提督の憂鬱 (sognathus)
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設定(常時更新)
「世界観・設定」


作中で反映させてる設定です。
少しずつ追加していきます。

ご意見とかあれば参考にさせて頂きます。


○艦娘の設定

 

艦娘には『オリジナル(素体)』と『コピー(量産型)』が存在する。

 

オリジナルは艦娘にする対象となる軍艦に縁のある物品を用意する。

その際は艦の残骸、乗艦していた乗組員の所持品等、艦に縁のある物なら何でも良い。

用意が出来たらそれを触媒として日本に古来から存在する特殊機関『八咫烏』の秘術によって“創造”されて、はい完成。

オリジナルは量産型と比べて性能が優る。

また、オリジナルは全ての量産型の元となっている為、オリジナルが轟沈するなどして消滅すると、その時点でオリジナルを元にした量産型はそれ以上建造できなくなる。

だが、オリジナルが消滅してもそれ以上造れなくなるだけで、既造の量産型はそのまま残る。

消滅したオリジナルは再度創造は可能だが、記憶と練度は初期状態に戻る。

海軍本部の所属艦は全てオリジナルで構成されている。

 

量産型は海軍本部が所有する“建造機”を使い、実際に軍艦の建造に必要な主な資材(鋼材・ボーキ)を投入する事によって造られる。

弾薬と燃料は艦娘の完成後に補充される。

艦娘が配備され始めた初期は実物の資材を使用するので建造機は非常に巨大だったが、資材の代わりに開発した特殊エネルギー源『ナノ資材』の導入により建造機は小型化、資材の運用に掛かっていたコストの問題も解消された。

艦娘の建造は完全に安定しておらず、建造を申請した提督が送った資材の量によって希望の艦娘ができる可能性が上がる。

造られた艦娘は輸送船によって建造を希望した提督がいる各拠点に運ばれる。

量産型は資材さえ投入すれば容易に建造できる分、その性能はオリジナルより全体的に劣る。

 

 

○艦娘の仕様

 

人型、原形の二つの姿を片方、または同時に自分の意思で取る事ができる。

同時に二つの姿を取っている場合は片方が傷つけば、もう片方もダメージを負い、轟沈すれば当然もう片方も消滅する。

 

弾薬と燃料の補給はあくまで戦闘能力を維持する為に必要な行為でしかなく、別に補給をしなくても艦娘は死なない。

生命の維持に必要なのは人間と同じで食事と睡眠。

 

補給についてはナノ資材が開発される前までは艦娘が直接資材に触れて消滅させる事で吸収していた。

修復に使う資材も同様だが、吸収した後に入居が必要。

ナノ資材開発後は、錠剤状のそれを薬と同じように飲み込むだけで補給や資材の吸収は可能になった。

 

入渠は艦娘の傷を癒すために開発された特別な溶液を混ぜた湯に浸かる事によってこれを行う事ができる。

例え生きていても大破などによって激しい損傷を受けた時は、入渠する前に人間と同じようにで先ず応急処置による生命維持が必要。

 

・遠征

単純に海軍本部のお遣い。

各軍施設から配下の艦娘を派遣し、本部の様々な依頼(バイト)をこなす。

 

・解体

艦娘を生まれる前の力の根源に戻す作業。

解体という言葉は聞こえは良くないが、艦娘にとっては元の場所(存在)に還るだけといった感覚が強く、解体自体に恐怖や拒否感を覚える艦娘はあまりいない。

解体は専用の装置を使って行われ、解体を受けた艦娘はフェードアウトするようにゆっくりと消えていく。

ただ、流石に長年海軍、特定の提督に仕えた艦娘となると、人間と比べて遜色がない程自我を確立している場合が殆どなので、解体に対しては悪い印象持ったり、または嫌がる。

 

 

○海軍以外の擬人化兵器について

 

・陸軍

戦車を筆頭に幾つか存在する。

 

・空軍

詳細不明。

 

 

○軍組織について

 

過去の大戦を条件付による降伏によって終結。

既存の軍組織と政治組織、及び指導者クラスの幹部は全員即刻罷免された。

その上で戦争責任を問う軍事裁判は、米国と日本からそれぞれ弁護士と検事を用意させて見解の調整をし、公平な判決に努めた。

その為裁判はかなり長期的なものになり戦後半世紀以上経ってもまだ全てが終わっていない。

 

 

・国防省

陸軍省・海軍省に代わる軍政統括政府機関。

代表は国防大臣。

 

・統帥部

名前の通り大本営に代わる軍の最高統帥機関。

代表は総統。

 

・日本皇国海軍本部

海軍司令部に代わる中央統括軍令機関。

代表は海軍総帥。

 

・海軍の階級

基本的には諸外国の軍隊の階級と一緒だが、海軍本部の5つの司令部、それぞれを統括する司令官においては、彼らの為だけに特別に設けられた階級が存在する。

『元帥』総大将、『元帥』大将、名誉中将、上級中将、上級少将。

これら5つの階級は総司令官である総帥は勿論、上級少将から『元帥』大将までの全てが、他の既存の大将または元帥以上の権限を持つ。

 

・日本皇国陸軍本部

陸軍司令部に代わる中央統括軍令機関。

代表は陸軍総帥。

 

・日本皇国空軍本部

大戦以降に発足した新機関。

代表は空軍総帥。



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登場人物紹介(筆者の艦隊)

艦種ごとに分けてありますが、紹介の順番は不規則です。
あと、筆者のプレイが下手なので指令部レベルの割には全体的にレベルはそんなに高くないです(泣)


○海軍

 

・提督

艦隊司令部レベル117

作中では一貫して「大佐」と階級で呼ばれる。

真面目で、当初はリアクションが乏しかったが、最近マシになった。

怒りはすれど、作中でまだ怒鳴った事がない。

硬派だが、油断をして一夫多妻の可能性を肯定してまう。

准将に昇進したが、大佐の時代が長かったため、昇進後も皆からは親しみを込めて大佐と呼ばれている。

非童貞。

 

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・総帥

オリジナルの人物。

海軍の事実上の最高責任者。

階級は海軍元帥総大将。

海軍本部“五つの壁”の最後の壁である海軍本部の総司令官。

作中ではまだその存在に軽く触れられる程度のみで姿やセリフは未登場。

中老達の話によるとかなり若いらしい。

 

・元帥

オリジナルの登場人物。

海軍本部の“三老”の一角、通称“元老”

階級は元帥海軍大将。

海軍本部“五つの壁”の一つである第1司令部の司令官。

中将とは昔からの親友であり同僚。

とても温和な性格で誰に対しても礼儀正しい口調で話す。

 

・紀伊

元帥専属の艦娘。

駿河と近江の姉。

とても礼儀正しく、冷静な性格。

 

・大将

オリジナルの登場人物。

海軍本部の“三老”の一角、通称“大老”

階級は上級大将。

海軍本部“五つの壁”の一つである第2司令部の司令官。

中将とは昔からの知り合いであり、親友同士。

職務には非常に忠実でかつ苛烈と思われる程厳しい性格の為、部下や他の艦娘からは“鬼”と恐れられている。

だが、職務以外の場では至って普通で、部下に対しても柔和な態度で接する。

 

・駿河

大将専属の戦艦。

超強いらしい。

 

・近江

大将専属の戦艦。

マジで強いらしい。

 

・中将

オリジナルの登場人物。

海軍本部“三老”の一角、通称“中老”

階級は名誉中将。

士官学校の校長、総司令の補佐も務める。

提督の元上司で新米の頃の彼を鍛えあげた人。

提督からは「親父殿」と慕われている。

数少ない「最初の戦争」の頃からの軍人。

今の地位に満足しており、昇進を断り続けてもう20年くらい中将をしている。

 

・大和

オリジナルに近い性格。

中将の専属の秘書艦。

建造機を使わずに直接、特殊機関『八咫烏』にの秘術によって創造された全ての『大和』のオリジナル。

改大和型からさらに独自の強化を受けており、その実力は未だに作中では明らかにされていないが、それを知る数少ない者からは『反則としか言えない』とされている。

中将の事が大好きだが、いつも中将に軽くいなされている為、目の前でイチャイチャする武蔵達が羨ましくて仕方がない。

 

・中将

オリジナルの登場人物。

階級は上級中将。

海軍本部“五つの壁”の一つである第3司令部の司令官。

見た目や仕草はただのオジサンだけど、結構なやり手らしい。

 

・信濃

中将専属の艦娘。

部下とは思えない程上司 or 同僚然としてる。

何事もテキパキとこなすしっかりした性格。

 

・朝日

旧式の艦娘で、封印されずにずっと本部の基地の掃除をしていた。

大将の指示で中将の部下となり、事務を手伝っている。

 

・彼女

オリジナルの登場人物。

階級は上級少将。

海軍本部“五つの壁”の第4司令部の司令官。

提督の元彼女で、士官学校時代に付き合っていた。

今はどうか定かではないが、家事以外は非常に優秀な人物。

大佐の鎮守府に査察に訪れた際、いろいろあってめでたく復縁した。

 

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・武蔵(無蔵)

オリジナルと比べて大分性格が子供っぽい。

オリジナルの武蔵。

彼女の恋人。

レズではなかったが彼女に一目惚れし、以降は彼女に首ったけ。

彼女の前では超甘えん坊。

 

・丁督

オリジナルの登場人物。

階級は特務中佐。

主人公の提督と彼女とは士官学校時代の同期であり、親友同士。

誰にも物怖じしない豪放磊落な性格だが、理性的な判断も十分にできる。

最前線の泊地に努めているらしく、その麾下の艦隊は少数精鋭の名に相応しく、レ級達すら小破のみの被害で追い返すほど強力。

 

・長門

丁督の相棒でもあり“女”の一人。

彼に影響されてか、結構好戦的な性格。

“少数精鋭”の中核メンバーでその実力は折り紙付き。

既に一般的に認知されている『ケッコン後』の艦娘の限界レベルを突破しており、値に換算するとはその数値は250相当。

 

・T督

オリジナルの登場人物。

別の鎮守府の提督。

階級は少将。

主人公の大佐より若いが、軍人として自覚と責任感はしっかり持っている。

恋人は叢雲。

超熱々で彼女に対しては非常に甘い。

 

・叢雲

T督の恋人。

ケッコンカッコカリはもうしてるおり、レベルはとっくに最高値。

T督のことを心から愛しており、お互い相思相愛の仲。

愛情が常に爆発しているため機会があれば常にイチャイチャしているか、それ以上の事をしているらしい。

 

・彼女2

提督の士官学校時代の陸軍の女友達。

提督に想いを寄せ、軍を辞める時にとある方法で彼にその想いを伝えた。

(*「第五部第27話」参照)

さばさばして面倒見が良い性格で努力家。

旧家の生まれで公私ともに環境に恵まれていたが、それが自分をダメにすると断じ、自ら幹部の座を約束されていた出世コースを辞する。

そして、敢えて前線の指揮官になる事を望むほどの自分の成長に対する高い向上心を持つ。

20代前半で周りから認められる指揮官になるほどの才能を見せるが、程なく軍を辞めて故郷の地で暮らしていた。

しかしその後、提督を追いかける形で何と今度は海軍に入隊した。

 

・元帥

提督が所属する海域の責任者。

見た目はかなり若く、20代前半より上には見えない。

プレイボーイ然としており挙動や発言に軽薄なところが見られるが、根は真面目で軍人としてもかなり優秀らしい。

若く見えるのは恐らく毎晩のように部下の艦娘とよろしくやっているから……?

 

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●提督(主人公)の艦隊

 

○戦艦枠

 

・金剛(改二)

レベル160

提督の艦隊の中で最高レベルの存在。

オリジナルに近い性格。

家事は紅茶を淹れる事できる以外は基本的にダメで、更に時折おバカなところも見せる天然。

 

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・比叡(改二)

レベル129

金剛の妹。

オリジナル通りシスコンだけど素直な性格。

家事は普通にでき、服装や流行などにも敏感。

四姉妹の中で女子力が一番高いのは実は彼女だったりする。

 

・霧島(改二)

レベル116

金剛と比叡の妹。

オリジナルに近い性格。

見た目通り、頭がよくテキパキとした性格。

でも何かの催し物などでは自ら司会を務めたりするなど、目立ちたがり屋でノリが良いところもある。

 

・榛名(改二)

レベル122

金剛と比叡の妹。

霧島とは双子の姉妹。

オリジナルより若干思い込みと独占欲が強い性格。

でも基本的には真面目で優等生で頑張り屋で努力家な聖女。

 

 

・ビスマルク

レベル127(drei)

通称「マルク」「マルさん」「マリア」 (*第40話「名前」参照)

こちらはオリジナルに比べかなり子供っぽい。

負けず嫌いで勤勉な性格。

登場人物の中で一番呼び名が多かったが、今は「マリア」に落ち着いてる。

元カナヅチ。

 

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・イタリア(改)

レベル121

ビスマルクに次ぐ海外戦艦として提督の基地に来た娘。

通称「ローザ」(*第七章 第1話「命名」参照)

温厚で優しく妹想いの性格で、少し食いしん坊。

 

・ローマ(改)

レベル118

イタリアの妹。

姉と一緒に新しく海外戦艦として提督の基地の仲間に迎えられる。

通称「リウィア」(*第七章 第1話「命名」参照)

姉と違ってかなりプライドが高く、口調が刺々しいのが特徴。

しかしとておも姉想いで、かつ怒るとかなり口調が乱暴(素?)になる。

怒れるとシュンとしたり、割と子供っぽいところもある。

 

・アイオワ

レベル134

近々本編に登場予定。

 

・ウォースパイト

レベル115

 

・ネルソン

レベル115

 

・リシュリュー

レベル114

 

・ガンクード

レベル114

 

・伊勢(改二)

レベル121

オリジナルに近い性格。

少しやんちゃで子供っぽいところがある。

お酒が少し苦手。

 

・日向(改二)

レベル119

戦艦組の組長。

オリジナル通り真面目でクール。

作中貴重な良識人。

提督に甘える時だけは子供っぽい面を魅せる時がある。

 

・長門(改二)

レベル139

オリジナルよりかなりブッとんだ性格。

何時いかなる時も爽やかで頼りになるお姉さん。

可愛い物が好き。

 

・陸奥(改二)

レベル126

オリジナルに近い性格。

優しいお姉さん。

そのむっちりボディは数多の提督を魅了している、はず。

 

・扶桑(改二)

レベル128

オリジナルより少し子供っぽい性格。

ダイナマイトボディ。

 

・山城(改二)

レベル121

オリジナルに近い性格だけど、提督に対しても大分態度は柔らかい。

お姉様大好き。

 

・大和(改)

レベル142

原作よりちょっと子供っぽい性格。

武蔵より後に基地に着た所為かあまり出番がなかったが、様々な作戦で活躍する様になってレベルが金剛、武蔵に次ぐ第3位になった。

 

・武蔵(改二)

レベル154

オリジナルに近い性格だが、中身は結構乙女、そして提督に対してはワンコ。

生まれて間もない頃に怖い体験をして、そこを提督に慰められたりしたので今はすっかり提督にゾッコン。

レベルは艦隊中2位だが戦闘力に関しては文句なしのトップ。

 

 

○空母枠

 

・加賀(改)

レベル135

空母レベルトップ。

性格はオリジナルよりアクティブ。

言うまでもなく優秀な人。

拗ねると提督を階級を下げて呼ぶ。

 

・赤城(改)

レベル125

加賀が来るまでは主力空母だった。

オリジナルより二次創作の性格に近いけど、もう少し常識がある感じ。

 

・飛龍(改二)

レベル123

オリジナルに近い性格。

改二になってからは、実力、恋愛ともに自信がついた模様。

蒼龍よりちょっと積極性では負ける為、それを何とかしたいと思っている。

 

・蒼龍(改二)

レベル118

オリジナルに近い性格。

ちょっと悪戯好き。

姉より積極的で、提督には自分から距離を詰めてどんどんアピールしようと思っている。

 

・雲龍(改)

レベル113

オリジナルに近い性格。

空母の中で一番のダイナマイトボディを誇る。

大人しくて落ち着いた性格だが、提督が絡むと時に子供の様な嫉妬を見せる事も。

 

・天城(改)

レベル109

雲龍の妹。

 

・葛城(改)

レベル109

オリジナルに近い性格。

雲龍と天城の妹。

当時、実戦に出る事もなく、まともな艦載機を積んだことがない所為か、実戦で使える艦載機に対する執着がやや強い。

配備してもらえると子供の用に喜び、実際、提督に着任早々「余裕があるから」という理由で烈風や流星改の使用を許可されてかなり喜ぶ。

結構単純な性格なようで、この一件だけで提督の事をかなり気に入り、好意も持つようになる。

 

・大鳳(改)

レベル119

オリジナルに近い性格。

艦隊でも貴重な装甲空母の一人。

真面目でしっかり者。

最近同じ装甲空母の仲間が増えて嬉しいらしい。

 

・翔鶴甲(改二甲)

レベル126

オリジナルに近い性格。

優しいお姉さん。

実は妹が先に自分より提督と親しくなるのではと密かに焦っている。

様々な経緯を経て装甲空母へと生まれ変わった。

 

・瑞鶴(改二甲)

レベル129

オリジナルに近い性格。

勝ち気で少しおてんばだが、根は素直な良い子。

姉がなかなか提督にアピールしないでの、自分から接近している内に自分も好意を持つようになった。

最近姉と一緒に装甲空母に生まれ変わった。

 

・アークロイヤル(改)

レベル117

 

・サラトガ(MK.Ⅱ)

レベル118

 

・インテルピット(改)

レベル121

 

・アクィラ

レベル100

 

・グラーフ・ツェッペリン(改)

レベル100

 

・鳳翔(改)

レベル75

オリジナルに近い性格

皆のお母さん的存在。

だが実は本人はそう表だって言われる事に対して、女性として気にしている。

提督の事は心から慕っており、恋愛では人に負けたくないと思っている。

 

・龍驤(改二)

レベル84

オリジナルに近い性格。

無い子。

最近は何かを諦めたらしく、新境地を目指す模様。

ノリが良く、明るく、落ち込んでも立ち直りが早い元気の塊のような女の子。

でも提督に対しては結構乙女な心を持っていたりする。

 

【挿絵表示】

 

 

・瑞鳳(改二乙)

レベル97

オリジナルに近い性格。

小さくて可愛い。

やる気は誰にも負けない頑張り屋。

 

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・飛鷹(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

麗人といった雰囲気を纏う軽空母。

真面目で提督に一途。

だけどあまり関わる事がない所為で提督との距離が縮まっていない事を気にしている。

 

・隼鷹(改二)

レベル100

オリジナルに近い性格。

軽空母の中では一番明るい性格をしている。

ちゃらんぽらんなようで意外にしっかりしている。

が、ハメを外した時のインパクトが強過ぎて残念ながらその事を理化している人は少ない。

やっぱりお酒が好き。

 

・千歳(航改二)

レベル75

オリジナルに近い性格。

優しいお姉さんだが、結構天然ボケをかますらしい。

軽空母としてはかなり良性能のはずだが何故か出番に恵まれず、最近は専ら喫茶店や厨房の手伝いをしている。

 

・千代田(航改二)

レベル78

オリジナルに近い性格。

この妹にしてあの姉あり、と言える程しっかりしている。

千歳と同じ理由により姉と一緒に喫茶店や厨房の手伝いをしている。

姉よりは今の仕事を楽しんでいる模様。

 

・龍鳳(改)

レベル75

オリジナルよりかなり子供っぽい。

大鯨が軽空母として生まれ変わった姿。

提督大好きっ子。

とある理由により提督を「お父さん」と呼ぶ。

 

・千歳(甲)

レベル96

水上機母艦としてのもう一人の千歳。

ある遠征の任務上必要なため水上機母艦のまま。

他の軽空母程強力ではないが、多様な攻撃能力を持つ。

軽空母と間違えられない様に髪型を変えている。

遠征で常に活躍している影響で水上機母艦としてはかなりレベルが高く、彼女と一緒によく遠征に出る駆逐艦たちからはとても慕われている。

 

・千代田(甲)

レベル97

水上機母艦としてのもう一人の千代田。

ある遠征の任務上必要なため水上機母艦のまま。

他の軽空母程強力ではないが、多様な攻撃能力を持つ。

大体姉と同じ境遇。

でもこっちの妹は水上機母艦のままであることをちょっと気にしているらしい。

 

・大鷹(改二)

レベル100

 

・神鷹(改二)

レベル87

 

・ガンビア・ベイ

レベル75

 

・鈴谷(航改二)

レベル100

軽空母へと生まれ変わり、自信に相応しい実力を持つ。

オリジナルに比べ結構肝が据わった女子高生。

自称足柄の舎妹第一号らしい。

ギャルっぽいが、女性らしい面もあるらしい。

しかしそれを見せるのは提督にだけだとか。

 

・熊野(改)

レベル100

鈴谷と同じく軽空母へと生まれ変わった。

オリジナルに近い性格。

性格が似てる為か三隈とは仲良し。

三隈に次いで天然な性格をしている。

鈴谷に胸の大きさで負けている事を密かに気にしている。

 

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秋津洲(改)

レベル98

千歳姉妹以来初となる完全な水上機母艦として提督の基地に来た艦娘。

優秀な偵察機である二式大偵を装備できる唯一の水上機空母だが、それ以外の装備にやや不便があり、それを内心とてもきにしている。

今は提督によって砲撃艦としての役割を主に与えられ、喜んで出撃している。

 

・瑞穂(改)

レベル82

 

・日進(甲)

レベル75

 

・コマンダン・テスト

レベル78

 

・神威(改)

レベル66

 

・神威(給)

レベル75

 

・速吸(改)

レベル75

 

○重巡枠

 

・妙高(改二)

レベル98

オリジナルに近い性格。

妙高型の長女。

凡そ不得意な事は無いのではないかと言う程手先が器用で、礼儀正しく頭脳も明晰と完璧。

でも怒ると超怖い。

 

・那智(改二)

レベル93

オリジナルより少し砕けた性格。

妙高の妹。

真面目で頼りになる教官みたいな人。

実は可愛い物が好き。

改二になって姉としての自信が増した模様。

 

・足柄(改二)

レベル142

重巡レベルトップ。

こちらはオリジナルにくらべ結構大人。

姉御肌の妙高型三女。

年下(見た目)に人気がある。

提督と早くケッコンしたいらしい。

「わかってるじゃない」が口癖

 

・羽黒(改二)

レベル95

オリジナルに近い性格。

妙高型の末妹。

弱気で直ぐ泣いてしまうけど、いざという時の度胸はある。

こと恋愛においては対抗心も割と強い。

 

・古鷹(改二)

レベル76

オリジナルに近い性格。

真面目で良い子だが妙に影が薄い。

改二になって少し存在感がマシになった模様。

 

・加古(改二)

レベル75

オリジナルに近い性格。

古鷹の妹。

影が薄い姉に対してこちらは性格のお蔭で、少なくとも古鷹よりは目立っている。

やんちゃで頑張り屋だが、夜更かしが苦手という子供っぽいところがある。

寝ている時が一番幸せらしい。

 

・青葉(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

お祭りのような賑やかなイベントが大好き。

自分が興味のある事に対しては積極的に行動するが、逆にそれ以外に関してはおろそかにしがちで、その所為でよく失敗をする。

実は怖い物が苦手。

 

・衣笠(改二)

レベル75

オリジナルに近い性格。

青葉の妹。

一番初めに重巡の中で改二になったはずなのになんか影が薄い。

姉よりよっぽど常識人なのにキャラの濃さに負けて不遇な扱いを受けていると思っているらしい。

不遇と言うのは勿論提督とあまり関わる機会がないという事。

 

・高雄(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目で妹想い。

妹の影響でゲームを趣味に持つ。

いろいろなゲームをやる妹に対して、過激な内容のゲームが苦手と言う可愛らしいところがある。

 

・愛宕(改)

レベル75

ゲームが大好きで、新旧問わずかなり深い関連の知識を持つ。

ゲームをする時は何故かメガネを掛ける。

提督をゲームに誘うのは勿論趣味もあるが、一番はやはり提督の事が好きだから。

 

・摩耶(改二)

レベル98

オリジナルに近い性格。

天龍、木曾に並ぶ男勝りな性格。

だが、とある物を収集する趣味を持っており、それを自身の最大の秘密としている。

それは妹の鳥海にも秘密で、その事を知っているのはとある件(*第四部第16話「届け物」参照)でそれを知った提督のみ。

以後その趣味の為にいろいろと密かに協力してもらっているらしい。

 

【挿絵表示】

 

・鳥海(改二)

レベル79

オリジナルに近い性格。

真面目でしっかり者。

結構規則に厳しい。

高雄型の末妹。

 

・プリンツ・オイゲン(改)

レベル77

重巡初の海外艦。

通称「フランソワ」「フラン」(*第五章 第53話「交流⑦」参照)

オリジナルに近い性格。

ともて人懐っこく子供っぽい。

ビスマルクの事が大好きで姉と慕っている。

 

・ザラ(改二)

レベル92

 

・ポーラ

レベル75

初めてのイタリアの重巡。

近々登場予定。

 

・利根(改二)

レベル120

オリジナルより若干子供っぽい性格、だと思う。

妹想いな筑摩の姉。

天然で場の空気を読めない。

少し抜けているところもあるが、その実力は確か。

 

・筑摩(改二)

レベル113

オリジナルに近い性格。

真面目でおしとやかで姉想い。

筑摩よりグラマラスなボディが密かな自慢。

 

・最上(改)

レベル96

オリジナルに近い性格。

僕っ娘。

時雨に次ぐ読めない性格をしている。

が、腕は確かで出撃した任務では常に成果を挙げて帰ってくる。

読書が趣味で、三隈との相部屋には彼女の本がそこらじゅうに置いてある。

 

【挿絵表示】

 

・三隈(改)

レベル93

オリジナルに近い性格。

お嬢様な仕草お嬢様な口調。

似た性格である熊野とは仲良し。

少々常識が欠けており、間違った知識を与えられるとそれを信じてしまう天然ともいえる素直さを持つ。

 

 

○軽巡枠

 

・球磨(改)

レベル87

オリジナルに近い性格。

多摩の姉。

やんちゃで負けず嫌いだが、妹の多摩と比べて若干素直じゃない。

その性格がたたって、よく任務では多摩と一緒に傷だらけで帰ってくる。

そしてその度に提督に怒られている。

 

・多摩(改二)

レベル93

オリジナルに近い性格。

球磨の妹。

正確は球磨に近いが、彼女より人懐っこく甘えん坊なところがある。

出撃してはよく球磨と一緒に傷だらけで帰ってくるが、本人は提督に怒られたくないので自分なりに姉を宥めたりしている。

が、結局はいつも押し切られ、開き直って一緒に暴れている。

 

・川内(改二)

レベル96

大体オリジナルに近い、と思う。

夜戦も好きだけど夜の散歩も好き。

超常現象は苦手。

妹の神通の方が姉っぽいのを気にしている。

 

・神通(改二)

レベル86

オリジナルに近く控えめで大人しく優しい性格。

川内型三姉妹の次女。

芯はしっかりとしており、やる時は普段の態度からは想像ができない程凛々しい姿を見せる。

 

・那珂(改二)

レベル80

オリジナルに近い性格だが、最近アイドルを自称するのに飽きた模様。

ノリが良いムードメーカーだが、自分の世界を作り過ぎて一人暴走する事が偶にある。

 

・阿賀野(改)

レベル82

オリジナルより更に子供っぽい性格。

阿賀野型四姉妹の長女。

日本で提督に拾われたらしい。

その所為か提督にはぞっこん。

非常に官能的な体つきをしている。

 

・能代(改)

レベル83

オリジナルに近い性格。

阿賀野型四姉妹の次女で矢矧の姉。

性格は姉よりかはしっかりしているが、妹の矢矧と比べると少し丸いといったところ。

バランスの取れた性格で、誰とでも器用に接し、仲良くなる。

 

・矢矧(改)

レベル85

軽巡組の組長。

オリジナルに近い性格。

阿賀野型四姉妹の三女。

すこぶる真面目なクールビューティ。

阿賀野には負けるが、能代より豊満な身体をしている。

 

酒匂(改)

レベル77

 

・天龍(改二)

レベル84

オリジナルに近い性格。

割とノリがよく、龍田との漫才(本人にその気はないが)ではツッコミ担当。

提督の事は大好きで、彼の前では大体素直。

 

・龍田(改二)

レベル80

オリジナルに近い性格。

おっとりマイペースかと思いきや、実は言葉の裏ではかなりの思考を働かせている策略家。

それでいて時には相手を圧倒する威圧感も放つなど、ある意味万能な性格。

こちらも提督に対する好意は隠さないくらい彼の事が好き。

 

・長良(改)

レベル87

オリジナルに近い性格。

長良型の長女。

元気で活発で運動が大好き。

面倒見も良く、駆逐艦には彼女を慕う者も多い。

 

・五十鈴(改二)

レベル88

オリジナルに近い性格。

長良型姉妹の次女。

長良より抜け目がなく、しっかりしている。

あまり出番がない事を気にしているが、やはり改造で一変した凄まじい魅力を放つ身体は自慢らしい。

 

・名取(改)

レベル87

オリジナルに近い性格。

長良型姉妹の三女。

少し泣き虫で引っ込み思案だが、基本的に真面目で良い子。

提督の事は大好き。

 

・由良(改二)

レベル92

オリジナルに近い性格。

長良型姉妹の四女。

気弱な性格の名取をよくフォローしている。

そしてあまり出番がない事をきにしている。

 

・鬼怒(改二)

レベル81

オリジナルに近い性格。

由良の妹で阿武隈の姉。

やや負けず嫌いな性格だが、基本真面目で大人しい。

あまり出番がない事を気にしている。

 

・阿武隈(改二)

レベル125

オリジナルに近い性格。

長良型の末妹。

少々自己主張が強い性格だが、指示にはちゃんと従う。

あまり出番がない事を気にしている。

 

・夕張(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

新し物好き。

それは興味の範囲は艦装のみに留まらず、多岐の分野に渡る。

最近はよく愛宕とTVゲームをしている。

 

・大淀(改)

レベル86

オリジナルに近い性格。

少し前まで提督に(悪気はなかったが)その存在そのものを認識されていなかった悲劇の軽巡。

その所為か少しひねくれたところがある、らしい。

夕張に並ぶ装備の充実さと更に彼女とすら一線を画す性能と前述した生い立ちも相まって、軽巡の中では“表の番長”龍田に対して裏番を務めているのだとか。

 

・香取

レベル75

オリジナルに近い性格。

教師風の落ち着いた雰囲気の女性。

その態度は常に安定しており、頼りになる感じが凄い。

作戦の指揮や立案の能力に秀でていて、表にでるよりかは裏方で仕事をしている時が多い。

 

・鹿島

レベル75

 

・ゴトランド

レベル78

 

○駆逐枠

 

・神風

レベル98

 

・春風

レベル104

 

・松風

レベル96

 

・旗風

レベル75

 

・暁(改二)

レベル76

オリジナルに近い性格。

暁型の長女。

昔はよくレディを称して見栄を張っていたが、最近では見栄を張った結果恥をかく方を恐れるようになった為割と大人しい。

 

・響(ヴェールヌイ)

レベル118

駆逐艦レベルトップ。

オリジナルと比べて若干、天然で供っぽい性格。

響と呼ばれるのを好む。

提督の事は大好き。

 

・雷(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

大人しい妹と違ってとてもアクティブ。

提督の事は普通に好き。

 

・電(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

元気な姉と違ってとても大人しい。

でも怒るとヤバイらしい。

提督の事は大好き。

 

・島風(改)

レベル87

オリジナルに近い性格。

とても子供っぽく、負けず嫌い。

提督の友達第一号。

提督の基地の三大規格外駆逐艦の一人。

一回しかまだ改造を受けていないながら、その実力は改二勢に全く引けをとらない。

 

・秋月(改)

レベル114

オリジナルに近い性格。

三大規格外駆逐艦の一人。

特にその優れた防空能力は駆逐艦の中でも文句なしのトップ。

とても真面目で良い子だが、最近愛宕の影響でゲームを嗜むようになり、あるキャラクターの大ファンになった。

 

・照月(改)

レベル97

 

・涼月(改)

レベル75

 

・初月(改)

レベル100

 

・Z1(zwei)

レベル79

通称「レイス」(*第40話「名前」参照)

オリジナル以上に優しい。

真面目で大人しい僕っ娘。

頑張り屋で何事も自分から率先して動く。

 

・Z3(zwei)

レベル94

通称「ジェーン」(*第40話「名前」参照)

オリジナルより少し柔らかい性格。

「そう」が口癖

愛想がなく見えるが、話してみると結構饒舌。

特にそれは自分の自慢話になると止まらなくなるらしい。

Z1に負けず劣らず真面目な性格で、実は努力家だったりする。

 

・初春(改二)

レベル78

初春型の長女にして駆逐組の組長補佐。

オリジナル近い性格だがこちらの方が大分余裕がある。

提督の艦隊の二人目。

実は艦娘に関するある秘密を知っている。(*第二部 第6話 「感情」参照)

 

・子日(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

おっちょこちょいに見えて割としっかりしている。

だが普段の発言や言動から与える印象が強いので、その事を知っている者は少ない。

 

・若葉(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目だが、それより自信が先に立つせいで行動が偶に空回りする事がある。

素っ気ない口調だが、それは単に彼女が口下手なだけらしい。

 

・初霜(改二)

レベル97

オリジナルに近い性格。

真面目で仲間想いな性格。

姉の若葉と仲が良く、偶に空回りしている彼女をフォローしている。

 

・白露(改二)

レベル79

オリジナルに近い性格。

白露型の長女。

ノリが良いムードメーカー。

だが、ややお調子者でその失敗をよく涼風にツッコまれている。

 

・時雨(改二)

レベル98

オリジナルと比べて結構マイペースな性格で、そのつかみどころのなさは最上に並ぶ。

戦闘では普段のイメージからは一線を画す獅子奮迅振りを見せる。

 

・村雨(改二)

レベル89

オリジナルに近い性格。

白露程ではないが、調子に乗り易い性格。

よく姉の白露と一緒に遊んでは涼風や五月雨に注意されている。

 

・夕立(改二)

レベル97

オリジナルに近い性格。

マイペースで天然。

独特の言葉遣いで周囲を惑わす事がある。

火力においては規格外駆逐艦の島風をも上回るポテンシャルを誇る。

 

・春雨(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

基本的に真面目だが、やや甘えん坊なところがある。

人目が少ないところで提督に甘える機会を窺っている。

 

・五月雨(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

駆逐艦の中でも特に真面目で更に優しい。

よく涼風と一緒に姉の白露と村雨のおてんばに振り回されている。

 

・海風(改)

レベル75

 

・山風(改)

レベル80

 

・江風(改二)

レベル80

 

・涼風(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目だが、強気、加えて面倒見が良い。

よく涼風と一緒に姉の白露と村雨が起こすトラブルに巻き込まれてその度に注意している。

 

・吹雪(改二)

レベル80

オリジナルに近い性格。

吹雪型の長女。

真面目だが、少しやきもちを妬くところがある。

意外にノリが良く、雷たちと一緒になって遊んではしゃいだりしている。

 

・白雪(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目で大人しい優等生。

吹雪型の中では一番大人しいとされるが、実は違うらしい。

だがその分怒らせると質が悪いらしい。

 

・初雪(改)

レベル77

オリジナルに近い性格。

マイペースで何を考えているのか分かり難い。

根は真面目だが、それを見せる事は少なく、若干素直でないところがある。

自分と似た性格ながら器用に世渡りをしている望月の事を慕っており、仲が良い。

 

・深雪(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

勝ち気な性格だが、不測の事態にはちょっと弱い。

敷波とはウマが合うらしく、よく一緒にいる。

 

・叢雲(改二)

レベル75

オリジナルより大人しく、余裕がある性格。

提督の艦隊の一人目。

実は艦娘に関するある秘密を知っている。(*第二部 第6話 「感情」参照)

提督LOVE

 

【挿絵表示】

 

・磯波(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目だが、白雪より大人しい性格。

周囲を和ませる雰囲気を持っている。

 

・浦波

レベル75

 

・睦月(改二)

レベル78

オリジナルに近い性格。

睦月型の長女。

甘えん坊でやや自信家。

 

・如月(改二)

レベル77

オリジナルに近い性格。

自信家な所は姉以上。

加えておっとりした性格が、よく油断に繋がり睦月と一緒に長月に怒られている。

 

・弥生(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

無口で表情も乏しいが、内面は居たって女の子そのもの。

打ち解ければ誰でも彼女が何を考えているのか解るくらいにはなる。

 

・卯月(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

マイペースで甘えん坊。

駆逐艦の中ではあまり強くは無い方だが、それでも弥生との息の合った連係は十分に驚異的で、出撃の度に確かな戦果は挙げている。

 

・皐月(改二)

レベル89

オリジナルに近い性格。

真面目だが姉の睦月譲りの自信家の面を持つ。

よく睦月と如月の失態に巻き込まれ、その度に注意している。

SF劇が好き。

 

・水無月(改)

レベル75

 

・文月(改二)

レベル82

オリジナルに近い性格。

マイペースでやや自信家、そして少し甘えん坊。

よく睦月と如月の失態に巻き込まれ、その度に注意している。

ホラー映画が好き。

 

・長月(改)

レベル75

オリジナルに近い近い性格。

真面目だが姉の睦月譲りの自信家の面を持つ。

よく睦月と如月の失態に巻き込まれ、その度に注意している。

戦争映画が好き。

 

・菊月(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目でハキハキした口調が特徴。

提督に対する好意は基本隠さず、甘えたい時はしっかり甘える。

時代劇が好き。

 

・三日月(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

真面目で責任感が強い。

実は提督に甘えたかったりしているが、普段のイメージを意識している所為かなかなか言い出せないでいる。

 

・望月(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

マイペースで少し間延びする口調が特徴。

初雪と同じで始終気だるげ雰囲気を漂わせているが、やることはしっかりやる。

 

・陽炎(改二)

レベル83

オリジナルに近い性格。

陽炎型の長女。

明るく、それでいて真面目なムードメーカー。

妹の不知火とは対照的な性格だが、船上では息の合った連係を見せる。

 

・不知火(改二)

レベル81

オリジナルと比べて少しだけ甘い性格。

基本的に真面目で口数が少なく、常に怜悧な雰囲気を漂わせている。

思ってる事を素直に言えないところがあるが、提督の前では素直になろうと努力している。

 

【挿絵表示】

 

・黒潮(改二)

レベル79

オリジナルに近い性格。

明るいムードメーカーだが、愛嬌があるせいか弄られ役になることが割とある。

龍驤と同じ関西弁を話すことから仲間とよく思われがちだが、本人は迷惑がってる模様。。

 

・親潮(改)

レベル75

 

・初風(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

やや勝気だが基本的に大人しい。

黒潮と同じ属性を持ち、良く大人(特に長門)に弄られる。

 

・雪風(改)

レベル94

オリジナルに近い性格。

量産タイプでありながら、唯一規格外駆逐艦に数えられている駆逐艦。

そのポテンシャルは素晴らしく、特に回避能力に関しては駆逐艦随一らしい。

島風の親友にして提督の友達第二号。

 

・天津風(改)

レベル77

オリジナルに近い性格。

ちょっと我儘で子供っぽい性格。

駆逐艦の中では戦闘力が高い方で、単艦でもそれなりの活躍を見せる力を持つ。

 

・時津風(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

悪戯好きで甘えん坊。

隙を見ては直ぐに提督や仲間に絡んでじゃれようとする。

 

・浦風(丁改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

明るく頼りになる姉御肌。

偶に通じない博多弁に替わり共通語を喋る。

 

・磯風(乙改)

レベル78

 

・浜風(乙改)

レベル98

オリジナルに近い性格。

真面目なしっかりもの。

駆逐艦の中ではトップクラスのナイスボディを持つ。

 

・谷風(丁改)

レベル77

オリジナルに近い性格。

明るくてお調子ものだけど芯はしっかりしている。

“勘”で良く動く為に、その所為でよく失敗をして浜風に怒られている。

しかし偶にその“勘”が当たった時は驚くほどの戦果を挙げる。

 

・野分(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

似た者同士である浜風と仲が良い。

だが身体付に差がある為、それを密かに気にしている。

 

・嵐(改)

レベル75

 

・萩風(改)

レベル76

 

・舞風(改)

レベル79

オリジナルに近い性格。

動き回るのが好きで、暇があればよく趣味のダンスを踊っている。

周りの迷惑を考えずについ踊り過ぎる時があるので、彼女が踊っている時は蜘蛛の子を散らすように皆は逃げ回る。

 

・秋雲(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

飄々とした性格で、周りに流されない自己の強さを持つ。

絵を描くのが好きで得意だが、意外に事務処理も優秀。

 

・綾波(改二)

レベル94

オリジナルに近い性格。

綾波型の長女。

優しく真面目で人懐っこい。

改二なると胸が大きくなると言う迷信を信じていたせいで、その結果に衝撃を受ける。

 

・敷波(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

ちょっと素直じゃないけど頑張り屋さん。

性格が似てる深雪と仲が良く、よく一緒に行動している。

 

・天霧

レベル75

 

・狭霧

レベル75

 

・朧(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

綾波型の中では曙と漣に次ぐ行動派。

他の二人が活発な印象が強いので誤解されがちだが、彼女も負けず劣らず大胆な行動をする事がある。

 

・曙(改)

レベル75

オリジナルと比べて少し大人しい。

口が悪い事で有名だが、こちらでは提督の事を認めてるのか、めったり「クソ」はつけない。

 

・漣(改二)

レベル96

オリジナルに近い性格。

調子が良く見えてしっかり者。

偶に独特の言い回しをするが、怒るとキツイ口調になる。

 

・潮(改二)

レベル96

オリジナルに近い性格。

やや内向的で恥ずかしがりや。

さり気にとてもグラマラスなボディを持つ。

 

・夕雲(改二)

レベル81

オリジナルに近い性格。

夕雲型の長女。

他の鎮守府で虐待されているところを逃げ出し、提督に拾われた。(*第二部第28話「保護」参照)

 

・巻雲(改二)

レベル100

オリジナルに近い性格。

姉っ子で、ちょっと甘えん坊。

提督の事は結構好き。

 

・風雲(改二)

レベル75

 

・長波(改二)

レベル84

オリジナルに近い性格。

少し見栄っ張りな所があるがその実、甘えん坊な所がある。

お姉さん振ろうとして空回りすることが多い。

そういう点が共通する所為か、暁とは特に仲が良い。

提督に対する好感度は不明だが、嫌ってはいない。

 

・高波(改)

レベル77

オリジナルに近い性格。

引っ込み思案に見えるが、結構思い切った行動をする。

上の姉達に比べて自分に自信が持てないところがある模様。

個性豊かな妹達には苦労せられているが、怒ると怖いらしく、結構彼女のいう事は聞く。

 

・藤波(改)

レベル75

 

・早波(改)

レベル75

 

・浜波(改)

レベル75

 

・沖波(改)

レベル75

 

・岸波(改)

レベル75

 

・朝霜(改)

レベル98

オリジナルに近い性格。

わんぱくな夕雲妹で早霜の姉。

長波以上に勝気で明るく、子供っぽくて更に人懐っこいという、元気の塊の様な娘。

 

・早霜(改)

レベル75

オリジナルに近い性格。

駆逐艦の中では特に個性的な性格をしている。

音もなく近寄り、相手が驚く様を見るのが好き。

 

・清霜(改)

レベル75

 

・朝潮(改二丁)

レベル98

オリジナルに近い性格。

朝潮型の長女。

駆逐艦の中ではトップレベルの真面目な性格をしている。

だがあまりにも真面目過ぎて、意図せずそれが暴走する時がある。

 

・大潮(改二)

レベル81

オリジナルに近い性格。

声が大きくとにかく元気。

朧とはウマが合うようで、よく一緒に遊んでいる。

 

・満潮(改二)

レベル78

オリジナルに近い性格。

勝気だが真面目で芯が強い。

朝潮の暴走のストッパー役でもある。

 

・荒潮(改二)

レベル78

オリジナルに近い性格。

おっとりして常にマイペース。

だがそこには基本的に隙は無く、しかも割と狡猾な性格をしている。

 

・朝雲(改)

レベル76

オリジナルに近い性格。

“朝潮型の陽炎”と言われるほど似た性格をしている。

元気で明るい子。

山雲とは仲良し。

 

・山雲(改)

レベル77

オリジナルに近い性格。

なんだか性格が龍田に似ているような気がする。

怒ると怖そう。

 

・峯雲(改)

レベル75

 

・霰(改二)

レベル82

オリジナルに近い性格。

朝潮型では一番大人しく、思考が読めない。

だがその行動自体は常識そのもの。

第一印象で誤解してはいけないと言う好例。

 

・霞(改二乙)

レベル97

オリジナルに近い性格。

満潮と性格が似ているが、こちらの方が少々厳しめで勝気。

満潮と一緒によく朝潮のフォローをしている。

 

・マエストラーレ(改)

レベル80

 

・リベッチオ(改)

レベル89

 

・ジョンストン(改)

レベル75

 

・サミュエル・ロバーツ(改)

レベル75

 

・ジャーヴィス(改)

レベル75

 

・タシュケント(改)

レベル76

 

○潜水組

 

・伊13(改)

レベル121

 

・伊14(改)

レベル113

 

・伊400(改)

レベル100

 

・伊401(改)

レベル123

 

・伊168(改)

レベル135

通称「イムヤ」

潜水組のリーダー。

オリジナルに近い性格。

真面目で頑張り屋さんだが潜水艦の中で一番熱く、負けず嫌い。

 

・伊58(改)

レベル143

通称「ゴーヤ」

オリジナルに近い性格。

イムヤに次いで負けず嫌いな性格だが、冷静な判断もしっかりできる。

 

・伊8(改)

レベル139

通称「ハチ」「ハっちゃん」

オリジナルに近い性格。

潜水艦の中では一番大人しいが若干マイペースなところも。

 

・伊19(改)

レベル147

通称「イク」

オリジナルに近い性格。

潜水艦の中では一番ノリが良い。

面倒見が良い面もある。

お菓子が大好き。

 

・伊26(改)

レベル130

 

伊504(改)

レベル106

 

・まるゆ(改)

レベル117

オリジナルにより若干大人。

潜水艦の中で最も弱いが、一番の常識人でもある。

 

・呂500

レベル129

オリジナルに近い性格。

改造を受けてようやく中身と外見が合致するようになった。

作中のU-551はとある事情の為、最初から呂500の性格をしていた。(*「第六部第×28話」参照)

若干改造前より人懐っこさが増したように思える。

 

○海防艦

 

・占守(改)

レベル64

 

・国後(改)

レベル58

 

・択捉(改)

レベル67

 

・松輪(改)

レベル62

 

・佐渡(改)

レベル52

 

・対馬(改)

レベル58

 

・福江(改)

レベル52

 

・日振(改)

レベル51

 

・大東(改)

レベル56

 

〇特殊船

・あきつ丸

レベル41

オリジナルに近い性格。

真面目でしっかりしているが、どことなくマイペース。

 

○工作艦

 

・明石(改)

レベル45

元々は任務と整備専任の艦娘だったが、最近は実戦部隊にも参加するようになった。

工作艦の割には艦の整備をする事は殆ど無く(提督の鎮守府の資材が常に余っている為)専ら基地の設備の整備をしている。

お蔭で工作艦としての存在意義に悩むことが偶にあるとか。

 

○深海棲艦

 

・レ級

元(旧)扶桑

艦娘だった頃は中将(現、親父)の艦隊に所属し、共に戦っていた。

深海棲艦になってからは、艦娘だった頃と打って変って天真爛漫なとても明るい性格になり、常に突拍子もない発言や行動で周囲を驚かせている。

深海棲艦となった今でも基本的に人間(海軍)に対し、一切負の感情は持っておらず、「深海棲艦だから」というシンプルな理由のみで偶に思いつくように「仕事」として海軍を襲っている。

のほほんとしているが、普通のフラグシップのレ級より無茶苦茶強いらしい。

取り巻き(親友)として常にタ級・ル級・ヲ級がおり、彼女はその中でもリーダー的存在となっている。

 

【挿絵表示】

 

・タ級

元八島。

艦娘だった頃は中将(現、親父)の艦隊に所属し、共に戦っていた。

艦娘だった頃は扶桑たちとは違い、唯一まともな感情の様なものを一番持っていた。

深海棲艦となってからはそれとは正反対に4人の中で一番クールで真面なご意見番的存在となる。

深海棲艦としてのポリシーは基本的にレ級と一緒。

普通のフラグシップのタ級よりやたら強いらしい。

 

・ル級

元東。

艦娘だった頃は中将(現、親父)の艦隊に所属し、共に戦っていた。

艦娘だった頃は扶桑と敷島と同じく感情が希薄だったが、深海棲艦となってからは大人しくて子供っぽい性格となった。

が、根はしっかりしており、ヘタレなところを見せつつも戦闘の場面では自分の役割を十二分に果たしている。

4人の中で特にタ級と仲が良く(というよりひっついている?)、暇なときは大体彼女と遊んで(話して)いる。

深海棲艦としてのポリシーは基本的にレ級と一緒。

普通のフラグシップのル級より信じられない程強いらしい。

 

・ヲ級

元敷島。

艦娘だった頃は中将(現、親父)の艦隊に所属し、共に戦っていた。

艦娘だった頃は扶桑と敷島と同じく感情が希薄だったが、深海棲艦となってからはかなり子供っぽい性格となる。

ル級と同じく、根はしっかりしており、戦闘では見た目以上の戦闘力を見せ、常に仲間の戦果に貢献している。

4人の中で特にレ級と仲が良く、彼女との連携プレイが得意。

深海棲艦としてのポリシーは基本的にレ級と一緒。

普通のフラグシップのヲ級より半端なく強いらしい。

 

・鬼姫

鬼級と姫級を超える深海棲艦の中では頂上的存在。

レ級の上司にあたる指揮官。

配下には彼女だけでなく、当然の如く様々な種類の鬼級や姫級がいる。

支配地域は日本の南側を担当していたらしいが、レ級の行動を見ている内に人間に対する認識を改めるに至り、最近個人的に大佐と和解した。




言うまでもなくどんどん追記されていきます。
これを設けたのは設定もありますが人物をより濃くして作品で動かし易くする目的もあります。
あと、当たり前ですが提督の人物設定は筆者とは一切関係有りません。
完全に筆者の都合によるものなのでご容赦下さい。


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第一章 「提督と艦娘」
第1話 結婚しませんか?


人生初のネットに投稿した二次創作物(SS)の再修正版です


提督の机に指輪が置いてありました。

 

「何だこれ」

 

「指輪です。大佐」

 

「貴方は何を言ってるんですか?」という顔の加賀。

提督はそういう事を訊いてるんじゃないと頭を振りながら言った。

 

「そんなのは見れば判る。俺が知りたいのは、なんで指輪なんかが此処に在るのかということなんだが」

 

「それは艦娘とその指揮官である提督が結婚をする為の指輪です」

 

この話には提督も珍しく虚を突かれた顔をした。

なんだそれ、そんな話聞いたことも無い。

 

「……なに?」

 

「結婚です。中佐」

 

「階級を勝手に下げるな。それと、結婚だって? 艦娘と提督の?」

 

「そうです」

 

「何故そんなことをする必要がある?」

 

「本部からの説明によりますと、この指輪は成長限界に達した艦娘の力を更に引き出す効果があるそうです」

 

「ほう」

 

提督は少し興味を引かれたように手を組む。

艦娘の力を更に引き出すとはどういう事だろう?

改二への改造はいわばアップグレード、強化であり限界に達した力を引き出すのとは意味がちょっと違う。

 

「ただその効果を得る為には、この指輪を提督と艦娘がお互いにはめることによって従来よりも強い絆で結ばれる必要がある、との事です」

 

「意味が解らん」

 

「何がですか?」

 

「指輪をする事によって力が引き出されると言う説明は解った。仕組みは理解できないが、まぁそういうものなんだろう。俺が解らないのはな加賀。何故その前提として結婚しなければならないのかという事だ」

 

「嫌なのですか?」

 

「嫌も何も、本部がそんな事を通達してきたことが信じられないんだが」

 

「恐縮ではありますが事実です」

 

僅かに口の端を緩ませながらそう言う加賀。

彼女は明らかに提督と深い絆で結ばれる機会が艦娘に与えられた今回の件を喜んでいるようだった。

提督はそんな彼女に溜め息を付きながら言った。

 

「嬉しそうに言うなよ。それと、その話が本当なら仮に全員とその契約を結んだとしたら俺自身はどれだけの数の指輪を所持する事になると思う?」

 

「いえ、大佐に所持して頂くのは一個だけです。結婚相手が増えた場合はその都度指輪を一時本部で預けて頂き情報を更新します」

 

「結婚相手のか?」

 

「そうです。一見するとただの指輪ですが、なかなかに高度な技術が詰め込まれているようです」

 

「ふーん……」

 

「あの」

 

「ん?」

 

「大佐は重婚がお望みですか?」

 

「例え話だ。仮の話だ」

 

「……そうですか。あと、正確には『結婚』ではなく『ケッコンカッコカリ』という方法らしいです」

 

「それでも意味は同じだろう。その事については何か言及はなかったのか?」

 

「気分と雰囲気を考慮して、との事です」

 

「建前にしても何故敢えて結婚なんて言葉を……頭が……ん」

 

提督はその時あることに気付いた。

 

「どうしました?」

 

「艦娘の力を底上げするなんて重要な物を何故お前が俺より先に確認しているんだ?」

 

当然の疑問である。

加賀はその指摘に半歩後ずさる。

表情こそそんなに変わってなかったが、僅かに強張った彼女の顔は明らかに『しまった』という感情を表していた。

 

「……」

 

加賀の表情は変わらないが、取り巻く雰囲気がいつもより少し重くなった様な感じがした。

 

「取り敢えずそれをこっちに渡せ」

 

加賀に向かって手を差し出す提督。

だが彼女は更に半歩後ずさる。

 

「もうそこに置いてありますが?」

 

「1つだけだろう。2つで一組のはずだ」

 

「元帥閣下、私と結婚してくれませんか? 好きです」

 

雰囲気も何もあったもんじゃない突然の告白だった。

あまりにもの唐突の告白に加賀のその行動は、提督にはまるで宣告布告の様にも思えた。

 

「持ち上げすぎだ。機嫌取りのつもりか?」

 

「結婚……」

 

加賀らしくもない未練がましい態度だった。

表情もいつものポーカーフェイスと違って若干拗ねている様に見える気がしないでもない。

 

「加賀、お前は俺の性格を知っているだろう?」

 

「私達を大事にしてくださる優しい方ですね」

 

「兵器として扱うことに対して抵抗感を払拭できていないだけだ」

 

「でも私はそうやって苦悩しながらも、大佐が一身で私たちを守ってくれている事を知っています」

 

「お前たちを戦地へ送り出してる人間に対してよく言う」

 

「出撃は殆ど鎮守府周辺の警備、後は遠征と演習しかしてませんが?」

 

「全部資材の備蓄と節約の為だ」

 

相手が言葉を発すると間髪入れず切り返す言葉の合戦だった。

どちらも一歩も下がる様子はない。

このまま長期戦になるかと思われたのだが……。

 

「ふぅ……相変わらず取り付く島がありませんね」

 

意外にも口合戦の発端となった原因の方から降参撤退を表明してきた。

表情こそいつも通りだったが、加賀の眼は少し悲しそうだった。

そんな彼女に対して提督はすまなそうに帽子を取って目を瞑り、自分に言い聞かせる様にポツリと言った。

 

「お前たちがただの兵器なら良かった」

 

「……指輪置いておきますね」

 

「傷ついたか?」

 

「いいえ。求愛する雰囲気でなくなってしまったので」

 

「悪いな」

 

素っ気ない事この上ないが、気持ちの籠った謝罪であることは加賀には解った。

だからこそ彼女は次にこう訊く事ができた。

 

「大佐、どうすれば私たちを受け入れてくれますか?」

 

提督は溜め息をついて椅子にもたれながら言った。

 

「分からん。こればかりは」




はじめまして。
加賀良いですね。
でも俺は足柄が一番好きです。


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第2話 「執務室」

提督の執務室は提督が居ない時は許可なく出入り自由です。
居る時は秘書艦でも許可がないと入れません。


提督の執務室の前に一人の駆逐艦の艦娘がいた。

 

「あ、今大佐いないんだ」

 

「あ、島風ちゃん」

 

近くを通りかかった雪風が島風に声を掛けてきた。

 

「あ、雪ちゃん。大佐は今部屋に居ないからちょっと入ってみようかなぁって」

 

「勝手に入っていいの?」

 

「うん。大佐が自分が居ない時は好きに使っていいて言ってた」

 

「ね、雪ちゃん、入ってみようよ」

 

「そうだね。問題がないなら雪風も大佐の部屋見てみたいな」

 

 

二人はお互いに意思の合致を確認すると、ドアを開けた。

 

「うん。誰も居ないね」

 

「机と椅子だね」

 

「つまんないなぁ。何か面白い物があったらいいなと思ったのに」

 

「あ、でも机にサボテンが置いてある」

 

雪風が指す方向を見ると確かに鉢に入った小さなサボテンが机の隅に置いてあった。

 

「え?あ、ホントだ。ちっさくて可愛い♪」

 

「でも触ったら痛そ」

 

「大佐、サボテンしか友達がいないのかな」

 

島風が悪意のない素朴な疑問を口にした。

普通の人が聞いたら思わず提督に同情してしまうかもしれない。

 

「そういえば命令以外で大佐が誰かと話しているところって、あまり見た事がないね」

 

「誰も居ないなら島風が艦娘の中で最初の友達になれるチャンスかも!」

 

「あ、雪風もお友達になりたい! 大佐あまり喋らないけど優しいし」

 

「そうなの? わたし命令している大佐しか知らないよ?」

 

「この前の演習で殊勲艦に選ばれた時に『よくやった』て褒めてくれたんだよ」

 

「何それズルーい!」

 

島風は間髪入れずに反応した。

島風は自他ともに認められている優秀な駆逐艦だったが、未だに本人は提督から褒められたことがなく、彼女自身もそれを以前から気にしていたらだ。

 

「島風ちゃん強いけど、いつも真っ先に突貫して被弾ちゃうから……」

 

「でもでも、わたし凄く頑張ってるんだよ!」

 

「うーん、雪風はいつも周りの状況を見て行動を判断してから……島風ちゃんも同じようにしてみれば?」

 

「えー、でもそれだと速くない……」

 

「速くないかもしれないけど殊勲艦には選ばれるかもしれないよ?」

 

「そうかなー?」

 

「そうだよ!行動は速くなくても戦果が1番なら良くない?」

 

「1番かぁ……。うん、それも悪くないかも! よーし、そうと決まれば次の演習で出番が来たとき頑張ろうっと!」

 

「ハイです!お互いに頑張ろうね!」

 

生来負けず嫌いの島風は新たなる目的を胸に演習へと闘志を燃やすのだった。

 

――そして程なく演習があり、島風は見事に1番の戦果を挙げて殊勲艦に選ばれた。

 

「島風、今回の演習、動きが良かったな」

 

「えへへ。そうでしょー? わたし頑張ったよ!」

 

「ああ。いつものように突貫すると思っていたら周りの状況に即した素早い動きだった」

 

「速かった!? 本当!? やったぁ♪」

 

『速い』この言葉は島風にとって最上の褒め言葉だった。

歳相応の子供の様に無邪気な笑顔で嬉しそうにはしゃぐ。

 

「ああ、よくやったぞ。島風」

 

ポンっ

 

頭に乗せられた提督の手を少し驚いた目でみる島風。

 

「あ」

 

「どうした?」

 

「わたし、大佐に初めて褒められた!」

 

「そうだったか?」

 

「うん! わたし今すっごく嬉しい!」

 

「そうか。よかったな」

 

「うん!あ、それとね大佐」

 

「ん?」

 

「わたし、大佐が笑ったところも初めて見たよ!」

 

「……」

 

予想外な事を言われて不意を突かれたのか、提督は一瞬言葉をなくした。

 

「どうしたの? 大佐」

 

「いや、そんなに俺は笑ってなかったのかと思ってな」

 

「わたしは初めて見たよ! だからその事も今凄く嬉しいの!」

 

「そうか。偶には笑わないと可笑しいよな」

 

島風の言葉に軽く笑みを浮かべながら提督は答えた。

それは島風が本当に初めて見た提督の笑顔だった。

 

「うん! 島風は難しい顔してる大佐より笑ってる大佐の方が好きだよ!」




島風可愛いですね。
でも潮の方がもっと可愛いと俺は思います。


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第3話 「友達」

友達になるのを忘れていた島風と雪風は早速、提督と友達になりに行きました。
しかし何も仲良くなりたいのは島風と雪風だけではなかったのです。


「友達になってほしい?」

 

意表を突いたお願いに提督は若干驚いた声を出した。

 

「うん!」「はい!」

 

それに対して島風と雪風が元気よく返事をする。

 

(夜中に勢い良く訪ねて来たと思ったら、これはまた予想外なお願いだな)

 

「二人ともいいか? まずお前たちは友達云々以前に俺の部下であることを忘れてはならない」

 

「そんなの分かってるよ! ちゃんと命令は聞いてるでしょ?」

 

「雪風も分かってます。それでも今より大佐と仲良くなる為に友達になりたいんです!」

 

「まぁ待て。それとな、二人は部下である前にへ……」

 

提督は唐突に黙った。

この言葉は出来るなら使いたくない。

この見た目も中身も子供と変わらない二人の前では尚更だ。

 

「? どうしたの大佐?」

 

「大佐?」

 

島風と雪風は純心な目で不思議そうに提督を見る。

 

「……まぁ、お互いに軍属で、上司と部下の関係だから友達はちょっと難しいんじゃないかと」

 

「ええー!?そうなのー!?」

 

「雪風は、それは……」

 

提督の言葉に二人は一緒に残念そうな声を上げた。

 

「ああ、だから悪いが今回は諦めるように」

 

「でもでも、それでもやっぱり島風は大佐と仲良くなりたいよ!」

 

「雪風も大佐と友達になりたいです!」

 

やはり精神年齢が若干幼い所為だろう、島風と雪風は駄々とまでとはいかないが、納得がいかないことに関しては子供の様に退かなかった。

 

「仲良くはしてやれるかもしれないが、友達はな。おい、ちゃんと聞き――」

 

 

「失礼します」

 

提督が不意に声が聞こえた方を振り向くと加賀が扉の前に立っていた。

 

「加賀……」

 

「あ、加賀さん」

 

「申し訳ございません。扉が開きっぱなしだったものですから」

 

加賀はいつも通りの涼しい顔で提督に謝罪と釈明した。

 

「ねぇ聞いて加賀さん。わたし、大佐と友達になりたいの。でも大佐がそれは無理なんだって」

 

そんな彼女にまるで親に訴える子供の様に島風が先程の話をしだした。

 

「あら」

 

「何か大佐と仲良くなれる方法はないでしょうか……加賀さん」

 

雪風も加賀の元へ行き、彼女の服の裾を掴んで相談してきた。

 

「二人とも落ち着いて。大尉?」

 

加賀は表情こそいつも通りだが目が提督を非難していた。

 

「どれだけ重い失態を俺はしたんだ」

 

提督は溜息を吐きながらも加賀の非難を受け止めた。

是非もない。

非は明らかに自分にある。

 

「私も大佐と仲良くなりたいのですが?」

 

「む……」

 

半ば予想はしていたが、やはり加賀は島風達の味方に付いたようだ。

島風と雪風は加賀の加勢に目を輝かせて嬉しそうな顔をし、自分達と同じ願いに提督がどう答えるのか見守っていた。

 

「え!? 加賀さんも!? 加賀さんも大佐と友達になりたいの!?」

 

「雪風達と一緒なんですか!?」

 

「ええ、そうよ。私も大佐と笑いあえる様な夫婦みたいな仲になりたいの」

 

「おい」

 

一言余計だった。

二人と同じはずだった願いが一人だけそれを飛び越えて宿願になっていた。

 

「大佐、仲良くなる事は悪いことではありませんよ。お互いの信頼関係を築くことは任務の遂行にも影響しますから」

 

「そうくるか」

 

「大佐は私達の事が嫌いなのですか?」

 

「む」

 

加賀の更な攻勢に提督は顔をしかめた。

この質問は反則だった。

こんな事を言っては……。

 

「え!?」

 

「そ、そうなのですか!? 大佐」

 

予想通り“嫌い”という言葉に敏感に反応した二人が泣きそうな顔をしていた。

 

「……」(これは流れを掴まれたな……)

 

提督は内心勝敗が決したのを確信した。

故にこう言うしかなかった。

 

「嫌いでは、ない」

 

「ホント!? 嘘じゃない!?」

 

「雪風は、雪風は安心しましたぁ……」

 

島風と雪風は提督の言葉にさっきまで泣きそうだった顔はどこえへやら、今度はパッとした明るい笑顔で心から嬉しそうな顔をする二人。

 

「大佐、確かに任務実行中はそうはいきませんが、待機中にお互いに僅かな暇くらいなら多少はいいのでは?」

 

「そう、だな」

 

提督は最早妥協するしかなかった。

自分でこう言った以上はできる範囲で尽力するのが筋というものだ。

加賀は、渋い顔をしながらも自分たちのお願いを聞いてくれた提督に普段とは違った柔らかい声で言った。

 

「大佐、私は貴方に余裕を持って欲しいのです」

 

攻めていたと思いきや次いで提督をフォローする発言。

戦略としては悪くなかった、否、実際に成功していた。

 

(勝負あり。いや、これ以上は俺がやる気になれんな)

 

「分かった」

 

提督はポツリと言った。

 

「友達になってくれるの!?」

 

「そうなのですか!?」

 

その言葉に島風と雪風は今度は加賀から提督へ興奮した様子で近寄って来た。

そんな二人に提督は改めてはっきりと言った。

 

「ああ、そうだ。友達と言うと何かアレだが仲良くはしていこう、か?」

 

「うん!」「はい!」

 

「だが二人とも、節度は守れよ?」

 

「うん、分かった!」

 

「了解です!」

 

「よし、ならもうお前たちは寝るように。約束は守るから」

 

「はーい。大佐、今日はありがとう!」

 

「ありがとうございました! おやすみなさいです!」

 

余程嬉しかったのだろう。

いつもだったらまだ寝たくないと言いそうなところだが、今回ばかりは上機嫌で提督の言葉に素直に従って二人は部屋を出ていった。

 

バタン

 

 

「……加賀?」

 

二人の退出を見届けて提督は静かに加賀を呼んだ。

加賀は内心出過ぎた真似をしてしまったと、提督に叱責を受けるのを覚悟していたが、提督の次の行動は彼女の予想とは違ったものだった。

 

「はい?」

 

(あら 、サボテンの鉢の下に鍵が……引き出しから……お酒……?)

 

提督は引き出しから酒瓶を取り出すと、グラスを2つ机に置いた。

 

「信用の証だ。気を抜いているのを見られたくなくてな。少し付き合えってもらえるか?」

 

「是非もありません」

 

素っ気ない言葉とは裏腹に、加賀は柔らかい笑みで提督の誘いを快諾した。

 

(自分がいうのもなんだが、加賀のこんな笑顔を見るのは初めてだな多分)

 

加賀の笑顔を見て提督はそんな事を思った。




雰囲気的にワインぽいですね。
でも俺は焼酎の方が好きです。


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第4話 「出撃」

あまり出撃しない鎮守府ですが、いざ出撃となると備蓄した資材を湯水のように使います。
艦娘たちは日頃出撃できなくて溜まった鬱憤を晴らすかのように、のびのびと作戦対象海域を駆け回ります。


「今回は数か月ぶりにまともに出撃する。演習と遠征ばかりで退屈していただろうが、時間をかけた分お前たちは戦力としては申し分ない」

 

ワアアアアア!

 

提督の言葉に日頃から身体を動かしたくてうずうずしていた艦娘たちは歓喜の声をあげた。

提督は士気の高さを確認して続けた。

 

「皆、意気軒昂のようで結構だ。さぁお前たち、1日限りだが思う存分駆け回ってこい」

 

『了解!』

 

提督の号令に艦娘たちは一同に承諾の声を上げ、久方ぶりの大規模な出撃はこうして幕を開けた。

 

 

「ふぅ、これで暫く本部から出撃からの催促はこなくなるな」

 

提督は椅子に深く腰掛けて今までに本部から来た出撃を促す電文の数を思い出しながら言った。

 

「大佐、報告です!第四艦隊、南西諸島海域制圧完了とのことです」

 

その日の秘書艦の青葉が早速出撃した艦隊の戦果を報告してきた。

 

「いいペースだな。沖ノ島辺りをもう4、5週してくるように通達。資材、バケツ・は任意に使用することを許可」

 

「了解です!」

 

 

――数時間後

 

「第二・第三艦隊から報告です!北方・西方海域制圧完了とのことです」

 

「制圧してもまた現れるからな。暫く出てこないように制圧しても必ず索敵は3重以上するように通達。掃討は念入りにな」

 

「了解しました!」

 

 

――更に数時間後

 

「第一艦隊より報告!南方海域、サブ島沖までは制圧完了とのこと」

 

「やはりまだサーモン沖は攻略厳しいか。重巡の育成なんとかしないとな」

 

提督は表情には出していなかったが、まだこの海域を制圧し切れない事に対して反省しているかのような厳しい声で言った。

そんな彼に青葉もいつものようなノリの良さは控えて真面目な表情で言った。

 

「そうですね。利根姉妹は練度は高いですけど上位改装はまだできてませんし、衣笠も健闘してくれているのですが」

 

重巡の中でも最も練度が高い利根姉妹と唯一の改二である衣笠は、重巡組の中核的存在であり、青葉の報告から彼女達が奮闘している姿を想像するのは提督にとってそう難しい事ではなかった。

 

(あいつらにはまだ苦労を掛けてしまっているな。早く何とかしてやりたいものだ)

 

提督は心中で彼女達の労を労いながら青葉に指示を出す。

 

「中破による轟沈の可能性ありの場合は入渠優先は徹底。焦らなくても此処に戻ればいくらでも出撃できる。危険海域への強行はせず、余裕を持って制圧可能な海域のみに専念するように通達」

 

「了解です!」

 

 

 

そして作戦開始から数時間後、その日の終わりを告げる時計の秒針が、もう直ぐ0時を過ぎようとしていた頃――

 

「皆ご苦労だった。おかげで轟沈は無く、攻略対象の海域の制圧は全てこれを完了することができた。日付はもう変わる直前だがが、今日はゆっくり休んでくれ」

 

『了解!』

 

皆、戦闘で顔や身体が汚れていたが、一様に何か満足したようなスッキリした顔をしていた。

それなりに長い時間海原を駆けまわっていた筈だが、提督の言葉に応えた彼女たちの声は力強かった。

提督はそんな彼女たちを誇らしくも頼もしく思いながら最後に締めた。

 

「では、解散」

 

 

――それから数分後

 

「青葉もご苦労だった。もう休んでいいぞ、当直は俺がする」

 

「はい。了か……て、え? 大佐が当直をするんですか?」

 

「ああ」

 

秘書艦として執務室に最後まで残っていた青葉は提督の言葉に驚いた顔をした。

 

「でも大佐もずっと作戦の指揮を執っててお疲れじゃないんですか?」

 

「お前たちと違って俺は実戦に出ていたわけじゃないからな。大丈夫だ、体力は十分にある」

 

「でもそれでも一日作戦の指揮を一人でしていたんですから流石ににキツいんじゃ……」

 

「待機組に交代で警備はさせている。俺一人無防備というわけじゃないさ」

 

「いや、そういう事じゃなくて」

 

「青葉、気遣いは嬉しいが本当に問題はない。あと話は変わるが、今度時間がとれたら今回の作戦の成功のことで皆にちょっとしたお礼をするつもりだ」

 

「え、お礼?」

 

意外な言葉に青葉は目をパチくりさせる。

青葉は提督からそんな言葉を聞くのは初めてだった。

 

「そうだ。勿論、しっかり秘書艦として伝令の役割を果たしてくれたお前も例外ではない」

 

「あ、青葉もですか?」

 

「勿論だ。だからお前も今日は休め。どうせお礼を貰うなら万全の状態で良い気分で貰いたいだろう?」

 

「は、はい! 了解しました! ありがとうございます! 失礼します!」

 

バタン

 

 

「……」(でもいくら秘書艦の仕事をしていたと言っても、わたし報告しかしていないかったなぁ……。作戦中の他の執務は大丈夫だったのかな?)

 

青葉は部屋を出た後扉の前でそんな事を考えた。

そして浮かない顔をしながら自室へと戻っていった。

 

 

 

「......」

 

青葉が退室してから数分後、提督は外から彼女の気配が無くなった事を確悟ると、引き出しからその日にこなさなければいけなかった書類を出して片付いていた机の上に積んでいった。

あっという間に出来上がった紙の山を疲労した目でぼんやりと見ながら提督は思った。

 

(流石に多いな。ここに着任してから事務仕事には慣れたつもりだが、これは時間がかかるだろうな。あいつらと仲良くすると言った手前で未だにこんな事をしているなんてバレたら……)

 

「怒るだろうな」

 

提督は誰にともなく一人そう呟き、机の上の書類に意識を集中するのだった。




青葉可愛いですよね。
今回は筆者も意見は変えません。
年を取るごとに徹夜は結構応える様になるので皆さんは気を付けてください。


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第5話 「風邪」(挿絵あり)

疲労してる状態で徹夜で仕事をした提督は風邪をひきました。
いつもクールな艦娘は、あまり見ない光景に気を引かれてしまいます。
提督は何とか仕事をしようとしますが……。


「大佐どうした? 調子が悪そうだが」

 

「風邪をひいてしまったらしい」

 

日向が異変に気付いたのは、その日彼を見た瞬間からだった。

少し悪い目つきが風邪の所為で力なく半目になってしまい、余計に印象が悪くなっていた。

 

「なら何故床に就いて療養してないんだ?」

 

「今日は非番じゃないからな」

 

「昨日の出撃明けで今日からまたいつも通りの演習と遠征なんだろう? それならこんな時くらい休むべきだと思うんだが」

 

「いつも通りだからこそ多少無理が利くんだ。流石に俺だって昨日こんな状態だったら指揮の代行を誰かに頼んで休養したさ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「まぁ心配するな。それよりお前は演習組と遠征組の点呼をしてきてくれ。確認でき次第朝礼だ」

 

「了解した。だが、くれぐれも無理はするなよ?」

 

「ああ、ありがとう」

 

提督は日向の気遣いをありがたく思うと同時に改めて自分の責任を感じた。

逆にそれが相手に心配を掛ける事に繋がってしまうという考えに行きつかないのは、彼の欠点だった。

 

 

――それから数分後

 

「各組の点呼終了。問題なし。大佐、朝礼を」

 

「ああ、皆おはよう。それでは――」

 

 

「――以上。じゃあ遠征組は日向の指示に従って編成ができ次第出撃。演習組は俺と一緒にこのまま工し、しょ……っくひん!」

 

突然の提督の大きなくしゃみに日向とその場にいた他の艦娘たちは目を丸くして提督を見た。

くしゃみでこそあったが、彼の大きな声を聞いたのはこれが初めてだったのだ。

早速提督の列の最前列に居た雷が珍しい物を見たとばかりに声を潜めて隣の電に話し掛けていた。

 

「ねぇ、大佐がくしゃみをしたわよ。見た?」

 

「み、見たのです。大佐のくしゃみ初めて見ました」

 

「……」(本当に大丈夫か?)

 

目を細めて心配そうな顔をする日向。

提督もその視線に気付き、取り繕うに一度咳をすると朝礼の締めを再開した。

 

「んんっ、ふぅ……。失礼、それでは日向、そっちは頼んだぞ」

 

「ん?あ、ああ」

 

流石に誤魔化しが利かない上にバツも悪いので、提督はその日の朝礼が終わると気を入れ直す為にそそくさと顔を洗いに行ったのだった。

{IMG3481}

 

――数時間後、執務室

 

「大佐、遠征組の今日最後の編成と出撃を完了した。後は帰港を待つだけだ。そっちはどうだ?」

 

「ああ。問題ない。A判定の勝利が2つ。それ以外は全てSだ」

 

「ん?大佐、私にはこの勝利判定は敗北のCに見えるんだが」

 

「なに?」

 

日向の指摘を受けて提督が目をこすって再度彼女が指さした報告書の個所を見てみると、確かに記載されていたのはSではなくCだった。

 

「ああ、本当だ。そうかギリギリ負けていたのかこの演習は。通りで反省会をしている時に雷たちが不可解そうな顔をしてたわけだ」

 

「なぁ大佐。本当に大丈夫か?こんなこと言っては何だが、そんな姿初めて見るぞ」

 

「ん……日向、悪いが医務室に行って鎮痛剤を持ってきてくれないか?」

 

流石に今回は注意を受け入れてくるか、そう思って医務室に向かいかけた日向だったが、提督が言った言葉に違和感を感じて向き直った。

 

「鎮痛剤? 感覚を麻痺させてどうする! 風邪薬だろそこは!」

 

「え? ああ、そうだ……な」

 

「あ……いや、すまない。つい怒鳴ってしまった。とにかく大佐はここに居てくれ。薬と医療妖精を連れてくるから」

 

「分かった。頼む」

 

バタン

 

 

日向が去ったあと、提督は先程のことを反省する様に天井を見つめながら思った。

 

(……日向を怒らせてしまったか、初めてだな。……反省しないとな)

 

ガチャッ

 

扉が開く音に提督が気付く。

日向が部屋を出てからまささほど時間が経っていない様に思えた。

 

「ん?早かったなひゅ……」

 

「大佐ァ!風邪をひいたって really!? 大丈夫デスカ!?」

 

「ああん! 金剛に負けちゃったぁ!大佐どうかしたの?」

 

「……」

 

部屋に飛び込んできたのはいつも通りの反応の金剛と、どこから彼女と競っていたのかついでに遊び来た様子の島風だった。

続いて最後に日向が入ってきて珍しく動揺して申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「す、すまん大佐。薬を取りに行く途中でこいつらに話したら――」

 

「大佐ァ大佐ァ!大佐が風邪をひくなんてよっぽどデス! ねえ本当に――」

 

「ああ!金剛ばっかりズルイ! 大佐はわたしの友達なんだよ!」

 

「What?! 大佐ァ! friend ってどういうことデス?! ワタシは friend ではないのデスカ!?」

 

「っ、静かにしないかお前たち!!!」

 

騒がしい二人についに艦隊の中でも代表的なクールビューティの一人、日向の怒りが爆発した。

提督は、本日二度目の珍しい日向の怒声を聞いて彼女には悪いと思いつつも、その時の雰囲気を何となく楽しく感じた。

 

(まぁこれはこれで。元気を貰ったということにしておこう。しかし色々と圧倒されたな今日は)




提督はこの後直ぐに風邪は治ったそうです。
俺は長引くので羨ましいですね。
それにしても戦艦の中ではやっぱり金剛より日向が良いと思います。


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第6話 「釣り」

風邪が治った提督は、艦娘達の勧めで半日程休む事にしたそうです。
因みに当初は1日休む予定でした。
残り半日は前回出撃した艦娘達の報酬を用意するのに使うそうです。
休めよ。


足柄が基地の外を歩いていると、前方に堤防の上に座って釣りをしている提督を見つけた。

確か今日は彼は非番の筈だったが、着ている服は何故か制服だった。

 

「大佐、今日は休みなんじゃなかったの?」

 

「謂わば心の安らぎというやつだ。魚が釣れなくてもにこうして波を見ているだけでも気が休まる」

 

「そういうものなの? ふーん」

 

「そういうお前はどうした? お前だって今日は非番のはずだろう?」

 

「暇なのよ。今日はお酒が呑める人たちは軒並み演習と遠征だから」

 

「そうか」

 

「そうよ」

 

短いやりとりの後おもむろに足柄がポケットを弄ってあるモノを出した。

提督は足柄が出したソレを見て無意識にその物の名前を口にした。

 

「煙草か」

 

「吸う?」

 

「病み上がりに吸う気にはなれないな。それよりよかったら――」

 

「なにそれ。お酒?」

 

水筒にしては小さくて平たい特徴的な形をした入れ物を見て足柄は直ぐに中身を察した。

 

「ああ。スキットルだから回し飲みしかできないが、どうだ?」

 

「……頂くわ」

 

「? どうかしたか?」

 

「ん……くはっ……いやね? 何だか大佐、前と比べて優しく?なったみたいだなって」

 

「ああ、そのことか」

 

足柄の意見に提督は、返してもらったスキットルから一口酒を呷りながら呟くように言った。

その様子に足柄は興味を覚え、上半身を堤防に預けながら提督を見上げて訊いた。

 

「何かあったの?」

 

「島風たちにせがまれてな」

 

「えぇ? ……ぷっ、あはは。あの子達らしいわね」

 

足柄は、島風がいつものように親に絡む子供の様な態度で提督にまとわりつきながらそんな事をせがむ様子を想像して、つい吹き出してしまった。

だがそんな愉快な話題も、提督が次に話した意外な話題で直ぐに何処か行ってしまった。

 

「……それと加賀にもな」

 

「え?」

 

意外な人物の名に足柄は目を丸くする。

だが提督は、それが偽りのない事実である事を証明する様に、特に訂正をすることなく一言で断言した。

 

「事実だ」

 

「へ、へぇ、そう……」(加賀さんが大佐と友達になってくれって言ったての? なかなか想像し難いわね)

 

「まぁ何を考えているかは解る」

 

「意外だわ」

 

「だろう?」

 

「ええ、ホントに。あ、そういえば大佐。加賀さんから伝言があるの」

 

「ん?」

 

「『秘書艦としての事務の仕事、何で黙っていたんですか? これからは私もやりますからね』だって」

 

「……」

 

加賀からの伝言が余程意表を突いたのか、提督はつい持っていた釣竿を握る手の力を緩めてしまい、それを取り落としそうになった。

それを機敏に察知した足柄は艦娘らしい運動能力で片手をヘりに付けながら一瞬で堤防の上に飛び乗ると、その竿を見事にキャッチした。

 

「っと、危ないわね。危うく竿落とすところだったわよ」

 

「すまない」(しまった、油断した。そういえば書類全て出したままだった)

 

提督のバツが悪そうな顔を見て足柄は何故彼がそんな顔をしているのか察した。

そして少し問い詰めるような顔をしながらも心配も窺わせる声で訊いた。

 

「……ねぇ、全部一人でやってたの?」

 

「ああ」

 

「前の出撃の時も?」

 

「ああ」

 

「何でよ? 体壊して当然じゃない。そんなに私たちのこと信用できないの?」

 

「そうじゃない。接し方に悩んでいたんだ」

 

「あたしたちが兵器だから?」

 

「見た目が人間で意思疎通もできるのに兵器と言われてもな……」

 

「そう。大佐も人間らしいとこあったのね」

 

「え?」

 

足柄の言葉に提督は本当に、本当に驚いた顔をした。

自分が人間故に、他人から見てもそれが当然であると無意識に決めつけていたのだ。

だがそれも、不愛想で誰の力も借りずに一人だけで淡々と仕事をしていれば、人間より機械に近い印象を与えるだろう。

提督はその事実を今、自分が今まで接し方に悩んでいた艦娘によって気付かされたのだ。

対して足柄は、彼女は彼女で提督の驚いた顔を初めて見た事もあって、その事に内心動揺していた。

 

「な、何よハトが豆鉄砲食らったような顔をして」

 

「いや……ふっ……はは、そうだな。言われてみれば俺の方がよっぽど人間らしくなかったかもな」

 

「そうよ……」(あ、大佐が笑ってるとこ初めて見たかも)

 

驚いた顔に続いて笑った顔、短い間で提督が初めて見せる面を二つも見た足柄はそれを密かに嬉しく思った。

そしていつの間にか寄り添うように彼の隣に座る形を取っていた彼女は、自分なりに一番優しい顔と声で提督に言った。

 

「ねぇ?」

 

「ん?」

 

「今も悩んでるの?」

 

「……そうだな。まだ完全に吹っ切れたとは言えないな」

 

「そう。でもね、それは普通のことだと思うの。だから、ね?」

 

「ああ」

 

「人間は貴方一人で寂しいかもしれないけど、そういう時は相談くらいしなさいよ?」

 

「……」

 

足柄の言葉に提督は深く考える様に目を瞑って潮風を浴びる。

そんな提督に足柄は彼の方に手置きながら続けた。

 

「わたしたちだってそういう事くらい判るのよ?」

 

「……ありがとう」

 

「心底から感謝してるみたいね」

 

「解るのか?」

 

「ええ。今大佐凄くそういう顔してるもの」

 

「そうか」

 

「そうよ」

 

「……なんか酒が美味くなった気がするな」

 

「ふふ、奇遇ね。わたしもよ」

 

再び酒を呷ってスキットルを見ながら言った提督のそんな一言に、足柄も笑顔で同意を示した。




はい、釣り殆どしてないですね。
リア充爆発しろ。
やっぱり足柄さんは素敵だと思います。


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第7話 「報酬」

今日は前回出撃した艦娘達に報酬を渡す日です。
提督は何を用意したんでしょうか。
出撃しなかったレベルが低い子にはクッキーをあげるそうです。
しかも手作り。


提督「さて、今日は前回出撃したお前たちに慰労の意を込めて報酬を用意した」

 

提督「出撃しなかった組にも細やかではあるが労いの物は用意してるので、今回はそれで我慢してほしい」

 

五十鈴「何を用意してくれたのかしら。楽しみね」

 

響「興味あるな」

 

陸奥「あらら。なにかしら♪」

 

提督「まぁそう急くな。まずは酒だ」ドンッ

 

隼鷹「ひゃっはー!お酒だ―♪」

 

足柄「わかってるじゃない!」

 

霧島「これはこれは......」

 

提督「次はこれだ」トン

 

電「ケーキ! ケーキなのです!」

 

潮「わぁ......たくさん」

 

瑞鶴「いいわね!」

 

提督「お次はこれだ」ドン

 

日向「ほう。これは塩漬け豚か」

 

比叡「美味しそうです!」

 

文月「た、食べてみたいけど食べられるかな」

 

提督「次はこれだな」コン

 

榛名「紅茶ですよ姉さま!それもこんなにいろんな種類」

 

金剛「Nice ネ。大佐!」

 

鳳翔「まぁ日本茶までこんなに」

 

提督「これは、最後になるが......。まぁ、お前たちは見た目は女だから欲しい奴も居るかもと思ってな。ヌイグルミだ」ドドン

 

長門・摩耶・利根・矢矧「!」

 

龍田「あらぁ~? 何か意外な視線を感じちゃったような」

 

北上「へぇ~、いろいろあるねぇ。1個くらいいいかも」

 

提督「後は、食事をバイキングで用意した。赤城、遠慮するなよ」

 

赤城「ありがとうございます!待ってましたよ♪」

 

ゴーヤ「わぁ、いっぱいあるでちねぇ」

 

卯月「卯月嬉しいぴょん!早く突貫したいなぁ」

 

白露「む、一番は譲らないよ!」

 

提督「待機組には自家製のクッキーだ。口に合うかは分からないが、まぁ食べてみてくれ」

 

艦娘達「......」

 

提督「ん? 意外か?」

 

妙高「そ、その。失礼ながら驚きました」

 

暁「お菓子を作れるなんて大佐やるじゃない!」

 

多摩「にゃにゃ、ちょっと羨ましいにゃ」

 

提督「分かってると思うが。報酬も料理も大目に用意してある。余ったりしたら待機組とも分けるようにな」

 

通常戦力組「はーい!」

 

待機組「ありがとうございます!」

 

提督「それでは待たせたな。始めようか」

 

艦娘達「わぁぁぁぁ」

 

 

ガヤガヤ

 

 

提督「ふぅ」

 

加賀「お疲れ様です大佐」

 

提督「ああ。ありがとう加賀」

 

加賀「ところで報酬の中に指輪がなかった様ですが?」

 

一部の艦娘達「......」ピク

 

提督「あんなもの報酬として出すもんじゃないだろ。あの前提を気にせず使うにしても常に指輪を見られるのはちょっと、な」

 

加賀「私は構わないんですけどね」

 

提督「何でお前はそう積極的なんだ」

 

加賀「好きだからですが?」

 

提督「この基地に男は俺だけだからそう感じてしまっているだけかもしれないだろう?」

 

加賀「いいえ。この気持ちは本物です」

 

提督「だとしても俺にはまだ受け入れる用意はない」

 

加賀「いつかその鉄壁爆砕してあげますよ少尉」

 

提督「物騒な事を言うな。尉官最下位一歩手前にするほど悔しいのか」

 

加賀「一歩手前にしたのは情けですよ」

 

提督「もう少しお手柔らかに頼みたい」

 

大井「あの、指輪って何のことですか? 」

 

提督「む?」

 

加賀(しまった)

 

大井「いえ、わたしは北上さんがいるから気になりませんけど。念のため一応教えてもらえますか?」

 

神通「え? 指輪って何の事ですか?」

 

初春「ほほう? 面白そうな事を話しておるな?」

 

扶桑「指......輪?」

 

提督(本能が一時撤退して部屋に閉じこもれと言っている」

 

利根「んん? 大佐何処へいくのじゃ?」

 

不知火「怪しいですね。彩雲と水上観測機準備お願いできますか?」

 

千代田・蒼龍「了解」「任せて!」

 

提督(何なんだ? どうしてこうなった?」ダッ




ハーレムですね。
でもこの提督はまだ誰にも恋慕を抱いてない硬派な男、という設定です。
俺も早くケッコンカッコリしたいもんです。


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第8話 「女子会」

前回の慰労会で指輪の事知った艦娘が増えました。
加賀さんらしくもなく、爪が甘かったようです。
提督は部屋に立てこもって凌いだみたいですが、艦娘達の間では指輪の話題が流行ってるようです。


深夜、翔鶴の部屋にて。

 

翔鶴「指輪......ねぇ」

 

イク「そうなの!イク聞いちゃったの!」

 

龍驤「せや!何でも聞くところによるとその指輪で大佐と結婚できるらしいで!」

 

那智「なんだ。お前たちは大佐と結ばれたいのか?」

 

夕立「ん~、確かそれって元々夕立達の力を上げる為の道具っぽいて聞いた気がするよ?」

 

あきつ丸「なるほど。つまり結婚とはあくまで建前のようなものなんですね」

 

愛宕「だとしても実際に使ったらお互いに指輪を嵌めることになるのよね。ふふ、照れるなぁ♪」

 

天龍「ここにもう結婚した気の奴がいるみたいだぜ?」

 

如月「あら、いいじゃない。如月は大佐のこと結構好きよ?」

 

時雨「そうなのかい?」

 

夕張「大佐、最近柔らかくなったっていうか優しくなった気がするものね。ポイント高いかも」

 

那珂「うんうん。やっぱり結婚は置いておくにしても今よりパワーアップするのは魅力的よね!」

 

川内「その、指輪を嵌めるのも......なんだか、大佐にとって特別な存在になったみたいで悪い気はしないわね」

 

阿賀野「何だかんだ言って皆結構乗り気みたいね。でも一つだけ問題があるわよ?」

 

菊月「そうだな。問題というよりはまぁ強敵といった方が適当か」

 

山城「加賀と金剛ね」

 

叢雲「二人とも対照的な感じだけど大佐に対する好感度は目に見えて高いわよね」

 

木曽「叢雲はよく判るな。あんなに表情が硬い奴なのに」

 

三隈「そういう人ほど情熱が目に見えて滲み出てるものだから。結構判っちゃうものよ?」

 

島風「そうなんだー」

 

筑摩「取り敢えず、今のところの意見をまとめてみましょう」

 

鈴谷「みんな結婚には興味ある人ない人がいるっぽいけど、今より強くなれちゃうことには全員興味ある感じ?」

 

足柄「そういう事ね」

 

衣笠「じゃぁ、問題はどうやって加賀さんと金剛さんより先に大佐に気に入られるかって事?」

 

翔鶴or祥鳳「それはちょっと難しいかもね。大佐、別にわたしたちの事嫌ってるみたいじゃないけど、こう......」

 

羽黒「うん......ちょっと壁みたいなのを感じるよね。艦娘という存在自体にまだ慣れてないみたい」

 

利根「なるほどそれは確かに厄介じゃの。気持ちは解らんでもないだけに」

 

明石「別に取り入ることにそこまで躍起になる必要はないんじゃないかしら?」

 

初雪「ん? どゆこと?」

 

若葉「別に取り入らなくても、こいつは相棒として信用できるって信頼を勝ち取ればいい」

 

高雄「なるほど」

 

由良「今まで以上に頑張らないと」

 

望月「でも、それだけじゃダメだな」

 

白雪「そうですね。自己主張も程ほどに、この娘は信頼できるっていう活躍をしないといけないですね」

 

曙「ふふん、やってやろうじゃないの!」

 

阿武隈「な、なんか駆逐艦の子達のやる気凄いね......」

 

加古「これは負けてられないな!」

 

瑞鳳「それじゃ結論はそれでいい? お互い恨みっこなし、全力でがんばりましょう!」

 

一同「おー!!!」

 

 

同時刻、執務室

 

バキッ

 

加賀「どうしました?」

 

提督「万年筆のペン先が折れた......」

 

加賀「力を入れ過ぎたのですか?」

 

提督「そんなはずは......」

 

提督「まぁ、代わりはあるからいいが」ガラ

 

提督(引き出しにこんな書類が)

 

『ケッコンカッコカリを複数使用したい場合は、自費にて申請することで指輪は用意可能』

 

提督「頭が痛い......」

 

加賀「大佐?」

 

提督「いや、なんでもない」




皆の好感度がMAXじゃないところがまだ許せますよね。
そのうちに全員惚れたりするのだろうか。
流石に所有してる艦娘全員出すことはできませんでした。
キャラ付けできてるといいな。


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第9話 「料理」

裏で色々動いていそうなことを何となく予感しつつも、実態は不明なので提督は取り敢えず気にしないようにしたみたいです。
今は昼食時、提督は食堂には行かず自分で作ることにしたようです。


ジャッ、ジャッ、シュー

 

伊勢「あら? なんか良い匂い。執務室から?」

 

コンコン

 

伊勢「伊勢です。入ってよろしいですか?」

 

提督「ああ、いいぞ」

 

伊勢「大佐、何を......」

 

提督「ん?ああ、まぁ驚くよな」

 

伊勢「執務室に調理台なんてありましたっけ?」

 

提督「いや、なかった。用意したんだ」

 

伊勢「またなんで」

 

提督「元々物がなくて殺風景な部屋だったからな。せっかくだから無駄に空いてるスペースを我儘に使わせてもらうことにしたんだ」

 

伊勢「それでこれを?」

 

提督「そう。偶にこれが食べたくなるんだが、知っての通り此処にはパスタを食べられる所がない」

 

伊勢「それで自分で作って食べる為に?」

 

提督「そうだ」

 

伊勢「はぁ、なんか凄いですね。以前の大佐からはちょっと考えられないというか」

 

提督「それは俺も思う。ま、それもお前たちのおかげだ」

 

伊勢「どういう意味です?」

 

提督「多少気が楽になって感謝しているという事だ」

 

伊勢(何かあったのかしら)

 

伊勢「ま、まぁいいです。よく分かりませんけど」

 

伊勢「それでこれはなんという料理ですか?」

 

提督「ペペロンチーノだ」

 

伊勢「ペペロ......」

 

提督「馴染みがないみたいだな。食べてみるか?」

 

伊勢「え? いいんですか?」

 

提督「好物だから二人分作る癖があってな。どうだ?」

 

伊勢「あ、それじゃ頂きます」

 

提督「分かった。それじゃもうでき上がるから卓に着いて待ってろ」

 

伊勢「はい」

 

 

――数分後

 

提督「お待たせ」

 

伊勢「わ、ありがとうございます」

 

提督「遠慮せず食え」

 

伊勢「それじゃ頂きますね」モグモグ

 

伊勢(ちょっとピリッとして辛いな。でも味自体はあっさりしてて丁度良いかも)

 

提督「どうだ?」

 

伊勢「美味しいです」

 

提督「そりゃ良かった」

 

伊勢「あ、でもすいません。せっかく好物で多めに作っていたのに」

 

提督「気にするな。俺もお前と昼飯を食うのは初めてだしな。良い機会だ」

 

伊勢「あれ?秘書艦でも一緒に昼飯を食べた事なかったですよね?」

 

提督「そういえばそうだな。なかなか新鮮な気持ちだ」

 

伊勢(ていうことは、わたしが初めて一緒に食事をした相手になるんだ。例の競争もしかしてわたしが一歩リードかも!)

 

提督「どうかしたか?」

 

伊勢「いいえ。なんでも」

 

提督「そうか?」

 

伊勢「ええ。ご馳走様でした。ありがとうございます」

 

提督「こちらとしても美味しく食べてもらえたようで何よりだ」

 

伊勢「本当に美味しかったですよ。また食べてみたいですね」

 

提督「食べたくなったら言いに来い。材料があったらまた作ってやる」

 

伊勢「え!本当ですか!?」

 

提督「やけに食いつくな。そんなに気に入ったか?」

 

伊勢「え?あ、はい。結構」

 

提督「そうか。作った甲斐があったな。また一緒に食べよう」

 

伊勢「はい!失礼します」バタン

 

 

――扉の向こう。

 

伊勢(おお!?これは伊勢さん一歩どころか大きくリードしたかも!)ガッツポーズ

 

伊勢「~♪」ルンルン

 

 

――執務室。

 

提督(鼻歌が聞こえたような。伊勢の奴かなり気に入ったみたいだなこれ。誰かの為に飯をつくるのも良いもんだな)




よくあるすれ違いですね。
でもこれは鈍感とは違うと思うのでまだフォローのしようはあるでしょう。
ペペロンチーノ好きなんですよ。
あ、でも俺は伊勢より日向に食べて欲しかったな。(ア


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第10話 「改造」

再び遠征と演習を繰り返す日々の中でようやく利根姉妹が改二に改造できるレベルに達したようです。
待ちに待った最新の強化に心ときめく姉妹二人。
これでようやくサーモン沖の攻略が楽になると心の中で安堵の息を吐く提督。
気持ちは違えど気分が良いことには変わりがない3人ですが、彼らを待ち受けていたのは予想外の結果でした。


提督「改造ができない?」

 

鳥海「はい。なんでも利根型の上位改造は極めて機密性の高い新鋭の技術を用いる為、本部が認める程度の戦果を挙げた者にしか改造許可は下りないそうです」

 

提督「それがこの勲章というわけか」

 

鳥海「そうです。大佐は残念ながら一隻改造する為に必要な勲章が一つだけ足りないみたいです」

 

提督「なるほどな。仮にもし改造できたとしても、今の所持数じゃ利根か筑摩のどちらか一隻だけだったというわけか」

 

鳥海「最近一時的に確認された海域を最深部まで制圧できていれば何とかなったかもしれませんが」

 

提督「それこそ無理だっただろう。今の俺たちの戦力ではあそこまでの制圧は不可能だった」

 

提督「どちらかというと我が艦隊は守りに向いているからな。無策な強行ほど怖いものはない」

 

鳥海「はい......」

 

提督「利根に筑摩もいいな? 気にするな」

 

利根「大佐、誠に申し訳ないのじゃ......」

 

筑摩「ぐす、大佐ごめんなさい......」

 

提督「だから気にするなと言っているだろう? それに原因を挙げるとしたら結局は俺が碌に出撃しないで勲章を軽視していた所為だ」

 

利根「そんな。大佐は......!」

 

筑摩「そうです。大佐は悪くありません!」

 

提督「分かった。分かったからもう泣くな。お互い様だ。いいな?」

 

利根・筑摩「「はい」」

 

提督「よし。今日2人は非番でいい。ゆっくり休んで英気を養え」

 

利根「了解。忝い......」

 

筑摩「ありがとうございます。失礼ます」

 

トボトボ

 

 

提督「ふぅ......」

 

鳥海「2人とも凄い落ち込み様でしたね」

 

提督「無理もないだろう。重巡の中で衣笠が先んじて改二になってから随分待たされていたからな。」

 

提督「俺だってこう見えて結構唖然としてる」

 

鳥海「そうですね」

 

提督「だが、遅かれ早かれ重巡も含めて全ての艦娘が改二に何れなる筈だ。鳥海もあまり気にせず待っていてくれ」

 

鳥海「え?わ、わたしは別に気にしてませんよ?」

 

提督「そうか? まぁそれならいい」

 

提督「さて、改造の予定がなくなったおかげでこちらの時間も余ってしまったな」

 

鳥海「ふふ。何処か気晴らしに行きますか?」

 

提督「そうだな。せっかくだから落ち込んでる利根達も誘ってみるか」

 

鳥海「いいと思います。それじゃぁ何処に――」

 

コンコン

 

提督「ん?」

 

Bis「大佐、居ますか?ビスマルクです」

 

提督「マルクか。入っていいぞ」

 

Bis「失礼します」

 

鳥海「あら?マルさんは今日は近代化改装の予定じゃなかったの?」

 

Bis「え、ええ。そうだったんだけど......」

 

提督「どうかしたのか?」

 

Bis「その、私の改装のことで話が」




前書きが長かった割に本文少ないですね。
全部収めようするとちょっと長くなりそうだったので切りました。
利根はお姉さんの割には妹と比べて子供っぽいのが良いですね。


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第11話 「勲章」

改造の話がおじゃんになった後に気晴らしに何処かへ行こうとかと思案してたら意外な娘が提督を訪ねてきました。
普段のしっかりした印象とは異なり少し落ち着きがないビスマルクの様子に提督は首をかしげます。
何があったんでしょう。


提督「ふむ。つまり俺は元々勲章を7個持っていたと」

 

Bis「そうなの。この前の出撃よりもう少し前に一時期確認されてた海域があったじゃない?」

 

提督「ああ。丁度鳥海と話していたところだ。それがどうした?」

 

Bis「あの海域、最深部までは攻略できなかったけど確かその一歩手前くらいまでは行けてたわよね?」

 

提督「ああ。あまり気乗りはしなかったが、出撃してみると意外に順調に進撃できたな。新入りも見つけることが出来たし」

 

鳥海「天津風ちゃんと明石さんですね」

 

Bis「まぁその子たちの事は置いといて。で、その一歩手前までの海域なんだけど実は攻略成功者は勲章授与の対象だったの」

 

鳥海「提督?」

 

提督「いや、俺もそれは知らなかった。というより勲章自体授与されてなかったからな」

 

Bis「あ、あの。別に隠していた訳じゃないの。あの時って確か私が秘書艦だったじゃない?」

 

提督「ああ」

 

Bis「丁度その時に。大佐宛に特定海域攻略の褒美ってことで勲章が届いていたの」

 

鳥海「勲章が届いたということは。その限定海域が消失した後という事ですか?」

 

Bis「そう。私は伝令くらいしかやることがなかったから直ぐに大佐に報告しようとしたわ。でも......」

 

提督(何か嫌な予感がするな)

 

鳥海「でも?」

 

Bis「大佐、凄い数の書類の山の中で机に突っ伏して寝てたの」

 

提督「......」

 

提督(そういえばあの時一瞬意識が遠のいていた記憶があるな)

 

Bis「私大佐の手伝いをしようと思ったけど事務の仕事とか教えってもらってなかったからどうしようもなくて......」

 

Bis「かと言って勲章も届けずにその場を去ることもできなくて。だから......」

 

鳥海「どうしました?」

 

Bis「直ぐに気付けるようにって大佐の服のポケットに勲章を入れておいたの」

 

提督「......」ゴソ

 

提督(あった)

 

Bis「ごめんなさい! 私その事を今の今まですっかり忘れていたの!」

 

提督「いや、マルク。そんなに謝らなくていい。そもそもそれは――」

 

鳥海「そうですよマルさん。そもそもそれは、大佐が私達の事を信用してくれなくて一人で全部仕事をやっていた所為なんですから」

 

提督「鳥海、それは違――」

 

鳥海「そうですよね? 大佐」

 

提督(鳥海の奴、顔は笑ってるんだが明らかにこれは怒ってるな。こいつこんなに威圧感があったのか)

 

提督「まぁ......その、悪かった。マルクもすまなかったな」

 

Bis「え!?そんな。大体今回は私が全体的に――」

 

鳥海「マルさん、ここは素直に大佐の謝意を受けておいて下さい」

 

Bis「でも流石にそれは......」

 

鳥海「こういう事の積み重ねが今の大佐には大切なんです。ね?そうですよね大佐?」

 

提督「はは、ああそうだな。最近は前たちには思い知らされることばかりで困る」

 

提督「そういうことだマルク。これからはもう少しお前の事頼りにさせてもらっていいか?」

 

Bis「は、はい!了解よ。このビスマルクに任せてちょうだい!」

 

提督「ああ。よろしく頼む」

 

Bis「あの、それで大佐。実はもう一つ報告があるのだけど......」

 

提督「ん?」

 

Bis「私が近代化改装を受けずに、ここに来た理由がもう一つあるの」

 

鳥海(もしかして......)

 

Bis「大佐、私も利根たちと同じように改二の改造を受ける事ができるの。でもそれには......」

 

提督「ふむ。もしかして、か?」

 

Bis「そう。私の改造にも勲章が必要なの」




さて、提督はどちらの改造を取るのでしょうか。
正直言って利根も金髪も捨て難いです。
金髪もツインテールにしてくれたら直ぐに彼女に決めるのですが。


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第12話 「一緒」

自分の改造にも勲章が必要なことから、利根達より先に改造を受けることに対してうしろめたさを感じたビスマルク。
彼女は彼女らしく正面から利根姉妹と向き合って勲章の使い道を決めたいと言います。
さて、利根と筑摩の反応は。


利根「なるほど......の」

 

Bis「勲章は7個だけだけど、貴女たちのどちらか一人は改造を受けることができるわ」

 

利根「お主はいいのか?マルさん」

 

Bis「私は今回はいいの。勲章の事を忘れていた件もあるし」

 

利根「そうか......筑摩、どうする?」

 

筑摩「私は勿論姉さんにお譲りします。強くて格好良い姉さんを見るのが楽しみです」

 

利根「そうか。吾輩は筑摩よりお姉さんだからな。姉としての威厳は必要じゃな」

 

筑摩「そうですよ姉さん!遠慮する必要なんてないわ」

 

利根「うむ。それでは、この勲章は......」

 

利根「マルさんに譲る事にする!」

 

Bis「え!?」

 

筑摩「姉さん!?」

 

Bis「何を言ってるのよ! 貰うわけにはいかないわ!」

 

利根「まぁ、そう言わないで受け取ってもらえないかマル」

 

Bis「でも、それじゃ貴女達が......」

 

利根「今回の事、正直にこうして話してに来てくれて嬉しかった」

 

Bis「なら受け取りなさいよ」

 

利根「マルには悪いがそうはいかないのだ。何故なら利根と筑摩は姉妹なのだから」

 

Bis「......」

 

利根「改造を受けるときはやっぱり一緒じゃないと吾輩は嫌なのじゃ」

 

筑摩「ね、姉さぁぁぁぁああああん!」ボロボロ

 

利根「よしよし筑摩。改造、結局もう少し先の事になりそうじゃが、我慢してくれるか?」

 

筑摩「はい!利根姉さんは......姉さんは、やっぱり筑摩の自慢の姉ですぅぅ!」

 

利根「よさぬか筑摩。恥ずかしいではないか」ナデナデ

 

利根「というわけ故、マルさん申し出は大変嬉しいが、今回はお主が使ってくれぬか?」

 

筑摩「わたしからもお願いします。これはマルさんが使ってください」

 

Bis「もう、そこまでされちゃったら受けるしかないじゃない」

 

利根「おお、貰ってくれるか」

 

Bis「ええ。ありがたく頂戴するわ。Danke!」

 

利根「うむ。こちらこそダンクじゃ」

 

Bis「それじゃ、残りの勲章は大佐に預けるわね。利根に筑摩、貴方たちは必ず二人一緒に改二になりなさいよ!」

 

Bis「そして、その時は絶対に私も呼んでよね!」

 

利根「うむ。約束じゃ」

 

筑摩「わたしもマルさんに約束します。二人の晴れ姿、必ずご覧に入れてみせます」

 

Bis「楽しみにしてるわね。あ、それとこれはお誘いなんだけど」

 

利根「む? なんじゃ?」

 

筑摩「なんでしょう?」

 

Bis「大佐と鳥海が気分転換に何処か出掛けないかって言ってるの。一緒に来ない?」

 

利根「何と、大佐も一緒か。これは行かねば、のう筑摩?」

 

筑摩「ええ、そうですね。こんな珍しい組み合わせ滅多にありませんから」

 

Bis「決まりだね。さぁ大佐の所へ行きましこう」

 

 

~同時刻、執務室~

 

提督「なぁ鳥海」

 

鳥海「なんですか? 大佐」

 

提督「誰が今回改造を受けると思う?」

 

鳥海「なかなかズルイ質問ですね。そんなの答えなくても大佐だって分かってるんじゃないんですか?」

 

提督「そうだな。利根だからな」

 

鳥海「利根さんですからね」

 

提督「さて、出かける準備をする前にマルクの改造の予定を立てておくか」

 

鳥海「了解です大佐♪」




利根はやっぱりお姉さんですね。
そして筑摩は本当に姉想いでいい子ですね。
でもやっぱり扶桑姉妹にはある意味敵わないと思います。
ある意味ね......。


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第13話 「お出かけ」

お出かけと言っても基地の敷地から出るわけにはいかないので、そのコースは食堂で食事→周辺を散歩、と大体パターンが決まっています。
そんなお決まりのパターンでも誰かと一緒だとまた気分は違うものです。
そんな雰囲気を提督が新鮮に感じていた時の事です。


イムヤ「あ、大佐だ」

 

提督「イムヤか」

 

利根「何をしておるのじゃ?」

 

イムヤ「ハっちゃん達と宝探しをしてるのよ」

 

鳥海「宝探し?」

 

イムヤ「そうよ。海底って陸と違って色んなものがあるの」

 

イムヤ「その中でも特に面白そうなを探してるってわけ」

 

筑摩「面白そうね。私もやってみたいけど海には潜れないからなぁ......」

 

利根「なんじゃ? 筑摩は泳げないのか?」

 

筑摩「え、いや泳げますよ。勿論」

 

提督「そういえばイムヤ達を除けば全ての艦娘は常に海面に浮いているな」

 

提督「泳げない奴なんているのか?」

 

Bis「そこでなんで私を見るのよ? もしかして戦艦の私は重いから泳げないとか思っているのじゃないかしら?」

 

提督「いや、そこまでは言ってないだろ」

 

鳥海「そうですよ。浮いているといっても常に海上で戦っているわたし達が泳げないわけないじゃないですか?」

 

イムヤ「え~? ホントに~?」

 

筑摩「な、なんですか。その言い方は泳げますよ!?」

 

Bis「そ、そうよ!私こう見えて普通に泳ぐだけだったら貴方に負けない自信があるのよ?」

 

筑摩「そ、そうです。私だって水泳は負けません!」

 

利根「何と。筑摩たちはイムヤ達より速く泳げるというのか?」

 

Bis・筑摩「「え?」」

 

鳥海(あ、墓穴掘ったみたい)

 

Bis「いや、まぁそうね。うん」

 

筑摩「調子が良い時ならまぁ......」

 

提督「凄いな。流石艦娘と言ったところか」

 

Bis・筑摩「「う......」」

 

鳥海(大佐の無自覚の賞賛がプレッシャーになってるみたいね)

 

利根「うむ。天晴じゃ。これは是非見てみたいな!」

 

Bis・筑摩「「えっ?」」

 

鳥海(ここにも天然がいた!)

 

イムヤ「そうね。そこまで言われちゃったら潜水艦としてイムヤも黙ってられないわ」

 

Bis「い、いえ、そこまで本気にしなくてもいいのよ?」

 

筑摩「そ、そうですよ? わたし達だってムキになって少し申し訳ないと思ってるし」

 

利根「何をいうかマルさん、筑摩!ここは一つ海上の軍艦を代表して水泳で勝負してみせい!」

 

Bis・筑摩「「え、ええええええ!?」」

 

利根「吾輩は天晴な泳ぎを見せる筑摩とマルさんが見たいのじゃ」

 

利根「吾輩はそこまで泳ぎは得意じゃないから二人が羨ましいぞ」

 

筑摩「ね、姉さん......」

 

Bis「うぐ......」

 

利根「というわけで大佐。今度何とか都合をつけて水泳大会を開いてほしいのじゃが」

 

提督「大会? 3人の勝負じゃないのか? なんか規模がでかくなってるぞ?」

 

利根「どうせやるなら団体戦がいいのじゃ。さっきからイムヤも目をキラキラさせておるぞ?」

 

イムヤ「いいわね。あたしたち潜水艦の力見せてあげるわ! 早速ハっちゃんたちに相談してくるね!」

 

Bis「え、ちょ。ま......」

 

筑摩「行ってしまいましたね。速い......」

 

鳥海(これ勝てないでしょ)

 

提督「ふむ。マルクたちもあそこまで速く泳げるのか」

 

鳥海(た、大佐......)

 

利根「大佐、頼めるかの?大会」

 

提督「まぁ、考えてみる」

 

鳥海(検討しちゃうの!?)

 

Bis・筑摩「「......」」

 

利根「2人とも静かに燃えているようじゃな。楽しみじゃ!」

 

鳥海(二人とも今回は本当に運が悪かったわね)




艦娘の水着見てみたいですね。
中破グラもいいですけど、魅せる水着もまたいいものです。
それと提督、水着見たいから検討してんですよね?ね?


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第14話 「思案」

まともに秘書艦に仕事を手伝って貰うようになってから、提督の仕事は以前と比べてかなり効率が良くなりました。
そのお蔭もあって今では仕事の合間に秘書艦と取り留めない会話をする余裕もあります。
そんな時に秘書艦の加賀からこんな事を言ってきました。


加賀「大佐、水着大会を開くそうですね?」

 

提督「なんなんだいきなり。それと言い方に物凄く意図的なものを感じるんだが」

 

提督「水泳大会だ。間違っても外で水着大会なんて言うんじゃないぞ。軍人としての資質を疑われる」

 

加賀「大佐は私の水着見たくないのですか?」

 

提督「お前も出るつもりなのか」

 

加賀「勿論」

 

提督「悪いが催し自体はまだ検討中だ。基地を挙げての水泳大会なんて本部ですら前例がないからな」

 

加賀「まぁ開催が簡単ではないのは解ります」

 

提督「先ず第1に本部が許可するとは思えないからやるとしたら秘密裏でないといか

ん」

 

加賀「いきなり難問ですね」

 

提督「ああ。不正はしたくないが現実的に考えて決行するにはこれしかない」

 

提督「第2、許可なしでやる以上発覚に細心の注意を払うのは当然だが、それと同時に催し中でも有事の際は即対応できるようにしなければならない」

 

加賀「当然ですね」

 

提督「第3、これは第1と内容が少し被るが、秘密裏に行う関係上その最中の鎮守府は一見いつも通りに見えなければならない」

 

加賀「これが一番難しい様な気がします」

 

提督「常に交代で周辺の警備を装い警戒する必要があるな」

 

提督「第4、競技を何処でするか」

 

加賀「1・2・3の時点で海は外れますね」

 

提督「そうだ。だからやるとしたら絶対にプールだ」

 

加賀「そんなもの基地にはありませんが」

 

提督「作るしかないだろうな。建造妖精たちに頼んで」

 

加賀「頼むのは私たちに任せてください」

 

提督「いや、それは俺も一緒にやる。一応提督だからな部下だけに任せるわけにはいかない」

 

加賀「分かりました」

 

提督「そして最後、第5だが水泳に適した温暖な気候。これはまぁ......」

 

加賀「ええ。我が鎮守府では問題にはならないですね」

 

提督「これくらいか。何かあるか?」

 

加賀「そうですね。私としてはやはり本部の許可を頂き堂々と行いたいです」

 

提督「今までの議論が全て無駄になるな。だがまぁ最もだ。それが一番には変わりない」

 

加賀「許可さえ取れれば一時的にこの鎮守府周辺の安全の保障を何らかの形で取り付ける事も可能でしょうし」

 

加賀「何より開放的な気分で海で泳げます」

 

提督「最後のがなかったら極まっていたのにな」

 

加賀「惚れていました?」

 

提督「飛躍し過ぎだ」

 

提督「だが、許可か......。そうだな無理を承知で伺いを立ててみるか」

 

加賀「いえ、伺う以上許可を得られなければ本部に疑いを持たれる可能性があります。そうなっては秘密裏に行う事も難しくなるでしょう」

 

提督「失敗は許されない、と?」

 

加賀「いえ、失敗は有り得ません。結果が決まった気持ちでやらなければ」

 

提督「さっきから気になっていたが、何でそんなに気合が入ってるんだ」

 

加賀「泳ぎたいからです。大佐に水着を見せつけたいからです」

 

提督「俺は今の言葉で許可を貰う自信がなくなりそうだ」




提督、許可を貰えるといいですね。
そうすれば思う存分艦娘たちの水着が拝めるので。
描写がR-15くらいになったりして。
タグ追加も考えておきましょう。


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第15話 「結果」

気合の入った加賀さんの言葉を受けて一気に気合が抜けてしまった提督は早速本部、大本営にお伺いを立ててみるようです。
上手くいくといいですね。


提督「許可が下りた」

 

加賀「やりました」グッ

 

金剛「やったネ!これで大佐を悩殺してイチコロにできるネ!」ブイッ

 

提督「金剛、お前何時から居た」

 

加賀「そこは譲れません。金剛さん、その発言宣戦布告と見なします」

 

金剛「フフフー、ワタシの win は揺るがないワ! 今のうちにハンカチを用意しておくといいネ加賀!」

 

提督「金剛、お前も頭の中身は加賀と一緒か」

 

金剛「ノンノン。大佐への love は加賀に絶対勝ってるから一緒じゃないネ!」

 

加賀「流石に頭にきました。覚悟はいいですか? 金剛さん」

 

提督「お前たち、それ以上騒いだら当分の間秘書艦候補から外すぞ」

 

金剛・加賀「「......」」ピタッ

 

提督(全く、二人ともこれで有能なのだから質が悪い)

 

加賀「ですが大佐。私が言うのもなんですがよく許可が下りましたね」

 

提督「ああ。この前の出撃とその戦果報告のおかげだ」

 

加賀「と言いますと?」

 

提督「あの時の出撃でかなり深海棲艦達を一掃しだろう? その後に索敵を何重も行った」

 

金剛「そうネ。お蔭でクリアした海域はとても silent になったヨ」

 

提督「そのことをしっかり報告書としてまとめて提出しただけだ。本部も実際に静かになったその海域を確認して結果に満足したらしい」

 

提督「その結果、自己責任で大会開催中最低限の警戒を怠らないなら、1日のみ許可するというお言葉を頂けたわけだ」

 

金剛「さっすが大佐ネ!」

 

加賀「感動しました」

 

提督「正直、予想以上に上手くいって俺も驚いている。だがこれで心置きなく大会を開けるのは本当にありがたいな」

 

金剛「それでそれで。When is start up?」

 

提督「それは一度簡単な会議を開いて決めるつもりだ。もう少し待て」

 

金剛「待ち遠しいネ♪」

 

加賀「そうね。でもしっかり計画を立てるのは大切だわ」

 

提督「その通りだ。開催の日取りが決まったら全員に通達するから、それまで大人しく待っているように」

 

加賀・金剛「了解しました」「了解ネ!」

 

金剛「あ、大佐。フェスティバルには大佐も参加して下さいネ?」

 

提督「ああ勿論。一観客として参加する」

 

金剛「ノンノン。大佐もフェスティバルに参加ヨ?」

 

提督「......なに?」

 

加賀「金剛さん、貴女何を言ってるのかしら?」

 

提督「そうだぞ金剛。いくら人間と同じように泳ぐからといって、基礎身体能力が違うのだから俺が敵うわけがないだろう」

 

金剛「ダイブならそんなに差は出ないと思いマス」

 

提督「いや、それでも無理だろう」

 

加賀「そうよ。無理にさせるのはよくないわ」

 

金剛「そうデスカー......。ビクトリーとか別にいいから一緒に swim したかったデス......」

 

提督「......分かった。自由時間に泳ぐだけだぞ? 競技には参加しないからな?」

 

金剛「! ノープロブレムね!サンキューネ大佐♪」パァァ

 

加賀「全く仕方のない......」ニマニマ

 

金剛「それじゃ大佐。you lose の時は anyshing my wish を聞いててもらうヨ!」

 

加賀(エニシング......なんでも?)

 

提督「おいお前何言ってーー」

 

金剛「ジャー bye ネ、大佐!」バタン

 

加賀「了解。失礼します」バタン

 

提督「な、待て加......賀」シーン

 

提督(ハメられた......)




提督も勝負に参加することになったようです。
これって有効か?
可哀想な気もするけど、リア充だし仕方ないね!


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第16話 「釣り2」

前回、確信犯2人にハメられてしまった提督は少し落ち込んでいるようです。
見た目は変わらないのですが、釣りをしてる後姿は何となく哀愁が満ちています。
気分転換にまた釣りをしているようですが、そこに現れたのは?


Z1「釣れてる? 大佐」

 

提督「レイスか」←名前が長いので提督が適当に略した

 

Z1「なんか落ち込んでる?」

 

提督「まぁそうかもしれない。少し疲れてた」

 

Z1「無理はしてはいけないよ?」

 

提督「ああ。体力は大丈夫だ。ただちょっと頭がな......」

 

Z1「風邪かい?」

 

提督「風邪だったらまだよかったかな」

 

Z1「一体どうしたの?」

 

提督「俺も今度の水泳大会参加することになった、らしい」

 

Z1「え?ホント!?」

 

提督「ああ、まぁな。泳ぐしかない......よな」

 

Z1「僕たちと泳ぐのが嫌なの?」シュン

 

提督「そうじゃない。俺じゃお前たちには勝てないだろう? それが分かってて参加するのもな」

 

Z1「なんだそんなことか!大丈夫僕が手伝ってあげるよ」

 

提督「手伝う?」

 

Z1「大佐は結果が分かった勝負をするのが嫌なんでしょ? だったら僕がそうならないように手伝ってあげるよ」

 

提督「具体的にどういう風にだ?」

 

Z1「僕の推力を一時的に少し分けてあげる」

 

提督「推力を分ける?」

 

Z1「僕たちが海上で戦う為の加護みたいなものだよ」

 

提督「水の上に浮いているあの能力の事か」

 

Z1「うん。それも加護の一つだね」

 

提督「分けられるものなのか?」

 

Z1「うん。一時的になら大丈夫だよ。効果の時間もある程度調整ができるんだ」

 

提督「反則のような気もするが」

 

Z1「生身じゃ勝つのが難しいのは分かってるんでしょ?だったらちょっとくらい僕たちに条件を近づけても問題ないと思うよ」

 

提督「む......。そう、か?」

 

Z1「うん大丈夫だよ。それにそこまで反則的に速くなるわけじゃないよ?」

 

提督「具体的にどうなるんだ? 推力とか言ってたな」

 

Z1「通常泳いで進む距離の感覚が少しだけ短くなる感じ」

 

提督「なるほど。浮くわけじゃないんだな」

 

Z1「うん。そうだよ。あ、でも明らかに人間の泳ぐ速さは超えるから感覚に注意してね」

 

提督「なるほど。自分の感覚より速度が出ている状態で障害物にぶつかったりしたら危ないからな」

 

Z1「そういう事。あと加護を受けても艦娘の身体能力が優れている事には変わりないから過信は禁物だよ?」

 

提督「そうだな」

 

Z1「あと良い勝負ができるかは大佐の水泳の実力次第だね。どうかな? この提案」

 

提督「そうだな。レイス手伝って貰えるか?」

 

Z1「うん!勿論だよ!」

 

提督「ただ、手伝って貰う上で一つだけ許してほしい事がある」

 

Z1「? 何かな?」

 

提督「大会に参加する前に予め俺がその加護を受けることを皆に公表させてほしい」

 

提督「実際に泳いだら直ぐにバレるだろうし、受けるなら受けるで皆にはそれを納得してもらった上で競技に臨みたいからな」

 

提督「どうだ? 許してもらえるか?」

 

Z1「答えるまでもないよ。大佐ならそうすると思ってし」ニコッ

 

提督「そうか。ありがとう」

 

提督「ところで加護を分かるといっても具体的にどうやって分けるんだ?」

 

Z1「僕の手を握って」

 

提督「こうか?」ギュ

 

Z1「うん。少しだけ待っててね......」スゥー

 

提督に手を握ってもらったレイスは目を瞑想するかの様に静かに瞑ると深く深呼吸をした。

するとレイスの体が淡く青い光を帯び始め、やがてその光は2人を包み込んだ。

 

Z1「はい。終わり」

 

目を開けたレイスはいつも通りだ。

 

提督「これでいいのか?」

 

Z1「うん。終わったよ。効果は10分くらいかな?」

 

提督「特に変わった気はしないな」

 

Z1「陸にいる分には分からないと思うよ。ちょっとそこの海面を軽く掌で凪いでみて」

 

提督「こうか?」チャプ......サッ

 

ザァァァァ

 

提督「ほう」

 

Z1「ね、凄いでしょ?」

 

提督「なるほどな。レイスありがとう。当日も頼む」

 

Z1「うん任せて!あ、それとね大佐」

 

提督「ん?」

 

Z1「替わりというわけじゃないけど一つだけお願いを聞いてもらっていいかな?」

 

提督「協力への対価は当然だ。無理じゃない内容ならいいぞ」

 

Z1「うん。ありがとう、たぶん大丈夫」

 

Z1「その、僕の頭に掌を置いてもらっていいかな?」

 

提督「......こうか?」ポン

 

Z1「あ......うん。ありがとう。ちょっとだけこうしてもえる?」

 

提督「ああ」

 

提督(こうしてみると本当に年相応の子供だな......)




今までで一番長くなってしまった。←ロりじゃない
僕っ子は可愛いですね。←ロりじゃない
Z1は本当に良い子だと俺は思います。←ロりじゃない
Z1の頭に掌を置いた提督は何を考えてるんでしょう。
ちょっと気になりますね。


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第17話 「お酒」

提督はその日の仕事が全て終わるとよく一人で晩酌をします。
今までは一人で飲んでいたのですが、最近は飲み仲間が出来たようです。
特に誘うわけでもなく、その時間帯になると誰かが来るのです。
しかし何故か来るのは必ず一人だけ。
その日も晩酌を始めようとしていた所に誰かが訪ねてきました。


コンコン

 

提督「ん。入っていいぞ」

 

霧島「お邪魔しにきました。大佐」

 

提督「今日は霧島か。これをしに来たのか」クイ

 

霧島「ええ。宜しければ」

 

提督「歓迎だ」

 

 

ーー今日の晩酌開始。

 

提督「......ふぅ。そういえば霧島、一つ訊きたい事があるんだが」

 

霧島「何でしょう?」

 

提督「お前たちが此処へ晩酌に付き合いに来てくれるようになってから気になっている事があるんだ」

 

霧島「気になる事?」

 

提督「ああ。何故いつも来るのは1人だけなのかと」

 

提督「こちらとしても人数が少ないのは自分のペースを保ち易いし問題ないんだが、ただな」

 

霧島「ええ」

 

提督「お前たちの中には特に酒好きなのが何人かいるだろう?」

 

霧島「ああ、隼鷹とか足柄ですね」

提督「そう。そういう奴に限ってこういう場は逃さないものなのではないかと思ってな」

 

霧島「成る程。仰りたいことは分かりました」

 

提督「何か理由を知っているか?」

 

霧島「結論から言いますと。知っています」

 

提督「ん、その口ぶりだと理由は話せない感じか」

 

霧島「隠しているつもりはないんですが......知りたいですか?」

 

提督「無理に聞くつもりはないぞ」

 

霧島「じゃぁ、ちょっとした戯れをしませんか? それに勝ったら話します」

 

提督「ほう。なんだ?」

 

霧島「これです」スッ

 

提督「違い刺しか」

 

霧島「ええ、そうです。零さずに飲むことができたら勝ちです」

 

提督「制服を汚すわけにはいかないな」

 

霧島「あ、やっぱりそうですよね」

 

提督「ああ。脱ぐからちょっと待ってくれ」カタ

 

霧島「え?」

 

提督「よし、やろうか?」

 

霧島「 」

 

提督「霧島?」

 

霧島「あ、えっとごめんなさい。まさか乗ってくるとは思わなくて」

 

提督「ああ。制服を脱いだことか? まぁ今日は当直でもないしな」

 

提督「自分らしくもなくハメを外してみた。お前が乗り気でないならやらないが?」

 

霧島「いえ!自分から言い出したことですし初めてなのでやってみたいです!」

 

提督「俺が最初の相手でいいのか?」

 

霧島「望むところです!」

 

提督(何か気合が入ってるな。どうしたんだ?)

 

提督「そうか分かった。酒はこれでいいか?」

 

霧島「ええ。飲んでみて特に抵抗はなかったので大丈夫だと思います」

 

提督「ん、では?」スッ

 

霧島「はい大佐」スッ

 

提督・霧島「......」

 

提督・霧島「いざ」

 

提督(ゴク......ゴク......)「んぐ、っ」ゴフ

 

霧島(コクコク......ツー)「ん......」

 

提督「ふう。俺の勝ち、か?」ゴシゴシ

 

霧島「......」ポー

 

提督「霧島? おい大丈夫か?」

 

提督(酒が合わなかったか?)

 

霧島「......はっ!?」

 

提督「大丈夫か? 気が遠くなっていたみたいだが?」

 

霧島「ああ、いえあのその......大丈夫です!」キッパリ

 

提督「本当か? 無理はするな。話すのはまた今度でいいから今日はもうここまででいいぞ?」

 

霧島「あ、いえ。思いの外、提督の飲ませ方が上手くて驚いてしまいまして」

 

提督「ああ、あれは俺も我ながら上手くいった思った」

 

霧島「ですからその大丈夫なんですけど、その......」

 

霧島「うん! ごめんなさい!今日はここまでにさせて貰ってもいいでしょうか?」

 

提督「気にするな。こちらとしては楽しかったからな。またやろう」

 

霧島「はい。是非!」

 

霧島「あー、じゃなかった?えっと、申し訳ありません。自分から言い出したことなのに」

 

提督「大分混乱していないか? 部屋まで一人で戻れるか? 誰かつけるが」

 

霧島「だ、大丈夫です! それでは失礼します!」バタン

 

 

提督「......」

 

提督(本当に大丈夫か?)




また長くなってしまった。
まぁ前回と同じくらいだけど。
登場人物が2人だけだと凄く筆(指)が進むんですよね何故か。
今回は好きなお酒がお題だった所為かもしれませんが。
金剛姉妹の中では霧島が一番好きです。
ひえー!はその次かな。


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第18話 「秘密」

提督と晩酌をした次の日の霧島は目に見えて気分が良いようです。
その浮かれように金剛姉妹は興味を持ちます。
一体何があったのか(第三者視点)


~金剛姉妹の部屋

 

霧島「~♪~♪」

 

金剛「あんなに浮かれた霧島を見るのは初めてデス」

 

比叡「そうですね。明らかに私達の知る霧島じゃないですよね」

 

榛名「でもニコニコして幸せそうです。何か良い事でもあったのかな」

 

金剛「比叡と榛名も何があったのか知らないデスカ」

 

比叡「わたしは昨日はやく寝ちゃいましたからねー」

 

榛名「榛名はずっと本を読んでいたので。金剛お姉様も知らないのですか?」

 

金剛「ワタシは昨日ずっと装備の紅茶のブレンドを試してましたからネ。分からないのヨ」

 

比叡「直接本人に聞くしかないようですね」

 

金剛「そうネ。聞いてみまショウ!」

 

金剛「霧島ぁ」

 

霧島「何ですか金剛お姉様?」

 

金剛「随分機嫌が良さそうネ。何かあったノ?」

 

霧島「え?そ、そんなに機嫌が良さそうに見えます?」

 

金剛「もう、very very happy て感じヨ?」

 

霧島「そうですか? えへへ」テレテレ

 

金剛「Oh......霧島、一体何があったのですカ? お姉ちゃんは教えてほしいデス」

 

霧島「別に特に何かあったわけではありませんよ。昨日の夜、大佐の晩酌にお付き合いしただけです」

 

金剛「晩酌? ああ、今足柄達の間で流行ってる晩酌ジャンケンの事?」

 

霧島「そうです。私もあれに参加してるんです」

 

金剛「そうだったノ」

 

榛名「金剛お姉様はお酒を飲まれないのですか?」

 

金剛「飲めない事ないけど美味しく感じないから苦手なのヨ。私は紅茶の方が好きネ」

 

霧島「金剛お姉様も大佐とお酒が呑めるようになればきっと楽しいですよ」

 

金剛「そっか。霧島が機嫌が良かったのはお酒を飲んでたからなのネ」

 

霧島(あ、何だか上手い具合に勘違いしてくれてる気がする)

 

金剛「うーん......ちょっとだけ、頑張ってみようカシラ」

 

比叡「そういう事ならわたしお手伝いしちゃいますよ! ね?榛名」

 

榛名「はい! 榛名も精一杯頑張ります!」

 

金剛「2人とも本当に Thank you ネ!それじゃ早速始めるワヨ!」

 

榛名・霧島「え?」

 

比叡「了解です!まず何から始めますか?」

 

榛名「え? あの?姉様達、一応榛名達は今待機任務中なんですけど......」

 

金剛「Shit! そうでした。私としたことが」

 

比叡「むむ。でも軽めのやつなら少しくらいは――」

 

霧島「大佐に言いつけますよ?」

 

比叡「ひえ~」

 

霧島「ちゃんと飲んでも問題ない時にして下さい」

 

榛名「お姉様、規則は守りましょう?」

 

金剛・比叡「ハイ」「はい」

 

比叡「それにしてもお酒を飲んだだけでそんなに気分が良くなるなんて、もしかして霧島は大佐と何かあったんじゃないの?」

 

金剛「What!? 霧島、何かってナニ!?」

 

霧島「なっ!? 何を言ってるんですか姉様達と榛名は!?」

 

榛名(あ。赤くなった。え、もしかして......!?)

 

比叡「ああっ!霧島、やっぱり貴女何か知ってるのね!?」

 

金剛「霧島ぁ教えるヨ! お姉ちゃんに lecture しなサイ!」

 

霧島「な、何も知りませんから本当に勘弁して下さい!」

 

霧島(ごめん姉様達と榛名。できればあれは霧島だけの思い出にしたいの)




今回は割と短くまとめることができました。
金剛姉妹の中では榛名が一番耳年増だと思います。
年長者が実は一番ウブっていうのは鉄板ですよね。


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第19話 「褒美」

金剛姉妹達が騒いでる頃、提督は演習場で艦隊の訓練の様子を見ていました。
演習や出撃をする前に訓練をして装備の状態や隊列の動きを確認するのは重要です。
各艦隊の旗艦を務める隊長艦は真剣な表情で所属の艦娘に助言や指示を出しています。
そんな時にある隊長が提督の姿を確認して声を掛けてきました。


那智「大佐、どうだ? 私の隊の動きは?」

 

提督「ああ、相変わらず動きが機敏で隙が少ないな」

 

那智「隙が無い、とは言ってくれないんだな」

 

提督「隙が無い艦隊なんてないからな」

 

那智「うむ、違いない。頭から根拠もなく自信を持っていては、それはただの慢心だからな」

 

那智「隙を見せまいと常に用心してこそ立派な軍人というものだ」

 

提督「最近は島風もよく従って戦果も上々らしいな」

 

那智「ああ。あの問題児、一時は私の隊では持て余すかと思っていたが、今では立派に駆逐艦としての役割を果たしてくれている」

 

那智「ほら、噂をすれば影有りだ」

 

島風「あー!大佐ー!」タタタッ

 

提督「島風、頑張ってるみたいだな」

 

島風「うん。わたし頑張ってるよ! 武功第一だってたくさん挙げてるんだから!」

 

提督「そうか。凄いな」

 

島風「えへへー。そうでしょー?だからわたしご褒美が欲しいな」

 

那智「な」

 

提督「褒美?」

 

島風「そう! 頑張ったご褒美!」

 

提督「武功を挙げる度に褒美をせがまれても困るぞ?」

 

島風「大丈夫!物をもらうわけじゃないよ」

 

提督「じゃぁどんな褒美が欲しいんだ?」

 

島風「レイスちゃんみたいにして欲しいの!」

 

提督「レイスみたいに?」

 

提督(なんだ? 俺は何かあの子に何かしてやったか?)

 

提督「何をして欲しいんだ?」

 

島風「わたしの頭をポンポンして欲しいの!」

 

提督「ポンポン? ああ......」

 

提督「これでいいか?」ポン

 

島風「あ。......えへへ、気持ち良い♪」

 

提督(まるで犬だな。撫でてみるか)

 

提督「そうか。これはどうだ?」ナデ

 

島風「んん? あ......すっごく気持ち良い!」

 

提督「そうか。よかった」

 

島風「大佐ありがとう! 次もやってね!」

 

提督「ああ。これくらいだたったら構わないぞ」

 

島風「ホント!? やったぁ♪」

 

島風「よーし何かやる気出てきたぁ。那智さんちょっと走って来ていい?」

 

那智「......」ジー

 

島風「那智さん?」

 

那智「え?あ、ああ。いいぞ」

 

那智「今日はもう演習もないからな。だが程々にしとけよ?」

 

島風「はーい! 行ってきまーす!」タタタッ

 

提督「相変わらず元気の塊のような奴だな」

 

那智「そう......だな」

 

提督「那智? どうした?」

 

那智「ああ、いや。その、さっきの褒美の撫でるやつだが」

 

提督「うん?」

 

那智「あれは全員にやっているのか?」

 

提督「いや、今のところレイスと島風だけだ」

 

那智「そうか。大佐、それは......駆逐艦にしかやらないのか?」

 

提督(那智の奴どうしたんだ? 歯切れが悪いな)

 

提督「まぁ、見た目が子供に近いのは駆逐艦だけだからな。やるにしても駆逐艦にした方が自然な感じがするが」

 

那智「そうかもしれんが、別に重巡の中にもやって喜ぶ奴だって居ると思うぞ?」

 

提督(まさか)

 

提督「......」

 

那智「......」ジッ

 

提督「那智」

 

那智「な、なんだ?」

 

提督「少し近くに」

 

那智「! ああ、分かった」トトッ

 

提督「......」ソッ

 

那智「ん......」

 

那智「もう、いい十分だ。......大佐」

 

提督「ん?」

 

那智「ありがとう」

 

提督「ああ」




足柄さんも最高だけど那智も結構良いですよね。
艦娘が見た目より従順だたり純情だったりするのは、やっぱり育つ環境が人間と違うからだと思います。
だからついアニメ的な設定と思いがちでも、世界観的には十分有りなんじゃないかと。


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第20話 「発覚」

今日、提督はお休みです。
休日というわけではなく、寝ています。
どうやら寝床に突くのが面倒でそのまま机に突っ伏してしまったようです。
その様子を就寝前に偶然発見したその日の秘書艦が提督を起こそうとしたのですが......。


瑞鶴「何よ......これ」ペラッ

 

瑞鶴(開くページ開くページに半裸の男が笑顔でポーズを取ってる)

 

瑞鶴(表紙は男物ファッション誌っぽいけど、それにしても表紙ですらなんかちょっとアレな感じがする)

 

瑞鶴(大佐は殆ど基地にいて、軍服を着てる姿しかわたしは見たことがない)

 

瑞鶴(つまり大佐はファッション以外の目的でこの雑誌を持っていたことになる)

 

瑞鶴「これは......っ」

 

瑞鶴「大佐! 大佐! ちょっと起きなさい!!」ユサユサ

 

提督「ん......瑞鶴か。すまん寝てしまっていたか」

 

瑞鶴「そんなことはどうでもいいの! それよりなんなのよこれは!?」

 

提督「一体何を騒――」←瑞鶴が持っている雑誌が視界に入った

 

瑞鶴「......」

 

提督「......」

 

提督「まぁ、そのなんだ。命に懸けて断言するが俺はそういう趣味はない」

 

瑞鶴(何とか平静を装うとしてるけど明らかに狼狽してるわね。でも目は嘘を言ってない)

 

瑞鶴「じゃぁ、なんなの? これ」

 

提督「説明するから落ち着け」

 

提督「ほら、これに座れ」

 

瑞鶴「......」ムスッ ←椅子に腰かける

 

提督「まず端的に理由だけを言う」

 

瑞鶴「ええ」

 

提督「男を忘れない為だ」

 

瑞鶴「! やっぱり大佐、貴方......!」ガタッ

 

提督「待て。今のは言い方が悪かった。違う。取り敢えず座れ。落ち着け」

 

瑞鶴「......分かった」スッ

 

提督「ふぅ......。この基地は男は俺だけだろう?」

 

瑞鶴「え?」

 

提督「正確に言うと、人間の男性は俺だけだろう?」

 

瑞鶴「え、ええ。そうね」

 

提督「この仕事をずっとやっているとな。信じられないかもしれないが、男というものがどういうモノであったか分からなくなってくるんだ」

 

瑞鶴「へ?」

 

提督「分からないというよりは男の姿に関する記憶が薄れていく感じだな」

 

瑞鶴「え? え? どういうこと?」

 

提督「つまり、男一人大勢の女性に囲まれてる影響で自分が男である自信がなくなってきてしまったんだ」

 

瑞鶴「ええ!? だって大佐どう見たって男じゃない!」

 

提督「まぁ、お前から見たらそうだろう」

 

提督「だが俺にとっては男に関する情報は偶に無線で上官と話すときに声を確認するくらいだ」

 

『姿は見えないが、今は話している相手の声は間違いなく男のものだ。俺は今男と話している。だから俺は男だ』

 

提督「と、軽く自己暗示を掛けないと最近は精神的にきつくなってきたんだ」

 

瑞鶴「し、信じられない......」

 

提督「お前たちの事を狼だと言うつもりはないが、狼の群れの中に立った一匹だけいる羊の心境と言えば解り易いか」

 

瑞鶴「なる......ほど?」

 

瑞鶴「じゃ、じゃぁこの本は?」

 

提督「厳重な本部の検閲を躱して何とか手にいれたお守りのようなものだ」

 

瑞鶴「これが......?」

 

提督「そうだ。馬鹿みたいに思うだろうが、それで自分以外の男を認識することで自分が男である自信が持てるんだ」

 

提督「お蔭で今はすこぶる調子が良い」

 

瑞鶴「なんか大佐が凄く可哀想になってきた」

 

提督「やめろ。そんな目で俺を見るな」

 

瑞鶴「普通、これだけ女子に囲まれていたら喜ぶのが男だと思うんだけど。大佐は特殊なのかしら?」

 

提督「どうかな。だが、少なくとも俺はお前たちをちゃんと全員女性だと認識しているぞ?」

 

瑞鶴「当り前よ!!」バシン ←提督の顔に本を投げつけた




その日、明け方近くまで男女の激しく話し合う声が聞こえたそうです。

一応言っておきますがこの提督はホモではなりません。
ですが軍属なので衆道的な文化にも一定の理解を持っている好漢です。
ですが、ホモではありません。

そして瑞鶴ちゃん、お疲れ様です。


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第21話 「会議」

水泳大会の許可が下りたので提督は詳細を決める為に会議を開くことにしました。
勝負に燃える者、何故か顔色冴えない者、明らかに大会とは関係ない事を考えて目をキラキラさせている者。
まだ大会が始まる前だというのに幾多の思惑が交差し会議を独特の雰囲気が覆っていた。
果たして提督は無事に会議を終える事ができるのでしょうか。


提督「それでは始める。加賀、進行を頼む」

 

加賀「分かりました。先ず初めに競技に出場する代表選手の選出についてです」

 

加賀「今回は、現在いる潜水艦組5隻に合わせて代表の選出は各グループ5人までとします」

 

足柄「代表を選出するグループはどうなっているのかしら?」

 

加賀「単純に各艦種の組に分けるつもりです」

 

明石「私とあきつ丸については?」

 

加賀「競技に参加する意思がある場合は、希望する組に入って貰います」

 

明石「どうするあきつ丸さん? わたしは参加したいけど?」

 

あきつ丸「私も参加したいであります」

 

加賀「どの組に入りたいですか?」

 

あきつ丸「雷巡組であります」

 

明石「なるほど。雷巡組ならわたし達合わせて丁度5人ね」

 

加賀「雷巡組どうですか?」

 

北上「問題ないよ~」

 

大井「勿論歓迎よ」

 

木曽「了解」

 

最上「僕達はどうしたら?」

 

加賀「元が重巡なので重巡組はどうです? 必ず代表になれるとは限りませんが」

 

鈴谷「おっけー。熊のんと最上んは?」

 

熊野「異論なしですわ」

 

最上「僕もそれでいいよ」

 

千歳「空母組はどうします? 軽空組と分けますか?」

 

加賀「希望するなら」

 

龍驤「ええやんそれで。巡洋艦だって重い軽いあるんやから」

 

鳳翔「どうです皆さん?」

 

軽空メンバー「鳳翔さんがいいならー」

 

鳳翔「では、お願いします」

 

加賀「了解しました」

 

長波「後はわたし達か」

 

朧「朧達は数が多いから代表を決めるのが大変そうですね」

 

加賀「駆逐組は2グループに分かれてください。代表の選出は分類ごとに一隻でどうです?」

 

陽炎「となると......」

 

島風「わたしはぜっったい出たい!」

 

霞「最初から止める気はないっての」

 

加賀「グループについては決まりましたね。まとめます」

 

加賀「戦艦組・航空組・軽空組・重巡/航巡組・雷巡組・軽巡組・駆逐組A・駆逐組B・潜水艦組の計9グループになります」

 

加賀「大佐、宜しいですか?」

 

提督「ああ。いいだろう」

 

加賀「では、グループについてはこれで決まりですね」

 

加賀「代表の選出は各グループで独自に行てください。決まったら大佐か私に報告を」

 

加賀「次は勝敗の判定についてです」

 

加賀「これについては大佐から直接提案があります。大佐お願いします」

 

提督「ん、一定の距離を泳いで計ったタイムでどうだ?」

 

提督「単純だが、分かり易いし何より俺の負担が少ない」

 

艦娘一同「......」

 

天龍「何も言えねーよそれ言われたら。ま、いいけどよ」

 

長門「これは誰も文句は言えない、な?」

 

艦娘一同「異議なーし」

 

飛龍「あれ? ちょっと待ってよ。大佐も大会に参加してくれんだよね? 大佐はどのグループに入るの?」

 

提督「俺は大会最下位のチームの代表1人と対決する」

 

初春「ほう。逆シードというやつじゃな」

 

提督「そうだ。ま、祭りの締めでもあるがな」

 

加賀「では、判定についてはこれでいいですね」

 

加賀「ではこれで最後です。あ、開催の日取りについては予定を調整して決まり次第通達しますので」

 

加賀「最後に決めるのは、まぁ答えは分かり切ってますが、泳ぎの型です」

 

艦娘一同「自由!!」

 

加賀「はい決定。以上です。最後に大佐からお願いします」

 

提督「競技に参加しない者も大会の最後に自由時間を設けるからそこで好きに泳いでくれ。では、解散」

 

 

~会議から暫く後の執務室

 

提督「ふぅ......」

 

加賀「何とか決まりましたね」

 

提督「ああ。あとは開催の日取りだけだ」

 

加賀「予定、調整できそうですか?」

 

提督「許可を貰った以上は必ず実行する。報告書も出さないといけないしな」

 

加賀「了解です。私の水着、期待していて下さい」

 

提督「何故そうなる?」




加賀さんの水着見たいです!
というより、疲れた~今までで一番時間掛かりました。
字数はそんなに多くないけど。
水着回はまだ先ですが、出すときはR-15のタグ共に出るかも。
流石に1話じゃ書ききれないだろうな内容的に......。


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第22話 「ご飯」

提督は今日は食堂で食事を摂るようです。
ふと隣を見ると丼一杯のごはんが5個も並んでます。
提督は特に驚きもせず、食事を始めようとすると、ご飯の壁をかき分けて声を掛けられました。

何だよ......ご飯の壁って。


赤城「あ、大佐じゃないですか。今日はここでご飯ですか」

 

提督「俺が食べるのは定食だ。お前はご飯しか食べないのか」

 

赤城「あはは。おかずが足りなくなるからご飯で我慢しろって言われちゃって......」

 

提督(こいつを食事に誘ったらどうなるんだろうな。下手に味を気に入られたらと思うと結果を想像するのが怖い)

 

提督「ご飯だけで満足できるのか?」

 

赤城「いえ、おかずも有りますよ? 一人分なのでこれを5等分して少しずつ食べるんです」

 

提督「空母赤城とは思えないほどいじましい食べ方だな」

 

赤城「そうですよね? そう思いますよね? 私にはもっとエネルギーが必要なんです」

 

提督「そういう事を言ってるんじゃない。少しは調整して消費を抑えたらどうだ?」

 

赤城「そんな事ができるならとっくにやってます!」

 

提督「改善しようとした事はあるのか」

 

赤城「ありませんよ?」

 

提督「今しろ。直ぐにだ」

 

赤城「大佐は私が嫌いなのですか?」

 

提督「お前と言い、加賀と言い、どうしてこう会話の流れが予測困難なんだ」

 

提督「別に嫌ってない」

 

赤城「良かった好きなんですね♪」

 

提督(これは突っ込むのはやめておこう。嫌な予感しかしない)

 

赤城「黙ってしまって......照れてるんですか?」

 

提督(艦載機に囲まれて逃げ場を失うってこいう気持ちなのかもな)

 

提督「お前は加賀と違って表情豊かだな」

 

赤城「あら? 加賀さんだって大佐が思っている以上に感情豊かなんですよ?」

 

提督「そうなのか?俺はポーカーフェイスで言葉の追撃を受けた記憶が殆どなんだが」

 

赤城「その時の言葉の節々に感情が籠ってるあるんですよ。分かりません?」

 

提督「言いたいことはまぁ分かる」

 

赤城「流石ですね。ご褒美に少し食べます?」

 

提督「俺の米はまだ十分に残ってる。ご飯をおかずにしろとでも言うのか」

 

赤城「え? おかずもうありませんよ?」

 

提督「なに?」

 

提督「......いつの間に」

 

赤城「私じゃありませんよ?流石に人のおかずに手を付けたりなんかしません」

 

提督「じゃぁ何処に......」

 

赤城「野良猫発見です♪ 彗星一二最低火力で泥棒猫を艦爆しなさい」

 

多摩「にゃにゃ!? ちょっと待つにゃ! 流石に基地でそれは......!」

 

赤城「私の艦載機の運用技術甘く見ちゃだめよ? さ、火傷くらいは覚悟しなさい」

 

多摩「にゃぁあああ!? ごめんなにゃ。許し――」

 

赤城「発進♪」ニコッ

 

パパパッ 「ニャァァァ!?」 ボンボンッ 「アツイニャァァァ!!」

 

 

提督「......恐ろしいな」

 

赤城「食べ物の恨みは怖いんですよ。まして、大佐の食事を盗むだなんてちょっとお仕置きが必要ですしね」

 

提督「まぁ、お前なら問題ないだろう。多摩には悪いが自業自得か」

 

赤城「ふふ、話が分かりますね大佐。それで、どうです? ご飯」

 

提督「まだ勧めるか。......塩を貰おうか」

 

赤城「分かってますね♪」




俺の最初の主力空母は赤城でした。
今でこそレベルは加賀さんに負けますが、それでも強い事には変わりないです。
一体いつからこんな愛嬌のある空母になったんでしょうね。
久しぶりに使ってみようかな。


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第23話 「散歩」

提督が所属している鎮守府は1年中温暖な気候なので、夜に気分転換で散歩するのには最適です。
提督もそんな散歩を密かに楽しんでいる一人です。
基地の周りを少し歩くだけですが、顔を撫でてくれる潮の香りが乗った夜風はとても優しく心地良いです。
提督が基地の周りを半周ほどした頃誰かを見つけたようです。


提督「川内か? こんなところで一人で夜戦か?」

 

川内「いくらわたしでも誰もいない所で夜戦なんかしないよ! ていうかできないじゃん!」

 

提督「分かってるじゃないか。で、何してるんだ?」

 

川内「提督と同じだよ、散歩。気持ち良いからね」

 

提督「ところで、さっきお前は一人と言ったが本当か?」

 

川内「え?」

 

提督「俺には一人で来たようには見えないんだが」

 

川内「な、なに......言ってる......のよ? 私此処までずっと一人だったよ?」

 

川内「わたし以外にだ、誰かいるなんて......そんなわけ」

 

響「居るよ?」

 

川内「いやぁあぁぁぁぁあああああ!!」

 

響「こんばんわ。いい夜だね」

 

提督「そうだな。だが驚かせ過ぎだ」

 

響「大佐は驚いてないみたいだけど?」

 

提督「最初から後ろを着いて来てるのに驚きようがないだろ」

 

響「気づいてたなら声を掛けてくれたっていいじゃないか」

 

響「川内を見つけるまでちょっと寂しかった」

 

提督「それなら今度からちゃんと声を掛けるんだな。ところで」

 

響「何?」

 

提督「いい加減、お前の前で泣いている川内を慰めてやらないか?」

 

響「そういうのは男の人の役目だと思うんだけどな」

 

提督「泣かせた本人が謝罪するのが先だ。そうだろう?」

 

響「そうだね。うん、ごめんなさい。川内、大丈夫?響だよ」

 

川内「ひっく、う、う......え?」

 

提督(さっきまでの会話に気づかずに泣いていたのか。響の気配の消し方は大したものだな)

 

響「川内、ごめんね。ちょっと脅かせたかったんだ」

 

川内「ば、バカァァァァァ!!」

 

 

~それから数分後、鎮守府正面入り口付近

 

川内「大佐、そのわたしが泣いてたのは......」

 

提督「誰かに言う事ではない。安心しろ」

 

響「うん。安心して?」

 

川内「あんたが一番信用できないのよ!!」

 

提督(確かに)

 

響「そう?」

 

川内「そうよ!」

 

提督「そういえば響も散歩していたのか?」

 

響「トイレに起きたら窓から大佐が見えたから着いてきたんだ」

 

提督「そうか。だが、これからはあまり一人で行かないように」

 

提督「平気かもしれんが一応用心しておけ」

 

響「大佐だって一人で散歩してたじゃないか?」

 

提督「俺は大人だからな。というズルイ言い方はするつもりはない」

 

提督「これからは誰かに断わってから行くことにしよう」

 

響「なら、これから大佐が散歩に行くとき響も一緒に連れて行ってくれないかな? 2人だったら問題ないだろう?」

 

提督「まぁ、起きていたらな」

 

響「了解。頑張る」

 

提督「頑張るな。寝ろ」

 

川内「ちょ、ちょっとさっきから2人だけで話勧めないでよ! わたしは連れて行ってくれないの?」

 

提督「夜戦はできないぞ?」

 

川内「だからそんな事分かってるってば!!」

 

響「響は大佐と2人が良かったな」

 

提督「子供には保護者が必要だ。我慢しなさい」

 

響「ちぇっ」

 

川内(ほ、保護者? ていうことはわたしが響のお母さんで大佐が旦那さん?)

 

提督「ヘソを曲げるな。起きていたらちゃんと誘ってやるから」

 

川内「ちょ、ちょっとまだそれは早いと思うんだけど!?」

 

提督「川内は一体何の話をしてるんだ?」

 

響「なんだろうね。お父さん?」




川内可愛いですよね。
でも名取の方が好きです。(久しぶりのこのパターン)
夜戦のセリフでよくネタにされる川内ですが、見てのとおり子供なのであまり弄るのはよくないと思います。
放置ボイスの良さは否定できませんが。


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第24話 「練習」

提督は泳げないわけではなりませんが、常に訓練で泳いでるわけでもないのでその泳ぎ振りは人並みギリギリです。
水泳大会の予定の調整も進んでいるので、大会が始まる前に何とか体に泳ぐ感覚を思覚えさせる必要に迫られていました。
でも海での息継ぎって素人にはプールと比べて結構キツイんですよね。
そんなことで苦労をしていると、潜水艦の子が話してきました。


イク「大佐ー遊んでるのー?」

 

提督「思いの外ぐさりとくる言葉だな。まぁお前たちからすればそう見えるかもな」

 

イク「違うの?」

 

提督「ああ。水泳の練習をしてたんだ」

 

イク「大佐泳げないの?」

 

提督「いや、泳げはするが得意じゃない」

 

提督「だから練習してもう少しまともになるようにしてるんだ」

 

イク「そうなの。ねぇ、イクがコーチしてあげようか?」

 

提督「ん? 教えてくれるのか?」

 

イク「うん。イクがバッチリ泳げるようにコーチしてあげる!」

 

提督「それは正直助かるな。頼めるか?」

 

イク「分かったの!じゃぁまずは潜水からね。30mくらい潜って息を止める練習!」

 

提督「待て」

 

イク「え?」

 

提督「素人にいきなりそれは無理だ」

 

イク「そうなの?」

 

提督「ああ。そもそも息を止める必要がない」

 

イク「あ、そっか。イクったら潜水しか殆どしないから提督にも同じことをさせるところだったの。ごめんね」

 

提督「いや、いい。肺に空気を貯めるのも必要な技術の一つだからな」

 

提督「だが、今回は普通に泳ぐ方で頼む。フォームは分かるんだが効率がよくないみたいで直ぐに息が苦しくなってしまうんだ」

 

イク「分かったの。じゃぁクロールでいい?」

 

提督「ああ頼む」

 

イク「了解なの。クロールはぁ――」

 

 

そして数時間後

 

提督「ふぅ、どうだ?」

 

イク「うん。大分体が動くようになってきたの」

 

提督「そうみたいだな。最初と比べて息が大分楽になった」

 

イク「息継ぎがきれいにできるようになるだけで大分違うからね」

 

提督「流石にイクは潜水艦だけあって教えるのが上手いな」

 

イク「もう提督褒めても何もでないよ?」

 

提督「いや、もう十分薫陶を貰っている。これだけでもありがたい」

 

イク「うふふ。でも、大佐も上達は遅くないと思うよ?」

 

提督「そうか?」

 

イク「体自体は元々鍛えてたみたいだからイクの教え方にちゃんと着いてこれたみたい」

 

提督「やはり体力は大事だな。逆は言えば最初の練習はその体力が直ぐになくなるくらい無駄な動きが多かったという事か」

 

イク「そこまで自分で分かれば。もう一人でも大丈夫だと思うよ」

 

イク「後はひたすら練習して速くなるだけのはずなの」

 

提督「そうか分かった。教えてくれて恩に着る」

 

イク「大佐とイクの仲なの。気にしないで」

 

提督「いや、お礼をしよう。今度俺がお菓子を作るからそれを貰ってくれないか?」

 

イク「お菓子!?イク大好きなの!」

 

提督「そうか。クッキー......は前に作ったな。ケーキは好きか?」

 

イク「大好き!」

 

提督「よし、それじゃぁ今度作ったら呼ぶから貰いに来い」

 

イク「わかったの!大佐楽しみにしてるのー!」チャプンッ

 

 

提督「さて、もう少しだけ泳ぐか」

 

提督「......ん?」

 

提督(あれはハチか? 波に寝ながら乗って本を読んでいる)

 

提督(目はしっかり本に集中してるのに、よく見ると足で微妙に舵を取ってるみたいだな)

 

提督(前にレイスが言っていた加護もあるんだろうが、あれが潜水艦の実力か)

 

提督「......大したものだな」サバッ




この後提督は1時間ほど練習をしたそうです。
実は練習を終えた時点で前回の話に出ていたカナヅチ疑惑のある(この作品での独自設定)2人の艦娘より泳げるようになっている事にはまだ気づいていません。
がんばれ提督!
それと、残念!今回は水着回ではありませんでした。
まぁ、水着回だったらやっぱりR-15タグ付けてただろうしね。


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第25話 「買い物」

前回の話で水泳の練習をした提督。
あれから何回か練習を繰り返し、今では明らかに並み以上に泳げるようになっていました。
その事は提督自身も自覚しおり、Z1から加護を借りた時の事も踏まえて少し自信を持てるようになっていました。
そんな時に例のカナヅチズからあるお願いをされるのでした。


コンコン

 

筑摩「大佐、筑摩です」

 

Bis「ビスマルクです」

 

提督「入れ」

 

筑摩・Bis「失礼します」ガチャ

 

提督「どうした?二人とも」

 

筑摩「あの......大佐にお願いがあって来ました」

 

Bis「私も......」

 

提督「なんだ改まって」

 

筑摩「大佐、私達に水泳を教えて欲しいんです」

 

提督「ふむ......私達ってことはマルクもか?」

 

Bis「あ......はい。そうです」

 

提督「やっぱり二人は泳ぎが得意じゃなかったのか」

 

筑摩「というより、泳げません......」

 

Bis「うん。全然......」

 

提督「なに?」

 

筑摩・Bis「......」

 

提督「全くか?」

 

筑摩・Bis「はい......」

 

提督「水の中で目を開ける事くらいはできるよな?」

 

筑摩「プ、プールなら」

 

Bis「水の中で開けるなんて考えられないわ......」

 

提督「......」

 

提督(これは予想以上に重傷だぞ)

 

提督「素直にイク達に教えてもらった方が良くないか?」

 

筑摩「っ。そ、それはダメですできません」

 

Bis「そうよ......。よりよって艦娘が泳げないなんて。私なんて戦艦よ?」

 

提督「じゃぁ仲が良い奴ならどうだ?」

 

提督「利根なら得意ではないと言っていたが、普通に泳ぐくらいは教えてくれるだろう」

 

筑摩「姉さんに迷惑は掛けられません!」

 

Bis「利根にはこれ以上借りはつくれないわよ......」

 

提督「そうか......」

 

提督(口には出せないがメンド臭い。この様子だと他の仲間でも無理そうだな。)

 

提督(いや、マルクがいる時点で全部ダメか)

 

提督「分かった。教えよう」

 

筑摩「本当ですか!?」

 

Bis「約束よ!」

 

提督「泳げるようになるくらい、でいいな?」

 

Bis「十分よ」

 

筑摩「お願いします!」

 

提督「そじゃあ何時にするか」

 

筑摩・Bis「......」ガタッ

 

提督「......今からか?」

 

 

~それから十数分後、鎮守府最寄りのあるお店

 

筑摩「大佐、これどうです?」

 

提督「ああ」

 

Bis「大佐、これなんてなかなか良いと思わないかしら?」

 

提督「そうだな」

 

提督(即練習をするのかと思ったら、水着を買いに行くとはな)

 

提督「なぁ二人とも」

 

筑摩「なんです?」

 

Bis「何?大佐」

 

提督「俺が付き合う必要はあるのか? これ」

 

筑摩「できれば第三者の意見が欲しいんです」

 

Bis「見た目は重要だからね」

 

提督「練習するのに見た目を重視する必要はないと思うぞ? ほら、この競泳用のやつでいいんじゃないか?」

 

筑摩「えっと、どうせならここで買ったのをそのまま大会で使いたいので......」

 

Bis「そうね。その方が手間が省けるわね」

 

提督(2人とも大会の趣旨を忘れてないか?)

 

提督「......そうか。まぁあまり外出はよくないからもうそろそろ決めるようにな」

 

筑摩・Bis「了解!」

 

 

――それからの数分間

 

筑摩「大佐、大佐って何色が好きですか?」

 

提督「黒と淡い緑だ」

 

筑摩「まぁ、大胆ですね」

 

提督(なんだ? どんな水着なんだ? 俺が選択したことになるのか?)

 

Bis「大佐、大佐はハイレグ好き?」

 

提督「競泳でそんなもの着るな」

 

Bis「ビキニがいいのね」

 

提督(そんなこと言ってない)

 

 

~鎮守府への帰り道

 

提督「もう練習する時間は今日はなくなってしまったぞ」

 

筑摩「時間が過ぎるのは早いですね。仕方がないので練習はまた今度にしましょう」

 

Bis「そうね。今日は水着が買えただけでも良しとしましょう」

 

提督(2人ともただ買い物がしたかっただけなんじゃないのか?)




結局練習は次の機会になったようです。
まだ、タグ追加には至らず。
というか、台本形式の時点でそんな描写は可能なのかな。
まぁ提督お疲れ様です!


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第26話 「夜戦」

サーモン沖海域。
それなりの規模の艦隊を誇る提督の鎮守府ですが、未だにこの海域は制圧できないでいます。
その主な原因は強制的な暗所での戦闘による苦戦。
深海棲艦の能力によるものかは定かではありませんが、この海域は常に暗く、その暗さは夜戦を得意とする艦娘ですら砲撃の計算に苦労する程です。
無理な攻略はせず、定期的に試みることで少しずつ戦果を重ねいますが、果たして今回はどのような結果になるのでしょうか。


提督「これより作戦を開始する」

 

Bis「サーモン沖か......よし、今日こそやってみせるわ!」

 

金剛「ソーネ!いつまでもここで break time してるワケにはいかないワ!」

 

足柄「肩の力抜きなさいよ? 気合空回りしちゃ意味ないんだからね」

 

鈴谷「相変わらず金剛ネーサン達のやる気パないねー。それに比べて足柄の姐さん随分悟った感じになっちゃったね?」

 

足柄「もうリベンジやる気なくなっちゃったのよ。あれだけ戦り難いとね」

 

提督「もう出撃したくないか? なんだったら衣笠に代えてもいいが?」

 

足柄「何言ってるのよ。いくら撤退しても絶対に負けないわよ」

 

提督(そういえば、好戦的だった足柄がここまで落ち着くとはな。)

 

提督(戦い好きを表に出さなくなった分内に秘めた闘争心は前より燃え盛ってるようだが......頼もしくなったものだ)

 

Z1「そんなに戦い難い海域域なの?」

 

Z3「面白いじゃない」

 

提督「お前たち2人はこの海域に出るのは初めてだったな。やる気もあるのも良いが、鈴谷や足柄のようにあまり意気込んで行かない方がいいぞ」

 

Z1「うん。分かった」

 

Z3「大丈夫よ。絶っt――」ポン

 

足柄「ダメって言ったでしょ? あたし達の背中しっかり見てなさい」

 

Z3「あ......」

 

Z3「スゥー.........ハァー......。ん、ごめんなさい」

 

鈴谷「お、いい目になったじゃん?」

 

金剛「Oh! 頼もしーネ!but もっと active にいってもイーのヨ?」

 

Bis「そうよ!今度こそ今度こそ......やってやるわ!!!」

 

提督「お前たちはもう少し落ち着け。子供か」

 

鈴谷「ま、ネーサンたちが一番出てるからね。でもマジこのやる気だけは凄いと思うよ?」

 

足柄「そうね。出直す度にリベンジに燃えまくってるわよね」

 

提督「ムキになっているようにしか見えんがな」

 

提督「まぁ良い。轟沈はしないように戦略的撤退の判断は誤るなよ」

 

提督「それでは、第一金剛機動艦隊出撃」

 

第一艦隊メンバー「はっ!!」

 

 

~サブ島沖ポイントC

 

金剛「やったネ!perfect で抜けたワヨ!!」

 

Bis「次の戦場......いえ、勝利が私を呼んでいるわ!!」

 

足柄「昔のわたしを見ているようで恥ずかしいわね」

 

鈴谷「あ~、ついに姐さのセリフを言っちゃうまでになっちゃったかぁ。悔しいスか?」

 

足柄「お酒でも入ってないともう言わないと思うわ」

 

Z1「な、なんか凄く冷静だね。僕こんなに戦い難いとは思ってなかったよ」

 

Z3「私も冷静になったつもりだけど、予想以上ねこれは。姐さんの言葉に感謝しないと」

 

足柄「マっちゃんもあたしのこと姐さんて言うようになっちゃったか」

 

鈴谷「あははは。姐さんまた舎妹増えちゃったね~?」

 

足柄「自称第一号のあんたの所為よ」

 

Z3「あの、ダメだったからしら姐さんて呼んじゃ?」

 

足柄「ダメなわけないでしょ。頼られるのは嫌いじゃないから」

 

足柄「でもあなたもしっかり良いところ見せなさいよ?」

 

Z3「わ、わかったわ!」

 

金剛「What doing? 早く征くヨー!!」

 

Bis「そうよ! もう勝利は目の前よ!!」

 

足柄「あの人達はホント......」

 

Z1「でも、お蔭で周りは暗いけど気持ちは全然暗くならないよ」

 

鈴谷「お、レイスちゃん良いこと言うじゃん~?」

 

足柄「フフ、そうね。それは間違いないわ」

 

足柄「さて、行くわよ」

 

 

~ポイントD

 

旗艦金剛 副艦ビスマルク 大破 チーン

 

金剛「Nooooooooooooooォ!」

 

Bis「なんでよおおおおおおお!?」

 

鈴谷「やっぱりCポイント通過したときネーサン達がフラグつくっちゃったんじゃね?」←無傷

 

足柄「そうかもね」←無傷

 

Z1「敗けちゃった」←無傷

 

Z3「いいえ。撤退する限り敗けじゃないわ」←無傷

 

Z3「そうでしょ?姐さん」

 

足柄・鈴谷「わかって るじゃない」んじゃん」ニッ

 

足柄「さ。さっさとあそこで駄々捏ねてる大人引っ張って帰るわよ」

 

鈴谷「あーい」

 

 

~提督執務室

 

提督「ご苦労」

 

足柄「ごめんなさいね」

 

提督「気にするな。いつか越える」

 

鈴谷「そうそう。何回もやってりゃそのうち抜けるって」

 

提督「お前はもう少し言動とやる気を一致させろ」

 

鈴谷「無理!」

 

提督「上等だ。次も頼むぞ」

 

鈴谷「ウース」

 

提督「レイス達はどうだった? 今回の出撃は?」

 

Z1「難しかった......でも、攻略は不可能じゃないよ!」

 

Z3「そうね。私も手応えを感じました」

 

提督「頼もしい限りだ」

 

提督「それと......」

 

金剛・Bis「......」ズーン

 

提督「まぁあいつらには俺から後で言っておく」

 

足柄「大佐も大変ねぇ。毎度」

 

提督「お前がいなくなった分マシにはなったさ。いや、少し寂しいか?」

 

足柄「ちょ、ちょっとやめてよ!」カァッ

 

鈴谷「お、姐さん赤くなってない?」ニマニマ

 

Z1「え? そう?」

 

Z3(恥ずかしがってる姐さん可愛いわね)

 

足柄「もうっ、行くわよあんたたち! 大佐、この人たち宜しくね」

 

提督「任せとけ」

 

足柄「あ、それと」

 

提督「分かってる。今日は良い酒を用意しておく」

 

足柄「分かってるじゃない」ニッ

 

鈴谷「あ~、鈴谷もお酒飲みたいなぁ」

 

足柄「酎ハイで酔っぱらう子が何言ってるのよ。ほら行くわよ」

 

Z1「それじゃ提督」

 

Z3「失礼します」

 

提督「ああ、ゆっくり休め」

 

バタン

 

 

提督「さてと......」クル

 

金剛・Bis「......」ズズーン

 

提督(足柄が来るまでに終わらせておかないとな)

 




はい。最多文字量更新しました。
ただ、思い入れのある所なので筆は止まりませんでしたが。
5-3難しいですよね。
あ、因みにこの話はリアルで今日のことですw
ま、足柄さんも言っていましたがいつかクリアします。

ちょっと足柄さんへの愛が溢れてしまいましたがご容赦下さい。
足柄さんの晩酌は書くとして、紅茶たちを慰める話どうしようかなぁ。


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第27話 「フォロー」

前回の出撃で見事大破した戦艦の二人。
ひどく落ち込んで壁の隅でブツブツ言ってます。
提督はどうやって彼女たちを立ち直させるのか。
いざフォロー開始!


