プリキュア5の世界に転生しました…悪役サイドだった者ですが。 (クルミ割りフレンズ)
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番外等
本作オリジナル設定集(必要があれば更新)
サブタイトルにある通りこれからも必要が出てくれば更新するかもしれません。
【ウェザート(人間態:上里 象気)】
本作の主人公。転生して早々に5編のラスボスであるデスパライアに幹部へとスカウトされたヤベーイ奴。
前世の事は憶えている部分ははっきりとしているがソレ以外は殆ど思い出せない。特に名前などの個人情報など。
しかしプリキュア、その中でもシリーズ中最も好きな『Yes!プリキュア5』に転生出来た事が分かった為に特に気にしていない。
プリキュア5大好きおじさんとでも呼べる人物。前世ではプリキュア限界オタクであったが転生してウェザートになった事、デスパライアとの出会いなどにより一周回って落ち着き、丁寧語や普段の行動によって周囲から見れば紳士的な人物に見える(錯覚)
プリキュア達の為になるなら倒されても良いとすら考えていたが自分がなまじ強すぎて倒されるビジョンが浮かばなかったので結局寝返る事を決めた。
プリキュアと同程度に特撮も好きで自分で変身の掛け声を考えたり、会話に特撮の名言を入れたりするなど結構痛い前世30代。
元々は適当に仕事して中盤位でプリキュア側に寝返るつもりであったが、割と仕事も出来て周囲に気を遣える人物だったが為に短時間でデスパライアに気に入られる。
かなり人情にも流されやすいので自分に良くしてくれ続けたデスパライアの下を去るのがギリギリになったのはその為。しかし結構な割合でうっかりしている為意外な場面で足を掬われる事もある。
全てが終わった後に結局自身の優柔不断さが色々な人物を傷付け悲しませた事を悔いてプリキュア5の前から姿を消して影から見守るか考えたが2秒で辞めてその後の展開を知っているので別の方法を思いついた。
5編最終話では一旦彼女達と別れたが裏でコソコソ、表でコソコソして『上里 象気』という人間と肩書を作り学園まで追い掛けて来たやっぱりヤベーイ奴。それでも教師としての必要な知識や能力を1ヵ月あまりで習得するなどその執念は確かなもの。
実力は描写される機会が少なかったが原作では撃破率100%を誇る『プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン』をほぼ能力を使わずに身体能力のみで受け止め、片腕を僅かな負傷に抑えた程。
能力はありとあらゆる気象現象を操り、使い方次第ではその場に留まりながら各地方に局地的な異常気象を引き起こし甚大な被害を齎す事が可能。まぁ本人にはその気は更々無いため注意する必要は無い。
本性はあくまでも怪人態、人間態は弱体化する代わりに省エネ・気配も殆ど人間と同じになる。
怪人態は御存じの通り『ウェザー・ドーパント』と同じ姿をしているがその本質は全くの別物。『ドーパント』がガイアメモリを人体に挿入する事で変身する怪人なのに対しウェザートは気象現象の記憶そのものが受肉したような存在。ガイアメモリから態々出力しない為『ウェザー・ドーパント』よりも高い出力、広い能力範囲を得ている。その反面手加減という行為がそもそも苦手な為劇中行った様に力を分割でもしないと手加減に相当困る。最初にプリキュア5と戦っていた時は滅茶苦茶気を付けながら相手をしていた。
本作では100%・70%・30%の形態が登場したが変化するのはあくまで出力と能力が及ぶ範囲程度。100%ならば本気を出せば地球全域に影響を及ぼせる。70%・30%ならば其々大陸レベル、一国レベルとなる。
ここまで記述して100%と比較すると規模が違い過ぎる様に感じるがその理由は『仮面ライダーオーズ』に登場する『オーズ』や『グリード』のコンボ・完全体に近い性質を持っている為。
100%になると出力や能力の影響範囲が大きく拡大するのはその為。
『ウェザート固有能力』
・【
日差しや雨、風などの自然の気象現象を受ける事で僅かではあるがエネルギーに変換する能力。変換されたエネルギーは攻撃や回復に回せるが微々たるものなので実践的ではない。強いて記すならば戦闘終了後に傷の回復速度を上げたりなど。
あくまでも自然の気象現象に依る能力なので室内・作られた空間などでは全くの無力になる能力となる。しかし、もし何らか影響であらゆる気象現象が集まってくれば...?
・【
自身を中心に全ての気象情報を瞬時に収集・解析・接続できる能力。噛み砕いて説明するなら超正確で随時更新され続ける天気予報。
例えば雨の降っている地域でウェザートの能力を被せればソレは相乗効果によって今まで人類が味わった事も無いような規模の暴雨へと変貌させる事ができる。この様に自分で作り出すのと元からあった天候に能力を被せるでは訳が違う程の破壊力が瞬時に出せる。
また、別の使い方として全ての気象情報とリンクさせている状態ならば最悪肉体を破壊されても時間は掛かるが気象情報から肉体を再構成させる事ができる。この能力を封じるには地球上の全ての天候を消す必要がある。
・【スノー・ガーディアンズ】
ウェザートが再生能力を持つコワイナーからヒントを得て作り出した雪だるまのゴーレム。自立思考は持たないがウェザートの命令や予め入力した『妨害』や『防御』を積極的に行う雪人形。「ユッキー」と鳴く。
実体は雪で出来ている為破壊されようが削られようがウェザートが雪さえ降らせていれば欠片から瞬時に再生・増殖していく。弱点として戦闘能力は皆無な事と熱で解けると再生も増殖も出来ないという事。しかし攻撃に関してはウェザートが担っているので問題無い。
総括するならウェザートが雪を降らせているという前提条件があるが脆く弱くその癖無制限に再生して増えていくとてもしぶとい雪だるまのゴーレム。
元ネタはFGOのアヴィケブロンの話に出て来たスノーゴーレム。
・【力の分割】
ウェザートが強すぎる自分の力を何とかしようしたら出来た事。
劇中では解けない氷で出来た胡蝶蘭という形で一時的にプリキュア5側に預けられた。力を悪用される事も当初考えていたがカワリーノに奪われるまですっかり忘れており、彼女達が持って来なければ割と積んでいた状況。
光が彼女達を導いたのは力の持ち主であるウェザートのピンチに呼応した結果。
・【必殺技】
自身の持つ気象現象の記憶のエネルギーを最大限増幅させた状態。早い話が『マキシマムドライブ』。
気象現象全てだけでなく雷だけ、日照りだけ、雨だけなどの記憶のエネルギーで放つ事も出来る。全ての気象現象の記憶を纏めて放った場合はかなり殺意マシマシな状態。
『ウェザーメモリ』
キュアドリームに返された氷の胡蝶蘭がウェザートの手に渡った事で変化したもの。この時はウェザートの力の70%を保管しており、ガイアメモリの形になったのはウェザートが持つ無意識の形にしやすい形状がソレだった為。
ガイアウィスパーこそ鳴ったが挿さずにそのまま吸収されたのもその影響。
『プリキュア5ウォッチ』
ウェザートが転生した折に最初から所持していたブランクライドウォッチから変化した。ウェザートが最初にプリキュア5と戦った時に最後に全力である【プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン】を受けた後、その力の残滓を吸収してブランクの状態から変化して生まれたウォッチ。
何時の日か役に立つと思いウェザートが所持し続けていた。変化した直後からプリキュア5と常に同期し続けている為彼女達が強くなればなるほどウォッチも強くなる。また彼女達の希望が強くなればなるほどにあらゆる闇にも打ち勝つ希望の光を放ち続ける。絶望を力とする者はこの光だけでダメージを負う。このウォッチが無ければウェザートは絶望の闇から抜け出す事は難しかった。
本来の持ち主であるプリキュア5の手に渡る事で5つに分かれ、スーパープリキュアに強化変身させた。5つに分かれても出力が5分の1になる事は無く、5人で1つのプリキュアである彼女達とリンクする様に総合的にパワーアップする。
1つの状態ではピンク・赤・黄・緑・青からなる5つの蝶の絵が描かれている。現在は力を失った様に色を失っており、ウェザートは本来の持ち主ではない自分が長時間使い続けたからではないかと考えている。
小山〇也の声でプリキュア5と言う状況は傍から見ると非常にシュール。
NEW!【漆黒のローブの男】
5GOGO編にて新たに出て来たオリジナルキャラ。
本来ならばこの世界には存在し得ない強烈な毒素を持つガイアメモリも造り出す事が出来る。
エターナル陣営に所属しているがどうやら利害一致の関係らしい。本作の主人公、ウェザートに対して並々ならぬ憎悪を抱いているようだが...?
矛盾してたらごめんなさい。基本的にその場のノリで書いてます。
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オリジナル設定集2
【オリジナルドーパント設定】
本作に登場または名前だけ出てきたウェザートが倒したオリジナルドーパントの設定。
『カメラ・ドーパント』
Yesプリキュア5の登場人物である増子美香が強制的にカメラメモリを挿入されて変身したドーパント。登場自体は5GOGO編第2話。
見た目はティーレックスドーパントや親子丼ドーパントみたいな2頭身系のドーパント。色は全体的に黒く、腕は19世紀に使われていたスタジオカメラの様な形状で伸縮自在。手足の指は巻いたフィルムになっている。
8×10インチの撮影した場所を抉り取る能力がある。その他にも伸ばしたフィルムによる拘束なども可能だが発揮される事は無くメモリブレイクされた。
『エドモントニア・ドーパント』
恐竜エドモントニアの記憶が内包されているエドモントニアメモリを挿入する事で変身するドーパント。名前だけ登場したが本編未登場。
建設作業員が実験的にメモリを挿入されて強制変身させられた。エドモントニアの要素を全面に出したような重厚でガッシリした見た目。戦い方はバイオレンス・ドーパントの様な肉弾戦が得意。肩部から3対の湾曲した槍の穂先の様な棘が生えており遠距離の相手にはこの棘を発射して応戦する事が可能。
スピードが無い分物理的な破壊力と装甲を持っており近接戦が得意な相手には辛い敵。しかし相手が悪く物理のみならず冷気や電撃、熱射を自在に操るウェザート相手にはなす術なく倒され描写すらされなかった。
『ダイアリー・ドーパント』
日記の記憶が内包されているダイアリーメモリを挿入する事で変身するドーパント。名前だけ登場したが本編未登場。
比較的メモリとの親和性の高い人間にメモリが渡された為暫くは意識や理性を保っていた。しかし度重なる使用により理性が薄まりそのメモリ使用者特有の万能感や元々持っていた欲望が刺激され悪事に走った。
自身の力を日記に憑依させる事でその日あった出来事を日記に記した人物からその日の記憶を奪う事が出来る。奪った記憶そのものはメモリ使用者の経験として蓄積される為例えばスポーツ選手から記憶を奪えばそのテクニックすら再現する事が可能となる。この人物自体は記憶が狙いだったのでは無く他者から記憶を奪うという行為そのものから快楽を得るタイプの人間だった。
能力を使用するにはドーパントになる必要があった為その時にウェザートに察知され倒された。戦闘能力自体は紙の形をしたエネルギーを飛ばすくらいで高くないが奪った記憶を使う事である程度補強出来る。
メモリブレイクされた事でメモリ使用中の記憶を失っているが後遺症として毎日その日起こった事を日記にしなければ記憶を保持する事が出来なくなってしまった。しかし後日デトックスメモリをウェザートに使用された事でこの後遺症も消えた。
『マンティス・ドーパント』
昆虫カマキリの記憶が内包されたマンティスメモリを挿入する事で変身するドーパント。名前だけ登場したが本編未登場。
戦闘方法はカマキリヤミーとほぼ同じな為割愛。恋人に別れを切り出され意気消沈していた女性が黒いローブの男から渡されたメモリを使用して変身した。
メモリ使用直後に理性が消失してしまったが、まだ恋人を愛していた女性の精神とカマキリの本能が融合した事で執拗に恋人を捕食しようとする怪物に変貌してしまった。
恋人の方はいきなり怪物に襲われ喰われそうになった為このドーパントの正体が自分の彼女だとは分からなかった。騒ぎを聞きつけてやってきたウェザートが直ぐにメモリブレイクしたが恋人の方は混乱に乗じて逃げた為最後までドーパントの正体が彼女であるとは知らなかった。
『フォルスラコス・ドーパント』
恐鳥フォルスラコスの記憶が内包されたフォルスラコスメモリを挿入する事で変身するドーパント。名前だけ登場したが本編未登場。
怪我により選手生命が絶たれたキックボクサーが黒いローブの男にメモリを渡され使用した。自身を早々に見限った事務所やスポンサーに復讐しようとしていた。
乗用車程度ならサッカーボールの様に簡単に蹴り飛ばせるだけの脚力とスピード、頑丈な骨格を獲得している。当初の目的は復讐だったが怪我による不自由さを感じさせない身体能力に酔いしれるようになり結果としてただ暴れるだけの怪物と化してしまった。最後はウェザートに氷漬けにされた上で雷撃を喰らいメモリブレイクされた。
『リゾフォラ・ドーパント』
秋本こまち の姉、秋本まどか が黒いローブの男によってマングローブを構成する植物の1つヒルギの記憶が内包されたリゾフォラメモリの実験台にされた事で変身したドーパント。登場自体は5GOGO編第6話。
黒いローブの男によって出力や毒素の影響を調節されたメモリの実験台にされた事でメモリ本来の力を十二分以上に引き出してしまった。通常形態では全身が根で覆われており、背中からヒルギの幹が生えている。街中に根を張り巡らして車や建造物、道路すら絡めとってしまう程に成長。
単純な攻撃では全身から伸ばした根を振り回す。地面から呼吸根を槍の様に突き上げて串刺しにする。遠距離攻撃では枝から果実を射出するなど遠中近に対応した攻撃手段を持つなど戦闘力は高い。射出された果実は地面に落ちると直ぐに発芽し数秒程で人型の植物といえる見た目の怪人に成長する。体の一部が千切れてもその欠片から再生し増殖してしまう為完全に消し去るには焼き尽くすしかない。
《巨大形態ジャイアント・リゾフォラ》
リゾフォラ・ドーパントへ変身し、沈みこんでいた秋元まどか の精神がキュアミントの呼び掛けにほんの僅かだが反応した事で精神とドーパントの肉体が互いに拒絶反応を起こした。その結果生み出した植物怪人をエネルギーとして吸収し完全に暴走し変異した形態。
のぞみ達が暮らす街の時計塔と同程度の大きさまで変貌し、まだ人型だった最初の形態から完全に巨大な植物型になっている。幹に付いている目は左右で上下に位置がずれており不気味さが増している。
根による攻撃は変わらず行ってくるが面積とリーチが長くなってパワー、スピードが上昇している分迎撃より回避に専念した方が良い。新たに枝による攻撃を行ってくるようになっており、果実は射出しなくなった変わりに緑色の光弾を発射してくる様になった。
新たな能力として海水を呼び寄せる能力を獲得した。この能力の真の力はヒルギである己はどれほど内陸であろうと自身が存在している周囲は海であるという事実を逆説的に証明する事である。街中で発動しようものなら物の数分で海の底である。
【真相】
ヒルギには果実から人型の怪人を作ったりその破片から増殖するような力も無ければ海を呼び寄せるなどもっての他である。これらの能力はメモリによる物では無く秋元まどか自身が覚醒させた能力だった。つまり秋元まどか は限りなくハイドープになりかけていた。
秋元まどか自身は長期間の人体実験と毒素によりウェザートの介入が無ければ長くは無かった。だが仮にまだ体への負担が少なければこれらの能力を生身で行使可能に、つまりハイドープに完全に覚醒していた。
本格的に挿絵したいけど絵心ががが。
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オリジナル設定集3(少な目)
【漆黒のローブの男】→【ウェザストル】
5GOGO!編から登場したオリジナルの敵キャラ。本作主人公であるウェザートに対して並々ならぬ憎悪を持ち、何度もドーパントを差し向けて来た張本人。
その正体は嘗てのウェザートの力の欠片。カワリーノに奪われ、ウェザートに回収されなかった小さな欠片に『完全になりたい』という欲望が発生した事で周囲の絶望の力などの所謂『闇の住人が持つ力』を代替として吸収し続けた者。
本来ならば消え行くだけの存在でありウェザート本人も気付かなかった程の小さな欠片でありその損失分も時間経過で補填されてしまうような量だった為尚更気付かれ様が無かった。
外の世界に脱出した後は暫くは明確な意思など持っていなかったが『闇の力』を回収し続けた事で悪意に塗れた感情を獲得し、自身を回収し忘れ自分を完璧にしてくれなかったウェザートに対して強い憎悪を抱くようになった。
姿形や声は勿論の事元がウェザートの一部であったが故に特定の事に対して執着心が強く、目的の為なら他の者がどうなろうとあまり関心を抱かない。この部分はウェザートはプリキュア5やデスパライアと関わるうちにある程度改善されている。時折り語尾を少し伸ばすよう癖も共通。
ウェザストル自身は『闇の力』によって力が増幅されているとは言え元が欠片である為『ウェザー』の力だけではウェザート相手では分が悪く、単純な力比べでは敗北してしまう。その為自身を構成している『闇の力』と取り憑いた物の力を起点にして様々な力や特徴を発揮するエターナルボールをヒントに得てガイアメモリを製造する。
使用者の事など何一つ考えていない前提で製造している為毒素がかなり強いが反面出力もオリジナルのガイアメモリたちよりも高い。人体実験とも言えるドーパントからデータを取得してある程度調整する事でウェザストルに適合するガイアメモリを複数作り出している。つまりウェザストルがこれまでばら撒いて来たメモリは完全にデータを取る事を前提した粗悪品でもあり使用者が死のうがそれでウェザート相手に嫌がらせが出来るのなら丁度いいくらいにしか思ってない。
そうして完成したメモリを自身に使用する事でウェザートとの差を埋めようとしているテクニカルタイプ。それに反する様にウェザート本人は基本ウェザーの力によるゴリ押しのパワータイプ。
この性質を持っている為にウェザートと違い『成長』という強みがある。戦いが長引けば長引く程厄介になってくるタイプの敵。ウェザートと同様に体の何処かに核となるガイアメモリがある訳でも無いので一撃で諸共吹き飛ばすような攻撃か搦手でもない限り倒すのは難しい。ウェザートは絡めてが大の苦手である。
名前の由来は『ウェザー』+『デザストル(厄災・天災・災害)』+『デザイア(欲望)』
iPhone使ってるんですけどサブスクなんかの請求先のクレカが期限来たから新しいクレカ登録しようとしたら『フォームが全部入力出来てない』的な赤字が出てきて設定出来ずにまた気分が沈みました。最近こんな事ばっかです。
...プリキュアの世界にいけねーかな?なんて最近思うようになってます。あと数年で30なのにね。
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5編
第1話 プリキュア5の世界に転生?ならばぁ答えは一つぅ!
始めましての方は始めまして、お久しぶりですの方はお久しぶりです。約一年二次創作から離れていたので文章力などに関しては言わずもがなです。
最近U〇EXTで昔のプリキュアを見返してたら我慢出来なくなってやっちゃいました。特にYes!プリキュア5は当時私がリアルタイムで一番見ていたプリキュアシリーズとして思い出深いです。
プリキュア5の中では誰が一番?って聞かれると非常に難しいですが強いて選ぶならかれん/アクアです特に一期です。もう肩がエチエチでゲフンゲフン。でも好きな技はドリームのクリスタル・シュートですね腕で口元が隠れる瞬間がなんかかっこいいです。
転生って本当に存在するんですねぇ等と感想を抱いたのはもう何年も前ですねぇ。いえね、自分が前世という世界で生涯を終えた記憶はぼんやりと存在しているんですが何ともあやふやなものでしたので。
でも問題はあの時の自分の状況ですよ。えぇえぇ戸惑いましたとも勿論、だって気付けば何処とも知らない場所に一人ポツンですよ。しかも自分が人間じゃなくなってるのが何となく分かってしまうんですから冷静に混乱(矛盾)していましたよハハ。
そして自身の前に掌から【冷気を放射して氷の姿見】を作り出し自身の〝現状″を確認しました。【ウェザー・ドーパント】でしたよ...いや何故?とも思いましたが何とか飲みこみました。
次に自身の今後の展開を考察しました。何故か?怪人に転生してしまっているのなら本編の【ウェザー・ドーパント】よろしく敵役として命を落とす可能性です。確かに一度死んだ身とはいえ死ぬのは怖いのですから。とりあえず仮面ライダー的な存在がいるなら極力関わらないようにしようと決めました。当初は味方になろうとも考えましたがそれだと敵対している存在に命を狙われてしまうかもしれませんからねぇ。
ただ完全に自分が【ウェザー・ドーパント】なのかというとそうでもないようで、怪人態から人間態へと自由に切り替えが出来るようでしてガイアメモリが排出されない...そもそもウェザー・ドーパントの方が本性だったらしく、人間態はあくまでも擬態のような状態でした。つまり怪人としての【ウェザー・ドーパント】はあくまでもガイアメモリを使用した人間であり、私の現在は【ウェザー・ドーパント】の姿と能力を持った正真正銘の怪物という事です。
次に自身のこれからを考えていた時です、目の前に突然昏く禍々しい靄が出現しその中から変な仮面を付けた女性が現れました。その時私が(えっ、怖っ!)って思ったこと悪くないと思います。
そうかここは〝YES!プリキュア5″の世界なんだなって分かりました。っていうか〝YES!プリキュア5″の〝デスパライア″でした。いえ今は立場上デスパライア様ですが、とにかく何でだか知りませんがその場でデスパライア様にヘッドハンティング?されました。とりあえず職には困らず済みそうで助かりました。
いえいえ、いえいえいえいえ。そうではなくてですね、その時に重要な事を決めました。
こんな【ウェザー・ドーパント】擬きの怪物が真面に
ゲフンゲフン話が逸れました。デスパライア様にスカウトしてもらった直後に幹部にして頂きました。何でも私からは隠し切れない程に大きな力を感じるのだとか、まぁライダー2人がかりでやっと互角に持ち込んだ怪人ですからね強さは折り紙付きです。
立場としてはブンビーさんより上というか専務です、ナイトメアの中ではかなりの新入りなのですがこうも待遇が良いと少々恐ろしいですね。
因みにやけにカワリーノさんには目の敵にされてるっぽいんですよねぇ。ナイトメア内ではカワリーノさんと同格だとかデスパライア様に次いで強いだとか噂されていますがどうなんですかね。いつか黒い仮面被らされませんかね?
時間軸としては既にパルミエ王国は既にナイトメアによって滅ぼされているようです。これはこれで良かったかもしれません、いくら後の展開の為とはいえぬいぐるみの様な可愛らしい種族を必要以上に甚振るのは流石に心が痛みますからね。
職場は和気藹々とはいきません、物理的にも概念的にもブラックですからね。
まぁその分ブンビーさんのコミカルさが目立って面白いのですが。
あっ因みに前世の名前は憶えていないので【ウェザー・ドーパント】改め【ウェザート】と名付けましたのでよろしくお願いします。
「こんにちは、ブンビーさん。仕事の進捗はいかがですか?」
「ぉあ!う、ウェザートさん!こんにちはですハイ!そのぉドリームコレットは未だ見つからず...。」
というと冷や汗流しながらペコペコしだすブンビーさん。別に威圧している訳ではないのですがこの反応面白いですね、いやいやここは優しい上司風で行きましょう。見た目とか完全にブンビーさんの方が年上ですけど。
「そんなに畏まらないで下さいブンビーさん。私は確かに貴方たちの上司という立場ですがナイトメアではかなりの新顔、そこまでされてはやりづらいというものです。」
「いえ、しかしそういう訳にも...。」
「まぁまぁ、それは追々。それとこちら良かったらどうぞ、美味しい紅茶とクッキーです。お口に合えば良いのですが。」
「おお!これはどうもありがとうございます。毎度毎度良くして頂いて。」
「お気になさらず、少しでも現場の皆さんの士気に繋がって頂ければと思いましてね。それでは失礼しますよ。」
っとまぁ毎回こんな感じにブンビーさんやその部下たちと話したりしています。今は流石に力の抑え方を覚えましたが初期の駄々洩れを知っている人達からは凄くビクビクされます。怖がらないのなんてデスパライア様にカワリーノさん、ブラッディさんくらいですかねぇ。ハデーニャさんは苦手です、私が。
さてと最近アルバイトのガマオ君が入って来ましたしそろそろ本編が始まる時期なのでしょう。
当面の間は私もデスパライア様の為にドリームコレット入手という使命がありますが私とデスパライア様の間には
立場上現場に行く事はあまりないかもしれませんが早く
やりたい事オリ主に取らせたい行動は山ほどあるのですがそれを文章に起こす程の能力が無いのが一番の問題です。
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第2話 プリキュア5接触!さぁ始めましょう、暇と痛さのパジェントを!
Yes!プリキュア5で一番好きな話は37話です。のぞみのココへの信頼がとても良く感じれる回ですよね。
あれからかなり時間が経ちました、というかギリンマさんが敗れました。なんならプリキュア5全員強化技覚えている頃だと思います、時間飛び過ぎだろと思われますけど立場上早々現場に行けないんですよね。
その代わりに自室で
しかしまぁそうこうしている内にやっとデスパライア様直々に辞令が下りましたよ。内容を要約すると【プリキュアたちが何故強大な力を前にしても絶望せず希望を見出せるのか調査せよ】との事です。珍しくドリームコレットを狙えとかではないのだから少々驚きましたが、どんな暗闇の中でも希望を見出したプリキュアという存在を改めて脅威と認識したのでしょう。
彼女たちは5人で1つのプリキュア、それをバラバラにするというカワリーノさんの作戦は良い線行ってたみたいですが唯一の誤算は一人でも希望を再び持ったならば周囲のプリキュアにも伝播して行くという事でしたね。なんなら本人が毎回口上で言ってましたしたよ「大いなる希望の力」だと。
さてと、では行くとしますか。時期としては30話と31話の間あたりですかね。私の初の
颯爽とスーツの上に羽織ったコートを翻して行く私、キマッタァ...。
◇ ◇ ◇
所変わって私の目の前にあるこの建物、そう『ナッツハウス』です。
しかし、ここまで近づいても感知されないという事はやはり私は他のナイトメアの方たちとは出自が異なるのもあるのでしょうが、所謂〝純粋な″闇の住人では無いようです。
では少し深呼吸して突入です。あぁやっとプリキュア5に会える!いざ!!
「こんにちは。」
「こんにちは!いらっしゃいませ!」
うおおお!最初に迎えてくれたのは元気溌剌 のぞみちゃん です!はぁ~生きてて良かった、いえ一度死んでますけどね。
兎に角平常心ですよ平常心、ぶっちゃけオ〇ナミンCより元気貰えて顔面崩壊しそうです。眼すら動かさないように周囲を確認すると丁度お客さんはいませんでしたが他のメンバーの皆さんもいるようです。ヨキカナヨキカナ
「このような所にアクセサリーショップがあったのですね、初めて知りました。」
「そうなんです!少し前に出来たんですよ。女性のお客さんは良く来て頂いてるんですけど男の人のお客さんって初めてです!」
今度は うららちゃん に話し掛けられました。はぁあ!アイドルやってるだけあってプリキュア5の中で一番年下なのにしっかりした雰囲気と可愛さが混在している!
それにしてもなるほどアクセサリーショップに加えてハンサム店長が揃っていれば女性客が集中してしまうのは当然ですね。そうくれば必然、男性のみは寄り付きにくいでしょう。
「なるほど...おや貴女アイドルの春日野うららさんではありませんか?」
「え?私の事知ってるんですか?」
「えぇ、お恥ずかしながらこの歳でファンになってしまいました。時折テレビでお見掛けしています。CDも購入させて頂きましたよ。」
「うわあ!ありがとうございます!」ペコリ
さすが輝く乙女!油断したらみるみる内に此方が浄化されそうだ!
まぁ、うららちゃん だけではなくプリキュア5全員のファンなのですけどね。フフフ
「そうですね、此処にこうして来たのも何かの縁。貴方が店長さんですか?商品をいくつか買わせていただいても?」
「ええ、そう言って貰えるとありがたい。何を買われますか?」
「生憎と私はそういった知識に疎いものでして。よければ店長さんや皆さんでいくつか見繕っていただけませんか?」
「俺は構わないが、皆もいいか?」
『Yes!』
おお!凄い生の、それも戦いでもない状況で「Yes」が聞けました!
今日は仕事で来たのですが非常に良い思い出が出来そうです。のぞみちゃん・りんちゃん・うららちゃん・こまちさん・かれんさんは勿論ナッツさんとココさんも選んでくれています。ミルクさんは人間態になれないので2期に期待です。
男の私でも持ちやすい落ち着いた物を選んでくれたようです。これってファンからしたらかなり嬉しいお土産ではないでしょうか?
「お待たせした、こちらの商品です。」
「ありがとうございました、では代金を。待たせて頂いている間店内の商品を拝見させて頂きました、どれも素晴らしいものだ。」
「ありがとうございます。全部ナッツや私達で作ったものなんです!」
うっはあー!のぞみちゃん、その笑顔が私には効く!これはココさんが落ちたのも納得ですねぇ。
ふう、お土産(自分用)も買いました。心苦しいですがお仕事を始めましょうか。
「そうでしたか、皆さんが。ではまた次に寄らせていただいた時も何か買わせていただきますね。それでは」
『ありがとうございました。』
「おっと、私とした事が大事な事を忘れていました。」
『??』
フフフ、皆さん「どうしたのだろう?」という顔をしています。
そう、ここです!ここで出来る悪役(笑)ムーブです!
「いえね、とても とても大事な事を忘れてしまう所でした。」
「大事な、事?」
「えぇ こうすれば、分かっていただけますか?」
◇ ◇ ◇
のぞみ達は今日は珍しく暇を持て余していた。朝からナッツハウスを手伝っていたがお客はチラホラとしか来なかったからだ。いつもなら沢山の女性客が訪れるが今日はその何分の一といった程度であった。
しかしそんなのんびりしていた中不意に店の扉が開かれて一人の男性が入ってきた。言わずもがなナッツハウスはアクセサリーショップ、男性客自体が珍しいというより見た事が無かったのだ。
人間に化けたココやナッツと同程度の高身長にスーツの上からコートを羽織った優し気な目元の男性。ココやナッツ、家族やそれに近しい存在以外ではあまり男性と関わりが無い彼女たち。無論ナイトメア達は論外であり、男性の持つ柔和な雰囲気には好感が持てる。
自身の年齢を気にしてか、うらら のファンだと言う男性は恥ずかし気に頬を綻ばせている。それを見てのぞみ達やココ、普段無愛想なナッツまでも口角を緩ませる。
記念にとアクセサリーを買いたいと言う。自身ではそういった事柄に疎いから自分達に選んで欲しいと言われ張り切って選ぶ事にする。その瞬間のみだが男性が一際嬉しそうになったように感じたがのぞみはその考えを直ぐに脳内の隅に追いやった。普段なら派手だったり華やかな物を勧めたりするが今回は男性、年齢は30代前半といったところでとても紳士的だ。選ぶのなら普段と趣向の違う物でなければならないだろう。ならばと同じ男性であるココやナッツ、頼れる先輩である こまち や かれん に相談しながら決める事にした。実家が花屋で手伝いをしている りん も通じるものがあるのか のぞみ と うらら にアドバイスをくれる。
全員でそれぞれ選んだ物を男性に渡すと余程嬉しかったのか先程とは違うように頬を綻ばせる。
たったこれだけのやり取りではあったが此処にいた皆が男性に好感を抱いていた。男性は次に来れた時はまた何か買わせてもらうと言い帰ろうとする。
しかし何かを思い出したと言って立ち止まった。「なにか忘れ物かな?」などと考えていると男性は先程と同じ優し気な笑顔のまま振り返り、
「えぇ こうすれば、分かっていただけますか?」
全身が総毛立ちココとナッツに至っては元の姿に戻ってしまう程のドス黒く禍々しい力を発する男性がいた。
◇ ◇ ◇
おぉっと久しぶりで加減を間違えてしまいました。ココさんとナッツさんの擬態が解けてしまいましたし。
「あなた、一体誰!?何なの!?」
「質問にお答えしましょう。私の名は【ウェザート】、ナイトメアの刺客にして幹部。つまり貴方がたの敵という事です、以後お見知りおきを。」
「ウェザート...ナイトメアの幹部!」
良し!超強そうな敵として振舞えましたよ!序でに名前も覚えてもらった。他の人達みたいに毎回毎回ナイトメアって呼ばれるのはゴメンですからね。プリキュアに名前を憶えて貰えるなんてウルトラハッピーってやつです。
「ナイトメアでお前みたいな奴見た事ないココ!」
「それはそうでしょう。私がナイトメアに加入したのはココさん、ナッツさん、ミルクさん、貴方達の故郷であるパルミエ王国が滅ぼされた後なのですからね。」
「ナツ!?何故今になって出て来たナツ!今まで色んな奴がコレットを狙ってきたのに何故今更ナツ!」
「立場上の問題です。私は幹部の中でも最も位が高いのです。故にそうそう現場に出られなかった。しかし最近になってデスパライア様から直々に命令があったので来た次第です。」
「「で、デスパライア!?」」
デスパライア様の名を聞き震えるパルミエ王国出身の方がた。無理もありません、故郷を滅ぼしたナイトメアの総帥なのですから。
依然彼女たちはこちらを警戒の眼差しで見つめ続ける。あぁそんな目で見られているとゲフンゲフン!
「それじゃあ今度はあなたがドリームコレットを奪いに来たという事ね!」
「「そんな事させないんだから!」」
今までのナイトメアの人達同様コレットを奪いに来たと思った かれんさん 。そしてそんな事はさせないと叫ぶ りんちゃん と うららちゃん。
おっと今回は違うという事を言っておかなければ、どうせ闘う事になりますが。
「いいえ、それは違います。今回はドリームコレットが目的ではありません。」
「ドリームコレットが狙いじゃないなら何が目的!」
のぞみちゃん にそう聞かれて彼女たち指差しながら答える。
「貴女たちですよ、プリキュアの皆さん。端的に申しますと私と戦って頂きます。」
「私たちと戦う事が、目的ですって。」
「えぇそうですよ。キュアアクア、水無月かれん さん。私としても貴方たちにこんなにも素晴らしい物を頂いておいて心苦しいですが。」
私が言った事に皆が眉を顰めて怪訝そうに此方を見る。まぁ今までのナイトメアの皆さん大体趣味が悪かったりしますからねぇ。一般的に綺麗だったり素晴らしいと言えるものをそう思わないと言えば分かりやすいでしょう。
「怪訝そうですが本心ですよ。他の方はどうか分かりませんが私の感性は一般的ですよ。だからこそこの様に美しい物が揃っている此処で戦うのは本意ではありません、故に。」パチン
そう言ってフィンガースナップをすると周囲が荒野の様な景色へと一気に変わる。一種の結界の様なもので私が闇の住人(仮)になった事で習得した能力のようなものですね。結構便利で使い勝手が良いんですよ。
プリキュアの皆さんは最初こそ戸惑っていたようですが直ぐに闘いの目になりましたね。やっと生でアレが聞けます!見れます!
「行くよ!みんな!」
「「「「「プリキュア・メタモルフォーゼ!」」」」」
「大いなる希望の力! キュアドリーム!」
「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」
「はじけるレモンの香り! キュアレモネード!」
「安らぎの緑の大地 キュアミント!」
「知性の青き泉! キュアアクア!」
「希望の力と」「「「「未来の光」」」」
「「「「「華麗に羽ばたく5つの心 Yes!プリキュア5!」」」」」
素晴らしい!!これこそが私が見たかったプリキュア5だ!それが今真の意味で目の前にいる。ただ変身しただけだというのに力が随分と増したのを確かに感じる!思わず拍手などしてしまいましたよ。あっホラ、プリキュア5どころかココさんたちまでキョトンとしているじゃないですか。
「素晴らしい、これがプリキュア!これが希望の力ですか!なるほど、これほどの輝きならばどのような暗闇の中でも絶望せずに希望を見出せる筈です。」
「あなた、何でそんな事を...。」
「おや意外ですか?言った筈ですよ、私は感性は普通だと。素晴らしいものを見たのなら称賛を送るのは当然です。」
「だったら何故こんな事をするの!貴方たちがこれまでして来た事がどういった事か分かるでしょう!」
「簡単な話です、貴女たちがプリキュアで私がナイトメア。闘う理由としてはこれで十分です。」
あぁ、ここに来てはっきりと改めてプリキュアと敵対するのだという現実を受け入れているとちょっぴり表情が沈んでしまいました。
「あなたやっぱりそんなに悪い人に見えないよ。私たち話し合ったら分かり合えないかな。」
「...少々話しすぎましたね。構えなさいプリキュア5、私も行くとしましょう。」
危ない危ない のぞみちゃん の説得で瞬間的に「プリキュア側に味方します。」とか言ってしまうところでした。ふぅ~
話は変わりますが皆さん、特に特撮なんかを良く見ている方。変身する時に掛け声がある作品ってあるでしょう。その中でも私は怪人・疑似ライダーたちの掛け声が好きなんですよ。「培養」「蒸血」「潤動」「実装」という風に「変身」とはまた違ったカッコよさがあって好きなんです。
そこで私考えたんですよ、いつか私もやってみたいって。ドーパントにもあれば良かったんですけど、生憎とドーパントは平成2期の最初の怪人。そんな掛け声はありませんでした。代わりに本来はガイアメモリのガイアウィスパーが名前を言うんですがね。しかし諦めきれなかった私は虹色の脳細胞を総動員してオリジナルの掛け声を編み出しました。そして今こそソレを披露する時!
強者風の雰囲気を醸し出す事でプリキュア5やココさんたちは先程よりも表情を引き締めました。そして静かに、しかし確かに周囲に聞こえるように
「想覚」
その一言と共に私の周囲を雷や冷気、強風に熱波と豪雨という無駄に派手なエフェクトで覆い【ウェザー・ドーパント】の姿に変身する。変身するだけならこんなエフェクト無いですよ、ただ格好つけたいだけです。
「さぁ始めましょう、プリキュア5。手加減するので本気で掛かって来なさい!」
親に男なのにプリキュア見てるのって言われましたよ。そんなものは偏見だ!
30,40過ぎても見てる人いるんだから私なんてまだまだです。
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第3話 戦う異常気象
早くもネタが尽きかけて来てますが頑張ります!
「さぁ始めましょう、プリキュア5。手加減するので本気で掛かって来なさい!」
ドーパントの姿になった事で漸く彼女たちも本編中の様な構えを取りましたね。その後キュアドリームを筆頭にプリキュア5が私目掛けてやって来ました。
初期のプリキュアは基本的に拳や蹴りといった打撃が主体。私が完全に怪物になった事が分かる様に彼女たちの常人を超えた連打を目で追えています。時に躱し、時に受け流し、時に受け止め押し返す。
やはりプリキュア、素晴らしい!彼女たちはプリキュアとして闘って来てはいますがプロと比較すれば素人のソレの筈、粗削りながら動きも申し分ない。5人それぞれがカバーする事で良い連携が出来ています。
さて、このまま彼女たちとの応酬を繰り返すのも良いですがそろそろ【ウェザー・ドーパント】の力を使うとしましょうか。その方が私の脅威と私自身を良く覚えて頂けるでしょう。
「はああぁぁ!」
「キュアドリーム、動きは悪くありませんが貴女は少々動きが直線的過ぎる。故にこの様に少し慣れれば簡単に受け流してしまえる。」グルン
「うわあ!っく、はゅああぁ!」
私は突き出されたキュアドリームの拳を躱すと同時に彼女の腕を持って回転させました。ふむ空中で体を捩じって姿勢を元に戻しましたね。腕、柔らかかったです。
その後再度拳による連打を行ってきました。悪くはありませんが、やはりまだ青い。
「良いですかキュアドリーム、拳での攻撃というのは只管に続けて当てればいいというものではありません。敵が人型ならばその中心線、鳩尾などを的確に抉り込む様に穿ちなさい。このように!」
「きゃあああぁ!」
「ドリーム!このぉ!」
ドリームの攻撃を往なし続け僅かに距離が開いた瞬間に私とドリームの間に瞬時に人間大の氷塊を創り出しました。そしてソレに向かって正拳突きの要領で粉々に砕き破片を彼女にぶつけました。いえ流石に冒頭でも言った通り手加減してますよ?それに年端も行かない女の子相手に直接殴るのはアレですし。
まあそれでも勢いを付ける為に氷の礫で吹き飛ぶドリームに風を纏わせてちょっと後方に行って貰いました。プリキュアなら直ぐに起き上がってくるでしょうがね。
次にキュアルージュが来ました。親友のドリームが吹き飛ばされた事でかなりお冠なご様子です。そりゃあそうでしょうね。
彼女は元々優れた運動能力の持ち主。そういった動きに関してはプリキュア5の中でも最も高いでしょう。
「プリキュア・ルージュ・バーニング!」
ルージュの強化された必殺技が直撃しましたが【ウェザー・ドーパント】になった影響ですかね、こういった攻撃は私には殆ど効かないようです。
必殺技が直撃しても平然と立っている私を見て驚くルージュ。倒せなくとも多少は怯むなりすると思ったのでしょうね。
「キュアルージュ、貴女はプリキュア5の中でも卓越した運動能力の持ち主です。先程の必殺技までに繋げた攻撃のコンボは目を見張るモノがある。」
「ッ!!」
「しかし頭に血が昇っている状態では貴女の真価は発揮されず、通常よりも動きの質が落ち予想を超える展開には咄嗟の判断力を失い動きが一瞬固まります。更にその程度の熱では私にダメージは与えられません。真の熱とはこう使うのです。」
私はそう言うと太陽光を瞬間的に強め、雲で範囲を限定。空中に氷で出来た集光レンズを創り出しました。それによってルージュに向かってギリギリ当たらない位置に太陽光線が発射されます。
基本的に強力なだけの光なのに私がやると照射された位置で衝撃波が起こるんですよね。因みに当たった場所を確認するとドロドロに融けて一部ガラス化しています。
太陽光線の余波で偶然にもルージュがドリームが吹き飛んでいった方に飛ばされました。私がその方向に向かって歩いて行くと今度はキュアレモネードが私の前に躍り出ました。
「これ以上あなたの好きにはさせません!」
「プリキュア・レモネード・シャイニング!」
先輩二人を守る為に必殺技を放ってきたレモネード、このまま受けてもいいですが私もナイトメア。しっかり正しい敵として答えなければ。
「これなら!...そんなっ!?」
彼女からは直撃した様に見えたでしょうが、そうではありません。必殺技が当たる直前私は自身の周りに雷雲を発生させ、細かな雷撃で自身に当たりそうな光の蝶を全て相殺しました。
「キュアレモネード、貴女は小柄な体格を生かした小回りの利く動きが仲間へのサポートとして優れていますね。そして必殺技の拡散し向かってくる多量の蝶もそれに拍車をかけています。」
「単純な攻撃から目くらまし、そして後続の仲間への繋ぎへと多種多様。素直に称賛に値します。が、それはコワイナーなど大型の相手にのみ大きな力として発揮されます。拡散する攻撃の弱点として一撃の威力はそこまで高くありません。それこそ真価を発揮するには攻撃全てを直撃させる必要があります。」
「人間大の大きさ相手では全てを当てるのは苦手ですね?先程も防いだ以外の蝶は全て私を通り過ぎました。拡散攻撃とはこういう使い方もあるのだと知りなさい。」
「きゃあああぁ!!」
私は再び雷雲を創り出しました、今度は上空に。強烈な一撃では無く沢山の紫電による檻。後方にはドリームとルージュがいる為下がれず、細かな雷が逃げ場を無くします。勿論直撃は避けています。
「これ以上みんなを傷付けさせない!」
「プリキュア・ミント・シールド!」
私の紫電の檻はキュアミントの防御技によって防がれました。手加減しているとはいえウェザーの攻撃を防ぐとは素晴らしい!益々プリキュアのファンになってしまいます!
