5P erosuna4 (夜叉五郎)
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prologue

見切り発車。


<YU SIDE 2010年2月某日 曇/雨 7:00>

 

気がついたら俺はゲームの世界に紛れ込んでいた。

なぜ俺がこの世界がゲームの中だとわかったのか。

俺にはステータス画面が見えるのだ。

 

朝、目が覚めると透明なボタンが目の前にあった。

とても不思議な光景だ。

<表示>と書いてある。

 

恐る恐る其のボタンを押すと、<あなたのステータスを表示します>と文字が浮かび上がる。

続けて<以降、スマホのアプリから本ステータス画面は表示可能となります>という文字が。

最後に<よろしいですか?YESorNO>とあった。

 

恐る恐るYESを押す。

すると透明なステータス画面がいきなり視界全域に現れる。

 

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識0:ズレてる

勇気1:なくはない

根気1:若者級

寛容1:それなり

伝達Z:マタヨシ級

――――――――――――

 

驚き跳ね起きる。

視線を回すとその透明な板も視界について回る。

なんだこれ!?

 

急に恐ろしくなった俺は、手を振り回してその板を視界から取り払おうとする。

すると触れるや否やフッとそのステータス画面は掻き消えてしまった。

 

呆然として周りを見渡す。

見知らぬ部屋だった。

鏡と窓とドアしかない殺風景な白い部屋だ。

 

とりあえず鏡を覗きこむ。

衝撃。

若過ぎる男の子の顔がそこにあった。

俺の顔はこんな端正ではなかったはずだ!

本当の顔はもっとこう!

 

あれ?

本当の顔・・・は?

 

・・・思い出せない。

思い出せないぞ!

それどころか、俺は自分の名前さえも思い出せなくなっていた。

どういうことだ?

 

ベッドの枕の横に置いてあったスマホが目に入る。

慌てて手に取る。

知らないメーカーの製品だ。

初芝電器ってどこの国の企業だろう。

 

震える手でロックを解除する。

HOME画面に"ステータス"というアイコンがあった。

タップ。

 

先ほど見たステータス画面がまた空中に表示される。

画面の上部に輝く"鳴上悠"の文字。

これが俺の名前なのか?

 

 

 

<YU SIDE 2010年2月某日 曇/雨 7:30>

 

そこからは大変だった。

スマホを洗いざらい確認してみる。

買ったばかりのものなのか、何もデータが入っていない。

唯一自分のプロフィール欄には"鳴上悠"の文字が。

 

やはり俺は鳴上悠という人物なのだろうか?

ステータスは明らかにゲームっぽい画面。

漫画のキャラクターの顔の絵が、画面の左側に表示されている。

鏡に写った自分の顔に非常に良く似ていた。

 

ステータス画面があるということは、ここはゲームの世界に間違いない。

生憎だが俺はあまりゲームをしたことがない。

俺はどんなゲームの中に取り込まれてしまったんだ?

 

窓から見える風景は普通の街だ。

部屋は二階にあるらしい。

慎重にドアを開ける。

 

普通の住宅だ。

そろそろと階段を降りる。

 

トントントンと包丁の音が聞こえる。

居間らしき部屋のドアをびくつきながら開けた。

 

「あら悠。おはよう。朝ごはんもうちょっとかかるから。顔洗ってらっしゃい。どうしたのひどい顔よ」

 

随分綺麗な女性だ。

この接し方からすると母親らしい。

 

「どうしたんだ悠。そんなとこに突っ立って。トイレ入らないなら先に父さんが入るぞ?」

 

今度は父親のようだった。

だが、二人とも見覚えがない。

 

試しにスマホを操作してステータス画面を空中に表示してみる。

しかし二人には見えていないらしい。

 

ここはゲームの世界なんですか?なんていきなり語り出されたら自分でも確実に引く。

一歩間違えれば精神異常者扱いされ、病院送りになりかねない。

慎重に、とにかく慎重に。

俺の勇気のレベルは"なくはない"程度なんだから仕方がない。

 

動揺を隠しながら両親らしき人たちとの朝の会話を恐る恐るこなす。

必死に情報収集。

 

TVではお天気キャスターが東京の空模様を伝えていた。

山野真由美という名前のキャスターのようだ。

知らない名前だ。

 

今日は2月上旬の週末。

そしてどうやらここは都内らしい。

朝ごはんに箸をつけつつ会話に齟齬が生じないよう慎重に話しを進める。

 

よくよく見るまでもなく、父も母も目が覚めるような美男美女だった。

覚えていないが本当の両親は確かこんなんじゃなかったはずで、いろんな意味で悲しくなる。

 

特に父は出来る男の見本のような人物だ。

空手四段、柔道三段、合気道二段、少林寺拳法少々の五ヶ国語を操るエリートビジネスマンであった。

ヤマト中央建設ってところに勤めてるらしい。

 

母親の方も良妻賢母を地で行く。

昔は父にも勝るとも劣らないバリバリのキャリアウーマンだったと自慢された。

華々しい社内恋愛の末のゴールインだったんだそうだ。

 

ハイスペックな両親たちに内心大いに引きつつ、それとなく親戚周りの情報を入手しようと頑張る俺。

いきなり顔を合わせて相手がわかりませんでしたとなると洒落にならないから。

 

しかし心配は杞憂に終わった。

親戚と呼べるのは、母方の叔父の堂島遼太郎という人物くらいしかいないようだ。

山梨県の稲羽市という地方都市に住んでおり、菜々子ちゃんという可愛らしい幼稚園児がいる・・・そうだ。

 

俺が親戚のことを気にするなんて非常に珍しいことだったらしい。

何か変な方向に話が盛り上がり、春休みに家族みんなで久しぶりに遊びに行こうという話しになってしまった。

「引越しの買い物が終わったら千里さんに電話しておきましょう」と母親の方がノリノリになる。

 

千里さんとは遼太郎さんの奥さん、菜々子ちゃんの母親の名前だ。

言うに及ばず美人なんだと。

しかし稲羽市なんて名前の都市、山梨にあったっけ?

って引越しってなんだ?

 

この冬に大手企業勤めで転勤がちな父親は急な内示が下って東京の本社に異動になっていた。

中学三年だった俺と母親は俺が卒業するまで転勤元の福岡に居残り中。

春には父が先乗りしていた東京のこの家へ引っ越す予定なんだそうだ。

 

自分こと鳴上悠は推薦入試でこの春から通う高校をすでに決めていた。

合格通知がつい先日届き、週末を利用して引越しの前準備のために東京に出てきているシチュエーションらしい。

今日は母に付き添い、新居で新たに必要になる小物を見て回る予定だった。

 

「一から友人を作り直しになるな、いつもスマン悠」と父に謝られてしまう。

つまり、これから通う学校には鳴上悠という自分を知る人間がいない。

これは逆にありがたいことである。

 

 

 

<YU SIDE 2010年2月某日 曇/雨 10:00>

 

朝食を終え、支度をして買い物に向かう。

父は仕事で忙しく、母のおもりは俺の役目だ。

買い物の手伝いを無難にこなしつつ、状況を整理する。

 

どうやら思い出せないのは自分の個人情報だけらしい。

世界の有り様や常識、地理、歴史、有名人等の情報は漠然とだが思い出せる。

その知識と照らしあわせてみるに、この世界は元の世界とあまり変わらない。

 

本屋に立ち寄って高校の公民教育の教科書を読んでみると、社会通念も法律も政治体制も全く一緒。

歴史についても、教科書をパラパラと捲ってみたが日本史は俺が覚えているままだった。

世界地図や世界史の本を見渡しても、主要な国に関する情報の差異はない。

さすがにもともと把握していない東欧や中東、アフリカなど細かい国々に関しては怪しかったが。

 

大幅に異なっていたのは、現代社会における芸能人やスポーツ選手、政治家といった登場人物。

そして企業やスポーツチーム、メジャーな商品のブランドの名前であった。

さらにマイナーな都市や街の名前も微妙に違うところもチラホラ。

 

俺の知らない名詞が街の看板やTV、新聞の紙面に踊りまくっている。

そのギャップを埋めるには大変な労力が必要に思え、暗澹たる気分になる。

 

そして鳴上悠の個人史を俺は何も知らない。

早く福岡の自宅に戻って自分を調べたい。

 

 

 

<YU SIDE 2010年2月末某日 曇 14:00>

 

福岡に戻ってから自分探しのため家にこもることが多くなっていた。

今日も創立記念日で休みにも関わらず、自宅でアルバム整理である。

 

<リリリリリッ>

 

家電が鳴る。

母さんは買い物に出かけていて自宅には自分一人。

 

電話に出る。

 

「はい、鳴上です」

 

<もしもし、私、堂島と申します>

 

若い女性の声。

堂島・・・?

 

あ、母さんの。

 

「母に御用でしょうか?」

 

<もしかして悠君?はじめまして。叔母の千里です>

 

「はじめまして」

 

随分若い声だ。

いや、確か菜々子ちゃんは六歳になったばかりのはず。

年齢的には二十代後半でもおかしくない。

 

まてよ?

叔父の遼太郎さんって今年四十歳じゃなかったっけ?

一回りも下の女性と結婚したってのか?

なんて羨ましい。

ってそれどころじゃなかった!

 

「母は今外出中です。もう少しで帰ってくるはずです。折り返し電話させましょうか?」

 

<あ、いえ、いらっしゃらないならいいんです。夜にまた掛け直します>

 

「では電話があったことだけ伝えておきます」

 

<ありがとう。あ、遼太郎さんから聞きました。高校合格されたんですってね。おめでとうございます>

 

「ありがとうございます」

 

<春から東京の高校なのでしょう。随分近くなりますね。是非稲羽市まで遊びにいらして下さい>

 

そうか。

前に東京で春休みの旅行の話で盛り上がってたな。

その件の電話か。

 

「はい、遼太郎さんや菜々子ちゃんにも一度お会いしてみたいと思ってました」

 

<菜々子も喜ぶと思います>

 

「菜々子ちゃんはまだ保育園ですか?」

 

<そうなの。これから向かいに行かないといけなくて。なので夜にまた電話しますね>

 

「そうですか。そちらはお天気は大丈夫ですか?最近交通事故が多いと聞いてます。【人通りのある道を選んで、車に気をつけて下さい】」

 

<・・・ええ、ありがとう。気をつけます>

 

千里さん。

優しい人柄がにじみ出てくる暖かい声だったな。

社交辞令でもなんでもなく本当に会ってみたい女性だ。

 

 

 

<SYSOP 2010年2月末某日 曇 --:-->

 

本編にない電話での鳴上悠の「神言」により堂島千里の死亡フラグは叩き折られました。

 

堂島菜々子は寂しくありません。

 

堂島遼太郎は荒れません。

 

ハーレムルートに分岐します。

隠しパラメータが開放されました。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識0:ズレてる

勇気1:なくはない

根気1:若者級

寛容1:それなり

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力1:早漏気味

色気1:初恋の味

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年3月末某日>

 

中学を卒業するまでの約二ヶ月間。

正直自分探しで学校どころではなかった。

 

ほとんどのクラスメイトが一般入試組だ。

受験に集中してくれたことがありがたい。

そして幸いなことに鳴上悠は部活には入っていない。

後輩たちの接点も少なく自分の時間が持てた。

 

一般入試の合格発表が終わるとぼちぼち遊びに誘われるようになる。

だが引越し作業が忙しいと全て断った。

 

結局クラスメイトたちとは表面を取り繕うような会話に終始する。

卒業式に連絡先もいくつか貰った。

でもこちらから連絡することはないだろう。

申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

因みに春休みに予定していた稲羽市への旅行は親の仕事の都合で行けなくなる。

菜々子ちゃんは非常に残念がってたらしい。

ごめん、菜々子ちゃん。

 

 

 

<SYSOP 2010年3月末某日>

 

自分探しを経て知識がガッチリ高まりました。

知識のパラメータが"歳相応"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識1:歳相応(↑)

勇気1:なくはない

根気1:若者級

寛容1:それなり

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力1:早漏気味

色気1:初恋の味

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年4月>

 

東京に引っ越す。

そして四月二日に誕生日を迎える。

 

ここがどんなゲームの世界の中か不明だ。

だが緊急の移動手段を確保しておくことは損にはならないはず。

両親に誕生日プレゼントで何が欲しいか問われた俺は、普通二輪の免許取得を許して欲しいと頼み込む。

母親は反対だったが、父の趣味がバイクだったこともあって拝み倒すことに成功する。

 

始業式も無事に終え、学校と教習所に通い始める。

学校での過ごし方については中学時代と同じスタンスを続けた。

部活にも入らず通学一日目から情報収集に勤しむ俺。

中学では自分探し中心だったが、高校では社会常識の部分のキャッチアップに勤しんだ。

 

どんなゲームかわからず、いつ本編がスタートするかもわからない。

平日は学校、週末は教習所に通いながら、とにかく日々出来ることを積み重ねていく。

 

 

 

<SYSOP 2010年4月>

 

社会に関する勉強に熱中し知識がガッチリ高まりました。

知識のパラメータが"広い"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識2:広い(↑)

勇気1:なくはない

根気1:若者級

寛容1:それなり

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力1:早漏気味

色気1:初恋の味

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年5月>

 

結局高校でも自然と人付き合いが悪くなっていた。

それが逆にミステリアスと評判を呼んでしまったらしい。

 

自分で言うのもなんだが、鳴上悠という人物はスタイルも顔も良い。

陰が薄いキャラのはずなのだが、通っている高校の女生徒たちから告白されるイベントが数回発生。

そんな夢のようなシチュエーション、前の世界では考えられなかったことである。

 

最初は嬉しくて舞い上がってしまっていた。

だがすぐに冷静になる。

 

待て。

この娘たちは俺の中身が好きなんじゃない。

鳴上悠という外面に食いついてきているだけなんだ。

所詮は顔なのか。

 

寛容さが"それなり"にしかない俺。

格差社会の不条理さを受け止めきれなかった。

全ての告白を断ってしまう。

 

 

 

<SYSOP 2010年5月>

 

恐れずに女の子たちを振り続け、勇気がガッチリ高まりました。

勇気のパラメータが"頼りになる"に上昇します。

 

女の子に対してストイックになり、反動で色気がガッチリ高まりました。

色気のパラメータが"大人の階段"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識2:広い

勇気2:頼りになる(↑)

根気1:若者級

寛容1:それなり

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力1:早漏気味

色気2:大人の階段(↑)

――――――――――――

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年6月>

 

コンビニでグラビア雑誌を買う。

これもこの世界の情報を得るための重要な作業の一環だ。

 

クラスメイトたちが夢中になってるアイドル。

芸能情報に疎い俺はクラスメイトと話が合わなかった。

クラスで奇異の目で見られてしまっている。

 

彼らとも仲良くして情報を収集したい。

そのために俺はこの娘たちの名前を知っておく必要がある。

決して表紙を飾っているツインテールの女の子の媚びた笑顔に惹かれたわけじゃない。

 

こっちの世界のアイドル業界は粗製濫造ではなく一点豪華主義のようだった。

48人もいるような大人数アイドルグループは存在しない。

その点では非常に助かる。

 

表紙を飾っていた女の子は"久慈川りせ"。

最近売り出し中の若手アイドル一番手だそうだ。

 

そうか。

この娘がクラスメイトたちが今大絶賛している"りせちー"か。

 

確かに可愛い。

俺がいた元の世界にもこんな可愛いアイドルはなかなかいなかった。

 

・・・いいな、この娘。

へぇまだ15歳になったばかりなのか。

ゴクリ。

 

この世界での初めてのオナペットアイドルが決定した瞬間だった。

 

 

 

<SYSOP 2010年6月>

 

クラスメイトたちのアイドル嗜好を受け入れ、寛容がガッチリ高まりました。

寛容のパラメータが"情け深い"に上昇します。

 

毎日りせちーをオカズにマスカキに勤しんだため、精力がガッチリ高まりました。

精力のパラメータが"猿並"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識2:広い

勇気2:頼りになる

根気1:若者級

寛容2:情け深い(↑)

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力2:猿並(↑)

色気2:大人の階段

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年7月>

 

無事普通二輪の免許を取得出来た。

親のバイクを借りて都内を走り回る。

行動範囲が一気に広がった。

 

ステータス画面のHPとMPのステータスからジャンルはRPGゲームだろうと推測する。

何かヒントはないかと都内のゲーム中古店や古本屋をバイクで巡り、ゲームに関する資料を買い漁った。

並行して"りせちー"のグラビアが掲載されている雑誌も収集。

 

なぜかグラビアの購入費の方が多い。

芸能関係の無駄な知識ばかりが増えていく。

 

資料代にグラビア代にガソリン代。

小遣いでは全然予算が足りない。

親を説得してバイトを開始する。

毎朝新聞を配りまくる。

 

 

 

<SYSOP 2010年7月>

 

グラビアアイドルを中心とした現代の芸能人の情報をコンプリートしたことで、知識がガッチリ高まりました。

知識のパラメータが"物知り"に上昇します。

 

新聞配達のバイトで毎朝早起きをし根気がガッチリ高まりました。

根気のパラメータが"ねばり気味"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識3:物知り(↑)

勇気2:頼りになる

根気2:ねばり気味(↑)

寛容2:情け深い

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力2:猿並

色気2:大人の階段

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年8月>

 

熱い想いを込めて書いたファンレターを送った甲斐があった。

"りせちー"の限界ギリギリな1st写真集が発売される。

 

ただ問題は部数限定の即完ですぐに入手不可能になってしまったこと。

ネットオークションでもプレミアムが付いており到底手が出ない有様だ。

 

仕方がないので夏休みを利用して割のいいバイトを始める。

毎朝バイクで江ノ島の海水浴場まで通った。

海の家の売店で炎天下の中かき氷やマズイらーめんを売りまくる。

お陰で肌がコンガリ焼けてしまった。

 

客は全てチャラチャラした若いヤリチン男や、肌も顕な尻軽女たちである。

少々のマナーの悪さも目を瞑れるようになった。

 

大変だったのは尻軽女たちに色目を使われたときだ。

ほぼ間違いなくその女の彼氏に喧嘩を売られることになる。

 

また行儀の悪い陸サーファーが無防備な女性に強引に迫っているところに遭遇することも多い。

そういう場合は仕方なしに助けざるを得なくなる。

場数だけが増えていく。

 

無駄に度胸が付いてしまった。

 

 

 

<SYSOP 2010年8月>

 

ヤリチン男を計10人ノシたことで勇気がガッチリ高まりました。

勇気のパラメータが"怖い物なし"に上昇します。

 

毎朝早くに家を出て炎天下で働き続け、根気がガッチリ高まりました。

根気のパラメータが"筋金入り"に上昇します。

 

無礼な客にも腹を立てずにスマートな対応を心がけ、寛容がガッチリ高まりました。

寛容のパラメータが"太っ腹"に上昇します。

 

肌が焼けて見た目が精悍になり色気がガッチリ高まりました。

色気のパラメータが"見惚れる"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識3:物知り

勇気3:怖い物なし(↑)

根気3:筋金入り(↑)

寛容3:太っ腹(↑)

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力2:猿並

色気3:見惚れる(↑)

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年9月>

 

夏休みのバイト代で"りせちー"の1st写真集がやっと買えた。

これで今までの出版物はコンプリートである。

 

写真集は非常に素晴らしく、抜く回数も大幅に増えてしまう。

 

 

 

<SYSOP 2010年9月>

 

"りせちー"のグラビア雑誌をレアも含めて全てコンプリートしたことで、根気がガッチリ高まりました。

根気のパラメータが"半端ない"に上昇します。

 

"りせちー"で抜いた回数が連続で合計200回を超え、精力がガッチリ高まりました。

精力のパラメータが"悍馬"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識3:物知り

勇気3:怖い物なし

根気4:半端ない(↑)

寛容3:太っ腹

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力3:悍馬(↑)

色気3:見惚れる

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年10月>

 

いつの間にか俺は"りせちー"に完璧にハマってしまったようだ。

雑誌だけでなくグッズにまで手を出してしまっている。

 

ファンクラブにも入会済みだ。

自室には"りせちー"のポスターやカレンダーが貼りまくりである。

 

母の白い目も、今の俺には通じない。

 

 

 

<SYSOP 2010年10月>

 

アイドルオタとしての壁を乗り越え、勇気がガッチリ高まりました。

勇気のパラメータが"冒険者級"に上昇します。

 

アイドルオタへの偏見の目を許し、寛容がガッチリ高まりました。

寛容のパラメータが"菩薩級"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識3:物知り

勇気4:冒険者級(↑)

根気4:半端ない

寛容4:菩薩級(↑)

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力3:悍馬

色気3:見惚れる

――――――――――――

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年11月>

 

"りせちー"の1stライブが決定したというニュースが急遽入ってくる。

クリスマスイブに武道館である。

戦争が始まる。

 

チケット代だけでなく、物販用の資金も用意しておく必要がある。

どうやって資金を確保すべきか頭を悩ませながら街を歩いていると、偶然モデルにスカウトされた。

 

あまり顔出しはしたくなかったが背に腹は変えられない。

ホイホイ付いて行き、メンズ系のファッション雑誌の撮影に参加する。

 

実は"りせちー"に会うためにこのまま芸能界入りも考えた。

だが雑誌発売後にすぐに親と学校にバイトがバレてしまった。

大いに叱られる。

 

 

 

<SYSOP 2010年11月>

 

モデル・雑誌業界の内部情報を入手し、知識がガッチリ高まりました。

知識のパラメータが"博士級"に上昇します。

 

ブランド物の服に触れ、他のモデルのプロの魅せ方を身近で感じることにより、色気がガッチリ高まりました。

色気のパラメータが"香水級"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識4:博士級(↑)

勇気4:冒険者級

根気4:半端ない

寛容4:菩薩級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力3:悍馬

色気4:香水級(↑)

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2010年12月>

 

冬休みに入る。

俺は喜び勇んで"りせちー"に1stライブに参加する。

 

チケットはアリーナの良席を抑えている。

始発で物販にも並び、全商品をゲットである。

モデルで稼いだギャラを全てぶっ込んだ。

 

そして1stライブを思いっきり楽しむ。

"りせちー"のパフォーマンスが素晴らしすぎて大満足な一日だった。

 

生の"りせちー"はとても輝いて見え、自宅に帰っても興奮は収まらない。

いつも以上に自家発電に勤しんでしまう。

 

 

 

<SYSOP 2010年12月>

 

恐れずに全財産を一つのイベントに突っ込んだことにより、勇気がガッチリ高まりました。

勇気のパラメータが"豪傑"に上昇します。

 

冬の寒空の下で六時間以上並んだことにより、根気がガッチリ高まりました。

根気のパラメータが"タフガイ"に上昇します。

 

"りせちー"で抜いた回数が連続で合計500回を超え、精力がガッチリ高まりました。

精力のパラメータが"絶倫"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識4:博士級

勇気5:豪傑(↑)

根気5:タフガイ(↑)

寛容4:菩薩級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力4:絶倫(↑)

色気4:香水級

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年1月>

 

お年玉を全て使ってついに全てのJーRPGのゲームの情報を網羅することに成功する。

 

結論。

こんなステータス画面のゲームはこの世界に存在しない。

ヒントも手がかりも見つからない。

 

全てが無駄な労力だったと悟って結構落ち込んだ。

相当な額のお金と時間を注ぎ込んのだから。

 

得たものと言えば・・・。

ゲーム系の雑誌はアニメやラノベとも親和性が高い。

いつの間にかサブカルチャー系の情報通になってしまっていた。

 

 

 

<SYSOP 2011年1月>

 

過去から現在に至るまでの全てのJーRPGゲームの内容を把握し、知識がガッチリ高まりました。

知識のパラメータが"生き字引"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識5:生き字引(↑)

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容4:菩薩級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力4:絶倫

色気4:香水級

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年2月>

 

バレンタインデーに本命チョコを大量にもらう。

断る作業が大変だった。

 

 

 

<SYSOP 2011年2月>

 

振った女性の数が100人を超え、色気がガッチリ高まりました。

色気のパラメータが"媚薬級"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識4:博士級

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容4:菩薩級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力4:絶倫

色気5:媚薬級(↑)

――――――――――――

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年3月>

 

唐突に父の海外転勤が決まる。

中東のアザディスタンという国らしい。

前の世界にそんな国あったっけ?

 

調べてみると王政で石油も出るそうだ。

中東の他の国家に比べるとかなり宗教に関して寛容らしい。

また新しい油田が見つかり、父の建設会社が開発プロジェクトに関わるとのこと。

 

1年との期限が区切られているが、初の海外長期滞在ということで母も父に付いて行くことになった。

これを機に母は職場復帰をするそうで、現地では父の秘書として活躍するんだと。

来月の上旬に出国だそうで随分慌ただしい。

 

一人この国に残ることになった俺は、稲羽市の高校に転校し、叔父の堂島さん宅に預けられることが決まった。

高校の成績は常にトップクラスだったので、面と向かっては言われてはいなかったが。

俺のアイドル狂いやアキバ通い、怪しげなバイトをどうやら両親は快く思ってなかったらしい。

誘惑の多い東京から俺を引き剥がしたかったようだ。

 

表見え未成年の自分としては両親の意向に従う他選択肢は無い。

と言うか、そんな風に見られていたとはと反省しきりである。

 

因みに結局一回も稲羽市に行けてない。

父が仕事で飛び回っていたせいで、企画する都度予定が潰れた結果である。

千里さんとも去年電話で数回話した程度。

堂島一家の人となりはほとんど把握出来てなかった。

 

話しを聞くと堂島宅に一室与えられるらしいのだが。

問題はここまで集めた"りせちー"関連の本である。

量が多くてさすがに全て持っていくわけにはいかない。

 

考えたのが自炊である。

デジタルデータでも許容しようと割り切った。

ばっさばっさとページを切り落としてタブレット端末用にデータ化する。

(さすがに1st写真集だけは対象外。この時点でプレミアムが付いて6桁超である。)

 

作業中に歴代のオカズ写真に目を通すことになった。

久しぶりにこれで抜いてみるかと休憩が度々挟まってしまう。

作業が遅々として捗らない。

 

裁断されたページの山の隣にティッシュの山も出来上がった。

 

 

 

<SYSOP 2011年3月>

 

自炊した画像データでも許そうと決断したため、寛容がガッチリ高まりました。

寛容のパラメータが"オカン級"に上昇します。

 

"りせちー"で抜いた回数が連続で合計1000回を超え、精力がガッチリ高まりました。

精力のパラメータが"孕ませ王"に上昇します。

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識5:生き字引

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容5:オカン級(↑)

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技0:童貞

精力5:孕ませ王(↑)

色気5:媚薬級

――――――――――――

 

 

<YU SIDE 2011年3月末某日 晴 15:00>

 

この学校に通うのもこれで最後。

ホームルームの時間に転校の挨拶をする。

 

何故かクラスの全員が別れを惜しんでくれた。

女の子の中には号泣してくれている娘も。

みんなから花束やら寄せ書きやら連絡先を書いたメモを強引に押し付けられる。

 

そんなに付き合いが良い方ではなかった自覚があるので困惑しきりである。

どうもしっくりこなかったけど顔には出さず如才なく振る舞う。

立つ鳥跡を濁さずである。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月1日MAN 曇/晴>

 

16歳最後の日を迎える。

どうやら無駄に年を重ねることになりそうだ。

 

結局この一年もゲームらしいイベントは何も起こらなかった。

何か起こるとしたら引っ越し先の稲羽市でのことになるのだろうか。

 

両親からプレゼントとして父のバイクを正式に譲り受ける。

このバイクも稲羽市で活躍する場があればいいのだが。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月2日SAT 曇/晴>

 

誕生日に問題発生。

 

引越しまであと十日足らずというところで、堂島遼太郎氏から連絡が入る。

なんと奥さんの千里さんの妊娠が発覚したため、俺の下宿の件を白紙に戻したいとのこと。

叔父さん、まだまだ若いな!

 

千里さんは既に妊娠三ヶ月目に突入していた。

もともと体が弱く、生理が不順だったところで悪阻が始まって発覚。

菜々子ちゃんを妊娠したときも酷く悪阻に苦しんだらしい。

今回も同じ状況になっており、居候の俺を受け入れる余裕がなくなったのだそうだ。

 

おめでたい話しではあったが、さて困ったことになった。

既に転校の手続きは済んでしまっている。

稲羽市に引っ越さないわけにはいかない。

もちろん堂島さんたちに無理を言うことは出来ない。

 

両親と叔父さんが協議が進む。

結果、堂島宅の近くのアパートもしくは賃貸マンションを借りて、そこに一人暮らしすることになった。

叔父さんも一旦受け入れると言った手前、せめてものお詫びとして知り合いの伝手を頼って良い物件を探すと約束してくれた。

 

一人暮らしか。

逆に気が楽でいい。

ある意味で最高の誕生日プレゼントであった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月8日FRI 晴れ>

 

引越し先の物件が決まったとの連絡が入る。

叔父さんの同僚の持ち家のマンションだそうだ。

この四月に急遽転勤が決まってしまい、まだ借り手が見つからず困っていたらしい。

 

送られてきた写真を見る限り、ファミリー向けで一人暮らしには広すぎる感がある。

だが、借り手が堂島さんの紹介であること、一年での俺の退去が決まっていること。

これらの諸条件から、近隣の一人暮らし用の賃貸マンションの家賃と同程度の金額で貸してくれることが決まった。

地方の家賃って東京に比べると思いっきり安くてビビる。

(因みに叔父さんの職業を聞いたら警察官という答えが返ってきた。)

 

綺麗に使ってほしいとの言付けがあったそうだ。

壁にポスターなどを貼るときは気をつけなければいけない。

 

家具や家電は粗方持ちだされており、冷蔵庫や洗濯機、ジャーに電子レンジ当たりを買い揃える必要がある。

親から一人暮らしの初期費用+家具・家電・食器代として合わせて二十万円渡された。

 

調べてみるとほぼ一年前にJUNES八十稲羽店が近隣にオープンしている。

現地に行ったらさっそく家具・家電を購入しに行こうと思う。

 

嬉しい誤算はテレビを買う必要がない点かな。

なんでも家主、長年愛用していた42インチのブラウン管TVから、引越し+地デジ化を機に液晶TVに買い換えたのだそうだ。

まだ使えるブラウン管のTVがマンションに置きっぱなしになっており、自由にしていいとのことだった。

 

ありがたく使わせてもらおう。

チューナーを付ければ地デジ化にも対応できるし。

ポータブルのDVDプレイヤーを接続すれば大画面で"りせちー"のイメージビデオが楽しめる。

 

引越し業者に連絡。

荷物の配送先に新しく決まった住所を指定。

 

これで全て準備は整った。

今から一人暮らしが楽しみで仕方ない。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 12:00>

 

空港で両親の乗った飛行機を見送る。

さあ八十稲羽に向かおう。

バイクのエンジンを吹かしながら、俺はまだ見ぬ八十稲羽の土地に思いを馳せる。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月11日MAN 雨/曇 13:00>

 

本編(ハーレムルート)がスタートします。

Good Luck!




いきなりパラメータMAXな二周目展開で。そして千里さん生存ルート。


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第01章 愚者

小西早紀は攻略対象ではありません。


<VELVET ROOM 2011年4月11日MAN 雨/曇 --:-->

 

霧の中を疾走するリムジン。

その豪勢な内装の車中、奥のソファに腰掛ける人物が二人。

 

「ようこそベルベッドルームへ」

 

正面に座った長い鼻が特徴の老人が語りかけてくる。

 

「ほう、これはまた素晴らしい定めをお持ちの方がいらっしゃったようだ。ふふふ。私の名はイゴール。お初にお目にかかります」

 

横に控えて座る妙齢の金髪美人秘書が続いて挨拶。

 

「私はお客様の旅のお供を務めて参ります、マーガレットと申します」

 

イゴールがタロットカードを取り出す。

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所」

 

テーブルの上に七枚のタロットカードが並べられていく。

 

「本来は何かの形で契約を果たされた方が来る部屋。むっ!?」

 

その中の一枚をイゴールが捲ろうとした瞬間、タロットは霧散した。

 

「これは・・・」

 

主のタロット占いが初めて失敗する光景を目にし、驚くマーガレット。

 

「ほうほう、そういうことですか。老人の出番など無いと。では仕方ありますまい」

 

パチりとイゴールが指を鳴らすとリムジンが静かに停車した。

 

「邪魔な私は退散致しましょう。後のことはこのマーガレットに任せると致しましょうか」

 

立ち上がったイゴールがシルクハットを冠る。

 

「あ、主・・・」

 

突然のことに動転するマーガレットに一言声をかける。

 

「ではマーガレット。この方の性欲が暴走せぬよう、その躰を使ってしっかりと発散させておやりなさい」

 

イゴールがマーガレットの躰を下から上まで嘗めるように凝視し、うむうむと頷いた。

 

「おっといけない。ソファでは何かと不自由でしょう」

 

再びイゴールがパチりと指を鳴らすと、リムジンの内装が一瞬で様変わりして広いベッドが現れる。

 

「やはり初めてはベッドの方がよろしいのではないですかな?」

 

そのベッドの上には、呆然とした表情のマーガレットが横たわっていた。

 

「では、ごゆっくり。ふふふ」

 

そう言ってイゴールはリムジンから降りていった。

 

 

 

<VELVET ROOM 2011年4月11日MAN 雨/曇 --:-->

 

イゴールから供物としての役割を押し付けられたマーガレットが覚悟を決める。

 

「主の命令は絶対です。不肖の身ですが、お客様の初めてのお相手を誠心誠意勤めさせて頂きます」

 

ベルベッドな手触りのベッドの上で膝を付き、三つ指をついて初夜の挨拶をするマーガレット。

 

「こういうことは私も、は、初めてですので至らぬ点があるとは思いますが、ご容赦願います」

 

顔を赤らめながら青いスーツのボタンを一つ一つ外していき、白く輝く肌を曝していく。

 

「その、真に申し上げにくいのですが・・・優しくして、下さいませ」

 

黒いストッキングを脱ぎ捨て、下着姿になったマーガレットが恥ずかしげに誘いの言葉を紡いだ。

 

「あっ、ああーーーっ」

 

やがて悪路でもないのに霧の中を走るリムジンは激しく揺れ始める。

 

 

 

<VELVET ROOM 2011年4月11日MAN 雨/曇 --:-->

 

事を終えて身繕いするマーガレット。

 

「とてもご立派でしたわ。お客様」

 

ベッドの白いシーツには赤いシミが残る。

 

「いっぱい出されましたね。お客様の雄々しいマーラ様がまだ私の中にいるみたい」

 

処女を散らされたばかりの秘唇に手をあて、垂れてくるペルソナ液を抑えている。

 

「またいらして下さい。次にいらしたときまで、私ももっと男と女の営みを勉強しておきます。んっ」

 

不意に顔を寄せてキス。

 

「フフッ。では再びお会いするそのときまで。ごきげんよう」

 

 

 

<SYSOP 2011年4月11日MAN 雨/曇 --:-->

 

マーガレットで童貞を捨てたため、性技がガッチリ高まりました。

性技のパラメータが"初心者"に上昇します。

 

――――――――――――

鳴上悠

70/70

41/41

 

通常パラメータ

知識5:生き字引

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容5:オカン級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技1:初心者(↑)

精力5:孕ませ王

色気5:媚薬級

――――――――――――

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 15:00>

 

うぉっ?

凄いエロい夢を見ていた気がする。

ヤバッ。

 

慌てて股間を確認する。

夢精はしてないようだ。

良かった〜!

 

しかし凄かったな。

金髪の美女とあんなことやこんなことまで・・・。

 

あれ?

金髪の美女?

どんな夢だっけ。

・・・まあいっか。

 

首都高から中央自動車道で一路山梨県へ。

こちらは朝から雨模様だったようだが既に雨も上がっていた。

渋滞も無く快適なツーリングとなる。

約束の時間まで結構あったのでサービスエリアのベンチで一休み。

 

春の午後の陽気についウトウトしてしまっていたようだ。

そろそろ稲羽市に向かおう。

 

でもなんだろう。

凄くスッキリした感がある。

腰回りが特に。

オナ禁後に出しまくった後のような感覚だった。

 

不思議に思いながらも俺はバイクを駆り続けた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 15:50>

 

<ドッドッドッドッドッ、カチリ>

 

ここが八十稲羽駅か。

駅前にバイクを止める。

見事な地方の駅だった。

駅前は何もない。

 

「おおーもう着いたか。やっぱバイクだと早いな」

 

小さな女の子の手を引いた、スーツ姿の渋い男性が声を掛けてきた。

この人が叔父の堂島遼太郎さんか。

そして菜々子ちゃん。

可愛らしい女の子だった。

 

菜々子ちゃんは人見知りが激しいらしい。

上手くコミュニケーションが取れなかった。

しゃがみ込んで頭を撫でてあげたら、頬を染めて叔父さんの影に隠れてしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 16:00>

 

まずは堂島邸に移動だ。

千里さんにもきちんと挨拶をしよう。

 

バイクに跨って堂島さんの車の後を追う。

信号で止まったタイミングで道路沿いの商店を観察する。

ディスプレイのガラスにりせちーのポスターが張ってあった。

 

うぉ、あれ欲しい!

そちらに意識が取られてしまう。

そのせいで信号が青になったのに気づくのに遅れる俺。

 

叔父さんの車に置いてかれそうになった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 16:15>

 

どうやらガソリンスタンドに寄るようだ。

ついでなのでこちらも給油しておこうか。

 

車から菜々子ちゃんが降りてきた。

トイレに行きたいらしい。

 

ヘルメットを取る。

するとガソリンスタンドの店員の兄ちゃんが声をかけてきた。

 

「ちょっと待ってて。こっち入れ終わったらそっちやるんで」

 

店員は一人のようだ。

叔父さんの車への給油が終わるまで待つ。

 

お、あれはアルバイト募集の張り紙。

田舎のガソリンスタンド。

時給いくらだろう。

 

「ねぇ、もしかしてバイト興味あるの?」

 

給油を終わったらしい。

店員が話掛けてきた。

煩わしかったので適当に応対してやる。

 

「・・・ええ。何をするにしても軍資金は必要でしょうから」

 

こちらのバイクへの給油に取りかかる店員さん。

 

「へー。キミ高校生くらいだよね。この町、何もなくてビックリするでしょ。実際バイトでもしないと退屈すると思うよ」

 

何だろう。

初対面なのに妙に馴れ馴れしい。

田舎の狭いコミュニティだとこれが普通なのか?

 

「ガソリン代だって店員価格になるしさ。バイトの候補に入れといてよ。よろしく」

 

右手を差し出される。

無視するのも業腹なので戸惑いつつも握り返す。

 

<<ドクン>>

 

一瞬心臓が跳ね上がる。

なんだ?

 

「そっちはまだ終わってないのか?」

 

叔父さんが戻ってきた。

バイトのお兄さんは仕事に戻っていく。

今の感触はなんだったのだろうか?

 

・・・まさか?

 

ひ、一目惚れ??

 

そんな馬鹿な。

俺がホモだと!?

ありえん。

 

慌てて店員のお兄さんを追う。

 

「すみません!【もう一度握手して下さい!!】」

 

「・・・え、な、何?」

 

警戒した表情を見せるバイトのお兄さん。

構わずその手を取って握る。

 

胸がドキドキ・・・しない。

ホッ。

 

「ありがとう!」

 

まさかのホモ疑惑が晴れる。

俺はそのままバイトのお兄さんの手をブンブンと振り回してしまった。

 

「・・・お兄ちゃん何やってんの?」

 

菜々子ちゃんの無垢な目が痛かった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 16:30>

 

堂島宅に到着する。

ニ階建ての広い家だ。

 

「はじめまして悠君」

 

初めてとなる千里さんとの会合。

想像通りの美人だった。

菜々子ちゃんは母親似のようだ。

良かったな、菜々子ちゃん。

 

聞いていたとおり悪阻が酷いのか若干顔が青白い。

無理をさせてはいけないと思ったが、せめて夕飯は一緒にということでご相伴に預かることにする。

 

と言っても出前の寿司だったが。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 18:00>

 

食事中に叔父さんの携帯が鳴る。

事件らしい。

刑事は大変だ。

 

「食べ終わった後、マンションに案内する予定だったんだが。これが鍵だ。それと地図はこれだ。ここから歩いて10分ほどになる。すまんが一人で行ってくれ。引越しの荷物はもうある程度荷解き終わらせているから。千里、あとは頼んだぞ。何かあったらすぐ電話しろ」

 

慌ただしく叔父さんが出て行く。

 

「悠、外は雨だぞ!危ないから歩いていけ!傘適当に使っていいからな!バイクは後で取りに来い!」

 

「お父さん行ってらっしゃーい」

 

<ブロロロロー>

 

「もう、いっつもあーなのよ」

 

「はぁ」

 

刑事の奥さんは大変だな。

でもやることやってるんだよな。

千里さんの細い腰をチラ見。

 

「エブディ〜ヤンライ、じゅーねーす」

 

菜々子ちゃん早く大きくなんないかな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 19:00>

 

叔父さんの分も寿司をガッツリ頂いてから堂島邸を辞去する。

千里さんが明日の朝ご飯にとチャーハンを持たさせてくれた。

美味しく頂きます。

 

外は結構な本降りだった。

天気予報もたまには外れる。

雨に濡れないように借りた傘をさしてマンションに移動する。

 

マンションは稲葉中央通り商店街の裏手にあった。

堂島宅よりも転校先の八十神高等学校に近いようだ。

八十神高校はバイクでの通学は禁止されている。

こちらから通った方が朝は楽なようで正直ありがたい。

 

部屋は五階建てのマンションの四階の奥。

日当たりもまずまずの様子。

 

部屋を見て回る。

3LDKで一人で暮らすには広すぎるくらいだ。

聞いていたとおりLDKには42インチのブラン管が鎮座している。

 

LDKと連結している和室には布団袋が置かれていた。

しばらくはここで寝ることになるだろう。

 

小さい方の洋室には東京から送った学習机と本棚が設置されている。

勉強部屋として使うべきなんだろうが物置になりそう。

 

使い道が決まっていないのが広い方の洋室だ。

普通なら夫婦のベッドルームになる場所なんだろうけども。

引越し支度金の二十万、節約してベッドでも買おうかな。

 

水回りも広々。

バスルームは洗い場も含めてかなりゆったりなサイズだった。

 

新しい住居に満足した俺はLDKに戻り荷解きを始める。

これからここで一年か。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月11日MAN 雨/曇 24:00>

 

気がついたら霧の中にいた。

 

荷解きに疲れて寝落ちしてしまったようだ。

しかし夢にしてはやけにリアル。

霧の向こうから声が聞こえる。

 

『お前は何者だ・・・』

 

こちらを警戒している凄みを含んだ声。

 

ピンッときた。

ついに始まったんだな!

俺のゲームが!!

理由もなくそう確信する。

 

この世界はRPGゲームを模して作られている。

そのゲームが今やっと始まった。

恐らくこの霧の中のイベントはゲームの導入部分なんだろう。

一年間も待たせられたんだ。

はりきって行くぞ!

 

『このプレッシャー・・・ありえん・・・』

 

声に向かって走る。

すぐに扉に突き当たった。

速攻突入。

 

霧の中に誰かの影が。

 

『お前は・・・真実など求めてないのだな・・・』

 

強烈な敵意を感じる。

これが敵とのファーストコンタクトになるのか。

よしいくぞっておおっ?

 

そう言えば俺何も持っていない。

何か武器になるものないかな。

バタバタと学生服のポケットを探る。

当然武器になりそうなものは何もない。

困った。

 

ん、待てよ?

ここがゲームの中の世界というのなら。

もしかして武器を召喚できる能力があるかもしれない。

 

「【来い!エクスカリバー!!!】」

 

気取ったポーズを取って武器の名前を叫んでみる。

すると。

 

<ぴかっーーーーー!>

 

天からの光が霧を裂き俺を照らす。

そして光の粒子が手に集まり。

気がつくと見事なエクスカリバーが俺の手に握られていた。

 

おおっ!

やってみるもんだな!

そうかー。

この世界は想いの力が形になるんだな!

 

『!?』

 

俺が武器を召喚したことに霧の向こうの影は驚いているようだ。

隙あり!

 

「ていっ」

 

駆け寄ってエクスカリバーで斬りかかる。

霧を切り裂き聖剣が影に迫る。

 

<ザシュッ!>

 

『・・・っ!?』

 

影の横を駆け抜けながらの斬撃。

手応えあり!

 

「安心しろ、峰打ちだ」

 

カッコつけてみる。

嘘です。

しっかり手応えありました。

 

首を捻って肩越しに背後を確認。

 

見えない・・・。

霧が深過ぎる。

ええい邪魔だ!

 

聖剣の力を開放。

 

「おおおおっ、エクスカリバー!!!」

 

『ーーーッ、ーーー、・・・、・・、・』

 

振り向き様の返しの一刀で一気に霧を消滅させる。

すると体育館程度の広さの殺風景な部屋に俺は立っていた。

ここはどこなのだろうか。

 

おっとそうだった。

切り倒したはずの敵の姿は、と。

あれ?

どこにもいない・・・だと!?

 

クソッ。

逃げられたか!

せっかく待ち焦がれていた敵に遭遇したのに!!

 

部屋の外か?

扉に向かって駆け出し、部屋の外に勢い良く飛び出る。

そこで意識が途切れた。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月12日TUE 雨/曇 --:-->

 

国譲りが発動しました。

稲羽市の支配権は鳴上悠に譲渡されました。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 7:30>

 

気がついたら朝だった。

 

くそっ。

あの異世界から放り出されたらしい。

手がかりは何も無い。

どうすべきか・・・。

 

しかし俺をこの世界へ引き込んだ黒幕がこの街にいることは確かだ。

今はその正体を追うことは出来ないが、いずれまた接触してくるだろう。

焦るな。

自分に言い聞かせる。

 

そして今日は八十神高等学校への初登校日。

初日からサボるわけにもいかない。

方針はまだ定まっていないが、まずは学校だ。

昨日千里さんから貰ったチャーハンをかっくらって家を出る。

 

昨晩からの雨はまだ止まない。

堂島邸にバイクを取りに行くのは帰りだな。

傘をさして歩いて登校する。

 

登校途中、傘さし運転でヨロヨロと進む学生に遭遇。

危ないと思ったら案の定ゴミ捨て場に突っ込んでいった。

 

そっとしておこう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 8:35>

 

出っ歯の担任に連れられて二年二組に入る。

 

「転校生を紹介する。爛れた」

 

「先生、【自分で挨拶します】」

 

「・・・う、うむ」

 

「鳴上悠です。東京から来ました。趣味は・・・」

 

やはり新天地だし最初はスマートにいかないとな。

自分から自己紹介してみた。

クラスがざわめいているがどうしたんだろう?

 

俺の席はどこになるのかな。

ミドリ色のジャージの上着を着込んだショートボブの女の子の隣の席が空いていた。

なかなか可愛い娘だ。

よし、決めた!

 

「先生、【自分の席、あそこにして下さい】」

 

「・・・いいだろう。さっさと席に着け!」

 

先生の気が変わる前にさっさとその席に移動。

席に座るとさっきチェックした隣の娘が話かけてきた。

 

「モロキン黙らせるなんてやるじゃん。あの先生諸岡金四郎っていうの。通称モロキン。普段はもっと煩いんだよ」

 

年頃なのに異性でも話しかけやすい雰囲気がある女の子だった。

 

「へー。それより君の名前は?」

 

「え、あたし?あたしは里中千枝」

 

何か武道でもやっているのだろうか。

椅子に座っている状態からでも体幹が鍛えられているのがわかる。

躰のラインが引き締まっている。

意外なところで磨けば光る逸材がいるものだと感心する。

 

「そこ、静かにせんかーーーっ!!」

 

あ、確かに煩いな。

腐ったミカン帳ってなんだ?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 10:30>

 

退屈な始業式を通して二年二組のクラスメイトを一人ひとりチェック。

 

隣の里中千枝。

喜怒哀楽が顔に出やすい性格のようでコロコロと表情が変わる。

見ていて楽しい。

 

感情を顔に出し過ぎてるせいであまり目立ってないが、よくよく見ると顔立ち自体はかなり整っていることがわかる。

もう少し落ち着きが出てくれば、とんでもない美女に化けるんじゃなかろうか。

 

里中さん以外では・・・。

斜め前の席に座っていた女生徒が特別目を引く。

 

黒髪ロングのお嬢様然とした娘。

天城雪子という名前らしい。

 

目にも鮮やかな赤いカーディガンを羽織っている。

一応学校指定の服ではあるが、着ているのは彼女一人。

かなり目立っていた。

 

ベクトルは違うけれどあの"りせちー"に匹敵する美形だ。

礼儀正しい所作も相まってまさしく学園のマドンナという感じの女の子だった。

 

格式の高い場所で客商売に従事している者特有の立ち振舞。

それをナチュラルに行なっているところを見ると、高級旅館の跡取り娘というあたりだろうか。

確か稲羽市には温泉宿も多くあったはず。

 

里中千枝と天城雪子は親友のようだ。

美人コミュニティってやっぱりあるもんなんだな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 12:40>

 

今日は始業式ということで午前中で学校は終了である。

最初から最後まで煩わしいモロキンから開放されるとドッとクラスメイトが押し寄せきた。

 

どこに住んでるの、彼女はいるの、好きな食べ物は、部活は何に入るの。

質問攻めに会い困惑する。

 

「ほらほら鳴上君困ってるじゃない。散った散った!」

 

里中さんが助けてくれる。

 

<ピンポンパンポン>

 

突然の校内放送。

 

<全校生徒にお知らせします>

 

学区内で事件が発生したようだ。

放送は落ち着いて速やかに下校するように呼びかけていた。

 

クラスがざわめいている。

まさか昨日の敵の仕業ではないだろうな。

これは調査だ。

 

席を立つ。

すると天城さんと一緒の里中さんが声を掛けてきた。

 

「鳴上君、一人で帰るの?良かったらあたしたちをエスコートしてくれないかなーなんて。なんか物騒だしさー」

 

まいったな。

調査もそうだけど、バイクも取りに行かないといけないんだけど。

 

「千枝大胆過ぎ・・・。いきなりごめんね」

 

「べ、別に逆ナンとかじゃないって!一緒に帰るついでにちょっと話を聞きたいなーって。あ、こっちはアタシの親友の天城雪子ね」

 

女の子だけで下校するのが心細いのは確かだろう。

この世界に来て「あ、いいな」とマーラ様が反応した生身の女の子はこの娘たちが初めてだ。

断れなかった。

 

ごめん"りせちー"。

浮気しちゃいそうです。

 

「いいよ。一緒に帰ろう。改めてよろしく。鳴上悠です」

 

お近づきの印にスッと握手を求める。

二人とも少し戸惑った様子だったが気軽に応じてくれた。

 

「あ、うん。そのぅ、あはは・・・。よ、よろしくっ」

 

「・・・天城雪子です」

 

里中さんの手は握りやすくて温かみがあった。

天城さんの手は嫋やかで少しひんやりしている。

 

あまり男性に触れた経験がないのだろう。

二人とも頬を赤らめて可愛い。

どちらもとてもいい匂いがした。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 12:45>

 

二人と一緒に教室を出ようとする。

そのタイミングで男子生徒が里中さんに声をかけてきた。

 

後ろの席でずっと寝ていた男子生徒。

朝に自転車でゴミ集積所に突っ込んでた生徒だった。

確か花村という名前だったか?

 

里中さんから借りていたDVDを返却に来たらしい。

パッケージを里中さんに押し付けてサッと去ろうとする。

 

不審に感じた里中さんがその花村君の脚をサッと引っ掛ける。

そしてパッケージを開けると中身のDVDが割れていた。

 

「な、何よ、これーっ!?割れてんじゃん!」

 

朝の事故が原因のようだ。

憤慨する里中さんに詰られる花村君。

 

「バイト代が入るまで待ってくれ〜」

 

倒れたまま里中さんの罵倒を甘んじて受け入れていた。

悪い男ではないみたいだが・・・。

 

そっとしておこう。

天城さんと連れ立って先に外に出る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 12:50>

 

元気の良い里中さんはポンポンといろんな質問を投げかけてくる。

それをお淑やかな天城さんが窘めつつもしっかりフォロー。

対照的な二人との会話はとても心地良かった。

 

ん?

視線を感じる。

校門の影。

誰かいる。

 

男子生徒がこちらを伺っていた。

制服が違う。

他校の生徒。

狙いは俺か。

いや違う。

視線の行き先は・・・。

天城さん?

 

確かにこれほどわかりやすい美人だ。

恋わずらいをしている男子の一人や二人いてもおかしくはない。

天城さん自身は気づいていないみたいだけど。

 

だが粘着質な視線にイヤなものを感じる。

悪質な部類なのかもしれない。

スッと視線を遮るように天城さんを守るポジションに入る。

俺が守ってやらないと。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 12:55>

 

下校中いろいろな話しをした。

 

天城さんの自宅の"天城屋旅館"。

里中さんの話では"隠れ家温泉"と言われるほどの稲羽市の名所だそうだ。

やっぱりな。

 

「雪子って色白で美人だと思わない?」

 

里中さんにあけすけに聞かれてしまう。

 

「そうだね」

 

素直に応えると天城さんが赤くなった。

里中さんによると天城さんは学校でもかなりモテるらしい。

なのに何故か未だに彼氏ゼロだそうだ。

 

「じゃあ俺が立候補しようかな」

 

軽く探りを入れてみるとさらに赤くなって黙ってしまう。

この娘は恥じらうと凄く淫靡なエロスを感じさせるな。

これも人気の秘密の一つか。

 

「うぉおおおお、やっと雪子に春が!」

 

俺の大胆発言に興奮する里中さん。

そんな里中さんに対してちょっとだけ訂正。

 

「でもさ。里中さんだって天城さんと同じくらい魅力的だと思うよ」

 

心からの言葉を連ねる。

 

「えぇ!?」

 

「そうよ!千枝は私なんかよりも断然可愛いんだから!」

 

戸惑う里中さんとは対照的に天城さんが激しく同意してくる。

 

「千枝の良さをわかってくれるなんて・・・」

 

里中さんを褒めたつもりが、天城さんの方が感動しているようだ。

同士よ!という感じでこちらを見つめる目が熱い。

どんだけ里中さんが好きなんだこの娘。

 

これを機に二人との距離感が逆転した。

 

里中さんはテレが入ったのか俺から少し距離を取ってしまった。

話しかける度に赤くなってしどろもどろな応対に終始。

 

逆に天城さんは仲間意識が働いたせいか積極的に寄り添ってくる。

話も弾んでコロコロと笑顔を見せるようになる。

 

それぞれの違う一面が見れてとても楽しい。

 

一つ言えることは二人ともとってもいい娘だということだ。

この娘たちならば本気のお付き合いを考えてもいいのかもしれない。

少しだけそう思えた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月12日TUE 雨/曇 13:15>

 

偶然事件現場を通りがかる。

これ幸いと野次馬のおばさんたちの会話から情報収集。

 

最近不倫騒動で騒がれてた女性キャスターの死体が見つかったとのこと。

それもとても奇妙な状況で発見されたそうだ。

なんでも一般住宅の屋上アンテナに引っ掛けられた状態で死んでいたとか。

 

確かにどうやってアンテナまで担ぎあげたのか気になる話ではある。

もっと詳しい状況を聞き出そうとしたら・・・。

現場検証中の叔父さんに見つかってしまった。

 

「ウロウロしていないでさっさと帰れ!」

 

叔父さんに追い返されてしまう。

 

仕方がない。

二人の娘さんたちを自宅まで送り届けることを優先しよう。

先ほどとは一転して不安げな表情を浮かべているし。

俺は事件現場から立ち去ることを選択した。

 

「オロロロロロ」

 

道端で吐いている新米刑事さんはそっとしておこう。

 

まずは天城さんを自宅まで送る。

初めて見たが、天城屋旅館は大層な老舗だった。

 

次は里中さん。

普通を絵に描いたような中流家庭の一軒家だった。

 

「またね」と挨拶をし合い、それぞれと別れる。

 

さて。

堂島邸にバイクを取りに行こう。

それから事件についての情報収集だ。

叔父さんにバレないように・・・。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月13日WED 曇 8:00>

 

結局昨日は有益な情報を何も得ることが出来なかった。

頭を悩ませつつ登校する。

 

通学路で花村君がバケツに上半身を突っ込んで倒れていた。

また自転車でコケたようだ。

あまりにも哀れな光景だったので助けてやる。

 

「ありがとな!!」

 

昨日の里中さんのDVDを割った件といい随分お茶目な性格のようだ。

改めて自己紹介し合い一緒に登校。

 

この街の名物がビフテキであることを登校中に教えてもらった。

そして助けたお礼にそのビフテキを奢ってもらうことに。

 

「その肉の話、私も乗った!」

 

振り向くと昨日の割れたDVDのパッケージをひらひらさせてる里中さんの姿が。

 

「これのお詫びの印に私にもビフテキ奢ってよ」

 

結局三人で放課後JUNESに行く約束をする。

ちょうどいい。

家電を見に行こう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月13日WED 曇 16:00>

 

JUNESのフードコートで三人でおやつの時間。

天城さんも誘いたかったが、今日は自宅の旅館の手伝いで無理なんだそうだ。

旅館近くまで天城さんを送った後、三人でJUNESに向かう。

 

「ちょっと何これ!たこ焼きじゃん!」

 

「金貯めてる最中なんで、ビフテキ二枚は無理!」

 

「嘘でしょーっ!?100%肉の口になってたのに!」

 

里中さんと花村君の口喧嘩を尻目に、カウンターでビフテキを受け取って席へ運ぶ。

 

「はい、ビフテキ」

 

「え、鳴上君?」

 

驚いた表情を見せる里中さん。

 

「お近づきの印に」

 

「そんな、悪いよ〜」

 

「じゃあ半分っこしよう。この町の名物なんだろ。俺も食べてみたかったから」

 

「え、う、うん」

 

たこ焼きの熱さに悶絶している花村君は放っておく。

里中さんの方に椅子を寄せて二人で一つの皿を突っつく。

ちょっと距離が近すぎるかな。

ビフテキの臭いの中に隠れて、里中さんの爽やかな体臭が微かに香る。

 

里中さん、照れてるのか頬を染めて箸が進まないみたい。

可愛い反応だ。

 

「里中さんってお肉好きなの?」

 

「え、えへへ。肉好きの女子って引いちゃうでしょ」

 

「そんなことないよ。可愛いと思う。凄く親しみやすい感じを受けるし。はい、これも食べていいよ」

 

「て、照れちゃうな。あ〜、そうだ!な、鳴上君って最近ウワサのマヨナカテレビって知ってる?」

 

「いや。今流行ってる深夜番組のタイトルとか?」

 

ギルガメッシュナイトとかそっち系のやつだろうか。

最近TVはとんと見ないのでわからないな。

 

「全然ちげーよ。雨の夜の午前零時にだったっけ?消えてるTVを一人で見るってやつ」

 

花村君が話に割り込んできた。

 

「画面に誰か写ったらさ。それが自分の運命の相手らしいよー。今晩雨らしいし鳴上君も試してみない?」

 

「アホくさ。よくそんな幼稚なオカルトネタで一々盛り上がれるなー」

 

花村君は全く信じてないようだ。

里中さんを鼻で笑ってる。

 

「よ、ようちですって!?」

 

「お前さぁ。そんなんだから今まで一人も彼氏できねーんだよ。鳴上にも嫌われるぜ」

 

「え、そうかな・・・」

 

怯えた目でこちらを伺ってくる里中さん。

安心させるように微笑んであげる。

 

「面白そうだね。今晩試してみようかな」

 

「そ、そうだよね!良かった〜」

 

里中さんの顔に笑みが戻る。

よし。

これで里中さんとの距離がまた縮まったな。

 

というか花村君。

いつの間にか呼び捨てになってるぞ。

馴れ馴れしくてウザい。

 

もういいや。

こちらも花村と呼び捨てにしてやる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月13日WED 曇 16:15>

 

「じゃあさ。電話しながら一緒に同じ時間にマヨナカテレビを見ようよ。電話番号とメールアドレス教えてくれないか」

 

「え!?あ、あのえとその。ちょちょっと待ってね」

 

イソイソと携帯を取り出す里中さん。

これで里中さんの連絡先をゲットだぜ!

 

この街に着てから花村に次いで二人目。

もっとも花村の連絡先は強引に押し付けられたものであったが。

 

その花村。

俺と里中さんが良い雰囲気になりかけてる中、空気を読まず突如立ち上がる。

 

「お、小西先輩だ!」

 

誰か来たようだ。

振り返るとバイトの女性がこちらに近づいて来ていた。

ソバージュでスラリとした体型をしている女の人だった。

 

ブンブンと手を振り回しながら、花村がその小西先輩とやらに駆け寄っていく。

犬みたいだな。

熱心に話しかけている。

 

「あの人、うちの学校の一個上の小西先輩っていうの。ほっそりしてて綺麗な人でしょ」

 

確かに細面の美人だ。

陰のある雰囲気があり、系統としては天城さんと同じ方向性になる。

八十稲葉中央商店街にある酒屋の娘さんとのこと。

 

「彼女だと思った?そうだったらいいんだけどね〜。まだまだただのバイト仲間って感じみたい」

 

実は花村も半年前にこの街に転校してきたらしい。

なんとこのJUNESの八十稲羽支店の支店長の息子さんなんだそうだ。

彼自身父親の手伝いがてらここでバイトしているようで、そこで小西先輩と知り合ったと。

それで猛烈アタック中というところか。

 

その小西先輩が俺に話しかけてくる。

 

「ねぇ君。君も転校生なんでしょ?」

 

「はい。鳴上悠といいます。はじめまして」

 

ん?

なんだろう。

小西先輩、表情が冴えないな。

 

「ハナちゃん、友達少ないから仲良くしてやってね。でもちょっとお節介過ぎるとこあるから、ウザかったらウザいって言いなね」

 

「ええ、もう若干」

 

おっといけない。

無理しているように見える小西先輩に気を取られて、思わず本心が溢れ出てしまった。

 

「鳴上、冗談キツいぞ〜」

 

すまん、花村。

冗談ではないんだ。

 

「そろそろ休憩時間終わりね。行かないと。またね」

 

挨拶して去っていく小西先輩。

やはり疲れているのだろうか。

その足取りは重く見えた。

 

「あ、先輩!この間の映画のチケット!」

 

「ああ、うん。いいよ。後で空いてる休みの日連絡するね」

 

花村が慌てて声をかけ、返事を貰って激しくガッツポーズをしている。

 

「なになになに?何の話?」

 

里中さんの問いかけに花村は満面のピースサインで振り返る。

そして映画のチケットらしきものを誇らしげに見せつけてきた。

どうやらデートのお誘いをOKして貰えたと思ってるようだ。

 

しかし小西先輩のあの返事は遠回しな断りの合図なのだが・・・。

哀れ花村。

 

だが良かった。

花村のターゲットは里中さんと天城さんではないということが確定した。

これで彼とは良い友達になれそうだ。

 

彼には是非あの小西先輩と懇ろな仲になってもらいたい。

そうすればいろいろと邪魔されることはなくなる。

俺も出来る限り応援しよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月13日WED 曇 16:30>

 

里中さんを連れ立って花村の案内でJUNESの中を回ってみる。

一人暮らしをしていると打ち明けたら、里中さんが興奮していた。

 

「いいな〜、一人暮らし憧れるよね〜」

 

「え〜、面倒なだけだと思うぜ〜」

 

うっさい花村。

さっさと案内しろ。

 

家電売場で冷蔵庫・洗濯機・炊飯ジャー・電子レンジ・掃除機を順次見てみた。

家電売場担当のバイトの花村の話では、企画モノの一人暮らしセットというのがオススメらしい。

型落ちの製品ばかりになるが、もう四月も半ばとなって在庫が余っており安く出来るのだそうだ。

 

里中さんの意見も聞いてみて機種や色を選ぶ。

配送日は土曜日の午後に設定する。

当初の予算よりもかなり節約できた。

これならベッドも買えそうだけどそれはまた今度にしよう。

 

後は・・・。

そうだ!

夕飯の惣菜弁当を買わなきゃ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月13日WED 曇 18:40>

 

自宅で一人弁当を突っつきながらTVを見る。

ニュースでアナウンサー山野真由美(27歳)の死体の第一発見者のインタビューが流されていた。

ボイスチャンジャーで声は変えられていたが、あの髪型と口元は昼間会った小西先輩のものだった。

そうか、それで元気が無かったのか。

 

しかし、この山野アナの殺人事件。

あの霧の世界で出会った謎の声と関係があるのだろうか。

 

そしてこの街で噂になっているマヨナカテレビとは?

コメンテータが夢中になっている天城屋旅館の女子高生女将とは?

謎は深まるばかりだ。

 

あ、そうだ。

里中さんから電話番号とメールアドレス貰ったんだった。

早速電話してみようかな。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 0:30>

 

「あはははは、へぇ天城さんってそんなところがあるんだ。意外だな」

 

気がつけばもう時計の針はとっくに深夜零時を回っていた。

里中さんとの電話越しのおしゃべりはとても楽しく、時間を忘れて話し込む。

この世界に来てから同年代の女の子とこんなに話し込んだのは初めてだ。

やはりこの接し易さが里中さんの魅力だと思う。

 

あれ?

何か忘れているような?

 

<じゃあもう遅いし、これで切るね。また明日学校で。おやすみ!>

 

「ん?ああ。おやすみなさい。里中さん」

 

電話を切ってから気づく。

俺たちマヨナカテレビ見忘れてんじゃん!

 

はあ、まあいいや。

また明日だな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 15:45>

 

「マジかよ。電話に夢中になって見忘れただって?」

 

「「エヘヘヘヘ」」

 

放課後に教室で昨晩の失敗のことを話したら、花村に呆れられてしまった。

 

「俺は見たぜ。なんか人影みたいなのが映ってた。天城は?」

 

「んー、その時間私は仕事してたから」

 

・・・午前零時過ぎに仕事って。

突っ込むべきか悩んでいたら、時計を見た天城さんが席を立った。

 

「ごめんね。そろそろ私帰らなきゃ」

 

「家の手伝い?今って旅館忙しい時期だっけ?」

 

里中さんが不思議そうに問いかける。

確かにもう春休みも終わって繁忙期じゃないと思うが・・・。

 

「いろいろあってお母さんが体調崩してるの。ウチの旅館、私がいないと全然ダメだから」

 

「そうだったの!?雪子無理してない?」

 

「大丈夫」

 

ああ、そうか。

昨日のニュースでコメンテータが言っていた女子高生女将って天城さんのことか。

次期女将ともなると陣頭指揮まで任せられているんだろうか。

この歳で大変だな。

 

「天城さん、送ってくよ」

 

「そんな悪いよ」

 

「いいから」

 

最近何かと物騒だ。

少しでも彼女の心配事を減らして上げないと。

この前校門で見かけた男子生徒の件もあるし。

 

「じゃあねー。あたしは家族にお使い頼まれてて。ちょっとJUNESに買い物しに行かなきゃいけないんだ。花村付き合ってよ」

 

「えー何で俺がー」

 

「ははは、じゃあ花村。俺も後でJUNESに行くのでよろしく」

 

戯れてる二人を置いて、俺は天城さんと一緒に教室を出た。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 16:00>

 

やはりいるな。

帰宅中ずっと天城さんを追う視線を感じていた。

これは本格的にストーカーかもしれん。

 

「気をつけた方がいい。恐らく君はストーカーに狙われている」

 

「ス、ストーカー?」

 

「心当たりはない?」

 

「し、知らない」

 

天城さん酷く緊張しているように見える。

 

「あまり気負わない方がいい」

 

「ち、違うの。私、同年代の男の子と二人きりで話すのって無かったから。そうだ。千枝と電話番号交換したの?」

 

「あ、ああ」

 

いきなり話が飛んだな。

こういうところあるよな天城さんは。

 

「ふーんそうなんだ」

 

意気消沈?

里中さんとだけ電話番号交換して面白くないのだろうか。

うん、そうだな。

このストーカーの件もあるし、天城さんに連絡先は教えておいた方がいいだろう。

 

「天城さん、お願いがある」

 

「なに?」

 

「俺の携帯の電話番号とメールアドレスを教えるから、何かあったらすぐに連絡して欲しい」

 

「えっ嘘っ本当にっ?」

 

何を慌ててるんだろう。

さっきのは自分に連絡先を教えろっていう合図じゃなかったのか?

 

「えーと、あのー、そのー」

 

「大丈夫?天城さん」

 

「う、うん大丈夫。こっちも電話番号とメールアドレス教えるね!待ってて」

 

片手で傘を持ちながらカバンから電話を取ろうとしてワタワタしている。

見かねて傘を持ってあげる。

 

「あれ、スマホとの連絡先の交換ってどうするんだっけ?」

 

機械とかあまり詳しくなさそう。

 

「ちょっと見せて」

 

覗き込もうとするが、自分の両手はどちらも傘で塞がっている。

仕方ないので天城さんの傘を閉じ、広い俺の傘の方に天城さんの細身の躰を入れる。

これって図らずも相合傘?

 

雨の臭いに混じって、天城さんの甘い体臭がほのかに香る。

いい匂いだ。

ドキドキしながら携帯を操作。

 

「あの、いっつも千枝ばっかり男の子とメアド交換してて羨ましいと思ってたんだ」

 

「そうなんだ。意外だな。たくさんの男子から交換して欲しいって言われてると思ってた」

 

「そんなことないよ。ちゃんと私に頼んできたの。鳴上くんが初めてだよ」

 

"私に"ってことは里中さん経由でってのは結構あったってことか。

里中さん、男の子から見ると接しやすそうだものな。

そして天城さん思いの里中さんは、それを片っ端から断ってるってところだろう。

 

「光栄だな。最初の一人が俺だなんて」

 

「う、うん」

 

連絡先を交換し終わった携帯を大事そうに抱きしめる天城さん。

いじらしくて誤解してしまいそうになる。

いや待て落ち着け。

 

悶々としながら道を進む。

天城さんも同じだったみたいだ。

肩が触れ合いそうになって見つめ合い、恥ずかしいながらも何故か幸せな気分になる。

気がつけば相合傘のまま天城屋旅館まで歩いてしまっていた。

 

雨音に隠れてどこかからグギギという歯ぎしりの音が聞こえた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 17:00>

 

天城さんを送り届けた後、JUNESに向かった俺は家具と寝具を見て回った。

家電コーナーでバイトしている花村をわざわざ呼び出し、各フロアの店員を紹介してもらう。

 

まずは家具コーナーで手頃なコタツテーブルとマットを購入。

こたつ布団の方は冬に買えばいいだろう。

 

続いて寝具フロアに移動。

いろいろ寝比べた結果、丈夫そうで広いマットレス付きのキングサイズベッドを購入。

昨日節約した分の引越し支度金を全部ベッド本体に突っ込む。

家電と同じように土曜日の午後に届けてもらうよう依頼。

 

さて、これであと必要なのはLDKに置くソファあたりか。

あと寝室用のエアコンも必要かな。

うーん、バイト探さないと。

 

求人雑誌を手に取って家路につく。

店を出るとき花村が「毎度ありー」と満面の笑みで見送ってくれた。

なんかムカツク。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 23:30>

 

今日こそはマヨナカテレビを見なければ。

そう思い立った俺は、準備万端な体勢でテレビに向かっていた。

 

42インチのブラウン管にポータブルDVDプレイヤーを接続。

零時直前まで"りせちー"のイメージビデオを大画面で楽しむ。

 

この稲羽市に移って初めてのマス掻きである。

ここ数日溜め込んでいたこともあり、思いっきり出すつもりだった。

里中さんや天城さんに目移りしていたことを"りせちー"に詫びつつ、全裸でしこる。

 

おおっ。

この開放感!

一度やってみたかった!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 24:00>

 

先ほどまで"りせちー"が映っていたTVを消して賢者タイムに浸る中、時計の針が深夜零時を指し示す。

ある意味、正しく全裸待機だ。

 

テンションが下がっている中、不意に再びTVに明かりが灯る。

 

「何?来たか!!」

 

いきり立ってTVにかぶりつく。

人影が現れる。

"りせちー"来い!

 

しかし映っていたのは残念ながら"りせちー"ではなかった。

画面の中には逃げ惑う一人の女性の姿が。

 

「これ誰だ?」

 

この髪型。

小西先輩!?

 

俺の運命の相手は小西先輩だったのかー。

って、んなわけがないだろ!

 

何故小西先輩が?

グッと躰を乗り出して画面の中の彼女の姿を確認しようとすると・・・。

 

「おわっ!?」

 

倒れ込みそうになって画面に触れた俺の手がその中にどんどん沈み込んで行く。

 

「おおおおおおおおぁぁぁぁぁ!?」

 

そのまま俺はTVの中の世界に引き釣り込まれていった。

 

当然フルチンのままでダイヴ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 0:01>

 

「ぁぁぁぁぁああああああああ!」

 

霧を引き裂いて落下する俺。

地面が迫る。

思わず俺は叫んでいた。

 

「【浮けぇぇぇぇえええええ!】」

 

慣性の法則がねじ曲がる。

落下速度が減少する。

 

「とぉう!!」

 

<ずずーん>

 

くるりと体勢を整え、脚から地面に着地。

格好良く大の字でポーズを取ってみる。

すると丁度その着地点に走りこんでくる人影が。

 

「きゃあああああああああああ!!」

 

突然現れた俺に驚いたのか、その人影は盛大にすっ転んで止まった。

 

「大丈夫ですか?」

 

思わず声をかける。

その女性はよろよろと顔を起こし。

 

「い、いや、いやよ、いやぁぁぁぁああああああああああ!」

 

俺の雄々しいマーラ様と間近でご対面。

その人物、小西先輩は悲鳴を上げ、ご丁寧にも白目を剥いて気絶してしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 24:02>

 

「しかし、なんだここは?」

 

気絶中の小西先輩を抱え起こしつつ、周囲を確認する。

霧に霞んでいるが寂れた商店街のようだった。

何処と無く雰囲気は初日に迷い込んだ霧の世界に似ている。

ならば・・・。

 

「【来い!聖剣と星衣よ!】」

 

あの時と同じようにイメージする。

すると。

 

<ピカー>

 

やはりそうだった。

俺は一瞬のうちにクロスとエクスカリバーを装備していた。

ヒーローものの変身シーンのようだな。

燃え上がれ俺のコスモよ!

 

すると小西先輩が走ってきた方向から二体の化け物が飛んでくる。

明らかに敵っぽい。

 

「せいっ!」

 

聖剣の一振りで消滅させる。

簡単なものだった。

 

しかし放たれた聖剣の光に誘き寄せられたのだろうか。

四方八方から先ほどと同じ化け物が現れる。

さらにどこからともなく声が聞こえてきた。

 

『JUNESなんて無くなればいいのに』

 

斬り潰す。

 

『JUNESがこの町に来たせいで』

 

刺し潰す。

 

『そういえば小西さんちの早紀ちゃん、JUNESで働いてるんですってよ』

 

叩き潰す。

 

『まあお家の酒屋さんが大変だって時にねぇ』

 

殴り潰す。

 

『JUNESにお客を取られてこのところ売上も良くないっていうし』

 

投げ潰す。

 

『お子さんがJUNESでバイトしてるなんてご主人も苦労するわねぇ』

 

蹴り潰す。

 

『困った娘さんよねぇ。親の気もしらないで』

 

踏み潰す。

 

どうやらこいつら全て俺ではなく小西先輩を狙ってるようである。

この商店街に満ちている小西先輩への悪意が形になったもの、なのだろうか。

 

簡単に倒せるので害はないがとにかく七面倒臭い。

とりあえず小西先輩を安全な場所に移動させないと。

 

周りの建物を確認すると目の前にコニシ酒店が。

小西先輩の実家のようだ。

 

ここにしよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 24:10>

 

酒屋然とした内部だった。

樽やビンケースが積み重なっている。

 

しかし暗い。

とにかく暗くてジメジメしている。

明かりのスイッチはないのか?

 

ん?妙な気配が。

これは・・・。

逃げるつもりが敵の本丸に乗り込んでしまったか?

 

『何度言えば分かるんだ早紀!お前がご近所さんからどう悪し様に言われているか、お前も知らない訳じゃないだろ!』

 

小西先輩の父親の声?

 

『代々続いてきたこの酒屋の長女として恥ずかしくないのか!小遣いがそんなに足りねぇのか?やっぱり男か!?よりによって敵の店で働きやがって・・・』

 

声が鳴り響く都度、抱き抱えている小西先輩の顔が辛そうに歪む。

うーんこれは。

彼女の心象風景が現実になった世界と考えるのが自然だ。

 

俺がこの聖剣と星衣を想いの力で生み出したように。

この膿んだ世界は小西先輩の深層意識が創り出したものなのだろう。

あの化け物たちも彼女が存在すると思い込んでいる己への悪意が形になった化生。

だから彼女自身が狙われる。

 

「ということは、このステージのラスボスは彼女自身の心の影、ってなるのが妥当なところか」

 

そう口にした瞬間、案の定物陰からもうひとりの小西先輩が姿を表す。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 24:15>

 

バイト先のJUNESで見た小西先輩とは真逆の荒々しい印象をしたもう一人の小西早紀。

その金色の瞳をした小西先輩がいきなり思いの丈をぶち撒けてきた。

 

『私はね。JUNESのバイトなんてどうだっていいって思ってるの』

 

<がしゃーん>

 

店内の酒瓶がいっせいに割れる。

 

『たかだかJUNESができただけで潰れそうになってるウチの酒屋にもうんざり』

 

ガラスの破片が宙を舞い、ピタリと止まる。

 

『怒鳴るだけで威張ってばっかりの無能な父親なんか顔も見たくない』

 

その切っ先の全てがこちらに向けられる。

 

『好き勝手言う近所のおばさんたちも同じ。みんな消えて欲しい』

 

まずいな。

彼女を逃がす場所はないか!?

 

『そうね。全て、全て無くなればいいのよ!!あたしよ、死ねーーーーーっ!!!』

 

「そこだ!」

 

激昂した小西先輩の影が全てのガラス片を彼女の本体に向けて放った瞬間。

俺は店の片隅にあったTVの画面に彼女を押し込んでいた。

彼女の躰は24インチの横長サイズのTV画面をくぐり抜けるのに十分な細さだった。

彼女を逃した後、転がってガラス片の攻撃を避ける。

 

さて後はどうやってこの場を切り抜けるかだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 24:20>

 

本人がいなくなったせいか、彼女の影も若干落ち着きを取り戻したようだ。

 

『私はただ、こんな狭くて陰気臭い町から逃げ出したいだけなのよ・・・』

 

このままこの聖剣で倒すことは可能とは思うが。

現実世界に送り返した小西先輩本人にどう影響するかわからない。

可能な限り穏便に済ませたい。

 

ここにいるのは、小西先輩本人の深層意識の固まりである。

どうにか説得して表層意識との折り合いを付けさせれば・・・。

いけるかもしれない。

 

そうか!

これは単純なRPGじゃない。

きっと裁判モノや論破モノと組み合わさったゲームなんだ!

 

よーし頑張っちゃうぞー。

何か説得材料はないかな。

 

ん、あれは。

花村が小西先輩に渡したという映画のチケット?

見事に破り捨てられているな。

 

「【答えてくれ!】これはあなたが?」

 

『・・・父さんに見つかって破り捨てられたの。あんな父親いらないわ』

 

フッ。

これを突破口にしよう。

 

「では貴女自身は花村のことをどう思ってる?」

 

『同じよ。ずっと言えなかった。私、ずっと花ちゃんの事・・・ウザいと思ってた』

 

「本当に?」

 

『仲良くしてたのは彼がバイト先の店長の息子だから。都合良いってだけだったのに・・・。勘違いして盛り上がってほんとウザい』

 

「【それはちがーーーうっ!!】」

 

『ちが・・・う?」

 

ここが勝負だ!

 

「あなたは好きの反対の感情を知っているか?それは嫌いとかウザいとかじゃない。無関心だ。本当に好きではないのなら彼のことをなんとも思っていないはず!」

 

『・・・』

 

「あなたにこの世の真理を教えよう。それは、【嫌よ嫌よも好きのうち!】」

 

『す、き』

 

「あなたはウザイウザイと思いつつ花村のことが気になって仕方がない。つまり!【あなたは花村のことが好きで好きで堪らない!】そういうことだ!」

 

『ハナちゃんが好き。そう私は・・・ハナちゃんが大好き!』

 

よしいいぞ。

あとひと押し。

そう言えば彼女は新しい世界を知りたいらしい。

ならば!

 

「あなたは新しい世界に行きたいと言った。いいだろう。俺があなたにその世界への扉を指し示そう!」

 

『おし・・・えて』

 

「女は男ができると生まれ変わる。でもそれだけじゃあなたは満足しない。なぜか?」

 

『なぜ?』

 

「小西先輩。あなたはウザいウザいと思いつつ、結局耐え忍んでこの街での日々の生活を受け入れていた。つまりこれはあなたが重度の隠れマゾであることを指し示している」

 

『マゾ?私はマゾなの?』

 

「【あなたはその本性を花村の前でだけさらけ出し、立派なマゾ女となれ!】」

 

『・・・はい』

 

「【花村に尽くして尽くして尽くしまくり、花村を立派なサドに育て上げろ!そして花村と一緒にSMの新世界へ逝け!】」

 

『・・・はい!』

 

「【さあ俺の手を取れ!そして心の底から誓え!この世界に関することは全て忘れ、花村専用のマゾ奴隷になると!】」

 

『はい!誓います!!』

 

小西先輩の影が言われるがままに俺の手を取る。

 

<ピカーッ>

 

つないだ手から光が溢れた。

スッーと何かが俺の躰に入り込んでくる。

 

目を開けると小西先輩の姿だけでなく、コニシ酒屋や商店街も消えていた。

辺りは一面霧の中である。

終わったか。

 

小西先輩の心の中に花村という安全弁を作る。

そして日々の抑圧された感情を、恋人へのマゾ心という形で花村に対して吐き出させる。

 

いやーほんとによかった。

この解決策を彼女の深層意識が受け入れてくれて。

これで小西先輩は心の安定を取り戻すだろう。

 

しかし意外だった。

昼間フードコートで初めて会ったときは、花村の想いが成就するのは厳しいかなと思ってたんだけど。

俺の目は節穴だな。

 

さーて、どうやって帰ろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月14日THU 雨 25:00>

 

出口よ現れろ!と念じながら歩いているとクマっぽい着ぐるみに出会う。

いろいろ話しかけられたが、とにかく疲れていてよく覚えていない。

言われるがままにTVに入ったら自宅にいた。

 

疲れた。

寝よう。

ずるずるとそのまま和室に向かい、裸のままバタンキューする。

 

このとき俺は大事なことを忘れていた。

小西先輩本人の行方である。

実家の酒屋のTVに突っ込んだから勿論酒屋に戻ってるんだろう。

そう漠然と考えてしまっていた。

 

そのため翌朝に街が大騒ぎになってしまうことなど、この時は知る由もなかった。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月14日THU 雨 --:-->

 

鳴上悠の「神言」により小西早紀は"異様な商店街"に関連する記憶全てを失います。

小西早紀は自分を"異様な商店街"に突き落とした犯人のことを忘れました。

鳴上悠の「神言」により小西早紀は花村陽介専用マゾ奴隷になりました。

 

鳴上悠がペルソナに目覚めません。

愚者のアルカナが消滅しました。




しょっぱなでケリがつきました。そして花村ハッピールートに分岐です。


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第02章 魔術師/星

コニシ酒屋のTVは廃棄されてました。そしてまさかの花村得展開。


<VELVET ROOM 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

「ようこそ私たちの愛の巣へ」

 

霧の中を進む豪華客船のロイヤルスィートルームで、ピンク色のベッドに腰掛けたマーガレットが待っていた。

 

「ここは私と男女の契りを果たされた方のみが訪れる部屋。あなたは見事、この船を顕現されたのです」

 

淡い色使いの内装は、さながらラブホテルのベッドルームのような趣となっている。

 

「これをお持ち下さい。それは私の貞操帯の鍵。今宵からあなたがこのベルベットルームの主人です」

 

柄の部分がピンクのハート型になっている鍵が渡される。

 

「あなたのマーラ様はとってもワイルド。他者とは異なる特別な逸物」

 

愛おしそうに服の上からマーラ様を撫でさするマーガレット。

 

「私の子宮を満たしたように、無限の射精性能を秘めています。んっ」

 

キスをしながら服を剥いでいき、互いに体を弄り合う。

 

「私を狂わせたワイルドなマーラ様は、いずれの体位に弱いのか。ご一緒に確認して参りましょう。ああんっ」

 

波の音にギシギシアンアンという卑猥な音が重なっていく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 6:30>

 

少し早めに目が覚めた。

またエロい夢を見ていたような気がする。

夢精は・・・、していない。

 

昨日のことも夢だったのかとTVに触ってみる。

ずっぽしと手が画面に吸い込まれる。

どうやら夢ではないようだ。

 

俺がこの世界に来た意味を考える。

このTVの謎を解けばそれがわかるのだろうか。

いや、今はそう信じるしかない。

 

雨が降っている。

とりあえずまだ早いけど学校に行こう。

傘をさして家を出る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 7:30>

 

天城屋旅館の前で邪魔にならないように待つ。

しばらくしていつもの赤いカーディガンを着た天城さんが現れた。

 

「おはよう、天城さん」

 

「え、鳴上君?」

 

「一緒に学校に行こう」

 

「・・・もしかして昨日言ってたストーカーのことで心配してくれて?」

 

にっこり笑ってこちらの意思を伝える。

 

「近頃、物騒だから」

 

「そんな。いいのに」

 

申し訳なさそうにしている天城さんを説得して一緒に登校。

途中里中さんとも合流して三人で学校に向かった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 8:00>

 

結構な強さの雨の中、校門前に傘も立たずに突っ立っている学生がいた。

あのストーカーだ。

天城さんを庇って前に立つ。

 

「どけよ!お前は関係ないだろ」

 

「いや。どかないさ。こんな朝から天城さんに何の用だ?【答えろ!】」

 

「・・・うう、ゆ、雪子を連れてこうと思って」

 

「今から学校だぞ。迷惑だと思わないのか。【さっさと自分の学校に行け!】」

 

「くっ、もういいっ」

 

悔し気な表情を浮かべ走り去っていくストーカー。

 

「「おおーーーーー」」

 

いつの間にか集まっていた周囲のギャラリーから声が上がる。

 

「すげー」

「天城越えに新たな難所の登場だな!」

「彼、転校生でしょ」

「何々?あの二人付き合ってるの?天城越え済み?」

 

登校時間での校門前での騒ぎである。

大分目立っていたらしい。

参ったな。

 

「さあ、行こう」

 

二人を即して玄関に向かう。

里中さんがキラキラした目でこっちを見てくる。

 

「かっこよかったよ鳴上君!ほら雪子、お礼言いなよ」

 

「え、うん。ありがとう。でも今の人、結局何の用だったのかな?」

 

おいおい。

この天然も天城さんの魅力の一つか。

 

「何の用って。天城さんをデートに誘いに来たんだろ。勝手に断ったの迷惑だった?」

 

「そうだったんだー。ううん全然。断ってくれて嬉しい」

 

頬を染めて礼を言ってくる天城さん。

さ、学校に入ろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 8:15>

 

場所は変わって教室。

花村、校門での出来事を又聞きしたらしい。

 

「まったく天城も次々と言い寄られて大変だよなー。かく言う俺もその一人だったけど」

 

何かあったのだろうか。

やたら低いテンションで投げやりに天城さんを弄ってくる。

 

「そんなことあったかしら?」

 

「去年、一緒に出かけようって誘ったろ」

 

「ごめんなさい。覚えてない」

 

「やれやれ。まったく罪作りな女だぜ」

 

天城さんと花村のおざなりなやり取りが続く。

やはり好意の対局は無関心ということだな。

 

「まあいいけどな。俺にはもう小西先輩がいるし。・・・はぁ」

 

「どうしたんだ?花村。何か心配事か?」

 

「その小西先輩のことでちょっと昨日の晩に気になることがあってな。んで連絡取ろうと思って散々メールしてんだけど、一切返事をしてくれないんだ。どうしたんだろ」

 

<ウウウーーーーン>

 

警察車両の音だ。

また何かあったのか?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 13:30>

 

緊急の全校集会ということで午後の授業は中止となり全員体育館に集められる。

朝の騒ぎの説明だろうか。

 

花村の様子がおかしい。

朝から苛つきを見せていたが最早挙動不審レベルである。

 

「花村、落ち着け!」

 

「やっぱり三年の列に先輩いないしさ。電源切ってるらしくて電話も通じないんだよっ。くそっ」

 

小西先輩ならあの世界から無事に救出したはずなんだが・・・。

 

「あー静かに。今から校長先生の大事な話があるから黙って聞くように。喋ったりしたら腐った・・・」

 

相変わらずモロキンは煩いな。

 

「今日は皆さんに悲しいお知らせがあります。三年B組の小西早紀さんが今朝路上で倒れているのが発見されました」

 

何!?

 

<<ザワザワ>>

 

「あー静かに。幸いなことに乱暴された形跡は無く、怪我なども全く無かったようですが、彼女は依然意識不明の状態であり病院に入院中となります」

 

隣の花村が愕然としている。

そして俺もまた。

 

「一昨日の殺人事件との関係については警察が調査中とのことです。皆さんは不確かな噂を信じず、学生としての本分を・・・」

 

し、しまったー!

あのTVの出口、コニシ酒屋のTVじゃなかったのか!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 14:30>

 

体育館から校舎の戻る中、皆の噂話が嫌でも耳に入ってくる。

 

「小西早紀ってあの三年の美人な人でしょ?」

「絶対姦られてるってマジで」

「裏で遊んでたって噂もあったしねー」

「あーあー憧れてたのに。俺も一発・・・」

 

やっぱそうなるよなー。

参ったな。

 

「花村君、大丈夫?」

 

天城さんが落ち込んでる花村に声を掛ける。

 

「なぁお前ら、昨日の夜さ。マヨナカテレビ見なかったか?」

 

「花村、あんたこんなときに何言ってるの!?」

 

「いいから聞いてくれ!」

 

里中さんの言葉を語気強く遮る花村。

いつになくシリアスだ。

当然か。

 

「月曜日。山野アナが死んだ事件で校内放送あったろ。そのちょっと前に、山野アナが運命の相手だって騒いでた奴がいたよな」

 

「あ、うん。確かいたね」

 

「それがどうかしたの?」

 

里中さんと天城さんの二人は聞いていたらしい。

 

「つまりそいつは前の晩にマヨナカテレビで山野アナを見たってことだろ。そして俺も昨日マヨナカテレビで小西先輩を見たんだよ!偶然にしては出来過ぎだろう!?」

 

「「それって・・・」」

 

顔を見合わせる里中さんと天城さん。

面白い着眼点だ。

 

小西先輩の場合、俺が居合わせたので助かった。

だが山野アナは違う。

そういうことか。

 

花村、バカではないな。

 

「つまり、あのTVに映った人間に不幸な出来事が起こり、運が悪ければ死ぬってことか」

 

TVの中の世界がこの事件に密接に関わっていると考えて間違いない。

俺と同じように山野アナと小西先輩はあの世界に引きこまれた。

そして山野アナは帰ってこれなかった。

 

だとすると俺や彼女たちにTVに入れる力を与えた何者か。

そいつこそがこのゲームで探し出すべき俺の敵なのかもしれない。

 

「ああ。昨日TVの中で小西先輩、全裸の変態野郎に襲われていたように見えた。間違いなく奴が犯人だ!許せねぇ!」

 

ってちょっと待てい。

それ俺だよ・・・。

 

「絶対あの変態野郎を捕まえてギッタンギッタンにしてやる!小西先輩を傷つけた報いを受けさせてやる!」

 

「花村・・・」

 

「花村君・・・」

 

崩れ落ちて慟哭する花村を里中さんと天城さんの二人が慰める。

い、居たたまれない。

このままでは花村と敵対関係になってしまう!

そうだ!!

 

「違うぞ、花村」

 

「「え?」」

 

俺の意外な言葉に里中さんと天城さんが顔を上げる。

 

「何が違うって言うんだよ!」

 

「お前がやるべきことはそんなことじゃない!お前がまず真っ先にしなければいけないことは!」

 

「「ことは?」」

 

「病院に行って小西先輩の意識が戻るまで付き添ってあげることじゃないのか!?」

 

<ババーン>

 

「あ・・・」

 

立ち尽くす花村。

 

「そうよ、花村!」

 

「鳴上君の言うとおりだわ、花村君!」

 

里中さんと天城さんの二人が激しく賛同してくる。

 

フッ。

これで誤魔化せたな。

 

「【犯人を探すのは俺に任せろ。】お前は早く小西先輩のもとに行ってやれ!」

 

「あ、ああ、頼んだぜ、鳴上!」

 

ダーーーッと病院に向けて駈け出す花村。

よし花村はこれでいい。

 

「で、犯人を探す当てはあるの?鳴上君」

 

里中さんが興味深げに尋ねてきた。

二人には話しておいた方がいいな。

 

「ああ。実は・・・」

 

<ぶるるるる>

 

「あっごめん、家からのメールみたい。私、旅館に戻らないと」

 

ガクッとくる。

天城さんって何故かいつもタイミング悪いよなー。

 

仕方ない。

天城さんを家に送り届ける道中で話そう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:00>

 

「「TVの中に入った!?」」

 

「ああ。信じられないだろうけど」

 

疑いよりも戸惑い表情を浮かべる二人。

 

「一度俺のマンションに来て欲しい。俺の言葉が真実だということを証明して見せるから」

 

「「・・・」」

 

ハッ!?

言ってから気づく。

これって女の子を部屋に連れ込むナンパ男のセリフみたいじゃないか。

 

「ご、ごめん。急に変なこと口走っちゃって。忘れてくれ」

 

「その。私、今は家の旅館が凄く忙しくて無理だけど、休みが出来たら絶対行くから!鳴上君のお家」

 

「今日予定何も入ってないから、私は今からでも行けるよ。雪子より先にお邪魔しちゃおっかな〜」

 

あれ?

なんか盛り上がってる?

 

「じゃ、じゃあ里中さん、この後一緒に来てくれ」

 

「りょうかーい」

 

「えーいいなー千枝」

 

しきりに残念がる天城さんを旅館まで送ると、天城屋旅館の前にTV局の中継車が来ていた。

そして何やら旅館の中がバタバタしている。

天城さんが急に呼ばれたのはこのTV局のためだろうか。

 

「前に取材は断ったはずなのに・・・。ごめんなさい。私行かなきゃ」

 

「雪子・・・」

 

一気にテンションが下がった天城さんが、慌てて旅館の中に入っていく。

里中さんは天城さんの後ろ姿を心配気に見送っていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:20>

 

天城さんが心配だが俺たちには何も出来ることがない。

当初の予定どおり、俺は里中さんを連れて自宅に向かっていた。

だが途中で急遽行き先を変えることになる。

 

俺の話を親身になって聞いてくれた里中さん。

その彼女の何気ない一言が俺の背筋を凍らせたのだ。

 

「その・・・TVの中の世界?それが本当にあるのなら、小西先輩をそこに連れ込んだ犯人。今頃慌ててるんじゃないかなー」

 

え?

 

「だってさ。自分の顔を見たかもしれない小西先輩が、無事に中から出てきちゃったわけでしょ。目が覚めてから小西先輩に聞いたら、一発で犯人がわかっちゃうじゃない」

 

俺は何を勘違いしていた?

彼女たちはあの世界に自ら入り込んだとばかり思い込んでいた。

だが冷静になって考えてみればそれだけじゃない。

 

俺と同じような力を得た誰かが、彼女たちをあの世界に放り込んだ。

そういう線も有り得るじゃないか。

だとすれば里中さんの言うとおり小西先輩が危ない!

警察には彼女を守りきれないだろう。

 

携帯電話を取り出して花村に電話する。

 

<おかけになった番号の電話機は・・・>

 

・・・花村、電源を切ってる。

病院にいるなら当然か。

くそっ、なら直接行くしかない!

 

「ちょっと!いきなりどうしたの、鳴上君」

 

急に走り出した俺を慌てて追走してくる里中さん。

 

花村、彼女を守れ。

小西先輩を守るんだ!

TVから離れるんだ!!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:40>

 

里中さんを連れ、小西先輩が運び込まれた稲羽市立病院に移動する。

途中で上手くタクシー捕まえられたので、あまり濡れずに済んだ。

 

ナースステーションに駆けつけ、居合わせたナースに小西先輩のいる病室を尋ねる。

里中さんがいくら尋ねても梨の礫だったが、俺が真摯にお願いするとこっそり教えてくれた。

 

「・・・関係者以外は面談禁止になってるけど、特別よ」

 

名札を見ると上原さんという方らしい。

随分色っぽいお姉さんだ。

こんなナースになら是非看護されたい。

 

「ありがとうございます。【お仕事、無理しないで頑張って下さい!】」

 

ナースの仕事は激務と聞いている。

お礼と激励の言葉を送り、上原さんに教えられた病室に全速力で向かった。

 

 

 

<SYSOP 2011年8月20日FRY 雨 --:-->

 

上原小夜子は仕事で無理をしないで頑張るようになります。

上原小夜子の自然体な頑張りは周囲に好影響を与え、人間関係が大いに改善します。

上原小夜子はかつての職務に対する熱い想いを取り戻し、素敵な男性に見初められます。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 15:50>

 

この部屋かっ!

 

<ガラガラッ>

 

暗い病室。

 

一番奥のベッドがカーテンで仕切られていた。

そこにいるのか?

 

<シャッ>

 

「小西先輩!花村!・・・あれっ?」

 

「んー、おー、ヌシ様。遅かったの―」

 

そのベッドに横たわっていたのは、麗しい小西先輩ではなくヨボヨボのお爺さんだった。

ヌシ様って誰だよ。

 

ベッドに掛かっているネームプレートを見ると、黒田という名字が記されていた。

 

「鳴上君!ここ違う病棟だよ。小西先輩はあっちの建物!」

 

里中さんが追い付いてきて、部屋の外から俺の誤りを指摘してくれる。

しまった、うかつ!

 

「すみません。部屋を間違えてしまったようです。失礼します。ん?」

 

お爺さんに謝罪してベッドから離れようとしたとき、ベッドの傍に黒い包みが落ちていることに気付く。

拾うと、布の中に綺麗な鼈甲の櫛が入っていた。

包みがかなり上等な絹布なところを見ると、とても大切の物のようだ。

恐らくこの老人のご家族のものだろう。

 

「お爺さん。この櫛、ここに置いておきますね。【持ち主の方に渡してあげて下さい】」

 

「・・・おお、わかったぞーい」

 

お爺さんの手が届くところに櫛を置き、部屋を出る。

 

「おそ〜い。こっちだってば!」

 

先の曲がり角で待機していた里中さんが俺を呼ぶ。

急ぎ足でそちらに向かう。

 

途中、一人の上品なお婆さんが立っていた。

俺が先ほどの病室から出てきたことに驚いているようだ。

恐らくあの老人のご家族の方に違いない。

 

すれ違うときにペコリとお辞儀する。

お婆さんは戸惑いながらもお辞儀を返してくれた。

 

多分あの櫛はこのお婆さんのものだろう。

お爺さん、きちんと渡せればいいんだけど。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

黒田ひさ乃の夫は、櫛をプレゼントした相手を思い出しました。

黒田ひさ乃は再び夫から櫛を渡され、号泣します。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 16:00>

 

途中運送業者の人にぶつかりそうになる。

「すみません!」と謝りつつ院内を進む。

目的の病室に到着すると、病室の扉の前で一騒動起こっていた。

 

「お前がJUNESの息子か!お前のせいで早紀がこんな目に合ったんだ!」

 

騒いでいるのは小西先輩の父親のようだ。

その前で土下座しているのが花村。

頬が腫れている。

 

小西先輩の父親に殴られたらしい。

その父親を背後から抑えているのが叔父の堂島さんだった。

 

「お願いします!小西先輩に会わせて下さい!」

 

「ふざけるな。帰れ!」

 

「まぁまぁ小西さん落ち着いて」

 

どうやら病室に入れろ許さんの押し問答中らしい。

 

「離せ!」

 

まだ花村を殴り足りないらしく、小西先輩の父親は叔父さんを振りほどこうとする。

あっちの世界で小西先輩が嘆いていたが相当な暴れ者だな。

 

「小西さん、これ以上暴れるならこっちも手荒なまねをしなければなりませんな!」

 

「あぐっ」

 

叔父さんが締め付けをきつくする。

 

<ガラガラ>

 

「もう〜うるさいな〜静かにしてくださいよ。ここは病院なんですよ〜」

 

前に見た叔父さんの部下が病室から出てくる。

凄く昼行灯っぽい人だ。

 

「足立!何やってる被害者から離れるな!」

 

「堂島さん。そんなこと言ったって彼女一向に目覚める気配ないですよ〜。あれ、君どなた?」

 

「ん?悠だと?お前こんなところに何の用だ!」

 

叔父さんにスッゴい迫力で睨まされた。

さすが現役の刑事だけどなんかカチンとくる。

 

「この方の言うとおりです。皆さん病院の廊下で何やってるんですか!周りの病室の方々に迷惑です。【静かにして下さい!】」

 

思わず一喝してしまった。

皆を黙らせた後、叔父さんに向き直り堂々と主張する。

 

「僕は花村の友人です。友達のことが心配で駆けつけるってそんなにおかしいことでしょうか」

 

「いやそうは言わんが。だが小西早紀さんは重要参考人でな。ご家族の方以外会わせるわけには」

 

「花村と小西先輩は付き合っていました。デートの約束までしていた。そのことは小西先輩のお父さんもご存知のはず。つまり花村は他人じゃない。【会わせてあげて下さい】」

 

平気な顔で嘘八百を並び立ててみる。

 

「・・・。はぁ〜やれやれ。仕方ないな。少しの間だけだぞ」

 

「堂島さん!いいんですか?まずいっすよ〜」

 

よし上手くいったみたいだ。

 

「【小西先輩のお父さんもいいですね!】」

 

「・・・勝手にしろ!」

 

ぷいっとソッポを向かれた。

許可は出たようだ。

 

「さぁ花村、小西先輩に会いにいこう」

 

「ほらしっかり花村!」

 

「鳴上、里中すまねぇ。ありがとう」

 

花村を抱き起こし里中さんと一緒に病室に入った。

広い病室の中、窓際のベッドに小西先輩が眠っている。

昨晩のTVの中で気絶してから状態に変わりはないようだ。

 

「小西先輩!」

 

小西先輩の元に駆けつける花村。

その手を握って彼女が目覚めるよう必死になって呼びかけていた。

 

「起きてくれ先輩!一緒に映画を見に行こうって約束したじゃないか。ウワワーン」

 

ついには小西先輩の手を両手で押し包み、泣きだしてしまう。

 

「花村・・・グスン」

 

里中さんも居たたまれないようで貰い泣きしそうになってる。

俺は花村を慰めるように、彼の手を上からギュッと握ってやった。

小西先輩の細い指にも触れる形となる。

 

その瞬間スーーーッと俺の躰の中から手のひらを伝って何かが抜け出していった。

 

「うううっん」

 

小西先輩の蒼白だった顔に赤みが刺す。

そして。

 

「ハナ・・・ちゃん?」

 

小西先輩は意識を取り戻した。

 

「小西、先輩!?先輩!よかった!」

 

感極まった花村は小西先輩に抱きつく。

花村の勢いに戸惑っていた小西先輩であったが、やがて嬉しげな表情を浮かべてその抱擁を受け入れていた。

 

「どうした!!!」

 

部屋の中の歓喜の叫びが外にも聞こえたらしい。

大挙して病室の中に人が雪崩れ込んでくる。

当然先頭は叔父さんだった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 17:00>

 

「何も覚えていない・・・だとっ!?」

 

目覚めたばかりの小西先輩に対して、早速事情聴取をしようとする叔父さん。

小西先輩のお父さんや俺たちは反発するが、当の小西先輩が花村と一緒ならという条件で受け入れていた。

花村の方は俺と里中さんの立ち会いを望み、結果俺も病室の中に残ることになる。

 

まず叔父さんが小西先輩から昨日一日の行動を聞き出そうとするが、小西先輩の答えは要領を得なかった。

 

「夕方にハナちゃんから貰ったチケットを父さんに破かれて、家を飛び出たところまでは覚えてます。でもその後がわからないんです」

 

不安なのだろう。

叔父さんの質問に応える間、小西先輩はずっと花村の腕に縋り付いていた。

 

「その後誰かに会ったような気がするけど、そこから記憶に霧がかかったように思い出せなくて」

 

花村に抱きつき震える小西先輩。

 

「小西先輩・・・」

 

花村も守るように彼女を抱き寄せる。

 

「やれやれ。手がかりは何もなしか」

 

叔父さんも諦めるしかないようだ。

しかし叔父さんの部下の足立さん。

尋問中に凄い表情してたな。

 

睨みつけるような視線を小西先輩に浴びせていた。

重要な犯人の情報が得られるかもしれないから、一言も聞き逃すまいとしてたんだろう。

なんて仕事熱心な人なんだ。

 

「足立、また犯人が小西さんに接触しにくるかもしれない。当分お前が彼女に張り付いてろ。交代の人員はあとで呼んどいてやるから。ん?どうした?」

 

「いやーその、うらやましーなーなんて」

 

慌てて睨むのを止め、戯ける足立さん。

彼の視線の先には抱きしめ合う若い恋人たちの姿。

言わんとすることはわからないでもない。

昨日の今日で急速に接近し過ぎだろ。

これもあのテレビの中で小西先輩の影を説得した影響なのだろうか。

 

「何バカなこと言ってるんだ!いいか!決して彼女から目を離すなよ!」

 

よかった。

彼なら信頼できる。

俺からもきちんと頼んでおこう。

 

「足立さん。はじめまして鳴上悠と言います。堂島さんの甥に当たります。僕からもお願いします。【二人のこと守ってやって下さい】」

 

「・・・あ、ああ、よろしく」

 

グッと握手する。

これで花村と足立さんの二人で小西先輩を警護する体制が整った。

犯人もそうそう手を出してこれないだろう。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 17:00>

 

鳴上悠の「神言」により、足立透は小西早紀と花村陽介の将来を守る義務を負いました。

足立透は生暖かい目で二人を見守り続けます。

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 17:40>

 

「悠、ちょっと話がある」

 

怖い顔した堂島さんに部屋の外に連れてかれる。

そしてクドクドと事件に顔を突っ込むなと説教される。

ろくな証拠もないのに俺がこの事件に関わっていると肌で感じてるらしい。

これが歴戦の刑事の勘ってやつか。

 

「最初は帰宅途中に偶然通りかかっただけで、今回は被害者の彼氏がクラスメイトだっただけです!」

 

逆ギレして黙らせる。

 

イライラしながら堂島さんは去っていった。

まあ堂島さんがイラつくのもある意味仕方がないかな。

自宅には妊娠中の千里さんがいるのに、殺人事件で家に帰る暇も無いのだろうから。

 

<ガラガラ>

 

「あちーあちー、もうお腹いっぱいだわ。あたし、もう耐えらんない」

 

「全くもうやってらんないよー、あーあー若いってのはいーねー、チッ」

 

里中さんと足立さんが病室から出てくる。

二人はうんざりした表情を浮かべていた。

 

「どうした?」

 

「どうしたも何も。鳴上君も覗いてみれば」

 

投げやりな態度の里中さんに勧められてドアを開け中を覗く。

 

「ハナちゃんごめんね」

 

「どうしたんだよ先輩」

 

「ハナちゃんに貰った映画のチケット、破けちゃって使えなくなっちゃった」

 

「そんなこと大したことじゃないさ。もう一枚用意するって」

 

「ありがと。でもお詫びをさせて。んん」

 

「んん・・・うわっ、せ、先輩」

 

「フフ、ハナちゃんの唇、柔らかい」

 

バカップルの姿がそこにはあった。

この後めちゃめちゃセックスした、とモノローグが出そうな勢いだ。

 

あれ?

