挟間ボンドルドもカツユも苦笑いしそうになった。

 

 消えたと思ったら別の場所に出現し、更には必殺の一撃を放とうとする寸前だ。

 

『あ、ありえません。今まで、ソコの空間には確かに何もありませんでした。それに、あの起爆札を直撃して、無傷とかどんだけなんですか』

 

『馬鹿め、あの程度の起爆札なんぞかすり傷程度にしかならんわ』

 

 九尾の言い分には無理があるだろうと、正直誰もが思った。木ノ葉隠れの里を完全に消滅させられるほどの威力を誇っていた火遁・起爆炎陣。それの直撃でかすり傷で済むはずが無い。事実、挟間プルシュカとカツユのコラボ忍術で尾を3本消し飛ばしたのだから、それを考えれば数本は失ってもおかしくは無いはず。

 

「お願いだ、挟間特別上忍。降伏してくれってばよ。挟間特別上忍じゃあ、俺には勝てないってば」

 

「おやおや、うずまきナルト君はもう勝った気でいるんですか。貴方は昔に比べて格段と強くなりました。ですが、私も引けない一線というのは持ち合わせております。どうぞ、必殺の一撃を放って下さい」

 

 うずまきナルトは迷っていた。風遁・螺旋手裏剣は、間違いなく必殺の一撃だ。万が一、挟間ボンドルドが死んだ場合、この戦争を終わらす術が無くなってしまうのではないかという危惧。

 

 しかし、うずまきナルトは風遁・螺旋手裏剣を放った。今の彼には、忍連合を支えなければならないという重要な責務がある。

 

「それでいいのです。口寄せの術!!」

 

 挟間ボンドルドが口寄せの術を行使して、連れてきた祈手達を呼び寄せた。その内の一体が風遁・螺旋手裏剣の前に立ちふさがる。両手を前に出して、真っ向から受け止め術を吸収し始めた。

 

「嘘だろう。その術は長門の。あれは、輪廻眼がないと使えないんじゃ無いのかよ」

 

「何を不思議に思っているのですか、うずまきナルト君。ペイン六道システムを近代改修したのは、私です。それに、輪廻眼とは写輪眼の先にある物です。うちはマダラさんと行動を共にした私が何かしらの方法で眼を手に入れていたとしても不思議ではないでしょうに」

 

 挟間ボンドルドの切り札の一つ、輪廻眼。うちはイタチの眼と白ゼツから採取した柱間細胞を用いて開眼させた輪廻眼。それの一つが既に挟間ボンドルドの手中にはあった。

 

「影縛りの術!」

 

 祈手の一人が、影を伸ばしてうずまきナルトを拘束する。奈良一族の秘伝忍術。うずまきナルトほどではないが、えげつない忍術だ。九尾の行動すら止めることが出来る。

 

「なんで、シカマルの忍術を。くっそ、解けねーー」

 

「あぁ、それは彼の子供ですからね。秘伝忍術を使えるのは当然だと思います」

 

 信じがたい事実にうずまきナルトも驚きを隠せなかった。同期の子供がまさか、挟間ボンドルド側にいるなんて誰が信じられるだろうか。

 

「こ、子供って。シカマルには」

 

「お忘れですか、下忍の卒業試験で何があったかを。その時に皆様からご提供頂きました遺伝子は全て私が管理運用しております。だから、木ノ葉隠れが滅んでも忍術は後世に継承されますのでご安心ください」

 

 忍術とは使い方一つで、戦況を左右する。

 

「グェイラ。心転身の術」

 

「あいよ。心転身の術!!」

 

 うずまきナルトの体に乗り移る祈手(グェイラ)。だが、うずまきナルトの中には九尾が存在しており、当然この術に対して反発し、追い出そうとする。強固な精神を持つ祈手であっても長い時間乗り移る事は困難だった。

 

「屍鬼封尽」

 

 心転身の術を使った必殺の方法。乗り移った肉体で屍鬼封尽を使う。これにより、死神に魂ごと捧げる。当然、死神に魂を奪われる前に体は本人に返すというやり方だ。この方法は、うちはマダラにすら有効となる。

 

 事前に用意していた小動物の魂を死神に喰わせたタイミングでうずまきナルトに肉体を返す祈手。

 

「っ!!九喇嘛」

 

 死神を退けることなど不可能。だから、うずまきナルトがとった手段は、九尾の尻尾を魂に似せる事で見事に即死忍術を回避して見せた。犠牲となった尾は一本。咄嗟の判断力に挟間ボンドルドは思わず称賛してしまった。

