Muv-Luv-Dragonewt (へらこじか)
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第一章 一角獣の導き
#0 プロローグ


みなさん初めましてよろしくお願いします。
この物語は、マブラヴとガンダムシリーズ作品から取ったモビルスーツのクロスオーバー作品です。
少しずつですが更新していくので、ぜひ読んでください!


この世界はひとつ…ではないと誰かが言った。今起きていることが別の世界では無いかもしれないし、反対に向こうで何かが起こっているかもしれない。

 

この物語はある少年が些細なことで運命を変えられ、自らを律していくもう一つの『あいとゆうきのおとぎばなし』である。

 

ーーー2020年11月6日ーーー

 

俺は今とても嬉しい。なぜなら今日は誕生日だからだ。高校3年の終わりが近づき、進路も指定校推薦で決まり、気楽に生きている。

高校2年の夏に模型屋で見つけたあるプラモ---『RGユニコーンガンダム1号機』に一目惚れしてしまい、進路が確定するまで買わないと決めた。今日こそ買える日なのだと浮かれ気味の帰路、ここが俺の命運を分ける分岐点となった…。

 

 

 

(あれは…トカゲ…?)

 

道路のど真ん中に居座っているトカゲらしきものを発見した。轢かれても知らない、そう思っていた時…1台の軽自動車がトカゲに気付かずに走ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………ここは………どこだ……)

 

目が覚めると、そこは何もないまるで新品のコピー用紙のような真っ白な空間だった。本当に何もない…。

 

「確か…俺は………そうか……やっぱり…」

 

痛みは無く、記憶も断片的にだがある。

 

(帰り道、トカゲらしきものを見つけて、それから…)

 

…認めたくはなかった。人間誰しも終わりが来る。いや、人間以外もそうだ。でもこんな形で終わってしまうとは…。

 

しかしその時、俺は動かずにはいられなかった。考えるよりも先に動いていた。

 

小さい頃からそうだったが、俺はヒーローに憧れてたからか、いつも人助けをしていた。どれも小さなことだが皆に『ありがとう』と言われることが嬉しかった。いつか皆を守れる大人になりたいと思っていた。

 

…まあでもいいか。最期に小さな命を守れたんだ。悔いは…もちろんある。両親に孝行出来なかったこと、よりにもよって誕生日が命日になってしまったこと、恋愛経験もなかった。まだまだある…やりたかったこと。

 

それに、ある少女を……救えなかったこと。

 

 

「っ…畜生……!!」

 

 

 

 

 

 

『少年…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…?何だ幻聴か?誰かが呼んだ気が

 

「少年。」

 

ッ!?

足元を見ると、さっきのトカゲがいた。

 

(なんだよ…これ…なんでトカゲが言葉を………!?……声が…出せない…?)

 

「当然。少年殿は死んだのだから。」

 

(…何…どういう事だ…一から説明しろ!!)

 

声は出せないが心の中で叫ぶ。やり場のない怒り、死んでしまったことへの悲しみ、負の感情が渦巻いていく。

 

「少年殿、君の残りあったはずの時間を取り戻したいと思わないか?」

 

何だって…まさかこれ…

 

「説明している暇はない…これも君のため…いや、()()()のためだ…。」

 

(ま…待て!!これってまさか転生とかなんとか…)

 

「龍の加護があらんことを。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー横浜基地地下ー

 

 

(…武ちゃん…)

シリンダーに入った脳髄がそう呟いたかのような感覚があった。

うさ耳のような髪飾りを着けた少女がそのシリンダーにそっと手をかざす。

「…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued




まだ主人公の名前が出ていませんが、次回から出ます。マブラヴオルタはにわかプレイなので訂正ありましたらよろしくお願いいたします!


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#1 少年と一角獣

今回から主人公の名前が決まります!
文章に不備がありましたら報告お願いいたします!


-オルタ世界・夜-

 

 

………………月が綺麗だと思いながら、少年は今日起こったことを整理した。

まずひとつ…学校帰りに事故に遭う。ふたつ…俺にトカゲが『死んだ』って言ってきた。みっつ…いきなり転生させられた。

少年は正直に言うと異世界転生ものは苦手であった。なぜに突然事故に遭ってチート能力貰って…。そんなものご都合主義すぎてそういう類の作品は好きとは言えなかった。

しかし現に自分はそんな場面に会ってしまった。 ……チートとかは貰っていないはずだが。

 

「まず事故にあって…なんかトカゲが喋って…で、転生させられて…」

 

何故こうなったのか……一から整理をしなければ追いつかない程の体験。

 

「まぁ、こういう時はどうするんだっけ…?」

 

手当り次第に頭の中の記憶を掘り起こす。アニメや小説の世界では事前に情報を与えられたりするのだが、それが全くない。由々しき事態である。

 

さらに追い討ちをかけるように、これから彼にとって一番あってはならないことが起こってしまう。

 

「…。ん?俺の名前…なんか違う…?」

 

思い出せない。自分の名前を。

人間誰しも名前がある。たとえどんな悪党でも、正義感溢れる人でも。

しかし出てくるのは違和感のある名前…

 

 

刻永 龍臥(ときなが りゅうが)

 

 

「なんでだよ……こんな名前じゃないッ…!!!」

 

(……なんだよこれ……なんで忘れてんだよ…)

 

忘れてしまった元の名は大切であり尊敬する者-祖父がつけてくれたのであって、おじいちゃんっ子であった彼にとっては今の出来事よりも大変なのだ。

 

「嘘だ嘘だッ!こんなこと…………っ!!うああああああああああっっっっ!!」

 

少年……龍臥はしばらく泣き続けた。大切な思い出がどんどん消えていく感覚に陥っていった。

……少し落ち着き、数分後に龍臥は辺りを見回す。

荒廃したような、いや、何者かによって整地されたかのような大地を目にする。

 

(何が起こったのか大体は想像がつく…。おそらく戦車のような大型機械が通ったのか?それにひとつじゃない…。)

 

生前にマンションの解体作業を見たことがあり、よく覚えていた。

 

-と想像していると、その時ふと後ろに気配を感じる。この感覚は生き物だ。だが何か違和感がある…空っぽな魂、ただ命令だけを実行するような生物…。

そんな感じがした。振り返りたくない。振り返れば恐ろしい事になる。

 

 

 

 

 

 

(なんで俺ばかりこんな目に…)

 

 

 

 

突如、耳を塞ぎたくなる程の轟音。

後ろにいる何かを超える威圧感。

刹那、轟音を発した()()は後ろの何かに攻撃を開始した。

銃弾を発射したような銃声、肉が潰れる不快な音…

今まで振り返る事が出来なかった龍臥は咄嗟に振り返り目視する。

そこには、現実では有り得ない事が----

 

白乳色の不気味な生物の死骸、それと自分を見下ろすかのようにそびえ立つモノ。

純白な一本角をもつ巨大な人型機動兵器『ユニコーンガンダム』がそこに居た--。

 

「嘘…だろ…」

 

自分を疑った。今日で色々なことが起こりすぎたから無理もない。

しかし現実---瞬時に理解出来た。

その時、ユニコーンは巨大なマニピュレーターを差し出した。

 

 

()()

 

 

そう言ったように感じた。開いたコックピットに乗り込み、操縦席であろうシートに座る。コックピットが閉まり、全天周囲モニターに周囲の映像が写ると、あの特有の起動音が聞こえてくる…

 

「これがパイロットの…バナージの…景色…」

 

バナージとはユニコーンガンダムのパイロットであり、龍臥の好きなキャラクターだ。その人と同じ光景を見ているのだ。だが感動していたり、思考を停止している場合ではない。

 

「まずはこの世界について知らなきゃな…」

 

座席正面にある小型モニターに通知。付近で戦闘………。良い予想は出来ない。先ほどの奇妙な生物の死骸を見てからそう思ってしまう。

 

「とにかく…行かなきゃ!!」

 

気持ちを紛らわそうと、龍臥は某天パの言葉を--龍臥、行きます!!!

そう叫ぶとユニコーンのバーニアを目いっぱい吹かし、その戦闘区域を目指す-----!!

 

 

 

その先で地獄を見るとは知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

to be continued




文章ってのは難しいですね…。
毎日投稿を考えておりますので、閲覧していただけると嬉しいですッ!!次回をお楽しみに!!


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#2 初陣-地獄

戦闘描写、すごく書きたかったので少し長めです。
主人公の容姿を決めてみました。それではどうぞ!


戦闘区域に向かう途中、暗くなった小型モニターに自分の顔--転生後の顔が写る。

容姿はまあまあ良く、黒の髪に一部分右目あたり前髪が白く長くなっている。いかにもアニメっぽさがあるが嫌な気はしない。

 

「これからどうなっちまうんだよ〜…あの変な死骸とか…ホラーな世界とかやめろよな!」

 

不安しかないが、龍臥自身、今の状況を飲み込むしかない。憧れの機体を操縦しているのだ、少し気楽に行こう。しかしその数秒後、眼下に広がる光景に絶句し、ユニコーンに乗っていることを忘れてしまう……。

 

「な…なんだよ……この…………え…?」

 

クレーターのふちの崖にユニコーンを止め、クレーター内で起こっていることを凝視する。

 

 

そこには、MSとは違う人型ロボットと……先ほどの死骸と似た、気色悪い生物との戦闘だった。

オープン回線になっていたせいか、突如

 

『た、隊長ォォォォォォ!!!』

 

『痛”い”!!あ”あ”あ”いやめてくれあああああああああああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”お”あ”ああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”お”あ”あ”がっ』

『兄さあああああああん!!!』

 

『い”や”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっっ!!!』

 

悲鳴、断末魔、助けを乞う声、敵への呪詛…人が日常生活では発さないであろう声が聞こえてくる。

赤い蜘蛛…蟻にも見える化け物…その数およそ500体が群がり、人をロボットごと喰っている。

 

別の場所では大きな鋏角をもつ白いヤツがロボットを叩き潰している。

目を疑ったが、目の前で起こっていることは紛れもない現実--言葉が出ない。開いた口が塞がらないとはこのことか、と思う暇もない。

 

(今は…まだこの世界の事情を知らない…下手に動かないでおきたい……………)

 

それに正直、恐ろしい。あんな化け物を相手に自分が何をできるか。多分…囮にもならないだろう。

 

「あれは…まだ…生きている…?」

 

ふと見ると、先ほど喰われていたロボットのパイロットらしき男性が必死に手でもがいている。

 

「なんだよ…あのクソトカゲ野郎!!!こんな世界に飛ばしやがって……なんだよこの世界は…何をさせたいんだよ!!!!」

 

オープン回線だという事も忘れ、叫ぶ。こんな無力で意気地無しな自分を恨む。目の前で死人が出ているのに…動けない。

 

ウゴケ、ウゴケ、リュウガ

 

(!?)

 

後ろ、正確に言えばシートの後ろ下から聞き覚えのある音声が聞こえた。

 

「な…ハ…ハロ!!?」

 

気が付かなかった。こんなに存在感のある物体がいるなんて…。

 

『ウゴケ、ウゴケ、タスケニイケ、リュウガ』 とハロ。

 

「無理…だよ…あんな化け物…俺には何も出来ないよ……」

 

事実そうかもしれないと自分に言い聞かせたその時

 

 

 

 

()()()()、マモルンジャナイノカ?』

 

 

…え?

 

『ヒーローニ、ナルンジャナイノカ?』

 

「な…何故そのことを…?」

 

正直驚いた。そのことを知っているのは自分と…『あの娘』だけのはずだった。

 

 

 

『約束、ね!』

 

 

 

 

思い出の中の、()()()の声。

覚悟を…決める。

 

 

わかったよ…()()()…俺は………ヒーローに…皆を守れる大人になる!!

 

 

「うおおおおおおおおオオオオオッ!!!!」

 

ユニコーンを動かす。恐怖をかき消そうと力いっぱい叫ぶ。

 

「化け物共がアアアアアアアアアアア!!!」

 

崖から飛び降り、鋏角をもつヤツをクッション代わりに踏みつける。同時にそいつが潰れて体液を吹き出すと、周りの赤いのも白いのもこちらに向かって来る。

 

「何か…武器は…!!」

 

モニターを操作し、ビームトンファーを起動させる。

 

「これなら!!」

 

龍臥の思った通り、相手は有機生命体。ビーム部分が触れた途端、瞬時に肉体を焼き切る。

 

ただ振り回すだけで十分だった。どんどん飛びかかってくる赤い化け物共が溶けていく。

 

 

突如警告音が鳴り響く。

 

(後ろかッ!!)

 

鋏角が二体、両方とも鋏角をユニコーンに叩きつけようと振りかぶる。その一瞬を龍臥が逃すはずもない。

 

今は怖くない。()()()の言葉を思い出すと勇気が湧いてくる。

 

ユニコーンを半回転させ、鋏角を切り落とす。と同時にバルカン砲を掃射、二体とも沈黙する。

 

(残り…赤いのざっと100体…)

 

モニターに『Magnum』の文字が見えると即座にタップ、武装をユニコーンの代名詞であるビームマグナムに切り替える。

 

「これで…終わりだあああああああああああああぁぁぁ!!!!」

 

斜め後ろ上に飛び、赤いのが直線上になった瞬間、操縦桿のトリガーを押す。

遠雷のごとき轟音を鳴らし、ビームマグナムから光球が発射される。

赤い化け物達が一瞬で溶けていく……

 

「掠っただけで…」

 

アンジェロというパイロットも同じセリフを吐いたが、その場にいれば誰もがそう言うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

龍臥が戦闘を開始してから約4分後---

生存していたのは、脚部を返り血で赤黒く汚したユニコーンに乗った龍臥ただ一人だった……。

 

 

 

 

 

to be continued

 




今回から戦闘描写が追加されます!龍臥がなぜユニコーンに乗ることになったのか、カオリとは何者か…
どんどん謎が増えていきますが、気長にお待ちください!では、次回もお楽しみに…


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#3 遭遇-変身

今回からヴァルキリーズが登場します!
もう一度プレイし直さなきゃ(使命感)


初戦闘を終え、座席にぐったりと座りこむ龍臥。目の前の命を助けきれなかった事に心残りがあるが、気持ちを切り替える事に専念する。

 

「お疲れ様 、ハロ」

 

龍臥はハロに話しかけるが返答がない。

 

(せめてお疲れぐらい言って欲しいな…)

 

しかしハロが沈黙していた理由が判明するのだった。

 

『…戦…が…………せよ……』

 

突如聞こえた何者かの無線。

 

「無線、確認シタ!確認シタ!」

 

(ファッ!?人か…!?)

 

オープン回線になっている事を思い出し、周波数を合わせる。

 

『こちらヴァルキリー2、戦闘終了後の部隊生存者の捜索を開始します』

 

『ヴァルキリー2、こちらヴァルキリー1了解した。ヴァルキリー5は付近を見張れ。ヴァルキリー3、4は生き残りの小型種に注意せよ』

 

『『『了解!』』』

 

…どこかの部隊らしき会話が聞こえる。

もし遭遇してしまったら、どう思われるだろうか…。

 

(まさかとは思うがユニコーンを捕縛なんてことは……しないよな。)

 

不安になりかけた龍臥が取るべき選択肢は3つ

1:情報を得るため接触する

2:逃げる

3:戦う

 

この場合は当然3を選ぶ訳にはいかない。だとすれば1…いや、今の自分は身分を証明するものが無く、しかも私服姿だった…。

こんな少年が戦場にいるのは怪しすぎる。

では2…逃げても得られるものはないか…

と迷っているとエンジン音が響いてきた。もうすぐそこにいるのだろう。

 

『ヴァルキリー2、目標に到着…こ…これは酷い……』

 

『こ、こちらヴァルキリー5、付近を捜索します…』

 

『ヴァルキリー3、周囲を警戒』

 

『同じくヴァルキリー4、周囲を警戒します』

 

(ヤバいどうする!?このままじゃ…)

 

焦る、焦る。龍臥はここまで焦る事は初めての経験だった。口腔がカラカラに渇いてくる。

 

『!?…そこの白い機体!!所属部隊を言え!』

 

何やらヴァルキリー2だとかの強気な女性の声がこちらに向かって言っているようだ。確かに、所属を言わなければよりいっそう怪しまれる…。

 

「自分は…」

 

ここで龍臥のアレが発動してしまう。

 

女性耐性0(陰キャ特有のアレ)

 

バーニアを吹かして上昇。

 

『あっ!ちょっと!!----』

 

一方的に通信を切断、逃げれば得られるものがないとか吐かしておきながらなんだこの有様は。龍臥は思うがそのまま逃げようとする----

 

-水月サイド-

 

付近で戦闘を開始したらしい部隊の捜索に来たと思ったら、所属不明の真っ白な戦術機がいたし、その後逃げるなんて…

 

『こちらヴァルキリーマム、ヴァルキリー2、どうかしたの!?』

 

「あっ遥、所属不明機が逃走、通信も切断されたの!!」

 

聞こえてきた無線相手はライバルにして親友の涼宮遙。元々は衛士志望だったけど、事故でその道は絶たれてしまったのよね……。

 

「!!バカ……それ以上跳んだら…!!」

 

見るとその機体は高く跳び上がってしまった。

 

戦術機を操縦するにあたって最も注意しなければならないことの一つ、

『跳びすぎてはいけない』

 

高く跳躍した所属不明機は彼方からの強烈な光に照らされる。

あぁ………またこれで人がまた死ぬ…

人類が制空権を奪われた理由が、その『光線級(レーザー)』だった。

 

 

 

 

だが次の瞬間、水月は目を疑った。何故なら現状それは回避不可のはずだったからだ。

 

 

なのに…純白の機体はいとも簡単にその光線を回避したのだった---

 

-龍臥サイド-

跳び上がって逃げようとした瞬間、前方彼方に光が見えた。

 

突如警告音が鳴り響き、それに動揺したその時、光線が機体を掠めていった……

偶然回避運動を行っていたため間一髪回避できたが、何者が撃ったのか、その正体が気になった。

モニターにズーム画像が表示されると、そこには二つ目のかわいらし…くない緑色の生物がそこに15体程いた。

 

「生物がビーム…いや光線を撃つ!?そんな事ある訳が…」

 

龍臥は動揺していたが、ある感情が湧いてきた。

 

憤怒

 

もう少しで自分は死んで、いや殺されていたのだ。

先ほどのこともあり、『死』というものが身近になってきた事とその元凶であるあいつ(トカゲ野郎)に怒りが湧いてくる。

「あのクソトカゲ………!!!」

突然--

 

 

 

 

 

 

機体が赤く輝き始めた。

龍臥自身、何故ニュータイプでもないはずの転生した自分がこのシステムを起動出来るのか、理解できなかった。

しかし見る見るうちに装甲部分がスライドし--赤く光る『サイコフレーム』が露わになっていく。

 

NT-D(ニュータイプ・デストロイ)

 

ニュータイプ絶滅計画の脅威のシステム…

その身を赤く輝かせ、ユニコーンは雄々しい一角を、Vの字に変形させる。

 

 

 

 

 

その名も-ガンダム。ユニコーンガンダム。

 

 

 

 

 

 

to be continued




人物の感情表現が難しいですね。まだまだ毎日投稿を頑張りますのでぜひ評価、ご感想を!!
それではまた明日!


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#4 遭遇-接触

お待たせしました!昨日は体調不良で投稿できませんでした…梅干しって美味しいですよね…
それでは今回もよろしくお願い致します!どうぞ〜


-赤く輝くサイコフレームを見て水月は驚愕していた。今まで見たことない機体が、見たことも聞いたこともない状態にあったからだ。

 

「ちょ…何よあれ…あ…赤い!!」

 

『どうしますか大尉!!』

 

『光線級との交戦は予定にはない。全機、待機せよ!』

 

『『『了解!』』』

 

「りょ、了解!」

 

(何なのよ今日は…)

 

それは水月以外も思っているだろう。光線級のレーザーに対抗できる機動が可能な機体はあるはずがない。

水月達は見ているしか出来なかった…

 

 

龍臥サイド

 

「NT-D……そんな馬鹿な!?ニュータイプもいない、俺自身もだ!」

 

龍臥は動揺しまくっていた。

座席が変形し、操縦桿もしまわれ、脳波コントロールをするための状態になった。もし、龍臥がニュータイプならばユニコーンは思いのまま動かせる。それをできるか試みた。

 

「あの緑色のヤツに…突っ込んでやる!!!」

 

ユニコーンはバーニアを全開、およそ300km離れた標的に向かっていく。

 

(やはりこいつは…俺がニュータイプだってことの証明!?)

 

転生時に特典で貰ったのならば、有難い。少なくともユニコーンを使う上で必要だからだ。

 

「!?…しまった!!」

 

前方の光が強くなっていく。数は14、残り一つはまだチャージ中なのだろうか?そんな疑問を隅に置き、レーザーをギリギリで回避する。

 

モニター操作で武装を変更、ビームマグナムからバックパックに装着されているビームサーベルへ。

右腕を振りかぶり、再び撃たれたレーザーをサーベルで防御する。強烈な閃光に思わず目を閉じそうになる。

 

「ここで……止まれるかァァァッッ!!!!」

 

思い切り上昇、その後すぐに急降下。フェイントが通じるか分からないが、一気に距離を縮める。

 

「龍臥、ナイス、ナイス!!」

 

「サンキュー、ハロ!! 行くぜぇぇぇぇ!!」

 

ビームサーベルの剣先を目標へ向け、全速で突っ込む。

一体をサーベルが溶かしたことを確認すると左右に振り回し殲滅する。

 

「はぁ…はぁ…な…疲れた…」

 

ユニコーンはサイコフレームを収納し、ユニコーンモードに戻った。

脳波コントロールってのは疲れる、と思いながら先ほどのクレーターに戻る。今の戦闘で自信がついたため、接触することに決めた。

 

何があろうと、カオリの言葉を思い出して勇気を振り絞ると心に誓った。

 

 

 

 

 

(--人数は5人…いるのか。)

 

多少不安がありながら接触を試みるため、距離を詰める。

オープン回線にし、通信を開始。

 

「初めまして、どこかの部隊の皆さん。」

 

『--!!? あぁ、貴様は何者だ?その戦術機といい…』

 

階級が大尉らしき人の声だ、この人が中隊長か?それに…戦術機ってなんだ?と思いながら、できる限りの答えを出す。

 

「俺は刻永 龍臥。この機体については…今は説明しにくいです…。俺には記憶がありませんから。」

 

『記憶が…?』

 

半分嘘であって嘘ではない。生前の記憶があるがこの世界については全く知らないからな。

 

「それについてなんですが、あの奇妙な生物は何ですか?」

 

『あなた…BETAを知らない訳ないでしょ!?』とヴァルキリー2。

 

(なるほど…あれはBETAと言うのか…)

 

『いや、記憶が無いならBETAについて知らなくてもおかしくはない…』

 

「なので、今何が起こっているのか教えてくれませんか?……おぅっ!!?」

 

がくん、と機体が急に動き始める。見るとマップに目的地が現れた。おそらくそこに自動で向かうらしい…

と悠長に考えている場合ではない!!まだ教えてもらってないのに…

 

『あっまた!!』

 

ヴァルキリー2らしき女性が焦る声が聞こえたかと思えばまた、通信が切断された。

 

「はああああああ??おいまたかよぉ!?ユニコーン!!ちょっと戻れ!!」

 

機体はみるみる上昇、空の彼方へ。

『……何なのよもう…』

呆れるヴァルキリー2。

 

「ハロハロ、ハロ。落チ込ムナ、龍臥!」

 

「ちくしょう…なんも情報ないし…この世界について知りたかったのに…」

 

と、落ち込む龍臥。しかしそんな落ち込みを忘れるほどの衝撃が待っている。

 

 

 

 

 

マップに映し出された文字、それは『N()e()e()l() ()A()r()g()a()m()a()』だった…

 

 

to be continued




最近便秘気味でありながらお腹が減ってよく食べてしまう…溜まってばっかだ…
いかがでしたか?接触したかったのにユニコーン君は勝手に動いてしまいました。その向かった先には…!?察しのいい方ならもう…
では次回もお楽しみに!!


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#5 拠点

夜以外から失礼するゾ〜
このクロスSSつまんなスギィ!!(自虐)
自分、書いていいっすかぁ^〜
では続きを、どうぞ。


ユニコーンが目指していた場所がわかると、龍臥は心が踊りそうだった。今必要なものは大きく分けて3つ。

 

1:情報

2:拠点

3:燃料他

 

もし本当にこの先にあの『戦艦』があるのならば、『拠点』と『燃料他』の2つ、あわよくば3つ全てを入手できるかもしれない。そんな期待を胸にしまい、(多少は期待しながらも)ユニコーンの行く先に目を向けていた。

 

 

 

-数分後、京都にあたる場所にそれはあった。

 

かつて別世界で反地球連邦軍エゥーゴが用いた戦艦、『ネェル・アーガマ』だ。

 

「この(ふね)にもしもジェガンだとかの汎用だが高機能MSがあれば…ユニコーンの代用としても使えるかも……」

 

「ハッチオープン、ハッチオープン!」

 

ハロがアーガマのハッチを開けてくれたらしく、ユニコーンをハンガーに収納する。

 

「すっっっげぇ〜…本物だ…!!」

 

そこには、先ほどの想像通りジェガンの他リゼル、デルタプラスといった機体が多くのハロによって整備されている最中だった。

 

他に何かあるか、広いハンガーを走り回って確認したところ、ビームライフルやバズーカなどの武器があり、とりあえずは戦えることがわかりホッとする。

 

「流石に武器不足は避けたいからな…」

 

もう反対側にハンガーがあるが、今は行かないでおこう。と思い、龍臥は管制室に向かった。

 

(改めてみると、さすがに変じゃないか?何故ここまで揃っている?まるで誰かがここに送られることが決まっていたような…)

 

確かに不自然な程整っているが、今は情報を得ることが先優先的だと感じ、管制室のドアをボタン操作で開ける。

 

「管制室というより…ブリッジか?」

 

間違いない、アニメで見た通りだった。

数あるコンピューターのうち一つを起動、『BETA』と検索してみる。

 

(BETA…宇宙から来た人類に敵対するもの…え?)

 

ハッとした。まさかこの世界は……いや、そんなわけ…

試しに『シュヴァルツェスマーケン』と入力してみる。すると、ある文字が表示される。

 

「第666戦術機部隊…東ドイツ最強の部隊…あぁ……やっぱり…」

 

悪い予感が的中し、龍臥は落胆した。よりによってこの世界とは…

 

龍臥は生前に友人のオススメでシュヴァルツェスマーケンの小説を借りたばっかりだった。

まだ5巻しか読んでいないが、軽く鬱になりそうになったのを憶えている。

 

(面倒臭い事になったぞこれ…)

 

しかし落ち込む暇はない。しばらくすると龍臥は腹ごしらえのために食堂へ。

 

(食糧は十分…野菜は栽培しているのか…)

 

モニターに野菜の成長度が表示されており、またも安心できたが、携帯食糧を食べ、戦闘に備える。この世界ならばいつ戦闘になってもおかしくはないので当然である。

 

突如ハロが慌てた様子で入って来たと同時に警告音が鳴り響く。

 

「敵、敵、敵発見!!」

 

「了解。」

 

仕方がないので戦闘準備を始める。

バナージが着ていた物と同じ型のパイロットスーツに着替え、リゼルに乗り込む。また勝手ユニコーンに動かれちゃたまらない。

 

「戦闘を開始。」

 

最低限の言葉を発し、カタパルトにリゼルを乗せ、発進する。

何故自分がMSを操縦できるのか、と考えながら赤く広がった戦車級(タンク)の絨毯に突っ込んでいく。

 

 

 

しかし龍臥は気が付かなかった。戦車級(タンク)の他に硬い、()()()()()気配があったことに…

 

 

 

 

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 




拠点はネェル・アーガマで決定です。
小型種はまだしも、突撃級に関してはMSも危なさそうですね…
それでは次回もお楽しみに!!ユニコーン君、お留守番。


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#6 戦う理由

マブラヴオルタのコミカライズ版買いました。


リゼルのビームライフルで戦車級を殲滅していくと龍臥はある疑問を持つ。

 

(なぜ…戦車級のみなんだ?今までシュヴァルツェスマーケンを読んでいたときはこんな描写は無かったはず…)

 

-とこんな事を考えている暇はない。例え戦術機…この世界の兵器を遥かに凌駕するモビルスーツであっても油断は禁物だ。攻撃の手を緩めるな。

 

(ライフルのエネルギーが減少…残量6割!)

 

即座に武装をビームサーベルに変更したが、基本とは少し違いサーベル二刀流で戦う。

 

飛びかかってくる戦車級はまさに噛みつかんと歯をガチガチ鳴らして襲いかかってくる。確かにアレに噛みつかれもすればひとたまりもない。

しかしこちらも負けじとサーベルを振り回して応戦。レーダーに映る戦車級の4割は倒したと思うと、機体を軽く上昇させ縦に半回転、バルカン砲を掃射。

 

「サーベルの方が楽だったな…無駄な弾を使っちまった」

 

色々試したいことはあるが、今は殲滅が優先事項だ。

突如ハロが騒ぎ出す。

 

「新タニ敵反応!!数、オヨソ200!!200!!」

 

「!? やっぱり来たか!!?」

 

龍臥は初め戦車級の後に要撃級(グラップラー)梯団が押し寄せると思っていた。確かに、『シュヴァルツェスマーケン』ではそのように書かれていた。しかし()()()()()()

響く地鳴り、嫌な気配、殺気に近いものを感じる。

 

「ま…さか…」

 

しまった、と思った。急いで武装を、リゼル隊長機に装備されるメガ・ビーム・ランチャーに切り替える。

狙撃できるのならばしたい。しかし今、戦車級を片付けることに精一杯だ。狙いを定めランチャーのトリガーを引く。

 

「消え去れッ!!気色悪ぃんだよオォーーーーーーッ!!」

 

狙ったのは近づいてくる()()()ではなく、傍の戦車級の大軍である。ビームライフルとは違い、一直線上の敵を多く殲滅でき、ビームサーベルのような効率良さはないが近接戦闘でのリスクも少ない。

薙ぎ払うようにランチャーを発射、戦車級を片付けていく。

ビームによって地形が崩れるのは致し方なしと言い聞かせ、次なる敵、硬い鎧を頭部にあたる部分に纏う突撃級(デストロイヤー)にロックを切り替える…。

 

(来いよ…それ以上近づけば灰にしてやる…!!)

 

龍臥は怒っていた。こんな、わけも分からない生物達に多くの少年少女が、お年寄りたちが、大人たちが殺されたのだ。許せない。今ここに来て龍臥は初めて『()()()()』を考えた。

 

 

--『笑顔

 

子供たち、未来ある少年少女の笑顔のため、戦う。

 

例え相手が…BETAだとしても、()()でも。

 

 

そう考えている間に距離が縮まっていく。

もう我慢できない。

龍臥はリゼルをMA形態に変形させ、突撃級の梯団に突っ込んでいく。

 

「ハロ!!近くに光線級の反応は!?」

 

「ナイ!ナイ!飛ンデモ平気!!」

 

了解、と軽く返事をし前を向く。バーニアを点火し上昇、そこでMS形態に戻りランチャーを発射する。例え硬い鎧を持とうとその身体は有機生物。ビームによって呆気なく溶け、数が40程消える。ビームランチャーでなければこの数は貫けなかっただろう。

 

(やっぱり早く終わらせるためには…近接戦闘だ!!)

 

ビームサーベルを二本構え、切っ先を下へ。そのまま梯団の向かう方向の逆向きに全速前進、切り裂いていく。

これを繰り返していくと確実だが、流石にランチャーよりも効率が悪い。

と考えているとハロが驚きの言葉を発する。

 

「ハロ小隊、出動!!出動!!」

 

「は?」

 

レーダーに反応、機体の遥か後ろ-正確にはネェル・アーガマからだ。

見ると、驚愕する。なんと()()()()()()()()()()()()()()()()が6機、向かってくるのだった。

 

『ハロ01ヨリ、戦闘ヲ開始スル!!全機、続ケ、続ケ!!』

 

『『『『『了解、了解!!』』』』』

 

その様子は圧巻だった。様々なバリエーションのジェガン達が武装を巧みに使ってBETAを殲滅していくのだった。

下手をすれば俺よりも上手い、と思い龍臥も戦闘を再開。

 

----「これでぇッ!!最後オオオオオオオオオ!!」

 

体当たりで突っ込んでくる突撃級をビームサーベルで突き刺して終わり、これでひと区切りって感じだろう。

 

「ハロ、あの小隊は…?」

 

「アレ、ハロ達、ミンナ戦ウ為に組ンダ!龍臥ノ戦闘データ入レタ!!」

 

「はぇ!?お、俺のデータだって!?」

 

(そういえば食堂に来る前に見ないと思ったら、そんなことしていたのか…。それに、俺のデータだからそれなりに強いと言っても…)

 

だとしてもあの連携プレーはさすがと言うべきか。まさにロボットだからできることって感じだな。

なんてハロと会話をしながらハンガーに戻る。ジェガンもあそこまで強いなんて…意識したことも無かった。

モビルスーツは対モビルスーツのためにあった事から、BETA相手だとより強く見える。

ハロ達とともにブリッジへ向かう。

 

…これで人1人の命を守れたのだろうか。例え壊滅した京都で戦ったとしても、BETAの進行を多少止められたと信じたい。

 

調べてみると、この艦はハロ達によって成り立っているらしく、小型の作業用ロボットも多く存在している。

反対のハンガーも確認したところ、今日1番驚いた。なんとF91やV2アサルトバスター、クロスボーンX1の宇宙世紀最後の機体やアナザー系列のWゼロ、DXも配備されていた。流石にまだアナザー系列の機体は整備途中だが、その中でも∀ガンダムがあったのが驚きだ。これで多くのBETAから人々を守れる…。無意識に笑みがこぼれる。

 

さて…この世界--マブラヴオルタの世界について、少しネットで調べた程度の知識で俺が戦い抜けるだろうか?不安だが考えるだけ無駄だ、と次の計画を立てる。

 

「たしか…今日は12月13日…え!?ヤバいやんけ!!」

 

12月といえば、甲21号作戦が行われる…その前に…行かなければ…多くの人の笑顔のために…!

 

「艦長!!これから横浜基地へ向かう!!ネェル・アーガマの発進準備を頼む!!」

 

艦長帽子を被った艦長ハロにそう伝える。

 

「まずは、博士と…白銀タケルに接触しなければ!」

 

 

-横浜基地-

 

教官を失った少年の心は、酷く落ち込んでいた。しかし、そのままではいけない。これからもっと悲惨な運命が待っているのだから…

 

「…まりもちゃん……。」

 

 

to be continued

 

 

 




これから文字数を増やしていこうと思います。小説って難しい…
次回へ。


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#7 横浜基地へ

前回、タケルちゃんが落ち込み気味でしたが、演出上仕方なかったのです(言い訳)
今回と次回は武との対面ですッ


ネェル・アーガマで横浜基地へ向かう間にこの艦の1から10まで知ろうと思う。

 

まず第1ハンガーにある機体は現在ユニコーン1機、リゼル隊長機と汎用リゼルが2機ずつ、ジェガン6機、デルタプラス、バイアランカスタム。

…そして、これはあまり動かしたくない機体……ユニコーン2号機バンシィ。

設定的にも危険なシロモノであり、もし米軍に奪われでもしたら…想像するだけでも恐ろしい。そこまで警備を薄くする気はないが。

 

次に第2ハンガーにあるのは超高性能機体ばかり…

ガンダムF91、V2アサルトバスター、クロスボーンガンダムX1…これらだけでも敵なしな機体ばかりなのに、更にはウィングゼロ(ENDLESS Waltz)、ガンダムDX、∀ガンダム…他にも探せば設計図や武装があるかもしれない。

 

素材はフルサイコフレームの機体が1機建造できるほどのサイコフレームがありルナチタニウム合金や強化スチールも多くありしばらくは困らないだろうか、と考えているとハロ達が問い掛けてくる。

 

「龍臥、ナゼモビルスーツ操縦デキル?デキル?」

 

「ナ〜ゼ?ナ〜ゼ?」

 

そういえばそうだった。

まさかあのトカゲ野郎か…? だとしたら困った事になる。自分の力も理解せずに戦うとなれば、下手をすれば撃墜されかねない。

ふと思ったことを聴いてみる。

 

「ハロ、この艦にシュミレーターはないか?あったら案内してくれ」

 

「…アル!アル!」

 

ハロについて行くと、4台シュミレーターが設置してある場所に着いた。

例えるなら、ゲームセンターのアーケードゲームみたいな。

脱出ポッドの形状をしたシュミレーターに乗り、機体データを確認。データにはユニコーン以外の機体が全て入っており、設計図もそこから入手可能かもしれない。

などと考えている間にシュミレーターを起動させる。

 

「さぁ、俺は白銀タケルに追いつける程の力はあるのか!?」

 

日本帝国軍を相手に設定し、戦闘を開始する…!!

 

 

-横浜基地-

 

 

「---以上がBETAを大きく分けた種の基本だ…」

 

特殊任務部隊A-01の中隊長、伊隅大尉がBETAの種について解説しており、それを隊員達は聞いていた。

その中、因果導体と呼ばれる白銀武-彼だけはBETAに対し恐怖近い感覚…特に、『兵士級』に強く反応していた。

その事を伊隅大尉は見逃さなかった。

 

「…少し早いがこれで終了する。白銀、後で面を貸せ。全員起立!!」---

 

-----伊隅は武に話した。自身と、自分の教官であった神宮寺軍曹との過去、これからの事…

それを武はしっかりと理解し、聴き、何事にもくじけずに進む事を決めた。

自分のしでかしてしまった事により教官を失った彼にとっては、大きな成長となった。

 

場所は少し変わり、ある部屋-夕呼副司令のパソコンにあるメールが届く。

夕呼は横浜基地の副司令であり、天才と言われる女性科学者だ。

 

(何かしら…こんな事ないはずなのに…)

 

夕呼はウイルスか警戒していたが、件名からそうではないことを予想した。

 

(この件名…『あなた個人に向えて』って誤字よね…こんなミスをオルタネイティヴ5の狗がする訳ない…)

 

しかし色々な可能性を考え、自作のウイルス対策ソフトを起動し、メールを開く…

 

実はこのメール、龍臥が送ったものである。彼は夕呼副司令に接触するため、ネェル・アーガマのコンピュータ全てを使い副司令個人のパソコンを探したのだった。

 

(『これはこの世界と、あなた達みんなに関係することです。単刀直入に申し上げます。私は別世界から来た者です』……なんですって!?)

 

思わず目をカッと開き、早くメールの続きを読み進めようとする。

 

『ある少年…白銀武-因果導体である彼にもこの事を伝えて欲しいのです。少なくとも彼の不安を減らすことにもなりますし、個人的にも協力したいのです。』

 

(……)

 

夕呼は悩んだ。もしこれが事実だとしても…白銀武を知っている時点で何かあるのだろうと考える。

 

『私はオルタネイティヴ4の協力者であり、オルタネイティヴ5の反対者です。今日、そちらにお伺いします。』

 

(……!?今日ですって!?)