一瞬小西先輩の瞳が金色に輝いていたような。

気のせいか。

 

さすがに病室に入って二人の邪魔をするほど足立さんは野暮ではなかった。

病室入り口に椅子を用意してそこで過ごすようだ。

 

小西先輩のお父さんももう大丈夫だろう。

「【二人のこと暖かく見守ってやって下さい】」と真摯にお願いしたら、大人しく引き下がってくれた。

やはり大事なのは真心だよな。

 

ラブラブな二人に中てられ疲れきった俺と里中さんは、判定負けしたボクサーのようにヨロヨロと病院を立ち去る。

帰り際、花村には「【TVに気をつけろ】」と助言をし、当初の目的は一応果たす。

さすがにこれから俺の自宅へという雰囲気にはなれず、里中さんの自宅訪問は明日に持ち越しになった。

 

「明日いろいろと荷物届くんでしょ。ちょうどいいから私が設置手伝ってあげる。花村はあんなだし」

 

「ありがとう。里中さん」

 

「いいっていいって。それじゃバイバイ」

 

里中さんと別れて家路に付いた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 18:40>

 

八十稲葉中央商店街にある中華料理屋さんの"愛屋"から出前を取る。

里中さん絶賛メニューの肉丼を頼んでみた。

すると出前に来たのはクラスメイトの中村あいかさんだった。

 

「まいど」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

ちょっとビックリ。

そうか。

中村さんってあの店の娘なのか。

 

パンチの効いた味と匂いのする肉丼をガッツキながらTVを見る。

ニュース内の報道特集はまた稲羽市の殺人事件ネタだった。

やれやれと思って眺めてると画面の中に天城さんが現れる。

ああ、やっぱり昼間天城さんはこの撮影のために呼び戻されたのか。

 

<女子高生で女将ということですが>

 

<いえ、私は母の代役で>

 

<でも跡継ぐんですよね。と言うか和服色っぽいね。男性客多いでしょ?>

 

レポーター、見事に脱線してる。

ただ同じ男として脱線したくなるのもわかる。

桜色の着物の天城さんにはえも言われぬ色気があった。

天城さんってまさに日本美人って感じで華奢で細くて柳腰だから、和服が他の人より断然映えるんだよな。

 

<え、あのっ>

 

<山野アナは死の直前おたくの旅館に泊まっていたそうですね>

 

<ええ>

 

なんでこんな撮影許可出したんだろう。

女将さんが倒れていると言ってたな。

 

天城屋旅館の従業員の誰かがTV局の押しの強さに断りきれず。

尻拭いの形で天城さんが無理やり出演、という嫌な流れが容易に想像できた。

 

マスゴミはほんとにしょうがないな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 24:00>

 

外はまだ雨が降り続いている。

今日はマヨナカテレビは映るのだろうか。

 

<シャッ>

 

かっこつけてカーテンを閉めてTVに向き合う。

時計の針が零時を刺した。

 

<ピーピョロロ>

 

映った!

和服の女性のようだ。

 

ん?

んん?

これ天城さんか?

 

映像は影しか映っておらず、はっきりとはわからない。

だが、さっきのニュースで出てた和服姿の天城さんにシルエットがよく似ていた。

 

そうだ。

天城さんとは連絡先を交換していたんだ。

確認してみよう。

 

<トルルルルル>

 

<はい、もしもし天城です。鳴上君、こんな夜更けにどうしたの?>

 

・・・出たよ。

ってことは、これは天城さんじゃない?

 

「ごめん。今どうしてたのかなって思って」

 

<今?お仕事終わってお風呂を頂いてたところ>

 

え、湯上りの天城さん?

色っぽそう。

 

いかんいかん!

 

「そうなんだ。やっぱり迷惑だったみたいだね。大したことではないんだ。明日学校で直接話そう」

 

<迷惑だなんてそんなこと。逆に嬉しい、かな。あ、ごめん。明日学校行けないんだ。団体さんの予約が突然入っちゃって>

 

「へー、急だね」

 

<うん。夕方のニュースを見て興味を持ってくれたみたい>

 

困惑気味な天城さんの声。

彼女自身、図らずも自分が客寄せパンダにされてしまったことが不本意なんだろう。

 

「ああ、あのニュースか。着物姿の天城さん初めて見た。とても似合ってたよ」

 

<もうっ。鳴上君までそんなこと言わないで>

 

「はははは、ごめんごめん」

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月15日FRY 雨 25:00>

 

天城さん、なんだかんだでストレスが溜まっていたみたいだ。

零時を回っているのにも関わらず、結構な時間話し込んでしまっていた。

凄く楽しい時間だけど、さすがにこれ以上は天城さんの明日の仕事に障ってしまう。

 

「じゃあそろそろ切るよ。おやすみ。天城さん」

 

<うん。おやすみ。また電話してくれると嬉しいな>

 

「ああ、明日も頑張って」

 

<ツーツーツー>

 

とっくの昔にマヨナカテレビは放送を終えている。

TVに顔を突っ込んでみたけど、誰もいない。

 

寝るか。

 

後になって考えると、やはりこのマヨナカテレビは天城さんとは無関係ではなかった。

何者かが天城さんを狙う先触れであった。

そして悔しい事にこの時点で俺が打てる手は何もなかったのである。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月15日FRY 雨 --:-->

 

小西早紀が助かったことで、花村陽介がペルソナに目覚める機会が失われました。

花村陽介は結局マヨナカテレビに入らず、小西早紀とデート三昧の充実した高校生活を送ります。

花村陽介は将来JUNESに入社し、鳴上悠が仲人になって小西早紀と結婚します。

花村陽介は父親と同じく八十稲羽支店長に上り詰め、八十稲羽商店街とのコラボを成功させ稲羽市の救世主となります。

魔術師のアルカナが消滅しました。

 

小西早紀が己の影に殺されなかったことで、星のアルカナはクマに譲渡されません。

小西早紀の花村専用マゾ奴隷として充実した高校生活を送ります。

小西早紀は将来鳴上悠を仲人として花村陽介と結婚し、立派なマゾ花嫁になって一姫二太郎を産みます。

小西早紀の夫の花村陽介がJUNESで出世し、八十神商店街を復活させたことで父と和解します。

星のアルカナが消滅しました。




星のアルカナの委譲うんぬんは完全にオリジナル設定です。次話からやっとエロ本番。


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第03章 戦車

千枝の声が好き過ぎてオチは悪ノリしました。ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!


<VELVET ROOM 2011年4月15日SAT 雨 --:-->

 

「お帰りなさいませ。我が主」

 

ベッドの端に座っていたマーガレットが頬を染めて歓迎の言葉を述べる。

 

「主の能力は女心を御する力。女心とは女の子宮を快感で支配することによって満ち足りるもの」

 

うっとりと自分の下腹を撫で回すマーガレット。

 

「私と交わりボルチオ性感への刺激の与え方を学んだことにより、主は新たに女を意のままに喘がせる力を手に入れられました」

 

幾度もの行為の最中に味わった濃密な子宮口への連打を思い出したのか、自らの躰を抱きしめ熱いため息を漏らす。

 

「主の力は女の性感帯をより知ることによって育っていきます。よくよく心しておかれますように」

 

そう言うとマーガレットはその青いスーツを自ら脱ぎだした。

 

「では、再び互いに果てるまで、楽しみましょう。準備はいいかしら。うふふ」

 

霧の中を進む豪華客船の一室から、女の甘い啼き声が嫋々と漏れ始める。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 8:30>

 

今朝はいつも以上にスッキリした目覚めだった。

腰が軽い。

 

昨日の電話で天城さんから休む旨を伝えられている。

ストーカー対策も今日は不要。

直接登校。

授業が始まるまで時間潰しに教室で花村と駄弁る。

 

「早紀さんさー。早ければ今日の午後には退院できるってよ。学校終わったら速攻駆けつけるつもり」

 

「早紀さん?」

 

「あ、いやー気付かれちゃった?俺たち正式にお付き合いすることになってなー。彼女がどうしてもって言うから。慣れないんだけどよー照れるぜ」

 

「ハイハイ、ご馳走様」

 

昨日は小西先輩に懇願されて病院に泊まったらしい。

この分だとマヨナカテレビは見てないだろう。

 

<ガラガラッ>

 

里中さんが教室に飛び込んでくる。

 

「ハァハァ、雪子居る!?」

 

「天城?まだ来てねーな。それより聞いてくれよ〜」

 

「うっさい花村!・・・どうしよう」

 

恋愛脳の花村は放っておいて二人で話しを進める。

 

「どうかしたのか?」

 

「昨日のマヨナカテレビ見た!?」

 

「ああ」

 

「映っていたの雪子だと思う。花村昨日言ってたよね。マヨナカテレビに映った人物は不幸な目に会うって。私心配で!」

 

里中の剣幕にクラスメイトたちが何事?と振り返る。

まずいな、落ち着かせないと。

 

「里中さん」

 

「雪子が映ってからすぐに電話したけどずっと電話中で繋がらなかったし。何度もメールしてるんだけど今朝になっても全然返事来なくて」

 

ん?

それ俺のせいだな。

 

「ごめん里中さん。昨日は俺が彼女と電話で話してた」

 

「はいーーー!?」

 

「あ、あと今日は朝から急な団体さんが来るらしくて、天城さん学校来れないって。メールの返事が来ないのも忙しいからだと思う」

 

「何よーそれーー!なんで連絡入れるの私じゃなく鳴上君なのよーーー」

 

<ピーンポーンパーンポーン>

 

あ、チャイム鳴った。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 12:00>

 

今日は半ドンだ。

天城さんのために取ったノートを確認しながら一階の玄関に向かう。

花村は速攻で小西先輩のもとに向かっており、里中さんと二人きりである。

 

「鳴上君、何それ?」

 

「今日の授業のノート。後で天城さんに貸そうと思って」

 

「うわっ、字が綺麗ー」

 

ん?

不審な動き。

 

「どうしたの?」

 

里中さんが慌ててカバンの中に何かを入れていた。

ノート?

 

「エヘヘ、何でもないです。それよりも荷物届くまでまだ時間あるんだよね。お昼ご飯食べに愛屋に行こうよ」

 

「いいね。そうしようか」

 

掲示板の前を通る。

バスケ部の勧誘ポスターが目に入り、立ち止まる。

元の世界で有名だったバスケ漫画のトレース絵が書いてある。

あ、こっちの世界でもこの漫画あるのか。

かなり好きだっだので読み返したいな。

 

「お、あんた転校生だよな。バスケの経験あるのか?」

 

二人組みの男子生徒が声を掛けてきた。

勧誘だろうか。

 

「いや。全く」

 

向き合って答える。

声を掛けてきた生徒のネームプレートには「一条」という名前が。

爽やかな美男子で明らかにモテそう。

 

後ろに控えている方は、一条とは対照的な無骨そうな男だった。

一条の腕が邪魔で、ジャージに書かれている名前が見えない。

 

「鳴上くーん、早くーーーっ」

 

先に下足棚に向かっていた里中さんが声を掛けてくる。

これから二人で愛屋に寄る予定になっていた。

肉丼が待ちきれないようだ。

 

「じゃあ」

 

二人に挨拶をして立ち去ろうとする。

 

「おいっ、アンタ、まさか里中さんと、つ、付き合ってるのか?どんな関係なんだ!?」

 

一条という学生の方が慌てた様子で問いを投げかけてきた。

 

どんな関係って。

二人きりで昼食デートした後、一人暮らしの部屋に一人で来てくれる程度の関係ですが何か?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 12:30>

 

愛屋に入る。

 

「まいど」

 

あいかさんがもうスタンバってた。

帰るの早いな。

 

「ここってさー雨の日にスペシャル肉丼を頼めるんだよ。値段も凄いけどボリュームも凄いの!」

 

「じゃあそれで」

 

「え、やめときなって!私も食べきったことないんだから!」

 

「ふーん、そうなんだ。じゃあ二人で食べよう。頼めますか?」

 

「まいど」

 

待っている間散々スペシャル肉丼の恐ろしさを里中さんから聞かされ、自然と期待度も高まる。

そしてついにヤツはやってきた!

 

「こ、これは!全てを受け入れる果てしなき寛容さ、正しいペース配分をキープするための知識、肉の山に突っ込む蛮勇の如き勇気、諦めずに食べ続ける根気、それら全てを兼ね揃えて無ければ完食できないだろうスペシャル肉丼!」

 

「冷めないうちにどぞー」

 

「肉、肉、脂、脂、そして肉&米・・・か。上等だ。じゃあ里中さん。早速初めての共同作業を始めようか」

 

「ってちょっと!鳴上君、もう何言ってるのよ。からかわないで!」

 

二人で一つの雨の日スペシャル肉丼を突く。

 

確かに凄い量だ。

二人で分けても一人当たりで優に二人前以上ある。

お腹いっぱいになった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 14:00>

 

「おじゃましまーす」

 

「どうぞ」

 

初めてマンションの自室に他人を入れる。

それも女子である。

緊張した。

でも"りせちー"のポスターとかはまだ張ってないので、引かれることはないはずだ。

 

最初は興味深げに部屋を見て回り、「ひろーい」だの「きれー」だの騒いでた里中さんだったが直ぐに飽きてしまったようだ。

まだ何もない部屋なので当然である。

 

本題の件に移る。

TVに手が入るところを見せたら「すごい!なにこれ!なんのトリック!?」と大騒ぎする里中さん。

その後、二人でいろいろ実験してみる。

そして俺と接触している状態だと、彼女もTVの中に入れることが判明した。

ただしTVの中は霧が濃く何も見えない。

 

結局普通にTVを見ながら荷物待つことに。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 19:00>

 

「来ないね」

 

「ああ」

 

「鳴上君、夕飯どうするの?」

 

「お腹減ってない」

 

「私も」

 

恐るべしスペシャル肉丼。

全然空腹感がやって来ない。

 

しかし遅いな。

雨で配送が遅れているらしい。

 

「もう夜だし、里中さんはもう帰った方がいいんじゃない?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 20:55>

 

荷物がやっときた。

 

「こんな大きなベッド、どうやって入れるのよ!?」

 

「え、ちゃんと測ったけどな」

 

「ギリギリじゃない!」

 

運送業者と一緒に四苦八苦しつつも無事に寝室に設置。

続いて家電の搬入に取り掛かる。

 

「お、お嬢さんは休んでて下さい。わ、私がやりますので」

 

運送業者さん、女の子の里中さんが重い洗濯機を運ぶのが心配のようだ。

 

「平気平気、これぐらい軽いですから!」

 

里中さん、さすが鍛えてるだけある。

 

「で、でも・・・」

 

「彼女は大丈夫です。【彼女のことは心配しないで下さい】」

 

あれ、運送業者さんの顔、どっかで見たことがあるような?

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 23:30>

 

全てのセッティングが完了する。

運送業者は配送が大幅に遅れたことをペコペコ謝りながら去っていった。

部屋に里中さんと二人きりになる。

 

「ごめん、こんな時間まで付きあわせてしまって。ご両親怒ってるんじゃない?」

 

「あー言ってなかったっけ。うちの両親今日旅行でいないんだ」

 

そうなのか。

そのセリフ、もっと色気のあるシチュエーションで聞きたかったな。

とりあえず彼女を家まで送らないと。

 

「送るよ」

 

「んー、今帰ると間に合わないかも」

 

何に?

 

「・・・マヨナカテレビ」

 

先ほどまでと一転して、どこか落ち着かない表情を見せてる里中さん。

昨日親友の天城さんっぽい人物が映ったことが、彼女をずっと不安にさせていたらしい。

 

「じゃあ一緒に見よう」

 

「うん」

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:00>

 

俺と里中さんはポカーンとした表情でマヨナカテレビを見ていた。

 

『こんばんわー!今日は私、天城雪子がハーレム、逆ハーに挑戦してみたいと思います』

 

これは"女子高生女将・魅惑の逆ハーレム大作戦!!"って番組だそうだ。

だってテロップにそう書いてあるし。

 

『名付けて、ヤラセナシ!逆ハーフラグ乱立!雪子姫の白馬の王子様たち探し!もう超本気〜』

 

胸元の大きく開いた白雪姫風のピンクパールのドレスを身にまとった天城雪子。

普段の彼女の立ち振る舞いからは想像もできない甘い媚声で、あけすけに男を誘っている。

 

『見えてるとこもー、見えてないとこもー、と・こ・と・ん勝負仕様〜ハート!みたいなね〜』

 

前屈みになり、ピンクのグローブに包まれた繊手で思わせぶりにスカートの上から股間を押さえ付けるポーズ。

そして肌の白さと柔らかさを魅せつける、こぼれ落ちそうな胸元を強調したアップ。

 

うーん、大きい。

天城さんって意外と着痩せするんだな。

 

『もう私用の豪華な後宮をぶっ立てるくらいの意気込みで〜、じゃあ行ってきます〜』

 

TVの中の天城雪子が奥にある大きな城に中に走って入っていく。

 

「ねぇ鳴上君!これって」

 

「ああ、録画しとけばよかった」

 

「って、何言ってんの!これって雪子だよね!言っていること全然おかしいけど!」

 

「そうだね。ちょっと待って」

 

スマホを取り出す。

リダイヤルっと。

 

<おかけになった電話は・・・>

 

「圏外だって」

 

「ま、マズイよー」

 

「里中さん、天城屋旅館に電話してみて。天城さんの安否を確かめないと。面識の無い俺より里中さんが掛けた方がいいだろ」

 

「・・・あっあっ、そうだねっ」

 

<トゥルルルル>

 

<はい、天城屋旅館です>

 

「女将さん!?あ、夜分遅くにすみません。私、里中千枝です。雪子はいますか?」

 

<あ、千枝ちゃん。大変なの。雪子の姿が見えないのよ。千枝ちゃんのところにも行ってないのね?>

 

「い、いつからですか?」

 

<夕飯前くらいかしら。余り騒ぎにしたくないのだけれど、警察に連絡しようか迷ってたところなの>

 

「大変だ・・・。やっぱりあれ雪子だよ・・・」

 

<え、今なんて言ったの?千枝ちゃん、雪子の居場所を知ってるの?>

 

なんか大騒動になりそうな展開。

 

「里中さんちょっと代わって。すみません。僕は天城雪子さんのクラスメイトの鳴上悠と言います。【落ち着いて下さい】」

 

<・・・はぁ>

 

「雪子さんですが僕達が探しだして連れ戻します。今夜中に。【警察に連絡にするのは明日まで待って下さい】」

 

<・・・あなたが雪子を見つけてくれるんですか?>

 

「はい。必ず。では失礼します」

 

よしこれでいい。

 

「じゃあ天城さんを追おうか」

 

「え?ええ!?」

 

電話を終えた俺は里中さんと手をつないでTVの中に飛び込んだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:05>

 

<タシッ>

 

「きゃっ!」

 

里中さんをお姫様抱っこして着地する。

そこは先ほどの天城雪子?が放送を行なっていた城の前だった。

 

「城か。やっぱりダンジョンになってるんだろうな」

 

里中さんを下ろしつつ天城さんが入った城を観察する。

 

「あの中に雪子が!」

 

居ても立ってもいられないのか、止める間も無く里中さんが城の入り口に向かって駈け出していく。

 

「ちょまてよ!」

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:10>

 

先行する里中さん。

もうこっちの言うことなんて聞いてくんない。

怒涛の突進である。

周囲から次々と現れる化け物たちに目もくれず、とにかく突っ走っていく。

 

全然周りの状況が見えていないようだ。

天城さんはそれほど彼女にとって大切な存在なんだろう。

 

「クッ」

 

里中さんの移動スピートが速すぎるため、化け物たちは結果として後続の俺目掛けて襲い掛かってくる。

例のごとく聖剣でバッサバッサ切り捨てながら里中さんを追う。

ただ里中さんが襲われないように牽制も入れなきゃならない。

飛び道具が必要だった。

 

「ええい、いでよ【グラビドン!】」

 

右手に聖剣(エクスカリバー)、左手に重力銃(グラビドン)を装備する。

 

<ザシュ!ドキューン!ドキューン!>

 

襲い掛かってくる妖魔(ルシファーホーク)たちを切り払いつつ、先行する里中さんの周囲に現れた個体を重力弾で撃ち落としていく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:20>

 

「はぁはぁはぁ。あの暴走戦車娘め!」

 

いつの間にか置いてかれてしまった。

この中か?

 

<バタンッ>

 

2階の扉を開いて中に突入。

階段を登った先。

広い踊り場の真ん中に里中さんが突っ立ってる。

そして金色の瞳をしたもう一人の里中千枝。

 

小西先輩のときと同じ展開だな。

抑圧されていた里中さんの内面がこの世界の力によって影として実体化したのだろう。

そんなことを考えながら里中さんの傍にスタスタと近づいていく。

 

「や・・・やだ鳴上君、来ないで!見ないでぇ!!」

 

俺に気付いた里中さんはひどく情けない顔で俺から自分の影を隠そうとする。

 

自分がもっとも認めたくない部分の結晶だものな。

当然の反応だろう。

親にエロ本見つけられた男子生徒と同じ反応で愛おしい。

ニコっと笑ってあげる。

 

「大丈夫、里中さん。全部わかっているから」

 

「違う・・・違うの、あたし、こんな下衆な女じゃないの!」

 

『ふふ、そうだよねぇ。男たちからチヤホヤされてる色白の雪子が側にいないと、周りに男なんて誰も寄って来ない。人としても女としても雪子に勝ててない、どうしようもないアタシ』

 

煽るなぁ。

人としては知らないけど、女としてはいい勝負だと思うのだが。

 

『奥手な雪子を男子たちから守るのも雪子が男慣れしたらアタシが困るから。雪子がいなくなったら男が誰も寄って来なくなるから。ふふ。だから雪子を自分の側から手放せない。だから雪子は大事なトモダチ!』

 

「そんなっ。あたしは、そんなに、男が欲しいなんて思ってない!」

 

否定すれば否定するほど抑圧は強まり、影は力を得ていく。

 

『うふふ、今までは功夫で発散して女の性欲を押さえ付けてたけど、ここでは違うよ。いずれ"その時"が来たら消えるのは鋼鉄の処女のアンタ。残るのはヤリマンのあたし。いいよね?女の性欲は男の六倍強いらしいから!』

 

「黙れ!!男なんか・・・男なんか、一生いらないんだから!!」

 

錯乱した里中さんがとんでもないことを叫んでる。

え、まさかのレズ宣言!?

それは、ちょっと困るぞ。

 

『うふふ、うふ、ふ、きゃーっはっはっは!!』

 

影が闇に包まれた。

力が集まっていくのがわかる。

おっとこれ以上はいけない!

 

<ダン!>

 

「うう」

 

首筋に手刀を入れて彼女を気絶させる。

すまん里中さん。

このまま君の影を暴走させるわけにはいかないんだ。

 

<シュウウウウゥゥゥゥン>

 

『ざーんねん。あともうちょっとで真なる我を引き出せたのに』

 

そこに現れたのは無数の里中さんの影の上に悠然と座る、これまた里中さんの姿だった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:30>

 

ひーふーみー、四人か。

一番上の里中さんの影は、組み上がった三人の自分の上に座っている。

一番下の里中さんなんて脚がプルプル震えてて辛そう。

下の三人は日頃抑圧されている、様々な里中さん自身の内面を表しているんだろうな。

どう説得してこの抑圧を解消してやろうか。

 

『鳴上君、あんたも雪子の方がいいんでしょ。男はみんなそう。結局雪子のようなお淑やかな美人の方に惹かれるのよね』

 

ある意味当たってはいる。

だがな、里中さん。

君はまだ全然人生経験を積んでない。

それは事実ではないんだよ。

 

彼女の立場から見た三段論法でいくと、雪子に固執する理由は自分に自信が持てないから。

自分に自信が持てないのは、周りの男たちが雪子ばかりチヤホヤするから。

周りの男たちが雪子ばかりチヤホヤするのは、自分に女としての魅力がないから。

 

つまり彼女に雪子に匹敵する素敵女子になる方法を教えてあげれば、全ては万事解決だ。

よし、まずは彼女の誤りを正そう!

 

「違うな里中さん。【君は間違っている】」

 

『・・・ああん?』

 

「はっきり言おう。今はともかく、将来的には絶対に君の方が天城さんよりも男子に人気が出る」

 

『何言っているの。そんなわけないじゃん』

 

「仮に社会人の男性の十人に付き合いたい方はどっちと聞けば、恐らく七人は里中さんと答えるよ。【これは間違いない】」

 

『・・・そうなの?』

 

「仕事で忙しい男子にとっては、里中さんのような気のおけない女性と付き合う方が楽なんだよ。彼女にするなら尚更ね。天城さんはグレードが高すぎる。ホステスとか一夜の恋の相手とかそういう枠かな」

 

社会に出たことのある男なら誰しも同意してくれるだろう。

里中さんの方がタフで自分を受け入れてくれそうで一緒にいても疲れなさそう。

これはとても大きなアドバンテージだろう。

 

しかし問題は、だ。

その良さを理解できるほど周りの男子たちが経験を積んでいないという点だ。

思春期でマスかきばかりしている彼らはもっと単純なオスなのである。

 

「そんな君が現在学校で男子に女の子として見られていない理由はただ一つ。ずばり今の里中さんには色気が足りない。【色気を出せ。色気は努力すれば身につけられる!】」

 

『・・・へー、面白そうじゃん。その方法教えてよ』

 

「立ち振舞は変える必要はない。君の良さがスポイルされるから。まずは自分に合う化粧を覚えること。【毎日三十分は鏡に向かってナチュラルメイクの技量を磨け!】」

 

『・・・それくらいなら出来るかも』

 

「次に【男と付き合って沢山セックスしろ!】」

 

『・・・』

 

「女は男で変わる。男と肌を多く重ねれば女性ホルモンの分泌が活発化して自然と綺麗になるし、男心の機微も学べてセックスアピールも上手くなる」

 

『・・・』

 

「この二つを心がければ、すぐに君は天城さん以上の人気を得ることになる!」

 

よし、完璧!

これで彼女を説得できれば・・・。

 

『ふーん。じゃあ鳴上君。あたしと今すぐセックスしてよ』

 

何・・・だと!?

 

『男と付き合えって今言ったじゃない。アンタがあたしとセックスして証明してみせてよ』

 

この展開は予想していなかった。

思わずフリーズしてしまう。

 

『出来ないの?ふん、やっぱりあたしみたいな何もない女を相手にしてくれる男なんてさ。この世にいるはず無いってことよね』

 

「待て!そんなことはない!先の言葉どおり君は今でも十分に魅力的だ!・・・でも、本当にいいのか俺で?」

 

『だってあたしの知る中では鳴上君ぐらいだもの。まともな男って。どいつもこいつもくだらない奴ばっかり』

 

そうなのか?

ど、どうする?

いや待て。

 

このTV世界は通常の世界とは違う。

言わば夢の世界。

つまり何でもありだ。

里中さんの深層意識を満足させてやれば、彼女の心の内の抑圧が解消されかもしれない。

 

うん、そこに寝ている里中さんの本人の躰自体には指一本を触れないわけだし・・・。

問題ない・・・よな?

 

「よ、ようし良いだろう。里中さん。いや千枝。君が俺の童貞を捨てるに足る魅力的な女性であることを、身を持って証明してみせようじゃないか!」

 

『へぇー、鳴上君童貞なんだ!いっがいー。今時高校生で童貞ってダサくない?童貞のキミが私を満足させられるの?』

 

自分の影が作り上げていた塔から飛び降りた千枝の影が俺の前でシナを作る。

腰をクイっと突き出し、ピラリとスカートを捲って挑発してきた。

くやしかったら私をヒィヒィ言わせてみせなさいよ。

金色の瞳をした彼女の下卑た笑みがそう語っていた。

 

望むところだ!

童貞の何が悪い!

だいたい君だって処女だろうに!

 

・・・あれ?

俺って童貞、だったよな?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 24:40>

 

想いの力で踊り場の中央に広いベッドを作り、その上で千枝と交わる。

俺のマーラ様は超ギンギンだ。

 

祝童貞卒業!

いや相手は影だから違うのか?

それにその前に誰かと既に?

あの金髪の美人さんって誰だっけ?

まぁいっか!

 

「ふん、ふん、ふん!」

 

『ああー、ああーん、すごい、悠!もっとちょうだい!』

 

セックス中の千枝は普段の彼女から想像できないほどエロくて欲情を誘う。

引き締まった肉体と同様に千枝の中は引き締まっており、俺を大いに楽しませた。

破瓜の傷みも「【信じろ!俺と千枝の躰の相性は最高だから痛くない!】」と想いの力で克服させてやった。

すでにトロトロでキュッキュッな最高の肉穴である。

むせかえるような千枝の甘いフェロモン臭を堪能しながら腰を振るう。

 

『あんあんあん、あんっ、そこダメっ、感じ過ぎちゃうぅ』

 

そして千枝のエッチな喘ぎ声は特に俺を興奮させた。

普段のやや慎みの足りない言葉遣いから一変し、非常に可愛らしい声で可憐に喘ぐのだ。

もっと啼かせたくてわざと千枝の得られる快感が倍増するような腰使いをしてしまう。

 

『んあんっ、ふぁあ、あふん、んんんっ、イクっ、イッちゃってる、んんんんんっ』

 

今日の俺は絶好調だ。

千枝の感じる部分を寸分の狂いなくピンポイントで責め立てることが出来ている。

まるでそのやり方を飽きるくらいに繰り返して事前に修練を重ねていたかのように面白いくらいに千枝が啼く。

 

おっと。

 

『ああああああぁぁーーーーん』

 

何度目になるかわからない千枝の大アクメ。

跳ね上がる千枝に合わせて思いっきり中出しする。

だってこれ千枝の影だから妊娠の心配ないし。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 25:00>

 

ふー、あれ?

ベッドの周りにいる抑圧された千枝の影たちがこちらを羨ましげに見ている。

 

そうか。

彼女たちも癒してあげないと。

一人一人にベッドを作って順番に愛してあげる。

 

『ああ』

 

『ううん』

 

『あひー』

 

都合四回千枝の処女膜を破ったことになるな。

 

"りせちー"でセンズリしまくって鍛えあげた俺のマーラ様。

千枝たちを散々に啼かせることに次々と成功していった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 26:00>

 

問題があった。

一人を抱いている間に回復した他の三人が待ちきれずどんどんストレスを貯めていく。

日々の生活の中で雪子を救いつつ、そのことで逆にストレスを貯めこんでいった千枝。

同じである。

 

なんとかしないと。

そうだ!

 

「くぅ、千枝!【自分の番が回ってくるまで、邪魔しない程度に自分をアピールしろ!他の女との駆け引きを楽しんでストレスを発散するんだ!】」

 

最初に抱いた千枝をもう一度正常位で攻めながら、周りの三人に呼びかける!

その言葉と同時に四人の乗ったベッドを思いの力で一つに結合し、5P体制に移行する。

騎乗位で千枝と交わり直す。

 

『あんあんあん!』

 

『乳首なめなめしてあげる』

 

『じゃあ私は左の乳首を攻めちゃおーっと』

 

『んちゅんちゅ』

 

騎乗位でヨガる千枝その1。

右の乳首を舐めながら俺に股間に指を差し込まれる千枝その2。

左の乳首を舐めながら俺に胸を揉まれる千枝その3。

俺とのディープキスに励む千枝その4。

 

「ぷはっそうだ千枝!【君は大勢で一人の男に奉仕するのが好きで好きで堪らない変態女だ!一緒にイケーーーッ!!】」

 

一際大きく突き上げ激しく噴出。

 

『ああーーーーん!』

 

腰の上で踊っていた千枝が絶頂と共にグンッと胸を突き上げて伸び上がり、光となって消えていく。

三方からあの手この手で俺を攻めていた千枝たちも、腰をピクピク震わせて恍惚とした表情で己のイク姿を眺めながら消えていった。

スッーと何かが俺の中に入り込んでいく感覚。

 

どうやらこれで彼女の深層心理が抱えていたストレスは完全解消されたらしい。

後はこの彼女の影を本人に返してやるだけだな。

 

俺はベッドから立ち上がり、傍にソファを作って寝かせていた千枝本人のもとに向かった。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月16日SAT 雨 26:20>

 

里中千枝の影をバトルファックで完璧にコマしたため、性技がガッチリ高まりました。

性技のパラメータが"2Pマスター"に上昇します。

 

――――――――――――

鳴上悠

86/136

34/84

 

通常パラメータ

知識5:生き字引

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容5:オカン級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技2:2Pマスター(↑)

精力5:孕ませ王

色気5:媚薬級

――――――――――――

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 26:20>

 

「やっと終わったよ千枝」

 

俺の手刀の一撃で昏倒したままとなっていた千枝を抱き起こす。

その瞬間スーーーッと俺の中から何かが抜けていった。

小西先輩のときと一緒の感覚。

 

「・・・はひ!はひぃぃぃぃぃ」

 

その途端ビクンビクンと千枝の躰が若鮎のように跳ね上がった。

 

うお!?

 

慌てて彼女の躰を抑えこむ。

千枝は躰をつっぱらせたかと思うと弛緩させ、また躰をつっぱらせるを繰り返す。

その間ずっとひぃひぃ言っていた。

 

顔を覗きこむと、千枝は首まで肌をピンク色に染めて目をギュッと瞑って何かに耐えている。

尋常ではない。

 

「千枝!大丈夫か!!」

 

声を掛けるも聞こえていないようだ。

躰をクネラせたかと思うとピンと躰を反らし、ギューっと俺の服を掴む。

 

「ぁぁぁぁぁぁ!」

 

口を開けて音にならない叫びを上げながら、十秒ほどその体勢をキープ。

その後電池が切れたかのようにパタリと躰の力を抜き、俺の服を握っていた手もスルリと滑り落ちる。

グッタリとした千枝の躰を抱きかかえたまま、呆然とする俺。

 

これは・・・。

自分の影を受け入れたことによる影響なのか?

小西先輩のときはこんな風にはならなかったのに。

 

<チョロチョロ>

 

ん、なんの音だ?って。

 

「うわ!!」

 

全身の力が抜けてしまったのか、膀胱も抑えが効かなくなったようだ。

千枝お漏らし。

 

慌てて避けたのでこちらに被害はなかったが、千枝のスカートとスパッツが聖水塗れに。

そして、千枝自身はお漏らししてしまったことに気づかず、気絶したままである。

時たまピクピクと躰を震わせ、色っぽい喘ぎ声を漏らしている。

 

まずいな。

まだ天城さんを救い出してないのに。

 

この状態の千枝を連れて行くのはリスクが高すぎる。

何より臭う。

一旦自分の部屋に戻ることにしよう。

 

まだ夜明けまで時間はあるはずだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月16日SAT 雨 26:30>

 

強く念じてTVを作り出して自宅のリビングに千枝を連れ戻した。

千枝は相変わらずピクピクしている。

色っぽくて困る。

 

とにかく今は天城さんを助けることを優先したい。

ただ千枝を聖水に塗れたまま放置するのは可哀想だ。

とりあえず服を脱がせる。

 

裸に剥いてタオルで躰を拭いてあげる。

刺激を与えると、ビクンビクンと震わせながらその躰を悩ましげに仰け反らせる千枝。

その都度ピュッピュッと聖水じゃない何かが股間から飛び散り、ドキドキしてしまう。

千枝の躰は欲情しているかのように男を誘う甘い香りを放出しており、思わずスーハースーハーしてしまった。

興奮はしたがさきほど散々千枝の影を抱いたばかりである。

造形は一緒だったので満腹感が強く、なんとか手を出さずにすんだ。

 

ベッドルームに裸のままの千枝を運ぶ。

届いたばかりのベッドの下ろしたてのシーツの上に寝かせ、タオルケットをかけてやる。

また漏らされたら困るので、腰の下にタオルを敷くのを忘れない。

 

替えのパンツはどうしようとか考えながら、千枝の汚れた服を彼女に手伝ってもらって設置したばかりの洗濯機に放り込む。

シャワーを浴びて汗を流した後、天城雪子救出作戦を続行すべく俺は再びTVの画面を跨いだ。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月16日SAT 雨 --:-->

 

鳴上悠に自分の影を犯され、里中千枝がペルソナに目覚める機会が失われました。

里中千枝は戦闘に加わらず、鳴上悠とセックス三昧の充実した高校生活を送ります。

里中千枝は高校在学中に妊娠してアザディスタンに留学し、鳴上悠の妻となってアザディスタン国籍を得ます。

鳴上悠が里中千枝の喘ぎ声を絶賛し続けたために、高校卒業後日本に戻って声優になる道を選びます。

里中千枝は人妻で子持ちであることを隠しながらアイドル声優となり、お肉大好き声優というジャンルを構築し、永遠の17歳として声優界のトップで活躍し続けます。

戦車のアルカナが消滅しました。




千枝のシャドウの下にいる影、原作とは異なってます。あとほんとは警察官目指します。


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第04章 女教皇

吸収時に影の体験した行為が本人に一気にフィードバックされます。そしてアザディスタンは一夫多妻制。


<VELVET ROOM 2011年4月17日SUN 晴 --:-->

 

「んんっ、お帰りなさいませ、我が主」

 

咥えていたバナナを何食わぬ顔でベッド脇のテーブルに置いて、マーガレットが出迎えの言葉を発する。

 

「見事ワイルドに女を啼かす能力を発揮されたようですね。さすがです。やはり私の目に狂いはありませんでした」

 

置かれたバナナの果肉部分にはべったりと口紅がついていた。

 

「主でしたら私が新たに学んだこの技も、堪能し味わい尽くせることでしょう」

 

目の前で膝を付いたマーガレットが、媚びるような上目遣いでその技の名前を告げる。

 

「魅惑のフェラチオ」

 

服の中に収まっていたマーラ様がその単語に反応していきり立つ。

 

「この技を受けてあなたのマーラ様はどの程度まで我慢し続けることが出来るのでしょうか」

 

ジーッとズボンのチャックを下し、口の動きだけでマーラ様を取り出すマーガレット。

 

「ペルソナ液を吐き出す可愛らしい瞬間をじっくりと拝見させて頂きます」

 

亀頭の先端にマーガレットの熱い吐息がかかった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 3:00>

 

TVの画面を通って"雪子姫の城"に戻る。

ニ階の大広間に出た。

千枝の影たちを散々啼かせまくったベッドがそのままだ。

 

画面を潜った瞬間にクラッときた。

な、なんだ?

 

あんなに千枝の影とセックスしたはずなのに。

俺のマーラ様がばりばりに猛り立っておられる!

 

まるで柔らかい舌と唇で煽りに煽られ、射精間近で堪えていたかのような状態だった。

うう、早く出したい!

 

<パッ>

 

突如辺りが暗くなる。

 

<ダララララララ>

 

ドラムロール?

 

<チャチャーーン!>

 

パパッとスポットライトが付いた。

ベッドの傍らにいつの間にか立っていた人物が照らし出される。

ピンクパールのドレスを纏う天城さんだった。

 

『うふふ、ふふ、あはははは!』

 

見るからに本人じゃない。

あれが天城さんの影か。

 

<パパーヤパパー>

 

大人の社交場に流れるようなサックスの淫靡なメロディが鳴り響く。

 

『あらぁ?サプライズゲスト?なーんとここで本命の王子さまの登場でーす!』

 

天城さんのドレス姿は、画面越しに見るよりも遥かにエロかった。

大きく開いた胸元。

白くてスベスベで柔らかそうな乳の谷間。

そのビジュアルは俺のマーラ様を視覚だけで大いに刺激する。

 

『んふふ、さぁ王子さまは私とどんな風に絡んでくれるのでしょうか!?』

 

どんな風にって問われるとそれは勿論・・・。

 

「【ベッドの上で組んずほぐれつのエロエロな絡みで!】」

 

マーラ様の疼きを堪えきれなかった。

思わず本音が口から漏れてしまう。

 

『・・・あらあらあらぁー?そうなんだー。うふふ。じゃあ次はこのコーナーにしましょう!』

 

<モザイクなし!雪子姫、白馬の王子様弄り!>

 

ぱんぱんぱんひゅーひゅー。

 

『そう私は雪子。雪子は私。それじゃあー、初めてでちょっと恥ずかしいけどー、張り切って突貫してみましょー!うふ王子さま、マーラ様おっ立てて待ってろヨ!』

 

天城さんの影が俺めがけて銃を撃つフリをする。

 

<バキューン>

 

チープな効果音が鳴り響いた。

どうやら俺は彼女の探している意中の王子さまだったらしい。

 

もうすぐ夜が明ける。

俺のマーラ様は既におっ立っている。

ここで決着を付けよう。

 

『いでよ!衛兵さんたち!王子さまを取り押さえなさーい!』

 

「セイッ」

 

天城さんの影の後ろから馬に乗った騎士らしき化け物が二体現れる。

聖剣を構えて一瞬で斬り捨てる。

 

『あら?あらららら〜ぁ?つっよーい!やっぱりあなたがアタシの欲求不満を解消してくれるのかしら〜?』

 

欲求不満だと?

 

『雪子ねぇ。イっちゃいたいんだぁ。未体験のとっても気持ちいい遠くにぃ。王子さまなら連れてってくれるでしょぉ?ねぇ、早くぅ』

 

これが天城さんの深層心理に眠る抑圧されていた本当の願望。

清楚な顔してそんなに男漁りに憧れていたのか!

 

いいだろう。

望むところだ!

その願い俺が叶える!

 

「ふ、天城さん、いや雪子!本当にそこに辿り着きたいなら・・・。【逆ハーなんて甘ったれたこと言ってないで、自ら悦んで一人の男のハーレムに加わってみせるぐらいの気概を示せ!】』

 

<ババーン>

 

おおー。

歓声が広がる。

 

虚をつかれたかのような表情を見せる雪子。

だがすぐに反撃してくる。

 

『・・・いいわ、逆ハーレムなんて生温いことはもうやめた。逆レイプしてやろうじゃないの!』

 

まさかの逆レイプ宣言だ。

舐められたものだな。

 

『さあ王子さま、一緒に淫らなダンスを踊りましょう?ンフフフフ』

 

ジジジと背中のファスナーを開き、シュルリとドレスを色っぽく脱ぎ始める雪子。

ふるんと解放される双乳のニップルシールがエロい。

焦らすようにシールを剥がし、その綺麗な乳首を解放してくる。

俺も負けじと服を脱ぎ捨て、戦闘態勢十分のマーラ様を見せつけてやった。

 

もう興奮してビンビンにボッキしてしまっている乳首とマーラ様を互いに晒しながら対峙する俺たち。

 

「待ってろ雪子。俺が全部受け止めてやる!」

 

『あらホントぉ・・・?じゃ私も、ガッツリ本気でぶつかってあげる!!』

 

俺たち二人はもつれ合うようにベッドにダイブした!

そして絡み合った!

エロエロにな!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 3:10>

 

雪子というその名前のとおり、雪子の肌はシミやホクロひとつない透き通る白さを誇っている。

そしてこれまた名前のとおり、肌の温度が人より冷たい。

火照った躰で雪子の冷たい肌を抱きしめると凄く気持ちいい。

ただその代りに雪子の体内の温度は高めのようだ。

 

その細くて長い白魚のような指と赤い唇で俺のマーラ様を攻めてくる。

生来の生真面目な性格も手伝って口唇愛撫の攻めに緩みは全くない。

 

『ペロペロちゅぱちゅぱ』

 

「う・・・、うう」

 

裏筋から球筋まで丹念にねぶられ果ててしまいそうになる。

ここは我慢だ!

もっと凄いフェラを散々堪えてきたので、なんとかここも耐えることに成功する。

 

『ふふふ』

 

一旦口を離した雪子は、魅せつけるようにその白い大きな乳を自らの手で捧げ持って擦り寄ってくる。

雪子の躰の細さも相まって、そのオッパイは明らかに千枝よりも大きく見える。

ま、まさか!?

 

『男の人って〜、こうするの好きなんでしょう?』

 

パイズリだった。

柔らかくてひんやりした雪子のおっぱいに俺のマーラ様が包まれる。

両手で両の乳房をむにむにと動かし刺激を与えてくる雪子。

ピンピンになってる朱鷺色の乳首がカリ首をコリコリと刺激し、堪らない。

 

『あーーん。じゅるじゅる』

 

うぉ!?

油断していた!

両の乳房の間から飛び出ていた亀頭が、その生暖かい口の中に収まってしまう。

乳房の冷たさから一転しての熱いほどの口内。

亀頭を丸ごとしゃぶられ、さらに鈴口をチロロと舌でくすぐられる。

 

それはヤバ・・・い!

美形の雪子のだらし無いひょっとこ顔が視覚的に追い打ちを掛けてくる。

こんな快楽責めは初めてだった。

 

パイズリ、フェラ、ひょっとこ。

このジェットストリームアタックを俺は回避しそこねる。

 

<どぴゅどぴゅう>

 

『ゴクン、チューチュー』

 

くっ何とか耐えていたのにイカされてしまった。

悔しいビクンビクン。

 

『んふふ、頑張ったわね。でもまだまだよ。アタシが身も心も捧げるに相応しいか、もぉっと強さを見せてちょうだい!』

 

糸を引きながら俺のペルソナから唇を離した雪子は、その白くて長い脚を大胆に開いた。

土手の白さと秘唇の紅さのコントラストが美しい。

直ぐ様シャキーンと復活してしまった俺のマーラ様に、背面座位の体勢で自分から己の秘華を宛がう。

 

『いらっしゃい、アタシの王子様、ンフフフフ』

 

<ブチッズブズブ>

 

『クッ、イタッ。うふふ。これがセックス!これが男の子!』

 

「うぉ!?くぅううううう」

 

逆レイプの宣言どおり雪子自らが腰を動かしてのバージンブレイク。

雪子は新しい世界に到達した。

 

雪子には破瓜の血の赤が似合う。

しかし初めて破瓜を体験する雪子を慮るどころではない。

俺は出ちゃいそうになるのを堪えるのに必死だった。

なぜなら雪子の膣の中が熱くてヌルヌルしてグニグニしているから!

雪子のソレは恐るべき名器だったのである。

 

先ほど散々味わった千枝のモノとは比べ物にならなかった。

思わず後ろから雪子に抱きついて、たわわに実ったやわ乳をギューっと握って堪える俺。

雪子の肩口に顔を埋め深呼吸。

すると艶やかな黒髪と白いうなじから立ち上る極上の甘い体臭にクラクラ。

い、いかん、これは孔明の罠だ!

 

『さぁ行くわよ王子さま』

 

「ちょっ待っ、待ってくれ!うわーーー」

 

<どくっどくっどくん>

 

みこすり半で出ちゃった・・・。

雪子の影がその端正な眉をおもいっきり顰める。

 

『何?もうイッちゃったの?早くない?』

 

・・・面目ない。

 

『ケッ、やっぱ見込み違いだったわ。あんたは王子さまでも何でもない。さっさと離れろクズ男!!』

 

雪子は俺を罵倒し結合を解こうと自ら腰を上げる。

悔しいけれど、その腰の動きによって生まれた摩擦でさえも、今の俺には気持ち良過ぎた。

即時にマーラ様が復活して、またまた出そうになる。

 

雪子は強敵だった。

天城越えは難易度高すぎた。

俺の負けか・・・。

せめて千枝の影との戦いで消耗していなかったら!

 

いやまだだ。

こんなもので俺は終わらない。

"りせちー"で何度マーラ様を鍛えたと思っている!

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

『何?何!?やだ、イヤだ、こんな格好嫌ぁーっ!!』

 

強引に雪子を押し倒す。

背面座位から後背位の体勢に移行。

 

「そうだ!俺は王子さまなんかじゃない!俺はこの世界の王!【マヨナカ王に俺はなる!】」

 

『王子さまっ!あんっ、王子さまっ!くぅ、私を助けてぇ!』

 

「黙ってろ雪子!お前の王子さまなんてどこにもいない!」

 

『なんで・・・、ふぁん、なんで来てくれないの・・・・あっあっあっあっ』

 

「お前に必要なのは王子さまじゃない!はしたないお前の本性をお仕置きするご主人様だ!俺が雪子のご主人様になってやる!【俺がお前のご主人様だ!!】」

 

『ああーーーーっ!ご主人さまーーーーっ!!』

 

俺の宣言により攻守が完全に逆転した。

後ろから雪子の綺麗なハート型の尻をガンガン突きまくりイかせまくる。

着痩せする乳房をフルフルと震わせながら、もうイクのはイヤイヤと拒否ってきてもお構いなし。

その美しい曲線を描く柳腰をがっちりと離さず、ねんねの雪子に本当のレイプの激しさを教えてやる。

 

老舗の旅館を継ぐのが嫌とか、勇気を持てない自分が云々とか。

そんな小さい悩みなんて気にならなくなるまで、雪子をイカせまくった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 4:10>

 

雪子の初めての穴に全弾注ぎ込み終わり、ベッドの上に横たわって休む俺。

もうクタクタだった。

その隣には同じく裸で寄り添う雪子の姿が。

 

途中からだいぶ従順になり、身も心も俺をご主人様と認めてしまったようだ。

ぼんやりとその黒髪を撫でてやると、うっとりとした表情を浮かべる。

 

「・・・またしたくなったら、いつでも言ってくれ。すぐに雪子を満足させてあげるから」

 

『本当?ご主人様のハーレムにも入れてくれる?』

 

「ああ」

 

『約束よ、アタシのご主人様ぁ』

 

金色の瞳をした雪子がキスを強請ってくる。

そっと応じてやる。

スッーと何かが俺の中に入り込んでいく感覚。

キスをし終わった時、雪子の影は何処にもいなかった。

 

さて雪子本人を探さないと。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 4:40>

 

疲れた躰に鞭打って雪子探索を続行する。

 

この城の主である雪子の影を調伏したためだろうか。

化け物は出てこず、あっさり最上階の八階に到着する。

玉座の間には、気絶した着物姿の雪子の姿があった。

 

「雪子!大丈夫か!?」

 

駆け寄って抱き起こす。

その瞬間スーーーッと俺の中から何かが抜けていく。

 

「あ、ああ、ああーーーん」

 

プルプルと雪子の躰が震える。

さらに何かを堪えるようにギュッと目を瞑り、口を大きく開けてその可愛いらしい舌をレロレロと動かし始めた。

甘いフェロモンが雪子の細い躰から立ち上る。

千枝のときと一緒だった。

 

と、いうことは。

 

「マズいッ!」

 

当然の帰結に気づいた俺は、急いで雪子の高そうな着物の帯を解こうと試みる。

無意識で暴れて躰をつっぱらせる雪子を必死に抑える。

 

「くふーーー、はふーーー、ご・・・ご主人さまー」

 

帯を解き終わるまで雪子が腰をプルプルと突き上げること十数度。

段々間隔が短くなってきていた。

猶予はあまりない。

 

バッと着物の前を開く。

赤い絨毯の上に広がる黒絹のような髪と桜色の着物。

そして大の字の格好で脚を緩め、その白い肌を朱に染めて喘ぎ続ける雪子。

和装の女性を抱くシーンなんて想像もしたことがなかったので、予想以上の婀娜っぽさに心を打たれる。

ってそれどころじゃなかった!

 

内の襦袢は諦めるしかない!

雪子の細い腰を持ち上げ、着物を抜き取る。

その瞬間、限界が訪れたようだ。

 

<チョロロロロ>

 

長襦袢の股間の部分が濡れていく。

本日二回目の美少女のお漏らしである。

エロ過ぎて勃起した。

 

「ふわっ」

 

当の雪子は気持ちよさそうに笑みを浮かべていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 4:50>

 

疲れ過ぎて朦朧としながらも、濡れないように気をつけて雪子を抱き上げ自宅に戻る。

 

着物を回収するときに落ちていた雪子の携帯電話を拾う。

仲居さんとしての連絡用のもののようだ。

自宅に戻って電波が回復すると同時にメールの受信が始まる。

 

開いて見ると結構な量だ。

全て雪子の安否を確認する内容だった。

発信日時は昨日の夜から深夜に渡る。

 

雪子のお母さんは心配で堪らないだろう。

まだ雪子を探しているかもしれない。

体調を崩しているらしいので早く安心させてあげたい。

 

だけど・・・。

雪子は未だアヒアヒ言いながら躰をピクピク震わせている。

この状態では帰せない。

 

とりあえず雪子の無事を伝えておくか。

雪子の携帯の履歴から女将さんの番号を押す。

 

<トゥルルルル、ガチャ>

 

<雪子!あなた何処に!?>

 

「もしもし」

 

<あ、あなた誰ですか!?>

 

「【落ち着いて聞いて下さい。】零時過ぎにお話させて頂いた鳴上悠です。雪子さんですが無事に見つけました」

 

<・・・よ、良かった>

 

「友人たちのパーティに誘われて断れなかったようです。それでその。申し上げにくいんですが。かなり飲み過ぎてしまっているみたいで今は動かせません」

 

<まぁあの娘が>

 

「はい。お昼過ぎには必ず雪子さんをお連れしますので。【僕を信じて下さい】」

 

<・・・娘をよろしくお願いしますね。鳴上さん。とにかく無事で良かった。警察にも連絡せずにすみました。お礼を申し上げます>

 

「お気になさらず。大事な友達ですから。では失礼します」

 

ふー。

眠い。

疲れた。

でもまだ寝れない。

 

千枝の服を洗濯機から取り出して部屋干し。

代わりに雪子の長襦袢と肌襦袢を剥ぎ取り、洗濯機に放り込みスイッチオン。

裸の雪子の股間を拭いてあげた後、抱え上げて寝室に移動。

ベッドに寝かせる。

 

千枝の方はだいぶ落ち着いてきたみたい。

ただ腰のタオルの方がグショグショだった。

千枝のタオルを替えてあげ、雪子の腰の下にもタオルを差し込んだところで限界が訪れる。

 

「うう、もう無理。おやすみ・・・なさい」

 

俺は千枝と雪子の間に転がり、二人の匂いに包まれながらそのまま意識を失った。

ああ、キングサイズのベッド、間に合って良かったな。

zzz。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 10:00>

 

「ぴちゃぴちゃ」

 

「れろれろ」

 

ん?

股間がやたら気持ちいい。

なんだ?

 

眠い目を擦り顔を上げると夢のような光景が。

俺の朝立ちマーラ様が、なんと裸の雪子と千枝の二人にフェラられていた!

 

俺のマーラ様を挟んで左右から口を寄せる千枝と雪子。

ピンク色の舌が競うように亀頭を這いまわる。

まるで俺のマーラ様を挟んで雪子と千枝がキスしあってる様にも見えた。

 

「な、なんで?」

 

「ご主人さま〜、んーちゅっちゅ」

 

「あ、やっとおきたー、ぺろぺろ」

 

二人はエロく微笑んで舌の動きを早くする。

ちょうど鈴口の上で二人の舌が激しく踊る。

二人の舌が鈴口の上で絡まる。

 

あまりのエロ過ぎる光景に、寝ている間に散々高められていたらしい俺のマーラ様はあっけなく暴発する。

 

<どぴゅー>

 

白濁したペルソナ液が二人の舌に掛かって飛ぶ方向が変わり、雪子の美貌を濡らす。

 

「きゃっ」

 

「やっとでたー」

 

うっとりとした表情を浮かべる二人。

 

「ウフフ。雪子のぶっかけ顔、凄くエロいよ。ちょっと待ってね。今舐めとってあげるから」

 

「ん、お願い千枝。じゃあ私はご主人様の出し残しを頂くね」

 

雪子の白い額から整った鼻筋までドロリと垂れ落ちるペルソナ液を、千枝が器用に吸い取っていく。

雪子はその細い指で俺のマーラ様を握って、絞り出すような動きで擦り上げる。

さらに先端に口付け、チュルチュルと残ったペルソナ液を吸い始めた。

 

お互い粗方吸い取り終わったと思ったら、おもむろに二人は口を寄せ合って。

なんとキスを始めた。

 

見せつけるようにモゴモゴと互いの口内で舌を撹拌する二人。

明らかに俺のペルソナ液を混ぜ合い啜り合っている。

 

俺は呆然とその光景を見つめるしかなく。

当然の如くマーラ様をいきり勃たせてしまう。

 

エロエロなレズキスをし終わった二人は、科を作ってにっこり笑いかけてきた。

 

「ねぇご主人様。雪子にもっといけないこと教えてほしいな」

 

「アタシは雪子の後でもいいよ。でもその代わり残らず絞りとってあ・げ・る」

 

二人の瞳は溢れる情欲で金色に濡れ光っていた。

その淫蕩さに俺は逆らえなかった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 10:10>

 

なんでこんなことになったのかわからない。

TVの中の世界で彼女たちのシャドウを犯しまくったのが原因だろうか。

とりあえず言えることは、裸の彼女たちの魅力には叶うものなどないってことだ。

据え膳食わぬは男の恥と言うじゃないか。

 

白くて嫋やかで細くて胸がフヨンフヨンの雪子。

健康的で引き締まっていて胸がプリプリの千枝。

甲乙付けがたくエロい。

 

なので両方いっきに味わう。

腰に手を回して二人の秘唇を同時に愛撫しながら、交互に乳房と乳首に舌を這わせてイカせる。

雪子が下で千枝が上の体勢で抱き合わせる。

処女の秘唇を二つ重ね合わせ、その間にグチョグチョになるまでマーラ様を差し込んでヒィヒィ言わせる。

 

気分が乗ってきた俺はそのままの体勢で二人を犯すことを決めた。

無二の親友同士が互いの処女喪失を見守るなんて最高じゃないか。

TVの中の世界では千枝が先だったから、こっちの現実世界では雪子を先にしよう。

 

あっ。

そう言えば俺、現実世界で本物の女と交わるのはこれが初めてだよな。

つまり、これが本当の童貞喪失になるわけだ。

 

なんかもう何度童貞捨てたかわからなくなってきてるけど、もういい決めた。

これが鳴上悠にとっての初めてのセックスです!

鳴上悠の童貞捨てる相手は天城雪子で、はいっ決定!

 

夜露に濡れたバラの花びらのような雪子の秘唇をクパァと開き、熱り立つマーラ様を宛がう。

 

<ズブリ>

 

「痛っ・・・。え?ち、千枝?あ、私・・・何を。くぅううう。痛い!」

 

「雪子ぉ、すっごい綺麗だよ。処女無くしちゃった瞬間の雪子、すごい可愛かったよー。んちゅんちゅ」

 

「くぉ!大丈夫だ。雪子。【雪子ならすぐに気持良くなる!】」

 

TVの中で体験したとおり、雪子の中はありえないほどの名器だった。

今はコンドームを付けてないし現実世界だ。

俺は射精感を遠ざけるために無我夢中で腰を動かした。

 

<パンパンパン>

 

「くぅ・・・あっ?ああ!?気持ちいいっあっあっダメっダメ!!」

 

「雪子っがんばれ雪子!あともうちょっとでイケルよ!」

 

快楽から逃げるためにずり上がろうとする雪子。

その動きを上にいる千枝が抑え込む。

雪子の乳房の上に千枝の乳房が鏡餅のようにムニッと重なって卑猥だ。

 

「ご主人様は何でも知ってるぞ、【雪子、ここがお前の弱点だ!】」

 

ちょっとだけ腰の角度を変えてやる。

千枝に逃げ場を封じられた雪子の子宮口に亀頭がピッタりハマる角度で連打。

 

「あ、それイイ!イクッイッちゃう。ご主人様!私、イクーーーーーゥ!」

 

「雪子ぉ、イキなさい!イッちゃえーーー!」

 

「うおおおおおおおぉ」

 

処女を無くしたばかりなのに大アクメに到達した雪子。

その中の締め付けの気持ち良さは苛烈を極めた。

 

処女喪失で絶頂って漫画みたいな展開だ。

だがここはゲームの中なのでそれもありだろう。

 

「くぅ!」

 

<ズルン、どぴゅーー>

 

なんとか耐え切った俺は、出ちゃった瞬間にマーラ様を抜き出すことに成功。

恍惚とした表情で雪子のヨガリ姿に目を細めている千枝の伸びやかな背中に向けて、盛大に射精した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 10:40>

 

雪子は絶頂の衝撃で軽く気を失っているようだ。

満足度の高い射精に俺のマーラ様も臨戦態勢を解こうとする。

しかしそうは問屋がおろさなかった。

 

「ウフフ。早く〜ぅ。その雪子の破瓜の血に塗れた立派なソ・レ。アタシのここにもちょーだい」

 

大の字でぐったりとしている雪子に覆いかぶさった千枝が、クィクィと腰を振って俺を挑発してくる。

 

「アタシ、今日はバリバリの安全日なんだー。思いっきり出していいよ」

 

殺し文句だった。

上等だ!

俺は即座にマーラ様を回復させて伸し掛かった。

 

「ああー入ってくる!雪子の処女を奪ったのがアタシにも!」

 

「いくぜ!」

 

<ズブリ>

 

「カハッ。あ、な・・・にコ・・・レ?」

 

後背位で一気に千枝の処女を奪う。

入れるまでに散々イカせまくったせいだろう。

千枝の中はすでに奥までグチョグチョだった。

 

TVの中のときと同じく千枝はあまり痛がらない。

だから最初から全力でいく!

 

<パン!パン!パン!パン!>

 

ビタンビタンと俺の腰と千枝の尻が激しくぶつかる。

千枝の中は俺のマーラ様のために誂えたかのようにピッタリだった。

 

「あ、ああ!悠!?アタシたち、アン!セックス、くぅあ、してるの?あ、ダメぇ」

 

「ああ、ぐっ、そうだ!千枝!【僕達は愛し合ってるんだ!!】」

 

「・・・千枝?」

 

「雪子!アンッ、助けて!アア、気持よすぎるの!アッ、ピッタリなの!アタシもうダメ!こんなの知ったら戻れない!」

 

雪子に抱きつきながら千枝はイキそうなのを我慢していた。

俺は千枝を追い落とすために俺はラストスパートに入る。

 

「千枝!【愛しているから一緒にイッてくれ!】」

 

「イクっイっちゃうよっ!悠ーーッ!アタシもぉ!愛してるーーーーッ!」

 

Gスポットを連続で攻め、最後に一突き。

 

<ビクンビクン>

 

<ドピューーー!>

 

「うう・・・」

 

「ぁぁぁぁぁあああああ!」

 

一番奥まで突き込んだ体勢でプルプルと躰を震わせて固まる俺と千枝の二人。

この光景を下から雪子がウットリと見つめていた。

 

<ガクリ>

 

限界まで子宮にペルソナ液を注ぎ込まれた千枝が崩れ落ちる。

それを雪子が優しく抱きとめた。

 

「千枝、頑張ったね、千枝・・・」

 

「はぁはぁはぁ・・・雪子ぉ」

 

ふぅ。

 

<ズルリ>

 

結合を解く。

 

眼下には俺のマーラ様で処女を奪われた美少女が二人。

抱き合ったまま処女喪失の余韻に浸ってる。

 

二人とも初めてだったんだ。

責任を取らなくては。

 

このゲーム、ハーレムエンドってあるのかな。

そんな埒もないことを考えながら二人の横にゴロリと転がる。

 

朝方まで散々ヤリまくった上での起き抜けの三発である。

さすがにダメージは大きかった。

あっという間に意識が遠くなっていく。

zzz。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月17日SUN 晴 11:10>

 

天城雪子と里中千枝の二人の処女を同時に奪ったため、性技がガッチリ高まりました。

性技のパラメータが"3Pマスター"に上昇します。

3Pプレイが可能になりました。

 

――――――――――――

鳴上悠

80/210

03/133

 

通常パラメータ

知識5:生き字引

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容5:オカン級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技3:3Pマスター(↑)

精力5:孕ませ王

色気5:媚薬級

――――――――――――

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 13:00>

 

目が覚めたら正午をとっくに回っていた。

俺は裸の千枝と雪子を抱きながら寝ていた。

二人の甘い体臭に包まれながら覚醒する。

 

昼過ぎには雪子を天城屋旅館に戻すと雪子のお母さんと約束している。

起きないと。

未だ寝たままだった二人を揺り起こす。

 

「きゃあ」

 

「あんまりジロジロ見るな!」

 

良かった。

元に戻っている。

顔を赤らめて同じシーツで躰を隠し、チラチラとこちらの股間を気にする二人。

 

先ほどの淫靡な雰囲気とは打って変わった普段の清楚さがそこにあった。

あれはいったいなんだったのだろう。

TVの中で散々抱いて調伏した彼女たちの影が、表層意識にまで浮き上がってきたのだろうか。

だとすると、あれが最後だとは思えない。

 

ふー。

 

うん。

やはりこういうことははっきりしておこう。

 

「聞いてくれ。二人とも」

 

ベッドから降りて二人に向き合う。

 

「俺は二人から処女を貰ったことを微塵も後悔なんかしてない。そして責任は取る!」

 

「・・・(赤)」

 

「もうっ。どうやって責任取るっての?」

 

うーん、それを言われると辛いが。

出来ることは限られている。

 

「両方平等に愛すことをここに誓うよ。お前たちが俺のツバサだ!」

 

「・・・(赤)」

 

「わかったからとにかく何か着て!」

 

おっとフルチンでは格好が付かなかったか。

失敬失敬。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 13:10>

 

雪子は昨晩天城屋旅館で誰かが訪ねてきたところまでは覚えていた。

だが通用口の扉を開けたところから記憶が無かった。

来訪者について詳しく確認しようとしたが、一瞬だったために顔を見ていないそうだ。

一連の事件の犯人に至るための手がかりは何も得られなかったことになる。

 

ただし、朝に自ら率先して俺を淫らに誘ったことについては雪子も千枝もちゃんと自覚しているらしい。

「自分のことながら信じられない」というのが千枝の談である。

俺を見ていたらなぜかムラムラしてきたのだそうだ。

「私たちから誘ったのだからご主人様・・・あっ、ゆ、悠君が責任感じる必要はないよ」とまで雪子に言われてしまう。

 

問題はだ。

二人とも俺と肉体関係を結んでしまったわけで。

有り体に言えばこの二人は俺に二股されている状態になる。

 

それで千枝と雪子の間に深刻な溝が出来るかと思ったのだが・・・。

どうも違うようだ。

今も二人仲良く一緒にシャワーを浴びている。

 

もともと親友同士。

一人の男をシェアすることで、よりいっそう絆が深まったとでもいうのだろうか。

かなり都合の良い話だけれど。

ありえるのか?

男の俺には彼女たちの心理はよくわからなかった。

 

雪子の長襦袢と肌襦袢はまだ乾いていない。

シャワーを浴び終わったら千枝が乾いた服を着て一旦自宅に戻り、雪子のために服を取ってくる段取りになっている。

 

もう昼過ぎだ。

お腹が空いたな。

愛屋から出前を取ろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 13:40>

 

「まいど」

 

肉丼とパーコー麺と麻婆豆腐定食が並べられる。

 

「はい2400円」

 

会計を済ませると同時に、風呂場からバスタオルを巻いた千枝が顔を出す。

 

「なになにー出前取ったのー?って、あ・・・あいか・・・ちゃん」

 

バカッ!

ここで顔出すなんて!

 

「これはそのー!そうじゃないの!そうではあるけど!ってそうじゃなくて!」

 

「千枝、どうしたの?キャッ」

 

しどろもどろの千枝の後ろから雪子が顔を出し、二次被害が発生。

取り返しのつかない状態に。

ダラダラと汗を流しながら立ちすくむ俺。

 

もしあいかちゃんが俺たちの噂を学校で流したら。

確実にモロキンの耳に入り、保護者の叔父さんへ問い合わせが行くだろう。

その時点で女を連れ込んだとして夢の一人暮らしは一巻の終わりである。

 

「あいかちゃん、お願いだ。内密にしてくれるなら何でもする。【何でも言ってくれ】」

 

「・・・何、でも?」

 

「ああ。俺に出来ることなら何でも。【君の内に秘められた願望を俺に教えてくれ】」

 

「・・・じゃあ、ズボン脱いでー」

 

は?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 14:00>

 

「じゅっぽじゅっぽじゅっぽ」

 

「ううっ」

 

なぜか玄関先でマーラ様をあいかちゃんにイマラチオされてる俺。

 

「うわー、あいかちゃん大胆〜」

 

「凄いね。ご主人様気持ちいい?」

 

バスタオルを巻いただけの千枝と雪子が左右から興味深げにあいかちゃんのフェラを観察している。

 

「でもあいかちゃん、こんなんで私たちのこと黙っててくれるの?」

 

「結構苦いし、喉に絡み付くよ」

 

「じゅっぽ。うんー、レロ、前から味に興味あった。ちゅるちゅる。まだ出ない?かぷっ」

 

淡々と刺激を与えてくるエプロン姿のあいかちゃんのフェラ。

それが逆にエロスを感じさせる。

 

「ちゅぱちゅぱ」

 

「うくっ」

 

<ドクッドクドクッ>

 

あいかちゃんの口の中にペルソナ液を射出する。

 

これがあいかちゃんの求めた口止め料だった。

前々から男の子種の味を味わってみたかった、とのこと。

この子も随分変わった娘だと思っていたが、筋金入りの変態少女だったか・・・。

 

「うわーっ、いっぱい出たみたいねー。悠の量、多いから大変でしょう」

 

「どうっ?どんな味がするっ?教えてあいかちゃん!」

 

「んくっ。もごもご。うん。まずい」

 

相変わらずの無表情で俺のペルソナ液を味わっているあいかちゃん。

それでも満足はしたらしい。

 

「じゃあどんぶり、置いといてー」

 

あいかちゃんは飄々と去っていった。

 

これでちゃんと口止めになればいいのだが・・・。

まあ、もしものときはこのフェラ顔写真を使って脅せばいっか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 14:30>

 

「もしもしお母さん。ごめん。心配かけてごめんなさい」

 

肉丼をかっ食らって飛び出していった千枝を待っている間、雪子に自宅へ電話を入れさせた。

TVの中に入ってましたなどと信じて貰えるはずもない。

今朝捏造した友人宅パーティに行っていたというストーリーを雪子の口からも語らせる。

電話越しに母親に泣かれたようで、叱られるよりも雪子にはダメージが大きかったみたい。

電話を切った頃には雪子はすっかり落ち込んでしまっていた。

 

元気付けてあげないと。

 

「そういえば俺を見るとムラムラしてきたって言ってたよね。今もそうなの?」

 

「えっ・・・?」

 

ガウン一枚纏っただけの雪子と向き合い、その瞳を見つめる。

次第にその瞳が金色にとろけていく。

 

どちらからともなく顔が近づき、キス。

雪子の躰から漂う石鹸とシャンプーの匂い。

欲情が止まらない。

盛り上がってしまい、そのまま和室で押し倒して本日二回目のセックスに突入。

 

「せっかくシャワー浴びたのに・・・」

 

「じゃあまた入ろう。今度は一緒に」

 

「ポッ(赤)」

 

嫌じゃないようだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 15:00>

 

お風呂場で髪を上げた雪子の艶姿に欲情し3回目に突入。

湯船でヌルヌルイチャイチャしていたところで、千枝が戻ってきた。

 

「あーなにそれー!アタシも入る!」

 

さすがに浴槽に3人は狭く3Pは無理があった。

千枝はぷんぷんである。

後日二人きりで風呂に入ることを約束してなんとか納得してもらう。

 

しかしこうなると、風呂場用のマットも購入しないといけないな・・・。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 15:30>

 

夕方から家族と約束があるという千枝を見送る。

その後、千枝が持ってきてくれた服に着替えた雪子を連れてマンションを出た。

 

痛みはないようだが違和感があるらしい。

まだ慣れてないのか雪子は歩き辛そうにしている。

雪子の和服を入れた紙袋を持っていない方の腕を貸してあげる。

 

「まだご主人様のが中にいるみたい・・・」

 

「ちょ雪子、ご主人様ってのはちょっと」

 

「二人きりのときはいいでしょう?ね、お願い」

 

「お、おう」

 

ぴったりと寄りかかられて潤んだ目でお願いされると断り切れない。

美人って得だよな。

 

雪子を連れ立って街を漫ろ歩く。

 

なんだろう。

隣にいるのが楚々とした風情のある雪子だからだろうか。

長年連れ立った恋女房って感じがする。

 

甘い雰囲気を互いに味わいながらゆっくりと旅館に向かった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 16:00>

 

天城屋旅館に着いて雪子の案内で裏口から事務所に向かう。

従業員にすれ違う都度心配したと声を掛けられ、雪子は平謝りである。

ついでに隣の俺を紹介する雪子。

 

俺と雪子の距離感や雪子の立ち振舞に何か感じるものがあるのだろう。

ほとんどの人が昨日のサボリが俺のせいであると勘違いしてそうだった。

 

いけない。

俺の印象が悪くなる点は別に構わない。

しかしこのままでは、次期女将の雪子の旅館での立場が悪くなってしまう。

ここは俺が盾となって踏み込むべきだ。

 

「鳴上悠です。雪子さんとは今日からお付き合いをさせて頂くことになりました。よろしくお願いします。【僕達のことをどうか暖かい目で見守って下さい】」

 

肉体関係を結んでしまったことは確かなのだし、開き直っての攻勢である。

強引に相手の手を握って真摯に頼み込む。

 

「・・・お、おう、頑張れよ」

 

「・・・良かったね、雪子ちゃん」

 

真心というものはやはり通じるものである。

僕の雪子への熱い想いが伝わったのか、皆快く頷き僕達の仲を応援してくれた。

 

「あたし、嬉しい・・・」

 

隣で雪子が嬉し泣きしていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月17日SUN 晴 16:30>

 

雪子の母に会う。

 

「雪子・・・」

 

「お母さん・・・」

 

もう昼過ぎとは言えない時間になってしまった。

まずそれを詫びる。

 

「すみません。お母さん。遅くなりました」

 

「あなたが朝電話を頂いた・・・」

 

「はい。鳴上悠といいます。雪子さんとお付き合いさせて頂いてます」

 

「まぁ!?」

 

「必ず雪子さんを幸せにします。【どうか僕達の仲を許して下さい!そして雪子の外泊を許してやって下さい!】

 

「お母さん、昨日のことは謝ります。だからお願い。これからも悠君の家にお泊りするのを許して下さい」

 

え?

あれ?

 

「・・・ふー、わかったわ。ちゃんと泊まりに行くときはそう言うこと。あと高校生の間はきちんと避妊しなさい」

 

「ポッ(赤)ありがとうお母さん。いずれ立派な天城屋旅館の跡継ぎを産んでみせるから」

 

な、なんだ?

どうしてそうなる?

 

昨日の雪子の外泊を許してもらおうと思ったら、なぜか今後の雪子の外泊の許可が出てしまった。

千枝の話しでは雪子は相当感性が人とはズレているということだったが、母親譲りなのだろうか。

 

それからは、まるで入婿のような扱いである。

女将さん自ら旅館の施設を案内され、従業員一人一人に紹介される運びとなる。

挨拶を済ませていなかった方々は最初怪訝な表情を浮かべていた。

だが、握手をして自分の言葉で誠意を伝えると、女将さんの執り成しもあって皆さん納得してくれた。

 

旅館の経営状態について詳しく話を聞く。

やはり週末はお客も多くて従業員の手が足りなくなるらしい。

雪子もキリキリ舞いになる場合が多いそうだ。

雪子の負担を減らしてあげたかった俺は、ちょうどバイトを探していたこともあって手伝いを申し出る。

 

「うちも経営が厳しいのであまりお金は出せないけど・・・」

 

そう言う雪子だったが嬉しそうだった。

 

「構わない」

 

一緒に働けば天城屋旅館の皆さんに良いアピールになるだろう。

 

後日きちんと堂島の叔父さんの許可も取る。

叔父さんは学生の本分がどうのといろいろ言ってくる。

だが、千里さんの「いいじゃないですか。学生の間にいろいろなことを経験すべきだわ」との鶴の一声で決定である。

こうして俺は土日限定で天城屋旅館でバイトを始めることになる。

 

また千枝にバイトの件を報告したら「えーじゃあアタシもやるー」と協力を申し出てきた。

結局千枝も一緒に働くことになる。

女中としての所作をまるで知らず、バイト開始当初は活発さだけが売りだった千枝。

しかし俺と雪子のアドバイスでメキメキと接客業のスキルを身につけていく。

それに比例して女っぷりもどんどん上がっていく。

 

天城屋旅館の従業員は柔軟な恋愛観を持つ人々の集まりらしい。

千枝との仲も正直に告白して両方大事にすることを切々と訴えてみた。

すると皆理解してくれて逆に応援までしてくれた。

とてもありがたい。

 

月曜から金曜日は放課後雪子と千枝をマンションに連れ込み、夜までセックス三昧。

夜に彼女たちを送った後、マヨナカテレビの中を一人探索。

土曜日は午後から夜まで天城屋旅館で千枝と一緒にバイトし、雪子の部屋に三人で一泊。

日曜日はそのまま天城屋旅館で朝からバイト。

夕方に仕事上がって雪子と千枝を連れてマンションに戻り、翌朝に三人一緒に登校。

 

これが俺の稲羽市での基本ルーティンとなった。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月17日SUN 晴 --:-->

 

鳴上悠に自分の影を犯され、天城雪子がペルソナに目覚める機会が失われました。

天城雪子は戦闘に加わらず、鳴上悠とセックス三昧の充実した高校生活を送ります。

天城雪子は高校在学中に妊娠してアザディスタンに留学し、鳴上悠の妻となってアザディスタン国籍を得ます。

天城屋旅館は潤沢なオイルマネーが注ぎ込まれて上流階級向けに生まれ変わり、中東の王族たちの定宿となります。

天城雪子はアザディスタン王家が愛用する天城屋旅館の若女将としてオイルマネー目当ての日本政財界に大きな影響力を持ち、時の権力者たちから"稲羽の『黒』雪姫"と呼ばれて恐れ奉られるようになります。

女教皇のアルカナが消滅しました。




やっとこさハーレム展開突入。アルトもこれくらいしてから俺の翼だ宣言しろよと。


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第05章 剛毅/月

海老原あいは攻略対象ではありません。そしてこの作品はバスケ物ではありません。


<VELVET ROOM 2011年4月18日MAN 晴 --:-->

 

「うふふ、今宵もまた新しい技を試させて頂きますわ」

 

ベッドの上で投げ出した両足の間からマーガレットが挨拶してくる。

 

「主のマーラ様の両脇には今二つの乳房が輝いております」

 

マーガレットはすでにその白い肌を全て曝しており、奇麗なピンクの乳首を強調する姿勢で欲情を煽ってくる。

 

「右の乳、そして左の乳」

 

片方ずつ順番に己の乳を持ち上げて、その柔らかさと形の良さアピールしてくるマーガレット。

 

「もうすぐ私の生み出す乳圧によって、新たな快感が生まれるはず」

 

マーラ様に触れそうで触れないギリギリのところで両の乳をたぷんたぷんと揺らし、期待値をつり上げる。

 

「私のパイズリはやがて主を快楽の果てへと誘う輝かしい技へと成長していくことでしょう」

 

マーガレットの思惑通り、白い谷間に収まったマーラ様は彼女の唇にキスしそうなくらいギンギンに屹立していた。

 

「では始めさせて頂きます。存分にペルソナ液を吐き出しなさって下さい。んんっ」

 

ゆっくりとマーラ様がマーガレットの白い乳に包まれていく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月19日TUE 晴/曇 8:00>

 

"雪子姫の城"で味わった雪子の影のパイズリが忘れられなくて、昨日のセックスでリアルな雪子にもお願いしてみた。

そのあまりの素晴らしいムニムニ感が尾を引いたらしい。

夢の中までパイズリされてたような気がする。

 

ストーカーの件があるので今朝も雪子を迎えに行くはずだった。

しかし起床したらその雪子から今日は迎えはいらないとのメールが入っており。

なんでも千枝との約束があるらしい。

一応難色は示してみたが千枝がしっかりガードしてくれるとのことなので、不承不承ではあったが一人で登校して教室で二人を待つ。

 

「おはっよー」

 

「おはようございます。ご主、ンン悠君」

 

やっと登校してきた千枝と雪子。

挨拶を返す。

 

「おはよう。ん?」

 

あれ?

千枝、綺麗になって・・・る?

唇が吸い付きたくなるほどぷっくらプルプルだ。

 

「えへへ、ちょっと雪子にアドバイスしてもらってさ。アタシもついに化粧をば。これが本当の高校デビューって奴?なんかウキウキしちゃうねー、いやーメイクって凄いわ」

 

俺の怪訝な表情に気付いて照れる千枝。

彼女なりのサプライズが成功したことで、やけにハイテンションだ。

 

千枝の化粧はほんとに軽くというレベル。

あまりやり過ぎるとモロキンに目を付けられるが、まぁこの程度なら大丈夫だろう。

雪子のアドバイスが良かったようだ。

 

「昨日はお疲れ様。すっごくカッコ良かったよ」

 

軽く頬を染めて声を掛けてくる雪子。

確かに昨日は学校が終わってから千枝の家に押しかけることになり大変な思いをした。

雪子のときと同様に千枝との仲を千枝の家族に認めてもらうためだったのだが・・・。

千枝のお父さんは千枝以上の武道マニアで「娘が欲しければ私を倒してみせろ」といきなりの対決である。

 

格闘技なんて習得しているわけもなく苦戦は必至だった。

しかしこの躰自体のスペックが高かったことと去年一年の研鑽が自分を助けた。

どうやらテレビの中の世界での自分の動きに近づこうと意識したのが功を奏したようだ。

 

愛すべき千枝と雪子の前で千枝のお父さんを完璧にのす。

「グフ、小僧、いや息子よ、千枝を頼んだぞ・・・ガクッ」と説得に成功。

晴れて千枝にも外泊許可が出る。

まぁ千枝が浮かれてオシャレに気を使い始めるのも仕方ないだろう。

 

「なになにどうした?俺も疲れが抜けなくてさ―、グフフフ、聞いてくれよついに俺昨日早紀と」

 

後ろの席の花村は相変わらずの頭がお花畑のようだ。

適当に相槌を打っておく。

 

「つーか鳴上聞いてるか、女の子の初めて貰うのってすっげー体力使うんだぜ。終わった後疲れがどっときたっていうか」

 

「え、俺は全然平気だったけどな」

 

「なんだよ、お前も処女食ったことあんの!?俺なんてなーやっと昨日童貞捨てれて」

 

「確かに悠ってスッゴい体力あるよね」

 

「うん、昨日も凄かった。ポッ(赤)」

 

もちろん昨日も里中パパとの対戦終了後、自宅マンションに所を移して雪子と千枝の二人相手に閨合戦を挑んでいた。

雪子のパイズリ分も含め、その戦も俺の完全勝利に終わったわけで。

 

「ねぇご主人様。転校してくる前、何か体育会系の部活とかやってたの?」

 

うっとりと雪子が尋ねてくる。

 

「いや。帰宅部だったけど?」

 

「あ、そうだ!」

 

何かに気付いたのか、いきなり声を上げる千枝。

 

「部活と言えば一つ頼みがあったんだー。ちょっとでも興味があったら協力して欲しいんだけど」

 

両手を合わせて拝みながらウィンクしてくる。

その仕草が可愛かったので放課後千枝に付き合うことにした。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月19日TUE 晴/曇 15:50>

 

<ドン、ドン、ドン、キュ、キュ、シュパッ!>

 

千枝に連れられて雪子と一緒に体育館に移動する。

バスケの音が響いている。

 

「頼みって、バスケ部に入って欲しいってことか?」

 

「うん、もう少しで練習試合があるみたいなんだけど。なんだか選手が揃わなくて困ってるみたいなの。お願いできないかなー。悠のかっこいいとこも見てみたいしー」

 

甘えてくる千枝。

雪子が補足してくる。

 

「あ、それ前にちょっと聞いた。うちのバスケ部ってとっても弱いんだけど、インターハイ常連校がわざわざ練習試合に来てくれるって」

 

「了解した」

 

弱小高校バスケ部。

燃える!

先生・・・、バスケがしたいです!

 

「一条くーん!ちょっといいー!?」

 

「さ、里中さん!?ちょっと休憩入るぞ!あ、えーと何の用?」

 

一人だけ機敏な動きで黙々と練習していたバスケ部員がこちらに近づいてくる。

 

「新入部員連れてきたよー。臨時の。期間限定だけどねー」

 

「マジで?あ、この前の転校生・・・。お前か」

 

「千枝に頼まれてな」

 

ああ、以前に掲示板の前で声を掛けてきた生徒か。

 

「ち、千枝?クソッもうそんな関係なのかよ・・・。あ、ああスマン。俺は一条、一条康。よろしく」

 

「ああ、任せろ」

 

「俺サッカー部の」

 

さあやるぞ!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月19日TUE 晴/曇 16:00>

 

整列。

 

「えー、つーわけで、仮入部員を紹介するぞー」

 

「鳴上悠だ。よろしく」

 

「「「うぃーす」」」

 

バスケ部員たちの前で一条に紹介される。

男子部員が四人。

他の部員はもう帰ったらしい。

なんて奴らだ。

 

そしてバスケ部員の中に一人、学生服の女子が交ざっている。

軽くウェーブしたロングの茶髪で広い額の小顔をしたモデル体型のオシャレ女子だった。

同じ綺麗系ではあるが純和風の雪子とは対照的。

小悪魔チックなワガママお嬢様って感じでこちらも男子から人気がありそうだ。

なんでこんな綺麗な娘がこんな潰れかけのバスケ部にいるのか不思議だ。

 

いけない。

集中しないと。

そんな埒もないことを考えている暇などない。

 

一条に則されて残っていた男子部員が一人一人の自分の名前を申告してくる。

見るからにやる気が無さそうだった。

イラっときて思わず挑発的な態度を取ってしまう。

 

「俺はバスケの経験がない。でもお前たちとバスケしても負ける気がしない」

 

「「「・・・なっ」」」

 

「なぜかわかるか。お前たちから試合に勝つという意欲が見えないからだ。【俺にバスケで勝てるのは一条だけだ!】」

 

「「「・・・ふざけんなよ!」」」

 

「俺の言葉が真実であることを今日の練習で証明してやる!【悔しかったら俺以上に練習に打ち込んでみせろ!】」

 

「「「ぐ・・・」」」

 

俺の挑発にダラけて立っていた部員たちの姿勢が臨戦態勢になる。

よし、これで少しはやる気が出るだろう。

 

おっと、そう言えばあと一人紹介されてないな。

 

「それで、こっちの娘は?」

 

「あー、ああ。こいつは海老原あい。マネージャーやってもらってる」

 

とてもマネージャーをやるようなタイプには見えないが・・・。

いや、先入観を持つのは止めよう。

 

「何よ。あたしになんか用?」

 

「はじめまして。練習のサポートをよろしく頼む。【マネージャーとして本分を尽くしてくれ】」

 

「・・・ええ、わかったわ」

 

部活の成否は女子マネージャーの質にかかっていると言っても過言ではない。

真剣にサポートをお願いする。

 

そしてストレッチに移行。

とにかく練習だ。

試合まであと十日しかないのだから!

 

この日の練習は夜遅くまで続いた。

予想通り一条以外の部員たちはてんで相手にならなかった。

そのちんけなプライドをなぎ倒して叱咤。

厳しくシゴキ上げる。

男子部員たちからゴーコンガーという意味不明な幻聴が聞こえてくるが無視する。

 

女子マネージャーの方は外見に似合わず甲斐甲斐しく練習を手伝ってくれていた。

彼女は雪子と校内を二分するほどの凄まじい男子人気を誇っているらしい。

練習中に部員からその話を聞いて納得する。

 

なるほど。

これがギャップ萌えって奴か。

人は見かけによらないとはこのことだなと実感。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月19日TUE 晴/曇 --:-->

 

鳴上悠の「神言」により、鳴上悠はバスケットボールで一条康に勝てないことが確定しました。

バスケットボールプレイ時にのみ、一条康の各種パラメータに鳴上悠を凌駕するための補正が生じます。

 

鳴上悠の「神言」により、海老原あいはバスケ部のマネージャーを勤めるためにマネジメントの勉強を開始します。

海老原あいの愛読書にドラッカーが追加されることになります。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月19日TUE 晴/曇 20:00>

 

居残り練習で一条に付き合ってもらう。

彼との1オン1はとても白熱した。

 

練習を終えてマンションに戻ると、合鍵を渡していた雪子と千枝が夕飯を用意してくれていた。

・・・とても食物に見えない。

言うなれば物体X。

こんなもの食えるかーっ!!

 

ベッドの上でマーラ様を駆使して小一時間説教する。

実際に二人の皮(服)を剥いで全身を舐め回して実践して見せ、腰を振りながら二人に皮むきと味見を徹底するようにキツく言って聴かせる。

 

これで少しはマシになればいいのだが。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月20日WED 曇 8:25>

 

朝、掲示板脇のニ階に向かう階段で昨日の小悪魔系マネージャーとすれ違う。

 

「おはよう、海老原さん。昨日は遅くまで付き合ってくれてごめん」

 

「別に。マネージャーとして当然でしょ」

 

部活のマネージャーをきちんと勤め上げるのに学校はさぼるらしい。

そこはイメージどおりなのな。

 

「ねぇあんたも一緒に来てくれない?バスケ部が強くなるための大事な買い物があるの。部員なら手伝ってよ。当然でしょ」

 

どうせ授業の内容は出席しなくてもわかっている。

それにモロキンの授業はつまらない。

受けても時間の無駄だろう。

 

昨日の練習のサポートのお礼として海老原さんに付き合ってやることにした。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月20日WED 曇 10:00>

 

となり町の沖奈市に電車で移動。

大型書店に付き合わされる。

 

「マネージャー、本気でやってみようと思って。んで、この中でどれ読めばいいわけ?」

 

マネジメント系のビジネス本の棚の前で海老原さんに問われる。

 

本気で言ってるのだろうか。

いや同じマネジメントだから合ってるのか?

 

彼女からマネジメントを勉強したい熱意はヒシヒシと伝わってくる。

ならばとマネジメントの基本と原則を学んでもらうためにドラッカーの本を推薦しておいた。

しかし、ほんとにバスケ部の大事な買い物だったとは意外だった。

 

本を買った後は趣味の買い物に移行。

百貨店の化粧室で海老原さんが着替えるのを待つ。

 

「じゃじゃーん。どう?」

 

「良く似合ってるな。うん」

 

「や、やめてよ。そんな真っ直ぐ見つめられちゃ恥ずかしいじゃない」

 

薄いピンク色のワンピースに着替えた海老原さんは、化粧もばっちり決まっていてモデルばりだった。

東京にいた頃モデルのバイトをしたことがあるが、そこで見た女性モデルたちよりも海老原さんの方が優っているように思える。

 

海老原さんの買い物に従者の如く付き合う。

彼女はゴールドカードでバンバン買い物をしていき、洋服やら何やらと俺の持つ荷物はどんどん増えていく。

支払いのときにちらっと見ると、カードの名義は海老原某になっていた。

父親のカードなのだろうか。

良いとこのお嬢様という噂を本当らしい。

 

ただ彼女の美的センスは確かなようだ。

流行モノに鋭敏で、買うもの全て彼女に良く似合っている。

将来ファッション業界に進むと大成するんじゃなかろうか。

 

んん?

何かが思考の片隅を過る。

なんだ?

 

そうこうする間にショッピングは終了したらしい。

ATLUSBUCKS COFFEEに入ってお茶にする。

 

たわいのない会話が続く。

しかし先ほどから引っ掛かっていた何かが気になって仕方が無い。

 

「もうっ。なんだかさっきから上の空ね。失礼しちゃうわ!」

 

ファッション業界、モデル、エビ・・・。

そうか!

ガタッ

 

「わかった!エビちゃんだ!」

 

「きゃっ、なに!?いきなりどうしたのよ!」

 

俺が前にいた世界には、確か似たような名前の有名なモデルがいたはずだった。

カリスマ的な存在で一世を風靡。

その後人気絶頂期にヒップホップグループのMCと結婚したんだっけ?

 

だけどこの世界にそのモデルに該当する現役タレントは存在しない。

そして目の前にいるのはエビハラさん。

 

もしかして。

いや間違いない。

未来のトップモデルが目の前にいる!

 

「断言しよう!海老原さん、いやエビ!【君は将来日本のトップモデルになる!】」

 

「・・・え、ええ!?私が・・・トップモデル?」

 

「そうだ!【自分を信じろ!君なら必ず成れる!】」

 

「モデル・・・いいかも!」

 

「【小悪魔系から、悪目立ちしない可愛い系のナチュラルコーディネートに切り替えるんだ!】」

 

「可愛くてナチュラル系ね!わかったわ!」

 

エビの目に炎が灯る。

 

「サイン下さい」

 

今のうちにサイン貰っておこう。

手元のナプキンとペンをそっとエビに差し出す。

彼女が有名になったら自慢しよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月20日WED 曇 20:00>

 

居残り練習で一条に付き合ってもらう。

彼とのフリースロー対決はとても白熱した。

 

練習を終えてマンションに戻ると、またまた雪子と千枝が夕飯を用意してくれて・・・なかった。

台所で二人がピクピクと倒れており、すわバイオテロ発生か!と慌てる。

 

なんとか応急処置をして回復した二人から事情聴取をしてみると、昨日言い聞かせたとおり味見したことが原因だった。

料理の途中で味見をして・・・二人ともぶっ倒れたらしい。

 

ベッドの上でマーラ様を駆使して小一時間説教する。

腰を振りながら二人に料理のさ・し・す・せ・そを一から言って聴かせる。

 

これで少しはマシになればいいのだが。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月21日THU 雨/曇 16:00>

 

今日もまた激しくバスケの練習に勤しむ。

ん、エビがまだ来てない・・・。

 

「マネージャー、遅いな」

「最近良く来るよな。今じゃバスケ部唯一のお楽しみだわ」

「放課後の男漁り止めたのかな。超遊んでたらしいのに」

「すっげー金持ちのパパとかいるって噂あったよな」

「あの顔で、あの声で、あの胸で、あの腰で、あの脚だものな。そりゃ男の二人や三人」

 

部員たちが猥談に興じ始めてしまった。

こいつらの集中力の欠如はどうしたものか。

試合のメンバ、新しく探した方が良さそうだ。

 

「お前らやめろって!あることないこと言って陰でビッチ扱いとか、彼女可哀想だろ」

 

一条が注意する。

おや一条、エビに好意を持っているのか。

だとしたらナイスタイミングだったな。

ちょうどエビが体育館の入り口に現れたところだった。

 

「やべータイミングわるー」

「聞かれてたかなー」

 

焦る部員たち。

間違いなく聞かれてたはずだ。

しかし彼女は何事もなかったかのように振舞った。

マネージャーとして練習をサポートし始める。

偉いぞエビ!

 

おや?

それに昨日と印象が違うな。

制服が派手さを抑えたコーディネートになっていた。

昨日より可憐さが二割増しである。

いいぞエビ!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月21日THU 雨/曇 17:00>

 

休憩中に水飲み場で水を飲んでいたらエビが給水用のヤカンを持ってやってきた。

エビと二人きりになったので一応先ほどの陰口の件を確認してみる。

 

「大丈夫か?」

 

「何の事?ああさっきの?別にどうでもいいっていうか。興味ない男たちに何言われようが知ったこっちゃないし」

 

だろうな。

そんな珠じゃないか。

 

「それよりさ。さっきさ。一条くん、あたしのことかばってくれてた・・・よね」

 

「ああ」

 

「そっかぁ。嬉しいな・・・。どうしよう!すっごいドキドキしてる」

 

エビが急にハイテンションになる。

 

「実は一条くんのことずっと気になってたんだぁ。明るくて優しいしカッコイイし。つ、付き合ってる娘とかいるのかなー」

 

やれやれ。

でもこういう恋する乙女なエビも可愛いな。

微笑ましくて応援したくなる。

 

「ねぇお願い。あんたしかいないの。協力してくれないかな。一条くんに好きな女の子のタイプを聞いてくれない?」

 

「ああ、任せろ。ただし忠告がある。ワガママお嬢様キャラはもう辞めた方がいい。【もっと男を立てる術を覚えろ。いろんな意味で!】」

 

「・・・えっ?」

 

「その方が一条もきっと君を受け入れてくれる」

 

「そ、そうかな。ポッ(赤)」

 

「ああ、絶対そうだ。」

 

さて。

俺に出来ることをしようか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月21日THU 雨/曇 18:00>

 

全体練習が終了し、一条と共に不要な分の機材を用具室に運ぶ。

エビはすでに用具室内の跳び箱の中に待機中である。

 

よし、今だ!

 

「一条、聞きたいことがある」

 

「ん、何だー?」

 

「お前の好きな娘って誰だ?」

 

直球勝負を仕掛ける。

 

「え、な、好きな娘!?何をいきなり」

 

「いないわけないよな?」

 

「えーいや、お前。意外と容赦無いよな。んー、仕方ねぇか」

 

真剣な顔をして答えようとする一条。

いい奴だな。

自分から言わせるのは忍びない。

よし。

 

「いや待て、俺が当ててみせよう」

 

「ふぅう、やっぱバレバレだよな」

 

「ああ。一目瞭然だ」

 

「いいぜ、言ってみろよ」

 

「じゃあいくぞ。【一条康が好きな娘は"海老原あい"である】」

 

どうだ。

 

「・・・お?おう」

 

やはりな。

正解をずばり言い当てられて渋々認めてくる一条。

でも今の声じゃ跳び箱の中のエビに聞こえなかったかもしれない。

ならば!

 

「もう一度言うぞ。【一条康が一番大好きな娘は"海老原あい"である】」

 

「・・・ああ」

 

まだまだ照れがあるな。

 

「声が小さい!ワンモアプリーズ!【一条康が世界で一番大好きな娘は"海老原あい"である!】」

 

「・・・あーもううっさいな!そうだよ俺は海老原さんが世界で一番大好きだよ!」

 

<ガタッ>

 

よし!

 

「フッ。【あの顔と、あの声と、あの胸と、あの腰と、あの脚に一条康も欲情している】と。そういうことだな!」

 

「・・・なんだよ!と、当然だろ?あんな美人でスタイルもスッゲーいいんだから!聞いたからには協力しろよな!じゃあな!」

 

<ガタガタッ>

 

「おーい一条、いつ告白するんだ?」

 

「次の練習試合に勝ったらだよ!」

 

少ししつこすぎたか?

まあ当初の目的は無事達せられたな。

 

跳び箱の上の段を持ち上げる。

そこには体育座りのエビが夢見心地でふにゃふにゃになっている姿があった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月21日THU 雨/曇 18:20>

 

エビの意向に沿って屋上で作戦会議をする。

とは言っても両想いなのは明らかになったわけだし、俺の出る幕はないと思うのだが。

 

「頑張って可愛くなった甲斐があった・・・」

 

「よしよし」

 

ポロポロと嬉し涙を流すエビ。

 

「アタシね。ちょっと前までデブでドン臭くてダサくて、ほんとどうしようもない人間だったの。ヒック」

 

衝撃の告白だな。

 

「中学入ったばっかのときとか気色悪いとかブス原とか影で言われてさ。クラスのみんなに無視されて。ヒック」

 

醜いアヒルの子という奴か。

 

「見返してやろうと思って必死で痩せて運動して、モテ方とか化粧とか服とか全部インターネッツで勉強したんだよ。今やっと報われた気がする」

 

「・・・それは凄いインターネッツですね」

 

そうか、とにかく頑張ったんだな、エビ。

 

「ねぇアタシがモデルになって活躍したら、一条くんもっとアタシのこと好きになってくれるのかな」

 

「ああ絶対そうだ」

 

こういう場合は女の子が好む夢物語を語ればオッケーだろ。

 

「【エビと一条は高校で初めて結ばれ、ラブラブなまま互いに励まし合って、エビはトップファッションモデルで女優、一条はプロバスケのスーパースターになる】」

 

「・・・うん!」

 

「【二人は人気絶頂の二十代半ばで電撃結婚。婚約会見で高校から十年間一途なお付き合いしていることを報告。国民的カップル、純愛カップルと世間からもて囃される】」

 

「・・・うん、うん!」

 

「【エビは二十代後半で一条の子供を毎年妊娠出産。三十代前半で美人ママタレントとして復帰。一条はコーチの道を選び名監督に。幸せな家庭は続いていく】」

 

「・・・えーウフフ、いいなーそうなれば」

 

「なるさ。きっとなる。信じれば必ず!」

 

「よし!信じて頑張る!」

 

希望に満ち溢れた晴れやかな表情のエビ。

さて後は。

 

一条がエビに気持ち良く告れるように試合に勝つだけだ!

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月21日THU 雨/曇 20:00>

 

居残り練習で一条に付き合ってもらう。

彼との3ポイントシュート対決はとても白熱した。

 

練習を終えてマンションに戻ると、またまた雪子と千枝が夕飯を用意してくれて・・・なかった。

愛屋の肉丼がテーブルの上に鎮座してらっしゃる。

どうやらギブアップして出前を取ったらしい。

 

台所を見に行くと寸胴鍋の中にスープが入っていた。

が、味ははっきり言って不味かった。

ただし以前のような得体の知れない物体Xではなく成長の後が見られる。

 

ベッドの上でマーラ様を駆使して小一時間説教する。

腰を振りながら二人にアクを取りの大切さを一から言って聴かせる。

 

これで少しはマシになればいいのだが。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月22日FRI 晴/曇 6:30>

 

早朝の通学路。

 

「あれ鳴上」

 

「おはよう悠君、早いのね」

 

何故か花村と小西先輩の二人に会う。

朝から寄り添ってのお手々つないでベタベタの甘々な雰囲気だった。

 

小西先輩、どうやら大丈夫そうだな。

全校生徒の前で校長が失踪の件を暴露してしまったせいで、レイプ被害者という根も葉もない噂が流れていたのだが。

花村の隣で幸せそうにしている小西先輩を見ると、余計な心配だったようだ。

 

まあ花村が脳天気にも教室内で"処女頂きました宣言"したことが功を奏したのかもしれない。

あれで噂も一気に掻き消されてしまった感がある。

 

「おはよう二人とも。朝から・・・何というか情熱的だな」

 

「おぅ!」

 

「ウフフ」

 

俺はバスケ部の朝練なので朝が早いのだが、何故この二人はこんなに早く?

ピンと来た。

さては空き教室で朝からシッポリするつもりだな。

 

「ほどほどにしとけよ」

 

「鳴上、な、何のことかなー?」

 

「ポッ(赤)」

 

ごちそうさまだ。

 

そうか。

バスケ部の仮入部が終わったら、俺も雪子と千枝を連れて朝早く登校してみようかな。

学生服でのプレイってのも興味があった。

 

二人の邪魔になりそうなので先を急ごうとする。

すると後ろから俺の名前を呼ぶ声が。

 

「鳴上君ーーーっ!」

 

あれはエビ。

軽やかに自転車で登場。

 

「おはよ!」

 

「どうしたんだ?」

 

「今日からアタシも朝練手伝おうと思って」

 

「そうか、偉いな」

 

「じゃあ先に行ってるから!」

 

素直に感心して見送る。

 

「おい鳴上・・・」

 

「何だ花村?」

 

「あれ二年一組の海老原・・・だよな!えらく雰囲気違くね?すっげー可愛くなってるだろ!嘘だろマジかよ!」

 

「恋する乙女は日々成長するって奴だよ。それよりいいのか?彼女の手を握りながら他の女に目を奪われるなんて」

 

「あ・・・」

 

「よ・う・ちゃ・ん?ど・う・い・う・こ・と・か・なぁーーー」

 

「ゴメンナサイスミマセンモウシマセンニドトコノヨウナコトワーーー!」

 

やれやれ。

そっとしておこう。

さて俺も走って学校行くか。

 

エビが見守る中、朝練で一条とのパス連携を入念に練習した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月22日FRI 晴/曇 20:00>

 

居残り練習で一条に付き合ってもらう。

彼とのダンクシュート対決はとても白熱した。

 

練習を終えてマンションに戻ると、またまた雪子と千枝が夕飯を用意してくれて・・・いた!

ビーフシチューと食パンである。

なぜ食パン?