 

「素晴らしい。まさか、必殺の一撃をそのような方法で回避されるとは想像しておりませんでした。ですが、これで残りは5本。あと何回防げますかね」

 

「多重影分身の術!!もう、同じ手は通じないってばよ」

 

 数十体にも及びうずまきナルトの影分身。これでは、もう本体に心転身の術を当てるのは不可能だ。減っても補充されてしまいイタチごっこになる。

 

 だが、それならそれでやりようはあると挟間ボンドルドは、うずまきナルトに語りかける。

 

「うずまきナルト君。禁術がなぜ禁術と言われるかご存じですか?」

 

「どういう意味だってばよ。そりゃ、危ないからじゃねーのか」

 

「その通りです。例えばですが、影分身は経験をフィードバックできます。そのフィードバックは一方的な物であり、拒否することは出来ません。これがどういう意味があるかご理解頂けますか?」

 

「わからねー」

 

 うずまきナルトにとって、影分身は修行にも使える便利な術程度の認識であった。

 

「そうでしょうね。貴方は、今までだした影分身達を把握しておりますか?つまり、こう言うことですよ、うずまきナルト君。口寄せの術!!」

 

 対うずまきナルトの切り札。

 

 湿骨林にある不屈の花園で保存管理されていたうずまきナルトの影分身。影分身はダメージを負うと消えてしまう。だからこそクオンガタリとカツユが一生懸命延命し続け何年も生かされ続けた影分身。

 

 呼び出された存在は、生きているのが不思議なレベルの影分身だった。死んだ方がマシだと思える地獄を何年も経験しており、溜められた経験値は莫大だ。

 

「……も、もしかして、それって俺の影分身」

 

「えぇ、その通りですよ。随分昔に捕まえておりました。こういった場合に備えた切り札です。彼が死んだ瞬間に流れ込むであろう、莫大な経験は凄まじい物ですよ。うずまきナルト君、禁術を不用意に使うべきではありません」

 

 不屈の花園で管理され続けたうずまきナルトの影分身が本体を確認した。唇が僅かに動く。声にはならないが、影分身達はハッキリと理解した「コロシテ」と言っているのだと。

 

 挟間ボンドルドが死に体の影分身にトドメを刺そうとする。

 

「や、止めてくれってばよーーーーー」

 

「影分身の皆さん、明日は我が身かも知れませんよ」

 

 フィードバックを察したうずまきナルトの影分身達が即座に術を解いた。その瞬間、最年長の影分身がようやく術を解かれる。

 

 不屈の花園で過ごしたおぞましい日々がうずまきナルトに流れ込んだ。死なないように丁重に管理され、体の内側からナニかに改造され死ぬ事も許されない日々。栄養補給はクオンガタリが口から入り、決して自決はできない。

 

 その日々を一気に経験したうずまきナルトの心肺が停止した。 




年度末つらたん…。

必中即死忍術をこれでもかと回避するうずまきナルトを頑張って倒さなければ。

影分身を使った必中攻撃。
やはり、これに限りますわ。
心から殺していくスタイルで行かねばなるまい。



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81:飛雷神のマーキングは決して消えない

いつもありがとうございます。
更新速度が遅く、もうちょっとなのに中々進まなくて申し訳ありません。


 挟間ボンドルドが、対うずまきナルトに用意した必中即死忍術ビルド。だが、尾獣の尾を犠牲にして回避し続けていた。しかし、うずまきナルトも何年にも及び死ぬより辛い経験を積んだ影分身の経験値をフィードバックされて、心肺停止に陥る。

 

 今までの敵であれば、何故か!完全な死を確認しないで立ち去ったり、復活まで待ってくれるなど『祝福』の力が作用していた。しかし、その力を認識して対抗するまでに至った『祝福』を持つ挟間ボンドルドが相手では無意味だ。

 

『ボンドルド様、次弾も準備しておきますか?最年長は使い切りましたが、まだ弾は残っています』

 

「同じ忍術が二度も通じる生やさしい『祝福』ではないでしょう。それにしても、心肺停止状態にも関わらず九尾チャクラが解除されない。これは、嫌な状況です。仙法・火葬砲!!」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの肉体を完全に焼却する為、仙法を放つ。あらゆる物質を原子レベルで焼き尽くす即死忍術。心肺が停止し、地に伏せたうずまきナルトでは防ぎようが無い……はずだった。