 

急すぎる展開だが、メールの内容はともかく、実際会ってみなければ敵かどうかも分からない。

 

「……いいわ、今日来るなら来てみなさい…」

 

夕呼は武を呼び、メールについて話をした…。

 

「--それで、メールの送信主は信頼できるんですか?もし敵だったら…」

 

武は疑心暗鬼だった。もし送信主が自分と同じ別世界からの来訪者だとしても、味方とは限らない。

数日前、日本帝国軍の一部がクーデターを起こし、多大なる被害をもたらした。

その事もあって、送信主に対し不安だった。

 

「まあでも、会って話をすれば全て分かるかも…霞がいればね。」

 

社霞…オルタネイティヴ4のために生まれた人工生命だ。彼女は子供ともいえる見た目だが、リーディングという特殊能力がある。それは、人の考えている事が分かってしまうことだ。

 

確かに霞がいれば、敵か見破れる。武は多少なりとも不安ではあったが、送信主を待つことにした。

 

 

 

-ネェル・アーガマ【シュミレータールーム】-

 

-龍臥は仰向きに倒れていた。力試しとはいえ、本気になりすぎた。若干体調不良だがこれから横浜基地へ行くのだ、と起き上がって戦闘結果を確認する。

帝国軍や米軍、国連軍相手には一方的な虐殺レベルまで行けたのだが……ハロが何故か、『一年戦争末期のアムロ・レイ』と『キレたカミーユ・ビダン』のデータを乱入させてきたのだった。

結果はもちろん負け、カミーユ相手にはバイアランカスタムで左腕部をビームサーベルで切断されたがなんとか勝利。

しかしアムロ・レイだけは本当に怖かった。コックピットを狙われ、避けたハズなのに直撃し撃墜された。

今回でわかったことは、ニュータイプ能力はジュドー並にあると想定、操縦テクニックはアムロ以下カミーユ以上という事だろうか。

ここまで力があれば、油断しなければ生き残りは確実だろう。

そうこうしている間にハロが横浜基地が近づいている、と報告してくれた。

…行こう、この世界のために!!

 

 

-横浜基地-

 

夕呼と武は待っていた。突如、基地内のサイレンが鳴り響き、職員や衛士達は何事かと慌て始める。

 

『所属不明の飛行物体が、当基地へ接近中!繰り返す、所属不明の飛行物体が接近中!』

 

BETAじゃないのか、と衛士達は半分安心するが油断はできない。戦闘準備をしておけと司令が入る。

 

「ついに…来たのね」

 

「はい…そろそろ…。霞、怖いか?」

 

「…ううん」と首を振る。

 

ウサ耳のようなカチューシャをした彼女こそが、社 霞である。

武と夕呼は彼女のリーディングに期待し、メールの送信主を待つ……

 

--「はぁ!?何よアレ!!国連軍にもなかった飛行船…?なんて…」

 

ヴァルキリー2、速瀬水月が戦術機名『吹雪』のコックピット内でカメラの様子を確認しながら驚愕したように声を漏らす。

 

『水月、茜。あなた達、戦場痕で所属不明の戦術機に出会ったんでしょう?それと関係ありそうじゃない?』と遥。

 

『お姉ちゃん、それなんだけど…その機体、すぐ逃げちゃって…』

 

彼女は涼宮遥の妹、茜。

 

『まぁとにかく、敵なら戦うしかないってことね…』

 

「……。」

 

水月は敵とは思えなかった。オープン回線で聞こえてきたあの声、

 

(『この…化け物共がああああああああぁぁぁ!!!』)

 

何か意思を、勇気に近いものを感じた。

 

『…速瀬中尉?』

 

『水月?』

 

ハッとし、「あぁ、ごめん考え事!!」と答える。

 

(…あの人……何者?)

 

 

---ネェル・アーガマが降り、中から見たことも無い機体7機…6機は同じだが一つだけ真っ白な機体達が飛んできた。

 

「なんだよアレ…!戦いに来たのかよ…!?」

 

武は焦ったが、夕呼はそれを見据えていた。

 

しばらくすると、純白な機体のコックピットハッチが開き、男性…らしき人が降りてきた。

その人は強化装備…戦術機に搭乗するとき装着する装備を着ず、宇宙服のようなスーツを着ていた。

 

「初めまして…夕呼副司令、それに白銀武さん。」

 

「こちらも初めてね…さて、本題よ。」

 

「え…もうですか?」と武

 

「当然よ。私たちに時間はないんだから。」

 

「分かりました。ちょっとその前に…武さん。」

 

はい、返事をする武。

 

「実はあなたと私は同い年でして…良かったらタメ口で会話してもよろしいですか?」

 

(…何だって?同い年??)

武は困惑していた。同い年でこんな事をひとりでしてくることがあるのか、と。

 

「まあ、構わないけど…」

 

感謝の返事をし、本題に入る。

「では……夕呼副司令、ここでは話は難しいでしょう?部屋に…「部屋に行きましょうってことね?」…!!?」

 

先読みとは…さすが天才か。と龍臥は思い、肯定した。

 

「-よし、ハロ!!ユニコーンをロックして、ついて来い!!ハロ小隊はこのまま待機!」

 

『『『『『『『了解、了解』』』』』』』

 

「…行きましょうか。本当に大事なことなので。」

 

龍臥は自分のことを全て話すつもりで夕呼と武について行った………。

 

後ろに何者か、心を読まれるような感覚をしながら…

 

 

 

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 

 

 




文章量はこれくらいが書きたいことがかけるのでこれで行きます。パズドラ片手に内容を練ります。
では…次回もお楽しみにイイイイイイ!!!


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#8 初めての仲間

マブラヴアニメ化早く!!
俺は待てない…ニブニブニブ


(-何だあの…きょにゅ…超乳!ゲフンゲフン。駄目だろ俺…女性耐性ないのに…ああもう…ネェル・アーガマに帰りたい…ハロをなでなでしたい……)

さっきまでの威勢はどうした。と思いつつ、女性だということを意識せずに会話を試みる。

 

龍臥は身にあった事を逐一話した。

 

 

-----------------

 

 

 

 

「-で、それがあなたに起こった事ってことで…いいのね?」

 

夕呼は、龍臥の話した事柄に間違いがないか確認するよう聞き返す。

 

「……知っている人がいない中で、よく一人で戦い続けたな……」

 

武の元いた世界は今存在する人達と同じメンバーでありながら、世界そのものだけが違っていた。

平和な世界から一転、地獄そのものと言える世界に来てしまった身としては龍臥に共感するものがあった。

 

「いや…ひとりじゃないさ。ハロ達がいてくれて、楽しいよ」

 

「ハロって…あの緑色の?」と武。

 

「あんな機械も、モビルスーツだっけ?見たことないものばっかだし…あんた何者?」

 

夕呼は右手側-霞がいる方をチラッと見ながら質問する。

 

「(ああ、もう女性が相手だと緊張する…武がいてくれてもこれか…)ただの元高校生ですよ……まぁ、この現状を好きになれないので戦っていますが。(?)」

 

緊張で意味が分かりずらいことを言ってしまう。

 

霞の反応を見るが、嘘は言っていないらしい。

 

「…で、あなた本当に私達の味方…オルタネイティヴ4計画の促進者でいいのね?」

 

龍臥はもちろん、と肯定する。

 

「これから色々とモビルスーツについて、説明したいのですが…お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」と丁寧に頼む。未だに目を直視しずらい。

 

「もちろんよ。これが人類に勝機をもたらすかもしれないでしょうから。」

 

「では…まず、あの6機のモビルスーツ…ジェガンといいます。あのジェガンにはハロを搭乗させ、戦闘に参加させています。」

 

「ちょっと待て!?ハロってのを戦術機…いや、モビルスーツに乗せているのか?」

 

武は驚いた顔をする。

本来機体は人が乗るものであり、当然の反応だった。

 

「ああ。俺の機体に乗っているハロが俺の戦闘データを解析して、インプットしたらしいから、連携プレーが気持ち悪いほどさ。」

 

…と話していると夕呼が質問する。

 

「そのデータ、私達に貰えないかしら。もしそのデータがあれば…私の研究が進むんだけど。」

 

「悪用しなければ、差し上げますよ。」龍臥は微笑んで答える。

 

ニヤりと笑う夕呼をよそに、武が興奮気味に質問する。

 

「あの真っ白な機体…龍臥のモビルスーツはなんて名前で、どんな性能なんだ!?」

 

きたか、と龍臥は予想通りの展開に安心する。

 

「俺の機体は『RX-0 ユニコーンガンダム』と言って、単機でハイヴ攻略が可能な性能を秘めている。」

 

「「単機でハイヴを!!?」」

 

二人同時に驚愕する。

 

「ありえないわ。確かに、ハイヴ攻略の要となる機体や武装はあるけど、絶対的なものは存在しない。」

 

「ユニコーンにはある機能があって、それも重要ですが特に、武装が重要なのです。」

 

龍臥は一呼吸し、その内容について話す。

 

「ビームマグナムという武装です。従来のビームライフルなどの、ビーム兵器のおよそ4倍の威力があります。その武装を装備しており、ハイヴを外から破壊が可能という訳です。」

 

ビーム兵器について夕呼は考えたことはあるが荷電粒子砲のように、小型化が難しいものであると思っていた。

しかし、今この基地にそれがあるのだ。

科学者としての血が騒ぐ。

 

「ビーム兵器…バルジャーノンの世界みてぇだ…」

 

武はビームというものに感嘆の息を漏らす。

 

「それが単機攻略が可能な理由?ならその兵器を装備させた戦術機でも可能じゃない?」

 

「いえ、ビームマグナムは発射時に異常ともいえるGと衝撃が機体に響きます。そのせいで、普通の機体なら耐えられずにマニピュレーターがぶっ壊れます。」

 

「でもユニコーンなら耐えられて、支障もなく発射可能って訳…」

 

龍臥は肯定する。

それと同時に武が次の質問をしてくる。

 

「ユニコーンの隠された機能ってなんだよ?自爆…って訳でもないだろ?」

 

正直、この機能についてはあまり答えたくはなかったが、彼らと協力するなら必要だった。

 

「ユニコーンには…『NT-D』という機能があります。それを発動すると、全身を覆っている装甲がスライドし、内部のサイコフレームという装甲が露出します。」

 

龍臥は小型端末…この世界にはない、スマートフォン型の端末の画面に映し出された映像を見せる。

 

「…!?これが……!?」

 

その映像は龍臥の初戦闘時、その場にあった戦術機の残骸をハックして入手したものであった。

赤い輝きを放つモビルスーツを見て二人は驚愕した。

見たこともない機動、基地内に停めてあるユニコーンの変形、一本角がV字に割れ顔が現れる様子…。

これまで、XM3…新OSを開発した武は、ここまでの機動はXM3にもできないと確信した。

夕呼はこの映像は見たことはなかったが、ユニコーンの戦闘映像は確認したことはあった。その映像は伊隅ヴァルキリーズが持ち帰った残骸にあったからだ。

 

「すげぇよ…すげぇ!!これがあれば…人類がBETAに勝てるかも…この機体、すげぇよ!」

 

武は大興奮だった。ビームマグナムの重低音で発射されるビーム、要撃級の鋏角を焼き切るビームサーベル…龍臥の操縦も含めて、龍臥に輝いている目で褒めちぎっていた。

これには龍臥もたじたじだった。自分が開発した訳ではなかったが、ここまで人に褒められたことはなかったため、嬉しい反面照れくさかった。

武は同年代であり同性、しかも同じ別世界の人間ということで強い仲間意識が芽生えていた。この世界での…初めての『親友』ともいえる存在に出会えた。

 

「はいはい!男同士の仲良し話はそこまでにして」と夕呼は間に入って話を続ける。

 

「あなた、何が目的?」

 

「人類の勝利は勿論、未来ある子供達が笑って暮らせる未来をつくるためです!」

 

龍臥は心の底から思ったことを話す。

 

「じゃあ、決まりね。龍臥…あなたはこれから武と同じ部隊に入ってもらうわ。」

 

「?武と同じ…?」

 

おおっ、と武はまたも嬉しそうな反応をする。

 

「伊隅ヴァルキリーズ…A-01部隊ね。伊隅大尉のことは、あの戦場で会話したんでしょう?」

 

これはまた、伊隅が持ち帰った記録にもあった。

 

「龍臥…あなたは臨時少尉として入ってもらうから、そのつもりでね。ビシバシ使って、人類の勝利に貢献してもらうわよ!」

夕呼は龍臥を味方として認めてくれたようだ。

 

「分かりました!刻永 龍臥 臨時少尉、精一杯頑張らせて頂きます!」

 

夕呼は微笑む。

武は満面の笑みだった。心強い味方ができたのだから…。

 

 

 

 

 

------------

 

数分後、武を含めた伊隅ヴァルキリーズがミーティングルームに集まっていた。

そしてそこに二人…夕呼と龍臥が来る。

 

「全員聞け。副司令から聞いたが、これから新たに衛士が編入される。」

 

伊隅大尉が全員に報告。と同時に部屋の扉が開き、夕呼と龍臥が入ってくる。

(女性ばっかやんけぇぇぇぇ!中隊からしてもしやと思ったらああああああああぁぁぁ!!)

龍臥の脳内ではコロニー落としが起こっていた。しかし表情では冷静そのものだった。言わずもがな、堪えている。

武は待っていましたと言わんばかりに目線を送る。

 

「彼が今回から編入される衛士よ。自己紹介を。」

 

夕呼が言うと龍臥が発言する。

 

「刻永 龍臥 臨時少尉 、只今 着任しました!以後、よろしくお願いします!」

 

よく通った声ではっきりと発し、敬礼。

 

「よく来た、刻永少尉。貴様を歓迎する!…それに、ここでは堅っ苦しい言動は必要ない。では、我が隊のモットーを教えておく」

 

「死力を尽くして任務にあたれ!中隊復唱!」

 

「「「「「「「「「「死力を尽くして任務にあたれ!生ある限り最善を尽くせ!決して犬死にするな!」」」」」」」」」」

 

「-以上だ。刻永少尉、復唱!」

 

「死力を尽くして任務にあたれ!生ある限り最善を尽くせ!決して犬死にするな!」

 

「よし、今の言葉…よく頭に刻んでおけ。ではメンバーを紹介しよう。」

 

(刻永…こいつがあの時の…)

 

伊隅は龍臥があの時の者だと確信しながらメンバーを紹介していく。

 

「CP将校の涼宮遥中尉だ。怒らせるなよ?おっとりしているが怖い女だから気をつけろ」

 

「な…何言ってるんですか大尉…よろしくね、刻永少尉」

桃色の長い髪の女性が涼宮遥中尉。

 

「B小隊指揮、速瀬水月中尉だ。」

 

「白銀少尉に続いて、男が編入ね…まぁいいや、よろしく。」

ポニーテールの青い髪の女性…彼女こそが龍臥と交信した内のひとりである。

 

(現実で見ると…本当に綺麗な人だな…)

龍臥の能内は少し落ち着いてきた。

------

 

「-そして、白銀武少尉…こいつとは面識があるような感じだな。仲良くしろよ?」

 

武は嬉しそうにこちらを見てくる。

龍臥も微笑み返す。

 

「では紹介も終わったことだ、貴様をコキ使ってやるから覚悟しておけ!」

 

「-はい!」

 

龍臥は仲間ができ、共に戦えることに感動していた。

 

「よし…では全員、解散!」

------------

 

「…水月、どうかした?」

 

遥が、険しい顔をしている水月に聞く。

 

「……あの刻永って子…なんか分かんないのよね…」

 

「?」

 

「なんかこう……()()()()()()()()をしているのよね…」

 

「え?そうなの?」

 

龍臥のニュータイプ能力について気が付いたのは、水月ただ一人だった。

 

 

 

to be continued

 




学校帰り、鬼滅アイス買って食べましたが…イラストって使い回し多いっすよねほんと…
では次回もお楽しみに!


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#9 試作MS開発計画①

タケルちゃんまじぐう聖…
今回も、どうぞ。


水月本人は知らなくとも、龍臥のニュータイプ能力に気が付いた事は事実。そのことを龍臥も薄々感じていた。

他の中隊メンバーが気さくに接してくれながらも、水月だけはそうではなかった。

味方…というよりは、怪しい人物として見ていた。

 

「龍臥ー!メシ食いに行こうぜ!」

 

武がミーティングの後、昼食に誘ってきた。

当然断る理由もないため、快諾。

武は他のモビルスーツについて龍臥にたくさん質問してきた。ビーム兵器は主兵装なのか、ビームマグナム以外の強力な武器は、などなど…

 

「うーん、そうだな…例えばウィングガンダムゼロっていう機体があるんだけど…」

 

龍臥と武は食堂に向かいながら会話していた。それ以外では、二人だけの共通的な会話ができないためである。

 

「ウィング?羽…翼とかか?なんかカッコ良さげなネーミングだな…」

 

「そう、実は機体に翼が付いているんだ。でも、本物って訳じゃなくて機械的なんだけどな。」

 

龍臥も機体の解説は嫌いじゃなかった。これが00ユニットのためになれば、と思っていたほどだ。

 

「単機で大気圏突入やハイヴ攻略も可能で…特に専用武装のツインバスターライフルが強力なんだ。」

 

「ツインバスターライフル?ビームマグナムより強そうな名前だ…」

 

「事実、ビームマグナムより強力かもしれない。ふたつのバスターライフルを連結させて発射するととんでもない火力が出せる。かつて、地球に迫った巨大なコロニー…宇宙移民のための施設を破壊した程だからな!」

 

「うわ…なんだそれチートかよ!」

 

武と龍臥は2人揃って楽しく会話できていた。まるで同じ世界にいたみたいな…そんな感覚だった。

 

しばらくすると、武が真剣な眼差しで話を振る。

 

「俺さ…XM3の実験の時に大切な教官をBETAに殺されたんだ…。とても悲しかった。それでも、俺は周りの人達…夕呼先生や中尉達に励まされて、立ち直れたんだ。だから…」

 

「……」

 

龍臥は黙って聞いていた。武の教官…おそらく、神宮寺まりもだろう。

 

「たとえ俺がやられても…そこまで落ち込むなよ?お前の機体があれば…人類を勝利に導けるんだからな。」

 

「縁起でもないことを……。というか、誰も死なせない!これも俺の目的でもあるんだからな!?」

 

龍臥と武は笑いあっていた。

 

食堂に着く頃には会話もひと段落つき、他メンバーも集まっていた。

 

「刻永、よろしく頼む。改めて、御剣 冥夜と申す。」

 

腰まで届くほどの髪の長い同い年の少女…彼女が御剣冥夜。彼女は征夷大将軍の実妹である。

 

「よろしく、御剣さん。」

龍臥も挨拶を返す。相手が征夷大将軍の血縁者だろうと、態度を変えないこと。これがいい関係を保つ秘訣だ。

 

「あ、あの…珠瀬壬姫でしゅっ…よろしくね。……噛んじゃった…」

 

「おおタマ、相変わらず緊張すんのか?同い年だぞ?」

 

武が茶化す。それを見て龍臥は苦笑する。

 

「…で、こっちの眼鏡かけたのが委員長。無口っぽい感じのが彩峰だ。」

 

武が軽く紹介すると、二人が鋭く言う。

 

「白銀…彩峰だけは名前呼びで私は委員長って…榊 千鶴よ。よろしく」

 

「改めてよろしく…彩峰。」

 

彼女らは元々武の同期らしく、仲良さげな印象だ。

 

「ハイハイ!鎧衣美琴だよ!よろしくね!」

 

武から聞いたが、武の世界では男らしい…なんで並行世界は何故、なんでもアリなんだ……?

 

「あ!みんなと…刻永少尉だ!あなたの戦術機…あれってどこの!?」

 

「こら茜、いきなり質問責めしないの…」

 

「えー!?だってお姉ちゃんもあの戦術機のこと知りたいでしょ!?」

 

(涼宮遥の妹…茜。涼宮姉妹は変わらずこんな感じか…こんなに女性が多いと緊張する…)

 

龍臥の元いた世界では極力女性と関わらないように過ごしていたが…ここではそうはいかない。克服していかなくては。

 

「お、昼食にもA-01部隊勢揃いか。賑やかで結構だな。」

 

微笑みながらそう言ってきたのは、伊隅みちる大尉…伊隅ヴァルキリーズの中隊長だ。

後ろに柏木晴子、風間梼子、宗像美冴がついて来る。

彼女らも龍臥に軽く挨拶してくれた。

 

そんな中、ひとり遅れて水月がやって来た。

相変わらず龍臥への目は疑惑に近いものがあった。

 

(水月…どうしたんだろう…)

 

遥は心配だった。なぜ龍臥に対してそんな態度をとるのか、理解できなかった。

 

「刻永…あんたちょっといい?」

 

水月は龍臥を呼び出したのだ。みなが見つめる中、二人は食堂を後にする。

 

「え!?なんだい新しい子が入ってきたと思ったら…険悪なムードだねぇ!」

 

「!京塚のおばちゃん!」

武は急に現れた京塚志津江に驚く。

 

「さぁ、今日もちゃんと食べて力をつけな!」

 

 

 

----

 

 

「-で、あんたあの時戦場で会ったやつよね…」

 

「!!」

 

龍臥はドキリとした。何を言われるか分からないが…下手な質問に下手な回答をすれば別世界から来た人だ、と言うことがバレてしまうかもしれない。普通、別世界なんて信じられないが。

 

「…はい…まぁ、あの時逃げようとしたパイロットです…」

 

「…あの戦術機…見たことないし、どのデータにも一致しないの。国連職員の私たちにも知らない、未知の機体なのかもしれない…。それは別にいいの、問題はあなたよ。」

 

(……しまった…ニュータイプのことか?それとも、この世界の住人じゃないことか!?)

 

龍臥はどんな質問にも答えられるように準備した。しかし、質問された内容は驚愕の内容だった!

 

「あなた!男のクセしてよくも逃げたわね!普通は逃げないでしょう!?あんなふうに通信してきたんだから!」

 

「…いえ、あの時は機体が勝手に動いて…」

 

「言い訳しないの!それに、ウジウジというか、モジモジというか、あの時の白銀みたいだし…もう!」

 

龍臥は訳が分からなかった。何を聞かれるかと思ったら、いきなりこうなったのだから。

 

「ほら!もう行くよ!食事に遅れるでしょ!?」

 

「は…はぁ…」

 

仕方なくこの場を切り抜けるため、素直に従う方がいいようだ。

 

-----

 

「龍臥、大丈夫か?」

 

武が心配する。

龍臥は混乱していた。女性耐性が0に等しいのに、訳の分からない事で怒られはするし、散々だった。

 

「……おう……」

 

「まぁ、元気出せよ。俺も早瀬中尉には散々言われたからさ。」

 

「ちょっと白銀!あんたがウジウジしてたからしょうがないでしょ!」

 

「まぁまぁ……水月…少し落ち着いて…ね」

 

遥が抑える。

 

「久々に編入した人が二人とも男で、態度が気に食わなかったならこうなりますよ。でも少しは優しくしてさげましょう?そうですよね、大尉」

 

美冴が水月にからかうように大尉に話しかける。

 

「そうだぞ、中尉。そうでなければ、刻永少尉に嫌われるぞ?」

 

「嫌われて結構ですっ!」

 

こう言うのは、すぐムキになる性格のせいだろうか。

 

(それにしても……合成食ってこんなに美味いのか?さすが京塚志津江さんだな…)

 

龍臥はメシの美味さに感動していた。

 

昼食も終え、モビルスーツの点検でもやろうかと考えていたところ、龍臥は夕呼の部屋に呼ばれた。

龍臥もちょうど夕呼に用があったためグッドタイミングというやつだった。

 

龍臥はハロを連れ、『ゼロシステム』、『サイコフレーム』、『ミノフスキー粒子』の資料を持って夕呼の待つ部屋…魔女の巣窟へ向かう……。

 

 

 

 

 

 

 

to be continued




次回から夕呼先生と共にオリジナルMS開発計画を練ります…
次回もお楽しみに!


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#10 試作MS開発計画②

仮面ライダーゴーストはめいさく。異論は認めない…
続きをどうぞ!


夕呼に呼ばれ、龍臥は持参した資料『サイコフレーム』『ゼロシステム』『ミノフスキー粒子』と龍臥自身の戦闘データを渡した。

すると夕呼は資料をぱっと見てあとでじっくり読ませてもらうと言い、本題に入る。

 

「00ユニット…それを作ろうとしているんだけど、あんたは知ってる?」

 

「00ユニット……確か、オルタネイティヴ4計画の中枢である…人の魂をコピーしたものですよね…?」

 

龍臥はある程度知っていたことを夕呼に伝える。

 

「なんだ…やっぱり知ってるのね。白銀と同じく、あんたもこの世界について多少歴史を知ってるらしいわね」

 

「ええ……そうなんですけど…まだ00ユニットって…完成していないんですか?」

 

「…?そうよ?そりゃあ、人そのものをコピーするんだから、すぐ出来るわけないじゃない。」

 

なんてことだ。龍臥の知る歴史では、既に00ユニットが完成していて、武は調律に入る頃ではなかったのだろうか。

龍臥が介入したことによって、歴史が変わってしまったのかと不安に思う。

 

「まあ何にせよ、この資料はじっくり読ませてもらうから、とりあえずありがとね。」

 

夕呼が微笑み、龍臥は少しドキッとする。

やはり間近で見ると、夕呼は美人なのだ。龍臥は改めてそう思う。

 

「……夕呼博士…少しお願いがあります…」

 

「何?言っとくけどモビルスーツは少し専門外よ?」

 

「いえ、機体を改造したりする工場…ドックのようなものがあったりしますか?」

 

龍臥は考えていた試作モビルスーツの開発を行いたいのであった。どうせ戦うのであれば、自分の専用機体をデザインして搭乗したかった。

 

「ドック…ね……。」

 

夕呼は机にドカっと座り、考え込む。

その拍子に胸が上下に揺れ、龍臥は思わず視線を逸らす。

 

「…いいわ。多分、この横浜の近くにあるから、そこを使わせてもらいましょう。」

 

初耳だったが、ありがたい。早速訓練後に出発することに決めた。

 

--横浜基地 シミュレータールーム--

 

「---ヴァルキリーマムより、以上が作戦内容である。シミュレーション開始まで3、2、1…作戦開始!!」

 

「ヴァルキリー1より、全機…出撃ッ!!」

 

「「「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」」」

 

訓練として、ハイヴ…BETAが建造する拠点のようなものの中を再現したものをシミュレーションしている。

 

(これが……ハイヴの中……)

 

龍臥はハイヴを初めて見るため、ここまで大きいとは知らなかった。

 

(こんなに大きいなら…ナイチンゲールはもちろん、αアジールも入るかも…)

 

考えていたのは、ハイヴ内で活動可能なモビルスーツやモビルアーマーのことであった。

そして龍臥がシミュレーションで使用している機体は『シナンジュ』である。

シナンジュはユニコーンガンダムの姉妹機として存在しており、シナンジュの戦闘データがユニコーンにフィードバックされる仕組みである。よって、たとえシミュレーションとは言っても戦闘データは取ることができるため、好都合だった。

それに、夕呼が気を利かしてモビルスーツのデータを横浜基地のシミュレーターに入れてくれたのだった。

 

『よぉ、龍臥!またもカッコイイ機体に乗ってんなぁ!赤い機体似合ってるぞ!』

 

武が話しかけてきた。武達は量産機である『吹雪』に搭乗しており、同じくシミュレーション中である。

 

「武…無駄口叩いたら大尉達に注意されちまうぞ。特に……中尉に…」

 

『はぁ!?なーんだってぇ!?刻永ぁ!!』

 

「うわっ!!速瀬中尉だなんて一言も言ってないじゃないですか!!」

 

『(面白ぇなぁ……)』

 

武は心の中で笑っていた。龍臥がいると全てが気楽に思えてくる。これも共通する部分が多いためであろうか。

 

「戦車級…流石に多すぎないか…?」

 

『ハイヴ付近ではこんなもんらしいぞ。』

 

武と秘匿回線で会話しながらハイヴ内部へ進入していく。

迫り来る戦車級や小型種をビームライフルで始末しながら、要撃級の猛攻をシールドで防ぎ、反撃する。

 

「ッ!?茜さん!!」

 

『!!龍臥!?』

 

後ろを見ると、茜が要撃級の鋏角に攻撃されかけていた。

龍臥の性格上、そういうのは放っておけないので助けに行く。

 

『…くぅっっ……! え…刻永!?』

 

「離れ…ろッ!!」

 

ビームアックスを展開し、鋏角を切り落とす。それと同時にビームライフルでその後ろにいる数体の要撃級を撃破。

 

『う…ありがと…だけど、作戦重要だからほっといてもよかったのに…』

 

「仲間を失っても、作戦を続けるなんて俺は嫌だ。それに俺は茜さんを…(仲間は誰であろうと)失いたくないから。」

 

『え…ふぇ!?あ、うん…』

 

シナンジュと茜の吹雪は前方にいる部隊に遅れて付いて行く。

 

『(今の…どういう意味…?まさか……そんなわけね…)』

 

茜の勘違いであるが、これも龍臥の女性耐性の無さのせいで話をすっ飛ばしたからである。

女性に対して克服できるのはいつになるのやら……。

 

(全く……みんな無茶するなぁ…そんなに死にたいのか?)

 

そう思うほどにみな、無茶な機動をするのである。そこも武の開発した新OSの性能だろう。その中でも武は他の操縦を凌駕していた。

無茶苦茶で変態とも言える機動でどんどんハイヴ内へ進んでいく。

 

「変態だな…」

 

『え?』思わず茜が聞き返す。

 

「いや別に…なんでもないよ。」

 

遅れて二人はハイヴ最深部へ辿り着いたのであった…。

 

--------------------------

「--だぁッ!!疲れた!」

 

シミュレーションも終え、武と龍臥はお互いの操縦を褒めあっていた。

 

「なんだよ龍臥!機体の性能だけかと思ったら…間近で見たらお前の操縦ヤバすぎだろ!!」

 

「武も、変態だったぞ。どこから見ても…ただの変態機動だった。」

 

「褒めてんのかそれ?まぁ、これで俺らが力を合わせれば敵無しだな!」

 

なんて会話をしていると、茜が駆け寄ってくる。

 

「あの…刻永。さっきはありがと。」

 

「どういたしまして、何も実戦じゃないから気にしなくてもいいのに……!」

 

茜が強化装備姿であることを今思い出してしまい、恥ずかしくなる。未だに強化装備は直視しにくい。

 

「さぁ、龍臥。シャワー浴びてさっさと行こうぜ。先生に呼ばれてんだろ?」

 

「ああ、そうだった。じゃ、茜さん。またあとで!」

 

うん、という返事を後に龍臥と武は準備を始める。

 

--------------------------

「先生ー。どこっすか?」

 

「夕呼博士?資料読み終わりました?」

 

二人が夕呼を呼ぶが返事がない。その直後机の真下からぬっと影が…夕呼が現れる。

 

「あ、そこにいらしたんですか。どうでした?ミノフスキー粒子、面白いでしょう?……!?」

 

そう言うと同時に夕呼が走って向かってくる。

とっさに身構えるが、夕呼は龍臥にとって苦手な…いや、全人類男性の最も憧れ(?)であろう行動をとる。

 

「刻永ぁ〜あんたってば!全くどうしてもっと早くこれ持ってきてくれなかったの?こんなに素晴らしいデータそうそう無いわよぉ!これで00ユニットも完成に近付くわ!!」

 

と、満面の笑みで龍臥を抱きしめながら頭を撫でくりまわす。龍臥は夕呼のその大きな乳房に顔が埋まってしまう。

 

「!!??!??!?////」

 

武は既視感を感じながら見守っていた。決して羨ましいとは思わずに……。

 

「-博士…あの…本題に……」

 

「あら?男の子だもんねぇ?ドキドキしちゃった?今相当気分いいし、手伝うくらならできるわよ?」

 

と言いながら右手で握りこぶしを上下に動かす。

 

「あなたそれでも副司令ですかっ!?///」

 

龍臥は思わずツッコミを入れる。

 

「ふふふっ…じゃ、いいわよ。モビルスーツの開発…しに行くんでしょ?行きましょ。データと設計図はあんの?」

 

「もう準備万端です。材料も搬入作業終わりましたから。」

 

強化スチール合金、ルナチタニウム合金をロンド・ベルのロゴが入った大型トラックに搬入し、いつでも出発できる状態にある。

 

 

--------------------------

 

「この世界の技術はモビルスーツに追いつかないと思うので、基本的な装甲の加工を頼もうと思います。」

 

トラックの座席に龍臥、武、夕呼の三人が乗り、横浜にある戦術機工場へ向かう。

 

「随分と言ってくれるわね。確かに、理論上可能な事でも技術的に無理なものが幾つかあるから、当然っちゃ当然よ。」

 

「で、なんのモビルスーツを開発する気なんだ?」

 

武が質問する。

 

「今日の訓練で乗ったモビルスーツ…シナンジュさ。」

 

「アレかよ!?かっこいいから実際に動くところを見てみてぇなぁ…」

 

武が想像している中、しばらくすると工場に着いたのだろう。運転手ハロが知らせてくれた。

 

「ここか…」

 

龍臥がつぶやくと工場から工場長らしい人物が歩いてくる。

 

「お待ちしておりました!香月夕呼副司令殿、白銀武少尉、刻永龍臥少尉!」

 

「いいわよ、そんな堅苦しい挨拶…さて、早速お願いしていいかしら?」

 

「はっ!以前から聞いておりますが、機体の開発にこの工場を使って頂き、誠に感謝します!」

 

「じゃ、刻永、機体データと設計図を。」

 

工場長へデータと設計図を渡し、龍臥もお願いする。

 

「最優先で建造いたしますので、明後日には間に合うように致します!少々お待ちください!」

 

「ありがとうございます!是非お願いします。」

 

龍臥がお礼を言う。その後材料を預け、工場を後にする。

 

「明後日には終わるって…無茶ですよね…」

 

龍臥がトラック内で心配そうに言う。

 

「そうかしら?日本の科学技術を舐めない方がいいわよ?」

 

夕呼が自信ありげに言い、龍臥も納得する。

 

龍臥は小型端末で先程の設計図のコピーを確認する。

 

「ん?そのシナンジュ…訓練中のとはフォルムが少し違っていないか?」

 

武が気が付いたように龍臥に聞く。

 

「そうさ……元々モビルスーツは人を殺すためにあったけど…ハイヴ攻略に重点を置いた機体にしたいんだ。だから色々考えて設計したんだ。」

 

龍臥が武の目を見て話す。

 

「新しい時代を…未来を見て、子供達のための正義の盾となる……それが、

シナンジュ=エクスゼロ』。」

 

龍臥が呟いたのはその機体の名前だった。

元々は悪用された()()を、希望となるべき存在に…戦争をゼロにするために……。

 

 

 

to be continued

 




最近は内容を考えることから書くまでが本当に楽しいです。みなさん読んでくださってありがとうございます!
次回もお楽しみに!

ついでにシナンジュ=エクスゼロのカタログスペックを

シナンジュ=エクスゼロ
全長:23.2m 本体重量:18.7t 全備重量:59.1t
武装:ビームライフル ビームアックス ビームナギナタ シールド×2 頭部バルカン砲2門 簡易式ツインサテライト・ビームキャノン
材質:ルナチタニウム合金、強化スチール合金(ガンダリウム合金が不足のため)
概要:ハイヴ単機攻略を重点に置き、龍臥が開発、設計したオリジナルMS。パーツの互換性にも着目し、吹雪の装甲も利用可能にしている。サイコフレームがないため、NTではなくても操縦可能だがより高度な技術が必要。
建御雷を非武装状態で圧倒する程の性能を秘めている。しかしそれには『ゼロシステム』を搭載しているため使用は非推奨である。


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#11 迷い

オリ主だけど龍臥君は無双させたくなくなってきた。しかしそうしなきゃマブラヴ世界の誰かが死ぬ…無双は重要だな(錯乱)



「…シナンジュ=エクスゼロ?」

 

武はその機体の名前を聞き直した。

龍臥はこくりと頷き、話を続ける。

 

「このモビルスーツには戦争をゼロにするという想いが込められている。だから、どんな手段を取っても目的を達成するために『ゼロシステム』を搭載しているんだ」

 

ゼロシステム-超高度な情報分析と状況予測を行い、毎秒毎瞬無数に計測される予測結果をコクピットの搭乗者の脳に直接伝達するインターフェースである。

要は、未来を…様々な可能性をパイロットへ見せるシステム。

それを武と夕呼へ説明する。

 

「未来を見せるって…そんなことできるのか!?」

 

「あくまで可能性や憶測でしょ?なら外れることもあるわよね?」

 

「ええ。ただし、ゼロシステムを使用すると大きな負担がかかることに…それにゼロシステムは勝利のために非人道的な事……例えば、仲間殺しも行うので基本は使わずにおいておきます。」

 

「そう…そんなシステム、確かに使わない方がよさそうね。」

 

「それに、その背中のキャノン砲?みたいなのは何だ?」

 

武が武装について質問してくる。

 

「ネェル・アーガマに、ガンダムDXという機体がある。その機体にはツインサテライトキャノン、月の光をマイクロウェーブとして放出し、膨大なエネルギーをダイレクトに撃つ物がある。それを簡易式に、ビーム砲として改造したものを付けた。」

 

「月の光?それって月にエネルギー送信装置がなきゃだめなんじゃないの?」

 

「さすが天才、鋭いですね。その通り、月に装置が無ければそもそもエネルギーを取得出来ません。なので、自給できるようにエネルギーをある程度入れておき、チャージする形で武装に利用します。」

 

武が頷きながらも、よくわからんという顔をする。

 

「そうすれば送信装置も不要であり、チャージする間は通常通り戦闘し、その最に溜まってしまう熱をエネルギーに変換しチャージできるようにします。」

 

「なるほどね。それならハイヴ最深部へ行ってから発射して、内部から破壊する……中々いいじゃない。威力はどのくらいあるの?」

 

「オリジナルのツインサテライトキャノンよりも小さいのですが…まともに撃てば横浜基地が吹っ飛びますね。」

 

「!?」

 

武がぎょっとする。

 

「腐ってもサテライトキャノンなので、そこは変わりませんね。まあ使用するまで時間がかかってしまうので当然の威力ですよ。」

 

 

(ツインサテライトキャノンを簡易式に…?)