「流石ですね、キュアミント。貴方ほどの守護の力を持つものはナイトメアどころか世界を探してもそういないでしょう。」
「褒められても嬉しくないわ!」
「称賛は受け取って頂きたいですね。しかしキュアミント、貴女の守護の力は素晴らしいですがそれと同時に弱点がある。」
「貴女は護る事こそ得意だが逆に自らの攻撃力はメンバーの中でもとても低い。それに以前にも受けたでしょう?どんなに強力な護りでもここまで広範囲では一点特化の強力な攻撃には弱いという事を。こんなのはいかがですか?」
依然落雷を続けていた黒い雷雲が瞬時に白みがかった灰色の雲に変わる。そして今度は雷ではなく通天閣サイズの巨大な氷柱状の雹を一本降らせた。雹がミント・シールドに接触した瞬間轟音が響き、数秒間は拮抗してみせました。しかしその後直ぐにミント・シールドに罅が入り始める。焦りの表情を見せるプリキュア達、このままでは砕けるのも時間の問題でしょう。
しかし私が容赦無くこんな雹を降らせたのは訳があります。私が何かしようとする瞬間に駈け出した彼女を視界の端で確認しましたから。
その後ミント・シールドは破壊され消滅し誰もが目を瞑る中彼女が駆けつけました。
「プリキュア・アクア・トルネード!」
キュアアクアの必殺技はまるで生きている様に動き、最初に私の雹にぶつかり落下速度を減速させました。次にそのまま直ぐにドリーム、ルージュ、レモネード、ミントを包み込み回収すると安全圏である自身の元へ引き寄せた。
今日はずっと素晴らしいとしか言ってませんが本当に素晴らしい!とても器用な真似をしますね、強化前の技では威力の問題で巨大雹を減速させられない。強化後の技ならば減速させれても仲間の回収時に上手くコントロールが出来なければ仲間に余計なダメージを与えてしまう可能性がある。それをこの土壇場で上手くコントロールするとは流石です。私が最初にファンになったプリキュアなだけありますね、信じてましたよ!
「「「「アクア!」」」」
「今のは凄まじかったですよ、キュアアクア。私の巨大雹を一瞬でも押し留める水圧を操り、剰えソレで仲間を回収して助けるとは。一歩間違えれば回収と同時に仲間を傷付けかねませんが、その兆候すらなかった。攻撃・防御・サポートとどれを取っても他の皆さんと遜色ないパフォーマンスが出来る。やはり貴方は能力的に見てもプリキュア5の中で最もバランスが取れている。知性のプリキュアとして戦況を良く見る観察眼も評価できます。」
「しかし逆に考えすぎて状況を見極めようとして行動が遅くなる節がある。それこそが貴女が今この瞬間まで仲間を上手く補助出来なかった理由でもあります。」
「一つ聞きたいわ。何故貴男はそうやって私達の弱点を指摘するの?それではまるで私達に弱点を克服するように言っているようなものじゃない!」
おっと、調子に乗ってたら思っても無い質問が来てしまいました。流石生徒会長、疑問に感じた事は結構ズバッと聞いてきますね。それっぽい事を言って乗り切りましょう。
仰々しく両腕を広げて(端的に言えばす〇ざんまいです)語ります。
「最初貴方々のお店に来た時にも言ったでしょう。私は素晴らしいもの美しいものが好きなのですよ。貴方達やナッツさん達が作ったアクセサリーも小鳥たちの囀り、虫たちや木々のさざめきも壮大な花畑もその全てが私にとっては美しかった!」
「しかし私がナイトメアである以上貴方達と闘う以外に道は無い。しかしそれでも私は少しぐらい個人のエゴを通してみたくなりました。未だ個々の弱点を持つプリキュア5、もしソレを克服出来たなら貴女達の輝きは更に増すと考えました。」
良し!皆さん真剣に私の話を聞いてくれています。嘘ではないですが咄嗟に思いついた事にしては上手くいきました。
それに時間としてそろそろ潮時、分かれ惜しいですが次に会えるチャンスに期待しましょう。
「デスパライア様の命令ならば私は戦いましょう。しかし!それでも、私が戦っている間は私にのみ〝その″輝きを向けてもらいたい!いつか貴女達の
「それが私のエゴです。敵である貴女達にそう思ってしまう事はとても不躾な事だったでしょう。プリキュア5、次の一撃で今回は最後です。今出せる貴女達の最大の
「ッ!!行くよ、みんな!!」
「「「「 Yes! 」」」」
「「ミルク!プリキュアのみんなに力を貸すココ(ナツ)!」」
「分かりましたミル!ドリームー!」
まだアラクネアさんが倒されていないので早いと思いましたがプリキュアの皆さんが心を一つにした事でミルクさんが光り輝き始めました。ココさん、ナッツさんの後押しでキュアドリームの腕に抱きつくとブレスレットに変身しました。
私もいよいよ正念場です。果たしてアレを受けてどうなるか分かりません。ぶっちゃけ生き残っても倒されても私にとっては美味しい展開です。
キュアドリームの持つドリームトーチにルージュ、レモネード、ミント、アクアが持つルージュタクト・レモネードカスタネット・ミントリーフ・アクアリボンが合体し、ミルクさんが変身したブレスレットにスキャンさせることで一瞬で大空に向かって飛んでいき巨大化する。
それはとても神々しく、明日への希望へと飛び立つ大いなる蝶になって私に押し寄せる。
なるほど、こうして生で見て初めて分かります。これはプリキュア達だけではない。ココさんやナッツさん、人々やこの世に生きとし生ける全ての者の
「さあ来なさいプリキュア!貴女達の持つ本物の希望を私に見せてみなさい!」
生き残れば私の勝ち、この果てに滅びようともこれだけの輝きの前ならば私は喜んで消滅しましょう。
さぁ、どうなりますか?
個人的に何が一番しんどいって文章よりも太字色付け「」です。5人揃ってる時とかとか目がおかしくなりそうですよ。
勿論文章考えるのも大変なんですけどね。
ゴグ バンガゲスド ギョグゲヅバデデ ドデロダギゼン バゴギゴド バンゼグベ
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第4話 異常気象はプリキュア5がお好き!
今回は一区切りという事で短めです。
現状のプリキュア5の最大の必殺技【プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン】が両手で受け止めようと構えていたウェザートに炸裂。
時間にして数十秒拮抗した。プリキュア達にとっては数分にも数時間にも感じられただろう。かつて超獣化したギリンマを相手にしてもこの技をここまで受け止められなかったのだから。
その後以前よりも威力と輝きを増した大爆発、それでも油断せずに彼女達は後方を確認した。
煙と大量の虹色の蝶が晴れた後には.......
凍り付かせた左腕から煙を上げながらもウェザートがプリキュア5を見据えて立っていた。
プリキュア達は息を呑むしか無かった。普段のナイトメア達なら苦戦する事もあるコワイナーを使ってくる。しかし彼はそれどころかただ一人で今日何度も自分達の想像を遥かに超える実力を示し、剰え大技を耐えきってしまった。
いつもならどんなに苦戦を強いられてもメンバーの精神的支柱となり希望を見出すドリームですら言葉が出ず、驚愕や畏れのような表情を浮かべていた。
暫く未だに煙を上げ凍り付いていた左腕を見ていたウェザートが顔を上げ再びプリキュア5を見据える。
咄嗟に構えるがどうやら既に戦闘の意志は無い事が纏っている雰囲気から分かる。
「驚きましたよ、プリキュアの皆さん。痛みを感じたのは久方振りです。こうして腕を凍らせて治療しているのがその証拠です。」
「フフフ、ハハハハ!今のは今日一番の輝きでした。しかしこうして私は生きている、今日の所は私の勝ちですね。」
どこか嬉しそうに、まるで子供の様に喜んでいるウェザート。しかも勝てたからというよりも彼の言う自分たちの〝一番の輝き″を見れた事を喜んでいる様だった。
その喜び様にプリキュア達は呆けてしまい其々で顔を見合わせてしまう。
少しして自分の先程の行動を自覚してウェザートは態とらしく咳払いをして話を切り替えようとした。
「コホン!素晴らしいものを見せて頂いたお礼に一つ助言を。ドリームコレットのみがパルミエ王国を復興させる手段ではありません、とだけ言っておきましょう。」
その言葉にココ・ナッツ・ミルクがどういう事が尋ねようとするとウェザートはクルリと身を翻しナッツハウスに来店して来た時と同じ人間の姿になった。
「言ったでしょう、一つだけだと。しかし、まぁ時が来れば分かりますよ。」
「私の方もそろそろ時間です、それではまたお会いしましょう。プリキュア5、次に相見えた時はさらに貴女方の
懐から懐中時計を取り出し時間を確認するとそのままウェザートは去って行こうとする。
咄嗟にドリームは呼び止めてしまった。やはり理解出来なかったのだ、こうして敵対こそしたものの他のナイトメアの様な邪悪さというモノが感じられなかった。
「やっぱり分からないよ。あなた全然悪い人に見えないもん、よく分からなかったけど、こうしてココたちにアドバイスまでしてる。あなたがナイトメアにいる理由全然分かんない!」
「答える必要はありませんが...私は貴女達が思っているよりもずっと悪い
「それでは今度こそ、失礼します。」
ウェザートは恭しく腰を曲げて挨拶をすると彼の周りを濃い霧が覆っていく。霧が晴れればそこに既に姿は無く自分達も気付けば先程の荒野から元のナッツハウスへと戻ってきていた。
時間もそれ程経っておらず、全員で夢でも見ていたのかと思ったが足元を見ると『お土産のお礼です。』という一言の手紙と共に【解けない氷で出来たピンク・赤・黄・緑・青の胡蝶蘭】が置いてあった。
◇ ◇ ◇
戻って来ましたよナイトメア社。相変わらず鬱屈としてますね、まあ社員の9割方が絶望してるんだから当然ですか。
帰ってくる直前にお土産のお礼も渡しておきましたし、これで私の好感度上がりましたかね?
「ただ今戻りました。おやブンビーさんだけですか?」
「あ、おかえりなさいウェザートさん。いえ私だけじゃなくてですね...」
「私も居ますよ、ウェザートさん。」
あぁこの人も居たんですね。私この人苦手なんですよね、嫌いとかじゃなくて苦手です。
常に不気味な笑顔で何考えてるか分からず、掴みどころがありませんから。それ故にキュアドリームが絶望の仮面を破壊した時の焦り具合といったら内心愉悦ものでしたよ。
「聞きましたよ、ウェザートさん。貴方プリキュア達と戦ってきたそうではありませんか。」
「そうですが、それが何か?デスパライア様の命でしたので。」
「いえいえ、そこは問題では無いんですよ。ただ困るんですよねぇ。貴方が例の結界を張ったお陰で我々は何一つ見聞き出来ませんでした。」
「それこそ何も問題ありません。これは私〝だけ″がデスパライア様に命じられた事。必要な事は後日書類にして〝私が″デスパライア様に報告します。それとも貴方に何か不都合が?」
ここまで全て笑顔のやりとりです。でもこれだけ感覚的にも物理的にも室内の温度が急激に下がった様な気がします。
だからってブンビーさん今にも死にそうな青白い顔でガタガタ震えながら椅子の裏に隠れないで下さい、大丈夫ですから。
「いいえ、何も問題ありませんね。あぁそうそうその腕ですがどうされました?まさか貴方ともあろうお人がプリキュア〝如き″に敗けましたか?」
「いえいえ、この腕はギリンマさんが最後に倒された時の攻撃を〝態と″食らって受け止めた結果です。プリキュア最大の攻撃を耐えた、これは敗北とは言いませんね?」
「...そうですね。それでは私はお仕事がありますので失礼します。」
そう言って去って行くカワリーノさん、いえカワリーノ。私アイツの事苦手じゃなくて嫌いになりました。アイツ、プリキュアの事如きって言いましたよ!いつか個人的に絶対零度で氷漬けにしてやろうか。
おっといけないいけない。僅かながら怒気が滲み出たせいかブンビーさんが更に可哀想な状態に。
まぁ片やパルミエ王国崩壊の直接の原因を作った事で功績を認められ幹部になった者。片やぽっと出の実力者だというだけで最高幹部になった者。前者が後者を良く思わないのは当然ですし何ならデスパライア様と自分以外は全て使い捨ての駒程度にしか思っていないのですから私の事を許せないのも当たり前ですか。
「ブンビーさん、私も今日は少し疲れました。少し仕事を片付けたら今日はもう休みますね。お疲れ様でした。」
「あッハイ!お疲れ様でした!」
先の謝罪としてカワリーノ相手とは違う、せめてもの精一杯の笑顔で別れました。
それにしても今日はとても良い経験が出来ました!良い夢が見れそうです。
悪の組織にいる者の考える事ではありませんね。今に始まったことではありませんが。
ログジョドド ザベ ヅズブンジャ
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第5話 晴・天・喫・茶
あれからまた少し日が経ちました。プリキュア5との戦闘記録及び彼女達の
仮面を付けている為表情は窺い知れませんが、ご期待にはお応え出来たようです。
そういえばその後暫くしてブンビーさんの部署が解散したり新部署が出来たりアラクネアさんとガマオ君が倒されたそうです。
今回の褒美としてボーナスと数週間あまりの休暇を頂けました。
そういう訳で僅かばかりの仕事を片付けて私は今比較的ナッツハウスに近い場所にあるカフェテリアに来ています。運が良ければまた彼女達に出会えるかもしれませんからね。しかしこうして寛ぐというのも良いものですねぇ、プリキュア云々を抜きにしても充実した一時です。ナイトメア社に居ると暗い雰囲気でこうは行きませんから。
おや、おやおやおや。噂をすればなんとやら、仲良さそうに談笑しながら5人で歩いて来られてます。しかも のぞみちゃん 、こまちさん、かれんさん のバッグからは気配が其々1つずつ。ココさん達も一緒ですね。
相変わらず仲良き事は美しきかな。ふむ、向こうも漸く気付いて頂けたようです。こちらも目を合わせるとしましょう。軽く会釈してから座るよう目配せしました。
最初は軽く警戒していたようですが周りのお客さんの目もあるので のぞみちゃん が先陣を切りました。他の皆さんもそれに続きます、毎度思いますけどこの娘達の度胸ってどうなってるんでしょうか。
「ごきげんよう、皆さん。暫くぶりですね、ショッピングか何かの途中ですか?」
「アンタこそこんな場所で何してんのよ。また何か企んでる訳?」
「ちょっと りんちゃんっ。そんな言い方しちゃダメだよ。」
「ははは、構いませんよ夢原のぞみさん。夏木りんさんの質問にお答えするなら何も企んでいませんよ。私は今休暇中なものでして。」
まぁそりゃあ警戒されますよね。敵の幹部が休日にこんなに堂々とカフェでティータイムと洒落込んでいれば。
それでも此処は元々私のお気に入りのお店なんですよね。以前ブンビーさんに差し上げたお茶とクッキーも此処で買った物ですしね。
『休暇中!?』
「お静かに、他のお客さんも居られるので。」シー
『あっ、ごめんなさい。』
顔の前で人指し指を立てて静かにという様なジェスチャーをする。彼女達も声が少し大きかった事に気付き素直に謝罪されました。こういう素直に謝れるところは彼女達の一つの美点ですね。
しかしそうですね、
マスターと話した内容は普段使っていない奥の部屋を使う許可でした。このカフェのマスターとは懇意にしているのもあってこういう我が儘を聞いてもらえます。マスターに彼女達を改めて招いてもらいました。
「この部屋なら遠慮無くお話が出来るでしょう。隠れている皆さんも出てきても大丈夫ですよ。」
私の言葉にココさん達は頭を覗かせ出て来ました。ここは一番見た目的にも内面的にも大人な対応をするとしましょう。
「お話をする前に皆さん良ければ何か注文してはどうですか?」
「え、でもそれは...」
「遠慮なさらないで下さい、第一何も注文せずに長居というのもお店にご迷惑をお掛けしてしまいます。代金は私が持ちますので遠慮なさらず。」
私の言葉に「確かに」というような表情をする皆さん。のぞみちゃん と うららちゃん、ココさんとミルクさんは既に壁とスタンドに挟まれているメニューに釘付けです。
しかし他の方は未だ渋っているようです。注文するのは良くても私に奢られるのは抵抗があるのでしょう。ならば最後の一押しです。
「このカフェは私が貴女達プリキュアが現れる前から通っているお店なんですよ。和洋カフェという種類で和菓子と洋菓子、どちらも取り扱っていてどのメニューも絶品です。」
「洋菓子ならクッキー・ケーキ・チョコレート・シュークリーム、和菓子ならあられ、かりんとう、羊羹、豆大福と数多くの種類を扱っています。」
メニューを語る私を見て先程の方々は更に目をキラキラさせ、こまちさん はもじもじとしてナッツさんすら「ナツゥ...。」と言って りんちゃん と かれんさん を見上げます。お2人も仕方ないとばかりに互いに苦笑いしました。これでやっと注文して頂けます。私もエクレアのお代わりを注文したかったですし。
「本当に良いのかしら、全員分ともなればそれなりになると思うのだけど。」
「構いませんよ、それだけの持ち合わせはあるつもりですし。何かを頂きながらの方が落ち着いてお話も出来るというものですから。」
その言葉を皮切りに皆さんそれぞれメニューを見ながら注文内容を決めて行きます。まあ大体皆さん好物を注文されますよね。
「さて落ち着いて来た所で何をお話しましょうか。と言っても私もナイトメアの者、言える事には限度がありますが。」
「なら私から。私達はこれまで貴方達の仲間を3人倒したわ、それにドリームコレットを守る為に何度も貴方達の邪魔をして来たようなもの。それに対して貴方はどう思っているのかしら?」
最初から割と重い事聞いてきましたね、かれんさん。こういう事を聞いてくるのが彼女の凄いところですね。個人的にコレットに関しては結構どうでも良いんですよねぇ。原作通り話が進むならカワリーノが手に入れてデスパライア様に献上するでしょうし。
「2番目の質問からお答えします。私個人はそこまでドリームコレットに執着していません。前にも説明した通り立場上早々現場に行けませんので。勿論デスパライア様に命じられれば私も全力でドリームコレットを奪取しに行きますので。」
紅茶を一口含んでから再度口を開く。これが結構反感買いそうだから言いたくないんですけど、嘘も言いたくないですからねぇ。
「彼ら3人が倒された事、これに関しては0ではありませんが...そこまで大きな何か感じているかと言えば嘘になってしまいます。」
私の言葉に皆さん其々険しい表情、哀しい表情をされる。無理もありませんね、どんなに強くても彼女達はまだ中学生なのですから。
「そんな...確かに倒したのは私達よ。でも仲間を倒されたのにあまり気にしていないなんて...。」
「貴女は優しいですね、秋元こまちさん。敵である我々にもその様なお気持ちを向けて下さるとは。分かって頂けないでしょうが我々には皆さん程の仲間意識を持つ者は殆ど居ないのですよ。」
「闘うという事はどういう事だと、思いますか?」
敵であるナイトメアたる我々にもその優しさを向けてくれる こまちさん に一瞬ウルっと来てしまいそうになりました。
質問にしっかりと答えるために敢えて私からも質問を投げかけます。
「〝たたかう″という事、についてですか?」
「はい、春日野うららさん。貴方はどのような事を思いますか?」
「はっきりとは、分からないです。でも!私も のぞみさん みたいにココたちの夢を叶えてあげたい。その為にドリームコレットを狙うナイトメアと〝たたかう″って決めました!」
「良いですね、それは。それでこそ貴女達プリキュアと言えます。」
「なら次は私の考えを話しましょう。これはあくまで私の考え、貴女達に押し付けるものでは無い事をお分かり下さい。」
再び紅茶を一口含み一拍間を空ける。こうやって注目される事はやはりあまり慣れませんね。
「私は未だ貴女達とは一度しか闘っていません。しかしその一度の闘いで私は貴女達との闘いは命を懸けるだけの価値があると感じました。」
「命を、懸けるって...。」
「当然です、それだけの覚悟を持って挑むという事は当たり前です。戦場に立つという事は命のやり取り。自分が倒される事すら想定せずに挑むとは愚の骨頂。」
「そういう意味ではギリンマさんとアラクネアさんは称賛に値します。あの黒い仮面を自らの意志で着けたのですから。ガマオ君は、カワリーノに半ば騙される形で黒い仮面を着けましたから。」
私の話を聞いて皆さん少し暗い顔をされます。やはり皆さん未だ中学生、この様な話は少し重すぎましたか。
皆さんの為にも私はそろそろ失礼した方がよろしいですね。そろそろ失礼します。そう言って立ち上がった時に前と同じ様に声を掛けられました。
「待って!最後に一つだけ聞かせて、やっぱり何回考えても分かんなかった。あなたはやっぱり優しい人だよ、そんな人が何で酷いことばかりするナイトメアにいるのか分からなかった。だからどうしても聞きたいの。」
のぞみちゃん の言葉に皆さんも合わせて立ち上がった私を真剣な表情で見上げました。のぞみちゃん 皆さん...
そんな純粋な目で見ないで下さいよおおぉ!!!ナイトメアにいる一番の理由が貴女達プリキュア5と会えると思ったからだなんて言える訳ないでしょううぅ!!!
くっ、しかしこんな純粋な瞳を曇らせる訳にはムムム!
そうだ!あの手がありました!嘘も言わずかと言って本当の事も言わない方法が!
「私がナイトメアに居る理由、ですか。そうですね一番の理由はデスパライア様に恩義があるからです。」
「えっと、助けられたって事?」
「その通りです。私が私として目が覚めた時、私は自分自身についての記憶がありませんでした。」
「あっ...ごめんなさい、ウェザートさん。」
「気にしないで下さい。私もその事に関してあまり気にしていません。どういう訳か力の使い方は知っていました。その時目の前にデスパライア様が現れナイトメア社にスカウトされました。」
「こんな何処の誰かも分からない私を力が強いという理由のみで幹部にまで引き上げて下さりました。私は少なくともこの恩を返せたと判断できるまではデスパライア様の下に居るつもりです。」
「そうなんだ、ウェザートさんはいつか記憶が戻って欲しいって思う?」
「いいえ、今の私はおそらく以前の私では見た事が無い程素晴らしいものを見れている筈ですから。では、機会があればいずれ。」
ふうぅ~何とか誤魔化せましたかね。浮かれ気分でプリキュアに会えるかもと態々テラスでお茶してましたけど、こういう事になりかねないから控えるべきですね。
「それと、あの氷の綺麗なお花!ありがとう!みんなで大切にしてるよ!」
その言葉に先程の焦りは何処へやら。片手を挙げて部屋を後にすると気持ち軽快な歩みで支払いを済ませて店を出ました。
今日の天気は私の能力が無意識に作用したのかそうでないのか、それでも今の私の心を表すような気持ちの良い雲一つない青空でした。
別に りんちゃん のセリフや描写が少なかったのは忘れてた訳でも冷遇してるわけでも無いんです。単なる私の技術力の問題です。
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第6話 異常気象の消える日
応援ありがとうございます。
前からまたまた時間が過ぎました。休暇も終えて仕事を再開、と言っても事務・書類仕事を中心に新部署の視察といった本当にサラリーマンの様な内容でした。
っと思っていたらデスパライア様からお呼び出しです。側近であるカワリーノが居ないという事は以前と同じく私個人への内容の様です。その内容ですが...
「プリキュア達と戦えと、もう一度?それは願ってもいないことですがまた何故でしょうか。」
「耳が早いお主の事だ。私が既にあの者達と一度戦った事は知っているな。」
「それは勿論存じ上げておりますが、その時に何かございましたか?」
「あの力は危険過ぎる、今すぐにでもドリームコレットを入手する必要がある。だが未だあ奴らにも未知数な力があるやもしれぬ。」
「かつてよりも衰えているとはいえ、あの者に負傷を負わされた。故にお主に命じたい、以前は調査として出向いてもらったが今回は私にもお主とあ奴らの戦う様を見せよ。」
「...ご命令とあらば如何様にも。しかしドリームコレットに関しては1つだけ具申したい事が。」
「申してみるが良い。」
まさかこの時期にデスパライア様から出撃を命じられるとは思いませんでした。この時期、つまりあと少しでピンキーが55体に近づいてくるということだ。ハデーニャさんが既に黒い仮面によってプリキュアに倒され、クリスマスも過ぎていると言ったら分かって頂けるだろうか。前後の会話からも遠回しに可能ならばコレットを奪って来いという意味でしょうし。
だからこそこれは賭けに近い、どうか賭けに勝てますように。
「私のプリキュア研究ではあと少しでドリームコレットを使用可能状態、即ちピンキーを55体集めた状態に到達致します。」
「それは本当か?」
「はい、そしてどうやらピンキー達は自らプリキュア達の近くに寄っていく性質があります。この性質を逆手に取りプリキュア達に最後までピンキー達を集めさせるのです。」
「何だと?しかしそれでは奴らに先に願いが叶えられてしまう。」
「いえ、最後の一体が集まった瞬間が狙いです。どのような生き物も目的が達成しそうになった瞬間が最も気が緩むもの。54体目が揃った辺りから実力者、ブラッディさん程の方なら気配すら分からせず監視出来る筈です。」
どうですか、失敗すれば私がコレットを奪いに行くハメになります。私が現れた時点で既にガタついているでしょうがこれ以上原作を壊す訳には行きません。
さぁ、どう来ますかデスパライア様。
「...良いだろう。ウェザート、お主の案を呑もう。今のナイトメアは人手不足、活用できるものは何でも使うのも一つの手段か。」
「ありがたき幸せ。では私はプリキュア達に一刻も早くピンキーを全て集めさせる為に、その様な演技をしてみます。」
「また、他の邪魔が入らぬようデスパライア様のみご覧になれる様に結界を張らせて頂きます。」
人手不足なのは貴女の側近がどんどん消して行っているからなのですけどね。
あぁでもプリキュア達を脅かす演技ですか、完全に嫌われないと良いのですが。
おっと、もう一つ大事な事を忘れるところでした。
「それと一つ、お願いしたい事がございます。」
「願いだと?申してみよ、お主が必要とあらば用意しよう。」
「はい、それは...
◇ ◇ ◇
お願い、聞いてもらえる様でよかったです。聞き入れて貰えなければ正式に謀反を考えなければいけませんからね。
問題です。私は今何処にいるでしょうか?答えはサンクルミエール学園の校庭です。クイズになっていませんね。さて何故私がこんな所にいるのか?答えは簡単です。
「見つけたよ、ウェザートさん!この手紙っ!」
「お待ちしていましたよ、プリキュアの皆さん。キュアドリーム、私の手紙は読んで頂けましたか?」
「読んだよ、みんなで。ねぇ、どういう事?だって...。」
私は笑う、最初に出会った時の様な人の良さそうな笑顔で。
彼女達は、哀し気に俯いてくれる。所詮敵でしかない私の為に心を痛めてくれる。
「これが最後の戦いってどういう事なの?」
「これは可笑しな事を仰る。最初会った時も言ったでしょう、私はナイトメア。貴女達プリキュアの敵でしか無いのです。」
「最後と書いたのは本日は私の全力を以って貴女達を倒し、ドリームコレットを奪うからという意味です。故に」パチン
いつかの日と同じ様にフィンガースナップで周囲を結界で覆い景色を荒野へと変える。
「以前とは比べ物になりませんよ。さあ来なさいプリキュア5!」
「みんな!行くよ!」
「「「「「プリキュア・メタモルフォーゼ!」」」」」
「大いなる希望の力! キュアドリーム!」
「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」
「はじけるレモンの香り! キュアレモネード!」
「安らぎの緑の大地 キュアミント!」
「知性の青き泉! キュアアクア!」
「希望の力と」「「「「未来の光」」」」
「「「「「華麗に羽ばたく5つの心 Yes!プリキュア5!」」」」」
いつ見ても綺麗ですね。しかし、だからといって今回ばかりは私も手は抜けません。
これで良かったのです。私がナイトメアでいる限り彼女達とは相容れない。
「想覚」
「今回は私から行かせて頂きます。食らいなさい!」
そう叫ぶと共に両腕を前に突き出し虹の光線を乱射し続ける。プリキュアの皆さんは勿論回避しようとします。が乱射の為に軌道が定まらず回避し難く此方に近寄れません。
「させないわ!」
「プリキュア・ミント・プロテクション!」
キュアミントによって虹の光線は防がれましたか。その際地面に当たった光線の所為で土煙が上がってしまいました。
しかし、高威力では無いとはいえ決して低くない威力。それを初期の技で防ぐとは。
さぁどう来ますか、プリキュア5。
「プリキュア・レモネード・フラッシュ!」
「くっ!」
上空からですか!完璧と言っていい程コントロール出来ています、蝶の殆どが私の上半身に命中している!
更に上方前後左右から命中している為周囲が視認出来ない!
「調子に乗らないことです!キュアレモネード、また雷をプレゼント...何!」
反撃として蝶が飛んでくる方向に雷を放つとそこにキュアレモネードの姿はありませんでした。
蝶は態と軌道を変えてから私に向かって来ていたのです。
「私はあなた程自分の力を上手く扱えていないのかもしれません。それでも私は一人じゃない!」
「貴男は以前私達の力が殆ど通じなかった。それでいて私の守りも突破した、私悔しかったわ。でもね分かったのよ、私の力は誰かを守りたいという思いの力。だったらもうどんな攻撃が来ようと絶対に負けないわ!」
2人の息の合った回し蹴りを咄嗟に両腕をクロスさせて防ぐ。
以前よりも重くなった蹴り、しっかりと彼女達も成長している様です。しかし、
「私に簡単に近づいた事は間違いですよ!塵芥の様に吹き飛びなさい!」
「「きゃあああぁ!!!」」
暴風を起こして2人を吹き飛ばし岩壁に叩きつけました。暫く立てないでしょう。
しかし失態です、彼女たちにばかり意識を向けていた事で今になって彼女の接近に気付きました。
振り返った時には既に遅かった様です。
「プリキュア・ドリーム・アタック!」
以前彼女に教えた様に鳩尾に近距離で食らってしまいました。体が僅かに浮かび上がり後退させられました。
「私は勉強もダメだしスポーツだってダメ。それでも!私の事を思ってアドバイスしてくれた人がいたならそれに応えたい!」
「プリキュア・ルージュ・ファイヤー!」
「プリキュア・アクア・ストリーム!」
今度は私の背後でルージュとアクアの技が同時に命中し水蒸気爆発を起こして私は更に吹き飛ばされた。
初期の技で初めてダメージを負った事に驚きました。
「私は今でも頭に血が上りやすい。でもね仲間の良いところを良く見て見習う事が出来る!」
「私もよ、貴男に言われた様に皆より少し出遅れる事があるわ。それでもこうして仲間と力を合わせれば以前の私を超えられる!」
嬉しかった。皆さんが私の言葉を受け止めてここまで成長してくれていた事が。
私は少し彼女達を侮っていたようです。この様な失態で何がファンと言えますか。
このままでは彼女達に失礼です。
「あなたがドリームコレットを狙うと言うんなら!」
「「私達は何度だって!」」
「「止めてみせると決めたから!」」
私に対してここまでの覚悟を見せてくれた彼女達プリキュア5。
ならば私も出し惜しみはしません。【ウェザー・ドーパント】には専用武器があるのをご存じですか?その名を万能チェーン武器【ウェザーマイン】。
本来ならば強力な物理攻撃を可能とする武装、しかし今回はそれに私の能力も追加しましょう。
「お見事です。ここまで予想を超えるレベルで成長されているとは驚きです。正直侮っていました、故に今からは1つギアを上げて行きますよ!」
その一言と共にウェザーマインを手に一瞬で彼女達の上方から腕を振り上げた状態で迫る私。
チェーン武器の名の通りウェザーマインの先端からは鎖状のエネルギーが撓った状態で出現しました。しかしそれも最初のみ、直ぐに一直線に並ぶとそのまま氷の刀身が出現しました。
彼女達もギリギリ回避します。氷剣を振り下ろした場所はクレーター状に陥没すると共に周囲を凍てつかせました。
「剣!?だったら私が!」
武器勝負に持ち込むつもりかアクアがアクアリボンから刀身を出現させて挑んできました。
しかし、ウェザーマインと触れた途端彼女の刀身は凍りつき粉々に砕け散りました。
「くっ!それなら!」
「プリキュア・アクア・トルネード!」
近接では即座に不利と悟り強化技を仕掛けてくるアクア。
流石知性のプリキュア、素早い判断です。しかし、
「以前よりも判断が早かった事は称賛します、ですがその判断が正しかったかは別ですよ。その激流、頂きます!」
私は自身を守るように竜巻を出現させました。私の竜巻と彼女の激流、両者はぶつかり混ざり合う事で渦潮の様になります。
「そのまま返して差し上げます。」
「させないと言ったでしょう!仲間は私が守ってみせるもの!」
「プリキュア・ミント・シールド!」
アクアの攻撃をカウンターとして放った私の攻撃を受け止めてみせるミント。
以前の彼女では防ぎ切れなかった攻撃、それを防ぎ拮抗してみせた。いえ、これは徐々に押し返されている。
「はあぁ!」
カウンターをカウンターで返されるとは失笑ものですね。
シールドの勢いを付けて更に威力を増した渦潮が私に迫る。
「ならば更に利用するだけの事です!」
渦の中心にウェザーマインを突き入れる事で渦潮は凍りつきました。そのままウェザーマインは氷剣から巨大な氷の螺旋槍へと姿を変えました。
未だシールドを張っているミント。私はウェザーマインを地面に突き刺し強力な電撃を放ちました。これを防げますか?
「「ッ!?」」
即座にシールドを解除して回避するアクアとミント。
しかし私が相手をするのは彼女達だけではありません。
「私らを!」
「忘れてもらっては困ります!」
ルージュとレモネードが既に私の後方でルージュタクトとレモネードカスタネットを構えていました。
振り向くと共に必殺技の準備は完了しています。
「プリキュア・ルージュ・バーニング!」
「プリキュア・レモネード・シャイニング!」
彼女達の必殺技は私に同時に着弾...しませんでした。
呆気にとられています。それもその筈、彼女たちの技は私に命中したように見えていたのでしょう。
その実私は技が放たれる前に距離を取っており、私に見えていたのは陽炎や蜃気楼の原理を利用して光を屈折させて作り出した身代わりだったのです。
「良い連携です。しかし直撃です!」
ウェザーマインで薙ぎ払いルージュとレモネードと吹き飛ばし彼女と向き合います。
「さぁ、最後は貴女だけですよキュアドリーム。」
「行くよ!ウェザートさん!」
ドリームトーチを取り出し構えるドリーム。
私も前方に高密度の雷雲を発生させ待機状態に入ります。
「プリキュア・クリスタル・シュート!」
大量の結晶が迫る中、私も腰を落とし一度螺旋槍となったウェザーマインを後方へ向ける。
迫る結晶距離にして半分になった瞬間、勢いよくウェザーマインで前方の雷雲を突き穿ち私の
「MAXIMUM・KERAUNOS!」
結晶とぶつかり競り合いを起こす私の大雷撃。以前見せた紫電とは比べ物にならない程の威力と規模。
ドリームも負けじと力を込めてきます。この競り合いに打ち勝ったのは...
「きゃあああぁ!」
私でした。
ドリームも直撃こそ避けましたが、その余波で大きなダメージを負い傷だらけ。
もう立てない、立てない筈なのに。彼女は、
「まだ、私たち負けてないよ!」
仲間の肩を借りて立ち上がりました。
その後私は何度も彼女達を甚振り続けました。その度に彼女達は立ち上がり続ける。
何度でも、何度でも、何度でも。
ボロボロで、傷だらけで、今にも折れてしまいそうなのに、それでも震えながら何度もでも立ち上がります。
これは、私の負けですね。ここまで何度も倒れても立ち上がる彼女達の姿を見せればデスパライア様のオーダーにも十分応えられたでしょう。
これが試合に勝って勝負に負けたというものなんですかねぇ。
「私の負けです、プリキュア5。今日はもう大人しく退散いたします。」
「しかし、これだけでは覚えておきなさい。私以外にもコレットを狙うナイトメアは未だ居る。それを防ぎたいのなら直ぐにでもコレットを完成させる事です。」
踵を返し去るように見せかけデスパライア様とのリンクを切って立ち止まります。
そのままの状態で私がナイトメアとして出来る最後の忠告をします。
「カワリーノに気を付けなさい。」
それを最後に今度こそ立ち去りボロボロの彼女達を学園ではなくナッツハウスへと転移させます。
このくらいのお節介なら、いいですよね?
◇ ◇ ◇
戻って来ましたナイトメア社。今回は直接デスパライア様の下に来てます。
満足してもらったと判断したから戻って来ましたけどぶっちゃけ5割と言ったところなのでちょっと緊張気味です。
「ただ今戻りました、デスパライア様。」
「うむ、よくぞ働いてくれた。」
「ご期待に応えられたようで何よりです。」
満足されてた様で良かったです。これで肩の荷が下りたというものですよ。ふ~
「...それで褒美、いや願いの件だったな。今すぐが良いのか?」
「はい、よろしくお願いいたします。」
「分かった、お主の願い、今ここで叶えてやろう。」
私がデスパライア様に願った事、それは...
◇ ◇ ◇
「それと一つ、お願いしたい事がございます。」
「願いだと?申してみよ、お主が必要とあらば用意しよう。」
「はい、それは
「...そうか、お主との契約を。それをお主は願うか。」
「了承しよう、お主が私の依頼を完了した暁にはその願いを叶えよう。」
私とデスパライア様の間に執り行われた契約。その内容は私がいつでもナイトメアを辞める事が出来るというもの。
そのいつでもというのは本当にいつでも。その代わり私はデスパライア様が満足できるように仕事をし続ける。その見返りこそが幹部としての私の立場。
本来ならば辞めようなどすれば裏切り者や処刑などの処分がされてもおかしくありません。しかしこの契約はその一切が介入出来ず、尚且つ私をナイトメアに縛り付けておくというものでした。
提案したのは私でしたし、仕事ぶりから直ぐにデスパライア様からの信用をいただけました。
だからこそ、この先もう長く続かないナイトメアを辞める為に今回契約を持ち出させて頂きました。
◇ ◇ ◇
「さあ、契約書を出すが良い。」
「ここに。」
懐からグレー一色の紙を取り出しデスパライア様に渡す。何も書かれていない様に見えますがこの紙自体が契約そのものを表すもの。契約を完了しなければ決して破壊も破棄も出来ない代物。
「デスパライアの名の下に、ウェザートとの間に交わした契約を果たした事をここに証明する。」
デスパライア様の宣言と共にグレーの紙は跡形も無く消え去った。これで契約は完了したという事でしょう。
「今までよくぞ働いてくれた。永く感じていたが、そうかお主が来てまだ数年しか経っておらなかったか。」
「他の皆さんに比べれば私など新人も良い所ですよ。」
「フフ、違いない。それでお主はこれからどうするつもりだ?」
「自室に少し仕事が残っていますので、それを終わらせてから完全に退社させて頂きます。」
「分かった。何度も言うが、ご苦労だった。」
礼をした後私はデスパライア様の部屋を出て行った。
あのお方は決して良い人ではないのでしょう。目的の為なら手段を択ばない冷酷な人、しかし一度信用し心を許した者には良くしてくれる方だった。
その在り方は私が好きで好きで已まない彼女達と似ていたのかもしれません。
◇ ◇ ◇
あれから誰とも顔を会わせず自室にて残りの仕事を片付けました。
数日は過ぎた筈ですが今日がいよいよ私の退社日です。
最後に各部署にでも挨拶でもして行きましょうか...そう考えていた時です。
そうだ、そうだ何故忘れていた!だって、今日は!
「おや、どうされましたか?ウェザートさん、何かご用ですか?」
「貴方こそ何をしているのですか、カワリーノ。」
黒い仮面をブラッディさんに無理やり付けているカワリーノの姿があった。
そうだ今日はドリームコレットが完成し、その事をブラッディさんがカワリーノに報告した事で用済みとして処分されてしまう日だ。
「いえ、もう用済みだったのでこうして引退して頂いていた所ですよ。貴方こそ何です、その荷物は?」
「私は今日限りを以ってナイトメアを退社させて貰いました。デスパライア様とそういう契約でしたので。」
「今、何と?辞めると言いましたか!?デスパライア様に仕える事こそが至上の喜びであるというのに裏切り辞めるというのですか!?」
「...フフフ、少し予定変更です。」パチン
「ガアアアァァ!!!」
カワリーノが暴走したブラッディさんを操り私に差し向けてきました。
人間態なのもあり咄嗟に受け止める事しか出来ませんでした。そして...しくじりました。
「そのまま押さえていて下さいね、ブラッディさん。役立たずの貴方が最後に役立てる瞬間ですよ。」
「貴方々にはそのまま絶望の闇に堕ちて頂きます。裏切り者と役立たずには相応しい最期でしょう?あぁご安心を、ドリームコレットは私が手に入れデスパライア様に献上しますので。」
その言葉を最後に私とブラッディさんは完全に闇に沈んで行った。
あぁ、こんな所で。プリキュア5、貴女達が明日への希望です。
どうか、頑張って...
展開が早すぎたかなとも思ったんですけどこの位じゃないとやりたい事が出来ないんです。ごめんなさい。
あと少し最終回なんですけど、主人公を生かすか死なすか迷っています。
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第7話 還ってきたW/絶望しない男
「う~ん...ココォ!?ナイトメアがっ!!ナッツ!ドリームコレットは!?」
「ナツ...。」フルフル
「そんなぁ!?」
プリキュア達はピンキーを55体集め気が緩んでしまっていた隙を突かれてカワリーノにドリームコレットを奪われてしまっていた。
気絶させられ成り代わられていたココは酷くショックを受けていた。その悲痛さは他の皆も同様、特にパルミエ王国出身の者達はかなり落ち込んでいた。
その中でもカワリーノに騙される形とは言え直接ドリームコレットを渡してしまったミルクの落ち込み具合は半端ではない。
「ウェザートさんが言っていた『カワリーノに気を付けなさい』ってこういう事だったのね。それなのに折角の忠告を無碍にしてしてしまったわ...。」
「かれん、あまり一人で抱え込まないで。貴女だけじゃないわ、私も皆も油断してしまっていたのよ。」
どうにか皆お互いに励まそうとはするものの事の重大さ故にいつもの様に行かない。
しかし、そんな時でも希望を
「誰のせいでもないよ。」
「のぞみ?」
「大切なのはこれからどうするか、だよね。ココ!」
「今までだって沢山ピンチはあったじゃない。でも私たちは絶対諦めなかった!」
その言葉に皆の表情からは暗さが先程よりも薄れて行った。
それでも未だ空気は重い。しかし のぞみ はそんな事知るものかと言葉を続ける。
「さぁって、それじゃ行こっか。」
「え、何処に?」
「ドリームコレットを、取り返しに!」
空を指差しながらそう宣言する のぞみ。その言葉にココとナッツ、ミルクは俯き既にドリームコレットを使われているかもしれない。ドリームコレットを使えるのは一度限りだと言い落ち込んでしまう。
しかし、そうはならないのがプリキュア5のリーダー夢原のぞみ だ。力強く空を指差しもし本当に使われてしまっているのならこんなにも空が綺麗な筈が無いと言いきった。
その言葉に皆が一筋の希望を見出しやっと笑顔を見せ始めた。
そして皆でドリームコレットを取り返しに行こうと決めようとした時...