 

 火葬砲がナルトの肉体から伸びた尾の一部を犠牲にして、軌道が逸れる。

 

『ナルトォ!早く目を覚ませ』

 

「これは、実に興味深い。宿主が心肺停止状態だというのに、寄生している尾獣は自由に行動出来るとは。しかし、本体が持つ『祝福』の影響下に無いようですね。そうでなければ、6億枚の火遁・起爆炎陣で無傷で凌ぎ、火葬砲で尾を失う説明がつきません」

 

 物理ダメージ無効化が発動しない。この事には、九尾も驚くしか無かった。本来であれば、挟間ボンドルドの攻撃を無傷で軌道をずらす予定が尾を失う程の大ダメージ。九尾自身も長い年月、うずまきナルトに寄生していたお陰で感覚が麻痺していた。

 

『つまり、今なら殺せるって事ですね!ボンドルド様』

 

「えぇ、より正確に言えば。やっと、同じ土俵に降ろせたという事です。うずまきナルト君は、我々とは異なる物理法則が働いておりました。その為、死と言う概念を含んだ忍術以外では碌な成果もあがらない。それが、今はない。いいですか、残りの尾の数は4本……つまり、四尾相当。やってやれない事はありません」

 

 うずまきナルトの『祝福』が一時的に作用しなくても、十分強いのは事実。それに、挟間ボンドルドには確信があった。早く殺さねば、パワーアップして復活してくると。それを考慮すると、このタイミングでなんとしても九尾を殺しきるのがベストアンサーだ。パワーアップを遂げたとしても九尾が居なければ、挟間ボンドルドにも十分勝機が存在している。

 

『あまり、ワシを舐めるなよ若造が。ナルトが居なくてもお前等に後れはとらん』

 

「それは楽しみです。では、第二ラウンドを始めましょう。今まで貴方達の敵が味わってきた理不尽を教えて差し上げます。ギャリケー、上昇負荷。土遁・土陸返し」

 

 挟間ボンドルドが祈手に指示をだす。祈手(ギャリケー)には、挟間プルシュカの万華鏡写輪眼がある。当然、その能力を使う事を前提にして鍛えられている。上昇負荷のターゲットとなった瞬間、挟間ボンドルドが土遁を使いうずまきナルトを上空へと打ち上げる。その高さ6mを超える。

 

 一瞬にして襲い掛かる体調不良に加え、成れ果てへの肉体変化。死を感じた九尾は、尾に全ての不調と肉体変化を押しつけて切り抜ける。これにより、上昇負荷のターゲットからも外れてしまう。

 

『糞が!よく分からん忍術を使いやがって』

 

「尾を命のストックみたいに使うのですね。原理的には、カートリッジに近いのでしょうか。残り3本……スウマーマ」

 

 四本の手を持つ巨躯の祈手(スウマーマ)。彼は、必殺とも言える特別な能力は有していない。そんな彼に九尾は、食らいついた。現状、一人でも挟間ボンドルド側の戦力を削る必要があり、一人だけ突出して出てくれば狙うしか無い。それに、祈手を壁にすれば火葬砲などを撃ってこないと九尾は予想した。九尾は長年生きてきた為、人を見る目はあった。だからこそ、挟間ボンドルドが他者を犠牲にしたやり方は使わないと本能で理解する。

 

「(地獄まで)ご足労願います」

 

『どうやら変な能力は無いようだな、力比べか?』

 

 うずまきナルトが目覚めるまでの時間を何とか確保したい九尾。だからこそ、突進してくる祈手の誘いに乗った。両者がぶつかり合い手を組んだ。その瞬間、相手の手を利用して印を組み始める祈手(スウマーマ)

 

 本家本元の大蛇丸ですら称賛するレベルの印を結ぶ速度。左右両方の手で術が完成する。

 

「忍法・双蛇相殺の術」

 

 自らの命を犠牲に使い捨てる道連れ忍術。しかも、組んだ左右の手で行う事で二度術を発動する。確実に印を結び、この世のルールに則った自爆忍術。正規手順で行われては、九尾とてリスクを負わねば回避出来ない。つまり、その回避方法が尾を犠牲にする身代わりだ。

 

『貴様ーー!仲間に死を強要するとは見下げた奴だ』

 

「仲間?何を言っているんですか。祈手は全て私です」

 