提督「まぁ、二人ともそう落ち込むな」

 

金剛「そういう訳にはいかないデス......。もうこれで何回目の lose ネ......」

 

Bis「屈辱だわ......。今度はいけると思、いえ。行けたのよ!」ドンッ

 

提督「確かに一番出撃してるお前たちにとっては、耐え難いかもしれない」

 

提督「だがそれでも新たに出撃する時に文句も言わず出てくれるお前たちに俺は感謝しているぞ」

 

金剛「大佐ァ......。でもワタシも流石に今回は自信を lost little しちゃったネ」

 

Bis「弱音は吐きたくないけど......この悔しい気持ちはなかなか消えないわ」

 

提督「足柄や鈴谷の様に開き直るのも一つの強さだぞ?」

 

提督「悔しがるなとは言わない。だが、その気持ちを糧に新たな気持ちで挑み、勝利を掴むんだ」

 

金剛「大佐ァ......ワタシは今は follow よりマイハートを care して欲シーヨ」

 

Bis「そうね。それにこんな時に他の女の話はしないで欲しいわね」

 

提督(金剛はともかく、マルクがらしくないな。今回は結構堪えてるみたいだ)

 

提督「分かった。じゃぁちょっと海でも見に行かないか? 夜風が気持ち良いから良い気分転換になるかもしれないぞ?」

 

提督「歩きながらでも話を聞いてやるから」

 

金剛「sea watching デスカ。悪くないワネ♪」

 

Bis「風に当たれば少しはマシになるかしら」

 

提督「決定だな。マルク、なんだったら泳ぐ練習を今からやってみるか? 浅瀬なら月明かりもあるし多少は泳げるぞ」

 

Bis「た、大佐!」

 

金剛「swim? practice?」

 

提督(しまった)

 

金剛「大佐、今のどういう事ネ?」

 

提督「マルクすまん。口が滑ってしまった」

 

金剛「大佐ァ? マルさんと一緒に sea date するつもりだっタノ?」

 

提督「曲解するな。マルクが泳げないから練習を見てやろうと思ったんだ」

 

金剛「マルさん you can't swim ?」

 

Bis「う......そう......よ」

 

金剛「泳げないから大佐に practice して貰う話になってタノ?」

 

Bis「ええ......」

 

金剛「大佐ァ♪」クルッ

 

提督(何か凄く嫌な予感がする)

 

提督「なんだ」

 

金剛「ワタシも can't swim ネ♪」

 

Bis「え? 本当!?」パァ ←親友を見つけたような笑顔

 

金剛「yes really! 大佐、だからワタシにも practice プリーズヨ!」

 

提督「いや、お前泳げたろ。この前の休みの時、姉妹で海水浴してーー」

 

金剛「プ リ イ ズ !!!」ズイ

 

提督「......」

 

Bis「大佐、泳げない同志を見捨ててはいけないわ!」

 

提督「分かった。分かったからそう睨むな」

 

金剛「yeah! やったネ♪」

 

提督「だが、夜の海で二人の練習を見る自信は俺にはない。だから練習はまた今度で、今日は海を見に行くだけだ。いいな?」

 

金剛「OK よ♪」

 

金剛(水着ちょっと早めに用意しないといけないわね♪)

 

Bis「同志の事を思うなら当然ね。了解よ!」

 

提督(今回は完全に俺の失態だが、何故こうなる)




水着回の前座に金剛も参加するようですね。
提督はあまり嬉しくなさそうです。
逆にマルさんは仲間ができ(と思い込んで)て嬉しそうですね。
ま、夜の海は割と危険もあるんで、この判断も悪くはないでしょう。
提督ガンバレ!


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第28話 「晩酌」

提督が浜辺から執務室に戻ると足柄がいました。
そりゃ晩酌する約束はしてたけど。
そりゃ自分がいない時は出入り自由だけど。
少し休憩してからにしたかっと思う提督でした。


ガチャ

 

足柄「待ってたわよ」

 

提督「早いな」

 

足柄「そりゃあね。楽しみにしてのよ?」

 

提督「そうか」

 

足柄「金剛たちとのデートは楽しかったかしら?」

 

提督「まあな」

 

足柄「む」

 

提督「どうした?」

 

足柄「否定しないのね」

 

提督「お前がそういう顔をすると思ったからな」

 

足柄「大佐の癖に生意気ね」

 

提督「いつも予想通りの反応をするとは思わないことだな」

 

足柄「じゃあ今日はとことん飲んで、もっと違う反応見せて貰おうじゃないの」

 

提督「明日も仕事だ。無理をする気はないぞ」

 

足柄「大丈夫よ。あたし強いから」

 

提督「自重しようという気はないんだな」

 

足柄「どうかしら?」

 

提督「ふぅ......。まぁ、いい。酒を出そう」

 

足柄「待ってました」

 

 

コト

 

足柄「へぇ、焼酎ね」

 

提督「苦手だったか?」

 

足柄「んーん。いつか初めて大佐から貰ったお酒がウイスキーだったから」

 

提督「それを期待していたか?」

 

足柄「正直ね。でも洋酒よりは焼酎の方が好きよ」

 

足柄「ちょっと思い出に浸りたかっただけ」

 

提督「ふむ......」ス

 

足柄「え、これ」

 

提督「チャンポンはよくないから、これは最後にしよう」

 

足柄「わざわざまたスキットルに入れてくれちゃって。回し飲みじゃないと嫌よ?」

 

提督「そのつもりだ」

 

足柄「わかってるじゃない」

 

足柄「――それじゃあ大佐?」

 

提督「始めようか」

 

 

それから数時間後

 

提督「......んく、ふう。もうすぐ夜明けだな」

 

足柄「あら、もう? 時間が過ぎるのは早いわね」

 

提督「まさか一升瓶を5本も空けるとはな」

 

足柄「大佐何となく予想はしてたけど強いわね」

 

提督「お前ほどじゃない。もう俺は結構キテるぞ」

 

足柄「あら? そうやって何度切り上げようとしたかしらね?」

 

提督「晩はもう明けようとしている。だから酌はコレで最後にしないか?」

 

足柄「ふふ、上手く言ったつもり? ま、残念だけど仕方ないわね」

 

足柄「これで占めましょうか」クイ

 

提督「ああ」

 

足柄「じゃ、先ずは大佐から」ヒョイ

 

提督「ん。俺からか」パシ

 

足柄「あたしからだと思った?」

 

提督「まぁな......んぐ」ゴク

 

提督「フー......ほら」ポイ

 

足柄「あらぁ? ちょっと回ってきちゃった?」パシッ

 

提督「どうだか」

 

提督(最後の最後が一番強いのだからな)

 

足柄「無理しちゃだめよー?......んく、ん......ん」

 

足柄「ふぅー。これ強いわね。美味しいけど」

 

提督「ん? 堪えたか?」

 

足柄「まだまだ。はい、とと......。」ポーイ

 

足柄「あら?」フラ

 

提督「おっと」wキャッチ

 

提督「大丈夫か? もう――」

 

足柄「嫌。最後まで飲む!」

 

提督「お前こそ無理はするなよ?」

 

提督(やっぱり洋酒はあまり得意じゃないようだな。ここは少し大目に飲むか)

 

提督「さて......んぐ、んぐ、んぐ」ゴクゴク

 

足柄(あら?結構大目に飲んでる?)

 

足柄「ちょっと、間接キス長くないかしらー?」フラァ

 

提督「ぷはっ......おい?足柄」

 

足柄「次はあたしー」

 

提督(足柄の奴油断して酒に飲まれたか)

 

提督「お前はこれ以上はダメだ」ヒョイ

 

足柄「あー何するのよー?渡しなさいよー!」ピョンピョン

 

足柄「......もう!」ダキ

 

提督「ぐぬ?」

 

足柄「ぬー」グググ

 

提督(これが重巡の力......動けん)

 

足柄「うー......あ」プルプル、ガシッ

 

足柄「取ったー!!て、きゃ」グラ

 

提督「むぐぐ」

 

バタン!

 

 

足柄「......」

 

提督「......」

 

提督「足柄?」

 

提督(力が抜けてる。動けるな)

 

提督「おい。大丈夫か?」クル

 

足柄「すー......すー......くふふ」

 

提督(完全に酔いつぶれて寝てる。これは暫く起きないな)

 

提督(部屋に運ぶには......この時間はまだ寝てる奴もいるか)

 

提督「......」ダキ ←お姫様ダッコ

 

提督(軽い。一体どこからあの力が)

 

提督(やはり艦娘は人間ではない、か......。だが)

 

提督「人間でない故に兵器としても扱わない」ソッ ←自分のベッドに寝かせる

 

提督「今はこれでいい」




その日、提督は椅子に座ったまま寝たそうです。
そして早朝、妙高を呼んで足柄を部屋に連れて行ってもらいました。
因みに妙高は提督のベッドに寝ている足柄を見ても溜め息をついただけで、提督にはお礼だけ言って他には何も言わなかったみたいです。
信用されてますね!


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第29話 「ラーメン」

足柄との晩酌を終えた次の日、(詳しくは当日)流石に酔いが尾を引いており仕事に支障をきたす可能性を懸念した提督は眠気覚ましにラーメンを作ることにしました。
普通のラーメンではなく、スープが赤い辛いラーメンです。
鼻を突くスープの匂いが部屋に充満し始めた頃、部屋から漏れた匂いにつられて隼鷹が訪ねてきました。


コンコン

 

隼鷹「入っていいかい?」

 

提督「隼鷹か?いいぞ」

 

 

ガチャ

 

隼鷹「大佐、何作ってるんだい?」

 

提督「ラーメンだ」

 

隼鷹「え? ラーメンてこんな匂いしたっけ?」

 

提督「激辛ラーメンというやつだ。名前の如く辛い」

 

隼鷹「うわぁ......スープが見たこともない色してる。これ大丈夫なの?」

 

提督「食べ過ぎは体に悪いが、二日酔いで気分が優れない時や空腹のときは結構美味しく感じるらしい」

 

隼鷹「大佐はどっちの理由で作ってるんだい?」

 

提督「俺は元々辛い物が結構好きなんだが、今回の場合は前者が理由だ」

 

隼鷹「ああ、昨日晩酌だったんだーって、えー! 聞いてないよ!」

 

提督「元々昨日は足柄と飲む約束をしてたんだ」

 

隼鷹「何それ。特別な関係ってやつ?」

 

提督「邪推するな。その日はサーモン沖の作戦を実行してな」

 

隼鷹「あー。慰労ってやつ?」

 

提督「そう。思いの他飲んでしまったんで、ちょっと酔い覚ましにな」

 

隼鷹「大佐が酔いが残るって昨日どんだけ飲んだのささ。あー、あたしも飲みたかったなぁ」

 

提督「空気は読まないのか?」

 

隼鷹「分かってるって。例え知っててもそんな野暮な事しなかったって」

 

提督「だろうな。それで、食べて行くか?」

 

隼鷹「えっ」

 

提督「どうせ匂いにつられてきたんだろ?」

 

隼鷹「いやー、確かに匂いに引かれて来たわけだけどこれは......」

 

提督「辛いのは苦手か?」

 

隼鷹「というより、食べた事ないの。匂いキツイからちょっと、ね」

 

提督「怖いか」

 

隼鷹「え、怖い? 怖いっていうか、自信がないっていうかーうーん」

 

提督「激辛とは言うが、実際のところこれはそれほど辛くはないと思うが」

 

隼鷹「え? そうなの? そのスープなんか凄く赤いけど」

 

提督「材料の関係上どうしてもスープはこういう色になってしまうんだ」

 

隼鷹「へぇー」

 

提督「ほら。少し味見してみるか?」スッ ←小皿にスープを入れた

 

隼鷹「まぁ、こくらいなら......」ズズ

 

隼鷹「んん!? や、ちょっと辛いかなこれ。でも初めてだからかも」

 

提督「麺と一緒に食べればまた印象が変わると思う」

 

隼鷹「味が変わるのかい?」

 

提督「変わるというより大分食べ易くなる。流石に辛いスープだけ飲むは誰だってキツイさ」

 

隼鷹「確かに」

 

提督「――と、話している内に出来たな。どうだ? やっぱりやめておくか?」

 

隼鷹「んー、じゃ食べてみる。どういう風に食べ易くなるのか気になるし」

 

提督「分かった。小皿に取ってやろう」

 

 

――数分後

 

提督「よし、準備ができた。ほら」トン

 

隼鷹「あ。ありがとう」

 

提督「さて、頂くか」

 

隼鷹「頂きます!」

 

隼鷹「ん......」パク......ズズ

 

提督「どうだ?」

 

隼鷹「あ、美味しい。辛いけど食べ易い。うん、これはイケる」

 

提督「気に入ったか」

 

隼鷹「割と。まだ食べれるよ」

 

提督「俺の分を見るな。これしかないんだ」

 

隼鷹「えー」

 

提督「また作ってやるから」

 

隼鷹「本当? 約束だよっ」

 

提督「ああ。だがさっきも言ったが、こういう味が濃いのは食べ過ぎはよくないから気を付けるんだぞ」

 

隼鷹「はーい......と、隙あり!」サッ

 

提督「甘い」ヒョイ

 

隼鷹「お、やるねー」

 

提督「油断も隙も無い......ほら」

 

隼鷹「お、サンキュー。流石大佐♪」

 

提督「調子が良い奴だ」




辛い食べ物が好きです。
俺は胡椒のようなスパイシー系が好きですね。
激辛ラーメンも良いですが、俺の場合一杯食べただけでもちょっと胃がもたれるんで苦手なんです。
あ、お腹空いてきた。


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第30話 「演習」

あまり出撃をしないこの鎮守府にとって演習は貴重な実践型の訓練です。
いつもそつなく勝利判定を取っている艦隊ですが、今日の相手は簡単にはいかない模様。
提督は勝つことができるのか?


提督「今日の相手はただの本部所属の艦隊ではない。元帥閣下直属の最強の艦隊だ」

 

加賀「勝てますか?」

 

提督「勝に拘るな。負けない戦いをしろ」

 

長門「見苦しい戦いはしたくないぞ?」

 

提督「別に逃げ回れとは言ってない。絶対に負けないという気概を相手に示すんだ」

 

陸奥「ああ、そういうこと」

 

金剛「了解! 全力で行くネ!」

 

Bis「私達の実力を示す良い機会ね!」

 

赤城「久しぶりの出番だと思ったら......」

 

提督「怖いか?」

 

赤城「いいえ。暴れ回りますよ!」キラキラ

 

元帥「元気な艦隊だな大佐」

 

提督「閣下。今日は宜しくお願いします」

 

元帥「応。存分に君の力を示してくれ」

 

提督「はっ」

 

元帥「それでは......戦ろうか?」

 

 

~鎮守府近海の演習場

 

長門「......壮観だな」

 

陸奥「ええ。流石は最強の艦隊というところかしら」

 

加賀「大和に武蔵、大鳳...あれは......まさか、信濃?」

 

赤城「見たことがない戦艦がまだ2隻いますよ。でも......」

 

金剛「Yeah ワタシ達は知っていマス。いえ、 memory に刻まれているノ」

 

Bis「私達の記憶に無いのに記録に刻まれているってどういうこと?」

 

長門「答えは......戦ってみればわかるさ!」ガコン

 

加賀「そうね。あの人たちの力見てみましょう」ヒュンヒュン

 

陸奥「勝てる気がしないわねぇ。負ける気もないけど!」ゴゴ

 

金剛「ワタシ達の full power 見せてあげまショウ!」ズォォ

 

赤城「ふふふ。久しぶりにお腹いっぱい食べられそう♪」ブォォ

 

Bis「覚悟はいい?じゃぁ......行くわよ!!」ドン

 

 

結果、戦術的敗北C

 

元帥「まぁ、D判定を取らなかっただけでも大したものだ」

 

提督「そうですね。しかしお強い......」

 

元帥「いや、それはこちらのセリフだぞ」

 

提督「そうですか?」

 

元帥「うむ。練度の差を考えれば圧倒すると思っていたからな」

 

提督「私もそれは予想外でした」

 

元帥「君の艦娘達は今どうしてるんだ? 負けて意気消沈してたりするのか?」

 

提督「いえ、負けた割には凄く良い顔をして仲間と反省会をしています」

 

元帥「そのようだな。笑い声すら聞こえる気がする。良い艦娘を持ったな大佐」

 

提督「は。ありがとうございます」

 

元帥「全く気合だけよくもあそこまで立ち回ったものだ。正直言って君の所の噂はあまり良くないから相手が務まるか心配していたんだぞ?」

 

提督「ご心配が現実にならず良かったです」

 

元帥「はは。そうだな」

 

元帥「ああ、それと」

 

提督「は」

 

元帥「例の水泳大会だったか? まだやってないのか?」

 

提督「は......。まぁその、予定を調整中でして」

 

元帥「はは。そうか」

 

元帥「もし本部の決定を信じ切れてないのなら儂がこの場で保証する。都合が良い時にやりたまえ」

 

提督「重ね重ねありがとうございます......」

 

元帥「どうした? 何やら元気がないな」

 

提督「いえ、大丈夫です。問題ありません」

 

元帥「そうか? まぁ、今日はご苦労だった。また会おう」

 

提督「は。閣下、この度の演習誠にありがとうございました。お達者で」

 

元帥「ああ。またな」

 

 

提督「......」

 

提督(大会の件で元帥に太鼓判を押されて、もうやるしかなくなった事に対して呆然としていたとは流石に言えないよな)




後半男だらけの会話でごめんなさい。
でもこういうのも俺は好きなんですよね。
いつも鬼のように強い元帥プレイヤーさんを良い人と思わないと、レベル130くらいの大和と武蔵に遭遇した時の現実に心が折れてしまいますw

今回は完全に創作の艦娘を出しました。
存在しているレベル程度の登場の仕方でしたが、今後実際に登場する可能性が結構示唆されてるので少し触れてみました。
名前すら出なかった残り二隻、皆さんはは何だと思いますか?


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第31話 「資材」若干R-15

提督の鎮守府はあまり出撃をしない関係で資材が豊富です。
が、保有するその資材の種類に若干偏りがあり、必要な時にソレが不足してて困る時が偶にあります。
今回もその事で少し困っているようです。


提督「相変わらず弾薬が少ないな」

 

陸奥「手間がかからなくていいって毎度同じ遠征ばっかりしてるからよ」

 

提督「至極真っ当な見解だ」

 

陸奥「弾薬以外は常に保有を許されてる限界数量持ってるのに、本当にうちは弾薬だけは極端に少ないわね」

 

提督「1桁違うからな」

 

陸奥「備蓄自体はできてるけど、演習で結構使うから実際プラマイ0に近いわよね」

 

提督「弾薬の数量が3万を超えてるのを見たのは何時だったか」

 

陸奥「遠い目してるんじゃなくて遠征のプラン少し変えたら?」

 

提督「ふむ......」

 

陸奥「過剰な量の資材を不足している資材と交換とかできたらいいのにね」

 

提督「独断による資材の転用、交換は違反だからな。それは無理だ」

 

提督「それに鋼材とボーキはやはり常に個人的に余裕を持っていたい」

 

陸奥「欲張りね。なんでよ?」

 

提督「回復に事欠くことがないからだ」

 

陸奥「ああ、うちってそういえば回復待ちしたことないわよね」

 

提督「これもお前たちを沈めない為の手段の一つだ」

 

陸奥「ふふ、大事に守ってくれてるのね」

 

提督「......気にするな」

 

陸奥「この話をすると昔の顔をするわね。やっぱりまだ苦心してるのね」

 

提督「すまない。嫌ってはいない。非道に扱う気もない。が......自分の未熟さが嫌になる」

 

ギュ

 

提督「おい......ぐぅ」

 

陸奥「気にしないで。普通に接してくれればいいの。それだけ嬉しいから」

 

提督「わか......はな......ぐむ」

 

陸奥「ん......口を動かさないで胸がくすぐったい」

 

提督(動けん。息がし難い)パンパン ←背中を叩いてる

 

陸奥「ん? どうしたの? ......あっ」バッ

 

提督「っはぁ......ふぅ......ぜぇ」

 

陸奥「ご、ごめん。大丈夫?」

 

提督「大丈夫だ。気にしなくていい」

 

陸奥「わたしったらつい」

 

提督「気持ちはまぁ嫌じゃなかった。だから大丈夫だ」

 

陸奥「......えっと、それだけ?」

 

提督「ん?」

 

陸奥「気持ち良くなかった? その胸......」

 

提督「ああ。気持ち良すぎて一瞬意識が遠のいた先に桃源郷が見えたな」

 

陸奥「あはは。何それ、はぐらかしてるつもり?」

 

提督「そういうことにしておいてくれ」

 

陸奥「ウブね~」

 

提督「そう見えるか?」

 

陸奥「もう少し慌ててくれてたらね」

 

提督「言っておくが俺は異性に興味がないわけじゃないぞ」

 

陸奥「え?」

 

提督「ちゃんと自分が男だと自覚できているからな」

 

陸奥「え?あ、そ、そう?」

 

陸奥(感慨深い表情をして何か自分に言い聞かせるようにしてる)

 

陸奥(でもその顔がわたしの抱擁の所為じゃないのがちょっと悔しいわね)

 

陸奥「ねぇ」

 

提督「うん?」

 

陸奥「もう一度抱きしめていい? 今度は加減するから」

 

提督「ダメだ。仕事しろ。ほら」ドサ ←書類

 

陸奥「もうっ。いけず!」




おめでとうございます!
初のR-15タグです。(水着じゃなかったけど)
戦艦の中では陸奥が一番好きです。
エロい。可愛い。優しい。最高です。
マルクはその次です。


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第32話 「写真」

その日の秘書艦は白雪でした。
提督が部屋を空けているので掃除をしています。
調理台とテーブルが置いてあること以外得に変わった物はない、寧ろ物が少ない部屋なので直ぐに提督の机を拭くところまで来てしまいました。


白雪「さて、最後は机ね」

 

白雪(机は提督が一番使ってる物だから最後に綺麗にしなくちゃね)

 

白雪「~~♪」フキフキ

 

コツ

 

白雪「あっ」

 

バサバサ

 

白雪「大佐のファイルが」アセアセ

 

白雪「......」 ←散らばった書類をファイルに集めてる。

 

白雪「ん?」

 

白雪(これ大佐の写真だ。女の人と写ってる。)

 

白雪「か、彼女さんかな。いや、奥さん? 姉、妹......?」

 

白雪「うーん」

 

 

コンコン

 

白雪「あ、はい」

 

古鷹「失礼します。古鷹で――て、あれ? 白雪ちゃんだけ?」

 

白雪「あ、古鷹さん」

 

古鷹「大佐はいないの?」

 

白雪「あ、はい。今は大佐部屋にいないので掃除中です」

 

古鷹「そうなんだ。偉いーーどうしたの白雪ちゃん?」

 

白雪「あ、えっと。これ、見つけちゃって」

 

古鷹「写真? あ、大佐......と、女の人」

 

白雪「や、やっぱり彼女さんでしょうか」

 

古鷹「大佐に? うーん、それは確かに居てもおかしくない年齢だとは思うけど」

 

白雪「でも?」

 

古鷹「別に大佐の事悪く言うつもりはないけど、あまり女性に興味なさそうだから」

 

白雪「大佐は優しいですよ?」

 

古鷹「優しいのと興味が有る無しは、ちょっと違うのよ。でもやっぱり私は彼女さんじゃなないと思うな」

 

白雪「そ、そうですか」

 

古鷹「ふふ。安心した?」

 

白雪「え?安心って、そんな」マッカ

 

古鷹「可愛い♪ でもこれあまり他の人には見せない方が良い気がするな」

 

白雪「そうなのですか?」

 

古鷹「うん。まぁ大佐のプライバシーも有るし、それに......」

 

愛宕「そ・れ・に?」

 

古鷹「あ、愛宕さん!?」

 

白雪「愛宕さんこんにわ」

 

愛宕「はい。こんにちわ」

 

古鷹「み、見てました?」

 

愛宕「おおよそ♪」

 

古鷹「口外しないでくれます?」

 

愛宕「私はそんな事しないわよ~。 ん~、でも後ろに彩雲が......」

 

白雪・古鷹「え?」

 

加賀「2人とも執務室では騒がないで下さい。白雪さんが掃除できません」

 

古鷹「あ、ごめんなさい。それじゃ私はこれで......」

 

愛宕「そうね。私もお暇......」

 

加賀「それと」

 

古鷹・愛宕「 」ピタ

 

加賀「その写真についていろいろ聞かせてもらえますか?」

 

白雪(加賀さんなんだか、怒ってる?)

 

 

それから数分後

 

加賀「なるほど」

 

古鷹「まぁ私はやっぱりご家族の方だと思いますけどね。ね、白雪ちゃん」

 

白雪「そ、そうですね。私もそう思います」

 

愛宕「ん~、でも~。もしかしてって事もあるわよ?」

 

加賀「......」ピク

 

古鷹「あ、愛宕さん!」

 

白雪「?」

 

 

ガチャ

 

提督「お前たち、此処は雑談室じゃないぞ」

 

白雪「あ、大佐」

 

古鷹(このタイミングで......!)

 

愛宕「流石です。大佐♪」

 

加賀「......大佐」

 

提督「......なんだ?」

 

 

更に数分後

 

提督「なるほどな」

 

白雪「ご、ごめんなさ! 私の所為で」

 

提督「お前は掃除をしてくれていたんだろう? 何も悪くない」

 

古鷹「そ、その私は......」

 

愛宕「そうそう大佐。あの写真の女の人何方なんです?」

 

古鷹「ちょ、ちょっと......」

 

提督「......どうやら反省をしないといけないのはお前だけのようだな」

 

愛宕「え~? お仕置きですか♪」

 

白雪(なんで嬉しそうな顔をするんだろう?)

 

提督「罰として一週間赤城と同じ量の食事をして貰う」

 

愛宕「 」

 

古鷹「うわ......」

 

白雪「?」(お仕置きがご飯?)

 

愛宕「ゴメンナサイ。太りたくないです」

 

提督「ふぅ、もういい。解散。白雪以外は待機任務に戻れ」

 

加賀「待ってください」

 

提督「うん?」

 

加賀「差し支えなければ先ほどの愛宕さんの質問に答えて頂きたいのですが」

 

提督「......」

 

提督(士官学校時代に世話になった教官なんだが、ここは敢えて恋人ということにしておくか)

 

提督「k――」

 

加賀「嘘は嫌、ですよ?」

 

提督(なんで艦載機が出撃体制なんだ。一文字すら言わせない気か)

 

加賀「嘘は分かりますからね。お願いです。本当の事を教えてください」

 

提督「......」

 

古鷹「......」ヒヤヒヤ

 

白雪「......」ドキドキ

 

愛宕「......」キラキラ

 

提督「士官学校時代に世話になった教官だ」

 

加賀「そう、ですか」

 

古鷹「そうなんですかぁ。良かったぁ......」

 

古鷹(あれ? なんか私安心しちゃってる?)

 

白雪「良かったです!」

 

愛宕「ふふ、私も分かってましたよ?」

 

提督「そうか。ほら分かったら解散だ」

 

古鷹「失礼します」(最初の用事忘れちゃった......)

 

愛宕「はーい。失礼しまーす」

 

ゾロゾロ

 

 

加賀「......」

 

提督「加賀?」

 

加賀「大佐」クル

 

提督「なんだ?」

 

加賀「本当に......安心しました」

 

提督「......そうか」

 

バタン

 

 

白雪「......」

 

提督「白雪、どうした?」

 

白雪「あ、いえ。なんでもありません」

 

白雪(加賀さん、さっき目尻に涙が見えたような。安心したから......?)




登場の仕方の関係で加賀がヒロインぽいですね。
でも個人的には陸奥か足柄が好きなんですが......。
どうやって話広げていこうかなぁ。


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第33話 「興味」

昼休み。
食事を取って余った時間に提督は読書をしています。
なんだか久しぶりに味合う静かな休み時間です。
しかし残念ながらあまり長く続きませんでした。(オイ


コンコン

 

提督「ん?」

 

龍田「大佐ぁ?龍田です。入っていいですかぁ?」

 

提督「ああ、いいぞ」

 

 

ガチャ

 

龍田「失礼しまぁす」

 

提督「何か用か?」

 

龍田「別に用とかはないんですけどぉ。ほらぁ? 最近大佐わたし達とよく話すようになったじゃない?」

 

龍田「だからわたしもお話にきたのよぉ? 迷惑だったかしら?」

 

提督「別に、問題ない」

 

龍田「良かったぁ。それじゃ何話します?」

 

提督「唐突な話題の振り方だな。普通話しに来た方が話題を出すもんだろ」

 

龍田「ふふ、そうねぇ。じゃぁわたしの事どう思っているか教えてくれない?」

 

提督「なかなか自分から振る話題じゃないな。答えないとダメか?」

 

龍田「こ た え な さ い ?」

 

提督「ダメだな。ある程度崩れた話し方は許してるが、上司に対して敬意が感じられない奴には俺は何も応える気はない」

 

龍田「あら......言うじゃない? わたし貴方より強いのよ? その事分かってます?」

 

提督「例え力で敵わなくても納得できる理由もなく、上司を脅す奴は俺は願い下げだ」

 

龍田「そんなこと言ってわたしの機嫌損ねて殺されたりしたらどするのかしらぁ

?」

 

提督「殺した後存分に後悔しろ。その時はお前は軍人ではなくなり国家の敵となる」

 

提督「そしてそんなお前の仲間だった奴らはお前と同じ評価を受ける事になるんだ。その事を後悔しながら裁かれるがいい」

 

龍田「......」

 

提督「......」

 

龍田「ふ、ふふふふ」

 

提督「冗談もこのくらいにしないか?」

 

龍田「あら? 分かってたのぉ?」

 

提督「正直、お前の性格は一番扱いづらくて好きではないが、それでも信用できる部下である事には変わりはない」

 

提督「まぁそれに、俺はともかくお前が仲間を蔑ろにする筈はないからな」

 

龍田「やめてよぉ。照れちゃうじゃなぁい♪」

 

提督「照れてるのか? 加賀とは違ってた意味で感情が読み難い奴だな」

 

龍田「そんなこと言って最初からわたしの脅しを冗談だと見抜いたのは大佐だけよぉ?」

 

龍田「これって結構すごい事なんだから」

 

提督「確かにまるで本気のような脅しだったな」

 

龍田「その割には全然動揺しなかったじゃなぁい? それどころか攻めてくるなんてお思いもしなかったわぁ」

 

提督「信じていたからな」

 

龍田「......その自信は何処から来るのかしら?」

 

提督「特に明確な根拠はないが、強いて言うならお前の存在そのものが信用に足ると言ったところか」

 

龍田「あら......」

 

提督「俺は部屋で指示するだけだが、それでも一緒に戦う仲間の命を互いに守り合ってるお前のことは分かっているつもりだ」

 

提督「正直、人間の身である故に一緒に出撃できないことを申し訳なく思っている」

 

龍田「......」

 

龍田「大佐?」

 

提督「なんだ?」

 

龍田「さっき貴方、自分はともかく他の仲間は―っていったじゃない?」

 

提督「ああ」

 

龍田「正直、わたしにもそういう事を思う部分はあったわ」

 

提督「そうか」

 

龍田「でもね。貴方の言葉を聞いて決めた。守ってあげる」

 

龍田「わたしは仲間も貴方のことも必ず守るわ。だから――」

 

龍田「貴方もわたしを信じて。そしてわたしも貴方の事を信じさせて?」

 

提督「その全幅の信頼、軍人としては何にも代えられない誉れだ」

 

龍田「もう、そんな堅苦しい言い方しないでよ。ただ、一言『ありがとう』て言えばいいの」

 

提督「そうだな。あー」 龍田「ありがとう」

 

龍田「もう女に先言わせるなんてダメよ?」

 

提督「......やはり扱い難い奴だ。ありがとう」

 

龍田「こちらこそ」ニコッ




はい。龍田先生の試験終了しました。
怖すぎですねあの人。
軽巡なのに一人だけ威圧感バリバリです。
そんな彼女だから作中扱いに結構緊張しました。
加賀とは明らかに使い方が難しいんですよね。
まぁ、それでもこれで少しは動かし易くなったと思います。
何時までも怖いままのキャラだと可哀想ですしね。


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第34話 「特訓(前篇)」

今日は金剛・マルク・筑摩と水泳の練習をする日です。
3人とも思い思いの水着を着てやる気まんまんです。
そんな3人を提督は少し疲れた顔をして見てます。
あれ?なんで疲れてるの?


金剛「大佐ァー!早く行くデース!」

 

マルク「つ、ついにこの時が来たのね......」

 

筑摩「マルクさん頑張りましょう」

 

提督「......」

 

提督(3人とも競泳に着るような水着ではないな。露出が過度に激しい気がするし、色も筑摩以外は扇情的な気がする)

 

提督(金剛は白一色か。一見地味だが元々薄い肌の色も相まって見ようによては酷く官能的だ)

 

提督(対するマルクは反対に黒一色か。二人に比べ明らかに豊満な身体を黒という映える色が少ない面積でより強調している)

 

提督(筑摩は2人に比べればまだ控えめだが、あの黒と薄い蓬色のツートンからーの水着が俺が好きな色を言った結果だと思うと何となくやるせない気分だ)

 

提督「......」←解説的な事を考えて更にやるせなくなった

 

金剛「それにしてもよくこんなナイスな所みつけたネ」

 

筑摩「本当ですね。人の気配がしません」

 

Bis「ここなら人目を気にせず練習ができるわね!」

 

提督「警備海域を今日だけ微妙にずらして一日限定で作った文字通りの穴場だからな」

 

提督「それでもいざという時はちゃんと通信できるようにしてあるから、それについては文句言うなよ」

 

金剛「了解ネ!」(ちょっと人数多いけど大佐とデート♪)

 

筑摩・Bis「了解」「分かりました」(何としても今日泳げるようになる!)

 

提督「それじゃぁ先ずは水に慣れ――」 金剛「ちょっと wait ネ!」

 

提督「なんだ?金剛」

 

金剛「水に入る前に sun oil 塗りまショウ」

 

提督「......なに?」

 

金剛「日焼けはお肌に bad ですからネ! care は大事ヨ? それに」

 

提督「......日焼けしたら練習してたことがバレる、か?」

 

金剛「yes! that's right! 分かってるネー大佐!」

 

筑摩「なるほど」

 

Bis「一理あるわね」

 

金剛「ということで大佐、さっs――」 提督「塗らないぞ?」

 

金剛「what!?」

 

提督「3人いるんだ。塗りあえばいいだろ」

 

金剛「そんなー! 大佐ァ! please!」

 

提督「やらんと言ったらやらん。準備が出来たら浅瀬に来いよ」スタスタ

 

 

金剛「うぅ......せっかくの plan が......」

 

筑摩「仕方ありませんよ。塗るの手伝いますから。その、だから......」

 

Bis「私と筑摩にもオイル貸してもらえないかしら?」

 

 

~浅瀬

 

筑摩「お待たせしました。大佐」

 

Bis「待たせたわね」

 

金剛「大佐、次は塗ってヨ!」

 

提督「まだ言うか。まぁいい。それでは――」

 

金剛「? どうかした大佐?」

 

提督(気の所為か3人とも布地で覆われたところ以外にも万遍なくオイルが塗られてるように見える。こいつらまさか全裸で塗っていたのか? 危なかった......)

 

提督「何でもない。すこし肝が冷えただけだ」

 

金剛「へ?」

 

筑摩(興奮するならまだしも)

 

Bis(肝が冷えた?)

 

提督「それでは始める」




ちょっと長くなりそうなのでキリが良いところで切って前後に分けることにしました。
挿絵も作ってますが、3人の水着姿気合入りますね。


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第35話 「特訓 後編①筑摩の場合」微R-15

さぁ、いよいよ特訓開始です。
若干1名特訓が必要なのか疑問な人もいますが、彼女たちは無事に泳げるようになるのでしょうか。


提督「そう、そうだ。足から徐々に水につけて......」

 

筑摩「き、緊張します」

 

Bis「怖くない怖くない......」

 

金剛「大佐ァーこれでイーですカ?♪」ムニ

 

提督「俺は腰まで水に浸かれとはいったが、前かがみになって胸を強調しろとは言ってないぞ」

 

金剛「そんなこと言ってーうれシーくせにー♪」

 

筑摩(なんか、金剛さんだけ雰囲気が違う。緊張を全く感じない。......凄い!)

 

Bis(やるわね金剛......。なんて度胸大なの! 見習わなくちゃ!)

 

提督(何故二人は金剛の事を尊敬するような目で見てるんだ)

 

提督「よし、次は一人ずつだ。俺の手を掴んで沖までいくぞ」

 

提督「よし、筑摩。お前からだ」

 

筑摩「は、はい!お願いします!」

 

 

筑摩「手、離さないで下さいね?」ソロソロ

 

提督「大丈夫だ......来い」

 

筑摩「か、肩まで水が」チャプ

 

提督「怖がるな。手は握ってる。俺を見ろ」

 

筑摩「大佐......はい!」

 

提督「よし、次は水に顔を付けて目を開けるんだ」

 

筑摩「目、痛くないでしょうか?」

 

提督「海水の塩分濃度は涙のそれと同じくらいらしい。多分大丈夫だ」

 

提督「痛く感じたら直ぐに顔をあげろ。いいな?」

 

筑摩「はい!」

 

提督「良い気合だ。それじゃあやってみろ」

 

筑摩「う......」チャプ......パチッ

 

筑摩(......! 本当だ痛くない!それに――)

 

筑摩(海の中ってこんなに綺麗だったんだぁ......)

 

提督(ちゃんと目は開けれたようだな。それに海中鑑賞まで満喫してるらしい)

 

提督「筑摩は自分で気づいてないみたいだが、自然に足を離して体全体で浮かんでバランスを取っている。これなら泳ぐだけなら直ぐにできそうだ)

 

サワッ ←海中の筑摩の足元を魚が横ぎった

 

筑摩「ひゃぁ!?」ガバッ、ダキ

 

提督「な?ぐ......」

 

浅瀬の2人「!?」

 

筑摩「大佐、大佐!今足元に何か触れました!」ギュー、ガシッ

 

提督(なっ、カニ挟みまで。動きが取れない)

 

提督「落ち......つけ......魚が横ぎっ......ただけだ......ろ」

 

筑摩「あ、そう。そっか......」

 

提督「筑......離れて......れ」

 

筑摩「え?ああっ!?ご、ごめんなさい!」

 

提督「はぁー、ハー、ぜぇ......」

 

提督(危なかった。もう少しあのままだったら支えきれず身動き取れないまま倒れてたな)

 

筑摩「た、大佐申し訳ありませんでした!」カァッ

 

提督「大丈夫だ。気にするな。それより」

 

筑摩「な、なんでしょう」

 

提督「お前海水に顔を付けてる間無意識に泳いでいたのを気づいていたか?」

 

筑摩「え!? そ、そんな」

 

提督「本当だ。自分から足を噺体を海に浮かべていたぞ」

 

筑摩(そういえば、もっと楽に見たくていつの間にか浮いているような感覚だった

......)

 

提督「無意識体がそこまで動けばもう大丈夫だ。後は泳ぎ方の基本を覚えればお前なら直ぐ泳げるようになるさ」

 

筑摩「ほ、本当ですか!? 私頑張ります!」

 

筑摩「あ、それと大佐」

 

大佐「うん?」

 

筑摩「その、抱き着いたりしてその......気持ち......」カァッ

 

提督「ああ、抱き心地は良かった......と思う。重くもなかった」

 

筑摩「そ、そうですか。よか......あ、えっと...。やだ、私はしたない」

 

提督「必死だったんだ。分からないのも無理はない。さぁそろそろ次にいくぞ。準備はいいな?」

 

筑摩「はい! 宜しくお願いします!」

 

提督「いい返事だ。それじゃぁ先ずはバタ足からだな。バタ足は......」




この後程なく筑摩は直ぐに泳げるようになったそうです。
良くあるラッキースケベな展開ですが、提督の場合は常に命が懸かった状況になり易いのが難点ですね。
男だから多少感じるところはあるかもしれませんが、それを感じる余裕すらないのが悲しいところ。


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第36話 「特訓 後編②ビスマルクの場合」軽R-15

次はビスマルクです。
明らかに筑摩より手が掛かりそうなこの人。
果たして提督は無事目的を達成できるのか?


「大佐、さっきの筑摩……」

 

ビスマルクは先程の筑摩と提督の様子が気になっていたらしい。

頭のどこかでは理解していても実際は素直に受け入れたくない、そんな我儘な感情に揺れる目で彼女は提督を見つめていた。

それに対して提督は流石に詳細を話すわけにもいかなかったので、努めて平静を装い素っ気なく言った。

 

「あれは筑摩が驚いただけだ」

 

「そ、そう。あ、あとね……」

 

「マルク、怖いのは分かるが俺を信じろ。絶対に溺れない」

 

「う、うん。手離さないでよ? 絶対よ?」

 

ビスマルクは震える手で提督の手をしっかりと握り、ゆっくりと、そして恐る恐るといった様子で徐々にその白い体を海水に浸けていった。

 

「分かってる。大丈夫だ」(沖に出るだけでもこのペースか。やはりこいつが一番苦労しそうだ)

 

 

「あ、あの」

 

遅々としたペースながらもようやく海面が胸元に達しようかと言う所でビスマルクはふと足を止めた。

 

「なんだ? まだ肩に浸かるまでは沖に来てないぞ」

 

「そ、その……情けない話だけど手を繋いでるだけじゃ本当に怖くて……だ、抱きしめながら行って貰えないかしら?」

 

「……」

 

提督はそれを聞いて考える表情をする。

彼の頭の中では彼女を抱く事に抵抗を感じるのとは別にとある懸念がその頭をよぎっていた。

 

(マルクは海外艦故か長門以上に背が高い。そして戦艦だ。そんな奴にさっきの筑摩みたいに抱きつかれたら……流石に自信がないな)

 

「悪いがそれは――」 

 

「力は加減するから! 本当よ? だからお願い!」

 

提督が躊躇っていた理由を察していたらしいビスマルクは彼が断わろうとする前にそれを遮って縋るような声で言った。

 

「……」

 

「おね……がい……よ」

 

ビスマルクはとうとう沖に行く恐怖に耐えられず泣き出してしまった。

提督はそんな彼女を見て観念したように息をひとつはくと、真剣な表情で言った。

 

「マルク」

 

「な、なに?」ビクッ

 

「頼むから殺してくれるなよ? そして練習が終わったらちゃんとあそこの2人に抱いた理由を話せよ?」

 

「う、うん。分かったわ! それで……いいの?」

 

「ああ」

 

「ありがとう!!」パァッ

 

「そ、それじゃぁ……」ソッ

 

「ん」

 

ギュッ

 

 

浅瀬の2人「!? !? !?」

 

金剛と筑摩は浅瀬からしっかりその光景を見ていた。

突然の行動に金剛は嫉妬するように目をくわっと開き、筑摩はその大胆んな行為に驚き口に手を当てた。

そして互いに顔を見合わせ今見た光景が現実だという事を確かめ合うと、何故ビスマルクと提督がいきなり抱き合ったのかできるだけ穏便な予測を挙げ始めた。

 

 

「? 何か海岸の方が騒がしいわね」

 

「……そうだな。それじゃゆっくり行くぞ?」

 

「あ、うん」

 

提督は今より深い所に行く事もあってビスマルクに気を遣い、最初より更にゆっくりとしたペースで彼女を抱きしめながら沖へと進んでいった。

 

ムニッ

 

「……」

 

そして当然密着している事によってとある感触も感じていたのだが、それが故意によるものでない以上努めて気にしない様に気を引き締めた。

ここで油断をして気を抜こうものならどのような結果になるのか判らなかったからだ。

何しろ今抱きしめながらエスコートしている女性は大人の身体をしていながらも、子供以下の水泳の知識しかなく、更にその力は見た目以上に強力なのだ。

そう、本当に一瞬の油断が命取りになりかねないのである。

 

 

「よし、此処でいいだろ。肩まで浸かってるな?」

 

提督は足がギリギリ浸かる位置にまでようやく来て、そこで歩みを止めた。

ビスマルクは提督より背が高く彼よりかは水位に余裕があるにもかかわらず、もう不安で泣きそうな顔をしていた。

 

「う、うん……」ビクビク

 

「じゃぁ今度は顔付けて目を開けるんだ。大丈夫だ痛くない」

 

「か、顔を……目……。い、一緒にやって……?」ジワッ

 

(口調がもう子供だな。そんなに不安か)

 

「分かった。じゃぁ顔だけ付けるんじゃなくて一緒に潜ってみよう」

 

「も、潜……!?」ビクッ

 

提督に告げられた次のステップにビスマルクはビクリと肩を震わせる。

その様子はまるで死刑宣告を受けたようで、顔面を蒼白とさせていた。

提督はそんな彼女をなるべく安心させる為になるべく穏やかな口調で言った。

 

「お前一人だと不安だろう? 俺も一緒にやってやるから」

 

「で、でも潜るなんて……」

 

「ちゃんと抱き留めててやるから。いいな?」

 

「……うん……分かったわ!」グス

 

ビスマルクは暫く逡巡したのち、一大決心をしたような真剣な顔で決意の籠った声でようやく提督の指示を受け入れた。

だがその水に対する恐怖を我慢しているのは明らかで、その目尻には涙が浮かんでいた。

 

(目に涙まで浮かべて、そんなに怖いか)

 

「よし、それじゃぁせーので潜るぞ。あとくれぐれも力を入れるな。俺がちゃんと抱いててやるからな?」

 

「し、信じてるわよ」

 

「ああ。任せろ。それじゃいくぞ? せーのっ」

 

ザプンッ

 

 

「……!」ブクブク

 

(思いっきり目を瞑ってるな。少し安心させるか)

 

提督は水の中で思いっきり目を瞑っているビスマルクに苦笑して、彼女を安心させるためにそっとその頭に手を置いて撫でた。

ビスマルクは水の中でもその感触はしっかりと感じる余裕はあったらしい、感じ慣れたその感触に彼女は直ぐに提督が自分を撫でている事に気付く。

 

(! 頭撫でてくれてる……安心しろって事?)

 

「……」ポンポン

 

頭だけではなかった。

提督は開いた手で彼女の肩も軽く横から叩いてくれた。

ビスマルクはその感触に安心感と勇気を貰い、そして決断した。

 

(あ……肩も。よし、頑張ろう!」パチッ

 

 

果たして目を明けたビスマルクの前に広がっていた光景は……。

 

「…………!」

 

地上の空より濃い青の世界だった。

その青い世界は外からさしこむ太陽の日差しを受けて煌めき、また泳いでいる色鮮やかな魚もそれを受けて輝いていた。

ビスマルクはその光景に目を見張り、今まで海面からでしか知らなかったその海の世界に感動して打ち震えた。

 

( なんて綺麗なの……こんな世界私今まで見た事ない)

 

「……」

 

提督はその様子を見て彼女が恐怖を忘れて海の世界に魅入っているのを確認した。

 

(……よし、何とか目を開けれたみたいだな。そろそろ上がるか)

 

実はビスマルクが潜ってその目を開けるまでは割と時間が経っていた。

時間にしてまだ2分程だったが、提督は余裕がある内に一度空気を補充したかったので浮上する為に、彼女の肩を軽くトントンと叩いた。

だがビスマルクはそれには反応せず、提督の顔の横からずっと海の世界を見つめたままだ。

 

「……」ポー

 

(返事がない。まだ海中に見惚れているのか……?)

 

「……」ペチペチ

 

提督は今度はその頬を軽く叩く。

だがそれでもビスマルクは反応しない。

そこにきて提督は流石に焦りを感じ始めた。

 

「……」ボー

 

(これでも駄目か。む、息が……)ゴボッ

 

 

(どうする。抱き合って潜ってるから浮上するにしても二人同時でないと駄目だ。もっと強いショックを与えるしか手段がないか……)

 

「......」チラッ

 

提督はチラリとビスマルクの白くて豊満な胸を見た。

決して不純な理由からではなく、あくまでとある目的の為にだ。

 

「……」チラッ

 

提督は僅かな望みを懸けてビスマルクの顔を再び見た。

だがその期待も虚しく、彼女はまだ明後日の方を見たままだ。

 

「……」

 

提督はそれを見て苦渋に満ちた顔で目を瞑ったが、やがて決心したように目を開いた。

 

(……俺は今日ほど自分が嫌になったことはない。仕方ない……許せマルク!)

 

 

モニュッ

 

不意に胸元に感じた感触にビスマルクは目を見開く。

見ると提督の手が自分の胸を鷲掴みにしていた。

 

「!?」ゴボッ

 

あまりにも衝撃な光景にビスマルクは思わず息を漏らす。

 

(え、え? どういう事? 大佐どうして……あ)

 

提督はやっとビスマルクが自分を目で捉えている事を確認して直ぐにその手を放した。

そして指で上を指し浮上のサインを伝える。

 

「……」クイクイ

 

「……?」(大佐なんだか苦しそうね。どうし……あっ!!)

 

ザパァッ

 

 

「ハーッ……ハーッ、ッく、ハァー……ゼェ」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

ビスマルクは海面に上がるなり、大きな水しぶきが上がる勢いで頭を額を

海面に付けて提督に謝罪した。

提督はそれに対して軽く手を振って気にするなと伝えてきた。

 

「いや、俺の方こそ今回はすまん。その、胸を……な」

 

「き、気にしくていいわ。全然私反応しなかったんでしょ? なら、仕方ないわ……」

 

「じゃぁ今回はお相子にしよう。そしてできる事ならさっきの事は忘れてくれ本当に」

 

「わ、分かった」

 

「ありがとう、助かる。それと、話を逸らすつもりはないが、大分水に慣れたみたいだな?」

 

「え? あ、うん。もう潜るのは平気。海の中があんなに綺麗だったなんて私知らなかったわ」

 

「水に対して抵抗がなくなったのならもう、半分泳げたようなもんだ。お前も筑摩と同じように直ぐ泳げるようになるだろう」

 

「ほ、本当!?」

 

「ああ。保証する。だからもう少し頑張れるか?」

 

「ええ。大丈夫よ。任せてちょうだい!」

 

「その意気だ。それじゃあやっぱりバタ足からだな。まずは……」

 

ビスマルクが改めてやる気を示した事に、提督は教え甲斐がありそうだと内心彼女の成長を喜んだ。

そして一方ビスマルクの方はというと……。

 

(私提督に胸さわら……揉まれちゃったのよね。……多分こんな事されたの私だけの筈、よね?)

 

「どうしたマルク? 聞いているか?」

 

「あ、ごめんなさい。大丈夫よ。聞いてる」

 

(恥ずかしいはずなのに私だけだと思うと何か嬉しい。確かにこの事はだれにも言えないわね。フフ)

 

今回のハプニングを早速楽しい思い出として忘れない事を心に決めたのであった。




予想していたとはいえ、描写の関係上長くなってしまいました。
金剛は流石に泳げるのでここまではならないかな?
これは文句なしに個人的にR-15です。


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第37話 「特訓 後編③金剛の場合」R-15

最後はいよいよ本当にこの人泳げないの?の人です。
提督は早くも泳げることを指摘してどう躱すかを考えているようです。
果たして提督の思惑通りいくのでしょうか。


金剛「やっとワタシのターンネ!」

 

提督「そうか良かったな」

 

金剛「yeah! I miss you だったんだカラ!」

 

提督「ま、手早く終わらせようか」

 

金剛「What!? 何言ってるデス!」

 

金剛「さっきまであんなに二人とラブムードだったのに、ワタシだけ nothing なんて嫌ヨ!」

 

提督「2人ともあれは事故だと言ってただろう」

 

金剛「but それでもワタシは大佐とラブラブしたいネ!」

 

提督「喧しい。ほら始めるぞ」

 

金剛「もう! このまま end する気なんか無いんだからネ!」

 

提督「沖に行くぞ着いて来い」

 

金剛「アレ?手を繋いで escort してくれないデス?」

 

提督「お前泳げるだろ。少し練習して直ぐに終わるぞ」ザブザブ

 

金剛「No! 大佐ァ待ってよぉ......て、 yeah! 大佐ァ背中ががら空きヨ♪」ピョン

 

提督「おい、お前何を」ムニュムニュ

 

金剛「I scary だからこのまま連れてイッテ♪」ダキッ

 

浅瀬の2人「~~~~!!?」

 

提督「海岸の方が今日一番騒がしい気がするんだが」

 

金剛「気のせいヨ♪」(ふふん。二人に格の違い見せつけてあげるんだから!)

 

提督「沖についたぞ。何時までしがみついてるつもりだ」

 

金剛「ん~♪ 大佐もっとおんぶプリーズ♪」

 

提督「泳ぐ気がないなら戻るぞ」

 

金剛「No! 離れマス」スッ

 

提督「全く。お前はバタ足からだ。ほら手を掴め......腕を組んでどうしたんだ?」

 

金剛「ハグした時に上の紐が解けちゃったみたいデス」

 

提督「......」

 

金剛「大佐。結んでくれマスカ?」クルッ

 

提督「後ろ向いてるからさっさと直せ」フイッ

 

金剛「Oh......相変わらず cool ネ。分かっタヨ」(そうくると思ってたわよ!)

 

ゴソゴソ

 

提督「......もういいか?」

 

金剛「ん......」ソ......ギュッ

 

提督「っ、金剛お前......」

 

金剛「振り向かナイデ! 今は本当に恥ずかしいデスカラ......」ポヨ

 

提督「ならどうしてこんな事を」

 

金剛「少しでも、少しだけでも大佐との仲をリードしたかっタノヨ」

 

提督「だからと言ってそこまでしなくてもいいだろ」

 

金剛「大丈夫ヨ? ちゃんと片手に持ってますカラ。ほら?」

 

提督「いちいち見せなくていい」

 

金剛「大佐......今ワタシ達、あの二人から見たらドどういうふうに見えるカナ?」

 

提督「背中まで海に浸かってるからな。見えても後ろから抱き着いているようにしかみえないだろ」

 

金剛「そうネ。じゃぁ......」クルッ

 

提督「く、お前それはやり過ぎだ」

 

金剛「離さないで下さいネ? 離しちゃったら見えちゃう......カラ」カァァ

 

提督「そんなに赤くなって恥ずかしがるなら最初から......押し付けるな」ポヨヨ

 

金剛「大佐......どうです? 気持ち良いデスカ?」

 

提督「お前の積極さを甘く見ていた」

 

金剛「あ......嫌いに......ナッタ?」プルプル

 

提督「......」ポン

 

金剛「あ......」

 

提督「次はこうはいかないからな?」

 

金剛「! yes! 次もっとお淑やかに攻めるワ! だから今はもう少しこのままデ......」

 

提督「手の掛かる子だ」




はい!短いけどこれで終わりです。
まぁ短い分、かなり詰め込んだつもりです。
金剛ファンになりそう......。


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第38話 「帰り道」

色々気苦労が絶えなかった水泳の特訓でしたが、何とか目的を達成しました。
気が付けば夕方。
提督は自分がこんなに仕事以外の事で誰かの為に時間を使ったのが、これが初めてだということに気づきました。
4人は留めのない会話をしながら基地までの帰路を行きます。


金剛「たっのしカッター♪」

 

筑摩「そうですね。海で遊ぶのがこんなに楽しいなんて知りませんでした」

 

Bis「ふふ。筑摩、水泳の特訓がいつの間にか遊びに変わってるわよ?」

 

筑摩「あ、私ったら」アセアセ

 

提督「まぁ、楽しむのも大事な要素だ。2人ともよく泳げるようになった」

 

Bis・筑摩「2人?」

 

金剛「タ、大佐ァ!ワタシを forget しないでヨ!」

 

提督「おっと、そうだたったな」

 

提督(そういえば2人には金剛が泳げるのを知らなかったか)

 

金剛(危ない危ない......)

 

筑摩「それにしても今回の特訓をとして私達随分と仲良くなりましたよね?」ススッ ←さり気なく提督の横に並ぶ

 

Bis「そうね。色々思い出......思い出できたし」 ←顔を赤らめながら無意識に前を歩く提督の影に入る

 

金剛「そうネ。今日大佐と swim 出来て本当にハッピーだったヨ!」ピョン

 

Bis・筑摩「えっ」

 

督「おい。金剛何をするんだ」

 

金剛「I'm tired オンブして欲しいネ」

 

筑摩「た、大佐!金剛さんが終わったら次は私お願いしたいです!」

 

Bis「わ、私もしてくれてもいいのよ?」

 

提督「お前ら俺の意思をm」

 

筑摩「お願いします!」 Bis「お、お願い!」

 

提督「......俺の体力も考えてくれよ?」

 

筑摩「ありがとうございます!」パァァ

 

Bis「Danke!」パァァ

 

提督(勝手に交代制にされてしまった。明日問題なく起きれたらいいが)

 

金剛「大佐甘過ぎネェ......to be jealous しちゃいマス」ボソ

 

 

――数十分後

 

金剛「次ワタシ、ワタシデス!」ピョンピョン

 

筑摩さん「金剛さんはそれだと2回連続ですよ! 次は私です!」

 

Bis「ちょっと、ジャンケンに勝ったのは私なのよ!」

 

提督(一回切りの応対じゃなかったのか......)

 

 

――更にそれから数十分後、鎮守府入り口前

 

提督「着いた......」(途中から胸の感触も感じなくなったな)

 

Bis「Danke 大佐!」

 

筑摩「最後はマルクさんでしたか。次は負けません」

 

金剛「No! 次の winner はワタシヨ!」

 

提督「程々にな」(勘弁してくれ)

 

金剛「大佐」トントン

 

提督「うん?」

 

金剛・Bis・筑摩「大佐、今日は本当にありがとございました!」バッ

 

提督「......みんな今日はよく頑張った」

 

提督「まぁ、目的が水泳だったというのがあれだが、それでも今の結果はお前たちの真摯な努力の賜物である事には違いない」

 

提督「その気持ちを常に忘れるな。以上、解散」

 

金剛「という事は今からは free time ですネ!」

 

提督「何......?」

 

金剛「ニッポンでは go home まで遠足っていうネ」

 

筑摩「金剛さんは何が言いたいんでしょう?」

 

Bis「さぁ......?」

 

金剛「大佐の home はべッドもある執務室ネ。だから部屋までデートしまショウ♪」

 

Bis・筑摩「!」

 

提督「いや、別にそこまでせんでも......」

 

金剛「Don't hold back! さ、行きまショウ?」ギュ ←腕を組む

 

Bis「なっ」

 

筑摩「っ」

 

提督「分かった。分かったから腕を解け」

 

金剛「No! 部屋までは離さないヨ!」ズルズル

 

 

Bis・筑摩「......」

 

Bis「強いわね」

 

筑摩「そう、ですね。でも金剛さんは元々大佐の事を好きだと公言してるので......」

 

Bis「隠さなければ遠慮する気持ちもなくなるのかしら......」

 

筑摩「え?」

 

Bis「あ、ううんと。またね筑摩! 今日はお互い泳げるようになって良かったわね」

 

Bis「それじゃ!」タタッ

 

筑摩「あ、はい。それじゃ......」

 

 

筑摩「え? もしかして私だけ負けてる?」




タイトルは違いますが、5話に渡って続いた特訓のお話はこれで終了です。
筑摩は積極的になると一気に強敵になりそうな気がします。
それにしても......これで大会の話に入ったら何話くらいになるんだろう。


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第39話 「反省」

海での特訓の付き合いを終えて部屋に戻った提督は少し休んだのち、加賀と足柄を呼びました。
特訓と帰り道のおんぶ合戦で疲れ果てるはずの提督が彼女たちを呼んだ理由とは?


加賀「つまりこういう事ですか」

 

加賀「マルクさん達を無事泳げるしたのは良かったけど」

 

足柄「部屋に戻って落ち着いたら」

 

加賀「それまでの行いがまるで色情に狂った人間の所業のような気がして」

 

足柄「羞恥心に我慢できなくなったから」

 

加賀「心の内を誰かに打ち明けて楽になりたかった、と?」

 

提督「概ねその通りだ」

 

足柄「大佐も難儀な性格ねぇ」

 

加賀「ですが、私達を呼んだ事は評価します」

 

足柄「違うでしょ? 行動を評価してあげなさいよ」

 

加賀「貴女は嬉しくないのですか?」

 

足柄「そりゃまぁ呼ばれないよりかは、ね」

 

提督「お前たちになら厳しい言葉で俺を説いてくれると思ってな」

 

足柄「別にあたし大佐を苛める趣味なんてないんだけど」

 

加賀「同じく。ですが、金剛さん達と海に行ってたのは正直気に入りません」

 

足柄「はっきり言うわね。なに? 嫉妬?」ニヤニヤ

 

加賀「そうです」シレ

 

足柄「え?あ、そ、そうですか」

 

提督「確かに。本人たちの為とは言え、半裸の女子3人に男一人で泳ぎを教えるなんて事情を知らない一般人が見たらいかg」

 

加賀「そうじゃありません」

 

加賀「私も連れて行ってくれなかった事が不満なんです」

 

提督「......すまん」

 

足柄「いや、大佐。そこは多分謝るところじゃないわよ」

 

加賀「お詫びとして大佐に埋め合わせを要求します」

 

足柄(特に大佐が悪いわけじゃないのに当然のように要求してきた!)

 

提督「言っておくが俺はお前が泳げるのは知ってるからな?」

 

加賀「別に特訓をして欲しいわけじゃありません」

 

加賀「私も大佐と一緒に海で遊びたいんです」

 

足柄(あれ? 加賀ってこんなんだっけ?)

 

提督「遊ぶと言ってもな......」

 

加賀「大会の終わりに自由時間があったはずでよね? その時間に今日のその場所で一緒に遊んで下さい」

 

加賀「勿論、足柄さんも一緒です」

 

足柄「え!? あ、あたしも!?」

 

加賀「共に大佐を諌める為に呼ばれたのですから当然の権利ですよ」

 

足柄「や、別にあたしは、そういうんだったらお酒の方が......。大会だって出るつもりなかったから水着も持ってないし......」

 

加賀「では、私が大佐を独り占めしてもいいんですね? ありがとうございます。足柄さん、貴女は良い人ですね」

 

足柄「へ? え? いや、別にそうとはあたし言ってな――」

 

加賀「じゃぁ、行くんですね」

 

足柄(な、なにこの状況)

 

提督(加賀の奴、足柄を巻き込んで俺が断わり難い状況を作る気か)

 

加賀「行 き ま す よ ね ?」ズイ

 

足柄「ひぁっ!? わ、わかったわよ。行く。行きたいです! 一緒に連れてって下さい!」

 

加賀「やはりそうでしたか。正直なのは良い事ですよ」ニコ

 

足柄(滅多に見ない貴重な笑顔なのに怖い......)

 

加賀「というわけですから大佐、よろしくお願いしますね?」

 

提督「......分かった」

 

加賀「ありがとうございます。あ、それと。今日の事なら気にする事はありませんよ」

 

加賀「良かれと思ってやったのでしょう? そして実際に皆に成果を示しました」

 

加賀「卑下することなんてありません。寧ろ誇らしく思います」

 

提督「そうか。そう言ってもらえるとまぁ少しは気持ちが楽になる」

 

加賀「ええ。流石は私達の大佐です」

 

加賀「それでは失礼します。さて、行きますよ足柄さん」

 

足柄「失礼しま――て、え? 行くって何処に? あたしも?」

 

加賀「来たる勝負の日に向けて出陣の準備です」

 

足柄「ちょっと加賀なに言って――え、やだ引っ張らないで。いやぁぁぁあ!」ズルズル

 

バタン

 

 

提督「まぁ気分は楽になった......か?」

 

誰にともなくひとり呟いた提督だった。




俺は自分で自分の周囲の彫を埋める性癖でもあるんですかね。
どんどん話の風呂敷が広がって畳むのを面倒にしてるような。
ですが、足柄さんの為なら頑張るしかありません!


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第40話 「名前」

提督の艦隊には3人の海外艦がいます。
戦艦ビスマルク、駆逐艦Z1とZ3です。
今回はこの3人が着任した時の少し前の話です。


Z1「大佐また釣りをしてるの?」

 

提督「うん?」

 

Z3「レイス、またって?」

 

Z1「前に会った時も提督は釣りをしていたんだ」

 

Bis「大佐は釣りが好きなのかしら?」

 

提督「まぁな。こうして風に吹かれてぼんやりするだけでかなり癒される」

 

提督「3人一緒なのは珍しいな」

 

Z3「そうね。久しぶりかも」

 

提督「お前たちが揃っているのを見ると此処に来たばかりの頃を思い出す」

 

Bis「ああ、あの時ね。ふふ。なかなか印象的な出会いだったわね」

 

Z1「アハハ。そうだね。初めて会ったときに言われた言葉今で覚えてるよ」

 

Z3「なかなか衝撃的、だったわね」

 

Bis「そうね。だって会っていきなり言われた言葉が――」

 

 

 

――数か月前

 

提督「何て呼べばいい?」

 

Z1「え?」

 

Z3「どういう事?」

 

Bis「呼ぶって名前の事?」

 

提督「お前たちはこの国の艦と違って名前が長いからな」

 

提督「特にそこの2人は長い」

 

Z1「否定はできないけど......だけど僕そんなこと気にしないよ?」

 

Z3「そうよ。名前なんて気にしないで好きに呼んで下さい」

 

提督「そうか。それじゃあそうさせてもらおう」

 

Bis「あまり変な言い方は、その......嫌よ?」

 

提督「任せろ。そうだな先ずはレーベレヒト・マース、君だ」

 

Z1「ぼ、僕?」

 

提督「そうだな......よし、レイスにしよう」

 

Z1「わ。凄く短い。どうしてその名前にしたの?」

 

提督「名前を構成する文字を抜き出して、一番違和感無くに聞こえるように変えてみた」

 

『れー(い)ベルヒト・マーす』

 

提督「この平仮名の部分だけを繋いでみた」

 

Z1「へぇ」

 

提督「どうだ?」

 

Z1「うん。何だか気に入ったよ!ありがとう!」

 

提督「よし、レイスはそれ決まったな。次は......」

 

Z3「私かしら?」

 

提督「そうだな、君は......ジェーンとかどうだ?」

 

Z3「......一応理由を聞いてもいいかしら?」

 

提督「マックス・シュルツのマックスという言葉はマキシーンの略でな」

 

提督「そこからシーンの部分だけを取って、更に女性名らしく聞こえるように音を濁した。結構強引だが、どうだ?」

 

Z3「別にジェーンで構わないわ......そう。ジェーンでいいわ......うん」

 

Z1(ジェーンて名前嬉しそう。そういえばあまりマックスて呼ばれるの嬉しくなさそうだったな)

 

Bis「次は私ね」

 

提督「お前はマルクだな」

 

Bis「ちょ!あまりにも決めるの早くない!? もう少し悩んでもいいのよ!?」

 

提督「お前はそれ以外考えられない」

 

Bis「そんなぁ......もういいわよマルクで......」

 

提督「よし、これで全員決まったな。マルク、レイス、ジェーン。これからよろしく頼むぞ」

 

ドイツ娘3人「はっ」

 

 

 

――現在

 

Bis「そうそう。大佐ったら私に対してだけ酷かったわね」

 

Z1「アハハ。一瞬で決めたからね」

 

Z3「でも似合ってるわよマルク......ふふ」

 

Bis「何か貴女にそう言われると悔しいわね」

 

Z3「そう?ジェーンより良いと思うわよ。ジェーンより、ね?」

 

提督・Bis・Z1(明らかにそう思ってない)

 

提督「まぁ3人とも納得してる名前という事でいいじゃないか」

 

Bis「ちょっと大佐、私はまだ完全には......!」

 

提督「じゃぁもういっその事、マリアなんてどうだ?」

 

Bis「え」

 

提督「昔オーストリアにいたカール大公の娘の名前だ。名前の中にマリアとマルクの文字が入っていたはずだ」

 

Bis「ま、マリア......」

 

Z3「む」

 

Z1「可愛いよ!うん。凄く良いと思う!」

 

Bis「ま、まぁどうしてもというなら......」

 

Z3「大佐、マルクでも問題ないみたよ?」

 

Bis「ちょ、ジェーン!」

 

提督「ん? そうかやっぱり使い慣れた名前の方が......」

 

Bis「マリア!マリアでいいわ!」

 

提督「では、マリア宜しく」

 

Bis「ええ、宜しく!」

 

Z3「......」ブスー

 

Z3「......ジェーンの方が可愛いわよ」ボソ

 

Z1「ジェーン......」クス




記念すべき40話目はZ1達ののあだ名の由来の話でした。
Z3とマルクの名前の決め方は確かに強引だと思います。
ですが、結構気に入ってるのでこれからもこれで行こうと思います。
取り敢えずマルク、改めマリアさん改名おめでとうございます。


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第41話 「苦手」

提督たるもの体調管理は重要です。
食事は言うまでもなく、トレーニングによる体力作りものその一つ。
そそういうわけで提督が日課の早朝ランニングをしている時でした。


曙「大佐ぁー!!」トットット

 

提督「曙、お前もランニングか」

 

曙「そうよ。どっかの誰かのお蔭でなかなか出撃で体を動かせないからね」

 

提督「耳が痛い話だ」

 

曙「あ、あんま気にすんじゃないわよ。ランニングも結構あたし好きだから」

 

提督「すまないな。一緒に走るか?」

 

曙「大佐ぁ? 駆逐艦だからってあたしの体力甘く見ると後悔するわよ?」

 

提督(確かに駆逐艦は艦娘の中で一番小柄だが、一番動戦場を動き回ってるのも駆逐艦だな)

 

提督「できれば俺のペースに合わせて貰えるか?」

 

曙「それでいいのよ。了解任せて」

 

提督「準備は?」

 

曙「いつでも!」

 

提督「よし、行くぞ」

 

 

――数十分後、鎮守府通信塔前

 

提督「ふぅ。本当に凄いな。これだけ走って息一つあげないとは」

 

曙「大佐もやるじゃない。これだけ走って音をあげないなんて」

 

提督「まだ走る事自体はできるが、これ以上は体に負担がかかるからな」

 

曙「え?まだ走れるの?」

 

提督「ああ。残りの体力半々というところだ」

 

曙「本当にやるわね。あたしの予想以上よ」

 

提督「お前にそう言われると少しは自信が持てるな」

 

曙「そ、そんなお世辞を言ったって何も出ないわよ」

 

提督「本心だ。大したものだ」

 

曙「ふ、ふん。まぁせっかくだからその言葉ありがたく受け取っておくわ」

 

提督「そうしてくれ」

 

曙「うーん、でも体力に余裕はあるとは言え、汗は多少掻いちゃったわね」

 

曙「ねぇ大佐、そこの通信塔に上って少し風に当たらない?」

 

提督「何......?」

 

曙「あ、ご、ごめん。嫌だった?」

 

提督「嫌というか......曙、これから言う事はできれば他言無用でお願いしたいんだが」

 

曙「な、なに?」

 

提督「俺は、あまり高い所が好きじゃないんだ」

 

曙「え? それって苦手って事?」

 

提督「まぁ、そうだ。恥ずかしい話だが」

 

曙「へ、へぇ~。大佐も苦手なものがあるのね」ニヒヒ

 

提督「曙、今凄く嫌な笑いしてるぞ? 何を考えてる?」

 

ギュッ

 

提督「ん? なんだ。袖を持って」

 

曙「ね? ちょっとだけ」

 

提督「おい、まさか」

 

曙「怖かったらあたしに掴まってもいいから。ね、涼みたいの」

 

提督「全く......その代わり約束は守れよ?」

 

曙「当り前よ!約束は絶対に守るわ。」

 

曙「だから行こ?」

 

提督「分かった分かった。引っ張るな」

 

 

~通信塔、通信室

 

夕張「あ、大佐に曙ちゃん。こんな朝早くにどうしたんですか?」

 

曙「ランニングをして汗かいたから涼みに来たのよ」

 

夕張「あ、そうなんだ。大佐も、ですか?」

 

提督「まぁ......そうだ」

 

夕張(うん? 何だか顔色が悪い)

 

曙(本当に苦手なのね。何か、可愛いところあるじゃない)

 

夕張「大佐、調子でも悪いんですか?」

 

提督「いや......まぁ普通だ」

 

曙「あたしと同じペースで走ったから息あがっちゃってるのよ」

 

夕張「ああ、なるほど」

 

曙「ちょっと外に出るわね?」

 

夕張「今日風が少しあるから気をつけてね」

 

提督(なに......)

 

 

~通信室外

 

曙「あー、確かにちょっとだけ風あるわね」

 

提督「強くないか?」

 

曙「はい、手」ス

 

提督「む」

 

曙「握っていいわよ?」

 

提督「お言葉に甘えさせてもらおう」(ここは意地は張れないな)ギュ

 

曙「どう? 少しは落ち着いた?」

 

提督「不思議なものだな。手を握るだけで大分気分がマシだ」

 

曙「あたしのおかげかもよ?」

 

提督「そうだな。助かる」

 

曙「ちょ、ちょっとそんなに素直に感謝しないでよ」

 

提督「照れなくていい。こういう時は素直に受けた方がお互い気が楽だぞ」

 

曙「もう、ちょっと手を握ってあげたくらいで調子戻しちゃってさ。離すわよ?」

 

提督「それは困る」グ

 

曙「あ......もう、本当にしょうがないわね♪」

 

提督「ところで朝日でも観るつもりか? もう結構いる気がするんだが」

 

曙「うん? そうよ。高いところで観る夜明けは結構良いものよ。――ほら」

 

提督「ふむ......」

 

曙「ねぇ気づいている? あたし今手を離してるのよ?」

 

提督「お?」

 

曙「苦手なのを忘れるくらい綺麗でしょ?」

 

提督「そう、だな。」

 

提督「曙」

 

曙「なに?」

 

提督「また一緒に走ろう」

 

曙「いいわね! また来ましょう♪」

 

 

通信室

 

夕張(何だか二人とも良い雰囲気だなぁ)




朝の運動は良いものです。
俺も冬は寒いのが苦手だからあまりしませんが、夏とか春は偶にやったりしてます。
しかし、曙達、駆逐艦と同じペースで走ったらヤバいだろうなぁ。


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第42話 「予定」

ついに水泳大会の開催日が決定したようです。
大佐はこの事を各艦種の組長にに伝えて準備をするよう指示を出しました。
開催決定の日から間が空いていただけに、各艦娘はついに来たかと若干お祭りムードです。


提督「では、この日に大会を開催する事を決定する」

 

提督「各組長はそれぞれに所属する艦達に速やかに通達し、来たる大会に向けて準備せよ」

 

日向「戦艦組了解」

 

赤城「空母組了解」

 

古鷹「重巡組了解」

 

矢矧「軽巡組了解」

 

叢雲「駆逐組了解」

 

初春「同じく了解」

 

イムヤ「潜水組了解」

 

提督「よし、解散」

 

 

~秘書艦と提督だけの執務室

 

加賀「やっと決まりましたね」

 

提督「本当は決めようと思えばもっと早く決めれた気がするが、予想外の事が最近多かったからな」

 

加賀「水泳の特訓とかですか?」ボソ

 

提督「それ以外にもあった」

 

加賀「そうでしたか?」シレ

 

提督「まだ機嫌が悪いのか」

 

加賀「別に」

 

提督「全く......ところで、加賀。お前、前に足柄を無理やり連れて何処に行ったんだ?」

 

加賀「水着の販売店です」

 

提督「そうか」(聞かなければよかった)

 

加賀「一緒に来たかったですか?」

 

提督「いや、全く。もうこりごりだああいうのは」

 

加賀「......こりごり、とは?」

 

提督「まぁ......この前の特訓の時に着る為の金剛達の買い物に付き合ったんだ」

 

加賀「へぇ......」

 

提督「お前は俺に何も言わなかったろ?」

 

加賀「そうですね。行っても来てくれるとは思ってなかったので」

 

提督「む......」

 

加賀「でも金剛さん達とは行ったんですよね?」

 

提督「まぁ、半ば無理やりに近かったがな」

 

加賀「い っ た ん で す よ ね ?」

 

提督「......ああ、行った」

 

加賀「初めからそうやって素直に認めればいいんです。それ以上は私から追求するつもりはありませんから」

 

提督「そうか......」

 

加賀「ええ」

 

提督「......」

 

加賀「......」ジー

 

提督「どんな水着を買ったんだ?」

 

加賀「見たいですか?」

 

提督「関心はある」(まぁ見るだけだ)

 

加賀「そうですか。持ってきますので少し待っていて下さい」

 

バタン

 

 

――数分後

 

ガチャ

 

加賀「お待たせしました」

 

提督「......」(手には何も持っていない。まさか......)

 

加賀「どうしました?」

 

提督「着て来たのか?」

 

加賀「ご名答です」

 

提督「ここで見せるつもりか」

 

加賀「更にご名答です」

 

加賀「では、ご覧下さい」

 

シュル......パサ......コト......パサ......パサ

 

加賀「......どうですか?」

 

提督「世の男ならありがたくて泣いているところだろうな」

 

加賀「大佐はどうです?」

 

提督「それ、大会で着るのか?」

 

加賀「ええ。これが大会用の水着ですから」

 

提督「別にまだ買ったのか?」

 

加賀「それはお楽しみです」

 

提督(それ以上にアレなのか)

 

提督「はぁ......」

 

加賀「興奮しました?」

 

提督「きれいだ」

 

加賀「 」

 

提督「どうした?」

 

加賀「少々動揺してしまいました」

 

提督「偶には気の利いた事を言わないとな」

 

加賀「ありがとうございます。十分満たされました」

 

加賀「それでは、仕事の続きを」

 

提督「服を着ろ。大馬鹿者」




いい加減大会開始の狼煙挙げることにしました。
加賀さんやる気満々ですね。
競技に参加するかどうかは分からないけど。


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第43話 「開会式」

いよいよ大会の始まりです。
大会に参加する代表選手は静かに闘志を燃やしています。
波乱がありそうなこの大会、果たして無事に終わるのでしょうか。


提督「それではこれより、水泳大会の開会式を行う」

 

艦娘達「ワァァァァァァァァ」

 

提督「司会進行役、後は頼んだ」

 

青葉「はい!お任せ下さい♪」

 

提督(楽しそうだな)

 

青葉「はい。皆さん注目です!大佐より司会進行役を仰せつかりました青葉です!」

 

青葉「まず、初めに競技の進め方について改めてご説明しますので、どうかご清聴を!」

 

青葉「今回の大会は、各艦種のグループから選出された代表5名による団体戦です」

 

青葉「ルールは簡単。各グループの代表が一名ずつ自由な型で同時に一定距離泳いでもらい、タイムを合計して割り出した平均で競います!」

 

青葉「因みに入賞は3位まで! 入賞したグループには順位に応じて素晴らしい景品が用意されています!」

 

青葉「そして、なんとなんと今回は団体の成績とは別に、最も個人成績が良かった選手にはご褒美として大佐に何でもお願い出来る権利が与えられます!」

 

艦娘「ワァァァァァァァアアアアア!!」

 

青葉(明らかに後者の方に熱い何かを感じるなぁ)

 

青葉「故意に競争相手を妨害する行為は勿論反則! それに加えて艦娘として持ってる力も使ってはいけません! 必ず自力で泳いでください!」

 

青葉「あ。あと一番最後に目玉イベントがあります!」

 

青葉「個人成績最下位の選手は大佐と勝負をしてもらいます!」

 

青葉「こちらは勝っても負けても大佐個人からご褒美が貰えちゃいますよ!」

 

青葉「えーと、説明はこのくらいでしょうか......うん。はい、それでは各グループの紹介に入ります!」

 

青葉「各グループの紹介の後には代表選手のリーダーに大会に向けてのコメントも頂きますので、どうかよろしくお願いします!」

 

青葉「それでは早速行ってみましょう!先ずは戦艦グループです!」

 

<戦艦グループ代表選手:長門・金剛・伊勢・ビスマルク・扶桑>

 

青葉「では、割れた腹筋が眩しい戦艦グループのリーダー長門さんにコメントをしてもらいます。どうぞ!」

 

長門「こら、腹筋とか言うんじゃない!あーこほん。リーダーの長門だ!」

 

長門「今回は世界のビッグセブンとしてではなく、鎮守府のビッグファイブとして戦う所存だ! 無論、優勝は私達が頂く!」

 

青葉「はい、ありがとうございます素晴らしい意気込みでしたね!」

 

青葉「では、次は航空母艦グループです。どうぞ!」

 

<航空母艦グループ代表選手:加賀・翔鶴・瑞鶴・飛龍・蒼龍>

 

青葉「では、絶対零度の氷の女王リーダーの加賀さんコメントお願いします!」

 

加賀「......貴女、大会が終わったら後で鎮守府の裏に来なさい?」

 

加賀「こんにちは、加賀です。私達に敗北は有り得ません。勝ちは既に決まっています」

 

青葉「何とも凄い自信! 流石ですね!」

 

青葉「では次、軽空母グループの方どうぞ!」

 

<軽空母グループ代表:鳳翔・龍驤・瑞鳳・飛鷹・千歳>

 

青葉「それでは我が鎮守府のお母さん、リーダーの鳳翔さん一言お願いします!」

 

鳳翔「お、お母さんなんて、そんな。どうも皆さんこんにちわ、鳳翔です」

 

鳳翔「今日は私達軽空母の本当の力をお見せできると思います。期待しててくださいね?」

 

青葉「凄い!和みました!ありがとうございました!」

 

青葉「それでは次は、重巡・航巡の混成グループです。どうぞ!」

 

<重巡・航巡チーム:加古・那智・摩耶・最上・筑摩>

 

青葉「これは意外な人選! 居眠り王、リーダーの加古さんコメントどうぞ!」

 

加古「居眠り王なんてやめてよ! あー加古です」

 

加古「普段、ぼーっとしてる事が多いかもしれないけど、いざという時はやるので見てて下さい!」

 

青葉「はい!本当にお願いしますね!」

 

青葉「お次、雷巡・特務艦の混成グループです。どうぞ!」

 

<雷巡・特務艦チーム:北上・大井・木曾・あきつ丸・明石>

 

青葉「これも意外な人選ですね。ではマイペースなら誰にも負けないリーダーの北上さん一言どうぞ!」

 

北上「あたしはリーダーなんてやりたくなかったんだけどね~」

 

北上「でもやる時はやるよ~? チーム北上の活躍こうご期待ってね」

 

青葉「はい。ありがとうございます。何だか不思議な安心感ありますね!」

 

青葉「それではお次は軽巡グループです。どうぞー!」

 

<軽巡グループ:矢矧・天龍・長良・川内・夕張>

 

青葉「お、これは頼もしい人選! クールビューティー、リーダーの矢矧さんどうぞ意気込みを!」

 

矢矧「クールビューティって......まぁ悪い気はしない? か」

 

矢矧「矢矧だ。軽巡と侮るなよ? 私達が一番優勝に近い事を証明してみせよう!」

 

青葉「凄い!カッコイイですね!流石です!」

 

青葉「さて、残りも少なくなってきました。お次は駆逐グループAです!」

 

<駆逐グループA:初春・菊月・深雪・綾波・雷>

 

青葉「はい、それでは煙管を持った姿が良く似合いそうなリーダー初春さんお願いします!」

 

初春「別に妾は喫煙はしないのだがな。初春じゃ。先ほどの軽巡のリーダの言葉と被るが言っておこう」

 

初春「駆逐艦と侮らぬことだ。さもなくば、気づいた時には全て手遅れだぞ?」

 

青葉「凄い自信ですね! 駆逐艦とは思えません! ありがとうございました!」

 

青葉「残るは2グループ!はい、それでは駆逐グループBどうぞ!」

 

<駆逐グループB:陽炎・白露・霞・長波・島風>

 

青葉「いいですね!駆逐艦のアイドル、リーダーの陽炎さんコメントどうぞ!」

 

陽炎「あ、アイドルなんかじゃなわいよ! 陽炎よ!」

 

陽炎「今日は私達駆逐艦の真の力を見せるわよ! 期待しててね!」

 

青葉「わー可愛い! これは誰だって期待しちゃいますね!」

 

青葉「はーい!それではいよいよ本大会の大本命、潜水グループの皆さんです!」

 

<潜水グループ:伊168・伊58・伊19・伊8・まるゆ>

 

青葉「おお、何と今回は全員独自の水着を着るそうです!これはますます期待です!」

 

青葉「それではリーダーのイムヤさん、一言お願いします」

 

イムヤ「私達潜水艦は全力を尽くすわ! 勿論手加減抜き! 楽しみましょう!」

 

青葉「いやー、実力者らしい堂々としたお言葉でしたね!」

 

青葉「グループの紹介は以上です! それでは、最後に大佐に開会の合図をして頂きます! 大佐お願いします!」

 

提督「皆、今日は競技に参加する側も応援する側も一丸となって大会を盛り上げ、そして楽しんで欲しい」

 

提督「それでは、堅苦しい話はするつもりはないので、早々に大会の開始を宣言させてもらう」

 

提督「これより水泳大会を開催する。一同、全力を尽くせ」

 

艦娘一同「ワアアアアアアアァァァ!!」




つ、疲れた......。
やっぱり登場人物が多かったり、会議のような流れだと区切ることができないから文字が多くなってしまうなぁ。
まぁ、話を広げたからにはしっかり最後まで畳んでみせます。


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第44話 「水泳大会第一ゲーム①」

第一ゲーム開始!

○出場選手一覧
戦艦G:扶桑 航空G:蒼龍 軽空G:千歳 重巡/航巡G:筑摩 雷巡/特殊G:明石 軽巡G:夕張 駆逐AG:雷 駆逐BG:島風 潜水G:まるゆ

さぁ結果は!?


青葉「さぁもうすぐ水泳大会第一ゲームの始まりです!」

 

青葉「この試合の実況と解説は青葉と」

 

赤城「ゲストの赤城でお送りします」

 

青葉「それにしても赤城さん、最初のゲームからいきなり波乱の予感がしますね」

 

赤城「そうですね。駆逐グループからはいきなり『最速』の島風ちゃん、潜水グループからは『海の土竜』こと、まるゆちゃん」

 

赤城「軽巡からは『鈍足』の夕張さん、更に雷巡/特務グループからは明石さん......」

 

青葉「いきなりダークホース的要素が満載ですね!」

 

赤城「それはどうでしょう。今回の重要な要素は艦娘としての能力を使わずに自力で泳ぐことにあります」

 

青葉「あくまで艦娘としてではなく、個人の実力がモノを言うという事ですか」

 

赤城「そういう事です」

 

青葉「なるほど。それじゃあ本当に実際に試合が始まってみないと......」

 

赤城「実況解説員としての腕の見せ所ですね?」

 

青葉「むむ、望むところです!」

 

赤城「ふふふ、頑張ってね。じゃぁそろそろ試合会場に移動しましょう」

 

 

~試合会場

 

青葉「では、試合の詳細を説明します」

 

青葉「まず、この高速艇に乗って鎮守府の前の浜辺から沖合3キロまで移動します。つまりそこがスタート地点になるわけです」

 

青葉「後は合図と同時に船から飛び込んで砂浜を目指してください。以上です」

 

扶桑「先に足が着いた方が勝ちとかじゃないのね」

 

青葉「それだと身長のある人が有利になりますからね。ちゃんと海から上がって浜辺に出た時点でゴールです」

 

まるゆ「ちょっとだけ安心しました」

 

蒼龍「うーん、普段海の上に浮いてるからちょっと緊張してきたなぁ」

 

千歳「あ、それ私もです。上手く泳げるかしら」

 

筑摩「......」(大丈夫怖くない、怖くない)

 

明石「筑摩さん凄く集中してるわね」

 

夕張「ふふふ......」

 

雷「な、なんか夕張が笑ってるわよ......」

 

島風「ワクワクしてるからじゃない? わたしもワクワクが止まらない♪」

 

青葉「皆さん他に質問とかないですか? ないなら水着に着替えて船に集合して下さい」

 

 

――数分後

 

青葉「皆さん、お待たせしました! 第一ゲーム間もなく始まります!」

 

赤城「あ。選手が入場してきましたよ」

 

青葉「最初に入場してきたのは扶桑さんです! おお、これはいきなり凄い! なんというセクシーな赤のワンピースでしょう!」

 

青葉「 ホルターネックのトップがたわわに実ったはち切れんばかりの果実を絶妙な加減で支え、そこからは肩から背中にかけて陶磁の様な白い肌が覗いています!」

 

赤城「下はハイレグカットですか。扶桑さん試合が始まる前から凄い攻撃力」

 

扶桑(山城に水着を買いに行かせたばかりにこんな事に......恥ずかしくて轟沈しそう......)

 

青葉「次に入場してきたのは蒼龍さんです! こちらは蒼龍さんらしく翠色を基調にした控えめなデザインのビキニです!」

 

赤城「でも、さり気にトップもボトムも紐で結ぶタイプですね」

 

蒼龍(控えめで悪かったわね! 紐ってなだけ結構恥ずかしいんだから!)

 

青葉「続いて入場してきたのは千歳さんです! こちらもビキニですがアダルティな黒! しかもトップはVネックで胸元が非常に際どい!」

 

赤城「良く見ると水着に細かい刺繍が入っててオシャレですね」

 

千歳(ふふ、普段地味に見られがちだからこういう所で目立っておかないとね)

 

青葉「お次は筑摩さんです! センターストラップのワンピースが普段控えめな筑摩さんからは考えられないほど大胆なデザインです!」

 

赤城「エメラルドグリーンと黒のツートンカラーですかも良いですね」

 

筑摩(うう、恥ずかしい......。でも、大佐とはこれで練習したのよね.....大丈夫いけるわ!)

 

青葉「そしてお次は明石さん! モノキニで登場です!後姿がセクシーですね!」

 

赤城「あれって前と後ろで見え方が違うんですよね。なんか明石さんらしいなぁ」

 

明石(なんか二人の解説があっさりしてるのが気になるなぁ。結構気合入れたのに)

 

青葉「最後は、あ。島風さんとまるゆさんが一緒に入場してきました! 島風さんは当り障りのない普通のあ、赤色......? のワンピースです!」

 

赤城「まるゆちゃんはいつもの白いのじゃなくて黒色ですね......」

 

青葉(こ、これはコメントしずらい。ある意味意表を突かれたけど)

 

島風「みんなわたしの魅力に驚いてる! やっぱ赤色はセクシーってことだね!」

 

まるゆ「いいえ。きっとわたしですよ! やっぱり黒色が大人っぽいんです!」

 

 

~観覧席

 

提督「これは一体何の大会だ......?」




素人には!文才のない素人には、大人数&水着の描写は辛い!
多分10話は超えるでしょう。
ガンバリマス......。


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第45話 「水泳大会第一ゲーム②」

何とか勢いで終わらせないと!
ここで止まったらダメ気がします。

というわけで第一ゲーム本編始まります。


榛名「それでは各選手位置について下さい」

 

出場選手一同「......」ス

 

榛名「スタート!」パーン

 

バシャーン!

 

 

青葉「さぁついに始まりました第一ゲーム。皆さん流石には......あ、あれ?」

 

赤城「だから言ったでしょう? 結構みんな自力で泳ぐことには慣れてないものなんですよ」

 

 

島風「わぷっ! 泳ぐってこんなに難しいんだ!」

 

雷「島風大丈夫?」バシャバシャ

 

島風「大丈夫! 波の掻き分け方段々慣れてきたから!」

 

雷「流石ね。頑張りなさいよ!」ジャブッ

 

 

青葉「流石は島風さんですね。泳ぐのに苦労していると思っていたらもう慣れてしまってるみたいです」

 

赤城「そうね。雷ちゃんは元々泳げたみたいですね。動きに迷いがないです」

 

青葉「他の選手は......」

 

 

扶桑「くっ。泳ぐことはできるけどやっぱり慣れないわね」ザブザブ

 

蒼龍「扶桑さんお先に~」スー

 

千歳「蒼龍さん待ちなさい! あ、扶桑さん。頑張って下さい!」スイスイ

 

 

青葉「空母の方達は器用に泳いでますね」

 

赤城「常に水上で艦載機を運用してたおかげかしら、波の乗り方も上手いですね」

 

青葉「対して扶桑さんは苦労してるみたいです。泳げてはいますけど」

 

赤城「扶桑さんは航空甲板を盾替わりによく使っててましたからね......プールならまだましも波の動きにちょっと翻弄されてるみたい」

 

青葉「これは意外です。さて、残りの選手は......」

 

 

筑摩「......」スッスッ

 

明石「筑摩さん慎重だねー」スイー

 

筑摩「今日はっ、自力でっ、ゴールする事が目標ですからっ」スッ

 

明石(凄い真剣に泳いでる)

 

明石「頑張ってね!筑摩さん」オヤユビグッ

 

筑摩「......貴女も」ニコ

 

夕張「どいたどいた~!」

 

筑摩・明石「え?」

 

夕張「......!」スイーーサブッ

 

夕張「海の上では仕方ないけど、ここでは最速よー!」

 

 

青葉「おーこれは凄い! あれだけ鈍足と呼ばれてた夕張さんがあんなに速く泳げるなんて」

 

赤城「まぁそれは艦娘としての性能の問題ですからね。元々夕張さんは他の軽巡の人より装備が重かった分、体力もあったんでしょうね」

 

青葉「で、元々泳ぎも得意だった、と?」

 

赤城「あの泳ぎ振りを見る限りそうとしか思えませんね」

 

青葉「なるほど。筑摩さんは速くはありませんけど、確実に危なげない泳ぎを見せてますね。実に彼女らしいです」

 

赤城「明石さんは工作艦としての器用さというところでしょうか。こちらも非常に安定した泳ぎをしてますよ」

 

青葉「なるほどそうですね。......あれ? 誰かを忘れてるような」

 

 

~浜辺

 

まるゆ「ふぅ......到着です」ザブ

 

 

青葉「なんとー!!?」

 

赤城「速い......!」

 

夕張「ええ!?」

 

蒼龍・千歳「嘘!?」

 

 

青葉「こ、これはえっと、いつの間に」

 

赤城「タイムは18分50秒」

 

青葉「時速10kmですか!?」

 

赤城「人間の約2倍ですね」

 

 

島風「はっやーい! まるゆちゃん凄い!」

 

雷「ここまで速いなんてね。驚きよ!」

 

筑摩「確かに凄いです。ですが」

 

明石「そうね。私達の勝負はまだ終わってないわよね!」

 

扶桑「みんな持って~」

 

 

~数十分後

 

第一ゲーム結果

 

1位:まるゆ 18m50s

2位:夕張  22m10s

3位:千歳  26m22s

4位:蒼龍  26m31s

5位:明石  30m05s

6位:雷   35m24s

7位:島風  35m25s

8位:筑摩  47m09s

9位:扶桑  1h6m6s

 

 

提督「やはり艦娘は人間より身体能力が優れているんだな」

 

叢雲「扶桑は、体力で泳ぎ切ったものね」

 

提督「叢雲、お前は大会には出ないんだったな」

 

叢雲「面倒よ」

 

提督「お前らしいな」

 

叢雲「ところで、あそこで落ち込んでる人に声でも掛けてあげたら」

 

提督「ん?」チラ

 

 

扶桑「ふふふ......私は結局欠陥戦艦なのよ......」ズーン

 

雷「ちゃんとゴールできただけ良かったじゃない」

 

筑摩「そ、そうですよ。私もやっとの思いでした」

 

島風「扶桑さんも今度はもっと速く泳げばいいじゃない」

 

 

提督「そうだな。少し行ってくるか」

 

叢雲「しっかり頼むわよー」ヒラヒラ




何かかなり強引に終わらせてしまいました。
R15要素なんて欠片もなかったですね。
次はもう少し上手く表現したいものです。


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第46話 「水泳大会第二ゲーム①」

さぁ、勢いがある内に、やる気がある内になんとか突き進まなないと!
第二ゲーム開始です。

○出場選手一覧
戦艦G:ビスマルク 航空G:飛龍 軽空G:飛鷹 重巡/航巡G:最上 雷巡/特殊G:あきつ丸 軽巡G:川内 駆逐AG:綾波 駆逐BG:長波 潜水G:伊8


青葉「さぁ第二ゲームの始まりです! 今回のゲストは五十鈴さんです。よろしくお願いします」

 

五十鈴「よろしく。バシバシ行くわよ」

 

青葉「最初はビスマルクさんですね!最近はマリアさんと呼ばれてるようです!」

 

五十鈴「ごくシンプルな......さ、三角紐ビキニね。生地は無地で全て黒で統一されてるわ」(凄い......色々零れそう)

 

青葉「元々背が高くてスタイルもいい上に金髪、それだけで水着が映えてますね!」

 

Bis(照れるわね。大佐、見ててくれてるかしら)

 

青葉「次は飛龍さん!黄色のワンピースで登場です! ベアミドリフの大胆なカットが印象的です!」

 

五十鈴「へぇ。飛龍さんももああいう格好するんだ」

 

青葉「3人目は飛鷹さん純白のビキニで登じ......や、これは!」

 

五十鈴「ソングのボトム......これお尻殆ど見えてるわよね......大胆」

 

飛鷹(ふっふー、ちょっと恥ずかしいけど。注目されるのは気分良いわね!)

 

青葉「続いて最上さんです!山吹色のシンプルなワンピースですね!」

 

五十鈴「最上のイメージをよく表してるわね」

 

最上(なんか反応が凄く普通だなぁ。もう少し派手なのが良かったかな。)

 

青葉「お次はあきつ丸さんですね! おっとこれは誰が予想できたでしょうか、スクール水着です!」

 

五十鈴「あきつ丸さんって結構胸あったのね、ってあれ明らかにサイズ小さい気がするんだけど。まさかわざと?」

 

あきつ丸(うぅ......胸がキツイ、磨れてる。もっと考えて選ぶべきだったなぁ)

 

青葉「はい、それでは次は川内さんです!お、これは思い切ってビキニを着てきたという感じですね!初々しい感じが非常に良いです!」

 

五十鈴「無理して照れちゃって......。顔が水着と同じ色してるじゃない」

 

川内(う~、やっぱりワンピースにすれば良かったぁ!)

 

青葉「はい。お次は綾波さんですね!うん、これは良く似合ってる!」

 

五十鈴「ねぇあのワンピース胸元に少し切れ込みが入ってるように見えるんだけど気のせい?」

 

綾波(な、なにこの切れ込み!? 如月さん、手直しってこれの事だったの!?)カァァ

 

青葉「さぁ次です。長波さんどうぞ! うん、これはまた意外にもビキニですね」

 

五十鈴「キュロパンか。模様も凝ってるし、ただ可愛いだけじゃないわね」

 

長波(ちょーっと大胆だったかなぁ。ま、周りがそれ以上に凄い人多いからそんなに目立たないか)

 

青葉「さてさて、最後は伊8さんです! あ。タンキニですね! 潜水艦の方は水着が違うだけで新鮮な感じがします!」

 

五十鈴「綺麗な柄ね。露出も少ないのも意外だわ」

 

ハチ(たまにはこういうオシャレなのもいいわよねぇ♪)

 

 

~観覧席

 

提督「マリアの奴こっちに手を振ってるぞ」

 

叢雲「そうね。あーそんなに飛び跳ねると......揺れてるから......あーやっぱりね」

 

叢雲「大佐?」

 

提督「......」 ←眉間を抑えてる

 

叢雲「触れないようにしないといけないわね」

 

提督「そうだな......」




提督と叢雲は一体何を見たのでしょうか?(ゲスガオ
マルクが段々アホの子になってるような気がするなぁ。


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第47話 「水泳大会第二ゲーム②」

前回は潜水艦が強すぎました。
まるゆでさえあの強さです。
今回も勝負にならないと思います。(エ


青葉「さあ、第二ゲーム開始です! 榛名さんお願いします」

 

榛名「了解です!それでは皆さんいちについ――あ、あのマリ......アさん?」

 

Bis「大佐に見られた......全部見られちゃったよ......」グス

 

榛名「あ、あのマリアさん。もう試合が始まっちゃうんですけど」

 

Bis「絶対ふしだらな女だと思われたわ......。もう顔を見れない......」ヒック

 

榛名「あ、あのーマリアさんが......」

 

龍田「わたしに任せなさぁい」コツコツ

 

榛名「龍田さん? 何を......」

 

龍田「マリアちゃん、悲しむ事なんかないわよ?」ボソ

 

Bis「えぇ......?」

 

龍田「大佐、顔真っ赤にしながら貴女のソレから目を逸らさせずいたもの」ボソ

 

Bis「え、そ、それって......」

 

龍田「そう。大佐は大きなお胸が大好きなの。だからマリアちゃん」ボソ

 

Bis「な、なに......?」(だからあの時私の胸を......?)

 

龍田「恥ずかしかったかもしれないけど悲しむことは無いわ。貴女今、艦娘の中で一番大佐を虜にしてるのよ?」

 

龍田「そう。一番大佐の恋人になれる可能性があるのは貴女。ついでにこの試合で優秀な成績を残しちゃえば、もう大佐は貴女に ゾ ッ コ ン 間違いなしよ ?」ボソボソ

 

Bis「!」

 

 

~観覧席

 

バリン!

 

叢雲「......なに?」

 

提督「飲み物が入っていたグラスが勝手に割れた......」

 

 

~提督の所から少し離れた観覧席

 

長門「龍田! すまないな!」

 

龍田「正直言って自分の組以外を助けるのはあまり気分がよくないけど、まぁお礼の為だものねぇ。例のアレ頼むわよぉ?」

 

長門「ああ、約束は守る。この長門に任せておけ」

 

 

~試合会場

 

青葉「あ、マリアさん復活したみたいですね! しかも何だか凄く燃えてる?」

 

五十鈴「龍田......あいつ何を言ったのかしら」

 

青葉「ま、取り敢えず始めましょ!。ちょっと時間かかっちゃいましたし」

 

五十鈴「そうね。榛名さんお願い」

 

榛名「はい! それでは皆さん位置に着いて下さい」

 

選手一同「......」ス

 

榛名「スタート!」

 

ザップーン

 

 

青葉「さぁいいよ第二ゲーム始まりました!どのような結果が待ち受けるのか!」

 

五十鈴「でも、正直勝負になるのかしら。前回だってかなりの差を付けて潜水グループが勝ったわよね」

 

青葉「う......そうなんですが。実際にあの後調べたところ、本当にまるゆさんは不正はせず自力で泳いでましたからね」

 

五十鈴「全然私たちは泳いでるの見てなかったけど?」

 

青葉「ああ、それは絶対的な肺活量を使って全て潜水で泳いでいたからですよ」

 

五十鈴「ぜ、全部潜水で?」

 

青葉「潜水が一番水の抵抗が少ないですからね。まるゆさんはたった2回の息継ぎで泳ぎ切ったみたいです」

 

五十鈴「たった2回......気づかないわけね」

 

青葉「水泳の型は自由と言った手前途中でルールを変更するのいやらしい感じもしますし」

 

五十鈴「そうね。でもそれじゃあこの試合は圧倒的に......え?」

 

青葉「どうしたんですか? 五十鈴さん」

 

五十鈴「あそこの、あの凄い水飛沫をあげながら泳いでるのマリアさんじゃない?」

 

青葉「え? あ、ああ! 本当です!マリア選手速い! まるで海を割るように凄い勢いで掻き分けて進んでます!」

 

 

飛龍「くっ?」(マリアさんが通った後の波が乱れて泳ぎ難い!)

 

長波「ちょっと、あれには近づかない方がいいわね。綾波! 少し迂回して泳ぐのよ!」

 

綾波「そ、そうですね。このまま泳ぐのは流石に危なそう......」

 

飛鷹「皆元気ねぇ。私はせっかくだからのんびり泳がしてもら――」ザバァ

 

飛鷹「わぶ!?げ、げほっ......な、なに?」

 

川内「飛鷹さんおっ先~」ニヤ

 

飛鷹「こ、こんの~、待ちなさい!」ザブッ

 

 

青葉「おおー、川内さんも速いですね!とてもしなやかに泳いでいます! そしてそれを追う飛鷹さんも見事な泳ぎっぷりを見せてくれています!」

 

五十鈴「あの子、夜戦だけが得意じゃなかったのね」

 

 

あきつ丸「皆速いでありますね。これは例え遅くても安全に行くのが得策であります!」

 

最上「あっさん、あっさん」

 

あきつ丸「あ、最上さん」

 

最上「駆逐艦の子達が安全なルート見つけたよ。僕たちもそこを行こう!」

 

あきつ丸「了解です! ありがとうであります!」

 

 

青葉「あの二人はどうやら駆逐グループと同じコースで行くみたいですね」

 

五十鈴「迂回するのね。距離は少し遠くなるけど、確かにあの波は避けた方がいいかもね」

 

青葉「それと、分かってはいましたがやっぱりハチさんの姿が見え――」

 

五十鈴「あれじゃない?」

 

青葉「え? あ、本当です!なんであんな中途半端な所に?」

 

 

ハチ「げほっげほっ」

 

ハチ(マリアさんの横すれすれを追い抜いて驚かそうとしたらバタ足で更に加速するなんて......)

 

ハチ「水掻きだけであそこまで泳げるものなのかしら......」

 

 

~浜辺

 

ザブッ

 

Bis「着いたわよー!」ガッツポーズ

 

 

青葉「おお、凄い!本当に勢いだけで一位でゴールしちゃいました!」

 

五十鈴「ハチは追うのをやめたみたいね。迂回するにしてもあの距離では差は縮められないと判断したんでしょうね」

 

 

――それから数十分後

 

第二ゲーム結果

 

1位:ビスマルク 20m32s

2位:伊8   22m10s

3位:飛龍   27m00s

4位:長波    32m10s

5位:最上    32m19s

6位:綾波    32m50s

7位:あきつ丸  36m03s

8位:川内    45m42s

9位:飛鷹    45m48s

 

 

提督「マリアが一位か。まるゆのタイムが上とはいえ、大したものだな」

 

叢雲「マリアの後波を受けながら乗り切ってゴールした飛龍も凄いわよ」

 

提督「4位から6位は接戦だったみたいだな」

 

叢雲「ええ。なかなか見ごたえのある試合だったわ。あんなに引き締まった顔の3人は久しぶりに見たわ」

 

提督「川内達は一体どうしたんだ......」

 

叢雲「途中で喧嘩してたみたい」

 

 

ピンポンパンポーン

 

青葉「第二ゲームが終わったところでお昼休みに入ります!よろしくお願いしまーす!」




筆は進みましたが、長くなりました。
龍田さんはどんなお礼を貰うんでしょうね。
次回昼休みです!


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第48話 「昼休み」

競技は一時中断して昼休みです。
提督が観覧席で昼食をとっていると筑摩とマリアがやって来ました。
目的は何となく察しがつきますね。


筑摩「大佐! あ、叢雲さんも」

 

Bis「叢雲さんこんにちわ。大佐、私一位取ったわよ!」

 

叢雲「2人ともなかなか良かったわよ」

 

提督「そうだな。2人ともよく頑張った」

 

提督「筑摩も順位を気にせずよく最後まで泳ぎ切った」

 

提督「マリアは一位まで取ったか。本当に2人とも大したものだ」

 

Bis・筑摩「えへへ......」テレテレ

 

提督「ところで二人とも、自由時間は全ての試合が終わった後だぞ」

 

提督「何で水着のままなんだ」

 

筑摩「この水着気に入りまして、このままじゃダメでしょうか?」ズイ

 

Bis「わ、私はこれもっとしっかり見てもらいたくて......ダメ?」ズイ

 

提督「ダメではないが非常に目のやり場に困る」

 

Bis「お、男の人が胸に目がいっちゃうのは仕方ないわよ。あまり見過ぎないならべつに気にしないわ」

 

筑摩「ええ。私も大佐なら構いません」

 

提督「色即是空......空即是色......」ボソ

 

Bis・筑摩「え?」

 

叢雲「大佐も大変ね......」

 

提督「何でもない。ま、お前たちがそれでいいならいい。だがあまり近づくなよ」

 

筑摩「そ、そんな!私なにか......!?」ウル

 

Bis「私一位になったのよ!?」ウル

 

提督「違う。自分がまるで色情狂いの人間の様で我慢ならないんだ」

 

筑摩「自己嫌悪し過ぎですよ。普通に接してくれたらいいんです」

 

Bis「そうよ。普通にスキンシップするだけなら何もイヤラシくなんてないわ」

 

提督「お前たちが普段の格好ならな。ま、自重はしてくれ」

 

筑摩「分かりました」

 

Bis「了解よ」

 

叢雲「大佐、私席外してあげましょうか?」ニヤ

 

提督(俺の心境を分かって言ってるなこいつ)

 

提督「いや、気にするな。食事は多い方が楽しいしな」

 

叢雲「ふふ、あらそう? 仕方ないわね」ニヤニヤ

 

筑摩「何を食べてたんです?」

 

叢雲「素麺よ」

 

Bis「ソーメン?」

 

提督「昔からある日本の麺食の一つだ。夏季に納涼を味わうために食べる事が多い」

 

叢雲「食べてみる?」スッ

 

Bis「そうね。せっかくだから」

 

筑摩「面をこの汁に浸けて食べるんですよ」

 

Bis「......」パク、チュルチュル

 

提督「どうだ?」

 

Bis「少し味が薄い気がするけど、確かに冷たい気分を味わうには向いてるかも」

 

提督「だろう。気に入ったら食べて行け。筑摩も食べるか?」

 

筑摩「はい。頂きます」

 

提督「叢雲、用意頼めるか?」

 

叢雲「分かったわ」

 

 

Bis・筑摩「......」チュルチュル

 

提督(今気づいたが、麺を啜った時の汁の飛沫がこいつらの胸元にあちこちに)

 

提督(肌がきれいだと無駄に目立って、視線が無意識に誘導されがちだ)

 

筑摩(大佐、さっきから私達の胸を見てる......?)

 

Bis(やっぱりこれくらいのが好きなのね......!)

 

叢雲「あら? 筑摩さん胸のところに麺が着いてるわよ」

 

筑摩「え?あ、本当だ」

 

叢雲「......大佐に取ってもらったら?」ニヤ

 

提督「ゴフッ」

 

Bis・筑摩「きゃっ」

 

叢雲「あらあらいけないわね。何二人を汚しちゃってるのよ」

 

叢雲「拭いてあげたら?」ニヤニヤ

 

提督「叢......雲......お前何を馬鹿な事を......。だいいち、二人が受け入れるわけないだろう」

 

Bis・筑摩「えっ」

 

提督「何故意外そうな声を出す?」

 

Bis「いや、その......拭きたかったら別に......優しく拭いてくれるなら......」

 

提督(何を言ってるんだこいつは)

 

筑摩「わ、私は......嫌じゃない......ですけど、恥ずかしい......というか」

 

叢雲(そう言いながらしっかり胸の下で腕を組むのね)

 

Bis「あ、水着が邪魔ならと、取ってもいいわよ? て、手で隠すから」

 

提督「なにを......」

 

叢雲「あら、大胆ね」

 

筑摩「ええ!? それは流石に......!」

 

提督「頼むから普通に食事をさせてくれ」

 

叢雲「あははははは。大佐、頑張りなさい!」




マリアさんがすっかりエロ要員的な扱いですね。
でもあまり露骨なのはキャラの質が落ちるので、次からはもう少し雰囲気を考えます。
それにしても叢雲は悪い奴ですね。


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第49話 「末井大会第三ゲーム①」

第三ゲームです。
先ずは恒例の出場選手紹介いきます。
○出場選手一覧
戦艦G:伊勢 航空G:瑞鶴 軽空G:瑞鳳 重巡/航巡G:麻耶 雷巡/特殊G:木曽 軽巡G:長良 駆逐AG:深雪 駆逐BG:霞 潜水G:伊19


青葉「水泳大会も後半に突入です! 五十鈴さんに代って新しいゲストは球磨さんです」

 

球磨「よろしくだクマー」

 

青葉「では、出場選手の紹介行ってみましょう!」

 

球磨「最初は伊勢クマね。競泳用のワンピースクマ」

 

青葉「手堅く来ましたね。それだけに試合に懸ける意気込みを感じます!」

 

伊勢(何時も日向に良いところ持っていかれがちだからね。今回は姉らしいところ見せるわよ!)

 

青葉「瑞鶴さんの姿が見えてきました。お、これは可愛いセパレーツですね!」

 

球磨「水玉模様に所々に入ってるピンクのラインがオシャレクマね。スカート型のボトムもポイント高いクマ」

 

瑞鶴(ちょっと、子供っぽかったかな。でも、可愛いし良いか♪)

 

青葉「続いて瑞鳳さんですね。おお、これも可愛いマリンブルーのワンピースです!」

 

球磨「リボンの飾りと裾のフリルが可愛いクマ。未熟な体をうまく可愛さでごまかしてるクマ」

 

瑞鳳(最後が余計よ!ただ可愛いだけじゃないんだから。見てなさい!)

 

青葉「次は摩耶さんですね。ん、これは予想通りといいますか、立派な紺色の三角ビキニですね!」

 

球磨「流石に似合ってるクマ。あのボディが恨めしい......クマ」

 

摩耶(そ、そんなに似合ってるか......? あと球磨、お前は褒めるか羨むかどっちかにしやがれ)

 

青葉「木曾の入場です! こちらは普通のツーピースですね。しかしその着こなしは実に木曾さんらしいと思います!」

 

球磨「球磨を差し置いてベアトップを使うとはいい度胸クマ。ま、今日はその地味なスパッツのボトムに免じて今日は見逃してやるクマ」

 

木曾(地味で悪かったな! 見た目より機能だ!)

 

青葉「長良さんは......これは、木曾さんとは対照的にビキニで来ました!」

 

球磨「紅白のツートンカラーでデザインはシンプルクマ。長良らしいクマ」

 

長良(褒められてるのかな......偶にはこういう格好も良いよね♪)

 

青葉「深雪ちゃんの登場です。まぁ流石に普通のワンピースですね」

 

クマ「いや、よくみるクマ。背中のところがベアバックになってるクマ!」

 

深雪「ちょっと大胆かなぁ。でもこれくらいいっとかないと見劣りしちゃうからな!)

 

青葉「あ、霞ちゃんですね。わ、凄いもじもじしてて可愛いです!」

 

クマ「深雪と違って普通のワンピースなのに恥ずかしがってるクマ。これからは意外に恥ずかしがり屋の霞ちゃんって言ってあげるクマ)

 

霞(余計なお世話よ! くぅ......恥ずかしい)

 

青葉「最後はやっぱり潜水艦です。オレンジと白のボーダーのワンピースが眩しいイクさんどうぞ!」

 

クマ「水着が変わっても相変わらずムチムチな体クマ。おまけにVネックなんてもはや凶器だクマ」

 

イク(はっちゃんは残念だったけど、イクはそうはいかないの! ここからまた大反撃なの!)




お?なんかすんなり終わりましたね。
心なしか選手の紹介があっさりした感じになった気がしますが。
このくらいがやり易い。
ペース上がるといいなぁ。


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第50話 「水泳大会第三ゲーム②」

第三ゲーム開始です。

イクが潜水艦の意地を再び見せるのか、それともまた意外な結果になるのか。
結果は如何に?


青葉「それでは、試合開始ですね! 榛名さんお願いします!」

 

榛名「了解です!皆さん位置に着いてください」

 

榛名「いきますよ?よーい......」

 

出場選手一同「......」

 

榛名「スタート!」

 

ザップーン!

 

 

青葉「さぁ始まりました第三ゲーム。まず、見えるのは......瑞鶴さんですね!」

 

球磨「直ぐ前に瑞鳳もいるクマ」

 

青葉「瑞鶴さんが瑞鳳さんを追う形なのでしょうか」

 

球磨「多分違うクマ。あれは......」

 

 

瑞鶴「瑞鳳! 大丈夫!?」

 

瑞鳳「だ、大丈夫......」(うぅ、いきなり足をつっちゃうなんて)

 

瑞鶴「ほら、掴まって」

 

瑞鳳「あ、ありがとう......ごめんなさい。足引っ張っちゃって」

 

瑞鶴「こんな時にごめんなさいも何もないわよ。どう? 痛い?」

 

瑞鳳「大分マシになってきた。もう大丈夫」

 

瑞鶴「そう? それじゃ、行こうか。ちょっと差が開いちゃったけど、今からならまだビリにはならないかも」

 

イク「手伝ってあげようか?」チャプ

 

瑞鳳「イクちゃん!?」

 

瑞鶴「なんで此処に」

 

イク「2人の様子がおかしかったから見に来たの。見に来て正解だったの」

 

瑞鳳「あの、今手伝うって?」

 

イク「こういう事故で負けちゃうのは悔しいでしょ? だから途中までは二人を連れて行ってあげるの」

 

瑞鶴「そんなことしたら貴女が......」

 

イク「大丈夫なの。このくらいの差なら直ぐに追いつけるの。潜水艦の力甘く見ない方がいいの」ニコッ

 

 

青葉「どうやら瑞鳳さんたちは大丈夫みたいですね。しかし、これからどう舞い返すのでしょうか」

 

球磨「なんだかゾクゾクするクマ。何かあるかもしれないクマよ?」

 

青葉「その予感が当たれば何が起こるんでしょう。楽しみですが、今は他の選手を探します!お、見るからにトップは長良さんですね!」

 

 

長良「あれー、何か前に誰もいないけどわたしがトップなのかなー?」

 

長良「なら、このまま一位目指すしかないわね!」

 

摩耶「んなことさせねーよ!」

 

長良「摩耶さん!? く、追いついて来ちゃった?」

 

摩耶「俺だけじゃねーぜぇ? 後ろ見てみな」クイ

 

 

伊勢「目標発見、いっくぞー!」

 

霞「わ、伊勢さん速い!」

 

深雪「これは負けてられねーな!」

 

 

青葉「おー、これは接戦ですね。今回はレベルが高い試合になりそうです!」

 

球磨「この試合に出てる艦娘達はどうやら全員泳ぎに自信があるみたいクマね。流石に中堅ともなるとレベルが高いクマ」

 

 

摩耶「な? だから言ったろ?」

 

長良「く、これは予想以上です!」

 

長良・摩耶「......」

 

長良「負けませんよ!」 摩耶「負けないぜ!」

 

木曾「いや、もう負けだぜ?」

 

長良・摩耶「!?」

 

ザバッ

 

木曾「2人とも後ろばっか見過ぎだ。勝負は常に前を見てろ」

 

木曾「俺の様にな!」

 

 

青葉「おー木曾さん速い!」

 

クマ「流石は我が妹だクマ!」エヘン

 

 

木曾「イクの奴も見当たらねーな」

 

木曾「近くを潜水してるわけでもねーみたいだし。これはもう......勝ちだな!」

 

 

イク「残念でしたなの」

 

木曾「なに!?」クル

 

瑞鶴・瑞鳳「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

木曾「なぁっ!?」

 

バシャーン!

 

イク「じゃ、二人とも。後は頑張るの」スイー

 

 

木曾「た、た......一体なん......はっ」

 

瑞鶴「え?」

 

瑞鳳「ん?」

 

木曾・瑞鶴・瑞鳳「!」

 

木曾「クソ! どうなってやがる!」ザブ

 

瑞鶴「ちょっと反則な気もするけどこの機は逃せないわ!」パシャ

 

瑞鳳「いけるかも......!」ザブッ

 

 

~浜辺

 

イク「ゴールなのー♪」

 

 

青葉「よ、余裕だ......!」

 

球磨「これが潜水艦の力......クマか。」

 

 

――数十分後

 

 

第三ゲーム結果

 

1位:伊19  18m10s

2位:木曾  21m48s

3位:瑞鶴  21m59s

4位:瑞鳳  22m07s

5位:長良  25m12s

6位:摩耶  35m23s

7位:伊勢  35m40s

8位:霞   35m55s

9位:深雪  36m03s

 

 

~観覧席

 

提督「今回の試合は本当にレベルが高かったみたいだな」

 

叢雲「接戦もいいところね。最短でゲームが終わったわ」

 

提督「潜水艦はやはり別格だな。瑞鶴達を助けて尚、まるゆのタイムより上でゴールするとは」

 

叢雲「前のゲーム、よくマリアさん1位になれたわね」

 

提督「全くだ」




はい。なんかとうか、こっちもあっという間に終わってしまいました。
お蔭で駆逐艦たちの活躍が可哀想なことになってますね。
R-15の要素すら欠片もなかったです(本当に水着回か?


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第51話 「確認」

水泳大会の第三ゲームが終わった直後、海上から少し離れた浜辺にこれから自分が出場する試合に対して特に投資を燃やしている艦娘がいました。
その艦娘に加賀さんが声を掛けるのですが、その用事は......。


加賀「金剛さん此処にいたのですか」

 

金剛「Oh 加賀、どうかしたデース?」

 

加賀「いえ、大会が始まってからというもの、特に貴女の試合に対する意気込みが気になっていたもので」

 

金剛「ふっふー、それは当然ヨ!」

 

加賀「やはり、最高タイムを出した選手に与えられる特権ですか?」

 

金剛「Yes of course 勿論ヨ!。だって大佐に何でもお願いできるんデショ?」

 

加賀「......参考までに訊きますが、何をお願いするつもりですか?」

 

金剛「......ソレは加賀、 you と同じ気がしますガ?」

 

加賀「一応、言っておきますが私達は今のままでは大佐と絶対に結婚できませんよ?」

 

金剛「What!? 何を言ってるネ! 大佐とワタシはラブラブだから全く no problem ヨ!」

 

加賀「それは私も同じです。まぁ大佐個人とのすれ違いは私も貴女も多少あるようですが、そんなモノ問題ではありません」

 

加賀「そんな障壁はその内爆砕しますので」ニヤ

 

金剛「ちょ、ちょっと怖いネ加賀......」

 

金剛「じゃぁ、一体何が problem だと言うのデスカ?」

 

加賀「簡単です。結婚、所謂ケッコンカッコカリは対象となる艦娘の練度、つまりレベルが限界値でないと出来ないんです」

 

金剛「何デスッテ!?」

 

加賀「つまり艦隊最高のレベル保持者である金剛さん、貴女でもその願いは今の時点では叶う事は有り得ないんです」

 

金剛「そ、そんなぁ......」

 

加賀「貴女がレベル93に対して私に至ってはまだ89。とてもではありませんが、直ぐにというわけにはいかないでしょう」

 

金剛「うぅ......でも加賀、どうしてわざわざそんな事をワタシに教えてくれるんデスカ?」

 

金剛「もしワタシが miracle でトップになって、その願いを口にした時に笑い者にできたハズヨ?」

 

加賀「ふぅ......金剛さん、確かに貴女は私にとって誰よりも手強い恋敵ですが」

 

加賀「別に競争相手を貶めてまで意中の殿方の心を掴もうなどという考えは私にはありません」

 

金剛「加賀ァ......」ウル

 

加賀「そして何より、私はそこまで性格は悪くありませんよ?」ニッ

 

金剛「加賀...... sorry ネ。ワタシ、加賀の事もっとお堅い皮肉屋だと思ってマシタ......」

 

加賀「それはそれは」

 

金剛「それにワタシは加賀が羨ましいネ。頭が smart だから大佐の事何でもすぐ理解できマスシ」

 

加賀「それは私も同じですよ。貴女みたいに素直に感情を顔に出すことが出来ればと常に思ってましたから」

 

金剛「そ、そんな......ワタシなんていつも空回りしてばかりヨ」アセアセ

 

加賀「でも、そんな姿を大佐は必ず愛らしいと思っているはずです」

 

金剛「そ、そう......かな?」

 

加賀「ええ。間違いなく」ニコ

 

金剛「加賀 thank you very much ネ!ワタシ、貴女のお蔭でこのフェスティバルに

new heart で臨めるね」

 

加賀「それは何よりです」

 

金剛「でも、そうなるとワタシのお願いは無くなってしまいマシタ......。何を新しくお願いしようカナ」

 

加賀「金剛さん、貴女は一つ勘違いはしていますよ?」

 

金剛「What? 何のコト?」

 

加賀「確かに結婚自体は今はできませんが、限りになくそれに近いお願いはできるんです」

 

金剛「It's really!? そ、それは何デスカ!?」

 

加賀「ふふ、知りたいですか?それは......」

 

 

金剛「um......ナルホド! それは確かに良い idea デス!」

 

加賀「そうでしょう?」

 

金剛「加賀、本当に、ホントーにサンキューネ!」ダキ

 

加賀「あ、ちょっと......。ふぅ、貴女は本当に感情に素直な人ですね」ポンポン

 

金剛「フフ♪ 加賀、アナタもとっても cool&smart で素敵ヨ」

 

加賀「さて、私が貴女に伝えたかったのは以上です」スッ

 

金剛「うん。理解シタワ」

 

加賀「それでは、後は......」

 

金剛「Yes お互いに頑張りマショウ?」ソ ←手を差し出す

 

加賀「ええ、手加減抜きです」ギュ




金剛が試合に出る前にちょっと関和挟みました。
男同士の友情があるように、女同士の友情もまたあります。
この二人の場合はお互いが尊敬し合える気持ちの良い仲ですね。

今までの中で一番金剛の話し方が上手くできた気がします。
これをベースに全部修正しようかな。


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第52話 「水泳大会第四ゲーム①」

水泳大会もついに第四戦目。
この試合ではついに金剛が出ます。
果たして見事最高タイムを出せるのか。

○出場選手一覧
戦艦G:金剛 航空G:翔鶴 軽空G:龍驤 重巡/航巡G:那智 雷巡/特殊G:大井 軽巡G:天龍 駆逐AG:菊月 駆逐BG:白露 潜水G:伊58


青葉「水泳大会ももう終盤ですね! 最後まで張り切っていきましょう!」

 

青葉「本日のゲストは熊野さんです! 宜しくお願いします!」

 

熊野「宜しくてよ。見事務めを果たしてみせますわ!」

 

青葉「凄い気合ですね! 頼みますよ! はい。最初に出てきたのは、金剛さんです!」

 

熊野「まぁ純白のワンピース......華麗ですわね」

 

青葉「ただ華麗なだけではありません! 背中はベアバックに胸元はVネック、ウエストの部分はベアミドリフにカットされておりしかもハイレグです!」

 

熊野「ギリギリスリングショットじゃないレベルですわね。よ、よくあんなに堂々と着こなせますわね......」ドキドキ

 

金剛(大佐......ワタシの本気、見せてあげるわ!)

 

青葉「続いて出て参りましたのは『空母のお姉さん』こと翔鶴さんです!」

 

熊野「まぁ翔鶴さんも白色の水着ですのね。紐の三角ビキニ......今回は水着の威力のレベル高いですわね」

 

青葉「翡翠の首飾りが胸元で光っていて実にセクシーです!あ、泳ぐときは外してくださいね。危ないので」

 

翔鶴(瑞鶴見ててね。お姉ちゃん頑張るから!)

 

青葉「そして次は龍驤さんですね! うーん、流石にワンピースです! 冒険をしなかった龍驤さんの決断は評価すべきでしょう!」

 

熊野「南国をあつらったヤシの木の柄が印象的ですわね。いつも快活な龍驤さんらしい水着だと思いますわ」

 

龍驤(流石にってなんや! 冒険ってなんや!? 青葉、後で覚えとけよ!)

 

青葉「お次は那智さんですね。お、ビキニです! 正直言って予想外です!」

 

熊野「マリアさんと同じ黒色ですけど、こちらは上ががホルターネックですわね」

 

青葉「後姿が非常に色気があります! 普段の硬派な那智さんからは考えられないチョイス! どうしたんでしょう」

 

那智(ま、まぁ私も偶には......な。大佐見てるかな)チラ

 

青葉「あ、大井さんが入場してきました! モノキニですね」

 

熊野「白の基調に所々のラインに入った黄色のフリルがオシャレですわね」

 

大井(うふふ、これで北上さんと......あ、あと大佐もついでに悩殺よ♪)

 

青葉「続いて天龍さんです! ベアトップとボーイレッグのツーピースで登場です!」

 

熊野「実に男勝りな天龍さんらしい水着だと思いますわ。少々色気が足りませんが、スタイルが元々良いので見た目ほど残念ではありませんわね」

 

天龍(余計なお世話だっつーの。勝ちゃぁいーんだよ勝ちゃぁ......大佐もそう思ってるのかな......)

 

青葉「あ、菊月ちゃんはスクール水着ですね! 似合ってるので全く問題ありません!」

 

熊野「駆逐艦に対して評価甘くないかしら。まぁでも胸元の『きくつき』のネームが可愛らしいですわね♪」

 

菊月(大人っぽくマイクロビキニで行きたかったのだがな......何であんなに止められたのやら)

 

青葉「次は、駆逐艦の中でも比較的大人っぽい体つきの白露ちゃんです!」

 

熊野「あら、花柄のツーピースじゃない。可愛いですわね」

 

青葉「あ、さり気に上が紐で結ぶタイプです! 大人っぽさのアピールでしょうか」

 

白露(駆逐艦ではまだ誰も一位が出ていない......あたしの出番じゃない!)

 

青葉「そして最後はゴーヤさんです! なんだか本編初登場なような気もしますが気にしたら負けです!」

 

熊野「花柄のセパレーツですわね。ビキニにしない辺りゴーヤさんらしく感じますわ」

 

ゴーヤ(目立っても仕方ないでち。目立つのは......トップでゴールの時で十分でち!)

 

 

~観覧席

 

提督「流石に副将戦ともなると皆雰囲気が違うな」

 

叢雲「あら? そんなの分かるの?」

 

提督「いつもあいつらの事を見てれば自然とな」

 

叢雲「ふーん......ねぇ、わたしはどう?」

 

提督「お前、実は代表に選ばれていたんだってな」

 

叢雲「あら、知ってたの?」

 

提督「それを辞退してここにいるのが実力を示す証明じゃないのか?」

 

叢雲「買い被りよ。初春が代わりに出てくれて助かったわ」

 

叢雲「それに泳ぐのは疲れるもの......」

 

提督(試合を見てる時、自分がずっと何かに耐えるようにうずうずしてた事に気づいてないみたいだな)

 

提督(自由時間まで我慢してくれるといいが)




叢雲さんはどうやらむっちゃ泳ぐのが速いっぽいですね。
それにしても水着の説明は本当にむちゃくちゃだと思います。


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第53話 「水泳大会第四ゲーム②」

第四ゲーム副将戦の開始です。
出場選手は皆泳ぐのは得意みたいですが、やはりここにきても潜水艦の余裕は変わらないようです。
皆が真剣な表情で集中してる中、ゴーヤさんは気楽に高速艇の船尾で足をパタパタやってます。可愛い。
これも彼女なりの緊張のほぐし方かもしれませんね。


青葉「第五ゲームの始まりです!皆さん用意はいいですか?」

 

熊野「いつになく気合が入ってますわね?」

 

青葉「そりゃ、もう終盤ですからね! 出場する選手の気迫がこちらにも伝わってくるので、感化されずにはいられないです!」

 

熊野「確かに......皆さんの勝利に懸ける意気込みピリピリと感じますわ」

 

青葉「分かってますね! あ、それでは榛名さんお願いします!」

 

榛名「了解です!皆さん、位置に着いて下さい!」

 

出場選手一同「......」ス

 

榛名「用意はいいですか? いきますよ......」

 

榛名「スタート!」

 

ザップーン!

 

 

青葉「さあいよいよ始まりました第四ゲーム副将戦!」

 

熊野「あ!いきなりトップに踊り出た子がいますわよ!」

 

青葉「え!? 何も見えませんよ?」

 

熊野「ほら!あそこだけ、姿は見えないけど波の形が変わってます!」

 

青葉「ああっ!ホントだ!あれはゴーヤさんです! もう最初から全力で勝ちにいってるみたいです!」

 

 

ゴーヤ「皆には悪いけどここは早々に勝たせてもらうでち」

 

ゴーヤ「今一緒に泳いでる人たちは明らかに泳ぐのが上手そうち。前のイクほど余裕ぶることは......できないわ!」

 

 

翔鶴(っ速い! まるで魚雷ね! でもあれだけの速さなら運動量も相当なはず。だから息継ぎは絶対1回はある)

 

翔鶴(その時を......攻める!)

 

ズザァ

 

 

青葉「おー、翔鶴さん速いですね! 普段のおっとりしたイメージからは想像ができない凛々しさです!」

 

熊野「はぁ......翔鶴お姉様、カッコイイ......」ポー

 

青葉「お、お姉?あの......熊野さん?」

 

 

龍驤(くぅ、やっぱり翔鶴ネーサン速いなぁ......!)

 

龍驤(でもうちかて負けてられへん! 軽空母でもやればできるって......示したるんや!」

 

龍驤「......ふっ」

 

バシャァッ

 

 

青葉「おお? 龍驤さんも加速しました! これは速い! 翔鶴さんに追いつくか!?」

 

熊野「お姉様ー!頑張ってくださいましー!!」

 

青葉「熊野さん!?」

 

 

翔鶴「っ、龍驤ちゃん......! 追いついて来たわね」

 

翔鶴「でも、そう簡単にはいかなせないわよ!」

 

 

大井「まるで二人だけで戦ってるような口ぶりね」

 

那智「我々の事を忘れて貰っては困るな!」

 

 

翔鶴「貴方達......!」

 

那智「大井、着いてこれたのか」

 

大井「雷巡を甘く見ないでくれる? いつも魚雷戦しか活躍の場がないわけじゃないのよ!」

 

龍驤「ちょい待ちぃ! うちのことも忘れんなやぁぁぁ!」

 

 

青葉「こ、これは凄い! かつてない程の接戦、混戦です!」

 

熊野「こほん。そうですわね。おねえs――翔鶴さんも優れてますが、龍驤さんたちの実力も侮りがたいものがありますわ」

 

 

菊月「別に4人だけで勝負させる気はないんだがな」

 

天龍「でもゴーヤの奴はマジで何処にいるかもう分からないぞ。はえーなぁ」

 

白露「2人とも何のんきなこと言ってるのよ! 一番になりたくないの?」

 

菊月「む?」 天龍「あん?」

 

菊月「無論」

 

天龍「あったりまえだろ」

 

菊月・天龍「一番は......」「わたしだ!」「俺だ!」「あたしよ!」

 

ドォッ

 

 

青葉「あれは......混戦してる選手を追い抜いて一気に駆け上がってる集団があります!」

 

熊野「あれは、駆逐艦の子達と天龍さんです!」

 

青葉「わざと少しペースを落として泳いで混戦して動きが鈍るのを待っていたみたいですね!」

 

熊野「菊月さんはともかく、天龍さんと白露さんがそういう戦略を持っていたというのが意外ですわね」

 

青葉「いや多分、菊月ちゃんの策を理解して流れでそれに乗ったんですよ」

 

 

ズザァァ

 

翔鶴・龍驤・那智・大井「!」

 

天龍「先に行くぜぇ!」

 

菊月「勝たせてもらう!」

 

白露「いっちばーん!」

 

 

翔鶴「く、時間を浪費したせいで......でもまだ!」

 

龍驤「かぁっ、人様の横を通っていくとはええ度胸やないか!」

 

那智「油断した! だが、まだだ!」

 

大井「ちっ」

 

 

~浜辺から1キロ付近

 

ゴーヤ「ぷはっ、流石に全力で泳ぐと一回は息継ぎしないと疲れるでちね」

 

ゴーヤ「でも、もうゴールは目の前でち!」

 

 

白露「あ、あれ。ゴーヤちゃんだ!」

 

天龍「なに? お、マジだ。距離は少しあるが追いつけない距離じゃねぇ!」

 

菊月「勝負の時が来たようだな」

 

金剛「そのようネ」

 

白露・天龍・菊月「!?」

 

天龍「こ、金剛のネーサン!?」

 

菊月「一体いつから......」

 

白露「全然気づかなかった!」

 

金剛「そう? 結構ずっと近くにいたのヨ?」

 

金剛「それにしても驚きデス。まさかワタシと同じ考えの人が3人もいるなんてネ」

 

天龍「え?」

 

白露「え?」

 

金剛「え?」

 

菊月「......」

 

天龍「そ、そーだよ。俺も驚きだぜ! まさか皆同じとはな!」

 

白露「あたしは菊月ちゃんに着いてきただけだよ?」

 

天龍「えっ」

 

天龍「そ、そーか......。お、俺......とそこの2人が一緒......だったか」

 

菊月「取り敢えずもう行くぞ。後ろの集団との距離ももう殆どない」

 

白露「うわ、やっば!」

 

天龍「そ、そうだな。速くゴールに――」

 

金剛「ノンノン」

 

菊月「?」

 

金剛「この勝負ワタシの勝ちヨ」

 

天龍「なに言ってやがるまだ勝負は――」

 

金剛「今から本気を出すネ」

 

白露「そ、そうだよ!まだ負けたわけじゃ......て、え?」

 

金剛「高速の、戦艦の力......」スゥ

 

金剛「見せてあげるネ」

 

 

ドオォォォーン!

 

 

ゴーヤ「!?」

 

ゴーヤ「な、なに?」

 

 

青葉「おーーーと!姿が見えないと思っていた金剛さんが天龍さんたちと一緒にいると思っていたら......!」

 

熊野「......凄い!」

 

青葉「マリアさんの時とは違って、海を割るというよりあれは切っていますね! 海を切り裂いて我が道を作っています!」

 

熊野「あれが......戦艦の......力!」

 

 

金剛「ゴーヤ lock on ネ!」

 

ゴーヤ「なっ......」

 

金剛「さぁ一騎打ちヨ!」

 

ゴーヤ「っ......負けない!」

 

 

~浜辺

 

バシャ

 

金剛「アイムゥゥゥゥ......ウイナァァァァ!!」ガッツポーズ

 

ゴーヤ「ふふふ......完敗でち!」ヘナ

 

 

――数十分後

 

第三ゲーム結果

 

1位:金剛  15m55s

2位:伊58  15m58s

3位:龍驤  18m59s

4位:翔鶴  19m03s

5位:菊月  20m25s

6位:那智  20m31s

7位:大井  20m44s

8位:白露  25m11s

9位:天龍  25m14s

 

 

~観覧席

 

提督「......凄いなこれは」

 

叢雲「かなり見応えがあったわね」

 

提督「戦艦が潜水艦に勝ったか」

 

叢雲「違うでしょ」

 

提督「ん?」

 

叢雲「金剛がゴーヤに勝った、でしょ?」

 

提督「そうだな」

 

提督「龍驤も翔鶴に競り勝ったか」

 

叢雲「一位にはなれなかったけど、正規空母に勝てたのはかなり嬉しかっみたいね。飛び跳ねて喜んでいたわ」

 

提督「あいつもこれで自信を持つようになるといいが」

 

叢雲「そうねぇ。まぁ元々......あら?」

 

提督「どうした?」

 

叢雲「王子様、お姫様が来たみたいよ?」

 

提督「なに?」

 

タタタタタッ

 

金剛「大佐ァァァー! ワタシ、ナンバーワン取ったワヨー!」ガバッ

 

提督「ふぐっ」

 

ドタン

 

叢雲「あらあら......水着で、しかも濡れたままで押し倒すなんて」

 

叢雲「妬けるわね」クス

 

金剛「褒めて褒メテ!」スリスリムニュムニュ

 

提督「分かったから、分かったから離れろ。水着がずれてるぞ」

 

金剛「今は気にしないワ。ギュッとするデス!」ギューポヨヨン

 

提督「ぐ......苦し......」

 

叢雲「そろそろ助けてあげましょうか」




長くなってしまってすいません。
でも、今回は書いてて楽しかったです。
金剛可愛いですね!
......陸奥も可愛い話書きたいなぁ。

大会の本戦次で最後です!


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第54話 「インターバル①」

最終戦前の中休み、最後の試合に向けて各グループの選手は決意を新たにしています。
勝っても負けても次が最後。せめて悔いの残らない結果を残したい、この思いだけは全てのグループ共通でした。



潜水艦グループ

 

イムヤ「......」

 

ゴーヤ「イムヤごめんなさい。負けちゃったでち......」

 

イク「気にすることないの! ゴーヤも頑張ったの! 僅差なの!」

 

ハチ「そうですよ。ゴーヤは頑張りました。それに私達は成績の上では圧倒的に勝ってます!」

 

まるゆ「ま、まるゆもそう思います! ゴーヤさんは何も悪くありません!」

 

イムヤ「当り前よ。誰が悪いとか負けたのが悔しいとか、そんなこと気にしないわ」

 

イムヤ「ゴーヤはよくやったわ。イクもハチもまるゆも皆みんな最高よ!」

 

ゴーヤ「イムヤぁ......」ウル

 

イムヤ「最終戦見てなさい。私、勝つわよ!」

 

イク「イムヤなら大丈夫なの!」

 

ハチ「そうです。なんたって私達のリーダーなんですから」

 

ゴーヤ「イムヤが負けるはずないでち!」

 

まるゆ「イムヤさん頑張ってください!」

 

イムヤ「皆ありがとう! それじゃぁ早速準備するわね!」

 

イムヤ以外の潜水艦「準備?」

 

イムヤ「そう。私考えたの。どうしたらもっと速く有利になるかって」

 

ゴーヤ「それで?」

 

イムヤ「水の抵抗を限界まで減らすしかないわ」

 

まるゆ「へ、減らすと言っても髪の毛切るわけにはいかないし、他もう減らせるものなんて......」

 

ハチ「......まさか」

 

イク「な、何なの?」

 

イムヤ「脱ぎます」キリ

 

イムヤ以外のメンバー「 」

 

ゴーヤ「え、ちょ。何言ってるのイムヤ!?」

 

ハチ「ダメ! それはダメですよ!」

 

イク「ぬ、脱ぐって裸になるの!?」

 

まるゆ「そ、それは......」カァァ

 

イムヤ「大丈夫よ。ちゃんと前張りを使うし、胸も防水の絆創膏で隠すから!」

 

ゴーヤ「そ、そういう問題じゃないよ!」

 

ハチ「そうですよ!早まらないで!」

 

イムヤ「止めないで! 私はやるわよ!」ヌギ

 

まるゆ「わわわわ......!」

 

イク「だ、誰か大佐を呼んできて! あ、来ても部屋に入れちゃだめよ!」

 

 

戦艦グループ

 

長門「むぅ......」

 

Bis「総合順位は最下位ね......」

 

伊勢「トップとの差を考えれば、もはや一位は不可能だけど」

 

金剛「次でトップになればなんとか3位には入れるかもヨ?」

 

扶桑「金剛さんが個人成績一位になってくれてなかったら、結構悲惨な状態になっていたかも......」

 

金剛「えへへー、それ程でもないネー♪」テレテレ

 

扶桑「ホント私なんて......」ズーン

 

伊勢「ちょ、ちょっと。最後の試合の前に雰囲気暗くしないでよ」

 

Bis「ちょっと待って!」

 

長門「どうしたマリア」

 

Bis「確かに金剛は凄いかもしれないけど、私だって一位になったのよ!」

 

扶桑「ああ......私なんて、私なんて......」ズズーン

 

伊勢「なに余計なこと言ってるのよ!?」

 

長門「ま、まぁ扶桑は、このまま最下位だと大佐と勝負になるわけだから」

 

長門「勝てば大佐から褒美を貰えるかもしれないぞ?」

 

扶桑「!」ガバッ

 

金剛・Bis「な!?」「What!?」

 

伊勢「あ、生き返った」

 

扶桑「長門さん、後は宜しくお願いします! 頑張って下さいね!」キラキラ

 

長門「あ、ああ。全力を尽くそう」

 

金剛「いいナー」

 

Bis「ちょっと羨ましいわね」

 

伊勢(現金な子たちね)

 

 

空母グループ

 

加賀「総合順位では2位ですか」

 

翔鶴「でもまだ一回も1位になった事はないんですね」

 

瑞鶴「差を見れば次の試合で十分に逆転は可能ね! それに」

 

飛龍「加賀さんが個人成績で一位になれば」

 

蒼龍「タイトルは全て独占できちゃうね」

 

加賀「それは、潜水グループにも言える事です。私が本気のイムヤさんに勝てるとは限りません」

 

蒼龍「でも勝つんでしょ?」ニッ

 

瑞鶴「なんたって加賀さんだもんね!」ニッ

 

翔鶴「私は貴女を信じてるわ」ニコ

 

飛龍「皆あまり加賀さんにプレッシャー与えちゃだめだよー。ま、わたしも信じてるけどね?」ニコ

 

加賀「貴女達......この昂ぶり無駄にはしません」

 

 

軽空グループ

 

瑞鳳「総合順位は4位かぁ」

 

飛鷹「でも3位との差はそんなにないし、次の試合の成績次第では十分に入賞はかなうよ」

 

千歳「1位はちょっと無理そうですけどね」

 

龍驤「そんなことないで! 気合でなんとかなるわ!」

 

鳳翔「龍驤ちゃん落ち着いて。でも、そうね全力を尽くせば、あるいは......」

 

飛鷹「おー、アクティブな鳳翔さんって凛としてて貴重よよねぇ」

 

瑞鳳「うん。カッコイイ......と思う」

 

鳳翔「え? カッコイイって私がですか?」

 

龍驤「おー、良い表情してたでぇ」ニマ

 

千歳「凛々しかったですよ」ニコ

 

鳳翔「ふふふ。ちょっと複雑ですけど照れますね」

 

鳳翔「......それじゃあカッコイイところお見せできるように頑張ってみようかしら♪」

 

飛鷹「期待してるわよ!」オヤユビグッ

 

龍驤「軽空母でもやれるんや!」ブイッ

 

千歳「応援は任せてください」ニコ

 

瑞鳳「私も手伝います!」

 

鳳翔「皆さんありがとう。それでは鳳翔......押して参ります!」

 

 

重巡・航巡グループ

 

最上「総合成績はビリ2かぁ」

 

摩耶「個人成績もパッとしねぇなぁ」

 

筑摩「これはも......」

 

那智「まさか諦めろとか言わないよな」

 

加古「違うよ。筑摩が言いたいのは」

 

筑摩「はい。勿論一位を目指すしかない思います」ニコ

 

摩耶「へぇ、面白いこと言うじゃねーか」ニヤ

 

最上「そうだね。それいかないよ。というかもうそれ以外は考えられないよね」

 

那智「ふっ......そうだな」

 

加古「よーし、あわよくば個人成績トップを狙って有終の美を飾っちゃうよー!」

 

摩耶「おう! その意気だ!」

 

那智「当然だな」

 

最上「分かってるじゃん」

 

筑摩「加古さん頑張ってください!」

 

加古「任せといてー! 加古の本気見せちゃうよー!」




自分で適当に出したタイムの統計を取ってたらやっぱり潜水艦ダントツですね。
逆に戦艦は最下位なのに1位を2回も取ってるという......。
自分で筋書き書いてるのに結果を忘れたお蔭で驚いてちゃ世話ないですよね。
まぁ終わり見えてきました。
がんばりましょうか。


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第55話 「インターバル②」

残りのグループの様子です。
......特に後はないかな。
最後の試合の準備をするのみです(筆者が)


雷巡・特務グループ

 

明石「総合順位は3位かぁ」

 

あき「試合で獲得した最高順位は木曾さんの2位でありますね」

 

木曾「総合2位は十分狙える。1位もキツイかもしれないが不可能じゃないな」

 

大井「ちっ。この私が7位なんて......」

 

北上「まぁあれは仕方ないよ~。結構混戦してたしねぇ」

 

大井「き、北上さんありがとう! キスする!?」

 

北上「床としてね」ゴス

 

木曾「お前ら相変わらずだな......まぁ調子がいつも通りなのはいい事だ」

 

明石「緊張してちゃ大望も成就成らざるってね」

 

あき「そうです!私達は大器晩成型なのであります!」

 

大井「う......つまり最後の最後で勝利を掴むのは......」

 

木曾「俺たちってことだな」ニヤ

 

北上「あっさ~ん。いい事言うじゃ~ん」

 

大井「私も北上さんとイイことsあうっ」ベシ

 

北上「そこは『北上様なら優勝間違いないわ』でしょ?」ニッ

 

大井「北上さん......」ウル

 

大井「よぉぉし、お前ら締って征くぞー!!」

 

明石・あき「ひっ!?」

 

北上(あ~あ、変なスイッチは入っちゃったかな。でもま、いっか)

 

木曾「おい。こいつ止めろよ」

 

 

軽巡グループ

 

夕張「7位、か」

 

天龍「総合か?」

 

夕張「うん。出だしは快調だと思ったんだけどなぁ」

 

川内「まぁ、いきなり2位だったしね」

 

長良「でも、その後がねぇ......」

 

矢矧「ああ。散々な結果だ。長良も頑張ってくれたが......」

 

長良「5位でごめんなさい......」グス

 

矢矧「ああ、いや。別にその事を言いたかったわけじゃない」アセアセ

 

天龍「おいおい、泣かすなよ」

 

川内「あんた余計な事を......!」

 

夕張(あ、なんか雰囲気が......)

 

天龍「勘違いすんなって。泣かせるなら嬉し泣きさせてくれよ」

 

矢矧「む......」

 

長良「でも、入賞は難しいと思うよ?」

 

川内「個人の1位を狙うの?」

 

天龍「それしかないだろ?」

 

夕張「できるかしら」

 

矢矧「簡単ではないわね。下の順位の者ほどそれに懸けてくる可能性大だし」

 

矢矧「だけど......」

 

長良「やろう!」

 

夕張「長良?」

 

長良「わたし達の全力最後に見せてやろうよ!」

 

川内「賛成!それしかないっしょ」

 

天龍「だな。夕張?」

 

夕張「そうね。最後には自由時間もあるし!」

 

天龍「おいおい......最後の最後でそれかよ」

 

矢矧「ふふふ、だけど前向きなのは良いことだわ」

 

矢矧「リーダーとして恥じない姿を皆に見せてあげる!」

 

天龍「よっしゃ! 鬨を上げようぜ!」

 

川内「いわね!それじゃいくわよ。......せーの」

 

軽巡グループ一同「オー!!」

 

 

駆逐Aグループ

 

初春「総合順位はそんなに悲観する程のものではないな」

 

雷「5位だけど6位の駆逐グループと比べてもそんなに差はないわね」

 

深雪「上を目指すにしても入賞は何とか狙える位置だね」

 

菊月「おまけに個人成績も狙えるぞ」

 

綾波「まぁ、その代わりここまでに獲得した試合の順位はあまりよくありませんけどね。はは」ニガワライ

 

初春「ま、総合力で勝負という事じゃな」

 

雷「さっすが初春ね。組長の補佐をやってるだけあって落ち着いてるわね」

 

初春「そういう事は言うでない。妾だて本当はこの役は叢雲に頼みたかったのだからな」

 

菊月「組長にそれだけ信頼されてるってことだな」

 

深雪「組長は大佐とデートだから仕方ないさ」

 

綾波「いいなぁ。綾波も大佐と......あわわ」アセアセ

 

初春「ははは。まぁそのことに関しては大会の後大佐に期待しよう」

 

初春「ここまで懸命な乙女に褒美の一つもくれないのでは漢が廃るというもの故」

 

菊月「初春。いけるか一位?」

 

初春「愚問じゃな。皆が納得できる結果を持って帰る事を約束しようではないか」

 

綾波「頼りになります~」

 

深雪「いよっ大将!」

 

雷「任せたわよ」

 

初春「うむ。この初春に任せておけい」ニコ

 

 

駆逐Bグループ

 

長波「うーん、初春達にギリ負けてる感じだなぁ」

 

島風「こんなに速さで勝てなかったのは初めてだよ!」

 

白露「もう一番は無理かなぁ」

 

霞「総合は諦めた方が良さそうね」

 

島風「えー! 諦めちゃうの!?」

 

陽炎「別に全部諦めるわけじゃないわよ。無理なものは捨てて別の目的に集中するだけ」

 

白露「目的っていうと」

 

長波「どこも考えることは同じだろうけどまず個人トップね」

 

霞「それと入賞かしら」

 

陽炎「3位まではいけるかもしれないわ」

 

白露「個人かぁ。ふふ、それもいいかも♪」

 

霞「なんでもう1位になった気でいるのよ」

 

陽炎「泳ぐのはわたしよ? まぁ、頑張るけど」

 

長波「期待してるわよ?」

 

島風「陽炎、頑張ってね!」

 

霞「あんたなら大丈夫でしょ」

 

白露「応援してるよー!」

 

陽炎「あー緊張してきた! ふふふ、やるわよー!」

 

霞「超やる気じゃない」クス




これであとは第五ゲーム目指すのみですね!


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第56話 「水泳大会第五ゲーム①」

水泳大会最終戦(大将戦)
誰が勝ってもおかしくない気迫に満ちた雰囲気です。

○出場選手一覧
戦艦G:長門 航空G:加賀 軽空G:鳳翔 重巡/航巡G:加古 雷巡/特殊G:北上 軽巡G:矢矧 駆逐AG:初春 駆逐BG:陽炎 潜水G:伊168


青葉「さぁ、ついに水泳大会も最終戦となります!」

 

青葉「本日のゲストは弥生ちゃんです! 弥生ちゃん、宜しくお願いしますね!」

 

弥生「よろしく......私でいいのかな......」

 

青葉「思ったことを言ってくれたらいいですよ! あ、選手が入場してきました!」

 

弥生「長門さん......やっぱりカッコイイな。マリアさんと同じ黒い水着......」

 

青葉「三角紐ビキニですが、ボトムは大胆にブラジリアンカットですか!」

 

青葉「普通ならその色気に圧倒されるところですが、やはりそこは長門さん鍛え上げられた肉体が美しいです!」

 

青葉「縊れた腰に小ぶりなで引き締まったお尻! 浮き出た腹筋! 程よく盛り上がった形の整った胸! その姿はさながら芸術?的な彫刻の様です!」

 

弥生「青葉さん、なんか長門さんの解説に力が入ってる......?」

 

青葉「え? あ、えっと......ごめんなさい。つい興奮してしまいました」

 

長門(興奮するにしても細かく言い過ぎだ! 恥ずかしいだろ!)

 

青葉「続いては加賀さんですね。うん! 彼女も素晴らしいですね!」

 

弥生「青い三角ビキニ......あれはホルターネックっていうのかな。上も下も結ぶタイプだけどリボンみたいで可愛い......」

 

青葉「加賀さんもすらっとした綺麗な体ですね。着やせするタイプだという事がよく分かります」

 

弥生(加賀さん、あんなに胸が大きかったんだ......いいなぁ)ペタペタ

 

加賀(何やら一部の人から恨めしさがこもった視線を感じますね)

 

青葉「あ、鳳翔さんが入って来ました! 自己主張をしない控えめなスタイルが、かえってお淑やかで素敵ですね!」

 

弥生「普通のセパレーツ......でも色は柔らかい桜色で、優しい鳳翔さんっぽい感じが凄くする......可愛いし、きれい」

 

鳳翔(もう少し胸があったら違う水着を着れたかもしれませんね。ちょっとだけ残念......かな)

 

青葉「続いては加古さんですね。青と白の縞々のセパレーツの水着で登場です!」

 

弥生「露出がビキニほどないから......分かり難いけど、加古さんも筋肉がところどころ浮き出るくらいについてる......スタイルもいいし、強そう」

 

加古(あんまり褒めないでよ。照れるなぁ。水着ちょーっと地味だったかな)

 

青葉「続いて出てきたのは北上さんですね。ベアドリミフカットの白いワンピースで登場です!」

 

弥生「北上さんあんなに腰細かったんだ......でも痩せてるというほどじゃない。ああいうのって均整がとれてるっていうのかな......強そう」

 

北上(まぁ、あまり目立ちすぎてもねぇ。あ、でも大佐に見られるならまだ――大井っち興奮し過ぎだし......)ドンビキ

 

青葉「次は矢矧さんです! オレンジに白のラインが入った三角ビキニです! 彼女も長門さんばりに良い体してますね!」

 

弥生「ホントだ......長門さんみたいな筋肉......でも長門さんより胸が明らかに大きい......。これが勝敗の分かれ目になるかも......」

 

矢矧(胸で決まるのか!? まぁでも、褒められて悪い気はしないな。......褒められてるんだよな?)

 

青葉「おっと、続いて入場してきましたのは初春さんですね」

 

青葉「お、これはただの赤色のワンピースだと思いきや、大胆にも胸元がVネックカットのものを着ています! 正直意外です!」

 

弥生「なんか凄く危険な感じがする......。でも初春さんの貫録で無理やりそれを抑えてる感じ。私じゃああはいかない......な」

 

初春(少々無理はしたが......最後くらいは目立って終わりたいし、の?)

 

青葉「駆逐艦最後の選手が入って来ました。陽炎ちゃんです! 赤と黒の色使いが印象的なタンキニですね!」

 

弥生「タンクトップがおへその上のあたりでカットされてる......自分で切ったのかな。装飾も結構されてるみたい」

 

弥生「今まで見てきた水着の中で一番オシャレで可愛い......と思う。私もちょっと欲しいかも......」

 

陽炎(気合入れて作ったからね! 注目されなきゃ困るのよ! 大佐も見ててくれてるかしら)

 

青葉「さぁ最後は潜s......ぶはっ! い、イムヤさん、ま、マイクロビキニで登場......です!?」

 

弥生「......」カオマッカ

 

青葉「弥生ちゃんが沈黙しちゃった......。え、えーと。と、とにかく丸見えです! 殆ど裸と変わりないです!」

 

青葉「一体イムヤさんに何があったんでしょう!?」

 

イムヤ(妥協してこれになったけど、仕方ないか。心身ともに本気の私、見せてあげる!)

 

 

~観覧席

 

提督「イムヤは最終的にアレに落ち着いたのか。イク達に呼ばれた時は何事かとおもったが」

 

叢雲「ねぇ」

 

提督「ん?」

 

叢雲「あれ......あれ、まさか大佐が選んだの?」ジト

 

提督「......そう思うか?」

 

叢雲「思いたくはないわね」フイ

 

提督「まだ俺も信用されているようで安心した。だが、あれでもマシになったくらいなんだぞ」

 

叢雲「はぁ!? あ、あれでマシってどういうことよ!?」

 

提督「漢の俺は実際に見るわけにはいかんレベルだな」

 

叢雲「そ、そう」

 

叢雲(イムヤ......あんた一体どんな格好で泳ごうとしたの......?)




マイクロビキニはエロいとは思いますが、ちょっと度が過ぎてて逆に俺は引いてしまいます。
そんな水着をイムヤに着せた俺は外道です。
あ、自分で着たんですけどね。


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第57話 「水泳大会第五ゲーム②」

最後の試合の始まりですよ!



青葉「さぁ、皆さんいよいよ最後の試合の始まりです!」

 

青葉「あ、弥生ちゃん大丈夫ですか? ちょっとアレは刺激が強かったですかね」

 

弥生「大丈夫......ちょっと驚いただけだから。進行していいよ」

 

青葉「分かりました! では榛名さんお願いします!」

 

榛名「分かりました! 各グループの出場選手はスタート位置に着いて下さい!」

 

出場選手一同「......」

 

榛名「いきますよ? よーい......」

 

榛名「スタート!」

 

パシッャーン

 

 

ズオッ!

 

イムヤ「誰にも追いつかせはしないわよ!」

 

 

青葉「おっと、前回に続き今回も一瞬でトップに躍り出たのは潜水艦です!」

 

青葉「イムヤさん速い! 格好はアレですが、流石はリーダー! これはもう勝負になるのかというレベルです!」

 

弥生「本当に速い......時速15km」

 

青葉「ゴールまでたった12分ですか......これはもう圧勝かなぁ」

 

 

長門「ゴールできたらの話だがな......は!」

 

ゴオオオオオオ

 

 

青葉「長門さんが出てきました! 金剛さんが見せた戦艦のパワーですね!」

 

弥生「今回はどちらかというとマリアさんに近い泳ぎ方。力任せに波を分けるから周囲の海が凄く荒れてる」

 

青葉「しかも長門さんはマリアさんより力がありますからね、これは周りの人も......おっとイムヤさんも影響を受けているようです!」

 

 

イムヤ「きゃぁっ。海中にまで余波が......息を乱そうってわけね!」

 

 

北上「わっぷ、長門さんやるなぁ。ま、こっちも負ける気はないけどね......よっっと!」

 

青葉「あ!北上さんが追い上げてきてます。乱れた波の影響を、文字の如くバタフライで躱してますね」

 

弥生「息継ぎの時軽く体が浮くくらい飛んでる......」

 

弥生「艦娘だからこそできる泳法だから、厳密にはバタフライじゃないかも......」

 

 

長門「むっ、北上か。流石だな! まさか追いついてくるとは」

 

北上「チッチッチ。わたしが目指してるのはイムヤさんだから。悪いけど、長門さんはただの通過点だよ!」

 

 

鳳翔「くっ、皆の姿を追うのでやっとですね......。このままでは差が開くばかり、どうにかしないと」

 

 

青葉「鳳翔さんが苦労してるみたいですね」

 

弥生「鳳翔さんも遅いわけじゃないけど、今回はメンバーは特にレベルが高いからキツイかも......」

 

青葉「おや、鳳翔さんに近づく姿が......!あれは加賀さんですね」

 

弥生「どうしたんだろう」

 

 

加賀「鳳翔さん、どうしたんですか?」

 

鳳凰「あ、加賀さん。私、みんなの期待に応えられそうになくて......」

 

加賀「なるほど。確かにあれに追いつくのはキツそうです」

 

加賀「......鳳翔さん、一つ提案があるのですが」

 

鳳翔「え?」

 

 

青葉「お、あそこに見えるのは加古さんと矢矧さんと......あれ、駆逐艦の子もいますね」

 

弥生「こっちも何か話し合ってる感じ......何を話してるんだろう」

 

 

初春「――というのはどうじゃ?」

 

矢矧「なるほど」

 

陽炎「確かにあの波を乗り切るにはこれしかなさそうね」

 

加古「イムヤもその内体制立て直すだろうから、もう時間はないね」

 

初春「それでは、皆同意ということで良いな?」

 

矢矧「ああ、一時的にだけど協力するわ」

 

陽炎「仕方ないわよね」

 

加古「いいねぇ。皆驚きそうじゃん!」

 

初春「それでは参るぞ?」

 

 

長門「く、抜かせるか!」

 

北上「ナガモンもしぶといねぇ」

 

長門「っ、ナガモンて言うなぁ!」

 

 

イムヤ「うまい具合に2人とも白熱してくれてるわね」

 

イムヤ「眼中に入ってないのは酌だけど、隙は突くかせてもらわ――て、また余波!?さっきより大きい!」

 

 

長門「なんだ?」

 

北上「戦艦は一人だけのはずだけど......」

 

 

青葉「こ、これは先ほど話し合ってた4人が驚くべき行動を取っています!」

 

弥生「皆一緒に陣形を組んで泳いでる......」

 

青葉「加古さんと矢矧さんを先頭にして駆逐艦二人が少し下がって両サイドを泳いでますね。」

 

弥生「皆同時に同じ速さで泳ぐことで一つの群艦になってる......」

 

青葉「なるほど。これだけの艦隊が固まって一斉に泳ぐわけですから当然波も......」

 

 

長門「なるほど。あいつら......そう来たか!」

 

北上「わわわ。これは無理!流される~」

 

イムヤ「ちょ、ちょっとこっちに来ないでよ!」

 

初春「よし、追いついたな! それでは皆の衆ご苦労!」

 

初春「これよりは解散して。また敵同士じゃ」

 

加古「よっしゃぁ! あとは突っ走るのみ!」

 

矢矧「ここからが本番だ!」

 

陽炎「乱戦上等! こちとらそういう戦場を駆け回ってきたのよ!」

 

 

青葉「おー、上手い具合に混戦になってますね」

 

弥生「全員が同じスタート位置に立った......」

 

 

加賀「いいえ」

 

鳳翔「残念ながら違いますよ」

 

 

2人以外の全員「!?」

 

 

スイィィィィ......パシャッ

 

 

加賀「完全」ブイ 鳳翔「勝利です♪」ブイ

 

 

青葉「な、なんと2人同時に潜水でゴールしたあぁぁ!?」

 

弥生「一緒に潜水することによって倍の推力で泳いだって事......かな」

 

 

長門「くっ、だが2人同時という事は2位と3位は空いているという事だな。それなら......!」

 

北上「それ無理だよ。もうイムヤゴールしてるし」

 

長門「な!?」

 

長門「な、なら3位を」

 

北上「それも無理。なんか初春さんが途中から『本気』出したみたいであっという間にゴールしちゃった」

 

長門「 」

 

北上「ヤハギン達も呆然としてるね。あはは。こりゃあ勝てないわ」

 

 

第五ゲーム結果

 

1位:加賀  14m05s

2位:鳳翔  14m05s

3位:伊168  14m25s

4位:初春  16m17s

5位:矢矧  16m30s

6位:加古  16m32s

7位:陽炎  16m40s

8位:北上  18m08s

9位:長門  18m10s

 

 

~観覧隻

 

提督「加賀達は金剛の記録を超えたのか。凄いな」

 

叢雲「それなんだけど、鳳翔さんは1位を辞退したそうよ」

 

提督「ふむ」

 

叢雲「加賀の提案で1位になれた事が理由なんだって。本人は思い出だけで十分とか言ってたわ」

 

提督「鳳翔らしいな」

 

叢雲「ええ、そうね。全くどこまで『お母さん』なんだか」

 

提督「それではタイムは同じでも鳳翔は2位になるのか」

 

叢雲「そういう事」

 

叢雲「ああ、あと彼女、個人成績の褒賞に関しても受け取る権利を前の試合で最高記録だった人に譲るそうよ」

 

提督「待て、それでは」

 

叢雲「ええ、そうよ。褒賞の授与者は金剛と加賀よ」




ちょっと無理やり感がありますかね。
でも上手く二人にお願いができる流れにしたかったんですよね。

これで本線は終わりですが、まだ提督と扶桑の試合が残ってます。


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第58話 「僥倖」

鳳翔の心配りによって提督にごお願いができる権利を保持することができた金剛。
安堵の溜め息とともに今度、鳳翔さんにどのようなお礼をしようかと感謝の気持ちで一杯で思案してるところにまた加賀がやってきました。

目に見えて頬が緩んで嬉しそうです。
そんな加賀に金剛も自分の事のように嬉しそうにして話しかけます。


金剛「加賀、ナイスレースだったヨ!」ダキ

 

加賀「っと、金剛さん、全く......ありがとう」ポンポン

 

金剛「2人がベストタイムを出したときは正直、ショックでしたガ......本当に鳳翔さんには感謝の気持ちでいっぱいデス」

 

加賀「ええ、お蔭で私と貴女一緒にお願いができるという最も理想的な形を実現することが出来ました」

 

金剛「フッフー、加賀? 心の準備はいいカシラ?」

 

加賀「お願いはこの後の大佐と扶桑さんの試合の後に表彰式と一緒にやるのですから気が早いですよ」

 

金剛「そんなコト言われたって、この胸のドキドキはどうしようもないヨ♪」

 

加賀「それは私も同じですが......」

 

金剛「どうしたノ、加賀?」

 

加賀「金剛、貴女は大佐がこのお願いを本当に受け入れてくれると思いますか?」

 

金剛「あ......」

 

加賀「大佐は、優しい人です。今は本当に昔と比べて私達と分け隔てなく接してくれるようになりました。だけど......」

 

金剛「ワタシたちが人間じゃないことを......ネ」

 

加賀「そうです。私達に好意を向けらている事に大佐は戸惑い悩んでいます」

 

金剛「殆ど顔には出さないけど確かにそうネ。パーフェクトに拒否はされないけど、自分からはゼッタイ寄ってこない感ジ......」

 

加賀「私も自分の気持ちが偽りだとは思いませんが、あそこまで明確に苦心してる大佐にこのまま寵愛を求めていいものかどうか......正直悩みます」

 

金剛「ココロが痛いね......」

 

加賀「世にはお互い相思相愛で人間と艦娘の壁を越えて愛し合う提督もいるみたいですが......」

 

金剛「ワタシ達の大佐にもそうなって欲しいと wish するのは我儘カナ......」

 

加賀・金剛「......」

 

加賀「......悩んでも仕方ありませんね」

 

金剛「加賀?」

 

加賀「やはり実際に聞いてみるしかないでしょう」

 

金剛「そう......ネ」

 

加賀「公の場で聞くというのもなんだか無理に答えを迫っているようで心苦しくはありますが、私達にもそろそろその答えが必要です」

 

金剛「っ、加賀ワタシ怖いヨ......。大佐がもし、拒絶するようなこと言ったりしたらと思ウト......」ブルブル

 

加賀「......」ソッ、ギュ

 

金剛「あ......」

 

加賀「その時は私も一緒に泣いてあげます。ですが」

 

金剛「but?」

 

加賀「それでも私は諦めるつもりは有りませんけどね」ニッ

 

金剛「え......?」

 

加賀「言ったでしょう。私はどんな障壁だろうと何れ爆砕してみせる、と」

 

金剛「そ、そういえばそんな事言ってたワネ......」

 

加賀「貴女もその時は手伝って貰えませんか?」 ←金剛の耳元に囁く

 

金剛「ん......!」ゾク

 

加賀「一緒にがんばりましょう?」

 

金剛「は、アぁ......加賀、アナタの言葉って麻薬みたいネ。そういうのってズルイヨ」

 

加賀「では、諦めますか?」ス

 

金剛「NO! 今ので覚悟が決まったネ。加賀、ワタシやるヨ! アナタと一緒に最後まで諦めないネ!」

 

加賀「その言葉しかと受け止めました。では、一緒に――」ソ ←手差し出す

 

金剛「頑張りマショウ!」ガシ




やー、やっぱ会話のキャッチボールっていいですよね。
書き易い!
大会の話の何分の一かのペースでできていしまいました。
加賀も金剛も乙女ですね。

ですが、まだまだ乙女はいる(書く)予定ですよ!


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第59話 「水泳大会ラストゲーム」R-15

結局最後まで最遅の個人記録を保持した扶桑が提督と大会の締めの試合をする選手に選ばれました。
試合直後は超ロウテーションだった彼女ですが、今では提督と勝負ができるたった一人の選手として選ばれた事にご満悦のご様子。

試合前に提督がレイスから艦娘の加護を借りる(第16話参照)ことも公言し、一同から肯定の賛同を貰って提督の準備も万全です。


青葉「それではぁ、最後の試合。ある意味一番のメインイベント、大佐との一騎打ちです!」

 

青葉「今回は最後のゲストは扶桑さん妹、山城さんにお願いしました! 山城さん宜しくお願いします!」

 

山城「扶桑お姉様が負けるはずないわ」

 

青葉「いえ、そんなこと訊いてません」

 

青葉「それでは、先ずは扶桑さんの入場です! うーん相変わらず凄まじい色気ですね!」

 

山城「お姉様......素敵......。山城、熱くなってしまいます......!」クネクネ

 

青葉「何がですか!? こんなところで発情しないで下さい!」

 

扶桑(今ばかりはこの水着を選んでくれた山城に感謝しないとね。大佐にしっかりアピールしなきゃ♪)

 

青葉「そしていよいよ大佐の登場です! ほう、軍人だけにやっぱりそれなりに鍛えられた体をしてます!」

 

山城「わ、悪く......ないんじゃないかしら」ポ

 

提督(扶桑は最下位だったとは言え、泳ぐのはこれで2回目。コツを掴んでるかもしれない。油断はしない方が良いだろうな) ←扶桑には目もくれてない

 

扶桑「......」コソコソ

 

扶桑「大佐」トントン

 

提督「うん?」

 

扶桑「お手柔らかにお願いしますね」

 

提督「ああ、こちらこそよろしく頼む。あと、近いぞ。離れろ」

 

 

青葉「なんかいい雰囲気ですね!でも邪魔して申し訳ありませんがそろそろ始めさせていただきます!」」

 

山城「大佐......」ギリギリ

 

青葉(もう気にしないでおこう)

 

青葉「それでは榛名さん、最後の合図お願いします!」

 

榛名「了解です! 大佐、扶桑さん準備はいいですか?」

 

提督「ああ」

 

扶桑「いつでも」

 

榛名「分かりました! それでは行きますよ。 用意......」

 

榛名「始め!!」

 

パシャーン

 

 

青葉「さぁ、始まりました最後の試合! お、扶桑さん最初の試合とは打って変わって綺麗に泳いでます!」

 

山城「流石に2回も遅いとかは戦艦としてのプライドが許さないわよ」

 

山城「姉様、自分がこの試合に出ることを確信して他の試合が行われてる間ずっと一人で練習してたのよ?」

 

青葉「それは知りませんでした! なるほどこれはその成果という事ですね!」

 

 

提督(っ、加護を受けない時と比べて明らかに速いのは分かる。だが、それでも明らかに前の試合より上達した扶桑の泳ぎが勝っている......か)

 

扶桑(大佐......私より泳ぐのが上手いのは明らかね。でも、速さは私が上みたい。これなら......!)