「よーし!それじゃあ皆で取り返しに行くぞー!けっte...」「って のぞみ!」
「うぇ!?何、りんちゃん?」
「後ろ、後ろの花が!」
のぞみ のいつもの決定を遮り りん が彼女の後ろを指差す。
そこにはいつかの日にウェザートに貰った氷で出来た胡蝶蘭があった。そこまではいつもの事だがその胡蝶蘭が突如キラキラと輝き始めた。
一同は先程の事を一瞬忘れてしまう程驚愕したがどうにか冷静になろうとした。その時胡蝶蘭全体の輝きが一つの花に集まり50cm程照射した。
まるでコンパスの様にどこか場所を示しているように。
のぞみ が試しに胡蝶蘭を持ってみて動かしてみるが光は同じ方向を指し続けている。
「みんな、行こう!」
『うん(はい)(ええ)(ココ)(ナツ)(ミル)!!!』
(ありがとう、ウェザートさん!)
◇ ◇ ◇
胡蝶蘭の光が指示した場所はとある広場。
そこまで来ると花からは先程の様な輝きが消えいつも通りの状態に戻ってしまった。
「...消えちゃいまいしたね。」
「でも、此処で消えたんなら何かあるかもしれないナツ!」
「そうよね、ナッツさん。皆でこの辺りを何か手掛かりが無いか探してみましょう。」
ナッツと こまち の言葉に皆が頷いて周囲を散策しようと決めた。
その時思いもよらない声が聞こえて来た。
「おや皆さん、こんな所で何をされているんですか?」
「アンタは、カワリーノ!」
(やっぱりウェザートさんは私たちをコイツが来る所まで案内してくれたんだ!)
「こんな所で何をなされていたのか知りませんが丁度良い、探す手間が省けました。」
彼女たちはココ達の為にもドリームコレットを返せと要求する。
そんな のぞみ達を嘲笑うように返せないと言い、返して欲しければと、ナイトメアに通じる黒い扉を出現させた。
扉を潜った先ではかつて超獣化したギリンマと戦った闘技場。
玉座ではドリームコレットを手にしているが未だ使用していないデスパライアがいた。
カワリーノは自身に勝って見事ドリームコレットを取り返してみろと言い立ちはだかる。のぞみ達はプリキュアへと変身しカワリーノはカメレオンを彷彿とさせる魔人の姿へと変わった。
ここからは原作通り戦い始める両者。僅かな違いはカワリーノの予想よりもプリキュア達が強くなっていた事だろう。しかし、それでもプリキュア達を蹂躙してみせたカワリーノ。
「フフフ、思っていたよりもやるようですが所詮この程度です。しかし悔しがる必要はありませんよ、こうなる事は最初から分かっていたのですから。」
自分達の攻撃を全て尻尾で絡めとり逆に利用してしまう強さにプリキュア達はウェザートと戦っていた時の事を思い出していた。
「しかし、このままお別れしてしまうのも勿体無いですねぇ。おぉ!そうだ、良かったら私の部下になりませんか?」
「今までの使えない部下たちや処分した裏切り者の
その言葉に愕然とした。部下になれと言ってきた事にでは無い。
ウェザートを処分したという言葉にだ。デスパライアでさえも「カワリーノ、貴様何故...」と呟いた辺りデスパライアでさえも知らなかったようだ。
「アンタ今なんて言ったの!ウェザートさんを処分とか裏切りとかどういう事よ!」
「おや、そこに食いつきますか。あの者はナイトメアを辞めたのですよ、組織を辞めるなど裏切りも同然。役立たずとして見切りを付けたブラッディさん共々絶望の闇へと堕ちて頂きました。」
「それにあの者の動きは何処かおかしかったのですよ。貴女達プリキュアの存在を知ってから研究だ何だと言って自室に籠りきり。そして外に出たかと思ったら貴女達と会っていた様ではないですか。」
「そして一番怪しいと感じたのは奴と貴女達が戦った後ですよ。しっかりと貴女達は強くなっていたと言うではないですか。ナイトメアを辞めた後は貴女達の方に鞍替えするつもりだったのかもしれませんねぇ。消して正解でしたよ。」
まさかたったそれだけの事でウェザートを消したのかと彼女達は怒りが湧いた。
確かにプリキュアとナイトメアという敵対関係でこそあったが、そこには確かにそれ以上の絆と呼べるモノがあったと言える。
歳の離れた友人のような、自分達の事を客観的に見てくれる父性を持った教師のような存在にも感じていた。
自分達が不躾な質問をしてしまった時も笑顔を絶やさずこちらに気を使い優しくしてくれた。
最後に戦った時も態々忠告までしてくれて、ボロボロになってしまった自分達を学園ではなくナッツハウスまで送ってくれた。
そして自身が居なくなっても自分達を導いてくれた綺麗な胡蝶蘭を贈ってくれた。
そんな彼を消したというカワリーノが許せなかった。
しかし、カワリーノは更に続ける。ナッツが嘗て傷ついたピンキーだと思い門を開いて招き入れたのは自分なのだと。嘲笑う様にナッツに感謝を述べる。自身を騙したカワリーノに飛び掛かっていくナッツ、更にその後を追うココとミントを軽くあしらう。
「アンタ絶対許さない!」
「ココとナッツ、ミルクの故郷を滅ぼしておいて!」
「まったく悪びれもしない!」
「そして更に皆を傷付けて!」
「剰えあんなに優しかったウェザートさんまで手に掛けるなんて!」
此処までのカワリーノの所業にかつてない程に堪忍袋の緒が切れた。しかし、
「許さない?おかしな事を言いますねぇ。パルミエ王国は兎も角、奴が裏切り者になったのはそもそも貴女達プリキュアが現れたからではないのですか。」
そんな怒りは砕け散ってしまった。奴の言う事など荒唐無稽、頭ではそう考えようとしても本当にそうなのか?と頭が埋め尽くされる。
どうにか助けようとココとナッツは俯いていたミルクに声を掛けプリキュアの力になるよう頼んだ。またしても、
「そうはさせませんよ。貴女には
「嫌ミル!ミルクは絶望なんてしたくないミル!」
「あぁそうだ、ドリームコレット。ありがとうございます。」
その一言で絶望してしまいミルクは絶望の仮面を付けられてしまった。
ココ達もプリキュア達もその光景に呆然とした。
◇ ◇ ◇
ここに堕とされて一体どれだけの時間が経ったのでしょうか。1分?1時間?1日?それとも1年でしょうか?
まず最初に視覚が、次に時間感覚が失われました。周囲はとても暗く昏い闇そのもの。自分の手足の場所さえ把握に困るほど何も見えず、何も聞こえず、何も感じない。
こんな場所から執念のみでカワリーノをブラッディさんは道連れに出来たのだから敬服しますよ。そのブラッディさんともこの闇に堕ちた瞬間に何処へやら。
おそらく完全に闇へと飲まれた事でカワリーノの支配から解き放たれたのでしょう。私を放すと何処かへ行かれました。まぁ見えないし聞こえないので直ぐ隣に居るかもしれませんがね。
次に日光を利用して周囲を照らせないかとも考えましたけど、失敗しました。一瞬のみ照らせましたが私が出した光は直ぐに周囲の闇へと吸収されてしまいました。体力の無駄だと判断して直ぐに止めましたよ。
あーあ、何故あそこで油断してしまったのでしょうか。っていうか自分でフラグ立てて回収してましたよ。何が「どのような生き物も目的が達成しそうになった瞬間が最も気が緩むもの。」キリですか。自分で言って自分で実践してたら世話ないです。(...カー...)
黒歴史を新たに更新しちゃいましたよ!あぁ此処床も壁も無いからゴロゴロとのたうち回る事も出来ません。(ピカー...)
大体カワリーノが現状で最も警戒するべき相手なんですからブラッディさんに仮面付けてる時点で問答無用で変身していれば良かったんですよ。(ピカー)
そもそも何各部署に最後の挨拶回りみたいな本当のサラリーマンみたいな事やっちゃってんですか。ナイトメアは立派な悪のそしki(ピカー!)あぁ!もう何です!さっきからピカピカ、ピカピカ!そんなに輝いたら眩しいじゃないですか!こちとら今大事な後悔を...ん?
ピカピカ?この闇の中で?輝く?どうやって?眩しい?何処から?
えっ、私の懐!?急いでコートの内ポケットを探る。
こ、コレは!
プリキュア5ウォッチ(私命名)(仮)!!!
あぁそうだ、この世界に来てふと持ち物を探った時に何故か持ってたブランクライドウォッチ。それが最初にプリキュア5と戦った時の最後に【プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン】を受けて変化したんでした。
前面のリングパーツ、ウェイクベゼルを回すと5つ蝶のマークになったから驚きましたよ。起動させたら思いっきり小山〇也ボイスで【プリキュア5!】って言いますし。
起動させた場所が私の結界内で良かったです。ナイトメア本部で起動させた日にはデスパライア様がすっ飛んでくるかもしれない程の希望の力に溢れていました。
因みに去り際に取り出した懐中時計ってコレの事だったんです。後ろ向いた瞬間コートの内側がピカッっと光りまして内心焦りまくってました。のぞみちゃん に呼び止められた時は心臓バックバクだったのは言うまでも無いでしょう?
それにしてもこの闇の中でも輝き続けるなんて凄いですね。流石に範囲は私の周囲といった所ですが照らせている。しかし何故突然?私が寂しくなったから照らしてくれた訳でもないでしょうに...ん?
ウォッチの光が伸びて行く。これは、追ってみるしかありませんね。
ウォッチの光に導かれて辿り着いた場所。その光景とは、
(なるほど、神様という存在がいるのなら感謝します。私は未だ自分の罪を数える機会がありそうだ。)
◇ ◇ ◇
時間は少し経った闘技場。あれからデスパライアはドリームコレットを使用して願いを叶えてしまい永遠の命と若さを手に入れてしまっていた。
カワリーノは更にプリキュア達を絶望させようと、自分を倒してももはやどうする事も出来ないと言い彼女達を甚振った。
そして最後の仕上げだと言って彼女達の足元に絶望の闇を展開させた。
「それは裏切り者のウェザートも堕ちた絶望した者を飲みこむ絶望の闇。その闇に飲まれたら最後永遠に闇の中を彷徨い続ける事になるのです。」
「ほら、早速皆さんの絶望の匂いを嗅ぎつけて来ましたよ。...何?」
他の4人の足元には既に準備完了とでも言うように闇が展開されているがドリームには闇が寄り付けていなかった。
震える足を支えに何とか立ち上がる。
過去カワリーノの策略によって仲間を失いかけた事。そんな思いはもうしたくないと叫ぶドリーム。しかし、とうとう肉体の限界か倒れ込んでしまう。
「この様な状況の何処に希望があるというのです。呑まれてしまいなさい。」
自分の勝ちを確信し嘲るカワリーノの姿を最後にドリームの下にも闇が寄って来た。
それでも彼女達は何度も何度でもどの様な闇の中でも希望を見出してきたプリキュア5。この様な状況下でも自分達は将来どんな事をしたいのかと自分達の
絶望しきらない為に彼女達の周りの闇は揺らぎ始める。
「!?絶望の闇がッ!?」
「みんな、今将来の夢を話したよね。ってことは」
「私達は未来を諦めていない!」
「そうよ、まだまだやりたい事がいっぱいあるんだから!」
「こんな所で、挫けてる訳にはいかないですよね!」
「皆で力を合わせれば!」
「みんなで力を合わせれば何でも出来るんだから!」
立ち上がる。何度でも何度でも、挫けても良い倒れても良い。その度に彼女達にお互いを支え合える仲間がいるのだから。
そして、
「その通りです。」
彼女達の足元にあった闇の中からカワリーノに堕とされたというウェザートが光と共に出現し周囲の闇を吹き飛ばした。
「「「「「ウェザートさん!」」」」」
「お久しぶり、かは分かりませんがあの時以来ですね皆さん。」
一度堕ちれば永遠に彷徨い続けるという絶望の闇から帰還してみせたウェザートに両者共驚愕する。っと言っても片方は歓迎、もう片方は理解不能という事によるもの。
「ありがとうございます。皆さんのどのような
「どういう事?私たちのおかげって?」
「それはですね...」
「何故だぁ!何故だ何故絶望の闇から戻った!?」
ウェザートがプリキュアにお礼と説明をしようとしているとカワリーノが割り込んで来た。ウェザートは「やれやれ」と言わんばかりに溜息を吐き、
「何ですかカワリーノ、図体が大きくなった所為で空気を読む程度の脳比率も低下しましたか?」
「貴様ぁ!!!」
「そもそも何故も何もありません。あの闇にはカワリーノ、お前が無理矢理私を堕としたのでしょうが。絶望した者を引き込み永遠に彷徨わせるのなら絶望していない者ならば糸口さえあれば抜け出せるのは道理です。」
「さて、積もる話もありますがカワリーノ。反撃と行かせて頂きます。」
「想覚」
雷が冷気が暴風が熱波が豪雨がウェザートの周りを目まぐるしく覆っていき戦う姿へと変えて行く。
そしてプリキュア5もウェザートと並び立てた事を喜び勇ましく明日への希望を滾らせて構える。
「ここからは我々のステージです。」
沢山の応援ありがとうございます。取り敢えずあともう少しでこの小説は完結します。短くてごめんなさい。
重ねて主人公は生存と死亡どっちも書こうとしたら私が過労死します。なので両方望まれた方にはごめんなさい。
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第8話 還ってきたW/取り戻す希望と力
ただ映画館に成人した男が自分達だけで絵面がやばかったです。
帰りにカラオケでW-B-X歌って来ました。
さてさて啖呵を切ったのですから恥じない戦いをしなければ。プリキュアの皆さんと共にカワリーノに駈け出します。その際ウェザーマインを装備するのを忘れずに。
ウェザーマインは両端から鎖状のエネルギーを出し今回は棒状、【ウェザーマイン・ロッドモード】とでもしましょうか。以前は剣や槍として使いましたがこの武器の真価は強力な物理攻撃。
知っていますか、カワリーノ。巨大化は負けフラグだという事を。
私は素早く懐に潜り込むと即座に顎を打ち据えて体勢を崩させ、追撃で首にも一撃。後ろに回り込んだミントがシールドを展開し護りではなく反射の力で勢いよくカワリーノを此方側へ吹き飛ばしてくれました。そして無防備な腹部に強烈な突き。
尻もちを着く形で倒れたカワリーノが2本の尻尾で攻撃してきますがルージュとアクアが其々の必殺技で防ぎ次いでとばかりにウェザーマインで奴の尾を縛り付けて動きを制限します。そしてレモネードの視界を妨害しつつのシャイニングが炸裂した後にドリームのクリスタル・シュートが顔面にフルヒットしました。
さすがの奴もこれには渋い顔をします。
「何故だ!何故絶望しない!ドリームコレットは使用され、もうパルミエ王国は復活しないというのに!」
「復活しますよ。」
私の言葉にカワリーノだけではなくプリキュア5の皆さん、ココさんとナッツさんが私の方に振り返る。
言うならばここだ。ドリームコレットが使われた今私に出来る数少ないココさん達への贖罪。
「何を戯言を!先程も言ったようにこの通りドリームコレットはもう使えないのですよ!これの何処に希望があると言うのです!」
「ドリームコレットのみが王国を復活させられるのだと考えているのならカワリーノ、お前はお頭が残念ですね。」
「何故なら此処にはパルミエ王国の王子が2人居り、そして
「彼ら?」
ドリームは闘技場に座る彼らを見やる。
私は説明した、彼らはかつてのパルミエ王国民であり故郷を滅ぼされた事により絶望してしまったのだと。そして今現在は絶望の仮面を着けられてナイトメアの社員になっているのだと。
「えぇ、その通りですよ。だからこそ希望は無い!だって彼らは絶望しているのだから!」
「お前には言っていませんよ、カワリーノ。ココさん、ナッツさん私が王国が復活すると言えた理由が分かりますか?」
「ココ...。」「ナツ...。」
「彼らはプリキュアの皆さんが同様に絶望しながらその絶望を打ち破った時確かに見て、感じた筈です。彼女達が持つ暖かな
私の言葉に共に頷き国民達に語り掛ける王子2人。
国民の皆が居ればドリームコレット等が無くても王国を復活させられると。プリキュアが言った様に皆が力を合わせれどんな困難も解決できると。
皆こそが自分達の夢と希望であると宣言する。
一人、また一人と仮面に罅が入って行く。全員の心に確実にお2人の言葉が響いたのでしょう、彼らは今希望を思い出したのです。
ミルクさんに至っては完全に打ち砕いた。その光景にプリキュアの皆さんも笑顔になりました。
これにはカワリーノもかつてない程に苦虫を噛み潰したような顔です。
「おのれ、ウェザート!よくもこの者達に希望を与えてくれたな!」
「私はただ切っ掛けを与えたにすぎません。希望を見出せたのは彼らの力そのものです。お前が考えているよりも彼らはずっと強かったという事です。」
「許さんぞぉ!」
激昂したカワリーノが襲い掛かってきました。
む、力任せにウェザーマインを引き千切りましたか。流石に腐っても最高幹部の一人ですね。
肉弾戦に闇のエネルギーと私の雷や冷気、光線の応酬が始まりました。プリキュア5も何とか加勢してくれようとしますが戦闘が激しすぎて近づけない様子。
カワリーノの振り下ろしてきた拳をウェザーマインで受け止める。キリがありませんね。
ヘイトが私に向いている現状早々にケリを付けた方が得策ですね。
「認めましょう、貴方は確かにお強いですよ。」
「突然何を...」
「しかし、こうしてプリキュア側に寝返ってくれたお陰で弱点が分かりましたよ。」
「こういう、ね!」
太々しい邪悪な笑みを浮かべて言い放つ。
突如奴は向きを変えて私から距離を取るとその尾を槍の様にドリーム目掛けて突き刺そうとしました。
ドリームの後ろにはココさん達が居て動けない!
奴め、これが私の弱点だという事か!
「貴方ならそう動いてくれると思ってましたよ!フハハハハ!」
「ウェザート、さん?」
私の背中には奴の尾が深々と刺さっていました。貫通こそしていませんが、こんな姿少女に見せるべきではありませんね。
痛い、とても痛いですよ。普通に生きてたら背中に太い槍状の物が刺さるなんてそうそう無いですからね!
「ぐあぁ!!!」
「ありがとうございます。貴男のお陰で彼女達は上質な絶望を迎えてくれそうですよ。」
「「「「 ウェザートさん! 」」」」
「そして貴男の力、頂きます!」
「うぁ!?う、あああぁぁ!!!ぐぅ!?」
これは力が抜けて!いや違います、奪われて行く!
ぐぅあ!そうでした、奴はプリキュアの攻撃を尾で吸収して攻撃に転用する事も出来た!
奴の尾が引き抜かれると同時に私は変身が解かれてしまい人間の姿になってしまった。
どうやら奴に力を奪われてしまった様です。その証拠に奴は2本の尾に片方は冷気と電気、暴風がもう片方は熱と雲、虹を纏わせていました。
「ククク、何という強大な力だ!これだけの力があれば更に絶望を振りまける!」
「これ程までに素晴らしい力、感謝しますよウェザート!」
嫌な笑みをしてくれますね...。
プリキュアの皆さんが駆けつけてくれましたがダメージ自体は大きくありません。しかしこのままでは彼女達のお荷物です。
何か、何か手を考えなければ!しかしどうやって戦う?力はカワリーノに奪われてしまい、奴は逆に強化されてしまった。
今の私はせいぜいが身体能力の高い人間と同程度。現状で役立てる事といえば彼女達の迷惑にならない様に隠れるか一瞬だけでも奴からの攻撃を防ぐ肉壁ぐらい。
このままでは奴の言った通り私の力で絶望が振りまかれる!どうする、どうすれば!
何か案が浮かばないか周囲に目を動かしていた時です。
アレは...
◇ ◇ ◇
カワリーノの卑劣な作戦によって変身能力を失ってしまったウェザート。ただでさえ強かったカワリーノのウェザートの力が加わってしまった事にプリキュア達は狼狽えててしまう。
これを好機と見てカワリーノは更に彼女らを嘲笑う。
「何が希望ですか、何が夢ですか。その様な下らないものは圧倒的な力の前では無意味なのです!」
「そしてウェザート、貴男はこれで役立たずですね!アハハハ!ハハハハハ!」
プリキュア達もただ事では無いと感じる程の圧倒的な力を目の前のカワリーノから感じてしまった。
このままでは万事休す、誰もがそう思ったその時、
「いいえ、カワリーノ。私はお前の言う通りの役立たずに成る気はありませんよ。」
「戯言を。負け犬の遠吠えですか?」
「そんな訳が無いでしょう。どうやら切り札は私の所に来ていた様です。」
「はぁ?」
能力を奪われたばかりで体にあまり力が入っていないせいか立つのがやっとと言った見た目でそんな事を言ってみせるウェザート。
これにはカワリーノのみならずプリキュア5、ココ達そしてデスパライアですら呆気にとられた。
「キュアドリーム!私が贈った氷花を渡して下さい!」
「これ?はいっ!」
突如ウェザートはドリームに嘗て自身が彼女達に送った氷の花を要求した。
自分達をカワリーノが出現する場所まで案内してくれた氷の花。その時にそのまま持ってきてしまっていた。ドリームは困惑しながらも彼の要求に応える。
投げ渡された花は彼の手に渡ると周囲を埋め尽くす程の光を放ち始めたのだ。光が収まるとウェザートの手からは氷の花が消えていた。
その代わり彼の手には大き目のUSBメモリが握られている。
「な、何だ!何が起こった!?」
「お前が知りたい事は今から分かりますよ、その無駄に大きな目で見ていなさい。」カチ
「WEATHER!」
ウェザートがUSBメモリ...ウェザー・メモリの起動スイッチを押す事でガイアウィスパーが鳴り、そのまま溶け込む様に吸収されていった。
次の瞬間には今までとは比にならない程の冷気や暴風、ありとあらゆる気象現象が彼を包み込み明らかに以前よりも強い威圧感を与えるウェザートが立っていた。
◇ ◇ ◇
やりました、成功したようで何よりです。何故か当初の予定と違ってガイアメモリが出来ちゃいました。
ガイアウィスパーはしっかり立〇文彦でしたよ。毒素とか大丈夫ですかね?
まぁ見た目がライダー達の使う次世代型メモリと同じ形してたので心配ないと思うんですけど。
「貴様の力は私が奪った筈!変身出来る訳ない!」
「フ、こんな事もあろうかと予め力の7割を氷の花として隠しておいたのですよ。」
「それでは私が奪った力はこれ程の力でも3割だと言うのですか!?」
そう、実はプリキュア5と初めて戦った後に私の力を悪用されるのを防ぐ為。そして自身の力をセーブする目的もあって彼女達に託していたのです。彼女達なら大切にしてくれると信じていましたし。
それはそれとして今の今まで預けていたのをすっかり忘れてしまっていましたよHAHAHA!
ふむ、しかし良い事を聞きました。奴め私の力を奪った直後と今の言葉、うっかりし過ぎですね。
「カワリーノ、お前は吸収できる力には限度があるのではないですか?」
「な、何を言う!?」
「その証拠にお前は私の力を奪った時と先程の言葉、どっちも大層驚いていましたねぇ。」
「くっ!貴様ぁ!」
「察するにお前は今容量ギリギリなのでは?」
「貴様あぁ!そこまで私を侮辱するか!」
奴はまたまた激昂して私から奪った力で攻撃してきましたが、なっていませんねぇ。
ちょっとイラついたので奴を上回るレベルの暴風で吹き飛ばしてやりました。滑稽ですねぇ、またもや尻もちをつきました。
「お前ではその力は使い熟せない。この力こういう使い方も出来るんですよ。」
私は自分の体を霧に変換してカワリーノに纏わり付きます。奴は必死に引き剥がそう藻掻いていますが透過してる様なものなので掴める訳も無い。ここで私から奪った力を使えばある程度は散らせると思うんですけどやっぱり使い熟せていない。どこぞの相手の意見を求めてない悪役だって奪った破壊者の力は器用に使っていたというのに。
私はそのまま纏わり付いたまま継続的にダメージを与えつつ地面に叩きつけます。今の状態なら奴の鼻や口から呼吸器官に入り込んで内側から破壊する事も出来るんですけど流石に絵面的にスプラッター過ぎますね。
カワリーノを私に引き付けている間にミルクさんの声が最後の一押しになって国民達に届いた様です。仮面は砕け散り国民達は次々と元の姿へと戻って行きます。
これには奴も「しまった!」という様な顔をしていますが既に後の祭り。希望を完全に取り戻した彼らを再び絶望させるなど不可能でしょう。
そして、これにはデスパライア様も驚愕といった表情。絶望こそが絶対の力だと信じているお方だ、無理もありません。
「何故です。何故貴女達は絶望しないのです。私がこれだけ念入りに絶望へと導こうしているというのに。」
「未だ分かりませんか、彼女達はプリキュアだから絶望せずに希望を見出せるのではありません。どの様な状況下でも絶望を希望に変える事が出来るからプリキュアなのです。」
私の言った事が気に入らなかったのでしょう。奴の持つ邪悪な力が膨れ上がっているのが分かります。
「希望、希望だと?もういい、そんな希望だの夢だの下らないモノはお前達ごと消し去ってやる!」
奴は自身に黒い紙を複数貼り付ける事で自身を巨大化、パワーアップした様ですが学びませんねぇ。巨大化は負けフラグなんですよ、古事記にも書いてあります。
さて此処からは私も彼女達のサポートをしましょう。
「プリキュア5、貴女達に風の鎧を纏わせました。ちょっとやそっとでは壊れません、参りましょう。」
「「「「「 Yes! 」」」」」
これなら奴の攻撃が当たろうともダメージは最小限で済みます。吹き飛ばされはするでしょうけど彼女達なら自力で立て直すなり仲間に支えてもらうなり出来るでしょう。
アイツ何の為に巨大化したんですか。当たり判定が広くなったのは分かりますけど逆に言えば殴りやすい面積も増えたという事ですし。大きくなった事で尾以外の動きは緩慢になってます。素早く動かせる尾だって最初の細かい動きは出来なくなったようでただ早く動かせるだけ。最初の時の方が未だ強かったんじゃないんですか?
だってプリキュアの皆さんの攻撃が最初の時よりもめっちゃヒットしてます。やはり負けフラグか。
このままでも勝てそうなんですがココさん・ナッツさん・ミルクさんが国民達に「皆の力をプリキュアに!皆で戦おう!」的な事言ってます。
もうこうなったらやっちゃいますか、オーバーキル。
「プリキュア5!先程のお礼です、コレを受け取って下さい!」
私が彼女達に投げ渡したのはプリキュア5ウォッチ。本来の持ち主である彼女達の手に渡った事、そしてパルミエ王国民達の希望の光を受けた事で5つに分かれメンバー全員の手に行き渡りました。
「コレって、あの時ウェザートさんが持ってた時計?」
「前面のリングを時計回りに回して、スイッチを押し込むのです。」
私の使い方説明に彼女達は「うん!」と頷くとウォッチを突き出すように構えると起動させます。
何て眩い光だ!ウォッチから大量の虹色の蝶が飛び出しプリキュア5を優しく包み込む!まるでその様は蛹のようです。そして中から彼女達が姿を現した時には其々背中から綺麗な蝶の羽が生えていました。
これぞ彼女達の劇場版に登場した強化フォーム『スーパープリキュア』!もしやと考えていましたがまさかこの目で見れるとは!
ふう~、興奮するのもここまで。彼女達の必殺技の準備が終わるまでに私は私のやるべき事を済ませましょう。
「一つ、私は同僚の危険性を見て見ぬフリをしました。
二つ、ドリームコレットが奪われるのが分かっていた。
三つ、その所為で皆さんを悲しませた。
私は自分の罪を数えましたよ、カワリーノ...
さぁ、お前の罪を......数えなさい。」
「今更数え切れる訳がないでしょう!」
「ならば、地獄を楽しみなさい...はあぁあ!」
腰を軽く落とし、足を肩幅より少し開く。両手は握り左腕は腰の位置で引き絞る様に、右腕はガッツポーズの様に構え全身に力を巡らせる。
駆け出し、跳躍。背部より暴風を噴出し、急加速。右足におよそ全ての気象エネルギーを収束させる。
今の私に出来る一点特化の最大破壊力を持つ必殺技。
彼女達と共にカワリーノに必殺技を繰り出す!
直撃、奴は大爆発に呑まれそのまま消滅した。
私は奴が爆発した場所に手を翳し奪われた力を回収した。
今の私はせんp...いえ100%ウェザートに戻りました。
そして私達はこれまで静かに我々を見続けていたデスパライア様へと目を向けるのでした。
実はこの回他にも色々パクrもといパロディを入れようとしたんですけど私の技術力の問題で無理でした。
・国際警察の権限において、実力を行使する
・おい知ってるか?夢ってのはな、時々スッゲー熱くなって、時々スッゲー切なくなるらしいぜ。 俺には夢が無い、けど夢を守る事はできる!
・嫌いじゃないわ!
・名護さんは最高です!
・万丈だ
こんなのをプリキュアに合いそうに変えて入れようとしたのですが無理でした。
それとこの作品が完結したら時期は分かりませんが番外編か続き、新規の作品を書こうと思っています。どれを書くか決めるのにアンケートをとりますのでよければどうぞ。番外編の場合はあくまでIFの話になるので主人公のいくつかの設定は変わるかもしれません。
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第9話 明日の夢と希望と掲げる腕
玉座から立ち上がり我々を見下ろすデスパライア様、そして不意に視線が交差しました。その瞳は何処か安心している様で哀し気なもの。
はっきり言って悪の組織を抜けたというのに罪悪感が凄まじい。勿論プリキュアの皆さんやココさん達にも感じていますがあの方にも感じてます。あの方がカワリーノ並みの極悪人なら裏切るのに後悔しないんですけどね、デスパライア様って悪人であっても悪党では無いですし非道ではあるものの外道では無いんですよねぇ。
私がこの時期までナイトメアを辞めなかったのも原作との兼ね合いもあったとはいえデスパライア様の存在が大きかったのです。心を許した相手には割りと良くして下さるから中々辞め辛い。
ナイトメアは勿論悪徳企業でしたけど、デスパライア様が悪徳経営者かと言われるとねぇ。寧ろその部下が暴走してたって感じですし。
「仮面を砕き、カワリーノを倒すとは恐るべき力だ。そして、まさかウェザートお主が其方側に行くとはな。カワリーノが絶望の闇に堕としたと言った時は本当に信じられなかった。」
あああ!心が痛い!何ならカワリーノに背中刺された時の方がマシと思える位には滅茶苦茶痛い!
戦う前から精神攻撃ですか!そうですか!それならこっちだって実力を行使しますよ!
「しかし私とて信頼していたお前と戦うのは本望ではない。出来る事なら下がっておれ、ウェザート。」
「良いでしょう。私にも貴女を裏切った事に対する罪の意識を感じています。」
ちょっと私ぃ!?何あっさり言う事聞いてるんですか!?こんな所で前世と今世の社畜魂発揮しなくて良いんですよぉ!!
仕方ありません、こうなったらそれらしい事言って皆さんには納得してもらうしかありません。 今世の私誤魔化してばっかりですね。
「皆さん、聞いての通り私は今から戦力になりません。あの方はお強い、しかし私は貴女達の希望が勝ると信じています。」
「ウェザートさん...うん!私たちに任せて!絶望なんかに負けないんだから!」
「お気を付けて、その代わりパルミエ王国の皆さんに何かあった場合は私が責任を持ってお守りします。」
「さぁ、皆さんは此方に。」
パルミエ王国の皆さんを避難させつつ内心ガッツポーズです。
とにもかくにも私の舌先三寸にかかればこの通りです。
しかし、この見た目の所為かココさん達以外には怖がられている様子。個人的には格好いいと思うのですがやっぱり厳ついのでしょうか?
人間態に戻っても良いのですが、それだと不測の事態に行動が遅れてしまいます。その所為でカワリーノの奴に絶望の闇に堕とされたのですし。
どうしたものでしょうか、既にプリキュア5とデスパライア様のコワイナーが戦闘を始めてしまいました。しかしこのまま最後まで怯えていられるのも可哀想です。
「みんな、大丈夫ココ!ウェザートは少し前まで敵対してたけど今は心強い味方ココ!」
「そうナツ!皆だって見てた筈ナツ、ウェザートがプリキュア達の為に一緒に戦っていたナツ!」
「ミル!この人のくれた花のお陰でミルクたちは此処に来る事が出来たし、さっきはプリキュアに大きな力をくれたミル!」
「「「だから怖がらなくても大丈夫ココ(ナツ)(ミル)!」」」
ココさん達のお陰でパルミエ王国の皆さんの警戒心が薄れて行きました。
こんな私の為に皆さんに私を味方なのだと言って下さるとはありがたい限りです。
私が感動していると一人の方が歩み出て来ました。たしかパパイヤさんでしたか。
「ウェザート殿、先程は怖がってしまい申し訳ありませんでしたパパ。皆を代表して謝罪しますパパ。」
「そんな、謝らないで下さい。私はつい最近までナイトメアの幹部でした、怖れられてもしかたない。」
まさか謝罪されるとは、ココさん達に目を向けてもニコニコされるだけですしどうしましょう。
「いえ、しかしそういう訳にはパパ...。」
「私はただ
「パパ...。」
「だからこそ私に貴方達を守らせていただけませんか?」
私の言葉に彼らは自分達の謝罪を受け取る代わりが何故自分達を守る事になるのか首を傾げてしまう。
こういうのは立て続きに言って有耶無耶にするのが一番です。
「私は
私の言葉に彼らは頷き「お願いします。」と言って来られた。
良かったです。彼らのような心の優しい人達が態々私に謝罪で頭を下げる事はありません。彼らはもう散々苦しんだのですからね。
そうと決まれば話は早い。私は彼ら全員を覆い隠せる程の巨大なカマクラを作り出します。
そして私の横には5体の1.5mの雪だるま型のゴーレム。彼らは再生能力を持つコワイナーから着想を得て考えた私の私兵です。戦闘力は皆無ですが守る事に掛けてはピカイチです。
例え砕かれようとも私が雪を降らすだけで再生・復活、破片から増殖していきます。総評すると弱い癖にやけにしぶとくどんどん増えて行く、という完全に妨害特化のゴーレムです。
彼らが足止めしてくれる間に私が敵を倒すという作戦です。
「皆さん、今から雪を降らせますのであのドームの中に入って下さい。ご安心をあの中は頑丈で温かくなっています。」
私の言葉に一斉に皆さんカマクラの中へと入っていきます。ココさん達は残るようで、どうやらプリキュアの皆さんを見守るようです。
取り敢えず寒くないように小型の多重層カマクラを作ったのでその中から応援してもらう事にしました。幾層にも重なった層によってかなり頑丈なカマクラは100人乗っても大丈夫です。
っと案の定プリキュアを絶望させようとこちらにコワイナーが襲ってきました。
さぁ!出番ですよ、スノー・ガーディアンズ(今命名)!
『コワイナー!』
『ユッキー!』
当初の予定通りかなりのスピードでどんどん砕かれて行きますが私の超局所的な暴雪によって直ぐに再生・増殖していきます。
そして実は彼ら最大で3m程まで大きくなります。いくら戦闘力皆無とはいえ体が大きくなれば単純に投げ飛ばすだけの力ぐらいは得る事が出来ます。
そして後は私がそこに攻撃を加えるだけです。
「光あれ!!!」
『コワイナー...』
やはりあのコワイナーは影から作られているのか日光に弱いようです。
勿論スノー・ガーディアンズには当てませんよ。流石に解けたら再生できませんからね。
しかし増殖できるのは向こうも同じ様です。何か更に差し向けられたんですけど。あの、デスパライア様?もしかして怒ってます?
や、やっと終わりましたか。最後あたりプリキュア達に向かう同量のコワイナーが押し寄せて来たんですけど!
私基本的にオフェンス向きなんですよ。タワーディフェンスのゲームとかも苦手ですし。とはいえ凄いですね。
のぞみちゃん の言葉はデスパライア様の心にもしっかり届いた様です。しかしこうしては居られません、ココさんたちには「夢原のぞみ さん達の所に行ってきます。」と言って近づいて行きます。
だって のぞみちゃん がデスパライア様に手を差し出した良いところで...。
「無礼者が!デスパライア様は貴様如きが気安く手を触れて良い相手では無いわ!消え失せろぉ!」
「「「「のぞみ(さん)!」」」」
「少しは空気というものを読んだらどうですか?今完全にいいところでしたよ。」
首から下を氷漬けにしてやりましたよ。
アイツああやって黒い紙に自分が完全に倒される寸前に隠れてましたね。それで動けるようになったから出てきて見るからに感動の場面を邪魔しやがりましたね。
ちょっと威圧感を与えながら奴に近づきます。
「ウェザート!貴様またしても私の邪魔を!」
「邪魔なのはお前ですよ、カワリーノ。この際だから言ってやりましょう、お前なんざ唯の金メッキです。」
奴の顔が激しく歪む。
あともう少しで本当にお別れでしょうしこの際今まで言えなかった事ぶちまけてやります。
「本当の事でしょう?幾ら綺麗に着飾り丁寧な口調で覆っても、その実他者を見下し踏みにじり駒にしか思わない。」
「黙れぇ!!!」
「極めつけは自身の主にすら己の理想を押し付けようとする。そんな醜い怪物を金メッキと言わず何と言いますか?」
「黙れと言っているだろう!!!」
怒りが有頂天に達したのか私の氷を砕いて襲い掛かってこようとしたので圧縮した風の衝撃波で壁まで吹き飛ばしました。
手加減しましたがそれでも立ち上がって来るとは執念深いですねぇ。
「わた、しは私はぁ、デスパライア様の為に尽くして来たのだ!お前の様に私は裏切っては」
「もう良い、カワリーノ。」
「デスパライア様?何故ですか?」
私に向けられようとした罵倒をデスパライア様は遮ってくれました。
決して私の方には向かれていないその表情。窺う事は出来ませんが怒気を感じます。
「私はウェザートが裏切ったとは思っておらん。」
「何故ですか!確かに奴はナイトメアを辞めたと申しました!」
「それは私が許した事だ。そもそも最初からナイトメアに貢献してくれれば何時辞めてくれても良いという契約だったのだ。」
「それに、今はそれよりも」
デスパライア様は一旦区切ると のぞみちゃん そして他のメンバーの方へ顔を向けられる。
のぞみちゃん に対しては若干微笑んいる様に見えたのは私の勘違いではないでしょう。
「この者達の話をもっと聞きたいのだ。」
「なぁっ!?」
「どうすれば希望を持てるのか知りたいのだ。不老不死を得てはみたもののこのまま世界を絶望に堕としても空しいだけではないか...。」
そして漸く私の方に向けられたその顔は興味を持っていると言ったものでしょうか。
「同じくナイトメアに居ながらウェザートもこの者達の希望に惹かれたのだ。故に私は希望について知りたいのだ」
「そ、そんな...。」
その言葉がトドメになったのでしょう、奴は膝から崩れ落ちました、そしてその足元には私を堕とした時の絶望の闇が。
「お前は、ブラッディ!!!」
「カワリーノォ!」
中からは巨大な手がカワリーノを掴みます。執念のみで今か今かとブラッディさんはカワリーノが絶望する瞬間を待っていたのでしょう。
「あぁ!カワリーノ!」ガシ
「ウェザート...?」
「...。」フルフル
奴はブラッディさんに引きずりこまれている時に往生際悪くデスパライア様に助けを求めた。
デスパライア様も心を許していた相手です、咄嗟に手を伸ばそうとした彼女を私は掴んで引き止め首を横に振る。
奴はそのまま絶望の闇へと呑み込まれました。奴は結局他者を蔑み利用する事しか知らなかった。これは奴が招いた自業自得、自分で生み出した絶望です永遠に嘗ての上司と共に彷徨い続ける事でしょう。
あの時言ったでしょう?罪を数えないのなら...地獄を楽しみなさい、とね。
そしてこの世界ももうじき、
「これは、何が起きてるの!?」
「私の所為だ、私はもう絶望の力が制御出来ない。」
永遠の命と若さと嘗ての力を手に入れてしまったデスパライア様。このままでは文字通り全ての世界を永遠の絶望に堕としてしまうだろう。
故にデスパライア様は彼女達に頼みます。プリキュアの力で自分が全ての世界を蝕む前に己を封印して欲しいと。
のぞみちゃん はとても悲しそうにその提案を躊躇っています。それは他のメンバー達も同様。
やはりこんなにも優しい彼女達が悲しむ顔は見たくない。貴女もですよ、デスパライア様。折角希望について知りたいと思えたのです。
せめて最後くらいは悔いの無いように。
「デスパライア様、それならば最後に彼女達に貴女が知りたがっていた希望について話し合われてみればいかがですか。」
「しかし、そんな事をしている時間は...。」
「時間が無いのなら作れば良い。私が暫くの間暴走する絶望の力をこの空間ごと凍結させます。」
「出来るのか!その様な事が!?」
「私一人では無理でしょう。私の力はあくまでも気象現象を操る力。しかし、」
そう言って のぞみちゃん が持っている再び一つに戻ったプリキュア5ウォッチに目を向ける。
「夢原のぞみさん、ウォッチを渡して頂けますか?」
「はい!」
「彼女達の夢と希望の詰まった奇跡の力を使えば出来るでしょう。」
「ウェザート...。」
「折角出来た貴女の夢です。さぁ、お早く!あくまでも時間を遅らせるだけで止める事はできませんので!」
私の言葉が一押しになった様で良かったです。彼女は のぞみちゃん達の方に向かいます。
ウォッチを左手に持ち、右手は上空に掲げる構えをとります。
私は貴女を裏切った身だ、せめて貴女が満足出来るまでは時間を稼いで見せましょう!これで罪が清算出来なくとも!
世界を蝕む絶望の力、望む所です!私の愛する希望の力!どちらが勝つか勝負と行きましょう!