 挟間ボンドルドは、仲間を見捨てたり犠牲にする男だと思われた事を心外だと感じていた。祈手達は全て、自らの精神を分割している存在。挟間ボンドルドと祈手達との差は、ほぼない。

 

 他者を犠牲にしないという崇高な精神の持ち主だ。

 

『なんだとぉ!? 影分身……いいや、違うな。匂いは完全に別物だ。認めてやる。今、貴様には勝てない。だから、ナルトが目覚めるまで悪いが戦略的撤退だ』

 

「あの雷影にも匹敵する速度で動ける貴方には私では追いつけません。ですが、逃げても最後の尾は消費させて貰いますよ。貴方が死ねば、うずまきナルト君だけなら問題にはなりませんから」

 

 うずまきナルトの肉体を操り、後方へ逃げ出す九尾。防御に重きを置いた挟間ボンドルドや祈手達では到底追いつけるレベルでは無い。それに、3分が経過して仙人モードも解除されてしまった。一定時間のインターバルを挟まねば、再度仙人モードにはなれない。

 

『ボンドルド様、私が狙い撃ちましょうか。運が良ければ当たる可能性も』

 

「それには及びません、カツユ。貴方は、チャクラ供給の要ですので、現状維持でお願いします。それに、この二代目様に教わった忍術を使うには良い機会です」

 

 挟間ボンドルドが起爆札を取り出した。その裏側には、飛雷術のマーキングが施されている。

 

『アレを使うんですね。それにしても、本当に卑劣な彼女は碌な忍術を開発しませんよね』

 

「同意します。うずまきナルト君、君の為に用意した最後の忍術です。二代目様の忍術、四代目の得意な忍術……そして、四代目の弟子が残したマーキング。私自身、この術への適正は低いですが、起爆札程度を飛ばす事は出来ます。そして、飛雷神のマーキングは決して消えない」

 

『でますか!?彼女が考案したあの忍術』

 

「卑遁・腸内飛雷互乗起爆札」

 

 木ノ葉隠れの里には、悪しき風習がある。下忍の卒業試験でハニートラップ対策が施される際、木ノ葉の"黄ばんだ閃光"による腸内マーキングが施される。このマーキングの詳細情報を挟間ボンドルドは、"黄ばんだ閃光"から教えて貰っている。その位には、持ちつ持たれつの仲だった。

 

 『祝福』による絶対防御を失った状態で、体内から無限にも思える起爆札が突然わき出す恐ろしい忍術。初手の6億枚に比べれば爆発規模は比べるまでもない。しかし、人間一人を跡形も無く消し飛ばすには十分だ。

 

『ボンドルド様、あっちの方で爆発音がします』

 

「向かいましょう」

 

 爆発音が響く場所へと向かう挟間ボンドルドと祈手達。その行く手を拒む者は誰も居ない。忍連合の忍者は、既に挟間プルシュカと湿骨林の愉快な仲間達によってほぼ駆逐されていた。

 

 

◇◇◇

 

 うずまきナルト。

 

 影分身からのフィードバックを受けて、意識を失っていた。その際、夢の中で尾獣達と話し合い、各々の思いを知る。そして、必ず助けて平和な未来を作ると約束する。しかし、その場には九尾だけが居ない事に僅かな疑問も持っていた。

 

 目覚めたときに話せばいいやという楽観的な思考を持つうずまきナルト。

 

 そして、夢は覚めた。

 

 目覚めると同時に自らが地面に横たわっている事を理解する。寝起きのように意識がハッキリとしなかったが、九尾の存在が感じられない事に気が付く。

 

 現状を正しく把握するため、立ち上がり周囲を見渡したうずまきナルト。だが、何もなかった。起爆札の切れ端などがある事から何かしらの爆発があったのだろうと察する事ができる。その影響で、衣服が全て吹き飛んだのだと彼は考えた。

 

「なにがあったんだってばよ」

 

 ポンとうずまきナルトの肩に手を置く存在がそこに居た。うずまきナルトの感知を完全にすり抜けて、背後からだ。今までに、経験したことがない状況にうずまきナルトも混乱する。

 

 彼が持つ絶対的な『祝福』は、敵の接近を許さない。何かしらの方法で本体がそれを察知できるシステムがあった。しかし、それが発動しなかった。その原因は、うずまきナルトが九尾を喪失した事により、『祝福』の総量が挟間ボンドルドの方が圧倒的に多くなった為だ。

 