 

ここで武はある疑問に気付く。

 

「龍臥、それじゃあそのビームキャノンも工場で作ってんのか?この世界の技術力じゃ間に合わないんじゃないか?」

 

龍臥はその質問に、得意げに返す。

 

「それが違うんだなぁ武君…。言ったろ?基本的な装甲を加工してもらうだけだって。仮に工場で作ったとしても、情報が漏れてオルタネイティヴ5促進派に強奪されて終わりだぜ。それこそ一番不味い。」

 

「確かにな……。」

 

「それに、今ネェル・アーガマ内部でももうひとつモビルスーツを改造してるんだからな?こっちはエクスゼロのような汎用機体じゃなくてNT専用機体だけどな。」

 

「ヤバそうなのがまだあったのか…」

 

呆れと驚きが混ざった息を漏らす武。

 

「着イタゾ、着イタゾ、降リロ!降リロ!」

 

運転手ハロが横浜基地に着いたことを伝えてくれた。

 

「ああ〜っ……やっぱり、ここが一番落ち着くぜ!!」

 

龍臥達が基地に着いて、しばらく伸びていると一人の男性が近付いてくる。

 

「少しいいか?香月博士…と刻永少尉、白銀少尉。」

 

横浜基地司令官 パウル・ラダビノッド 准将だ。彼に呼ばれるとなると、何かあるに違いないと、急いで彼に着いていく。

 

--------------------

 

「以前、刻永少尉の戦闘シミュレーションのデータと純白の戦術機の映像を見た国連軍が、その機体を譲渡して欲しいとの事だそうだ。」

 

「な…なんですかそれ…そんなの承諾できませんよ…!」

 

司令の言葉に勿論、納得することなど出来ない。武もその思いだった。

 

司令官は、その言葉が出るだろうと思っていたのか、険しい顔をする。

 

「……言い難いのだが…構わないだろうか……」

 

「司令官、何かあったのなら話して頂きたいです。俺個人が聞いてどうにかなるならですが…」

司令官が重い口を開く…

 

「実はだな……どんな手を使っても、その機体を手に入れる気だ……。おそらくオルタネイティヴ5計画の促進者だろう……」

 

武は開いた口が塞がらなかった。夕呼は司令官よりも更に険しい顔をしていた。

 

「…G弾よりも効率がよく、一気にBETAを殲滅できる兵器が…その機体だと思われているのだ……。それに…応じなかった場合、

 

A-01部隊を解体後 機体を捕縛するそうだ

 

 

「!!!」

 

龍臥は理解できなかった。何故そんなことをする必要があるのだ。

 

「……分かりました………。少し考えさせて頂きます……。」

 

「龍臥ッ……!?」

 

武は混乱していた。龍臥ならすぐ断ると思ったからだ。しかし独自の判断で断れば、伊隅ヴァルキリーズは解体させられてしまう。絶対にあってはならない。

 

部隊か…ガンダムか…選ぶのは一つ。

いや、ガンダムを選べば部隊も解体させられ、ガンダムも失う。

……どうすべきなのだろうか。

 

 

--------------------

 

 

「クッソがぁぁぁぁぁぁ!!!なんで大人たちは!勝手にものを考える!!何がオルタネイティヴ計画だ!!だからBETAにも負けるんだよぉ!!」

 

龍臥は個人部屋に着いたとたん、国連軍の奴らに向けての怒号をあげる。歯を食いしばり、唇を噛んでしまう。口の中に鉄の味が広がる。こぶしをキツく握る。爪がくい込み、手のひらから血が流れる。

 

「……!どうしたの!?刻永君!?」

 

「刻永!?何!?何かあったの!?」

 

涼宮姉妹がその声を聞き、駆け付けたのだろう。龍臥を見つめる。

 

「「「………………っ……」」」

 

武と茜、遥は見ていることしかできなかった。

龍臥自身も、重く受け止めていたのだ…自分が転生してきたせいで、ユニコーンを持ってきたせいで部隊が解体してしまう。そんな結果などあってはならない。

 

「龍臥……。」

 

「だいたい何だよ……あのトカゲ野郎……ふざけんなよ!……………………………………カオリ……俺は……どうしたらいいんだ…………?」

 

落ち込む彼を見て、武は聞いてみることにした。

 

 

「龍臥……その……カオリって……誰なんだ……?知りたいんだ……お前の事…この世界の…親友として……」

 

「カオリ…………?」

 

(女の人の名前……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………カオリは…………俺の……」

 

龍臥はしばらくしてからその口を開く。

 

生前、彼に何があったのか。それを知るのはこの場にいる4人だけになる…………

 

 

 

to be continued

 

 




次回、龍臥の過去が全て明らかになります。11話分の伏線を一気に回収していきたいです。
次回もお楽しみに!!俺のターン!ドロー!()


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#12 還りし記憶

伏線回収気持ちええ^〜
今回は長めんそうめん人間ドラマ満載です。


「カオリは……………………俺の………………妹だ………」

 

龍臥がその女性の名を、関係を口にする。

 

「妹と言っても…ただ、あいつが勝手に俺を兄だって言って……ようは幼なじみさ……」

 

「幼なじみ……」

 

武はその言葉に反応してしまう。彼自身もその言葉には思い当たるものがあるのだろう。

 

「名前は……矢凪 香織(やなぎ かおり)っていうんだ……あいつは特別元気って訳じゃなくて……少し病弱だったんだ。家が近くて、毎日のように遊びに行ってた」

 

遥と茜も、その話を真剣に聞いていた。

 

「あいつと一緒にいると……元気になれたんだ…昔は…………」

 

「昔は……?」

 

遥は不思議に思う。

そう、先程から全て過去形で話しているのだった。

 

「その……香織さんは……今は……?」

 

茜が恐る恐る質問する。

返ってきたのは予想通りの返答だった。

 

「……っ………し…死んだよ。」

 

涙ながらに龍臥が言う。

 

「………バカだったよあいつは……テストも俺より点数悪くて……幼なじみの俺を残して勝手に死んで……」

 

龍臥の発する声が少しずつ震えてくる。泣いている。そう誰もが分かっていた。

 

「病死……か?……」

 

武がその質問に入った瞬間、龍臥の顔が鬼のような形相に変貌する。

 

「刻永君……?」

 

「……殺……されました……!!」

 

「「「っ!!」」」

 

その場にいた全員が息を呑んだ。

 

「ちょっと……そんな……犯人は……?」

 

茜が信じられないという顔になりながらも、龍臥の話を聞こうとする。

 

「中学3年の頃だった…当時あいつは………大学生と付き合っていた…。アプローチしたのはそいつからで、執拗な絡みが嫌で香織は仕方なく付き合ったんだ。………………ただそれが間違いだった……」

 

龍臥が大粒の涙を流し、震える声で話し続ける。

 

「そいつは……ただ遊びだったんだ……っ……好きでアプローチしたん………じゃない……」

 

「……」

 

「……そ”い”つ”は”あ”ろ”う”こ”と”か”!!……仲間と一緒に香織を放課後拉致して!!乱暴した後に殺したんだ…………っ……。」

 

「なっ………!?」

 

武は驚きと怒りが混じった顔になる。

遥は口を抑えて涙目になっている。

茜は目を見開いた。

 

「…………そいつらは捕まって……でも…………未成年だったからって……たった2年で釈放されて…………」

 

龍臥の息がどんどん荒くなっていく。

 

「なんで香織だったんだって…………問い詰めた!そしたら……『初めて見かけた時に目が合ったから』って………!!!どうしてあいつだったんだよ……!!なんでッ!!!……」

 

顔を手で覆って、蚊が泣いたような小さい声で泣く。

 

「……あいつは、俺が小学3年の時いじめられていた。いっつも俺が庇ってやって…そんときに約束したんだ……」

 

「約束……?」

 

遥が尋ねる。

 

「…『私だけじゃなくて、みんなを守れるヒーローになって』って……。俺は『勿論だ』って……」

 

 

----------------------------------------

 

 

 

---元の世界 10年前---

 

ここはある公園。横浜市の都会とは言えないが、それに近い場所にあった。

ある少女が泣いている。

 

「…………っ………えぐ……っ…」

 

その傍らに立つ少年は、優しく少女に話しかける。

 

「ほら香織、あいつら追っ払ったから、もう泣くな。」

 

しかし少女は泣き止まない。

 

「…それだ!それがあいつらがいじめ続ける理由だよ!あいつら香織の()()()()を見て楽しんでいるんだ。ほら。」

 

そう言って少年は少女の涙をハンカチで拭いてやる。

少女は少年を見つめる。

 

「な…なんだよ…」

 

いつまで経っても少女は少年を見つめるので、少年は照れくさくなる。

 

「……して」

 

「へ?何?」

 

「やくそくして、もういじめられないようにするから、つよくなるから…。だから……」

 

少女が決意の目で言い切る。

 

「螳ョ逕ー莠ォ(にぃ)も、わたしだけじゃなくてみんなをまもれる()()()()になって!」

 

少年は意外だった。今まで、目の前にいる少女が自分にそう言ってきたことがなかったからだ。

 

「……も、もちろんさ!おれはりっぱな大人になる!それに、おまえもいつまでたっても泣き虫だから、おまえももちろんまもってやるよ!」

 

「なきむしじゃないもん!」

 

「うっそだー。いま泣いてんじゃん!」

 

「ないてない!」

 

少女が頬を膨らませて言い張るものだから、少年は吹き出してしまう。

 

 

その後二人は笑いあった。子供の無邪気な笑顔で……

 

 

やくそく、ね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-俺はあいつを守れなかった……俺は…ヒーローなんかに……なれないよ……」

 

茜も武も暗い顔をしていたが、遥は違った。

歩み出して、龍臥の近くへ寄る。

 

「あなた……本当にそう思ってる?」

 

遥の目は『甘ったれるな』という意思があった。

 

「え…?」

 

「そうやってウジウジしていて、どうにかなると思っているのって聞いてるの!!いい?今は今、昔は昔って考えて割り切りなさい!」

 

遥は龍臥の頬を叩く。

龍臥は何が起こったのか一瞬理解できなかった。

 

「お姉ちゃん!ちょっと…それは」

 

「涼宮中尉!待って下さい!…」

 

二人は止めようとするが、遥は止まらず続ける。

 

「それにあなたは、ここに来る前、数回ともBETAと戦ったんでしょう!?それは何のために!?」

 

「それは…BETAが…現れたから…」

 

「あなたは何のために戦ってるの!!?」

 

「仲間や……子供達の…笑顔のために…みんなを…………()()()()()………………………!!」

 

龍臥がハッと気付く。

遥が龍臥の隣に腰掛け、優しく続ける。

 

「わかっているんでしょう?あなたは無意識にも、彼女との約束を守ろうとしているのよ。それが一番の…香織ちゃんへの供養にもなる。」

 

「あなたは強い。力だけじゃなくて、その約束を守ろうとする『心の強さ』があるの。だからあなたは…今まで通りでいいの。ね?」

 

「涼宮……中尉……」

 

「それに、人に話すと心が軽くなるでしょ?いいのよ。私でよければ、相談に乗ってあげるから。」

 

「涼宮…中尉………っ……遥…さん……っ」

 

武と茜は二人を残して部屋を後にする。

 

「膝貸してあげるから……まずはちゃんと泣きなさい…ね…?」

 

龍臥は泣き続けた。遥の膝の上で。

遥は黙って龍臥の頭を撫でてくれた。優しく、安らぎをくれた。

 

 

そして 、龍臥は自分の身にあったこと--別世界の人間であることを告白した。

 

 

 

「---それで、今に至る訳です……」

 

遥は龍臥を優しい目で見つめている。

 

「信じられませんよね……こんな突拍子もない話……」

 

それまで黙っていた遥が口を開く。

 

「……私は信じるわ。あなたが辛いことを体験してきたことも、ここじゃない何処かの人だってことも。」

 

「中尉……」

 

「あれ?さっきまで『遥さん』って呼んでくれたのに。弟ができたみたいでよかったよ?」

 

「いえ…一応上官なので………。……中尉……」

 

「何?まだあった?」

 

龍臥のこの世界に来て…初めてのわがままを告げる。

 

「涼宮中尉を……『遥さん』と……呼ばせてもらってよろしいでしょうか……?」

 

少し短い沈黙が続いた。

 

しばらくすると遥が微笑みながら応える。

 

「もちろん。あ、でも他の部隊がいる時はメリハリつけてね?」

 

「…ありがとうございます」

 

二人は絆を深め、龍臥は人の温もりを改めて知り、決意した。

 

これからも『()()』を胸に、戦い続ける。

たとえ相手が人間であろうとも、大切な仲間達を守るために。

 

 

--------------------

 

「---どうした、刻永少尉。急に中隊を集めて。」

 

「伊隅大尉…今ここに集まって頂いたのは、みなさんへ謝るべきことがあり、それを伝えるためです。」

 

龍臥の目には迷いはなかった。記憶の中の声を……妹のように可愛がった彼女の声を思い出す。

 

「より圧倒的な兵器を求めた国連軍は…俺の機体を譲渡するよう言ってきました。それに、国連軍は俺の機体を譲渡しなければ、この中隊を解体するという条件を提示してきました。」

 

皆が龍臥を見つめる。驚愕と疑問の目で。

 

「……中隊のみなさん!申し訳…「わかっている。」!?」

 

「話は副司令から聞いたばかりだ。中隊長の私にそんなこと言われても、と思ったがな。」

 

伊隅大尉は夕呼から聞いていたらしい。

 

「この中隊が解体されるのは私は不服であり、心が痛む。このメンバーこそが伊隅ヴァルキリーズだからな…」

 

「…」

 

「だから、刻永少尉!私からも皆に謝罪させてほしい!」

 

「!?大尉…!?」

 

「皆、刻永少尉と私のわがままを聞いてほしい…国連軍に…刻永少尉の戦術機は譲渡しないことを…!!」

 

シン…と全員が静まり返る。

 

「……もちろん、ですよ。」

 

「国連軍の言いなりは嫌だしね〜」

 

「宗像中尉…柏木少尉…」

 

龍臥は意外だった。中隊の解体となれば、反対されると思っていたからだった。

 

「はぁ…ま、いいわ。どうせその機体も奪われるんなら、最後まで抵抗って言うし。」

 

「大尉に着いていくだけですから…」

 

「刻永〜…私も同じだからね!」

 

水月も祷子も、茜も同じ思いだった。

 

「心配すんな龍臥!俺達も…」

 

「私達も同じ……」

 

「刻永、そういう時はもっと早めに相談頼むわよ」

 

「あうぅ〜…でも……これが伊隅ヴァルキリーズですっ!……なのかな?」

 

「そなただけで抱え込む必要はない。武も同じく一人で抱え込んだことがあった。みんながいるぞ。」

 

「いいねー。一丸となった感じ。」

 

「武…彩峰…榊…珠瀬…御剣さん…鎧衣…」

 

遥は龍臥を見て、応援しているように頷く。

 

「--という訳だな…行ってこい。刻永…」

 

「みなさん………ありがとうございますッ!!!」

 

ブリーフィングルームを出て、司令室へ…

そして…司令官へ、オルタネイティヴ5派への返答を伝えに行く。

 

 

--------------------

 

 

「国連軍の方々へ伝えて下さい。私は…ガンダムを渡す気はありません!!……」

 

夕呼はニヤリと笑う。

司令官がふう、と息を吐く。

 

 

「私もその思いだ。刻永少尉。君の戦闘データを見た時に思った…君ならば…この世界を変える力になれると……!」

 

「司令官……!」

 

みんなひとつなのだ。龍臥はそう実感した。このように世界が手をとりあえば、BETAに勝てると思った。

 

……必ず責任はとる。龍臥はその気でいた。

 

「司令官、もし機体を強奪に来た際は……」

 

一呼吸し、覚悟を決め、続ける。

 

「俺が奴らを撃退します。オルタネイティヴ5の計画通りになど……させません!!」

 

 

---横浜基地ハンガー---

 

ここにはネェル・アーガマから移したモビルスーツが整備されている。

その中にひとつ、異様な雰囲気を醸し出す機体があった。

黒い装甲に黄金の一本角……その機体に吸い寄せられるように、一人の女性が近付いていく……

 

 

 

 

…孝之……?

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




龍臥はお気に入りキャラです。さて…ここから怪しくなっていきますよ?いいですか!?せーのっ!ああ〜『NT-D』の音ぉ〜!
次回もお楽しみに…


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#13 黒き獅子

文章力つけたい。
それはそうと、遊戯王新パックでシクが出なくて泣いたぜ!


横浜基地ハンガーにある戦術機は『吹雪』、『不知火』そして、未使用の『建御雷』。この三種類以外にモビルスーツが複数あるが、誰も気にならなかった。それどころか、あの戦闘映像を見た者はユニコーンを羨望の眼差しで見ていた。

 

「……孝之…?」

 

伊隅ヴァルキリーズの突撃前衛長(ストームバンガードワン)、速瀬水月はその黒い機体に惹かれていった。

その口にした名前は思い出の人物なのだろう。そんな感じのする声のトーンだった。

 

「…痛っ…!」

 

突然、なんの前触れもなく頭痛がした。訓練のし過ぎだったのだろうか?疲れたのだろうか?などと考えていると、頭の中に声が響く。

 

((こっちだ……ここだ……))

 

(孝…之…っ)

 

水月はその機体に向かって歩み始める。かつての想い人を求めるように…

 

 

 

 

 

 

 

「…で、どうする気?刻永。」

 

場所は変わって司令室。夕呼に龍臥はどうのようにするのか質問されている。

責任をとると言っても、相手を殺してしまうのは不味い。かといって手を抜けば、下手をすればこちらが死んでしまうかもしれない。

龍臥はその頭で数秒かかって答えをようやく捻り出した。

 

「…できる限り、敵機を無力化させます。ビームサーベルを使えば機体の四肢を切断して、飛行すらできなくすることができます。」

 

龍臥はもちろん、敵を殺さずに撃退する方法を考えていた。戦術機とモビルスーツでは天と地の性能差がある。

この方法が一番手っ取り早く、無力化でき、国連軍からこの中隊…否、横浜基地自体を守る方法だった。

 

「まぁそれが一番の方法ね。それしかないと言えば嘘になるけど…」

 

夕呼がまだ奥の手があるといったような顔をする。

相変わらず司令官は険しい顔をしている。

と、それを見た夕呼はその奥の手を告げる。

 

「00ユニット……それがあれば、戦術機のメインコンピュータを制御下に置ける。そうすれば無駄な戦いを避けられるでしょ?」

 

「00ユニット……」

 

龍臥は多少それについては知っている。何故なら、彼の友人、武の愛する人物…() ()()()が被検体だからなのだ。

彼女がもしその力によって戦術機を無力化できればそれに越したことはない。しかし、調()()が間に合わないかもしれない。調律とは、彼女に『人間らしい感情』を取り戻すことである。龍臥の提供した技術で00ユニット自体の性能は完璧だが、調律には武が必要であり、いつ国連軍が来るか分からないのである。

 

「博士…一つ、方法があります。」

 

龍臥は思い切って一番使いたくない方法を伝える。

 

「ユニコーンガンダム2号機…バンシィ・ノルンに搭載しているシステムがあれば、1日もかからずに調律を終わらせられるかもしれません。」

 

「あるシステム…?」

 

そのシステムとは、本来人が乗ってはいけないような…倫理観を無視するものであって、軍が使用するにはもってこいの機体だった。しかしそれが原因で悲劇が起こってしまい、バンシィを始め、ユニコーンなどのサイコフレーム搭載機は封印される形となった。

 

「ナイトロ というものです。そのシステムがあれば、彼女に人間らしい感情を取り戻すことが可能になるかと……」

 

「あら…まさか00ユニットの重要な部まで知っているのね。機密情報ダダ漏れじゃない」

 

夕呼が苦笑し、それがあれば調律できるのか聞いてきた。勿論可能である…とは言いきれないが、可能性はかなり高いと信じている。信じているのはバンシィのこともあるが、00ユニット自体のことや、彼女を想う武のことを第一に信じている。

 

「じゃ、夕食済ませたら早速実験開始よ。武にも伝えておいてね。」

 

龍臥は司令官と夕呼へ一礼し、その場を後にする。

 

 

 

---横浜基地食堂ーーー

 

 

「龍臥、どうだった?先生も、『オルタネイティヴ5なんてもの発動させるものですかーっ』って感じだっただろ?」

 

武が先程の龍臥を励ますように、冗談混じりに話しかけてくる。

言えない。否、言うべきなのだ。00ユニットの調律の件を。

 

「武…食事が終わったら博士の所へ行くぞ。博士が実験するって。」

 

「実験?また『半導体が100億個』だの言ったのか?」

 

「00ユニットの調律へ入るそうだ…」

 

武が目をギョッと見張る。00ユニットとなれば当然の反応だった。彼にとって彼女は大切な存在。それを調律する時が来た。事前に調律については夕呼から聞いていたのだろう。

 

「…ああ。分かった。行こうぜ…。……まずはメシ食うのが先だな!!」

 

武がニカッと笑う。

これだ。この笑顔を見るべきなのだ。BETAに勝ち、元の世界へ帰る…それはもう既に死んでいる龍臥には無理かもしれないが、武にはそれが出来る。

ならば武のために…人々の笑顔のため、前を向くしかない。落ち込んでいる暇などないのだ。

 

「武…お前を信じているからな。」

 

「…?おう!」

 

二人はいつもの…と言ってもまだ2日しか経っていないが、もとの笑顔に戻った。

 

「…!遥さん……」

 

「龍臥君、もう調子は戻ったみたいね。焦らずにね。」

 

「刻永!あんた国連軍に負けて部隊解体になったらぶん殴るからね!」

 

「遥さん…茜さん……ありがとうございます。俺…もう自分に負けません!」

 

涼宮姉妹も応援してくれている。皆もだ。いっそう負けられない。

 

ドアを開け重い足取りで水月が入ってくる。

その顔はいつもの彼女らしくなかった。いつもの、元気な上官ではなく…一人の女性としての顔でありながら沈んでいた。

 

「水月…どうかしたの?顔色悪いよ…」

 

「速瀬中尉…」

 

「ん…あぁ遥…あいつの声が……」

 

「声…?あいつ……?」

 

水月、遥、茜の三人で食事をとりながら遥は尋ねたが、

遥は意味がわからなかった。誰かの声が聞こえたと親友が言っているが、水月が告げたその声の主に驚愕する。

 

「孝之…の声が……聞こえたの…」

 

「…え?」

 

そんな筈はない。何故ならその者は…既に戦死していたから。米軍の忌むべき作戦によって……横浜基地が設立する前に……

 

「ちょ……え?まってそんな冗談…」

 

「冗談じゃないわよ…確かに聞こえたの…あの()()()()から」

 

その言葉を聞いて龍臥は驚愕する。『黒い機体』…それが間違いでなければ、とんでもない事になると思った。

決してニュータイプ故の予感ではなく、人間としての感覚だった。

バンシィ・ノルン…黒き獅子とも呼ばれ、NT専用機として開発されたモビルスーツ。00ユニットの調律に利用しようとしたシステム…『ナイトロ』を搭載した機体。

 

 

マズイ。急がなくては!

 

「え、ちょ、龍臥!?走らないとヤバいのか?調律間に合わないのか!?」

 

食事を終え、武を置いて急いで夕呼の元へ向かう龍臥。

 

「あ、来たわね。そんなに急いで…白銀は?…!」

 

「は…博士…っ!はぁ…はぁ…今は調律は……やめた方が……!!危険なんです!!」

 

「ど…どうしたのそんなに…何かマズイ事でもあったの!?」

 

荒い息を整え、龍臥はバンシィのナイトロについて説明する。

 

「バンシィノルンに搭載しているナイトロシステムは…普通のパイロットを一時的にニュータイプにするシステムなんです……」

 

「……それで?」

 

「それを使って、00ユニットに直接、武の思考を送って調律する予定でした…しかし……」

 

「……」

 

「あっ、やっと追いついた……ハァ……ハァ…」

 

武が入室してきたと同時に龍臥が声を荒らげて話す。必死にそれを止めるために。

 

「バンシィのサイコフレームに!他の誰かの思念が混ざっているみたいなんですっ!!」

 

「!!」

 

「それがどういう意味を指すか…博士なら分かりますね?……」

 

「…送るべき思考が…思念に邪魔される…」

 

その場にいた全員が凍りついたように目を見開いて固まった。

 

 

------------------------

 

水月はバンシィに導かれるように向かった。ハンガーへ向かい、強化装備も装着せずに。

その場にいた整備兵は何も心配などしていなかった。国連軍が来ることも…これから人間同士の戦いが始まることも…

 

水月がバンシィに乗りこむなんてことも。

 

「な…なんだぁーーー!!」

 

「黒い戦術機が……動き出したっ!?」

 

整備兵達はパニックになっていた。突然機体が動き出せば、驚いてしまう。当然、機体には戦闘用にリボルビング・ランチャーが付いたビームマグナムと、Iフィールド発生機が搭載されたシールドが装備されていた。

バンシィはハッチをマニピュレーターでこじ開けて外へ出ていき、バーニアを噴射し導かれるかのように何処かへ向かう。

 

「孝之…どこなの……?」

 

----------------

 

騒ぎを聞きつけ、ヴァルキリーズ全員が集まっていた。夕呼と武はバンシィを見たことはなかったが、どれほどのものかは想像できていた。

 

「バンシィ…誰が乗っていったんだ!?」

 

武が叫ぶようにメンバーを確認する。それと同時に遥が告げる。

 

「あれに乗っていったのは多分……速瀬中尉です!」

 

「な…速瀬中尉が…?」

 

「……」

 

武は驚愕していたが、龍臥は落ち着いていた。バンシィが人を侵食していくことは知っていため、焦らずに対処できると自分を信じていた。

 

「俺が……」

 

全員がいっせいに龍臥を見つめる。

 

「俺が速瀬中尉を連れ戻します!!」

 

「馬鹿なっ!大体、早瀬が乗っているとは限った話では…」

 

「映像にも残っているわ、伊隅。」

 

「…っ!しかし…刻永少尉に止められるのでしょうか!?あんな未知の機体を……」

 

「あれを持ってきたのは刻永よ。止め方もわかっているから志願した…そうでしょ?刻永。」

 

はい、と龍臥は頷く。伊隅は不安だったが、龍臥に賭けてみることにした。他の中隊メンバーもそうだった。

しかし龍臥は覚悟の眼差しで続ける。

 

「それに…止められるのは俺しかいないと思っています…ユニコーンを止められるのはユニコーンのみ……!俺がユニコーンを改造したNT専用機…ユニコーンガンダム4号機 『ドラゴニュート』で行きますッ!!!」

 

 

 

 

to be continued

 

 




ここに来て題名の由来判明です。
ドラゴニュート……竜人って意味です。その通り、一角獣、獅子、不死鳥ときたら……竜しかなかったのです!
では次回は戦闘描写満載ですッ次回もお楽しみに!!
今日連続で投稿するかも?


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#14 Dragonewt〜竜人〜

オリジナルモビルスーツ…二機目出ました!カッチョいい機体にデザインしてみたい……完成したらpixivに載せる予定です。それでは前回の続きから!!どうぞ!!


龍臥が改造したニュータイプにしか操縦できないモビルスーツ…その名を聞いた時、武は再び思い知った。

こいつは人類の切り札になれる-と

龍臥にしかできないことがあるなら、それをサポートするのは当然周りの人間の役目だ。

 

「龍臥……必ず…速瀬中尉を……」

 

「ああ!」

 

二人は拳を合わせあった。戦士の誓い…親友として、戦友として…

 

「龍臥君、時間は取らないから…少しいい?」

 

「遥さん……?」

 

龍臥は遥に呼ばれ、水月が口にした男性の名前を告げる。それは彼女らにとって、忘れられないかけがえのない人物であった。

 

「鳴海 孝之…私達の…愛した人…」

 

龍臥はその名前に聞き覚えがあった。転生者として、マブラヴのことは多少知っていたため、関連事項も調べておいたのだ。

 

「私達はね…訓練校の同期だった孝之君を…好きになっちゃったの。二人同時に。」

 

龍臥は黙って話を聞いていた。

 

「でもある日、BETAの侵攻が進んで…私達より早く正規兵に抜擢されたの。そして、この横浜基地の元となった横浜ハイヴ攻略……『明星作戦』で、戦死したの……」

 

遥の目は何処か遠くを見ているようだった。

 

「それで、無事帰ってきたら私達のどちらかを選んで貰うはずだった…それは叶わなかったけど」

 

「…それは…お気の毒に……」

 

「…いいの。だって戦場だから、いつ死ぬか分からなかったし…それに、私達は誓ったの。私達のどちらが本当に孝之君を好きかって…勝負をするの…だから立ち直れた。水月がいたから……生きる気になれた…」

 

「……」

 

「だからお願い …龍臥君…水月を……連れ戻して…お願いします……」

 

声が震えていくのが分かった。さっきまでは自分が遥の前で弱気になっていた。しかし今は遥が泣いている。

当然、断ることはしない、絶対に。

 

「遥さん、約束します。絶対速瀬中尉を…水月さんを連れ戻します!」

 

「龍臥君…ありがとう……っ…」

 

彼女は涙を流しながら感謝の意を述べた。この涙を無駄にしてはいけない。

それに、だ。孝之さんが戦死したのはBETAによるものじゃない…。米軍が無通告で使用したG弾によるものだった。

龍臥が一番許せないのはそこだった。いくら攻略のためとはいえ、無通告はあってはならない。

龍臥は更衣室へ向かい、ユニコーン専用のパイロットスーツを着用する。

 

(俺は…もう下を向きっぱなしにはしないんだ……!!)

 

ネェル・アーガマから横浜基地ハンガーへその機体をハロ達に搬送してもらい、出撃準備を済ませる。

現在時刻17:18……いつもなら何をしていただろうか?テレビを見て…夕飯食って…父さん母さんと笑いあって……

香織と電話していた。

今はそんなこともできない。今は…戦うしかない。守りたいもののため、自分の人生に悔いを残さないために…俺は…戦う!

 

「龍臥……頼んだ!」

 

「中隊、刻永少尉に敬礼!」

 

伊隅が中隊へ号令をかけ、中隊のみんなが龍臥へ敬礼している。

龍臥も敬礼し返す。そのままガンダムへ乗り込み、コックピットハッチを閉める。

全天周囲モニター…これがあれば下からの戦車級の攻撃に気付くだろうか?網膜投射ではないならば、もっと効率よく戦えるだろうか?と考えている間にパイロットスーツを少し脱ぎ、小型モニターに指紋を登録し、龍臥専用機体にする。

パイロットスーツを着直して操縦桿を握る。

 

(水月さん……必ず…あなたを連れ戻します!!)

 

「刻永少尉、ドラゴニュート……行きますッッ!!!」

 

バンシィが空けたであろうか、穴の空いたハッチを出て空へ上昇。

バンシィを追いかけて行く。

 

「龍臥君…お願い。」

 

遥は姿が見えなくなるまで見送っていた。心配だからではなく、期待や信頼があった。彼ならやってくれると…

 

 

 

-----------------------

 

「孝之…孝之…どこなの……」

 

バンシィに乗った水月がいたのは、横浜基地のすぐ近く、あの忌まわしいG弾が使用され荒廃した町並だった。

 

「…っ…頭が…痛い……ん…」

 

頭痛がする。こんなに痛むのは、孝之が死んで以来だと水月は思った。

その直後、再び声が頭に響いてくる。

 

((こっちだ……こっち……に…))

 

突如、警告音。何かが接近してくる。米軍か?国連軍なのか?などと考えたが、水月にとってはそんなことはどうでもよかった。

孝之に会えるのなら…あの言葉を伝えることができるのなら…

 

接近してきたのは先程考えたもののどちらでもなかった。

 

「…!速瀬中尉…見つけた!!」

 

『!何…新しい戦術機…?!』

 

「速瀬中尉!!その機体に乗っては駄目です!!その機体は…」

 

『刻永…邪魔しない……でぇッ!!』

 

ビームマグナムを構え、ドラゴニュート目掛けて撃とうとしてくる。

 

「速瀬中尉!!その機体は…」

 

『うるさいわよ!!まだ酒も飲めないガキが!!』

 

ビームマグナムから低く唸る轟音が発せられ、赤とも紫とも言える光球がビームとなって発射される。

龍臥はドラゴニュートに装備された新装備、Iフィールド発生機を搭載したシールドを構えビームを防御。

このシールドには通常のIフィールド発生機を2重に搭載している。

光線級のレーザーを防ぐことができるのか、それをシミュレーターで試したかったが…試験運用が実戦とは。などと考えながら龍臥は武装を切り替え、攻撃よりも防御を優先する。

両腕に装備されたアームドウェポンシステム…まるで竜の翼と爪のような見た目の武装を展開、そのままバンシィを掴もうとする。

しかしバンシィも黙ってはいない。バルカン砲を掃射し、マニピュレーターを破壊しようとしてくる。

 

「…させないっ!」

 

機体を上昇させ、回避。光線級の照射を受けないように高度に気を付ける。

 

『守ってばかりじゃ…勝てないって!!言ったでしょう!!』

 

上昇し、止まった所をビームマグナムで撃ちにくるがそのような攻撃はもう予測済みだ。先程と同様にシールドで防御し、アームドウェポンでバンシィの右腕…ビームマグナムを所持している方を掴む。

 

「速瀬中尉…だから話を聞いてください!!その機体は、パイロットを飲み込んでしまう!恐ろしいんです!早く降りて下さい!!」

 

『黙ってよ…これがあれば…孝之の声が……聞こえたのッ!!』

 

(…この人は…っ!!全く……)

 

「孝之さんの声が聞こえた!?それは違います!!それはBETAに殺された人々の残留思念ですッ!孝之さんじゃありません!」

 

龍臥は畳み掛ける。

 

「それに…そんなんで、孝之さんが喜ぶと思っているんですかッ!!?」

 

『……っさい…うるさいっ!!あんたのようなガキに……孝之の……』

 

その時--

 

『何が分かるっていうのよぉぉおおおおおおッ!!!』

 

突如バンシィの機体全体が黄金に輝き始める。

 

「なっ…まさか!!!?」

 

バンシィの装甲はスライドしていき、隠された装甲…全身のサイコフレームが発光しながら露わになっていく。

獅子の角が割れ、顔が変形しガンダムフェイスが現れる!

 

これがバンシィノルンの……『NT-D』だ。

 

「俺がニュータイプだからっ……デストロイモードに……!!ドラゴニュート…?バンシィと共鳴しているのか!?」

 

『孝之のことを知らないのに……何も言わないでッ!!!』

 

「!!」

 

バンシィが左腕のビームトンファーを展開し、ドラゴニュートへ刺し込もうとしてくる。

すかさず右腕を離し、アームドウェポンで左腕に掴み変える。

しかしそれが間違いだった。ウェポンを離した途端にビームマグナムを鈍器として使ってきたのだった。

機体に響く鈍い音、重い衝撃。

バンシィは止まらず右脚で連続でキックし、機体を蹴り飛ばす。

しかしここで止まっていられない。

 

「俺に力を貸せ……ドラゴニュート……速瀬中尉を……連れ戻すって……」

 

『邪魔…しないでぇぇぇぇええぇぇぇぇ!!』

 

「遥さんと……約束したんだよオォォォォォッッ!!」

 

ドラゴニュートも機体が白く発光、深い緑色の機体カラーをサイコフレームの光が白く照らす。

装甲がスライドするだけではなく、スライドした装甲が更に展開し、内部の純白な装甲が突起する。

改造元のユニコーンの形を取り戻しながら、竜の翼のようなアームドウェポンもサイコフレームを展開。バンシィ同様一角を変形、V字アンテナになりながらも竜の角が再現された頭部---『ユニコーンガンダム4号機-ドラゴニュート-デストロイモード』が姿を現す。

 

「速瀬中尉………水月さん!!!あんたを……止めてみせますッ!!」

 

ドラゴニュートがアームドウェポンを鞭のように振り上げ、ビームトンファーを起動。そのままバンシィへ叩きつける。

 

『………ッ!!』

 

バンシィへの攻撃はビームトンファーによる切断ではなく、ビームトンファーによるビームをサイコフレームに纏わせ、機体へ叩きつけたのだ。

 

『……やるじゃないっ!!訓練で見せなかった機動ね!!』

 

いつもの水月のように思えたが、明確な殺意が込められている。これがバンシィの恐ろしさ。絶対に止めなければ。多くの人を殺させる前に……!!

 

 

 

 

 

 

「ぅぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

ふたつのビームトンファーがぶつかり合い、眩い閃光が走る。

そのふたつの黄金と純白の光は関東全体にまで広がった。

 

to be continued

 

 

 

 

 

 




次回も戦闘が続きます!
はたして龍臥は残留思念から水月を連れ戻せるのか…?
次回も読んでいただけると嬉しいです!!


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#15 秘めた想い

オリジナル戦術機…どうしようか?そこを考えていると話のネタが溢れ出てくる。
今日のお昼はうどんを作りました。


ふたつの閃光が眩く輝いている中、龍臥はモニターを操作し、ひとつのシステムを起動させようか迷っている。このシステムはBETA相手や戦術機に強大な力を発揮する。

 

「くっ……これを使えば…」

 

(バンシィを止められる…しかし水月さんを殺しかねない!)

 

迷っている暇などないが、その瞬間にバンシィは後ろへ下がり、右脚を振りかぶり蹴りの体制へ入る。

ドラゴニュートのシールドを弾き飛ばし、マグナムを撃つように構える。しかし撃ってきたのはビームではなく、その下に装着されたリボルビングランチャーの瞬光式徹甲榴弾。

ドラゴニュートへ発射されたそれは機体の胸部へ着弾し、炸裂。しかし機体へのダメージは極小。機体の改造に『V2ガンダム』のガンダリウム合金を何重にも重ねて作ったのが正解だった。

そのままバックパックからビームサーベルを取り出し、バンシィへ斬りかかる。

 

「いい加減に…して下さいッ!!」

 

バンシィもビームトンファーで防御。再び鍔迫り合いになったが、バンシィはこの至近距離でビームマグナムを撃ち込もうとしてくる。

 

(完全に殺しに来ている…)

 

機体をつくるサイコフレームに取り込まれた無数の残留思念…それが彼女を狂わせているものだと分かった時点で、やることは決まっている。

 

(もったいないがバンシィを…ブッ壊す!!)

 

アームドウェポンを動かし、バンシィの頭部を掴みそのまま潰そうとする。しかしバンシィはマグナムを発射、ドラゴニュートの肩部分の装甲が炎を上げ吹き飛ぶ。

残りマグナムのEパックは2発。

Eパックの予備を装備させなくてよかったと安心する。水月ほどの腕前ならば龍臥を撃墜できてもおかしくはない。

 

『いい加減離しなさい!』

 

「誰がッ!!あなたを連れ帰るんです!死んでも離しませんから!!」

 

諦めずにバンシィを掴み続ける。バンシィはビームマグナムを捨て、ビームトンファーで斬りかかる。

しかしドラゴニュートへは届かない。龍臥は既にアームドウェポンで掴みながら、間合いをとっていたのだ。

 

「俺は孝之さんがどんな人かは分からない…ですがひとつだけ…。あなたや遥さんを好きにさせることのできる男性だってことを!!」

 

『っ…孝之…』

 

水月が動揺し、バンシィの動きが鈍くなる。

いける。あのシステムを使わなくても!

龍臥はバンシィの頭部を潰しかかろうとした…

 

 

 

その瞬間、龍臥の耳にもはっきり聞こえた。

 

((そのまま……こっちへ……こい…))

 

違う、と瞬時に理解した。これはそもそも孝之さんらしい青年の声でもなかった。

明らかに、若い声ではなく中年の声色だった。

 

「やっぱり…あなたは機体に飲み込まれているッ!!」

 

直ぐに距離を詰め、バンシィのコックピットが近付いたその時、龍臥はコックピットハッチを開け、水月に話しかける。

 

「水月さん……!あなたも分かっているんでしょう!その声は…あなたを死に導いている!」

 

バンシィのハッチが開き、水月が姿を現す。

 

(まさかこの人…強化装備も着ずにバンシィを操っていた…!?)