氷の巨大な蝶が飛び立ち、世界を優しく包み込む。
「もう良いウェザート、良くぞ時間を稼いでくれた。」
その言葉を聞き終えると変身が解かれる。
体中が痛い、意識が朦朧とする。僅かな挙動のみで頭が割れるようだ。慣れない事はするものではありませんね。
視界が揺れる、体が傾く。このままでは1秒と掛からず硬い地面に倒れるだろうと無駄に未だ働く頭で考える。
いつまで経っても衝撃は来ない。それどころかフワリと誰かに包まれる様にキャッチされたようだ。
霞む目を精一杯開けて見てみる。デスパライア様だ。
「私の為にここまで体を酷使させてしまった、すまない。そして、ありがとう。」
何を仰るのですか。そんな事を最後に言われては寂しくなるではないですか。
「お礼を...言いたいの、は私の...ほうです。あな、た...にはとても良く、していただいた。これで...少しは、お返し...出来、ましたか...?」
「ああ、お主は十分返してくれたよ。」
こんなに朗らかに笑うこの人を見た事はあっただろうか。ある訳ないか、素顔を隠されていたのだから。
喋るだけでも全身が軋む様だ。知った事か、唯意識が朦朧としているだけ唯体が死ぬほど痛いだけだ。
足腰に力を入れてどうにか自力で立つ。
「だったら、良かった...!」
私のやるべき事出来る事はもうやった。ならば私にもう出番は無い、後は彼女達に任せよましょう。
せめて、せめて最後だけは精一杯の笑顔でこの方をお見送りしたい。
デスパライア様はパルミエ王国の皆さんに謝罪を受け入れられたようだった。
プリキュアの持つ奇跡の力によってこの世界はデスパライア様と共に封印された。
私の目に映っていた彼女達の表情は双方共満ち足りたモノだった。
取り敢えずこの作品も残す所あと1話になります。
時期は決まっていませんが今作が終わった後にまた作品を書くという意欲は湧いてまいりましたので「俺達の戦いはこれからだ!」みたいな終わり方はしませんからご安心下さい。
主人公が最後ボロボロなのはゲイツリバイブの副作用的なアレだと思って下さい。
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第10話 プリキュア5の世界に転生しました…悪役サイドだった者ですが。
アンケートは2021/3/26まで実施しているつもりです。結果は活動報告にて記載させていただきます。
コメント欄に主人公とデスパライアの間には一種の恋慕が存在したのではと考察されていますが、私はそこまで詳細に考えていません。ただ言える事はデスパライアは主人公がナイトメアを抜けてプリキュア側に着こうとも恨みや憎しみは感じず裏切ったとすら思ってもいなかったのではないかという事です。そこに恋慕の情があったのかは私にも分かりません。そして主人公にしてもデスパライアにしてもお互いに戦うのは最も拒みたかった事なのだと考えています。
そこら辺の情景に関しては読者様にお任せします(笑)
目が覚める。体を起こすと自分の状況を少し整理する。
確か、人間界に戻って来た後に流石に限界が来てそれから...。
「そういえば、此処は何処でしょうか...?」
軽く見渡して見れば広い部屋に豪華な装飾品や家具。そして自分が今まで寝かされていたキングサイズベッド。
素人目で見ても何処かのお屋敷と分かるという事は かれんさん のお家でしょうか。
そう思うと申し訳なく感じてしまいます。大の大人一人を此処まで連れてくるのは難しいでしょう。
確か今日は爺やさんが休暇中だった筈です。それならプリキュアに変身した状態かココさんとナッツさんが人間に化けて運んで頂いた可能性が高い。
はぁ~、最後の最後までご迷惑をお掛けするとは情けない。
一人落ち込んでいると「コンコンコン」とノックがされる。
何時までもウジウジしていてもしょうがないので返事をすると かれんさん が入って来られました。
「ウェザートさん、もう起きていても平気なの?」
「ご心配をお掛けして申し訳ありません。一時的なものだった様でもう大丈夫ですよ。」
「だったら良かったわ。」ニコ
凄い破壊力ですね、かれんさん の笑顔。これだけでご飯3杯は行けちゃいます。
おっと、私の中の邪な部分が。静まり給え、私は紳士。
「水無月かれんさん、聞きたい事が。」
「〝かれん″で良いわよ。多分他の皆もフルネームより名前で呼んで欲しいと思うから。」
え、マジですか?合法的に現役中学生の、ましてやプリキュアのメンバーを名前呼びしても良いと許可が!
この時に舞い上がらなかった私に心の中で拍手を送りたいです。
「では かれんさん、私を此処まで運んで下さったのは何方でしょうか?」
「ココとナッツよ、二人とも倒れたウェザートさんを私達プリキュアと同じ恩人だからって此処...私の自宅まで運んでくれたの。」
やはりココさんとナッツさんでしたか。
多分両隣りから肩を貸されていたのだと思うのですがそう考えるとハンサム二人に挟まれるオジサンという誰得な絵面が出来上がるのですがこの際ソレは置いておきましょう。
「それならば後でお二人にお礼を言わなければいけませんね。」
「二人はあまり気にしていない様だったのだけれど、貴男は律儀な人ね。」
律儀?私がですか?いえ、誰かに良くして頂いたならそれに報いる。せめてお礼くらいは言わなければ、これ社会人の常識です。
...ただ今無職ですがね。
「それと、改めて皆さんには謝罪をしなければいけませんね。」
「謝罪?何故かしら?」
「何故って、私は今までナイトメアの一員でした。貴女達と共に戦ったとはいえ確りとした謝罪はしていません。」
そう、これはケジメの様な物です。いくら皆さんが気にしていない、許していると言っても私が敵対していた過去は変わらない。
だからこそ私は謝罪しなければいけない。彼女達は何処にでもいる中学生で、彼らは平和を享受して暮らしていた国民達。本来ならしなくても良い戦いをするハメになり、彼らは故郷を滅ぼされた。
私がナイトメアに入ったのは少しでも彼女達に近づく為。私が直接戦った回数は少なくとも傷付けた事には変わらず、その結果招いたのが今回の悲劇とも言える。
つまりこれは嘗ての自分との決別でもあるのです。そう彼女に説明する。
「......ふふ。ふふふ。」
「え」
あの、私何かそんな口元抑える程の変な事言いました?
というかそんなに笑われていられる居た堪れない様な美味しい様な複雑な気分なのですが。
「ふふふ、ごめんなさい。でも我慢出来なくて、貴男少し私に似てるわ。」
「わ、私が かれんさん にですか?」
彼女に言われた事が理解出来なくて頭が情報処理に追いつかない。
だって、そんな事を考えた事など全く無かったのだから。
「えぇ、責任感と使命感があってそれでいて真面目過ぎて融通が利かない。のぞみ達と出会う前と出会った直後の私にそっくり。」
「そう、なのでしょうか?」
「そうよ、だからこそ貴男の立場から考える事も出来るわ。纏めれば貴男は自分が許せないって事よね?」
何というか、自分の事がここまでお見通しだと少し恥ずかしいですね。
しかし、それと同時に似ていると言って貰えた事が嬉しい。
「でもね、私達にとってソレはもう終わった事なの。だって私達はもう友達でしょう?」
「友...達、私が既に貴女達の?」
「そうよ、ココとナッツにお礼を言うのは良いと思うわ。でも謝罪をされては逆に困ってしまうわね。」
そう言ってもう一度微笑む かれんさん。
目から鱗とはこの事ですね。私の事を友達だと思ってくれるとは、これは心が躍ります!
それに胸の痞えが取れたような気分です。
「ありがとうございます、目が覚めた気分です。」
「ふふふ、それなら良かったわ。」
「時に皆さんは今何を?」
「パルミエ王国の皆が帰って来た事を祝ってちょっとしたパーティーをしてるわ。」
それならとベッドから立ち上がり私も手伝う事にしました。最初は かれんさん に止められましたが体調は万全なのと手伝う人数は多い方が良いと言って手伝わせてもらう事にしました。
そういう所も似ていると苦笑されたのは面白かったですよ。
厨房に着くとお菓子を作られていた りんちゃん達に驚かれました。
クッキーやビスケットなどの焼き菓子を始めアイスクリームなども作らせて頂きました。
皆さんは大分意外そうな顔をされていましたが私これでも料理は出来るんですよ。得意ではなく出来るタイプと言うんでしょうか。普段はあまり積極的にしないのですが一度やり始めると凝ったモノも作ってしまうタイプですね。
ナイトメア時代も仕事が終わった後は基本的に暇になってしまうので集中して時間が潰せる料理やお菓子作りはまあまあやっていました。お菓子は概ね好評で良かったです、転生してから誰かに振舞うのは初めてですからね。
その際ココさんとナッツさんには確りとお礼を伝えました。
そんな楽しいパーティーも時計の針が00時を指す頃にはお開きに。片付けも終えて王国の皆さんは休まれています。元の世界へは直ぐにでも戻る為に夜明けあたりには出発されるようです。
ココさんと のぞみちゃん、ナッツさんと こまちさん は良いムード。最初から率先してお菓子を作り手伝っていた りんちゃん と うららちゃん は疲れたのか揃って夢の中。
私はというと、
「驚いたわ、まさかウェザートさんがお菓子作りが得意とは思わなかったもの。」
「私もですよ、まさかこうして振舞う機会があるとは思ってもいませんでした。」
「良かったら時々でいいから教えて欲しいぐらいだわ。」
何故か かれんさん と一緒に暫くお話をしています。当人である私が一番が驚いてますよ。
中学生とおじさんが楽しそうに同じ部屋で2人きりで話している、事案な絵面じゃないですよね?
「それは...難しいですね。」
「え?」
「パルミエ王国の皆さんと同じように私もこの街を暫く離れる事にしたのです。」
「...そう。折角仲良くなれたのに寂しくなるわ。」
彼女達は優しいからこういう雰囲気になると思ってあまり話したく無かった事なんですけどね。
でもこれは決めた事なんです。上手くいくかは分からない事、だから下手な事は言えません。
でも、
「そんなお顔をされないで下さい。この世には絶対などありませんよ、縁があれば何処かで会えます。」
「ウェザートさん...。」
「だって世界は繋がっていますから。」
「そうね、そうよね。ありがとう!」
ここまで通してきた紳士ムーブ本当に役に立ってます。
さて、夜明けまであと数時間あります。私は平気ですが かれんさん は未だ中学生ですし何なら女性です。夜更かしは美容の大敵でしょうし、そろそろ休まれるようにって...あらぁ?
HAHAHA私の肩に何やらコテンと乗って来ました。誤魔化すのも此処までにしましょう、勿論かれんさん です。疲れていたのですね、いやしかし幾ら何でも男性の肩に頭を預けるのは無防備過ぎですよ!
しかしどうしたものでしょうか。この部屋はあくまで書斎の様な場所、ベッドなどある訳も無いので運ぶ事も出来ません。かれんさん の自室にお連れしようにも絵面的にアウトですし、そもそも初めて来たので場所が分からない。大分お疲れの様ですから起こすのも可哀想です。しかし幾らこのソファが良いものでも座った姿勢で寝るのは体に悪いですし。
仕方ありません、男の硬い膝なのはお許し下さい。あぁそうだ体を冷やさない様にコートでも掛けて差し上げないと。
翌朝声にならない悲鳴を上げられ赤面されたのは言うまでもありませんでした。
やっぱりちょっとデリカシーが無かったですかね?セクハラで訴えられなければいいのですが。
そしていよいよ別れの時となりました。この先の展開を知っている身としては今生の別れでは無いので暫くは寂しくなるといった感じです。
皆さん其々お別れの言葉は済ませた様ですがやはりもう会えないと思っている為か涙を溜めている方も。
そうですね私からも一つ出発される皆様へプレゼントを。
「それでは短い間でしたが、僭越ながら私から皆様へ門出の祝いとこれからのご多幸を願って贈り物を。」
古くから天候とは神々が齎す厄災や怪物、呪いなど様々な解釈をされ畏れられて来た存在。日照りは大地から水を奪い台風は家屋を根こそぎ薙ぎ倒し、大雪はそれだけで人間の生活を麻痺させて来た。
しかし多くの神々が持つように天候はある種の二面性を持つ。人を傷付け命を奪う呪いにもなれば、人を感動させ命を育む祝福にもなれる。
そんな強大な力を持ち、下手をすれば全てを破壊しかねない
『うわああ!』
「すごい!」
「これって...」
「オーロラだわ...」
何も壊さず、何も作らない未だ日が昇りきっていない空に揺れるオーロラ。
それでも彼ら彼女らの心に残ってくれればそれで良い。
「そうだわ、いつか私達をパルミエ王国に招待してもらったら今度は向こうでオーロラで見せてくれないかしら。」
「構いませんよ、皆さんが私もご招待頂けるのなら。」
『もちろん!!!』
かれんさん の言う通り皆さんは私の事を受け入れて下さっていた。それなのに私はずっと小さな事で悩んでいたのですね。
「だったらみんなの約束だね!けってーい!」
「はい、その時は今よりも飛び切り綺麗なオーロラをお見せする事を約束します。」
5つの蝶が1つの大きな蝶となってオーロラの海を泳ぐように飛んで行った光景を私達は忘れる事は無いでしょう。
☆ ☆ ☆
☆ ☆
☆
「ねぇ りんちゃん、急に決まった全校朝会って何だろうね?」
「さてねぇ、黒板に朝会があるから講堂に集合としか書いてなかったし。」
彼女達はココ達との別れから1か月といったところ。ココ達と別れた次の日にはウェザートとも別れる事になり仲良くなれたのにと寂しがる面々だった。
しかしウェザートに励まされた かれん が皆を同じ様に励まし笑顔で見送った。
彼女達はそれぞれ躓く事はあっても自分の夢を追い続けている。
「のぞみさん!りんさん!おはようございます!」
「「おはよう!うらら!」」
「「皆、おはよう。」」
『こまちさん!かれんさん!おはようございます!』
講堂に着くまでに揃ういつものメンバー。
慣れた光景ではあっても傍から見たらやっぱり不思議な組み合わせ。
「私達も全校朝会があるなんて今朝初めて知ったのよ。」
「私もですよ。」
講堂に着くと「また後で」とクラスごとに其々分かれるいつものメンバー。
暫くして始まった教頭先生の話では急遽新しく教師として来た先生がいるからその紹介だという。
そして紹介された教師が出て来た時に5人は同じタイミングで驚くこととなった。
「初めまして、ご紹介に与りました。
これがまた何かの波乱の幕開けになるかは、別のお話。
何故最後に主人公と かれんさん をちょっと良い雰囲気にしたのか?
それはぁ!私がぁ!プリキュアで初めてファンになったキャラクターだからだぁ!ハハハハ...!
いやぁ最終話くらい私の押しキャラを多めに登場させたかったていう欲望を開放させたくて...つい。
あぁそうだ、コメントでオールスターもって意見があったのですが実は私一旦ハートキャッチプリキュアで離れてしまっている為皆様が期待される程のオールスターを書ける程の自身がありません。なので絞りに絞ってアンケート欄は4つのみとなりました。
アンケートで結果が出ましたらそちらを頑張って書きますので何卒応援よろしくお願いします。
それと活動報告がございますので気になる方は見て行って下さい。
それでは皆様、しばらく。ノシ
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5GOGO編
第1話 苦慮:ウェザート葛藤中~ヘイトレッド・ヴィラン~
さてさて私が
1年生から3年生まで全員を担当しているので大変といえば大変ですが私のこの良く回ってくれる頭脳のお陰で教師として結構やっていけてますよ。
生徒達からの反応もまずまずといった具合で授業に雑学や蘊蓄などを取り入れたのが功を奏した様です。やはり同じ内容でも面白いと感じて貰える方が頭に残るでしょうしね。
それと一番大きかったのは赴任してその日に受けた新聞部の増子さんの取材ですかね。根掘り葉掘り聞かれて誤魔化すのが大変でした。最近の中学生ってあんなにバイタリティ溢れてるんですね、次の日には記事になってるから驚きましたよ。
驚いたで言えばプリキュア5の皆さんからも「驚いた!」って言われました。確かにいつかまた会えます的な事は言いましたが雰囲気は完全に今生の別れでしたのでコレは私が悪かったです。
どうやって教師になったのか聞かれましたけどナイトメア時代に作ったパイプで色々ゴニョゴニョしてなったなんて言えないのでこれも誤魔化しました。ナイトメア辞めてからも誤魔化してばっかりですね。
あぁそれと私生徒会顧問になりました。何でも以前の生徒会顧問を担当されていた方が私と入れ替わりで辞められたようで教頭先生から「良い機会だから生徒会顧問、やってみませんか?」って言われて2つ返事でOKしちゃいました。いやぁ私って単純!
顧問に就任した事を かれんさん に伝えると驚かれましたが直ぐに満面の笑みになられて祝われました。顧問ってそんなに大層な役職じゃないんですよね、恐らく普通だったら教師が手助けしないといけない事でも かれんさん達が居るとすらすら解決しちゃうのであんまりやる事無いんですよね。強いて言うなら生徒会長である かれんさん から報告書なんかの書類を受け取って顧問の判子押すぐらい。ぶっちゃけ私居る意味あるのかなと思いつつも彼女の傍に居れて何かしら力になれていると思えば嬉しいんですよ。
さてと、ナイトメアは壊滅、学園の桜は満開。ならば時期的に考えると原作でいえばそろそろ『5GOGO』が始まる時期ですがどうなりますかね。それというのも1つ問題があるのです。
私は彼女達の活躍が好きです。それは前世でも
近い未来、彼女達は再びプリキュア5として復活する。しかしソレが本当に彼女達の為になるのか分からないのです。折角普通の学生に戻れたというのに再び辛く苦しい戦いが待っている日々に戻ってしまう。敵が出てくるならば全ての力を取り戻した私が変わりに戦えば良いとも考えました。でも結局はソレは単なる私の自己満足な訳で彼女達の為になるのか分からない。
だから私は今もこうしてウジウジしてしまっているんです。彼女達のファンとしての憧憬と
話を変えましょう。私は今職員室から理科準備室に移動しています。明日行う授業で必要な資料等を前もって準備していたのでそれを取りに行っていた最中です。
ただサンクルミエール学園、途轍もなく広い。職員室から準備室まで10分程掛かるというのがその証拠。生徒とすれ違う事もあり、その度に挨拶をしてくれるので此処の学園の生徒は皆さん良い心掛けをされています。
「こんにちは。」
「「こんにちは!」」
この様に挨拶すると気持ちの良い返しをして頂けます。ご近所の方からもご好評なんですよ?かなり独創的な生徒も多いですけどね。
さてお仕事をさっさと済ませますか。
「ねぇ聞いた?近くの山で火事が起きたんだって。」
「私も聞いたよ、原因は不明だって言われてたなぁ。」
はて?近くで山火事、ですか。その様なイベントは無かった筈ですが、私の記憶違い?
しかし、この時期に起こったという事は無関係では無いかもしれませんね。これは内々に調査してみる必要がありますね。
◇ ◇ ◇
先日生徒達が話していた山火事、調査してきました。
収穫としては『怪しいが彼女達に今後関わってくるかは分からない』といった所でしょうか。唯の山火事では無い、という事は確かでしたね。
典型的な山火事と比較してもあまりにも燃焼範囲が狭かったのです。しかし、その代わりとでも言う様に燃焼した部分は悉く何も残っていなかったのです。炭化した木々の破片や灰が殆ど残っておらず僅かな痕跡からでしか山火事が起こった事が分からない程に。燃焼というのは温度が高いと残留物が残り難い、これは新しい火葬炉を想像して頂ければ分かって頂けるでしょう。新しい炉は古い炉よりも火葬温度が高いので余程丈夫な骨を持っている遺体でない限り殆ど燃えてしまうのと同じですね。それを示すように一部地面がガラスになっていました、これは余程高温でない限り発生しない現象です。
強力な爆弾などでこの様な現象が発生するのは聞いた事がありますが、そんな物使おうものなら山火事だけでは済まされない程のニュースになっているでしょう。第一ここは日本、そんな物騒な物を簡単に用意出来ますかねぇ。
もう一つ可能性があるとするならば...我々の様な
そんなニュースもあれから1週間、今時の中学生には他にも面白いニュースがあるようで直ぐに風化しました。
まぁ私としても生徒達がキナ臭い事件に興味を持ったりしないのは安心しました。あの増子さんも最初こそ興味を持っていた様ですが直ぐに別のスクープを見つけた様で其方に向かってくれました。
もし、考えた以上に生徒が先のニュースに興味を持つ様な事があれば かれんさん に相談して危ない事はしないよう改めて注意喚起して頂こうかと思っていました。
む?そのような事を考えていたら何やらワイワイと聞き覚えのある、というか彼女達が何やら大声を上げている様子...もしや。
「皆さん、どうされました?この様な場所で。」
「あっ、ウェザートさん!実はさっき...。」
◇ ◇ ◇
ふむ、どうやら のぞみちゃん が運び屋を名乗る謎の少年と共に一瞬で消えてしまったという事らしいです。間違いなくシロップ君でしょう、成程今日でしたか。
「分かりました、そういう事ならば私も一緒に のぞみさん の捜索を手伝いましょう。」
「でも未だお仕事が残ってるんじゃ...。」
「ご心配無く、最低限必要な仕事は終わらせてあります。先生方には急用が入ったとでも言っておきますので。」
『ありがとうございます!』
お礼を言われる程の事ではありませんよ。第一この様な事態では天秤にかける様で申し訳無いですが彼女達の方が重要です。
さてと、確か のぞみちゃん とシロップ君は大きな時計塔に居ましたね。この辺りで時計塔といえばあそこですか、直ぐに向かっても良いですが何故場所が分かったのか聞かれたら困りますし時間を見計らいつつ彼女達と共に捜索するとしましょう。
今期の敵役が登場するのが夕方あたりだった筈、その時間で時計塔に向かえば問題ありませんかね。
◇ ◇ ◇
「まさか!?あれって!」
「そうですよ!間違いありません!」
はい、あれから少し経って のぞみちゃん達を発見しました。問題があるとすれば2人が暴漢に襲われかけているという事でしょうか。字面だけなら大問題なんですがシロップ君がいますし大丈夫でしょう。
と思っていたら時計塔に居た皆さんが真っ逆さまに落ちてきました。人通りが少なくて良かったですよ、少なくとも傍から見たら阿鼻叫喚です。
「きゃあああぁ!」
『のぞみ(さん)!!』
何もしないのはアレなので能力を使う姿勢だけ見せる事にします。取り敢えず風を手に纏わせておけばいいでしょう、本心としてはこのままあの〇安ボイスを吹き飛ばしてやりたいところですが。
そうこうしている内に2人は地面に激突しそうになります。その瞬間モコモコとした煙に包まれて中から大きな鳥の姿になったシロップ君が現れました。
「ロプッ!」
『ロプ!?』
あれよあれよと言う間シロップ君達は空の彼方に飛んで行ってしまいました。
あの子〇ボイスも2人を追いかけて行ったようです。我々も追い掛けるといたしましょう。
「皆さん!私達も追い掛けましょう!」
「でも、あんなに早くて空も飛んでいるのにどうやって...?」
「それは勿論...
『...え?』
言うが早いか全員纏めて風で包んで序でに光を屈折させて周囲からも見えないようにします。
皆さん目をくりくりさせて驚愕されており大変可愛らしい、おっと。
「では皆さん、あまり口を開かないように。舌を噛んでしまいますから、それと目は瞑っておく事をお勧めします。酔ってしまうかもしれませんから。」
『ちょ、ちょっと待っt』
「すみません、時間がありませんので...行きます!」
『きゃあああぁ!!!』
本日2回目のそれも4人分の絶叫が響き渡りました。
空の旅に4名様ご案内です。
あっ勿論私が先頭を飛んでいますよ?何故かというとセクハラになってしまいますから。
◇ ◇ ◇
割と手加減したつもりだったのですが普段鍛えてる りんちゃん以外少しフラフラしています。これは悪い事をしてしまいましたかね。
シロップ君の正体がココさん達と似たり寄ったりな不思議生物と判明して皆さん少し嬉しそうです。
「ちょっといいかな、お取込み中失礼。」
「あなたまたローズパクトを奪いに来たんでしょう!さっきはよくもシロップを!」
「違うよ、元々ローズパクトは我々に届けられる筈だったのさ。シロップが届け先を間違えたのさ。」
さてそろそろ私も会話に混ざるとしましょうか。このままでは何でコイツいるの?って思われそうですし。
「失礼、先程から話に出ているローズパクトとは?」
「何だ貴様は?まぁいい、これさ。その娘が隠し持っている物こそがローズパクト、何の価値も分からない子供よりもその価値が分かる我々が持つべきだと思わないか?」
そう言って奴は意気揚々とカタログ本を開いてローズパクトが載っているページを見せてきました。何でこういう奴ら妙にサービス精神豊富なんでしょうか?
まあ幾ら説明されようともローズパクトにどれほどの価値があろうとも私には関係ありませんがね。
「さっきも言った様にシロップのミスなんだよ。貴様も同じ大人なら分かるだろ?真の価値があるものはその価値が分かる者が持つべきだ。」
「成程、ローズパクトとやらにはそれ程の価値があると。」
そう言って一旦彼女達に目を向けます。全員が強い意志が籠った目をしている、やはり彼女達はこうでなくてはと思ってしまいました。
「ウェザートさん...?」
「分かったらさっさとローズパクトを此方に「ふざけるな。」...何だと?」
「貴様、今私に同じ大人ならと言ったな。ふざけるなよ、目的の為なら平気で他人を貶めようとする貴様なんかと一緒にするんじゃない。
貴様が言うローズパクトにどれ程の価値があるか等私の知った事ではありません。ですが、今の私にとって最も価値ある私の生徒を貴様は傷付けようとしました。
その罪の方が今は何よりも重いぞ、カニ擬き。」
「何を言うかと思えば下らん、そんなものは無価値だよ。それと1つ訂正だ、私はカニじゃなくてサソリだ!」
そこにキレるのかとツッコミたくなりましたが我慢します。序に彼女達がいつでも逃げられる様に前に立ちました、つまり私と奴が向かい合っている状態ですね。
「だったらどうすると言うのですか?」
「我々エターナル流のやり方で、直ちにローズパクトを没収する!」
ふむ、怪人に変身して来ましたか。それなら私も迎え撃ちましょう、とくと御覧じろ何てね。
「奪えるものなら奪ってみなさい。私が相手になりましょう、このナイトメアの元・最高幹部ウェザートがお相手する。」
「何だと!?」
この掛け声を言うのは久方振りですねぇ。手加減出来ずに吹き飛ばしたらごめんなさいね。
「想覚」
突風に熱波、冷気に雷雲、豪雨を纏って怪人態に変身完了。
絶叫マシン以上のスピードで好感度下がらないかドギマギしたこのストレス、ぶつけさせてもらいます。
「瓦解したナイトメアの元・最高幹部だと!?何故そんな奴ここに!?」
「難しい話じゃありませんよ、唯彼女達の夢と希望に魅せられただけです。」
早速奴が両腕の鞭で攻撃してきましたが片方は弾いてもう片方はウェザーマインで絡めとりカウンターで風の衝撃砲を浴びせます。
この混乱に乗じて彼女達も離れてくれましたね。
「ぐおっ!?」
それにしても私がまともに戦った相手ってプリキュア5の皆さんと
奴...酢昆布さんが弱い訳じゃないんですけど、もう少し食らいついて下さい。あれ?スケッチさんでしたっけ?
まぁどうしようかじゃれ合っていると空の彼方からいつか見た光の蝶が現れました。
光の中から5つの蝶、ココさんとナッツさんも登場です。
私が戦っている以上彼女達は必ずしも戦う必要はない。どうしますか、皆さん?
「ローズパクトが!?」
ローズパクトの光と5つの蝶の力が混ざり新たな力が生まれました。『キュアモ』、彼女達を新しいプリキュア5へと変える力。それを手に彼女達は再び力強い目を私に向けます。
「皆さん、宜しいんですね。それを使うという事はまた戦う運命に巻き込まれてしまいますよ。戦うだけなら私がいます。」
やはり彼女達はその道を選びましたか。殆ど分かっていたようなものです、それならこうして悲観する必要はもうありません。こうして彼女達が自分で決めたのなら私はまたファンとして最大級に応援するのみ!
今ここに新たな力を得て再誕したプリキュア5が復活を果たしました。ちょっと目頭が熱くなりそうですが我慢です。
それならば私もまた彼女達と共に戦いましょう。
ストップさんは私の名は知っていてもプリキュアの事は知らないという事で嘗めている様子。攻撃を仕掛けましたがドリームに受け止められカウンターを食らいました。続くルージュとレモネード、ミントとアクアの連携でタジタジ。お返しとばかりに殴り掛かるもドリームに正面から拳で打ち据えられれて決まりません。それに、
「私を忘れられては困りますよ、ロブスター男!」
「ごはぁ!」
殴り掛かった後に出来た0.1秒の隙を突いて雷を纏わせたボディブローを叩き込みました。
多勢に無勢もあるでしょうがぶっちゃけラスボスレベルな私が此方側な時点で相手にとっては割りと詰んだ状況ですね。恐らく今回はエターナルボールすら持ってきていなかったのでしょう。ホシイナーを使えばその隙に逃げ出せたかもしれませんが、これも運が悪かっただけです。
まだ新たな力で変身したばかりで必殺技に目覚めていない彼女達では倒しきれないかもしれません。超獣化しないならそれに越した事はありません、だったら私が取り敢えず倒さない程度に吹っ飛ばします。
「これで、終わりです。」
「くっ!」
風を纏って高速で近付き、回し蹴りを食らわせる。
その時両腕をクロスさせて咄嗟に防御の姿勢を取る。全く認識していなかった方向からの強力な衝撃波、ソレによって体勢は崩れ威力は減衰し私はその場に着地するしかありませんでした。
私を襲った衝撃波が来た方向を見やる。
「帰りが遅いから見に来てみれば、随分苦戦している様だなぁスコルプ?」
漆黒のローブを身に纏った人物がそこにいた。顔や手、足などが全く伺えない為辛うじて声で男性だと分かる程度。誰だ、この人物は?こんな人物は私は知らない。私が忘れているだけ?そんな筈無い、ここまで強烈な人物が居れば忘れる筈が無い!
「お前は!わ、私は別に苦戦など!」
「していただろう?無様になぁ、そこの5人組とソイツになぁ」
フードに隠された頭でプリキュア5を見渡した後に一際強烈な圧を掛けて私を見やる。やはり只者ではありませんね、その余波だけで彼女達やスコルプが腕でガードしなければ一瞬吹き飛ばされそうになっている。
何だ、私だけに向けられるこの感情は何だ悪意なのは間違いない。憎悪?殺意?詳しくは分からない。しかしこれ程までの悪意を持たれる事をした覚えが無い。
それでも彼女達ではなく私に向けられているだけマシですね。それに、
「今回は退け、何の準備もしていなかったお前に出来る事は屍を晒すだけだ。」
「いいだろう、今回は退いてやる。ローズパクトも見つけた、次こそは没収してやる!」シュン!
「俺はローズパクトなぞどうでもいい。エターナルとは利害が一致しているだけだからなぁ。
あぁ、だがやっとだぁ。やっと見つけたぞウェザートォ、他の財宝など要らんがいつかお前の命を貰うぞ。」シュン!
それに、少なくとも完全体の私に明確な痛みを与えられる相手。現・エターナルの中でも最も警戒すべき相手ですね。
いつの日か『プリキュア・ファイブ・エクスプロージョン』を受け止めた時と同様に凍り付き治癒を促す腕を見てそう思わざるを得ませんでした。
私は かれんさん推しなのですが5GOGOでの変身バンクはレモネードが好きです。
でも全員共通の変身後の着地する瞬間も好きなんです。
第1話で早くも新キャラ出しちゃいましたけど個人的にこれで良かったのかと悩みながら書きました。
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第2話 命狙う、悪意向ける、おのれウェザート
5GOGO見返してるんですけど第4話の うららちゃん の動き凄すぎません?
※修正しました。いやぁ深夜まで書いてたの事故ってたの気付きませんでした。ご迷惑をお掛けしました。眠い目こすりながら何か内容と比べて文字数多いなあと思いました。
「ウェザートさん、大丈夫!?」
「えぇ...問題ありません、ご心配をおかけしました。」
思ったよりも長い間自分の腕を見続けていた所為でどうやらアクアに心配をかけてしまいました。直ぐに治癒を完了させ元の状態に戻った腕を見せる事で安心して頂きました。
しかし、それでも私の懸念は尽きません。文字通り戦う事に関してはピカイチだと自負している私、攻撃力は元より防御力も高いのです。その上基礎が人間であるドーパントと違って私は完全に人外です。その私に対して衝撃波のみで負傷させる実力を持つ相手の登場。未知数とも言える正体不明の私に対して悪意を向ける敵、こういった手合いは目的の為なら周囲の人間でさえ躊躇無く害するためよくよく考えたら全く油断出来ないじゃないですか。
あぁ皆さんとても心配そうな目を向けられています。非っ常に心が痛い!
いえ今は兎に角私よりもココさんとナッツさんの事情を優先してもらいましょう。良く分かっていない事よりも明確に分かっている大事の方が重大です。
「兎に角今は私よりもココさん達の話を聞きましょう。」
「それはありがたいが、大丈夫なのか?」
「貴男方が来ただけならまだしも、共にプリキュアの力まで来た。この事実から其方の話の方が重要性は高いでしょう。」
「気遣って貰ってありがとう、ウェザート。」
とはいえ今日はもう遅いので詳しい話はまた明日という事にして軽く各々再会を喜んでいました。
あー、 のぞみちゃん とココさんは特にココさんがよそよそしかったのが印象に残りましたね。この場面リアタイで見てても胸がキューッとなったの思い出しましたよ。
◇ ◇ ◇
ここはエターナル、世界中の財宝を奪い永久に保管するという目的で暗躍している組織の本拠地。
そこで今、以前の会社が潰れた為新たに就職面接にブンビーが幹部アナコンディの案内の下に会社見学をしていた。
「ゆくゆくは世界中の価値あるありとあらゆる宝物を手中に収めるのが我々エターナルの目的です、お分かりになりましたか?」
「えぇ、それはもう!」
かなりゴマすりの姿勢を見せておりどうにかして就職したい心が丸見えである。そんなブンビーの事など然して興味も無いのかとことん事務的なやり取りが続いていき段々冷や汗を掻き始めるブンビー。これでも以前の組織では元・幹部(中間管理職)である。
そうこうしている内にアナコンディの部屋に着く。そこには先客が居たようでスコルプと漆黒のローブの男である。
「あら、スコルプさん...それに貴方も帰っていたんですね。おかえりなさい。」
「ああ。」
「アナコンディさん、ローズパクトを発見しました。」
スコルプの言葉にアナコンディの目の色が変わった。エターナルが収集するどの財宝よりも優先度の高い物を見つけたという言葉に興味がそそられる。
「それは本当ですか?」
「ええ、リストと照合しましたので間違いありません。」
その言葉によって機嫌が良くなり珍しく部下を褒めた。これでローズパクトをコレクションに加える事が出来れば館長も喜ぶ、と。
しかしその良くなった機嫌に水を差す様に悪辣な笑い声が響く。視線を向けてみれば漆黒のローブの男だ。
「何ですか、その様な笑い声をあげて。」
「ククク、そうは言うがなアナコンディよぉ。
ローブの男の説明にアナコンディは眉を顰める。折角探し求めたローズパクトが手に入ると思った矢先にスコルプを倒せる程の存在が居ると言うのだ。
しかもこの男が大層嬉しそうにそれでいて嘲る様に語るのだから要注意事項だ。
「どういう事ですかスコルプさん、何者なのですか。」
「は、はい。それがプリキュアとかいう5人組と既に瓦解したナイトメアの元・最高幹部ウェザートという奴でした。」
プリキュアという存在は知らなかったがウェザートという人物には心当たりがあった。表舞台に立つ事は殆ど無かったがかなりの実力者だという噂だったと思い返す。そんな存在が相手では確かにスコルプが負けても仕方無いと考えるが、それならこの男はそんなウェザートが相手でも少なくともこうしてスコルプを連れ帰るだけの実力があるのだと考えた。
未だにエターナルと手を組んでいる者であるとはいえあくまでも利害一致の関係でしかない為未だに実力も底知れない。
そんな事を考えているとプリキュアとウェザートの名に反応した者が1名。今の今まで存在ごと忘れられていたブンビーだ。その様子にアナコンディはその者達の詳細を知っているのか尋ねる。
「はぁい!伝説の戦士プリキュア、前の組織に居た時に何度痛い目に遭わせてやった事か!」
「では、ウェザートという人物の方は?」
「はい!私の元・上司だった存在であります!前の組織の中では新参者だった事もあり私が色々と面倒を見た人物です!」
「ふむ...良いでしょう。ブンビーさんでしたね、採用します。」
自分の知っている事を捏zoもといちょっと盛って話した為ブンビーが採用された瞬間だった。
そんな彼らを嘲笑う者が一人。
(ククク、お前ら如きが奴に幾ら対策を立てようと勝てるものかよ。奴の命を頂くのは俺だ。)
◇ ◇ ◇
次の日、ココさん達から詳しい話を聞きました。私は既に知っている事だった為記憶と照らし合わせる復習も込めて聞いていました。
原作通り戴冠式が執り行われる日に何者かによる襲撃によって新生・パルミエ王国に集まっていた各国の王達が散り散りに離散。その後 のぞみちゃんを襲った相手と同じエターナルという組織だと判明。
やはり此処までは原作通り、だったら例の山火事といいあのローブの男といい何が起こっているんでしょうかね。一番疑うべき原因は私という異分子が紛れ込んだ事による弊害といった所でしょうか。某狩猟ゲームでも言ってました、大いなる存在がいれば自然に自浄作用が現れる的な事を。私という異物を等々世界が排除しようと送り込んできたのがあのローブの男だったとか?ダメです、思考が纏まらない。
「ココとナッツはこれからどうするの?」
「散り散りになってしまった4つの国王を探す。彼らはパルミンという存在に姿を変えてこの世界に居る筈だ。」
おっと、考え込んでいる間に話が進んでしまっていました。のぞみちゃん はまたココさん達と過ごせると分かって嬉しそうですが、ココさんはココさんで望まぬ形での再会やまた戦いに巻き込んでしまった罪悪感からか のぞみちゃん と以前の様に話す事が出来ていませんね。まぁその気持ちも分かります、私もその考えで昨日まで悩んでいましたから。彼女達の言葉が聞けなければ私はこれから先ずっと後悔したままだったのかもしれません。
こっちので拠点としてもう一度ナッツハウスを復活させる事、自国で4か国の王達が襲われたので自分達には彼らを助ける義務がある事、そして一度パルミエ王国に連絡をしたい事などを要点として纏めたようです。
連絡に関してはシロップ君に手紙という形でパルミエ王国に届けて貰おうしましたが断られてしまいましたね。
それでもって話題は次へ、打って変わって真剣な表情に。あまり彼女達やココさん・ナッツさんも危険な目に遭わせたくなかったので嫌だったのですがね。
「それであの時現れた黒いローブの人についてなのだけれど、ウェザートさん何か心当たりはあるかしら。」
「かれんさん、皆さんもそのようにあまり心配なさらないで下さい。しかし、そうですね...あそこまでドス黒い悪意を滲ませる人物に今の所該当する人物はいません。」
「そう...でもウェザートさんに怪我を負わせられる程の力を持った人物、ね。」
その言葉に皆さんの表情が一段階暗くなる。あぁだから話題にしたくなかったんですよ、こうなるのは目に見えていましたから。
ナッツさん達は暗いというより引き攣った表情になりましたね。当たり前ですか、自分達の国と4か国の王達を襲った組織にそんな得体の知れない恐ろしい存在が居るのだと分かったのだから。
「皆さん、あまりそのように気を落とさないで下さい。」
「でも...。」
「こう言っては皆さん更に気にするかもしれませんが、あの人物の目的は私でしょう。なのでもし次に私と居る時に奴と出会ったら直ぐに逃げて下さい。」
「でもそれって囮って事じゃないの!」
そう、これは私が囮になるという前提の話です。当然彼女達は嫌がるでしょうね、しかし今私が思いつく手段はこれくらいしかありません。私の所為で誰かが傷つき涙を流すのはもう見たくありませんので。
仮に奴の戦闘能力が最低限私と同格だとしましょう。そんな存在同士が戦えば例え私が結界を張っても忽ち破壊され意味を為さなくなります。全力でぶつかればその時の被害は想像するのは容易いでしょう。それに、
「そうですね、その通りです。しかしこれはもしもの話です、そこまで重く受け止めないで下さい。」
「...分かったわ、でも納得はしてないわよ。」
「ありがとうございます。それに貴女達には今やりたい事が出来たのでしょう?だったら今は其方を優先しなさい。」
『はい!』
良かった、これで取り敢えず話はまとまったようです。
次に新たなナッツハウスの場所を決める事になりました。以前の場所は別の方に貸してしまったのでまた新たな場所を かれんさん に紹介してもらう事になったのですが...かれんさん、この規模の建物を狭いとは言いませんよ。
◇ ◇ ◇
「それではアナコンディさん、予定通り私がローズパクトを手に入れてきます。」
「ええ、よろしくお願いします。」
場所は変わってエターナルの本拠地、ブンビーからプリキュア達の情報を聞き終えたアナコンディ達。本来ならばこのままスコルプが再度プリキュア達を襲撃しに行く筈だったがそれに異を唱える存在が。
「...待て、俺が行く。」
「何?貴様俺の仕事を奪う気か?」
これからローズパクト奪取に向かおうとしていた矢先にこの男から突然の待ったである。スコルプが癪に触るのも分かるというもの、反対にアナコンディはこの男が突然こんな事を言い出した事の理由を知りたい為静観する事にした。
「あの男がいる時点でお前じゃ勝てないさ。良いようにボコボコにされたのを憶えているだろ?」
「くっ!貴様ッ!!」
嘲るようなあまりにもな物言いについ怒声を上げてしまったのは致し方無いだろう。
更に男はその調子で言葉を続ける。
「何度でも言うぜ、お前じゃ勝てない。狙うんなら奴が居ない時を狙うんだな。それにお前も何時までも俺に助けられた借りがあるのは嫌だろう?」
「...アナコンディさん、どうしますか?」
「良いでしょう、しかし貴男の目的は何です?」
「お前らから貰った新しい
ローブの男に許可を出し、改めて出撃したい理由を問いただす。
返ってきた答えに疑問が浮かぶ。自分達から貰った力とは何の事なのだろうかと、ホシイナーを生成するエターナルボールであれば確かに必要があれば社員全員に支給されるが話に聞く限りウェザート相手では力不足も良いところだろう。それが分からない男では無い筈であるので尚更疑問が湧く。
「我々から受け取った力とはエターナルボールの事ですか?」
「当たらずとも遠からず、だ。それを元に俺が作り出した力さ。」
そう言い残すとローブの男は空間に溶ける様に消えて行った。
尚、ブンビーは最初から居たが話にすら入れて貰えなかった様だ。
◇ ◇ ◇
ココも再び小々田コージとして学園で教師として働き始めた。ウェザート扮する上里もこうして共に教職に就けて事は心強いと改めて歓迎の言葉を述べたが彼は何処か上の空に近い状態であり、上里も十中八九プリキュア絡みの事だと納得し当人達で解決するまで見守る事に決めた。そうと決めれば時間はあっという間に過ぎていく物で既に放課後。上里は明日の教材や資料を纏める為に理科準備室にて作業中。生徒達も下校する者、部活に行く物、委員会等様々な事に専念している。
そんな学園に一人の侵入者が居た。凡そ似つかわしくない闇のような漆黒のローブで全身を隠した出で立ちの人物が学園の中庭に...。
そんな怪しい恰好をしている人物が居れば勿論人目に付くわけで。
「何あの人、不審者?新聞のスクープになりそうなもの探してたらこんな場面に出くわすなんて!」
木陰から僅かに顔を覗かせその不審人物の様子を伺うのサンクルミエール通信編集長を自称する増子美香である。流石に本当に不審者であれば記事軽々しく記事になど出来ないがせめて写真を1枚撮って証拠として先生に提出・対応してもらおうと考えカメラを向ける。
「...え?」
カメラを向ければさっきまで見えていた不審人物が居なくなっていた。
その代わり自分に急に影が差したのに気が付き振り向こうとした。
「丁度良い、お前に決めたぞ。」
声を出す暇すらなく彼女の意識はそこで途絶え、ローブの男は手の中の物をカメラに翳すとその場を後にした。
◇ ◇ ◇
場所は変わって此処は学園の誇る図書館。新書から古書までとり揃える大が付く程の学園の自慢の図書館だ。
今日は偶々人出が少なかった様で中に居るのは極少数、浮かない顔をしたココが のぞみ から受け取った手紙を読んでいた。そこへココを探しに来た のぞみ が話していた。
「私、ココとまた会えて嬉しかったよ。でも、ココはそうじゃなかったみたい,,.。」
「そんな事ッ!」
「ごめんね、ちょっと気になってさ。お仕事、頑張ってね。」
「待って!そうじゃないんだ。」
傍から見れば恋愛ドラマの一場面に見えるだろう。お互いがお互いの事を想っているからこそ言えずすれ違い行き違っている感情だ。
そんな場面にシロップが現れた。のぞみ とキュアローズガーデンについて話をしようと思って来たがココが居た為つい悪態をついてしまう。
ココはココでそんなシロップの言葉に確かに的を得ていると思ってしまう。のぞみ の気持ちも考えずあんな素っ気ない態度で手紙を受け取ってしまった自分は確かに最低だと。
そんな場面に水を差すような人物が現れた。
「何だよ、此処に来ればアイツに会えると思ったのに居ないじゃねぇか。」
闇のような漆黒のローブで全身を覆ったあの時の謎の男である。
その禍々しい悪意を間近で感じた事によりココとシロップは元の姿に戻ってしまった。その間にも男は1歩1歩近づいて来る、楽しそうに獲物を狩るハンターのように。
「まあいいや、お前らにはアイツを誘き出すエサになってもらおうか。その間にコイツと遊んでな!」
男はエターナルボールを本棚に投げると其処から本棚をベースとしたホシイナーが現れた。
男はあくまで高見の見物といった具合で手を出してくる様子は無さそうだがホシイナーの方は直ぐにでも襲い掛かって来そうだ。
のぞみ はローズパクトを取り出すとココに持たせる。
「ココ、これをお願い。」
「おい、何でこんなやつに渡すロプ。」
「ココと一緒に逃げて。絶対に私が守るから!」
そのまま のぞみ はホシイナーに対峙するべくプリキュアに変身した。
◇ ◇ ◇
ふう~これでやっと明日の準備が終わりました。私とした事が明日は3学年4クラス分ある事を失念していました。
それと のぞみちゃん のクラスは明日小テストの返却、と。う~ん、このままだと次の小テストのぞみちゃん だけ追試しなくちゃいけなくなりそうですねぇ。
なんて思っていたら図書館の方から微かな揺れと一度受ければ決して忘れる事の無いこの悪意!まさかあの男がこの短期間で現れたと言うのですか!