 

 

青葉「おーと、扶桑さん大佐を追い抜きました!」

 

山城「キャー! お姉様頑張ってー!!」

 

青葉「貴女も熊野さんと一緒ですか」

 

 

提督(くっ、離されたか。だがこれはもう追いつけないな。全力で泳いでも距離を維持するのでやっとだ)

 

提督(何れ体力の差で負けるのは必然か。だが、出場したからには必ず最後まで泳ぎ切る)

 

 

扶桑(やった! 抜いた......! 後はもうゴールするだけね!」ニュル

 

扶桑「え?......っひあ!」ビクッ

 

 

青葉「おや?扶桑さんが止まりましたね。何だか苦しそうな顔でもじもじしてます!」

 

山城「お姉様! 今行きますわ!」ガタ

 

青葉「やめて下さい。大佐が異変に気づいて向かいましたから」ガシッ

 

青葉「多分、足をつったんでしょう」

 

 

提督「扶桑どうした? 大丈夫か?」

 

扶桑「た、大佐......うぅ」

 

提督「どうした?」

 

扶桑「さ、魚が......水着の中に......」コショ

 

提督「......」

 

扶桑「ヌルヌルして......あっ」ビクッ

 

扶桑「気持ち悪くて......んんっ!」ビクッ

 

扶桑「自分じゃ取れないんです......はぁはぁ......お、お願い......です」

 

扶桑「取って下さ......ああっ!?......い」ビクビクッ

 

提督「潜れ」

 

扶桑「え?」

 

提督「流石に見られたくない」

 

扶桑「あ、はい!」

 

提督「合図する。いくぞ」

 

扶桑「っ」

 

ポチャン

 

 

青葉「あれれ?二人とも潜ってしまいましたね」

 

山城「だ、大丈夫なの!? 私いつでも行けるわ――」

 

青葉「大佐も一緒に潜ったから大丈夫でしょう。多分足に何か絡まったんですよ」ガシッ

 

 

~海中

 

扶桑(あっ、大佐の手......が......んん!)

 

提督(凄い圧力だが、風船のように柔らかいから探ることはできるな......この当たってるのは......いや、考えるな)グニグニ......コス

 

扶桑(んはっ、それ私の......)カァ

 

提督(硬く......違う......むぅ......これか?」サワッ

 

扶桑(はぁっ!それ......触っちゃ......!」

 

提督(......俺はもう山城に殺される、いや殺された方がいいんじゃないか?)

 

扶桑(はぁ、はぁ......大佐......早く......気持ち......て違っ)カァァ

 

提督(っ、これか。 取れたぞっ)サッ

 

バシャッ

 

 

青葉「あ、出てきました。どうやら何とかなったみたいですね!」

 

山城「よかった......」ホッ

 

青葉「あー......これ、扶桑さん疲れ切った顔してますね。泳げるのかな」

 

 

扶桑「はぁ......はぁ......た、大佐......」

 

提督「すまん。手こずった」

 

扶桑「いえ......いいんです......ありがとうご......ざいます」ヘタ

 

提督「浜辺まで泳げるか?」

 

扶桑「ちょっと......休まないと......腰に力が入らなくて......」

 

提督「......肩を貸そう。一緒に泳ぐぞ」

 

扶桑「あ、ありがとうございま......ふ」

 

提督「この事は他言無用で頼む」

 

扶桑「流石に......山城には言えませんね......勿論他の子にも」

 

提督「助かる。俺も忘れ――」 扶桑「忘れなくて......いいですよ」

 

提督「ん?」

 

扶桑「私と大佐だけの秘密にしておいて......それがいいです」ボソ

 

提督「......分かった」

 

 

ラストゲーム結果

 

提督・扶桑 同着 22m19s

 

 

~観覧席

 

叢雲「......」

 

叢雲「いえ、まさか......ね」カァ




はい!
久しぶりにR-15タグです。
扶桑さん艶やか過ぎです。エロい!

次は表彰式です。


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第60話 「表彰式①」

水泳大会も全ての試合を終え表彰式です。
景品はどんなものが用意されているのか?
提督からのご褒美は何なのか?
提督に何をお願いするのか?

最後のイベントなのにまだ盛り上がりは収まりそうにありません。


提督「それでは、これより表彰式を始める」

 

提督「先ず第3位、雷巡・特務グループ代表前へ」

 

北上「は~い」

 

提督「大会の功績を湛えて貴君にこれを――」 北上「待って」

 

提督「ん?」

 

北上「そんな堅苦しい言い方じゃなくて、いつも通りに褒めてほしいな」

 

提督「......そうか」

 

提督「よく頑張ったな」

 

北上「ん、それでいいよ。あとついでに」

 

提督「まだあるのか?」

 

北上「頭を撫でて褒めて欲しい、なんてね」

 

 

北上以外の艦娘「!」ザワザワ

 

 

提督「ふっ......。これでどうだ?」ポンポンナデ

 

北上「ん~、いいねぇ♪」

 

 

明石「ちょっと羨ましいかも」

 

あき「私も後でお願いするであります!」

 

大井「ちっ、あんなのの何が......別に羨ましくなんて」

 

木曾「そう......だな。羨ましくなんてない......よな」

 

 

提督「榛名、景品をここに」

 

榛名「分かりました。3位の方達への景品はこちらです!」

 

北上「おぉ!」

 

榛名「32号電探人数分です!」

 

北上「ちょっと豪華すぎない?」

 

提督「そうでもない。使ってない資材が僅かに減っただけだ」シレ

 

北上(どれだけ余裕があるんだか......)

 

北上「ま、ありがとねっ。頂かせてもうらうよ」

 

 

提督「では、続いて第2位、空母グループ代表前へ」

 

加賀「はい」

 

提督「......」

 

加賀「......やりました」

 

提督「そうだな。よくやった」

 

 

瑞鶴「え? 何この空気」

 

瑞鶴「き、緊張するわね。何故か」

 

蒼龍「え、修羅場ってやつ?」

 

飛龍「こら、蒼龍!」

 

 

提督「榛名、頼む」

 

榛名「は、はい。2位の方達への景品はこちらです!」

 

榛名「南国のフルーツの盛り合わせ1トンです!」

 

 

会場全体 シーン......

 

 

提督「少々味気なかったか?」

 

加賀「そうでもありませんよ。見てください」

 

提督「うん?」クル

 

提督(空母のメンバーだけでなく、全ての艦娘の視線がフルーツに集中している......?)

 

加賀「そういう事です。これは私達だけで頂いてしまっては、後にどのような恨みを買ってしまうかわかりませんね」

 

提督「なるべく波風立たないように頼む」

 

加賀「ふふ、分かりました。それでは――あ」

 

提督「?」

 

加賀「大佐、また......後ほど」

 

提督「......ああ」

 

 

提督「それでは第1位、潜水グループ前へ」

 

イムヤ「はい......」

 

イムヤ「......」

 

提督「なんだ、不満そうだな」

 

イムヤ「! そ、そんな事ない......わよ」プルプル

 

提督「最後に勝てなくて悔しかったんだろう。気にするなとは言わない」

 

提督「だが、俺はお前たち潜水艦の実力は理解しているつもりだ。泳ぎに関してはお前たち個々の力は間違いなく最高だろう」

 

イムヤ「そんな......こと言ったって......勝てなきゃ意味......ない......じゃん」ヒック

 

提督「今、どうやってお前はここに立てたと思っている。お前だけじゃない、全員の力じゃないか」

 

イムヤ「!」

 

 

ゴーヤ「そうだよ。イムヤちゃん! ゴーヤ達頑張ったよ!」

 

ハチ「イムヤは頑張り屋さんですね。でもそれは私達も同じなんですよ?」

 

イク「そうよ! 今こうして1位になれたのは間違いなくイムヤのお蔭でもあるのよ!」

 

まるゆ「まるゆイムヤさんが1位に慣れなかった事なんか気にしてません! イムヤさん最後まで全力で凄くカッコよかったと思います!」

 

 

イムヤ「み、みんなぁ......」ウルウル

 

提督「イムヤ」

 

イムヤ「う......ぐす......は、はい!」

 

提督「よく頑張った」ポン

 

イムヤ「っ......う、うわぁぁぁぁん大佐ぁぁぁ!」ダキッ

 

提督「泣きたいだけ泣け。落ち着くまでいてやるから」ポンポン

 

 

北上「あ~、これは仕方ないかなぁ」チラ

 

大井「な、なんでこっちを見るのよ北上さん」

 

木曾「そ、そうだ。何故俺達を見る......!」

 

あき「自分に正直になれないのは損でありますね」ボソ

 

明石「ま、らしいって言ったららしいけどね」クス

 

 

瑞鶴「イムヤちゃん可愛い♪」

 

翔鶴「でもちょっと羨ましい、かな」

 

蒼龍「どうしたのよ飛龍~、黙っちゃって」ニヤニヤ

 

飛龍「ぐす......感動して涙が......」

 

加賀「本当にそれだけですか?」クス

 

 

提督「さて......落ち着いたか?」

 

イムヤ「ぐす......うん! もう大丈夫! ありがとう大佐!」グシグシ

 

提督「その言葉は俺だけにか?」

 

イムヤ「いいえ......!」クル

 

イムヤ「皆ありがとうね! あなた達のお蔭で優勝できたわ!」

 

 

潜水Gメンバー「イムヤ最高ー!」ワァワァ

 

 

提督「さて、榛名。頼む」

 

榛名「ぐす......はい! 1位の方達への景品はこちらです!」

 

榛名「我が鎮守府オリジナルのデザインにして、本部の最新の技術で作り上げた新しい水着です!」

 

榛名「しかも、一着一着に大佐直筆で潜水艦の名前が書いてあります!」

 

 

潜水艦メンバ一同「わぁぁぁぁぁ」キラキラ

 

 

提督「華やかさに欠く景品で悪いが、込めた気持ちは本物だ。大事に使ってくれると嬉しい」

 

イムヤ「ううん。本当に嬉しい......! 大佐、ありがとうございます!」

 

 

潜水艦Gメンバー「ありがとうございます!」

 

 

提督「喜んでもらえて何よりだ」




すいません。
2-5やってて結局今夜は一話で終わりそうです。
あ、浦風は出ませんでした。
勲章だけでも十分な収穫です。


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第61話 「表彰式②」

総合成績の表所が終わって次は個人成績の表彰です。
表彰台に立つのは最下位の扶桑とトップの加賀、金剛(第57話参照)です。



提督「それでは、次に個人成績最下位の者に努力賞を送る」

 

提督「扶桑、前へ」

 

扶桑「はい」

 

提督「ふぅ......」

 

扶桑「///」

 

 

雷「? どうしたんだろ2人とも」

 

山城「お姉様?」

 

 

提督「よく頑張った。お前には努力賞として個人的に用意した物を景品として贈る」

 

提督(叢雲に言われたからコレにしたが、本当にコレでいいのか?)

 

山城「はい」

 

提督「榛名、持ってきてくれ」

 

榛名「はい。......えっと、扶桑にお送りする景品は......大佐の......軍服です」

 

会場の艦娘達「!」

 

提督「こんな物で悪いが、もし俺に何かあった時の形見だと思って貰って欲しい」

 

扶桑「え、縁起でもない事言わないで下さい! でも、嬉しい♪」ボフッ、ギュー

 

扶桑「ありがとうございます! 大佐♪」キラキラ

 

提督「そうか......まぁ気に入ってくれたのならなによりだ」

 

 

扶桑「~♪ ~♪」ルンルン

 

山城「あんなに機嫌が良い姉様初めて見たわ......」

 

榛名(いいなぁ......きっとアレ、これから毎晩抱いて寝るんだろうなぁ)

 

 

提督「それでは、最後に本大会最高記録の者に最優秀賞を送る」

 

提督「加賀、金剛。前へ」

 

加賀「はい」 金剛「ハイ!」

 

提督「お前達には各々が個人的に希望するものを俺に願い出る権利を与える」

 

提督「無茶な願いでない限り、可能な範囲でそれに応える所存だ」

 

提督「もしもう願いが決まっているのならこの場で言うといい」

 

加賀「はい。決まってます」

 

金剛「ワタシもネ!」

 

提督「そうか。では、聞こう」

 

提督(嫌な予感がするぞ)

 

加賀「私と金剛さんの願いは同じなので、私が代表して言います」

 

提督「分かった」

 

加賀「大佐に私達と結婚して欲しいです。それが願いです」

 

 

会場の全艦娘達「!!!」ザワザワ

 

 

那智「なっ......」

 

Bis「なんですって!?」

 

扶桑「え......」ドサ ←服を落とした

 

龍田「へぇ......」

 

大井「......ぇ」

 

叢雲「ふむ」

 

曙「そ、それはダメよ!」

 

 

提督「......加賀、金剛」

 

加賀・金剛「はい」

 

提督「まず言っておこう。お前たちの純粋な好意は俺も嬉しく思う。これは確かだ」

 

加賀「ありがとうございます」

 

金剛「ハイ!」

 

提督「だが加賀、お前は知っているだろう。ケッコンカッコカリは成長限界に達した者にしか――」

 

加賀「はい。知っています。ですから」

 

金剛「マリッジを前提にワタシ達と恋人になってクダサイ!」

 

提督「む......」

 

 

会場の全艦娘達「!!!!」ザワザワ

 

 

Bis「そ、その手があった!」

 

扶桑「2人とも重婚は認めるってこと......? なら......」

 

那智「私達にも機会は......ある、という事......でいいんだよな」

 

大井「っ......!」ギリギリ

 

叢雲「落ち着きなさいよ」

 

龍田「ふふふふ......」ギラギラ

 

初春「お前もか」

 

比叡「お、姉様ぁ......」ブァ

 

 

提督「......」

 

加賀「それなら叶える事はできますよね?」

 

金剛「プリーズ! お願いヨ!!」

 

提督「2人とも」

 

加賀「はい」 金剛「は、ハイ!」

 

提督「手を......出してくれ。片手でいい」

 

加賀・金剛「......?」ス

 

提督「......」ギュ

 

 

提督(暖かい。これは間違いなく血だ。こいつらにも血が流れているという証拠だ)

 

提督(だが、だというのに本部は、世界は、こいつらが兵器だという。使い潰しても倫理は揺るがないと言う......)

 

提督(俺は、それが我慢ならない理解し切れない。軍人として未熟だから、冷淡になり切れないからかもしれない)

 

提督(だがそうだとしても、これは俺がこいつらを人間として扱わない事を拒否し、嫌悪する明確な意思である事は間違いのない事実だ)

 

提督(なら俺は、その事を答として今認めなければ、こいつらに示さなければ)

 

 

提督「......2人とも」

 

加賀「はい」 金剛「ハイ」

 

提督「悪いが、結婚はしない」

 

加賀「......っ」ジワ

 

金剛「大佐......!」ブァ

 

提督「落ち着け。俺が否定したのは結婚という前提だ」

 

加賀「......つまり?」

 

金剛「どういう......コト?」

 

提督「情けない話だが、この年になってまだ結婚を前提とした付き合いを誰かとしたことがない。だからいきなり言われても俺は困るんだ」

 

加賀「では......?」

 

金剛「困るから嫌ナノ?」

 

提督「嫌ではない。ただ、考えさせてくれ。お前たちと付き合いながら、2人に対する俺の思いが本物になるように」

 

金剛「そ、それじゃぁ!!」パァ

 

提督「恋人にはならないでもない」

 

加賀「......卑怯で情けない答......ですね」グス

 

提督「すまない。だが、これは偽りのない俺の今の本心であり、意思だ」

 

加賀「分かりました。私はその答、受け入れます。今は、ですが」

 

金剛「ワタシもネ!だけどゼーッタイ好きになってもうらんダカラ!」

 

提督「本当にすまないな。ありがとう」

 

提督「では、大会はこれをもって閉会とs――」

 

 

龍驤「ちょーーーっと待ったぁ!」

 

 

榛名「龍驤......さん?」

 

 

龍驤「その理屈やと、大佐はまだ誰にも好意を抱ききれてないちゅうことやな?」

 

提督「まぁ、厳密にはな」

 

金剛「そ、そんなの問題ないネ! だから今から――」

 

加賀「......」

 

龍驤「まぁ、待ちぃな。つまりそれは他にも大佐の事好いてる奴にもチャンスはあるってことやろ?」

 

 

会場の全艦娘達「!!!」ザワッ

 

 

扶桑「やっぱりそうよね!」

 

那智「......うむ!」

 

Bis「そうよね! 私達にもチャンスはあるのよね!」

 

龍田「......ふーん」

 

叢雲「やっと落ち着いたか」

 

 

龍驤「しかも2人同時に告白して、大佐もそれに対して何も反対せんかった辺り重婚は肯定ってことやろ?」

 

提督(今、俺の中で自分の評価が最低最悪になった)

 

提督「龍驤、つまり何が言いたいんだ」

 

龍驤「うちらもこれに乗る。大佐と結婚して本当に大佐のモノになりたいんや!」

 

提督「『うちら』と言ったな。他にもいるか」

 

 

Bis「わ、私やるわよ! お、落としてみせる! ......大佐を」

 

扶桑「私はもういつでもいいんですけど......もう一押し、かな?」

 

筑摩「私も! あ......私も頑張ります!」

 

榛名「は、榛名も......いいんですよね!」

 

 

その他の艦娘達「ワタシモ!ワタシモヨ!」

 

 

龍驤「ちゅーわけで、大佐。うちらもこれからあからさまに粉かけに行くかもしれへんから、覚悟しといてや!」

 

会場の艦娘達「ワァァァァァ」

 

 

金剛「ノオォォォォ! 何よコレ! 一気にライバルが増えチャッタ!?」

 

提督「加賀......」

 

加賀「なんでしょう?」

 

提督「お前の狙いはまさか、本当はこれだったんじゃないのか?」

 

加賀「......どうでしょう?」クス

 

 

叢雲「ねぇ初春」

 

初春「なんじゃ?」

 

叢雲「これでやっと遠慮なくいけるようになったわね」

 

初春「全くじゃ。大佐の奴め、本当に待たせてくれたの」

 

 

提督(全員に言質を取られたに等しいな......)

 

提督(今日は飲もう、一人だ。絶対に一人で飲もう)




お疲れさまでした。
取り敢えずキリがいいのでこれを第一部って事にします。
もうちょっと他の艦娘を登場させたかたですね。
修正するかもしれません。


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メインストーリー(第二章)
第1話 「自由時間①」


水泳大会も終わって最後は自由時間です。
大会に出場した人も出場しなかった人も思い思いに楽しく残り時間を過ごしています。
大佐は色々気づかれしたのか、ずっと寝ています。


青葉「皆さぁぁん! 自由時間をお楽しみのところ申し訳ないですが。ご連絡です!」

 

青葉「大佐より、大会を成功させてくれたお礼兼参加賞という事で皆さんに食べ物の差し入れです!」

 

青葉「かき氷、たこ焼き、焼きそば、『夏に食べたい食べ物』は何でもありますよー!」

 

艦娘達「ワァァァァァ♪」

 

 

叢雲「皆嬉しそうね」

 

提督「ああ、用意した甲斐があった」

 

初春「でも、空母達のフルーツといい、潜水艦達の水着、おまけにこの大量の食べ物といい、どやって用意したんじゃ?」

 

提督「どうもこうもない。俺はここに来てから鎮守府を離れたことが殆どない。支払われる給与もここにいると使う事がないから貯まるだけだったんだ」

 

叢雲「それを今回使ったの?」

 

提督「そういうことだ。これでも出費としては全然痛くない」

 

叢雲「どれだけ無欲なのよ......」

 

初春「おや、早速恋人になりたての者が来たようじゃぞ」

 

 

金剛「大佐ァ!」

 

提督「どうした」

 

金剛「一緒に swim しまショ♪」ズイ

 

加賀「金剛さんズルイですよ。大佐、サンオイルを塗って貰えませんか?」ズイ

 

提督「あっちで、2人で遊んでろ。俺は今疲れて眠いんだ」

 

金剛「Oh そうデシタカ! ならワタシも大佐と一緒に sleep シマス♪」ゴロン、ダキッ

 

提督「金剛、暑い......あと腕を挟むな」

 

金剛「うふふ~、もう知ってる感触じゃないデスカ♪」ムニムニ

 

加賀「大佐、失礼します」ゴロン、ダキッ

 

提督「お前も......足を絡めてくるな」

 

叢雲「凄い光景ね......世の男が見たら間違いなく殺しに来るわよ」

 

初春「その割には大佐はこの世の終わりの様な苦渋に満ちた顔をしておるの」ニヒヒ

 

提督「全く。お前たちは、そこで暫く寝てろ」ムク

 

金剛「ああン、大佐何処行くネ!」

 

加賀「ご一緒します」

 

提督「寝てろと言ったら寝てろ。後でオイルでもなんでも塗ってやるから」

 

金剛「really!? じゃぁ、しょうがありあまセンネ!」ゴロ

 

加賀「お待ちしてますよ?」ゴロ

 

提督「ああ......叢雲、初春頼んだぞ」

 

加賀・金剛「え?」「ワッツ?」

 

叢雲「りょーかい、任せなさい♪二人とも覚悟はいいわね?」ワキワキ

 

初春「妾に任せるがよい。どれ、ひとつ揉んでやろうか♪」ワキワキ

 

金剛「タ、大佐! 騙したネ!?」

 

加賀「油断しました......!」

 

提督「そのうち戻る」ヒラヒラ

 

金剛「あ、あああああ!?」

 

加賀「くぅ、これ......はっ......ぅ!?」

 

 

 

陽炎「あ、大佐だ」

 

雷「大佐! こっちで遊びましょうよ!」

 

提督「お前たち今日はよく頑張ったな」

 

綾波「いえ、そんな。それよりこんなにご馳走をありがとうございます!」

 

霞「ありがたく頂いてるわよ大佐!」フリフリ

 

島風「私、こんなに皆で騒ぐの初めて♪」

 

菊月「暫しの休息だな......チュー」 ←ヤシの実を吸ってる

 

白露「あ! あたしもそれ飲む!」

 

長波「あまり食べ過ぎてお腹壊すなよー」

 

深雪「大佐! 深雪様の活躍見てくれた!?」

 

提督「ああ。ちゃんと見てたぞ」

 

雷「大佐ぁ、遊びましょうよー」グイグイ

 

陽炎「雷、あまり無理言っちゃ駄目よ」

 

提督「悪いな雷。慰問訪問が終わったらまた来るから」

 

雷「約束よ!」

 

白露「え? なに? 雷ちゃん何か大佐と約束したの?」

 

深雪「えー? もうアタックしたの? 早いなぁ」

 

島風「速い? わたしより速いの!?」

 

霞「ちょっと何の話よ!」

 

提督「また後でな」スタスタ

 

 

摩耶「お、大佐じゃん。どうしたんだ?」

 

提督「皆の慰問訪問中だ」

 

加古「律儀だねぇ」

 

筑摩「でも嬉しいですよ♪ あ、大佐。私も頑張りますからね」

 

最上「頑張る?」

 

那智「まぁ......あれだ。私もその、これからは宜しくお願いする......」

 

提督「光栄だが節度は守れよ?俺にも精神的限界はある」

 

摩耶「男だったら限界なんて突破しちまえよ」

 

提督「もう色々限界が来てるような気がするんだがな」

 

筑摩「あ、私肩揉みましょうか?」

 

那智「で、では私はストレッチでも手伝って......」

 

提督「いや、今はいい。また来る」

 

最上「大佐、僕の事も忘れないでよ?」クイクイ

 

提督「忘れてなんかいないさ。じゃぁまた後でな」スタスタ

 

 

 

提督「皆、楽しんでいるか?」

 

矢矧「大佐。ええ、偶にはこういうのも良いわね」

 

川内「あー! 女たらしだ!」

 

提督「否定はしないが。その言葉は非常に不服だ」

 

天龍「ま、結果からしたらだもんな。実際大佐から何かしたわけじゃねーし」

 

提督「天龍......俺は今、お前のその発言を心からありがたく思っているぞ」

 

長良「天龍って、ホント極稀にだけど、良いこと言うよね」

 

天龍「俺はそんなに気が利かないかよ!?」

 

夕張「じゃぁ、その手に持ってるイカ焼きは何よ? それヤハギンのお皿にあったやつじゃない?」

 

矢矧「なに?」サッ

 

天龍「っといけねー。矢矧、まだイカ焼きはあるから勘弁しろよ!」ダッ

 

矢矧「待て天龍! あのイカ焼きは自慢の出来だったんだぞ!」

 

夕張「自分で焼いてたのね......。イカ焼きなんてどれも同じ味なのに」

 

川内「矢矧はああ見えて食い意地張ってるからねー」

 

提督(そういえば、あいつが食事当番の時は一人も食い残しがなかったな。自分以外にも徹底していたのか)

 

提督「さて、そろそろ行くか。お前たち、あまりハメを外し過ぎるなよ」

 

長良「あ、もう行くんですか?」

 

提督「ああ。また後でな」

 

川内「絶対来なさいよー!」フリフリ

 

提督「ああ、またな」スタスタ




何か結構あっさりしてししまいましたね。
尺の関係で②まで続きますが、ちょっと淡々とした流れになるかもです。

仕事の後は眠くていけませんね。
また明日書きます。


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第2話 「自由時間②」

自由時間①の続きですよ


提督「青葉」

 

青葉「あ、大佐! 今日はお疲れ様でした!」

 

提督「いや、それはこちらこそ言うべきだ。ご苦労だったな」

 

青葉「いえいえ! 青葉も今回は楽しませてもらいましたから!」

 

提督「そんなに喋るのが好きか?」

 

青葉「え?」

 

提督「司会役をとても楽しそうにしているように見えたんだが」

 

青葉「あー、んーっと......確かに楽しかったですけど、喋るのが楽しいというよりかは盛り上げるのが楽しかったですね」

 

提督「なるほど。祭りの様な雰囲気そのものが好きみたいだな」

 

青葉「あ! そう、それです! 雰囲気が楽しいと青葉も自然と舌が回っちゃいます♪」

 

提督「そうか。今も楽しそうでなによりだ」

 

青葉「今も? あ、確かにそうですけど......あれ? 青葉今大佐と二人だけなのに言葉がすらすら出てますね」

 

提督「お前のその明るい雰囲気は見ていて活力が湧く。これからもそうであってくれ」

 

青葉「ええ!? そ、そんな恐れ多いお褒めの言葉......きょ、恐縮です!」

 

提督「委縮しなくていい。心からの言葉だ。......よし、そろそろ行くか」

 

青葉「あ、ありが......今何をしてられるんですか?」

 

提督「大会に出た奴らの慰安訪問中だ」

 

青葉「なるほど! 気遣いが行き届いてますね!」

 

提督「提督たる者として然るべき仕事の範疇をこなしているだけだ」

 

青葉「ご立派ですね!」

 

提督「おだてるな。またいつかは分からないが、こういう時があったら頼むぞ」

 

青葉「はい! この青葉にお任せ下さい!」

 

提督「期待している。それじゃまた後でな」スタスタ

 

青葉「あ......行っちゃった。取材の名目で一緒に行けば良かったかなぁ......」

 

 

提督「北上、楽しんでるか?」

 

北上「あ、大佐。うん。満喫してるよ。なになに~? わたしに会いに来てくれたの~?」

 

大井「北上さん目当てですって!? 大佐、あまり下心をさらs」

 

北上「大井っちは黙ってよう♪」ゴス

 

提督(こいつらは相変わらずだな)

 

提督「木曾、お前はどうだ?」

 

木曾「ん? ああ、あまり騒がしいのは好きじゃないけど偶にはこういうのも良いな」

 

提督「そうか。慣れない場かもしれないがこういう時くらいは打ち解けてみるのも良いぞ」

 

木曾「そうか......そうだな。じゃあ大佐、俺の話にちょっとつk」

 

明石「大佐! 今日はありがとうございました!」

 

あき「感謝するであります!」

 

提督「こちらこそお前たちのお蔭で無事成功した。礼を言うのは俺の方だ」

 

明石「そんな! あのどこか壊れてるところはありませんか? 私直しますよ!」

 

提督「体調のことだよな? なら、大丈夫だ今はすこぶる調子が良い」

 

あき「自分にもなにかできることがありましたら!」

 

提督「気遣いは嬉しいが、本当に大丈夫だ。2人ともそんなことはいいから今を楽しめ」

 

明石「はい。でも調子が悪い時は遠慮なく来てくださいね」

 

あき「自分もその時はお手伝いするであります!」

 

提督「ああ。わかった、ありがとう」

 

木曾「......ふん」ブスー

 

北上「膨れない膨れない」クスクス

 

提督「大井」

 

大井「あいたた......え、何よ......ですか?」

 

提督「猫は被らなくていい。お前もよく頑張った。これからもその力を遺憾なく発揮てくれ」

 

大井「何よその言い方......まぁ、ありがとう、ございます」プイ

 

提督「それでは、俺はこれで失礼する」スタスタ

 

北上「また来てね~」

 

大井「......まぁ、それでもいいなら考えてあげ――」ブツブツ

 

北上「大井っち、大佐ならもういないよ?」




まだ3グループ残ってますが、長くなりそうなのでここまでで。
青葉だけちょっと特別扱いしてみました。
一人だけ司会頑張ってたのでこれくらいしても罰は当たらないですよね。


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第3話 「自由時間③」

②の続きです。
このお話はこれで最後ですよ。

しかしこの提督、やってることは間違ってないけど自分から危険地帯に踏み込んでるように見えなくもないですね。


提督「龍驤、楽しんでいるか」

 

龍驤「あ、大佐やん! なんや来るんやったらもっと速く来ぃや」

 

鳳翔「こんにちわ、大佐。今日はありがとうございます」

 

瑞鳳「大佐! これ凄く美味しい!」モグモグ

 

千歳「こら。瑞鳳ちゃん失礼でしょ」

 

飛鷹「小さい癖によく食べるわねー。あ、大佐、今日はお疲れ様」

 

千歳「お疲れ様です。楽しんでますよ♪」

 

瑞鳳「おふか......モグモグ......おつ......かれ様......」カァ

 

提督「そんなに畏まらなくていい。今日は楽んでくれ」

 

龍驤「ほんなら大佐、早速うちのモーション受けてくれる?」

 

提督「内容次第だ」

 

龍驤「うち、まぁ体はちょこーっと貧相かもしれへんけどアレのテk――モガ」

 

千歳「龍驤さーん、ちょっとこっちに来ましょうねー♪」

 

飛鷹「ごめんなさい大佐。こいつちょっとお酒回ってて」

 

提督「気にするな。分かってた」

 

鳳翔「大佐はもしかして今、慰問訪問中という事でしょうか?」

 

提督「そうだ。鳳翔も今日はよく頑張ってくれた。礼を言う」

 

鳳翔「そんな......私なんてあまり活躍できなくて。でも、ありがとうございます♪」

 

瑞鳳「大佐ぁ、瑞鳳も頑張ったのよ!」グイグイ

 

飛鷹「そうね。あんたも龍驤と一緒で『ちっさい』割には頑張ったわよね」ニヤニヤ

 

千歳「『可愛かった』わよ。瑞鳳ちゃん♪」

 

瑞鳳「もう! 2人とも一言余計だよ!」

 

鳳翔「騒がしくてすいません」

 

提督「それだけ活力が溢れているという事だ。だが、もし鳳翔があんな感じだったら俺は流石に動揺するだろうな」

 

鳳翔「まぁ、大佐ったら......騒がしい私は嫌いですか?」

 

提督「俺は今のままがいいな」

 

鳳翔「今のまま......」(ありのままの私......?)

 

提督「鳳翔?」

 

鳳翔「あ、ごめんなさい。ちょっとぼっとしちゃって」アセアセ

 

提督「疲れているなら今日はゆっくり休むように」肩ポン

 

鳳翔「あ、ありがとうございます」カァ

 

飛鷹「あざといわね」ボソ

 

千歳「ちょっと、飛鷹......!」ボソ

 

提督「それでは俺はもう行く」スタスタ

 

千歳「また気軽にどうぞー」フリフリ

 

瑞鳳「モグモグ......あれ? 大ふぁは?」

 

飛鷹「あんたはいつまで食べてるのよ」

 

鳳翔「ふふ、お口拭きましょうね」

 

 

提督「4人とも今日はご苦労だった」

 

蒼龍「あ、大佐。フルーツありがとう!」

 

飛龍「いやぁ、頑張った甲斐がありました!」

 

翔鶴「ふふ、そうね。まさか、最後にこんな素敵な贈り物まであるなんて、感謝です♪」

 

瑞鶴「悪くない気分よ、大佐♪」

 

提督「そうか。それは何よりだ」

 

蒼龍「それより大佐ぁ」ズイ

 

飛龍「私達の水着姿、どうでした?」

 

提督「ん?......きれいだった......ぞ?」

 

瑞鶴「なんでそこで疑問形なのよ!」

 

提督「すまん。ああいうのは褒め慣れてないんだ」

 

蒼龍「もう、駄目じゃん大佐! そういう時は」

 

飛龍「ひどく官能的で興奮した、くらい言ってもいいんですよ?」

 

瑞鶴「いや、それ真正面から言われたらドン引きだから」

 

提督「興奮はした、んだろうな。見てて心が洗われるような気持だった」

 

瑞鶴「なんか微妙な言い回しね。適当じゃない気がするけど」

 

翔鶴(大佐、私の水着を見て興奮したりしたのかな......)

 

飛龍「あはは。大佐らしいですね」

 

蒼龍「大佐、私達の水着姿を見たい時はいつでも言ってね♪なんて」

 

提督「まぁ、それなりに俺も楽しめたのは確かだ。皆、今日は楽しんでくれ」

 

翔鶴「ありがとうございます」

 

提督「ああ、翔鶴。お前も良かったぞ水着」

 

翔鶴「ええ!? あ、ありがとう......ございます」カァ

 

瑞鶴(自然にスケコマシてきたわね。普段からこういう気遣いできたらいいのに)

 

提督「それでは俺はもう行く」

 

蒼龍「えー、もっといればいいじゃん」

 

瑞鶴「慰安訪問ってやつでしょ。大佐も大変ね」

 

提督「好きでやってる事だ。別に負担とは思ってない。じゃぁな」

 

飛龍「また後でどうぞー」

 

翔鶴「水着......良かった......えへへ♪」テレテレ

 

蒼龍「翔鶴ネーサーン戻って来なよー」

 

 

提督「イムヤ」

 

イムヤ「あ、大佐。様子見に来てくれたの?」トテテ

 

イク「あ、大佐。お疲れ様なのー♪」プカプカ

 

ゴーヤ「お疲れさまでち大佐」モグモグ

 

ハチ「ご馳走頂いてますよ。ありがとうございます」スイー

 

まるゆ「まるゆ、こんなにたくさんの食べ物見たの初めてです!」

 

提督「楽しんでもらっているみたいだな」

 

イク「うふふー、食べ物もぉ、あんなに良い水着まで貰っちゃってぇ、イクもう何もいう事ないの。満足なの♪」

 

ゴーヤ「新しい水着早く着てみたいわね♪」

 

提督「そうか? まぁ、俺はお前たちが今来ている水着も普段とは違うから見応えがあって良いと思うが」

 

イムヤ「えっ」

 

ハチ「まぁ、大佐なかなか良いこと言いますね。はっちゃん、ちょっと大佐の事見直しました♪」

 

まるゆ「ま、まるゆ達の水着が大佐に気に入って......わ、わぁっ。う、嬉しいけど恥ずかしいです!」

 

提督(気に入った、までは言ってないんだがな)

 

イムヤ「もう、大佐。あんな出来事の後にナンパとかやめてよね!か、勘違いしちゃうかもしれないじゃない!」カァ

 

提督「ナンパ......」

 

ゴーヤ「あ、大佐が固まった」

 

ハチ「相変わらず硬派な人ですね。でもそこが素敵だと思います♪」

 

イク「大佐は凄くカッコ良くて優しいの! イク大佐の事大好きなの!」

 

まるゆ「ま、まるゆも大佐の事......好きです!」

 

イムヤ「あなた達あまり騒がないの! ほら大佐、しっかりしてよ」

 

提督「イムヤ......すまない。来て早々で悪いがちょっと別のところに行ってくる」スタスタ

 

ハチ「大佐大丈夫かしら?」

 

イムヤ(もう、本当に相変わらずなんだから......。結婚の話、頑張れば私も候補に入れるのかな......)

 

 

伊勢「あ、大佐じゃない! わたし達と遊びに......って、大丈夫? なんか何時にも増して眉間に皺よってるけど」

 

提督「ああ、大丈夫だ。ちょっと......な」

 

長門(また自分で墓穴を掘ったな)

 

長門「ま、取り敢えずせっかく来てくれたのだからゆっくりして行ってくれ」

 

Bis「大佐! 遅いじゃない! 私待っていたのよ!」ギュー

 

扶桑「大佐。私もお待ちしておりました。寂しかったです」ギュッ

 

伊勢(えっ何この状況)

 

提督「む......。お前たち離れろ」

 

長門(今まで放心していたのか!)

 

Bis「嫌よ!大佐、私も恋人にして!」

 

扶桑「私......愛人でも構いませんよ?」

 

伊勢(あー! 料理の件でリードしたと得意げになっていた頃が懐かしい!)泣

 

長門「2人ともがっつき過ぎだ。大佐が困っている......だろう」チラチラ

 

提督(注意しながら前かがみになって......胸を見せているのか?)

 

伊勢「な、長門? あなたも、なの......?」

 

長門「いやまぁその......私だって少しくらい、試してみてもよかろう?」

 

Bis「ダメよ! 大佐は私のなの!」

 

扶桑「扶桑さん独占が過ぎるのは見苦しいわよ!」

 

伊勢(マリアはマリアで焦りが表に出て自制が効かなくなっているわね)

 

提督(此処に来たのは間違いだったか)クタ

 

伊勢「あれ? 大佐?」

 

長門「疲れてたんだな。お前たち今日は開放してやれ」

 

Bis「膝枕をするわ。それならここでも休めるでしょ」

 

伊勢(あ、いいかも。それ)

 

扶桑「名案ですね。マリアさん交代よ......?」

 

Bis「仕方ないわね。大佐には嫌われたくないしね......」

 

長門「そう、それでいい。勿論私にも順番は回ってくるんだろうな?」

 

伊勢「ちょ、ちょっとわたしもなんだからね!」

 

 

叢雲「何かあっちが騒がしいけど」

 

初春「ま、問題なかろう。大佐も力尽きたみたいだし、の」

 

叢雲「多少危なっかしいのがいる気がするけど、長門と伊勢がいるなら安心......できるわよね?」

 

初春「そこは2人を信じねばならんな。それより......」

 

加賀・金剛「 」グテー

 

初春「少々ヤりすぎたか、の?」

 

叢雲「勘違いされそうな言い方しないでよ。2人が敏感過ぎただけよ」

 

初春「ふむ。しかし、肩と腰でここまで為るとは......これは、夜のアレなどはまだ心配する必要はなさそうじゃの」クスリ

 

叢雲「白昼堂々そんなこと言わないでよ。ま、ちょっとは安心かな」フゥ




登場人物が多いとやっぱり長いですね。
もうちょっと上手く分けれれば良かったのですが。
でも、やっぱり大会の描写と比べたら非常に書き易かったです。
これにて章を跨いで実に22話に渡って続いた水泳大会の話は終わりです。
次からはまたあっさり短編ですよ。


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第4話 「晩酌2」

お疲れの提督は久しぶりの一人晩酌で気分転換をしていました。
扉の前には就寝中の札を掛けているので火急の様でもない限り誰も来ないはずです。
ですが、その予想は意外にああさり崩れました。


コンコン

 

提督(札は確かに掛けた。その上でこの時間にノックをしてくる奴といえば......)

 

提督「......足柄か?」

 

足柄「っ、そ、そうです......よ」

 

提督「いいぞ。入れ」

 

ガチャ

 

戸惑いがちに半開きになったドアの隙間からどこか申し訳なさそうな顔をした足柄の顔が除いた。

 

足柄「入っていいの?」ヒョコ

 

提督「いいと言ったろ? 入れ」

 

足柄「う、うん......失礼......します」

 

提督「......」

 

足柄「あの......」

 

提督「うん?」

 

足柄「よく、わたしって判ったわね」

 

提督「俺が晩酌してると思ったんだろう?」

 

足柄「でも、疲れているのに......」

 

提督「そう。疲れている事に対して配慮ができて、かつ晩酌の事も分かっている奴といえばお前くらいだからな」

 

足柄「ごめん。迷惑だった?」

 

上目づかいですまなさそうにで聞いてくる足柄の顔は普段より幼く見えた。

 

提督「いや、まぁお前なら別にいい」(足柄もこういう顔をするんだな)

 

足柄「で、でもこの前の晩酌の時は迷惑かけちゃったじゃない」

 

提督「あの時はお前に合わない洋酒を勧めた俺にも非がある」

 

足柄「でも、気を利かせくれた......」

 

提督「もうしないとは言わない。今度は加減をして飲めば問題ないだろう?」

 

足柄「あ、うん......そうね。気を付けるわ」

 

提督「それでいい。もうしない、と責任を背負い込むような答よりかは力を抜いた良い答だ」

 

足柄「あ、ありがと......」

 

提督「どうした? 普段と比べて元気がないな」

 

足柄「大佐が疲れてると思って、その......」

 

提督「そうやって気を遣ってくれるだけで、気分はそれほど悪くはならないものだ。だからもう遠慮するな」

 

足柄「いいの?」

 

提督「いつものお前がいい。ほら、やりに来たんだろ?」ス

 

提督はそう言うと、氷を入れた空のグラスに焼酎を注いで足柄の前に出した。

 

提督「ほら、飲め」

 

足柄「あ、ありが......ううん。ありがとう。頂くわ」

 

提督「それでいい」

 

足柄「んく......ふぅ」

 

提督「美味いか?」

 

足柄「少し薄いけど、雰囲気で味って結構変わるのね。今はこれが凄く美味しく感じるわ」

 

提督「はは。足柄もようやく本当の意味でお酒が呑めるようになってきたか」

 

足柄「何よ。まるで自分の方が上手く飲めるような言い方ね」

 

提督「そうは言わないが、少なくとも前のお前と比べてなら上手い自信はあるな」

 

足柄「もう、その話はよして......恥ずかしいんだから」

 

提督「はは。悪い。......ごく......ふぅ、それで?」

 

足柄「え?」

 

提督「此処に来た目的は晩酌以外にもあるんだろう?」

 

足柄「それは......」

 

提督「まぁ、話し難いならいい」

 

足柄「あ、いえ。言うわ。今日のあの......ケッコンカッコカリの事よ」

 

提督「ああ」

 

足柄「あれってさ、誰でも大佐に好意を寄せて......伝えてもいいの?」

 

提督「状況はどうあれ公言したようなものだからな。今更否定する気はない」

 

提督「勿論、結果的に1人のみを選ぶ可能性もあるが」

 

足柄「そ、それでも好きになるのは、伝えるのは自由よね?」

 

足柄「少なくとも今の時点ではそうよね?」

 

身を乗り出してそう聞いてくる足柄は少し必死そうな表情に見えた。

 

提督「落ち着け。ああ、そうだ。そこまで制限できるものではないし、するつもりもない」

 

足柄「そ、そう......なら......」

 

足柄「わたしも大佐の事好きって言っていい? 結婚してほしいって言ってもいい?」

 

提督(やはりか)

 

提督「......全く今日は、男冥利に尽きるというやつか。艦娘とはいえ、異性にこうも好意を持たれる日が来るなんてな」

 

足柄「話をはぐらかさないで!」

 

提督「落ち着けと言ったろ。そんなつもりはない。俺自身今の状況に戸惑っているんだ」

 

足柄「あ......ごめんなさい。また迷惑掛けちゃって」ガタッ

 

酒が入ったせいだろうか、振られたと勘違いした足柄は早々に席を立って部屋を出ようとした。

 

提督「待て。何回落ち着けと言わせるつもりだ」ガシッ

 

足柄「だって......!」 提督「受ける」

 

足柄「え?」

 

提督「お前の申し出を受ける」

 

足柄「ほ、本当? ......う、嘘じゃないわよね」

 

提督「そんな質の悪い嘘をつくほど俺は性格は悪くない」

 

足柄「う、嬉しい......ひっく......ぐす」ボロボロ

 

提督「だが、さっきも言ったが結果は――」

 

足柄「分かってるわ。でも今はきちんと気持ちが伝わった事が嬉しいの」

 

提督「......そうか」

 

足柄「ねぇ」

 

提督「ん?」

 

足柄「抱いて」

 

提督「言葉通りの意味ではないな?」

 

足柄「流石にそんな卑怯な事はしないわ。ただ、抱いてくれるだけでいいの」

 

足柄「嬉しいから......その気持ちを今だけ確かめさせて」

 

提督「分かった。ここに座れ」

 

提督は軽く自分の膝を叩くと、足柄を横に座らせて頭を胸に預けさせた。

 

足柄「ありがとう......凄く落ち着く......嬉しい」

 

提督「そうか。今日はこのまま寝ろ。後で妙高に部屋に運ばせるから」ナデ

 

足柄「ん......姉さんに迷惑けちゃって悪いけど......今日はそうさせてもうらわ......」

 

 

数時間後

 

足柄「スー......スー...」

 

提督(前と同じ年頃の、いやもっと幼く見える顔だな)ポンポン




足柄さん絡みだと力が入ってしまいますね。

今度は早めに妙高さんに伝えていたので問題なく部屋に返せたらしいです。
妙高さんは少し恨めしそうな顔で、「次は私もやってみようかしら」と思ったと思わなかったとか。


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第5話 「異議」(挿絵あり)

執務中の提督を比叡が突然訪ねてきました。
何時になく凄い剣幕です。
提督に何か言いたい様子でしたが、それ以前に彼女は自分が何をしたのかを知ることになります。


バン!

朝からノックもなしに提督の執務室の扉を手荒に開けてくる者がいた。

 

比叡「大佐! ちょっと、あ......え、いいで......しょう......か?」

 

勢いよく入って来たものの、比叡は直ぐに言葉の勢いを失った。

何故なら目の前いるその日の秘書艦が鎮守府の中でも最古参と言われる叢雲だったからだ。

 

【挿絵表示】

 

提督「......」

 

叢雲「......」

 

叢雲「比叡さん?」

 

叢雲はあくまで丁寧な口調で失礼を働いた比叡に質問してきた。

駆逐艦とは思えないその威圧感と威厳は、比叡と彼女とのレベルの差など全く関係ないものに思わせるのに十分なものがあった。

 

比叡「は、はい!」

 

緊張した声で返事をする比叡。

 

叢雲「貴女、今自分が何をしたかお分かりかしら?」

 

比叡「は、はい......」

 

叢雲「言ってみなさいな」

 

比叡「大佐が部屋に居る時に無断で部屋に入りました......」

 

叢雲「それだけ?」

 

叢雲の語気が僅かに強くなった。

どうやらその答えだけでは不十分らしい。

比叡はそれ以上不興を買わないよに自分の行動をひとつひとつ思い出しながら答える事にした。

 

比叡「た、大佐の執務を邪魔しました......」

 

叢雲「どうやって?」

 

比叡「む、無断で......大きな音を立てて......」

 

叢雲「そうね。よく分かってるじゃない」

 

比叡「すいませんでした......」

 

叢雲は比叡の謝罪には反応をせず、提督の方を振り向いてある提案をしてきた。

 

叢雲「大佐?」クル

 

提督「ん」

 

叢雲「軍規に伴う風紀と礼節の違反として罰則、運動150を提案するわ」

 

比叡「ひゃ、150......!」

 

罰の内容が余程キツイのか、叢雲の言葉を聞いただけで比叡は青ざめた。

 

提督「今回は初めてのはずだ。100に負けてやれ」

 

叢雲「甘いわねぇ」

 

提督「指導役に皐月、長月、菊月を付けてグラウンド100週だ」

 

叢雲(あ、結構キツイかも)

 

比叡「く、駆逐艦と一緒にですか!?」

 

叢雲「せっかく大佐が100週に負けてくれたんだから頑張りなさい?」

 

叢雲はそれ以上異議を唱える事は許さないとばかりに満面の笑顔を比叡に向けた。

その顔は確かに表面上は笑っていたが、明らかに心は笑ってはいなかった。

 

比叡「は、はいぃぃぃ」

 

背筋を走る恐怖に悲鳴交じりの返事で反応する比叡。

 

提督「今日は平和だな......」ズズ

 

提督はそんな二人のやり取りを聞きながら、窓か差す陽光に目を細めてそんな事を言った。

 

――数時間後

 

比叡「ゼェー......ゼェェ......ヒィ......ハー......」

 

ノルマを達成した比叡は汗だくで執務室に戻って来た。

 

叢雲「お疲れ様。はい、水」

 

叢雲もあれ以上は何も言わず、比叡の労を労いながら水を差し出した。

 

比叡「...っ! ゴクゴクゴク......ぷはぁ!」

 

 

提督「それで、どうした?」

 

ようやく落ち着いたところで提督が比叡に話し掛ける。

 

比叡「ふー......ん......その前に、先ほどは失礼しました」

 

提督「ああ」

 

比叡「お尋ねした要件はお姉様の事でして」

 

提督「あの時の宣言の事か」

 

比叡「はい」

 

叢雲「姉を取られたくなくて異議を唱えに来た、と言うところかしら」

 

叢雲はあっさりと比叡が訪ねて来た理由の核心を突いた。

 

比叡「その通りです」

 

それに対して比叡も誤魔化したりはせず、素直に認めた。

 

【挿絵表示】

 

提督「ふむ......比叡」

 

提督は少し考えるように口元に手を置いた後、やがてゆっくり諭すような口調で比叡に話し始めた。

 

比叡「はい」

 

提督「お前が姉想いの良い奴だというのは分かる。だがな」

 

提督「お前は、お前の意思だけで姉の意思を妨げるのか?」

 

比叡「それは......」

 

提督の言葉に痛いところを突かれたとばかりに、表情を少し歪ませる比叡。

 

提督「こんな言い方は卑怯に感じるかもしれないが、あくまで告白してきたのは金剛であり、あいつの意思だ」

 

提督「それを知りながら俺に諦めるように持ちかけるのは、姉の思いを無視している事と同じ事だとは思わなかったのか?」

 

比叡「思います......改めて頭を冷やして考えると身勝手でした」

 

自分の行動の軽率さを痛感し、素直に反省の色を見せる比叡だったが、そんな彼女に叢雲次の言葉が重くのしかかった。

 

叢雲「危うく金剛さんに嫌われるところだったかもしれないわね」

 

比叡「......っ!」ジワ

 

提督「叢雲、もういい」

 

叢雲「口が過ぎたわ。ごめんなさい」

 

叢雲も口が過ぎたと思ったのか、目を伏せて二人に謝った。

 

比叡「大佐......わたし、お姉様が本当に大好きで......ぐす」

 

自分の間違いは認めたものの、それでも姉を慕う気持ちは止められず、やがてその感情が涙となって比叡の目から流れ出た。

 

比叡「でも大佐と恋人になっちゃうと......ひぐ......じ、自分から離れていってしまうみたいに思えて......」グシグシ

 

提督「ああ」

 

比叡「だ、だから何とか大佐にお姉様を諦めさせて......ダメなら自分が身代わりになろうと思って......」

 

提督(身代わりとまで言われると、何か自分が畜生のように思えてくるな。いや、実はそうなんじゃないのか?)

 

提督は比叡の悪気のないその言葉に密かに心を痛めるのを通り過ぎて、自分を責めた。

 

ポン

 

叢雲「しっかりしなさい」ボソ

 

そんな提督の機微を感じ取ったのか、自信を持てという風に叢雲が優しく肩を叩く。

 

提督「ありがとう」

 

比叡「え?」

 

予想外の言葉に驚いた眼で提督を比叡は見た。

 

提督「ん? いや、そうか......身代わりになってまで姉を取られま......いや、守ろうとしたんだな」

 

比叡「うん......」コク

 

提督「比叡、さっきも言ったがこれは金剛の個人の事だ」

 

提督「だからあいつ自身に今の状況を否定する考えがない限りこれを問題とすること自体が問題だ。分かるな?」

 

比叡「はい。でも......」

 

提督「比叡、お前は俺が嫌いか?」

 

比叡「べ、別に嫌ってなんか! ただお姉様の事となるとつい頭が......」

 

慌てて比叡は否定した。

そう、姉の事さえ絡まなければ比叡は提督に悪い印象など持っていなかった。

寧ろ口には出さないが頼りになって優しい男性だと密かに思っていた。

 

提督「そうか。比叡、お前は優しい子だな」

 

比叡「や、優しい......子、だなんて......」アセアセ

 

責めていた筈の提督から不意に褒められて、恥ずかしさ半分と言った様子で慌てる動揺する比叡。

だが、そんな彼女の動揺は提督の次の言葉で全く違う反応を見せる事になった。

 

提督「その優しさを少しだけ俺にも分けてくれないか」

 

比叡「え」ドキ

 

叢雲(あら? 流れが)

 

提督「俺を信用してほしい。決して金剛を傷つけるような事はしない」

 

比叡「そ、それってやっぱりお姉様と結婚......」

 

提督「それはまだ分からんが、例えそうならなかったとしても俺は金剛を、お前たちを傷つけるような事はしない」

 

提督「まずは、それを信用してはくれないか」

 

比叡「でももし、結婚を断ったりなんかしたら......それこそ、お姉様は傷ついてしまいますよ」

 

提督「それは必然だな。流石に俺にはどうしようもない。だからこそ、そういう時はお前が必要だと俺は思う」

 

比叡「凄く、ズルイ言い方ですね」

 

提督「俺は自分の心を偽ってまで自分を慕ってくれる相手と付き合う性根はないからな。その時はあらゆる非難を甘んじて受ける覚悟だ」

 

比叡「大佐......」

 

提督「悪いな。俺はこういう人間なんだ」

 

比叡「ううん。分かりました大佐。わたし、大佐、貴方を信用します」

 

提督「そうか、ありが――」 比叡「だからわたしとも付き合ってください!」

 

突然の言葉に固まる提督。

 

提督「......ん?」

 

叢雲(まぁ何となく流れで予想はしてたけど、相変わらず外堀を埋めるつもりで墓穴を掘るのが上手いわね)

 

呆れた様な可笑しい様な、そんな微妙な表情で叢雲は苦笑交じりに溜め息を吐いた。

 

提督「比叡、一応訊くが何故そうなる?」

 

比叡「大佐の話を聞いてる内に、お姉様がどうしてそこまで大佐に好きなのか興味が湧いてきまして!」

 

提督「なら、興味止まりでいいだろう。付き合うまでは必要――」

 

提督は暴走(提督の目にはそう見えた)する比叡を何とか宥めようと説得を試みたが、そんなつもりで発しようとした彼の言葉は、比叡の更なる予想外の行動で遮られた。

 

チュッ

 

叢雲「 」(なっ)

 

その展開は流石に予想外だったのか叢雲も驚いた顔をした。

 

比叡「ん......ふぅ。こ、これでわたしが一番リードしたことになりますね!」カオマッカ

 

比叡「あ、勿論これはお姉様には内緒にしておいて下さいね! これを理由に諦めてくれてもいいですけどね! それじゃ、失礼しました!」

 

 

バタン

 

提督「......叢雲」

 

二人だけになった部屋で提督が静かに叢雲に声を掛ける。

 

叢雲「何?」

 

提督「金庫の鍵を」

 

叢雲「金庫? 金庫ってあの銃が入って......いや、何する気よ?」

 

提督「そうか。鍵はあそこだったな」フラ

 

叢雲の言葉が届いていないのか、憑き物であるような足取りでゆらりと立ち上がった提督に叢雲は直ぐに不安を覚えた。

 

叢雲「ちょ、大佐!? だ、誰か来て! 初春と戦艦も呼んできて!」

 

提督「俺はやはり畜生だったようだ」

 

叢雲「やめなさいって!は、早く誰かー!」

 

ここに来て初めてではないかという叢雲の悲鳴がその日、鎮守府中に響き渡った。




提督は意外にメンタル弱いですね。

あーというか、強引だったですね流れ。
比叡ファンの方すいません。


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第6話 「感情」

一時混乱した提督ですが、今は落ち着きを取り戻して食事を摂っています。
この時は執務室で食事をしており、傍らには叢雲と、彼女に呼ばれた初春も一緒にいました。


叢雲「全くしっかりしないさよ。あれくらいで動揺しちゃってさ」

 

初春「ふふ。なかなかに見応えのある事態じゃったな」

 

叢雲「他人事のように言わないでよ。ホント焦ったわ」

 

提督「すまない。久しぶりに自分を見失った」

 

叢雲「気を付けてよね。古参だからってあまり出張りたくないのよ」

 

初春「うむ。被褐懐玉というやつじゃな」

 

叢雲「失礼ね。私は普段も普通よ」

 

提督「ふぅ......」ギシ

 

叢雲「あ......疲れてるのに悪かったわね」

 

提督「ん? ああ、いい。気にするな。それよりお前たちに訊きたい事があるんだが」

 

初春「なんじゃ?」

 

提督「お前たち艦娘の提督に対する愛情についてだ」

 

叢雲「ああ、その事」

 

初春「ま、大佐なら気になって当然じゃな」

 

提督「分かる範囲でいい。教えてくれ」

 

提督「いくら提督とは言え、ここまで無条件に好かれるものなのか? 鎮守府にいる男が俺一人だからとかそういう理由じゃないのか?」

 

叢雲「まず、無条件っていうのは大佐本人にもちょっとは考えて欲しいわね」

 

初春「そうじゃな。大佐、お主無自覚のようじゃが結構、妾たちに好かれるような事をしてるのじゃぞ? 今回が良い例じゃ」

 

提督「だとしてもあまりに予想外の事が続けて起きるのは勘弁してほしいものだが」

 

叢雲「そうね......じゃぁ何から話そうかしら」

 

初春「艦娘と人間との違いからでよかろう」

 

叢雲「分かったわ。じゃぁ大佐、大佐が思いつく限り人間と私達との違いを挙げてみて」

 

提督「ふむ......。身体能力、深海棲艦に干渉できる力、あとは......最初から成長した姿をしている事くらいか」

 

叢雲「そうね。大体そんな感じかしら」

 

初春「では大佐、その中で一番今のお主の質問の根底に近いものはなんだと思うかの?」

 

提督「成長した姿......か」

 

叢雲「正解。私達は人間と違って最初からある程度成長した姿をしているわ」

 

初春「おまけに生まれながらにして提督の下で問題なく働けるように最低限の知識まで与えられておる」

 

提督「生まれながらにして優れた力と知性を持ち、姿も成長してるとはまるで......」

 

叢雲「そうね。ある意味完成された、完璧なモノであると言っていいと思うわ」

 

初春「しかしのそんな完璧な妾達であるが、一つだけ生まれたて時には未熟な所があるのじゃ。それが何かわかるかの?」

 

提督「......心だ」

 

叢雲「流石大佐ね。そう。心だけは人間と同じで経験を積まないと育まれない。だから人間と一緒に経験を積む必要がある」

 

初春「妾達の場合、その人間とは最も身近にいる提督となるわけじゃ」

 

提督「だから好かれ易いと?」

 

叢雲「答を焦らないでよ。まぁ、当たらずとも遠からずと言ったところね」

 

初春「妾達はな大佐、提督と一緒に過ごす事によって経験を積み心を育む」

 

叢雲「そしてそれと同時に提督との信頼関係を構築し理解する」

 

初春「重要なのは、信頼関係が出来た瞬間じゃな。どうやら妾達艦娘はその信頼関係が提督への好意に繋がり易い仕組みになっているらしい」

 

叢雲「強い信頼関係で結ばれ、優れた戦果を挙げる艦隊は、それだけそこの提督が艦娘達に慕われいる証拠と言えるわけね」

 

提督「仕組み......か。何やら作為的なものを感じるな」

 

初春「まぁ十中八九、提督が艦隊を運用し易くするために仕組まれたナニカじゃろうな」

 

提督「お前たちはそれを自覚しつつも俺に、提督に付き従うのか?」

 

叢雲「他の艦隊の子の事はよく分からないけど、私は取り敢えずそれを自覚した時点で確かめたわ」

 

提督「確かめた? 何を?」

 

叢雲「大佐、貴方への愛情を、よ」

 

提督「......」

 

初春「右に同じく。妾もこの気持ちが偽りかどうか確認した」

 

提督「因みに訊くが、どうやってだ?」

 

叢雲「貴方、ずっとその事を疑問に感じて私達に対して壁を作ってたでしょ?」

 

初春「妾達はそれが不思議じゃった。何故兵器である妾達をもっと容易く扱わないのか」

 

叢雲「そんな姿をずっと見ている内にね、貴方が私達の事を心では悩みながらも大事にしていてくれてる事に気付いたの」

 

初春「その時にな。仕組まれた感情とは別に純粋に其方を愛おしく感じるようになったのじゃ」

 

叢雲「自我に目覚めるってやつかしら」

 

提督「......それすらも仕組まれたモノだと疑ったりはしないのか?」

 

叢雲「......大佐、見て」

 

叢雲はそう言って静かに提督に近寄り、胸元を少し広げて見せた。

そこには小さな傷痕があった。

 

提督(入渠すれば、どんな傷でも完治するはずの艦娘に傷痕が......)

 

叢雲「自我に目覚めた時にね、この辺りに何か違和感を感じたの。まるでその感情を否定するようなナニカを」

 

初春「試しに抉ってみたら小さなチップが出てきおった。恐らくこれで感情をある程度制御しておったのじゃな」

 

叢雲「チップが入っていた部分は治癒能力を司る組織に少し重なっていたみたいで、これを取り出したらその部分だけは完全に治癒しないでこうやって痕が残ったわ」

 

初春「因みにここの艦娘は全てそのチップを外してある」

 

提督「なに?」

 

叢雲「艦娘が生まれて目覚める前に全部私達が取り除いているのよ」

 

初春「因みにその事を知っているのはここにいる3人だけじゃ」

 

叢雲「何れは皆に話すつもりだけど、どいう風に打ち明けるかは全部大佐に任せるわ」

 

提督「......他の奴らが傷痕に気付いてないのは?」

 

叢雲「証拠は残さないわ。私と初春の後は全てその組織を傷つけないように細心の注意を払うようにしたから」

 

初春「当然じゃな」

 

提督「......全く、お前たちは......」

 

叢雲「あの......ごめんね。黙ってて」

 

初春「これがどれだけ重大な事かは妾達も理解しておる......しかしそれでも妾達は其方へのこの気持ちが偽りでないと信じたかったのじゃ......」

 

提督「......2人とも」

 

叢雲・初春「はい」ビクッ

 

提督「よく打ち明けてくれた。これで俺の疑問は晴れた。もうお前たちからの愛情は疑わない」

 

提督「平然としているが、打ち明ける時は不安で仕方なかっただろう。だが、もういい。我慢するな」

 

叢雲「馬鹿......そういう言葉って卑怯よ......涙が止まら......ないわ」ウル

 

初春「らしくもない......妾も止まらぬ......」グス

 

提督「2人とも、来い」

 

提督はそういうと2人に向かって腕を広げた。

叢雲と初春は堰を切ったかのように泣きながら提督の腕に飛び込んだ。

そんな2人を提督は、我が子の様に抱きしめた。

 

叢雲「ねぇ......分かってると思うけど私達の事も......」

 

初春「恋人として......受け入れてくれるかの?」

 

提督「お前たちとは特に長い付き合いだったのに待たせてしまってすまなかった」

 

提督「快諾だ、勿論」

 

叢雲「っ......大佐ぁ!」ギュ

 

初春「大事にしてたもれ」ギュ

 

 

――数分後

 

提督「もう、いいだろう? さぁ、離れて仕事の続きだ」

 

叢雲「ねぇ......もうヤっちゃわない? 私はいいわよ?」

 

初春「いきなり3人でか? 贅沢、もとい淫乱じゃのお♪」

 

提督「馬鹿者共が。さぁ、さっさと日常に戻れ」ポカカ

 

叢雲「痛っ。もう、雰囲気台無しよ」

 

初春「大佐はほんに律儀じゃの。結婚するまではお預けというやつかえ?」

 

提督「お前たちはチップを外しのは間違いだったかもしれんな。もう少し倫理というものを学べ」

 

初春「なるほど、そういう使い道もあったか」

 

叢雲「チップを外した私達が淫乱になったって言いたいの?」

 

提督「そうやって自問自答できるならまだ救いはあるな。さぁ仕事だ」

 

叢雲「それ褒めてるの?......ふぅ、仕方ないわね」(絶対、落として見せるわ!)

 

初春「ふふ、今日は特別に妾も手伝ってやろうかの」(落とし難いほど攻め甲斐があるというものじゃ)




ちょっとシリアスでしたかね。
提督はリアルスケコマシにランクアップしそうです。
個人的に考えた艦娘の設定の根幹の一部です。
賛否両論は勿論当然ですよ!

回を追うごとに文字の平均数が多くなっていますね。
もう少し減らすようにしないと。


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第7話 「ゆとり」

提督は釣りをよくしますが、時に何もせず、ただ寝て空を眺めてるだけの時もあります。
娯楽が極端に少くなくても、物欲がない提督はこれでも十分リラックスできます。
おまけに煙草も吸ってるので文句なしです。


雷「あー、大佐タバコ吸ってるー」

 

提督「ん?」

 

名取「あ、ホントだ......大佐ってタバコ吸うんですね」

 

雷「だめじゃない。なんか不良っぽいわよ」

 

提督「お前たち、俺の事を真面目な堅物だと勘違いしてないか?」

 

名取「え? 大佐は真面目な人ですよ?」

 

雷「いつも規則は守るように言ってるじゃない」

 

提督「軍人なんだから規則を守るのは当然だ。俺が言ってるのはな、心にゆとりがあるかどうかという事だ」

 

雷「ゆとりがあるからタバコを吸ってるっていうの?」

 

提督「いや、これは単純に好きなだけだ」

 

雷「ゆとり関係ないじゃない!」

 

名取「タバコを吸ってた大佐、何だか目も半目になってて怖かったです......」

 

提督「まぁ待て2人とも。日がな一日というわけにはいかないが、偶にこうして日光を浴びながら空を見ると気持ちいいだろう?」

 

雷「それは、分からないでもないわ」

 

名取「私もポカポカは好きです」

 

提督「だろう? 俺はそういう時についでに煙草を吸うともっとリラックスできるんだ」

 

雷「その満喫してる状態をゆとりって言いたいのね」

 

提督「そうだ」

 

名取「でも目......」

 

提督「あれは気分が良くて眠気に誘われていたんだ。名取、お前だって日に当たってれば気持ち良くて眠くなるだろう?」

 

名取「あ、はい。眠くなっちゃいますよね」

 

提督「リラックスの仕方は人それぞれだが、こうやって過ごす事ができるゆとりが有るか無いかでその日の気分は大分違うものだ」

 

雷「ふーん......分かったわ」

 

名取「私も分かりました。あと怖いとか言ってしまって、ごめんなさい」

 

提督「いや、気にしなくていい。こうやってお前たちと取り留めない会話をするのもリラックスであり、ゆとりある行為だ」

 

雷「でも、やっぱりタバコはいけないわね! 雷知ってるんだから! タバコを吸うと早く死んじゃうのよ!」

 

名取「ええ!? た、大佐し、死んじゃうんですか!? ダメです! 死なないでください!」ジワ

 

提督「おい雷、滅多な事言うもんじゃない。確かに体には良い影響はないが、これはこれで精神に作用する効果が――」

 

名取「ダメですぅ!」バッ

 

雷「あ」

 

提督「む」

 

名取「う......ぐす......大佐、こんなの吸わないで下さい。私、大佐ともっと長く一緒に居たいです......」

 

提督(雷......)ジロリ

 

雷(ええ!? い、雷の所為だっていうの!?)ビクッ

 

提督「分かった。分かったからもう泣くな」

 

名取「ぐす......もう、吸わないですか?」

 

提督「......努力はする」

 

名取「......そんな、やっぱり吸う――」

 

提督「待て泣くな。今までずっと使っていたものを急には止められないだろ?」

 

名取「でも、死んじゃ......」

 

提督「少しずつ吸う数は減らしていく。それだけでも体に与える影響は違ってくる」

 

名取「絶対に吸わなくなります......?」

 

提督「約束だ」

 

名取「分かりました......急にこんな事しちゃってごめんなさい」

 

提督「気にはしていない。俺の体を気遣ってくれたんだろう?」

 

名取「あ、はい......」

 

提督「だったら礼を言うのはこちらの方だ。ありがとう」

 

名取「そ、そんな......」アセアセ

 

グイグイ

 

提督「?」チラ

 

雷「雷も......一応大佐の事気遣ったのよ?」ナミダメ

 

提督「分かった分かった。ほら」ポン、ナデ

 

雷「あ......んー......♪」スリスリ

 

提督(まるで猫、いや犬か?)

 

名取「......」ジー

 

クイクイ

 

提督「ん?」クル

 

名取「あの大佐......私もそれやって欲しいです......ダメ、ですか?」ウル

 

提督「......ふぅ」

 

名取「あ、やっぱりごめんな――」ビク

 

提督「大丈夫だ」ポンポン

 

名取「あ......ん......ありがとうございます......♪」スリスリ

 

雷「あー、名取さん軽巡なのにズルイ!」

 

提督「 独り占めはカッコ悪いぞ、ほら」ナデ

 

雷「あ、もう......仕方ないわね♪」スリスリ

 

名取「大佐もっと......」プク

 

提督「分かったから袖を引っ張るな」ナデ

 

雷「~~♪」スリスリ

 

名取「~♪~♪」スリスリ

 

提督「......」(重くて寝れない......)




なんだこの癒し空間は!
爆発してください!お願いします!

名取は本当に癒し系ですね。


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第8話 「素直」

提督が書庫で本を読んでいると、整理をしていた不知火が気づいて話しかけてきました。
自分から声を掛けてくる事が珍しい相手だけに、提督は内心意外に思いながら話し返します。


不知火「大佐、勉強ですか?」

 

提督「ん? いや、士官学校時代使ってた教科書を見てたらつい懐かしくなってな。内容を読み返して昔を思い出してたんだ」

 

不知火「そうでしたか。お邪魔しました」

 

提督「ああ」

 

不知火「......」

 

提督「......どうした?」

 

不知火「いえ、てっきり引き止められるのかと」

 

提督「特に理由もないのに引き止めたりはしないぞ?」

 

不知火「まぁ、そうですよね」

 

提督「だろう?」

 

不知火「......」

 

提督「......不知火」

 

不知火「はい」

 

提督「一人で本を読んでるのも暇だからちょっと俺に付き合ってくれないか?」

 

不知火「! 了解です。ご命令とあらば」

 

提督(駆逐艦の中では一番大人びてると思ってたんだがな......)

 

提督「さて、なにを――不知火」

 

不知火「なんでしょう」

 

提督「話し相手になるのに何故俺の隣に座る?」

 

不知火「失礼でしょうか?」

 

提督「いや、それ以前に話し難いだろ」

 

不知火「不知火は問題無いのですが......ご命令とあらば......」シュン

 

提督「いや、そのままでいい。隣り合って話すのも楽しいかもしれないしな」

 

不知火「! 大佐もそう思われますか」

 

提督「まぁ偶にはいいだろう。新しい発見があるかもしれないしな」

 

不知火「新しい発見......新しい関係......やらねば」

 

提督「一体何を意気込んでるんだ」

 

不知火「こちらの話です」

 

提督「そうか。意外に不知火はよく喋るんだな」

 

不知火「そうですか?」

 

提督「ああ。いつも物静かで必要な事のみを言う大人びた奴だと思ってた」

 

不知火「よく話す不知火は嫌いですか?」

 

提督「なんでそれだけで嫌いになるんだ、極端だぞ。別に嫌いではない」

 

提督「寧ろその意外性が魅力的に感じないでもない」

 

不知火「し、不知火が魅力的......ですか」

 

提督(さっきから答え返す度に、反応が過剰なような気がするな)

 

提督「まぁ、あまり無理に喋る事もない。素直なのが一番だからな」

 

不知火「素直な不知火ですか......先ほどの不知火とは違うのですか?」

 

提督「ん? 素直な不知火か......そうだな」

 

不知火「......」ジッ ←何かを期待するような目で見てる

 

提督「心に思ったことをちゃんと口に出せたら良いかもな」

 

不知火「心に思ったことを......」

 

提督「そうだ。お前はさっきから心の中では色々期待しながらも、その答を俺が口にするのを待っていただろ?」

 

不知火「......確かにそうでした」

 

提督「ちゃんと自覚はあったか。そういうのを自分から言えるのが素直という事だと思う」

 

不知火「大佐は素直な方が好きですか?」

 

提督「素直な反応をするお前も意外だからな」

 

不知火「という事は魅力的という事ですね」

 

提督「まぁそうなるか」

 

不知火「分かりました。これからは大佐の前では素直な不知火でいきます」

 

提督「なんで俺の前限定なんだ。普段からそうしろ」

 

不知火「......」プイ

 

提督「分かった。分かったから今は素直でいてくれ」

 

不知火「......分かりました」ソ

 

提督「なんだ眠たいのか?」

 

不知火「はい。少しだけ肩を貸して頂けないでしょうか?」

 

提督「俺は本を読んでるから気にせず寝ろ」

 

不知火「ありがとうございます。それでは......」

 

 

――数分後

 

不知火「スー...スー......」

 

提督「......意外に心地良いもんだ」




不知火はクーデレだとよく言われていますが。
俺はデレデレだと思います。
レベル99にすれば分かる筈!


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第9話 「黒白」

黒潮と龍驤が何やら言い合っています。
見かけた提督は何事かと様子を見ていたのですが......。


龍驤「あ! 大佐! ええとこに!」

 

提督「じゃあな」スタスタ

 

龍驤「なんで!?」

 

提督「何となく嫌な予感がしたんだ」

 

黒潮「そらあんまりやわ!」

 

提督「いや、黒潮の事じゃない。あくまで龍驤が、だ」

 

龍驤「だから、なんでうちだけ!?」

 

提督「空母の中で騒がしいのはお前だけだからな」

 

龍驤「したら黒潮はどうやねん!?」

 

提督「いや、黒潮は普通だぞ? 口調はお前と一緒だが」

 

黒潮「大佐、そんなに褒めんといてほしわぁ♪」テレテレ

 

龍驤「くぅ......理不尽や......ものごっつ理不尽を感じるで!」

 

提督「なら普段の行いを反省して謹んで反省するんだな」

 

龍驤「なんで反省を2回も言ったん!?」

 

黒潮(さっきから漫才みたいで楽しいけど、うちだけノケモンにされてるみたいで寂しいなぁ)

 

提督「で、何を2人で言い合っていたんだ?」

 

黒潮「そ、それはぁ......ちょっと乙女同士の会話やから秘密にしたいっていうかぁ」

 

龍驤「うちと黒潮どっちが胸があるか揉めとったんや」

 

黒潮「なんでそんなに堂々と言えるん!? てか、やめて。恥ずかしいから!」

 

提督(やっぱりこいつが発端だったか)

 

提督「軽空母とは言え、なんで空母が駆逐艦と張り合ってるんだ。大人げないぞ」

 

龍驤「いーや、同じ関西弁を喋る者としてここは黒白ハッキリ着けとかんとあかんのや! 黒潮だけに!」

 

黒潮「それをゆーなら白黒や! お願いだからつまらん事でうちをネタにつかわんといて! めっちゃハズイ!」ビーッ ←泣いてる

 

提督「龍驤、もうそのくらいにしといてやれ。黒潮が不憫だ」

 

黒潮「ぐす......た、大佐ぁ......」ダキッ

 

龍驤「ああっ! ちょ、黒潮、あんた何調子いい事してんねん!?」

 

提督「龍驤やめないか」

 

龍驤「う......」

 

提督「全く、落ち着け。つまりお前はどうしたいんだ」

 

龍驤「どっちが胸大きいかハッキリさせたいです......」

 

提督「黒潮、こんな事訊くのはアレだが、この際ハッキリ言ってやれ」

 

黒潮「あう......ごめん。多分うちの方が大きい......と思う」ボソ

 

龍驤「こんちんちくりんが言うやないか! そないゆーなら実際に剥いて......!」ゴン

 

龍驤「 」プシュー

 

黒潮(大佐の拳骨初めて見た......)

 

提督「埒が明かん。黒潮」

 

黒潮「は、はい」

 

提督「医務室を使っていいからもう二人で実際に計ってこい。その間は鍵を閉めるのを忘れるなよ」

 

黒潮「ええ......でもうち......」

 

提督「恥ずかしいだろうが女同士だ。少しだけ我慢してくれないか」

 

黒潮「ほんなら一個だけうち、大佐に教えて欲しい事あるんや。それ教えてくれたら......」

 

提督「分かった。なんだ」

 

黒潮「む、胸あるのとないの......ど、どっちが好き......?」ボソ

 

提督「......それは龍驤と比べてという事か?」

 

黒潮「......」フルフル

 

提督「......俺は別に大きい胸に拘りがあるわけではない。小さくても、可愛いならそれはそれで良いと思う」

 

黒潮「っ、......そ、それほんま!?」パァ

 

提督「ああ」(俺は一体何を言ってるんだ)

 

黒潮「分かった。おおきに! じゃ、うちちょっと計ってくるわ! 行こ、龍驤さん!」

 

龍驤「え、え。なに? なんなん?」

 

 

――数分後

 

『んな、アホなぁぁぁ!!』

 

 

提督(廊下の奥から龍驤の絶叫が聞こえた。どうやら勝負は決まったようだ)

 

 

黒潮「~♪ ほな、大佐うちもう行くわ。龍驤さんもはよ元気出してや~♪」スタスタ

 

 

龍驤「 」プルプル

 

提督(両手を着いて震えている。屈辱に震えているというところか)

 

龍驤「大佐......」

 

提督「ああ」

 

龍驤「うちって、うちってなんでこうなんかな......。なんでこんなにもないんかな......」

 

提督(何がないのかは触れない方がいいな)

 

提督「落ち込むなとは言わないが、あまり気にするな。気にしたところでお前の悩みは簡単には解決しない」

 

龍驤「う......もうちょっと気ぃ利かせた事言ってくれたってええやないか......」

 

提督「......俺は大きい胸に特に拘りがあるわけではない」

 

龍驤「!」ガバッ

 

提督「......小さくても可愛いならそれはそれで良いと思う」

 

龍驤「そ、それほんま!? ほんまの本心!?」

 

提督「......ああ」

 

龍驤「ありがとう! うち元気出たわ♪」

 

提督「そうか......現金な奴だな」

 

龍驤「そんな褒めんといてぇな♪ ほなうちももう行くわ。大佐、今日はほんまにありがとなー!」フリフリ

 

提督「......何かドっと疲れたな。今日は早めに寝よう」

 

 

~廊下の曲がり角の影

 

文月「......大佐は小さい胸でもオッケー、と」

 

秋雲「良いこと聞いたじゃ~ん。早速皆に報告しますか♪」




黒潮ってなんか龍驤とは違う意味で弄りたくなりますよね。
それに比べて龍驤は損な役回りが多いので次はちょっと優遇してあげたい。

提督の知らぬところで情報が拡散されてるみたいですね。
ドンマイ!


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第10話 「好み」微R-15

特に前置きもなく始まります。
提督が資料室で調べものをしていたら機嫌が良さそうな卯月を見つけます。


卯月「た~いさぁ~♪」

 

提督「なんだ。何時になく機嫌が良さそうだな」

 

卯月「うん♪ 最近ちょ~っと良い事知ったからね~♪」

 

提督「良い事?」

 

卯月「そうぴょん♪ 卯月可愛さは自信はあるけど、アレは頑張ってもどうにもならないからね~。正直、不安だったぴょん」

 

提督「アレ? さっきから一体何の話をしてるんだ?」

 

卯月「えへへへ~♪ アレはアレぴょん♪」トテテ

 

提督「......なんだ?」

 

潮「......大佐」ズーン

 

提督「ん、居たのか潮。どうした? お前は何時になく静かだな」

 

潮「私、驕ってました......」

 

提督「うん?」

 

潮「私だけは他の駆逐艦の子達と比べて優位に立っていると思っていました......」

 

提督「お前も何の話をしてるんだ?」

 

潮「でもそれは私の驕りでした......。大佐は誰でも受け入れる事ができる大きな器をお持ちだったんですね」

 

提督(なんだ? 褒めてくれてのか? 何故だ?)

 

提督「よく分からんが、取り敢えず礼を言えばいいのか?」

 

潮「お礼だなんてそんな......。寧ろ私の傲慢さを気付かせてくれた事に対してこちらがお礼を言いたいくらいです......」

 

提督(こんなに饒舌で気落ちした潮を見るのは初めてだな)

 

提督「潮、お前大丈夫か?」

 

潮「潮は大丈夫です......。いえ、大丈夫にならないといけないんです!」

 

提督「む?」

 

潮「大佐、私頑張りますから! もっともっと頑張って、大佐が目を離させなくなるようなイイ潮になってみせます!」

 

提督(良い潮? 良い潮ってなんだ?)

 

提督「いや、お前は今のままでも特に問題はな――」

 

潮「潮、いきます! これより女を磨く修行に行って参ります!」ダダダ

 

提督「......一体なんなんだ?」

 

多摩「......大佐!」ダキッ

 

提督「ぐ......多摩か?」

 

多摩「タマは信じていたにゃ! 大佐は見た目だけを大事にするような提督じゃにゃいって!」

 

球磨「わたしもクマ!」ダキッ

 

提督「おぐ......球磨......お前も、居たのか」

 

球磨「クマも大佐は大きさに拘らない提督だと信じていたクマ!」

 

提督「2人とも......離せ......いくら軽巡でも......前後から2人に締められると......ぐ......」

 

天龍「あ! おいてめーら何してるんだ!」

 

龍田「大佐が苦しんでいるわよぉ? 離して あ げ て ?」ギラ

 

多摩「ニャー! 天敵が来たにゃ! 球磨、ここは一時撤退するにゃ!」ダッ

 

球磨「了解クマ! 2人とも覚えてろよクマー!」ダダッ

 

提督「かはっ......ふぅ......ふぅ...」

 

龍田「大佐、だいじょぉぶ?」

 

提督「ああ、助かった......ありがとう」

 

天龍「ったく、あいつら加減ってものを知らねーからな」

 

龍田「お礼なんてぇ......それじゃぁ♪」ギュ

 

提督「何故腕を絡める。押し付ける」

 

龍田「お礼なんだからいいでしょ? それに大佐もなんだかんだ言ってこのくらいがお好きよね?」フニフニ

 

天龍「おい! 龍田お前まで何してるんだ!」

 

龍田「ただのスキンシップよぉ。それにお礼なんだから天龍ちゃんだってやっていいのよぉ?」

 

天龍「お、俺は別にそんな事やりたくは......」カァ

 

龍田「あらそう? じゃぁ私が全部貰っちゃうわね?」スリスリ、プニ

 

提督「おい、足まで絡めて......それはやめろ。やり過ぎだ」

 

天龍「なぁ!? ちょ、ちょっと待て!」ギュ

 

龍田「はい。よく出来ました♪」

 

提督「......天龍まで、どうしたんだ2人とも」

 

天龍「こ、これがお礼なんだろ? だったら俺もこれがいいから少し黙っててくれよ......」ギュ、ムニー

 

龍田「だいじょぉぶ。今日の事は誰にも言わないから」

 

提督「そういう問題じゃないが......早く解放してくれ」

 

龍田「物分かりが良くて助かるわぁ。じゃ、もう少しだけね?」プチ

 

提督「胸元を広げるな」

 

龍田「もう少しだけって言ったじゃなぁい? これ以上は何もしないから、お ね が い♪」

 

天龍「しょ、しょうがねぇな......///」プチ

 

提督(今日は厄日だ)




正直、卯月はキャラ狙い過ぎだと思います。
ですが可愛いのは如何ともし難いので結局はアリだと思います。

というか殆ど天龍と龍田回になってしまいましたね。
この2人は本当に良いコンビだと思います。


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第11話 「意外」

ようやく龍田と天龍から解放された提督ですが、意味も分からず絡まれた為、珍しく彼らしくもなくご機嫌斜めの様です。
その眉間にはいつもより深い皺が寄っているように見えます。


提督「......」ブス

 

赤城「た、大佐? どうかしました?」

 

提督「別に何でもない。些末な事だ」

 

赤城(こんな風に機嫌が悪そうな大佐は初めて見るわね。なんか子供みたいで可愛い......?)

 

赤城「くす。そうですか。お茶、いります?」

 

提督「......頂こう」

 

 

――数分後

 

提督「ふぅ......お前からお茶を貰うのは久しぶりだな」

 

赤城「ふふ。そうでしたか? お口にあってます?」

 

提督「ああ、美味い。それに落ち着く......」

 

赤城「大佐」ス

 

提督「ん、いいのか?」

 

赤城「今日は特別です」

 

提督「お前の前では吸わない約束してたからな。正直意外だ」

 

赤城「あら。ならおやめになりますか?」

 

提督「訂正する。嬉しい。火頼めるか?」

 

赤城「どうぞ♪」シュボッ

 

提督「ふぅ......毒の煙だが、何故こうも気分が良くなるものなのか」

 

赤城「そんなに良くなるものですか?」

 

提督「慣れたらな。ま、吸わないに越したことはないのは確かだ」

 

赤城「そうですか......」

 

提督「なんだ?」

 

赤城「吸ってみるか? とは言ってくれないんだな、と」

 

提督「ふー......我儘言って恰好つかないが、お前には吸って欲しくないな」

 

赤城「まぁ、大事にしてくれてるという事でしょうか?」

 

提督「そうだな。お前には健康であって欲しい」

 

赤城「ふふ、嬉しい♪」

 

赤城「あ、意外と言えば」

 

提督「ふぅー......ん?」

 

赤城「さっき、大佐機嫌が悪そうじゃありませんでした? 些末な事とか言ってましたけど......」

 

提督「ああ......軽巡たちにちょっと絡まれてな。......ふぅー」

 

赤城「まさかとは思いますが、反抗ですか?」

 

提督「それこそまさかだ。単に、なんだ。少し過激なアプローチを受けてな」

 

赤城「ふーん......それで機嫌が悪かったと?」

 

提督「おい、目が怖いぞ。意味も分からず一方的に絡まれたら誰だって気分を害するだろう?」

 

赤城「じゃぁ、今私とならどうです?」ズイ

 

提督「冗談だろ」

 

赤城「煙草、取り上げますよ?」

 

提督「お手柔らかに頼む」

 

赤城「ありがとございます♪ それでは......ん」

 

そう言うと赤城は提督の肩に寄りかかった。

 

提督「それでいいのか?」

 

赤城「え? もっと過激なのをお望みでした?」

 

提督「いや、意外だっただけだ。それでいい」

 

赤城「ふふ。お互い様ですね」

 

提督「こうしてると、まだこの鎮守府の主力がお前だけだった頃を思い出すな」

 

赤城「そうですね。今は、空母としての主力の座も加賀さんに取られてしまいましたが」

 

提督「皮肉か。今の状況にやはり不満か?」

 

赤城「いいえ。割と今の待遇でも満足してますよ。偶にこうして過ごせますし♪」

 

提督「......そうか」

 

赤城「あ、煙草終わっちゃいましたね。もう一本吸います?」

 

提督「いや、もうこれでいい」

 

赤城「そうですか。それじゃぁ......」スッ

 

提督「待て。吸い終わったからと言って、別に頭を離す必要はない」

 

赤城「いいんですか?」

 

提督「寧ろ和むからお願いしたいくらいだ」

 

赤城「ふふ、なんですかそれ。それじゃあお言葉に甘えて」

 

提督「どうぞ」

 

赤城「......」

 

提督「......」

 

赤城「ねえ、大佐」

 

提督「うん?」

 

赤城「私も......恋人......結婚の候補になりたい......な」

 

提督「もう何人かそう言って来てくれる奴らがいて、それを受け入れてるから今更断る事はしないが......」

 

赤城「ですが?」

 

提督「甲斐性ないぞ俺」

 

赤城「ふふ、そんなことはありませんよ。現に今、私を大事にしてくれているじゃないですか?」

 

提督「そのくらいで満足されてもな......」

 

赤城「あら? もっと期待してもいいんですか?」

 

提督「......善処しよう」

 

赤城「あ、逃げましたね? でも、それでいいですよ。無理することはないです」

 

提督「......赤城」

 

赤城「はい」

 

提督「ありがとう」

 

赤城「いいえ♪」




なんかあっさり恋人成立(?)しちゃいましたね。
でも赤城さんとはこのくらいの雰囲気が丁度いい気がします。
大人ですし。
赤城さんも色物扱いが多いですが、真面目な時は真面目なんですよ、多分。


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第12話 「ヌイグルミ」

大佐がトレイの前を通りかかるとヌイグルミが落ちていました。
誰のでしょうか。


コツン

 

提督「ん? ヌイグルミ......」(何故トイレの前に......)

 

提督「取り敢えず預かっておくか」

 

 

~執務室

 

愛宕「大佐?」

 

提督「ん?」

 

愛宕「そのヌイグルミはどうしたんですか?」

 

提督「トイレの前に落ちてた。持ち主が分からないから預かることにしたんだ」

 

愛宕「そうですか......」(だからって普通机の上に置くかしら)

 

コンコン

 

愛宕「は~い」

 

 

矢矧「矢矧です。入っていいですか?」

 

 

愛宕「どうぞ~」

 

ガチャ

 

矢矧「失礼します。大佐、ちょっとおはな......し......が......」

 

部屋に入ってくるなり矢矧はヌイグルミを見ると、目を丸くして言葉を失った。

 

愛宕「ああ、これ? トイレの前に落ちてたのを大佐が拾って預かってるのよ」

 

矢矧「そ、そうですか......」

 

愛宕「大丈夫。大佐は間違ってもそういう趣味はないわ」クス

 

提督「おい」

 

愛宕「あら、ごめんなさい」クスクス

 

提督「全く......それで、どうした?」

 

矢矧「え?」

 

提督「用があって来たんだろう?」

 

矢矧「あ......ああ、そう。そうなんだけど......」

 

愛宕「?」

 

提督「......」

 

提督「愛宕」

 

愛宕「はい?」

 

提督「悪いが、開発をしてきてくれ。三式爆雷が一つ欲しい」

 

愛宕「え、急にどうしたんですか?」

 

提督「矢矧を見たら今月はまだ鎮守府近海の敵潜水艦の駆除を行ってない事を思い出してな」

 

提督「ソナーは潤沢にあるんだが、爆雷だけが3式が不足してるんだ。あと一個開発ができれば、1艦隊に所属する全艦に一個ずつ配備できる」

 

愛宕「でも、私まだレベル40ですよ?」

 

提督「秘書艦なんだからそれは気にするな。久々の開発で勘だけでも取り戻せ。資材は出るまで使っていいぞ」

 

愛宕「そういうことなら愛宕、頑張っちゃいます♪」

 

提督「お前の奮闘に期待している」

 

愛宕「! あ、ありがとうございます! 楽しみにしてて下さいね♪」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

矢矧「......あの」

 

提督「ほら」

 

提督はそう言うと机の上のヌイグルミを矢矧に差し出した。

 

矢矧「気づいていたの?」

 

提督「愛宕がいて言い出すのが恥ずかしかったんだろ?」

 

矢矧「うん......」ボフ

 

矢矧「......ねぇ」

 

提督「ん?」

 

矢矧「おかしいと思わない? 私がヌイグルミなんてイメージに合わないって」

 

提督「お前も女だろ。そういうのをあまり気にすると、いろいろ損するぞ」

 

矢矧「そう......ありがと」

 

提督「ああ」

 

矢矧「あ、あのさ」

 

提督「秘密にして欲しいなら誰にもヌイグルミの事は言わないぞ」

 

矢矧「あ、それも......今はそうして欲しいけど。そうじゃなくて」

 

提督「なんだ?」

 

矢矧「私のヌイグルミ見てどう思った?」

 

提督「ん? そのヌイグルミに対する単純な感想か?」

 

矢矧「そう」

 

提督「そうだな......あくまで個人的意見だが、ライオンより虎のヌイグルミの方がお前に合っている気がするな」

 

矢矧「そ、そう!? 実は私もこれ選ぶ時どちらにしようか迷ったのよね」

 

提督「そうだったのか。じゃあ買った後に後悔したのか?」

 

矢矧「少しね。これも可愛いから別にそこまで気にはならなかったんだけど......」

 

提督「そうか」

 

矢矧「大佐が一緒だったら虎の方を買ってたのにな」

 

提督「そうかもしれないな」

 

矢矧「そう。一緒だったらなぁ......」

 

提督「ん......」

 

矢矧「......」ジー

 

提督「今度一緒に行くか。時間があればな」

 

矢矧「! ほ、本当!?」

 

提督「今回は偶然お前の趣味に合った答をしただけかもしれないぞ?」

 

矢矧「そういうのは気にしないで! 一緒に来て選んでもらう事に意味があるのよ!」

 

提督「まぁ一人だと悩む事も多いからな」

 

矢矧「そうよ! ......ね? 本当に一緒に来てくれるの?」

 

提督「自分から言った事は守る」

 

矢矧「そ、そう! 期待してるわね! 都合がいい時間分かったら連絡してね!」

 

提督「分かった」

 

矢矧「ありがとう!失礼するわ」

 

バタン

 

提督「ヌイグルミか......」(俺は映画の登場人物とかの人形が好きだが、そういうのはやっぱりウケないんだろうな)

 

 

~廊下

 

愛宕(ふふふ~♪ まさか5回で出せちゃうなんて今日は本当に良い日ね♪ 大佐喜んでくれるかしら♪)

 

矢矧「~♪」テクテク

 

愛宕「あ、矢矧ちゃん用事はもう......」

 

矢矧「~♪~♪」

 

愛宕(気付かないで行っちゃった......。あんなにニコニコした矢矧ちゃん初めて見るわね......)

 

愛宕「何か良い事でもあったのかしら?」クビカシゲ




軽巡では名取......矢矧も捨てがたいけど、やっぱり名取が好きです。
矢矧はクールビューティという言葉が本当に良く合ってると思います。


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第13話 「便り」

提督に手紙が届きました。
実家からだそうです。
さて、内容は......。


時雨「大佐。大佐宛てにお便りが来てるよ」

 

提督「本部からか?」

 

時雨「ううん違うみたい。これは......ごめん。よく分からないな」

 

提督(よく分からない? どういうことだ?)

 

提督「見せてみろ」

 

時雨「うん。はい」

 

提督「ふむ......」

 

時雨「何処から?」

 

提督「実家だ」

 

時雨「実家?」

 

提督「俺が生まれた家、故郷だ」

 

時雨「へぇ、大佐にもそういうのがあるんだ」

 

提督「それはどういう意味だ?」

 

時雨「なんか大佐ってずっと基地に居るイメージだったから、生まれたのも基地なのかなって思ってた」

 

提督「俺は生まれも育ちも鎮守府だと言いたいのか......」

 

時雨「似合ってるよ?」

 

提督「悪いが、欠片微塵も嬉しくない」

 

時雨「え? そうなの?」

 

提督「仮に基地で生まれたとする」

 

時雨「うん」

 

提督「生まれたての俺はどうやって基地で生きて行けばいいんだ?」

 

時雨「資材庫があるから大丈夫だよ」

 

提督「俺は人間だ」

 

時雨「あ、そっか。大佐は人間だったね」

 

提督「なぁ、俺はそんなに人間らしくないか?」

 

時雨「以前と比べれば、大分人間らしいと思うよ」

 

提督「そうか。そいつは安心した」

 

時雨「資材を食べることができないからね」

 

提督「お前の判断基準はそこか? 俺はそんな食べれそうな顔をしているのか」

 

時雨「大佐だったらいける気がするな」

 

提督「割とショックなものだな......」

 

時雨「どうしたの?」

 

提督「もういい。何でもない。取り敢えず実家からの便りということだ」

 

時雨「大佐が生まれた所かぁ......。ねぇ、どんなとこ?」

 

提督「ん? 田舎だな。山と川がある。後は殆ど家の周りは田んぼと畑だった」

 

時雨「ふーん......」

 

提督「お前、俺が言った光景を想像できてないだろ」

 

時雨「あはは。実はさっぱり」

 

時雨「写真とかないの?」

 

提督「写真か......」ゴソゴソ

 

提督「あった。昔の写真だが、ほら背景に山とか田んぼが写ってるだろ」

 

時雨「......ねぇ、この小さい子は誰?」

 

提督「俺だ」

 

時雨「え!?」

 

驚いた時雨は写真と提督を何回も見比べた。

 

提督「どうしたんだ」

 

時雨「え、だってこれ全然似てないよ?」

 

提督「それは子供の頃だからな」

 

時雨「え、大佐って生まれた時からその姿じゃなかったの?」

 

提督「俺は人間だと言っているだろう......」ガク

 

時雨「へぇ、そっかぁ。大佐も昔は小さかったんだ」

 

提督「頼む。納得してくれ。俺の人間としての尊厳を認めてくれ」

 

時雨「な、なんでそんなに必死なの?」アセアセ

 

提督「今まで生きてきてこれほどまでに精神的に叩きのめされたのは初めてだからだ」

 

時雨「そ、そんなに僕酷い事言った?」

 

提督「他の人には言うなよ。ここには俺以外の人間はいないけどな」

 

時雨「うん。分かった。本当にごめんね?」

 

提督「分かればいい」

 

時雨「でも大佐が小さい頃の写真かぁ......。ねぇ、これ貰っていいかな?」

 

提督「親が焼き増しているはずだから構わないが......そんなのが欲しいのか?」

 

時雨「うん。何だかとても珍しい物を見つけた気がするからね」

 

提督「返せ。動機が不純だ。俺は天然記念物か何かか」

 

時雨「わ、わ。ごめん! 大事にするからちょうだい」

 

提督「大事にするかどうかはお前に任せるが、少なくとも珍獣扱いはやめろよ?」

 

時雨「うん。分かった、ありがとう。大事にするね♪」

 

提督「本当に頼むぞ」

 

時雨「さてとそれじゃ......あ。うーん......」ゴソゴソ

 

提督「どうした?」

 

時雨「この服ポケットがないからしまえないんだ。ま、いいや此処に入れとこ」

 

そういうと時雨はおもむろに提督の写真を胸元に入れ始めた。

 

提督「おい」

 

時雨「ん......何?」

 

提督「お前それ絶対に人前で出すなよ」

 

時雨「え? 他の人に見せちゃいけないの?」

 

提督「そうじゃない。そこに入れてるときは人前で出すなと言ってるんだ」

 

時雨「......よく分からないけど分かったよ。手に持ってたらいいんだよね?」

 

提督「そうだ」

 

時雨「じゃ、今はこの後直ぐに部屋に戻るからここに入れておくよ」

 

提督「そうか......くれぐれも慎重にな」

 

時雨「さっきからどうしたの? 元気がないね」

 

提督「少し疲れてるからな。悪いが、仮眠をとるから用がないならもう出て行くように」

 

時雨「うん、分かった。またね、大佐」フリフリ

 

バタン

 

 

提督「.....」

 

提督「疲れた......」ガク




提督お疲れ様です。
自分で書いてて提督に同情してしまいましたw


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第14話 「居眠り」

時雨との会話のペースに披露してしまった提督は仮眠をとったのですが、ちょっと寝過ごしてしまったようです。
優しい神通さんが起こしに来てくれました。


神通「大佐、大佐……。起きてください」

 

提督「ん……」

 

神通「あ、起きました? 大佐」

 

提督「ああ、神通か」

 

神通「お休みのところ申し訳ありません。執務の仕事がまだ残ってましたので……」

 

提督「む、そうか。寝過ごしてしまっていたか」

 

神通「お体の具合良くないのですか?」

 

提督「いや、体は大丈夫だ。ただちょっと精神的にな……」

 

神通「? 何かあったのですか?」

 

提督「大したことじゃない。時雨は見たか?」

 

神通「時雨ちゃんですか? いえ、見てませんけど……」

 

提督(言っていた通り、すぐに部屋に戻ったみたいだな)

 

提督「そうか。ならいいんだ」

 

神通「?」

 

首を傾げて疑問を呈してる神通を見て提督はあることに気付いた。

 

提督「……神通」

 

神通「はい?」

 

提督「確か、今日の秘書艦はお前じゃなくて那珂じゃなかったか?」

 

神通「あ……」

 

神通はそう言われると困った顔をして口ごもった。

 

提督「何かあったのか?」

 

神通「その……那珂は、玩具屋に行っているようでして……」

 

提督「玩具屋? お前らしくもないな、見逃したのか」

 

神通「いえ、いないと気付いた時には書置きが置いてありまして……」

 

『トップアイドルになる為に必要な物が玩具屋にあるので行ってきます!』

 

提督「なんだこれは……」

 

神通「すいません。私にもあの子が何を考えているの全く……」

 

提督「全く......戻ってきたら連れて来い。罰を与えないとな」

 

神通「それは、私にお任せ下さいませんか?」

 

提督「ん? 個人的に行うということか? それでは軍規の意味がないんだがな」

 

神通「妹がしでかした事ですから」ニコ

 

眩しい程の笑顔だが、その裏には凄まじい怒りが渦巻いているのを提督は感じ取った。

妹に煙に巻かれた事が余程腹に据えかねているようだ。

 

提督「今回だけだぞ」

 

神通「ありがとうございます」ペコリ

 

提督「ああ、それと」

 

神通「はい?」

 

提督「神通、お前はもう部屋に戻っていいぞ。元々お前は今日は秘書艦じゃなかたんだからな」

 

神通「……大佐、差し出がましい事を承知でお尋ねいたしますが」

 

提督「ん?」

 

神通「大佐は残りの仕事を一人で処理されるおつもりですか?」

 

提督「秘書艦がいないのだから仕方ないだろう」

 

神通「私、お手伝い致しますよ?」

 

提督「いや、だからお前は今日は――」

 

神通「お 手 伝 い さ せ て く だ さ い」ズイ

 

提督「む……」

 

神通「そじゃないと、大佐に申し訳がなさすぎて……那珂をどうにかしてしてしまいそうです……」

 

神通の背後に黒いナニカを提督を見た気がした。

そしてそれを見た瞬間、提督は即座に決断した。

 

提督「分かった。すまないが、頼めるか?」

 

神通「よろこんで」ニコ

 

 

――数時間後

 

提督「ん……もう少しというところだな」

 

神通「これを一人でなんて……これからはやめて下さいね?」

 

提督「悪い癖だ。加賀にも前に同じことを言われた」

 

神通「なら尚更じゃないですか。ダメですよ?」

 

提督「善処する」

 

神通「た い さ ?」

 

提督「分かった。しない。だから加賀には内緒にしておいてくれ」

 

神通「ふふ、分かりました。お互いに約束ですね」

 

提督「そうだな」

 

 

――それから更に数分後

 

提督「そういえば、那珂の奴はアイドルどうこうは今更だから置いておくとして、玩具屋なんかに何を買いに行ったんだ?」

 

神通「そういえばそうすね……。マイク……でしょうか」

 

提督「なるほど。それはあるかもしれないな。性能はあまりよくなくても玩具のようなマイクなら安いかも知れないしな」

 

神通「そうですね」

 

提督「ああ」

 

神通「……あの、私からも訊いていいですか?」

 

提督「なんだ?」

 

神通「もし教えて頂けたらで構わないのですが、昼間、大佐が居眠りをしてしまうほど疲れていたのが何故なのかちょっと気になって……」

 

提督「ああ、その事か」

 

提督「時雨と実家から来た頼りの事を話していたんだったか」

 

神通「実家からのお便り……ですか?」

 

提督「ん、まぁその事で時雨と話してたんだが、あいつのペースに飲まれて疲労してしまったという感じだ」

 

神通「そうだったんですか。ふふ、時雨ちゃんたら」

 

提督「あいつも大人しそうに見えてなかなかにマイペースだからな」

 

神通「そうですね。あの、ところでさっきのお便り事なんですが、実家というと大佐がお生まれになった家からのお便りという事ですよね?」

 

提督「そうだ。流石にお前はそれくらいは分かるよな」

 

神通「その辺りの常識は個々にバラつきがあるみたいですね……困らせてしまってすいません」

 

提督「それはお前が謝る事じゃないだろ。大丈夫だ、気にしてない」

 

神通「恐縮です。あの……それで」

 

提督「ん?」

 

神通「実家からお便りというと大佐のご家族に何かあったのですか?」

 

そこに来て提督は初めて表情を少し曇らせた。

何やら言い難いそうだ。

 

提督「別に家族に不幸があったとかじゃないんだが……」

 

神通「?」

 

提督「見合いの話だった」




ドラマみたいな切り方にしてみました。
このあと波乱万丈な展開が……というふうにはあまりしたくないですね、疲れるので(ア


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第15話 「ストップ」

「お見合い」この言葉はこの鎮守府において不穏な言葉のようです。


コンコン

 

金剛「金剛デス」

 

 

提督「金剛? 入れ」

 

 

ガチャ

 

金剛「失礼するネ」

 

金剛「……」

 

提督「なんだ? こんな時間に」

 

神通「? 金剛さん?」

 

金剛「スゥ……ちょっとウェーーーーイト!」

 

提督「……」

 

神通「……」

 

神通(ちゃんとマナーを守って入ってきたこともあって、唐突な訴えとの差がシュールね……)

 

提督「うるさいぞ金剛。いきなりなんなんだ」

 

金剛「大佐、さっきワタシ聞いたヨ。ヒアリングミスじゃなかったら確かに『オミアイ』って言ってたネ!」

 

提督「……お前、今は電探系何も着けていないよな? 一体どうやって知ったんだ」

 

金剛「Love は盲目ナノヨ!」

 

神通「使い方を致命的に間違ってますよ。金剛さん」

 

提督「それで何が言いたいんだ。まぁ、大体分かるが」

 

金剛「大佐! 大佐はワタシ達と恋人になるって約束したネ! なのに他のレディとケッコンなんてワタシ許さないヨ!」

 

提督「ああ、そのことなら――」

 

金剛「大佐ァ!」ズイ

 

金剛が凄い勢いで体ごと机に乗り出してきた。

 

提督「近いぞ。あと無礼だ」

 

神通(わわ……後ろから丸見え……)カァ

 

金剛「……」シュル…パサ… スル

 

提督「おい」

 

神通「こ、金剛さん!? 何を!?」

 

金剛「もうこうなったらキセイジジツを作るしかないネ!」

 

提督「やめろ。そこで手を止めるんだ。それ以上脱いだら約束は反古にするぞ」

 

金剛「No! その約束が今 danger じゃないデスカ!」

 

神通「金剛さん聞いて、大佐は――」

 

金剛「……っ」

 

金剛は神通の言葉が耳に入っているのか、問答無用で提督の手を取ると自分の片胸に押し付けた。

 

ムニュウ

 

提督「ぬ……」

 

神通「え……」カオマッカ

 

金剛「ふふ……これでワンステップ踏み込んでしまったネ。もうここまでキタラ……」

 

そう言うと金剛は体の上下を覆ってる最後の一枚に手を掛けた。

 

加賀「そこまでです」

 

全員がドアの前に振り向くと加賀が臨戦態勢で弓を構えていた。

 

金剛「加賀……邪魔しちゃダメよ。もうワタシ引き返せないワ」

 

加賀「金剛さん落ち着いてください。大佐が私達との約束を無碍にする人だと思うんですか?」

 

金剛「でも大佐のホームからお見合いの話がきたネ! これはもう余裕ブってられないヨ!」

 

加賀「ですから落ち着きなさい。大佐は今しがたその事について説明をしようとしていましたよ」

 

金剛「言い訳なんて聞きたくナイヨ……」グス

 

神通「言い訳なんかじゃないですよ! 私、大佐の口から直接そうじゃないことを聞きましたから!」

 

金剛「え……」

 

加賀「金剛……手を放しなさい」

 

提督「金剛、お前の愛情の深さは問題だな。だが、そこまで想ってくれる事に関しては礼を言おう」

 

提督「だから離すんだ」

 

金剛「大佐……」

 

暴走によって正気を欠いていた金剛の瞳に徐々に理性の光が戻ってきた。

そして――。

 

金剛「……っ!」

 

自分が何をしているのか改めて認識した混合は顔を真っ赤にして慌てて手を離して半裸の体を隠すようにその場にうずくまった。

 

提督「ふぅ……」

 

提督はため息と共に席を立ち、静かに金剛の後ろに回ると優しく自分の上着を被せた。

 

金剛「あ……」

 

羞恥と後悔で濡れた瞳が不安げに提督を見上げた。

 

提督「落ち着いたか? なら、後ろを向いているから服装を正せ。神通手伝ってやってくれ」

 

神通「あ、はい」

 

提督「加賀」

 

加賀「はい」

 

提督「ご苦労だった。ついでに頼まれて欲しいんだが、できればお前も部屋に残って欲しい。話がある」

 

加賀「分かりました」

 

 

――数分後

 

提督「さて、始めるか。だが、その前に………」

 

金剛「ゴメンナサイ」

 

提督「これからは人の話をちゃんと聞くように」

 

金剛「ハイ……」シュン

 

提督「ならもういい。これ以上は追求しない」

 

金剛「え、もういいのデスカ?」

 

提督「できれば俺も忘れたいからな」

 

加賀「忘れてもらわなければ困ります」

 

提督「おい何故こっちに矢を向ける? 何を目くじら立ててる?」

 

神通(感情的だったとはいえ過激だった金剛さんのアプローチに焦ったのね)

 

加賀「……まぁいいです。ではお話を」

 

金剛「くす……アハハ。大佐、改めて sorry ヨ。それに加賀、本当に本当に thank you ネ」

 

加賀「……分かればいいんです」

 

提督「そうだな。もうしなければいい」

 

提督「さて、お前たちが気にしてたこのお見合いの話だが、実は結構前から何回も来ている」

 

神通「大佐はいつもそれを断ってたんですよね?」

 

提督「そうだ。ま、この年だ。親の気持ちも分からないでもないが、こういう仕事をしてるとなかなか受ける気にもなれなくてな」

 

金剛「それじゃあ今回モ……」

 

提督「断るつもりだった」

 

金剛「そうだったんデスカ。はぁ……安心しまシタ。大佐ホントにゴメンネ?」

 

提督「もういいと言ってるだろう」

 

加賀「まぁ私は信じていましたが」

 

金剛「エ?」

 

神通「?」

 

提督「どうした金剛」

 

金剛「ワタシがこの事知ったのはちょうど大佐の部屋の前を彩雲が flying してるのを見つけたからナノヨ」

 

提督「……」

 

神通「……」

 

金剛「……」

 

加賀「……それでは私はこれで」

 

提督「神通、金剛」

 

金剛「yeah!」 神通「はい」

 

提督「全力で捕獲、連行してこい」

 

加賀「くっ……!」ダッ

 

金剛「了解! ワタシの全力見せてあげるネ!」ジャキン

 

神通「那珂の前の前哨戦ですね♪」ポキポキ

 

 

~提督が一人だけになった執務室

 

提督「……」(まぁ今日も平和でなによりだ)




よくあるパターンですね。
果たして加賀さんは改二コンビの追撃を交わす事ができるのでしょうか。


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第16話 「ゲーム」

提督が執務室で仕事をしていると少しボロボロになった那珂が入ってきました。
何故ボロボロなのかは敢えて聞かなかった提督ですが、彼女が手に持っていたある物に目を止めます。
彼女がソレを持ってきた目的とは?


提督「那珂」

 

那珂「なぁに? 大佐」

 

提督「それは何だ?」

 

那珂「人○ゲームだよ!」

 

提督「お前が玩具屋に買いに行っていた物はそれだったのか」

 

那珂「うん! そうだよ!」

 

提督「それがトップアイドルになる為に必要だというのか」

 

那珂「当然!」

 

提督「因みに訊くが、何故だ?」

 

那珂「トップアイドルになるためにはまず人生でもトップにならないとね!」

 

提督「それは玩具だぞ?」

 

那珂「運も実力の内なんだよ!」

 

提督(川内型はどうしてこう……神通が不憫だな)

 

那珂「どうしたの? 急に眉間に手を当てちゃって」

 

提督「何でもない。それで、どうしてそれを此処に持ってきた」

 

那珂「大佐と一緒に遊ぶ為に決まってるじゃん!」

 

提督「なに当たり前のような顔で言ってるんだ。俺は今仕事中だ。他に時間がある奴とやれ」

 

那珂「えぇー……付き合い悪いなぁ」

 

提督「神通に言いつけるぞ」

 

那珂「暇な子探してくるね! 失礼しました!」

 

バタン

 

 

――休憩時間

 

ガチャ

 

卯月「大佐! 卯月と一緒にゲームやるぴょん!」

 

巻雲「仕方ありませんね。付き合ってあげますか」

 

那珂「大佐、暇な子見つけてきたよ!」

 

提督「……なんで俺も一緒にやる前提なんだ」ガク

 

 

――ゲーム開始

 

卯月「やったぴょん! 株を購入して一儲けぴょん!」

 

巻雲「さっきから紙一重で暴落避けてますね。さすが卯月さんです」

 

那珂「大佐、物件買わないの?」

 

提督「結婚もしない内から普通は買わないだろ。金もない」

 

 

――数分後

 

卯月「ぷっぷくぷ~♪ 宝クジがあたったぴょん! これが卯月の実力です! えっへん!」

 

巻雲「ここは無難に自動車保険に加入です」

 

那珂「ぷ、プログラマー!? 那珂ちゃんはアイドルになりたいのに~!」

 

提督「そろそろ物件の購入を考えるか……」

 

 

――更に数分後

 

卯月「大佐と結婚して子供ができたぴょん! 大佐ぁ~卯月の事大切にしてねぇ♪」

 

提督「待て。俺はプレイヤーだぞ。勝手に人を結婚相手として想定するな」

 

巻雲「卯月さん結婚してすぐに子供ができるなんて……///」カァ

 

那珂「那珂ちゃんはハイキングなんかに行きたくないのに~!」ジタバタ

 

 

――ゲーム終盤

 

卯月「やったぴょん!大金持ち~♪」

 

巻雲「あっさりと当然の様に最後の賭けにも買っちゃうなんて! あ、巻雲はパスです」

 

提督「ついに子供が一人もできなかったな……」

 

那珂「開拓地なんていやぁぁぁぁぁ!」

 

 

――ゲーム終了

 

提督「普通に卯月がトップで終わったな」

 

卯月「皆、ゲームで卯月に勝とうなんて100年早いぴょん♪」

 

巻雲「まずまずの結果です。でももうちょっと欲張ってもよかったかなぁ」

 

那珂「那珂ちゃんだけ知らない土地で終わりなの!?」

 

提督「ソロライブだな。よかったじゃないか」

 

那珂「そんなの全然嬉しくないよ!」

 

 

――休憩時間終了

 

卯月「楽しかったぴょん♪ またやりたいなぁ~♪」

 

巻雲「次はもっと上を目指しますよ!」

 

那珂「もう暫くはやりたくないよ……ぐす」

 

バタン

 

 

――再び仕事中

 

加賀「大佐」

 

提督「ん」

 

加賀「卯月と子供を作ったそうですね」

 

ボキ ←ペン先が折れた

 

提督「……誤解を招く表現はやめろ」

 

加賀「ああ、種n――」

 

提督「それもやめろ。例えゲームでもそれを言われるとキツイ」

 

加賀「上手く作るコツとかもあるみたいですね」

 

提督「……」(下手だったからできなかったとでも言うのか)

 

加賀「……私はいつでもいいんですけどね」ボソ

 

提督「耳元で囁くな。お前のそれは洒落にならない迫力がある」

 

加賀「……いつでもいいのは本当なんですけどね」ボソ

 

提督「仕事しろ」




子供の頃はゲームでもよくムキになったものです。
大人になると何故こうも発想が汚れるのか……。


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第17話 「子犬」

矢矧が前回(*第二部 第12話「ヌイグルミ」参照)ヌイグルミを一緒に買いに行く約束をした件について、時間の確認をする為に提督を訪ねて来ました。



矢矧「大佐、例の件の予定はどうかしら。時間とれそう?」

 

提督「ああ。あのヌイグルミの件か。そうだな......」

 

提督は傍らに合った予定表をパラパラめくって確かめた。

 

提督「この日でどうだ? 午後が空いてる」

 

矢矧「いいわよ。じゃ、楽しみにしてるから」

 

バタン

 

 

矢矧が通り過ぎた廊下の影から2つの影が除いていた。

 

名取「羽黒さん見た?」ヒョコ

 

羽黒「うん。見たよ、名取ちゃん」ヒョコ

 

名取「執務室から出てきましたよね」

 

羽黒「そうだね......矢矧さん凄くうれしそうな顔してた......」

 

名取「大佐と何かあったのかな......あ」

 

羽黒「どうしたの? 名取ちゃん」

 

名取「もしかして、ですけど......」

 

羽黒「な、何......?」ドキドキ

 

名取「大佐、結婚相手に矢矧さんを選んだのかも......」

 

羽黒「ええ!? だ、だって先ずは恋人からのはずでしょ!? なのにいきなり結婚だなんて......」

 

名取「矢矧さんが提督が心に決めた相手なのかもしれません」

 

羽黒「そ、そんんぁ......私、私がもっと早く告白していれば......」ジワ

 

名取「ま、まだそうと決まったわけじゃないので......」アセアセ

 

羽黒「でも、あの幸せそうな顔......絶対そうだよぉ」グス

 

名取「た、確かめてみましょう!」

 

羽黒「え? 確かめるって大佐に直接......?」

 

名取「そうです! それしかないですよ!」

 

羽黒「でも......私、怖い......」

 

名取「私も一緒に行きますから......ね?」

 

羽黒「うん......ありがとう名取ちゃん」

 

ガチャ

 

 

提督「何を部屋の前で騒いでるんだ」

 

羽黒「ぴ、ぴぃぃぃぃ!?」

 

名取「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

 

提督の目の前に居たのは名取と羽黒だった。

2人とも何故か半泣きで、提督の予想外の出現に動揺して為す術もなく抱き合っていた。

恐怖に怯える捨てられた仔犬の様だった。

 

提督「2人とも落ち着け。取り敢えず部屋に入れ」

 

 

~執務室

 

提督「それで、何を2人して騒いでいたんだ」

 

名取「あ、あの......」

 

羽黒「た、大佐はもう矢矧ちゃんと結婚したんですか?」

 

提督「なに?」

 

羽黒「ひっ......ご、ごめんなさい。不躾な事聞いちゃって!」

 

名取「ちょ、ちょっと気になっただけなんです。だから怒らないでください!」

 

提督「待て。怒ったりしないから、まず俺の話をちゃんと聞け」

 

名取「は、はい......」

 

羽黒「う......ぐす......はい」

 

提督「結論から言って、俺は矢矧とは......いや、現時点では誰とも結婚はしていない」

 

名取「ほ、本当ですか!?」パァ

 

羽黒「え......?」

 

提督「結婚はしていないと言ったんだ、羽黒」

 

羽黒「う......うぇぇぇん! 名取ちゃん良かったよぉぉぉぉ!」ダキッ

 

名取「ぐす......そうですね。本当に良かったですね。羽黒さん」ナデナデ

 

提督「......」(なんなんだこの空間は)

 

 

――数分後

 

提督「2人とも落ち着いたか?」

 

名取「ぐす......お見苦しいところをおみせしました。すいません」

 

羽黒「私も......ごめんなさい」

 

提督「ふぅ......それで、落ち着いたところでお前たちは俺に用があるんだろう?」

 

羽黒「はい。......大佐」

 

提督「ああ」

 

羽黒「私と名取ちゃんを大佐の恋人にしてください! 私達も結婚相手の候補になりたいです!」

 

名取「え、ええ!? わ、私も!?」

 

羽黒「名取ちゃん私だけ大佐の恋人になちゃっていいの?」

 

名取「わ、私は......」

 

羽黒「恋人になったらいつも背中を見るだけじゃなくて他にもいろいろできるよ?」

 

提督(いろいろって何だ。俺はいつも名取に背中を見られていたのか?)

 

名取「!」

 

羽黒「私恋人になるなら名取ちゃんと一緒がいいよ......ね? 一緒になろ?」

 

名取「わ、私は......なりたいです! 大佐の恋人に!」

 

羽黒「名取ちゃん......!」パァ

 

提督「2人とも恋人に慣れる前提で話を進めてるが、俺の意思は無視か?」

 

名取「こ、断わったりしてるんですか?」ウル

 

羽黒「そ、そう......なの......?」ジワァ

 

提督「いや......してない。2人ともこれからよろしく頼む」

 

提督(加賀とも金剛とも違う圧力を感じた。これは断れない)

 

羽黒「っ、大佐ぁ! ありがとうございます!」ダキッ

 

名取「わ、私も......! ありがとうございます、大佐!」ダキッ

 

提督「待て。軽巡と重巡の同時突撃は......うぐっ」




名取と羽黒は天使ですね。
弱気過ぎるのが気に入らない人もいるみたいですが、レベルが上がるにつれて内面だってしっかり成長しているはずです!(妄想)


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第18話 「海」R-15

今回は以前(*第一部 第39話「反省」参照)に加賀と足柄(半ば強制)と約束していた海で遊ぶお話です。



「良い天気ですね大佐」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「でも、こう陽射しが強いと日焼けにも気を付けないといけませんね」

 

「そうだな」

 

「......」

 

「先ほどから2人ともどうしたのですか?」

 

傍から見ると確かに妙な状況だった。

加賀が言う通り天気は晴天。

燦燦んと眩しくも暖かな日差しが降り注ぎ、絶好の海水浴日和と言えた。

だが肝心の遊びに来た提督は加賀の方をなるべく見ようとはせず、足柄に至っては水着を見られるのが恥ずかしいのか岩陰から出て来ないという有様だった。

 

「足柄さんはともかく、大佐。何故こっちを見ようとしないのです」

 

「お前の水着の所為だ」

 

「私の水着が何か?」

 

加賀が着ている水着は、俗に言うスリングショットという種類の物だった。

肌の露出の度合いはビキニに匹敵するが、その見た目の刺激の強さはビキニのそれを超えるものがある。

特にその水着を着た者を真横から見た時の肌の無防備さは、それを見た者の劣情を誘うに十分すぎる程の色気があった。

 

「その水着はなんだ。ある意味、大会の時にイムヤが着ていたやつを超えているぞ」

 

「ただのスリングショットではつまらないので、Vストリングにしてみたのですが……お気に召しませんでしたか?」

 

「そういう問題じゃない。あと、わざと横に動いて揺れるのを見せるな」

 

「ふふ、これを選んだ甲斐がありました」

 

 

加賀が自分の水着姿を存分に提督に見せつけている頃、一方足柄はまだ岩陰で自分の水着姿を見られる恥ずかしさを克服できずにいた。

 

「……」チラ

 

\ドウデスカ? タイサ/ \ヤメロ、ヒッツクナ/

 

「……!」(な、なによアレ! 殆ど裸じゃない! あんなのじゃ、わたしの水着なんて……。いや、そうじゃなかったとしても恥ずかしくて……)

 

モニュ

 

「!?」

 

「足柄さん」

 

不意に背後から加賀に胸を揉まれ、足柄は驚きと羞恥の悲鳴をあげる。

 

「きゃ、きゃぁぁぁぁ! か、加賀さん!? ちょ、やだっ、やめて!」

 

「岩陰にずっと隠れて何をしているのですか? 大佐があなたの水着を待っていますよ?」モニュモニュ

 

「わ、分かったからむ、むね……ぁ……はぁっ。揉むの……やめてぇ!」ピクン

 

 

\イヤー!/ \ソノワリニハ、カラダハショウジキデスガ?/

 

「……」(さっきから足柄の悲鳴が聞こえるが、加賀のせいだろう。まぁ大丈夫か)

 

提督が砂浜にパラソルとチェアを設置していると、後ろから加賀が足柄を連れて戻って来た。

 

「お待たせしました。大佐、足柄さんを連れてきました」

 

「ん、ああ。……ん?」

 

やっと姿を表した足柄を見て提督は僅かに眉を潜めた。

足柄は何故か全身を真っ赤に火照らせ、息も切れ切れとといった感じだ。

髪もとこどころ解れて、心なしか水着も少し乱れているように見える。

本人は気づいてないようだが、何とも言えない色香を放っていた。

 

「加賀......」

 

「なんでしょう?」

 

「お前、足柄に何かしたか?」

 

「彼女の魅力を引き出す手伝いをしただけですが?」

 

「うぅ……加賀さんの馬鹿ぁ」グス

 

「足柄、お前大丈夫か?」

 

「っ……大佐ぁ!」ダキッ

 

「ぐっ……」(あの足柄が自分から……。加賀、お前は本当にこいつに何をしたんだ)

 

涙目の足柄に抱き付かれてその膂力に負けない様に全身を緊張させる提督。

そんな二人を見ながら加賀は自分の行いによる結果に満足げに小さく笑っていた。

 

「やりました」ニヤリ

 

 

――数分後

 

「さて、オイルを塗って貰えますか?」

 

「塗らなきゃだめか?」

 

チェアに寝そべって準備OKといった様子の加賀を前に、提督はまだ乗り気ではなさそうに逡巡していた。

 

「恋人同士なんですよ? お願いします」

 

「わ、わたしは別に……」

 

加賀の横では同じ格好をして寝ている足柄が恥ずかしそうにしていた。

 

「足柄さん?」

 

「ひっ!? ぬ、塗って、大佐……」カァ

 

「……分かった」

 

完全に加賀の支配下に置かれた足柄を哀れに思いながら、やがて提督は渋々といった様子で加賀達の要望を受け入れた。

 

 

「それでは私からお願いします。……ん」ピク

 

「……」(改めてこいつの姿は裸と変わらないな。水着の面積が小さい上に寝ることによって体が水平になるから水着の構造上、浮いて……丸見えだ)

 

「塗り易いでしょう? 塗れるところは全部お願いしますね」

 

「全部……か?」

 

「はい」

 

「前は自分で塗れよ?」

 

「仕方ありませんね」

 

「……」ヌリヌリ

 

「ん……そう、そこも。……あ、下もですよ?」

 

「……」ヌリ、ムニ

 

「んん……大佐、上手……」

 

提督は加賀の下半身に回ると、水着をズラして彼女の尻全体にオイルを塗った。

張りのある臀部を縫っている時に偶に力を入れる方向を誤って尻を割り引いてしまったりもしたが、そこは邪念を頭から払拭する事によって提督は何とか作業を続けた。

対して加賀も、その時にナニカを見られた事には明らかに気付いていた様に思えたが、特に気にした様子もなく、僅かに頬を紅潮させながらも涼しい顔をしていた。

 

「な、何あれ……凄い」ドキドキ

 

「……終わったぞ」

 

「そう、みたいですね。ありがとうございます」

 

「……」ゲッソリ

 

「どうでした?」

 

「お前とは二度と海に行きたくないな」

 

「では、今度は床にいっs」

 

「また機会があれば行こう」

 

 

「次は足柄か……」

 

「お願い……ひっ」

 

背中に手が触れただけで小さな悲鳴をあげた足柄に提督は努めて気を遣うように声を掛ける。

 

「大丈夫か?」

 

「んん……大丈夫……。慣れて……ない、だけ……だから」

 

「……」ヌリヌリ

 

「あ、ん……ねぇ、大佐」

 

「なんだ?」ヌリヌリ

 

「なんか加賀さんの時と違っ……て、塗るのが速くない?」

 

足柄の言った通り、加賀の時と違って若干自分は塗るペースが速い、と言うか、スムーズな気がした。

提督はその疑問に明らかに加賀の時とは違って余裕のある様子で、オイルを塗りながら答えた。

 

「お前の水着は普通だからな、助かる。加賀の後という事もあるが」ヌリヌリ

 

「そう……」ムッ

 

「……?」

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「わたしも、その……。塗ってよ、下も……」

 

「なに?」

 

「ほう」キラン

 

寝そべっていた加賀が足柄の方を向いて、その大胆なお願いに目を細めて瞳を輝かせる。

当然何故唐突に彼女がそんな事を言い出したのか、加賀はちゃんと理解していた。

 

「足柄、お前の水着は普通だから下は……」

 

「ずらして……いいから……」カァァ

 

自分の言動に羞恥を覚えて顔を伏せながらも、あくまでその意思を変えない足柄に提督は仕方なく応える事にした。

彼は傍にいた加賀に声を掛ける。

 

「……加賀」

 

「はい?」

 

「見ないでくれるか?」

 

「仕方ありませんね」クス

 

それは一体提督と足柄、誰に対する気遣いだったのか。

定かではなかったが加賀は提督の頼みに面白そうに小さく笑って頷くと再び寝そべって軽く仮眠を取り始めた。

 

 

「ふぅ……やるぞ」

 

「うん……」

 

グイ

 

提督は足柄の水着をズラすと再びオイルを塗り始めた。

加賀と違って足柄は普通のワンピースタイプの水着だった為、ズラすのに多少力が要り、加えて布地が隠している面積が大きかったので、塗っている間足柄は長い時間彼に尻の殆どを見られる形となった。

足の付け根も当然視界に入り、普段目にすると事は絶対にない所も完全に丸見えの状態だ。

提督が下心からそこを注視する事など到底考えられなかったが、それでも足柄は自分の恥ずかしい姿が彼の目に触れられている事に対して言葉にできない背徳的な快感を無意識に感じていた。

 

「あっ……」(見られてる……。絶対に見えてるよね……!)

 

「……」ヌリヌリ、ムニムニ

 

グニッ

 

「……っ、ふぁ!?」ビクン

 

提督の手が臀部の割れ目に触れた時だった。

加賀の時と同様、そこを塗りこむ際に誤って僅かに力が入ってしまい、彼女に負けないくらい張りのある尻を割り開いてしまった。

開いてしまったその場所には加賀の時以上の過激な光景が広がっていたが、提督はその時も心を氷にして邪念を払い、見なかったことにして作業を続けた。

一方足柄はその事態を一瞬で把握してそれを理解した瞬間、全身を電流のような衝撃が走り抜けるのを感じるであった。

 

「はぁ……はぁっ、んんっ!」(あれ? 今......?)ブルッ

 

 

「……終わったぞ」

 

それから数分後、提督は加賀に続いて足柄のオイル塗りもなんとか終えた。

 

「はぁ、はぁ……。ありがとう……」グテー

 

「立てるか?」

 

何とも言えない色香を全身に香りだたせながら、足柄は口の端に僅かに涎が垂れている事にも気づかない程全身から力が抜けているようだった。

心配そうに声を掛ける提督に、足柄は力なく返す。

 

「ごめん。ちょっと、力……今入らない……わ」

 

「そうか奇遇だな。俺も精魂果てたところだ」クタ

 

「え? ちょっ、大佐大丈夫?」

 

「少しやすめば大丈夫だ。……加賀、足柄、悪いが俺は少し寝るぞ。先に二人で遊んでくれ」

 

グッタリした提督を見て薄く微笑みながら加賀は、今日何度目かの言葉を言った。

 

「仕方ありませんね。後で必ず来てくださいよ?」

 

「ああ」

 

「じゃぁ足柄さん行きましょうか?」

 

「え? いや、わたしもちょっと力が……」

 

「大丈夫です。抱いて行ってあげますから」ダキ

 

「えっ、ちょっと、きゃっ」

 

力が抜けきった身体を容易く加賀に抱き上げられて、足柄は驚きの声をあげる。

動揺しながらも上手く抵抗もできずに慌てるばかりの彼女を見ながら、加賀は愛おしい人形でも手にいれたかの様に、嬉しそうに顔を紅潮させながら言った。

 

「足柄さん、貴女は可愛い人ですね。ちょっと癖になってしまいそうです」

 

「お、下ろして! 恥ずかしっ、自分で歩くからぁ!」ジタバタ

 

「暴れないで下さい」ギュッ

 

 

(足柄……俺の分も頑張ってくれ)

 

提督は心の中で静かに足柄の冥福を祈った。




いつの間にか加賀×足柄な流れになってしまいました。
エロいから長くなってしまったわけでは、ないかもしれません。


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第19話 「トレーニング」

大佐は最近朝のトレーニングを曙と一緒にするようになっていました。
今日もその日課のトレーニングをこなしていると後ろから那智が声をかけてきました。


那智「大佐、曙」

 

提督「フッフッ......おお、那智」

 

曙「那智さんおはよう」

 

那智「朝練か? 精が出るな」

 

提督「一応毎日の日課だからな」

 

曙「ふふー、大佐やるじゃない。最近はわたしのペースに着いてこれるようになったわね」

 

那智「曙の? 駆逐艦のペースと一緒とは凄いじゃないか」

 

提督「毎日こいつと一緒に走った成果だな」

 

那智「毎日一緒?」

 

曙「そうよ。いつからか一緒に走り始めたのかは覚えてないけど」

 

那智「......曙、大佐。これからは私も一緒させてもらってもいいだろうか?」

 

曙「那智さんも? そうね......大佐とわたしに着いて来れたらいいわよ!」

 

那智「ふふ、重巡と侮るなよ? これでも他の仲間たちの中では普段から運動している方だからな。体力は自信がある」

 

提督(重巡が駆逐艦に対して能力差を保証する様は何か新鮮だな......)

 

曙「言うじゃない? それじゃ大佐、那智さん行くわよ!」

 

提督「おい、あまりペースをあげると......」

 

 

――数十分後

 

提督「こう......ゼェー......ハァー......なる......」グテー

 

那智「ハァー......ハァー......っぐ......ふぅ......」グッタリ

 

曙「ごめん二人とも......調子に乗り過ぎちゃった......」

 

提督「少し......休憩だな。那智、大丈夫か?」

 

那智「流石に......息があがって......動けないな。だから......休憩には賛成だ」

 

曙「あ、わたし濡らしたタオルと飲み物持ってくるわね」

 

提督「頼む、助かる」

 

曙「うん。待ってて」タタッ

 

 

那智「大佐は......いつもこんなペースで走ってるのか?」

 

提督「いや、流石にあれはない。俺だってほら、こんな状態だ」

 

那智「そうか......ふふ。駆逐艦は凄いな」

 

提督「そのペースに俺みたいに練習もしないでここまで着いてこられたお前もなかなかのものだと思うぞ」

 

那智「ふ......煽てるな。お返しは何もできないぞ。少なくとも今の状態では......な」

 

提督「別にそんなの望んでない。素直に賛辞を受けろ」

 

那智「そうか......ありがとう」

 

提督「ああ。それでいい」

 

那智「ん。曙はまだ来ないみたいだな」パタパタ

 

提督「暑いか?」

 

那智「ああ、流石に汗だくだ。......悪いが後ろを向いていてくれないか? 服を絞って汗を取りたい」

 

提督「分かった。俺もそうしよう」

 

ギュー、ポタポタ......

 

那智「大佐も凄い汗の量だな」

 

提督「ん? そっちはもう絞り終わったのか?」

 

那智「あ、まだだ。振り向かないでくれ。大佐の汗の量に驚いて見入っていた」

 

提督「こんなので見入られてもな。まぁ、お前も早く絞れ」

 

那智「ああ」

 

那智(大佐の背中広いな......流石に男というところか。こんな逞しい背中を持つ男に、いつも私達は命を預ける意味も持つ指示を貰っているんだな......)

 

 

曙「お待たせ! 持って来た......わ......よ」

 

提督「ん。ご苦労」←半裸(服を着るところ)

 

那智「ポー......」←提督の背中に見とれて服を着ることを忘れてる

 

曙「な......な......」

 

提督「曙? どうした?」

 

曙「なにセクハラしてるのよ!? こんのクソ提督!」

 

提督「? 一体なにを――ぶ」

 

バシン!と、塗れたタオルが提督の顔を直撃した。

 

 




この後曙は泣きながら提督に謝ったそうです。
そして何故かその時那智も一緒に謝っていたそうです。


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第20話 「デート」

今日は約束した矢矧とヌイグルミを買いに行く日です。
あれ、タイトルが......? 気にしたら負けです。


矢矧「大佐、こっちよ!」

 

提督の姿を見つけた矢矧が嬉しそうに手を振っている。

 

提督「早いな。約束の時間より早く来たつもりだったんだが」

 

矢矧「楽しみで仕方なかったの。つい、ね」

 

提督「そうか。待たせて悪かったな」

 

矢矧「気にしなくていいわよ。待っている間も楽しかったんだから」

 

提督「そうなのか?」

 

矢矧「ええ! 私、大佐とこういう風に出かけるのって初めてだったから。待っている間いろいろ想像してて退屈しなかったわ」

 

提督「まぁ、それならよかった。じゃあ行こうか」

 

矢矧「ええ。お願いするわね!」ギュ

 

提督「ん」

 

矢矧「あっ。ご、ごめんなさい私ったらつい浮かれちゃって断りもなく手を......」カァ

 

提督「......」

 

ギュ

 

矢矧「あ......」

 

提督「今日はデートのようなものだ。気にするな」

 

矢矧「デート......う、うん!」パァァ

 

 

~玩具屋ヌイグルミコーナー

 

提督「ヌイグルミと一口に言っても、いろいろあるものだな」

 

矢矧「そうよ。ねぇ大佐だったらこの中でどのヌイグルミを選ぶ?」

 

提督「ヌイグルミの趣味がないから直感で選ぶしかないが......ふむ、これか」

 

矢矧「お、大きい......クマのヌイグルミね。60cmくらいはあるんじゃないかしら......。重さは7kgも......」

 

提督「持った時の重さが程良かったんでな」

 

矢矧「重さで決めるの?」

 

提督「見た目で決めるにはまだ経験が足りないみたいだ」

 

矢矧「ぷっ、ヌイグルミを重さで選ぶ人なんて初めて見たわ」

 

提督「まぁ、強いて言うなら熊、だからか。強そうだろ?」

 

矢矧「......」(球磨『球磨を選ぶとはいいセンスだクマ。やっぱり球磨の魅力には大佐も敵わないクマね♪』)

 

矢矧「クマよりもっといいのだってあるわよ......」プク-

 

提督「ん、どうした? 何故機嫌を損ねた?」

 

矢矧「別に......あ! ここよ。トラのヌイグルミがある所」

 

提督「見事に虎だけが置いてあるな。こんなコーナー需要があるのか......」

 

矢矧「ここは特定の動物ごとに固めてコーナーが作られているのよ。ほら提督が前に見つけてくれたライオンもあそこに......」

 

提督「なるほど」

 

矢矧「ね、どれが良いと思う?」キラキラ

 

提督「ふむ......」

 

提督(リアルなのは恐らく駄目だろうな。前見つけたライオンのデザインからして。ということは見た目が女性......いや、女の子ウケする可愛いのか)

 

提督「これ、はどうだ?」

 

矢矧「意外......大佐って私の好みが分かるの?」

 

提督「まぁいろいろ思案した結果だ。女の子が好きそうなのを適当に吟味して選んだだけだが」

 

矢矧「お、女の子って......」カァ

 

提督(照れてはいるが、嫌がってはなさそうだな)

 

提督「どうだ? これ」

 

矢矧「うん......そうね。せっかく選んでもらったんだからこれにするわ」

 

提督「そうか。良かった」

 

矢矧「それで、名前は何にする?」

 

提督「......なに?」

 

矢矧「名前よ。名前付けなきゃ可哀想でしょ?」

 

提督「すまん。ヌイグルミに名前を付けるという発想が全くなかったから少し驚いてしまった」

 

提督(そういえば、俺が持っていた人形は最初から全部名前が付いていたな)

 

矢矧「大事に扱えば物にも魂が宿るっていうじゃない。だから名前って結構重要なのよ?」

 

提督「そうだな、名前か......トラ、じゃ駄目だよな」

 

矢矧「ふふ、大佐らしいけどちょっと単純すぎかな」

 

提督「だよな。ふむ......虎......矢矧......」ブツブツ

 

矢矧(真剣に考えてくれてる♪)

 

提督「ふむ......ヤッコ、とかどうだ?」

 

矢矧「!」

 

提督「その反応。悪くないと見た」

 

矢矧「ね、ねぇ。どうしてその名前にしたの?」

 

提督「矢矧の『や』と虎の音読みの『こ』を繋げてみたんだ」

 

矢矧「なるほど......ヤッコ......うん! いいわね!凄く良いと思うわ♪」

 

提督「そうか。気に入ってくれたか」

 

矢矧「ええ。とっても。これ早速買って来るわね!」

 

提督に選んでもらったヌイグルミを手に持ってレジへと向かった矢矧の後姿は本当に嬉しそうに見えた。

提督はその姿を見ただけで付き合った甲斐があったと心から思った。

 

 

矢矧「大佐、今日は本当にありがとう! 今日は来て良かったわ」

 

提督「ん? もう終わりなのか?」

 

矢矧「え? だって、ヌイグルミも買ったしもう目的は......」

 

提督「今日はデートのようなもの、だと言ったろ? そこでお茶を飲んで、帰りは一緒に歩いて帰らないか?」

 

矢矧「......」ポケー

 

提督「どうした?」

 

矢矧「大佐の言葉が本当に意外過ぎて......それに嬉しくて涙が......」ポロポロ

 

提督「大袈裟だな。俺もいろいろあって女性の扱いを学んでるんだぞ」

 

提督「で、どうだ?」

 

矢矧「......っ、勿論! 大賛成よ!」

 

提督「そうか。今日は楽しもう」ス

 

矢矧「ええ♪」ギュ

 

 

~お店の影

 

榛名「......榛名は......榛名は見ちゃいました!」

 

青葉「青葉のセリフ取らないで下さい! にしてもこれは面白いところを見ちゃいました」

 

榛名「……」ゴゴゴ

 

青葉「あ。大変なところ、だったかも……」




また、ドラマみたいな感じになってしまいましたね。
黒榛名の登場なるか!?

提督......なんかチャラ男になってる気がする。
でもまぁ、自分から手を出してないだけまだフォローのしようある......かな?


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第21話 「すれ違い」

場所は金剛達の部屋。
ある一人の戦艦の影響でで明らかに部屋の雰囲気がいつもと比べて殺伐としていました。
その重圧に耐えかねた姉が心配の気持ち半分に妹に話しかけます。


金剛「は、榛名」

 

榛名「なんですか? お姉様」

 

金剛「何か嫌なコトでもあった?」

 

榛名「どうしてそんな事を訊くんです?」ニコ

 

金剛「ひっ」ビク

 

比叡「お姉様! ちょっと榛名! お姉様が怖がってるじゃない!」

 

榛名「私が何かしましたか? 比叡お姉様」ニコ

 

比叡「だ、だから怖がらせちゃ......」

 

榛名「榛名が何かしたんですか?」

 

比叡「こ、こわがらs」

 

榛名「だから具体的に私が何をしたと言うんです?」ニコ

 

比叡「ひぇぇぇぇぇ......」メソメソ

 

霧島「ちょっと榛名、やりすぎよ」

 

榛名「霧島まで......どうしたというの?」

 

霧島「榛名、貴女さっきからなんで言葉に威圧を込めてるの?」

 

榛名「何を言ってるの? 私はいつも通りだよ?」

 

霧島「じゃぁ、その張り付いた笑顔をやめなさいよ」

 

榛名「......チッ」

 

金剛「Noooooooo! 比叡見まシタカ? い、今......今、榛名が舌打ちしたヨ!」

 

比叡「な、何かの間違いじゃ......」

 

金剛「そ、そうネ。ワタシの可愛い妹が舌打ちなんてするワケ......」

 

榛名「お姉様達さっきから煩いですよ。いい年して何やってるんですか」

 

金剛「ああ、まるで霧島みたいだケド、それでもいいネ! 榛名が舌打ちなんかするくらいナラ......」

 

榛名「......チッ」

 

金剛「ノォォォォォ!」ブワッ

 

比叡「ひぇぇぇぇぇ!」ブワッ

 

霧島「っ、いい加減にしなさいよ、榛名!」

 

榛名「霧島だって、煩いからいい加減にしてよ!」

 

霧島「......」キッ

 

榛名「......」ギロッ

 

ゴゴゴゴゴゴゴ............

 

金剛「た、大佐......help me......」グス

 

比叡「うわぁぁぁぁん! 大佐ぁぁぁ!」ブワァ

 

榛名「っ、なんでそこで大佐が出てくるんですか!」

 

金剛「は、榛名......?」ビクッ

 

榛名「どうしてそんなにすんなり大佐の事を求められるんですか!?」

 

比叡「え、え?」ビクッ

 

榛名「榛名は......私は......今までいい子にしてたのに......どうして大佐は私のことを見てくれないんですか!!」

 

霧島「榛名、貴女......」

 

榛名「榛名は......いつもお姉様達のいう事を聞いていい子にしてきました......」

 

榛名「大佐の命令もちゃんと守って、ミスなんかした事ありませんでした......」

 

榛名「なのに......なのに......大佐が優しくしてくれるのはお姉様達......。真面目なのは変わらないのに霧島も良くされてる......」

 

金剛「榛名......」

 

榛名「それだけじゃない......。加賀さんや足柄さんも......矢矧さんとはデートまで......!」

 

榛名「なんで......なんで......榛名じゃ......ぐす」

 

比叡「そうだったんだ、榛名......」

 

金剛「榛名」

 

榛名「お姉様......ごめんなさい。榛名、悪い子でした......」グス

 

金剛「うーうン、そのなことないヨ。榛名は good girl デス。こんなになっちゃうまで我慢シテ......ホントウによく我慢したヨ」ナデ

 

榛名「お姉様ぁ......」ブワッ

 

比叡「そっか。私達、榛名に頼り切りな所あったもんね......」

 

霧島「まぁ、お姉様達と同じカテゴリにまとめられるのはちょっと納得いかないにしても」

 

金剛・比叡(えっ)

 

霧島「榛名、貴女頑張り過ぎたのよ。いつも優等生だったから大佐も安心して逆に榛名の事心配しなくなったのだと思うわ」

 

榛名「嬉しいけど、そんなのって......」

 

霧島「まぁ、それは信用の表れでもあるわけだけど。じゃぁ、我慢しなければいいじゃないの」

 

榛名「そんな......大佐に嫌われちゃう......」

 

霧島「ほら、それが駄目なのよ。そうやって気にして無理して、優等生しちゃうから大佐も榛名の事気づけないのよ?」

 

榛名「う......」

 

霧島「一度、我慢しないで思いっきり甘えてみなさい? そうすれば大佐も最初は驚くかもしれないけど、きっと榛名の苦労を理解して受け入れてくれるわ」

 

榛名「そう......かな」

 

霧島「ええ。私の計算に間違いはないわ。でしょ? 榛名」

 

榛名「霧島......うん。私頑張る! 大佐に思い切って打ち明けてみる!」

 

霧島「その意気よ。さぁ善は急げ、早速行ってらっしゃい!」

 

榛名「うん! そうする! お姉様達、さっきはごめんなさい! でも、もう榛名は大丈夫です!」

 

金剛「あ、ウン......」

 

比叡「そっか。良かったね......」

 

榛名「あの、それじゃあ榛名、少し大佐の所に行ってきますね。霧島、ありがとう!」

 

バタン

 

 

金剛「比叡......」

 

比叡「なんですかお姉様......」

 

金剛「ナンカ美味しいトコロ全部霧島に持っていかれたネ......」

 

比叡「そうですね......。姉ってなんなんでしょうね......」

 

金剛「ホントにそうネ......あはは」

 

比叡「あははは」

 

金剛・比叡「あはははははは......びぇぇぇぇぇぇん!」ブワッ

 

霧島(この姉達は......)

 

霧島「金剛お姉様、比叡お姉様、落ち込んでいるところ悪いのですが」

 

金剛「何ヨ霧島、ダメダメな sister は穴掘って埋まってるヨ......邪魔しないデ」

 

比叡「お姉様お供します......」

 

霧島「だから聞いて下さい!」ダン

 

金剛「ふぇ!?」ビク

 

比叡「ひぇっ!?」ビク

 

霧島「二人ともさっきの榛名の言葉をちょっと思い出して頂けますか?」

 

金剛「remember って何を? 辛い思いでしかないワ」

 

比叡「ダメな姉って自覚するだけだよ......」

 

霧島「その部分じゃないです! さっき榛名は大佐と仲が良い人たちを挙げてましたが、一人だけ明確にある事をしていたって言ってませんでしたか?」

 

金剛「あるコト? 霧島、下ジョークはダメヨ。男と女がする事なんテ決まってるじゃナイ」

 

比叡「そうですね。ヤルことなんてせk」

 

霧島「そうじゃなくて!」カァ

 

霧島「さっき榛名は矢矧さんと大佐がデートしていたって言ってませんでした?」

 

金剛「デート......? でーと......date!?」クワッ

 

比叡「な、なんですって......!?」シャキン

 

霧島「さぁ作戦会議です」ニヤリ

 

 

~その頃の執務室

 

提督「青葉、話ってなんだ?」

 

青葉「うふふ~、すっごい特ダネがあるんですよ! というか、大佐の命に係わるかもしれない重大なお知らせが!」

 

提督「そうか。期待は微塵もしてないが聞いてやろう。3単語で要約しろ」

 

青葉「短っ! というか、どれだけわたし信用無いんですか!? 本当に本当の特ダネなんですてば~」グイグイ

 

提督「分かったから服を引っ張るな」

 

青葉「ぐす......分かればいいんです! いいですか? 言いますよ?」

 

提督「早くしろ」

 

青葉「せっかちですね。まぁいいです。お知らせというのは――」

 

コンコン

 

榛名「榛名です。大佐、居ますか?」




提督逃げて~、な事態が着々と進行中です。
榛名だって根っからの良い子じゃないはずです。
偶にはこうやってガス抜きしないとやってられませんよね、多分。


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第22話 「我儘」

青葉が衝撃の事実を大佐に告げようとした丁度その時、本当にいいタイミングで榛名の登場です。
青葉と大佐の運命は如何に。


青葉「え」

 

提督「榛名か? いるぞ。入れ」

 

 

ガチャ

 

榛名「失礼します」

 

青葉「は、榛名さん......」

 

提督「ん......? なんだ青葉、重大な知らせというのは榛名の事だったのか?」

 

榛名「え?」

 

青葉「えっ」

 

提督「榛名を見る限り、俺の命まで関わっているようには見えないんだが」

 

青葉「た、大佐!」

 

榛名「あ お ば さん?」

 

青葉「ひっ!?」

 

榛名「私の事、大佐に何かご忠言をしようとしてたみたいですが?」ニコ

 

青葉「え、えっと......それは......」アセ

 

榛名「あまり余計な事はしないでくれますか? でないと......」

 

榛名「46cm砲を貴女の顔にねじ込んで、以降、青葉さんのことは『あ』だけ抜いて呼んで差し上げますよ?」ニコォ

 

青葉「ひ、ひぃ! お、お願いです! 砲撃も嫌ですけど、『おばさん』なんて呼ばないで下さい!」

 

提督(榛名?)

 

榛名「なら分かってますね?」

 

青葉「あ、青葉は何も見てません! 何も知りません!」

 

榛名「よく出来ました♪ じゃぁ、ちょっと私は今から大佐に用があるので出て行って貰えますか?」

 

青葉「りょ、了解であります! 大佐、失礼します!」

 

提督「青葉」

 

青葉「は、はい?」

 

提督「後で俺が呼んだらまた来るように」

 

青葉「分かりました......失礼します」ズーン

 

 

バタン

 

提督「さて......」

 

榛名「大佐......」

 

提督「何かあったのか?」

 

榛名「っ、 大佐っ!」ダキ

 

提督「うぐっ......どう......した?」

 

榛名「大佐、今榛名の事心配してくれました? 気に掛けてくれました?」

 

提督「まぁ、いつもと明らかに様子が違っていたからな。どうかしたのか?」

 

榛名「大佐......榛名は......榛名は、悪い子でした。大佐に甘えたいのに、優しくしてもらいたいのにずっといい子の振りをしていました!」

 

提督「なに?」

 

榛名「私がずっと大人しかったのは、大佐やお姉様達に褒められたかったからんです! 喜んで貰いたかったからなんです!」

 

大佐「......」

 

榛名「でも、それじゃダメだと気付いたんです......。皆は喜んでくれても、榛名は寂しいだけでした......」

 

榛名「大佐......私は、榛名は、大佐にもっと甘えたいんです! 『よくやった』ってもっと褒めてもらいたいんです!」

 

榛名「そんな思いを今までずっと隠していい子の振りをしてきました。ごめんなさい!」

 

大佐「......榛名」ス

 

榛名「......っ」ビクッ

 

ポン

 

榛名「あ......」

 

大佐「全く、お前たち姉妹はどうしてこう手間のかかる......」ナデナデ

 

榛名「大佐ぁ......」ブワァァ

 

大佐「いつも苦労していたんだな。我慢をしていたんだな」

 

榛名「うぅ......ぐす」スリスリ

 

大佐「気付いてやれなくて悪かった。俺はお前にずっと負担を掛けていたんだな」

 

榛名「そんな! それは、榛名が勝手に......!」ガバ

 

大佐「分かってる。分かった上でお前に命令する。もう無理はするな。少しは我儘でいろ」

 

榛名「我儘でいろなんてそんな......」

 

大佐「お前の我儘は俺に迷惑を掛ける程なのか?」

 

榛名「そんなこと......! そんなことはありません!」

 

大佐「なら、少しくらい欲張れ、自分に正直でいろ。な?」

 

榛名「大佐......大佐ぁ!」ダキッ

 

大佐「っ......、周りを気にすることは無い。俺はお前を信頼している」

 

榛名「ひっく......ぐす......あ、ありが......ありがとうございます......」

 

大佐「さぁ、涙を拭け。そして遠慮なく言ってみろ、自分の望みを」

 

榛名「ぐす......はい。榛名、大佐にお願いがあります」

 

大佐「なんだ?」

 

榛名「榛名も大佐の恋人にしてください。甘えさせてください!」

 

大佐「時と場所は弁えろよ?」

 

榛名「勿論です!」

 

大佐「ならいい。俺も応えられる範囲で応えよう」

 

榛名「大佐、ありがとうございます! 本当に......大好きです!」ダキッ

 

大佐「ぐっ......一つだけいいか榛名」

 

榛名「はい。何でも言ってください。大佐の為なら私......」

 

大佐「お前に限った事じゃないが、いきなり抱き付くのは少し遠慮して欲しい」

 

榛名「え?」

 

大佐「いや、別に抱き付くなというわけじゃない。その、なんだ......お前たちは、特に戦艦は力があるからその......」

 

榛名(あの大佐が凄く歯切れが悪そうにしてる......。こんな表情を見たのは初めて......)

 

大佐「男が女性にこんな事頼むのは恰好つかないが......もう少し加減して抱き締めて貰えると助かる」

 

榛名「大佐......くす。分かりました♪」キュ

 

大佐「む......。流石だな」

 

榛名「はい。榛名、我儘な良い子ですから♪」スリスリ




甘い!と、個人的に思います。

これで一件落着かと思いきや、残りの姉妹がなんか画策してたり、青葉への説教が残ってたりするんですよね。
やる事為す事いっぱいですね大佐。


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第23話 「元気」

青葉が提督に呼ばれてやって来ました。
これから怒られるんじゃないかと少しビクビクしているみたいです。
呼ばれた目的はなんでしょう?


コンコン

 

青葉「あ、青葉です......」

 

提督「入れ」

 

ガチャ

 

 

提督「......」

 

青葉「あ、あの......」

 

提督「どうして呼ばれたか判るか?」

 

青葉「あ、青葉が榛名さんの誤った情報を広めようとしたから......?」

 

提督「まぁ確かにお前はトラブルメーカーだからな。それもあるが......」

 

青葉「ほ、他に何かしてしまったでしょうか?」プルプル

 

提督「そう怖がるな。お前を呼んだ理由は礼を言う為だ」

 

青葉「え?」

 

提督「お前、榛名の奴がヘソを曲げることを知ってそれを俺を伝えようとしたんだろう?」

 

青葉「は、はい。でもそれは......」

 

提督「伝え方は考慮するべきだが、少なくとも一応は俺の身を案じてくれたんじゃないのか?」

 

青葉「まぁ、確かにそれもありますけど......拡大解釈し過ぎだと思います」

 

提督「そうかもな。だが、お蔭で俺は榛名の異変を察知する事ができたからな」

 

青葉「偶然ですよ」

 

提督「だとしても、この結果はお前ありきだったかもしれない。だから礼を言う」

 

青葉「あう......謝意の押し付けは苦手です......」

 

提督「はは。お前は騒いで、その所為で怒られてばかりだからな」

 

提督「情報を早とちりして誤報したり」

 

青葉「う......」グサ

 

提督「厚顔無恥に不躾な質問や調査をしたり」

 

青葉「うぅ......」グサグサ

 

提督「あとはそうだな......」

 

青葉「もうやめてくださぃぃぃぃ! 青葉が悪かったですぅぅぅ!」ブワッ

 

提督「なら、俺の謝意も素直に受け取れ」ポン

 

青葉「あ......」

 

提督「榛名の事で少し怖い思いをしたかもしれないが、これに懲りずこれからもお前らしくいて欲しい」

 

提督「実はそれが一番言いたかった。部屋を出ていくお前の後姿があまりにも覇気がなかったから気になっていたんだ」

 

青葉「さっきから褒めてくれてるのか、貶しているのかわかりません......」

 

提督「両方だ」シレ

 

青葉「ひどっ!?」

 

提督「ふむ。ようやくお前らしくなった。これで俺も今日は枕を高くして寝れる」

 

青葉「え? 青葉のお蔭で大佐はよく寝れるんですか?」

 

提督「お前にそう言われると自分の発言が致命的な気がしてくるな......」

 

青葉「ねぇ、ちょっと!?」

 

提督「まぁ、冗談だ」

 

青葉「本当ですか......?」ジト

 

提督「それはお前のこれからの働き次第だな。真面目に働けばお前の事も見直すかもな」

 

青葉「よく働いたら何か青葉にも得がりあますか? た、例えば......」

 

青葉「ご褒美......とか」ボソ

 

提督(こいつは、今までどれだけ賞賛という言葉と縁がなかったんだ)

 

青葉「......? 大佐?」

 

提督「ああ、悪い。お前って実は結構可哀想な奴だったんじゃないかと思ってた」

 

青葉「そんな!? むぅ......な、なら可哀想な青葉にも少しは優しくしてください! ご褒美ください!」

 

提督「いきなり褒美と言われてもな。優しくは、さっきから十分してるし」

 

青葉「あれで!? なら、ご褒美! ご褒美です! それを今すぐ青葉は要求します!」

 

提督「何がいいんだ?」

 

青葉「青葉と結婚してください!」

 

提督「ん?」

 

青葉「あ」

 

提督「今、何だって?」

 

青葉「あ......あ......」カァ

 

提督「正直、意外だ。お前がそんなk」

 

青葉「うわぁぁぁぁん! 大佐のばかぁぁぁぁ!」

 

バタン

 

 

提督(本当に話していて飽きない奴だな。青葉、その活力には本当に感謝しているぞ)




なんか、青葉弄られ損ですね。
というか提督が結構嫌な奴になってたような。
重巡の中では足柄さんの次好きなんですが、RJと同様可愛く動かすのが難しい。
何とかしたいですね。


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第24話 「おさんぽ」

提督の楽しみの一つ夜のお散歩です。
今日は誰もいないかと思いきや後ろから響に服を引っ張られました。


響「大佐」グイ

 

提督「ん」

 

響「前に、散歩に行くときは誘ってくれるって言ったじゃないか」

 

提督「お前が起きているとは思わなかったんだ」

 

響「響はずっと寝ないで待っていたのに」

 

提督「まさか毎晩か?」

 

響「流石にそれはないよ。大佐の足音がした時だけだよ」

 

提督「足音で誰か判るのか」

 

響「響き、だけにね」

 

提督「その名前、伊達ではなかったんだな」

 

響「いや……その、冗談だよ。分かってよ」

 

提督「そうか。じゃぁ、行くか?」

 

響「うん。今度はちゃんと誘ってよ?」

 

提督「ああ。寝息が聞こえなかったらそうしよう」

 

響「うん。それでいいよ」

 

提督「今日は、本当に二人きりだな」

 

響「うん。川内は寝てるよ」

 

提督「確かめてきたのか?」

 

響「ううん。雷と卯月の遊びに付き合って疲れたみたい」

 

提督「まさか、お前……」

 

響「さあ?」シレ

 

提督「まぁいい。さて行くk」クイクイ

 

提督「ん?」

 

響「手……繋いで欲しい」

 

提督「ああ、いいぞ」ギュ

 

響「ん……♪」

 

提督「嬉しそうだな」

 

響「割と……。この方が、いい」

 

提督「そうか」

 

提督「ここは日本と違って年中暑いから人によっては辛いかもな」

 

響「大佐は夏が好きなの?」

 

提督「暑いのが平気そうだからか?」

 

響「そう」

 

提督「平気というわけじゃないが、夏という季節自体は好きだからな」

 

響「そうなんだ」

 

提督「お前はどうなんだ?」

 

響「響?」

 

提督「ああ」

 

響「響は寒いの以外ならなんでも……」

 

提督「もしかして、ロシアの名前で呼ばれたがらないと関係があるのか?」

 

響「ん。他の鎮守府の響は分からないけど、やっぱり生まれ持った名前の方が響はいい」

 

提督「そうか」

 

響「それに」

 

提督「うん?」

 

響「こっちの名前の方が日本の艦って自覚できるから……」

 

提督「そうか」

 

響「あと」

 

提督「まだあるのか」

 

響「不死鳥という渾名も響は好きじゃない」

 

提督「ほう。それはまたなんで?」

 

響「もう響は沈まないし、沈まされることもないから」

 

提督「……」

 

響「信じていいよね?」

 

提督「その信頼、裏切るわけにはいかんな」

 

響「む。もっと優しく言って欲しい」

 

提督「優しく?」

 

響「そう。女の子に言うみたいに優しく」

 

提督「ふむ……」ポン

 

響「ん……♪」

 

提督「約束だ」ナデ

 

響「満点」

 

提督「それは、嬉しいな」

 

響「ご褒美に響のこと貰ってもいいよ?」

 

提督「お前は既にこの鎮守府の、俺の所有物だ」

 

響「わざと意地悪な言い方しないで欲しいな」プク

 

提督「ふっ、悪い。大事な子だ」ポンポン

 

響「むぅ……今は、それで満足してあげるよ」

 

提督「ありがとう」

 

 

提督「さて、帰るか」

 

響「もう?」

 

提督「涼しいが、夜風に当たりすぎるのも良くないからな」

 

響「そっか」

 

提督「ああ。お前にも風邪をひいて欲しくないからな」

 

響「なら仕方ないね。じゃあさ」

 

提督「ん?」

 

響「基地に帰るまでさ、今度は肩車して欲しい」

 

提督「なんだ。急に小さい子供みたいだぞ」

 

響「ちょっと高いけど、大人の視点で景色を見たいんだ」

 

提督「別に大人ぶらなくてもいいぞ?」

 

響「いいの。して?」

 

提督「分かった分かった。ほら」ヒョイ

 

響「わっ……高い」

 

提督「怖いか?」

 

響「ううん。気持ちいい」

 

提督「ならよかった」

 

響「大佐はいいな。こんな視点で世界が見れて」

 

提督「羨ましいか」

 

響「少しね。でもこの状態の方がいいこともあるよ」

 

提督「なんだ?」

 

響「……」グイ

 

提督「んむ……」

 

チュ

 

響「好き、有り」

 

提督「何か日本語が違う気がするが……全くませた子だ」

 

響「ふふ~♪」




秋雲好きなんだけど、響もやっぱり可愛い。


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第25話 「敵」

本当に今更ですが、この作品に出てくる深海棲艦は全て音節文字は全て平仮名を使って普通に喋ります。
理由は単純に、筆者が読んでみて読み難いと思ったからという酷く主観的な理由によるものです。
片仮名の方が雰囲気あるのですが、それだと個人的に感情が伝え難いのです。
はい。完全に筆者のスキル不足なわけです。

それでも良いよという甘い方はどうぞ。


扶桑「敵機来襲! 深海棲艦です!」

 

大佐「来襲......レ級か」

 

加賀「絶対防衛線10㎞まで迫っています」

 

大佐「全艦隊、第一種戦闘配置。訓練生はただちに避難。急げ」

 

加賀「また来ましたか」

 

扶桑「もう。こりごりです......」

 

大佐「そうだな。高速艇の準備を急げ」

 

加賀「行くのですか。個人的にはやはり支持できません」

 

大佐「気持ちは分かる。だが、現状これが最善なんだ」

 

扶桑「でも......もしもの事があったら......」

 

大佐「そうならない為に細心の警戒をもって守ってくれているだろう?」

 

加賀「それでも100%安全ではありません」

 

大佐「それはそうだ。......まぁ、もしもの事があったら......思うままにしたらいい」

 

扶桑「そんなこと言って......ズルイですよ」

 

加賀「自暴自棄になって特攻するとでも?」

 

大佐「やはりお前たちは頼りになるな。その時は皆を頼むぞ」

 

扶桑「ふぅ......了解です」

 

加賀「任せて下さい。絶対に何も起こらせません」

 

大佐「よろしい。では出撃」

 

 

~絶対防衛線まで3kmの海域

 

ル級「レ級、鎮守府の絶対防衛線までもうすぐよ」

 

レ級「うん! そうだね! 今日は攻撃できるといいな!」

 

タ級「全く......毎回空振りになって部下を宥める身にもなってよ」

 

レ級「いいじゃん。この前できたばかりの海軍の基地攻撃できたんだから」

 

タ級「そうだけど、あの後熟練の応援部隊が来て私の隊半分以上沈んだのよ」

 

ル級「え、そんなに?」

 

レ級「ああ、あの時の......。あれはきっと本部か、最前線の基地の部隊だね」

 

タ級「ええ。相手にもダメージは与えたけど痛み分けにはちょっと足りなかったわ」

 

ル級「私参加しなくて良かったぁ......」

 

レ級「あはははははは。なにそれ。沈まないと転生できないのに」

 

ル級「そうだけど......やっぱり負けて沈むのは悔しいもん」

 

タ級「それは同意」

 

レ級「二人とも、そんな事気にしてたらいつまでたっても同じ事の繰り返しだよ!」

 

ル級・タ級「......」

 

レ級「気にせず行こう! 沈めるか沈まされるか、僕達はそれを楽しまないと! それしか楽しみがないんだから!」

 

ル級「難儀だよね。深海棲艦って......」

 

タ級「そうね。この苦労、仲間しか分かってもらえないのが辛いわ」

 

 

~絶対防衛線

 

レ級「一番乗りぃ! お、今日は大佐いない? いよいよヤれちゃう?」ウキウキ

 

タ級「そうなの? やっとここと戦えるのかしら」

 

ル級「なんか強そうな艦隊持ってそうな提督だったからなぁ......間に合って欲しかったけど」

 

レ級「まぁ仕方ないね! それじゃ、早速k」

 

提督「待て」

 

タ級「あ」

 

ル級「良かったぁ」

 

レ級「あらぁ......。間に合っちゃったか」

 

提督「全く何度も何度も......。やはりこの緊張感だけは慣れない。心臓に悪い」

 

レ級「良かったじゃん間に合って。だから今回も攻撃しないよ?」

 

提督「基地の絶対防衛線を超えるまでに俺が間に合えば攻撃しない、か」

 

提督「約束を守ってもらって助かるが、それでも予告なしの来襲はやはり辛いな。間に合う保証がない」

 

レ級「だから面白いんじゃん」

 

ル級「そんなのレ級だけだよ......」ボソ

 

タ級「私も、ギャンブルはあまり好きじゃないわ」

 

レ級「う......ふ、2人とも~」

 

提督「なぁ」

 

レ級「うん?」

 

提督「ここまで意思疎通ができて話も通じるのだから、和平の道は考えられないのか?」

 

レ級「大佐と、だけならいいよ」

 

提督「それは受け入れられない」

 

レ級「それじゃ無理だね」

 

提督「何故だ。何故そこまで......」

 

レ級「もう何度も言わせないでよ。僕達は戦うしかないんだから」

 

タ級「大佐には悪いけどレ級の言うとおりね。深海棲艦になった時点で敵として戦うしか道はないわ」

 

ル級「私はもう飽きてきたからこのままで仲良くなってもいけど......」

 

レ級「個人的になら勝手にすればいいと思うよ。でもね、全体は無理だよ。僕たちは戦って沈まないとまた艦娘として転生できないし」

 

タ級「戦って艦娘を沈めないと仲間もできないからね」

 

提督「だからこそ双方に被害が出ないように話し合いという考えはできないのか?」

 

ル級「無理じゃないかな......だって海軍が私達のこと敵だと断定してるし」

 

レ級「それに敵がいないと海軍の存在意義も弱くなるしね!」

 

提督「例え敵がいくなっても、常に国防に努めるのが軍というものだ。立場は弱くなるだろうが、存在意義が弱くなることなど有り得ない」

 

タ級「大佐の理想は嫌いじゃないわよ? でもそれは難しいってどうしても思っちゃうの」

 

ル級「元艦娘だからね......私なんて元々本部にいたから内部事情を常にその身に感じていたわ」

 

レ級「ごめんね? 大佐。そういうわけだから僕は無理だと思うな!」

 

提督「俺は......諦めない」

 

レ級「大佐のそういう頑固なところ、可愛くて僕好きだよ。だからこんな関係になれたのかもね」

 

タ級「初対面の時は、あんなに話が通じなかったのに不思議なものね。一目惚れってやつかしら」

 

ル級「え。そ、そうなの......?」

 

レ級「もうやめてよ恥ずかしいなぁ♪」

 

提督「......」

 

ヲ級「あのーお話し中のところ悪いんだけど、戦わないならもう私達帰りたいんだけど......」

 

レ級「あっ、ごめんね! じゃ、大佐。僕達もう帰るね」

 

提督「ああ......」

 

レ級「大佐が約束を守ってくれる限り僕たちは此処を攻撃しないから、しっかり守ってね。名実ともに!」

 

タ級「大佐、また会いましょ」フリフリ

 

ル級「迷惑掛けちゃってごめんね」ペコリ

 

レ級「じゃーねー!」

 

ヲ級「お邪魔しました」

 

 

提督「......悪意の無い敵意か」

 

加賀「お疲れ様です」

 

扶桑「全く、私達には目もくれない癖にあの人達は......」

 

提督「さて、帰ろう。今日は疲れた」

 

加賀「お風呂沸かしますか?」

 

提督「何故お前が沸かす?」

 

扶桑「えっと......じゃぁ寝ます?」

 

提督「何故照れながら言う? 一緒には寝ないからな」




はい。というわけで本作初登場の深海棲艦でした。
元々無機的なイメージがありましたが、それだと寂しいのでちょっと手を加えてみました。
悪意はないのに敵意はあるってやりにくい感じがしませんか?なんて。


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第26話 「お風呂」

提督の執務室の隣の部屋は居住区になっています。
入渠用の大浴場に提督が入るわけにはいかないので、その部屋には浴室もあります。
大浴場しか入ったことがない駆逐艦達は個人用のお風呂を持つ提督がちょっと羨ましいみたいです。



弥生「大佐の部屋ってお風呂があるの?」

 

提督「ああ」

 

弥生「弥生達が使ってるお風呂とは違うの?」

 

提督「個人用の風呂だ。普通の風呂だからお前たちが入っても傷とかは癒えない」

 

望月「ズルよね~大佐だけさ。わたし達は大人数向けの大浴場なのに」

 

提督「何を言うんだ。浴槽が広い方がゆっくり全身が湯に浸かれるし、一人じゃないから仲間と会話だってできるだろ」

 

提督「個人用の風呂はプライバシーが守られていいかもしれないが、それでも偶には俺も広い風呂でのんびり湯に浸かりたいと思う時はある」

 

秋雲「なになに? それじゃ大佐は秋雲達とお風呂に入りたいってこと~? セクハラじゃん♪ いいの?」

 

提督「明らかに悪戯を楽しむような顔をしてよく言う。誰がお前たちと入りたいと言った」

 

不知火「つまり一緒に入りたくないほど不知火達の事は好きではないと」

 

提督「あからさまな曲解をするな。その理屈だと好きなら一緒に入るのが当然みたいだぞ」

 

天津風「わ、わたしは別に......大佐がそうしたいなら......いいのよ?」

 

文月「わ、だいた~ん」ポ

 

提督「別に入りたいとは思ってない」キッパリ

 

天津風「ガーン!」

 

谷風「ちょっとぉ、そこは男らしく『お前となら......』と言うべきところじゃないですかねぇ♪」

 

提督「馬鹿者が。いいか? 軍人が、お前たちの上司が、しかも男が異性と一緒に風呂に入るなんて余程親密な仲か、混浴でもないと有り得ん」

 

雷「ふ~ん、じゃあ混浴ならいいのね」

 

提督「一緒に入っても大丈夫だと思える人ならな」

 

大潮「大佐は違うのですか?」

 

提督「違う。俺は夫婦くらいの仲でない限りそういうのは遠慮したい方だ」キッパリ

 

荒潮「大佐は私達駆逐艦は結婚の対象とは見てくれないのかしら~?」

 

提督「すまんが......子供は、な......」

 

菊月「私達も......成長すれば、それなりの女になるはずなんだが......な?」ボソ

 

提督「艦娘が成長して姿変わるというのは聞いた事がないが......」

 

暁「えぇ!? じゃあ暁たちは、ずっと真のレディになれないってこと?」

 

村雨「それは困るわね~」ニヤニヤ

 

白露「そうだねぇ。わたしもいつまでも子供のままは嫌だなぁ」フンス

 

夕立「夕立大人じゃないっぽい?」テンネン

 

時雨「僕もまだまだ子供みたいだ」シレ

 

長月「......なぁ。あの4人、明らかに私達とは違って、体が女らしいとは思わないか?」

 

子日「そういえば......そうかも」

 

五月雨「上位改装を受ける前とは明らかに姿が......というより、体が成長していると思います」

 

響「不公平だ......なんで響だけ......」ズーン

 

ポン

 

Z1「僕達もいるから」

 

Z3「非常に不本意だけどね」

 

島風「4人だけズル~イ!」

 

雪風「島風ちゃん落ち着いて。逆に考えるんです」

 

綾波「逆?」

 

雪風「はい、そうです。確かに子供の姿に近いわたし達とは結婚はし難いかもしれません。だけど」

 

黒潮「なんや?」

 

雪風「だけど、親と子供位の見た目の差なら逆に一緒にお風呂入っても問題もありません!」

 

漣「なるほど!」ポン

 

提督「なるほど、じゃない。問題大有りだ」

 

敷波「え? そうなの?」

 

提督「親子とかならまだしも、そうでもないのに幼子と一緒に風呂に入る大人なんて、今の社会では単に犯罪者予備軍としか見なされない」

 

叢雲「まぁ、そうでしょうね」

 

初春「大昔なら十二やそこらで結婚とかも有りだったのじゃがな」

 

提督「それとて限られた力ある者の、政略という形でのみ成立していた事柄だ」

 

若葉「世の中は......厳しいな」シュン

 

提督「いや、俺はこの程度の倫理は必要だと思うが」

 

電「電は......やっぱり、ちょっと残念なのです」

 

如月「これはばかりは仕方ないわよ。さぁ、皆今回は諦めて解散しましょう? 大佐も困ってるし」

 

駆逐艦一同「え~?」

 

如月「私に少し考えがあるの」ヒソ

 

不知火「! 仕方ありませんね。一同解散!」

 

駆逐艦一同「了解!」ビシッ

 

提督(やけに潔く引き下がったな。これは、何かあるか?)