 

「刻永…わかってるわよ!あの声が孝之じゃないってことも!だけど…その声の方へ行けば、孝之に会えるかもしれないじゃない!」

 

「仮に会えたとしても…何を話すんですか!!好きだってことですか!?それじゃあ…」

 

「それでもッ!……伝えなきゃいけないの!遥が『好きだ』って…!」

 

龍臥は絶句した。水月は自分が好きだということを伝えるのではなく、遥の想いを伝えようとしたのだ。

自らよりも親友を優先する。その自己犠牲の想いは人間に必要だ。しかし、それは今じゃない。

 

「……あなたは本当に馬鹿ですよッ…なんで…なんでそんなに…!」

 

見ると水月はもうバンシィに乗ってしまったであろう、バンシィが距離をとる。

龍臥もコックピットへ戻り、間合いをとる。

 

(俺はなんでこんなに水月さんを連れ戻そうとするのか…?大尉達の思いを無駄にしないため?遥さんに頼まれたから?バンシィを取り返すため?)

 

龍臥は考える。

ひとつの答えが浮かび上がった。自分でも理解出来た。

 

(あぁ…分かった……俺…水月さんに…一目惚れしてたんだ……)

 

今更だが気付き、その答えに恥ずかしくなる。

人を好きになったことは…なかった。香織を好きになったことはなかった。妹として見ていたから…

香織の想いには気が付いていた筈なのに、見て見ぬふりをしていた。

今なら香織にもはっきりと言えるだろう。

『想いに気づけなくて、すまない』と---

 

 

「ハロハロ、ハロ!」

 

「ハロ…いたのか…」

 

気付かなかったことが多すぎる。俺はなんて鈍感で馬鹿なのだ、と龍臥は自分を責める。

しかしもう答えは決まった。

水月に伝えるのだ。この想いを、たとえ両想いではなくてもいい。自分自身に…もう逃げたりしない!

 

((私もだよ…お兄ちゃん……))

 

「は…?」

 

聞き覚えのある声に驚きを隠せない。なぜならそれは…もう会えない人物だった。既に故人であったこと、時空も、世界も違う筈なのだ。

だからありえない。しかし確信した…その声は…

 

「香織……なのか…?」

 

((そうだよ、お兄ちゃん…。お兄ちゃん言ってくれたよね…みんなを守るって…約束、守ってくれてありがとう……))

 

「ど…どこから…話しているんだ!?姿を見せてくれよ…香織……。それに…まだ言うべきことが……」

 

((ごめんね…前の姿はないの。死んだ時にね…でも、お兄ちゃんにならいつでも会えるよ…いつも、傍にいるから…これまでも、これからも……))

 

「……香織……お前の想いに気づけなくて……ご…ごめんな……っ…」

 

身を震わせて泣いてしまう。

今日は泣いてばかりだな…と思い、ハロを見ると…

白い光が伸びていた。

 

(…ハロ…お前だったのか…香織に会わせてくれたのは…)

 

「水月さん……っ…あんたが…あなたのことが…」

 

ドラゴニュートの白い光がどんどん強く、大きくなっていき、その色が変わっていく。かつて起こった『アクシズショック』を思わせるような眩い…虹色の光。

その光が機体を飲み込み、あるシステムが強制的に起動する。

 

「あなたが好きだ…一目惚れだ…!俺の初めての…恋だ…!」

 

秘めた想いを声に出して叫ぶ。

 

水月さん……あなたが、好きなんだァァァッ!!!

 

『システム-テューポーン』

龍臥の開発した、新たなシステム。攻撃のために使用する場合と、防御のための場合…その二つを駆使して戦う新兵器。それがドラゴニュートだった。

 

両腕のアームドウェポンが変形していき、竜の翼から…『竜神の爪』へ…

バックパックのアームドウェポンは…ひとつの巨大な龍の尾へ…

 

『竜から神へ』テューポーンは人の上半身がありながら、竜のような翼を持ち、龍の巨大な尾を持つ怪物だ。

神話ではゼウスとの戦いで彼を破り、ゼウスと肩を並べるほどの力を有しているとされた。

その怪物としての強さを持ちながらも、決して己の為には戦わず、人のために戦う。

ドラゴニュートは機体性能を極限まで高めながら、パイロットの思考をダイレクトに反応させることが可能。しかしその副産物として、膨大なエネルギーが溜まる。それは機体が爆破してしまう程の強大なものだが、その発生した余剰なエネルギーを機体のジェネレーターからビームとして放出する。

これがハイヴ攻略を目的としたNT専用機体。

敵を殲滅する、怪物。正に悪魔(テューポーン)そのもの。

 

『……っ…刻…永…』

 

水月が龍臥の想いに少し動揺する。

今がチャンスだと、ドラゴニュートは機体を急接近させ、システム-テューポーンを発動。機体から放出されたビームがバンシィの装甲を焼き切っていくと同時に、ふたつのユニコーンが虹色の光に包まれていく……

 

「水月さんッ!!帰って来て下さいッ!!」

 

『……』

 

 

 

------------------------

 

 

 

水月は夢を見ていた。

かつて愛した人が、手を振り自分を呼んでいる。走っているのにも関わらず、一向に距離は遠くなる。

なぜ?と思う暇もなく、辺りが暗闇に覆われていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前を光がふたつ通り過ぎていく。

その直後、絶対忘れないであろう声が聞こえてくる。

 

((遥に…よろしく言っといてくれ…水月。生きろ……お前ら……まだこっちへ……来るなよ…。俺達は…ここにいるから……))

 

「孝之!!!」

 

その後、後ろから声が聞こえる。自分を呼ぶ声だ。

聞き覚えがある…?ああ、確か新入の子だ…

えっと……名前は…

 

 

((水月さんッ!!!))

 

 

 

刻永…龍臥……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------

 

 

ハッとすると目の前に見たことの無い、あの純白の機体に似た戦術機がいる。自分は何か機体に乗っているのか?そんな感じの場所だ…コックピットか。

今まで何をやっていたのだろう?

水月は思い出そうとするが、頭が痛むのでやめる。

突然コックピットハッチらしきものが開く。

 

 

「……?刻…永…?」

 

「水月……さん……!!おかえりなさい…」

 

「…?ただい……ま?」

 

龍臥は歓喜の涙を流した。

水月はわけもわからず、涙を流す龍臥を見て焦る。

 

「ど…どうしたのよっ…そんな……泣いて…男の子でしょう!?」

 

「すみません…なんか込み上げちゃって……」

 

「……なんか…私のこと…呼んだ?」

 

(……)

 

「……いえ、呼んでませんよ?ほら、早く帰りましょう!」

 

「…そういえば、ここ…基地じゃないわね……どこなのかな……」

 

 

バンシィを掴み、ドラゴニュートは空へ上昇。決して光線級の攻撃を受けないように。

 

(水月さん……あなたに振り向いてもらえなくても、俺は…あなたに伝えることができた。それで…十分です!)

 

バンシィとドラゴニュートは、ユニコーンモードへ変身、静けさを取り戻した空を飛び、帰るべき場所へ帰る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(刻永………さっきの………考えておくね…)

 

 

to be continued




刻永×水月です。水月ファンを敵に回してしまうことを恐れないスタイル。
恋愛表現は難しいですが、色々と試していきたいと思います。次回もお楽しみに…フッヒイイイイイイイイ(狂乱)


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第二章 鮮血を求めし獣
#16 帰還-そして日常


ユニコーンのBGM最高ですね!
それとして、プロジェクト ミハイル楽しみです…
今回は日常回どすえ〜(舞子並感)


ほんの数十分の間に色々なことが起こりすぎた。

NT-D同士のぶつかり合い、サイコフレームの共振…そして最も有り得ないはずの死者と交流。

この3つが今日のイベントとして間違いないだろう。もうこれ以上は何も起きないことを祈るしかない。

 

『刻永…悪いけど少し寝かせてくれない?なんか疲れちゃって……』

 

「もちろんですよ。基地に着いたら起こしますね。」

 

すると、すぐに水月が眠りについたのだろう、通信中にも関わらず何の音沙汰も無くなった。

 

(水月さんのバイタル…正常だな…)

 

戦術機に乗っているのならば強化装備によってバイタルチェックが可能となる。しかし、モビルスーツではパイロットスーツ無しでもバイタルは確認できる。そのため、水月の身体に異常がないか確認している。

 

横浜基地に到着したのは、水月が寝てから10数分後だった。

バンシィをハンガーに戻そうとしたとき、A-01部隊のメンバーが待っているのが見えた。皆、自分達の帰りを待ってくれたのだと理解すると龍臥は感極まって思わず笑みがこぼれる。

二つの機体を収納し、ハッチを開けて皆の所へ向かう。

 

「龍臥……お前、戻ってきたな…!」

 

「龍臥君…ありがとう……!」

 

武と遥が第一に声を掛けてくれた。

次に他のメンバーがそれぞれ声を掛けてくれ、更には整備兵達が羨望の眼差しでバンシィとドラゴニュートを見つめる。まるで、この機体に希望を持っているような目だった。

 

「武…遥さん……皆さん、刻永少尉ただいま帰投しました!」

 

「よくやったわ、刻永。これで速瀬も戻ってきたし、計画も進められる。これ以上の成果はそうそうないわよ?」

 

夕呼が褒めてくれている。となると、これは相当の評価や信用を得たのではないだろうか、と龍臥は思う。

 

(これなら…()()()()()をアレでこうして…強化できるかも?)、と考えていると夕呼が耳元で囁く。

 

 

「そういえば、司令官があなたの回答を国連軍…オルタネイティヴ5促進派に送ってくれたわ。奴らムキになって明日頃に来るわね…」

 

「!!…そうでした…」

 

忘れていた訳ではないが、彼らに不都合な返信をしたおかげで戦闘になるのかもしれないのだ。今日はゆっくり休んでおきたい。

 

「刻永、とりあえずは疲れただろう。ゆっくり休むといい。…早瀬は?」

 

伊隅が龍臥の顔を見ていてくれたのか、龍臥が今一番求めているものを発言してくれた。

 

(こ…こんなに嬉しいことはない…!)

 

「水月さn…速瀬中尉はバンシィの中で眠っています」

 

「?なんだあの間に名前呼びとは…そこまで仲良くなったのか?」

 

「あっいえ、俺がそう呼んでいるだけです…多分」

 

「ふふふっ…」

 

伊隅の質問に焦って、赤面しながら答える龍臥を見て、遥は笑ってしまう。

 

(ほんとに…強い子ね…。ありがとう…)

 

遥は優しく暖かい目で龍臥を見ていた。

水月がバンシィの中から連れ出され、担架で運ばれていく。バイタルは正常であることを夕呼に伝えた龍臥はお返しに耳打ちする。

 

「それと……俺の考えでは……----」

 

「!!?…今の、シャレでも冗談でもないわよね?」

 

龍臥の言ったことはそれほどのものであったのであろうか、夕呼の目が見開き、龍臥に確認するように再度質問する。

 

「今の状況で冗談など言いません…それに、あれらは『可能性の獣』ですから」

 

「……」

 

龍臥の答えを聞くと、何かをメモしながら夕呼は自室へ走るように戻っていく。

 

「おつかれ、龍臥」

 

「オス、武…悪いけど…疲れ…-」

 

「!? おい、龍臥?」

 

武と少しの会話を最後に、彼にもたれかかるように眠ってしまう龍臥。

龍臥を部屋へ運ぶ武は、後ろを振り返りドラゴニュートとバンシィを見つめる。

 

(これがあれば…人類を救えるのか…?)

 

基地から見えた純白と黄金の光、そして虹色の輝き…はたしてこれらが人類の希望となるか、滅亡の種となるのか…武には分からなかった。しかし一つだけ分かる。

 

(龍臥と俺なら…この世界を変えられる!)

 

---------------------

 

 

「……香……な…織 …ごめ……ん」

 

「…おはよう……」

 

(え?)

 

朝なのだろう。その言葉は朝、目覚めた時に言う言葉だからだ。

変なのはそこじゃない。目を開けた先にそれが居た。

白い…髪?長髪をウサギのような髪飾りにまとめ、ツインテールらしき髪型の少女…

 

「ファッ!!?か……霞ちゃん…?」

 

「…おはよう……」

 

「あ、おはよう……」

 

「……」

 

「…?」

 

少し間が空いたその後、そそくさと部屋を出ていく霞。それを見るが、わけが分からなかった。なぜ居るのか?鍵は……いや、武に運んで貰ったのだ。

などと考えていると、出ていく時に霞が一言、

 

「香織さんは…いい子だったんですね…」

 

「……お、おう」

 

(リーディングされていたのか……)

 

しかし先程から心臓がバクバクだ。見た目は少女だが、当たり前だが相手は女性……まだ当分女性耐性は克服できそうにない。

 

国連制服に着替え、部屋を出ていこうとする。

 

(そういえば…俺も一応国連に入っているのか…)

 

国連の制服を見ると、何か複雑な思いになる。国連に入ってはいるが、国連軍と戦わなければいけない。

これから何が起こるのか分からない。しかしやることは決まった。俺は二度と逃げない。

全てを守ることは出来なくても、身近な存在だけは守りたい。

そんな思いを秘め、部屋の外へ出た瞬間--!!

 

「おぶぁ!?すみま…」

 

「きゃっ…!ちょ…」

 

(…ふわふわしている…?あ、嫌な予感。)

 

その通りだった。龍臥は声の方向を見る。すると、そこにいたのは顔を赤面させた水月がいた。

 

「刻…永…あんた…っ…」

 

ちなみに、龍臥は生前、ラッキースケベ?というものに縁はなかった。それに近いものといえば香織と幼い頃に一緒に風呂に入ったこと位だろう。

 

「…おはようございます」

 

龍臥は爽やかな顔で挨拶する。しかし…

 

「ちょっ…離れなさいよ!バカ!」

 

否、どこも『しかし』ではなかった。予想通り水月は強烈なボディブローを龍臥の脇腹に繰り出す。もちろん龍臥に直撃、ダウンする。

 

「こんな経験生きてる間に無かった…我が生涯に一遍の悔いなし…」

 

「何がこんな経験よ!上官の胸に顔を埋めるのが挨拶より前にすること!?伸びてないで起きなさい!」

 

「うぃーす……」

 

「おわっ!?龍臥…速瀬中尉…何が…!?」

 

武が隣の部屋から出てくると困惑気味に聞く。

 

「こいつ…私の胸に飛び込んで来たの…変態。」

 

「誤解ですよ!?武もな!そんな露骨に蔑むような目で見んな!!…躓いた弾みに、ですよ」

 

龍臥も慌てて言い訳…本当のことを話す。

 

「…ふふっ…あはははっ、わかってるって。さぁ、今日もビシバシ訓練してやるから!さっさとPXに行くわよ!……ほら、起きなさい!」

 

そう言いながら最後に伸びている龍臥にトドメの一撃、背中に蹴りを喰らわす。

 

「は、はい!ほれ、龍臥!!」

 

「今…行きます……」

 

---横浜基地 食堂---

 

「-朝から酷い目に会った……」

 

合成食の鯖味噌を口に運びながら、龍臥はつぶやく。

 

「……」

 

「お姉ちゃん?どうしたの?食べないの?」

 

遥が皿にのせられたものを見つめ、考えているのだろうか、動きが止まっている。

 

「ううん…この野菜…天然物…だよね?なんか綺麗で…珍しいなって…」

 

「そうなんだよ!夕呼ちゃんからねぇ、手に入れたって沢山くれたのよ!久々の天然物だったから、腕がなったよ!」

 

「副司令から…?」

 

(あ、渡してくれたんだな、夕呼博士。よかった…みんなの役に立てるな…)

 

龍臥が夕呼に渡しておいた、ネェル・アーガマからの栽培物の天然野菜だ。流石は宇宙世紀の技術…野菜も様々な種類を栽培できるなんて……

 

なんてことを考えていると、京塚のおばちゃんが夕呼に絶対言うな、とあれほど言っていたことを言ってしまう。

 

「そうそう、夕呼ちゃんから聞いたよ!龍臥が乗ってきたあの飛行機?にあったから、龍臥が渡してくれたってね!」

 

皆が一斉振り向き、龍臥を見る。

色々秘密にしろとあれほど言ったはずだ、と考えたが、夕呼は研究に使えるもの以外に興味は持たない。だから秘密にはしなかったのだろう、と自己完結する。

 

「え…刻永が持ってきてくれたの!?」

 

「……まぁ…」

 

「なんでもっと早くこの横浜基地に来なかったの!?あんなに凄いものいっぱいあるのに!」

 

「……事情があるんでしょ、茜」

 

茜のはしゃぎように、遥は龍臥の事を知っているため落ち着くように言い聞かせる。

 

(目立つのはあまり好きじゃないんだがなぁ…)

 

ユニコーンを持ってきて何を言うか、と自らツッコミを入れる。

ふと武を見ると、彼自身も闘っていた。

武に霞がさば味噌を『あーん』しようとしている。無論、御剣を初め元207訓練小隊のメンバーに軽い殺意を向けられている。

 

(ニュータイプのせいか、軽くても殺意には反応しちまうのは厄介だ…)

 

と思いながら、ある人物を横目に見る。

その人物は…速瀬水月。今一番龍臥が気になっている人物。

先程の殺意に、軽くビクッとしていた。

 

(おそらく…戦場に長くいるせいか、ニュータイプになりかけている…?)

 

もし水月がニュータイプならば、全て辻褄が合う。

初めに邂逅した時…ユニコーンがデストロイモードになったとき、そしてバンシィとの戦い、サイコフレームの共鳴……

色々と気になることがあるが、今はオルタネイティヴ5派の攻撃を待つ。

そして、ひとつの小さな争いを終わらせるのだ。たとえ塵のような小さな問題でも……。

 

(そして、水月さん…あなたを必ず守ります。あなたが守りたいものをも全て--!)

 

 

 

 

 

 

 

 




日常のほのぼのした感じは好きですが、マブラヴ世界ではそんな日常回的なこと…ないです。
次回もお楽しみに!


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#17 戦に向けて

肉まん美味しい(^q^)


 

水月をチラ見しながら、これからできることを考えてみたが、今は訓練、モビルスーツの整理、そして00ユニットの調律…この3つが最重要事項であると確認する。

 

「なに?さっきからチラチラ見て…」

 

「…!あ、いえなんでも…」

 

水月が龍臥の目線に気付いたのか龍臥に直接聞いてきた。それを聞いた茜が、追い討ちというのか分からないが龍臥にとって他人事ではないことを言い出す。

 

「えっ!?何、刻永あんた速瀬中尉のこと好きn…」

 

「はいそこまで…」

 

遥が龍臥のフォローに入るため茜を止める。

しかし彼女の猛攻は止まる所を知らない。

 

「えぇ〜?だってさお姉ちゃん、昨日の事だって刻永は速瀬中尉を真っ先に心配して、自分が行くって言ったんだよ?」

 

「……まぁ…それはね?だって龍臥君の機体だったし…うん…多分…」

 

遥のフォローが尽きてしまったため、朝食中この後も茜に質問攻めにされてしまった。

 

---シュミレータールーム---

 

食事を終えた後の訓練はいつも通りシミュレーションだ。と言ってもハイヴ戦ではなく、戦術機同士の戦闘シミュレーションである。その訓練で龍臥は試したいことがあった。

 

「武、その新OSでシナンジュを操縦してみないか?」

 

「え!?いいのか!?」

 

「もちろん構わないけど、普通の戦術機とは違って高機動だから気をつけろよ?」

 

「おおお!一度あれ使ってみたかったんだよな!」

 

武が歓喜しながらシミュレーターに入っていく。

しかし龍臥には狙いがあった。武にただシナンジュを使わせるだけでは訓練にはならない。よって、水月にもあの機体を使わせてみることにした。

 

「水月さん、バンシィを使ってみませんか?」

 

「え…」

 

水月は少し戸惑った。あれは水月にとってトラウマレベルの出来事であったため、迷うのも無理ない。

 

「今のあなたなら使いこなせますって!」

 

「…ま、まぁやってみるけど…そう言ってまたおかしくなったら、ぶっ飛ばすから。」

 

「覚悟は承知です!」

 

少し疑いながらもシミュレーターに入っていく水月を確認すると、夕呼にそのことを頼みに行く。

 

「別にいいわよ?使用するシミュレーターの機体データを少し弄ればいいんでしょ?」

 

「助かります!これで対人戦の訓練にハリがあるってもんです!」

 

「…もちろん遊びじゃないってことは承知ね?」

 

「いつでも俺は真剣ですよ、博士。それに、あの時言ったこと、確認できますよ。それは博士にもメリットにもなるでしょう。」

 

「よくわかってるじゃない。それじゃ、始めるわよ。」

 

龍臥もシュミレーターに搭乗し、機体データを確認し、今回はF91を選択する。

 

『ヴァルキリーマムより、これより戦闘シミュレーションの開始を知らせる。』

 

『ヴァルキリー2、了解』

 

『ヴァルキリー10、了解しました』

 

『ヴァルキリー11、了解した』

 

「ヴァルキリー13、了解です」

 

『各員、戦闘シミュレーション、開始!』

 

今回は2対2の訓練であり、メンバーは武と冥夜がペア、水月と龍臥がペアとなっている。

 

『足引っ張ったら、助けないからね!』

 

「了解です!水月さん!」

 

『冥夜!かっ飛ばすぞ!!』

 

『了解した…が、タケル、なんだその機体は…前に刻永が乗っていた機体ではないか』

 

『色々あって、使わせてもらってんだよ、お前も龍臥に何か使わせてもらったらどうだ…っと!』

 

そんな会話をしていると、迷いなくバンシィが武に向かってリボルビングランチャーの徹甲弾を撃つ。

 

『そんな呑気に会話していると、撃墜するわよ!』

 

『くっ…流石は速瀬中尉だ…』

 

『タケル!刻永は何処だ!?』

 

冥夜が発言したことにより、武は辺りを探すが龍臥の機体が見当たらない。

 

「大型もいいが小型モビルスーツもいいな…センサーに感じられにくいぜ…」

 

龍臥はF91を巧みにビルの隙間に潜り込ませ、攻撃の機会を待つ。

 

『…!建物の隙間とかは…ないだろうか?タケル、そこのビルを撃て!』

 

そう言われ武がシナンジュのビームライフルを発射すると、見事ビルに命中。ビルの数棟が煙を上げ崩れていく。

その一瞬、影が高速で空へ上昇する。

 

『…!!冥夜、上だ!』

 

『むっ!』

 

二人が上を見上げると、普通光線級のレーザー照射を受けてしまう高度にそれはいた。

ガンダムF91…地球連邦が最後に運用した小型のガンダムタイプ。型式はRXではないが、顔がガンダムに似ているとのことで『ガンダム』と呼ばれている。

 

「さっすが御剣さんだ!!俺の機体に気付くとは!だが隠れるだけがF91じゃないぜ!」

 

そう言うと、F91のバックパックに装備された銃身が腰部へ移動し、エネルギーが溜まっていく。

 

「ヴェスバーを…喰らいなァ!」

 

ヴェスバー…variable speed beam rifle(可変速ビームライフル) といい、用途に合わせてビームの種類を変えることを可能にした新兵装である。

龍臥が放ったのは、貫通力の高い高速ビームである。そのビームが冥夜の乗る吹雪を狙う。

しかし、その一瞬に武はシナンジュのシールドを投げ、冥夜を庇う。

 

『冥夜、無事か!?』

 

『タケル、すまない!こちらは無傷だ……!』

 

『だぁからぁ!おしゃべりしてるとッ!!』

 

水月がバンシィのビームトンファーをシナンジュへ突きつける。

しかし冥夜はそれを黙って見てはいない。吹雪の持つ長刀をバンシィに斬りつける…が、バンシィはシールドを構え長刀を防御。その瞬間にF91がシナンジュに突っ込んでいく。

 

「俺を…忘れんな!武!!」

 

『来たか!龍臥ぁ!!』

 

シナンジュのビームナギナタを展開し、振りかぶってそのまま機体目掛けて斬りつける。F91はそれを難なく回避、バルカン砲を掃射しながらビームサーベルを抜刀、シナンジュ…ではなく吹雪を狙う。

 

『っ!来るか、刻永!』

 

『させねぇ!』

 

『あら、こっちも同じよ!!』

 

武が阻止しようとするが、それを更に水月が阻止しようとする。バンシィがビームマグナムを撃ち、シナンジュのシールドを破壊することに成功。

 

『刻永!!今がチャンスよ!』

 

「助かりました!水月さん!!」

 

水月の助けを受け、龍臥は吹雪の右腕を切断する。

 

『まだ…まだ!私は行ける!』

 

冥夜が諦めず長刀を片方のマニピュレーターで構え、間合いを取る。これは剣道そのものである。

 

(まずい…たとえモビルスーツと戦術機では性能に差があったとしても、相手が御剣さんなら違う…)

 

彼女は昔から剣術に磨きをかけていた。それも戦いに反映される。長刀とビームサーベルでは長刀の方が圧倒的に長い。

後ろではバンシィとシナンジュの戦いが繰り広げられている。武が助けに来ることはないだろう。

 

(勝負は一瞬だ…)

 

二機が互いにバーニアを吹かし、促進剤を一気に消費するように突っ込む。

 

その瞬間だけ、その一瞬だけ……辺りが静かになった。

 

『はあああああああああああああああッ!!!』

 

「オラァアアアアアアアアアアッ!!!」

 

鋭い金属音が響き、勝負は決する。

---勝ったのは、龍臥…ではなく冥夜。

 

あの一瞬でF91のマニピュレーターを斬り、武装解除させたのだ。

 

「なっ……F91が…!?」

 

『ふ…許すが良い、刻永。これも立派な戦術でな。』

 

しまった、と思いながらも後ろを確認するが、そちらはまだ決着がついていなかった。

 

「だが…まだ負けてねぇッ!!」

 

『なっ…!!』

 

F91のバイオコンピュータが作動、ヴェスバーが背後の吹雪を低速ビームで撃ち抜く。吹雪が大炎上しながら爆発する。

 

『ヴァルキリー11、機体損傷91%!機体大破、撃破判定!!』

 

『やるじゃない、刻永。あとでその機体もデータちょうだいね。』

 

「なんですか博士!!わざわざ遥さんのマイク今使ってまで言いますか!?」

 

『……不覚ッ……』

 

『--さぁ、さっさと決着つけるわよ!!白銀!』

 

『はい!龍臥、お前はあとでぶっ倒してやるからな!』

 

二人の最強クラス衛士の対決。これは見応えがありそうだ、と思いながら見守っている龍臥をよそに、戦いが再開される。

 

---日本上空---

 

『--Flying over Japan…Target point, Yokohama(現在日本上空を飛行中…目標地点、横浜)

 

日本上空--光線級の攻撃を受けないように山を盾に戦術機を搭載した飛行機が飛行している…その機体には『国連軍』のエンブレムが飾られていた---

 




はああああああああああ!!速瀬を誤字ってたああああああああ!!指摘してくれた方、大感謝です!!


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#18 戦闘態勢

お昼ご飯は牛弁当…
推奨Bgmを表記してみましたので、ぜひ聴きながら読んでみてください!


ふたつの機影が衝突する。

 

『うおおおおおおおおおおおおッ!!』

 

『そんなんじゃ遅いッ!!』

 

シナンジュがビームナギナタを横へ振るが、バンシィは上昇し、回避。そのまま後ろへ回り込みシナンジュを蹴り上げる。

 

『……っ!!』

 

武は今まで感じた事のない衝撃を味わっていた。後ろからの強烈な蹴りに加え、上官の圧倒的な実力に直面したためである。

更に追い討ちをかけるように、耳がつんざくような轟音、バンシィがリボルビングランチャーの徹甲弾を炸裂させた。シナンジュの右脚が爆発。

 

『…!右脚のバーニアが…』

 

『そぉらっ!!まだまだ行くわよ!!』

 

『くっ…ここで……負けてられるかぁッ!!』

 

武がムキになって地面に伏せるようにスラスターを操作し、バンシィの攻撃を回避する。

それだけではなく武は機体を一気に急上昇させバンシィの真上をとる。

 

『は…嘘でしょ……』

 

『うおおおおおおっ!!』

 

シナンジュの高機動性、武の変態機動、そして新OSの3つが重なってなせる事。そのままビームアックスを構え、バンシィに切り込む。

勝った--もし皆が武ならば誰もがそう思うだろう。しかし相手は全身サイコフレームの謎の機体。

その瞬間に水月が覚悟を決めると同時にバンシィが黄金に輝き出す。

 

『(お願い……上手くいって…!!)』

 

推奨BGM : MAD NUG サビ〜

 

バンシィが上部装甲をスライドさせNT-Dを発動。黒き獣がその牙を鳴らす。

 

『ちょ…これ相手かよぉ!!』

 

「頑張れ武!!下手こくとやられるぞ!」

 

『てめ…他人事だからって…』

 

『刻永!敵を応援するな!』

 

「オス!水月さん!」

 

バンシィがビームトンファーを使ってシナンジュの左マニピュレーターを切り落とす。

武は少し距離を置き、ビームライフルを連射--しかしいとも簡単に躱され距離を縮められる。

 

『っ…クソっ…!』

 

バンシィに飛び蹴りされ、腰部のスカート部分の装甲が剥がれ落ちる。シナンジュは再びビームライフルを撃ち続けながら離れようとする。

 

『そんなに近付かれるのが嫌!?それならこうしてあげる!』

 

バンシィがビームマグナムを構え、射撃の姿勢へ入る。武は傍のビルを盾にするが…時すでに遅し。発射されたビームがビルと共にシナンジュの右半身を撃ち抜き、シミュレーション終了。

 

「--あぁっ!あと少しだったのに!」

 

武が汗だくになり文句を言いながら出てくる。しかしその顔は少しも負けたことへの悔しさでは無く、シナンジュを操って戦えたことへの喜びが勝り、むしろ清々しい顔だった。

 

「これが先輩の実力ってね!そうでしょ、刻永!」

 

龍臥の肩をバシッと叩き自賛する水月。

しかし相変わらず龍臥は強化装備姿の女性に対して恥ずかしそうな態度をとる。それに気付いた水月は龍臥へ耳打ちする。

 

「…あのとき私にちゃんと言ったんだから、今更恥ずかしがることないでしょう?男なんだからビシッとしなさいよ」

 

龍臥へのそれは逆効果だった。目の前にはかなりの美人であり身体のラインがしっかりと出る強化装備姿、更に自身の惚れた相手なのだから…龍臥のボルテージが振り切れてしまう。

 

「は…っ………はいっす……!」

 

「?」と武は少し理解できずにいたが、冥夜はある程度理解できた。

 

(ああ…あれは完全に『恋する乙女』の目だな…刻永は男だが)

 

「水月さん……それはそうと…顔近いっす……」

 

「はぁ?どーこがぁ?」

 

顔を赤面させ照れる龍臥をからかい、水月は更に顔を近づける。

 

 

--そんな日常が過ぎる中、突如基地内のサイレンが鳴り響く。

 

『--緊急連絡、準戦闘態勢2…繰り返す。準戦闘態勢2へ切り替えよ--』

 

シミュレーションを一旦中止し、中隊全員が…シュミレータールームにいる者がザワザワと騒ぎ出す。

 

「な…いきなり準戦闘態勢2!?またクーデターかよ!?」

 

「タケル…暫くはクーデターはないと思うが、油断は禁物だ…」

 

「刻永!」

 

慌てながら夕呼が駆け寄ってくる。

 

「遂に来たわよ!国連軍…特に、アイツらよ…!!」

 

「……了解です。今…準備します。」

 

「……それが、とんでもないのよ。まさかアレを投入してくるとは思わなかったわ…」

 

「…?アレとは…なんですか?」

 

龍臥が質問した時だった。夕呼の額からの汗が頬をつたって床に落ちるーー夕呼が重い口を開く…

 

「『ラプター』よ…米軍の最新戦術機…ステルスを搭載しているの…それが16機」

 

「じゅっ…16!?……龍臥っ!危険だ!」

 

武が目をひん剥いて龍臥に訴えかける。しかし龍臥は止まらない。

 

「行きます。その程度なら、ドラゴニュートの敵ではないと思います」

 

「刻永!タケルの言う通りだ…米軍を舐めては……」

 

「私が行く。」

 

その場にいた夕呼以外の全員が彼女ーー速瀬水月を振り返る。

 

「ダメです!なんであなたが出なきゃ行けないんですか!?そもそも俺はみんなを守りたいから行くんで…」

 

「無茶は承知よ。それに、大尉やほかのみんなが、新入りの部下が一人で戦うのを指をくわえて見てろって言うと思う?私は思わない…あんたは大丈夫だと思うけど、目の前で人が死ぬのはもうたくさんよ!……特に、こんなにからかいがいのあるかわいい部下は…」

 

「水月さん……」

 

水月の発言を聞いてニヤリと夕呼が笑い、ひとつ提案をする。

 

「…ふふっ、あんたなら言うと思ったわ速瀬。いいわよ…責任は私…副司令がとるわ。」

 

「夕呼先生…!!」

 

「香月副司令…ありがとうございます!」

 

「頑張って刻永をサポートしてあげてね、速瀬。」

 

「はい!……ふふふっ…」

 

「え!?逆じゃないっすか!?てか何で笑うんすか水月さん……」

 

龍臥が二人に困惑気味に訊く。

 

「…じゃあ、行くわよ刻永!」

 

「は…はいっ!」

 

二人が出ていく瞬間、夕呼が龍臥にボソッと伝える。

 

「好きな女なら、命をかけて守りなさい…絶対にね」

 

「…了解です…香月副司令!!」

 

「こんなときに副司令呼びって……行ってきなさい。」

 

龍臥が後ろを向き、夕呼と中隊全員に向けて敬礼する。

 

「…必ず、生きて帰ります!お土産にラプターの部品を持って帰ってきます!」

 

その発言に皆に苦笑や大笑いなど…龍臥の一番求める『笑顔』が見られた。

この笑顔のため、戦わなければならない。たとえ相手が人間でもーーー

 

ーーー横浜基地 ハンガーーーー

 

「えっ水月さん、バンシィで行かないんですか!?」

 

「当然でしょ、もし暴走したらあんた国連軍と私を相手にするのよ?そんなんで生き残れる?」

 

正論ではある。しかしーー搭乗する機体は…と思っていると、水月はある機体に向かって走り出してしまう。

 

「あっそんな子供みたいに…」

 

「これ!この戦術機かっこいいわぁ!これで行くわ!」

 

彼女が選んだ機体…高機動かつ高火力を出せる可変型モビルスーツ『デルタプラス』。

 

(なんでバンシィ乗る人って機体が大体パターン化してるんだよ…)

 

「じゃあ、それでいいですけど…下手に変形しないでくださいよ、整備が大変だって整備ハロにどつかれましたから」

 

「へ…変形?それどういう意味?」

 

「じゃ、俺はドラゴニュートで行きますんで。射線場へ出ないでくださいね」

 

「ちょっ…指示が多いし変形って何よ!?あっ逃げんな!……もうっ…」

 

水月の質問に答えるのが面倒くさくなった龍臥はさっさとドラゴニュートへ乗り込む。

ーーが、直ぐにコックピットを降り向かってくる人物の気配に気が付く。ニュータイプになりかけている水月も同じくその方向を見る。

 

「やれやれ…全く、横浜基地というのは次から次へとトラブルが発生するな…冥夜様の身が心配だ…」

 

「あ…あなたは……」

 

龍臥がその人物を確認すると同時に武と冥夜が走ってくる。

 

「龍臥!まだいたのか!早く行ったほうがいい!」

 

「武、御剣さん!なんでここに……」

 

「モニターを確認していたら帝国の武御雷がいたのでな…。……何故ここにそなたがおるのだ……

 

月詠!!」

 

「月詠…中尉……!」

 

青緑色の髪をした綺麗な顔立ちのいかにも厳しそうな女性…月詠真那中尉。五摂家の1つであり、現将軍家でもある煌武院家の警護を担当する帝国斯衛軍第19独立警備小隊の隊長が何故…

と、考える間もなく月詠は龍臥に鋭く訊く。

 

「刻永少尉…貴様はあの戦術機の衛士らしいな。国連軍の連中が騒いでいるぞ?あの機体を引き渡せと」

 

「こちらにも事情があるのだ月詠…」

 

「冥夜様、私はこの者に多少質問しなければならないことがあります。…これは冥夜様達にも関係がありますゆえ。」

 

「……あの機体は絶対に渡せません。これは全人類のために、平和のためにあります。」

 

「その言葉が真実だとしても、貴様に真実味が不足しているぞ、刻永少尉。」

 

「……どういうことでしょうか?」

 

龍臥にとって不都合な質問であればマズイが、物事に逃げることは絶対にしないと決めたため、逃げる訳にはいかない。

 

「貴様は何者だ…戸籍が存在せず…あの戦艦も何だ!見知らぬ戦術機に続いて貴様には謎が多すぎる!白銀少尉以上にだ」

 

「刻永……?」

 

「え…どういう…こと?」

 

「……っ…龍臥……」

 

月詠、以外の三人が龍臥を一斉に見る。

口腔が乾いてきた。手汗もダラダラと滲み出てくるし、唇も乾燥している。

 

「……俺は…」

 

龍臥が言うべきことはひとつだけ。

 

「俺が何者だろうと、そんなこと訊いてくる人も機関にも構いません!!俺はそんなことより、()()()()()()()()()()武装して来る国連軍のことを考えなければいけないんです!……今は人類同士で銃口を向けている場合じゃないでしょう!?そんなんだからBETAの侵攻を許したんです…

 

 

俺は、全人類の…地球の!!味方です!!!

 

 

その一言を聞いた月詠は彼女らしい言葉を発する。

 

「……わかった、ただし冥夜様に何かあったら貴様を斬りに行く。覚悟しておけ……」

 

「…はい!!」

 

「さぁ!刻永、速瀬中尉、早く!」

 

「よしっ!行くわよ龍臥!……さっきのカッコよかったわよ…」

 

「…っ!! 了解です!」

 

ーーーふたつの機体が横浜基地を出ていくのを確認すると月詠は小さく呟く。

 

「……あのような若者が増えるといいんだがな…。……冥夜様…殿下…日本帝国もまだ捨てたものではありませんね…」

 

 




推しでもある月詠真那が登場しました。月詠中尉の強化装備姿ほんとエッッッッッッッで好き
推奨Bgm不要でしたら言ってください。読者さんの需要にも合わせるのも必要ですので!
それでは!また明日!!