「うずまきナルト君は、九尾に愛されておりました。九尾が最後の尾を犠牲にして、貴方の蘇生を成し遂げたのですから。仕事的には、九尾を外道魔像に渡したかったのですが……尾を数本喰わせているので、うちはマダラさんも許してくれるでしょう」

 

 今まであったものを失ったうずまきナルト。この時初めて、恐怖という感情を理解する。彼の自信の根底にあった九尾という存在。その莫大なチャクラを利用できるからこそ、うずまきナルトは最強たり得る存在だった。

 

 持ち前のチャクラは既に枯渇寸前。全裸で忍具の一つも無い。更には全国放送されているこの状況。忍連合側の切り札であった九尾が完全に失われた瞬間であり、影達も挟間プルシュカによって殺されており、忍連合作戦本部も全滅している。

 

 八尾もうちはオビトによって、捕縛されている。ここからの逆転の目など全く無かった。

 

「例え、九喇嘛が居なくたって俺は折れねーぞ。最後まで、戦い抜いてやる。父ちゃんとも約束したんだ。絶対に父ちゃんを超える立派な忍びになるって。だから、あきらめね~」

 

「それでしたら、ご安心ください。既に、そのプランで動いております。親子が切磋琢磨する舞台はとても素敵な物になるでしょう」

 

 うずまきナルトは、第四次忍界大戦を一人でも戦い抜く決意を抱く。

 

 だが、その場に駆けつける完成形仙人モードで須佐能乎を構える挟間プルシュカ。

 

 八尾を血祭りにあげて、マイト・ガイとはたけカカシを始末したうちはオビトも駆けつける。

 

 更には、挟間ボンドルドと祈手達もほぼ全員が無傷で残っているこの状況。

 

 ここから、うずまきナルトは全員を倒して第四次忍界大戦に勝利する必要があった。

 

「ちょっと、待ってくれってばよ」

 

「うずまきナルト君。三対一です、頑張って下さい」

 

 今までの理不尽さをその身で味わう事になるうずまきナルト。そんな理不尽な状況を遠くで見ている彼の両親は、既に女物の服を大量に用意していた。

 




第四次忍界大戦は次話でお終いの予感!
のこりは消化試合にしかならないかもしれないけど、許して下さい。

ちゃんと、ナルトは金髪が似合う彼女にしますので。
そして、某種馬が急接近するかもね。
第七班は仲よくしなくちゃとかで!


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最終話:挟間ボンドルド

 うちはオビトだけが、挟間一家を……特に挟間プルシュカを確認して、驚いている。うちは一族の中でも万華鏡写輪眼を開眼した者にしか使えない須佐能乎を扱っている。他にも、祈手が輪廻眼を持っているなど、知らない情報が盛りだくさん過ぎて、事が終わり次第問い詰める次第だった。

 

 場合によっては、自らの命を犠牲にせずに、本物のうちはマダラを外道輪廻転生する事が出来る可能性があったからだ。尤も、今となっては不可能な事なのを彼はまだ知らない。

 

 完全に囲まれて逃げ場が無いうずまきナルトに対して、挟間ボンドルドが歩み寄る。

 

「うずまきナルト君、今度こそ本当の実力が試されるときです。普通の忍者がどれほどチャクラを工面して闘っているか、身をもって実感してください。火遁、水遁、風遁、土遁、雷遁などどれでも結構です。貴方が長年鍛え上げてきた実力を思い残すこと無いように発揮してください」

 

「つかえねーーってばよ。俺は、影分身と螺旋丸。後は口寄せの術と仙人モードや九尾チャクラモードしか……」

 

 うずまきナルトから伝えられた衝撃の真実に、挟間ボンドルドも思わず耳を疑った。まさか、今まで下忍でも使えるような簡単な忍術すら使えずに、火影になるなどと言っていたのかと。

 

 世の中、基礎があって応用があるのに対して、うずまきナルトは全ての工程をすっ飛ばしている。今までうずまきナルトの成長の糧とされた者達が、この事実を知ったら嘆くことは間違いない。

 

 確かに、木ノ葉隠れの里には体術のみで上忍になったキワモノもいる。しかし、四代目火影の息子で、九尾を宿していて、火影を目指す忍者がこれでは笑えない。

 

「うずまきナルト君、九尾のせいで幼少期は辛い人生だったでしょうが……貴方は、人生を舐めすぎです。世の中には、貴方より辛く苦労した人達は五万と居ます。今の貴方のチャクラ量では、影分身は自殺行為。口寄せの術でも蝦蟇たちは呼べません。螺旋丸では、私の暁に至る天蓋を凹ませられれば良い程度でしょう。忍連合はほぼ全滅しております。助けは、死んでも貴方を助けたいと思う奇特な人以外は来ないでしょう」