 

 

~夜、執務室

 

提督「ふぅ......」ガラ

 

皐月「キャーー!えっちぃ!」ゼンラ

 

提督「 」

 

電「はわわ......み、見られてしまいました」ゼンラ

 

初雪「まぁ、大佐もわざとじゃないし。ハプニングなら仕方ないよね」ゼンラ

 

提督「......お前たち直ぐに服を着ろ。説教だ」




これは提督は悪くない! はず。
この後この3人と策を授けた首謀者はみっちりお説教をされたらしいです。


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第27話 「理由」

今日は秋雲が秘書艦です。
秋雲はさっきからチラチラ提督を見て何かの機会を伺っているようです。
何を狙ってるんでしょう。


秋雲「ねえねえ大佐ぁ」

 

提督「うん?」

 

秋雲「大佐いつか言ってたのよね? 胸が小さくても可愛いならそれでいい、って」

 

提督「......なんなんだ。藪から棒に」

 

秋雲「いやー前さ、わたし達駆逐艦は子供っぽいから結婚はやり難いとか言っちゃってたけど」

 

秋雲「ぶっちゃけ秋雲は姿こんななだけで、中身は結構大人だったりするわけよ」

 

提督「それで?」

 

秋雲「だ・か・ら! 大佐が胸が小さくても可愛いなら、っていうなら......秋雲もありじゃない?」ヒソ

 

提督「耳元で囁くな。加賀に教えてもらったのか」

 

秋雲「まぁいいじゃんいいじゃんそんな事ぉ。で、どう? ありでしょ? ぶっちゃけ」

 

提督「......ふぅ。確かに見た目だけで判断するのは失礼だな。それは認めよう」

 

秋雲「ならならー」

 

提督「だが、お前は軽い感じがするから恋愛の対象とし見るのは些か難しい」

 

秋雲「えーっ、そんなぁ! いや、秋雲これでも尽くす方よ? 好きな人には一途なんよ?」

 

提督「そういうのがお前は......まぁ、それがお前か」

 

秋雲「分かってんじゃーん♪」グリグリ

 

提督「仕事の邪魔をするな。あと、お前も秘書なんだからしっかり手伝え」

 

秋雲「アイサイサー。じゃま、交渉成立っと♪」

 

提督「......凄まじく気軽な交渉だったな」

 

秋雲「でも大佐受け入れてくれたっしょ? 秋雲の本気は分かってくれたでしょ?」

 

提督「お前は嘘はつかないからな」

 

秋雲「そういうこと♪ ふっふ~♪」

 

 

――昼過ぎ

 

秋雲「おっわりぃ!」

 

提督「あの量を......お前は意外に事務作業が得意なんだな」

 

秋雲「意外は余計、とは言わないっ。そういう風に見えるだろうなってのはわたしも分かってるからねぇ」

 

提督「やはり、暇さえあればスケッチブックに向かう奴は違うな」

 

秋雲「いや、流石にその表現は無理あるっしょ。いくら秋雲でもイラストのスキルを書類作成に変換する才能なんてないから」

 

秋雲「ま、紙に向かうのは好きだけどね♪」サラサラー

 

提督「何を描いているんだ?」

 

秋雲「レ級ちゃん」

 

提督「よりよってなんてものを......」

 

秋雲「え? ダメ? あの子面白いんだよー?」

 

提督「良い悪い以前に海軍としてのモラルの問題だ」

 

秋雲「そんな硬いこと言わないでよー。絶対外には漏らしたりしないからさ」

 

提督「程々にしておけよ?」

 

秋雲「アイサー! さんきゅー♪」

 

 

提督「それにしてもあいつが此処に現れてから俺たちの深海棲艦に対する印象も大分変ったものだな」

 

秋雲「あいつ? ああ、レ級ちゃんね。そうだねーまさか、襲ってきたのに悪意はないなんてねぇ」

 

秋雲「わたし達ってお互いに恨み恨まれるくらいの敵対関係だと思ってたから」

 

提督「そうだな。だがそれが......」

 

『恨みとかなんてないよー。ただ、これしかやる事がないかやってるだけ―』

 

秋雲「だもんね」

 

提督「正直あれには本当に拍子抜けした」

 

秋雲「でもあの後の大佐の言葉にもわたし達は驚かされたよー」

 

『なら俺は絶対にお前たちとは戦わない」

 

秋雲「秋雲はあれもちょっと無いと思うなー。あ、良い意味で、だけどね」

 

提督「あんないい加減な理由で宣戦布告来た事が頭にキタからな」

 

秋雲「そのあとレ級ちゃん、提督が最初してた顔と同じ顔になったと思たら急に笑い出したよね」

 

『面白い提督だね! じゃぁさ僕達と大佐との間でルール作ろうよ! 遊びの一環みたいなやつ!』

 

提督「まさか、あんな提案をしてくるとはな」

 

秋雲「いやー経緯はどうあれ、秋雲あれはあれで結構有り難いもんだと思うよ?」

 

提督「......まぁな」

 

秋雲「レ級ちゃんあんなんだけど多分あの子無茶苦茶強いよ」

 

提督「あいつが従え(?)てた戦艦や空母も全てフラグシップだったな」

 

秋雲「いや、わたし達も負けるつもりはないけどさ。ありゃ、下手したら轟沈も有り得るもんね」

 

提督「......沈んだら深海棲艦になると知ってどう思った?」

 

秋雲「ん? まぁ、最初はやっぱりショックだったよ。でもね、時間が経つにつれて直ぐに頭も冷静になってきた」

 

提督「そうだったのか?」

 

秋雲「うん。秋雲だけじゃないよ。皆そんな感じだった」

 

提督「ほう」

 

秋雲「多分皆心の何処かでは気付いてたんだろうねぇ。何となくお互いに通じるものがあるって事にさ」

 

提督「怖くはないのか?」

 

秋雲「ん? 沈んで深海棲艦になっちゃう事?」

 

提督「ああ」

 

秋雲「それはへーき。だって大佐の事、信じちゃってるからねぇ」クス

 

提督「頭が下がる思いだ」

 

秋雲「やめてよー、むず痒いじゃん♪」

 

提督「だが、その信頼には応えないとな。実際レ級達以外では問答無用で攻撃してくる深海棲艦もいる」

 

秋雲「ま、そういう降りかかってくる火の粉的なモノは払うしかないよねぇ」

 

提督「そうだ。敵の目的はどうあれ、俺たちの義務はこの海の平穏を維持することだからな」

 

秋雲「......攻略命令で自分の縄張り荒らされる深海棲艦も同じことを考えてるかもね」

 

提督「そういう恨みつらみは全て俺が受ける。その為の提督だ」

 

秋雲「お、カッコイイ♪ 流石大佐!」

 

秋雲「......でももね、わたし達も大佐の事は絶対守るから安心してよねっ」

 

提督「ああ。お蔭で俺は最近ずっと安眠できている」

 

秋雲「ぷっ。それ、つい最近そうなっただけじゃん」

 

提督「それでも信頼してるのは変わりない」

 

秋雲「艦娘冥利に尽きるねぇ♪ んじゃま、せっかく恋人にもなれた事だし、親睦の証として一緒にお風呂でも入りますか!」

 

提督「出て行け。直ぐにだ」

 

秋雲「冗談だって♪」




秋雲回でした。
秋雲可愛い、潮も可愛い、不知火も......駆逐艦は種類が多いだけあって魅力的なこもたくさんいるから困ります。


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第28話 「保護」

提督が日課朝練の準備をしていると、見覚えのない艦娘がこっちに向かって来るのが見えました。
よく見ると全身がボロボロです。
何があったんでしょう。



~早朝、鎮守府正面入り口

 

提督(曙はまだ来てないみたいだな。ストレッチをして少し体をほぐしておくか)

 

提督が軽くストレッチをしていると正面から一人の艦娘がやって来るのが見えた。

最初は曙かと思ったが、自分の方が先に来ているはずなので基地とは反対の方向から来ることは有り得なかった。

 

提督「ん......?」

 

提督(あれは......夕雲か? 確か俺の艦隊にはいないはず......だとすると)

 

夕雲「......」トボトボ

 

トン

 

夕雲「っ!?」

 

提督「艦娘だというのに正面にいる人間にすら気付かないとは......」

 

夕雲「あ......」

 

提督「君は此処の艦娘じゃないな。何処から来た? 何か用向きでも?」

 

夕雲「う......その......」ブルブルカタカタ

 

提督「俺が怖いか?」

 

夕雲「......」コク

 

提督「そうか。まぁ大体察しはついた。信じろとは言わないが、悪い様にはしないから一度基地に来ないか?」

 

夕雲「......何も......しない?」

 

提督「君が元居た場所でされた事のことを言っているのなら、それはここでは有り得ない」

 

夕雲「......案内を......お願いします」

 

提督「分かった。着いて来なさい」

 

 

~執務室

 

長良「大佐、この夕雲の子は? うちにはまだいなかったよね?」

 

長門「その筈だ。という事は......」

 

提督「結論を急くな。先ず話を聞け」

 

夕雲「......」

 

提督「今朝、本部からある鎮守府で艦娘の反乱が起こり、それを鎮圧したとの報せが届いた」

 

長良「は、反乱?」

 

叢雲「なるほどね。そこの鎮守府の提督、やっちゃったのね」

 

初春「妾達は提督との絆が深いほど自身が持つ力を発揮できる。そしてその絆は団結力、提督への忠誠心にも繋がるのじゃ」

 

長門「という事はそこで起こった反乱というのは」

 

叢雲「大方、そこの提督が誤った行動・行為を取り続けて艦娘との絆どころか、憎悪を買ってしまったのでしょうね」

 

長良「そんな事有り得るの? その、わたし達が提督に手を掛けちゃう事なんて」

 

初春「親しくなれなくても普通に接していれば、基本、妾達にはそのような考えは思い浮かぶことは無い」

 

長門「そこの提督がよほど悪辣だったと?」

 

提督「それは、夕雲に聞けば分かるだろう」

 

提督「夕雲、辛いだろうが首を振るか頷くだけでいい。そこで提督から虐げれていたのか?」

 

夕雲「大丈夫です......話せます」

 

夕雲「私達の扱いは、詳しくは言えませんが......酷いものでした......」

 

夕雲「逆らう意思を持ち切れないことをいい事に......本当に......うっ......」

 

長良「ねぇ、大佐。そんな提督が本当にいるものなの?」ワナワナ

 

提督「居てはならない。そうしない為にも海軍も厳しい選考をしているし、各鎮守府への査察も定期的にも抜き打ち的にも行っている」

 

提督「流石に『提督になれる』適正が有るだけでは、採用したりはしていない」

 

長良「じゃぁ、どうしてです?」

 

提督「稀に居るんだ。お前たちが女なのをいい事にそれだけを求めて、外面を完璧に取り繕って、内に秘めた醜い願望を悟らせない男が採用されることが」

 

長良「そこまでしてるのに何で......!」

 

提督「ここ数年ではなかった事だ」

 

長門「......そこにいた他の艦娘と提督はどうなった?」

 

提督「提督だった男は遺体となって発見。他の艦娘の大半は自主投降をした。処分は全て解体。一部の者は頑強に抵抗するも鎮圧された。そして......」

 

提督「この連絡書によると、一名のみ見つかってないらしい」

 

叢雲「それが......」

 

夕雲「はい。私です......」

 

初春「よくここまで来れたの」

 

夕雲「何処でもよかったんです。でも暫く逃げてたら見覚えのある基地の明かりを見つけてそれで......」

 

長良「保護を求めに来たのね!」

 

夕雲「いいえ」フルフル

 

長門「む......」

 

夕雲「反乱に加担しなかったとはいえ、仲間はやってはならない事を犯しました。これは連帯責任です」

 

提督「なら、何故ここに?」

 

夕雲「最初は逃げたい一心でしたけど......最後に安心が出来るところを求めていたのかもしれません」

 

夕雲「現に大分落ち着きました。提督、ありがとうございます。今は心穏やかです。もう解体処分も悔いなく受け入れることが出来ます」

 

提督「海軍に所属する艦娘として軍法に則った処分を望む、か」

 

夕雲「......」コク

 

長良「提督......!」

 

叢雲「長良さん、待ちなさい」

 

提督「長門?」

 

長門「......うむ」コク

 

提督「村雲、初春?」

 

叢雲「賛成よ。だから好き」

 

初春「無論。妾も叢雲と同じである」

 

提督「長良は......まぁ、必要ないな」

 

長良「さっきから何を言ってるの......?」

 

夕雲「......?」

 

提督「夕雲」

 

夕雲「は、はい」

 

提督「これからは俺の事を大佐と呼びなさい。君の身柄は今日よりうちで預かる」

 

長良「大佐ぁ!」パァ

 

夕雲「そんな......! でも、無理です。私達には全て所属する鎮守府の認識番号が登録されていて......」

 

提督「そのデータは抹消し、改めてうちのものへと書き換えた物を発行する。問題ない」

 

長門「そんな大それた事......できるのか?」

 

提督「他の提督には悪いが、こういう時はコネを使わせてもらう。褒められた事ではないと分かっているがな」

 

長良「コネって......そんな事ができちゃう偉い人と知り合いなの?」

 

提督「ああ、幸運にもな」

 

夕雲「誰......にそんな事、頼む......つもりですか?」

 

提督「大本営本部の中将、親父殿に頼む」




少しドラマチックにしてみました。
けど、次の話であっさり終わる予定です。
可愛そうな子を助けるシーンてやっぱり胸熱な展開ですよね」


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第29話 「電話」

早速大佐は夕雲の件で本部の中将、通称『親父殿』に電話を掛けます。

*終始男だけの会話です。
*BLじゃないよ!


中将『儂だ』

 

大佐「中将殿、お久しぶりです」

 

中将『おお!? その声、若造か!』

 

大佐「ええ、そうです。相変わらずその呼び方ですか」

 

中将『うははは! 儂とお前の仲だろ? お前も儂のことは昔の様に親父と呼んでくれ』

 

大佐「それは流石に......親父殿、では?」

 

中将『相変わらず堅苦しい奴だな。まぁいいよ、それで。で、何か頼み事か?』

 

大佐「お見通しですか。実は恥を忍んでお願いしたい事が――」

 

 

中将『なるほどな。夕雲はそっちに居たのか』

 

大佐「ええ、できましたら」

 

中将『ああ、いいぞ』

 

大佐「え?」

 

中将『夕雲の奴をお前の所に所属させたいんだろ? 識別番号とかの書き換えとかは全部こっちでやっておいてやる』

 

中将『勿論、調査報告書も解体処分に改ざんしておくから心配するな』

 

大佐「......話が早くて助かりますが、その......」

 

中将『調子が良すぎて逆に不安か? ははははは! まぁそうだろうな。』

 

大佐「何か理由が?」

 

中将『おう。その件だがな。投降してきた艦娘達から事情聴取をしてみりゃ、その殺された馬鹿野郎の、まぁ下衆なことよ!』

 

中将『証言だけだとちょい厳しかったとこだが、あいつら物証も自分自身を使ってまで証明しおったのよ』

 

大佐「では、もしかして結果報告の解体処分というのは......」

 

中将『嘘だ。情状酌量の余地十分に足るって元帥殿まで口添えしてくれてな! まぁ、報告書に関しては海軍としての体裁もあるからな』

 

大佐「では、解体されてないんですね」

 

中将『そうだ。皆こっちで面倒見ることになった』

 

大佐「そうですか。では、実際に処分されたのは現地で抵抗した艦娘だけだったんですね」

 

中将『いや、そいつらも生きてるぞ』

 

大佐「え?」

 

中将『うははははは! 柄にもなく間抜けな声を出しおるわ! そんなに驚いたか?』

 

大佐「それはもう......。では、その艦娘達はどうしたのですか?」

 

中将『儂が説得した』

 

大佐「は?」

 

中将『あのガキども、半人前の癖に儂ら鎮圧部隊を前にしてもいっちょまえに自分達の主張を一歩も譲らなくてな』

 

中将『怖くて震えてる癖に目に涙を貯めて逆に儂らを睨み返してきやがったのよ! その様に感心して儂は――』

 

大佐「説得を呼びかけた、と?」

 

中将『いや、直接説得しに行った』

 

大佐「......冗談ではないんでしょうね。丸腰で、ですか?」

 

中将『当たり前だろ! あそこで行かなければずっと後悔していたわ!』

 

大佐「興奮状態の艦娘相手によく丸腰で行きましたね」

 

中将『絶対に説き伏せる事ができると確信していたからな!』

 

大佐「......ふぅ。流石としか言えません」

 

中将『ははははは! そう褒めるな! 照れる!』

 

大佐「しかし安心しました。夕雲の奴は自分だけ生き残ったと思ってるので、自分だけ処分を免れる事にまだ抵抗を示していましたから」

 

中将『そうか。あいつらが言ってた通りに、真面目な奴だったんだな』

 

大佐「同僚たちはなんと?」

 

中将『皆口を揃えて夕雲だけは最後まで話し合いか本部へ直接訴えるべきだと皆に反論していた、と言っていたな』

 

大佐「そうですか」(夕雲が言っていた事は本当だったんだな)

 

中将『そういうわけだから、仲間の事は気にするなと言っておいてくれ』

 

大佐「分かりました。こちらの無理をお聞き届け頂き心から感謝致します」

 

中将『よせよせ! 気にするな、大した事はしてないわ!』

 

中将『じゃあ、もう用がないなら切るぞ。今度は電話じゃなくて手土産でも持って来い。久しぶりに酒を飲もうじゃないか!』

 

大佐「ええ。その時は是非」

 

中将『おう。それじゃあな!』

 

大佐「ええ、何れまた。親父殿もお達者で」

 

ガチャ

 

 

大佐(ふぅ......。親父殿には頭があがらないな。返せてない恩がまた増えてしまった)

 

提督「だが、あまりにも理想的な結果だ。夕雲の奴、喜ぶだろうな」




後にこの事を知った夕雲は大泣きして喜んだそうです。←それを書けよ!


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第30話 「おねだり」

金剛が家具をおねだりしてるようです。
でも提督は渋っているご様子。


金剛「Buy プリーズ!」

 

提督「だめだ」

 

金剛「お願いヨ大佐! ティーセットが欲しいデス!」ジタバタ

 

提督「お前もう持ってるだろ?」

 

金剛「ワタシが欲しいのは金剛 only のスペシャルなティーセットなんデス!」

 

提督「そんなものが存在するわけないだろ。艦娘専用ならともかく、戦艦の、それもお前だけの為のティーセットなんて」

 

金剛「あるヨ! ほらこのカタログを Look プリーズ!」

 

提督「......」パラパラ

 

金剛「ほら! ココ!」

 

提督「......」ビリ

 

金剛「ファッ!?」

 

提督「ないな」

 

金剛「嘘ヨ! 今あからさまにページ破ったデショ!?」

 

提督「そうか?」シレ

 

金剛「Why!? ナンデ買ってくれないデスカ!」ジタバタ

 

提督「お前の給料でも直ぐに買えない高価な代物など御免だ」

 

提督「大体この部屋には合わないだろ」

 

○提督(リアル筆者)の部屋

・床:い草の畳

・壁:新緑の壁紙

・机:床の間

・窓枠:障子デラックス

・装飾:掛け軸「海上護衛」

・家具:しょうぶ和箪笥

・おまけ:調理台(オリジナル設定)

 

金剛「Kichen だけ明らかにおかしいヨ!? コレと交換するヨ!」

 

提督「だめだ。これは俺の数少ない趣味の一つなんだ」

 

金剛「じゃあ買ったあと、ワタシの部屋に置いたらいいネ!」

 

提督「お前の部屋は四人部屋だろ? あんな大きい物、部屋に置いておけるわけがない」

 

金剛「No! 大佐のケチー! 買ってヨー!」

 

提督「子供か......」

 

高雄「金剛さん、ワガママを言ったらだめですよ?」

 

金剛「うぅ......高雄ォ......でも、デモ......」

 

高雄「私もこれで我慢してるんですから♪」

 

と高雄はこれ見よがしに、以前提督に買ってもらったドレッサーの写真が乗っているカタログのページを指さした。

 

金剛「ちょっ、大佐ァ! 高雄だけズルいヨ!」

 

提督「女は身だしなみに気を遣う物だろ? その点高雄の希望は筋が通っていた」

 

金剛「そんなァ! ワタシも英国で生まれた Lady として嗜みが必要なんデス!」

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

夕雲「大佐......なら私の部屋に置いてはどうです? 私の部屋なら最近空けて貰ったばかりで物もありませんし......」

 

金剛「夕雲ォ!」パァ

 

提督「購入資金はどうする? 高いぞ、これ」

 

夕雲「大佐に拾って頂いた恩もありますし、それにお金なら一応前の所で貰ってた分が蓄えとして結構あるので......」

 

提督「しかし、お前にそこまでさせるのもな」

 

金剛「そう......ネ。部屋の事までは嬉しかったケド、流石に money の事まで頼っちゃうのは悪いワ」

 

夕雲「金剛さん......大丈夫ですよ」

 

金剛「え?」

 

夕雲「このお金は金剛さんに貸付るだけですから」

 

金剛「カシツケ......? 借金?」

 

夕雲「勿論、利息は取りません」ニコ

 

金剛「......」

 

提督「おい、お前たちちょt」

 

金剛「I understand! 分かったワ! 夕雲、お願イ!」

 

夕雲「ふふ、畏まりました、金剛さん♪」

 

提督「......」(後で霧島と榛名に怒られても知らんからな)




案の定、金剛はこっぴどくこの後年下の妹二人に怒られました。

筆者の提督の部屋は、和風の家具を購入できる様になってから一貫して和風の雰囲気です。
ただ、ティーセットは妙な圧力を感じて買ってしまったんですよね......。
使ってませんがw


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第31話 「お菓子」

前の練習(*第一部 第24話参照)で、付き合って貰ったお礼に提督はイクにお菓子をプレゼントする約束をしていました。
今日は、本番で協力(第一部 第17話参照)してくれたZ1も誘って、提督は2人にお菓子を振る舞うことにしました。


イク「大佐、約束通り来たの!」

 

提督「よく来た。出来上がってるぞ」

 

テーブルの上には言葉の通りできたのカステラが乗っていた。

 

イク「わぁ、美味しそうなの♪」

 

Z1「ホントだ......でも、僕も呼ばれちゃってよかったの?」

 

提督「二人には水泳大会の時に世話になったからな。これは礼だ」

 

提督「イク、元々お前にしか菓子の礼の事は言ってなかったのに、俺の都合で頭数を増やしてしまって悪いな」

 

イク「そんなの気にしなくていいの! 一人だけだし、イクは大佐がお菓子のお礼を覚えてくれていただけで嬉しいの♪」

 

提督「そう言って貰えると助かる。レイス、そういう事だ。遠慮なく食べてくれ」

 

Z1「うん。ありがとう!」

 

イク「う~ん、甘くて良い匂いなの~♪」クンクン

 

Z1「本当にそうだね。出来たばかりのこの生地の匂い......堪らないね」ウットリ

 

提督「ほら、切り分けたぞ」トン

 

イク・Z1「いただきま~す♪」

 

パク

 

イク「んん! 美味しい!」

 

Z1「本当だ......これは予想外」

 

提督「なんだ、味を心配していたのか?」

 

Z1「あ、いやそうじゃないんだけど。ここまでの味だとは予想してなかったから」

 

イク「本当にそうなのよ。これはお店に並んでても許せるレベルなの」

 

提督「そうか......作った甲斐があった」

 

Z1(わ......大佐、本当に嬉しそうな顔してる。こんな顔もするんだ......)

 

イク(凄く優しい目なの。もうこれだけでも満足なの♪)

 

イク・Z1「......」ポー

 

提督「ん? どうした?」

 

Z1「え? あ......な、なんでもないよ?」パク

 

イク「そうなの♪」モグモグ

 

提督「......?」

 

 

――数十分後

 

イク「ご馳走様なの~♪」

 

Z1「本当に美味しかったぁ」

 

提督「ああ。美味しく頂いてもらってなによりだ」

 

イク「また食べたいの~♪」

 

提督「その時はまた誘ってやる」

 

イク「ありがとう! 大佐だ~い好きっ」!ギュ

 

Z1「あ、あの! ぼ、僕もまた......呼んで、くれる?」

 

提督「勿論だ」ポン

 

Z1「あ......うん。嬉しい。Dank......ありがとう」

 

イク「じゃぁ、大佐。また誘ってなの~」フリフリ

 

Z1「ご馳走様でした。失礼します」

 

提督「ああ」

 

バタン

 

 

~廊下

 

イク「美味しかったねぇ♪」

 

Z1「そうだね。とても美味しかった」

 

イク「全部食べたかったけどやっぱり残ってたのは自分の分だったのかなぁ」

 

Z1「大佐は一つも食べてなかったらね。きっとそうだよ」

 

イク「イク達が言うのも可笑しいけど、アレはゆ~っくり味わって食べて欲しいの♪」

 

Z1「そうだね。甘いものは元気が出るしね」

 

 

~深夜、執務室

 

筑摩「良い匂いですね。これは、お酒ですか?」

 

提督「そうだ。ブランデーで作ったシロップだ」

 

提督「本当は一日置いた方がいいんだが、まぁ塗ってから時間もそれなりに経ってるし風味はそんなに問題ないだろう」

 

霧島「ええ。良い香りです。でも、これはイクとレイスちゃんには出さなかったみたいですね」

 

提督「なんとなくだ。お酒が飲めないと知っていたわけではないが......まぁ、塗らなくても美味しそうにしていたしいいだろう」

 

金剛「んー、この香り堪らないネ♪」

 

榛名「食べた後にちょっとだけ喉が温かく感じます......不思議な美味しさです♪」

 

那智「これは......美味しいな」

 

提督「ま、せっかく作ったからな。ちょっとした大人のお茶会だ」

 

部屋いる艦娘「ありがとうございます大佐♪」




実は筆者は甘い物、特に洋菓子、カステラの類が好きではありません。

では何故書いたのか? というと、ブランデーのシロップを塗ったカステラは好きだからです(オイ


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第32話 「お誘い」

金剛・比叡・霧島の榛名も巻き込んだ(予定)デートの計画(*第二部 第21話参照)が動き出しました。
お伺いを立てるのは勿論、提案者の霧島です。


霧島「大佐、デートをしましょう」

 

榛名「 」←本日の秘書艦

 

提督「......ん」

 

霧島「ど、どうしました?」

 

提督「いや、霧島からそんな事を言われるなんてな。意外で」

 

霧島「わ、私だって偶にはそういう事を言ったりします。で、どうですか?」

 

提督「今更もう断ることはしない。いいぞ」

 

霧島「そうですか! それじゃぁ何時にしm」

 

榛名「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

霧島「あら、どうしたの? 榛名」

 

榛名「どうしたの? じゃないよ霧島! なんでこんな......」

 

霧島「私と提督のデートが気になるの?」

 

榛名「そうじゃ......! そうだけど......。だからって私の目の前でしなくても......」

 

霧島「安心して榛名。デートはお姉様達も一緒よ」

 

榛名「え?」

 

提督「なに?」

 

霧島「大佐、お願いの後出しのような形で恐縮ですが、私達4人とデートをして頂けませんか?」

 

榛名「4人って......わ、私も?」

 

霧島「さっきからそう言ってるじゃない」

 

提督「待て。お前たち姉妹全員と出掛けるのか?」

 

霧島「そうです。お願い、できますか?」

 

提督「いや、それは流石に行動はできたとしても男としてあまりにも節操がなさすg」

 

ギュ

 

榛名「大佐、そのデート......榛名からもお願いしたいです」

 

提督「榛名、お前まで......」

 

霧島(いいわ。でかしたわよ榛名!)ガッツポーズ

 

榛名「お願い......です。初めてのデートが全員一緒なら、榛名も心置きなく楽しめると思うので......」

 

提督「むぅ......」

 

ギュ

 

霧島「提督、私からも改めてお願いします。一緒にシテくださいませんか?」ジッ

 

榛名「大佐......」ウル

 

提督「ぐ......分かった」ガク

 

霧島「っ、ありがとうございます!」

 

榛名「大佐ぁ!」パァ

 

提督「じゃぁ......この日でどうだ? 少し遅くなるが、夕方くらいから」

 

霧島「ええ。了解しました!」

 

榛名「了解です♪」

 

提督「そうか。じゃあまたその日にな」

 

霧島「はい! それではお姉様達に知らせてきます」

 

霧島「大佐、本当にありがとうございました。失礼します♪」

 

バタン

 

 

提督「......ふぅ」

 

提督は溜め息を吐くと同時に深く椅子に座り直した。

 

榛名「あ、大丈夫ですか?」

 

提督「ああ。大丈夫だ。少し慣れない決断をして気疲れしただけだ」

 

榛名「やっぱり4人一緒だなんて、迷惑......ですよね。ごめんなs」

 

ポン

 

榛名「う......?」

 

提督「元々俺が硬派な所為もある。だが、それとて精神を頑強にする良い機会と考えれば......」

 

榛名「た、大佐?」

 

提督「すまん。つい自分に言い訳をしてしまった。まあなんだ、気にするな。俺も榛名達と楽しい思いでを作れるように最善を尽くす」

 

榛名「あ、ありがとございます」(なんか凄い気合を感じる)

 

提督「......すまん。こんな時に限って適切な態度を取る為にはどうしたらいいか頭が回らない」

 

榛名「え?」

 

提督「柄にもなく混乱しているんだ」ポリポリ

 

榛名「ふふ、相変わらずお顔からは分かり難いですね。大佐?」

 

提督「うん?」

 

榛名「こういう時は――」

 

ギュ

 

提督「ん......」

 

榛名「こうやって抱きしめて貰えると榛名は嬉しいし......落ち着きます」

 

提督「そうか」

 

榛名「大佐は、落ち着きました?」

 

提督「方法としてはあまり人前ではできないが......。そうだな、落ち着く」

 

榛名「......良かった♪」

 

 

~その頃の金剛の部屋

 

金剛「ワオ! 霧島、それ really !?」

 

霧島「ええ。間違いありません。約束してきました」

 

金剛「さっすがワタシの妹ね! 愛してルワ霧島ッ♪」ギュー

 

霧島「ん......もう。お姉様ったら♪」

 

比叡「ひぇぇぇ......。い、いきなり全員とデートですか。た、大佐もなかなかやりますね」

 

金剛「そうヨ、比叡。初めての Date が妹たちも一緒なんて素敵ネ♪」

 

比叡「それはわたしも同意見です! んー、デートかぁ......初めてだからなぁ......何着て行こうかな......」

 

霧島「え?」

 

金剛「What?」

 

比叡「え?」

 

霧島「......ねぇ比叡姉様」

 

比叡「?」

 

霧島「服っていつも着てる服じゃダメなんですか?」

 

比叡「えっ」

 

金剛「ワタシ、服はこれとパジャマしか持ってないヨ?」

 

比叡「......も、もしかして二人とも最初から普段着を着て行くつもりだったんですか?」

 

霧島「やはり問題が......?」

 

金剛「そ、そうナノ?」

 

比叡「いやぁ......それは流石に......」

 

霧島「くっ、どうすれば!? 何を着れば!?」

 

金剛「だ、だから服はこれシカ......」

 

比叡「ちょ......落ち着いて!」

 

霧島「落ち着けと言われても、これじゃぁダメなんですよね!?」

 

金剛「どうしよう......どうシヨウ......」ハンベソ

 

比叡「ふぅ......仕方ないです。不肖、この比叡が二人に服を選んであげます」

 

霧島「比叡お姉様!」パァ

 

金剛「ウゥー......比叡ィー!!」ブワッ

 

この日二人は比叡の意外な女子力の高さを目の当たりにする事となった。




まずはデートの誘いから。
それにしても榛名のヒロインスキル半端ないです。
始終甘い雰囲気、お蔭で筆者の心中は書いてる最中ずっとブリザードでした。

因みに榛名は見た目通り女子力高いので比叡に言われるまでもなく、私服を持っています。


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第33話 「から騒ぎ」

金剛姉妹とのクアッドデートの日、提督は定石に則り早目に待ち合わせ場所に居ました。
今回は提督よりは先に誰も来てなかったらしく、後ろから彼に呼びかける4人の賑やかな声に振り向きます。
そして暫し言葉を失いました。


金剛「大佐ァ!」

 

比叡「大佐、今日は宜しくお願いします!」

 

霧島「お待たせしました。大佐」

 

榛名「すいません。待たせてしまいました?」

 

提督「......」

 

霧島「大佐?」

 

提督「金剛と榛名は眼鏡を掛けて来たのか......伊達か?」

 

金剛「イエース! これもオシャレの一種だっテ比叡が言ってマシタ!」

 

榛名「私も同じ理由で......。大佐、その......似合ってますか?」

 

提督「ああ。2人ともなかなかのものだと思う。榛名は淑やかさに磨きが掛かった感じがする」

 

榛名「淑やかだなんて、そんな......♪」フルフル

 

金剛「ねぇ大佐、ワタシはワタシは!?」ピョンピョン

 

提督「お前は、髪を全部下ろしてストレートにした所為でもはや別人だな。メガネの効果もあって非常に大人しそうな印象だ」

 

金剛「大人しいっテ、お淑やかってことデショ? やったネ♪」

 

提督「ああ、その通りだ。だが、だがな金剛」

 

金剛「hm......?」

 

提督「なんでお前だけ学生服なんだ?」

 

比叡(あ、やっぱり)

 

榛名(やっぱり気になりますよね......)

 

霧島「? 何か問題でもあるのですか?」

 

金剛「そうヨ! これ、凄く pretty じゃナイ?」

 

比叡「ごめんなさい大佐。お姉様何故かそれを凄く気に入っちゃって......」

 

金剛「日本の女子コーセーはセンスがいいネ♪」クルクル

 

提督(......せめて霧島が教師っぽい格好だったらな)

 

霧島「た、大佐。私をそんなに見つめてどうしたんです?」ポ

 

提督「いや、なんでもない」

 

提督(それにしても......)

 

・金剛:女子高生の夏の制服、ストレートパーマ&眼鏡

・比叡:ノースリーブのシャツ、薄いチェックのミニスカート

・霧島:デニムのショートパンツ、黒のインナー、半袖のレースのカーディガン

・榛名:水色のノースリーブワンピース(腰に白いリボン)ポニテール&眼鏡

 

提督(一様に恰好が異なるが、元々の素体が良いから結局よく似合っている)

 

提督「大したものだな」ボソ

 

榛名「大佐?」

 

提督「ん、ああ悪い。さ、行こうか」

 

金剛「大佐、手繋ぎまショウ♪」ギュ

 

比叡「あ! じゃ、じゃぁわたしは左手......」ギュ

 

霧島・榛名「う......」

 

提督「......交代で代ってやれ」

 

 

――数分後

 

霧島「私達の番ですね♪ では、大佐」グッ

 

提督「む......」

 

金剛「な......!?」(う、腕を組んだ!)

 

榛名「......失礼しますね」グイ、フニィ

 

提督「おい」

 

比叡「ええ!?」(あ、当ててる......当ててるよね、あれ!)

 

霧島「さぁ行きましょうか」シレ

 

榛名「そうですね♪」ニコニコ

 

金剛・比叡「うー......」

 

提督(なんだこれ......)

 

 

~映画館

 

提督「まずは映画か......」

 

金剛「大佐、どうしたノ?」

 

霧島「この映画はお嫌いでしたか?」

 

提督「いや、そうじゃない。せっかくの機会なのに、いきなりただずっと観ているだけになるぞ?」

 

比叡「雰囲気を楽しむのもデートの一環ですよ、大佐」

 

榛名「榛名は大佐と一緒にこれが見たいです♪」

 

提督「そうか。分かった」

 

 

~劇場内

 

金剛・比叡「zzz......♪」

 

提督(上映開始数分で2人揃って俺の膝を枕にして寝た......)

 

榛名「大佐......ちゅ......ん......」スリスリ

 

霧島「榛名、ずるい......わよ......。ん......」スリスリ

 

提督(後ろの二人は周りが暗い所為か大胆に甘えて来る......)

 

提督「......」(映画に集中できん......)

 

 

――数時間後

 

榛名「面白かったですね♪」

 

霧島「そうね。なかなか良かったわ」

 

金剛「ふぁぁ......寝ちゃったネ」コシコシ

 

比叡「くぁ......んむ......おはようごじゃます......」ムニャ

 

提督「......」(この中に映画の内容をちゃんと覚えてる奴はいるのか......?)

 

 

~喫茶店

 

提督「俺の驕りだ。何でも好きなのを食べろ」

 

金剛「ワオ! thank you ネ、大佐♪ じゃぁアールグレイお願イ♪」

 

比叡「あ、わたしハンバーグ!」

 

霧島「エスプレッソお願いします」

 

榛名「そ、ソーダ......」カァ

 

提督「せめてメニューを見てから決めろ。セットもあるぞ」

 

 

~夜、鎮守府前砂浜

 

提督「宵も深まったな......ベタではあるが、ここで暫く休んでから帰ろう」

 

金剛「Oh......前に遮るものがないカラ、空を凄く広く感じるヨ」キラキラ

 

榛名「素敵です......」

 

霧島「流石大佐♪」

 

比叡「夜戦では空なんか全然集中して見れないもんね......こんなに大きかったんだ......」

 

金剛「ねぇ大佐......」

 

提督「ん?」

 

金剛「泳が......ナイ?」シュル......パサ

 

比叡「お、お姉様!?」

 

霧島「榛名、止めて!」

 

榛名「///」プシュー

 

提督「金剛、やめておけ」

 

金剛「Why? 下着も水着も隠シてる面積は一緒ヨ?」

 

提督「防水性が違うんだ。風邪をひくかもしれない。やめるんだ」

 

金剛「ワタシ魅力ないカナ......」グス

 

提督「結論を飛躍させるな。そうじゃない。心配だからやめて欲しいんだ」

 

金剛「大佐......わかりまシタ」

 

提督「うむ。それじゃあ、そろそろかえr」

 

金剛「次は水着持ってくるカラ next time は夜の海を一緒にシマショウ♪」

 

霧島「シ、シマショウってなんですか!? 泳ぎですよね!? そうですよね!?」

 

比叡「あ......じゃ、じゃぁその時はわたしも......」

 

榛名「榛名も行きますから! 大佐!」

 

提督「お前たち、帰る時くらい大人しくしないか」




少しあっさりでしたかね。
テンポを考えてまとめてみました。
私服姿......絵にしたいですね......いつ描くか分からないけど。


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第34話 「提案」

夕雲がこの鎮守所属になってから暫く経った日のこと。
その日の秘書艦だった隼鷹がある提案をしてきました。
その提案とは......。


隼鷹「大佐、歓迎会しようよ!」

 

提督「歓迎会?」

 

隼鷹「そう! 夕雲ちゃんの歓迎会」

 

提督「夕雲の......」

 

隼鷹「他所からうちに来たのって、あの子が初めてでしょ? だから歓迎会をしないかなって」

 

提督「ふむ。そういえばうちは、打ち上げや慰労会はやった事があるが歓迎会はまだなかったな」

 

隼鷹「でしょー? だからぁやってみない?」

 

提督「ふむ......」ジッ

 

隼鷹「ちょ、な、なんでそんなにこっち見るの?」ドキ

 

提督「隼鷹、お前まさか単に酒が飲みたいから歓迎会を提案してるんじゃ......」

 

隼鷹「何それ!? ひどい!」ガーン

 

提督「ん、そうか。本心だったか。それは悪かt」

 

隼鷹「いや、まあ確かにお酒は飲みたい......けどね?」テヘ

 

提督「まあいいだろう、許可しよう。今夜にでもやるか」

 

隼鷹「ヒャッホーー! 酒宴だぁ!」

 

提督「おい。一瞬で歓迎会を飲兵衛の集会にするんじゃない」

 

隼鷹「冗談だって♪ 嘘、ウソ♪」

 

提督「本当か......?」

 

隼鷹「う......あっ! それじゃ、あたし皆と夕雲ちゃんにも知らせてくるね!」

 

提督「待て」

 

隼鷹「は、はい」ビク

 

提督「ここを出るついでに叢雲を呼んできてくれないか?」

 

隼鷹「叢雲を? 了解! そいじゃ失礼しましたー」ササー

 

バタン

 

提督「正に『逃げるように』だな」

 

 

――数分後

 

叢雲「来たわよ」

 

提督「ああ、ご苦労。少し確認したいことがあってな」

 

叢雲「確認? 何かしら」

 

提督「まず、夕雲の歓迎会の事は......」

 

叢雲「知ってるわ。大佐に呼ばれてる事を伝えられた時に一緒にそれも聞いたから」

 

叢雲「いいんじゃない? あの子もきっと喜ぶと思うわよ」

 

提督「そうか、そうだな」

 

叢雲「確認したい事ってそれだけじゃないわよね?」

 

提督「ああ。例のチップ、だったか。感情を制御する装置の事だ」

 

叢雲「ああ」

 

提督「夕雲はうちとしては初めて受け入れた他所からの艦娘だ。という事はだ」

 

叢雲「取ったわよ」

 

提督「......そうなのか?」

 

叢雲「既に生まれて自立してるから、どう除去したのか気になるのね」

 

提督「そうだ。まさか無理やり意識を、という事はあるはずないな」

 

叢雲「くす。そんなことしないわよ」

 

叢雲「夕雲には直接、理由を話して除去させてもらったわ」

 

提督「本人に直接話したんだな」

 

叢雲「ええ。彼女ならこの事実を知っても理解できると思ったし。それに」

 

提督「......」

 

叢雲「理解者は多いに越したことないし、ね?」

 

提督「そうだな。いつまでも隠しておきたくはないしな」

 

叢雲「夕雲には口外しないように頼んであるから、打ち明ける役が大佐なのは変わってないわよ」

 

提督「了解した。それでいい」

 

叢雲「確認したい事は以上かしら」

 

提督「そうだ。もう戻っていいぞ」

 

叢雲「そう......」

 

提督「......ん?」

 

叢雲「......ねぇ、今ここは私達二人っきりよね」

 

提督「......そうだな」

 

叢雲「キスして欲しい」

 

提督「仕事中にそういう事はしない」

 

ギュ

 

提督「む」

 

叢雲「ね、お願い。キスだけでいいから」ジッ

 

提督「......」

 

叢雲「それ以外は何もしない。ホントよ? ひ、卑猥な事もしないから......」カァ

 

提督「叢雲」ソ

 

叢雲「なに――ん......」

 

提督「......」

 

叢雲「ん......む......はぁ」ペロ

 

提督「んくっ......ふぅ......」

 

叢雲「はっ......ふぅ......ふふ♪」トロン

 

提督「......舌を入れるのは反則だ」

 

叢雲「あら、そんな条件は聞いてないわよ♪」

 

提督「全く......」

 

叢雲「......ねえ」

 

提督「なんだ?」

 

叢雲「また、シテね?」

 

提督「......ああ。またな」




実は、叢雲が一番提督との仲が進んでたりして。
だてに一人目じゃないし......ま、そこは加賀さん達と相談してもらいましょうw
でも、一番大人っぽいのは叢雲だと俺は思います。(エッ


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第35話 「歓迎会(前篇)」

夕雲の歓迎会の始まりです。
司会は勿論、青葉。


青葉「それでは只今より、我が鎮守府の新しい仲間、夕雲ちゃんの歓迎会を始めたいと思います!」

 

ワアアアアア

 

青葉「はい皆さん、ご静粛に! 直ぐに始まりますから!」

 

青葉「では早速ですが、今回の主賓夕雲ちゃんよりお言葉を頂きます! 夕雲ちゃん、どうぞお願いします」

 

夕雲「あ、その......今日は私なんかの為にこの様な席を設けて頂き、大変感謝しています」

 

夕雲「新参者ですが、これからも仲良くして頂けると嬉しいです。皆さん宜しくお願いします!」ペコ

 

ヨロシクー!

 

青葉「はい、夕雲ちゃん。挨拶を短くまとめて頂きありがとうございます! とても良かったですよ♪」

 

青葉「ではお待たせしました。最後に大佐より乾杯の音頭を頂き、歓迎会の開始の合図とさせて頂きます! 大佐、お願いします!」

 

提督「皆、俺からも新しい仲間、夕雲の事を宜しく頼む。これからも力を合わせてこの鎮守府を盛り立てていって欲しい」

 

提督「それでは、挨拶もこれくらいにして......乾杯っ」

 

カンパーイ!

 

 

隼鷹「大佐ー飲んでるー? あははー♪」クルクル

 

提督「お前はできあがるのが早すぎだ」

 

飛鷹「もうっ、こういう時くらいしかこんなになんないわよー。大佐って本当に、か・た・す・ぎ♪ ヒック」グリグリ

 

提督「痛いからやめろ」

 

 

電「わ、わっ。飛鷹さんが大佐のほっぺをグリグリしてるのです」

 

陽炎「あ、本当だ。後が怖いわよ。大佐ぁー、後でこっちにも来てよねー

!」

 

龍驤「お、この中トロめっちゃ美味いやん!」

 

不知火「不知火が狙っていたのを掠め取るとは......宣戦布告と見なします」キリッ

 

瑞鳳「龍驤~このたまごも美味しいわよ♪」

 

 

利根「改めてこの空母二人は駆逐艦達に混ざってても違和感ないのぉ......」

 

高雄「二人とも可愛いわね」

 

古鷹「そ、それでいいのかな......」

 

 

足柄「あ、大佐」

 

提督「足柄、お前は飲んでないのか?」

 

足柄「ん? 飲んでるわよ?」カロン

 

提督「ウィスキーか。大丈夫か?」

 

足柄「嫌いな味じゃないんだけどね、慣れてたくて」

 

提督「そうか。あまり、無理して飲むなよ」

 

足柄「んー」オヤユビb

 

筑摩「大佐はお飲みにならないのですか?」

 

提督「飲んではいるぞ。回らないように調整はしているが」

 

筑摩「そうですか。宜しければ一献頂いていきませんか?」ス

 

提督「頂こう」

 

 

熊野「あァー良い気分ですワー♪」クルクル

 

鈴谷「あははは、ホントだー世界が丸い! 最上んも、飲んでるぅ?」

 

夕雲「あの、私夕雲ですけど......。あと、世界が丸いのは当たり前ですよ......?」

 

最上(夕雲が二人の相手をしてくれて助かったなぁ。二人とも酒癖悪すぎだから)コソコソ

 

 

五十鈴「ハチってツナマヨが好きなの? さっきからずっと食べてるわね」

 

ハチ「そういうわではありませんが......驚きです」

 

秋雲「ん? 何がー?」

 

ハチ「ツナとマヨネーズがこんなに合うなんて......」

 

木曾「マヨネーズは万能だからな。お前らが好きな間宮のアイスクリームにも結構合うぞ?」

 

イムヤ「アイスクリームに!?」

 

神通「イムヤさん、それ嘘ですよ。木曾さんも適当なことを言って......」

 

木曾「あん? 本当に俺はかけてるぞ?」

 

神通・五十鈴・秋雲「えっ」

 

 

涼風「てぇやんでぇいっ♪」ザブッ

 

矢矧「おい......涼風が頭から酒をかぶってるぞ......」

 

黒潮「飲めないのに意地張って無理するからや」チビ

 

金剛「黒潮はヘーキなの?」

 

黒潮「うちは元々お酒は好きやで?」

 

阿武隈「駆逐艦ってお酒を飲ませていいのか、自分の判断が怖くなる時あるよね」

 

赤城「見た目が可愛いですからね」ガブガブ

 

瑞鶴「樽ごと飲んでも平気な赤城さんの方が怖いわよ......」

 

 

大井「どうせ私なんて、ガチレズで通ってる嫌な女よ......」

 

夕張「き、北上......大井、どうしちゃったの?」

 

北上「なんかお酒が変な風に入っちゃったみたいだねぇ」

 

大井「大佐も私みたいな疑惑のある女なんかどうせ......」

 

北上「普段からそのモラルを保持してりゃいいのにね」

 

摩耶「キャラ付けも大変だなぁ」

 

夕張「え。そ、そうなの? あれってわワザとだったの?」

 

北上「素面の時に聞いてみるといいよ~。......魚雷が飛んでこなけければいいけどね」ボソ

 

大井「あぁ? 夕張あたしに何か用?」

 

夕張「ひっ!?」

 

摩耶「大井は暫く禁酒決定だな、こりゃ」ニヤニヤ




ちょっと長くなりそうなので前篇後編に分けます。


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第36話 「歓迎会(後編)」

すいません。
寝てました。

後編です。


大井「大佐!」ガシッ

 

提督「どうした? お前も大分酔っているな。素が出てるぞ」

 

大井「酔ってないとやってられないのよ!」

 

提督「一体どうしたんだ......」

 

北上「いや~それが......」

 

大井「もう! 今は北上さんじゃなくて私を見て!」ダキッ

 

提督「こら、よせ」

 

北上「......む」

 

大井「大佐、私ガチレズなんて噂があるみたいだけど、そういうの北上さんにだけだから......」

 

提督「ん?」

 

大井「大佐だけは特別だから......。だから......ね?」ググ

 

提督「おい、まさか......こんな公衆の面前で。ぐっ......やめろ大井」

 

大井「大佐のキス頂きm」

 

ガシ

 

北上「は~い、大井っちそこまでだよ~」

 

大井「ああんっ、北上さん何を!?」

 

北上「大井っちはちょっとそこで頭冷やそうね~」

 

大井「いや! 離して北上さぁん!」ズリズリ

 

提督「助かった。北上、恩に着る」

 

北上「......」ピタ

 

北上「大佐ぁ」

 

提督「うん? っむぐ」

 

チュッ

 

北上「浮気も程々に、ね?」ウィンク

 

大井「えっ、北上さん今大佐に何をしたの!? ねぇ!?」

 

北上「なんでもないよ?さ、行こっか大井っち」

 

大井「嘘! 何かしたよね!? ねぇ、聞いてる!?」

 

北上「~♪」ズリズリ

 

 

提督「......」

 

蒼龍「北上ってば、だいたーん」ニヤニヤ

 

榛名「......」プルプル

 

長門「なんだ、無理やりやっても抵抗しないじゃn」

 

陸奥「できるわけないでしょ。力では敵わないんだから」

 

扶桑「ふふ......北上さん......やりますね」

 

山城「ね、姉様?」

 

日向「ふむ......あれくらいなら......」

 

伊勢「何をする気よ日向?」

 

 

明石「な、なんか戦艦組の様子がおかしくない?」

 

あき「ん? そうでありますか?」モグモグ

 

加古「あっちゃんは相変わらずマイペースだねぇ」パクパク

 

妙高「それは貴女も人の事言えないと思いますよ?」クス

 

鳥海「それ、頂きです」ヒュッ

 

衣笠「っと、そうはいかないよ!」ガシッ

 

鳳翔「食べ物で遊んだらダメですよ?」

 

 

球磨「てんゆー! ヒック、今日こそ決着をつけてたるクマ!」

 

天龍「お? なんだなんだぁ? 野獣コンビが俺に挑むってかぁ?」

 

龍田「命知らずね~♪」

 

多摩「ヒック......ふふー。せいぜいいい気になゆといいにゃ! 大佐は多摩達みたいにゃつちゅましいお胸が好きなのにゃ」

 

球磨「そうクマ! そんなけーじゅんの癖に下品に膨らんだ脂肪のカタマリなんかで大佐をゆーわくできっと思ったらおーまちがいだクマ!」

 

天龍「......ほう?」ピキ

 

龍田「これは少~しお仕置きが必要かもねぇ~?」ピキピキ

 

 

五十鈴「......ねぇ、あれって私達の事も言ってるのよね。きっと」

 

名取「えっ。わ、わたしなんて......」カァ

 

長良「あはは......わ、わたしやっぱり運動ばっかりしてるから、こんなのなのかな......」

 

由良「あ、あの4人だけ特別なのよ! きっとそうよ!」

 

川内「メロンはどう思う?」

 

夕張「わ、私に訊かないでよ! ていうかメロンて何よ!? 私だってそうなりたかったわよ!」ブァッ

 

 

望月「胸の有る無しでしか大佐の事を考えられないなんて悲しいねぇ」グビ

 

谷風「お、望月ネーサン良い事言うね!」グビ

 

長月「胸なんて......飾り物だ......」グビ

 

菊月「長月、嫉妬はよせ。でないとまたあいつらに付け入る隙を与えてしまうぞ」グビ

 

Z3「どうして......どうして私も改二なのに......!」グビ

 

Z1「じぇ、ジェーン飲みすぎだよ」アセ

 

響「今日は......飲もう」

 

初雪「やっぱりあった方がいいのかなー......」ペタペタ

 

霞「境遇の改善を大佐に要求するわ!」

 

大潮「お、落ち着いて下さい。大佐に言っても仕方ないですよ」

 

秋雲「いやぁ? 案外大佐に頼めば何とかなったりするかもしれないよ~?」

 

朝潮「そ、それってどういう事ですか!? 詳しくお願いします!」

 

荒潮「うふふ~、大佐に大きくしてもらうのね~?」

 

霰「大佐がそんな事できるの......?」

 

五月雨「え、あの......それってどういう意味......」カァァ

 

満潮「わたし、ちょっと大佐に訊いてk」

 

初春「待て待て。そう急くでない」ガシ

 

叢雲「そうよ。今の大佐にはちょっとタイミング悪いわよ」

 

 

提督(油断していたとはいえ、こんな公衆の面前で俺は......)ズーン

 

トントン

 

提督「なんだ? 悪いが後にしてくれ。今は一人に――ぐぶっ」

 

Bis「大佐捕まえらー♪ どう美味しい? 日本の伝統の谷間酒よ!」グイグイ

 

加賀「っ、マリアさん。離れなさい、直ぐに」キッ

 

赤城「そ、そうです! それができるのはマリアさんだけじゃありませんよ!」

 

愛宕「あら、呼んだ~?」

 

加賀「強敵が、増えた!?」

 

千代「そ、それならわたし達だって!」

 

千歳「達? 達って私も入ってるの!? 千代田!」

 

翔鶴「皆さん落ち着きましょ~」フラー

 

飛龍「あ、翔鶴ネーサン良いところに......ってうわ......」

 

翔鶴「大佐がすきなのわぁ~、ヒック。谷間じゃけじゃないんでしゅよ~、ヒック」

 

加賀「それは本当ですか? 胸でないなら勝算があります。是非ご教授を」

 

翔鶴「はいよくできましたぁ♪ じゃぁ教えますね~? それはぁ......」

 

比叡「あ、まさか......霧島!」

 

霧島「え?」

 

翔鶴「ワkむぐ!?」

 

比叡「間に合った! 霧島は翔鶴さんをトイレに運ぶのを手伝って!」

 

霧島「は、はい? 分かりました!」

 

加賀「待ちなさい。秘密を隠そうとするのは理解できなくもありませんが......赤城さん?」

 

赤城「加賀さん......ごめんなさい。秘密を守るのも攻略の一つなの。ここを通すわけには行かないわ」

 

祥鳳「な、なにこの展開」

 

 

陸奥「マリアさん、大佐を離してあげて? なんだかグッタリしてるわ」

 

Bis「あ、ホントだ~。ごめんね大佐ぁ。はい。陸奥さん大佐あげゆ~」

 

提督「......」

 

陸奥「うん。ありがとう。ちょっと休ませてくるわね。夕雲ちゃん」

 

夕雲「あ、はい」

 

陸奥「ちょっと大佐を介抱するの手伝って貰える?」

 

夕雲「分かりました」

 

陸奥「ありがとう。それじゃ取り敢えず執務室に行きましょう」

 

夕雲「はい」

 

提督「......」グッタリ




歓迎会は以上にて終了です。
最後はせっかくなので夕雲と陸奥にちょっと頑張ってもらいましょう。


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第37話 「悪戯」R-15

陸奥と夕雲は大佐を部屋へと運びましたがまだ目を覚ましません。
そんな大佐を見ながら陸奥はちょっと昔の事を思い出します。

......エロいです。


提督「......」

 

夕雲「大佐、起きませんね。大丈夫でしょうか」

 

陸奥「息はしてるし、今は寝てるみたいね」

 

夕雲「そうですか。ならいいのですが」

 

夕雲「......」

 

陸奥「どうかしたの?」

 

夕雲「あ、いえ。大佐の寝顔がちょっと珍しくて」アセ

 

陸奥「ああ。ふふっ、そうよね。いつも気難しい顔してるもんね」

 

夕雲「でも優しい方ですよね」

 

陸奥「うん。前からそうだったけど今は、それを無理に悟らせないようにしたりしないから誰でも気付けるわね」

 

夕雲「前は?」

 

陸奥「うん。ちょっと私達と大佐との間に壁みたいなのがあってね。この人あまり感情を悟らせないようにしてたの」

 

夕雲「そんな事が......」

 

陸奥「あ、でも優しかったのはその時から変わってないわよ? 今が前と比べて接し易くなった程度の違いだから」

 

夕雲「それを聞いて安心しました。私が元居た場所の提督は本当に酷い人でしたから......」

 

陸奥「あ、ごめんね。変な事思い出せちゃった?」

 

夕雲「大丈夫です。あそこ居たからこそ今ここに居られるだと思えば、それほど気にはならなくなってきましたから」

 

陸奥「そう......よかったわ」

 

トテトテ

 

夕雲「大佐、よく寝てますね。少しお酒が入っているからでしょうか」ナデ

 

提督「......」

 

夕雲「ふふ、撫でてしまいました。いつもはしてくれる側なのに、なんか可愛いですね」

 

陸奥「夕雲ちゃん......」

 

夕雲「......」ソ

 

チュッ

 

陸奥「あ」

 

夕雲「ん......頬なら、そんなにズルく......ありませんよね?」カァ

 

陸奥「え、あ......そう、ね。かな?」

 

夕雲「っ、なんだか急に恥ずかしくなってきました。私会場に戻りますね」

 

陸奥「ああ、うん」

 

夕雲「それと......今日は本当にありがとうございました。大佐が目を覚ましたら宜しくお伝え下さい」

 

陸奥「分かったわ。夕雲ちゃんも今日は楽しんでね」

 

夕雲「はい、勿論です。それでは、失礼します」

 

バタン

 

 

陸奥「......」

 

陸奥「大佐のお世話、任されたのよ......ね」チラ

 

提督「......」

 

陸奥「本当に、よく寝てるわね......」ツンツン

 

提督「ん......」

 

陸奥「っ!」

 

提督「......」

 

陸奥「......これくらいじゃ起きないか」ホッ

 

陸奥(ちょっとだけイタズラしちゃおうかな)

 

陸奥「......」チラ

 

提督「......」

 

陸奥(よし、)

 

陸奥「......ん」プチ、スル

 

陸奥(私ったら、寝ているとは言え、なに人前で下着になってるんだろ......)ドキドキ

 

陸奥「でも......」チラ

 

提督「......」

 

陸奥「ちょ、ちょっとくらいいいよね?」

 

陸奥「よいしょっと」ギシ

 

陸奥(今度は力を加減して優しく包むように......)ダキ

 

提督「......ん」

 

陸奥(あ、なんか大佐の顔が少し穏やかになったような......。やっぱり人肌の温かさが良いのかな)

 

提督「すぅ......」スリ

 

陸奥「っ! ~っく」

 

陸奥(い、今凄い電気が走ったみたい。大佐気持ち良いの?)

 

提督「......」

 

陸奥(し、下着も取ってみよう......かな)

 

陸奥「ん......」プチ

 

陸奥(ダメ。緊張してズラすので精一杯......でも、これちょっと上から覗いたら丸見えね)

 

陸奥「大佐......」

 

提督「ん......すぅ......」スリ

 

ポロ

 

陸奥「!」

 

陸奥(取れちゃった!!)

 

提督「......」グリ

 

陸奥「っ......やっ、はぁ」

 

陸奥(あ、頭動かさないでっ。グリグリしないでっ。こ、擦れちゃうっ)

 

 

――数分後

 

陸奥「はぁ、はぁ......っ、はぁ......」

 

陸奥(ダメ。これ以上抱いてたら理性がどうにかなりそう......。もう離れよう)

 

陸奥「っしょ」ギシ

 

ふぅ

 

陸奥「!? っ、......はぁっ」

 

陸奥(息が直に......!)プルプル

 

提督「......」

 

陸奥(私、本当に何やってるんだろう......。眠ってる大佐に馬乗りになって、目の前で胸丸出しで興奮しちゃってる......)

 

陸奥(ちょ、ちょっとだけ体下げてみようかな......大佐気持ち良さそうだし。それに、もしかしたら口で直接......)

 

陸奥「んん......」ググ

 

スゥー......スゥー

 

陸奥「くぅ......!」プルプル

 

陸奥(息が......熱い! も、もうダメ。もう......わたし......!)

 

 

コンコン

 

陸奥「!」

 

 

~部屋の向こう

 

島風「大佐、大丈夫~? 夕雲ちゃんに聞いたから島風、様子見に来たよー?」

 

 

ガチャ

 

島風「あ、陸奥さん!」

 

陸奥「ダメよ島風、大佐今寝てるんだから」

 

島風「えっ、そうなの? まだ起きない?」

 

陸奥「どうかしら......まだ暫く起きないかも」

 

島風「そうなんだ。じゃぁ、会場で待ってた方がいいね!」

 

陸奥「それが賢明ね」ニコ

 

島風「......?」

 

陸奥「? なに?」

 

島風「陸奥さんなんか体がすごく赤いよ? 大丈夫?」

 

陸奥「っ! そ、そう? か、風邪かしら」

 

島風「もしそうだったら無理しない方がいいよ!」

 

陸奥「だ、大丈夫よ。多分お酒の所為よ。少し飲んだから」

 

島風「なんだ、そっかー。じゃ、一緒に会場に行こう♪」

 

陸奥「ええ。そうしま......」

 

島風「? どうしたの?」

 

陸奥「あ、えっと......ごめんね。先に会場に行ってて。私ちょっと部屋で顔を洗ってから行くわ」

 

島風「うん。分かった! またね!」ブンブン

 

陸奥「うん。後でね」フリフリ

 

 

陸奥「......」

 

陸奥(下、替えてこないと)カァ




陸奥はムッツリだと思います陸奥なだけに。
という冗談はさておき、お気に入りの子なのでついやってしまったわけですが。
直接的な描写は無いとは言え、これはR-15でもいいのかな。


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第38話 「寝起き」

陸奥の悪戯に気付く事無く寝ていた提督でがやっと起きたようです。


提督「ん......ふぅ」

 

提督(寝ていた? いや、俺は歓迎会の時に......)

 

提督「情けない。気絶して運ばれたか......ん」

 

何となく頬が僅かに通常より温かい気がしが、気のせい程度の違和感で、体にも特に異常は感じなかったので特に気にしないことにした。。

提督が身を起こそうとすると足に何か重さを感じ、思うように動けなかった。

 

提督「ん?」

 

島風「zzz」

 

不知火「すぅ......すぅ...」

 

提督「なんでまたこんな所に」

 

島風「んー......?」コスコス

 

提督「おはよう」

 

島風「あっ」

 

提督「?」

 

島風「いっけない、寝ちゃった。起きる前に行こうと思ってたのに」

 

提督「何をしてんたんだ?」

 

島風「歓迎会が終わっても大佐が戻ってこなかったからまた様子を見に来たの」

 

提督「また? という事は最初に俺を運んでくれたのも島風だったのか?」

 

島風「ううん、違うよ。陸奥さんと夕雲ちゃんだよ」

 

提督(陸奥どころか主賓だった夕雲にまで迷惑を......どんな顔をして礼を言ったらいいのやら)

 

提督「そうか。じゃあ、お前は途中で1回様子を見に来てくれたという事か」

 

島風「そうだよ。大佐はまだその時も寝てたけどね」

 

提督「やれやれ。格好の悪いところを見せてしまったな」

 

島風「そんなことないよ! 提督可愛かった!」

 

提督「かわい......」

 

不知火「んん......? 島風、何を騒いでいるんです......」

 

島風「あっ、不知火起きた!」

 

提督「おはよう不知火」

 

不知火「......か」

 

島風「?」

 

提督「不知火?」

 

不知火「......っ!」バッ

 

完全に意識が覚醒した不知火は、即座に提督と島風に背を向けると、顔を真っ赤にしてわたわたと身だしなみを整え始めたし。

 

不知火「た、大佐......見ないでくださいね」

 

提督「何をだ?」

 

島風「何をー?」

 

不知火「寝起きの顔なんて、淑女として恥ずかしくて見せられませんっ」

 

島風「えー? なんでー? 島風は平気だよ?」

 

不知火「貴女も少しは気を遣うべきですっ」

 

島風「大佐、どうしてわたし怒られたの?」キョトン

 

提督「女の子にはいろいろあるんだ」ポン、ナデ

 

島風「あぅ......んふふー♪ よく分らないけど別にいいや♪」

 

不知火「な!? ......っく」シュババ

 

不知火「......ふぅ。お待たせしました」クルッ

 

提督「ああ。驚かせてしまって悪かったな」

 

不知火「いえ、それはもう気にしないで下さい。不知火にも落ち度はありましたから」

 

提督「そうか。助かる」

 

不知火「......」ジー

 

提督「?」

 

不知火「あの......」

 

提督「うん?」

 

不知火「お待たせしました......」

 

提督「ああ。きれいになってるぞ」

 

島風「?」クビカシゲ ←いつもと同じようにしか見えない

 

不知火「ありがとうございます。いえ、そうではなくて......」

 

提督「ん?」

 

不知火「し、不知火も頭撫でて下さい......」カァ

 

提督「お前さっき身だしなみを整えたばかりじゃないか。撫でたりしたらまた髪が乱れるかもしれないぞ」

 

不知火「そ、そういうのはいいんです。仕方ないですから」

 

提督「そうなのか?」

 

不知火「そうです。だから......お願い......します。撫でて......ください」グス

 

自分からお願いするのが余程恥ずかしかったのか、不知火はとうとう泣いてしまった。

 

島風「あー! 大佐、不知火をイジメたー!」

 

提督「なに?」

 

島風「もうダメだよ! 意地悪しちゃ! 早く撫でてあげて!」

 

提督「ああ」(俺が悪いのか?)

 

提督「不知火」

 

不知火「......ぐす......はい」

 

提督「来なさい」

 

不知火「っ、大佐!」ダキッ

 

島風(あれ? 撫でてもらうだけじゃ......)

 

提督「全く。俺の前では自分に素直になると言ってただろ?」ヨシヨシ

 

不知火「ごめん......なさい。やっぱり......恥ずかしくて......」スリスリ

 

島風「むー......」

 

ギュ

 

提督「ん?」

 

島風「大佐、島風も!」

 

提督「なに?」

 

島風「島風もギュッとして、スリスリさせて!」

 

不知火「大佐、手を止めないでください」スリスリ

 

島風「あー! ズルイー! 大佐、島風も、島風も!」ジタバタ

 

提督「分かった。分かったから、ほら不知火の隣に来い」

 

島風「! ありがとう、大佐♪」ダキッ

 

 

――数分後

 

提督「なぁ、まだやめたら駄目か?」

 

島風「ダメ! もっともっと♪」スリスリ

 

不知火「そうですね。もう少しお願いします。......ん♪」スリスリ

 

不知火(島風、ナイスです)グッ

 

提督「そうか。分かった......」

 

提督(俺は調子が悪くなって運ばれたんじゃなかったのか......?)




駆逐艦が好きな人はロリコンと言われがちですが、それは間違いだと思います。
彼女たちは見た目がアレなだけで、中身は大人なのです!多分......。


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第39話 「トレード」

弾薬がヤバくなったみたです。
提督はどうするのでしょう?

*今回は他の鎮守府の提督がメインです。


提督「ふむ......」

 

翔鶴「弾薬、今月は厳しいですね」

 

提督「そうだな。とうとう3桁だ」

 

翔鶴「他の資材は6桁あるんですけどね......」

 

提督「常に保有限界の鋼材とボーキを弾薬と交換できればな」

 

翔鶴「一度、本部に相談してみては?」

 

提督「......そうだな。こうして悩んでても埒が明かないか。翔鶴、通信を繋いでくれ」

 

翔鶴「はい。分かりました」ニコ

 

 

――数十分後

 

提督「ふぅ......」

 

翔鶴「どうでした?」

 

提督「何とかなりそうだ。特定の資材が不足している鎮守府と交渉して交換するよう指示を貰った」

 

翔鶴「よかった♪ それなら何とかなりそうですね」

 

提督「そうだな。では早速各鎮守府に連絡を取ってみるか。翔鶴、すまないが」

 

翔鶴「はい。連絡先の一覧表ですね? こちらに」トン

 

提督「ありがとう。ふむ......」ペラ

 

 

~とある鎮守府

 

T督「えっ、資材の交換ですか?」

 

提督『そうです。何か不足している資材がありましたら、弾薬以外とならで交換が可能なんですが』

 

T督「というと、そちらは弾薬が不足してるんですね?」

 

提督『そういう事です』

 

T督「なるほど。因みに交換をするとして、そちらはどれくらいの弾薬をご希望なんです?」

 

提督『そうですね。本当に不足しておりまして......できましたら、今後の事も考えて3万ほど頂けらたらと』

 

T督「3万ですか? うーん、3万かぁ......それは......うーん......」

 

提督『当方としては弾薬さえ頂けるのでしたら、同数の資材でなくてもある程度融通を効かせることは可能ですが』

 

T督「ほう。というと?」

 

提督『そうですね。もし先ほど提示した数量の弾薬を頂けるのでしたら、鋼材かボーキどちらかを1万余分にお付けさせて頂く、というのではどうです?」

 

T督「よ、余分に一万ですか? あの、それは折半とかも可能ですか?」

 

提督『資材ごとに分割したいという事ですか? 勿論可能です』

 

T督「そうですか! それは助かります。あ、でも本当に大丈夫ですか? 一万も追加なんて......」

 

提督『御心配には及びません。その2つに関しては常に大体保有限界を保ってますので』

 

T督「そ、そうですか......」(一体どういう運用をしてるんだ?)

 

提督『それで、いかがでしょうか?』

 

T督「え? ああ、はい。そちらが問題ないのでしたらその条件で! 」

 

提督『そうですか、ありがとうございます。では、後ほど本部から指示書が届くと思いますので、交換の手順についてはそれに沿って頂いて』

 

T督「はい。わかりました。こちらこそありがとうございます。助かります」

 

提督『いえ、それはこちらも同じですから礼には及びません。では、よろしくお願いします。失礼します』

 

T督「はい。それではまた。失礼します」

 

ガチャ

 

 

叢雲「どうだった?」

 

T督「やったー! これで資材不足の問題が何とかなるぞー!」

 

叢雲「そんなに貰えるの?」

 

T督「弾薬は半分になっちゃうけど、それを補って余りある成果だよ!」

 

叢雲「へぇ、よかったじゃない」

 

T督「うん。本当にその通りだよ。これで大型建造でまた大和を狙えるぞー!」

 

叢雲「っ、そういう使い方をやめなさいって言ってるでしょ!」ドン

 

T督「じょ、冗談です。ごめんなさい......」

 

叢雲「全く、いつまで経っても......子供じゃないんだから。あら?」

 

T督「ん? どうしたの?」

 

叢雲「さっき交渉していた提督ってこの人よね?」

 

T督「うん。そうだよ。それが?」

 

叢雲「この人、階級が大佐ね。貴方より階級が下じゃない。話しぶりから目上の人かと思ってたわ」

 

T督「あ、ホントだ。多分不足階級の人じゃないかな」

 

叢雲「不足階級?」

 

T督「うん。本来は僕と同じか上の階級なんだけど、なんらかの理由で一定の戦果が維持できない人の事だよ」

 

叢雲「貴方はこの人の事、実際は上の人だと思ってるの?」

 

T督「そうだね。話し方が落ち着いていて丁寧だったし、奢りとかも感じなかった。多分、少将か中将クラスの大佐だよ」

 

叢雲「階級が安定しないっていうのも大変ね」

 

T督「僕ら提督の殆どは特別勅令徴兵で集められた人たちだからね。正規の軍人というわけでもないし、仕方ないよ」

 

T督「どんな人なのかなぁ。一度その人の鎮守府を見に行ってみたいな」

 

叢雲「視察目的なら可能だと思うけど......浮気とかしちゃ嫌よ?」

 

T督「大丈夫! この指輪は裏切らないよ! カッコカリでも僕は本気さ!」

 

叢雲「うん......ありがとう♪ ん......」チュ

 

T督「ん......」

 

T提「でも、この資材は本当に有り難いよ。臨時でもね」

 

叢雲「そうね。また何処の鎮守府に応援要請が来るか分からないし、備えは必要だわ」

 

T督「あのレ級達強かったなぁ......」

 

叢雲「襲われた鎮守府は半壊だったわね。全滅する前に間に合って良かったけど......」

 

T督「指揮官クラスは全部逃げちゃったからねぇ。しかも最後にこっちに向かって」

 

『またねー』

 

T督「だってさ」

 

叢雲「全くというほど、悪意を感じなかったわね。それでいて敵意はしっかり持ってて攻撃に迷いが全くない......恐ろしい敵」

 

T督「そうだね。でも負けるわけにはいかない」

 

叢雲「あまり無理しないでね」

 

T督「ありがとう。でも本当にもしもの時はごめんね。僕、正規の軍人じゃないけど、それでも軍人としての覚悟は正規の人以上のつもりだから」

 

叢雲「絶対にそうはさせないわ......。貴方と私はずっと一緒よ」ギュ

 

T提「うん......僕もそのつもりだよ」ギュ




リア充爆発しろ!
鎮守によっては同じ艦娘でも微妙に違う可能性ありますよね。
こちらの叢雲は甘々の熱々です。

*リアルの提督はここまで立派でもイケメンでもありません。
*弾薬はここまで枯渇してるわけではありませんが、同じ遠征しかしない所為で最後に6桁になったのはいつかだったか覚えてないくらいには常に不足してます。

ご利用は計画的に!


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第40話 「要望」

深海棲艦だけのお話。
姫様がご機嫌な斜めの様です。
対してレ級達は相変わらずマイペースに見えますが......。


戦姫「レ級......」

 

レ級「なにー? 姫ー」

 

戦姫「またあの鎮守府を攻撃しないで戻ってきたそうだな......」

 

レ級「ん? そうだよ」

 

戦姫「何故......攻撃しない?」

 

レ級「攻撃したくないから!」キリッ

 

戦姫「っ、そんな屁理屈を聞いているのではない!」ドン

 

レ級「ねぇ、何を怒ってるの?」

 

戦姫「お前が人間と慣れ合ってるからだ!」

 

レ級「大佐とだけじゃん。他の海軍はちゃんと攻撃してるよ?」

 

戦姫「例外などない! 海軍は、人間は......全部敵だ!」

 

 

ル級「姫、怒ってるね......」

 

タ級「そうね。ほいっ」

 

ル級「やった、ババ取った♪」

 

タ級「むっ......。直ぐにひかせてやるわよ」

 

ヲ級「タ級って強いけど、ババ抜き弱いよねー♪」

 

ル級「ねー♪」

 

タ級「あんた達......今日こそは勝ってみせるわ!」

 

ル級・ヲ級「はいはい」

 

タ級「ぐぬぬ......」

 

 

レ級「姫さー、人間が全部敵なんて、それじゃ海軍以外も攻撃しろっていう言うの?」

 

戦姫「何れはね。先ずは海軍を潰す!」

 

レ級「分かんないなー。どうしてそんなに必死なの?」

 

戦姫「それはこっちのセリフだ! どうしてそんなに平気な顔をしていられる!? どうして海軍を恨まない!?」

 

レ級「恨む理由がないから」ケロ

 

戦姫「な......」

 

レ級「もしかして姫ってさ、僕達が沈んで深海棲艦なった事で海軍を恨むのは当り前とか考えてない?」

 

戦姫「当然だ。あいつらの所為で、私達は戦いたくもない争いに身を投じさせられ、デタラメな指揮の所為で為す術まなく......!」プルプル

 

レ級「ふーん......まぁ、同情はするけどさ。姫って小さいよね」

 

戦姫「あ......?」ピキ

 

 

ル級「あ、姫キレたみたいだよ」

 

タ級「相変わらず短気ね......ちっ」

 

ヲ級「そろそろフォローに行った方がよくない?」

 

ル級「姫、怖いからやだなぁ......」

 

タ級「だからってレ級一人にこれ以上相手をさせるわけにはいかないでしょ?」

 

ヲ級「誰が相手をしたって姫は怒るよ......さ、行こ」

 

 

戦姫「貴様ぁ! 命令違反ならまだしも、私に対する無礼は許さんぞ!」ドン

 

レ級「もう、いちいち地面叩かないでよ。煩いなー」プクー

 

戦姫「 」ぶち

 

戦姫「このぉクソガキがぁ!!」ブォッ

 

カチャ

 

戦姫「!?」

 

レ級「......」

 

ル級・タ級・ヲ級「......」

 

戦姫「き、貴様ら......な、何故......何故仲間に武器を向ける!?」

 

レ級「仲間? 誰が?」

 

ル級「うん......姫は仲間じゃないよね」

 

タ級「勘違いでしょ」

 

ヲ級「なら仕方ないね」

 

戦姫「な、な......」

 

レ級「姫は僕達の仲間じゃないよ。同じ種類だよ?」

 

戦姫「そ、それでも同じ姿をしているのだから仲間だろう!?」

 

レ級「なんで? 人間だって人間同士で戦争してるよ?」

 

タ級「そうね。それなのに私達だけ例外ってのもね」

 

ル級「私達はそんなに特別じゃないよ?」

 

ヲ級「特別だったら尚更、私戦いたくないなぁ......最近面倒」

 

戦姫「お、お前たち......」

 

レ級「僕さ、さっき姫のこと小さいって言ったよね? それはさ、姫の器の事なの」

 

レ級「姫、恨みばかりに拘っちゃってさ、全然余裕を感じないんだよね」

 

レ級「戦いにそんな感情なんて持ち込んだら......直ぐに負けちゃうよ?」

 

戦姫「......!」ゾッ

 

レ級「僕達さ、ずっと昔、艦娘だった頃にお世話になった提督に何よりも心を鍛えろってい言われたの。鋼の様な......かつ鋼よりなお硬く」

 

ル級「それで体も同じように鍛えれば」

 

タ級「心身ともに頑強になり、不動不変の精神となって」

 

ヲ級「肉体を失っても尚、生前の意志と共に魂は在り続ける」

 

レ級「その結果が僕達ってわけ」

 

戦姫「なら、何故......過去の記憶を持ちながらも、一部の人間にのみ甘いだけで他の人間にはああも容赦なく攻撃ができる......?」

 

レ級「流石にこんな恰好じゃねぇ......戻りたくても戻れないじゃん」

 

ル級「それならいっその事」

 

タ級「鍛えて貰った心で」

 

ヲ級「敵としての覚悟を見せつけるしかないよね」

 

戦姫(こいつら......! 普段は飄々としてる癖にこの覚悟の有り様は、どの深海棲艦よりも凄まじい!)

 

レ級「姫、僕さ。姫にはもっと強くあって欲しい。僕達より優れた力を持っているならそれを力だけじゃなくて心でも示して欲しい」

 

戦姫「......」

 

レ級「そうじゃないと、僕達は本当に姫の敵になっちゃうかもしれないよ?」

 

戦姫「......脅してるつもりか?」

 

レ級「ううん。これは僕からの心からのお願い♪」

 

戦姫「......疲れた。もう下がりなさい。少し休みたいから」

 

レ級「うん。そうさせてもらうよ。姫、今日はごめんね。バイバイ」フリフリ

 

タ級「まぁ、あまり気にしないで。姫なら大丈夫よ......」

 

ル級「あ、後でお仕置きとかしないでね?」

 

ヲ級「そ、それは予想してなかった。姫、失礼しました。ゴメンナサイ」ペコ

 

 

戦姫「生意気だけど頼りになる部下か......いえ、部下にしないといけない......わね」ポツリ




実は筆者、レ級と戦った事がありません。
どれくらい強いかも知りません。
ただ、見た目が天真爛漫そうで動かし易そうだから、勝手に深海棲艦のリーダーのような扱いにしてしまってます。

反省は......レ級可愛い。


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第41話 「交流(提督サイド)」

提督とT督のお話。
お互い不足している資材を交換する日がやってきました。

*例によって野郎ばかりの話です。
*しつこいようですが、BLではありませんよ!


「では、ご確認を」

 

「はい。……問題ありません」

 

少将は提督から受け取った資材交換の受領書の内容に目を通して問題がない事を確認した。

 

「そうですか。ではこれで取引は完了ですね」

 

「そうですね、ありがとうございます。助かりました」

 

「いえ、こちらもお蔭で暫く弾薬には困らなくて済みます」

 

「ははは、お役に立てたのなら何よりです」

 

提督より若く見える少将は、にもかかわらず階級の貫禄を感じさせる笑顔で応えた。

提督はそれだけで相手の有能さを何となく悟り、今回の取引に応じてくれたのが彼でいてくれて良かったと心の片隅で思った。

 

「それでは、他に特に気になることがないのでしたら、これで……」

 

出してくれていた珈琲も飲み終わっていたので、部外者が長居するのも良くないと思って提督が椅子から立ち上がりかけた時だった。

 

「あ、ちょっと」

 

「はい?」

 

「せっかくですから少しお話でもしませんか? その、親睦も兼ねて」

 

「え? ええはい、勿論構いませんよ。叢雲、悪いがこれで暫く時間を潰しててくれないか?」

 

不意の少将の提案を提督は意外に思いながらも特に断る理由もなかったので彼はそれを快く承諾した。

提督は叢雲に紙幣を何枚か渡した。

叢雲はそれを頷いて受け取った。

 

「ん、喫茶店でも行ってればいいの?」

 

「ああ。時間は……1時間くらいで?」

 

「あ、それくらいでいいですよ」

 

「了解。せっかくだから貴女もも誘っていいかしら?」

 

「えっ?」

 

叢雲に声を掛けられた少将の秘書(叢雲)は小さな驚きの声を漏らすと、少将の方を見て指示をを待った。

少将は叢雲に笑顔を向けて言った。

 

「ああ、はい。どうぞ。叢雲、せっかくだから行っておいで」

 

「いいの?」

 

「勿論。ほら、君もこれで何か食べておいで」

 

秘書の叢雲は提督から貰ったお金を握ると上目遣いをして小さな声で訊いた。

 

「パフェ食べていい?」

 

「はは、何でも好きなのを食べるといいよ」

 

「! ありがとう! 行ってくるわね♪」

 

「ああ、行っておいで」

 

秘書の叢雲はその答に目を輝かせると提督の叢雲が待っている扉の方へと駆けて行った。

 

「お待たせ。行きましょ」

 

「ええ、そうね。それじゃ大佐、また後で」

 

「ああ」

 

「行ってくるわね提督♪」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

 

バタンと二人が出て行って扉が閉まると共に、少将が和やかな雰囲気を惜しむように笑いながら口を開いた。

 

「いやぁ、それにしても偶然ですね。連れてきた艦娘が僕の秘書と同じなんて」

 

「そうですね。ただ、不思議なもので見た目は同じでもやはり雰囲気で判りますね」

 

「誰が誰の叢雲か、が?」

 

「ええ」

 

少将は提督の意見に何故か嬉しそうにあいづちを打った。

 

「あ、そう思いました? 僕もですよ。なんていうか、そちらの叢雲は僕のとこと比べて大人びてますね」

 

「ええ、大人しい方だと思います。それに優秀な娘ですよ。よく出来過ぎていてこちらの仕事がなくなるくらいに」

 

「あはは。それは困りますね。いや、うちの叢雲も優秀ですよ?」

 

「それは見て判りました。子供のような愛想を見せても仕事も隙なくやってくれていそうですね。指輪をしていたところを見ると……」

 

「ええ、僕の自慢の秘書にして最愛の妻です」

 

「妻……ですか」

 

幸せそうにそう断言する少将に提督は返事が少し淀んだ。

少将の言葉の何かを意外に思ったようだった。

少将はそんな提督の様子に気付かずに、自ら珈琲のお代わりを注ぎながら訊いた。

 

「ええ、そうです。そちらは、されてないんですか?」

 

「ええ、まぁ」

 

「あ、もしかして大佐は独身主義ですか?」

 

「いや、そういうわけではないんですが……」

 

「ああ、いや、冗談です。気を悪くされたのなら申し訳ない」

 

「いえ、まぁ、ケッコン自体の考えが今のところないといいますか、決断できないといいますか」

 

「そうなんですか?」

 

再び答えにくそうに言い淀む提督の様子にその時初めて気付いた少将が興味ありげに少し身を乗り出して訊いてきた。

 

「ええ、それにまだうちの艦隊には成長限界に達した艦娘はいませんので」

 

「えっ」

 

「どうしました?」

 

「あ、失礼しました。正直、意外でして。てっきり貴方は僕より練度の高い子をたくさん保有してるものかと思ってたので」

 

「はは、見た目は老けてても階級がその実績を表してますから」

 

「あ、いえ、そんなに畏まらないで下さい。僕らの階級なんてあってないようなものですから」

 

「そうなのですか?」

 

「え? もしかして大佐は正規の軍人の方なのですか?」

 

「恥ずかしながら、これでも士官学校の出です」

 

「そうだったんですか……」

 

「意外そうなお顔ですね」

 

「いや、なんというか……」

 

提督の言葉に申し訳なさそうな表情で謝意を表した。

 

「自分より長く軍にいて、しかも正規の軍人なのに、徴兵で提督になった自分より階級が低い事が気になりますか?」

 

「えっ、いやまぁその……。いえ、そうですね。その通りです」

 

「遠慮される事はありませんよ。先程も言った通り実績が階級を表してます」

 

「何かのご事情で戦果を挙げられてないんですよね?」

 

「いや、ほぼ自業自得ですよ。うちは殆ど遠征と出撃ばかりで、敵海域攻略の出撃をあまり行っていないですからね」

 

「え」

 

提督の話に少将は目を丸くする。

それも仕方ない。

自分達の仕事は公務である。

しかも国防に携わる極めて重要なものだ。

なのに個人の我侭のような考えであまり仕事に真摯な姿勢を示さないのは不穏さすら感じた。

 

「ま、おかげで今回交換して頂いた弾薬以外の資材には事欠いていませんが」

 

「あの」

 

「はい?」

 

「失礼を承知でお尋ねします。まさか、臆病風に吹かれたわけではありませんよね?」

 

少将の真剣な目に提督は居住まいを正して応じた。

 

「まさか。自分の命が惜しさに軍人をやるくらいならやらない方がマシですよ」

 

「ならどうして」

 

「先程、少将殿は私にケッコンしない理由をお尋ねになりましたよね」

 

「ええ、でもそれは練度が理由では」

 

「それは自分からしたら原因です。ケッコンを躊躇っているのは理由が別にあるんですよ」

 

「別に?」

 

「人間でない艦娘と恋仲になることに対しての背徳感です」

 

「……なるほど」

 

提督の言葉に気を悪くした様子もなく少将は椅子に深く腰掛け直して、どこか自分にも言って聞かせてるように呟くように言った。

 

「先にお断り致しますが、私は別に彼女らの事を嫌ってなどいません。寧ろ最近はいろいろ踏ん切りが着いて、その候補の娘が増えているくらいです」

 

「おお、それは」

 

「それに、先程背徳感と言いましたが、実際のところ自分に度胸がないだけだと思います。彼女たちの事を心から愛せられるのか自信がないんです」

 

「出撃をあまりされないのは、彼女たちを兵器として扱う事を躊躇われているから、という事でしょうか」

 

「軍人としては甘いと思います。ですが、それこそ人間として譲ってはいけない一線だと思っています」

 

「大佐は……お優しい方ですね」

 

提督の話を聞いて少将は言った。

 

「いえ、軍人としては失格です。轟沈させるのが怖いというわけでもなく、単に自分のエゴを通しているのですから」

 

「僕も最初はそうでしたよ。大佐と同じでした」

 

「ほう」

 

「でも、彼女たちと一緒に苦難を乗り越える内に気付いたんです。例え何があっても彼女たちとの間に出来た絆は揺るがないと」

 

「……」

 

そう静かに言う少将に提督は軍人としての強い覚悟と責任感を感じた。

そして黙って続く言葉を待った。

 

「大佐は、もう少しご自分の艦娘達を信じても良いと思いますよ。それが彼女たちにとっても喜びにもなるでしょうから」

 

「……お強いですね」

 

「ああ、いえ! 差し出がましことを言ってしまいました。申し訳ない」

 

「謝る必要などありませんよ。少将殿のお考えは立派です。そして、私もそれをもっと真剣に考えるべきなのだと気づかされました。ありがとうございます」

 

「そ、そんなお礼なんて!」

 

「絆……ですか。ケッコンをすれば、その絆も少しは実感できるくらいにはなるのでしょうか」

 

「ええ、それはもう毎晩」

 

「毎晩?」

 

「あ」

 

少将はしまったという顔をした。

だがもう遅かった。

二人の間に気まずい沈黙が訪れた。

 

「……」

 

「い、今のは聞き流してください!」

 

「……」

 

「あれ? た、大佐? 聞こえてます?」

 

(そうか……。艦娘とはいえ、見た目は女性。する事はできるのか。というか、ケッコンしたらあり得るのか? 毎晩はやり過ぎにしても絆を深める為にはやはりやった方が……?)

 

「あの、大丈夫ですか? 僕の声聞こえてます?! ねぇ?!」

 

(もし仮に、可能性の上での話だが、複数の艦娘とケッコンするとなると、夜毎に違う娘と……。いや、下手をすれば乱交のような……?)

 

「た、大佐?! 急に顔が蒼くなりましたけど大丈夫ですか?!」

 

少将は脂汗すら滲ませて顔色を悪くする提督に流石に焦った。

そして次に取った提督の行動に驚愕するのだった。

 

「 え、な、なんで拳銃なんか持って……ちょ?! そ、それどうするつもりです?!」

 

(俺は……軍人として、いや人として何という事を……)

 

「ええ?! いや、それ冗談になってないですって!! 死にますよ?! だ、誰か来てくれー!」

 

少将の必死な声がその日、基地中に響いた。

彼のそんな声を始めて訊いた艦娘たちは大いに驚いたという。




初めて一日更新しなかったのではないでしょうか。
仕事を言い訳にはしたくありませんが、人間なので許してほしいと誰にともなく言い訳してます。


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第42話 「交流(艦娘サイド)」R-15(挿絵あり)

提督たちがちょっと真面目な話をしてる頃叢雲たちは喫茶店にいました。
片や村雲の方は美味しそうにデザートを食べてご機嫌のご様子ですが、我らが叢雲の方はどことなく上の空でコーヒーだけ啜ってます。


村雲「んー、美味しい♪」

 

叢雲「......そうねぇ」

 

幸せ一杯と言った顔でパフェを頬張る村雲。

その様子を何処か上の空と言った様子の顔でただ見つめるだけの叢雲。

全く同じ姿だが、纏っている雰囲気が全く異なる二人の艦娘の姿が喫茶店にあった。

 

村雲「ねぇ、貴女さっきから上の空だけど大丈夫? 頼んだのもコーヒーだけだし」

 

叢雲の様子が気になったのか、パフェを食べる手を途中で止めて村雲が聞いてきた。

 

叢雲「ん、気にしないで。ちょっと考え事よ」

 

村雲「どうしたの?」

 

叢雲「遠慮ないわね。少しは気を遣ったら?」

 

彼女は始終、鏡を見ているような気持だったが、自分と同じ姿の“他人”は自分と違ってあまり気を遣わないタイプのようだった。

 

村雲「自分自身に気を遣えと言われてもね」

 

叢雲「ぷっ、あははは。何それ」

 

村雲「そうじゃない?」

 

叢雲「屁理屈の様な理屈だけど、解る気がするのが癪ね」

 

茶目っ気の籠った目で笑いながらそう返してきた村雲に、叢雲も苦笑交じりに返事をする。

そしてなおも興味津々と言った様子で自分を見つめる村雲に、ついに降参と言わんばかりに大きな溜め息を一つつくと、叢雲は悩みを打ち明け始めた。

 

叢雲「はぁ......いいわ教えてあげる。ちょっと悩んでたのよ」

 

村雲「提督の事でしょ? そっちの」

 

まだ何も言っていないというのに確信の籠った口調で村雲は核心を突いてきた。

 

叢雲「流石、私ね。そうよ」

 

村雲「提督がどうかしたの?」

 

叢雲「いや、あなたのとこと比べてうちの提督ってよく言えば大人というか、悪く言えば真面目すぎるというか......」

 

叢雲は普段のハキハキした態度とは違い、珍しく話し難そうな口調でどう言ったものか悩んでいる様子だった。

それに対して村雲は彼女の悩みを一瞬で見抜き、一刀両断の如くこう一言した。

 

村雲「なんだ、手を出してもらえないのが不満なんだ」

 

叢雲「ぶっ! ストレートね......。結婚してるからかしら」

 

【挿絵表示】

 

村雲「うちは毎晩シテるからねぇ」

 

顔を赤くして動揺する叢雲に対して村雲は特に何を気にする風もない様子で更に彼女が予想だにしない事を言ってきた。

 

叢雲「ま、毎晩?」

 

村雲「あっ、明るい時もあるわよ。あと、外でもシちゃった事も......」

 

叢雲「もはや猿じゃない。......そ、そんなにシちゃうものなの?」

 

村雲「相手が好き過ぎて止まらないのよ。隙あらばすぐに求めちゃうのよね」

 

叢雲「へ、へぇ~」

 

叢雲は顔を赤らめつつも村雲の言葉に興味深そうな様子だった。

 

村雲「貴女、私よりちょっと大人びてる感じしたけど、そういうところ初心なのね」

 

叢雲「し、仕方ないじゃない。シたこと......ないんだもん......」

 

村雲「キスくらいはあるんでしょ?」

 

叢雲「まぁ、それくらいなら......」(実はないけどね......)

 

内心悔しさを感じながらも、小さな嘘を彼女は着いた。

流石に目の前の相手を前にして、キスもしてないと言う事は彼のプライドが許さなかった。

 

村雲「じゃあ後はもう押すだけよ」

 

あまりにもあっさりと直接的な手段を提案する村雲。

叢雲はその提案に動揺しつつも、やはりそれしかないのかと心の何処かで思いながら彼女の言葉を聞いた。

 

叢雲「強引じゃない?」

 

村雲「私が見た限り、あの提督は絶対に自分からは手を出さないわ」

 

叢雲「......否定できないのが悲しいわね」

 

村雲「なら、押し倒すしかないじゃない」

 

叢雲「やれない事はないけど、でもそれしちゃうと抜け駆けになっちゃうからなぁ」

 

村雲「なに? 他にも提督の事好きな子がいるの?」

 

叢雲「かなりね」

 

村雲「なるほどねぇ......ま、それはうちも同じだけど」

 

叢雲「でも、貴方たちは、その......毎晩シテるんでしょ?」

 

村雲「手出しされないように警戒してるからね。ま、好きな気持ちは止められないから、もし出されちゃってもそんなに怒る気はないけどね」

 

村雲は警戒していると言いながらも、もし誰かが提督に手を出してもそれが好意からくるものだったならば、その相手を咎めはしないと言う。

 

叢雲「寛容ね。うちの提督もそういう柔軟さがあったらねぇ」

 

村雲「一度ヤっちゃえば、案外フッ切れるものよ?」

 

叢雲「そうかしら?」

 

村雲「私がそうだったし」

 

叢雲「貴女の場合はタガが外れた感じみたいだけど」

 

少し呆れた口調で叢雲は言った。

 

村雲「似たようなものよ」

 

叢雲「ふーん......ねぇ」

 

村雲「ん?」

 

叢雲「そんなに、イイもの?」

 

叢雲はとても小さい声で、その日一番気になった事を村雲に聞いた。

 

村雲「好きな人を直接感じられるのよ。イイに決まってるじゃない」

 

叢雲「......気持ち良い?」

 

村雲「貴女、自慰はしてる?」

 

叢雲「っ、......ふぅ。シテるけど」

 

ここで下手に取り繕っても意味はない、何しろ相手は“自分”なのだ。

 

村雲「週何回くらい?」

 

叢雲「い、一回か二回かな......」

 

村雲「嘘。毎日シテるくせに」

 

叢雲「な、何で知って......あ」

 

村雲「ごめん。カマかけた」

 

叢雲「貴女ねぇ」プルプル

 

叢雲は真っ赤になって震えながら村雲を睨んできた。

 

村雲「ごめんって。でも、我慢しないのは良い事よ? だってそうしないと貴女、頭がどうにかなりそうでしょ?」

 

叢雲「まぁ......最近特に我慢ができなくなってるからね」

 

村雲「実際に提督としたらもう貴女、自慰なんてしなくなるわよ」

 

叢雲「そ、そんなに?」

 

村雲「当り前じゃない。だって貴女、自分が出来ない事もしてもらえるのよ?」

 

叢雲「い、挿れられるのがそんなにイイの?」

 

流石に彼女にもそれくらいの知識はあった。

だがその知識はあくまで一般的なレベルの保健体育程度のものだった。

だから所謂、「夜の営み」に関する知識は殆どなく、それ故に村雲の次の言葉には心から羞恥し、仰天した。

 

村雲「それだけじゃないわよ。舐めてももらえるし」

 

叢雲「な、舐めってそんな......汚な......」

 

村雲「ちゃんと清潔にしてれば、問題ないわよ。それにこれ、挿れられるのよりある意味最高に気持ち良いのよ?」

 

叢雲「そ、そう?」

 

叢雲(あ、アソコを舐められるのがそんなにいいの......?)

 

村雲「考えてもごらんなさいよ。自分から溢れてきたモノを残らず舌で掬われて、啜られる様を」

 

叢雲「......」ブルッ

 

村雲「それだけじゃ飽き足らず、もっと求められて舌で直接中を弄られたり」

 

叢雲「......!」ゾクゾクッ

 

村雲「どう? 興奮した?」

 

叢雲「す、凄い......聞いてるだけなのに」

 

村雲「濡れた......?」

 

叢雲「......」コク

 

叢雲は自分の下着がかなり湿気を帯び、冷たくなっているのを感じていた。

 

村雲「本番はもっと濡れるわよ? それこそ本当に頭がおかしくなっちゃうくらい」

 

叢雲「そ、そう......」

 

叢雲「......」

 

村雲「お手洗い、行ってきていいわよ」

 

叢雲「っ、でも替えが......」

 

村雲「穿かなかったらいいじゃない」

 

しれっととんでもない事を村雲は言った。

 

叢雲「そんな、変態じゃないっ」カァ

 

村雲「私今穿いてないわよ?」

 

平然とした顔で更にとんでもない事を村雲は言う。

それに対して叢雲は信じられないと言った顔で真偽を確認してきた。

 

叢雲「嘘!?」

 

村雲「うん。嘘」

 

叢雲「っ、貴女ね......!」

 

村雲「ふふ、ごめんごめん。でもね、大胆になるのも大事なのよ?」

 

叢雲「ん......」

 

村雲「さっきは嘘って言ったけど、本当に穿いてない時もあるから」

 

叢雲「まさか、そんな」

 

村雲「二人っきりの時だけね」

 

叢雲「あ......」

 

村雲の言葉に少し頭が冷えた。

彼女は彼女なりに叢雲の見栄を解し、好きな相手に柔軟になるように助言しているのだ。

 

村雲「ね? シチュエーションも大事なのよ?」

 

叢雲「参考になったわ......」

 

村雲「気にしないで♪ せっかくの同じ者同士なんだから」

 

叢雲「そうね。ありがとう」

 

村雲「あ、あと贈り物があるの」

 

叢雲「え?」

 

村雲「ちょっと手をテーブルの下に」

 

村雲「......?」(何かしら、表には出せない重要な物?)

 

叢雲は疑問に思いながらもテーブルの下に手を伸ばした。

村雲はそれを確認すると周りの様子も確認して、自分もテーブルの下に手を伸ばし、彼女の手にある布きれを渡した。

 

ポン

 

叢雲「! 貴女これ......!」

 

目にするまでもなく、渡された物が何か理解する叢雲。

 

村雲「一応、持ち歩くようにはしてるの。サイズは同じの筈だから......替えてきなさいな」




た、ただの猥談になってしまった......。
なんだかんだで経験もレベルも高い村雲さんの方が大人っぽくなってしまいましたね。


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第43話 「爽やか」

今日の秘書艦は長門です。
久々にお仕事しているようですが、ちゃんと毎日やってます。



提督「最近、陸奥と叢雲がやたら俺のことを見ている気がするんだが」

 

長門「なんだ、ノロケか? 私もその材料に使って貰っても構わないぞ」

 

提督「惚気てるつもりはないし、お前の希望にも応えかねる」

 

長門「相変わらずお堅いな」

 

提督「仕事に誠実なだけだ」

 

長門「そうか? 普段も結構堅物なイメージだが」

 

提督「時間があるときは酒や煙草をやってるだろ」

 

長門「青春時代の不良か」

 

提督「言われてみれば確かにそんなイメージだな。だが、釣りは不良でもなんでもないだろう?」

 

長門「そういえば、偶に一人でぼんやり港に座ってるのを見掛けるな」

 

提督「釣りをしている、をつけ加えろ。座ってるだけじゃ、まるで老後の年寄のようだ」

 

長門「釣れているのを見たことがないからな。釣りをしていないようなもんだろう?」

 

提督「ああいうのはやること自体に意味があるんだ。心の安らぎだ」

 

長門「大佐は酒と煙草と釣りしか心の安らぎがないのか?」

 

提督「......言われてみれば少ない気もするが、特にこれ以上何かを求める気にもならないな」

 

長門「それ、老後の年寄じゃないか?」

 

提督「......むぅ」

 

長門「ははは。ついに反論できなくなたか」

 

提督「口惜しいが、何も言う事がきない」

 

長門「気にするな。なら、これから少し私に付き合わないか?」

 

提督「この後か......まぁ大丈夫か。何をするつもりだ?」

 

長門「お、付き合ってくれるか。嬉しいな」

 

提督「何処かに行くのか? 遠出はできないぞ?」

 

長門「分かっている。なに、すぐそこだ」

 

提督「分かった。じゃあこの仕事をさっさと終わらせるか」

 

長門「腕が鳴るな」

 

提督「お前も意外に事務処理が得意だよな」

 

長門「戦艦だと侮るなよ? 別に力があるだけじゃないんだ」

 

提督「では、その実力如何なく発揮してくれ」

 

長門「ふふ。了解した」

 

 

~玩具屋、ヌイグルミコーナー

 

提督「また此処に来るとはな」

 

長門「なんだ、来た事があるのか? 意外な趣味だな」

 

提督「いや、俺にこの趣味は無い。矢矧に付き合った事があってな」

 

長門「ほう。矢矧はヌイグルミが趣味か。同好の士が見つかって嬉しいな」

 

提督「今になってあいつがその趣味を隠していた事を思い出した。悪いが、あまり口外しないでくれ」

 

長門「別に隠すような事ではないと思うんだがな」

 

提督「お前は一切隠さないんだな。正直、意外だ」

 

長門「そうか? 私は可愛い物は大好きだぞ?」

 

提督「はっきり肯定するものだな」

 

長門「好きな趣味を隠していては楽しみ難いからな」

 

提督「なるほど。実に清々しくお前らしい」

 

長門「はは。よしてくれ恥ずかしい」

 

提督「可愛い物が趣味という事は、ヌイグルミだけがその対象というわけではないという事か」

 

長門「そうだな。キーホルダーの様な小物やマグカップなどの生活用品も、可愛いデザインなら趣味の対象だ」

 

提督「なるほど」

 

長門「因みに、大佐もその私の趣味の対象だぞ?」

 

提督「......なに?」

 

長門「ほら、これ」

 

長門がそう言って見せたのは、ロケットペンダントに収められたある写真だった。

それは何時かの歓迎会の時に不甲斐なくベッドで寝かされていた提督の寝顔であった。

 

提督「お前も来ていたのか......」

 

長門「いや、青葉が大佐の寝顔の写真を撮って焼き増ししてばら撒いていた」

 

提督(......後で説教だ)

 

提督「まぁとにかく、それの何処が可愛いんだ」

 

長門「意外じゃないか。こんな安らかな顔してる大佐なんて。可愛いぞ?」

 

提督「やめてくれ。男が女にそんな事言われても恥ずかしいだけだ」

 

長門「はは。その反応もなかなかいいな」

 

提督「ぐ......」

 

長門「ま、気にするな。私は私でやっぱりこれが気に入っているし、可愛いと思ってるんだ」

 

提督「だからと言って、自分の寝顔の写真を持ち歩かれているというのは何とも気恥ずかしいものだ」

 

長門「私はわざわざその為にペンダント用に写真を加工までしてもらったからな」フンス

 

提督「威張りながら言うな。恥ずかしい」

 

長門「はは。照れるな照れるな」グリグリ

 

提督「後ろから抱き着くな。......っく、抜け出せない」

 

長門「逃がさんよ♪」ムニムニ

 

提督「程々にしてくれ......」

 

長門「お? 潔いな。好きだぞ」

 

提督「あっさり告白みたいな事を言ってるぞ」

 

長門「いや告白だ。好きだ大佐......付き合え」

 

提督「......お前らしいといえばお前らしいが、命令のような告白だな」

 

長門「大佐からは言ってくれそうにないからな。強引にいかせてもらった」

 

提督「そうか」

 

長門「で、返事は?」

 

提督「この淫蕩、と罵ってくれ」

 

長門「はは、なんだそれ。自虐か」

 

提督「こうでもしないと自分を保てそうにない」

 

長門「気にするな。大佐の中で誰が一番だろうと、私の心には大佐しかいない」クル

 

長門はそう言って、後ろから抱きしめていた提督を自分の方に向かせた。

 

提督「おい、まさかここで」

 

長門「大丈夫だ。この時間帯は人も殆どいないし、カメラからもここは死角だ」

 

提督「そういう問d」

 

チュ

 

長門「......」

 

提督「......」

 

長門「......ふぅ」

 

提督「本当に強引な奴だ」

 

長門「すまない。だが、ありがとう」

 

提督「礼を言われても困る」

 

長門「ふふ。いい思い出を貰った。これからもっと作っていこうな♪」

 

提督(女性に告白されたというのに、なんだこの複雑な気分は......)

 

長門「どうした?」

 

提督「いや、別に......」フィ

 

長門「っ、可愛いなぁ! もう♪」ギュー

 

提督「おい、やm......むぐっ」




実に爽やかな長門さんでした。
ですが、この人潔過ぎて、はいろいろと隠したりません。(ナニヲ)
提督の理性はいつまでもつのでしょうか。


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第44話 「容赦」

鳥海が遊びに来たようです。
しかし提督はまだ仕事中でした。
休み時間に入っていましたがまだ仕事のキリが着いていなかったのです。


摩耶「大佐! 暇だから遊びに来たぜ!」

 

バン

 

 

鳥海「......」

 

妙高「......」

 

摩耶「あ......」

 

提督「お前も運がないな」

 

摩耶「な、なんで鳥海が......いや、妙高ネエはまで!?」

 

妙高「鳳翔さんから大佐へ昼食の配膳を頼まれたんですよ。ええ、本当に良いタイミングでした♪」

 

鳥海「私は午前では処理しきれなかった仕事を秘書艦として手伝っていたのよ」

 

提督「摩耶、お前鳥海が今日秘書艦だという事を知らなかったのか?」

 

摩耶「そりゃ今起きたばかりだから分かるわ......け......」サァ

 

妙高「大佐」

 

提督「ん」

 

妙高「私、今日ほど偶然というものに感謝した事はありません」ニコッ

 

提督「そうか......」

 

鳥海「至らぬ姉の醜態、申し訳ありません」

 

提督「まぁ......一応、休み時間だからな。できるだけ手加減してやれ」

 

妙高「お優しいですね大佐。分かりました」

 

妙高「摩耶?」

 

鳥海(あ、呼び捨てだ。相当キテるなぁこれ)

 

摩耶「は、はい!」

 

妙高「さっき遊びに来たとか言ってましたよね? 何をして遊ぶつもりだったのかしら?」

 

摩耶「え、それは......外も良い天気だったから何か一緒に運動でもしようかなって......」

 

鳥海「運動? スポーツとかそんな感じ?」

 

摩耶「そ、そう」

 

妙高「そうでしたか。では私が付き合ってあげますよ、運動に」

 

摩耶「え?」

 

妙高「そうですね。ボクシングとかどうです?」

 

摩耶「ぼ、ボクシング!?そんな、いくら妙高ネエでも危n」

 

妙高「あ、ボクシングと言っても古代ボクシングですからね?」

 

鳥海「古代ボクシング?」

 

提督「......」

 

妙高「ボクシングの原形と言われているスポーツですよ。とても古いスポーツなので、ルールが不明確なところもありますが」

 

摩耶「ふ、不明確って......」

 

妙高「大体判明しているところでは、相手の降参を除けば基本デスマッチです」

 

摩耶・鳥海「えっ」

 

妙高「あ、勿論武器は使ってはいけません。素手での殴り合いです。グローブの代わりに拳に布を巻いて下さい。組み合ってはいけません。目を抉るのはダメです」

 

摩耶「あ、あの妙高n」

 

妙高「さ、闘りましょうか♪」ニコ

 

摩耶・鳥海「......!」ゾクッ

 

摩耶「あ、あ......」(こ、怖い......! 勝てる気がしない!)

 

提督「もうそれくらいでいいだろう」

 

妙高「大佐......」

 

提督「二人を見ろ。何故か鳥海まで真っ青だぞ」

 

摩耶「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

 

鳥海「すいません。すいません。うちの姉が本当に悪かったです。でも、代わりになるとか無理です。ごめんなさい」

 

妙高「あらあら......」

 

提督「摩耶」

 

摩耶「は、はいっ」

 

提督「これに懲りたらもう少し静かに行動しろ」

 

摩耶「わ、わかっt」

 

妙高「反省してる?」

 

摩耶「分かりました!」

 

鳥海「了解です!」

 

提督「だからなんでお前まで謝るんだ」

 

妙高「仕方ありませんね。では今回は大佐に免じて許してあげます」

 

摩耶・鳥海「ありがとうございます!」

 

妙高「でも、次に粗相したら......ただのデスマッチですからね?」ニコ

 

摩耶「気を付けます!」

 

鳥海「監督します!」

 

妙高「はい。もういいですよ。この話はこれでお終い」

 

摩耶・鳥海「ほっ......」

 

妙高「大佐、どうします? お仕事まだ残ってますけど、一旦中断してお昼にします?」

 

提督「そうだな。せっかくお前が運んできてくれたしな。それに......摩耶」

 

摩耶「は、はい!」

 

提督「そう畏まるな。もうさっきの話は終わってる」

 

摩耶「あ、うん......悪い。で、なに?」

 

提督「悪いが、鳳翔からもう3人分追加で食事を貰ってきてくれ」

 

妙高「あら、大佐......」

 

提督「理由はどうあれ、こうも集まっているんだ。一緒に食事をしないか? まだ食べてないなら、だが」

 

妙高「嬉しい。勿論ご一緒させて頂きます。実はまだ食べてませんでしたから」

 

鳥海「秘書の私は当然一緒に食事を摂る為にまだ食べてません」

 

摩耶「安心したら急にお腹が空いてきた......という事であたしもまだイケるぜ?」

 

提督「重畳だ。それでは摩耶が食事を持って来次第、細やかだが昼食会を開くとしようか」

 

妙高「分かりました♪」

 

鳥海「了解です♪」

 

摩耶「おうっ」




久しぶりに短めです。
しかもヤマなしオチなし。
筆者は重巡を全くと言う程育ててません......早く5-3クリアしたいなぁ。


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第45話 「避暑」R-15(挿絵あり)

鈴谷達が部屋で暇をしています。
部屋にはエアコンがないので暑い時は扇風機に当たるしかありません。
そんな時のお話です。


提督が所属している鎮守府は日本ではなく、海外。

それも、果たして日本人でどれだけの人が知っているのか分からない程の果ての地。

其処は一年を通して気候が温暖で、よく言えば常夏気分、悪く言えば年中蒸し風呂の気分が味わえた。

 

鈴谷「あっち~」バッサバッサ

 

熊野「はしたないですわよ鈴谷。下着が丸見えではありませんか」

 

鈴谷「だってあっついんだもん」

 

熊野「暑いからと言って淑女が扇風機の前でスカートを捲り上げるなんて下品ですわ!」

 

【挿絵表示】

 

鈴谷「捲り上げてるだけじゃないじゃん。バサバサやってるし」

 

熊野「子供じみた言い返しをしないでくださいまし! は・し・た・な・い、と言ってるのです!」

 

鈴谷「えー、だってこれ涼しくて気持良いんだもん」

 

熊野「だからって、気軽にやっていいものでは......」

 

鈴谷「クマノン、ま・じ・め・す・ぎ。女同士なんだから別にいいっしょぉ?」

 

熊野「わたくしは貴女に節度を持って欲しいのですっ」

 

鈴谷「あー鈴谷、そういうの無理。超無理。だから諦めて」

 

とうとう鈴谷は、スカートをはためかせるのをやめて、捲りっぱなしにして直接当て始めた。

 

熊野「な、なんという堕落......」

 

鈴谷「ていうか、クマノンも暑いっしょ? やればいいじゃん?」

 

熊野「わたくしはそんなはしたない事はいたしませんわ!」

 

鈴谷「無理しない方がいいよー? 熊野んだってスカートの中蒸れて暑いっしょぉ?」

 

熊野「例えそうだとしても、そこは淑女として忍んでこそ......」

 

鈴谷「えー、でもあんま我慢しちゃうとさぁ」

 

熊野「な、なんですの?」

 

鈴谷「大事なトコに汗疹ができちゃうよ?」

 

熊野「......っ」カァ

 

熊野は顔を赤くしてスカートを少し抑えた。

くしくも鈴谷の指摘の効果があったようだった。

 

鈴谷「あー鈴谷見たくないなー。クマノンが汗疹ができちゃってお股掻いてるところなんて」

 

熊野「そ、そんな事、例え汗疹になってもわたくしがするわk」

 

鈴谷「あ、じゃあ汗疹になってもいいんだ?」

 

熊野「そ、そういうわけでは......」

 

鈴谷「頑固だなぁ......あ、そうだ!」ポン

 

熊野「鈴谷?」

 

鈴谷「こうすれば解決じゃん!」

 

鈴谷はそう言うとおもむろにスカートの中に手を入れ、下着を脱ぎ始めた。

 

熊野「あ、貴女何をしてるんですの!?」

 

鈴谷「鈴谷的にはこれが一番、ココが蒸れない方法でありましてー」

 

鈴谷「それにこれなら鈴谷の方がはしたないわけだから、クマノンもスカート捲ってもそんなに恥ずかしくないっしょ?」

 

熊野「ど、どういう思考回路してますの貴女は!?」

 

鈴谷「当然の結果でありますー!ってことでポーイ」

 

パサッ

 

薄いブルーの可愛いショーツが綺麗な放物線を描き、見事に鈴谷のベッドに着地した。

 

熊野「す、直ぐに穿きなさい!」

 

鈴谷「やだ。あ、これー超気持ち良い! 超涼しいー♪」

 

熊野(あわわ......鈴谷のアソコが丸見え......)

 

鈴谷「もう、クマノンも我慢しないで早く捲っちゃいなよ?」

 

熊野「それより早く下着を......!」

 

鈴谷「じゃ、クマノンが最初、鈴谷がやってたみたいにしたら穿いてあげる」

 

熊野「そ、そんな卑怯ですわ!」

 

鈴谷「やってみなってー。絶対に気持ち良いから」

 

熊野「で、でも......そんなはした......恥ずかし......」

 

鈴谷「今は、鈴谷の方が恥ずかしいから問題ないって。ほらほら」ピラピラ

 

そうやって鈴谷は無毛の無防備な秘所を見せつけた。

本人が全く動じてない時点で、秘所という言葉自体が適切かどうかも怪しかった。

 

熊野「っ、何見せつけてるんですの!」

 

鈴谷「クマノンが早くしてくれたらやめたげるー」

 

熊野「くっ」

 

鈴谷「ほらー、早くやってよー」

 

熊野「......わ、わかりましたわ。で、でもあまり見ないでください......まし」

 

鈴谷「やだ、見る」

 

熊野「そんなっ」

 

鈴谷「今の鈴谷の方が恥ずかしいカッコしてるじゃん。普通だって普通」ピラピラ

 

その普通は明らかに普通じゃないはずだったが、完全に鈴谷のペースに飲まれた熊野には既に反論する考えが起こらなかった。

 

熊野「うぅ......もう、分かりました......。だからそんなに見せないで下さい......」

 

鈴谷(顔を真っ赤にしてるクマノン可愛いー♪)

 

鈴谷「ほら、早く早くー。仲間になれー♪」

 

熊野「その言葉がどれだけわたくしの覚悟を挫いてるのか分かってますの!?」

 

鈴谷「もうっ、分かってるから、ハイ!」バサッ

 

熊野「きゃぁ!」

 

不意に鈴谷にスカートを捲られて、熊野の可愛い下着が姿を現した。

薄いピンクに控えめのフリルが飾られた熊野らしいオシャレなショーツだった。

 

鈴谷「お、可愛いの穿いてるじゃん、クマノン~♪」

 

熊野「み、見ないで......!」

 

鈴谷「ほらー、やっぱり太ももの所とか汗ばんじゃってるしー」

 

熊野「うぅ......」プルプル

 

鈴谷「ほらほら、次は扇風機デビューだよっ」

 

熊野「わ、分かりましたから。そんなに押さないで......」

 

鈴谷「はーい。お客様一名入りまーす!」

 

熊野「何処のいかがわしいお店ですの!?」

 

 

ブォォ

 

熊野「あ......」

 

鈴谷「どう? どう?」ウキウキ

 

熊野「す、涼しい......」スー

 

鈴谷「でしょー?」

 

熊野「しょ、正直言いまして、これ程とは......ふぅ」

 

扇風機の風が当り、汗を掻いて蒸れていた箇所が急速に冷やされる感触を感じた。

汗が冷やされるという感覚が、ここまで涼しさを感じさせるという事に熊野は驚いているようだった。

 

鈴谷「ねっ? 癖になるっしょ? 最高っしょ?」

 

熊野「ちょ、あまり調子に乗らないで下さいまし。......でも、確かに気持ち良い......涼しい......」

 

鈴谷「ね、今度はパンツ脱いでみなよ?」

 

熊野「やっ、さ、流石にそれは......」カァ

 

鈴谷「ぜっったいに今より気持ち良いって!」

 

熊野「貴女、さっき言ってた事と違いますわよ! わたくしがやったら穿くという約束だったじゃありませんか!?」

 

鈴谷「クマノンも脱いでくれたら、ちゃんと穿くってー。ね、一回でいいからっ」

 

熊野「そ、そんなにお願いされたって......」

 

鈴谷「そんなに恥ずかしがることないってー。大体、一番最初にやってたのは鈴谷じゃなくてモガミンなんだよ?」

 

熊野「えっ?」

 

熊野は鈴谷の言葉に驚きの声を上げて、今まで我関せずの態度でベッドで本を読んでいた最上に視線を向けた。

 

最上「ちょっと鈴谷、そこで僕を巻き込まないでほしいな」

 

鈴谷「でも現にモガミン今、穿いてないっしょ?」

 

最上「まぁね」

 

鈴谷「熊野んに証拠見せてあげてよ」

 

最上「見せろって言われると、なんか露出狂みたいで気に入らないんだけど、まぁ減るものでもないし。......はい」ピラ

 

最上は、鈴谷と同じく無毛の秘所を恥ずかしげもなく晒した。

確かに穿いていなかった。

 

熊野「......!」カァァ

 

鈴谷「ね、穿いてないっしょ?」

 

熊雄「そ、そんな......」

 

鈴谷「あー、でもやっぱり毛は剃ってるよねー? こう暑いと見苦しいし、毛もベッタリになっちゃうもんね」

 

最上「僕は生えてないよ。薄いと勘違いしてたの?」

 

鈴谷「あ、モガミンもそうだったんだ。うん。鈴谷も生えてない派」

 

最上「なんだ仲間じゃん」

 

鈴谷「だねー。パイパン同盟ー、なんて」

 

最上「それ人前で絶対言わないでね」

 

鈴谷「流石に言わないってー。てことで、クマノン?」

 

熊野「え?」

 

鈴谷「脱いで♪」

 

熊野「......もうどうでもいいですわ」スル、パサ

 

この時点で熊野は完全に鈴谷に負けたと自覚しており、下着を脱ぐという行為に対する羞恥心も消えかけていた。

 

鈴谷「お、クマノンも生えてないんだ―」

 

最上「全員同じだったね」

 

熊野「ちょ、そんなに見ないで!」

 

鈴谷「あはは。人の事言えないけどツルツルで赤ちゃんみたいー♪」

 

熊野「もうっ、やめてって言って......」

 

鈴谷「はいはい。めんごめんご。じゃ、当ててみー?」

 

熊野「なんて軽い謝罪ですの......もう」

 

ブォォォ

 

 

熊野「あふぅ......」

 

直接肌に当たる風は確かに気持ち良かったが、それとは別のなんともいえない初めての感覚が熊野の表情を緩ませた。

 

鈴谷「お、クマノンのレア顔キタコレ!」

 

熊野「何言ってるの!?」

 

最上「気持ち良いでしょ?」

 

熊野「え? まあ、その......うん」コク

 

鈴谷「鈴谷は暫くモガミンとお話してるから、クマノンは当たってていいよ?」

 

熊野「そ、そう?」

 

鈴谷「うん。遠慮しないで。ね? モガミン」

 

最上「僕も鈴谷も熊野が部屋に来るまでに結構やってたからね。遠慮しなくていいよ」

 

熊野「そ、そう? で、では有り難く使わせてもらいますわ」

 

熊野(アレ? なにか忘れているような......)

 

鈴谷「落ちたね」ボソ

 

最上「そだね」ボソ

 

 

――数分後

 

熊野「~♪」

 

熊野はすっかりこの状態が気に入り、ご満悦の様子だった。

鈴谷と最上はそんな彼女を尻目にガールズトークに花を咲かせていた。

 

鈴谷「いやー、すっかり気に入ったみたいだねー」

 

最上「そだね。それにしても」

 

鈴谷「ん?」

 

最上「こうして熊野を後ろから見てると、時々扇風機の風がスカートの後ろまで捲って半分お尻見えたりしてるじゃん?」

 

鈴谷「まぁ強だからね」

 

最上「あの、熊野がって思わない?」

 

鈴谷「だねっ。なかなかシュールな光景だよねー」

 

最上「これは、基地内でのノーパンの許可を大佐に貰う必要があるかもね」

 

鈴谷「それ、ナイスアイディア!」

 

 

~数日後、執務室

 

鈴谷「という事でノーパンを希望します!」

 

提督「そうか。俺の説教と罰則を受ける覚悟はあるという事でいいんだな?」




なんか、最近タガが外れてきた気がします。
いや、書いてて楽しいんですけどね?

更新速度が落ちてしまって申し訳ないです。
でも、止まったりはしないので宜しくです。


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第46話 「映画」

映画のソフトを見つけた大佐。
その日は晩酌をするつもりでしたが、映画鑑賞会にする事に決めたようです。
その日に呼ばれたのは伊勢と日向の姉妹。
さて、晩酌に付き合うつもりで来た2人の反応は?


伊勢「映画......ですか」

 

提督「そうだ。何となく部屋の整理をしていたら、映画のソフトが出てきたんだ。多分、実家から荷物を持ち出すときに紛れていたんだな」

 

日向「大佐は映画が好きなの?」

 

提督「好き嫌いで言うなら、間違いなく好きな方だ。此処に着任してからも町の映画館には偶に足を運んでるくらいには好きだな」

 

伊勢「そうだったんですか。てっきり大佐の趣味は釣りと煙草くらいだと思ってました。あ、あとお酒か」

 

提督「酒はともかく、煙草は時間つぶしの目的に近いからな。本当の意味で趣味というとやはりこれか」

 

日向「この前、長門から聞いた分には映画が趣味というのは初耳ね」

 

提督「あの時は、いろいろ追いつめられていたからな。人間、余裕がなくなるとすぐ傍にある助けには意外と気づかないものだ」トオイメ

 

伊勢「一体、何を追いつめられていたの......?」

 

提督「些末な事だ。とにかく、せっかく出て来たわけだし一緒に観ないか?」

 

日向「てっきり晩酌の相手だと思ってたけど、こういうのもいいか」

 

伊勢「私はどっちかというとお酒はあまり強くないからこれは寧ろ歓迎よ♪」

 

提督「酒も一応用意してあるし、ジュースもある。これで口が寂しくなる事もないだろう」

 

日向「気が利いてるな。そういう心遣いは心ときめくよ」

 

伊勢「なに大袈裟な事言ってるのよ。でも、ジュースも用意してくれてたのはポイント高いわ。ありがと、大佐♪」

 

提督「誘った側の当然の配慮だ。気にするな。それでは観ようか」

 

日向「それはどんな映画?」

 

提督「所謂、海洋スペクタクルというやつだな」

 

伊勢「冒険的なやつ?」

 

提督「冒険と言えばそうだが、これはあくまで実際の世界が舞台だ」

 

日向「史実的な要素があるのね」

 

提督「そうだ。これは17世紀の英国海軍の、ある一隻の軍艦の船長とその船員達の物語だ」

 

伊勢「へぇ、昔の英国の海軍かぁ」

 

日向「面白そうね」

 

提督「興味を持ってくれて何よりだ。それじゃあ再生するぞ」

 

 

――観賞開始から30分辺り

 

日向「帆船の操船は大変だな」

 

伊勢「凄い。あんなに人が乗ってるんだ」

 

日向「あんな小さな子供まで......。しかも士官候補か。腕を亡失くしても気丈だな」

 

伊勢「あの船医さん、船長の親友なのね。ふふ、2人で楽器なんか演奏しちゃって」

 

日向「昔の軍人はいろいろ嗜んでいたんだな。見習いたいものね」

 

 

――観賞開始から1時間半後

 

伊勢「あの、士官候補の子可哀想だったね......ぐす」

 

日向「まだ科学がそれほど進歩していなかった時代だからな。神が唯一の拠り所だった人達からしたら、災いを誰かの所為にしないと耐えられなかったんだろう」

 

伊勢「ふふ、あの船医さん島へ行けるのが本当に嬉しいのね」

 

日向「昔の医者はどちらかというと博士に近かったのかもね。にしてもあの好奇心の旺盛さには感心するな」

 

 

――映画終盤

 

日向「追っていた標的を騙して奇襲、か。なんにしても船の性能の差を考えたらこれが成功しなければ後がないな」

 

伊勢「船長さん、凄く気迫に溢れてるのに興奮を感じさせずに本当に船員さんをよく纏めてる......凄いなぁ。えっ、船医さんも戦うんだ」

 

日向「できれば......あの子には生きていて欲しかったわね」

 

伊勢「ぐす......そうね。片腕の子、親友がいなくなって可哀想......。あ、でも身分が下が手伝ってくれてる......いいなぁこういう気配り」

 

日向「なんと、あの敵の船医が船長だったのか」

 

伊勢「船医さん、残念そうな顔をしたのに今は楽しそうに船長と楽器演奏してるね。以心伝心ってやつなのかな。不思議だけど温かい雰囲気ね」

 

 

――観賞終了

 

提督「どうだった?」

 

伊勢「凄く良かったわ!」

 

日向「そうね。スペクタクルって言ってたからもっと派手な視覚効果があると思ってたけど、割と地味で堅実な作りだった。現実的という意味では確かに迫力もあったわ」

 

提督「楽しんでもらえたようで何よりだ」

 

伊勢「うん? なんだか大佐、意外そうな顔をしてる?」

 

日向「私達が楽しんでいたのがそんなに意外だった?」

 

提督「ああ、いや。この手の映画はあまり女性にウケが良くない事が多いからな。そういう意味で少し嬉しさ半分驚き半分だったというだけだ」

 

伊勢「確かに。女の子からしたらあまり面白くないかもしれないけど、私、戦艦だし。こういうの結構好きよ?」

 

日向「同じく。そして更に軍人だ。内容的にはとても興味を惹かれたよ」

 

提督「そうか。改めてお前たちに見せて良かったと思った」

 

伊勢「ええ。良い映画を観せてくれてありがとう大佐」

 

日向「感謝するよ、大佐」

 

提督「ああ。また何か面白いのが用意できたら誘わせてもらおう。構わないか?」

 

伊勢「勿論!」

 

日向「逆に誘ってくれないと機嫌を損ねてしまうぞ?」クス

 

提督「ふっ。気を付けよう。それじゃあ映画も終わったし、時間ももうだいぶ遅いからこれで解散に......」

 

日向「大佐」

 

提督「ん?」

 

日向「映画に出ていた船長だけど、この人は最終的に生きて祖国で愛する妻に会えたの?」

 

提督「ふむ......実はこの映画はシリーズもので、内容的には割と長編らしい。今回の映画はその一部という事だ」

 

提督「俺も原作は読んだことがないから、そこまでは分からないな。すまん」

 

日向「いや、いいんだ。そうか、会えるといいな。ところで話は少し変わるけど」

 

提督「なんだ?」

 

日向「船長には愛する妻が居たように、やはり大佐にもそういうのが必要だと、私は思うんだけど」

 

伊勢「ひゅ、日向?」

 

日向「大佐はどう思う?」

 

提督「まあ......軍人とは言え、心の支えになってくれる人がいるのはありがたいだろうな」

 

日向「だろう? なら......」

 

伊勢「! あ、えっと......た、大佐それ、なんというか私もなりたい......いい......かな?」

 

提督「......随分、予想外な所からのアプローチだな」

 

日向「すま......ごめん。実は機会を伺ってた。小賢しく思えたら......その、ごめんなさい」

 

伊勢「大佐、日向のこと悪く思わないで。わ、私も気持ちは同じだったから......」

 

提督「......ふぅ」

 

日向・伊勢「......っ」ビクッ

 

提督「結婚とまではいかないかもしれんが......お前たちさえよければ......少しの間俺を支えてくれるか?」

 

日向「! 勿論......!」パァ

 

伊勢「私も......!」パァ

 

提督「そうか。ありがとう。これからもよろしく頼む」

 

提督「では重要な件も終わった事だし、本当にこれで今日は......」

 

日向「一緒に寝て欲しい......」ボソ

 

伊勢「ひゅ!? あ、ごめん......私も......」カァ

 

提督「......まだ、そういうのはダメだ」

 

日向「私達が寝付くまで側にいるくらいならいいだ......でしょ?」

 

伊勢「う、うん。私もそれでいい!」

 

提督「いやそれも......」

 

日向「お願い......」ジッ

 

伊勢「大佐ぁ......」ジッ

 

提督「む......」

 

提督「分かった。寝付くまでだからな?」

 

日向「! ありがとう!」パァ

 

伊勢「大佐、大好き♪」ギュ

 

提督「ふぅ......それじゃあお前たちの部屋に行くか」

 

日向「あ、待ってくれ。先に戻って下着を替えてくるから」

 

伊勢「ええ!? そ、その方がいいの?」ポ

 

提督「日向、何いきなり前言撤回をしているんだ」




少し個人的な趣味の内容になりました。
タイトルこそ明確に出してませんが、内容からネタに使われている映画を分かる人いるでしょうか。

日向は普段クールだけどいざという時は子供っぽく攻める......はず。
いや、攻めて欲しいです!


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第47話 「作戦会議」

提督ファンクラブ、いつの間にか艦娘達の中で出来た非公式のこのファンクラブは、この鎮守府にも当然あります。
今日はそのクラブの定例会議です。
何を話し合うのでしょうか?


加賀「では、これより大佐を落とす会を始めます」

 

Bis「会議の名前だけ聞くと凄く不穏ね」

 

加賀「敢えてストレートにする事によって私達の意気込みを表してみました」キリッ

 

金剛「Yeah! 恋は常にストレートじゃないとダメヨ!」

 

加賀「金剛さんありがとうございます。今回は、人数が多いと意見をまとめるのに時間が掛かってしまうので、参加人数を予め絞らせて頂きました」

 

長門「選考の基準は?」

 

加賀「説明が必要ですか?」

 

鈴谷「ないんじゃない?」

 

響「ないね」

 

龍田「不要よ。分かり切ったことじゃな~い♪」

 

足柄「まぁ......ね」

 

イク「ないの!」

 

加賀「正直言って選考するだけ無駄だったので、ここに居ない方には申し訳ありませんが、ランダムに選ばせて頂きました」

 

長門「......ま、そうなるか」

 

鈴谷「で、ぶっちゃけどうやって落とすの?」

 

金剛「愛ヨ! 大佐が受け入れるまでぶつけるしかナイワ!」

 

足柄「それだと効率悪いわよ」

 

龍田「そうよね~。やっぱり直接的な手段じゃないと」

 

長門「なんだ? 夜這いをして既成事実でも作るのか?」

 

加賀「それが一番早いのでしょうが、それでは大佐の心までは掴めないでしょう」

 

イク「寧ろ、離れちゃうかもしれないの」

 

響「それは困るな」

 

鈴谷「でもさー、やっぱ最終的にはヤルわけだから。その覚悟があるのかくらいは確認しといた方がよくない?」

 

鈴谷「因みに鈴谷はいつでもオッケーだけどね」

 

足柄「......好きなら当り前よ」カァ

 

長門「本当に大丈夫か? 菊門まで晒す事になるかもしれないぞ?」

 

金剛「キクモン?」

 

加賀「anal ですよ」

 

金剛「Oh......」

 

Bis「え......」

 

鈴谷「よゆーだしっ。ていうか、鈴谷は部屋ではいつもノーパンだから慣れてるし」

 

龍田「痴女ね~。大佐はそういうのが好みだとは思えないけどぉ?」

 

加賀「好みがどうあれ、それくらい私なら平気ですが? 勿論大佐にだけですが」

 

イク「なんだか変態さんな会話なの。でも大佐ならイクもいいの!」

 

足柄「別に......いいわよ」

 

長門「皆意外に度胸があるんだな。因みに私も余裕だ。好きな男に見せて恥ずかしい所などないからな」

 

金剛「Me too ヨ!」

 

Bis「が、頑張るもん......」

 

響「さっきから菊門とかアナルとかなんだい?」

 

鈴谷「お尻の穴だよ。響」

 

響「お尻......大佐はお尻が好きなの?」

 

加賀「大佐の名誉の為に言っておきますが、そんな嗜好はない筈です」

 

足柄「そう......」ホッ

 

龍田「安心してるとこ悪いけど、ヤルからには大体見られると思うわよ~?」

 

イク「後ろからヤったりしたら一発なの」

 

Bis「平気......だもん」

 

足柄「マリアさん体操座りしながら言っても頼りないだけよ?」

 

加賀「はい。皆さんそこまでにして下さい。私達は別に猥談をする為に集まっているわけではないのですから」

 

長門「ここは、全員それくらいの認識はある、という事でいいだろう。な、マリア?」

 

Bis「うん......」コク

 

鈴谷(マリアさん可愛い♪ なんか熊野んと同じ匂いがする)

 

響「響も大佐と一緒にお風呂入るのも平気だからそれでいいよ」

 

金剛「え?」

 

イク「今、凄い事言わなかったの? 響ちゃん」

 

龍田「一緒に入る事くらいわけないってことよ。それくらい分かりなさぁい?」

 

加賀「取り敢えず、最初の議題に戻ります。何か有効な案はないでしょうか」

 

足柄「......部屋に呼べば?」

 

長門「お、良い事言うな足柄。確かにそうだ。自分が勝手知ったる場所なら幾分有利な状況にも持っていけるだろう」

 

鈴谷「部屋かぁ。鈴谷の部屋散らかってるから掃除メンドイなぁ」

 

Bis「貴女、熊野達と相部屋でしょ? あの子たちのスペースまで散らかしてるの?」

 

鈴谷「ううん。それは流石に鈴谷のとこだけだよ。でも、あまり散らかし過ぎると熊野んが怒って片づけてくれるんだぁ」

 

イク「熊野が不憫なの......」

 

龍田「策士って言うのかしら~? でも、あまりだらしないのはダメよ~?」

 

響「大人数の部屋が多い響達からすればそれは当たり前だけどね」

 

金剛「ワ、ワタシも今度から気を付けマス......。そういえばいつも榛名と霧島が clean にしてくれてマシタ」

 

加賀「片づけられない欠点はこの際置いておくとして、足柄さんの意見は良いと思います。となると......」

 

長門「部屋へと誘う手段か」

 

龍田「いい考えがあるわよ~」

 

Bis「ホント!?」

 

響「興味あるな」

 

龍田「簡単よ~? 答は......そこの2人よぉ」

 

龍田が指を指した方向にはポカンとした顔をした金剛と鈴谷がいた。

二人とも何故自分たちが指名されたのか全く理解できていない様子だった。

 

金剛「ワ、ワタシ?」

 

鈴谷「へ? 鈴谷も?」

 

龍田「この2人はぁ、部屋を片づける事ができないダメな人たちで~す」

 

鈴谷「いやぁ、そんなに褒めないでよ~♪」

 

金剛「照れマス♪」ポ

 

長門「それで?」ムシ

 

龍田「片づけられなくて散らかってるってことはぁ、ゴミも含めて部屋にいろいろ持ち込んでるって事でしょ~?」

 

足柄「あ、もしかして......」

 

龍田「そう。部屋に規則違反の物を持ち込んでいないか、抜き打ち検査をしてもらうのよぉ」

 

響「な、なるほど......」

 

イク「響ちゃんは大変そうなの。響ちゃんは持ってなくても他の子もそうとは限らないもんね」

 

加賀「しかし名案です。大佐への進言は任せて下さい」

 

長門「それでは各自、調査の日が決まり次第当日にいるの同居人との予定の調整等を頭に入れておくように。あと、本当に見つかってはダメな物は上手く隠しておけよ」

 

Bis「了解よ!」(大佐の写真は多分ダメね。非公認だし)

 

金剛「了解ヨ!」(あんなに汚しちゃった写真見つかるわけにはいかないネ」

 

龍田「分かったわぁ」(天龍ちゃんに写真のこと言っておかないとねぇ)

 

イク「了解なの」(実はこっそり大佐の水着の写真も持ってたりするから見つかるわけにはいかないの)

 

響「了解」(雷達に上手く説明しないといけないな。はぁ......骨が折れそう)

 

足柄「分かったわ」(写真は下着と一緒にしまってあるから多分大丈夫よね......)

 

長門(敢えて、ぶちまけておくというのも有りだな)

 

加賀「了解しました」(秘密を敢えて晒す、というのも有りですね)

 

鈴谷「りょうか~い」(部屋には常にノーパン娘が2人いるもんなぁ......あ、寧ろそれを狙ってみる?)




戦艦の割合が多いのは許してください。
何となくこうなってしまいました。

余談ですが、艦これを初めて10ヶ月目にして初めて鬼怒を手に入れました。
基本、掘ることをしない人間なので、偶にこういうラッキーがあると嬉しいものです。


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第48話 「健康診断(前篇)」

艦娘たちの健康管理も提督の立派な仕事の一つです。
今日は定期健康診断の日。



提督「今日は健康診断を行う。全員準備ができたものから医務室に行くように」

 

天龍「あー、かったりぃなぁ」

 

龍田「あら、天龍ちゃんもしかして歯の診察が怖いのかしらぁ? 虫歯になってたら歯医者に行かないといけないもんねぇ」

 

天龍「べ、別にそんな事は......!」

 

提督「天龍、歯の診察は思いの外大事なんだぞ?」

 

天龍「......なんでだよ? 歯なんて大したことねーじゃねぇか」

 

提督「そうでもない。歯というのはな、普段から最も使う人体の一部だ。物を食べる時は歯で咀嚼をする、逆に飲む時は歯が液に浸る。それがどういう事が分かるか?」

 

天龍「歯が汚れてるってい言いたいんだろ? 分かってるよそんな事。だから、歯磨きだってちゃんとしてるぜ?」

 

提督「歯磨きは確かに大事だな。それも歯の健康を維持する上で欠かせないケアだ。だがな天龍」

 

天龍「な、なんだよ......」

 

提督「歯垢と呼ばれる汚れは歯磨きでなんとかなるが、歯石はそうはいかない」

 

天龍「歯石......聞いたことはあるけど」

 

提督「歯石も歯垢の一つだが、歯石は歯磨きなどでは除去できなかった歯垢が歯に蓄積し、形状的に石化したものだ」

 

天龍「石化......硬いのか?」

 

提督「そうだ。だからそれを取るには定期的に歯医者に行くしかない。もしそれを面倒だと放置するような事をすれば......」

 

天龍「......」ゴク

 

提督「歯は黄ばみ、見た目の汚さ通りの悪臭を口から放つことになる。勿論、虫歯の原因にもなるぞ」

 

天龍「!」バッ

 

龍田「心配しなくても天龍ちゃんからはまだそんな匂いはしないわぁ」

 

龍田「でも、これからそういうのを気にするなら最低でも年に2回くらいは歯医者に行かないとねぇ?」

 

天龍「......!」コクコク

 

龍田「うふ、かぁわいい♪ いい子ねぇ」

 

龍田「......これで好きな人にキスをする時は大丈夫、ね?」ヒソ

 

天龍「っ!」カァ

 

提督「? 龍田、お前天龍に何を言った?」

 

龍田「女としての嗜みを教えてあげただけよ~?」

 

提督「......そうか。まあ問題ないならいい」

 

提督「さて、少し時間を使ってしまったな。総員、健康診断の受診を開始せよ」

 

 

~数分後、執務室

 

ガチャ

 

島風「いっちばーん!」

 

提督「相変わらず何でも早いんだな、島......風」

 

提督は書類から顔を上げて島風を見るなり言葉を失った。

 

島風「? どうしたの? 大佐」

 

提督「なんで裸なんだ......」

 

島風「健康診断だからだよ?」

 

提督「健康診断で素っ裸になる必要はない筈だが......」

 

島風「あ、これ? 誰が一番軽いか競争してたの!」

 

提督「そうか......。それで、服は?」

 

島風「あっ、忘れてきちゃった! 取って来るね!」トテテ

 

バタン

 

 

提督「......次からは鍵を掛けておくか」

 

 

――それから更に数分後

 

コンコン

 

加賀「加賀です」

 

提督「ん、入れ」

 

ガチャ

 

 

加賀「失礼します」

 

提督「どうした? お前はまだ順番的に終わってない筈だが」

 

加賀「まだ少し時間が掛かりそうなのでお仕事を手伝いに来ました」

 

提督「そうか、悪いな。では、頼む」

 

加賀「分かりました」シュル

 

提督「何故脱ぐ?」

 

加賀「健康診断に直ぐに行けるようにですが?」

 

提督「まるで俺がおかしい事を言っているような目で見るのはやめろ」

 

提督「ダメに決まってるだろ。節度を考えろ」

 

加賀「そうですね。私としたことがつい二人きりだったので興奮してしまいました」

 

提督「次に同じ事をしようとしたら当分秘書から外すからな」

 

加賀「それは嫌ですね。分かりました仕事の時はしません」

 

提督「仕事以外でも慎みを持て馬鹿者」

 

加賀「努力します」

 

提督「確約はしないんだな」

 

加賀「攻め手を失くしたくはありませんから」

 

提督「ふぅ......用心しておこう」

 

加賀「頑張ってくださいね」ニコ

 

トントン

 

金剛「金剛ネ! 順番がまだだから少しカンバセイションに付き合っテ。仕事も手伝うワ!」ネ、ネエサマ......ホントニコンナコカッコウデ

 

 

提督「うん? 金剛以外にもいるのか?」

 

 

金剛「Yes! 妹達もいるヨ!」

 

 

提督「加賀?」チラ

 

加賀「いいのではありませんか? 幸い残ってる仕事もそんなに多くはなさそうですし。それだけの人数ができれば多少の暇はできるものかと」

 

提督「そう、だな。ああ、いいぞ。入れ」

 

ガチャ

 

 

金剛「お邪魔シマース!」ドヤ ←下着姿

 

比叡「お......お邪魔します......」カァ ←下着姿

 

霧島「失礼します。大佐」ヘイゼン ←下着姿

 

榛名「失礼......します」ドキドキ ←下着姿

 

提督「 」

 

加賀「これはこれは......」

 

提督「全員服を着ろ。説教だ」




4姉妹はこの後しっかりお説教を食らったそうです。
その割には皆辛そうな顔をしてなかったと後に加賀は言います。


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第49話 「健康診断(後編)」

金剛姉妹をお説教した後もまだ健康診断は続きます。
続きますが、これは受診を受けた人とこれから受ける人たちのお話です。


金剛「Oh......怒られてしまったネー」

 

比叡「そりゃ、あんな格好で入ってきたら怒りますよ......」

 

霧島「流石にあんな状況だと下着を見たくらいでは興奮もしないし、喜ばないでしょうね」

 

榛名「で、でも見られちゃいました......私、恥ずかしいはずなのに、何故か嬉しいです」ポッ

 

霧島「基本的に人に見せる格好じゃなないからね。そういう姿を好きな人に見てもらうという行為が特別に感じるのかもしれないわ」

 

金剛「Cute なの選んだからネ!」

 

比叡「迂闊だった......もっと可愛いの着て来ればよかった......」

 

扶桑「あら、金剛さん達まだ診断終わってないの?」

 

陸奥「早く終わらせてきなさいよ」

 

金剛「今から行くところネ。Oh......」

 

比叡「どうしました? 姉様」

 

金剛「扶桑も陸奥も前から思ってマシタが、おっぱい大きいネ」

 

扶桑・陸奥「え?」

 

霧島「確かに......。私達も決してない方ではありませんが、お二人の方が明らかに大きいですね」

 

扶桑「まぁ、小さいとは思った事はないけど......」

 

陸奥「そんなに大きい?」

 

榛名「......」

 

ムンズ

 

扶桑「ひゃっ!?」

 

比叡「は、榛名何をやってるの!?」

 

榛名「......」モミモミ

 

扶桑「ちょ、あっ......榛名っ、さん......何っ、を?」

 

榛名「大佐がもし大きいお胸がお好きなら、榛名達は少しだけ不利です。でも感触が同じならまだ抗する事は可能なので、それを確かめています」モミモミ

 

霧島「なるほど......それで、どう?」

 

榛名「大きいだけあって重量感が有り、揉み応えも良いですね。でもやっぱり感触自体は同じ......かな」パッ

 

扶桑「はぁ......はぁ......。もう、いきなりはやめて下さいよ」

 

榛名「ごめんなさい扶桑さん。どうしても確かめたくて失礼をしてしまいました」ペコ

 

金剛「扶桑、ワタシからも sorry ネ。でもお蔭で良い事を知ったワ」

 

比叡「榛名ったら最近は本当に開放的になったというか、大胆になったね......」

 

榛名「さて」クル

 

陸奥「うっ。や、やぱり私も?」

 

榛名「お願いします」

 

陸奥「仕方ない......わね。はい、いいよ」

 

比叡「あ、榛名。今度はわたしにやらせて!」

 

榛名「比叡姉様? いいですけど、しっかり確かめてくださいね?」

 

比叡「うん。分かってるって。それじゃ陸奥さん、失礼します!」

 

ムンズ

 

陸奥「ん......」ピクッ

 

比叡「わ、柔らか......んー......」モミモミ

 

金剛「比叡、どうデス?」

 

比叡「凄く気持ち良いんですけど......」

 

陸奥「えっ。な、なにか問題でもあるの?」

 

比叡「あ、いえ。そういうんじゃないんですけど。ほら、わたしと陸奥さんって結構身長差があるじゃないですか」

 

扶桑「そうね。頭半分くらいはあるかもしれないわね」

 

比叡「その身長差の所為で、陸奥さんの胸を揉むのに腕を少し上げないといけないから、こう」ムニィ

 

陸奥「んん......!」ピクピクッ

 

比叡「大きくて重みがある分揉むのが少し疲れるんですよね」

 

霧島「なるほど......大きい分、面積も体積もあるから揉み方によっては疲れてしまい、いざコトにあたる時に雰囲気が削がれる可能性が......」

 

扶桑「な、なんか凄く深刻そうね......そ、そんなに問題かしら?」

 

龍驤「大問題や!」

 

榛名「わっ!? 龍驤さんいつからそこに」

 

龍驤「さっきからいたで! 全くさっきから聞いてて思ったんやけど、それがどれだけ贅沢な悩みなのか皆わかってへん!」

 

金剛「......龍驤が言うと説得力あるワネ」

 

霧島「持たざる者の苦悩というやつかしら」

 

龍驤「そこ、余計な事言わんといて!」

 

陸奥「でも、確かにないよりかはあった方がいいものよ? 龍驤のいう事は間違いないわ」

 

龍驤「陸奥ネーサンの言う通りや! うちなんてもうその道で行くしかないって覚悟してるんやで?」

 

榛名「その道?」

 

龍驤「見た目がちんちくりんなんはもうどうにもならん。なら、逆にそれを極めて大佐をどうにかして幼女趣味にしたるんや!」

 

一同「......」

 

陸奥「そ、それってどうなの......?」

 

霧島「なかなか壮大な計画なのは間違いなと思います」

 

扶桑「大佐が、電ちゃんみたいな子達が趣味になるなんて、ちょっと想像がつかないけど......」

 

比叡「わ、わたしはなんか嫌だなぁ、それ......」

 

榛名「そ、そんなの認めるわけにはいきません!」

 

金剛「Don't worry ヨ榛名。多分それは、リアルにはならないワ」

 

龍驤「好きに言っとき! うちはやるでぇ!」ゴォォォ

 

 

~その頃の執務室

 

加賀「大佐、これが今回の私の診断結果です」

 

提督「そんな物頼んだ覚えはないし、見せるな」

 

加賀「そうですか。大佐はやはり大きい方がいいのですね......」シュン

 

提督「あからさまな曲解はやめろ」

 

加賀「なるほど。お尻派でしたか。それなら自信があります」

 

提督「妙な自信を誇る暇があったら金剛達に早く受診するよう催促をして来い」




はい。殆ど健康診断なんてしてませんね。
しかも、思ったほど桃色でもなくてすいません。


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第50話 「進言」

以前の作戦会議で決定した艦娘の部屋の抜き打ち検査という企みを提督に提案すべく、加賀は秘書をしながら機会を伺っていました。
そしてようやく丁度良い機会が訪れたようです。
上手くいくといいですね。


提督「抜き打ち検査?」

 

加賀「そうです」

 

提督「お前たちの部屋の抜き打ち検査をしろというのか?」

 

加賀「基地内の風紀を正し、維持するのが目的なので、不定期でもこういった事はある程度必要かと」

 

提督「ふむ......」

 

加賀「流石に一日で全員の部屋を回るのは無理でしょうから、適当に決めた部屋を5ないし、3部屋くらいで行うと良いと思います」

 

提督「まあ、検査する部屋の数自体はそれでいいとしてもだ」

 

加賀「なんです?」

 

提督「うちはそんなに規則に違反する物を持っている奴がいるとは思えないんだがな」

 

加賀「そうですか? 辺境の地で物がないと言っても、一応軍の誘致で町はある程度発展していますし」

 

加賀「例えそこで手に入らなかったとしても、今はインターネットでおおよその物は手に入ってしまいますよ?」

 

提督「インターネット自体はここか、電算室でしか使えないようになってるから問題ないんじゃないか?」

 

提督「この部屋は勿論、電算室も基本、俺の許可がないと使えないわけだし。例え使ったとしても履歴はこちらで把握できるようになっているしな」

 

加賀「きょうび履歴の改ざんや削除くらい誰でもできると思いますが」

 

提督「そこまでして何かが欲しいのなら、その時点で俺に相談してくると思うがな」

 

加賀「皆を信用しているのですね」

 

提督「組織というものは軍も例外ではなく結束によって保たれるものだ。ま、その結束もあまり度が過ぎると束縛になりかねないからある程度調整も必要だがな」

 

加賀「そうですね。強い束縛は支配になり得ます」

 

加賀「軍人からしたら規律と見なすこともできるかもしれませんが、それでもその概念に抵抗を感じる子には強いストレスになりかねませんからね」

 

提督「そういう事だ」

 

加賀「では、やはり検査自体は必要ないと?」

 

提督「そう結論するのはやや早計だな。検査自体は俺は悪いとは思ってない。風紀の維持・改善、大いに結構だ」

 

提督「俺は単にお前らが見つかって重大な問題になるような物を勝手に持ち込むような真似はしないと信用している、と言いたかっただけだ」

 

加賀「では、重大でないならある程度軽い物なら見逃すと?」

 

提督「流石に公には公言はできないし、見つけたらあからさまに見逃すわけにもいかないが、まぁ上手く隠してくれればいい」

 

提督「加賀、お前も俺の写真を持っているんだろう? 写ってる本人としてはむず痒いが、それでもそれを見せられなければ俺はそこまで気にならない」

 

加賀「大佐......」

 

加賀「では、私の写真などどうです? 自分の写真が不当に所持されてるのが気になるのでしたら、せめて私とは同じ条件という事で」

 

提督「それは勿論構わないが......普通の写真だろうな?」

 

加賀「......」

 

提督「俺は危うく自分で自分の風評被害を拡散するところだったか」

 

加賀「裸婦はお嫌いですか?」

 

提督「お前の思考は飛び過ぎだ、俺はそこまで劣情の塊じゃない」

 

加賀「仕方ありませんね。では、今度普通のを用意しておきます」

 

提督「ついでに青葉にいかがわしい写真は全て破棄するように言って......」

 

加賀「どうしました?」

 

提督「最初の検査候補は青葉だな」

 

加賀「......」

 

加賀(これはいけない。青葉さんが大佐に好意を持っていないとは思えないけど、それでも最初に部屋に踏み込んでもらうのはあの時会議に参加していたメンバーでないと、ちょっと彼女達に示しがつかないわ)

 

加賀(これは一応、修正を試みないと。できれば最初は自分の所に来て欲しかったけど、ここで我儘を通して順番を狂わしちゃ駄目ね)

 

加賀「それでは青葉さんの部屋は私が担当します。大佐は、金剛さんの部屋などどうです? あそこは4人部屋ですし、大佐も多少は気になる所があるのでは?」

 

加賀の提案という名の修正案に提督は少し歯切れが悪そうにこう答えた。

それは彼女にとって予想外の言葉だった。

 

提督「いや......検査自体ははお前たちに任せる。俺は結果だけを報告してもらえればいい」

 

加賀「大佐......?」

 

加賀(なんだろう、違和感を感じる。私達の企みに勘付いた風じゃない。検査......部屋に入るという行為自体に抵抗を感じている......?)

 

加賀「部屋に、入りたくないのですか?」

 

提督「ん......流石だな。今ので判るのか」

 

加賀「何故です? 私達が大佐に何かしたとは思えませんが」

 

提督「誤解するな。お前たち自身に問題があるわけじゃない。これは俺の個人的な理由によるものだ」

 

加賀「......教えていただけないでしょうか?」

 

提督「まあ、隠す事でもないしな。俺はな」

 

加賀「はい」

 

提督「女の部屋が苦手なんだ」




おっと、ここで衝撃の告白(?)です。
この言葉に隠された提督の本意は?
それに対する加賀の反応は?

次回をお待ちください!


という感じにまたドラマ風にしてみました。
雰囲気を作っといてなんですが、そんな大した理由ではありません。


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第51話 「爪切り」

時間的には健康真だの前のお話。
何となくネタが浮かんで書きました。
急ですいません。


パチッ......パチッ......。

 

多摩「にゃ?」

 

夜中、皆が寝静まった基地で、お手洗いから戻る途中だった多摩は執務室の前で妙な音を聞いた。

 

多摩「何の音にゃ?」ソー

 

気になってこっそり部屋を覗いてみるが誰も居なかった。。

音は執務室からしか行けない提督の私室からしている様だった。

 

多摩(気になるにゃ......部屋からは明かり漏れてるから大佐は起きているはずにゃ)

 

多摩「......よしっ」

 

 

大佐「誰か居るのか?」

 

 

多摩「にゃぁ!?」

 

 

ガチャ

 

提督「多摩か。こんな時間にそんな所で何をしているんだ」

 

寝間着姿の提督が現れた。

本人の趣味なのかどうかは分からないが、着物姿が妙に様になっていた。

 

多摩「えっと......えっと......」プルプル

 

提督「別に怒ってはいない。執務室は俺が居ない時は出入り自由だからな」

 

多摩「お、怒らない?」

 

提督「そう言ったろ」

 

多摩「にゃ......廊下を歩いていたら大佐の部屋の方から変な音がしたから、気ににゃって......」

 

提督「音?」

 

多摩「そうにゃ。こう、パチッ、パチッって」

 

提督「ああ。爪切りの音を聞いたのか」

 

多摩「爪? 大佐、爪を切っていたのかにゃ?」

 

提督「そうだ。寝る前に少し伸びているのに気付いてな。気になって切っていた」

 

多摩「なんだ、そうだったのかぁ」

 

提督「気が済んだか?」

 

多摩「うん。ごめんにゃ。失礼しま......」

 

提督「どうした? 指がどうかしたのか?」

 

多摩「大佐」

 

提督「ん?」

 

多摩「多摩も切って欲しいにゃ」

 

提督「なに?」

 

多摩「多摩も爪を切って欲しいにゃ!」

 

提督「どうしたんだ、いきなり」

 

多摩「多摩はたった今、まだ自分が爪の手入れをしていなかった事に気付いたのにゃ。だから大佐にそれをお願いしたいのにゃ」

 

提督「俺は女の爪を手入れできるほど器用でもないし、気も遣えないぞ」

 

多摩「そ・れ・で・も! 切るだけだったらできるにゃ?」

 

提督「切るだけだったらな。だがな、おm」

 

多摩「それだけでもいいにゃ! 切った後に鑢で整えるくらいはワケないはずにゃ」

 

提督「それだってお前が満足する程の出来とは限らないぞ?」

 

多摩「多摩は大佐に切って貰えるだけで満足にゃ。だから......お願いにゃ。切ってぇ」スリスリ

 

提督(急に何を言い出すのかと思えば今度は甘えてくるか。本当に猫だなこれは)

 

提督「分かった。ほら、動き難いから離れろ。切ってやるから」

 

多摩「! ありがとうにゃぁ♪」ピョン、ギュ

 

提督「こら、動き難いと言ったろ。全く......部屋に入るぞ」

 

多摩「分かったにゃ。お邪魔しますにゃ♪」

 

 

~提督私室

 

多摩「......」キョロキョロ

 

提督「何か珍しいのか?」

 

多摩「多摩、大佐のお部屋に初めて入ったにゃ」

 

提督「そういえば、艦娘で入れたのはお前が初めてだったかもな」

 

多摩「ホント!?」

 

提督「多分な。なんだ、嬉しそうだな」

 

多摩「当り前にゃ! だって、だって多摩が一番にゃんてぇ......♪」フルフル

 

提督「よく分からない拘りだな」

 

多摩「猫は総じてそういうものにゃ」

 

提督「お前が言うと何となく説得力があるな」

 

多摩「にゃふふ~。大佐も分かってるにゃぁ♪」スリスリ

 

提督「いちいち擦り付いてくるな。暑い」

 

多摩「多摩はこれがいいのにゃ♪」

 

提督「全く......ん? 今度はどうした?」

 

多摩「今気付いたけど、大佐の部屋って物があまりないにゃ」

 

提督「まぁ、ベッドと風呂を除いたらら酒と煙草を収めてる棚だけだからな」

 

多摩「大佐らしいけど、もうちょっと賑やかにすると良いと思うにゃ。そうじゃにゃいと女の子はちょっと気まずいかもしれないにゃ?」

 

提督「私室と言っても軍から提供された施設の一部だ。女を誘う為に使えるわけがないだろう」

 

多摩「にゃふふ、相変わらずお堅いにゃ。んにゃ、切って」ピョン

 

提督「膝の上に、寝るのか」

 

多摩「これがいいのにゃ♪ はい、手」

 

提督「まるで幼子だな」パチッ

 

多摩「にゅふふ~♪」スリスリ

 

 

――数分後

 

提督「ほら、切ったぞ」

 

多摩「ありがとにゃ。今度は足もお願いするにゃ。はい」

 

提督「おい、はしたないぞ。下着が見えている」

 

多摩「別に見せるつもりでやってるわけじゃにゃいから多摩は気にしないにゃ」

 

提督「俺が気になる」

 

多摩「にゃ? もしかして多摩のパンツみてこうf」

 

提督「切らないぞ」

 

多摩「にゃにゃ! ごめんにゃ。謝るから切って欲しいにゃ」

 

提督「それでもその格好は変えないのか」

 

多摩「この格好が良いのは本当なんだにゃ。だからお願いにゃぁ」スリスリ

 

提督「膝の上でじゃれつくな。ふぅ......」パチッ

 

多摩「あ、切ってくれるのにゃ。もうパンツは気にならないかにゃ?」

 

提督「お前と話していたら、島風と話しているみたいな感覚になって、気にならなくなってきた」

 

多摩「にゃ? それってどういう事にゃ?」

 

提督「子供の下着には食指は動かんという事だ」

 

多摩「ガーン」

 

バッ

 

提督「おい、何で片足が終わらないうちにもう片方を出す?」

 

多摩「セクシーアピールにゃ!」マルミエ

 

提督「そうか......」パチッ ←余計に気にならなくなった

 

多摩「ガーン!」

 

 

~数十分後

 

提督「終わったぞ」

 

多摩「結局、表情一つ変えなかったにゃ......。多摩は、何だか負けた気がするにゃ......」ショボーン

 

提督「それは残念だったな。もっと女を磨いて出直して来い」

 

多摩「にゃー! 悔しいにゃ!」ピョン、グルグル、トン

 

提督(凄い動きだ......)

 

多摩「大佐、次は負けないにゃ! 覚えているにゃー!」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

提督「さ、寝るか」




多摩はやっぱり天然でこそ多摩だと思います。
逆に球磨は......多摩と比べるとちょっと動かし難いかも。
ま、彼女の番が来るまでには何とかしたいですね。


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第52話 「トラウマ」

前回(*第二部第50話「進言」参照)、提督の口から思いもよらない言葉が出ました。
果たして、その理由とは?

間に全く関係ない話が入って、話が飛んだ印象を与えてしまってたら申し訳ないです!


加賀「苦手......?」

 

提督「そうだ」

 

加賀「おっしゃった意味がよく分かりません。苦手というのは女性の部屋そのものが苦手という事なのですか?」

 

提督「ん......そうだな。どうしても入りたくないという意識が働いてしまう」

 

加賀「一体、何故......」

 

提督「士官学校時代の頃の話だ。当時つきあt」

 

バン!

 

 

金剛「大佐ァ! 浮気はダメって言ったヨォ!?」ダキッ

 

羽黒「そ、そうなんですか!? 大佐!」ジワァ

 

名取「そ......嫌ぁ!」ブァ

 

提督「......っ」

 

加賀「3人とも落ち着いて下さい。あと、金剛さん大佐を離してあげて下さい。息ができてないみたいです」

 

金剛「あ」バッ

 

提督「かはっ......はぁ......ふぅ......」

 

加賀「大丈夫ですか?」

 

提督「久しぶりにマズイと思った......」

 

金剛「ご、ゴメンナサイ......」

 

羽黒「大佐、大丈夫?」

 

名取「大佐っ」

 

提督「大丈夫だ。だからそう詰め寄るな」

 

金剛「よかったデス......じゃ、ないヨ! 大佐どういう事ネ!? 誰かと付き合ってるノ!?」

 

加賀「そこは気になっていたところです。どうか詳細を」

 

羽黒「私も知りたいです!」

 

名取「わ、私も......!」

 

提督「話すから皆落ち着け」

 

提督(加賀が3人が不意に部屋に入った事を戒めないとは......。いやな予感がするな)

 

4人「......」

 

提督「まず、俺が何故女の部屋が苦手なのかという話だったな」

 

加賀「ええ、そうでしたね」

 

提督「士官学校時代俺は一人の女性と付き合っていた」

 

金剛「っ、それって......!」

 

加賀「金剛さん、冷静に」

 

提督「その頃の俺も若かったから、彼女も俺もお互いに結婚を前提としたような真剣な付き合いはしていなかった」

 

金剛・羽黒・名取「ほっ」

 

加賀「......それで、もしかしてその彼女の方が大佐が女性の部屋が苦手になった原因なのですか?」

 

提督「そうだ。この先は......所謂、大人の話になるわけだが......」

 

加賀「私に言ってるわけではないですよね」

 

金剛「ワタシは Adult だから問題ないワ」

 

羽黒「わ、わたしだって......」カァ

 

名取「が、頑張ります......」カァ

 

提督「......分かった」

 

提督「若かったとはいえ、もう十代半ばだ。付き合う内にいつの間にか彼女は俺の部屋にもよく来るようになっていた」

 

羽黒「そ、それって......」カァ

 

提督「肉体関係はあった」

 

加賀「......」

 

名取「ひっ!?」

 

金剛「ヘェ......」

 

羽黒「ぴぃ!?」

 

提督「金剛、加賀、何か言いたい事でもあるのか?」

 

加賀「いえ、なんでも。ただ、その彼女の方に先を越されたのが悔しくて腹わたが煮えくり返ってるだけです」

 

金剛「フフ......もうこれはバージンを捧げるしかなくなったネ......」

 

提督「......」(火に油......いや、ニトロが爆発寸前か)

 

羽黒(あ、あの大佐が冷や汗流してる......)

 

名取(うぅ......部屋が凄く狭苦しく感じるよぉ......)

 

提督「まぁ......続けるが、そんな感じで付き合っていて、ある日俺が初めて彼女の部屋を訪れる事があった」

 

加賀・金剛「......」

 

提督(最早、何も言わなくなったか。気のせいか俺を見る目が話を聞く本来の目的から離れている気がする)

 

名取「こ、怖いよ、羽黒さんっ」ギュッ

 

羽黒「わ、私も......て、手、離さないで」ギュッ

 

提督「......彼女の部屋を訪れた時だ、俺の目の前に衝撃的な光景が飛び込んできた」

 

加賀「......淫乱な彼女さんが全裸で性的要求してきたんですか?」

 

金剛「大佐......時間と場所は弁えなないと......ダメヨ?」

 

提督「一方的に色情狂いに断定するな。まだ続きがある」

 

加賀「......どうぞ」ジト

 

金剛「Sが付く言葉は言っちゃダメヨ?」ニコ

 

羽黒・名取「......」ガタガタ

 

提督「お前たちが想像している様な事じゃない、安心しろ」

 

提督「それで、その光景だが。一言で言うと不潔極まりない散らかった部屋だった」

 

金剛・加賀「え?」

 

羽黒(大佐が安心しろって言ってくれてたのに......)

 

名取(本当に信じてなかったんだ......大佐かわいそう)

 

提督「俺は、自分が潔癖症であるつもりはないが、それでも限度というものがある」

 

提督「俺の目に映った彼女のその部屋の有様は、そんな俺の許容を軽く越えるものだった」

 

加賀「......そう、ですか」シラー

 

金剛「う、ウン。それは驚くワネ」

 

名取(二人とも急にしおらしくなっちゃった。安心したのかな)

 

羽黒(現金です......。大佐は、後で私が慰めよう......!)

 

提督「俺は、彼女に断わる事もせず自分に走った衝動に従って、部屋を片づけ始めた」

 

提督「今思えば本当に失礼な事をしたと思う。当然、当時の俺も片づけ終わって我に返った頃には痛烈に後悔と自責の念に駆られて、即座に彼女に謝罪しようとした」

 

提督「すると......」

 

羽黒「すると......?」ドキドキ

 

名取「ど、どうしたんですか?」ドキドキ

 

提督「激しい叱責を覚悟して彼女の方を見ると、そんな予想に反して彼女は嬉しそうに笑っていた」

 

羽黒「え?」

 

名取「そ、それってどういう......」

 

加賀「これは嫌な予感がしますね」

 

金剛「Why? 綺麗にしてもらってハッピーだったからじゃないノ?」

 

提督「確かに彼女はその事で喜んでいた。それは、俺にとっては幸運だった。いや、だと思った。彼女の次の言葉を聞くまでは」

 

『ありがとう! また頼むわね』

 

5人「......」

 

提督「それからというもの、俺は部屋に呼び出される度に彼女の部屋を掃除させられ、ついには家事までやらされるようになっていた」

 

提督「見返りというつもりはなかったのだろうが、事の後に彼女が床に誘ったりもしたのだが、疲労困憊でそんな気分にもなれず、直ぐに帰るだけだった」

 

名取「ひ、ひどい......」

 

金剛「あんまりヨ!」

 

名取「大佐、かわいそう......」

 

加賀「それがトラウマになったのですか?」

 

提督「そうだ。その時から俺の中で女性の部屋は危険な所、という認識が生まれてしまったんだ」

 

加賀「因みにその彼女さんは今?」

 

提督「当然の成り行きだが、関係が自然に消滅した後は本部で働いているはずだ。生活面はアレだったが、優秀な子だったのは間違いないからな」

 

羽黒(良かった! まだ付き合ってるとかじゃないんだ)

 

名取(う、嬉しいと思っちゃうのは......意地悪かな。でも......よかった......)