 

ビーフシチューの味は普通だった。

固形のルーを使ってるので当たり前と言えば当たり前だが、これまでの二人の料理の惨状を見るに奇跡と言っていい。

ただ夕飯に食パンは頂けない。

ご飯を要求すると雪子と千枝の二人は激しく動揺する。

 

二人の妨害を振り切り台所を見に行くとジャーの中に炊き立てのご飯が。

しかし明らかに洗剤臭い。

 

ベッドの上でマーラ様を駆使して小一時間説教する。

腰を振りながら二人に米の研ぎ方を一から言って聴かせる。

 

これで少しはマシになればいいのだが。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月23日SAT 曇 9:18>

 

「・・・モロキンほんっと最悪だぜ!」

 

モロキンに呼び出された花村がヨレヨレになって帰ってくる。

 

「どうしたの花村?」

 

「ひどい顔よ」

 

千枝と雪子が心配して声を掛ける。

 

「ひどい顔ってひどくね?いやいいけど!早紀とイチャイチャしてるところ見つかってさ―。不純異性交遊だー!なんて生徒指導室で延々説教だよ。あの野郎」

 

「ああーまあしょうがないんじゃない?」

 

「当然かも。うん」

 

「・・・え、なんで?」

 

「有名になってるぞ、お前たちのバカップルぶり」

 

一応友人として忠告はしておく。

 

「やるならもっと上手くやらないと。周りが見えてないんじゃないか?」

 

花村はそんなんだから、目の前にいる美人女子二人が既に俺の女になってしまっていることに気付かないんだ。

 

千枝と雪子の二人は明らかにこの一週間で色気を増しており、周りの男子から浴びる視線も質が変わってきていた。

誰も彼もがオスの繁殖欲をギラつかせ、犯すような目で二人の躰を舐めるように見つめてくる。

 

周囲の変化に気付いていないのはクラスの中では花村くらい。

まさしく色ボケであろう。

千枝は格闘技を修めているのでともかく、雪子はこれまで以上のガードが必要だな。

早くバスケ部の試合が終わればいいのに。

 

<チャララチャララララララララー>

 

ゴッドファザーの着信音が鳴る。

エビからだった。

すぐに電話に出る。

 

「もしもし」

 

<早く廊下に出てきて。対戦相手の戦術について打ち合わせする予定だったじゃない>

 

「あ、悪い。今行く」

 

そうだった。

慌てて席を立って廊下に向かう。

 

「最近多くない?鳴上が呼び出されるの」

 

「しょうがないじゃん。バスケ部の練習試合近いしねー」

 

「マネージャーの子が凄く頑張ってるって聞いたわ」

 

「ああーそれでか。試合来週だっけ?俺も早紀とデートがてら応援しに行こうかな」

 

背中越しにワイワイと騒ぐ声が聞こえてくる。

 

・・・そうか。

花村を使う手もあったな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月23日SAT 曇 22:00>

 

今日から天城屋旅館でバイトである。

無事に初日を終える。

 

仕事終わりにまかない飯を出してもらい、ありがたく頂いた。

丁度良い機会なので、板長さんに雪子の料理の腕前について相談してみる。

すると怖い顔の板前さんが途端に青い顔してブルブル震えてしまった。

雪子、どんだけだよ・・・。

 

自分の将来のためにも雪子の料理の腕を上達させないと。

そう思い立った俺は板長さんと作戦を練る。

板長は喜んで相談に乗ってくれた。

相談の結果、まずは二人に毎日のお弁当を作らせることに決定。

 

その後、雪子の部屋に移動。

千枝と三人で寝る。

必死になって声を抑え、快感を濃縮させて悶絶する二人の艶姿を堪能。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月24日SUN 晴 10:00>

 

旅館の近くにミニバスケットコードがあると聞き、バイトの休憩時間に遊びに行ってみる。

一人でドリブルとシュート練習をしていたら、暫くして旅館の客らがやってきた。

場所を譲ろうとすると「一緒にやらないか」と誘われる。

1オン1でしばらく遊ぶ。

 

客の三人とも結構な歳なはずなのに、やたらバスケが上手かった。

ムキになって全力全開で相手をしてしまう。

そのため俺の勝率が圧倒的なものになってしまった。

一番若いのだから当然と言えば当然である。

 

「そろそろバイトに戻らないと」

 

断りを入れてプレイを止める。

 

「はぁはぁ、君凄いね。何処の高校だい?」

 

「八十神高校のバスケ部です」

 

「八十神高校?聞かないな。知ってるか?」

 

「「いや知らないな」」

 

首を捻る客人たち。

そんなにバスケ界では無名なのかうちの高校。

悔しい。

 

「確かに部自体は弱いですけど、部長の一条は俺よりも断然凄いですよ」

 

自分よりも上手い奴がいると八高バスケ部をアピール。

近くIH常連の某高校と練習試合があることも伝える。

 

「【暇なら見に来て下さい】」

 

かなり興味を持ってくれたようだ。

彼らは今週いっぱい仕事で天城屋旅館に宿泊するらしい。

強く誘ってみた。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月26日TUE 曇り 16:00>

 

「みんな聞いてくれ。練習試合の当日のスケジュールが決まった。昼スタートだから余り腹にモノ入れとくなよー。横っ腹が痛くなるからなー」

 

「「「うぃーす」」」

 

ついに試合だ。

俺と一条のコンビネーションは日に日に良くなってきている。

俺が最初に思ったとおり、一条は凄い。

バスケに限って言えば、奴は全てにおいて俺の動きを上回っていた。

俺がアシスト役に徹して一条に点を取らせることに専念すれば、オフェンスは問題ないだろう。

 

問題は守備だ。

最近は一条とエビが互いに意識し合っているのが周りから見てバレバレで、男子部員たちのモチベージョンがどうにも上がらない状態が続いていた。

このどうしようもない部員たちに、インターハイ常連校の攻撃を食い止められるとは思えない。

 

彼らのやる気を出させるにはどうすればいいか。

そのため俺は秘策を用意した。

 

「ゆうーっ!」

 

「お待たせ悠君」

 

千枝と雪子の二人だ。

 

「ちょっといいかな一条。彼女たちを仮入部させたい。臨時のマネージャーとしてエビの手伝いをしてもらおうと思って」

 

「本当かよ?マジ助かる。ちょうど人手が欲しかったんだ。よろしく里中さん!天城さん!」

 

「みんな頑張ろー!」

 

「皆さん、よろしくお願いします」

 

「「「おおおおおおおおおお!!!」」」

 

男子部員たちのテンションが一気に上がった。

さすが学校でエビと一ニの人気を争う雪子と、最近赤丸急上昇中の千枝である。

 

二人には部員たちに軽く色目を使う程度に愛想よく接するよう言い含めてあった。

千枝は男の子を会話でその気にさせるのに慣れてない。

"男性に好かれる会話術"というハウツー本を読ませ、毎日のピロートークで実技練習させて念を入れる。

天然の雪子はあまり会話すると引かれる可能性が高い。

ほんの少しだけボディタッチを許容してスキンシップ面で頑張ってもらうことにする。

 

これで二人に良いところを見せようと野郎供も頑張るだろう。

この年頃の男子の奴らホント単純だから。

勿論勘違いして強引に迫られた時用の防犯グッズは二人に手渡し済みだ。

 

「よろしく!海老原さん」

 

「よろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

二人ともエビとはこれまでほとんど交流がないようだったが、傍から見る限り問題は無さそうだ。

特に千枝とエビの相性は悪そうかなと思ったのだが・・・。

恋する乙女状態の今のエビには精神的な余裕がある。

それがうまくいっている要因かもしれない。

 

しかし、あの三人が揃っている絵は華があるな。

八十神高等学校二年のトップ3と言っても過言ではないだろう。

眼福眼福。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月26日TUE 曇り 18:30>

 

「鳴上。実は俺、次の試合が終わったらバスケ辞めようと思ってる」

 

「は?」

 

練習後の更衣室で一条と二人で着替えをしていると、突然一条のカミングアウトが始まった。

 

「始めたときから家族にバスケなんて野蛮だって反対されてたんだ。うちってかなり歴史が古い家でさ」

 

なんと一条、孤児院出の養子なんだそうだ。

一条家の跡取りとなるよう引き取られて育てられてきた。

それが一転、養父母の間に女の子が生まれて環境が激変。

周りに反発して固執していたバスケにも誰も文句を言わなくなったらしい。

結果としてバスケを続けるモチベーションが急激に減退してしまったんだと。

 

「ケジメを付けるために絶対に勝っときたい。海老原さんのこともあるし、力貸してくれ」

 

気に入らないな。

 

「一条、お前は間違ってる」

 

「え?」

 

「【お前はバスケを絶対に止めたりなんかしない】」

 

「・・・」

 

「何を悩んでいるか知らないけどな。お前がバスケを止めれるはずがない。なぜなら。【お前はバスケットマンだからだ!】」

 

「・・・俺がバスケットマン」

 

「そうだ。少しでも弱気を見せたらそこで試合終了だ。次の試合に勝ちたいだと?何を弱気な。違う!【俺達は断固として勝つ!圧倒的に勝つ!】」

 

「・・・ああ、そうだな。俺たちは勝つ!」

 

ふ、迷いは消えたようだな。

 

「そして約束通り試合に勝ったらエビに告白してもらおう。【今から告白のセリフを考えておけ】」

 

「・・・勿論だ」

 

エビ、約束は必ず守るぞ!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 11:00>

 

試合当日。

生憎の雨。

 

既に相手チームは到着しており、準備運動に余念がない。

相手チームのチョビ髭監督が悠然と構えてる。

そう言えば八十神側のコーチとか顧問とか見たことないな。

誰だ?

 

一条に聞いてみたら、なんとモロキンが腰掛けで顧問をやってるらしい。

端からやる気なんてなくて、今日も部長の一条に丸投げだそうだ。

全くなっとらん。

 

応援に来た花村にユニフォームを着せる。

ベンチ入りのメンバが足りないので、彼にもチームに加わってもらう。

 

「俺、早紀と一緒に応援しに来ただけだっつーのに!」

 

「文句言うな。【小西先輩にいいところ見せろ】」

 

「・・・おおさっ!もうやけだ!走りまくってやんよー」

 

俺と一条以外は最初から全開で守備に当たり、力尽きたらどんどん交代していく作戦である。

オフェンスは俺と一条の二人だけで十分だ!

 

<ガヤガヤ>

 

ん?

どうしたんだ?

相手チームが騒がしい。

あれは・・・。

 

この前の昼間、天城屋旅館で一緒にバスケしたお客さんたちだった。

俺の言葉どおりにこの試合を観に来たらしい。

ほんとに暇だったんだな。

 

因みに今日は祭日でこの練習試合は部外者も立ち入り可能である。

でもなんで相手チームのちょび髭監督があの人たちにやたらペコペコと頭を下げてるんだろう。

 

「おい一条。あの人たち誰?」

 

「ばっかお前知らねーのかよ!現日本代表のコーチ陣だよ!みんな元代表で有名だった選手だ。なんでここに」

 

へー。

元代表ってあんま大したことないんだな。

一条のドライブインの方が何倍も速くて正確だったんだが。

 

まあいいや。

わざわざ来てくれたんだ。

挨拶しておこう。

一条を連れて彼らのもとへ向かう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 12:00>

 

試合開始。

 

「がんばれー悠!」

 

「頑張って悠君!」

 

「一条君しっかり!」

 

「こら陽ちゃん真面目にやんなさい!」

 

八十神側のベンチから黄色い声が飛ぶ。

ベンチの戦力を見比べると、女子マネの充実振りだけは圧倒的大差で八十神が勝っていた。

相手はパッとしないジャージ女一人だけである。

相手チームの男子陣からの妬みの視線が痛い。

 

まあ当然か。

八十神高等学校の美女トップ4がここに揃っているわけで。

それだけで神々しい。

 

そして肝心の試合の方だが。

開始十秒で試合の結末がわかってしまう。

 

ティップオフのボールを驚異的なジャンプ力で一条が叩き、俺があっさりキャッチ。

そのままドリブルで突き進んで相手のデフェンスを引きつけてから一条にパス。

練習のマッチアップで散々俺がやられた、一条得意の高速ドライブインからのレイアップであっさり得点。

相手チームはほとんど反応出来ていなかった。

 

一瞬で体育館が静まり返る。

 

なんというか。

これがインターハイ常連校の実力なのだろうか。

うちのやる気のない部員たちに毛が生えた程度のレベルじゃないか。

 

もし仮に俺が一条と一緒に本気でバスケに打ち込んだとしたら、全国制覇も可能かもしれない。

だが俺にはあのマヨナカテレビの謎を解き、殺人犯を捕まえてこのゲームをクリアするという使命がある。

バスケばかりに構ってはいられない。

 

やはりバスケ部のことは一条に任せよう。

というかこの試合も一条一人でも全然余裕だろ!

 

この試合、俺は一条のアシストに徹することに決めた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 14:00>

 

<ビー>

 

<シュパ>

 

一条がブザービーターを鮮やかに決め、試合終了。

 

試合結果は八十神高校の圧勝。

88対44のダブルスコア。

その得点の半分以上を一条が叩き込んでいた。

 

この試合により一条は「八十稲羽に一条有り」と県下にその名を轟かすことになる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 14:40>

 

「遅かったじゃないか」

 

シャワーを浴びて更衣室で着替えていると、やっと一条がやってきた。

一条は何やら困惑した表情を浮かべている。

 

「どうした?」

 

「日本代表のコーチの人たちに呼び止められてさ。海老原さんが撮ってた今日の試合の動画をコピーさせてくれないかって。あと・・・」

 

「あと?」

 

「進学先がまだ決まっていないなら、スポーツ推薦でうちの大学に来ないかって」

 

大学の名前を聞いたら、東京にある超有名私立で、バスケの強豪校だった。

 

「で?」

 

「突然そんなこと言われてもな。少し考える時間をもらったよ。あ、鳴上、お前のことも探してたぞ!」

 

「ん、俺はいい。この試合を最後に俺はバスケを引退するよ」

 

衝撃の告白である。

まあもともとこの試合が終わるまでの仮入部だったのだが。

 

「な、お前何言って!?ふざけんなよ!」

 

「【聞いてくれ一条】」

 

「・・・なんだよ」

 

「俺は来年の春にこの街を去る。それまでにこの街でやらなければならないことがある。【残念ながらそれはバスケじゃない】」

 

「・・・ぐっ」

 

勿論マヨナカテレビの件もあるが、あまり部活が忙しいと雪子と千枝を可愛がる時間が無くなる。

あと昨日バスケ漫画全巻読み終わったので正直もういいかなって。

すまん一条。

 

「【お前のバスケ人生の栄光の時代はまだまだ先にある。IH優勝。日本代表選出。オリンピックメダル獲得。アメリカ進出。NBA優勝】」

 

「・・・」

 

「俺は・・・俺のは今日の試合だった」

 

「・・・」

 

「一条ありがとう。今日の試合お前がいたから勝てた。もう思い残すことはない。【止めてくれるな】」

 

「・・・鳴上」

 

俺の引退に涙を流してくれている一条と固く握手する。

一条もわかってくれたらしい。

 

さて。

試合にも勝ったことだし。

 

「一条、さっさとシャワー浴びてこい」

 

「なんで?」

 

「エビを体育館裏に待たせてある」

 

「うぇ!?」

 

約束を果たしてもらおうか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 15:00>

 

練習試合の打ち上げを兼ねて、愛屋でちょっと遅い昼食会をする。

愛屋の昼の開店時間は15:00までだが、あいかちゃんに頼み込んで店を閉めないでもらってる。

 

「「「おつかれー」」」

 

ジュースで乾杯。

運動の後の一杯は本当に美味しいな。

 

「肉丼お待たせ」

 

あいかちゃんが一条の頼んだ肉丼を持ってきた。

相変わらずの無表情っぷりだ。

 

あの顔であのフェラだものな・・・。

ついこの間の自宅玄関先の出来事が思い出されて仕方ない。

おっといかん、じっと凝視してしまってた。

 

「あ、それこっちね!はい、康君」

 

「お、おう」

 

エビが肉丼を受け取り。一条の前に甲斐甲斐しく置いてあげてる。

その意味に気付くことなく、花村があいかちゃんの方を見て驚いていた。

 

「あれ?あいかちゃんじゃん。いつからここでバイト始めたんだ?」

 

「ううん。ここマイハウスー」

 

「もう陽ちゃんはもっと周りに気を配った方がいいよ。でも今日の陽ちゃんはちょっとはカッコ良かったかな」

 

「えー、そうかなー、俺的には普通だったけどー。デヘヘ」

 

相変わらずの花村と小西先輩のイチャつきであった。

ただまあ今日は気にならない。

もっとテンパッてる二人が直ぐ傍にいたので。

 

「一条、食べないのか?」

 

「・・・あ、ああ」

 

「康君、先に食べていいよ。試合であんなに活躍したんだもの。お腹減ってるでしょ。ね」

 

「ありがとう。あ、あいさん」

 

まあ二人の態度を見ていると聞かなくてもわかるけども一応。

 

「それで、二人は付き合うことになった、でいいんだな?」

 

「ぐっ、ぶほっ」

 

「だ、大丈夫!?康君!」

 

「うわっキタネー」

 

「あらあら」

 

一条の吹き出した米粒の嵐が、向かいに座っていた花村を襲う。

互いの恋人を甲斐甲斐しく世話するエビと小西先輩。

 

「へー、二人付き合うことになったんだ。やるじゃん一条君」

 

「おめでとう、二人とも」

 

「美男美女の似合いのカップルだな」

 

千枝と雪子の二人と一緒に祝福の言葉を贈る。

 

「えーどっち?どっちから告白したの?」

 

「うん興味ある」

 

「それは一条だろ。な、一条?」

 

一条はゴホゴホッと咳込みながら恨みがましい目でこちらを睨みつけてくる。

ニヤニヤ。

 

「ゴホッ、ああそうだよ!俺から告白しました!彼女の方も前から俺のこと気にしててくれたみたいで」

 

「も、もうっそんなことまで言わなくていいから」

 

両想いであったことを一条自ら暴露してしまいエビが赤面。

キャーとかイヤーンとか女性陣たちが姦しい。

雪子は特に興味津々だ。

 

「もしかして海老原さんがバスケ部に入ったのも、実は一条君のためだったりするの?」

 

「・・・そうなる、かな。ポッ(赤)」

 

「いいね。そういう関係って」

 

「へー。ごめんねー海老原さん。あたしアンタのこと誤解してたわ。一緒にマネージャの仕事してみてわかったけど。なかなか根性あるじゃん」

 

「別にいいわよ。ちょっと前まで部活サボってたのは事実だし」

 

千枝もエビを頑張りを認めたようだ。

女同士の会話が盛り上がる。

それを横目で微笑ましく眺めながら一条に語りかけた。

 

「で、大学の推薦だっけ。その話受けるのか?」

 

「・・・ああ、受けようと思ってる。なあ鳴上。久々に試合してわかったんだ。もしかして俺ってさ。もっと上のレベルでも通用するんじゃないかって」

 

それは最初から俺もそう思っていた。

初めて体育館を訪れたときに見た一条のひたむきな練習姿。

その姿を見た瞬間、俺はバスケではこいつに勝てない、勝っちゃいけないんだって思ったんだ。

 

「お前と一緒に練習するようになって、なんかバスケのコツみたいなの掴んだっていうかさ。相手が止まって見えるんだ」

 

「"ゼロの領域"って奴か」

 

「面白いようにシュート決まって、試合中このレベルじゃ物足りねぇって思うようになってた。マジで鳴上には感謝してるんだ。ありがとうな」

 

そこで一条が顔を寄せてきた。

俺にしか聞こえない声で決意表明。

 

「んで、夢物語かもしれないけどな。いつかお前が言ってたけどプロになって優勝って奴?もしそこまで行けたら、あいさんにプロポーズする」

 

それだけ言って顔を離す一条。

照れたような口調だったが目は真剣だった。

フッ。

 

「一条、それお前の悪い癖だ」

 

「え?」

 

「もしなんて言うな。言うなら【絶対】だ」

 

「・・・絶対か。ああ絶対だ!お前がバスケを辞めるのは残念だけど、お前の分までバスケ頑張るよ。応援しててくれよなっ」

 

「ああ、勿論!」

 

にこやかに笑い合う俺たち。

 

「仮入部組のアタシたちも部活続けられないけど、一条くんのことこれからも応援するよ。ね、雪子」

 

「うん。一条くんならきっとプロになれる。あんなに凄かったんだもの」

 

「俺も応援するぜー、な、早紀」

 

「もう陽ちゃんったら。でもそうね。将来活躍したらうちの酒屋の宣伝とかお願いできないかな」

 

仲間たちがそれぞれ一条に声援を送る。

隣に控えていたエビがそっと声を上げた。

 

「あの康君。あたしはバスケ部にいてもいい?最近始めたマネジメントの勉強面白くなってきちゃって。公私混同はしないようにちゃんと気をつけるから」

 

「あったりまえじゃん。あいさんにはマネージャーとしてもずっと俺のことを応援していて欲しい」

 

見つめ合う二人。

いい雰囲気だった。

それを受けてまた花村や千枝が二人を囃し立てる。

打ち上げは終始和やかな中で行われた。

 

「あー、俺の肉丼まだ来てないんだけど」

 

「え、君、誰?」

 

「俺サッカー部の」

 

「肉丼お待たせ。まいどー。あと鳴上君、約束」

 

ああ、わかってるよ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 15:45>

 

「ちょっとトイレ」

 

仲間たちに断って中座する。

トイレの隣にある"スタッフオンリー"と記された扉から中村宅にお邪魔する。

あいかちゃんが待っていた。

 

無理を言って営業時間外での対応をお願いしたお礼をする約束になっていた。

 

「うん。ズボン下ろしてー」

 

またイマラチオである。

手早く終わらせるためにあいかちゃんの小さな頭を掴んで刺激を強くする。

 

「じゅっぽじゅっぽじゅっぽ」

 

「ううっ」

 

<ドクンドクン>

 

あいかちゃんの小さな口の中に、白濁したペルソナ液を零れそうなほど流し込む。

 

「ごくっごくっ、もぐもぐ、ごくっ」

 

「・・・ふうぅ。まずいんじゃなかったの?」

 

腰を引く。

ぬぱぁと糸を引いてマーラ様が口から外れる。

 

「うん。忘れられない、味」

 

無表情ながら頬がややポッとなっている。

 

なんだろう。

俺の味にハマりかけ?

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月29日FRI 雨 16:00>

 

皆が食事を終えて店を出ると雨が一時的に止んでいた。

商店街を皆で漫ろ歩く。

 

すると隣にエビが寄ってきた。

 

「鳴上君あのさ。協力してくれて感謝してる。アンタ優しいからさ。ちょっと甘えさせてもらったの。迷惑だった・・・よね」

 

「そんなことないさ」

 

「いつか語ってくれた夢。実現出来るように精一杯努力してみる。モデルの勉強と女子マネージャーの仕事、掛け持ちはしんどいけどさ」

 

「そうか」

 

「康君と一緒の大学に行きたいから勉強もしなくちゃ。もう学校サボってる暇なんてないわね」

 

「大丈夫。【君なら必ず出来る】」

 

「・・・うん!こんな気持ちになれたのアンタのおかげ。ありがとうね、鳴上君!」

 

そう言ってエビは一条の隣に駆けていった。

一言二言言葉を交わし、上気した顔で腕を組む一条とエビ。

初々しくてこそばゆい。

 

気がつくと俺の左右に雪子と千枝が。

一緒にエビと一条の寄り添った後ろ姿をにこやかに眺めていた。

 

そう言えば二人とはまだ恋人つなぎをしてなかったな。

花村と小西先輩は例のごとく二人の世界に逝っているので気づかないだろう。

そっと二人の手を握る。

 

「悠」

 

「ご主人様」

 

驚いたようにこちらを見てくる二人。

微笑んで応じる。

俺たちは三人で寄り添いながら仲良く商店街を進んでいった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年4月30日SAT 晴 12:40>

 

「千枝は緑の方だよね」

 

快晴の校舎の屋上でお昼ご飯である。

雪子が緑と赤のカップ麺を持ってきた。

 

「サンキュー。おほほ、この匂いが堪らないんだよねー」

 

「まったく。インスタントものはほどほどにな」

 

「いいじゃん偶には。好きなんだー、このお出汁」

 

「うん、私もこのお揚げが大好き」

 

ふー、仕方ない。

朝二人の弁当作りを手伝って何とか一人前は出来上がったのだが。

三人で食べるには少なすぎて、やむなくカップ麺の出番と相成った。

 

「「いっただきまーす」」

 

うん、なんとか食べられるレベルの弁当になってる。

 

「それでさ悠。テレビの中の探索ってどこまで進んだの?犯人の目星ってついた?」

 

「私も気になる。もし自分が誰かに殺したいほど恨まれているなら、知らなきゃいけないと思う」

 

食事しながら事件について訪ねてくる二人。

だが正直なところ進展はない。

 

「小西先輩と雪子を続けて救ったことで警戒しているのかもしれない。相手が尻尾を出すまで地道に探していくしかないかな」

 

「そっかー」

 

「私たちも調査を手伝えればいいんだけれど」

 

残念そうな表情を見せる千枝と雪子。

しかし俺からしてみれば二人を危険に晒すなどもってのほかである。

二人には極力安全なところにいて欲しかった。

 

「ん。個人的に調査よりも・・・もっと切実に協力して欲しいことがあるんだけど」

 

二人のスカートの中に手を忍ばせる。

 

「え、もうバカッ昨日もあんなにしたじゃん」

 

「・・・(赤)」

 

俺たちはこの日初めて青姦を決行した。

学校でのダブルフェラ&連続交尾は燃えるものがある。

花村と小西先輩がはまるわけだ。

妙に納得。

 

「あ、お揚げ」

 

雪子それ違う。

それは俺のお稲荷さんだ。

 

 

 

<SYSOP 2011年4月30日SAT 晴 --:-->

 

一条康は八十神高校二年生でバスケットボール日本代表に選出され、日本バスケ界初の高校生日本代表として活躍し一躍脚光を浴びます。

一条康は八十神高校三年生でIH杯優勝後オリンピックに参加し、バスケットボール日本代表初のメダル獲得に対して特筆すべき貢献をします。

一条康は東京の有名大学に進学して大学一年生で大学選手権優勝した後、二年生で交換留学生としてアメリカの大学に転籍して頭角を現します。

一条康は大学卒業後ドラフトでNBA入りを果たし、日本人として初めてレギュラーシーズンを通しての活躍を見せ、日本でバスケブームを巻き起こします。

一条康は26歳でNBAのファイナルに進出してMVPを獲得し、帰国時の空港でマスコミに囲まれながらも海老原あいにプロポーズをしてしまったことで国民的カップルと認められます。

一条康は鳴上悠の仲人で海老原あいと結婚して三人の子供を儲け、三十代で現役引退後は有能な監督として日米で活躍をします。

剛毅のアルカナが消滅しました。

 

海老原あいは一条康と同じ大学に進学し、一年生にも関わらず圧倒的得票率でミスキャンバスに選出されます。

海老原あいは大学在学中モデル事務所に所属してファッション誌を中心に活躍し、CAMCANの専属モデルに抜擢されます。

海老原あいは大学卒業後女優業にも進出すると同時に、あい自身の美しさが要因で売れているにもかかわらず、何故かそのメイクと着こなしが"男&友達受けの良いエビOLファッション"と銘打たれて持て囃され、大流行して社会現象となります。

海老原あいはMoDonaldsのCMに出演して"エビちゃんフィレオ"を1億食を売り上げ、エビ効果と称されてCMクィーンになります。

海老原あいは26歳で一条康のプロポーズを受け入れ、婚約会見の場で交際を開始するまで処女だったことをテンパった康に暴露されてしまい、仕方なく「私の青春にはいつも彼がいました」の名言を残します。

海老原あいは鳴上悠の仲人で一条康と結婚して三人の子供を儲け、美人ママモデルとして息の長い活躍をします。

月のアルカナが消滅しました。




"スーパー一条"×"キレイなエビ"のカップリングです。そして件のモデルさん、結婚しても三十路になっても美人は美人だなと。


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第06章 隠者

原作の6話は巽完二編の上回ですが、そんな展開になるわけもなく・・・。


<VELVET ROOM 2011年5月1日SUN 曇 --:-->

 

「あら、申し訳ございません。お風呂をちょうど頂いておりました」

 

扉を開けると豪奢なバスルームの泡風呂で寛いでいるマーガレットの姿があった。

 

「でもせっかく来て頂いたので・・・」

 

バスタブからゆっくりと立ち上がるマーガレット。

 

「ようこそバスルームへ。ふふっ。一度一緒に入ってみたかったの」

 

纏った泡が伝い落ちて徐々に裸体が露になっていく様が卑猥過ぎてマーラ様が自然と隆起する。

 

「それはそうと、また新たな技を披露するチャンスのようですわね」

 

泡に濡れたまま近づいてきたマーガレットが服を脱ぐのを手伝いながら耳元で蠱惑的に囁く。

 

「ソーププレイ」

 

広い浴室の中央には既にスケベ椅子が用意されている。

 

「この二つのヌルヌルな乳房はあなたをどのような悦楽の果てへ導くのでしょうね」

 

バスタブを満たす泡を手に取って自分の乳房を泡立てていくマーガレット。

 

「さぁ、好きな向きでお座りになって下さい。それともいきなりパイズリの方がいいのかしら。クスっ」

 

誘われるままスケベ椅子に座って近づいてくる二つの柔らかい固まりを待つ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月1日SUN 曇 18:00>

 

ふーっいい風呂だった。

 

天城屋旅館でのバイトを終えて昼過ぎにマンションに戻った俺は、愛すべき恋人たちと三人でさっそくセックス勤しんだ。

夕方になり日も落ち始めて一息ついたところで夕飯の前に風呂に入って汗を流すことに決定。

当然千枝と雪子も一緒に入浴し、手狭ではあるが三人で泡まみれになってイチャつきながら躰を洗う。

盛り上がって二人に一発ずつ発射した後、少し浴槽に浸かったままで微睡んでしまったようだ。

 

夕飯の準備をしなくてはならない。

一人先に風呂から上って浴衣室で躰を拭く。

風呂場ではまた躰が汚れてしまった千枝と雪子が躰を洗い直していた。

 

<雪子さー、ご飯食べた後、あたしたち当然もう一度セックスするわけでしょー>

 

<うん、そうだね。千枝>

 

<あたしたちってさ。ここんとこずっと悠にイカされまくりじゃない?偶にはこっちが主導権握りたいっていうか、悦ばせてあげたいっていうか>

 

<どうやって?>

 

<それを相談したいんだってば。やっぱ前戯をもっと極めるべきだと思うんだー>

 

風呂場から二人の猥談な作戦会議が漏れ聞こえてくる。

ふっ。

筒抜けだぞ二人共。

 

バスタオルで躰を吹きながら耳をそばだてる。

 

<ダブルフェラとかもう結構いっぱいやってるじゃない?もっとアクセント付けたいよねー>

 

<じゃあさっ。一人がご主人様の咥えてる間に、もう一人が後ろからご主人様のお尻の穴、舐めちゃう・・・とか?>

 

<えーーーッ!?そ、そんなとこ舐めちゃうの?>

 

<うん、調べてみたら一般的みたいだよ>

 

一般的って。

雪子、それどこ情報よ?

 

やばいな。

尻の穴、ちゃんとしっかり洗ったよな?

 

<PiPiPiPiPi>

 

そのときスマホが鳴った。

 

誰だろう。

花村?

 

脱衣所から出て浴衣室のドアを閉め、通話ボタンを押す。

 

「もしもし」

 

<おうっ俺。鳴上、いきなりで悪いんだけどよ。相談に乗ってくれよっ>

 

藪から棒だ。

厄介な話ではなければいいが。

 

「何の相談だ?」

 

<もうすぐ早紀の誕生日なんだよ。何か良い誕生日プレゼントねーかな>

 

ガクっとくる。

恋人へのプレゼントも一人で決めれんのか、己は!

 

小西先輩に送る初めての贈り物になるので、迷いに迷って彼一人では決められないのだそうだ。

 

<頼むよ相棒っ、一緒に探してくれー>

 

いつの間にかタダの友人から相棒にクラスアップしてた。

なんと厚かましい奴なんだろうか!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月2日MAN 雨 12:50>

 

プレゼント、プレゼント。

 

昨日の花村からの相談。

邪険にしても良かったが奴には一昨日のバスケ部の練習試合に出てもらった借りがあった。

次の授業に移動するために廊下を歩きながら、どんなプレゼントなら小西先輩が喜ぶのか頭を悩ませる。

 

指輪とかネックレスが一般的なんだろうけど。

それは当の花村が嫌がった。

そういうアクセサリー系のモノはもっと金を貯めてからちゃんとしたブランドのを買ってプレゼントしたいらしい。

ほんと面倒くさい。

 

<ポトッ>

 

ん?

前を歩いてた男子生徒のポケットから何かが落ちた。

 

反射的に拾ってしまう。

小さなピンクのウサギの人形だった。

よく見ると携帯のストラップのようである。

かなりの出来の良さだ。

 

「これ、君のかい?」

 

前を歩いている背が高くてガタイのいい一年生に声をかける。

 

「ああん?」

 

苛立った声を上げて振り替える一年生。

金色に染めた髪にドクロのTシャツとシルバーの耳飾り。

随分突っ張った格好をしているな。

 

「・・・くっ」

 

俺がこの人形を拾ったのが気に食わなかったのだろうか。

差し出した人形をバシッと引っ掴み、そのまま立ち去ろうとする。

 

「【ちょっと待ってくれ】」

 

思わず呼び止めてしまう。

 

「・・・何だよ」

 

立ち止まってくれた。

相変わらず不機嫌そうな顔ではあったが。

 

「それよく出来てるな。【売ってるところを教えてくれないか】」

 

「・・・売りもんじゃねぇよ」

 

「と言うことは手作りか。凄いな。【誰が作ったのか教えてくれ】」

 

「・・・俺だよ」

 

へ?

このガラの悪そうな一年生があれを作ったってのか?

人は見かけによらないとよく言うがこれまた意外だった。

 

その驚きが自然と顔に出てしまったみたいだ。

 

「何だよ!悪いかよ!」

 

「いや、そんなことはないさ」

 

誰も悪いなんて言ってないだろうに。

早とちりな奴だ。

 

「君の裁縫の腕前に驚いただけだ。凄いね。尊敬するよ」

 

「・・・そ、尊敬だと?」

 

俺が素直に感心していることを向こうも理解してくれたらしい。

 

「お、おう。ありがとよ」

 

照れた顔で礼を言ってくる。

 

「しかし残念だな。売り物じゃないのか。今ちょっと女性に送るプレゼントを探していてさ。いいなと思ったんだけど」

 

「・・・稲羽中央通り商店街の北側にある巽屋って店に来てみろよ。似たようなのがいくつか置いてあるから」

 

「本当か?助かった。ありがとう」

 

彼の先の反応を見ると己の趣味を周りに理解されず随分苦労しているのだろう。

礼を言って彼と別れる前に老婆心ながらエールを送ることにした。

 

「社会に出ればすぐにわかるだろうけど、世の中にはいろんな人がいる」

 

「あん?」

 

「狭い学生の世界の中では特異に見えても、その外に一歩でも出れば同好の士なんてものは山ほど見つかるものさ」

 

特にオタク系コミュはね。

 

「【だから君は自分にもっと自信を持っていい】」

 

「・・・いきなり何言ってんだお前。ただまぁ嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。ありがとよ」

 

よし、とにかくこれで花村への一応の義理は果たせそうだ。

店が気に入らなかったら後は知らん。

 

しかし随分迫力のある一年生だったな。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月3日TUE 曇/晴 13:00>

 

今日から三連休。

GWである。

バイト先の天城屋旅館はもちろん予約でびっしりだ。

 

若女将の雪子は大忙しである。

俺と千枝の二人もバイトでフル稼働予定だ。

13:00から22:00までの計八時間労働(途中一時間休憩有り)できっちり稼がせてもらう。

 

雪子は毎年来るお客さんたちに「随分色っぽくなったねー」と声を掛けられまくっていた。

これまでの週末と同じように、バイト終了後は賄いと内風呂を頂いて雪子の部屋に直行。

もっと色気が出るようにじっくりたっぷりねぶり上げるように雪子を愛してやる。

 

夜の座敷で酒のお酌を強請られて困っていたようなので一計を案じる。

 

「次はこれを見せつけなよ」

 

エロ親父対策に首元にキスマークを付けてやる。

 

「あーっ、こんなにはっきりついちゃってるぅ。もうっご主人様のいじわるー」

 

雪子の白い肌だとやたら目立ってしまった。

鏡を見ながら雪子は文句を言ってくるがどこか嬉しげであった。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月4日MAN 晴 13:00>

 

連休二日目。

今日も今日とて天城屋旅館でバイトである。

 

だいぶ仕事にも慣れてきた。

千枝の方も元気印で客も含めて周囲からの評判は上々。

発声練習や接客の練習も真面目に取り組んでおりイキイキしている。

当然のことながら彼女は夜も元気である。

 

「あたしにも悠の所有物だって印、ちょうだーい」

 

雪子に対抗してキスマークを強請ってくる。

仕方ないのでその魅力的な内ももに付けてやる。

 

うーん良い肉だ。

カプリッ。

むちゅーーーっ。

 

「えーっ、そんなとこー!?」

 

千枝も口では文句言いつつもどうやら満更ではない様子。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月5日THU 晴 23:30>

 

連休三日目も無事終了。

日払いの契約のためにこれまでの分も含めると結構お金が溜まった。

リビング用のソファーを買ってもお金が余りそうだ。

 

ピロートークで雪子と千枝に相談。

 

「これなんかいいと思うんだが、どうかな二人共」

 

自宅の風呂場で使えるようなエアマットを候補にあげる。

やはり今敷いてるスノコだと雰囲気が出ないしなー。

 

「あたしはいいと思うよー。立ちバックでイッて力抜けた時って浴室だと滑るからやっぱり危ないし」

 

「うんうんっ。これでご主人様とソープ嬢ごっこ、したいなー」

 

裸で絡まりながらスマホでコンビニ払い可能なWebサイトを探す。

三人で品定めをして購入ボタンをタップ。

 

到着が楽しみである。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月6日FRI 曇 16:00>

 

来週から中間テスト。

雪子と相談して自宅で勉強会を開くことにする。

花村も誘ったが小西先輩と約束があるらしく断られた。

彼の成績は大丈夫なのだろうか。

 

学校から帰った直後。

いつもなら熱烈に愛し合ってる時間帯に勉強である。

千枝はなかなか身が入らないようだった。

うんうん唸ってばかりだ。

一旦休憩を入れよう。

 

「そう言えば事件の捜査、進展は何も無いみたいだね」

 

「おっとその話ね。アタシも自分なりに事件のこといろいろ考えてみたんだけど〜」

 

休憩中の気分転換に雪子が話を振ると千枝がガブッと食いついてきた。

急に千枝の目に生気が戻る。

 

「最初の被害者の山野アナ。次に小西先輩。次の次に雪子。三人が狙われたのは偶然じゃなくてやっぱり何か理由があるんじゃないかな」

 

「理由って何なの?」

 

「この三人にはつながりがあるの。まず小西先輩は山野アナの遺体の第一発見者。その山野アナって雪子の旅館に泊まってたんでしょ?」

 

「うん、そうだよ」

 

「だからこう考えられない?山野アナに関係した女の人が連続して狙われているって」

 

確かに千枝の言うことは一理ある。

 

「でも何でそんなことするの?」

 

「そこまではわからないけど。でもこうやって少しでもヒントを拾っていかないと、犯人には辿り着けないと思う」

 

そう。

雪子と千枝の言うとおり敵の目的は不明だ。

 

ただあの初日に霧の中で聞いた声。

すぐに姿を消してしまったがあれはただの顔見せ。

俺に対する挑発だった。

 

つまりこの事件の真の目的は俺に対する挑戦。

今この稲羽市で起こってる事件はそのために奴が巻き起こしている可能性が非常に高い。

この程度の推理も出来ないようでは自分に挑む価値など無い。

そういう無言のプレッシャーを感じる。

くそっ、悔しいぞ。

 

奴を捕まえるにはこの連続婦女暴行事件の発生法則を読み解く必要がある。

そのために他に手がかりとなるものは・・・。

 

「やはりマヨナカテレビか」

 

「確かに。もしかしてあれって犯行の予告だったりして!」

 

千枝が同意してくる。

 

「予告、か。だったらこれからも確認しなくちゃね。このテレビで」

 

雪子が不安げな表情で居間の42インチTVを見つめる。

 

「そうだな。小西先輩や雪子のときのように救出するのではなく、犯行を防いで敵の尻尾を捕まえることが出来るかもしれない」

 

「オッケー!話はまとまったみたいだし。今日はもう勉強終わりにして一緒にシャワー浴びよ!」

 

にこやかに千枝がノートを閉じようとする。

 

「待った!」

 

「千枝~」

 

雪子と一緒に千枝を睨む。

 

「ごめんごめん、冗談だって~」

 

あはははと笑って誤魔化す千枝。

ふーっ、これは何らかのテコ入れが必要だな。

 

「仕方ないな。テストが終わるまでエッチは全面禁止!」

 

「「えーーーッ!?」」

 

苦渋の決断である。

 

「わ、私もなの?」

 

雪子がショックを受けた表情を見せている。

 

「というか、雪子もそろそろ女の子の日だろ」

 

「そ、そうだけど・・・」

 

「自重しよう」

 

生理中は口でしてもらうという手もあるが。

まあ未練だろう。

きっぱりとエロ断ちを宣言する。

 

「「ブーブー」」

 

二人ともブーブー言わない!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月8日SUN 曇 16:00>

 

天城屋旅館でのバイトを終えてJUNESに向かう。

いつもなら千枝と雪子が一緒だったが先日通達したとおりテストが終わるまではエロ封印である。

 

JUNESで食料品をメインにお買い物。

豚肉が安かったので大量に購入。

これで自炊で食費が安く上がる計算になりホクホクになる。

 

その後は気晴らしに稲羽中央通り商店街を一人でぶらついてみた。

惣菜大学というお店でコロッケが安かったので今日の夕飯用に購入。

 

さてと。

あとは本屋に寄ってみようかな。

ん、こんなところに神社が?

 

辰姫神社というらしい。

結構古い。

この街に越して来たからには一度参拝していこうか。

しかし随分ボロボロだな。

 

賽銭を入れようと本殿に近づくと本殿の影から声が聞こえてきた。

男二人が何やら交渉中のようだ。

 

「君たちの総長って八十神高校の学生だっけ。なんとかインタビュー取らせてくれないかなー」

 

「学校かそこの巽屋って店に行けば会えるんじゃね?」

 

「それじゃ全然迫力のある絵が撮れないじゃないか!君たちの次の集会って何時なの?」

 

「いやアイツが全然許可しないんで何時になるか・・・」

 

「困るなー。宙吊り殺人事件も最近さっぱり進展無くてさ。視聴者を引き付けるニュースが今直ぐ必要なんだよ。なんとかならないかい?」

 

うーん?

片方は見るからにTVのプロデューサーのようだ。

もう片方はリーゼントばりばりの暴走族っぽいヤンキーである。

話の内容からしてもそうだろう。

 

さて違法行為の現場に居合わせたことになるのだが。

どうしよう。

堂島さんとか警察呼ぶにしても間に合わないだろうし。

悩んだときは相談だ。

 

スマホで@チャンネルの専ブラを立ち上げる。

そして"TVクルーが暴走族に暴走行為を依頼している現場に居合わせてるんだが"というスレを立てた。

ハンドルネームはとりあえず、神社に因んで"赤いキツネ"にしとく。

 

すぐにレスが付いて証拠うpうpと煩い。

とりあえず交渉シーンを録画かな。

スマホで動画撮影開始。

 

「君の力で集会を開いてくれよー。そうすればその暴れ者って噂の総長もその場に出てくるでしょ」

 

「あいつマジでヤバイんっすよ。殺されたくないっすよ」

 

「そこを何とか頼むよー。幾ら欲しい?これくらいかい?もっとかい?」

 

あ、思い出した。

天城屋旅館に押しかけてきてたTVクルーの一人だ。

あのTV番組、雪子にかなりセクハラまがいなインタビューをしていたが・・・さもありなん。

ヤンキーに札束押し付けて暴走行為を依頼してるような男がプロデューサーとは。

 

「じゃあこれでよろしく頼むよ。いい絵が撮れたらこれと同じ額を払うから」

 

「仕方ねーな」

 

「人数は最低二十人は欲しいね。あ、出来れば11日でお願い。12日の木曜日に特集組む予定なんで」

 

交渉が妥結したらしい。

ヤンキーがプロデューサーに手渡された結構な量の万札をいそいそとポケットに押し込んでいる。

録画を終了。

動画をニコニヤ動画にアップロードして、先ほどのスレにリンクを貼る。

 

「コンコーン!」

 

え?

 

さてこれからどうするかな、と思ったら。

いきなり目の前に赤い前掛けをしたキツネが現れた。

 

「な、なぜキツネ?」

 

狼狽しているとキツネがフイッと顔を後ろに向ける。

 

「このキツネめ、待ちやがれ!」

 

「いてぇよ、絶対保健所に連れてってやる!」

 

神社の入り口の方からTVクルーらしき男2人がキツネを追いかけて走りこんできた。

本殿横を伺っていた俺は当然彼らに見つかってしまうわけで。

 

「あ、お前そんなとこで何やってる!」

 

「まずいっ捕まえろ!」

 

ああそうか。

プロデューサーとヤンキーが普通に話してたのは、入り口でこいつら二人が見張っているはずだったからか。

それでこのキツネが見張りを引き離していたせいで俺が普通に神社に入ってこられたということね。

って納得している場合じゃない!

 

襲い掛かってくるTVクルーを掻い潜って逃走する。

事態に気付いたらしいプロデューサーとヤンキーも慌てて俺を追いかけてきた。

すると何故か先ほどのキツネが間に割って入って撹乱してくれた。

そのおかげで神社の境内から外に出れる。

 

チラリと後ろを振り返ってみると、ヤンキーが先ほどのお札を盛大に辺りに撒き散らしている。

そしてキツネがその金を全て掻っ攫っていくのが見えた。

 

プロデューサーとヤンキーが金を取り戻そうとキツネを追ってクルクルと踊ってる。

だがTVクルーの二人は自分たちの背後で起こっている喜劇に気付いてないようだ。

しつこくこちらを追ってくる。

 

「「待てーーーッ」」

 

よし、逃げよう。

ここからは足の早さと土地勘の有無がモノを言うだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月8日SUN 曇 17:00>

 

撒けたか?

 

<キキーッ、ガチャン!>

 

え?

 

「あーぶなーいよ」

 

追手の様子を伺うべく背後を気にしながら走っていたのがいけなかった。

気付かずに車道までに飛び出てしまっていたようだ。

通りがかった出前中のあいかちゃんの原付きバイクに危うく轢かれそうになっていた。

 

あいかちゃんが急ブレーキを掛けてくれたお陰で無事で済んだ。

危なっ。

 

あいかちゃんと原付きバイクの方も無事のようだ。

ただ急制動を掛けて無理な体勢で止まったため、原付きバイクの後ろに積んであった岡持ちが激しく揺れている。

そして確かに陶器が割れる音がしたような・・・?

 

「ご、ごめん!出前の品物、大丈夫?」

 

ふるふると首を横に振るあいかちゃん。

 

「たーだいーまどんぶり、回収中」

 

あいかちゃん、岡持ちの中を確認。

 

どうやら注文を無駄にするという最悪の事態は免れたようだ。

しかし一番上の棚に積まれてた空の丼が三つ、見事に割れてしまってる。

あちゃー。

 

「べんしょー、おねがいします」

 

仕方ない。

これは完璧に俺が悪い。

 

「如何くらい払えばいいのかな?」

 

平身低頭して財布を取り出そうとする。

しかしあいかちゃんはスッと顔を傾けて何も言わない。

 

え?

 

「じ~~~っ」

 

あいかちゃんの視線は俺の股間に注がれてる。

 

あーはいはい。

そっちの方で弁償ね。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月8日SUN 曇 17:30>

 

人気のない河川敷に移動して開陳する。

 

「ペロペロ。ぐっぽぐっぽ。んんっ」

 

<ドクッドクッ>

 

まずは一発目。

 

「あむあむ。ごっくん」

 

あいかちゃん、ちゃんと良く噛んで飲み込んでる。

自分の精子が女の子に咀嚼して食われてるって改めて見ると凄いな。

 

「その・・・。美味しい?」

 

「まずいっ。もう一杯っ」

 

青汁じゃないんだから。

 

セックス禁止中のため昨日出さなかった分だけ濃厚だったようだ。

その味が気に入ったらしい。

しっかり割れた丼分、三発搾り取られた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月8日SUN 曇 18:30>

 

あいかちゃんと別れて家に戻る。

 

ああそうだった。

あいかちゃんのフェラの印象が強烈過ぎてすっかり忘れてしまっていた。

スマホで専ブラを立ち上げて先ほどのスレを覗いてみる。

 

なんか盛大な祭りになっている模様。

特定班が動き出しているらしい。

動画に映っているプロデューサーの名前や来歴が全て割り出されて晒されている。

 

動画の方は権利者がウンたらカンたらで何故か消されてしまっているようだ。

しかしすでにコピーが拡散しておりアップロードと削除のイタチごっこになってる。

スマホでの録画のため元動画は音声が不明瞭なところがあったが、特定班には読唇術まで使いこなす猛者がいるらしい。

まとめサイトでテキストでほぼ100%補完されて公開されている。

 

もう俺の出る幕じゃないな。

さて明日のテストに向けてさらっと復習でもしよう。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月9日MON 曇/晴 8:40>

 

中間テスト一日目。

登校時に千枝と一緒になる。

 

「悠!おはよう。やっと今日からテストだね。ほんと早く終わって欲しいわ!」

 

「千枝、勉強したか?」

 

「煩悩を振り払うために死ぬ気で頑張らせて頂きました!悠、覚えていなさいよー。テストが終わったら散々に絞りとってやるんだから!」

 

「はいはい」

 

初日のテストは体育と世界史がメインだった。

どれも簡単過ぎてあくびが出る。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月10日TUE 曇 8:40>

 

中間テストニ日目。

登校時に雪子と一緒になる。

 

「おはよう。ご主人様。会いたかった」

 

「いつも一緒にいるじゃないか」

 

「だってもう五日もしてないんだもの!躰が疼いて仕方がないのよ。昨日だって絶対満足できないのわかってるのに一人で何度もっ」

 

「どうどう」

 

二日目のテストは数学と国語がメインだった。

どれも簡単過ぎて時間が余って寝る。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月11日WED 曇/晴 8:40>

 

中間テスト三日目。

登校時に花村と一緒になる。

 

「よう!鳴上」

 

「おはよう。調子はどうだ?」

 

「え、調子?快調快調!俺の腰のキレは自分史上最高だぜっ。昨晩は名付けて"先輩と二人きりのエロイチャ勉強会"で早紀を押し倒して散々」

 

「やれやれ」

 

三日目のテストは倫理と地理がメインだった。

どれも簡単過ぎて直ぐに回答を埋めて退席すると何故か花村がテストをサボってたので説教する。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月12日THU 曇 12:50>

 

中間テスト四日目。

無事全てのテストが終了した。

終業のチャイムと同時に雪子と千枝の二人に両腕を捕まれて連行される。

 

「ちょ、ちょっと待て。普通こういうときは答え合わせとかで盛り上がるんじゃ!?」

 

「いいから来る!」

 

「私達もう限界なの!」

 

そのまま家まで連行され、玄関の扉が閉じると同時に二人同時に絡みつかれる。

二人共金色に濡れた瞳をギラつかせ、怖いくらいの色気を放っていた。

その迫力に押され、シャワーも浴びる暇もなくそのまま二人を抱く。

 

ただまあ一週間ぶりのセックスに興奮したのは俺も同じだった。

二人の痴態に触発されてあいかちゃんに三回抜かれてからは厳重に封印していたマーラ様を一気に解き放つ。

俺の場合は律儀にオナ禁もしていたので二人に向けて射出する量も半端無いことになる。

 

スキンが尽きるまで二人を抱きまくった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月12日THU 曇 18:40>

 

長時間ぶっ通しのマラソンセックスを一旦終える。

一人寝室を出てシャワーを浴びて汗を落とす。

髪を拭きながらキッチンに移動。

冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出して一気に飲む。

 

「ごくごくっ。ふー」

 

汗とペルソナ液を散々放出しまくってたせいだろう。

ただの水がやたら美味い。

 

雪子と千枝の二人は俺に愛されすぎて気絶中である。

復活するまでまだしばらくかかる。

その間に夕飯の準備をしておこう。

 

冷蔵庫の中を見る。

そう言えば豚肉を大量に買い込んでたな。

そろそろ使い切らないと悪くなりそうだ。

 

野菜はキャベツしかない。

それと生姜が一欠片。

これは豚のしょうが焼きかな。

 

しょうが焼きは隠し包丁を入れるのがコツだ。

大まかな料理の段取りを決めて、料理に取り掛かる。

 

料理の最中、ふと気になってTVのリモコンのスイッチを入れてみた。

稲羽市の暴走族特集はやっているのだろうか。

例のTV局の番組にチャンネルを回す。

 

あれ?

やってないぞ。

他の局にチャンネルを変えてみる。

 

<こちらの写真のプロデューサー、あの局では非常に有名な方なんですが、これがなんと暴走族に暴走行為を依頼していたと>

 

<これが本当なら非常に由々しき話ですねー。まさしく言語道断です>

 

<この問題が発覚したのは巨大ネット掲示板に書き込みがあったからなんです。これがなんと依頼中の様子を撮影した動画も同時に投稿されていたと>

 

<あの局はまだ正式な会見とか全然していないんでしょ。それもどうなんでしょうねー>

 

<いやいやいや。この動画を見て頂ければわかります。これは言い訳できませんよ。御覧ください。こちらがその動画となります!>

 

あ、これ俺が撮った動画だ。

勝手に放送されてる。

権利とかどうなってるんだ?

 

<この動画、稲羽市の商店街にある神社で撮られたものなんですねー。そして動画をアップロードした人物は"赤いキツネ"と名乗っていたようです>

 

<ハッハッハッ、こりゃ面白い。この神社のお稲荷さんが彼に天罰を与えるために録画したのかもしれませんな。ハッハッハッ>

 

・・・まぁいいか。

これで雪子のセクハラインタビューの敵は取れたかな?

 

GWも終わり客足も大分落ち着いているようだ。

雪子は外泊が可能になっていた。

この日以降ほぼ毎日俺の部屋に泊って朝帰りするようになる。

当然千枝も一緒だ。

 

 

 

<SYSOP 2011年5月12日THU 曇 --:-->

 

悪徳プロデュサーを退治したキツネとして辰姫神社のお稲荷さん像が一躍有名になります。

全国から参拝者が訪れるようになり、賽銭が一気に増えます。

市当局の観光課がこの騒動に目を付けて観光スポット化を目論み、辰姫神社の社殿の整備に予算が付きます。

キツネは鳴上悠と絆を作る必要が無くなりました。

隠者のアルカナが消滅しました。




誘拐フラグ折るため番組ごと抹消。"@チャンネル"と"ニコニヤ動画"はシュタゲから。


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第07章 皇帝

マーガレットのバストサイズの適正値が未だにわかりません。
ウェイトレス衣装はVIPER V16のものを想像願います。(古ッ)


<VELVET ROOM 2011年5月16日MON 曇 --:-->

 

「お帰りなさいませ、主」

 

胸元を強調したウェイトレス姿のマーガレットが艶やかに礼をする。

 

「いくつものコスチュームプレイを経験し、私も女を強調する手管を学べたようですわ」

 

その言葉通り、マーガレットの媚態は男の視線を釘付けにする要所をきちんと押さえていた。

 

「主に揉み込まれた乳房。これは既にEカップをも超えてFカップに迫りつつあります」

 

みっしり詰まった乳袋を自らの手でたふたふと揺らし、中身の大きさを強調してくる。

 

「ですが垂れることはございません。主のマーラ様は女体を磨く力をお持ちです」

 

マーガレットのその言葉通り、ノーブラにも関わらず乳の形は全く崩れていない。

 

「主が本当に欲情する躰こそ女の理想。私にそのためのお力添えをお願い致します」

 

体を振ってプルンプルンと扇情的に乳を揺らしながら、妖しげな瞳で誘ってくるマーガレット。

 

「あんっ、あなた好みに変わっていく私の躰。楽しみですわ」

 

強引に押し倒されながらも、その表情は喜悦に溢れていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月16日MON 曇 0:00>

 

リビングのソファに座って裸の雪子と千枝を抱き寄せながらマヨナカテレビを待つ。

ここ最近の荒淫の影響か、雪子と千枝の体がどんどんエロくなってきている気がする。

目で鑑賞するに飽き足らず、最近富に張りを増した二人の乳をこねくり廻していると午前0時を回った。

 

一昨日から昨日の午前中まで雨が降っており、そのせいで今は外に霧が出ている。

マヨナカテレビが映る条件は揃っているはず。

 

「何も映らないじゃん」

 

「うん、そうね」

 

二人の言うとおり何も映らない。

せっかくセックスを一旦休憩して待っていたのにとんだ肩透かしである。

ふーっと溜息を付く。

 

「つまり手がかりは無しってことよね」

 

「うん、確かにそうだけど。逆に言えば被害者が出ないんだから、喜ぶべき事なんじゃないかしら」

 

<PiPiPiPiPi>

 

スマホの着信音が鳴った。

画面を見ると花村からだった。

 

「もしもし」

 

<あー鳴上。こんな時間にすまん。此の間の件どうなったかなーって。ほら誕生日が近づいてるんで、そろそろ決めないとまずくてさ>

 

「その件か。ペアの小物なんて良いじゃないかな。稲羽中央通り商店街の巽屋というお店にいろいろ置いてあるらしいぞ」

 

<おっそれ良さそう。お前明日放課後は暇?ちょっとその店に寄るの付き合ってくんね?」

 

花村、どこまで優柔不断なヤツなんだ・・・。

でも俺も今横にいる二人にプレゼントを買う機会も有るだろう。

偵察に行く分にはいいかな。

 

「わかった。行こう」

 

<わりーな。あ、そーだ。話全然変わるけど電話しついでに訊いていいか?>

 

「なんだ?」

 

<前々から言おうと思ってたんだよ。お前さ・・・最近天城と里中の二人とよくつるんでるじゃん。二人の事どう思ってんだ?ぶっちゃけどっちが好み?>

 

ビリリと殺気が走る。

それを今聞くか!

当の二人が電話の内容を聞こうとピッタリと肌を擦りつけて、しっかり聞き耳を立ててるっていうのに!

 

「ど、どっちもいける」

 

<ははっマジで言ってんのかよ?お前守備範囲広すぎだろ!あー心配しなくても勿論これ二人には内緒にしとっからさ。んじゃなー。ブチッ>

 

この地雷屋め!

 

「で、本当はどっちなのかな〜?」

 

「どっちぃ?私よねご主人様〜」

 

面白がって千枝と雪子の二人が競うように媚態を晒して誂ってくる。

 

「両方って言っただろ!」

 

「あんっ!」

 

「んんっ!」

 

右手で千枝の顔を股間に押し付け、左手で雪子の躰を抱き寄せその唇をキスで奪う。

ジュポッジュポッと熟れた動きでフェラを開始する千枝と、ジュルジュルと甘えて舌を絡ませてくる雪子。

夜はまだまだ続きそうだ。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月16日MON 曇 16:00>

 

へぇ、ここが巽屋か。

放課後早速花村に付き合って稲葉中央通り商店街に来ていた。

もちろん雪子と千枝も一緒である。

 

雪子から話しを聞いたら天城屋旅館はこの店から土産を仕入れているのだそうだ。

確かにバイト中に手ぬぐいとかハンカチとか見たこと有るな。

雪子は幼い頃から店主のおばさんとは仲が良かったらしいので、値段も勉強してくれるかもしれない。

 

「ごめん下さい」

 

雪子が入り口の引き戸を開ける。

 

「ユキちゃんいらっしゃい」

 

「ご無沙汰してます。おばさん」

 

「あらまあ一段と綺麗になって。いい人でも出来たのかしら」

 

「え、そうですか?やっぱりわかります?ポッ(赤)」

 

雪子、そこは一応礼儀として否定しとこうよ。

入口で照れている雪子を押して皆で店の中に入る。

 

中には店主らしきおばさんの他に先客がいた。

襟の広い野暮ったいジャケットにベレー帽のような帽子。

男の子、なのだろうか?

それにしてはやけに小柄で華奢である。

 

「それじゃ僕はこれで失礼します」

 

「あら、あんまりお役に立てなかったみたいでごめんなさいね」

 

「いえ、なかなか興味深い話を聞くことが出来ました。ありがとうございます」

 

もう引き上げるようだ。

 

入り口付近ですれ違う。

すれ違い瞬間にこちらを伺う視線が気にかかる。

 

そして仄かに香る体臭。

これは・・・。

 

「なんだ女か」

 

先ほどの疑問が解消されスッキリする。

 

ん?

なんで睨まれているんだ?

 

「何を言っているんですあなたは。僕は男です」

 

「いやどう見ても女の子じゃないか」

 

なぜ否定するのだろう。

 

「え、こいつ女の子なの?へぇーそうは見えないぜ。すっかり騙されちまったー」

 

花村が脳天気に関心してる。

ああ、お前の目は節穴なことは良くわかってるさ。

 

「あーよくよく見ると確かに。帽子でかさ上げしてるけど、アタシより絶対背低いよね」

 

「あ、シークレットブーツ」

 

女性陣の小声のやり取りを受けて、なのだろうか。

よくわからないが目の前の女の子がワナワナと震え出し始めた。

 

「なんなんですかあなたたちは!無礼な!」

 

無礼だって?

聞き捨てならないな。

 

「無礼?無礼は君だろう。君が男だというのなら室内では帽子を脱ぐのがマナーだ。【帽子を取りなさい】」

 

「・・・ムっ」

 

図星を刺されて悔しいのか、グワシッと掴んで帽子を脱ぐ。

 

「どうです?これで満足ですか」

 

帽子が無くなり一気に小顔が強調される。

ほらやっぱり女の子だった。

 

「満足も何も。【女の子なら女らしい格好をすべきだ】」

 

「・・・くッ」

 

心から忠告である。

すると売り言葉に書い言葉というヤツなのだろうか。

 

「わかりました!」

 

その場でいきなり上着を脱ぎ出し始める。

ええええ?

 

皆でポカーンと彼女の脱衣を見守ってしまう。

上着を脱ぎ終わった彼女。

白いワイシャツにチェックのズボンというラフな格好になった。

 

「これなら文句ないでしょう!」

 

厚手のジャケットを脱いだことでその華奢な躰のラインが顕になる。

雪子や千枝よりウエスト細い。

だがそれよりも目を引いたのが・・・。

 

「【今時サラシとかないわー】」

 

有り得ない。

白ワイシャツが透けており分かってしまったのだが。

なんと彼女は胸元をサラシでキツく締め付けていたのである。

思わず口に出して否定してしまった。

 

「・・・グ、グスッ」

 

若干涙目になってこちらを睨んだと思ったら。

なんとクルリと背を向けゴソゴソと胸元をいじり始めた。

もしかしてサラシをここで外してる?

 

<シュルッ、ポヨン>

 

「「おおう!?」」

 

「「ちょ、ちょっと待ったーっ!」」

 

出歯亀状態の花村と一緒に呆然とそのサラシ生外しを見つめていたら、千枝と雪子の二人が慌てて止めに入っていた。

 

「離せ!離して下さい!」

 

彼女は完全にムキになっているようだ。

なんでここまで必死になるんだろう。

困惑しかない。

 

そ、それにしても・・・。

ゴクリッ。

 

こいつ小柄な割にデカいぞ!?

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月16日MON 曇 16:30>

 

状況を打開してくれたのは、いつぞや学校の廊下でこの店を教えてくれたあのガタイのいい一年生だった。

 

「なんだー?人んちの店の中で喧嘩とはいい度胸じゃねぇか!」

 

のっそりと入り口から入ってきて不機嫌に一喝してくる。

 

「うおっ出た!」

 

「うひゃー」

 

「あ、完二君」

 

大した迫力だ。

今にも全員殴り飛ばしそうな勢いだった。

サラシ外し少女も目を白黒させている。

 

「ああん?って、な、何やってんだ!お、オマエ、胸を隠しやがれ!」

 

「完二や、そんなに怒鳴らなくても」

 

「うっせいぞクソババァ!」

 

おばさんが宥めてくれるが止まらない。

花村は完全にびびって俺の後ろに隠れていた。

 

「巽って・・・、そうか、ここアイツの家だったのか!」

 

「有名なのか?」

 

「ばっか野郎!知らないのか?」

 

「何が?」

 

「あいつ中学三年のときにここらへんの族を締め上げて総長になったっていう・・・、札付きの暴れん坊だぞ〜」

 

「誰が総長だ誰が!しめんぞコラァ!キュッとしめんぞ!」

 

雪子に振ってみる。

 

「知ってた?」

 

「うん、小さい頃はあんなじゃなかったんだけどね」

 

あーそうか。

確かヤンキーが総長に会うには巽屋がどうとか言ってたけどそれでか。

とりあえずこれ以上騒ぎになることは本意ではない。

 

「すみませんでした。ほら君も謝れ」

 

「・・・ううっ、僕はなんてことを。クッ、取り乱してしまい申し訳ありませんでした」

 

おばさんに対して深くお辞儀して謝る。

サラシ外し少女もサラシが緩んだ状態で俺に習った。

 

「着替えは場所を考えてすべきだ。あとサラシがキツくて大変なのはわかったから。【二度とサラシなんて巻くな】」

 

「・・・も、もう用は済みましたので失礼します」

 

いたたまれなくなったのだろう。

謝罪を終えた後、サラシ外し少女は脱いだ服を取りまとめて店を出ようとする。

 

ただし向こうはまだこちらに敵意を持ったままのようだ。

すれ違いざま一言告げてくる。

 

「この借りは必ず返しますので」

 

悔しそうに捨て台詞を残してタッタッタッと逃げるように走り去っていった。

本当にもうわけがわからん。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月16日MON 曇 16:45>

 

「痴話喧嘩なら外でやれってんだよったく。しかしお前らも大概だな。あ、あんな華奢な娘を泣かせるなんて。どっちだよ泣かした野郎は!追いかけてやれや!」

 

「お、俺じゃねーよ!」

 

花村が必死に首を振って俺を盾にしようとする。

やれやれ。

 

「【君も落ち着いてくれ】」

 

「ああん?」

 

「別に喧嘩していたわけでもないし知り合いでもない。【あの娘のことをこれ以上君が気にする必要はない】」

 

「・・・そうなのか?じゃあ別にいいけどよぉ」

 

しかし不思議な女の子だった。

買い物に来たようではなかったし、何の目的でこの店に来ていたんだろう。

俺の疑問を察したのか雪子が尋ねてくれた。

 

「おばさん、今の娘に何を聞かれたんですか?」

 

「今の学生さん?そこのスカーフのことを知りたがってたみたいなのよ」

 

スカーフ?

横の売り物だなに綺麗な模様の入った赤いスカーフが飾ってある。

 

「それね。この間亡くなられたアナウンサーの山野さんに頼まれたオーダメイドなの」

 

山野アナだって?

 

「そのことを何処からか聞きつけたみたいでね。どんなものか見に来たって言ってたわ」

 

事件絡み?

本当に何者なのだろうか彼女は。

 

「あん、その売れ残り買ってってくれんのか?あんまり縁起の良い物じゃねーけど物自体はかなりいい。安くしとくぜ」

 

「うぇぇ、さすがにそれはちょっと・・・」

 

「ああん!?俺の言うことが聞けねぇってのか!?」

 

「な、鳴上助けろ!」

 

結局プレゼントは違う柄のペアのスカーフになる。

お詫びの意味も兼ねて結構な値段の上等な奴を花村に買わせた。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月17日TUE 晴/曇 18:30>

 

学校が終わり自宅に戻って千枝と雪子をひと通り可愛がる。

そしてシャワーを浴びた後、夕食の準備に取り掛かった。

冷蔵庫の中身をチェック。

 

豚のバラ肉とじゃがいも、人参、いんげんがある。

これは肉じゃがだな。

肉じゃがは落し蓋で煮るのがコツだ。

そして味を整える味醂。

 

しかしあいにくその味醂が切れかけていた。

今からJUNESに行くのも面倒だ。

涼むのも兼ねて一人近くの四六商店に味醂を買いに行くことにする。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月17日TUE 晴/曇 18:45>

 

四六商店に行く途中にある小西酒店。

店先で客の相手をしている小西先輩の姿があった。

 

ん、あれは?

 

その客は小柄で華奢な女の子だった。

よく見ると昨日巽屋で揉めた客のようだ。

一瞬わからなかったのは昨日と服装や雰囲気がガラリと変わっていたせいである。

 

今日は就活中の女子大生のようなパンツルックのリクルートスーツである。

昨日わざわざ忠告したせいだろうか。

サラシはしていないようだ。

ボディラインを強調するデザインのおかげで、胸元の豊かさと腰の細さが特に際立っていた。

 

昨日とはうって変わって落ち着きがない。

傍から見ても心配になるくらいオドオドしている。

いかにも着慣れていない感が伝わってきた。

 

ちょうど話が終わったようで何度も小西先輩にペコペコ頭を下げて去っていった。

入れ替わりで小西先輩に話し掛ける。

 

「こんにちわ」

 

「あら鳴上君、どうしたの?」

 

「ちょっと買い物です。それより先ほどのお客さん、何の用だったんですか?」

 

「彼女、探偵さんみたい。先月の事件のことでいろいろ聞かれたわ。あと昨日のお礼かな」

 

探偵?

年は俺たちとそう変わらないように見えたが。

 

「これ名刺。東京から来たんですって」

 

拝見すると名刺には白鐘探偵事務所とあった。

探偵調査員の白鐘直斗?

裏面の英字側を見るとナオトと読むようだ。

誰かが事件のことを調べるために探偵を雇ったということか。

依頼主はいったい誰だろう。

 

「探偵か・・・。それで昨日のお礼ってなんです?」

 

「ああ。昨日ジュネスの婦人服売り場でバイトしてたらね。彼女が駆け込んできて服のコーディネートを頼んできたの」

 

「服、ですか?」

 

「凄く困ってるみたいで、動き易くて仕事がバリバリ出来る女性に見える服一式をすぐに欲しいって。おかしいでしょ。それでいろいろとね」

 

昨日のことを思い出したのかニコニコ微笑む小西先輩。

その様子を見るに面倒見の良い小西先輩は喜んで彼女に協力してあげたのだろう。

彼女が同性や年下に慕われる理由である。

 

「大変だったんじゃないですか?」

 

「うん。これ内緒よ。彼女まともにブラを付けたことなかったみたい。バストサイズ測って彼女のカップに合うブラを探すところから始めて。凄く初心で可愛かったー」

 

なんという百合展開。

 

「それでね。やっぱりスーツかなってことになって。私としてはスカート履かせたかったんだけど。どうしてもパンツがいいって言うので結構大変だったの」

 

「へー」

 

「動き易いパンツルックのものってなると、彼女の体型だとボディラインがはっきり出るのしかサイズが無くてさー。説得するのに骨が折れたわ」

 

「へー」

 

「でも彼女の場合、あの大っきなおっぱい強調した方が魅力的に見えるし、あれはあれで正解よね。ああもう、私も彼女くらい欲しかったなー」

 

小西先輩が自分の胸元をモミモミしている。

そういうのは恋人の花村にしてもらいなさい。

 

「その後パンプス買うのも手伝ってあげて、凄く感謝されちゃってさー。今日はその御礼も兼ねてって感じだったみたい」

 

「そうでしたか」

 

挨拶をしてコニシ酒屋を離れる。

 

白鐘直斗。

今思うと最初に出会ったときの格好は探偵っぽいと言えなくもなかった。

だが探偵は探偵でもマンガやアニメの中の世界の少年探偵風味である。

 

事務所の名前と苗字が一緒ということは社長の娘さんあたりなのだろう。

親が怖くて周りの同僚からは「その格好絶対おかしいですよ」というツッコミが入らなかったと見える。

ある意味彼女も不幸だったと言えよう。

 

これで彼女は一つ大人になれたんだ。

あのとき真心で忠告してほんと良かった。

そう心の中で独り言ちて四六商店で味醂を購入してマンションに戻った。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月18日WED 晴 16:00>

 

学校を終えて三人でマンションに戻る。

千枝と雪子がシャワーを浴び終えるのを待っていると呼び鈴が鳴った。

 

<こんにちわ、お荷物をお届けに上がりました>

 

この前通販で注文したエアマットが届いたようだ。

運送業者は以前にベッドを運んでくれた人だった。

サインをして受け取る。

 

ワクワクが止まらない。

運送業者が帰った後、早速開封。

喜び勇んで二人が入ってるバスルームに持って行く。

そして裸の二人に見守られながら空気を入れてみる。

 

「は、入らない(汗)」

 

「「ええーっ!?」」

 

全然浴室の洗い場に収まらなかった。

 

「悠ってそういうとこあるよね。ベッドだってギリギリだったし」

 

「ちゃんと寸法計算したの?それとも注文するときにサイズ間違えたとか」

 

「面目ない・・・」

 

千枝と雪子に責められる。

二人ともかなり楽しみにしていたようで落胆も激しい。

 

「んで、このエアマットどうすんの?」

 

「部屋の中で使う?」

 

「さすがにそれは無理だろう」

 

部屋の床がローション塗れになるのはやだ。

だが二人は諦めきれないようだ。

 

「どっかないかなー広いところ。あ、天城屋旅館の大浴場とかどう!?」

 

「うちのお風呂は二十四時間入れるのが売りだもの。それはちょっと・・・」

 

「じゃあ、学校の室内プールに夜忍び込むってのは?」

 

「「うーん」」

 

千枝がなんとかアイデアを捻り出すが却下せざるをえない。

 

やはりラブホテルとかに行かないといけないのか。

ただラブホだとお金が掛かる。

それに人目に触れる可能性が高い。

出来れば避けたい。

 

広いところ、広いところ。

あっ!?

 

「「マヨナカテレビの中!!」」

 

千枝と同時に思いついた。

 

「テレビの中?」

 

雪子が首を傾げる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月18日WED 晴 18:00>

 

空気を抜いたエアマットやローション、タオル等を袋に入れて担ぐ。

準備万端の状態で左右の千枝と雪子を抱き寄せてTVの画面に三人で顔を突っ込む。

さすがに三人だと42インチでもギリギリだ。

二人をキツく抱き寄せて枠をくぐってダイブ。

 

「ここがテレビの中・・・」

 

霧の中に降り立つ。

雪子が興味津々で辺りを見回している。

城の中に放り込まれただけだった雪子にとってはこの世界は初見になる。

 

「お城ってどっちにあるのかな」

 

千枝もキョロキョロと辺りを伺う。

俺たちの目的地は雪子が捉えられていた"雪子姫の城"である。

お城だけに中を隈なく探せば風呂もあるだろう。

 

「大丈夫だ。はぐれないように気をつけて」

 

しっかりと二人の手を握って適当な方向に一歩を踏み出す。

 

風呂、風呂、風呂。

この世界は想いの力が強ければ強いほどそれが形になって現れる。

 

この先に絶対風呂がある。

そう信じて歩を進めた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月18日WED 晴 18:05>

 

「あ、向こうに何かあるよ」

 

「何か音楽、聞こえない?」

 

千枝と雪子が同時に声を上げる。

 

霧の先に何か見えてきた。

大きい影と文字のような光。

 

あと確かに音楽が微かに聞こえる。

いかがわしいメロディ。

サックスの音色だ。

 

歩を進める度に視界も音もはっきりしてくる。

城ではない?

 

それは大きな湯屋のようであった。

いやソープランドと言った方が的確だろうか。

 

ショッキングピンクを基調とした外壁とケバケバしいネオン。

女性のボディラインのシルエットが描かれている怪しい看板。

ムーディーな曲に合わせて複数の女性の喘ぎ声の効果音が響く。

 

なんだろう。

建物の外観と相まってとても胸がドキドキワクワクする。

 

「よし行こう!」

 

「え、悠、ちょちょっと」

 

「あん、ご主人様強引すぎ〜」

 

鼻息荒く二人を中へ連れ込んだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月18日WED 晴 19:00>

 

雪子姫の城と同じように中は迷宮になっていた。

シャドウが住み着いている。

プレイ中に邪魔されるのは面倒なので一匹残さず排除していく。

 

一層毎に異なる湯が用意されているようだ。

上の層に登る都度、内装の豪華さが増していった。

どうせなら一番良い風呂でしようと最上階を目指す。

 

最上階の一番奥にある風呂に入る。

風呂の奥には一際大きなシャドウが待ち受けていた。

戦闘態勢を取ると同時に前方の湯船からお湯が溢れ、床がお湯で覆われていく。

足元にもお湯が広がってきた。

 

「なにこのお湯。こんなんで足止めのつもり?うわっ嘘っ」

 

「千枝!危ないっ。あっ」

 

<ズルリ>

 

滑った千枝を助けようとしてその手を取った雪子も、千枝に引っ張られて脚を滑らせてしまう。

 

「「きゃあー」」

 

<ベシャ>

 

一緒に転んで液体に塗れる千枝と雪子。

 

「大丈夫か!?」

 

「うわー、なにこれ!ローション!?ヌルヌルー。ひぁー」

 

「あんっ、起き上がれないっ。きゃっ。ご主人様助けてぇ」

 

どうやらお湯ではなく適温のローションだったようだ。

服を着たままの二人がローションに塗れて躰を絡め合ってる。

その悶え姿はかなり卑猥だった。

思わず録画するものを探してしまったほどである。

 

そうかっ。

着衣のままのローションプレイもいいな!

あとここの施設は素晴らしいぞ。

湯船の中がローションになっているので無尽蔵に使える。

うん、ここにしよう!

 

「ていっ!」

 

迫ってくる巨大シャドウを一刀のもとに切り倒した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月18日WED 晴 19:30>

 

先ほど倒した巨大シャドウがここのボスだったようだ。

シャドウの気配が収まる。

 

最上階の施設をチェック。

蛇口はちゃんと水とお湯とローションが選べる仕様になっていた。

なかなか便利である。

 

さらに驚くべきことに脱衣所らしきエリアにはコスチュームプレイ用の衣裳部屋まで用意されていた。

ざっと見てもほとんどの職種の衣裳が用意されており、下着や夜用のボディスーツの類いも豊富であった。

 

ソープ嬢っぽい雰囲気を出すため、千枝と雪子には衣裳部屋を使わせる。

 

今日は初日だ。

ノーマルでいこう。

扇情的な下着姿になってもらった。

千枝はライトグリーン、雪子は赤である。

 

マヨナカテレビの中に入ると二人の影側の属性が強く出てくるらしい。

金色に濡れた瞳でソープ嬢に成りきって目一杯俺を楽しませてくれた。

勿論本番有りの二輪車プレイだ。

 

ローションヌルヌルプレイはとても新鮮で俺達三人は大いにハマる。

延長に継ぐ延長で気がついたら零時をとっくに回っていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月19日THU 晴 12:40>

 

昼休みに中間テストの結果が廊下の掲示板に貼りだされた。

当然のことながら鳴上悠の名前は学年一位に記されている。

 

周りから称賛の声が上がるがある意味自分は周回プレイ中である。

チートの結果を誇るのもバカらしくなんら喜びはなかった。

 

優等生の雪子も学年で五番以内に入っていた。

意外だったのは千枝である。

そんなに勉強が得意なようには見えなかったが、平均よりもやや上の成績であった。

 

「あたしやったよー」と本人は感動の涙であり、雪子も「千枝頑張ったね」と貰い泣きしてた。

エロ断ちして勉強に追い込んだのが効いたらしい。

 

友人たちの順位も見てみる。

一条も成績が良い。

さすがいいとこのお坊ちゃまである。

その一条に熱心にサポートしてもらったおかげか、エビもなかなかの順位だった。

 

花村は・・・、何も言うまい。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月20日FRI 晴 19:00>

 

今日は堂島家の夕飯にお呼ばれしていた。

千枝と雪子をマンションに残して、バイクで一人堂島家に向かう。

 

叔父さんに成績を報告する。

 

「凄いじゃないか」

 

褒められ、お小遣いとして三万円も貰ってしまう。

 

「お兄ちゃんおめでとう」

 

菜々子ちゃんから似顔絵付きメダルを貰ったのは嬉しかった。

 

今日の堂島家の食卓はすき焼きである。

いいお肉を使っている。

俺のために用意してくれたらしく恐縮である。

 

食卓の場で千里に謝られてしまった。

 

「あまり食事に誘えなくてごめんなさいね」

 

「そんな、謝らないで下さい」

 

千里さん、俺の食生活をかなり心配してくれているようだ。

ありがたい。

その優しさが身に沁みる。

 

「外食ばかりじゃだめよ」

 

「料理は得意な方なので自炊してます」

 

最近は千枝と雪子もなんとか邪魔せずに手伝ってくれるようになっており、料理自体はとても楽になっていた。

ここまで二人を育て上げるのにどんなに苦労したか・・・。

 

そこで叔父さんと怖い声で探りを入れられる。

 

「女なんて連れ込んでないだろうな」

 

現役刑事の威圧感は半端ない。

危うく震え上がりそうになる。

 

「そんなことあるわけないじゃないですか。はははは」

 

勇気と忍耐と寛容さを総動員して誤魔化した。

 

「ねぇ喧嘩?」

 

菜々子ちゃんが止めに入ってくれた。

本当にいい娘だな、菜々子ちゃんは。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月22日SUN 曇 10:00>

 

そう言えば東京で大人気の通販番組がこちらのTV局でも今日から始まるらしい。

天城屋旅館でのバイトの休憩中にTVを付けてみる。

 

キャッチーなテーマソングが流れる。

時価ネットたなかという番組名のようだ。

 

黙って見てみる。

紹介された品物はジョギングシューズと健康食品。

全て普通だった。

なんだつまらん。

 

と思ったら最後に番組の延長戦が始まる。

特殊仕様の石鹸の紹介が。

デリケートゾーン用専用のものらしい。

なんでも肌の黒ずみを落とすのだとか。

全て天然成分で健康被害ゼロを謳っている。

 

そういえば千枝が雪子より乳首が黒いのを気にしてたな。

アソコと乳首洗うときだけこれ使えばいいんじゃないだろうか。

よし注文してみよう。

 

<ピッポッパ、ガチャ>

 

「もしもし、今TVでやってた・・・」

 

今ならお買い得でもう1セット無料らしい。

雪子にも薦めてみようか。

 

あと以前エアマットを買うのに使った裏サイトも覗いてみる。

そう言えばスキンが切れてた。

雪子と千枝が舐めやすいように味付きのものを試してみよう。

メロン味とストロベリー味のスキンを一箱ずつ注文。

 

他に買うものはないだろうか。

ホームページをスクロール。

アナル拡張器具?

 

こ、こ、こ、これだっ!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年5月26日THU 曇 17:00>

 

<ピンポーン>

 

誰か来たようだ。

 

<毎度、お荷物です>

 

月曜日に入金した裏サイトで注文したグッズのようだ。

エアマットのときよりも早い。

在庫が余っていたのだろうか。

 

またまた同じ運送業者。

送り元が明らかに怪しげな社名になっており恥ずかしい。

まあ女性の運送業者ではないだけマシか。

 

味付きスキン2箱とアナルプラグセット2つ。

後者はアナル拡張用の器具である。

取っ手のリングが倒せる目立たないタイプ。

きちんと洗浄セットも付いてる安心な一品

 

早速千枝と雪子に装着してもらう。

 

「う、う、う、きつーい」

 

「これっ、腰に力入らないっ」

 

アナル拡張は個人差にもよるが一ヶ月から二ヶ月の期間が必要らしい。

今からその刻が待ち遠しくてならない。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月1日WED 曇 13:00>

 

一週間が経過して千枝も雪子もある程度プラグに慣れ始めたようだ。

ただやはり違和感は相当あるようで二人の挙動不審な日々が続いていた。

 

その間普段の千枝と雪子の姿を見るだけでも十分に湧き立つものがあった。

何食わぬ顔で授業を受けて休み時間にクラスメイトたちと談笑する二人。

そのケツ穴には俺のマーラ様を受け入れるためのアナルプラグが刺さっているのだ。

興奮するなという方が無理だろう。

 

ここ数日テレビの中にある通称"匂い立つ泡浴場"でアナルプラグを愛でながらコスプレした二人をバックで突くのがマイブームとなっている。

アナルプラグをしていると踏ん張ってお尻の穴を締めたくとも締まった感が得られないらしい。

そのため快感を堪えることが難しくなり、千枝と雪子のイク回数は激増していた。

 

日々のイキ疲れとアナルの力み疲れにより、二人の躰から陰気な色気がにじみ出ている。

二人が真の美女に成長するための良い糧となっているようだ。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月6日MON 晴 16:00>

 

何事もなく平穏な日々を過ごす。

学校帰りに食材の買い出しのため千枝と雪子を連れてJUNESに寄る。

特売までまだ時間があるようだ。

屋上のフードコートで三人でお茶をしてみた。

 

隣の席で八十神高校の男子学生が二人で駄弁っている。

 

「つーかさ、例のテレビ、最近どんどんエロくなってね?」

 

「次は何のコスだろうな。すげー気になるよな」

 

ん?

何の話だ?

 

「オレ前から、あの黒髪ロングの女の子、ぜってーアイツって思ってたんだよ。名前なんだっけ、ニ年で旅館の女将やってるっていう・・・」

 

「天城雪子だろ。俺もそう思ってた。もしかして本人じゃね?清楚な顔して実は現役女子高生AV女優とか。浪漫だよなぁ。凄い数の男子を振ってるらしいけどさ。俺も天城越えしてみてぇよ」

 

「あの男優のデカいの毎日咥えてたら、普通の男のなんて物足りなさ過ぎて見向きもしてねーんだろ。それよりもオレ、ショートヘアの娘の方が好みだわ。昨日のミニスカポリス、オレ三回も抜いちまったよ」

 

「あの娘も八十神高校の学生だぜ。この前学校で天城雪子と一緒に歩いてるの見たし」

 

「マジで!?」

 

嫌な予感がヒシヒシとする。

同じテーブルに座っている千枝と雪子も同じようだ。

二人とも顔を赤らめ縮こまってる。

 

確か昨日の二人はミニスカポリスのコスチュームだった。

元気印のショートヘアの婦警と、お淑やかなロングヘアおさげの婦警のコンビに俺が快楽攻めで尋問されるという設定。

題して"君の精子を逮捕しちゃうぞ"プレイである。

前の世界に似たような設定の漫画があったよなーと盛り上がってしまった。

 

"匂い立つ泡浴場"を発見してからというもの、天城屋旅館にバイトで泊まり込む土曜日以外はほぼ毎日浴場を利用してしまっている。

衣裳部屋のコスチュームをとっかえひっかえ二人に着せ、コスチュームプレイを真夜中まで堪能してしまうことが多い。

ちなみにどの衣裳も美人な二人には似合っていたが、あえて自分の好みで言うと千枝は昨日着せたミニスカポリス、雪子は特撮風味なチアガールが特にグッと来た。

 

えーと、つまり・・・。

これまでの二人の泡奉仕が毎晩マヨナカテレビで放送されていた、ということなのだろうか。

そういえば最近、顔を赤らめたクラスの連中が俺たちの様子を遠巻きに伺っているのがやたら多かったのだが。

これが原因か!

 

「でもあのテレビなんなんだろうな。混信してんのかな。肝心なところは絵も音もノイズ入ってるし。残念過ぎだぜ」

 

「録画しても何故か砂嵐だしな。BDとかDVDの発売まだかな。製品版は靄とか光とか消えてんだろ」

 

「俺、今日は親のハンディカムでテレビごと撮影してみるわ。上手く撮れたらコピーしてやんよ」

 

「マジで!?って、あ・・・お、おい隣の席にいるのって」

 

マズイ。

気付かれたらしい。

 

「い、いくぞ」

 

「う、うん」

 

「・・・(赤)」

 

ガタガタッと席を立って逃げるようにフードコートを後にする。

 

「提案があります」

 

千枝が話を切り出した。

 

「今日から夜にテレビの中でエッチするの禁止!」

 

「そうだね千枝。そうするしかないね」

 

「とても残念だが、賛同せざえるをえないな」

 

雪子と俺が賛成票を投じ、千枝の提案は承認された。

 

くそっ。

こんな罠があったとは。

マヨナカテレビ許すまじ!

 

 

 

<SYSOP 2011年6月6日MON 晴 16:00>

 

マヨナカテレビに映らなかったために巽完二がペルソナに目覚める機会が失われました。

巽完二は鳴上悠に趣味を認められたことをきっかけに八十神高校手芸部に入部し、内に溜め込んでいたコンプレックスを全て解消します。

巽完二は白鐘直斗を最初から女の子と認識したため、白鐘直斗にトキメキませんでした。

巽完二は高校卒業後に沖奈市にある服飾関連の専門学校に進んで同好の士と交流を深め、超一流のデザイナーに成長して世界に巽屋ブランドの名を轟かせます。

皇帝のアルカナが消滅しました。




完二の出番はこれでほぼ終了。あとは学園祭のコンテストくらい。
直斗魔改造開始。目指せいい女!


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第08章 刑死者

飯盒炊飯はゲーム準拠で夜に。そしてムドオンカレーは現れず。


<VELVET ROOM 2011年6月13日MAN 曇 --:-->

 

「お帰りなさいまし、我が主」

 

紐同然の露出の激しい水着姿なマーガレットが寛いでいたウォーターベッドから体を起こす。

 

「今日もお風呂を頂いております」

 

甲斐甲斐しく服を脱がされながら、ウォータベッドへ誘導される。

 

「それとも私のバスタイムを狙って来て下さったのかしら?」

 

バスタブのお湯の中で暖められていたピンクのボトルを取り出すマーガレット。

 

「また一つ新たなアダルトグッズ、ローションを得ております」

 

適温のローションでマーガレットが自ら躰をヌルヌルにしていく卑猥な光景に、マーラ様が激しく自己主張する。

 

「この類い稀なマーラ様。どこまで進化を遂げるのかしら」

 

恍惚の表情を浮かべたマーガレットがヌルヌルとなった繊手で愛おしげにマーラ様をしごき始める。

 

「あなたのマーラ様、もっと虐めたくなってしまったみたい」

 

マーラ様のあまりの逞しさにマーガレットのローションプレイはすぐに全身愛撫に移行していった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月13日MAN 曇 12:50>

 

昼休みの屋上で千枝と雪子の二人と一緒に昼食会。

 

始める前に手洗いに寄って石鹸を使ってよく手を洗った。

ヌルヌルの感触にふと何かを思い出しかけるが二人に呼ばれ思考を中断。

甘い記憶の残り香を振り切って屋上に上がる。

 

お弁当は昨日三人で作って一晩寝かせておいたビーフカレーとポテトサラダである。

 

「あーん。モグモグ。くぅー。こういう暑いときこそ辛いのが美味しい!やっぱり悠の言うとおり煮詰めたの正解だったよー」

 

「なんか蒸し蒸しするよね。あ、ポテトサラダも美味しい。熱いうちに潰すとこんなに味が違うんだ」

 

昨日はコーチング役に徹していたのだが二人の反応を見る限り美味しく出来ているらしい。

日々の努力の甲斐があって二人の料理の技量も大分改善されてきたようだ。

 

自分たちの作った料理を堪能している二人の様子をしみじみと眺める。

 

「やっぱり、いいな」

 

自然と感想が口から漏れた。

 

「え、何が?」

 

「どうしたの?」

 

「夏服って新鮮だなって」

 

今日から夏服である。

肌の露出が増え、開放感があった。

 

特に八十神高校の女子の夏服のセーラー服は他校に比べてもスカート丈が短い。

千枝と雪子の伸びやかな脚部が強調されてセクシーだった。

また冬服と違って千枝はスパッツ、雪子は黒タイツを履いていない。

性的に無防備になった印象を強く受け、煩悩が刺激される。

 

「やらしい目つきー。エッチィぞ」

 

「もう!朝、家で散々見てたじゃない」

 

俺の熱い視線に晒されつつ、文句を言いながらも満更でもない顔で食事を続ける二人。

見せつけるように脚を組んだり、胸元を強調してアーンをしてきたりと俺を楽しませてくれる。

 

食事が終わったタイミングで、二人のお望み通り本格的に愛撫を開始する。

脚に手を這わせてスカートの中に侵入。

二人とも顔を赤らめてモゾモゾと躰をくねらし、股をはしたなく緩めた。

 

「あんっ。ねぇ話は変わるけど、んんっ。梅雨になったら毎晩マヨナカテレビ見ないといけないのかしら。あっもうっ許して」

 

雪子が必死に俺の気を逸そうとする。

 

「確かに雨が続いちゃうと厄介だね。コラっそこダメだってば。ひゃん!」

 

構わずに二人の股間をネチネチと触り続けてやる。

 

「安心しろ。今年は空梅雨になりそうって話だぞ。今週末の林間学校も問題なさそうだ」

 

毎年この時期八十神高校は一年から三年までの合同で林間学校を開催しているらしい。

密かに楽しみにしていた。

 

「えー、それはちょっと。きゃうっ!クリちゃんばっかイジメないでよー」

 

「んーチュッ。私はご主人様のお家にお泊まりする方がいいなー。チュッ」

 

二人は林間学校に乗り気じゃないみたいだ。

何故だろう。

 

イチャイチャしながら二人から詳しい情報を引き出す。

林間学校とは名ばかりで実際は森林公園のゴミ拾いなんだそうだ。

夜も男女別のテントの押し込められるらしい。

 

確かに楽しい行事では無さそうだ。

残念!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月15日WED 曇 21:00>

 

「いっけー、一条君!」

 

「がんばれ!」

 

中国で行われているバスケ日本代表の東アジア選手権。

決勝戦を自宅の居間のTVで皆で応援。

現役高校生初のフル代表選出となった一条がTVの中で躍動していた。

千枝と雪子の応援にも力が入る。

 

<ピーッ>

 

「よしっ!」

 

一条の異次元の大活躍で日本が韓国に完勝。

TVで観戦してた俺たちは思わずガッツポーズ。

 

大会開始直前での突然の無名高校生の大抜擢。

マスコミたちはヘッドコーチ御乱心と騒ぎ立てていたのだが・・・。

これで盛大な手のひら返しが始まるだろう。

 

ネットでは一条のことを"バスケ王子"、もしくは最近流行ってる漫画"黒猫のバスケ"にもじって"リアル黒猫"と呼び始めてるとかなんとか。

この戦いで彼は日本代表の不動のポイントガードの地位を確保できたんじゃないだろうか。

友人として戦友として嬉しい限りである。

 

この喜びは千枝と雪子と深く熱く分かち合いたい。

今日の夜もハッスルしてしまいそうだ。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月16日THU 晴 16:00>

 

明日明後日の林間学校、花村と千枝、雪子の三人と同じ班になる。

飯盒炊飯の材料の買い出しのため、学校帰りにJUNESに寄る。

 

「ラーメンとカレーのどっちがいいか迷ってるの。悠はどっちがいい?」

 

千枝が夕飯のメニューを聞いてきた。

 

「ラーメンだと悪目立ちしそうだな。カレーの方がいい。この前はビーフカレーだったし今度はシーフードにしよう」

 

「じゃあカレーにしよっか。いいよね雪子も」

 

「うん。えーっとじゃあニンジンにジャガイモ」

 

こういうとき花村がうるさく自己主張してくるのが相場だが、何故か今日は大人しい。

 

「どうした?花村」

 

「んあ?ああ、ちょっと明日の作戦を」

 

「作戦?」

 

「早紀から林間学校の内容聞いたんだけどさ。やっぱ夜盛り上がらないと嘘じゃん。なんとかモロキンを出し抜く方法ねーかなって」

 

何やら良からぬことを企んでいるらしい。

大方小西先輩とイチャつくための方法を考えてるんだろう。

 

「よしっ。鳴上。俺ちょっと用事思い出した。買い出しの件は全部任せるわ。じゃあな!」

 

「お、おい!」

 

止める間もなくダッシュで去って行く花村。

 

「あれ?花村君は?」

 

「サボるって」

 

「はぁ~!?なにそれーっ」

 

怒る千枝をなだめる。

どうせ花村がいても買い物の邪魔になるだけだし。

 

「さぁ早く買い物を済ませてしまおう。実は俺もこの後ちょっと二人を連れて行きたい場所があるんだ」

 

花村ではないけれど確かにゴミ拾いをして一晩キャンプするだけではつまらない。

俺なりに情報収集をして企画していることがあった。

 

怪訝そうな表情を浮かべる千枝と雪子の背を押し、手早く必要な食材をカートに放り込んでいった。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月16日THU 晴 17:00>

 

「さあ、こっちだ」

 

買い出しを終えて別のフロアに移る。

二人を連れてきたのは婦人服売り場の新作水着展である。

 

「あら、いらっしゃい。鳴上君。千枝ちゃんも雪子ちゃんも。良く来てくれたわ」

 

売り子をしている小西先輩が声を掛けてきた。

 

「頼んでいた水着、お願いできますか」

 

「うん。どっちも二人にピッタリだと思う。鳴上君ってセンス良いわよね。陽ちゃんにも見習わせたいわ。ちょっと待っててね」

 

小西先輩が水着を取りに奥に引っ込む。

 

「えっと、どういうこと?」

 

「なんで水着?」

 

困惑している千枝と雪子に説明する。

 

「林間学校のキャンプ場の近くに泳げる場所があるって聞いたんだ。キャンプが終わったら一緒に泳ごう」

 

「確かに去年解散した後に河原で泳いでた人たちがいたみたいだけど・・・それで水着かぁ」

 

「ああ。この前この店にちょっと立ち寄ったら、二人に着せたい水着を見つけたんだ。良い機会だからプレゼントしようと思ってさ」

 

「ありがとう悠君。嬉しい」

 

二人とも俺の企画に異存はないようだ。

 

小西先輩が取り置きしてくれていた水着を二着持ってくる。

千枝用はグリーンとイエローを基調にしたハイレグビキニ。

雪子用は白地に赤い紐のハイレグビキニ。

どちらもパレオなんていう惰弱なものは付いておらず、脚の長さをトコトン強調する本気仕様である。

 

毎日のようにコスプレエッチに励む千枝と雪子の二人に、躰の手入れを怠るような死角など無い。

若干羞恥を残しながらも堂々と試着姿を見せてくれる。

アナルプラグは装着したままのため、お尻を気にする仕草がエロい。

 

水着自体のチョイスは我ながら二人によく似合っていた。

日々揉んでいるだけあってバストのカップの指定もドンピシャで小西先輩にからかわれる。

花村と違い、小西先輩には二人との関係がお見通しだったようだ。

「その水着で二人同時に鳴上君を悩殺しちゃえ!」と小西先輩に発破をかけられ、千枝と雪子は大いに赤面する。

 

「ありがとうございました」

 

二人の水着を購入し、小西先輩に礼を言って婦人服売り場を離れる。

千枝、雪子共に俺のチョイスを気に入ってくれたようで何よりである。

 

「じゃあ次は悠の水着ね」

 

「うん、そうだね」

 

「なんでそうなる?まあいいか。じゃあよろしく頼む」

 

お返しにということで、千枝と雪子の二人が俺の海パンを選んでくれることになった。

メンズウェアのフロアに移動し、きゃいきゃいと色々な柄の海パンを俺の腰に当ててくる二人。

 

男性客ばかりの中、輝くばかりの美少女二人が熱心に男物の水着を漁ってる姿は非常に目立つ。

周りから向けられる嫉妬の視線が痛い。

 

「これがいいよっ。ねぇ雪子っ」

 

「うん、これ以外考えられない!」

 

「・・・ハイカラだな」

 

結局売り場で一番派手な柄のものを購入することになる。

 

最後に虫除けスプレーと日焼け止めを購入。

明日の林間学校の買い出しはこれですべて完了した。

 

花村が何を企んでいるかわからないが是非無事に林間学校が終わって欲しいものだ。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月17日FRI 晴 15:00>

 

ジャージに着替え、キャンプ場周辺の広大な森林公園のゴミ拾いに従事する。

公園内には小規模ながら登山ルートもあってなかなかに骨が折れる作業である。

 

千枝と雪子の二人と一緒にゴミを拾いつつ、時間を無駄にしないよう一連の事件について改めて意見を交わすことにする。

 

「山野アナに関係する若くて綺麗な女性。それ以外に何か共通点はないだろうか」

 

「私、気付いたことがあるの。私も含めてTVの中に入れられた三人全員、直前に報道番組に出ているって」

 

「ああ確かに!山野アナは不倫。小西先輩は第一発見者。雪子は女子高生若女将。みんなニュースになってる。あるよ雪子それっ」

 

千枝が興奮して拾った空きカンを握り潰す。

考えてみれば犯人は小西先輩で失敗したのに狙いを雪子に移した。

テレビ放送という犯人なりのルールがあるならその事も一応頷けなくもない。

 

「つまり犯人の狙いは"TVで取り上げられた女の人"ということか」

 

「だけどそうなると動機は何なの?TVに出た人を狙う理由って」

 

「その~。TVの中に人が入ると中の様子がマヨナカテレビに映っちゃうんだよね。この前の、ソープランドごっこのときみたく・・・(赤)。それが見たい、とか」

 

雪子が恥ずかしそうに推論を口にする。

 

「愉快犯ってこと?だとしたら許せない!アタシたちのあの、その、は、は、恥ずかしい格好もあのときの声や仕草も全部見られてたなんて!」

 

千枝は憤慨しているが俺としては動機など関係無かった。

この世界がゲームの中である以上、全ての事件が俺への挑戦でしかない。

犯人さえ捕らえることができればそれでいい。

 

「とにかく、稲羽市に滞在中の若い女性がTVに出たら要チェックだ。出来る限り先回りして犯人を抑えよう」

 

あ、向こうからモロキンがやってくる。

二人に合図してモロキンに捕捉される前にそれぞれ別の場所に移動。

モロキンをやり過ごす。

 

「おい、鳴上」

 

「ん?」

 

この声は花村?

 

「こっちだ鳴上、手伝ってくれ」

 

獣道らしき場所に花村がいた。

足元に置いてあるのはクーラーボックスか?

 

「それ、なんだ?」

 

「目薬入りの酒が入ってる。早紀に聞いたらさ。先生たち毎年林間学校で酒盛りやるらしくてな。その酒の仕入れ先がコニシ酒店なんだってよ。早紀から収めた酒のリスト貰ってJUNESで同じの揃えた。気付かれないようにすり替えようってわけ」

 

「ちょっおまっそれ犯罪じゃ」

 

「ほんの微量だから酔いが早く回る程度で問題ないって。だいたい生徒はテントから出たら停学で、自分たちは酒盛りOKなんて普通ありえねーだろ。これで先生方がグッスリ寝てる間にグフフ。というわけで手伝ってくれ。行くぞ!相棒!」

 

「お、おい!」

 

言うだけあって花村は良く研究していた。

獣道は先生たちの宿舎のコテージの裏手に出るらしい。

誰にも見つからず目的地にたどり着く。

 

「よし、相棒。あの先生の注意を引いてくれ。その隙に俺が酒をすり替えるから」

 

「この貸しは大きいぞ、花村!」

 

これまで集めたゴミを持ったままグルリと回って宿舎に近づく。

見張りの先生に「熊っぽい動物を見かけました」と注意を引く。

「見間違いかもしれませんが、心配なので一緒に来てください」と宿舎から引き離しにかかる。

 

先生の肩越しに花村がコテージに無事侵入できたのを確認。

出来るだけ時間を稼ぐ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月17日FRI 晴 17:00>

 

飯盒炊飯の時間である。

カレールーは基本的に千枝と雪子の二人に任せる。

これまでの学習の成果を見る良い機会であった。

 

「ばれてないだろうな」

 

「オッケーオッケー。心配性だなー鳴上は。泥船に乗ったつもりで安心してくれ」

 

それが安心できないって言うんだ!

飯盒で白飯を炊きながら花村の無謀っぷりにいろいろと文句を垂れるが、花村の態度はまさに馬の耳に念仏、馬耳東風であった。

 

「お、炊けたみたいだぜ」

 

「こっちもできたよー」

 

ふー、とりあえず飯にしよう。

千枝と雪子の二人はきちんと俺の教えを守り、遊びのないカレールーを作ったようだ。

 

野菜は皮や芽をきちんと落としてから、玉ねぎは薄切り、人参ジャガイモはざく切りで鍋に投入してバターで炒める。

別のフライパンで具材の冷凍シーフードミックスをしっかり炒め、白ワインと塩コショウで味付けをしてから鍋に投入。

適量の水を鍋に加えて、灰汁を細目に取りながら煮込み、隠し味等は一切無しで最後に固形ルーを容量を守って投入。

今二人が調理可能な最低限のレシピであり、逆に間違えようがないだろう。

 

「おーきたきたー」

 

「お待たせー。隠し味に愛情たっぷり入れてるんで」

 

「おーおー愛情入りね!それとっても大事。いやー、ベッタベタな台詞だけど実際に言われるとすげーいいな!グッとくるぜ!あ、でも俺ってさ。早紀に一途なんで期待されても困」

 

「あ、花村君のには入ってないから」

 

雪子の話も聞かずに一人盛り上がってる花村は放っておいてさっそく頂こう。

 

「じゃあ二人とも、いただきます」

 

「「どうぞ召し上がれ!」」

 

スプーンで一口頂く。

うん、美味しい。

 

「合格、かな」

 

「「ほんと!?」」

 

やったーとハイタッチする千枝と雪子。

 

「お、何これ、めっちゃ美味いじゃん!!」

 

花村も絶賛のようだ。

 

「ガツガツ。天城は旅館の若女将だから心配してなかったけど。ガツガツ。里中も結構やるもんだなー。ガツガツ。おかわりー!」

 

「えへへ、そうかなー。まだまだあるからねー」

 

あっという間に平らげ、上機嫌の千枝が二杯目をよそってあげていた。

 

「ほら、雪子も千枝も食べなよ」

 

「うん。いただきます。千枝も一緒に食べよ」

 

女子陣の頑張りで飯盒炊飯は大成功のうちに幕を閉じた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月17日FRI 晴 18:00>

 

「ううっ食い過ぎた・・・」

 

「大丈夫か花村」

 

飯盒炊飯、大成功過ぎたようだ。

カレーを大量に食い過ぎてグロッキー状態の花村。

隣のクラスの大食漢の女子に対抗したらしい。

本当にバカである。

仕方なく女性陣に調理場の後片付けを任せ、花村を連れて救護のテントに向かう。

 

テントには保険委員の男子がポツンと座っていた。

一年生のようだ。

 

「ごめん、胃腸薬くれないか」

 

その男子に声を掛ける。

花村も苦しげな声で薬を求める。

 

「うう、ちょっと食い過ぎたみたいで。胃の調子がおかしくてさ、あ!」

 

「くっ」

 

困惑する花村と苦虫を噛み潰した顔をする保健委員一年。

なんだ?