 

 既に、うずまきナルトが持つ『祝福』は激減している。助けを呼んだとしても、誰がそれに応えるだろうか。九尾を失っているうずまきナルトの市場価値は、そこら辺にいる上忍程度しかない。

 

「そんな事、やってみなけりゃわからねーーーってばよ!螺旋丸」

 

 うずまきナルトの必死の抵抗。うちはオビトも挟間プルシュカも誰も行動を止めようとはしない。螺旋丸のターゲットになっているのが挟間ボンドルドであり、結果は火を見るより明らかだったからだ。

 

 螺旋丸は、今まで数多くの敵を葬ってきたうずまきナルトの必殺技。当たれば内臓破壊されてしまう殺人忍術ではあるが、術の規模が目視できており、お粗末な体術しか使えない者が使う忍術など子供の遊び程度にしか成らない。

 

 今までの戦いにおいては、なぜか敵が螺旋丸に吸い込まれるように当たりに行く事が殆どだ。しかも、態々クリティカルヒットになるような所に直撃する。そのような幸運は発揮されない。

 

 挟間ボンドルドに当たる事もなく、うずまきナルトの手を挟間ボンドルドが押さえ込んだ。これで印も結べない。更には、チャクラ吸収能力を有する外装により、うずまきナルトはジワジワと少ないチャクラを失っていった。

 

「うずまきナルト君、以前に教えたでしょう。必殺技とは、必ず殺す技と書くんですよ。つまり、こう言う技の事を言うんです」

 

「ナルト君を離してください!」

 

 うずまきナルトにトドメを刺そうとした瞬間、天の助けがやってきた。この戦場における準主役級の『祝福』を持つ女性……日向ヒナタ。愛する男性の為に自ら死地へ飛び込む勇敢さは、称賛に値するレベル。

 

 彼女自身も分かっている。自分一人がこの場に来たところで戦況が変わるなど思っていない。自己満足でしかない。

 

「ヒナタ、くるんじゃねーーー」

 

「見捨てられないよ。だって、私はナルト君の事が大好きだもん」

 

 ここまで愛されているうずまきナルト。だが、彼には既に思い人がいるとかいないとか色々な噂がある。ここまで思われているのに、まだ会った事も無い女性に心を惹かれているとか酷い話があるだろうか。

 

「素晴らしい。これが愛、愛ですよ。うずまきナルト君もいい加減、親離れすべきです。そして、彼女の思いを正面から受け止めるのが男というものではありませんか。貴方の父上であるミナトさんもそう望んでいるはずです」

 

「えっ!? 乳上、ちちうえ、父上!! 嘘だろう。じゃあ、おれは今までずっと……。こ、殺してくれってばよ。もう、世界なんてどうでもいいってばよ」

 

 何やら一人で全てを察したうずまきナルト。己の勘違い故に発生した特徴的な耳の彼女との関係に。今まで心の支えであったはずの思いが、根底から覆されて瓦解していく。希望が絶望に早変わりし、もはや彼は心から挫折してしまった。

 

 あまりの急変に助けに来た日向ヒナタの方が混乱し始めた。

 

「ナルト君!?一体どうしたの。私で良ければ相談に…え、何ですかボンドルドさん」

 

 日向ヒナタにとって、挟間ボンドルドは命の恩人であった。ペイン襲撃の際に、命を助けられた。後遺症で白眼の瞳力が低下してしまうだけで済んだのだから。そんな恩人がうずまきナルトから手を離して呼んでいる。罠かも知れないが、誘いに乗った。

 

 挟間ボンドルドは、日向ヒナタに優しい声でささやきかけた。

 

「うずまきナルト君と一緒に、離れた場所で健やかに暮らせるプランがあります。彼には、この戦争の責任を取って、一度死んで貰います。その後に、姿形を変えて新しいバ生を歩んで貰います。ご安心ください、彼の遺伝子は私が保管しております。子供の心配は不要です」

 

「日向は、暁にて最強です!!」

 

 柔拳使いは、手のひら返しの早さはお手の物だった。現状を正しく理解して、何を優先すべきかハッキリと日向ヒナタは理解している。今できる最善の手立てはこれしか無い。万が一にも、忍連合側には勝利はないのだから、この行動は当然の帰結。