 

金剛(今は付き合ってないみたいね! でも、先に寝取られちゃってのかぁ......。悔しいなぁ)

 

加賀(出遅れはしたけど、状況は元の通りね。だけど、もう油断はできないわ)

 

加賀「......事情は分かりました。苦労なされたのですね」

 

金剛「だ、大丈夫ヨ! ワタシの部屋はキレイだカラ!」

 

羽黒「わ、私の部屋もです!」

 

名取「散かったりなんかしていません!」

 

提督「皆、すまないな。ありがとう」

 

加賀「大佐、安心するのは難しいかもしれませんが、私達の部屋だけは取り敢えず信じて貰えませんか?」

 

提督「うむ......」

 

加賀「私を、信じられませんか?」ズイ

 

提督「......ふっ、子供じゃあるまいし、何を意固地になっていたんだろうな」

 

加賀「それでは?」

 

提督「ああ。提督として検査には立ち入られせてもらう」

 

金剛「ヤッタネ!」

 

加賀「ありがとうございます」

 

羽黒・名取「検査?」

 

提督「ん? 加賀はともかく、何で金剛は驚かないんだ?」

 

金剛「エ?」

 

加賀「......不覚」

 

羽黒・名取「?」

 

提督「......加賀、金剛。少し話を聞きたいんだが」




龍驤を改二に、金剛を結婚スパート(途中で気力尽きて大望為らず)掛けてたら投稿が遅くなってしまいました。

という事で加賀達の計画はバレてしまいました。
検査自体は加賀と金剛の態度次第でしょう!多分。


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第53話 「彼女」

本部にいる提督の元彼女のお話です。
因みに秘書艦は武蔵!

中将も出ます。
こちらの秘書艦は大和!

持ってない!欲しい!
......けど、まずは大和をゲットしないと。


~大本営本部 第4司令部 提督執務室

 

彼女「ふぅ......」

 

武蔵「どうかしたか?」

 

彼女「いえ、ちょっと昔、っていっても数年前の事だけど、その頃を思い出してね」

 

武蔵「数年前? 士官学校時代か?」

 

彼女「ええ。昔付き合っていた彼氏の事」

 

武蔵「む......恋人がいたのか......」

 

彼女「ええ」

 

武蔵「今も、付き合っているのか?」

 

彼女「昔付き合っていた、って言ったでしょ? その頃に別れたわよ」

 

武蔵「! そうか」

 

彼女「嬉しそうね?」

 

武蔵「私はお前が大好きだからな」

 

彼女「面と向かってそういう事言わないでよ。中将が聞いたら怒られるわよ?」

 

武蔵「逆に見せつけてやるさ」フンス

 

彼女「なに威張ってるのよ。......ふぅ」

 

武蔵「溜め息を付くと何かが逃げるぞ? 補充してやろうか?」ズイ

 

彼女「何か、が分かってるじゃない。こんなとこでキスはダメ」

 

武蔵「む......私じゃ不満か?」

 

彼女「不満だったら貴女とこんな関係になってないわよ」

 

武蔵「惚れてしまったんだ。仕方ないだろう」

 

彼女「貴女も女なんだから男にも興味持ちなさいよ」

 

武蔵「まぐわうだけなら男とでも出来る。でも、心はお前に夢中なんだ」

 

彼女「全く、どうやったらあの武蔵に女の私が惚れられるのかしら」

 

武蔵「一目惚れだからな、理由を聞かれても私も困る」

 

彼女「そうね......」

 

武蔵「なあ」

 

彼女「ん?」

 

武蔵「やっぱりキスしたい」

 

彼女「ダメだって。この間も同じ事言って結局最後までシちゃったじゃない」

 

武蔵「あの時はトイレだったから問題ないだろう」

 

彼女「なんでトイレだったら問題ないのよ。盛り過ぎ、少しは自粛しなさい」

 

ギュ

 

武蔵「お願い......」グス

 

彼女(服の裾なんか持って、涙目でお願いしてくるなんて......本当に武蔵なのかしらこの子)

 

彼女「キスだけよ?」

 

武蔵「! ああ!」パァ

 

彼女「舌は入れちゃダメよ?」

 

武蔵「う、うむ......」

 

彼女(入れるつもりだったわね)

 

彼女「全く......ほら」

 

武蔵「ありがとう。ん......」

 

チュ

 

彼女「......ん」

 

 

武蔵「ふぅ......♪」

 

彼女「満足した?」

 

武蔵「ああ! 今なら一人だけで基地近海の海域を一掃出来そうだ」

 

彼女「本当に出来るんだからダメよ。勝手な出撃は禁止」

 

武蔵「分かっているさ」

 

彼女「本当かしら......て、思ってしまう言葉でも信用できるくらいには、貴女優秀だからね。質悪いなぁ」

 

武蔵「き、嫌わないでくれ」ジワ

 

彼女「ああ、もう。武蔵がそんな事で泣かないの」(犬か)

 

ポン、ナデナデ

 

武蔵「んふ~♪」スリスリ

 

彼女「ちょっと、顔埋めないでよ。ご飯食べ難い」

 

武蔵「今休憩時間なんだからこれくらいさせてくれ」

 

彼女「キスだけって言ったわよね?」

 

武蔵「う......」シュン

 

彼女「......」

 

武蔵「......」ジワ

 

彼女「もう......ほら、おいで」

 

武蔵「っ、ありがとうっ。だから大好きだ♪」スリスリ

 

彼女「はいはい、いーこいーこ」

 

武蔵「......なあ」

 

彼女「ん?」

 

武蔵「今晩も......いいか?」

 

彼女「何度シテると思ってるのよ? もうあそこは半分貴女の部屋よ。私が禁止しない限りは遠慮しないで入って来なさい」

 

武蔵「ん......そうさせてもらう」スリスリ

 

彼女(ホント、なんでこうなったのかしら......。あいつ、元気かな)

 

 

~同刻、大本営本部 総司令部 副官執務室

 

大和「あの」

 

中将「ん?」

 

大和「少将と武蔵って仲良いですよね」

 

中将「そりゃま、恋人同士だからな」

 

大和「......やっぱりですか?」

 

中将「なんだ、やきもちか?」

 

大和「いえ、私には中将だけですから」

 

中将「ふははは、こんな年寄りに。相変わらず物好きな奴だ」

 

大和「もう、いつもそうやってご自分を卑下なさるんですから。もっとご自分を誇示されてもいいと思いますよ?」

 

中将「バカ。老兵がそんな事できるか。と......それより、武蔵の奴が気になるのか?」

 

大和「あ、はい。いえ、気になると言うより彼女が少将といるときの様子が未だに本当に本人と信じられない事があるので......」

 

中将「ああ、それか! そうだな。あのふやけきった顔! 戦の時とは比べもんにならないよな! うはは」

 

大和「中将、声が大きいですよ。でも、そうですよね。あの武蔵が......」

 

中将「誰かを好きになるっていうのはそういうもんだ。慕っているからこそ心の垣根が必要ないんだろう」

 

大和「......私ではご不満ですか?」

 

中将「おいおい、なんでそうなる? ほら、来い。撫でてやろう」

 

大和「もうっ、子供扱いしないでください! 私は、大和ですよ?」

 

中将「お前が大和だろうが何だろうが、儂にとっては誰一人例外なく可愛いガキだ。いや、お前は娘だ」

 

大和「娘は嫌なんですけど......お嫁さんが、いい......です」

 

中将「まぁ、そういうのはその内な! 死ぬ前に何とかしてみる!」

 

大和「縁起でもない事言わないで下さい」

 

中将「ふはははは! 悪い悪い! ほら、仕事だ。手伝え!」

 

大和「今、お昼休み中ですよ?」




百合が好きです。レズが好きです。
艦これ好きなら通らねばならぬ道、だと思います。

大和より武蔵の方が好きです。
でも武蔵は現在はどうやっても入手不可。
建造できる様になったら資材半分溶かしても出したいです。


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第54話 「的中」

龍驤を無理やり改二にしました!
お蔭でバケツと弾薬がヤバイです!
相乗効果で金剛の結婚ゲージも後2万程!

後悔はしてるけど、してないです!


龍驤「ふっ......分かってたんやで? 予測はできてたんやで......?」

 

一人寂しく港のビットに座っていた龍驤は誰にともなくそんな事を呟いていた。

提督が彼女を見掛けたのはそんな時だった。

 

提督(あいつ、何をしてるんだ? 落ち込んでいるように見えるが......。最近あいつは上位改造を受けて実力、練度ともに軽空母の中では千歳姉妹を抜いてトップになったはずだ。だったら何故落ち込んでいる?)

 

提督「龍驤」

 

龍驤「なんや大佐か。見てわかると思うけど、うち今ごっつ落ち込んでるんや。そっとしておいてくれへんかな」

 

提督「邪魔をするつもりはない。ただ、気になってな。よかったら相談に乗るぞ?」

 

龍驤「......膝」

 

提督「ん?」

 

龍驤「大佐の膝に乗せてくれる?」

 

提督「ああ、構わない」(何故、膝......)

 

龍驤「ありがとう。んしょ......っと」

 

提督(軽いな......)

 

龍驤「大佐、今うちを乗せて軽いなとか思わんかった?」

 

提督「よく分かったな」

 

龍驤「そりゃ、うちみたいなちんちくりんなのが重かったりしたらもうホンマ叶わへんで......」

 

提督(更に落ち込んだ? 何故だ?)

 

提督「なあ」

 

龍驤「んー?」

 

提督「一体どうしたんだ?」

 

龍驤「......頭撫でて」

 

提督「ああ、いいぞ」ナデ

 

龍驤「ん......おおきに」

 

龍驤「......うち改二になったやろ?」

 

提督「ああ」

 

龍驤「強くなったやろ?」

 

提督「そうだな」

 

龍驤「でも、実は強くなってなかったんや」

 

提督「なに?」

 

龍驤「や、実力は上がってるで? でも、でもな......」

 

龍驤「分かってはいたんや。予測は何となくできていたんや。でも、でもな......ちょっとくらい夢みさせてくれてもええやん?」

 

龍驤「金剛達の前ではあんな啖呵切って見せたけど、内心はちょこっとだけ期待してたんや。やっぱ間違いやったわぁ......」

 

提督「さっきから一体何の話をしてるんだ?」

 

龍驤「大佐はさ、子供って好き?」

 

提督「ん? まあ、元気に遊ぶ子供は嫌いではない」

 

龍驤「ん......それって見てて元気になるぅとか、愛嬌があるぅって類の『好き』やろ?」

 

提督「ああ」

 

龍驤「ちゃうねん。うちが求めてたのはそんなんちゃうねん」

 

提督「......」

 

龍驤「大佐、ちょっと手貸してくれへん? ん、ちゃう。両方とも」

 

提督「こうか?」

 

龍驤「そ。ちょっと黙っといてな。っしょっと」フニ

 

龍驤は提督の両腕を取ると、なんと自分の胸に手を当てさせた。

 

提督「おい」

 

龍驤「黙って!」

 

提督「......」

 

龍驤「大佐、どう?」

 

提督「何が?」

 

龍驤「何か感じる?」

 

提督「お前の鼓動しか感じない」

 

龍驤「ホンマ? ホンマにそれしか感じひん?」

 

提督「......少し柔らかいな」

 

龍驤「良かったぁ......。それで何も感じんとか言われたらもううち、どうなってたか分からんかったわ」

 

提督「お前、体型の事を気にしていたのか?」

 

龍驤「せや。うち一応空母やけど見た目が駆逐艦と変わらんくらいちんちくりんやん?」

 

提督「......子供っぽくはあるか」

 

龍驤「ふふ、ハッキリ言わんのは優しさなん? ま、嬉しいけど」

 

提督「改造に期待していたのか」

 

龍驤「ちょっちな。ま、結局叶わへんかったけど」

 

提督「......」

 

龍驤「大佐」

 

提督「うん?」

 

龍驤「大佐はうちみたいな背も胸も小さくて、股もツルツルな子供となんも見た目が変わらんちんちくりんは嫌?」

 

提督「嫌ではない」

 

龍驤「ほんなら好き? 好いてくれる?」

 

提督「さっきの子供が好きかという質問はこの事か」

 

龍驤「せや。こんなうちでも大佐が好いてくれるんか知りたかったんや」

 

提督「そうか」

 

龍驤「で、どう?」

 

提督「見た目は幼いかもしれないが、お前はお前だ。そんな事で俺は区別したりしない」

 

龍驤「ほんなら......!」

 

提督「......俺は既に何人もの娘から恋人になる願いを受け入れている色情狂いの最低の男だぞ?」

 

龍驤「そんなことない! 大佐は今でも大佐のままや! 真面目で優しいままやないか!」

 

提督「龍驤......」

 

龍驤「お願いや。何番目でもええ。せやからうちもその中の一人したって......後生や」

 

提督「......分かった」

 

龍驤「っ、ホンマ!?」

 

提督「そこで嘘を言うような人間だと思うか?」

 

龍驤「んーん!」ブンブン

 

龍驤「大佐......ホンマ、ホンマにありがとな! うちめっちゃ嬉しい!」

 

提督「それは良かった。......ところで」

 

龍驤「んー? なにぃ? うち、今幸せを噛み締めてるところなんや。ちょっと浸らせてといてぇな♪」スリスリ

 

提督「俺はいつまでお前の胸を包んでたらいいんだ?」

 

龍驤「なんやそんな事かいな。んー......そうやな。揉むと大きなるっちゅうからもうちょっと、悪いけどこのままでいてくれへん?」

 

提督「俺は、ただ手を当てているだけなんだがな。ま、頼まれてもこんな所では揉んだりはしないが」

 

龍驤「それでええよ。落ち着いて考えてみたらものごっつ恥ずかしいけど、これもこれで恋人同士でないとせんことやん?」

 

龍驤「今は、どんな形でもその気分に浸らせといてぇな」

 

提督「人の気配がしたら離すからな」

 

龍驤「ん♪ それでええよ。......えへへ、もしかしたらこの幸せのお蔭でちょっとくらい胸大きくなったりするかしれへんしな」

 

提督「......どうだろうな。俺は今、自分の倫理感を屁理屈で正当化するので精一杯だ」

 

龍驤「そ、その精一杯......その内本当にうちにも頂戴......な」カァ

 

龍驤「精一杯なだけに......///」ゴショ

 

提督「......いつか、な」




実際に書くことになったら活動報告でもしますが、R-18(性的描写)その内確実に入ります。
そういうのが苦手な方、筆者の醜悪な文に耐えられない方は今のうちにご判断をお願いします。

筆者的に書けるだけで大満足なので、どうぞご遠慮なくご判断下さい。
......これで絵まで出来たらいいのですが、そこは何とかギリギリ許可してもらえる範囲を模索してみようと考えてます。


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第55話 「春嵐」

金剛が提督に無理を言って出撃しまくっているようです。
巻き添えを食らって一緒に出撃しているビスマルクはヒーヒー言ってます。
長門ですら、またかと少しウンザリした顔です。
何かを焦っているようにも見えますが、さてその真意は?


金剛は焦っていた。

もう別れているとはいえ、提督に元々付き合っていた恋人がいた事に。

 

金剛は逸っていた。

自分の成長限界が目の前だったから。

 

結婚自体は提督自身が決める事だとしても、ケッコンは成長限界に達した者なら誰でもその資格がある。

なら形だけでもそれに近い関係になれないか。

金剛はそう思いながら過ごしている内に気付けば、自分の限界が直ぐそこというところにまで来ていた。

 

結果がどうなるかは分からない。

それでも自分が一番先に提督のモノになれるかも知れないと思うと、多少無理をしてでもその条件だけにでも近づこうと心に決めた。

 

その結果......。

 

 

提督「まだ出るのか」

 

金剛「お願いヨ! もう直ぐ! もう直ぐ最高練度に到達するノ!」

 

提督「そんなに焦ったところで結婚は......」

 

金剛「ケッコンでもいいノ! それができる条件に到達したいノ!」

 

提督「......」

 

提督(金剛がしきりに出撃を催促にするようになってからというもの、気づけば資材の消費こそ激しいものの、こいつが率いる艦隊のメンバーの練度は著しく上がっていた。その精強さはつい数日前とは比べ物にならない程だ)

 

提督「焦る気持ちも解らないでもないが、連日の出撃で資材の消費が激しい。出撃は次で最後だ。いいな?」

 

金剛「っ、I understand ! 分かったワ!」

 

Bis「えっ、まだ行くの? もうヘトヘト......」

 

長門「ふっ、今の金剛のやる気は鬼気迫るものを感じるな。まぁ、付き合ってやるが」

 

鬼怒「珊瑚諸島怖い、サンゴ諸島コワイ......」ブツブツ

 

蒼龍「鬼怒大丈夫かな?」

 

飛龍「実践訓練のつもりがいつの間にか出撃固定メンバーになっちゃってたからねぇ。ま、おかげで全員凄まじい勢いで練度上がってるけど」

 

蒼龍「はぁ......もし、あの時、訓練指導メンバーに立候補してなかったら......」トオイメ

 

飛龍「露骨な嫉妬で、可能性の段階でしかない改造に引かれるからよ」

 

提督「皆、疲れているところすまないが、これで最後の出撃だ。終われば暫く休暇とする」

 

一同「......!」ピタッ

 

提督「良い食い付きだ。約束は守る。さぁ行って来い、晴れて清々しい気分で憩いの時を過ごす為に」

 

一同「了解!」

 

 

~とある場所

 

レ級「え? そんな遠くから応援要請?」

 

タ級「うん。なんでもその方面の鎮守府の艦隊の一部が凄い勢いで出撃を繰り返してるらしいわ」

 

ル級「なにそれ、怖い」

 

ヲ級「お蔭でその近辺の深海棲艦は夜、おちおち寝る事もできないんだって」

 

タ級「はい。これ、その海域のボス直筆の応援依頼書」

 

 

『たすけてっ!!』

 

 

レ級「うわ......」

 

ル級「凄く......切羽詰まってるね......」

 

ヲ級「文字だけなのに書いた人の悲痛さを感じるね......」

 

タ級「どうする?」

 

レ級「悪いけど......見なかったことにしよっか」

 

ル級「いいの?」

 

レ級「気分はよくないけどさ、でもこれ本当は3日前にくらいに届いてないといけなかったやつだよね?」

 

タ級「依頼書が認められた日付を確認するに、そうね」

 

ヲ級「何かあったの?」

 

タ級「依頼書を携えた補給艦隊がその艦隊から何度も追撃にあって、13回目の出撃でようやく追撃を振り切ってこっちに届ける事ができたらしいわ」

 

ヲ級「うわぁ......」

 

ル級「依頼書を届けに来た補給艦の子たちは?」

 

タ級「疲労困憊がたたって依頼書を渡した瞬間疲れて寝ちゃったわ」

 

レ級「その子達が起きたら間に合わなかったって言おう。多分納得するよ」

 

ヲ級「そこのボスへのお詫びはどうするの?」

 

レ級「姫に一緒に来てもらって謝って、適当にそこら辺の基地を攻撃して、その憂さ晴らしに付き合ってあげたらいいんじゃない?」

 

タ級「それが妥当かしら」

 

ル級「挙手! 賛成の人っ」

 

ヲ級「はいっ」

 

ル級「ハイ!」

 

タ級「はい」

 

レ級「はーい」

 

ル級「満場一致だね」

 

レ級「じゃ、そういう事で」

 

タ級「了解」

 

ヲ級「補給艦の子達に出すお菓子用意してくるね」

 

レ級「いいね。行ってらっしゃーい」

 

レ級(それにしても、あの方面って確か大佐の鎮守府がある所だよね。何かあったのかな? 今度行ってみよう)

 

 

~所変わって、大佐の鎮守府

 

金剛「大佐ァ! 戻ったヨ!」

 

Bis「ただいまぁ~」フラフラ

 

長門「やれやれ。これで暫くゆっくりできるな」

 

鬼怒「え? もう終わり? もう寝ていいの?」

 

飛龍「お疲れ、鬼怒。今日はゆっくり休みなよ。なんならわたし達の部屋に来る?」

 

蒼龍「そういや、鬼怒ってこっちに所属してから部屋の割り当てすら決まる前に出撃祭りに参加する事になっちゃったからね......」

 

鬼怒「ありがとう......おねがい......しま......」フラ

 

飛龍「よっと」キャッチ

 

蒼龍「大佐、帰って早々だけどわたし達もう戻るね。休みたいし」

 

提督「ああ、ご苦労。ゆっくり休め」

 

飛龍「大佐、お疲れ様。休暇、時間があったら遊んでよね?」フリフリ

 

蒼龍「えー、なにそれー? あ、大佐。それ、わたしも予約ね? じゃ、おやすみー」バイバイ

 

長門「大佐、私もマリアを運んで休ませてもらう。マリアの奴、立ったまま寝てしまったからな」

 

Bis「スー......スー......」zzz

 

提督「ああ、お前たちもご苦労。ゆっくり休んでくれ」

 

長門「了解した。おっと、大佐」

 

提督「ん?」

 

長門「休暇の件、まさか飛龍達だけと遊ぶわけじゃないよな?」

 

提督「......時間を作っておく」

 

長門「うむ。それでこそ私達の提督だ。約束忘れないでくれよ? それじゃあ、お休み」

 

バタン

 

 

金剛「......」

 

提督「金剛」

 

金剛「大佐」

 

提督「ああ」

 

金剛「ワタシ、成長限界に到達シタヨ」

 

提督「そのようだな」

 

金剛「これでケッコンカッコカリできるネ?」

 

提督「可能にはなったな」

 

金剛「......ちょっと、加賀に会ってくるワ」

 

提督「そうか。あいつに宜しくな」

 

金剛「大佐......逃げない、でネ?」

 

提督「分かっている。よく頑張ったな」

 

金剛「ウン! それじゃ後でネ!」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

提督「覚悟を......しておくか」




レベル99になりました!

やったね!

でも、ケッコンの仕方が分からずに、30分くらいあたふたしたのは内緒です。

次話、R-18になります。
苦手な方はご注意下さい。


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第56話 「結実」R-15

加賀と金剛はある目的の為に提督の部屋を再び訪れてきました。
その目的とは......。

*明らかな性的描写あり


コンコン

 

金剛「加賀、いまスカ?」

 

 

加賀「どうぞ。今は丁度私一人です」

 

 

ガチャ

 

金剛「お邪魔するネ」

 

加賀「いらっしゃい」

 

金剛「加賀」

 

加賀「はい」

 

金剛「ワタシ、最高練度になったネ」

 

加賀「そのようね」

 

金剛「ケッコンカッコカリ、できるようになったヨ」

 

加賀「そうね」

 

金剛「......加賀、ワタシこれから大佐にお願いしに行こうと思うノ」

 

加賀「ケッコンの?」

 

金剛「ウン」

 

加賀「そう、幸運を祈ってるわ」

 

金剛「一緒に行きまショ?」

 

加賀「それはできないわ。邪魔はしたくないもの」

 

金剛「邪魔だなんて思ってないワ!」

 

加賀「......」

 

金剛「加賀、ワタシは貴女と対等の関係でいたいノ」

 

金剛「例えケッコンできたとしても、大佐と貴女との関係は fair じゃないと嫌ナノ!」

 

加賀「......我儘な人ですね」

 

金剛「Don't worry ヨ、加賀。貴女も直ぐにケッコンできるワ。だからコレは先に予約をするようなモノヨ?」

 

加賀「大佐が受け入れてくれるでしょうか......」

 

金剛「だから二人でいくんじゃナイ!」ギュッ

 

加賀「......」

 

金剛「加賀......一緒に......イコ?」ヒソ

 

加賀「......っ」ブルッ

 

金剛「ヤッタ、上手くいったワ♪」

 

加賀「貴女......」ジト

 

金剛「フフ、可愛いヨ?」

 

加賀「知りません」プイ

 

金剛「アハハ、 sorry ヨ、加賀。ほら、行きまショウ?」ス

 

加賀「......仕方ありませんね」ギュ

 

 

~深夜、提督執務室

 

コンコン

 

提督「入れ」

 

ガチャ

 

 

加賀「誰か確認しないんですね」

 

提督「お前たちだと確信していたからな」

 

金剛「乙女心を分かってるネ! 流石ヨ♪」

 

提督「茶化すな。......さて、雰囲気を考慮しないで悪いが、単刀直入に聞こう」

 

提督「何をしに来た?」

 

金剛「ケッコンカッコカリをしてもらいに来まシタ」

 

提督「加賀がいるのは?」

 

加賀「私も金剛さんと同じ立場でいたいからです」

 

提督「ケッコンできなくても同じと言えるのか?」

 

加賀「それは、ケッコンカッコカリという仕組みの問題です。大佐への好意とは関係ないかと」

 

金剛「大佐、ワタシは自分と同じくらい加賀も愛してあげて欲しいデス」

 

提督「二人を同時に愛せ、と?」

 

加賀「可能なら」 金剛「That's right」

 

提督「俺は、まだ二人に好意を抱き切れてないのだが......」

 

加賀「それは承知の上です」

 

金剛「だから好きになっテもらう為に......来たのヨ?」

 

金剛はそっと提督の手に自分の掌を重ねた。

提督は掌から金剛の温もり感じながら、目の前の二人が濡れた瞳で見つめている事に気付いた。

その時点で彼女たちが今、何を求めているか提督は理解した。

時計を見る、時刻は既に深夜を回っていた。

 

提督「......いい時間に来たものだな」

 

加賀「そうですね。この時間ならもう私達以外だれも起きていないと思います」

 

金剛「大佐は sleep せずにこの時間まで待っててくれまシタ。今更、偶然とかいうのナシ、ヨ?」

 

提督「......ふぅ。部屋に来い」

 

加賀・金剛「はい」

 

 

~提督の私室

 

金剛「大佐......どうデス? ワタシの......」

 

提督「きれいだ」

 

金剛「フフ、嬉しい......ね、さわっテ......」

 

金剛「ん......あっ......」

 

金剛「大佐、キス......」

 

提督「ああ」

 

金剛「ん......ちゅ......」

 

 

加賀「可愛い胸ですね。ちょっと失礼します」ペロ

 

金剛「ああんっ、加賀ァ」

 

提督「加賀、お前もきれいだな」ムニュ

 

加賀「んん......っ。ありがと......います......」

 

金剛「本当ネ......。今度はワタシが加賀のを......」ペロ

 

加賀「やっ......こん......ご......」

 

金剛「フフ......なんだかワタシ、赤ちゃんみたいネ」ペロ、ムニュムニュ

 

加賀「はぁ......そこ......あ......」

 

提督「加賀、足を......」

 

加賀「......」コク

 

金剛「Wow......こんなになるものナノ?」ジッ

 

提督「確かめてみるか?」

 

金剛「え?」

 

加賀「た、大佐?」

 

 

金剛「ああっ......くぅ......んっ」

 

提督「お前も良く具合だ。金剛、加賀を少し愛でてやれ。お前の面倒は俺が見よう」

 

金剛「あっ......はぁっ。め......でるって......どう、すればいいノ?」

 

提督「お前がやりたいようにしてみるといい。匂い、味、感触、全てを確かめてみろ」

 

加賀「そ、そんな......はずかし......」

 

金剛「......大佐も、同じことワタシにするノ......?」

 

提督「お前が許してくれるなら」

 

金剛「......わかったワ。好きにシテ、可愛がって......ワタシも加賀にそうスル」

 

 

ムニィ

 

金剛「Oh......これが加賀の、なのネ......」ジッ

 

加賀「......っ」

 

金剛「匂いは......スンスン。あまりしなイ?」

 

加賀(やだ、広げられてる。見られてる。嗅がれてる......!)

 

金剛「味は......加賀?」

 

加賀「......」コク

 

 

ペロ

 

加賀「~っ」

 

金剛「味も......ちゅる、ぺろ......ずず......あまりしないのネ。でも、温かい......」

 

 

金剛「凄い。いくら啜っても出てクル......」

 

 

提督「金剛......」

 

金剛「やっ......ああっ」

 

提督「......我慢するな。感じろ......ず......くにゅ......ペろ」

 

金剛「た、大佐......ど、ドウ? ワタシの。変じゃ......はっ......ない?」

 

提督「全く。綺麗だ......ちゅ......ぺろ」

 

金剛「お、美味しいノ......? そんな......ああっ、の......ガ?」

 

提督「味はそうでなくても、お前が感じてくれると、美味しく感じる」

 

金剛「はぁ......はぁ......ウフフ......そうナンダ......嬉しい♪」

 

金剛「ね、もっと舐メテ。もっと味わっテ......」

 

提督「ああ。じゅっ......じゅるるっ。ぺろ、れろれろ」

 

金剛「んん......! はぁっ、イイ......!」

 

 

加賀「金剛......お願い......です。私も......同じように......」

 

金剛「あ......ふふ、ゴメンね? おっ、ああ......またせっ」

 

金剛「ん......ちゅ、ちゅるる、ぺろ」

 

加賀「はぁっ......!」

 

金剛「あ、コレ知ってル......。コレ弄ると更に気持ちイイのよ、ネ?」ペロ、クリ

 

加賀「ああっ、そ、そこは......! ダメッ中まで......! うぅっ」

 

 

金剛・加賀「はぁ......はぁ......」

 

提督「さて、もう十分か......」

 

金剛「ま、待って......その前に大佐の、コレ......」

 

加賀「私も......貴方を......全部感じたい......です」

 

 

金剛「ん......オカシナ匂い......。それに......ん、ぺろ......ちょっとしょっぱイ?」

 

加賀「はぁ......はぁ......でも、これが大佐の......味......。ん......この感触......いい......もむ、ぺろ......」

 

提督「く......二人とも、もういい。そろそろ限界だ......」

 

金剛「あ。さ、最初はやっぱりコッチがいいデス。......お願いしマス」

 

加賀「私も......どうぞ、貫いて下さい......」

 

 

提督「......いくぞ」

 

加賀「あああ......!」

 

金剛「加賀......オメデトウ♪ 大佐.....次はワタシに......」

 

提督「ああ」

 

金剛「んん......っ!ああっ......くぅ!」

 

提督「む......加賀もお前も流石にキツイな......」

 

金剛「当り前ヨ......。大事にしてキタんだから......。ほら、コレ......」

 

提督「二人とも......待たせたな」グイ

 

金剛「ああっ!」

 

加賀「大佐! たいさっ」

 

 

――早朝

 

提督「......」ムク

 

金剛「あ。大佐、起きまシタカ?」

 

提督「ああ。おはよう」

 

金剛「Goo morning 良い朝ネ♪」チュ

 

提督「ん......加賀は......疲れて寝てるか」

 

提督の隣では加賀が静かに寝息を立てていた。

その顔は穏やかで幸せに満ちているような笑みを僅かに浮かべていた。

 

金剛「昨日はあんなにシちゃったからね......。ふふ、初めてだったノニ」

 

提督「そうだな。少しやり過ぎたか」

 

金剛「大佐のエッチ」

 

提督「返す言葉もない」

 

金剛「嘘ヨ。凄く良かった、幸せデシタ」

 

提督「そうか......」

 

金剛「ね、大佐」

 

提督「ああ」

 

金剛「これからも、よろしく、ネ?」

 

チュ




加賀、金剛おめでとうございます。

......加賀ともケッコンしないとな。


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第57話 「枯渇」

昨夜のお楽しみの後、いつも通りに仕事に従事する提督ですが、なんだが元気がありません。
そんな様子をその日の秘書艦の望月は、不可解そうに見ています。
何があったんでしょう......とは言いません。


加賀達の様子がおかしい。

早朝から望月はそう感じていた。

金剛はともかく、加賀が朝から笑っていたからだ。

 

望月(あの加賀さんがいつものポーカーフェイスを崩して、僅かだけど始終笑みを......)

 

金剛「~♪」

 

望月(金剛さんはいつも通りに見えるけど、加賀さんとと目が合うたびに凄く嬉しそう顔をして笑ってる......。一体、何が......?)

 

望月「大佐」

 

提督「......なんだ?」

 

そんな二人に対して提督はいつも以上に疲れているように見えた。

明らかに何か悩んでいるようだった。

 

望月「あ、いや......どうかした? 元気ないね」

 

提督「まぁな。ちょっと資材が、な」

 

提督(朝から起きて早々、加賀の欲求に応じてしまったからな。予測通りだが、金剛の相手も一緒にしたから体力が......マズイ)

 

提督(更に自分の淫乱さに嫌気がさしているところにこの資材の状況......キツイな。本当に)

 

望月「ん? あー、弾薬がまた3桁だね」

 

提督「金剛達が強くなったのは良い事だが、改めて資材の残量を確認してみると弾薬が本当にマズくてな......」

 

望月「なるほどねー。あ」

 

提督「ん? どうした?」

 

望月「大佐、落ち込んでるところ悪いんだけどさ、もう直ぐ第二艦隊が長期遠征から戻って来るよ?」

 

提督「無事に戻ってくるのは良いことじゃないのか? 資材も手に入るし」

 

望月「まぁ、そうなんだけどね。だけどさ......」

 

タタタッ......コンコン

 

羽黒「大佐っ、羽黒です! 入っていいですか?」

 

 

提督「羽黒? 今しがた遠征から帰ってきたばかりか。入れ」

 

望月「あーあ、来ちゃったかぁ」

 

 

ガチャ

 

羽黒「失礼しますっ」

 

提督「遠征ご苦労。どうした? そんなに急いで」

 

望月「......」

 

羽黒「大佐、私、さっきの遠征で上位改造が可能な練度に到達しました!」

 

提督「なに」

 

望月「やっぱり」

 

羽黒「お願いです。羽黒をもっと強くして下さい!」

 

提督「......」

 

羽黒「? 大佐?」クビカシゲ

 

望月(上位改造だもんね。資材使うよねー)

 

提督「ああ、悪い。急だったから少し驚いてな。そうか、よく頑張ったな。偉いぞ」

 

羽黒「えへへ。ありがとうございます。あの......頭を......」

 

提督「ん? ああ」ナデナデ

 

羽黒「ふぁ......ありがとうございます♪」

 

提督「改造だったな。勿論許可しよう。許可証を認めるから暫く......夕方くらいにまた来い」

 

羽黒「はいっ、分かりました! お願いしますね! 失礼しました」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

望月「ま、断われないよねぇ」

 

提督「望月、試算......を」

 

望月「もうできてるよ。はい」

 

 

『改造後の資材残量試算結果:燃料・鋼材・ボーキ/6桁 弾薬/2桁』

 

 

チーン

 

望月(大佐の頭の中で何かが鳴った気がする)

 

提督「......マズイな」

 

望月「そうだね。これじゃ、出撃どころか、演習も遠征も無理だね」

 

望月「また、あそこの提督に交換を頼む?」

 

提督「そう頻繁に頼むわけにもいかないだろ。こちらの体裁もある」

 

望月「じゃぁ、どうするの?」

 

提督「望月......」

 

望月「ごめんごめん。ちょっと意地悪しちゃったね。睦月達集めてもらえる? ちょっとひとっ走り稼いでくるよ」

 

提督「すまんな」

 

望月「やるときはやるからね。もっと褒めてもいいよ?」

 

提督「......何がいい?」

 

望月「......わたしを大佐の膝に乗せて抱きしめて、さらに頭を撫でる、とか?」

 

提督「容易いことだ」スッ

 

望月「ん......睦月達が来るまで、暫くお願いね」

 

望月(わ、本当にやってくれた。しかも迷いなく。こりゃ相当参ってるね。睦月達にも事情を話していっちょ頑張るか)

 

望月「ん、もういいよ。睦月達がもうすぐ来るから。ありがとね」トテ

 

提督「俺としてはこれくらいじゃ礼として申し訳ないくらいだ」

 

望月「まだ、実際に集めてもないのに。何言ってるのさ。そんなんじゃ、遠征から帰って来た時にもっとご褒美要求しちゃうよ?」

 

提督「寧ろ遠慮するな。可能な範囲で希望に応えよう」

 

望月「マジ......?......考えとく」

 

望月(......よしっ)

 

 

コンコン

 

睦月「睦月型駆逐艦一同参りました!」

 

 

提督「入れ。......望月、頼むぞ」

 

望月「任しといて」b




この後無事、弾薬はある程度補充が出来たそうです。

望月はやるときはやる子、頼りになる子です!


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第58話 「策士」

出撃祭りのメンバーだった空母組(飛龍・蒼龍)の労を労う為に今日は一緒に外へお出掛けします。
飛龍達は先に待ち合わせ場所に着いていたらしく、大佐の姿を見ると手を振って教えてくれます。
おや、よく見ると来たのは大佐一人ではないようです。
誰でしょう?


飛龍「あ、大佐っ。こっちこっちー!」フリフリ

 

蒼龍「お、来たね。......って、あら?」

 

望月「ちーす」

 

提督「すまん。遅れた」

 

飛龍「あ、ううん。別にいいですよ。それより」

 

蒼龍「何でもっちーもいるんですか?」

 

望月「もっちー言うなし。ま、ちょっといろいろあってねぇ」

 

提督「我が鎮守府の窮状を救ってくれた借りが望月達にはあってな。その礼代わりだ」

 

望月「そういう事。駆逐艦を代表して、大佐からお土産をドンと持ち帰らないといけないわけよ」

 

飛龍「駆逐艦に救われるって、一体何が......」

 

蒼龍「大佐ぁ、小さい子に手をだしちゃ......てなわけでもないですよね」

 

望月「わたし的にはそれも......やぶさかではないけど、残念ながら違うよー」

 

提督「何が残念ながらだ。全く掠りもしていない。資材が少しマズイ状況だったんだ。それを救ってもらった」

 

飛龍「ああ、なるほど。遠征ですね」

 

蒼龍「駆逐艦の子達ってホント、機動力半端ないですよね。基地の危機を回避する程なんて、どれだけ助けてもらったんです?」クス

 

望月「睦月型総動員でお手伝いしましたよー」フンス

 

提督「面目次第もない」

 

提督「まあそういうわけなので、望月も一緒で構わないか?」

 

飛龍「私は構いませんよ」

 

蒼龍「わたしも。人数が多い方が楽しいしね」

 

提督「ありがとう」

 

望月「さんきゅー」

 

飛龍「それで、何処行きます?」

 

蒼龍「特にプランがないなら、決まるまでわたし達の部屋で麻雀とかどう?」

 

望月「いや、せっかく外に出てるのにいきなり戻るってのもないっしょ」

 

提督「そうだな。お前たち、何か欲しい物はあるか?」

 

飛龍「わ、大佐ったらいきなり物で釣るつもりですか?」

 

提督「人聞きの悪い事言うな。先ず、直接的方法で礼と労を労いたかっただけだ」

 

蒼龍「じゃ、わたし大佐がいい」

 

望月「あ、それいいね。わたしもー」

 

飛龍「え?」

 

提督「なに?」

 

蒼龍「何でもいいんでしょ? じゃ、わたし大佐がいいなぁ?」ズイ

 

望月「男に二言はないよね」クイクイ

 

飛龍「ちょ、ちょっと二人とも」

 

提督「悪いが、俺は物じゃない」

 

蒼龍「そんなの分かってますって。何処でも付き合ってくれる大佐がいいって事ですよ」

 

望月「なんだそうなんだ。わたしは大佐をモノにしたいって意味だったんだけどな」

 

蒼龍・飛龍「えっ」

 

提督「望月......突然何を言うんだ」

 

望月「駆逐艦じゃダメ? やっぱ子供だから?」

 

提督「......」

 

望月「そんなに悩まないでよ。ただ、今までより親しくしてくれたらいいだけ」

 

提督「親しく?」

 

望月「そう。もっと気安く声を掛けてくれたり、褒めてくれたり。距離を感じない接し方を希望」

 

提督「改めて言われるとどうやればいいか悩むな」

 

望月「はい。まずは手を繋ぎましょう」ス

 

提督「そんなのでいいのか?」ギュ

 

望月「手を繋ぐのは単純なようで意外に重要かつ効果的な触れ合いなんだよ? 覚えておいて」

 

提督「勉強になる」

 

飛龍・蒼龍「......」ポカーン

 

飛龍「はっ。た、大佐、それじゃ、それ私もっ。腕、腕組んでください!」

 

蒼龍「あっ、飛龍ズルい! 大佐、わたしも!......て、もう手が空いてない......」

 

蒼龍「ならっ」ギュ

 

提督「おい、苦しい。もたれかかるな」

 

蒼龍「だって、場所がないんだもん。ほら加減しますから。ついでにオマケもありますよ?」ムニュムニュ

 

飛龍「くっ」

 

望月「悔しいけど、わたしには無理だなぁ。ま、その代わりに腕に抱き着くけど」ギュ

 

提督「歩き難い......あと、人目が気になる」

 

蒼龍「だーめ! 今日一日は何処でもどういう風にでも付き合ってもらうって約束です!」

 

望月「そういう事。望月のモノになったんだから今日は諦めなよ」

 

提督「さり気なく条件が追加されていた気がするが......」

 

飛龍「きっと気のせいです。ほら行きましょ!」ギュッ、ムニュゥ

 

望月「二人ともいいなぁそれ。少し分けて欲しい、と思ったりしないでもない」

 

飛龍「駆逐艦の子ってそこが不憫よねホント」

 

蒼龍「大丈夫だよ。大佐ストライクゾーン広いから」

 

提督「勝手に人の性的嗜好を拡大するな」

 

望月「大佐」クイクイ

 

提督「うん?」

 

望月「わたしたった今、皆に持って帰るお土産決まったよ」

 

提督「なんだ唐突に」

 

望月「蒼龍さんが言ってたゾーンの拡大。それをお土産に希望」

 

提督「.....ズルいぞ」

 

望月「狡猾って言ってよ」ニマ

 

蒼龍「ひゅうっ♪ もっちーやるぅ!」

 

飛龍「望月ちゃん......恐ろしい子」

 

望月「だからもっちー言うなし。ま、取り敢えず行こ」グイ

 

飛龍「そうね。じゃ、何処行きます? カラオケとかどうですか?」

 

蒼龍「お、いいねぇ♪ わたし美声披露しちゃいますよ!」

 

提督「分かった。分かったからそう引っ張るな」

 

望月「......今日は良い日になりそう♪」




飛龍より蒼龍の方がちょっと悪戯好きな感じがしませんか?
そんな彼女を窘める飛龍の姿をつい想像してしまいます。


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第59話 「好奇心」R-15

飛龍達のカラオケに行った時のお話です。

それだけです、多分。


蒼龍「~♪......どうよっ」

 

パチパチパチ

 

提督「上手いものだ」

 

望月「うん。確かに」

 

飛龍「相変わらず上手ねぇ」

 

蒼龍「どうもどうも~♪」

 

蒼龍「ふぅ、ちょっと休憩っと。あ、もっちー隣いい?」

 

望月「だから......はい、どうぞ」

 

蒼龍「ありがとう。お邪魔するね」

 

飛龍「大佐は何を歌います?」

 

提督「まだ決めてない」

 

飛龍「じゃ、一緒にこれ読みましょうか」

 

提督「別にお前から先に決めていいんだぞ?」

 

飛龍「まあまあ、大佐がどんな曲を知ってるのか興味もあるし」

 

提督「そうか......」

 

提督・飛龍「......?」「......、......♪」

 

 

蒼龍「ねえねえ、もっちー」

 

望月「んー?」

 

蒼龍「さっきから飛龍ったら大佐との距離が近い感じしない?」

 

望月「近いっていうより密着してるじゃん」

 

蒼龍「攻めるねぇ」

 

望月「あんな短いスカートまで履いちゃってさ」

 

蒼龍「見えてるよね?」

 

望月「少なくともわたし達からは丸見えだね。大佐の位置からでもギリギリ見えてるんじゃないかな」

 

蒼龍「あんなオシャレなの穿いちゃって......今日は本気、かな?」

 

望月「それはないと思うよ。いくら求められても大佐が外で迷惑を掛けるような事はしないと思うし」

 

蒼龍「んー......じゃあ、今回は飛龍の熱烈なアピール作戦てとこかな」

 

望月「そうじゃない? 飛龍さんだって時と場所を弁える常識はある筈だし」

 

蒼龍「と、なるとわたし達も手を咥えて見てるわけにはいかないなぁ」

 

望月「あんまり余計な事はしない方がいいと思うけど?」

 

蒼龍「まあまあ、そう言わずに。という事でちょっと作戦タイムに行こう」

 

望月「作戦タイム?」

 

蒼龍「大佐!」

 

 

提督「ん?」

 

蒼龍「わたしともっちー、ちょっとトイレに行ってくるね」

 

飛龍「二人揃って?」

 

蒼龍「まとめて済ませておくに越した事はないでしょ?」

 

望月「......」

 

飛龍「それは、まあそうだけど」

 

蒼龍「というわけで行ってくるね。あ、戻るときにドリンク持って来る?」

 

提督「いや、いい。俺はまだ残ってる」

 

飛龍「わたしもいいかな。ありがと」

 

蒼龍「そ? じゃ、行こっか? もっちー」

 

望月「......はいはい」

 

バタン

 

 

提督「ふむ......」←曲録を見てる

 

飛龍(これは、チャンスね!)

 

 

~障碍者用トイレ

 

望月「作戦会議ってここで?」

 

蒼龍「個室に二人で入るわけにもいかないじゃん」

 

望月「そりゃそうだけど......で、何するつもり?」

 

蒼龍「んー......ノーパンとか?」

 

望月「痴女じゃないんだからさ。それに外で迷惑を掛ける行為はアウトだよ?」

 

蒼龍「別に本番するわけじゃないし、個室なら分からないって。ただ、そう。セクシーアピールってやつよ」

 

望月「そういう軽はずみの行動が後悔に繋がるんだよ」

 

蒼龍「もっちーって、意外に真面目だね」

 

望月「人並みに常識があるだけだよ」

 

蒼龍「うー......じゃ、じゃぁ体験だけ体験!」

 

望月「体験?」

 

蒼龍「ここで脱いでみて。ダメそうならやらない」

 

望月「そこまでしないと納得いかないの?」

 

蒼龍「やらないで後悔したくないもん」

 

望月「......はぁ。仕方ないなぁ」

 

蒼龍「勿論、もっちーも脱いでね?」

 

望月「脱いだところでわたしは意見変わらないと思うけど」

 

蒼龍「だから体験なんだって」

 

望月「はいはい......分かったよ」スル

 

蒼龍「えっ、こっち向いて脱ぐの?」

 

望月「密室なんだから恥じる必要ないでしょ?」

 

蒼龍「そ、そういうものかな」(もっちーって意外にこういうとこ淡泊なのね)

 

蒼龍「じゃ、じゃあわたしも......」スル

 

望月「どう?」

 

蒼龍「す、スースーする......。これは無理かな」

 

望月「だから言ったじゃん。じゃ、穿くよ」

 

蒼龍「あ、ちょっと待って」

 

望月「ん?」

 

ピラ

 

望月「......何してんの」

 

蒼龍「まぁ、予想はしてたけど、もっちーってツルツルだね」

 

望月「駆逐艦でそうじゃない子なんていないと思うけど? 少なくとも睦月型ではいないよ」

 

蒼龍「へぇ、そうなんだ」

 

望月「もしかして、それを確かめたくて捲ったの?」

 

蒼龍「あはは」

 

望月「もう何考えてるんだか。取り敢えず、もういいでしょ? 手、離してよ。お腹が冷えちゃう」

 

蒼龍「ああ、ごめん。ん......?」

 

望月「どうかした?」

 

蒼龍「ああ、いやなんでもー。あはは」

 

望月「なんか凄く変な事考えてる予感がしたけど?」

 

蒼龍「だ、大丈夫! なんでもないから。あははは」

 

蒼龍(流石にあんな事考えていたなんて本人の前では言えないよね)

 

望月「ま、面倒な事にならなかったら何でもいいけど。そろそろ戻ろ」

 

蒼龍「りょうかーい」

 

 

ガチャ

 

蒼龍「大佐、ただい......あ」

 

望月「戻った......よー」

 

 

提督「また恋愛の曲か? もう勘弁してくれないか」

 

飛龍「私、これがどうしても好きで!」

 

提督「そのセリフ、もう何回目だ?」

 

飛龍「これで最後、最後ですから!」

 

提督「いや、そろそろ精神的にキツイんだが」

 

飛龍「男性なんですから頑張ってください! さ、いきますよー」

 

提督「待て、歌うとは言ってn」

 

飛龍「コイスルオトメ、参ります!」

 

提督「 」

 

 

望月「飛龍さんて奥手なんだか大胆なんだか分かんないね」

 

蒼龍「わたし達が来るまでずっと恋愛曲歌わされてたんだ......そりゃ、キツイわ」

 

望月「ほら、ブレーキ役、しっかり」クイクイ

 

蒼龍「ふぅ、全く......はいはい。ちょっと飛龍――」




蒼龍が新たなフェチに目覚めない事を祈ります。
多分、大丈夫だとは思いますが。

望月は怒らせると意外に怖い印象が何故か俺の中ではあります。


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第60話 「小晩餐会」

今度は長門達との約束を果たす番です。
植えた3人の欠食児童(戦艦)を提督はどう相手をするのでしょうか。


長門「やぁ来たな。上がってくれ」

 

陸奥「いらっしゃーい」

 

Bis「待ってたわよ!」

 

長門「あの出撃には陸奥はいなかったが、まぁそんな事をいちいち気にするような人間ではないよな?」

 

提督「無論だ。付き合うとは約束したが、お前たちだけとは俺も言った覚えはないしな」

 

提督「だが」

 

陸奥「ん? どうかした?」

 

提督「いや、付き合うとは言ったがこれでいいのか?」

 

長門「宅飲みは外で飲むより気楽だからな、偶にはこういう風に緩やかに飲むのもいいだろう?」

 

提督「お前たちがそれでいいなら俺からは何も言うことは無い。酒も、飲みたいしな」

 

Bis「流石、話が分かるふぁね♪」ギュ

 

提督「......こいつ、もう出来上がってるのか?」

 

陸奥「大佐が来る前に発泡酒を缶一本開けただけなんだけどね」

 

長門「ビールならともかく、発泡酒でこれとはある意味凄いよな」

 

提督「この分だと酎ハイとかもダメな気がするな。マリア、お前お酒弱いのか?」

 

Bis「べ、別にそんなことない......ゎよ。ちょっと気分が良かったから油断ししゃったの」カァ

 

提督「呂律も少し心もとないな。あまり無理するなよ?」ポン

 

Bis「うん......」

 

陸奥「あら? 自然に頭に手を置くなんて、大佐も随分フレンドリーになったわね」

 

長門「そうだな。私達にもそうしてもらって構わないんだがな」

 

提督「ん? ああ、これはなんとなくだ。マリアには無意識に、な」

 

Bis「そ、それって......」キラキラ

 

提督「子供っぽいからだろな」

 

Bis「なぁ!?」ガーン

 

陸奥「いや、そんな衝撃を受けるほど驚く事じゃいと思うわよ?。マリアって前々から所々子供っぽいところあったじゃない」

 

Bis「そ、そんなこと......」

 

長門「本当にそうか?」

 

Bis「う......」

 

提督「それくらいにしておいてやれ。こいつにも矜持というやつがあるんだ」ポン

 

Bis「た、大佐ぁ」ウル

 

長門「やれやれ、まるでワンコだな。可愛い、実に良い」

 

陸奥「長門、あなたマリアを見る目が何か変よ?」

 

提督「長門は可愛いものが好きだったな」

 

長門「ああ、そうだ。そして今のマリアは正直堪らないほど可愛い」

 

Bis「えっ、か、可愛いなんて、そんな......」カァ

 

陸奥「マリア、勘違いしない方がいいわよ。長門のあなたを見る目は明らかに仔犬とかそういうのを見る目だから」

 

Bis「犬!?」ガーン

 

提督「......的確な指摘というものは時として残酷なものだな」グビ

 

陸奥「ふふ、そうね」クイ

 

長門「ああ、もうっ。可愛いな! マリアちょっと来い。撫でさせてくれ」

 

Bis「え、ちょっとやめてよ! スリスリしないで! 抱き締めないで!」ジタバタ

 

提督「......いい肴だ」グビ

 

陸奥「そうね」クイ

 

陸奥「あ、そうだ大佐」

 

提督「ん?」

 

陸奥「なんかわたし達の部屋の抜き打ち検査をするらしいわね」

 

提督「情報が筒抜けの時点で抜き打ちという言葉がもはや意味をなしてないわけだが......。まぁ、そのつもりではある」

 

陸奥「今ってもうやった事にしちゃダメ?」

 

提督「元々、何かを疑って部屋中を調べる気とかはなかったからな。軽く部屋を眺めて2,3質問して終わりにするつもりだったし、それでいいぞ」

 

陸奥「ありがと。部屋の掃除とか気を遣うのが面倒だったのよ」

 

提督「そういう事を本人の前でいうな」

 

長門「あ、下着はそこの引き出しだぞ。陸奥とマリアのもそこにある」タイサ、タスケテー!

 

提督「そんな事も聞いてない」

 

陸奥「そしてそういう事を教えない」

 

長門「ふふ、ウブだな。っと、コラ、マリア暴れるな」

 

Bis「やー! 私はヌイグルミじゃないの!」ジタバタ

 

提督(酒が完全に回って、言葉がもう子供じみてきてるな)

 

陸奥(マリアには悪いけど、可愛いわね)

 

 

――数十分後

 

提督「......ふぅ」

 

長門「大佐、やはり飲めるな」

 

陸奥「お酒強いのね。素敵よ」

 

提督「酒が飲めるだけで褒めるのはどうかと思うぞ。マリアはどうした?」

 

長門「そこだ。いじけて布団でまるくなってる」

 

陸奥「やり過ぎよ」

 

長門「反省はしてる。だが、後悔はしていない」キリッ

 

提督「......後でちゃんとフォローしておけよ」グビ

 

長門「分かってるさ」ツイ

 

提督「ん? ツマミが切れてしまったな」

 

陸奥「あらホント。買って来る?」

 

提督「いや、それには及ばない。用意してくるから少し待っていてくれるか」

 

長門「作って来るつもりか?」

 

提督「そうだ。冷蔵庫に調理できそうな物があったはずだ」

 

陸奥「それは、悪いわよ」

 

提督「気にするな。料理は好きなんだ」

 

長門「なら、私も行こう。台所に立つ家庭的な大佐の姿というのも見てみたいしな」

 

提督「手伝うとは言わないんだな」

 

長門「勿論、言われなくても手伝いはするさ」

 

陸奥「あ、ズルイわよ。大佐、わたしもっ」

 

提督「マリアだけ置いて平気か?」

 

長門「......少しうたた寝をしてるみたいだな。酒気の所為だと思う」

 

提督「なら、静かにしていれば目は覚まさないな。よし、直ぐ作って戻って来るぞ」

 

 

――数分後

 

提督「よし、できた」

 

長門「あの短時間でここまで......やるものだな」

 

陸奥「ホント。種類も量も申し分ないわ」

 

提督「それは重畳。さ、戻るぞ。マリアが起きてるかもしれん」

 

長門「ああ分かった」(エプロン姿の大佐......凄く良かったな。カメラ持ってくればよかった」

 

陸奥「ええ。了解よ」(何よ、いい所見せてくれるじゃない。もう、好きなのが止まらないよ)

 

 

ガチャ

 

提督「マリアは寝t」

 

Bis「大佐ぁ!」ブァ

 

ダキッ

 

提督「っと、危ないところだった。おい、マリア、危ないから離れてくれ。料理が落ちる」

 

Bis「嫌よ! だって、目を覚ましたら誰もいないのよ!」

 

提督「酒の肴がなくなったからちょっと用意してたんだ。ほら、お前の分もちゃんとあるぞ」

 

Bis「あ......この匂い、ふらんく、ふると?」

 

提督「ちょっと違うな。それも具の一つの炒め物だ。美味いぞ?」

 

グゥ......

 

Bis「あ......」カァァ

 

提督「気にするな。あまり食べてなかったからな。食べるだろ?」

 

Bis「うん......」コク

 

提督「なら部屋に入れてくれ。このままだと動けないし、料理を落としそうだ」

 

Bis「あ、ごめん」バッ

 

 

陸奥「天然って恐ろしい......」

 

長門「全くだ、マリアは良いところを持っていくな」ウンウン

 

 




やっぱり、ビスマルクはかわい過ぎです。
でも、陸奥達にも愛を忘れてはだめですね。

続きを一応書くつもりです。


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第61話 「三色」R-15

提督が尽きた肴を用意して、改めて晩餐会が始まってから1時間程経った頃。

*明らかな性的描写あり


長門(いい感じに酒も回って来たな。酒の勢いに頼るようでアレだが、雰囲気も大事だからな。相手に負担を掛けず、かつ逃げるという選択肢を浮かばない状況を作らないと)

 

長門「......」

 

長門「大佐」ズイ

 

提督「なんだ長門。......近いぞ」(ん、胸元が......?)

 

長門「ふふ、私も酒が回ったみたいだ」(もう気づいたか、やるな)

 

提督「大丈夫か? 少し酔いが深く見えるぞ。先に休むか?」

 

長門「いや、それには及ばない。それより......」ピト

 

提督「おい、長門......」

 

長門「提督も......分かっているだろう? 欲しいんだ、シテ......欲しい」

 

提督「......酒の勢いを借りてそういう事を要求するのは感心しない」

 

長門「誤解しないでくれ。確かに勢いは借りてるかもしれないが、それでもこれは私の意思だ。それに、雰囲気だって......大事だろう?」

 

提督「だがな長t」

 

 

チュゥ

 

長門「......ん......」

 

提督「......」

 

長門「......ふぅ」

 

提督「......」

 

長門「お、怒ってるか?」

 

提督「いや、周りの目が、な」

 

長門「ああ......」チラ

 

陸奥「長門......あ、あなた......」

 

Bis「あ......あ......」

 

 

長門「二人とも、そう見つめてくれるな。照れるじゃないか」ポ

 

提督「いや、そこはそうじゃn」

 

長門「大佐」ズイ

 

提督「......なんだ」

 

長門「金剛と加賀二人と結んだみたいだな」

 

提督「......」

 

提督(驚いた。よく見ているものだ)

 

長門「ふふ......驚いたか? 女は勘が鋭いんだ」

 

提督「正直、驚いた。その勘、大したものだな」

 

長門「ありがとう。それで、だ大佐」

 

長門「その、愛......私にも向けてくれないか?」

 

提督「......」

 

長門「勿論、そこの二人も希望するなら受け入れてやって欲しいんだが」チラ

 

 

陸奥「わたしも......それ、お願いしたいわ」パサ

 

提督「陸奥......」

 

長門「ほう......大胆だな。なら私も......」スルッ

 

長門「女にここまでさせたんだ。恥をかかせたりはしてくれない、よな?」

 

提督「もう何も言わん。来い」

 

マリア「ま、待って。わ、私も......!」

 

 

長門「ちゅ......ちゅ......ふふ、やはり大佐の体は男だけあて逞しいな......ぺろ」

 

提督「お前の体だって逞しい、っと......思うが」

 

長門「んん? なんだ、私の体が筋肉質だと言いたいのか?」

 

提督「そうじゃない......。無駄な肉がない芸術の様な体だと言うことだ」モミ

 

長門「んっ......ああ、好きに触ってくれ。そこもっ......も吸っていいぞ」

 

 

陸奥「これが......大佐の......ん、ちゅ......れろれろ」

 

Bis「はぁ......はぁ......この匂い、味......忘れない......ぺろ、あむ」

 

長門「二人とも......可愛いな。そうだ、マリア、ちょっとこっちに来てくれ」

 

Bis「はむ、ぺろ、むちゅっ......っぷは、え? なに?」

 

長門「ここだ。ここに寝て足を......」ポンポン

 

Bis「え......」

 

長門「見たいんだ。マリアのかわいい所。頼む」

 

ポフッ

 

Bis「長門......私......その......」

 

長門「大丈夫だ。破りはしない。ただ、その前に味あわせてくれ」

 

 

にゅっる、ぺろ

 

Bis「ひぁっ、冷たっい! うぅぅ......長門っ、な......にこれ。ピリピ......リする......!」

 

長門「じゅ、じゅるる......ぺろぺろ。っはぁ、氷が冷たくて今までにない感覚だろ?」

 

長門「それに少量だが、アルコールが着いた口で舐めたから、快感も......ちゅ......れろ、ひとしお、のはずだ」

 

 

陸奥「凄い......長門淫乱過ぎ......」

 

 

ムニュ

 

陸奥「あん......!」

 

提督「陸奥、お前も味わってみるか?」

 

陸奥「え?」

 

提督「俺の顔に......どうだ?」

 

陸奥「っ......。お、お願い......」

 

 

ギシッ

 

陸奥「さ、流石に恥ずかしいな......」

 

ポタッ

 

陸奥「ん、ごめ。汚しちゃった......」

 

提督「気にするな。これからココはもっと溢れることになるんだ。さぁ、腰を......」

 

陸奥「大佐......んん」ク

 

ピト

 

提督「ちゅ......んむ......」

 

陸奥「はぁっ......!くっ......これ......すごっ......!ああっ」

 

提督「......まだだ。......ちゅるる」

 

陸奥「はぁっ......はぁっ......大佐......これイイよ......頭がおかしく......なりっ、そう......!」ブルッ

 

提督「ちゅ......、意識を集中させろ。でないと直ぐに気を失ってしまうぞ」

 

陸奥「うん。がんば......っる。もっと.......。はっぁ......可愛がって、欲しいし......!」

 

提督「......その期待、応えてやろう」

 

 

Bis「はぁ......はぁ......凄い。陸奥ったら、あんなに腰を動かして......」

 

長門「ちゅぷ、ぺろ......ふふ、負けてられないな」

 

Bis「ねぇ、長門......」

 

長門「ん?」

 

Bis「私、長門のもああしてみたい。口とか指で......」

 

長門「......っ!」ブルッ

 

Bis「長門......? どうしたの?」

 

長門「ああ、いや。マリアが可愛すぎて一瞬でイッテしまった」

 

Bis「え? さ、さっきの言葉だけで?」

 

長門「ああ、見ろ......」

 

Bis「凄い......」ジッ

 

長門「ふふ、そうだろう? それでは、お互いに攻め合ってみるか?」

 

Bis「うん......!」

 

 

Bis「大佐......」

 

陸奥「好きな所から......」

 

長門「いいぞ?」

 

提督「いくぞ......」グッ

 

Bis「っ、キテ!......ああっ」

 

陸奥「めちゃくちゃ......にっ......ん......!」

 

長門「大佐の好きに......はぁっ、ふぅ......いい!」

 

 

――翌日、早朝

 

長門「大佐、どうした?」

 

提督「いや......」

 

長門「昨日の事、後悔してるのか?」

 

提督「自分で選択した事だ。それはない」

 

長門「大佐......」ダキッ

 

提督「長門......」

 

長門「大丈夫だ。強くあればいい。それが艦娘の提督といういうものだ」

 

提督「お前の言葉を聞くと、人の道から外れそうだな」

 

長門「私達を愛してくれた行いが人道に反する行為なものか。自信を持ってくれ大佐」

 

長門「私もそれに応えてみせるから......」

 

提督「長門......ありがとう」

 

長門「キスを所望する」

 

提督「随意に」

 

チュ

 

 

布団の中の陸奥「出れなくなっちゃった......」

 

クイクイ

 

陸奥「ん?」

 

同じく布団の中のBis「じゃぁ、さ」

 

Bis「もう一回する?」

 

陸奥「 」(マリアが、淫乱になっちゃった......!)

 

Bis「陸奥?」クビカシゲ




エロ祭りだ―!
キリがいいので、これで第二部完了とします。


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メインストーリー(第三章)
第1話 「指令」


本部の彼女に上層部から提督の鎮守府への視察の指令が下りました。
突然の指令に首を傾げながらも、取り敢えず彼女は出向の準備をする事にしました。


彼女「行くわよ武蔵。準備しなさい」

 

武蔵「む? 何処に行くんだ? もぐもぐ」

 

彼女「あいつ、元彼に会いにいくのよ」

 

武蔵「......」ピタ

 

彼女「武蔵?」

 

武蔵「やだ」

 

彼女「え?」

 

武蔵「嫌だ。行きたくない」ムス

 

彼女「ちょっと、こんな時に嫉妬なんかやめてよ」

 

武蔵「嫌だと言ったら嫌だ! お前の元彼なんかに私は会いたくなんかない!」

 

彼女「武蔵、言う事を聞きなさい。一応命令なのよ」

 

武蔵「い・や・だ!」プイ

 

彼女「......めんどくさいわね。いいわよ、私一人で行くから」

 

武蔵「なに?」ピク

 

彼女「一人で行くって言ったのよ。あなたはもう来なくていいわ」

 

武蔵「ふふん、護衛艦なしで行く気か? 危ないぞ」

 

彼女「中将に大和を借りるから大丈夫よ」

 

武蔵「なっ!? っく......だ、だとしても私がいなかったら、その元彼に襲われるかもしれないぞ」

 

彼女「あなた、あいつの事を何だと思ってるのよ。そんな事あるわけないじゃない」

 

武蔵「お前は無条件にそいつを信用し過ぎだ!」

 

彼女「あー、もういい」

 

武蔵「え」ビクッ

 

彼女「もうそこでずっと駄々をこねてるといいわ。相手をするだけ時間のムダだから」

 

武蔵「な、何を言って......」

 

彼女「じゃあね、留守番頼んだわよ。あ、もう戻ってこないかもしれないけど」

 

武蔵「!?」

 

彼女「行ってきま――」

 

ギュ

 

武蔵「ごめんなさい......ぐす」

 

彼女「反省してる?」

 

武蔵「うん......」

 

彼女「文句を言わず着いてくる?」

 

武蔵「言わない......」

 

彼女「あいつに会ってもつっかかったりしない?」

 

武蔵「分かった。しない......」

 

彼女「絶対?」

 

武蔵「信じて......」ウル

 

彼女「......分かった。もう喧嘩はこれで終わり。私も怒るのをやめた」

 

武蔵「ほ、本当か?」

 

彼女「ええ」ニコ

 

武蔵「っ、う......うわぁぁぁん!」ギュ

 

彼女「っと、もう......」ナデナデ

 

武蔵「......すん」

 

彼女「落ち着いた?」

 

武蔵「......ああ。悪かった」

 

彼女「よしっ。それじゃ、行くわよ」

 

 

~大本営本部、廊下

 

武蔵「それにしてもなんで急に視察なんて」

 

彼女「ま、確かに本部の司令官が直接出向くっていうのは、ちょっと気になるわね」

 

武蔵「......提督の事、気になるか?」

 

彼女「ん? ああ、元彼のこと。まだ好きかって?」

 

武蔵「いや。まぁ、それも気にはなるが。その、心配とかそういう意味だ」

 

彼女「......そうね。あいつが本部が動くようなマネをするとは思えないけど......少し、気になるわね」

 

武蔵「大丈夫だ。私が付いている。何が起こってもお前も、その提督も守ってやる」

 

彼女「不安な事言わないでよ。ま、頼りにしてるけど」

 

武蔵「ああ、任せてくれ」

 

彼女「頼むわよ。さて、中将の部屋に着いたわ」

 

コンコン

 

彼女「私です。参りました」

 

 

中将「おう! 入れ!」

 

 

彼女(相変わらず大きな声ね)

 

武蔵(怖い......)

 

ガチャ

 

彼女「失礼します」

 

武蔵「失礼す......します」

 

中将「おう。出向前に呼び出してすまんな」

 

彼女「いえ、問題ありません」

 

中将「もう大体予想は着いてると思うが、若造のとこの視察の件だ」

 

彼女「はい」(わ、若造......)

 

中将「いや、別にあいつが何かしでかしたというわけじゃないんだ。ただ、ちょっと個人的に気になる事があってな」

 

彼女「この視察は本部の意向によるものではないのですか?」

 

中将「表向きにはそういう事にしてある。ま、実際は俺の個人的な頼み事だけどな」

 

彼女「そう......ですか」

 

中将「ん? ホッとしたか?」

 

彼女「あ、いえ......」

 

武蔵(む......)

 

中将「ははははは! お前たちは元々知り合いだったんだろ? 無理するな」

 

彼女「私が視察官に選ばれた理由が解りました」

 

中将「ん、そういう事だ」

 

彼女「それで視察の体を装って、何を確認すればいいのですか?」

 

中将「話が早くて助かる。それはな......」

 

中将はそこで敢えて言葉を発するのをやめ、胸元をトントンと叩いた。

 

彼女・武蔵「!」

 

中将「そういう事だ。気付いたかもしれん。お前達と同じようにな」

 

彼女「了解致しました。お任せ下さい」

 

中将「ああ、頼むぞ」

 

大和「中将?」

 

中将「ん? ああ、そうだった。おい少将」

 

彼女「はい?」

 

中将「ほどほどにしておけよ?」ニヤ

 

彼女・武蔵「なっ!?」

 

中将「おい、少将はともかく、なんで武蔵まで動揺するんだ? なぁ、大和?」ニヤニヤ

 

大和「さぁ何故でしょう」ニコニコ

 

武蔵「大和......貴様......」カァ

 

大和「あら武蔵、そんなに顔を真っ赤にしてどうしたのですか?」(ふふん、いつも少将とイチャイチャしてるお返しよ)

 

中将「ま、それくらいにしておけ」(こいつにも困ったもんだ)

 

中将「それでは改めて頼むぞ、少将」

 

彼女「は、はい。了解しました。失礼します」

 

バタン

 

 

武蔵「......」ムス

 

大和の計らいで明らかに不機嫌そうな武蔵、そんな彼女を見て少将は壁にもたれ掛かって少し困った顔をして上を向いた。

 

彼女(やれやれ......)




俺が知ってる武蔵はこんなんじゃない!というそこのあなた。
ツンツンしてるからこそ、デレデレにしたいとは思いませんか?なんて。


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第2話 「緊張」

提督が本部から視察が入る事を知って、腕を組んでます。
そんな大佐の様子が気になって、その日の秘書艦の榛名が声を掛けます。


提督「参ったな......」

 

榛名「どうしたんですか?」

 

提督「本部から視察が来る」

 

榛名「? それが何かマズイんですか?」

 

提督「いや、視察自体は別にどうという事はない。恐らく、抜き打ちの鎮守府の実態調査だろう」

 

榛名「? それでは何が気になるんです?」

 

提督「少将......元々付き合ってた恋人が来ることになった」

 

バサバサッ

 

提督「......榛名?」

 

榛名「あ、いけない、私ったら。ごめんなさい、大佐」

 

提督「いや......」

 

榛名「あの......」

 

提督「うん?」

 

榛名「大佐とその少将とは......元々、という事は今はもうなんでもないんですよね?」

 

提督「ああ。昔にもう別れた」

 

榛名「本当ですか?」ズイ

 

提督「本当だ」

 

榛名「子供とかできてないですよね?」

 

提督「っごふ、なに......?」

 

榛名「いえ、なんでもありません」

 

提督「そうか」(子供とか言ってなかったか?)

 

榛名「大佐」

 

提督「ん......なんだ?」

 

榛名「その、私達より先にお付き合いされていた元恋人の少将とは、今も仲は良いんですか?」

 

提督「どうだろうな。彼女が本部に配属になってからもう何年も会ってないからな」

 

榛名「会いたい、ですか?」ズイ

 

提督「いや、そう思わなくても会う事になるだろ」

 

榛名「そんな事は聞いてません。会いたい、ですか?」ジッ

 

提督「まぁ......旧交を温めるのに良い機会だとは、思っている」

 

榛名「へぇ......会いたいんですか......」

 

提督「榛名......?」

 

榛名「大佐には、榛名や姉様達、加賀さん達もいるのに......会いたいんですか」

 

提督「おい、榛名っ」ガシ

 

榛名「あ......」

 

提督「落ち着け。俺は別に、お前たちを置いて彼女と寄りを戻す様な真似はしない」

 

榛名「大佐......。はっ!ご、ごめんなさい。私ったら......」アセアセ

 

提督「本当に大丈夫か?」

 

榛名「大丈夫です......じゃ、ないです」

 

提督「ん?」

 

榛名「大丈夫っていう安心が欲しいです」

 

提督「安心?」

 

榛名「ん......」

 

榛名は目を瞑ると、キスを求めてきた。

 

提督「榛名、今は仕事中だ」

 

榛名「うー......キスだけでいですから」

 

提督「だめだ」

 

榛名「......脱ぎます」ヌギ

 

提督「榛名」グイ

 

チュ

 

榛名「んっ......。」

 

提督「......」

 

榛名「んん......ちゅぅ♪」

 

提督「っふぅ。どうだ?」

 

榛名「ふわぁ......ありがとうございます。榛名、満足です♪」

 

提督「そうか、それを聞いて安心した......」

 

榛名「ふふふ、今日は良い日ですね♪」

 

提督「そうだな......」

 

提督(マリアはあの時から隙あらば熱烈にアピールするようになった。金剛を抱いた以上、妹達の期待にも応える覚悟はるが......これは、榛名もどうなる分からんな。何故大人しい奴に限って何故こうも反転する......)

 

榛名「大佐、どうかしましたか?」

 

提督「いや、なんでもない」

 

榛名「......少将の事ですか?」

 

提督「断じて違う。榛名が淹れてくれたお茶は美味いな」ズズ

 

榛名「本当ですか!? 今日は、金剛お姉様に教えて貰って榛名オリジナルのブレンドなんですよ♪」パァ

 

提督「そうなのか? どうりで何時もと違う味なわけだ」

 

榛名「嬉しいっ。榛名、頑張った甲斐がありました!」

 

提督「うん。美味い......」ズズ

 

榛名「大佐、今度抜き打ちで部屋の検査をされるんですよね?」

 

提督「ん? ああ。もう抜き打ちでもなんでもないがな」

 

榛名「それなら是非榛名達の部屋に最初に来てください! その時に今よりもっと美味しいお茶とお菓子もご用意して待ってますから!」

 

提督「検査なんだからそういう気遣いは無用だぞ」

 

榛名「大佐が訪ねて来てくれるんですから、それくらいはさせてください!」

 

提督「最早、検査ですらなくなってきたな......。分かった。伺わせてもらおう。お茶も期待してる」

 

榛名「はいっ。榛名、その期待に全身全霊で応えて見せます!」パァ

 

提督「......」

 

提督(外はこんなにも良い天気なのに、何故かこの部屋だけ嵐の真っただ中に居るような心地だな)




榛名は何故かヤンデレのイメージが俺にはあります。
というか、怒らせると怖いというか。
でも、良いの子の筈ですから、そんな心配する必要はないですよね!多分。


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第3話 「癒し」

久しぶりに提督は港で釣りをしています。
傍らには島風と足柄がいて楽しそうに話しています。
提督は久しぶりの癒しを満喫しているようです。


島風「あ! 大佐、今糸引いたよ!」

 

提督「ん? そうか?」クイ

 

足柄「あー......逃げられちゃったんじゃない?」

 

提督「そのようだな」

 

島風「もうっ、わたしが言った時に直ぐに引かないからだよ!」

 

提督「はは、すまんな。次は気を付けよう」

 

足柄「頑張ってよね。それで今日のお昼用意するつもりなんでしょ?」

 

島風「わたし、鯛食べたい!」

 

提督「なに? ふむ......ここで鯛は無理かもな」

 

足柄「ふふ、ハゼで我慢しなさいよ」

 

島風「ええー、鯛がいいのに......」

 

提督「鯛は無理かもしれないが、それくらい大きいのを釣れるように頑張ろう」

 

島風「本当!? じゃあ、わたしずっと糸見張ってるね!」

 

足柄「そんなに直ぐ釣れるもんじゃないわよ」

 

島風「いいの! 絶対見逃さないんだから!」

 

足柄「そんな事言って......知らないわよ?」

 

 

――数分後

 

島風「う......むぅ......」コクリコクリ

 

足柄「ほら、こうなった。眠いなら膝を貸してあげるわよ?」

 

島風「や、島風だいじょ......わぁ......ふぅ......」コシコシ

 

提督「無理するな。今度はちゃんと見てるから」ポン

 

島風「たいふぁ......。うん......ちょっと、ねゆ......」

 

足柄「ほら、来なさい」

 

島風「足柄お姉ちゃんありがと......」ゴソ

 

足柄「いいのよ」(お姉ちゃん?)

 

 

島風「すー......すー......」zzz

 

足柄「ふふ......。お姉ちゃん、ですって」

 

提督「島風が特に好きな人に甘える時によく言うんだ。好かれている証拠だな」

 

足柄「お母さんと呼ばれなくて安心したわ」

 

提督「お前は、母性もあるからそれも悪くないと思うぞ」

 

足柄「うーん、子供もいないのにそれはやっぱりちょっと気になるかな、わたしは」

 

提督「なんだ、島風みたいな子では不満か?」

 

足柄「え」

 

提督「?」

 

足柄「み、みたい子では不満か? って......なんかこれからわたし達に......ゴニョゴニョ」カァ

 

提督「足柄?」

 

足柄「え? あ......ご、ごめんなさい。ちょっとボーっとしちゃって! う、うん。島風みたいな元気な子も悪くないわね!」

 

提督「なんだ、お前も眠いのか?」

 

足柄「そ、そんな事ないわよ?」

 

提督「寝たいなら寝ていいぞ。肩くらいは貸してやるから」

 

足柄「......胸がいいな......。前、みたいに......」

 

提督「それは、流石に今の状態ではできないな。悪いが、肩で」

 

足柄「それじゃ、膝......」

 

提督「それだと島風が寝れないだろ?」

 

足柄「抱きしめるから大丈夫よ。胸を枕代わりにするから」

 

提督「ん......そうか」

 

足柄「あらぁ? 大佐、今何を考えたの?」ニヤニヤ

 

提督「いや......」

 

足柄「胸って聞いて、ちょっと反応したでしょ?」

 

提督「......情けないが、そうだ。気持ちよさそうだと思った」

 

足柄「うん。正直でよろしい」

 

提督「お前には敵わないな」

 

足柄「ね」

 

提督「うん?」

 

足柄「胸、貸してあげましょうか?」

 

提督「いや、まだ一匹も釣れてないからな......」

 

足柄「少しお昼寝くらいいいじゃない」プク

 

提督「お前の胸は、心地が良すぎて寝過ごしそうだからな」

 

足柄「っ、そ、そう......?」

 

提督「ああ」(しまった。軽くいなすつもりが、これは想定外の反応だ」

 

足柄「そ、そこまで言われたら貸さないわけには......い、いかないわね」

 

提督「いや、だからまだ一匹も......」

 

足柄「遠慮しないで! ほら」グイ

 

提督「む」

 

ポフ

 

提督「......」

 

足柄「どう......?」

 

提督「やはり、予想通りだ。気持ちが良い......」

 

足柄「そ。良かった♪」

 

提督「俺の方が眠ってしまいそうだ」

 

足柄「寝ちゃっていいわよ。抱いててあげるから」

 

提督「それはそれでお前に悪いし、何か男として情けないな」

 

足柄「もう、そういう事は気にしなくていいから。今は......あなたに頼られたたいの」

 

提督「......」

 

足柄「いいでしょ?」

 

提督「少し、寝る。1時間くらいで起こしてくれ」

 

足柄「了解♪」

 

提督「悪いな。頼む」

 

足柄「んーん......」ナデ

 

提督(頭を......参ったな。本当に心地良い......)

 

 

――数分後

 

提督「......」zzz

 

島風「くー......すー」zzz

 

足柄「......」ナデナデ

 

足柄「......」ス

 

チュッ

 

提督「ん......」zzz

 

足柄「ふふ、これくらいはいいわよね♪」




のんびりした話ってやっぱり書き易いです。
それに書いてて楽しい。


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第4話 「到着」(挿絵あり)

提督の元彼女がそろそろ到着するようです。
提督の顔は少し浮かない顔をしています。
一緒に迎えに着いてきた長門と弥生は、そんな提督の事が少し気になるようです。


提督「そろそろ着く頃だ」

 

提督はビットから腰を上げると、もう直ぐ艦が見えるであろう方角を眺めた。

 

長門「少将はどんな女性なんだ?」

 

傍らにいた長門がふと、そんなことを訊いてきた。

 

提督「家事以外は男の理想だと思う」

 

長門「......」

 

流石に答えが簡潔過ぎたようで、長門は困った顔をして黙ってしまった。

弥生がその様子に気づき、すかさずフォローをしてきた。

 

弥生「もう少し分かり易く教えて欲しい......」

 

弥生の要求に、自分の答えに非があったと即座に感じ取った提督は、少し考えるように昔を思い出しながら答えていった。

 

提督「そうだな......先ず、見た目は間違いなく美人だな」

 

長門「ほう」

 

弥生「……それで?」

 

一人は何かを期待するような顔で、一人はちょっとむっ、とした表情で次を促した。

 

提督「性格は基本勝ち気だが、分別はちゃんと着ける事ができるし礼節も弁えている」

 

提督「士官学校を首席で卒業するくらいには頭脳も明晰で、提督としての指揮判断能力は迅速かつ冷静そのものだ」

 

長門「凄いな。完璧じゃないか」

 

提督「その通りだ。家事以外の才能は非常に豊かな才女だ」

 

弥生「そんな人と、大佐はお付き合いしていたの......?」

 

提督「......彼女の一目惚れだったらしい」

 

提督は少し言い難そうにそう答えた。

その反応は未だにそれが信じられない所為なのか、答え方にも少し恥じらいのようなものを感じさせた。

 

長門「ロマンだな」

 

弥生「それは......皆にはあまり言わない方がいいと思う......」

 

提督「そうなのか?」

 

弥生「うん......。弥生も、出来れば知りたくなかった......かな」

 

長門「まあ気持ちは解る」

 

提督「どういう事だ?」

 

長門「一目惚れなんて言われたら、彼女が惚れた理由を論理をもって崩そうにも取り付く島がないじゃないか」

 

物騒な事言う長門に、少しむくれた弥生、そんな二人の様子に提督は僅かながら不安を覚えた。

 

提督「頼むからややこしい事にはしないでくれよ」

 

弥生「了解......」

 

長門「ふふ、腕が鳴るな」

 

提督「おい」

 

こいつだけ解っていない、どうするべきか。

提督がそんな事を考えていると、弥生が声をあげた。

 

弥生「あ、見えたよ。あれじゃない?」

 

弥生が指を指した方向に一隻の巨大な船影が見えた。

この距離ではっきりと視認できる程の大きさとなると、恐らく戦艦に間違いなかった。

 

長門「あれは......大和型だな」

 

提督「大和か......あいつらしいな」

 

 

程なくして巨大な戦艦が港に入ってきた。

艦から提督らしき女性が下りると、戦艦が白い光に包まれ徐々に人の形になっていった。

 

【挿絵表示】

 

長門「武蔵か......」

 

提督(益々もって、あいつらしいな)

 

 

彼女「......久しぶりね」

 

眉目秀麗で華奢な体つき、長い黒髪を風に靡かせながら大和撫子を体現したような凛とした雰囲気を纏った女性が提督に話し掛けた。

 

提督「そうだな。5年ぶりくらいか」

 

対して提督は、相変わらず表情はいつも通りだが、少し硬く感じる声で応じた。

何やら彼女に後ろめたい事でもあるのか、距離も一歩引いているように見えなくもなかった。

 

彼女「そんなになるかしら」

 

提督「多分な」

 

そんな感じでまだ一言二言しか交わしていない最中に、強引に割り込んできた者がいた。

 

武蔵「少将の護衛艦の武蔵だ。おま......こほん。貴方がここの提督か」

 

提督「そうだ。大佐と呼んでくれ。護衛の任務ご苦労」

 

武蔵「......」ジッ

 

提督「なにか?」

 

武蔵「いや、やはりうちの提督の方が優れていると思ってな」

 

いきなり何を言い出すのか、武蔵はそんな事を言うと鼻で笑う態度をとった。

対する提督は、予想外の武蔵の態度に不意を突かれ、ポカンとするのみであった。

 

提督「は?」

 

長門「む......」カチン

 

弥生「へぇ......」ムカ

 

その態度には弥生どころか、長門も勘に触ったようだった。

 

彼女「ちょっと武蔵、失礼でしょ」

 

すかさず、彼女が武蔵の非礼を正そうとするも、武蔵は反省する素振りをみせるどころかこう応じる始末だった。

 

武蔵「あ、すまん。大佐を見たらつい、な」

 

長門「それはどういう意味だ?」

 

長門がついに怒った。

提督の鎮守府で一二を争う冷静な娘の逆鱗に触れた瞬間だった。

 

提督「おい、長門」

 

長門「大佐は黙っていてくれ。遠いところからわざわざご苦労だとは思うが、着いて早々私達の提督を貶める事を言われたのでは、腹も立とう」

 

弥生「......同意」

 

額に青筋を立てる長門に、弥生も石のような表情で長門の行動を肯定する意思を見せた。

非常にマズイ状況だった。

 

提督「弥生まで、こら待て」

 

武蔵「ふん、駆逐艦と老朽戦艦が何を言おうと痛くも痒くもない。わたしは事実を言ったまでだ」

 

対する武蔵は怯むどころか、挑発してくる始末だった。

 

長門「ほう。武蔵、長門型をあまり甘く見るなよ......?」

 

弥生「......駆逐艦だからって馬鹿にしてると後悔するよ......?」

 

長門の筋肉が膨張する。

普段はそんなに目立つことはないが、全身に力が入ると繊細な筋肉が隆起してくるのがよく分かった。

弥生に至っては目が完全に実戦になっていた。

最早、手加減という考えは最初から頭にないようだ。

 

提督「二人ともやめないか」(なんだ? 何故いきなりこんな挑発的な事を?)

 

彼女「武蔵、あなたいい加減にしなさいよ。約束を破ったら二度と一緒にお風呂入ってあげないわよ」

 

武蔵の狼藉についに怒った彼女が、おおよそ嗜める言葉とは思えない内容で武蔵を叱責した。

 

武蔵「えっ」ビクッ

 

その言葉を投げかけられた武蔵はまるで悪さを見つかった子供の様な反応をした。

 

長門・弥生「は?」

 

対する長門と弥生は呆気にとられるばかりであった。

 

提督(ああ、そういう......。よく見れば二人とも指輪をしてる)

 

武蔵「ご、ごめん。本当に無意識なんだ! 大佐を見たらつい対抗心が!」アセアセ

 

武蔵は態度を一変させ、今度は急に焦りながら彼女に言い訳を始めた。

纏っていた威圧的な雰囲気は元々なかったかのではと思わせるほどの豹変ぶりだった。

 

彼女「そんないいわけで納得すると思ってるの? 出発前にした約束を忘れたわけじゃないわよね?」

 

武蔵「忘れてない! 忘れてない! 本当にわざとじゃないんだ! 気付いたらムキになってたんだ!」

 

彼女「謝りなさい」キッ

 

自分より圧倒的な存在に対してそれ以上に圧倒的な存在だと誇示するかの如く、威圧を込めた眼で彼女は武蔵を睨んだ。

 

武蔵「う......」

 

その威力に溜らず武蔵はたじろぐ。

 

彼女「誰に、とまでは言わなくても分かるわよね?」

 

武蔵「はい......」シュン

 

まるで叱られた子供だった。

武蔵は、先ほどに比べて幾分小さく感じる背中を回してこちらを向き、謝罪をしてきた。

その眼には信じられないことに涙が浮かんでいた。

 

武蔵「大佐......」クル

 

提督「ん?」

 

武蔵「先程は大変失礼致しました。この通り平に謝罪申し上げます......」フカブカ

 

懇切丁寧な謝罪だったが、あまりもの急な展開に3人とも呆然とするしかなかった。

 

提督「......」

 

長門・弥生「......」ポカーン

 

提督「まあ、俺もそんなに気にしてないから顔を上げてくれ」

 

何とか平静を取り繕い、提督はそう声を掛けた。

 

提督「長門と弥生もいいな? これ以上は争うな」

 

長門「あ、ああ。了解した」

 

弥生「......仕方ないね」

 

提督の言葉に二人も我に返ったようだった。

表情こそ納得がいっていないが、謝罪の意思はちゃんと汲んでくれたらしい。

 

武蔵「あ、ありがとう! 恩に切る!」ダキッ

 

提督「うぐっ」

 

長門「おい」ピキ

 

弥生「ちょっと......」ムカァ

 

彼女「もう、武蔵! さっきからなにやってるのよ!? 早速ややこしい事になってるじゃない!」

 

収まりかけていた危機は、かくしてまた新たな局面を見せるのであった。




提督がストレスで死ななければいいですね。
ま、そこは武蔵と元彼女次第ですか。


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第5話 「衝撃」

提督と少将は2人きりで話をしたいという事で執務室にいます。
お互い数年ぶりの再会という事で積りに積もった話をするのかと思いきや......。


彼女「そう......。やっぱり気づいてたの」

 

提督「そうだ。先に気付いたのは叢雲達だが。既に此処にいる艦娘は全員それが取り除かれている」

 

彼女「優秀過ぎるというのも考えものね。正直言って、危なかったわよ? 先に違和感に気付いたのが中将で、本当に運が良かったわね」

 

提督「親父が?」

 

彼女「実はね、先にその事に気付いたのは中将なのよ。それも随分前に」

 

提督「親父が......」

 

彼女「その装置ね、発信機の機能もあるのよ?」

 

提督「じゃぁ除去した時点で?」

 

彼女「ええ、開発部が異変に気付くわ。通常ならね」

 

提督「というと?」

 

彼女「中将はこの事に気付いた時に発信機の機能を疑ったの、それで調べてみたら予想が的中」

 

彼女「その後どういうツテを頼ったのかは知らないけど開発部の機材に工作して、装置を除去しても違う場所から電波を受信するようにしたらしいわ」

 

提督「そんな事を......」

 

彼女「それでいて、本命の電波は中将だけが感知できるようにして、異変があれば先手を取れるようにしたってわけ」

 

提督「頭が下がる思いだ」

 

彼女「そうよ。反省しなさい? 先に動いたのが艦娘であったとしても、それを容認して安全を確かめなかった事を」

 

提督「ああ。本当に危ないところだった。君と親父には感謝しないとな」

 

彼女「ん、宜しい。確かめたかったのは正直それだけ。目的も果たしたし、後は適当に視察の振りをして数日滞在させてもらうわ」

 

提督「ん? 視察は今日だけの予定じゃなかったのか?」

 

彼女「......上に適当に理由をつけて期間を延ばしてもらっちゃった」

 

提督「それはまたなんで......」

 

彼女「だって、数年ぶりの再会なのよ? 少しくらい旧交を温めさせてくれたっていいじゃない?」

 

提督「その考えには俺も同意だが、それでも数日はちょっと長いんじゃないか?」

 

彼女「......貴方、老けたわよね」

 

提督「なんだ唐突に」

 

彼女「私はどう見える?」

 

提督「......そういえば、昔のままだな。全くと言う程」

 

彼女「何よ。子供っぽいって言いたいわけ?」

 

提督「いや、歳を取らない女性もいるものだと思っただけだ。見た目はあの頃より格段に綺麗になっているぞ。女を磨いたんだな」

 

彼女「ほ・め・す・ぎ♪ ま、それはそれとして。貴方は5年程度にしてはちょっとそう思えないくらい歳を取って見えるわ」

 

提督「まぁ、いろいろ無理をした事もあるからな。今は少しはマシだが」

 

彼女「ま、そうだろうとは思っていたけど。でもね、私があの頃と変わらなく見えるのは実は理由があるのよ?」

 

提督「理由? 美容か何かか?」

 

彼女「ぶー、ハズレ。貴方、基地の子にあまり手を出してないでしょ? ま、貴方らしいけど」

 

提督「......なに?」

 

彼女「そんなに怖い顔しないでよ。自分から手を出さなくても好意を持たれた子と同意の上でヤるなら全然問題ないでしょ?」

 

提督「さっきから何を言いたいんだ?」

 

彼女「ふふ、そう急かないで。これはまだ研究段階で、実証はされてないから確信を込めては言えないんだけど」

 

提督「?」

 

彼女「どうやら提督と艦娘が体の関係を持つ事によって、絆が強くなって艦娘の能力が上がる以外に提督自身にもある効果があるみたいなのよ」

 

提督「......まさか」

 

彼女「そう。細胞の活性化、つまり見た目も中身も若い頃のままで常に最盛期でいられるの」

 

 

扉「ガタッ」

 

 

提督「そんな効果が......」

 

彼女「勿論、週に1回、2回くらいじゃ自覚する程の効果はないわ。これは日々の営みによるものなのよ」

 

提督「......君は」

 

彼女「ん? なに?」

 

提督「君は武蔵とその、そういう関係なのか」

 

彼女「見てのとおりよ。お蔭様で」

 

提督「そうか......」

 

彼女「何? 私が同性に走ったのがショック?」ニヤ

 

提督「いや、全く。寧ろ、君ならそれもアリだと思い直したところだ」

 

彼女「ちょ、何よそれ!? 大体、私は貴方と別れてから武蔵以外と関係を持った事はないわよ!」

 

提督「は?」

 

彼女「あ」

 

提督「......」

 

彼女「......」カァ

 

提督「君は......」

 

彼女「と、とにかく! 私が言いたいのは常に全力で提督で、海軍に貢献したいなら艦娘達とヤリまくりなさい、という事よ!」

 

提督「それはあまりにも節操がないというものだ。もう少し節度というものがあっても......」

 

彼女「ま、貴方ならそう言うと思ったわ。でも、もう少し積極的になってもいのよ?」

 

提督「まぁ、考えておく......」

 

 

扉「ガタガタッ」

 

 

彼女「それに......も、もしどうしても抵抗があるなら......わ、わたしで練習してもいいの......よ?」

 

 

バンッ

 

 

武蔵「それはダメだぁぁぁぁぁ!」

 

提督「ん?」

 

彼女「ちょ、む、武蔵!?」

 

武蔵「お前は私の嫁だと言ったじゃないかぁ! 私を見捨てるのか!?」ダキッ

 

彼女「ちょ、誰が嫁よ? 逆でしょうが!あっ、ちょっとやめてよ、こんなとこで!」

 

武蔵「嫌だ! お前が考え直すまで絶対に離れない!」

 

提督「......暫く留守にする。好きに使って構わないぞ」

 

彼女「え!? ちょ、ちょっと私を見捨てる気!?」

 

提督「見捨てるとは人聞きの悪い。気を遣っただけだ。それじゃ、また後でな」

 

彼女「えっ、ちょっと待ってよ! まだ話がの残っ......やっ。武蔵こんなトコじゃダメ! ダメだった......触っちゃだ――」

 

バタン

 

 

提督「ふぅ......」

 

羽黒「あ、あの大佐......」

 

提督「っ、羽黒......いつから......」

 

羽黒「ご、ごめんなさい! お茶の用意をしようと思って来たんです......」

 

提督「いや、別にそれは謝る事じゃない。それで......聞いてたのか?」

 

羽黒「......///」コク

 

提督「羽黒、頼みがある。この事はできるだけ内密に......」

 

羽黒「大佐......ごめんなさい。それは無理だと思います」

 

提督「なに」

 

羽黒「さっき、青葉さんが真っ赤な顔をして走って行っちゃいましたから......」

 

提督「......」ガクッ

 

羽黒「た、大佐! 大丈夫ですか!?」

 

提督「ああ......ちょっと......少し疲れただけだ......」

 

羽黒「い、医務室にお連れしますね」

 

提督「すまない、頼む。今は少し休みたい」

 

羽黒「はい、分かりました。それじゃぁ肩を......」

 

提督「む......助かる」ヨロ

 

 

羽黒「......」トコトコ

 

提督「......」ヨロヨロ

 

羽黒「大佐......」

 

提督「......ん?」

 

羽黒「先程の少将殿お話の件......羽黒は、私は構いませんから......ね?」カァ

 

提督「......ああ」




予想はできてる方もいるとは思いますが、近いうちにガチ百合(Rー18)の話が入る事になると思います。

元彼女バンザイ!


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第6話 「作戦会議」

深夜、駆逐艦一同が集会場に集まっているようです。
皆、気配をなるべく消して隠密に行動しています。
何が始まるのでしょう。


雷「皆! “これから大佐とラブラブになろう!会議”を始めるわよ!」

 

電「今回は、わたし達駆逐艦だけの会議なのです」

 

黒潮「何でうちらだけなん?」

 

雷「いい質問ね! それはわたし達の見た目がお子様だからよ!」

 

文月「い、言い切っちゃった……。それは文月達にとって禁句なのに……」

 

雷「だからこそよ! わたし達はこのハンデを受け入れたうえで、大佐に好きになってもらわなければならいの!」

 

長月「成程な……。いつまでも逃げてはいられないからな」

 

雷「そういう事! それじゃ、会議を始める前に今回わたし達にとって喜ぶべき収穫と驚くべき情報を紹介するわ! 望月、報告をしてちょうだい」

 

望月「はーい。今回わたしからの報告は、大佐にわたし達見た目が子供の駆逐艦も恋愛の対象として見て貰える様、ストライクゾーンの拡大の要求に成功した事だよ」

 

ザワザワ……。

 

不知火「そ、それは本当なのですか!?」

 

望月「本当だよ。わたしの交渉術でその条件を引き出したわけ」

 

雷「前にわたし達にとっておきのお土産がある、って言っていたのはこの事だったのね」

 

望月「そういう事。褒めていいよ?」

 

モチヅキー! モッチー! サスガー!

 

 

雷「これは本当に喜ぶべき朗報ね! 皆、今暫くこの幸運を噛みしめましょ!」

 

 

陽炎「……へ、へぇ。大佐が、ね……。わたしでもチャンスがあるんだ」

 

霰「この気持ちは何……? 涙が……止まらない……よ」

 

綾波「う、ぐす……やっと、やっとこの時が来たのですね……!」

 

秋雲(うーん、先に恋人にしてもらった手前、素直に喜べないなぁ)

 

 

雷「はい! 余韻タイム終了よ。名残惜しいけど次に行くわよ!」

 

菊月「その通りだ。私達は常に前を向いて生きていかねば、な」

 

雷「言い事いうじゃない菊月! その通りよ! わたし達は、わたし達の明るい未来の為にこの会議を成功させなくちゃいけないのよ!」

 

電「なのです!」

 

雷「はい、それじゃ次に驚くべき情報を報告するわ! これは、えーと……夕雲でいいのかしら?」

 

夕雲「はい。青葉さんから情報を確認したのは私です」

 

雷「よかった。それじゃ、報告頼むわよ!」

 

夕雲「了解致しました。私からの報告は、大佐と恋仲になるのは決して大佐にとって不利益にならないと言う情報です」

 

ザワザワ……。

 

巻雲「それだけだとよく判りませんね。一体なにが大佐にとって有益なんですか?」

 

夕雲「それは……大佐とは、肌を重ねることによって、大佐が常に健康な身体でいられるという事です」カァ

 

シーン……。

 

雷「ね、ねぇ。そ、それってつまり、どういう……事?」

 

夕雲「まぐわ……エッチです。大佐とエッチをすれば、大佐も健康になります」

 

ザワザワザワ……!

 

島風「えっち?」

 

雪風「島風ちゃん。あ、あまり大きな声で言わない方がいいよ……」カァ

 

島風「え? ねぇ、えっちってどういう事? 大佐にパンツとかを見せればいいの?」

 

叢雲「違うわ。そういう視覚的なものじゃなくて、実際にエッチをするって事よ」

 

島風「実際に?」

 

谷風「だ、だからぁ……お互い裸になって……そ、そのわたし達の大事なところに……コショコショ」

 

初春「恥ずかしいなら無理をするでないわ。よいか島風、エッチというのはな。女のホトに大佐のマラを入れたり出したりする事じゃ」

 

白露「ぶっちゃけ過ぎ!」

 

島風「ホト? マラ?」

 

霞「もう、だからっ。島風のこ、ここに」フニョ

 

島風「ひゃんっ」

 

霞「た、大佐のち、チンチンを入れて貰うって事よ……」プシュー

 

朝潮「霞、貴女はよくやりました……流石です」グス

 

曙「お疲れ様。恥ずかしかったでしょ、ゆっくり休みなさい」

 

霞「……」プシュー

 

島風「島風のココに……」カァ

 

雪風「あわわ……」カァ

 

雷「そ、それはほ、本当に凄い情報ね! た、確かにそれが本当ならた、大佐とえ、エッチする大義名分はな、成り立つわ!」

 

皐月「目的はとても人様に言えない内容なのに、大義名分ってどうなんだろ……」

 

朧「ち、恥辱も試練の一つよ……。がんばらなきゃ」

 

夕立「でもぉ、どうやって大佐とエッチするわけ? 雰囲気とか大事じゃん?」

 

時雨「攻めるしか、ないよ」

 

満潮「し、時雨?」

 

時雨「今まで僕たちは奥手だった。自分たちの体が幼いからあまり直接的な手段に出れなかった。でも、今日のこの2つの情報が本当なら、今こそ攻めるべきだよ」

 

響「……時雨が言わなかったら。もう少し感動できたのにな」

 

時雨「ええ!? そ、それってどういう事!?」

 

涼風「こんな大きい胸してる癖に、時雨が幼いって言ったって、あたい達はへこむだけなんだよ!」モニュ

 

時雨「ひゃぁっ」

 

Z1「ま、それは置いておいても、確かに時雨の言う通りだよ。これからはもっと積極的に行こう」

 

Z3「だからって、大佐にあまり迷惑は掛けない様にしないとね」

 

五月雨「それは当然ですね!」

 

雷「んっ、なんだかんだでいい感じに意見がまとまってるみたいね! それじゃ、結論を出しましょうか!」

 

電「わ、わたし達は大佐に振り向いてもらう為に、ちょ、ちょっとエッチな方法でも取るべきなのです!」

 

荒潮「その通りねぇ。これからは攻めるわよぉ」

 

子日「今日は決意の日だね!」

 

雷「子日、あなたも良い事いうわね! それじゃ、答えが出たみたいだし最後に鬨の声を上げて決意を固くするわよ!」

 

一同「了解!」

 

雷「それじゃぁ、いくわよ! 暁の水平線に!!」

 

 

一同「愛を掴もう!!!」

 

 

雷「解ってるじゃない! 皆、行くわよー!!」

 

 

ワアアアアアアアア

 

 

 

~その頃、とある酒場

 

提督「……!?」ゾク

 

彼女「どうかした?」

 

提督「いや、飲み過ぎたか……?」

 

彼女「まだ、コップ一杯のビールも空けてないじゃない」

 

提督「そうだな……」

 

彼女「大丈夫?」

 

提督「ああ。取り敢えず飲もう」

 

彼女「んっ」




提督はロリコンではありません。
でも、愛には真摯な男です。

俗にいう良い漢というやつです。


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第7話 「お祝い」

提督と少将は再開を祝して飲むことにしました。
何事もなく旧交を温める事ができたらいいのですが、さて……。


彼女「じゃ、再会を祝して」

 

提督「乾杯」

 

チン

 

 

彼女「全く、ビール一杯でいきなり変な反応するんだも何事かと思ったわよ」

 

提督「すまん。何故か急にな。今は大丈夫だ」

 

彼女「……ちゃんと健康管理してる?」

 

提督「体作りはしている」

 

彼女「それ、健康が管理できてなかったら、ただ体をいじめてるだけよ?」

 

提督「む……」

 

彼女「基地の食事を摂っていれば大体問題ないとは思うけど、偶には料理とかもしたほうがいいわよ?」

 

提督「君のおかげでそれは、今や俺の趣味になっている。だからその点は大丈夫だ」

 

彼女「むっ、悪かったわね」

 

提督「……あれからどうだ?」

 

彼女「どうって?」

 

提督「苦手な事だ」

 

彼女「なんで気にするのよ?」

 

提督「別れてからは、自分でまたしないといけなくなっただろ? ちゃんとできているのかと思ってな」

 

彼女「少なくともあなたに心配されない程にはマシになったと思うわ」

 

提督「ほう? 料理も作れるように?」

 

彼女「わたし、才能豊かなのよ?」ニッ

 

提督「自分で言うか」

 

彼女「自惚れでない自信だからね。断言させてもらうわ」

 

提督「相変わらずだな」

 

彼女「……惚れ直した?」

 

提督「その言葉は聊か不適切だな。別れたのはどちらかというと俺が逃げたのが原因だからな」

 

彼女「でも起因は私よね?」

 

提督「だからと言って君自身が嫌いになったわけじゃない。元々俺は君には良い印象を抱いていた。そしてそれは今も変わらない」

 

彼女「不適切だって言ったのはそういう事?」

 

提督「そうだ」

 

彼女「それじゃ、まだ私にもチャンスはあるって事?」

 

提督「チャンスだなんて言うな。君が全部悪いとは思っていない」

 

彼女「寄りは戻してくれないの?」

 

提督「……再会してから思っていたが、まだ俺のことが好きなのか」

 

彼女「一目惚れよ?」

 

提督「……そうだったな」ゴク

 

彼女「答えは?」

 

提督「俺は君ほど肌を重ねてはいないとは言え、既に何人もの娘に告白され、更にその内に何人かとは体を結んだ人間だぞ」

 

彼女「ふふ、あなたにしては大したものだと思うわ」

 

提督「そこは軽蔑するところだろ」

 

彼女「好きなのは仕方ないの」

 

提督「武蔵はどうした?」

 

彼女「気を遣ってくれたわ。あの子、あれでいざという時はやってくれるのよ?」

 

提督「良い奴とケッコンしたな」

 

彼女「そういう言い方しないでよ。確かに私、あの子のこと愛してるけど、それはあなたも同じなのよ?」

 

提督「君は同時に好きな人を愛せるほど器用だったか」

 

彼女「提督をやってたら誰だってそうなるんじゃない?」

 

提督「耳が痛い話だ」

 

彼女「それで?」

 

提督「ん……」ゴク

 

提督「っふぅ……。密会や秘愛のような尾を引く真似はしたくない」

 

彼女「そう……」

 

提督「だから皆が、武蔵が認めるのなら、な」

 

彼女「っ、それ本気で言ってる?」

 

提督「ああ」

 

彼女「……ふふ」

 

提督「ん?」

 

彼女「んーん、お酒が美味しいの」

 

提督「今まで美味しくなかったのか?」

 

彼女「普通。でも今のは凄く美味しい」

 

提督「ほら……」

 

彼女「え? 私泣いてた?」

 

提督「今も、だ」

 

彼女「やだ、恥ずかし」カァ

 

提督「返さなくていいぞ」

 

彼女「ん……、ありがとう」

 

提督「……すまなかったな」

 

彼女「気にしないで。来た甲斐があったわ。本当に」

 

提督「期待していたのか?」

 

彼女「しないわけないじゃない。これでも結構緊張していたのよ?」

 

提督「そうか……」

 

彼女「ねぇ」

 

提督「ん?」

 

彼女「今も緊張してる……」

 

提督「……」ポン

 

彼女「あ……」

 

提督「今は、これで我慢してくれ。やはり秘め事にはしたくない」

 

彼女「うん……♪」

 

 

その頃、港

 

長門「そんなところで何してるんだ?」

 

武蔵「なんだ。老朽艦か。ほっとけ。今は一人になりたいんだ」

 

長門「相変わらず口が悪いな。自信があるのは結構だが、それだと嫌われるだけだぞ?」

 

武蔵「別に、提督さえいればいい……」

 

長門「……まぁ、な」

 

武蔵「……大佐はいい男か?」

 

長門「ああ。お前も惚れるかもしれないぞ」

 

武蔵「私は、提督の、あいつの胸がいいから、それはない」

 

長門「……本当に好きなんだな」

 

武蔵「……一目惚れだからな」

 

長門「なるほど……」

 

武蔵「なぁ」

 

長門「ん?」

 

武蔵「やっぱり寂しい」グス

 

長門「そうか。じゃあ私の部屋に来い。皆と一緒に酒でも飲もう」

 

武蔵「受け入れてもらえるだろうか」

 

長門「提督が好きな奴に悪い奴はいないさ。皆、それくらい解っている」

 

武蔵「……そうか」

 

長門「ああ、そうだ。……来るか?」

 

武蔵「ああ。ご相伴に預からせてもらおう」

 

長門「殆ど酒しかないぞ?」

 

武蔵「酒も飯だ」

 

長門「ふふ、なんだそれ。上手い事言ったつもりか?」

 

武蔵「えっ?」

 

長門(天然だったか。こいつも可愛いな)




最近、長門の抑制が利かなくなってきてるような……。

ま、武蔵だったら大丈夫でしょう!


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第8話 「ご機嫌」R-15

提督から色よい返事をもらい上機嫌の彼女は鼻歌を口ずさみながら自分に充てがわれた部屋に帰ってきました。
あまりみないその彼女の様子に武蔵はなにがあったのか直ぐに察したのですが……。

*明らかな性的描写あり


彼女「~~♪」

 

武蔵「......機嫌が良いな」

 

彼女「まぁね」

 

武蔵「大佐と仲直りしたのか?」

 

彼女「ん? ふふ、別に仲違いなんてしてなかったわ。私の思い過ごしだったみたい♪」

 

武蔵「そうか、良かったな。大佐は優しいんだな」

 

彼女「そういうのじゃないわよ。私がずっと嫌われたって勘違いしていただけ」

 

武蔵「そうか......。まぁ、よかったじゃないか」

 

彼女「......ねぇ」

 

武蔵「なんだ?」

 

彼女「甘えていいわよ。思いっきり」

 

武蔵「っ、それは......これが、最後とかそういう意味......か?」プルプル

 

彼女「バカね。そんなわけないじゃない。この指輪は絶対に外したりなんかしないわ」

 

武蔵「じゃ、じゃあ私は二番目なんだ……な」

 

彼女「あなたが女という時点であいつと比較なんてできないわよ」

 

武蔵「そ、それは……どう意味だ……?」

 

彼女「女ではあなたが一番ってことよ」

 

武蔵「っ、xxxぃぃぃ!」

 

彼女「はい。いらっしゃい」

 

ダキッ

 

武蔵「うっ......ひっく......すん」

 

彼女「久しぶりね、名前で呼んだの」

 

武蔵「すまん。規則を破った」

 

彼女「いいのよ。こういう時くらいは目を瞑るわ。寧ろ、呼んでくれた方が嬉しい」

 

武蔵「......!」スリスリ

 

彼女「んっ……服が皺になるから脱ぐわね」

 

武蔵「......脱がしたい」

 

彼女「ふふ、いいわよ。今日は何でも応えてあげる」

 

 

武蔵「......今日は黒色じゃないんだな」

 

彼女「昔を思い出してね。あの頃は“女の子”だったから」

 

武蔵「何を言ってるんだ。今だってそうだ。取るぞ?」

 

彼女「ん......」

 

 

武蔵「ん? もう勃ってるのか?」

 

彼女「んっ、今日は何でもしてあげるって言ったら、自分自身を興奮させちゃったみたい」クス

 

武蔵「......!」

 

武蔵「ちゅう......ぺろ」

 

彼女「......はっ、ふ......く。イイっ」

 

 

武蔵「凄いな......」

 

彼女「そうね。自分で言うのもなんだけど、ここまでなったのは初めてかも」

 

武蔵「苦しそうだな。今解放してやる」

 

彼女「あっ......もう......」

 

武蔵「はぁ......もう、溜らん。れろ.....じゅるるるっ」

 

彼女「ああっ.....ふぅ.....っく、はぁ、はぁ......ふふ。もう犬みたっ......いにがっついちゃって」

 

武蔵「わたしゅは、今日もご、じゅるっは、お前の......ん、ぺろっ......犬だ」

 

彼女「くぅぅっ。はぁ......あ、愛撫犬ってやつ? やらしいわね」

 

武蔵「何とでも言え。今日は好きにさせてもらう」

 

彼女「いいわよ。ほら......こっちもお願い」

 

武蔵「ふふ、可愛いな。可愛がってやろう」

 

 

彼女「あ、指......そこ......!」

 

武蔵「今日はこっちも攻めさせてもらうぞ」

 

彼女「あああああっ。凄っイイ! はぁっ......ふぅ......はぁっァ」

 

 

――数時間後

 

彼女「はぁ......はぁ......武蔵......むさし……ぺろ」

 

武蔵「んくっ、いい......ぞ。もっと......!」

 

彼女「あ......もう、夜が......明けっ、ちゃう......」

 

武蔵「寝てていいぞ。私はまだお前のココを弄っていたい」

 

彼女「何言いてるのよ。こんなにヒクヒクさせてるくせに......ちゅ」

 

武蔵「あ、ふ。し、仕方ないだろ。どんどん溢れてきてしまうんだ」

 

彼女「ふふ、武蔵って肌はちょっと浅黒なのに、ココはちゃんと......かーわいい♪ でも、あと1時間ね」

 

武蔵「仕方ないな。じゃあ、私はやっぱり最後までココを......ちゅ」

 

彼女「んんっ!はぁ......じゃ、私は目覚めの良い朝の為にあなたのを......」ムニュウ

 

武蔵「あっ......! はぁ、はぁ......やるな」

 

彼女「誰が先にイカせるか勝負よ」ニッ

 

武蔵「ふ、望むところだ」

 

 

同刻、提督執務室

 

コンコン

 

 

提督「......ん?」

 

ガチャ

 

 

提督「......どうしたんだ。三人ともこんな朝早くに」

 

名取「ひっく......な、なんか何処からかわかり......ませんけど、悲鳴みないな声が聞こえるんです」

 

暁「ふ、震えて可哀そうだったから、あ、暁が連れてきたのよ!」プルプル

 

提督「悲鳴......?」

 

妙高「あの大佐......」

 

提督「ん?」

 

妙高「......コショコショ」カァ

 

提督「......なるほど。3人とも、今日は夜が明けるまで俺の部屋で寝ろ。特別に許可する」

 

名取「ほ、本当ですか!?」ウル

 

暁「たいしゃぁぁ」ブァッ

 

妙高「わ、私もいいんですか?」

 

提督「ああ。4人では少し狭いだろうが、妙高は名取の隣に、俺は暁を見る」

 

妙高「ああ、そういう......」

 

名取「あ、ありがとうございます!」

 

暁「た、大佐の隣......♪」ポ

 

提督「妙高」

 

妙高「はい?」

 

提督「今日、晩酌に付き合ってくれるか? 指名したい」

 

妙高「っ! よ、喜んで!」

 

提督(ふぅ......。若さを保ってるというのは本当らしいな。いや......愛、か)




純粋百合できたぁ!
満足です。
もう終わってもいいです。

終わらせる気はまだありませんが。

あ、彼女の名前はわざと伏せました。
どうしても出さないと上手く文がつくれなかったので出したのですが......やっぱ、固有名は無い方がいいかな、と。


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第9話 「アイドル」

自称アイドル那珂は、自己主張が強いため鎮守府でも少し浮いた存在です。
そんな彼女が今日の秘書艦なわけですが、提督は彼女の事でなにか気になることがあるみたいです。

何を気にしているんでしょう?


提督「そういえば那珂は、歌が得意なのか?」

 

那珂「えっ。ど、どうして?」

 

提督「いや、ふと気になっただけだ。よくお前は自分の事をアイドルと言っているからな」

 

那珂「い、いやまあそうなんだけど。別にアイドルだからって歌に拘る必要はないんじゃないかな?」

 

提督「というと?」

 

那珂「ば、バラエティとか……」

 

提督「この辺境の地でバラエティか……」

 

那珂「にゅ、ニュースキャスターとか!」

 

提督「歩く情報発信源みたいな奴が既にいるからな。それもどうだろう」

 

那珂「うぅ……」

 

提督「……もしかして、ただ目立ちたいだけだったか?」

 

那珂「なぁ!?」ギク

 

提督「図星か。何故そんなに目立ちたがる?」

 

那珂「だ、だって……わたしってあまり特徴ないじゃん?」

 

提督「特徴?」

 

那珂「一時は改二になって凄くはりきってたけどさ、神通姉さんが改二になってからはあまり戦闘で活躍するのもどうかなって」

 

提督「姉に気を遣ったのか?」

 

那珂「あ、気を遣ったのは川内姉さんにだけどね。ほら、神通姉さんは私が言うのもなんだけど、凄く出来た人じゃん?」

 

提督「なるほど。あいつ最近元気がないと思う時があったが、そういう事だったのか」

 

那珂「あ、やっぱり? わたしももう直ぐ姉さんの番だよって励ましたりしてるんだけどね」

 

提督「そういうのはなるべくやめておけ。神通じゃないと逆効果だ」

 

那珂「それってどういう意味!?」

 

提督「普段の行いの所為だろう」

 

那珂「う……。ま、まあそういうわけで那珂的には適当に目立って皆の印象に残ろうかなって思ったわけでありまして……」

 

提督「そうか」

 

那珂「め、迷惑だった?」

 

提督「いや、迷惑というより、余計に印象が悪くなるだけだから寧ろこれからは控えた方がいいと思うぞ」

 

那珂「ええ!?」

 

提督「那珂、自覚してるかもしれないが、お前は軽巡としては優秀な部類に入る。そんなお前が実力を出し惜しみしてどうする?」

 

那珂「でも川内姉さんが……」

 

提督「川内はあれで、なかなか責任感があって妹思いのしっかりした姉だ。そんなあいつがお前が遠慮していることを知ったらどう思うと思う?」

 

那珂「……」

 

提督「妹の負担になってると知ったら、きっとあいつは今以上にショックを受けるぞ」

 

那珂「あり得るかも……」

 

提督「那珂、お前は無理に自分のイメージを作る必要はない。目立ちたいなら自分の実力を誇ってみせろ。実力に見合った戦果を示してみろ」

 

那珂「大佐……」

 

提督「お前は元々真面目な性格だと俺は思っている。勿論、決めつけるのはよくないが、それでも姉思いなのは間違いないだろ?」

 

那珂「うん……」

 

提督「なら、それを隠してどうする。寧ろその姿を姉たちに見せつけて、お前が一人前である事を伝えてあいつらを安心させてやれ」

 

那珂「姉さんたちを安心……させる……!」

 

提督「自信が出てきたか?」

 

那珂「うん! 大佐、那珂ちゃ……ううん。わたし頑張る! わたしがわたしである証をど真ん中にアピールしてみる!」

 

提督「良い意気込みだ。正に艦隊のアイドルだな」

 

那珂「ちょ、今それをここで言うのー?」プク

 

提督「はは、悪い。だが、お前の活躍で仲間の士気があがれば、アイドルという異名もそう悪くはないと思うぞ?」

 

那珂「わたしの活躍で皆の士気を……」ゾク

 

提督(前々から思っていたが川内は元々だったが、下の妹2人も姉に劣らずに戦闘では頼もしい面を覗かせる。神通は改造によって自信を持ったが、こいつの場合は自分を見失っていたのかもしれないな)

 

那珂「大佐」

 

提督「ん?」

 

那珂「これからのわたしの活躍、期待しててね?」

 

提督「いい顔になったな。頼もしさを感じる」

 

那珂「そ、そうかな?」テレ

 

提督「だがな那珂」

 

那珂「あ、はい!」

 

提督「本当に頼もしさを感じさせてくれるなら、目の前にあるこの書類の束を減らすのにも力を貸して欲しいんだが?」

 

那珂「えっ。あー……な、那珂ちゃんはぁ、アイドルなのでぇ……」

 

提督「おい、さっきの頼もしさは何処に行った? 一気に本当に人気があるのか怪しいアイドルになってるぞ?」

 

那珂「じ、事務処理は苦手なんだよーぉ」

 

提督「そこは姉に負けてるのを認めるわけだな」

 

那珂「ま、負けてると言っても神通姉さんだけだし! 川内姉さんはズボラだから絶対にこういう仕事不得意なはずだし!」

 

提督「お前それ、絶対に川内の前で言うなよ? あと、不得意を競うな」

 

那珂「う……」

 

提督「事務処理が苦手なら克服すればいい。神通に聞いてもいいし、今ここでなら俺も教えてやれる」

 

那珂「た、大佐が教えてくれるの? 仕事遅れちゃうよ?」

 

提督「先行投資というやつだ。将来が有望なアイドルなら投資して然るべきだろう?」

 

那珂「あ……」ポ

 

提督「輝いてくれるか?」

 

那珂「うんっ任せて!」

 




那珂はもっと落ち着けば人気が出ると思うんです。
そんな筆者は彼女を根気強く育ててみましたが、未だに落ち着いてくれません。
何故だ……。


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第10話 「子守り」

昼食も終えて暇な時間何をしようかと考えていたところに、提督は誰かの視線を感じました。
バレているつもりはないようですが、ふと視線を感じた方を見てみるとドアの隙間から島風と雪風がこちらの様子を覗いていました。


島風・雪風「ジー......」

 

提督「......」

 

島風・雪風「ジー......」

 

提督「なんだ......二人とも」

 

島風「っ、気付いた! 行くよ! 雪風ちゃん!」ダッ

 

雪風「りょ、了解しました!」ダッ

 

 

島風「大佐っ!」

 

雪風「見て下さい!」

 

バッ

 

提督「......何故、下着を見せる?」

 

島風「エッチな方法で大佐をのーさつするのっ」

 

雪風「た、大佐。どうです? 嬉しいですか?」

 

提督「......一体、誰の入れ知恵だ」

 

島風「雪風ちゃん、大佐あまり喜んでないみたい」ヒソ

 

雪風「そうですね。や、やっぱり脱いだ方が......」カァ

 

提督「二人とも」

 

島風・雪風「はい!」

 

提督「ふぅ......おいで」

 

島風・雪風「?」トコトコ

 

ギュ

 

島風「あ......」

 

雪風「ふぁ......」

 

提督「別に恋人になるにはそういう事をしないといけない、というわけではないんだ」

 

島風「そうなの?」

 

雪風「男の人はこれが一番好きなんじゃ......」

 

提督「それは、別に男だけとは限らない。女だってそいう人はいるぞ」

 

雪風「そうなんですか?」

 

提督「ああ。だが、俺は二人にはそういう方法はまだ時期が早いと思う。だから、これが今は最適の方法なんだ」

 

島風「それって、いつでも大佐に抱き着いていいってこと?」

 

提督「いつでもだと俺も困るな。仕事をしていない時に頼む」

 

島風「っ! わかった! ね、まだこのままでいていい?」

 

提督「ああ、もう少しならな」

 

雪風「ゆ、雪風も!」

 

提督「二人とも一緒だ」ポン

 

島風「むふー♪」スリスリ

 

雪風「たーいさぁ♪」スリスリ

 

 

――数分後

 

雪風「すぅ......すぅ......」

 

島風「くー......すー......」

 

提督「......」ナデナデ

 

ギュ

 

提督「ん?」

 

響「響も......」

 

提督(いつの間に......)

 

提督「......ちょっと待ってろ。2人をベッドに寝かせてくる」

 

響「了解、待ってる」

 

 

提督「待たせたな」

 

響「大佐っ......!ダッ

 

提督「む」キャッチ

 

響「んー......♪」スリスリ

 

提督「いつにも増して甘えん坊だな」

 

響「......これからこういう子がどんどん来ると思う」

 

提督「なに?」

 

響「でも、今は響だけを可愛がって」

 

提督「......ああ」(増える......?)

 

響「撫でて」

 

提督「ん」ナデナデ

 

響「ふ......んむ......」チュ

 

提督「っ」

 

響「......やった」

 

提督「また不意を突かれたな」

 

響「油断どんどんしていいよ?」

 

提督「そこは窘めてくれ」

 

響「やだ」プイ

 

提督「......全く」

 

 

――数分後

 

響「ん......もういいよ」スッ

 

提督「ん、そうか」(自分から離れるとは珍しいな)

 

響「名残惜しいけど......次は雷の番だし、ね」

 

提督「なに?」

 

雷「大佐っ!」ダキ

 

提督「おっと......一体どこから」

 

雷「ちゃんとドアから入って来たわよ! ほら」

 

提督「......」

 

響「皆、順番に待ってるから、ちゃんと相手をしてあげてね」

 

雷「大丈夫よ! 一日10人までって決めてるからお仕事の邪魔はさせないわ!」

 

提督「そうか......」

 

響「雷」クイクイ

 

雷「ん? なに?」

 

響「エッチなのは今日はダメだよ? 反則」ヒソ

 

雷「っ、わ、分かってるわよ」カァ

 

響「ん。ならいい。じゃ、大佐。よろしくね」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

雷「大佐っ」

 

提督「ん? む......」

 

チュ

 

雷「えへへ......やったわ♪」

 

提督「我ながら学習しないな......」

 

雷「隙を見せる方がわるいのよっ♪」スリスリ

 

雷「ね」

 

提督「ん? 撫でるか?」

 

雷「ううん、違うの。お、お腹をポンポンってして」

 

提督「......わかった」

 

ポンポン

 

雷「あ......なんだろ......撫でられるのと違ってこれ......いい」

 

提督「そうか」

 

雷「うん。なんか......安心するっていうか、体がポカポカして幸せな気分なの」

 

雷「ね、今度はお腹撫でて」

 

提督「ん」

 

ナデナデ

 

雷「ん......ふぁ、これもいいなぁ......」ウットリ

 

提督「それは良かった」

 

雷「ね。上からあ、足の付け根のとこまでスーってやって」

 

提督「雷、それは......」

 

雷「べ、別に服の上だし。パンツを触るわけじゃないからいいでしょっ」カァ

 

雷「ね、お願い。それ以上は我儘言わないから」ウル

 

提督「......ふぅ」

 

スー......サスサス、スー......

 

雷「あふぅ......あり......と。しば......らくそのまま、ね」

 

 

~執務室前の廊下

 

不知火「......」カァ

 

陽炎「ど、どうしたの? 何が見えるの?」

 

不知火「いえ......」スルッ

 

陽炎「どうしてパンツ脱ぐの!?」カァ




ロリコンではありませんが、駆逐艦大好きです。
駆逐艦は見た目がロリータなだけで中身はちゃんと大人なので、ケッコンしてもロリコン扱いはされません。
決して中破グラで興奮もしてはいけません。

え? 村雨? 無理です。ごめんなさい。あれで興奮するなと言われても筆者にはできません。


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第11話 「対峙」

少将(元彼女)が提督を訪ねてきました。
目的は提督との復縁を武蔵に許してもらった事の報告です。
が、その日に限って秘書艦だったのは……。


榛名「……」

 

彼女「あの、何か?」

 

榛名「少将は大佐の元恋人なんですよね?」

 

提督「榛名」

 

彼女「いいのよ。そうだけど、それが?」

 

榛名「今も“元恋人”なんですよね?」

 

彼女(なるほど、そういう事……)

 

彼女「榛名、さん」

 

榛名「っ、どうして本部の提督とは言え、階級も大佐より高い少将が私なんかに“さん”を付けるんんです?」

 

彼女「今から貴女にお願いしたい事があるからよ」

 

榛名「……お願い、ですか」

 

彼女「榛名さん、貴女、この人の事を好き……愛してるわよね?」

 

榛名「……はい。大好きです」

 

彼女「私は貴女のその気持ちを理解したうえでお願いしたいの」

 

榛名「大佐との仲直り、ですか?」

 

彼女「いいえ。復縁よ」

 

榛名「っ! 駄目です! 許しません!」

 

彼女「……理由を教えてくれるかしら」

 

榛名「榛名から大佐を奪わないでください!」

 

彼女「奪いはしないわ。ただ、昔と同じように恋人になってほしいd」

 

榛名「それが榛名達から大佐を奪う原因になるんです!」

 

彼女「何故?」

 

榛名「榛名は……私は、所詮艦娘です。人間じゃありません……。生まれた時から親もいなくて、ただ一人……」

 

榛名「少将、そんな私達にとって唯一常に傍にいて身近に感じる人、提督がどんな存在か解りますか……?」

 

彼女「……よく解るわ。だって武蔵にとっても私はたった一人の提督だもの」

 

榛名「なら……!」

 

彼女「榛名さん、私が貴女に訊きたいのはそんな事じゃないのよ? どうして私が彼と恋人に戻ったらいけないのか、を訊いてるの?」

 

榛名「……少将は人間じゃないですか」

 

彼女「そうね」

 

榛名「艦娘の恋が人間同士の恋に勝てると思いますか?」

 

提督・彼女「……」

 

榛名「人間同士ならいずれその……子供だってできますよね? もしそうなったらそれこそ、大佐は二度と榛名達の方を振り向いてくれなくなります」

 

榛名「私は……そんな絶望にあいたくありません。大佐を一生失うなんて考えられません!」

 

彼女「……それが理由?」

 

榛名「……そうです」

 

彼女「榛名さん、これを見てくれる?」

 

榛名「それは……ケッコンの指輪、ですよね?」

 

彼女「そう。これは、武蔵と私のケッコンの証の指輪よ」

 

榛名「っ!少将は、武蔵さんを裏切るんですか?」

 

彼女「そんなわけないじゃない。これは絶対に彼女を離さない誓いでもあるもの」

 

榛名「ならなんで大佐と……!」

 

彼女「……許しを貰ったの」

 

榛名「え?」

 

彼女「彼女に彼と寄りを戻していいっていう許しを……」

 

榛名「二人とも手に入れようしているんですか? 強欲が過ぎますよ?」

 

彼女「だって……好き、なのよ?」

 

榛名「な……」

 

彼女「この気持ち、止められると思う? 貴女なら」

 

榛名「引き際を……諦めを着けるのも、周りに迷惑を掛けない決意を表す選択なんですよ?」

 

彼女「そんなのごめんだわ。絶対に後悔するから」

 

榛名「え」

 

彼女「榛名さん、私は武蔵も彼も、“二人とも”好きなの。そんな我儘な私がどちらか一方だけを愛するなんてするわけないじゃない」

 

榛名「あ、貴女はさっきから何を言って……」

 

彼女「榛名……貴女も我儘でいいのよ? 私は彼の事を愛してるけど、絶対に貴女から奪うような真似はしない。だって貴女の気持ちを知ってるもの」

 

榛名「私は今でも十分我儘のつもりです。それなのにこれ以上なんて……」

 

彼女「なら諦める?」

 

榛名「っ! 嫌です!!」

 

彼女「私もよ。絶対に嫌」

 

榛名「あ……」

 

彼女「ね?」ニコ

 

榛名「あ……あぁ……」

 

彼女「もう我慢しなくていいわ。本当に心の底から貴女の好きなようにしなさい」

 

提督「……」(俺の艦娘なんだが……相変わらずなんという状況制圧力だ)

 

榛名「わ、私は……」

 

彼女「榛名……」フワ……ダキ

 

榛名「あ……」

 

彼女「ごめんね。女の胸なんかで。でも安心してほしいの。私を信じて。私も榛名と一緒に幸せにさせて?」

 

榛名「少将……」ギュ

 

彼女「いい子ね……大佐もそんな貴女の事がきっと好きなはずよ。もしかしたら、私よりも……」

 

榛名「そう……でしょうか? 榛名が人間の少将より大佐に好かれるなんて……」

 

彼女「自信を持ちなさい。貴女は艦娘である前に乙女なのよ? 乙女が男を虜にするのに自信がなくてどうするのよ?」

 

榛名「少将……」ウル

 

彼女「泣きなさい。全部受け止めてあげるわ。あ、でも大佐に抱き着くのは後にしなさい? 服が濡れちゃうからね。私は客人だからいいけど」

 

榛名「うわぁぁぁぁん! 少将おおおおお!!」ギュ

 

彼女「はいはい。いーこ、いーこ」ポンポン

 

提督「……」(俺はひょっとして無用の存在なのではないだろうか……)

 

 

――数分後

 

榛名「すん……」

 

彼女「……落ち着いた?」

 

榛名「はい……」

 

彼女「ついでに聞いて悪いけど、私の我儘許してもらえる……?」

 

榛名「少将ならっ」ニコ

 

彼女「っ、ありがとう!」ギュ

 

榛名「ん……少将、苦しいです♪」

 

彼女「あ、ごめんね。嬉しくて……。ね、更についでで申し訳ないけど……大佐に……彼に抱き着いていいかしら? 幸せが……止まらないの……」

 

彼女「彼に……受けて止めて欲しいの……」

 

榛名「もう少将と私は大佐の恋人同士じゃないですか。遠慮しないで下さい。あ、でも次は榛名ですよ?」

 

彼女「……うん!」

 

榛名(あ……可愛い……)

 

 

彼女「大佐……」

 

提督「……俺からは何も言う事は……いや、また恋人になってくれるか?」

 

彼女「勿論よ……!」ブァッ

 

ダキッ

 

彼女「ね、キス……」

 

提督「駄目だ。仕事中はそういう事はしない」

 

彼女「状況に流され易い癖に……ん、いいわ。今は抱き締めてくれるだけで」

 

提督「まあ、それなら……」ギュッ

 

彼女「ねぇ」

 

提督「ん?」

 

彼女「私今、凄く幸せよ?」

 

提督「知っている。さっき榛名に言ってたからな」

 

彼女「もう……雰囲気考えてよ」プク

 

提督「榛名が見てるのに雰囲気と言われてもな……」チラ

 

 

榛名『タイサ ファイト!』ブンブン

 

 

提督(身振りで……)

 

ギュッ

 

彼女「んっ、どうしたの?」

 

提督「いや」(本当に女には適わないな)

 

 

~扉の向こう側

 

加賀「……どう、思います?」

 

金剛「Oh……凄い、強敵ネ」

 

武蔵「むぅ……抱き着き過ぎだっ」

 

加賀「私達も負けてられませんね?」ニッ

 

金剛「当然ヨ!」

 

武蔵「ふっ、誰に口を聞いている?」

 

 

加賀(そう。例えケッコンしてなくても、人間でもなくても……恋は誰にも負けるつもりはないわ。……愛してます、大佐)




以上、彼女と大佐の復縁と榛名の攻略でした。
これで少なくともこの物語の榛名は少しは黒いところが少なくなるかもしれません。


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第12話 「配膳」

お昼休みも中ごろとい頃、提督は目処を付けることができずに、ずっと仕事をしていました。
そんな時に鳴った腹の虫がある事実を教えてくれます。
空腹だけではありません。
それは……


グ~……

 

提督(む、腹が……)

 

提督(そういえば、今日は秘書艦を充てがうの失念していたな。まさか、昼の仕事が終わるまで気づかないとは……)

 

提督「……食堂に行くか」

 

コンコン

 

 

提督「ん?」

 

 

鳳翔「鳳翔です。大佐、いらっしゃいますか?」

 

 

提督「ああ、入れ」

 

ガチャ

 

 

鳳翔「お邪魔します」

 

提督「どうし……た」

 

鳳翔「ふふ、やっぱりお食事、摂られてなかったんですね」

 

☆配膳メニュー

『赤みその味噌汁・麦飯・香の物・焼き鮭』

 

 

鳳翔「秘書艦らしい方が見えられなかったのでもしかして、と思ったんです」

 

鳳翔「食堂のメニューは全部終わってしまいましたが、残ってた食材で形だけ拵えてみました……。如何です?」

 

グ~……

 

提督「む」

 

鳳翔「ふふ、気に入ってもらった様でなによりです♪ お召しになって下さい」

 

提督「ありがとう」スッ

 

鳳翔「あ、あの……」

 

提督「ん?」

 

鳳翔「もし宜しければ……宜しければでいいんですが……」

 

提督「なんだ? せっかく気を遣ってこんな美味しそう食事を用意してくれたんだ。遠慮なく言ってくれ」

 

鳳翔「あ……ありがとうございます。それでは……スゥーハー……」

 

提督「?」

 

鳳翔「もし宜しければ……食べせてさしあげたいんですが……」

 

提督「な……」

 

鳳翔「遠慮なく、と申しました……よね?」チラ

 

提督「俺は病人でも怪我人でもないぞ」

 

鳳翔「意地悪しないで下さい……。私にだって……少しくらい、アピールさせてく下さい……」ボソ

 

提督「……頼む」

 

鳳翔「っ! はい、承知致しました!」パァ

 

 

鳳翔「それでは……」スッ

 

鳳翔「ふぅ……ふぅ……」

 

提督「なぁ」

 

鳳翔「はい?」

 

提督「そんなに熱そうに見えないんだが」

 

鳳翔「気のせいです♪」ニコ

 

提督「……そうか」(あと息が近い、とは言わない方がいいんだろうな)

 

鳳翔「はい、どうぞ」

 

提督「ん……」パク

 

鳳翔「どうです?」

 

提督「……美味い」

 

鳳翔「良かった! それじゃあ次は……」

 

 

~数十分後

 

提督「美味かった。ごちそう様」

 

鳳翔「お粗末さまでした」

 

提督「まぁ形はどうあれ、本当に美味かった。改めて礼を言う」

 

鳳翔「そんな、大げさですよ」ニコニコ

 

提督「いや、また食べたいくらいだ」

 

鳳翔「お望みでしたらいつでも」

 

提督「それは流石に体裁もあるかな。こういう時か、俺から頼みに来た時でいい」

 

鳳翔「遠慮なさらなくていいのに……。あ」

 

提督「ん?」

 

鳳翔「お茶、残ってますね」

 

提督「ん? ああ、全部飲んだ方が片付け易いか。ちょっとまt」

 

鳳翔「待ってください」

 

提督「?」

 

鳳翔「……」ス

 

提督「おい……」

 

鳳翔「……コクコク」

 

提督(まさか……)

 

鳳翔「ん……」ズイ

 

提督「大胆だな……」

 

鳳翔「……」カァ

 

鳳翔「んっ……」フルフル

 

提督(そのまま飲めとも言えないか、苦しそうだし)

 

提督「鳳翔……」

 

鳳翔「んぁ……ぁ……ん……」

 

提督「くちゅ……こく……」

 

ツー

 

提督「ふぅ……」

 

鳳翔「はふぅ……」ドキドキ

 

鳳翔「あの……」

 

提督「ん?」

 

鳳翔「申し訳ありませんでした。失礼な真似を……」

 

提督「……“お前の”お茶は美味かったぞ」

 

鳳翔「っ」カァァ

 

鳳翔「大佐……」スッ……ピト

 

提督「ん」

 

鳳翔「ありがとうございます……」

 

提督「ああ」

 

鳳翔「私にだってこういう時くらいあるんですよ?」

 

提督「そうだな」

 

鳳翔「嫌いに……なりました?」フルフル

 

提督「……鳳翔」

 

チュ

 

鳳翔「たいs……ん……」

 

提督「……ふ。……悪いな。昼休みも僅からだからこれが限界だ」

 

鳳翔「大佐……」ポー

 

提督「鳳翔? すまん。俺が無神経d」

 

鳳翔「……手を」

 

提督「ん?」

 

鳳翔「手を……私の胸に……」

 

提督「……」(鳳翔を信じよう)

 

フニョ

 

鳳翔「ん……」ピクッ

 

鳳翔「慎ましやかですみません。……どうです?」

 

提督「激しい鼓動を感じる」

 

鳳翔「もう、もっとそれっぽくお願いします。」

 

提督「凄くドキドキしているな」

 

鳳翔「これが私の気持ちです」

 

提督「そうか……」

 

鳳翔「大佐」

 

提督「ん」

 

鳳翔「今夜……閨をお訪ねして宜しいでしょうか……」

 

提督「ああ。皆が寝静まってから来い。寝ないで待っている」

 

鳳翔「っ! ありがとうございます……!」ウル

 

 

鳳翔「それでは失礼しますね。また……今夜に……」カァ

 

提督「ああ」

 

バタン

 

 

提督「……あの鳳翔が、な」

 

 

 

 

 




鳳翔に改二が実装されたら間違いなく育てまくるでしょう!(断言)

提督も流石に女性の扱いが上手くなってきた模様。


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第13話 「夜伽」R-15

深夜、約束通り鳳翔が提督の部屋を訪ねてきました。
目的は言うまでもなく......。

*明らかな性的描写あり


鳳翔「失礼します」

 

提督「ああ」

 

鳳翔「良かった。まだ起きていてくれたんですね」

 

提督「流石に破ったりなんかしない」

 

鳳翔「ありがとうございます......あの、それでは大佐......」

 

鳳翔「ん......ちゅ」

 

提督「ちゅ......ん......っは、ベッドまで待てないか?」

 

鳳翔「ん......ふ、はぁ。......しながら連れて行って下さい」

 

提督「分かった」

 

 

提督「下着、着けていないんだな」

 

鳳翔「普段はちゃんと着けてますよ? こういう時だけです」カァ

 

鳳翔「ごめんなさい。はしたない女で......」

 

提督「いや、魅力的だ」

 

きゅう

 

鳳翔「ああっ」

 

提督「もうこんなに感じているのか。......脱がしていいか?」

 

鳳翔「......はい」

 

 

パサッ

 

鳳翔「ごめんなさい。貧相な体で......」

 

提督「貧相なんかではない。細くて可憐だ。守ってやりたいくらいに......ちゅ」

 

鳳翔「んんっ」

 

鳳翔「あ、そこ......」

 

くちゅ

 

鳳翔「あはぁ......んん......ああ」

 

提督「いい具合だ......ぺろ」

 

鳳翔「ああっ、大佐ぁ」

 

提督「まだいけるな。今度は深くいくぞ......ちゅう」

 

鳳翔「い、ああああ......んくぅぅぅ......」

 

鳳翔「だめっ、こ......れ......あああっ」

 

提督「最後の仕上げだ」

 

 

鳳翔「あああっ......すご......はぁぁぁ!」

 

鳳翔「はぁはぁはぁ......」

 

提督「大丈夫か?」

 

鳳翔「はぁはぁ......大佐......お上手過ぎ......です」

 

鳳翔「やっぱり......経験ですか?」

 

提督「......まぁな」

 

鳳翔「それじゃぁ、今度は私に経験を積ませてもらえますか?」

 

提督「ん......」

 

鳳翔「あ......凄い、硬い......」

 

鳳翔「苦しそう......今、自由にしてさしあげますね......」

 

 

鳳翔「嬉しい......私で感じてくれていたんですね」

 

提督「っ......あんなものを見せられては感じない方が難しい」

 

鳳翔「ふふ、ありがとうございます。それでは......」

 

提督「......っ」

 

鳳翔「可愛いですね♪ なら今度は、これはどうです?」

 

鳳翔「んん......ちゅぅ」

 

提督「く......」

 

鳳翔「我慢......しなく、て......あむ。いいんです......よ?」

 

提督「いや......最初は、やはりお前が......いい」

 

鳳翔「大佐......」

 

鳳翔「分かりました......どうぞ......上がいいですか? 後がいいですか?」

 

提督「上に......」

 

鳳翔「わかりました......。いきますよ......んっ......」ピク

 

 

鳳翔「大佐......見えますか?今から......ここに......貴方を......」

 

提督「鳳翔、来てくれ」

 

鳳翔「はい......!」

 

鳳翔「んんん.........あっ、あああああっ」

 

鳳翔「あ......はぁ......はぁ。お腹の......中が......」

 

提督「む......くっ......」

 

鳳翔「あっ......あっ......あああ。大佐、もっと......もっと......!」

 

鳳翔「うっ......ああああああっ。く......んんんんん! ふぁああああ!」

 

提督「鳳翔......っ。もう限界が......」

 

鳳翔「はぁ......あっ......はぁ、わたし......も、で......す。おね......がい一緒に......!」

 

提督「......いくぞっ」

 

鳳翔「っっ、ああああああああああああああああ」

 

提督「うっ、く......」

 

 

鳳翔「あ、熱い......すご......い......あ......ああ」

 

鳳翔「大佐......愛しています......」

 

提督「ああ。分かっている」

 

 

――数十分後

 

提督「鳳翔......」

 

鳳翔「ん......なんですか?」

 

提督「まだこのままなのか?」

 

鳳翔「ん、もうちょっと......貴方を感じて......いたいから」

 

提督「......そうか」

 

鳳翔「もう一回は流石に無理でも......この状態なら......暫く問題なさそう、ですね」

 

提督「お前が気のすむままするといい」

 

鳳翔「ありがとうございます......」

 

鳳翔「大佐......」

 

提督「ん?」

 

鳳翔「もうすぐ、朝ですね」

 

提督「そうだな」

 

鳳翔「朝ご飯は......私、でいいですか?」

 

提督「どちらも所望させてもらおう」




すいません。
眠気には勝てませんでした。
そして長くてすいません。
つい力が入ってしまいました。
下品ですいm


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第14話 「お誘い」

今日は赤城と食堂でご飯です。
相変わらずご飯の量に対してオカズが少ないです。
そんな赤城を見ながら提督は、ふと、こんな事を言ってきました。


赤城「おかわりです!」

 

提督「お前それだけご飯だけ食べて、よく飽きないな」

 

赤城「ご飯はオカズなんですよ」

 

提督「味は変わらないだろ」

 

赤城「ほら、塩」

 

提督「......塩味のご飯をおかずに普通のご飯を......?」

 

赤城「そうです」

 

提督「......」

 

赤城「大佐?」

 

提督「赤城」

 

赤城「はい?」

 

提督「今度一緒に食事でもどうだ?」

 

赤城「えっ?」

 

食堂のイス「ガタッガタッ」

 

赤城「た、大佐......そ、それってデ、デートの......」

 

提督「なんだかお前を見ていたら不憫に思えてな。一度美味しい食事を食べてもらいたいとつい思ってしまった」

 

赤城「何ですかその理由!?」ガーン

 

提督「嫌か?」

 

赤城「行きます! ......ついで大佐もた、食べちゃったりして......」ポ

 

食堂の視線「ギロッ」

 

提督「そういう事を安易に言うな」

 

 

――数日後、提督執務室

 

赤城「お食事って提督が作ってくださるんですか」

 

提督「料理が好きでな」

 

赤城(執務室に食卓とキッチンがある......)

 

提督「というわけで、今日は俺の好物をこしらえてみた」コト

 

食卓『海老ピラフ:2升 ツナサラダ:5㎏ わかめスープ1ℓ』

 

赤城「わぁ♪」

 

提督「シンプルで悪いな」

 

赤城「いいえ! わたし、こういう方が好きですよ♪」

 

提督「そうか。良かった」(量はこれでよかったみたいだ)

 

 

提督「それでは頂こうか」

 

赤城「はい♪ 頂きます」

 

ぱくぱく

 

赤城「んー、美味しい♪」

 

提督「そうか?」

 

赤城「ええ。とっても」

 

赤城「このピラフの海老、予想以上にプリッとしてて」

 

提督「ああ、食材はなるべく新鮮な物を用意してこしらえたからな」

 

赤城「え、そうなんですか?」

 

提督「ああ。今日料理に使った食材の殆どはお店ではなく、市場から直接仕入れたものだ」

 

赤城「う......ごめんなさい」

 

提督「どうした急に」

 

赤城「大佐に面倒を掛けちゃって......」

 

提督「気にするな。俺は料理が好きだと言ったろう。結構楽しかったぞ。それに」

 

赤城「?」

 

提督「お前とこうして二人で食事をするのも久しぶりだしな」

 

赤城「あ......」

 

提督「昔を思い出したか?」

 

赤城「ええ......」

 

提督「あの時は戦力が心許なかったからお前に苦労を掛けてしまったな」

 

赤城「そんな! わたしは楽しかったですよ?」

 

提督「ん?」

 

赤城「確かに戦力が少なくて苦労したかもしれませんけど、だけど......」

 

提督「なんだ?」

 

赤城「人が少なかった分、大佐との時間は今よりありましたから......」

 

提督「ああ......」

 

赤城「大佐」ニギ

 

提督「ん」

 

赤城「偶にはわたしの相手もして下さいよ」

 

提督「そうだな。機会は増やせるようにする」

 

赤城「ホントですか?」ジッ

 

提督「約束をするか?」

 

赤城「ん、いいです。大佐のこと信じてますから」

 

提督「部下に信用されること程、指揮官としてはこれほど有り難い事は無いな」

 

赤城「信用じゃ、ありません。信頼です。それと」

 

提督「ん?」

 

赤城「“部下”なんて、言わないで下さいよ.....」

 

提督「む」

 

赤城「それは、大佐からしたら一番付き合いが古い部下の一人かもしれませんけど......」ムス

 

提督「赤城......」

 

赤城「もう解ってますよね? じゃぁ、ちょっと大佐の膝に座りたいです」

 

提督「膝に? ああ......」

 

赤城「そ、その......久しぶりに抱きながら食べさせ......」カァ

 

提督「そういえばお前は空母の中で一番甘えん坊だったな」

 

赤城「そ、そうでうですよ。皆には内緒ですけど」

 

提督「そうだったな。俺の前だけでは、だったな」

 

赤城「うん......それで、そっち、行っていいですか?」

 

提督「おいで」

 

赤城「大佐ぁ♪」パァ

 

 

ギシ

 

赤城「重く、ないですか? その、久しぶりだから......」

 

提督「いや。意外と言えば失礼だが、空母の奴は見た目より軽い奴が多いからな」

 

赤城「わ、私そんなに重く見えてました?」

 

提督「見た目からは特に。ただ、よくたb」

 

赤城「そ、それは分ってます。それにわたし太らないですし」

 

提督「悪い。少しからかってしまった」

 

赤城「もう、以前の大佐からは考えられないです」

 

提督「機嫌を損ねたか?」

 

赤城「ん......いいえ。もっと......構って、いじめて......欲し......かったり」

 

スル

 

提督「下着、見えてるぞ」

 

赤城「見せているんですけど?」

 

提督「......今はダメだ」

 

赤城「今晩はいいんですか?」

 

提督「......お前がいいならな」

 

赤城「っ! ほ、本当に?」ジッ

 

提督「待たせてしまっていたか......?」

 

赤城「そうですよ! でも、嬉しい......やっと......」ジワ

 

提督「む、泣かせてしまうほどか......すまん」

 

赤城「ううん、いいんです。やっと、思いを遂げる事ができるのなら」

 

提督「......ありがとう」

 

赤城「それは......もう、いいです」クス

 

提督「そうか」

 

赤城「大佐」

 

提督「ん?」

 

赤城「その......本番の前に、キス......欲しいです」

 

提督「ああ」

 

チュ

 




次回R-18(確定)です。

よろしくおお願いしマース!(KONGO風)


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第15話 「捕鯨」

提督は釣りをしていた。
釣りをしていると暇な艦娘がいつの間にか提督の周りに集まるようになっていた。
その日いたのは五十鈴と文月。

久しぶりに何か釣れそうな気がする、そんな予感がした日の事。


文月「今日も釣れないねー」

 

提督「......そうだな」

 

五十鈴「よく飽きないわね」

 

提督「釣りをすること自体に意味があるんだ。釣れたら幸運だと思うくらいでいい」

 

五十鈴「何それ......」

 

文月「大佐、おじいちゃんみたーい」

 

提督「......最近よく言われる」

 

五十鈴「あ、傷ついた? 慰めてあげてもいいわよ♪」

 

文月「あっ、だめ。それ文月がするの!」

 

提督「二人とも暇だったら他の事をしてていいんだぞ?」

 

五十鈴・文月「いやよ」「いや!」

 

提督「そうか......」(何がしたいんだ?)

 

ちゃぷ......くいっ

 

文月「あ! 大佐、引いてる!」グイ

 

提督「ん?」

 

五十鈴「え? 本当だ! 大佐、引いて引いて!」グイグイ

 

提督「分かった。分かったからお前たちは服を引っ張るのをやめろ。引き難い」

 

ググ......

 

提督「これはっ.....デカいな? なかなか......うん?」

 

ぶくぶく......ちゃぷん

 

大鯨「......」

 

 

提督「......」

 

五十鈴「え?」

 

文月「魚......じゃ、ない......」

 

大鯨「こ、こんにちわ......」

 

提督「......やあ」

 

大鯨「あ、あの......私、わたし......」

 

五十鈴(え? 艦娘?)

 

文月(漂流してきた駆逐艦?)

 

提督「取り敢えず上がらないか? 話は基地で聞く」

 

 

~鎮守府、提督執務室

 

提督「潜水母艦?」

 

あきつ「それは変わった艦でありますね」

 

明石「珍しいですね」

 

五十鈴「貴女達に言われたくはないわよ。というか、なに何食わぬ顔でいきなりいるのよ」

 

文月「オンリーワンがまた増えたぁ!」

 

提督「待て、まだ此処に所属すると決まったわけじゃない」

 

大鯨「え?」

 

提督「ん?」

 

大鯨「お、置いてくれないんですか......?」

 

五十鈴「えっ、元々此処に来る筈だったの?」

 

大鯨「さ、さあ......?」

 

明石「は?」

 

あきつ「一体彼女は何を言いたいのでありましょう?」

 

文月「うーん......謎だね!」

 

提督「お前たち、少し黙っていてくれるか。状況がまだ把握できていないんだ」

 

4人「......」

 

提督「ん、君は大鯨、だったね?」

 

大鯨「はい」

 

提督「艦娘か?」

 

大鯨「そうだと、思います」

 

提督「さっきからいろいろと曖昧な答え方だが、何故かな?」

 

大鯨「め、目覚めたら海を漂ってて......め、目の前に港が見えたんです......」

 

提督「ふむ......」

 

五十鈴「あっ」

 

提督「ん? どうした五十鈴」

 

五十鈴「大佐、これ......」

 

提督「今朝届いていた海難事故の軍報か。これはもう確認.....ん」

 

文月「どうしたの?」

 

明石「大佐?」

 

あきつ「き、気になるであります!」

 

 

○海軍、海難事故知らせ

 

『○月○日 深夜未明、南方海域珊瑚諸島沖において任務遂行中だった海軍の輸送艦隊が深海棲艦の奇襲に遭い、輸送艦に小破の被害を受ける』

 

 

提督「輸送艦小破......」

 

五十鈴「多分、その時にこの子だけ流れちゃったんじゃない? しかも目覚める前に」

 

提督「......一応、確認をしてみるか」

 

提督「大鯨」

 

大鯨「は、はい」

 

提督「君の身元が判明するまで、一時此処で身柄を預かる事にする。構わないか?」

 

大鯨「あ......はい! それは願ってもありません! こちらこそお願いします、お父さん!」

 

ピシ

 

提督「なに?」

 

五十鈴「お父さん?」

 

文月「え?」

 

明石「大佐が?」

 

あきつ「なんと......」

 

五十鈴「大佐.....ちょっと訊きたい事があるんだけど」

 

提督「何だその眼は、俺には全く心当たりがないぞ」

 

文月「こ、心当たりとか言ってる時点で怪しいよ!」

 

明石「え、え? そ、そうなの? やっぱりそうなの?」

 

あきつ「こ、これは一大事でありあます!」

 

大鯨「お、お父さんを苛めないで下さい!」

 

提督「大鯨やめろ。火に油を注ぐな」

 

大鯨「いやです! 大佐は大鯨のお父さんです!」ギュ

 

五十鈴「大佐ぁ?」ギロ

 

文月「ふ、文月たち以外に子供なんて......ダメ!」

 

明石「これは詳細な調査が必要ね」

 

あきつ「し、衝撃の事実発覚であります! 皆に知らせるであります!」

 

提督「待て、やめろ」

 

 

その後、本部に確認して判明したところによると、大鯨のこの発言は事故当時に受けた衝撃が原因である可能性が濃厚との事だった。

提督と艦娘との初コミュニケーションによる心情契約が誤作動を起こし、所謂“刷り込み”に変化してしまったらしい。

 

「面倒だからそっちで面倒見ろ」という中将の鶴の一声で大鯨は提督の鎮守府所属になった。

 

あまりにも乱暴なこの中将の決定に、提督はその日から胃に痛みを感じるようになったという。




月曜が休みだと艦これが捗って困ります。

レベリングしてたら大鯨が出ました。
お蔭で一瞬でネタが思いついた為、赤城さんとのアレなお話は一時保留にする事にしました。

急な変更申し訳ないですっ。


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第16話 「情浴」R-15

提督は風呂に入っていた。
一日を締めくくるこの最後の行動は、提督にとって数少ない癒しでもあった。
しかしその日に限っての入浴は、これから赤城との約束を果たす為の前準備の意味合いもあったので、普段と違ってその心持は少々神妙だった。
そんな折、

*明らかな性的描写あり


ガラッ

 

提督「?」

 

赤城「来ちゃいました」

 

提督「おい......」

 

赤城「お背中流しますね」

 

提督「......頼む」

 

赤城「はい♪ それでは腕から......」

 

 

ムニュウ

 

提督「......」

 

赤城「大佐、気持ち良いですか?」ゴシゴシ

 

提督「ああ......」

 

赤城「良かった♪ 今度はこっちの腕ですね......」

 

赤城は、洗らい易い位置に体を動かす際にワザと提督の背中に胸を擦り付けた。

 

くにゅ......

 

赤城「んっ......」

 

赤城「はぁ......お待たせしました......次はこっちですね。ん......」

 

ごしごし、ムニュムニュ、ごしごし、くにゅくにゅ......

 

赤城「んん......ふぅ......あ......ぅ」

 

 

赤城「ふふ......こんなにしちゃって......触ってもいいですか?」

 

提督「ああ......」

 

ギュッ

 

赤城「あっ、今ピクンって動きましたね」

 

提督「まぁ、後ろからそんな風に触られたらこれくらいの反応はするだろう」

 

赤城「ふふ、なんか嬉しいですね。ここが気持ち良いんですよね?」

 

提督「っく......」

 

赤城「へぇ......ここはこんなに硬いのにここは......。ふふ、なんか可愛い♪」

 

 

提督「......っふ、赤城、もう......いい」

 

赤城「あ、出そうですか? 出しても......」

 

提督「いや、その前にお前もしてやりたい」

 

赤城「え? きゃっ......」

 

赤城「ん、いきなりそこからですか......?」

 

提督「お前だって俺に同じ事をしただろう?」

 

赤城「それはそうですけど......やっぱり恥ずかしいものですね」

 

赤城「はい。どうぞ、ご覧下さい......」

 

提督「触っていいか?」

 

赤城「ここを見て下さい......拒んでる様に見えます......?」

 

 

提督「......そうだな」

 

ちゅく

 

赤城「あ......」

 

提督「これは凄いな、熱い......」

 

赤城「あっ、あっ......大佐、それ......あああああ」

 

赤城「大佐......ここも、お願いします......」

 

提督「ああ」

 

赤城「 んっ......いい......っです、大佐っぁ」

 

提督「これはどうだ?」

 

赤城「くうぅぅぅぅぅ!? 大佐っ、そ......れ......はぁぁあん」ビクッ

 

 

赤城「はぁ......はぁ......はぁ......。た、大佐......もう......」

 

赤城「お願いです......最後はこれで......」

 

提督「分かった......。いくぞ」

 

赤城「っつ、くぅ! あっ......はぁ......あああああんっ、んんん......!」

 

提督「......ふっ」

 

赤城「いっ、くぅ......いい......あああああああっ」

 

提督「っく、赤城......」

 

赤城「だっ、だめ......です、大佐! わ、わたひ......も、もう......ああああっ」

 

提督「赤城っ」

 

赤城「あああああああああああああ」

 

 

赤城「あ......はぁ......はぁ......大佐......ちゅ」

 

提督「ん......ちゅる......」

 

赤城「っぷはぁ......はぁ......大佐......良かったです......か?」

 

提督「お前が思っている通りだ......」

 

赤城「はぁ......ふぅ......ふふ、良かった♪」

 

ギュッ

 

赤城「でも、まだですよ?」

 

提督「分かっている。だが、まずは一旦体を洗おう」

 

赤城「また同じ事になりそうですけど......」

 

提督「その時はその時......にならないように俺が何とかする」

 

赤城「ふふ、頼りにしてますね大佐。......愛してます、ちゅ」

 

提督「ああ、俺もだ。そして、改めてこれからもよろしく頼む」




エロは好きですが、書くのは実は苦手です。
表現力もそうですし、なにより時間が掛かってしまうので。
投降が遅いのは大体仕事かこれのせいです、と言い訳する今日この頃でした。


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第17話 「娘たち」

大鯨の一言が波乱を呼び、鎮守府でひと騒動起きているようです。
その騒動のまっただ中にいるのは勿論、提督。
直ぐそばには嵐を呼ぶ原因の大鯨ます。
提督はこの難局を乗り切れるのか?


大鯨「文月さん離れてください! 大佐は私のお父さんなんです!」

 

文月「何でそうなるの! 大佐が大鯨のお父さんなら当然文月のお父さんよ!」

 

不知火「大佐、これはどういう事ですか? 不知火という娘がいながら......」

 

霰「ズルい......。霰も娘にしてほしい」

 

龍驤「ちょい待ち! 娘にするならうちみたいな見た目は子供やけど中身はぱっつんぱっつんの方がええで!」

 

瑞鳳「何がぱっつんぱっつんよ!? 分かるわけないじゃない! 大佐、娘にするなら瑞鳳にして!」

 

 

日向「......駆逐艦に混じって龍驤まで騒いでるな」

 

利根「うむ、何やらあやつはここ最近フっ切れたらしいな」

 

鳥海「瑞鳳ちゃんもいますね......」

 

矢矧「あの二人に限っては駆逐艦に混じってても違和感がないというのが、何とも言えないもの悲しさを感じさせるわね」

 

夕張「それ、本人に絶対言っちゃだめよ?」

 

 

ギャーギャー

 

提督「......」ゲッソリ

 

長門「なんだ、なんだ? ついにこの鎮守府にもベビーブーム到来か?」ニヤニヤ

 

提督「長門......」

 

長門「おっとそんな目で見つめられても困る。残念ながらこの娘らは私の子ではないからな」

 

扶桑「じゃ、じゃあ私の子という事で......」

 

山城「姉様何を!?」

 

金剛「ちょ、ちょっと大佐ァ! これはどういうコト!?」

 

衣笠「そ、そうです! これは詳細な説明が必要です!」

 

提督「説明も何も俺は何もしt」

 

大鯨「お父さん! 大鯨を一人ぼっちにしないで下さい!」ダキッ

 

天龍「んな!?」

 

龍田「あらぁ?」ニコォ

 

提督(マズイ、これは収拾がつかん)

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

ハチ「大佐、こっちこっち」ヒソ

 

神通「大佐っ」ヒソ

 

提督「む......」

 

コソコソ

 

 

大鯨「あっ! お父さんがいない!」

 

!?

 

霧島「何ですって!?」

 

霞「探すのよ!」

 

島風「島風、いっきまーす!」

 

蒼龍「面白そう♪ わたしも探す!」

 

ワーワー

 

 

~潜水艦専用整備ドッグ

 

ハチ「危ないところだったわね」

 

提督「すまない。助かった」

 

神通「お疲れ様です。大佐」

 

イムヤ「大丈夫? 疲れてない?」

 

提督「ああ、大丈夫だ」

 

イク「皆、凄い迫力だったの。ちょっと引いたの」

 

ゴーヤ「ま、仕方ないと言えば仕方ないけどね」

 

提督「俺自身に問題があればまだ諦めも着くが、今回は完全に不足の事態だ」

 

まるゆ「お父さんの一言だけで......大佐、凄い人気ですね」

 

提督「......褒められてこれほど嬉しくないのは初めてだ」

 

神通「それで、これからどうします?」

 

提督「ほとぼりが冷めるまで何処かに身を隠したいところだが......」

 

イク「なら、ここに暫くここに居るといいの。ここのドッグって潜水艦しか使えないから意外と人来ないの」

 

提督「そうなのか?」

 

ゴーヤ「本当よ。例外は神通さんくらい」

 

提督「そういえば、この中で潜水艦じゃないのは神通だけだな。一体どうして」

 

神通「それは......実は私、よくイムヤさんに水泳の練習を見てもらってまして」

 

提督「水泳の?」

 

イムヤ「そうよ。練習の後、よくここでお話しやミーティングをしてたの」

 

提督「神通、お前泳げなかったのか」

 

神通「完全に泳げないというわけではありませんでしたが、苦手でした」

 

まるゆ「神通さんは自分が水泳の選手に選ばれる可能性も考えて、まるゆ達にコーチをお願いしてきたんです」

 

提督「なるほどな......」

 

神通「ふふ、おかげで今ではすっかり泳げるようになりました。もう大佐に堂々と水着を見せることができます」

 

提督「泳ぐ姿じゃなくて、水着か」

 

神通「あ......わ、私ったら」カァ

 

ハチ「照れることはありませんよ。神通さんの水着とっても魅力的ですから」

 

イムヤ「そうね。神通さんって意外と着やsもご」

 

神通「も、もういいですから。やめてっ」アセ

 

提督「神通」

 

神通「は、はいっ」

 

提督「今度一緒に海に行くか?」

 

神通「え......」

 

イムヤ「わっ。デ、デートのお誘い?」

 

提督「まぁそう思えなくもないが......どうだ?」

 

神通「あ......い、行きます! ありがとうございます、大佐!」パァ

 

ゴーヤ「いいなぁ......」

 

ハチ「ゴーヤ、空気を読むのも大切ですよ?」

 

神通「......」

 

神通「大佐?」

 

提督「ん?」

 

神通「よかったら潜水艦の子たちも......」

 

潜水艦ズ「!」

 

提督「勿論だ」




最近神通さんを書いてなかったので久しぶりに出してみました。
いや、まだ他にもまともに出番が与えれてない子たくさんいますが。

話自体はまだまだ続けるつもりなので、ゆっくりやっていこうと思います。


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第18話 「おつかい」

ある日提督は大鯨にある命令を聞いてもらう為に苦労をしていました。
しかし、大鯨は何故か機嫌を損ねてなかなかいう事を聞いてくれない様子です。
提督は何を命令しているのでしょう?


大鯨「嫌です!」

 

イムヤ「大鯨、大佐の言う事はちゃんと聞かないとダメよ?」

 

ハチ「そうですよ。少しだけ離れるだけじゃないですか」

 

大鯨「でも、でも......こんなに長い遠征、お父さんと離ればなれになるなんて......」

 

ゴーヤ「確かに少し長いけど、ほんのちょーっと我慢するだけよ? ちゃんと我慢すれば帰って来た時、大佐が凄く褒めてくれるわよ?」

 

大鯨「う......」

 

イク「ほら、涙を拭くの。大鯨だって、大佐に迷惑掛けたくないでしょ?」

 

大鯨「うん......」ポツリ

 

まるゆ「なら、まるゆ達と一緒に行きましょう。大丈夫です。遠征に言ってる間はまるゆ達が寂しい思いなんてさせませんから!」

 

大鯨「まるゆさん......」

 

イムヤ「ね、行こ?」

 

大鯨「.......分りました。行きます」

 

イク「大鯨、偉いの!」

 

ハチ「信じてましたよ」

 

ゴーヤ「それじゃ、大佐に行ってきますの挨拶をしに行こう!」

 

大鯨「......」グシグシ

 

まるゆ「大丈夫ですか?」

 

大鯨「......うんっ」

 

 

大鯨「大佐、大鯨、行ってきます!」

 

提督「そうか。よく決断してくれたな。偉いぞ」ポン

 

大鯨「ん......♪」

 

イク「......」(ちょーっと羨ましいかなぁ)

 

提督「大鯨、頑張れるな?」

 

大鯨「......はい!」キリッ

 

提督「そうか、信じてるぞ。イムヤ」

 

イムヤ「はいっ」

 

提督「少し長くなるが、大鯨の事を頼む」

 

イムヤ「任せて! ね? 皆!」

 

ハチ「全く問題ありません。お任せください」

 

まるゆ「まるゆ、こんなに燃えるのは生まれて初めてです!」

 

ゴーヤ「期待しててくださいでち!」

 

イク「イク達に任せるの!」

 

提督「よし......。それではこれより遠征を開始せよ。皆、頼むぞ」

 

遠征メンバー「了解!」

 

 

提督「......」

 

木曽「......巣立ちの儀のつもりか?」

 

提督「半分はそうだ」

 

木曽「ま、確かにこのまま『お父さん』でいるわけにもいかないしな」ニヤ

 

提督「......お前がそれを言うと似合わないな」

 

木曽「え?」

 

提督「お前の場合はやっぱり『親父』と呼ぶ方が似合ってる気がするな」

 

木曽「......そ、そんなに俺は男っぽいか......?」

 

提督「今の口調を自分で聞いてどう思う?」

 

木曽「う......」

 

木曽「あ、あのよ......いや、さ?」

 

提督「無理するな。なんだ?」

 

木曽「や、やっぱり大佐は、お、男っぽい性格は嫌い......か?」

 

提督「お前はお前だ、もっと自分に自信を持て。そのままの方がお前らしくて魅力的だ」

 

木曽「み、魅力的って......」カァ

 

提督「木曽」

 

木曽「な、なんだ?」

 

提督「敢えて言わせてもらうが、可愛いぞ?」

 

木曽「なっ」カァァ

 

提督「今のお前は女らしいな。木曽、やはりそんなに気にする必要はない。多少男勝りでも、お前は間違いなく乙女だ」

 

木曽「お、乙女って......」カァ

 

提督「すまん。あまりにもズケズケと言い過ぎたか」

 

木曽「あ、いや。大丈夫だ......うん、大丈夫」

 

提督「ん?」

 

木曽「あ、今のっ。お、女らしい言い方だっただろ?」

 

提督「......ふっ、そうだな」

 

 

武蔵「むむ......大佐の奴、とんだ女たらしではないか」

 

彼女「......大鯨って」

 

武蔵「ん?」

 

彼女「大げ......うちの龍鳳もあんな感じだったかしら」

 

武蔵「いや、私達の所の龍鳳はあんなに甘えん坊じゃないぞ。もっと真面目で頼りになる奴だ。私の事もお姉様、と呼んで本当にかわ――」

 

彼女「そう......よね(無視)いや、なんかここにいると皆、あいつに甘い気がしちゃってね。いや、あいつが甘いのかな?」

 

武蔵「む......少なくともお前は普段より気が緩んでる気がするぞ」

 

彼女「そう?」

 

武蔵「ああ」

 

彼女「仕方ない、認めましょうっ」クス

 

武蔵「......なぁ」

 

彼女「ん?」

 

武蔵「......お前は、やっぱりあいつが好きなのか?」

 

彼女「ま、一目惚れだからね」

 

武蔵「そ、そうか......」

 

彼女「武蔵」

 

武蔵「ん?」ムス

 

彼女「あなたと一緒よ」ニコ

 

武蔵「あ......。ず、ズルいぞ」

 

彼女「そうね。一目惚れってズルいわよね......」

 

武蔵「......そうかもな。仕方ない」

 

彼女「うん、仕方ないわね。ふふ」

 

武蔵「全く、いつまで経っても適わないな」

 

彼女「ま、一応提督だからね」




初めてこの遠征任務を見たときに何故か嫌な予感がしてずっと放置していました。
そして最近になってようやくこの遠征が達成可能になりました。

結構長い時間の遠征ですが、どれだけ資材を運んできてくれるのか楽しみです。


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第19話 「予測外」

綾波はつい最近、上位改造を受けて改二となりました。
艦娘としての能力は飛躍的に上がった筈なのに、何故か彼女は元気がありません。
それどころかかなり落ち込んでいます。
それはどこかで見たことがある光景でした。


綾波「な、なんで......」ガクッ

 

龍驤「あややん、あんたは悪くない。悪いのはこの世の中なんや」ポン

 

響「元気出して」

 

綾波「だって、改二ですよ!? 期待しますよね、普通!」

 

響「綾な......あややん落ち着いて。ここにいる人は全員それ経験してるから」

 

龍驤「うんうん。誰でも最初はそうやって期待するもんや。あややんの気持ちは痛い程よくわかるで」

 

綾波「皆ぁ......」グス

 

龍驤「取り敢えず、涙拭きぃな。はい」

 

綾波「う......ぐす、ありが......とう」

 

響「飴食べる?」

 

龍驤「世の中っちゅうのはホンマに残酷なやっちゃな......」

 

提督「残酷なのは俺の仕事を邪魔し続けてるお前たちだ」

 

響「大佐、おはよう」

 

提督「おはよう。朝から元気だな。秘書艦なんだから仕事を手伝ってもいいんだぞ?」

 

響「今はダメ......あややんを慰めないと......」プイ

 

提督「......仕事をしたくないだけじゃないのか?」

 

響「......あややん大丈夫?」

 

提督・龍驤(逃げたな)

 

綾波(私をダシに使わないで!)