 

保健委員が薬箱からシャベキンローワSのビンを取り出し、無言で差し出してくる。

花村が何故か躊躇して取ろうとしないので、代わりに俺がビンを手に取った。

しかし、その保険委員はビンを離してくれない。

保健委員に睨まれる。

 

「何か嫌がらせされるようなことしたかな?」

 

ストレートに聞いてみた。

 

「俺、小西早紀の弟の小西尚紀っていいます。俺、花村が嫌いです。花村とツルンでる周りの奴らも」

 

・・・そういうことか。

 

花村と小西先輩のバカップル振りは八十神高校でも相当有名になっている。

姉のことで周りから冷やかし半分に吊るし上げられ、彼も相当居づらい思いをしているに違いない。

また弟としては面倒見の良かった姉を花村に取られたように感じられて面白くないのだろう。

で、その恨みは花村と友人関係にある俺にまで向けられてしまっている、と。

 

「君の気持ちはわかる」

 

「・・・」

 

「だが俺は花村とは関係ないし、むしろ君と同じ被害者だ。君に嫌われる理由はないと思う」

 

「え?」

 

「ちょ、ちょっと、おいおいおーーーい」

 

煩いぞ花村。

本当のことだろ。

 

「君とはいい友人になれそうだ。【一緒に生暖かい目で花村とお姉さんを見守っていこう】」

 

「・・・は、はい!」

 

花村は放っておいて尚紀君と二人でしっかり握手する。

素直ないい子じゃないか。

 

「ごめん小西君、一人にしちゃって。もう上がっていいみだいだよ。あ、」

 

他の保健委員数名がテントの裏から入ってきた。

ショート女子とメガネ男子、そしてポニーテル女子の合計三人である。

花村がいることに気付いて固まっている。

 

「・・・」

 

プイッとそっぽを向く尚紀君。

微妙な空気。

 

これは・・・。

尚紀君は保健委員内でも孤立している?

なんてことだ。

 

「君たち、悪いのは全てこの花村だ。だから、【だから尚紀くんと仲良くやってくれ】」

 

「な、何言ってるんですか先輩!」

 

「な、何を言い出すんだよ鳴上!」

 

慌てる尚紀君と花村に反して保険委員の三人の方は理性的に対応してくれた。

 

「・・・別に小西君に含む所はないし。私はもっと仲良くなりたいと思ってました」

 

「・・・俺も。ただ周りが彼を冷やかすから同調したって言うか。反省してます」

 

「・・・わ、わ、わたしは尚紀君のことが前から気になってて。緊張してただけなんです!」

 

訂正する。

一人だけ全然理性的ではなかったようだ。

 

最後に発言したポニーテール女子が顔を赤らめて尚紀君のことを上目遣いに見つめている。

突然の告白を受けて尚紀君の方も真っ赤になってしまっており・・・。

 

ははーん。

これは全然脈ありだろう。

どうやらもう俺たちは完全にお邪魔虫のようだ。

 

「いくぞ、花村」

 

「・・・もう好きにしてくれー」

 

イジケてる花村を連れて救護のテントから離れる。

後は若い者で盛り上がってくれ。

 

「先輩!ありがとうございました!」

 

後ろから尚紀君の明るい声が聞えてきた。

振り返らずに手を振って応えてやる。

 

頑張れ、尚紀君!

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月17日FRI 晴 20:00>

 

「ふー、やっと胃も落ち着いてきたぜ。よし見回りのモロキンは来ねーな。たぶん寝てんだろ」

 

ごそごそと花村が外に出る準備をしだした。

 

「鳴上、悪りぃな。明日の朝には戻ってくるから、そんときに証拠隠滅手伝ってくれ」

 

「どこに行くんだ?」

 

「野暮なこと聞くんじゃねーよ。ってまあお前ならいいか。キャンプ場の奥の方のコテージ、JUNESの名前使って一つ予約してんだ」

 

なんという行動力。

 

「早紀と一緒のテントの三年生たちも恋人持ちらしくてさ、話は通してある。コテージも三部屋の奴借りてるしよ。万事抜かり無しってやつ」

 

やれやれ。

その段取りの上手さを勉学にも向ければいいのに。

 

「じゃ、このテント、朝までお前一人で使っていいから。よろしく相棒!」

 

花村がテントから出撃していった。

 

テントの中、俺一人になる。

もともと三人用のテントである。

だが、あとの一人は急病と称して林間学校自体をサボってた。

 

まあ静かになることはいいことである。

今日は久しぶりに星でも眺めてゆっくり寝ようか。

 

ん?

テントの外に人の気配が二つ。

 

「ねぇ・・・起きてる?」

 

「お願い。テントに入れて」

 

雪子と千枝の声だ。

こんな時間に何の用だろう。

テントの入り口を開けて二人を中に入れる。

 

「あれ、花村君は?」

 

「小西先輩と逢引しに行った」

 

「いないの?ラッキー」

 

あからさまに喜ぶ千枝と、ホッとため息をつく雪子。

 

「で、どうしたんだ?」

 

「あのね。大谷花子さんっているでしょ。隣のクラスの」

 

「ほらっ夕食のとき隣でバケツサイズのカレー食べてた人」

 

ああ、あの化物か。

大谷さんって名前の人間だったんだ。

 

「とにかくその大谷さんがね。私たちと同じテントになんだけど、すごくイビキがうるさくて」

 

「爆音レベルでもう全然眠れないの!あれはイビキ魔神だわ。ね、雪子」

 

「う、うん。お願い。鼻と口塞いだらイビキ止まるかなって思ったんだけど。千枝に止められちゃって」

 

「あたりまえでしょっ」

 

「他の人が起きだす前に出ていくから一晩泊めてください。後生ですから!ご主人様!」

 

三指付いて頼んでくる雪子。

そういうことなら仕方ないか。

俺も千枝と雪子の二人なら大歓迎だ。

 

花村が先生方に眠り薬を仕込んだため、見回りに関しては心配いらないことを二人に告げる。

あとは・・・。

 

「このテント、花村が適当に場所選んで建てちゃったせいで、そこ下が岩になってるんだ。このテント実質二人しか寝れない。狭くなるけどいいか?」

 

「えーと、いつものベッドより狭そうだけど、アタシはその方が逆に嬉しいかな。エヘヘ」

 

「うん。私も。一緒の寝袋に入って寝るのもいいなー。憧れちゃう」

 

二人にはご褒美だったらしい。

 

三人で夜のテントに川の字で寝転ぶ。

当然真ん中は俺。

千枝と雪子が左右からピタリと寄り添ってくる。

 

なんだろう。

とてもロマンチックな夜だ。

それぞれに甘いキスを送り、トロ火でゆっくり煮立たせるようにゆるゆると愛撫を交わす。

 

他のテントで寝ているクラスメイトに気付かれてはならない。

テントの外の様子に耳をそばだたせながら星明りだけを頼りにキスをして互いを感じあう。

 

キャンプのテントの中という普段と異なるシチュエーション。

神経が研ぎ澄まされた状態でのセックスとなる。

一発ずつしか撃ち込まなかったが充実感は半端なかった。

 

情事を終えた後、俺たち三人は何も言わずに微笑みあって眠りについた。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月18日SAT 曇/晴 4:30>

 

まだ薄暗い中で千枝と雪子を起こし、日の出直前にテントから送り出す。

花村が戻ってくる前にテントの中の昨日の情事の証拠をすべて抹消する。

 

だが肝心の花村が戻ってこなかった。

仕方なく一人で先生方のコテージに潜入。

昨日の眠り薬入りの酒瓶をすべて回収し、普通の酒瓶とすり替えていく。

 

モロキンをはじめとする先生方は全てだらしなく寝たままである。

これなら楽々と隠蔽工作出来るな。

そう思ったんだけど・・・。

 

「おはよーございまーす」

 

「・・・やぁおはよう。あいかちゃん」

 

耳元で囁かれるまで気配を一切感じることが出来なかった。

何者なのだろう、この娘は。

 

あいかちゃん、昨晩先生方が頼んだ出前の食器の回収に現れたらしい。

 

ふぅ。

これはまた口止め料が必要だな。

 

「一番搾り、頂きます」

 

ですよねー。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月18日SAT 曇/晴 9:00>

 

あいかちゃんと交渉し、口止め料は今日の分も含めて十回で妥結する。

相変わらずのポーカーフェイスで難敵な交渉相手だった。

 

乗りかかった船ということであいかちゃんにも手伝ってもらい、無事証拠隠滅を果たすことに成功する。

あとは花村が朝の点呼まで戻ってくれば全てオッケーなのだが・・・。

 

起床時間になっても花村と小西先輩が戻って来なかった。

かなりヤキモキさせられる。

だが特に大きな問題にはならなくて済んだ。

 

どうやら目薬が効きすぎたらしい。

先生たちの方が大幅に寝過ごしてしまったのである。

威厳もへったくれもない。

大幅に遅れた朝礼で生徒から大きなブーイングが巻き起こった。

 

だいぶ後になってから知るのだが、話によるとこの年以降先生たちの酒盛りは厳禁となったようだ。

そして、これから八十稲羽市で起こるもう一つの事件も契機となって、この年を境に林間学校というイベント自体が廃れていくことになる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月18日SAT 曇/晴 13:00>

 

林間学校二日目が無事終了する。

午前中は雲が出ていたが午後になって晴れた。

一気に気温が上がり、蒸し暑くなる。

 

「俺、この後また早紀と約束あるんだ。というわけで、お先ー!」

 

花村が一人班から離れる。

やれやれ。

考えることは一緒か。

 

「じゃあ俺たちも行こうか」

 

「あれ悠、泳ぎにいくんじゃないの?河原はこっちだよ」

 

「確かこの先の滝になってるところ、だよね」

 

花村が向かった先とは反対方向に歩き出そうとすると、千枝と雪子が不思議そうな顔で尋ねてきた。

 

「向こうはキャンプ場の脇の川の下流だろ。去年飲み過ぎたモロキンが川に吐いたせいで、ひどいことになったらしいぞ」

 

「「うぇええ」」

 

多分花村はそれを知らないんだろうな。

哀れ花村。

小西先輩だけでも無事だといいが。

 

「川の上流にもう一つ滝壺があるらしい。少し歩くけど上流の滝の方が眺めもいいらしいから、そっちにしないか」

 

「「うん!」」

 

景色を楽しみながら三人でプチハイキングする。

 

しかし今日は暑いな。

三十度近くはあるんじゃないだろうか。

湿気もきつくて蒸し蒸しする。

こんな日に滝壺に入ったら気持ちいいだろうな。

 

同じ考えの生徒も多かったようだ。

滝壺に着いてみると複数のグループが水遊びを楽しんでた。

ちらほら水着姿の女の子も混じってる。

その中で一際スタイルのいい美人の子が声を掛けてきた。

 

「あら、鳴上君じゃない」

 

エビだった。

こんなところで一人で何を?と思ったら、一条が滝壺からちょうど上がってきた。

 

「お、鳴上。里中さんたちも泳ぐのか?冷たくてきっもちいーぞー」

 

どうやらデート中だったようである。

 

「もう康ってば。女の子は涼むだけよ。ここだと濡れた髪の手入れとか出来ないでしょ」

 

「えー、残念だな。じゃあ今度は長瀬抜いて二人でプール行こうぜ、あい」

 

「そうねー。パパが会員になってるジムのプールに行きましょ。あそこならゆっくりできるし」

 

なかなかいい雰囲気だ。

二人の向こうで男子生徒が一人派手に泳いでいるが、目もくれていない。

 

しかし一条。

つい一昨日まで中国にいたのに休みも取らずに林間学校か。

凄いバイタリティだ。

とりあえず、まずは東アジア選手権優勝おめでとう。

 

「おうっ。ありがとうなっ」

 

俺の後ろに控えてた雪子と千枝も続けて一条を祝福。

 

「おめでとう、一条君」

 

「大活躍だったじゃん!凄いかっこよかったよー」

 

一条、大いに照れる。

 

「えっへっへ」

 

鼻の下を伸ばす一条にエビがちょっと不満気。

一条から引き剥がすかのように千枝と雪子に声を掛けてくる。

 

「オホン。二人とも水着持ってるならそこの木陰で着替えるといいわ。鳴上君に見張ってもらいなさい」

 

周りを見ると七対三くらいの比率で男子生徒の方が多い。

中には野郎だけという悲しいグループもあり。

着替えと聞いてチラチラと千枝と雪子の方を伺っている。

 

「ありがとうエビ」

 

「どういたしまして」

 

エビに礼を言い、千枝と雪子の二人をエスコートする。

 

「ちょっと恥ずかしいかなー」

 

「う、うん」

 

ゴソゴソとジャージを脱ぎながらごにょごにょしてる千枝と雪子。

今さら何を言っているのか。

二人の着替え終わるのを待って、その場を離れる。

 

「じゃ、先に行ってるから」

 

「えー!?」

 

「ちょっ、待って悠君!」

 

ハイカラな海パン一丁になり、二人を置いて滝壺に近づく。

念入りに準備体操をした後、一条たちが遊んでいるように岩からダイブ!

 

<バシャーン!>

 

水が超冷たくて気持ち良かった。

 

しばらく一条らと遊んでいると、「「おおー」」というどよめきが起こる。

やっとか。

 

水から顔を出して先ほどの木陰の方を見ると、水着の千枝と雪子の二人が姿を現していた。

日焼け止め塗るのに手間取ってたようだ。

 

ここ二ヶ月ほどほぼ毎晩エッチして女体の開発に勤しんだため、同年代の女子よりも明らかにエロい雰囲気を醸し出している。

さらにアナルプラグを抜く許可は出していない。

バレないようにお尻を隠そうとして余計に仕草が色っぽくなっていた。

水場にいる男たちの視線が彼女らにくぎ付けになる。

彼女持ちの一条も思わず見蕩れてしまったようで彼女のエビに腕を抓られていた。

 

一条が惑うのも当然だろう。

エビの方が大人びた顔立ちをしているにも関わらず、千枝と雪子の方が明らかに男を誘う色香に溢れている。

まあエビに関しては、一条によると日本代表選出のお祝いとしてついこの間初体験をしたばかりという話なので、色気がまだまだなのも仕方ないだろう。

 

前に学食でたまたま一条と一緒になったとき、一条のポケットから落ちたプリクラのシールを拾ったことがあった。

エビとの熱烈なキスの写真で、狼狽した一条が聞いてないのに互いのファーストキスのシーンと暴露してきた。

さらに話の流れで「あいつにパパなんていねーんだよっ、だってすげー血が出たし!」との大声でのカミングアウトまで至ってしまう。

学食にいた全ての生徒から一条が総突っ込みを受け、以降エビを見る周囲の目も本人の知らぬ間に劇的に変わってしまってエビが困惑してしまう、なんていう香ばしい話があり。

 

ただ彼女ならすぐに色気の面でも千枝と雪子に追いついてしまうのではなかろうか。

なにせ相方が無尽蔵の体力を誇るトップアスリートの一条なのである。

毎晩膣内を何度も高速ドリブルされ、子宮口のリングに熱いシュートを何本も決められて、女を強引に開花させられていくに違いない。

 

っと、いかん。

埒もない思考に捕らわれてしまっていた。

とにかく千枝と雪子が魅力的過ぎたようだ。

男子生徒たちが誘蛾灯のようにふらふらと二人の周りに集まってくる。

助けに行かないと。

 

結局一条たちのグループ(後ろで泳いでいた男子生徒は一条の友人だったらしい)と合流させてもらった。

男子三人女子三人となってバランスの取れた男女構成になったことで他の男子生徒からのナンパ攻勢は収まる。

諦めきれず遠巻きにこちらの様子を伺っている奴らもいたが、さすがにバスケ日本代表の一条康の周りにいる女には手が出せない様子だった。

 

滝壺にはサンサンと陽が降り注いでいたため水の冷たさも大分緩和されており泳ぐのにもってこいだ。

一通り水遊びをしながら女性陣の水着姿を堪能したところで一条と一条の友人の男子生徒に礼を言う。

 

「今日は助かった。一条。それと、えーと・・・長江君」

 

「長瀬だ!」

 

よし、そろそろ上がろう!

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月18日SAT 曇/晴 17:00>

 

きれいな夕日に辺りが赤く染まっている。

キャンプ場を通り抜けてブラブラと街の方に降りていく。

道の途中で男性の盛大なクシャミが聞こえてきた。

 

「うー、はーっくしょん」

 

倒木に腰掛けて黄昏れている一人の男。

花村だった。

小西先輩も一緒におり、困ったような顔で彼を宥めているようだ。

ただ何故かちょっと花村から離れたところに立っていたのが不思議である。

 

「どうしたんだ?」

 

「おー、鳴上。お前たちもまだいたのか。へへ、何も聞いてくれるな」

 

「?」

 

花村の落ち込んでいる理由がわからない。

隣にいる小西先輩の方を伺う。

苦笑して説明してくれた。

 

「この先の滝壺で遊んでたんだけど。木陰になってたせいで結構水の中冷たかったみたい。それとここの上流ってすぐにキャンプ場でしょう?」

 

まさか。

去年は飲み過ぎで吐いたらしいけど。

今年は花村の用意した睡眠薬のせいで二日酔いに至るまでは飲んでないはず!

そのため去年のような悲劇が起こる可能性は低いと思っていたのだが。

 

「私は淵で涼んでただけだから被害は免れたけど。上で諸岡先生が、その、オシッコをしたらしくて・・・」

 

「言うなー!やめてくれー!」

 

花村が泣きわめいている。

さすがモロキン。

立ち小便とは生徒の嫌がることを平気でやってくる。

 

「聖水プレイだけはやりたくなかったのに。よりによって俺が受け側でなんて。俺はまた大切な何かを失ってしまった・・・」

 

「因果応報ってやつじゃないのか」

 

虚ろな目でブツブツ何か言ってる花村に対して冷静に突っ込む。

千枝と雪子も「「うん、うん」」と後ろで同意してくれる。

 

そんな俺達に対して花村は。

 

「う、う、うわわーーーん!!」

 

「ちょっと陽ちゃん!待ってってば!陽ちゃんのオシッコなら私、喜んで浴びるから!」

 

涙目で道を駆け下りていった。

後を追う小西先輩。

 

ああ、花村。

強く生きろよ。

 

この日を境に花村はこれまで必死に拒んできた聖水プレイを解禁。

小西先輩の念願が漸く叶ってラブホでのバスルームでのセックス回数が激増。

聖水プレイが突破口となって花村は加速度的にを本格SMの世界に転げ落ちていくことになる。

 

これが俺たちの林間学校の顛末である。

 

 

 

<SYSOP 2011年6月18日SAT 曇/晴 --:-->

 

小西直紀は姉・小西早紀と花村陽介の恋人関係を認め、シスコンを卒業します。

小西直紀は保険委員の同僚たちと仲良くなり、孤立しなくなったためグレなくなります。

小西直紀は林間学校中に同僚のポニーテール女子と付き合い始め、同時期に付き合い始めた同じ同僚のショート女子とメガネ男子のカップルと共にグループ交際を楽しみます。

小西直紀は将来コニシ商店の跡継ぎとなり、花村陽介のもとに嫁いだ早紀に協力して八十神商店街復活の手助けをします。

刑死者のアルカナが消滅しました。




上流の滝壺は完全にオリジナル設定になります。あと去年モロキンが吐いたのも。


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第09章 恋愛(上)

りせ回その1になります。
悠がりせの熱烈なファンだったら的なIFストーリーとして見て頂ければ幸いです。


<VELVET ROOM 2011年6月19日SUN 曇 --:-->

 

「お帰りなさいませ。んんっ」

 

バニーガール姿のマーガレットがもじもじとしている。

 

「主は大いにこの衣装が気に入られたご様子。はふぅ」

 

くるりと回って尻を突き出し、大胆に露出した背中と網タイツに包まれた美脚を見せつけるマーガレットバニー。

 

「新たな器具でついに私のアナルに手を付けられましたわね。あっあんっ」

 

フリフリと振られる尻の先端に付いているバニーの丸い尻尾が、ヴヴヴヴヴヴと細かい振動を続けていた。

 

「これから刺激を重ね、あっ、言葉で詰り、ううっ、ディルドーの振動を深めることで、おうっ、私のアナルは解れていくでしょう。あっ主、それ以上はっ、んんんーっ」

 

リモコンでバイヴの振動を強に上げられ、マーガレットバニーは悶絶した。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月19日SUN 曇 19:00>

 

リモコンでTVの音量を上げる。

 

「ば、ばかな!」

 

夕食中、俺はリモコン片手に呆然とTVを見ていた。

 

「どうしたのー?」

 

「ああ、これ?りせちゃんの引退会見、なのかしら?」

 

千枝と雪子が横で何か喋っているが、一切耳に入ってこなかった。

俺の意識は全てTVの画面の向こうの"りせちー"に持って行かれていた。

 

TVでは記者会見が生中継されている。

その中心には俺の心のアイドル久慈川りせが。

会見場には"久慈川りせ休業記者会見"というパネルが飾られている。

 

ま、まさかそんな・・・。

 

会見は質疑応答に移る。

いつもと違い元気の無さそうな"りせちー"。

インタビュアーの質問に淡々と答えていく。

 

<随分急な静養発表ですよね。ファンの方々も心配していると思います。体調面で何か問題でも?>

 

<いえ、別に躰は壊していません。至って健康です>

 

よ、よかった。

病気じゃないんだ。

 

<ではやっぱり精神的な部分で、ということでしょうか?>

 

<それは・・・、違います>

 

マ、マズゴミめー。

"りせちー"が困ってるじゃないか。

なぜそんなデリカシーのない質問をする!

 

<静養先は親族がいらっしゃる山梨県の稲羽市だそうですね>

 

<はい、その予定です>

 

「な、なにーっ!!」

 

<ドンッ>

 

「「きゃっ」」

 

思わず俺はテーブルを叩いて立ち上がってしまう。

"りせちー"がこの稲羽市に来るのか。

生りせちーに会えるかもしれない!

 

いや、これは喜ぶべきことではない。

"りせちー"が休業してしまったのは事実だ。

メディアを通して彼女の姿を見ることはしばらく無いだろう。

 

悲しみとやるせなさと、直接会えるかもしれないという僅かな希望。

それらが入り混じり、心の中が非常にモンモンとした状態となる。

 

<稲羽市って春先の宙吊り殺人事件で有名になった街ですよね。まだ未解決ですが不安はないんですか?事件について一言コメントを!>

 

<えー、以上で"久慈川りせ休業記者会見"は終わりです!はいそこっ、道を開けてください!>

 

あ、いつの間にか記者会見終わっちゃってる。

 

「悠って"りせちー"大好きだもんね」

 

「パソコンの中の画像、こっそり見たけど凄い量だったものね」

 

「えへへ。ちょっと今日は趣向を替えてみようよ。雪子は髪長いからそのままツインテールにしてー。アタシはウィッグ着けてさ」

 

「じゃあ、名付けて"ダブルりせちープレイ"ね!」

 

んん?

このお嬢さん方は何を言っているのだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月19日SUN 曇 22:00>

 

"久慈川りせ休業記者会見"の衝撃冷めやらぬ中、千枝と雪子がそれぞれ"りせちー"に成りきって俺を誘ってきた。

 

他の女に見立てられて抱かれる。

普通なら女としての挟持を大いに傷つけられる行為だろう。

しかし千枝と雪子の二人は違うようだった。

喜んで俺に"りせちー"の格好で犯されようとする。

 

どうやら俺を慰め悦ばせることが彼女たちにとって何よりも大事らしい。

きちんと答えてあげないと。

俺はリミッターを解除し、本気のマーラ様の性能を二人に見せつけてやる。

 

ひぃひぃ言いながら「もう許してぇ」と懇願してくる千枝と雪子。

許さずイかせまくる。

俺の"りせちー愛"を甘く見た罰である。

まぁ二人の"りせちーコス"が可愛過ぎて暴走してしまったとも言う。

 

気絶しても許さず、交互に犯す。

二人共完全に腰が抜けてしまっている。

 

明日ちゃんと学校行けるかしら。

自分のしたことながら少し心配になる。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月20日MAN 曇 16:30>

 

なんとか学校に通学したものの、千枝と雪子は案の定グロッキー状態。

授業にも腰にも全然力が入らなかったようだ。

いつもなら学校帰りの買い出しに付いてくるはずだが、今日は先にマンションに戻ってしまう。

仕方なく俺一人でJUNESに来ていた。

 

世間の話題はりせちー休業で一色である。

学校でもその話題で持ちきりだった。

JUNESの屋上のフードコートを歩いていても、その話がアチコチから聞こえてくる。

 

あれだけ影響力のあるアイドルだ。

当然だろう。

 

ん?

あれは?

 

携帯電話が落ちている。

ピンク色のガラケーだ。

落し物か。

 

拾ってみると変な形のストラップがついている。

これは・・・がんもどき?

携帯のストラップにがんもどき?

なんて個性的な。

 

さっきまでこのテーブルに座っていた娘のものだろうか。

どこに行ったんだろう。

周りを見渡してみる。

 

すぐ近くにエレベーターホールに向かって歩いている女の子の姿があった。

 

「あ・・・」

 

思わず声が漏れてしまう。

 

あの胸、あの腰つき、ムダの無い曲線美・・・。

ま、まさか、"りせちー"!?

野暮ったいメガネで変装しているが、どこからどう見ても"りせちー"だっ。

 

彼女は混雑しているエレベーターを避けて階段を使うようだ。

後を追おう。

 

下の階に降りた彼女はそのまま売り場を足早に進んでいく。

 

ああどうしよう。

どう声をかけよう。

なにせ憧れの"りせちー"である。

なかなか声が出なかった。

 

すると"りせちー"は突如駆け出して階段でさらに下の階へ。

いけない!

とにかく携帯を返さなければ!

 

走って彼女を追う。

"りせちー"はエレベーターの中にいた。

扉が閉まる寸前に駆け込み、一言。

 

「こ、これ、君の、だよね?」

 

ああやっと言えた・・・。

 

「だったら、早くそう声掛けてくれればいいじゃない!」

 

あうっ。

どうやらこちらをストーカーと勘違いして怯えていたようだ。

反射的に謝ってしまう。

 

「ご、ごめん」

 

「もうっ。拾ってくれたの助かったけど」

 

エレベーターの中でりせちーと二人きりになっていた。

な、何か話題を続けないと。

ほら、何やってんだ俺。

憧れの"りせちー"が目の前にいるんだぞ!

何か喋れ!

 

「ありが「ス、ストラップ、とっても、変だね!」

 

0点。

レッドカードで退場モノの大ファール。

我ながら気が利かな過ぎ。

ほら、"りせちー"も困った表情を浮かべてるじゃないか!

 

エレベーターが1Fに到着し扉が開く。

 

「じゃ、じゃあ」

 

鳴上悠は"りせちー"の前から逃げ出した!

 

<ダダダダダッ>

 

りせちーは追ってこない!

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月21日TUE 雨 20:00>

 

食後にボーッとTVを見る。

昨日の記者会見の様子が再び放送されていた。

 

<稲羽市ではご親族が老舗の豆腐屋を経営されているとか?>

 

<え?あ・・・はい、そうです>

 

<静養ということですが、復帰は何時頃になるのでしょうか?>

 

<わかりません>

 

<あくまで"静養"であって"引退"ではないんですね?>

 

<・・・はい>

 

<静養先ではどのように過ごされるんでしょうか?お豆腐屋さんを手伝われるんですか?>

 

<まだ、何も・・・>

 

「はぁ〜」

 

記者会見している"りせちー"の姿を見ていると自然とため息が出てくる。

昼間の件がまだ後を引いていた。

 

<稲羽市って春先の宙吊り殺人事件で有名になった街ですよね。まだ未解決ですが不安はないんですか?事件について一言コメントを!>

 

<えー、以上で"久慈川りせ休業記者会見"は終わりです!はいそこっ、道を開けてください!>

 

<一旦CMです>

 

番組からCM枠に切り替わってもそこには"りせちー"の姿が。

さすが昨日まで飛ぶ鳥を落とす勢いだった売れっ子である。

ビジネススーツの"りせちー"が落ち込んでいる同僚を励ますシチュエーションの資格講座のCMだ。

パンツルックの"りせちー"も良い。

 

この娘とついさっき会話を交わしたんだよな。

どうしてもっと上手く立ち回れなかったんだろう・・・。

落ち込んでいると一緒にTVを見ていた雪子が何やら気になる発言をする。

 

「老舗のお豆腐屋さんって丸久さんのことかしら。うちの旅館で出すお豆腐はずっと昔から丸久さんのなのよ」

 

さらに千枝から追加情報が。

 

「丸久って・・・ここの商店街の?このマンションのすぐ近くじゃない」

 

ガタッ。

 

「本当か!?」

 

「う、うん。お豆腐買いに行ったら会えるかも」

 

一気にテンション上がってきたーーーッ!

 

「よしっ豆腐買ってくる!」

 

「ちょちょちょっと!もうこの時間だと閉まってるってば!」

 

千枝に止められてしまう。

くそう!

 

「それよりさ。思ったんだけど。もし今までの事件がTV繋がりだとすると、彼女も犯人に狙われちゃうんじゃない?」

 

な、なんだって?

いきなり千枝が不穏なことを言い出す。

 

「あ、私も気になって少し調べてみたんだけど、りせちゃん、山野アナと一二度同じ番組に出ているみたいなの」

 

雪子まで"りせちー"が襲われると思っていたようだ。

 

「待ってくれ。"りせちー"は昨日今日TVに出たわけじゃないだろ」

 

「今度の休養騒ぎであの娘、今この街で時の人よね。しかもここに引っ越して来ているんだよ。そして誰もが認める可愛さじゃん。アイドルなんだし」

 

千枝に見事に反論されてしまう。

"生りせちー"に夢中で気付かなかった。

確かに俺たちの推理どおりなら目を付けられるパターンだ。

 

山野アナと何らかの関係がある。

この街に居る。

TVで報道されたことがある。

若くて綺麗な女性である。

 

確かに全て当てはまっている。

大変だ。

"りせちー"は何が何でも守らないと!

犯人を絶対捕まえてやる。

 

「クッ。わかった。明日から彼女の動向を追おう」

 

「「うん」」

 

これで落ち込んでいる暇など無くなったわけだ。

りせちーが狙われる可能性が出てきたということはマヨナカテレビのチェックも欠かせないだろう。

まだ零時までには時間がある。

それまでにこの滾った想いを発散させねば。

 

「よし。今日も"りせちーコス"でしようか!」

 

二人が引きつった顔を見せる。

 

「きょ、今日もあれやるの?えーと、で、できれば手加減してほしいなって。明日も学校だし・・・」

 

「あ、そ、そうだ!えーと久しぶり千枝と一緒にフェラしてあげる!ダブルフェラ。まず二、三回それで抜きましょう!ね、そうしよ!」

 

昨日の俺の荒ぶり様に恐れを為しているらしい。

いいだろう。

キックオフと同時のダブルフェラでの二発抜き。

受けて立とう!

 

結局二人とも今日もお泊まりコースとなる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月21日TUE 雨 21:00>

 

「「じゅるじゅる、ペロペロ、じゅっぽじゅっぽ、あーん」」

 

雪子の提案に乗り、二人にそれぞれ濃いのをゴックンさせてから本番に移行する。

昨日に続いて腰が抜けるまで二人を攻め立てる。

 

「「やーん!、もうやだー、許して―」」

 

許しません!

JUNESで"りせちー"と上手く会話できなかった後悔が熱いリビドーとなって腰に溜まっていた。

最初に二回程度抜いたくらいでは到底収まるはずもない。

俺のマーラ様はいきり立ちまくりである。

 

「も、もう限界。千枝、あとよろしく。ガクッ」

 

「雪子ずるいっ、アタシ一人じゃ無理だってば!」

 

雪子が先にダウン。

 

「千枝、ここにおいで」

 

「悠っ、お願ーい、もう堪忍してよぅ」

 

怯えて媚びた表情で後ずさる千枝。

最近くびれが急激に目立つようになってきたその千枝の腰を掴み、持ち上げて対面座位で結合する。

 

「ああああっ」

 

ここで雪子のように千枝も気絶してしまっては俺の出しどころが無くなってしまう。

千枝の体力が持つように千枝の腰をゆっくり回して生かさず殺さず延々と互いの性器を刺激し続ける。

 

「はっはっあっあんっああんっ」

 

寝室の中、千枝の喘ぎ声が延々と響き続けた。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月21日TUE 雨 24:00>

 

「もうっいがぜでぐだざいっ!いがぜでよー。うぇええん」

 

焦らし続けて頭のネジが半分飛んでる千枝から泣いて懇願される。

そろそろ許してやるか。

つながったままゴロンと転がって正常位に移行。

そして鬼ピストン。

 

「ああっあああっ、やっどぎだああああああああああっ!!!」

 

きっちり千枝をイキまくらせ、イッたまま帰れなくしてやる。

限界まで躰を仰け反らせている千枝のしなやかな腰をガッチリ掴んでグググッと射精する。

 

ふー、出した出した。

ヌポッと抜く。

スキンは無事のようだ。

二人のうちどちらかが起きていれば口でスキンの後片付けをしてもらうのだが・・・。

 

「すー、すー」

 

「・・・」

 

あいにくどちらも気絶中である。

自分でスキンを外す。

今日もいっぱい出したなー。

トイレに捨てに行く。

 

あ、そろそろマヨナカテレビの時間だ。

 

<ブツンッ>

 

電源を入れていないTVに映像が生まれる。

 

「これは・・・」

 

映し出された映像は水着の"りせちー"だった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 16:00>

 

昨日のマヨナカテレビ。

不鮮明ではあったが顔は間違いなく"りせちー"だった。

 

雪子のときはTVの中に入れられるまでマヨナカテレビは不明瞭な状態だった。

つまり"りせちー"もまだTVの中に入ってないということになる。

 

いったいどういう理屈で映し出される動画なのだろうか。

 

そして動画の内容についてもどうも腑に落ちないところがある。

 

あの水着は写真集の表紙でしか着たことがないものだ。

そもそも動画の媒体自体が存在していない。

 

それにあのバスト。

明らかに本物の"りせちー"よりデカい。

りせちー研究家の俺が言うのだから間違いない。

 

とりあえずだ。

"りせちー"本人の様子を見に行こう。

出来れば拉致の危険性を伝えられればいいのだが。

 

学校帰りに一人で丸久豆腐店に向かう。

千枝と雪子は今日も先にマンションに戻って休んでる。

仕方のない娘さんたちだ。

 

<パシャッ、パシャッ、ガヤガヤ>

 

丸久豆腐店の近くまで来てみたが、商店街の様子がいつもと違った。

沢山の学生たちが店の周りにたむろっており、携帯のカメラで店の様子を撮影している。

車も多く、宅急便のトラックが通れず困っているようだ。

車を誘導する警察の姿まである。

 

"りせちー"を見たくて集まった人たちである。

 

あまり目立ちたくはなかった。

人がはけた瞬間を見計らって丸久豆腐店に近づく。

とりあえず豆腐を買う振りをして中に入ろう。

 

「うおっ」

 

ところが目論見は見事に外れる。

店の引き戸に”お豆腐売り切れ”の張り紙が。

 

ど、どうする?

いや待て。

豆腐屋で売っている品物は豆腐だけじゃない!

 

「すみません!」

 

勇気を振り絞って中に入ってみた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 16:10>

 

店内はやけに薄暗かった。

 

「表の張り紙見てないの?お豆腐もう無いわよ」

 

店の奥の暖簾を捲って応対に出てくる店員さん。

 

"りせちー"!

 

ダルそうな態度で目を疑ったが、それは紛れも無く割烹着姿の"りせちー"だった。

"りせちー"の代名詞とも言えるツインテールが三角巾で覆われている。

 

「あれ、あなた携帯拾ってくれた」

 

俺のことを覚えていてくれたようだ。

感激だ!

 

「や、やあ」

 

き、緊張して声が出ない。

 

「・・・何のよう?」

 

慌てて商品ケースを見回す。

あれだ!

 

「が、がんもどきを三つ、下さい」

 

「がんもね。三つか」

 

"りせちー"ががんもどきを包装するために、商品ケースの淵に手をついてこちらに腰を向けてくる。

 

き、来てよかった。

腰を付き出した"生りせちー"の後ろ姿を見れるなんて!

っていかん!

 

「あ、あの。最近変わったこと、ありませんでしたか?」

 

勇気を振り絞って尋ねてみる。

 

「何?ストーカーの話?」

 

「いや、その、マヨナカに映るテレビの噂、知らないかな」

 

「ああ、昨日の夜に映ったあれのこと?」

 

え、"りせちー"も見たのか!?

 

「み、見たのかい!?」

 

「不思議よね、アレ。なんかアタシに良く似た人が映ってたみたいだけど」

 

がんもどきを手渡しつつ答えてくれる。

 

「プロモ撮りであの水着は着たこと無いし。それにあたしあんなに胸無いよ」

 

「ああ、それは気付いてた。でも胸以外は君に良く似ていた。あの腰つき、ムダの無い脚線美・・・。あれは君そのものだ!」

 

「はぁ?あんた何言ってんの?」

 

怯えたように後ずさる"りせちー"。

 

「ってそうじゃない!俺が言いたいのは・・・」

 

い、いかん。

これじゃ俺がストーカーみたいじゃないかっ。

 

<ガラガラッ>

 

「ごめんくださーい!って、あれ悠君じゃない」

 

間の悪いことに来客のようだ。

この声、足立さん?

振り返るとそこにはやはり足立さんが。

・・・まずいことに叔父さんも一緒だ。

 

「悠、お前ここで何を?」

 

なんか叔父さんが凄い目で睨んでくる。

なぜだ?

 

「その。がんもどきを買いにきました。夕飯のおかずです」

 

ヤバイ予感がするのでりせちーに代金を渡してしらばっくれる。

もし叔父さんにTVの件を知られたら。

雪子と千枝をマンションに連れ込んでいることまで芋づる式にバレてしまいそうだ。

あの二人との愛の巣を手放すつもりなど今の俺には毛頭なかった。

 

「そ、それじゃ」

 

藪蛇にならないようにスッパリ撤収を選択する。

 

「???、まいどー・・・」

 

腑に落ちない様子の"りせちー"が俺をおずおずと見送る。

"りせちー"にしてみれば不審人物にしか見えなかっただろうな。

はぁ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 17:00>

 

少し離れたところから丸久豆腐店を観察する。

なんとか"りせちー"に接触する機会を作らないと。

掲示板の影を張り込み場所にして機会を待つ。

 

掲示板には"安心な未来へ"という標語の警察のポスターが貼られていた。

モデルは警察官の制服姿の"りせちー"でこの春撮られたものだった。

きっちりしている制服のせいで腰のくびれのラインがやけに際立ってる。

非常にソソられる逸品だ。

 

ポスターに気を取られていると帽子を被った"りせちー"が店の裏手から出てきた。

今だ!

 

ん?

あれは何だ?

 

飛び出した瞬間、あり得ない光景が目に飛び込んできた。

リュックサックしたバンダナ男が電柱の上に掴まって"りせちー"をカメラで狙っている。

 

「誰だ!」

 

思わず声を上げてしまう。

 

バンダナ男がビクッとこちらを見る。

いかにもアイドルオタクって感じの男だった。

 

バンダナ男は華麗にスルスルと電柱を降りて道路を駆け出していく。

もしかしてあれ、"りせちー"がさっき言ってたストーカーなんじゃなかろうか。

捕まえないと!

 

「うひー」

 

「待て!」

 

「な、なんなの?」

 

戸惑っている"りせちー"の横をバンダナ男と俺が駆け抜ける。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 17:30>

 

くっ意外と脚速いなっ。

まずいぞ。

このままだと国道に出てしまう!

 

<ブーーーーン、キキーッ>

 

あいかちゃん!?

 

「うわあ」

 

偶然通りかかった出前中のあいかちゃんがなんと原付きバイクでストーカーの行手を遮ってくれた。

 

「とうっ」

 

「ぶぎゃ!」

 

そのお蔭でバンダナ男を取り押さえることに成功する。

 

「あいかちゃん、ありがとう!」

 

「お礼、よろしく」

 

「ツケにしといてくれ!」

 

「まいど」

 

ほんと助かった。

お礼、十回分くらいでいいかな。

 

「な、なんなんだよ、お前たちーっ」

 

「"りせちー"を困らせる奴は俺が許さん!」

 

ストーカーしてる証拠のカメラを抑えないと・・・。

暴れるバンダナ男を押し倒して拘束する。

 

「話しは署で聞くっ!」

 

<カチャリ>

 

え?

 

「くぅーこのセリフ一度言ってみたかったんだー。ほら立て!」

 

いつの間にか隣に現れた足立さんがバンダナ男に手錠を掛けていた。

 

「いやー、堂島さんに君を見張れって言われててさ。なんでも君ってかなりの久慈川りせファンらしいじゃない。おかしなことしないようにって話だったんだけどさー」

 

くっ。

両親経由で叔父さんに情報が入っていたか!

まぁいい。

ちょうど良かった。

 

「こいつ、"りせちー"のストーカーです。よろしく頼みます!」

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

後は足立さんに任せておけば大丈夫。

俺は"りせちー"を追わないと。

彼女はどこに行った?

 

「あの娘、河原の方」

 

絶妙なタイミングであいかちゃんが情報提供してくれる。

 

サンキュー、あいかちゃん。

お礼はさらに一回追加だっ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 18:00>

 

あまり遠くには行ってないはず。

そう思って辺りを探したらビンゴ。

"りせちー"は夕日の河川敷に座って一人黄昏れていた。

 

ん、何をやってるんだ?

グラビア雑誌のページを裂き、紙飛行機を作って飛ばしている。

よく見ると"りせちー"自身のグラビアのようだ。

 

「"りせちー"か。本当の私なんか誰も見てない・・・」

 

何か呟いたようだがよく聞こえない。

思わず一歩足を踏み出してしまう。

 

「誰っ!?」

 

「あ・・・」

 

俺に気づいた"りせちー"がサッと立ち去ろうとする。

 

「【待ってくれ!】」

 

慌てて呼び止める。

 

「・・・何?」

 

立ち止まってこちらを振り向く"りせちー"。

その眼光は不審気。

 

「えっとその。君を付け回っていたストーカー、捕まったよ」

 

「・・・あっそ。まあストーカーなんて慣れてるけど」

 

どうでも良さげに答えてくる。

 

「そのっ。そういうの、慣れない方がいいんじゃないかな」

 

「仕様がないじゃない。そういう人たちからお金巻き上げるためにさ。キャラ付けされたアイドルやってたわけだし」

 

「え?」

 

「アイドルの追っかけなんて全員ストーカー予備軍みたいなものでしょ。・・・あんたもそうなんじゃないの?」

 

そう言って"りせちー"はこちらに物憂げな視線を向けてくる。

アンニュイな雰囲気の"りせちー"もいいなぁ・・・って、いけない!

まずは疑いを晴らさないと。

 

「自分は決してストーカーなんかじゃない。【俺を信じてくれ!】」

 

真心だ。

こういうときは真心を表に出せばきっと通じる。

深呼吸して真正面から"りせちー"と向き合って言葉を紡ぐ。

 

「・・・クスッ、わかったわ。特別に信用してあげる」

 

やった!

"りせちー"が笑ってくれた。

俺の想いが彼女に通じたらしい。

 

「それで話はそれだけ?他に用が無いならもう帰るけど?」

 

本来の目的を忘れるところだった。

俺は"りせちー"に警告しに来たのだ。

 

「お店で言いかけたけど、マヨナカテレビに映った人は誘拐される可能性がかなり高い」

 

「え?」

 

「いきなりで信じられないかもしれないが、嘘や冗談じゃない。気をつけてほしい」

 

「さっき来た警察の人からも同じこと言われたわ。何かあったらすぐに連絡しろって」

 

叔父さんが?

警察も事件の発生条件をある程度まで掴んでいる、というのか?

それとも彼独特の刑事の勘だろうか。

 

「ありがとう」

 

え?

 

「あたしのこと心配してくれてるんでしょう。だからありがとう」

 

お、おう。

 

「じゃあ忠告に従って、暗くなってきたしもう帰るね。あ、名前聞いてなかった」

 

「な、鳴上悠」

 

"りせちー"に俺の名前を覚えてもらえるなんて、夢のようだ。

ドギマギしながら答える。

 

「ふふっ、あたしは久慈川りせ」

 

よく知ってます。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 23:45>

 

「あんっ、もう舐めないでっ。ペロペロしないでぇ」

 

"りせちー"と面識を得たことに興奮し、またまたりせちープレイでハッスル。

千枝と雪子の二人は今日もお泊まりで俺を楽しませてくれている。

 

すでに千枝は轟沈しており雪子をねっとりと攻めている最中である。

雪子の瞳は虚ろな金色に濡れ、視点を合わせられないほど快楽漬けになっている。

 

雪子の膣は入れるだけで気持ちいい。

背面座位で雪子と合体しつつ耳裏に鼻を埋め雪子の甘いフェロモン臭を堪能。

脚を大きく開かせて白い生乳や挿入中の秘唇を後ろから入念に愛撫。

すでに雪子の綺麗な背中は俺の口づけでサクラの花が散ったような状態だ。

 

「ちゅー」

 

「ああんっ」

 

雪子は首が性感帯だ。

 

普段の装いと異なるツインテールで細い首とうなじを露出させたその後ろ姿は新鮮だった。

執拗にペロペロと舐めまくったせいで雪子の首はヨダレまみれである。

 

あ、そろそろ零時になるな。

 

「雪子、体位変えるぞ」

 

「あぅん」

 

雪子の躰を前に倒し、腰を持ち上げる。

つながったまま後背位に移行。

 

わざと雪子の一番弱い角度を微妙に外して、パンパンッとゆっくり腰を打ちつける。

すると雪子はすでにろくな思考力も残ってないはずなのに、自分から一番気持ちいい場所が当たるようにモゾモゾと腰の位置をずらしてくる。

 

「フフッよく出来ました」

 

「ふぇ?」

 

ご褒美に本格的に腰の回転上げていく。

たぷんたぷんと揺れていた雪子の二つの白い乳が、プルプルプルプルと微振動するレベルまで到達。

 

「ん、ん、んんっっ!!ふああああん・・・っ!!!」

 

とっくの昔に雪子はイッたまま帰れない状態になっているようだ。

この世で最高のオナホールを使っているような感覚。

自分の好きなタイミングで射精。

 

イキ潰れた雪子をその場に放置し、一人居間に移動する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月22日WED 雨/曇 24:00>

 

<ブツンッ>

 

電源を入れていないTVに映像が生まれる。

胸と腰をやたら強調している水着の女性。

やはり"りせちー"だった。

 

まだ映像は不鮮明で安心する。

つまりまだ"りせちー"はTVの中にいない。

だが昨日より映像がはっきりしているようだ。

どういうことだろう。

 

バラエティのようなものが映るのは本人が入った後。

そしてそのバラエティは入った本人が映し出している本音。

ならばそもそもこの不鮮明な映像はいったい何だ?

 

犯人の犯行予告?

なら予告相手は?

俺、か?

 

いや待て。

決めつけるな。

 

何らかの理由で犯人の心の中が映し出され、結果的に犯行予告に見えるということはないだろうか。

"りせちー"を襲うぞという想念が強まり、結果として映像もはっきり見えるようになってきた?

 

わからない。

とにかく今はっきりしているのは"りせちー"の身に危険が近づいているってことだ。

明日も"りせちー"の動向をチェックだ。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 15:50>

 

授業が終わった。

千枝と雪子はなんとか授業を受けていたがここ数日と同様にグッタリしている。

少し休んでから帰るということなので先に教室を出た。

急いで丸久豆腐店に向かわないと。

 

速攻で靴箱で靴を履き替えて玄関の扉を開けようとする。

んん?

外の様子が変だ。

 

校門の外に多数の人影が見える。

カメラや集音マイクが多数。

TV局?

 

戸惑って立ち止まっていると隣に女子生徒が並んだ。

ふわりといい匂いがする。

 

「ついさっきまでいなかったのに。相変わらずマスコミは鼻が利くわね」

 

え、この声って。

ええ?

 

振り返るとなんとそこには"りせちー"がいた!

"りせちー"が八十神高校の制服着てる!?

 

「あ、鳴上君じゃない」

 

「・・・なんで?」

 

「来月からこの学校に編入するの。その手続きに来たんだけど」

 

困惑した表情で"りせちー"が外を見ている。

 

う、嘘だろ!

おい、やばいぞ。

"りせちー"と同じ学校になっちまった。

 

「はぁ、どうやって帰ろ」

 

校門の方を見てため息をつく"りせちー"。

これは"りせちー"ともっとお近づきになるチャンスだ!

 

「よければ別の道を案内するよ」

 

俺は勇気を出して"りせちー"を誘った。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 16:00>

 

裏門でもない場所から学校を出ることにする。

向かう先はグランドに面した普段は閉められたままの門。

そこだけ野球部のネットが捲れているのだ。

 

「あれ?その制服のバッチって二年の・・・」

 

移動中に"りせちー"が俺が二年生であることに気づいたらしい。

 

「そっか。先輩なんだ。あたし一年なの。じゃあ改めて。鳴上先輩、よろしくね」

 

「あ、ああ」

 

"りせちー"が俺の名前の呼び方を変えてくる。

あの"りせちー"が隣にいて俺を"先輩"と呼んでくれている。

なんて凄いシチュエーションだろうか。

 

人生何が起こるかほんとにわからないものだな。

ゲームの中に放り込まれてる俺が言うのも変な話ではあるが。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 16:10>

 

門扉の前に着いた。

ネットを潜って先に門扉の上によじ登る。

そして門扉に腰掛けて"りせちー"に手を差し伸べる。

 

「ほらっ手を握って」

 

「うんっ」

 

"りせちー"を門扉の上まで引き上げてあげる。

 

「よいしょっと。大丈夫?」

 

「ええ」

 

先に飛び降りて"りせちー"が降りるのを見守る。

 

「うふふ。こういうシーン、映画にあったよね」

 

「ロマンティックだろ」

 

にこりと微笑み合う。

 

このイベントで大分"りせちー"との距離感が縮まった感がある。

緊張が解けて俺もいつの間にか吃らなくなっていた。

もっと"りせちー"と二人きりでいたいところではあったが・・・。

 

「あ、あそこにいるぞ!」

 

あ、まずい!

見つかったようだ。

 

「こっちだ。行くぞ!」

 

「うん!」

 

反射的に"りせちー"の手を握って駆け出していた。

"りせちー"は俺の手をきゅっと握り返してくれた。

"りせちー"からの信頼を強く感じる。

 

俺にとっては夢の様な逃避行だった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 16:30>

 

商店街まで二人で手を握ったまま移動する。

マスコミに見つからないように遠回りになってしまった。

丸久豆腐店に近づく。

 

「「あっ」」

 

店の周りにも多数のマスコミの姿が。

 

「これじゃ入れないな」

 

「ん・・・」

 

とっさに"りせちー"を背中に隠す。

さすが狙っているのがりせというトップアイドルだけはあるけれども、これは明らかにマスコミもやり過ぎだろう。

ここは警察を呼んだ方がいい。

 

「堂島さんって刑事の連絡先は聞いてるんだろ?彼に頼んで追い払ってもらおう」

 

「あ、そっか。ちょっと待って。電話するね。もしもし、あのわたし久慈川りせといいますが・・・」

 

"りせちー"が電話越しに叔父さんに要件を伝えている。

 

「あと10分したら足立さんって刑事の人が来てくれるって」

 

良かった。

 

「りせ!」

 

え?

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 17:00>

 

声を掛けてきたのはスーツ姿のメガネ男。

"りせちー"のマネージャーだった人らしい。

井上という名だそうだ。

 

人目を避けるために辰姫神社に移動する。

最近TVやネットで妙な取り上げられ方をされて異様に人気が出ている神社だ。

しかし幸いなことに夕暮れ時になって参拝客は誰もいない。

 

「すまない、少し外してくれないか?」

 

「いやです」

 

心細そうな"りせちー"をほっとけなかった。

井上さんは俺が邪魔なようだったがキッパリ断る。

 

「き、君はりせの何なんだね!」

 

「【俺は彼女の恋人です】」

 

きっぱりと言い切る。

少なくとも今この瞬間だけでも恋人に成りきって彼女を守る!

 

「なっ!?」

 

「・・・先輩(ぽっ)」

 

"りせちー"も俺の芝居に付き合うことにしたようだ。

本物の恋人のように頬を赤らめて寄り添ってきた。

肩を抱き寄せてやる。

 

「な、何を言ってるんだ。りせがこの街に来てから数日しか立ってないだろ」

 

「井上さんには関係ない!一目惚れなの。先輩は運命の人なの。わ、わたしたち高校を卒業したら、結婚するんだから!」

 

"りせちー"話盛り過ぎ。

でも本当にそうなったらどんなにいいか。

とりあえずそれくらい熱烈な恋愛中であることを井上さんに対してアピールせねば。

 

「ええ、【俺達はラブラブです】」

 

もちろん井上さんに信じてもらうために、本気の想いを込めての発言である。

 

「・・・先輩〜。ウフフ」

 

ゴロゴロと甘えてくる"りせちー"の頭を撫でてやる。

あ、いい匂い。

ああ、これが恋い焦がれていた"りせちー"の体臭。

思いっきり吸い込んで堪能する。

 

「・・・わかった。もう何も言わないよ。君の主演が決まっていた映画、後任はかなみに決まった」

 

「え、あの娘が」

 

「今後我が社は真下かなみを力の限りバックアップしていく。それだけを伝えにきたんだ。それじゃ」

 

井上さんは恨みがましい目で俺を睨みつけ、踵を返してさっさと去っていった。

 

「あ・・・」

 

ん?

井上さんを見送る"りせちー"の様子がおかしい。

俺の制服を掴む"りせちー"の手が震えている。

不審に思って覗きこむと"りせちー"は涙を溢れさせていた。

 

「あ、れ?なんで、涙なんか出んのよ。悲しいことなんか何も無いのに・・・」

 

「どうしたんだ?」

 

「私、失くしちゃった。何か分かんないけど、大切なもの失くしちゃった。うわーん」

 

泣き出して縋ってくる"りせちー"。

俺は場に流され、その躰を抱きしめていた。

うわっ細い!

 

「みんながチヤホヤして寄ってくるのは本当のアタシじゃない。グスッ。売るためにキャラ付けされたアイドルなの。グスッ。本当のアタシなんか誰も見てない」

 

泣きながら"りせちー"が俺に想いを吐き出してくる。

 

「私もうタレントじゃない!生活時間を管理される人形じゃない!そう思ってたのに・・・なんで悲しいの。うわーん」

 

"りせちー"、いや久慈川りせがアイドルを休業した理由がやっと今わかった。

彼女、大分悩んでいたようだ。

背中と頭を撫でながら彼女が落ち着くのを待つ。

 

彼女を慰めたい。

そんな強い想いに突き動かされる。

りせを抱きしめたまま、俺自身が感じたことを素直に語りかけてみた。

 

「今、君がここにいることは正しい選択だったと思う。そんな想いを抱えながら無理して仕事を続けるなんて、人として間違ってる」

 

「・・・」

 

「それに今すぐ復帰したって、納得出来る仕事をするなんて絶対無理だ。タレントのメンタルケアもまともに出来ない事務所だもの」

 

「・・・え?」

 

「とりあえずさ。芸能界以外で君が今してみたいことを全部しよう。芸能界に戻るかどうかはそれから考えればいい。俺でよければ手伝うよ」

 

「う、うん。・・・そんなこと言われたの、初めてかもしれない」

 

いつの間にかりせは泣き止んでいた。

目元を赤く腫らし、俺の腕の中で照れたように笑うりせ。

か、可愛すぎる。

って俺、いつまでりせを抱きしめてるんだ?

 

抱擁を解き、慌ててりせから離れる。

 

「あ・・・」

 

少しだけりせが残念そうな顔をしたのは俺の願望だろう。

 

「あの、慰めてくれて、ありがとう」

 

「その、俺、君の大ファンだし。コンサートも行ったし」

 

俺もりせも顔が真っ赤だった。

 

「あ、そうだ。ねぇ先輩、携帯の連絡先の交換しよ!ラブラブで将来を誓い合った恋人同士なら当然でしょ?」

 

照れ隠しだろうか。

りせが先程の設定をからかってくる。

恥ずかしくて勘弁して欲しかったが、りせの連絡先をゲット出来るチャンスを逃すわけにはいかない。

 

「いいのか?」

 

「うん、勿論」

 

あたふたと携帯を取り出し、りせと連絡先を交換する。

 

「よしっ。これで登録っと。先輩の方はちゃんと登録できてる?」

 

「え?ああ大丈夫・・・みたいだ」

 

スマホの電話帳をチェックする。

"久慈川りせ"の項目が"く"の欄に追加されていることを確認。

スマホから視線をりせに戻そうとした瞬間。

 

「ん、チュッ」

 

スマホに気を取られていて反応できなかった。

スッと近付いてきたりせの顔。

ピンク色の唇が、俺の口元に当たる。

 

え?

 

一歩下がり、エヘヘと笑うりせ。

 

「わ、わたし泣き過ぎて今ひどい顔してるでしょ。今日はもう帰るね。夜に必ず連絡するから!」

 

「あ、ああ」

 

「じゃあ、バイバイ!」

 

その後姿を呆然と見送る俺。

しばらくその場に立ち尽くしてしまう。

 

今俺、りせとキス、したよな?

あのりせと。

 

それから後のことはよく覚えていない。

夢の中の出来事のようでフワフワしており、現実味がなかった。

 

マンションに帰って玄関で雪子と千枝が三指付いて俺を出迎えてきたことも。

二人が土下座して「「今夜のお勤めは勘弁して下さい!もう限界なんです!」」と必死でお願いしてきたことも。

鷹揚に了解してお風呂で背中を流されるだけで済まし、たいそう二人に喜ばれたことも。

 

全てが些細なことであった。

 

スマホを一時も離さず、ただただとにかくりせからの連絡を待ち続ける俺がそこにはいた。

 

・・・りせのガラケーが夜の車道に転がり、降り始めた雨に濡れ続けていることも知らずに。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月23日THU 雨/曇 --:-->

 

鳴上悠の「神言」により、久慈川りせは鳴上悠にラブラブになりました。

久慈川りせの中で高校卒業後の鳴上悠との結婚が規程路線になります。




りせ回その2でこれまで溜め込まれていたオナペットアイドルへの妄念が一気に爆発予定。


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第10章 恋愛(下)

りせ回その2。久慈川りせへの愛が溢れた回になっています。
この回を書きたくてこの作品を書き始めたと言っても過言ではないかな。

【注意】描写はほぼ無いですがスカトロ行為の表現があります。


<VELVET ROOM 2011年6月24日FRI 晴 --:-->

 

「お待ちしておりましたわ。我が主」

 

キャミソール姿のマーガレットがベッドの上に突っ伏し、尻を捧げるように突き出している。

 

「今回私が主に捧げるバージンは、あ、アナル・・・」

 

ベッドに顔を埋めたままの姿勢で、マーガレットは自ら己の美尻を割開いてアナルを曝してくる。

 

「ああ、主。これから私のアナルはかつてない大きな拡張、試練を味わうことになります」

 

水の洗浄魔法で汚れを完全に拭い去られたマーガレットの奇麗なアナル。

 

「ここまで手を入れたアナルの全開を持ってしても、入りきれないかもしれないほどの大きな主のマーラ様。ごくりっ」

 

激しいまぐわいを想像して後ろの穴は期待と怯えに震え、前の穴は濡れそぼる。

 

「わ、私のアナルが無事に主のマーラ様を収めきれるよう、主もお祈り下さいませっ。あっ、あおおおおおおっ!?」

 

霧の中を進む豪華客船の一室から、獣のような女の嬌声が漏れ聞こえ始めた。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 0:00>

 

<まーるきゅんっ>

 

りせのマヨナカテレビはっきり版。

突き出された彼女のお尻がプルンッと揺れるシーンから始まった。

りせに一番似合うゴールドのハイレグビキニの尻。

実に俺得な映像である。

あの尻もさっきみたいに掘って掘って掘りまくりたい。

 

<ついこの間十六歳になったばかりの華の女子高生トップアイドル、"りせちー"でーす!>

 

お尻から腰、胸、笑顔へと舐めるようにカメラが進む。

性的なインパクトが生じるアングルで、星がキラリと溢れるエフェクトが入る。

ちなみにりせの誕生日は六月一日である。

 

<みんなー誕生日プレゼントたっくさんありがとうー。今回わぁ、ファンの皆さんへのお礼も兼ねてー、すっごい企画に挑戦しちゃいまーす!>

 

八十神高校の冬服の上を持ち出し、前を隠すりせ。

 

<嬉し恥ずかしの~っ、スゥ・トォ・リィ・プゥーッ>

 

恥ずかしげに頬を染めて大胆宣言。

制服を大きく投げ捨てた瞬間、アバンがドン!と表示。

 

"りせちー!見せちー!スペシャルプレゼント企画!熟し始めた果実をひと皮剥いて!見ごろ食べごろお年頃!!!"

 

だそうだ。

 

<もう~だいた~んすぎ~。でもぉアタシももう十六歳。結婚してガンガン子作りだって出来ちゃうんです!なのでここでまるっと脱いで一足お先に大人の階段登っちゃおっかなって思いま~す。おっ楽しみにー!うふっ>

 

最後はりせの瑞々しい唇からのネットリとした投げキッス。

もう辛抱堪らん!

 

って違う!

この映像を見る限り、りせは何者かに拐かされてTVの中に入れられてしまったようだ。

さっきまで無事だったのにどうして・・・。

 

とにかく彼女を助けださないと!

 

「とうっ!」

 

俺はマヨナカテレビの中に飛び込んだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 0:02>

 

<シュタッ>

 

特出し劇場丸久座のMARUKYU劇場内に到着。

目の前には先ほどマヨナカテレビに映っていた水着姿のりせが。

 

『あん、もうお客様の入場?って先輩じゃない。せっかちすぎー。ちょっと待っててね。ミュージックスタート!』

 

<パーパパヤー、パーパパーヤ、りせちー・ダイナマーイツ・ボディー・ショーターイム!>

 

『今日はもうりせの恥ずかしいとこまで全部見せちゃうからー。あははっ。この春高校生になったばかりのピッチピチのや・わ・は・だ。しっかりその目に焼き付けてね』

 

りせが舞台でポールダンスを踊りだす。

 

『うふっ』

 

くるくるとポールを使って周り、卑猥なポーズで俺を誘ってくる。

ぷるんぷるんと金色の薄い水着に包まれた形の良い双乳が扇情的に跳ねる。

 

踊るりせの瞳は水着と同じ金色をしていた。

間違いない。

このりせは彼女の中に溜まっている抑圧された思念の結晶であろう。

 

りせ本人はこの建物の中のどこかにいる。

そのりせ本人を助け出すには、小西先輩や雪子を救い出したときと同様に具現化した彼女のストレスを解消してやる必要があった。

 

彼女のストレス。

目の前で楽しげに踊るりせを見れば誰にでも一目瞭然である。

そんなにショウガールに成りたかったのか、りせ!

 

彼女が実は露出狂であると知ってファンを辞める・・・とかは無い。

全く逆で禁断の果実を頬張るかの背徳感があった。

エロくて胸がドキドキしてくる。

フツフツと燃え滾るものが心に宿る。

 

彼女の秘めていたショウガール願望をそのまま肯定すれば、アイドルへの復帰の道は断たれてしまうだろう。

だが俺は彼女のやりたいことに全て協力すると約束しているのだ。

せめてこの世界の中でだけでも彼女の願望を叶えてやりたい。

 

幸いにもこのTVの中の世界では観客は俺一人だけ。

だったら俺の前でだけショウガールになりきってストレスを発散すればいい。

 

そうだ。

りせよ。

思う存分ストリップを踊るがいい!

 

「いいだろう、りせ!【今からお前は鳴上悠専用の風俗嬢だ!】」

 

『・・・おっけ~おっけ~!エヘッ。ほらほら~センパーイ。もっと近くでアタシのエロい踊りを見てぇ~』

 

「うおおおおおーーー!」

 

誘われるままに舞台に駆け寄り、かぶり付きでりせちーのポールダンスを凝視する。

すぐ手を伸ばせば届く距離である。

 

「ゴクリ」

 

思わず手が伸びそうになる。

りせがこちらに付き出したお尻をフリフリしながら、流し目で注意してくる。

 

『お客様~、踊り子には手を触れず、マナーを守って・・・』

 

<ビッ>

 

ストリップ劇場の流儀は俺もちゃんとわかっている。

千円札を財布から取り出してりせに突きつける。

 

『あ・・・』

 

おひねりを貰うために踊るのがストリップ嬢。

彼女も成りきっている以上、その意味はわかるだろう。

 

おひねりを貰い易いように音楽に合わせて腰を振りながらお尻を差し出してくるりせ。

水着の腰紐の部分に千円札を差し込んでやる。

 

「さあ、【本物のストリップ嬢に成りきってサービスしてもらおう】」

 

『・・・アンっ、いいよー。どんなサービスがいいのー?』

 

踊りながらりせが尋ねてくる。

ここは当然。

 

「オ・ナ・ニー!オ・ナ・ニー!りせー、【オナニー見せろー!】」

 

『・・・もうっ先輩も好きねー。いいわ、本邦初公開!生で見せちゃうよ~!とくとご覧あれ。あたしのオ・ナ・ニー!ウフッ』

 

りせがポールに掴まりながら大胆に脚を開き、股を付き出すようにクネクネと腰を振る。

踊りながら器用に胸と股間をまさぐり始めた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 0:10>

 

『あ、あーーんっ』

 

さすがプロである。

音楽の終わりに上手く合わせて最大のクライマックス。

ポールを掴みながらりせがはしたなくイッテいる。

大胆なV字開脚でのフィニッシュである。

ぴゅっぴゅっと潮吹きまで披露。

 

すでに水着は綺麗さっぱり脱ぎ捨てており、マッパである。

夢にまで見たりせのピンク色の乳首も秘唇もばっちり目に収めさせて頂いた。

いやあ、凄いものを見せてもらいました。

鼻血が・・・。

 

<ガシャン>

 

突然照明が落ちる。

ん?

 

<パッ>

 

照明が点くと舞台の中央にピンク色のベッドが。

その上で裸のりせが科を作っている。

 

<ぷぁーぷぁぷぁー>

 

また淫らな音楽が鳴り始めた。

トレードマークのツインテールを解き、生まれたままの姿になりながら、りせが流し目でこちらを見てくる。

 

『さ、ここからはスペシャルステージ。りせの生エッチ実況生中継!』

 

な、なんだと!?

 

『お相手は~、一番多くおひねりをくれた~、アタシの大好きな~、先輩です!』

 

<ダラララララ、ジャジャーン>

 

ドラムの音が終わると共に、俺にスポットライトが当たる。

 

『エヘヘ。アタシたちラブラブなの。ねぇ、せ・ん・ぱ・い』

 

俺を誘うように脚を立ててポーズを取り、濡れた瞳で自分を襲うように訴えかけてくる。

 

「ご、ごくり」

 

思わずツバを飲む。

これもまたりせの願望だと言うのか!

叶えてやるしか・・・ない!

むしろ望むところッ。

 

俺はいそいそと服を脱ぎながら舞台に上がった。

ずっと夢想してきたことが現実になる。

カーッと顔が熱くなり、胸の鼓動がドクドクと暴れている。

 

「じゃ、じゃありせの初めてを貰っちゃう・・・よ」

 

落ち着け。

りせにとって最高の初体験にしてあげなくては。

 

『うんっ!アタシの初めて、早く奪ってぇ』

 

そのりせの婀娜っぽい笑みが俺の獣性を容易く解放する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 0:15>

 

りせの唇はとても甘かった。

りせは昨日の神社でのキスが初めてだったそうだ。

ならばと本当のキス、ディープキスも教えてあげる。

 

夢中になってキス。

久慈川りせとベロチューしてるという興奮はものすごいものがあった。

りせもハマったようで「これ好き~」と延々とディープキスのシーンが続く。

 

それから全身の愛撫に移る。

実際のりせ本体のものよりも明らかに1カップ以上大きな乳。

グラビアの撮影のときは大分胸を寄せて上げるものだが、盛ってなくてもそれに以上の量感のある大きさ。

これも彼女の深層意識が望んだ己のそう在りたい姿の一つなのだろう。

ある意味偽乳である。

 

しかしいくら深層意識の願望とはいえ、いや深層意識の願望だからこそ自分の躰のポテンシャル以上のものは出せないはず。

つまりこの乳はりせが頑張れば美容手術に頼らずとも自然に到達出来るサイズなのだ。

未来のりせの乳を揉んでると思えば、真偽の別は埒外となる。

今はただその最高の感触を味わうのみ。

 

当然のことながらその両のピンク色の乳首は誰にも舐められたことはない。

今日初めて男に舐められることをりせ本人にカメラに向けてはっきりと宣言させてからいよいよ吸い付く。

周りの乳肉ごと口に含んで乳輪を舐め回す。

甘いミルクのような味がした。

 

唾液に濡れた両の乳房を揺らしながら脚を開かせる。

夢にまで見た秘唇に触れる。

すごく濡れている。

指で愛撫すると激しく感じてくれた。

 

りせに対する愛情が際限なく高まる。

仮に芸能界に復帰しても自分だけのりせでいて欲しい。

りせを官能に咽び啼かせながらそんな自分勝手な想いが自然と口からこぼれてしまう。

 

「りせ、君が肌を曝したいならいくら露出しても構わない」

 

『あん、ああああん』

 

「だけど・・・【この肌に直接触れて味わっていいのは俺だけだ!】」

 

『・・・当たり前でしょー。あうっ先輩以外の他の男に触られたら全力で拒否するもん。あ、そこいいっ』

 

嬉しくなってベロンベロンと大きく秘唇を舐めてやるとすぐに潮を吹く。

先程のオナニーのときもクパァと奥まで開いて処女膜を見せたまま潮を吹いていた。

りせは潮を吹きやすい体質のようだ。

千枝や雪子と違った反応でりせの個性を知ることが出来て嬉しい。

 

そしてついに挿入フェイズに移行する。

マーラ様をりせの秘唇に宛てがってその処女を奪う前に懺悔する。

ずっと心の奥にこびり付いていた後悔を打ち明けた。

 

「りせ。すまない。俺は今まで君一筋だった。だけど俺はこの街に来てから二人の女の子と関係を持ってしまった。【俺の浮気を許してくれ】」

 

『・・・いいもん。その代わりセンターとトリを務めるのはアタシだよ!最後に必ずアタシを可愛がるって約束して!』

 

女神だ。

女神がここにいる!

 

しかしなんという芸能人気質・・・。

どんなときでもメインポジションだけは譲れないらしい。

 

「あ、ありがとう。約束するよっ。俺にとってりせは永遠のヒロインだ。ふんっ」

 

『当然でしょ!ああああああああああっ』

 

正常位でりせの初めてを奪う。

細い体を仰け反らせてシーツをきつく掴む姿が視覚的にもソソる。

 

「大丈夫か?りせ」

 

『す、少し痛いけどっ、う、動いていいよっ先輩』

 

痛みに堪えて俺の快楽を優先しようと健気に振る舞うりせ。

正確にはりせの本物の処女膜ではない。

しかしこれはりせの抱いていた処女喪失シーンへの願望なのだろう。

初体験の痛みの中でも見事に男を立てる健気な女の子、女子の理想の姿を完璧に体現していた。

 

りせの願望に沿うように血が混じった愛液がまぶされたマーラ様をりせの膣に何度も差し込んでいく。

 

『んっ、んんんっ』

 

さすがに処女だけあってほぐれていない。

こなれている千枝や雪子のあそこよりは気持ちよくない。

しかし、ずっと憧れてきたりせちーとセックスしているのだ!

その充実感が俺を射精へと急き立てた。

 

『ま、待って激しすぎっ、あんっ、んんんっ』

 

早くりせの内面を俺のペルソナ液で汚したいっ。

りせが痛みに耐え切れなくなる前に一気にフィニッシュ。

 

「りせっ、うっううっ」

 

『ああっ、先輩っ』

 

<どぷっどぷぷっ>

 

一番奥に思いっきり射精する。

精神的な恍惚感が凄い。

 

射精を終えて五感が戻ってくる。

はぁはぁと荒く息とついている汗に濡れたりせの顔が目に入ってくる。

りせは男の野性を無事受け止めきってグッタリと躰を弛緩させていた。

 

愛おしい。

 

「よく頑張ったね」

 

抱きしめてキス。

 

『先輩、えへへ』

 

りせは嬉しそうに微笑んだ。

どうやら満足してくれたようだ。

俺自身いつもグラビアを眺めて夢想してたりせとの初セックスを無事終えて感動も一入である。

 

初体験を無事終えて俺とつながったままのりせの姿がすーっと消えていく。

 

俺が抱いたのはりせの潜在願望の塊、シャドウだ。

決してりせ本人の躰じゃない。

りせ本人にとっては夢の中の出来事のようなものだろう。

でも全て無かったことにするにはあまりに悲しすぎる。

 

「【りせ、ここでの俺とのセックス、いつまでも忘れないで欲しい】」

 

それはまるで祈りのような言葉だった。

 

『・・・もうっ当然じゃない。最高の思い出になったよ!』

 

そう答え、微笑みと共にりせのシャドウは消える。

満足感と共に一抹の侘しさが残る。

しかしとにかくこれで彼女のストレスは解消できたはず。

りせの本体を探そう。

 

だが予想に反してこの劇場内に彼女の本体はいなかった。

見つけたのは上の階に続く階段。

 

"盆ジュース"を飲んで一息付いてから上の階へ移動する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 0:55>

 

『まーるきゅんっ』

 

何!?

 

上の階に移動。

突き当りの部屋の扉を開けるとまた劇場が目の間に広がる。

舞台の上には、ゴスロリ風の衣装の久慈川りせがいた。

くるりと綺麗に回ってスカートが捲れるパンチラシーンを披露している。

 

あ、あれは!

久慈川りせ初主演ドラマ、上妻物語の虎ヶ崎桃江の衣装じゃないか!

 

『虎ヶ崎桃江こと、りせちーでーす!またぁまたぁ、すっごい企画に挑戦しちゃいまーす!』

 

チープなプラスティックのディルドーを取り出し、可愛く口元に当てるりせ。

 

『フェ・ラァ・チィッ・オー』

 

恥ずかしげに頬を染めて大胆宣言。

胸元を開いて胸の谷間を露わにして卑猥な仕草で谷間にディルドーを差し込む。

その瞬間アバンがドンと表示。

"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!男を知ってヤリたいさかり!見ごろ食べごろしゃぶり頃!!!"だそうだ。

 

『もう~はっずかし~、でもぉやるからにはぁ。ど~んと体当たりで、まるっとしゃぶっちゃおっかなって思いま~す。おっ楽しみにー!うふっ』

 

りせがディルドーの先端をチロロと舐める。

クッ、まだりせはその露出願望を満たしていなかったのか!

ならば!

 

「ちょっと待ったっ!【しゃぶるのは俺のものだけにしてもらおうか!】」

 

俺はズボンのチャックを開けながら舞台に飛び込んだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 1:00>

 

『はあああぁっ・・・・ん!!』

 

生本番で初絶頂する姿を散々魅せつけた後、満足したりせの躰がすっと消えていく。

 

まずロリータファッションに身を包んだりせの初フェラを堪能して思いきっり口内射精してやる。

すぐには飲み込ませないでアーンと口を開けさせたままのポーズを携帯で激写。

白濁した口内で舌を散々踊らせてから漸くゴックンさせる。

その後スカートを捲って後背位で散々啼かせて絶頂に導いてやった。

 

しかしこの階にも彼女の本体はいない。

 

どこだ。

どこにいる。

りせ!

 

"胡椒博士NEO"を飲んで一息付いてから上の階へ移動する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 1:30>

 

『まーるきゅんっ』

 

この階のりせの衣装はソフトSMチィックなパンクファッションである。

去年の年末特番"NENE"で彼女が演じた五反田ネネの衣装だ。

 

『アタイはネネ。次の企画はこれさ!ア・シィ・コォ・キーッ!いっくぜぇー!』

 

アバンは"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!サドっぽく迫って男を煽る!見ごろ食べごろ実はマゾ!!!"。

なんでも足コキに挑戦するんだそうだ。

仕方がない・・・。

自己弁護しつつ進んで俺のマーラ様を提供する。

 

言葉攻めされながら黒タイツで包まれたりせの足でマーラ様をグニグニされて射精。

彼女の綺麗な足が俺の白濁液でべっとり汚れる。

そのままの流れで女性上位のセックスに移行。

騎乗位でりせに主導権とマーラ様を握られて腰を振られる。

 

しかしながら最後の最後で激しく腰を突き上げて反撃。

泣いて詫びを入れてくるまで連続でイカせてやるとりせは満足して消えていった。

 

この階にも彼女の本体はいなかった。

 

まだまだイケる!

 

"やそぜんざい"を飲んで一息付いてから上の階へ移動。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 2:00>

 

『まーるきゅんっ』

 

この階のりせの衣装はリーグジャパンフットボールの東京ヴィクトリーのユニフォームである。

去年彼女がそのチームの公式サポーターをしていたときの衣装だ。

 

『みんなげんき~?今日はこの練習だよっ。パァ・イィ・ズゥ・リィーッ!うふっ』

 

アバンは"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!あなたのボールも転がします!見ごろ食べごろソープ嬢!!!"だった。

 

りせが披露したかったのは趣向を変えての己のシャワーシーン。

そこからソーププレイによるパイズリだった。

試合後の汗を落とすというシチュエーションで、りせが生シャワーを披露。

俺はシャワー室に強引に乗り込んでくるコーチという役どころで登場。

一緒にシャワーを浴びる。

 

ボディソープでヌルヌルになった躰を絡ませて互いの躰を愛撫し合う。

娼婦のように甘えた声で俺の2つのボールを巧みに転がしながらパイズリをしてくるりせ。

トレードマークであるツインテールを汚すくらいに激しく顔射してやる。

 

そのままの流れで立位でのセックスに移行。

シャワールームに彼女の喘ぎ声を幾度も反響させた。

抱き上げながら激しく中に射精してやるとりせは満足して消えていった。

 

この階にも彼女の本体はいなかった。

 

だんだん腰が重くなってきた。

だが俺のりせへの愛はこんなものではまだ尽きない。

 

"リボンナポリン"を飲んで一息付いてから上の階へ移動。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 2:30>

 

『まーるきゅんっ』

 

この階のりせの衣装はチアガールのユニフォームである。

制汗剤のCMで話題になったときの衣装だ。

 

『今回はコレで先輩を元気にしちゃおうと思います!ワァ・キィ・コォ・キーッ!フレー、フレー、せ・ん・ぱ・いっ!』

 

アバンは"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!こんなとこまでアナタ色!見ごろ食べごろワキどろどろ!!!"だった。

 

りせが披露したかったのはワキコキ。

りせちーはとても綺麗なワキをしており、CMでも大きくクローズアップされたことがある。

ワキ好きには堪らないワキらしい。

再びプラスティックのディルドーを取り出してどんなポーズがいいのかワキに当ててポージングを始めるりせ。

チアガールなりせのワキはやはりかなりエロかった。

 

ディルドーの代わりに使えと俺のマーラ様を付き出してやる。

後ろから前からりせのワキにマーラ様を差し込む。

思いっきり射精してその綺麗なワキを俺の白濁液でべっとりと汚してやった。

 

そのままの流れでりせのパンティを使った俺の自慰をノーパンのチアコスで応援するという荒芸に移行。

最終的にりせは我慢できなくなった俺に押し倒される。

寝転んで足をヴィクトリーのVの字型に開いて決めポーズをとってるりせに伸し掛かり、屈曲位で掘るようにガンガン突く。

りせの献身的な応援を受けて射精を完遂し切るとりせは満足して消えていった。

 

この階にも彼女の本体はいない。

 

りせの卑猥な応援のお陰で頑張れた。

だが行為を終えたに瞬間どっと疲れが溢れ出してしまう。

 

"リボンシトロン"を飲んで一息付いてから上の階へ移動。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 3:00>

 

『まーるきゅんっ』

 

この階のりせの衣装はOLのパンツルックである。

資格のCMで話題になったときの衣装だ。

 

『わかってるよ。私だけは本当のあなたのこと。これが見たいんでしょう?スゥ・カァ・トォ・ローッ!いや~ん』

 

アバンは"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!アイドルだって人間です!見ごろ食べごろお漏らし頃!!!"だった。

 

りせが披露したかったのはスカトロ。

舞台の上にトイレの個室がセットされていた。

個室に入ったりせがパンツを下ろして洋式便座に腰掛ける。

そして恍惚とした表情でチョロチョロと小水を出し始めた。

夢にまで見た淫らな光景にマーラ様が一気に復活する。

 

彼女と不倫関係にある上司の役どころでりせの入っているトイレの中に押掛ける。

甘えた声でお尻を突き出してくるりせの指示に従って浣腸液をその尻穴の窄まりに注入。

洋式便座にM字開脚でまたがったりせが大をするところを間近で観察する。

 

そのままの流れでこの前覚えたばかりの水の洗浄魔法を使った後、りせのアナルを座位で犯す。

普通ならば拡張作業から始めて長い準備期間が必要になるところだ。

だがこのりせは彼女の潜在意識が生み出した思念体である。

ケツ穴も彼女自身の願望が反映された緩さになっていた。

 

俺のアナル初体験?の相手はりせになる。

自分にとって初めてのアナル掘りのはずなのにまるで経験済みかのようにコツを掴むのは早かった。

散々にりせを啼かせた末に射精するとりせは満足して消えていった。

 

この階にも彼女の本体はいなかった。

 

今までと違ったベクトルでの誘惑に俺のマーラ様も頑張ってしまった。

だがさすがにもうエンプティランプが点滅中である。

 

"アムリタソーダ"を飲んで一息付いてから這うように上の階へ移動。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 3:30>

 

もう何度射精したのだろうか。

俺自身もはっきりと覚えていない。

 

だがこの世界では想いの力が現実になる。

俺のりせへの愛情は無限大だ

回復剤を飲み、なんとかマーラ様をいきり立たせる。

 

『あんっあんっあんっ、お代官様ぁ、もう勘弁してくださいまし!』

 

再び俺は舞台の上でりせを抱いていた。

この舞台でのりせの衣装は、人気の連続時代劇のSP回で彼女がゲスト出演したときの町娘の和装である。

この衣装が話題を呼んだのは、りせがメディアでツインテール以外の髪型を披露した初めてのシーンだったからだ。

確かにサイドテールのりせは新鮮だった。

 

ちなみにりせが披露したかったのはレイプされる自分。

アバンは"りせちー!見せちー!チャレンジ企画!誘ってないよホントだよ!見ごろ食べごろレイプ頃!!!"である。

 

吉原の遊郭的なセットでお代官様による帯回しプレイ。

その後、行灯の頼り無げな炎で淫靡に照らされている布団の上で、嫌がる彼女を無理やり犯す。

 

側位の体勢でりせの片足を高く持ち上げる。

恥ずかしい格好にりせの羞恥心もMAXになる。

その状態でねちっこくりせの子宮をマーラ様で攻め立てた。

 

『ああああぁぁぁっーーーー!!』

 

「うっ」

 

ドクンドクン。

 

絶頂と射精がぶつかり合って二人でプルプルと体を震わせ合う。

 

絶頂の緊張から一気に体の力を弛緩させ、ガクリと崩れ落ちるりせ。

その躰がスッーと消えていく。

周りのセットもりせと一緒に消えていった。

 

「はぁはぁはぁ」

 

MARUKYU劇場内に俺の吐く荒い息の音だけが響いた。

もう霞も出ない状態である。

シオシオのパーである。

 

これでりせの願望を叶えたのは都合七度目。

このコスチュームプレイはいつまで続くのか。

彼女の露出願望が正直怖くなってきた。

 

しかしここまで自己顕示欲が強くないとアイドルというものは勤まらないのかもしれない。

その意味で彼女はやはりトップアイドルなのだろう。

 

舞台の上に疲れた躰を横たえながら少し休憩。

明日も学校はある。

もう今日の探索は諦めるしかないのか?

 

『本当の自分なんてない』

 

え?

誰だ?

 

<カツン、カツン>

 

劇場の入り口の向こうから誰かの足音が聞こえる。

 

『本当の、自分』

 

<ガチャリ、キィィ>

 

現れたのはりせだった。

ホットパンツにTシャツ姿のラフな格好をしている。

 

「りせ?」

 

あれはりせ本人か?

いや様子がおかしい。

黒いオーラが彼女の体を取り巻いている。

 

この違和感は何だ?

 

慌てて飛び起きる。

ガクリッ。

腰に力が入らない!

 

「くっ」

 

『実に愚かだぁ!』

 

りせが両手を掲げるとその躰から一気に霧が吹き出す!

 

<プシューーーー>

 

霧の中にりせの姿が隠れる。

 

『真実は常に、霧に隠されている』

 

真実、だと?

その単語に聞き覚えがあった。

あれは確か。

この八十稲羽に来た当日の夜!

 

「お前か!お前が・・・うわっぷ」

 

一陣の風が巻き起こる。

空中に黒い巨大な孔が浮かび上がって辺りの霧が吸い込まれていく。

 

その孔の前にりせの躰が浮かんでいた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 4:00>

 

『我は影、真なる我。何かを掴んでも、それが真実であると確かめる術は決してない』

 

虚ろな瞳のりせが語りかけてくる。

どうやら孔の奥に潜む何者かに操られているようだ。

俺が限界に達するのは待っていたらしい。

なんて狡猾な奴だ!

 

バリバリと劇場の内装が剥げて暗い孔の奥に吸い込まれていく。

凄い吸引力だ。

俺も飛ばされそうになってまともに話すことも出来ない。

 

『ならば真実を求めることになんの意味がある。そもそも正体さえわからないものをどうやって見つける。真実など探すから辛い目に会う』

 

「た、確かに腰が辛い!うぷっ、だが本望だっ!」

 

『一つ真実を教えてやろう。お前にこの娘は救えない』

 

「どういう・・・意・・・味だ?」

 

『お前にはこの娘の望みがわからない。お前はこの娘について何も見ていない』

 

許せない暴言だった。

 

「何を・・・言っている!【俺以上にりせの全てを見た男はいない!】【来いエクスカリバー!!】」

 

ぶちきれてしまう。

 

<ザシュ>

 

エクスカリバーを床に突き立て力の入らない腰に活を入れ、りせの正面に立つ。

 

「俺がどんなにりせを見続けていたか!お前に思い知らせてやる!」

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 4:15>

 

確かに今の俺の精巣はすっからかんだ。

だが俺のりせへの愛が尽きたわけじゃない。

積み重ねてきた愛の歴史自体が俺の力になる。

 

この世界に来てりせを知ってからの日々に想いを馳せる。

 

初めて雑誌を手にとって彼女のグラビアを見たときの衝撃。

それから彼女のグラビアをオカズにマーラ様をこすり続けてきた懐かしい日々。

一射精、一射精が彼女への愛の印だった。

 

その証を今!

 

「・・・いくぞ!【消費された、かつての、スペルマ!】」

 

エクスカリバーを担ぎあげて一閃する。

 

切り裂いた空間から飛び出した大量のペルソナ液がりせに向かって飛んで行く。

 

行け!

かつて俺がりせに向かって放った子種たちよ!

今こそそのりせへの受精欲を叶えるとき!!

 

ちなみに5リットルくらい。

我ながらよくあんなに出したなー。

でも無駄にならなくて良かった。

 

全てを出し切ってガクリと膝を尽きながら放たれたペルソナ液の行方を見守る。

 

<ビチャビチャッ>

 

一滴残らずりせに掛かる。

顔面パックかと見間違うほどりせの顔にペルソナ液が張り付く。

ノーブラの胸元にも大量に降りかかり、ホットパンツから伸びるすらりとしたナマ足にもペルソナ液が伝わっていく

その瞬間スーーーッと俺の躰から何かが抜けていく感覚があった。

 

「・・・はああああっ!あああああああああ!!・・・ん、ん、んんっっ!!ふああああん・・・っ!!!」

 

『・・・うおおおおおおおおおおおおお!』

 

大量の俺のペルソナ液を浴びたりせが白くドロドロになりながら嬌声をあげる。

りせの躰から黒い霧が引き剥がされていき、背後の暗黒孔に吸い込まれていった。

 

どうやら俺の提示したこれ以上ない明白な証拠に反論できず、恐れをなして逃げ出したらしい。

奴がこの事件の犯人だろう。

追わなければ!

 

ヨロヨロと何とか立ち上がって閉じかけている孔に向かって駆け出す。

しかし孔に飛び込むことは叶わなかった。

宙に浮かんでいたりせの躰がズルリと落ちてきたのである。

 

「おおッ」

 

腰砕けになりつつもりせを抱きとめる。

もう孔は閉じかけている。

思わず叫んでいた。

 

「クソっ、名をっ【名を名乗れ!】」

 

『・・・我はアメノサギリ、人を望みの前途へ導くもの・・・』

 

その声と共に完全に孔は閉じる。

雨野沙霧・・・。

いったい何者なんだ?

本名なのだろうか?

まるで売れないAV女優の芸名みたいだな。

グーグル先生に尋ねてみよう。

 

いや待て。

詮索は後だ。

まずはりせである。

腕の中のりせの様子を確認する。

 

ペルソナ液塗れのりせは目をギュッと瞑ってアンアンと呻きながらプルプルと躰を震わせている。

千枝や雪子のときと同じである。

一晩待っていれば落ち着くだろう。

 

やっと助けられた。

彼女の様々な願望を叶えるために身を削って射精した甲斐があった。

りせの華奢な躰をギュッと抱きしめようとして・・・。

 

「・・・臭っ」

 

見る分には素晴らしい眺めだったが正直臭いことこの上ない。

たとえかつて自分が射出した体液であろうとも臭いものは臭い。

りせ本人は臭いどころではないようだが抱えている俺の方は堪らない。

体力の限界に達していたこともあって俺も気が遠くなりそうになる。

 

とにかくマンションに戻ろう。

俺は朦朧としながらりせを抱えて特出し劇場丸久座を後にする。

臭い、眠い、疲れた!

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 4:30>

 

TVから出てマンションに戻る。

すでに空が白み始めたようだ。

 

まずはペルソナ液塗れのりせを風呂場に連れて行かなければならなかった。

しかし睡魔に襲われて一瞬意識が途切れそうになる。

知らず倒れ込みそうになっていた。

 

悶えてるりせの躰を投げ出さないように踏ん張る。

だがフローリングの床に垂れたペルソナ液で足が滑った。

 

<ズルッ、ドシンッ、ガシャン>

 

りせを抱きかかえたまま尻モチをついてしまう。

その拍子に脚がテーブルに当ってしまった。

テーブルの上に置いていたカップが激しく鳴る。

そして俺は弁慶の泣き所を打って激しい痛みに悶絶する。

 

「ぐ、ぐぅ」

 

かなりうるさかったみたいだ。

寝ていたであろう千枝と雪子が起きてくる。

眠そうな目を擦りながら居間の様子を伺いに来る。

 

「ふぁー、なんの騒ぎー?」

 

「ご主人様、どうしたの?」

 

しかしペルソナ液塗れのりせを見て眠気が吹っ飛んだようだ。

 

「うわっ、これりせちー!?」

 

「ひどい!誰がこんなことを!?」

 

当然集団レイプされたと思うよなぁ。

 

「・・・いや、落ち着いてくれ。彼女は無事だ。それにこの白いの。全て俺のだから」

 

「「えぇ!?」」

 

怯えたような目でこちらを見てくる二人。

 

「・・・だから違うって。俺は彼女を助けただけだよ。すまない。あと任せていいか」

 

説明するのも面倒だった。

抱き合って身を竦ませている千枝と雪子に後始末を頼む。

 

「もう限界なんだ。りせの躰を洗ってあげて。少し休むから学校に行く時間になったら起こしてくれ」

 

「「・・・う、うん」」

 

気絶しているりせを千枝と雪子に預ける。

自分のペルソナ液で濡れた服を脱ぎ捨てながらベッドルームにフラフラと向かう。

 

「ねぇ雪子。こんなに出せるなんて、今まで全然本気じゃなかったってこと、だよね?」

 

「千枝。私たち、いつかご主人様にヤり殺されてしまうんじゃないかしら」

 

ん?

何か千枝と雪子が小声で言葉を交わしていたようだが、よく聞こえなかった。

 

「・・・どうかしたか?」

 

「「いえ!なんでもないです!!」」

 

振り返って尋ねると二人は飛び跳ねるように作業に取り掛かった。

千枝はりせの躰を洗って雪子はりせの服の汚れを落とす分担になったらしい。

 

後は二人に任せて少し寝よう。

ああ三時間しか寝れないな。

つらいわー。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 6:00>

 

<ジュル。チュパ。千枝、こっちもういいみたい>

 

<じゃあいくよ。よっと。やっぱ、りせちーの躰かるーいっ>

 

ん・・・。

股間の先が気持ちいい。

 

<千枝、そこでストップ。りせちゃんの方はどうかな・・・。あら。すっごいヌルヌル>

 

<うん。さっきからずっと軽くイき続けてるみたい。これならあまり痛くないでしょ。あ、雪子。そっちの脚持って>

 

再びペルソナの先に生暖かく気持ちの良いものが当てられる。

 

<じゃあ千枝、タイミング合わせていっきにいきましょう>

 

<おっけー。さあ、りせちー、処女喪失の時間ですよー>

 

<<せーの!>>

 

グッ、プチップチッ、ズルンッ!

 

「ああああああっーーー、あああああんんっっ!」

 

「ぐぉッ!うぁ・・・?」

 

あ、ありのまま、今、起こったことを話すぜ!

目が覚めたらリアルりせの処女を頂いてた。

な・・・、何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった・・・。

先っちょだけだとか違う方の穴でしたとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

さっきまで処女だったりせの子宮口の感触までガッチリ俺のマーラ様の亀頭が味わってたぜ・・・。

 

「な、何を・・・?」

 

「ウフフ、ご主人様~、憧れのりせちゃんの処女の味はいかがですか~?」

 

「さっ、りせちー、最初はゆっくり腰を動かしていくよ。大丈夫、りせちーならすぐに慣れるって」

 

「あん、あん、あん、あれ?あ・・・、アタシ、せんぱいとまたエッチしちゃってる・・・。せんぱいぃキモチいい?、アタシ、キモチいいよぉっ」

 

騎乗位の体勢で俺の疲れマーラ様に処女を捧げているりせ。

そのりせの左右についてりせの腰を動きをサポートする雪子と千枝。

驚愕の光景が目の前にあった。

 

破瓜の血が流れるのも構わずにりせは腰の動きを止めない。

左右の雪子と千枝は嬉しそうに微笑みながらりせの処女喪失シーンを見守っている。

女子三人ともがその瞳を金色に濡らしてもの凄く淫蕩な表情になっていた。

 

「な、何で・・・?」

 

「だって、私たちだけだとー、ご主人様のお情けを受け止めきれないんですもの。これからはりせちゃんにも手伝ってもらおうかなって」

 

「雪子、本当のこといっちゃダメだってば!悠ってりせちーのこと大好きだったじゃん。アタシたちからのプ・レ・ゼ・ン・ト。エヘッ」

 

雪子、お前は何を言ってるんだ?

千枝も、エヘッ、じゃねーよ!

二人ともあとで見てろよ!

倍返しだ!

 

「もう、やだー・・・あっ、あふうっ!せんぱい!あたしとエッチしてるときは・・・んっ!あたしに集中してってば!ひああっ!」

 

アタシを見て!とりせの腰の動きがどんどん加速していく。

 

「ふふふ、りせちゃん今日は大丈夫な日みたい。思いっきり出してあげて下さい。れろれろ」

 

雪子がりせから離れて俺の横に寝転んで俺の乳首をナメナメと舐め出す。

 

「じゃあ、あたしはこっちねー。よっと」

 

千枝の方は両手でりせのクリトリスと俺のゴールデンボールを同時に刺激し出した。

 

「おおっ・・!そ、そこはダメだってっ!うおっ!」

 

「くぅあ・・・せんぱい、アタシ、イッちゃう!・・・あああああああああぁ!」

 

雪子と千枝の二人に導かれて俺とりせの二人は絶頂に押し上げられていった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 8:00>

 

「じゃあアタシたち学校あるんで。お二人でごゆっくりー」

 

「ご主人様は体調不良でお休みですって諸岡先生に伝えておくから心配しないで」

 

そんなことを言いつつも交わり続ける俺とりせを置いて千枝と雪子はさっさと学校に行ってしまった。

今は寝室の広いベッドにりせと二人きりである。

 

りせは仰向けで寝ている俺の上にうつ伏せで覆い被さって胸の上に頭を乗せている。

ピロートークでいろいろなことを話した。

 

「躰の方は痛まないか?」

 

「うん、もう大丈夫。先輩の大っきすぎるよー。またちょっと血が出ちゃったみたい」

 

りせの中ではさっきのは初体験じゃなくなってる?

マヨナカテレビの中での俺の願いはしっかりと生きていたようだ。

 

「ゴ、ゴホン!しかし参ったな。りせも犯人の顔見てないのか」

 

「うん、気がついたらもう先輩とエッチしてた・・・ポッ(赤)」

 

昨日からりせのおばあちゃんは商店街の泊まりがけの寄り合いで不在で、昨晩りせは一人で留守番していたとのこと。

俺に電話しようとしたときに誰かが訪ねてきて、戸を開けたところで意識を失ったらしい。

 

マヨナカテレビの中でりせを操っていた"雨野沙霧"と名乗った謎の存在がラスボス。

その雨野沙霧に使嗾されている人物が恐らくこちらの世界にいる。

そいつが山野アナ、小西先輩、雪子、りせをTVの中に入れた犯人だ。

結局また今回も捕まえることが出来なかったことになる。

痛恨だ。

 

りせのおばあちゃんは昼過ぎに帰ってくる。

明日のお店の準備もあるそうで、それまでにりせを家に戻す必要があるのだが・・・。

 

「腰が抜けちゃって歩けないかも。どうしよう」

 

「俺も一緒に付いて行くさ。りせは一人じゃない」

 

「ありがとう。・・・あたし、この街に来て良かった」

 

「え?」

 

「あたしにもやれることが。居場所が出来た」

 

「居場所?」

 

頬を赤らめながら俺の首筋に顔を埋めてくる。

 

「悠先輩のエッチの相手」

 

「そ、そうか。よ、よろしく」

 

「あたし頑張るね。雪子先輩に千枝先輩だっけ。あの二人に負けないもん。ここがあたしの居場所。ね、いいでしょ?」

 

甘えてくるりせ。

自分の頬に血が登るのがわかった。

キュッと華奢なりせの躰を抱きしめる。

 

「ああ。問題ないよ。好きだ、りせ。・・・ん」

 

「んんー、チュッ。もっとー、せんぱーい、エヘッ」

 

あの恋焦がれていたりせが俺の彼女の一人になってくれたのである。

俺の心は幸福感で満ち溢れる。

 

尚、りせの言葉どおり以降りせがマンションに泊まりに来たときは右に千枝、左に雪子、上にりせのポジションが基本になる。

またトリプルフェラのときも真ん中は常にりせ。

センターは渡せない!のだそうだ。

アイドルの業なのだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年6月24日FRI 晴 13:00>

 

学校をサボってりせと二人で裸で絡み合ったままゴロゴロ過ごす。

少し寝直してから一緒にお風呂に入ってまたまたイチャつく。

身繕いをした後二人で丸久豆腐店に向かう。

 

すでにおばあちゃんは帰宅していた。

おばあちゃんに必死に謝るりせ。

俺もフォロー。

 

おばあちゃん。

処女を失ったばかりのりせの所作がおかしいことに目ざとく気付いたらしい。

「りせのこと、よろしく頼みますね~」と逆に頭を下げてくる。

激しく恐縮する。

 

恐縮ついでに今後りせが泊まりたいときにマンションに泊まりに来れるよう根回し。

真摯にお願いしたらおばあちゃんは快く承諾してくれた。

ありがたい。

家族同然の扱いを受けて家の中に案内されてお茶まで出される。

 

 

こうして俺のセックスライフはますます充実することになる。

りせは八十神高校への転入を7月11日から予定していた。

それまでの間、俺のマンションに入り浸たる。

俺は千枝、雪子、りせの三人を代わる代わる抱いて4Pを大いに楽しんだ。

 

1セットのローテーションは「千枝→雪子→りせ」か「雪子→千枝→りせ」のどちらか。

トリは必ずりせが勤める。

また一日の最後のオオトリのグランドフィナーレの相手についても、本人の希望どおりにりせになる。

イキ疲れて千枝と雪子の二人が先に堕ちているだけとも言えるがりせ本人は満足そう。

 

りせの加入により夜の負担が少なくなったことが嬉しいのだろうか。

雪子と千枝の表情も明るくなった。

しかしそれも長くは続かない。

 

面白くないのでこれまで以上にねちっこく愛してあげることにしたからだ。

勿論二人も等分に愛していることを証明するためだ。

俺に射精される回数は確かに2/3に減るが、彼女ら自身の絶頂回数は決して減らない。

否が応でも女を日々磨いていくことになる。

 

特筆すべきはりせが"匂い立つ泡浴場"で本業のアイドルの技能を存分に活かしてきたことだ。

コスチュームプレイに関しては魅せ方が上手くてアドリブが効くりせの独壇場だった。

さすがに現場での物覚えが良く、経験で劣るテクニック面についても雪子や千枝からすぐに技術を吸収していく。

そのお返しとばかりにりせは二人に対してプロ仕様の着付けやメイクの仕方を指導。

うまい具合に影響し合って雪子と千枝もどんどん垢抜けていった。

雪子、千枝、りせの三人とも最高級の泡姫としてどこに出しても恥ずかしくないレベルにまですぐに到達する。

 

りせのハーレム加入によって俺のマーラ様は乾く暇がないほどフル稼働となる。

 

 

 

<SYSOP 2011年6月24日FRI 晴 --:-->

 

鳴上悠に自分の影を犯され、久慈川りせがペルソナに目覚める機会が失われました。

久慈川りせはマヨナカテレビに入らず、鳴上悠とセックス三昧の充実した高校生活を送ります。

久慈川りせは高校在学中に妊娠してアザディスタンに留学し、鳴上悠と結婚してアザディスタン国籍を得ます。

久慈川りせは帰国後ネットへと活動拠点を移し、エロすぎるダンスが売りのPVでMewTubeにて19億回再生を達成して華麗に復活。

ネットスターとして精力的にPVリリースを続ける傍ら、別の芸名を使って女性向けAVの主演女優としても活動を開始し、りせ専用男優の鳴上悠とのあらゆるプレイ(キスの仕方から、受精・妊娠中のセックスの仕方まで)のハウツービデオをシリーズ化して大ヒットを産みます。

恋愛のアルカナが消滅しました。




原作で七人出てきたりせの影を個別にコマしてみました。
これでやっと4Pに到達。まだ先は長いですが残るは直斗きゅんです。


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第11章 塔

タイトルに偽りあり。エロなし。
中島君も出ますけど虚無(みつお)その1になります。


<VELVET ROOM 2011年7月10日SUN 曇/晴 --:-->

 

「や、やっと戻られましたのね、主」

 

ボンテージ姿で目隠ししたマーガレットがベッドの天蓋から伸びた鎖に繋がれている。

 

「厳しい孤独の時間を乗り越え、新たな快感が私の中で芽生えつつあります」

 

拘束された格好で突き出されたままの尻は、引き締まっていて叩き甲斐がありそうだ。

 

「放置プレイ。このプレイもきっと主のお情けなのでしょう」

 

ベッドの上には鞭とロウソクが準備されており、これから起こる被虐の快感にマーガレットの女陰は見事に濡れていた。

 

「SM。ソフトなプレイは女の欲求を満たす愉悦となりえますが、過剰にハードにされると、刺しますわよ。あっ痛っダメっ」

 

小生意気なマーガレットを完全に屈服させるべく、鞭の音が鳴り響いた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 9:00>

 

本当に唐突ではあるが、俺たちのクラスの担任、モロキンこと諸岡金四郎氏が死んだ。

この日の早朝、マンション屋上の給水塔の柵に吊るされているモロキンの死体が発見されたのだ。

 

この事件はTV各社で字幕速報までされ、朝から八十稲羽市は大騒ぎになっている。

三ヶ月前に発見された山野アナと同じように、空に近い場所にモロキンの死体が吊るされていた。

そのためマスコミは連続逆さ吊り殺人事件と騒ぎ立て始めている。

 

モロキンが日本代表の次期エースと目される一条の属するバスケ部の顧問だったことも、ニュースバリューを上げる一因となっていた。

一条も大変なことになるだろうな。

 

警察に対する風当たりも厳しい。

山野アナを殺した猟奇殺人犯を警察が野放しにしているために、また事件が起きてしまったという論調である。

だが俺から見るとどうにも腑に落ちない点がいくつもあった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 13:00>

 

雪子と千枝と共に天城屋旅館のバイトを昼で上がり、りせと合流して四人で愛屋で昼食を取る。

りせは初めての愛屋来訪のためメニューを知らない。

千枝の強烈な推薦もあり、また同じ料理なら出てくるのも早いだろうと四人とも肉丼を注文する。

 

配膳されるまでの間、モロキン殺害の一件について意見を交わす。

 

「狙われるのは女の人だけじゃなかったの?それにTVにも出てないよね。モロキン」

 

「マヨナカテレビも最近は全然放送されてないよね」

 

千枝と雪子の言うとおりだ。

モロキンの死に方はこれまでの被害者とは一線を画している。

 

山野アナと何らかの関係がある、とは思えない。

TVで報道されてた人、ではない。

若くて綺麗な女性、ではない。

マヨナカテレビに出演、してない。

 

唯一の共通点はこの街の住人という点だけ。

 

「男の人でもいいなら結構前からTVに出まくってる一条くんが無事なのは何でよっ。もうとっくの昔に超有名人になってんじゃん。うー、わっかんないっ」

 

頭を抱えている千枝。

 

「いろいろヒントを掴んでたような気がしてたけど結局全部ハズレだったのかな。やっぱり無理なのかな。私達で犯人捕まえるなんて」

 

雪子が憂いた顔でつぶやく。

 

「何言ってるの!そもそも犯人探しは私達の大好きな悠先輩が始めたことなんでしょ!恋人の私たちが腰砕けになったらそれこそ恋人失格だよ!それでいいの!?」

 

りせ・・・。

 

「ちょ」

 

<ドンッ>

 

口を開こうとした瞬間、目の前に例のスペシャル肉丼が突然置かれる。

 

「・・・あいかちゃん、こんなの頼んでないよ」

 

「サービス。ほんとは雨の日にしか出さないスペシャルメニューだけど」

 

厨房を見るとおやじさんが2杯目に取り掛かろうとしていた。

まさか全員の肉丼がスペシャル肉丼にチェンジ・・・だと!?