 

「では、うずまきナルト君。最後に選ばせてあげます。知らない仲ではありません、苦しまずに死ぬ選択肢を用意してあげます。自らチャクラを使い切って死ぬか、自決用の毒を飲んで死ぬか」

 

「俺は……」

 

 うずまきナルトが新しい人生を歩むには、一度人生を終える必要がある。その選択肢は、彼自身が選ぶ必要があった。その様子を、今か今かと見つめる日向ヒナタは若干病んでいた。

 

 うずまきナルトは、釣った魚に餌を与えない悪い男であったので、仕方が無い事だ。

 

………

……

 

 全ての人柱力が死に、尾獣を収めた外道魔像。その力を使い、うちはオビトは十尾の人柱力へと昇華した。時間を掛けて、力を馴染ませて徐々に人柱力になる事で人格形成にも影響をきたさず、完璧な状態。

 

 この場に集うは、うちはオビト、黒ゼツ、挟間ボンドルド、挟間プルシュカの四人。黒ゼツは、挟間一家を警戒している。第四次忍界大戦で見せた、輪廻眼や須佐能乎など爆弾が盛りだくさんだったからだ。

 

「これより、外道輪廻転生の術でうちはマダラを蘇らせる。それからは、マダラが無限月読で世界平和を成し遂げるだろう。奴は、話せば分かる奴だ。だから、俺達の計画に協力してくれた者達への配慮を忘れないようにしっかりと頼むぞ。特に黒ゼツは奴と面識があるだろうから分かっているな」

 

「あぁ、分かっているよ。無限月読での夢希望シートだろう。功労者に報いるのは当然だからね」

 

 挟間ボンドルドは、うちはオビトと黒ゼツのやり取りを見守る。だが、既に復活して音隠れの里で第二の人生をエンジョイしている彼女が外道輪廻転生で蘇るのだろうかと疑問に思っていた。そんなチャレンジをするために、命を賭けるとは悲しい事だ。

 

「オビトさん、来世でお会いしましょう。その時は、最高のおもてなしをさせて頂きます」

 

「バイバイ!次は、私がバ車馬の如く、顎で使うんだから」

 

「ボンドルド、プルシュカ。二人には感謝を。………外道・輪廻転生!!」

 

 輪廻眼を使った死者蘇生の忍術…外道・輪廻転生。

 

 命を対価にした忍術。術が完璧に発動し、いつうちはマダラが復活するのかとワクワクして待つ挟間一家と黒ゼツ。だが、うちはオビトが死んでから三分経っても何も起こらない。

 

「待て待て、まだ慌てるような時間じゃ無い」

 

「いいえ、黒ゼツさんの方が落ち着いた方が宜しいかと。後、三分くらい待ちますか?」

 

 神妙な顔で時を待つ黒ゼツ。だが、待てども何も起こらない。この日のため、数百年の月日を掛けてきた黒ゼツの壮大な計画が、計画倒れとなってしまう。これも全て、うずまきナルトという存在と挟間ボンドルドという存在が原因であったのは言うまでも無いだろう。

 

 だが、黒ゼツはその事実を知ることは無かった。

 

 絶望のどん底にいる黒ゼツに挟間ボンドルドが声を掛ける。

 

「黒ゼツさん、お気持ちが沈んでいるところ申し訳ありませんが、我々側に付いてくれた者達へ報酬が渡せないとなると次の職場へ斡旋等の手続きが必要になります。どうぞ、指揮をしてください。うちはオビトさんが不在の今、暁のトップは貴方なのですから」

 

「好きにしろ!暁は、今を以て解散だ。俺はこれから計画を再度練り直す必要がある。一体何年掛けてここまで来たと思っている」

 

 全てを投げ出した黒ゼツ。そして、挟間一家が雇われから解放された瞬間だ。つまり、今、この時より、フリーの忍者へと戻った。信頼第一の忍者である為、雇われ中はしっかりと仕事をする。しかし、報酬を渡さない雇い主にはそれ相応の報いがあるべきである。

 

『自暴自棄になっていますね。まぁ、暁が解散というなら我々は雇われの身から解放されたという事ですね』

 

「その通りですよ、カツユ。では、我々側に付いてくれた忍者の方々には音隠れの里に紹介状と退職金を包みましょう。それと、プルシュカ……掃除は頼みましたよ」

 

「はーい、パパ。黒ゼツさん、約束を破るのは良くないと思うよ」

 