 

提督「取り敢えず、何をそんなに落ち込んでいるんだ」

 

綾波「そ、それは......」カァ

 

龍驤「大佐」

 

提督「なんだ」

 

龍驤「うちと響ん、上位改造受けたやろ?」

 

提督「ああ、そうだな」

 

響「綾波も受けたんだよ?」

 

提督「知っている。許可を出したのは俺だからな」

 

龍驤「なら、そういう事や」

 

提督「どういう事だ」

 

響「......大佐の鈍感」

 

提督「む......」

 

響「......」ジツ

 

提督「......胸か?」

 

綾波「っ!」ブァッ

 

龍驤「あややん!!」

 

響「あややん!」

 

綾波「大佐にまで、大佐にまで判るほど変わってないなんて......!」メソメソ

 

龍驤「気にすることは無い! 大佐は、ロリもいけるで!」

 

提督「おい」

 

響「大佐、望月との約束」ズイ

 

提督「それは......」

 

響「や く そ く」ズズイ

 

提督「まぁ......それはそれとして、改造に豊胸を期待すること自体がそもそもおかしい事なんだぞ?」

 

龍驤「なんや! 夢を見るのもあかん、ちゅぅんか!?」

 

響「大佐の鬼。早くロリコン認めて」クイクイ

 

提督「響、お前は少し黙っててくれ。頭痛がしてきた」

 

綾波「大佐......大佐はおっきなお胸じゃないと駄目なですかぁ......?」グス

 

提督「綾波......」

 

響(あややん、ナイスタイミング)b

 

龍驤(ようやったでぇ、あややん!)

 

綾波「綾波の、綾波のちっちゃなお胸じゃダメですか......?」

 

提督「俺は......以前、胸に大きさは関係ないと言った」

 

綾波「じゃぁ......!」パァ

 

龍驤(お、生きる希望が)

 

提督「だが、やはり見た目だけでも子供なn」

 

グイ

 

響「約束......」ジロ

 

提督「......見た目が幼くても、それはそれで愛らしいから有り、かもな......」

 

綾波「大佐ぁ!!」ダキッ

 

提督「っと、いきなりは......」

 

龍驤「響ん、うちらもいくで!」

 

響「了解。響ん、これより突貫する」

 

龍驤・響「大佐!」ダキッ

 

提督「ぐっ......分かった。分かったから仕事を......」

 

チョンチョン

 

提督「ん?」

 

Z1「助けてあげようか?」

 

Z3「仕事も手伝ってあげてもいいわよ?」

 

提督「......何が望みだ」(嫌な予感しかしない)

 

Z1「ロリコンに」

 

Z3「なりなさい」

 

提督「......」(胃が......)ギリギリ

 

その後、提督は上位改造を受けて改二になった艦のみを、恋愛の対象にする条件で交渉を試みたが、珍しく不機嫌な叢雲と初春の古参二人に却下の一言で一蹴された。

 

結局、以前望月との約束で書かされた幼女愛好誓約書が依然として強い力を発揮し、提督は自他ともに認める幼女も愛好する提督となった。

 

ただ、最後の悪あがきなのか、提督は誓約を認める際、自分を決してロリコンと呼ばない事という条件を付けたた。

子供じみた抵抗にも思えるが、これはこれで彼の男として、提督としての矜持だったのかもしれない。




なんか書いてて提督が可哀想になってきました。
いや、筆者は駆逐艦も龍驤も好きですが。


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第20話 「勘違い」

新しい装備「53cm艦首魚雷」を装備したまるゆの戦闘力は飛躍的に向上し、最早そこに「潜水艇」の姿はありあませんでした。
お陰で潜水艦隊の戦果も上がり、その日も由良から受け取った報告書の内容は上々でした。


由良「大佐、潜水艦隊の戦果報告です」

 

提督「ん、ふむ......まるゆが著しいな」

 

由良「そうですね。単艦で駆逐艦を2隻も撃破してますから」

 

提督「ああ。まるゆも自分の戦果に驚いていたな」

 

由良「やっぱり艦首魚雷の性能凄いですね」

 

提督「別に装備のお陰だけじゃない。まるゆは今までずっと頑張ってきたからな。それまでに培った経験も活きているんだろう」

 

由良「そうでした。わたしったら装備の性能だけ褒めて、まるゆちゃんの事を疎かに......」

 

提督「誰だって同じ反応をするだろう。まるゆの努力をちゃんと認めさえすればいい」

 

由良「はい。気をつけます」

 

提督「よし、それじゃあ食事にするか。由良、悪いが持ってきてくれるか? 今日はここで書類を確認しながら摂りたい」

 

由良「分かりました。ちょっと待ってて下さいね」

 

バタン

 

 

コンコン

 

提督「ん?」(早い。由良じゃないな)

 

 

ガチャ

 

鈴谷「失礼するじゃん、大佐ー」

 

提督「入室の許可を待て」

 

鈴谷「えー、いーじゃーん。大佐とわたしの仲じゃん?」

 

提督「その前に上司と部下だ。規律を守れ」

 

鈴谷「......はいはい。分かりましたよー」ドサッ

 

提督「......おい」

 

鈴谷「ん、なに?」

 

提督「胡座をかくな」

 

鈴谷「あ、パンツ? 別にいいじゃん減るもんじゃないし」

 

提督「そういう問題じゃない。節度を......」

 

鈴谷「じゃ、規律を緩くしてー」

 

提督「子供みたいなこと言うんじゃない」

 

鈴谷「鈴谷子供だしー、女子高生(風)だしー、言っても別に悪くないじゃん」ピラピラ

 

提督「捲るな」

 

鈴谷「じゃ、ノーパン」

 

 

由良「痴女か!!」

 

バン

 

 

鈴谷「あ」

 

由良「鈴谷、あなたねぇ」ワナワナ

 

鈴谷「あー、思ったより早く戻ってきちゃったかぁ。大佐ーまたねー」フリフリ

 

由良「こら、待ちなさい!」

 

鈴谷「大佐は緑色が好きなんだよ?」ヒソ

 

由良「は?」

 

鈴谷「由良っち今何色のパンツ履いてる?」ヒソ

 

由良「なっ」ボッ

 

鈴谷「にひひ。頑張ってねぇー」

 

由良「あ、ちょっと」

 

バタン

 

 

由良「……」

 

提督「どうした? 鈴谷が何か言ったか?」

 

由良「え? ひぃや、なっ何も!?」

 

提督「何を動揺している......」

 

由良「な、何でもないです。それよりお食事持ってきました」

 

提督「ん、ああ。ありがとう」

 

 

提督「......」モグモグ

 

由良「......」チラッ

 

提督「......」モグモグ

 

由良「......」チラチラッ

 

提督「......なあ」

 

由良「は、はい?」

 

提督「俺に何か言いたい事でもあるのか?」

 

由良「あ、いえ......」

 

提督「本当にそうか?」

 

由良「う......あの」

 

提督「うん?」

 

由良「大佐って緑色好き、ですか?」

 

提督「ん? ああ、好きだが」(緑......緑黄色、キャベツの事か?)

 

由良「あ、青とどっちが好きです?」

 

提督「青? ああ、比較するなら緑だな」(焼き茄子もいいが、こう暑いとさっぱりして冷たいキャベツだな)

 

由良「そ、そうなんだ」(よしっ)

 

由良「た、大佐。という事は鈴谷よりわたしの方がいいって事ですよね」

 

提督「由良? まぁ......そうだな。お前だな」(落ち着いてゆっくり食事できるしな)

 

由良「あ......そ、そうですか」ポ

 

提督「何故照れる」

 

由良「い、いえ」

 

提督「? ふぅ......ごちそうさま」

 

由良(食べ終わった。やるなら今ね)

 

由良「ん......」

 

提督「ずず......」

 

由良(お茶を飲んでて気付いてない!)ガーン

 

由良「た、大佐」(は、恥ずかしいけどもう少し足を......)ググ

 

提督「ん?」

 

由良(今度は書類見てる!)ガガーン

 

由良「きょ、今日は良い天気ですね」(もうこれじゃ丸見えじゃない!)ガバ

 

提督「そうだな。相変わらず暑いが、この景色は嫌いじゃない」

 

由良(景色見てる!?)グワーン

 

由良「う、うぅ......」プルプル

 

由良(も、もうこうなったら強引に注意を引くしか)

 

提督「ん?」

 

由良「大佐!」ドン

 

提督「っ、どうした急に」

 

由良(か、顔に注意が......!)ジワァ

 

提督「おい、お前なんで泣いて......」

 

由良「パ......」

 

提督「なに?」

 

由良「パンツ......」

 

提督「は?」

 

由良「パンツ見てくださぁぁぁい。うわーん」ブワァ

 

提督「由良、大丈夫か? 落ち着け」

 

由良「うええぇぇぇぇんん......わたし痴女だぁぁぁぁ」

 

提督「......」(一体何が......)

 

 

青葉「こ、これは大スクープです! た、大佐が由良さんにセクハラ!?」

 

鈴谷「あっ、それ違うから」ピラ

 

青葉「ひゃぁ!? な、何するんですか!?」

 

鈴谷「お、青葉っちも緑かー」

 

青葉「え?」

 

鈴谷「ねぇいいこと教えてあげようか?」ニヤ




結局この後に鈴屋のイタズラはバレ、提督にもう何度目かのお説教をくらいました。
相変わらず反省してない顔をしてる鈴谷は、今度はどんな悪戯で提督をからかい、あわよくば......なんて考えるのでした。


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第21話 「快男児」

また違う鎮守府の提督の話です。
今回は艦娘も多く出てきます。

敵が襲ってきたようです。


~とある鎮守府

 

「敵機来襲! 敵機来襲!」

 

丁督「おいでなすったか! 大淀! 敵は何だ?」

 

大淀「深海棲艦、これは......レ級です! レ級率いる深海棲艦隊です!」

 

丁督「そうか、危険レベルは赤信号だな! ははっ!」

 

長門「何で嬉しそうな顔をする」

 

丁督「当たり前だろ! ここでそいつを叩けばまた一歩祖国の平和に繋がるんだ!」

 

金剛「テートクのそういうところ嫌いじゃないケド、偶には cool になってほしいデス」

 

丁督「俺は常にクールだ。ちょっと頭に血が上り易いけどな!」

 

日向「いや、それ駄目だろ」

 

丁督「相変わらずよく口答えしてきやがる。まぁ、それだけの実力を持ってるからいいけどな。加賀! 準備はいいか?」

 

加賀「いつでも。敵がレ級でしょうがなんでしょうが、有象無象問わず粉砕してみせます」

 

丁督「翔鶴!」

 

翔鶴「右に同じく。提督の前に立ち塞がる敵は、全てこの翔鶴が葬って差し上げます」

 

丁督「大井は?」

 

大井「提督の為ならわたし、ヤっちゃいます♪」

 

丁督「長門、金剛、日向は?」

 

長門「愚問だ。私の砲から逃げられるものはおらんよ。必ず全部潰してみせる」

 

金剛「今日のワタシ 2ウィークス もお預けくらってますカラネ! 欲求不満は敵の destroy で解消させて貰うワ!」

 

日向「私は1か月だ......。提督、今日は相手をしてくれるんだろうな?」

 

丁督「ああ、寝かせない」

 

日向「ん......皆には悪いが、今日の武功第一は私だ」

 

丁督「よし! お前たち気合は十分だな! 龍田、青葉、雷!」

 

龍田「はぁい。ご主人様」

 

青葉「はっ、ここに!」

 

雷「待っていました!」

 

丁督「残りの艦隊の指揮を執って鎮守府の防衛に当たれ。大淀は此処で総指揮だ」

 

大淀「提督は? まさか......」

 

丁督「ああ。俺は高速艇に乗って第一艦隊を最前線で指揮してくる!」

 

大淀「やっぱり......」

 

丁督「止めるなよ?」

 

大淀「今更止めませんよ。信じてますら、提督も長門さん達も」

 

丁督「そうだな。おい、お前たち! 守れよ?」

 

長門「偉そうに......まぁ、余裕だがな」

 

金剛「面白くなってきたネ!」

 

日向「エサが目の前にあった方が燃えるな」

 

大井「少しでも敵が提督に砲を向けたら......沈めてやる......」

 

加賀「死ぬときは一緒ですか。いいですね。死にませんし、死なせませんが」

 

翔鶴「冥府への花道を敵の方にプレゼントしてさしげます」

 

丁督「よし、それじゃ行くぞ。出撃!」

 

 

~鎮守府近海

 

ザパァッ

 

レ級「ああっ! 君、この前邪魔しに来た艦隊でしょ!? 覚えてるよ!」

 

丁督「ああ? この前? ああ、随分前の基地の襲撃の......お前か!」

 

タ級「なんで提督も一緒なのよ......」

 

丁督「うるせーよ! こっちの方がやり易いんだ!」

 

ル級「う......私、ああいうタイプ苦手だなぁ......」

 

ヲ級「殺しても死なないタイプね」

 

加賀「死なせませんよ。覚悟はいいですか?」

 

レ級「今後の為に君たちは潰させてもらうよ!」

 

大井「それはこっちのセリフよ。水底に沈めてやるわ!」

 

丁督「さて、もういいだろ。総員、攻撃開始!」

 

レ級「負けないよ!」

 

 

金剛「Oh......なんてコト。あれだけ撃って、小破止まりなんテ」

 

翔鶴「燃料と弾薬ちょっと心許なくなってきました......」

 

長門「こっちもダメージ自体は大したことは無いが......」

 

日向「戦るのなら一瞬で決着をつけなくちゃな、どうする? 提督」

 

丁督「......」

 

 

レ級「強いなぁ......。中々捕捉できない」

 

ル級「疲れちゃった......シャワー浴びたい......」

 

ヲ級「私も......」

 

タ級「レ級、もう今日はいいんじゃない?」

 

レ級「......よしっ」

 

 

丁督「む、動くか」

 

レ級「撤退!」

 

丁督「逃げるか!」

 

レ級「撤退も立派な選択だもん! 選択と決断は勇気だよ!」

 

丁督「......なに」

 

レ級「じゃーねー!」

 

ル級「もう暫くは此処には来たくないわね」

 

ヲ級「同感」

 

タ級「はいはい。ぶーぶー言わないの。行くわよ」

 

 

丁督「......」

 

長門「どうした? 追わないのか?」

 

丁督「あいつ」

 

長門「ん?」

 

丁督「選択と決断は勇気だと言った」

 

大井「それが?」

 

丁督「いや、偶然だと思うが、親父......俺が世話になった人がよく言ってたセリフでな」

 

金剛「ファーザー? ああ、中将ネ」

 

丁督「まぁいい。俺達も帰るぞ」

 

日向「提督?」スス

 

丁督「おい、こんなところでかよ。さわ......握るな」

 

日向「いいじゃないかずっと待ってたんだ。ほらもうこんなに硬く......」ニギニギ

 

金剛「ああっ! 日向、ズルいヨ!」

 

加賀「仕方ありませんね。皆さんには戦闘が長引いたと言いましょう」スルッ

 

長門「加賀、お前もか」

 

大井「私は提督となら何処でもいいわ」ヌギッ

 

長門「やれやれ6Pか」スルッ

 

翔鶴「いいえ。7Pです」パサッ

 

丁督「お前たち......ま、体は海で洗ったらいいか。よし、来い! 皆相手をしてやる!」

 

艦娘一同「てーとく♪」

 

 

 

~大佐の鎮守府

 

提督「む、また襲撃か。ん? これは......」

 

彼女「なになに? どうしたの?」ヌッ

 

潮「ひっ」

 

提督「いきなり後ろから現れるな」

 

彼女「驚いた?」

 

提督「潮がな」

 

潮「あ、あ......。その......」

 

彼女「あ、ごめんね。コーヒーを持って来たの。あなたも飲む?」

 

潮「あ。ありがとうございます」

 

彼女「いいのよ」ナデナデ

 

潮「あう......」ポォ

 

提督(無意識なんだろうが、籠絡してるなあれ......)

 

彼女「で、どうかしたの?」

 

提督「ん、いや。この軍報を見てみろ」

 

彼女「んー? また襲撃......へぇ、ほぼ被害なしで撃退、やるじゃない。あ......」

 

提督「あいつ、暫く見ないと思ってたらこんな最前線にいたのか」

 

彼女「彼らしいといったららしいけど、なんでまだ中佐なのよ」

 

提督「人の事言えないが、うちとは違った事情なんだろうな。予想は着くが」

 

彼女「そうね。大方資材の消費のし過ぎが原因でしょうね。この前なんか本部に乗り込んだらしいわ」

 

提督「本当か?」

 

彼女「ええ。中将は笑っていたらしいけど、大和が顔を真っ赤にして怒ってたって」

 

提督「変わってないな......」

 

彼女「会いたい?」

 

提督「暫く会ってないからな」

 

彼女「ちょっと、それは私も一緒よ?」

 

提督「君は暫くここに居るだろ」

 

彼女「......どうせ把握してない事だと思ってたけど」

 

提督「ん?」

 

彼女「明日、私帰るのよ」

 

 




重巡、次の改二は誰かなぁ。


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第22話 「公認」R-15

提督は彼女が帰る前にちょっとしたデートに誘いました。

*途中までは艦娘が出てこないので違う作品に見えるかもしれません。

*明らかな性的描写あり


彼女「待った?」

 

提督「いや」

 

彼女「そ」

 

提督「それじゃあ、行こうか?」スッ

 

彼女「ん♪」ギュッ

 

 

提督「こうやって二人で歩くのは久しぶりだな」

 

彼女「そうね。あなた見てると時の流れを感じるわ」

 

提督「それは俺への当て付けか。確かに君は変わってないが」

 

彼女「別にさ、あなた老けてるってことは......あまりヤッてないって事でしょ?」

 

提督「......最近はそうでもない気がするが、それでもまだ見た目がそんなに変わってないところを見ると、頻繁ではないらいしいな」

 

彼女「ね、気にしてくれたの?」

 

提督「悪いが、ここに来てから俺の倫理観は割とガタガタだ。事後にいつも軽く鬱になったりする事もあるが」

 

彼女「それヤった娘に言ってないでしょうね?」

 

提督「流石に言わないし、俺も日々後悔しない様に心を鍛えているつもりだ」

 

彼女「相変わらず硬いわねぇ。もっと大らかに受け入れてあげなさいよ」

 

提督「行為の途中ではそういう気持ちにもなるがな。途中から思い始めてもなかなかこう......いや、よそう」

 

彼女「?」

 

提督「今は、君といるからな。あまり他の女性の事を話すのは君に対して悪い」

 

彼女「......気、大分使えるようになったのね」

 

提督「見た目通り経験は積んでるからな」

 

彼女「もう、そこでそう言う?」

 

提督「はは、悪い」

 

彼女「でも、寄りを戻してくれ私は本当に嬉しかったよ」

 

提督「......それは俺もだ。お蔭で過去の自分から反省する事ができた」

 

彼女「うん。それは私も」

 

提督「そういえば、前にコーヒーを淹れてきてくれたな。美味しかった」

 

彼女「コーヒー一杯で大げさよ」

 

提督「俺はそうは思わない。あれはインスタントコーヒーだろ? 粉末の配分だけであそこまで味を出せるとは正直驚いた」

 

彼女「そ、そう......」

 

提督「コーヒー一杯にあそこまで......本当に君は才能豊かだな。俺には勿体ないくらいだ」

 

彼女「やめてよ。私はあなたがいいの」

 

提督「ああ。ありがとう」

 

 

彼女「どこかに寄ったりはしないのね。歩いてるだけ?」

 

提督「俺の我儘で申し訳ないが、今日が最後の日だと思うと君との時間が惜しくかんじてね」

 

彼女「......あなたって昔からスケコマシな台詞を天然で言うわよね。嬉しいからいいけど」

 

提督「スケコマ......」

 

彼女「あ、気にしないでね? あなたの場合は本心だって解ってるから」

 

提督「ああ......」ズーン

 

彼女(気にし過ぎ!)

 

 

~鎮守府正面入り口前

 

彼女「着いたわね」

 

提督「ああ。なんだかあっという間だった気がする」

 

彼女「ふふ、楽しかった?」

 

提督「久しぶりに充実した気分になれた」

 

彼女「......部屋、来るでしょ?」

 

提督「武蔵は?」

 

彼女「その事で私からお願いがあるの」

 

提督「なんだ?」

 

彼女「武蔵も......一緒にして欲しい。あの子だけ別にはしたくないの」

 

提督「......武蔵本人の気持ちはいいのか?」

 

彼女「別にあの子、男が嫌いってわけじゃないから。それに」

 

提督「?」

 

彼女「あなたなら、きっと大丈夫よ」

 

 

~彼女の部屋

 

武蔵「やはり来たか」

 

提督「お邪魔する」

 

彼女「武蔵、いいわね?」

 

武蔵「お前が好きなら仕方ない。私もお前が好きだからな」プイ

 

彼女「ふふ、ありがと」ポフ

 

武蔵「う、うむ......」

 

彼女「武蔵、私と大佐の服を脱がせて。私は彼とキスをするわ」

 

武蔵「わかった。どこから脱がしても?」

 

彼女「好きになさい」

 

提督「いや、俺は脱がしてもらわなくてm」

 

チュ

 

彼女「ここに来て何度目のキスからしら。数えるほどしかしえないから、もっと......ね?」

 

提督「......ああ」

 

彼女「ちゅ......んちゅ......れろ、はぁ......」

 

 

武蔵「脱がすぞ」

 

彼女「ん......あっ」(いきなり下を全部......)

 

武蔵「次は、大佐だ」

 

提督「ちゅ......っぷ、なに」

 

ぎゅっ

 

提督「んくっ、武蔵......」

 

武蔵「ふふ、熱いな。そして硬い。まだ何もしてないのにもうこんなに......れろ」

 

彼女「あ、ちょっと武蔵なにを」

 

武蔵「ん......れろ、なんだ? 大佐のコレを独り占めされて悔しいのか?」ニヤ

 

彼女「それは......」

 

武蔵「ちゅるっ。んはっ......いいんだぞ? 譲っても」

 

提督「ん、ふっ......武蔵」ポン

 

武蔵「んふぁ、ふぁいふぁ?」

 

提督「武蔵、無理に気丈にふるまうな。お前は愛したいように彼女を愛するといい。そして俺は、その邪魔にならない様に二人を愛させてもらう」

 

武蔵「っぷは、......大佐」

 

提督「さぁ」

 

 

提督「武蔵を頼む。俺は君を......」

 

彼女「ふふ、了解」

 

 

彼女「ね、彼優しいでしょ?」

 

武蔵「うん。私はちょっと焦っていた。自分が恥ずかしい......」

 

彼女「可愛いわよ武蔵。それじゃ......」

 

武蔵「あっ、それ......。ああっ」

 

彼女「あっ、んむ、ちゅるっ。いい......武蔵っ」

 

 

もにゅ

 

武蔵・彼女「ああっ」

 

提督「まだだ、いくぞ」

 

にゅるっ

 

彼女「んんっ、くぁっ」

 

彼女「あ、あつ......ふと......んんん!」

 

武蔵「はぁ......はぁ......ねぇ、もう......」

 

彼女「あ......武蔵?」

 

提督「武蔵、いいか?」

 

武蔵「ああ......だが、次は私に頼むぞ?」

 

提督「ああ。分かった。いくぞ」

 

彼女「ああああああああっ。これ、本当にひさし、ぶ......っり♪」

 

提督「武蔵、次はお前だ」

 

武蔵「う、ああああああっ。す、凄いっ! はぁ、はぁ......これ.....が男、か」

 

提督「っふ、もうキツイな。最後は二人一緒にイケっ」

 

彼女「え、ちょっとこれ、激し......あああああ!」

 

武蔵「な、なんだこれは!? もう耐えれ......んんん、ああっ」

 

 

提督「ふぅ......はぁ......はぁ」

 

彼女「んっ、ちょっと重い......やっ、あん。ふふ」

 

武蔵「ん......なんとも言えない心地よい重さだな」

 

提督「こんなに......張り切ったのは初めてだ」

 

彼女「この感じ......久しぶりすぎて癖になりそう」

 

武蔵「ああ。私もまだ足りない」

 

武蔵「大佐、すまないが今度は中に......」

 

提督「今日は気が済むまで相手をしてやる事を決めたんだ。二人は遠慮するなよ」グッ

 

彼女「あああああっ、ねぇ......今、更だけど......本当に、好きよ?」

 

武蔵「ああ、大佐なら。こいつを任せても抵抗はない。私がいないときに、求められたら......頼むぞ?」

 

提督「......なるべく善処はしよう」




なんか中途半端なエロになった気がします。

武蔵をもうちょっと可愛く書きたかったなぁ。


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第23話 「出立」

その日は彼女が本部へ戻る出立の日。
提督は漣と天龍を連れてお見送りに来ました。


彼女「それじゃそろそろ行くわね」

 

提督「ああ、元気でな」

 

彼女「あなたも。あまり無理してはだめよ?」

 

提督「分かっている」

 

武蔵「大佐、またな。短い間だったが色々楽しかった」

 

提督「武蔵、あっちにいる親父殿や大和にもよろしくな」

 

武蔵「承った。必ず伝える」

 

天龍「おい漣、武蔵ってあんなだったか?」コショ

 

漣「いいえ。少なくとも漣が知っている武蔵さんはもっとツンツンでした」コショ

 

天龍「大佐だと思うか?」コショ

 

漣「多分」コショ

 

提督「おい、二人とも何をこそこそしている。別れの挨拶くらいしっかりしないか」

 

天竜「っと、悪ぃ。あー......えっと、しょ、少将殿もお元気で?」

 

武蔵「なんで疑問形なんだ。あと、上官に対しては敬語を使え」ギロ

 

天龍「申し訳ありませんでした!」(あれ? やっぱりいつも通り?)

 

漣「申し訳ありませんでした!」(気のせい?)

 

彼女「武蔵、それくらいでいいわよ。礼儀を教えるのはいいけど、あまり高圧的にしてもダメよ?」

 

武蔵「む......すまない。二人とも悪かったな」

 

天龍「へ? ああいや、べ、別に気にしてないぜですから!」

 

漣「天龍さん言葉が......お心遣いありがとうございます!」

 

彼女「ふふ......大佐、いい娘に育ててるじゃない」

 

提督「俺がこいつらに恵まれていただけだ。運が良かった」

 

彼女「そう? まあいいわ。あ、本当にそろそろ行かないと。武蔵」

 

武蔵「うむ」

 

武蔵は港から海の上に浮上すると、白く光って戦艦の姿へと変わった。

 

天龍「ほえー、いつ見てもでっけーなぁ」

 

漣「カッコいいですっ」

 

彼女「当然よ。私の自慢の娘だからね」

 

提督「いいコンビだ」

 

彼女「ふふ、ありがとう。あ、大佐」

 

提督「ん?」

 

チュ

 

天竜・漣「 」

 

彼女「......うん。これでいい。じゃ、またね」

 

ブォォォォォ

 

 

提督「......」

 

天龍「なぁ、大佐」

 

提督「なんだ」

 

天龍「今の、何?」

 

提督「なに、とは?」

 

漣「キスの事です!」

 

提督「ああ、仲直りをしたからな」

 

天龍「仲直りしたらキスをするのか!?」

 

漣「それって本当ですか!?」

 

提督「何を言っているんだお前達は」

 

天龍「......よし、俺は大佐に宣戦を布告するぜぇ」

 

提督「布告してどうする。戦争でもする気が」

 

天龍「喧嘩だ! んでもって仲直りしてキスだ!」

 

漣・提督「......」

 

漣「その発想はなかったです!」

 

提督「いや、違うだろ。明らかに思考がおかしいと思わないのか。故意に喧嘩をしては、仲直りも何もあったものじゃないだろ」

 

天龍「えっ、そ、そうなのか?」

 

提督「......今度龍田に教えて貰え」

 

天龍「龍田に喧嘩を売れって事か。解ったぜ!」

 

提督「......」(いい薬になりそうだから黙っておこう)

 

漣(え、止めないの?)

 

天龍「あー、でもいいなぁ。俺も彼氏欲しいなぁ」チラ

 

提督「那智なんかどうだ? 性格も凛々しくて、お前の事も守ってくれそうだぞ」

 

天龍「那智は女じゃねーか!」

 

提督「一応それに気づくくらいには頭は大丈夫だったか」

 

漣(ひどい......。でも、天龍さんなら仕方ない気もする)

 

提督「漣」

 

漣「え? あ、はい。なんでしょう?」

 

提督「お前も彼氏が欲しいのか?」

 

漣「ええ!? な、なんですか急に!?」

 

提督「いや、天龍を見てたら何となくな」

 

天龍「それってどういう意味だよ!?」

 

提督「(無視)で、どうなんだ? 答え難いなら別にいいが」

 

漣「あ、欲しいかも......です」

 

提督「そうか、判った。天龍、手を」

 

天龍「え? な、なんだよ......ほら」サッ

 

提督「漣も、いいか?」

 

漣「あ、はい。お願いします!」

 

提督「うむ」

 

ギュッ

 

天龍・漣「え?」

 

提督「おめでとう。カップル成立だな」

 

天龍「だから俺は女で、漣も女だろうが!」

 

漣「い、いくら男っぽい天龍さんでも漣は、ちゃんと男の人がいいです!」

 

天竜「誰が男っぽいだ!」

 

漣「いつもじゃないですか!?」

 

提督「こら、二人ともやめないか」

 

天龍「でも大佐、漣が......」

 

漣「何言ってるんですか! もとはと言えば天龍さんが男っぽいのが......」

 

提督「まぁ、そこまでにしておけ。ほら、天龍仲直りのキスだ」

 

天龍・漣「え?」

 

提督「ん? 天龍は喧嘩をして仲直りのキスをしたいんじゃなかったのか?」

 

天龍「大佐......最初から俺を躱す為に嵌めたな?」

 

漣「あざとい! あざといです大佐!」

 

提督「漣には悪いが、天龍を見ていると何となくな」

 

漣「あ、それ解ります」

 

天龍「なんでだよ!?」

 

ギャーギャー

 

それは、少将との別れを惜しむ気持ちを誤魔化す為だったのか、提督の狙いは見事的中し、その帰り道は基地に着くまでずっと賑やかだった。




あぁ、久しぶりに軽い話を書いた気がします。
こういうネタがポンポン浮かべばいいのですが。


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第24話 「ゲーム2」

多摩と提督が将棋をやってます。
形成は多摩が不利、このまま負けてしまうのか......?


提督「王手」パチ

 

多摩「にゃ!?」

 

多摩「そうはいかないにゃ! 多聞丸、ここは一時撤退にゃ!」

 

提督「ん、王手。詰み、だな。これは」パチ

 

多摩「にゃぁぁぁ! 多聞丸がぁ!!」

 

飛龍「ちょっと多摩、何してくれてるのよ! 多聞丸がぁ!!」

 

提督「......駒に名前を付けるなよ。後、なんで山口司令官の名前を付ける。飛龍がさっきから怒り狂ってるぞ」

 

飛龍「ちょっと、多摩代りなさい! 多聞丸はまだ敗けていないわ! 実は死んだ振りをふりをして起死回生を狙っていたのよ!」

 

提督「なんだそれは」

 

飛龍「ま・だ・ま・け・て・な・い・ん・で・す!!」

 

多摩「おぉ、飛龍が燃えているにゃ......まるで山火事のようにゃ」

 

提督「まあいいが、将棋でいいな?」

 

飛龍「......オセロにしましょう! これなら白黒ハッキリ着きますし!」

 

多摩「あ、山火事だと思ったら小火だったみたいにゃ」

 

提督「いいだろう。オセロだな」

 

 

パタパタパタ

 

飛龍「いやぁぁぁぁぁ!」

 

提督「もう逆転の余地がないな」

 

多摩「器用にゃ。どうやったらここまで綺麗に白一色になるにゃ......」

 

提督「角を取ろうと躍起になり過ぎたな。お蔭で中は荒らし放題だったぞ」

 

飛龍「うわぁぁぁぁん。多聞丸ぅぅ!!」

 

提督「山口司令官はお前のなんなんだ...見てるとペットが死んだのを悲しんでいるように見えるぞ」

 

飛龍「多聞丸は多聞丸なんです!」

 

長波「ちょっと代ってくれますか。仇はこの長波が取ってみせますから」

 

飛龍「な、長波......」ウルウル

 

長波「いいですよね? 大佐」

 

提督「ああ」

 

長波「いくわよ! 頼三!」

 

提督「お前もか。オセロでいいか?」

 

長波「......紙飛行機で勝負よ!」

 

多摩「最早、競技ですらなくなってきた気がするにゃ」

 

提督「別に構わないが、長距離飛ばした方が勝ちか?」

 

長波「それでいいわ。負けないわよ!」

 

 

スイー......

 

長波「ら、頼三!!」

 

飛龍「おぉ、大佐凄いですね。よくあんなに飛ばします」

 

多摩「対する長波は序盤から急降下しちゃったにゃ」

 

提督「船乗りを飛ばしたのが間違いだったんじゃないか?」

 

長波「何よそれ! 慰めているつもり!?」

 

飛龍「悔し泣きはやめなさいよ。可愛いけどさ」

 

多摩「自分が愛してた者が負けちゃうのは悲しものにゃ。多摩も大事にとっておいた煮干しを間違って海に落としちゃった時にゃんか......」

 

飛龍「ちょっと! 多聞丸と煮干しを一緒にしないでよ!」

 

長波「ら、頼三が煮干しと同じだって言うの!?」

 

多摩「あ、地雷踏んだかにゃ? ばいにゃー」ピュー

 

飛龍「あ、ちょっと待ちなさいよ! くぅ、こんな時に限って艦載機が......!」

 

提督「基地の中で何をする気だ馬鹿者」

 

長波「飛龍さんあっちに行ったわ! 追いかけて直接爆撃よ!!」

 

飛龍「了解よ!!」

 

飛龍・長波「待てー!!」

 

 

提督「......さて、片づけるか」

 

トントン

 

提督「ん?」

 

隼鷹「なんか勝負してるみたいじゃないですか。どうです? 飲み比べでも?」

 

提督「昼間からそんな事するわけないだろ。夜にしろ。付き合ってやるから」

 

隼鷹「やっりぃ♪」




将棋は解るけど、チェスは解らない筆者です。
カッコイイからやってみたいのですが、あれ、駒が高そうですよね。


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第25話 「堂々」R-15

またとあの鎮守府の提督のお話。
大分エロいですけど、直接の描写はないです。


『あ、あ......提督、いい! ああっ』

 

『まだ果てるなよ。まだまだこれからだ!』

 

『うぁぁ! は、激し......ああああああ!』

 

 

金剛「Oh......」

 

翔鶴「盗み聞きはよくないですよ」

 

金剛「これだけ大きな声でヤってるんだカラ、盗み聞きもなにもないワヨ」

 

翔鶴「まぁ、そうですけど......」

 

 

『提督、提督っ、ちゅじゅるる......っぷは、うあぁぁ!」

 

『もっと鳴け、思う存分乱れていいぞ!』

 

『提督、ダメだ......菊座は......んん......っは、いい......気持ち、あっ」

 

 

翔鶴「長門さん?」

 

金剛「多分そうネ。ああ、いいなァ。長門」

 

翔鶴「貴女は3日前に提督に相手をしてもらったじゃないですか」

 

金剛「そ・れ・で・も! こう突きつけられたら......ネェ?」ピラ

 

翔鶴「きゃっ」

 

金剛「フフ、翔鶴だって興奮してるじゃナイ?」

 

翔鶴「私はもう3週間も、ですから......」

 

金剛「相手してあげようカ?」

 

翔鶴「うーん......魅力的な提案ですけど、遠慮しておきます。焦らされた分、って言うじゃないですか」

 

金剛「それわかル! ワタシも3日前は1ウィークぶりだったからネ。夜が明けるまでヤっちゃったワ」

 

翔鶴「一週間も待てないんですか......とんだビッチですね」

 

金剛「Oh 翔鶴の辛辣な発言はゾクゾクして素敵ヨ♪」

 

翔鶴「もうそんな事言って......あの、金剛さん」

 

金剛「um?」

 

翔鶴「私も濡れてますけど、金剛さんはもう履いてる意味ないくらいの状態になってますよ」

 

金剛「えっ」

 

グッショリ

 

金剛「Wow お漏らししちゃったみたいネ」

 

翔鶴「下着、早く洗わないと使えませんよ?」

 

金剛「hmm......これからはノーパンで行こうかシラ」

 

翔鶴「提督は興奮するかもしれませんが、別にそういう嗜好を持っているわけではなありませんからね。偶にならいいのでは?」

 

金剛「そうネ。履いてるからこそ、汚す事も、半脱ぎもできるからネ!」

 

翔鶴「あ、そうえいばこの前提督は半脱ぎが好きだって言ってました」

 

金剛「そうなの!?」

 

翔鶴「はい。なんでも足首にかかったままの状態がそそるらしいです」

 

金剛「だらしないのがいいってことかシラ」

 

翔鶴「うーん......男性の嗜好は時として私たちの理解を超えますからね。あ、あとブラはフロントホックが好きって言ってましたね」

 

金剛「あ、それは何となく分かるワ」

 

翔鶴「こう、上になっているときに外して胸が震えながら露わになる様が最高なのだとか」

 

金剛「ウン。ワタシも前にそうしたらテートクったら、喜んで吸い付いてきてベイビーみたいだったワ♪」

 

翔鶴「私の時もそうでした。提督ったら興奮しすぎて歯型まで残しちゃって......フフ」

 

金剛「......ねぇ翔鶴」

 

翔鶴「はい?」

 

金剛「話してたらムラムラしてきちゃったヨ」

 

翔鶴「お相手して差し上げましょうか?」

 

金剛「いいノ?」

 

翔鶴「ちょうど、私も我慢できなくなってきちゃいましたから」

 

金剛「サンキューね翔鶴!」チュ

 

翔鶴「はいはい。それじゃ、先ずはシャワーを浴びましょうか」

 

金剛「了解ヨ♪」

 

 

~提督私室

 

丁督「なあ長門」

 

長門「ん、なんだ?」

 

丁督「お前わざと大きい声出しただろ?」

 

長門「バレたか」

 

丁督「聞き耳立てた奴らに聞かせる為か?」

 

長門「相手をして貰えなくて可哀そうだったからな」

 

丁督「俺の体は一つだからなぁ。そこは我慢してほしいもんだ。悪いとは思うが」

 

長門「だから我慢してこうやって順番に相手をしてもらってるんじゃないか」

 

丁督「船のでの件は?」

 

長門「あれはノーカンだ。ボーナスだ」

 

丁督「随分自分に甘い長門さんだな」

 

クチュ

 

長門「ん......提督、いきなり触らないでくれ」

 

丁督「何か急に触りたくなった」

 

クチュクチュ

 

長門「何......だ、珍しいな。またシたいのか?」

 

丁督「いや、なんかお前が可愛いから、お前の大事なところを占有したくなってな」

 

クチュクチュジュプッ

 

長門「だからって、ん......普通に話しなが......ら、される、っと......あっ」

 

丁督「いいから普通にしてろ。今はこうしていたい」

 

チュクチュクチュプッ

 

長門「んあっ、そんな......にシたいなら、いつで......もいいんだぞ?」

 

丁督「偶にやるからいいだよ。ほら動くな」

 

カリッシュッシュッ

 

長門「あっ、ああ。提督、そこ......攻められる......と。あっ」

 

ピュッピュッ

 

丁督「お、出たな。どれ、ズズ」

 

長門「......目の前でやられると流石に恥ずかしいな。美味いか?」

 

丁督「お前の味だからな」

 

長門「そうか。なぁ提督......」

 

丁督「そうだな。第13ラウンドいくか」




提督が違うと大人しかったり内気な子の性格も多少は影響受けますよね。
こんな翔鶴さんが俺の好みです。


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第26話 「雑談」

高雄が提督の部屋を通りかかるとドアが開けっ放しでした。
ドアの隙間からは明かりが漏れているので提督は中にいるみたいです。
気になった高雄は部屋を覗いてみることにしました。


高雄「あら?」

 

提督「......」

 

高雄「大佐、ドアも窓も開けっぱなしでどうしたんです?」

 

提督「ああ、高雄か。いや、明日天気が崩れるせいかいつもより風が強くてな、つい天然の扇風機替わりにしていた」

 

高雄「ぷっ。なんですかそれ」

 

提督「加えて夜風だ、嵐にでもなる前に利用させてもらってもいいだろう」

 

ぴゅぅう

 

高雄「ん、確かにいつもの生暖かい風と比べたら勢いもあって少し涼しいですね」

 

提督「だろう? 思ったより心地がよくてな。寝ない様に頑張ってた」

 

高雄「寝ない様にって......ふふ」

 

提督「おかしいか?」

 

高雄「ええ。だって大佐なんだか台風が来る前の子供みたいなんですもの」

 

提督「......言われてみれば」

 

高雄「大佐は子供の頃台風が好きだったんですか?」

 

提督「学校が休みなる事に関しては嫌いではなかった」

 

高雄「あ、それよく聞きます。でも、学校が休みになる事だけ、ということは......」

 

提督「ああ、家ではそうでもなかった。やはり学校と家では作りが違うからな。学校はコンクリートの壁に風が当たっても揺れることはなかったが」

 

高雄「一般の住宅の場合はそうもいきませんよね」

 

提督「そうだ。風で家は、特に二階の俺の部屋は揺れて、風の音も雨戸をしてるにも関わらず凄かった」

 

高雄「......怖かったですか?」

 

提督「恥ずかしながらな」

 

高雄「意外です。大佐の事だから読書とかしてて、その邪魔になって気分が悪かったとか言うと思っていたのに」

 

提督「随分具体的な例を挙げるな。読書自体は嫌いじゃなかったが、俺の住んでたところは台風の時はよく停電していたからな。残念ながら読書はできなかった」

 

高雄「ああ、停電だとテレビゲームとかもできませんよね」

 

提督「そうだな。俺の家にもあったが、ゲーム機が古くてもうあまり遊んでなかったから、どっちみちやらなかっただろうが」

 

高雄「どんなゲームをやってたんです?」

 

提督「なんだ、高雄はゲームをやったりするのか?」

 

高雄「あ、意外ですか? 実は私、結構通販で取り寄せて遊んでたりするんですよ」

 

提督「鬼怒はよく遊んでるイメージがあったが」

 

高雄「あ、鬼怒ちゃんは私の大事なゲームの遊び仲間ですよ」

 

提督「質問を受けていてなんだが、どんなゲームをやるんだ?」

 

高雄「いろいろです、本当に。最近はレースゲームですね」

 

提督「ほう。新しいのか?」

 

高雄「そうです。私そのゲームが発売されるのをずっと待ってて、やっと出た時にそれに対応した本体も揃えたんですよ?」

 

提督「そこまでしたのか」

 

高雄「ええ。そのゲーム、シリーズもので結構色んなゲーム機で出ていたんです。多分、大佐が持っていたゲーム機でも対応したのが出ていたと思いますよ」

 

提督「ほう。面白かったか?」

 

高雄「まぁそれなりに。でもどちらかと言うと、私は過去のシリーズが好きですね。まぁそこは人それぞれの好みですから」

 

提督「なるほどな」

 

高雄「あの、興味......あります?」

 

提督「ん? まあな。一応ゲーム機は古くても持ってはいたわけだし」

 

高雄「あ、なら今度いっしょにやりません? 望月ちゃんや夕張ちゃんも一緒に遊んだりするんですよ?」

 

提督「あいつらもか。そうだな、腕の差は出るかもしれないが久しぶりにそういった娯楽に興じるのも悪くないかもな」

 

高雄「遊んでくれるんですね!?」

 

提督「ああ。お前達さえよければ」

 

高雄「勿論です!やったぁ楽しみ♪」

 

提督「大袈裟だな。......ん?」

 

高雄「どうしました?」

 

提督「いや、お前は愛宕と同じ部屋だろ。友人を誘ってゲームをしてるのに、妹は一緒にやらないのか?」

 

高雄「あ......愛宕はそのやってますが、違うのを......」

 

提督「ああ、違うゲーム機で遊んでるのか」

 

高雄「い、いえ。ゲーム機というかパソコンなんですけど......」

 

提督「そうか。パソコンでもゲームはできるからな。あいつはどんなのをやっているんだ?」

 

高雄「えっと......」

 

提督「なんだ? 人に言い難いゲームでもやっているのか?」

 

高雄「そういうわけじゃ、いや......そうなのかな......」

 

提督「?」

 

高雄「あの、この事はなるべく誰にも言わないで下さいね?」

 

提督「一体どんなゲームをやってるんだ」

 

高雄「え、エロゲーです」

 

提督「なに」

 

高雄「成人指定の......その、エッチなゲーム......です」

 

提督「.......あいつは欲求不満なのか」

 

高雄「た、多分違うと思います! 実際にやったことがないからはっきりとは断言できませんが」

 

高雄「愛宕が言うにはその手のゲームでしか味わえない楽しみや発見があるのだとか......」

 

提督「そうか......。まぁ偏見はいけないな。今度機会があれば、愛宕にそれとなく聞いてみるか」

 

高雄「だ、大丈夫かな......」

 

提督「あいつなりに面白いと思ってやっているわけだから、何が面白いのか勉強させて貰うくらい構わないだろう」

 

高雄「べ、勉強ってそんな真面目にならなくても......」

 

提督「お前も姉として妹に対する理解を深める良い機会になるかもしれないぞ?」

 

高雄「な、なるほど」

 

提督「まぁその話はその機会があればにしよう。それよりお前がさっき言っていたゲームの事だが、どういうキャラクターが......」

 

高雄「あ、それはですね......」

 

こうして涼しい風が吹きすさぶ部屋は二人の体を涼めるも、会話の熱は上げるという珍しい状況を作るのであった。




気付いた方もいるかもしれませんが、話のネタになっているレースゲームとは某おヒゲ様のレースゲームです。
携帯ゲーム機の方も面白いらしいのですが、筆者はSFCで止まっています。

新しいシリーズやってみようかなぁ。


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第27話 「説得」

大鯨達の長期遠征組が帰ってきました。
長い遠征に皆疲れ切った様子です。
提督は労を労う為に自ら出迎えたのですが……。


大鯨「お父さんただいまー!」ダキッ

 

提督「おかえり。よく帰ってきたな」

 

大鯨「うん! 大鯨、頑張りました!」

 

提督「ああ。偉いぞ。お前たちも長期間の遠征ご苦労だった。今日はゆっくり休んでくれ」

 

まるゆ「ふわぁ、疲れましたぁ」ヘタ

 

ゴーヤ「そうね。でも、お蔭で久しぶりの鎮守府の雰囲気が懐かしく感じるわ」

 

イムヤ「3週間ぶりだからね。まさか、こんなに長く続くとは私も思わなかったわ」

 

ハチ「でも、遠征した甲斐はありましたよ。ほら、資材だってこんなに。あ、大佐これ確保した資材の報告書です」

 

イク「いーっぱいとれたの! 大鯨も頑張ったけど、イク達も頑張ったのよ? 褒めてぇ♪」

 

提督「ああ本当によくやってくれた。お蔭で大分助かった」ナデ

 

イク「えへへ―♪」

 

大鯨「あっ、お父さん大鯨も!」

 

イムヤ「も、勿論私たちもしてくれるのよね?」

 

ゴーヤ「労を労うのは大佐の義務よ!」

 

ハチ「期待してもいいでしょうか?」

 

まるゆ「ま、まるゆ頑張りました!」

 

提督「皆撫でてほしいのか......まぁいい。ほら来い」

 

ナデナデ

 

遠征ズ「~♪」

 

 

ゴーヤ「んー、でも本当に疲れでち。体も潮でベタベタだしお風呂入りたいでち」

 

イムヤ「いいわね。行きましょ!」

 

ハチ「賛成です」

 

イク「ナイス提案なの!」

 

まるゆ「ご一緒します!」

 

大鯨「お父さんも一緒に入ろ!」

 

シーン

 

提督「......」

 

大鯨「? お父さん?」

 

提督「大鯨、俺は......」

 

イムヤ「た、大鯨。大佐は男の人だから一緒には入れないのよ?」

 

大鯨「え、何でですか? 大佐は大鯨のお父さんですよ?」

 

ハチ「それは私たちにとっても同じですよ。でもね大鯨、年頃の女の子が大人の男の人とお風呂に入るにはいろいろと準備が必要なのです」

 

大鯨「準備?」

 

ゴーヤ「そ、そうよ。準備もいろいろあるけど......た、大佐は他の女の子に裸を見られるのが恥ずかしいのよ!」

 

イク(あ、その言い方嫌な予感がするの)

 

大鯨「あ、それなら私後でお父さんと一緒に入ります」

 

ゴーヤ「 」

 

イク(ほらね)

 

まるゆ「あわわ......た、大佐と一緒に......」カァ

 

イムヤ「た、大鯨そういう問題じゃなくてね......」

 

クイクイ

 

イムヤ「え?」

 

ハチ「イムヤ、今はそれ以上言っては逆効果です。ここは肯定も否定もせず大佐に任せましょう」コショ

 

イク「イクもそれがいいと思うの。今これ以上言っちゃうと、多分大鯨泣いちゃいそうなの」コショ

 

イムヤ「う......」

 

大鯨「イムヤさん?」クビカシゲ

 

ゴーヤ「と、取り敢えず私たちはお風呂に行こう!」

 

大佐「な」

 

まるゆ「そ、そうですね。大佐、後はよろしくお願いします!」

 

イムヤ「......大佐ごめんね! さぁ皆行くわよ!」

 

「行ってきまーす!」

 

 

提督「......]

 

大鯨「皆どうしたんでしょう?」

 

提督「さぁ......な」

 

大鯨「お父さん、お風呂いつ入ります?」

 

提督「大鯨」

 

大鯨「?」

 

提督「悪いが個人的にはお前には一人で風呂に入って欲しい」

 

大鯨「え?」

 

提督「俺は一緒に入るわけにはいかないんだ」

 

大鯨「そんな......いやぁ」ジワァ

 

提督「いや、お前が嫌いなわけじゃない。ほら、ハチがさっき言っていただろう?」

 

大鯨「ぐす......ふぇ?」

 

提督「年ご......大鯨みたいな可愛い娘は俺みたいな大人が一緒にお風呂に入るには準備が必要なんだ」

 

大鯨「準備ってなんですか?」

 

提督「......改造だ」

 

大鯨「え?」

 

提督「大鯨、お前はここに来たばかりで知らないのも無理はないが、ここにいる先輩たちを見て何かに気付かないか?」

 

大鯨「......ごめんなさい」

 

提督「いや、気にするな。それはな、皆強化改造を受けているという事なんだ」

 

大鯨「強化......?」

 

提督「そうだ。お前は俺と一緒に風呂に入りたいと言ったが、実は人間とお前たち艦娘では入る風呂は湯の成分がだいぶ違っていてな」

 

提督「お互いに対策なしで入るのは危険なんだ」

 

大鯨「そんな......じゃあ私は......」ジワァ

 

提督「待て、泣くな。俺はどうやっても入れないが、お前達なら話は別なんだ」

 

大鯨「ぐす......どういう......事です?」

 

提督「お前たちはある程度練度を積むことによって改造による強化を受けることができる。その強化によって人間の風呂にも体が耐えられるようになるんだ」

 

大鯨「改造で......」

 

提督「そうだ。お前は残念ながら今は練度が低い。だが、多少時間は掛かってしまうかもしれないが、改造を受けれるようになればお前も......後は解るな?」

 

大鯨「うん......解りました。大鯨、早く皆と同じように大佐とお風呂に入れるように頑張ります!」

 

提督「そうだ。その意気だ」(しまった。皆と同じ......)

 

大鯨「それじゃ、ごめんなさいお父さん。大鯨もイムヤさん達と一緒にお風呂に入ってきますね!」

 

提督「ああ......。ゆっくり疲れを癒せよ」

 

大鯨「はい! 行ってきます!」

 

 

提督「......」

 

鈴谷「大佐ぁ?」

 

提督「む......」

 

鈴谷「なんか言い事聞いたじゃん? 改造を受けてたら大佐とお風呂入れるの?」

 

提督「鈴谷、お前なら解るだろう。何故大鯨に俺がああ言ったのか」

 

鈴谷「えー? 大佐はあんな良い子を騙す事言うのぉ?」

 

提督「人聞きが悪いぞ。あくまで鎮守府の風紀をだな......」

 

北上「その風紀、守りたいなら私たちのお願い聞いて欲しかったりして―」

 

提督「いつの間に」

 

北上「鈴っちのスカートに隠れてたの」

 

鈴谷「うっそ。鈴谷今、ノーパンなのにっ」

 

北上「いや、嘘に決まってんじゃん......」

 

提督「おい」

 

鈴谷「あ」

 

提督「鈴谷、お前今、穿いてないのか?」

 

北上「あ、説教モード? 鈴っちのバカ。いい流れだったのに」

 

鈴谷「ごめんって。ていうかこれ切り札のつもりだったのに。あー、タイミング悪っ」

 

提督「お前達には改めて軍人としての風紀を叩き込む必要がありそうだな」

 

鈴谷「ヤバっ、大佐この事は誰にも言わないから鈴谷とお風呂、考えといてねー」ピュー、ピラッ

 

北上「本当に履いてないよ......。あ、大佐それわたしもよろしくね。じゃっ」ピュー

 

提督「こら待て......ふぅ、疲れた」ドサ

 

提督は何とか難局を乗り切った事を実感して、力を抜いて深く椅子に腰かけた。

 

提督(疲れた......今日は早く寝よう)




大鯨って設計図要るんですよね......。
史実通りの改装だったので要らないものだと思ていたら予想外でした。
いや、俺は筑摩と利根に使いますので(キリッ


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第28話 「帰投」

大佐の元彼女が本部に帰投しました。
彼女は報告を行う為に中将の部屋を訪ねます。


彼女「中将殿、只今戻りました」

 

大和「少将、ご苦労様です」

 

中将「おう、ご苦労だった。で、どうだったよ?」

 

彼女「中将の予想通りでした。私から用心するよう注意はしました」

 

中将「そうか、それでいい。あいつならそれで十分だろう」

 

彼女「後、一応視察の名目だったのでこれは報告書です......」

 

中将「ん、そこに置いておいてくれ。大和、後でそれを......大和?」

 

大和「......」

 

武蔵「......」

 

大和はさっきから心ここにあらずという感じで窓を見ている武蔵をずっと見ていた。

少将のワンコな武蔵は見たことがあるが、あんなに呆けた武蔵を大和は初めて見た。

 

中将「おい、どうした大和?」

 

大和「あ、申し訳ありません。ちょっと考え事を」

 

中将「ほう、珍しいな。なんだ? お前も大佐の事を考えていたのか?」ニヤ

 

大和「はい?」ギロ

 

武蔵「なんだと?」

 

彼女(また何を......)

 

武蔵「おい、大和それはほんt」

 

大和「中将?」

 

中将「ん?」

 

大和「どうして私が貴方ではなく、大佐の事を考えていなければならないんです?」ニコ

 

中将「お?」(あ、逆鱗に触れたか)

 

大和「前から言ってますよね? 私は中将一筋だと」

 

武蔵「え?」

 

彼女(大和、怒りで周りが見えて......)

 

中将「おいよせ。恥ずかしいだろ。はははは」

 

大和「もう笑わないで下さい! 本気なんですよ!?」

 

中将「ああ、分かった分かった。分かったから取り敢えず、今はここまでにしておけ、ほら二人に惚気てるところを見られて恥ずかしいし」

 

武蔵「あ、いや別に......」(ん? あれノロケてたのか?」

 

彼女「いえ、どうぞお気になさらず。報告書の提出も終わりましたし、もう退出するところでしたので」

 

彼女(どこが惚気よ。中将は本当にガードが......いや、何か違う......?)

 

大和「あ......」ボッ

 

中将「ほら、言わんこっちゃない。ここは2人の気遣いに感謝しておけよ」

 

大和「あ、はい......」シュン

 

武蔵「あ、いやその、気にするな。う、うん。私は何も見ていない」

 

大和「っ!」ウル

 

武蔵「ええ!?」

 

彼女「武蔵、行くわよ」

 

武蔵「え? あ、おい? あ、謝ったほうが......」

 

彼女「いいのよ。ほら、さっさとする。中将殿失礼し致しました」カッ

 

中将「ああ。ご苦労だったな」ヒラヒラ

 

武蔵「え? え? 私、何か悪い事したのか?」ズルズル

 

バタン

 

 

中将「......」

 

大和「う......ぐす」

 

中将「ほら、こい」

 

大和「中将ぉ!」ダキ

 

中将「全く、お前は偶にこうなるよな」ナデナデ

 

大和「ごめんなさい......」メソメソ

 

中将「ま、儂の事を想っての事だしな。別にいいが」ポンポン

 

大和「中将......」スリスリ

 

中将「はは、まるで借りてきた猫だな」

 

大和「んー♪」スリスリ

 

中将「おい、膝にまで乗ってくるな。重いわ」

 

大和「や、です」

 

中将「まるで童女みたいだぞ」

 

大和「恋人が無理ならもう、娘でもいいです......」

 

中将「ん......すまんな」ナデ

 

大和「......中将」

 

中将「ん?」

 

大和「なぜ、です?」

 

中将「......大和」

 

大和「はい」

 

中将「儂、老けてるだろ?」

 

大和「え、そんな事......」アセ

 

中将「いやいや、そこでお世辞はもう無理がある、ふははは! まぁ、ちゃんと年相応に見えるだろ?」

 

大和「......はい」

 

中将「それがどういう事か判るな?」

 

大和「......///」コク

 

中将「今は全部は言えが、少しだけ秘密に触れてやろう。大和、儂ら幹部、特に上層部の連中は皆、他の幹部に比べて年相応というか、老けてるだろ?」

 

大和「言われてみれば......」

 

中将「それはな、儂らが過去にある罪を犯した事に対しての贖罪の意志の表れなんだ」

 

大和「贖罪?」

 

中将「ああ、そうだ。儂もそれに関わった。自分だけいい子ぶるつもりはないが、止めようと必死にもなったがな。結局叶わなかった」

 

大和「中将......一体過去に何が......」

 

中将「それはまだ言えんが、一つだけ教えてやれるとしたら」

 

大和「......はい」

 

中将「深海棲艦が今世の中にこれだけ蔓延っているのは、先ず間違いなく儂ら海軍の所為だという事だ」




基本ゆるい雰囲気の物語ですが、一応ほんの少し設定を作ったりしてます。
雰囲気を壊さない程度そういうネタも小出しにしていきたいですね。


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第29話 「メイド」

榛名と若干一名が、とある格好をして大佐に何かを迫っているようです。
その恰好とは?
何を迫っているのか?


提督「......榛名」

 

榛名「はい。なんですかご主人様?」

 

提督「その服装はどうしたんだ?」(口調は漣の真似か?)

 

榛名「あ、メイド服ですか? 金剛お姉様にお借りしたんです」

 

提督「なんでそんなものを......」

 

榛名「だって、大佐ったらいつまで経っても部屋の調査に来てくれないんですもの。だから自分から来ることにしたんです」

 

提督「別にここになら結構来てるだろ。後、その服を着ている意味は?」

 

榛名「ただ伺うだけじゃ意味がない事くらい分ります。だからメイドとしてご奉仕させてもらおうかなって......」

 

提督「却下だ」キッパリ

 

榛名「ええ!?」ガーン

 

提督「自分達の部屋で着るならまだしも、基地の中でその格好で歩き回られては、軍の施設としてのモラルが問われる」

 

榛名「だ、だから大佐の部屋で......」

 

提督「ダメだ。俺の部屋も一応その施設の一部だからな」

 

榛名「そんなぁ......」

 

提督「それに」

 

榛名「?」

 

提督「お前の後に隠れている足柄がさっきから恥ずかしがって泣きそうな顔をしてるからな」

 

榛名「あ、足柄さんなんで!?」

 

足柄「何でもなにもないわよ! わたし、コスプレなんて趣味ないわ!」

 

榛名「えっ、でも昨日の夜はあんなに喜んで......」

 

足柄「お酒飲んで酔っぱらってたからよ! なんか自分のペースで飲ませてくれないなぁと思ったら......」

 

提督「その服を着たまま寝てしまい、抵抗虚しくそのまま連れてこられたわけか」

 

足柄「うう......」コク(せめて髪に櫛を通す時間くらい......)

 

榛名「で、でも足柄さん凄く可愛いですよ?」

 

足柄「そういう問題じゃないの! そういう趣味があるかないかの嗜好の問題なの!!」ブァッ

 

提督(あ、ついに泣いた)

 

榛名「足柄さんなんで泣いて......!?」

 

足柄「恥ずか......ひっく......しいからに決まって......るじゃにゃぁい......! うわーん」

 

榛名「た、大佐助けて下さい!」アタフタ

 

提督「いや、部屋に連れて行って元の服に着替えさせたらいいだろ」

 

榛名「そこは、引けません!」

 

提督「なんでそんなに必死なんだ」

 

足柄「鬼!!」ブワッ

 

榛名「もう、足柄さんそんなに恥ずかしがる事ありませんよ?」ガシッ

 

足柄「あっ、いや、ちょっ......離して!」ジタバタ

 

足柄(くっ......凄い力......!)

 

榛名「大佐、ちょっと失礼しますね」

 

提督「ん? ああ」

 

そういうと榛名は足柄を羽交い絞めにしながら、提督に声が聞こえない位置に移動した。

 

 

榛名「足柄さん、大佐はこの服を駄目だとは言ってますけど、『嫌』とは言ってないじゃないですか」

 

足柄「そ、それは......」

 

提督「ん......?」(今、榛名は足柄に何を言ったんだ? 足柄の反応が......)

 

榛名「少なくともこの格好が嫌いじゃないなら、私達がすべき事は一つじゃないですか」

 

足柄「す、すべき事って......?」

 

榛名「ご奉仕です」

 

足柄「ほ、奉仕?」

 

榛名「私達は、普段お仕事くらいしか手伝ってないので、この機会に私達が大佐の身の回りまでお世話をするんです」

 

足柄「どうしてそこまで......嫌、じゃないけど......」

 

榛名「それはご褒美の為です」

 

足柄「ご、ご褒美?」

 

榛名「大佐が私達のご主人様なら、当然ご奉仕に対してご褒美がある筈です」

 

足柄「ご褒美......何かしら......?」

 

榛名「絆です」

 

足柄「え?」

 

榛名「私、最近気づいた事があるんです。金剛お姉様や長門さん達を見てて......」

 

足柄「榛名さん? 何を言って......」

 

榛名「多分お姉様達......大佐と......え、えっち、してるみたいなんです」

 

足柄「なぁ!?」

 

榛名「しっ、声が大きいですよ」

 

足柄「ご、ごめん......」

 

榛名「お姉様達は私達が気付かないところで上手く、大佐を誘惑して成功してるみたいなんです」

 

足柄「ゆ、誘惑だなんて......」カァ

 

榛名「足柄さん、これはチャンスですよ!」ズイ

 

足柄「うっ!?」ビクッ

 

榛名「足柄さん、大佐の事大好きですよね、愛してますよね?」

 

足柄「それは......あう......うん」コク

 

榛名「良かった。私と一緒ですね」パァ

 

足柄「い、一緒?」

 

榛名「そう、一緒です。だからここは2人で協力して大佐を誘惑しちゃいましょう!」

 

足柄「で、でも......恥ずかし......」

 

榛名「恥ずかしがってたら、大佐とは今の関係のままですよ?」

 

足柄「い、今だってそんなに悪くは......」

 

榛名「大佐に触れて欲しくないんですか?」

 

足柄「ふ、触れて......」

 

榛名「真に愛される事というのは、体の関係までにいってこそなんですよ?」

 

榛名(って、金剛お姉様が言ってました)

 

足柄「う......」

 

榛名「足柄さん、私達いつまでも中身は子供のままではいけません。だから一緒に大人に、大佐の本当の意味での恋人になりましょう?」

 

足柄「榛名......」

 

榛名「ね?」

 

足柄「......」コク

 

榛名「足柄さん! ありがとうございます!」ダキッ

 

足柄「あ、ちょっと......ふぁ」ムギュー

 

榛名「じゃあ、お互いに意見が一致したところで、この場は引きましょう。大佐に釘をさされてしまいましたし」

 

足柄「え、じゃぁいつ......?」

 

榛名「夜に決まってるじゃないですか」

 

足柄「あ......」カァ

 

榛名「足柄さん、いいですか?皆が寝静まったら......に集合です」

 

足柄「......分かったわ」コク

 

榛名「打ち合わせ完了ですね。それじゃ、ここは一旦戻りましょう」

 

 

提督「ん? 話は済んだのか?」

 

榛名「はい。足柄さんを説得してみたんですが......残念ながらダメでした。だから、榛名ももう今日の所は諦めます」

 

提督「今日のところは、か」

 

榛名「はい。まだ私諦めてませんから!」(嘘は付きたくないし、ね)

 

提督「ま、認める事はないとは思うがな。程々にな」

 

榛名「はい。それでは私達はこれで失礼します。大佐、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。足柄さんもごめんなさい」

 

足柄「え? あ......べ、別にいいわよ」

 

榛名「ありがとうございます。あ、じゃあ失礼しますね。足柄さんも服お返しますから行きましょう」

 

足柄「え、ええ。そ、それじゃ大佐、失礼しました」

 

 

バタン

 

提督「やけにあっさり引き下がったような......気のせいだといいが」




メイド服の足柄と榛名は反則だと思います。


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第30話 「ご奉仕」R-15

メイド服騒動の後、提督は足柄から晩酌の相手をさせて貰えないかと頼まれました。
特にその日は飲むつもりはなかった提督ですが、あの騒動で足柄が負った精神的ダメージが気になり、話し相手になる事でメンタルケアになるだろうと了承するのでした。

しかしそれは提督への奉仕に燃える榛名の計画だったのでした。

*明らかな性的描写あり


~基地の裏手

 

榛名「足柄さんこっちです」

 

足柄「あ......」タッタ

 

榛名「どうです? 上手くいきました?」

 

足柄「うん。お酒の相手をさせてくれる事になったわ」

 

榛名「狙い通りですね。これで準備ができました!」

 

足柄「ねぇ、本当にやるの?」

 

榛名「私はこれ以上出遅れるつもりはありませんから」キッパリ

 

足柄「そう......」

 

榛名「足柄さん、躊躇するのは解りますがここで前に進んでおかないと大佐との距離は縮みませんよ?」

 

足柄「そう......ね」

 

榛名「足柄さんは私のペースに合わせてください。後は多分、何とかなります」

 

足柄「何とかって......わかったわ。こうなったらやるだけよ」

 

榛名「その意気です! それじゃあ着替えましょうか」

 

足柄「はぁ......また着るのね......」

 

榛名「当然です! 何と言っても大佐に『ご奉仕』するのが大前提ですから!」

 

足柄「うぅ......やっぱり恥ずかし......」

 

榛名「しっかりご奉仕して、大佐から『ご褒美』もらいましょうね!」

 

足柄「ご褒美......っ!」カァ

 

榛名「ね? 足柄さん」

 

足柄「......うん」

 

 

~深夜、提督執務室

 

コンコン

 

提督「足柄か? 遅かったな。入っていいぞ」

 

 

ガチャ

 

足柄「失礼します......」コソ

 

提督「足柄......?」(何故顔だけ出す?)

 

足柄「あ、あの......」

 

提督「ん?」

 

足柄「ご、ごめんね?」

 

提督「ん? 何を謝......」

 

提督「足柄、お前なんでまたその格好......」

 

??「大佐、失礼します」

 

提督「榛名、お前まで......。その格好はダメだと言っただろう」

 

榛名「お願いです。今だけ許してください!」

 

提督「いや、お願いされてもな。これは......」

 

足柄「大佐、その......わたしからもお願い......」

 

提督「足柄、お前までどうした......」

 

足柄「そ、その......本当に今だけでいいから、許して貰えないかしら? 一応待機任務中と言っても、やる事もない時間なんだ......し」

 

 

榛名「大佐! 榛名、大佐にご奉仕がしたいんです!」

 

提督「別に奉仕するだけならメイド服じゃなくてもいいと思うんだが」

 

足柄「!」

 

足柄「うわぁぁぁぁぁぁんん!!」

 

榛名「あ、足柄さん!」

 

提督「......」

 

榛名「大佐ひどいです!」

 

提督「俺が悪い......」

 

榛名「......」ジッ

 

ポン、ナデナデ

 

提督「必要ないなんて言って悪かった。その格好、似あ......可愛いぞ」

 

足柄「えぇ......?」ピクッ

 

足柄「おかしく......ない?」

 

提督「ああ」

 

足柄「本当?」

 

提督「本当だ」

 

 

榛名「榛名は?」

 

提督「......」(こいつ......)

 

榛名「大佐?」ジワ

 

提督「ああ、お前も可愛い」

 

榛名「っ、大佐ぁ♪」ダキッ

 

足柄「あ、わっ、わたしも!!」ギュッ

 

 

提督「よし、二人とも満足したか? 部屋に戻れ」

 

二人「ええ!?」ガーン

 

榛名「な、何を言ってるんですか!? 榛名達はご奉仕に来たんですよ!?」

 

足柄「そ、そうよ! ご、ご褒美! ご褒美が貰えないじゃない!!」

 

提督「褒美?」

 

足柄「あ......」カァ

 

提督「褒美とは何が希望なんだ?」

 

榛名「そ、それは......」モジモジ

 

足柄「っ、こ、こういう事よ!」

 

 

チュウゥッ

 

提督「んぐっ」

 

榛名「大佐......逃げないで下さい......今から、ご奉仕して差し上げますから......」

 

ツーー......ッ

 

提督「っは、榛名、お前......んっ」

 

足柄「はぁ......はぁ......はぁ、大佐......ちゅ、じゅる......たいふぁあ」

 

榛名「ぺろ......はぁ......足柄さんその調子です」

 

榛名「大佐、ごめんなさい、こんな強引な事をして......。でも、もう榛名達は一歩踏み込む事を決めたんです」

 

 

提督「はふ......な」

 

榛名「はぁ......大佐の胸、やっぱり大きくて硬いです。逞しい......」

 

榛名「あ......男の人もやっぱり硬くなるんですね。......ん、足柄さんちょっと場所を開けて貰えますか?」

 

足柄「んふぁ?」

 

榛名「んちゅ、ぺろ......はぁ......大佐の、小さくて可愛いです......ちゅっ」

 

提督「んふっ、ちゅ......っく」

 

足柄「ちゅぷ......はぁ、はぁ......大佐......」

 

 

足柄「......」

 

サワッ

 

足柄「あ......」

 

足柄(キツそう......。これって......そうなのよね。じゃあ楽にしてあげなきゃ)

 

ぶるんっ

 

足柄(凄い.....これが大佐の......ちゅ、ぺろ」

 

 

榛名「あしふぁ......!?」

 

提督「っく......ふっ......」

 

榛名「んふっ......。どうです? 大佐、気持ちいですか? 好きにしていいんですよ」

 

提督「榛名......」

 

ちゅぅ、ぺろ、ちゅぱっ

 

榛名「ああっん、大佐ぁ」

 

 

提督「うっ......ぐ、足......柄」

 

ぺろぺろ、チロッ

 

提督「......くっ、二人とも、もうキツい。そろそろい......」

 

榛名「はぁ......ふぅ......。いいですよ、いつでも」

 

足柄「あ......大佐、わたしも......」

 

足柄「大佐......どっちらからでも......」

 

榛名「お召し上がりください......」

 

提督「......」

 

にゅっ

 

足柄「あっ」

 

榛名「んん......ああああっ」

 

提督「大丈夫か?」

 

榛名「い......ったいけど、大丈夫です。これで私も大佐の本当の恋人に......はぁ」

 

提督「榛名......」

 

足柄「......!」ゾクッ

 

榛名「大佐......ゆっくりでいいですから動いてください。その内よくなりそう......です」

 

提督「......わかった」

 

榛名「あっ、あっ。そ、そう......それくらいで......もう少しした......っら、もっと早くし......うぁっ、んんんんん」

 

足柄「そ、そんなに......気持ちい......ああっ」

 

にゅく

 

提督「榛名の相手をしている間にお前は十分に解しておかないとな。まぁこれだけ溢れさせているなら大丈夫かもしれないが......」

 

足柄「あっあっ......指ぃぃ。いいっ! そこ、あっ。うんくっ、もっと、もっとぉ」

 

榛名「ああ......ああああ いいです! 大佐ぁ!」

 

提督「っく、榛名......」

 

榛名「はい。どうぞ全部......榛名を満たし......ああああっ♪」

 

榛名「あっ......あ......まだ、まだ出て......」

 

 

足柄「凄い......」

 

提督「榛名、お前は暫く休んでいろ」

 

榛名「ふぁぁい」

 

提督「足柄、いいか?」

 

足柄「大丈夫? あんなに出したけど......」

 

提督「お前だけ置くような真似はしない。安心しろ」

 

足柄「大佐ぁ......」ウル

 

提督「それに、お前のココも大分待っていたみたいだしな」

 

ちゅく

 

足柄「あああああっ」

 

提督「これだけなっていれば、榛名よりかはマシかもな......いくぞ」

 

足柄「うん。お願い.....きて......」

 

足柄「いたっ、あ......これ、はぁぁぁぁぁあ!」

 

提督「良かった。思ったより痛みはなかったみたいだな」

 

足柄「う、うん......あっ。で、でも......あああっ。ちょ、ちょっと残念」

 

提督「ん?」

 

足柄「も、もう少し......いっ、痛け......んんんんん! れば、気持ちよくなる過程が......が、楽しっ......ふぁぁぁあ! めれたかなって......」

 

提督「......大丈夫だ。今からその事を忘れるくらいに良くしてやる」

 

足柄「んん、ああああああっ。きゅ、急に激しすぎ......! あああっ」

 

ギュウゥゥゥゥッッ

 

提督「そろそろか、いくぞっ」

 

足柄「ああああああああ......ふ、っく......うううううう!」

 

 

足柄「はぁ、はぁ......す、凄......こ、こんなに......」

 

榛名「はぁ......あしふぁらさん、しゅごい......」

 

榛名「もっと......よく、見せて......見たいれす......」

 

クニィ

 

足柄「ちょっ、あああん」

 

榛名「ふふ、凄い.....可愛い......ちゅ、ぺろ」

 

足柄「は、榛名っ、あっ今はダ......く、はぁぁぁあ!」

 

提督「......っく」

 

足柄「あっ......」

 

榛名「ふふ、流石大佐です......。それでは今度は上からお願いできますか......?」

 

足柄「わ、たしも......今度は口で......シて?」

 

提督「もう遠慮するな。好きなだけ相手をしてやる」




エロは好きなんですが、表現力が乏しいのでとにかく時間が掛かってしまうのが難点です。
そんなわけで投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。

榛名、エロ過ぎですがこれくらいの榛名が俺は好みです(キリッ


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第31話 「綱紀粛正」

ある日提督は、駆逐艦の菊月、長月、三日月に部屋に呼び出されました。
普段、艦娘から部屋に呼ばれる事はあまりない提督は何事かと途中出会った鈴谷達も一緒に、要請に応じて出向くのですが、そこで待っていたのは......。


長月「長月参上!」

 

菊月「菊月、まかり越した!」

 

三日月「三日月、お待たせしました!」

 

長・菊・三「三人揃って」

 

「睦月型戦隊マジメンジャー!」ドーン

 

提督「......何をやっているんだお前たち」

 

菊月「ああ、大佐か。いや、この前睦月型一同で話していたら」

 

三日月「誰が一番真面目なのかという話になりまして」

 

長月「話し合いの結果、私たち三人が特に真面目で可愛いという事に決定したんだ」

 

睦月「え? 可愛いなんて議論したっけ?」

 

菊月「(無視)まぁそういうわけで、せっかく駆逐艦の中でも一番真面目で輝いてる女子として選ばれたわけだから」

 

文月「輝いてる?」

 

長月「(無視)この際、真面目な子同士で団結して鎮守府内の風紀の乱れを正す為に日夜奮闘している大佐の力になる事を決めたんだ」

 

鈴谷「へぇ~、それでー、なんだっけ? ああ、ダルイ戦隊マジメンドイを結成したんだ」

 

三日月「マジメンジャーーです!! 名誉棄損でジェーン判事に訴えますよ!」

 

熊野「あら、でもマジメウドンにしろマジモロコシにしろ、“men”が入ってる時点で男性扱いですから、そのネーミングは正しくないと思いますわよ?」

 

菊月「マジメンジャーだ!! どうして全部食べ物なんだ!?」

 

長月「だが、熊野さんの言う事にも一理ある、せっかく結成したグループ名が婦女子っぽくないのは問題だ」

 

望月「三日月たち三人以外が全員真面目じゃない奴みたいな扱いを受けるのも問題だと思うんだけど」

 

文月「文月は真面目だもん! ちょっと甘えん坊なだけだもん!」

 

提督「お前たち本当に議論したのか?」

 

菊月「ああ、皆が集まる前に結論を出したぞ」

 

皐月「それ会議してないじゃん!?」

 

三日月「(無視)まあそれはともかく、女の子っぽい名前じゃない、ですか......」

 

子日「子日にいいアイディアあるよ!」

 

長月「おお、聞こうじゃないか」

 

子日「鼠戦隊ハツハルレディーズとかどうかな!」

 

菊月「おい、戦隊の名前が病原菌を蔓延させる齧歯類になってるぞ」

 

子日「げ、齧歯類!?」ガーン

 

初春「ハツハルレディーズという名前も何やら古臭さを感じるのう。というか、妾を巻き込むでない、この戯け」

 

子日「ショック!」

 

三日月「取り敢えず子日の案は却下ですね。うーん、何がいいでしょう......」

 

菊月「大佐は何か案はないか?」

 

提督「俺に聞くな」

 

長月「案っ、案が欲しいんだ!」グイグイ

 

提督「服を引っ張るな。分かったから」

 

長月「うむ」

 

提督「ふぅ......そうだな、綱紀粛正戦隊カゼカオルとかいうのはどうだ?」

 

菊月「おお......」キラキラ

 

三日月「こ、綱紀粛正戦隊......」キラキラ

 

初霜「な、なんか一気に物騒な戦隊名になってない......?」

 

暁「そうね。って、初霜は戦隊に入ってないのね、真面目なのに」

 

初霜「私は辞退したの」ヒソ

 

暁「ああ......」

 

長月「そのカゼカオルというのはどういうモチーフで決めたんだ?」

 

提督「風紀を正すという事は鎮守府内の空気を正す事だ。どうせ正すなら良い香りがするくらい清らかな空気(風)で満たしたいだろ?」

 

長月「な、なるほど......」

 

叢雲(本人の前では言えないけど、大佐のネーミングも独特というか、なんか古臭いわね)

 

菊月「では、戦隊の名前はそれでいいだろう。どうだ? 皆」

 

三日月「異議なし!」

 

長月「賛成だ」

 

菊月「よし、ではリーダーとしてこの戦隊の名をこれより鎮守府内にとd」

 

長月「ちょっと待て」

 

菊月「なんだ?」

 

長月「何故菊月がリーダーなんだ? 私じゃないのか?」

 

三日月「え、ちょっと待ってください。リーダーは三日月じゃ......」

 

菊月「お前たちは何を言ってるんだ? リーダーは最初からこの菊月以外いないだろ?」

 

三人「......」バチバチ

 

卯月「早くも解散の危機ぴょん♪」

 

霞「なに楽しそうに言ってるのよ」

 

菊月「いいだろう。ではどちらがリーダーに相応しいか砲撃による的当てで決めようじゃないか」

 

長月「それでいいのか? 後悔するなよ?」

 

三日月「望むところです」

 

提督「こら、勝手に実弾での訓練をするな。許可はしないぞ」

 

菊月「嫌だ! これはリーダーを決める大切な戦いなんだ! 訓練っ、訓練をさせてくれ!」グイグイ

 

提督「だから服の裾を引っ張るのはやめろ」

 

三日月「白黒はっきり着けないとダメなんです!」グイグイ

 

提督「三日月もか......。お前たちいいか、そもそも――」

 

不知火「話は聞かせてもらいました」

 

三人「!?」

 

Z3「私たちを差し置いて真面目がどうこうとはいい度胸ね」

 

夕雲「貴女達、昨日散々会議をするとか言って部屋を散らかしっぱなしにしたのを忘れてないかしら?」

 

菊月「み、三日月片付けてなかったのか!?」

 

三日月「な、何を言ってるんですか!? お手洗いから戻った後に片付けると言ったのは長月ですよ!」

 

長月「ちょっと待て! 私は菊月が片付けると聞いたぞ!」

 

三人「......」

 

不知火「もう充分です」

 

ビクッ

 

Z3「貴女達に罪の意識が全くないことはよく判ったわ」

 

ビクビクッ

 

夕雲「普段は真面目なのに、何かに夢中になると周りが見えなくなるのは悪い癖ですね。これは......」

 

不・3・夕「粛清が必要ね」

 

菊月「そ、総員撤退!!」

 

長月「了解した!」

 

三日月「仕方ありません!」

 

ダッ

 

不知火「逃がしませんよ。覚悟しなさい」

 

Z3「私たちを真面目じゃない扱いにした罪は重いわ」

 

夕雲「二人ともそんな事気にしてたんですか......」

 

ワーワー

 

 

提督「......あの三人は、急に戦隊とか一体どうしたんだ」

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

響「これ」

 

『海上護衛戦隊シーガーディアンズ 制作:大本営情報部広報課シーガーディアンズ制作委員会』

 

提督「なんだこれは」

 

響「面白いよ?」

 

提督「お前の影響か」

 

響「一緒に観よ」

 

提督「いや、俺は......ん?」

 

部屋に残ってる駆逐艦達「......」キラキラ

 

提督「......まあ、偶にはいいか」




この後、意外に凝った作りの内容に少し感心した提督なのでした。

最近の戦隊ものは流石に名前くらいしか知りませんが、子供の時は割とはまってた記憶があります。
駆逐艦も見た目が子供なら結構は好きだったりしないかなぁ、と。


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第32話 「査察」

提督に本部からある指令が下されました。
それは、ある鎮守府への査察。
久しぶりの出向任務に何処へ行くことになるのかと指令書を確認すると、提督の眉がピクリと動きました。
何処へ行くことになったのでしょう。


長門『こちら長門、大破した。撤退したい』

 

丁督「いいぞ、さっさと戻ってこい。沈むなよ? 沈んだら笑うからな」

 

長門『ふっ、死に様は笑われたくないな。了解した、敵を食い殺してでも帰還を約束する』

 

丁督「おう、その意気だ。他の奴らも長門の事頼むぞ」

 

翔鶴『この命に代えても。あ、でも沈んじゃったら私も一緒に死んだ方がいいですか?』

 

丁督「死にたかったら死ね。だが、それだと俺はちょっと悲しい」

 

長門『おい! 聞こえているぞ! 沈むか、バカ!!』

 

丁督「はっはっは! 大丈夫そうだな。待ってるぞ」

 

加賀『了解。帰ったら一発お願いしますね』

 

金剛『ハァ!? 何それズルいデス! 提督ゥ! ワタシも、ワタシも帰ったら――』

 

ブツッ

 

 

丁督「まぁ大丈夫だろ」

 

提督「......お前はいつもこんな無茶苦茶な指揮をしているのか」

 

丁督「無茶苦茶とはなんだ。これでも結構ちゃんとやってるんだぜ」

 

提督「どこがだ」

 

丁督「一隻も沈ませたことがない」

 

提督「……」ギロッ

 

丁督「相変わらず、頭の固い......いや、甘い奴だな」

 

提督「そう言うお前は本当に昔のままだな。粗暴で無礼で直情的なのは何も変わっていない」

 

丁督「変えるか阿呆。俺は俺のままで軍に尽くす、祖国を守る、こいつらを愛す」

 

提督「......少なくともその3点については俺も同意だ」

 

丁督「反論してきたら殴り飛ばすところだったぞ」ニヤ

 

那智「きさ......中佐殿、口を慎んで頂きたい。こちらは査察で来ているお忘れか」ワナワナ

 

丁督「我慢するな。ここでは自分を隠さず常に堂々としろ」

 

那智「っ、なら言わせてもらうが、貴様は――」

 

提督「那智、やめろ」

 

那智「大佐、しかし!」

 

提督「これがこいつのやり方であり、ここでのルールなんだ」

 

那智「っく......」

 

提督「上下関係なく隠し事はせずに本心で当たる、だったか?」

 

丁督「そうだ。それが俺の信条だ」

 

提督「そんな風だからいつまでも中佐のままなんだぞ」

 

丁督「出世に興味はない。俺が興味があるのは仕事とこいつらを愛する事だけだ」

 

提督「......全く」

 

丁督「そんな辛気臭い顔するなよ。俺は別にお前の事を嫌ってるわけじゃないぜ?」

 

提督「それは俺も同じだ。最初からある程度ぶつかる事は予想していたしな」

 

丁督「ははは、俺もだ。しっかしまぁ、まさかお前が来るとはなぁ」

 

提督「今の査察システムでは、有り得ないことじゃないさ」

 

提督(ま、もっともこいつに俺が当たった時点で、中将や彼女の息を感じる気はしないでもないがな)

 

 

○海軍新査察システム

 

従来は本部の高官が定期的に行っていたが、数年前に新しく就任した海軍の新総帥の改革によりその内容が大幅に変更された。

 

・これまで定期的に行っていた査察を抜き打ち的にも行うように追加。

・本部からのみ派遣していた査察官を各鎮守府の支部からも不特定に派遣するようにし、その評価の公正性を強化。

 

当初は、この改革に反対する者が多数いた。

その殆どが保身に焦る者達だったが、一部には密告システムにも捉える事ができるこの改革の危険性を心から心配する者も当然いた。

 

新総帥はそんな彼らに対して「異議のある者には任期満了額の退職金を以て解雇す」の決定を下し、反対意見を強硬に一掃した。

こうして残ったのは新たなシステムを心配しつつも、海軍に忠を尽くす事を誓うベテランの老幹部と、新総帥の意向に心から賛同し、海軍の健全性の維持に全力で努めようとする若手のみとなった。

 

提督の同期である中佐はそんな若手の中でも特に使命に燃える熱血漢であり、そんな彼には本部からある権限が与えられていた。

 

丁督「そういえばお前、この前に起こった艦娘の反乱事件知ってるか?」

 

提督「ああ......」

 

丁督「前々からあそこの鎮守府の評価内容が胡散臭いとは思っていたが、やっぱり事が起っちまったな。クソッ、出撃中でなけりゃな」

 

提督「前々から?」

 

丁督「ああ。お前だから言うけどな、俺は実は抜き打ちで査察ができる特務権限を本部から貰っているんだ」

 

提督「お前が......」

 

丁督「ただの勘だったが、本当にクソ野郎だったとはな。海軍の人事部は気の毒だぜ。あれだけ厳正に審査しててもああいうのが出ちまうんだからな」

 

提督「その権限とはどれほどのものなんだ?」

 

丁督「査察の時のみに限定されるが二階級上の扱いになる。つまり、俺は今中佐だから現状、本部以外のどこの鎮守府に行っても俺より上の奴はいなくなる」

 

提督「大将や中将はどうなる?」

 

丁督「そのレベルになると、本部の連中が選任で当たるらしい。ま、俺もあまり目上に威張りたくはないからその方が楽でいいけどな」

 

提督「なるほどな。査察は頻繁に行くのか?」

 

丁督「余程の事情がない限り、いつでも自由に行ける。公費、でな」ニヤ

 

提督「む......」ピク

 

丁督「察したか。そ。俺があまりにも縦横無尽に公費使いまくって粗探しするもんだから本部の連中から結構睨まれてる」

 

提督「なかなか昇進しない理由はそれか」

 

丁督「出撃任務ではしっかり成果も出してるからな。中佐で止まってるのはそういった事情の積み重ねで、妥当な状態ってやつだ」

 

提督「一体どれだけ査察を行っているんだ」

 

丁督「取り敢えず気になったところは全部だ。昼夜問わず行く。お蔭で今では俺は『鉄鯱』とか言われて一部の胡散臭い連中に嫌われている始末だ。ははは」

 

提督「......俺の所には来ないんだな」

 

丁督「馬鹿野郎。俺は、お前と親父と本部の一部、ああ、後、あのエリートだけは信じてるんだよ」

 

提督「面と向かって言われると照れるものだ」

 

丁督「へへ、数年ぶりに再開したんだ。照れるのも仕方ないぜ」

 

提督「なあ」

 

丁督「ん?」

 

提督「差し出がましい事だとは承知してるが、敢えて尋ねさせてくれ。あの長門は本当に大丈夫なのか?」

 

那智「......」

 

丁督「大丈夫だ。俺は、自分が直接指揮しない時は基本的に現地での判断は全部あいつらに一任している」

 

提督「指揮を全くしないのか?」

 

那智「なっ!?」

 

丁督「それくらいしても安心できるくらいには鍛え上げたつもりだ。伊達にここの基地の艦娘は“少数精鋭”で通ってるわけじゃない」

 

提督「だが、全く関知しないというのは流石に......」

 

丁督「問題ねーよ。ヤバいと思ったらあいつらからああやって通信がくるし、俺もそれなりの判断で動く」

 

提督「......正に鉄の絆だな。真似しようとは思えんが」

 

丁督「鉄だなんて色気のない言葉使うなよ。絆だ。それで十分だ。なぁ大淀?」

 

大淀「えっ? あ、はい......」モジモジ

 

提督「?」

 

丁督「実はな、ここにいる艦娘は全員建造で生まれたわけじゃない」

 

提督「なに?」

 

丁督「こいつらは全員、俺が査察した先で問題が有りと認めた後に、本人の希望で引き取った奴らだ」

 

提督「......」

 

丁督「まぁお前の想像通りヤることはヤってるが、その絆が強い理由も、もうお前なら判るだろう?」

 

提督「......」

 

那智「......」カァ

 

丁督「ま、唯一の例外はこの大淀と明石だけだ。お前の所もそうだろうが、こいつらだけは最初から俺の傍にいる」

 

丁督「だから俺もこいつらだけにはちょっと他の奴らと違って特別な思い入れがあるんだ」

 

大淀「提督......」ポ

 

提督「いや、うちには大淀はいないが」

 

丁督・大淀「えっ」

 

那智「......」

 

提督「元々配属される予定だったのかは分からないが、今の鎮守府に着任した当初は全部仕事は一人でやってたからな......ああ、やはりいなかったと思う」

 

丁督「大淀?」

 

大淀「そ、そんな筈は......どんな鎮守府にも必ず一人は“私”が充てがわれている筈ですが......」

 

那智「大佐、その事なんだが......」

 

提督「ん?」

 

那智「確かにうちにも最初は大淀はいたんだ」

 

提督「なに、そうなのか?」

 

那智「ああ。だが、その......さっきも言ってた通り、仕事を全部一人でこなしてたろ?」

 

提督「ああ」

 

那智「本部から戦闘参加許可が貰えず、仕事の手伝いだけが唯一の存在意義だった大淀は、大佐に存在を気付いて貰えなかった事に悲観に暮れてその......」

 

提督「まさか自沈......」

 

那智「いや、食堂で鳳翔と一緒に調理の手伝いをしているぞ」

 

提督「 」

 

那智「本当に気付いていなかったのか?」

 

提督「あ、ああ......」

 

丁督「マジ......?」

 

大淀「ひどい......」ウル

 

那智「私が言うのもなんだが、大佐は妙なところで鈍感が過ぎる......。機会があったら是非、彼女に声を掛けてほしいんだが」

 

提督「確約する」

 

丁督「当たり前だな」

 

大淀「当然です!!」

 

提督「......申し訳ない」

 

丁督「おい、那智」

 

那智「あ、はい」

 

丁督「さっきは悪かったな。ま、そういう事だから今後とも宜しくな」

 

那智「あ、いえ。こちらこそ先ほどは失礼しました」

 

丁督「いいっていいって。それとな、こいつ早く連れて帰ってくれ。大淀が不憫だ」

 

提督「いや、まだ査察が......」

 

丁督「特務権限が与えられている提督の鎮守府に問題があるわけないだろ。いいからさっさと行け。帰れ。帰って大淀とベッドインだ」

 

那智「おい」

 

大淀「提督それは......」

 

提督(言い返したいが、立場的に今は無理だな)

 

丁督「悪い、失言だった。ま、取り敢えず適当に済ませて早いとこ帰れよ。んで、機会があったら今度酒でも飲もうぜ」

 

提督「了解した」

 

コンコン

 

 

ガチャ

 

龍田「提督ぅ~、第一艦隊帰還したわぁ。長門さんのお帰りよ。もう凄い格好なんだからぁ」

 

丁督「ん。分かった直ぐ行く。じゃ、大佐そういう事だからちょっと失礼するわ」

 

提督「ああ」

 

丁督「用事が済んだらさっさと帰れよ。挨拶とかはいらねーからな」

 

提督「分かった」

 

丁督「......またな」

 

中佐はそういうと拳を提督の前に差し出してきた。

 

提督「ふっ......」

 

提督も同じく拳を突出し彼の拳に軽く当てた。

 

ゴッ

 

中佐は提督からその反応を受ける否や、それ以上は何も言わず、踵を返して長門を迎えに行った。

 

龍田「男同士の友情ってやつですかぁ~。素敵ねぇ♪」

 

提督「......ありがとう」

 

提督はその場にいた全員と、今日この機会を与えてくれた偶然(?)に心から感謝し、誰にともなくそう呟いた。




はい、ちょっと長くなりましたが、提督と中佐の話でした。
スタンスは全く違いますが、お互い信頼できる仲っていいですよね。
中佐の所は些かオープン過ぎる気もしますが。

あと、大淀可哀そう。


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第33話 「仲直り」

査察から帰った提督は、早速大淀に謝罪するために厨房へと向かいました。
果たして上手く行くのでしょうか。


鳳翔「大淀さん、次はこれを浸しておいてください」

 

大淀「はい、分かりました」トントン

 

鳳翔「お汁の方はどうですか?」

 

大淀「大丈夫だと思います。はい」

 

鳳翔「ん、失礼しますね。ズズ......」

 

大淀「もう少しお味噌足します?」

 

鳳翔「いいえ、大丈夫です。美味しいですよ」

 

大淀「よかったぁ♪」

 

 

提督「......」(本当に居た)

 

提督(どうする、今まで存在に気付かずに一年以上は経っているぞ。これはもうれっきとした虐めだ)

 

提督(自然に話しかけた方がいいか? いや、やはり先ずは土下座も辞さない構えで謝罪の意を表した方が......)

 

提督「ブツブツ......」

 

鳳翔「え? 大佐どうしたんですか? 厨房に来るなんて初めてですよね?」

 

提督「む」(しまった)

 

大淀「!」ビクッ

 

提督「いや、まぁ......その、大淀......に用があってな」

 

鳳翔「大淀さんですか? 居ますよ。でも、ここまで来るなんて珍しいですね、執務室ではお会いになられなかったんですか?」

 

提督「いや......会うというか......」

 

鳳翔「?」(何か歯切れが悪いわね。凄く珍しい)

 

提督「まあとにかく大淀をちょっと借りていいか?」

 

鳳翔「ええ、構いませんよ。夕食の準備はもう殆どできましたから。大淀さん」

 

大淀「......知りません。大淀って誰ですか? そこに誰かいるんですか?」

 

鳳翔「え?」

 

提督「......」(当り前だが激怒しているな)

 

鳳翔「お、大淀さんどうしたの?」(何か急に機嫌が......?)

 

大淀「あ、鳳翔さんごめんなさい。鳳翔さんはちゃんと見えますよ。でもあそこに誰がいるのかは私にはちょっと判らないんです。ごめんなさい」

 

鳳翔「ええ!?」

 

提督「大淀......」

 

大淀「......」プイッ

 

鳳翔「た、大佐。これってどういう事です?」

 

提督「あ、うむ。その、実はな......」

 

鳳翔「......酷い」

 

提督「弁明の余地もない」

 

鳳翔「いえ、これは弁解も無理ですよ」

 

提督「......だな。失言だった」

 

鳳翔「まさか大佐がこんなに鈍感だったなんて......」

 

提督「申し訳ない」

 

鳳翔「謝らないといけないのは、大淀さんにですよ?」

 

提督「もっともだ」

 

大淀「......」ツーン

 

鳳翔(あの大淀さんがここまで......でも、流石に仕方ないわよね)

 

提督「どうしたらいいだろうか......あ、いや。他人に助けを求めるのは筋違いだなこれは」

 

鳳翔「え? 他人?」カチン

 

提督「ん?」

 

鳳翔「大佐、私と貴方は既に結ばれた仲ですよね?」

 

大淀「!?」

 

提督「結ば......おい、いきなり何を」

 

鳳翔「言い替えれば恋仲です。それを“他人”と言いますか?」ニコ

 

提督「待て、鳳翔。それは誤解だ。あくまで第三者という意味での他人であって......」

 

鳳翔「そ・れ・で・も! 私の前では言って欲しくないです」プクッ

 

提督「心得た。了解だ。だから機嫌を......」

 

大淀「大佐ぁ?」ユラァ

 

提督「お、大淀? お前俺を無視してたんじゃ......」

 

大淀「そんな事は今はどうでもいいんです。それより、さんざん私の事に気付かなかった癖に」

 

大淀「私がこうやって厨房が居場所になってしまった間に大佐、貴方は一体何を......」ワナワナ

 

提督「ぐ......」(手詰まりだ。最早死んで詫びるしかない)

 

鳳翔「大佐?」ズイ

 

大淀「大佐ぁ?」ズズイ

 

提督「悪かった......この過ち、死んで償うか......」

 

鳳翔「そ、そこまでしなくていいです!」(言い過ぎちゃった!?)

 

大淀「別にそこまで望んではいません。じゃ、何でも私の言う事聞いて下さい」

 

鳳翔「え?」

 

提督「分かった。可能な範囲で善処する」

 

大淀「......無責任に全部叶えると言わないだけマシですね。それでは一つ目ですが」

 

提督「ああ」

 

大淀「もう仕事の手伝いはしたくありません。ここ(厨房)で働きたいです」

 

提督「っ、それは......仕方のない事だよな」

 

大淀「勘違いしないで下さい。別に元々の職務が嫌になったわけじゃないです。ただそれ以上にここでの仕事が好きなったんです。いいですか?」

 

提督「......勿論だ」

 

大淀「では2つ目です。もう私の事を見失わないで下さい。これは絶対です。いいですね?」

 

提督「......この命に代えても」

 

大淀「3つ目ですが、これで最後です。私も大佐の恋人にしてください」

 

提督「......俺の?」

 

大淀「何不思議そうな顔をしてるんですか? まさか嫌だとでも?」

 

提督「いや、そんなことは......。だが、俺だぞ? 今までずっとお前の事に気付かなかった最低な男だぞ?」

 

大淀「それはわざとじゃなかったんですよね? なら本当に大負けで許してあげます」

 

大淀「その代りに失った時間の分、つまり過程を飛ばして私を恋人として受け入れて下さい。今度はきちんと私に自分も大佐の大事な艦であるという自覚を下さい」

 

提督「......」

 

大淀「以上です。いですよね?」

 

提督「断わるわけがないだろう。その条件、全て受け入れさせて貰う」

 

大淀「......なら、いいです。今までの事は水に流してあげます」ニコッ

 

提督「本当にすまない。そしてありがとう......」

 

鳳翔「あ、あの!」

 

提督「うん?」

 

鳳翔「わ、私も。私も1個だけお願いがあります」

 

提督「遠慮するな。言ってくれ」

 

鳳翔「き、キスして下さい。改めて私が貴方の恋人だという証明が欲しいです......」

 

提督「......分った」

 

大淀「......大佐、4つ目追加です。私もそれ下さい」

 

提督「......了解した」

 

 

チュ......チュ

 

 

鳳翔「はい、これで♪」

 

大淀「仲直り完了です♪」

 

提督「......溜飲が下がる思いだ」




大淀って実際に使えるようになったらどんな事喋ってくれるんでしょうね。

筆者はあの人に笑顔で踏まれt


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第34話 「心労」

鳳翔と大淀との一件以降、提督は疲れが溜ったせいか、執務室でボーっとしていました。
そんな大佐を見て暇そうだと判断したのか、島風と雪風が執務室に遊びに来てまいました。


島風「大佐ー、ヒマー」ゴロゴロ

 

提督「......そうか」

 

雪風「島風ちゃんソファーの上でゴロゴロしちゃダメだよ。大佐に怒られちゃうよ」

 

提督「......」

 

雪風「大佐?」

 

提督「ん? ああ、悪い。なんだ?」

 

雪風「あ、いえ......」

 

提督「?」

 

島風「大佐なんだか疲れた顔してるー」

 

雪風「し、島風ちゃん!」

 

提督「俺が?」

 

島風「うん。だって、ずーと机で腕組んでるだけなんだもん」

 

提督「ん? ああ、これは......今は休憩中だからな」

 

雪風「休憩中に腕を組むなんて、何か考え事ですか?」

 

提督「いや、考え事というわけじゃないんだが......」

 

島風・雪風「?」キョトン

 

提督「......子供はいいな」

 

島風・雪風「え?」

 

提督「無邪気で、元気で、素直で......」

 

雪風「え、あの? 大佐?」

 

島風「むぅ、わたしは大佐が言うほど子供じゃないよ!」

 

提督「ははは。まぁそうムキになるな。可愛いけどな」ナデ

 

島風「!?」ゾゾ

 

雪風「ひっ」ビクッ

 

提督「ん? どうした?」

 

雪風「え? な、なんでもないです......よ?」

 

島風(な、撫でてもらったのに何だか凄く怖......かった? なんで......?)

 

提督「ん? 二人して一体どうしたんだ?」ニコ

 

島風・雪風「!?」ゾゾゾ

 

島風「大佐......何かあったの?」

 

提督「え?」

 

雪風「そんなに愛想が良くて笑う大佐なんて大佐じゃないです......」グス

 

提督「なに?」

 

島風「あ、今の大佐っぽい!」

 

雪風「ほ、本当です! ちょっと怖くて気分を害した顔をしてました!」パァ

 

提督「......お前たちは一体何を言ってるんだ」

 

不知火「いつもの大佐らしくないと言っているんです」

 

島風「わっ、不知火ちゃんいつの間に」

 

不知火「失礼。休憩中の所為かは解りませんが、ドアが開きっぱなしだったもので」

 

提督「ああ、ドアを閉めるのを忘れていたのか」

 

雪風「......大佐」

 

提督「ん?」

 

雪風「なんだか疲れてません?」

 

 

不知火「なるほど。つまり鳳翔さん達に振り回された所為で大人の女性との恋愛に飽きて少女趣味になったと」

 

提督「おい、自然に自分の願望を織り交ぜて俺の心労を曲解するな」

 

雪風「そうだったんですか......大人の恋愛は大変なんですね」

 

提督「雪風ありがとう。お前は天使の様に優しいな」ニコ

 

雪風「ひぃ!?」ゾゾ 不知火「っ!?」ゾゾ

 

島風「もう! 二人を苛めちゃだめだよ大佐!」

 

提督「はっ」

 

不知火「......なるほど。これは重症ですね」

 

雪風「完全に心の癒しを子供に求めちゃってますね」

 

島風「それってダメなの?」

 

不知火「不知火達的には幸運なんでしょうけど......」

 

雪風「大佐本人の性格が壊れてちゃダメですよ......」

 

提督「俺は......」フルフル

 

雪風「あ、ようやく自覚してきたみたいです」

 

不知火「大佐、不知火達に癒しを求めるのは結構ですが、ご自分を見失っては困ります。求めるなら“卑し”にして下さい」

 

提督「おい、不知火。お前今どういう意味で同じ音の言葉を二回言った?」

 

島風・雪風「?」

 

不知火「不知火は下着くらいなら大佐に平気で見せることはできますよ?」ピラ

 

雪風「きゃっ」カァ

 

島風「パンツを見られるのが平気なのがどうかしたの?」キョトン

 

提督「よし、俺はった今完全に調子を取り戻した。だからお前たちはここから出ていけ」ヒラヒラ

 

雪風「ええ!? 雪風もですか!?」ガーン

 

島風「わたし何もしてないよ!?」プク

 

不知火「反省しました。なのでここに居させてください。頭撫でてください」

 

ギャーワー

 

 

提督(ふぅ......やはり何だかかんだ言って、こいつら無邪気な反応は癒しになるな」

 

 

 




どうも、疲れが抜けず、大体寝落ちして最近投稿ペースが落ちている筆者です。
明日は休み、休みの日くらい多く投稿したいですね。


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第35話 「完遂」

夜戦の装備が充実して来たこともあって、提督は蓋が微大規模なサブ島沖海域の制圧作戦に出る事にしました。
今回は上手くいくのでしょうか。


サブ島沖海域、危険区域

 

鈴谷「これで......決まりじゃん!!」

 

ドォーン!

 

タ級A「......!!!」

 

足柄「悪いわね、これで終わりよっ」

 

ズガァォーン!!

 

タ級B「っ!?」

 

夕立「バイバイ! もう会いたくないけど、君本当に強かったよ!」

 

響「今度は艦娘として生まれ変わってきてね」

 

チュドーン!!

 

ヘ級・ヨ級「......」

 

Bis「貴方の海はここでお終い! Auf Wiedersehen!(ッフヴィーダーゼーン)」

 

ズドォォォン!!

 

戦姫「xxxxxx!」

 

金剛「Hey! 逃がさないヨ! ......See you again!!」

 

ドウ!......ヒュゥゥゥゥゥ......ッ、バァァァァァァン!!

 

ワ級「!!!!!」

 

金剛「Yeah!! やったネー!!」

 

Bis「勝ったわぁぁぁ!!」

 

足柄「ふぅ......やっと終わった」

 

鈴谷「あ、緊張が抜けたらおしっこしたくなっちゃった」

 

響「感動が一気に台無しだよ......」

 

夕立「あははは! でも、分かる。夕立も」

 

金剛「二人とも! ちょっとは勝利のヨインにひたらせてヨ!?」

 

Bis「......」プルプル

 

足柄「我慢しなさいよ?」

 

響「さ、大佐に勝利の報告をしに行こうか」

 

 

~提督執務室

 

加賀「大佐、先程金剛さんからサブ島沖海域の完全制圧が完了したとの報告がありました。彼女たちも間もなく帰還するものと思われます」

 

提督「そうか......やっと、か」

 

加賀「......長かったですね」

 

提督「まぁな。夜戦用の装備がある程度揃っていたからなんとかなったが、それまでは本当に制圧できるか疑問に思うまでになっていたからな」

 

加賀「お疲れ様です」

 

提督「ありがとう」

 

加賀「あと、追加で報告があるのですが」

 

提督「なんだ?」

 

加賀「制圧の可能性に手応えを感じてから、彼女たちの希望だったとは言え、連続で出撃した事により資材が少々......」

 

提督「まぁ、それは覚悟の上だ。どんな状況だ?」

 

加賀「こちらを」

 

『鎮守府保有資材数量:燃料・鋼材・ボーキ/6桁 弾薬/4桁』

 

提督「まぁ、毎度の事だが弾薬が厳しいな。まだ4桁をギリギリ維持してるだけマシか」

 

加賀「安心しているところ申し訳ないのですが、更に追加の報告があります」

 

提督「なに?」

 

加賀「今回の出撃で2交代制で出撃していた霧島のグループで川内が上位改造可能練度に達しました」

 

提督「なるほど、改造か......許可しないつもりはないが確かに出費が痛いな」

 

加賀「残念ながら上位改造を受けられるようになったのは川内だけではありません」

 

提督「ん?」

 

加賀「今回の戦果で本部より勲章が授与されることになりました」

 

提督「利根と筑摩......」

 

加賀「そうです。二人とも既に改造を受ける事ができる練度には達しいます。加えて、これで必要な勲章の数も揃う事になります」

 

提督「......弾薬はどれくらい残る?」

 

鎮守府内で「運動不足による不満が爆発するレベル、でしょうか」

 

提督「......」

 

加賀「またあそこの提督にお願いしますか?」

 

提督「今回ばかりは仕方あるまい」

 

加賀「分かりました。後ほど連絡を取ってみます」

 

提督「頼む」

 

加賀「最後にまだ報告があるのですが」

 

提督「まだあるのか」

 

加賀「これで最後です」

 

提督「なんだ」

 

加賀「今回の作戦でマリアさんが成長限界に達しました」

 

提督「......」

 

加賀「幸い、本人はまだ気づいてないようですが......」

 

提督「......」

 

加賀「大佐」

 

提督「ああ」

 

加賀「指輪、どうします?」

 

提督「......お前と長門は確かレベルは一緒だったな。いくつだ」

 

加賀「もうすぐ98になります」

 

提督「......そうか。直ぐ、だな」

 

加賀「大佐......」

 

提督「......本部に指輪を発注する」

 

加賀「っ、大佐......!」ウル

 

提督「もう決めた。......いいか?」

 

加賀「き......聞かないでくだ......さい......ぐす」

 

提督「加賀......」

 

加賀「大佐っ......」

 

チュッ

 

提督「ん......」

 

加賀「んちゅ......ちゅ、ちゅ......ぺろ」

 

提督「ちゅ......加賀、ここでは駄目だ。もうすぐ金剛達も帰って......んぐ」

 

加賀「はぁ......ちゅ、分かって......ます。キス、だけ......」

 

提督「いや、だから金剛達が......」

 

バン!!

 

 

鈴谷「うぅ、トイレトイレ~! あ、大佐。大佐のトイレちょっと貸し......」

 

夕立「たっだいまぁ! あれ鈴谷さんどうし......た......」

 

Bis「ねぇ、二人とも行かないの? なら私が先......さ......き!?」

 

足柄「どうしたの? 大きな声を出して何かあっ......た......」

 

金剛「大佐ァ! 勝利の報告をしにき......って何をしてるネェ!?」

 

響「見境がないね。そういうのも有り、かな」

 

提督「......皆、落ち着け。これは......んんっ」

 

加賀「ダメです。大佐、今は私だけ見て......ん、ちゅ......」

 

金剛「ちょ、ちょっとぉ!!? やめるデス!!」

 

Bis「な、なんで加賀だけなの? 私も! 私もして欲しい!!」

 

足柄「......う」カァ

 

響「して欲しいならしてって言えばいいと思うけど?」

 

鈴谷「鈴谷ちょっといきなり乱交はぁ......あ、漏れちゃう。大佐、トイレ貸してね!」

 

バタン

 

夕立「ああ、羨ましいけど、こっちも余裕ないっぽい~! 鈴谷さん早く早くぅ!」モジモジ

 

金剛「加賀ァ! 独り占めはダメよ! 代って代っテ!」

 

Bis「ちょ、ちょっと待ちなさい。ジャンケン! ジャンケンで公平に決めるのよ!」

 

足柄「あ、あの......それわたしも......」

 

加賀「んちゅ......ごめんなさい。もうちょっとだけ......」

 

提督「か......ん......」

 

加賀「っはぁ......大佐」

 

提督「加賀もうや......ん?」

 

加賀「大好きです。そしてありがとございます」ニコ

 

チュ

 

金剛「ちょっとー!?」ブァッ

 

Bis「わ、私もしてよぉ!?」ジワ

 

足柄「わ、わたしも忘れちゃ嫌......よ?」グス

 

コンコン

 

響「夕立、まだ? 私も使いたい」

 

鈴谷「うわっ、すっごい状況。修羅場ってやつ?」ニヤニヤ

 

提督(せっかく持ち直した気力が......資材が......作戦の成功を喜ぶ機会が......や、やはり子供が一番......)

 

チーン




いろいろ限界を超えて気力が尽きた提督は、その後持ち直すのにまた駆逐艦を呼んだとか呼ばなかったとか。

というわけでほぼ半日だらだらやって5-3クリアできました。
いやぁクリアするのに8か月近く掛かりましたよ。
どれだけ筆者が下手くそが良く分かりますねw

あと、ビスマルクともケッコンしてしまったし、利根、筑摩、川内も改装したし......あ、マジで弾薬が......。


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第36話 「改造2」

利根と筑摩とついでに川内が上位改造から帰ってきたみたいです。
3人とも三者三様の表情をしていますが、どの顔も嬉しそうです。



利根「大佐、戻ったぞ!」

 

筑摩「只今戻りました♪」

 

川内「戻りましたぁ。にん!」

 

提督「......」

 

利根・筑摩「......」

 

川内「ちょ、何か反応してよ!!」

 

提督「ああ......改造を受けたん......だな?」

 

川内「受けましたよ! 失敗なんかしてませんよ!?」

 

利根「川内の奴は極端なのじゃ。吾輩の様にこう恰好良くないと、な?」

 

筑摩「姉さん、素敵です♪」

 

川内「いや、私だってこのデザインはどうかと思ってるから! 希望のと大分違って驚いてるから!」

 

提督「服のデザインはお前達の希望だったのか」

 

利根「うむ。吾輩前々からこういう妖艶な雰囲気の服を着てみたくてな」

 

筑摩「私はちょっと恥ずかしかったのですが、姉さんと一緒ならという事で」

 

提督「その様子を見るとかねがね希望通りみたいだな」

 

利根「うむ、吾輩は満足じゃ♪」

 

筑摩「......」ピラッ(大佐、こういう服好きなのかな......)

 

川内「私は神通みたいに凛々しくも可憐で、それでいて威厳があるのって言ったのに......なんで忍者になるのよ!?」

 

提督「何となくどうして川内がこうなったのか解った気がする」

 

筑摩「そうですね。何事も注文を付け過ぎてはいけませんね」

 

利根「恐らく、技術部も川内が何を求めているのか解らなくなったのじゃろうな」

 

川内「だからってなんで忍者なのよぉ!? こんなカッコイイマフラーまでくれちゃってさ!」モフモフ

 

提督「......実は気に入ってるんじゃないか?」

 

川内「そんなわけないでござろう! ......あ」

 

提督「......」

 

利根「単純な奴じゃ」

 

筑摩「に、似合ってますよ。川内さん」

 

川内「うう......」プルプル

 

提督「......ふぅ、川内」

 

川内「な、なんです......か」

 

提督「これでやっとお前の本領が発揮できるな」

 

川内「え?」

 

提督「忍は闇の中でこそ本領を発揮するものだからな。お前は以前から夜戦を得意(希望)としていたし、これでようやく完全体になったんじゃないか?」

 

川内「か、完全体......」

 

利根(大佐め......言いよる)

 

筑摩(これってただ言いくるめてるだけよね? 川内さんが納得するならいいけど......)

 

提督「夜戦の王、正に“夜王”だな。前回のサブ島沖攻略作戦、お前の改装が間に合っていればもう少し作戦の成功が早かったかもな」

 

川内「や、夜王......!」キラキラ

 

利根(落ちたな)

 

筑摩(凄く目が輝いてる......)

 

提督「川内、お前の今後の活躍に期待しているぞ」

 

川内(期待!)

 

川内「は、はい! どうぞこれからの川内の活躍にご期待ください! 夜王の異名に相応しい働きを示して見せます!」

 

提督「ああ。期待しているぞ」

 

川内「はい!」トテテ

 

提督「?」

 

川内「......」ジッ

 

ポン

 

提督「頑張れよ」ナデナデ(まるで犬だな)

 

川内「あ......えへへ♪」

 

利根・筑摩「......」

 

利根「大佐よ」

 

提督「ん?」

 

利根「吾輩達には期待てくれないのか?」

 

筑摩「ほら! 火力も上がりましたし、水上爆撃機だって飛ばせますよ!」

 

提督「ああ、勿論お前たちにも――」

 

川内「大佐ぁ、手が止まってますよ。もっと、もっと撫でて下さい♪」スリスリ

 

利根「ほう......」

 

筑摩「へぇ......」

 

提督「おい、何を考えている」

 

利根はいきなり四つん這いになると、そのまま提督に近づいてきた。

元々深いスリットから覗いていた太ももが、四つん這いになる事によって更に露出し、その艶かしい肌が提督の目にも明らかになった。

 

利根「大佐ぁ」

 

提督「......なんだ?」

 

利根「吾は......利根も撫でて欲しい、ワン」スリスリ

 

川内「なっ」

 

提督「そんな事をしなくても撫でるくら――」

 

筑摩「大佐......筑摩も撫でて欲しいです......あ、ワン」スリスリ

 

川内「 」

 

提督「筑摩、お前まで......」

 

利根「大佐ぁ撫でてくれないのか? それならお主の胸を借りるしかないぞ」

 

ピト

 

筑摩「ん~♪」スリスリ

 

川内「なぁ!?」

 

利根「ん~、大佐の胸は大きくて硬いのぉ。逞しい男の胸そのもじゃ。これは癖になるワン♪」スリスリ

 

提督「おい、利根。撫でてやるからやめ――」

 

筑摩「大佐......筑摩も忘れないで下さいワン」ギュッ、ピト

 

川内「にゃぁ!?」(震え声)

 

提督「......腕に当てるな」

 

筑摩「何事ですか、ワン? 筑摩はい犬なので何を言ってるのか分からないです、ワン♪」スリスリ、ムニュムニュ

 

利根「大佐ぁ♪」スリスリ

 

筑摩「大佐......」ムニュムニュ

 

提督「......」(もう、気が済むまで放っておこう)

 

川内「......」ムニュムニュ

 

川内「......っ、!」ブァッ

 

提督「川内? 何を泣いて......」

 

川内「大佐っ、大佐はやっぱり胸が大きい子がいいんですかぁ!?」メソメソ

 

提督「なに?」

 

川内「私は別にある方じゃないけど、それでもゼロじゃないですよ!?」

 

提督「そんなに必死に訴えなくても分かって――」

 

川内「じゃあ私の事を忘れないで下さい! 撫でてぇ!」ビィッ

 

提督「......」

 

 

数十分後

 

川内「ぐす......すん......」ギュッ

 

利根「~♪」スリスリ

 

筑摩「ん......んん♪」ギュムギュム

 

提督(俺は何してたんだっけな......)ポンポン、ナデナデ




俺も利根犬とかいたら速攻で飼ってますね。
あと、「ついで」なんて前書きで書きましたが、川内犬も大好きです。
ちょっとイジメたくなるところが最k


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第37話 「贈り物」

ビスマルクが何やら嬉しそうな顔で一人しかいないのに、なにやら港で幸せオーラを振りまいてます。
そんな彼女を見掛けた金剛が興味を持ち、話し掛けてきました。

ガールズトーク開始!


Bis「~♪」

 

Bis「……」サッ、ジッ......

 

Bis「えへへ♪」ニコニコ

 

金剛「Um? hey マリア。何だか嬉しそうネ!」

 

Bis「あ、金剛。うん、まあね♪」アシプラプラ

 

金剛「どうしたデス?」

 

Bis「んー? 実はぁ、私も金剛と一緒で大佐に指輪を貰ったの♪」

 

金剛「Oh really? マリアいつの間にかそんなにレベルが上がってたのネ」

 

Bis「まぁ、私自身が気づいてなかったくらいだから、自分でも意外だったわ」

 

金剛「これで指輪を持つ best friend が増えまシタ。ワタシ嬉しいネ♪」

 

Bis「加賀や長門ももう直ぐって聞いたわ。意外に一夫多妻な提督の環境早くできそうね♪」

 

金剛「ま、いくら wife が増えても大佐への愛は負けるつもりはないケドネ!」

 

Bis「それは私もよ?」

 

金剛「フフン、いい返事デス」

 

Bis「あたなも、いい意気込みだわ」

 

金剛「......」

 

Bis「......」

 

金剛「ぷっ、あはは♪」 Bis「フフ♪」

 

Bis「はぁ、でもケッコンかぁ、結婚......ふふ♪」

 

金剛「......」(本当に幸せそう。可愛いなぁ)

 

金剛「ネェ、マリア」

 

Bis「ん、なに?」

 

金剛「これで晴れて夫婦になれたんだカラ、これからは遠慮なく大佐に kiss とかができるネ♪」

 

Bis「っ、そ、そうね......夫婦なんだからキスくらい普通よね......よし、これからはしてみよう」グッ

 

金剛「人の事と言えないケド、マリアも本当に大佐の事が好きネ」

 

Bis「え? うん、まぁ......私が艦娘という事もあるんだろけど......」

 

金剛「ケドなに? もしかして大佐に惚れた story でもあるノ?」

 

Bis「結構単純よ? 私がここで生れた時、戦艦ではただ一人の海外艦だったから表面は取り繕ってても実は内面では寂しかったの」

 

金剛「うんうン」

 

Bis「そんな時、大佐が私に声を掛けてくれたの『一緒に釣りでもしないか?』って」

 

金剛「Oh 釣りですカ......」

 

Bis「ふふ、そうよ? 金剛の思っている通り何も釣れなかったし、ただ座っているだけで凄く退屈だったわ」

 

金剛「で、ですヨネ......」

 

Bis「でもね、その時大佐が私に言ってくれたの『今までこんなに周りを気にしないで退屈な事があったか?』って」

 

金剛「ハァ?」

 

Bis「そうよね。そういう反応しちゃうわよね。私も実際そんな反応をしたんだと思う。そしたら大佐が今度は『今本当にストレスのない顔をしてるぞ』って」

 

金剛「ん......」

 

Bis「その時からかしら。私が大佐に対しては気兼ねなく接するようになったのは」

 

金剛「それがきっかけデ、いつの間にか惚れてたカンジ?」

 

Bis「そうね。そうだと思う。実際、それから大佐と関わる度にどんどん好意をもつようになったし」

 

金剛「そっかァ。フフ、なんだかワタシと似てるネ」

 

Bis「金剛もそうだったの?」

 

金剛「ワタシは......金剛型の中でも取り分け“私”は提督に好意を持ち易いようになってるみたいデ」

 

金剛「最初はワタシも大佐が好きなのは当たり前、というヨり仕方がないといった感覚だったワ」

 

Bis「......」

 

金剛「でも、ワタシがどんなに積極的に接しても大佐の態度はあまり変わらなかったノ。いつも避けてたというカ、まともに相手をしてくれなかったとイウカ」

 

Bis「昔の大佐ネ」

 

金剛「ウン。でもね、その頃からあの人には、中々表には出してくれなかったケド、ワタシたちの事を常に気遣う心があったノ」

 

金剛「ワタシは、それに気づいた時から本当に彼に振り向いて欲しくてなっテ、努力するようになったワ」

 

Bis「ふふ、それって昔より過剰に接するようになったって事でしょ?」

 

金剛「あはは、まーネ。But 紅茶の美味しい淹れ方とかは本当に練習したワヨ?」

 

Bis「ああ、金剛の淹れてくれた紅茶は本当に美味しいわよね。私、それを飲むまではコーヒー派だったのに、今ではすっかり紅茶の方が好きになったわ」

 

金剛「Wow! それは大変な honor ヨ。Thank you very much ネ♪」

 

Bis「お茶一つで感謝し過ぎよ......あ、話してたらちょっと飲みたくなった」

 

金剛「良かったら飲みにクル? せっかく褒めてくれたんだし、淹れるワヨ?」

 

Bis「いいわね。ご馳走になろうかしら」

 

金剛「yeah! じゃ、早速行きまショウ♪」




金剛とビスマルクって、金剛は日本の戦艦だけど帰国子女な事もあって純粋な海外艦のビスマルクとは仲が良さそうな感じがします。

そんな事を思った時に浮かんだ話でした。


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第38話 「予想外」R-15

最近遠征で一人で部屋に戻る事が多かった三隈は、久しぶりに鈴谷達が揃っている時間帯に部屋に戻って、目の前に広がっている光景に愕然とした。


三隈「あ、貴女達あまりにもはしたないですわよ!」

 

最上「あ、三隈久しぶりー」

 

熊野「あら三隈さんお久しぶりですわ」

 

鈴谷「zzz」ポリポリ

 

三隈「す、鈴谷ぁ! 婦女子が寝ながらま、股を掻くんじゃありません!」

 

鈴谷「んー? なにぃ? うるさいなぁ」

 

三隈「うるさい、じゃありません! 鈴谷、この惨状は貴女の仕業ですわね!?」

 

鈴谷「え? なにいきなり?」

 

三隈「しらばくれても駄目ですわよ!」

 

鈴谷「だからぁ、鈴谷が何をしたっての?」

 

三隈「だ、だから......ゴニョゴニョ」

 

鈴谷「え? 何、聞こえない」

 

三隈「っ、ここにいる人たちが全員ショーツを穿いていない事です!」

 

鈴谷「あー、なんだそんな事。別に鈴谷は何もしてないし。皆暑いから脱いだだけだし」

 

三隈「え?」

 

鈴谷「そうっしょぉ? ねー皆ぁ」

 

最上「まぁね」

 

熊野「の、ノーコメントですわ!」

 

鈴谷「ね?」

 

三隈「そ、そんな.......」

 

三隈はその事実にが癖然とした。

 

鈴谷「てかミックンも暑かったからここでは脱いでいいんだよ?」

 

三隈「そ、そんな事するわけ......!」

 

鈴谷「一回やってみなって。凄くスース―してかえって気持ちいいよ? スカートってこの為にあるんだってくらい」

 

三隈「だから私はやらな――」

 

鈴谷「もうっ、強情だね! 一回やってみなって!」ズルッ

 

三隈「きゃぁぁぁ!?」

 

鈴谷「お? ミックンってば黒いの穿いてんじゃん。結構色っぽいの穿くんだねぇ」

 

熊野「く、黒?」

 

最上「へぇ」

 

三隈「か、返して!」

 

ゴト

 

鈴谷「はい。扇風機」

 

三隈「え?」

 

鈴谷「当てたら返してあげる」

 

三隈「何を......」

 

鈴谷「当てて気持ち良くなかったら返してあげる」

 

三隈「そんな......大体当てたらみ、見えちゃう.....」

 

鈴谷「女同士なんだから気にする事ないじゃん。ほら、鈴谷も見せるから」ペラ

 

三隈「や、やぁ......」

 

鈴谷「鈴谷のだけじゃダメ? ならクマノンとモガミンのも見たらいいよ」

 

三隈「ええ!?」

 

熊野「い、いきなりそんな事......。それに改めて言われると......」

 

鈴谷「あー、自分じゃ見せられない? じゃ、鈴谷が手伝ったげる」

 

熊野「け、結構ですわ! は、はい」ペラッ

 

三隈「な......熊野さん貴女まで......」

 

鈴谷「ね、クマノンのココってさ、鈴谷も人の事言えないけど、なんか赤ちゃんみたいで可愛いくない? 」

 

熊野「んいやぁ、鈴谷そんなこと言わないで......」

 

三隈「そ、そんなこと......知りません!」

 

鈴谷「純情だなぁ。ま、それがミックンのいいところだけどね。はい、次はモガミンだよ」

 

最上「僕はもう最初から見えてるじゃん。ほら、好きなだけ見なよ」

 

三隈「......」

 

鈴谷「ね? 皆そうでしょ?」

 

三隈「け、けどぉ......」

 

鈴谷「ほら、覚悟を決めてミックンも見せなって。案外一度やったら場所さえ限定すれば気にならなくなるって」

 

鈴谷「ほら、早く早く。皆も見たがってるよ」

 

熊野「三隈の......あ、いえ」カァ

 

最上「僕は別に......あ、でも黒い下着履いてたんだよね? 大人っっぽいの穿いてたって事はもしかして......」

 

鈴谷「えっ、もしかしてミックンって、生えてる?」

 

三隈「は、生えてませんわ!!」バッ

 

鈴谷「あ、本当だ。ミックンも生えてないね。てか、熊野んと一緒でなんか可愛い」

 

最上「あのさ、さっきから聞いてたら、僕のは可愛くないみたいに聞こえるんだけど?」

 

鈴谷「あ、そういうわけじゃないけどさ。ほら、クマノンとミックンって普段からちょっとお嬢様してるじゃん? だからなんというか」

 

最上「なるほどね。言いたいことは大体解ったよ。ふーん、でも言われてみれば......」ジッ

 

三隈「ひゃっ。そ、そんなに見つめないで......」カァ

 

熊野「も、最上近いですわ。い、息が......はぁ......」

 

鈴谷「ね、可愛いっしょ?」

 

最上「んー......」

 

ぷに

 

三隈「ひゃぁっ!?」

 

最上「へぇ、こんなにやわらかかったんだ。これはちょっと癖になるかも」

 

ぷにぷに

 

三隈「あ、ちょ、やっ。あぁんっ」

 

熊野(三隈さん恥ずかしがってるけど、気持ちよさそう......)

 

熊野「ん......」モジモジ

 

鈴谷「お? クマノンったら、もしかして発情しちゃった?」ニヤ

 

熊野「そ、それは......」カァ

 

最上「鈴谷、それ以上やると可哀そうだからやめてあげたら?」

 

鈴谷「ん? あ、そだね。やめよっか。可哀そうだし」

 

三隈・最上「えっ」

 

鈴谷「あ? もしかして期待してた? だったらメンゴ! 鈴谷一応そういう趣味ないっていうか、やるにしてもムードを大切にする方だから」

 

最上「同じく。ごめんね、生憎今はそういう気分じゃないんだ」

 

三隈(な、生殺し......!)

 

熊野(こ、この二人本当に天然......!?)

 

三隈「う、うぅ......べ、別に平気ですわ」プルプル

 

熊野「そ、そうです。な、何も期待なんかしていなかったですわ」プルプル

 

鈴谷・最上(可愛いなぁ)

 

最上(だからこの二人は本当に)

 

鈴谷(愛しくて弄り甲斐があるよねっ)




鈴谷と熊野は可愛いです。
が、意外に最上と三隈の魅力に気づかない人がいるようです。

かくいう筆者がそうであり、最近それに目覚めたのでこの話を書くに至りました。

なんか鈴谷と最上って、相棒に対する力関係が似てる気がします。


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第39話 「鬱」

その日の秘書艦は山城でした。
彼女は提督の仕事を手伝わずに物憂げな様子で窓を見つめるばかりです。
何となく声が掛け辛い状態だったので、取り敢えず提督はそのまま黙々と仕事をしていたのですが......。


山城「大佐、良い天気ですね」

 

ピシャッゴロロ!

 

ザァザァ......

 

提督「......」

 

山城「あらぁ? 急に嵐になっちゃうなんて、無礼にも姉様の真似をしちゃったからかしら?」ニヤァ

 

提督「......ズズ」

 

山城「まぁ、私なんてどうせ欠陥戦艦だし......こんな事言ったところで......」

 

提督「......」パラパラ

 

山城「はぁ......不幸だわ」フゥ

 

提督「......」カキカキ

 

山城「ちょっとぉ!!」バン

 

提督「やめろ、机を叩くな。字がズr」

 

山城「そんな事より何さっきから無視してるんですかぁ!?」

 

提督「......声を掛けて貰いたかったのか?」

 

山城「当たり前です!」バンバン

 

提督「叩くな。......前から思っていたが山城、お前の感情表現は解りにくい」ビシッ

 

山城「うっ......」

 

提督「憂鬱な気分なのは判るが、さっきまでの独り言では逆に声を掛け難いぞ?」

 

山城「そ、それでもぉ......」ウル

 

提督「泣くな。取り敢えず仕事をしろ。そうすれば仕事をしながら話を聞いてやるから」

 

山城「そこはせめて慰めてから仕事をする、って言って下さいよ!」

 

提督「駄目だ。今は余裕がないし、お前の力量を信じての事だ」

 

山城「わ、私の力......」

 

提督「別にお前は戦闘が全てというわけじゃないだろう?」

 

山城「あ......」

 

提督「鳳翔が料理が上手かったり、霧島が見た目に反して好戦的だったり、人には意外な長所があるものだ」

 

山城「大佐......」(最後の霧島のはどうなのかしら)

 

提督「助けてくれないか?」

 

山城「ええ! 分かりました! お任せください!」パァ

 

 

――2時間後

 

提督「......なるほどな、欠陥戦艦のジンクスから抜け出せないのと、俺に姉が取られそうで嫉妬していたわけか」

 

山城「もうちょっとオブラートに包んでくれないですか!? 直球過ぎです!」

 

提督「ここは下手に遠まわしに言うよりいいと思ったんだが」

 

山城「まぁ大佐らしいですけど......」

 

提督「ふむ。まず前者についてはそんなことはないと思う」

 

提督「お前は“航空戦艦”としては立派に活躍しているし、気にしている性能の落差も艦隊のメンバー編成によっていくらでもカバーできるしな」

 

山城「そ、そうかしら......」

 

提督「火力の低さを気にしているのか? 大丈夫だ。その代わりにお前は艦載機を搭載できる“戦艦”なんじゃないか」

 

提督「しかもその種の戦艦は現状、伊勢型とお前達扶桑型しかいない。これはなかなか貴重な存在なんだぞ?」

 

山城「う、うん......」

 

提督「それに、今後例え同種の新艦を抱えることになったとしても、それによってお前たちの扱いは変わること無い。これは予め約束する」

 

山城「大佐......」

 

提督「だから、な? 自信を持て」ポン

 

山城「あ、ありがとう......ございます。えへへ♪」

 

提督「後は扶桑の事か......。これは単純に俺が彼女の好意を丁重に断れば済む......」

 

山城「あ、それ却下です。それやったら姉様泣いてしまいます。そして泣いたら私もしかしたら大佐を......」

 

提督「物騒な事を言うな」

 

山城「まぁ、どうするかは半分冗談として」

 

提督「半分は何をするつもりだったんだ」

 

山城「(無視)姉様を泣かせるのは認められません」

 

提督「泣くのは確定なのか」

 

山城「悔しいですけど、姉様大佐の事大好きですから」

 

提督「......そうか。光栄の限りだがそれだとどうすればいいものか」

 

山城「簡単ですよ。私も大佐が好きになればいいんです」

 

提督「なに?」

 

山城「私も大佐が好きになれば、私の大佐への嫉妬心は今よりかはマシになると思います。この人なら好きになるのも仕方ないって」

 

提督「それはあまりにも強引な理論じゃないか?」

 

山城「大佐は私が嫌いなんですか?」

 

提督「極端だぞ。好きか嫌いの二択なら選択肢は一つしかないじゃないか」

 

山城「え? と、と言うと......?」

 

提督「好き、しかないだろう」

 

山城「きゅ、急に恥ずかしい事言わないで下さい!!」カァ

 

提督「......一体どうしろと」

 

山城「と、取り敢えずもう仕事終わってますよね?」

 

提督「ん? ああ、お蔭様でな。ありがt」

 

山城「じゃ、じゃぁこ、恋人になるステップとして私を抱きしめてください」

 

提督「おい、『好きになる』から既に『恋人になる』へステップアップしてるぞ」

 

山城「っ、い、いいですから! は、早く!」

 

提督「......もう直ぐ昼休みか。分からった、ほら」

 

ギュ

 

山城「あ......。そ、そのまま大佐の膝に座ってもいいですか?」

 

提督「ああ」

 

ギシ......

 

提督「これでいいのか?」

 

山城「ん......あ、あと......」

 

提督「ん?」

 

山城「わ、私がいいって言うまで頭撫でて下さい」

 

提督「了解」

 

ナデナデ

 

山城「ん......ふぅ......。そう、です。あ......うん、そのままですよ? まだ......まだですよ......?」

 

 

――数分後

 

山城「すー......すー......」

 

提督(案の定寝てしまった。これでは、撫でるのを終わる事ができないな)

 

グゥ......

 

提督「腹......減ったな」




扶桑より山城派の筆者です。
姉様LOVEではある意味、山城は比叡を超えるものがあると思います。
しかし、だからこそこっちも向いて欲しいものです。


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第40話 「最怖」

山城を寝かしつけてしまった提督は、空腹を覚えながらも眠気とも戦っていました。
これは、眠った方が気が楽かも、と思っていた矢先の事でした。


山城「すー......すー......」

 

提督(さて......これだけ熟睡してたら撫でるのをやめても気付かないだろ)

 

提督(外も晴れて陽が差してきた。俺も少し眠らせて......)

 

ピシャッゴロロロロ!

 

ザァァァァァァアアアアア!!

 

提督「......」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ......

 

扶桑「......」

 

扶桑「た・い・さ♪」

 

提督「扶桑......」

 

扶桑「山城に浮気ですか?」ニコッ

 

提督「お前には言い訳にしか聞こえないだろうが、俺は......」

 

扶桑「解っていますよ。大佐の愛は私だけに向けられているものではありませんからね」ニコ

 

「でも」

 

扶桑「流石に妹を手籠めにしちゃってるところを見ちゃうと、嫉妬しちゃっても仕方ないですよね?」ニコォ

 

ズゴゴゴゴゴゴゴ......

 

提督「......っく」

 

扶桑「大佐ぁ、まさか山城にだけこんな事をして、私には無しとか言いませんよねぇ?」

 

提督「いや、俺は今から昼寝でもしようかと......」

 

扶桑「じゃぁ、一緒に寝ましょう?」

 

提督「山城が......」

 

扶桑「それなら私にお任せ下さい」

 

扶桑「ん......っしょ、と」ヒョイ

 

山城「んむぅ......にゃぁ......?」

 

扶桑「山城、良い子ね......」ナデナデ

 

山城「ん~......♪」スリスリ

 

扶桑「はい、良い子良い子。ほら、ソファに行きましょうねぇ」

 

そ......

 

山城「ん......すー......すぅ......」

 

 

扶桑「はい♪」

 

提督「いや、何がハイ、だ」

 

扶桑「寝ましょう?」

 

提督「もうソファーが空いていない」

 

扶桑「ベッドがあるじゃないですか」

 

提督「昼間から何を......」

 

扶桑「大佐」

 

ピシャッ!! ゴロゴロッ!

 

提督「、っ」

 

扶桑「嵐......止んだ方がいいと思いません?」

 

提督「まさか......冗談だろ、流石に」

 

扶桑「大佐......」

 

ゴゴゴゴゴゴ......

 

提督「っく」

 

ピト

 

扶桑「休み時間の間だけでいいですから......」

 

提督「......一緒に寝ると暑いぞ? 汗の臭いも......」

 

扶桑「私シャワー浴びましたし、大佐の臭いなら別に......」

 

提督「降参だ。嵐を鎮めてくれ」

 

扶桑「えぇ? 何の事ですか? ふふ......」

 

 

提督「......なぁ」

 

扶桑「はい?」

 

提督「そんなに抱き着いて、暑くないか?」

 

扶桑「心地良いですよ? 私はこの温かさは大好きです♪」ギュッ

 

提督「臭い......本当に大丈夫か?」

 

扶桑「汗ですか? そうですね......くんくん」

 

提督「おい」

 

扶桑「あ、逃げないで下さい。ん......すん」

 

提督(これは......思ったより恥ずかしい)

 

扶桑「そうですね。確かに僅かですけどします」

 

提督「僅かか?」

 

扶桑「気にしないで下さい。私、この匂い好きです」

 

提督「汗の臭いが好きと言われてもな」

 

扶桑「臭い、じゃありませんよ。匂い、です」

 

提督「......」

 

扶桑「大佐こそ、私の......大丈夫ですか?」

 

提督「シャワーを浴びて来たんだろ? それこそ香り立つような良い匂いしない」

 

扶桑「ふふ、大好きです♪」ギュッ

 

提督「ん......足なんか絡めたら、見えるぞ」

 

扶桑「見てもいいですよ。自信がないわけじゃないですから」

 

提督「今は......な」

 

扶桑「ですね。じゃあ感触だけでも」グッ

 

提督「ふぅ......」

 

扶桑「あ、興奮してます?」

 

提督「お前に言われたくはないな」ソッ

 

扶桑「あ......」

 

提督「これくらいで今は我慢、だな」ナデ

 

扶桑「ん......これは寝過ごさないように注意しないと♪」

 

提督「同意だ」

 

 

グゥ~......

 

扶桑「......」

 

提督「すまん......」

 

扶桑「っぷ、くすす......山城ったら。大佐、ごめんなさいね」

 

提督「いや、山城は責めないでくれ」

 

扶桑「ふふ、大丈夫ですよ。お食事お持ちしますね」

 

提督「3人分頼む」

 

扶桑「......ありがとうございます♪」




妙高改二来ましたね!
俺の所はいつになるか分かりませんが。

それより、武蔵です武蔵!
造りたいけど弾薬が圧倒的に不足していて......泣きそうですorz


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第41話 「偶然」

“武蔵の建造許可が下りた。”

確実に建造できるわけではないものの、以前に彼女の付き添いでいた武蔵を見た時から久しぶりに大型建造に興味を持ち始めていた提督は、条件反射的にヤってしまったのである。

その結果は......。



提督「......」ダラダラ

 

大淀「......」ニコニコ

 

武蔵「?」

 

大淀「大佐、何か言う事は?」

 

提督「ない。敢えて言えば間が差したとしか......」

 

大淀「弾薬どうするんですか?」

 

提督「そこは、武蔵の誕生祝という事にはいかないだろうか。仮にも一回で生まれて来てくれたわけだし......」

 

大淀「その“一回”でこの鎮守府がどれだけ窮地に立つ結果になってしまったのか解ってます?」

 

提督「......そうだな。弾薬の交換の話が成立してなかったら終わっていたな」

 

大淀「全く、大佐らしくない......」

 

提督「申し訳ない。男というのはこういう時に衝動で動いてしまうものなんだ。今日俺も、その類の例に漏れないという事をつくづく痛感した......」

 

武蔵「な、なぁ。私生まれたら駄目だったのか?」

 

大淀「そんな事はありませんよ! 武蔵さんは間違いなく大戦力のひとつですから。わが鎮守府には絶対必要な戦艦です!」

 

武蔵「大戦力......! そ、そうか! そうハッキリ言って貰えると嬉しいものだな」テレテレ

 

大淀「問題は大佐です。間が差したとは言え、前の作戦で消費した弾薬の補充もできていなかったのにまさか大型建造をしてしまうなんて......」

 

提督「重ね重ね申し訳ない。腹を切れと言うのであれば、新しい提督着任の要請を次第すぐにこの場で......」

 

大淀「誰もそんな事言ってません。大佐の事大好きなんだから死なれても困ります。というか死ぬなんて絶対に許しません」

 

提督「申し訳ございません......」

 

武蔵(だ、大好きって......)

 

武蔵「な、なぁそんなに弾薬が......弾薬だけがヤバイのか?」

 

大淀「はい。それ以外は全く問題ありません。何せ弾薬以外は保有限界量を常に維持してますから」

 

武蔵「そ、そうか」(あ、結構私に向いてる鎮守府だったみたいだ)

 

提督「望月や加賀に会わせる顔がないな......」

 

大淀「正直に言った方がいいところでしょうけど......まぁ、表面上は取り繕ってごまかせるくらいの量はありますから。そこは私が何とかしてみせます」

 

提督「できるのか?」

 

大淀「その為に一時的にこの仕事に復帰したんです。執務専任の私の力、甘く見ないで下さい」

 

提督「頼もしいな。あ、いや、頼りない提督で本当にすまない」

 

武蔵「た、大佐。もうそんなに謝るのはやめてくれ。わ、私を建造してくれたんだろ? その事に関しては私は凄く感謝しているから」

 

大淀「そうですね。今回はただの戦力の拡充ではなくて、大幅な拡充になりましたからね。その点だけは喜ぶべきだと私も思います」

 

提督「......」

 

大淀「大佐、もうしませんか?」

 

提督「誓って」

 

大淀「今度からは建造する前に必ず相談してくださいね?」

 

提督「必ず」

 

大淀「キスして下さい」

 

提督・武蔵「え?」

 

大淀「何か?」

 

提督「いや......失礼する」

 

チュ

 

大淀「ん......ちゅ......ん......ふ......」

 

武蔵(わ...わ...)カァ

 

提督「ちゅ......ん......」(長い......)

 

大淀「ん......れろ......ちゅ......ふぅ」

 

提督「っ......ふぅ......はぁ」

 

大淀「はい。よく出来ました。これで全て許してあげます」

 

提督「あ、ああ。ありがとう」

 

武蔵(す、凄いキスだったな......)ポ

 

大淀「あ、武蔵さんもします?」

 

武蔵「ええ!? なんで私が!? あ、いや嫌いとかじゃないけどあまりにも振りが唐突というか」アセアセ

 

提督「おい、流石に無理があるぞ」

 

大淀「そうですか? この鎮守府にいる艦娘は基本、全員大佐の恋人だと思っていたのですが」

 

武蔵「こ、恋人......」カァ

 

提督「せめて本人の意思くらい尊重してやれ」

 

大淀「まぁ、そうですね。確かにそこは私の勝手でした。武蔵さんごめんなさい」

 

武蔵「ああいや、別に! 私も嫌だったわけじゃ!」

 

大淀「へぇ?」ピク

 

武蔵「え?」

 

大淀「“私の大佐”の恋人になる機会を自ら辞退したにも関わらず、キスは嫌じゃなかった?」

 

武蔵「え、いやそれは......」

 

大淀「武蔵さん、貴女は大変お強い戦艦なのでしょうが、大佐の事はあまり安く見ないで下さいね。でないと......」ゴゴゴ

 

武蔵「あわわ......」ジワ

 

提督(大淀ってこんな性格だったのか。あいつの所で見た大淀とは大分違う気がするな)

 

大淀「......後悔しますよ? いろいろと」ギロ

 

武蔵「ひゃ、はい!」

 

大淀「......なんて冗談ですよ。ちょっとこの鎮守府に配属になる上で軍人として心構えを持って欲しかっただけです」ニコ

 

武蔵「ふ......ぇぇ?」グス

 

大淀「私みたいな巡洋艦が偉そうな口をきいてごめんなさい。それじゃ、大佐。私は皆に武蔵さんを紹介する場を設ける準備とかをしてきますので」

 

提督「ああ、頼む」

 

大淀「あ、弾薬の件も忘れてませんからね。全てこの大淀にお任せ下さい。キスの分はしっかり働いてみせますよ」

 

提督「そうか......」

 

大淀「はい。あ、武蔵さん」

 

武蔵「はいっ」ビクッ

 

大淀「私は席を外しますので、後は大佐と適当に話して挨拶でもしておいて下さい」

 

武蔵「了解した。大淀殿!」ビシッ

 

大淀「そんなに畏まらないで下さいよ」ニコ

 

武蔵「す......申し訳ない!」ビクッ

 

大淀「だから大袈裟ですって。あ、もう行かないと。それでは失礼しますね」

 

バタン

 

 

武蔵「......」

 

提督「まぁその......怖かったな」

 

武蔵「!」ピクッ

 

提督「我慢しなくていいぞ」

 

武蔵「!」ピクピクッ

 

提督(ん? 髪が動いた......? 気のせいか)

 

武蔵「......」クルッ

 

提督「ん? 武蔵?」

 

武蔵「......た、確かに怖かった」プルプル

 

提督「そうだな。俺も気を付けないとな」

 

武蔵「な、なぁ」

 

提督「ん?」

 

武蔵「抱き着いていい......か?」グス

 

提督「遠慮するな」

 

武蔵「っ、......ふわぁあぁぁぁん! 怖かったよぉぉぉ!」ダッ

 

提督(しまった。こいつは戦艦、しかも大和が......)

 

ダキッ

 

提督「ぐぅっ......く......むぐ......ぐぁ」ドゴ

 

武蔵「ふぇぇぇぇん!」メキミシ

 

提督(耐えろ、耐え抜け俺......)

 

提督「む......さし」

 

武蔵「ぐす......なんだ?」

 

提督「もす......少し力を緩めてくれたら撫でてやれるんだが......」クラクラ

 

武蔵「あ......うん、撫でて欲しい」パッ

 

提督「っ......はぁ......ぜぇ......」

 

武蔵「あ、力......大丈夫か?」アセ

 

提督「気に......するな......。それよりほら......」

 

くしゃ......ナデナデ

 

武蔵「あ......ふぁう......ん......♪」

 

 

 

――数分後

 

武蔵「ん......♪」スリ

 

提督「落ち着いてくれてよかった」ナデ

 

武蔵「ん......この心地、良いな。好きだ」

 

提督「そうか。よかった」ナデ

 

武蔵「大佐」

 

提督「うん?」

 

武蔵「大佐は優しいな。それも嬉しかったぞ」カァ

 

提督「......あまり強さを誇るなよ。強すぎる自負は心の負担も増すからな」

 

武蔵「うん......この鎮守府に来た時からもう私は大佐の命令をちゃんと聞くと決めたからな。大丈夫だ」

 

提督「賢い子だ」ナデ

 

武蔵「んん♪ だから......もう少し、いいか?」

 

提督「遠慮するなと言ったろ?」ナデ

 

武蔵「ふぁ......ありがとう」




武蔵できましたよ!

やったね!
でもこれで夏イベントはある意味絶望的になったかもしれません。
これ......武蔵の弾薬を補給した時点で多分もう終わりだよな......。

ご利用は計画的にしましょう。


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第42話 「昼休み2」

武蔵の建造許可が下りて暫くした頃の本部のお話。
まぁ、それだけの話です。


武蔵「なぁ」

 

彼女「んー?」

 

武蔵「本部から各鎮守府へ“私”の建造許可が下りたらしいな」

 

彼女「そうね」

 

武蔵「ふふん」

 

彼女「......なにを自慢げにしてるの?」

 

武蔵「いや、いくら他の鎮守府の提督が“私”を造ろうが、ここにいる私は正真正銘の一人目だからな。他の奴は私がいるからできるわけで」

 

彼女「つまり自分がオリジナルなのが誇らしいのね」

 

武蔵「それだけじゃない。しかも私はお前に拾われた身だからな。やはり、作られた奴等とは違うんだよ」

 

彼女「......あまり差別的な発言をする子は好きじゃないわね」

 

武蔵「ご、ごめんなさい!」ブァッ

 

彼女「いちいち泣かないでよ。いくらなんでもあなたは私に対して隙があり過ぎ」

 

武蔵「だって、好きなんだ......仕方ない」

 

彼女「感情的な論理の帰結は認めませーん」

 

武蔵「い、意地悪しないで......!」グス

 

彼女「はいはい。分かったから」ナデナデ

 

武蔵「うん......」

 

彼女「それしても大和に続いて武蔵も、とはね」

 

武蔵「戦況の悪化か?」

 

彼女「どうだろう。今の状態だと戦い続ける限り決着はつかないからね。お互いに膠着が最も望ましい形なのだと思うんだけど」

 

武蔵「ふーん......敵が本気で来るのかも?」

 

彼女「それはそれで望むところよ。ここにいる艦娘は何れも全て“一人目”にして最強。まだ一部にしか公にしてない秘蔵艦もいる」

 

彼女「彼女たちに挑む事は私達の力を敵が思い知る事と同義。その時、私達は自分の仕事をして勝つだけよ」

 

武蔵「慢心はいけないぞ」

 

彼女「ふふ、慢心にしろ自惚れにしろ、自分に溺れる自信くらいないと提督なんてやってられないわよ。いい? 武蔵。だから私はあなたの提督なのよ?」

 

武蔵「......」ポー

 

彼女「ん? なに?」

 

武蔵「いや、カッコ良すぎて惚れ直してしまった」

 

彼女「あら、ありがとう」

 

武蔵「今晩は燃えそうだ」

 

彼女「仕事中よ。そういう話は休み時間」

 

武蔵「すまん」

 

彼女「解ってるからいいわよ。んー、それにしても敵が攻めてくるかも、かぁ」

 

武蔵「久しぶりに全力で暴れてみたいものだな」

 

彼女「あなたがそれをする時は死をも覚悟する時よ」

 

武蔵「私とて戦艦だ。それくらい分っている」

 

彼女「違う。解ってない。私は死んで欲しくないってい言ってるのよ?」

 

武蔵「っ......提督!」ダキッ

 

彼女「やめて。仕事できない」

 

武蔵「やだ。暫くこのままがいい」ムギュムギュ

 

彼女「またそんな事言って......あ、もうすぐ休み時間か」

 

武蔵「な? いいだろう?」

 

彼女「ま、いいか。温かいし」

 

武蔵「最近寒くなって来たな」

 

彼女「そうね。......そういえばあいつがいる所はずっと夏だったわね」

 

武蔵「大佐か?」

 

彼女「うん。あいつね、日本の四季が結構好きなのよ」

 

武蔵「そうなのか? それじゃあ大佐にとっては年中暑いあそこは苦痛だな」

 

彼女「ふふ、それがそうでもないの」

 

武蔵「? どういうことだ?」

 

彼女「あいつね。四季は好きだけど、寒いのが苦手なの」

 

武蔵「はぁ? はははは。なんだそれは」

 

彼女「面白いでしょう?」

 

武蔵「意外だ。大佐は表情がいつも硬いから何が苦手なのかも分り難かったからな」

 

彼女「でしょう? 寒いとね。あいつ本当に外に出ようとしないのよ」

 

武蔵「そうなのか?」

 

彼女「真面目な顔していろいろ理由を着けて炬燵からなかなか出ようとしないの」

 

武蔵「へ?」

 

彼女「風邪になるから、とか。霜焼けになるから、とか。それはもういろいろね」

 

武蔵「信じられないな......」

 

彼女「ま、学生時代の話だから今はどうか分らないけどね。でも少なくとも今の環境はあいつにとってそう悪くない筈よ」

 

武蔵「なるほどなぁ」

 

彼女「あ、休み時間がなくなっちゃうわね。武蔵、今日は食堂で食べるわよ」

 

武蔵「む......名残惜しが解放するか」

 

彼女「宜しい。行くわよ」

 

武蔵「ああ」

 

 

大和「......」

 

大和「中将、私達も食事行きましょう」

 

中将「あ? 私達も?」

 

大和「あ、いえ」

 

中将「儂は今から煙草を吸うから、食事ならお前一人で行っていいぞ」

 

大和「中将......」

 

中将「おいおい。何て顔するんだ」

 

大和「お父さん、行きましょう!」

 

中将「いやだ。爺ちゃんと言え」

 

大和「えっ」

 

中将「爺ちゃん」

 

大和「じ、じ......」

 

中将「ほれ、どうした?」ニヤニヤ

 

大和「じ......うぅ......」ジワ

 

中将「はははははは。よっしゃ、可愛い孫に泣かれちゃ敵わんから行くか」

 

大和「最初からそうして下さい!」




中将たち以外の軍人も出したいところ。
でも、塑像力がないのでどうしたものか、考えてる内にその機会を逃しそうです。
ま、それでもいいんd

武蔵が出た記念に思いついた話でした。
運営様、ネタ提供ありがとうございます。


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第43話 「対抗心」

何やら整備ドッグで戦艦達が集まり何かを話しています。
何を話しているんでしょう?
集まりの中心には戸惑った顔の武蔵もいました。


長門「……」ジーッ

 

武蔵「な、なんだ?」

 

長門「いや、前に見た時も思っていたがやはり......」

 

武蔵「一体何の話だ?」

 

長門「胸だ」

 

武蔵「は?」

 

長門「武蔵は胸が大きいな。これは扶桑......いや、もしかしたら愛宕か五十鈴以上か......?」

 

武蔵「藪から棒になんなんだ。いきなり胸なんて」

 

日向「武蔵の言う通りだ。胸なんて飾りだ」

 

長門「日向、いくら戦艦の中では胸がない方だからといってひがむのはよくないぞ」

 

日向「なに?」

 

比叡「そうですよ。いくら私達にも負けてるからってひがむのはよくないですよ!」

 

伊勢「嘘!? そうなの!?」ガーン

 

日向「長門に比叡、それは聞き捨てならないな。一体いつから私の胸の評価はそんなに下がったんだ?」

 

伊勢「そ、そうよ。少なくとも......榛名以上はあるんじゃない?」

 

榛名「......それは、榛名が小さいという事ですか?」

 

日向「ほら、自分でそう言うのは認めているようなものだろう」

 

榛名「な、なにを言うんですか! 大体、わたし達姉妹の中で一番小さいのは比叡お姉様です! 榛名じゃありません!」

 

比叡「榛名!?」

 

金剛「ワタシは普通だと思うケド、霧島は大きいヨネ」ボソ

 

霧島「余計な事を言わないで下さい!」ボソ

 

扶桑「誰が小さいなんてどうでも良い事ですよ。これから大きくなる可能性だってあるわけですから」

 

日向「いや、私はだから小さくはない」

 

伊勢「わたしもよ!」

 

比叡「いや、それはわたしd」

 

榛名「さして問題のない大きさだと思います」

 

山城「ふふ、まぁそこはお互いドングリの背比べしているといいわ」

 

扶桑「山城......言い方に気をつけなさい。皆だって気にしているのよ?」

 

山城「あ、ごめんなさいお姉様♪」チラ

 

日・伊・比・榛「……!」

 

武蔵「お、おい。もうそれくらいにしてくれ。誰が胸が大きくたっていいじゃないか」

 

扶桑「武蔵さん、そはいかないんです」キッパリ

 

武蔵「なぜ」

 

山城「武蔵さん、貴女が来るまで誰が一番戦艦の中で胸が大きかったと思います?」

 

武蔵「そんなの知るわけないだろ。それ以前に興味ない」

 

山城「貴女が興味なくても、こちらとしては大問題なんです! 武蔵さん、貴女がここに来るまではお姉様がトップだったんですよ!?」

 

武蔵「だからなんだと......」

 

扶桑「戦艦としては半端、航空戦艦としても伊勢達に負けていた中で唯一の誇りは......胸だったんです」

 

武蔵「そんな航空戦艦聞いたことないぞ......」

 

陸奥「ま、そこは持つ者の悩みってやつよ」

 

山城「というわけでまた不幸が増えてしまったんです。どうしてくれるんですか!?」

 

武蔵「知るか!!」

 

武蔵「大体、胸が大きいからと言ってなんだと言うんだ。自分以外喜ぶ奴がいるとでもいうのか?」

 

金剛「あ、一応自慢くらいには思っていたノネ」

 

武蔵「っ、そ、そんな事はどうでもいい! どうなんだ?」

 

長門「どうって、そりゃあ......」

 

陸奥「大佐が喜ぶんじゃない?」

 

武蔵「え? た、大佐は大きい胸が好きなのか?」

 

山城「そりゃあ小さいよりかは大きい方が好きなのは当たり前ですよ」

 

日向「待て。それはいくらんなでも早計だ」

 

伊勢「そうよ! そ、それに巨乳って感度が悪いっていうじゃない!」

 

長門「そんなことはないぞ?」

 

陸奥「まぁ......ね」

 

扶桑「私も......そう思います」

 

山城「お姉様!?」

 

日向「何でそんなに早く即答ができる。特に長門」

 

長門「ま、そこは経験者が語るというやつだ。結局は経験が無い者がどう言おうが、胸の有る無に関わらず経験の有る者の方が有利という事だ」

 

陸奥「まぁ、そういう事ね」

 

金剛「なるほど。その理屈でいけば、ワタシも lead しているって事ネ」

 

榛名「......」カァ

 

比叡・霧島「!?」

 

扶桑「え? ねぇ、それってどういう......」

 

山城「お、お姉様から黒いオーラが......!」

 

日向「む、不味いな。いろいろ言い返したいことはあるが、何だか嵐が来そうだ。伊勢姉ここは一時撤退......」

 

伊勢「撤退よ!」

 

武蔵「え? え?」

 

扶桑「大佐......扶桑は、扶桑は悲しゅうございます......ふふふ」ユラァ

 

比叡「まさかお姉様が既に......これは問い詰めないと!」

 

金剛「ホラ、霧島も青くなってないデここは一回引きショウ?」

 

霧島「あ、はい......」

 

榛名「霧島、大丈夫?」

 

武蔵「なぁ、一体皆どうしたと言う――」ガシッ

 

山城「いいから! ここは避難です! 大佐、ご武運を!」

 

武蔵「え? 大佐がなんだって......て、おいどこへ連れて行く!」

 

扶桑「大佐ぁ......今行きますねぇ」ユラァ

 

比叡「大佐! わたしに相談も無しに......ひどいです!」

 

 

~提督執務室

 

加賀「大佐? 資材の交換の約束は午後からの筈では?」

 

提督「いや、なんだか背筋に未だ感じた事がない悪寒が走ってな。こういう時は直感に従うに限る」

 

加賀「はぁ」

 

提督「済まないが後は頼むぞ」

 

加賀「分かりました。お土産宜しくお願いしますね」

 

提督「あんまり量は期待するなよ。ではな」




大佐はこの後無事に鎮守府を離れることができたようです。
というわけで、次は久しぶりにT督の登場になります。


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第44話 「動揺」

不穏な空気からを察知した提督は、鎮守府からこっそり抜け出し、資材交換の目的地へと行く為に高速艇へと急ぎます。
港には航行中護衛役を務めるビスマルクが既に彼を待っていました。


Bis「大佐、早くっ」

 

提督「ああ、待たせた」

 

Bis「私が乗せて行ってもいいのに」

 

提督「そのつもりだったが、今は目立ちたくないんだ」

 

Bis「そう......でも、二人っきりね♪」

 

提督「そうだな。ま、目的地までは少し時間が掛かる、その間はのんびり過ごそう」

 

Bis「mein Lieber(愛しい人)......」ボソ

 

提督「ん? ドイツ語か」

 

Bis「あ、その......」カァ

 

提督「ん......Ich mag dich.(イッヒマァクディヒ)でいいか?」

 

Bis「大佐......。でもそこはできたら“liebe”(リーベ)を使って欲しかった、かな」

 

提督「ああ、そうか。最初にお前が使っていたな。すまん、こっちだと普段使うには意味が重いと思ってな」

 

Bis「ん、確かにドイツ人にも日本人と似た気質のところがあるから、そういうのも気にする人はいるけど。でも、私はそっちの方がいいわ」

 

提督「覚えておく」

 

Bis「ううん、いいの。言ってくれただけで嬉しかったから」

 

提督「そうか」

 

Bis「ね」

 

提督「ん?」

 

Bis「キスして欲しい......」

 

提督「まだ港が見える。もう少し我慢してくれ」

 

Bis「......じゃぁ撫でて?」

 

提督「それくらいなら。ほら」ナデ

 

Bis「ん......♪」

 

 

――港を出て数分後

 

Bis「すぅ......すぅ......」

 

提督(撫でていたら寝てしまった。まぁ、潮風や日差しが気持ち良いからな)

 

提督「少し寝かせておくか......」ソッ

 

Bis「んん......」ギュッ

 

提督(む、腕が......)

 

Bis「んー......♪」スリスリ

 

提督(参ったな。何時までも自動操縦にはしておけないし)

 

???「わぁ、お熱いねー、ってやつ?」

 

提督「......レ級?」

 

レ級「せいかーい!ていうか驚きもしないんだね」

 

提督「......いつの間に」

 

レ級「あはははは。何それ同情? やめてよもー、恥ずかしいじゃん!」

 

提督「いや、驚いたのは本当だ。一体いつの間に」

 

レ級「小舟が見えたから漁船かと思ってさ。ちょっとお魚分けて貰えないかなーって」

 

提督「脅すつもりだったのか?」

 

レ級「む、違うよ! ちゃんとお願いするつもりだったもん! 断わられたら諦めるつもりだったし!」

 

提督「一般人が深海棲艦なんか見たら大抵は恐怖に震えて要求を呑むと思うがな」

 

レ級「だ・か・ら、お願いするつもりだったんだって!」プク

 

提督「随分礼儀正しい深海棲艦だな」

 

レ級「え? もしかしてそれ褒めてくれてる? その子みたいに撫でてくれる?」

 

提督(しまった......マリアが無防備だ)

 

レ級「心配しなくたってまだ休戦中だし、そうじゃなっかったとしても僕は絶対にそんな卑怯な真似はしないよ」

 

提督「......」

 

レ級「本当だって。それにこの子可愛いしね。ね、触っていい? わぁ、ほっぺた柔らかーい」ツンツン

 

提督「もう触ってるじゃないか」

 

レ級「襲わないからいいじゃん。わ、この子胸も意外にあるんだね。わぁ服の上からでもふわふわするー」

 

むにゅむにゅ

 

Bis「ああん......大佐ぁ......」

 

レ級「へ?」

 

提督「......」

 

レ級「あー......なるほどー」ニヤニヤ

 

提督「......なんだ?」

 

レ級「たーいさ、ね。僕、どう?」ピト

 

提督「おい、俺とお前は敵同士......」

 

レ級「今はそういうのナシ! ね、それでどう? 僕は?」

 

提督「なにがだ」

 

レ級「僕、この子みたいに胸があるわけじゃないけど、そこそこ可愛いと思うんだ」

 

提督「自分でそれを言うか。というよりそもそも俺が可愛い娘なら誰にでも手を出しているというその考えは遺憾だ」

 

レ級「え、違うの?」

 

提督「当り前だ。ちゃんとお互いの同意の上、好き合ってる者同士だ」

 

レ級「ふーん......じゃ、僕も」

 

提督「なに?」

 

レ級「僕も好きになって!」

 

提督「お前は敵だろう......」

 

レ級「そ・れ・で・も! 敵に愛通じ合う子がいるなんてロマンじゃん!」

 

提督「随分軽いロマンだな。悪いがお断――」

 

チュ

 

提督「っ!?」

 

レ級「......ん......ふ......」

 

提督「......っ」ググ

 

レ級「......っふぅ。もうそんなに抵抗しないでよ。傷つくなぁ」

 

提督「な......っく......」

 

レ級「へぇ、大佐もそういう顔するんだ。初めて見たかも。もしかして超レア?」

 

提督「お前は、何を考えて......」

 

レ級「好きな人に敵も味方も関係ないよ。うん、決めた。僕大佐が好き」

 

提督「......は?」

 

レ級「よし、キスも貰った事だしもう行こうかな。あ、好きになった分は奇襲少なくするから。じゃ、大佐またねー」

 

チャプンッ

 

 

Bis「ん......私寝ちゃって......あ、大佐。傍に居てくれたんだ」

 

提督「......」

 

Bis「大佐?」

 

提督「ん? ああ、おはよう。目が覚めたか」

 

Bis「うん......何かあったの?」

 

提督「......キスの事をな」

 

Bis「え?」

 

提督「しないか?」

 

Bis「あ、覚えてくれて......うん、してっ♪」

 

チュ

 

Bis「ん......」

 

提督「......」

 

提督(同じ感触だ、温かい。レ級も同じだった)

 

Bis「んん......ちゅ」

 

提督「......」ギュッ

 

Bis「あ......♪ ん......ちゅ......」

 

提督(深海棲艦と人間、本当に敵対するしか道はないのだろうか......)




レ級可愛い!
まだ戦った事ないけど。

でも強いんでしょうねぇ。
5-5なんてクリアどころかやる気自体がまだ起きないので、当分そのご尊顔を見るのは先になりそうです。


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第45話 「説教」

船が目的地着いたようです。
前と同じくT督と叢雲が出迎えてくれました。


T督「やぁお久しぶりです!」

 

提督「ご無沙汰しております。またご迷惑をお掛けする事になって申し訳ない」

 

T督「いえ、そんな事言わないで下さいよ! この取引は結果的には僕の方が得をしてしまってるんですから」

 

提督「だとしても、枯渇寸前の弾薬をご用意して頂けるのですから、やはり感謝はします」

 

T督「ははは......まぁ、そんなに気にしないで下さい」(また弾薬だけかぁ。本当に極端だな......)

 

叢雲「お久しぶりです大佐。今日の付き添いは叢雲じゃないのね」

 

提督「叢雲は今遠征中なんだ」

 

Bis「へえ、前の付き添いは彼女だったのね。あ、ご挨拶遅れました。ビスマルクです」

 

T督「あ、これはどうも」(初めて見た......綺麗だなぁ)

 

叢雲「......ちょっと」ニギッ

 

T督「あああああ!? ちょ、叢雲! 痛い! 潰れるぅ!!」

 

提督「......」ゾッ

 

Bis(ま、股ぐらを......凄く痛そうね......)ドキドキ

 

パッ

 

叢雲「ふんっ......」

 

T督「ぜぇ......ぜぇ...ど、どうも失礼しました。お、お見苦しいところを......」

 

提督「ああ、いえ......」(かなり強く握られていたな。加減はしていただろうが、大丈夫か?)

 

叢雲「ちょっと、それだけ?」

 

T督「い、いや!? 愛してるよ叢雲! そして本当にごめんなさい!!」

 

叢雲「......まぁいいわ。......今日は私が満足するまで寝ちゃだめだからね」

 

T督「は、はい!」

 

提督(公の場で堂々と......ある意味大した仲だな)

 

Bis(ね、寝ちゃ駄目って......アレの事、よね」カァ

 

T督「あ、それでは交換の準備をしましょ......お?」

 

キラッ

 

T督「おお、大佐......いや、先輩。ビスマルクさんとケッコンされたんですか!」

 

Bis「え?」

 

提督「ええ、まぁ......」(先輩?)

 

叢雲(アイツ先を越され......あ、そもそもレベルが。ちゃんとアピールできたのかしら)

 

T督「おめでとうございます! いやぁ、そうと知っていれば何かお祝いの品でも用意していたんですが。あ、ビスマルクさんもおめでとうございます!」

 

Bis「あ、ありがとうございます」

 

T督「お二人ともお似合いですよ! まさに理想の夫婦ってやつじゃないですか!」

 

Bis「そ、そうですか? えへへ......金剛よりもそう見えるのかな」

 

T督「え?」

 

叢雲「......」

 

Bis「はい?」

 

T督「あ、いえ。先ほど金剛がどうのこうのって......?」

 

Bis「ああ、私二人目のケッコン相手なんです」

 

ピキッ

 

提督(む......? 空気が......?)

 

叢雲(あーあ、地雷踏んじゃったか。ま、別に大佐は悪くないんだけど......それでもねぇ......)

 

T督「あの......先輩」

 

提督「せんぱ......ああ、私の事ですか。なんですか?」

 

T督「つかぬ事をお聞きしますが、先輩は重婚されているのですか?」

 

提督「......耳に痛い言葉ですが、その通りです」

 

T督「そうですか......うん......」

 

提督「少将殿?」

 

Bis「なんか......怖い」ギュッ

 

T督「先輩!」

 

Bis「ひっ!?」ダキッ

 

提督「......なんでしょう?」ナデ

 

T督「今日ちょっと飲みましょう!」

 

提督「は?」

 

T督「飲みましょう!」ズイッ

 

提督「いや、交換だけとはいえ、一応職務中ですし......」

 

T督「僕はそうじゃありません! 実は非番なんです。秘書艦に頼む事も出来たんですけど、せっかくの機会でしたので」

 

提督「なら尚のこと、貴重なお時間を使うわけには......」

 

T督「いいんです! 飲みましょう、ねぇ!」ズズイ

 

クイクイ

 

提督(ん?)

 

叢雲「こうなったらもう付き合って貰うしかありません。うちの提督、ああなっちゃうともうテコでも引かないんです」コショ

 

提督「しかし......」ヒソ

 

叢雲「大丈夫です。大佐にはアルコールが入ってないのを私が直接用意しますので」コショ

 

提督「なるほど......」ヒソ

 

T督「先輩、聞いてます!?」

 

提督「ああ、失礼。そうですね。せっかくですから」

 

T督「ありがとうございます! それじゃ行きましょうか! あ、叢雲。君はビスマルクさんのお相手をお願いできるかな」

 

叢雲「いいけど、お酒は私が運ぶからね?」

 

T督「うん。ありがとう!」

 

Bis「え? え?」

 

叢雲「ごめんなさい、ビスマルクさん。そういうわけだからちょっと其処でく寛ぎながらお話でもしましょう?」

 

Bis「あ、うん......」

 

 

~それから数十分後のT督執務室

 

T督「っぷは! だからね! 僕は愛を捧げるのはやっぱり一人だけ、意中の相手は一人だけにすべきだと思うんです!」

 

提督「非常に理解できます。そしてそれ故に申し訳ない」

 

T督「や、先輩は悪くないですよ? それは分ってます! でも、でもね? 好きない相手はいくらいてもいいけど、ケッコン相手はやっぱり――」

 

提督(......コップ一杯でよくもまぁここまで。しかしこれも俺が選んだ道の贖罪だと思えば......必然か)

 

 

~待合室

 

叢雲「――でね、その時は......」

 

Bis「そ、そんな攻め手が......?」カァ

 

 

結局、その日提督が鎮守府に戻ったのは予定より大きく遅れた時刻だったそうです。

帰った時の提督は、やっと資材が補充できたというのに何だか浮かない顔をしていました。

それに対して付き添いだったビスマルクは顔を赤くして一人でブツブツ何かの実行を決意するような表情をしていたそうです。




はい。重婚してます。
だってできるんだから仕方ないじゃん、強くもなるし!