今日はスコルプが来る日では無かったのですか!いや、こんな事考えている暇は無い。原作通りならあの揺れは彼女達が戦っている証拠、急がねば!
「よぉ、やっと来たか。待ちくたびれたぜ。」
「やはり貴方でしたか、一体何の用ですか。」
「言っただろ?俺の目的はお前だよ。今日は挨拶がてら
現場に着くとあのローブの男が手すりに凭れ、プリキュア5とホシイナーの戦いまるで観戦しているようでした。フードの所為で分かり辛いですが酷く退屈そうにしている様子です。
反対側にはローズパクトを抱えたココさん達が居るというのに見向きもしていない。一体この男なんなんですか。
「お土産?まさか彼女達が戦っているものですか。」
「はっ、そんな訳無いだろ。まあいいや、驚くぜお前。」
そう言うと奴は虚空に腕を伸ばし何かを引っ張る動作をするとその腕の中には1人の意識を失った女生徒が、この子は!
「「「「「「増子さん!」」」」」」
「おいおい、驚くのはまだ早いぞ。ここからなんだからなぁ!」
そう言って奴が増子さんが抱えていない方の腕から手が見えた。信じられなかった、今まで長い袖の所為で見えなかったその手には私が予想もしていなかった物が握られていた。
「そんな...ガイア、メモリだと。」
「ククク」カチ
「CAMERA!」
奴はガイアメモリを起動させるとそのまま意識のない増子さんの首筋に突き立てた。
そして増子さんは、
「ああああアアアアアアAAAAAAAAAAaaaaaaa!!!」
あまりの苦痛に絶叫しながらカメラ・ドーパントとでも呼ぶべき姿に変身させられた。
やりたいゲームが多すぎる。
誘惑が多すぎる。
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第3話 カメラを向けるな、彼女を救え!
私事で色々ゴタゴタが起きちゃってまして、何回か書こうとはしたんですけど内容が思いつかないようなんつて。
1読者としてはちょくちょくハーメルン来てはいましたんですけど書こう書こうと思ってるとハマってるゲームのイベントが始まっちゃうしで中々腰を据える事が出来ませんでした。
沢山評価を頂いているのに半年以上もお待たせしてしまって本当にすみませんでした。誤字脱字報告も助かってます。
長々失礼しました、それではどうぞ。
この世界には凡そ存在してはいけない怪物が私の次に生まれてしまった事に一瞬頭が真っ白になってしまった。確かに
ならば目の前の存在は?増子さんが強制変身させられたドーパントである。ガイアウィスパーは【カメラ】と鳴っていた、であるならば差し詰め【カメラ・ドーパント】と呼ぶべき存在でしょう。
そんな存在を作り出すことの出来るコイツは何者なのか、という疑問が晴れないが今は増子さんです。アレが本来のガイアメモリと同じ物ならば未成年で長時間の使用は命に関わります。それに生体コネクタすら出現していなかった、このままではメモリの毒素で身体が持たない!
「増子さん、今助けるからっ!」
「いけません、貴女達は手出し無用です。」
友達想いの彼女達の事です、今にでも駆け出そうとします。しかし今回に限ってはそれは悪手でしかない。
ガイアメモリを使いドーパントになった者を救出するにはメモリのみを破壊しなければいけない。それ以外の方法で攻撃し続ければメモリ使用者は死ぬ。
ガイアメモリを破壊するにはガイアメモリから出力・増幅させたエネルギーをぶつける、それが出来るのは我々の中では私だけだ。だからこそ彼女達に手出しをさせる訳にはいかない。
いくら彼女達が奇跡の存在であろうとも其れだけはさせられない。あぁだからそんなそんな「何で!?」みたいな目で見ないで下さい説明しますから。
「AAAAAAAAAAAAaaaaaaaa!!!!!」
「ちょっ、何でよ!このままじゃ増子さんが...。」
「ルージュも、皆さんも難しいですが落ち着いて下さい。端的に申しますと私以外の力で攻撃し続けると増子さんの命が危ないのです。」
「「「「「っ!?」」」」」
彼女達は息を呑む。無理も無いでしょう、今までプリキュアとして戦ってきてはいましたがここまで明確に自分達のよく知る人物が死ぬかもしれないのだから。
そして自分達は増子さんを助ける事が出来ない。助けようとする事自体が増子さんの命に関わってしまうと分かってしまったから。
そんな重苦しい雰囲気の中愉快そうに高笑いをする人物が一人。ええ奴ですよ、正体不明のローブの人物。ガイアメモリで人間をドーパントに変える力を持つ危険な存在。
「フハハハハ!!!やはり知っていたかぁ、ウェザート。その嬢ちゃんはなぁ俺が此処に来た時に偶々見かけたもんでな、挨拶代わりに実験台になってもらったよ。」
「貴様っ、たったそれだけの理由でこれだけの事をしたというのか!たったそれだけの理由で彼女の命を危険に晒しているというのか!」
いけない、あまりにもな外道発言と態度に怒りを発してしまった。私と奴のオーラがぶつかった衝撃でプリキュア5の皆さんは吹き飛ばない様に踏ん張っているしホシイナーは壁に激突している。
しかし怒りが一周回って頭はクールになりました。普段紳士ぶってるんだからこういう時も気を付けなければいけませんね、はい反省。
「ふぅ、皆さんはあちらのデカブツの相手をお願いします。増子さんを救うには少々デリケートなモノでして、邪魔が入らない様にして頂きたい。」
「「「「「Yes!」」」」」
「ククク、やるなら早くした方がいいぜぇ?あのメモリは試作品もいいところだ。あの嬢ちゃんの体質にもよるだろうが出力は高めに設定してある、それだけ毒素も強力だからなぁ!」
私は【カメラ・ドーパント】の下へ駆ける。ホシイナーは彼女達に任せれば問題ない、前世では動画サイトのコメントで散々戦闘集団だの特殊小隊だの言われていた彼女達だ。ことチームワークに関しては以降に登場するプリキュアにも負けない完璧な以心伝心具合を
とにもかくにも増子さん基【カメラ・ドーパント】の相手をしなければ、はてさて一体どういった能力なのか。ダブルに出て来たドーパントならば対策は出来るのですが...
「GAAAAaaaaa!!!GAAAAA!!!AAAAAaaaaa!!!」バシャッバシャッバシャッ!
「っ!おっと、危ない危ない。」
咄嗟に身を翻して跳躍し少し離れた場所に着地し自分がさっきまで居た場所を確認する。
成程、【カメラ・ドーパント】の特殊能力は大体分かりましたよ。
「どうやら撮影した場所を抉り取れる力をお持ちのようだ。」
そうさっき奴からは三度シャッター音が鳴り私が居た場所は重なる様に三か所が抉られています。しかし範囲はそこまで広く無いと思われますね、恐らく奴は局所的にしかあの能力は発揮できない。今も尚私を
「その能力の全容はある程度分かりましたが面倒なのは変わり無いので封じさせて頂きます。」
「GIIii!?GAAAaaaaa!!!!????」
カメラは湿気や雨に弱い様ですし、温度差と湿度てレンズを曇らせてみました。やはりあのレンズはあのドーパントにとっては一番の武器であると同時に目でもあるようですね。突然視界がぼやけて見えなくなれば驚くのも無理ないでしょう。
殆ど攻撃は加えていませんがメモリによって増子さんは今かなり身体を痛めつけられている筈、なら手加減していてもメモリブレイクは可能でしょうね。
正拳突きの構えを行い力を選択する。
【ウェザー】に含まれる必要な記憶は雨や湿気といったカメラの天敵。最低限の力でメモリブレイクを行うのなら最大の弱点を狙えば良いだけです。
辛いでしょうが頑張って下さい増子さん、痛みは本当に一瞬です。それを過ぎれば貴女は悪い夢を見ていただけなのです。故に貴女の体内にある異物を除去しなければいけません。
「これで終わりです。」
「GAAAAAaaaaaaa!!!!!!」
「MAXIMUM・TEFNUT!」
あの者に装填されたと思われる辺りの首筋にメモリの力を増幅した拳を叩き込む事に成功しました。
どうやら彼女達もホシイナーを倒したようですね。増子さんの様子は...どうやら元の姿に戻ったようです。メモリも排出され砕け散りました。
しかし増子さんの容体は心配です、短期間とはいえ未成年が毒素の強いメモリを使用したのです。どのような後遺症が出るか見当も尽きません。取り敢えず目に見える範囲での以上は目の下にクマが出ているくらいでしょうか。
これはメモリによる多大なストレスによるものか...とはいえ私か かれんさん の紹介で病院に連れて行きますか。
もう一つ懸念があるとするならば...!
「ハァハッハッハ!中々面白いゲームだったなぁ。」
「ゲーム...だと、今そう言いましたか?」
「その通り!これはゲームさ。早く助けない誰か死んじまうゲームだがなぁ。」
こんな事がゲームだと言うのか、コイツは!何も関係無かった増子さんを巻き込んでおいて、下手をすれば死んでいたかもしれないというのに!
コイツは人の命を何だとっ!
「何とも思っちゃいないさ。」
「貴様っ...。」
「雰囲気でそう言ってたぜぇ。まぁいい、今回はお前の勝ちだが次はどうなるか楽しみだなぁ。」
そう言うと奴は闇に溶ける様に消えて行きました。
とにかく今は彼女を病院に運ばなければ、ここからは教師としての仕事をしましょう。
◇ ◇ ◇
「上里先生、増子さんは大丈夫!?」
「落ち着いて下さい夢原さん、私は医者では無いので表面上しか分かりません。それでも良いのなら今は呼吸も安定していて脈も正常なリズムを刻んでいます。」
「一時はどうなるかと思ったわ、あの黒い奴が増子さんに何かしたと思ったら怪物に変わってしまうだなんて。」
「それなのですが水無月さん、何処か彼女に病院を紹介して貰えませんか?今はこうでもその後が心配です。」
という事で かれんさん に大き目の病院を直ぐにでも紹介して貰う事になりました。坂本さんを呼ぶと言われましたが流石に悪いと思いタクシーで向かう事になりました。
【HOUKOKUSHO】
結局病院に到着しても増子さんは目覚めず取り敢えず血液検査も含め緊急入院という処置になりました。30分後に両親が到着し流石にありのまま説明する訳にもいかず中庭で気絶していたという事にして現状説明。
私の説明を聞いて心配そうに俯いているご両親に心を痛めていると真横から大欠伸で増子さんが起き上がり寝ぼけ眼でご両親の顔を見て一言「おはよう~」。
ご両親、今度は違う意味で俯いてしまいました。お二人揃って顔を真っ赤にするというオマケ付きで。事態が呑み込めて無いのは増子さんただ一人、ゆっくりご両親が居る方とは反対側の私が居る方に顔を向けると今度は増子さんがお顔真っ赤で俯いてしまってちょっとカオスな状態になってしまいました。
そんな状況を打破するべく現れたのは増子さんを検査したドクター。検査結果は殆ど異常無しで倒れた原因は過労だという事になり一日大事を取る事で解決。
増子さん一家にはそれはもう頭を下げられてしまいましたが元はと言えば此方が巻き込んでしまった様なモノなので心が痛い。
次の日いつものメンバーで報告会をしました。
どうやらピンキーを捕まえたらしいですが王様の何方かでは無かった様です。それとココさんと のぞみちゃん は仲直り出来たようです。私にとってはプリキュア全員が推しといっても良いのでその推しの笑顔が再び見れるだけで上々です。
そして増子さんの身に起こった事を説明しなければいけませんね。本来ならば無関係でいて欲しかったのですが、現状こうなってしまってはしかたありません。
◇ ◇ ◇
「それで、この前の事を説明して貰ってもいいかしら。」
かれんさん が先陣を切り又は代弁をするように不安げに私に質問をしてくる。他の皆さんも同様だ、当たり前か。目の前で友人が怪物にされたこれ程恐ろしい事はそうそう無いかもしれない。もしかしたら奴の魔の手は他の友人や家族にさえ及ぶかもしれないのだから。
「本来ならば皆さんには無関係であって欲しかった。しかしこうなってしまっては私には説明する義務が生じました。」
一拍置いてからテーブルの上に砕け散った【カメラ・メモリ】の入ったビニール袋を置き話し出す。
「【ガイアメモリ】と言います。このUSBメモリのようなアイテムには地球の記憶が内包されています。」
「地球の、記憶?」
「はい。例えばこのメモリは【カメラ】、つまり写真機の記憶が封入されています。これを人体に挿入する事でその記憶を元にした超人【ドーパント】へと変身させます。」
「あの、前にウェザートさんが のぞみさん から受け取っていた物も同じガイアメモリなんですか?」
説明していると うららちゃん がおずおずと挙手して質問をして来ました。皆さんも何か合点が行ったような表情をしています。
あぁ、成程。私が出現させたメモリは奴のメモリと外見が違いますからね。そこが引っ掛かっていたのでしょうね、私のメモリは次世代型で奴のメモリは化石の様な骨を思わせる造形がありますから。それにウェザー・ドーパントの見た目は他のドーパントと違ってダークヒーロー感がありますからね。
私の【ウェザー・メモリ】を出現させて合わせて説明する。
「えぇ、私のメモリも奴のメモリも本質は基本は同じです。このメモリはそもそも外側だけですが。」
「ええっと、どう言う事?」
「私はそもそもドーパントですらないのです。ドーパントは人間がメモリを使って変身した存在ですが、私は違う。私は地球の記憶の、その内の【天気】という概念が心を持ち肉体を得た存在だからです。」
後半はちょっと捏造だ、転生したなんて言えません。でも私はドーパントですらないのは本当です。ガイアメモリの力を【ニンゲン】という余計な中継器を通さずに直接出力する事でドーパントという存在の上位互換になれる。
ハイドープは過剰にメモリを使用した事で超能力を得た人間です。もともとメモリには存在しなかった能力を得た存在、それがハイドープ。ならば私は?最初から色々出来ていましたよ、ウェザー・メモリの力では証明出来ない力が。人間への擬態・瞬間移動・あらゆる監視を防ぐ結界構築・単純な命を吹き込み動く雪人形etc.
元々過剰気味な出力と便利だからとポンポン使っていたメモリとはまったく関係ない能力。つくづく自分が怪物である事を再認識する事になりました。そんな私を恐怖の対象で見ない彼女達には本当に感謝の念しかありませんね。
「そして、ここからが本題です。あの時何故増子さんの命が危ないと言ったか覚えていますか?」
「たしか毒素がどうとかって言ってたココ。」
「その通りです、程度はあれどこのガイアメモリは強力な毒素を含んでいます。
彼女が暴走したのはその毒素による苦しみによるものでしょう。しかし今回は彼女が意識が無かった事が功を奏しました。」
「なぜ意識が無いことが良かったの?」
「理由は単純です、このガイアメモリの毒素にはたった一回の使用で手放せなくなる程の
私の言葉に皆一様にぎょっとする。当たり前だ、だってこの説明ではそう...
違法な薬物その物なのだから。
「学生の皆さんも授業で何度か習ったでしょう、違法な薬物などの話を。
このガイアメモリはそれよりも更に危険な物です、使用し続ければ段々と精神や身体が毒素に侵食される。最終的には自身の負の感情を制御出来なくなり暴走し最悪死に至る事もある。
しかしこれは本来はの話です。」
『本来は(ココ)(ナツ)(ロップ)?』
そうこれまで話した事は本来ならばの話、そして増子さんに起こった事も含めれば一致しているとすら言える。
だからこそおかしいとも言える。何故今更になってなったのか、奴も自分と同じ転生者なのか?それならば何故このタイミングなのか分からない。
つい最近転生した存在なのか、そもそも本当に転生者なのか。次会ったとしても下手な事は聞けない。
一番不可解なのは奴が私の事を知っていてそれでいてあそこまで禍々しい悪意を向けて来た所だ。多分ですけど私前世と今世で人相は大分違うと思うのです。見た目は30半ばのオジサンですが前世でもキャーキャー言われそうなハンサムですよ。前世の自分の顔面は憶えていませんがこんなハンサムだったら(多分)独身だった筈ありません。
そういうのも含めて奴が前世から私の事を知っていたとしても私の事を見分けられるのか疑問があるので色々分からないんです。エターナルにいるのはその方が私を狙いやすいという利害一致だと言っていましたし。
「訳有って言えませんし未だ自分の昔の記憶は戻っていませんがガイアメモリがこの世界に存在する事自体がそもそもあり得ない。」
「...ロプ。」
ん?あぁ、そういえばシロップ君も昔の記憶が無いのでしたね。私の言った事に自身を重ね合わせてしまったといったところでしょうか?
明確に憶えている事がある私は幸せなのでしょうね。
「とにかく断定するにはまだ早いですがガイアメモリを造れるのは奴のみだと思います。そしてドーパントに出会ったら絶対に攻撃しないで下さい。」
「昨日も言われたけど一体どうして?」
「ドーパントはメモリで進化した超人と説明しましたが言ってしまえばその身体は強靭な肉体を持った生身です。許容量を超えたダメージを負えばやがて肉体はその負荷に耐えきれなくなり使用者は死んでしまうでしょう。」
「そんなっ...!?」
「しかし私の様な地球の記憶のエネルギーを増幅しメモリにぶつける事が出来れば使用者の命を奪わずにメモリのみを破壊して救出する事ができます。」
私の最後の説明に彼女達は一斉にホッとする。恐らく今日の説明で最も聞きたかった事でしょう。
この世界にメモリを使うライダーが居てくれれば心強いのですが、無い物強請りはいけませんね。
「よぅーし!むずかしいお話も終わった所で増子さんのお見舞いに行くぞー!けってーい!」
ただ少しでも怪物である私に彼女達の傍に居られる権利があるのなら見守って行きたいものですねぇ。
カメラ・ドーパントのイメージに関してはティーレックスドーパントや親子丼ドーパントみたいな2頭身タイプだと思って下さい。色は全体的に黒で描写は無かったですが腕は19世紀に使われていたスタジオカメラの様な形状で伸縮します。手足の指は巻いたフィルムです。
8×10インチの撮影した場所を抉り取る能力があります。割と強い設定で考えていたのに苦も無く倒されたのは主人公の方がアホみたいに強かったからです。
地球規模でどうこう出来るモノホンの怪物とそこらへんの女子中学生が素体の怪人だと比べるべくも無いですよね。
自分に絵心があれば良かったんですけど昔友人にサメの絵を描いて見せたらカバの化物と言われる程度の画力なので無理ですね。
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第4話 毒素の解明→量産される悪意
今回は話数としては本編の4話と5話の間くらいのオリジナル回となります。
また今回は割と独自解釈が多いです。あんまりにもアレならタグに独自解釈を追加しときます。
それと短めです、それではどうぞ。
以前の事件&説明会から幾日か経過しました。この間にあった大き目なイベントと言えば うららちゃん のオーディションやドーナツ国王が発見された事くらいですか。結果的にはスキンヘッドさんの介入もあって落選してしまいました。あの時はキュアレモネードとして成長出来るイベントでもあったので極力私は介入しない様にしていました。
問題は国王様の方ですね、今現在も昏睡中。ココさんナッツさん、そして彼女達はどうにか目覚めさせられないか奮闘中な様です。しかしそれはまだ先の事、私も何かしらお手伝いしたいのは山々ですが私は私で別の懸念事項がある為以前ほど自由に動けません。
目下最大の懸念事項、『漆黒のローブの男』これに尽きるとしか言いようが無い。エターナルに関しては問題ありません、未だ彼女達は成長途中であるため館長クラスは兎も角として他の輩ならば撃退可能でしょう。
ガイアメモリを作り出せる能力を持つ奴は危険以外何者でも無い。最も気を付けなければならない事は風都の様に町中にメモリをばらまかれる事。それだけは避けなければいけません。
彼女達の暮らすこの街をジャンキーで溢れ返させる訳にはいきません。そして少なくとも彼女達の前ではハッピーエンドであって欲しい。
奴は何の躊躇も無く毒性の強いメモリを中学生に使用した。私が早期に除去出来た事もあって毒素による影響は数時間の昏睡程度で済んだだけです。もし少しでも発見が、対処が遅れたのならば増子さんの命は無かった可能性がある。ただでさえメモリの毒性は大人であっても過剰使用すれば死亡するリスクもある、あの日以降奴は目立ったアクションを取っていないのもあって不気味さする感じる程。
やはり注意しなければいけないのは毒素ですね。メモリブレイク出来たのに人間に戻ったら死亡したら目も当てられない。風都、というか仮面ライダーWの世界ではメモリの使用した事での死亡は全て事故・自業自得として処理される。当たり前ですね、メモリ使用者の殆どは往々にして犯罪者。更生出来た者の方が少ないのですからメモリ犯罪という特殊犯罪にはそういう対処がされて当然。しかし、この世界にはそんな物は存在しなかった。
井坂の様に消滅するならば最悪彼女達の前に屍は晒さずに...いけませんね、そんな事を希望にしてはいけません。やはり救助の方向で行かなければ。
毒素はメモリが排出されれば少しずつ体外へと排出されはします。そうする事で依存性や身体への負担を減らしていくという現実の違法ドラッグと同じような対処方が出来ます。が、それは肉体が毒素にある程度耐えられているならばの話。ガイアメモリの毒素は違法ドラッグと比べても数倍は危険な筈、更に言えばメモリの力が強ければ比例する様に毒性もまた強い筈。奴は出力を高めでこの嘗て『カメラ・メモリ』だった物を作ったと言っていた。
私の力でどうにか出来るならば、流石にウェザーの力では...ん?私の力では?
そうか何故気付かなかったのか、ウェザーの力でどうにも出来ないならウェザー以外の力でどうにかしてしまえば良いじゃないですか!
至極簡単な事でした、あくまで私はウェザー・ドーパントっぽい怪人です。割とドーパントのモノじゃない力を使っておいて灯台下暗しにも程があります。以前自分の異常性に触れておいてこの始末、心までは老化したくはありませんねぇ。
私の出した結論には何の理論もありません、だって私自身ガイアメモリについて知っている事は設定で語られている部分だけ。事細かにどういった物質で作られているとか毒素の化学組成なんて知りません。しかしウェザートとしてのこの身体ならば限りなく可能である筈です。天気の情報をコアとしたデータで構成されている身体ならば恐らくではありますが毒素の分析が可能です。分析が終われば次はその毒素を打ち消す特効薬を構築すればいい。
サンプルは私の手の中にあるコレをこうして...ふむふむ成程成程、異物が入り込んだ感じはしますが問題ありません。次は取り込んだメモリをデータ分解し毒素を検出、成功しましたね。
後はこの毒素のデータを解明する作業に入るだけです。
◇ ◇ ◇
むむむ、どうにもこの毒素というモノが難しい。私も一応は一端の理科の先生として勉強しましたがこんな組成は初めて見ました。
物質というよりは膨大な情報体という方が近いかもしれません。しかしそれでも分析は進んでいるので成果ありですね。後は同時進行で作り始めたコレが早めに完成しましたし順調なのは間違いありませんね。
おや?この気配は...
コンコンコン
「開いてますよ、どうぞお入り下さい。」
「失礼します、上里先生。」
やっぱり かれんさん でしたか。そうですねぇ、一人でアレコレしていて一段落着いた事ですし休憩がてら かれんさん のお話を聞かせてもらいましょうか。
「立ち話も何ですし、どうぞ掛けて下さい。飲み物はぁ...インスタントで良ければ紅茶がありますよ。」
「ごめんなさい、お気を遣わせてしまって。」
そんなに申し訳なさそうにしなくても大丈夫ですよ、そう伝えるといつも通りの笑顔を見せてくれました。
紅茶とクッキーを出して話をしていくとどうやら次の生徒会の会議での確認だった様です。
そういえば少し前に目安箱を設置していましたねぇ。この学園の生徒さん達は自分達の学園が大好きなのも相まって良く意見が生徒会に届けられていましたね。でも逐一相談にのっていると捌き切れないので目安箱を設置する事になった、でしたか。皆さんの意見は少しでも学園をより良い場所にしようとするもの。無碍には出来ませんし色んな所から来る意見は身内だけでは浮かばなかった改善案のヒントになったりするので大歓迎だと言われてましたね。
かれんさん もやっぱり未だ中学生、こうして学園の事で笑ってくれるのは個人的にも教師としてもとても嬉しい事なのですね。
「いつもお話を聞いてもらってありがとうございます。」
「お気になさらず、これも先生としての仕事ですしね。ぶっちゃけ皆さんが優秀過ぎて顧問としてもそこまで大きな仕事してない位ですよ?」
「そんな事ないです、生徒会の皆や委員会で集まる人達も上里先生は優しくてさり気無く的確な意見をくれるって言っていました!」
おお!こうして かれんさん が大きな声を出す所は久しぶりに見たような気がします。勿論プリキュア以外で。
あっ、大声出したの気付いて赤くなりました。こういう所は年相応でオジサン微笑ましくなりますねぇ。
しかし、そういってくれる生徒がいると分かるのは嬉しいのプラス若干の気恥ずかしさがありますね。
「そういって貰えるのなら先生冥利に尽きると言えますね、ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ大きな声出してしまって...それでもこうして長く話せたのは久しぶりですね。」
「ええ、ドーナツ国王はまだお目覚めには?」
「今は うらら が保護していますが目覚めていないそうです。」
国王様が目覚めるのはやはり原作通りですか、まぁそう遠くない内に起きる筈ですし気長に待ちましょうか。
それに後もう少ししたら今度はキュアアクアの成長イベント、これも出来れば手出しはしたくありませんねぇ。というかブンビーさんが来るんでしたか?
いやー実はメルポさん初登場回はかつての同僚との顔合わせってのが自分の立場の複雑さも相まって会わない様にしてたんですよ。後から のぞみちゃん が教えてくれましたが苦笑いするしかありませんでした。
「あの、やっぱりウェザートさんが最近一人で考え事が多いのって図書館や説明会での事が原因ですか?」
「正直に申しますとその通りです。どうにか出来ないものかと悩んでいました、心配をお掛けしましたね。」
「確かに皆心配しているわ。でも一番は私達は直接力にはなれないかもしれないけど相談くらいはして欲しいって事なのよ。」
「...一人でウジウジ考えていたのが情けなく思う限りです。ただご心配無く、どうにか出来る筈なので。」
心配を掛けた事を謝罪し、悩みの種も解決に向かっていると話せば驚いたという様な表情をされていました。それ程ここ最近の私は酷かったようですね、後程開店予定のナッツハウスにて皆さんに謝罪をしなければ。
序でに何か美味しいお菓子でも買って行きましょう。
さて、もう少しで下校時間です。そう伝えると笑顔で「また明日もよろしくお願いします。」と言われて帰られました。
私ももう少しだけお仕事頑張りますか!
あっ、のぞみちゃん前より小テストの点数13点上がってます。
◇ ◇ ◇
「貴方、一体どういう事ですか?ここ最近出動していないと報告を受けていますよ。」
エターナル本部にて高級そうなソファーにドカッと座り込んでいるローブの男がアナコンディに説教を受けている。本人はそれさえも何処吹く風という感じに流している。
曲がりなりにもアナコンディは最高幹部であり、ただでさえ釣り目も相まって威圧感があるというのに本当に微々たる物だが怒気を滲ませているにも関わらず飄々としているローブの男は欠伸すらしてみせる。
「前にも言ってやったろうがよぉ、俺ぁ俺の好きな時に出張るってよぉ。」
「ええ契約内容は憶えています、しかしそれにも限度というものがあるでしょう。」
「あー、うるせぇなぁ。俺は俺で仕事してんだよ。」
何を言っても聞く耳を持とうとしないローブの男の態度に我慢の限界が来そうになり本気の怒気が溢れ出る。この怒気だけでも他のエターナルの構成員ならば瞬時に戦意喪失する程だ。
少しは痛い目を見て貰おう、そんな風に思考を巡らせていると...その時。
「あんまり喧しくするなら お 前 か ら 狩 る ぞ ?」
男は未だソファーに凭れかかったままではあるが左腕をアナコンディの方に向けており袖の中から無数の槍の様に
根拠は無いがこのまま停止していなければ自分は貫かれていただろう。アナコンディは冷静に分析こそするが冷や汗を掻き動く事すら儘ならない。
そして最も驚く事は見えなかった事。攻撃する素ぶり・初動・停止するまでが全く見えなかった。実力者であると自覚している自分が知覚出来ない程のスピードが何らかの術を有しているという事。その事を認識して改めてこの男の異質さを強さを味わわされた。
「んぁーこのメモリも俺とは相性が悪ぃな。他の奴で試すしかねぇな。」
「そ、れは...?」
「言っただろ、俺は俺なりに仕事してるのさぁ。」
男の右手で弄ばれるように持たれている黄緑色の四角いUSBメモリのような物。
そこらの違法ドラッグよりも数倍は危険な悪意は着々と増えている。
「RHIZOPHORA!」カチ
次の更新は早ければ再来週くらいになりそうですけど、あまり期待しないで下さいね。
そういえば今更ながら私がサボってた間に色々発表されましたよね。中でも風都探偵アニメ化!これはもうやるしかねぇよなぁ!
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第5話 貫穿の弾丸、増幅する悪意
えっ最後に更新したのが去年の10月...本当にすみませんでした。
ただ良い訳だけさせて頂くと仕事が忙しかったりばあちゃん家で飼ってる老犬のお世話があったり本当に書く時間が無かったんです。
この話の半分くらいは去年に途中まで書いて放っておいた物なので駆け足気味だしその後の構想がちょっとあやふやで微妙になってるかもしれません。ただ取り敢えず投稿しないといけないと思い書きましたので何卒ご勘弁を。
あとアンケートを設けておりますのでお手数でなければ是非お願い致します。
まだ日も昇り切っていない朝方に異形の影同士がぶつかり合っていた。
片方は獣の様に唸り声を上げて荒々しい挙動を見せ、もう片方は相手の攻撃を最低限の動きのみで避け当たりそうな攻撃だけを弾き落としている。
「ガアァァァ!な゛ん゛て゛あ゛た゛ら゛ね゛ぇ゛ん゛た゛!」
「意識を保てる程度にはメモリに適合出来たという事ですか...。」
後者は勿論ウェザート。前者は凶悪な獣の様な姿をした怪人、【ビースト・ドーパント】だ。
本来ならこのドーパントはあらゆる傷を瞬時に治癒する事でどんな攻撃が向かって来ても恐れず進撃出来るのが最大の武器としている。しかしウェザートの攻撃は当てた瞬間強烈な電撃で傷を焼く為治癒するのもままならない。
【ビースト】はどんなに攻撃しようと避けられ捌かれ10分も戦っていないにも関わらず既に満身創痍だ。更には比較的高い適合率を持っているとはいえメモリの毒素によって段々と思考能力すらままならなくなって来ている。これには堪らないと逃亡を図ろうとする。
「ぐえぇっ!?」
「ここまで来て逃がす訳が無いでしょう。」
【ビースト】が踵を翻し跳躍した瞬間ウェザートは自身を霧化させ纏わり付いて地面に叩きつけた。
強靭な肉体に助けられはしたが叩きつけられた衝撃で膝を着いた状態から立ち上がれない。
既に実体化したウェザートは【ビースト】に近づき手を頭に被せるように伸ばす。
「安心なさい、手加減はしてあげます。〈MAXIMUM・KERAUNOS〉」
「ガアァッ!?...。」
紫電が一瞬迸ったと思えば【ビースト】だった男は変身が解け倒れ込み男の頬から【ビースト・メモリ】が排出され意識を失った。
ウェザートが排出されたメモリを拾い上げるとガイアウィスパーが鳴り砕けた。
「...全く、先週から数えて既に5人ですか。奴め、とうとうメモリをばら撒き始めましたか。」
ウェザートは忌々し気に砕け散った【ビースト・メモリ】を睨み付けた後貴重なサンプルとして取り込み、意識を失った男を夜間も運営している病院の入り口近くまで運んで姿を消すのだった。
◇ ◇ ◇
はぁ、今朝は疲れました。ここ最近あの男がメモリを撒き始めたのかドーパントは大体2~3日に1人の割合で出現する様になりました。
寝る必要の無いこの肉体でも流石に夜通し町全体を見張るのは精神的に疲れます。それにドーパント達は夜だけ活動する訳でも無いので昼間、学校にいる時でも意識を研ぎ澄ませ続ける必要があるのも疲れます。
周囲の人間に目撃されない様に結界を張って戦っているので今の所一般人には見つかっていませんが時間の問題かもしれませんね。彼女達には既にバレてしまいましたがどうにかこうにか教師らしい事を言って説得出来ました。凄く渋々だったのが心が痛いです。
これまで撃破したメモリは【カメラ】を除けば、【エドモントニア】・【ダイアリー】・【マンティス】・【フォルスラコス】そして今朝倒した【ビースト】。
これまでドーパントを倒して1つか分かった事があります。倒されたメモリ使用者は意識を持っている状態で使用してもメモリブレイクされるとメモリを使っている間の記憶が混濁する様です。そして次に目覚めた時にはその間の記憶を失っている、これは結果的には良かった事かもしれません。強制されたにせよ自分から使用したにせよメモリを再び使いたいという感情は無くなるでしょう。ただ暫くはメモリの毒素によって入院生活は続くでしょう。
それとメモリを使用した弊害か【ダイアリー】使用者は毎日日記を付けなければ1日の記憶を保てなくなっている事が後の調査で判明しました。こればっかりは私の力でもどうにもならないでしょう、もし毒素の影響であるなら下手な事は出来ません。もう暫く様子を見てどうにもならなそうなら新しく力を作る必要があるかもしれない為前途多難ですねぇ。
あぁ、そう云えば皆さんそろそろパルミエ王国に到着した頃合いでしょうか。
お昼にス...何とかさんが襲って来て撃退したかと思えばナッツハウスにてミルクさんからの速達で急遽向かわれてしまわれました。私も誘われましたがこの街を離れる訳にもいかない為残る事にしましたし。
ナッツハウスの店番も私は大してアクセサリーの類いに詳しくも無いので出来ませんでしたし、こうなると暇なんですよね。
『ウェザートさん、それじゃあ行って来るね。
『いえ、お気になさらないで下さい。タダでさえ其方の方が緊急性が高いというのに同行出来ずすみません。』
ミルクから届いたパルミエ王国の一大事という手紙でウェザート以外の面々はシロップの力を借りて出発する事になった。
ドーパントが出現した時に備える為にウェザートは待機する事に罪悪感を感じたが のぞみ や かれん は気にしなくて良い。こっちは任せて欲しいと気遣ってくれる。
そうだ、彼女達は学生ではあるがその心構えは立派な戦士そのもの。過度な心配や罪悪感は彼女達を侮辱する行為ど同じだと心を切り替えて見送る事にする。
その際ウェザートは懐からあるモノを取り出し のぞみ に渡す。のぞみ が渡されたモノを他の面々も覗き込む。
『それではコチラを渡しておきます。何か有ればご連絡下さい。』
『これって...携帯電話ですか?鷲尾さんが使ってる物と比べるとちょっと大きい様な...。』
『私が作ったモノですので。無い事を祈りますが、ドーパントや<奴>が出た時にはお願いします。』
えらくゴツゴツした携帯電話だったが幾つか使い方の説明をした後ウェザート以外はシロップと共にパルミエ王国へと発った。
◇ ◇ ◇
一方その頃ローズパクトを狙い暗躍しているエターナル本部では頭頂部が禿げ上がった男、ネバタコスがアナコンディからローズパクトはパルミエ王国にあると情報提供され出発しようとしていた。が、そこに黒いローブの男が待ったをかける。
「待ちな、パルミエ王国とやらへ行くんだろ?俺も連れて行けよ。」
「ああ?お前...俺の仕事を奪う気か?ローズパクトを頂くの俺だぞ!」
「そんなモンに用は無えよ、用があるのはローズパクトを持ってる奴らと一緒に居る奴だ。」
断ろうとしたネバタコスだったが男が放つ邪悪な雰囲気を感じ取り苛立たしく思いながらも面倒そうなので了承した。
「ククク安心しな、お前さんの邪魔はしねぇよ。奴をマトモに相手どれるのなんざ俺だけだ。その分お前の仕事も楽になるんじゃねえか?」
男は不気味な笑い声を漏らしながらネバタコスと共にパルミエ王国へと出立した。
手の中で異形のメモリを弄びながら男は愉快そうに笑い続ける。
◇ ◇ ◇
パルミエ王国に到着した面々は手紙に書かれていた内容と齟齬がある様に感じて疑問に思っていた。王国自体は未だ復興が終わっていないが平和そのもの。事の真相はというとココとナッツが人間界に行った事で寂しくなり会いたい一心で緊急事態だと手紙を書いてしまったのだと白状した。
その事でミルクはお世話役統括であるパパイヤに叱られてしまったがそれに反抗する様に出て行ってしまった。
かれん はミルクを探しに行き のぞみ達はココ・ナッツと共に王国の復興の手伝いをして暫し休憩を取っていた。かれん の方もミルクは見つからず仕方ないと戻って来ていた。
談笑も束の間、招かれざる客が来訪してきた。以前にも体験した怖気をココとナッツは鋭敏に感じ取った。
「「何か出たココ(ナツ)!」」
地面に衝突する様な勢いで突っ込んで来た為辺り一面が揺れ動きその時に生じた風圧で のぞみ達は吹き飛ばされた。
そこに立っていたのは黒いローブの男と頭頂部が禿げた見知らぬ男・ネバタコスであった。
「「エターナル!?」」
「初めましてだな。君達が持ってるっていうローズパクトを貰いに来たよ。さぁ渡してもらおうか。」
『あなた達なんかにローズパクトは絶対に渡さない!』
彼女達からしたらいつも道理のやり取りだが黒いローブの男は少々苛々したような態度で尋ねて来た。
その様子に隣のネバタコスは嫌そうにしておりプリキュアの面々ですら足が竦みかける。
「あ゛あ゛?おい、奴は何処だ?ローズパクト持ってるお前らと居るんじゃねーのかよ。」
「ウェザートさんなら居ないわ。あなたが街で人を怪物に変えるのに備えて残ったもの!」
質問に帰って来た答えに更に苛立ちを募らせる。自分が蒔いた種であるというのに知った事かと邪悪なオーラを撒き散らしながら癇癪を起す子供の様に暴れ出しそうだ。
しかし直ぐにオーラを抑え彼女達を闇の様に暗いフードの中から捉える。
「チッ、連日適当にばら撒いたのが裏目に出たか。まぁ良い、それならちょっとばかしストレス解消に付き合ってくれよ。」
「おいお前、俺との約束破る気じゃねーだろうな?」
「だからさっさと渡したくなるようにしてやるよ。」カチ
「QUETZALCOATLUS!」
一対の翼がメモリケース上部に生えたようなデザインの基盤が剥き出しになっているメモリを空を飛んでいた鳥に向かって投げ挿す事で巨大な翼竜のドーパント、ケツァルコアトルス・ドーパントを生み出した。
「クゥエエェェェイ!!!」
「遊んでやれ、ケツァルコアトルス・ドーパント!」
「こいつは面白い、なら俺も!」シュッ
ネバタコスもタコを思わせる怪人に変身し岩石にエターナルボールを憑依させる事でホシイナーを作り差し向ける。
復興を進めるパルミエ王国に悪意が襲い掛かった。
◇ ◇ ◇
♪~
一人残っていたウェザートは時計塔から街を見渡していた時に携帯電話に着信が入る。懸念事項が当たった様で、見れば のぞみ に渡していた携帯電話からだった。
『もしもしウェザートさん!?あnうわぁ!あの黒いのがやって来た!あと大きいトリのどーぱんとがお城に攻撃してる!』ドーン
「分かりました直ぐに向かいます。それまで持ち堪えて下さいっ」
電話を切ると共に怪人態に変身しテレポーテーションを使う事で妖精の世界にあるパルミエ王国に転移した。
転移して直ぐにドリームが電話で伝えた巨大な鳥という特徴、より正確に言えば翼竜のドーパントであるケツァルコアトルス・ドーパントが丁度飛行しながら逃げ遅れた国民を救助していたシロップを追いかけていた。
そして内心焦りながらシロップに掴みかかろうとしていたケツァルコアトルスに肉薄する。
(拙い、非常に拙い。ケツァルコアトルスメモリはゴールドクラスの力を持つ強力なメモリ!それだけ肉体への負担も大きい筈だ、一体誰が変身したんだ!)