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#19 死闘、見えざる敵

戦闘シーン推奨BGM :Vigilante

では……どうぞ


横浜基地を出た二機のモビルスーツは高速でその飛翔する機体に向かう。下手をすれば光線級に狙われかねないため、高度を低く維持して行動する。

 

「……水月さん、ラプターってどんなのなんですか?」

敵の戦術機についての情報があまりにも乏しいため、国連職員でもある彼女に訊く。

 

『詳しいことは私達も知らないけど…たしか12.5クーデター事件で何機か目撃したわ。それに……副司令が言ってたようにステルス機能があるって……』

 

水月が記憶の中を探るように、不確かだが重要な情報を伝えてくれた。

ステルス機能…間違いでなければ厄介なことになる。このモビルスーツやデルタプラスのような機体には全天周囲モニターを採用しており、それはレーダーによって確認した機器の情報をCGとしてモニターに映すもの。

その時点でレーダーに映りにくいラプターであれば、確認するのも一苦労。ニュータイプの力に頼るしか他ないだろう。

 

「…そういえば水月さん、他の戦術機と違って網膜投影じゃないですが…問題ないですか?」

 

『言われてみれば……網膜投影は便利だったなぁ。まあ特に問題ないけど…こっちの方が下とか背後の攻撃に気付けるのは大きいわね』

 

龍臥はその応答に納得出来た。

実の所、龍臥自身も網膜投影の便利さに魅力を感じていた。モニター操作なしで目線で操作可能なのはモビルスーツにも応用できると考えらからである。

 

ーー突如通信が入る…横浜基地からだと分かると、すぐさま応答する。

 

『刻永、次が最後の猶予らしいわよ。『即刻機体を譲渡し、降伏せよ』……何よこれ、まるで私達が悪者みたいじゃない』

 

「実際、これから悪者になるかもしれないんです。この極東の最新鋭基地ーオルタネイティヴ4派と5派の抗争が始まるんですから」

 

龍臥が呆れながら応えていると、水月が通信に乱入してくる。何か慌てた様子で…

 

『刻永…落ち着いて聞いて、アイツら…すぐ近くにいるかも…しかも攻撃する気満々よ』

 

『……?レーダーにも何もないし、それに相手はラプターですよ…そんな分かるものなんですか…?ッ!!!』

 

水月の方が先に気が付いたのだろう、龍臥も遅れてその殺気に気付く。

機体の強奪が目的なのだが、敵は殺しに来ている。矛盾しているのではないか…と考えている内にある答えに辿り着く。

 

「水月さん…博士…まさかとは思いますが、奴らは機体奪取が目的じゃなく…オルタネイティヴ4派の主力になりうるこの機体を、あわよくばオルタネイティヴ4派全てを消すつもりなのでは…?」

 

その答えに二人は息を飲む。

 

『そ…それじゃただの人間同士の戦争よ!何でそんなことをするわけ…!?』

 

『おそらくはオルタネイティヴ5派がBETAを殲滅する事を優先しすぎた結果のようね……』

 

オルタネイティヴ5ーー限られた人間を地球圏から脱出させ、大量のG弾で全ハイヴへ一斉攻撃を仕掛ける…残された人類だけではなく地球そのものも破滅へ導く、その計画は絶対に阻止しなければならない。

 

「…ッ!来ました!水月さん!……博士、それじゃ」

 

『気をつけてね…絶対生き残りなさい!そして、守りたいものはたとえ死んでも守りきりなさい…いいわね!』

 

その通信を最後に、戦闘を開始しドラゴニュートとデルタプラスは接近するミサイルを回避。

 

(まず威嚇射撃もなくミサイルだなんて…やはり奴らの目的ってのは……)

 

龍臥はドラゴニュートのアームドウェポンーー彼がそう呼んでいるが『アームドアーマー』のことであり、左右対称に装備されたワイバーンの翼ようなものを持つ。

その翼は展開するとビームを発生させ、ビームブレードとしてもビームシールドにもなる万能兵装である。

そのアームドウェポンを展開し、更に撃ち込まれたミサイルをビームシールドで防ぐと、爆煙が広がる。

その煙を突き抜けドラゴニュートの真横をラプターが抜き去る。

 

「なっ…気付かなかった……コイツっ!!」

 

ビームマグナムを構えるが、背後にもう一機のラプター。全部で16機もいたことを完全に忘れていた。

 

『刻永!避けなさい!』

 

水月がビームライフルを連射し、ラプターの左肩の装甲に命中。

しかし引き下がらずにラプターは小型ダガーナイフを構え、デルタプラス目掛けて急接近。

しかし水月は焦らず敵機に、器用に回し蹴りを繰り出す。

 

『来れるならきなさい!部下も基地も、私が守ってやる!』

 

龍臥は水月の言葉に感動していた。いつもご機嫌にからかってくる3つ程年上の上官が、自分よりも真っ先に敵機を確認し戦ってくれたのだ。

龍臥も男として、この人に応えなければならない。そう思うとドラゴニュートのバーニアを吹かしラプターへ急接近し、アームドウェポンのビームブレードで頭部を切り裂く。そのまま頭部を失ったラプターは堕ち、爆炎をメラメラとあげて大爆発。

 

(……水月さん…あなたも含め、みんなを守るのは俺の願いです…!そのためなら……たとえ殺人だろうと、やりきってやります!)

 

「まだ…そこにいるのかああああああああぁぁぁ!!」

 

『刻永!そっちは……駄目!』

 

ラプター3機が逃走…水月の注意も聞かず、そのまま追いかけていく。

追い続ける内、気が付くとそこはG弾によって壊滅した横浜市内だった。彼に突然悪寒が走る。

ここはあくまでも、大勢人が死んだ場所。霊感がなくともニュータイプである彼らには安全とは言いきれない場所であった。

 

『刻……こな……!応……』

 

水月らしき声が無線に入るが、環境が悪いのかノイズが走る。

その時だった。ラプター4機がビルの間から挟み撃ちの形で襲ってきた。

 

「……ッこいつら!!」

 

ドラゴニュートを急上昇させ、攻撃を回避するが既に上にもラプターが。先程水月が肩を破壊した機体がAMWS-21突撃砲を構え待ち伏せている。

 

「そんなんで……ッ!!俺を殺せるかああああああああ!!」

 

120mm弾を撃ってきたと同時にビームトンファーを起動し、突撃砲に突き刺す。

突撃砲が小爆発を起こしたのがゴングだったのか、真下のラプター2機がドラゴニュートへ突っ込んできた。しかしそれを黙って見ておらず、すぐさま振り向き、そのまま2機のラプターを縦に真っ二つにする。

 

『ーー刻永!いた!!』

 

『ーーtake this!(これでも喰らいな)

 

「水月さん!後ろ!!」

 

デルタプラスに120mmが直撃し、水月が軽く悲鳴を上げる。

それが龍臥を怒らせた。デルタプラスはそこまでヤワじゃないが、勝手に追いかけた自分を心配してくれた上官が攻撃を受けたことに、怒りを覚える。

 

「ッ!!……ドラゴニュートッッ!!!」

 

ドラゴニュートはユニコーンモードからデストロイモードへ変身、サイコフレームを虹色に輝かせながらデルタプラスの背後のラプターへ近付き、頭部をマニピュレーターで鷲掴み。

 

『ーWho is …this guy!?(こいつは一体…何なんだぁぁぁぁ)

 

Valkyrie13…Call it a dozen devils!(ヴァルキリー13…悪魔のダースって呼びな)それに、英検準1級持ちを舐めんなアアアアアア!」

 

生前所持していた英語検定。それを取得するために鍛えられた英語力を駆使し、相手の無線に応える。そのまま頭部を握りつぶし、また1機戦闘不能にする。

 

『っ…あんた英語話せたの!?』

 

「ただ生きてる訳じゃないんでね。」

 

『ーIt ’s my big brother ’s death!!(兄貴をよくもぉぉぉぉ)

 

『っ!また!』

 

水月へもう1機ラプターが突っ込んでくるが、デルタプラスがビームサーベルを抜刀、機体の四肢を切断。

デルタプラスとドラゴニュートは背中を合わせ、どの方向からも対応できるように武装を構える。

 

「……残り11機……!」

 

『どこからでも…来なさい…』

 

二人は敵を待つ。しかしいっこうに敵は現れなかった。

 

『……刻……月…応答…て……』

 

「ッ!?……博士!?」

 

『……よ…罠……それ……お……』

 

さっきからノイズが邪魔をする。もしかしたら……これも敵の作戦か……?

 

『……囮……よ……!』

 

その言葉に二人は目を見開く。

しまった。これは敵の作戦通りだったのだ。横浜基地が危険だ。行かなければ!

 

『刻永!』

 

「はい!」

 

2機は全速力で、弧を描きながら横浜基地へと向かっていく。

 

 

 




ドラゴニュートのスペックです

RX-0-4
ユニコーンガンダム4号機-ドラゴニュート

全長:ユニコーン時19.8m デストロイモード時22.4m
本体重量:26t 全備重量:68t

概要:龍臥がユニコーンガンダムを改造した4号機。装甲色はザクのような深い緑だが、それは竜をイメージしているためである。
両腕にアームドウェポンと呼ばれる『アームドアーマーBW(ビームウィング)』を装備。
NT-D発動状態になると、緑色の装甲が展開され純白の装甲が現れる。これは元の機体となったユニコーンの装甲にドラゴニュートの装甲を装着ーつまりNT-D時には装甲がパージされ、裏側にしまわれる仕組みとなっている。
また、そのアームドウェポンは爪状にも変形し接近戦にも対応可能となっている。
龍臥がハロ達と共に開発したテューポーンシステムを装備しており、それは排熱機構としてビームを全身から発するシステム。武器にもなり、防御としても使用出来るこのシステムは対BETAにも対人戦にも効果がある。

武装:アームドアーマーBW ビームマグナム ビームトンファー ビームサーベル×2 ハイパーバズーカ×2 シールドファンネル×3 ビームガトリング テューポーンシステム




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#20 防衛

明日は学校行事で投稿出来なくなるかもしれません…
現役高校生はつらいよ(男はつらいよって面白いよね)


---武サイド・司令室---

 

龍臥と速瀬中尉が出撃してから早5分が過ぎた。無事なのだろうか心配になるが、あの速瀬中尉が付いていて…更には戦術機の足元にも及ばないモビルスーツがある。そう考えると心配は無用であると自分に言い聞かせ、喉の辺りのモヤモヤを…不安を落ち着かせる。

しかし妙な胸騒ぎがする。夕呼先生は二人に無線を送っていて手が離せないらしく、今は俺がしっかりしなければ。

 

---『…ッ!来ました!水月さん!……博士、それじゃ』

 

そう聞こえたという事は戦闘が始まったのだろう。先生も注意喚起などの言葉を送って通信が終了する。

……先程の会話で何か嫌な感覚に陥ったのは何故だろうか…確か、『第4計画を消す』とかなんとかって……。そんな事考えていても埒が明かない。今は二人を待つしかないか……

 

「白銀少尉、少しいいか?」

 

そう言ってきたのは中隊長、伊隅大尉。

 

「ええ、かまいませんが……何でしょうか?」

 

何について聞かれるか、もしくは何か言われるのか不安になるが今の状況よりかはだいぶマシだろう。

 

「刻永少尉についてだが…彼は何者なのだろうな……基地に停めてある戦艦や戦術機といい……先程月詠中尉が言っていたが私達も知りたいからな。少尉は彼と接点があるのだろう?」

 

正直言うと、このことは秘密にしておきたかった。しかし何も言わないのは逆に不自然であると判断し、少しの真実を混ぜて話すことにした。

 

「俺とあいつは似たような境遇にあって…それでも諦めずに戦い続けているんです…一番辛い筈なのに……。しかし彼は言いました、『地球の味方だ』って…その言葉や龍臥を俺は信じています。あいつが何者だろうと」

 

大尉は納得したように軽く頷く。

 

「…わかった。時間をとらせてすまなかった、確かにそうだな。刻永少尉が誰であろうと、私の部下なのだからな」

 

大尉はそれを言うと去っていった。こんな感じで人々が信じ合えばBETAとの戦いに勝てると思うのだが……それが出来ていないから、今の状況になっている。

 

夕呼先生が早歩きで駆け寄ってくる。そして中隊みんなを集めだした。

 

「おかしい点があったの。確かに第5計画のヤツらは機体の確保を目的としていた…それなのに完全武装をして、かつ即攻撃に入った…。つまりヤツらは機体の確保ではなく、破壊が目的だということになるわ」

 

「しかしそれでは…彼らに利点がないのではないのでしょうか?」

 

 

委員長が疑問に思い質問する。それについて他のメンバーも同感のように頷く。しかし先生はその質問を予想していたかのように答える。

 

「そこなのよ。アイツら、機体の破壊によって第4計画の主力を潰す気よ。そして第5計画を進めて、BETAとの決着をつける…地球を見捨ててね」

 

オルタネイティヴ第5計画…阻止しなければならない計画であり、人類全てを救うためにも第4計画を終わらせる訳にはいかない。

 

「そしてその第5計画促進派の部隊と戦闘しているのが、速瀬中尉と刻永少尉ですか…」

 

「水月…龍臥君…大丈夫よね…」

 

「二人なら大丈夫ですよ…そんな気がするんです!」

 

宗像中尉と涼宮中尉が心配そうにつぶやく。それをカバーするように茜が励ます。

 

「まあ何にせよ…二人が勝つことを祈るしかないという訳か……。…タケル?どうした…」

 

冥夜が俺に声をかけ、俺は夕呼先生に歩み寄る。

 

「先生……俺は、この基地でも戦闘準備に入っていつでも迎撃出来るようにするべきだと進言します」

 

「……確かにね…第5計画の目的が確実になるまでは、そのほうがいいかもね。いいわ、中隊は戦闘準備を。伊隅、後はよろしくね」

 

「はっ、了解しました。……聞いたな、行くぞ」

 

中隊全員が戦闘準備を始める。それぞれが準備を進める中、俺の予想が正しかったかのように基地のサイレンが鳴り響いた。

 

『レーダー確認不能の戦術機が横浜基地に接近中!繰り出す、戦術機が当基地へ接近中!』

 

「なっ……!早すぎる!刻永と中尉はどうしたんだ……!?」

 

「タケル〜!大変だよ!モニターで確認したら、米軍の最新機ラプターが……!」

 

「!?…ラプターって…対戦術機特化のかよ…!やっぱり奴ら……」

 

美琴がそう伝えてくれ、元207訓練小隊の面々は焦るばかりだった。

 

「またか…何故そこまでトラブルが発生するのだろうな……白銀少尉。」

 

「月詠中尉…まだいたんですか…」

 

「フ…いては迷惑か?何、嫌な予感がしたのでしばらく留まっただけだ。……ラプター…12.5事件では味方だった機体が今度は敵とはな…」

 

「月詠…そなた、どうする気だ。まさか戦う気では……」

 

冥夜が月詠さんへ問う。

 

「仮にも私は近衛隊…国を守るのは我々の仕事です。それに、冥夜様も戦うのであればお守りするのも私の役目……私1人ではありますが、それなりに戦えるでしょう」

 

これは思った以上にいい結果になりそうだ。月詠中尉がいれば百人力。武御雷があれば…ある程度戦えるかも……

 

「では、そういう事でありますので…私も戦闘態勢に入らせていただきます」

 

「……月詠…気を付けるのだぞ…」

 

冥夜が去り際に言葉をかけ、その言葉に微笑みながら「冥夜様もご無事で」と応える。

俺達も吹雪へ乗り、戦闘態勢へ入る

 

『ヴァルキリー1より…聞こえるか、中隊は敵機が攻撃を仕掛ける前に横浜基地敷地内へは通すな!クーデター事件からの対人戦が続くが、個々の腕を信じて戦え!……中隊全員、生き残れ!』

 

『『『『『『『『『「了解!」』』』』』』』』』

 

吹雪がハンガーから出撃し、望遠レンズでズームしていくと11機のラプターが確認できた。

 

『嘘…レーダーにも映ってない…そんなに戦術機特化の機体を作って……何がしたいの米軍は…』

 

『どうでしょうね…BETAとの戦いが終わった後を考えているのかもしれない……』

 

柏木が米軍に対し考えているのを風間少尉が共に考え、ある程度の答えを見出す。

 

『……っ!嘘…ロックオンされてる…大尉!!』

 

茜がロックオンに気付き、大尉へ指示をもらおうとする。

 

『全機散開!ロックされたら振り切れ!性能面でもこちらはXM3を搭載している点で有利だ!』

 

大尉が散開命令を出し、各機体がそれぞれ移動する。ラプターが市街地を通り過ぎ、俺達との接触まで残り5kmとなった時……先生から無線が入る。

 

『白銀、刻永達には残り5機は囮だったって伝えたわ。もうすぐ来ると思うけど、それまで持ちこたえて!』

 

「はい!気をつけます…………ノイズが入るんですが、もしかしてこれも……」

 

『おそらく敵の妨害ね。それでもここまでの距離なら問題ないわ。…二人との通信はほぼノイズだらけだったけど……』

 

先生との通信を終え、戦闘態勢へ。接触まで……900m……500m……すぐそこ…!!

 

「うぉぉぉぉおおおッーーーーー!!」

 

ラプターが突撃砲を撃ってきたが、XM3の『キャンセル』により回避の後すぐ長刀による攻撃を開始する。ラプターの右腕に当たったが、やはり基本的な性能が高い敵機の方が有利だった。当たったはいいものの装甲が硬すぎてかすり傷しか与えられない。

 

『うわっちょっ……!!』

 

茜も同じことになっているのだろう、混乱の声が聞こえる。

すぐ近くで爆発が見え、確認すると柏木が120mm弾の攻撃を受けていた。吹雪の脚部が爆発し、既にバーニアが使えない状態だった。これでは回避もできない……

 

『ッ!!うっ…くそっ……!』

 

「!!柏木ィィーーーーーッ!!」

 

汗が止まらない。すぐそこに仲間がいるってのに助けに行けない……。手が震えてくる。

 

ダメだ……間に合わない!目の前のラプターが救助に行かせてくれない!

どけよ、なんでお前らは人間同士銃口を向け合うんだよ……人類の敵はただひとつだろ!?

もう誰も……()()()()()()のように……誰も失いたくないんだ……

 

ラプターが柏木に向けて銃口を向ける。

 

「もう……やめろぉぉぉッーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然柏木の前のラプターが何者かの攻撃を受け、爆発し左腕が吹き飛ぶ。その後、俺の目の前のラプターも管制ユニットごと大爆発する。

 

「何が……起こった……?ラプターの衛士は…死んだのか……」

 

辺りを見回すが、戦車らしきものも無い。戦術機の増援も見当たらない。すると、建物の上に2機、戦術機……否、モビルスーツが立っていた。それは龍臥が教えてくれた『ジェガン』というモビルスーツで、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

『全ク……何故人ハ過チヲ繰リ返ス?』

 

『……坊ヤダカラサ……』

 

「……は?」

 

ひとつはバズーカらしきものを持った白色のジェガン、もうひとつはマシンガンと斧を構えた赤いジェガンがそこに居た。なんの意図があるのか理解しがたい言葉を話す声が聞こえ、思わず声をあげてしまった。

 

間違いない……柏木を救ってくれたのはあれらだ……

龍臥の戦艦に配属されているモビルスーツ小隊…

 

ハロ小隊』だ

 

 

 

 

 

 




ハロ小隊のピークはここです。次回は月詠と冥夜の共闘です


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#21 黒鉄を斬り裂く刃

長らくお待たせしました!
コロナは陰性でした。このまま書き続けていきます。連載再開です



--撃墜の危機を救った二機のモビルスーツ、ジェガン。その機体から聞こえた会話は人間ではあるが独特な機械音らしさがあったため、これが龍臥の言っていたハロ小隊であることは瞬時に分かった。

 

『アノ『ラプター』ヲ……堕トセバイイノカ?』

 

『エゴダヨソレハ……!!』

 

(な……何を言ってるのか理解できない…)

 

正直、目の前の機体が従来の戦術機を超越しているということは先の様子で分かった。…しかしだ!このハロ達は何を言っているのか到底分からない……。

 

『え…白銀…その機体の衛士?何言ってるの?…』

 

「お…俺にも理解できない……。でも…味方だ。」

 

その時、柏木と戦闘していたラプターが後退していくのが見えた。これを逃がす訳にはいかないため、追いかけようとするが赤いジェガンがマシンガンを撃ちながら追跡する。

するとラプターは振り返り赤いジェガンを見るとダガーナイフを構え、迎撃の態勢をとる。

 

『見セテ貰オウカ!米軍ノ戦術機ノ性能トヤラヲ!』

 

何やらエリートっぽい声質が聞こえ、片手斧を振りかぶってラプターへ斬りつける。対するラプター側もダガーナイフで防御するが、赤いジェガンの攻撃はそれだけではなかった。片手斧の刃が赤く光りダガーナイフを軽々と突き抜け、そのまま肩から腰にかけて斜めに斬り裂く。その断面は斬り裂くというよりも焼き切ったのほうが適切だった。撃破を確認したジェガンは二機とも何処かへ飛んでいってしまった……。

 

それはそうと、一瞬だけ中の衛士が焼け切れた光景が見えたのは黙っておきたい。

 

(…しかしだ……。いいのか?いくら敵でも同じ人類だ……殺し合わなくてもいい筈なのに…。このジェガン達はなんでそう簡単に人を殺せるんだ…)

 

俺は迷っているのかもしれない。クーデター事件の時もそうだったが、首謀者は国を--殿下を思って行動したのであって本当の敵とは言いきれなかった。それに、人が目の前で死ぬのは見たくない。

 

『……白銀?』

 

ウィンドウに柏木が映り、黙っている俺を心配して声をかけてくれた。

……そうだ。今は撃退するだけでいい。何も殺さなくても……

 

『相手が人であれ、私達を殺す気でいたんだから…気になっちゃうのは分かる。けれど、今はこの基地を守るために戦う。だから気にする事はないよ』

 

「……ああ、ありがとな柏木。」

 

…俺は全人類のために戦うなんて…重すぎたのか……?

 

(なぁ……純夏……)

 

行こう、他の中隊の元へ。そう決心し、柏木と共に皆のマーカーが位置する場所へ向かう。

 

-------------------------やや数十秒移動した先、鋭い金属音が耳に響いてきた。音から察するに、近接武器同士の接触であろうか。

 

「(マーカーは…っと…冥夜!?それに、あの赤い武御雷…月詠中尉か!)柏木!俺は二人のカバーを、お前は他の奴らを頼む!」

 

『了解!大尉達は任せて!』

 

柏木機と分かれると、俺は突撃砲をラプターへ撃ち込む。しかしそれを軽く躱し、ラプターがこちらを一瞥した後こちらへ向かってくる。…が、二本の長刀がラプターへ叩き込まれ後ろへずり下がる。

 

『ここは…私達が!!通すと思うのかッ!!』

 

『白銀少尉…手出し無用だと思え。…冥夜様、お力添えをさせて頂きます』

 

「……はい!冥夜を頼みます!」

 

『…言われなくとも!』

 

そう言うと二つの機体は長刀を構え黒い鉄塊に立ちはだかる。冥夜と月詠中尉が二人揃って戦うのは初めて見るので多少心配ではあったが、あの二人ならばその必要はないと思える。二機の向かい側、ラプターが武装をダガーナイフ二本に持ち替え近接戦闘へ切り替える。

 

『『うおおおおぉぉぉぉぉぉッーーーーー!!』』

 

二人が叫ぶと同時に三機は急接近し互いの装甲目掛けて手に持つ武器を叩きつける。冥夜は少し攻撃を受けていたが、さすがは月詠中尉だ。相手の攻撃を器用に長刀で受け流し確実に攻撃を仕掛けていく。

 

冥夜は思った。月詠とともに何かを行うのは幼少期以来だろうか、と---。

月詠は思った。冥夜様と戦えるとは…冥夜様の成長が従者として誇らしい、と---。

 

ラプターは二人の連携に危機を感じ、すぐさま背の突撃砲へ手を伸ばす。しかし、冥夜はそれに気付きラプターの背後へ回る。

 

『(龍臥との訓練のように…ここを壊せばッ!)』

 

冥夜の吹雪が背後に回ったことに気を取られたラプターは月詠中尉からターゲットロックを冥夜へ移す。その一瞬で月詠中尉は長刀を機体の脇腹へ一太刀。

 

『冥夜様ッ今が!!』

 

『……はァアアアアアア!ここかァアアアアアッ!!』

 

冥夜はラプターのマニピュレーターを粉々に粉砕し、武装解除をさせる。もうラプターには使える武器は無い!

 

『貴様の勇姿…脳裏に焼き付けておく……!!』

 

その言葉を最後に、月詠中尉の武御雷がラプターを真っ二つに斬り裂く。敵機は爆炎をあげ散っていった…。

 

(俺がカバーするほどでもなかった…)

 

二人が揃えば長刀使いに右に出る者はいないと感じさせる一時だった。

 

---龍臥サイド---

 

『ちょっと!まだ着かないわけ!?』

 

横浜基地へ未だ到着しないことにしびれを切らした水月が半分文句気味に龍臥へ聞いてくる。

 

「そう焦るとダメですよ…これ以上速度を上げたら、戦術機の速度を超えちゃって……水月さんの身体に負担がかかるかもしれませんよ」

 

『…横浜基地が心配だからしょうがないでしょう!?』

 

みんなを思う気持ちは分かるけど、少しは落ち着いて欲しいもんだ、と思う。というよりも戦術機よりも操作が複雑なモビルスーツに乗ってここまで乗りこなせて速度も出せるこの人が異常なんだ。

それもデルタプラスっていう仮にも新型機体を。

 

「……!水月さん、今……光が!近いですよ!」

 

『見えたわ。それに、あの光り方…光学兵器よ…まさかあんたの……』

 

「おそらく、ハロ小隊かも…。勝手に動きやがって…アムロとシャア(あの人達)のデータを入れたままだったから……(今頃殺戮してなきゃいいけど)」

 

『あの人達?』

 

「さぁ!来客様にお・も・て・な・しの時間だ!」

 

『はぁ!?またそうやって質問に答えないの!?それにそのおもてなしって…言い方、その手振り何よ!?』

 

小うるさい水月を無視しスラスターを噴射し目標地点を目指す。今のことを答えたりするのは少しだけ面倒臭いので忘れよう。

それに、今はNT-D発動中だから相手にこの機体の存在を認知されてしまう。敵に情報を送信される前にテューポーンシステムで一掃すべきか。

そう思っているうちに横浜基地へと近づいてきたが、敷地内では既にラプター3機の残骸が確認できた。これで残り8機…いささか面倒ではあるがチマチマ倒すしかない。

 

『じゃ、私は大尉達の方へ行くから!後よろしく!』

 

「へ!?まあいいですけど、気を付けてください!てかいきなり分散ですか!?」

 

『大尉達大丈夫よね……』

 

「あれ!?ちょっ…無視ですか?おーい水月さ〜ん?速瀬中尉〜?」

 

『(さっきの仕返しよ!…)』

 

短く舌を出し、からかうようにほくそ笑む水月。二十歳を越えてまで年下への仕返しをするとは…それほどムキになる性格というのは、ここまで面倒なのであろうか。

今までのツケが回ってきたと確信した龍臥は、次からは質問に答えて行こうと思ったのであった…。

 

「早速お出ましか……敵は……二機!!いいもん見せてやるぜ!」

 

ラプター二機が急に現れ、流れるように攻撃を躱していくドラゴニュートはテューポーンシステムを起動。

装甲の隙間という隙間からビームが発射され、ラプターの全身を破壊していく。接近する数秒で複数の敵を排除できるのは効率がいい。これはBETAにも十分効果はありそうだ。

 

「これが本当の一生に一度の大技ってね!見た側からだけどな!」

 

などとジョークを言う龍臥の目の前に、残り6機が編隊を組んで待ち構えていた。

龍臥は一瞬、ビクッとしてしまった。しかしすかさずテューポーンシステムを……しかし機体はウンともスンとも言わない。

 

(な……何故……まさかッ!!?)

 

見ると、ビーム発射に必要なエネルギーが足りなかったのだ。

もちろんテューポーンシステムは排熱機構。溜まった熱をビームに変換しただけなので、そもそも溜まる熱を出尽くしてしまったためこのシステムは使えない。

 

(しっ……しまったぁぁぁぁ!!)

 

---???---

 

『しっ……しまったぁぁぁぁ!!』

 

「ほう……どうするのか……この少年は……お前どう思う?」

 

「しらん」

 

「しらんって……この少年飛ばしたのお前やろ……」

 

「どうせこいつなら何とかする。」

 

真っ白な空間があり、そこにはブラウン管テレビらしきモニターを見ていた二人…否、二つの影があった。その影たちは何やら話をしている。

ひとつは大きな毛むくじゃらの虎と思しき影。もうひとつは……とても小さくとても大きな、()()()()()……。

 

(お前たちなら何とかできるはずだ……()()殿()()()()殿())

 

その影たちはモニターを静かに見守っていた。

 




久しぶりの更新です。毎日投稿を頑張って続けていきたいです
それではまた次回でお会いしましょう!


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#22 殺す事、生きる事

熱下がりそう。
HGナイチンゲール欲しい……
今回は謎のミスでルビがふれていない箇所があります。解決しだい修正します。


龍臥は焦っていた。自分で設計したシステムによって重大なピンチに陥っていたためである。本来ピンチを打開するためのシステムがピンチの原因になってしまっている、この事がどれほど龍臥自身をパニックにさせているか。

目の前には6機のラプター。その戦術機は対人特化型の最新鋭機体でありながら、搭乗する衛士はおそらく凄腕パイロット。この場合、普通の人ならば後退して体勢を整えるかもしれない。

しかし龍臥は逆に!

 

「うぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁッッーーー!!!」

 

『前に突っ込んだ』ッ……!!

 

推奨Bgm:Vigilante サビ

 

ラプターに体当たり。機体がギシギシと不快な音をたてて擦れ合い、その度にラプターの装甲が剥がれ落ちる。他のラプター二機が接近してくるがアームドアーマーWBで縦半分に斬り裂き、素早く上昇しラプターの真上をとる。

 

「悪いな……」

 

ビームマグナムを撃ち込み、また一機撃破。そのままもう一機にビームマグナムを構える。

 

(この衛士達には家族はいるのだろうか?いたとして、このまま殺す事は良いとは限らない…)

などと考えていると、突撃砲の銃口がこちらへ向くことに気が付く。

 

(やはり……俺達が生きるためには……!)

 

すかさずビームマグナムを発射、耳に響く独特な発射音をたててラプターのコックピットを貫く。

 

Bgm off

--少し沈黙があった。お互い動かない時間が一瞬あった。おそらく隊長機だろうか?通信アンテナが付いており、まるでシャアザクのように謎のプレッシャーを感じた。

 

Use automatic translation (自動翻訳を有効にせよ)repeat, (繰り返す)Use automatic translation(自動翻訳を有効にせよ)

 

I want to hear your voice.(我々は貴様の声を聞きたい)

 

Oh, I understand. (了解しました。)Well, it must have been here(ええっと確かここにあった気が)

 

相手が無線を使って接触を試みてきた。龍臥もすかさず英語で対応し、自動翻訳を探す。モビルスーツにもあった気がすると思いながら探していると、モニターが食い気味に通知してくれた。

 

(この機体には人工知能でもくっついてんのか?)

 

龍臥は自身の改造した機体にもかかわらず、別の誰かが付け加えたような感じがした。

 

『……なんだ、珍しいな。英語を話す日本人がいるとは……。我々ではないが、以前アメリカの部隊がそちらに向かった際に英語で話さず何かを言われたことがあるからな。』

 

『後でデータを聞き返してみると……『英語などクソ喰らえ』だと言われたとか…』

 

「は…はぁ……」

 

そんな何気ない会話から始まったこの対話は相手の意図が掴めなかった。何か伝えることがあるのか…それともまともに敵わないため油断させる気か……。

 

『よくもこちらの部隊を壊滅させてくれたな。それも対戦術機に特化したラプターを。』

 

「そちらが攻撃を開始した事が原因ですよ。正当防衛というヤツです。」

 

相手は感情を殺し淡々と言ってくるが、その声には明らかに殺意が、恨みが、部下を撃墜されたことへの怒りが篭っていた。

 

『隊長……やはり今すぐ…コイツを撃t…『やめておけ。相手は手強い。』……ッ』

 

部下らしき声を制止し、対話を進める。

 

「……あなた達に…家族はいるんですか?」

 

『『!』』

 

「守りたいものは…あるんですか?」

 

龍臥は知りたい。相手を殺してしまっていいのか。戦わずとも、共存できると信じたい。

 

『ああ、もちろんいるさ。……娘が一人』

 

『……両親が……』

 

「…そうですか……。……って下さい」

 

龍臥の意思は決まった。

 

「帰って下さい。俺にも守りたいものがあります。…この基地のみんなや……届かなくても、想いを寄せる女性(ひと)が……。」

 

ラプターの衛士は黙っていた。龍臥の言葉が心を動かした、そういう訳ではないがただ聞いていた。

それでも龍臥は帰って欲しかった。さんざん殺しておいてなんだが、これ以上死人を出したくない。ただその一心だった。

 

『……ああ……任務失敗だ……。』

 

『なッ……そんな…』

 

隊長が諦めた様子でそう告げた時、一機のラプターが動いた。決して勝てると思った訳ではなかったがそれでも一矢報いたい--そんな感じがした。

 

『仲間を失って!任務も失敗して!!それで帰れるかッッーーーーー!!』

 

『おいフォース2!!待て!!』

 

「……これ以上俺に殺させんなよ…」

 

ドラゴニュートのテューポーンシステムを起動し、溜まった熱をビームに変換し排出する。

ラプターの頭部を残し全てを溶かしていく。

 

『隊長オオオオッ!お世話になりましたッ!!』

 

最期にそう言い残し、ラプターは消えていく--はずだった。龍臥は決して苦痛を与えず、一瞬でビームを展開した。それが龍臥に今できることであった……が、素早く展開されたビームにより機体に内蔵された動力パイプが小爆発を起こし、残ったミサイルに引火し大爆発を引き起こしたのだ。

辺り一面が山火事の後のように焼け野原となり、爆煙が広がっていく。

 

『あの戦術機は……?』

 

隊長は血眼になって探すが、モニターに反応がない。破壊したか、そう思えたが…。

白い装甲に深緑の外部ラインがついた上部装甲から煙を上げながら、V字のアンテナが付いた頭部をした機体がズシズシと歩いてくる。

 

『……ッ!』

 

隊長はその巨体に恐怖を感じた。いくら叩いても向かってくる、その巨大な金属の塊を恐れた。

少しの沈黙の後、隊長が震える声で話す。

 

『……全く…まだ仕事が残っているのに死にやがって……。……貴様のこと、国連に報告しておく。対BETAの希望となる戦術機の強奪及び第4計画打破は失敗に終わったとな。』

 

「あんたの部隊……フォースってつくんですか?」

 

『ああ、フォースレイダーだ。…部隊人数20人の大隊だったがな。私は国連軍所属大隊フォースレイダー隊長、アンバス・ストリクス少佐。貴様は……?』

 

フォースレイダー大隊の隊長が龍臥へ向けて質問してくる。これが二人の最後の会話だろう。

 

「俺は…横浜基地 第4計画直属の中隊 伊隅ヴァルキリーズ所属、刻永龍臥少尉です。…隊員コードはヴァルキリー13…a dozen devils(悪魔のダース)と報告して下さい。」

 

龍臥も自己紹介を終え、真昼の戦闘は静かに終えた。去っていくラプターを一瞥し、龍臥は思った。また一度、もし彼に会えるのならば……今度はBETAを倒す、共に仲間として戦いたい。

足元を見ると、雫が落ちていた。誰のだろう。俺のか?

龍臥は知らず知らずのうちに泣いていた。ただ悲しかった訳ではない。こんな世界で人類で足を引っ張りあっている状況に、哀しみを感じた。

 

(…帰らなきゃ……涙を拭いて明るくしなきゃ…)

 

龍臥は手で涙を拭い、ユニコーンモードへ戻ったドラゴニュートの操縦桿を握る。そしてみんなの元へ--横浜基地へ帰るのであった…。

 

--------------------

 

龍臥が基地へ着くとまだ武と冥夜は戻っていなかった。

デルタプラスやハロ小隊も戻っており、ハロ達が必死に(?)整備を行っている。

水月がこちらを見ると手を振りながら駆け寄ってくるのが見えた。

ハッチを開け、すぐにコックピットを降りる。

 

「水っ………ッ」

 

彼女の名を言い終わる前に温かい感覚に陥る。そう感じるのは当然だった。水月が両腕で龍臥を抱きしめていたからである。

 

「心配したんだからっ!あの爆発があって、もし怪我でもしたらって…。っ!怪我……してないわね!?てか、ヘルメット外しなさい!」

 

「えっあっ……はい…」

 

言われた通りにヘルメットを脱ぎ、少し恥ずかしいが水月を見つめる。

 

「水月さ…ッッ!!?」

 

そしていきなりアゴを殴られる。アメとムチが酷いのではないか、と混乱していた。

 

「…っ……心配させた分よ…。それに、いつまでもくっつくな!」

 

相変わらずキツい女性だ……。そこに惚れたのは確実なのだが。

そういうやりとりをしていると、武と冥夜も戻ってきたのが見えた。その他にも布を被され、搬入されている機体も幾つか確認できた。

 

「また馬鹿やってんの?あんたららしいわね…。」

 

「夕呼博士…」

 

夕呼が何やら書類を持って歩いてくる。その足取りは軽やかしく、実験準備が済んだのか…はたまた数式が揃ったのか…そんな感じだった。

 

「白銀に伝えて…00ユニットとの対面よ…」

 

夕呼がボソリと囁く。すこしドキッとしたがこれにはまだ慣れないものだ。それに、龍臥は知っているが00ユニットの被験者は……()()なのだから。歩いてくる武を見て、不安に思う。しかし決戦の日は近い。少し歴史が変わってしまったが、あと一週間もすればあの日になる……その日までに00ユニットを完成させなければ。

 

甲21号作戦(歴史の分岐点)』当日までに。

 

 

 




甲21号作戦が早く書きたいんです……ッ!!そうだ!!RGνガンダム作らなきゃ!HGバウンドドックも、Vダッシュも……やること満載!!

それでは次回にお会いしましょう!!


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#23 対面、想い人

最近お腹が空くようになって、49kgだった体重が増え51kgになりました。やったぜ。
話が急に変わりますが、遊戯王の大会に出ようとしたらデッキを忘れたことが何度かあります。汗
必死に作った幻影騎士団の出番があああああ!