 忍界における眼とは、入れ替え簡単なコンタクト的な存在だ。特に、医療忍術を極めた存在が居れば尚更のこと。今現在、挟間プルシュカの眼には、うちはイタチが残した万華鏡写輪眼が装着されている。そして、その眼から出現する須佐能乎には十拳剣が標準装備。

 

 黒ゼツが優れた能力を有していても本体を確実に十拳剣が貫けば、幻術世界に永遠に封印することは容易い。

 

「う、裏切ったな!」

 

「酷い言いがかりですよ黒ゼツさん。私達への報酬を支払わないまま暁を解散させたのは貴方ですよ。本当に残念です」

 

 黒ゼツの封印が完了する。

 

 これにより、第四次忍界大戦が終戦した。

 

 忍連合は、文字通り全滅。第四次忍界大戦の裏側で行われていた5大国と周辺諸国の第五次忍界大戦は、当然周辺諸国側が大勝利して、大国の国土を半分以上奪い取った。その結果、5大国で生き残った忍者の総数は大戦前の1割以下にまで落ち込み、国家存亡の危機となっている。

 

 暁側は、うちはオビトが外道輪廻転生で自爆。黒ゼツは、封印される。挟間一家や暁側に寝返った忍者達は無報酬。幸いな事に、暁側がため込んだ資産から寝返った忍者へは退職金と音隠れの里への紹介状がある程度。

 

 つまり、此度の戦争は周辺諸国側が漁夫の利を全て勝ち取った形で終わった。

 

『さて、私達も家に帰りましょう。長いプルシュカちゃんの職場体験も終わりましたし』

 

「そうですね。帰りには、音隠れの里に寄って大蛇丸様に事の経緯もお伝えすると同時に、約束も果たさないといけませんからね」

 

「パパ~、ママ~。プルシュカ、頑張ったから今日の晩ご飯はオムライスがいいな~」

 

 愛する妻と愛する娘を守り、全てを成し遂げた挟間ボンドルド。

 

 愛の力で戦争を根絶した男の物語が完結した。

 

 

◇◇◇

 

 全ての戦争が根絶された数年後。音隠れの里で、開催される平和記念のレース。

 

 そのレースの応援に家族と参加する日向ヒナタと日向ボルト、日向ヒマワリの姿があった。日向一家は、母親が二人いるという謎めいた家庭である。だが、昨今音隠れの里で似たような家庭で猿飛一家もある。珍しい事には変わりないが、探せばいるという感じだ。

 

「ほら、ボルトもヒマワリもしっかり応援するのよ」

 

「分かってるってば。ナルト(・・・)トップロード母ちゃんが勝てば、今日はごちそうだもんな」

 

「兄ちゃん。勝つのは、サトノダルイ(・・・)モンドさんだよ。私、ファンなんだから」

 

 日向ヒナタの息子である日向ボルト。彼の名前は、恩人である挟間ボンドルドから名を頂いている。名付けたのは日向ヒナタ本人であり、そういった配慮ができる素晴らしい女性に成長を遂げていた。

 

 そして、参加バ体達の次々紹介されていく。

 

『1枠:ハシラ(・・・)マックイーン

2枠:マダラ(・・・)イスシャワー

3枠:トビラマ(・・・・)テイオー

4枠:ヒルゼン(・・・・)スキー

5枠:ミナト(・・・)ブルボン

6枠:ナルト(・・・)トップロード

7枠:メジロアルダンゾウ(・・・・)

8枠:メジロジライヤ(・・・・)

9枠:サクモ(・・・)クロス

10枠:オビト(・・・)ップガン

11枠:ナガト(・・・)ブライアン

12枠:コナン(・・・)ターボ

13枠:イタチ(・・・)ワン

14枠:キサメ(・・・)イショウドトウ

15枠:サトノダルイ(・・・)モンド

………

……

…』

 

 忍界に詳しい者ならば、どこかで聞いた事があるような名前ばかりだった。そして、始まる。平和記念レース……ボンドルド杯が。

 




は、走りきった!
超大作ナルトの二次を何とか完結させられました。

長い間、読者の皆様ありがとうございました!
途中、色々と時事ネタが混ざってしまいバ体など出てきましたが…最終的にはこれで良かったと思っております。

本当に、ここまで執筆してこれたのも読者の皆様も感想や誤字脱字指摘などあってこそです。

ありがとうございます。


次回作等は、何も考えておりませんが思いつきましたら活動報告に載せたいと思っております。


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