 

「えーと、タダってことでいいんだよね」

 

「ううん。一人三千円」

 

「断る!」

 

頼んでない高額商品、しかも食べきれない量のものを黙って配膳。

そして金を取るのか?

なんてひどい店だ・・・。

 

この店、贔屓にするのはやめた方がいいかもしれんな。

最近は顔を合わせる都度、あいかちゃんにフェラされてしまっている気がするし!

 

というかこの娘、俺が困ったときやピンチのときには何故か必ず颯爽と現れるんだよな。

ある意味凄いスキル持ちだ。

 

今日もバイトの休憩中にミニバスケコート近くの自販機であいかちゃんと遭遇していた。

"リボンシトロン"を買おうとしたら小銭が無くて困っていたところだった。

それで俺はたった百円のために外でマーラ様を晒すはめになる。

 

俺のペルソナ液には百円の価値しかないのかっ!

あいかちゃんのお口に盛大に射出しつつ、心の中で密かに慟哭してしまっていた。

 

そんなこともあって今日はやたら好戦的な気分である。

断固としてこの無法に抗議。

小皿を用意してもらって四人で一つのスペシャル肉丼を分けることにする。

 

「ちぇっ。冷めないうちにどぞー」

 

「「「「・・・頂きます」」」」

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 13:30>

 

三ヶ月振りのスペシャル肉丼である。

やはりニクニクアブラアブラニクコメニクと量が半端ない。

 

「これすっごい量。私もう無理。悠先輩お願いー。私の分も食べて」

 

「私もあんまりお腹すいてないの。千枝、お願いしていいかな。ごめんね」

 

もともと小食なりせと雪子は普通の一人前でも食べきれないだろう。

結局やはり肉丼大好きの千枝と俺が丼の中の肉と米の大部分を消費することになる。

 

だがわずかな助勢と言えどもりせと雪子が手伝ってくれたのは大きかった。

ご飯が見えてくるタイミング、丼の底に箸が辿り着くまでにかかった時間は、千枝と二人で頑張った刻とは比べものにならないほど速い。

一人では手強いスペシャル肉丼も皆でかかれば怖くない。

 

「こうやって皆で助け合えば、どんな難関でも突破することができる」

 

三人の愛しい女の子たちに訴えかける。

 

「うん、そうだよね。助け合えばいつかは答えにたどり着けるよね」

 

「うん、いつかきっと」

 

「うん、先輩!」

 

感ずるものがあったのだろう。

三人とも熱い目で応えてくれた。

俺の言いたいことを理解してくれたらしい。

 

「じゃあ今日はその難関だった雪子のアナルバージンを貰うんで。皆で協力して最高の夜にしよう」

 

「えええ、いつの間にかそっちの話!?」

 

「ポッ(赤)」

 

「えー、雪子先輩いいなー」

 

すでに千枝のアナルバージンは俺のマーラ様によって散らされている。

なかなかに甘美なアナルセックスであった。

次は雪子の番である。

 

ミミズ千匹・数の子天井な前の穴名器と違って雪子のアナルは実に慎ましやかだ。

千枝よりも拡張に時間がかかっていた。

昨日確認したらやっといい具合にほぐれていたのでもう大丈夫だろう。

 

ちなみにりせのアナルは現在絶賛拡張中である。

かなり柔軟なアナルをしているらしく、千枝のときよりも時間がかからなさそうだった。

すでに彼女はTVの中でのアナルセックスで絶頂を散々経験している。

そのことが現実のアナルに影響しているのかもしれない。

 

さてJUNESの薬局に浣腸液買いに行かないと。

米粒一つまで残らず食し、丼を綺麗にして席を立つ。

 

スペシャル肉丼一杯三千円。

四人で割れば一人辺り七百五十円。

コストパフォーマンスは良い、かもしんない。

 

「得るものが大きい戦いだった」

 

主にカロリー的な意味で。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 14:00>

 

JUNESに移動する。

買い物しながら会話をしていると自然とまたモロキンの件の話になる。

 

「ひょっとしてもうTVの世界で殺せないってわかったから、現実の世界で殺したのかな」

 

「それあるかも。悠、続けて三人も助けているんだし」

 

雪子の意見に千枝が賛同する。

確かに考えられる話だ。

だが・・・。

 

「どちらかと言うと模倣犯の線が強いんじゃないかな」

 

「模倣犯?」

 

「マネしたってこと?」

 

モロキンは教師以前に人として終わっていた。

指導が苛烈すぎて生徒との摩擦も絶えなかった。

噂では彼と合わなさ過ぎたせいで、ノイローゼで転校していった生徒までいたらしい。

 

「モロキンに恨みを持っていた人間が一件目の殺人に真似て彼を殺す。そしてその罪を最初の犯人に擦り付けようとしてる・・・ということも考えられる」

 

「なるほどー」

 

「うん。そう考えれば、TVの報道やマヨナカテレビに映ってないのに殺されたってことも説明が付くわ」

 

模倣犯だとしたら現場の遺留品やら指紋やらから足がつくはず。

完全に警察の領分でケリがつく話だ。

今回の事件に関しては当分様子見かな。

 

「悠せんぱーい!こっちー」

 

ん?

先程から姿が見えなくなっていたりせが俺を呼んでる。

なんだろう?

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 14:30>

 

「ううううう、堪らないー。すっごいツボに入ってるー」

 

りせがマッサージチェアで寛いでた。

 

「何やってんだ、りせ・・・」

 

「んんんんん、先輩も座ってみて。凄く気持ちいいのこれー」

 

あまりこういう器具を使ったことがなかったらしい。

最新型のマッサージチェアの性能の良さに驚いている。

 

「うちに一台買っちゃおっかなー。先輩のマンションにも一台置こうよ!」

 

最近のりせは普段の生活でも素の自分をさらけ出すようになっていた。

とても良い傾向だとは思うんだけど・・・。

 

やはり周りがついこの間までトップアイドルだったりせを放っておくわけもなく。

 

「"りせちー"だってよ!」

「うそっ"生りせちー"初めて見た!」

「写真撮っていいのかなー」

 

あっという間に周囲に人だかりが出来始める。

店の社員や売り子まで集まってきてるし。

みんなマッサージチェアで喘ぐりせの姿に見蕩れてた。

 

って、花村じゃないか!?

人だかりの中にエプロン着てバイト中のはずの花村の姿があった。

りせの側を離れて花村に近づく。

 

「バイト中に何やってるんだ花村。この人だかり、迷惑だから何とかしてくれ」

 

「おっ鳴上じゃん!すげーぞ、本当に"りせちー"だ!可愛すぎるだろ!」

 

どうやら"りせちー"しか目に入ってないようだ。

・・・小西先輩に言いつけようかな。

 

「り、りせちゃん、行こう!」

 

「ほら、みんな集まって来てるでしょ。迷惑だってば!」

 

「えー」

 

雪子と千枝がマッサージチェアからりせを引き剥がす。

りせは渋々二人に従い、タッタッタッとこちらに寄ってきた。

結果としてりせと花村の距離は一気に縮まり、花村が雄叫びをあげる。

 

「うおおおおおっ」

 

「あのー、こちらの方は?」

 

「・・・ああ、花村陽介。通称ジュネス王子。俺たちのクラスメイトだ」

 

仕方がない。

りせに花村のことを紹介する。

 

「えっ、な、何っ?お前らもう知り合い?ずっりぃー」

 

「ああ、いろいろあってな」

 

「へー先輩たちのお友達なんだ。じゃ〜あ〜。はじめまして!久慈川りせです!」

 

営業用のスマイル全開で挨拶するりせ。

さすがスーパーアイドル。

破壊力抜群な笑顔だった。

 

「ヤバッ可愛いぃ!今やっと実感したぜ!確かに本物の"りせちー"だっ!」

 

・・・まあ浮足立つ花村を責められないな。

今のりせはアイドルだった頃よりも男を誘う色香がより濃厚になっている。

大抵の男なら一発で虜になってしまうだろう。

 

「明日から私も先輩たちと同じ八十神高校に通うことになりました。よろしくね、花村先輩!」

 

「"りせちー"と同じ学校!キタぜっ!俺のバラ色青春時代!」

 

んー、まあいっか。

すっごい怖い笑みを浮かべた小西先輩が向こうから近付いてきてるんだけど。

そっとしておこう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 15:00>

 

三人娘たちが浣腸液を買いに薬局に行ってる間、夕飯の食材の買い出しにあたる。

 

唐突だが沢庵が食べたくなった。

昼間食べたスペシャル肉丼の付け合わせの沢庵がやたら美味かったせいだろう。

油っぽい肉丼の中で一服の清涼剤的な役割を果たしていたあの味が忘れられない。

 

漬け物売り場に行くと"いなかたくあん"は残りニ個。

両方買うべきか少し迷うが一個だけ手に取る。

 

さて次は・・・。

 

「あれ、悠君?」

 

精肉売場で偶然千里さんに出会う。

相変わらず綺麗な人である。

妊娠六ヶ月目でお腹の方が目立ち始めている。

 

「夕飯の買い物ですか?」

 

「ええ、菜々子も一緒よ。あら?菜々子、どこ行ったのかしら」

 

あたりを見回しても菜々子ちゃんの姿は見えない。

最近何かとこの街は物騒だ。

小さな子どもを一人にするのは極力避けるべきだ。

 

「ちょっと探してきますね」

 

千里さんを置いて売り場を回る。

菜々子ちゃんはどこだろう。

 

あ、あれは!

 

先ほどの漬物売り場に菜々子ちゃんの姿が。

その側には俺と同じくらいの年代の男が立っている。

 

あの男、どこかで見たことがあるような・・・。

雪子のストーカー!

いけない!

 

怯えている菜々子ちゃんに手を出そうとしていたので、素早く近づき間に割り込む。

 

「お兄ちゃん」

 

「この子に何か?」

 

静かに威嚇する。

男の死んだ魚のような目を睨みつける。

 

「なんだよお前。あ・・・、お、お前、ゆきこの・・・。くっ」

 

男も俺のことを思い出したようだ。

男は脱兎のごとく逃げていった。

奴を追うべきだがすがりついてくる菜々子ちゃんを置いてはいけない。

 

「大丈夫かい?」

 

「うん、ありがとう、お兄ちゃん」

 

頭を撫でてやると菜々子ちゃんは微笑んでくれた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 15:10>

 

菜々子ちゃんを千里さんのところまで連れて行く。

 

「こらっ、一人で歩き回ったらダメでしょ」

 

「ごめんなさい、お母さん」

 

菜々子ちゃんは叔父さんの好物の"いなかたくあん"を取りに行っていたようだ。

あいにく残っていた最後の一つを先程の男に持ってかれたらしい。

あいつ、今度会ったらタダじゃ済まさん!

 

仕方ない。

先ほど籠に入れていたもう一つの"いなかたくあん"を取り出し、菜々子ちゃんに渡す。

 

「えー、いいのー、お兄ちゃん!」

 

花が咲いたように目を輝かせて笑う菜々子ちゃん。

うんうん、いいんだよ。

その笑顔が見れただけでお兄ちゃんは十分さ。

 

「悠ーっ、買い物まだ終わってないの?」

 

千枝?

浣腸薬を購入し終わり、食品売り場まで降りてきたらしい。

もちろん雪子とりせも一緒だ。

 

「あー、りせちーだ!」

 

菜々子ちゃんが嬉しそうに声をあげる。

 

「あの、この子は?」

 

「ああ俺のいとこ・・・、いや妹、かな」

 

雪子の質問を受けて、みんなに菜々子ちゃんを紹介する。

 

「へー、悠先輩のいとこかー。可愛いー。こんにちは!りせだよ!あなたのお名前は?」

 

「堂島菜々子です!」

 

菜々子ちゃんの目がキラキラしている。

さすが久慈川りせ。

 

「悠君。私のことは紹介してくれないの?」

 

千里さんが好奇心に満ちた目で催促してくる。

おっといけない。

 

「こちら堂島千里さん。俺の叔母にあたる人。凄くお世話になってる」

 

「ど、どうも。里中千枝です。はじめまして」

 

「天城雪子と申します。よろしくお願いします」

 

「久慈川りせです。あの、悠先輩の親戚の方ってことは、もしかして堂島刑事の・・・」

 

「ええ、堂島の妻です。皆さんはじめまして」

 

にこやかに答える千里さん。

 

「凄いわね。とっても綺麗な娘ばかり。芸能人の方まで。皆さん、悠君のお友達なのね?」

 

「「「はい!」」」

 

「フフフ、モテモテね。悠君」

 

軽く肘で突付いてくる。

い、居づらい。

 

「ご、ごめんみんな。荷物を運ぶの手伝いたいから一旦ここで解散しよう。後でりせの家の前で待ち合わせってことで」

 

モロキンの件で叔父さんは当分忙しいだろう。

千里さんの相手をする時間がなかなか取れないはずだ。

せめてこんなときくらい俺が手伝ってあげないと!

 

「いいなー」

 

「何ヶ月目なんですか?」

 

「菜々子ちゃん、楽しみだね!」

 

「うん!菜々子、弟が欲しいの!」

 

「こら。それは神様が決めることよ。六ヶ月目なの。やっとつわりも収まってきて大分楽になってきたわ」

 

俺の決意も何のその。

女の子たちが俺そっちのけで盛り上がってる。

千里さんのお腹を見つめる女子陣のキラキラ光った目が怖い。

いつか私も!という思いがヒシヒシと伝わってくる。

焦るな、ドウドウ。

 

「そうだ。皆さん、今度悠君と一緒にうちに遊びにいらっしゃいませんか?」

 

「千里さん!?」

 

「「「行きます!」」」

 

「わーい」

 

なぜか全員引き連れて堂島邸を訪問する約束までさせられてしまった。

ほわほわと夢想中な三人娘たちと一旦別れ、千里さんと菜々子ちゃんに連れ添って堂島邸まで買い物袋を運ぶ。

道中の千里さんの追求に戦々恐々となった。

さすがに正直に三人全員とお付き合いしていますとは言えず、終始しどろもどろな対応となる。

 

「あの人みたいに女の子をマンションに連れ込むなーとまでは言わないけれど。ケジメを付けるときはきちんとしないとダメよ。じゃないと・・・刺されるわ。ウフッ」

 

こ、怖いことを言う。

肝に銘じます。

三人全員幸せにしてみせます!

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月10日SUN 曇/晴 16:00>

 

堂島邸に千里さんと菜々子ちゃんを送ってから、打ち合わせどおり丸久豆腐店に向かう。

 

「ん?」

 

店の前で千枝たち三人と小柄な女性が対峙していた。

 

白い半袖のブラウスにタイトなパンツ。

小柄なのに巨乳。

いつぞやの探偵さんだった。

 

前にコニシ酒店の前で見かけた時より髪型が若干変わってる。

前はベリーショートくらいの長さだったが今はショート気味になっていた。

随分髪が伸びるのが速いんだな。

 

相変わらず化粧っ気がなかった。

だが髪型と胸元の豊かさのおかげで誰がどう見ても可憐な女の子である。

 

「おそろいですね」

 

「君は確か」

 

「天城雪子さんに次いで既に久慈川りせさんも懐柔済み、ということですか」

 

挑発的な言動と視線。

慣れない女物の服を着てオタオタしていた彼女は既にいないようだ。

この二ヶ月弱で大分慣れたのだろう。

 

そして彼女の懐柔済みという言動。

雪子とりせにはそれぞれ一晩だけ行き先が不明になった日がある。

そのことを直斗は掴んでいるようだ。

 

警察は今も雪子とりせのプチ失踪に気づいていないはず。

天城屋旅館の従業員やりせのお婆ちゃんに独自に聞き込みでもしたのだろう。

まあ探偵ならそれぐらいはな。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね。ぼくっ、オホンッ・・・私は白鐘直斗」

 

「探偵、だろ?」

 

「・・・おや、もう知っていましたか。そうです。私は警察に協力して例の殺人事件について調べています」

 

警察が探偵に協力を依頼する、だって?

それって有り得るのか?

東京の探偵ってことは少なくとも現場の判断じゃないよな。

 

「一つお願いがあります。今この街で起こっている事件について皆さんの見解を聞かせて欲しいんです」

 

「私たちに答えられる範囲でなら」

 

得体の知れない少女のヒタヒタと迫ってくるような言動。

応じる雪子の声も硬い。

 

「今回の事件の被害者、諸岡金四郎さん。通称モロキン先生。あなた達三人のクラスの担任教師ですよね」

 

「それがどうかした?」

 

今更な確認に反発する千枝。

 

「最初の殺人の後に襲われた小西早紀さんと同じ学校の人間。"バスケ王子"として一躍有名になった一条康さん属するバスケ部顧問。世間じゃもっぱらそればかりですが、そこは全く重要じゃない。もっと重要な点がおかしいとは思いませんか?」

 

「何よ!何が言いたいのよ!」

 

りせの苛立ちもわかる。

これも尋問のテクニックなのだろうが迂遠過ぎる。

欠伸が出そうだ。

 

「諸岡さんはTVに出るのをとても嫌っていた。一条康さん絡みのマスコミの攻勢を全て邪険に追い返していたと聞きます。つまり彼の姿は一切TVで報道されてない。どういうことでしょうね」

 

この娘は俺達と同じ観点で事件を追っていることを当の俺達にアピールしに来たのだ。

何故そんなことをするのか。

つまりは・・・。

 

「さあな。俺たちに聞くよりも、警察の対策本部にその点についてどう考えてるか聞いた方がいい」

 

「・・・」

 

何も反応を見せないことが答えだった。

やっぱりこの娘、現場の捜査官からハブられてるんだろう。

そして警察はマヨナカテレビの存在をただのオカルトチックな噂話として端から無視している、と。

 

「まあいいでしょう。とにかく私は探偵としてクライアントの依頼に迅速に対処したい。事件解決の糸口を探るために皆さんにも注目しています。では今日の所はこれで」

 

あっさりと引き下がり踵を返す白鐘直斗。

今回の来訪は俺たちを揺さぶることが目的である以上、もうここにいる意味は無いのだろう。

だが俺の方は彼女に告げなければならないことがあった。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「・・・何です?」

 

白鐘直斗を呼び止め、改めて彼女の全身を舐めるように観察する。

 

「髪も伸ばし始めたのか。その方がいい。そうだな。君にはロングヘアが似合うよ。【後ろ髪は腰のあたりまで伸ばそう】」

 

「・・・なっ!?い、言われなくとも、そのつもりでした!」

 

「あと現代社会において僕っ子の希少価値は大変高い。絶滅危惧種と言っていいほどだ。【無理に私って言う必要は無い】」

 

「・・・何を言ってるんですかっあなたは!ぼ、僕は不愉快だ!失礼する!」

 

先ほどの冷徹な応対から一変、白皙の美貌を朱に染めて美少女探偵は大股で去っていく。

 

うんうん。

その反応、とっても可愛いな。

それにカツカツと歩く度にゆさゆさと揺れる胸部。

あの乳には男のロマンが詰まってる。

 

ハッ!?

 

「「「ジーッ」」」

 

三人とも、そんなジト目で俺を見るのは止めてくれ。

そんなに彼女が羨ましいならいっぱい揉んで育ててあげるから!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月11日MON 曇 8:30>

 

HRが始まるまで右斜めの座席の雪子のお尻を眺めて待つ。

今日の雪子は少しやつれた様子で陰媚なオーラを纏っており、とても妖艶である。

後ろの処女を俺に捧げたことで雪子の美しさがさらに磨かれたようだ。

 

昨日の雪子の悶絶振りは凄かった。

初めてのアナルセックスに雪子は乱れに乱れた。

じっくり待った甲斐があったというものだ。

雪子のあられもない痴態を思い返してほくそ笑む。

 

「ねえ、モロキンの吊るされてたってマジ?」

「マジらしいよ。友達が警察が死体下ろしてるとこ見たって言ってた」

「あの"りせちー"が一年に転校してきたってマジかよっ」

「歩いてるとこ見たぜ。すげー可愛かったー」

 

教室の中はやはりモロキンとりせの噂で持ちきりだ。

噂ではモロキン、りせの写真集を商店街の本屋で購入してたらしい。

哀れモロキン。

生きていれば生りせに会えたのに。

 

<ガラガラッ>

 

「おはよーう。みんなもう聞いてると思うけどー諸岡先生亡くなっちゃいました。びっくりよねー。それでー今日から二年二組の担任になった柏木典子です。うふっよろしくね」

 

胸元の大きく開いたボディコン(死語)を着た、アラフォーのおばさんが胸を揺らしながら教室に入ってきた。

こっちに向けてウィンクしてくる。

うっ、は、吐きそうになる。

 

「諸岡先生が突然いなくなって悲しいのはわかるけどー、来週から期末テストよお。わからないとこがあって個人授業希望する男子はー、どんどんあたしのとこにキ・テ・ネッ」

 

モロキンと同じくらい生徒から忌避されている先生の登場にクラスの皆のテンションもダダ下がりである。

 

「モロキンから柏木って最悪なコンボ技だろっ。教頭俺達に恨みでもあんのかよっ」

 

花村のセリフに賛同せざるを得ない。

 

「・・・ある意味、豊富な人材だな」

 

何故か先程から俺にばかり色目を使ってくる柏木典子。

イラッと来る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月11日MON 曇 16:00>

 

りせを待って四人で下校する。

花村は例によって小西先輩のところである。

 

「もうやんなっちゃう。転校早々テストって最悪ー」

 

転校初日のりせ。

群がってくるクラスメイトたちから抜け出すのに大分苦労したようだ。

今も遠目から多くの生徒がりせの様子を伺ってる。

 

「あ、あははは、そうだねー。とりあえず早くここから移動しよ」

 

「どうしたの千枝?何か変よ」

 

トップアイドルだったりせにとっては日常茶飯事だろう。

俺もモブキャラたちの視線など端から無視してる。

雪子は周囲からの注目自体に気付いてない。

千枝だけが動揺していた。

 

千枝に押される形で校門に向かう。

 

「ゆきこ」

 

門の手前でふらふらと現れた人影が雪子に声を掛けてくる。

 

「え?」

 

突然の名前を呼ばれ戸惑っている雪子。

声を掛けてきたのは変なトレーナーにジーンズを着た不審者。

昨日の菜々子ちゃんの"いなかたくわん"を奪った男だ。

 

「お前はっ」

 

とっさに動こうとするが俺より雪子の隣にいた千枝の方が速かった。

雪子に近こうとする男の前に千枝が割って入る。

 

「なぁゆきこ。俺の世界に来いよ」

 

「雪子になんの用!?」

 

「どけよブス!邪魔なんだよー。ゆきこ、俺と来たいよなー。なー」

 

千枝に邪魔されて男が子供のように喚いている。

当の雪子の反応はと言うと・・・。

 

「・・・ブスですって?あんた今千枝のことブスって言った?」

 

<ゴゴゴゴゴゴゴゴッ>

 

「え、雪子?」

 

なんか凄いSEが鳴ってるんですけど・・・。

雪子を庇ってる千枝も恐れをなしてる。

 

「取り消しなさい!千枝がブスなわけないじゃないっ!この唐変木!」

 

「ゆ、ゆきこ、いきなりなんだよっ」

 

突如豹変した雪子の一喝に男は混乱している。

 

「あーそうなんだー。あなたがストーカーね。へー、ストーカーてこういう顔してるんだー。死んだ魚みたいな目をしてる。プッくくっ、キモーい」

 

「雪子ってば・・・」

 

雪子の追い込みに庇ってる千枝も若干ひき気味である。

 

「お、お前も俺をバカにするのか!?ふざけんな!ふざけんなよ!!」

 

男は煽り耐性が皆無のようだ。

激昂して辺りの注目を集めてしまっている。

今にもキーボードをクラッシュしそうな勢いだ。

 

下校時間である。

あたりには下校中の生徒がいっぱいだ。

 

もともと天城越え挑戦イベントは八十神高校の名物である。

さらに今日は久慈川りせまでいるのだ。

遠巻きにもの凄い数の生徒が集まり始めていた。

 

これ以上見せ物になるつもりはない。

ケリを付けるべく千枝を抑えて前に出る。

 

「【それ以上近づくな】」

 

「・・・お前ぇ、お前だお前ぇ!お前はゆきこの何なんだよ!」

 

「彼氏」

 

<<オーッ>>

 

俺の毅然とした態度にギャラリーから感心の声が漏れる。

 

「・・・は?」

 

「だから恋人」

 

「う、嘘だ!」

 

「いや、本当」

 

純然たる事実を淡々と告げ、男に迫る。

 

「ハハ、ハハハ、そ、そんなこと、あるわけ、無いだろ。ゆきこが男と付き合ってるなんて。なぁ、ゆきこ」

 

追い詰められ、男は縋るように雪子に答えを求める。

 

「そうさ、ゆきこは処女に決まってる。なぁ処女なんだろ。俺以外の男に躰を許したりなんて、するわけないよなぁ!」

 

「えっとー、そのー。ポッ(赤)」

 

顔を赤らめて恥ずかしそうに俯く雪子。

その態度が全てを雄弁に語っていた。

 

<<オオーッ>>

 

あまりにもバレバレな雪子の反応にギャラリーから動揺の声が上がる。

 

「ううー、ううううー、嘘だと言ってよー、ゆきこーっ」

 

泣きそうになってる男に止めの一撃をくれてやる。

 

「はっきり言おう。雪子に処女の穴なんてもう存在しない」

 

ドドーン。

 

<<オオオーッ>>

 

全てのルートで天城越えが完了済み。

完璧な俺の勝利宣言にギャラリーから驚愕の声が巻き起こる。

当の雪子は頬を真赤に染め、カバンを後ろ手にモゾモゾとお尻を抑えてる。

昨日の初めてのアナルセックスの衝撃を思い出してしまったのだろう。

 

天地神明に誓って嘘は言っていない。

 

雪子の躰で俺が触れていないところは一切ない。

穴という穴に俺のペルソナ液は注がれており、鼻や耳も例外ではなかった。

もともと顔射の流れで鼻の穴はペルソナ液塗れになっている。

それにりせのセンター就任と刻を同じくして、二人で合わせ耳コキという新ジャンルを開拓した千枝と雪子は天才だと思う。

 

「うう、ビッチが!娼婦にでもなってろ!」

 

もう完全に涙目の男が捨て台詞を残して逃げてった。

フッ、勝った。

 

「あいつ、丸久に来たことある。お豆腐売ってる私に"暴走族は群れないと何もできない"とか全然関係無い話をずーっとしてたっけ」

 

走り去っていくストーカー男の背中を見ていると、りせが側に近寄ってきて情報提供してくれた。

一番面倒な客だな、それ。

アイドルヲタの中にもたまにいる典型的なコミュ症人間のようだ。

 

「あれってヤバいタイプだよ~。真性ってやつ。雪子先輩、気を付けた方がいいと思う」

 

「・・・私は悠の方が心配だわ。あんな堂々と宣言して。雪子を狙ってた男子にいつか刺されるんじゃないの」

 

ん、何か言ったか千枝?

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月12日TUE 雨 23:00>

 

りせは安全日だそうで泊まっていくらしい。

4Pを心ゆくまで楽しんで一休み。

千枝と雪子はベッドの端の方で絡まって寝ており、トリを勤めたりせは俺のすぐ側で瞑れてた。

 

まだマヨナカテレビの時間までしばらくある。

暇つぶしにスマホで"@ちゃんねる"の芸能板のりせちースレを見る。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

291:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:00:52 ID:apLXBHpA

りせちーが引退なんて嘘に決まってる。信じねーぞ。

 

292:名無しの腐ったみつを:2011/07/12(火) 23:00:58 ID:9uB03I2o

稲羽市の連続逆さ吊り殺人事件の犯人は俺だ。

全部俺がやった。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

ん?

変なのが湧いてるな。

犯行自供ならバカッターでしてろ。

 

更新ボタンをタップ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

293:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:01:08 ID:aapPpKeC

犯人ktkr、通報しますた。

 

294:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:01:15 ID:Hn3zQg4f

成りすまし乙

――――――――――――――――――――――――――――――

 

いちいち反応するなよ。

スレが荒れる。

 

仕方がない。

俺が流れを戻してやろう。

 

ふとすぐ横で眠るりせの腰が目に入ってくる。

りせのぷっくりとしたお尻からスリムな腰に至る魅惑の曲線。

天下を取った腰である。

 

その秘唇からは俺のペルソナ液がドロリと垂れており、ひたすらエロい光景だ。

千枝と雪子の分までりせの中に注いだものなー。

 

そうだ。

 

「り・せ・ちー・の・腰・に・つ・い・て・語・ろ・う・ぜ・・・・っと」

 

ポチッとな。

書き込み完了。

 

スマホ片手にりせの側に横たわり、りせの腰のラインを撫でまわす。

その滑らかな肌の感触を楽しみながら、スレッドの行方を追う。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

307:名無しの腐ったきつね:2011/07/12(火) 23:02:22 ID:7aRukAm1

そんなことより、りせちーの腰について語ろうぜ。

 

308:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:02:28 ID:XgHBWzdi

りせちー is オワコン

 

309:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:02:32 ID:DN47bFcp

>292

マジ、マジモンかい?

 

310:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:02:48 ID:Y73HJhCH

>292

早まるな、吊るしちゃダメだ、、ってもう吊るしてるのか。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

以降292を煽る書き込みばかりとなる。

ダメだ。

誰もりせの腰について語ってくれないじゃないか。

 

それどころかどんどん292弄りが激しくなってくる。

どこかにこのスレへのリンクが貼られたらしい。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

335:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:05:41 ID:DN47bFcp

292シカトかよ

 

336:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:05:51 ID:kIRik0Ds

■一般人の認識

 

ガンバム:安室とシャーがたたかう話

エバ:パチンコ、そうりゅうが可愛い

ミクロス:歌う

ジアス:何それ

ボトムズ:アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントの陣営は互いに軍を形成し、

もはや開戦の理由など誰もわからなくなった銀河規模の戦争を100年間継続していた。

その“百年戦争”の末期、ギルガメス軍の一兵士だった主人公「キリコ・キュービィー」は、味方の基地を強襲するという不可解な作戦に参加させられる。

作戦中、キリコは「素体」と呼ばれるギルガメス軍最高機密を目にしたため軍から追われる身となり、町から町へ、星から星へと幾多の「戦場」を放浪する。

その逃走と戦いの中で、陰謀の闇を突きとめ、やがては自身の出生に関わる更なる謎の核心に迫っていく。

 

337:名無しの腐ったみかん:2011/07/12(火) 23:05:59 ID:DN47bFcp

>336

誤爆乙

 

338:名無しの腐ったみつを:2011/07/12(火) 23:06:10 ID:9uB03I2o

 

だったら今から証明してやる!!!!!!!!!!!!!!!!!

――――――――――――――――――――――――――――――

 

スレを閉じようと思ったら292がキレ芸を見せて去ってった。

以降、292を見た者は誰もいない。

あっけなく犯罪宣言に関するレスは収束する。

 

さて、りせの腰について改めて語ろう。

とりあえずりせをオワコン呼ばわりした奴は屋上な。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月18日MON 晴 13:00>

 

海の日である。

明日から期末テストのため例の如く禁欲生活に突入中である。

久しぶりに一人で過ごす休日。

バイクで外に出る。

 

一軒目の用事は空振りに終わった。

気分転換に市立図書館に寄って勉強することにする。

 

「そこっ【静かにしろ!】」

 

やたら煩いガキ共がいたので硬派に注意。

すると隣の席で勉強していた中学生の男子から礼を言われた。

 

「ありがとうございます」

 

少年は一人のようだ。

少しだけ言葉を交わす。

 

「休みなのに友達と遊びに行かないのか?」

 

尋ねてみる。

 

「周りはバカばかりでつまらないですから」

 

そっけなく曰われる。

人生の先輩として少しだけ助言。

 

「良かったじゃないか。彼女を作るなら自分よりバカな方が楽だ」

 

「え?」

 

「【周りのバカの中で一番可愛い娘に一生懸命勉強を教えてあげなさい】」

 

「・・・」

 

「テストでその娘の成績が上がったら思い切って告白するんだ。【必ず成功する】」

 

少年が黙ってしまったので勉強(復習)に戻る。

かなり捗った。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月23日SAT 曇 13:00>

 

一週間に渡る期末テストがやっと終わった。

千枝、雪子、りせと一緒に四人でJUNESのフードコートに移動。

昼食を取る。

 

「英語のテストってほんと意味わかんないっ。あたしハワイとかグァムとか日本語通じるとこしか行く気ないしっ」

 

「そういう問題じゃないでしょ」

 

りせの理不尽な物言いに千枝が突っ込む。

基本相方の雪子もボケ担当なので、最近ツッコミ役の千枝が忙しい。

大変だな千枝。

 

なんてどうでもいいことを考えていたら、りせから俺のテストの出来を聞かれる。

 

「ねぇ、先輩はテストの調子どうだった?」

 

「いつもどおり、かな」

 

「つまりまた一位ってことよね・・・」

 

「うわっ、さすが先輩」

 

千枝の呟きを受けてりせが尊敬の目で見てくる。

この世界に来てから頭の回転が明らかに早くなった。

ステータスが関係しているのだろうか。

 

しかし・・・。

このテーブルだけ大分目立ってるな。

男の俺一人に美少女三人。

これがハーレム状態ってやつか。

 

フッ。

 

「どうしたの?」

 

思わず零れた笑みを雪子に見られる。

 

「いや、こんな風に綺麗な女の子たちを侍らせてお茶してたら、モロキンが頭沸騰させて怒鳴り込んできそうだなって」

 

僅か三ヶ月間の付き合いだったが、強烈な印象を残していったモロキン。

事件から二週間経っただけで既に懐かしさを感じる。

果たして彼の死は回避可能だったのだろうか。

 

「モロキンかー。強烈にうざかったよね」

 

「私も実は苦手だった。好きだった人なんているのかしら」

 

「ただ犯罪は犯罪だ。これ以上時間が掛かるようなら、犯人は俺が捕まえるしかないか・・・」

 

TVのニュースを見る限り、第二の殺人についても警察の捜査は行き詰まっているようだ。

堂島さんには悪いが警察というのは無能の集まりなんだろうか。

 

「その心配は不要です」

 

いきなりの割り込み。

 

「警察の捜査でとある人物の容疑が固まったと聞きました。最早あなた方の出番はない」

 

振り返るとそこには白鐘直斗がいた。

相変わらず胸が目立ってる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月23日SAT 曇 13:30>

 

「とある人物?いったい誰なの?」

 

千枝が白鐘直斗に問う。

 

「容疑者は僕達と同じ高校生らしいですよ。残念ながら名前までは・・・。探偵と言えど一般人であることに変わりはありませんしね」

 

「犯人は高校生・・・」

 

驚く雪子。

だが俺はその直斗の言葉で犯人像が明確になる。

 

「そうか。やっぱり久保がモロキン殺しの犯人か」

 

「悠、久保って誰?」

 

千枝が興味津々で食いついてきた。

 

「この前、学校の校門で雪子に声を掛けてきたストーカーのあいつだよ」

 

「えっと、そんなことあったっけ?」

 

・・・雪子は相変わらずだなー。

記憶から完全消去してやがる。

 

「久保美津雄。八十神高校に昔在籍してたらしい。モロキンと激しく衝突して学校を追い出されてる。動機としては十分だろ。ちなみに十日ほど前から行方不明」

 

「あの一人で喋っちゃう系のアレな人?先輩すごーい!テスト中もちゃんと捜査進めてたんだね。でー、本職の探偵さんの調査はどこまで進んでたのかな?」

 

りせが俺に抱きつきながら直斗を挑発する。

 

「クッ」

 

久保美津雄までは辿り着けてなかった直斗が歯噛みする。

悔し紛れに挑発を返してきた。

 

「お見事、と言っておきましょう。ただ容疑者が見つかった以上、あなた方の遊びもこれでおしまいでしょうね」

 

「遊び、か。本物の人生がかかった随分シビアなゲームだな」

 

「なにか?」

 

「いや、いいさ。ただ見つかったのはモロキン殺しの犯人だろ。山野アナの件はまだ解決してない」

 

「・・・なぜ、そう思われるんですか?」

 

「あいつが連続殺人事件の犯人だとしたら、雪子が今こうして無事でいられるはずがないってことさ」

 

TVの中に入れられた被害者は雪子が三人目。

仮に奴が雪子の拉致に成功したとしたら。

間違いなくTVの中ではなく久保の部屋に閉じ込められ、散々に犯されまくっていたことだろう。

 

「なるほど〜、確かにそうだわ」

 

「私も。自分があんな奴に拐かされたなんて信じられないし」

 

千枝とりせは納得の相槌だが直斗の目がギラリと光る。

 

「どういう意味です?」

 

直斗は久保が雪子にご執心だったことを知らない。

食いついてくるのも仕方ない。

だが一々説明するのも面倒だ。

 

「なに、こっちの話さ」

 

適当にごまかす。

 

「・・・つまり、その久保という人物は模倣犯だと言いたいんですか?」

 

「そのとおり。で、探偵の君はこんなとこで何してるんだ?犯人わかったからもういらないって警察に追い出されたのか?」

 

「・・・」

 

反応がない。

図星だったようだな。

 

「容疑者が固まった以上、もう僕の役目は終わりと判断されたようです。・・・女の子としての僕にしか興味を持たれないというのは、探偵として寂しいですね。もう慣れましたけど」

 

直斗は俯いて淋しげな表情を浮かべている。

どうやら警察では探偵として扱われず、アイドル的な扱いを受けてしまっていたらしい。

居辛くなって事件の終了に託つけて警察から逃げ出してきたのか。

 

これは少し厳しいことを言った方が良さそうだ。

 

「本当に有能なら年齢とか性別なんて関係ないさ」

 

直斗がハッとこっちを見る。

 

「それに今の時代、逆に女の方が有利な点が多い。君が女としての自分の魅力を使いこなせていないだけだ。【魅力的な女に見えるよう、スカートでも履いて出直して来い!】」

 

「・・・うっ。いいでしょうっ!必ずあなたを見返してやります!」

 

いきり立って大股で帰っていく直斗。

彼女の心情を表すように胸元がプルンプルンと揺れていた。

すれ違う男性たちの目線が釘付けである。

 

さっそく女磨きに余念がないようで、大変結構だった。

 

直斗が去り、各々の口から不満が漏れる。

 

「モロキン殺しの犯人が捕まっても、まだまだ終わりじゃないんだね。はぁー」

 

「事件なんて早く解決すればいいのにー。りせはもっと悠先輩とイチャイチャしたーい」

 

千枝とりせの二人はもう事件なんて懲りごりという体である。

 

「私達がこうやって集まることももう無いのかな。もう一人女の子が増えそうだし。今度からあっちのテーブル使わないと」

 

雪子は何か他の心配をしているようだ。

もう一人って誰のことだろう?

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月26日TUE 雨 8:15>

 

今日が終われば夏休み!

普通なら晴れやかな気分で登校するはずが、あいにくの天気。

シトシトと雨が降る中、いつもの四人で登校する。

 

「なんか容疑者固まったらしいぜ」

「なーんだ。じゃ捕まるのか」

 

すでに噂は広まってるらしい。

すれ違う登校中の生徒たちから残念そうな声が聞える。

なんだかんだ言って面白がっていた奴らが多かったらしい。

 

久保が八十神高校に姿を表していたのは警察も掴んでいるようだ。

校門のところに普段はいない警官が警邏で立っていた。

 

「先輩。私、後ろでするのって癖になっちゃいそう」

 

そんな中、りせが側に寄ってきて恥ずかしげに告白してくる。

 

昨日、期末テストの結果が発表された。

学年1位はまた俺。

そのご褒美として、三人を代表してりせのアナルバージンがプレゼントされたのである。

りせは昨日が初体験にも拘わらずアナルセックスの魅力にどっぷりと填まったようだ。

 

「あーあー、これであたしらにできることって」

 

「もう何もないんだよね」

 

千枝と雪子の言うとおり、三人とも口、前、後ろと3つのバージン全てを俺に捧げ終わったことになる。

すっごく充実はしてるけれど、どこかうら寂しいものがあるのも確かだ。

だけどまだ俺は三人から貰っていないものがある。

 

「まだだ」

 

「先輩?」「うん?」「え?」

 

「まだ皆の一番大事な子宮が残ってる」

 

金銭面での不安はない。

既に三人分の出産費用と数年間の生活費に相当する額は十分に確保出来ていた。

 

TVの中でシャドウを倒すと、あいつらはお金を落としてく。

毎晩シャドウを狩りまくっているため、かなりの金額が溜まっていた。

銀行で本物か確かめてみたら全部本物。

どうやら現実世界で無くしたり見つからなくなったお金は、全てTVの世界側に移動しているらしい。

 

問題はタイミングである。

今すぐにでも彼女たちの子宮を俺の種で中古にしてやりたい。

だがまだ彼女たちは在学中である。

そして俺も来年の春にはこの街を去らなければならないのだ。

 

最低でも高校を卒業するまで待つ必要があった。

先は長いがそれが返って励みになるだろう。

 

「少し先の話になるけど、基礎体温は忘れずにチェックしておこう」

 

「「「はい!」」」

 

俺達は決意も新たにハーレムセックスに耽ることを誓い合った。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月27日WED 曇 0:00>

 

<クククッ、みんな僕のこと童貞だと思ってるんだろ。エロゲマニアの割れ厨だとバカにしてるんだろ。アハハハ。だったら捕まえてみなよ!>

 

マヨナカテレビに久保美津雄が映る。

そうくるかー。

 

「チュパ、チュパ、チュパ、ううん?この人誰だっけー」

 

俺のペルソナをしゃぶっていた雪子が呆けた顔でテレビに目を向ける。

 

「ああ、気にしなくていいよ」

 

「うん・・・。あーん、モグ、モグ」

 

やっぱ助けなきゃダメかな。

 

ダメだよなー。

仕方ない!

夏休みの宿題はさっさと済ませてしまうに限る。

 

「よし、イクぞ!雪子!」

 

<ジュッポ、ジュッポ、ジュッポッ>

 

「ん、ん、んーーーーっ!」

 

<ドクッドクッ>

 

「んんん、ちゅーー」

 

雪子に直飲みできっちり最後まで吸い出させる。

 

「ふぅ。ありがとう雪子。すっきりしたよ。そろそろ行かないと」

 

「んん、いってらっひゃいー」

 

雪子が口唇愛撫を優先した結果、マヨナカテレビはとうに終わっていた。

口元からペルソナ液を垂らしてトリップ中の雪子に見送られ、何も映っていない画面に脚を踏み入れる。

 

 

 

<SYSOP 2011年7月27日WED 晴 --:-->

 

中島秀は学年で一番可愛い女の子に勉強を教え、見事彼女をゲットします。

中島秀は勉強を人に教えることで自分の理解もより深まり、さらに成績がよくなります。

中島秀の彼女があまりに可愛かったため、中島秀の母親も大いに満足し、親子仲も良好になります。

中島秀は成績が上がり、彼女が可愛く、母親との折り合いもついたことで自信に満ち溢れ、天才転校生の登場にも微塵も動揺しません。

中島秀は人にものを教えることに喜びを覚え、自主的に学校の先生となる道を選び、鳴上悠との絆を必要としなくなります。

塔のアルカナが消滅しました。




一条がマヨナカテレビに出ないのは、普通に全国区のTVで取り上げられまくっていていたから。
情報が飽和し過ぎてしまい、稲羽市民が食傷気味となっていたため、にしといて下さい。

そして"すた丼"のオシンコは何故あんなに美味いのか。味噌汁の具はもちろんモヤシで。


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第12章 虚無

虚無(みつお)その2になります。オムライス回とも言います。
今回は少し短めです。


<VELVET ROOM 2011年7月27日WED 曇 --:-->

 

「主、起きて下さい。主」

 

目覚めるとベッドの上で大の字に拘束されており、ボンテージ姿のマーガレットが覆い被さってくる。

 

「激しいSMプレイによって、鞭で女をイキ酔わす力が目覚めたようですね」

 

マーガレットは自らの躰についた鞭の跡にうっとりと指を這わせている。

 

「さてSMパートもついに佳境。しかしそれ故に予想だにせぬマゾの喜びがいくつも待ち構えているかも。ふふっ」

 

攻守交代で今度はサドの喜びにうち震えるマーガレット。

 

「主のマーラ様は私の手の内にあり、この紐を解かなければ射精管は閉ざされたままになります」

 

エナメルのロンググローブのマーガレットの手が、根元を締め上げて射精を封じたマーラ様を扱き上げる。

 

「濡れ光る膣は深く見えても、挿入はオ・ア・ズ・ケ」

 

マーガレットは69の体勢で濡れた膣を広げて見せつけてくる。

 

「私の膣に入れる以外にも得られる快楽はあります。努々狂い果てませぬように。えいっ」

 

マーガレットの指が菊門に添えられ、前立腺を刺激する攻めが開始された。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月27日WED 曇 0:15>

 

出た場所は昔のRPG風のドット絵で書かれた城の前だった。

 

タイトルは"ボイドクエスト"とある。

虚無の探求。

意味がわからん。

 

「ただまあ、捕まえてみろってことはゲーム感覚ってやつか」

 

先ほどから何か腰回りがモヤモヤした状態が続いており、やる気が湧いてこない。

こんなことなら雪子にもう一回抜いてもらえば良かった。

 

面倒だ。

速攻クリアしてやろう。

"NEW GAME"を叩いて城門に飛び込んだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月27日WED 曇 0:20>

 

城の中もいかにもゲームっぽい作りだ。

ランダムエンカウントでばんばんシャドウが出てきた。

ストレス解消とばかりに聖剣を召喚して片っ端から叩き潰していく。

 

「めざせ!エンディング・・・か。ソシャゲーよりはマシかな」

 

サクサク進んでいく。

シャドウが沸きまくるがチャリンチャリンといい小金稼ぎになる。

 

「男はみんなゲーム好きっ・・・てわけでもないんだけどな。ん?」

 

<ビーッビーッビーッ>

 

廊下の真ん中で"Warning"の文字が点滅している。

 

「何だ?」

 

<誰なんだよ、お前は!俺みたいな顔して、気持ち悪いんだよ!>

 

<ボクは虚無だ。そしてキミはボクだ>

 

声が響く。

おそらく自分のシャドウと対峙している久保美津雄の声。

 

<ふざけるなーっ!俺は俺だ!お前なんか知るか!全部俺がやったんだ!何とか言えよ!>

 

<全てが無になる>

 

自分の影と対峙しているということは、俺のように自らこの世界に入り込んだわけではないらしい。

一件目の殺人犯の怒りを買って、この世界に放り込まれたと考えるのが妥当か。

 

しかし聞くに堪えないな。

このドアの向こうがラスボス部屋らしい。

さっさと片付けよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月27日WED 曇 0:40>

 

「誰も俺を見てくれない!だから二人目を吊るした!俺が、この俺が吊るしてやったんだ!この俺の手で!俺を見ろよ!」

 

闘技場?っぽい場所に入ったら、久保がテンパッて叫んでる。

相手はやはり自分の影。

久保の影はこちらに背を向けてTVゲームやってた。

 

「お前が何を言おうか知るかよ!さっさと偽者は消え失せろ!」

 

『キミも認めないんだね。ボクを。自分を』

 

久保の影に力が集まっていく。

 

『ボクは影。待っていて。すぐにその空っぽの器をバラバラに砕いてあげる』

 

<おぎゃーーーーッ>

 

久保の影が巨大な赤子に変化した。

 

「ふんっ」

 

気持ち悪いので一撃で叩き潰してやった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月27日WED 曇 0:45>

 

久保のシャドウが元に戻る。

何もせずに突っ立ったままだ。

もう脅威は感じられない。

 

さて。

こっちをどうするか、だな。

久保の本体の前に立つ。

 

「何だよ、ここはどこだよ。あっ!お、お前はっ!?」

 

「一言伝えにきた。【雪子に二度と近づくな。近付いたら殺す】」

 

聖剣を突きつけて脅す。

 

「・・・ううう、うううー、ゆ、ゆきこだって?ああああ、あんな薄汚れた売女なんて、もう知らねーよっ!」

 

「警察がお前を追ってるようだぞ。お前がモロキンを殺したんだな?」

 

「け、警察?ハハハッ、ハハハハッ、やっとかよっ。そうだよ。俺だよ。俺がやったんだ!俺がっ!全部っ!」

 

『・・・。』

 

久保が叫んだ瞬間、奴のシャドウが崩れていく。

 

「ハハッ、アイツ消えやがった、くくッざまあみろ!アイツなんかが俺なわけあるかよ!ハハハッ」

 

その光景を見て久保は満足そうに笑っていた。

 

「答えろ。お前をこの世界に投げ入れたのは誰だ!?」

 

「お前、何言ってんだよバッカじゃねーのっ。俺なんだよ。アハハハハッ皆俺を見ろよっ!」

 

ふぅ。

こりゃダメだ。

 

完全に人の話を聞いてない。

いや、人の話を聞く中身自体が無くなっていた。

潜在意識である影が消滅した影響。

 

「ハハッハハハハッハハハハ」

 

それからの久保はただ虚ろな目で笑い続けるだけ。

何を尋ねても「俺がやった」を連呼。

 

これが久保美津雄の影が言っていた"虚無"か。

もうこいつからは情報を取れないだろう。

こいつをTVの中に投げ入れた真犯人が知りたかったのだが。

潮時だな。

 

<ドガッ>

 

「グッ」

 

頭を蹴って気絶させる。

 

近くに久保の影がゲームに使ってたTVが置いてある。

画面に顔を突っ込んで中を覗いてみると、どうやらJUNESの家電売場のようだった。

よし、警備員もいるだろうし、ここでいいか。

 

画面に久保の躰を押し込み、現実世界にリリースする。

あとはJUNESの警備員と警察が勝手にやってくれるだろう。

 

「これで用事は終わった」

 

俺も向こうに戻って雪子との続きをしよう。

 

明日から夏休み。

天城屋旅館も忙しくなる。

彼女たちと愛しあう時間は一秒足りとも無駄にしたくない。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月28日THU 曇 9:00>

 

夏休みが始まった。

夏休み中はほぼ天城屋旅館のバイトを入れてある。

雪子のお母さんに頼られたら断れない。

 

シフトも夏休みバージョンに切り替わる。

平日は早朝から昼過ぎまで働いて夕方と夜は自宅で過ごす。

週末は自由時間としてキープだ。

雪子と千枝も俺に倣う。

 

りせは夏休みの間、豆腐屋の手伝いながらダンスレッスンに通う予定になっている。

沖奈市のダンス教室まで通うみたいだ。

 

アイドル時代は忙しすぎて纏まった練習の時間が取れなかったらしい。

一からみっちり鍛えたいとのこと。

ポールダンスだけでなく、セクシーなベリーダンスのレッスンも受けるようだ。

さすがショーガール志望である。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月29日FRI 晴/曇 15:00>

 

夜に堂島邸にお呼ばれしている。

千枝、雪子、りせも招待されていた。

 

千里さんは料理を用意すると言っていたが・・・。

身重の千里さんにあまり無理はさせられない。

バイトを終えて合流し、三人娘たちとどうしようか相談。

 

「それじゃあ、皆でご馳走作ろうよ」

 

雪子が提案してくる。

 

「えー、先輩たち、料理得意なのー?」

 

自宅では主に俺がチャチャッと作ってしまっていたので、りせは二人の腕前を知らない。

 

「「まあ、それなりに」」

 

恥ずかしげに答え、互いに視線を逸らす千枝と雪子。

この二人を鍛えるのにどんだけ苦労したか・・・。

 

「ねぇ私も料理得意だよ。先輩にラブラブな手料理作ってあげたいな」

 

「へぇそうなのか。じゃあ料理対決にしよう。二人の腕前が落ちてないかチェックだな」

 

「「が、がんばります!」」

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月29日FRI 晴/曇 16:00>

 

電話で料理はこちらで作ることを申し出て、千里さんに了解を得る。

JUNESに寄って食材を購入してから堂島邸に赴くことにする。

 

電話越しに菜々子ちゃんに何が食べたいか聞く。

最初は遠慮していたが根気強く聞くと「オムライス!」との答えが返ってきた。

 

ナイスチョイスだ菜々子ちゃん。

誰でも簡単に作れて仮に失敗しても大外れの無いメニュー。

それでいてオリジナリティも出しやすい。

 

メニューが決まり、三人娘たちが大いに張り切り出す。

じゃあ審査員は菜々子ちゃんだな。

 

残念ながら叔父さんは今晩も仕事で留守になるそうだ。

先ほどバイト中の花村から聞いた話によると、久保は三日前の深夜にJUNESで警備員に捕まったらしい。

まだ取り調べが続いている旨のニュースも流れている。

どうやら叔父さんは久保美津雄の自供の裏取りで忙しいようだ。

 

食材売り場を歩きながら自然と久保の話になる。

 

「犯行の理由を聞かれて目立ちたかっただけって言い張ってるって。でもマスコミは一条くんのバスケ部での不遇な一年目と絡めて、教師のモロキン側に問題があったってことにしたいみたい」

 

千枝がワイドショーから仕入れた情報を伝えてくる。

久保自身はモロキンへの恨みは徹底して否定しているようだが・・・。

 

「それって、ひどい」

 

「今回の件も行き過ぎた体罰とアカハラが原因って論調。恨まれてるから殺されても仕方ないって、んなわけないでしょ!あんまりだよね」

 

雪子と千枝が顔を曇らす。

これ以上俺たちが考えても仕方のないことだ。

気持ちを切り替えないと。

 

「久保のモロキン殺しの件についてはこれで幕引きだ。後は警察と検察に任せよう」

 

「うん、そうするしかないよっ。あ、これ!」

 

りせが何かいいものを見つけたようで、飛びついた。

 

「え、フォアグラ使うの?」

 

「うん!オムライスってフランスの料理でしょ。スペシャルなの作るならやっぱりフランス産の高級食材使わなきゃ」

 

「た、確かに極めつけの食材ね」

 

りせの選んだ具材に千枝と雪子が動揺する。

俺は逆に嫌な予感がするが・・・。

確かオムライスって日本発祥の料理じゃなかったっけ?

 

「多分私が圧勝しちゃうけど、イベントの絵的にもそれでオッケーだよね~」

 

「く、久慈川さん、調子に乗ていられるのも今のうちですわよ!アタシの腕前を見せてやろうじゃないのっ」

 

「一撃で、終わりにしてあげる!」

 

早速ガチンコな空気になっている。

楽しみだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月29日FRI 晴/曇 19:00>

 

卓上に4つのオムライスが並ぶ。

 

三人が料理をするのを見て抑え切れなくなって自分も一皿作ってしまった。

俺のオムライスのテーマは和洋の出会い。

隠し味のショウユがポイントだ。

 

どれもオムレツ部分は綺麗な外観となっており、味も期待できそう。

赤の一皿を除いてだが・・・。

 

「まずは雪子が作ったやつからいきましょー。どれどれー」

 

千枝が早速スプーンを付けたのはホワイトソースが掛けられたオムライス。

パセリが添えてあって格調の高いビジュアル。

普通に美味しそう。

 

「あーん、モグモグ。うーん。ちょっと味薄くない?」

 

千枝の感想通り、もう少しパンチが欲しいところだ。

雪子は上品な薄味が好きだものな。

好意的に捉えればお年寄りや女性向けの優しい味のオムライスと言える。

 

「ち、千枝が繊細な味をわからないだけ・・・だと思うんだけど」

 

急に自信が無くなったのかオロオロし出す雪子を見ながら、審査員の菜々子ちゃんがスプーンを口に運ぶ。

 

「うんっ美味しいよ!雪子お姉ちゃんのオムライス!」

 

「菜々子ちゃん、ありがとう・・・」

 

どうやら菜々子ちゃんの口には合ったみたいだな。

そうか、菜々子ちゃんは雪子と同じで薄味好きか。

菜々子ちゃんの反応に雪子は心底ホッとしている。

 

「じゃあじゃあ、次はアタシの食べてみて!」

 

千枝が自信を持って指し示したのはシンプルにトマトケチャップが掛けられたオムライス。

素朴なビジュアルでこれも美味しそうだ。

 

「では頂こうか。モグモグ」

 

今度は俺が最初の一口を頂く。

 

「どう!?」

 

「うん、少し濃い目かな」

 

最初の雪子のオムライスが薄口だったので余計に味の濃さが際立った。

運動して汗をかいた後ならこの濃さもちょうどいいかもしれない。

体育会系やガテン系向けの逞しいオムライスだ。

 

「これも美味しいよ!千枝お姉ちゃん、料理ウマーイ!」

 

え?

一口頬張った菜々子ちゃんが千枝のオムライスも褒めていた。

 

「菜々子ちゃん!いやーそれほどでもーエヘヘ」

 

その一言に千枝が感激して身悶えしてる。

菜々子ちゃん、薄口が好きなんじゃないのか?

まさか・・・。

 

「どれどれー。うん。千枝これ濃すぎ。塩分取り過ぎて血圧上がるよ」

 

「そんなことないでしょー?じゃありせちゃんのアレ食べてみなよー。絶対私の方が美味しいって!」

 

千枝が雪子に指し示したのは、真っ赤なチリソース?がふんだんに掛けられているオムライス。

明らかにあの一皿だけ地雷臭が漂っている。

 

「え、わ、私が食べるの?」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

「ほら、雪子先輩、パクっていっちゃって。絶対先輩たちのより美味しいんだから!」

 

恐る恐るスプーンで掬ったオムライスを口に運んでいく雪子。

 

「あ、あーん、あべしっ」

 

一口食べただけで青い顔して雪子がぶっ倒れる。

 

「きゃー」

 

「雪子ー!」

 

「一撃でっ!?」

 

あまりの惨劇にりせと千枝が悲鳴を上げる。

仰向けに倒れた雪子は起き上がれない。

ノックアウトの鐘が確かに鳴り響いた。

まあ幻聴だろう。

 

動揺したりせが自己フォローに走る。

 

「か、辛党向けのオムライスなんだもん!インドとかタイとかインドネシアとかメキシコとか四川とか朝鮮の人たちはこれくらい余裕で食べれるんだもん!グローバル・スタンダードなんだもん!あはーーーん」

 

別にそういうのは今求めてないから!

それにお前、作る前はフランスがどうとか言ってただろっ。

 

すると嘘泣きしてるりせを不思議そうに眺めてた菜々子ちゃんがスプーンを取った。

さ、さすがにこれは止めるべきじゃ。

 

「・・・あーん。モグモグ。か、辛いけど、とっても美味しいよ!」

 

やっぱりか。

菜々子ちゃん、マジ天使!

 

「ほんとー!?じゃあもう一口いってみて!」

 

「やめろ!」

 

りせの図に乗った行動を全力で止める。

菜々子ちゃんの優しい心がお前にはわからないのか!?

 

「そうね、結局悠君のが一番美味しいわね」

 

今まで黙ってニコニコと俺達の様子を眺めていた千里さん。

俺のショウユ餡の掛かったオムライスを一口食べて感想を告げる。

ですよねー。

 

「お兄ちゃんの!?モグモグ。うん。お醤油の味がするー。こんなオムライス初めて!」

 

今日一番の菜々子ちゃんの笑顔。

天使が降臨した。

 

そして審査員の結果発表。

 

「全部美味しかったよ!でも菜々子、りせちゃんのオムライスが一番好き!」

 

「「え!?」」

 

か、辛党だったの?

菜々子ちゃん・・・。

 

「な、菜々子ちゃん!」

 

感動したりせが菜々子ちゃんに抱きついてる。

 

「ねーりせちゃん、もっと食べていい?」

 

「うんっうんっ、全部食べていいからね!」

 

「ほんとー?やったー!パクパクッ辛ーい、美味しいー!」

 

なんなんだ、これ・・・。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月29日FRI 晴/曇 20:00>

 

食事会が終わり、ゆったりとした寛ぎの時間。

 

「美味しかったわ。せめてお茶だけでも」と千里さんは台所である。

「私もやります」と千枝が手伝いに行っている。

 

オムライス選手権まさかの優勝者のりせは縁側で菜々子ちゃんの相手をしていた。

 

雪子はまだ先程のりせ特製激辛オムライスの一撃から回復しきれていない。

ソファで休んでる雪子に付き添ってやる。

 

「この写真、とっても素敵ね」

 

ん?

 

雪子がソファの横のシェルフに置いてある写真盾立てを見てる。

飾られてる写真は堂島一家の家族団らんの光景だ。

 

河原で撮られたもののようだ。

鮫川の河川敷だろうか。

真ん中の菜々子ちゃんが本当に幸せそうに笑っている。

 

「ねえご主人様。今度お祭りあるでしょ。商店街の。あれ皆で行きましょう。それで写真撮るの。こんな風に」

 

「ああ、それは良いな。雪子」

 

そっと甘えてくる雪子に応える。

夏祭りか。

確か来月の20日の土曜日だったか。

ん?

 

「今、お兄ちゃんのことご主人様って呼んだ~」

 

「え?」「あっ」

 

い、いかん!

菜々子ちゃんに聞かれてしまっていたようだ。

情操教育に悪すぎるだろ!

慌てて言い逃れしようとすると、台所からお茶を運んできた千里さんが割り込んでくる。

 

「なあに、何のお話?」

 

「ち、千里さん、何でもないです!」

 

「ポッ(赤)」

 

雪子、何赤くなってる!?

俺たちの動揺っぷりに千里さんは好奇心に目を輝かせて食いついてきた。

 

「悠君、隠し事はダメよ。うふふ」

 

「お母さん、あのね~」

 

「菜々子ちゃん、シーッ!」

 

雪子、後でお仕置きするから覚悟しておくように。

 

 

 

<YU SIDE 2011年7月30日FRI 晴 9:00>

 

今日は7月30日。

千枝の誕生日である。

何をプレゼントするか悩んだ末、バイク用のヘルメットをあげる。

 

「あ、ありがとう」

 

微妙な表情を浮かべる千枝。

ふふふ。

サプライズはこれからだ。

 

千枝の手を取って駐車場に向かう。

そこには俺の愛車のバイクが。

 

「今日は二人きりでバイクデート。ヘルメット着けて後ろに乗って」

 

「・・・え?」

 

「俺の初めてのタンデム走行。お付き合い頂けませんでしょうか。お嬢さん」

 

二輪免許を取得してすでに一年が経過。

ついにタンデムが可能になったのである。

 

初めてはとびきり可愛い女の子を後ろに載せると決めていた。

その夢がまさか叶うとは。

八十稲羽に来るまでは想像だにしなかった話で高揚を抑えきれない。

1年前に免許を取ることを決断した自分を褒めてやりたい。

 

「う、嬉しいよー。男の人のバイクの後ろに乗るの、実は憧れてたんだー。エヘヘ」

 

千枝、泣きそうになってる。

涙堪えながら嬉しそうにはにかんでる。

めっちゃ可愛い。

 

ロマンチックな雰囲気に包まれる。

 

はっ!?

柱の陰から怨念を感じる。

 

「「ずるーい!」」

 

・・・どうやら別の機会に雪子とりせ、それぞれツーリングに連れて行く必要がありそうだ。

とりあえず、帰ってきたら今日の夜は三人ともきっちり抱いてやらねば。

 

 

 

<SYSOP 2011年7月30日SAT 晴 -:-->

 

里中千恵、天城雪子、久慈川りせ。

三人全員の口、前、後ろの三穴を一日でフルコンプしたため、性技がガッチリ高まりました。

性技のパラメータが"4P"に上昇します。

4Pプレイがいつでも可能になりました。

 

――――――――――――

鳴上悠

220/350

018/288

 

通常パラメータ

知識5:生き字引

勇気5:豪傑

根気5:タフガイ

寛容5:オカン級

伝達Z:マタヨシ級

 

隠しパラメータ

性技4:4P(↑)

精力5:孕ませ王

色気5:媚薬級

――――――――――――




この世界線の菜々子は凄い辛党設定です。


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第13章 節制

南絵理&勇太回と思いきや鎌倉編。
完全オリジナルな水着回。


<VELVET ROOM 2011年8月10日WED 晴 --:-->

 

「ようこそベルベッド回春院へ」

 

ピンクのミニスカナース姿のマーガレットが迎えてくる。

 

「今まででもっとも困難な責めを乗り越えたようですね」

 

自分でやっておきながらマーガレットは心配そうな表情を見せている。

 

「お疲れ様でした」

 

ナースに成り切っているマーガレットに服を脱がされながらベッドに誘導される。

 

「お客様にはしばし腰を休めてマーラ様を養う時間が必要だと思われます」

 

半立ちのマーラ様を撫で摩りながら、回春マッサージの準備に取りかかるマーガレット。

 

「私が身につけた回春の技はあまり多くはございませんが、こうした奉仕にも効果がありましょう」

 

マーガレットに全身を優しく愛撫されながら、じっくりと性感を高められていく。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月10日WED 晴 15:30>

 

バイトを終え、雪子と千枝と一旦別れて天城屋旅館を出る。

何故か今日は朝から随分体の調子がいい。

 

そのまま沖奈市までバイクで向かう。

ダンス教室に通うりせのお迎えのためだ。

最近は日課となっている。

 

一度デートの延長でりせの通うポールダンス教室とベリーダンス教室を見学させてもらったことがある。

どちらも普通の教室で安心したが、やはり他の生徒たちの中でりせの放つ芸能人オーラは凄い。

レッスンに通ってる最中に悪い虫が寄ってこないか心配だった。

そのためりせには毎日バイクで沖奈市まで迎えに行くことを約束していた。

 

ん?スマホが鳴ってる?

 

公園の近くでバイクを止めてスマホをチェック。

一条からの電話のようだ。

珍しい。

確か今はバスケ部の合宿中じゃなかったっけ?

 

「もしもし」

 

<お、鳴上。悪いな。今大丈夫か?>

 

「ああ、何の要件だ?」

 

<お前さ、今週の土日って暇?>

 

「特に予定は入れてなかったはずだけど。なんかあるのか?」

 

<実はさ・・・>

 

春に現役高校生初の日本代表に選ばれてから一条康を取り巻く環境は劇的に変わった。

二年前に妹が生まれてからというもの養子の康は家で肩身の狭い思いをしていた。

しかし一気に周囲の態度が豹変。

親戚参りをしつこく依頼されるようになる。

 

何やかやと理由を付けて延ばし延ばしにしてきたのだが・・・。

今回は入念に一条のスケジュールを調査していたらしい。

断固として引いてくれない。

バスケ部の合宿は明後日まで。

そして来週からは代表合宿が始まってそのまま海外遠征。

夏休み中にエビとデートを楽しむ時間は今週末しかない。

当然友人達との時間を大切にしたいと親戚に訴えた。

しかしそれなら友人達も一緒に連れて来なさいと説得されてしまった、とのこと。

 

さすがは藤原氏北家摂関家九条流に連なる家。

親戚の家は鎌倉にあり、ホテルをいくつも経営しているのだとか。

鎌倉なら海水浴場も近く、エビとの海デートも可能だろう。

ただエビ一人だけ連れて行くというのは、さすがに親戚の前では憚られた。

とても大事な人とは言え、まだただの恋人であって婚約者ではないのだ。

出来れば大勢の友人達中の一人という形で連れて行きたい。

そこで俺に白羽の矢が立ったと。

 

「えーと、あの、いつもつるんでた、サッカー部の、えーと、彼だ。彼はどうした?」

 

<長瀬か?あいつ、土日は東北の親戚んちに行ってるみたいなんだ。>

 

ナガ・・・何だって?

 

<それにあいつ女っ気ねーし。鳴上なら女の子たち、沢山誘えそーじゃん。里中さんとか天城さんとか>

 

千枝も雪子もりせも週末は予定が入ってなかったはず。

 

「わかった。何人誘ってもいいのか?」

 

<おっ助かるぜ。お前を入れて五、六人までならオッケー。人数決まったらメールしてくれ!じゃあな!>

 

そう言って一条は電話を切った。

 

鎌倉の海か。

懐かしいな。

去年の今頃はバイトでヒーヒー言ってたっけ。

 

六名まで誘えるってことは一応花村にも聞いてみるか?

 

<トゥルルル、ガチャ、よー鳴上、どした?>

 

「花村、突然だけど今週末は暇か?」

 

<土日?ああ、もう予定入ってるわ。早紀と二人でちょっと遠出する計画>

 

「旅行でもするのか?」

 

<フフフ。聞いて驚け!ついに原付き免許とミニバイクゲットだぜ!早紀と一緒に海までツーリングするんだ~>

 

「稲羽市から海まで原付きで行くのか?大変だろ」

 

<二~三時間走れば着くだろ。朝一で出発すれば楽勝楽勝!>

 

運転に疲れてあんまり海は楽しめないのではなかろうか。

まあいいか。

それもまた楽しい思い出になるだろうし。

 

<んで、週末何かあんの?>

 

「いや、一条に誘われて千枝や雪子たちと遊びに行こうと思ってさ。花村たちもどうかなって思って」

 

<ワリィなー。鳴上。また今度誘ってくれや。あ、来週の夏祭りとかどうよ?皆で一緒に花火見ようぜ!>

 

「ああ、そうだな。考えとくよ。じゃ」

 

<んじゃな!プツッ>

 

楽しい恋人たちのイベントを邪魔するのも野暮というもの。

今回は俺たちだけで行くか。

 

一条にこちらの参加人数が4名になることをメールする。

さて、りせを迎えに行かないと。

 

うん?

何か後ろが騒がしいぞ?

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月10日WED 晴 15:40>

 

「お前が壊したんだ!」

 

「違う!俺じゃない!」

 

なんだろう。

公園の芝生の上で二人の小学生が言い争ってる。

保育士はみんな向こうの東屋にいるようで、誰もこちらには気づいていないようだ。

 

「勇太が僕のネオフェザーマンロボの腕壊したんだろ!」

 

「壊してない!見せてみろよ!」

 

「離せよ!離せ!」

 

あっという間にエスカレートして、ロボットのおもちゃの奪い合いの喧嘩になる。

いかん!

 

ヘルメットをバイクに置き、生け垣を飛び越えて止めに入る。

 

「【止めろ!】」

 

<バキッ>

 

「「「あっ」」」

 

強引に二人を引き離したら、ロボットの腕が根本からもげた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月10日WED 晴 15:50>

 

「うちの勇太が大変申し訳ございませんでした」

 

「困ったわねー。これ直らないわー」

 

勇太という名の少年の母親は、優しげな雰囲気をした美人だった。

あまり主張が激しい性格ではないらしい。

言われるがままに派手な和服を来た太ったおばさんにひたすら謝ってる。

 

「本当に申し訳ございません」

 

「とにかく壊れたネオフェザーマンロボ、弁償して頂戴」

 

「・・・わかりました。お幾らでしょうか」

 

「僕じゃないって言ってるのに」

 

勇太君は悔しそうだ。

相手のおばさんのあまりの高圧的でバカにしたような態度にこっちもイラっとくる。

 

「本当に申し訳「あの、俺も弁償しますよ」

 

思わず申し出てしまう。

二人を強引に引き剥がしたのは俺だ。

俺にも少しは責任があった。

 

「え?」

 

「ある意味、二人を引き離した俺が壊したとも言えるので。おいくらですか?」

 

提示された金額は68000円。

アホかと。

今時超合金ロボにロクマンハッセンエン?

 

「なめてるんですか?そんな高いわけないでしょ」

 

「な、何よ?」

 

「それにそのネオフェザーマンロボとやらを販売しているメーカー、修理費はどんなに壊れてても最大で定価の20%と明記してます」

 

証拠にメーカのサポートページをスマホの画面で突きつける。

 

「し、修理に出したりなんてしたら、戻ってくるのに時間がかかるじゃない!それに何よ!部外者は口出さないでよ!」

 

ふーん、喧嘩売ってるんだな。

いいだろう、戦争だ!

 

「そもそも!【ここが学童保育の現場である以上、二人の喧嘩を止めなかった保育士にも責任がある!きちんと上司に報告して判断を仰げ!】」

 

遠目で明らかに関わりたく無さ気にしてた保育士二人にビシッと指を突きつける。

彼女たちはビクッとしてる。

 

「さらに!【こんなデカくて高額なおもちゃを外に持ち出すことを許容していた親にも問題がある!壊れるのは当たり前だろ!反省しろ!】」

 

目の前の太ったおばさんにも一喝を入れる。

こちらもビクッとしてる。

 

「最後に!勇太くんのお母さん。【簡単に謝るな!あなたが勇太くんを信じてやれなくてどうする!まずは信じるために勇太くんの話をとことん良く聞くんです!】」

 

蒼白な顔して立ち尽くす勇太くんのお母さん。

場はシーンと静まってしまった。

 

「【この壊れたおもちゃは保育士の方が預かって販売元に修理を依頼して下さい。請求金額については俺と保育所と両方の家で四分割しましょう。いいですね!】」

 

「「「・・・はい」」」

 

 

よし、これにて大岡裁きが無事完了。

高くとも一人あたり4000円は超えないはず。

 

こちらの連絡先を保育士と双方の母親に渡す。

勇太くんの母親、絵里さんと言うらしい。

 

去り際、勇太くんが涙を堪えてじっと俺を見つめているのに気づく。

立ち止まって声を掛ける。

 

「本当にやってないんだな?」

 

「・・・やってない」

 

「なら。逆ギレなんかせずに正々堂々とそう主張しろ。誰も信じてくれなくたっていいじゃないか。お天道様はきちんと君を見てる。【そしてもっと絵里さんを頼れ】」

 

「・・・うん」

 

勇太くんの側に立った絵里さんがそっとお辞儀をしてくる。

なかなかに問題がある家庭のようだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月10日WED 晴 17:00>

 

一条から折り返しで土曜日朝七時に八十稲羽駅で集合との連絡メールがあった。

水着と一泊分のお着替えセットを忘れずに、だそうだ。

 

俺と千枝、雪子は先の林間学校のときに買った新作の水着がある。

残るはりせだ。

ダンススクールの迎えに行ったついでに沖奈市のファッションビルに二人で立ち寄った。

彼女用の水着を選んであげる。

 

「先輩、これなんかどう?セクシーでしょ」

 

「ああ、似合うな」

 

ちょっとした二人きりのデートとなり、りせも大いに楽しんでいた。

オレンジの夏らしい色のビキニが候補に上がる。

紐がめっちゃ細くてセクシー。

トップアイドルのりせの魅力を最大限に引き出す一品だ。

 

「すみませーん、これのもう一つカップが大きなのありますかー?」

 

グラビア撮影していた頃よりサイズが一つ大きくなったらしい。

たくさん揉んであげたせいだろうか。

 

帰りのタンデムで、いつもよりちょっと強めにぎゅっと後ろから抱きついてくるりせ。

二つの柔らかい固まりが背中に押し付けられる。

りせの露骨な巨乳化アピールに俺はもうクラクラ。

 

週末の海水浴がとても楽しみである。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 7:00>

 

いい天気になった。

午後は少し曇るみたいだけど絶好の海水浴日和だろう。

あまり日差しがキツいと肌が焼け過ぎてしまうし。

 

「おっはよー」

 

三人娘たちと八十稲羽駅前で一条を待ってるとエビが合流してくる。

最近富にオシャレっぷりに磨きが掛かってる。

 

りせとは初顔合わせになるのでそれぞれ紹介してると、一台のリムジンがロータリーに入ってきた。

黒塗りですっごい高級そう。

 

ガチャリと運転席から執事が出てきて後部座席のドアを開く。

フォーマルな格好の一条が降りてくる。

 

「一条、この車は?それにその服・・・」

 

「えーと。全員で六人だからマイクロバス借りるよりもこっちの方が安上がりでさ。普段ほとんど使ってないし。服の方は・・・。向こうで夜にパーティがあるみたいで。お婆がうるさくて」

 

関白一条家を祖に持つ家は違うわー。

 

「とりあえず、あい。お手をどうぞ」

 

「康・・・」

 

頬を赤らめて一条の手を取るエビ。

三人娘たちはそのロマンティックな光景に「きゃー」と黄色い声を上げている。

う、うーむ。

かっこよすぎるぞ一条。

 

リムジンの後部座席は対面の座席になっていた。

相談の上、前列は雪子・俺・千枝、後列にりせ・エビ・一条の順で座る。

エビは芸能界のことを詳しく聞きたいらしく、りせからモデルになるためのアドバイスを欲しがっていた。

 

鎌倉までの行程があっという間に過ぎていく。

途中、二台の原チャリを追い抜いたような気がするが・・・。

まあいいか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 9:30>

 

高速道を降りて海まで南進。

海岸線を眺めながら国道で鎌倉へ。

 

ひどい渋滞の中で途中いくつもの海水浴場を通るが、どこも芋の子を洗ったような平常運転。

 

「うっわー」

 

「あの中で泳ぐの?」

 

早くも千枝と雪子はげんなり気味だ。

去年はあの中でバイトしてたんだよなぁ。

確かにあれは地獄だった・・・。

 

江ノ島を越えてしばらく進むと目的のホテルが見えてきた。

鎌倉ロイヤルプリンセスパークホテル。

鎌倉でトップの格調の高さ・規模を誇るホテル。

敷地面積と客室数、施設の数はダントツ。

 

「えーっあんな大きなホテル、一条先輩の親戚が経営してるの?すごーい!」

 

りせもビックリである。

 

稲羽ヶ崎駅の降り口から海岸線の国道まで、全て鎌倉ロイヤルプリンセスパークホテルの敷地となっている。

商業施設や飲食店の入ったビルにシネコンまでも併設され、連日かなりのにぎわいだ。

目の前に広がる稲羽ヶ崎海水浴場へのアクセスも最適だが、施設内に宿泊客専用の広いリゾートプールも備えており、まさにセレブ御用達のホテルだった。

 

俺も含めて一条以外の全員が圧倒されて声も出ない。

一条の親戚はこんなホテルを経営しているのかよ。

TVの中の世界で小金を稼いで満足していた自分が恥ずかしくなってくる。

 

いや、僻む必要はない!

だって俺にはかけがえのない三人の恋人たちがいるのだから!

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 10:00>

 

ホテルにリムジンで乗り付け、VIP待遇で客室まで案内される。

ツイン一部屋とダブルニ部屋が用意されており、どれも広いベットにオーシャンビューと素晴らしい部屋だった。

俺と一条がツイン、雪子と千枝、りせとエビのペアがダブルの部屋分けになる。

 

夏休みのまっただ中によくこんな部屋が空いていたな。

疑問に思ったが、一条に聞いても「さぁ?」の一言。

 

「夕方までには部屋に戻ってろだってさ。それまでは自由時間。難しいことは考えずにみんなで海に行こうぜ!」

 

それぞれの部屋に入ってから、親戚の叔父さんとの電話を終えた一条が早速海に誘ってくる。

 

「夕方から何があるんだ?」

 

「俺の日本代表選出のお祝いと、秋のアジア選手権に向けての壮行会だってさー」

 

お、おい。

それってかなり大きなパーティーなんじゃ・・・。

 

「叔父さんが大のバスケ好きでな。是非パーティ開いてお披露目したいんだと。下のホールでやるんだって」

 

やっぱりだ!

そのために予め多くの部屋を抑えてあったと考えれば、俺たちの部屋の件も納得がいく。

 

「立食パーティらしいんで一応みんな参加出来るよう頼んどいたけどさ。まずかったか?」

 

「服はどうすんだよ。フォーマルな夜会なんだろ?」

 

「貸衣装のサービスあるみたいだから、そこで借りればいいんじゃね?」

 

脳天気でいいなー。

それが一条の良さでもあるのだが。

 

「堅苦しいのが嫌だったら別に来なくていいぜ。他のレストラン予約しとくから」

 

そう言って女性陣たちを海に誘うためにドアに向かう一条。

 

「あっと、その前に」

 

ん?

 

「鳴上、あの三人の中の誰と付き合ってんだ?」

 

「いきなりだな。なんで今そんなことを?」

 

「いやー、うーん、まあいっか。正直に言うわ。後であいと部屋を変わってくんない?頼む!」

 

あ、そういうことか。

渡りに船とはこのことだ。

 

「わかった。こっちで調整付けとく」

 

そうするとツインのこの部屋は使わないことになるな。

 

「助かるぜ。で、誰?まさか里中さん?」

 

「【細かいことは気にすんなよ一条】」

 

「・・・お、おう」

 

「行くぞ」

 

「おうっ!」

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 10:30>

 

鎌倉ロイヤルプリンセスパークホテルの海側。

海岸線を走る国道までは開けたガーデンエリアになっている。

そして国道を越えた先には稲羽ヶ崎海水浴場だ。

ホテルにはガーデンエリアへ通じるシャワー室完備の専用出入口がある。

そこを使えば自分の部屋から海水浴場まで水着で移動できる。

 

一条と別れて千枝達の部屋に入る。

りせもすぐに合流してきた。

海水浴の準備。

 

「せんぱーい、日焼け止めのローション塗って~」

 

オレンジのビキニ姿のりせがローションボトルを持って来る。

 

「あ、私もー」

 

「・・・ポッ(赤)」

 

ライムグリーンのビキニな千枝、赤いビキニで肌の白さが映える雪子も寄ってきた。

互いに塗り合えばすむ話だが、三人ともあくまで俺の手で塗られたいらしい。

 

三人の全身の隅々まで日焼け止めを塗りこんでやる。

キスだけでは飽き足らず、我慢できなくなったマーラ様が熱り立つ。

 

「おっきくなっちゃったね、先輩っ。えいっ」

 

「もうっしょうがないなー。チュッ」

 

「このままじゃ外に出れないし。仕方ないよね・・・。ん、ジュル」

 

ううっ。

 

艶やかな水着姿の三人にトリプルフェラで一発抜いてもらってから出発。

 

全員水着の上にパーカーを羽織った格好で部屋を出る。

りせだけ大きなサングラスをしている。

 

「似合ってるよ」

 

「えへへ」

 

念のための変装のようだ。

さすがトップアイドルだけにガードに余念がない。

ピチピチのボディに大きめのサングラスのアンバランス感が良かった。

 

エレベータホールに向かうと一条たちと落ち合う。

 

「ようっ遅かったじゃないか。あいと二人きりで行っちまうとこだったぜ」

 

「もうっ康ったら」

 

ラブラブな雰囲気が漂っていることから察するに同じようなことをやってたらしい。

お互いに若いな。

 

ホテルのサービスでビーチパラソルとマット、飲み物を受け取り外に出る。

太陽が眩しい。

さて行こうか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 11:00>

 

垢抜けた美少女四人を引き連れて海岸を歩く。

 

稲羽ヶ崎海水浴場は相模湾の他の海水浴場と違ってあまり規模が大きくない。

それでもやはりこの季節は人が多い。

連れが華やかすぎて注目を浴びるのも当然のこと。

 

すれ違う男たちは皆熱い視線を向けてくる。

隣の彼女に引っ叩かれる奴ら多数発生。

 

りせは堂々としているが千枝と雪子は恥ずかし気だ。

 

「せんぱいー、腕組もうよ」

 

「なんかすっごい見られてない?」

 

「・・・りせちゃん元気ね」

 

一方、一条とエビは完全に二人きりの世界に入っており、周りの様子は一切無視のようだ。

 

「あい、やっぱりその水着すげー良く似合ってる」

 

「でしょー。康のために一生懸命選んだの」

 

海水浴場にはホテルに泊まるセレブな女の子目当ての陸サーファーも多数集まっていた。

当然俺たちの周りにワラワラと群がってくる。

 

「おい、あれ見ろよ」

「すげー。グレード高すぎ」

「ちくしょう、いい女連れてやがんな」

 

一条はエビ一人をがっちりガード。

こっちは三人面倒見なければならないので大変だ。

三人とのボディタッチの回数を増やして周囲に全員俺の女とアピール。

 

そんな中でも適当な場所を見つけマットとパラソルを設置。

海に入る。

 

ここで想定外な問題が発生。

雪子が泳げないことが発覚する。

 

「ご主人様。えーと。泳ぎ、教えてほしいな」

 

上目遣いで頼まれたら否とは言えない。

雪子にマンツーマンで泳ぎ方を教えてあげる。

その間、千枝とりせは一条に任せる。

 

しかし好事魔多し。

きゃっきゃウフフとしばらく海を楽しんでたら、陸サーファーたちが一条たちの方にちょっかいかけてきた。

初めはツレなくアシラッていたようだが、あまりのしつこさに千枝とエビが激怒。

 

「あんたら、いい加減にしてよね!」

 

「お呼びじゃないっての!」

 

「あい、そんなにカッカするなよ。里中さんも。あー君たち、マナーを守って・・・おい、話を聞けよ!」

 

一条が割って入るが、そこで久慈川りせの存在がバレてしまった。

 

「・・・あれ、久慈川りせじゃね?」

「マジでっ?おい本物だよっ」

「めっちゃ可愛いーじゃん。おおーいこっちに・・・」

 

「ヤバっ、せんぱーい」

 

騒動に気づき、雪子へのレッスンを切り上げて一条たちに合流。

一喝する。

 

「【いい加減にしろ。彼女たちは俺の連れだ!手を出すな!】」

 

「お前、去年の!」

「あのスイカ売りかっ」

「てめぇ、あのときはよくも!」

 

陸サーファーたち。

去年俺がバイトの期間中にボコった奴らだった。

 

仲間がわらわらと寄ってくる。

向こうの数が倍になった。

数が増えたことで陸サーファーたちも戦意が高まる。

 

一触即発な雰囲気。

緊張感が高まってくる。

 

しかし睨み合う俺たちの間に一つの人影が割り込んだ!

 

「出前、お待ち」

 

あ、あいかちゃん!?

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 11:30>

 

紫色のビキニにカラフルなパレオを巻いたあいかちゃん。

両手に持った岡持ちが場違いではあったが、夏の海に相応しいオシャレな出で立ちである。

 

肌が白い。

そして意外なほど胸が、ある。

直斗級だ。

これは侮っていたやもしれぬ。

 

「あいかちゃん、なんでここに!?」

 

千枝が驚きの声をあげる。

 

「明日までこっちでバイト中。ほいっラーメン六丁お届け」

 

あいかちゃん、俺たちと対峙してる最中の陸サーファーたちにどんどんラーメンを配っていく。

 

「そう言えばラーメン出前で頼んでたな。相変わらず早いねー」

「あ、俺そっちの味噌ラーメンだわ。大盛りにしてくれてる?」

「チャーシュー2枚もサービスされてんじゃん、ラッキー」

「うーんいい匂いだ。たまんねーな。ここのスープ」

「やっぱ湘南の海と太陽にはラーメンが一番合うって」

「あ、お会計ね。ちょっと待って。俺まとめて払うから」

 

陸サーファーたちの興味が一斉にラーメンに移る。

誰もこっちを気にしてない。

さすが偏差値30クラスの集団である。

 

「まーいど」

 

相変わらずのポーカーフェイスのあいかちゃんがちらっとこっちに視線をよこす。

そしてコクリと首を縦に振って合図してくる。

 

この隙に逃げろということらしい。

大変助かる。

 

りせバレの騒ぎが大きくなる前に無事に海水浴場から撤収することが出来た。

あいかちゃんのお陰だ。

後できちんとお礼をしないといけないな。

今回は何発くらいで納得してくれるだろうか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 12:00>

 

「ふー、あいかちゃんがいなかったら大騒ぎになっちゃったねー。あいかちゃんサマサマだわ」

 

「うん、そうだね!」

 

千枝と雪子があいかちゃんを賞賛してる。

 

「ごめーん。あたしのせいだね」

 

「アンタが謝ることないって」

 

恐縮するりせをエビが慰める。

 

俺達はシャワーを浴びた後、ガーデンエリアに併設されているレストランのカフェテラスで休憩していた。

ちょうど昼食時。

一条はカウンターに注文を頼みに行っている。

 

「ところでどうするんだ?エビ」

 

「え、何が?」

 

「夜のパーティだよ」

 

「壮行会だっけ。康の傍にいたいけど・・・、どうかしらね」

 

エビが悩ましげな表情を見せる。

 

「多分招待客って皆凄いセレブな人たちばかりでしょ。学生の私が出ても場違いじゃないかなって」

 

千枝が不思議そうな顔をする。

 

「あれ?海老原さんの家も相当な資産家だって聞いてたけど。違うの?」

 

「まあ金持ちなことは否定しないけどさ。所詮成金って奴よ。康の家とは格式が違いすぎるっていうか」

 

そうなのか。

 

「ハァー。天城さんとこの旅館くらいの伝統があれば、ちょっとは釣り合いも取れるんでしょうけど」

 

「え?そ、そんな!うちの旅館はただ古いだけだし。こんな大きくないし」

 

雪子は滅相もないという顔をしてる。

 

「えー、でもいーのー?こんな凄いホテルでホール使ってパーティー開くんだよ。お披露目だけで終わるかなー」

 

「何よ」

 

「一条先輩、もしかしてお嫁さん候補たっくさん紹介されるんじゃない?」

 

ビシッ。

りせの一言でエビが固まる。

 

なるほど。

ありえる話だ。

 

上流階級は政略結婚で勢力を伸ばしていくと聞く。

最年少バスケ日本代表の一条は見栄えの良い格好の駒だろう。

 

「そ、そ、そんなのダメよ。康の彼女は私なんだから!」

 

皆でホテルのプールで寛ぐつもりだったが、午後の予定は変更だ。

夜のパーティーに向けての戦闘準備の時間になる。

 

このホテルにはエステサロンや美容室が併設されている。

昼食終了後、三人娘とエビをエステに送り込むことになった。

 

予約も無しの急な話となり、店側はバタバタしていたがなんとか頼み込む。

一番値段の張る高級コースをチョイス。

さすがにエステ代までホテルオーナーに持ってもらうのは差支えがあるため、三人の分の代金は俺が支払う。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 17:00>

 

一条は親戚のホテルオーナーに呼ばれていった。

俺一人で女性陣のエステが終わるのを待つ。

 

「じゃじゃーん。えへへ。つやつやテカテカーっ」

 

「エステって初めてだけど、・・・凄いんだね」

 

「んー、気持ちよかったーっ」

 

リラックスして満足気な表情で出てくる千枝と雪子とりせ。

 

「さっ次行くわよっ!」

 

翻ってエビの方は気合い入りまくりである。

まるでこれから自分の戦場である舞台に赴く女優のような面持ちだ。

 

エステで躰の隅々まで磨かれた四人を連れて貸衣装室に移動。

 

着付けとヘアメイクは、本来なら一週間くらい前からの予約が必要なサービスらしい。

だが一条に配慮して予めホテルオーナーが仮予約を入れておいてくれていたため、快く対応してもらえた。

 

俺はサイズの合うタキシードを着て髪をセットすればいいだけ。

あまり時間はかからない。

女性陣を待つ間、俺は一計を案じて手配していた花束を花屋に取りにいく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 18:45>

 

パーティ開始の十五分前。

やっと着付けが終わったようだ。

現れた四人の艶姿にため息が漏れる。

 

「ど、どうかな、悠。似合ってる?」

 

「すこし恥ずかしいな。ぽっ」

 

「ばっちりでしょ。せんぱーい!」

 

「何よ?康だけなんだからねっ」

 

ドレスの色は千枝は緑、雪子は赤、りせは桃、エビは白。

みんな肩と背中が大胆に開いたデザインのものを選んでいた。

基本全員細くてスタイルが良い。

そのためどんなドレスを着ても似合うのだろうが、少し背伸びした感が出ていてグッドである。

 

結い上げられた髪にボリューム感があって大人っぽい。

メイクも上品なテイストでばっちりきまっており艶やかだ。

高級な香水の匂いが堪らない。

全員ふるいつきたくなるような美少女ぶりだった。

 

俺のマーラ様が疼いく。

ドレスは明日の朝までに返却すればいいらしい。

今夜は楽しめそうだな。

 

だが、まずはこの後のパーティである。

エビの気合の入り方が凄い。

 

「さっ、行くわよ!」

 

「「「「おーーーっ!」」」」

 

エビを先頭に意気揚々と会場に乗り込だ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 19:00>

 

パーティ開始の時間。

少し遅れて会場入りする。

 

広い会場だ。

フォーマルに着飾った紳士淑女が大勢いる。

 

「おおーいっぱいいるねー」

 

千枝が興味深げに周りをキョロキョロ。

ざっと見渡すと同年代の女の子の姿もちらほら。

 

「負けるもんですかっ!」

 

エビが気合を入れて先頭を行く。

 

ちょうど一条の紹介のところだったらしい。

マイクを握った司会者が良い声で一条の経歴を紹介している。

 

「あの司会の人、前にインタビュー受けたことある。へー、フリーになったんだー」

 

りせの言葉で司会者が元局アナだと気づいた。

どっかで見たことがあると思ったら、それか。

 

壇上の一条がこちらに気付いてビックリした表情を見せる。

俺たちの装いはかなり華やかでとても目立っていた。

周りの視線も自然とこちらに集まる。

 

"あれ、りせちーじゃない?"

 

そんな声も聞こえ始める。

 

しかし、丁度良いタイミングで会場が暗くなった。

大きいスクリーンがスルスルと下りてきて、一条のプレーシーンの動画が始まる。

一条の日本代表デビュー戦である、東アジア選手権のハイライトである。

一条の活躍シーンがうまくまとめられていた。

こうやって見ると超かっこいいな、一条。

 

一条のプレイを初めて見る人たちも多いらしく、その超絶プレイにドヨメキや歓声が上がる。

上流階級のハイソな方々がバスケの試合を一々チェックするわけもなし、当然かもしれない。

このビデオにより会場の空気が一気に変わった。

しかし、このホテルのオーナー、ほんとにバスケが好きなんだな。

 

映像が終わり、灯りが戻る。

一条に向けて万雷の拍手が巻き起こる。

その後、かなりの数の来賓が順繰りに壇上に上がり、一条の活躍を祝福し、激励の言葉を述べていく。

日本バスケット協会のお偉方も数人招待されていたようで、壇上で一条の素晴らしさを滔々と語っていった。

一条の顔、引きつり始めてる。

 

最後にホテルオーナーがマイクを握り、来月に開催されるアジア選手権での活躍を祈願して、乾杯の音頭を取る。

 

「「「かんぱーい!」」」

 

俺たちもノンアルコールのカクテルを受け取って唱和した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 20:00>

 

しばらく歓談タイムらしい。

これからが勝負の時間だ。

 

他の招待客たちの挨拶参りが始まる前に、女性陣四人に花束を持たせ一条のもとへ一気に近づく。

 

「【すみません、通して下さい。はいっそこ下がって!】」

 

マネージャー役に成り切って四人を引き連れて進むと、自然と前に道が出来ていく。

思惑通り、周りは芸能人による花束贈呈のサプライズと勘違いして動きを止めてくれていた。

 

活動停止中とはいえ、こちらには現役トップアイドルの久慈川りせがいる。

俺との荒淫とセクシーダンスの特訓の日々により、以前にも増して華やかさがパワーアップしている。

そして、りせに匹敵する美人オーラを放っている千枝、雪子、エビの三人。

エステでツヤツヤな上に勝負ドレスを着ていることもあって、彼女たちにも周囲の視線は否が応でも集まっていた。

艶やかすぎるボディでりせの友人のアイドルたちと周囲が勘違いしてしまうのも当然だった。

 

やはり本物の芸能人である久慈川りせの存在は大きい。

司会のアナウンサーもホテルマンたちも逡巡し、止めに入るタイミングを逸する。

誰にも邪魔されずにオーナと一条の元へ到達。

 

「君たちは・・・」

 

戸惑っているオーナーに挨拶。

 

「康君の友人の鳴上です。この度はお招きに預かりましてありがとうございます。一条、日本代表おめでとう」

 

「「「「おめでとう!」」」」

 

「お、おう、鳴上。里中さんたちも、あ、ありがとう。・・・あい?」

 

同じく戸惑いつつも女性陣から順繰りに花束を渡されていく一条。

最後がエビ。

 

「頑張ってね。ちゅっ」

 

なんと花束を渡した瞬間に一条の口元に軽くキスした。

おおっやるなエビ!

見事な宣戦布告だ。

 

「ちょっ、あい、こんなとこで!」

 

「別にいいじゃない。これくらい。もうっ」

 

慌てる康に不機嫌そうなエビ。

そのまま軽く抱き合ったままの状態になる。

 

「オホンっ、康君、こちらの女性は、誰だね!?」

 

慌てるオーナー。

 

「あー、えーと、僕の彼女です」

 

「海老原あいです。よろしくお願いします」

 

空気を読まず彼女持ち宣言してしまう一条。

にっこりと外向けの奇麗な笑顔を見せて挨拶するエビ。

 

ここが勝機とダメ押しをしてやる。

 

「この夏、康君が海老原さんと会う機会は凄く限られてました。【海老原さんを同席させてあげて下さい】」

 

オーナーに対して真摯にお願いする。

俺、千枝、雪子、りせだけでなく、康たち本人の熱意に押されたようだ。

 

「わ、わかった」

 

オーナーはしぶしぶ許容してくれた。

 

そして俺たちはパーティが終わるまでそのまま一条の周りに居座り続ける。

エビは一条の隣をキープして他の女たちを牽制。

 

一条のもとへ次々と令嬢を連れてやってくる招待客たち。

思惑通り令嬢たちは一条の隣で黒い微笑みを見せてるエビのオーラに尻込み。

フォローすべき大人の男たちは、すぐ側に控える千枝、雪子、りせの美しい肢体に気もそぞろ。

ろくに連絡先の交換もせずに挨拶を終えて撤退、という流れが繰り返される。

 

まぁ今回は顔見せだけということもあるのだろうけど。

 

しかしあれだな。

礼服の一条の隣には白いドレスを着たエビ。

まるで披露宴みたいな光景だ。

 

エビ、そこまで計算していたんだろうか。

女って凄い。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月13日SAT 晴/曇 22:00>

 

パーティーが終わり、部屋に戻る。

りせが一条と部屋を交換。

一条とエビがダブルの部屋に。

 

一条が去ってから、俺とりせも千枝と雪子のダブルの部屋に移動。

ダブルと言っても、もともとのシングルのサイズがクィーン級なので通常のキングを軽く超える。

八十稲羽の自宅のマンションのベッドと同じような広さだ。

ただスプリングはこちらの方が断然高級で、いつもより激しく腰が弾みそうである。

 

「このまましようよー、せんぱいー!えへへっ」

 

「よしきたっ、待ちに待ったお楽しみタイムよねっ、おほほっ」

 

「うん!楽しもう!うふふっ」

 

エステで磨かれ、高級なドレスと装飾品で着飾り、濃いめのメイクと高級香水でおめかししている女の子三人。

さきほどまで幾人もの男たちの垂涎の的になっていたその躰を、俺だけが隅々まで味わえるのだ。

普段では得られないゴージャス感と優越感が合間って、マーラ様が疼いてしかたない。

 

もちろんドレスを脱がず、そのままの格好で奉仕してもらう。

ソファに座り、左右と千枝と雪子、正面にりせを配置。

マーラ様を曝け出す。

 

「じゃーん、私がセンター!」

 

「もうっ、りせちーばっかずっこい。ちゃんとこっちも相手してくれなきゃ怒るよ、悠!」

 

「ねぇ、手袋着けたままするの?」

 

まずは三人同時のテコキ。

シルクの手袋で擦られるのは普通に握られるよりも気持ちよく、クセになりそうだ。

千枝と雪子の肩に手を回して大きく開いた胸元に手を突っ込む。

ボリュームのあるやわ乳を揉みまくってピクピク躰を震わせるまで追い込むことも忘れない。

一回目の射精は、正面で跪いてるりせに発射。

ドレスが汚れないようにプルプルなピンクの唇で全てチューっと吸い取ってくれた。

 

「うーん、ぐらっちぇ!」

 

「いいなーりせちー。あたしにも、あんっ、ナメナメさせてよっ」

 

「はぁはぁ、今度は私に飲ませて。ご主人様ぁー」

 

次は仁王立ちでトリプルフェラ。

上品な化粧をした三人の美顔が三方向からマーラ様に寄せられる様は壮観である。

三人の蠱惑的な唇のルージュがマーラ様に移っていく。

二回目の射精は、髪を結い上げて随分大人っぽく見える雪子の口に放つ。

 

続いてオーシャンビューの窓に手をついての立ちバック三連。

腰を突き出させてスカートをたくし上げる。

もちろん胸は開けた状態だ。

 

「こんな格好、ああっ、外から見られたら、破滅だよぉう、せんぱいっ、あんっ」

 

「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、イクぅぅぅぅっ」

 

「次は、あんっ、こっちに入れて、あっ、クリちゃんつまんじゃ、らめーっ」

 

ガーターストッキングに包まれた三人の長い脚の形の良さを堪能しながら、紐パンをずらして秘唇を愛撫。

まずは千枝から挿入を行い、彼女たちがイク度に隣に移って順繰りに腰を振るっていく。

挿入していない穴はディルドーとフィンガーテクニックで決して寂しくなんてさせない。

三回目の射精は、ショートボブをふんわりアップにしている千枝にしっかりと注ぎ込んだ。

 

その後、ドレスを着たままの三人と座位や正常位、騎乗位で繋がり夜遅くまでゴージャスセックスを堪能。

放たれたペルソナ液は全て三人の体内に収まり、ドレスを汚すことはなかった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月14日SAN 晴 9:00>

 

海に面した開放的なレストランで朝食のバイキングを堪能する。

互いの部屋で夜遅くまで頑張った結果、少し遅めの朝食だ。

 

一夜を越えて、男性陣と女性陣、それぞれ対照的な様相となっている。

ぐったりしている一条に対してエビは活力をたっぷり注入されたって感じでツヤツヤだった。

翻ってこちらの部屋の面々では俺が元気で女性陣三人は愛され過ぎてお疲れモード。

ふっ、バスケでは負けるが夜の戦いでは俺の方が圧勝のようだな。

 

一条の話では今日の予定は特に何もないらしい。

夕方にホテルのロビーで待ち合わせ。

それまで自由時間になる。

 

「あー、俺たちは街の方まで出て遊んでくるつもりだけど、鳴上たちはどうすんだ?」

 

一条は疲れた体に鞭打ってエビと鎌倉デートに出かけるそうだ。

 

「うーん、そうだな。どうする?」

 

みんなに意見を聞く。

 

「私はホテルの中でゆっくりしたいなー。またファンに絡まれるのやだし。千枝先輩と雪子先輩は?」

 

「あたしも外に出るのはパス。ここのステーキハウス、すっごい評判らしいよ。ランチはそこにしようよ!」

 

「今日は暑くなるみたいだから、私もあまり出歩きたくないな。それにホテルの施設、よく見ておきたいし」

 

よし決めた。

せっかくの豪華なホテルに来ているので、俺たちはホテル内の施設を堪能することにする。

 

食事を終えて一条たちと別れ、これからどうするか相談。

まずは昨日行けなかったリゾートプールである。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月14日SAN 晴 18:30>

 

八十稲羽駅に到着。

帰りの車中は遊び疲れて皆寝てしまっていた。

 

鎌倉ロイヤルプリンセスパークホテルのリゾートプールは最高だった。

宿泊客専用なためセレブな雰囲気で、他グループは干渉してこない。

りせもファンに囲まれることなく安心して泳ぎを楽しめていた。

俺も昨日堪能できなかった三人のセクシーな水着姿をじっくり鑑賞することができて大満足である。

やはりグラビアアイドルの水着姿は開放的でキラキラ光るプールサイドこそ映えるな。

 

お昼は千枝の要望に沿ってホテルの最上階にあるステーキハウスへ。

俺のポケットマネーでどどーんと支払う。

高級な牛肉を使ってるだけあって肉の脂身も上品。

あまり肉が得意でない雪子とりせでも美味しく感じられたようだ。

1ポンドステーキをぺろりと平らげた千枝が、感涙して「肉はみんなを裏切らない!」の名言を残す。

 

午後は雪子に付き合い、ホテルの敷地内の施設やお店をいろいろと回る。

やはり老舗天城屋旅館の次期女将だけあって、雪子のホテルを観察する視点は経営者目線で面白い。

千枝とりせもウィンドウショッピングを堪能したようだ。

個人的にはみんなで入ったプラネタリウムが良かった。

・・・俺の隣に誰が座るかで大分もめてしまったが。

 

八十稲葉駅前で別れ際、一条が礼を言ってくる。

 

「鳴上、付き合ってくれてありがとな」

 

「こちらこそ、あんな豪華なホテルに誘ってくれて感謝してる」

 

「・・・あいから聞いた。昨日のパーティーで叔父さんに頼んでくれたこと、すっげぇうれしかったぜ」

 

「あれくらいたいした事ないさ。それより一条。日本代表、頑張れよ。応援してる」

 

「おうよ!任せとけ!」

 

爽やかに去っていく一条。

この小旅行、いい一夏の思い出となった。

 

さて自宅に戻る前に愛屋に寄ろうか。

あいかちゃん、帰ってきてるかな。

確か今日まで向こうでバイトって話だったが。

 

あのパープルの水着、可愛かったな。

出来ればあの水着でフェラしてくれると嬉しいんだけどな。

 

 

 

<SYSOP 2011年8月14日SAN 晴 --:-->

 

南絵理は夫の連れ子である勇太との接し方を改め、とことん対話する姿勢を打ち出していきます。

南勇太はキレ難くなり、家庭内でもきちんと主張すべき事は主張するようになります。

南絵理はいきなり母ではなくまずは勇太の家族になることから始め、鳴上悠との絆を必要としなくなります。

節制のアルカナが消滅しました。




一条家超セレブ設定。
名家らしいからいいよね。


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第14章 悪魔/死神

原作13話14話の夏祭り回になります。
直斗の改造がまたさらに一歩進みます。


<VELVET ROOM 2011年8月20日SAT 晴 --:-->

 

「ようこそまた私の膣へ。あんっ」

 

膝をついて腰をつき出している浴衣姿のマーガレットの膣へ、マーラ様がヌルヌルと差し込まれて行く。

 

「あっあっあっ、これが主が私に射精して中出しした回数、ですぅ」

 

裾がめくり上がって露わになっているマーガレットの尻たぶには油性のマジックペンで正の字が書かれている。

 

「あふっん、一度にこれだけのペルソナ液を膣に入れられるなんてぇ~」

 

一突きする毎にパンパンに注がれたペルソナ液が吹子のように隙間から溢れ出てくる。

 

「ああ、私、また絶頂への高まりを感じるわ。あああんっ」

 

マーガレットの肩が落ち、尻がより高く突き出される。

 

「やはり、主は、はぁ、私の思っていた以上の、ああああっ、益荒男なのかもしれない。イクうっ」

 

六回目の中出しがマーガレットの膣を破裂しそうな勢いで駆け巡っていった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:00>

 

今日は夏祭りだ。

昨晩花村から「夜、神社に集合な」と電話があり、みんなで辰姫神社に行く約束をしていた。

 

それと叔父さんからの依頼も受けている。

菜々子ちゃんを夏祭りに連れて行って欲しいそうだ。

 

勿論その依頼は快く引き受けた。

身重の千里さんに無理はさせられない。

それに菜々子ちゃんは優しいから。

千里さんが一緒だとお母さんが気になって夏祭りに集中できないだろう。

 

雪子と千枝とりせの三人と相談し、雪子たちに一旦菜々子ちゃんを預ける。

雪子たちは菜々子ちゃんを連れて天城屋旅館に寄り、浴衣に着替えてから神社に来る予定だ。

 

とは言うものの、少し早く来すぎたかもしれない。

花村たちの姿もまだ見えない。

 

しかし凄い人手だ。

例年こうなんだろうか。

少し境内を回ってみるか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:05>

 

あれは誰だっけ?