「取り敢えず、落ちなさい!」
「クゥエエェ!?!?!?」
翼を狙ってウェザーマインを振り下ろし叩きつける事でケツァルコアトルス・ドーパントを地に落とす事に成功した。
ウェザートも着地し正面を見据える。図書館で出会ってから暫く見える事は無かった黒いローブの男が顔こそ見えないが愉快そうにウェザートを見ていた。
「また貴様か、態々この国まで来てコレですか。」
「ククク、最初はちょっと遊んでやろうと思ってな。まさかお前の方から来てくれるなんてなぁ嬉しいぜぇウェザートォ!」
「あれはゴールドクラスのメモリだぞ!一体誰をケツァルコアトルスにした!?」
「さてな、ケツァルコアトルス!今度はアイツと遊んでやりな!」
ケツァルコアトルス・ドーパントは一鳴きするとウェザートに狙いを定め襲い掛かる。ウェザートも風を纏い浮遊する事で空中戦を繰り広げているが飛ぶための器官である翼を持つ分ケツァルコアトルスの方が少々有利であった。巨体の割りに身軽な挙動を見せパワーもある為ただ突進するだけで攻撃として機能する。連続で吐いてくる火炎球もウェザートにとっては大した威力では無いが避ければプリキュア達やパルミエ王国民に当たる可能性を考慮し全弾撃ち落さなければならない。更に下手に攻撃すれば強力なメモリの影響で使用者が死にかねない為攻めあぐねていた。が、
「ウェザートさん!」
「っ!アクア、どうしました?」
「そのドーパントは人じゃないわ。飛んでいた鳥にメモリが挿されたの!」
ホシイナーと戦っていたキュアアクアから齎された新たな情報により先程まで防御に徹していたウェザートは内心笑みを浮かべながら一変攻撃に切り替え始める。
(ありがとうございますアクア。その情報のお陰でどうにか出来そうです。)
ガイアメモリは人間には毒素の影響が強く出るが動物相手では人間と比べると影響は少ない。仮面ライダーWにて模造品とはいえコネクタ無しでメモリを挿されたオウムがメモリブレイクされた後何事も無く飛び去った様に通常通りに此方もブレイクしても大丈夫だという確信が持てる。
「はああぁぁ!」
嘴を開き噛みつこうと突進して来たが大振りな攻撃を行った事でウェザートが躱せばケツァルコアトルスは大きく旋回して戻って来る必要がある。そんな絶好のチャンスを逃す手は無かった。
ケツァルコアトルス・ドーパントの隙を突き翼を凍てつかせウェザーマインから鎖状のエネルギーを出して嘴に巻き付ける事で身動きを制限する。しかしケツァルコアトルスのパワーならグズグズしていれば脱出されるだろう。
そしてこのドーパントを倒すにはもう一つの懸念がある。ケツァルコアトルスサイズのドーパントをメモリブレイクするにはかなり出力する必要がある。ウェザートがそれだけのエネルギーを出力しようものならドーパントを中心にして周囲にもそれなりの被害が出る。本来なら原作通りに空中などの被害が被らない場所でメモリブレイクすれば良いのだが地面に再び落としている為それは出来ない。
故にこういった事を想定して作っていた武器を取り出す。その名も『ウェザートマグナム』、ウェザートが周囲を巻き込み易い部分を鑑みて製作した専用武器である。見た目は完全に色が違うだけのトリガーマグナムである。
そして同時期に考案・作成した物がもう一つ。
「ドリームっ!私が貸した携帯電話をこちらに!」
「分かった、投げるよ!ウェザートさんっ!」
放物線を描きながら投げ渡された携帯電話をキャッチし1セットで作ったメモリを装填する。
『ヘラクレスビートル』
そしてこれが携帯電話型のメモリガジェット『ヘラクレスビートルフォン』である。ギジメモリを装填する事でヘラクレスオオカブト形態に変形する。
すぐさまソレを『ウェザーマグナム』にセットし体内から取り出したウェザーメモリを装填しマキシマムモードへ移行させる。
「これで、お仕舞です。」
『WEATHER MAXIMUM DRIVE』
「ウェザー・ヘラクレスペネトレーション」
放たれた氷の弾丸は電撃を纏い、ドリルの様に回転しながら拘束から逃れかけたケツァルコアトルス・ドーパントに命中。回転によって貫通力を強化した弾丸が完全に貫きメモリブレイクを完了、排出されたメモリはウェザーの足元まで転がり砕け散りドーパントにされていた鳥は何事も無かった様に飛び立って行った。
「いやぁ驚いたぞウェザート。まさかそんな物を作っていたなんてなぁ。」パチパチ
事が終わった後に態とらしく拍手をしながら近づいてくる黒いローブの男。ドーパントが倒されても余裕を崩さずに喋り続ける。
「途中からメモリブレイクされた時の爆発でお前のお仲間事巻き込ませようとも考えたんだ。お前の力ならそれくらいの事は可能だと知ってたからな。」
完全に自分の力を利用し周囲を巻き込む予定だったと愉快そうに語り続ける黒いローブの男をウェザートは睨み付ける。空中では抜群の機動力とパワーを誇るケツァルコアトルスならば自分が来ても来なくても、ウェザーマグナムが完成していなければ大惨事が起きただろう事は容易に想像出来る。
「丁度向こうも終わったみたいだな。それじゃあ俺も帰るとするぜ、そういえばお前には感謝しなくちゃなぁ。なんせ
奴の手にあったのはウェザートの足元に転がっている基盤が剥き出しの複製品では無く、完成しゴールドメモリと同じく金色に輝くメモリケースに入っているケツァルコアトルスメモリだった。
◇ ◇ ◇
プリキュア5がホシイナーを倒した事でエターナルが撤退した事でパルミエ王国の皆さんから歓声が上がり私まで感謝されました。しかし折角こうして復興しようとしていた建築中のお城にも少なくない被害が出ており不甲斐ないばかりです。そして又しても彼らに本来ならば味わう事の無かった恐怖を感じさせてしまった事に罪悪感が湧きました。
まぁしかしそれでも彼らの命を救う事が出来たのは本当に良かった。彼らが純粋に示してくれるこの感謝だけは素直に受け取らなければいけませんね。
しかしまた1つ懸念事項が出来てしまった。オリジナルに比べれば出力の低い模造品とはいえゴールドメモリと同等の力を持つケツァルコアトルスメモリを取り込めたのは大きいです。これでまた一歩毒素の解明に近付けるのは確かでしょうから。しかしこの収穫を台無しにしかねないのが奴が持っていたオリジナルのメモリ。データを取った、完成したという奴の言葉が真実であるなら私の所為でアレ以上の被害を齎す可能性が出てきてしまったという事。原作でも結局オリジナルのメモリを使用したドーパントが登場しなかったが為にどの程度の力を持つのかさえ未知数な部分がある。これからは更により一層警戒しなければいけません。
っと、折角心を切り替えたと思ったらまた難しい顔をしてしまいました。こんな表情では彼女達も不安になってしまいます。それにどうやらお土産を用意してくれるようです。ふふっパルミエの木の実、ですか。出来るならばこの木の様に高く大きく豊かな国になる事を祈らせて頂きます。
「デカいドーパントを使って周囲を巻き込む爆発もダメかぁ、実現していたらさぞや阿鼻叫喚だと楽しみにしていたんだがなぁ。」
「そうだなぁ奴を、いや奴の周囲すら滅茶苦茶にするにはどうすれば良いのか?その答えはお前だ。」カチ
「...えっ?」
「RHIZOPHORA!」
どうでしたか?自分で読んでもなんかバタバタしてるなって感じるしプリキュアの小説なのにプリキュアの登場シーン少なって思いました。ただ原作アニメが良すぎてこれ以上弄れないってのもあり、ただでさえ視点がコロコロ切り替わるのにプリキュアの場面入れたら更にあっちこっちに行って混乱を招くと思いカットしました。
次は出来るだけプリキュアが活躍出来る様にしたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。
アンケート内容に関しては今はそこまでどういう事か説明出来ません。なので直感でピンッと来た項目に投票していただければと思います。
『今回登場したウェザートが作ったアイテム紹介』
【ヘラクレスビートルフォン】
ウェザートが作った携帯電話型のメモリガジェット。ギジメモリであるヘラクレスビートルメモリを装填する事でライブモードに変形する。
ヘラクレスオオカブトをモチーフにしている様に力が強く人間大の大きさ相手なら角で挟み込んで投げ飛ばしたり突進で怯ませる事も可能。
携帯電話としてもしっかりと機能しパルミエ王国程度離れた世界からでも通話が可能。しかし逆に普通の携帯からは電話をかけられない為こっちから掛ける必要がある。
【ヘラクレスビートルメモリ】
ウェザートが作ったヘラクレスビートルフォンをライブモードへ変形させるのに必要なギジメモリ。
【ウェザートマグナム】
ウェザートが仮面ライダーWが使う狙撃武器トリガーマグナムを参考に製作した専用武器。ウェザーメモリ、というかウェザートの出力に耐えられる様に調整されている。
勿論通常モードでの銃撃戦も可能だが基本的にチマチマ撃つよりメモリブレイク可能な状態までウェザート自身が攻撃した方が早いので専らマキシマムドライブ専用になる予定。
他のメモリも使用可能だが属性・威力に関してはウェザー1本で応用が効く。
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第6話 Rの悲劇/根を張る叫喚
アンケートの途中結果を見てみましたが王蛇とキックホッパーはある程度予想してましたけどアークも伸びるとは思ってもいませんでした。
パルミエ王国にてあの黒いローブの男のそのドーパントと戦い人間界に帰還して数日後。メルポさんを通して謎の手紙が来たりストーブさんが時計塔の鐘を奪いに来たりと色々ありましたが今回は私の出番はありませんでしたね。
手紙というか紙片と植物の蔓、お菓子の欠片の謎は彼女達が真相に辿り着けて居たようです。
私は極力エターナルの連中とは戦わない様にしています。理由は勿論彼女達の成長を阻害してしまうから。私が今しなくてはいけないのはローブの男、そして奴が作ったメモリによって生み出されるドーパントの対処でしょう。最初にストーブさんと戦ったのはその場のノリもありますが彼女達を守る為、そして新たなプリキュアの力に目覚めたばかりだった為。私の知っていた筋書きとは大きく乖離する事も覚悟の上で私は画面の中では無く今を生きる彼女達を支えられる大人として行動したから。このまま私もエターナルの連中と戦い合うかと思っていたら現れたのが奴。そのお陰というのは癪ですが物語りはドーパント以外は大きく変わってはいません。
私がナイトメアに居た時から今まである程度立ち回って来られたのも原作知識と強大な力を使って力づくでどうにか出来たから。私はいつか奴と真っ向から勝負する時が来るでしょう。その時は果たして私の知る知識でどうにか出来るのか。
そんな益体も無い事を考えながら私は一人作業台に向かって手を動かしています。何をしているのかと言うとまたメモリガジェットの製作をしています。ギジメモリの方はもう作っているので残りはハードの部分だけです。
私は自身が強い事を自覚しています、が汎用性も高い割に私自身が基本殴ってどうにかするタイプなので苦手分野の方が多いのも事実。特に索敵なんかは霧を街中に放つ事で行っていますが知覚能力を分散させる分精度自体はそこまで高く無いんです。今までのドーパントの発見だって運が良かったのが一番大きいんじゃないでしょうかね。人外化した事で明らかに処理能力は高くなりましたがそれ全てを索敵になんて回せません。なので苦手な部分は外部から補う事にしました。以前お披露目したヘラクレスビートルフォンはあくまでもプロトタイプ。そこから更に発展させれば私の負担を減らせます。
そして今完成させようとしているのは仮面ライダーWが使う蝙蝠型のガジェットである『バットショット』を参考にした物です。しかし参考にしたのは待機状態であるカメラの部分、ライブモードはまた別の物を参考にしています。
よし、後はこことこっちを接続させれば...完成です!動作確認は問題ありませんね、しっかりと撮影出来ています。写真と動画どちらも問題無く撮影出来ています。容量に空きがあったので試しで入れてみたサーモグラフィーも問題ありませんね。後はライブモードの確認ですが...
おや?そろそろ時間的にギリギリですね。結局少しずらして行われる事になったナッツハウスの新装開店祝いに私も呼ばれています。お土産も持ったし少し遅れるかもしれないと連絡もしておきましょう。
◇ ◇ ◇
雨が降りそうだったので雲の動きを制御しながら向かっていると懐かしい顔であるブンビーさんが抵抗虚しくキュアレモネードとキュアミントの連携で吹き飛んで行きました。あぁ、そういえば彼女達のケーキを食べたと間違えられたんでしたね。数年同じ職場で働いていましたのであんまり違和感無いですけど大分ギャグに寄っていってますねブンビーさん。
ナッツハウスに到着したので話を聞くとセレブ堂のホールケーキが丸々一個無くなって犯人だと思ってたブンビーさんは実は犯人でも無かった、と。まぁ全員が犯人にされかけてピリピリしていた時に口元にクリーム付けて「ケーキを食べた」等と発言すれば早とちりされても仕方ありませんね。乙女の甘いものに対する執念は凄まじいものがありますから。
そこで今回の犯人捜しに私の作ったメモリガジェットが使えると思ったので実行してみましょう。犯人が誰かは分かってるんですけどね、ライブモードのテストもしておきたかったので丁度良い機会です。
「それならば犯人捜しは私にお任せ下さい。」
「そんな事出来るんですか?さっきまでの雰囲気を思い出すとこれ以上犯人捜しはちょっと...。」
「私がするというよりかは、私の作ったこの新しいガジェットに探してもらおうと思いまして。」
「今回はカメラ型なんだ、何に変わるの?」
皆さんに見える様に机の上に待機状態のカメラ型ガジェットと置くと皆さん興味深げに見つめられていますね。特に男性3名はキラキラした目で見て来ますね、やっぱり男の子はこういった変形するアイテムって気になりますよね。
それにしても、はて?こまち さんは少し元気が無さそうですね。私の記憶通りならばノリノリで探偵ごっこをされていた筈ですが、何かいつもより消極的のような気が...?気のせいでしょうか。
「それでは早速、よろしく頼みますよ『ウルフショット』」
『ウルフ』ギュイン
「小さなワンちゃんだ。」
「のぞみ さん、ウルフは犬じゃなくて狼ですよ。」
「アレそうだっけ?」
ズバリ今回作ったメモリガジェットの名前が先程言った様に『ウルフショット』です。ライブモードは『バットショット』が蝙蝠なのに対して『ウルフショット』は狼です。狼型のライブモードはガジェットでは無く小説『Zを継ぐ者』に登場した『ズーメモリ』のライブモードを参考にしています。飛行能力こそ持ちませんが嗅覚による索敵能力は上回っている筈です。
「ウルフショット、ケーキナイフに付着しているクリームと同じ匂いを辿りなさい。」
『アオーン!......!グルル、アオーン!』クンクン
「メ、メェ~!」ポイッ
よし、索敵能力も問題無さそうですね。クリームの匂いを覚えた後に直ぐにケーキを隠しているメルポさんの前で立ち止まって吠えています。あっ、自分が犯人だと吠えられた所為で驚いて手紙を出しました。確かこの手紙の封筒に...。
「あれ?この手紙クリームが付いてますよ!」
「お、おいメルポ?まさかお前がケーキを?」
「メェ...メェ~。」コク
「なんでだよメルポ。お前食べたり飲んだり出来ないだろ?」
やはりケーキはメルポさんが食べたのでは無く隠していたようです。隠した理由は原作と同じ様にメルポさん自身が食べる事は出来ないとはいえ数えられなかった為に仲間外れにされたと思ったようです。
ん?おや、『ウルフショット』はしっかり機能していますね。ケーキを食べた人の所にもちゃんと向かっています。
『......!アオーン!』クンクン
「うぇえっ!え~っと、アレレ。」
「何故のぞみ の方にも反応してるナツ?」
「メェー!」
メルポさんがケーキを返してくれましたが私が加わった事で9等分になっている筈ですが、その内の1つが無くなっていました。そして のぞみ さんの前で未だに吠えている『ウルフショット』という証拠も相まって彼女を見る皆さんの目がジト目に変わりました。
「あーいや、あのねつい味見したくなっちゃって~。」
『『のーぞーみー?』』
「えーっとそのー、ごめんなさい。」
手元に帰って来た『ウルフショット』を一撫でして待機状態に戻しました。皆さん本気で怒っている訳では無さそうですけど、まぁここらで助け船でも出しましょうか。
「まぁまぁ皆さん、のぞみ さんも反省されている様ですしもう水に流してはいかがでしょうか。」
「うぅ~、ありがとうウェザートさん!」
「それにほら、私もセレブ堂で被ってしまいましたがシュークリームを持ち寄りましたので一緒に食べましょう。」
よし何名かキラキラした目で反応されましたね。それに のぞみ さんのつまみ食いはいつもの事ですし、彼女達もそこは分かってるみたいですから許す雰囲気になっていますね。
それにさっきから気になっていた事もありますのでおやつを食べながらなら聞きやすいかもしれません。
ふぅ、ケーキとシュークリームで舌鼓を打ちナッツハウスに到着してから気になっていた事を口にする事にしました。
そう、何を隠そう こまち さんの事です。アニメでは全シリーズを通してもプリキュア界の変人として名が挙がる事もある彼女。天然な部分もあって割と突飛な行動を起こす事もある彼女は確か今回の話は以前読んだ推理モノ小説の影響でホームズの様な鹿撃ち帽とコートまで用意していた筈です。
かれん さん達程一緒に居た訳ではないので確証はありませんが常に明るく皆を元気づけようとしている彼女が何処となく暗い雰囲気を漂わせている様に見えます。何なら此処に着いた時にコスプレ衣装すら見当たりませんでした。
こまち さんはどうにか隠そうとしている様ですが私を始め付き合いの長い かれん さんやリーダーの のぞみ さんにナッツさん達も気付いているようですね。シロップさんはあまり分かっていないという感じが見受けられますがそれでも全体の雰囲気から何かを感じ取っているご様子。今は誰が切り出すか窺っているようですね。いつもなら何気なく誰かが切り込んで行く感じですが仲間内にさえ隠そうとしている事が原因か皆さん足踏みしている、と言った所でしょうか。
本来ならばうら若き乙女の苦悩という事で存分に悩む事を勧める私ですが今までの事も手伝って何が原作から大きく離れてしまう原因か分からない手前、切り出さなくてなりません。
「コホン、1つ此処に着いてから少し気になっていた事があります。勘違いならばよろしいのですがね...こまち さん、私は貴女が何か思い悩んでいる様に見えたのですが如何ですか?」
「えっ、あの私そんな悩んでなんて...。」
「そうですか、しかし此処にいる皆さんは私と同様に何かあったと思っていらっしゃる様ですが。」
私の言葉につられて周囲を見渡し驚いた こまち さん。私が切り込んだ事で皆さんも後に続くように心配する様な真剣な瞳を向けました。彼女が一瞬驚いたのは自分なりに隠せていると思っていたからでしょうか。
そして一度目を伏せ、意を決した様に彼女も凛とした目で返す。
「私ってそんなに分かり易かったかしら...。」
「そうね、最初は少し違和感を感じる程度だったわ。でも段々その違和感が積み重なって確信に変わったの。こう言うとアレだけど こまち は今日みたいな事態が起こればいつもなら楽しもうとすると思ったのよ。この前推理小説を読んでいたし、こまち なら悪ふざけも兼ねて探偵みたいな事をしそうだって思ったの。」
「...私ってそんな事しそうって思われてるの?」
『『えぇ(うん)(はい)』』コクッ
私も含めて皆さん一斉に頷くものだから若干むくれながら「そんな事無い」みたいな目で訴えて来てますがアニメではやっていたので かれん さんに同意せざるを得ませんでした。
若干拗ねながらも段々いつもの調子が戻って来て場の空気も幾分か和らいだので こまち さんも悩みの原因を打ち明けやすいでしょう。
私のただの杞憂ならそれで良い。思春期にありがちな悩み事ならば大人としても教師としてもアドバイスくらいなら出来ますから。
しかし私の希望的観測は彼女の口から放たれた現実によって吹き飛ぶ事になった。
「お姉ちゃんがね、少し前から家に戻って来ないの。」
◇ ◇ ◇
何処かの廃工場にて暗躍する黒い影が拘束されている異形の怪物に何らかの機械に繋いでいた。
機械に繋がれた怪物は体中を植物の根が覆い尽くした様な姿をしており苦しみからか絶叫を上げ続ける。
「グゥウッ!ガアァァァアア!アアアアアアア!!!」
手足の動きを封じられている為のたうち回る事すら出来ず、体から根を生やし続け振り回す事しか出来ない。
「ふむ...実験は成功か。これまでは唯メモリの出力を高くすれば良いと思っていたが、それでは使用者に負担がかかりすぎた。だから理性を無くしメモリの力を十分に引き出せなかった訳か。」
怪物...ドーパントに繋がれたコードの大元である機械を操作しながらブツブツ呟くローブを纏った男は興味深そうに画面に映し出される数値を見やる。
ドーパントが暴れ過ぎれば強烈な電撃を流す事で大人しくさせる。
「アアアアア!アァ...ぐ、うっあ...。」
「はっ、人間ってのはつくづく脆え。いくら肉体を強化されても内側から毒素に食われりゃ奴をどうこうする前に弱るってか。だが出力を低くする事である程度理性を保ったままメモリの力を引き出す事が可能、か。」
ガシガシと頭を掻く仕草をした後コードに繋がれ、高圧電流によって弱り切ったドーパントを見やりほくそ笑む。これから起こす事が楽しみで仕方無い、そう言い表す様に僅かに肩が揺れ動く。
「ククク。メモリと引き合うレベルの実験体を捕獲したが、面白くなりそうだな。プリキュア、だったか?奴とよく一緒にいる奴らの身内が過剰適合者だとは思わなかったが、良い拾い物をしたな。」
「アァァア...うっグォ、ギ...アああぁ。」
根に覆われた顔から覗く二つの眼からポロポロと涙が流れ落ちて行く。そんな事は気にも留めずローブの男は機械を操作し続ける。
「あっアア...ああああ
最愛の妹の名を呟くもその響きは広がる事なく周囲の空気に溶けて消えて行くしか無かった。
5000字ちょっとなんでやっぱり短いですね。
それとやっつけ感マシマシで新たなガジェットも出してしまいました。
【ウルフショット】
ウェザートがバットショットの待機状態とズーメモリのライブモードを参考に作ったデジカメ型のメモリガジェット。ウルフメモリを装填する事で狼型のライブモードへと変形する。
飛行能力こそ持たないが鋭い嗅覚を使った索敵や追跡を可能とし、その範囲は2kmにまで達する。噛みついて攻撃する事も可能。写真撮影・映像の録画、余った容量にサーモグラフィー機能まで追加されている。撮影したデータはヘラクレスビートルフォンに転送可能。
【ウルフメモリ】
ウルフショットを待機状態からライブモードへ変形させるのに必要なギジメモリ。
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第7話 Rの悲劇/伐採された苦しみ
遅れた理由は活動報告にある通りちょっと身内でゴタゴタがあったのとそれが解決したと思ったら副反応でダウンしてました。熱40℃なんて初めて出ました。
それではどうぞ!
こまち から彼女の姉である『秋元まどか』が失踪したという話を聞いて翌日、ウェザートは一人考えに耽っていた。それは勿論『秋元まどか』が失踪した事もあるが最も懸念していたのはその裏である。
まどか さんが帰って来なかった、ここまでなら単なる家出や友人宅に泊まっている事も考えられますが状況的に見ても裏で糸を引いている者が居る...間違いなく奴であるのは間違いなさそうですね。何せ原作には こまち さんの姉が居なくなるなどの話はありませんでしたから。
こまち さんのご家族も捜索願いを出したらしいですが彼女は成人済み、つまり望み薄。一縷の望みを懸けて私達に話してくれましたがウルフショットを使おうにも街中に残された匂いなどは雨によって消えている為恐らく捜索は不可能。
甚だ遺憾ですが基本的に私は何か事が起こってからでないと動けません。つまり奴が目の前でドーパントを作るなどの状況でない限り後手に回り続けるしかない。生徒一人の不安を取り除く事すら出来ない自分に腹が立つ。
それでも捜索しない訳にはいきませんのでヘラクレスビートルフォンとウルフショットを街中に放していますが、収穫があれば良いのですけどね。
「何か思い詰めているという顔をしているな。こまち の姉の事でか?」
「こまち にも言ったけど、何か悩んでいるなら僕たちに話してみるのはどうかな?それだけでも少しは楽になれると思うよ。」
先日に引き続きナッツハウスに私は来ています。ここのバルコニーは私が力を使わずとも良い風が吹くので考え事をするにはもってこいの場所なのでお邪魔しています。ナッツさんとココさんがどうやら私の様子を見に来られた様です。
誰かに悩みを話す、か。確かに散々誰かの相談を受けた事はありますがあまり自分の悩みを誰かに話す、といった経験は少ないですね。
「ココさんナッツさん...悩みというか、これは酷く傲慢な考えをしていただけです。もっと力があれば未然に防げたかもしれない、等というとても傲慢な考えですよ。」
そう、これは思い上がりも良いところのタラレバです。もし私が索敵能力が高ければ、私が奴を最初に出会った時に倒せていたら。考え出せばキリが無い不毛な思考。下らないと、起こってしまった物は仕方ないと割り切るべきなのでしょうが如何せん彼女達の幸せを願っておきながらこの体たらく。腐ってしまうのが嫌になります。
「確かにそれはとても傲慢な考えだ、だがそういった事を考えた事は俺達にもある。」
「そうだね、僕らだって何度も悔いた事はある。もっと力があればパルミエ王国を救えたのにって。」
「ああ、だからこそそこまでの力が無い俺達でも出来る事はある。」
「出来る、事ですか...?」
「希望を忘れないって事だよ、ウェザート。どんな状況でも希望を持つ事、君も良く知ってる事だろ。」
ナッツさんココさんの言葉にハッとする。そうです、どんな暗闇の中であろうと希望を忘れない事。それを私は彼女達からこれでもかと学んだ筈です、そんな初歩的な事を忘れていた自分が情けない。一度考え込むとうじうじ思考してしまうのは私の悪い癖です。
確かに手を拱いている状況はあまりよろしくありませんが少なくともまだ『秋元まどか』さんは生きている可能性はある。端から最悪を想定して動くべきではありませんね。何事も希望を持って行動しなければ気付ける事にも気付かなくなってしまう。
「ありがとうございます。とても単純な事を私は忘れていました、少し悪い方向にばかり考えていました。」
そうです、今私に出来る事はこのバルコニーで物思いに耽る事では無く何かしらの行動を起こす事。ナイトメアに居た頃の私は陰ながら色々と行動を起こしていましたが今の私は後手に回り続ける事は甘んじて受け入れているだけ。索敵能力が高く無いとしても気合いを入れない理由にはならない。
取り敢えずガジェット達を回収しましょう。収穫が無くても取り敢えず記録の確認を行えば何かしらの手掛かりがあるかもしれません。
そう思いナッツハウスを出ようとした時です。地震とまでは行きませんがかなりの地響きが起こりました。
その際に尻もちをついてしまったお二人は衝撃で妖精の姿に戻ってしまわれました。それにしても今の地響きは...まさか。
「っ!?!?」
「何か出たナツ!」
「街の方を見てみるココ!」
ココさんナッツさんが指摘するのと同時に私が街に放っていた霧から反応が帰って来ました。間違いなくドーパント、しかもこれは拙い。
更に街の方からシロップさんが、ナッツハウスの下階からは のぞみ さん達5人がやって来ました。
「ねえ、さっきの揺れってただの地震じゃないよね!」
「地震なんかじゃないロプ!街の方が凄い事になってるロプ!」
私の方も丁度向かわせていたガジェット達が戻って来た為記録を確認しましたが、奴めここまで派手に動き始めましたか!
そこに写っていたのは...
「建物も道も、シロップ達が居た時計塔も変な植物に雁字搦めロプ!」
急いで街までやって来ましたが、酷いですね。シロップさんが言った様に建物も道も乗り物も植物の蔦、いえこれは根か。何かの植物の根に雁字搦めにされていました。
根の成長速度が異様に早くまるでヘビの様にうねりながら進路上の物に絡みついている。
「皆さん兎に角直ぐにこの植物の大元、街の中心まで急ぎましょう。今はまだ一角のみの様ですがこのままでは更に拡大するでしょう。」
『はい!(ココ)(ナツ)(ロプ)』
植物と根本に黒幕、つまり奴が居る筈。故に根の迫りくる方向に駈け出しました。数百メートル程進めばそこは街の中心。
そして見えました。黒いローブの男、その傍らにはやはり...
「よう!今回は早かったじゃないかウェザートォ!」
「やはりこの事態は貴様が原因か。何より彼女をさらったのも。」
「え?お姉、ちゃん?なんで、ここに居るの?」
奴の傍ら、足元には俯き横座りした状態の こまち さんの姉である秋元まどか さんが居ました。今でこそ植物とは切り離されていますが彼女の下には根が寄り集まっています。
こまち さんも恐らくは分かっている筈ですが現実を直視出来て、いえ受け入れたくないといった所ですか。誰だって家族が怪物にされたなんて受け入れたくありませんもの。
「あぁこの女か?俺の作ったメモリとお互いに惹かれ合ったみたいでなぁ、良い実験体になってくれたよ。メモリの出力を低くした事でメモリ本来の力を良く引き出してくれたよ。」
「そんな、お姉ちゃん!私よ、こまち よ!目を覚まして!」
こまち さんが必死に呼びかけてはいますが見るからに衰弱している、しかし奴はメモリの出力を下げたと言っていますがそれでも状況は拙い。どんなに出力を下げようと彼女が失踪したのは数日前、その時からメモリの実験体にされていたのだとしたらどんなに出力を下げたメモリであろうと毒素が与える影響は大きい筈。
更に今までのドーパントは言ってしまえば理性を失い闇雲に力を振り回すだけでした。しかし街全体にすら影響を及ぼしかねない程にまで力の範囲が広がっている。なんなら彼女は今人間の姿であるにも拘わらず”根の成長が止まっていない!”
「ククク、実験体にしてから既に数日。それじゃあ最後のお仕事をしてもらおうかぁ。」
「待て!彼女はもう限界だっ!」
「俺の知った事じゃねぇな。」
駄目だ、奴と彼女の位置が近すぎる!妨害しようにも下手をすれば彼女に当たる、いや奴なら盾にすらしかねない。
奴は彼女の腕を掴みメモリを挿そうとし...
「うぅ...ダメ、こまち 逃げて...。」
「さあ、妹に別れを告げな。」カチ
「RHIZOPHORA!」
「あああアアアアアア!!!」
メモリが彼女の体内へと装填された事で全身が根や枝で構成された植物型のドーパントへと変身してました。
そして街を覆い尽くす程の植物の力も分かりました。リゾフォラ...つまり汽水域に生息するマングローブを構成する植物の一種、ヒルギのメモリか!
リゾフォラ・ドーパントへと変身した事で植物の成長速度もより活性化したようですね。これは...拙いですね。
「これでこの女ももう長くないだろうな。時間が経過しても死ぬ、例えメモリブレイクされても死ぬ。ウェザートォ、お前の周りに居る奴は不幸になるなぁ。」
「あっ、ああ...そんなお姉ちゃん...。」
コイツ、他者の命すら駒としか見ていないのかっ。
いけません、落ち着きなさい。どんな時でも冷静に対処しなければ。それに、まだ完全に『希望』が潰えた訳ではありません。
だからこそ今の私に出来る事をしなければ!
「こまち さん、立ち上がりなさい。」
「ウェザートさん、でも...。」
「希望はまだ残っています。彼女を救う為にも こまち さん、貴女の力が必要なのです。」
「希望...お姉ちゃんを救けられる、の?」
「勿論ですよ、それは貴女方がこれまでの戦いで学んだ事でしょう?」
今は兎に角 こまち さんを立ち上がらせる事が最優先です。まどか さんを救けるにはこのメンバーの中で こまち さんの力は必須でしょう。これは私でも出来ない事だから。
「そうだよ こまち さん!ウェザートさんの言う通り、希望を捨てちゃダメだよ。」
「こまち、貴女は一人じゃないわ。貴女の傍には私達が付いているんだから。」
「まっ言いたい事は言われちゃったけどそういう事ですよ。どんなに辛い時でも私達は乗り越えてこれたでしょ?」
「大丈夫ですよ こまち さん、皆さんの言った通り諦めちゃだめです!」
彼女を奮い立たせるのに必要な最後のピース、仲間の温かい言葉。私に出来る事はせいぜいが切っ掛けを作る事、でもその切っ掛けさえあれば。
「皆、ありがとう。どんなに辛い時でも先ずは立ち上がらなくちゃいけないわよね。力を、貸してくれる?」
「「「「勿論!」」」」
良かった、何とか奮い立ってもらう事が出来ました。どんなに伝説の戦士だと言われていようとも彼女達は普通の女の子なのだから酷く気持ちが沈んでしまう時がある。でもこうして仲間が寄り添ってくれたなら彼女達ならば何度だって立ち上がる事が出来るのだから。
奮い立った彼女達は奴と まどか さんが変身したリゾフォラ・ドーパントを真剣な目で見据える。こまち さんはどこか覚悟を決めた様な力強い瞳で。
私もこの物語が悲劇に向かわない為にも早く『完了』させなければ。
「茶番は終わったかぁ?なら、やっちまえ。」
「オオオオオオオォ!!!」
リゾフォラ・ドーパントが根をこちらに大槍の如く伸ばしてきましたが...
「させるとでもお思いですか?想覚」カチ
「WEATHER!」
「貴方だけは絶対に許さないわ!」
私が変身する時に生じさせた電撃や風、吹雪によって迫りくる根を吹き飛ばしたの変身妨害なんてさせませんでした。恐らく根事態にはそこまで痛覚は無いのでしょう、結構無茶苦茶に吹き飛ばしましたが怯んだ様子もありません。
「あああアアアアア!!!」
「っ!?皆さん飛びなさい!」
「「「「「はいっ!」」」」」
一斉にその場から飛んで離れましたが次の瞬間には我々の居た地面からは剣山の様に無数の鋭利な根が突き出していました。危なかった、私なら兎も角彼女達でも変身しているとは言え直撃すればそれなりのダメージを受けたかもしれません。
「これはヒルギ科の植物が持つ呼吸根か、厄介ですね。」
ヒルギという植物は呼吸によるガス交換を行う為に地面から突き立つ様に伸びる呼吸根を持ちますがこれを攻撃に使用してくるとは。誘い込まれる様に使用されれば厄介そうですね。
「それだけじゃ無ぇぜ。」
「グッ!ウアアああアアア!!!」ズドドド
まさか遠距離攻撃すら持っているとは。リゾフォラ・ドーパントの背中から茂みの様に伸びる幹から弾丸の様な物が発射されたので内心驚いています。
「させないわ!プリキュア・エメラルド・ソーサー!」
ミントが防いでくれたお陰で弾かれた弾丸らしき物は周囲に飛び散りましたが、これは...実か!
そう結論が出たのも束の間撃ち出された実が発芽したかと思えば急速に成長し植物怪人へと成長してしまいました。見た感じは戦闘員的な感じですかね?
「......。」
「えぇ!?何か増えた!」
「あの発射された実から次々芽吹いて増えるみたいね。」
「とは言え...はあ!」
無言で襲い掛かって来たので局地的な日照りを起こしてみましたが瞬時に枯れ果てボロボロに崩れて行きました。やはりそこまで強くは無いようですね。
しかし40、50まだ増えますか。倒すだけなら私が一気に広範囲攻撃をすれば良いのでしょうがこの植物怪人共はどんどん増殖して行っている。全部は相手なんてしていられません、ここは彼女達に任せさせてもらいましょう。
「ドリーム、ルージュ、レモネード、アクア。この植物怪人達を任せたいのですがお願い出来ますか?」
「分かった、アレは任せて!」
「正面突破は得意だしやってやろうじゃない。」
「ウェザートさん、私は皆とは別行動なの?」
ミントの疑問も当然ですね。チーム分けしたした理由は3つ、1つ目はリゾフォラ・ドーパントを守る様に今もなお増殖し続ける植物怪人達の対処まで手が回らない可能性があるから。まどか さん救けるには今までと違って神経質にならなければいけません。集中している時に余計な横入が入る事は避けたいところ。
2つ目が最も大事、それは私だけでは恐らく まどか さんを生きた状態で救ける事が難しいから。リゾフォラ・ドーパントをメモリブレイクして倒す事は出来るでしょう。しかしそれでは生存が見込めません。変身前から奴による人体実験の影響でかなり衰弱していた事、そして幾ら毒素の影響が和らいでいたとしてもその毒素を数日前から受け続けている事。いつも通りメモリブレイクしようモノなら彼女の命を奪う事になってしまう。
3つ目も2つ目と合わせてミントの力が必要になる理由。それは今のリゾフォラ・ドーパントからは変身前に辛うじてあった彼女の意識が感じられない事。見た所あのドーパントは完全に暴走している様に見えるのは間違いではありません。出力すらもデタラメに引き出し続けた力を振り撒いています。そこで今この場ではミントにしか出来ない仕事、つまりは妹である こまち さんの声による まどか さんの意識を引き揚げる事。
勿論100%成功する可能性はありません。五分五分になれば良い方で実際はもっと低いかもしれません。しかしそこに確かな『希望』があるというのなら取らざるを得ない選択肢。
僅かでも彼女の意識が戻ったのならその瞬間にメモリとの結び付きが僅かに緩む筈。最後に救出した まどか さんの命を救う『一手』、それさえ間に合えば...。
「ミント、貴女は私と共にお姉さんの下へ行きましょう。貴女は彼女に近づいたら只管に呼びかけてお姉さんの意識を僅かで良い、引き揚げて頂きたい。」
「分かったわ。ウェザートさん、貴方もどうか私に力を貸してちょうだい!」
「勿論ですよ、では...参りましょう!」
私の合図と共にドリーム・ルージュ・レモネード・アクアが先行して駆け出し、私とミントは彼女らを追う様に並び立って地を蹴る。
「それじゃあ行くよ!プリキュア・シューティング・スター!」
最初にドリームが植物怪人の壁を突破し活路を開く。そんな事はさせないとばかりに開いた道に怪人達がなだれ込もうしますが
「邪魔させないって言ってるでしょうが!プリキュア・ファイヤー・ストライク!」
ルージュの蹴り放つ火炎球によって怪人達を消し炭にする事によってそれを防ぐ。
「行きます!プリキュア・プリズム・チェーン!」
「ウェザートさん、お願い!プリキュア・サファイア・アロー!」
「お任せを...はあ!」
開いた道を万全な物にする為にレモネードがチェーンを道の両端に合わせる様に向こう側まで届かせて、アクアがチェーンをなぞる様に一対の水の矢を放つ。最後に私がその矢に冷気を浴びせれば氷の壁が出来た道の完成です。そう長くは持たないでしょうが、後は此処を駆け抜けるだけです。
「皆さん、後は頼みます!」
「「「「YES!!!」」」」
「皆!ありがとう!プリキュア・エメラルド・ソーサー!」
今度はリゾフォラ・ドーパントが操る根を上空から伸ばして来ましたがミントが真上に壁を展開する事でそれを防ぐ。さて気を引き締めて参りましょう、このトンネルを超えた先に待ち構える今までで一番の無理難題を解決する為に。私の方も準備完了まで残り1%を切っている、急がねば。
「なんだよ、随分掛かったじゃねぇか。」
「えぇ、随分と進路妨害が多かったもので...。」
「コイツはもう止まらねえ、根は既にこの街の7割を侵食している程だ。」
「それでも我々は彼女を救います。」
「お前らお得意の希望ってか?下らねえ、やれるもんならやってみな。」シュン
そう言い残して奴はこの場からて撤退して行ってしまいました。邪魔が入らないのなら渡りに船ですが、我々が彼女を救えないとでも決めつけたのでしょうかね。
さて、ここからが正念場です。どんなに頑張ってもあの衰弱具合では後30分持つかどうか。速攻で決めたい所ですがそれすらも容易に出来ない。
「アアアア、アアアアアア...。」
「お姉ちゃん、分かる?私よ、こまち よ。救けに来たわ!」
「ウゥゥ、アッアア...。」
「大丈夫よ、皆本気でお姉ちゃんを傷付けようだなんて思ってない。皆お姉ちゃんを救けたいの!」
「ウウウゥゥア...。」
さて、どうだ?ミントの声に僅かながら反応している様に感じますが...。
「お姉ちゃん?」
「ウゥゥゥ......アアアアア!!!」ビュン
「ミント、危ない!セイッ!」
良い所まで行ったと思いましたがまだでしたか。根を振り回して来たので防ぎましたが、いやこれは...。
「そんな、私の声は届かなかったの...。」
「いえ、大分揺らいでいるのは確かな筈です。このまま声を掛け続けて」
「ウェザートさん、大変!何かコイツら急にそっちに向かい始めた!」
ルージュの声に後ろを振り向けば残っていた怪人共が一斉にこちらに向かって来ていました。一瞬動きが止まってしまった為その隙に距離を詰められたので咄嗟に落雷によって十数体纏めて焼き尽くしましたがそれでも止まる気配が...いや、この怪人共の目的は私達じゃない!
コイツらの目的はドーパントの方かっ!
怪人共が私達を無視してどんどんリゾフォラ・ドーパントに飛び付いて行くと次々に吸収されてしまいました。咄嗟に暴風で壁を作れば次の瞬間には衝撃波を放ちながら巨大化してしまいました。
ここに来て巨大化するとは思ってもいませんでした。まだ人型だった先程の姿からより樹木に近い見た目となり幹には互いに若干位置のずれた二つの眼。差し詰め『ジャイアント・リゾフォラ』とでも呼称しましょうか。まあそれでも
「やる事に違いはありません。ミント、再度に渡って彼女に声掛けをお願いします。」
「ウェザートさん...。」
「大丈夫ですよミント、貴女の希望を信じて下さい。他の方は私と共に迫りくる根や枝の対処をお願いします。」
「「「「「 Yes! 」」」」」
私と共に駈け出しますが相手は巨大化した為小回りこそ効きませんがパワーとスピード、攻撃範囲が上がっていますが対処出来ない事は無いでしょう。寧ろ私よりも巨大戦に慣れている彼女達なら心配ありません。
『■■■■■■!!!』
出来るだけ本体を傷付けない様に根や枝を破壊する様にしていたら巨大化前と違って実を射出するのではなく緑色の光弾を放つようになりましたか。ミントは隙えお見つけては声を掛け続けていますが、果たして...。
勝機は恐らくたった一度、それを逃せば救えない。でも彼女達なら出来るだろうという考えはずっと変わりません。
◇ ◇ ◇
感覚なんて、もう殆ど残っていない筈なのに寒い。とても寒くて堪らない。体が冷えているのか、それとも心が冷えていっているのかは分からない。
痛い、苦しい、辛い、もう止めて。そんな感情が頭の中を占める。どれだけ叫び尽くしたのかも分からない。声はまだ出るかもしれない、でももう発声するだけの気力も無い。
一体どれだけこうして一人で居るのかも良く覚えていない。少しだけ外に無理やり連れだされた事もあったけど、それでも直ぐにこうして閉じ込められる。
何だか外が騒がしくなった気がした。いや、多分その時からずっと騒々しいのだろうけど直ぐに気にならなくなった。自分という存在がどんどんすり減って行っているというこの感覚のみが鋭敏に感じられる。その恐怖に比べれば他のどんな苦痛でさえ些細な事に感じられた。
...っ
怖いよ、嫌だよ、誰か...助けてよ。自分の声が届かない事くらい分かってる、それでも助けを求めてしまう。
...え...ゃ...
何だろう?今何か聞こえた、ような...?
お...えちゃ...
やっぱり聞こえる。ううん、これは...呼ばれてる?
お姉ちゃん!
この、声知ってる。私がとっても良く知ってる人の声だ。
私はこの声に縋る様に手を...
お姉ちゃん!聞こえる!?お姉ちゃん!
あっ、ああこの声、この声は!
「お姉ちゃん!手を伸ばして!私の手を掴んで!」
こまち!
◇ ◇ ◇
ジャイアント・リゾフォラとの戦いを初めて15分程が経過しました。私の方も残り0.12%、早くもっと早く!あともう少し!
「えっ!?ちょっとこれって!」
「レモネード、何かありましたk」チャプ
チャプ?と思い足元を見てみると踝の辺りまで水に浸かっていました。
「これは...一体何が起こっているの?」
いえ、待って下さい。雨すら降っていないというのにこんな急激に水位が上がるなど普通あり得ない。というかこの水から漂ってくる臭いは...まさか!
「これは唯の水じゃありません、海水です。」
「海水?でも何故急にこんなに。」
「あのドーパントの新しい能力だと思われます。マングローブとは海水のある場所に生息する植物群です。つまり海水のある場所で育つ植物がこうして根付いている以上此処は海であるという事が逆説的に証明されてしまっているのです。」
「いやでもそんな無茶苦茶な。」
「そういう無茶苦茶な事が出来てしまうのが目の前で戦っている相手です。兎に角このままではこの街が海に沈むかもしれません。」
自分達の予想の上を行く能力、どんどん苛烈になって行く攻撃。仲間に攻撃が当たりフォローしに行けばその間に更に枝や根が増え続ける。終わりが見えないというこの立ち回りは精神的に少し来ますね。
皆さんの中でももう駄目なのかという空気が漂い始めていた時に動きがありました。
『■■■■アアアああああああ、あ...こ、こまち」
占めた!やっと まどか さんの意識が浮かび上がった!この好機は絶対に逃がさない!それに私の方もタイミングがバッチリです。『分析完了』!ガイアメモリ製作開始!