オルタネイティヴ第3計画によって人類が得られた情報はただ一つ、『BETAは人類を生命体とはみなしていない』。それが莫大な時間や経費、犠牲を費やして得られたものであった。

その第3計画を元に計画されたものがオルタネイティヴ第4計画--その中枢となる存在こそが00ユニット、生体反応0 生物的根拠0からそう名付けられた。その能力はニュータイプである龍臥など足元にも及ばない驚異的な力を秘めている。その00ユニットの被験者は……武はその事に、既に理解も覚悟もしていた。何故なら彼の大切な人…この地獄のような世界に居なくてよかったと思っていた人--鑑 純夏、彼女こそが00ユニットなのである。

 

国連軍との戦闘が終わり、昼食を済まして00ユニットとの対面を終えた武が夕呼の部屋から出てきた。少し時間を置き、再び00ユニットに会い調律という名の調整を行うのである。

 

「武……まぁ……無理すんなよ…」

 

龍臥は00ユニットの被験者が鑑純夏だったという事実を多少かじっていたため、ショックは少なかった。しかし目の前にその現実が迫るとなると、武にかける言葉が『無理すんな』くらいしか出てこなくなるのであった。

 

「ああ…また行ってくるよ…」

 

龍臥は考えた。もしも…もしも香織や水月が、00ユニットの被験者であったなら…武と同じ立場だったならば。多分まともには精神が働かなくなるだろう。

武について行き、見守ることくらいしかできない……そう考えていたが、龍臥の頭にピンと閃く。完全に忘れていた。アレを。

 

「あっおい、ちょっっっっっと待てゐ!!武殿!」

 

少しでも明るくしようと時代劇のような口調になってしまったが、問題はそこではない。

 

「な…なんでござろうか!?」

 

武も乗ってきたことに少し困惑したが、話の本題へ入ろうと武の目を見てそれを告げる。

 

「前のバンシィあっただろ?あの騒動のせいで大分忘れていたけど、あのシステムなら!お前の負担も軽く出来るかなって……」

 

「あっそれって確か…」

 

「「『ナイトロシステム』!!」」

 

二人揃ってそのシステムの名を声に出す。

 

「そのシステムって何だっけ?」と武がもう一度説明してくれと言わんばかりに首を傾げる。

 

「ナイトロシステムってのは、簡単に言うとニュータイプじゃない人を一時的にニュータイプにするもので…そのシステムに慣れていくと、パイロットはニュータイプになれるっていうシステムだよ」

 

難しい事を言っても訳分からんだろうと、武に合わせた説明を行う龍臥。その解説に続けてさらに自身の考えを告げる。

 

「いいか?水月さんはニュータイプじゃなかった…。それでも今は、バンシィを少し扱える程のニュータイプ能力を持つようになった!つまり…」

 

その時武が閃いたように言い出す。

 

「俺もニュータイプになれる!?」

 

「言いたいのそこちゃうねん!!」

 

ドスッと手刀を武の頭部にクリーンヒットさせる。武もそこじゃないか、と苦笑する。

気を取り直し龍臥は一番重要なことを話す。

 

「一時的にお前をニュータイプにして、00ユニットの調律を手伝ってやる!」

 

一瞬の間の沈黙。武が目をパチクリさせ、「やっぱり俺もニュータイプに〜」などと言い出すから再びツッコミを入れるが、華麗に回避される。

 

「あの…龍臥?ナイトロシステムの使い方とか特性は分かった。でも…それが00ユニットの調律に何の意味が?」

 

武の質問にフンと鼻を鳴らして龍臥は答える。

 

「00ユニットがBETAに対しての負の感情しか出なかったのはわかってる。意思疎通が難しい。だから今は会話も霞ちゃんでなければ不可能に近い。」

 

武は黙って真剣な眼差しで龍臥を見つめる。

 

「だったらこっちが合わせてやりゃいい。一時的にニュータイプになって、直接思念を送って感情を甦らせる!どうだ?」

 

武がプルプルと小刻みに震える。

しまった、と龍臥は一瞬思った。いくら今は感情が甦っていないとはいえ、彼の大切な人なのだから。それを侮辱してしまったのではないか、言いすぎたのではないかと思った。

 

「わ…悪い言いすぎたか…?」

 

しかし武は怒ってなどいなかった。むしろその逆だ。目をキラキラ輝かせてこちらを見ている。

 

「龍臥…お前ってやつは…!やっぱすげぇよ!早速先生に伝えに行こう!」

 

「いや、博士はもう知っている。」

 

「あ?マジ?」と武。

その調律について知っているのは龍臥、夕呼、武のみだった。甲21号作戦までに調律を終えなければならない。すぐに脳髄が入ったシリンダーのある部屋へ、夕呼と00ユニットに会いに向かった。

 

------

 

「調律といえば、やっぱりアレ使うのね」

 

夕呼が待ちくたびれたとため息を吐く。

その傍では霞が00ユニットにあやとりを教えていた。少しずつだが反応していたため、今すぐナイトロを使っての調律は可能だと思えた。

 

「すぐにでも始めましょう、博士、武。あと一週間…時間が無いんですよね?」

 

「ええ、早速…。霞、00ユニットを連れてきてくれる?」

 

夕呼が霞に頼み、それを霞はこくりと頷き00ユニットの手を引く。

 

---横浜基地 ハンガー---

 

ハンガーにこの世界の技術を完全に超越した獣が二機配備されている。二機とも、いつでも出撃を可能にするためハロ達が整備している。損傷の修理だったり内部基盤の点検、塗装剥がれの確認など…。それぞれができることを行っていた。

ハンガーについた時、一体のハロが近づいてきた。何かあるのか、目線を合わせるため屈んだその時--

 

「マタ、壊シタナ!?壊シタナ!?」

 

ハロがその開く耳のような箇所から小型スタンガンらしきものを取り出し、龍臥の鼻に直撃。

 

お”ぅ”っ”ぁ”あ”っ”!?

 

「(情けない声ね…)」

 

「(龍臥お前…変な声…)」

 

「龍臥さん、変で情けない声です」

 

「か”す”み”ち”ゃ”ん”…………皆の声を…まとめなくて…いい……から…」

 

力尽きそうな龍臥に一撃蹴りが入る。何事かと見上げるとそこには青く綺麗な髪をいつも通りポニーテールにまとめた水月がそこにいた。腕を組んで龍臥を見下ろしている。

 

「水月さんなにやってんすかツナギ姿で…」

 

「ハロ達が手伝えってうるさいのよ…だから遥と一緒に軽い点検でもやってんの」

 

水月が見る先に、デルタプラスの手のひらに乗った遥がノートパソコン片手にこちらに手を振っている。

 

(ハロに気に入られたな…あの二人…)

 

龍臥は立ち上がり、水月にハロの言うことを聞いておかなきゃこうなると伝え、ユニコーン二機の元へ急ぐ。

 

 

 

---「…これがガンダム…ですか?」

 

霞が興味ありげにガンダムを見上げる。例え人工生命であっても、その瞳は初めて見るものに興味を抱く少女そのものであった。

 

「目が2つあって頭部にV字アンテナがついてりゃガンダムだって言う人もいたけど、ガンダムはいつの時代も人のためにあった。今も、ガンダムは人のために戦う」

 

「なんだか…このガンダムから声を感じます」

 

霞の目はガンダムをじっと見つめていた。

 

(どういう…事だ?)

 

不思議に思うが、今はそれよりも調律だ。早速準備に取り掛かる。

 

「博士、00ユニットをドラゴニュートに。武はバンシィに乗れ」

 

二人に指示を出し調律の準備を進める。上手く行けば、一日程度で調律が終了するのだ。気合いを入れていきたい。

 

「武、あとはお前次第だからな!」

 

「ああ!やってみせるさ!」

 

二機のユニコーンが起動し、NT-Dを発動。ドラゴニュートには龍臥は乗っていないが、バンシィがNT-Dを発動すればドラゴニュートの方も、それに共鳴するように強制的にデストロイモードが発動するのであって問題はない。

 

「ぐっ…ッ……なんだ……これ…!!」

 

武は今まで感じたことの無い頭痛に直面した。こんな痛みを速瀬中尉は感じていたのか、と驚愕する。

しかしこんな痛みなど、愛する彼女のためならば屁でもない。

 

「ッ…すッ……純…夏…ッ…」

 

(武…無理すんな…無理なら無理と言え…)

 

龍臥は武が心配だったが、やってくれると信頼していた。彼なら調律をやってのけると--。

 

「純夏…俺はここだ!何処にもいかない、お前の傍にいる!」

 

武が呼びかけるが、返ってきた反応は変わらず

 

『BETA…殺してやる…』

 

「BETAとは俺も一緒に戦う!だから戻ってくれ!純夏!!」

 

『BETA…殺してやる…!……うう……!BETA!!BETA!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

「純夏!それはいい!BETAは今はここにいない!俺だ!白銀武だ!思い出してくれ!純夏!!」

 

00ユニットが負の感情を剥き出しにすると同時にドラゴニュートのサイコフレームが白い発光を強めていく。

何事だとハンガー中の整備兵やハロ達が一斉にユニコーンを見ている。

 

「水月……あれって……」

「うん……サイコフレームの…。……白銀……!」

水月は誰がこの現象を起こしているのか、把握できた。ニュータイプである者の証---彼女もそうなのだから。

 

ドラゴニュートの発光に合わせてバンシィも黄金に発光し続ける。

 

「……純夏アアアァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

武は力いっぱい叫ぶ。愛する者の名を。決して失いたくない存在を---。

 

お前を……愛しているッッ!!!純夏アアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タケル…ちゃん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「純夏ッ!!」

 

それをきっかけに両機ともサイコフレームの発光が薄くなっていき、遂にはユニコーンモードへ戻ってしまった……。

失敗か、そう思われた時だった。バンシィのコックピットが開き、武が大急ぎでドラゴニュートへ駆け寄る。

 

「純夏!開けてくれ!純夏ッ!」

 

「武!ハッチは外からでも開けられる!」

 

龍臥はドラゴニュートのハッチを開けてやり、武を中に入れる。

 

「……!純夏…大丈夫か……?」

 

目を閉じシートにもたれかかっている00ユニットに優しく話しかけ、彼女の反応を伺う。

 

「タケル…ちゃん……?…あはは……タケルちゃん…だ…」

 

00ユニット--否、()()()は静かに目を開け、愛する者の名を確かめる。

 

「ああ、俺だ…武だ…」

 

とりあえず成功といったところか。武を認識できる状態にまでもっていけた事が証拠だ。

 

「博士、霞ちゃん、しばらく二人きりにさせてあげませんか?」

 

龍臥は二人に提案をし、恋人同士を優しい眼差しで見つめる。

 

「そうね…少しの間はいいでしょ。」

 

「はい…龍臥さん、二人をありがとうございます。」

 

「いいえ、どうも。さ…俺はバンシィの点検かな?」

 

バンシィに向かって歩きながら、横目に武達を見ると何やら幸せそうな表情をしている。

ひとつまた、いいことができた気がする。龍臥が殺したラプターの衛士にも、同じように愛する者がいたのかもしれない。そんな事をクヨクヨ考えていてもキリがない。

全ての人々を守る事は無理かもしれない。しかし、身近な人々は守ることができる。これからは手の届く範囲で人々の笑顔を守ろう、と心に誓った。

互いを愛する恋人は深緑の竜人の中で、ほんの一時の幸せな時間を過ごしたのだった。

 

 

 

 




書きたいから書くんです。そう、自己満足です。
また日常回をしばらく突っ込んだら…あの作戦に行きます。それでは、次回も読んでくれたら幸いです!


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#24 連携訓練

ゲッターロボアーク楽しみ


純夏との思い出話を通して、少しずつ記憶を思い出させていく武。この二人には本当の愛がある。

バンシィのメンテナンスをしながら、龍臥は二人を気にかけていた。このままいけば、甲21号作戦までには完全なコンディションで戦いに挑める。そうすればあの兵器も……。

これから起こりうることは全て龍臥が把握出来ていることであり、事前に防ぐこともできることだ。それに、こちらにはモビルスーツがあり、XM3も凄腕衛士もいる。注意すれば中隊に誰も犠牲者を出さずに終わらせることも可能なのではないか、と思いながらバンシィのモニターを操作していく。

 

(…こいつ…戦闘データが以上に取れている…!?)

 

それは当然、実戦やシミュレーションを重ねているからこそなのだが、それにしても想像以上だった。これも水月が操縦しているからこその、賜物なのであろう。

 

「終わった?刻永」

 

水月が確認しに来たのだろう、声が後ろから聞こえる。

 

「ええ、今データの確認で終わりです」

 

「じゃあさ、終わったら後で外行かない?」

 

「…?俺でよければいいですよ。もう少し待って下さい…」

 

水月の誘いとあらば断る訳にはいかない、と龍臥は内心ガッツポーズで快諾する。

 

(…でも何故わざわざ外に?)

 

---横浜市 ある丘---

 

曇った空に少し晴れ間が覗いている。季節は冬だというのに、不思議なことにゆずの木には葉がまだ付いている。もしもここで夏を過ごしたのなら、どれほど爽やかな気分になれるだろうか。そう思わせる程の風景だ。しかし、崩壊した横浜市が見えてしまうのは少し心苦しい…。

 

「…で、水月さん…どうかしたんでしょうか?」

 

「……私ね…」

 

水月がゆっくりと口を開き、呼び出した理由を告げる。

 

「昔…といっても3年くらい前なんだけど、好きな人がいたの…。刻永は知ってると思うけど…」

 

水月はかつての想い人の話をし始めた。

 

「私と遥は、その同じ人を好きになっちゃったの…それで、なんやかんやあって私達より先に正規兵になる事が決まったの。…それで、私達は正規兵になったらその人…孝之に同時に告白しようって決めてた。でも…」

 

水月の目はどこか遠くを見ていた。思い出に浸っているのか、そんな感覚だった。

 

「孝之は明星作戦で、戦死した。とても悲しかった。でも私達は立ち直って、遥とある約束をしたの」

 

「約束…ですか」

 

「そう…『BETAを一刻も早く倒して、孝之より良い男を見つけて、どっちが先に孝之を卒業できるか決着をつける』ってね…。」

 

そんなことがあったのか、と龍臥はその話に納得する。それが、彼女がバンシィに導かれた訳なのだと思う。

 

「…じゃあBETAとの戦争を…終わらせたいですね…」

 

「…うん…。それに……刻永、あんたには期待してるからね。あんたがあの機体を持ってこなかったら、対BETA戦術の幅が広がらなかった。」

 

「……期待には応えます…。それが俺の望むことでもありますから。」

 

「そう?それだけ?」

 

水月が何か知っているように、ニヤニヤしながら龍臥の目を見てくる。感性が強いニュータイプならば、彼の想いにも気が付いてしまうのかもしれない。

 

「え……」

 

「……ま、あんたには知っておいて欲しかったから、この話をしたの。…あんたの戦う理由って、何?」

 

龍臥の戦う理由について、それは共に戦う仲間ならば知りたいのは当然だと考える。

 

「『笑顔』…です。人々が笑いあっている世界を、俺は見たいんです」

 

単純。笑顔、そのひとつが理由なのだ。名声や評価などどうでもいい。香織との約束を果たすことが出来れば、後はどうなってもいい。それが一番の、目的だから。

 

「…素敵じゃない。当然その『笑顔』には、あんたもいるのよね?……そうでなきゃ…つまらないもの。」

 

水月の目がどんどん優しく、温かくなっていく。いつもは元気な上官もこんな表情もするのか、と龍臥は驚く。

 

「…俺は…皆と笑いたい。この世界を変えて……」

 

「……じゃ、お互い戦う理由が分かったって事で、午後の訓練に行きましょ。」

 

「はい!……って、え…さっきの…『つまらない』って、どういう意味ですか?」

 

「あー遅れるー。さっさと行かなきゃー」

 

棒読み感満載に水月はスルーする。

 

「……!?…まあ…いいか。」

 

気が付くと彼女は結構先に行ってしまったため、急いで追いかける。足、速い。流石先任なだけある。

 

「ほらぁ!早く!龍臥!!」

 

(……ん?龍…臥…?……ホアアアアアアアアアアアアアッ!!!!???)

 

---横浜基地 シミュレーションルーム---

 

『…ッ!!速い…何だこの機動!!』

 

「これが…ガンダムですッ!!大尉!」

 

午後の訓練として、シミュレーションでの対人訓練が行われていた。チームとしては龍臥、水月、風間少尉、宗像中尉。もう一方は伊隅大尉、武、茜、柏木。

今龍臥が操る機体はドラゴニュート。今のうちに技術力を上げておかなければ、デストロイモードに頼りきってしまうことになる。それは避けておきたい。

 

『横だ!!龍臥!』

 

伊隅の機体--不知火は、ヴァルキリーズの駆る日本製の戦術機だ。その不知火にビームトンファーを突き刺そうとした時、武のシナンジュがビル影からドラゴニュートに襲いかかる。

龍臥はターゲットをシナンジュへ切り替え、近接戦闘を繰り広げる。ビームアックスとビームトンファーがぶつかり合い、閃光と共に発生したスパークがビルを削る。

落ちる瓦礫に気を取られた風間の隙を突き、茜の機体が飛び出し彼女の機体へ突撃砲を撃ち込む。

 

『…っこんなんで…』

 

『祷子!避けなさい!』

 

さらにその中へ水月のバンシィが突撃し、茜機へ体当たりを行う。やはりモビルスーツと戦術機をつくる素材に圧倒的で根本的な差がある。

 

『速瀬中尉…!』

 

『右翼の連携がなってないわよ涼宮!』

 

おそらくそれは武の変態機動のせいでバランスが崩れたのだろう、右翼だけでなく左翼もバラバラだった。

 

(…!左側の編隊がズレた…)

 

龍臥はチーム連携を最優先事項に戦っている。連携が重要なBETA戦なら、これも必要な訓練である。

すぐさまシナンジュから距離を置き、配置に戻りながらビームマグナムを一発、二発発射。大尉の突撃砲の破壊に成功する。

 

「武!こっちだ!!」

 

『畜生…!』

 

『白銀!挑発に乗るな!まだ長刀がある、一旦退くぞ!』

 

伊隅は挑発に乗りかけた武を制止し、一時退避を促す。焦った龍臥は、逃すまいとビームマグナムを発射。ビームはシナンジュのシールドを掠めて明後日の方向へ飛んでいく。シールドがドロドロに溶けて原型を失ってしまう。

 

「武ゥ〜!それじゃあシールドの意味ないぜ〜?」

 

『刻永〜ズルいよその武器…』

 

柏木はビームマグナムの威力を見て、ビル影から不知火を覗かせ、ウィンドウで羨望の眼差しを向けていた。

 

「シミュレーションなら兵装くらい変更できますよ。博士に頼んでおきますね」

 

『同じ階級だから丁寧に話さなくていいのに〜』

 

『柏木ィ〜あんたには使いこなせるの?ソレ』

 

『速瀬にできてるんだからできそうね』

 

『ちょっとそれどういう意味!?』

 

宗像中尉の弄りが、水月のすぐムキになる性格にヒットし、彼女にからかわれている。その様子は、いつもからかわれている龍臥にとって正に『ざまあ』であった。

 

「中尉!伏せて下さい!!」

 

龍臥は前方からの突撃砲の気配を察知し皆に警戒を促す…しかし遅かった。既に宗像中尉の不知火は大破判定を受けており、行動不能であった。

 

(誰の…砲撃だ!?)

 

---横浜基地 ハンガー---

 

「では、こちらを副司令殿にお願いします」

 

そう言いながら戦術機工場の整備士がトラックに搬入され大きな布により隠されたある機体を指す。

 

「こちらが…例の…」

 

「副司令殿から聞いておりましたか、誰かの専用機体と聞いております」

 

その機体はかつて『ネオ・ジオン残党 袖付き』により運用された高機動機体の改造版。その黒く塗られた装甲に白いラインが施されており、国連軍のマークも入っていた。

龍臥が武のために開発した機体…シナンジュ=exゼロ---。




ポンポン!!(謎ω謎)


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#25 exゼロ、起動

前書きなんていらねぇ!最初から最後までクライマックスだぜ!



exゼロが搬入され、その事を夕呼が龍臥へ秘匿回線を繋ぎ伝える。すると驚く事に、シミュレーションをすぐ終わらせると言い出したので正直何を言っているのか理解できなかった。

呆れたものだ、と夕呼はため息をつく。伊隅達が相手というだけでなく、モビルスーツもいるのによくそんな事言いきれるな、と。

(なら見せて貰おうじゃない…ニュータイプってものを)

 

------

 

(―――一体何処からの砲撃だ…!?)

 

龍臥は気になっていた。先程からの異質な砲撃…否、狙撃。明らかにそれはビームではなく、実弾という事だったため、武ではない、そう考えていた。

 

『どうする…!?龍臥…』

 

「俺が突っ込みますッ!」

 

スラスターを吹かし、砲撃の射線上…その先を見る。機影がそこにあった。出てこないのなら、やるだけだ。そう考えていたが、再び砲撃してきたためシールドを構え、ビルの隙間へ逃げ込む。

 

「そういえば水月さん…。名前で呼んでくれるんですね…」

 

水月の自身に対する接し方に喜びを感じていた龍臥。

 

『どういう事ですか?中尉。まさか()()()なって……?』

 

『…!それは……〜〜〜!!……龍臥!!上!!』

 

水月が誤魔化しに何か言っていると思ったが、上からのロックに警告音が鳴る。

すぐさま促進(ブースト)し、ビルの隙間を抜け上の機体に目をやるが、龍臥は驚愕した。そこには不知火が三機、ビルの上に陣取っていたからである。

 

(まさか…!!)

 

先程の砲撃の射線上を見ると、シナンジュが突撃砲を二丁構え、こちらを狙っていた。

やられた。武は自ら陽動を買って出たのだ。しかも龍臥を騙すために武装を入れ替えてまで。

上からのビームがシールドを貫く。伊隅の不知火がビームライフルを構えこちらを狙い撃つ。その眩しい光に、一瞬目を瞑ってしまったことが失敗だった。

一瞬の隙を突き、シナンジュが突進してくる。更には突撃砲を柏木機と茜機へ投げ、ビームアックスを片手に、もう片手にビームサーベルを持ち接近戦に持ち込んでくる。

 

『刻永少尉!!』

 

「俺は大丈夫です!風間少尉は自分を守っt……」

 

その一瞬で風間機をビームが貫く。

 

『なるほど…これがビーム兵器か。突撃砲より()()()()()()、威力絶大だな。使い勝手がいい』

 

『大尉!?……くっ……龍臥!白銀を頼んだわよ!』

 

「了解しました!」

 

水月に武以外を任せ、龍臥は迫るシナンジュへ目を向ける。

NT-Dだけは使わない、とは決めているがいざとなったら使うかもしれない。

水月を信じ、ビームトンファーを起動し、シナンジュへ向かって促進していく―――。

 

『大尉、私が相手ですよ!他もかかってきなさい!』

 

『フ……いくら高性能な機体に乗っていても、一人では限界もあるぞ?速瀬。だが部下を守る姿勢は褒めてやろう』

 

水月一人では確かに限界はある。一対三、普通なら勝ち目はないはずだが…今の水月はベストコンディションであり、バンシィも水月用に調整されている。

バンシィの装甲がスライドしていく。それを確認するやビームライフルを乱射する伊隅。

しかし全弾謎の壁に弾かれ、黄金色が強くなっていき―――バンシィがデストロイモードへ移行し、NT-Dを発動する。

黄金の(たてがみ)をもつ獅子が牙を剥き、不知火へ襲いかかる。

 

 

「―――おおおおおぉぉッ!!」

 

シナンジュとドラゴニュートの戦闘はより激しさを増していく。

 

「どうした武!!お前の力はそんな程度か!?」

 

段々と押されていくシナンジュへ挑発を行う。先程は騙されたが、今度はこちらの番だ、とバルカン砲を撃ち込む。弾は外れたが、避けた拍子に機体のバランスが崩れ倒れる。

―――しかし、武は奇妙な程に、回転するように機動し体勢を立て直す。

 

(流石武、変態機動をやってのける!)

 

『(龍臥…こいつは敵に回すと厄介だな……)』

 

お互い心の奥で褒め合い、決着をつけるために距離を置く。ビームトンファーの出力を最大にし、シナンジュを見つめる。

――が、突如後方からのビームがシナンジュの脚を吹き飛ばす。何故だ、これはビームマグナムの光。今水月は戦っているはず…と後ろをチラ見する。龍臥は眼下に広がるその光景に固唾を呑んで驚愕する。

既に三機の不知火が機体の四肢を切断され、上半身と下半身にそれぞれ風穴が空いて転がっていた。

 

『(バカなっ……!大尉や涼宮…柏木は……!?)』

 

武はウィンドウを確認するが、既に撃破判定を受けており、戦闘不能に陥っていた。

黒き獅子が大地を踏みしめるように、ゆっくりと歩いてくる。

武に湧き上がってきた感覚――恐怖。いざ向き合うと、改めてバンシィの恐ろしさに気付かされる。

脚を破壊されており、動けない。ドラゴニュートとバンシィが自分を見下ろしている。こんなにも二機のガンダムが恐ろしく見える。

バンシィがビームマグナムをこちらに向け光が一瞬見えた所で、プツリとシミュレーションが終了する―――。

 

------

 

龍臥と武は、走ってハンガーへ搬入された機体を見に行く。その後を元207訓練隊メンバーが追いかける。

 

「タケル、そんなに急ぐほどの戦術機なのか?」

 

「いいから来いよ、冥夜!皆も、早く!」

 

武は子供のようにはしゃぎながら龍臥の後を追う。

 

「白銀…まるで子供ね」

 

「……榊の方が子供っぽい……」

 

武のはしゃぎ様を見て言う榊に、彩峰がボソリと呟く。

 

「何ですって彩峰!?」

 

「タケルさん……待って下さい〜!…鎧衣さん?」

 

「…なんかデジャブだね〜…」

 

美琴が何やら笑みを浮かべているのを、珠瀬が不思議に思う。

 

「いや〜…初めて戦術機に乗れるようになって、ハンガーに急いだことを思い出すなぁって…」

 

ほんの数週間前、総合演習を終えた訓練隊は衛士になるために様々なトレーニングを行っており、初めて自分達の戦術機が搬入された日のことを思い出していた。

 

「…あれから色々ありましたしね…」

 

「タマ、美琴!早く来いよ!」

 

武が自分らを急かしているように手を降っている。その姿は、笑顔でこちらを向く同期でありながら、もう何も迷いがない立派な『衛士』の顔でもあった。

 

 

 

 

「――すげえ、これが…」

 

武は若干興奮気味にその機体を見つめる。

布が外され、搬入された新型機が顕になる。

黒い装甲に白いラインがひかれ、シナンジュより重装甲なモビルスーツには、設計通りサテライトキャノンが装備されていた。

 

「あれ…誰が乗るんだ!?」

 

龍臥へ質問をする武。その質問を待っていたかのように、満を持して告げる。

 

「武、お前が乗るんだ」

 

武が目を見開いて、もう一度言ってくれ、と信じられないような顔をする。

 

「だから、博士に頼んでこのexゼロはお前用に製造してもらったって言ってんだ」

 

龍臥はスペックや装備情報が記された書類を、冥夜へ手渡す。

 

「…これを…タケルが操縦するのか…?」

 

そのデータを見て一同が驚愕する。

ユニコーン等のモビルスーツを見てその性能を知ることはできた。しかし、こうしてデータに起こすと今までの戦術機を超越した超兵器という事を改めて実感させられる。

 

「タケルさん…こんなスラスター推力の機体、扱えるんですか?」

 

珠瀬が心配そうに武を見る。しかし武は乗る気満々だったため、その思いを胸にしまう。

 

「早速だが、テスト飛行をしてもらいたいんだ。司令部の許可はとってある。」

 

武は歓喜の表情を見せ、強化装備に着替えに向かう。

 

「後は…不知火の性能強化かな…」

 

龍臥の呟きに冥夜がギョッとする。

 

「タケルといいそなたといい…一体何者なのだ?刻永…」

 

「……ま…ちょっとした事で力を得た、ただの将兵ですよ」

 

微笑んで誤魔化しながら、exゼロに向かって歩み始める。

 

―――数分後、横浜基地周辺を高速飛行した謎の戦術機の情報が世界中に広まりつつあった……。




フォオオオオオオオオオオオオ!!
RGνガンダム素組み完了!!行くぜ塗装!


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第三章 甲21号作戦篇
#26 甲21号作戦発令


Bluetoothイヤホンから音が鳴らなくて辛い今日この頃
イライラするんで捕食植物デッキ組んで友達無くしてきます。_| ̄| Σ・∴'、-・一≡三(っ'ヮ'c)
あっあかん、超融合無いやん……


武がexゼロのテスト飛行を終わらせ、横浜基地へ帰還してその日が終わった。

ベッドに寝ながら、今まで一番忙しい日であったと龍臥は一日の全てを思い出す。

ラプターとの戦闘、対人訓練、そしてexゼロ搬入。武にexゼロの駆動に違和感はなかったか、と聞いた所、『若干スラスターの噴射のタイミングが早く、いつもの機動が難しかった』とのこと。

やはりモビルスーツと戦術機では性能が段違いであり、その中でもexゼロは『ウィングガンダムゼロ』と『ガンダムDX』の装甲を利用し、更にはスラスターを改造しジェネレータ出力を最大限に引き出せるよう細工を施した。

武なら扱えると信じた甲斐があった、とまず一安心する。

今日は12月23日。甲21号作戦まであと2日。この世界について分かることは二つ。

ひとつは誰が死んでしまうか。これだけは歴史をひん曲げてでも阻止しなければらならない。

二つ目はBETAの新種について。これは絶対的な根拠が無ければ、報告しても国連が信じない。だからこの情報は最後までとっておく。

そう考えていると、段々とまぶたが重くなっていき、意識が薄れてくる。そのまま龍臥は眠りについた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ここは何処だろうか?真っ暗で何も見えない。あの時見た空間と真逆だったため心底不安になる。

――と、突然足元が明るくなる。そこにはアイツ……彼をこの世界にとばした張本人が居た。

 

「久しぶりだな、少年殿。」

 

(な……お前は……!!……!?声が…?)

 

龍臥は目の前に居る者と、声が出ないこと両方に驚愕と困惑、ふたつの思いをした。

 

「ここは夢…と言っていいのか分からんが、とにかく夢の中だ。夢を見ている間は魂が身体を離れる、と言われたことはないか?それと同じだ。だから魂だけの少年殿…おっと、今は龍臥だったか。だから龍臥殿は声が出ないのだよ。」

 

(何言ってんだこいつ…)

 

「『何言ってんだこいつ』か……」

 

龍臥は目の前のトカゲに何度驚かされたことだろう。異世界にとばすことだけでなく、心も読めるとは。こいつは一体何者なのだ。

 

(お前が俺の名前を奪ったのか…?何故この世界に香織がいたんだ…?何故モビルスーツがあって、ネェル・アーガマもあるんだ!?お前の目的はなんだ!!?)

 

「質問は一つずつにしてくれ龍臥殿…結論から言おう。()()()()()()()()()。」

 

龍臥の頭は真っ白になった。このトカゲが言っていることが理解できない。何もしていないなんて…そんな事があるはずがない。

 

「全て想定外だった。まさか君が私の分身体を庇うなんて。あの程度の機械なら、避けられたのだ。」

 

(じゃあ…俺は無駄死にだったって事かよ!?お前の言い方じゃ、正にそれだ!俺は一体なんて名前なんだ!!)

 

龍臥の声が少しずつ荒くなっていく。

香織がこの世界に霊体となって存在していたこと、まずそこが不思議なのだ。彼女が死亡したのは元の世界。普通有り得ない。

他にも、こいつが何もしていないのならば、モビルスーツがある理由は?こいつの目的が理解できない。いや、そもそも目的があるのかどうかも怪しい。

 

「まだ早い。全ては、この世界の出来事にひと段落つくまで。」

 

こいつには本当に呆れ、怒りさえも覚える。

 

「それにもうひとつ…絶対に歴史を曲げるな。例えば本来は死亡する者を生かす……とかな。もし歴史を変えれば、君は元の世界に帰ることは出来なくなる。」

 

(……無責任な事を言わせて貰うが、俺は中隊のみんなを死なせない。誰もな)

 

龍臥は心の奥からの思いをトカゲに告げる。

するとそいつは奇怪な程に眼をギョロギョロとさせ、にやりと笑ったかと思えば次の瞬間には元の表情に戻っていた。トカゲが表情とかいうのはおかしいと思うが、確かに表情と言えるものだった。

 

「……ほほう。では見せてもらう。それが『()()()()()()』ならな……。」

 

そう言いながらそいつは目の前に浮かんできたと思えば、闇の中へ消えていく。

 

(ま…待ちやがれぇッ!!!!)

 

手を伸ばすが届かない。届きはするが、透けてしまい掴むことができない。そのまま龍臥の意識も無くなっていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……!!)

 

気が付けば朝だった。時計を見ると、午前7時ちょうど。そして横には……水月が心配そうに顔を覗かせていた。

 

「大丈夫……?随分と(うな)されてたわよ…」

 

「え…何故部屋にいるんすか…?いつからいるんすか…」

 

鍵をかけていなかった事を思い出し、自分の不注意さに苛まれる。こんな小さな事であったから良かったが、これがコックピットハッチのロックならどうだ。戦車級のアゴに簡単に喰い破られたり、敵勢力の工作員に機体を奪取されてしまうだろう。

 

「来たのはさっきよ。起こそうと思ったら、魘されてたから心配で……。…もう大丈夫そうね、支度して。Pxに行くわよ」

 

水月はいつも通りの調子で告げる。

やはりこの人だけは失いたくない。片想いでもいい。とにかく守りたいものは見失わずにいたい。

ベッドから起き上がり、制服を着ようとした時。

 

「……結構、寝顔可愛かったな……」

 

部屋を出る瞬間の水月の呟きに、龍臥は”全力で回したハンドスピナー”以上の速度で、首を水月の方向へ向ける。顔は角度で見えなかったが、とても優しい声色だったのは確かだ。

これは”()()”か、と龍臥は良い方向に思い至った。否、自分は”弟キャラ”として見られていると自分の中で訂正、自己完結する。

遅れてしまうと再び水月にどつかれると思い、急いで顔を洗い国連制服に着替えPxへ向かう。

 

ーーー横浜基地 食堂ーーー

 

朝であるからか、食堂の担当者達が全員分の食事の準備のため忙しなく動いている。

今日の朝食は合成サンマ定食にしよう、と考えているととても香ばしい香りが鼻を刺激する。たとえ合成食であっても、京塚のおばちゃんによれば非常に美味なものと化す。

野菜類はネェル・アーガマの一室を利用した栽培所から持ってきており、兵士みな久しぶりの天然物を楽しみにしている。

この世界ではBETAによって動植物の激減に伴い食料不足に陥っていた。その解消のため、合成食というものを基本食として食べられている。

少なくとも、龍臥が提供した天然野菜や、兵器技術によって兵士の心身共に大分楽になっているのは確実だった。

 

「おはよう刻永!朝は合成サンマ定食?私もそれにしよっかな〜」

 

「おはようございます、茜さん。サンマは好物なので」

 

茜が朝とは思えない程元気な声で挨拶を交わす。

顔も性格もかわいいとか、全くこの世界はBETA以外は完璧だな、と思いながら席に着く。

向かい側に茜、その隣に遥が座っている。龍臥の隣には遥の向かい側となるように水月が座っており、二人は合成さば味噌定食を頼んでいた。

 

「おはようございます遥さん」

 

「おはよう。龍臥君、水月から聞いたよ。魘されてたんだって?大丈夫?」

 

「問題ないでしょ、遥。こいつは結構丈夫なんだから。それに、ただの疲れでしょ?ここ最近実戦が多かったから」

 

そんな感じに二人は会話を進める。その会話を聞きながらサンマを口に運ぶ。

やはりおばちゃんは流石だ。こんなにも合成食であるサンマが本物のように思える。

最後に食べたのはいつだったか、と考えていると頭に妙な感覚が走る。

大群のなにかが、数を増やしながら進軍している感覚――。間違いない、龍臥の予想通りニュータイプ能力によってBETAの存在を感知したのだ。

隣で水月は変わりなく笑顔で会話している。水月のニュータイプ能力は低いのだろう、と安心する。もし感性が強すぎると、あの戦場でどうなるか予測不可能である。

朝食を終えたら、対BETA戦のシミュレーション訓練が待っている。いつもより気合い入れて行こうとやる気を出すため、このサンマ定食の味をしっかりと味わう。

 

ーーー横浜基地 ブリーフィングルームーーー

 

「本日未明、国連司令部及び帝国参謀本部より『甲21号作戦』が発令された!」

 

午後5時48分、横浜基地司令がその作戦名を伝える。

遂に来た、この日が。龍臥は作戦目的も戦況がどう転ぶかも熟知しているため、有利な立ち回りが可能だろう。

 

「今回の作戦は国連と帝国の共同作戦であり、作戦目標は敵ハイヴ”甲21号目標”の奪還、敵情報の入手よ。他にも、私達A-01にはある新型兵器の護衛をやってもらうわ。」

 

夕呼がそう告げ、側近のオペレーターへ合図を送る。その新型兵器のデータが大型モニターへ転送される。

 

「護衛してもらうのはこれ…XG-70b……”凄乃皇・弐型”よ」

 

どよめきが起こり、龍臥以外の全員が驚きの表情を見せる。

戦術機らしからぬ巨体、いかにも強そうな名前と、驚くには十分な要素だった。

 

「刻永少尉には、技術者として協力してもらったから…既に存在は知っていたわ」

 

(事前に博士に『凄乃皇の存在は知っているんで』って言っておいて正解だった……)

 

さすがに一人だけ驚かないのは、不自然極まりない。

 

「これは単機で敵陣地へ赴いて、敵陣地を内部から破壊するという夢のようなオーダーを叶える兵器。動力はML型抗重力機関を使用していて、何よりも重要なものがここ」

 

夕呼はそう言って凄乃皇の胸部に近い部分をアップする。

まるでソーラ・レイのような見た目の武装であるそれは人類にとって希望となりうる存在だった。

 

「これは胸部に設置された荷電粒子砲と呼ばれるもの。これが凄乃皇一番の武装ね。他にも、動力機構から発生される”ラザフォード(フィールド)”は、BETAの光線級の攻撃を無効化することができる。こんなんでも1975年にはボツになって、もっと効率のいい兵器が開発された。それがG弾って呼ばれる爆弾ね。」

 

淡々と凄乃皇の解説を進めていく夕呼を見ながら、龍臥はこの作戦を成功させるための、”ハッピーエンド”のことを考えていた。

 

 

 

 




甲21号作戦…書きたかった……!!


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#27 それぞれの覚悟

(前書きは)ないです。


夕呼の作戦の具体的な説明には納得がいった。実際聞いていると、凄乃皇の実用試験が成功するような気がしてきた。

それでも本来の歴史では作戦は最悪な方向へ向かってしまう。それを変えることができるのは龍臥ただ一人。この事実に、不安と緊張で押し潰されてしまいそうになる。

 

「――以上が作戦の趣旨よ。このテストの結果次第では次回以降のハイヴ攻略にかかる戦力が大幅に削減できる。そうなれば初めて『人類の勝利』という言葉が具体性を得るものとなる……。オルタネイティヴ4の成否はこの作戦の結果が大きく影響するわ――頼んだわよ」

 

『人類の勝利』はかつて誰もが夢見るものだった。それは叶わないと思われていたが、今はその現実が近付きつつある。

 

「「「「「「「「「「「「「「

―――了解!!」」」」」」」」」」」」」」

 

中隊全員の表情が明るくなり、いつも以上に声に緊張と期待がこもっていた。

龍臥はどうなるか不安だった。この作戦が成功したとして、その先の未来は『誰も知らない』ものなのだから――。

しかし、どのような未来が来ようとも今の彼は乗り越える気でいる。全ては皆の『笑顔』のために―――。

 

ーーーネェル・アーガマ MSドックーーー

 

横浜基地の敷地を借り、ペガサス級戦艦ネェル・アーガマを停泊させている。

ネェル・アーガマの内部はアニメや設定とは違って、モビルスーツ製造のためのドックが存在し、ドラゴニュート自体もここで製造したのだった。

明日へ備えるため、空いている時間は全て訓練や武装点検に回していたい。

 

(ビームマグナムのみだとEパックが無くなった時不安だ。――となると実弾兵器も必須だな…フルアーマーユニコーンの武装を使用しても…いや、重量的に邪魔じゃないか…?)