一条とよくつるんでたサッカー部のキャプテン。

長井君だったか。

 

相変わらずのジャージ姿の彼。

かき氷の屋台の前で一人特盛のかき氷食べてる。

お、あのかき氷屋、四六商店のおばちゃんがやってるのか。

 

「ぐ、ぐおー」

 

長井君、突然冷たいもの食べて頭がキンキンになったようだ。

のたうち転げ回っている。

 

・・・そっとしておこう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:10>

 

屋台をぶらつく。

 

露天くじ屋があった。

ああいうくじ屋って当りクジの無い詐欺の場合が多いんだよな。

くじ全部引いても当たりが出なくて露店商が捕まったニュースが思い出される。

 

「お客さん、うちのは外れクジ無しだよ。一つ引いていかないか?」

 

・・・心を読まれたのだろうか。

眼光鋭い露店商の挑戦的な視線。

いいだろう。

引いてやろうじゃないか。

 

「一回千円だ」

 

随分高いな。

一回勝負だ!

 

「【いい商品が当たりますように!】えいっ」

 

「・・・大あたりーっ。特等だ。もってけドロボーッ」

 

<ごろんごろーん>

 

店員がヤケクソ気味に鐘を鳴らす。

おお、凄いのが当たったようだ。

 

賞品を受け取ってみると摩訶不思議な品だった。

リップスティック型カメラ。

なんだこれ。

スパイ大作戦か?

 

小型カメラとして使えるだけではなく、普通に口紅としても使えるようだ。

ブランド物を模したオシャレな外装。

口紅の色自体はパールピンク。

 

あ、普通に口紅部分差し替えれる構造になってる。

エコでポイント高いぞ。

 

しかし確かに隠し撮りには便利かもしれないが・・・。

明らかに女性専用のアイテムだ。

こんな物、いったい誰にあげればいいんだろう?

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:15>

 

口紅カメラの処分先に迷いながら歩いていると社務所の前で女の子から声を掛けられる。

 

「あら、鳴上君じゃない」

 

エビじゃないか。

一週間ぶりだな。

 

相変わらずファッションモデル並みのオシャレな格好。

レース編みの奇麗なショールなんて首に巻いてる。

でも場所柄を考えると意外だった。

 

「かっこいいけど、浴衣じゃないのか?夏祭りなのに」

 

「そこは可愛いって言うとこ。今日は康と一緒じゃないもの。それにこれ奉納しに来ただけだから」

 

一条は九月のアジア杯に向けて日本代表の合宿中だ。

手に持っていた絵馬を見せてくるエビ。

アジア杯での康の活躍を祈願したもののようだ。

 

「わかった。じゃあ一緒に参拝しようか」

 

エビの参拝に付き添って混み合ってる社殿に向かう。

 

途中エビにさっきの口紅カメラをプレゼントしようかとも考えたが思い留まる。

彼氏持ちの女の子にプレゼントなんて誤解されたら困る。

それにエビも隠しカメラなんて貰っても困惑するだけだろう。

 

二人で並んでさい銭を投げ、鈴を鳴らして二礼二拍手一礼。

一条と日本代表の優勝を祈る。

 

別れ際、「夏祭り、来年は一条と一緒に来れたらいいな」と声を掛ける。

するとエビは「そのときはあたしの浴衣姿にメロメロの康を見せてあげる」と奇麗に笑った。

 

多分そのときはもう俺は稲羽市から離れていると思うが、その姿を想像するだけで楽しくなってくる。

ごちそうさま。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:30>

 

辰姫神社の境内にあるベンチに座って一休み。

スマホをチェック。

まだ連絡は無い。

 

一人の浴衣の男が目の前を通り過ぎる。

携帯電話でも取り出そうとしたようだ。

その拍子に男の袖から小さな箱のような何かがこぼれ堕ちる。

目の前に転がってきたそれを俺は反射的に拾い上げた。

 

指輪ケース?

 

「ご、ごめん!」

 

その男が慌てて戻ってくる。

二十代半ばだろうか。

なんか雰囲気が研修医っぽい真面目そうな優男。

 

「もしかして、これからプロポーズですか?」

 

指輪ケースを渡しながら一声掛ける。

 

「え?あ、ああ。うん、そうなんだ」

 

随分テンパってるようだ。

 

「きっと上手くいきます。【二人の絆を信じて】」

 

「・・・そうだね。ありがとう」

 

俺の一言で大分緊張が解れたみたい。

見違えるほど引き締まった表情になって去っていく。

 

向かう先には一人の女性の姿が。

あの水色の浴衣を着ている人がプロポーズ相手かな?

先ほどの男性よりも若干年上のようだが・・・。

 

うん?

あの女の人どこかで・・・。

あっ、稲羽市立病院のナースさん?

 

早紀さんが運ばれたときに部屋を教えてくれた人だ。

確か上原さんという名前だったような気がする。

 

プロポーズが上手く行けば美人ナースの姉さん女房か。

それも憧れるなぁ。

 

おっ、プロポーズするか?

するか?

するか?

したーーーーっ!?

 

指輪を嵌められた上原さんが感極まったようで指輪を抱きしめて涙を零している。

これは見事プロポーズ成功だろ!

 

「あらあら、まあ」

 

え?

気がつくと隣に喪服のお婆さんがいた。

いつの間に!?

 

何かを抱きしめながらプロポーズシーンを見つめて微笑んでいる。

なんだろう?

べっ甲の櫛?

 

「あぁ懐かしい。あたし、こんなにも夫の事を愛してたのねぇ」

 

「あ・・・」

 

このお婆さんともどこかで会った気がする。

だが俺が言葉を掛ける前に、お婆さんは幸せそうに泣きながら去っていってしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:45>

 

喪服のお婆さんが少し気になって後を追ってみる。

すると境内の片隅で、だいだーらの店主のおっさんが座ったままで一人呻き苦しんでいるところに遭遇。

 

「く、くぉ、う、うううー」

 

<バシバシバシ>

 

すっごく暴れている。

彼の足元にはビール缶と食い差しの団子が数本置かれていた。

 

「どうしたんですかっ!」

 

段々青い顔になってきたおっさんが必死に己の背中を指差している。

 

「背中、叩いてほしいんですね!?」

 

「んんっ、んんっ、んんっ」

 

<ドンっ>

 

要望に沿って背中にハンマーパンチ。

 

「げほっげほっげほーーーっ」

 

おじいさんの口から緑色の団子が飛び出してきた。

九死に一生を得たようだ。

やはり団子と餅はこの国で一番多くの人間を殺している殺人犯だな。

 

「ふー、三途の川が見えたぜ」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、兄ちゃん、ありがとよっ」

 

しかしだいだーらの店主のおっさん、相変わらず凄い顔をしているな。

顔に大きなXの傷跡があるなんて只者ではないだろ。

よろず屋なんて営んでいるが本職は一体何なんだ?

あれ?

 

「・・・花火屋さんだったんですね」

 

法被の背中に大きな屋号が書かれてあった。

 

「おお。俺はアートが好きなんだよ。花火ってのはでっけぇアートよ」

 

「はぁ」

 

なんかいきなり語りだしたぞ。

 

「今年は人が多いなー。いいことじゃねーか。俺の花火が上がった瞬間にな。この祭りに参加している奴らみんな笑顔になるって考えるとよぉ。ワクワクしてこねぇか?おいっ」

 

そんなことより団子と餅食うときはちゃんと噛んで・・・。

あ、あと最近は蒟蒻のゼリーもやばいって話で。

 

「おっ時間そろそろか。よっしゃ行こうか!待ってろよっでっけぇ花火打ち上げてやるぜー。お前さんも彼女がいるなら、早く合流しとけよっ」

 

何だって?

もうそんな時間か。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 18:55>

 

境内の外の暗い路地を歩く。

結局、花村たちにも雪子たちにも会えていない。

19時前には合流する予定だったんだが。

 

このままでは一人寂しく花火を見ることになるな。

残念だ。

 

ん?

あれは白鐘直斗・・・。

所在なげに木々の合間に見える祭りの様子を伺っている。

声をかけてみよう。

 

「やあ、また調査かい」

 

「あなたは。・・・探偵が諦めたら事件は終わりませんから。僕は諦めませんよ。最後まで」

 

一ヶ月前に会った時とはまた様相が違っていた。

また髪が伸びたようでボブカットに近い。

 

随分髪が伸びるのが早いな。

女性ホルモンが半端ないんだろうか。

あの胸だし納得はできるが。

 

そして一番大きい変化はパンツルックを止めたことである。

ついにスカートを履くようになったようだ。

 

探偵らしくいざという時に素早く走れるようだろうか。

かなりタイトなミニだった。

そのため奇麗な脚がにょっきりと曝されており、夜祭りの薄明かりの中でその白さがかなり目立っている。

胸の大きさを強調するブラウスと相まって、どこから見ても魅力的な女の子である。

 

化粧っけのない清楚さが逆に妖しげな胸騒ぎを誘発させる。

こんなセクシーな女の子が闇夜で一人歩いていたら危ないんじゃないだろうか。

そんな心配さえ抱かせる美少女振りだった。

 

「用が無いのなら僕はもう行きます」

 

あまりジロジロ見過ぎたらしい。

恥ずかしげに頬を赤らめ、立ち去ろうとする直斗。

慌てて呼び止める。

 

「ちょまてよ!」

 

「何か?」

 

もうすぐ花火が始まる時間だ。

 

「【一緒に花火を見よう】」

 

「・・・え?」

 

「互いに一人きりで花火を見るのは寂しすぎるだろ」

 

<どどーん>

 

花火が始まった。

 

<どどーん、どどーん>

 

夜空に大輪の華が咲く。

花火屋のおじいさん、随分奮発したな。

 

直斗も見惚れているようだ。

そっとその隣に立つ。

 

「奇麗だな」

 

「ええ。いい花火です」

 

「いや君のことさ。そのミニのスカート、とても似合ってる」

 

「えっ!?あ、ありがとうございます。ポッ(赤)」

 

照れる直斗を肴に花火を堪能する。

 

そうだっ。

この口紅カメラ、彼女にあげてしまおう。

探偵の彼女なら女としても探偵としても活用する機会がある。

一番有効活用出来る。

 

それに千枝、雪子、りせの何れかにプレゼントしたら、結局他の二人の分も用意しなければならなくなるし。

ここで直斗にプレゼントしてしまうのが一番収まりがいい。

 

「あとはメイクにも気を使えば完璧だな。良ければこれを使って」

 

直斗に口紅カメラを差し出す。

 

「これは?」

 

「さっき屋台で当てた景品。隠しカメラにもなってる。君に使って欲しい」

 

「そんな。頂けません」

 

「君に使ってもらわないと逆に俺が困る。探偵なんだろ。【使いこなして魅せろ】」

 

「・・・は、はい」

 

いつの間にか花火は終わっていた。

 

<PiPiPiPiPiPiPi>

 

ん?

花村からの着信だ。

やっと来たか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:15>

 

直斗と別れた後、やっと連絡の取れた花村と合流する。

 

「わりぃわりぃ。花火終わっちまったな」

 

「ごめんね。鳴上君。JUNESのバイトが長引いちゃって。んん」

 

小西先輩は浅葱色の浴衣姿だ。

少し顔が赤い。

そういう事なら責めても仕方ないか。

 

辺りを興味深げに見回す花村。

 

「祭りって、去年はもっと人が少なかった気がするんだけど・・・あの赤いキツネ騒動のせいか?」

 

「確かに今年は人多いみたいね。あふっ。あれだけ世間で騒ぎになったら仕方ないかも、んっ」

 

感心してる花村の言葉に、縋り付いてた小西先輩が同意を見せた。

改めて境内を見回して自分が発端となった五月のキツネ騒動を思い出す。

あの頃はネットがやたら盛り上がってたっけ。

 

「マスコミはもう引き上げたみたいだな」

 

あのTV局、結局謝らないで有耶無耶になったままだ。

 

「あいつら好き放題かき回して、逃げ足だけは早いよなー」

 

花村もマスコミには思うところがあったようだ。

最近はほとんどTVを見ないと聞くが。

 

「賑わってて良かったじゃない。それより陽ちゃん。今日忙しくてお昼抜いてるの。くぅ、何か食べない?」

 

「おお、いいね!じゃあイカ串あたりいっとく?」

 

結局花村たち色ボケカップルに付き合って、また屋台を周ることになった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:25>

 

「くそっ、なんで売り切れなんだよぅ!」

 

イカ串持った花村がかき氷屋で絶叫する。

 

「ごめんねー。ジャージ着たガタイのいい学生さんが、やけ食いだーって信じられない勢いで食べ尽くしちゃって」

 

「店のかき氷全部食べちゃうなんて凄いわ。失恋でもしたのかしら?」

 

四六商店のおばちゃんの説明に小西先輩も呆れてしまっている。

長根君、無茶しやがって・・・。

 

夏祭りにかき氷が無いなんてどうにも締まらない話だ。

仕方ない。

彼女に頼むか。

 

「俺に任せろ」

 

花村たちに声を掛けてからスマホを取り出し、リダイヤルで電話を掛ける。

 

「出前を頼みたいんだ。辰姫神社までかき氷用の氷を大至急持ってきて欲しいんだけど」

 

<まいどあり。んフフ。オプション代よろしく。ガチャ>

 

これでいい。

 

営業時間外の注文で三回。

メニュー外の注文で五回。

速達での注文で二回。

 

今回のオプション代は計十回か。

まだ払い終えてない分も結構あるから、溜まっていく一方だな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:30>

 

氷の出前を待ちつつ、雪子たちも待つ。

 

「あいつら、おっせーなー。わざわざ天城んちで集合って、何してんだ?」

 

イカ串を食べ終わった花村がボヤいている。

 

「何って勿論浴衣の着付けさ。従姉妹の菜々子ちゃんの分も頼んで・・・」

 

「あ、あれ、そうじゃない?」

 

小西先輩が声を上げる。

境内をゆっくり上がってくる浴衣姿の四人。

 

「ご、ごめん、ちょっと遅くなっちゃった・・・ね」

 

開口一番謝罪の言葉を述べてきた千枝は、白地に緑の花柄の浴衣に橙の帯。

とても華やかだ。

最近とみに色っぽくなってきた彼女の女振りをいい感じに強調してる。

 

「えと、いつもよりお着付けに手間取っちゃって。あはは」

 

雪子は紫色に白い扇子柄の浴衣に桃の帯。

落ち着いた色使いでかなり高級そうな浴衣である。

やはり和装なら雪子と唸ってしまいたくなる。

体の動きまで綺麗で浴衣の見せ方が上手い。

 

「あつ~い、浴衣って中に巻いちゃうから、言うほど涼しくないのよねー」

 

りせは桃色に白い蝶柄の浴衣に黄の帯になる。

よく似合ってるが、この娘はほんとピンクのポジショニングを崩さないな。

さすが骨の髄までアイドル。

 

三人とも可愛いが、それ以上にその所作にはえも言われぬ色気があった。

その理由こそが彼女たちが遅れた原因。

 

つまり浴衣の下には何も着けるなと命令してあったのだ。

 

千枝と雪子は大分緊張しているのが見て取れる。

万が一でも見えないように己の動きと周囲の状況に神経を張り巡らしていた。

りせが平気そうに見えるのは職業柄か。

写真撮影時に下着のラインが出ないよう、着けないことが往々にしてあるらしいから。

 

まぁノーパンノーブラなんて昔の人は当たり前だったのだし、可愛いモノに違いない。

ローターにバイブまで着用の隣のバカップルよりはよっぽどマシだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:35>

 

「下駄って歩きにくい・・・」

 

お姉ちゃんズと違って、菜々子ちゃんは慣れない下駄に四苦八苦の様子だ。

 

そんな菜々子ちゃんは白と桃の格子柄の浴衣に朱の帯。

大きな綿菓子の袋を持っているのが愛らしい。

途中で雪子たちに買ってもらったようだ。

 

「似合ってる。浴衣」

 

「・・・えへへ、ありがとう!」

 

俺の言葉にうれしそうに微笑む菜々子ちゃん。

 

「花火は見れた?」

 

「うん!旅館から見れた!すっごいきれーだった!」

 

良かった。

やはり夏祭りは花火を見ないと。

 

「ね、先輩、私たちの浴衣の着こなしどう?グッとくるでしょ」

 

チラリと裾を捲り、ノーブラノーパンを仄めかしてアピールしてくるりせ。

今までいろんなコスプレHをしてきたが、そういえば浴衣は初めてだな。

 

「ああ。今すぐ押し倒したいくらい色っぽいな。今夜は寝かせないから」

 

ストレートに答えてあげる。

 

「「「・・・ッ(赤)」」」

 

三人とも真っ赤になってしまった。

 

「ん、お姉ちゃんたち、どうしたの?顔赤いよー」

 

微妙な空気が流れ、菜々子ちゃんが不思議そうな顔をしている。

花村たちは・・・。

 

「陽ちゃん、なにそんなにマジマジと見てるの?まさか・・・浮気?許さないわよ・・・」

 

「そ、そんなんじゃねーよ!!」

 

こっちに絡んでくる余裕は無さそうだった。

 

「あ、あはは、花村先輩、超ぴーんちっ」

 

なんとか立ち直ったりせが場を和ます発言。

 

「「あ、あはははは・・・は」」

 

千枝と雪子も追随する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:45>

 

雪子の提案で皆で集合写真を撮る。

勿論菜々子ちゃんが写真の中心だ。

それからペアで写真撮影。

 

「よう・・・すまんな。せっかくの祭りの日だってのに菜々子の面倒見てもらって」

 

ちょうど写真を撮り終えたところで背広の上着を肩に引っ掛けて、叔父さんが現れた。

 

「叔父さん、今日も警察で仕事だったんじゃ」

 

「ああ、田舎の祭りになんて興味が無いとか抜かしがやがったんで、足立の奴に雑用も含めて全部押し付けてきた」

 

足立さん、哀れ。

 

「ラブリーンの綿菓子、買ってもらったー」

 

菜々子ちゃんが綿菓子袋を嬉しげに叔父さんに見せている。

 

「そうか。よーし、じゃあ次はお父さんと一緒に射的でもやるか?」

 

「うん、負けないよー!」

 

「千里にもお土産買って帰らないとな」

 

「うん!」

 

やっぱ、菜々子ちゃんの微笑みの質が違うな。

お父さんが一番好き、か。

最高の娘じゃないか。

 

「菜々子はもう大丈夫だ。一年に一度の祭りだ。それにこんなにこの祭が賑わうなんてここ数年無かったからな。お前らも楽しめよ」

 

そう言って叔父さんは菜々子ちゃんと二人、射的屋に向かっていった。

現役刑事の銃の腕の見せ所だろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 19:50>

 

さてどうするか。

このメンバーを連れて三度屋台を冷やかすか。

 

・・・と思ったら花村が離脱宣言をしてくる。

 

「すまねぇみんな。早紀がさっきから具合が悪いみたいなんだ。彼女を送ってくから四人で回ってくんね?」

 

「っ。ううぅ」

 

小西先輩は熱に浮かされたような表情を浮かべて、ふるふると震える己の体を自分で抱きしめている。

じゃあ仕方が無いな。

 

「わかった。あまり無理させるなよ」

 

「ああ」

 

浮気を疑われて詰め寄られてから、花村の手はズボンのポケットに突っ込まれたままだ。

追求の回避プラスお詫びも兼ねて、小西先輩の体に取り付けられた機具の振動をマックスにしてしまったようだ。

 

小西先輩の様子は色っぽいを通り越してひたすらエロい。

完全に出来上がってる。

大方これから神社の裏手にでも連れ込んでするつもりだろう。

 

「「お、お大事にー」」

 

小西先輩のエロさに当てられつつ、よくわかってないで二人を見送る千枝と雪子。

 

「夏祭りの夜、寄り添って歩くふたり・・・慣れない浴衣が着崩れて・・・夏、かー」

 

りせ、いきなり何のコピーだよ。

千枝と雪子と違ってりせは状況を良く把握しているようだ。

 

「ねー先輩、あたしたちはどこでするの?」

 

花村たちと鉢合わせしたくない。

それに今は夏だからな。

最初から俺の中に青姦の選択肢は無かった。

 

「マンションが近いし、帰ってからかな。りせだって蚊に刺されたくないだろ」

 

「そっか。じゃあ取りあえず普通にお祭りを楽しまなきゃね。ほら先輩たちー、屋台巡りに出発するよー!」

 

りせの音頭で移動を開始した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 20:00>

 

「じゃあ最初はあそこ!」

 

さっそく千枝が目の前のかき氷屋に突撃する。

あ、その店はまだ・・・。

 

「えー、かき氷無いのーっ!?」

 

「ご、ごめんねー、氷は品切れなの」

 

千枝の勢いにタジタジな四六商店のおばちゃん。

そこに救世主現れる。

 

「出前ー、お届けにきた」

 

夏祭りバージョンの浴衣姿のあいかちゃんだ。

紺色に朝顔の柄の生地に朱の帯が涼やかだ。

 

あいかちゃんが岡持の蓋を開ける。

中にはキラキラ輝く大きなブロックアイスが。

 

「おおー」

 

千枝が目を輝かせて感嘆する。

早速四六商店のおばちゃんがかき氷作りに取り掛かる。

 

良かったな千枝。

そのかき氷は俺の貴重なペルソナ液と等価交換された貴重な一品なんだぞ。

よく味わって食すように。

 

なんだったらシロップ代わりにペルソナ液ぶっかけてやろうか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 20:15>

 

少しだけ皆から離れて出前を終えたあいかちゃんを送る。

そのまま神社の裏手に移動。

 

「んじゃここでー」

 

あいかちゃんが立ち止まる。

神社側からの視線が遮らえる木陰の中だ。

 

あいかちゃん、しっかり蚊取り線香まで用意してきてた。

 

<パンパン>

 

「本日の出前の手付分、頂きまーす」

 

俺の足元に膝をついて俺のマーラ様に二礼二拍手一拝してくるあいかちゃん。

俺のマーラ様は道祖神か何かなのだろうか・・・。

 

「じゅっぽじゅっぽじゅぽ」

 

いつもと違う可憐な浴衣姿のあいかちゃんのフェラに気分が乗ってくる。

 

「ううっ、もっとかりのところを舐めてくれ!」

 

普段はしない指示まで出してしまった。

 

「んぐっ了解、レロレロじゅぼじゅぼ」

 

これもそれも背後の林の奥から聞こえてくるバカップルたちの嬌声がいけない。

 

<ああーん、そこいいーっ、ようちゃん、もっとついてー>

<さきっ、もっとあしあげげろよ!いぬみたいにもっと!>

<あっあっああああ、だめっゆかたはだけて、きつけできなくなっちゃううう>

 

まぁ向こうからこちらは見えてないみたいだからいいだろう。

これも夏の青姦の醍醐味と言えば醍醐味だ。

 

はしたない喘ぎ声に煽られ、俺もだんだんエロイ気分になりつつあった。

 

おっといけない。

これはあくまでお礼なんだ。

 

「んっ出るよっ」

 

「ふんふん」

 

<どぴゅぴゅどぴゅー>

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 20:30>

 

あいかちゃんと別れて縁日に戻る。

三人と合流しないと。

 

おっと、これはアイドルのプロマイド屋か?

稲羽市に越してきてからアイドル情報はとんと仕入れていない。

昔取った杵柄で興味が湧いてくる。

冷やかしに入ってみた。

 

へぇーこの娘が真下かなみ、か。

 

「ちょっと先輩!なんで他の子のプロマイド選んでんの!?私のあったでしょ!」

 

げ、やばい!

 

いつの間にか後ろからこちらの手元を覗き込んでいたりせにどやされてしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 20:45>

 

「ご主人様ー、金魚すくい付き合ってー」

 

雪子に甘えられてポイを握る。

こういうとき雪子の実家が旅館であることが助かる。

庭園に巨大な池があるので、掬い放題だ。

 

二人で夢中になって金魚を追ってると、ふと屋台のおっちゃんの視線の先が気になった。

そんなに顔を赤らめて何、見てんだ?

 

はっ!?

 

「雪子、裾」

 

「え?・・・きゃっ」

 

しゃがみ込んだ雪子の浴衣の裾が少しめくれていた。

白い脚と足袋が屋台の明かりに照らされて眩しい。

 

慌てて裾を押さえる雪子。

 

<ポチャ>

 

ポイが沈んで行く。

 

うーむ、ノーパンは危険だ。

だがそのギリギリ感がいい!

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 21:00>

 

夏祭りを堪能し、マンションに戻る。

 

肌の露出部分に虫除けスプレーをしてるので、シャワーを浴びたいところだ。

しかしそうなるとせっかくの浴衣姿を楽しめなくなる。

痛し痒し。

仕方ないので今日は女性陣の方からの奉仕をメインに据える。

 

やはり和装でのHは和室ですべきだ。

明かりも行灯だけ。

そして窓辺には風鈴。

良い音色が聞こえてくる。

蚊取り線香の匂いが仄かに香る。

風情が出てきた。

 

準備は万端。

和室の畳の上に仁王立ちになる。

 

「「「ふふふふ」」」

 

妖しげな笑みを浮かべて三人の美少女たちが群がってくる。

まるで夏の夜を舞う美しい蝶のようだった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月20日SAT 晴 21:30>

 

「えへへ。もう一回っ。あーん」

 

「こ、このっ。りせちゃん!次はあたしの番なんだから、勝手にしゃぶらないでよ!」

 

「あー!千枝が浴衣にご主人様のペルソナ液つけてるー!もー」

 

もうすでに俺のマーラー様が咆哮を上げること三度。

 

つい先ほどの口内射精を飲み干し終わったりせが、マーラ様を離さず続けてフェラチオしようとしている。

そのりせの暴挙を一回目で飲みきれずに吹いてしまったことを悔い、リベンジを誓っていた千枝が糾弾。

マーラー様の取り合いが発生している。

 

雪子は雪子で汚れてしまった浴衣に気づき、狼狽中。

天城屋旅館からの持ち出しだろ。

いくらぐらいするのかな。

 

三人とも最初の頃の風情は何処へやら、だ。

 

<トゥルルルル、トゥルルルル>

 

部屋の隅に投げ出してあったスマホが鳴る。

 

「れろれろ」

 

「はむはむ」

 

千枝とりせは俺のマーラ様へのフェラで忙しい。

 

「雪子、スマホ取って」

 

「あ~あ~、・・・はい、ご主人様。すんすん」

 

浴衣の汚れにショックを受けて涙目になってる雪子にスマホを拾ってもらう。

着信は叔父さんからだ。

 

「はい、悠です」

 

<先ほどはありがとうな、悠。お礼と言ってはなんだが、明後日うちにスイカが届くんだ。お前たちも来ないか>

 

「じゃあスイカ割りですね。菜々子ちゃんが喜びそうだ」

 

<あん?スイカ割りだって?・・・その発想は無かったな。隣の家にもお裾分けを考えてたんだが。やっぱ玉のままの方がいいか>

 

「ええ」

 

<よしわかった。昼過ぎにうちに来い。じゃあな、ガチャ、ツーツーツー>

 

「よし、もういいよ。みんな横になって裾を割って、脚を開いて」

 

「「はーい」」

 

今日は何故か後背位はもうやり切った感があり、正常位で三人をとことん攻めたい気分だった。

 

「ほら、雪子も」

 

「すんすん、・・・うん、わかった」

 

よし、まずはしょげてる雪子から。

 

白い長い脚を持ち上げ、のしかかっていく。

浴衣、これ以上汚さないようにしないと。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月22日MAN 曇/晴 14:00>

 

堂島邸にみんなでお邪魔している。

 

「スイカ、早く食いたいぜ。まだかな」

 

「もう陽ちゃん、人の家に来てまでにがっつかないで」

 

スイカと聞いてすっ飛んできた花村。

いつも通り小西先輩も一緒だ。

彼には菜々子ちゃんに内緒で、こっそりスイカ割り用のバットを持って来てもらっている。

 

「うふふ。今、遼太郎さんが取りに行ってるわ」

 

千里さんのお腹はもう八ヶ月目で随分大きくなってきている。

赤ちゃんの性別も判明したらしい。

男の子だそうだ。

 

「楽しみー、スイカ割りー」

 

イベント好きなりせもスイカが待ちきれない様子。

 

「え、やっぱり割るの?パックリ?」

 

「え、割らないの?ここまできて?」

 

千枝と雪子の掛け合い。

そして菜々子ちゃんの瞳が輝く。

 

「え、スイカ割るの?・・・菜々子スイカ割りたい!」

 

やっぱり菜々子ちゃんも割りたかったか。

 

「よし、じゃあ菜々子ちゃんに割るの任せるよ」

 

「うん!」

 

<がらがら>

 

「ただい・・・うぉっ、女ものの靴の数がすげえな。何人来てんだ?」

 

叔父さんが帰ってきたようだ。

菜々子ちゃんが玄関に飛び出して行く。

 

「お帰りー。お父さん。スイカ割ろー」

 

「おーいいぞー。庭にビニールシート敷こうか。千里、ビニールシートは物置だったよな」

 

さて取りに行くか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月22日MAN 曇/晴 14:30>

 

「菜々子ちゃん、頑張れー」

 

「右、もっと右よー」

 

「行き過ぎー。少し戻って」

 

千枝と雪子とりせの指示で、菜々子ちゃんがスイカに近づいて行く。

よし、俺もアドバイスを。

 

「【考えるな!心で感じるんだ!】」

 

「てぇーぃ」

 

<ばかん>

 

飛び散る果汁。

はじける笑顔。

 

菜々子ちゃんは見事スイカを一撃で粉砕した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年8月22日MAN 曇/晴 15:00>

 

菜々子ちゃんが割ったスイカをみんなで頂く。

菜々子ちゃんは大満足のようだ。

 

「菜々子ちゃん、スイカ割りまたやろっか」

 

縁側で菜々子ちゃんの横に座った千枝が提案。

 

「賛成。でもスイカ割りっていったらやっぱり海でしょ。また海行こーっ先輩」

 

それにりせが乗っかる。

 

「おお海かー。いいねー。来年はガッツリ計画立ててよ。皆で南国の海に行こうぜ!」

 

そうだな。

今度は花村たちとも一緒に海に行きたいな。

ただ来年はどうなってるかわからないけど、な。

 

「来年も皆と一緒にスイカ割りできる?」

 

恐る恐る尋ねてくる菜々子ちゃん。

 

「あたり前だってば。海水浴場の砂浜でさ。スイカ割りだけじゃなくビーチバレーとか他の遊びもしようよ」

 

「もっちろん。棒倒しとかみんなでしたいねー。夜は違う棒も倒しちゃったりしてっ。うふふっ」

 

千枝とりせが当然とばかり菜々子ちゃんに答えていた。

りせの言う棒倒しは菜々子ちゃんにはまだ早いかな。

うん。

 

「私たちだけじゃないわ。来年は弟君も一緒だね」

 

雪子が優しく微笑んだ。

 

「うん!」

 

この菜々子ちゃんの輝かしい笑顔によって、この一夏の思い出の締めくくりとなる。

一夏の思い出がここに完結した。

 

 

 

<SYSOP 2011年8月22日MAN 曇/晴 --:-->

 

上原小夜子は沖奈市の総合病院の理事長である親の反対を押し切った年下のイケメン彼氏にプロポーズされます。

上原小夜子は全てを捨ててでも彼女と添い遂げたいと願う彼氏の熱い想いに絆され、プロポーズを受け入れます。

上原小夜子は親に勘当された夫に付き従って公私ともに充実した日々を送り、鳴上悠との絆を必要としなくなります。

悪魔のアルカナが消滅しました。

 

黒田ひさ乃の夫は最後までひさ乃を忘れずに幸せな往生を遂げました。

黒田ひさ乃は上原小夜子のプロポーズシーンを目撃し、かつて同じ場所で夏祭りの日に夫から結婚を申し込まれた時の感情を思い出します。

黒田ひさ乃は夫の死を鳴上悠との絆無しで受け入れることが出来るようになります。

死神のアルカナが消滅しました。




リップ型盗撮カメラは次話に必要となるアイテムです。


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第15章 旅

直斗のセーラー服姿はゲーム版のクリスマスイベント仕様+髪長め。
エスカペイドでの女子陣の衣装はP4Gの追加エンディングの格好をイメージして読んで下さい。
あと現実世界ではマーラー様分裂しません。


<VELVET ROOM 2011年9月1日THU 晴 --:-->

 

「さぁおいでなさいっ、我が主」

 

マーラ様が伸びて分裂し、マーガレットの裸体に絡み付いていく。

 

「主の育んだマーラ様に、また新たなる力が生まれましたわね」

 

五本の触手じみたマーラ様がマーガレットの体をベッドの上に持ち上げ、卑猥な格好を取らせる。

 

「お口、右乳、左乳、膣、アナル」

 

一本目の亀頭が口元を這い回り、二本目と三本目が乳を縛って、四本目と五本目が股間の両穴に侵入する。

 

「ああああん、一度にこんなにも責められるなんて。ふふふ、最高っ。あんっ。じゅぼじゅぼ」

 

しつこくマーガレットの顔にペルソナ腺液を擦り付けていたマーラ様が、ついにその唇を塞ぐ。

 

「ぷはっ。主とはすでに多くの愛の形を学んで参りました。あっ、そこイイッ」

 

絞り出す形に乳房の根元を締め上げて乳肉を揉み込んでいたマーラ様が、尖った乳首を執拗に突きまくる。

 

「体を重ね、お互いの性感帯への理解が深まれば、さらに相性が深まり、プレイに変化が生まれるでしょう。うぐっ、んんんっ」

 

股間に埋まったマーラ様が交互にピストン運動を開始し、マーガレットを絶頂に容赦なく追い立てて行った。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月1日THU 晴 8:10>

 

夏休みが終わった。

無駄にいい天気なのが恨めしい。

 

千枝と雪子、りせを引き連れて登校。

 

「夏休み、あっという間だったねー」

 

黄金の日々を思い返すかのように千枝も憂鬱そうだ。

 

「来る時、道間違えそうになっちゃった」

 

りせが夏休みボケを見せている。

 

「休みの間、全然学校来る機会無かったもんね」

 

夏休みだし当たり前だろ、雪子。

 

「いや、だからってあんまりでしょ」

 

相変わらず2ボケ体制だとツッコミ役の千枝は大変だ。

 

「アタシの場合まだ十日しかこの高校通ってないし。テストばっかりだったし。夏休みの方が断然長いんだもん。しょうがないじゃん」

 

りせがぶーたれてる。

まあそんなもんか?

 

そうこう言ってるうちに久しぶりの校門が見えてきた。

 

ん?

なんだ?

校門の前で数人の学生がたむろってる。

 

「すっげー可愛いじゃん!」

「ねー、君転校生だよねー。一年生?」

「名前なんていうの?彼氏いる?」

 

「あ、あの困ります!」

 

ナンパか?

朝の登校中によくやる。

ターゲットにされてる女子生徒を見る。

 

小柄で華奢なのに随分胸の大きな女の子だな。

あんな生徒うちの学校にいたっけ?

 

んん?

 

ナンパされていたのは白鐘直斗だった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月1日THU 晴 8:20>

 

男子生徒たちに囲まれていた直斗。

こちらに助けを求める上目遣いを無視できなかった。

千枝と一緒に男子生徒を追い散らして直斗を救出する。

 

「あ、ありがとうございます」

 

八十神高校のセーラー服をまとった直斗はキュートだった。

 

「あの、あなたたちを待っていました」

 

髪型はボブカットで軽く化粧もしている。

唇がほんのりピンク色だ。

 

そうか。

プレゼントした口紅、使ってくれてるのか。

ちょっと嬉しい。

 

「えー、あなた、あの探偵さん!?うっそー」

 

「かっわいー、とっても似合ってるよー」

 

「むね、やっぱ大っきいね。うん」

 

女性陣が直斗のセーラー服姿に興奮してる。

キラキラした目で直斗と距離を詰めてキャイキャイとはしゃいでる。

 

「か、からかわないで下さい。一応皆さんに挨拶しておこうと思いまして!」

 

「挨拶?その制服ってことはやっぱりこの学校に転校するの?」

 

照れてる直斗に雪子が尋ねる。

 

「ええ。今日から僕も八十神高校生です。警察の捜査は終わってしまいましたが、あなたの言う通り山野アナの殺人事件はまだ解決されていません」

 

まあ高校生である以上、どこかの高校に通わなければならないか。

 

「それにお祖父様が・・・、いえ。家庭の事情もあって、暫く稲羽市で暮らすことになりました。改めまして白鐘直斗です。よろしくお願いします。先輩方」

 

「うんうん、こんな可愛い転校生なら大歓迎!ねぇ悠?」

 

「学校で困った事があったら、何でも言って。協力するから」

 

「直斗はどのクラスになるの?私は二組なんだー。一緒だといいなー」

 

女性陣の予想外の歓迎ぶりに直斗は戸惑ってる。

やはり可愛いは大正義だな。

 

「あ、あの・・・?」

 

「よろしく、直斗」

 

スッと手を伸ばし、握手を求める。

 

「は、はい」

 

俺の手を握り返した直斗の手は女の子らしくとても小さくて柔らかかった。

うおっ、肌すっべすべだな!

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月4日SUN 晴 13:00>

 

天城屋旅館でバイト開始。

 

夏休みが終わって新しいシフトになっていた。

当分の間は週一勤務となり、日曜の午後と夜の計八時間のみの労働となる。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月7日WED 晴 22:00>

 

明日から修学旅行。

TVの中でシャドウ狩りをしている場合じゃない。

旅行の準備をしなければ。

 

普通の高校では修学旅行ともなれば班を決めての行動になるのだろう。

しかし八十神高校は一風変わっていた。

就寝時のホテルの部屋割だけ事前申請となり、それ以外は完全自由である。

 

そして今年から一二年合同の旅行となる。

ホテルの部屋割りは基本三人部屋らしく、年次クラス関係なく名簿を提出可能。

提出しなかった生徒の分は、先生側で勝手に部屋割りしていくのだそうだ。

 

千枝と雪子とりせが同じ部屋を申請していた。

俺は花村と一条の二人と一緒である。

 

だが一条は予想どおり来週から中国で開催のアジア選手権で本代表に選出されていた。

直前合宿があって不参加が決定済み。

結局花村と二人部屋になるのかと考えていたら荷造り中にその花村から電話があった。

 

<PiPiPiPiPi>

 

「はい、もしもし」

 

<鳴上。わりぃ。明日俺、熱出して休むから>

 

は?

お前、いきなり何言ってんの?

 

<さぼりだよ、さぼり!お前合宿の栞ちゃんと見たか?>

 

「見たけど」

 

手元にある栞を開いてみる。

 

<一日目の向こうの私立高校との交流会ってあるだろ>

 

「ああ、そうなってるな」

 

<それ、向こうで普通に授業受けるだけらしいぞ。そんなん旅行でもなんでもねーよ>

 

それで、サボりか。

 

<あと早紀経由で情報仕入れたんだけど、宿泊先も柏木が決めたラブホ紛いのなんか変なとこだってさ>

 

「へー」

 

それは書いてないな。

というか、泊まるホテルの情報が乗ってない栞ってどうなんだ?

保護者が心配がるだろうに。

 

<それに二日目も工場見学ってほぼ社会科見学じゃねーかー。自由行動なんて半日ぽっちだろ>

 

観光地行ったり。

他のクラスの女子と一緒に写真取ったり。

知らない街でときめきの出会いを楽しんだり。

 

誰もが修学旅行と聞いて夢想するそんな展開は無いだろうな。

まあ俺は間に合ってるが。

 

<この旅行の企画立案ばーいモロキンなんだってさ。モロキン、死してなお俺らを縛るってな>

 

諸葛亮かよ。

俺らは魏軍か。

 

<と、いうわけで俺はこっちに残って早紀とデートしてるわ。じゃあな、よろしく相棒!>

 

「はぁ。わかった。お大事に」

 

相棒ねー。

このぶんだとホテルの部屋、知らない奴らと一緒になりそうだな。

いつぞやの林間学校の千枝と雪子のように、いびきがうるさい奴に当たらなければいいんだが。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 12:00>

 

修学旅行一日目。

昨日の予告どおり花村は欠席だ。

とんだ相棒である。

 

電車を乗り継いで辰巳ポートアイランドへ移動。

移動はクラス単位になるが、俺は千枝と雪子のクラスのマドンナ二人を独占。

二人はかなり気合が入っていて、髪型もいつもと違った。

千枝はゆるボブ風で、雪子は綺麗に結い上げている。

眼福、眼福。

 

巌戸台駅で降りる。

 

「えへへー。超ラッキー。今年の修学旅行から一二年合同だなんて最高!先輩、ずっと一緒にいられるねっ」

 

早速りせがこちらに合流してきて腕に抱きついてくる。

 

りせも千枝たちと同様に旅行仕様になっていた。

髪を下ろし、スィートカールなパフィースタイルである。

 

「それでさー。これから行く辰巳ポートアイランドって実際どんなとこなの?結構ニュースで聞くけどさ」

 

千枝の疑問にりせが答える。

 

「沖奈市よりももっと都会かなー。学園がいっぱいある人工島で周りが海なんだよ。私は何回か来てるけどー。先輩たちがいるから退屈しないですみそう!」

 

そうか。

じゃあ、りせに案内を頼めるな。

ん、どうした雪子?

 

「ねぇご主人様。みんなでどこか行くときは彼女も誘いましょう。ほらあそこ。また困ってる」

 

「直斗?」

 

雪子の見つめる先には、複数の男子生徒に絡まれてオロオロしている直斗の姿が。

まああんだけ可愛ければ仕方ないだろうが、いい加減ナンパ男のさばき方くらい覚えて欲しい。

これで何度目だよ。

 

「あの娘って転校してきたばかりだもんね。一緒の班に誘ってくれる女友達とかいないだろうし。これは貞操の危機かも。悠!」

 

「いくら探偵だって女の子だもん。悠先輩、守ってあげなきゃ!」

 

「ああ、わかってる」

 

千枝とりせにも即され、俺は直斗を再び助け出すために脚を踏み出した。

報酬として明日の自由時間でのデートでも要求するか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 13:00>

 

交流先の私立月光館学園に着いた。

 

「・・・で次にこの学園都市と学園の設立意義について・・・」

 

私立月光館学園の学園長のありがたい長話が始まっている。

聞いてられないので学園のパンフレットを見る。

 

「広過ぎだな。JUNESの敷地三個分はあるか」

 

思わず出た呟きに隣の雪子が反応する。

 

「ご主人様ここ学校。JUNESじゃないってば。くくく」

 

「雪子先輩、何がおもしろいの・・・」

 

ツボに入ったらしい雪子を、りせがジト目で見てる。

やっと学園長の話が終わったようだ。

 

「八十神高校のみなさん。私立月光館学園へようこそいらっしゃいました。生徒会長を勤める伏見千尋です。初めまして」

 

学園長の隣に控えていた髪の長い眼鏡の女学生が前に出てきて挨拶を始める。

 

やばい。

俺史上空前の眼鏡美人が現れたようだ。

ハイカラな眼鏡を掛けてるのもポイント高いなー

綺麗な声に聴き惚れる。

 

「ではご案内します。皆さんの班は今からこちらの教室で特別授業を受けて頂きます」

 

ただの授業だとわかっているのに、ほいほい付いて行ってしまう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 14:00>

 

教室に移動。

 

保健教師の江戸川先生の授業が始まる。

随分ぼそぼそとしゃべる先生だ。

 

段々眠くなってくる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 19:30>

 

はぁああー、やっと終わったか。

花村、稲羽市に残ってお前正解だったぞ。

 

月光館学園の学生食堂で夕飯を食べた後、バスに乗る。

柏木がやたら張り切ってる。

こうなったら後は今日の宿に期待するしかない。

 

ラブホ崩れのホテル。

いったいどんな部屋があるのだろうか。

 

なんとか先生方を出し抜きたいところだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 20:00>

 

連れてこられた場所はやはり場末のホテル街だった。

 

「はーいここよぉー。シーサイドシティホテルは~ま~ぐ~り。今日はみ・ん・な・で、ここにお泊まりでーす」

 

花村の情報は正しかったか。

壁には休憩も含めたピンク色の料金表が貼られている。

そのまんまじゃないか。

 

「最近リニューアルオープンしたばっかりでー、内装もぴっかぴかー。しかもお値段格安ー」

 

「「「はぁぁぁぁぁぁ」」」

 

柏木らしい展開に生徒全員ため息だ。

 

「はーい、止まっちゃダメよぉん。前からどんどん来てぇ、あ、来てぇ、もっと来てぇ」

 

仕方なくホテルの中に入って行く生徒たち。

前が詰まっているので後方で待機。

 

あ、向かいのホテルの屋根に猫が三匹いる。

みゃーみゃーうるさい。

 

「ここ普通のホテル?なんか妖しいね」

 

「そう?こういうの初めて見たからわかんない。あ、でもTVの中の"匂い立つ泡浴場"に雰囲気似てるかも」

 

「ここはね、白河通りって言って、多分、その。潰れたラブホテルをリニューアルして・・・」

 

よくわかってない雪子と千枝に、りせがクネクネと躰を振りながら恥ずかしげに説明してる。

 

「へー、これがラブホかー。中どうなってんだろ」

 

「うん、興味ある」

 

「もー。先輩と二人っきりで来たかったなー」

 

ラブホテルと聞いても動じないほど既に経験を積みまくりの女子陣。

三人とも修学旅行でラブホテルに泊まることに嫌悪感はないようだ。

それもどうなんだろう?

 

「はいはーい、あなたたちも早く入りなさーい」

 

柏木がホテルから出てきて入館を即してきた。

仕方ない入るか。

 

「あなたたち三人の部屋のカードキーはこれよー。鳴上君はー。ふふーん。この部屋ねー」

 

ん?

同室の生徒はいないのか?

 

「あー、鳴上君はあぶれちゃったから一人なの。広い部屋だけど少しだけ我慢しててね。うふふ」

 

その物言い。

悪い予感がびんびんにするのだが。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 20:20>

 

四人でエレベータに乗る。

 

「先輩は何号室なの?」

 

りせが自分たちの降りる階のボタンを押して聞いてきた。

カードキーを見る。

 

「最上階の部屋みたいだ」

 

「あれ。ボタン押せないよ?」

 

千枝が不思議そうにしてる。

 

「あ、最上階をご利用の方はキー認証かパスコードを入力して下さい、って書いてあるよ」

 

雪子が注意書きを読み上げる。

 

「変なのー。何でそんなことになってんの?」

 

千枝が疑問の声をあげる。

 

とりあえずカードキーを差し込み、最上階のボタンを点灯させてみる。

 

<ちーん>

 

三人の部屋の階に着いた。

 

「後で連絡するよ」

 

愛しいみんなと別れて一人最上階を目指す。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 20:30>

 

なんだこれ。

 

やたら広い部屋だった。

フロアの三分の一は占有しているんじゃないだろうか。

 

そしてやたら豪華。

小さいがプールまであるぞ。

俗にいうロイヤルスィートルームってやつか。

 

なんでこんな部屋が俺に割り当てられたのか。

柏木の暗躍を感じる。

 

とりあえずせっかくなので点呼の時間まで寛ぐとしよう。

60インチの大画面でTVを見ながらジャグジーに入ってみた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 22:00>

 

<とぅるるるる>

 

部屋電が鳴る。

 

「はい、鳴上です」

 

<はーい、鳴上君、点呼の時間でーす>

 

やっとか。

千枝たちから点呼が終わった連絡を受けてから三十分。

恐らく一番最後なんだろう。

 

<じゃあぁ、スィートルームへ行くための秘密のパスコードを設定してー、先生に教えてくれるかな?>

 

「・・・この部屋は自分一人ですので、この電話で既に点呼は済んでるのでは?」

 

<ダァメェ、点呼はきちんと顔を見る規則になってるのぉ、ほらぁはやくぅ>

 

うざっ。

ひたすらうざい。

 

「わかりました。いいですか?パスコードは・・・」

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 22:03>

 

<こんこん>

 

<鳴上くん、お・ま・た・せ。ドアを開けて私を迎え入れてぇー>

 

ふぅー。

嫌な予感しかしない。

 

「はい」

 

ドアを開けると柏木が胸の大きく開いた衣装で。

 

「二人きりでイケない授業しな・・・」

 

「居ますんで、とっとと帰って下さい」

 

<バタン>

 

ドアを閉めて鍵を掛ける。

 

<えー、鳴上くーん>

 

「【いいから帰って寝ろ!二度と来んな!】」

 

<・・・ぐすん>

 

しばらく待っていたら廊下から何も聞こえなくなった。

 

<You got a mail!>

 

メール着信。

まだ点呼が終わらないのかとのりせからの確認メールだ。

やっと終わったと打ち込む。

 

そして再度設定したエレベーターのワンタイムパスワードを添えてメールを三人に返した。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月8日THU 晴 22:15>

 

「うわ、ひっろーい。なんで悠だけこんな豪華な部屋なのよ」

 

「凄い大きなTV。ソファもふかふかー」

 

「見て見てー、プールもあるよー。せんぱーい入っていいー?」

 

三人とも上手く監視の目をくぐり抜けて来たようだ。

パスコードを打ち込んだ場合、中からボタンを押さない限りは最上階まで直通のエレベーターになる。

そのためエレベーターに乗るまでに見回りに見つからなければセーフだ。

 

三人の階のエレベーターホールの監視役は柏木。

何故か不在だったのでエレベータに到達するのも楽勝だったらしい。

大方不貞寝でもしてるんだろう。

 

さて。

夏休みに泊まった鎌倉ロイヤルプリンセスパークホテルとは随分赴きの異なる部屋だ。

調度品のグレードとセンスは断然鎌倉の方が上だが、こちらはとにかく広くてスタイリッシュ。

そしてラブホテル特有の淫靡な雰囲気がある。

また違った楽しみがありそう。

 

「ねぇ、このベッドもウォーターベッド?おおーやっぱバヨンバヨーンだ」

 

「あれ、ベッド回転させるのってどのボタンだっけ?」

 

「えー、私はプールでしたいなー」

 

ガウンを脱ぎ捨て、グラスを置いて三人に近づく。

三人ともお風呂は済ませているようだ。

早速始めよう。

修学旅行の思い出が最良のものとなるよう頑張らねば。

 

三人とも同じ気持だったようだ。

熱烈なボディトークで大いに盛り上がる。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 12:00>

 

修学旅行二日目。

工場見学も無事終わってやっと自由時間。

俺たちはポロニアンモールに遊びに来ていた。

初日に誘った直斗も一緒である。

 

学生服の美少女四人を引き連れてまずはランチタイム。

その後ウィンドウショッピングを楽しむ予定になっていた。

 

<番組では独自に少年Aの中学時代の卒業文集を入試しました>

 

街頭のヴィジョンで稲羽市の事件に関するニュースが流れていた。

 

「まだやってるー」

 

呆れるりせ。

 

確かにこの文集晒しはマスコミが良くやる手だけども酷いな。

武士の情けもヘッタクレもない。

文集なんて黒歴史の最たる例じゃないか。

偉人だろうが悪人だろうが、そこまで晒してやるなよ。

 

この外面が悪い奴には何やってもいいという報道姿勢。

仮に誤認逮捕だったらマスコミはどう責任を取るんだろう。

 

「結局さ、誰もが見たいものしか見ない時代ってことよね・・・」

 

りせがため息をついてる。

 

「どうした、りせ?」

 

「え?ううん。結局本当の自分なんて好きな人にだけわかってもらえば十分なんだなって。行こっ先輩」

 

腕を捕まれ引っ張られる。

 

「お、おい」

 

ん?

直斗がつまらなそうな顔をしながら密かにこちらを観察してる。

 

「ほらっ直斗も行くよっ」

 

りせがそんな直斗にも声を掛ける。

 

「・・・ふぅ、やれやれ。なんで僕が」

 

呆れたようなため息。

聞こえたぞ直斗。

どうやら修学旅行を楽しめてないようだな。

 

いいだろう。

強制的に楽しくしてやる!

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 14:00>

 

流石に大都会。

稲羽市や沖奈市とは街の規模の桁が違う。

たくさんのブランドショップが立ち並んでおり見てて飽きない。

 

夜はりせの案内でこっちで人気のクラブに行く事になっている。

八十神高校の制服のままで行くのは盛り下がるだけ。

服が必要だ。

 

九月に入ってからTVの中で巨大シャドウを連続で倒しており、かなり実入りがあった。

せっかくだからと皆に服を買わせることにする。

全員の分を俺が払うと決める。

 

「え、いいのー?ラッキー!」

 

「嬉しい!ご主人様!」

 

「えへへ、先輩わかってるー!」

 

「え、ボクもですか!?」

 

勿論直斗もだ。

直斗は渋っていたが口紅カメラのときと同様に強引に納得させた。

 

お金を出すのは俺ということで全面的に俺の意見が採用される。

クラブに似合う服装ということで基本全員大人びた方向性の選択になる。

わいわいきゃあきゃあと試着しまくりのプチファッションショー状態。

最終的に以下のチョイスに落ち着いた。

 

千枝は黒のレギンスと黄キャミソールに裏地が青い花柄の白ボレロ。

アクセサリーに黒い首紐。

 

雪子はピンクのペアワンピースに水色のカーディガン。

アクセサリーに赤いペンダント。

 

りせは茶色のジーンズにピンク色の肩出しカットソー。

アクセサリーにサングラスとイヤリング、ネックレス。

 

直斗は黒のタイトスカートに白いノースリーブシャツ。

アクセサリーに青いペンダント。

 

普段と髪型が異なるのも合わさって、全員少しだけ大人びた感じになった。

短大生くらいに見える。

納得の出来だ。

直斗が恥ずかしそうにしてるのがまたいい。

 

続いて俺の番。

無難に黒でまとめた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 17:00>

 

脱いだ制服をコインロッカーに預ける。

あいにく人数分のロッカーの空きが無かった。

 

他のロッカーを探し廻っている間に千枝の姿が見えなくなる。

 

「あれ、千枝は?」

 

「先ほどから姿が見えませんね」

 

「もう千枝先輩、どこー?」

 

電話にも出ない。

 

仕方ない。

手分けして探そう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 17:15>

 

裏通りの薄暗い路地の方から千枝の声がかすかに聞こえてくる。

 

「ちょっとやめてよね。あんたらタイプじゃなんだよ。寄ってたかって恥ずかしくない訳?」

 

「この女、調子にのりやがってよ」

「随分いい体してんじゃねーか」

「ゴクリ。やってやんぞ」

 

「いやよ。顔でもお腹でも何発でも殴れば。そのかわり犯すのだけはやめてよね!」

 

急いで千枝の救出に向かう。

 

「おい聞いたか?何発でも腹にぶち込んでいいってよ!」

「うひゃひゃひゃひゃ。じゃあ俺、アナルなー」

「お前好きだねー。フェラさせよーぜ。とりあえず拉致って逆らう気が無くなるまでボコるか」

 

「あ、あんたたちー。きゃあぁああ」

 

くっ。

路地を曲がると千枝が男たちにボックスカーへ連れ込まれそうになっていた。

 

「悠!?」

 

ヒーロー登場だ。

 

「なんだおめぇ、ぐわっ」

「なぁ!?げふっ」

「ちょまて、あおっ」

 

<ゴッ、ガシッ、ズバンッ>

 

一瞬で三人を殴り飛ばし、千枝から引き離す。

 

「【ここから去れ!】」

 

地面に転がっている男たちを一喝。

 

「お、おぼえてやがれ!」

「ちくしょう」

「ひ、ひぃいいい」

 

<ガチャ、バタンッ、キキーッ、ブーーーーンッ>

 

彼我の技量差を明敏に感じ取ったのだろう。

チンピラたちは大慌てで車に乗り込み、一目散に逃げ出していく。

 

「悠・・・」

 

「大丈夫か?」

 

レイプされそうになって怯えていた千枝を助け起こし、そっと抱きしめてやる。

 

「なんでこんなことに?」

 

千枝が落ち着いたのを見計らって尋ねる。

 

「ごめん。心配かけて。通りがかりにしつこくナンパされて走って逃げたんだけど、追い込まれて逃げ場がなくなっちゃってさ。どうしても操だけは守りたいって思ったんだよね。バカみたい?」

 

「いや。貞操を守るって素晴らしいと思う」

 

「えへ。あたしに出来ることってそれくらいだからさ」

 

俺の胸に納得した表情で顔を埋めてくる千枝。

悔しいはずなのに女の自分では男に決して勝てないという事実をきちんと受け入れているようだ。

 

「あたしね、悠に可愛がってもらうばっかりの自分じゃなくて、ちゃんと自分の価値みつけたいって思って。だからいつも、もっと上手くならなきゃ、とにかくもっとセックス頑張らなきゃって焦ってるの」

 

その向上心によって確実に男を誘う色気は増しているよ。

今回、悪い虫を引き寄せてしまったのもその証左だ。

 

「里中は十分頑張ってセックスしてる」

 

「そうかな」

 

雪子のような名器でもない。

りせのような華やかさもない。

直斗のように胸も大きくない。

 

だが千枝には人一倍の直向きさがある。

才能ではなく経験に裏打ちされた千枝の指使い、舌使い、腰使いは鉄板である。

その日のコンディションに左右されやすい雪子やりせと違って外れが無い。

俺にとっては安心の千枝ブランドだった。

 

「俺もベッドの上では頼りにしてるよ」

 

「ほ、ほんとう?う、嬉しいな」

 

俺の心からの言葉が通じたようだ。

千枝は頬を染めて喜んでる。

 

それに千枝には他の二人にはないセールスポイントがあった。

声である。

 

「それに俺、里中の喘ぎ声が三人の中で一番好きだ」

 

「え?」

 

千枝が甘えてくる時。

普段のあけっぴろげ感が無くなり、角の取れた女らしい優しい声質になる。

三人の中で一番平時との落差が激しい。

そして可愛い。

その可憐で温かみのある声が聞きたくて、ついついエッチを頑張ってしまうのだ。

 

「甘える声とか阿る声、男に媚びる声とかさ。【もっといろんな千枝の声を聞かせて欲しい】」

 

千枝。

君は俺に可愛がられて喘ぐだけの女でいいんだ。

何も想い悩むことはないさ。

 

「・・・う、うん。がんばり、ます」

 

頬を染める千枝にキス。

久しぶりの二人きりのベロチュー。

キスの合間に漏れる千枝の可愛い声を堪能する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 17:30>

 

<きゃるんきゃるんっ>

 

「んちゅっ、メールだ」

 

キスを中断し千枝が携帯を取り出す。

 

「雪子から。返信しなきゃ」

 

三人ともまだ千枝を探してたようだ。

 

「クラブで落ち合おうって伝えておいてくれ」

 

「うん、わかった」

 

さて俺たちもクラブに向かうか。

おや、なんだこれ?

 

足下に黒いカードが落ちていた。

先ほどのチンピラ連中が落として行ったものらしい。

 

拾ってみるとパスワードらしき文字列が走り書きされた付箋紙が貼られている。

忘れないように貼り付けていたのだろうか。

パスワードの意味がまるでない。

さすが頭の足りないチンピラだわ。

 

「どうしたの、悠?」

 

「なんでもない」

 

何のカードかはわからないが、とりあえず持っとこう。

カードをポケットに納めて千枝とともにクラブに向かう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 18:00>

 

クラブ・エスカペイド。

 

カップルらしく千枝と腕を組んで店内に入る。

ホテルの点呼は21時開始だから、ギリギリで20時半までは遊んでいけそうか。

 

「うわー、これがクラブ?初めて入る!やばいねー!テンション上がってきた!」

 

初めてのクラブに目を輝かせる千枝。

 

まだ早い時間なので人の入りはそれほどでもない。

客層も学生がメインの様。

健全な雰囲気だ。

 

ただ今日は金曜日。

これから社会人たちがやってきて一気に賑やかになっていくだろう。

 

先に来てるはずの三人は、と。

 

「あ、あそこにいるよ」

 

千枝がカウンターを指差す。

一足先にカクテルでも飲んでいるようだ。

 

雪子、りせ、直斗。

美少女三人、オーラが凄い。

その場だけ華やいで見える。

 

周りには声を掛けるタイミングを虎視眈々と伺う野郎共が多数。

またもやの面倒事は避けたいのでさっさと合流する。

 

「やっときたー!先輩おそーい」

 

「千枝、大丈夫だった?心配したよー」

 

「へへ、ごめんごめん」

 

きゃいきゃい言ってる三人の横で直斗がぺこりと挨拶してくる。

何故かしっくりいってない感じが見て取れる。

どうしたんだ?と視線と問いかけた。

 

「そのっ、やっぱりいいんですかね。まだ高校生のボク達がこんなところに来て」

 

そんな遊んでる女子大生っぽい格好でカクテルまで頼んでいて今更何を言っているのか。

 

確かに普通なら未成年お断りな店に見える。

しかし今この店は飲酒運転への抗議とやらでアルコールは出してないそうだ。

りせから評判の店と聞いていたので午前の見学中にスマホでリサーチ済みだ。

 

それで売り上げが成り立つのか激しく疑問ではあるが・・・。

 

「ええ、これも確かにノンアルコールのカクテルです。客層も今のところ悪くなさそうですが」

 

「そうみたいだな。ムッ!?」

 

慌てて千枝を抱き寄せ、店の奥に背を向ける。

 

「・・・どうしたの悠?」

 

「シッ、千枝そのまま肩越しに店の奥を見てくれ。みんなはそのままで。頼む」

 

「なになに?あ、さっきのチンピラ野郎」

 

暗い店内。

ステージの反対側の奥の壁に暗幕のかかった通路がある。

その前に先ほど殴り倒したチンピラのリーダー格が現れた。

蓮っ葉な女を連れて通路に入って行く。

 

「えー、そうなんだー」

「でねー、あの子がねー」

 

空気を読んで会話を楽しむふりをしてくれている雪子とりせ。

 

「気になりますね、あの奥」

 

直斗は目を光らせて声を掛けてくる。

さすが探偵だ。

 

そうこうするうちに何故か先ほどのチンピラが慌てた様子で通路の奥から出てくる。

連れの女も遅れてチンピラを追って出てきた。

 

「ねー急にどうしたのー。ねーってばー。良いとこに連れてってくれるんじゃなかったのー」

「ちくしょう!ぜってーさっき落としたんだ!やっべーぞ、見つけねぇと兄貴に殺される!」

 

チンピラは周りが見えてないようだ。

すぐそばに先程自分殴り倒した本人がいることも気づかず、怒鳴り散らしながら出口に突進していく。

落とした、と言ったか。

恐らく今俺のポケットに入っている黒いカードのことではなかろうか。

 

しばらく奥の通路を観察。

すると時間をおいて複数の男女が次々と周りを気にしながら通路に入って行くのが見て取れた。

カップルの場合と男一人の場合が約半々だ。

気になるのは入っていった人たちの出てくる気配が全く感じられないこと。

 

「なあ直斗。夏祭りのときにあげた口紅。今持ってるか?」

 

「ええ。肌身離さず」

 

言わんとすることはわかっているらしい。

潜入調査、やってみるか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 18:30>

 

千枝、雪子、りせの三人には店内で待ってもらうことにする。

ただしこのままカウンターで飲んでるとナンパ小僧たちがうるさそう。

 

「じゃあさ。あたしVIPルーム押さえてくる。多分顔効くと思うからちょっと待ってて」

 

りせが提案してきた。

顔効くってどういうことだ?

 

「前にここでシークレットライブしたことあるんだ。でも電源落ちてライブ中止になっちゃったの。そのときスタッフ、まだいるみたいだから」

 

二年前の話らしい。

高校入学前の年でクラブイベントか。

やはり全うな店ではないようだ。

 

展開によっては彼女たちに危険が及ぶことになるかもしれない。

常に連絡が取れるよう言い含めて一旦別れる。

 

潜入捜査開始!

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 18:45>

 

ちょうどまた奥へ向かう男が現れた。

 

後を追うように直斗と二人、奥の通路に入る。

カップルらしく腕を組んで体を密着させる。

 

直斗に女子大生風の格好をさせていてほんと良かった。

これならバレないだろう。

 

探偵モードに入ってる直斗。

その豊かな胸がガッツリ俺の腕に当たっていることに気づいてない。

役得だな。

 

先を行くサラリーマンはスタッフオンリーと書かれたドアの中に入っていった。

閉まったドアに近づいて取手を握る。

そっと開けて中を覘く。

 

通路が続いていた。

その先にはエレベーターの扉が見える。

扉の横にある表示板を見ると地下に向かっているようだ。

先ほどのサラリーマンが乗っているのだろう。

 

「妖しいですね」

 

「ああ」

 

エレベーターの前に立ち、下のボタンを押す。

しばらくするとエレベーターが戻ってきて扉が開いた。

中に入る。

 

行き先は・・・。

ボタンがないぞ。

その代わり、カードキーを差し込むスロットが。

ホテルはまぐりと同じだ。

 

「どうするんです?」

 

「大丈夫だ。恐らくこれだろう」

 

ポケットからカードを取り出す。

 

「どこでそんなものを?」

 

「さっき路地裏で拾った」

 

付箋を剥がしてカードキーを差し込み、現れた暗証番号入力パネルに付箋のパスコードを打ち込む。

 

<ウィーーン>

 

エレベーターが動き出した。

大分下がっているようだ。

かなり深い。

 

<チーン>

 

さて鬼が出るか蛇が出るか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 18:50>

 

黒い内装の部屋。

更衣室だろうか。

無数のロッカーが立ち並んでいる。

奥には思わせぶりな両開きの扉があった。

 

「見て下さい。携帯などはこのロッカーに入れて先に進むシステムみたいです」

 

確かに携帯・カメラ・録音機器の持ち込みお断りの注意書きが貼られている。

ロッカーを見て回ると結構な数が使用中になっていた。

 

「これは・・・」

 

未使用のロッカーを開けた直斗が困惑の声を上げた。

 

「どうした?」

 

中に入っていたのだろう。

蝶の形をしたマスクを手にしている。

 

「これを着けて入れ、ということでしょうか」

 

恐らくそうだろう。

顔を見られないで楽しむ大人の社交場、か。

出来ればスワッピングは避けたいところだな。

 

二人でそれぞれ携帯をロッカーに入れ、蝶マスクを着ける。

直斗は口紅カメラを忍ばせたポーチを持ったまま。

うまくボディチェックをくぐり抜けられることを祈ろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 18:55>

 

扉の先はまた通路。

どこからか音楽が聞こえてくる。

先に進むにつれ音が大きくなっていく。

目的地は近いようだ。

 

再び両開きの扉。

開けると受付部屋のようだった。

赤い内装が目に痛い。

 

バニーガールがカウンターに立っている。

反対側の壁際にはやたらガタイのいい黒人が二人。

 

「いっらっしゃいませ。女性同伴ですね」

 

バニーガールが挨拶してくる。

 

「ああ」

 

「本日のご利用料金は一時間一万円になります」

 

先払いのようだ。

ピン札をシュパっと取り出して渡す。

 

「ではボディチェック、失礼します」

 

ボディチェックはバニーガールの人がやるようだ。

用心棒の二人が立ち上がり、俺たちの動きを見張っている。

直斗のポーチの中身もあらためられたが、どうやら見破られずに済んだようだ。

 

「こちらにどうぞ」

 

奥のカーテンの先に通される。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 19:00>

 

二重扉を通るとそこはやや広いホール。

妖しい音楽と卑猥な嬌声に満ち溢れた堕落の宴が催されていた。

 

「こ、これは・・・」

 

直斗が顔を真っ赤にして驚いている。

 

中央には舞台があり、卑猥な音楽とともにほぼ裸のポールダンサーがくるくると踊っている。

薄暗い客席はボックスになっており、席の合間を縫って数名のバニーガールがドリンクを運んでいた。

 

各客席には蝶マスクを着けた無数の客の姿があり、思い思いのスタイルで楽しんでいるのが見て取れる。

カップル席の場合、ペッティングだけでなく本番にまで及んでいるところもあるようだ。

 

男性一人の席もまちまちだ。

ポールダンスに夢中になっている者もいれば、隣の席のセックスに鼻を伸ばしている者もいる。

給仕のバニーガールにしゃぶらせている者もいた。

 

バニーガールたち。

どうやら追加料金を払えば様々なオプションで相手をしてくれるらしい。

キスしながらのテコキや、フェラ、パイズリ。

指名を入れての予約制らしく、人気のバニーガールは次から次へと夜の蝶のように席を移っていく。

中には自分の連れの女とバニーガールを絡ませ、二人同時に愛撫しているようなツワモノも。

 

「大丈夫か」

 

「は、はい」

 

ボックス席に座る頃には、周りのエロさに充てられた直斗はかちんこちんになっていた。

案内してきたバニーガールに俺が率先して注文を出す。

 

「とりあえずロックで。彼女には水割りを」

 

明らかに無許可の会員制違法風俗店だ。

タバコ以外の煙のにおいもする。

 

警察に今すぐ連絡したいところだが携帯等の連絡手段は今はない。

とにかくここは証拠の映像を押さえるのだ。

通報は後からでいい。

 

直斗と目配せしあって方針を固める。

さてどうやって直斗の口紅カメラを使うかな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 19:40>

 

本気を出してしまった。

大分酔いが回ってきてる。

 

飲まないと怪しまれるのでドリンクの注文は続ける。

直斗は飲めないのでその分俺が杯を開け続けていた。

 

他の席と同様に相方と絡んでないと怪しまれる。

当然直斗とは体を密着。

既にシャツのボタンを全て外して胸板を曝している状態の俺。

その俺の腰の上に横座りし、首に手を回して抱きついている姿勢の直斗。

 

直斗も探偵の端くれだ。

潜入捜査の基本は押さえており、俺のセクハラ紛いの接触に不平を言わず体を預けてくれていた。

俺の愛撫にぴくぴくと体を震わせながら、口紅型の小型カメラを握りしめて撮影を続けている。

凄く照れてはいたが。

 

直斗の唇のすぐ横の頬に唇を当て囁く。

あくまで演技のためキスするわけにはいかない。

 

「ちゃんと撮れているか?」

 

「・・・は、はひ。ああっ」

 

悶える直斗のハスキーな嬌声が耳に心地よい。

やはり直斗の魅力はおっぱいだけではなく、その羞恥心にもあると思う。

恥ずかしげに感じる様がより男の情欲を煽るのだ。

 

「【いつまでもその恥じらいを忘れるなよ】」

 

「・・・はひっ、はひっ。わかりましたからっ、んんっそこっダメっ」

 

思わず捜査に関係ないことを口走ってしまったが、直斗は目を閉じながらコクコクと頷いてくれた。

愛しさが溢れてくる。

 

「可愛いぞ直斗。ちゅー」

 

あ、ちょっとずれて半分唇に当たってしまった。

まあいいか、直斗も文句言ってこないし。

 

俺は怪しまれないように、俺は直斗を抱きかかえた右手で彼女のチャームポイントの乳房を服の上から愛撫し続けていた。

勿論怪しまれないように、左右交互にきちんと分け隔てなく、その膨よかな乳を揉み込んであげている。

また怪しまれないように、彼女の太ももにも左手を添え、そのすべすべした肌の感触も堪能している。

さらに怪しまれないように、タイトスカートの中に左手を突っ込み、パンツの上から秘唇をしっかりと刺激し続けるのも忘れていない。

全て潜入捜査に必要な演技だ。

 

「あっ、ダメッ、周りが見てますっ」

 

「当然だろ。直斗はこんなに可愛い女の子なんだから」

 

「ん、んんっ」

 

演技である以上、彼女をイカせてしまうわけにはいかない。

両の乳首が服の上からでもわかるくらいコリコリに勃起していても、あくまで演技。

パンツの上からでも形がわかるくらいに秘唇がぬれぬれになっても、あくまで演技。

俺も直斗も最後の一線は頑に守り通している。

自分を褒めてやりたい。

 

「俺はお前にキスマークを着けられるのが大好きなんだ。【さあまたキスをしてくれ】」

 

当たりに聞こえるように言い放つ。

すでに俺の胸板には直斗のキスマークがしつこいくらいに付けられている。

 

「あぁ、はい。ここがいいんですね。ん、んちゅうう」

 

再び体勢を変えて俺の胸や腹に顔を寄せ、ポーっとした表情を浮かべてキスをしてくる直斗。

ルージュが剥がれるように熱心にそのぷるぷるの唇を擦り付けてくる。

 

「はぁっはぁっはぁっ、も、もう一回。むちゅううう」

 

「うおっ」

 

危なかった。

直斗が余り激しく俺の乳首に唇を擦り付けてくるものだから、感じてしまって漏れそうになる。

 

俺の胸板へのキスでルージュが剥がれ終わったら俺に抱きついてルージュを塗り直すふりをして撮影、というループを直斗は先ほどから延々と繰り返している。

彼女が口紅を手放さない不自然さを隠すための苦肉の策であった。

 

俺の努力で直斗も迫真の演技を続ける事が出来ていた。

感じまくりの直斗がリッププレイを楽しんでいるように見え、これなら誰にも怪しまれることはないだろう。

 

周囲のボックス席の独り身の野郎共の注意を直斗が一身に引きつけてしまっているのは誤算だったが。

まあ他の席の女どもとはグレードが違いすぎる美少女なので仕方がないだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 20:00>

 

うーん、ここのポールダンス。

やはりりせのダンスの方が断然華やかでキレがあるな。

もし彼女を連れてきていたら私に踊らせてよ!とうるさかっただろう。

 

腕の中の直斗は、ギリギリイかないレベルでトロトロと美肉を蕩かされ続けて完全にクテっとなってしまっている。

ブラの中にまで手を突っ込んで生乳を揉んでいるのだが、嫌がっている様子は一切無い。

それどころかボーッとした瞳で自ら乳を突き出して愛撫を強請ってくる素振りまで見せていた。

ふわふわの乳肉とコリコリの乳首の感触を肴に酒とポールダンスを楽しんでいると、バニーガールが声を掛けてきた。

 

「お楽しみのところすみません。お客様。お時間です。延長なさいますか?」

 

いかん。

もうそんな時間か。

証拠の写真もバッチリ撮れているだろう。

千枝たちも待たせてある。

ここは引き上げ時だな。

 

それにこれ以上ここにいたら周りの野郎共が直斗に手を出して来そうだ。

 

「ああ、すまない。もう帰ります。彼女には少し刺激が強すぎたみたいだ」

 

「残念ですわ。あなたたちの周りの席のお客さん方、とってもいっぱい抜いて下さったのよ。また来てね」

 

バニーガールさんたちもたくさん稼いだということだな。

ガサ入れされるときにシフト入ってなければいいな。

 

ほら直斗。

ぼーっとしてないで行くぞ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 20:15>

 

ロッカーから携帯を取り出し、へろへろの直斗と二人で慎重に上の層に戻る。

どうやら怪しまれてはいないようだ。

 

直斗は疲れ切ってしまい、使い物にならない状態だ。

これ以上はヤブヘビにならないよう手早く撤収したい。

三人がいるのはVIPルームだったな。

 

「悠、助けて〜」

 

二階のVIPルームに行くと千枝から助けを求められる。

 

「ふぇらちーおーっ。zzz」

 

「おうさまげーむ!せんぱーい。うふふふ。むにゃむにゃ」

 

何故か酔いつぶれている雪子とりせに挟まれている千枝。

 

「こっちはノンアルコールじゃなかったのか?」

 

「そのはずなんだけど、なんか場酔いしちゃったみたいで・・・」

 

なんだそりゃ。

 

しかし困ったな。

まともなのは俺と千枝の二人しかいない。

ホテルまでどうやって移動しよう。

 

「僕は結構ですからっ。一人で歩けます」

 

そうか。

その乳の感触、名残惜しい。

もう少し味わっていたかった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 20:30>

 

俺がりせを千枝が雪子を背負ってエスカペイドを出る。

ホテルに戻る道すがらコインロッカーに寄って制服を回収。

なんとか点呼の時間までは間に合いそうだ。

 

途中、先ほど撮った映像はどうするのか直斗に聞く。

まだ頬の赤い直斗が目を逸らしながら応えてきた。

 

「む、向こうに帰ったら知り合いの刑事に相談してみます。その、音声とか編集する必要があるので、それからですけど」

 

確かに直斗のハスキーな喘ぎ声が入りまくりだしな。

 

「じゃあこれも預けておく」

 

「ありがとう、ございます」

 

もう使用することはないであろう黒いカードキーを直斗に渡す。

これでこの件に関しての俺の出番は終わりだろう。

 

問題は散々直斗と乳繰りあって高まったままのこのマーラ様をどうするかだが。

雪子とりせはもう寝てしまってるしなー。

 

「な、何?」

 

嫌な気配でも感じたのだろうか、千枝が引きつった顔でこちらを見つめてくる。

 

「セックス頑張るって言ったよね」

 

「う・・・うん。確かに言ったけど」

 

「よーし!」

 

「何がよーしなのよーーっ!?一人じゃ無理だって!!」

 

点呼が終わってから千枝だけにメールを入れよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 22:30>

 

相変わらず千枝の喘ぎ声は俺の性欲を大いに燃え上がらせる。

 

「あ、あ、あ、あ、ああああああぁ!」

 

「出すぞ、千枝!」

 

「来てっ悠!あたしもイクっ、イッちゃうよおおおお!ああん!」

 

点呼終了後、メールで呼び出した千枝が俺の部屋を訪れていた。

コールガールのような扱いにご立腹だったが、千枝はきちんと相手をしてくれている。

ほんと律儀だなー。

 

直斗で溜まった分を正常位で繋がった千枝でどんどん吐き出していく。

既に使用済みコンドームが幾つも千枝の胸元に積まれていた。

愛し合った回数って感じがして、そそる光景だ。

思わず千枝の頭のすぐ横に置いてあるコンドームの帯からもう一つ取り出してしまう。

 

「だ、出し過ぎだよ悠、何があったの?すっごいキスマークだしっ」

 

「いいこと。ふふっ」

 

必死に俺の胸板にキスしてくる直斗を思い出して微笑む。

犬みたいで可愛かったなーあいつ。

 

そういえば俺には溜まった性欲を受け止めてくれる相手が三人もいるけど。

同じように今日欲求不満を溜め込んだ直斗はどうするんだろう。

 

なんかアイツ、オナニーなんてしませんって感じの真面目ちゃんだしな。

いつか爆発してしまわなければいいけど。

 

「とりあえず千枝、今日はこのゴムの帯使い切るまでヤるから」

 

「え。ええええええ!?」

 

だから言っただろ。

頼りにしてるよ、千枝。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 23:30>

 

ふぅ。

 

千枝とやりまくったお陰で性欲も発散出来たようだ。

 

「はひっはひっ、もうっ無理っ。無理だってば・・・」

 

ベッドの上では裸の千枝が大の字で気絶寸前の状態。

ちょっと休憩が必要なようだ。

 

<ぐぅううう>

 

腹がなった。

あ、そういえば俺、夕飯食べてなかったな。

潜入調査を優先してドリンクばかり飲み、食事らしい食事をしていない。

 

確か出前可能なお店のリストが部屋に置いてあったよな。

 

えーとこの時間でも出前をしてるのは・・・。

 

「"はがくれ"か。ラーメンでいっか」

 

さっそくスマホで電話だ。

店主のおっさんにエレベーターのパスコードも伝える。

 

早く出前来ないかな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月9日FRI 晴 24:00>

 

<ピンポーン>

 

部屋のチャイムが鳴る。

お、きたきた。

 

<ガチャ>

 

「すみません、こんな時間に頼んじゃ・・・て?」

 

「まいど。出前、お届けにきたー」

 

ドアを開けるとそこには、岡持ちを持ったあいかちゃんが。

 

「・・・なんで?」

 

「この店、お父さんの兄弟弟子の店。修行中」

 

「この時間にかっ!?」

 

「ちゃんと外泊許可取ってある。うちのお父さん、校長先生のマブダチ」

 

なんてことだ。

 

「じーーー」

 

あいかちゃんが首を傾げて部屋の中を伺ってる。

慌ててその視線を遮るように立つ。

 

「だ、誰もいないさ」

 

「じーーー」

 

「ほんとだって」

 

「じーーー」

 

う、ううっ。

その全てを見透かすような茫洋とした目。

耐えられない!

 

「だ、黙っていてくれ」

 

「うん。まいど」

 

トロ肉醤油ラーメンを受け取って代金を支払う。

そして当然口止め料も躰で支払う。

 

千枝が全裸で気絶してるベッドに腰掛け、あいかちゃんにフェラさせる。

 

<どぴゅどぴゅぴゅー>

 

「ごくごくっ、うーん、ぐらっちぇ」

 

あいかちゃん、すっかり俺の味を美味しく感じられるようになったみたいだ。

まぁ彼女がこれまで飲んだ回数は軽く三桁いってるものな。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月10日SAT 晴 12:00>

 

修学旅行三日目。

巌戸台駅の駅前商店街。

 

昨晩食べた"はがくれ"のラーメンが美味しかったのでお昼もそこにする。

あいかちゃんへの義理立てもあったのは否定できないが。

 

厨房にあいかちゃんの姿があったので挨拶。

 

「あいかちゃん、昨日は出前ありがとう」

 

「まいど」

 

二人で視線で会話。

 

「あいかちゃん?」

 

「なんでここで働いてるの?」

 

驚く雪子と千枝。

 

「ここ知り合いの店。修行中」

 

「「「えーっ旅行中まで修行!?」」」

 

まあ普通はそう驚くよな。

 

「凄いですね」

 

直斗もビックリのようだ。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月10日SAT 晴 12:10>

 

みんなでトロ肉醤油ラーメンを頼んだ。

 

「んーお肉美味しいー!うまいよコレ!スープも疲れた五臓六腑に染み渡るーっ」

 

千枝がラーメンのチャーシューとスープにえらく感動している。

 

「あたしもドラマの撮影のときこの店良く来てたんだよ。先輩、よくここのラーメンこの辺りで一番美味しいって知ってたねー」

 

昨晩偶然な。

代償は大きかったような気がするが。

 

おや?

隣の雪子の箸が進んでないようだ。

気にかかることがあるみたい。

 

「りせちゃん、昨日の夜のこと覚えてる?」

 

沈痛な面持ちで雪子が質問を口にした。

 

「えへへ、あたしと雪子先輩すぐ寝ちゃったみたいだよ。ねぇ千枝先輩?」

 

「あの店でだけじゃなくて、あの後も大変だったんだからねー、あんたたちー!」

 

脳天気なりせに千枝が猛烈に抗議。

 

「ふっ。いっぱい出してしまった」

 

確かに千枝の腰が抜けるほどハッスルしたな。

あいかちゃんに抜いて貰わなかったらもっと頑張ってたかも。

 

千枝の苦労もそっちのけで頭痛を訴えてくる雪子。

 

「私、なんか頭痛が酷くて」

 

場酔いで二日酔いって凄いな。

いつか本当に酒盛りしてみたい。

どんだけ乱れるんだろうか。

 

「これ差し入れー。"はがくれ丼"」

 

そんな雪子の前にあいかちゃんがスッと丼が配膳してくる。

"はがくれ丼"。

叉焼を使用した丼飯のようだ。

 

「あ、これもすっごい美味しいんだよー!へー、通常メニューになったんだ」

 

りせが興奮している。

なんでもつい一年前までは隠れメニューだったとか。

 

「お熱いうちにどぞー」

 

周りを見てみると他の客も同じ丼を結構頼んでる。

確かにそっちも美味そうだな。

 

「・・・全部食べられるかな」

 

丼二杯を前にして雪子が困っていた。

小食の雪子にやはり荷が勝ちすぎたか。

 

「俺が手伝うよ」

 

「うん!」

 

はがくれ丼の味にも興味があったので、ヘルプにかこつけて俺も味わってみる事にした。

 

うむ。

確かに美味い。

みんな黙々と食事に集中してしまう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月10日SAT 晴 12:30>

 

「あのっ、皆さん、そろそろ集合の時間のようですけど・・・」

 

先に食べ終わった直斗が時間を告げてきた。

そういえば今日はほとんど直斗とはしゃべってない。

 

話そうとしたら頬を染めて視線を反らされてしまう。

これは・・・、避けられてる?

昨日の潜入捜査のとき、少しやり過ぎてしまったか?

 

「あー、もうそんな時間かー?修学旅行、終わってみれば楽しかったかも」

 

りせは満足そうだ。

芸能活動に忙しくて学校行事にほとんど参加してこなかったりせ。

彼女にとってはこの程度の旅行でも新鮮だったようだ。

 

さて、あとこの旅行でやり残したことは、と。

あ、そうだ。

 

「菜々子ちゃんと千里さんへのお土産何がいいかな」

 

「それはみんなで選ぼうよー」

 

千枝が提案してくる。

時間も無いし、そうするか。

 

「よし、お土産屋に行こう」

 

とりあえず直斗のことは一旦脇に置いておいて、目先の土産に取りかかることにする。

駅の土産屋で、巌戸台Tシャツと巌戸台まんじゅうと巌戸台ちょうちんの三択に遭遇。

独断と偏見で菜々子ちゃんへはちょうちんを選択した。

 

菜々子ちゃん喜んでくれるといいが。

千里さんへは無難にまんじゅうかな。

 

花村へのお土産は・・・、無しだっ!

 

 

 

 

 

<SYSOP 2011年9月10日SAT 晴 --:-->

 

巌戸台ちょうちんは堂島菜々子の趣味にピッタリ合いました。

白鐘直斗がTV取材を受けることを決意しました。




エスカペイドの地下ホールはペルソナ3でハーミットと戦った場所になります。
ただ地下ホールに至るまでの描写は全てオリジナルになります。


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第16章 運命(上)

直斗の溜め回。
エロ無しです。


<VELVET ROOM 2011年9月12日MON 曇 --:-->

 

「まだまだ負けませんわよ。ううっ」

 

今日のベルベッドルームでのセックスバトルの相手は、エスとエムの美女戦士セーラーマーガレットだ。

 

「あんっ、主、主の表情の中には油断が見えます!」

 

セーラーマーガレットは組み拉がれ、マーラ様を差し込まれて陥落したはずだった。

 

「私の膣が再び深くきつく締め付けつつあります。くぅ。雌雄はまだ決しておりません」

 

なかなかに往生際が悪いセーラーマーガレットは、イったはずなのに負けを認めようとしない。

 

「いいえ、むしろこれからさらにエロくなっていくでしょう。えいっ」

 

一瞬の隙を突き、くるりと反転してマウントポジションを取るセーラーマーガレット。

 

「しかしまた射精するまでの時間は長いようですわね。私のペースで腰を振らせて頂きますわ」

 

勝ち誇った笑みを浮かべたセーラーマーガレットがセーラー服に包まれた乳を縦揺れさせながら腰を使ってくる。

 

「あっあっあっあっ。おもしろくなってまいりました。ふふふ。さぁもう一勝負です。ああんっ」

 

爛れた戦いは、セーラーマーガレットがヒロピンものの定石通りマーラ様に屈服して悪落ちするまで続いた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月12日MON 曇 20:00>

 

ん?

直斗、随分思い切った行動に出たものだ。

 

三人を家まで送った後、マンションに戻ってTVを付けるとそこに直斗の姿が。

 

「報道EYE。今日の特集は先日無事容疑者逮捕となった稲羽市の"逆さ磔・連続殺人事件"の解決に多大な貢献をされたこの方。現役女子高生にして私立探偵。白皙の美貌でも話題を攫いそうな美少女探偵、白鐘直斗さんです。いやー本当に奇麗な方ですねー」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

八十神高校のセーラ服姿のままインタビューを受けている直斗。

 

可憐だ。

男性アナウンサーのノリの軽さに戸惑ってるのが見て取れる。

 

「早速ですが謎が多いと言われた事件もようやく解決ですね!」

 

「い、いえ、事件の全体像を見渡すとボク、ンンッ・・・わ、私の見解は警察とは違います」

 

スツールに腰掛けての対談形式でインタビューは進むようだ。

腰の高いスツールのせいで生脚が丸見えである。

カメラがやたらローアングルでいやらしかった。

 

直斗の形の良い美脚と、その抜けるような肌の白さ。

そしてセーラー服の胸元を押し上げる乳の大きさがやたらクローズアップされている。

直斗もカメラアングルがおかしいことをわかっているのか、スカートの裾をずっと気にしている。

 

「ほほう。と、言いますと」

 

「具体的なことはまだ何とも言えませんが、違和感を感じます」

 

それでも直斗は言いたいことはきちんと主張していた。

キッと前を見た直斗の表情は凛々しくて美しい。

 

しかし上手い言い回しだ。

久保美津雄を模倣犯とは断定しなかったか。

警察を敵にまわすとまずいしな。

 

「直斗きゅんはまだ事件には謎があると」

 

「きゅ、きゅん?」

 

「ところで直斗きゅんはとてもお奇麗ですが、どこの芸能事務所に所属されるのでしょうか?アイドルとしてのデビューのご予定は?歌は出すんですか?それともモデル路線?」

 

「あ、あのえっとアナウンサーさん?ふ、二人の犠牲が出た事件です。どんな小さな違和感でも追求すべきだと、僕は思っています!」

 

「おお、実は僕っ子キャラなんですね!これは素晴らしい!さて、番組では"美少女探偵の素顔"と題しまして直斗きゅん自身の秘密をどんどん掘り下げていきたいと思います!こちらの"美少女探偵"が今まで解決してきた事件は何と二十四件。そのうち十六件が迷宮入りの難事件で・・・」

 

"逆さ磔・連続殺人事件"そっちのけで"美少女探偵"特集が始まってしまった。

直斗が中学生まで男装していて、高校デビューで一気に女っぽくなったことまで探り出してきてた。

この番組、凄い脱線ぶりだな・・・。

 

しかしそうか。

直斗くん、そうきましたか。

 

自分の女体を囮にするなんて。

それだけ彼女のこの事件に掛ける想いは重いということだろう。

意外だったのは直斗に自分が美少女であるという自覚が出てきたってところだ。

順調に色気付いており大変微笑ましい。

 

少し気になって"@チャンネル"を見てみる。

案の定というか直斗スレが乱立していた。

一部では"久慈川りせ"休養を受けて今や誰もが認めるトップアイドルとなりつつある"真下かなみ"越えを声高に宣言する書き込みも有り。

プチ祭り状態だ。

 

まあ、あれだけ白くてほっそりしていて巨乳で美少女でハスキーボイスだもの。

皆が放っておくわけもなく。

一夜にして国民的美少女が誕生してしまったな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 16:00>

 

授業が終わって下校時間。

校門に向かう途中、千枝が昨日のTVの感想を投げかけてくる。

 

「なーんか凄いTV映り良かったよねー。直斗くん」

 

「お手柄美少女探偵だっけ・・・。今頃芸能プロダクションで争奪戦始まってるんじゃないかなー」

 

芸能欄が直斗一色になってしまい、りせも複雑なようだ。

休止中とはいえトップアイドルとしての挟持が刺激されてしまったか。

 

「あ、昨日のテレビのこと?直斗くん、すっごい可愛かったね」

 

基本的に世事に疎いはずの雪子も話題に食いついてきた。

 

「うん、確かに可愛かった。カメラ映りもバッチリだよね。でも彼女さ、TVとかに出たがるタイプじゃないと思ってたんだー」

 

千枝も直斗のキュートさに同意はするが、千枝の言いたいことはそこじゃないらしい。

つまり何のために直斗がTVに出たのか、千枝はまだ理解出来てないのだろう。

 

おっ噂をすれば。

 

「もちろんです!むしろあの番組に出たことをものすごく後悔してます・・・」

 

校門で待ち受けていた直斗。

顔を赤らめながら声を掛けてきた。

 

先週の修学旅行まではところかまわず男子生徒に言い寄られていたのだが、TVに出て箔がついたからだろう。

今日はナンパしてくる男子は皆無な様子。

多くのギャラリーがただ遠巻きにして彼女の動向を見守っている。

 

「あの皆さん、ちょっといいですか?」

 

直斗から話があるようだ。

ここでは衆目を集め過ぎる。

場所を変えることにした。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 16:30>

 

八十稲羽商店街のおふくろの味、総菜大学。

 

店の前のイートコーナーに全員着席。

移動先をここにしたのは千枝のチョイスだった。

 

「がぶっ、うーん、柔らかジューシー!」

 

ビフテキ串にホクホク顔で齧り付く千枝。

ここのビフテキ串、筋張っていて硬い印象しか無いんだけどな。

 

じゃあ俺は・・・。

特製コロッケはまた売り切れか。

仕方ない。

ビフテキコロッケにしよう。

 

「はい毎度!」

 

おばちゃんからビフテキコロッケを受け取る。

アツアツだ。

 

「あのっ。現時点での僕の考えを皆さんに聞いて貰おうと思って」

 

コロッケにかぶりつく。

 

「昨日のTV。違和感があるって上手い言い回しだったな。はふはふ」

 

うん、ビフテキコロッケ普通に美味い。

ただやっぱり特製コロッケも一度は食べてみたいぞ。

今度雨の日にでも買いにくるか。

 

「ありがとうございます。まず被害者の共通点ですが、必ず誘拐されてること。狙われるのはメディアにある程度はっきり取り上げられて急に知名度を得た地元の人。そしてかなり容姿の整っている妙齢の女性。この条件に当てはまる方が皆さんの中にいますよね」

 

雪子とりせに視線を走らせる直斗。

 

「一件目と二件目の間にはブランクがありました。でも先ほどの条件に当てはまる人の失踪は続いていた。小西早紀さん、天城雪子さん、久慈川りせさん。三人ともTVで取り上げられた直後に実は失踪してる。しかし何らかの理由で死を免れた。・・・その理由は一切不明ですが」

 

その理由は今のところ俺たち四人しか知らない。

謎を解くための鍵の部分の情報が何も無く、もどかしい思いをしているのだろう。

直斗がふぅーっと大きくため息をついて話題を変えてきた。

 

「先輩の言うとおり二件目は模倣犯・久保美津雄の犯行と考えるのが自然でしょう。諸岡さんはメディアにも出ず、失踪しておらず、美しい女性ではない。そして遺体の状況も食い違う。山野アナは今も詳しい死因は不明ですが、諸岡さんの場合は頭部強打が直接の死因です」

 

そこで言葉を切った直斗は、重大なことを打ち明けるようにまっすぐこちらを見つめてくる。

 

おっといかん。

ひょいっ、もぐもぐ、ごっくん。

ビフテキコロッケを食べ切る。

 

「ご、ごほん。では、第一の殺人の犯人、そして小西早紀さんたちを誘拐したのは誰なのか。正直にお話します。実はずっとあなたのことを疑っていました。鳴上悠先輩」

 

へー。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 16:45>

 

おや?

視線をいっぱい感じる。

 

「おいおいあれ噂の美少女探偵じゃね?」

「絶対そうだって」

「すっげー可愛いな」

 

商店街の一般客らが脚を止めてこちらを伺っていた。

さらに八十神高校生もたくさんたむろってきている。

 

「やっぱり千枝先輩、ここダメだって。こんな往来のど真ん中じゃ人集まってくるの当然でしょー」

 

「もともとここって八十神高生の下校時の溜まり場だしね」

 

周りを気にせずビフテキ串を完食間際の千枝に対して、りせと雪子が呆れた声を上げている。

 

「千枝、満足したか?場所変えていいか?」

 

「もぐもぐ、ごっくん。うん、いいよー」

 

ビフテキ串を食い切って満足そうにしてる千枝は能天気に答えた。

肉が絡むと途端に千枝はボケ役に回るなー。

 

「・・・河川敷の東屋あたりにしましょう」

 

なかなかシリアスな雰囲気になりきれず、直斗が疲れた声で提案してきた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 17:00>

 

夕暮れの河川敷。

ここなら誰もいない。

 

先ほどの続きを再開しよう。

まずは千枝が軽い口調で口火を切った。

 

「んで、どうして直斗くんは悠が犯人って疑ってたわけ?」

 

「小西早紀さん以降、三件全ての失踪に先輩が関わっているように見えたからです。失踪した翌日、被害者の傍らには必ず先輩の姿があった」

 

そう言えば小西先輩のときも一瞬だけ側に居たな。

確かにそうだ。

 

興味津々な様子でりせが尋ねる。

 

「じゃあ聞くけど。何のために悠先輩は私たちを攫ったの?」

 

「あの、えと。コホン。先輩は随分女好きなようですので、攫った女性をて、手込めにしようとしたんじゃないかなって」

 

この直斗の反応。

俺たちの爛れた肉体関係もしっかり把握済みと見える。

しかし手込めとは随分古風な言い回しだな。

 

「えー、それ変じゃん。ならとっくに雪子先輩や私が警察に突き出してるよ」

 

りせはさらに不思議そうだ。

 

「それはそうなんですが。先輩は女性を虜にする技にかなり精通してそうなので・・・。お二人とも取り込まれてしまった可能性が高いと判断してました。その、実際に凄い指使いでしたし」

 

エスカペイド地下の一件を思い出したらしい。

直斗は凄く恥ずかしそうにしている。

そんな直斗にフムフムとりせが一定の理解を示す。

 

「そっかー、確かに悠先輩ってテクニシャンだもんねー」

 

「つまり山野アナは悠のテクに屈しなかったから殺しちゃったってことね。じゃあ早紀先輩は?今は花村の彼女だけど」

 

千枝が質問を引き継いぐ。

 

「あ、あの人は。ア、アブノーマル過ぎて先輩の好みに合わず、手を出す前に解放したのではないかと・・・」

 

ほう、小西先輩のマゾ趣味までリサーチ済みとな?

このうぶな直斗があのバカップルの性生活を覗き見てどんな印象を抱いたか。

すっごく気ぃーにーなーるーぅー。

 

「調べたのか?陽介のことも」

 

「は、はい」

 

「参考までに教えてくれ。小西先輩と陽介はいったいどんなプレイをしてたんだ?」

 

「それは・・・(赤)」

 

ふむふむ。

ほーほー。

なんとそんなことまでぇ!?

 

お、恐ろしい。

あの変態夫婦はいったいどこまで進化を遂げるのか。

負けるぜっ相棒!

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 17:15>

 

「その話には全く興味ないので置いておいて」

 

花村の話になると途端にクールになる雪子。

おかしな方向に傾きつつあった話の流れを強引に立て直してくる。

 

「根本的におかしくない?ご主人様が転校してきたの、山野アナの事件が起こった当日よ?山野アナとだって全く面識無いはずだし」

 

「性犯罪となれば動機はとてもシンプルです。ニュースで見た若くて美しい女性を手に入れたかったから。個人的なつながりを追う意味自体無くなります。それに先輩が東京から稲羽市に越してきたのは、山野アナの死体が発見された日の前日の午後。山野アナが失踪したのはその日の夕方以降と目されていますから、犯行に及ぶ時間は十分にあった・・・と、今までは考えてました」

 

そこで直斗が持っていた鞄から一枚の書類を取り出してくる。

 

「でもつい先日入手したこのデータによって、僕はその推測を全て破棄せざるをえなくなりました。警察が使用している道路交通監視システムに記録されていた、4月11日当日の先輩のバイクについての移動記録です」

 

まるっきり違法行為だな。

一介の探偵に警察の内部データを引き渡す警官も警官だが。

・・・ああ、そういうことか。

 

「エスカペイドの会員制違法風俗店の情報とトレード、か」

 

「ご明察です」

 

神妙な顔で頷く直斗。

ぐぬぬ。

 

「おかしいではないか!あの潜入捜査には俺も多大な貢献をしている!直斗だけが利益を得るなど許されるはずがない!」

 

いきり立って声高に権利を主張してみる。

 

「あれ、おかしいな。ちゃんと報酬は渡したはずですよ」

 

何ぃ?

 

「ぼ、僕のファーストキスです。唇の半分だけでしたけど。乙女の唇です。それだけの価値はあるでしょう。ポッ(赤)」

 

ぐぬぬ。

実際はそれ以上のことをしてしまっているから何も言えぬ。

ヤブヘビになってセクハラで訴えられかねないしな!

 

「さて、このデータを見る限りですが、天城さんの言う通り、先輩には山野アナを誘拐する時間的余裕はいっさい無かったことになります」

 

「つまり、直斗くんはもう悠を犯人だとは思ってないわけね」

 

千枝が結論を口にする。

 

「はい。今の僕の考えは全く逆です」

 

「逆?」

 

「先輩は犯人ではなく、恐らく犯人を追いつめる何らかの手段を持った、救済者側の人間なのでしょう」

 

ほほう。

 

「小西さんの失踪時はまだ稲羽市に来て日が浅かった。そのため慣れない地理に戸惑って救出も中途半端になってしまった」

 

確かにあのときはまだシャドウにもTVの中の世界にも慣れてなかったな。

 

「しかし天城さんと久慈川さんの失踪時には小西さんのときの経験を生かせた。警察にも気づかれないくらいの短期間で、恐らくその日のうちにお二人を救出することに成功している。そしてお二人は命の恩人である先輩の側に身を置くことを自ら選択された。そう考えれば全ての辻褄が合います」

 

鋭い。

さすが美少女探偵。

花丸をあげよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月13日TEU 晴 17:30>

 

「疑いが晴れて嬉しいよ。それで真犯人を誘き寄せるためにTVに出演したのか」

 

「ええ。警察は久保美津雄に全ての咎を被せて事件を終息させようと必死です。たとえ久保自身が望んだ結果だとしても、それは正しい姿ではない。この上は真犯人に関する確証を掴む行動が必要です」

 

ここまで親しくなった仲だ。

直斗が素直に尋ねてくれば、TVの中の世界のことを教えるのもやぶさかではなかった。

 

「うーむ」

 

しかし、ふと思いとどまる。

彼女に真実を伝えるには、やはりTVの中の霧の世界に彼女を連れて行かなければならない。

それは彼女に己のシャドウと向き合わせることを意味していた。

つまり真犯人のしていることと全く同じになる。

 

同じく直斗がシャドウと向き合うことになるのなら、真犯人を誘き寄せて情報を得てからの方がマシ。

ここはこちらも心を鬼にしてこの機会を利用させて貰おう。

 

「すまない直斗。故あってどうやって失踪者を助け出しているかはまだ教えられない」

 

「えっ?」

 

俺が推理を肯定する態度をとったことにハッと驚いた表情を見せる直斗。

構わず言葉を続ける。

 

「だが約束する。もし直斗が連れ去られても、雪子やりせのときと同じく必ず助けるから。【俺を信じて待て】」

 

「・・・」

 

見つめ合う直斗と俺。

俺が述べた約束が真剣なものであることを見て取ったようだ。

 

「その言葉を頂けただけでも、今日お会いした甲斐がありました。嬉しいです。少しだけ不安が減った気がします」

 

とても奇麗な笑顔でお辞儀して礼を述べてくる。

 

抱いていた不安が大分和らいだようだ。

立ち去る間際に直斗が冗談を言い残していった。

 

「でもわかりませんよ。ターゲットは"美しい女性"ですから。僕なんかが狙われるとは思えません」

 

直斗ほどの美少女に真犯人が食指を動かさないなら、そもそも事件なんて発生していないだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月14日WED 雨 24:00>

 

マヨナカテレビに影が映る。

男装時の直斗のようだ。

 

しかし、それだけではなかった。

 

ん?

これ・・・。

影がもう一つ?

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 15:30>

 

雨の放課後。

 

教室に集まってマヨナカテレビについて語り合う。

直斗は学校に来ていないようだった。

 

「昨日のマヨナカテレビ、あれやっぱり直斗くんだよね」

 

千枝が確認を取ってくる。

 

「巽屋で初めて会ったときの直斗くんに似ている感じがした」

 

雪子もやはりそう感じたらしい。

 

「やっと真犯人が動きだしたってことかー」

 

ため息をつくりせ。

それよりもだ。

 

「みんな、昨日のマヨナカテレビ、影がもう一つ見えなかったか?」

 

「え、そんなのいた?」

 

千枝には見えなかったらしい。

 

「ど、どうだったかな。かなり画像が乱れていたから」

 

雪子も俺の質問に困惑している。

 

「最後の方、確かに影が二重になってたけど。それのこと?」

 

お、りせにも見えたのか。

それそれ。

 

「あー、はいはい。それなら私にも見えたよ。ただのノイズじゃない?」

 

「・・・もしかして二人いるって言いたいの?直斗くん以外にもう一人」

 

千枝とは対照的に雪子が不安げにしてる。

 

「マヨナカテレビのことはまだよくわかっていなんだ」

 

三人に語りかける。

 

「今までは単独だったけど今度は二人同時ってこともありえるかもしれない。いろいろなケースを想定しておかないと。他に気になったことはないか?」

 

「・・・ねぇ、マヨナカテレビのことと関係あるのかわからないんだけど、なんだか最近変じゃない?街とか学校の雰囲気」

 

俺の言葉に触発されたのか、雪子が疑問を提示してきた。

 

「みんな妙に浮かれているっていうか。他人の話ばっかりしていて」

 

「別に今に始まったことじゃないけど、確かにそう。最近は特にひどいよねー」

 

千枝も雪子の言葉に同意してきた。

 

「ヤバい事件が解決したんで不安が無くなった反動かと思ってたけど・・・、なんかそういう感じじゃないよね」

 

「うん。いくらなんでもちょっと変っていうか。なんだか街全体が怖がってるみたい」

 

稲羽市自体がざわついているのか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:00>

 

さてそろそろだ。

台所から居間に移動する。

 

<ゴロゴロドドーン>

 

雷が落ちた。

 

外は激しい雨だ。

放課後の雨がまだ続いている。

 

今日は早めにみんなを帰らせて正解だったな。

 

<キューーーン>

 

時計の針が零時を回ると同時にマヨナカテレビが始まった。

 

<皆さんようこそいらっしゃいました。探偵博士こと白鐘直斗です。性器の大実験TSプロジェクトへようこそ>

 

袖が長過ぎる白衣を着た男装直斗のシャドウが現れる。

 

<僕がこれから行うのは性転換手術。金玉を生やす素晴らしき秘法!>

 

「性転換、だと?」

 

直斗が立っている場所は特撮モノによくある改造手術を行うオペルームのような部屋だった。

そこで今から性転換をしようってのか!?