という言い訳は通るんですかねぇ......。


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第46話 「レトロゲーム」

高雄とゲームをして遊ぶ約束をしていた提督は、ある日高雄に誘われて約束を果たすことにしました。
どんなゲームをやるんでしょう。


高雄「はい! 赤甲羅取ったわよ!」

 

夕張「マジ!? わわ、ド○キー粘るのよ! しっかり壁の役割を果たしなさい!」

 

ピュー......ドゴッ、キュルル!

 

望月「150ccのド○キー、殆ど壁の役目を果たせなかったね......」

 

提督「このゲーム、こんなに速いクラスがあったのか」

 

高雄「もう......少し! え? 大佐知らなかったんですか?」

 

夕張「やらせないわよ! 電、じゃなかったイナズマ出ろ! 大佐何のクラスで走ってたんですか?」

 

望月「もしかして50?」

 

提督「ああ」

 

望月「ぷっ、お爺ちゃんみたい」

 

提督「......」

 

夕張「よーし、逃げ切っ......ええ!? イナズマ!?」

 

高雄「ふっ......」

 

夕張「やめて! 踏まな......」

 

プチッ

 

望月「あ」

 

提督「どんどん抜かれていくな、惨い......」

 

・結果

 

1位:キ○ピオ(高雄) 6位:ノ○ノコ(夕張)

 

 

高雄「いい勝負でしたね!」キラキラ

 

夕張「......」プルプル

 

望月「可哀そうに、あんなに震えちゃって」

 

提督(こんな雰囲気になるゲームだったか......?)

 

 

望月「いやぁ、それにしても古いゲームでも遊べるもんだね」

 

夕張「最初は古いゲーム機そのまま使おうとしたけど、流石にソフトの電池切れてたみたいね」

 

高雄「そういう時の次世代ゲーム機よ。大佐の持ってたゲーム、私のゲーム機に入ってて良かったです」

 

愛宕「あなた達、一応次世代ゲーム機なんだからもっと性能を活かせるゲームやりなさいよ......」

 

提督「お、愛宕」

 

高雄「あら、愛宕気になる? なんだったら一緒に遊ぶ?」

 

愛宕「え、いや私はまだ攻略しないといけない......ゴニョゴニョ」

 

提督「......望月、ちょっと皆と遊んでいてくれないか。俺は愛宕の遊んでるゲームが気になるから、少し見てみる」

 

愛宕「た、大佐!?」

 

高雄「あ......それじゃ、私も......」

 

愛宕「高雄姉さん!?」

 

高雄「夕張、ちょっとだけいいかしら?」

 

夕張「えー? 勝ち逃げですかー?」

 

望月「ま、ノ○ノコだしね。勝てないよ絶対。亀だし」

 

夕張「......ちょっと、亀バカにしちゃダメよ? 皆遅いみたいに言うけど、この子凄く安定してるから私みたいな玄人が使うと凄いのよ?」

 

望月「さっき負けたじゃん」

 

夕張「あれは運が悪かったのよ!」

 

望月「はいはい。そういのはわたしに買ってから言ってねー」

 

夕張「望むところよ!」

 

ギャー、ワー

 

 

提督「......ふむ、それでは愛宕」

 

高雄「あなたの遊んでるゲーム教えてくれる?」

 

愛宕「え......ほ、本当に?」

 

提督「高雄から大体聞いている。偏見の目で見るつもりはない。お前が知っている限りでいいから、そのゲームのどういう所が良いのか教えてくれるか?」

 

愛宕「うぅ......でもぉ」モジモジ

 

高雄「愛宕、大佐は絶対に呆れたりなんかはしないわ」ポン

 

提督「姉さん......。分かりました。では、軽く」

 

提督「頼む」

 

 

愛宕「まず、私が遊んでるゲームは、所謂......っていうのは知ってますよね?」

 

提督「ああ」

 

高雄「エッチなのよね」

 

愛宕「ま、まぁ......そうなんですけど。でも、そういう一般のゲーム機では表現できないところまで表現できるからこそ面白い内容のものもあるわけで」

 

提督「なるほど。多少過激な内容は別に官能的なものだけではないからな」

 

愛宕「そうです。まぁ官能的な内容だからこそ映えるストーリーもありますけどね」

 

提督「そこは映画とかも一緒だ。構成的どうしても入れた方が良いシーンなどもあるからな」

 

愛宕「あ、そういう風に考えていただけると、ちょっとは理解し易いかもしれません。私がやってるのは......」

 

提督「ほう、地域制圧型のシミュレーションか......」

 

高雄「へぇ......世界観結構凝ってるのね」

 

愛宕「これ、一応人気で10年以上続いてるシリーズですから......」

 

高雄「わわ......早速」

 

愛宕「こういうのもあってこそのゲームなの。姉さんここだけで評価を決めないでね」

 

提督「ふむ、下衆な人物故にそのキャラクターに対する怒りでストーリーも盛り上がるのか......」

 

 

愛宕「まぁ、こんな感じです」

 

高雄「続きが気になるわね。これ続くんでしょ?」

 

提督「次で最後の話になるみたいだが、ここまで作りこんだ世界観と設定を活かし、どう完結へと持っていくのか見ものだな」

 

愛宕「二人とも、最後まで興味を持って見てくれてありがとう。少し恥ずかしかったけど、私嬉しかったです♪」

 

提督「ふむ......愛宕の説明を聞いていた限り、まだこれ以外にもいろんなジャンルがありそうだな」

 

愛宕「まぁ......この手のゲームはジャンルだけは本当にいろいろありますから」

 

愛宕「でも、人によっては生理的に無理なくらいキツイのあるので、これ以上調べるなら正直自己責任で行って頂いた方が良いと思います」

 

高雄「ど、どんなのがあるのかしら。私ちょっと......」

 

提督「高雄、愛宕が言ったことを忘れるなよ? ここから先は自己責任だぞ」

 

愛宕「そうよ姉さん。あ、でも調べるときは姉さんの場合は一言相談してくれた方がいいかも」

 

高雄「あら? 私、そんなに心臓弱くないわよ?」

 

愛宕「ううん......結局は私の姉さんだから変なハマり方しないか心配で......」

 

提督「なるほど......」

 

高雄「ちょっと!?」

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

望月「ねぇ、まだー? もう夕張さんが負けすぎていじけちゃったんだけど」

 

高雄「望月ちゃん、一体どれだけ打ち負かしたの......」

 

望月「50連勝くらい?」

 

愛宕「え......酷い」

 

提督「少しは手加減してやれよ」

 

望月「いや、夕張さん目がマジだったからさ......」ポリポリ

 

愛宕「ふふ、それじゃ今度は私がやろうかしら。あまり家庭用のは遊んだ事がないからちょうどいいかも」

 

高雄「いいわね。じゃ、次はゴ○モンでもやります?」

 

望月「おお、いいねー」

 

夕張「ゴ○モン!? それなら負けないわ! わたし、エ○ス丸使うからね!」

 

提督「夕張、お前さっきから無意識にキャラクター選んでるんだよな?」

 

夕張「え? あ......は、ハリセンで豪快に叩く攻撃が好きなのよ!」

 

望月「はいはい。それじゃやってみようか」

 

高雄「え? これやるの? 確かにゴ○モンだけど、本当に昔のゲームってシンプルに見えてその分難易度凄いのよ?」

 

夕張「あれ? これハリセンじゃない......」

 

提督「夕張、ハンカチ持っていた方が......」

 

夕張「ええ!?」




FC時代のゲームはどれもまともにクリアした憶えがありません。
というか、多分一個も......。

これはちょっと夕張には荷が重かったかなw


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第47話 「蜜月」R-15

提督は夜遅くに酒を飲んでいた。
灯りは机のスタンドのみ。
窓の隙間から吹き込む夜風が心地良い。

提督は、何故かこの日は誰かが自分を訪ねてくる気がした。

*明らかな性的描写あり


カチャッ、キィ......

 

提督「......叢雲か? 初春?」

 

叢雲「よく、分かったわね」

 

初春「ふむ、それに妾達が来るのを予測していたみたいじゃ」

 

提督「時間帯もそうだが、ノック無しで敢えて開けてくるのはお前たちくらいだからな」

 

提督「それに今日のこの天気、何となくお前たちを初めて迎えた頃を思い出しててな」

 

叢雲「ああ......そういえば大佐、初めて此処に来た時、道に迷って着いたのは夜だったわね」

 

初春「ふふ、待ちぼうけを食らっていた叢雲が暇に耐えかねて妾を建造したんだったな」

 

提督「あの時は驚いた。やっと辿り着いた鎮守府で待っていた艦娘が2人いたんだからな」

 

提督は着任当初、船が嵐に遭い予定していた到着ポイントから大幅に外れてしまった。

それでもなんとか陸には上がることができたが、今度はその場所が基地からそんなに離れてないと言う理由から、なんと案内人もなく地図だけ渡されて彼はその場に置き去りにされたのだった。

自力で辿り着くことを余儀なくされた提督は、激しい風雨の中道に迷ってしまい、更に基地に到着するのが送れた。

やっとの思いで辿り着いた目的地では、一人のみと聞いていた筈の艦娘が何故か二人おり、自分を待っていたのだった。

 

叢雲「まぁ......勝手に建造したのは悪かったと思ってるわ」

 

初春「おい、つれない事を言うでない。お前が建造してくれなかったら妾は此処にいなかったのかもしれないのだぞ?」

 

提督「ふっ、そうだな。お蔭で俺は“最初”から二人の艦娘と最も古い付き合いになっている」

 

叢雲「ねぇ、私達が今日此処に来たのは......」

 

叢雲が緊張した面持ちで決意を込めた目で提督を見る。

 

提督「言わなくていい。お前たちとは何れ、と思っていた」

 

初春「無粋というやつかえ? 全く鈍感なんだか気が利くんだか...」

 

叢雲「そう、なら話は早いわ。ねぇ大佐......今宵こそ......」

 

初春「妾達を......貰ってくれる、かの?」

 

 

提督「......全部は脱がないのか?」

 

叢雲「あ、ぬ、脱いだ方がいい? これでも十分全部見えると思うんだけど」

 

提督「いや、それでもいいんだが、何というか脱ぎ掛けのままというのも少し......な」

 

初春「ふふ、劣情を覚えるかえ? んちゅ......」

 

初春「ん......ふ......ちゅ......。ふぅ......どうかの大佐? 気持ち良えかえ?」

 

叢雲「身体の貧相さはどうしよもないけど......あなたを気持ち良くさせる事なら十分にできるわ。だから......ん......ぺろ」

 

提督「くっ、叢雲......」

 

叢雲「ちゅ......ぺろ、んむ......はぁ......んむ」

 

 

初春「叢雲......やるのぉ。さて、妾はどうするかの......」

 

ムニュ

 

初春「はぁ! た、大佐駄目じゃ。そこは......恥ずかし......」

 

提督「言っただろ? 俺は大きさはそこまで気にしないと」

 

ムニュムニュ

 

初春「そこまで......って、あ......やはり......ああっ、気にする可能性もあ......いうことではな......やぁ! そこ、は......んんっ」

 

提督「我慢しなくていい」

 

クニクニ、ムニュ

 

初春「きゃぁ、あっ......あっ......んああああっ」

 

 

初春「はぁ......はぁ......」ビクン、ビクンッ

 

初春(情けない......あれだけでイってしまった......)

 

提督「可愛かったぞ」

 

初春「もう、馬鹿......」

 

 

叢雲「あ、大佐......あっ」

 

提督「......叢雲?」

 

叢雲「大佐......私......わたし、もう......」

 

くちゅくちゅ

 

叢雲「あ......ああっ......」ビクッ、ビクン

 

提督「叢雲......可愛かった」

 

初春「ふふ......ほんに、まさかお前があんな顔をするとは、の」

 

クチュゥ......

 

叢雲「あっ、ちょ......そこは......んんんんんん!」

 

初春「おうおう、よくもまぁこんなに......」

 

叢雲「いやああああ、初春それいじょ......ああああっ」

 

 

初春「ふむ、これくらい解せばもう大丈夫じゃろ。大佐、そろそろ......」

 

提督「大丈夫か? 相当キツそうだが......」

 

初春「それは叢雲自身の事かえ? それとも叢雲のココのこと......?」

 

ちゅく......

 

叢雲「えっ? こ、これ......ふ、ふぁぁぁぁぁあ!!」

 

キュキュ......ウゥ

 

提督「うくっ、これは......」

 

叢雲「あっ、あっ......大佐のがお......奥に......!」

 

初春「はぁ......いいのぉ......その表情......」

 

提督「初春......」

 

初春「大佐、全部好きにしてくりゃれ。舌で手で、もう破っても構わぬ。ぐちゃぐちゃにして......」

 

提督「初春......ちゅ、ちゅるる!」

 

初春「ああああああああ!」

 

 

初春「た、大佐......っ。こ、これはちょ......くっ、あああああう!」

 

ップ......ニュクッ

 

初春「ひっ......あ!?」

 

初春「も、もう......限界じゃ......!う、く......んんんああああっ!」

 

叢雲「た、大佐! こ、こっちも......お、お願い。このまま中に......い、イク......う、うぁぁぁぁあああ!」

 

叢雲「あ......」

 

 

――それから数十分後

 

提督「すまん......お前たちにはキツかったな」

 

叢雲「大佐ったら......激しすぎ......でも......ありがと」

 

初春「ほんに......少々異色の体験じゃったが、これもまた良い経験じゃ。じゃが、途中本当に意識を桃源郷に持っていかれると思ったぞ?」

 

提督「......反省している」

 

叢雲「あら、それじゃぁ今度は私をそこに連れて行ってよ」

 

初春「......ならん。やっぱりあそこは妾だけのものじゃ」

 

叢雲「なによ、ケチ」

 

初春「宝物は独り占めしたいからの、悪く思わんでくれ」

 

叢雲「ふーん......宝物、ね」

 

初春「そうじゃ、宝物......じゃ」

 

叢雲・初春「......」

 

叢雲「大佐......」

 

提督「ん?」

 

叢雲「今宵は蔭外の無い宝物をありがとうね。初体験としてはちょっとアレだったけど、それでも私達にとっては何にも勝る宝物よ」

 

初春「まあ、内容は確かにアレじゃが、初めてを捧げられたのじゃ。宝物には相違あるまい」

 

提督「そうか......」

 

叢雲「ぷっ、なによその顔? 私嬉しいのよ?」

 

初春「大佐はもう少し女子の気持ちを分かってくりゃ......いや、やっぱりその方が......いい、な」

 

叢雲「そうね。それも含めて大佐だものね」

 

初春「そう......ね。ねぇ、大佐」

 

提督「ああ」

 

叢雲「ありがとう......好きよ、大好き」

 

 

チュ




エロは長くなりますねー。
それに時間かかる!(力量不足)
でも書いた後の達成感がいいです!

なので次もがんば......いや、楽しみます。


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第48話 「朝食」

早朝、日課のトレーニングを終えて部屋に戻って来た提督は、机の上に置かれた朝食を見て固まりました。
いつも以上に無表情に眺めるその視線の先には、コーンフレークがありました。


提督「コーンフレーク......」

 

加賀「厨房のガスコンロの調子が悪いみたいで、急遽朝食はそれで代用する事にしたみたいです」

 

提督「......そうか」

 

加賀「大佐? ああ、牛乳ですか。絞ります?」

 

提督「何をだ。というか出ないだろ」

 

加賀「これから頑張れば或は......」ジッ

 

提督「やめろ、朝から。早く後ろ手に隠しているものを出せ」

 

加賀「バレてましたか」チッ

 

提督「おい」

 

加賀「どうぞ」シレッ

 

提督「全く......」

 

提督「......」

 

加賀「?」(お皿をずっと見つめてどうしたのかしら?)

 

提督「加賀」

 

加賀「はい」

 

提督「悪いが、ちょっとお遣いを頼まれてくれないか?」

 

加賀「構いませんが、何を買ってくれば?」

 

提督「たば......いや、おむすびを適当なのを」

 

加賀「......大佐」

 

提督「なんだ」

 

加賀「もしかしてコーンフレークが苦手なんですか?」

 

提督「......別に」

 

加賀「なら何故煙草やおむすびを買いに行かせようとしたんです? 私が出ている間に処分しようとか考えてませんでした?」

 

提督「......」

 

加賀「苦手なんですね?」

 

提督「......ああ」

 

加賀「ふっ......なんか子供みたいで可愛いですね」

 

提督「やめろ。昔から洋食とは相性が悪いんだ」

 

加賀「洋食ですか。そういえば、この前シチューも結構残していたような......。赤城さんとそれを取り合ったのを思い出しました」

 

提督「......」

 

加賀「牛乳も苦手なんですね」

 

提督「......はい」

 

加賀「大佐、良い機会ですから克服してみては? こんな事態がまたいつあるか分かりませんし、多少でも対応できるようにしておかないと」

 

提督「いや、無理に食べようと思えばできるんだ。食べたところで腹をくだすこともない。ただな」

 

加賀「ただ?」

 

提督「相性が悪い食べ物を食べると、その日は非常に調子が悪くなる。具体的にはあらゆる反応が鈍くなると言うか」

 

加賀「......隙が出来るという事ですか」

 

提督「おい、今邪な気配を感じたぞ」

 

加賀「気のせいです。大佐、私もご助力致しますので克服しましょう」

 

提督「話を聞いていたか?」

 

加賀「少しだけです。一口食べてダメそうなら私もそれ以上はしません」

 

提督「いや......」

 

加賀「あーん、がしたいです」ズイ

 

提督「それか」

 

加賀「はい」

 

提督「......」

 

加賀「お願い......」ジッ

 

提督「分った、一口だけだぞ」

 

加賀「大佐......」ポワァ

 

 

カチャ......

 

加賀「ふぅ......ふぅ......」

 

提督「おい、何故冷ます必要がある。最初からこれ冷ます程の熱もないだろ」

 

加賀「雰囲気です。はい、どうぞ」

 

提督「む......」

 

加賀「ど・う・ぞ」

 

提督「む......う」

 

加賀「口移ししますよ?」

 

パク

 

提督「むぐむぐ......しゃく」

 

加賀(こんな渋い顔した大佐見たの初めてね。なんかイジめてるみたいで変な加虐心が......)

 

加賀「どうです」

 

提督「ああ......やっぱり、ちょっと......な」サァ

 

加賀(たった一口で。アレルギーじゃないわよね)アセ、タラー

 

加賀「大佐、大丈夫ですか?」

 

提督「ああ......」クラクラ

 

加賀「ちょっと休みますか? 私の膝で」

 

提督「ああ......」

 

加賀(即答......! これ薬じゃないわよね。だとしたらこれは......いえ、駄目よ。これは奥の手として滅多に使わないようにしないと)

 

加賀「はい、どうぞ」ポン

 

提督「うむ......」ポテ

 

加賀「あ......た、大佐。うつ伏せに顔を乗せちゃ......」

 

提督「......」グテー

 

加賀「ん......息が......あ......」

 

提督「......すー......」

 

加賀(気ぜ......寝ちゃった!?)

 

加賀「大佐」

 

ツンツン

 

提督「......」

 

ペシペシ

 

提督「......」

 

加賀「凄いわね......。んっ、あ......」ピクッ

 

加賀(ちょっと、ちょっとだけ足を開いて......)グ......

 

フニィ

 

加賀「んん......!」ピクン

 

加賀(朝礼までまだ時間が大分......これはこれでいいかもしれないけど、生殺しな分なかなか辛くもあるわね)




その後朝礼までに何とか意識を取り戻した提督でしたが、本調子には戻り切れず、少し顔を赤くした加賀にフォローをしてもうらいながら何とか切り抜けたようです。


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第49話 「不意」

提督が廊下を歩いていると、潮と大鯨が仲良く話しているのを見掛けました。
提督に気付いた大鯨は、嬉しそうに彼に駆け寄りいつもの言葉を言って来ました。


大鯨「お父さん!」

 

潮「お、おとうさん?」

 

提督「大鯨、もうお父さんはやめないか? 元々反応の異常だったわけだし」

 

大鯨「え......だ、駄目ですか?」

 

提督「人目がな......」

 

大鯨「わたし、大佐の事本当にお父さんみたいに思ってます。それでも......?」グス

 

提督「......それじゃあ基地の中だけにしよう。それでいいな?」

 

大鯨「っ......はい! ありがとうございます、お父さん!」ダキッ

 

潮「あ......」

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

潮「大佐、潮もその......大佐の事......お父さんって......」

 

大鯨「え!? それは、駄目です! お父さんは大鯨だけの......!」

 

潮「や、やっぱりそうですよね。ご、ごめんな......ぐす」

 

大鯨「う......」

 

提督(凄い。あの独占欲の強い大鯨が押されている......)

 

潮「大佐、急に変な事を言って......」

 

大鯨「......いいですよ」

 

潮「え?」

 

大鯨「潮さんだけ特別です。お父さんって言っていいですよ」

 

潮「ほ、本当!?」

 

大鯨「はい」

 

提督「俺の意思は無視なんだな」

 

潮「だ、駄目ですか?」

 

大鯨「お父さん!」

 

提督(何故か悪役になった気分だ)

 

提督「いや、分かった。基地の中だけだぞ」

 

潮「っ......! ありがとうございます、お父さん!」ダキッ

 

響「папа(パーパ)」ダキッ

 

提督・大鯨・潮「!?」

 

響「どうしたの?」

 

提督「いや、一体どこから現れた?」

 

響「ずっと足元にいたけど?」

 

大鯨「気付かなった......」

 

潮(響さんの気配の消し方は相変わらず凄いな......)

 

提督「それで、響。お前さっき何て言った? ロシア語か?」

 

響「響ロシア語なんて話せないよ。きっと聞き間違い」

 

大鯨「え、でもさっきのパー......なんとかって」

 

響「ちょっと寝ぼけて抱き着いただけだよ。あれはただの寝言」

 

潮(そうは見えなかったけど......)

 

響「大佐」

 

提督「なんだ」

 

響「大佐は大鯨さんと潮のお父さんになるの?」

 

提督「呼称を許可しただけだ。実際にそういう関係になるわけじゃない。愛称みたいなものだ」

 

大鯨「そうですよ。大佐は私のお父さんですけど、何れは......その、お嫁......さんに」カァ

 

潮「う、潮も! 潮もいつか大佐の......!」

 

提督「二人とも落ち着け。分かったから」ナデナデ

 

大鯨「んにゃ......お父さぁん......♪」スリスリ

 

潮「あう......お父さん......」ポ

 

響「......ふーん。ね、大佐」

 

提督「ん」

 

響「響も大佐の呼び方変えていい?」

 

提督「......なんと言うつもりだ?」

 

響「......Милый мой(ミーリモィ)」ボソ

 

提督「なに?」

 

潮「み、みぃ......?」

 

大鯨「ど、どういう意味ですか?」

 

響「知りたい?」

 

潮「は、はい!」

 

大鯨「気になる!」

 

響「いいよ。じゃ、大佐、ちょっと屈んでくれる?」

 

提督「こうか?」ググ

 

響「もうちょっと、そう響の顔の位置まで......」

 

提督「これくら......ん」

 

チュ

 

大鯨・潮「!?」

 

 

響「んちゅ......ちゅ......ちゅぅ」

 

提督「ひ......む......ん、く......」

 

響「ちゅ......ちゅ......ふぅ」

 

大鯨「あ......あ......」カァ

 

潮「わ......あぅ......」カァ

 

提督「響......」

 

響「ダーリンって意味だよ」ビシッ




響......本当に良いキャラしてると思うんです。
凄く動かし易くて可愛い......。
伊達に駆逐艦トップのレベルではありませんね。


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第50話 「湯上り」

風呂上り、提督が部屋から廊下に出ると偶然龍田と会いました。
彼女も湯上りだったらしく、その身体から僅かながらの湯気と微かな石鹸の匂いを放っていました。

ハッキリ言って良い匂いでした。


提督「ふぅ......」

 

龍田「あらぁ、今上がり?」

 

提督「龍田、お前もか」

 

龍田「そうよぉ。でも大佐、こんな遅い時間にお風呂なんて一体いつまで仕事をしていたの?」

 

提督「ついさっきまでだ。目処が着いたからひとっ風呂浴びて......」

 

龍田「まさかもう一仕事?」

 

提督「いや、風が涼しくて気持ちいから外に行こうかと」

 

龍田「へぇ......。ねぇ、それ私も一緒に行っていい?」

 

提督「ん? ただ、酒一缶片手に煙草を吸うだけだぞ?」

 

龍田「それでもいいわ。ね、いいでしょ?」

 

提督「酒は飲むか?」

 

龍田「ちょっとだけなら」

 

提督「そうか。なら行くか」

 

龍田「やった♪」

 

 

~鎮守府、艦隊娘用居住棟屋上

 

龍田「涼む時は何時も此処なの?」

 

提督「いや、割とバラバラだ。海岸に行ったり自室で窓を開けたり」

 

龍田「そ」

 

提督「さて、先ずは開けるか」

 

龍田「お酒ね」

 

提督「ああ。龍田はこれだ」

 

龍田「お猪口? でも、それじゃ大佐は」

 

提督「俺も杯を持ってきた」

 

龍田「漆杯......お洒落ねぇ」

 

提督「そんなに飲むつもりはないからな。今日はこの一缶を二人で分けよう」

 

龍田「ええ、いいわよ」

 

提督「それでは注いでやろう」

 

龍田「え、いいわよ私は。大佐に注いでもうらうなんて......」

 

提督「こういう時は仕事の事は忘れろ。今はただの親しい仲同士だ」

 

龍田「いいの?」

 

提督「遠慮するな。ほら」トクッ

 

龍田「ん......ありがと」

 

提督「焼酎だが大丈夫か?」

 

龍田「飲んだことないから分からいけど、でも多分大丈夫」

 

提督「口に合わなかったら直ぐに飲むのを止めろよ」

 

龍田「もう、そんなに心配しないでよぉ。はい、私も注いであげる」トクトクッ

 

提督「ありがとう」

 

龍田「どう致しまして♪ はい、それじゃ」

 

提督「乾杯」

 

コチンッ

 

提督「......ん」ツイ

 

龍田「ん......」コク

 

提督「ふぅ......どうだ?」

 

龍田「ん......はぁ、ちょっと......辛い? かしら。匂いもなんか独特ね。嫌じゃないけど」

 

提督「黒糖の焼酎だ」

 

龍田「お砂糖? 甘くないわね」

 

提督「一応サトウキビの汁が使われているがハッキリ判る程の甘さは無い筈だ。どちらかというと口当たりの良さとまろやかさが特長だな」

 

龍田「へぇ......アルコールも結構高い?」

 

提督「この種の焼酎で25度より下はは見たことがないな」

 

龍田「25......決して低くはないのね」

 

提督「そうだ。だから例え味に抵抗はなくてもあまり無理して飲むなよ」

 

龍田「私はお猪口よ? 流石にこれ一杯で酔ったりはしないわぁ」

 

提督「ならいいんだが」ツイ

 

龍田「大佐はこのお酒よく飲むの?」

 

提督「俺は酒は焼酎派だからな。だからと言って他の酒が飲めないわけじゃないが」

 

龍田「強いのが好きなのね」

 

提督「そういうわけでもないんだが、焼酎は二日酔いし難いからな。あと、やっぱり味か」

 

龍田「ふぅん......ぺろ。やっぱりまだ私には味がよく解らないわねぇ」

 

提督「鼻で香りも楽しめるようになれば、少しは美味しく感じるかもしれないぞ」

 

龍田「香り?......すん。......あ」

 

提督「どうだ?」

 

龍田「さっきは独特の匂いとか言ったけど、良く嗅いでみたら匂いが少し甘い」

 

提督「気づいたか、そういう事だ。これは甘さ自体が完全に消えたわけじゃない。香り程度はちゃんと残っているんだ」

 

龍田「香りを楽しみながら......飲む......」コク

 

龍田「......美味しい」

 

提督「良かった」

 

龍田「お酒はただ飲むだけじゃダメね」

 

提督「そうだ。自分でも楽しまないとな」シュボッ

 

龍田「あ、煙草......」

 

提督「あまり吸わないようにはしてるんだが、気分が良い時は、な」

 

龍田「そういうものなの?」

 

提督「こればかりは喫煙者にもよると思う」

 

龍田「ふーん」

 

提督「......ふぅ」

 

龍田「ねぇ」

 

提督「ダメだぞ?」

 

龍田「えぇ、私まだ何も言ってないわよぉ?」

 

提督「煙草を吸ってみたい、だろ? ダメだ。これは興味本位であまり始めない方がいい」

 

龍田「じゃぁ、どういう時に始めたらいいの?」

 

提督「......気分、かな」

 

龍田「ふふ、何それ」

 

提督「何となく吸ってみたくなって吸ってみたら、これが予想外に心地よさを感じた。俺はこれがきっかけだった」

 

龍田「ねぇ、それってどんな時だった?」

 

提督「......今日みたいに風が心地よくて星が良く見える夜だったな」

 

龍田「一人で吸ったの?」

 

提督「ああ」

 

龍田「誰かと吸ったりはしなかったの?」

 

提督「ない事もないが、こういう時は大体一人か気心の知れた人とでないと吸いたくはないな」

 

龍田「ねぇ、それって......もしかしてこうして誰かが隣にいて吸うのは初めて?」

 

提督「......そういえばそうだな」(彼女は煙草が嫌いだったからな)

 

龍田「っ、......」ギュッ

 

提督「龍田?」

 

龍田「あ、顔見ないでね。今何だか凄く幸せな気分でだらしない顔してると思うから......」

 

提督「ああ......」

 

龍田「ねぇ、大佐」

 

提督「ん?」

 

龍田「好きよ?」

 

提督「......そうか」ポン

 

龍田「あ......うふふ♪」ギュウ




湯上りの龍田ってなんだか色っぽいですよね。
あ、それだけです、ハイ。


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第51話 「釣り3」

大潮を伴って釣りをしている提督。
今日も何時ものごとく一匹も釣れてませんでした。


大潮「釣れないですねー」

 

提督「だめだぞ大潮。釣れないのも楽しめるようにならなければ」

 

大潮「! そうでした」

 

提督「いや、そう気合いを入れるもんでもない」

 

大潮「うー......難しいです」

 

提督「女子と釣りはやっぱり相性が良くないのかもな.......」

 

大潮「えっ、そ、それって......大潮が大佐の邪魔をしてるっと事でしょうか......!?」

 

提督「考えが飛躍し過ぎだ。そんな事はない」

 

大潮「そ、そうですか。良かったぁ......」ホッ

 

提督「それだ」

 

大潮「え?」

 

提督「別に釣れなくてもこうやって青空の下、話しながら釣りをするのは楽しいだろう?」

 

大潮「あ......」

 

提督「ふっ......理解できたか」ポン

 

大潮「は、はい! 大潮解りました! それと頭を撫でてくれてありがとうございます!」

 

提督「こんな事くらいでお礼は言わなくてもいい。ほら、釣るぞ」

 

大潮「はい!」

 

 

大潮「海の上からはお魚が見えるのに何で釣れないないんでしょう」

 

提督「海が綺麗だからな。餌にも困ってなくて、もしかしたら今は満腹なのかもな」

 

大潮「場所、変えます?」

 

提督「いや、綺麗な海を見るのもいいだろう?」

 

大潮「そうですね!」

 

 

大潮「うぅ......」コシコシ

 

提督「眠いか?」

 

大潮「あ、いえっ!」

 

提督「気にするな、気持ち良いからな。寝ていいぞ」

 

大潮「で、でもぉ......」

 

提督「ほら、膝を貸してやる」

 

大潮「あ......本当にいいんですか?」

 

提督「寝る子は何とやらだ。目が覚めた時のお前の成長振りに期待しているぞ」

 

大潮「あ......ま、任せてください! あ、それじゃお休みないですー......」

 

 

大潮「すー......すー......」

 

提督「ふっ......」ポン

 

矢矧「良い顔ね」

 

提督「矢矧」

 

矢矧「デートのときはあんな顔見せてくれなかったわよ?」

 

提督「ああ、ヌイグルミの時の事か」

 

矢矧「隣、いいかしら?」

 

提督「ああ」

 

矢矧「ん......」

 

提督「どうした?」

 

矢矧「私? いや、海を見るのが好きなの。そしたら大佐を見つけて」

 

提督「そうか」

 

矢矧「うん......」

 

提督「一人で海を見るのは好きか?」

 

矢矧「え?」

 

提督「......」

 

矢矧「......ううん。実はあんまり」

 

提督「直接経験したわけでもないのに昔の記憶があるというのも辛いものだな」

 

矢矧「私たちが私たちでいられる理由でもあるからね。気に入らなくてもやっぱり必要だと思うわ」

 

提督「頼もしいな」

 

矢矧「ふふ、嬉しいけどその言葉、女としてはなんか複雑ね」

 

提督「気に障ってしまったか」

 

矢矧「あ、ううん、別に。ちょっと嬉しかったし」

 

提督「そうか、安心した」

 

矢矧「うん......」

 

提督「......」(本当に釣れないな。ハゼでもいいんだが)

 

矢矧「ねぇ」

 

提督「うん?」

 

矢矧「この前にみたいにさ......」

 

提督「ん?」

 

矢矧「で、デートっぽい事していいかしら?」

 

提督「というと?」

 

矢矧「大佐の肩に寄りかかったり、とか」

 

提督「それくらいなら。眠くなったら寝てもいいぞ。夕方までは釣るつもりだからな」

 

矢矧「それは夕方まで釣れないままでいる、という事? それとも夕方までには何か釣るって事?」

 

提督「......」

 

矢矧「そ、そんなに釣れないの?」

 

提督「......よく履歴書の趣味の欄に『釣り』と書く男は大体嘘をつているという風潮があるみたいだが、俺は本当に趣味でやってるんだがな......」

 

矢矧「最後に釣ったのは?」

 

提督「......大鯨だ」

 

矢矧「へ?」

 

提督「いや、もう随分前だ。何を釣ったのかも忘れてしまった」

 

矢矧「そ、そう。あ、じゃあちょっと失礼するわね」

 

提督「ああ」

 

矢矧「ん......」

 

提督「肩、硬くて痛くないか?」

 

矢矧「不思議とそんなに」

 

提督「そうか。まぁ、大丈夫ならいい」

 

矢矧「うん......。あ、本当に眠くなってきちゃった」

 

提督「寝ていいからな」

 

矢矧「それじゃ、お言葉に甘えようかしら」

 

矢矧「あ」

 

提督「どうした?」

 

矢矧「えーっと......ね、寝てるからって変な事しないでね?」

 

提督「大潮を見ろ。信用しろ」

 

矢矧「うん、それ。聞きようによってはとんでもない誤解を招くから。気を付けてね」

 

提督「?」

 

矢矧「何でもないわ。おやすみ」

 

提督「ああ? ああ......」

 

 

大潮「......すぅ」

 

矢矧「ん......すぅ......」

 

提督「二人ともよく寝てるな」

 

矢矧「......大佐ぁ」

 

提督「ん?」

 

矢矧「わらし......私も釣って......いいの......よ......」

 

提督「......」(聞かなかった事にしよう)




大潮って人気ないんですかね?
あの子の元気は駆逐艦の中でも随一だと思うですが、そこが可愛く思えないかなぁ......。


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第52話 「前進」

夜遅く、仕事を終えて風呂にでも入ろうかと考えていた提督を比叡が訪ねてきました。
提督が招き入れると彼女は静かに入ってきて、暫く特に口を開くこともなく無言で提督を眺めていたのですが......。


比叡「大佐ー」

 

提督「ん?」

 

比叡「お姉様に手を出しましたね」

 

提督「......」

 

比叡「......」ジトー

 

提督「手を出したと言うのは......」

 

比叡「あ、それ以上言わないで下さい。殴りますよ」

 

提督「比叡、上官に軽率な発言は気を付けろ。その場その場で感情的になっては不利になるのはお前だぞ?」

 

比叡「う......ご、ごめんなさい」

 

提督「いや、俺もお前には後ろめたさは感じていたからな。すまない」

 

比叡「罪悪感とかじゃないんですか?」

 

提督「昔の俺ならそうだったかもしれないが、今それを感じると......解るか?」

 

比叡「はい。お姉様に失礼です」

 

提督「そういう事だ」

 

比叡「はぁ......でも......つ、ついにヤっちゃいましたかぁ......」

 

提督「......」

 

比叡「ううん。お姉様も大佐も悪くない。だって好き合ってたんだ......もん」

 

比叡「でも、でも......やっぱりちょっと......お姉様が遠くに行っちゃった気がしなくもないと言うか......」ウル

 

提督「比叡」ポン

 

比叡「ふ......うぇ、大佐?」

 

提督「我慢するな」

 

比叡「っ......、ふえぇぇぇん! 大佐ぁぁぁ!」ダキッ

 

提督「大丈夫、大丈夫だ。お前の姉に対する気持ちは悪くない。それに金剛は絶対にお前を置いて遠くに行ったりはしない」ナデナデ

 

比叡「う......ぐす......そ、そう......かなぁ?」

 

提督「お前が大好きな姉が好きになってくれた俺が言うんだ。信じられないか?」

 

比叡「あ......ん......ううん、そんな事ないです!」

 

提督「そうか、よかった」

 

比叡「大佐......ありがとうございます。あの......それと、できればなんですが」

 

提督「ん?」

 

比叡「もう少し抱き着いてていいですか......?」

 

提督「もう今日の仕事は終わってる。それにこの時間帯、お前が訪ねて来た時点で用はこの事じゃないかと予想していたからな。遠慮するな」

 

比叡「ぐす......ありがとうございます」

 

提督「礼なんていい。金剛でなくて申し訳ないが、俺で良かったら好きなだけ抱いててやる」

 

比叡「大佐......ふ......ん......」スリ

 

提督「......」ナデナデ

 

 

――数分後

 

提督「落ち着いたか?」

 

比叡「はい。ありがとうございした」

 

提督「ああ」

 

比叡「大佐」

 

提督「なんだ?」

 

比叡「わたしと大佐って、一応付き合ってるんです......よね?」

 

提督「そういえば前にお前からそんな宣言を受けたな。正直言ってお前からこうして確認されるまで自覚は薄かったが」

 

比叡「う......確かに。恋人らしい事なんて......あ、あの時のキスくらいですからね」

 

提督「そうだな」

 

比叡「あの......」

 

提督「ん」

 

比叡「い、今からしません? こ、恋人らしい事......」

 

提督「......比叡」

 

比叡「は、はい」

 

提督「焦らなくていいぞ」

 

比叡「あ......」

 

提督「お前が姉妹の中で一番そういう事に初心なのは何となく分ってる」

 

提督「だから、無理に焦って姉と同じ位置行こうとしなくてもいいんだ」

 

比叡「わたしの緊張バレてたんですね......」

 

提督「緊張で空気が震えていたからな」

 

比叡「そ、そんなに!?」

 

提督「冗談だ」

 

比叡「もう、大佐!」

 

提督「ははっ、だが......そんなに顔を赤くして震えながら言う姿を見れば、そういう風に感じるのも無理はないと思うけどな」

 

比叡「あ......」カァ

 

提督「可愛いぞ」

 

比叡「え......や......み、見ないで下さい!」

 

提督「ん、分かった」

 

比叡「あ、だ、ダメ! や、やっぱり......」

 

提督「キスをするか?」

 

比叡「え?」

 

提督「無理に体の関係までいくことはない。なら、キスくらいは自然できるようにするか?」

 

比叡「あ......はい」コク

 

 

提督「俺は座ったままでいいのか?」

 

比叡「はい。あ、大佐の膝に跨っていいですか?」

 

提督「なに? 俺の膝? ちょ、ま......」

 

フニィ

 

提督「......」

 

比叡「? どうかしました?」

 

提督「いや......」

 

提督(薄布一枚を挟んで比叡の感触が伝わる......これは理性を総動員だな)

 

比叡「あ、後手を......そう、こうやって繋いでくれます? 」

 

提督「こうか?」ギュ

 

比叡「はい。あ、両手です」

 

提督「ん」

 

比叡「あ......ちょっとあまり膝を動かさないで下さい。くすぐったい......」

 

提督「ああ分った」(動いたらこっちがマズイしな)

 

比叡「はい。それでは準備完了です。大佐......」

 

提督「ん......」

 

チュ

 

比叡「ん......」

 

提督「ちゅ......ん......む......」

 

比叡「たいふぁ......んちゅ。ちゅむ......」

 

提督「ふぅ......どうだ?」

 

比叡「はふぅ......え?」ポー

 

提督「その様子だと悪くなかったみたいだな」

 

比叡「あ、はい! な、なんかこういう甘い雰囲気も悪くありませんね♪」

 

提督「それはよかった」

 

比叡「あの、時々こうしに来ていいですか? そしてその内この続きも......」

 

提督「ああ。事前に約束ができていたらな」

 

比叡「っ......ありがとうございます! 大佐、今日は本当に......!」

 

提督「気にするな。俺もお前との間にあった壁がようやく完全になくなったような気がして嬉しい」

 

比叡「そうですね。わたしもです! あ、それじゃ夜ももう遅いし、あまりお邪魔するわけにもいかないのでこれで失礼しますね!」

 

提督「ああ、お休み比叡」

 

比叡「はい、大佐もおやすみなさい! 失礼しました」

 

バタン

 

 

提督「ふぅ......」

 

 

提督(嬉しくもあったが、久しぶりにかなり精神を使ったな。もっと鍛えよう)




比叡はエロはゆっくり行きたいと思います。
なんだかんだでそれが彼女のキャラに合ってるような気がするんですよね。

やはり金剛姉妹の中では比叡が一番好きです♪


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第53話 「不覚」

提督はずっと外を眺めていました。
青葉は最初は海を眺めているのかと思ったのですが、視線を辿ると空を向いています。
何か変だ。
そう思った青葉は提督に声を掛けました。


提督「......」

 

青葉「大佐、なにさっきから外ばっかり眺めてるんですか?」

 

提督「ん? ああ、冬だなと思ってな」

 

青葉「へ?」

 

提督「......」

 

青葉(また外を眺めてる。それに冬って......こんなに暑いのに)

 

青葉「た、大佐......?」

 

提督「......もう雪がふっているだろうな」ボソ

 

青葉「!?」

 

青葉(た、大佐がおかしくなったぁ!!)ウル

 

青葉(ど、どうして!? やっぱり私の所為? 私があまりにもいろいろ騒ぎ立てるから大佐の精神が......!?)

 

青葉「......」チラ

 

提督「......」ボー

 

青葉「ふぇ......」ジワ

 

提督「.....ん?」

 

青葉「うぇぇぇぇぇんん! 大佐ぁ、ごめんあさぁぁぁい!!」ダキッ

 

提督「なっ? おい、青葉」

 

青葉「青葉......青葉が悪かったですからぁ! 今までの事全部謝って、これからは良い子にしますからぁ!!」

 

提督「おい、何を......」

 

青葉「だから、だからいつもの大佐に戻ってくださぃぃぃ!!」

 

提督「いつものって......おい、青葉。何のことだ?」

 

青葉「大佐の頭がおかしくなっちゃったんですぅ!」

 

提督「......なに?」

 

青葉「ボーっと外ばかり眺めて、青葉の言葉にも反応が鈍くて......」

 

青葉「ついには......こんなに暑いのに雪だなんて......うわぁぁぁあん! 大佐ぁ、ごめんなさぁぁぁい!!」

 

提督「......なるほど。そういう事か」

 

青葉「あ、正気に戻りました!?」

 

提督「戻るも何も俺はいつも通りだ」

 

青葉「えぇ?」

 

 

青葉「そ、そうだったんですか......“日本が”今は冬なんですね」

 

提督「そうだ」

 

青葉「わ、わたしったら勘違いしちゃって......」カァ

 

提督「だが、心配してくれたんだろ? ありがとう」

 

青葉「い、いえそんな、お礼なんて......!」

 

提督「いや、言わなくては。信じられないことに、お前はこれから“良い子”になるって宣言したんだからな」

 

青葉「 」

 

提督「俺は感動して泣きそうになったぞ」

 

青葉「 」

 

提督「軍人、青葉に二言はないな? これからのお前の落ち着きぶりにきt」

 

青葉「は、反則です!!」

 

提督「ほう?」

 

青葉「あ、青葉は大佐を正気戻すためにそういう条件を出したんです! 元から正気ならそもそもその条件は無効です!!」

 

提督「そうか。なら、今まで通り悪い子でいるということか?」

 

青葉「ちょ、人の事を普段から悪い子だなんて言わないで下さいよ!?」

 

提督「そう言われてもな。結構俺はお前の、故意だか偶然だか判らない噂の流布に実害を被ってるぞ?」

 

青葉「そ、それは......!」

 

提督「ふむ......そうか、やはり元に戻ってしまうのか」

 

青葉「だからそれは一方的な見方であって......!」

 

提督「素直で良い子な青葉が俺は好きなんだがな」

 

青葉「だから......! って、え?」

 

提督「ん?」

 

青葉「い、今なんて言いました?」

 

提督「......雪か」

 

青葉「ねぇ、ちょっとぉ!?」

 

提督「なんだ騒がしいな。俺は故郷の冬を思い出してるんだ。邪魔をしないでくれるか」

 

青葉「あからさまに話をそらそうとしてるだけじゃないですか! ていうか、今何て言ったのかもう一回言って下さいよぉ!!」

 

提督「悪いが憶えてない。俺はボケたからな」

 

青葉「真顔でそんな事言っても信じられるわけないでしょう!?」

 

提督「そうか?」シレッ

 

青葉(嘘をつくのもやめて拒否した!?)

 

青葉「う......ぐす......」

 

提督「む」

 

青葉「ねぇ、言って下さい......言ってよぉ......。大佐、そんなに青葉のことが......ひっく、嫌い......なんですかぁ」ブワァ

 

提督(しまった......まさか泣くとは)

 

青葉「うぇぇん......ぐす、ひぐっ......ぐす......」

 

提督「青葉」ポン

 

青葉「ふぁ......大佐ぁ?」

 

提督「良い子な青葉が好きだ」

 

青葉「ほ、ホントに......?」

 

提督「......良い子、だったらな」

 

提督(ここで念を押せば、恥ずかしがって今言った事をうやむやにできるかもしれない)

 

青葉「な、なります?」

 

提督「ん」(なに)

 

青葉「あ、青葉良い子になります!」

 

提督「そう.....か?」

 

青葉「はい! 青葉、これからは良い子になって大佐に迷惑を掛けません!」

 

提督「......あまり我慢しなくていいんだぞ? 多少騒ぐのもストレスを溜めるよりかは......」

 

青葉「しません! 大佐が好きになってくれるなら、良い子にした方が絶対にいいです!」

 

提督「そうか......」

 

青葉「大佐、今の言ったこと本当ですよね?」

 

提督「......ああ」

 

青葉「大佐ぁ!」パァ

 

提督「青葉......」

 

提督(凄い嬉しそうな笑顔だ。ここでつい口が滑ったなんて言おうものなら俺は死んだ方がいい)

 

青葉「ねぇ、大佐」

 

提督「なんだ」

 

青葉「青葉をギュッとして下さい。もう今この時点から青葉は良い子の青葉ですから......」

 

提督「こうか?」ギュッ

 

青葉「はわぁぁぁ......ありがとうございますぅ。し、幸せぇ......」トローン

 

提督「大袈裟じゃないか?」

 

青葉「そんな事ないです! い、今更ですけど、あ、青葉も大佐の事好きだったんです」

 

提督「......そうだったのか?」

 

青葉「はい! でも、まさかそれを大佐の方から言ってくれるなんて......これはもう幸せと言う言葉以外適当な言葉はありませんよぉ」

 

提督「......」

 

青葉「? 大佐?」

 

提督「いや」ナデ

 

青葉「はぅ......」トロン

 

提督「青葉、これからよろしく頼む」

 

青葉「は、はい! 青葉頑張っちゃいますから! 頑張って......ケッコン目指しますから!」

 

提督「無理はするなよ、程ほどにな」

 

青葉「大佐の頼みなら!」

 

提督「そ、そうか......ありがとう」

 

青葉「お、お礼なんて......ただ、こうして抱きしめて貰えるだけで青葉は......大佐ぁ~♪」スリスリ

 

提督「良い子だな、青葉」ナデナデ

 

提督(......自分のスケコマシ振りが恥ずかし過ぎて穴に埋まりたい気分だ......)




青葉可愛い!
......くしてしまいました。
ちょっとキャラ崩壊でしょうか。
でも、青葉可愛いし仕方ないよね! 許してください!


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第54話 「過癒」

計算が裏目に出て全くの偶然に青葉を攻略(?)してしまった提督は、彼女に抱き着かれたままソファでお話をしていました。
提督はどこか浮かない顔ですが、青葉は幸せいっぱいといった顔です。


青葉「大佐は寒いのが嫌いなんですか」

 

提督「嫌い......そうだな。苦手というよりかは嫌いという表現の方が合っているな」

 

青葉「じゃあ日本にいる時、季節が冬だと外にもあまり出ないんですか?」

 

提督「炬燵に一度入ってしまうと、それこそ出なくなる。子供染みているがその癖は今も治ってないかもな」

 

青葉「そうなですかぁ」

 

提督「ああ」

 

提督「......青葉」

 

青葉「あ、はい。なんですか?」

 

提督「いつまで抱き着いているつもりだ?」

 

青葉「お昼休みの間です」

 

提督「まだ大分時間があるな......」

 

青葉「あ、迷惑なら直ぐに......」シュン

 

提督「......いや、まぁ別に――」

 

「迷惑だ」

 

青葉「!?」

 

提督「.......武蔵」

 

武蔵「大佐、ここはハッキリ言った方がいいぞ? いつまでもひっつかれると暑い、と」

 

青葉「む、武蔵さん! あ......え? ちょ、や、な、何をするんですかー!?」

 

武蔵「ちょっと大佐と戯れに来てみれば馴れ馴れしくしてからに」ヒョイ

 

武蔵「代われ、大佐の犬は私だ」

 

提督「 」ピシッ

 

青葉「い、犬!?」

 

武蔵「なんだ? さっきはまるで主人に甘える犬の様に大佐に擦り着いていた癖に否定するのか?」

 

青葉「え?」

 

武蔵「まぁ否定するのなら仕方ない。ここは正当な飼い犬である私が大佐に甘える権利を行使するとしよう」

 

武蔵「大佐ぁ......あんな貧相な犬では満足できなかっただろう? ほら、武蔵が来たぞ。たっぷり可愛がってくれ♪」スリスリ

 

青葉「なぁ!?」

 

提督「......」

 

青葉「ちょ、ちょっと待ってください! いきなり横から入ってわたしを摘み上げて何をしてるんですかあなたは!?」

 

武蔵「んん......? なんだ? チワワが吠えているようだが煩わしいな。部屋から摘まみ出すか、大佐」

 

青葉「ち、チワワ!? 青葉が......重巡がチワワ!?」ガーン

 

比叡「そうです! 青葉がチワワならわたしはどうなるんですか!? 豆柴ですか!?」

 

青葉「比叡さん!? いつの間に!?」

 

武蔵「誰かと思ったら金剛姉妹のワンコか。しかも自分から豆柴とは......。貴様、解っているな?」

 

提督「......一体、お前たちは何の話をしているんだ......」サァ

 

比叡「あ、たい......さ!? どうしたんですか!? 顔色が凄く悪いですよ!?」

 

武蔵「なにっ? あ......見ろ! お前たちが騒ぐから大佐が体調を崩してしまったじゃないか!」

 

青葉「あ、青葉達の所為なんですか!?」

 

比叡「言いがかりです! というか、そこどいてい下さい! 大佐はこの比叡が癒します!」

 

ギャーギャー、ワーワー

 

 

長門「......」

 

日向「長門、何をじっと見ているの?」

 

長門「いや、ちょっと面白い光景を、な」

 

日向「ん? おい、どうしたんだこれ。糸が切れたマリオネットみたいな大佐を戦艦と重巡が取り合っているぞ」

 

長門「面白いだろ? オスを取り合うメス犬の様な青葉達も愛くるしいが、それ以上にあんなに精神的に弱り切った大佐が可愛い」

 

日向「長門、あなたね......」

 

長門「ふふ、これは後で私が癒してやらねば、な?」

 

日向「あの状態からそんなチャンスがあるのかしら?」

 

長門「あの状態だからこそ、だ。あの精神状態では大佐はまともに武蔵達の相手をする事などできまい? 皆が大佐に気を遣っていなくなった所で美味しいところをかっさらうんだ」

 

日向「上手くいくかしら......」

 

長門「大佐は真面目だがその分極端に打たれ弱い部分があるからな。そこを優しく労うように話し掛ければ、間違いないだろう」

 

日向「全て計算尽というわけね」

 

長門「ああ」

 

日向「......長門」

 

長門「ん? 日向、お前も乗るか?」

 

日向「ええ」

 

 

加賀「はい、そこまでです」

 

長門「む?」

 

日向「え?」

 

望月「全く、部屋が探しいと思って来てみれば」

 

神通「あまり、大佐をイジメちゃダメ、ですよ?」ニコ

 

長門「ふむ......ここは分が悪いな」

 

日向「長門と共犯扱いされるのはアレだけど......私も乗ってしまったからな」

 

長門「おいおい」

 

日向「分かった。退散する。大佐を助けてやってくれるか?」

 

赤城「心得ました」ニコ

 

加賀「それでは皆さん準備はいいですか?」

 

望月「私は出来ることが限られてるから、適当によろしく」

 

赤城「いつでも」

 

神通「大佐......お救いします」

 

加賀「......救出開始です」

 

 

長門「やれやれ、あんな気合いの入った目を向けられては退散せざるを得ないな」

 

日向「ま、今回ばかりは加賀達に任せた方がよかったさ」

 

長門「戦艦2人に重巡1人と正規空母2人と軽巡、駆逐、どっちに分があると思う?」

 

日向「愚問よ。“強い”方に決まってるじゃない」

 

長門「はは、そうだな」




その後、無事に加賀達に救出された提督は、暫く救出してくれた加賀達と駆逐艦以外に対して女性恐怖症を発症してしまったとかしなかったとか。
提督はもう少し肩の力が抜けるといいですね。


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第55話 「記憶」

「暇だから散歩してくる」と言って出て行ったレ級ですが、なにやら帰ってからずっとご機嫌です。
何時も明るくニコニコしている彼女ですが、その日に限っては特に明るく見えました。
当然、いつもの“メンバー”は彼女の様子に興味を持ちます。


レ級「~♪」

 

ル級「レ級なんだか嬉しそうね。何かあったの?」

 

レ級「えぇ? んふ~、実はねぇ~、えへへ~♪」

 

タ級「何なのよ......」

 

ヲ級「ドキドキ」

 

レ級「僕、大佐とキスしました!」

 

ル級「えっ」

 

タ級「へぇ」

 

ヲ級「わぁ」

 

レ級「あ、違った。大佐を好きになっちゃった、だ」

 

タ級「どっちにしても同じような意味よ」

 

ル級「そ、それホント? 敵を好きになっちゃったの? いくら大佐でも......」

 

ヲ級「大佐かぁ......」

 

レ級「大丈夫! いくら好きになってもちゃんと敵同士だから!」

 

タ級「きっぱりしてるわね。ま、あなたらしいけど」

 

ル級「す、好きな人が敵だなんて......なんかロマンチックね!」

 

ヲ級「うんうん!」

 

レ級「あ? やっぱりそう思う? 思うよね?」ニマニマ

 

タ級「なに喜んでるのよ......。姫にはどう言うの?」

 

レ級「もう言ってきた」

 

ヲ級「お、怒られた? 怒られたよね?」

 

レ級「頭痛くなった、って言って寝ちゃった」

 

ル級「姫......」

 

タ級「全く......それで、これからどうするの? 本当に敵同士のままでいいの?」

 

レ級「うん! その方針は変えないつもりだよ! ただ......」

 

ル級「ただ?」

 

レ級「これから大佐の所だけ奇襲する回数は減らそうかなって思ってる」

 

タ級「奇襲を減らす......それってもしかして、これからは事前に通告して襲うって事?」

 

レ級「うん!」

 

ヲ級「せ、宣戦布告ね! なんだかそれ、カッコイイ!」キラキラ

 

ル級「いや、来襲ポイントまで間に合えば襲わないんだから、実質会い行くだけだだよそれ......」

 

レ級「うん! これからは堂々と大佐に会いに行けるね!」

 

タ級「確かにこれは姫も頭痛くなるわよね......」

 

ヲ級「遊びに......わぁ、楽しみぃ♪」

 

ル級「ヲ級......」

 

レ級「取り敢えず、そういう事だから!」

 

タ級・ル級「......」

 

ヲ級「ねぇ、ねぇ。いつ行くの!?」

 

レ級「え? うーん、そうだなぁ......」

 

 

タ級「ヲ級、すっかりレ級の話に乗っちゃったわね」

 

ル級「うん......」

 

タ級「ル級、あなたも?」

 

ル級「え、えっと......ど、どちらかというと、た、楽しみ、かな......」

 

タ級「......」

 

ル級「う......」

 

タ級「ふぅ......」

 

ル級「っ、」ビクッ

 

タ級「そうね。私もよ」ニコッ

 

ル級「タ、タ級!」パァッ

 

タ級「私だって元艦娘、だもん。それは......ね」

 

ル級「......戻りたい?」

 

タ級「また沈まないといけないのはアレだけど......どうかしら。私沈んだ時の記憶がないのよね」

 

ル級「え、タ級も?」

 

タ級「私もって、もしかしてあなたも?」

 

ル級「うん......」

 

タ級「......ねぇ、ちょっと」

 

ル級「タ級?」

 

 

レ級「うん? なにー?」

 

タ級「レ級ってさ、艦娘のだった頃に沈んだ時の記憶って......ある?」

 

レ級「ないよ? なんだか分からないけど、僕だけ全然思い出せない」

 

ヲ級「え? レ級も?」

 

レ級「レ級もって、え? もしかしてヲ級も?」

 

ヲ級「うん......私だけだと思ってた」

 

タ級「......それ私達も、よ」

 

レ級「ええ?」 ヲ級「ウソぉ!?」

 

ル級「ホントよ......凄く驚いてるけど」

 

タ級「ねぇ、私達って姫みたいな特別な存在を除けば、大体沈んだ時の事を憶えてるわよね?」

 

レ級「少なくともここにいる面子以外はそう、かな?」

 

ル級「うん、そう。私も結構聞いてる」

 

ヲ級「私も」

 

4人「......」

 

タ級「なんで私達だけ......」

 

ル級「お、憶えてないくらい沈んだ時の恨みが強かった......とか?」

 

ヲ級「え、なんかヤダよそれ......」

 

タ級「そうね。でも有り得ないとも......」

 

レ級「多分、違うと思うよ」

 

タ級・ル級・ヲ級「え?」

 

レ級「多分、強いからだよ。僕たちが」ニッ

 

タ級「強いからって......ただ、それだけ?」

 

レ級「うん! 多分他の子より特別強くて、自信とか誇りとかがあったから、沈んだ時も後悔しなかったんじゃない?」

 

ル級「後悔しなかったから憶える必要がないって思ったって事?」

 

レ級「そ」

 

ヲ級「そ、そっちの方がいいなぁ。なんだかカッコイイし!」

 

タ級「あなたそればっかりじゃない......。でも、そうね。私もその方がいいわ」

 

レ級「ね? そうでしょ? きっとそうだよ!」ニコッ

 

ヲ級「流石、レ級! 大好き♪」ギュッ

 

レ級「えへへ、そんなに褒めないでよ~♪」テレ

 

ル級「流石、私達のリーダーねっ♪」

 

タ級「全く、あなたのその自分を疑わない真っ直さには適わないわね。でも、ありがとう。あなたが私たちのまとめ役でよかったわ」

 

レ級「もう、タ級まで。照れるからもうやめて!」テレテレ

 

 

レ級(うん......多分そうだよ。辛い記憶だった印象は無いし......。ただ、他の子は分からないけど、僕の中に微かに残っているのは......。燃え盛る炎の中で傷だらけなのに、優しく豪快な笑みを浮かべた“誰か”の顔だけ......)

 

レ級「元気かなその人......」ボソ

 

ル級「え?」

 

レ級「あ、ううん何でもないよ」




過去編を書くためのネタ作りです。
まぁ大体この子たちが“誰”の艦娘で、その提督が“誰”であったかのかは予想できている人もいるとは思いますがw

ま、そのことを書くのはいつになるのかまだ分かりません。


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第56話 「回復」

提督が朝からベッドで寝ていました。
なかなか起きてこない提督に業を煮やして、珍しくやる気が満ちた顔の初雪が提督を起こしに行きました。


初雪「大佐ー」

 

提督「......なんだ」

 

初雪「昼間っから何で寝てるの?」

 

提督「ちょっと、な」

 

初雪「体調でも悪いの?」

 

提督「そんなところだ」

 

初雪「大丈夫?」

 

提督「別に病気とかじゃないから大丈夫だ」

 

初雪「え、じゃあ何が調子悪いの?」

 

提督「......」

 

初雪「大佐?」

 

提督「大人だって時にはいじけたくなる時もあるんだ」

 

初雪「へ?」

 

提督「初雪」

 

初雪「な、なに?」

 

提督「女は怖いな」

 

初雪「え?」

 

提督「.....」ボフッ

 

初雪(ふ、布団被っちゃった。な、なに。何があったの? ていうかホントにこれ大佐?)

 

初雪「ね、ねえ大佐元気出してよ。仕事どうするのさ」

 

提督『執務なら今日中のは全部やって机においてある」

 

初雪「え?」

 

初雪が提督の机を見ると山のような書類がきちんと整理されて置かれていた。

 

初雪(あの量を午前中だけで......? 嘘でしょ......)

 

初雪「で、でもさ艦隊の指揮はどうするの?」

 

提督『出撃や演習の指揮を執る時はちゃんと出るから大丈夫だ』

 

初雪「そ、そう......」

 

提督『ああ』

 

初雪「ねえ、大佐」

 

提督『なんだ』

 

初雪「何があったの?」

 

提督『......初雪、お前は個性的ながらも頼りになる部下が、いきなり自分は上官の犬だ、なんて自信を持ってしかも嬉しそうに言ったりする姿を見たらどう思う?』

 

初雪「え?」

 

提督『俺は衝撃を受けると思う。今まで真面目に訓練してきたつもりだったが、どこで育て方を間違ったのかと。俺は自信がなくなってしまった』

 

初雪「え、えっと......」

 

提督『衝撃を受けて呆然としている俺を信頼していた部下たちが、チワワである自分こそ提督を癒すに相応しいとか、豆柴である自分の方が提督の好みだとか、ハスキーの自分こそが提督に色々してやれるなどと言って取り合い......俺は心の中で泣いてしまった......)

 

初雪「うわぁ......」(そりゃ大佐にはキツイかも......)

 

提督『俺は女と言う生き物が怖くなってしまった』

 

初雪「大佐......」(あ、重症だこれ)

 

 

初雪「あのさ大佐」

 

提督『ん?』

 

初雪「こうやって話してる分にはわたしは平気そうだね」

 

提督『駆逐艦は大丈夫だ。お前たちは常に素直だからな。信用できる』

 

初雪「あ......あ、そう」(なんでだろう嬉しい事言ってくれている筈なのに素直に喜べない)

 

初雪「でもさ大佐、その誰だかわからないけど大佐を取り合った子も、大佐の事が好きでやったんでしょ?」

 

提督『......かもな』

 

初雪「なら、そこは素直に喜んでお礼を言うべきじゃない? じゃれつかれるのが苦手でも、そこで動揺せずに平静を装って対応ができれば上手くいったかもよ?」

 

提督『......』

 

初雪(まだダメか......)

 

初雪「じゃ、じゃあさ大佐」

 

初雪「わたしが犬の真似したらどう思う?」

 

提督『......なに?』

 

初雪(えーい、こうなりゃヤケだ!)

 

初雪「わ、ワン! は、はつゆ......初ワンだワン!」カァ

 

提督『......』

 

初雪「た、大佐ど、どうしたワン? げ、元気出すワン。く、ク~ンク~ン」カァァ

 

提督(なんだ......? 一見して下手なのに、俺なんかの為に一生懸命に犬の真似をする初雪の姿がどうしようもなく嬉しくて心が熱い)

 

初雪「た、大佐ぁ~元気を出して欲しいわ、ワ~ン」プルプル

 

提督(羞恥のあまり泣き笑いのような表情を......俺は、俺はこのままで......!」

 

バッ

 

初雪「ワン!?」ビクッ

 

提督「初雪......」

 

初雪「な、なに?」

 

ギュッ

 

初雪「きゃっ」

 

提督「ありがとう......俺は間違っていた。お前の必死に頑張る姿を見て、俺は今、自分の心が洗われたような気持ちだ」

 

初雪「わ、ワン......」(あ、犬真似の癖がまだ......)

 

提督(まだ俺なんかの為に犬の真似を......。くっ)

 

提督「......これはいけないな。お前達に心配を掛けない提督の姿を再び示さなければ」

 

初雪「あ......も、もう平気?」

 

提督「ああ、ありがとう初雪。お前のおかげだ」

 

初雪「う、うん......元気になってくれればいいよ」

 

提督「安心しろ。もう大丈夫だ」

 

初雪「そ......」(なんか残念だなーなんて、ね)

 

初雪「......ちぇ」

 

提督「ん? どうした?」

 

初雪「ううん、なんでもない」




初雪はやる気を出せば望月と並んで優秀な子だと思います。
どっちも甲乙付け難い可愛さが難点と言えば難点です。


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第57話 「昇進」

食堂で昼食を取ろうとしていた提督に大淀がに配膳口である物を手渡してきました。
何故食堂なのか?
それは大淀がそこにいるからです。



大淀「大佐、本部より大佐に通達が来ています」

 

提督「そうか......定食と一緒に通達を受けるのは初めてだ」

 

大淀「はい、これオマケの封筒を切る為のカッターです」

 

提督「ファミレスのメニューのトッピングのように言わないでくれ......」

 

 

雷「大佐―それなーにー?」

 

提督「本部からの通達だ。中身はまだ見ていない」

 

暁「気になるわね。開けてよ!」

 

提督「今食事中だ」

 

飛鷹「私が開けてあげるわよ?」

 

提督「お前は、ただ中身が見たいだけだろ。見た目は一応大人なんだから、もう少しそれらしくしろ」

 

曙「ちょ、それってあたしが子供っぽいって事ですか!?」

 

提督「いや、お前たちと比べたら飛鷹の方が子供だな」

 

飛鷹「ちょ!?」ガーン

 

加賀「何にせよ。食堂で開けるわけにはいかないわ。皆、ここは大人しく退散しなさい」

 

ハーイ

 

 

提督「加賀、悪いな」

 

加賀「いえ」

 

提督「......」モグモグ

 

加賀「......」ズズ

 

提督「お前も気になるのか」

 

加賀「ま、人並みには」

 

提督「何故?」

 

加賀「もしかして異動のお話だったりしたら......」

 

「!?」ガタッ

 

提督「お前達落ち着け」

 

加賀「......」

 

提督「突然何を言うんだ」

 

加賀「可能性はゼロじゃないじゃないですか......」

 

提督「お前まさか、通達が来る度にその可能性を心配してたんじゃ......」

 

加賀「いけませんか?」

 

提督「もし、その辞令だたらどうするつもりだったんだ」

 

加賀「絶対に着いて行きます」

 

提督「子供みたいなこと言うな」

 

グッ

 

加賀「つ・い・て・い・き・ま・す」グス

 

提督「分かった。分かったから無表情で睨みながら泣くな」

 

提督「......失礼しました」グシグシ

 

提督「......ふぅ。伊勢」

 

伊勢「あ、はい?」

 

提督「悪いがこの封筒の中に入っている辞令を今この場で読んでくれないか?」

 

伊勢「え? 今ここで、ですか?」

 

提督「ああ」

 

加賀「大佐......」

 

伊勢「わ、分かりました。じゃ、ちょっと失礼しますね」スー......ピッ

 

伊勢「えーっと......あ」

 

提督「どうした?」

 

加賀「な、なに......?」ビクッ

 

伊勢「大佐、おめでとうございます。これ昇進の辞令ですよ。大佐は明日の0000時より階級が准将になるそうです」

 

オオオオオ ガヤガヤ

 

提督「そうか」

 

加賀「......」ホッ

 

木曽「ん? じゃ、これからは大佐の事は准将って呼ばないといけないのか?」

 

島風「えー、やだそれー言い難い!」

 

妙高「でも、今まで通り大佐と呼ぶのも......階級が下になるわけですし」

 

鈴谷「じゃぁ、提督にする? これがメジャーっぽいけど、鈴谷はずっと大佐だったから大佐がいいなぁ」

 

提督「大佐でいい」

 

妙高「え?」

 

提督「今までお前達と一番長い時を過ごした階級がそれだったんだ。なら俺もそっちの方がしっくりくる」

 

翔鶴「しかしそれでは階級が......」

 

提督「敬称という事にしておけばいい。少なくともここでは上官の前でない限り今まで通り大佐でいい」

 

霧島「さっすが大佐です。私もその方がいいです♪」

 

名取「わ、私も......その方が嬉しいです。ありがとう......大佐」

 

タイサ! タイサ! ガヤガヤ......

 

伊勢「あ、まだ紙があった。これは......ちゅ、中将からです!」

 

伊勢「え、えっと、“尚、この辞令を受けた提督は、昇進祝いをするので明日の昼までに大本営海軍本部まで出向く事。随伴艦は3人迄編成は自由”......」

 

シーン......

 

提督「ん?」

 

金剛「大佐ァ! ワタシ! ワタシが行くネ!」

 

武蔵「待て。この武蔵を差し置いて金剛が行くなど......」

 

矢矧「3人とは少ないわね......た、大佐、私なんてどう、かな?」

 

子日「子日も行ってみたい!」

 

ワタシ! ワタシヨ! ガヤガヤ

 

提督「お前達、少し落ち着......」

 

鳳翔「みなさん静かにしてください?」

 

大淀「静かにしないとこれから1カ月おかずを1品減らしますよ?」

 

シーン......

 

加賀「取り敢えず、抽選と言う事にしましょうか」

 

提督「......そうだな」




そろそろ昇進させた方がいいかなと思って、してもらいました。
呼び方は変わりませんがw


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第58話 「練習」

初雪が鏡の前で何やら真剣な表情をしています。
その頭には犬耳、何をするつもりでしょう?


初雪「......」

 

初雪「......わん」

 

初雪「初ワンだわん......」

 

初雪「違うな......」

 

初雪「こんばんワン♪ 初わんだワン!」

 

初雪「......うん」

 

望月「......何してるの」

 

初雪「!?!?!?!?」

 

望月「いや、そんなに驚かないでよ。ドアから声が漏れてたよ?」

 

初雪「えっ......。っ、」グス

 

望月「え、泣く事ないよ。大丈夫、多分気付いたのわたしが最初だから」

 

初雪「も......望月が最初で......もぉ、う......ぐす。恥ずかしいよ......」

 

望月「ごめんけど、そこは諦めてよ。気付いたのがわたしで良かったと思えばいいと思うよ?」

 

初雪「......まぁ、そう言われれば......」

 

望月「でしょ? って自分で言うのもあれだけどね」

 

初雪「ううん、望月で良かった」

 

望月「そりゃどうも。で、何してたの?」

 

初雪「......犬の練習」

 

望月「はぁ、そりゃまたなんで?」

 

初雪「大佐、犬が好きっぽいから......」

 

望月「......待って」

 

ガチャ、バタン、カチッ

 

 

初雪「どうして部屋中の鍵を閉めるの?」

 

望月「この手の情報は外に漏れると収拾が付かなくなる事があるからね。大佐には迷惑を掛けたくないでしょ?」

 

初雪「なるほど......」

 

望月「それで、なんだっけ。大佐が犬が好きだから犬の真似してたの?」

 

初雪「うん」

 

望月「それホント?」

 

初雪「間違いない。わたし......凄く可愛がってもらった」

 

望月「......へぇ」

 

初雪「望月も大佐が好き?」

 

望月「まぁね。何よりも好きなのは間違いないよ」

 

初雪「意外。全然気づかなかった」

 

望月「そりゃ初雪だってそうだよ。わたし普段の態度から悟られる事がないようには一応気を付けてたつもりだし。初雪だってそうだたんでしょ?」

 

初雪「まあ......」

 

望月「でもなるほどねぇ。大佐は犬が好きかぁ」

 

初雪「望月も犬の真似してみる?」

 

望月「大佐が喜ぶならね。わたしだって可愛がってもらいたいし」

 

初雪「はい、犬耳」

 

望月「ん? ああ、いいよ。本番では着けるけど、練習の時はいらない」

 

初雪「為り切るのに必要だよ?」

 

望月「まぁ見てて......」

 

初雪「?」

 

望月「こほん......」

 

望月「こっんばんワン♪ 望わんだよ♪ え? 最後語尾がワンじゃなかったって? そっれはぁ.....望わんをちゃんと可愛がってくれたら言ってあげる......ワン?」

 

望月「......こんな感じ?」

 

初雪「凄い......」

 

望月「ま、キャラづくりは得意だよ」

 

初雪「なんか資料でもあるの?」

 

望月「主に漫画関係」

 

初雪「へぇ......」

 

望月「初雪も見てみる?」

 

初雪「うん......」

 

 

――数十分後

 

初雪「初わんと♪」

 

望月「望わんだワン♪」

 

初雪「たーいさぁ、初わんをもっとナデナデするワァン」

 

望月「だーめっ。先にナデナデするのは望わんにして! じゃないと、ペロペロしてあげないよっ?」

 

初雪・望月「......」

 

望月「なかなかいい感じじゃない?」

 

初雪「うん......これなら、頑張れる」

 

望月「じゃ、後は甘えるタイミングでも決めようか」

 

初雪「了解。この時間帯とか......」

 

 

祥鳳「......」

 

千歳「翔鳳さん人の部屋を見るのは良くないですよ」

 

祥鳳「あ、その......ごめんなさい。つい、可愛すぎて......」

 

千歳「可愛すぎて?」

 

祥鳳「うん、ほら......」

 

千歳「え? これっ、わぁぁぁぁ......」キラキラ

 

祥鳳「ね?」

 

千歳「こ、これはいけないのは分っていても破壊力が......はわぁぁぁ」キラキラ

 

祥鳳「青葉を呼びましょう」

 

千歳「そうですね! これは保存しないと!」




二人とも飼いたいです。
それ以外に言葉見当たりません。


次の話(第3部57話参照)に出す抽選の艦娘を読者の方に希望があれば参考にしてみたいと思います。
完全な気まぐれなので宣伝はここと一部の感想の返信のみです。

希望がありましたら活動報告の「はじめまして」に今日の00時迄に返信でお願いします。
*武蔵は固定(話ネタに必要な為、つまり枠は2人)

何事もなければ筆者の趣味になります。


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第59話 「準備」

抽選の結果が出ました。
あとは準備です。


提督「抽選のクジで残ったのは......」

 

長門「私と」

 

武蔵「私と」

 

初春「妾じゃな」

 

加賀「戦艦二人と駆逐艦、クジにしてはなかなか悪くない編成だと思います」

 

筑摩「残念ですけど仕方ないですね。こればかりは運ですから」

 

神通「皆さん、大佐の事をお願いしますね」

 

陸奥「長門、しっかり頼むわよ」

 

叢雲「初春もね」

 

長門「任せてくれ。運だとしても希望して選ばれたんだ。勤めは果たしてみせる」

 

武蔵「右に同じくだ。武蔵の名に恥じない働きをしてくるさ」

 

初春「心配無用じゃ。それは叢雲も分かっておるじゃろう?」

 

加賀「皆さん良い返事です。私からも大佐の事を宜しくお願いします」

 

提督「おい、なんか俺の扱いが初めてお遣いに出す子供のような気がするんだが」

 

加賀「それだけ身を案じているんですよ」

 

提督「そうか」

 

 

筑摩「あの、ちょっとよろしいですか?」

 

提督「何だ、筑摩」

 

筑摩「中将からの手紙では明日の昼までには本部に着くようにとの指示でしたが......」

 

長門「あ」

 

加賀「......ここから日本までの距離はかなりありますね。それなのに明日の昼までにとは一体......」

 

提督「その事なんだがな。迎えが来る」

 

武蔵「迎え? 海路......ではないな。どんなに速い潜水艦でも間に合うまい」

 

提督「恐らく複座式に改造した疾風だ」

 

長門「疾風......四式か」

 

筑摩「確かに疾風なら10時間もあれば着くとは思いますが、燃料が......」

 

加賀「空母ですか?」

 

提督「そうだ。途中、作戦行動中の給油用の空母が待機しているらしい」

 

初春「随分と準備がいいのう」

 

提督「昇進自体決めるのは本部だからな。それに合わせて元々作戦行動も取っていたんだろう」

 

陸奥「なるほどねぇ」

 

叢雲「手配したのは中将かしら」

 

提督「恐らくな」

 

加賀「という事は出発は今夜ですか」

 

提督「ああ」

 

長門「空か......初めてだな」

 

武蔵「なんだ。怖いのか」ニヤ

 

長門「かもな。でも楽しみでもある」

 

武蔵「そ、そうか......」

 

初春「なんじゃ、怖いのは武蔵殿じゃったか?」

 

武蔵「なぁ!? ば、馬鹿を言うな! 私はただ......」

 

陸奥「体重?」

 

武蔵「う......」

 

筑摩「一応、最大の戦艦ですからね......」

 

提督「お前達、当たり前だが艦装は外していくからな? そんなものを着けて飛べる筈がないからな」

 

武蔵「えっ」

 

提督「お前は俺たちを海に落とす気だったのか」

 

武蔵「い、いや、そんな! た、ただ......私は普段から艦装を着けていることが多いから......落ち着かないというか」

 

加賀「普通の女の子になるのが恥ずかしいようです大佐」

 

武蔵「か、加賀!」

 

叢雲「意外ね。武蔵さんって結構乙女だったのね」

 

長門「なぁ、一応それは武蔵だけに言っているんだよな? 戦艦でひとくくりにしてはいないよな?」

 

陸奥「なにこんな時に乙女アピールしようとしてるのよ......」

 

提督「お前達が艦娘である前に一人の女性であることは俺も承知している。だから武蔵、そんなに気にするな」

 

武蔵「あ、ああ......分かった」

 

長門「大佐、私には言ってくれないのか?」

 

陸奥「だから、自分から乙女アピールしてた人間が何言ってるのよ!」

 

初春「ふふ。これは道中の道のりは退屈しないで済みそうじゃ」

 

加賀「大佐、そろそろ支度の準備を。仰る通りなら迎えが来るまでもうあまり時間がありません」

 

提督「そうだな。分かった」

 




ね、眠いので続きは明日で。
多分次の話では本部に着いてますよ、うん。


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第60話 「出迎え」

予想通り迎えに来た疾風に乗り込んだ提督たちは何度かの空母での給油を得て、今は高速艇に乗って本部へと向かっています。

流石に狭いコクピットに疲れたのか、伸びをしたりして気持ち良さそうです。


提督「もう直ぐ着くぞ」

 

初春「ふぅ、最後の移動が船でよかったわ」

 

長門「確かに、数時間も狭い飛行機の中というのはちょっとキツイからな」

 

武蔵「隣から嬉しそうに手を振っていた奴がよく言う......」

 

長門「仕方ないだろ、楽しかったんだから。ああ、そういえばお前はずっと海面を見て青い顔をしていたな。ふふっ」

 

武蔵「なっ、あ、あれは違う! 敵の奇襲を警戒していたんだ!」

 

長門「あんな上空から発見しても意味ないだろ......砲撃だって届かないし」

 

武蔵「も、もしもの場合がだな――」

 

提督「二人ともあまり騒ぐな。もう直ぐ着く、出迎えてくれる方に恥ずかしいところを見せるな」

 

初春「誰が迎えに来てくれるのじゃ?」

 

提督「信じられないが、中将と彼女、そして......元帥だ」

 

武蔵「元帥も? ちょっと大げさ過ぎないか?」

 

提督「昔からの中将の同僚で、声を掛けたららしい。彼女は俺と同じ中将の教え子だ」

 

長門「錚々たる顔ぶれだな」

 

提督「そうだな。海軍の総司令官補佐と第1、第4司令部の司令官の直々の出迎えだからな」

 

武蔵「第1司令部の司令官が元帥という事は総司令部の司令官と兼任なのか?」

 

提督「いや、総司令部の司令官は総帥だ」

 

長門「では、第2、3の司令部の司令官は誰が務めてるんだ?」

 

提督「単純に階級と役職順だ。上から総帥、元帥、大将、中将、少将、だな」

 

初春「第3司令部の司令官は大佐の言う中将とは違う方みたいじゃな」

 

提督「その通りだ。俺もその司令官には会った事がない」

 

初春「なるほどのう」

 

武蔵「初春は知らなかったのか?」

 

初春「大佐との付き合いは長いが、本部には一度も行った事がないからの」

 

長門「右に同じく」

 

提督「艦娘の本土への上陸は本部からの許可がないとできないからな。一応、お前たちの存在はまだ機密扱いなんだ」

 

武蔵「うむ。私の建造も重要機密だったからな」

 

長門「......何を威張ってるんだ?」

 

初春「そこは聞くだけ野暮というものじゃ」

 

武蔵「聞こえているぞ!」

 

提督「全員静かにしろ。港が見えて来た」

 

長門「ん......? なんか人数が多くないか?」

 

初春「そうじゃの。3人の司令官に供してる艦娘を入れても、少し多い気がする」

 

提督「あれは......」

 

 

中将「おお! 来たなぁ。待ってたぞ!」

 

元帥「准将、昇進おめでとう」

 

彼女「遅いわよ、なんて事ないから安心しなさい」

 

T督(以降、一時的に少将)「先輩! 昇進おめでとうございます!」

 

丁提(以降、一時的に中佐)「おう、酒の約束果たしに来たぜ」

 

提督「元帥殿、中将殿、少将に......」

 

彼女「ちょっと、わたしにも『殿』って付けなさいよ」

 

少将「僕がよく資材の件でお世話になってるのを元帥閣下が把握されていたんです。それで今回気を遣って頂きまして」

 

中佐「俺は親父経由だ」

 

大和「中佐、何度も言わせないで下さい。親父ではなく中将殿、です」

 

中佐「わーってるよ。......いきおくれ」ボソ

 

大和「は......?」プチッ

 

長戸「ん? やるのか?“本部の大和”とやるのは初めてだな♪」

 

 

叢雲「数週間ぶりね大佐。あら......?」

 

長門「ん、なんだ?」

 

叢雲「いえ、あなたそれ指輪?」

 

長門「ん? ああ、此処に来る直前の演習で成長限界に達したんだ。ふふっ、これで私もたい......准将と晴れて夫婦というわけだな。3人目だが」

 

少将「......あ?」

 

提督(しまった)

 

少将「先輩、この前僕が言った事覚えてますか? いや、強制のつもりはなかったですけどね。まぁ、取り敢えず飲みましょうか、ねえ!」

 

初春「なるほどの。重婚というのはこういう災難も呼び寄せるのか。ふふ、これは勉強になるのう」

 

 

無蔵「ん? おい、お前新顔だな」

 

武蔵「ん? ああ、同型か。同じ顔というのは気持ち悪いものだな」

 

無蔵「そうだな。が、まあ私はオリジナルだからな。もうその時点でお前とはポテンシャルが違うぞ」

 

武蔵「そんな事をいちいち自慢するとは器の小さい奴だ。私の同型とは思いたくないな」

 

無蔵「なに?」

 

武蔵「いいか? 私は准将の誰よりも従順な犬なんだ。聞こえはあまり良くないが、あの人と私の間には既にケッコン前から信頼を超えた絆がある。私が誇るのはそれだけだ」

 

無蔵「何を言うかと思えばそんな事か。だが生憎な、絆に関する事なら私も負けていないぞ。彼女こそ私が誰よりも愛している生涯のパートナーであり、そして私はその下僕だ」

 

武蔵「げ、げぼ!?」

 

彼女「あなた達はさっきから何を言っているのよ......」

 

ギャーギャー、ワーワー

 

 

中将「はっはっは。一気に騒がしくなりよった。なぁ元帥」

 

元帥「全く、若いというのはいいものだな」

 

???「止めないのですか?」

 

元帥「いや、昔を思い出す。暫くこうやって眺めるのもいいだろう」

 

中将「ふはっ、相変わらず人が悪いな」

 

元帥「お前に言われたくはないわ」ニヤ

 

???「全く......それでは、私は先に宴会場の準備の様子を確認してきますね」

 

元帥「ああ、紀伊。頼んだ」




というわけで、ある意味オリジナルキャラの紀伊が一瞬だけ登場です。

紀伊って実装されるんですかね。
というかそもそも「紀伊」という名前になるかも分らないですよね。
紀伊を登場させたのは一応彼女が実装されるまでは続けていたいという願掛け的な意味もあったり。

その時この作品は何話なのかなぁ。

あ、そうだ金剛、ビスマルクに続いて長門ともケッコンしました。
おめでとう!


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第61話 「宴会」

宴会場に案内された提督たちは、挨拶もそぞろに中佐(T督)の乾杯の音頭でもう宴が始まろうとしていました。


少将「それでは、准将の昇進を祝いまして......」

 

「かんぱーい!」

 

 

中佐「ごく......ごく......ふはぁ、にしてもやっと昇進かぁ。良かったな」

 

提督「俺からすればお前がまだ中佐のままの方が不思議だ」

 

彼女「そうね。いくら資材の消費が激しいからってそれを補って余りある戦果だって挙げてるでしょうに、その戦果すら霞ませる消費ってなんなのよ」

 

中佐「んぁ? まあそれはアレだ。あいつを見ろ」

 

提督「お前の長門か」

 

中佐「そうだ。俺が鍛え上げた、親父の様に。それがどういう意味か解るだろう?」

 

彼女「ケッコン以後の成長限界に達しているって事かしら」

 

中佐「それだけじゃない。経験と鍛錬を唯ひたすら積み重ねてきた。これは能力では補えない精神的強さになる」

 

提督「ふむ、お前はその為に全てを注ぎこんでいるんだな」

 

中佐「その通り。その為なら昇進なんてどうでもいい。お蔭で俺の艦隊は今も最強の自信がある」

 

彼女「豪語するわねぇ......。ま、その言葉がハッタリじゃないのは解るけど」

 

中佐「おう。お前のとこの武蔵にも負けないぞ」

 

彼女「言うわね。だけど、演習はしないわよ? こんな席でそんな話したら中将に何を言われるか分からないもの」

 

中佐「残念、釣れなかったか」

 

提督「今日は元帥もいるんだ。少しは自粛しないとな」

 

 

無蔵「お前は准将の所の初春か?」

 

初春「そうじゃ。この前来た時はろくに挨拶もできなくてすまなんだのう」

 

無蔵「いや、気にするな。ふっ......」

 

初春「なんじゃ?」

 

無蔵「いや、准将は養女趣味もあるのかと思ってな」

 

初春「ほう。妾の矮躯を哂うか。ま、否定はせんがの」

 

無蔵「ほう。感情的に反論してくると思ったら意外に身の程を弁えてるじゃないか」

 

初春「その不遜な態度、自分の実力に対する絶対の自信があるようじゃな。大したものじゃ」

 

無蔵「ん? ま、まあな」(なんだ? ここまでして乗ってこない奴は初めてだぞ)

 

初春「妾が憤怒しないのが不思議かえ? それは残念じゃったな。これでも妾はこと忍耐と機を読む力に関しては絶対の自信があるのじゃ」

 

無蔵「なんだ、単に我慢強いという事か?」

 

初春「そんな安易なものではない。心から慕う殿方と最も古い付き合いの一人でありながら、その想いを殿方自身から好意を受けるまで秘することができる程度の忍耐ぞ?」

 

無蔵「なんだそれ。やっぱりただ我慢してるだけじゃないか」

 

初春「ふっ......最も数が多く、そしてその脆さ故に練度を鍛え難い駆逐艦の悩みは無蔵殿には流石に理解は難しいじゃろうて」

 

無蔵「あ......えっと、す、すまなかったな。あまりにも無神経が過ぎた」

 

初春「よいよい。もう直ぐ先ほど申した、妾が得意とする力を経験することになるじゃろうし。今回は大負けに許してしんぜよう」

 

無蔵「は?」

 

初春「忍耐と、機を読む事にも自信があると申したじゃろう? 無蔵殿、覚悟されよ。もう直ぐ妾が読んでいたその機が主に襲い掛かるぞ?」

 

無蔵「な、なにを......」

 

むきゅ

 

無蔵「ひゃ、ひゃぁぁあ!?」

 

少将「駆逐艦の......何が悪いって言うんですかぁぁぁぁ!」

 

無蔵「しょ、少将!? あ、ちょっと......や、やめてくれ! 客人には危害を加えられないんだ!」

 

少将「にゃぁぁぁに言ってるんですか? さっき無蔵さん駆逐艦の事馬鹿にしたでしょう? それはね、僕の叢雲を馬鹿にしてる事と同じなんですよ!? それの何処が危害を加えてないってゆーうんですかぁ!?」

 

むぎゅぅぅぅ

 

無蔵「ひ、ひひゃいっ! ひゃ、ひゃへて! あひゃはふはは!」

 

少将「何言ってるのか分かりませんよ! 反省がまだ足らないみたいですね!」

 

ぎゅむぅ

 

無蔵「ひひゃぁぁぁぁっ!? はふはひゅ、はふへへ......」

 

初春「......」ニコニコ

 

無蔵「......!」ゾッ

 

初春「......」トントン......

 

無蔵(も、モールス信号?)

 

トトン......(シバラクハンセイスルガヨイ)

 

無蔵「!」

 

初春「~♪」バイバイ

 

少将「なぁぁぁに余所見してるんですかぁぁ!!」

 

ギュギュゥ

 

無蔵「ひぃ、ひゃああああああああ!!」

 

 

武蔵「......凄いな」ゾッ

 

叢雲「あーあ、怒らせちゃって。ま、嬉しいけど」

 

長戸「はは、嬉しいって酷いな奴だな」

 

叢雲「私だって駆逐艦なりの誇りは持ってもの。彼はそれ代弁してくれてるのよ。嬉しいに決まってるじゃない」

 

武蔵「じ、自分の分身ながら鏡を見ているようで気分が......」サァ

 

長戸「おいおい、そっちの武蔵は随分大人しいんだな」

 

武蔵「わ、私はお前たちが思ってるほど不遜ではないぞ? ちゃんと准将に躾けられてるんだ」

 

叢雲「躾って.......」

 

長戸「ほうほう、そういう趣味か。よし、お姉さんとちょっとエロトークでもしよう!」

 

武蔵「お、お姉さんって......。わ、私は大和型だぞ!? 武蔵なんだぞ!?」

 

長戸「こーんな可愛い武蔵が私よりお姉ちゃんな筈がなかろう。さぁおいで可愛がってやろう」

 

武蔵「な、なにを......!?」

 

長戸「叢雲、お前も付き合ってくれよ? 見た限りお前も相当アッチの話はできそうだしな」

 

叢雲「へぇ、よく判ったわね。ま、退屈だったからいいけど」

 

長戸「そうこなくては!」

 

武蔵「や、やめろぉぉぉ! 大佐ぁぁ! うわぁぁぁぁん!!」

 

 

長門「皆盛り上がってるな」

 

大和「そうね......」

 

長門「お前は酒が入ってるのに全然変わらないな。寧ろ落ち込んでる。一体どうしたんだ?」

 

大和「......いいわよね、貴方たちは提督と恋仲になれて」

 

長門「ん?」

 

大和「......」フィ、グビ

 

長門(ああ、そういう事か)

 

長門「中将が好きなのか?」

 

大和「......大好き」

 

長門「告白はしたのか?」

 

大和「もう何回も......」

 

長門「全て断られてるのか」

 

大和「というより、まともに相手にされない。悪気がないのは分かるけど。それでも振り向くくらいはしてくれたっていいじゃない......」

 

長門「なるほどな」

 

大和「長門、私どうしたらいいのかな......」

 

長門「ん? そうだな......」(酒が入ってる所為か口調が段々子供みたいになってきたな)

 

大和「う......ぐす。どうやったら、振り向いてもらえるの......かにゃぁぁ......」ジワ

 

長門「うーん......あっ」(泣き上戸か。これは厄介だぞ)

 

長門「取り敢えず、後ろの中将殿に慰めてもらったらどうだ?」

 

大和「ふぇぇぇ......?」

 

中将「何を泣いてるんだ、この娘は」

 

大和「ちゅ、中将ぉ......だって......だってぇ......」ブァ

 

中将「お前は酒が入るといつもこうだな」

 

大和「う......ぐす......ごめんなしゃい......」

 

中将「泣く泣くな。ほれ、こっちにきて一緒になんか食べよう。酌をしてくれるか?」

 

大和「っ、中将ぉぉぉ!」ダキッ

 

中将「おっとっと、ほら行くぞ」

 

大和「はぁ......い♪」スリスリ

 

中将「調子のいい奴だな。長門、面倒掛けたな」

 

長門「あ、いえ」

 

中将「うむ、ほら行くぞ大和ぉ」ヒョイ

 

大和「んふふふ、おんぶ―♪」

 

 

長門「......」

 

長門(中将のあの目、気になるな)

 

 

元帥「賑やかだな」

 

紀伊「......」

 

元帥「どかしたか?」

 

紀伊「いえ」

 

元帥「そうか」

 

紀伊「......閣下」

 

元帥「ん?」

 

紀伊「お注ぎ致します」

 

元帥「ふっ、ありがとう」




宴会の話が終わったところで第三部終了とします。

次の第四部からは......過去の話を多少混ぜようかと思ってます。
ま、最初の方は本部と提督の鎮守府の日常にするつもりですが。


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メインストーリー(第四章)
第1話 「謎」R-15


宴会も無事何事も無く(若干名泣いていた大和型が3人いましたが)終わり、提督たちは再びそれぞれ鎮守府に帰ります。
港までは中将たちが迎えの時と同じく、見送りに来てくれました。

*明らかな性的描写あり


元帥「それでは達者でな」

 

彼女「偶には仕事以外で来なさいよ?」

 

中将「ぐふふ、久しぶりに一緒に飲めて良かったわ。また、飲もうな!」

 

大和「中将まだお酒が抜けてないんですか?」

 

提督「皆さん、この度は本当にありがとうございました」

 

元帥「本当に帰りは送らなくていいのか? 輸送機を用意しようと思っていたのだが」

 

提督「ええ、大丈夫です。帰りくらいは自分達で――」

 

 

中佐「帰りはゆっくりでいいんだろ? なら、俺の......」

 

長戸「提督......」クイ

 

中佐「あ?」

 

長戸「......」チョン

 

中佐「お前な......。悪い、ちょっと無理そうだ。あー......、あ、後輩!」

 

少将「え?」

 

中佐「おま......あ、階級は上なのか......あー、えっと」

 

少将「ははは、気にしないで下さいよ。中佐の武勇伝はよく耳にしてます。勿論、昇進が出来ていない理由も」ニコッ

 

中佐「うわ、なんかカッコワリィなそれ。まあいいや。後輩、こいつの事頼めるか?」

 

提督「いや、俺は連れて来た誰かに乗れば......」

 

中佐「遠慮すんなって、ここまでは原形にならずに一緒に来たんだろ? なら、帰りも旅行気分でいけよ。俺だってわざわざその為に別の船で来たんだぜ?」

 

彼女(滅多に使わない有給、この為に浸かったのね)

 

少将「そうですよ准将。遠慮は無用です。幸い僕の鎮守府はここからそんなに遠くはないですからね。基地に着いたらそこから96式の輸送機でお送りしますよ」

 

少将「いいだろ? 叢雲」

 

叢雲「当然よ」

 

 

彼女「......どうして一鎮守の提督が輸送機なんて持ってるのかしら?」

 

少将「あ、実は叢雲とケッコンした時にハネムーンの旅行用に無理言って......えへへ」テレ

 

武蔵(何か急にノロケ始めた! 私も大佐に甘えたいぞ!)

 

無蔵(ふむ......新婚ごっこというのもありかな)

 

初春(この2人、結局は同型だけあって本質は同じみたいじゃな)

 

大和(またなんかラブラブな事考えてるわね。キー!)

 

長門「ふっ、お熱いことだ」

 

紀伊「......」

 

 

提督「ふむ......少将殿、では頼めるだろうか?」

 

少将「はい! お任せ下さい!」

 

提督「ありがとうございます。では、皆さん私達はこれで」

 

中将「おう、またな!」

 

彼女「......メールや電話の履歴はちゃんと確認するようにしてね」

 

元帥「君たちの今後の活躍を期待している。また会おう」

 

提督「はっ、それでは失礼いたしま――」

 

紀伊「准将」

 

提督「はっ、貴女は......」(しまった、そういえば全然知らないぞ。挨拶くらいはしたが、名前を聞いてなかった)

 

初春(相変わらず妙な所が鈍いの)

 

紀伊「元帥専任の秘書艦をしています艦娘です。故あってまだ名前を明かす事はできませんが、私もあなた達の活躍に期待しています」

 

提督「はっ、ありがとうございます」

 

少将「ありがとうございます!」

 

中佐「......感謝します」

 

紀伊「少将、准将、中佐......あなた達は艦娘の提督、指揮官です。貴方達の采配一つ一つが私達の今後を作用する事をお忘れなく。脅すわけではありませんが、その采配が常に間違っていない事を祈ります」

 

元帥「......」

 

彼女(紀伊......)

 

大和(紀伊さん......)

 

武蔵(ふん.....)

 

中将(紀伊、そうかこいつは......)

 

提督「......了解しました。肝に銘じておきます」

 

少将「僕も了解しました。当然です!」

 

中佐「同じく。絶対に後悔なんてさせはしませんよ」

 

紀伊「......大変結構です」ニコ

 

 

~数時間後、とある海域航行中の丁督専用高速艇

 

長戸「ん......ちゅ......なぁ、提督」ギシ

 

丁督「ちゅ......ん?」

 

長戸「最後に私達に声を掛けた艦娘、誰だと思う?」

 

丁督「やっぱり、お前も知らなかったか」

 

長戸「お前も?って......あっ......んっ......」ピクッ

 

丁督「宴会の席でも誰もあいつの事を知ってるような反応をする奴はいなかったからな」

 

長戸「そう......だった......の、か」

 

丁督「ああ。そして結局お前も知らなかった。お蔭で答えが出たぜ」

 

長戸「え?それって......ああっ、や......んふっ......!」ギシッ

 

丁督「恐らく大和の姉妹だ。存在しなかった筈のな」

 

長戸「存在しなかっ......ちょ、ていと......急に激しぞ......ちゃんと教え......は......ぁぁあん!」ピクンッ

 

丁督「湿っぽい話は後だ。いくぞっ」グッ

 

長戸「ああ、んんんんっ......!!」

 

 

同刻、とある空域飛行中のT督専用輸送機

 

長門「なあ、大佐......」

 

提督「あの艦娘の事か?」

 

長門「ああ」

 

T督「あ、それ僕も気になってました。誰なんでしょうねあの人」

 

叢雲「初春は知らないの?」

 

初春「そうじゃの。同じ仲間(艦娘)であることは直ぐに判ったのじゃが」

 

長門「ふむ、まだ建造許可が下りてない秘蔵艦という事か。なあ、武蔵は......武蔵?」

 

武蔵「......ん? ああ、悪い。少し微睡んでいた」

 

提督「あの艦娘を見てからずっとその調子だな」

 

武蔵「気づいてたのか。うん、そうだ。宴会の時はあまり余裕がなかったからそんなに気にもしてなかったんだが......」

 

初春「何か気付いたのかの?」

 

武蔵「いや、分らない。ただ、他人とは思えない気はするんだ」

 

T督「へぇ、それじゃもしかしてあの人も戦艦なのかもしれませんね」

 

叢雲「見た感じはそれっぽかったわね」

 

提督「......」

 

長門「大佐?」

 

提督「ん、いや。まあその話は後だ。もう直ぐ我が家だぞ」

 

初春「もうかえ? 疾風より明らかには遅い筈なのに随分と早く着く気がするのう」

 

長門「疾風の時は皆バラバラだったからな。時間の進みを遅く感じたのだろう。こうして話してるとどれだけ暇潰しが重要なのかがよく分かるな」

 

武蔵「そうだな。皆で乗れば空の上も怖くないしな」

 

T督・叢雲「え?」

 

長門・初春「ほう?」ニヤ

 

提督「......」

 

武蔵「?......は! ち、違うぞ!? さっきのはあれだ! 皆が怖くないように私が一緒にだな!」

 

長門「意外に可愛い奴だな。撫でていいか?」

 

武蔵「なっ、だ、ダメだ! 私を撫でていいのは大佐だけだ! あ、ギュッとするのもダメだぞ!」

 

叢雲「ちょっと、こんな所でノロケないでよ。妬いちゃうじゃない。ね? 提督?」サワッ

 

T督「ちょっ、む、叢雲!? 運転中はダメだよ!」

 

初春「盛るのは良いが。くれぐれも理性は落ちないように、の?」

 

提督「全員、落ち着け。説教だ」




新しい章の初っ端からヤってしまいましたね。
でも後悔はしてません!
長門とのケッコン祝いですから(最低)

ま、それはともかく最後にもうちょっとだけ紀伊にスポット当ててみました。
超大和型なんてロマンですよねぇ......。(ウットリ


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第2話 「挑戦」

レ級達が何と本部を覆っちゃうみたいです。
大丈夫か?


レ級「今回は海軍の本部を襲ってみようと思います!」

 

ル級「えっ」

 

ヲ級「......マジ?」

 

タ級「私達4人だけで? 本気?」

 

レ級「何れ攻めることになるかもしれないしね! 大丈夫、偵察みたいなものだよ!」

 

ル級「偵察で本部を襲うの? 大丈夫かな」

 

タ級「まさか、正面から襲うなんて考えてないわよね?」

 

レ級「流石にそれはないよ! 本部の基地に帰港しようとしてる艦隊を見つけて襲ってみようと思います!」

 

ヲ級「あ、なるほど」

 

ル級「それなら本部の戦力全部相手にしなくて済むね。危なくなったら逃げちゃえばいいし」

 

レ級「そういう事!」

 

タ級「でも私達は4人、そして相手は本部の艦隊。それを忘れちゃ駄目よ?」

 

レ級「分ってるよ! 撤退のタイミングは絶対に誤らない。これは絶対だからね!」

 

レ級「それじゃ、決を取るよ! いつも通り決定は満場一致のみ! ......本部、襲っちゃおうと思います! 賛成の人挙手!」

 

3人「賛成」スッ

 

レ級「よーっし、行ってみよう!!」

 

 

~大本営海軍本部、総司令部副官執務室

 

中将「ほう? うちの艦隊が襲われた?」

 

大和「はい。ちょうど方面指揮官の元帥の査察から帰港していた大将が襲われたみたいです」

 

中将「よりによってあいつをな......。それで戦況は?」

 

大和「未だ継続中です。大将が応援を拒否されてるので戦闘の状況の確認だけでしたら大展望から肉眼でもできます」

 

中将「戦況は膠着してるっていうのか? やるなぁ。見るぞ!」

 

大和「そう仰るとと思ってました。どうぞこちらに」

 

 

~海軍本部大展望広場

 

中将「おお、やっとるやっとる! 本当にまだ続いてるじゃないか! 敵もやりおるのお!」

 

大和「なに楽しそうに言ってるんですか、もう。敵の勢力は深海棲艦レ級、ル級、タ級、ヲ級、全てカテゴリFS以上です」

 

中将「たった4隻? 大将の奴の艦隊は?」

 

大和「査察が目的でしたから、艦隊は然程強力でありません。一応6隻編成ではありますが」

 

中将「ふーん、“強力じゃない艦隊”でも、たった4人だけであそこまで戦えるか。おい、双眼鏡くれ!」

 

大和「はいはい」(全く......)

 

 

~海軍本部正面近海

 

レ級「くぅ~、流石に強いなぁ」

 

タ級「ホント、艦隊は駆逐艦と重巡だけなのに凄いわね」

 

ヲ級「ふぇぇぇ、なかなか艦爆が決まらないよぉ」

 

ル級「捕捉できそうなところで、ギリギリ避けるのよね。うん、やっぱり強いよ」

 

タ級「しかも基地の近くだと言うのに応援を呼んでる気配もない。これは自分の実力に絶対の自信がある証拠よ」

 

レ級「あの提督の艦隊も強かったけど、まさか駆逐艦と重巡でここまで抵抗できるなんてねぇ。うん、この人たちの強さは別格だよ」

 

ル級「どうする?」

 

レ級「4人だけだけど、編成見た時勝機ありだと思ったんだけどなぁ」

 

タ級「それは私も同じよ。今回はいい勉強になったわね」

 

ヲ級「退散! 退散!」グイグイ

 

レ級「分ってるよ。じゃ、悔しいけど、退散!」

 

 

~再び大展望広場

 

中将「お、撤退して行くな。てっきり継続するのかと思ったが、大将の艦隊を編成だけで判断せんかったらしい。思いの外敵も冷静だわ」

 

大和「大将は追撃するでしょうか?」

 

中将「いや、恐らくせんな。あいつは無駄な事が大嫌いだからな。敵の戦力を侮っていなければ、その判断はやはり有り得ん。......ん?」

 

大和「どうしました?」

 

中将「いや、あの逃げていくレ級、どこかで見た覚えが?」

 

大和「以前戦った事が?」

 

中将「いや、それはあるが。ただ今見てるあいつに関しては、それとは違って親近感に近い感じというか......」

 

大和「はぁ」

 

中将「......いや、わしも自分で何を言ってるのか分からなくなってきた。取り敢えず大将の奴を迎えに行こう。感想とか聞いてみたいし」

 

大和「そんな事言って......また喧嘩とかしないで下さいね」

 

中将「ふふ、喧嘩する程なんとかと言うだろう? わしとあいつはそういう仲なのよ」

 

大和「はいはい。それでは私は紀伊さんに報告してきますから」

 

中将「おう」

 

 

~とある海域

 

レ級「う~ん......」

 

ル級「レ級どうしたの?」

 

レ級「いや、最後撤退する時に、基地の上の方で誰か僕達の戦いを見てる人がいたんだけど......」

 

ヲ級「え、そんな事気にしてたの? というか、よく気付いたね」

 

レ級「や、なーんか視線を感じちゃってさ。あ、嫌な視線とかじゃないよ? 何故だか分からないけど見られてたのが直ぐに分かっちゃったんだ」

 

タ級「不思議な事言うのね」

 

レ級「うん。自分でもそう思う」

 

ヲ級「どんな人だったの」

 

レ級「ひげもじゃのの人。歳はおじいさんくらいかな」

 

タ級「海軍の幹部かもしれないわね。なんで気になったのかしら。もしかしてその人の元艦娘だったとか?」

 

ル級「え、それホント!?」

 

レ級「え、それはまだ分らないよ......。うーんでもそうなのかなぁ。気になるなぁ」

 

ヲ級「本部怖いから暫く近づきたくないな」

 

レ級「大丈夫。僕ももう少ない人数で行こうとは思わないよ」

 

ル級「あ」

 

タ級「どうしたの?」

 

ル級「解決するか分からないけど、大佐に聞いてみたら? 今度会う時にでも」

 

レ級「あ、それいいね! じゃ、明日行こうか!」

 

タ級「こら、ちゃんとそういうのは本人の都合を調べてからにしなさい」

 

レ級「あはは、だよね。ごめん」

 

ヲ級「潜水艦の子にちょと様子の確認をお願いしてみる?」

 

タ級「そうね。それがいいわ」

 

レ級「お願いします!」

 

ヲ級「は~い」テクテク

 

レ級(ホント、あの人誰だったのかな。気になるなぁ)




また新キャラが出てきました。
殆ど出てないようなもんですが一応強いぞ、的な存在とでも認識してもらえれば。

レ級のスペック調べました。
勝てる気がしない......なんだこれ......。


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第3話 「回避」

提督が鎮守府に帰投しました!
これより艦隊の指揮には......いる前に、何かありそうです!


加古「大佐が帰って来たよー!!」

 

望月「準備はいい? 初わん」

 

初雪「いつでも、望わん」

 

青葉(......これはマズイなぁ。上手く止めないと大佐の迷惑になっちゃう......。わたしがなんとかしないと)

 

青葉「......」ポチポチ

 

 

prr♪

 

提督「ん?」

 

武蔵「私だ。ラ○ンだ」

 

初春「スマホか。すっかり馴染んでおるのう」

 

長門「ま、うちの鎮守府だって携帯もスマホも持ってない奴はいないだろ」

 

武蔵「......」

 

初春「ん? どうしたのじゃ? 武蔵」

 

武蔵「大佐」

 

提督「ん?」

 

武蔵「ちょっとお願いがあるのだが」

 

 

ガチャッ

 

初雪「来た!」

 

望月「いくよっ」

 

初雪「大佐、おかりワン! 初わんだよ!」ダキッ

 

望月「まってワン~。この望わんを待たせるなんて大佐も意地悪な人だワァン♪」スリスリ

 

提督(?)「......」

 

初雪「? 大佐?」

 

望月「黙ってどうしたワン? 疲れ......」

 

ムニュ

 

望月(ん? ムニュ?)

 

提督(?)「可愛い......」

 

初雪「え?」

 

長門「ああもう! 可愛いなぁ!!」ギュウゥ

 

望月「な!? え? な、なが......むぎゅ」

 

長門「こんな可愛い姿で私を出迎えてくれるとは。お前達本当にありがとう!」ギュッ

 

初雪「え、ちょっとこれってどういう――」

 

 

武蔵「......ふむ」

 

青葉「何とか上手くいったみたいですね」

 

提督「......一体」

 

武蔵「危うく皆の前で犬好きがバレるところだったな」

 

提督「犬好き?」

 

青葉「大佐、青葉、大佐の為に頑張りました。褒めてください!」

 

提督「青葉?」

 

武蔵「なに、礼ならあ、頭を撫でてくれたら......いいぞ?」

 

青葉「ああっ、ズルいです! 大佐、青葉! 青葉を先にクシャクシャって撫でて下さい!」

 

提督「お前達、一体なにを言ってるんだ」

 

 

――数分後

 

提督「......なるほどな。俺はお前達に助けられたわけか」ナデ

 

武蔵「そういう事だ。ん......♪」スリ

 

青葉「ふぁ......大佐ぁ......。青葉は幸せですぅ♪」スリ

 

提督「しかし、これは初雪たちに少し悪い事をしたな」

 

武蔵「ん......だからと言って犬好きがバレたら大変なことになっただろう?」

 

提督「いや、確かに犬は好きだがこういう趣味は......」

 

青葉「大佐ぁ......もっと撫でて下さぁい♪」スリスリ

 

提督「ん......」ナデ

 

武蔵・青葉「~♪」

 

提督「......」(後で長門から助けに行こう)

 

 

――その夜

 

初雪「う......ぐす」

 

望月「......」ゲッソリ

 

提督「二人とも大変だったな」

 

初雪・望月「っ、」ダキッ

 

提督「よしよし」(長門......一体何をしたんだ)

 

初雪「大佐、ひどいよ。長門さんに提督の格好をさせるんなんて」

 

望月「身長差利用したね。確かにあれじゃあちゃんと顔を確認しないと間違える」

 

提督「二人ともすまんな。長門がイタズラをしたいと言い出してな」

 

提督(すまん長門。だがお前もあれだけ満足していたんだ。これくらいいいよな?)

 

初雪「別にもういいよ。今結構嬉しいし」

 

望月「うん。助けてくれたしね」

 

提督「二人とも」

 

初雪・望月「?」

 

提督「犬の格好何てしなくても、俺はお前たちの事をこうやって撫でてたり抱いてやる事はできる。だからあまりこうなんというか......」

 

望月「コスプレは嫌?」

 

提督「コスプ......まぁ人目があるところでは気まずいな」

 

初雪「そっか。ごめんね」

 

望月「それは迂闊だったよ。今度から気を付けるね」

 

提督「いや、分かってくれればいい。二人とも今日は俺を出迎えてくれようとしてありがとうな」ナデナデ

 

初雪「ん......♪」

 

望月「おおぉ......これは長門さんに捕まった甲斐があったねぇ♪」

 

提督「......」(やっぱり駆逐艦は素直でいいな)

 

 




祥鳳に呼ばれた青葉は提督の犬好き(半分誤解)を黙っていたようですね。
青葉は良い子になったんですよ! ......多分(ヒド


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第4話 「サボテン」

提督は昇進祝いから鎮守府に帰った次の日、先ず自分が不在の間基地の管理をやってくれていた赤城や天龍達にお礼を言ってその労を労いました。

そして最後に机の上のいつも通りの場所に置いてあるサボテンを確認すると、島風と雪風、そして加古を呼びました。


提督「島風、雪風」

 

島風・雪風「はいっ」

 

提督「俺がいない間、ちゃんとサボテンの世話をしてくれていたみたいだな。ありがとう」

 

雪風「いいえ! 雪風達は殆ど何もしていませんから」

 

島風「そうだねっ。わたし達の部屋に置いてちゃんとお日様に当てて、時々虫が付いてないか見てただけだもん」

 

提督「それでも十分だ。コイツとは長い付き合いだからな。大事にしてもらって嬉しい」

 

雪風「あ......そ、そんな。そこまで褒められる事なんて」テレ

 

島風「島風たちエライ? 凄い!? ありがとう大佐♪」ピョン

 

提督「ああ。二人ともよくやってくれた」ナデナデ

 

島風・雪風「えへへ♪」

 

加古「......」

 

提督「加古」

 

加古「は、はいっ」

 

提督「お前も俺がいない間、駆逐艦達の面倒をみてくれてありがとう」

 

加古「あ、いやっ。あたしは別に.....赤城や天龍たちが殆ど基地の事はやってくれてたし......」

 

提督「それでもこのサボテンを島風達と一緒に面倒を見てくれたろ? それだけでも十分だ」

 

加古「は、はぁ......」(アレ、ただのサボテンだよな? そうだよな?)

 

加古「......あの~」

 

提督「ん?」

 

加古「そのサボテンってそんなに大事なものなの? 普通のサボテンだよね?」

 

提督「ああ......。確かに何の変哲もない普通のサボテンだぞ」

 

雪風「えっ」

 

提督「ん? どうした?」

 

雪風「わ、わたしこのサボテン、凄く価値のあるものだと思ってました」

 

提督「はは、価値か。まぁ普通だな1000円くらいか、適当だが」

 

島風「違うよ! 1000円なんかじゃないでしょ!」

 

加古「え? 島風?」

 

島風「そのサボテン、大佐の大事な友達なんでしょ? だったら1000円なんて値段なわけないじゃん! 価値なんて付けられないよ!」

 

雪風「島風ちゃん......」

 

加古「あ......」

 

提督「......島風の言う通りだ。加古、質問に答えるのが少し遅れたが、さっきも言った通りこれは普通のサボテンだ。だがな」

 

雪風「友達なんですね? 提督の」

 

提督「まぁ友達と言うより相棒みたいなものかな。何しろ俺が赤ん坊の頃からの付き合いだからな。もう20年以上になる」

 

島風「そんなに!? すごーい!」

 

加古「こんなにちっちゃいのが20年も......ははぁ」

 

雪風「友達というのは本当だったんですね!」

 

提督「ああ。あながち間違いではないな」

 

島風「ねぇ大佐」

 

提督「うん?」

 

島風「名前は?」

 

提督「ん?」

 

島風「名前! この子、名前は何て言うの?」

 

提督「名前? いや、名前は特に......」

 

島風・雪風「えー?」

 

提督・加古「え?」

 

島風「赤ちゃんの頃からの友達なのに名前がないの!?」

 

雪風「それ、可哀そうです!」

 

提督「......そうか?」チラ

 

加古「えぁや!? あ、あたしに聞かない下さいよ!」

 

島風「そうだよ! 名前がないのは可哀そうだよ!」

 

雪風「そうです!」コクコク

 

提督「ふむ、じゃあ付けるか。何がいいだろう。加古は?」

 

加古「ええっ、いきなりあたしですかぁ? うーん......そうだなぁ」

 

島風「ドキドキ」

 

雪風「ワクワク」

 

加古「あ、3号とかどうです?」

 

島風・雪風「 」

 

提督「......一応、何から思い付いたのか教えてもらえるか?」

 

加古「やぁ、20.3cm砲が......」

 

島風「ダメ!」 雪風「だめです!」 提督「却下だ」

 

加古「即答!?」

 

島風「そんなの全然可愛くないよ!」

 

雪風「数字の名前なんてあまりにも可哀そうです」

 

提督「自分の願望を人の大事なものに被せるな」

 

加古「あははは......そ、そんなにダメだったかな」

 

島風「い・や!」

 

雪風「めっ!」

 

提督「そういう事だ。では二人はどうだ?」

 

島風「わたし? えへへ、わたしはねぇ。 トゲピー!」

 

雪風「わたしは雪雲です!」

 

加古「へぇ、トゲピーか。可愛いんじゃない?」

 

島風「えへへ~、でしょー?」

 

提督「雪風のその雪雲というのは?」

 

雪風「建造の予定だけあった駆逐艦の名前です。わたしの字が入ってるのでその......選びました」

 

提督「ふむ......」

 

加古(あ、これは決まったかな)

 

提督「島風」

 

島風「なに?」

 

提督「雪雲でいいか?」

 

雪風「た、大佐」

 

島風「え? うーん......『ゆっきー』って呼んでもいい?」

 

提督「雪風?」

 

雪風「え? い、いいの? 島風ちゃん?」

 

島風「ゆっきー、って呼んでもいいならね!」

 

雪風「うん......勿論だよ! ありがとう島風ちゃん!」

 

島風「雪風ちゃんが考えた名前なんだもん、いいに決まってるよ!」

 

加古「あのー」

 

提督「ん? なんだ、異見か?」

 

加古「ああ、いやそうじゃないんだけど。大佐は何か考えなかったの?」

 

島風「あ」

 

雪風「そ、そうですよ! 大佐の友達なんですから一応大佐も考えないと!」

 

提督「俺も? ふむ......ミッドウェーとかどうだ?」

 

加古「......一応聞くけど、どうしてその名前に?」

 

提督「失敗に終わったMI作戦、その悲劇を繰り返さないた――」

 

加古「雪雲だね」

 

島風「うん!」

 

雪風「です!」

 

提督「......そうか」




かなり最初の方の話で提督の机の上にサボテンが置いてあったのを思い出して、この話が浮かびました。
や、筆者もサボテン育ててるのもあるんですけどね。


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第5話 「風邪2」

また風邪をひきました。
そしてその日の秘書艦はまた日向でした。


日向「風邪、ね」

 

提督「......」

 

日向「また大佐の風邪に立ち会う事になるとはね」

 

提督「......面目ない。前に本部に行ったとき季節が冬で寒かったから、こことの温度差でひいたのかもな」

 

日向「なるほどね。今回は安静にしてくれるのよね?」

 

提督「......ああ」

 

日向「よかった。待ってて、今リンゴでも剥いて来るから」

 

提督「すまない」

 

日向「気にしないで。......やっと私にもチャンスが来たみたいだしね」ボソ

 

提督「ん? 誰か来たのか?」

 

日向「独り言よ。はい、リンゴ」

 

提督「早いな」

 

日向「実は大佐が風邪っぽいって判断した時点で剥いていたの」

 

提督「......さっきは兎にしていたのか」

 

日向「そう。可愛いでしょ?」

 

提督「兎に剥かれたリンゴなんて久しぶりだ。食べるのが惜しいな」

 

日向「そこまで言ってもらえると剥いた甲斐があるというものね。はい」

 

提督「......いや、いい」

 

日向「あーん」

 

提督「......あ」

 

パク

 

提督「......」シャリシャリ

 

日向「ん、よく味わってね」

 

提督「......美味い」

 

日向「それは良かった。はい」

 

提督「まだやるのか?」

 

日向「やらせてくれないの?」

 

提督「......あ」パク

 

日向「ふふ、良い子ね♪」

 

提督「まるで子供だな」

 

日向「今は、そうであってくれると嬉しいな」

 

提督「......タオル、冷やしてきてくれないか?」

 

日向「うん。分かった」

 

 

提督「ふぅ......」

 

日向「お待たせ」

 

提督「ああ、ありが――」

 

コツ

 

日向「......」

 

提督「......」

 

日向「うん......良かった。熱は、あまりないようね」

 

提督「......急に驚いたぞ」

 

日向「ん? ふふ、キスかと思った?」

 

提督「風邪が感染るからそれはないな」

 

日向「大佐とできるなら、感染ってもいいんけどな」

 

提督「それは俺が受け入れられない。それに」

 

日向「それに?」

 

提督「口が乾いてるからきっと臭い」

 

日向「ええ? ふふっ」

 

提督「なにか可笑しいことを言ったか?」

 

日向「ああ、いやすまない。大佐もそういう事を気にするんだなってね」

 

提督「......女性と付き合ったことがないわけじゃないからな」

 

日向「おっと、そこまで。くれぐれも今はそこで他の女の名前は出さないでね?」

 

提督「......それくらいは心得てる」

 

日向「大佐って、そういう機微には聡いのにもっと単純な事には鈍感よね、何故かしら?」

 

提督「ん? 何か不快な思いをさせてしまったか?」

 

日向「ううん、今は私は凄く幸せな気分よ。こんな風に大佐と話す事あまりないから」

 

提督「幸せとは、ちょっと大袈裟なきがするが」

 

日向「いいの。幸せに間違いはないんだから」

 

提督「......そうか」

 

日向「うん、そう」

 

日向「......」

 

チュ

 

提督「おい」

 

日向「頬だ。風は感染らないよ」

 

提督「いや、ヒゲが」

 

日向「それくらい気にしないわよ。ほら」

 

チュ

 

提督「......」

 

日向「ね?」

 

提督「ふぅ......」

 

日向「ん? もしかして照れてる?」

 

提督「俺も人間だ。恥の感情くらいは持っている」

 

日向「ふふ、なんか可愛いな」

 

提督「やめてくれ。男がそんな事言われても嬉しくはない」

 

日向「そう、それは行幸。攻め手が一つ増えたわ」

 

提督「おい」

 

日向「冗談よ。半分ね」

 

提督「敢えてもう半分は......」

 

日向「本気よ。私、大佐を攻めたい」

 

提督「......今は駄目だぞ」

 

日向「分かってる。ねぇ」

 

提督「ん?」

 

日向「風邪、治ったら......もっと、恥ずかしい事しない?」

 

提督「......風邪が治ったらな」

 

日向「っ、ほ、本当?」

 

提督「そんな顔しないでくれ。本当だ」

 

日向「っ......、嬉しいな。これで私も恋人になれるのかな」

 

提督「別にしないとなれないというわけじゃ――」

 

日向「したい」

 

提督「......そうか」

 

日向「ねぇ」

 

提督「うん?」

 

日向「その......本番の前に心の準備をさせて欲しい」

 

提督「ああ、看病助かった。休んで――」

 

日向「違う」ジトッ

 

提督「......今のは鈍かった、か?」

 

日向「そうね。ま、気づけただけマシだけど」

 

提督「それで、準備と言うのは?」

 

日向「一瞬でいいから抱き締めてほしい」

 

提督「......感染したくはないんだがな。それに汗が......」

 

日向「分かってる。汗も気にしない。だから一瞬」

 

提督「......ほら」

 

日向「あ......」

 

ギュッ

 

提督「......大丈夫か?」

 

日向「......汗? ああ、気にならないくらい今幸せだからね」

 

提督「そうか」

 

スッ

 

日向「ありがとう」

 

提督「いや」

 

日向「寝るまで、ここにいていい?」

 

提督「......お前さえよければ」

 

日向「ありがとう。好きよ、大佐」




日向2回目の風邪の看病にてようやく結ばれそうな予感。
最初の方に出たキャラなのに結構時間かかりましたねぇ。

あ、はい。
私の所為です、ハイ。


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第6話 「自慢」

蒼龍が何やら自慢げに飛龍の頭を撫でてます。
飛龍は勿論不服そうです。
提督は何があったのか加賀に訊きました。


蒼龍「あははは! ねぇ飛龍、悔しい? 悔しい?」

 

飛龍「......っの、悔しくないって言ってるじゃない!」

 

 

蒼龍「あはははっ、嘘ばっかしー!」

 

 

提督「......一体どうしたんだ蒼龍は」

 

加賀「改二の件がよほど嬉しかったみたいですね」

 

提督「上位改造の件か? 蒼龍は練度が僅差で足らなかった筈だが......」

 

加賀「はい。どうやらその差が、自分の方が熟達した結果の改造だという考えに行き着いたみたいでして」

 

提督「......そんな考え方もあるのか」

 

加賀「あまり見ない例ですが、彼女の場合はそうみたいですね。ほら、あんなに嬉しそうです」

 

 

蒼龍「そんなにわたしの方が改造レベルが高かったのが悔しいの? ね、そうなんでしょ? いやぁ参ったなぁ」

 

飛龍「だ・か・ら! そんな事ないってさっきから言ってるじゃない!」

 

蒼龍「えー? じゃあ、なんでそんなに怒ってるのー?」

 

飛龍「そ、それは......」

 

蒼龍「ほらー、やっぱり悔しいんだー」

 

飛龍「そ、そうじゃないって言ってりゅでしょぉ!」グス

 

 

加賀「あ、ついに半泣きになりましたね」

 

提督「そうだな。止めるか」

 

加賀「待ってください」

 

提督「どうした?」

 

加賀「いえ、あんな飛龍はあまり見ないので......可愛い」

 

提督「おい」

 

 

蒼龍「もう、そんなに涙ぐんじゃって。悔しいなら大佐の胸で泣いていいんだよ!」

 

飛龍「だっ、だからぁ! しょ、そんなことしないってぇ......!」グス

 

提督「そこまでだ」

 

蒼龍「あ」

 

飛龍「大佐......」

 

提督「蒼龍、嬉しいお前の気持ちも分からないでもないが、あまり飛龍を苛めるのも感心しないぞ?」

 

蒼龍「え、う、うーん......」

 

提督「あまり脅すような事はしたくないが、上位改造受けたくないのか?」

 

蒼龍「! う、受けたい! 受けたいです!」

 

提督「なら、少しは大人らしい態度をとれ」

 

蒼龍「う......」

 

提督「加賀?」

 

加賀「そうですね。これ以上飛龍さんをイジメるなら私も黙ってはいませんよ?」

 

蒼龍「か、加賀さん!?」

 

提督「蒼龍」

 

蒼龍「う......ご、ごめんなさい」

 

提督「俺に言う言葉じゃないな?」

 

蒼龍「うぅ......飛龍、ごめんね。ちょっと調子に乗りすぎたわ」

 

加賀「それは心からの言葉ですか?」

 

蒼龍「むぐ......飛龍ごめん! もうしない! わたしちょっと有頂天になってた!」

 

飛龍「......もういいよ。分かったから」

 

蒼龍「ホント!?」

 

飛龍「うん。大佐も来てくれたし......♪」スリ

 

蒼龍「な!?」

 

加賀「おや」

 

提督「......」

 

蒼龍「う、うぅ......た、大佐!」

 

提督「ん?」

 

蒼龍「ちゃ、ちゃんと私も改造可能なレベルまで上げて下さいね!」

 

提督「約束する」

 

蒼龍「あと、改造が終わったらわたしも飛龍みたいに甘えさせてくださいね!」

 

提督「ああ、わか......なに?」

 

蒼龍「言質取りましたからね?」ニヤ

 

提督「おいちょっとま――」

 

蒼龍「それじゃぁそういう事で!」ピュー

 

 

加賀「......行ってしまいましたね」

 

提督「そうだな......」

 

飛龍「あの、大佐」

 

提督「ああ、大丈夫か? 飛龍」

 

飛龍「あ、はい。ありがとうございます......」

 

提督「気にするな」

 

加賀「そうですよ。飛龍さん何も悪くないんですから

 

飛龍「加賀さん......ありがとう」

 

提督「ふむ、今日はお前達二人に晩酌に付き合ってもらうか」

 

飛龍「え、いいんですか?」

 

加賀「本当ですか?」

 

提督「嫌か?」

 

加賀「是非」 飛龍「とんでもない!」

 

提督「では、宜しく頼む」

 

 




うあっはっは!
今日仕事あるのに酒飲んでべろんべろんです!

こういうテンションで書くのもいいですね!

......多分朝反省してます。


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第7話 「結婚できますよ?」

加賀がレベル99になりました。
初めて提督に求婚した時の様に加賀は突然切り出します。


提督「何だこれ」

 

加賀「指輪です。大佐」

 

提督「そんなのは見れば分かる」

 

提督「俺が知りたいのは、どうしてわざわざ二つ並べて指輪が机に置いてあるのかというということなんだが」

 

加賀「分りませんか?」

 

提督「......さてな」

 

加賀「中佐、意地悪しないで下さい」

 

提督「ふっ、久しぶりに降格したな」

 

加賀「当り前です」ブス

 

提督「怒っているか?」

 

加賀「とても気分を害しました。賠償として可及的速やかに結婚を申し込みます」

 

提督「日本語がおかしいぞ。賠償は普通請求するものだぞ」

 

加賀「大事なプロポーズを請求なんかしたくありません」プイ

 

提督「そうだな。悪かった、加賀」

 

加賀「......抱きしめて下さい」

 

ギュ

 

提督「......他には?」

 

......加賀「もっと強くです」

 

ギュッ

 

提督「どうだ?」

 

加賀「最高です。次は頭撫でて下さい」

 

提督「了解」

 

ナデ

 

提督「相変わらず撫で心地が良いな」

 

加賀「それは私も同じです。ん......♪」

 

提督「まだあるか?」

 

加賀「当然です。次はキ――」

 

チュ

 

提督「......」

 

加賀「......ん......」

 

提督「......ふ」

 

加賀「......初めてですね。貴方からキスをしてくれたのは」

 

提督「そうだったか?」

 

加賀「はい。私、感情表現が......今、これでもとっても幸せです」

 

提督「久しぶりに聞く言葉だ。確かお前が初めて俺に告白した時の言葉だな」

 

加賀「憶えていたのですか?」

 

提督「当り前だ。お前をここに迎え入れて、次の日にいきなり受けた言葉だぞ?」

 

加賀「......そういえば、そうでしたね」

 

提督「あの時の俺は、その時の答えを保留にする事しか考えられなかった。それでもお前はそう言ったな。何故だ?」

 

加賀「断わられると思ってましたから......。『検討しておく』という貴方の言葉にどれだけ希望を持ったことか」

 

提督「それであの言葉か。 ハッキリ言ってあんなことを言われた時の俺のあの時の気持ちは、半分脅迫されたような心地だったぞ」

 

加賀「ふふ......それが狙いでもありましたから」

 

提督「なぁ」

 

加賀「はい」

 

提督「何で俺なんかを好きになった?」

 

加賀「艦娘だからなのかもしれませんが、一目惚れです」

 

提督「......そうか」

 

加賀「驚きました?」

 

提督「......いや、その......初めてじゃないからな」

 

加賀「他にも私と同じような子が?」

 

提督「いや、お前たちじゃなくて前に来た彼女だ」

 

加賀「ああ......あの人もだったんですか」

 

提督「そうだ。......それにしても一目惚れなんてのは半信半疑だったんだがな。流石に2回もそうだと言われると」

 

加賀「信じざるを得なくなりました?」

 

提督「正直言ってそうだ」

 

加賀「ふふ。でもやっとこうして今、ずっと願い続けていた想いが叶いそうです」

 

提督「と言うと?」

 

加賀「私に言わせる気ですか?」ムッ

 

提督「なるほど......そうだな」

 

加賀「言われたいんです。いくらでも言う事はできますが、偶には......」

 

提督「結婚してくれるか?」

 

加賀「......もう少しムードを考えて欲しかったですね。あまりにも唐突です」

 

提督「......すまん」

 

加賀「ふふふ、いいですよ。気にしてませんから。だから好きなんです」

 

提督「......返事は?」

 

加賀「愚問です。断わると思いますか?」

 

提督「いや、で――」

 

加賀「んっ......!」

 

提督「っ......ん......」

 

加賀「ふぅ......」

 

提督「加賀......」

 

加賀「ありがとう。愛してます!」




加賀とケッコンしました。
初めてSSを書いてから2カ月ちょっと......ようやく達成です。
いやぁ、感無量です。


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第8話 「在庫」

提督は装備を充実を図る為にその日、最高レベル保持者の金剛を秘書艦にして彼女に副砲の開発を指示しました。

しかし、開発されたのは......。


提督「......また徹甲弾か」

 

金剛「もう18個目ネ」

 

提督「調子がいいな?」

 

金剛「そんな疑問形で言わないでヨ。ワザとじゃないワ」

 

提督「狙って出せるならそれはそれで凄いからな」

 

金剛「そうヨ!」

 

提督「悪かった。悪かったから抱き着くな」

 

金剛「や!」ギュゥ

 

提督「おい」

 

金剛「ダッテ秘書艦久しぶりなんだもン! イチャイチャしたいネ!」

 

提督「こら、秘書艦の仕事を逢引みたいに言うな。......全く」

 

金剛「んー♪スリスリ

 

提督「それににしても......」チラ

 

徹甲弾の山「ゴロン」

 

提督「......なんだ? ついにレ級達と戦う事になりそうなのか?」

 

金剛「大佐と加賀との結婚祝いじゃナイ?」

 

提督「こんな物騒な結婚祝いいらん」

 

金剛「それもそうネ」

 

提督「ふむ......」

 

金剛「私達も装備できたらいいのにネ」

 

提督「そうだな」

 

金剛「装備できたら霧島とか喜びそうネ」

 

提督「霧島か......」

 

 

霧島『新たに強化改装された霧島の火力存分に味わって下さい。......○ネ! ゴルァ!!』

 

 

提督「......うむ」

 

金剛「大佐? ナンカ霧島に対して失礼なコト考えてナイ?」

 

提督「いや......」

 

金剛「ほんとにィ?」

 

提督「金剛は可愛いな」ナデナデ

 

金剛「あふぅ......大佐ぁ♪」

 

提督「まるでね......いや、ちょろいだったか?」

 

金剛「ハ?」

 

提督「この前鈴谷が秘書艦だった時にいろいろ教えてくれてな。さっきみたいな金剛の事をそう言うらしい」

 

金剛「鈴谷......大佐になんて事を教えてくれるネ......」グギギ

 

提督「ん? もしかして悪い意味だったのか? 撫でれば機嫌を直すなんて猫や犬みいたで可愛いじゃないか」

 

金剛「えっ」

 

提督「ん?」

 

金剛「たーいさっ」ピョン

 

提督「なんだ、いきなり」

 

金剛「大佐ァ、大佐は猫と犬どっちが好きデス?」

 

提督「なんだ唐突に? まあどちらかと言われれば犬だが」

 

ガタッ

 

金剛「なら、ワタシは今から大佐のワンちゃんになるネ! だから好きなだけ可愛がってヨ♪ クゥ~ン♪」スリスリ

 

提督(しまった。また武蔵みたいなのが......)

 

提督「まだ仕事が残ってる。だからやめろ」

 

金剛「もう午前中のは little ネ。午後からでも直ぐ終わるワ」スリスリ

 

提督「いや、駄目だ。そういうのはちゃんとケジメをつけけないとい――」

 

バンッ

 

 

武蔵「そうだぞ! そんな手段で私の大佐へのポジションを奪おうとは金剛、お前はなんて浅ましい奴だ!」

 

比叡「金剛お姉様ズルイ! 最初のワンコはわたしなんですよ!」

 

青葉「違います! 青葉です! 大佐に忠実なこのわたしこそ大佐のワンちゃんに相応しいんです!」

 

望月「......それには同意しかねるけど、金剛さんだけが大佐のワンコっていうのはないかなぁ」

 

初雪「抜け駆け、ダメ」

 

金剛「な......ライバルが既にこんなニ!?」

 

提督「......」

 

武蔵「というわけで誰が一番大佐の犬に相応しいか勝負だ!」

 

比叡「望むところです!」

 

望月「競技は何にするの?」

 

青葉「青葉は作文がいいです!」

 

初雪「それは青葉さんだけが有利過ぎるからダメでしょ」

 

金剛「なら、お茶の美味しい淹れ方もダメネ」

 

比叡「なら駆けっこです! これなら単純で......」

 

青葉「比叡さんずっと前に罰で駆逐艦とランニングさせられた事を忘れたんですか? 長距離であんなだったのに、短距離なんて絶対無理ですよ」

 

アーダ、コーダ

 

 

提督「......皆適当にやっておいてくれ。俺は残りの仕事を食堂で片づけてくる」スタスタ

 

 

~食堂

 

鳳翔「あら、大佐。どうしたんですか? こんなところで」

 

提督「ちょっと、な」

 

鳳翔「お茶でも淹れます?」

 

提督「ありがとう。頼めるか?」

 

鳳翔「はい、分りました」ニコ




特に狙ってるわけではありませんが、デイリーのクエストで15.5cmの副砲欲しさに開発したら最近徹甲弾ばかり出てます。

レアだから出ても嫌じゃないのですが、まさか余る状態になるとは夢にも思ってませんでした。

大人しく追加装甲を狙ってみようかなぁと思い始めてる今日この頃。


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第9話 「約束」 R-15

日向が提督の部屋を訪ねてきました。
寝る前なので彼女の格好は寝巻用の着物です。
その姿は艦装を装備してる時とのギャップの所為で、普段よりとても華奢に見えました。

*明らかな性的描写あり


日向「大佐、今空いてる?」

 

夜更けに日向が訪ねて来た。

その目的は、以前提督が風邪をひいた時に交わした約束を果たしてもらう為だろう。

提督は直ぐにその事を察した。

 

提督「ああ、今は大丈夫だ。時間も......ちゃんと選んで来たんだな」

 

日向「一応、ね。寝てるんじゃないかと不安だったけど」

 

提督「仕事が今日は多かったからな。そういえばお前、昼くらいからずっと仕事の量を気にしていたな」

 

日向「気づいてた? うん。この量なら今日は遅いかなって」

 

提督「ふっ、読み通りだったな。だが、その仕事も今しがた殆どキリが着いたところだ」

 

日向「本当? 何か手伝うことは無い?」

 

提督「お前、今日は秘書艦じゃなかったろ? そういう時は気にするな。それに大丈夫だ、本当にもう全部終わった」

 

日向「そう......それじゃ」

 

提督「いや、悪いが」

 

日向「え?」

 

提督「そんな泣きそうな顔するな。お前らしくないぞ。単にシャワーを、な」

 

日向「あ......」

 

提督「お前は浴びて来たみたいだな」

 

日向「......っ」カァァ

 

提督「すまん、今のはデリカシーがなかったな」

 

日向「別に大丈夫。だから、どうぞ」

 

提督「ああ。悪いが少し待っていてくれ」

 

提督はそういうと上着だけハンガーに掛けると浴室へと入っていった。

 

 

日向「......」

 

日向(大佐の上着......私、これからスるのよね......)

 

スー......。

 

日向(大佐の匂いだ......落ち着くな。自分らしくもなく少し緊張していたけど、これなら大丈夫そう)

 

スゥ......。

 

日向「はぁ......大佐......」ウットリ

 

日向(まだ、出ないわよね)チラ

 

スー......ゥゥ......。

 

日向「ふぅ......」

 

くちゅ

 

日向(っ、私ったら匂いだけで)

 

日向「ん......ふっ......」

 

日向(だめ、指が止まらない......!)

 

日向「あっ......あっ、大佐......!」

 

 

提督「......」

 

日向「!!」

 

提督「......すまん」

 

日向「っ......!」

 

提督「待て。逃げることは無い。大丈夫だ」ガシッ

 

日向「離してっ。私、凄くはしたな――」

 

チュ

 

提督「......」

 

日向「ん......」

 

提督「......落ち着け。大丈夫、俺は何とも思ってない」

 

日向「......嘘」

 

提督「本当だ。寧ろ......」

 

日向「え?」

 

提督「寧ろ、意外で可愛かった」

 

日向「か、可愛かったって。あ、あんなのが......っ」

 

提督「可愛かった。恥じらいながら俺の事を想っていてくれたお前の顔が」

 

日向「お、想っていたって、あ、あれは......」カァァ

 

提督「俺の服を使っていただろ?」

 

日向「っ!」ボッ

 

提督「日向......」ギュッ

 

日向「うぅ......馬鹿」

 

提督「可愛いな、本当に」ナデ

 

日向「もう......」ボフ

 

提督「日向」

 

日向「ん?」

 

提督「日向の可愛いところ見ていいか?」

 

 

日向「い、いきなりそんとトコロ......」

 

提督「わざとじゃないとは言え、いきなり見てしまったからな。正直気になっていた......いいか?」

 

日向「......」コク

 

提督「ありがとう」

 

ピラ

 

提督「やっぱり下着着けていなかったか」

 

日向「その......誘うつもりだったから......」カァァ

 

提督「足、もっと開いてくれるか」

 

日向「うん......」

 

提督「......」ジッ

 

日向(う......見られてる。それにさっきシてたばかりだから蕩けて......)

 

提督「可愛いな」

 

チュ

 

日向「ああっ、そんなトコっ。だ......ううんっ!」ピクン

 

提督「イク前だったろう? ならこのまま一回......ぺろ」

 

日向「ひぐっ、あああああっ」

 

提督「ん......ちゅ」

 

日向「あっ、中までっ!ひあっ、か、掻き回さ......うあああ!」

 

提督(舌なのに凄いな......)

 

日向「はぁ......はぁ......」

 

提督「どうだ?」

 

日向「さ......流石に経験者なだけある......な。完全にイカされちゃった......」

 

提督「別に経験者だからとかそういうのは関係ない。単にお前が可愛かったから俺もここまで夢中になってしまったんだ」

 

日向「また......。ふふ、でもそう言われるのも......悪い気分ではなくなってきた......かな」

 

提督「それはよかった。日向......」スッ

 

日向「あ......その、上は......」

 

提督「? 恥ずかしいか?」

 

日向「全くそうじゃないわけではないけど、それより私あまり大きく......」

 

提督「......ふ」

 

日向「わ、笑わないで」ウル

 

提督「いや、悪い。別に大きくないのを哂ったわけじゃない。お前がこういう事を気にしてたのが意外で、可愛らしく思えてな」

 

日向「私だって女だ。気にくらい......する」

 

提督「日向」

 

チュ

 

日向「あ、ん......大佐?」

 

提督「見せてくれ」

 

日向「大佐......」コク

 

スルッ......パサ

 

提督「......」

 

日向「ど、どう?」

 

提督「別に小さくなんかない。気にし過ぎだ」

 

日向「ホント?」

 

提督「ああ。ほら」フニッ

 

日向「んっ」ピクッ

 

提督「こんなに柔らかい」フニフニ

 

日向「や......あ......ん」ピクピクッ

 

提督「ここも、小さくて綺麗だ......ちゅ」

 

日向「あっ、そこ......いいっ」ピクン

 

提督「分かるか? 固くなってる。......ぺろぺろ、ちゅぅ」

 

日向「あっ......あん......あっ、ああ......わか.....る。き、気持ち......」

 

提督「良いか? ちゅぱっ」

 

日向「あああっ」

 

 

提督「......また、イッたか?」

 

日向「はぁ......はぁ、あ......ああ。ホントに上手いな」

 

提督「お前が多少感じ易い体質なのもあるかもな。ん......もうこっちは問題ないみたいだ」

 

日向「あ......」ブルッ

 

提督「日向、いいか?」スルッ

 

日向「あ......す、凄いな。ソレが今から私に来るのか......」

 

提督「怖いか?」

 

日向「ちょっと、ね。でも......手を握っててくれるなら......」

 

提督「勿論だ」ギュ

 

日向「ありがと......いいよ。来て」

 

提督「ああ」グッ

 

日向「あ、う......んん......い......っく......っ」

 

提督「もう少し......だ」

 

ググッ......

 

日向「っ......ああ、ああああ......」

 

提督「大丈夫か?」

 

日向「ちょ、ちょっとだけ......そのままで......」

 

提督「気にするな。落ち着くまで動かない」

 

日向「ありが......く......ぅぅ」

 

提督「......」スッ

 

日向「あ、だめ!」ガシッ

 

提督「おい、ひゅう......」

 

日向「あっ......」

 

ズン

 

日向「う.......く、ふぅ......はぁ、は......ああああ」

 

提督「おい、大丈夫か?」

 

日向「う、うん......ちょっと驚いただけ......」

 

提督「そうか」

 

日向「う、うん......それより」

 

提督「ん?」

 

日向「どう? 中......」

 

提督「ああ、熱い。全て搾り取られそうだ」

 

日向「あ......は。そう......わた、私も......凄く熱い。焼かれてるみ、たい」

 

提督「それは痛みじゃないのか?」

 

日向「痛いのは......うん、慣れてきた。それより......ううん、ホントに熱いの。これ、気持ち良いって......言うのかな」

 

提督「......」クイ

 

日向「あっ」

 

提督「どうだ?」

 

日向「うん......良かった」フルッ

 

グッ、グ......

 

日向「あっ......あっ......」

 

提督「......大丈夫そうだな」

 

日向「う、うん......いいよ......ねぇ、もっと......」

 

提督「ああ」

 

パッ......ンッ

 

日向「ああああああ。ん、んんんんん......ふぁっ」

 

提督(凄い締め付けだな......ぐっ、これは......)

 

日向「大佐? も......もう、イキそ......う?」

 

提督「ああ......これ程とは......よそ......くっ」

 

日向「ふ......ああっ。いい......よっ。ねぇ、がま......しないでっ。わた、たしも......もう......。おねがっ、い、一緒に......!」

 

提督「日向っ」

 

日向「あ、あああああああああ!」

 

 

日向「......ねぇ、どうだった?」

 

提督「何も言えないくらい良かった」ギュ

 

日向「あ......うん。私も......嬉しいよ」

 

提督「頑張ったな」ナデ

 

日向「もう......確かに初めてだったけど......ああ、いいや。今は......うん。こういう時だけは甘えていたい......から」

 

提督「そうだ。遠慮は今はするな」ナデナデ

 

日向「ありがと......ねぇ大佐」

 

提督「ん?」

 

日向「好きだよ」

 

チュッ




お久しぶりってほどでもありませんが、どうも。

蒼龍改二にしました。
リランカクエクリアしました。
仕事ちょっとアレです。

前の調子取り戻したいですね。
頑張りますよー......多分。

あ、18禁版は少しだけ待ってくださいね。
明日中には投稿しますよ。


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第10話 「酒(劇)場」

時間が前後します。
飛龍が蒼龍に改二の件でイジられた時の後のお話。
彼女を慰める為に晩酌を兼ねて提督は飛龍と一緒に加賀も誘ってお酒を飲んでいました。


飛龍「だっからぁ! わゃし言ってやってゃんでしゅ! 改ひのレベゆのしゃは、ぎゆゆのしゃじゃにゃーって!」

 

提督「.......? ああ」(何て言ってるんだ?)

 

加賀「飛龍さん、のみす......ヒック」

 

提督「加賀?」

 

加賀「だいじょ......ぶです」

 

ドンッ

 

飛龍「ちょっしょ! たいさっ、無視しにゃいでくじゃさい! 泣きますよぉ!?」

 

提督「聞いてる。だからそんなに強くテーブルを叩くな。ツマミが零れる」

 

飛龍「ちゅマミがにゃんだってんでうかー!」

 

加賀「飛龍さん」

 

飛龍「んに? っ......んぐ」パク

 

加賀「どうです?」

 

飛龍「おいし......」モグモグ

 

提督(俺のカツオの叩き......)

 

飛龍「うっ......」

 

提督「今度はどうした?」

 

加賀「まさか不味......」

 

提督「それはない。絶対だ」キッパリ

 

加賀「そうですか」(......意外に強情なとこがあるのね)

 

飛龍「う、うぅ......」ポロポロ

 

提督「どうした飛龍。味付けが合わなかったか?」

 

飛龍「うーうん、違うます!」

 

加賀「そこは違います、よ? って言っても今は無駄よね」

 

飛龍「しょうです! たーさ......」

 

提督「ん? ああ『大佐』か」

 

飛龍「にゃんで、なんでコレこんなに美味しーのかなぁ......」ウル

 

提督「ああ、それはな。今朝港で漁師に新鮮なのを......」

 

加賀「大佐、多分それ飛龍さんが訊きたいこ事違います」

 

提督「......それで、どうした?」

 

加賀(ちょっと拗ねた? 可愛い......)

 

飛龍「カツオのおいしゃが目に染みゆんでしゅ......う、ぐす......美味しいよぉ。うぇーん......」ボロボロ

 

提督「......これは喜んでいいのか? 作り手として」

 

加賀「冷静に。今話に乗ると確実に絡まれますよ」

 

飛龍「っ、大佐!」ダキッ

 

提督「うぐっ」

 

ポロ

 

加賀「あ」

 

提督(鳥皮の塩焼きが......っ)

 

ポス

 

加賀「キャッチです」

 

提督「ありがとう。加賀それを――」

 

パク

 

提督「 」

 

加賀「......美味しい」ウットリ

 

提督(......こいつも結構酔ってるんだな)

 

モゾ

 

提督「っ、飛龍? あまり動くな。酒まで零れる」

 

飛龍「んふふー♪ えー?」スリスリ

 

加賀「......」ムッ

 

飛龍「たーしゃ、しゅきです。だい好き......♪ ちゅ」

 

提督「んっ......おい」

 

加賀「飛龍さん、そこまでです。大佐は私の夫なんですよ?」

 

飛龍「やっ! わたしも好きあもん!」ギュウゥ

 

加賀「......離れなさい」

 

飛龍「いやったら嫌! うぅ、たいしゃぁ......飛龍も大佐と結婚したいよぉぉ」

 

提督「お前も頑張ればそんなに......んぐ」

 

加賀「......ちょっと」ピキッ

 

飛龍「えへへぇ、それじゃぁ先にキスしちゃいまゆ♪ んちゅっ......」

 

提督「飛龍、お前酔いすぎだ。落ち着け」

 

加賀「そうですよ。もうさっき一回キスしたじゃないですか。2回目はちょっと許せません」

 

提督「いや、そこじゃないだろ」

 

飛龍「あれぇ? キスじゃご不満ですか? んもう......しあたないですへぇ」ヌギ

 

提督「いかん。だめだ。酔った勢いはダメだ飛龍」

 

加賀「 」プチッ

 

グイッ

 

飛龍「ひゃっ!? か、加賀さん!?」

 

加賀「飛龍......ちょっとアッチでお話しましょう?」

 

飛龍「え、ちょっと。痛っ......ていうか怖......」

 

加賀「行きましょ?」ニコッ

 

飛龍「ひぃぃっ!!」ゾクッ

 

提督(あれは酔いが覚めるな)

 

飛龍「た、大佐っ、助けてっ......!」

 

提督「加賀そのくら――」

 

加賀「大佐は黙っていてもらえますか? 決して間違いは犯しませんので」

 

提督「それは信じている。だがなあま――」

 

加賀「皆の前で淫乱な貴方との夜の営みの話をしま――」

 

提督「飛龍、達者でな」

 

飛龍「大佐ぁ!?」ガーン

 

提督「大丈夫だ。骨は......いや、事が済んだらちゃんと迎えに行ってやるから」

 

加賀「......まぁいいでしょう。さ、行きますよ」ズル

 

飛龍「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ......!!」

 

提督(許せ飛龍......)

 

 

キャーヤメテー! ココデスカ? ココガイケナイノデスカ? ウワァァァン、ソコハタイサダケノー! ......ンデスッテ?

 

 

提督「......」グビ

 

提督「......味がしない」

 

トントン

 

提督「ん?」

 

妙高「失礼します。すいません、ドアが開きっぱなしだったもので......」

 

提督「ん? ああ......いや、構わない。どうした?」

 

妙高「その......私、ほら最近......になったじゃないですか......?」チラ

 

提督(ああ)

 

提督「妙高」

 

スッ

 

妙高「あ、大佐......」

 

提督「おめでとう。飲もうか」

 

妙高「は、はい! 頂きます、大佐♪」




間を開けるとなんかスラスラと書けちゃう不思議。
いや、その間忙しかったり休んだりはしてましたけど。

やっぱ、根詰めると駄目ですね。
体調管理はしっかりしよう。


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第11話 「自信」

また話が前後します。
レ級達が海軍の本部を襲って、それを大将が追い払った後のお話。
少し不機嫌そうな顔の大将が戦闘を終えて基地に帰って来ました。


大和「中将、大将殿がお戻りになられました」

 

中将「お、そうか」

 

ズンズンズン......

 

中将「よー、大将ー。残念じゃったな。お前の艦隊、大丈夫だったか?」

 

大将「......老体、俺は今機嫌が悪いんだが?」

 

中将「知ってる。だからこそその憂さ、今ここで晴らしみんか?」

 

大将「......」ギロッ

 

中将「......」ニヤ

 

大和「......っ」ビクッ

 

艦娘達「......」アセタラー

 

大将「......ふん。余計な気遣いだ......礼を言う」

 

中将「ふっ、丸くなったのう」

 

大将「......大人になったと言え。20年越しだがな。おい、行くぞ」

 

艦娘達「は、はいっ」

 

ズンズン......

 

 

中将「......」

 

大和「ふぅ......」ヘタ

 

中将「ん? 威圧に当てられたか?」

 

大和「はい......この大和が......。中将もそうですけど、あの人や総帥は本当に人間ですか?」

 

中将「ふははははは! 儂も人外扱いか!」

 

大和「あ、す、すみませ......」

 

中将「いや、いい気にするな。ま、そこで元帥を入れなかったのは流石だな。あいつ優しいしな」

 

大和「うっ......」タジ

 

中将「ははは、泣くな泣くな」ワシワシ

 

大和「きゃっ......な、泣いてません!」

 

中将「ふはは、そうか。んじゃ、行くか。大将も元気そうだったし」

 

ギュッ

 

中将「ん?」

 

大和「あ、あの......」

 

中将「抱いて行ってやろうか?」

 

大和「お、お願いします」ポ

 

 

~大本営海軍本部、第二司令室

 

ボスッ

 

大将「ふぅ......」

 

雷「あ、あの......か、閣下」

 

大将「ん?」

 

雷「きょ、今日はごめんなさい!」ペコ

 

艦娘達「ごめんなさい!」

 

大将「......」

 

雷「雷達がもっと上手くやってたら追撃も出来たかもしれないのに......」

 

大将「......」スクッ

 

スッ

 

雷「......ひっ」ビクッ

 

ポン

 

雷「あ......」

 

大将「気にするな。お前たちはよくやった」

 

雷「か、閣下ぁ......ぐす」ウル

 

大将「お前達もだ。気にすることは無い。今回はあれだけの戦力でよくやった」

 

利根「あ、ありがとうございます!」

 

艦娘達「ありがとうございます!」

 

大将「利根、それに皆、そう畏まらなくていい。お前たちは俺の艦隊だ、俺の兵器だ、俺の艦娘だ。何も恥じる事はない。以降も死ぬ気で尽くせ。それだけでいい」

 

艦娘達「はっ」

 

大将「......それにしても、あのレ級達強かったな。そこら辺の鬼や姫など恐らく相手にならん」

 

筑摩「確かに......あの者たちの実力、並大抵のものではありませんでした」

 

衣笠「こっちも無傷だったけど、あっちもほぼ無傷なんて、ね......初めてよ」

 

電「つ、次は必ず仕留めます!」

 

暁「物騒な事言うんじゃないわよ。似合わないわよ?」ポン

 

電「あう......」

 

雷「そうね、無理して気張る事はないわ。閣下の言う通り、次はもっと死ぬ気で戦えばいいんだから!」

 

大将「その通りだ。だが死ぬなよ? それはあくまでものの例えだという事を忘れるな」

 

雷「は、はい!」

 

大将「......よし」ポン

 

雷「ふ......ん♪」

 

電「あ......か、閣下」ギュッ

 

大将「ん?......ああ、他に撫でて貰いたい者がいたら並べ。今日はこの後に間宮の甘味も出してやろう」

 

ワァァァ!

 

 

――その夜

 

大将「......さて、駿河、近江、奴らをどう見る」

 

駿河「......強敵です。今まで戦ってきたどんな深海棲艦よりも」

 

大将「そうだな」

 

近江「それに奇妙でもあります。あんな感情豊かな深海棲艦は見た事がありません。侮らない事は勿論ですが、警戒は必須かと」

 

大将「ふむ......お前たちがそこまで言うのならそうなのだろう。実際俺もそう思っていた」

 

駿河・近江「......」

 

大将「お前達二人は大和型を超える現時点で最強の戦艦だ。だが、同時に実際の歴史では起工すらされなかったあやふやな存在でもある」

 

大将「そんな実力や存在が不確かなお前たちを俺は信じていいか?」

 

駿河「大将、わざと挑発的な言動をして私達の自信を引き出そうとするのは感心しない」

 

近江「そうです。その様な事言われずとも、私達は私達の最強を閣下の御前で確実に示して見せます」

 

大将「流石だな。俺も先程の発言を失言と認めよう。そしてお前たち、頼りにしてるぞ」

 

駿河「身に余る光栄です。幻の様な存在なれどこの力、確かなものだとお頼り下さい」

 

近江「私も、閣下と祖国の為ならいかなる任をも遂げてみませす」

 

大将「十分だ。それでは今日は解散。各自英気を養え」

 

近江「はっ。あの、閣下? ......偶には一緒に寝てくれてもいいんですよ?」

 

駿河「あ、おいっ。ズルいぞ!」

 

大将「......素が出ればあやふやな存在だろうが、最強だろうが、年相応の娘達だな本当に」




また新キャラです。
紀伊型出て欲しい!

ただ、それだけですw


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第12話 「悪夢」

川内と瑞鶴と比叡が何やら提督の部屋で騒いでいます。
何かを一生懸命お願いしているようです。
何をお願いしてるんでしょう。


川内「夏だ!」

 

比叡「七夕!」

 

瑞鶴「バーベキューよ!」

 

提督「何を言ってるんだ......」

 

川内「大佐! 夏ですよ夏!」

 

提督「ここはいつも暑いだろ、それに日本は季節的に今は冬だ」

 

比叡「で・も! いつもここは夏みたいに暑いんですから、なんかイベントっぽいことやりたいです!」

 

提督「ならクリスマスでいいだろう」

 

瑞鶴「わたしは真夏の太陽の日差しを浴びて笑うサンタなんて認めないわ!」

 

提督「じゃぁ、バーベキューだけでいだろう」

 

比叡「い・や・で・す! ここに来てイベントらしい事といったら、水着大会くらいだったじゃないですか!」

 

提督「水泳大会だ。事実を歪曲するな」

 

瑞鶴「ちょっと、わたしの水着見てなかったっていうの!?」

 

提督「何を言ってるんだお前は」

 

川内「と・に・か・く! 七夕です! 七夕祭りがしたいです!」

 

比叡「なんか楽しいイベントがやりたいですぅ!」

 

瑞鶴「バーベキューも忘れないでよ!」

 

ギャーギャー!

 

 

提督「......静まれ」キッ

 

川内・比叡・瑞鶴「!」ピタッ

 

提督「全く......。比叡、七夕をしたいんだな?」

 

比叡「あ、はい......その、ちょっと退屈で......」

 

提督「バーベキューもしたいのか?」

 

瑞鶴「あ、えっと......別にバーベキューじゃなくてもいい......です。何かパーティーみたいにワイワイ食べれれば......」

 

提督「当然夜がいいんだな?」

 

川内「やせ......! じゃなかった。はい!」

 

提督「ふむ......それじゃあ今夜やるか。消灯時間の1時間くらい前に」

 

比叡「ホントですか!?」パァ

 

川内「今夜ですね!?」

 

瑞鶴「やったぁ♪」

 

提督「時間厳守、食事はファーストフード店で軽く用意する程度でいいな?」

 

三人「はい!」

 

提督「うむ。なら許可してやる。ほら、他の皆に知らせて来い」

 

比叡「はーい!」

 

川内「やっせん、たっなばった♪」

 

瑞鶴「おっまつり、おっまつり♪」

 

ワーワー

 

 

提督「俺も甘くなったもんだな......」

 

響「そんなことないよ」

 

提督「......ずっと机の下に居たのか?」

 

響「うん」

 

提督「何故?」

 

響「暇だったから?」

 

提督「だからといって、机の下は......」

 

ギュッ

 

響「......じゃ、膝」

 

提督「いやそれは......」

 

響「大佐は甘くないよ、ずっと前から優しいよ?」

 

提督「......」

 

響「ね?」

 

提督「乗れ」

 

響「~♪」

 

ギシッ

 

 

提督「......そんなにいいか?」

 

響「襲いたくなる?」

 

提督「ちゃんと会話をしろ」

 

響「ちぇっ」

 

提督「聞いていたと思うが、七夕祭りをする」

 

響「うん」

 

提督「参加するか?」

 

響「全員するよ」

 

提督「そうか」

 

響「ね」

 

提督「ん?」

 

響「いい子いい子して」

 

提督「なんでわざと幼い言い方を......」

 

響「甘えてるの」ムッ

 

提督「そうか」

 

響「やって」

 

提督「......」

 

ポン

 

響「んふ~♪」

 

提督「お前は本当に甘えん坊だな」

 

響「そうだよ。というか多分皆そうだよ?」

 

提督「なに?」

 

響「みんな」

 

提督「......皆こうして貰いたいと?」

 

響「うん」

 

提督「戦艦も空母も重巡も?」

 

響「そう。あと軽巡と潜水艦他の皆もね」

 

提督「冗談だろ?」

 

響「本当にそう思ってる?」

 

提督「......」

 

響「皆大佐が大好きなんだよ?」

 

提督「......!」ゾッ

 

提督「......」

 

響「大佐......? あ、気絶してる」

 

響「そんなに全員に好かれているのがショックだったのかな......? 響は寧ろそっちの方がショックだったんだけどな」

 

響「大佐、逃げないでね。逃げても全員追いかけるから......ね?」

 

 

提督「という夢を見たんだ」

 

響「......失礼だね」プラプラ

 

提督「俺にとっては悪夢そのものだった」

 

響「一緒にうたた寝してたら大佐はとんでもない夢を見てたんだね」

 

提督「皆が俺を好きとはな」

 

響「怖い?」

 

提督「いや、信じられないだけだ」

 

響「そう」

 

提督「......なんで俺なんだろうな」

 

響「大佐だから、提督だからだよ」

 

提督「もっと自分に自信を持たなければな」

 

響「あまり気負わないでね。響も手伝うから」

 

提督「ありがとう」ポン

 

響「ん♪」




夏なので、ちょっとホラーチックに。
それにしてもこんなハーレムな桃源郷にショックを受ける提督って......。


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第13話 「お祭り」

七夕祭り開始です!


青葉「みなさーん! 楽しんでますかー!? 本日は七夕祭りにご参加頂きありがとうございまーす!」

 

隼鷹「楽しんでるよー。お酒があったらもっと良かったんだけどねー」

 

飛鷹「全員いるんだからお酒の所為で騒ぎにでもなったら大変でしょ」

 

足柄「ま、仕方ないわよ」

 

 

青葉「すいません! 時間帯とか基地の周りに住んでる人に迷惑を掛けるわけにはいかないので、お酒は我慢してくださーい!」

 

暁「し、仕方ないわね。本当はお酒が飲みたかったんでだけど、今回は我慢してあげるわ」

 

秋雲「ホントは飲めない癖にー」

 

谷風「えっ、お酒のんじゃダメなの!?」

 

天龍「おい」

 

 

青葉「今日は七夕祭りなので、参加してる方は食事しながらでもいいので短冊にお願い事を書いて、収集箱に入れて下さいねー!」

 

鬼怒「金剛さんは何を書くの?」

 

金剛「It`s child ! 」

 

鳥海「え?」

 

加賀「私と一緒ですか」

 

赤城「ええ!?」

 

提督「那智、あそこのメンバー要注意だ。あまり外に晒せない願いだったら訂正させろ」

 

那智「了解。......あの、願い事は恋人とかはダメ、か?」.

 

 

青葉「名前は匿名でも可です! 恥ずかしいなら無記名でもいいですよ!」

 

武蔵「名前を隠す必要なんてあるのか?」

 

長門「全くだ。晒すからこそ得るものがあるだろうに」

 

五十鈴「一体何を言ってるのよ......」

 

 

青葉「はい、全員書きましたかー!? それでは、順番に箱の中に手を入れてこの笹に着けて下さいねー!」

 

最上「ん? 『絶対におっきくなる!』 なに、これ」

 

龍驤「......」カァ

 

ハチ「『先手必勝』......。これ願いというより信条な気がするのですが......」

 

木曽「えっ」

 

榛名「えっとこれは、え......? 『米が減らないお釜』......?」

 

利根「無茶な!」

 

 

青葉「皆さん、実に色んなお願い(?)を書かれてますね! はーい、それじゃあ笹を立てますよー!」

 

青葉「山城さんお願いしまーす!」

 

山城「み、皆が私に注目してる......! 今日は良い日ね!」

 

扶桑「山城......」ホロリ

 

由良「ねぇ、あの涙って......」

 

妙高「あまり気にしない方がいいですよ」

 

 

青葉「......」コソコソ

 

鈴谷「自分だけ目立たないとこに掛けようなんてズルイじゃん?」

 

青葉「す、鈴谷さん!」

 

鈴谷「ま、気持ちは解らないでもないけどね」

 

青葉「う......」

 

鈴谷「教えてくれたら秘密にしてあげるよ?」ニヒ

 

青葉「ぜ、絶対に誰にも言わない?」

 

鈴谷「鈴谷これでも女の子の秘密は守る女の子だよ」

 

青葉「これ......」スッ

 

鈴谷「んー? ......ね、これ」

 

青葉「あ、あはは。あまりキャラじゃないかなぁって。そう思うと恥ずかしくて......」カァ

 

鈴谷「ううん。そんな事ないよ。超良い事書いてんじゃん! そんな事を恥ずかしがるなんてアオちゃん超可愛い!」ギュッ

 

青葉「あ、ちょ、ちょっと......」アセ

 

 

――祭り後

 

提督「花火を用意しなかったのは迂闊だったな」

 

赤城「そんなに気にすることはありませんよ。皆その花火ができなかった分、浜辺ではしゃいでましたし」

 

提督「ゴーヤたちが水着になった時はもしやと思ったが」

 

赤城「ふふ、案の定何人か一緒に海に飛び込んじゃいましたね」

 

提督「俺も連れて行かれそうになった時は流石に焦った」

 

赤城「まだ夜の海は?」

 

提督「慣れてないからな。今度練習でもするか」

 

赤城「あの、その時は私も......」

 

提督「ああ、教えてもらえると助かる」

 

赤城「っ、喜んで♪」

 

 

提督「......風が気持ち良いな」

 

赤城「そうですね。いつもと同じな筈なのに、気分によって感じ方って結構変わるものですね」

 

提督「そうだな。......ん」

 

赤城「どうかしました?」

 

提督「いや、あれ。あの笹に掛かってる短冊、丁度向かい風で見堅い位置にある」

 

赤城「ああ、あんなところに。あっ」

 

 

『皆大佐と一緒に幸せになれますように』

 

 

提督「......身が引き締まる思いだ」

 

赤城「まぁ、ふふ......そこは力を抜いて受け入れて欲しいものですけど」

 

提督「一応それも兼ねてだ。誰が書いたんだろうな」

 

赤城「名前がありませんが......でもこの願いなら誰でも書きそうですから」

 

提督「......そうか」

 

赤城「でも、間違いなくこれを書いた人はとっても良い人ですよ」

 

提督「そうだな。これからもそうあれる様に頑張らないとな」

 

赤城「はい、一緒に」

 

提督「ああ」

 

ギュッ




イベント関係の話だと、前に書いた水泳大会の話を思い出します。
や、今見ると結構拙い内容ですが、あれのお蔭でその後の話もいろいろ思いつく事が出来た事を考えると感慨深いものです。


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第14話 「映画2」

久しぶりに映画の話です。
さて今回観る映画は......?

お客さんは羽黒と北上と卯月と伊勢です。


卯月「えーが、えーが♪」

 

羽黒「どんなのを上映するんだろう......」ワクワク

 

伊勢「やった! また観られるなんて運がいいなぁ♪」

 

北上「映画かぁ......あ、恋愛ものはパスね」

 

提督「......何処から聞きつけたんだか」

 

卯月「伊勢さんだよ」

 

羽黒「伊勢さんです」

 

北上「イセっちー」

 

提督「......」

 

伊勢「あ、あはは......。その、ごめんなさい!つい」

 

提督「いや、悪くはないが、俺が他に映像ソフトを見つけてなかったらお前はまた同じ映画を観るところだったぞ?」

 

伊勢「まぁ、あれもそれなり面白かったから2度観でもいいだけどね」

 

提督「そうか? 気に行って貰えているならなによりだ。だが、今回は別のだ」

 

卯月「なになにー?」

 

羽黒「どんな映画ですか?」

 

北上「エッチなの?」

 

伊勢「ええ!?」

 

提督「北上、俺はそんな変態じゃない。今日観るのはこれだ」

 

 

卯月「ぶ、ぶら......?」

 

羽黒「役者さんの顔がちょっと怖いですね......」

 

北上「歴史もの?」

 

伊勢「前のと一緒のジャンルね」

 

提督「そうだ。これはアイルランドに実在したらしい祖国の解放の為に奮闘した英雄の話でな......」

 

 

卯月「お、おー......ぐ、グロ......」

 

羽黒「ひぐっ......う、卯月ちゃんなんでそんなに平気そうなの......?」

 

北上「あはは、お尻出して挑発してたら尻に矢が」

 

伊勢「よくそんなに笑えるわね。私は結構痛いそうで笑えないわよ」

 

 

北上「うわー......えげつな、裏切るんだ」

 

羽黒「ひどい......可哀想......ぐす」

 

卯月「うーん、でもこの王様、一見冷酷だけど結構優秀そうだぴょん」

 

伊勢「え、そう? ただ、性格が悪いだけじゃないの?」

 

 

北上「あー、やぱり捕まっちゃったかぁ」

 

羽黒「ひぃ......ねぇ、ねぇこれ何をされて......や、やっぱりいです」

 

卯月「う~ん、こんな過酷な拷問に屈せずに最後に訴え叫ぶなんて主人公やるぴょん」

 

伊勢「卯月って結構真面目に観てるのね」

 

 

提督「どうだ?」

 

羽黒「うぅ......私にはちょっと刺激が強かったみたいです......でも、これ最後はちゃんと......?」

 

提督「ああ、最終的には独立に成功してる」

 

羽黒「良かったぁ......」ウル

 

北上「え、そこで泣く?」

 

伊勢「今回も面白かったわ! またよろしくね!」

 

提督「楽しんでもらえたようで......ああ、羽黒は少し休んでいくか?」

 

羽黒「はい、ありがとうございます......」

 

北上「あ、じゃあわたしも」

 

卯月「卯月も!」

 

伊勢「わ、わたしも......ダメ?」

 

提督「俺の部屋は休憩室じゃないんだが」

 

北上「おねがーい。ちょっと太もも見せてあげるから」

 

提督「お前はそんなに俺を......いや、それ以前にそんな事されたら大井が面倒だ。やめろ」

 

卯月「じゃ、卯月はパンツ見せてあげ――もが」

 

伊勢「それ以上大佐の精神を削っちゃだめよ」

 

提督「すまない伊勢」

 

北上「ナイスアシスト」b

 

提督「事の発端が偉そうに言うな」

 

北上「ま、それは置いておいて。いい?」

 

提督「あまり騒ぐなよ。休みの間だけだからな」

 

卯月・北上・伊勢「はーい」

 

ワイワイ ガヤガヤ

 

 

提督「羽黒はこっちで休んでろ」

 

羽黒「はい、ありが......え、ベッドいいんですか?」

 

提督「ああ。流石に昼からベッドで寝たりはしない。ああ、臭いとか気になるか。それならソファーに......」

 

羽黒「い、いえ! ベッド、ベッドがいいです!」

 

提督「そうか? まぁお前が構わないなら」

 

提督(なんだ? なんか一瞬で元気になっている気が......?)

 

羽黒「ありがとうございます!」

 

羽黒(大佐と同じベッドなんて、こんな機会逃せられないよ!)