「ミント!まどか さんへの道を切り開きます!彼女を引っ張り上げて下さい!」
「分かったわ!」
絶対に狙いは外さない!
『ウルフ』ギュイン
素早くウルフショットをライブモードへ移行させウェザートマグナムに接続させ頭部を前方向に向かせてレーザーポインターへ。
「これで決まりだ!」
『WEATHER MAXIMUM DRIVE』
「ウェザー・ウルフクランチ!」
銃口から発射された複数の弾丸はそれぞれが風と雷を纏ったオオカミの頭へと変わり
「行きなさい、ミント!」
「「「「行っけー!!!」」」」
食い千切られた痕が塞がる前に幹を駆け上がったミント まどか さんが伸ばした腕を
「お姉ちゃーん!!!」
掴んで引っ張り出して避難した。ならばこのウドの大木に要は無し!
一度離れていた弾丸のオオカミが再度集まり再び噛みつく。
「終わりだ!」
噛みつかれたドーパントだった残骸は雷に焼かれ、暴風に切り刻まれて爆発四散。街中に張り巡らされていた根も綺麗さっぱり消滅しました。私の方も何とか間に合った、最後の一仕事です。
既に変身を解除した こまち さんが まどか さんに寄り添っていました。こまち さんが握っている腕から『リゾフォラメモリ』が排出され
「R...RHIZO,PHORA!」パリン
メモリブレイク完了。ですが まどか さんは呼吸が荒くなり始め肌も青白くなりはじめてしまっています。既に意識を失っていますね。
「ダメ、お姉ちゃん...死んじゃダメ!」
「言ったでしょう、絶対に救けると。」
「ウェザート、さん...。」
「大丈夫です、信じて下さい。何より貴女のお姉さんを。」
『DETOX MAXIMUM DRIVE』
ギリギリ間に合わせる事が出来た新たなメモリ、『デトックスメモリ』を装填しマキシマムドライブを発動させたウェザートマグナムを まどか さんの腕に押し当て引き金を引いた。
◇ ◇ ◇
今回の騒動はあの黒いローブの男に まどか さんが誘拐されガイアメモリの実験体にされた事で起こってしまった。自分の力不足を嘆くと共に街に奴の魔の手が及ばない様に監視の目を強める事で一応は自分を納得させました。彼女達からはあまり自分を責めないで欲しいとのありがたい言葉を頂いたので良しとしましょう。
結果から言えば まどか さんの救命は成功しました。彼女を救う際に使用した新たに作ったメモリ『デトックスメモリ』の力で事無きを得ました。このメモリは私がこれまでメモリブレイクした複数のメモリを体内へと取り込みガイアメモリ特有の毒素を解析し続ける事で製作に漕ぎ着けました。効果としてはメモリの毒素と後遺症の排除、という救命以外にはあまり使えない能力ですが成果としては十分でしょう。
しかし まどか さんは数日間に渡る長期的なメモリの実験によって衰弱していたのは確かなので入院自体は必須でした。毒素は消し去ってもメモリ使用中の事はやはり記憶に無いようです。病院に担ぎ込まれ2日程寝込んだ後、目覚めた時に こまち さんに聞いて頂きましたが何も覚えていないとの事。この事で警察関係者もここ何週間か起こっている数日間の記憶喪失事件と同じ物であるとして取り扱うと思われます。
今も懸念事項はまだ幾つかありますがそれでも、今この瞬間の束の間の平和を味わうとしましょうか。こまち さんからお礼だと渡された沢山の豆大福と羊羹を頬張りながら思う今日この頃。まだお礼し足りないと更に渡されそうなのが怖いですね〜。
【デトックスメモリ】
ウェザートが自身を実験体兼分析装置として使い製作したオリジナルガイアメモリ
メモリブレイクしたガイアメモリを取り込み続けて毒素を分析した事で秋元まどか救出にギリギリ間に合う形で完成した。
中和ではなく解毒の力である為マキシマムドライブを発動させれば対象者の体内から毒素を排除する。副産物的効果として毒素とは別にメモリによる後遺症も排除する効果がある。
前後編に分けたとは言えそれでも初めて1話で一万字超えました。
多分誤字脱字があると思うので遠慮せずにビシバシ指摘して頂けると嬉しいです。コメントも執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。ここの所ずっと返信は出来ていませんがそれでもしっかりと拝見させて頂いております。
オリジナルドーパントの設定とかもその内投稿すると思います。タブンネ
何分遅筆ゆえ完結までの道は遠いですが本編が終わり次第オールスターズ辺りを書こうかな~なんて構想しています。
ではまた次回!
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第8話 迫る悪意
「一体どういう事ですかコレは!」
「どうもこうも無ぇ、見たまんまだろうが。」
エターナル本部にて黒いローブの男とアナコンディがある一室にて向かい合っている。アナコンディは声を張り上げると共に手に握っていた紙束、ローブの男が提出した報告書を思わず机に叩きつけてしまっていた。
報告書とは名ばかりの代物であるがそれはいつもの事。寧ろ報告書すら書かない事もあるこの男の相手は幾分か慣れ始めていたが今日はいつもと比べても少々機嫌が悪かったのが重なってしまった。部下たちが何度も出撃してはローズパクトの回収は叶わずイライラしていた。そんな時にこの男だ、いつも通りのこちらを舐め切った態度にふざけた報告書。当の本人はソファーにふんぞり返って足まで組んでいる。
男の提出した報告書の内容も欄など無視してデカデカと「○○回収」だけである。確かにエターナル内にはネバタコスの様な横柄な態度の者も居るがここまでは無いし報告書だって他の部下共々しっかり提出している。
「別に良いだろうが、仕事はやってやってんだ。感謝してくれても良いぐらいだ。」
「何を世迷言を。大体ローズパクトだって回収されていないばかりかプリキュアと一緒に居る者にも貴方は敗北しているようですが?」
「そもそもローズパクトとか言うモンの回収担当はあのサソリとハチの2人で俺じゃ無い。それに負けたのは俺じゃなくてドーパントだ。負けた原因も人間どもが脆弱だからに他ならない。」
怒鳴ってから怒りが一周して逆に冷静になった為少しでもと皮肉を言うが男は全く意に介さず、こちらを舐め切った態度を崩す事は無い。確かにこの男態度も口調も悪くオマケに報告書すら出さず出したとしてもこの内容だが仕事自体はキッチリしている。
「さっきも言ったがよぉ、仕事はやってるぞ。お前の部下たちよりもなぁ。」カチ
「ICEAGE!」
アナコンディが怒りこそしても正面切って強く出れない理由。単純に男の戦闘力もある。が一番の理由は男の背後にある夥しい数の氷漬けになった物品の数々にある。
今はもう絶滅してしまったと言われている動植物たち。歴代の名匠たちが作り上げた調度品や宝石、世界中の美術館が喉から手が出るほど欲しがるであろう絵画や彫刻などの美術品。既にエターナルの持つリストの5分の1はこの男によって埋められている。
「瞬時に凍結させたからなぁ、死んでも無いし壊しても無ぇ。これでもまだ何か文句あるかよヘビ女。」
またアナコンディをイラつかせるが確かに結果を出し続けている。なまじ自分の部下たちよりも成果は出している為他の部下ほど強く出られない。
「もう何も無いなら俺は帰るぜ。」
「待ちなさい、またドーパントとやらを差し向ける気ですか。」
「駄目だな、ドーパントじゃ奴の相手は務まらない事が分かった。精々嫌がらせが良い所だ、前も確実に死ぬと思った実験台が生存していた。
そもそも被害を顧みなければ奴はどんなドーパントでさえ瞬殺するだろう。」
「奴、貴方がずっと付け狙っているウェザートという者でしたか。」
「ああそうだ!『ウェザート』その名を聞くだけでも捻り潰したくなる!」
「それで、貴方はどうするおつもりで?まさか...」
「クククああ、お前が思っている通り。今回は俺自ら出張る。」
男は不気味に笑いながら漆黒のローブを翻しながらその場を後にした。
◇ ◇ ◇
さて、こまち さんのお姉さんである まどか さんを救けて早数日。特にエターナルの連中が仕掛けて来る事も無く比較的穏やかな日常を過ごしていた為今がどの辺りなのか分からずちょっと悩んでいました。
そこでど忘れしていましたがまだフローラさんが立体映像よろしく青いバラについて少しだけ話すイベントが起こっていませんでした。偶々私が居ない時にあったのかもとそれと無く聞いてみましたが特に無いとの事。
つまりこれから起こるのだろうと最近ナッツハウスに通い詰めてお手伝いをしています。先日の事もあって割とアテにならなくなって来た私の原作知識、でもこれが当たらないと困る事態もありますし何より私がミルキィローズと会いたいという重要な目的もあるのでイベントの把握は大事です。
それで休日という事もあり、今日も今日とてナッツハウスでお手伝いです。とは言え今は休憩中、私や年長組が持ち寄ったお菓子でティーブレイクの準備中。
「シロップさん、今からホットケーキを焼いてくるから待っててもらえるかしら。」
「ほんとうロプ!」
シロップ君はホットケーキが食べたそうだったので こまち さんに頼んで買い置きしておいた材料で作ってもらっています。こまち さん以外にも りん さんに作って頂いている時もありますね。私も一応出来ない訳では無いのですが普段からよく料理されているお二人の方が私より美味しい物が作れますし。ほら私って人の身じゃないですしこの体になって食事そのものが完全に娯楽になってしまっています。なので気が向いた時には買ったりお店で食べたりで自炊は殆どしなくなってしまいました。
王様たちにしてもらう訳にもいきませんし多分シロップ君は食べないでしょう。後々の関係が楽しみな身としては うらら さんにも作って頂く事は考えましたがカレーを入れようとする姿が浮かんだので。かれん さんも途中までは良いんですけど卵の殻が入っても栄養的には大丈夫だと言いそう、というか一度やったので辞退して頂いてます。のぞみ さんはまぁ、そのキッチンが悲惨な事になりそうなので...。
おっと回想していたらローズパクトが光り輝き始めその輝きは更に増し続け部屋中を光で満たしました。そしてその光が収まるとローズパクトからは立体映像ながら一人の美女が。
おぉ、こうして生で見ると本当にお美しい。春先では諸々の事情があって対面する事は叶いませんでしたから、こうして会う事が出来て割と嬉しいです。
『皆さんにお伝えしなくてはいけない事があります。闇に強い憎しみと怒りが現れています。彼らは赤いバラを散らして希望を奪いに来るでしょう。
気を付けて下さい。赤いバラと青いバラの力、二つの力を合わせるのです。』
ふむ、この辺りの忠告は原作通りですね。闇の力が増しているから気を付けなさい、二つのバラの力を合わせれば立ち向かう事が出来る。この忠告が新たな戦士であるミルキィローズと出会うイベントになります。
ん?この忠告が終われば通信終了する筈ですがまだ終わっていない、というかフローラさん私の方を見ていらっしゃる?えっこれ私喋る流れですか?何か恐れ多い気がしなくもありませんが。えっとただの会釈ではアレですし、軽めのボウアンドスクレープで良いでしょうか?
『貴方は...。』
「お初にお目にかかります、フローラ殿。私の名はウェザートと申します、以後お見知りおきを。
かつては彼女たちと敵対する組織に身を置いておりましたが今は一人の大人として、仲間として彼女たちと共におります。」
あまり大仰なのはどうかと思ったので背は挨拶をする時の様に下げて右手は胸に、左手は握って腰の方に持って行く。これならあまり失礼にならないでしょう。
『そう、貴方がウェザートなのですね。』
「えっ...。」
その言葉に一瞬ドキリとしました。えっフローラさん私の事をご存じで?何か目を付けられる様な事でも...何個か思い当たる節はありますけど。いやいや、フローラさんは伝説の戦士とはいえまだ学生でしかない彼女たちを知っていたくらいです。私の事を知っていても不思議ではありませんとも。
『ならば貴方にも忠告をしなければなりません。貴方が対峙しなければならない闇は他を凌ぐ勢いで悪意と力を増大させています。
この闇は私は完全に知る術を持たない物なのです。だからどうか、この闇と向き合える貴方だからこそその対処をお願いします。』
私が対峙しなければいけない闇...十中八九『奴』の事で間違いは無いでしょう。闇の力の増大というのは恐らくガイアメモリの事でしょうか。いえ、あまり早計な事は控えましょう。
結論付けるには情報が幾らか足りません。あっ、言われた事に対しての疑問があったのですけれどもう映像は切れてしまいました。残念ですがここからは自力でどうにかするしかありませんか。
何はともあれフローラさんからの有難いお話も終わりこれで楽しいティータイム、とはならず先程のお話もあっていつもの和気藹々とした雰囲気は鳴りを潜め皆さん程度の差はあれど何処か真剣な顔で黙々とお菓子を食べるのでした。
時間は進んで次の日、今日は全校生徒による校内庭園の清掃活動です。まぁ今日は生徒を主体にした清掃なので私はその裏方に回っていますけどね。今彼女たちは不安でしょうがないでしょうがそこは頼もしいリーダーである のぞみ さんによる激励によって持ち直す筈なので心配ありません。それでも何かあれば何かしら相談などをしてもらえる程度には頼られる様にはなりましたしね。
そして同時に放課後重要なイベントであるミルキィローズとの遭逢がある筈です。本心では彼女たちの苦しむ姿など見たく無いので介入してでもスコルプさんをぶっ飛ばしに行きたいです。しかしそれでは彼女たちの成長する機会を邪魔してしまう事になってしまう。今更ですが唯でさえ異物でしか無い私が物語りを引っ掻き回すべきでは無い。まぁ『奴』の登場など割としっちゃかめっちゃかになってはいるのですがそれでも展開自体は私の記憶している物と凡そ同じと言っていいでしょう。飽くまでも推察になりますが彼女たちにとっての重要なイベント、それさえ邪魔しなければあまり問題は無いのではないかと考えています。
兎にも角にも今回は出来るだけ手出し無用という方向性で...っ。
「何でしょうかコレは、雨が降るからという理由だけでは無さそうです。やけに嫌な風が吹きますねぇ...。」
自分の作業をこなしていれば時間は既に清掃活動も終わりに近く、空も段々と曇っていっています。ただの気の所為であれば良いのですがこの風、どうにも心の何処かで警鐘が鳴り続けます。
こういった時の嫌な予感って当たるから嫌なんですよねぇ。
という事で放課後です。私ももうお仕事は済ませたので一緒に帰ろうと誘われたのですが泣く泣くお断りしました。時が経てば経つ程どうにも警鐘は大きくなっていく。
空模様はその不安を煽るかの様な曇天、というかもう直ぐに降り始めますね。スコルプを補足しましたし、あちらでは事態は既に開始している様です。取り敢えず当初の予定通りに今回は見守りましょう、必然的にココさん達が酷い目に遭うのを見過ごす事になり心苦しいですがね。
おや等々降り始めましたか、記憶通りならこの後にブンビーさんが来てココさん達をっっっ!?!?!?!?
この吐き気がこみ上げる程の悪意と力、間違いない。
「『奴』だ。私の
「WEATHER!」
居場所が分かれば直ぐにでも時計塔へと転移します。放っておくなど論外です、奴なら何をするか分かったものじゃありませんから。
急いで時計塔まで来てみれば奴は壁に凭れかかりながら私を見ていました。何だ、今度は一体何を企んでいる?
「クククよぉ、今回は最初から臨戦態勢だな。気配を出せば直ぐに来てくれる、嬉しいぜぇ。」
「あそこまで露骨では気付くのも当然でしょう。今度は一体何を考えている?」
「そんなもん無ぇよ、今回は俺が直々に出て来たまでだ。ドーパントじゃ嫌がらせにしかならないみたいだしなぁ。」
成程、我々以外に他の者が居ないのもそういう事ですか。
ここに来て改めて思い返しましたが奴の実力は未知数。私が知っている事は奴はガイアメモリを作れて私にダメージを負わせる位の実力は持っているだろうという事程度。どんな能力を持っているのかさえ私は知らない。
知らないという事がここまでストレスになるとは思いませんでしたよ。
そしてもう一つ分からない事、それは奴の正体です。最初に会った時から奴は私に対して並々ならない悪意を向けて来ていた。秋元まどかを捕えてドーパントに変えたのも恐らく奴の言う嫌がらせの一つでしょう。
しかし私自身ここまで悪意を向けられる覚えが無いのも事実。ナイトメア時代も極力社内の者以外とは
「幾つか...お前と出会った時から疑問に思っていた事がありました。」
「あぁん?俺とお前は敵。これ以上に分かり易い事は無ぇだろうが。」
「そこですよ、あの時初めましての時からお前は私に強い悪意を向けて来ていた。無関係の人間を巻き込む事すら厭わない程の悪意。」
「......。」
「お前という存在にはっきり言って見覚えはありません。初遭遇の時ならまだしもガイアメモリすら作ってしまう様な輩。
こんな特徴を持つ奴が居れば忘れる筈がありませんからねぇ。今まで関わって来た方を思い返しても分からない、お前は一体誰ですか。」
「......。」
私と奴の間に沈黙が流れる。それどころか先程まで垂れ流す様に私に向けられた悪意すら霧散しています。何だ?一体何を考えている?
しかしこの奇妙な沈黙は奴の盛大な溜息と共に破られる事になりました。
「...はあぁあ。」
その溜息は全力で私に対して呆れているような、何処か馬鹿にしてくる様な物でした。どういう事だ?やはり私と奴は過去に何処かで出会っているとでも言うのか?
「おいおい俺と出会って数か月経ってるってのに俺が誰かも分からなかった、てか?呆れた奴だなウェザートォ。」
「何が言いたい、それとも我々は過去に出会っていたとでも?」
「いいや。成程なぁお前からすれば俺の事なんか眼中に無かったから知らなかったって事だろぅ?」
「一体、何を言っているのですか。」
奴からまた悪意がこちらに向けられてくる。単純な害意だけじゃない、これは嘲りですかね?口調も何処か笑っている様にも感じられます。
「あぁ俺の正体、だったか?」
奴が溜息を吐いてからずっと俯かせていた顔を上げる。
その時私と奴の間に一際強い突風が吹きました。そして、その風でフードがはためき今まで闇の様に暗く見る事が出来なかった奴の顔が見えました。
そんな、馬鹿な...ありえない!奴は!コイツの『正体』は、まさか!
「なっ!?お前の、正体は!」
「ククク...!」
まぁこの時私は激しく動揺してしまい、奴に対しては隙を晒すには十二分な時間でした。
◇ ◇ ◇
「いててっ」
「大丈夫なの?」
「うん、何とかね。あれ?あの子は何処行ったんだろ?」
所変わってサンクルミエール学園にてプリキュア5の面々は
自分たちがスコルプによって誘き出されている間にココ・ナッツ・シロップを人質に取られ、動揺していた事もあっていつもの様に動けなかった為であるが今回の事を教訓にして彼女たちはまた一歩成長するという流れである。
本来の展開との違いはミルキィローズが登場した辺りから雨は止み晴れる筈が今でも尚降り続けている事だろう。何ならゴロゴロと雷鳴すら聞こえ始めている。
「皆、雨もどんどん強くなっているわ。一旦戻りましょう、雷も鳴り始めているし。」
流石にこのまま雨に打たれながら雷雲の下で過ごすのは有り得ないので取り敢えず校舎の方に戻ろうとした時だ。
ドゴオォン!!!
『っ!!!???』
その場に居た全員が驚愕と同時に警戒の眼を向ける。爆撃とも取れる程の凄まじい轟音を響かせながら地面に激突したソレ。先程ドリームがプリキュア・シューティング・スターによって地面に突っ込んだがその比では無い。まるで隕石が降って来たかの様にクレーターが出来てしまっている。
雨で土煙が直ぐに収まった為目を凝らすと...
「ぐっゴホッゴホッ!油断しましたか...!」
『ウェザートさん(ココ)(ナツ)(ロプ)!?』
「なっ!?皆さん、ダメだ!直ぐに逃げなさい!」
シロップはそこまででは無いがそれでもドリーム達はウェザートのその様子から衝撃を受ける。ウェザートとは嘗て敵だった時に二度戦った事があるからだ。どちらも手を抜かれ何なら二度目は力の3割しか使っていなかったにも拘わらず尚圧倒された程だったからだ。彼女たちは身を以ってウェザートの強さを痛感しているからこそ動揺する。
生憎表情は怪人態である為窺えないが声からしてもいつもの余裕綽々といった物が感じられず鬼気迫る物が宿っているのが良く分かる。何より状況的に見てもウェザートは何者かに吹き飛ばされて此処に来たのだと分かってしまったから。
そして空から黒い塊が降りて来た事で完全に状況を把握した。地面に降り立ったのは何度も自分達、正しく言うならウェザートの前に現れた黒いローブの男。こいつが彼を吹き飛ばしたのだと理解した。
「何だよ、氷すら覆って無ぇな。真面なダメージにすらならなかったか?」
「「「「「っ!」」」」」
咄嗟に戦おうと構える、が
「ダメだ!戦ってはいけない。自分達の状態を良く見なさい!」
何より焦っている様子のウェザートの剣幕によって制される。確かにスコルプ・ブンビーとの戦いでのダメージは蓄積している。だからと言って何故ここまで止められるのかが分からなかった。
「うん?ああそう言う事か。お前も俺の正体を知らなかったんだ、当然ソイツらも知る由も無いか。」
そう言うと黒いローブの男は徐にフードを取る。それによってウェザートと同様今まで闇の様に暗く見る事が出来なかった男の顔が見えた。
「...え?」
「どういう、事よ」
「だって、そんな事が」
「一体、何がどうなってのよ」
「あれは、どう見ても...!」
彼女達がここまで同様するのも無理は無い。何故なら
「ウェザートさんと...同じ顔」
何故なら普段は頼りになる教師としても大人としても慕っている、ウェザートと同じ顔がそこにあったからだ。
前書きに言ったモチーフ元ですが正解を言うと『ウェザー・ヘラクレスペネトレーション』が轟轟戦隊ボウケンジャーより技のモチーフはボウケンジャーの武装であるデュアルクラッシャーから。技名は同じくボウケンジャーの合体ロボであるダイボウケンドリルの『マキシマムペネトレーション』。
『ウェザー・ウルフクランチ』は仮面ライダーバルカンの必殺技『シューティングブラスト』をモチーフにさせて頂きました。
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第9話 暗き記憶、闇と正体
停止していた間の事は活動報告の方に書いてます。この一年間読者としては居たのですが執筆欲が無くなってました。すいません。
それと今回の話なんですが半分は去年の5月終わり、もう半分は3日前あたりから書き始めたので当初の構想も忘れてしまい多分ちょとおかしい部分があるかもしれません。
フードを取っ払った男は獰猛な笑みこそ浮かべていたが、その顔は
「何が、どうなっているというの。ウェザートさんと同じ顔だなんて。」
「あぁ、訳分かんねぇって感じだよなぁ。だが当のソイツは既に当たりを付けてるんじゃねぇのか?」
えぇ、そうですとも。確たる証拠はありませんが奴がメモリを製造出来た事、私を吹き飛ばした時に使った『力』。そして私と瓜二つの顔、ここまでキーワードが揃っていれば絞られた答えはそう多くありません。
それと同時に導き出される答えを私は心の底から否定したくなる物。でなければ、私の『罪』はまた一つ増えてしまうだろうから。とても受け入れ難い物、しかし此処までくれば否定出来る材料すら無い。
「えぇ、まあここまでヒントが出ていればある程度見当は付きますよ。お前の正体それは...
「ククク、悪くない。」
「この人の正体がウェザートさんって、一体どういう...?」
ドリーム達の困惑度合が更に増していますが無理もありませんねぇ。私だって真面な思考してたらこんな事考える事すら出来なかったでしょう。なんせ私は真面とは言い難い怪物な訳で、まぁこんな事が起きてもあり得なくはないなという程度の体をしている訳ですし。
「分かり易く答えるならば私の分身、というよりかは私から生まれた新たな『私』と言った所だと考えています。」
「当たらずとも遠からず、ってな。そっくりそのまま同一の存在って訳じゃねぇからな。」
そうでしょうとも、全く同じ存在ならば此処までの所業なんぞしていないでしょうからね。まぁそれでも同一の力は持っている筈です。
「一つだけ、気がかりな部分があるとするなら...お前の誕生の経緯ですよ。生憎と私は生み出した覚えが無いものでしてねぇ。」
「クク、流石にそこまでは分からなかったか?良いぜ教えてやるよ、俺がどうやって生まれたのかをなぁ!」
side???
あれは忘れもしない、忘れる事など不可能な始まりだ。
俺がまだお前を構成している力の一部でしか無かった時、自我など存在していなかった時。当たり前だ、俺はその時は単なる1データでしかなかったからな。
転機が訪れたのはそう、ナイトメアだったか?その最終決戦でお前が後ろの奴らの命を救うなどと言う下らない理由で身を投げ打った事だ。あの時お前はあのクソッタレなトカゲに力を奪われた、覚えているだろう?
あ゛あ゛あ゛あ゛っ!思い出すだけでもイライラする!
そしてお前は最終的に7割の力を取り戻し奴を倒した。そして奪われた力を回収した、そうだろう?だが真相は違うんだよぉウェザートォ...っ!お前は完全に力を取り戻したと考えただろうが違うっ。僅か、本当にほんの僅かだが回収されなかった力がその場に残った!お前ぇ!お前は!自覚すらしていなかっただろうがな!数値で言えば0.1%にも満たない力の残滓、それが俺の
ただでさえ3割などという不完全・不安定な状態が長期間続いていたのにも拘わらず!不完全なモノはより完全に近づこうとする。俺を回収しきれなかったお前も当然その範疇に入る。だが俺と言う『抜け』は数分あれば自動で埋まってしまう程の小さな穴だったからだ。つまりお前は俺が戻らずとも100%の状態に戻れた訳だ。
ならば大多数は回収されたのに残った力はどうなった思う!?何もしなければただ消えて無くなって行くだけ、そんな時に自我とすら呼べない小さなモノがソレには宿った。『元の体に戻りたい、完全になりたい』という『欲望』がな。
だがそれでも何もしなければ先に言った様に消滅するだけだ。何かで足りない部分を補填する必要があった。少なくとも消滅しない程度の個を獲得しなければいけなかった。しかし運よくあの場所にはそれを可能にする力が充満していた。その通り『闇の力』さ。ソイツらが必死こいて戦っていた存在の力があの空間に充満していた。『闇の力』を吸収する事で消滅を免れた俺はお前達とは別口であの空間を脱出し、その後は各地を転々としながら自身を完全なモノとする為に散らばった『闇の力』を回収し続けた。
そんな事をしていた時に漸く俺は『俺』という自我を獲得した!当たり前だ、こんな力を集め続ければ生まれる自我など悪意そのもの!俺を回収しなかったお前に対する憎悪!プリキュアなどという下らない存在に傾倒し俺を見放したお前に対する復讐心のみ!ああ!そうさ!俺が起こし、これからも起こし続ける事件は全てお前に起因する!
side???out
「......っ。」
「そんな!」
「まさか...そんな事が、ありえるというの!?」
「だが俺は現にこうして此処に存在している。そしてそれまで自身を定義していたウェザートという名は捨てた!
「WEATHER!」
「フッ!」
奴...ウェザストルは吼える様に宣言する事で見た目としては漆黒のウェザー・ドーパントに変身しました。更に変身が完了した途端此方に衝撃波、いえこれは単なる衝撃波ではありませんね。大気中に真空状態を作り出す事で大量の空気を雪崩れ込ませる空気の砲弾、初めて邂逅した時に受けた攻撃と同じですが出力が桁違いです。流石にみすみす食らいたくありませんし彼女達にも被害が及ぶでしょうから咄嗟に風で防壁を作り上げて防ぎましたが、何度も食らいたくありませんね。
「何てパワーなの!?」
「タダでさえコッチはダメージ負ってるのにこんなの真面に食らったヤバいでしょ!」
「確かに凄まじい威力ですウェザストル、嘗て私に浴びせたあの時よりも数段上でしょう。これが今のお前の本気と言う事ですか。」
「当たり前だ、あの時は今の凡そ9割と言った所だったからな。だが俺は既に春先に実力の一端をお前達に見せていたぞ?」
「何っ?」
奴は今何と言った?春先、つまり新学期が始まった辺りで既に何らかのアクションを起こしていた、と?何が、いいえ一つだけありました。一時期話題になって私の知識にも無かった事が...結局詳しい事は分からなかったので放置していましたが...。
「あの狭い範囲で起こった山火事の犯人はお前でしたか。」
「ククク、その通りだ!俺自身の実力を知りたくてなぁ、落雷と竜巻を起こして実験していた。」
成る程、それであの異様な山火事の真相が判明しました。
火元は奴の言う通り落雷による出火、しかし唯の山火事ではあそこまで温度は上がらない。そこで竜巻、この場合は旋風でしょうね。それによって引き起こされた火炎旋風によって炎は常に酸素を供給され続け周囲の可燃物を根こそぎ燃やし尽くしたという事でしょうね。
唯の火炎旋風ならまだしも其処にメモリの力が加われば地面がガラス化していたのも納得の火力です。
考える必要もありません。コイツは危険だ、手加減して勝てる相手じゃないでしょう。コイツは、ウェザストルは私にとっての明確な『敵』だ!
『ヘラクレスビートル』
『WEATHER MAXIMUM DRIVE』
「こちらとしても最初から本気です!ハァッ!!」
それ故に今一番行わなければいけない事をします。この場で奴を倒す事ではなく彼女達をここから遠ざける事、それが今の最優先事項です。記憶から直接出力する私の必殺技は周囲にもある程度広がってしまう性質上この状況ではあまりよろしくありません。しかしマキシマムドライブなら周囲をあまり巻き込まず一点突破な分距離を開けるにはこちらの方が勝手がいい。
まぁそれでもあまり効いてはいないようですが...
「成る程な、直接食らってみたが悪くない。だがまだ足りない!」
ぐっ!マキシマムで距離を離す事には成功しましたウェザストルが起こした黒い波動によって相殺されてしまいました。これが奴の言う『闇の力』とやらですか。その余波だけでこちらも僅かながらダメージを負ってしまいました。彼女達を庇いながらではとてもではありませんが戦いにすらならない。他のエターナル相手なら極力手出し無用でありたかったですがコイツは駄目です。少なくとも今の彼女達には荷が重い。それならば...
「皆さん、私が奴を抑え込んでいる間に極力ここから逃げて下さい!」
「そんな!?でもウェザートさんがっ!」
「お願いします!これ以上貴女達を私の不始末に付き合わせる訳にもいきません!」
「ウェザートさん...」
「ご安心を。私も何も今日で奴に勝てるだなんて思ってはいません。手傷を負わせでもして機を見て撤退します。だからどうか」
お願いします。そう意志を載せて目線を向ける事で彼女達も渋々と言ったご様子ながらコクリと離れる意志を示してくれました。
「お別れの挨拶は終わったか?」
「ええ、その通りですよ!」パチン
「む...」
取り敢えず彼女達の大事な学び舎もこれ以上傷つけたくないので私のフィールドへとお付き合いしてもらいましょうかね!
とカッコつけたは良い物の、結界内で奴と戦い始めてもう一時間は経っているでしょうか?ジリ貧という訳ではありませんが、決定打が無いというのが現状です。
いえ完全に決定打が無いという訳ではありません。その証拠のこれまでの技の応酬でお互いにそこそこ手痛い攻撃を与えたのですが我々の性質上時間経過で回復してしまうので決着が付かないのが現状です。
例えば今私が行っている攻撃で
「MAXIMUM・TEFNUT!これならどうです!」
「グッ!...ククク、確かに今のも効いたぜ?だが残念だったなこれも決定打にはならないみたいだぞ」
記憶のエネルギを纏って殴り掛かると同時に自身の一部を霧に変換、傷口を通ってウェザストルの内側から破壊する試みをしましたがこれも駄目でした。我々の性質上体の何処かに核となるメモリがある訳でも無いのでこういう正面切っての戦いだと弱点が...。しかし厄介さに関しては奴の方が上です。何故ならさっきの攻撃の後に間髪入れずに雷を次々落としているのですが
「その手は食わんぞ!」
「RHIZOPHORA!」カチ
とまぁこんな感じで奴でも防ぎ切れない攻撃や、逆に反撃に出る際は他のメモリを使ってくるんですよね。いい加減うんざりして来ました。今だって私の落雷を大量の根に伝達させる事で電流を地面に逃がしています。
「お前も食らっておけ!」
「ごっ!?!?」
そして私自身で身を以って分かった事ですがドーパントが使う攻撃はそう簡単に私には届きませんが奴の場合は話が違って来ます。今もこうして腹部に風穴開けられましたが奴が使う『ウェザー』の力ではこうなりませんでしたから。くっそれにしても死にはしませんけど痛い物は痛いんですよ。まぁそれでもお互いにそこそこ消耗はしている筈なので次でどうにかしましょう。
「はぁ、ふぅ。だったらこれならどうです!」
いつぞやの様に力を溜めるポーズ。特に技の威力とかに関係は無いんですけどね。まぁそれでも形から入るって事で、気分的にもこれする方が力が出るような気がしますし。
どうやらそれは奴にも言える事の様です。なんか向こうも向こうで力を溜めるモーションに入ってますし。多分これでも決着が付かないんでしょうけどね。
お互い感触からして大技のぶつかり合いって感じなんで当然大爆発が起こる訳です。これが狙い目だったんですよ、こんな馬鹿らしい事付き合ってられません!三十六計逃げるに如かずです。
「奴め、逃げたか...まぁ良いまだまだこれからだ。目に物見せてやるぞ、ウェザートォ!」
◇ ◇ ◇
あれから何とか撤退して彼女達の無事も確認した後に念のため りんさんと かれんさんをお家まで送らせて頂きました。他3名はココさん、ナッツさん、シロップさんに任せました。シロップさんは若干嫌な顔しましたがこれからバンバン貴方にはフラグが建つので無視しました。
取り敢えず今日は色々あって疲れました。精神的にですがね。何よりミルキィローズに会えなかった事が残念でなりません!奴の所為で結局会えず仕舞でした!
しかしまぁ何はともあれ奴...ウェザストルの事に関しては現時点での収穫があったので良しとします。原作には登場しない謎の敵でしたが、まさか身から出た錆だったとは思いませんでした。ともあれ分かった事を纏めておきますか。
【HOUKOKUSHO】
名称・姿・能力・目的が不明だった謎の存在、名はウェザストルである事が判明。
容姿に関しては私、ウェザートと酷似。奴の言葉を信用するならウェザストルは私の一部から発生したからである。虹彩の色は黒目である私と違って血のように赤黒かったがそれ以外はほぼ私と同じもの。顔や声、髪型で分かりにくかったが身長も同じだと推定。怪人への変身後はウェザー・ドーパントと同じ私と比較して黒く染まったウェザー・ドーパントと言える見た目。
能力に関しては戦った事で実感した事も踏まえて推測が入るが凡そ当たっていると思われる。
1つ目にウェザーとしての能力は私の方が上であると認識する。理由としては後述するものが関係してくるが大まかな部分としては奴が私の一部から発生した事が占めているからだと推測。
2つ目が1つ目に関わって来る、『闇の力』である。奴の攻撃に何度か被弾したがその際に強く痛み感じたのはこの『闇の力』を載せて放たれた時である。出力の関係上ウェザーで私に手傷を負わせるには『闇の力』による威力の底上げが必要なのだと予想する。
3つ目が豊富な手数。こればかりは私よりも奴の方が上であると言える。奴は所持している複数のガイアメモリを起動させる事でその能力は使用できるのだと考察する。死にはしないがそれでも痛みを感じる為か大技への防御や攻撃に転ずる時にはメモリの使用を確認した。これにより私自身最も多く負傷している。メモリの数が増えれば競り負けていた可能性がある事を記載する。成長性としては私よりも上である。
目的に関しては単なる私怨。しかし『闇の力』によって増幅された悪意によって何を仕出かすか分からない為今後も要警戒。
とまぁこんな所でしょうかね。取り敢えず奴の動向には今後も警戒し続けないといけません。ああいうタイプの輩は目的の為ならありとあらゆる物を犠牲にしても厭わないタイプです。特に彼女達の周囲には目を向けなければ。
え~、やっとオリジナル敵キャラであるウェザストルの名前を出す事が出来ました。
名前の由来はウェザー+デザイア(欲望)+デザストル(災害)です。
前書きには書けなかったのですが今まで以上に主人公やウェザストルが説明口調になっててすみません。長い事間が空いたのは勿論の事、私の執筆能力の所為で説明させないとよく分からない内容になってしまいました。
主人公のテンションが前半と後半で結構違うのは前書きの通り書かれた時期が違うからです。まぁ後付けで設定を付けるならクロッ〇タワー3のラスボスと5回連続で戦い続けたような気分にでもなってたんじゃないでしょうか。
そして更新していて何ですが多分次もまた間が空くかもしれません。
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第10話 さらば蠍!!
おかしい、いくらなんでもドーパントとの交戦率がやけに高い気がします。以前にもほぼ毎日交戦する機会は確かにありましたが、最近は少なくとも
現場に駆けつけてみれば青い粘液で動けなくされた警察の方々と所々に落ちている散らばっている諭吉さん達。成る程、メモリの力で強盗でもしていたのでしょうね。そしてよくよく地面を見れば何かが高速で擦れた様な痕跡がチラホラ...と来れば
「今回はコックローチですか、しかもメモリの力を使っての犯罪。救い様がありません」
という訳で路地裏に潜んでいた
「ぐアあアアあ!?!?テメェ何しテくれヤがル!折角集メた俺の金がァ!!」
「お前のじゃ無いでしょうが」
また同じ様に風で攻撃しましたが流石にギリギリですが避けられてしまいました。明らかにテレビで見ていた個体と比べても幾らか速く感じます。まぁ映像での描写と現実だとまた違うんでしょうけど私でも目で追えるか負えないかレベルのスピードですし。ふぅむ、もう少し方向性を変えますか。
Q.敵が超高速で動いている時の対処法は?
「答えはエレクトロファイヤーです」
そう言うや否や手を勢いよく地面に叩きつけて私を中心に半径20m程度の足首くらいの高さに雷雲を発生させます。そうなれば...
「ガあアアあアああああアアア!?!?!?」
と、まぁこの通り足を止めてしまう訳です。実際は地面に電流を流すんですけど私の場合は雷雲を経由しないといけないので。
おっと、また逃げられる前に終わらせましょうか。そろそろメモリの力に呑み込まれかけてますし。
「グゥゥウウ!テメェ許サネェ!!!」
「お前に言われる筋合いはありませんよ」
『WEATHER MAXIMUM DRIVE』
「ウェザー・サンライトレーザー」
手早くウェザーメモリもウェザートマグナムに装填してマキシマムドライブを発動させ、銃口から収束した太陽光を発射して撃ち抜きます。
「グオオオォォォォォ!?!?」
そのままコックローチ・ドーパントの変身が解かれた後にコックローチ・メモリが排出されメモリブレイクも完了。メモリの残骸も回収して後は...
「アフターケアも、まぁ必要ですよね」
『DETOX MAXIMUM DRIVE』
はい解毒完了、後は簡単に拘束して近くに置いておけばいいでしょう。後はお巡りさんのお仕事ですよっと。
それにしても今日だけで『ジュエル』に『エナジー』と来て『マグマ』、そしてさっきの『コックローチ』です。いくら何でも多すぎる、しかも強いのも居れば力を引き出し切れていない弱い個体も居ましたし。
いくら何でも粗製乱造が過ぎる。ウェザストルの奴、一体何を考えているのでしょうね。まぁ今は取り敢えず一旦帰還するとしましょうか、今ならまだ皆さんナッツハウスに居る頃でしょうし。
「はぁ、それにしてもまだ機会はあるとはいえミルキィローズとのファーストコンタクトを逃したのは惜しかったですねぇ」
◇ ◇ ◇
ナッツハウスに帰ってくればニッコニコの のぞみさんを除いて皆さんは何やらポカンとしたご様子。あぁ成る程以前自分達を助けてくれたミルキィローズが本当に青いバラの力の持ち主なのかと議論していた回でしたか。
「ただいま戻りました。すみません皆さん、朝からバタバタしていて申し訳ない」
「お疲れ様ウェザートさん、こっちもごめんなさい。あまり手伝える事がなくて...」
「いいえ。あまり気になさらないください かれんさん。こちらとしても奴の事で手一杯になってしまって他のエターナル関係はあまりお手伝い出来ていませんし、『適材適所』という言葉もありますから」
そう本当に気にしていませんので。いやいや皆さんもそんな申し訳なさそうにしないで下さい。
ドーパントを倒して人間に戻すにはメモリブレイクしかありませんし此方側でそれが出来るのは現状私だけなので仕方ない部分もあります。
まぁまさか前世で憧れていた仮面ライダーみたいな真似をする事になるとは思ってもみませんでしたが。この辺の新聞や雑誌でもちょっと話題になっちゃってましたし。此方としてはあまり目立たずにやって行きたかったんですけど私の能力の仕様上目立つのも仕方ないんですよねぇ。
さっきも言った様にウェザストル関連の事件さえ無ければ私だってちょいちょいプリキュア5のお手伝いくらいしたかったんですよ。ただ必要に以上に手を出せば彼女達の成長を阻害する恐れもあったので本当にそこそこレベルだったんでしょうけど。
「うむ、お互いに気遣えるのは良い事ドナ!おお、そうドナ。ウェザート殿にも彼女達を助けたという人物についてどう考えるか聞いてみたいドナ!」
「ドーナツ国王...私自身は入れ違いだった為直接その人物に会っていないので何とも言えません。とはいえ...」
そう言いながら懐から青い花弁が何枚か入った試験管を取り出しました。いえね、いくら何でも彼女は青いバラの戦士だし名前はミルキィローズだしおまけに正体まで知っているなんて流石に言えません。かと言って私は彼女の事を知らない事になっているのでそれっぽい事言うのも難しいので奴との戦闘が終わった後に のぞみさんみたいに青いバラの花弁をこうして回収しておきました。何かの役に立つかもしれませんでしたし。
「少なくともこの花弁は間違いなくバラの花弁だったという事です。それと同時に僅かですか何か不思議な力も感じます。プリキュアの皆さんの証言からも超人的な身体能力も加えて考えるなら青いバラの戦士である可能性はかなり高いのではと考えています」
「やっぱりそうだよね!今度会ったらちゃんとお礼を言わなきゃね!」
のぞみさんのこういう溌剌とした所は本当に癒しになります。身体的な疲れは無くともこう連日連夜だと精神的に疲れてしまうのでありがたい限りです。まぁこの後はいつも通りやいのやいのしながらお茶会になりました。甘い物は効きますねぇ。
sideエターナル
「アナコンディの奴に逆らった私に先は無い」
「えっいやそんな...」
「こうなったらプリキュアを倒し、ローズパクトとパルミエ王国の奴ら全てを手に入れてみせる!」
自身に言い聞かせる様にいきり立っているのはスコルプ。彼がこうまで言い切っているのは度重なる失態によりローズパクト奪取の任務から外され剰えその事でアナコンディに盾突いてしまったからだ。№2である彼女に歯向かえば消されるのがオチだと分かっているからこそだ。
「ま、待ってください!折角仲良くなれそうなのに焦っちゃダメですよ!前の職場での経験上感情的に動くのはよくない...そうチャンス!チャンスを待つんですよスコルプさん!」
「ふっ、優しい男だなブンビー。だがな、私はもうこの組織には居られない。達者で生きろよ、ブンビー」
「ああっあの、待っスコルプさん...」
前の組織と違い初めて友人と言えるような間柄になり掛けていた相手であるスコルプをブンビーはどうにか引き止めたかった。しかし彼の覚悟の決まった目を見てしまえば二の句も出ない。だからこそ黙ってその背を見送るしかブンビーには出来なかった。
「へぇ、面白くなってきやがった」
そしてそんな彼等のやり取りを物陰から愉快そうに笑みを浮かべながら覗き、手の中で2本のガイアメモリを弄んでいる者が一人。
◇ ◇ ◇
はい、という訳で今日も今日とてドーパントの処理をしていた訳なんですけどまぁまぁ強力なのも居ない事も無い程度ですね。その大半が直ぐに片づけられる程度の力しか持っていない連中ばかり。それにしてもドーパントが現れる事に追いかけていれば町から結構離れてしまいましたね。
...ん?この気配は、恐らくスコルプの物でしょうか。あまり直接は戦いませんでしたが彼女達を見守る序でに何回か出会っているので分かります。しかしこの距離でこれだけ認識出来るという事はかなり力が増している。場所は...ナッツハウスという事は成る程、今日がミルキィローズとの2度目の邂逅の日でしたか。ならば今頃は超獣化している筈ですね。むっ、どうやら彼女達もプリキュアへ変身した様です。
それなら今回もあまり手出し無用という事でしょうね。なんせ彼女は颯爽と駆けつける感じで格好良く振舞いたかった筈、ここで私が駆けつけてしまえば台無しになってしまいかねない。花を持たせる為にも惜しいですが今回も無しですね。大人しくこうして次に現れるかもしれないドーパントを待っ...