その素晴らしい女の躰のどこが不満だって言うんだ、直斗!

 

<皆さんこそが生き証人です。見守って下さい。胸ばかりデカイ馬鹿な尻軽娘の死と、一人の男の誕生の瞬間を!>

 

直斗が手を広げると同時に無数のドリルやノコギリなどが画面外から伸びてきた。

 

<僕という人間が今日を境に全く別の人生を歩み始めるのです。この素晴らしき記念の日を皆さんと祝わせて頂きたい!さぁチャンネルはそのまま!>

 

「くそっ!」

 

TSモノは男が女になるから流行ってるんじゃないかっ。

その反対の需要なんて断じて無いっ。

あってもフタナリくらいのものだ!

 

直斗を止めるために慌ててテレビの中に入ろうとする。

だが、マヨナカテレビにはまだ続きがあった。

 

<待て!>

 

「な、何ぃ?」

 

もう一体だと?

誰のシャドウなんだ・・・。

声は・・・、直斗?

 

<ぼ、僕の名前は愛と推理の美少女探偵セーラーナオト!お前の勝手には決してさせないっ、ぞっ!>

 

「おお!?」

 

現れたのは最近のイメージチェンジが完了した直斗の容貌をベースにしたシャドウ。

実物と異なるのは、腰までありそうなさらさらな黒髪をキュッとポニテに縛ってること。

そして衣装がセーラー服をモチーフにした変身スーツであることの二点。

 

己の過激な格好に慣れていないのだろうか。

かなり照れが入ってる。

 

スタイル抜群の美人で凛々しい女の子が、恥ずかしそうにしながら美少女戦士な超ミニのセーラー服を着て美脚を晒してる。

結構クルものがあった。

おそらくどこかの女優のように大人になったら黒歴史として封印されるだろう。

 

<かっ、覚悟しろ!探偵博士!>

 

<僕の邪魔をするなーーー!>

 

画面の中で探偵博士と美少女探偵が激しく争っている。

 

これどっちも直斗だよな。

どうなってるんだ?

 

そうか。

昨日の二重の影ってこれを意味してたのか。

 

あっ。

 

<キューーーーン、プツン>

 

戦いの行方を見守っていたらマヨナカテレビが終わってしまった。

しまった!

入るタイミングを逸してしまった。

 

くっ。

慌ててテレビを潜る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:03>

 

特撮の秘密基地っぽいとこの前に出た。

あたりは密林だ。

ジャブローだろうか?

 

シャッターを壊して中に入る。

そういえば特撮の撮影現場ってしんどいらしいよな。

埃っぽくて照明で灼熱地獄だし。

ここは霧の影響かひんやりしてる。

 

この世界での建物や出来事は捕われた者の抑圧された心から作り出される。

この秘密基地は、いかにも昔の少年探偵やヒーローが活躍しそうな場所だ。

これの出元が直斗の心なんだとすると結構可愛いとこあるんだな。

美少女戦隊モノもこういうバトルステージは最終戦でありそうだし。

 

<ウィーンウィーンウィーン。警告。侵入者有り。侵入者有り>

 

それっぽいな。

ガードマン風のシャドウが天井から床から多数出てきた。

切り倒して前へ進む。

 

<さぁどうした。セーラーナオト。僕を止めるんじゃなかったのかい?>

 

<くぅう。絶対に、止めて、みせるっ>

 

通路の壁に並ぶディスプレイには探偵博士とセーラーナオトが戦うシーンが映されている。

探偵博士が優勢のようだ。

セーラーナオトはもう己の格好を照れている場合ではないようで必死に反撃している。

 

どっちを味方するかと問われれば当然セーラー戦士の方だ。

ヒロピンものは嫌いじゃないけどな。

 

急がないと。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:15>

 

「ていっ」

 

<どがーん>

 

中がボスの部屋らしき扉をぶち割る。

どうやら当りだな。

 

特撮の司令室のような巨大な空間。

その奥で探偵博士とセーラナオトが戦っていた。

決着する瞬間だったようだ。

 

『ほらほらほらぁー!』

 

<バキッ、カラン、カラン、カラン>

 

『ぐうっ』

 

探偵博士のサーベルがセーラーナオトのレイピアをたたき落とす。

 

『ははっこれで終わりだっ!』

 

<ドガっ>

 

『うわー』

 

さらに探偵博士の蹴りがセーラーナオトを壁まで吹っ飛ばした。

 

ボロボロとなったセーラナオト。

かなりそそられる光景だ。

 

あ、ちゃんと見せパン履いてる。

 

『さて邪魔者も静かになったことだし、そろそろ始めるとしましょうか』

 

探偵博士がサーベルを宙に翳す。

 

<ウィーーーーン>

 

部屋の中央。

丁度シャドウたちと俺の間の空間の床が割れ、改造手術台が競り上がってきた。

誰かが乗せられている。

 

普通の手術台ではなかった。

出産用の分娩台のように開脚アームがあり、脚が開かれたまま拘束されている。

 

『さぁお待ちかねの性転換手術の時間だ!』

 

<パッ>

 

手術灯が着いた。

手術台の上に拘束されているのは直斗本人。

 

オペ時の貫頭衣っぽい服を着せられている。

おそらく下は何も着けてないのだろう。

 

胸を絞り出すように締められており、乳首の形が丸わかりだ。

さらに白い素足が広げられて開脚アームに固定されており、短い裾が捲れて中が見えそうになっている。

 

「ふががっ!ふががっ!」

 

ポールギャグを噛まされており何を言っているのかわからない。

恐怖に目を見開き、イヤイヤと首を振っている。

 

『さぁ、レッツ男の子!』

 

そんなことは俺が絶対に許さない!

 

 

 

<SYSOP 2011年9月15日THU 雨 --:-->

 

鳴上悠の「神言」の積み重ねの効果により、白鐘直斗のシャドウは二つに分裂しています。

 

白鐘直斗が持っていた男の子になりたいという欲望は、鳴上悠の「神言」により強烈に抑圧され、特撮モノへの白鐘直斗の憧憬を基にして探偵博士の白衣姿に固定されています。

白鐘直斗が持っていた女の子らしく素直に生きたいという願望は、鳴上悠の「神言」によって強烈に増幅され、女の子向け特撮モノの定番のセーラー戦士姿に固定されています。

 

このままでは精神が完全に分裂してしまい、大変危険な状況です。

早急に片方を抹消する必要があります。




セーラーナオトは勿論美少女戦士たちがモチーフになってます。
ヒロピン物、結構好きなのでMAIKAとかこれからも頑張って欲しい。


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第17章 運命(下)

なおっぱい回。これまでとは逆パターンになります。
主人公が暴走気味ですね。


<VELVET ROOM 2011年9月15日THU 雨 --:-->

 

「我が主、私にご奉仕させて下さいな」

 

悪落ちしたセーラーマーガレットが現れた。

 

「今日は主のマーラ様にトコトンまとわりついてフェラしてみようかしら」

 

跪いてマーラ様を取り出すセーラーマーガレット。

 

「ペロペロ、ペロロンレロレロォ」

 

最初は竿を舐めるだけ。

 

「チュッチュッチュ、クチュクチュ。チュパチュパチュパチュパ、んうふー」

 

次にカリの部分を中心に亀頭にリップアタック。

 

「ジュルジュルジュルジュルジュル、ジュッポジュッポジュッポ、」

 

おもむろに亀頭を咥え、舌をクネラセて軽くシェイク。

 

「チューチュー、レロレロ、チロチロチロチロ」

 

と思ったら亀頭を吐き出し、鈴口を集中的に攻め出す。

 

「グッポグッポグッポグッポグッポグッポグッポグッポグッポグッポ。んんー」

 

続いてズルリと飲み込み、唇の輪で竿をマッサージ。

 

「モゴモゴモゴ、ガリっ、うふぅ!?、ハムハム、ガリっ・・・。ふぅー」

 

フェラも佳境に入って甘噛みの最中、マーラ様を二回も噛まれてしまった。

 

「ぷはっ・・・噛んでないですわよ。うごっ」

 

喉奥まで一気に突き込み、泣いて謝るまでイマラチオを慣行する。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:30>

 

痛っ。

マーラ様の先が痙った。

 

<ガシャン>

 

直斗が拘束されている手術台の横の床からコンテナが飛び出てきた。

 

<バタン>

 

コンテナの扉が開いて大量の薬剤が露になる。

全て無針アンプル剤のようだ。

 

<ウィーン、カシャ>

 

天井から伸びるマシンアームがその中の一つを取り出す。

そのまま嫌がる直斗の首元にその無針アンプル剤を突き立てる。

 

<ウィーン、トスッ、プシュー>

 

「んんー、んんーっ」

 

ピンク色の薬剤がどんどん直斗の躰に注入されていく。

 

『ハハハ、心配しなくてもいいよ。オペ用の麻酔薬さ。全ての感覚が快感に変わるとびきり強力な奴だけどね』

 

「ふおおー、ふしゅー」

 

直斗の頬に朱がさし、トロンとした目つきになっていく。

 

『これで改造されるのが気持ちよくてたまらなくなる。何も怖がる必要はないんだ。君は体を弄られるのが大好きじゃないか。ハハハハハ』

 

「ふおっ、ふおっ」

 

<ビクン、ビクン>

 

媚薬とやらが効き始めたらしく直斗は躰をひくつかせ始めた。

 

『さて性転換オペを開始しよう』

 

天井から伸びてきたマシンアームがレーザーメスを発射。

直斗の胸元の布地が切り裂かれていく。

 

<ビーーーーー>

 

ぶるん。

挑発的な形をした二房のおっぱいが露になる。

抜けるような白さの乳肉とピンク色の乳輪に乳首。

 

ゴクリ。

初めてちゃんと直斗の生乳を見た。

 

あのおっぱいと乳首の感触、最高だったなー。

修学旅行のハイライトを思い出した。

 

『まずはこの邪魔な堕肉を切り取ってしまおうか』

 

<ウィーン、キュオーーーーーン>

 

電動ノコギリが降りてきて直斗の白いおっぱいに迫る。

 

な、なにー!

いかん!

あのおっぱいは稲羽市の、いや日本の至宝。

断じて切り落とされてなるものか!

 

「待て!」

 

ついに一歩を踏み出す俺。

 

『おや先輩じゃないか。いいところに来ましたね』

 

今気づいたようなフリをして振り向いてくる探偵博士。

絶妙のカウンターでマシンアームが襲ってきた。

 

<ブオンッ、ドカッ>

 

「ぐはっ」

 

直斗のおっぱいの安否に気を取られていたため、マシンアームを避けきれない。

 

ぐ、ぐぬう。

罠だったか。

 

<ウィーン、ブオンッ。ウィーン、ブオンッ>

 

マシンアームを振りほどこうとすると、次から次へとマシンアームが襲い掛かってくる。

 

なんだ?

俺を捕獲するつもりか?

 

『ご明察。先輩のマーラ様、とっても立派らしいからさ。切り落として僕の体に移植しようかと思ってね。ふははは』

 

「な、なんだってー」

 

いかん。

奴は本気だ!

 

<キュオーーーーーン>

 

ああ、まずい!

直斗のおっぱいも絶対絶命だ。

くっ、どうする!?

 

『・・・"ディストーションフィールド"!!』

 

<シャリーーーーーン>

 

俺と直斗のピンチを救ってくれたのは、敗退寸前のセーラーナオトだった。

 

セーラーナオトの作り出したバリアが部屋を分断する。

バリアはちょうど手術台と探偵博士の間に張られた。

 

それだけではない。

バリアの生成に巻き込むことで、セーラーナオトは探偵博士のサーベルを破壊する事に成功している。

 

『くっ、これでその機械への命令は出せなくなるはず。今のうちに逃げて下さい!』

 

お、おおう!

 

セーラーナオトの言った通りだ。

マシンアームは全て動作を停止している。

直斗の白いおっぱいも二つとも無事だ。

 

マシンアームを全て振り払い手術台の直斗の元に向かう。

 

「大丈夫か!?直斗!」

 

「ヘンヘイ、ファオファイフファファインン」

 

媚薬とポールギャグのせいで何言ってるかわからない。

かなりの酩酊状態のようだ。

潤んだ瞳で見つめられてドギマギする。

 

くっ、それどころじゃない!

この拘束どうやったら解けるんだ!?

両手両足は鉄の輪、胸元は太いケーブルで拘束されている。

手術台の周りを調べるが解錠方法が見当たらなかった。

 

斯くなる上はこの聖剣で!

・・・いや、ダメだ。

直斗の体を傷つけてしまいそうだ。

聖剣で切り裂くのは危険過ぎる。

 

『ふははっ無駄だっ。僕がいる限りその拘束が解かれることはない!』

 

バリアーの向こうで余裕を見せていた探偵博士が笑い声を上げる。

 

『確かに手術マシンを操作できないようですね。まあいいでしょう』

 

振り返って片膝立ちで荒い息をついているセーラーナオトの方を向く。

 

『待っていて下さい。すぐに目障りなこいつを潰してバリアを消し去ってやります。そうしたら次は先輩のマーラ様の番だ』

 

くっ。

 

聖剣エクスカリバーの力でこのバリアーを叩き壊すことは可能だろう。

そしてセーラーナオトと協力して探偵博士を倒せばいい。

だがバリアーを割った瞬間、探偵博士は手術マシンのコントロールを取り戻してしまう。

そうなると直斗のおっぱいが危ない!

 

くそっ、どうしたらいいんだ!?

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:40>

 

落ち着け!

冷静に考えろ。

 

バリアの向こうにいる二人のシャドウ。

探偵博士とセーラーナオト。

 

探偵博士は男になりたいという直斗の願い。

セーラーナオトは女のままでいたいという直斗の祈り。

どちらも直斗から生み出された影であることは間違いない。

 

であれば。

そこの手術台に寝ている直斗。

彼女自身に考えを改めてもらうのが一番手っ取り早いのではなかろうか。

直斗自身が女のままでいたいと本気で強く願えば探偵博士の力が弱まるはずだ。

 

問題はだ。

シャドウの出現元が直斗の無意識下の深層心理の部分であるという点だ。

つまり表面的な意思に拠らないため、普通に話して聞かせても効果が無い。

もっと彼女の性根を根本から揺るがす、体験的な衝撃を与える必要がある。

 

当然だが無茶な手術を強要する探偵博士の方を排除しなければならない。

つまり直斗に女のコの幸せというものを実感を交えて教え込むのだ。

 

女のコの幸せ。

男女同権で女性の社会進出が姦しい世相。

そんな社会的な幸福感に関する価値観は今は置いておこう。

今は生物としての男と女の幸福のあり方を論じるべきだ。

性転換という発想の元となった、男と女の肉体の差異に関する葛藤に基づいて整理をする。

 

つまり女のコの肉体の幸せとは。

ぶっちゃけると逞しい男に抱かれ、愛され、その男の子を孕むという三点になる。

それは言い換えれば、全ての生物の雌が共通に持つ根源的な欲求であった。

 

その幸せをまだこの娘は知らない。

だってまだ処女だから!

 

ならば俺が今するべきことはやはり・・・。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:40>

 

2秒で理論武装が完了。

俺は手術台の上の直斗の顔を覗き込み、男らしく宣言する。

 

「直斗、今から俺はお前を抱く」

 

「んふぇ?」

 

「決して直斗を助けるために抱くんじゃない。直斗、君が魅力的な女の子だから抱くんだ。いいな?」

 

あまり猶予がなかった。

 

『くくく、ほらほらほら!"フリッカージャブ!"』

 

<シュパシュパシュパ>

 

『うぁああああー』

 

バリアの向こうでは武器を失った探偵博士の放つジャブにセーラーナオトが襲われている。

鞭のようなパンチにセーラー服がどんどん裂かれていっており、さらに露出が多くなる。

セーラーナオトはグロッキー状態だ。

 

急がないと。

直斗の本人の返事を聞く前に、直斗を抱く体勢に入る。

 

幸いなことに分娩台スタイルの手術台は正常位で犯すのにちょうどいい設計だ。

拘束された脚を開脚アームごと開き、裾を捲って局部を露出させる。

 

これが直斗のアソコ。

ゴクリ。

 

申し訳程度の恥毛に奇麗なマンスジ。

奇麗にすぼまった菊の門。

アナルにも興味は尽きない。

だがまずは前の門である。

 

媚薬のせいだろう。

普段はぴったりと閉じているであろうマンスジが少し緩まって露を纏っている。

良く美少女の秘唇を夜露に濡れたバラの花と形容するが、直斗のはまさにそれだった。

 

匂いをかぐとほのかに直斗のフェロモン臭がするも、清潔なアルコール消毒液の匂いの方が強い。

手術前にしっかりと全身消毒させられたようだ。

これならすぐに愛撫に移れる。

 

直斗ほどの美少女だ。

きちんとした手順を踏んで処女を奪いたいところ。

だがいかんせん時間がない。

 

ちらりとバリアの向こうに目を向けると今にもセーラーナオトがKOされそうな状況。

レイプ気味に処女を奪うことにする。

 

「ちゅうー」

 

びくん。

 

直斗の秘唇とキス。

上の唇とは半分だけのフレンチキスしかしてない。

だがこちらはディープにガッツリいく。

 

これが直斗との本当のファーストキスになる。

そんな感慨に浸りつつも口の動きは寸毫たりとも止めない。

レロレロと舌で秘唇をほじくりまわして強引に開花させていった。

もちろんひょっこり芽を出してきたクリちゃんへの愛撫も忘れない。

 

「んんっ、んんっ、んふーーーん」

 

俺の愛撫にひくんひくんと反応する直斗。

バリアの向こうではセーラーナオトが探偵博士のフリッガージャブを回避し始めていた。

いいぞ!と力を得て、本格的にイかせるために舌をさざめかす。

 

「れろえろ、はむはむ、れろれろーん、ちゅっちゅっ、ちゅちゅちゅーーーーっ」

 

「んっ、んっ、んっ、んっ、んんっ、んーーーーーーーっ!!!」

 

ぷしゅっ。

 

ぴくぴくと震えていた直斗の体がびくーんっと大きく仰け反る。

そのままプルプルと震えて固まっていたかと思うとぐったりと脱力。

どうやら無事にイケたようだ。

 

ご丁寧に潮を噴いての初絶頂である。

同時に探偵博士のフリッガージャブをセーラーナオトが華麗に搔い潜るのに成功。

至近距離から放たれたセーラーナオトのボディ攻撃が探偵博士に腹に見事決まっていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 24:50>

 

俺に処女を奪われるのを待っている直斗。

全身の白い肌をうっすらとピンク色に染めている。

裾は捲り上がり、乳房も全部曝け出した状態。

俺のマーラ様もガチガチである。

 

「ふしゅー、ふしゅー、ふしゅー」

 

直斗は初めて絶頂の味を知ったことで、よけいに媚薬の効果を意識してしまったようだ。

熱を帯びる己の体に戸惑いながら、期待と不安に満ちた潤んだ目で見つめてくる。

 

直斗の最大のチャームポイントであるおっぱい。

もにゅっと掴み、たゆんたゆんと揺らして目で楽しむ。

乳首をくりくりして直斗を軽く悶絶させつつ、マーラ様の先端を秘唇にセットする。

 

「んんっ、んあー」

 

「さぁいくぞ、直斗。お前に女の体が得ることの出来る快感の果てを教えてやる。ていっ」

 

「んんんんんっ、んほおおおおおおおおおおっ!!?」

 

<ミチミチミチ、グリッ、プチプチプチッ、ムリムリムリムリ>

 

狭い穴に強引にマーラ様を押し込んで行く。

途中直斗の処女膜が無惨に引き裂かれていくのがわかる。

普通ならこれだけ強引に割り開いていくと痛みに泣き叫ぶはず。

 

だが今の直斗は媚薬漬けである。

痛ければ痛いだけその感覚が快感に変換される。

 

「はぶぅ、はぅ、ふひぃいいいいいいいいいいい」

 

俺が1ミリ押し込む都度、直斗は絶頂に至っていた。

直斗の奥まで俺のマーラ様が到達したときには、直斗はイったまま帰れなくなっていた。

ポールギャグからダラダラと唾液を零し、白い喉を曝して限界まで体をのけぞらせ続ける直斗。

 

「ーーーーーーーーッ」

 

「く、きつすぎだろっ、ううううっ」

 

余の狭さと締め付けの強さに俺もうめき声を上げる。

普通の男なら剛直を維持することもままならないだろう。

しかし俺のマーラ様は違う!

この膣の締め付けさえも射精の圧に変えてみせるのだ!

 

剛直さを維持したまま先端に意識を集中!

小さいリングのような形状の部位を発見!

鈴口ドッキング用意、3、2、1、接地!

主砲発射、てぇえええええええええええ!

 

<どぴゅーーーーっ>

 

「ううっ」

 

「んうっ、んんぅ、んんんーーーっ、んふううううううううううっ!!!」

 

文字通り誰も到達したことのない処女地に俺のペルソナ液が迸っていく。

全ての感覚が快感に変わる媚薬の効果は、子宮の奥に浴びる熱い迸りの衝撃にさえも及ぶらしい。

直斗は子宮に直接浴びたペルソナ液の熱さに耐えきれず、ぐるんと白目になって気絶してしまった。

 

バリアの向こうで探偵博士が堪えきれずに放った決め技の打ち下ろしの"チョッピングライト"。

その攻撃を予測していたのかダッキングで華麗に避けるセーラナオト。

満を持してカウンターで放たれた"ドラゴンフィッシュブロー"が見事探偵博士の顎を打ち砕いていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 25:00>

 

俺がこれまで体験してきた三人の女性。

ん、四人だったか?

四人目って誰だっけ?

まあいい。

 

千枝、雪子、りせ。

三者三様の膣の持ち主だが、直斗のアソコも三人と大分違った面持ちだった。

 

純粋に狭くて小さいのだ。

普通にマーラ様を差し込んだだけでは全部は入り切らない。

逆にその小ささから全部埋め切ったときの征服感が半端ないのだが・・・。

 

直斗ほどの美少女である。

やっぱり全部マーラ様を入れたくなる。

そのためには初物の膣を十二分にほぐす必要があった。

 

まだ処女を失ったばかりで直斗の膣には柔軟性が足りない。

一旦マーラ様を抜き出し、処女喪失時の裂傷を四六商店特製の軟膏薬で治療。

それから直斗が気絶しているのもお構い無しに再び挿入する。

媚薬が効いているうちに腰を降り続け、俺のマーラ様の形に合うように強引に拡張していく。

 

「んっ、んんっ」

 

直斗は気絶しながら色っぽいうめき声をあげている。

そして腰を振るたびにたふたふと豊かに揺れる直斗の白いおっぱい。

このおっぱいが俺にいくらでもやる気を取り戻させてくれる。

 

バリアの向こうでも戦いは続いている。

セーラーナイトが"ガゼルパンチ"を放つ。

対抗してぶっ放される探偵博士のスリークォーターからの"スマッシュ"。

中央でぶつかり合う二体のシャドウ。

 

『はぁっ!』

 

『ぐっ、なにーーっ!?』

 

相打ちのはずだったが弾け飛んだのは探偵博士だけ。

今や完全に形勢は逆転していた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 25:40>

 

「ううっ、いくぞっ直斗!」

 

「んんーーーーーーーっ!」

 

<ドクッドクドクッ>

 

絶頂に反り返った汗で濡れ光る直斗の白い躰の深奥にペルソナ液が注がれていく。

 

抜かずの四連発目が終了。

女性のセックスで得られる快感の臨界点。

そこに直斗が到達するために出来ることは何でもした。

 

子宮回りの肉もいい感じにほぐれ、やっとマーラ様が全部入るようになっている。

これにて直斗の前の穴の開発は無事完了だ。

さて次はどうするか。

 

今の直斗は媚薬のせいでどんなことをしても快感を得る。

ならアナルはどうだろう。

 

未拡張の場合は生身の人間ならまず入らない。

だが媚薬の効いている今なら強引に犯しても大丈夫なんじゃないだろうか?

 

ヒールゼリーをマーラ様と直斗の慎ましいアナルに塗りたくる。

 

「んん、んんん、ふあぁ?」

 

思わぬ冷たさにイきまくって天国に意識を飛ばしていた直斗も覚醒したようだ。

 

「待ってろよ直斗。アナルの良さもきっちり教えてやるからな」

 

準備万端。

マーラ様を直斗の窄まった後門にセット。

そして再び本人の覚悟も問わず、直斗の処女アナルを犯していく。

 

「ぬーん」

 

<ミチミチミチ、グググ>

 

「ぐ、ぐ、ぐ、くはぁあああ」

 

小柄な直斗である。

アナルの最大直径がもともと小さい。

媚薬のせいで尻の穴の力は抜けてはいるが狭いものは狭い。

括約筋の輪に邪魔され、マーラ様をひねり込むのに苦労する。

 

仮に裂けてしまってもワセリン代わりに塗りたくったヒールゼリーが回復してくれる。

そう信じて強行突破を選択。

渾身の力を腰に込める。

 

<メリメリメリッ、ズポッ>

 

なんとかマーラ様の亀頭がくぐり抜けてくれた。

ここまで入れば後は大丈夫だ。

 

「頑張ったな直斗、さぁいくぞ」

 

<ズズズズ、ズズズズ>

 

ゆっくりとマーラ様を奥に差し込んで行く。

 

「ふぉおー、ふぉおおおおお」

 

直斗は目を見開いて仰け反り、媚薬により巻き起こるアナルバージンブレイクの快感に悶絶している。

前の穴とは異なるアナル特有の窮屈さに俺もイキそうだ。

 

<ズズズズズ、ズン>

 

腰が直斗の尻に密着する。

前の穴ではかなりほぐさないと無理だったが、これがアナルならではの良さである。

 

これで直斗の後ろの処女も俺が貰った。

征服欲が満たされていく。

 

「ふぉん。はふー、はふー」

 

尻の拡張感と熱さに直斗もどうしたらいいかわからないようだ。

怯えた目でこちらを見つめてくる。

 

「大丈夫、俺に任せておけ。すぐにやみつきになる。チュッ。ふんっ」

 

「んん、んんんん、んんんん、んふーー」

 

ポールギャグをした直斗のおでこにキスを落とした後、腰に力を入れる。

羞恥心の強い直斗にとっては尻の穴にマーラ様を入れられるなど考えられないことなのだろう。

いやいやと首を振る直斗。

かまわずガツガツとどん欲に直斗のアナルを掘りまくって悶絶させてやった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 26:00>

 

「ふしゅっ、ふしゅっ、ふしゅしゅっ」

 

一突きするたびに直斗のポールギャグを噛まされた口から、喜びの声が漏れている。

先ほどから直斗の尻を攻めまくり、抜かずの三発目に突入しているのだが・・・。

 

セーラーナオトと探偵博士の戦いはまだ終わってなかった。

 

『えいっ、やーっ、"ホワイトファング!"』

 

『まだぁまだぁ、"飛燕!飛燕弐式!!ツバメ返し!!!"』

 

<ガシッ、ドガッ>

 

相打ちとなりセーラーナオトの攻撃がなかなか決まらない。

脅威の粘り腰を見せる探偵博士。

 

おかしい。

 

一度アナルでイった後は直斗も尻の良さに目覚めてくれた。

既に複数回上り詰めている。

今もきっちり感じているはずだが、先ほどからセーラーナオトと探偵博士の戦いに変化が見られない。

こんなにイケてるならもっとセーラーナオトが優勢になってもいいはず。

 

なぜだ?

腰を動かしながら思考を巡らす。

そして気づいてしまった。

 

「し、しまったああああ」

 

ぐりん

 

「んん、んんんーーー」

 

びくんびくん。

 

また直斗がアナルでイッた。

 

『これでっ!とぉーーーー、"カエルパンチ!!"』

 

『ぐっ、今だっ!"ジョルトカウンター!!"』

 

ア、アナルは男にもあーるじゃないか。

あーるじゃーないかっ!

 

完全な作戦失敗であった。

直斗には女である喜びを教え込まなければいけないのに。

アナルセックスの味をいくら知っても女の幸せを知ることにはならない!

逆に男でもいいやと思わせてしまうではないかっ!

 

なんてことだ・・・。

案の定向こうの"カエルパンチ"も失敗してカウンターで叩き落とされてるし。

 

「くっ」

 

<ずるるる>

 

「んん、ふあああああ」

 

慌てて直斗のアナルからマーラ様を引き抜く。

排泄の快感にまた直斗がイッてしまったようだ。

しかし今の自分にその様を愛でる余裕はなかった。

 

直斗の腸液とヒールゼリーとペルソナ液に濡れ光るマーラ様。

急いで消毒しないと。

アイテムボックスを開き、持ってたはずのどくだみ茶を探す。

 

すでに直斗は男でも味わえるアナルセックスの蜜の味を知ってしまった。

それも普通のセックスでの絶頂感を経験した上で、だ。

先ほどのアナルセックス以上の衝撃を再度のノーマルセックスで与えなければいけない。

かなり難易度が高いように思えた。

くそっ、自分でハードルを上げてどうする!

 

あ、あった。

どくだみ茶のペットボトルを取り出す。

そしてキャップを外してマーラ様にぶっかける。

 

<じゃぼじゃぼ>

 

マーラ様をどくだみ茶で洗浄しながら作戦を考える。

やはり男が持っていない女特有の女性器を攻めるしか道はないだろう。

だが探偵博士が注入した媚薬の効果がいつまで続くかわからない。

急ぐ必要がある。

 

・・・媚薬か。

さらに媚薬の力を借りるのもありだな。

もっと強力な催淫薬とかないかしら。

 

手術台脇のコンテナを見る。

色とりどりのアンプル剤。

 

ん?

あれは?

 

気になって俺が手に取ったアンプル剤。

ラベルには"膨乳薬"と書かれてあった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 26:10>

 

乳房。

おっぱい。

 

男の躰にはついてない女性の躰の最たる特徴の一つだ。

その大きさ、丸み、揺れに男たちは魅了され、夢中になる。

 

女の体の良さを教え込むために直斗のおっぱいを集中的に責める。

俺の選択は間違っていないはずだ。

 

だが・・・。

 

「ふおーー、ふおおおー、ふぎゅーーー」

 

なんか凄いことになっちゃったぞ・・・。

 

アナルセックスで疲れきっている直斗に"膨乳薬"の無針アンプル剤を投与した。

しばらくすると直斗は拘束されたまま必死に胸を突き出して身悶えし始める。

余りに激しい惑乱っぷりに慌てて魔石を膣の中に押し込み、直斗の体力を回復してあげたほどだ。

 

そして今。

 

直斗のおっぱいは二周りほど大きく膨れ上がり、天に向かってその鴇色の乳首をびんびんに屹立させている。

胸を絞り出す形で拘束されていることもあり、まさに二台のロケットが発射台に屹立している状態。

凄い痩身巨乳っぷりだ。

 

「ふーーーっ」

 

「ひぐっう」

 

乳首を軽く吹くだけで、直斗がびくんびくんと体を震わせている。

 

「れろれろーん」

 

「ふしゅっ、ふしゅっ、んんんんーー」

 

ロケット乳の根元から乳輪まで一直線に舌を這わせると、ぷるぷるとおっぱいを揺るわせ激しく身悶えする。

どうやら乳房全体が凄まじい性感帯に変化しているようだ。

 

「んふっ、んふっ、んふっ」

 

何かを恐れているように目を見開く。

首を振ってイヤイヤしてくる直斗。

 

君の気持ちは痛いほどわかる。

でも俺も男である以上は。

手が出てしまうのは仕方ないことなんだよ!

仕方ないことなんだよ!

 

なぜ男は乳を揉むのか?

そこに乳があるからです!

 

<もみもみぎゅー>

 

「ふぎゅ、ふぎゅ、ふおーーーーーーっ!」

 

大胆に根元から直斗の巨乳を揉みしだく。

 

もっちりしてすべすべの肌。

パンパンに張った身肉。

最高のおっぱいがそこにあった。

 

直斗に女の体の良さを教えてあげるため。

そんな建前さえも忘れて、俺は直斗のおっぱいを揉みしだきまくる。

 

「んっ、んっ、んっ、んんっ、んんんっ」

 

直斗のおっぱい。

その若さゆえ張りが半端ない。

ぐにゅんぐにゅんと揉み込んでいくとわかったことがあった。

両の乳房の芯の部分が固いのである。

 

これは直斗のおっぱいがまだ成長しきってないことの証左だった。

揉み方を変える。

 

「【大きくなれよー、大きくなれよー、体は細いままでおっぱいだけ型崩れしないで大きくなれよー】」

 

念じながら芯の部分をゆっくりとほぐしていく。

 

「んふー、んふー、んあ、んあー」

 

普通ならかなり痛いはずだ。

だが膨乳薬のせいで夢見心地な気持ち良さを得ているらしい。

直斗はトロンとした目になって酩酊状態だ。

 

俺の乳マッサージの甲斐があってか直斗のおっぱいの芯の部分も大分柔らかくなってきた。

さらに張りが増した気がする。

そろそろメインディッシュの乳首に取りかかるとき。

 

膨乳薬を使ってからというもの、まだ俺は直斗の乳首に一度も触れていない。

はたしてどんなに直斗が悶えるのかとても楽しみだ。

 

二つの乳首を一緒に頬張りたい。

両の乳房を持ち上げようと横から鷲掴む。

そしてぎゅぎゅと両手に力を込めた瞬間。

 

異変が起こった。

 

「っっっ!んんんんっんふっ!!」

 

<ぷしゃ>

 

「え・・・?」

 

直斗のピンク色の乳首。

そこから白い液体が噴出されたのである。

 

指についた白い液体を舐めてみる。

甘い乳の味がした。

 

これはミ、ミルク?

 

「・・・・・んんんっ!?」

 

直斗も自分が乳を出したことに気づいたようで呆けている。

呆然と見つめ合う俺と直斗。

 

もう一度乳に手を伸ばしてみる。

直斗も恐る恐る胸を張って俺の手を待つ。

 

直斗の左乳に顔を近づけ、よく観察しながら手に力を入れる。

 

<ぷしゅ>

 

「んんっ」

 

白い液体が俺の顔を打つ。

 

甘い香りが鼻を襲う。

直斗のフェロモンだ。

やはり乳。

 

「ふふふふ。ふははははは。そうかこのための膨乳薬か」

 

自然と笑みがこぼれる。

 

「一度ミルクプレイをやってみたかったんだ。直斗、やっぱりお前は最高の女だよ!」

 

直斗を激賛する。

 

何が起こってるかわからずただ惑乱したままの直斗。

しかし、ギラリと俺の目が光ったことに気づいたのだろう。

 

「んんー、んんーっ」

 

羞恥とこれから襲い掛かるであろう許容値以上の快感への恐怖からか必死に体を反らす。

しかしその動きは乳をぶるんぶるんと官能的に震わすだけ。

俺の獣欲を煽る動作にしかならない。

 

「さて直斗。君のミルクの一番搾り、俺が頂くよ」

 

また一つ、直斗の初めてを奪うことになったな。

 

直斗の両の乳房を中央に寄せる。

そしてミルクの滲んでいる二つの乳首に一気に齧り付いた。

 

「あーん」

 

ぱくり。

れろれろ。

んふー、あまーい。

 

「んんんんんんっ」

 

ミルクを垂らす甘い乳首を舐めまくられて直斗は激しく惑乱。

躰をゾクゾクと震わせてイッているようだ。

さて本格的に味わおうか。

 

「ちゅー」

 

「んもーーーーーっ」

 

ぎゅーっと両の乳房を根元から握り絞り、両のミルクを噴出させる。

直斗ミルクの味は一度飲んだら止められないほど美味だった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 26:30>

 

随分長い時間直斗のミルクを味わってしまっていた。

それだけ直斗の乳房を嬲られる快感を教え込む効果は絶大だったのだ。

 

『"ハリネズミパンチッ!!"』

 

『うわっ、ぐふうう』

 

俺が直斗の乳を吸うたびにセーラーナオトの連打攻撃が決まる。

一発ごとに探偵博士が劣勢に追い込まれて行く。

その様を見て俺はさらに猛る。

 

「ほらっ直斗。よく味わうんだ。これが女の体の良さだっ。乳を吸われるのは幸せだろう。ちゅうちゅう」

 

「ふおっふおおおお」

 

直斗はガクガクと首を振りながら乳房を突き出し俺にミルクを捧げてくる。

乳を出す行為はかなり体力を使うらしく直斗の消耗も激しい。

しかしとっておきの宝玉を膣に挿入してあげたことで直斗の生命力は全回復。

無尽蔵に乳がわき出してくる。

 

「げっぷ。大分こぼれてしまったな」

 

飲みきれなかった乳がこぼれる。

直斗の乳房全体が濡れまくっている。

乳房の谷間もヌルヌルだ。

そろそろ頃合いか。

止めを刺そう。

 

拘束されている直斗にまたがる。

そして直斗の腹の上にマーラ様をセット!

 

「ん、んんん?」

 

乳を吸われまくり、あまりの快感と幸福感に思考能力が落ちている直斗。

これから何をされるかわかっていないようだ。

 

直斗のミルクまみれの二つの乳房を寄せ、谷間の乳圧を上げる。

それだけでさらにぴゅぴゅっとミルクが噴出。

これでさらに滑りが良くなっただろう。

レディィィィ、ゴーッ!

 

<ずりゅりゅりゅりゅ>

 

谷間の下からマーラ様を差し込んでいく。

 

おおお、きもちえー。

 

「んほおおおおおお!?」

 

柔らかい胸の谷間をかき分け、直斗の鎖骨のあたりに亀頭を出すマーラ様。

突如現れたマーラ様の熱さと雄々しさに直斗はびっくりしている。

初めてマーラ様の勇姿を間近で見る事になった直斗は、カァアアアと顔を赤らめていた。

 

「さて、直斗。これから君のおっぱいを犯す。覚悟してくれ」

 

「・・・・ンッ」

 

真っ赤な顔で亀頭の先端に視線を合わせている直斗。

あまりに恥ずかしいシチュエーション過ぎて俺の言葉が耳に入ってないようだ。

かまわず始めようか。

 

左右の乳房を掴んで中央に押し付ける。

そのまま人差し指と親指でこりっこりの乳首を摘む。

そしておもむろに腰を振り始める。

 

<ズッチョズッチョズッチョ>

 

すべすべの肌、ぬるぬるのミルク、全長を包み込む大きさ。

直斗のおっぱいオナホールは最高だった。

俺の腰と激しく当たり、バインバインと直斗のおっぱいが縦揺れを起こす。

 

「ンンっ?ンンッ!?ふぉ、ふおおおおおおおおっ」

 

マーラ様の熱、固さ、激しさ。

乳房への加圧、乳首への刺激、波打つ乳肉。

全てが快感に変換され直斗に襲い掛かる。

アナルセックス以上の乱れっぷりである。

 

「ンヒイッ、アオッ、ンゴー、フフー、ンモーッ、ンモーッ、ンモーッ」

 

一突きする毎に摘んでいる両の乳首からぴゅうぴゅうと噴乳し、ぶるっぶるっと躰を震わす。

イキ癖のついてしまった直斗はそれだけでイッてしまっているのだろう。

 

イクたびにミルクの出が良くなり、ミルクを出すたびにイク。

ミルク製造によって失われた血液はその都度膣にはめ込まれた宝玉が回復。

快楽の無限循環の果てに、直斗は激しいマーラ様の射精をその美顔で受け止めることになる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 26:45>

 

『さあ観念するんだっ、探偵博士!"デンプシーロール!!"』

 

『ガッガッガッぐァアアアア・・・。まだ、僕は戦える。ぐぐっ、先輩のマーラ様を僕は手に入れるんだ!』

 

戦況はセーラーナオトが圧倒的に優勢。

ほぼ九分九厘勝利を手中に納めている状態。

でも探偵博士はしぶとい。

ボロボロになっているのになかなか消滅しない。

 

直斗本人はパイズリからの顔射を受けて、今日何度目かわからない大アクメの余韻に浸っている最中。

激しい勢いで大量のペルソナ液を顔中に浴びたため、ポールギャグが白濁まみれになっている。

隙間から口内にペルソナ液がどろどろと流れ込んでいた。

初めて味わうペルソナ液の味にさえ恍惚とした表情を浮かべている。

 

女性の味わう快楽を限界まで教え込んだはずだ。

それなのに直斗、男になりたい気持ちをまだ捨てられないのか。

女の良さを教え込むだけじゃダメなのか。

 

よし!

 

ぷるるん。

大アクメし終わった直斗の乳房の谷間からマーラ様を引き抜く。

 

「んんん・・・んーー」

 

<カチャカチャ、バチン>

 

ポールギャグを外してやる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

荒い吐息をついている直斗の眼前にまだカッチカチのマーラ様を近づける。

 

「【見ろ】」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、え・・・?あ・・・」

 

直斗に命令してマーラ様を観察させる。

 

「直斗、そんなにこのマーラ様が欲しいのか」

 

「ああ、す、凄い」

 

直斗は熱に浮かされたような視線で感嘆の声を上げている。

やはりこのマーラ様自体に憧れていたのか。

 

「わかった。このマーラ様、好きなときに好きなだけお前に貸してやる」

 

「え?」

 

あげる事は出来ないが貸すことは出来る。

アタッチメントではないので俺ごとになるが。

 

「お前は自分のマーラ様が欲しかったんだろ。もう苦しむことはない。今日からこれがお前のマーラ様だ」

 

「こ、これが僕の、僕のマーラ様」

 

「舐めたければ舐めればいい。ハメたければハメればいいんだ」

 

「ごくり」

 

直斗は俺のマーラ様の威力を身を以て体験している。

与えられた力の大きさに尻込みしているように見えた。

だが今ならきっと俺の言葉も直斗の心に響くはずだ。

 

「【お前が男になる必要なんてない。欲望のままに俺のマーラ様をいじり倒せ】」

 

「・・・ああああああ、う、嬉しいよ。僕、嬉しいよ」

 

ポロポロと涙を流す直斗。

やっと素直になったか。

 

「ほら、【好きなだけ舐めろ】」

 

「・・・うん、舐める。ぼくっ舐める!ペロペロするぅ!」

 

直斗は首だけ動かして一心不乱に初めてのフェラに興じ始める。

 

「ちゅうちゅう、ん、先輩ずるいよ。はぁはぁ、こんな風にずっと楽しんでたなんて。あーん、もごもご」

 

夢中になってマーラ様を頬張ろうと頑張っている。

 

「こんな大きいの、ちゅぱ、ボクの口に全部入るわけ・・・んっふー、ないよー。くちゅくちゅ」

 

亀頭のみをしゃぶる拙い口技であったが、初めて素直になった直斗の無垢な愛情表現に俺も高まってくる。

 

「ちゅぽちゅぽちゅぽちゅぽっ、イッてぇ。ぼくのお口にくださいっ!んちゅううううううう!」

 

『さぁこれでトドメです!はぁああああ、"ハートブレイクショーーーーットッ・・・!!!"』

 

バリアの内と外でクライマックスが訪れる。

 

「う、いくぞっ!うおおおおおおお」

 

<どぴゅうーーー>

 

『うぎゃああああああああああああ』

 

<どちゅーーーん>

 

俺のペルソナ液が直斗の口内に直接注ぎ込まれると同時に探偵博士の時が完全に止まった。

 

これで二度と直斗が男になりたいなんてバカなことを言い出すことはないだろう。

一つの正義が守られたわけだ。

 

可愛いは正義、だからね。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 26:55>

 

<シュオオオオオオオオオオオオン>

 

<ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ>

 

戦いが決着すると同時にセーラーバリアと手術台の拘束が解ける。

 

すでに探偵博士の姿はどこにもない。

手術台の上の直斗も、イキ疲れて口元からペルソナ液を垂らしながら意識を失っている。

 

意思を持って立っているのは俺と直斗の唯一残ったシャドウであるセーラナオトの二人。

そのセーラナオトからは敵意は全く感じられない。

ボロボロのセーラ服にも関わらず優しげな表情を浮かべている。

 

<カツカツカツ>

 

セーラーナオトがハイヒールの音を響かせて手術台に近づいてくる。

そして満足げ気眠りについている己の本体を見てクスリと笑った。

 

『僕のこと、よろしくお願いしますね』

 

「ああ」

 

『最後に一つだけお願いがあるんですが、いいですか?』

 

なんだろう?

今目の前にいるのは直斗本人の深層心理を象ったもの。

その願いは直斗の真なる願いに他ならない。

 

『ちゃんとした、キス。ですよ』

 

ははっ。

そうか。

そういえばまだファーストキスを済ませてなかったな。

 

この娘も頑張ったんだ。

ファーストキスくらい独り占めにするだけの資格はある。

 

ちゃんと向き合ってセーラナオトと抱きしめ合う。

 

「その衣装、すっごく似合ってる。【また着てくれ】」

 

『・・・ふふ、ありがとうございます。必ず。んんっ』

 

正式な恋人同士のキスを二人で楽しむ。

セーラーナオトは満足したようだ。

 

キスを終えて唇を離すと姿が薄らぎ始める。

しかしその消え去り間際、セーラーナオトが何かに気づいて慌てた口調で大変な事実を告げる。

 

『あっ。言い忘れてましたっ。この基地には自爆装置があります!探偵博士が死ぬと五分後に爆発っ・・・』

 

な、なんだってー!?

 

慌てて手術台の上の直斗を担ぎ上げる。

その瞬間、俺の体の中から何かがスッーと直斗の体に移って行ったのがわかった。

セーラーナオトが俺の体を通して直斗本体に帰って行ったのだろう。

 

今回はいつもと逆の順番になってしまったな。

ってそれどころじゃなーーーいっ!

 

TVを出している暇はない。

出口まで走るぞ!

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月15日THU 雨 27:00>

 

<ちゅどーーーーーーーんっ!>

 

遠くで秘密基地が大爆発を起こしている。

密林の中にあった秘密基地の爆破。

ヒーローものの最終回のような展開だ。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁつ」

 

ここまで小柄とはいえ女の子一人抱えて走ってくるのは流石に疲れたぞ。

荒い息を着いて座り込む。

 

腕の中の直斗は消耗し切っていた。

この騒ぎでも目を覚ましてこない。

改めて救い出した直斗を見る。

 

胸元を切り取られた貫頭衣で大きく膨らんだ乳が丸出しの直斗。

もはやどこからどう見ても立派な女である。

 

そして直斗の少年っぽさを表していた秘密基地も粉みじんに吹き飛んだ。

つまり内面的にも直斗は一つ大人になったのだ。

これで男装趣味からは完全に卒業だろう。

 

これからどんどん直斗は大人の女に成長していくのは間違いない。

願わくば彼女のすぐ横で、彼女の心と体の成長を日々見て触れて実感していきたいものである。

そのために打てる布石は全て打つつもりだ。

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 7:00>

 

テレビの中から帰還後、直斗を裸に剥いてベッドに寝かせてから仮眠を取った。

三時間ほど寝て、眠い目をこすりながら登校の準備。

今日三時間しか寝てねーわー、つれーわー。

 

朝になっても直斗は起きてこない。

俺とのセックスでかなり消耗しているため仕方がないだろう。

さすがに登校は無理だろうから寝かせたままにしておいてあげる。

 

俺も今日は休みたいところであったが、修学旅行の一件以来担任の柏木に目を付けられてしまっている。

体調不良で休んだりしたら家にまで押し掛けてきかねない。

仮にそこで追い返せても、次は一人暮らし自体を問題視されて難癖を付けられるだろう。

夢のハーレムライフがおじゃんになることだけは避けたい。

危険は未然に摘んでおくに限る。

 

それに今日は千枝たちにお昼の弁当を持って行く約束をしている。

そのための下ごしらえは昨日のうちに済ませてある。

せっかく作った料理を無駄にするわけにはいかない。

 

ついでに直斗が起きたときに食べれるよう軽い食事を用意。

カリフォルニアロールのお弁当とデザートに白桃の実である。

冷蔵庫に入れておく。

 

直斗宛に居間のテーブルの上へ食事の場所を書いた紙と、部屋の合鍵を置いてておく。

出来上がったお重を風呂敷に包み、雨の中マンションを出た。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 8:00>

 

登校中、千枝や雪子たちと合流。

当然ながらマヨナカテレビの結末が気になって仕方ないようだ。

 

「ねぇねぇどうだった?」

 

千枝が勢い込んで聞いてくる。

 

「ああ、勿論助けたよ。ただ直斗の消耗が激しくてさ。犯人に関する詳しい話はまだ聞けてない」

 

「そ、そうじゃなくて・・・その。」

 

ん、雪子、何が聞きたいんだ?

 

「もう先輩ったら。千枝先輩たちは直斗とのセックスはどうだった?って聞いたの。私も知りたーい」

 

「そう!どうだった?直斗くん、可愛かった?」

 

「もう二人とも朝っぱらから往来で何言ってるのよ。・・・でも私も知りたいな。エヘ」

 

・・・三人の中では俺が直斗を抱いたことがもう既定事項になっていたらしい。

 

嫉妬とかという感情は無いのだろうか。

いや、同じ男をシェアする相手がもう既に二人もいたら、それが三人になっても一緒か。

いい感じに倫理観壊れてるなー俺たち。

 

「ああ凄く良かったよ。見た通りおっぱいもおっきかったし。流石に初めてだったんで今日は休ませてる」

 

だから正直に答えてやる。

 

「「よかったー」」

 

うんうんと頷き合ってクルクルと傘を回している千枝と雪子。

 

「うーん、強力ライバル出現ねー。よーし燃えてきたぞー。先輩!センターは譲らないからね!」

 

りせもポジティブに鼻息が荒い。

 

「その、いいのか?もう一人増えちゃって」

 

一応聞いてみることにした。

 

「今更じゃん。そんなこと。それに最近また悠、夜激しくなってない?もう三人でもつらいよー」

 

「直斗くん、ずっと前からご主人様を慕ってたみたいだし、いつ仲間に入れてあげるのか心配してたの」

 

「あの娘クラスの可愛い女の子なら全然おっけー。むしろ自分よりブスな子に先輩がフラフラする方が超最悪ー」

 

「「「ねー?」」」

 

そうか・・・。

なら今朝はもうちょっと寝とけば良かった、なー。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 12:40>

 

ほとんどの授業を隠れて寝て過ごす。

 

お昼は晴れたので屋上でお重を開き昼食。

さぁ昨日のうちに下準備をしておいた渾身の料理を喰らうがいい!

 

「「「わー、美味しそー」」」

 

千枝と言ったらやっぱり肉!ということで、メインに"とんかつ"と"豚の角煮"を用意。

雪子好みの味の"ごぼうとニンジンのきんぴら"と"ほうれんそうのゴマ和え"を添えるのも忘れてはいない。

お汁とご飯はりせが大好そうな"ビシソワーズ"と"茶巾ずし"にしてみた。

メインディッシュ、付け合わせ、お汁、ごはん。

我ながら見事にバランスの取れたお重だ。

 

これでご機嫌を取って直斗とのことは許してもらうという、とっても浅はかな考えを抱いていたのだが。

全くの無用の長物だったことが今朝の段階で既に判明している。

 

だが作ってしまったものは仕方がない。

彼女たちには日頃性欲処理で無茶ばっかりお願いしているのでそのお礼ということにする。

 

「うわっとんかつサクふわだよ。豚の角煮もやっわらかー。もっと食べたい!でも食べ終わるのもったいない!」

 

「きんぴらのてりつやが凄いね。あ、ゴマ和え、さっぱりしてて美味しい。うちの料理長にも出せるかなこの味」

 

「このビジソワーズ、コクうま!茶巾ずしもきっれー。ほらほら見て見てー、具が黄金色だよー。先輩天才!」

 

なかなかに好評だったので良しとしよう。

こんなに喜んでくれるなら、またいつか作ってあげるのもいいかな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 16:00>

 

午後の授業中に直斗からメールがあった。

放課後JUNESで俺に会いたいそうだ。

千枝たち三人も一緒に連れて行くと返信。

 

学校が終わり、待ち合わせ場所の屋上のフードコートに皆で向かう。

 

「あ、また絡まれてる。直斗クン、やっほー」

 

直斗を見つけた千枝が声をかける。

 

直斗は軟派小僧たちを迷惑そうにあしらっているところだった。

つい数日前まで見せていたオドオドした雰囲気は無くなっている。

TVの中で女になったことで文字通り大人となったようだ。

落ち着きが違う。

 

「ああ、皆さん、こんにちわ」

 

言い寄る小僧たちを無視してこちらを見て頬を染めて挨拶を返してくる直斗。

小僧たちもこちらに気づき、新たな美少女3人の登場に色めき立つ。

 

「おいおい美人がいっぱいじゃん」

「そんな男より俺たちの方が楽しいぜ」

「あれもしかして久慈川りせじゃね?すげーマジもんじゃん」

 

少しヤンキー入ってる。

田舎のヤンキー。

うざっ。

 

「【彼女も俺の連れだ。邪魔だから帰れ】」

 

「「「・・・すいませんっした!!!」」」

 

俺の眼光に恐れをなしてナンパ小僧たちはすごすごと立ち去って行った。

彼らを見送りながら直斗に声をかける。

 

「体、もういいのか?」

 

「は、はい。先輩の部屋でゆっくり休ませて頂いたので」

 

まだ辛そうではあったが直斗は大分疲労は回復していた。

今日は俺のマンションで昼過ぎまで熟睡していたらしい。

 

潤んだ瞳で見つめられる。

思わず抱きしめてしまいたくなるが、千枝たちの存在や周囲の視線が踏み止まらせる。

 

「お弁当もとても気高くて美味しかったです。白桃の実も疲れた体に染み渡りました。あとこれ。お返しします」

 

直斗が紙袋と貸した合鍵を渡してくる。

紙袋の中は今朝貸した千枝たちの置き服だ。

一旦自宅に帰って着替えて来たらしい。

 

ちなみに今の直斗のコーディネートは修学旅行で購入しエスカペイド地下に潜入したときの服。

あの時と同様に女性らしさが強調されてとても奇麗ではあったが、前回と少し印象が異なっている。

胸元ががかなり窮屈そうなのだ。

どうやら膨乳薬の影響が抜け切ってないらしい。

 

女性の場合あまり胸が大きすぎるとデブく見られてしまうことが多い。

だが直斗の場合は絶妙なラインに納まっており、むしろ体全体が細く見える。

そして細いウェストのラインをぴっちりと強調する服のため、余計メリハリが強調されていた。

今の直斗はグラビアアイドルも裸足で逃げ出すレベルのスタイルだ。

だから自然と衆目を集めてしまう。

 

「あ、美少女探偵だ!」

「すっげー奇麗。お、おいTVより可愛くね?」

「ああ、む、胸もでけーよ」

 

再び通りがかりの他の通行客から歓声が上がる。

直斗の周りに俺たちが陣取っているため、先ほど小僧たちのように寄ってくることはない。

その代わり遠目からの囃し立てる声がやたらと聞こえてくる。

 

「・・・カッ(赤)」

 

中には露骨なセクハラ表現もあって頬を赤らめてしまう直斗。

 

「気にするな」

 

「そうそう。これからずーっと直斗は美少女探偵って言われ続けるんだからねー。TVって怖いんだから」

 

「もー自分もいるのにー」とりせは不満そうに直斗に忠告している。

確かにこの場の注目はほぼ直斗に集まっていた。

りせだって休業中とはいえトップアイドルでなおかつ直斗に匹敵する可愛さなのだが。

これが世間一般でいう流行というものなのだろう。

 

「ええ。あんな番組ほんとに出なきゃ良かったです。それより皆さんと事件についてきちんとお話したくて」

 

とりあえずここは目立ちすぎる。

場所を変えてテントの下の六人掛けの椅子に移動しよう。

 

そういえば何時ぞや雪子が予言してた通りになったな。

もう四人掛けのテーブルには座れないか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 16:30>

 

四人の女の子に囲まれてベンチに座る。

 

全員が美少女。

そして全員が俺の囲い女。

優越感が限りない。

 

「まずは先にきちんとお礼をさせて下さい。命を助けて頂き、本当にありがとうございました」

 

隣に座った直斗が居住まいを正して俺に頭を下げてきた。

お辞儀を終え、柔らかく微笑んでくる直斗。

 

「実は信じてました。あの約束。きっと守ってくれるって」

 

フっ。

無言でキメ顔する。

 

「当然だ。俺は約束を守る男だからな」

 

おっとそうだった。

 

「勿論昨日の約束も守るつもりだから」

 

直斗の耳元に顔を寄せ、こそっと囁く。

 

「い、いつでも、ごにょごにょを貸してくれるっていう話、ですよね。本当に?」

 

頬を染めた直斗が小声で聞き返してくる。

 

「ああ当然だ。只で借りるのに気後れするなら、そうだな。代わりにその魅力的な胸を貸してくれればいい」

 

「そ、そういう意味で尋ねたのではないのですが・・・」

 

恥ずかしがって胸元を手で隠す直斗。

乳房が柔らかく弾んでやたらエロい仕草になっていた。

どうやらノーブラのようだ。

膨らみすぎてブラも入らないのか。

 

「えー、何の話?」

「内緒話なんてずるい」

「私たちにも聞かせてよー」

 

おっと外野がうるさくなってきた。

真面目に話を進めよう。

 

「お、おほん。さあ真犯人について教えてくれ。そのためにわざわざTVに出たんだろ」

 

まずは今回の囮捜査の結果を聞いてみた。

すると直斗の顔が一気に曇ってしまう。

 

「・・・すみません。僕も犯人の顔を見る事は出来ませんでした」

 

なんてこった。

体を張って囮になったのに手がかりなしなのか。

今度こそ重要な証拠が手に入ると思ったのに。

とほほ。

 

「直斗くんはどこで攫われたの?」

 

肝心な点を雪子が問いただす。

 

「自宅です。チャイムが鳴ったので玄関のドアを開けたんですが・・・。誰もいなくて不審に思って外に出たところを狙われました。急に後ろから口を塞がれて。袋のようなものを被せられて担がれたのは覚えています」

 

出来るだけ正確に自分の誘拐シーンを伝えようとしてくる直斗。

 

「チャイム・・・。私といっしょだ」

 

「あっ、そういえば私のときもチャイムの音、聞いたような気がする・・・」

 

雪子とりせが直斗の状況報告に反応して自分が攫われたときの状況を思い出している。

 

「会話や合図らしい声も一切ありませんでした。結構高く躰を持ち上げられた感覚がありましたので、手際や体格から言ってまず間違いなく男の単独犯だと思います」

 

「なるほど」

 

かなり重要な情報だ。

 

「その後ほんの数分でしょうか。体に衝撃がありました。恐らくそのときにTVの中に落とされたんだと思います」

 

「つまり捕まった直後にTVに入れられたってこと?」

 

これもまた留意すべき情報だった。

千枝が思わず口に出した疑問。

捕まった直後にテレビ。

犯人は雪子やりせへの犯行にも時間が掛かけていないことを鑑みるに、恐らくそれが答えだろう。

 

「つまり犯人は女の子の躰が潜り抜けられるくらいのインチ数のTVを常に持ち歩いているってことか」

 

暴れられて引っかかって時間がかかってしまうのもまずいだろう。

女の子を入れるのに余裕を持ったサイズ。

 

「32インチ以上の薄型テレビあたり。そうなると・・・犯人は車で移動しているな」

 

「ええ、ボクもそう考えます。普通免許を取得している18歳以上の体格のいい男性。それがボクとお二人を拐かした犯人像になります」

 

「じゃあ、やっぱり諸岡先生を殺したあの久保って子はご主人様と直斗くんの推測どおり模倣犯なのね」

 

おお、あれだけ久保に興味を持てなかった雪子が、久保の名前を口にしてる。

事件を起こした甲斐があったな久保。

あ、もう売女でビッチな雪子のことなんて何とも思ってないんだっけか?

 

「ええ。先輩の話から推測するに、諸岡先生を殺した後、久保も真犯人の手によってTVの中に投げ込まれたのでしょう。でもその時点で久保は一切報道されていません。久保の犯行を真犯人がどうやって嗅ぎ付けたのかが謎です。久保本人に直に聴取出来ればもっと詳しい情報が得られる可能性があるんですが」

 

いや無理だろう。

あいつは空っぽだった。

 

「久保にとっては連続殺人事件の犯人であるってことが自分の虚栄心を満たす唯一の手段になってしまっている。そんな奴に何を聞いたってまともな答えなんて返ってこないさ」

 

「そうかも、しれませんね」

 

しかし車移動となると・・・。

 

「前に道路交通監視システムで俺のバイクの移動経路を調べたろ。あれは使えないのか?」

 

「昔お世話になった方にまた裏で手を回してもらって不審車両の洗い出しを進めてもらっています。ただ残念ながらボクの住んでいる地区はカメラが設置されてないらしくて」

 

「カメラが無い?」

 

「はい。基本的に幹線道路や人通りの多い道はほとんどカバーされています。でもそれ以外の路地などへのカメラの設置率はまだまだすごく低いんです。先輩のバイクは幹線道路しか使ってませんでしたから移動経路を全て追えたんですが」

 

道路交通監視システムもこの田舎町ではあまり役に立たないことが判明した。

うーん、せっかく直斗が囮になってくれたのに行き詰まってしまったようだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 17:00>

 

「でも凄いね。攫われたときにそんなに冷静に観察してるなんて。怖くなかった?」

 

場の雰囲気を変えようと雪子が直斗を労る。

 

「え、いえ、心の準備はしていたつもりだったんですけど。やっぱり、その、凄く、怖かったです」

 

「女の子だもんねー」

 

「うん、当然だよね」

 

頬を染めて告白する直斗を千枝とりせがフォローする。

 

「よく頑張ったな。あの秘密基地でも」

 

俺もその小さな頭を撫でて褒めてあげる。

 

「は、はい。ともかくこの事件はもう仕事でも人事でもありません。先輩のようにあの世界に入って戦うことは出来ないけれど、僕も真実が知りたい。是非協力させて下さい。あの、出来ることは何でもしますから」

 

取り繕ったところもなく、真心からの直斗の言葉だった。

 

「勿論だ。美少女探偵がいろいろと手助けしてくれれば心強い」

 

「あ、ありがとうございます」

 

美少女探偵という名称に相変わらず照れる直斗。

やはり美少女というフレーズはとても大事なことなので外すわけにはいかないな。

 

「えへへ、良かったね、先輩」

 

「ああ」

 

りせも仲間が増えて嬉しそうだ。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

こうして白鐘直斗は俺たちの仲間に迎えられることになった。

あくまで表の意味で、ではあったが。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月16日FRI 雨/晴 17:30>

 

気がつくと随分話し込んでしまっていた。

そろそろ夕飯の支度に取りかからなければならな時間だ。

りせが皆と直斗にこれからの予定を聞いてくる。

 

「これからどうするの?食材買って先輩のマンションに移動する?直斗も来る?」

 

「い、いえ。まだ体がだるくって。今日はこのまま家に帰ります」

 

自分の胸を抱きしめる直斗。

確かに薬が抜けてないのは辛いだろう。

今日は大人しく自宅で寝かせてやった方が良さそうだ。

 

「そ、それよりも実は悠先輩と皆さんの体のことで相談があるんです。明日の午後も時間頂けますか?」

 

少し思い詰めた表情で直斗が訴えかけてくる。

深刻な用件なようだ。

 

丁度良かった。

普段なら天城屋旅館のバイトだったが、来週の月曜日は敬老の日で休校となっており連休である。

天城屋旅館も例年混むため、女将に頼まれて明日の土曜日のバイトを月曜日に移していたのだ。

みんなで直斗に付き合うことにしよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 13:00>

 

お昼を食べないで来て欲しいという直斗の要請に従い、昼を抜いて待ち合わせ場所に集合する。

待ち合わせ場所は稲羽市立病院だった。

 

話を聞くと直斗は自分の分も含めて俺たち全員分の人間ドックの予約を入れているそうだ。

それも即日で検査結果が分かるゴールドコースである。

どんだけ金を持ってるんだろう、この飛んでるお嬢さんは。

 

「ご主人様の躰を医者に見てもらうの?」

 

雪子が不思議そうに尋ねる。

 

「ええ、まずは悠先輩の躰が正常なのか、医者に見てもらうのがいいのかなと」

 

ん?

俺の躰って異常なのか?

 

「・・・だって、明らかに人間が出せるペ、ペルソナ液の量じゃないでしょぅ」

 

うーん確かに。

普通ならとっくに赤玉出てるだろうな。

それなら俺だけでいいはずだが。

 

「あたしたちも?」

 

「あなたたちが悠先輩と、その、深い肉体関係にあることは知ってます。悠先輩とセックスし続けることで、躰に何か影響が蓄積していないか調べるべきです。それに!調べてみたらほぼ毎日じゃないですかっ。間違いが起こってしまっている可能性もある。ちゃんと妊娠や性病の検査をすべきです!」

 

千枝の意外そうな声に直斗は若干切れ気味に答える。

えらいなー。

このお嬢さんはちゃんと考えてらっしゃる。

 

「そ、それに僕もちょっと調べてもらいたいところがあって・・・(赤)」

 

ああー、胸のことね。

サイズアップしたままだしな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 15:30>

 

やっと検査が終わった。

しかしグラビア雑誌渡されて「これで抜いて下さい」って言われたときはビビったぞ。

ペルソナ液検査まであるなんて。

 

仕方ないので巻頭特集の真下かなみで抜いてみた。

マンションだとりせの目が光ってるので他のアイドルが出ている雑誌は置いておけないのだ。

そういう意味では新鮮だった。

 

「おなかすいたよー」

 

昼を抜いたままのため千枝はブーたれてる。

 

「まぁまぁもう少しの辛抱です。もう検査結果が出ましたよ」

 

書類を携えた直斗が待機室に入って来た。

 

「皆さんは特に異常なしです。誰も妊娠されてません。それに性病もありませんでした」

 

千枝と雪子とりせに向けて結果を報告する直斗。

 

「で、悠先輩は?何かわかったの?」

 

「わかりました。その。よくわからないことがわかったというべきでしょうか」

 

りせの質問に対して要領の得ない回答を返してくる。

 

「悠先輩はその、至って健康体のようです。マ、マーラ様や採取したペルソナ液にも異常は見られませんでした」

 

異常と見られないことが異常、か。

 

「マーラ様のサイズは日本人男性としてはかなり大きな方だそうです。でもあり得ない大きさではないらしいですね。ペルソナ液の方は・・・」

 

頬を朱に染めた直斗が俺のマーラ様の検査結果を伝えてくる。

そして一枚の写真を取り出した。

 

「ペルソナ液を顕微鏡で拡大した写真がこれです」

 

「何コレ、うっわー」

 

「いっぱいいるー」

 

あー、保険体育で見るなーこういう写真。

うようよと精虫が泳いでいる絵に千枝と雪子が興奮している。

 

「通常の男子のものに比べると数もかなり多く、とても元気なようですが異常とまでは言えないそうです。そのっ。検査された女医さんは、おほん。こんなの排卵日に注がれたら受精は確実ね、と褒めてらっしゃいました。(赤)」

 

それは・・・褒めてくれてどうもありがとう?

とにかくあまり意味の無い検査だったことは分かった。

 

「こちらが全員の検査結果になります。見られますか?」

 

「ああ」

 

ぺらぺらと捲る

 

「どれどれー」

 

全員が集まってきた。

直斗も俺たちに見られることに抵抗は無いようだ。

 

身長体重スリーサイズまでばっちり記載されている。

体重は千枝が一番重いようだ。

千枝のページのところでじっと体重の欄を見てたらゴンと殴られてしまった。

 

「なによー、なんか文句あんのー」

 

いやいや。

一番筋肉質なので当然と言えば当然だよ。

うん。

 

胸の大きさは、直斗>>雪子>りせ=千枝だ。

直斗はドーピング中のため1カップ大きい計測結果になっている。

特筆すべきは雪子と下位2者との差が縮まったことにある。

かなり揉みまくった成果だな。

 

「あーん、もうちょっとかー」

 

「雪子、着やせしてるもんねー」

 

「そ、そんなことないよー」

 

他に見るべきところはっと。

あれ、これ?

 

直斗のカルテに乳房の異常に関する記載がされてあった。

膨乳薬の影響による乳房肥大についてかと思ったらどうやらそれだけではないようだ。

乳が出る症例について詳しく書かれている。

 

「直斗くん、お乳が出るの?まさか・・・妊娠!?」

 

「へー、凄いじゃん。そっかー、それでおっきくなってんのかー」

 

「私、お乳を絞るのって大変だって聞いたよ。直斗どんな感じなの?」

 

女性陣が食いついて来た。

 

「妊娠なんてしてません!そ、その、一時的にホルモンバランスが崩れてるせいらしくて。乳の方はしばらく経てば自然と収まるらしいです」

 

必死に否定する直斗。

 

「そうか。残念だ。でも大丈夫だ。いずれ正式な手順を踏んで出るようにしてあげるから」

 

「せ、先輩!な、何を言ってるんですかっ(赤)」

 

いや本気だけど。

凄く美味しかったし。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 17:00>

 

結局お昼抜きになってしまった。

早めの夕飯を取ることにする。

みんなで行きつけの愛屋に入る。

 

「あたし、いつものやつ!」

 

千枝はおなじみの肉丼注文だ。

俺はどうしようか。

ん、あのメニューは新作か?

 

店内の目立つ位置に激辛麻婆豆腐というメニューが張り出されていた。

 

「あいかちゃん、この激辛麻婆豆腐っていつもの麻婆豆腐定食のとは違うのかい?」

 

「かなーり辛いよー。激、辛」

 

へー。

 

何でもマスター。

お盆休み中に冬木市という街へ修行に行ってきたらしい。

紅洲宴歳館・泰山という隠れ名店の名物料理だそうだ。

 

じゃあ俺はそれにしてみようかな。

 

雪子はきつねラーメン、りせはパーコー麺を注文。

 

「直斗はどうする?」

 

「じゃあ先輩と同じものを」

 

この選択、果たして吉と出るか凶と出るか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 17:15>

 

凶と出ました。

 

「おまち。激辛麻婆豆腐」

 

俺の目の前に配膳された麻婆豆腐はマグマのように真っ赤っか。

大量の唐辛子がぶち込まれただけのただの雑な料理に見えるが・・・。

ま、マスターがわざわざ遠方まで修行して習って来た料理だ。

意外と美味いのかもしれない。

 

パクリ。

 

「・・・ぐおおおおおおッ!?」

 

豆腐を口に入れた瞬間、舌が焼かれるような刺激に襲われる。

 

辛過ぎだって!

以前りせが作った激辛オムライスに匹敵する辛さだよっ。

コップの水をガブ飲みする。

 

「ぐっ、ごくごくごくごく。ぷはー。水お代わり!はぁっはぁっはぁっ」

 

「まいど。もう一皿おまち」

 

悶えて水を求める俺の横で直斗の前にも赤い溶岩が配膳される。

 

「これが麻婆豆腐ですか?」

 

その見た目と刺激臭に直斗もあっけに取られているようだ。

ええい、直斗も巻き添えにしてしまえ!

 

「はぁっはぁっ。直斗、お前に協力を頼みたい事件が、たった今見つかった」

 

「事件ですか?依頼ならば喜んで!」

 

麻婆豆腐そっちのけで直斗の目がキラリと光る。

 

「この激辛麻婆豆腐の全容を解明してくれ」

 

「・・・なんか先輩と一緒にいると調子が狂います。先輩と関わると全てが大事ですね。事件もこの麻婆豆腐も」

 

やれやれといった感じの直斗。

思わず反論してしまう。

 

「一口含めば口の中が大火事なんだぞ。大事じゃないかっ、はぁはぁ」

 

「ふむ。豆腐の間に浮かんでいるのは唐辛子。その横に唐辛子、唐辛子、唐辛子。これは一定の法則に基づくものなのでしょうか」

 

「ぐうっ、いいからまず食え」

 

「もうっわかりましたってば。パクリ。む、これは!?痛い。いや美味い。痛美味い!」

 

ま、マジでか!?

 

「病み付きになる味です!うおォン!」

 

直斗暴走。

 

平気な顔してパクパクと激辛麻婆を食い進める直斗。

その直斗の食いっぷりを呆れて見ていると、あいかちゃんが水を注ぎに来てくれた。

 

「ごくごくっ、ふぅー、ありがとう」

 

「それ、食べきれなかったら、ペナルティあーるよ」

 

は?

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 17:45>

 

罰則回避のために頑張って八割まで食べ進む。

しかしそこで限界点に到達。

レンゲを取り落としてカウンターに突っ伏す。

 

そのままあいかちゃんに腕を引かれ、店の裏手に誘導された。

 

「じゅぶじゅぶっ」

 

あまりの辛さにテンションが変になってたようだ。

 

<どぴゅぴゅー>

 

すぐに射出してしまう。

辛味成分の影響なのかペルソナ液の分泌量も凄いことに。

 

「ごふっ、ずるっずるずるっ」

 

あいかちゃんが目を瞑って無心に俺のペルソナ液を味わってる。

全部啜り終わってから一言。

 

「なんか辛い。ピリ辛?」

 

恐るべし泰山直伝激辛麻婆豆腐!

菜々子ちゃんには教えない方がいいだろうな!

 

 

 

<YU SIDE 2011年9月17日SAT 晴 19:00>

 

ペナルティ回避のために無駄な対抗したのがまずかったようだ。

マンションに戻った頃にはお腹がごろごろと鳴りだし、トイレに駆け込むことになる。

 

俺がトイレに入っている間、直斗を含んだ四人には捜査への協力準備を進めて貰っていた。

具体的にはシャワーを浴びて汗を落とし、ベッドルームで下着姿になっての5Pの準備である。

 

ん?

何か聞こえる。

 

<あの・・・これって何への協力ですか?>

 

<何のって当然捜査への協力でしょ>

 

<ご主人様が捜査に集中できるようにしっかり抜いておかないとね>

 

<悠先輩のー、日頃の疲れを癒してあげるっ!みたいな感じだってば>

 

このトイレ。

壁の向こうはベッドルームだ。

ここだけ防音が効いてないのか?

 

<ぼ、僕はあくまで捜査に協力したいだけで、こんなことまでは・・・>

 

<えー、何言ってんの?何でも協力するっていったじゃん>

 

<直斗くん、約束は守らなきゃダメよ>

 

<今更ばっくれるのは無しだからね、直斗>

 

壁に耳を充ててガールズトークの様子を伺う。

どうやら皆が一斉に服を脱ぎ出したことに直斗が戸惑っているようだ。

 

<・・・あの、皆さんは僕が参加することに文句はないんですか?>

 

<文句?なんで?あるわけないじゃん?逆に助かったーって感じだよ>

 

<うん。全然遠慮することないのよ。直斗くん。ご主人様は絶倫だもの>

 

<そーだよ直斗。一緒に楽しもー。あ、でも真ん中は譲らないからね>

 

千枝たちの壊れた倫理観が信じられないようだ。

常識人なら直斗と同じ反応を見せるだろう。

 

<やっぱり一人の男性をシェアするって行為って倫理的におかしいっていうかっ。日本は一夫一婦制ですし、当然悠先輩と結婚できるのは一人しかいないわけで・・・>

 

<まあ籍は入れれないけどさ。普通じゃあり得ない凄い性生活がおくれるわけだし。そこはトントンでしょ>

 

<純白のウェディングドレスとか憧れるけど、結婚式自体はいくらでも挙げられるもの。海外での挙式とかいいよね>

 

<うんうん。それにどうしても全員で一つの家族になりたいってなったら、養子縁組って手もあるよねー>

 

そうか。

海外での挙式という手があったか。

四人のウェディングドレス姿を想像して、ゴクリと生唾を飲み込む。

お金貯めないとなー。

 

<み、未婚の母になるかもしれないんですよ!>

 

<そんときは悠がしっかりサポートしてくれるだろうから。彼って責任はちゃんと取る人だし。そこはあんまり心配してないかなー>

 

<私も心配してない。ご主人様は高校卒業してからって言ってるけど、私はそれよりも早く子供が欲しいな。跡取りを産んでお母さん安心させたいし>

 

<私もー!実は芸能活動休止中にこっそり産んじゃうつもり!でさ、トップに返り咲いてから週刊誌で発覚するの。そういうのってスキャンダラスで燃える展開でしょー?>

 

なんか話が非常に怖い内容にシフトしてきたな。

 

・・・避妊には気をつけよう。

 

いずれ確実に孕ませる予定ではある。

だが、さすがに在学中はマズイだろう。

俺とてそれくらいの常識は心得ているつもりだ。

 

<赤ちゃんって言えばさー。直斗くんって今、おっぱい出るんだよね>

 

<そうそう!それ聞きたかった。おっぱいが溜まるってどんな感じ?吸われるときって気持ちいいの?>

 

<直斗のおっぱいのミルクの味、すっごい気になるー。えーい揉んじゃえ>

 

<や、やめてくださいっ、あっ、ダメっ、出ちゃうっ>

 

直斗のミルクと違い、こっちはもう何も出ないようだ。

ヒリヒリする尻の穴を拭いて、水を流してからトイレを出る。

 

そのまま卑猥な嬌声が漏れ聞こえるベッドルームに向かう。

ドアを開けると、中では直斗が三人に襲われ、おっぱいを散々にもみくちゃにされていた。

 

直斗の桃色吐息な様にマーラ様が自然と戦闘状態に移行した。

 

 

 

<SYSOP 2011年9月17日SAT 晴 --:-->

 

鳴上悠に自分の影の前で犯され、白鐘直斗がペルソナに目覚める機会が失われました。

白鐘直斗はマヨナカテレビに入らず、鳴上悠とセックス三昧の充実した高校生活を送ります。

白鐘直斗の双乳のサイズは僅かしか戻らず、発情すると乳が溜まる体質のまま生きていくことになります。

白鐘直斗は高校在学中に妊娠してアザディスタンに留学し、鳴上悠と結婚してアザディスタン国籍を得ます。

白鐘直斗は帰国後に白鐘探偵事務所の所長となり、子育てしながら事務所の経営を続ける傍ら、久慈川りせからの要請を受けてPVやグラビアでも大いに活躍していきます。

TV番組のコメンテーターを幾つも務めてメディアでの露出が増えていった結果、白鐘直斗は美人すぎる探偵所長として"なおっぱい"ブームを巻き起こします。

運命のアルカナが消滅しました。




シャドウ同士の戦いでの技名は"はじめの一歩"より。
紅洲宴歳館・泰山はFateシリーズから。


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第18章 正義

菜々子回ですが非ナナコンなのでわりとどうでもいい回です。
エロほとんど無しです。


<VELVET ROOM 2011年10月8日SAT 雨 --:-->

 

「さて主、さっそく試してみましょう」

 

白黒のバーテンダー姿のマーガレットが筒のようなものを取り出し、マーラ様にセットする。

 

「これは私の膣をモチーフとした新式のオナホ。それっ」

 

筒の中はヌルヌルな構造で、マーガレットがスイッチを入れると自動で顫動が開始される。

 

「次々に種を吐き出していくあなたのマーラ様。とても美しいわ。うふふっ」

 

筒の先端には穴があり、マーガレットの持つカクテルグラスにペルソナ液がぴゅっぴゅっと強制搾取されていく。

 

「私の膣に入り込めるのはこのマーラ様だけ」

 

顫動を続ける筒とカクテルグラスを支えながら、うっとりと溜まっていくペルソナ液を見つめるマーガレット。

 

「マーガレット畑に蒔かれる鳴上悠印の種。果たしてその品質は」

 

カクテルグラス一杯にペルソナ液が溜まり、マーガレットが電動オナホのスイッチを切る。

 

「いやだ。指にかかってしまったわ。ちゅるっ。ずずず」

 

溢れて指を伝ったペルソナ液を口で余さず吸った後、頬を染めて優雅にグラスに口を付け、杯を傾けていく。

 

「んっんっんっ。主は今、男としての受精力を試されているの。くちゅくちゅ」

 

いつの間にか鳴上悠専門のペルソナ液ソムリエの資格を取得していたマーガレットのテイスティング。

 

「んっ。おめでとうございます。合格ですわ」

 

杯が全て飲み干されてテイスティングが終了し、晴れて鳴上悠の種はマーガレットの卵への受精資格を得た。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月8日SAT 雨 19:30>

 

「んっモゴモゴ。ごっくん。次は千枝の番ね」

 

りせとのキスを解いた雪子。

りせに口移されたペルソナ液をコクリと嚥下した後、千枝と場所を変わる。

 

「うん、ありがとう雪子。んじゃりせちゃん、あたしにもちょっとちょーだい。んん」

 

千枝が次にりせとキス。

千枝もりせの口に溜まっている白濁したペルソナ液を吸い取り始める。

 

「ほら、直斗くんも」

 

雪子が直斗を押す。

 

「す、すみません」

 

「うふっ。朝と夜の一発目は皆で飲み回して頂くって約束したの、すっかり癖になっちゃったね」

 

うっとりと唇に手を当てる雪子。

色っぽい仕草だ。

 

「ぷはっ、おいしいー」

 

りせとのレズキスを俺に見せつけていた千枝がキスを解く。

二人の唇の間に銀色の唾液の糸が伸びる。

これまたとてもいやらしい光景だった。

 

「直斗くんも新鮮なうちにね」

 

「い、頂きます」

 

「んんー」

 

雪子に背を押された直斗が恐る恐るりせに唇を近づけていく。

相変わらずまだ慣れていない。

りせの方はわざと直斗からのキスを待っている。

 

「んんっ」

 

「んちゅ」

 

りせの口内に貯められた俺のペルソナ液がトロトロと直斗の口に流し込まれていくのがわかる。

直斗は真っ赤な顔をして口の中に溜まって行くペルソナ液を味わっていた。

 

先ほどりせの口に一発出したばかりだというのに、俺のマーラ様はまた臨戦態勢に移行し始める。

 

「ふふふっ。ご主人様、元気ー」

 

「固くなってきたっ。えへへ」

 

雪子が玉をコロコロと転がし、千枝が竿を優しく撫で摩る。

俺の股間に仲良く手を伸ばしている二人。

その瞳はこれからの始まる暴淫への期待で金色に蕩けていた。

 

さて今日は誰から抱こうかな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月8日SAT 雨 21:00>

 

「あああーーんっ」

 

ぶるんと乳房を揺らしてガクリと直斗が崩れ落ちる。

セックスも二周り目に突入。

次はりせの番だ。

 

「悠せんぱーい。次は後ろから犯して」

 

りせが腰を高く上げて俺を誘ってくる。

 

「ああ、どっちの穴にするんだ?」

 

「こっちぃ」

 

尻タブを自らの手で割開いて後ろ穴を曝してくるりせ。

よし、じゃあ次の一周はアナルでいこう!

 

<トゥルルルル>

 

アナルセックス用のローションを取り出してる最中にスマホが鳴る。

叔父さんからだった。

いいところだったのに・・・。

 

「ちょっとごめん。はい悠です」

 

<すまん悠!千里の陣痛が始まったみたいでな。間の悪いことについさっき轢き逃げ事件が発生して手が離せん。すまんがお前が千里に付き添ってやってくれんか!?>

 

「わかりました!すぐ行きます」

 

これは緊急事態だ!

セックスにかまけてる場合じゃない。

 

「ごめん皆。千里さん、産気づいてるらしい。今から出ないと。今日は恐らく帰れない」

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月9日SUN 曇 6:00>

 

千里さんに付き添って病院で夜を越す。

朝方、無事出産。

 

叔父さんはギリギリ間に合った。

二人で産声を聞く。

 

堂島家に待望の長男が誕生した瞬間である。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月9日SUN 曇 8:00>

 

徹夜明けでぼーっとしながら家路につく。

天城屋旅館でのバイトの時間まで少し仮眠を取るつもりだった。

 

鮫川の河川敷を歩いていると前方から八十神高校の男子生徒が向かってくる。

吹奏楽部だろうか。

大きな楽器ケースを担いでいる。

休日練習のため学校に向かっているようだ。

 

あ、危ないな。

その男子生徒、イヤホンで音楽を聞いているようで周囲に気を配っていないのが見て取れる。

よぼよぼのお爺さんの乗った自転車がヨタヨタと危なげな動きで彼の背後に迫っていた。

全く気が付いていない様子。

 

「おいっ!志村ーっ後ろーっ!!」

 

大声を上げて手を振り、背後への注意を喚起してやる。

いや、別にそいつが志村って名前ってわけではないのだが。

まあお約束だろう。

 

老人が突っ込んでいく。

 

「あわわわわわ」

 

<キキーッ、ガシャン>

 

ギリギリでその男子生徒は背後に迫っていた自転車に気付いてくれた。

咄嗟のところで自転車の横転に巻き込まれるのを避けるのに成功する。

 

「お爺さん、大丈夫ですか!?」

 

駆け寄り、倒れた老人を助け起こす。

 

「大丈夫じゃ大丈夫じゃ、若いもんにはまだまだ負けんぞい!」

 

幸いなことに怪我はないようだ。

 

「わりっ」

 

イヤホンを外してこちらに礼をしてくる生徒。

 

「いや、大きな事故にならなくて良かった」

 

その生徒、俺と同じ2年で飯田という名前らしい。

二人で老人を家まで送り届けてあげる。

 

道中、飯田君がトロンボーンを吹いていることを聞く。

別れ際に文化祭でコンサートがあるので是非聞きにきてくれと頼まれた。

 

そうか。

もう少しで文化祭か。

うちのクラスの出し物とかそろそろ決めないとな。

何か面白そうなことが出来ればいいが。

 

よしバイトが終わったらいろいろ考えてみよう。

 

 

 

<SYSOP 2011年10月9日SUN 曇 --:-->

 

鳴上悠の機転により八十神高校吹奏楽部員の飯田は怪我をしませんでした。

松永綾音に文化祭の吹奏楽部コンサートでのトロンボーン担当は回ってきません。

 

鳴上悠は文化祭で"ちょっとエッチなメイド喫茶"を出店するために動き出します。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月11日TUE 晴 7:00>

 

朝の食卓。

 

「えへへー。どこを舐めて欲しいの悠先輩ー。ぺろぺろ」

 

「はぁはぁ。遠慮せずに言って下さい先輩っ。れろれろ」

 

「ううっ。もっと亀頭の先端を。くぅっ、そうだっそれでいい」

 

寝起きに一発クワトロフェラで抜いてもらっていたのだが・・・。

居間でもう一度りせと直斗の下級生コンビに抜いて貰っていた。

朝食準備中の千枝と雪子の裸エプロン姿についつい勃起してしまい、それを見られてしまったからである。

 

「もうっ。後少しで出来上がるから抜くなら早くしてよね」

 

千枝がテーブルの上を片付けながら、ちらちらと二人のフェラの様子を伺いつつ文句を言ってくる。

どうやらフェラに混ざりたくて仕方がないようだ。

 

「あっ、千枝、なんか落ちたよ。これ写真?赤ちゃんと千里さんだわ。可愛いー」

 

朝食を運んで来た雪子がテーブルの下に落ちた写真を拾って手に取り、歓声を上げる。

 

「えー、どれどれ。ほんとだ。可愛いー。千里さんも奇麗」

 

千枝も写真を覗き込んで目をキラキラさせている。

 

その写真。

千里さんが産まれた男の子を初めてだっこしているシーンのものだった。

 

「ああそれ、くぅ、堂島さんに頼まれて、ううっ、現像した写真だ。んんん、後で届けないと」

 

ペロペロレロレロと一心不乱にマーラ様を舐めてくるりせと直斗の舌の動きに耐えつつ、写真の説明をする。

 

「こんな幸せそうな写真見ると、あたしも赤ちゃん欲しくなっちゃうなー」

 

「うん、そうだね。今すぐ欲しいよね。産みたいよね」

 

なんか千枝と雪子、不穏な会話を交わしているぞ。

二人のアイコンタクト。

そしておもむろに後ろを向いて裸の背中と尻をさらし、俺を誘惑し始めた。

 

「ねぇ悠~、子作りしょ~よ~。インモラルなファイトしよ~」

 

「ご主人様の種、ここに注いでほしいな~。絶対に許すから~」

 

「くうっ」

 

<どぴゅどぴゅ>

 

「「ああんっ」」

 

千枝と雪子のあまりの淫らさに耐えきれず射精。

りせと直斗の顔をペルソナ液でドロドロにしてしまう。

当然一発抜いただけでは納まりきらず、裸エプロンで受精したがってる二人に襲い掛かってしまう。

 

とっさのところでゴムを取り出せたのはまさに奇跡だった。

ふーぅ危ない危ない。

 

・・・学校は遅刻しそうになったけどな!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月11日TUE 晴 16:00>

 

テーブルに肘をついて千枝が深いため息をつく。

 

「ふー、神様は何でテストなんかお造りになったのでしょうか」

 

「もう千枝ったら。いいからさっさと始めましょ」

 

雪子が千枝のだらしなさに呆れている。

三日後には中間試験が始まる。

皆で俺のマンションに集まっての試験勉強の開始である。

つまり今日からお泊まり+セックスは禁止となる。

 

「悠、あたしソーダ飲みたい」

 

「自分で取って来いよ」

 

千枝はどうにもやる気が出ないようだ。

冷蔵庫の中にある飲み物を取りに行く気力さえも湧かない様子。

耳元に唇を寄せ、卑猥な声で囁いてきた。

 

「おねがーい。後で雪子の直伝のパイズリしてあげるからさー」

 

「・・・ちょっとそそられるけど、それって雪子に直接やってもらった方がよくないか?雪子の方が胸も大きいし」

 

「ばれたか。じゃあフェラも追加しちゃう!」

 

ちろりと舌を出してレロレロとエアフェラしてみせる千枝。

 

「先輩たち!菜々子ちゃんもいるんですからそういうことは・・・」

 

「そうよー。今夜からH禁止って皆で決めたじゃん!」

 

直斗とりせが非難の声を上げる。

 

そうだ。

この場は俺たちだけじゃない。

菜々子ちゃんもいるのだ。

 

千里さんはまだ産院に入院中。

叔父さんはこの前の轢き逃げ事件の犯人がまだ捕まっておらず、今日は帰れないらしい。

職場と産院の往復で精一杯で、菜々子ちゃんの面倒を見ている時間が取れないそうだ。

そのため今日明日は俺のマンションに菜々子ちゃんを預かることになっていた。

 

「???」

 

「えへへー、菜々子ちゃん何でもないからねー」

 

幸いなことに菜々子ちゃんには少し早過ぎたようだ。

苦笑いしてごまかす千枝。

 

「お兄ちゃんたち、頑張ってね。テストで一番になったら菜々子がプレゼントあげるね」

 

「楽しみにしてる」

 

純粋な菜々子ちゃんの笑顔が眩しい。

 

「よし、皆がんばろ!菜々子ちゃんは宿題頑張りましょ」

 

「うん!」

 

りせの号令に菜々子ちゃんは嬉しげに応える。

やっぱり一人で家にいるよりも賑やかな方がいいらしい。

 

「はーああー、こういうときばっかりは小学生の菜々子ちゃんが羨ましいよー」

 

「嘆いてないで、まずは余弦定理のところから始めよ」

 

再びの千枝のため息に雪子がつっこむ。

 

基本的に勉強の出来る雪子が千枝の、直斗がりせの面倒を見るスタンスだ。

俺は菜々子ちゃんの宿題と、雪子と直斗の手に余る部分を見てあげることにしていた。

 

平行して夕飯の準備も進める。

今日は菜々子ちゃんもいるのだ。

いつもより料理の腕のふるい甲斐があった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月11日TUE 晴 20:30>

 

夕飯はコロッケにした。

さくさくコロッケで皆から好評だった。

りせは大層気に入った様子。

料理人冥利に尽きる。

 

そして特別に辛いコロッケも用意してあげた。

一口食べた菜々子ちゃんが大喜びする。

味もヘッタクレもない辛味重視の赤いコロッケで、料理人冥利なんて全然無い一品だったのだが。

まぁ菜々子ちゃんがそれで喜ぶのなら仕方ない。

 

だが皆が引き上げて床に就く直前、菜々子ちゃんの体調に異変が訪れる。

叔父さんから電話があり応対している最中、菜々子ちゃんがお腹の痛みを訴えてきたのだ。

 

「なんかお腹痛い。チクチクする」

 

「菜々子ちゃん!?」

 

まさか俺が作った激辛コロッケが原因か!?

くっ、病院に連れて行かないと!

 

「すみません叔父さん。菜々子ちゃんがお腹が痛いと。今から病院に連れて行きます!」

 

<なんだって!?救急車!いや前にもあったな。すまん悠!菜々子と代わってくれ>

 

スマホの通話をスピーカーモードにする。

 

「はい、ほら菜々子ちゃん、お父さんだ」

 

「お父さん、お腹の下の方、痛い」

 

<菜々子!どんな痛みだ?前のときと同じか?お前また辛いもの食っただろ!>

 

「・・・ごめんなさい」

 

<まいったな。あのときの薬は確か・・・。なんだ足立!こんなときに!何ぃ!?市原さんからの封書じゃねぇか!忘れてただぁ?ふざけやがって!>

 

スピーカー越しに叔父さんの怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「・・・お父さん」

 

<すまん、今は帰れない。悠、家の救急箱の中に薬があるはずだ。頼む!>

 

ええー、それって親としてどうなん?

いくら警察の仕事は大事とはいえ、菜々子ちゃんは自分の娘だろ。

 

って、今はそれどころじゃない!

堂島邸に薬を取りに行かないと!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月11日TUE 晴 21:30>

 

家が一番近いりせを電話で呼び戻す。

りせに菜々子ちゃんの様子を見てもらっている間に堂島邸から薬を回収。

急いで菜々子ちゃんに薬を飲ませた。

 

「大丈夫?菜々子ちゃん」

 

「うん。ありがとう、りせちゃん」

 

大分落ち着いたようだ。

しかし夜中に痛みがぶり返してきそうで怖い。

 

さすがに俺が添い寝をするわけにはいかないので、りせには今夜泊まってもらうことにしていた。

 

「すまないな、急に」

 

「平気平気。いつものことじゃん。今のうちにお風呂頂いちゃうね」

 

りせがシャワーを浴びている間、菜々子と二人でテレビを見る。

ペンギンの親子が主人公のアニメが放送されていた。

 

「ねぇお兄ちゃん。お父さんは菜々子の本当のお父さんなの?」

 

親子で抱き合うペンギンたちを眺めながら菜々子ちゃんがぽつりと疑問を発する。

 

「もしかしたら菜々子、お父さんの本当の子供じゃないのかな」

 

これは厨二病発症の兆し!?

全ての厨二病は親を疑うことから始まると言っても過言ではない!

 

「ど、どうしてかな?」

 

「だってお父さんは菜々子より悪い人と弟の方が大事なんでしょ。今日も来てくれないし」

 

確かにあれは無いよなー。

尊敬出来る大人の親の態度じゃない。

 

ん?

 

「これは・・・」

 

テーブルに紙が一枚置かれている。

 

「あ、それ菜々子の」

 

手に取ってみると授業参観の希望日アンケートと書いてある。

夕方に菜々子ちゃんがランドセルから宿題を取り出したときに一緒にテーブルの上に出してしまったものらしい。

 

「今日ね。学校で配られた。お家の人に渡しなさいって。いつ来れるか書いてもらいなさいって。でもお父さんお仕事あるからきっと来れないよね。お母さんも・・・」

 

「わかった。明日俺から叔父さんに聞いてみるよ。千里さんから着替え届けて欲しいってお願いされてるから。そのときに」

 

「本当!?」

 

「ああ」

 

菜々子ちゃんの顔がパーっと輝く。

この笑顔、守りたい。

 

しかしなー。

叔父さんのあの様子だと説得するのは骨が折れそうだ。

腹くくって挑まないとな。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月12日WED 曇/雨 16:00>

 

放課後、菜々子ちゃんの面倒は雪子たちに任せて警察署に足を運ぶ。

千里さんに頼まれて叔父さんの着替えを持って行くためだ。

ついでに菜々子ちゃんの授業参観のアンケート用紙を持っていくことにする。

 

受付に場所を教えてもらい、叔父さんのデスクに赴くと足立さんがいた。

何かの資料を手に持っている。

 

「足立さん、こんにちわ」

 

「あれ悠君、どったの?」

 

「叔父さんはいますか?」

 

「ああ、堂島さんならトイレだよー。すぐ戻るんじゃないかな。そこで待ってて」

 

資料が山積みにになっているデスクを指差される。

あそこが叔父さんの席か。

 

「失礼しまーす」

 

うわっタバコの吸い殻多過ぎ!

 

「はぁー、でも堂島さんってさー。ほんとよくやるよねー。家でもあんな感じなのかなー」

 

「え?どういうことです?」

 

「連続殺人のホシが納得いかないって一人で調べてるんだよ。その上今度の轢き逃げ事件でしょー。いくら初動捜査の今が一番大事なときだっていっても、奥さん出産されたばかりなんだからさー。休めばいいのに。あ、おっと仕事仕事っと」

 

足立さんが愚痴を切り上げて足早に去って行く。

どうやら叔父さんが戻って来たらしい。

 

「おう、悠か」

 

「千里さんから頼まれていた着替えとかです」

 

「悪いな、わざわざ」

 

叔父さん、大分疲れているようだ。

 

「それとこれは菜々子ちゃんから」

 

「なんだ?」

 

「授業参観のアンケートだそうです。希望日を書いておいて欲しいって」

 

「・・・ああ、いつでもいい。後で書いておくから」

 

ちらっと眺めて内ポケットにアンケートを納める叔父さん。

上手く取り繕っているがおざなりな回答は明らかだった。

大人の欺瞞を強く感じる。

 

「今日も帰れないんですか?」

 

「ああ、多分な。菜々子の具合はどうだ?」

 

「もう元気になりました。でも・・・」

 

「何だ?」

 

「仕事が大変なのはわかります。しかし菜々子ちゃんが具合が悪いときぐらい側に居てあげてやった方が・・・」

 

「お前に何がわかる。子供が口出しするな!」

 

いきなりガオーッと獅子吼される。

どうやら虎の尾を踏んだようだ。

 

しかしこれが叔父さんのいつもの手だとわかっている。

今更ビビるほどこちらも柔ではない。

 

「いいえ言わせてもらいます!だいたい、ほんとにいつでもいいですか!?」

 

「なんだと?何の話だ!?」

 

「菜々子ちゃんの授業参観です。今いつでもいいって言ったでしょ!【きちんと答えて下さい!】」

 

「・・・まあいつだって行けそうにないからな。この忙しいときに希望日って言われてもな」

 

やっぱりだ!

 

汚い。

大人って汚い!

 

「菜々子ちゃんは初めての授業参観をとても楽しみにしていました。赤ちゃんがいるので千里さんが行けないのはわかります。でも、そんなときに父親が頑張らなくてどうするんです!」

 

「いきなりなんだ!?ガキが生意気な口を!これは俺の家の中の話だ!部外者のお前が口を挟むな!」

 

ふー。

一つため息が自然と溢れた。

結局それか。

 

まあ当然か。

俺は単なる親戚の一人であって、叔父さん、いや堂島さんにとってみれば所詮は他人ってことだ。

わかっていたことではあるが・・・。

家族と同じくらいの絆を堂島一家との間に結べなかった事実が無性に悲しい。

 

「わかりました。なら他人として忠告させて下さい。堂島さん。【仕事とプライベートで同時に重要な問題が起こったらプライベートを優先しなさい。仕事ではあなたの代わりはいる。でもプライベートであなたの代わりになる人はいない】」

 

とあるまとめサイト情報を開示。

 

「・・・なんだそれは?」

 

「あるビジネスマンが上司に言われた一言だそうです。その人は部下を持った時にはこの言葉を必ず自分も言おうと思ってるらしいですよ」

 

うん、俺もいつか言ってみたい。

惚れてまうやろ。

 

「・・・利いた風な口を」

 

「確かに伝聞です。でも心に染みる言葉なのは確かだ。そして堂島さんに尋ねたい。そんなに警察には仕事を任せられる人がいないんですかと!あなたの仲間はそんなに無能なのですかと!」

 

「ぐぅ」

 

「こんなに口を酸っぱくして言っても菜々子ちゃんときちんと向き合う気が無いなら、もうあなたには何も言いません!・・・ただ千里さんにはこのことを伝えておきますけど。さすがの千里さんでも怒るだろうな」

 

「ぐぐぅ」

 

「【そのアンケート、ちゃんと参観可能な日付を書いて菜々子ちゃんに直接渡して下さい】」

 

踵を返す。

 

「では失礼します」

 

立ち尽くしている堂島さんを置いて撤収。

 

<<おおーっ!パチパチパチ>>

 

何故か堂島さんの同僚の皆さんが拍手で見送ってくれた。

足立さんなんか「よく言ってくれたねーっ」って大喜びである。

ほら、ちゃんと仕事を任せられる同僚が沢山いるじゃないですか、堂島さん。

 

でも足立さんの様子を見るとイマイチ不安だな。

もう一つ手を打っておくか。

 

「足立さん、ちょっと聞きたいことがあるんですが」

 

「え、なになに?何でも聞いてよー」

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月13日THU 晴/曇 12:40>

 

お昼。

八十神高校屋上。

 

「五日前に鮫川付近で起きた事故なんだけど、調べられるか?」

 

警察でも解決が難しい事件。

こういうときこそ美少女探偵直斗の出番だ。

 

「ちょっと待って下さい。新聞を探してみます。あ、これですね」

 

直斗が事件の記事をスマホで検索する。

 

「稲羽市で起きた轢き逃げ事件。被害者は市内に住む主婦。この記事では警察が捜査中となっていますが、目撃情報もほとんどないようです。解決まで長引きそうですね」

 

「堂島さん、この事件の捜査で今忙しいの?」

 

「ひどいよねこういうの。あたし絶対許せない!」

 

「逃げ得とかありえないし!」

 

直斗の読み上げた記事に、雪子・千枝・りせがそれぞれ声を上げる。

 

「例の道路交通監視システムは?」

 

「当然警察もチェックしているはずです。でもそれでも行方を追えていないということは、システムのカメラが設置されていない道が逃走に使われたことになりますね」

 

うーん。

なかなか難しそうだな。

 

「足立さんから聞いた話だと、轢き逃げした車は白のセダンでおそらくはでかいアメ車。でもこの街にそんな車はないらしい。修理も廃車も該当する車はなかったそうだ」

 

「・・・変ですね。そんな目立つ車なら付近で撮影されてたり、目撃情報が有ってもよさそうなのに」

 

スマホで地図を見ながら考えてみる。

 

「そうだな。カメラに写らないように幹線道路を使わずに稲羽市に乗り入れたなら、この山道を使った可能性が高い。でもこの道は事件後すぐに検問が敷かれたらしい。山を越えた先の隣町での目撃情報も無いそうだ」

 

「つまりまだ車は稲羽市のどこかにいると?」

 

状況を整理しよう。

これまでの推測から以下の点が浮かび上がってきた。

 

・つい最近山道を使って隣町から稲羽市へやってきた市外の人間。

・稲羽市へ来るのに白いアメ車の大型セダンを初めて使った市外の人間。

・監視システムのカメラの位置を知り得る市外の人間。

・現場付近の道路情報に精通している市外の人間。

・アメ車を隠せる場所を持つ、知ってる市外の人間。

・レンタカーなど借りずとも替えの脚をすぐに用意できる市外の人間。

 

不自然すぎる。

 

「・・・稲羽市に別荘とか、別宅とかを持ってる地位の高い人間とかかな?それも隠密で移動したがっている」

 

「その可能性、ありますね」

 

どうやら直斗が東京でお世話になっているという警察の御偉いさんの力が必要な案件のようだ。

 

10月24日~26日のいずれかに予定されている菜々子ちゃんの学校の授業参観日までには間に合わないかもしれないが、一応直斗を通して依頼を出してみることにする。

 

それが後に日本の政界を揺るがす大事件に発展することになるとは、このときまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月20日THU 雨/曇 17:00>

 

中間試験が終わった。

いつも通りの出来である。

 

すでに千里さんと赤ちゃんは無事退院している。

放課後皆で花束とケーキを持って堂島邸を尋ねてみた。

さっそく千枝たち四人は赤ちゃんに夢中になってる。

 

「「「「かわいい!」」」」

 

ほっぺたぷにぷにー!とか。

おててちっちゃーい!とか。

だっこしたい!とか。

ボクも産んでみたいです!とか。

 

非常に姦しい。

 

試験期間が終わってついに今日からセックス解禁だ。

相手は母性本能を大いに刺激された四人である。

今夜は大変なことになりそうだ。

まぁ望むところではあるが。

 

四人のお姉さんたちが弟に群がる姿を菜々子ちゃんがニコニコと笑って見守っている。

 

「あ、お兄ちゃん!あのね。お父さん来週の授業参観来てくれるの!」

 

「良かったな。菜々子ちゃん」

 

頭を撫でてあげる。

ふと視界の隅に今まで無かった写真があることに気付く。

 

「写真が増えてるな」

 

「うん!それお母さんたちが退院した日に撮ったの!」

 

家族団らんの写真。

去年鮫川河川敷で撮ったという三人での写真の隣に、赤ちゃんが加わった四人の新しい家族写真が立てられていた。

みんなとても幸せそうな表情を浮かべている。

 

堂島さん、二児の父親になってようやく自覚が出て来たか。

あのとき随分きついことを言ってしまったが、言って良かった。

もう菜々子ちゃんは大丈夫だな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月20日THU 雨/曇 20:00>

 

堂島邸で夕飯を頂いてからマンションに戻る。

1Fのエントランスでポストをチェック。

 

ちらしの中に封書が一通入っていた。

切手も宛先も無い封書。

表書きは"鳴上悠様"とだけ。

もちろん差出人の記載も無い。

 

封を開いてみる。

中には一枚の便せんが。

 

「へぇ・・・」

 

思わず笑みが溢れる。

 

便箋にはたった一行だけ印字されていた。

 

"コレイジョウタスケルナ"、と。

 

 

 

 

<SYSOP 2011年10月20日THU 雨/曇 --:-->

 

堂島菜々子は堂島遼太郎・千里夫妻ともに充実した日々を送り、鳴上悠との絆を必要としなくなります。

堂島菜々子からの鳴上悠へのプロポーズは失われました。

正義のアルカナが消滅しました。




思わせぶりな記述になってますが、ひき逃げ事件は今後一切物語に関わってきません。
あと菜々子の弟も。


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第19章 太陽

メイドはかなり昔に閉店した神田小川町のショコ◯ッテのメイド服をイメージ。
直斗の水着姿は"ペルソナ×探偵NAOTO"の冒頭のグラビア撮影時のバージョン。


<VELVET ROOM 2011年10月29日SAT 晴 --:-->

 

ベルベットルームにはマーガレットの姿はなかった。

 

ベッドのサイドテーブルには出張中と書かれた立て札が置いている。

 

その脇にマーガレットの署名の入った一枚のメッセージカードが。

 

"待望の排卵日です。お待たせ致しました。マーガレット"

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 14:30>

 

「えー。というわけで、うちのクラスの文化祭の出し物は"ちょっとエッチ風なメイド喫茶"に決まりました」

 

クラス委員長が高らかに宣言する。

 

よし。

圧倒的な得票数だ。

企画提案書作戦が成功したな。

競合していたどっかのバカが提案した"合コン喫茶"には一票しか入ってない。

 

「いやいやいや、あり得ないだろ!文化祭だろ。嬉しいけどさ!法律的にまずいって!何?誰のアイデアよ?」

 

うるさいな花村。

"合コン喫茶"ってやっぱりお前か。

 

「いやー、このメイド服凄い可愛くてさー。悠に凄い似合ってるって褒められて。テへへ」

 

「うえ?里中、お前票入れたの!?」

 

お前寝てて投票前に配った企画提案書読んでないだろ・・・。

せっかく千枝の可憐なメイド姿の写真まで載せてあるのに。

 

「私、いっつも和服でお客さんの相手してたから、メイドの格好で仕事するのにちょっとだけ興味があったっていうか。それにメイド喫茶ならご主人様って教室で呼んでも自然だし」

 

「天城もーーっ!?」

 

花村以外の生徒たちは全員この結果に納得してるようだ。

 

「実は俺もメイド好きなんだよねー」

「ネタ的には最近定番じゃん」

「あたしもこのメイド服きてみたーい」

「この企画提案書読んだら入れないわけには」

「売り上げで盛大にパーティーしようぜ」

 

呆然としている花村。

 

「なんなんだ?このクラス・・・」

 

何言ってんだ花村。

お前だってそういうの大好きなくせに。

 

さてそろそろいいかな。

じゃあ事前の打ち合わせどおりに。

 

こちらの様子を伺っていたクラス委員長に対して頷いてやる。

 

「じゃあメイド喫茶をやるにあたって店長を決めたいと思います。この企画提案書を作ってきてくれた鳴上君が適任だと思うんだけど、賛成なら拍手願います」

 

<<<わーーーぱちぱちぱちぱち>>>

 

「鳴上、提案したのお前かよ!?」

 

見ると花村以外の全員が拍手してくれていた。

皆、企画提案書の執筆者である俺の熱意をわかってくれていたようだ。

 

心が伝わるように手書きした甲斐があった。

ありがとう、みんな!