 

大量のBETA相手への武装を考え、タブレット状の小型端末を操作する。便利なことに端末と連動しており、瞬時にアームが操作どおりの仕事を行ってくれる。

ハロ小隊には一時休息をとってもらい(ロボットに休息というのは適切かどうか分からないが)、甲21号作戦には同行させずにおく。もし不在中にトラブルが発生した場合のため、彼らはここに残して行く。

 

(バンシィの武装も突撃砲くらいは持ってても…。exゼロは武の変態機動があれば問題ないか。『逃げれていれば撃墜されない』ってやつだな。)

 

そう考えている間にドラゴニュートの武装変更が完了したことを知らせる通知が鳴り、カメラを利用して全体像を確認する。

基本はビームマグナムで小型種を一掃しながら、ミサイルポッドやハイパーバズーカ、突撃砲などの実弾兵器を駆使しながら戦うのがベストだと信じる。

特に期待しているのはシールドファンネルと呼ばれる、サイコフレームの力によって促進剤無しでオールレンジ攻撃が可能となる武装。取り付けられたビームガトリングによる攻撃ならば、全方向からのBETAに対応できる。当然ながらシールドとしても使用できる点でも十分な価値はある。

光線級のレーザーをIフィールドが無効化してくれるのかは不明だが、かつてコロニーレーザーのレーザーを防御したサイコフィールドならば可能かもしれない、と考える。

シールドファンネルは三基、無駄なく有効に使っていきたい。

 

(…そろそろBETA戦のシミュレーション訓練の時間か……。)

 

気が付けばもうそんな時間か、と時の経過に驚く。

シミュレーション訓練をしっかりと積み、実戦へ備える。何事も練習が重要だと改めて実感させられる。

 

ーーーシミュレーションルームーーー

 

『――ヴァルキリーマムより、ヴァルキリーズに継ぐ。全機態勢維持のまま散開、左右の小型種を殲滅されたし』

 

『聞いたな!全機散開開始!』

 

了解、と応答し左右に赤い絨毯のように広がる戦車級の群れに突っ込んでいく。

水月と伊隅の提案でB小隊 突撃前衛に抜擢された龍臥は、BETAの大半を120mmマシンガン一丁で殲滅し、自分の仕事をこなしていく。

 

ヴァルキリー13(龍臥)!いつもと動きが違うじゃない?』

 

水月が龍臥の駆動にいつもと違う感覚を感じ、回線を繋げる。

 

「ドラゴニュートをフル装備にする予定なので、いつも以上に大きく動かないといけないんですよ。それに相手は決まった動きをしてくれないので…」

 

『…よく考えるわねあんた……』

 

若干呆れが混じった声を出す。

その横では武が駆るexゼロが奇妙な機動を行っていた。バーニアを吹かしては回転、吹かしては回転を繰り返している。

 

『龍臥…この機体、不知火より重いから勝手が違うぜ…』

 

「慣れろ、お前の機動を見込んで専用に造ったんだからな。それに、そいつは高機動・高火力のモビルスーツでありながらハイヴ単機攻略をコンセプトにしているから流石に不知火より操縦は難しいさ」

 

『…そんなもんかな?』

 

「というか、それでもお前がおかしいんだ。()()()()()()()()()exゼロをそこまで操れるんだ?」

 

普通、exゼロはシナンジュをベースにしていることからシナンジュと同等と思われてもおかしくない。

しかしexゼロは全く違うモビルスーツと言ってもいい程、機動のタイミングが早い。それを短時間で操縦できる武はやはりおかしい。

 

『…バルジャーノンのお陰かな…?なんかゲームと似ていた動きの機体だから、頑張ればあと数時間で慣れるかも』

 

バルジャーノン――武の元いた世界のゲームであり、戦術機に搭載された新OSの基盤となった存在。

流石衛士なだけあるがそれでも異常だ、そう思っていると要撃級が接近してくることを知らせる警告音が鳴り響く。

 

(…警告音、少し音量下げよう。耳に響く……)

 

耳障りな警告音を消し、ドラゴニュートをデストロイモードに移行させ、迫る敵に目掛けビームマグナムを構える―――。

 

 

 

ーーー横浜基地 ハンガーーーー

 

 

「いよいよ明日『甲21号作戦』が決行される。我々A-01は明朝4時00分に出撃、陸路にて帝国軍高田基地まで前身し全機起動。帝国海軍戦術機母艦『大隅』に乗って海路にて佐渡島を目指す」

 

伊隅が部隊の大まかな行動を伝える。

その説明を聞きながら龍臥はドラゴニュートやバンシィを見た他部隊の反応を想像するが、面倒な事は起こらないだろうと信じる。

 

「夕食後は身辺整理を済ませてさっさと寝るんだ、いいな!――以上、解散!」

 

解散の号令がかかり、更衣室へ向かおうとしていた時、武が伊隅へ確認するように質問する。

 

「身辺整理…ですか」

 

「そうだ、遺品を受け取った者が悲しむようなものは廃棄するか分けておけ」

 

「悲しむようなもの…?」

 

「例えば…だ。白銀少尉が速瀬中尉のシャワー室を隠し撮りしているとする」

 

武のその言葉に宗像が『小学生に算数を分かりやすく説明する』ように話す。

 

「はぁ!?」

 

「武、まさかそんな事しねぇよな!?」

 

武は思わず驚いて声をあげてしまう。

龍臥は冗談だと分かっていても、真っ先に反応してしまう。

 

「しねぇよ!絶対な!本当にな!!」

 

「なら良し!!」

 

「なんか…そう言われるとなんだか苛つくのはなぜかしら」

 

当の本人、水月は何故か不満そうであった。

 

「…要するに、いかがわしいピンナップとか写真なんかは分けておきなさいってことよ」

 

水月が要約してくれていると、宗像が武から龍臥へターゲットを変更したのか急にこちらを向く。

 

「そうかそうか…速瀬中尉を隠し撮るのは刻永少尉だったか。」

 

「へぇっ!?俺もしませんよ!?違いますからね!!?」

 

「処分するのが多いのか?それともお前は()()()か?この時期トラブルは程々に――」

 

「だから俺は違いますって!」

 

(何で俺がターゲットに…本来は武のイベントだろ!)

 

心の中で文句を言いながら、宗像のからかいを回避(できていないが)していく。

 

「――ったく…あの人たちにはかなわないぜ…」

 

「ふふ、これも出撃前の緊張を解す知恵だろう」

 

「御剣さん…そんなもんですかね……」

 

冥夜が微笑みながら龍臥へ話しかける。

 

「…だろうな、これが実質的俺らの初陣だからな」

 

武達はBETAとの戦闘は初めてではない。しかしそれはトライアル中の事件であったため、実戦ではなかった。

 

「そういえば――刻永は初ではないのだろう?副司令からは聞いているが、何処か国外で徴兵経験があるとか…」

 

夕呼には『海外の部隊出身ってことにしておくわね』と気を利かせて仮の身分証も発行してくれた。

全くあの人には頭が上がらない。

 

「…まあ、俺はBETAとの戦闘経験が幾つかあります。中尉達ほどではないですが…」

 

「そうか…では安心だな。同期に経験者がいて」

 

「……御剣さんは…」

 

「ん?」

 

「御剣さんは何のために戦っているんですか?」

 

冥夜がふむ、と顎を押さえて考えるような仕草をとる。

 

「あ、いえ…無理に言わなくても…」

 

「私はだな……」

 

冥夜の瞳が真っ直ぐこちらを向く。決意の目だ。

 

この星とこの国の民……日本そのものだ。この世に人のいない国などないのだから……

 

 

 

 

 

ーーー12月25日 甲21号作戦当日ーーー

 

 

朝4時ちょうどに横浜基地を出発したA-01部隊は移動用車に乗車、高田基地へ到着。

そこで戦術機の点検を再度行い、万全なものとする。

 

(「――じゃあ凄乃皇の護衛する時の注意点を伝えておくわ。まず第一に『凄乃皇・弐型』の機体装甲面から10m以上の距離を維持すること」)

 

艇へ乗り込み、佐渡島へ向かう中で夕呼の説明を思い出し、海を眺めながら作戦の成功を祈る。

 

(「『凄乃皇・弐型』の姿勢維持と機動は『ラザフォード場』と呼ばれる重力場によって制御されている。これに干渉すると急激な重力偏差に巻き込まれるわよ。コックピットでミンチになりたくなかったら距離には注意して」)

 

ミンチ…それだけはなりたくない。

 

(「じゃあ次――荷電粒子砲が発射態勢に入ったら機体より後方へ退避しなさい。発射時の射線周囲には強力な電磁場が形成されるから、それに巻き込まれれば戦術機も人間も即アウト。それに、真後ろは駄目ね。荷電粒子砲はビームなどの光学兵器じゃないから発射時に強大な反動が発生する。それを打ち消すのにかなり大きいラザフォード場が機体の真後ろに発生するからね。あと、機体に直接BETAが取り付くと致命的。近接装備は一切ないからね――あたしは帝国海軍の作戦旗艦『最上』から指揮をとるから――じゃあ佐渡島で会いましょう」)

 

今思い出すだけでもぶるっとしてしまう。凄乃皇…なんて凄い機体だ。ラザフォード場なんてものを開発してしまうこの世界の科学力は伊達じゃないな。

船内では武達元訓練生が集って結束している。

 

横を見ると、柏木晴子少尉――彼女が何やら考え事をしているのか、水平線の彼方を見つめていた。

その顔は、家族を想う人が見せるであろう表情をしていた―――。

 

 




晴子ちゃんンンン〜〜〜!!!


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#28 甲21号作戦決行

ドキドキプリキュアを三連休で一気見しましたが、まこぴー6話近くまでツンツンし過ぎやろ…


佐渡島へ向かう艇の甲板、柏木晴子少尉は水平線の彼方を見つめていた。龍臥は今のうちに仲良くしておこうと決意し、彼女の隣へ歩み寄る。

しばらく二人は海を眺めていたが、先に口を開いたのは、龍臥だった。

 

「……柏木少尉…どうかしましたか…?」

 

「………ああ…刻永か…。別にタメ口でいいよ。」

 

「あ、じゃあ……。――…柏木…家族が心配か?」

 

龍臥は彼女が今想っている存在について訊ねる。

 

「…よく分かったね…まぁ、その通りだよ」

 

数秒間、沈黙する。

 

「”凄乃皇”って言ったっけ…強そうな新兵器の名前」

 

(やっぱりこれも武のイベントなんだけどなぁ…)

 

「テスト…上手くいって欲しいよね」

 

「いかなきゃ困るよ…あれに人類の希望がかかってんだから」

 

龍臥は表情を柔らかくし、凄乃皇への期待を示す。

実際、あの新兵器には期待していた。あれ一つでこれからのハイヴ攻略での戦況が激変するほど、画期的なものなのだから。

 

「…もし凄乃皇が通常兵器として運用されたら…弟達は戦わなくてすむかな…?……私って…ワガママだね……」

 

「…そんな事ないさ、誰だって家族には戦ってほしくない。……柏木は…戦う理由は『家族のため』なのか?」

 

「うーん…。そう言われるとそうなのかな?そこが曖昧なんだけどね」

 

眉を八の字にし、考えるように上を向く。

しばらく待って、答えが出なかったことを見兼ねたのか龍臥が口を開く。

 

「柏木…ひとつだけ言わせてもらうが、”戦う理由”が必ずしもある訳じゃない。それでも、何か理由が無ければ戦うこと自体に疑問を持ってしまう……。」

 

柏木が龍臥の方を向き、話を真剣に聞いている。

これはアドバイスではなく、自論なのかもしれない。龍臥はそれでも、言いたかった。”誰でも持てる戦う理由”を――。

 

「だから柏木…”生き残るため”に戦え。それを、今の戦う理由にしよう。」

 

ふと、柏木の表情が明るくなったかと思えば、クスクス笑い始めてしまった。

 

「……??」

 

「ふふふっ…刻永、面白いこと言うね。じゃあ、そうしようかな。だったら刻永も、必ず生き残ってね。同期として、約束。」

 

「ああ。必ず守るさ…」

 

二人は拳を合わせる。武たち元訓練隊もその頃、生き残ることを約束していた。

それぞれの覚悟が決まる中、艇は佐渡島へと近付いていくのだった――。

 

 

ーーー 12月25日 佐渡島 ーーー

 

 

本来この日は、クリスマス。世界中の子供たちにとっては夢のようなイベントであった。しかし、この世界ではそんなものは無い。あるのは…BETAとの戦争だけだった――。

佐渡島の陸から少し離れた沖では、国連軍の戦艦や帝国海軍の戦艦、更には海底からの攻撃隊が作戦決行までの時間の準備を進めていた。

また、指揮官などの官僚が乗船している指令船が数隻、それぞれ戦術機母艦でも先行部隊が戦術機を起動し、準備は万全を期している。

 

「アンバス・ストリクス少佐!機体点検、完了しました!いつでも出撃可能です!」

 

「ああ、感謝する。」

 

ある戦術機母艦の整備士が、彼の新機体”ラプター:Break”の点検を終えたことを知らせる。

ラプター:Break――通称ラプターBは、龍臥のドラゴニュートとの戦闘後急ピッチで製造された彼専用機である。

ドラゴニュートの映像を解析した米軍が、機動力だけでも追いつかせようとスラスターを増設し、促進剤も通常のラプターの2.4倍の量を装備。

BETAへの陽動にも使用でき、その圧倒的な機動力は大型種の攻撃をも受け付けない。

そんな機体のコックピットに乗り込みながら、彼はあの戦術機と、”悪魔のダース”と名乗る衛士について考えていた。

”悪魔のダース”――国連や米軍はBETAよりも、その話題に持ちきりだった。何処にも所属していなかったその機体は、急に第4計画直属の部隊へ編入され、未知の科学力をも所持している。その話題に夢中にならない科学者や司令部がいないはずなどない。

国連は本作戦に、その戦術機が現れることを心待ちにしていた。

 

(あの坊主も…いるのか…?この島に。――……復讐などは考えていない…ただ、今度は”仲間”として共に戦いたい。……それが、失った部下への手向けだからだ…)

 

そう思いを巡らせていると、強化装備の無線へ現状報告としてオペレーターの音声が流れる。

 

『海底攻撃部隊、攻撃を開始!A-6(イントルーダー) 8機、上陸可能な地点を確保!!――繰り返す、海底攻撃部隊が上陸開始!!戦術機部隊は直ちに出撃せよ!』

 

『重金属雲濃度良好!面制圧開始まで30秒!』

 

アンバスは操縦桿に力を込め、深く息を吸い込み緊張を解す。BETAとの戦場ではない所で散っていった仲間を思い出す。

 

「――…聞いたな!フォースレイダー大隊……全機、出撃ィッッ!!!」

 

 

 

 

 

ーーー 戦術機母艦 大隅 格納コンテナ ーーー

 

 

 

 

(――遂に始まった!!)

 

武は緊張していた。額から汗が流れ、目に入りそうになりながらも、戦況ウィンドウから目を離さなかった。

それに、今日彼は普段搭乗している不知火ではなくシナンジュexゼロを操縦する。慣れない機体ではあるが、凄乃皇の護衛のみであるならば問題ない、と思っている。

 

(あの新兵器に…純夏が乗るのか……。リーディングするためにハイヴへ近付かなきゃいけないのは仕方ないが…俺たちでサポートしなきゃな…)

 

愛する者へ心配をする。彼の元いた世界では、彼が因果導体であるが故に体育の授業中に落下したバスケットゴールの下敷きになってしまった。

この世界の彼女に何があったのか、それを一番知りたい。

 

『武、緊張してんのか?それとももうチビっちまったか?』

 

龍臥がいつも通りの軽い調子で秘匿回線を繋げてきた。

 

「……大丈夫だ。ただ…凄乃皇のことでな…」

 

『ほーう……。…鑑さんのことか?』

 

「……心配だ」

 

『だからこそ俺たちが護衛のためにいるんだろ!お前が一番近い存在なんだから、サポートしっかりやろうぜ』

 

龍臥の明るい言葉に、思わず笑ってしまう。彼の話を聞いていると自然に心配事や不安が吹き飛ぶ。

 

「…ああ、そうだな!」

 

『――帝国連合艦隊第2戦隊は依然健在 現在砲撃を継続中!』

 

『轟沈81 うち戦術機母艦49 大破52……』

 

(くっ……やっぱり作戦開始から被害がとんでもない事になってる……)

 

龍臥と会話していると、現状報告の無線が鳴る。

作戦とはいえ、味方が撃破されているのを黙って見ているのは心苦しい。

 

『ウィスキー部隊 旧八幡新町及び旧河原田本町を確保!部隊損耗7パーセント!』

 

『ヴァルキリーマムより各機――― エコー揚陸艦隊は現在両津港跡へ向け南下中』

 

(ウィスキー部隊…大尉から聞いたが確か、一番下の妹がいるんだっけ……)

 

武は私情を押し殺し、作戦を成功させることを一番に考える。

 

『―――ヴァルキリー1より中隊各機 ウィスキー部隊母艦は沿岸部からのレーザー照射でかなり沈められている。いつでも発進できるようしておけ!』

 

伊隅からの無線に中隊は応答し、いずれ発信されるであろう出撃命令を待機していた。

 

『HQよりエコー揚陸艦隊 全艦隊連載機発進準備!繰り返す、全艦隊連載機発進準備!』

 

『エコーアルファ1よりHQ、全艦艦載機発進準備よし!』

 

遂に出た出撃命令―――全艦隊から大量の戦術機が出撃していく。

ヴァルキリーズの機体もコンテナから甲板へ移送され、出撃体勢をとる――。

 

――行くぞヴァルキリーズ!!全機、続けぇッ!!

 

『『『『『『『『『『『「

了解ッ!!

」』』』』』』』』』』』

 

戦術機母艦 大隅からスラスターの炎を青白く燃やし勢いよく出撃した機体は、かつては青く美しいはずだった海上を滑るように促進していく―――。

 

 

 

 

 




武ちゃん無双を早く書きたい……


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#29 神速、黒い新型

今まで組んだデッキを1650円のファーニマルデッキにワンキルされました。10回攻撃のシザーウルフ許さん!
明日は君望やりながらエーリアンデッキを作るで!


『――ヴァルキリー13!前出過ぎ!』

 

「――!了解です!」

 

突撃前衛(ストームバンガード)1、水月の注意に応答し、陸地を目指し促進(ブースト)していく。

佐渡島ハイヴの攻略には、国連が主体となって行う。そのことから察するに、このドラゴニュートや、武のexゼロをハイヴ坑内へ進軍することはないだろう。

 

『――ヴァルキリー1より、全機戦闘態勢!これより佐渡島への上陸を行う!』

 

中隊それぞれの機体が兵装を準備し、いざ島へ上陸―――陸地へ脚部が接触した途端に、モニターを通して眼下に広がるBETA達が一斉にこちらを向く。

こちら人類側のような編隊など組まず、ただ殺戮するように戦う。それが自分達の敵。

龍臥は操縦桿を握りしめ、トリガーを指で押える。

 

『――ヴァルキリーズ全機…攻撃開始ィッ!!』

 

『『『『『『『『『『『「

了解ッ!!

」』』』』』』』』』』』

 

号令と同時に、耳をつんざく程の銃声が鳴り響く。十数機の機体が所持している突撃砲から発射された銃弾が、要撃級や戦車級の肉を削ぎ落としていく。

その大量の実弾に混じって、ビームマグナムから放たれた光が直線上に連なるBETAを溶かし、殲滅する。

 

『――はあぁぁぁぁぁッ!!』

 

『――うおぉぉぉぁぁぁぁ!!』

 

冥夜と武の雄叫びが聞こえ、共に戦っていることを実感し、不思議な安心感を覚える。

 

『龍臥!前方11時の方角、突撃級梯団狙える!?』

 

「…やってみます!」

 

地球が揺れるような――とは少しオーバーな表現だが、そのように感じさせる地響きを起こしながらこちらへ向かって進軍してくる突撃級。

その方向へビームマグナムを構え、それらを狙う。

 

「全機体はドラゴニュートの射線上に立たないで下さい!…撃ちます!!」

 

注意を促しながら、標的が射程距離に入ると瞬時に操縦桿のトリガーを押す。

飛んでいく光は突撃級の硬質な外殻でさえも貫通し、近くにいただけの突撃級をも溶かしていく。

 

『――これが…この一発で…!?』

 

次々に仲間達の驚きの声があがる。

 

『――ヴァルキリーズ、今の攻撃で敵軍の体勢に穴が空いた!速瀬、先を任せる!』

 

『――了解!…B小隊、私へ続けぇッ!!』

 

伊隅の号令で水月を小隊長としたB小隊が進軍を開始、龍臥もそれに従い彼女を追いかける。

 

『龍臥、途中でバテたら置いていくから!』

 

「了解です…。………!!」

 

止まらない敵の行進。要撃級がその巨腕を振り上げるが、ビームトンファーを駆使し切り落としていく。戦車級にはバルカン砲を撃ち、できる限り最小限の弾薬を使用する。

 

「――俺に近寄んじゃあねぇ!!!気持ち悪い見た目しやがってェ!!」

 

目の前の醜い生命体に、ビームマグナムを構えトリガーを引く――。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

――しばらく戦闘が続き、交代制で補給を行うヴァルキリーズ。

設置されたコンテナから弾薬や、予備の長刀を調達する。

 

『――ヴァルキリー1より 各機、A-02は予定通り進行中だ。進行ラインにはBETAを1匹も近付けさせるな。特にプランBの攻撃開始地点には絶対だ。』

 

(今は新潟を進んでいる…――凄乃皇を守りきれば…この歴史を変える事ができる……)

 

龍臥としては、歴史を変えたことによって、元の世界へ帰ることが出来なくてもそれでいいと思っている。この世界で戦い続ける人を置いて自分は去るなんて以ての外だった。

 

『――龍臥、次の補給あんたの番よ』

 

物事を深く考えすぎだったと、はっと我に返る。

 

「……了解です。」

 

『――元気ないわね。久しぶりの戦場で疲れたの?』

 

「……ええ、まぁ…そんな感じです……」

 

(やっぱり…戦場は怖い。でも、皆同じなんだ。水月さんだって…軽口を言っているが本当は怖いんだ…)

 

深呼吸し心を落ち着かせる。目を閉じ、香織との約束を思い出しながら考える。守りたいものを全て守る、それが自分の望みなのだ。

通信に多少のノイズがかかる。おそらく、これから全部隊への無線の前触れだろう。

補給―といっても、武装がそもそも違うので機体のエネルギーチェックなどしかできない。モニターに指を伸ばした瞬間、突如通信が入る。

 

『――作戦執行中の全部隊へ告ぐ!これより甲21号目標への上空からの侵入を行う!繰り返す、上空からの攻撃を開始する!』

 

と、司令部からの通信が終わると同時、何の音だか…空から何かが落ちてくる感覚。

 

(来た―――!!)

 

――そう思う間もなく、強烈な耳鳴り。爆音によってそうなったのは確実である。今までにない経験で、心の底からドキドキしてしまう。

 

(――これがっ…本物の戦場…!!)

 

舞い散る土埃に紛れ、BETAの体液や肉塊が飛び散っていく。

上を見ると、戦術機が何機も降下していく。

 

「…アメリカの……戦術機……!!」

 

空から落下してきたその機体は、F-15 ストライク・イーグル。

第6降下部隊の攻撃により、ハイヴに侵入したのち占領を行う手筈だ。

 

(ただ…確かこの後…失敗してプランBにいくんだっけか?)

 

多少所ではなく、物凄く心配だ。もしヴァルキリーズに入っていなければ、このままハイヴへ行きビームマグナムをぶちかましていた頃だった。

が、今は自分の役割を果たす事が使命なのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

『――ヴァルキリーマムより各機、ハイヴ坑内へ進入した部隊との交信途絶――プランBに移行し、A02での攻撃によってハイヴの無力化を行う。』

 

(……なッ…やっぱり歴史は……!!)

 

予想よりも早い展開に驚愕する。より一層、心臓がバクバクと動き始めた。

 

『――ヴァルキリー11、12!周囲の小型種に攻撃を続けろ!!』

 

『『了解!』』

 

『――ヴァルキリー10、13!付近の大型種に警戒!!』

 

「大型種…!!?」

 

周りの様子をレーダーを使って確認する――そこには、巨大な影がいくつも並んでいた。その数およそ72――。

白っぽい肉体に、昆虫のような胴体を持ち巨大な柱のような10本の脚でその巨体を支えている――要塞(フォート)級。

 

(き…気持ち悪ィ……!!)

 

率直な感想であった。おそらく、誰であろうとそう思うであろう。

 

(しかもデカすぎだよ…こんなんが72体って……)

 

次々とこちらへ向かってその脚で歩んで来ている。

奴らは高度なコンピュータを優先的に攻撃を仕掛ける習性がある。そのためか、モビルスーツを狙うのは想定済みだったが、いざこの場に立つとその自信も崩れそうになる。

 

「…!!来るかッ!!?」

 

ミサイルポッドの状態を発射可能にし、武装をハイパーバズーカへ持ち替える。

ミサイルを右側のストック分撃ち尽くし、要塞級へバズーカを撃ち込む。

爆発したミサイルは一体の要塞級の脚を吹き飛ばし、バズーカで頭部を破壊する。

これだけの実弾兵器を使用しても一体しか撃破出来ないことへの不満を思う。要塞級は異常に硬い外皮を持ち、手練た長刀使いでも通りが悪ければ、一刀両断も難しい。

 

『――龍臥、無駄弾は極力避けろ!可能であれば近接武器を使え!』

 

「…ああ、わかった武!……」

 

(ビームマグナムの予備弾―Eパックは残り11。ビームガトリングを使わなければ…)

 

そう考えていると、要塞級の尾がブルブルと動き始めていることに気が付く。

突然、尾から鞭のようなものが発射され、地面に突き刺さったかと思えば、周りが溶けてしまっている。

龍臥は驚愕した。その攻撃にだけではなく、強酸性溶解液というものに対しても。

あれを喰らえば、モビルスーツであっても無傷では済まない。

 

「……数が多すぎる!!デストロイモードを……」

 

要塞級の猛攻をギリギリで避けながら、NT-Dを発動させようか迷っていると、ひとつの黒い機体が高速で接近してくるのをモニターが発見。その背後からは何機もストライク・イーグルがついて飛行している。

 

(レーダーにも反応がない…!?――まさか、ラプターかッ!!?)

 

モニターの映像をアップしていくと、従来のラプターよりも刺々しい見た目の機体がそこに居た。

要塞級はそのラプターらしき機体に気付くと、脚を振り上げて突き刺すような動作に入る――しかし、一瞬でその脚が切断される。

目にも止まらぬ速さで機動し、大型種でさえも容易く撃破してしまう機体――。

”神速”、そう形容してしまう程の速度。その速度はドラゴニュートに近いと言ってもよかった。

 

『――久しぶりだな…”ヴァルキリー13(悪魔のダース)”の坊主!!』

 

「ぁあっ!!?」

 

機体の複眼を赤く光らせ、ダガーナイフと突撃砲を構えた機体がこちらを一瞥する。

見たことも、記憶にもないラプターから聞こえたその声は、龍臥の記憶にも新しかったものであった―――。

 

 




次回が武ちゃん無双です。テスト期間なので更新が遅くなりました。これからそうなるかもしれません…ですが、更新はしていくのでよろしくお願いします!


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#30 敵味方を越えて――

武ちゃん無双、始まるよッ!!!
俺は待てない…!!!

何やかんやあって第30話、どうぞ。


「…フォース・レイダー……大隊……!」

 

目の前の機体、ラプターBからの無線から聞こえたその声は、かつて戦った事のある者だった。

 

『――…相変わらずその得体の知れない機体に乗ってんのか…』

 

アンバス少佐が感情を押し殺すような声色で話す。

 

「これが俺の愛機なんでそうそう乗り換えませんよ……ッ!!」

 

応答している間に、要塞級が尾からなる鞭を発射する。しかし2機の歩行兵器はそれを難無く躱し、ドラゴニュートは頭部の辺りまで上昇。それに気を取られた要塞級が標的を彼に変え、その時を待っていたかのようにラプターBは短刀を尾に突き立てる。

その痛みに悶えるかのように怯んだ瞬間、ドラゴニュートがビームトンファーでその頭部を一刀両断する。

 

『――なんて息の合ったコンビネーションなんだ…!?』

『―――嘘でしょ…互いに合図もしていないのに…』

『―さすが…』

 

ふたりは互いに殺し合いをして1週間しか経っていなかった。それなのに、まるで長年共にいた戦友のごとく戦っている。

その事実に武、茜、彩峰の3人は驚愕し声をあげる。

 

『――なかなかやるな…坊主!』

「…少佐も…やっぱりその階級は伊達ではありませんね…!!」

 

互いに褒め合うふたり。その後ろでは彼の部隊が小型種を相手に奮戦していた。

 

『――ヴァルキリーズ、新任少尉に負けず我々も行くぞッ!正面の小型種17体はA小隊が頂く!!』

『―では支援を我々C小隊が』

『――なるほどね…よし、側面の要塞級はB小隊が相手をするッ!突撃前衛(ストームバンガード)の証を見せつけてやれッ!!』

 

”了解”の応答が鳴ると同時に、推進し始めるヴァルキリーズ。

C小隊長 宗像美冴の指揮の元、A、B小隊の支援を行う彼女の小隊。

突撃砲からの36mm弾が雨のように、BETAの肉体を吹き飛ばす。体液が飛び散り大地の土が赤黒く染まっていく。

戦車級の血肉が硫黄のような匂いを放ち、機体の換気システムを通してその匂いが多少入ってくる。

 

『龍臥どいて!…喰らいなさいッ!』

「――水月中尉!!その位置でリボルビングランチャーは…!?」

 

バンシィの武装から発射された徹甲弾がドラゴニュートをギリギリ掠めて要塞級の多脚に着弾、炸裂し右脚を粉砕。

要塞級の体が倒れ、そこを武のexゼロが長刀で頭部を切り落とす。

 

「――あぶねぇ!!……ちょっと水月さん!危ないじゃないっすか!」

『どいてって言ったでしょ!?それに、陣形を崩さないで!』

「……なんかすみません…」

(…何故俺が謝ってんだよ……いや、まあしょうがねぇな…)

 

正直不満ではあるが、指示通り元の陣形に戻り戦闘を再開する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…こんなもんかな……。ふぅ……疲れる…」

『――しかし、速瀬の小隊には度肝を抜かれたな。4体も持っていかれた。』

『――いや〜かわいい部下達がやってくれましたから〜。ね、龍臥?』

「…え?ああ、そう…なんですね…」

『――だそうだ、刻永少尉、白銀少尉。速瀬のお墨付きだな』

『――あ、ありがとうございます』

 

そんなふたりの軽口を聞き流し、龍臥は次の行動を考えていた。

さっきまで小型種だったモノの残骸が周りに広がる。

ふと空を見ると、面制圧第2波の誘導弾が飛んで行くのが見えた。

 

(…高いなぁ…花火見てぇだ……。…そういえば……香織と花火見たの…最後、いつだったっけ?)

 

今は戦場の事で頭がいっぱいになっているせいで、思い出せない。次の瞬間、そんな呑気な考えも吹き飛んでしまった。

―――誘導弾が次々に下からの攻撃で空中で爆発してしまう。その攻撃は光線、間違いない。()()だ。

――とその時、フォース・レイダー大隊のイーグルが爆発し炎上する。

1機、また1機と、計3機が戦闘不能にされ――撃破されてしまった。

 

『――ヴァルキリーズ全機、安全圏まで後退!光線級だッ!!』

『――フォース・レイダー、自動回避(オート)をそのままにして退避、岩盤を探し盾にしろッ!!』

 

ふたりの隊長がそれぞれ指揮を執る。

2つの隊が安全圏にある巨大な岩盤を盾に、待機を行っている。今にも崩れそうな横浜市のビル街とは違い、自然なものなだけあって頑丈そうな岩盤であった。

 

「畜生どうすれば……」

『このままじゃA-02の進行ルートにBETAが…』

『――今出たら光線級の標的になる!』

 

榊の作戦行動への心配に、武が当然の反応をする。

 

「――だからってこのままじゃどうしようも…」

『あぁっ!!もうっ!』

『「!?」』

 

水月の大声で皆が沈黙する。

 

『――認めてやったらピーチクパーチクうるさいことだわ!!

「…み…水月さん……な……なんかごめんなさい…」

『――なんで謝んの!?』

『「えぇ……(困惑)」』

 

思わず龍臥と武は困惑してしまった。

 

『――フフ…坊主の部隊は賑やかだな……』

『―― と、ところでアンバス少佐、そちらはどのようにこの場を切り抜けるおつもりで…?』

 

気を取り直そうと、伊隅が現状を打破するために、少佐へ質問を投げかける。

するとアンバスは鼻で笑い始めてしまったと思えば、口を開け大笑いしてしまった。その状況に中隊の皆が困惑してしまう。

 

(…このオッサン…頭でもおかしくなったのか!?)

 

武はそう思うしか無かった。さすがにこの状態では半ば諦めてしまう兵士がいてもおかしくなかった。

しかし、少佐はすぐに表情を戻しウィンドウに映る龍臥を見つめる。

 

『――時に坊主、貴様らはこのラプターを初めて見るだろう?こいつは坊主との戦闘データを基盤に開発された機体でな…』

「ッ!?やはりデータは撮られていたのか……」

『そりゃそうだ、あんな珍しいモノは他にない。……こいつは正式名称”F-22A-Break”ラプターB型といってな、機体速度を坊主の戦術機に極限まで近付けたモノだ』

「…そんな事もできるのか……」

 

アンバスは淡々と説明していく。

 

『――だからこの機体はその速度で光線級のレーザーを躱すことが可能だ。…俺が囮になって光線級を引きつける。その間に奴らを狩れ!』

「アンバス少佐…!?」

『『『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』』』

 

中隊全員が唾を呑む。

まさか自ら囮を買ってでるとは思わなかったためである。

 

『――…了解した。…聞いたな!?各機、武装の準備が完了次第、行動に移る!』

 

やるしかない、と思いながら操縦桿を力強く握る。

 

『――フォース・レイダー大隊!!俺一人で光線級の囮になる!支援射撃を頼む!!』

『『『『『『『『『『『『『『『『『『『

了解(ラジャー)ッ!!!

』』』』』』』』』』』』』』』』』』』

 

米兵らしい力強い応答が耳を刺激し、雰囲気も相まって俄然やる気が出てくる。

 

『行くぞッ!!ヴァルキリーズ!!』

『『『『『『『『『『『『「

了解ッ!!!

」』』』』』』』』』』』』

 

推進(ジャンプ)ユニットを吹かし、不知火 数機とバンシィ、ドラゴニュートとexゼロのモビルスーツが光線級目掛けて突っ込んでいく。

龍臥はラプターBを心配ながらに一瞥すると、光線級の位置を割出そうとモニターを操作する。

 

『――来たッ!!』

 

水月の一声に、モニターを操作する指がより一層素早くなる。

正面遠くから何本ものレーザーがラプター目掛けて発射される。それを難無く回避、異常なまでのGがかかりそうな程、無茶な機動を行っている。

 

(あんな…ジェガンよりも速い…米国……なんて技術力だ…)

 

そう思いながら、位置を割出す。

正確な位置が判明し、データリンクを通して全機へ送信。

 

『――よくやった刻永少尉!このまま行くぞ!』

『――ッ大尉!!要塞級が……!』

 

光線級周辺には、要塞級だけではなく要撃級、突撃級、戦車級が群れをなしている。

光線級を叩くにはこの大群に突っ込むしか他ないだろう。

 

『――どうする……このままじゃ……!光線級に辿り着く前に……』

『――龍臥ッ!そのミサイルポッドは!?』

「駄目ですっ!数に合わない……」

 

焦り始める中隊メンバー達。ウィンドウに映る顔には、汗を浮かべる表情ばかりだった。

―――そんな中、1人だけ決意された瞳をしている者がいた。天才衛士と呼ばれた少年――白銀 武

 

『――大尉!!……俺が陽動を行いますッ!!』

『――!?ばっ―――そんな!?白銀!やめなさい!』

 

武の一言に思わず焦る水月。龍臥も心配ではあったが、武ならやれる、と信じる事にした。

 

「――大尉、俺からもお願いします!水月さん、武を信じてやって下さい!!」

『――でも龍臥……』

『――わかった――。』

 

伊隅が半ば諦め的にため息を漏らす。

 

『白銀!撃墜されるなよ!!…残りヴァルキリーズ、続けぇッ!!』

 

武を残してヴァルキリーズは光線級へ向かう。

まずは周りの要撃級から片付けなければ、近付くことすらできない。

後ろではexゼロが要塞級や小型種に囲まれていた。

 

『――大尉、白銀の支援を……!』

『駄目だ!それでは陽動の意味が無くなる!!』

「茜さん、武を信じろ!あいつは強い…そうだろう!?御剣さん!」

『――……あぁ…確かにな…タケルは強い…だが……』

『――ッ!!大尉!――敵の消耗率が急激に……!!』

 

風間少尉の戦況ウィンドウを見る瞳が、まるで絶望から希望へ変わるように、輝いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!』

 

長刀で次々に襲いかかる要撃級を斬り捨てていく。

要撃級が腕を振りかざし、exゼロへ叩きつける。しかし余裕のある回避を行い、同時に要撃級の巨腕が切断される。

武は回避する瞬間、既に腕を斬り落としていたのだ。

武の操縦によりexゼロは性能以上の力を出せている。

要塞級が脚を持ち上げるが、exゼロがビームサーベルを抜刀、要塞級目掛け投げつける。当然ながら切断され、体勢を崩された要塞級は倒れ込む。

武は機体を上昇させ、投げたビームサーベルを回収、更に急降下しもう一体の要塞級を一刀両断。

 

『――俺を殺しに来てみろ!!やってみろ!』

 

鞭の攻撃を行おうと、体勢を整えた要塞級が3体向かってくる。

その3体が重なった瞬間を逃さず、ビームライフルを発射する武。見事3枚抜きに成功する。

 

『……誰も…』

 

背後から突撃級が突進。

振り向いたexゼロは静かに構え、敵を待つ。

スラスターによって機体が数m上昇、ビームアックスを展開し向かってくる突撃級を縦に切り裂く。その硬質な鎧も、ビーム兵器の前では意味を持たない。

突撃級の体液を浴びながら、exゼロのモノアイが(あか)く煌めく。

 

これ以上誰も!!失うわけにはいかないんだアアアアアァァァーーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

 




ついに書けるぞ……無双が!!
主人公より主人公やっちゃう武ちゃん、マジですか…

次回もお楽しみに……!!(…する人おるんか?)


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#31 A-02の”チカラ”

おまたせしました。闇の力…お借りします!
『ゼッパンドン!』

はい。長らくお待たせしました!テストから解放され、遊戯王片手に色々展開を練っています。
専門学校の課題もありますが、更新頑張っていきます!それでは…本編、どうぞ!!