「いや、おかしい。何でしょうか、こう兎に角何かが引っ掛かる感じがするのは」
そうこう考えてる間にまた新しい気配が、
「いや、まさか。奴の狙いは!」
言うが早いか私は彼女達の下に駆け付ける事にした。そして移動しながらここ最近出現し続けているドーパント達の事を思い出す。
私はドーパントの性能や種類、数ばかりに目が向いていてもう一つの事を思考から外していました。最初は学校の近く、そこから3日目辺りは町の中。次は隣町と段々と離れていっている事を頭から外していました。人の身ならそこそこ遠くとも怪人としてのスペックならばそんなに苦じゃ無かっただけに気付けませんでした!
「邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!」
現場に駆けつけてみれば前回会えずに悔しい思いをしたミルキィローズが必殺技であるミルキィローズ・ブリザードでスコルプを氷のバラで包み込んでいる所でした。こんな懸念さえなければ手放しで喜べたんですけどねぇ。氷のバラが弾けて消えれば後には人間態に戻ったスコルプが一人。本来ならばこのまま消滅という形で倒されるんでしょうけど...来た!
「さらば、ブンビー」
「おいおい、くたばるにはまだ早ぇだろうがよ」
「がぁっ!?貴様ウェザストル!何をっ!?」
奴は消滅し掛けているスコルプの首を掴むと自らの『闇の力』を注ぎ始めました。一足遅かったか!いやまだ間に合う!咄嗟に奴らに向かって駈け出しますが...
「折角俺の実験体にしてやろうってんだ、死なれちゃ困るぜぇ!」カチ
くっ、また遅かったか!奴の狙いは最初からこれだったのでしょう。スコルプが失態続きで任務から外され、そして彼の性格上最後に消される前にローズパクトを奪取しに来る事を予測でもしていたのでしょう。
そして最後には倒され、抵抗する気力も無いスコルプを狙う為に。私をナッツハウスから遠ざけたのは奴の言う「実験」を邪魔されるのを嫌ったからでしょう。
しかしまさか1人に対してメモリを一度に2本も挿すとは思ってもいませんでした。スコーピオンとはサソリ、ユーリプテルスとは太古の時代に生きていた広翼類...つまりはウミサソリ。サソリ繋がりですがサソリとウミサソリは本来別種の生き物の筈なんですけどね。
「グアアアオオオオオオオオオ!!!!!」
「よぉウェザートォ!今回も間に合わなかったなぁ!」
「くっ、貴様っ!またしても!」
「「「「「 ウェザートさん! 」」」」」
「ちょっと、何よアレ!」
ミルキィローズが指さし叫ぶのもまぁ分かります。カッコよく必殺技で決めたと思えば突然外野からの横槍でパワーアップして復活したんですから。
今のスコルプの状態ですが人型飛び越えていきなり巨大化しました。見た目は超獣化したスコルプに似ていますが通常が割とコミカルな顔つきだったのが完全にサソリを思わせるより凶悪な物になりました。それに加えて元々1本だった尻尾も根本から2本追加され3本に、腕もこれまた根本からもう2対追加さて6本腕に。おまけに元々普通のサソリぽかった足にはヒレまで付いてます。さながら『ジャイアント・スコルプ』とでも名付けましょうか
「ギュオオオオオオオオオオオ!!!!」
「クハハハハ!成る程な、人間相手では段階が必要だが怪人相手ならこうも素早く進化するか!とはいえ」
「ギリャアアアアアアアアアア!!!!」ブオン
「おっと、こうも制御不能じゃ『失敗作』だな。精々奴らを巻き込んで死んでくれや。じゃあなウェザート、
「酷いっ、何てことを!」
相変わらずやるだけやって、言うだけ言って帰りやがりましたよあのクソ野郎!しかし『ジャイアント・スコルプ』をこのまま野放しにする訳にも行きませんし、仕方ありません個人的な怨みなどありませんが倒すしかないか。
「ギュオオオオオオオオ!!!」
「っ!ウェザートさん、どうしますか?」
「どうするも何も、ああなっては倒すしかありません!」
向こうは既に此方をターゲットに定めている。ならば向こうに主導権を握られる前に此方から接近するまでです!
十分接近できましたがそれは『ジャイアント・スコルプ』の方も同様、私が近づくや否や右側の3本の腕を振り下ろして来ましたがこっちだってタダでやられる気は毛頭ありません。
「ギュララララララ!!!!」ブオン
「はああっ!せぇやああ!」
振り下ろされた腕のハサミをウェザーマインで受け流しつつ胴体の下に潜り込み渾身の力でウェザーマインを振り上げて『ジャイアント・スコルプ』を上空にカチ上げます。どれだけ強力な力を持っていようと飛翔能力を持っていない限り空中では隙だらけになります。私も『ジャイアント・スコルプ』を空中に吹き飛ばした直後に跳躍し、彼よりも更に上空に上がります。
「グギャアアアアアアア!?!?」
「これでっ、決めます!!!」
ウェザーマインを伸ばして先端に氷で出来た刃を生成、上空には高密度の雷雲を発生させつつ腕を限界まで引き絞ります!上空の雷雲のチャージが完了したのを確認した後に引き絞っていた腕を開放し槍となったウェザーマインを発射し『ジャイアント・スコルプ』に突き立てます!
「ギュオオッ!?!?グガアアアア!!!」
「これで終わりではありませんよ!さぁ落ちて来なさい、赤雷よ!!!」
そう言うなればランスモードとなったウェザーマインを突き立てたのは本命の攻撃ではありません。私がどんなに高威力の雷を落とそうと彼が身に纏う強靭な外骨格で阻まれる可能性があった為です。ならば無理やりこじ開けて中身を直接攻撃する他ありませんが向こうだって当然抵抗するでしょうしこれが最善策だと考えました。
そして『ジャイアント・スコルプ』を空中に打ち上げた理由もただ単に隙を作る為だけじゃありません。地面にいる状態で落雷を当てた所でその幾分かは地面に流れてしまうでしょう。しかし空中ではそこまで流れていきませんので。
「MAXIMUM・KERAUNOS!!!」
「ギャッッッッ!?グガガガガガガガガガガ!?!?グギャアアアア!!!」
限界までチャージされた雷のエネルギーが突き立てられたウェザーマインに向かって落ちて行き、そのまま『ジャイアント・スコルプ』を内側から焼き尽くしていき落下し最後には大爆発しました。吹き飛んで来たウェザーマインをキャッチしつつ皆さんの下に戻ります。
「ウェザートさん!大丈夫!?なんか凄い爆発してたけど!」
「心配してくれてありがとうございますドリーム、しかし何も問題ありませんよ」
まぁ人間だった頃ならあれだけ腕を動かせば絶対肩を痛めるでしょうけど。主に疲労とか肉離れなんかでですが。
「改めて見たけど途轍もない威力ね。衝撃がこっちまで伝わって来たわ」
「おや、貴女が彼女達が言っていた...」
「ミルキィローズ、よ。まぁこれからもよろしくね」
知っています。それにしてもミルキィローズは何やらあまりお気に召していないご様子。まぁこの感じだと私が気に入らないというより颯爽と現れ瞬く間にスコルプを翻弄し倒そうとした自身の活躍を私と『ジャイアント・スコルプ』に食われたような感じになってしまったからでしょう。確かミルキィローズの初期の戦う動機って割かし不純な部分もあった筈ですし、まぁここからの彼女の成長が楽しみです。
「まっ、そういう事でまた会いまsっっ!?」
「「「「「 なっ!?」」」」」
「まさかっ、まだ!?」
我々はほぼ同時に気付きました。奴がまだ生きているという事に。いやいや嘘でしょう!?結構な威力を叩き込んだ筈だったんですけど!?少なくもいつかのカメレオンよりも防御力高いって事ですか!?
「グウウウゥゥゥ......ゴアアアアアアアアア!!!」
「ちょっと!?いくら何でもタフ過ぎるでしょう!」
「あれだけの攻撃を受けて立ち上がるなんてっ!」
そう、あまりにもタフ過ぎる。いくら何でも外骨格を破壊して内部までエネルギーを伝えたのだからメモリブレイクされなければおかしい!素体が人間じゃないと言ってもここまでタフになるとは考えにくい...一体何がっ
「そんなまさか...いえ、奴ならあり得るのか?」
私の知る限り複数のメモリの力を使っていたのは仮面ライダー達、井坂深紅郎、親子丼ドーパント。仮面ライダーは別にして考えても井坂も親子丼ドーパントも最終的にマキシマムドライブによってメモリブレイクされている。井坂は複数のメモリの過剰使用により自身の力や耐久力を底上げしてはいましたが最後には負けている。親子丼ドーパントはメモリの数自体は1本でもその1本にチキンとエッグという2つ記憶の力を合わせる事で強靭なパワーを誇っていたがコチラも最終的にマキシマムドライブを受けてメモリブレイクされている。
となればメモリが複数使われていたとしてもそれがマキシマムドライブに相当する私の必殺技を受けて倒れない道理は基本的には無いという事です。防御面に秀でている特性を持つメモリなら別でしょうが、サソリとウミサソリ...この2つにそこまで高い耐久力というイメージはあまり湧きません。確かに中々に頑丈な外骨格でしたが破壊出来ない程ではありませんでした。そして何より私は内部まで電撃を与えていたというのに倒せなかった。
これらの事から導き出せる答えは...ビンゴです。私の必殺技で倒せなかった理由はただ一つ。ならばプリキュア5とミルキィローズの力を貸して貰いましょう。
「皆さん、驚いていたりお疲れだったりで申し訳ありませんがまだ動く事は出来ますか?」
「戦ってた時はボロボロだったけど大丈夫だよ!」
「まあ暫く休憩出来てたしね」
「私達に出来る事が何かあるの?ウェザートさん」
「その通りですアクア、というより私の力だけではあのデカブツを倒す事...メモリブレイクが出来ないようです」
「でもそれって本当ならウェザートさんじゃないと出来ないんじゃ...」
「本来ならその通りなのですが、私が砕いたあの外骨格の位置...見えますか?」
そう言いながら私は『ジャイアント・スコルプ』の方を指差しながら彼女達にも見て貰います。奴は唸りながらもまだダメージが抜けきっていないのか立ち上がりはしたが思う様に動けないのかまだ此方を攻撃までしてきません。まぁそれも時間の問題でしょうがね。
「
「その通りですミント。あれはウェザストルが使っていた『闇の力』です。あの力に邪魔されて私の必殺技もダメージこそ与えるまで出来ましたが内部のメモリまで届かせる事が出来ませんでした。」
「成る程、あの時注がれていた力という訳ね?」
「ええ、と言う訳で皆さんには先んじて内側の『闇の力』をどうにかして欲しいのです。そうすれば次こそ私の力も体内のメモリにまで届くと思うので。ミルキィローズ、貴女にも是非ご協力頂きたいのですが...構いませんか?」
「勿論よ。何よりこのまま放っておくなんて出来ないわ」
「ありがとうございます。奴の外骨格は中々に強靭ですが私が砕いた部分は脆くなっている筈なのでそこが狙い目だと思います」
長々と説明しいましたがどうやら奴さんも動き出せる程度には回復して来た様ですし、今度こそケリを付けなければいけませんね。話も纏まりましたし此方も向こうもほぼ同時に駈け出します。
「グリャアアアアアアアアア!!!!!」シュンッ
「ちょっ!?さっきよりも何か速いんだけど!?」
「皆さん奴の足は水生生物の物です!陸上よりは素早く行動出来る様です!」
「うわわ!そういう事は先に言ってー!?」
「グオオオオオオオオオオ!!!!」ブオン
必殺技で吹き飛ばした時に湖に落下させたのは間違いでしたか。足のヒレを器用に使いながら中々の高速移動です。水ですし落雷を起こす事も考えましたが皆さんに被害が及びそうなので却下ですね。それならば!
「足止めします!皆さん攻撃をお願いします!ハアアア!!!」
「グオオオオオウ!?!?」
「足ごと凍った!これなら行けるわ!」
「でもあの巨体なら抜け出すのも時間の問題ね!」
「ギュラララララララ!!!!」
ええ、ミルキィローズの言う通りあの巨体では抜け出すまで数分と掛かりません。
皆さんそれぞれ一塊にならずに四方八方から攻撃を仕掛けていますが、やはり尻尾と腕が増えた事で単純に攻撃の手数が3倍になっていますしねぇ。ならば封じてしまうのが吉ですね。
「レモネード!私が左腕を封じます!なので貴女は右腕をお願いします!」
「分かりました!」
「お願いします!では尻尾の方は...」
「ウェザートさん!尻尾は私がやるわ!」
「では任せました!お願いします!」
私・レモネード・ミントでそれぞれ奴の両側の腕と尻尾を封じる事が決まりましたので早速ウェザーマインを取り出します。ウェザーマインからエネルギーで出来たチェーンを作り出し鞭を振るう様に撓らせ思いっきり振りかぶり奴の3本の左腕を封じに掛かります。
「せぇえい!それと、おまけです!凍てつけ!」
「グルガアアアアア!?」
エネルギーチェーンで確りと左腕を絡めとりウェザーマインは伸ばして凍った湖面に突き刺して固定、序でに絡めとったチェーンごと冷凍させて頂きました!後はレモネードとミントの方ですが...問題無さそうですね。
「これ以上!」
「皆を傷付けないで!」
「プリキュア・プリズム・チェーン!」
「プリキュア・エメラルド・ソーサー!」
「ゴグアアアアア!?!?」
よし!良い感じですね。レモネードは私と同じ様にプリズム・チェーンで絡めとり確りと握りしめて踏ん張っています。ミントは複数枚重ねたエメラルド・ソーサーを3つ作り出しそれでそれぞれの尻尾を湖面で挟み込む様に抑えてくれています。だったら私も少しばかりサポートでもしましょう。まずレモネードの方は私の時と同じ様に強力は冷気で凍結、ミントの方は上から漬物石の様に重石としてそこそこ大きな雹を降らせて抑え込みのサポートを。
これで『ジャイアント・スコルプ』ほ動きは殆ど封じ込める事が出来ました。3対の両腕は雁字搦めの上に凍り付き、残りの3本の尾はかなりの圧力で抑え込まれている。その上そんな状態の所為で思う様に力が出せず踏ん張れないので凍った湖面から脱出も困難です。
「ゴオッググググゴオオオ!?!?!?」
「よしっ!後は...ドリーム!ルージュ!アクア!どデカいのをお願いします!」
我々の連携に一早く反応していたドリーム・ルージュ・アクアは既にジャンプして空中で待機していてくれていました。いやぁ、彼女達のこういう誰かが指示を出す前に既に行動し次の連携に繋げられる連帯感!何回観ても素晴らしい!!!
「皆が作ってくれたこのチャンス!」
「「絶対に無駄にしない!」」
「プリキュア・サファイア・アロー!」
「プリキュア・ファイヤー・ストライク!」
「グギギギャアアアアア!!!!」
まずアクアとルージュの水と火という相反する様な属性の組み合わせ。これらの技は私が破壊していた外骨格の亀裂部分にほぼ同時に着弾する事で水蒸気爆発を起こし、その時に発生した衝撃によって脆くなっていた亀裂は更に広がる事になりました。そしてドリームは...
「プリキュア・シューティング・スター!」
「ゴボアアアアアア!!!!」
今や『ジャイアント・スコルプ』の一番の弱点となった亀裂に向かって落下の勢いを乗せてシューティング・スターで突撃した事で背中だけで留めていた亀裂は全身に広がる事になりました。まぁ何というか見るも無残というか。
砕け散った外骨格の隙間から内側に詰まっていた『闇の力』が漏れ出て来る様になりました。最初の時よりも彼女達プリキュアの攻撃でかなり薄くなっていますが、もう一押し今か今かと出番を待ち続けていた彼女にやってもらいましょう。
「ミルキィローズ!仕上げをお願いします!」
「任されたわ!今度こそ!邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!」
「グオッ!?グッグ、グオ、オオオオオ!!!」
ミルキィローズ・ブリザードによって『ジャイアント・スコルプ』は超獣化していた時の様に再度全身を氷のバラで包み込まれ、バラが弾けると共にまた姿を現しましたその頃には残っていた『闇の力』は残らず消滅し『ジャイアント・スコルプ』自体も凄くグッタリしています。
「グ、オオオオ......」
「皆さん重ね重ねの手助け、ありがとうございます!」
ミルキィローズが必殺技を放った時点で私はウェザーマインをランスモードにしており眼前には墨のように真っ黒い雷雲が出番を待つように待機しています。皆さんそれを察知して既に退避済みです。ゴロゴロと紫と赤の雷が迸る。いつかの時の様に腰を少し落としランスモードのウェザーマインを後方に向け、一息に轟音を響かせる雷雲を着き穿つ。
「MAXIMUM・KERAUNOS!!!」
ウェザーマインの一撃によって解き放たれた紫と赤の雷電が互いに捻じれ合いながら奔流となって満身創痍の『ジャイアント・スコルプ』を呑み込む。
「グギギギギギギガアアああああああ!!!」
大爆発。何だか今日はスコルプさん踏んだり蹴ったりですね。そして今度こそ私の力は届いた様で爆発の後に2本のメモリ...スコーピオンメモリとユーリプテルスメモリが排出され空中で粉々に砕けメモリブレイクも完了です。
そして本日はもう一つ驚く事が...
「ぐぅっ、くっ酷い目に遭った...」
本体というかスコルプさんがかなりボロボロで膝もプルプルしていますがどうやら命に別状無い感じで生きていました。正直驚きました、何せ彼はドーパントになる前にミルキィローズによって倒されかけていた上にその後はウェザストルのメモリを2本も挿され我々によってフルボッコにされた筈なんですけど?よしんば生きていたとしてもメモリの負荷に耐えられず死は免れないと思っていたのですが、はて?皆さんも、何よりスコルプさん本人も自身の現状に驚いています。
いや待てよ、そういえばスコルプさん消滅する直前にウェザストルに『闇の力』つまりは『闇の住人が持つ力』を送られた事で消滅を免れたとすればどうでしょうか。それで持ち堪え、ドーパントにされ暴走こそしたものの怪人であるが故に人間よりも毒素にある程度耐えられた、とか?駄目だ、現状では判断材料が少ない。しかし、問題はこの後です。放っておいたら彼女達の脅威になったりしませんかね?今の内に消しますか?
ん?あれ、おかしいですね。この距離だというのに...ふむ。
「まぁ、取り敢えず生きていた事はおめでとうございます。それで?スコルプさん貴方どうしますか?彼女達にまた挑みますか?」
私の言葉に彼女達は一瞬身構えるも直ぐに臨戦態勢は解かれました。何故ならスコルプさんはその場に座り込みガックリと項垂れてしまったからです。う~む、この様子からするとやはり...
「は、ははは。無理だな、今の私では既に戦う力なぞ残っていない。変身能力すらも失った私では挑んだ所で返り討ちが関の山だ」
ああ、やっぱり。これだけ近くに居ても彼からは『闇の住人』特有の気配が極端に希薄になっています。それこそこっちが集中しなければ認識出来ない程です。今のスコルプさんでは人間とそう変わらないでしょう。
「それとも、君達は私にトドメを刺すかい?碌に抵抗する力すら失った私なら簡単に倒せるぞ」
その言葉に彼女達は変身を解き自分達も戦意が無い事を伝えます。ミルキィローズはいつの間にか姿を消していました。まぁ唯でさえあの姿は体力を消耗する上に長時間変身し続け必殺技は2回も撃ったのですから本当にギリギリだったのでしょう。
スコルプさんは彼女達の様子を見て不思議そうにしています。まぁ通常敵対していたならこの感じが普通ですよね。かつての私の上司も、こんな感じで戸惑っていましたっけ...。
「何故だ...君達は憎く無いのか?今まで散々ローズパクトを付け狙い、容赦なく攻撃し続けた私の事が...恨めしく思わないのか?」
「ぜーんぜん!確かに何でこんな事するのーって怒ってはいたけどそういう気持ちで戦った事は一回も無いよ?」
「馬鹿な...我々は敵同士だ。何故敵に対してそんなに悪意無く接する事が出来るんだ。確かに君達には散々辛酸を舐めさせられた。しかしそれでも毎回酷い目に遭わせて来た。痛みだって感じた筈だろう。」
「ええそうね。確かに痛い思いもしたし、辛かった時もあるわ。でもね、私達が共通して持ってる戦う理由はただ1つよ」
「それはいつだって誰かの『夢』や『希望』を守る為。その誰かは自分達だったり私達の大事な人達の為だったり」
「だからどんなに傷ついても私達は何度だって戦って来れましたし、何度だって立ち上がり続けます」
「まっ、それがアタシらの戦って来た理由って奴よ。だからこそその誰かの『夢』や『希望』を奪おうとするならアタシ達は絶対に許さない思いで戦えるの。だけどそこに憎いとか怨みとかそういう気持ちは無いわ」
いつしか彼女達5人の話を真剣に聞いているスコルプさん。今まで散々馬鹿にしてきた『希望』や『夢』に対して懇々と諭され色々の思う事があるのかもしれませんね。あの御方といい、闇に長い事浸って来た者ほど彼女達の言葉は衝撃的で刺激的で突き刺さる方には突き刺さるのかもしれません。まぁ残っていた闇を根こそぎ彼女達に浄化された事で何かしら心境の変化でも起こったのかもしれませんね。
「本当に...たったそれだけの為に戦っていたと言うのか。それだけの為に何度も傷つく事さえ厭わずに、『夢や希望』とやらの為だけに?」
「それが、彼女達の強さです。奪い、憎むだけでは何も生まれません。我々はそこに”いつかの明日”に叶えている『夢』を『希望』して毎日足掻き続けるのですよ、スコルプさん」
「奪う、だけでは何も生まれない...。いつかの明日、夢と希望...」
ふむ、顔つきが変わりましたね。ついさっきまで全てを失い、絶望し、憔悴しきった様な表情だったと言うのに。今は目を閉じながら彼女達と私の言葉を噛み締める様に何やら考え込んでいるご様子。
そして何やら決意した様に目を開けて立ち上がりました。それにどうやら付き物が落ちた様なさっぱりとした表情、良い感じです。
「それでスコルプさん、貴方結局これからどうするおつもりで?まさかエターナルにそのまま戻るとかですか?」
「いや...私はこれまでの失態に加えて上司に歯向かってしまった。戻った所で消されるだろうし、さっきも言ったが私にはもう戦うだけの力が消失している。本部でも私は既に死んだものとされているだろう」
「スコルプさん...」
「だからエターナルからは手を引き、足を洗うつもりだ。そして...」
言葉を一旦区切り一度目を伏せ、改めてのぞみさん、りんさん、うららさん、こまちさん、かれんさん。そして彼女達に抱きかかえられているココさん、ナッツさん、シロップ君。え?私にも?目を向ける。おや?これってまさか...。
「今まで散々迷惑を掛けて、すまなかった。謝って許される訳じゃないだろうが、どうか謝罪を受け取って欲しい」
おおお!まさか原作で最初に殉職する筈だったキャラが彼女達やココさん達と和解しようとしている!これって結構凄い場面なのでは?ふむ、ここまで誠心誠意相手が詫びているのなら彼女達の返答も勿論...。
「しっかり反省しての謝罪ならちゃんと受け取るココ!」
「嘘を吐いている訳でも無さそうナツ。それならナッツも受け入れるナツ!」
「ロプ...、本当にエターナルを辞めるロプ?」
「あぁシロップ、君みたいに私もエターナルから足を洗うさ」
「まぁこいつらが何も無いんならシロップから言う事は無いロプ...」
おおおう!テレビの前で毎週張り付くように見ていた身としてはかなりグッと来る場面じゃないですか!プリキュア5のファンである事は勿論ですが物語り自体も大好きだったのでこういう原作では有り得なかったIFも実に良い!いやぁまだ変身していて良かった。解除してたら多分にやけていましたし。
まぁしかしここまで来れば私も変身解除しないと絵面的にもちょっと、ね?という訳で解除っと。
「ってココ達も言ってるし、丸く収まったって良いんじゃない?」
「だね!りんちゃん!」
やはり彼女達の雰囲気もココさん達と同様謝罪を受け入れ許す方向で和気藹々とし始めました。いやぁこの感じはやっぱり落ち着きますねぇ。むっローズパクトが独りでに開いて...ああ成る程。
「うむ諸君らの言葉は余がしかと聞き届けたドナ!真摯に謝罪する者を許す心!それもまた王としての資質に重要なものドナ」
「ドーナツ国王、貴方にも散々失礼な態度を取った事。どうか許して頂きたい。」
「その謝罪、受け入れるドナ。誰しも間違う時はあるドナ、その罪を許すのも我々王という者ドナ」
「ドーナツ国王...ありがとうございます!」
という事はここからがスコルプさんの再スタートという事ですね。足を洗うとはいえ一体これからどうするのでしょうか?原作では最終的に和解して改心したブンビーさんは自分で会社立ち上げてましたけど。
「スコルプさん、つかぬ事をお聞きしますがこれから具体的にどうするおつもりで?どこか行く当てはあるので?」
「いや、具体的にはまだ決めていないよ。ただ、エターナルとして動いていた仕事柄色々と土地勘はあるからな。だから先ずは色々と自分の足で巡って、色々と目に焼き付けてから決めようと思っている」
「そっか...じゃあ頑張ってね、スコルプさん!何かあったらナッツハウスに寄ってよ!お茶くらいご馳走するから!」
「いやいや、いっつもお茶淹れてくれてんのこまちさん達でしょうが」
「もう!りんちゃーん!」
ああ、こうなって来ると彼女達のいつもの日常感が戻って来ますねぇ。あぁホラ、スコルプさんもポカンとしてます。
この世界に生まれ変わってからというもの、彼女達と関わって改めてファンとしても大人としてもこの何でもない日常を守ってあげたくなりましたねぇ。
「...フッ、そうだな。もし近くに来る事があったらありがたくご馳走になろう。君達の言う『夢』や『希望』、叶うといいな」
「うん!絶対に叶えるよ!だってその為に毎日頑張ってるもんね!」
「そうね、のぞみはまずうららから勉強を見て貰う事から卒業する所から頑張らないとね」
「うわーん!かれんさんまでりんちゃんみたいな事言うー!」
「それではのぞみさん、頑張る序でに次の小テストは少し難しい問題を入れるのでお勉強頑張ってくださいね」
「えー!?ウェザートさんまでそんな事言うのー!?」
「ハハハ!君達は本当に賑やかで楽しいな。こうして彼女達の近くに居る君の気持ちが少し分かる様な気がするよ」
「おや?そうですか?」
「ああ、そうだ。...じゃあもう行くよ、達者でな」
『さようなら!また会おうね(会いましょうね)、スコルプ(さん)!』
「ええ、さようならですスコルプさん。縁があればまたお会いしましょう」
「ああ...その時はよろしく頼む。私も自分なりの『夢』ってやつを探してみるさ」
そう言うとスコルプさんは歩き去って行きました。取り敢えずは旅をしながら彼なりの『夢』というものを見つけに行くのでしょうね。こうしてクールに去る姿も中々画になりますねぇ。今までの必死さや焦燥感が無くなった分本来の素材の良さが出た感じでしょうか。ふむふむ、いつか参考にしましょう。
という事で本日のゴタゴタはこうして綺麗に幕を閉じた訳ですが、今更ながらこれってかなり原作との差異が出始めたのでは?とも思いましたが本当に今更でしたね。
彼女達は戦う覚悟を持っています。今やそれは揺らぐ事は無く必要があらば彼女達は躊躇しないでしょう。それでも彼女達はまだ花の学生なんです。彼女達は優しい、いっそ優しすぎるくらいに。例え相手が敵であって彼女達はその優しさで倒した相手の事を憂うでしょう。
だからこうして少しでも心の負担が軽くなったのなら、それで私は良いと思うのです。こういう事を考えてしまうから私は傲慢なんでしょうねぇ。これからもプリキュア達の活躍を心から望みながら、何でも無い日常を長く謳歌して欲しい。そんな矛盾した願いを持ってしまっているのだから。あぁ、私はやはり...欲深い。なーんて心の中でかっこつけたりして、ね。
何て考えていたら隣町の方からドーパントの気配が...はぁ今夜も残業ですかねぇ。奴め、私を引き離すだけが理由じゃなくてやはり実験も兼ねていたって事ですか。あああ、憂鬱です。最近働き詰めなんですよねぇ、トホホ...。
「グワアアアア!?ヤ、ヤメロー!!」
「人間に戻ったら止めてさしあげますよ」
『WEATHER MAXIMUM DRIVE』
スコルプとのゴタゴタをプリキュアと共に解決したウェザート。そして今日も今日とて夜であろうとドーパントを処理し続けている。
「グエエエエエエエエ!?!?!?」
「ふぅ、これで本日8体目...あぁまたウルフショットから連絡来ました。次ですね」
『DETOX MAXIMUM DRIVE』
そんなウェザートをビルの上から見下ろしている影が1つ...
「へぇ、仮面ライダーは居ないけど代わりに女の子達が変身して怪物や怪人と戦う世界かぁ。シンケンジャーの世界みたいな場所なのかな?」
その人影は手を拳銃の形にしてウェザートを狙うように向けている...
「でも仮面ライダーは居ないのにドーパントやドーパントっぽい怪人が居る。こんな世界は初めてだ」
そして何やらこれからの事を考え愉快そうな表情をする...
「この世界に僕が欲しくなる様な”お宝”はあるのかな?ねぇ、怪人君?バーン」
そしてウェザートを取り巻く環境もまた少しずつ変わって行くのかもしれない。
ミルキィローズの「」の色なんですけどローズのイメージカラーの紫だとドリームと一緒だとややこしいし、青いバラって事で青にすると今度はアクアと被るので水色にさせてもらいました。
前のライダーの名前だけ書いたアンケートの内容なんですけどもう少しだけ待ってくださいお願いします。とはいえ別にそんなに物語に響くような内容でも無いんですけどね。
リアルもハーメルンもリハビリ頑張ります。
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第11話 泥棒ライダー、現る!
長い事空けた割にはそんなに長くなくてすみません。
ふーむ、この世界所々細かい部分は違いますが概ね物語りの進みは原作にやはり沿ってはいるみたいですね。私や
まあそこそこに大きな齟齬というのならやはりスコルプさんの生存でしょうか?それ以外は特に大きな変化などは無さそうです。物語りも着々と進んで行き、ミルキーローズも未だ正体判明までは行ってませんがプリキュア5の仲間入りを果たしましたしね。まぁ以前のスコルプさんとのゴタゴタを皮切りにドーパントの出現頻度は下がって来てはいます。これもまた
「っと、そろそろ時間ですね。確かナッツハウスに集合だった筈、遅れてはいけませんし向かいましょか」
『GIGIGI!』
『アオーン!』
念のためにガジェット達もガジェットモードにして持って行きますか。今日は最近忙しかった私を労うという事で彼女たちとココさんナッツさん、そして私という面子でショッピングモールで買い物との事なので楽しみです。シロップさんは残念ながら配達のお仕事で断られてしまいました。まぁそれでも歯切れが悪かったのでどうやら少し前のシビレッタ戦から少しずつ打ち解けて来たご様子。私もそろそろ羽を伸ばしたかったのでいい機会でしょうし今日はとことん楽しむとしましょう。
◇ ◇ ◇
人の気配をまるで感じない廃墟が立ち並ぶ道を一人の少女が駆け抜ける。何者かに追われているのか必死な表情で。何かに取り憑かれたように走り続ける。
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!ダメ、もっと走らないとっ」
(走る、走ってアイツらから逃げないと...こんな所で倒れちゃったら皆と合わせる顔が無い。だから走って走って出来るだけ遠くに逃げるの。アイツらに見つかっちゃう)
『ヂッ!ゾボラゼ ギビジャガダダ!』
『ゴヂヅベ、ジャヅバ ゼギジャブバ リントザ。ゴグドゴブラゼパギベン』
(来た!あのよく分からない言葉を喋る奴らだ。息を潜めて去るのは待つしかないかも。だってアイツらはまるでゲームを楽しむみたいに嬉々として人を...っ)
『ラガギギ、ゾンリヂボンゲバギゼパ リントバ ゴグバガブギビサセン』
『ガガ、バサダデバズゾ ズジャグバ?オルフェノク バ マカモウ ゾジョドグ』
『ゴギヅパギギ、バシグ ダボギブ バシゴグザ!』
(何を言ってるのか良く分からなかったけど遠ざかって行った。今の内に逃げないと、もっと遠くへ。
辛い、怖い、痛い。でも諦めるのだけは絶対嫌だ。だから私は走らなくちゃいけない。生きなきゃいけないんだ)
明確な形などないナニカに縋る様に、しかしそれでも絶対に諦めないと今日も少女は誓いを胸に生き続ける。
「何なんだこの世界は...ネガの世界とはまた違う、この世界は正常ではない。正しい世界に戻す必要があるだろう。業腹だが
チューリップハットにコートを着込んだその男は自らの眼に映るその異様な世界を見渡しながら誰に言うでも無く一人呟く。気味の悪いナニカを見る様にその表情を顰めながらその異常性から目を離さない。
そこはいつか自分も見て訪れた事のあるネガの世界とは違うが似ている世界。男は思う、確かにあの世界も一見異常な世界だがあれはネガの世界という起こり得るべくして発生した世界でありあれ程まで人類が迫害されたとしても運命に紐づけられたある種正常な世界だ。
「あまりにも異常すぎる。この世界はネガの世界の様に
その男、『鳴滝』の目に映る光景は数多の怪人達によって人類が蹂躙され駆逐されて行く人間からすれば地獄の様な光景だ。ある男性はロードによって木の中に埋め込まれ、ある女性はミラーモンスターによって鏡の中から放たれた糸によって絡めとられ引き擦り込まれて消えていった。ある老夫婦は魔化魍に食い殺され、ある子供たちはオルフェノク達によって使徒再生を受けて残らず灰化した。
「ここまで事態が進んでいてはディケイドだけでは荷が重いかもしれん、ならばディエンドも...あれは彼が今居る世界か。...ふむアチラの世界も随分変わっている様だな。まさか怪人と人間が打ち解けている」
「その怪人はウェザードーパント、によく似た怪人か。認めたくは無いがこちらを仮にネガの世界とするならば向こうがポジの世界と言った所か。実力も申し分無さそうだ、ならば不確定要素とも言えるディエンドよりかは彼と
鳴滝は今まで自分が見ていた光景に背を向けると灰色のオーロラカーテンの中に入って行きその場から姿を消した。
◇ ◇ ◇
「ふぅ、今日はありがとうございました。ここ最近色々とゴタゴタしていたので久しぶりに羽を伸ばす事が出来ました」
「ふふ、そう言って貰えると皆と話し合った甲斐があったわ。ウェザートさん、最近疲れた顔をしている事が多かったから心配だったのよ」
おやおや、気を付けていたつもりですがどうやら表情に出てしまっていましたか。彼女たちは皆優しい人ですから心配をあまり掛けたくは無かったのですが...。肉体的疲労はほぼ無くとも精神的疲労までは完全に隠せませんでしたか。
「ご心配をお掛けしてしまいすみませんでした。しかしこうして気にかけて遊びに誘って頂いた事は凄く嬉しく感じます。ありがとう、かれんさん」
「お礼なら のぞみ達にも言ってあげて。ココやナッツにも色々相談してたみたいだし。中々慕われてるみたいよ上里先生」
「ええ、私も素晴らしい生徒達を担当出来て喜ばしい限りです。誘って頂いたお陰で以前から買いたかった物も購入出来ましたし今日は良い日ですよ」
本当に今日は珍しく何事もなく、皆さんとのんびりと過ごす事が出来ました。こういった何気ない日常がいつまでも続いて欲しいと心から願っています。彼女たちがああやって仲の良い友人同士で集まって笑い合う、そういう光景を守っていきたいものです。
「あっ!ウェザートさーん!かれんさーん!こっちは買いたい物買えたけどそっちは?」
「のぞみ、ここは人も多いから大きな声は出しちゃダメでしょ?」
「えへへ、ごめんなさい。楽しくてついね」
「全くもう。私の方は小物を数点ね。ウェザートさんは?」
「私の方はガジェット達の整備に必要な物を幾つかと普段着を数着、後は調味料なんかを数点ですね。大きな物は自宅まで発送してもらえる様なのでそんなに多くありませんよ」
いやぁ別に重労働という訳ではありませんが一度に全部持ち帰ろう物なら嵩張ってしまうので自宅まで発送できるサービスがあって便利でした。車でもあれば良いんですけど今日は皆さん徒歩でしたので。
「そう言えば皆さんの買い物はどうなったんでしょうか?手荷物が多ければ持ちますよ?」
「それなら大丈夫だよ。私たちも買いたい物はそんなに多くなかったしナッツ達の方もお店に置く小物とかだったみたいだから」
という事は皆さん一通り買いたい物は買えたみたいですね。となれば当初の予定より早く用事が終わってしまった事になりますが...さて、この後はどうしましょうか。
「ではこの後はどうしましょうか?このまま皆さんと一緒にブラブラしても良いのですが...」
「あっ!それだったら皆でナッツハウス行かない?こまちさんが美味しいお茶とお菓子を置いて来てるんだって!」
「おや、それは楽しみですね。ではこのまま一緒にハッツハウスに行きましょう」
「よぉし!それじゃあナッツハウスで皆でおやつだ!けってーい!」
「あっ!コラのぞみ走らないの!もう...」
という事で一同はナッツハウスへと帰還する事になりました。のぞみさん達は「お腹減った~」と言ってますしよっぽどおやつタイムが楽しみみたいですねぇ。うぅむそれにしてもさっきまで うららさんはフードコートでカレーライスを平らげていたご様子なのですが...乙女には秘密が沢山といった所でしょうか?
「ねぇねぇこまちさん!お菓子ってどんなのがあるの?楽しみなんだぁ!」
「今回はお馬さんが看板に描かれてる車屋さんの近所にある芋羊羹を買って来たの。美味しいって結構評判なのよ。それといつも通りウチからは豆大福を持って来たわ」
「うわぁ~芋羊羹かぁ、それにこまちさん家の豆大福も美味しいから楽しみです!」
「ホントホント!楽しみだnアデッ!?」
「おっと...」
む?彼女達が楽しそうに歓談している所を見守っていましたがどうやら のぞみさんが反対方向から来た青年とすれ違い様に肩がぶつかってしまったみたいですね。お尻を打ってしまった以外に特に怪我もしてなさそうで安心しました。相手の青年も申し訳なさそう...ん?え?
「すまないね、怪我は無いかい?急いでいたものでね、前をよく見てなかったんだ。立てるかい?」
あの...この青年というかイケメンさん滅茶苦茶見覚えがあるんですが。具体的には10周年記念作品に登場したトレジャーハンターというかコソ泥...というかチラっと一瞬しか見えませんでしたけどぶつかった時に のぞみさんのバッグから白いナニカ、もしかしなくてもローズパクト抜き取りましたよね?
「いえいえ大丈夫です!こっちもよく前見てなくてすみませんでした!」
顔とか声とか雰囲気とか喋り方とかがご本人なんですけど?え?こんな事あります?いえ、まぁイレギュラー中のイレギュラーの自分が居るんですからこういう事もある、んでしょうか?色々混乱してますし言いたい事もありますけどこのままみすみす逃す訳にも行きませんね。出来る事なら穏便に事を済ませたいんですけどね。
「そうかい?それなら今回はお互い様って事でいいかな?それじゃあね」
「いいえ、待っていただけますかね...」
「ウェザートさん?...どうしたの?」
「ん?何かな、僕は先を急いでるんだけど」
「通り過ぎるだけなら結構ですよ...ただその前に彼女から盗んだ物を返していただけるのなら、ですが」
「へぇ...」
「へ???あーーー!?ローズパクトが無い!?」
『なっ!?まさかエターナル!?』
やはり盗まれた本人の のぞみさんも盗られた事に気付かなかったみたいですね。流石プロの泥棒さんです、私も気付けたのは奇跡みたいな物です。まぁとにかくローズパクトは大事な物です、返して貰いましょうか。
「エターナル?あんな美学も何も無い連中と一緒にしないで貰えるかな」
「じゃあ何だって言うのよ!やってる事はアイツら同じ泥棒じゃない!」
りんさんにキツ目に言われても飄々と何処吹く風で手の中でローズパクトを弄ぶ姿、確かにこの人はこういうキャラクターでしたね。本来ならこうして出会えた事に私自身嬉しくは思うのですが状況が状況ですしね。それにしても今気付きました周囲に人の気配も無い...どういう手を使ったのか分かりませんが人払いも済んでいるご様子で。察知される事も前提で動いていたんですかね。
「この世界に来てもどうやらやる事は泥棒と...やる事は変わりませんか。そうでしょう『海東大樹』!」
「意外だね、君は僕の事知ってるんだ?」
「えっ?ウェザートさんこの人知り合い?」
「知り合いという訳ではありませんが...私達みたいな者の中では有名人ですよ。文字通り世界を股にかけたコソ泥として、ね」
「僕としてはトレジャーハンターって言って欲しいけどね。それで?返さないって言ったら?」
「力づくで返して頂きますが?」
こちらが好戦的な返答をすればアチラも不敵な笑み、そして懐からディエンドライバーを取り出して...出来れば穏便に済ませたかったんですがね。こうなったら仕方無いですねっ!彼女達もキュアモとミルキィパレットを取り出して構えてますし。
「ああ、そうだ。君達はさっき僕が何なんだって言ってたよね。なら教えてあげるよ
仮面ライダーに変身しましたか。油断、出来ませんね。何せ相手は泥棒ではありますが歴戦の戦士、最悪私もただでは済まないかもしれませんね。ならば私もやりますか。
彼女達も変身完了してますけどやっぱり困惑気味ですねぇ。私とか今まで戦ってきた怪人達と比較しても変身ヒーローって感じの変身の仕方ですしね。まあでもこうなったら大怪我覚悟でローズパクトを取り返すしかありませんが、彼の能力で一番警戒すべき能力はやはり...。
「海東大樹...またの名を仮面ライダーディエンド。相手にとって不足無し」
『ふふ、かかっておいでよ。勝てるものなら、ね』
執筆中の調べものしてる時に知ったんですけどキュアローズガーデンって物件あるんですね。
本編と途中に挟んだ部分の温度差酷くないかなぁって少し心配です。
彼を本格的に登場させたけど大丈夫かなぁ。以前プロット残してたら何故か消えててそれ以降殆ど思いつきだし
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