 

「じゃあ鳴上君、後はよろしく」

 

クラス委員長からの登壇要請。

快く答える。

 

「ただいま店長を拝命した鳴上悠です。店を一つの国と例えれば、店長とは言うなれば店の王様。利益という勝利を掴むためには国民である皆が王の下で一致団結して戦いに挑まなければならない!【賛同してくれた皆は、俺を王様だと思って俺の指示に従ってくれ!】」

 

「「「おうっ!」」」

 

「よし、じゃあさっき配った企画提案書をもう一回見てくれ。いいかお前たち。メイド喫茶というものはだな・・・」

 

予算、損益分岐点、席数、メニュー構成、売り上げ予測、人員配置、衣装、サーブの仕方、内装と事細かく説明していく。

 

奇麗なメイドで客を引き、原価のカスいメニューで利益をガッツリ頂く。

それが清く正しいメイド喫茶スタイル。

俺の目指すメイド喫茶である。

 

メニューのドリンクは格安茶葉の紅茶一択。

フードも調理が簡単なハニトーもどきオンリー。

レンタル代もバカにならないので皿とコップは百均統一。

売りは正しくメイドのクオリティーのみ、だ。

 

メイドのクオリティー。

それはつまりメイド服とメイド服の中身。

 

メイド服の方は俺のポケットマネーを原資にして既に入手済みだ。

メイドブームも今は昔。

最近は多くの店が閉店の憂き目にあっている。

そしてメイド喫茶の発祥の地とも言える秋葉原でついこの間メイド喫茶のまた一件が店を畳んだ。

その店のメイド服をネット経由で安価に入手。

それをベースにノーギャラで手直ししてもらった。

一年の服飾がやたら上手い巽完二君に頼み込んだのだ。

 

ミニのフレンチメイド服で胸元はアンミラ仕様。

勿論黒のニーソックスで絶対領域完備である。

胸元と太ももがいい感じに強調されており、ちょっとエッチ風という名目は嘘ではないだろう。

このメイド服ならばたとえ中身が並の容姿でもワンランク上の女子に錯覚させることが十分に可能だ。

ポスター撮影向けのノースリーブ夏服バージョンは四着完成済みで、雪子と千枝たちに着せて写真撮影も完了している。

もちろん撮影者は俺だ。

彼女たちの魅力が伝わるよう思いっきり念を込めて最高の一枚をおのおの撮ってある。

 

次にメイド服の中身の方だが。

雪子と千枝だけでなく、並以上の容姿の子たちにメイドをお願いすることになる。

前述のメイド服であれば容姿が並の子でも十分に魅力的に見えるはずだ。

ただしメイドの中身で重要なのは容姿だけではない。

服が良いだけにむしろサーブの質、客への思いやりの方がより重要になってくる。

 

雪子と千枝は天城屋旅館の接客で鍛えられている。

彼女たち以外の女子生徒向けに、出来るだけ優雅さを意識することに集中しやすい環境を作る必要があった。

そのためにサーブのオペレーションを簡略化する。

オーダーを取るメイド、フードを運ぶメイド、カップとソーサを運ぶメイド、ポッドでお茶を注ぐメイド、食器を片付けるメイド。会計するメイド。

六人体制の完全分業制だ。

そして雪子と千枝の二人をメイド長に任命し、メイドたちをサポートさせるのだ。

 

雪子と千枝。

この二年二組の美人ツートップが勝敗を握ると言っても過言ではない。

ポスターや呼び込み等の露出はもちろん、利益率を上げるためのパンダ役にもなってもらう。

 

飲食店の客の回転率は売り上げに直結する大事なパラメータである。

しかし喫茶店の場合、お茶と駄弁りを楽しむ場所という性質上ラーメン屋並みの回転率はとても望めない。

そこで時間制での課金システムをぶっ込む。

"15分単位の時間制でお茶は飲み放題。フードを注文すれば好きなメイドと一枚だけ写真撮影OK"

これなら確実に雪子と千枝目当てでクソ高いフードが飛ぶように出てくれるだろう。

 

ちなみにフードのハニトーもどきだが。

厚めの食パンをトースターで焼いてバター塗って四つ切り。

フルーツ散らしてアイス乗っけてシナモンパウダー振ってはい完成。

5分もあれば提供可能な一品である。

トースターはみんなで持ち寄る予定。

 

もちろん飲食店をやる上で裏方も大事だ。

メイドになれなかった娘たちには裏方の調理をお願いする。

俺手ずからお茶の入れ方とハニトーもどきの作り方を指導することを約束し、ご機嫌を取るのも忘れない。

男子にも設営、ポスター張り、呼び込み、影働きと動いてもらうことがいっぱいある。

 

文化祭当日、俺は店長として店内に控え、まさに王のように部下たちを監督することになるだろう。

 

 

 

<SYSOP 2011年10月26日WED 晴 --:-->

 

鳴上悠の神言が宿った手書きの企画書により、花村以外のクラスメイトは全て洗脳されました。

鳴上悠は二年二組の王になりました。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 15:00>

 

「つまり、メイドとは奉仕の心なのだ!」

 

「・・・わかった。もうわかったってばよ、悠・・・」

 

花村の声が聞こえた気がする。

 

おや?

気がつけば30分以上捲し立ててしまっていたようだ。

 

「よし。じゃあ雪子と千枝はあっちの方も頑張ってくれ」

 

「「うん!」」

 

「あん?あっちって何だ?」

 

そろそろ張り出されてる頃だな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 15:20>

 

一階の下足棚の向かいにある掲示板に人だかりが出来ている。

 

「レベル高過ぎじゃね?今年のミスコン!」

「くぅー悩むなー。つーかお前誰押しよ?」

「凄いよねーミスコンに出るとか。勇気あるー。住む世界違うって感じー」

「どんだけ自分の顔とスタイルに自信があるんだろうねー。羨ましーなー」

 

出来上がったばかりのミス八高コンテストのポスターが張り出されていた。

それも四種類。

 

ミスコン優勝候補者の四人をそれぞれメインにしたポスターである。

久慈川りせ、里中千枝、天城雪子、白鐘直斗が思い思いのポーズを取って己の魅力をアピールしている。

共通しているのは全て俺が撮った写真であり、皆メイド服だということ。

 

そう。

二年二組がメイド喫茶で披露する予定の衣装であった。

 

ミス八高コンテストは生徒会主催で行われる毎年恒例のイベントである。

俺は二年二組でメイド喫茶をやると決めてから、企画提案書を二つ作り生徒会へも売り込みを行っていた。

生徒会も「八十高きっての美少女四人が全員参加してくれるなんて!」と喜んで俺の提案を受け入れてくれた。

その時点でミスコンへの申し込みは柏木典子と大谷花子の二名のみ。

生徒会も中止にすべきか否かで大変苦慮していたらしい。

俺の提案は正しく渡りに船だったようだ。

 

メイド服姿の写真もその被写体のクオリティーの高さによりあっさり受け入れてくれた。

そしてこの四種のポスターが出来上がったというわけである。

 

ちなみに当初はメイン以外の立候補者の顔写真をポスター内に配置するというレイアウトだったのだが。

立候補者に柏木と大谷がいると知ってそこは断念。

立候補者情報は文字リストで掲載するに留めた。

 

これが逆に吉と出たようだ。

シンプルな構図となってメインの四名のスタイルの良さとメイド服の可憐さが全面に押し出された。

これによりポスターとしてのインパクト度が激増したのである。

 

この四種のポスター、二年二組の男子生徒の野郎どもを動員して稲羽市中に張りまくる予定である。

 

「ちょっと恥ずかしいね、あはは」

 

「うん・・・ご主人様のためとはいえ、これはちょっと(赤)」

 

何を言うか千枝、雪子。

もっとその魅力的な胸を張るがいい!

 

これでミスコン目当てで文化祭に来た部外者は皆、必然的にうちのメイド喫茶に脚を運ぶことになるであろう。

 

元アイドルと美少女探偵もポスターでメイド姿を披露しているがうちの喫茶店で働くとはどこにも書いてない。

メイド喫茶で彼女たちにも会えると考えるのは客の勝手だ。

断じて騙してるわけではない。

 

ふふふ、完璧だ!

 

 

 

<SYSOP 2011年10月26日WED 晴 --:-->

 

鳴上悠の神言が宿ったミス八校ポスターが稲羽市の街中に張られます。

ポスターを見た男子は煩悩を刺激され、モデルの四人への興味を募らせます。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 15:30>

 

りせと直斗の二人とも合流して屋上。

花村もいた。

 

「鳴上。お前が書いたのか、ミスコンの応募」

 

「ああ。学校中で前からかなりの人気だった雪子、最近注目されつつある千枝、その上アイドルに美少女探偵。こんな注目ヒロインが全員不参加のミスコンなんて、あり得ないだろ」

 

「んなこと言って、自分の女を皆に見せつけてーだけだろ」

 

おや、ばれていたか。

 

「花村、早紀先輩は出さないのか?」

 

「へっ。はっきり言ってよ。露出を楽しむ段階なんてとっくに過ぎちまってんだよ俺たちは。ぬる過ぎだっつーの」

 

なんか花村、黄昏れてる。

すっかり汚れちまったな。

 

「じゃあ、花村先輩はアタシたちの内、誰が勝つと思う?」

 

りせが花村に尋ねる。

 

「んー、ミスコンの審査内容見たけど水着審査にアピールタイムの二つだろ。やっぱ最後のアピールが明暗をわけんじゃね?」

 

「アピールですか。困りましたね」

 

花村の答えを受けて悩む直斗。

 

「直斗クン、名探偵でしょ。そこは推理力働かせないとー」

 

茶化す千枝。

 

「た、探偵関係ありますか?そういう千枝先輩は何をアピールされるんです?」

 

「あたし?あたしは最近ハマってる朗読かな。えっへっへ。やっと人前で聞かせられるレベルになったかなって」

 

千枝が照れながらカバーの掛かった小説を取り出してきた。

意外性で勝負のようだ。

 

「勝つためには私も本気出さないとダメそうだね」

 

扇子を取り出しパシリと構えを取る雪子。

幼い頃から習っていたという日舞で勝負するようだ。

 

「優勝したら先輩がご褒美くれるっていうし、久しぶりに頑張っちゃおうかな!」

 

とか言いつつ、りせの目は往年のアイドルの頃のギラギラした輝きを取り戻している。

こちらもかなりの本気仕様のようだ。

 

「なぁ鳴上、お前この四人にどんなご褒美を約束したんだ?」

 

そこは察してくれ花村。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 16:15>

 

何故かサッカー部の練習に参加することになった。

一条の強引さに負けた結果である。

 

「すまんな。文化祭の準備とかで欠席者が多くてな。いいだろ偶には」

 

一条の友人の長・・・田?君が礼を言ってくる。

彼が一条に頼んで人を集めていたようだ。

 

しかし文化祭の準備で忙しいとは言うがギャラリーの数が凄い。

 

「きゃー、一条くんよーっ、きゃー」

「一条君、がんばってー」

 

一条、凄い人気だ。

 

さもありなん。

先月中国で行われたバスケのアジア杯。

一条の活躍によって日本が見事優勝。

大会MVPまで獲得し、一条はまさに日本のニューヒーローである。

 

「うちのクラスの出し物がだりーよ。何だよ演劇って。しかもなんで俺が主役なんだよっ」

 

溜まった鬱憤をサッカーボールにぶつけて発散している一条。

 

「そう言うな、ハム」

 

長田君が一条を宥めつつ俺にパス。

ハムってなんなんだ?

あ、シュート打てそう。

 

「くらえっイーグルショット!」

 

<ズサッ>

 

キーパー森埼君だからとれなーい!

地を這うシュートが相手ゴール左隅に見事に決まる。

 

<ピッピーッ>

 

よし先制点ゲット!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月26日WED 晴 17:30>

 

夕暮れに染まる河川敷。

臨時のサッカー部での活動を終え一人家路に着く。

 

女性陣はみんなミスコンの準備に忙しく先に帰宅している。

まったりと歩いていると楽器の音が聞こえて来た。

トロンボーンの音が二つ?

 

<<ぱぷー>>

 

上手い演奏と下手な演奏。

技量差が激しい。

どうやら個人レッスン中のようだ。

 

あれは・・・。

前にこの河川敷で出会った飯田君じゃないか。

もう一人は小柄な八十稲羽の女学生だ。

 

ほほう。

つまりデート兼個人レッスンというわけか。

ラブラブだな。

声をかけるのは野暮だろう。

 

<<ぷぷぷぷーぷぷぷ、ぷーぷーぷー>>

 

二人の演奏に耳を傾けながら通り過ぎる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月28日FRI 曇 16:00>

 

文化祭前日。

このクソ忙しい中、何故か生徒指導室に呼び出されていた。

目の前には担任の柏木典子。

 

「鳴上君、うちのクラスの出し物についてクレームが入ってるの」

 

「はぁ」

 

「あなた、メイドの格好した女生徒たちに客をご主人様と呼ぶように指導してたそうじゃない」

 

ええメイド喫茶ですから。

 

「それにこの衣装。まー破廉恥だこと。先生こんなことになってるなんて知らなかったわー」

 

興味が無いって最初っから最後まで丸投げしてたのオマエだろ。

 

「いいこと鳴上君。あくまで学校は喫茶店だから出店を許してるの。お客をご主人様と呼ぶことはダメです。でもまあ衣装の方は、アタシがなんとかしてやれないこともないわね」

 

「・・・で、どんな条件なんです?」

 

「おほほっ。話が早くて助かるわーっ。鳴上君。あなたこれに出なさい!」

 

ばばっと机の上にポスターを展開する柏木。

ミスターコンテスト?

確か今年は応募者ゼロで取り止めになったはず。

どうしてこれが?

 

「おほほっ。ミスコンは開催するんですもの。男女同権の今のご時世、男のコンテストもしないと差別よねぇー。先生が生徒会に乗り込んで開催するようにわざわざ調整したのよ。出席者まで手配して」

 

すでにポスターには幾人かの顔写真が掲載されている。

そのうちの一人が俺だった。

参加者は他に三人いて、一年の巽完二に同じクラスの花村陽介。

そしてもう一人は顔が伏せられている。

ただスペシャルゲストとだけ記載されていた。

 

「あなた以外の全員は快く参加を承諾してくれたわ。あとは鳴上君、あなただけ」

 

柏木は勝ち誇った笑みを浮かべている。

 

くぅ。

ここで断れば我がクラスのメイド喫茶はただの喫茶店になってしまうだろう。

泣く泣く俺は柏木の軍門に下る。

 

くそう、許すまじ柏木典子!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月28日FRI 曇 16:30>

 

「どうしたの先輩?」

 

生徒指導室からヨロヨロと退室したところをりせに見つかってしまった。

りせに事の顛末を説明する。

 

「えー、先輩もコンテスト参加するの?」

 

「ああ、不本意ながらな」

 

「腐らない腐らない。これで皆で楽しめるじゃん!任せて。先輩はあたしたち全員でフォローするから」

 

にこにこと笑いながら気分を盛り上げようとしてくれるりせ。

その優しい心遣いが身に染みる。

 

そうだな。

出るからにはトップを目指さないと!

 

「よろしく頼む。ダンス審査もあるらしい。今日中に振り付け覚えなきゃいけないんだ。手伝ってくれ」

 

「りょーかい。ダンスなら得意だもんっ。えへへ」

 

今夜のダンス練習についてりせと打ち合わせつつ、階段を降りる。

 

「今年のミスコン、りせちー出るんだよなー」

「ポスターも気合い入ってるなー。メイドのりせちー、かわいー」

「りせちー以外の三人もそそるよなっ。下手なアイドルに余裕で勝ってるぜ」

「生徒会の奴ら、ポスター街に張りまくって稲羽市の人間全員集めるつもりらしいぜ」

「まじかよっ、すげー」

 

掲示板の前で男子生徒たちが盛り上がってる。

熱気がこっちまで伝わってくる。

この分だと明日は人が沢山押し寄せてきそうだな。

 

「悠先輩の撮った写真すっごい評判だよ。プロみたいっていうか、プロ以上の味があるの。当日いっぱい人が来ちゃいそう」

 

そうか。

ふっ、まあ当然だ。

自分の才能が怖いくらいだ。

 

「ああそうだった。先輩。公正を期すためにミスターコンテストの会場は女性だけが入場可能になるらしいよ。それでミスコンはその逆みたい」

 

「へー、そうなのか」

 

出来るだけ多くの人が見たいコンテストを見れるようにするための措置だそうだ。

当日の入場者数が想定よりも大幅に増えそうなことを受けての変更らしい。

 

「これでやることは大分シンプルになっちゃったね。明後日はアイドルの頃の私全開にして男子たちに媚び売りまくってトップ取るつもり。先輩も女の子に目一杯色目使えば余裕で勝てるよ。でーもっ。そう簡単に浮気は許さないんだからねっ」

 

「ははっ、わかってる」

 

さぁ時間がない。

コンテストのことは一旦脇に置いて、教室に戻ってメイド喫茶の最終の仕込みを行わないと!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 11:00>

 

八十神高校学園祭一日目。

 

「メイド喫茶やってまーす。押さないで下さいねー」

 

廊下から入店待ちの行列を整理している雪子の声が聞こえる。

開店早々から俺たちのメイド喫茶はもの凄い繁盛っぷりだった。

服飾好き、可愛いもの好きの女子もメイドに釣られてきて結構来ている。

ただやはり男子連中が客の大半を占めている。

 

既にあまりに人が集まりすぎて延長時間は15分までで制限している状況。

 

「ご主人様ー。お客様二名、ご案内です」

 

雪子が客を案内してくる。

 

「「「いらっしゃいませ、お客様」」」

 

接客中のメイドたちが礼儀作法を守って優雅に一礼。

オーダーを取るメイドが案内を引き継いで席に案内していく。

 

「ご主人様、こちらのお客様、雪子嬢とのーショットをご所望でーす。代わりに外に出てきますねー」

 

千枝が雪子と交代で呼び込み兼列整理に出ていく。

 

柏木の横やりにより、客をご主人様と呼ぶことは出来なくなった。

その代わりなぜか店長の俺がメイドたちからご主人様と呼ばれることに。

最初雪子が言い出したのだが、今では千枝を含めたメイド全員である。

 

さすがにまずいだろと思ったのだが「店長はこの店の王様だから」という雪子の言に皆が賛同。

結局そのままとなってしまった。

 

つまりこのメイド喫茶は鳴上王のメイド喫茶になってしまったわけだ。

ハッハッハ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 12:00>

 

順調に客が回転している。

 

こういう店に来る客は粘着化することが多いのだが、さすがに田舎。

都会と違ってすれてない。

皆行儀よくメイド喫茶を楽しんでいる。

わざわざメイド喫茶の楽しみ方を大書した甲斐があったというもの。

 

教室の壁とメニューの1ページ目には俺が心を込めて記した五か条が張ってあった。

 

一つ、無闇にメイドに話しかけてはならない。

一つ、貴族になったつもりで上品に飲食せよ。

一つ、恥ずかしがらずにメイドを目で愛でろ。

一つ、好みのメイドを見つけたら一途に応援。

一つ、店の外で客が並んでいたら空気を読め。

 

席に座った客たちはメイドからこの五か条に目を通すようにお願いされる。

メイド喫茶に慣れてない来客たちは皆食い入るように五か条を読んでから注文を開始する。

 

今のところ全ての客がこちらの想定通りの反応を見せている。

 

「お、おい、ここのメイドたち全員ノーブラだって噂本当かな」

「ゴクリ。おい見ろよっ。揺れてるぜ。絶対そうだって」

 

男子生徒の客のヒソヒソ話が耳に入ってくる。

よく見ると店内の客のほとんどの視線がメイドたちの胸元に集中しているのがわかる。

 

カツカツとヒールの靴音を響かせてサーブするメイドたち。

黒い布地一枚に包まれている乳房はアンダーバストまでの白エプロンでより強調されており、並のサイズでも揺れが目立つ。

この中で一番大きい雪子の場合、歩くたびにポヨポヨと揺れていた。

 

これが"ちょっとエッチ風なメイド喫茶"の真の売りである。

 

前日からうちのクラスの男子生徒たちにノーブラの噂を校内に散布していた。

全て俺の指示であり、その策が想定通りの働きを見せ始めている。

もちろんメイドの皆にはノーブラかどうか直接聞かれても答えを濁すよう言い含めており、抜かりは無い。

 

やはりこういうのはそこはかとなく匂わせるだけの方が余計に男子の想像力を掻き立てるのだ。

チラリズムの一種である。

 

「ご主人様ー、ハニトー用のパンとアイス、もう切れそうです」

 

早いな!?

予想以上の注文率だ。

 

でも大丈夫。

そこも抜かりは無い。

ちゃんと出前は頼んである。

 

「まいどー」

 

ちょうど到着したようだ。

メイド姿のあいかちゃんも可愛いな。

岡持ちを持ってコツコツと歩く都度、直斗級の大きさを誇るその胸が揺れる。

 

最近のあいかちゃんはハッとするくらい綺麗になった。

そして今、きっちり化粧を施しておめかししているメイドのあいかちゃんからは匂い立つような色気が感じられる。

躰のラインを強調するメイド服によってその胸元や腰回りの充実振りが露骨にアピールされていた。

 

俺のペルソナ液をいつも大量に摂取しているせいだろうか。

であれば、こんなに嬉しいことはない。

 

学園祭中の出前を予約するにあたってあいかちゃんと取り交わした契約は二点。

店内のメイドたちと同じ服をあいかちゃん向けに用意することとお定まりのフェラである。

 

「じゃあちょっとだけ休憩で外すので調理よろしく。行こうかあいかちゃん」

 

「ご主人様まいどありー」

 

隣のクラス、更衣室になってて今は誰も使ってない。

メイドのあいかちゃんにご主人様の濃いのをたっぷり飲ませてやるとしよう。

 

そして三指着いてかしずいたメイドのあいかちゃんにマーラ様をしゃぶられる俺。

こっちもくせになりそうだ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 14:00>

 

遅い昼食であったが昼休みをもらって一旦店を抜ける。

体育館に寄ったら二年一組が劇をやっていた。

"ロミオとジュリエットとハムレット"という劇らしい。

凄い人手なので興味を惹かれて入ってみる。

 

「ロミオなのかジュリエットなのか、それが問題だ!」

 

<<<キャーキャー>>>

 

一条がハムレットを熱演してた。

ああ、だからハムか。

日本バスケ界のニューヒーローが主演ということで注目が集まっていたようだ。

もう一条はバスケ知らない女子にも人気が出ていて、ほとんどアイドル化してるからな。

黄色い声援が凄い。

 

「ああハムレット様!なぜあなたはハムレット様なの?」

 

お、ジュリエットはエビが演じているのか。

熱演だなー。

 

あ、劇の落ちが読めたぞ。

多分ハムレットとジュリエットがくっついて終わるな。

じゃなきゃエビが承知するはずないもの。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 14:20>

 

劇を最後まで見たかったが昼ご飯を食べてない。

体育館を出て中庭に移動。

屋台で焼きそばを啜る。

 

「なぁ今年の吹奏楽部凄いんじゃね?」

「トロンボーンがめっちゃ調子良いらしいな」

 

二年二組に戻る途中の廊下。

すれ違った男子生徒たちが話していた吹奏楽部の噂が耳に入る。

 

そうななのか。

時間があったら聞きにいこうかな。

おっ噂をすればなんとやら。

 

昨日河原で二人で練習してた吹奏楽部カップルとばったり鉢合わせだ。

 

「やあ、飯田君」

 

「あっこの前の。確か鳴上君だったよな」

 

「ああ」

 

飯田君に寄り添ってる女の子。

純朴そうな可愛い子だった。

紹介してもらおう。

 

「こちらは?」

 

「えっと。こいつは同じ吹奏楽部の松永」

 

ぺこりとお辞儀をしてくる松永さん。

 

「デートか。鬼熱じゃないか」

 

茶化す。

二人とも真っ赤になる。

 

「あ、ああそうだ!この先にある占い屋、すっごい良く当たるんだぜ。お前も行ってみろよ」

 

飯田君から耳寄り情報ゲット。

へー、そんな店が。

喫茶店に戻る前に寄ってみよう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 14:25>

 

「こ、これは・・・」

 

店の看板には"占いの館THE長鼻"とある。

この雰囲気、どこかで・・・?

 

「お待ちしておりました我が主。どうぞ中へ」

 

奇麗な、そして何故か良く知っているような気がする玲瓏な女性の声が俺を誘う。

ふらふらと小屋の中へ吸い寄せられてしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 14:30>

 

椅子に座ると小屋の入り口の天幕がスッと閉じた。

ほの暗いランプの光に照らされつつ、奥の内幕から占い師が登場する。

 

肌も露な紫色のベーリーダンスの衣装をまとった妙齢の女性であった。

金髪碧眼で肌が抜けるように白くスタイルも良い。

美しい顔の半分が半透過のフェイスベールに覆われ、お神秘さを増している。

 

「やっと会えましたわね。私のことはいつも通りマーガレットとお呼び下さい」

 

「いや、え?」

 

初対面のはずだよな。

あれ?

 

「さてここは占い小屋。我が主には主向けの特別な占いをご用意しております」

 

内幕を捲るマーガレット。

そこには豪華な天蓋のダブルベッドがあった。

 

「今回ご用意したのは孕ませ占い。主にはこの場で私を孕ませて頂きます」

 

「は、孕ませ?」

 

「はい。主の種を自らの腹で育て十月十日後の出産にて未来の卦を占う、女性占い師の最終奥義ですわ」

 

なんて凄い占いだ。

 

「男の子が生まれれば豊漁。女の子が生まれれば豊作になります」

 

マーガレットは占いを説明しながらベッドにゆっくりと横たわった。

そしてスカートのベールを捲って白い脚を曝していく。

股間が露になるとそこには黒い貞操帯が。

 

「さあ我が主。そのポケットの中の鍵を使って、この貞操帯を取り外して下さいませ」

 

学生服の内ポケットを弄ると占い師の言う通り鍵が出て来た。

なぜ俺はこんな鍵を持っているんだ?

 

震える手で鍵を握り、貞操帯の鍵穴に差し込んでみる。

 

<カチリ>

 

どうやら本当にこの貞操帯の鍵だったようだ。

 

「これで準備が出来ましたわね。さあそのマーラ様をここに差し込み、いっぱい種を注いで下さい」

 

貞操帯を取り外されたマーガレットが奇麗に恥毛をそり落とした秘唇を晒す。

くぱぁと指で開いてピンク色の粘膜を見せて俺を誘う。

 

既に俺のマーラ様はこの美女を望み通り孕ませてしまおうと臨戦態勢である。

再び俺はフラフラと腰を吸い寄せられてしまっていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 14:40>

 

生で挿入。

 

「あん、ああんっ!」

 

マーガレットが憚ることなく高い嬌声を上げる。

思わず腰を止めてしまう。

 

「あんっ、このテントは防音になっております。ふあっ。遠慮なさらずにお突き下さいましっ」

 

そうだったのか。

だったら遠慮なく。

 

「なんだっ、この密着感は!?くぅ」

 

「あんあんあんっ」

 

今まで俺は四人の美少女たちを相手にしてきた。

しかし、まるで彼女たち以上に回数をこなしているかのようにフィットしている。

納まるところに納まった感がある。

まるで一組の刀と鞘のようだ。

 

俺とマーガレットは狂ったように腰を叩き付け合った。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 15:30>

 

屈曲位でマーガレットの子宮口を突く。

 

「あんっ、あ、主、もう入りませんのにっ」

 

「くぅっ」

 

<ぱちゅんぱちゅんぱちゅん!>

 

抜かずに射精することすでに五回。

文字通りマーガレットの子宮は俺のペルソナ液で満杯になっていた。

 

はあはあはあ!

絶対、この美女を、孕ませるんだ!

 

「あ、あああああああーーんっ」

 

マーガレットが腰をグググっとせり上げて絶頂する。

 

「おおおおおおっ孕めー!」

 

子宮口にマーラ様の亀頭を突っ込ませ、渾身の力を込めて射精。

さらに卵巣まで届けとばかりにペルソナ液を押し込む。

 

合計六回の射精がマーガレットの子宮の中で合体。

光が走る。

 

「あーーーーーーーっ!」

 

「おおお!?」

 

六射精合体の衝撃の中、新たなペルソナがマーガレットの腹から生まれ落ちる未来が確かに見えた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 15:30>

 

情熱的なセックスで全身を薔薇色に染めたマーガレットが貞操帯を装着し直す。

もちろんパンパンに注がれた種はそのままだ。

 

なよやかに身繕いしつつ、うっとりと下腹を撫でながら微笑む。

 

「ありがとうございます。我が主。頂いたこの種により私はきっと妊ることが出来ましょう」

 

「ああ。間違いない。必ず受精するさ」

 

すでに俺はこの激しい種付けセックスを通して、これまでマーガレットと交わしてきた熱い情交の全てを思い出していた。

 

「順調なら一週間ほどで着床です。そうなれば後はじっくりと育つのを待つのみ。十月十日後が楽しみですわね」

 

そうか。

来年にはもう俺はパパになるのか。

ゲームの中の話とはいえ責任感が湧いてくる。

 

「我が主。この旅の果てで私はこの嬰児と共に貴方様を待っております。何とぞ歩みを止められませぬよう」

 

「ああ、行ってくるよ」

 

俺はマーガレットに見送られながら占い小屋のテントの幕を捲り、決意を新たに外へ踏み出した!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 17:30>

 

大分長い昼休みとなり皆から文句を言われてしまう。

しかし千枝と雪子が上手く店を切り回してくれていたようだ。

メイド喫茶は盛況のうちに一日目を終えた。

これなら明日は俺がいないても大丈夫だろう。

 

明日は午前中ミスターコンテストに参加しなければならない。

そして午後は千枝と雪子がミスコンに参加だ。

もちろん午後のミスコンも見たい。

 

店長役は終日代理を委員長に押し付けることにした。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月29日SAT 晴 20:00>

 

千枝と雪子の二人がメイド喫茶でメイドになりきり、白昼堂々男性客たちに媚を売る姿はとてもエロかった。

その光景を思い出すとマーラ様が滾ってくる。

女一人を孕ませたくらいでは到底納まり切らない。

 

明らかに二人は俺にお仕置きされることを望み、接客中チラチラ俺を見ながら客の男たちへ必要以上に体を寄せていた。

俺の命令に従った行為だとしても、千枝と雪子がノリノリで客の男たちの欲情を煽っていたのは確かである。

他の男に色目を使う端ない女達には、ご主人様として激しい躾が必要だろう。

彼女たちの思惑に乗ってやり、狂おしい嫉妬心と所有欲に駆られたまま、お仕置きと称して全員にメイド服を着せてのコスプレエッチを断行する。

 

まずは雪子。

 

「ご主人様ー、ごめんなさぁい。雪子いっぱいお客さんたちと握手しちゃったぁ」

 

雪子はツーショットでの写真撮影で吐息がかかるくらいのギリギリまで体を寄せ、撮影後に両手で握手までしていた。

その男子生徒たちがドキドキしながら握ったであろう雪子の冷たくて気持ち良い手。

 

「許さん!俺のコレを握って消毒しろ!」

 

「はぁーい」

 

<こきこき>

 

ふふふ。

客は皆、前日に盛大にマス掻いた手を奇麗なメイド雪子に握られたぐらいで満足していたが。

俺なんかもっと凄いとこ握らせてるんだぞ。

雪子にマーラ様を握らせて悦に入る。

 

次に千枝。

 

「えへへ、テーブル拭くときにこんな感じでわざと腰上げたらさー。皆私のお尻をガン見してるの。焦ったよー」

 

実は千枝、絶対領域にプラスしてエロ過ぎるTバックのヒモパンを履いていた。

その上でギリギリ見えるか見えないかのところで腰を振って、客の男たちの反応を楽しんでたのである。

 

「なんていけない尻だ!」

 

「あんっ」

 

<なでりなでり、ぱちんぱちん>

 

ミニのスカートとレースに手を突っ込み、千枝のもっちりとした尻肉の感触を愛撫とスパンキングで直に味わう。

今頃喫茶店に来ていた連中はこの千枝のスカートの中身を想像しながら、一人寂しくオナニーしてるだろう。

 

そしてりせだ。

 

「もー、先輩たち邪魔だってばー。悠せんぱーい、こっち見て。明日のコンテストのダンスの最終確認だよー」

 

ミスコン&メイド喫茶の宣伝ポスターの撮影のために用意したメイド服を着ているりせ。

メイド服を纏った体をくねくねとくねらせ、音楽に合わせて淫らな踊りを披露してくれている。

 

「ワンツー、ワンツー、ここでお尻をクイッと突き出すのっ。でねっ、ここで一枚脱ぎながらスマイル。えへっ」

 

「いいぞーりせ!もっと脱げー!ぴぃいー」

 

<しゅるしゅるぱさっ>

 

指笛を吹いてりせのストリップを煽る。

素晴らしいりせの上達具合だった。

これならどこのストリップ劇場に行っても大トリを飾ることが出来るだろう。

 

最後に直斗。

 

「ご、ご主人様、ボクに勇気を注入して下さい!」

 

もちろん直斗にもメイド服を着せている。

膨乳薬で女性ホルモンのバランスが崩れた影響か、既に髪はミディアムヘアと呼べるほどの長さにまでになっている。

ポニーテールにしてホワイトブリムを付けている様が可愛過ぎた。

 

「明日のアピールタイム、何するのか決まったのか?」

 

「は、はい。ボクなりに年頃の男性が望むことを考えてみました。ああんっ」

 

<ぱちゅんぱちゅん>

 

メイド服のミニスカートを捲ってバックで直斗を犯す。

明日のミスコンに向けて、フェロモン全開になるようじっくりマーラ様で嬲ってやる。

 

ふぁっさふぁっさと揺れるポニーテールと、ゆっさゆっさと揺れるメイド服に包まれたノーブラの胸。

発情し過ぎて乳が溜まって限界を超えたのか、揺らすだけで服の中で噴乳してしまっているようだ。

 

「あ、ああああーーーーっ」

 

俺のマーラ様に子宮口を小突かれまくって身悶える直斗。

溢れた乳でメイド服の乳首の辺りに染みが出来てしまっている。

絶頂は近い。

 

四人の美少女メイドたちにかしずかれる今の俺は、まさしく王様だった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 10:00>

 

八十神高校文化祭二日目。

 

第一の盛り上がりポイント。

ミスターコンテスト。

 

例年なら観客は男女の区別無く疎らとのことだったが、今年は違うようだ。

体育館は女子でいっぱいである。

年頃の女子の体臭が香水の匂いが集合し、なんとも言えない淀んだ空気になっていた。

 

<レディーたち、いくぜ二日目の目玉イベント、ミスターコンテスト!>

 

「「キャー!キャー!!」」

 

袖で待機してると歓声が凄い。

盛り上がってるなー。

まあ審査対象のダンスがあれだしな。

 

<それじゃー早速行ってみよー。エントリーナンバー1。稲羽の美しい自然が生み出した暴走編み込み屋。人形編ませたら天下一。一年三組、巽完二くーん」

 

「うっし!行ってくるっす。やるからには咲かねーとなぁ!」

 

「・・・巽君。君はなんでこれに参加してるんだ?」

 

「赤点ばっかで単位が足りないんで柏木のセンコーに出ろって言われて。留年してお袋泣かすのもあれなんで、まぁ。じゃあ先輩方、お先っす」

 

舞台に飛び出して行く巽君。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 10:10>

 

質問タイムの後のダンスタイム。

 

「「キャーキャー、巽くーん」」

 

意外にも盛り上がっているようだ。

強面の彼が女子に受ける、だと?

 

「意外だろ悠。あいつ服飾部に入ってて、女子生徒たちからめっちゃ評判いいんだってよ。編み物すげー上手いんだって。笑えるだろ」

 

花村が頼んでもいないのにしゃしゃり出て来て説明してくる。

そういうお前は何でここにいるのか。

 

「あー、俺が何でこんなのに出るのかって?柏木のせいに決まってんだろ!早紀とトイレでやってるの見つかってな。証拠の写真まで取られちまってて」

 

「・・・それは大変だな」

 

<完二君サイコーだったYO!それじゃー次行ってみよー。エントリーナンバー2。JUNESの御曹司にしてさわやかイケメン。口を開けば色ボケ王子。二年二組、花村陽介くーん>

 

「んじゃまあいってくらー、とほほ」

 

完全に自業自得だな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 10:20>

 

激しいブーイングの中、花村のダンスが終了する。

次は俺か。

 

<エントリーナンバー3。都会の香り漂うビターマイルド。毎晩啼かせてる女は星の数?二年二組に舞い降りた転校生、鳴上悠くーん>

 

スペシャルゲスト役の彼に挨拶して壇上に飛び出す。

 

まずは質問タイムだ。

 

<それではー質問ターイム!皆さんから応募の中から一番多かった質問はこ・れ・だ!"現在何又中ですか?">

 

「そっとしておけ!」

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 10:25>

 

続いてダンスタイム。

 

激しいダンスミュージックに合わせ、一枚ずつ服を脱いで行く。

 

「俺に惚れろ」

 

煽るような視線を投げつけ、挑発的なポーズを見せつける。

りせと練習した振り付けである。

 

「「「きゃーっ!!きゃーっ!!」」」

 

客席が沸く。

そして一番前の席で柏木がノリノリで楽しんでる。

このために俺たちを嵌めたのかーっ!

 

イラっとくるがここは我慢。

演者に徹しろ。

自分に言い聞かせる。

 

ダンスが終わったとき、俺はスイミングパンツ一丁になっていた。

これも柏木の指示であった。

「あなたたちのメイド喫茶の衣装と違って水泳部の公式スタイルだから何も問題がないわーおほほ」とは柏木の言だった。

 

踊り終わった後、会場の様子を伺う。

ライトのせいで何も見えないが、これまでの二人に比べると感触は良いようだ。

 

ただまあ次に出てくるのがあいつだからな。

何の意味も無いパフォーマンスだろう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 10:30>

 

<さーてここでもう一人の勇者を紹介だ!本日最後の登場はスペシャルゲスト、クロネコふろーむバスケットコート!来年のオリンピックの期待の星。日本代表次期エース。我らが稲羽の英雄、二年一組、いちじょーこーーーーうっ!!>

 

「は、ハートを、ぶちぬく・・・ぞ?」

 

「「「「ぎゃあああああ!!いちじょうぐうううううんん!!!」」」」

 

黄色い嬌声を越えて、もはや怒号である。

 

モロキンが死んだ後、柏木がバスケ部の臨時顧問をやってるらしい。

顧問命令での強制参加だそうだ。

日本代表招集だなんだで出席日数が危うくなってきたのも一条のウィークポイントだった。

 

そしてエビが積極的に参加を応援したのも一条が参加を決めた理由の一つだろう。

自分の彼氏がコンテストで優勝すれば鼻が高い、というところか?

 

「康!がんばってーっ!」

 

最前列で応援してるエビの姿が見える。

柏木と火花を散らしている。

 

まあこれでコンテストの結果は火を見るより明らかだ。

この無駄な時間、早く終わって欲しい。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 11:30>

 

集計が終わって結果発表。

 

<結果発表!栄えある優勝は!二年一組、一条康!!>

 

あーはいはい。

おめでとうおめでとう。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 13:55>

 

「「「がやがやがや、どよどよどよ」」」

 

「お、おっかしいなー。あれだけ街中にポスター張ったから八校の生徒以外も結構来るとは思ってたけど、こんなに沢山来るなんて」

 

袖から開演前の体育館内の様子を伺っていたりせが動揺している。

無理も無い。

ミスコンの会場はすでに男で溢れ、入場制限をかけなければいけないほどぎゅうぎゅう詰めだった。

 

「よかったじゃないか。それだけ注目されてるってことだろう」

 

「まあ、そうなんだけど」

 

腑に落ちないようだ。

 

「ちょ、押すなよ!って、まじで!?」

「ああ商店街に今真下かなみが来てるんだって。ロケらしい」

「うっそ。かぁー!ミスコンじゃなかったら見に行ってたのになー」

「ロケ目当てで稲羽市に来た連中も、このミスコン見に来てるらしいぜ」

「それでこんなに混んでんのかよ。あのポスター出来良かったもんなー」

「おい、誰が勝つか掛けしようぜ!おれ、りせちー!」

 

俺の作ったポスターが真下かなみ目当ての野次馬をこちらに誘導することに成功しているようだ。

写真からレイアウトから文章まで、精魂込めて作った甲斐があった!

 

「かなみのロケ・・・」

 

「どうしたんだ?浮かない顔だな。心配事か?」

 

「かなみ、休んでるアタシや素人の千枝先輩たちに負けるってさ。何やってるのよって感じ。一応後輩だしね」

 

ふーん。

後継者が不甲斐なくて現役復帰すべきか迷ってる隠居、のような心境なのだろうか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 14:00>

 

<ジェントルメンたち準備はいいかい!?さぁやってまいりましたメインイベント。史上最高のミス八校コンテスト!>

 

「「「ひゅー!」」」

「「「待ってました!」」」

「「「おおぉおお!」」」

 

地鳴りのような歓声。

この野郎共の気合いの入り様よ。

 

<エントリナンバー1!二年二組、里中千枝!>

 

「えっと、好きな食べ物は肉全般です!」

 

「「うおおっ」」

 

黄色いマイクロビキニを纏った千枝が元気よく登場。

改めて見ると随分エロい肉付きになったなー。

 

<続いてエントリナンバー2!二年二組、天城雪子!>

 

「よろしくお願いしまーす。うふっ」

 

「「「うおおおっ」」」

 

赤いメタリックのビキニを纏った雪子が優雅に登場。

一つサイズの小さいトップを着ているらしく、胸の谷間とブラのたわみがエロい。

 

<エントリーナンバー3!一年二組、久慈川りせ!>

 

「やっほー、りせちーだよー。みんなー休業中でごめんねー」

 

「「「「うおおおおっ!」」」」

 

ピンクのハイレグビキニを纏ったりせが軽やかに登場。

やはりこういう場は慣れているようだ。

 

<続いてエントリーナンバー4!一年一組、白鐘直斗!>

 

「す、すみません」

 

「「「「「・・・うおおおおおっ!」」」」」

 

黒い紐ビキニを纏ったポニテの直斗がおずおずと登場。

恥ずかしいのか顔を真っ赤にしてギューっと胸をすぼませる。

余計にその豊かな乳が強調され、これまでで一番の歓声があがる。

 

あとの二人の水着姿は論ずるに及び申さず。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 14:30>

 

体育館中央まで伸びた花道を使っての水着ショー。

四人の美少女がその魅惑の水着姿を存分にアピールする。

あと二匹、妖怪が壇上に上がっていた気がするが無視だ。

 

その後、一人一人のアピールタイムに移る。

 

千枝はミニスカポリスのコスプレに着替え、エロい小説の朗読。

犯される女刑事のセリフと嬌声を甘い声で演じきり観衆を魅了。

 

雪子は水着の上に白い薄衣を纏って、色っぽく日本舞踊を披露。

和のテイストのエロさを存分に披露し、観衆を疑似逆ナンする。

 

りせはアイドル衣装に着替え、自分のメドレーに合わせて熱唱。

昨年の武道館コンサート以上の熱いノリで観衆を一体化させる。

 

そして四人の中で最後に出て来たのが白鐘直斗。

前の三人と違って着替えておらず、先ほどの黒ビキニのままである。

この美少女探偵はいったい何を見せてくれるのだろうか。

皆が固唾を飲んで見守る。

 

ん、何か持ってるぞ。

あれは縄?

 

「あのっ・・・、縄跳びを、します。」

 

「「「・・・ッ」」」

 

静寂の中、皆が驚いて息を吸う音が響く。

 

「いきます!んっんっんっんっ」

 

<ばいん、ばいん、ばいん、ばいん>

 

ふぁさふぁさとポニテの黒髪が跳ねると共に、黒いビキニに包まれた直斗の柔らかな豊乳が縦揺れを起こしている。

 

「「「・・・おぉ」」」

 

会場内に感嘆の声があふれる。

 

「ふっ、んんんっ」

 

直斗、二重飛びに挑戦。

 

<ばいばいばいばいばいばいんっ>

 

跳ね回る直斗の二つの乳。

 

おお、乳神様が暴れておる。

思わず拝んでしまった。

会場の皆も同じようだ。

 

「「「「・・・ゴクリッ」」」」

 

もはや誰も言葉はない。

会場にいる全ての男子の視線が直斗の黒ビキニに包まれた白い乳肉の一点に集中。

跳ねまわる二つの柔らかくて白い固まり。

その動きを追う皆の目は、某ヤムチャのようにおっぱいになってしまっていた。

 

直斗の演技が終了したとき。

男子は皆、己がいつの間にかダラダラと鼻血を垂らしてしまっていることに気付く。

 

やるな直斗。

さすがは美少女探偵。

何か策があるとは思っていたが・・・。

ここまでとは!

 

自分のチャームポイントと野郎共のツボをよく理解している。

もはや勝負は決したと言っても過言ではないだろう。

 

あとの二人のアピールは論ずるに術がござらぬ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 15:30>

 

<結果発表!圧倒的な得票率でトップに躍り出たのはーっ白鐘直斗!!>

 

「え、ええっ!?」

 

スポットライトが当り、困惑している直斗。

 

美少女組の三人は結果に納得してる表情を見せている。

 

「ただの縄跳びで優勝かー。男ってやっぱ単純だよねー。笑える。あはは」

 

「直斗クンなりに頑張ったんだよね。皆鼻血吹いちゃって、クスっ、うけるっ、ププッ」

 

「ああー負けちゃった。せめてポールダンス披露出来ればなぁ。まぁポール無いし仕方ないか」

 

納得してないのは残り二人の妖怪。

 

「ううー、この私があんな小娘たちに負けるなんて・・・」

 

「柏木先生、アタシくやしい!うわーん」

 

「あたしもよー、大谷さん!うわーん」

 

抱き合って互いを慰めている。

正直興味は無い。

 

さて、優勝した直斗にどんなご褒美をあげようか。

ギラついた男たちの視線に晒されて彼女の躰も興奮したようで、乳が溜まって乳房がパンパンのようだ。

まずは搾乳だな。

 

あと他の三人も健闘を称える意味でしっかり可愛がってあげよう。

強がってはいるが、りせなんかは地味にショックだったみたいだし。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 16:30>

 

文化祭の締めである吹奏楽部演奏会も無事終了。

飯田君のトロンボーンがいい音出してた。

 

これで八十神高校の今年の文化祭も終わりだ。

夕暮れの中、後片付けが始まる。

 

我らが二年二組のメイド喫茶の売り上げは八十神高校の学園祭史上最高となった。

メイド服への初期投資費用や諸経費を引いてもかなりの額が手元に残る。

打ち上げは盛大なものになりそうだ。

 

あとは喫茶店で使ったメイド服だが。

実際に着たクラスメイトたちから譲って欲しいとの声が多く聞こえてきている。

引き取り手が無かった服は現役女子高生が着ていた生メイド服と銘打ってネットオークションにかける予定だ。

かなりの儲けが期待できるだろう。

 

もちろん千枝たちの専用メイド服はキープだけどな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 17:00>

 

夕暮れの屋上。

 

「探したぞ。ここにいたのか」

 

「あ、先輩」

 

<現在休業中のはずのりせちーこと久慈川りせちゃん。本日稲羽市の高校の文化祭で彼女のミニライブが行われたそうです。私たちが独占入手した映像がこちら・・・>

 

どうやらワンセグでマスコミの報道をチェックしていたようだ。

りせの手元を覗き込む。

ニュース番組のテロップは"久慈川りせ 稲羽市で復活ライブ? ファン殺到"となっていた。

 

撮影禁止にも関わらず、恐らく誰かが携帯のカメラで撮ったのだろう。

先ほどのミスコンでりせが見せたパフォーマンスの荒い画質の動画がTVで流れている。

 

「まいったなー。私、休業中なのに。事務所通さずにこんなことやっちゃったから、後できっつく怒られるかも」

 

「そうなのか?休業中でも?」

 

「うん。多分このニュースが無ければ、かなみのロケの話が芸能面のトップニュースになってたはずだもの。事務所と今度の映画にとっては結構ダメージ大きいかも」

 

どうやら壇上で表情が優れなかったのは、ミスコンで負けたことによるショックでは無かったようだ。

りせを理解しきれていなかった自分が恥ずかしい。

 

「直斗に負けたのは別にどうってことないんだ。盗撮されることはある程度予測出来からさ。アイドル路線全開であんまりエッチに見えることしなかったし。いい?先輩。アタシが本気見せたら誰にも負けないんだからねっ」

 

つまりりせはアイドルとしてコンテストに挑んだからエロさで直斗に負けた、と言いたいらしい。

確かに今のりせは休業前まで持っていたアイドルとしての能力以上のスキルを身につけており、現在持ってるスペックの半分も発揮出来ていなかったと言えよう。

 

「予想外だったのは、かなみのロケが偶然重なっちゃったこと・・・。でも、わっかんないんだー。私は今休業中で、事務所のことももう関係ないって割り切ってたはずなのに、どうしてこんな」

 

「申し訳なく思うのは当然だ。これまでりせちーがお世話になってきた人たち、後輩として面倒を見てた娘なんだろ。そう簡単に割り切れるものではないさ。りせちーだってりせなんだから」

 

「先輩・・・」

 

「それに自分で言ってたじゃないか。"休んでるアタシに負けるって何やってるのよ"って。りせを押しのけてトップニュースを取れなかったのは、今の真下かなみって娘の実力がまだまだってことなんだろう。彼女自身が頑張るしかないさ」

 

俺の言葉が届いたのだろう。

不安げだったりせの表情がふっと緩む。

 

「ありがとっ。励ましにしては拙いけどね。こういうときはスキンシップで慰めて欲しかったなー」

 

「お望みとあらば」

 

頬を染めて言外にキスを強請っているりせを抱きしめてやる。

 

「「んっ」」

 

夕暮れの屋上で俺とりせの影が重なる。

しばし互いに体を撫で回し、舌を絡まらせて愛情を伝え合った。

 

「レロッ。うふふっ。でも今日のコンテストで直斗に負けて、アイドル路線の限界が見えちゃったのは確かなんだよねー。」

 

キスを解いて俺の胸に顔を埋めてくるりせ。

そして重大な決意を告白してきた。

 

「先輩。あたし、アイドルは本気で卒業しようと思う。少なくとも前までみたいな形での芸能界復帰はしない。りせちーもあたしの大切な一部なのは認めるけど、もっと先輩との時間を大切にしたい」

 

りせの言葉に迷いはない。

混じりっけなしの本気のようだ。

 

「そうか。決めたんだな」

 

「先輩もいっしょに考えて欲しいの。あたしがアイドル以外の路線でこれからどんな風に活動していけばいいか。あたしのマネージャーになってよ」

 

りせのマネージャーか。

俺がマネージメントするとなるとあれしかないだろ。

 

「そうだな。AV女優とかどうだろう。俺が監督と唯一登場する男優も兼ねて。もちろん撮影スタッフは全員女で」

 

「もう先輩ってば!ストレートにエッチだなー。・・・そういうとこ好きだけど」

 

りせが主演で俺が男優のAV。

そんな妄想をかつて抱いたこともあったっけ。

自主制作でもいいから撮ってみるか!

 

なんか燃えきたぞ!

 

「よーし、早速相談しに皆のとこ戻るか」

 

「えー!ハーレムもの〜?まぁいっか」

 

ん?

千枝たちに撮影係をお願いしようと考えてたんだが、ハーレムものだと?

確かにそういう手もあるな。

 

りせの勘違いであったが、本人はすっかり上機嫌になって腕に抱きついてる。

この様子では本気でハーレムものでもOKらしい。

 

りせ本人が許容してるんだ。

よーし、ハーレムAVを撮ってやるぞーっ!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 17:20>

 

いつの間にか下手なトロンボーンの音が辺りに響いていた。

これは飯田君の彼女、確か松永さんと言ったか、の演奏だろう。

 

うんっ、やっぱりひどい。

飯田君が怪我しないでほんと良かった。

 

 

 

<SYSOP 2011年10月30日SUN 晴 --:-->

 

松永綾音は飯田部員ともに充実した日々を送り、鳴上悠との絆を必要としなくなります。

松永綾音は飯田部員との二人きりの個人レッスンを重ね、飯田部員の小マーラ様を吹くのと同じくらいトロンボーンが上手くなっていきます。

松永綾音は来年度の八十神高校の文化祭公演で無事デビューし、さらに翌年は吹奏楽部部長にまで上り詰めます。

太陽のアルカナが消滅しました。




この回でストックしてた分は終了になります。
次の更新まで暫く時間を頂く予定です。


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第20章 温泉

エロ少なめ+微妙なクロス有り。
ペルソナシリーズ以外のキャラが出てきますが、そんなに重要なキャラではないので許してつかあさい。


<VELVET ROOM 2011年10月30日SUN 晴 --:-->

 

「ようこそベルベッドルームへ」

 

普段着の蒼いスーツ姿のマーガレットがベッドに腰掛けて待っていた。

 

「私のお腹に力強い光を感じます」

 

マーガレットは優しげな表情を浮かべながら己の下腹部を撫で擦っている。

 

「受精卵に宿った光。これもあなたのマーラ様の力かしら」

 

念願叶って受精を果たし、マーガレットも嬉しげである。

 

「そういえば替え歌で子守唄を作ってみたの」

 

ベッドに誘われるが、着床待ちのため今日は合体を控えてベッティングだけでスキンシップを図るつもりのようだ。

 

「べるべるべーるべるべっと、わーがあーるじながいマラ」

 

艶っぽく歌いながらズボンからマーラ様を取り出していくマーガレット。

 

「うふっ懐かしいわ。よく原曲を妹と歌っていたのよ。ほんとに懐かしいわ。あむっ」

 

己を見事孕せてくれたマーラ様をうっとりと見つめ、感謝の念を添えながら赤いルージュの唇でパックリと咥え込んでいく。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 16:30>

 

<八十神高校文化祭の全行事は終了しました。実行委員は視聴室に集まって下さい>

 

「よっと、ふぅ終わったー」

 

千枝が最後の机を元に戻す。

これで片付けは終了。

 

さてどうするかな。

特にこれからの予定は決めていない。

すると最初に動いたのは花村だった。

 

「よっしゃ文化祭もこれにて終了っと。じゃ天城、今夜はよろしくなっ!」

 

「あ、うん」

 

雪子が返事をする間も無く、花村がウキウキとステップ踏みながら速攻で帰宅していく。

 

「一体何の話だ?」

 

「えと、JUNESの社員さんたちの宿泊予約が昨日突然入ったの。宴会の予約も一緒に。明日からのハロウィンフェアの壮行会なんだって」

 

「随分急な話だな」

 

なんでもハロウィンフェアをするかしないかで社内でかなり揉めていたらしい。

壮行会の場所取りも直前まで伸び伸びになったようだ。

なんと傍迷惑な。

 

「大口のお客様だし、いつも使って貰っててお世話になってるから。それに部屋結構空いてたしね。感謝しないと」

 

「俺と千枝、シフト入ってないけど大丈夫か?」

 

「ちょっと厳しいけど、あいかちゃんが入ってくれてるもの。なんとかなると思う」

 

愛屋のあいかちゃん。

最近天城屋旅館にバイトに来ていた。

出前同様の手際の良さで今では貴重な戦力ではある。

しかし・・・。

 

「雪子、文化祭で疲れてるだろ。今日は特に何も予定入れてないから俺も手伝うよ」

 

「え、いいの?」

 

「なになに、なんのはなしー?」

 

千枝も話に交ざってくる。

結局千枝も俠気全開で天城屋旅館へ臨時バイトに駆けつけることになった。

 

「えー先輩たち、これからバイトなのー?」

 

文化祭の打ち上げが出来なくてりせは残念そうだ。

確かにあれだけ盛り上がったのに何もしないまま解散するのは味気ないな。

 

「雪子、今日って旅館の方まだ部屋空いてるかな」

 

「え?昨日の予約表だとニ、三部屋空いてたと思うけど・・・」

 

なら多分大丈夫そうだな。

 

「じゃあ二人とも、これから天城屋旅館に来ないか?」

 

「センパイッいいの?」

 

「えっ、ボクたちも、ですか?」

 

パーッと表情が晴れるりせと戸惑う直斗。

 

「おー、いいじゃんいいじゃんっ。皆で温泉入るのもいいねー」

 

「もうっ千枝ったら。でもいい案かも。やっぱり皆で文化祭の打ち上げしたいしねっ」

 

千枝と雪子も賛成のようだ。

宴会が終わるまで二人の相手出来ないと思うが、その間彼女たちには食事と温泉を楽しんでもらっていればいい。

 

「二人とも天城屋旅館に泊まったことないだろ。明日は振替休日だし、いい機会じゃないか。宿代は俺が払うよ。直斗はミス八校グランプリのご褒美。りせは俺の初監督作品の主演料前払いってことで」

 

「や、やめて下さい。コンテストの話は。もうっ」

 

「やだっセンパイったら。うふふっ」

 

一旦解散して天城屋旅館で集合となった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 17:00>

 

天城屋旅館に到着。

勝手口から事務所に入る。

 

「急にごめんなさいね鳴上君。里中さんも」

 

女中頭の葛西さんが謝ってきた。

 

「いえ大丈夫です。葛西さん」

 

「アタシも全然平気でーす」

 

笑顔で応対しつつテキパキと準備に取りかかる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 17:10>

 

「宴会場のヘルプ行ってきまーす!」

 

先に着替え終わった千枝が元気良く事務所から飛び出して行く。

さて俺は調理場の手伝いだな。

 

「葛西さん、一組追加なんだけど部屋空いてるでしょう。後輩たちを泊めてあげたいの」

 

更衣室から出ると雪子が葛西さんとりせたちの泊まる部屋を相談していた。

 

「困ったわね雪ちゃん。ついさっきまた急な予約が入って・・・。お部屋埋まっちゃったわ」

 

「えっ、そうなんだ」

 

雪子の顔が曇ってる。

トラブルのようだ。

近寄って声を掛けてみる。

 

「どうした?」

 

「りせちゃんたちの部屋、用意出来ないみたい。私の部屋に五人はちょっと多すぎるし」

 

部屋が無い、か。

今日は入浴だけで日帰りしてもらうしかないか?

それは残念だな・・。

 

んん?

ピンッと来た。

 

「あの部屋があるじゃないか」

 

「あの部屋・・・?ダ、ダメよ!あの部屋は・・・」

 

この天城屋旅館の別館には春先からずっと使われていない部屋があるのだ。

四月に起こった最初の逆さ磔事件の被害者、山野アナが宿泊していた上部屋である。

縁起が悪いのと変に騒がれるのを恐れての判断であった。

 

「大丈夫。二人とも怖がるかもしれないけど、俺も一緒にあの部屋に泊まって一晩中添い寝してやるさ」

 

日々テレビの中の世界に潜って気味の悪い人外のシャドウを相手に切った張ったやってるのだ。

今更幽霊如きでビビる俺ではない。

りせと直斗の二人に早速ご褒美と演技指導を与えてやれる良い機会だった。

 

「えー、あの二人だけずるいっ。じゃあ私も!葛西さん、あの部屋今夜使いますから!」

 

あれ?

雪子が荒ぶってる。

私だってミスコンやメイド喫茶で頑張ったんだからご褒美もらう権利あるもん!だそうだ。

 

「じゃ、じゃああの部屋でいいのね?雪ちゃん」

 

「ええ!」

 

部外者では問題かもしれないけれど、今回は言わば身内を泊めるようなもの。

噂などによる経営への悪影響も考えられない。

結局雪子が葛西さんを押し切ってあの部屋を使うことが決まった。

 

ちょうどバイトのあいかちゃんが出勤してきたので、彼女に別館の山野部屋の準備をお願いする。

 

「あいかちゃん、お願いねっ」

 

「あの部屋。だいじょうぶ?」

 

「うん。大丈夫だから」

 

「ふむ。りょーかい」

 

雪子から指示を受けてスーっと去って行くあいかちゃん。

さて俺も板場に急がないと。

 

「あ、そうだっ鳴上君」

 

葛西さんに呼び止められる。

 

「板場を手伝ってくれる前に、一つ頼みたいことがあるの」

 

急な用事のようだ。

何か問題だろうか。

 

「どうしました?」

 

「別館の二階の廊下の天井のランプ、切れかかってるみたいなの。悪いんだけど交換して来てくれないかしら」

 

「任せて下さい」

 

倉庫に寄って脚立と替えのランプを持って別館に向かう。

二階の・・・、あそこだな。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 17:30>

 

脚立に登って廊下の灯りを取り替えていると、近くの部屋から宿泊客が出てくる気配がする。

 

「すみません、今終わりますので」

 

出てきたアベック客に対して不便を詫びようと声を掛けたのだが・・・。

 

「鳴上じゃないか。こんなとこで何やってんだ?バイトか?」

 

「へー、鳴上くんってここでバイトしてるんだー」

 

相手は一条とエビだった。

 

エビ、しっかりめかし込んでおりキレイ系の女子大生っぽい格好。

美人な女と泊まりがけの温泉デートとかやはり日本代表のスター選手は違うな。

等々いろいろ言いたいことはあるが、とりあえず・・・。

 

「一条か。ミスターコンテスト優勝おめでとう」

 

「お、おう」

 

「ただハムレットの演技の方は、」

 

「劇の事は触れてくれるなよっ後生だから!」

 

「えー、私はいい演技だと思ったけどなー。キスも情熱的だったし。ぽっ」

 

既に一条とエビの仲は一条家だけでなくエビの父親の方も公認となってるらしい。

普通なら未成年同士での宿泊はよほどの事が無い限り許容されないものだが、今日の予約も天城屋旅館の上客である父親のフォローで何とかしてしまったようだ。

まぁ成金の海老原家が次に求めるものは家の格になるのは当然の流れであり、一条康というスターは願ってもないエビの相手なのだろう。

翻って康のいる一条家も親族の羽振りは良さそうだが本家筋の方の実入りはそれほどでも無さそうで、一族の中では肩身の狭い思いをしているようであり。

養子である康ならば下賎な成金海老原家から金を引き込むための生贄にしても家名には傷がつかない、という判断が働いているのが見て取れる。

 

二人の交際を取り巻く環境は傍で見るよりも大分複雑怪奇で、上流階級の家同士の怨念や虚栄心をバックボーンとした重い関係のはずなのだが。

まあ当人同士が単純に恋仲でよろしくやってるのなら、皆ハッピーで大変微笑ましいことである。

是非この二人には行き着くとこまで行って欲しいものだ。

 

「ほら康の活躍でバスケ日本代表、ロンドン五輪への出場決めちゃったじゃない。来年になったら康が忙しすぎて時間取れなくなるのは目に見えてるから。今のうちに二人きりで羽根伸ばしておこうと思って。それにー、今日はわたしのためにコンテスト優勝してくれたんだもの。やっぱり嬉しいじゃない、そういうの」

 

頬を赤らめながら一条の腕に躰を絡めて惚気けるエビ。

夕飯を食べる前に早速二人で温泉に行くらしい。

 

「んじゃそういうことで。バイト頑張れよー」

 

にゃはは、と笑って寄り添うエビを連れて去っていく一条。

やる気満々のようだ。

 

ご褒美はワ・タ・シ、か。

考えることは皆同じだな。

俺も今夜はしっかりとご褒美を皆に射出してやらないと。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 19:00>

 

「追加オーダー、ビール十本入りましたー!」

 

板場で仕事していると仲居姿の千枝が駆け込んてきて注文を告げる。

一人で運ぶのは到底ムリな数だ。

 

「運ぶの手伝ってきます」

 

板前さんたちに許可を貰って板場を離れ、ビール瓶を宴会場まで運ぶ。

途中千枝から花村に対しての愚痴を聞かされた。

 

「もう聞いてよっ。花村ったら自分が早紀さんと温泉に宿泊したいからって強引にJUNESで宴会の予約入れたらしいよー」

 

こんなに忙しいのは誰のせいだ!花村のせいだ!とプンスカ状態な千枝。

 

「もともと営業企画部の部長さん、ハロウィン企画自体取り止めにする方向で検討してたらしいんだけどね。支社長の花村パパの意向で突然ひっくり返ったんだって。その原因が花村みたい。お酌してる最中あたし愚痴られちゃった」

 

「へー。アイツも大分無茶やってるな」

 

「花村の相部屋の若手社員さんと、早紀さんと相部屋のパートの女の子、なんか恋人同士らしくてねー。絶対今夜部屋入れ替えるでしょ。いい気なもんよねーまったく」

 

だろうな。

林間学校でも同じことやってたし。

花村得意の一手である。

 

この大量の追加ビールも花村のせいだろう。

大方宴会場では彼が場を盛り上げて他の社員たちを酔い潰そうと奮闘しているに違いない。

 

しかし今夜は温泉で火照った躰で浴衣姿のまま組んず解れつか。

男ならば考えることは皆同じというわけだ。

惜しむらくは天城屋旅館に混浴は無い、ということ。

そこは花村には絶対に越えられない壁である。

 

だが俺なら。

天城屋旅館の従業員の俺ならば出来ることもある。

花村が到達出来ないであろう輝かしい未来に、俺は行く!

 

「あ、今晩の件、勿論あたしも参加するから。まあミスコン取れなかったけどさ。敢闘賞くらいは期待してもいいよねっ」

 

ああ、わかってるさ。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 19:50>

 

シーズン中の旅館の板場は戦場である。

ただ今日は宴会客が大半ということもある。

それに遅れてくる客もおらず夕食の配膳は定刻どおりに無事完了した。

 

膳が下がってくる二十一時過ぎまでの間、奇跡的に時間が空く。

賄いメシをササッと頂いた後、休憩を貰って板場の外に出る。

 

さてりせと直斗の二人は旅館の料理を楽しんでくれたのだろうか。

次は温泉だろう。

彼女たちとのスキンシップを更に深めるための一手を用意するため事務所に赴く。

事務所でマジックペンと紙を用意。

念を込めて張り紙を一枚書き終えたところで雪子と千枝が現れる。

 

「あ、ご主人さま、お疲れ様」

 

「お疲れー」

 

「二人とも休憩か?」

 

どうやら賄いを食べ終わった直後のようだ。

 

「ええ。まだ宴会は続いてるけど、もう葛西さんとあいかちゃんに任せても大丈夫みたい」

 

「温泉って今の時間ってだいたい空いているからさ。これからりせちゃんと直斗君たちと一緒に入ってこようかなって」

 

宴会場は二十一時クローズでそれまで時間がある。

確かに温泉に浸かるにはイイ時間帯だった。

 

「今日は晴れてるし、露天風呂から見上げる星空最高だと思うの。二人もきっと喜んでくれるんじゃないかしら」

 

「どうせなら悠も一緒に入りたいよねー。雪子には悪いんだけどさ。今度混浴のある温泉に行く企画とか立てようよ。テレビの中の"泡浴場"は星見れないしー」

 

二人はこれからりせたちと合流して露天風呂に入る気マンマンのようだ。

水を差すようで悪いのだが・・・。

 

「今の時間、露天風呂は男湯だぞ」

 

「「えっ?」」

 

雪子、明日休みだったために今日を土曜日と勘違いしていたようだ。

今日は日曜日で、日曜日は二十一時までが男湯である。

 

「あーほんとだ。今日は日曜日だった。露天って今の時間男湯だわ。あはははは」

 

「って笑ってる場合かっ!マズイじゃん雪子っ!りせちーと直斗君、多分もう露天風呂入っちゃってるよ!電話で露天で待ち合わせって伝えてるし!」

 

ツボに入って笑ってる雪子を引っ張って、慌てて露天風呂に駆けて行く千枝。

俺も先程用意した張り紙を手に取って二人の後を追った。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 19:55>

 

「はぁー良かったー。二人しか入ってない・・・」

 

露天風呂の脱衣所で千枝が安堵の溜息を吐く。

 

確かにカゴにはりせと直斗の二人が脱いだ衣服しか置かれていなかった。

まだほとんどの男性客が宴会に参加しているので当然だろう。

 

「他の男衆が入ってくる前に早く二人をお湯から出さなくっちゃ」

 

「うんっそうだねっ」

 

千枝と雪子が頷き合う。

だがちょっと待って欲しい。

 

「慌てるな!」

 

「「えっ!?」」

 

「こんなこともあろうかと、これを用意してきた!」

 

ババーン。

 

一枚の紙を取り出し二人に見せつける。

 

【"清掃中のため二十一時半まで立入禁止"】

 

マジックペンの太文字で心を込めて書き殴った注意書き。

清掃中を知らせる張り紙である。

 

「えっと・・・」

 

「それ、どうすんの?」

 

困惑した表情を浮かべる雪子と千枝。

察しが悪いなーもぅ!

 

「これを、こうする!」

 

清掃中の張り紙。

バシッと露天風呂の入り口の扉に貼り付けてやった。

 

「これであと1時間半は誰も入ってこない。さぁみんなで温泉だ!」

 

「「ええーっ!?」」

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:00>

 

<ガラガラッ>

 

脱衣所でさっくり服を脱いで露天風呂の戸を開ける。

 

「だ、大丈夫だよね・・・」

 

「もうっ強引なんだからー」

 

雪子と千枝を引き連れて外に出る。

もちろんバスタオルを躰に巻くなんてことは許してない。

生まれたままの女体である。

 

いろいろ言いたいことはありそうだが結局二人共俺の言葉に従ってくれている。

彼女たちもやはり俺と一緒に開放的な温泉に浸かってみたいのだろう。

 

星空の下、二人の裸の女を引き連れて湯船に向かって歩を進める。

 

りせと直斗の二人の姿が湯煙の向こうに見えてきた。

当然だが二人とも素っ裸だ。

バスタオルをお湯に浸けるなんて普通に厳禁だし。

 

「先輩たちー、おそーい!えっ?きゃっ」

 

「な、なんで先輩がっ」

 

毎晩裸になって恥ずかしいところまで晒し合っている仲のはずなのだが。

こういう開放的で開けた空間の風呂や温泉で裸で向き合うと、何故か羞恥心が湧き上がってくるものらしい。

二人とも反射的に俺に背を向け、胸元と股間を腕で隠そうとしていた。

その羞恥に満ちた女の仕草が余計に俺の獣欲をビンビンに刺激してくる。

 

普段と髪型が違うのもいい。

りせのお団子ヘアも可愛いし、直斗の結い上げた髪もセクシーだ。

 

「もうセンパーイ、いくらあたしたちとすぐにエッチしたいからって、ちょっとガッツきすぎー。でもそういうとこも嫌いじゃないけど。ポッ」

 

「こ、ここ混浴じゃないんですよねっ!?いけませんよ先輩!いくらなんでもこれは犯罪行為ですっ」

 

りせにとっては満更でもない展開だったようだが、初心な直斗にはまだ早過ぎたようだ。

まだ直斗とはノーマルな、と言っても複数プレイが基本ではあるが、閨房でのプレイしかしていない。

いずれ"匂い立つ泡浴場"にも連れて行こうとは思っていたのだが・・・。

まあ良い機会だろう。

 

「直斗、なら捕まるのはお前たちだな。実は今この露天風呂、男湯の時間帯なんだぞ」

 

桶を持ってお湯に近付き、掛け湯をしながら真実を明らかにしてやる。

 

「え?ウソ。雪子先輩、電話で女湯だって言ってたよね」

 

りせが驚いた顔をして雪子の方を向く。

 

「てへっ、時間間違えちゃった」

 

笑って誤魔化そうとする雪子。

 

「雪子せんぱーい」

 

「まったくもうっ」

 

ジト目で雪子を責めるりせと千枝。

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

二人の視線に耐え切れなくなって雪子が三指着いてみんなに向かって土下座する。

呆然と皆のやり取りを聞いていた直斗がそれを受けてやっと再起動。

 

「え、ええーーっ!?だ、だったらボクたち早く出ないとマズイじゃないですかっ」

 

ワタワタと慌て出した。

ザバッと立ち上がったことでその豊満な双乳がぶるんと揺れる。

 

「大丈夫大丈夫。男性客はほとんどまだ宴会場だしー、悠が清掃中って張り紙用意してくれたからさ。当分誰も入ってこないでしょ。よっと」

 

掛け湯で躰を流し終わった千枝が湯船に入りながらフォロー。

カモシカのような千枝の脚がスラリと湯に分け入っていく。

 

「なーんだ。じゃあ今の時間、この露天風呂あたしたちの貸し切りってわけ?」

 

安心したのか脱力して湯に浸かり直しつつ、りせが疑問を投げかけてくる。

白い乳がぽよっと湯に浮いていた。

 

「うん、いつもは二十一時から二十一時半までの入れ替え時間に清掃するんだけど、今日は私たちの他に人いないし、ちょっと早めに清掃に入ったってことにすればきっと大丈夫」

 

誰も来ませんようにと脱衣所の方に向かって手を合わせて祈る雪子。

その項から尻までの生白い首筋と背中のラインがこちらに向けられている。

 

「それに今日の清掃当番、あいかちゃんだしねー。もし見つかっても悠が頼めばきっと見逃してくれるでしょ。んーいいお湯っ」

 

胸元まで湯に浸かり、大胆に躰を伸ばす千枝。

湯の波間にプルンッと形の良い乳が揺れる。

実に伸びやかで気持ちよさそうである。

 

確かにあいかちゃんには後でまた口封じの口内射精をしておかないといけないだろう。

ただ今は俺の女であるこの美少女四人組との温泉タイムを心ゆくまで堪能するのみ。

 

ざばりと湯に入り、先程立ち上がって固まったままだった直斗の前に移動する。

 

「と言う訳で、安心しろ直斗」

 

「はっ、はいっ」

 

だがその返事とは異なり直斗の様子はリラックスとは程遠いように見えた。

なぜだろう?

顔を真赤にして俯いてしまってる直斗の視線を追う。

 

おっといけない。

四人それぞれの無意識の媚態にマーラ様が反応してしまっていたか。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:10>

 

「直斗クンも、こっちに来なよー。おいしいよー。あむっれろれろ」

 

雪子とりせと共に俺のマーラ様へ熱心に舌を這わせていた千枝が直斗に呼びかける。

 

「は、はい」

 

直斗は一人離れた場所でチラチラとこちらを見ていた。

俺は温泉の淵に背中を預け、大の字で腰を伸ばして湯とフェラの気持ちよさに目を細める。

 

「ちゅるちゅるっ、ご主人様のマーラ様の亀頭ってスベスベー」

 

俺の腰の右側に陣取った雪子がうっとりと表情を浮かべて舌の先端でクルクルとマーラ様の肌の張りを堪能。

 

「ほんとテカテカー。んふっ、ちゅ」

 

股間の合間から顔を出しているりせは媚びた笑顔を見せつけながら亀頭にさらに磨きを掛けようと念心にキス。

 

「凄いよねー。色も黒光りしてるし玉も竿もバキバキだし。れろれろーん」

 

千枝は竿を根本から先端に向けて舐め上げつつ、下から手を伸ばしてゴールデンボールをクニクニと弄ぶ。

 

三人の濡れ光るピンク色の唇と舌が、レロレロと俺のマーラ様にまとわり付いている。

4Pでの潜望鏡フェラ。

ああっ全てが最高だっ!

 

「やっぱりボクも混ぜて下さいっ」

 

我慢しきれなくなった直斗がその生白い双乳を揺らしながら俺の上半身に抱きついてくる。

パンパンに張り詰めたロケット乳を顔に押し付けてくる直斗。

昼間のコンテストで発情して乳が溜まり、早く吸い出して欲しくて堪らなかったようだ。

望み通りその朱鷺色の勃起した乳首に吸い付いてやる。

 

「んちゅーー」

 

「ああんっ」

 

耳に響く直斗の喘ぎ声。

直斗の甘い乳をゴクゴクと飲んでいると、自然と腰がグングンと突き上がる。

 

突き上がるマーラ様に動きに合わせて、美少女たちの唇と舌も必死に追随してくる。

羽化登仙の心地の中で体が自然とびくびく震え、マーラ様がペルソナ液を激しく噴出した。

射精の気持ち良さの中、薄めを開けて腰の方を見ると千枝と雪子とりせの三人が嬌声をあげながら争ってそれを口で受け止めていた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:20>

 

一発抜いて少し落ち着いた。

千枝と雪子とりせの三人は俺のペルソナ液を啜って満足気である。

直斗の方も俺に両方の乳を吸われてまったりしている。

 

お湯の中で四人と躰を絡めながら談笑。

しばらく温泉を普通に楽しむ。

 

「二人ともあの部屋で平気なのか?怖くない?」

 

直斗とりせの部屋が山野アナの部屋であることを思い出し尋ねてみた。

 

「ちょっと気にはなりますね。雪子先輩からの電話で黒電話が鳴ったときは正直ビビっちゃっいました」

 

「あの梁に張ってある御札とか不気味過ぎ~。先輩絶対夜私たちだけにしないでね。約束だよっ」

 

ぴとっと張り付いてくる直斗とりせ。

 

「もちろんだっ」

 

「「やんっ」」

 

二人を抱き寄せ乳を揉んでやる。

すべすべの肌と弾力ある乳の感触にマーラ様がまた励起し始めた。

まだ時間はあるだろう。

次は四人に尻を突き出させて鶯の谷渡りといこうか・・・。

 

「ねぇ先輩。そろそろー、しちゃおっか」

 

目ざとくマーラ様の勃起を見つけたりせが、マーラ様に手を添えながら顔を寄せて蠱惑的に囁いてくる。

 

「ずるいりせちーっ、アタシが一番先だってのっ」

 

「ご、ご褒美・・・」

 

千枝と直斗が慌てて我も我もと自己主張してくる。

そんな中、雪子がいきなり突飛な提案を出してくる。

 

「ねぇみんな、泳ぎましょうよ!」

 

はぁ?という怪訝な表情を浮かべる千枝。

 

「いきなり何言ってんの雪子?」

 

「あっちの淵まで行って戻ってきて、最初にご主人様のマーラ様にタッチした人が優勝。負けた人の順番が一番最後ってのはどうかしら?」

 

わくわくっとした表情で雪子が熱く語っている。

 

「その勝負乗った!面白そうっ」

 

勝負好きのりせが嬉々として賛同の意を表した。

 

「ぼ、僕も負けませんから!」

 

直斗も負けじと参戦。

 

「まあいいけど~。でも自分から勝負を持ちかけてくるなんて、随分自信あんじゃん雪子」

 

確かに千枝の言うとおりだ。

そんなに泳ぎたいのか雪子。

 

「私小さいときからこの露天風呂で泳いでるから。えへへ」

 

ふと思いついて尋ねてみた。

 

「今も泳いでるのか」

 

「えっと」

 

「否定しないんだ・・・、雪子」

 

千枝が呆れてる。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:30>

 

四人のベッティングで俺のマーラ様は再びギンギンとなり傲然と屹立している。

今は淵に腰掛けている俺のマーラ様に四人の細い指が絡まり、ゆっくりとシコられてる状態。

 

「じゃあ第一回天城屋旅館杯・棒倒しゲームを開始しますっ!悠せんぱーい、ちゃんとマーラ様おっ立ておいてね。すぐ戻ってくるから。ちゅっ」

 

りせが頬にキスしてくる。

 

「じゃあいくよ。これから三コスリ目が終わったらスタートね」

 

ギュッとマーラ様を握りながら千枝がルール確認。

 

「向こうの淵まで行って戻ってきてフェラを始め、一番多く先輩のペルソナ液を口に含んだ者が勝者。皆さんそれでいいですね」

 

勝利条件を改めて告げる直斗。

 

「うんっ、じゃあ行くよっ、いーちー、にーいー」

 

雪子の掛け声に合わせ、全員が声を合わせて俺のマーラ様をその細い指でシコる。

 

「「「「さんっ!」」」」

 

一気にマーラ様から指が離れ、四人の白い裸体が跳ねるように湯の合間に消えていく

 

<<<<ザバーンッ>>>>

 

「うわっぷ」

 

波をもろに顔面に受けて湯を飲みそうになる。

そんなにムキにならなくても全員ちゃんと可愛がってあげるのに・・・。

怪我だけはして欲しくないな。

 

とにかく四人のレースの行方を見守ろう。

女同士の過酷な戦い、脚の引っ張り合いとなっているようだ。

まだ誰も向こう岸にまで辿り着いていない。

 

<トントン>

 

ん?

 

誰かに肩を叩かれた。

反射的に振り返えるとそこには・・・。

 

「あ、あいかちゃん」

 

「まいど。なーにしてる?」

 

女中姿でタスキで袖を捲り上げたあいかちゃんがそこにいた。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:40>

 

結局このレース、誰も勝者には成れなかった。

敢えて言えばあいかちゃんが勝者だろうか。

 

千枝、雪子、りせ、直斗がクタクタになってこちらの淵まで戻ってきたとき、俺の姿はそこには無く。

慌てて俺を探す四人は、温泉の外、月光の下であいかちゃんにフェラられている俺の姿を湯の中から呆然と見上げることになる。

 

悠々とフェラを終えて俺のペルソナ液を堪能した後、あいかちゃんのお説教タイムが始まる。

 

「お風呂場、セックス、禁止」

 

「え~、そんな~」

 

りせが不平を口にするが、その至極まっとうなあいかちゃんの注意は受け入れざるを得ない。

 

「あ、あははは」

 

「と、当然ですね」

 

笑って誤魔化す千枝。

素直に反省する直斗。

 

「あと、泳ぐのも、禁止なはず」

 

「ご、ごめんなさい」

 

雪子はあいかちゃんの更なる追撃に恥ずかしそうに小さくなっている。

バイトに怒られる若女将の構図。

いろいろダメである。

 

一回のフェラだけでは口止め料にとても足りない。

他の皆を先に上がらせ、あいかちゃんの露天風呂掃除を一人手伝うことにする。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 20:55>

 

一人分の仕事を二人でやる。

当然速攻で露天風呂の掃除は終わった。

さてそろそろ板場に戻らないと。

 

「ヒック」

 

ん?

あいかちゃん、シャックリ?

 

「ヒック。ん、大丈夫。行って」

 

なかなか止まらないようだ。

心配だったが、あいかちゃんに押し出されて露天風呂を出る。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 21:00>

 

あいかちゃん、シャックリ止まったかな。

 

そんなことを考えていたら露天風呂から調理場に移動する途中、葛西さんにぶつかりそうになる。

何やら彼女の方も心ここに在らずな様子だった模様。

 

「雪ちゃん大丈夫かしら・・・」

 

雪子がどうしたのだろうか。

 

「何かありましたか?」

 

「前に取材に来たTV局がまた押しかけて来たの。雪ちゃんが応対に出てくれてるんだけど。心配で」

 

あのTV局の番組プロデューサ、赤いキツネ事件で左遷されてたはずなのだが。

今更何の用だろう。

 

「わかりました。俺も行ってみます」

 

雪子一人では荷が重いかもしれない。

心ない暴言を浴びせられて心が傷つかないよう、俺が彼女を守ってあげねば!

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 21:05>

 

「「「お願いします!」」」

 

「そんなこと言われましても・・・」

 

玄関に行くと予想と違う光景になっていた。

 

あの悪徳プロデューサーの姿は無く、TV局側のスタッフは皆女性。

チーフと思わしき若い女性が先頭切って土下座しそうな勢いで雪子に対して頭を下げている。

困っている雪子。

 

「雪子、どうした?」

 

「ご主、ンンッ、悠君あのね」

 

話を聞くとこの人たち、この前来たTV局のスタッフではなく、そのTV局に番組制作を委託されてる番組制作会社の社員だそうだ。

先頭の若い女性は番組制作会社ソレスタルビーイングのプロデューサーのスメラギと名乗ってきた。

 

何でもTV局から報道番組用に稲羽市絡みで一本映像を撮ってくるよう急に依頼され、さらに局のお偉いさんから天城屋旅館の若女将を口説き落とすよう指示があったらしい。

 

「うちってすっごい弱小制作会社なの。この仕事失敗したら会社倒産するかもしれないのよ。助けて欲しいの!お願いします!」

 

それはそちらの都合であって天城屋旅館が協力しなければならない義理は全く無いのだが・・・。

ちなみにどんな映像を撮りたいのだろう。

 

「えっと、若女将、雪子さんでしたっけ。あなたの一日の仕事を撮らせてもらって、あなたの仕事を通して天城屋旅館がどんな温泉なのか紹介していく形式を考えています。もちろん八十稲羽の隠し湯の魅力をアピールするような内容をドンドン盛り込んでいくつもりよ」

 

話を聞く限り真っ当な撮影のようだ。

それにこのスメラギさんという女性プロデューサー。

この前のプロデューサーと違って至極真面な人間に見える。

 

「どうしたらいいと思う?」

 

雪子は迷っているようだ。

再び客寄せパンダになってしまうのは嫌なのだろうが、山野アナの一件以来若干だが売上が落ちているのも事実なのだ。

経営判断的には受けるべき話であり、雪子も本当はわかっている。

 

「それくらいなら天城屋の宣伝にもなっていいんじゃないか。もちろん最終的にどんな内容になってるかはチェックさせてもらうのは当然だけど」

 

素直に思ってることを伝え、雪子の背中を押してやる。

そのまま雪子の判断も撮影を許可する方向に傾きそうになるが、俺たちが思っている以上にスメラギさんは誠実な人だった。

苦しい愛想笑いを浮かべながら、天城屋旅館にやって来た真の目的をゲロって来た。

 

「あのっそれでねっ。もう一つお願いがあるんだけど・・・。雪子さんが入浴してるところも撮らせて下さい!お願いします!TV局への納品の条件として魅力的な入浴シーンが絶対に必要なのよ!」

 

「え、えーっ!?」

 

無茶過ぎるお願いなのはスメラギさんもわかってるようで、両手を合わせて必死になって拝んでくる。

 

「そんなの無理っ、無理ですからっ!お断りしますっ」

 

「大丈夫だって!うちの会社のスタッフ全員女子なのっ。撮影も女子だけでするっ。雪子さんとっても美人だし絶対に綺麗に撮るからっ」

 

大方TV局のお偉いさん、美人で巨乳なスメラギさんを追い詰めて枕営業させるために無理難題を彼女の会社に押し付けたのだろう。

TV的に現役女子高生女将の雪子の柔肌の映像が欲しかったのも真実ではあるのだろうが。

律儀に女性スタッフだけ引き連れて稲羽市までやって来たスメラギさんも生真面目なものである。

 

しかし・・・。

 

「甘いな、甘すぎる」

 

「「えっ」」

 

「TV局は視聴者のことを何もわかってないっ。そんなんだからネットに負けっぱなしなんだ」

 

自然と憤りが口をついて出てくる。

 

「何が言いたいのっ?」

 

「スメラギさんでしたか。この特集が流れる番組は何時に始まるんですか?」

 

「十八時からの報道番組の予定よ。それが何かっ?」

 

然もありなん。

 

「雪子、最近の天城屋旅館の客層で一番多い年齢層と性別を教えてやれ」

 

「うちは家族連れのお客様が一番多いんです。あと最近の傾向としては年代を問わず女子会のグループでのご予約も増えて来てますね」

 

つまりだ。

 

「十八時過ぎの夕飯時のTVなんて仕事で忙しいオッサンはほぼ見れないはず。つまり視聴者のメインは主婦層。家庭で財布の紐を握ってるのはその主婦。そして女子は温泉好き。そんな主婦層が女子高生の入浴シーンを見て旅情をそそられると本気で考えてるんですか!?」

 

「それは・・・」

 

「必要なのは若い娘の裸なんかじゃ無い!主婦たちが求めてるのは若い男のセクシーな腹筋だっ!」

 

スメラギさんを喝破する。

 

「「た、確かにそうかも」」

 

雪子共々この場にいた全員が俺の言葉に一理あると思ってくれたようだ。

 

「で、でも若い男のモデルさんなんて直ぐには手配できないし・・・あっ」

 

スメラギさんは俺が言いたいことを察してくれたようだ。

 

「・・・キミを、キミを撮れっていうの?」

 

「視聴率が取れる素晴らしい絵が用意出来れば、女子高生じゃなくても誰も文句は言わないでしょう。【俺を撮って下さい】」

 

堂々と雪子の代役に立候補してやる。

 

「ご主人様、ホントにいいの?」

 

そっと寄り添って尋ねてくる雪子。

 

「問題ない。この天城屋旅館のために一肌脱ぐくらい何時でも覚悟は出来ているさ。それにこれは必要なことなんだ」

 

「え?」

 

フッ。

真犯人の挑発にはきちんと応えてやらないとな。

 

「・・・わかったわ。望むところよ。改めてこちらからもお願いします。キミの裸、撮らせてちょうだい!」

 

スメラギさんも一発逆転を狙う覚悟が決まったらしい。

早速女将さんも交えて撮影のための契約書を交わす。

撮影は明日一日で終わらせる予定だそうだ。

 

「朝一でまた来ますので。明日はよろしくね」

 

そう告げてスメラギさんはスタッフを引き連れて撤収していった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 22:00>

 

板場の掃除を終え、本日の業務も無事終了。

約束通りりせと直斗が泊まっている部屋を訪れる。

 

「「ヒッ」」

 

襖を開けると布団の上で互いに身を寄せ合い抱き合って怯えているりせと直斗の姿があった。

二人とも目を丸くしてこちらを凝視している。

 

「どうしたんだ?」

 

「ふぇ~ん、センパーイ、オバケ怖いよ〜」

 

「悠先輩、バカバカバカっ!遅いですよっ」

 

近付いたら涙目の二人にガバッと縋り付かられた。

 

「この部屋、四方八方から女の人の啜り泣きの声が聞こえるの~。え~んっ」

 

「ボクだって非科学的なことは信じてません。でもっ怖いものは怖いんですっ」

 

女の悲鳴と泣き声だって?

耳を澄ます。

 

<オーイオイオイ><ンオオオン>

 

<アアッンンッ>

 

<シヌーッシンデシマウーッ>

 

<ハァウ、ンンンンッ、アアー>

 

確かに天井と左右の壁、畳から女のモノと思わしき声が漏れ聞こえて来る。

低い声から高い声までいろいろだ。

背筋に戦慄が走る。

 

山野アナの怨霊とでも言うのだろうか。

そんなバカな!

 

いや待て。

この声って・・・。

 

一つ冷静になって考えてみよう。

この部屋の上下左右の部屋には誰が泊まっているのだったか。

そうか、そういうことか!

 

「フッ。大丈夫だ。安心しろ。この声は怨霊なんかのものじゃない」

 

縋り付いて柔らかい体を押し付けてくる二人を愛おしく思いながら抱きしめ、優しく断言してやる。

 

「じゃあこの声なんなのっ?先輩」

 

「この部屋の両隣。JUNESの花村と早紀さんともう一組のカップルが男女別に泊まってる。大方パートナーを入れ替えたんだろう」

 

「えっと。つまりこの悲鳴って、・・・エッチの声ってことですかっ!?」

 

「ああ。下の部屋には一条とエビが泊まっている。どこもお盛んなことだ」

 

「やだっ。そういうことだったんだー。もー紛らわしいんだからー」

 

「くっ。そんな大事なことは最初から教えておいて下さいよっ」

 

りせと直斗はホッと一安心したようだ。

文句を口にするだけ元気が戻ってきている。

 

「じゃあ先輩、上の部屋には誰が泊まってるの?いちっばん煩いんだもんっ。むかつくー」

 

りせの言うとおり、確かに一番耳障りな嗚咽が聞こえてきているのは上部屋だ。

確か・・・。

ああ、そうか。

あの二人か。

 

「宿帳には柏木と大谷って書いてあったな」

 

「柏木って、あの柏木先生のことでしょうか。先輩たちの担任の」

 

「大谷ってあの身の程知らずのミスコンに出てたデッブイ人?」

 

あの二人、この宿によくプチ傷心旅行で泊まりにくるからな。

まず間違いないだろう。

 

「大方お前たちにボロ負けして二人でボロ泣きしてるんじゃないか」

 

本物の女の魅力がわかる男がいないっ!とか妄言吐いてそう。

 

「なんだー、もう怖がって損した!せんぱーい慰めてよー」

 

「悠先輩、優しくしてくださいっ」

 

「よしっ、来いっ。そのかわり、周りみたいに声を上げ過ぎちゃダメだぞ」

 

二人の帯に手をかけ、帯回しを敢行。

 

「やめて下さいっ先輩っ、きゃあっ」

 

「あんっ先輩も好きねー。あーれー」

 

「よいではないかよいではないか」

 

男なら誰もが憧れる経験をしてしまった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 22:30>

 

「おっやってるやってる」

 

仕事を終えた後、温泉に入って汗を流していた千枝が合流して来る。

 

「あっあっあっ、イクぅ」

 

ビクビクビクッ。

後背位で子宮を小突き回されていたりせの白い背中がググッとエビ反りになる。

数秒間恍惚とした硬直を堪能した後ゆっくりと崩れ落ちていった。

 

「はぁはぁはぁ」

 

その隣では正常位で犯されながら両の乳房を吸い尽くされ、息も絶え絶えな直斗がコロンと転がっている。

二人共躰を開発し過ぎたせいか感度も上がってすぐイク体質になってしまい、最近は堕ちるのも早い。

二人がイッた回数は二桁を軽く越えていたが、俺の方はまだ一回ずつ注ぎ込んだだけである。

マーラ様はまだまだペルソナ液を吐き出したくて猛っている。

 

りせの引き締まった腰とのジョイントをヌポッと解くと、待ってましたとばかりに千枝がホカホカのマーラ様にしゃぶりついてきた。

 

「れろれろっ、あたしの方はもう準備出来てるから。んちゅ、露天風呂誰もいなかったの。それでこっそりオナニーしてきちゃった。えへへっ」

 

少し照れながら笑顔でエロいことを言い出す千枝。

人懐っこくて快活でいじらしい千枝がお風呂場で俺に犯されること想像してムズムズしてきちゃって一人オナニーとか。

た、たまりません!

 

「あんっ」

 

千枝の浴衣の裾を割り開いて跳ね上げ、片足を抱き上げて一気にマーラ様をぶっさす。

 

「あああんっ、キ、キモチいいーーーーっ」

 

持ち上げた脚がビンっと天を蹴りあげ。ググッとマーラ様が締め付けられる。

どうやら千枝はぶち込まれただけでイッてしまったようだ。

千枝もイキやすくなったなー。

体力的に余裕があるためりせや直斗よりも保つだろう。

だがこのまま千枝を犯し続けていたら二人が回復する前に千枝もヘタってしまうかも。

 

「雪子は?」

 

ふんっふんっと腰を振って千枝を悦ばせながら、ここにいないもう一人のセックスパートナーについて聞く。

 

「あんっあんっ、明日の仕込みのっ、ああんっ、打ち合わせが終わってから、くぅ、来るってー。くうううっ」

 

小アクメの連続でバチバチと意識がスパークしながらも、千枝はなんとか俺の問いに答えてくる。

 

「あひぃ、す、凄いよぉー」

 

マーラ様の突進に押され、ガクガクと躰を震わせながら大アクメに突き進んでいく千枝。

その甘い鳴き声もどんどん高まってくる。

 

「くうううっ、あっあっあっあっあああっ」

 

もともと武闘派の千枝は肺活量が多い。

それに最近の発声練習の成果もあって声が良く通るようになっている。

 

「くふぅううう・・・んはぁあああああああんっ」

 

「千枝っバカッ声大きすぎっ」

 

「んんんっ、ごめんなさいっ、でも気持ち良すぎて声が止まらないのぉおお、んんっんんんんんっ」

 

喘ぎ声を抑えるために枕に齧りついて顔を埋めた千枝が目元をバラ色に染め、切なさいっぱいの流し目で己の得ている快感の大きさを訴えてくる。

その様が可愛過ぎて俺も腰の動きをクールダウンさせることも出来ない。

 

<アアアアンンンッ>

 

<イクゥウウウウッ>

 

<ヒィヒィイイイッ>

 

千枝の喘ぎ声に感応したのか、周りの部屋から聞こえる啼声も一段と強まりを見せていた。

反響する嬌声に煽られて俺たちの理性の箍もあっさり外れてしまうまで、そう時間は掛からなかった。

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月30日SUN 晴 23:15>

 

上下に重なっているりせと直斗を交互に犯していく。

 

「ああああーーんっ」

 

まずは上の直斗をイカせる。

 

「んっんっんんんっひああ」

 

次に下のりせ。

 

千枝がヘタバッて再びりせと直斗を抱き終わった頃、やっと雪子が部屋にやってきた。

白い肌襦袢姿での登場で気合が入っている。

 

「ご主人様、まだ出来るよね」

 

「ああ。待っていた」

 

抱き寄せてキスする。

千枝と同じように温泉に入り直してきたようで、その嫋やかな躰から漂う石鹸の香りが鼻をくすぐる。

 

「お疲れ様、今日は上がるの遅かったな」

 

「うん。明日の撮影の件の打ち合わせとか、膣圧をアップするための勉強とかしてたから」

 

いきなり雪子の口から予想外の言葉が飛び出してきた。

 

「ち、膣圧?」

 

前半の打ち合わせは納得出来るけど、膣圧って。

何を言い出してるんだろうこの娘は。

 

「私、テレビの世界に落とされて、そしてご主人様に抱いてもらったでしょ。あのとき自分の膣が名器だってご主人様に教えられて嬉しくて。でもそんなのは生まれ付きなだけで、自分の技できちんと悦ばせてあげたいって思ってたの」

 

「その決心がパイズリテクを向上させたわけだ」

 

確かに雪子のパイズリテクは他の追随を許さない。

唯一これからの大幅な成長を期待出来るのは直斗くらいなのだが。

まだあのデカい乳を使いこなせているとは到底言えない。

 

「うん。でね。自分の膣は別にこのままでいいだって。一度は前じゃなくてアナルを集中的に鍛えようかとも思った」

 

お尻をクイッと捻ってアナルを強調してくる雪子。

確かに雪子のアナルは前に比べると慎ましやかで開発甲斐があったな。

 

「不思議ね。自分でバイヴを入れてオナニーしてみたら、膣がとても大切で鍛えるべき場所だったって感じるようになったの」

 

雪子が頬を染めて俺の胸に顔を埋めながらバイヴオナニーを告白してくる。

そう言えばいつも使ってるバイヴ、一本見当たらないと思ったら雪子が持って行ってたのか。

 

「私気付けて良かった。このままご主人様に可愛がられるだけだったらきっと後悔してた。自分の膣は名器なんだからそのままでいいだって思ってたんだけど、そういうのって凄くおこがましいってやっと気づいたの」

 

これまで任せっきりのセックスをさせてしまっていてごめんなさいと謝ってくる雪子。

 

「若さがあって筋力があってまだ出産を経験してないから今のあたしの膣があるんだよね。そう思ったらあたしの膣って今だけの問題じゃない。あたしはあたしの意思でここでもご主人様を悦ばせられるようになろうと思う。きっとご主人様たちと過ごした時間がそういうこと気づかせてくれたんだと思う」

 

彼女は己が出産を経験した後のセックス強度まできちんと計算しているようだ。

雪子は己の股間に手を当てつつ、晴れ晴れとした表情で膣圧アップのトレーニングを開始したことを告げてきた。

 

ただでさえ気持ちよすぎる雪子のアソコがさらに気持ちよくなるのか。

期待と恐れが入り混じって胸がワクワクドキドキしてきた。

 

ゴクリ。

自然と唾を飲み込む。

いいだろう、望むところである。

 

「じゃあその成果、見せてもらおうか」

 

「そのっ、まだトレーニング始めたばっかりだからっ。・・・幻滅しないでね」

 

「優しくするよ」

 

「うん。明日も頑張れるようにご主人様のエネルギー、たっぷり注入して欲しいな。んんっ」

 

肌襦袢の帯を解きながら改めてキス。

そのまま雪子を押し倒し、このまま繋がるか尋ねる。

 

「んんっ、入れちゃう?」

 

「んちゅっ、えっとわたし騎上位で試してみたかったんだけど」

 

困った顔の雪子。

彼女の希望と違ったらしい。

 

いかんな。

雪子の膣圧アップの決意表明で浮足立って、肝心の以心伝心が出来てない。

 

「悪い」

 

一言謝ってゴロリと体位を変える。

 

「んふっうふふふふ、あはははっは。わ、悪い、あはははは。あんっんんんんんっ」

 

何がツボに入ったのかわからないが、いつもの大笑いを披露しながらもマーラ様に向かって腰を下ろしてくる雪子。

その笑いはすぐに喘ぎ声に変わっていった。

 

 

 

 

 

<YU SIDE 2011年10月31日MAN 晴 11:00>

 

「じゃあ鳴上君、いくわよ。準備はいい?」

 

「ええ」

 

露天風呂での撮影。

本番開始前、スメラギさんが声を掛けてきた。

 

腰にタオルを巻いたまま湯に脚を入れる。

 

ほんとにスタッフ、女性しかいないんだな。

見回すとみんな若くて可愛いスタッフばかり。

現場は華やかな雰囲気になっている。

確かにこれなら女性の演者でも緊張はしないだろう。

 

ただ今回の被写体は裸の俺。

俺の方は複数の女の子に裸を見られるのは慣れているのだが・・・。

女性スタッフたちの方が男の裸に緊張しているようだ。

男の裸を見るのも撮るのも慣れていないのだろう。

 

なんかもっと見せつけてやりたくなってくる。

 

いや、いかんいかん。

撮影に集中しないと。

これはただの撮影ではないのだ。

 

"コレイジョウタスケルナ"

 

つい10日ほど前、何者かが俺のマンションの郵便受けに脅迫状を投函してきた。

それ以降何も動きはない。

当てが外れてつまらない。

 

「じゃあいくわよっ3、2、1」

 

ならこちらから犯人に対して揺さぶりを掛けてやろう。

スメラギさんには悪いが・・・。

この機会、上手く利用させてもらう!

 

 

 

<SYSOP 2011年10月31日MAN 晴 --:-->

 

JUNESのハロウィンフェアは天城屋旅館での壮行会のお陰で大成功し、社内で花村陽介の株が上がります。

花村陽介と相部屋だった社員と小西早紀と相部屋だったバイトは無事結ばれ、この一夜が原因で出来婚します。

天城屋旅館に恋花温泉の属性が付与されます。

カップルの喘ぎ声に当てられて柏木典子は天城屋旅館を使用しなくなります。

カップルの喘ぎ声に当てられて大谷花子は天城屋旅館を使用しなくなります。

番組制作会社ソレスタルビーイングは鳴上悠専属の女性向けAV撮影会社として業界に確固たる地位を構築していきます。

天城雪子の膣が名器から超絶名器にランクアップしました。

 

中村あいかのペルソナ液摂取量が限界を越えました。




しかしP4GAは面白いですね。
でもマリーをerosuna4に組み込むのは至難の業だなと。


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