黒色の機体(exゼロ)要塞(フォート)級の群れとの戦闘が続き、龍臥の知る歴史よりも時間、弾薬の消費が圧倒的に少ないのは明らかだった。武はその操縦技術と機体性能の両方を遺憾なく発揮させ、次々に敵を倒していく。

一方、重光線(レーザー)級を叩くために進む龍臥達は彼の陽動の成功を期待していた。当然、彼の戦いを見ているとそうなるのは自然の成り行きだろう。

 

『――要塞級の壁に穴が空いた!陽動成功!少尉、よくやった!』

 

ウィンドウが無く、顔は映っていないが伊隅の声は喜びの表情を帯びていた。

 

『――白銀、陽動はもういい!離脱しろ!』

『――いえ、まだ重光線級まで届くのに要塞級の数が多い!少し続けます!』

 

水月は撤退を促すが、武はそれを拒否し、陽動を継続することを決める。

 

「なっ…マジか…。……必ず、着いてこいよ!?」

『――ああ!必ず!!』

 

そう言葉を交わし、モニターに映る要塞級の間をすり抜けていき、目標へ近づいていく。

ドラゴニュートのスラスターが青白い炎を吹かし、誰よりも、何よりも速く敵へ向かっていく。

 

『――!?…いくらなんでも速いって…』

 

半分驚き、半分呆れながら茜が言葉を漏らす。

光線級や重光線級が彼に向けレーザーを照射する。しかし機体を回転させ、容易く躱す。

 

「…攻撃が遅いつってんだろッ!!」

 

躱してくのに何度もレーザーを撃ってくる敵に、多少イラつきながら操縦桿を握りトリガーに指を置く。

ビームマグナムを発射し、撃破しようとするが突如光線級は向きを変える。放たれた光線級のレーザーが自分ではなく後ろの中隊を狙う。

 

(…ッ!しまっ……!!)

 

回避が間に合わないのではないか、そう思ってしまったその時。黒い刺々しい機体――ラプターBが現れ、どこから拾ってきたのか(シールド)を構えて中隊を庇うように立ち塞がる。

幾本ものレーザーが一点に集中し、あと数秒後には…――。

 

「少佐!!」

『――行け!!坊主!…こいつは長く持たん!』

「…はい!!――ッ!!」

 

気合いを入れフットペダルを踏み、距離を詰めながら敵を自動ロックする。

 

((……前…見て………))

「ッ!?」

 

発射インターバルを終えた光線級が、レーザーを撃ち、それをギリギリで躱す。

操縦桿のトリガーに指を乗せ、ビームマグナムの発射体勢に入る。

後ろでは武が残りの要塞級をビームアックスで切り裂く瞬間だった。

二人がそれぞれ、力を込めて眼下の敵へその武器を構える。

 

『「これでっ…終わりだあぁぁぁぁぁーーーーッ!!」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はぁっ…はぁっ………っくぁあ……」

 

光線級を見事撃破し、辺りはビームマグナムの余波によってドロドロに溶けた光線級だった肉塊が転がっていた。

 

『――やるじゃん刻永!』

 

茜が真っ先に通信を入れてきた。人に褒められるのはもちろん嬉しいが、それでも少し恥ずかしい気持ちはある。

 

『――でも敵に後先考えずに突っ込んでいくのは危険よ…ギリギリだったじゃない…』

「でも生きてるんで、結果オーライっすよ…榊さん」

 

榊の正論を”生きてる”という謎理論で返答、その事に彼女は呆れたようにため息を吐く。

ふとモニターに映る死骸や体液に汚れた地形が目に入ると、かつてはこの島も綺麗なものだったのだろうか、そう考えているととても悲しくなる。

 

(BETA…あいつらを許す訳にはいかない………。例えどんな理由があっても、自然を…人々を…地球を穢すなんて…)

 

嫌な気分になるが、今はまだ作戦行動中だった、と気持ちを切り替えるために息を吐く。

 

(…さっきの声は……誰の声だ?)

 

戦場ならば回線が混線してもおかしくはない。それでも、何か異質な感覚がした。通信ではないような。

 

「そういえば…最後のレーザーを回避する前、誰か警告してくれました?」

 

一応、中隊のメンバーに確認を行う。

 

『――少尉、どうかしたのか?』

『――いや、私は何も言わなかったが…』

 

宗像中尉は逆に質問し、冥夜は否定する。

龍臥にのみ聞こえていたのか、皆は彼の言葉に不思議そう目を細める。

 

『――…??龍臥あんた…』

「はい?」

『頭大丈夫?』

 

水月の言葉に苦笑する中隊メンバー。言われた本人は焦って否定する。

「ファッッ!?…いえっそんなこと…!?ないです…多分」

『自信持ちなさいよそこは…』

 

ウィンドウ上の水月は笑みを浮かべていた。その顔を見ていると、無性に恥ずかしくなってくる。

恋をすることはこんなにも胸が複雑な感覚になるのか、と改めて感じさせられた。

 

『――楽しい談笑の最中すまないが、我々は他部隊の援助任務に戻る。A-02の護衛…任せたぞ、幸運を祈る。…………坊主』

「はっ」

『……次会う時には、酒の飲める年齢になっていろよ。貴様とは話すことが山ほどあるからな。もちろん英語(我々の言語)でな』

「…はい…」

(2年後かよ……)

 

心の中で突っ込みを入れながらも、ウィンドウに映る彼に敬礼。この人がいなければ、中隊がダメージを受けていたことであろう。

ラプターBとともに彼の部隊は低空飛行を行い、ヴァルキリーズから離れていく。

その横からラプターとは違う黒い機体が1機、こちらへ向かってくるのを確認した。

それは間違いなく、陽動を自ら志願しそのまま生還どころか要塞級全てを殲滅し終えた者、武だった。

 

「武!!無事だったか…」

『――当たり前だ!龍臥の造ってくれた機体があって、予想以上に動けたぞ!』

「お前がバケモンなだけなんだよなぁ……」

 

彼とそんな会話を行っていたところに突如、赤文字の”WORKING”と共にけたたましい警告音が鳴り響く。

 

「―――ッ!?警告…」

 

モニターには新たな光線級の反応。しかもただの光線級ではなく、重光線級。

 

(この距離じゃ…躱しきれない!かと言ってビームマグナムでは余波でみんなの機体に損傷が…)

『――ヴァルキリーマムより、ヴァルキリーズ。A-02が佐渡島へ到着、予定通り荷電粒子砲での攻撃を行う。全機A-02より後方へ退避せよ』

 

焦る彼に、聞き覚えのある心地よい柔らかい声で無線が繋がる。

 

『――ヴァルキリーズ、全機退避!!』

 

伊隅の号令で中隊が後退していく。龍臥も従い、後方へ向きを変える瞬間、見えた。

明らかに従来の戦術機とは違う、巨大な機体。モビルアーマー、”α・アジール”をゆうに超える大きさ。

”凄乃皇・弐型”

 

(でっっっっけぇ……)

 

それしか思わなかった。やはり、目の前にそんなモノがあれば簡単な感想しか出てこなくなるとは本当だったのか、龍臥はそう思った。

 

『――龍臥、早くしなさい!巻き込まれるわよ!!』

「はっ…はい!!」

 

水月の注意で我に返り、急いで後退する。

重光線級はレーザーを凄乃皇に向けて発射。しかし、凄乃皇が発生させた”ラザフォード(フィールド)”にてレーザーが弾かれる。

 

『ラザフォード場、問題なく展開!レーザー防御率98パーセント!!』

 

戦艦大隅からのオペレーターが状況を確認する。

 

(レーザーが曲がる!?…この世界の技術力はやっぱりとんでもないな…。Iフィールドよりすごいんじゃないか?)

『荷電粒子砲、充填完了!!機能は正常!』

 

凄乃皇の荷電粒子砲砲身にエネルギーが集まっていく。

―――突如、とてつもない轟音と閃光が瞬く。

荷電粒子砲(人類の切り札)が敵へ向かって発射される―――!!

 

 

to be continued




久々で何かとおかしい文になっていないか不安です。更新が遅くなりましたが、確実に、これからは少しずつ更新していきます。これからも読んでくれると幸いです。







ストーリーの展開は全て考えているので、迷走はしない予定です。


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#32 アクシデント

お気に入り100件越えていましたね……
このガバガバ駄文()を気に入って下さった方がいてくれるだけで嬉しいです!
課題さっさと終わらせて年末年始楽しみたい!

ヒープリが終わるのは嫌です(半ギレ)セイバーは好きです(全ギレ)ウルトラマンZ続きあくしろ(過激派)


ーーーーーー作戦司令戦艦 最上ーーーーーー

 

作戦司令のため、複数人のオペレーターがパソコンやモニター等の端末機器を操作している。

各無線機からは、状況連絡の音声がひっきりなしに鳴っている。

 

「いよいよですな……」

 

忙しい中、最上の艦長であろう、海軍の軍服を身にまとった中年とも年寄りとも言えない渋い男性が夕呼に話しかける。

 

「今作戦における両軍将兵の挺身が、意味あるものとならんことを……期待しますぞ…」

 

夕呼はその言葉に、自信たっぷりとも言える表情を浮かべる。

 

「お任せ下さい提督。人類がBETAごときに滅ぼされる種ではない証拠を…今お見せしますわ。――それに、」

「……それに…?」

 

そう言うと、巨大モニターに映る戦術機を表す十数ものマーカーを見つめ、ニヤリと笑う。

 

「私には、優秀な部下が大勢いますので…特にあの二人は……」

 

 

 

ーーーーーー佐渡島 本島 A01部隊ーーーーーー

 

 

―――耳が痛い。凄乃皇の攻撃による影響だな。

そりゃそうだ、あれほどの轟音だもんな。いくら外部の騒音を減らそうと設定しても、音源がデカすぎてどう足掻いても……。

 

『――龍臥!おい、起きてるか!?』

「――…!!お…オス!!」

 

いきなりドデカい聞き覚えのある声が聞こえたかと思えば、武のものだった。

驚いて柔道のような掛け声を出してしまった。

それはそうと、俺自身に異常は無いか確認しなければ。

今ここは、12月25日の佐渡島。作戦…甲21号作戦。俺は…刻永龍臥。そして俺のすべき事……。

……よし、問題ない。

フットペダルを踏み込み、機体姿勢を整える。機体には先程の攻撃によって土埃が撒き上がり、それがまとわりついている。余計な事だが、深緑色の機体カラーと相まってちょうどいい迷彩柄になっている。

周りの機体は同様に土に汚れており、ロボットアニメオタクが見れば興奮気味になるであろう、いかにも格好良い様になっていた。

……何を考えている。落ち着け、今俺はロボットアニメ好きでも、ただの高校生でもなく、軍人なんだ。余計なことは考えるな。

 

『――続けて、A-02第2攻撃開始。各機、衝撃に備えよ』

 

遥の指示を聞き、今度は耳を塞ごうとしたが、パイロットスーツのヘルメットを被っていた事を忘れていた。

おかげで再び轟音を聞く羽目に遭った訳だが……。

 

 

 

――――――数秒後、土煙が収まり、表面が欠けたハイヴが顕になった。

それを見た瞬間、龍臥を含めた中隊全員が歓喜の声を上げていた。

 

『――いける、これがあれば人類は……!よし、何としてでもA-02を守りきるわよ!』

 

やる気が漲ってきたのであろう、水月がいつも以上に明るい声色になる。

龍臥もそう思っていた。しかし、これから起こる惨劇を知っているからこそ、彼は期待同様に不安も大きい。これを知っているのは自分だけ、そのプレッシャーに押し潰されそうになる。

 

『――刻永』

「…柏木……」

 

ウィンドウに映る彼の複雑な表情を見て、心配そうに優しく声をかけてくれた。

 

『どうかしたんでしょ、その顔。』

「……あ…あぁ。」

『ま、あまり深く考え過ぎると思うように動けないよ。リラックス、リラックス』

 

深く考えないなんて、無理だ。これから死ぬ人物にそう言われると、余計に考えてしまう。

こんなにも死というものが近い存在だなんて。自分も一度死んだが、改めてそう実感させられる。

 

(それに…俺の手は血に汚れている……。人を殺したんだ。俺はなぜ…この世界に来てしまったんだ。何故……)

 

その思考をも掻き消すように、警告音やら無線やら複数もの機器が一斉に鳴り響きだした。

 

(重力偏差警報……?…まさか!!)

 

『――司令部より緊急連絡!A-02一部機能停止!空間座標固定不能!ラザフォード(フィールド)に注意!』

 

「!!」

『なっ……!?どうして……?』

『早瀬、取り乱すな!………各機、直援展開!指示を待て!』

『――嘘…であろう……?』

 

『A-02姿勢制御不能…―――墜ちますッ!!』

 

焦る面々。墜落していく凄乃皇。それを見ることしかできない龍臥。

いつかこうなるとは思っていたが、分かっていてもいざ来るとなると不安な気持ちになる。

 

『――純……夏……』

 

武がボソリとその名を呟く。龍臥は瞬時に秘匿回線を繋げ、武へ連絡する。

 

「武、心配するな…。それに、()()()は俺達や博士だけの情報だ」

『それは分かってる……だけど……』

「今は、指示を待つんだ。俺達は軍人なんだ。子供じゃない」

 

その言葉に納得したのか、それともそうではないのか、武はそのまま黙りこくってしまった。

龍臥はモニターを操作し、メモを黙読する。

 

(『・凄乃皇の墜落→慌てずに指示に従い、最善の行動をとる』か……)

 

自分で入力した内容だが、当たり前の事を書いており、あてにならない。しかしこの内容が今やるべき事なのだ。

いつでも動けるようフットペダルに足を置き、操縦桿を握る。

無線が砂嵐の如くザーザー鳴り、司令部からの指示が入る。

 

『――白銀、刻永―聞こえているわね?』

 

秘匿回線にてウィンドウに夕呼の顔が映し出される。

瞬間に武が慌て、彼女へ真っ先に訊きだす。

 

『――先生!凄乃皇に何かあったんですか!?』

「まず、XG-70の機体機能は全て正常…」

『「!」』

 

感情的になる武とは反対に、事務的に現状を伝える夕呼。その副司令としての姿勢に、龍臥は少し感心した。

 

『なのに再起動コードを受け付けないのよ。…その意味は、分かるわね刻永?』

 

油断していた龍臥へ彼女が確認してきた。龍臥は考えられる事を言うことにした。

 

「…00ユニットが…機能を停止してしまった…」

『そう、そういう事』

 

正解だったみたいだと、この状況で置いていかれていない事に安堵する。

 

『遠隔操作で主機の再起動ができない原因は00ユニットが自閉モードに陥ったこと』

『――それで先生……俺は何をすればいいんですか?』

『――だから白銀、あんたは00ユニットを回収して戦域離脱しなさい』

「…博士」

 

龍臥は思い切って訊いてみることにした。

 

「凄乃皇は……まさか……」

『……えぇ、そうよ……。作戦プランGに従って最終的には爆破するわ』

『ばっ…爆!!?』

 

武の声色、息遣い、彼が焦っているのが手に取るように分かった。

 

『凄乃皇を…爆破するんですかッ!?』

『…そうよ。あんな大きな機体、時間も無いんだしバラして回収なんてできっこないし』

 

またしても事務的に言う彼女に、龍臥は不気味さを感じた。

何故そこまで機体を簡単に捨てる事ができるのか、この状況下だからと言って、技術者としての焦りはないのだろうか?これが「天才」なのか、と――。

しかし、今は従うしか方法がない。

 

「武、00ユニットさえあれば人類は……。勿体ないが、ここは作戦に従うのが筋ってもんだ」

『龍臥…お前まで……!…………ッ…――そう…だな……』

『流石分かってるじゃない、時間が無いから伊隅に繋ぐわよ』

 

機体の安全コードと制御キーは隊長である彼女が持っている。そのまま彼女に、凄乃皇内部から直接入力させるのであろう。

ウィンドウがもうひとつ増え、伊隅が映し出される。それと同時に夕呼は指示を3人に出す。

 

『この任務は00ユニットの無傷での回収が最優先。ただし、時間が許す限り、手動での自律制御の起動を試みる。一番遅い艦が安全圏に到達する前に起動出来なければ最終的に爆破処理する――いいわね?』

『『「はい!」』』

 

この先、何が起こるか分かっている龍臥でさえも、この場にいて上手くいくと思っていた。しかし現実は甘くない。

彼が思う以上に、これからの出来事は非常に残酷なものであった。

 

 

to be continued




白トカゲ「我らの出番は……どこ…ここ…?」


久々の更新です。不定期ですが、失踪だけはしないので安心して下さい!!
では皆さん、また次回で!!


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#33 守りたかったもの

お久しぶりです!!疾走ではないです!ワクチンどうのこうの、課題が続いて……あとはストーリーを完全に決めていたのでくっそ遅れてしました。
今読み返したら、ただの駄文でした。だから修正等行っていきますので、ご愛読、よろしくお願いします!


【挿絵表示】


主人公の原案です↑


A-02内部へ進入してからおよそ3分、コックピットと思われる箇所へと辿り着いた。

コックピット内部は薄暗く、メインコンピュータのモニターしか光源はない。

 

(こんな中で00ユニットは一人で……)

 

今までこんな閉鎖的な空間を見たことはなく、もし自分ならば気が狂いそうである、と龍臥は息を呑む。

 

「白銀、刻永、貴様らは00ユニットの回収を---」

 

「純夏っ!!」

 

『---白銀!下手な刺激はよしなさい!』

 

伊隅が2人へ指示を出す瞬間、夕呼の制止を聞かずに武は真っ先に00ユニットの元へと向かう。

彼の顔は逞しい兵士ではなく、ごく一般の高校生らしい優しい目をしていた。

 

「純夏!無事か…?純夏……」

 

「落ち着け。…………気絶……しているみたいだな…」

 

彼女を心配する武は必死に彼女の名を呼びかける。見たところ気絶しているように見えるため、龍臥は武を落ち着かせることにした。

 

「あぁ…悪い……取り乱したみたいだ……先生もすみません……」

 

落ち着きを取り戻し、冷静でいる彼らを見て伊隅は困惑していた。目の前の00ユニットは『純夏』と呼ばれていた。

異常なまでの武の心配する様子、そして名前で呼んでいる事から、以前に武から聞いていた女性だと容易に想像できた。

 

(そうか……そういうことか……)

 

「白銀……まさか00ユニットが……お前の……」

 

「……そうです、彼女が……純夏です」

 

「そうか…………直ぐに彼女を連れて行くんだ、必ず守ってやれ。刻永、お前は私と凄乃皇の自立制御の起動準備だ」

 

「「了か----」」

 

瞬間、けたたましい警報音が機体内に鳴り響く。モニターには『第1種BETA警報』。

 

『---大尉!!BETAの師団規模の大群が地下を移動中!!』

 

突然の事で焦り始める彼らへ、遥が無線連絡をくれた。

 

「どこだ!?出現予測は!?」

 

『作戦域の広範囲です!ウィスキー・エコー部隊の回収艦隊に反応していると思われます!』

 

「回収艦隊……!!遥さん!回収艦隊には師団規模対策の武装は装備していませんよね!?」

 

『おそらく!このままじゃ一方的に撃沈する!!』

 

「ぐっ……!!なんて事だ……!!

……白銀!!お前は急げッ!!」

 

龍臥はいち早く艦隊の装備の確認を行い、伊隅は白銀へ指示を催促するが、夕呼からの連絡が3人をより深い絶望へとたたき落とした。

 

『--待ちなさい、回収ルートに近い箇所に重光線級と要塞級がたんまり出現したわ』

 

「「「ッ!!?」」」

 

『それだけじゃない、凄乃皇に反応してこっちに近づいて来てる』

 

「そんな……先生!なら急いで!!」

 

『対レーザー弾も残っていなくてね。効果的な支援も期待できない以上、強行突破はハイリスクよ』

 

「じゃあどうしろってんですか!?」

 

より焦る2人へ、夕呼は指示を送る。

 

『伊隅と刻永は凄乃皇の自立制御、白銀はいつでも動けるよう待機!!』

 

「了解です……!」

 

「行くぞ刻永!!」

 

3人はそれぞれ動き出す。

伊隅はコンピュータの起動作業を続け、龍臥はメインデータの回収を急ぐ。

 

(武……純夏さんを無事に届けろよ……)

 

「大尉、こちらはデータ回収完了しました」

 

「わかった、こっちもあと数分で終わる…」

 

十数秒もの沈黙のあと、伊隅は龍臥へひとつの質問を投げかけた。

 

「--刻永は…………速瀬の事が好きなのか?」

 

「ッッッ!!?」

 

突然の事に混乱する龍臥を放っておき、伊隅は話し続ける。

 

「お前の……他の女性を見る目が全く違うからな。

多分私と中尉達にはバレているぞ。おそらくお前の同期にも…」

 

「……わかったんですね…何でそれを今言うんですか……?」

 

「フフ…………いや…お前は入隊時から面白そうだったからな。今この時代らしからぬ素直さ、戦争を知らないようなその優しい目…………。

お前が何者かはわからないが、可愛げのある部下だから言ってみたまでさ」

 

「…ちゃんと通信切ってますよね……?」

 

「切っていると思っていたか?」

 

龍臥は青ざめた。この通信が記録として残るだけではなく、確実に他の隊員へバレてしまうからであった。

 

「ハハハ!冗談だ、もちろん切っているさ。

面白いな刻永は……」

 

大笑いする彼女に龍臥は呆れる。

 

「やめてくださいよほんと……焦ったんですから……」

 

和やかな雰囲気に終わりを告げるように、再び警告音が響く。

 

「博士、また何か!!?」

 

『ご明察---自立制御が作動した凄乃皇目掛けてBETA郡が向かってくるわよ

白銀は00ユニットを回収し速やかに移動してちょうだい。

それに、これからは内部無線のみ通信することになるわ』

 

『了解です!!大尉も、龍臥も無事で!!』

 

「わかってらァ!!……大尉、どうですか!?」

 

「もうすぐだ……………ッ!!?」

 

作業が終わりそうだった間近、自立制御を受け付けない、エラーコードが表示された。

 

「制御を受けない…!?どういう事だ…」

 

「今一瞬、プログラムにアクセスできたはず……起爆プログラムの立ち上げまで順調でした…」

 

『--伊隅!SエリアにBETAが出現してそっちに向かってるわ!自立制御の起動は中止、すぐ爆破作業に移行して!』

 

夕呼の話し方から、今危機的状況にあることは明らかだった。

 

「--博士、BETAの位置は!!」

 

『7km先まで迫ってる!急いでちょうだい!』

 

「ふざけるなよ……こんなに一斉に凄乃皇を狙ってんのか……!!」

 

拳に力が籠る。爪が食い込み、その箇所から血液が滴る。

 

『--伊隅、状況は?』

 

「申し訳ありません、起爆プログラムは依然沈黙……」

 

『そう、作業を続けてちょうだい。あと、柏木機が被弾したわ。推進剤漏れ程度で済んだけど……

--今色々準備をやらせてるわ。脱出する時、刻永機は周囲のBETAからカバーしながら柏木機に乗って来なさい』

 

「--は!?柏木はここに戻ってきてるんですか!?」

 

「!!」

 

伊隅は離脱したはずの部下が戻ってきていることへの驚きを隠せないでいた。龍臥自身もそうだった。

 

『そういう手筈じゃなかったの?……まあいいわ。とにかく作業を--』

 

その瞬間だった。突然凄乃皇全体が揺れる感覚に襲われた。

事実、BETAが地中から出現したためだった。

 

「---博士!!」

 

『えぇ!!刻永はA-02から離脱して周囲のBETAを対処してちょうだい!!』

 

「了解!!」

 

龍臥は急いでリフトに搭乗し、自機目指して凄乃皇を後にする。

 

『伊隅!プランDに変更!!大至急A-02を放棄して戦線を離脱して!』

 

「りょ--了解!」

 

『柏木!今刻永が使っているのを合わせてリフトが上がるまで1分!耐えてちょうだい!!』

 

『--了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大尉がリフトを使って離脱するまで1分……耐え抜いてみせる!

--私は逃げていた。みんなが戦っているのに、他人事みたいに冷めた目で見て…巻き込まれない場所を探していたのかもしれない。だから国連に行こうとしたのかも---。

だけど今は違う。人類は勝てる。日本を--家族を--弟を--太一を護ってやれる!

 

「---凄乃皇がッ!!」

 

見ると凄乃皇に多くの戦車級が張り付いていた。このままでは装甲を食い破られてしまう。

 

「しまった!このままじゃ大尉が---」

 

瞬間、警告音。

同時に強い衝撃。首が痛い。機体は大破、そう直感した。

視界が霞んでよく見えないけど…前に要塞級がいるのが分かる。

 

 

 

 

---駄目か。やっぱり---太一を---護ってやれな---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【BGM:RX-0】

 

ぃやめろォォォォォォォッッッ!!!!

 

1人の声と共に一閃、また一閃と光線--ビームが要塞級を焼き尽くす。

深緑色の機体---龍臥は間一髪間に合った。

 

『刻永--な……んで--』

 

「約束したじゃねぇか……!最後まで生き残るって……!家族を守るんだろ!?だったら生きて見せろよ!!」

 

ドラゴニュート目掛けてBETAが一斉に攻撃を開始する。しかし、たかが近接武器しかできぬ種。光線種でなければどうということはない。

 

「約束も守りたいもんも!全て守れよ!!それが……人として、やるべき事のひとつだろ!!」

 

半涙目で龍臥は怒鳴る。あのトカゲが言っていた、『歴史を変えれば元の世界へは戻れない』--そんなことはわかっている。しかし、動かずにはいられない。目の前のなかまが死ぬなんて以ての外だ。

力を込めて操縦桿を握り、龍臥は力の限り叫ぶ。

 

「俺に力を貸せ……

ドラゴニュートォォォォォォッッッッ!!!」

 

機体のサイコフレームが虹色に輝きだし、内部装甲が露出し変形していく。

 

『---……!』

 

薄れる意識の中、柏木は見た。その機体に、一人の女の子が重なって見えた。15歳くらいだろうか、まるで龍臥を守るように--

次の瞬間、彼女の意識はプツリと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---うぉぉぉあああああ!!!」

 

武は異常な状況の中、機体を走らせ最上へと向かっていた。同機として冥夜と共に。

コックピット内、目線のすぐ近くに00ユニット--自身の最愛の女性がいる。少々荒々しく移動しながらも、彼女を配慮するよう機動していた。

 

『--タケル、前方1時の方向!光線級!!』

 

「あぁ、突破するぞ!」

 

武はエクスゼロに装備された兵装をビームライフルからビームアックスへと変え、刀身部分で光線をガードしながら接近、切り裂く。

しばらく移動していると、黒い機体が見えた。

水月らが彼らを待っており、いつでも動けるよう待機していた。

 

『遅かったわね!最上へ急ぐわよ!!』

 

「中尉、まだA-02には!!」

 

『わかっている!だから離脱路を確保するためさっさと海上に出るわよ!』

 

「了解--」

 

その直後、見えた。

幻覚か?それとも---

 

『……タケル!?どうかしたのか!?』

 

「--っあ!?い、いやなんでも!!」

 

冥夜は心配そうに声をかけるが、武は平気だと言う。しかしそうは見えなかった。正しくは『そうは聞こえなかった』だが。

いつもの彼とは違う、困惑していたような驚き方。疲れているという訳ではなさそうだったが、今はそんな事は置いておき、海上を目指す。

 

(---今のは--何だ!?巨大な--BETA?それに--あそこは……基地内?爆発!?--……触手……!?何だ……)

 

一部謎な映像が、イメージが流れ込んできた。直接、脳内に。

彼は知らずに見ていた。ゼロシステムによる未来予知を。

 

 

 

佐渡ヶ島の戦いは、終局へ向かっていた。

 




文書力も上がっていたらいいのですが。ちなみに、設定は忘れている訳ではないんです。ゼロシステムも、どこで出すかが決まっていたのでさっさと出さなかっただけです!


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#34 二人の仲間との別れ

お久しぶりです!ン?疾走だと思った?残念でした!生きています。
考えていたストーリーに大幅な変更・修正を行い、時間も作ったので更新しました。不定期更新ですがまだ読んでいただけると幸いでございます。
これにて甲21号作戦編完結でございます!
ちなみに、主人公はNT設定ですが操縦力は素人同然なのでガンダム世界だとほぼ弱いです。
それではどうぞ…


「柏木ィ!!応答しろぉ!!」

 

龍臥は必死に彼女に対し呼びかけるが、以前応答は無い。

 

(信じろ…俺ならできる……守れるッ)

 

そう自分に言い聞かせ迫る敵から凄乃皇、僚機を遠ざけていく。決して味方機へ被害を出さぬように、ビームの出力を最小限に抑える。ビームマグナムの異常な火力を抑えてはいるが、一発発射する度に周りへの衝撃と舞い上がった瓦礫が視界をいっそう悪くする。

 

(クソっ!マグナムは使えば使うほど不利になる一方だ……)

 

マグナムをバックパックに戻し、トンファーに切り替える瞬間を戦車級が狙ったかのように飛び付いてくる。バルカン砲で撃ち落とし、周囲を警戒するが遅かった。その瞬間に飛びかかった戦車級が大量に機体に張り付き、装甲を食い破ろうと歯を剥き出しにする。

ヤバいと感じた龍臥はすかさずテューポーンシステムを起動し、張り付いた戦車級を焼き殺していく。

 

(危ねぇ……テューポーンシステムが無かったら……死んで…!?)

 

死は一度体験したが、それとは比べ物にならない程の最悪な結末なのではないかとゾッとする。

背後に嫌な感覚を感じ取り、振り返ると凄乃皇と柏木機に戦車級が張り付いていたのだった。龍臥が気を取られている間に出し抜かれた。

凄乃皇はまだしも、柏木機は無防備状態。今やられたら確実に無事では済まない。バルカン砲を一体一体撃ち込んでいくが、20体は張り付いているため全て取り除くのは時間がかかる。

龍臥は閃いた。危険だが、これしか仲間を守れない。早速、メインモニターを操作し機体のメインシステムの出力を最大に設定する。

その瞬間、僚機に張り付いていた敵が一斉にドラゴニュートに振り向く。

作戦は成功した。戦車級に限らずBETAは基本的に高性能のコンピュータを狙う。NT-Dやテューポーンシステムを積み込んだこの機体に興味を持たないはずがなかった。

さらに、凄乃皇と僚機から更に遠ざけるため機体を後向きにブースト、それを追いかけた戦車級が機体から離れる。

 

(よし、後はこいつらを!)

 

ビームトンファーとビームサーベルを最大出力に切り替え、敵を薙ぎ払う。案の定一瞬で蒸発し、とりあえずは危機を乗り越えた―――はずだった。突然背後に巨大な気配を察知、振り向くと要塞級が3体見下ろすように佇んでいた。

 

「…………次から次へと……」

 

龍臥は呆れるように吐き捨てながら機体を急上昇、ビームトンファーを一体の頭部に突き刺す。しかし他の2体が触角を飛ばし、回避運動をとるが、掠ったために右腕部のマニピュレーターを破壊されてしまう。

 

「嘘だろッッッ!!?マズイって!!」

 

要塞級の触角から出る溶解液で腕の装甲もドロドロに溶けてしまい、もはや使い物にならなくなってしまった。絶体絶命、その時凄乃皇からバリアが発生する。

 

「ラザフォードフィールド……?まさか……」

 

龍臥は最悪の結末を想像する。

突如その考えを決定づける通信が入る。

 

『刻永、すぐにその場から撤退しなさい。事情は後で伝えるわ』

 

「博士……まさか…大尉は…………!」

 

ワイプに映る夕呼の頷きを見て、龍臥は確信する。

 

「そ……そんなの、良くないですよ…いくら……いくら大尉が…決めたからと言って……」

 

動揺を隠せずにいると彼女は続けて話す。

 

『あなたもその損傷では撤退が最優先よ。まだ片腕があるからと言っても、まともに戦えないのなら戦場では邪魔なだけよ』

 

「…………しかし」

 

『柏木のことは残念だけど……』

 

「え」

 

龍臥は言葉が詰まる。まさか、とは思うが。

 

「博士……柏木機は大破していますが……まだ生きて」

 

『脳損傷、脊髄損傷、肋骨骨折…主に要塞級の攻撃でやられたのね。他にも色々あるけど、聞く?』

 

夕呼の発言に驚きを隠せなかったが、気になっていはいた。柏木からの応答が一切無かったことから想像はできる。しかし本当かどうか事実を飲み込めない。

 

「いえ、了解しました…でも、せめて遺体の回収はさせていただきます。それは止めないでください」

 

『……いいわ。じゃあ撤退しなさい、いいわね』

 

「了解」

 

通信が切れると同時に、龍臥は残った左腕で柏木機を抱え、推進剤を使い切るほどの速さでその場を後にする。

前を見ているが、下を向いて泣き出したい程だった。視界がぼやけ、自然と涙が溢れてくる。仲間の死の悲しさと非力な自分への怒りが混ざった涙だった。

いくつかの混線した他部隊の通信が途切れ途切れ聞こえてきたが、そんなものに気を取られていられなかった。数週間の仲だったが、共に目的を持った真に心が通じた仲間だった。その分、込み上げてくる気持ちが抑えきれない。

 

横からの光線級の攻撃を感じ、抱えた僚機を傷付けない完璧な回避運動をとる。皮肉なことに今必死に守っている仲間は生きていない。彼の心に大きな傷ができたのだった。

 

気が付くとメインモニターは作動しておらず、真っ暗なコックピットの中だった。

深呼吸で気持ちを落ち着かせる。しかしいつまで経っても気持ちは晴れない。あの時の、香織が死んだ日の事を思い出してしまい余計に悲しくなってしまう。

あのトカゲが言っていた事をもう一度思い出す。『決まった歴史を変えるのは困難』『歴史を無理に変えると元の世界に帰れなくなる』。何が正しいのか、何をすればいいのか…全くわからなくなっていた。

 

突然光が射し込み、眩しくて思わず目を細める。

 

「龍臥…………」

 

目の前には水月が立っていた。何か言葉を投げ掛けようとしているようだったが、言い出せない様子だった。

 

「すみません…………俺………………みっともない所を見せました…………」

 

そう言いながら無理に軽い微笑み顔を作り、席を立ちコックピットから降りようとした途端、水月に抱き抱えられた。

胸元に顔を押さえつけられ、強化装備越しに豊満な胸の柔らかな感触と温もりを感じる。

 

「中尉、やめてください…………俺は」

 

「やめてよ、そういうの」

 

龍臥が言い終わる前に話し出す水月。

 

「無理に笑うの、バレバレだから。そういうのは、隠さなくて泣きたい時に泣きなさい」

 

もっともである。

 

「それに……私の前では素直でいてもいいんじゃない」

 

「……水月さん…………すみません…………でした…」

 

「そういう時は、『ありがとうございます』よ」

 

水月が微笑む。龍臥は遂に涙を流してしまった。後悔と悲しみの涙を。

 

 

 

 

「すっきりした?どうよ、私のハグは」

 

しばらく経って龍臥は、随分と恥ずかしい事だったのではないかと思い返し赤面する。

 

「あ…ありがとう…ございました。おかげで立ち直れそうです」

 

感謝の意を込めた言葉をかける。

 

「私だって、みんなも悲しいわよ。でも一人で悩むのは違う。みんな同じ気持ちなんだから吐き出してスッキリしなさい!」

 

そう言いながら龍臥の背中をバンと叩く。

艦の甲板に出て佐渡島の様子を見たかったが、伊隅のとる最期の行動・佐渡島ハイヴを島を巻き込んでの自爆は余波が凄まじい。隣には柏木機の無惨な姿があったが、それは非常に勇ましく、誇らしい、何とも言えない美しさがあった。兵士としての仕事を最期まで終えた勇姿がそこには確かに残っていた。

 

伊隅の最期の立ち会いに向かうため、急いでその場を離れる。

 

巨大なモニターの全面には、伊隅が映し出されている。その顔は以外にも清々しく思えた。そのモニターの前には中隊のメンバーが揃っている。本来、私的な通信は不要なのだが戦艦・国東と最上のふたつに、帝国側の指揮官達が要請し、有線の秘匿回線を繋いでくれた。全員何も言わずに伊隅へ向かい敬礼を行う。

伊隅はそれぞれ部下へ言葉をかけており、最後は龍臥の順。

 

『――――刻永』

 

伊隅が話し始める。

 

『貴様はこの戦いでよく成長したといえる。だが、ここから先…自分だけでは解決できない事も必ずある。だからその時は、仲間を頼れ。ただ独りで戦う事はできない。貴様なら……人類の勝利に向かう事ができる。

共に戦えて良かったぞ、少尉』

 

「大尉……―――――お世話になりましたッ!」

 

 

(大尉…………柏木………………短い間でしたが、共に戦えて光栄でした。ありがとうございました!!)

 

龍臥は静かに敬礼を行った。彼女らの魂に、安らぎが訪れる事を願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月25日-AM:11:00

 

龍臥達A-01部隊は帰ってきた。あの戦場を生き延び、横浜基地へ――――。

帰ってきて直ぐに軍服に着替えた後、司令室に招集される。司令室に着くと、そこにはラダビノット司令の姿が。

 

「諸君、よくぞ困難な任務を達成してくれた。私は諸君を誇りに思う」

 

そう言い司令は話を切り出す。

 

「一方で伊隅大尉、柏木少尉を失ったことは誠に残念でならない。二人の人類への貢献を鑑みれば、本来二階級特進をもって軍葬を行うべきものだ」

 

司令は顔色を変えずに話を続ける。

 

「だが我々オルタネイティヴ計画に携わる者にはそのいずれも許されない。公式には軍事訓練中の死亡として記録される」

 

実際、オルタネイティヴ計画に関わっている龍臥達はその情報漏れを防ぐためにあえて機密情報扱いとなる。

納得いかないものではあるが、それが軍隊なのだ、と龍臥は考える。

 

「人類は僅かではあるが勝利に近ずいている。諸君のより一層の奮戦に期待する!」

 

「「「はい!!」」」

 

司令の言葉に中隊全員が応える。

その後、水月は司令直々にA-01部隊の指揮官に任命される。彼女が指揮官ならば亡き大尉も任せられるはずだ。

 

司令室を後にした中隊は、桜の木を墓標にした遺体も何も無い部下のみの非公式の部隊葬に参列した。柏木の遺体はあったのだが、それは別の場所で弔われる。

今国全土は佐渡島ハイヴ消滅を祝ってお祭りムードとなっている。その中で帝都では亡くなった兵士へ弔いの盛大な式典が行われるらしい。

 

(俺は……何も出来なかったな…ただ戦って、作戦通りに動いて……)

 

龍臥は後悔の念に押しつぶされそうではあったが、亡くなった二人を思い出すとそう思ってもいられなかった。

その弔い後、水月から中隊全員へ今後についての話があった。自身が指揮官であるが中隊名は変えず『伊隅ヴァルキリーズ』のままのこと。それが二人が残った証と信じて。

 

「―――それじゃあ解散!今日くらいしっかり休むようにね!」

 

「「「了解!!」」」

 

長いようで短かった一日が終了した。

 

武は夕呼に呼ばれたため向かうが、龍臥に聞きたいことがあったため少し話をする。

 

「龍臥……あの『ゼロシステム』って言ったけか?あれなんだけど」

 

龍臥はハッとする。何か見えたのか、何を見たのか問い詰める。

 

「いや…横浜基地……なんだけど、何か……ヤバそうな…一瞬しか見えなかったんだけど……」

 

「……ついに……か」

 

龍臥が最も恐れていた事が発覚する。それはあの――未曾有の被害を出した最悪の戦い…

『横浜基地防衛戦』そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




甲21号作戦編、これにて完結。ありがとうございました。それでは次回もよろしくお願い致します!


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