 

提督「それじゃあ俺は休み時間まであいつらの相手をしてるからお前は......」

 

羽黒(えへへ、大佐のベッド♪ 何となく大佐の匂いもする♪」

 

羽黒「~♪」モゾモゾ

 

提督「......まぁ、ゆっくりな」




あの映画殆どスケールの割には殆ど実写なんですよね。
CGもあまり、というかほぼ(?)使ってないみたいですし。

俳優も監督もできる人って凄いと思います。
旧ジョーカーの人もこうなれたらいいんですけどね。


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第15話 「特徴」

霰が提督を尋ねてきました。
何時もと変わらない顔に見えますが、その表情はどことなく固く何か思いつめているようにも見えます。


霰「大佐......」

 

提督「ん、霰か。どうした」

 

霰「ちょっと、大佐の意見が聞きたくて......」

 

提督「なんだ?」

 

霰「霰と弥生ちゃんって似てる?」

 

提督「お前と弥生が?」

 

霰「......うん」コク

 

提督「それは外見ではなく、内面を比べてという事か?」

 

霰「そう」

 

提督「なるぼど......。ああ、似ていると言えば似てる」

 

霰「例えば何処?」

 

提督「ん? そうだな。例えばその話し方だ。たどたどしくて静かな声が弥生と感じが似ているな」

 

霰「そう......。それじゃあ霰が弥生ちゃんのモノマネしたら完璧?」

 

提督「......その発想はなかった。確かに、話し方だけなら声さえ似せれば弥生そのものだな」

 

霰「そう......」

 

提督「嬉しそうだな」

 

霰「え? ......うん。霰、あまり特徴ないし。こういう特技くらいしか......」

 

提督「霰」

 

霰「ん?」

 

提督「お前が真似をしようとしている弥生もそんなに自分に自信がなさそうな感じなのか?」

 

霰「ううん。弥生ちゃんはしっかりしてる。物静かだけど、約束や時間はちゃんと守るし、行動とかも何気に早くて凄くキビキビしてる......」

 

提督「そうか。それは俺が霰にもっている印象と同じだな」

 

霰「え?」

 

提督「なんだ自分で気づいてなかったのか? お前は自分が思っているよりも他の人から見たらしっかりしているぞ?」

 

霰「そ、そう? 霰そんなにしっかりしてる......かな?」

 

提督「ああ、大丈夫だ。だから弥生のモノマネをする時は話し方だけでいいぞ?」

 

霰「大佐......ありがとう。霰、ちょっと自信持てた。嬉しい......」

 

提督「ああ。これからもその調子でな」ポン

 

霰「あう......んん......♪」

 

提督(目を細めて気持ち良さそうに......猫みたいだな)

 

霰「大佐、もっと......」

 

提督「うん?」

 

霰「もっと撫でて欲しいの......霰もっと頑張るから」

 

提督「そうか。だが、あまり無理はするなよ? 頑張り過ぎないのも頑張る事の一つだからな」

 

霰「え? ......んと、分った。ちょっと難しいけどやってみる」

 

提督「その意気だ」ナデナデ

 

霰「んふぅ......♪」

 

 

弥生「......」

 

球磨「弥生、何をみているクマ?」

 

弥生「......自分」

 

球磨「え?」

 

弥生「霰ちゃん凄い......あれは、もう弥生以上に弥生だよ......」

 

球磨「え? え? 弥生以上に弥生ってどういうことクマ?」

 

弥生「球磨さんはクマさんって事だよ」

 

球磨「球磨がクマさん? いやぁ、そう言われると照れるクマぁ♪ 熊強いもんねー♪」

 

弥生「うん......どんな状況でも会話を成立させる球磨さんはやっぱり凄いと思うよ」

 

球磨「もう言い過ぎだクマぁ。♪ 嬉しいけどぉ♪」テレテレ

 

弥生「球磨さんの長所ってさ。力が強くて凄く能天気なところだよね」

 

球磨「えっ」

 

弥生「弥生の長所ってなんだろう......」

 

球磨「ち、力が強くてのうてん...き......。そ、それってつまりどういう事クマ......?」フルフル

 

弥生「? そのままだと思うけど......?」

 

球磨「!!」(馬鹿にされたぁぁぁ!?)ウル

 

弥生「球磨さん?」

 

球磨「く、球磨はおバカさんじゃないクマ!」

 

弥生「え?」

 

球磨「や、弥生ちゃん今に見てるクマ! きっと近い内に弥生ちゃんが認めるくらいの完璧な球磨になって見せるクマー!!」ダダッ

 

弥生「あ、え......?」

 

弥生「球磨......さん......?」ポツーン

 

 

提督「なんか外が騒がしくなかったか?」

 

霰「......」

 

提督「霰?」

 

霰「すぅ......すぅ......」

 

提督(本当に猫だな。少し寝かせておくか)

 

 

~球磨と多摩の部屋

 

多摩「にゃにゃ! なんか最近多摩のアイデンティティが侵略されているような気がするにゃ!」

 

球磨「そうクマ! 多摩、今こそわたし達は新たなあいで......あい......?」

 

多摩「アイデンティティにゃ」

 

球磨「そう! それで新たな境地を開拓するクマ!」

 

多摩「おー、なんだかいつになく球磨燃えてるにゃね」

 

球磨「おバカな球磨からの脱出だクマ!」

 

多摩「にゃ?」

 

球磨「多摩も球磨と一緒におバカな多摩から脱出するクマ!」

 

多摩「にゃぁ!? た、多摩は馬鹿じゃないにゃ!」

 

球磨「そう思ってるのは自分だけだったりするクマよ!?」

 

多摩「にゃ、にゃんだってぇ!?」ガーン

 

球磨「多摩、頑張るにゃ!」

 

多摩「な、何だか分らないけど分ったクマ! イメージアップクマね!」

 

球磨「そうにゃ! イメージアップにゃ!」

 

球磨・多摩「......」

 

球磨・多摩「あれ?」




二人のイメージアップないし、チェンジの道のりは遠そうですね。
キャラが強すぎるだけに。

それにしても名前からこのキャラ設定、運営さんの気持ちは解りますが、ちょっと強引な気も。
おかげで二人が......というのは考え過ぎかな。


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第16話 「届け物」

提督にお荷物が......じゃなかった宛名不明の荷物が鎮守に届きました!
これより検品に入ります!


提督「届け物?」

 

鳥海「はい。大佐宛ではなかったんですが、鎮守府宛てだったので」

 

提督「......これは艦娘宛てだな」

 

鳥海「え? そうなんですか?」

 

提督「ああ。ほら、宛先のところのシールのこの部分が剥がれてしまっている。恐らく荷物を下ろす時か置いてある時に磨れてこの部分だけ取れてしまったんだろう」

 

鳥海「でもそれだけでは大佐宛じゃないとは......」

 

提督「俺は通販は使った事がないんだ。この通販会社すらな」

 

鳥海「ああ......」

 

提督「しかし宛先が分からないとは言え、このままにしておくのもな」

 

鳥海「だからと言って手当たり次第に確認するのも憚れますよね。知られたくないものかもしれないですし」

 

提督「そうだな。さてどうするか......」

 

鳥海「......中身を確認してそれっぽい人に確認すると言うのは?」

 

提督「勝手に開けるのは、な」

 

鳥海「そうですよね。ちょっと振ってみますか」

 

提督「大丈夫か?」

 

鳥海「持った感じ全然重くないですし、運んでる最中も中から特に音は聞こえなかったですから多分大丈夫ですよ」

 

提督「そうか。ならいい」

 

鳥海「はい。それでは」フリフリ

 

提督・鳥海「......」

 

提督「しないな」

 

鳥海「しませんね」

 

提督「しっかり梱包されてるからか?」

 

鳥海「確かに、重さの発生源は箱の中央から感じます」

 

提督「マグカップくらいの大きさの箱で、そんなに重くないもの、か」

 

鳥海「いろいろありますね。本当にマグカップかも」

 

提督「だったら開けたところでそんなに問題はないんだろうが......」

 

鳥海「確実じゃありませんからねぇ」

 

提督「ふむ......」 鳥海「うーん......」

 

コンコン

 

 

提督「ん? 誰だ?」

 

 

摩耶「摩耶だ、です。入ってもいい、です?」

 

 

提督「ああ、いいぞ」(何か緊張してる......?)

 

 

ガチャ

 

摩耶「失礼します。大佐、今日基地に何かとどけ......あっ!」

 

提督「ん? これお前宛だったのか?」

 

鳥海「え、そうなの摩耶?」

 

摩耶「そ、そう! ......中身、見た?」

 

提督「いや」

 

鳥海「ううん」

 

摩耶「そ、そう。ふぅ......」

 

鳥海「......摩耶」

 

摩耶「ん?」

 

鳥海「これ、なに?」

 

摩耶「え!? そ、それは......」

 

鳥海「そんなに焦るなんて、まさか規則に違反するものじゃ......」

 

摩耶「そ、そんな事ない! 絶対だ! だ、だから開けるな! お願い!」

 

鳥海「なんでそんなに必死なの? 姉妹なら私にくらい見られても問題ないわよね?」

 

摩耶「だ、ダメ! それだけは絶対!」

 

鳥海「摩耶……あなた本当に危険な……」

 

摩耶「ち、違う。違うからぁ! お願いちょうだい!」ウル

 

提督「......」

 

鳥海(あんなに涙を滲ませて......。まさか、本当に......? ここは心を鬼にしにと!)

 

鳥海「摩耶悪いけど......」

 

摩耶「!!」

 

提督「鳥海」

 

鳥海「ダメですよ大佐。私だって疑いたくはないですけど可能性は......」

 

提督「鳥海、お前は摩耶を信じているだろう?」

 

鳥海「え?」

 

提督「摩耶の事を同じ姉妹として大切に思っているだろう?」

 

鳥海「そ、それはまぁ……でも」

 

摩耶「大佐……?」

 

提督「なら、ここは俺に任せろ。俺がいまから摩耶に耳打ちにしてそれが正解なら開封せずに麻耶に渡す。それでどうだ?」

 

鳥海「大佐は中身の予想が?」

 

提督「まぁ、多分……大凡だが」

 

摩耶「……」(ええ!?)カァ

 

提督「摩耶」スタスタ

 

摩耶「……っ」ビクッ

 

提督「耳を貸せ。お前が取り寄せたのは……じゃないか?」

 

摩耶「……!!」カァ

 

提督「合っているか?」

 

摩耶「……」コク

 

提督「鳥海、摩耶に渡してやれ。大丈夫だそれは本当に危険でもなんでもない」

 

鳥海「え? 正解だったんですか?」

 

提督「まあな」

 

摩耶「……」コク

 

鳥海「一体何……」

 

提督「後で教えてやる」

 

摩耶「た、大佐ぁ」ウル

 

提督「大丈夫だ。信じろ」

 

摩耶「……わ、わかった」

 

提督「そう言うわけだ。後で教えてやるから渡してやれ」

 

鳥海「はぁ、まあそう仰るのなら。はい、摩耶」

 

摩耶「っ……」バッ

 

提督「落ち着け」

 

摩耶「……ありが、ありがとう。ふぅ……失礼します」

 

バタン

 

 

鳥海「一体……」

 

提督「生理用品だ」

 

鳥海「え?」

 

提督「自分にも子供が作れるようになる時が来るかもしれない、てな」

 

鳥海「そんな。私達はそんな身体的機能は......」

 

提督「可能性くらいは希望として持たせてやってもいいだろう」

 

鳥海「それは……」ジッ

 

提督「ん……こほん」

 

鳥海「あ……」カァァ

 

提督「ま、仕事をしようか」

 

鳥海「は、はい」アセ

 

 

~摩耶と鳥海の部屋

 

摩耶(バレちゃったバレちゃった! 鳥海には言わないと思うけど、大佐にはバレちゃった!)カァァ

 

摩耶「……ふぅ」

 

摩耶(ま、まぁ大佐にならいいか……うん)

 

カチッ、ヴィィィン

 

摩耶(こんなの興味本位で買っちゃったなんて言えないよな……)




提督の直観パねぇ!
え、結局何を買ったのかって?
紳士なら誰でも分りますよ。キリッ

本当に久しぶりに割とスラスラ書けました。
こんな調子はこのSSを投稿し始めた当初以来ですかね。

休みを有意義に使えて嬉しいです。


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第17話 「始まり」(前編)

結構無茶苦茶な説明です。
男ばっかです。

事の始まりのお話、過去編です。


倫理的生物兵器開発計画。

一見この冗談の様な軍事計画が全ての事の発端だった。

 

先の大戦から敗北後、ある方法により条件付きで連合側の降伏を受け入れに成功した日本は、連合国による軍の解体と公職の追放、更には占領統治していた大部分の領土の放棄すら免れ、晴れて民主国家となった。

 

降伏後、暫くは連合国による分割統治などが行われていたが、やがてそれも傀儡政権が解体と主権の回復によって結果的には占領した一部の領土放棄のみで再び日本は独立することが出来た。

 

解体と追放が行われなかったとはいえ、その中枢的役割を担っていた重要人物は悉く罷免され、主権はそのままで統帥権のみが完全に軍へと移行した日本は、民主化としたことも合わせてその実態は既に以前の日本とは別物となっていた。

 

 

大佐(後の親父)「倫理的生物兵器開発計画?」

 

少将(後の元帥)「そうだ。新しい軍の兵器開発計画だ」

 

准将(後の大将)「何だそれは?」

 

少将「私からは何とも......正直内容があまりにも馬鹿らしくて......」

 

大佐「?」

 

准将「計画の概要書は?」

 

少将「これを」スッ

 

准将「ふむ......ん......」ピク

 

大佐「どうした?」

 

准将「どうもこうもない。なんだこれは」

 

少将「......」

 

准将「陰陽道によって過去に使用していた兵器に魂を宿らせて自立思考型兵器として運用する、だと?」

 

大佐「はぁ?」

 

准将「なんだこれは。俺達を馬鹿にしているのか!!」ドンッ

 

少将「怒るだろうと思っていた」

 

准将「当り前だ! ふざけてるのか!!」

 

大佐「まぁ落ち着けよ」

 

准将「......失礼した」

 

少将「いや、気にするな。無理もない事だ」

 

大佐「確かにな......しかしなぁ、これ本気か?」

 

少将「本気だからこそ米国にも正気を疑われ、勝手にしろと言われた」

 

大佐「だろうなぁ」

 

准将「......本気でこんな事が可能だと?」

 

少将「出来るかどうかはまぁ......一応根拠はある」

 

大佐「へぇ、なんだよそれ」

 

准将「根拠?」

 

少将「ここにいる3人、私も含めて知らなかった事だが、日本には太古からある組織が存在していたらしい」

 

大佐「組織?」

 

少将「八咫烏だ」

 

准将「......」シラー

 

大佐「おいおい......」

 

少将「そんな目で見ないでくれ。私だって恥ずかしいんだ。とにかくその組織だか結社が本当に存在したらしい」

 

大佐「はぁ、まぁそれで。その焼き鳥かなんかがどうかしたのか?」

 

少将「八咫烏だ。まぁそれが紆余曲折あって軍部と協力する事になったらしい」

 

准将「なんだその紆余曲折ってのは......」

 

少将「敗戦後に新体制が発足した事によって埃をかぶってたり元々隠れていたのがいろいろと明るみに出たらしい。その時に」

 

大佐「つくねが見つかったのか」

 

少将「......腹でも減ってるのか?そうだ。八咫烏が表舞台に姿を表したらしい」

 

大佐「ふーん、それで?」

 

少将「ん?」

 

大佐「軍部とそれが協力して、その事をお前が俺達に話すって事はもうその兵器とやらがいくつか出来てるんだろ?」

 

准将「!」

 

少将「察しがいいな。ああ、実はもういる」

 

准将「いる?」

 

少将「扶桑、入れ」

 

大佐「ん?」

 

准将「ふ......そう?」

 

ガチャ

 

 

トコトコ

 

扶桑「扶桑です」

 

大佐「......」

 

准将「......」

 

少将「これが生物兵器、扶桑だ」

 

准将「......」ピキピキ

 

大佐(准将の奴、よく堪えているな。ここはなるべく話を行きわたらせないとな)

 

大佐「あー、少将」

 

少将「ああ」

 

大佐「この......あー、この、こいつが兵器だって?」

 

少将「そうだ」

 

大佐「女だぞ?」

 

少将「そうだな」

 

大佐「少女だぞ?」

 

少将「間違いない」

 

大佐「これ......この子が兵器だってのか?」

 

少将「そうだ」

 

准将「......っ」ブチッ

 

大佐「まぁまぁ待て准将! 待てって! 俺が話してる!」

 

准将「これ以上こんな戯言を聞けと......!」ゴゴ

 

大佐「だからもうちょっと聞け......ん?」

 

准将「......どうした?」

 

大佐「いや、この扶桑って奴、さっきからずっと黙ったままだなってな」

 

准将「それがなんだと言うんだ」

 

大佐「いや、見てみろって。自分の名前を言ってからずーっと立っているだけだぞ」

 

准将「だからそれがなんだと......」

 

扶桑「......」

 

准将「おい、少将」

 

少将「ん?」

 

准将「こいつどうしたんだ。まるで人形みたいだ。生気を感じない」

 

少将「二人ともいいところに気付くな。そうだ。生物兵器自体はこうやって既に誕生はしているが、一つだけ問題、というか欠落的なものがあってな」

 

大佐「欠落?」

 

少将「そうだ。読んで字の如くだ。この子にはな、魂は宿っていても意思が存在しないんだ」




日本はどうやって条件付きの降伏をゲットしたのでしょう?

正解は二つ、それは原爆の悲惨さをマスコミとメディアを使って正解中に拡散して核のネガキャンを行うことにより連合国のイメージダウンを図った。

そしてもう一つは、比較的友好的な関係を築いていた占領地に反連合の思想誘導を図って反連合の運動を活発化させ、連合国=正義という世界のイメージを最初の戦略と合わせる事によって世界に疑問を生じさせた。です。

え? いくらなんでも荒唐無稽過ぎる?
全部上手く言ったって事にしてください(土下座)


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第18話 「始まり」(中編)

昔話の続きです。
相変わらず男ばっかです。


准将「意思がない?」

 

少将「そうだ」

 

大佐「それじゃあ本当にただの人形じゃないか」

 

少将「だからこそ我々が指示を出すんだ。少なくとも彼女はそれを理解して実行する力がある」

 

大佐「実行って、なぁ。どうやってこんな子が戦うってんだ?」

 

少将「それを説明しようと思っていたところだ」

 

准将「......頼む」

 

少将「まず彼女、この生物兵器の正式な名称だが艦隊娘、略して艦娘になる予定だ」

 

大佐「かんむす......腹が減るな」

 

准将「お前は常に腹が減っているのか? というか何を想像した」

 

少将「次にこの艦娘の開発方法だが、八咫烏によると魂を宿らせる為に対象となる軍艦に縁のある物が必要だそうだ」

 

大佐「縁? 残骸とかか」

 

少将「ああ。それと設計図や開発に携わった人間の所有物や遺品でもいいらしい」

 

准将「......随分応用が効くんだな」

 

少将「ああ、それについてもちょっとした理由がある」

 

大佐「ほう?」

 

少将「艦娘の開発だが、基本的に一体しか創れないらしい」

 

准将「なに。一体だけだと? いや、兵器としてはまだ全く信用していないが、それでも一体だけと言うのは......」

 

少将「まだ続きがある。確かに艦娘自体は一体しか創れないが、それは素体のみに限るのだそうだ」

 

大佐「素体......とういことは量産型なら複数可能だと?」

 

少将「そうだ。まだ開発中だが素体が一体でもいれば、以降は特殊な製造機を使うことでその最初の一体から同型を量産できるらしい」

 

准将「......量産型と素体との違いはあるのか?」

 

少将「素体は量産型と比べて複製が効かない分、性能面では全体的に量産型をかなり上回るらしい。そして」

 

大佐「そして?」

 

少将「さっき説明した内容と重複するが、量産型を作るには基本、素体が必ず必要だ。つまり......」

 

准将「素体が何らかの理由でいなくなれば、量産が不可能になる?」

 

少将「そうだ」

 

大佐「その場合今まで作った量産型はどうなる? 霧散したりするのか?」

 

少将「いや、それ以上造れなくなるだけだ」

 

准将「素体の再開発は?」

 

少将「可能だ。媒体さえあればな」

 

大佐「......ふむ」

 

准将「大佐、何を考えている?」

 

大佐「お前と同じだと思うが?」ニヤ

 

准将「ふむ。その艦娘とやら確かに兵器として有用なのであれば、これほど運用に魅力的なものはないな。しかも意思がないというのであれば、兵器としては当たり前だが、理想的であり合格だ」

 

大佐「......ふん」

 

准将(ま、こいつはそういうのは好きそうじゃないからな)

 

准将「それで、まだ続きがあるんだろう?」

 

少将「ああ。次にこの艦娘の性能についてだが。この兵器は今のような見た目が人間にしか見えない人型と艦本来の姿である原型の二つの姿を自由にとる事が出来る」

 

准将「ほう」

 

大佐「人型では戦闘はしないんだな?」

 

少将「いや、可能だ。人型の場合は艦装と呼ばれる艦娘専用の装備を駆使して戦闘ができる。扶桑、艦装を装備せよ」

 

扶桑「了解しました。......転送」

 

ブン

 

大佐「おおうっ」

 

准将「!」

 

扶桑「艦装、装備完了しました」ジャキン

 

少将「よろしい。こんな具合だ」

 

准将(見ただけでも重そうに見える装備を平然と.....)

 

大佐「こいつ力ありそうだな」

 

少将「力だけじゃない。艦娘の身体能力は基本的に人間のそれより遥かに上だ」

 

准将「......意思がなくてよかったな」

 

大佐「む......反乱の想定か? まぁそうだが......」

 

少将「あとこの状態だと水上に浮かぶことができる」

 

大佐「ほう。ボート見たいに波を割くのか?」

 

少将「直接水面には着かない。すれすれで浮遊する感じだ。その状態のまま艦と同じ速度で移動も可能だ」

 

准将「走るのか?」

 

少将「いや、進みたい方向に上体を傾けた姿勢でそのまま移動する感じだ」

 

大佐「やれやれ......まるで、どころか完全に未来の兵器じゃないか」

 

准将「確かに。これは兵器として申し分ない。軍艦用の電探や砲の換装も可能なのか?」

 

少将「今のところ関連する装備だったら開発も装備も可能だとしてる。新兵器も勿論可能性は有望だそうだ」

 

大佐「へぇ......。あ、そうだ一番大事なことを聞き忘れてた!」

 

准将「......なんだ?」(嫌な予感しかしない)

 

少将「何かな?」

 

大佐「こいつ飯は食うのか?」

 

准将「......」

 

大佐「なんだよ? 大事な事だろ?」

 

少将「いや、准将。大佐の質問は結構的を射ている」

 

大佐「ほらな」

 

准将「うるさい。というと?」

 

少将「まず艦娘を実際に運用する上で欠かせないのは物資の補給と整備だ。つまり運用そのものは軍艦と変わらない」

 

准将「まさかこの姿のまま油を飲んだり弾薬を食ったりするのではあるまいな?」

 

少将「ははは。それは私も怖いな。だが安心してくれ。物資の補給は今のところ原型でしかできない」

 

大佐「整備も原型でやらないといけないのか?」

 

少将「いや、そこがこの艦娘の優れている点の一つでな。なんと風呂に入れば治るらしい」

 

大佐・准将「は?」




昔の話と言うよりこの作品での艦娘の仕組みの説明ですね。
楽しいから続けますよ!


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第19話 「始まり」(後編)

まだまだ続く昔の話。
今度は若かりし頃の中将が本格的に暴走(?)します。


大佐「風呂に入ると整備、いや破損か? それが直るっていうのか?」

 

少将「そうだ。正確には艦娘専用の溶液を沸かした湯だな」

 

大佐「油や弾薬はいいとして、鉄やボーキの補給は?」

 

少将「それは原形の状態で艦の中に置いてくれれば、人型に戻った時に吸収するみたいだ」

 

准将「人間の状態だと傷のように見えるんだな」

 

少将「その通りだ。人間と同じように自然治癒もするが、それでは時間が掛かるので入浴という名の入渠をしてもらう形だ」

 

大佐「准将、順応が早いな」

 

准将「いや、なんかいろいろとな......」

 

少将「まあ、そこはある程度フっ切れてもらった方が楽だろう」

 

大佐「普通に風呂とか入れるんだな?」

 

准将「大佐......お前何を考えている? 飢えているのか?」

 

大佐「ああ? ははははっ、ちげーよ! ほら、その溶液とやらがどんなのかは分からねーけど、やっぱ本場の風呂は気持ちいだろ? 心の癒しってのも必要だと思うぜ」

 

少将「まぁ、可能だが。何ぶん彼女たちには今現在意思がないからな。気持ちよく感じるかどうかは......」

 

大佐「だからそこは心の問題だってーの! あ、それと飯だ飯は食えるのか?」

 

少将「ああ、その事なんだが。基本兵器として運用しなければ、体調管理の維持は人間と同じものが必要だ」

 

大佐「つまり飯と寝る事だな」

 

少将「そういう事だ。見た目だけが人間と言うわけではないという事を忘れないで欲しい。これは結構重要だ」

 

准将「単純に兵器としては扱えないということだな」

 

少将「その通り」

 

大佐「いいよ! それなら訓練しようぜ訓練! 軍人としての心構えも叩き込んでやる。心ができるようにな!」

 

准将(早速目的がズレ始めてるな......)

 

少将「ははは、君は本当に相変わらずだな。だが、君ならそれもできそうな気がする」

 

准将「おい物騒な事......分かった。分かったからそう睨むな」

 

大佐「おうっ! やっぱり一緒に仕事するなら楽しくなくちゃな!」

 

准将「......やれやれ」

 

少将「さて、私からの説明は以上だが君らから他に何か質問はるか?」

 

大佐「あるぞ!」

 

准将「またお前か。まあいいが......俺は思いつかない」

 

大佐「こいつ、扶桑とか言ったな。扶桑と言ったら“あの”扶桑か?」

 

少将「航空戦艦にする予定だった方のか? だったら違う。この子は我が国最初の甲鉄艦の方の扶桑だ」

 

大佐「初代か! 渋いなぁ!」

 

准将「また趣味な......」

 

少将「国産ではないとは言え最初の本格的な戦艦だからな。げんを担いだんだろう」

 

大佐「東艦じゃないのか?」

 

少将「創造しようにも流石に古くてな......現在、関連品を捜索中らしい。つまりその内できる。そうなれば、立場上は東が彼女の先輩になるな」

 

准将「戦争でゴタゴタしてたからな。無理もないか」

 

大佐「なるほどな。ま、取り敢えずはこいつが艦娘としては1号になるわけだな」

 

少将「そうだな。ん? おい大佐?」

 

大佐「おう、クソガキ」

 

少将「な......」

 

准将「......っくく」

 

扶桑「......」

 

大佐「おう、ダンマリか。お前だ扶桑」

 

扶桑「はい、なんでしょう大佐」

 

大佐「ふーん、自分の名前以外には反応しないのか」

 

少将「あ、あまり変な事は覚えさせるなよ」

 

大佐「分かってるって。おい、ガキ」

 

少将「 」

 

准将「はぁーはっはっは」

 

大佐「ガキ、お前だ。扶桑、お前の事だ」

 

扶桑「大佐、扶桑はガキではありません。扶桑は扶桑です」

 

大佐「ああ? そんなつまらない返ししかできないのは全部ガキだぞ?」

 

少将「胃が......」

 

准将「まぁ、見ててやれ。ふっ......」

 

扶桑「大佐、扶桑はガキなのですか?」

 

大佐「嫌か?」

 

扶桑「分かりません。選択肢に選ぶことができる回答がありません」

 

大佐「そうか......少将」

 

少将「ん、ん?」

 

大佐「こいつちょっと外に連れて行っていいか?」

 

少将「だ、ダメに決まってるだろう! 一応まだ重要軍事機密扱いだぞ!」

 

大佐「大展望広場ならいいだろ? 基地の一部だし、前は海なんだからさ」

 

准将「誰かに見られたらどうする?」

 

大佐「見た目はこんなんだからな。俺の娘って事にしとく」

 

少将「君は結婚してないだろう......」

 

大佐「じゃ、隠し子だ」

 

准将「相変わらず周りの目を気にしない奴だ」

 

大佐「な、いいだろう?」

 

少将「......私も一緒に行くからな」

 

大佐「おう! ありがとな! 准将はどうする?」

 

准将「馬鹿がこれ以上馬鹿やらかさない様に見張らないとな」

 

大佐「よっしゃ! それじゃ扶桑、行くか!」

 

扶桑「何処へですか?」

 

大佐「外だ外! 肩車してやる。よっと!」

 

スクッ

 

扶桑「......っ?」

 

大佐「お? 今驚いた顔したか?」

 

扶桑「そうですか? すいませんわかり――」

 

大佐「まぁいいや。行くぞー!」

 

ゴンっ

 

少将「た、大佐! ドアを抜ける時くらい降ろせ! ふ、扶桑大丈夫か!? どこか壊れてないか!?」

 

准将「くくく......ははははは! 扶桑の奴の顔を見ろ。自分に何が起こったのか理解できていないぞ」

 

大佐「うわっ、扶桑悪かった。大丈夫か?」

 

扶桑「......え?」ピヨピヨ

 

大佐「よし、大丈夫だな。行くぞ!」

 

少将「何故!? 今のどこが大丈夫だったんだ!?」

 

大佐「俺の勘だ。というか今のでさっきより随分良くなった気がする」

 

准将「気のせい......とは言い切れんのがなんとも」

 

少将「うぐっ......い、胃が......」

 

大佐「ほら扶桑、また肩車だ! 今度は気を付けるからな!」

 

扶桑「あ......や......」

 

大佐「お?」

 

准将「む?」

 

少将「え?」

 

3軍人「......」ジッ

 

扶桑「......っ?」ビクッ

 

大佐「ふっ、行くぞー!」

 

少将「程ほどにな。程ほどだぞ!」

 

准将「今日は面白い一日になりそうだ」




フォルム的には東艦大好きなんですよね。
初めて見たのはる○剣でしたか。
あの、一見マストとかなかったら潜水艦にも見えそうな船とは思えぬ外見、とてもそそられます。


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第20話 「終わり」(前編)

艦娘の本格的な研究と開発が始まって、前の話から5年後くらいの話です。

暗い話です。


艦娘の研究が本格的に開始されてからいくつか新たな事実が判明していった。

 

一つ、純国産でない軍艦を艦娘化した場合、極めて自我に乏しい艦娘が生まれるという事。これは兵器としては理想的であった。

*後にこの定説はある艦娘の存在によって覆る事になる。

詳しい原因は不明だが、ある程度長く運用された軍艦ならこのケースに当てはまらず、次の様な艦娘になり得た。

 

二つ、純国産の軍艦を艦娘化した場合は逆に明らかに性格と呼べる極めて強い自我をもった艦娘が生まれるという事。

これは兵器としては由々しき問題であったが、その代わりにその艦隊娘の戦闘力は、明らかに先に創造された国産ではない艦娘を上回っていた。

 

三つ、例え海外の軍艦でもそれが確実に生産された国で国産として運用されたものならば、二つ目の条件にあてはまる自我の強い強力な艦娘を造る事ができた。

 

四つ、艦娘は誰でも使いこなせるというわけではなく、ある程度適正のあるものが指揮することによって初めてその能力を最大まで引き出す事ができた。

これによって適正があるものを階級に関係なく“提督”という役職を与え、指揮させる為の特別な軍制度ができた。

制度ができると同時に総帥腑から特別勅令徴兵令が発せられることとなり、あらゆる分野から一般人と公人関係なく適性のある人材が集められた。

 

*先に登場していた少将達は元々適正があったらしく、軍人で、しかも高い階級を持ち、艦娘の指揮ができる本物の提督としてエリート的存在であった。

 

五つ、適性のある者は艦娘と提督との間に“絆”を育むことができ、それが強い艦娘ほど戦闘力の工場が通常の艦娘と比べて著しかった。

 

六つ、研究が進むにつれて妖精と言う艦娘に極めて関連性の強い存在が発見された。

これらの更なる研究から妖精自体の複製と艦娘の兵器への転用と強化が可能となり、そこから空母のような特殊な装備を武器として扱える艦娘の本格的な運用できる様になった。

 

七つ、何故かいくら創造しても生まれる艦娘の性別は全て女性であった。

 

八つ、近代化改装によって“使用された方”の艦娘は強化される艦娘と融合する形となり、戦闘力の強化と共にその記憶も受け継いだ。

しかしこれは、非人道的な面が目立つとの意見が軍内部だけでなくさる筋からももたらされ、完全に人間として存在させる技術の確立を目指すきっかけとなった。

解体処分にも同様の技術が導入される事が決定した。

 

そして九つ目、艦娘を兵器としてようやくまともに運用するようになってから暫くして、後に深海棲艦呼ばれる謎の敵対勢力が発生し、世界中の海の安全を脅かすようになった。

 

これらの事実がある程度軍内部での常識として認知されるようになった頃。

 

 

准将(後の親父)「なんだと!」

 

ドンッ

 

元帥「先ほど通告した通りだ。古い艦娘は全て不用品として廃棄処分する」

 

准将「本気で言ってるのか!? アイツらだって生きてるんだぞ!?」

 

元帥「あんな自己主張もできないモノに気を遣う必要はないぞ?」

 

准将「そういう問題ではないだろう! 今まで散々俺たちの為に働いてくれたというのにそれを魚の餌にしろっていうのか!?」

 

元帥「それは安心しろ。我々もそこまで冷酷なつもりはない。処分する艦娘は全て機能停止状態にして投棄用の収納ケースに入れて処分する。なに、大丈夫だ。あいつらは機能停止状態でも死んでるわけじゃないから醜く腐ることもない」

 

准将「くっ......棺桶かよ!!」

 

元帥「いい加減にしろ。これは既に決定した事項だ。何しろこれでもう5度目なんだからな」

 

准将「......なに?」

 

元帥「やはり知らなかったか。無理もないな。お前が一番うるさそうだからな」

 

准将「最近新しい艦娘が目立つと思っていたらそういう事か......!」

 

元帥「因みにこの5度目は准将、お前のための5度目だ。最後に残っている旧式はもうお前のところだけなんだよ」

 

准将「なんだと!」

 

元帥「これは艦娘の育成に絶大な功があるお前への我々からの情けだと思え。急げよ? 明日中には処分しておけ。以上だ」

 

 

バン!

 

准将「......」

 

中将(後の元帥)「准将......」

 

准将「......知ってたのか?」

 

中将「ああ」

 

准将「お前の艦娘達はどうした?」

 

中将「全て抹消した。皆何も言わず霧のように消えたよ......」

 

准将「っ......」

 

中将「最後に残った子が一人だけ私の手を自分から握ってくれた。お礼のつもりだったんだろうな」

 

准将「馬鹿野郎......!」

 

少将(後の大将)「......」

 

准将「少将、お前......は」

 

少将「知ってるだろう? 俺のは全て巡回中に遭遇した深海棲艦に沈められた。全く歯が立たなかった。新型の艦娘を引き連れた援軍が来なかったら俺も危なかったな」

 

准将「そうか、すまない」

 

少将「気にするな」

 

中将「准将、君はどうする?」

 

准将「俺も......征く」

 

中将「......何処へだ?」

 

准将「奴らの巣窟、深海棲艦の存在が最も確認されている魔の海域だ。俺は決めたぞ。俺は自分と自分の娘達の墓をあそこにする」




本格的な暗い話はそういえば初めてですね。
でも、何故か気分はそう落ち込みません。
准将がカッコイイからでしょうか。


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第21話 「終わり」(中編)

過去のお話もいよいよラスト2

ここ一番の准将の見せ場です。
頑張れ!


ガチャ

 

扶桑「准将」

 

東「准将」

 

八島「司令官」

 

敷島「提督」

 

 

トコトコ

 

准将「......」

 

准将(こいつらは見た目こそ最初の頃と変わらないが、それでも内面は確実に成長している。自分から俺に話しかけてくるし近寄って来る。褒めてやれば僅かだが喜ぶような素振りすら見せるようになった。最初から意思がないわけじゃない。心が未発達なだけなんだ! だと言うのに上の連中は......)

 

扶桑「准将?」

 

准将「ん......いや、ちょっとな......」

 

ポン、クシャクシャ

 

扶桑「......ん」

 

東・八島・敷島「......」ジー

 

准将「ん? なんだお前たちも撫でて欲しいのか?」

 

東「......?」キョトン

 

八島「......分りません」ムスッ

 

敷島「分りません?」ジッ

 

准将「ははははは。そうか、じゃあ俺からやってやろう。ほら」

 

グワシグワシ

 

東「......」ボー

 

八島「ん......♪」

 

敷島「っ......?」ビクッ

 

准将(四者四様の反応だが、不快ではなさそうだ。寧ろ八島に至っては明らかに嬉しそうな顔をするようになったな。そんなこいつらを俺は......」

 

准将「......ふぅ」

 

ギュッ

 

准将「ん?」

 

扶桑「......准将?」

 

准将「......ふっ、整列!」

 

扶桑・東・八島・敷島「!」バッ

 

准将「お前たちに訊く、俺と死ぬ覚悟はあるか?」

 

4人「あります」

 

准将「......怖くはないか? 俺の指示に不満はないか?」

 

4人「何もありません」

 

准将「......本当か? 敷島、お前は?」

 

敷島「ないです」

 

准将「怖くないのか?」

 

敷島「ないです。提督と一緒なら何も問題ありません」

 

准将「......そうか。八島は?」

 

八島「不満も恐怖もありません」

 

准将「無理してないか?」

 

八島「してません。......心配、して頂けなくても大丈夫、です」

 

准将「そうか。......東、お前は?」

 

東「分りません」

 

准将「ほう、何がだ?」

 

東「准将が何が不安なのか」

 

准将「......ほう」

 

東「准将、東は大丈夫です」

 

准将「分った。扶桑、お前は?」

 

扶桑「私はずっと准将の役に立つと......」

 

准将「?」

 

扶桑「自分で決めたました。だから答えは東達と一緒です」

 

准将「......そうか自分で、決めたか。分かった」

 

扶桑「作戦ですか?」

 

准将「ああ、上の決定でお前たち旧式の艦娘は処分になるらしい。というか、もういつのまにか残ってるのはお前たちだけらしい」

 

敷島「それでは私達も?」

 

准将「いや、それは俺が絶対嫌だ」

 

八島「ではどうするのですか?」

 

准将「敵の本拠地に特攻する」

 

東「准将も死にますよ?」

 

准将「ああ」

 

扶桑「私達と一緒に死ぬつもりですか」

 

准将「そうだ。だが、自殺じゃないぞ? 俺達は軍人だからな、戦死だ、殉職だ、名誉だ」

 

扶桑「......准将、私勝ってみせます。そして准将を守ってみせます」

 

准将「ふっ、そうか」

 

敷島「......私も、必ず果たします」

 

准将「ん......」

 

東「......全身全霊でいきます」

 

准将「ああ......」

 

八島「司令官は心配されなくて大丈夫です」

 

准将「八島、お前ら......分った。もう何も言わん。征くぞ!」

 

扶桑・東・敷島・八島「了解しました」

 

 

少将「止めないんだな」

 

中将「止められるものか。気持ちは痛いほど解る」

 

少将「......そうだな」

 

中将「それに、准将らしいしな。あの方がいいだろう」

 

少将「やれやれ、海軍はとんでもない損失を出すことになるな」

 

中将「......少将、私は元帥を目指す」

 

少将「うん?」

 

中将「元帥になって総帥に異見できる今よりもっと強い力を持つ提督に絶対になる」

 

少将「......そうか」

 

中将「その時は少将、お前も私の傍で力を貸してくれないか?」

 

少将「最初から人を頼るのもどうかと思うが、まぁ目指す目的を考えれば至極真っ当な結論だ。下手に自尊心を優先して強がるよりよっぽどいい」

 

中将「では?」

 

少将「ああ、その船乗ったぞ」

 

中将「ありがとう」

 

少将「気にするな。このツケ、上の奴等に絶対に払わせてやる」

 

 

――深海棲艦生息濃度最大、特危険海域最深部

 

准将「ゼェ......ぜぇ......はぁ......」

 

パチパチ......ゴォォォ

 

扶桑・東・敷島・八島「......」

 

准将「くっ、足が......代りは......っ!」

 

カロン

 

准将「敷島......お前の砲借りるぞ。......ふんっ!」

 

ズブッ......ビチャビチャッ! ......ジュゥゥゥゥゥ!!

 

准将「ふぬっ......! くぅ......ふっふ......くく......ああっ!!」

 

ギュウッ!

 

准将「......よしっ」

 

カンッ、コツ、カンッ、コツ......。

 

 

棲艦鬼姫(以降、鬼姫)「オオオオオオオオオ」

 

准将「......っふ、精々派手に頼むぞ」

 

ズッ......ドォォォォン!!

 

鬼姫「!!」

 

 

准将「......おい、扶桑」

 

扶桑「......まだです」

 

ドドドドドド!

 

鬼姫「っ!」

 

准将「......お前もか東」

 

東「甘い......まだ戦闘不能、じゃない」

 

ドーン!!

 

鬼姫「オオオオ!」

 

准将「おいおい......」

 

敷島「まだまだです......やれます」

 

ズガガガガ!

 

鬼姫「オオオ......っ!?」

 

准将「っふ、本当にお前らは......!」

 

八島「降参は、しないです。勝ちます」

 

ポォォォォ......。

 

准将(ん? こいつらから光が......)

 

扶桑・東・敷島・八島「......」

 

准将(なんだか知らんが、戦れる。勝てる気がする! いや、勝つ!!)

 

准将「よし、お前たち!! しまって征け!! 最後にたっぷりぶちまけろ!! 勝って生き残って凱旋だぁぁぁ!!」

 

扶桑・東・敷島・八島「了解」

 

准将「攻撃、開始!!!!!」

 

鬼姫「オオオオオオオオオオオオ!!!!」




はい、結構ズタボロにやられてます。
で、結果は......?


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第22話 「終わり」(後編)

殆ど男だけ!
男祭りですよー!

嘘です。それだと耐えられないので女の子(?)も出ます。


元帥「艦隊が帰って来る? 准将の艦隊が? あの危険海域に向かった艦隊がか?」

 

中将「はい。間もなく港に着く頃かと」

 

元帥「......大将」

 

大将「はっ」

 

元帥「悪いが、総帥に報告しておいてくれ、私は准将を迎えに行ってくる」

 

大将「はっ、かしこまりました」

 

中将「......」

 

元帥「意外そうな顔だな」

 

中将「いえ......」

 

元帥「艦娘の扱いは非道で通ってるかもしれないが、これでも一応軍人なのでな。戦果をあげて帰還する部下に敬意を表することくらいはできる」

 

中将「......恐縮です」

 

元帥「ふん、行くぞ」

 

 

少将「おお、中将来た......元帥殿」

 

元帥「別に機嫌取りで来たわけじゃない。義務を果たしに来ただけだ」

 

少将「左様ですか」

 

元帥「......」

 

少将「......」

 

中将「あっ、見えた。見えました!」

 

少将「なに、ほんと......か......これは......」

 

元帥「......!」(全艦帰投、だと?」

 

3人の前に現れたのは4隻の戦艦だった。

素人目でも判るほど激しく損傷したその戦艦らは、行動不能に陥って曳航される艦の如くゆっくりと港に近付いて来た。

何れも准将が基地を出た時の編成のままで、欠落した艦はいないようだった。

 

やがて准将が乗っていると思われる艦が1隻だけ港に着船し、船内から人影が現れた。

 

カンッ、コツ......カンッコツ......。

 

元帥「......」

 

中将「......っ!」

 

少将「あいつ足が......」

 

准将「......只今、帰投した」

 

元帥「......ご苦労。戦果は?」

 

准将「これを」

 

少将「......首か」

 

中将「こ......これは?」

 

准将「ここら一帯の深海棲艦をまとめていた首領だ。これで暫くは海が静かになるぞ」

 

元帥「それは本当か? あの艦隊で討伐したというのか?」

 

准将「......確かに。だが俺はあの戦いで艦娘の起こした更なる可能性、奇跡を目にした。己の命を糧に、最後の攻撃に全てを懸けた渾身の一撃を」

 

元帥「だが......」

 

准将「......証拠はある。あいつらの最期を看取ってやってくれ。生命力の全てを使い果たしたあいつらは、もう人間の姿になる事もできない」

 

少将「なに」

 

准将「もうあいつらには何も残っていない。俺を此処まで運んで来た時点で既に限界を超えていたんだ。後は沈むだけだ」

 

ズズ......。

 

准将を降ろしてから間もなくして帰港していた4隻の艦に異変が起きた。

全ての艦が徐々に船体を傾かせて海に沈み始めたのだ。

 

中将「ああ......」

 

元帥「......」

 

少将「......」カッ

 

准将「お前たち、よく頑張ったな。ありがとう。ゆっくりやす......いや、また会おう」

 

元帥「......なに?」

 

准将「元帥、俺はあの海域である真実を見た」

 

元帥「......何を見た?」

 

准将「敵の本拠地で廃棄されたはずの艦娘が収められた大量の収納ケースだ」

 

元帥「......!」

 

中将「なんだって!?」

 

少将「......」

 

准将「深海棲艦はな、艦娘だったんだよ。轟沈したり廃棄された艦娘が無念に駆られた結果、深海棲艦になっていたんだ」

 

元帥「なんだと......」

 

准将「あんたらは旧型には意思がないとか言っていたが、もしそうならこうやって無念の所為で深海棲艦になったりはしないよな? だが、事実は違った」

 

元帥「......」

 

准将「なぁ、俺達は新型の艦娘が造れるようになってから一体どれだけの旧型を廃棄したんだ? どれだけの数を世界に広めてしまったんだ......?」

 

元帥「少なくとも......本国だけで5000体以上だ」

 

中将「そんなに......!?」

 

元帥「新しい安全保障を条件に米国を筆頭に各国から艦娘の受注を受けていたからな......。最終的な総数は見当もつかん......」

 

少将「......」

 

准将「俺達は艦娘という存在をあまりにも甘く見ていた。使い勝手がいいという事だけに注目し、その癖その管理はあまりにも杜撰だった。その結果がこのザマだ」

 

准将「恐らく、これは俺の予測だが、艦娘創造のきっかけを作った八咫烏からはその運用についていろいろ注意されてたんじゃないか?」

 

准将「それなのに早期の配備にばかり気を取られて、話半分で殆ど聞き流していいたんじゃないか?」

 

元帥「......情報部に関連資料の精査を早急に指示する」

 

准将「......」

 

元帥「......責任は全て私と総帥が取る」

 

中将「げ、元帥殿。おいそれとそのような事は......」

 

元帥「いや、必要だ。この過ち、私達の首だけでは足りないくらいだ。最終的には、悪いが......大将にも付き合って貰う事になるだろう」

 

准将「俺も辞めるぞ」

 

少将「俺も辞めますよ」

 

中将「私もです!」

 

元帥「いや、駄目だ。君らは正しかった。そして君たち程、本部の幹部として、指導者として、提督として、艦娘を良く運用していた者はいない。君たちは今後の海軍に絶対に必要な存在だ」

 

中将「元帥......!」

 

少将・准将「......」

 

元帥「さらばだ諸君。できれば軍法会議で死刑が望ましいが、そこまでの処分をすると逆に外に勘ぐられて事の真相がバレかねないからな。残念だが懲戒処分の上で一生国の監視下に置かれる程度で済んでしまうだろう」

 

元帥「結果的には隠蔽になるが、現状深海棲艦に対抗できる勢力が我々海軍だけなのも事実だ。その均衡が崩れることによって無用な混乱を招くわけにもいかん。気分は良くないだろうが、時期が来るまではこの事は最高機密扱いで頼む」

 

中将「......了解しました」

 

少将「了解。お任せください」

 

准将「......」

 

元帥「准将、すまなかったな。今更こんな事を言っても言い訳でしかないが、お前には悪い事をしたと思っている」

 

准将「いえ、その言葉を頂けただでも、あいつらの名誉は守られました。俺の方こそ貴方には随分失礼な態度を取ってきた......どうか御達者で」カッ

 

元帥「......海軍を頼んだぞ」

 

 

 

~とある海域

 

ちゃぷんっ

 

レ級「僕は......」

 

タ級「どうしたの?」

 

レ級「え?」

 

タ級「何か悩み事?」

 

レ級「うーん......」

 

タ級「?」

 

レ級「分かんない!」

 

タ級「え?」

 

レ級「だって目が覚めたらいつの間にかこんな姿だったんだもん」

 

タ級「......あなたもしかして艦娘だった?」

 

レ級「うん! どんな姿だったかとか艦娘だった頃の事は全く思い出せないけど、艦娘だった事は何故か凄く自信あるんだ!」

 

タ級「そう......私と同じね」

 

レ級「え? 君も?」

 

タ級「そう。あそこにいる二人もよ」

 

レ級「へ?」

 

 

ヲ級「もうっ! いきなり水を掛けるのやめてよ! ビックリしたじゃん!」

 

ル級「ご、ごめんなさい。隣にいるのに気付かなくてビックリしちゃって......」

 

ヲ級「え? 君私の隣にいたの?」

 

ル級「目が覚めたらいたよ?」

 

ヲ級「......なんで?」

 

ル級「さぁ?」

 

 

レ級「......ふふ」

 

タ級「どうしたの? 急に笑って」

 

レ級「分かんない。でも、あの二人なんか気が合いそうな気がするんだよね」

 

タ級「そうなの?」

 

レ級「うん! あ、君もね!」

 

タ級「私も?」

 

レ級「うん! 友達になってよ!」

 

タ級「......いいけど」

 

レ級「やった! よろしくね!」

 

タ級「え、ええ......」

 

レ級「それじゃ、あっちにいる二人にも声掛けに行こうか!」

 

タ級「慌ただしい子ね。ま、賑やかなのは嫌いじゃないけど」

 

レ級「ホント!? やっぱり僕たち気が合うね! それじゃ行こうか!」

 

タ級「はいはい」

 

レ級「おーい! 君たちー!!」

 

ヲ級・ル級「え?」

 

 

 

 

 

その後、事態を知る事になった総帥は元帥の言った通り自らの辞職を以て全ての責任を取る事を即決した。

元帥の部下だった大将も巻き込まれた形にはなったもの、一切の不平不満を漏らさず将官としての務めを全うする為、彼らに従う形で一緒に辞職をした。

軍法会議の結果も真相が真相だけに、責任の所在の追及に窮した軍統制監査部は、これも元帥の言っていた通りに一応は彼らを一生保護監視下に置く決定をする事で半ば無理やりに決着させた。

 

それから暫して、国は中将を緊急措置で元帥海軍大将に昇進させすることによって海軍総帥代行に抜擢し、准将と少将も同じ措置で2階級特進させて彼を支える体制を作った。

 

それから更に数年後、若い時分から経験を積ませる事によって有能な総帥を育てる事を目的とした元帥は、国に要望して前例のない若さの総帥候補を用意させた。

彼はとても優秀で、僅か三年足らずで元帥たちに教えられた全ての知識を吸収し、海軍の総帥として恥ずかしくない誇れる存在となった。

 

更にそれから十数年後、完全に軍の統帥権を総帥に委ねた元帥たちは新たな幹部候補として若い人材を探していた。

 

 

大将「おい、士官学校の校長をやるって本当か?」

 

中将「ああ、面白い奴らがいたら鍛えてみたくてな」

 

大将「......相手はあくまで人間だからな? あまりやりすぎるなよ?」

 

中将「分かってるわい」

 

大和「......心配です」

 

大将「......夫の浮気を心配する妻みたいな顔だなでなければ、さまになったセリフだったんだがな」

 

大和「ちょ、た、大将殿!」カァァ

 

中将「はははは! そうか、それじゃ若い娘にもちょっかいだせんな」

 

大和「中将!?」

 

中将「おお怖っ! じゃ、ちょっと行ってくる!」

 

 

 

女「ねぇ、今度デートしない? 奢るわよ」

 

男1「なんでいきなり声を掛けられた見ず知らずの女性にデートで奢られなければいけないんだ......」

 

男2「え? お前達付き合ってんじゃねーの?」

 

男1「いや、別n――」

 

女「そうよ。たった今からよ」

 

男1「 」

 

 

中将「......なんか面白そうなガキだもだな。よしっ。おーい!!」

 




長い、というより分かり難い?

ま、過去編やっと終わったんで次からはまたゆるりと短編書きます。
というか、やっといろいろ終わった気がする。

仕事ももいろいろ終わってくれたら楽なのになぁ。


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第23話 「機微」

その日は秋雲が秘書艦だったのですが、何故か榛名が朝一番で執務室に来て落ち込んでいました。
提督はその姿を見て戸惑うのですが......。


榛名「......」ズーン

 

提督「......榛名の奴はどうしたんだ?」

 

秋雲「なんでも改二の改造を受けれるレベルが金剛ネーサン達と違って高かったみたいなの。それで......」

 

提督「受けられなかったのか」

 

秋雲「そうみたいね」

 

 

榛名「なんで......どうして......やっと改造の機会が来たと思ったのに......」ズーン

 

提督「......蒼龍とは逆のパターンか」

 

秋雲「え?」

 

提督「いや、なんでもない。ふむ、俺がもっと鍛えてやってたらな」

 

秋雲「ま、そこは最近はケッコン間近組から大佐ずっと出撃や演習を迫られてたからね。無理はないと思うけど」

 

提督「押し切られた俺の弱さにも問題があるだろう」

 

秋雲「わたしの押しにはなかなか屈せずにエッチしてくれないのに?」

 

提督「......」

 

秋雲「冗談だって! やだなぁもう! そんな顔しないでよ!」

 

提督「ああ、いや......」

 

秋雲「だから冗談だって、半分だけど」

 

提督「半分か」

 

秋雲「そうは――」

 

榛名「......」ゴゴゴゴゴゴ......

 

秋雲「!!!?」

 

提督「? 秋雲?」

 

秋雲「あ、じゃ、じゃぁ大佐、わたしちょっとお茶の用意して来るね!」

 

提督「なに? お茶ならここでも用意できるだろ?」

 

秋雲「いやいや、わたしの部屋にめっちゃ美味しそうな色材があるんだって!」

 

提督「俺に何を飲ませる気だ?」

 

秋雲「ま、まぁそういう事だから。ちょーっと待っててね。少ししたら戻ってくるから! あと、ご武運を」

 

提督「武運? 何故?」

 

秋雲「......」クイクイ

 

提督「......っ」

 

秋雲「じゃね!」

 

バタン

 

 

榛名「......大佐?」

 

提督「なんだ? 後ろにいるならいるで教えてくれると嬉しかったんだが」

 

榛名「あら、お気づきになってなかったんですか? 通りで榛名の目の前で秋雲ちゃんとエッチなお話を......」

 

提督「いや、してないし、実際にまだ行為にも及んだ事はない」

 

榛名「まだ?」

 

提督「......いや」(この榛名は無敵か? 隙がない)

 

榛名「大佐? 別に榛名はいいんですよ? 大佐が誰とエッチな事しても。榛名も好きでいて下さるのなら」

 

提督「いや。それは流石に倫理的に節操がないというか......」

 

榛名「で・も!」ズイ

 

提督「......なんだ?」

 

榛名「榛名が落ち込んでる時くらい慰めて欲しいです......」ダキッ

 

提督「ああ......」

 

榛名「大佐、お膝に座っていいですか?」

 

提督「ああ」(今は絶対に断れない)

 

榛名「ありがとうございます♪ あっ、自分でお願いしておいてなんですけど、重くはありませんか?」

 

提督「いや全然」(実際、金剛の次くらいに榛名は軽いからな)

 

榛名「そうですか♪ それじゃあ失礼しますね」

 

ギシッ

 

榛名「はぁ......大佐の懐はやっぱり落ち着きます♪」スリ

 

提督「......そうか」

 

榛名「んー......♪ あ、大佐......?」

 

提督「......」ナデナデ

 

榛名「~♪」

 

提督「榛名は良い子だな。俺の所為で練度が足りなくて改造を受けられなかったというのにこんなに怒らずにこんなに優しくて......頑張り屋さんだ」

 

榛名「そんなぁ......榛名はこうやって大佐に抱きしめてもらえれば......♪」スリスリ

 

提督「遠慮するな。今は思いっきり甘えろ」

 

榛名「っ、大佐ぁ♪」

 

提督(榛名は下手に気を利かせずに、子供をあやす様に甘やかすのが吉だと最近分かるようになってきたな。逆に比叡は少し放置した方が......)

 

提督「......」ズーン

 

榛名「あ、あの大佐? どうかしました?」

 

提督「いや、自分のスケコマシ振りにちょっと嫌悪感が、な」

 

榛名「そんな! スケコマシだなんて! 大佐は単に純粋なだけです!」

 

提督「......」(何故だろうフォローしてくれている筈なのに逆に男して惨めな気分に......)

 

榛名「大佐、榛名の......お、お尻ちょっと触ってみてください」

 

提督「いや、日中にそんな事をする気は......」

 

榛名「あ、ち、違います! お、女の子って好きな人ならお尻を触われるのって結構気持ち良くて好きなんですよ?」

 

提督「そうなのか? でも、どうしたんだ突然」

 

榛名「大佐がちょっと元気なさそうだったので、榛名で気持ち良くなってもらいたくて......」

 

提督「そんな事で尻まで差し出さなくていいぞ」

 

榛名「あ、ごめんなさい」

 

提督「いや、いい。俺はこうやってお前を撫でているだでも割と心が癒――」

 

榛名「あの、お尻は触って欲しいのですが」キッパリ

 

提督「そこは譲らないのか」

 

榛名「はい」

 

提督「......分かった」(まぁマッサージでも尻は揉むしな。その心持だ)

 

ムニッ

 

榛名「あ......」

 

提督「柔らかいな。特に凝っているところもなさそうだ」

 

榛名「あ、マッサージするおつもりだったんですか?」

 

提督「いや、まあ撫でるならその方がいいかなと思っただけだ」

 

榛名「ふふ、そうなんですか。いいですよ。榛名を好きなだけマッサージして下さい♪」

 

提督「甘えん坊だな」ナデ

 

榛名「んん.......♪ お尻も忘れないで下さいね?」

 

提督「ああ」

 

 

――数十分後

 

秋雲「大佐ぁ、生きてるー?」ソー

 

榛名「すぅ......すー......」

 

提督「......」ゲッソリ

 

秋雲「ありゃ、こりゃ結構お疲れみたいだね」

 

提督「......榛名には言うなよ? 単に自分と戦っていただけだ」

 

秋雲「性欲?」

 

提督「......っ」グサッ

 

秋雲「あ、意外」

 

提督「......俺は駄目な男だ。ちょっと前までは仕事に集中したらそれ以外は頭に入らなかったのに。今となっては......」

 

秋雲「あーいやいや、女の子触って欲情しない男なんてそういないから大丈夫だよ」

 

提督「......普段の俺なら堪えるフォローだが、今はそんなお前の言葉も嬉しく感じる......」

 

秋雲「あははは。まぁまぁ、秋雲もパンツくらいならいつでも見せてあげるから」

 

提督「......立ち直った」

 

秋雲「あ、狙い通り」

 

提督「流石だな」

 

秋雲「そりゃ大佐の事大好きだもん。好きな人の立ち直し方なんて基本よん?」

 

提督「......そのお茶、貰えるか?」

 

秋雲「はい、どーぞ。ついでに秋雲もどーぞ?」

 

提督「榛名をソファーに寝かせたら。膝に乗れ」

 

秋雲「やっりぃ♪」




うーん、それにしても榛名以外は改造レベル皆一緒だったのに彼女だけ違うとは......割とこれは本当に予想外でした。
気付けば、榛名が一番姉妹の中でレベルが下。
これは早急に育てないと後が怖いですねw


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第24話 「マッサージ」R-15

青葉「本部聞こえますか? これよりオペレーションMを実行します!」

比叡「了解! さぁやるわよ!」

金剛「何してるネ。二人とも......」

久しぶりのエロですよー

*明らかな性的描写あり


青葉「青葉が収集したデータによると大佐はお風呂が大好きで、必ず一日の終わりに入浴しています」

 

比叡「入浴直後が一番力が抜けてるって本当?」

 

青葉「ええ、確かです。一番気が抜けてリラックスしてる状態で、前に青葉が頭を撫でて下さい! ってお願いをしたら直ぐに撫でてくれました」

 

比叡「なるほど......攻めるとしたら絶好の機会ってことね」

 

青葉「そうです。それでも頻繁には使えないので、その機を狙うとしたらある程度の間隔は空けてないといけませんが」

 

比叡「最後にその手を使ったのは?」

 

青葉「3週間前ですね」

 

比叡「......イケるかな?」

 

青葉「恐らく」

 

比叡「......よしっ」

 

 

 

大佐「ふぅ......」ホカホカ

 

比叡「あ、大佐」

 

青葉「こんばんわです」

 

提督「比叡、青葉......どうした?」

 

比叡「いえ、ちょっと大佐にお願いがあって......」

 

提督「俺に? なんだ?」

 

青葉「大佐ってちゃんと疲れとかとってます?」

 

提督「疲れ? 肩凝りとかの疲労か? まぁない事はないが、こうやって最後に風呂に入ると多少癒されてる気はするな」

 

比叡「いけません! それだけじゃいけませんよ! そこはちゃんとした手段で癒さないと!」

 

提督「ちゃんとした手段?」

 

青葉「大佐、宜しければ青葉達が大佐をマッサージして差し上げたいのですが」

 

提督「なに? お前たちが? いや、それは流石に悪い」

 

比叡「遠慮しないで下さい大佐! わたしこれでも普段から大佐に感謝してるんです! だから、こういう時くらい恩返しさせて下さい!」

 

提督「いや、何もそこまで過大に感謝しなくても......」

 

青葉「いいえ! 青葉も大佐にいろいろとお礼をしたいと思っていたんです! だから、こんな程度の事で申し訳ないのですが......」

 

提督「こんな程度の事ってマッサージの事か? いや、それでも十分だろ」

 

比叡「本当ですか!? じゃぁ」

 

青葉「青葉達に恩返しさせて下さい!」

 

提督「......分った。頼む」

 

 

 

~提督私室

 

提督「ベッドに寝てればいいか?」

 

青葉「あ、はい。うつ伏せでお願いします。はい、このクッションを胸と顔に」

 

提督「ん」

 

比叡「それじゃ、行きますよ。よっ」

 

グキッ

 

提督「!!」ビクンッ

 

青葉「あ、なかなか良い反応なんじゃないですか? これ。じゃぁ青葉はここを......ほっ」

 

ゴキンッ

 

提督「......っ......は......ぁ......!?」ビクッ

 

チーン......。

 

比叡「......あれ? 大佐?」

 

青葉「急に反応が? おかしいですね......あ」

 

比叡「どうしたの?」

 

青葉「き、気絶してる......」

 

比叡「ええ!?」

 

青葉「ど、どうして......」

 

コンッ

 

比叡「コン?」

 

青葉「え?」

 

比叡「......あ、私達艦装着けたままだ」

 

青葉「青葉達もそうですけど、大佐......その事を指摘するのを忘れるくらい気が抜けてたんだ......」

 

比叡「ど、どうしよう!? 大佐、多分私達の重さが乗った指圧で気絶しちゃったんだよね!?」

 

青葉「お、落ち着いて下さい! 幸いにも息はしています。体もちょっと衝撃が走って一時的に気絶しただけみたいです」

 

比叡「本当!? ヒビとか入ってない?」

 

青葉「多分......触った感じには......」

 

比叡「不安よ! ちょっと調べてみよう!」

 

青葉「そうですね!」

 

比叡「大佐、ちょっと失礼しますね」ヌガシヌガシ

 

青葉「あ、じゃあ青葉は下の方を......」

 

比叡「下?」

 

青葉「あ」

 

比叡・青葉「......」

 

比叡「ど、どうする?」

 

青葉「ど、どうしましょうか?」

 

比叡「大佐......寝て......気絶してるんだよね。起きないかな」

 

青葉「こ、これは介抱です! 何もやましい事なんてありません! 多分......」

 

比叡「うん、そうだよね。じゃ、じゃぁちょっとだけ?」

 

青葉「そ、そうですね。少しくらいならやって......いや、必要ですよね!」

 

 

スル......ぽろん

 

青葉「あ、これが大佐の......」

 

比叡「へぇ......こういう感じなんだ」

 

青葉「あ、青葉も! ん......」

 

比叡「わわ、いきなり大胆......! じゃ、じゃあわたしは......ぺろ」

 

青葉「どうです......?」

 

比叡「特に何も......?」

 

ビクンッ

 

比叡「きゃっ」

 

青葉「わわっ」

 

ググッ......

 

比叡「す、凄い......」

 

青葉「こういう風に大きくなるんですね。はぁ......」

 

比叡「き、気絶していても反応するんだ」

 

青葉「みたいですね。大佐は未だに気を失ってるみたいですし」

 

比叡「......」ギュッ

 

ビクンッ

 

比叡「あっ......ふふ、なんか可愛い♪」

 

青葉「比叡さんズルいです!」

 

比叡「シーっ、静かに。ほら青葉も......」

 

青葉「あ、ありがとうございま......ちゅ」

 

比叡「はぁ......はぁ......あ」

 

ぐにぐに

 

青葉「ちゅ......比叡さん?」

 

比叡「ん......これもなんか気持ち良いかも♪」

 

ぐにぐに

 

青葉「そ、それは......」

 

比叡「わたし姉様に聞いたことがある。この中に子供を作る為の大事なものが蓄えられているんだって」

 

青葉「へぇ......あ、凄く柔らかい。ここは硬くならないんですね」モミッ

 

比叡「......」

 

ムニュ

 

青葉「きゃぁっ!? ひ、比叡さん?」

 

比叡「本当だ。青葉のより柔らかいね」

 

ムニュムニュ

 

青葉「きゃ、あ......んぅ......比叡さぁん......」

 

比叡「わ、わたしちょっと暑くなってきちゃった」ヌギ

 

青葉「あ......比叡さん意外にあるんですね......」

 

比叡「青葉の方が大きいけどね?」

 

モニュ

 

青葉「ああんっ」ピクッ

 

比叡「あ、青葉もう硬く......」クリッ

 

青葉「ああっ、ふ......う......そ、それは比叡さんもじゃないですか......」ペロ

 

比叡「んあっ!? ちょ、いきなり......や......あっ」

 

青葉「ちゅぅ......」

 

比叡「はぁ......はぁ......ね、青葉わたし......」

 

青葉「はい、青葉もうグショグショです......ほら」

 

比叡「凄い......」

 

青葉「比叡さんは......?」

 

比叡「ん......」ピラッ

 

青葉「わわ、と、トイレには行ったんですよね......?」

 

比叡「や、言わないで......」フルフル

 

青葉(可愛い......)

 

提督「ん......う......」

 

比叡・青葉「!」

 

 

提督「......ん」

 

提督「俺は......寝ていたのか......ん」

 

提督(体が少し軽い......?)

 

提督(ああ、そうえいば青葉達にマッサージを......気持ち良くて寝てしまったのか)

 

提督「あいつらには今度お礼を言わないとな」

 

 

 

~廊下

 

比叡「あう......途中で目を覚ましちゃうなんて反則です大佐......」

 

青葉「仕方ないですよ......。まぁ、気付かれなかっただけでも良しとしましょう」

 

比叡「はぁ......下着気持ち悪いなぁ」

 

青葉「逃げなければ良かったでしょうか......」

 

比叡「......ううん、やっぱり寝込みを襲うのは良くないわ! やっぱり大佐の意思で正面から抱かれたいし」

 

青葉「はっきり恥ずかしい事を言いますねぇ......でも青葉もその異見には賛成です」

 

比叡「でしょ?」ニッ

 

青葉「です! あ、取り敢えず下着早く替えましょう。このままじゃ風邪ひいちゃうかもしれません」

 

比叡「そうねっ」




くあぁ、比叡と青葉大好きです!

しかし、その割には比叡のレベルは姉妹の中で3番目。
青葉に至っては未だに40......。

も少し、育成に専念できる環境が欲しいんですが、それだと筆者の場合は仕事を辞める選択肢しか浮かびませんw


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第25話 「訪問」

第二艦隊が遠征から帰投したようです。
成果は十分! ん......? じゅう......ぶん......?


赤城「第二艦隊、遠征から帰投しました」

 

提督「ああ、ご苦労」

 

雷「たっいさーたっだいまー♪」

 

曙「帰ったわ」

 

白雪「戻りましたー」

 

衣笠「お疲れ様ぁ」

 

瑞鳳「疲れたぁ」

 

レ級「本当にねー」

 

ル級「久しぶりだねー」

 

ヲ級「わぁ、執務室ってこうなってるんだー」

 

タ級「......」

 

提督「......」

 

赤城「......!?」ダラダラ

 

雷「え?」

 

曙「なぁ!?」

 

白雪「......はい?」

 

衣笠「......」バタッ

 

瑞鳳「衣笠さん!?」

 

 

――数分後

 

提督「全く、行きなり訪ねて来るとは......」

 

レ級「前に今度は遊びに行くって言ったじゃーん」

 

ル級「言ったっけ?」

 

ヲ級「どうだったかな?」

 

タ級「知らないわよ......大佐、ごめんね? 急に来ちゃって」

 

赤城「そ、そうです! な、なんなんですかあなた達は!? 深海棲艦なんですよ? 私達の敵なんですよ!?」

 

レ級「何でそんなに怒ってるの? 今日は戦いに来たわけじゃないからいいじゃん」

 

赤城「そんな問題ではありません! 会いに来ただけというのなら最低でも武装を解除してください!」

 

レ級「あ、装備? そだね。じゃ外すよ。皆も外してねー、よっ」ポン

 

赤城(尻尾が取れた!?)

 

ヲ級「んしょっと......」

 

赤城(あれって被りも......装備だったの!?)

 

ル級「っしょ......」 タ級「んっ......と」

 

ゴト、ゴト

 

レ級「これでいい?」

 

赤城「え、ええ......」(ちょっと青白いただの女の子になっちゃった......)

 

提督「......それ、全部装備だったのか......」

 

レ級「そうだよ。まぁ機械とはちょっと違うから自律行動もある程度可能だけどね」

 

レ級尻尾「ビチビチッ」 ヲ級帽「パクパク」

 

赤城「ひっ......」

 

ヲ級「ふぅ......久しぶりに装備外したぁ。かるーい♪」

 

ル級「ねー♪」

 

タ級「まぁ偶にはいいか......な」

 

提督「それで、今日は一体何の用だ?」

 

レ級「むっ、それが自分を好いている女の子に対して言う言葉?」

 

赤城「え?」

 

提督「おい」

 

レ級「あ、否定する気? それじゃぁ......」スス

 

赤城「ちょっ」

 

鳳翔「......止まりなさい? 爆散されたいですか?」

 

レ級「おっと」

 

タ級「早い......いつの間に」

 

ル級・ヲ級「ひっ」

 

提督「鳳翔......」

 

鳳翔「大佐、ご無事ですか?」ニコォ

 

提督「......それはこれから俺が無事に済むかどうかだな」

 

レ級「ちょっと、大丈夫だって。何もしないから」

 

鳳翔「......黙りなさい」ジッ

 

赤城(怖い......鳳翔さん怖い......)

 

レ級「やだっ。そんな上から目線は嫌いだもん! べぇー!」

 

鳳翔「っ......。ふぅ、不思議な子ですね」

 

レ級「......」ムスッ

 

鳳翔「ごめんなさいね。もう何もしないわ」

 

ル級「ほ、ほんと?」

 

ヲ級「ぜったい?」

 

タ級「なんであなた達が聞くのよ......」

 

レ級「もう脅さない?」

 

鳳翔「ええ」ニコ

 

レ級「ん......じゃあ許してあげるっ」

 

鳳翔「ふふ、ありがとう。あ、大佐、失礼しました。私はこれで。何かあったら直ぐにお呼び下さいね?」

 

提督「ああ......」

 

レ級「何もしないよ!」プクー

 

鳳翔「ふふ、そうね。それじゃ......」

 

パタン

 

 

赤城「......っはぁ、怖かったぁ」

 

ヲ級「怖い!」

 

ル級「あ、あまり大きな声で言っちゃだめだよっ」

 

レ級「あはははは」

 

提督「それで? 今日はどうしたんだ?」

 

レ級「あ、そうだった。あのね、大佐」

 

提督「ああ」

 

レ級「海軍の本部のね、こーんなに背が高くて、ヒゲもじゃのお爺さん知ってる?」

 

提督「......いや、他に特徴は?」(もしかして親父か?)

 

レ級「えーっとねぇ......あっ、足が片方鉄の棒だった!」

 

提督「......」(親父だ、間違いない)

 

レ級「あ、その顔知ってる顔だね? ねっ、そうでしょ?」

 

提督「だとしても、敵であるお前達においそれと情報を渡すわけにもいかん」

 

レ級「えー......まぁそれはその通りなんだけどさぁ。あ、じゃぁこれだけ教えて?」

 

提督「なんだ?」

 

レ級「その人昔、今とは別の艦隊持ってた?」

 

提督「......まあ外見がある程度の年齢の人間なら過去に何回か艦隊が変わってる可能性はあるかもな」

 

レ級「あ、やっぱりそうなんだ。ふーん」

 

提督「一体それがどうしたと言うんだ?」

 

レ級「えへへ、実はねー」

 

タ級「その人、もしかしたらこの子の元提督だったかもしれないのよ」

 

提督「なに、そうなのか?」

 

レ級「もしかしたらねっ」

 

提督「何か根拠でもあるのか?」

 

レ級「特にこれと言ってないんだけどー、でもなんかあの人見た時不思議な感じがしたんだよねー」

 

提督「不思議な?」

 

レ級「うん、なんか見てて懐かしい気持ちになったっていうか」

 

提督「......そうか」

 

レ級「ね、大佐」

 

提督「ん」

 

レ級「僕、その人に会ってみたいな?」

 

提督「......今度会う機会があったらそれとなく聞いてやる」

 

レ級「ほんと!?」

 

提督「聞くだけだ。本人が会ってくれるとは限らないぞ?」

 

レ級「ううん、それでもいいよ! ありがとう大佐っ、大好き!」

 

チュ

 

赤城「はぁぁぁぁぁ!?」

 

ル級・ヲ級「きゃっ」

 

タ級「やるわねぇ......」

 

提督「お前、そういうのは......」

 

レ級「いいじゃん。お礼なんだから。あ、もしかしてもっと別のを期待してた......?」チラッ

 

赤城「 」ピシッ

 

ル級・ヲ級「きゃぁぁぁ♪」

 

タ級「ちょっと......」

 

提督「おい、やめ――」

 

シュッ......

 

レ級「よっと」パシッ

 

赤城「......」ゴゴゴゴゴ

 

レ級「危ないなぁ」ニマニマ

 

赤城「ふふふふふ、ごめんなさい。つい手が、ね?」

 

レ級「あ、そうなんだ。じゃ、仕方ないねー」ニヤ

 

赤城「っ......」カチン

 

ル級「......あっちで遊んでよっか」

 

ヲ級「そだね」

 

タ級「止めなさいよ」

 

提督「赤城やめ――」

 

赤城「レ級さんちょーっとそこでお話しましょうか?」

 

レ級「物理的なお話? ならお断りだよ?」

 

赤城「いえいえ、この鎮守府でのマナーを少し、ね?」

 

レ級「あー、そういう事? いいよ?」ニヤ

 

赤城「......良い度胸です」

 

レ級「じゃ、行こっか」

 

提督「......」

 

タ級「大佐、ほんっとにゴメン!」

 

提督「......昼までには帰れよ」トンッ

 

タ級「......これは?」

 

提督「食堂の食券だ。少なくともその姿なら一方的にバレる事はないだろう。これで何か食べて行け」

 

タ級「い――」

 

ル級「いいの!?」キラキラ

 

ヲ級「ホント!?」キラキラ

 

タ級「本当にもうあなた達は......」




その後、食堂では二人の女の子の嬉しそうにご飯を食べる姿と、それ見守りつつ時折注意を放つお姉さんらしき女性の姿が。

そしてもう一方では何処からか、ヒステリックに叫ぶ赤城の声とそれを面白そうにからかう女の子の声が聞こえたそうです。


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第26話 「ゲーム3」

高雄と愛宕が格闘ゲームをしています。
木曽は面白そうに観戦。
提督はお茶を飲みながら磯波と深雪と一緒にネットサーフィン。

皆、思い思いに寛いでいたある非番の日。


高雄「真空、もらったわ!」

 

愛宕「甘いわ! 言葉そこよ!」

 

高雄「くっ、抜けられた!」

 

愛宕「まだまだよ姉さん♪」

 

ワーワー

 

 

提督「......」

 

木曽「へぇ、やるもんだなぁ」

 

提督「解るのか?」

 

木曽「俺、格ゲーだけは結構好きでよくやるんだ」

 

提督「......天龍とか?」

 

木曽「よく分ったな」

 

提督「いや、何となくな」(ベタだな......)

 

 

高雄「ああ、負けちゃった」

 

愛宕「なかなかいい線だったわよ、姉さん」

 

高雄「愛宕、あなたパソコンのゲームだけやってたんじゃなかったのね」

 

愛宕「んー、これも一応パソコンのゲームだから......私の場合はキャラ愛で始めた結果ここまで上達したのよ」

 

高雄「キャラ愛?」

 

愛宕「このゲームいろんなゲームのキャラがタイトル関係なしに対戦できるだけじゃなくて、独自に作成したキャラクターも使えるのよ」

 

高雄「独自に?」

 

愛宕「そう。実際に存在しないキャラでも既存のキャラをベースに作ったり、凝る人は本当に一から作ったりするの」

 

高雄「あなたのもそうなの?」

 

愛宕「これは私が作ったわけじゃないけどね。でも元々好きなキャラだったから、それがこうやってゲームで使えるようになったのが嬉しくてつい使い込んでしまったのよ」

 

高雄「なるほどねぇ。それであんなに手馴れてたのね」

 

愛宕「好きなキャラだったら大体私使えるわよ」

 

高雄「そうなの? んー、悔しい。私も格闘ゲームは割とやっていた方なんだけどなぁ。正規キャラで負けるとわね」

 

木曽「ふっ、なら高雄姐の仇俺が取ってやるよ」

 

高雄「木曽、やる?」

 

木曽「ああ、交代だ」

 

愛宕「どうぞー。歓迎よ♪」

 

木曽「俺はやっぱりドラ○ロだな!」

 

愛宕「わ、渋いわねぇ。解るわ。なら私は......」

 

ワーワー

 

 

提督「......ズズ」

 

磯波「大佐はやらないのですか?」

 

提督「俺は格闘ゲームがそんなに上手くなくてな。ブ○ド○レードなら得意なんだが」

 

磯波「そうなんですかー」(なんだろそれ......聞いたことない)

 

深雪「じゃぁ何か得意なジャンルはあるの?」

 

提督「断然SLGだ」

 

磯波「シミュレーションゲームですかぁ。大佐らしいですね」

 

深雪「う......あたしは逆にそういうのは苦手だなぁ。いろいろ考えるんだろ? その手のやつって」

 

提督「ゲームによる。例えば俺が好きなモノの一つにこういうのがある」

 

深雪「ん? なにこれ? お城を作ってる?」

 

磯波「わわ、人がたくさん動いてます」

 

提督「このキャラたちを使って資材や食料を調達し、建物を作り、砦や兵士の装備も作るんだ」

 

磯波「うわっ、聞いただけで難しそう......」

 

提督「このゲームはそれほどでもないと思うがな。ある程度慣れればこういうことが可能だ」カチッ

 

磯波「わぁ、兵隊が列を組んで......軍隊みたいです!」

 

那智「......」ピクッ

 

深雪「おー」

 

提督「これで攻め込んだり、自分の領地を守ったりする」

 

深雪「え、人で城壁を壊せるの?」

 

提督「一応できるが、それだと時間が掛かって壊してる最中に矢で倒されてしまうからな。そういう時は攻城兵器を使う」

 

磯波「へぇ、面白s」

 

那智「面白そうだな、それ!」

 

深雪「わっ」

 

磯波「那智さん、びっくりしました」

 

提督「読書はもういいのか?」

 

那智「いや、本を読んでいたら何やら興味深い話が聞こえたもので」

 

磯波「那智さんゲームとかやるんですか?」

 

那智「いや、全く。でも、これは面白そうだな」

 

深雪「ゲームを全くやったことがない那智さんが......あ、あたしもそれちょっとやってみようかな」

 

提督「興味があるなら教えてやれるが?」

 

那智「是非!」

 

深雪「あたしも!」

 

磯波「わ、わた――」

 

シンクノー♪ オウゴンノテツノカタマ――

 

 

磯波「......」

 

那智「ふふ、興味があるならあっちでもいいんだぞ?」ポン

 

磯波「あ......」

 

提督「ふっ、いろいろと興味が出て迷うか」

 

磯波「うー......ちょ、ちょっとだけ! ちょっとだけ見てきます!」タタッ

 

 

深雪「意外、磯波って格ゲーに興味あったんだ」

 

那智「いや、多分違うな。あれは自分の趣味に合った音が聞こえたからだろう。興味の広がりというのはそういうものだ」

 

提督「だとすれば、愛宕はその事を教えることについては適任だな。さて、では俺達も始めるか」

 

那智「ああ、宜しく頼む」

 

深雪「て、丁寧にお願いな!」




ごめんなさい。
筆者の趣味全開の、というより半分宣伝入ってますよね、ごめんなさい。
でも面白いですよ(オイ

昔はいろんなジャンル遊んでいたんですけどねぇ......いつの間にかSLGに傾いていました。
今でも遊ぶ格闘ゲームはあるのですが、タイトルがみんな古いんですよね。
それだったら今も割と自信があるのですがw


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第27話 「悪夢2」

目覚めたら女の子になっていた。

これは夢なのか?


朝目覚めて鏡を見たら女性になっていた。

髪が長い。

背が男の時より縮んでる。

腕は細い。

腰も明らかに縊れて尻が若干大きくなったような。

胸は......これは、叢雲と同じくらいか?

そしてなにより......なくなっていた。

 

 

提督(さて、どうしたものか。夢に違いないが、だとしてもこの状態から目を覚ます手段がない)

 

提督「......もう一度寝るか?」

 

 

トントン

 

提督「ん?」

 

加賀「大佐、加賀です。朝食をお持ちしました」

 

 

提督「......」

 

提督(この姿を見て夢の中の加賀はどう思うだろうか。いや、意外とこれがデフォルトの世界かも)

 

 

加賀「大佐?どうかしました?」

 

 

提督「いや、何でもないはい――」

 

バンッ

 

 

提督「きゃっ」(何だ今の? 俺の声か? 俺の口から出たのか?)

 

加賀「......」ジッ

 

提督「ひっ......」(怖い。クソ、なんだこの感情は? 止められない)

 

加賀「あなた誰ですか?」

 

提督「えっ」

 

加賀「何故大佐の服を着ているんですか?」

 

提督「か、加賀俺は――」

 

加賀「申し訳ありませんが、あなたに呼び捨てにされる程親しい関係だった覚えはありません。というよりあなたを私は知りません」

 

提督「っ......」

 

加賀「もう一度訊きます。あなたは誰ですか?」

 

提督「......大佐、です」

 

加賀「はい?」キッ

 

提督「大佐......です」

 

加賀「......」

 

提督「う、嘘じゃない......です。本当に......」

 

提督(俺が俺でないみたいだ。女性というのは責められるとこうも心理的に弱くなり易いものなんだな)

 

加賀「......私が機嫌が悪い......もとい、拗ねた時によく大佐にする癖があります。分りますか?」

 

提督「え?」

 

加賀「......」

 

提督「......か、階級を下げて呼ぶ......です」

 

加賀「......どうやら本物のようですね」

 

提督「し、信じてくれるの?」

 

提督(もう最早言葉が女言葉しか出ないようになってきた)

 

加賀「信じたくありませんが。ふぅ、これは一体どうしたことでしょう」

 

提督「し、知らない......解ったらわたしが教えて......欲しい」

 

加賀「......」

 

提督「う......ぐす。ひっく......えぐ」

 

加賀「おいで」

 

提督「......え?」

 

加賀「来てください、大佐。安心させてあげますから」

 

提督「加賀?」トコトコ

 

加賀「......」

 

ギュ

 

提督「あ......」

 

加賀「何も怖い事はありませんよ。大丈夫、私がちゃんと守ってあげますから」

 

提督「か......が......」ウル

 

加賀「女の子の大佐というのもなかなか可愛いものですね」ナデナデ

 

提督「あ......加賀......」

 

提督(撫でられるのがこんなに心地良くて安心するものだとは)

 

加賀「大佐、このままお眠りください。そして目覚めればきっと何もかも元通りです」

 

提督「そう......かな」

 

加賀「私が保証します。もしダメでも......」

 

提督「うん......」

 

加賀「私が男に“戻して”さしあげますから」ギラッ

 

提督「!!!!」

 

 

提督「......っ!」ガバッ

 

提督「......」

 

提督「夢......か?」

 

ギュウゥ

 

提督「......な......っ!?」バサッ

 

隼鷹「にへへー、大佐ぁ」ニギニギ

 

飛鷹「もう、これ以上のへないわひょー」グデー

 

提督「......」

 

ココンッ!

 

2HIT!

 

隼鷹「あいたー!?」

 

飛鷹「いっ......え? あれ?」

 

 

――数分後

 

提督「......なるほどな。俺が一緒に酒を飲む約束をしたのにいつまでも誘いが来ないから......」

 

隼鷹「晩酌してたらそのまま飛び込み参加しようかなぁって......」

 

飛鷹「でも寝てたから......二人だけ始めて......」

 

提督「そのまま酔い潰れて寝た結果、ソファーから大移動して俺のベッドに潜り込んだと?」

 

隼鷹・飛鷹「はい......」

 

提督「......」

 

隼鷹・飛鷹「ごめんなさい」

 

提督「いや、俺もいつまでも誘わなかった所為もあるからな。今回は大目に見よう」

 

隼鷹「え、じゃぁ今から飲み直し!?」キラキラ

 

飛鷹「そうなの!?」キラキラ

 

提督「反省しろ」

 

カコン!

 

隼鷹「あうっ」

 

飛鷹「ごめんなさい......」

 

提督「......飲み直しは今度な」

 

隼鷹「ホント!?」パァ

 

飛鷹「絶対よ!?」パァ

 

提督「どれだけ酒が飲みたいんだお前たちは......」

 

隼鷹「違う! あたしは大佐と酒が飲みたいんだ!」

 

飛鷹「そうよ!」

 

提督「分った。分ったからまた今度な。絶対俺から誘うから」

 

隼鷹「むぅ、約束したよ! ちゃんと誘ってよ!」

 

飛鷹「待ってるからね!」

 

提督「ああ、約束する」

 

バタン

 

 

提督「ふぅ......」

 

提督(あの夢は、女心をもう少し知るべきだという警告だったのかもしれないな)

 

提督「だがそれにしても......」

 

提督「......」ゾクッ

 

提督(いや、考えないでおこう。どうやって男にするつもりだったかなんて、な)

 

 

~赤城と加賀の部屋

 

赤城「加賀さん何を読んでるの?」

 

加賀「前に大佐に貸した本を読み直してるの」

 

赤城「どんな本?」

 

加賀「夏だからちょっと怖いのをね」

 

赤城「へぇ、私も読んでみようかしら」

 

加賀「......止めておいた方がいいわ。これ、結構過激よ?」

 

赤城「え、そうなの?」

 

加賀「ほらこのページなんて」

 

赤城「う......ぶ、文章なのに結構来るものが......」

 

加賀「ね?」

 

赤城「よ、よく平気な顔して読めますね」

 

加賀「違うわ」

 

赤城「え?」

 

加賀「読み始めたら、怖くて目が離せなくなってしまったの......」カタカタ

 

赤城「へ?」

 

加賀「赤城さん......助けて......」グス

 

赤城「......っ」

 

加賀「赤城......さん?」

 

赤城「もうっ、加賀さん可愛い!」ダキッ

 

加賀「きゃっ」




ホラーっぽいの第二弾。

ま、単に女の子になって可愛くなった提督を書きたかっただけですが。
案の定上手くいってない感、バリバリですね。
もっと頑張ります。


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第28話 「新開発」

霧島が何やら薬の瓶のような物を提督に見せてきました。
本部からの試供品らしいです。
なんでしょう?


提督「それは?」

 

霧島「ナノ資材です」

 

提督「ナノ資材?」

 

霧島「はい。技術開発部が開発した新しい資材ですよ」

 

提督「錠剤にしか見えないが」

 

霧島「この錠剤の中に私たちが艦娘として使うのに必要なエネルギーが全て込められているそうです」

 

提督「この中にか?」

 

霧島「はい、そうです。今まで私たちは、資材の補給をする場合原型でしかできませんでしたが」

 

霧島「この度開発されたこの新エネルギーで人の姿でも容易に資材に代わるエネルギーが補給できるようになりました。何しろ普通の錠剤と一緒で飲み込むだけですから」

 

提督「ほう、それは凄いな。これで我が鎮守府の極端な資材の偏りという問題も解決されるのか」

 

霧島「いえ、残念ながら......」

 

提督「ま、そう話は上手くないよな。霧島、詳細を」

 

霧島「はい。このナノ資材ですが、実際の資材と同じく燃料・弾薬・ボーキ・鋼材の4種類がありあます」

 

提督「ふむ」

 

霧島「錠剤の数に応じて補給の量を調整も可能なので、効率的になる以外は本当に単純に補給の仕方が変わるだけなんです」

 

提督「今まで使っていた資材は?」

 

霧島「そこなんですが、このナノ資材、現状本部からしか入手できません」

 

提督「というと?」

 

霧島「ナノ資材の搬入を希望する場合は、今まで通り相応の量の実際の資材と交換となります」

 

提督「......なるほどな。つまるところ資材の節約か」

 

霧島「その通りです。艦娘は運用が今までの兵器と比べて容易な分、消費する資材もかなりのペースでなくなります」

 

提督「最近は環境問題もいろいろ気にされているからな。無理もない」

 

霧島「交換のレートはまんま同数量というわけではなく、実際の資材の方が交換するナノ資材と比較して2割ほど少なく設定するようなので、以前と比べたら楽にはなると思います。若干ですが」

 

提督「なるほど、理解した」

 

霧島「あ、因みに、生身の人間が飲んでも全く無害です」

 

提督「実際に重油や鋼材が使われているわけではないという事だな」

 

霧島「そうです。これは艦娘にしか効果が出ません。生身の人間が飲んでも効果の弱いビタミン剤程度の影響しかありません」

 

提督「間違って飲むには少々高価なビタミン剤だな。注意はするが」

 

霧島「ふふ、そうですね。......それでどうします?」

 

提督「利用するかどうかか? 勿論する。今ある資材と全て交換だ」

 

霧島「了解しました。手配しますね」

 

 

――数日後

 

提督「......あの膨大な資材の塊が、こんなダンボール5個ほどになるとはな」

 

翔鶴「にわかには信じられませんね」

 

提督「そうだな。この程度の量なら執務室にすら置いておける」

 

翔鶴「保管場所どうします?」

 

提督「武器庫でいいだろう。整備ドックにも近いし、場所が場所なだけに防備も厳重だしな」

 

翔鶴「了解しました」

 

提督「それよりだ......」

 

翔鶴「はい?」

 

提督「この余ってしまった膨大なスペースどうしたものか......」

 

ガラーン

 

翔鶴「ああ......」

 

提督「ジムにでもするか? 待機組や非番の奴が退屈しない様に」

 

翔鶴「それもいいですけど......」

 

提督「ん? なにか希望でもあるか?」

 

翔鶴「あ、いえ。その......喫茶店なんてどうかなぁって」

 

提督「喫茶店......」

 

翔鶴「あ、いえ。あくまで妄想なので」アセ

 

提督「基地の中に喫茶店か......」

 

大淀「いいですね。やりましょう!」

 

提督「大淀」

 

翔鶴「大淀さん」

 

大淀「ごめんなさい。ちょっと通りかかりに興味深い話が耳に入ったものですから」

 

提督「いや、それは別にいいが。大淀、お前は喫茶店に賛成なのか?」

 

大淀「そうです。食堂の方で大分腕も鍛えましたし。それに、もし喫茶店の運営を任せて頂けるのでしたらなんだか独り立ちするみたいでワクワクするじゃないですか」

 

翔鶴「大淀さん、最近は鳳翔さんの代わりに厨房頭を務める事もありますからね。勿論美味しいです♪」

 

大淀「ありがとう翔鶴さん。ね、大佐どうでしょう?」

 

提督「本部に許可を願い出てみる。下りれば建造妖精達に改装そしてもらおう」

 

大淀「お願いします!」

 

翔鶴「楽しみぃ♪」

 

提督「まだ決まったわけじゃないぞ?」

 

翔鶴「艦娘のポテンシャルを維持する為とか尤もらしい理由をつければ大丈夫ですよ!」

 

提督「そうか? まぁ上手くいくといいが」

 

翔鶴「はぁ......鳳翔さん仕込みの大淀さんのスイーツ......楽しみ~」ポワワン

 

大淀「......翔鶴さんもああいう顔するんですね」

 

提督「女性は甘いものに目がないのは昔から変わらないな。これは気合いを入れて許可を貰わないとな」

 

大淀「ふふ、頑張ってくださいね♪」




その後、特に交渉が滞る事もなく基地の中にめでたく喫茶店がオープンしました。
店主は定期的に大淀と鳳翔で交代で回すそうです。
赤城や翔鶴が常連になったのは言うまでもなく、さり気に麻耶や那智といった意外な人物も足繁く通っているとかいないとか。



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第29話 「喫煙」

その日は朝からずっと雨が降っていました。
提督はそんな天気にも関わらず外に出て釣りをするわけでもなく、煙草を吸っていました。


提督「......ふぅ~」

 

文月「あー、大佐タバコ吸ってるー」

 

提督「ん、文月か。皆には内緒だぞ」

 

文月「内緒にしたいような事をするのはよくないよ?」

 

提督「大人は駄目と分かってても気分がこれを求める事ががあるんだ」

 

文月「我慢できないの?」

 

提督「出来ない事もないが、許してくれそうな人の前では少し気が緩んでしまうかな」

 

文月「えー、文月そんな軽い女じゃないもん」

 

提督「使い方が間違ってるぞ」

 

文月「え? そ、そう?」

 

提督「ああ。あまり良い意味じゃない」

 

文月「えっ......。ふ、文月良い子よ? ホントよ!?」ジワ

 

提督「分かってる」ポン

 

文月「ん......」

 

提督「文月、もう一本吸っていいか?」

 

文月「もうズルいんだから。後一本だけだからね?」

 

提督「ありがとう」シュボ

 

 

文月「今日はよく降るね」

 

提督「ああ。お蔭でこれが美味しく感じる」

 

文月「雨が降っていた方が気分が良いの?」

 

提督「多少湿気があるとな。風味が微妙に良くなる事がある」

 

文月「へぇ~」

 

提督「文月は雨が嫌いか?」

 

文月「え? ん~、嫌いじゃないけど......でもやっぱり文月はお日様が好き!」

 

提督「そうか。うん、晴天もいいよな」

 

文月「あ、でも......こうやって大佐と長くお話ができるなら雨も悪く、ないかな」

 

提督「そうだな。俺も偶にはこういうのもいい」

 

文月「本当?」

 

提督「嘘をついてどうする」

 

文月「もし嘘だったら罰として大佐のお膝に乗るつもりだったのに」

 

提督「......」グシグシ

 

文月「あれ? もう吸わないの? 大分残ってなかった?」

 

提督「吸ったままだとお前の頭にタバコの灰が落ちるかもしれないだろう?」

 

文月「あっ......いいの?」

 

提督「嫌か?」

 

文月「ううん! ありがとー♪」

 

 

文月「大佐ー」

 

提督「ん?」

 

文月「今日は一日雨なのかな」

 

提督「天気予報は見てなかったからな。時雨にでも聞いてみたらどうだ?」

 

文月「しーちゃんは雨が好きだからそういう事は聞かない様にしてるの」

 

提督「そうなのか?」

 

文月「うん」

 

提督「......」ナデナデ

 

文月「ん......っ、大佐?」

 

提督「良い子だな文月は」

 

文月「こ、子ども扱いは......」

 

提督「ああ、悪い」スッ

 

文月「あ、やっ......だめっ」ギュ

 

提督「ん?」

 

文月「撫でるのはやめてほしくないの」

 

提督「分かった」ナデナデ

 

文月「~♪」

 

 

提督「ん、晴れてきたな」

 

文月「あ、虹だぁ」

 

提督「ああ、本当だ......」

 

文月「きれー♪」

 

提督「そうだな」

 

文月「......」

 

提督「......」

 

提督「さて、戻るか」

 

文月「え、もう?」

 

提督「このままここにいたら、今度は日差しで一気に蒸発した湿気を味わう事になるぞ?」

 

文月「う......」

 

提督「ここは大人しく部屋で扇風機に当たっていた方が良いだろう」

 

文月「扇風機......大佐」

 

提督「うん?」

 

文月「どうして文月たちの鎮守府にはエアコンがないの?」

 

提督「......単純に取り付けられる業者がいないんだ」

 

文月「パソコンとかはあるのに......」

 

提督「エアコンが日本ほど普及してない所為みたいだな」

 

文月「えぇ」

 

提督「......今度買い物に行くか」

 

文月「え?」

 

提督「外出申請を出してもっと都会に行けば、ここでもエアコンが手に入ると思うし」

 

文月「そ、それって文月も行っていい?」

 

提督「行きたいのか?」

 

文月「......!」コクコク

 

提督「お前の都合が着けば構わないが」

 

文月「じゃあ予定が分かったら絶対に直ぐに教えて! その日は非番にしたいの!

 

提督「あまり言いふらすなよ? 遊びに行くわけでもないが、お前だけ特別扱いされているようにも思われたりしたら気まずいからな」

 

文月「分かった!」

 

提督「よし、じゃあ戻るぞ」

 

文月「はーい。戻ったら扇風機の前であ゛~ってするの♪」

 

提督「......それは口が乾くから駄目だぞ」




久しぶりのヤなしオチなしのゆったりした日常でした。

提督はロリではありません(断言)
ただ、駆逐艦に癒されているだけです!


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第30話 「訓練」

本部の大将の訓練の様子です。
超厳しいです。


大将「射撃訓練開始」

 

雷「ってぇー!!」

 

ドーン!

 

大将「遅い! もっと早く撃て! 敵に反撃する隙を与えるな!」

 

電「撃ちます!」

 

ドーン!

 

大将「全然駄目だ! なんだそれは!? もっと的をよく狙え!!」

 

暁「撃つわ!!」

 

ドォーン!

 

大将「的に当てればいいというものじゃない!! しっかり真ん中に当てて粉砕しろ!! 甘い!!」

 

利根「参る!!」

 

ズドッ!!

 

大将「まだまだ! 着弾に時間が掛かってるぞ! 誤差修正をもっと念入りにしろ!!」

 

筑摩「いきます!!」

 

ドォーン!

 

大将「衝撃を完全に受け流せてないぞ!! もっとしっかり構えろ!!」

 

衣笠「......っふ!」

 

ド......オオオン!

 

大将「マシな方だが調子に乗るなよ! もっと撃て! もっと精度を上げろ!!」

 

 

――数分後

 

ぜぇ......はぁ......ひぃ......げほっ。

 

大将「後2分で訓練再開だ。これで終わりだと思うな! まだ続ける意思がある者は返事をしろ!!」

 

全員「サッー!!」

 

大将「よし! 今日は泣いてもやめんからな!! 覚悟しろ!!」

 

全員「サー、イエッサー!!」

 

 

彼女「......相変わらず大将の訓練は凄まじいわね」

 

武蔵「ああ、私も参加した事があるが、途中で泣いてしまった......」

 

彼女「あなたが? 訓練に耐えれなくて?」

 

武蔵「いや、訓練自体は耐えれる自信は始終揺るがなかった。ただな」

 

彼女「?」

 

武蔵「大将が怖すぎて......」

 

彼女「ああ......」

 

武蔵「嫌ってるわけじゃないが、以降それがトラウマになって私は大将が苦手なんだ」

 

彼女「擁護する形になるけど、大将がああなのは戦闘や訓練の時だけだからね? それ以外はただ真面目な提督よ?」

 

武蔵「分ってるさ。この前廊下ですれ違った時も自分から挨拶してくれたし」

 

彼女「うん。だから普段は怖がる必要はないわ」

 

武蔵「ああ、でも......そうだと分っていてもだな......」

 

 

大将「何をしている!? 立て! 遅い!! そうだ!! まだまだ!!」

 

 

武蔵「......」サァ

 

彼女「......あの日々の訓練の結果、大将の艦隊の子達は戦艦は勿論、駆逐艦の子まで“駆逐艦の皮を被った何か”と言われるまでの精強なのよね」

 

武蔵「お前の艦隊だって強いと思うぞ?」

 

彼女「当り前よ。私も訓練に手を抜いているつもりはないわ。でもね、あれを見ちゃうとねぇ」

 

武蔵「......やっぱり演習をしたら負ける、かな」

 

彼女「全力で当たる、としか言えないわね」

 

武蔵「そうだな。勝つけどな」

 

彼女「ええ、そうよ。その気持ちを忘れないで」

 

武蔵「ああ」

 

 

大将「よーっし! 今日はここまで!!」

 

雷「......」バタッ

 

電「う......うぅ......」フラフラ

 

暁「きょ、今日も泣か......なかったわ」

 

利根「は......ははは、はぁ......」グテッ

 

筑摩「う......水......水さえあればまだ......」

 

衣笠「すぅ......はぁ......。う......」クラクラ

 

 

パシャァァァァァァ

 

雷「あ......」

 

電「水......」

 

暁「はぁ......気持ち良い」

 

利根「あー......ごくごく。ぷはぁっ。ははははは、美味い!」

 

筑摩「......んー......。はぁ......極楽です......」

 

衣笠「ひゃぁー♪」

 

大将「今日もよく耐えたな。これでまずは体を冷やせ。落ち着いたらシャワー浴びて休んでよし」

 

「了解です! ありがとうございます!」

 

大将「よしっ、解散!!」

 

 

利根「んー、今日の訓練も厳しかったのー」

 

筑摩「ほんと、いつももうダメかと思ってしまいます」

 

雷「でも耐えたわよ! 次だって耐えてみせるわ!」

 

電「なのです! 電は次の訓練もへっちゃらです!」

 

衣笠「実際本当にキツイけど、終わった後は気分が良いわよね。いろいろ鍛えられるし」

 

暁「淑女としては最高潮のレベルにわたし達いるんじゃないかしら」

 

雷「随分アクティブな淑女ね。ま、いいけど♪」

 

電「部屋に戻って早く寝た......あ、アイスがありました!」

 

筑摩「えっ」

 

利根「誠か!?」

 

電「はい。この前第3司令部の中将さんがお裾分けしてくれたのです」

 

衣笠「あー、あの人かぁ。よくいろいろくれるよね。私達に気があるのかな」

 

暁「ちょっとそういう事は思っても言っちゃダメなのよ? 噂にでもなったら中将が可哀想じゃない」

 

利根「そうか? あの方はあまりそういうの気にしない性格に見えるがの」

 

筑摩「そうですね。何というか......よく分らない方ですよね」

 

衣笠「見た目や仕草は凄くオジサンなのよねぇ。でも仕事はしっかりやってるみたい。仕事してるとこあまり見た事ないけど」

 

暁「そ、それって大丈夫なの?」

 

雷「大丈夫なんじゃない? だって、現になんの問題も起きていないから」

 

利根「そうじゃの。と、それよりアイスじゃアイス! 電、人数分はあるのじゃろうな?」

 

電「はい。勿論です」

 

衣笠「やったぁ。アイス祭りよー」

 

暁「訓練の後のアイス......はわぁぁぁ」

 

筑摩「とても良いものですね♪」

 

雷「早く、行くわよ!」

 

 

~第3司令部、提督執務室

 

中将「へっくし」

 

信濃「風邪?」

 

中将「んーどうだろうね。あ、信濃さんお茶」

 

信濃「どうぞ」

 

中将「ズズ......はぁ。よっと」ギシッ

 

信濃「何処へ行くの?」

 

中将「ちょっと煙草吸いにトイレに」

 

信濃「外で吸いなさい外で」ジトッ

 

中将「はい......」




新キャラ登場です。
信濃は秋に来るとか聞いたことあります。

空母的には加賀より強いのだろうか、設計図で戦艦になったりするのだろうか。
夏イベントが目前なのに頭は秋の事を考えているという季節外れの筆者でした。


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第31話 「外出」

外出当日、文月と提督が外に出る準備をしているのを偶然明石が見掛けて声を掛けてきました。
そしてその目的を聞くと......。


明石「全く、エアコンを設置したいなら私に言ってくださいよ」

 

提督「すまん。お前の事をすっかり忘れていた」

 

明石「わ、酷い。酷いですよ? これはしっかりお礼貰いますよ?」

 

提督「勿論だ。なんで――」

 

文月「めっ」

 

提督「文月?」

 

文月「そのセリフは不用意に言っちゃダメなんだよ!」

 

明石「文月ちゃんしっかりしてますねぇ。でもちょっと残念」

 

提督「?」

 

明石「で、エアコンでしたね。買いに行くんですか? 経費節約したいなら一から作ってもいいですよ?」

 

文月「そんな事ができるの?」

 

明石「工作艦を甘く見ないでね? 少し時間は掛かるけど余裕よ」

 

提督「ふむ......だがもう外出許可は取り付けてあるしな」

 

明石「じゃ、エアコン自体じゃなくてパーツを買いに行きましょう。その方が新品をそのまま買うより安くつきますから」

 

提督「お前も来てくれるのか?」

 

明石「今日が非番で本当に運が良かったです♪」

 

提督「そうか。なら行くか。文月準備は?」

 

文月「できてまーす」

 

提督「明石は......」

 

明石「......実はもうそのつもりで」

 

提督「よし、では出発だ」

 

 

提督「......この廃品にしか見えない鉄の塊から冷房を、な」

 

明石「ちょっと業務用っぽくなりますが、その方がパワーも有るし、何より頑丈ですよ」

 

文月「店主さん不思議そうな目で見てますね」

 

提督「まぁ俺達が買い取らなければ処分されるだけのゴミだからな」

 

 

明石「これだけ下さい」

 

ごっちゃり

 

店主「はぁ、どうも......本当にこんなので? 古いですけどちゃんと動くのはありますよ?」

 

明石「これがいいんです」

 

提督「申し訳ありませんが、これで」

 

店主「まぁそう仰るなら......はい、こちらになります」

 

提督「......安いですね」

 

店主「そりゃ部品として流用しない限り使い道がないですから。うちはメーカーという訳でも、そこまで修理ができる店でもありませんから」

 

提督「なるほど」

 

店主「あ、でもお解かりだとは思いますが返品はききませんからね?」

 

提督「大丈夫です」

 

 

店主「まいどありがとうございまーす」

 

 

文月「基地に送ってくれて助かったねー」

 

明石「流石にあれを抱えたままじゃ外を闊歩できないからね」

 

提督「軍人というのもある程度効果があったんだろう。送り先を言った時に態度を少し改めていたからな」

 

明石「それで、これからどうするんですか?」

 

文月「あ......」モジモジ

 

提督「せっかくだ。行きたいところがあったら付き合うぞ」

 

明石「あ、なら私は服!」

 

文月「文月はデザート!」

 

提督「よし分った」

 

 

~服屋

 

明石「大佐、文月ちゃんこれなんてどう?」

 

文月「わぁ、とっても似合ってます~」

 

提督「......? さっきのとどう違うんだ?」

 

明石「え、ああ。着こなしを変えてみたんですよ。ほらここをこう......」

 

文月「大佐ぁダメだよ? そういう所にも気付けないと」

 

提督「......面目ない」

 

明石「ふふふ、いいですよ。まだ着てみたいのがたくさんありますから。あ、これなんて――」

 

文月「わぁ♪」

 

提督(服の買い物だけでもう数時間、凄いな......)

 

 

~喫茶店

 

文月「おいし~♪」

 

明石「ホント、大淀さん達のデザートもいいですけどこういう地元でしか食べられないのもいいよねぇ」

 

提督「......ズズ」

 

文月「大佐は食べないの?」

 

提督「ん? ああ、俺は甘い物が少し苦手でな。特に洋菓子が......」

 

文月「はい」

 

提督「ん?」

 

文月「食べてみて。美味しいよ?」

 

提督(よりによって生クリーム......)

 

文月「はい、あーん」

 

提督「いや俺は......」

 

明石「......」ジー

 

提督「......」パク

 

文月「どう?」

 

提督「あ......ああ。意外に、美味い......な」フルフル

 

文月「ほんとう!? じゃあ特別にもう一口あげるねっ」

 

明石「あ、それ私も、やりたい、な?」

 

提督「......どんと来い」

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 

文月「美味しかったぁ♪」

 

明石「ふふ、ほーんと♪」

 

提督「......」チャリン

 

明石「あれ、大佐? お店を出たばかりなのにいきなりお茶を買うんですか?」

 

文月「え、それ熱いの......間違ってない?」

 

提督「ごく......ごく......ふぅ、やっぱり日本人はお茶だな」

 

明石・文月「?」キョトン

 

 

~基地

 

文月「はぁ、楽しかったぁ♪」

 

明石「本当ね。偶にはこういうのもいいわねー」

 

提督「割と試練だった......」ボソ

 

明石「え?」

 

提督「いや。冷房は部品が届いたら直ぐに作るのか?」

 

明石「建造妖精の子達にも手伝ってもらえたら......うん。3日以内になら全施設に設置できると思います」

 

文月「たった3日で? すごーい!」

 

明石「うーん、一応他にも人手がいたら方がいいかな......? 頼めますか?」

 

提督「任せろ。俺から何人かに声を掛けてみる」

 

明石「ありがとうございます♪」

 

 

文月「それでは文月はこれでお休みします。大佐ぁ今日はどうもありがとー」

 

提督「ああ。また明日から宜しく頼むぞ」

 

文月「はーい」

 

明石「じゃあ私も戻りますね。今日はありがとうございました」

 

提督「いや、礼を言うのはこちらの方だ。今日は助かった」

 

明石「いえいえ、大佐と基地の為でしたら♪ それではおやすみなさいっ」

 

提督「ああ、おやすみ。ご苦労様」

 

 

提督「......」

 

提督(もう少ししたらこの暑い夜と部屋で会う機会が減るのか......。それはそれで少し寂しい気もするな)




家は未だに寝る時は扇風機で過ごしてます。
流石に日中はもうエアコンは欠かせませんねぇ。

......あ。
そういえば暑くなくなったら鈴谷達はノーパンじゃなくなるのか......?


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第32話 「尻取り」

夜、提督が就寝の準備をしていると、金剛が彼を訪ねてきて直ぐに自分たちの部屋に来て欲しいと頼んできました。
突然の訴えに何事かと金剛と一緒に部屋を訪れた提督でしたが......。


金剛「第一回金剛姉妹歴史上の人物尻取リ大会デース!」

 

榛名「わぁ、榛名負けません!」

 

霧島「私の頭脳の冴えお見せしましょう!」

 

比叡「ひぇぇ、わ、わたしそういう勉強っぽい遊び苦手ですぅ。でも、がんばります!」

 

提督「......俺は帰っていいか?」

 

金剛「No!」 比叡「だめ!」 霧島「却下です」 榛名「だめです!」

 

提督「......夜中に突然呼び出されて何があったのかと来てみれば......」

 

金剛「大佐ァ、こんな cute な girls に囲まれてそんな顔しちゃダメヨ?」

 

霧島「ごめんなさい大佐。宜しければ姉達の戯れにお付き合い頂けないでしょうか?」

 

榛名「榛名からもお願いします!」

 

比叡「あれ? お姉様主催なのにさり気にわたしも事の発端にされちゃってる?」

 

提督「......まぁ来なかったら酒か煙草をやってただけだしな」

 

金剛「さっすガ大佐ネ! you are champion!」

 

比叡「はやっ!?」

 

霧島「いや、それはないですから」

 

榛名「大佐おめでとうございます!」

 

提督「やる気あるのか? ルールは?」

 

霧島「負けの条件は語尾に『ん』がつくか、1ゲーム5分の内に最後に答えられなかった人です」

 

提督「分った」

 

榛名「大佐から姉妹の上から順でいいですか?」

 

金剛「オーケーヨ! さぁ大佐、please!」

 

提督「織田信長」

 

金剛「オダノブナガ?」

 

比叡・霧島・榛名「えっ」

 

金剛「え?」

 

霧島「お姉様......織田信長知らないのですか?」

 

金剛「え? そ、そんなに有名?」

 

比叡「わ、わたしでも知ってます......」

 

榛名「お姉様......」

 

金剛「え? え?」アセ

 

提督「後で歴史の授業をしてやる」

 

金剛「really!? 二人っきりヨ!?」ダキッ

 

比叡・霧島・榛名「え?」

 

提督「分ったから離れろ。ほら次はお前だ」

 

比叡(お姉様ズルい......)

 

霧島(くっ、これが天然......!)

 

榛名(榛名もおバカな振りをすれば......)

 

金剛「イエス! んー......ガ......が......が?」

 

金剛「......」

 

霧島(これはなかなか厳しい)

 

比叡(ごめんなさいお姉様、思いつかない......)

 

榛名(蒲生氏郷......)

 

金剛「が......。ふぇ......」グス

 

比叡「お姉様!」

 

霧島「大佐......?」

 

榛名(ガリレオ・ガリレイ......)

 

提督「俺が悪いのか......?」

 

金剛「ふぇぇぇぇぇん!」

 

霧島「大佐っ」ヒソ

 

提督「......ほら、泣くな」ギュッ

 

金剛「大佐ァ......」グス

 

提督「このくらい気にすることは無い。偶々分らなかっただけだろう?」

 

金剛「う......ぐす......ワタシお姉ちゃんなのに......」

 

霧島「気にしないでお姉様。 『が』は流石に難しかったと私も思います」

 

比叡「そうです!」

 

榛名(ガイウス・ユリウス・カエサル......)

 

金剛「ぐす......比叡、霧島......」

 

榛名(濁点無しはありかな? じゃないと難しいものね。葛飾北斎、勝海舟......か......か......)

 

提督「いい妹を持ったな金剛」ポン

 

金剛「あ......ウン。本当にワタシは幸せな姉ネ......」

 

比叡「さぁお姉様第二ラウンドです!」

 

榛名「か......か......」ブツブツ

 

霧島「榛名......?」

 

金剛「ウン。サンキューネ大佐、比叡、きりし――」

 

榛名「あっ、加藤清正!」

 

提督「ん?」

 

金剛「エ?」

 

比叡「え?」

 

霧島「榛名、あなた......」

 

榛名「え? あ......」

 

 

金剛「......え?」

 

提督「......」




その後、霧島が必死の形相で事態を把握した提督と共にその場をとりなし、何とか事なきを得る事ができたようです。

なんか一人だけ黒い人がいたような気がしますが、多分きっと気のせいでしょう、ええ!


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第33話 「勉強」

金剛たちとの尻取り大会の次の日の夜、速攻で約束を守ってもらいに来た金剛の前に、予想外の先客がいました。
その人物とは......。


金剛「......なんでマリアもいるのヨ......」

 

Bis「歴史の授業なんでしょ? 私、この国の歴史はあまり知らないから興味があるのよ」

 

金剛「大佐ァ」

 

提督「......別に隠し......いや、確かに二人きりとは言ったが、秘密ではなかっただろう? マリアに会った時に何をしているのか聞かれてそれに答えただけだ」

 

Bis「お願いっ。私も授業に参加させて。興味があるのは本当なの!」

 

金剛「むぅ......仕方ないですネ。何より同じ大佐の wife であるマリアの頼みだし......ネ」

 

Bis「金剛!」パァァ

 

提督「すまんな」

 

金剛「never mind! 気にしなくていいワ。それより大佐、早く授業!」

 

Bis「確かオダノブナガだったわね? どこまでが名字でどこからが名前なの?」

 

提督「織田が名字で、信長が名前だな」

 

金剛「アーハン、ノブナガ・オダ、ネ」

 

Bis「字はどう書くのかしら?」

 

提督「字? 漢字でいいのか?」

 

Bis「ええ、平仮名は読めるから漢字でお願い」

 

金剛「マリアは偉いネ。フツー字まで知りたい人はそういないヨ?」

 

Bis「漢字って面白いのよ? たった一文字の中にちゃんと意味があって、しかもっ読み方も複数あるの。私はそれを理解しながら覚えていろいろ想像するのが楽しいのよ」

 

金剛「はぁ~、凄いネェ、マリア......」

 

Bis「やめてよ。照れるじゃない。それで大佐、字は?」

 

提督「ん、字はこう書く」サラサラ

 

金剛「Oh 名字の最初の文字、凄く難しそうネ」

 

Bis「そうね。画数が多い......。ね、それぞれの漢字の意味を教えて?」

 

提督「分かった。まず織田の『織』だが......」

 

 

Bis「なるほど。大体わかったわ。名字自体は先祖が住んでた地名から、(多分地名自体も何か縁があるんだろうけど)名前は意味よりも先祖から代々受け継いできた共通の文字を重視していたわけね」

 

提督「まあそんな感じだと思う」

 

金剛「へぇ......名前一つにここまで......なんかもうワタシこれだけで凄く勉強した気分ネ」

 

提督「はは、流石に名前だけで終わっては霧島たちに示しがつかないぞ?」

 

金剛「あ、そうデシタ」イソイソ

 

Bis「それで、その人はどんな人だったのかしら? 先ずは大まかな概略をお願いできる?」

 

提督「ああ。まず覚えておくといいのはこの人物は日本の中で恐らく、歴史や勉強が苦手な人でも大体名前だけは知っているという程、日本で一番有名な歴史上の人物という事だな」

 

金剛「へ、へぇ~」(そんな人物をワタシったら......)カァ

 

Bis「なるほど。それは重要ね。それで、具体的にどんな人物なの?」

 

提督「ああそれはな......」

 

 

金剛「um......なるほど~。それは確かに凄いキーパーソン的な人ネ」

 

Bis「いろいろ酷い事もしてるみたいだけど、それを批判するにはその時の時代背景の勉強が不足してるから今は無理ね。でも取り敢えず非常に非凡な人だったというのは分かったわ」

 

提督「ああ、そんな感じで良いぞ。歴史と言うのは人によって、見方によって違う。大事なのは人の意見に流されるのではなく、自分で調べて自分の考えをしっかり持つことだからな」

 

金剛「大佐アリガトウ! 凄く勉強になったワ!」

 

Bis「私も、久しぶりにとても充実した時間を過ごせた気がするわ」

 

提督「いや、俺もお前たちが俺たちの国の歴史に興味を持ってくれて嬉しい。講師役もやってみるものだな」

 

金剛「えへへ、そんなァ♪」テレ

 

Bis「わ、私は......貴方だから授業を受けたいという気持ちもあったのよ......」

ポッ

 

提督「どっちにしても俺も楽しかった。二人とも礼を言う。ありがとうな」ポン

 

金剛「んん......大佐ァ♪」スリスリ

 

Bis「あう......うん......」ウットリ

 

提督「さて、今日はもう遅い。これで終わりに――」

 

ギュ

 

提督「ん」

 

金剛「そうネ。だから今度は違う授業を......受けたいワ」ウル

 

Bis「あ......私も......その、最近なかったから......ダメ?」ジッ

 

提督「......電気消すぞ」

 

金剛「大佐ァっ」ダキッ

 

Bis「好きっ、大好きよっ」




その後3人はお楽しみになったそうです。

歴史は面白いです。
外も内も、どっちの歴史も。
自分は日本史が好きな方なので今回こうしてネタに使わせてもらいました。
ありがとう魔王様!(オイ


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第34話 「二色」R-15

薄灯りの中、三人の影が重なっています。
俗にいう夜のなんとやらというやつです。
久しぶりに体を重ねる所為か、二人ともいつになく積極的です。

*明らかな性的描写あり。


金剛「あっ、あっ、マリア......ああっ」

 

Bis「んちゅ......金剛、おいし......」

 

ちゅうっ

 

金剛「あああっ、イ......ああっ」

 

提督「マリア......」グッ

 

Bis「あっ、たい.....んんっふぁぁぁああ!」

 

Bis「ん......ちゅ。ぺろっ」

 

金剛「アアアアっ! だ、ダメよマリア、ま、まだ......大佐に......んあっ、イ、イッ......あっ!」

 

Bis「金剛......こんご......あっ、あっ......わた.、わたしも......ああ、あああああっ大佐ぁ!!!」

 

金剛「はぁ......はぁ......モウ、大佐に可愛がってもうら前にマリアにイカされちゃったワ......くす」

 

Bis「はぁ......は......ぁ......ごめ......金剛」

 

金剛「ふふ、気にしないデ。それよりワタシも sorry ネ。その......マリアを汚し......ちゃっテ」カァ

 

Bis「ああ......これ?」

 

Bis「ん......ちゅ。大丈夫、美味しいから」

 

金剛「あ......」

 

金剛「......」

 

Bis「こ、金剛......きゃっ」

 

Bis「金剛? ど、どうしたの?」

 

金剛「ワタシをよくしてくれたお礼ネ。マリアのも......」

 

Bis「こ、金剛......! い、いやっ。この格好は、ちょ......はずか......」

 

金剛「逃げないでマリア......今度はワタシが......ん」

 

Bis「ダメ金剛! 私今イっ......やぁぁぁああああ! あ、ああっ」

 

金剛「あ......はぁ......マリアと大佐の......する、ネ」

 

提督「......」グイ

 

金剛「あ......大佐?」

 

提督「金剛......次はお前に......いいか?」

 

金剛「あ......嬉しいネ......お願イ......めちゃくちゃに......シテ?」

 

ググッ

 

金剛「あっ、ん......そん...ふぁ、ソコだへ?」

 

提督「こちらは気にするな。それよりマリアを可愛がってやれ」

 

金剛「んふっ......わかっふぁ......ちゅっ」

 

Bis「あっ、あっ、こんご......も、もう......いい......やっ、ふぁぁぁぁ」

 

金剛「ノンノン......にげちゃ......ふぁめ......ちゅっ」

 

Bis「んぁっ......はぁっ! イっちゃ......うぁああ」

 

金剛「んふ......マリアかわ......え......?」

 

グッ......!

 

金剛「んっふぁああ! あああ、あっ......凄い......大佐......コレ......ああっ、イイ!」

 

提督「良かった。最初から全力でいっては俺も体力が持たないからな。最後はこれでいかせて......もらうっ」

 

金剛「お......あふぁあああ......あっあっ......あああっ♪」

 

Bis「こ、金剛......」

 

提督「......ふっ......っ、金剛......マリアをっ......マリアが寂しそうだぞ」

 

金剛「ア......マリア......んっ」

 

Bis「あああっ、こん......ごうっ♪」

 

提督「......金剛、もうイキそうだ。お前も......マリアを......」

 

金剛「んちゅ......っぷはぁ。わ、わか......たネ。はぁ、はっああっ、マリア......また一緒に......」

 

Bis「うん......金剛......いっ一緒......よ......あっ、あああ!」

 

金剛「......たい......イクぅぅぅうう!」

 

提督「......くっ」

 

 

 

金剛「久しぶりに一杯しちゃったネ♪」

 

Bis「すぅ......す......ん......すき......」

 

提督「久しぶりに全力を出した感じだ。マリアも疲れたんだな。よく寝ている」

 

金剛「んふふ。可愛い♪」

 

ぷにぷに、くにくに

 

Bis「んっ......」ピクッ

 

提督「おい、あまり眠ってる人を弄るのはよくないぞ」

 

金剛「分ってるワ。でも......ほら......」

 

提督「......」

 

金剛「なんか眠ってる子をイジるのって興奮しなイ?」

 

提督「......眠ってても感じるんだな」

 

金剛「ふふ......これでも起きないなんてよほど疲れてるのネ」

 

提督「......もうその辺にしておけ」

 

金剛「そう......ね。Good night マリア♪」

 

ちゅっ......ぺろ

 

Bis「ん......ふぁっ......」ピククッ

 

提督「おい......何処に......」

 

金剛「ふふ......クセになりそうネ」

 

提督「全く......」

 

金剛「ね、大佐......」

 

提督「......今日はもうシないぞ」

 

金剛「ウン、分ってる。だから最後に......ネ?」

 

提督「お前にも困ったものだ......ちゅ......ぺろっ」

 

金剛「んあっ♪」

 

提督「さ、寝るぞ」

 

金剛「ん♪」

 

ギュッ




てことで保健体育の授業終了。
どうも何日か振りかです。
暫くは多分仕事の関係で更新のペースはこんな感じになる事をお許しください。

眠ってる子にイタズラする事に興奮する筆者はやはり変態だと自覚しました。


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第35話 「オジサン」

本部第三司令部の司令官。
親父じゃない方の中将のお話。


曙「......司令官何してるの?」

 

中将「釣り」

 

霞「一応待機任務中じゃ......」

 

中将「そだね。だから雷達が頑張って......」

 

叢雲「いや、わたしたちは?」

 

中将「......大丈夫。無線ならここにあるから」

 

満潮「そういう問題じゃないでしょ!?」

 

中将「まぁまぁ。俺達は俺達の仕事をきっちりこなせればいいんだから」

 

朝潮「だからってあまり気を抜くのは......」

 

中将「これでも一応気張ってるんだけどなぁ」

 

曙(見えない)

 

霞(どこが?)

 

叢雲(ただオジサンしてるだけじゃない)

 

満潮(だったら煙草まで吸わなければいいのに)

 

朝潮「......また信濃さんに怒られますよ」

 

中将「おっと、それは怖いな。戻るか」

 

曙「最初からそうしなさいよ!!」

 

 

中将「......」ソロォ

 

信濃「お帰りなさい」

 

中将「あっ」

 

信濃「何処へ行ってたの?」

 

中将「......信濃さんのあっつ~い。お茶飲みたいなぁ」

 

信濃「誤魔化してるつもり?」

 

中将「失敗?」

 

信濃「......はぁ」

 

コトッ

 

信濃「どうぞ」

 

中将「ありがとう」

 

信濃「......」

 

中将「ずず......」

 

信濃「......私達の待機任務長いわね」

 

中将「いいんじゃない? 暇なのはいいことだよ。平和だしね」

 

信濃「あなたはちょっと緩み過ぎだと思うけど?」

 

中将「おっと、それはいけないな」ササッ

 

信濃「......」

 

中将「どう?」

 

信濃「なにが?」

 

中将「髪型直したんだけど。男前になったかな」

 

信濃「いつも通りよ」

 

中将「さいですか」

 

信濃「......」

 

中将「ちょっとトイレに行ってくるね」

 

信濃「煙草は外」

 

中将「......はい」

 

 

信濃「はぁ......」

 

加賀「......あの」

 

信濃「あら、加賀さん。どうしたの?」

 

加賀「いえ」

 

信濃「何か?」

 

加賀「......信濃さんと司令官は仲が良さそうだなと思いまして」

 

信濃「私と司令官が?」

 

加賀「はい」

 

信濃「そう見えるの?」

 

加賀「付き合ってるんですか?」

 

信濃「話が飛び過ぎよ。付き合ってないわよ」

 

加賀「じゃぁ好き?」

 

信濃「何がじゃあなのよ。いいえ別に」

 

加賀「それは司令官を侮辱してるのですか?」

 

信濃「模範的解答を要求します」

 

加賀「ごめんなさい。参りました」

 

信濃「全く......あなたは好きなの?」

 

加賀「......分りません。ただ、信濃さん達を見てるとちょっと嫉妬を感じました」

 

信濃「そう」

 

加賀「......」

 

信濃「あの人はね、誰にでもそうよ。私の事は確かに好いてる様にも見えるけど、それでも自分からは絶対にある一定の範囲以上は踏み込んで来ないのよ」

 

加賀「そうなんですか?」

 

信濃「ええ、だからご覧の通り今もこんな感じよ」

 

加賀「そうですか......。何故でしょう」

 

信濃「何が?」

 

加賀「司令官がああなのは」

 

信濃「オジサンだからじゃない?」

 

加賀「えっ?」

 

信濃「ふふ、あなたもそんな顔するのね」

 

加賀「不覚」

 

 

龍田「司令官さ~ん、こんなところで煙草ですかぁ?」

 

中将「いる?」スッ

 

龍田「えっ」

 

中将「いらない?」

 

龍田「あっ......えっと......私......」

 

中将「大丈夫。誰にも言わないから」

 

龍田「知ってたの?」

 

中将「隠してたからね」

 

龍田「......侮れない人」

 

中将「一応本部の司令官だからねぇ。はい」

 

龍田「ありがと......」シュボッ

 

龍田「ふぅ~......」

 

中将「はぁ......」

 

龍田「......今日も平和ね」

 

中将「そうね」




一貫してオジサンでしたね。
でもこういうキャラが実は一番好きだったり。


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第36話 「引き取り」

本部の廊下で一人の女の子が掃除をしていました。
それを見掛けた中将が何となく気になって声を掛けました。


???「......」

 

中将「どしたの?」

 

???「?」

 

中将「掃除?」

 

???「はい」

 

中将「そっか。手伝おうか?」

 

???「......中将殿のお手を煩わせるかけにはいきません?」

 

中将(......旧式だな。殆ど封印されてると思ってたけど、こんな所にもいるんだな)

 

中将「はい、貸して」ヒョイ

 

???「あ」

 

中将「いいのいいの。暇だから。はい、君そこね」

 

???「了解しました」

 

中将「君名前は?」

 

???「朝日です」

 

中将「そっか」

 

朝日「......」サッサッ

 

中将「はい、終わり」

 

朝日「ありがとうございます」

 

中将「礼はいいって。そいじゃ――あ、大将」

 

大将「......中将」

 

中将「どうも、おはようございます」

 

大将「ああ、おはよう。で、お前は朝から艦娘をナンパか?」

 

中将「いやぁ、私もこの歳なんでこんな若い子は無理ですよ」

 

大将「そうか。いや、失礼な事を言ったな」

 

中将「いえいえ」クイクイ

 

中将「ん?」

 

朝日「......」ジッ

 

大将「ほう」

 

中将「? どしたの?」

 

朝日「......あ」

 

大将「中将、お前、娘はどうだ?」

 

中将「は?」

 

大将「冗談だ」

 

中将「......ま、いい奥さんがいたらいいんですけどね」

 

大将「いないのか?」

 

中将「ははは。これがなかなか縁がなくて」

 

大将「艦娘には抵抗はあるか?」

 

中将「ああいえ、あいつらはどっちかというと部下ですから」

 

大将「ふむ」

 

中将「あ、でも可愛いとは思いますよ? 別に異性に興味がないわけじゃありませんから」

 

大将「そうか」

 

クイクイ

 

中将「ん?」

 

朝日「......あの」

 

中将「うん」

 

朝日「私......ありがとうございます」

 

中将「お礼の言葉はさっきもらったよ」

 

大将「......中将」

 

中将「はい?」

 

大将「こいつ、朝日をお前の艦隊で引き取らないか?」

 

中将「え?」

 

大将「無論、戦力としてではない。事務方の仕事でもさせるといい」

 

中将「はぁ」

 

大将「何か不満が?」

 

中将「いえ。お受けします。暇なんで」

 

大将「暇?」

 

中将「あ」

 

大将「......くく、面白い男だな。じゃ、任せたぞ」

 

中将「はっ」

 

 

中将「......朝日」

 

朝日「はい」

 

中将「よろしく」スッ

 

朝日「......!」パァ

 

ギュッ

 

中将(こんなに笑うんだねぇ)

 

 

信濃「司令」

 

中将「うん?」

 

信濃「こちらの方は?」

 

中将「朝日ちゃん」

 

信濃「はぁ」

 

中将「仲良くしてね」

 

朝日「よろしくお願いします」ペコ

 

信濃「信濃です。よろしくね」

 

朝日「はい」

 

 

信濃「司令」

 

中将「ああ、うん。旧式の子だよ」

 

信濃「やっぱり。でもなんで?」

 

中将「いやぁ、偶然見つけたらなんか大将に面倒を見るように言われちゃってさ」

 

信濃「はぁ」

 

中将「ま、こんなオジサンだったら手を出さないと思ったんじゃない?」

 

信濃「は?」

 

中将「ごめんなさい。失言でした」ペコ

 

信濃「全く......また娘が増えたわね」

 

中将「あ、信濃さんもそう思うの?」

 

信濃「寧ろ、そう思ってなかったの?」

 

中将「はっはっは。結婚してないのに娘が多いってのもアレだね」

 

信濃「そう? 結構いい父親してると思うけど?」

 

中将「やめてよ。俺は信濃さん一筋よ?」

 

信濃「窓を眺めながら言うセリフじゃないでしょ......」

 

中将「いい天気だなぁ......眠い」

 

信濃「え?」

 

中将「さーて、仕事仕事!」

 

信濃「......はぁ」




朝日は中将に引き取られたみたいです。
彼がロリ○ンでないことを祈りましょう。
あ、それは筆者なので大丈夫ですね(ア


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第37話 「お願い」

大鯨が改造の事で提督になにやら不満を言っています。
約束(*第三部 27話 「説得」参照)がどうのこうのとも言っているようです。
どうしたんでしょう。


大鯨「お父さん!」

 

提督「ん」

 

大鯨「大鯨はいつになったら改造を受けれるんですか! もうレベル50ですよ! 練度的には十分だと思います!」

 

提督「......それなんだがな」

 

大鯨「?」

 

提督「大鯨、お前が改造を受けるには勲章が必要らしい」

 

大鯨「勲章?」

 

提督「そうだ。お前の改造は利根やマリアみたいに技術が少々高度らしくてな、その改造の許可をもらうにはある一定のノルマ的な評価が必要なんだ」

 

大鯨「それが勲章?」

 

提督「そう。そしてとても心苦しい事だが、その勲章の数が今のところ改造の許可をもらえるレベルに達していない」

 

大鯨「そんな......」

 

提督「だからな、もう少し辛抱する事に......」

 

大鯨「......やだ」

 

提督「......」

 

大鯨「やだぁ! 大鯨、お父さんとお風呂に入りたいよぉ! えぇぇーん」

 

提督「大鯨......お前そんなに俺と風呂に入りたいのか?」

 

大鯨「そうです!」

 

提督「なぜ?」

 

大鯨「親子なら当然です!」

 

提督「そこは最早ツッコむつもりはないが、それでも仲が良いからといって風呂に拘ることは無いだろう?」

 

大鯨「やっ! 先輩達と同じようにわたしもお父さんと楽しくお風呂に入りたいんです!」

 

提督「それはあくまでお前が仲間と一緒に楽しく風呂に入ってるという事だからな? 俺が常にあいつらと一緒に風呂に入っているわけじゃないからな?」

 

大鯨「え?」

 

翔鶴「言葉の面白いところですね。大鯨ちゃんの言い方だと私達が大佐と一緒にいつも楽しく入っているように聞こえますものね」

 

提督「それを今誤解されないように念を押している」

 

翔鶴「別に私は......いいんですけどね」ボソ

 

提督「......大鯨」

 

翔鶴(無視された! 絶対に聞こえていたと思うのに無視された!)ガーン

 

大鯨「なに?」

 

提督「プール......いや、海じゃだめか? それなら風呂みたいに水に浸かれるぞ」

 

大鯨「お・ふ・ろ がいいんです! お父さんと一緒に泡あわしたい!」

 

提督「......」

 

翔鶴「大佐」

 

提督「なんだ?」

 

翔鶴「もういっそのこと諦めて一緒に入ってあげては?」

 

大鯨「翔鶴お姉ちゃん!」パァ

 

翔鶴「はうっ」キューン

 

提督「何を言い出すんだ。そんな事俺は」

 

翔鶴「大佐はロリコンじゃないんでしょう?」ヒソ

 

提督「そうだ」ヒソ

 

翔鶴「なら、雷ちゃんや大鯨ちゃんの裸を見ても興奮しませんよね?」ヒソ

 

提督「そういう問題じゃないだろう」ヒソ

 

翔鶴「大丈夫ですよ。いかがわしい思惑さえなければ、見た目は何とか凄く年が離れた親子にも見えなくもないですし問題な――」

 

瑞鶴「異議あり!」バン

 

提督「瑞鶴......」

 

瑞鶴「あっ、ごめんなさい。失礼します」

 

提督「いや、いい。それでどうした?」

 

瑞鶴「偶然、あくまで偶然翔鶴姉の言葉が聞こえたから意見させてもうらうけど、その流れで行くと私だって大佐とお風呂に入っても問題ないじゃない!」

 

翔鶴「えっ」

 

提督「......なぜ?」

 

瑞鶴「わ、わたしだって......ほら見た目結構幼いじゃん? だから......」カァ

 

提督「体型のことで同じ空母の仲間でくくるなら龍驤や瑞鳳には遠く及ばないと思うんだが」

 

瑞鶴「そ、それは......ああ......」

 

 

~瑞鳳の部屋

 

瑞鳳「成敗!」

 

龍驤「にゃにをう! ならうちは、ぶぁあくはつ! や!」

 

祥鳳「二人とも何をしてるの......?」

 

千代田「カッコイイ決めセリフゲーム? だっけ。最後に思い浮かばなかったら負けなんだって」

 

千歳「終わりあるのそれ......」

 

瑞鳳「やるわね龍驤!ならわたしは......あ」

 

龍驤「......うん?」

 

翔鳳「どうしたの? 二人とも」

 

龍驤「いや、なんか今めっちゃ失礼な事言われた気がする......」

 

瑞鳳「え、龍驤も? そうなの、わたしもなんか今凄く失礼な噂話されてた気がするの......」

 

隼鷹「え、なにそれ。エスパー?」

 

鳳翔「き、気のせいですよ。多分......」

 

 

~再び、執務室

 

翔鶴「と、とにかく。大鯨ちゃんとお風呂に入ってあげたらどうです? 回りが公認してるなら後は大佐の倫理さえ大鯨ちゃんの為に沿えば......」

 

大鯨「おとーさん!」グイグイ

 

提督「......」

 

瑞鶴「お、おと――」

 

翔鶴「やめなさい」パシ

 

瑞鶴「へぶっ」

 

提督「......ふぅ」

 

翔鶴「あ」

 

瑞鶴「まさか」

 

大鯨「お父さん......?」(お、怒らせちゃった......?)

 

提督「翔鶴、瑞鶴」

 

翔鶴「はい」 瑞鶴「......はーい」ツーン

 

提督「......」スッ

 

翔鶴「そ、それは喫茶店のデザート食べ放題のチケット......!」

 

瑞鶴「嘘っ!? バイキングじゃないあの喫茶店にそんなチケットあるの!?」

 

提督「言いたい事は判るな?」

 

翔鶴「はっ、命にかえても!」

 

瑞鶴「絶対に守るわ!」

 

大鯨「?」ポカン

 

提督「ならいい。ほら」

 

翔鶴「やったぁ♪ 行くわよ瑞鶴!」キラキラ

 

瑞鶴「はーい。お・ね・え・ちゃん♪」キラキラ

 

翔鶴・瑞鶴「失礼しましたー」

 

バタン

 

 

提督「......」

 

大鯨「え......?」

 

提督「大鯨」

 

大鯨「え、なに?」

 

提督「入るか......風呂」

 

大鯨「おとーさん!」パァ




次回、幼女風呂回(確定)

ロリコン待ったなし。
閲覧注意警報発令!

ま、そんなにやり過ぎるつもりはありませんが。


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第38話 「入浴」R-15

大鯨とお風呂タイムです。
提督は今度は逃げたりしません。
がんばれ!


大鯨「わぁい。おっふろ、おっふろー♪」

 

提督「......」

 

大鯨「やっとお父さんとお風呂に入れました。大鯨嬉しいっ♪」

 

提督「なら、もう出てもいいか」

 

大鯨「だめっ。ちゃんと最後までして!」

 

提督「そのセリフあまり他で言うなよ。誤解される」(もう誤解されてもおかしくはない状況だけどな)

 

大鯨「はーい♪」

 

提督「嬉しそうだな」

 

大鯨「はいっ。だってずっと入りたかったんだもん♪」

 

提督「そうか......」

 

大鯨「なんだか元気ないですね。大鯨とはそんなに......」ウル

 

提督「いやそんなことは無い。ちょっと慣れてないだけだ」

 

大鯨「そうなんですか? じゃ、これからはいつでも入れるように慣れて下さいね」

 

提督「いつでも......どんな時でも入れるように、だな?」

 

大鯨「え?」

 

提督「“いつも”とは常に一緒に入るという意味じゃ......」

 

大鯨「そ、そんなに念を押すなんて、やっぱりお父さんは大鯨と......ふぇ」ジワ

 

提督「違うそうじゃない。誤解だ」

 

大鯨「ホント?」ジッ

 

提督「ああ」

 

大鯨「じゃ、ぎゅっとして」

 

提督「ん......」

 

ギュッ

 

裸の大鯨を抱きしめる事によって、提督に彼女の柔らかな感触が全て伝わった。

 

大鯨「んー......おとうさーん♪」スリスリ

 

提督「......」

 

提督(それにしても、全く恥ずかしがってる気配がないな。タオルを使わず一糸纏わないとは)

 

提督(慎ましやかとはいえ、成長途中の胸は明らかに殆どの駆逐艦よりかはあるし、腰だってしっかり縊れていて女の体をしている)

 

提督(なのに、それを一切隠さず晒していても恥ずかしがる様子はない。これは本当に親子で入っている感覚なのかもな。そうと考えれば、俺も少しは気が楽か)

 

大鯨「お父さん?」キョトン

 

提督「いや、なんでもない」

 

大鯨「? あっ、お父さん、お風呂の中でタオルを巻いたまま入ったらいけないんですよ!」

 

提督「......悪いが、これだけは外せない。ある意味男としてのプライドのようなものだ」

 

大鯨「プライド? 恥ずかしいんですか?」

 

提督「そうだ」

 

大鯨「んー......なら、仕方ないですね」ニコ

 

提督「良い子だな」ポン

 

大鯨「えへへー♪ それじゃ、早速洗いっこしましょー」

 

提督(やっぱりか)

 

提督「なら俺が洗ってやろう」

 

大鯨「本当ですか? ありがとうございます♪」

 

提督「ほら、後ろを向け」

 

大鯨「はーい」クルッ

 

提督「まず背中だな......」ワシャワシャ

 

大鯨「~♪」

 

提督「次は肩と腕......」ゴシゴシ

 

大鯨「ふぁ~......んふふ♪」

 

提督「......よし。これで......」

 

大鯨「......はい」スクッ

 

提督「なんで立つ?」

 

大鯨「え? だってまだお尻と足がまだですよ?」

 

提督「洗って欲しいのか?」

 

大鯨「うん♪」

 

提督「わかった......」

 

むにむに、ワシャシャ

 

大鯨「ん~♪」

 

提督「次は脚だ」

 

ごしごし、わしゃわしゃ

 

大鯨「はわぁ♪」トローン

 

提督「よし、これでいいだろう。大鯨前はじぶ......」

 

大鯨「はーい」クルッ

 

提督「......洗うぞ」

 

もにゅ、ごし、もにゅ、ごし

 

大鯨「ん......」

 

提督「次は腹......」

 

すー......ゴシッ、すー......ゴシッ

 

大鯨「ひゃっ、ふふ......あふ、あはははっ。くすぐったーい♪」

 

提督「次は......大鯨?」

 

大鯨「はい?」

 

提督「いいのか? ココ」

 

大鯨「え? な、なにか悪いとこありました......?」ビクッ

 

提督「いや、そうじゃないが......」

 

大鯨「本当ですか? よかったぁ......」ホッ

 

提督「......」(洗ってやらないと駄目みたいだな。仕方ない)

 

ふにぃ

 

大鯨「きゃうっ」ピクン

 

提督「すまん。痛かったか?」

 

大鯨「あ、ううん。ちょとくすぐったかっただけです」

 

提督「そうか......」

 

むにむに、くに......。

 

大鯨「んっ、ん~......」プルプル

 

提督「よし、終わったぞ」

 

大鯨「はふぅ......最後、ちょっとくすぐったくて我慢するの大変でしたぁ」

 

提督「よく我慢したな。偉いぞ」ナデナデ

 

大鯨「えへへ~♪」

 

提督「よし、最期は頭だ」

 

ワシャワシャ

 

大鯨「~♪ ~♪」

 

提督(これは本当に気持ちよさそうだな。彼女の時と一緒だ)

 

ザパァッ

 

大鯨「ひゃうっ」

 

提督「よし、終わりだ。先に湯船に入っていいぞ」

 

大鯨「えっ」

 

提督「ん? どうした?」

 

大鯨「わたし、普通のお風呂に入っても大丈夫なんですか?」

 

提督(しまった)

 

提督「......」

 

大鯨「お父さん?」

 

提督「さ、最近になって普通の風呂にも入れるようになったらしい......」

 

大鯨「え、そうなんですか!?」

 

提督「ああ、本当だ。気づいていないようだが、徐々に入渠に使っている溶液の成分を変えて普通のお湯に浸かっても大丈夫なように慣れさせていったんだ」

 

大鯨「それは、知らなかったです」

 

提督「すまん。言うのを忘れていた。皆にはもう言ってたんだけどな。お前に言うのは風呂に入るまで忘れていた」

 

提督(我ながら苦しすぎる言い訳だ)

 

大鯨「あ、気にしないで下さい。わたし、一緒にお父さんとこうやってお風呂に入れるようになっただけで嬉しいですから♪」ニコ

 

提督「......そうか」(罪悪感が......)

 

大鯨「ですよ~。あ、じゃあお風呂に入る前に今度は大鯨がお父さんを......」

 

提督「背中だけでいいぞ」

 

大鯨「え、それでいいんですか? お尻とか前は......」

 

提督「......男というのは前は自分で洗いたい生き物なんだ」

 

大鯨「そうなんだ~。分りました。それじゃ、後ろだけ大鯨が洗いますね」

 

提督「頼む」

 

大鯨「はいっ。お父さんの背中ひろーい♪」ゴシゴシ

 

 

チャプン

 

提督「......入るのも一緒か」

 

大鯨「はいっ♪」




入浴後、提督は何故か風呂上がりの割にはいつもよりやつれていたそうです。

はい、幼女回終了です。
軽めで申し訳ないですが、でもまたその内書きます。
ロリ......変態なので!


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第39話 「ピンチ」

執務室を異様な暗い空気が漂っています。
提督とその日の秘書艦である古鷹は揃って沈鬱な表情をしています。
一体何が......。


榛名「榛名、改造完了! リニューアルされて帰って来ました!」

 

提督「......」

 

古鷹「......」

 

榛名「帰って......え?」

 

古鷹「はっ。は、榛名さん! 大佐、大佐! 榛名さんですよ! 改造を受けて帰って来ましたよ」ユサユサ

 

提督「はっ」

 

榛名「大佐? 古鷹さん......?」

 

提督「ああ、榛名か。うん、改造を受けて来たんだな」

 

榛名「ええ。そうです! どうですか?」クルーリ

 

提督「......あ、ああ。いいぞ。いい感じだ」

 

榛名「......へ?」

 

古鷹(大佐!)

 

榛名「あの、大佐どうかしました? なんだか様子が......」

 

提督「......」

 

古鷹「大佐!」ヒソ

 

ギュムッ

 

提督「!」

 

榛名「あのー......」

 

提督「榛名」

 

ギュッ

 

提督「すまない。お前の姿にちょっと見惚れていた」

 

榛名「え......? そ、そんなぁ」カァ

 

古鷹(ああ......凄い動揺してる。こんなに褒める大佐見た事ないよ......)

 

提督「榛名、よく戻って来た」ナデ

 

榛名「大佐ぁ......」スリスリ

 

提督「改造した甲斐があった」ナデナデ

 

榛名「ああん、大佐......」トローン

 

提督「ふっ......お前の前では資材なんて霞む......」

 

古鷹(大佐ぁ!)

 

榛名「そんなぁ......褒めすぎですぅ」テレテレ

 

古鷹「......」

 

榛名「大佐、何だか今日の大佐凄く優しいですね」

 

提督「ああ、今の俺はお前の為なら何でも......」

 

古鷹「ちょ、大佐それはだ――」

 

榛名「古鷹さん」

 

古鷹「!」ビクッ

 

榛名「今、凄く良いところなんです。邪魔......しないで下さいね?」ニコォ

 

古鷹「ひぃっ」

 

榛名「あ、大佐ごめんなさい。今なんて......大佐?」キョロキョロ

 

提督「古鷹大丈夫か?」

 

古鷹「......え?」ブルブル

 

提督「怖い思いをさせてしまったな」ギュッ

 

古鷹「きゃっ......あ......え......?」

 

榛名「!?」

 

提督「すまないな......」ナデ

 

古鷹「そ、そんなやめ......いや、そうじゃなく......はう」カァァ

 

榛名「古鷹さん......」プルプル

 

古鷹「あ......大佐ぁ......た......はっ!」

 

榛名「......」ゴゴゴ

 

古鷹「!!」

 

提督「古鷹?」

 

古鷹「た、大佐はな、離して......!」ジタバタ

 

提督「ふるた......? っ」グラ

 

ポヨン

 

榛名「キャッチです♪ もう、大佐ったら急にいなくなっちゃうんですから」

 

提督「はる......」

 

榛名「大佐......ん」

 

チュウ

 

提督「む......んぐ......」

 

古鷹(人の目の前で何してるのー!?)

 

榛名「っふ......大佐、さっき大佐は榛名の為なら何でもしてくれるって言おうとしませんでした?」

 

提督「......俺は」ボー

 

古鷹(あ、正気に戻って来た)

 

榛名「じゃぁ、ここで榛名と......」スルッ

 

古鷹「ちょっ」

 

榛名「ふふふ......」

 

バッ

 

榛名「むんぐ!?」

 

叢雲「はい。却下。ダメよダメ。全く、何やってるのよ」

 

初春「ふふふ、危なかったのぉ大佐。いや、惜しいことしたか、の?」

 

古鷹「む、叢雲さん、初春さぁん!」ウル

 

榛名「っぷは、え、あ......」

 

叢雲「榛名さん、自分を見失っちゃダメよ。良い子なのがあなたの取り得でしょ?」

 

初春「ま、今回は大佐がほぼ原因じゃ。そう厳しくいう事もいないじゃろ」

 

叢雲「二人ともこの場は私達が預かるわ。古鷹さん、悪いけどちょっとの間だけ秘書艦の役割代らせてね」

 

初春「榛名殿も少しだけ我慢してたもれ。大佐に会うなら彼が落ち着いてから、の?」

 

古鷹「分りました。お任せします」

 

榛名「あう......私ったら......ご迷惑をお掛けしました。大佐をお願いします」ペコリ

 

叢雲「ええ。任せなさい」

 

初春「期待に十二分に応えてみせようぞ」ブイッ

 

古鷹「お願いします。それでは――」

 

榛名「失礼しました」

 

バタン

 

 

叢雲「......」

 

初春「さて?」

 

叢雲「一体どうしたのよ?」

 

提督「これを......」

 

叢雲「恒例の資材残量ね。今度も弾薬が3桁なのかしら? それとも2け......」

 

初春「ん? おお、これは凄い。マル一つか」

 

叢雲「大佐これ......」

 

提督「ナノ資材は怖いな。手軽に運用できる分、消費する時の配慮が欠けてしまう」

 

初春「何に使ったのじゃ?」

 

提督「榛名の改造に......」

 

叢雲「ああ......そりゃ言えないわよね」

 

提督「榛名を見た時罪悪感でちょっと取り乱してしまった」

 

初春「ちょっと?」ニヤニヤ

 

叢雲「初春」

 

初春「はいはい」コウサーン

 

叢雲「でも、これは......どうしよう。うーん......」

 

提督「補給だけでなく、開発や建造にも転用できるとはな。ふっ.....調子に乗ってしまった」

 

ダキッ

 

初春「よしよし。大佐に悪気はなかったのだから、そんなに思いつめる事はないぞえ」

 

叢雲「あ、ちょっと」

 

初春(役得じゃ)ニヒヒ

 

提督「......すまない」ギュッ

 

初春「あ......ん......ふふ。よいよい」(愛いのお♪)

 

叢雲(大佐......こりゃそうとう参ってるわね)

 

叢雲「ま、資材に関しては大淀さんと加賀さんと......」

 

初春「あと、秋雲と夕雲じゃな。あ奴達もなかなかやりおる」

 

叢雲「うん。それ以外にも頼りになりそうな子達に相談してみるからそんなに心配しないで」

 

提督「ああ......」

 

叢雲「それじゃわたした......」

 

叢雲「初春」

 

初春「んー?」ナデナデ

 

叢雲「頼んだわよ、大佐」

 

初春「うむ。任せておけい」ブイッ

 

叢雲「もう......」クス




その後、叢雲と達の尽力で存在がなくなってしまっていた弾薬はあっという間に6000まで回復したようです。(リアル)

ベテラン勢スゲー!


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第40話 「エアコン」

その日はエアコンの最終設置日。
提督の鎮守府の基地全ての施設にエアコンの設置が完了する日です。


カチ、カチ......キィ......バタンッ。

 

明石「ふぅ......よし、設置完了!」

 

わぁぁぁぁぁ

 

北上「え? マジ? これでもう暑いからって大井っちにパンツ脱がされる危険がなくなるの?」

 

川内「わーエアコンだー。涼しい♪」

 

不知火「......」

 

衣笠「あまりもの快適さに不知火が言葉を発する事を忘れて風に当たってる......」

 

ハチ「涼しいですねぇ♪ 潜水艦なだけに特に感慨深いです」

 

鈴谷「うーん......」

 

あきつ「何を悩んでいるでありますか?」

 

鈴谷「いや、エアコンついたじゃん? これで涼しくて快適になるわけだから鈴谷がパンツを脱いでる意味が......」

 

あきつ「えっ?」

 

伊勢「うわぁ、これで暑さにだれる度に扶桑たちの所にいって迷惑を掛けずにすむね」

 

扶桑「......それ、どういう効果で避暑になっていたのか教えて貰えますか?」

 

龍驤「これで裸で寝る日々ともおさらばやー♪」

 

瑞鳳「え、裸だったの!?」

 

わーわー

 

提督「明石、それに妖精と手伝ってくれた皆、ご苦労だったな」

 

明石「いえ、私も久しぶりに工作らしい工作ができて楽しかったですから」

 

加古「そだねー。偶にはこんな風に汗水垂らせて働くってのもいいね」

 

妖精「~♪」

 

提督「そう言って貰えると俺も嬉しい。だが、流石にそれだけで済ませるつもりはない。大淀、鳳翔」

 

鳳翔「はい」

 

大淀「待っていました」

 

提督「皆、聞いてくれっ。明石たちの労を労う為にかき氷を用意した。勿論皆の分もある。これで一つ納涼といこうっ」

 

きゃぁぁぁああ♪

 

明石「大佐......ありがとうっ」

 

青葉「くぁぁぁぁぁ! 冷たいですねぇ、キーンときますねぇ!」

 

妖精「~~♪」

 

提督「慌てて食べるなよ。沢山ある」

 

 

提督「明石、どうだ?」

 

明石「美味しいです。いいですねこういうの♪」

 

提督「そうか、気にいって貰えたようで何よりだ」

 

加賀「しゃくしゃく......」ウットリ

 

熊野「これは......これはいいものですね♪」

 

初雪「......美味しい」

 

陽炎「ちょっとそれあたしのレモン!」

 

弥生「イチゴで我慢」

 

Z1「弥生ちゃん......かき氷に夢中になり過ぎだよ......」

 

隼鷹「夏はやっぱりビールかき氷でしょ!」

 

飛鷹「先に言っておくけど、それ想像より美味しくないから」

 

 

提督「ふむ、皆思い思いにエアコンの設置を喜び、納涼を楽しんでいるな」

 

霧島「念願のエアコンですからね。無理もありませんよ」

 

武蔵「我々戦艦組も大変ありがたい。こう暑いと胸が蒸れてな」チラ

 

比叡「それは、わたし達に対する当てつけですか!? ね? 日向さん」

 

日向「私に振らないでよ......くっ」

 

提督「......黒潮、楽しんでるか?」

 

黒潮「へっ? 勿論や!」

 

山城(逃げた)

 

龍田(逃げたわねぇ)

 

 

――その夜

 

提督「エアコンの一つで大分変るものだな」

 

赤城「そうですね。快適ですよね」

 

提督「窓を閉めたせいで虫の鳴き声が聞こえ難くなったのは少し寂しいがな」

 

赤城「ああ、それはあるかもしれません」

 

提督「まぁそれも、蒸し暑くて寝難かった頃と比べれば大分マシか」

 

赤城「そうですね。私結構汗を掻くので胸とか蒸れちゃって......」パタパタ

 

提督「エアコンが効いているのに、わざわざ暑かった頃を再現するな」

 

赤城「えへ」

 

提督「えへ、じゃない。早く整えろ」

 

赤城「ちぇー」

 

提督「子供ぶってもダメだ」

 

赤城「......お堅いですね」

 

提督「......この快適な空間、暑さで途中で気力が尽きた所為で残った仕事を片づけるにはうってつけだ」

 

赤城「うぅ、あまりにも灰色過ぎる使い方です......」

 

提督「逆に言えば、これからはもっと時間と心の余裕ができるという事だ。今日頑張れば明日への幸せに繋がると考えろ」

 

赤城「はいはい。頑張りますよー」

 

提督「ああ、頑張れ。なんとか終わらせたら昼の残りの素麺でも食べよう」

 

赤城「一航戦参ります!」

 

提督(現金な奴だ)




エアコンは文明の利器だと思います。
夏はこれがないといろいろ捗りませんから。

このSSだって妄想だけで終わってたかもしれませんし。
あ、今でも半分ただの妄想かw


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第41話 「おいかけっこ」(前篇)

提督がお出かけをするそうです。


提督「ちょっと出掛けてくる」

 

夕張「はえ? 今日何か外にでるお仕事とかありましたっけ?」

 

提督「いや、今日は非番だ」

 

夕張「制服着てますけど?」

 

提督「つい忘れて着て来てしまった。代理は長門に頼んである」

 

夕張「あ、そうですか」

 

提督「夕張、悪いが上着を掛けておいてくれ」スッ

 

夕張「あっ......」ポス

 

提督「俺は私室で着替えてくる」

 

夕張「あ、はい」

 

バタン

 

 

夕張「......」ポフ

 

夕張「すん......んー......くふふ♪」(何か幸せ)

 

 

ガチャ

 

提督「じゃあ行って来る」

 

夕張「あ、はい行ってらっしゃい」(わ、大佐のラフな格好初めて見るかも)

 

青葉・武蔵・瑞鳳「......」コソコソ

 

 

武蔵「おい、大佐のあの格好観たか?」

 

青葉「見ました。青葉見ちゃいました」

 

瑞鳳「大佐休みなんでしょ? 別におかしくなんか......」

 

武蔵「確かに。格好はそんなに畏まってないし軽いものだった。だが、自分たちの慕う男が一人で外に出るとなると気になるじゃないか」

 

青葉「です! 大佐のプライバシーを侵害しない程度の情報の把握は、あの人の身の安全を確保する為にもある程度は必要です」

 

瑞鳳「もう割と侵害しそうな事しようとしてるように思えるけど......」

 

武蔵「ならヒヨコちゃんは残るか?」

 

瑞鳳「ひ、ヒヨ......ってもしかしてわたしの事!?」

 

青葉「あ、なんか分ります。小さくてかわ――」

 

瑞鳳「......」ジトッ

 

青葉「あはは。ごめんなさい。いーこいーこ」ナデナデ

 

瑞鳳「もうっ、やめてよ!」プクッ

 

武蔵「子ども扱いが嫌なら大人らしく振る舞って私達と行動を共にするか? それならお前の事を立派なニワトリとして認識を改めて扱ってやるぞ?」

 

瑞鳳「ニワ......鳥類から離れてよ!!」

 

青葉「くく......ひひ......ち、チキン......ぷくく......つ、ツボに......」

 

瑞鳳「青葉さん!」

 

武蔵「まぁ冗談だ。大佐が外に出るぞ。さぁ忠犬部隊出撃だ!」

 

青葉「甲斐犬青葉行きまーす」←最近チワワから甲斐犬にジョブチェンジをした。

 

武蔵「うむ、正に甲斐犬(飼い犬)の如く活躍に期待しているぞ」

 

瑞鳳「ちゅ、忠犬部隊って......」

 

武蔵「何をしているチワワ。行くぞ」

 

瑞鳳「え、わたし!? 今度は瑞鳳がチワワなの!?」

 

武蔵「ふっ......そのきゃんきゃん喚く愛らしい姿、正にチワワじゃないか。さぁこの武蔵について来い!」

 

瑞鳳「......武蔵さんは何犬のつもりなのかしら」

 

青葉「一応、ハスキーが好きみたいですけど何か名前が気に入らいないみたいで、表だって言う事はないみたいですよ」

 

瑞鳳「それってやっぱり......」

 

青葉「シベリアンの『シベリア』が気に入らないんでしょうね。ソ連を連想させるから」

 

瑞鳳「今はロシアなのに」

 

青葉「武蔵さん、そういうところちょっと融通効きませんからね」

 

武蔵「何をしている青ワン、瑞ワン。行くぞー!」

 

青葉「あ、はーい」

 

瑞鶴「ず、瑞ワン......まぁヒヨコやニワトリよりマシか......あ、行く、行くから待ってー!」

 




久しぶりに2編か3編くらいの日常ものをやってみようと思いました。

夏イベント近いですね。
周りは色々盛り上がってますが、個人的にイベントは特別な報酬を得る為に面倒な任務(クエスト)に参加しないといけないというマイナスな考えが先に立ってしまいます。
極めて駄目な提督ですね。
まぁ、だからこそ昔はイベントに参加せず、401とか持ってないわけですが。
今では割とその事を後悔してます。


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第42話 「おいかけっこ」(中編)

大佐を追いかけていた武蔵達は、今は車に乗って大佐を追跡していいます。
車まで使って大佐は何処に行くつもりでしょう。


青葉「大佐発見! 只今大佐の後方より20mの位置です」

 

瑞鳳「そんな事言わななくたって分かるわよ。一緒にいるんだから」

 

武蔵「まさか車で移動するとはな。レンタカーが間に合ってよかった」

 

青葉「軍の所属証見せたらあっさり貸してくれましたね。良かったぁ」

 

瑞鳳「いくら私達の事信用しているからって所属証だけで貸すのもどうかと思うけどね」

 

武蔵「ふっ、そこは我ら大日本帝国海軍の威信の賜物......いや、大佐が献身的にここの地域を守ってくれているお蔭だな」

 

青葉「大佐の指揮のお蔭で未だ青葉達は此処の人たちに被害を及ぼしていないですからね。流石大佐です!」

 

瑞鳳「まぁあまりべた褒めはしたくないけど、わたし達だけじゃあんなに上手く動けないものね」

 

武蔵「うむ、やはり主人あっての私達なんだよ。お、大佐の車が止まった」

 

青葉「あ、距離取って下さいね。気付かれてしまいます」

 

瑞鳳「いったん通り過ぎて......あ、あそこの端に停まろう! 幅員が広がってる」

 

武蔵「よし」

 

ブロロロロロ......キッ。

 

 

青葉「ここは......」

 

武蔵「石段だな......神社か?」

 

瑞鳳「ここ、一応日本領だけど、日本じゃないよ?」

 

青葉「大佐はここを上ったのでしょうか」

 

武蔵「高いな......一体何段、何メートルあるんだ?」

 

瑞鳳「木が生い茂ってトンネルみたいに石段の上を覆ってるね......涼しいけどなんか......」

 

ヒュゥ~

 

瑞鳳「ひゃっ」ピト

 

青葉「ひっ」ピト

 

武蔵「お前達......」

 

青葉「あ、あはは。ご、ごめんなさい武蔵さん。ちょ、ちょっと手を繋いでいてもらえますか? できれば階段を上がりきるまで」

 

瑞鳳「ず、瑞鳳も!」

 

武蔵「仕方ないな。ほら瑞鳳は私の方に乗れ、肩車だ。青葉は抱いて行ってやる」

 

瑞鳳「えっ、そ、そんな悪いよ。流石に自分で歩ける......」

 

武蔵「遠慮するな。ほらっ」ヒョイ

 

瑞鳳「きゃっ、ぱ、パンツ見えちゃ......」

 

武蔵「こんな所で見るやつなんていなさいさ。ほら、青葉も」

 

青葉「え、えっと......抱くっていうのはしがみ付くような抱かれ方ではありませんよね? も、もしかしてお、お姫さ......」

 

武蔵「その通りだ。よっ」スッ

 

青葉「きゃぁっ」

 

武蔵「これでよし」

 

青葉「あ、あう......ちょ、ちょっとこれは恥ずかしいですね」

 

瑞鳳「二人も抱えて......お、重くない?」

 

武蔵「私は戦艦だぞ? しかも大和型だ。速さではお前達に負けるが、事体力に関しては言うに及ぶまい? 勿論膂力もだ」

 

瑞鳳(ほんと涼しい顔してる......)

 

青葉(凄いなぁ......)

 

武蔵「ふふ、二人とも得心がいったようだな。さ、上るぞ」

 

青葉「よ、宜しくお願いします」

 

瑞鳳「あ、ありがと......」

 

武蔵「ふっ、先ずは一段っと」

 

 

提督「......?」

 

提督(何か下の方で聞こえたような。気配.......?)

 

提督「......ここを使う人、俺以外にもいるんだな」

 

提督「......」クル

 

提督(さて、もうひと踏ん張りだ)

 

 

武蔵「......」スッ

 

武蔵「どうだ瑞鳳何か見えるか?」ヒソ

 

瑞鳳「うーん......」キョロキョロ

 

瑞鳳「あ、いたっ。大佐見つけたよ。なんかおっきな木の前でしゃがんでる」

 

武蔵「木の前でしゃがんでる? ......見当がつかんな。なにやってるんだ? おい、青葉。お前何か――」

 

青葉「にへへ......武蔵さんのおっぱいふかふ......」

 

武蔵「......」パッ

 

青葉「ひゃあっ!?」

 

トスッ

 

武蔵「起きたか」

 

青葉「あ......え? ああ、あはは。お、おはようございます」

 

武蔵「おはよう。よく眠れたうようで何よりだ。そんなに気持ち良かったか」

 

青葉「え、えっとそれは、その......!」アセアセ

 

武蔵「冗談だ。それより聞け――」

 

 

青葉「うーん......」ジー

 

武蔵「どう見る?」

 

青葉「何か......お祈り?」

 

瑞鳳「やっぱりそう見える?」

 

武蔵「まぁ妥当だよな」

 

青葉「あのおっきな木、わざわざ日本で使われているのと同じしめ縄が巻かれてますし、多分間違いないかと」

 

武蔵「鍛錬の一環か? 最後に神木に祈願して無事を祈るとか」

 

瑞鳳「あ、それなんか大佐っぽい」

 

青葉「ですねぇ。でもなーんかそれにしては大佐の雰囲気が......あ」

 

武蔵「どうした?」

 

青葉「し、しまった......見失っちゃいました! 大佐の姿が......」

 

武蔵「なに? もっとよく探せ」

 

瑞鳳「わ、わたしも探すっ」

 

 

「その必要はないぞ」

 

 

武蔵・青葉・瑞鳳「え?」

 

提督「お前達、着いて来ていたのか」




前篇、後編では無理でしたね。
じゃ、前・中ってことで次で終われるようにします。
お休みっ!


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第43話 「おいかけっこ」(後編)

後篇です。
大佐に見つかりました。
どうなるんでしょう、怒られる?


武蔵「た、大佐」

 

青葉「あわわ、見つかってしまいました」

 

瑞鳳「ふぇ......」ジワ

 

提督「......取り敢えず怒らないから瑞鳳は泣くな」ポン

 

瑞鳳「ふ......ぐす、ごめんなふぁぃ......」

 

提督「悪い事をしていると思っていたのか? 大丈夫だ。俺は気にしてはいない」ナデナデ

 

武蔵「......」

 

青葉「......」

 

武蔵「た、大佐?」

 

青葉「あ、青葉達も実は......」

 

提督「お前達は反省していいんだぞ?」

 

武蔵「うっ......」タジッ

 

青葉「は、反省......いえ、猛省します!」ビシッ

 

提督「......ふっ。もういい。それで一体どうしたんだ? なんで着いてきた?」

 

青葉「そ、その大佐が私服で一人で何処かに行くのが珍しくて......」

 

武蔵「気になって、な......」

 

瑞鳳「わ、わた......ひっく、わたし......も誘われたときに興味......ぐす、持っちゃって......」

 

提督「なるほど。それで追いかけてきたと」

 

青葉「はい」 武蔵「そうだ......です」 瑞鳳「うん......」

 

提督「そうか......まぁ、確かに一人で来たかったから誰にも特に目的は言わなかったけどな」

 

青葉「ご、ごめんなさいです! お、お邪魔しちゃって」

 

武蔵「私も......少々浅慮だった。申し訳ない」

 

瑞鳳「う......ぐすっ......!」ギュゥ

 

提督「瑞鳳はもういい。だから落ち着くまでそうしてろ。な?」

 

瑞鳳「......」コク

 

提督「さてと、まあ一人で来るつもりだったとは言え、別に隠し事のつもりでもないしな。知りたいなら教えてやるが」

 

青葉「あ、はい。その......図々しいのは承知してますが、教えて頂けるのなら......」

 

武蔵「......」

 

提督「武蔵は何となく雰囲気で察していたみたいだな?」

 

 

武蔵「神木に祈り......祈願かとも思ったが、なるべく一人で来たいと思っていたという事は......」

 

提督「そうだ。冥福を祈りに来た」

 

青葉「冥福......」

 

瑞鳳「お、お墓参り......?」

 

提督「まぁそんなようなものだ」

 

武蔵(やはりか)

 

提督「俺が此処に提督として赴任して間もない頃は、当然だが今より未熟でな。故意ではないとは言え、作戦中に轟沈した艦娘も決して数は多くはないが、少なからずいたんだ」

 

青葉・武蔵・瑞鳳「......」

 

提督「幸いにして部下たちはそれでも俺を支えてくれ、そして理解してくれた。だから俺も今この時まで挫折することなくお前たちの最期に正面から向き合うことができているわけだが」

 

提督「ただ、その中でも一人だけ今でも後悔......というのか、轟沈させてしまった事が自分の所為として許し切れていない奴が一人いてな」

 

武蔵「では、その一人の為に此処に?」

 

提督「ん、冥福を祈る事自体は沈んでしまった奴ら全員に捧げているつもりだが、割合的にはまあそうだな。そいつに対するものが多いか」

 

青葉「その、差支えなければ教えて頂けますか? その人は......」

 

瑞鳳「あ、青葉さん......」

 

提督「いや、いい。さっきも言った通り別に隠しているつもりはなかった。訊かれればお前達にならいつでも話せる心づもりではあったしな」

 

武蔵「大佐......」

 

提督「その一人とはな、千代田の事だ」

 

青葉「え、千代田さん? でも彼女は今も居ますよ? あっ......」

 

武蔵「二人目、か」

 

提督「そうだ。今いいる千代田は先代と言ったらいいのか、前にいた千代田の後にうちに来た子だ」

 

瑞鳳「知らなかった......いつも姉妹仲良くしてるから......」

 

提督「いや、実際に仲はいいぞ? 今の千代田も姉の事を慕っているし、千歳もそれは同じだ。そして今の千代田はこの事も知っている」

 

青葉「......」

 

武蔵「私はともかく、お前達はその事を知らなかったのか」

 

瑞鳳「わたしが大佐の鎮守府に来たのはそんなに前の事じゃないから......」

 

青葉「恥ずかながら重巡の中ではわたしが一番最後に所属したんです。大佐の話ぶりから察するに、前の千代田さんがいたのはもっと前の頃だと思います」

 

提督「そうだ。青葉がうちに来る前だからお前たちが知らないのは当然だ」

 

提督「先代の千代田と千歳を一緒に出撃させた時だったな。俺の判断の誤りから千代田が轟沈しててしまった」

 

提督「千歳は『実戦では仕方のない事、覚悟はできていました』なんて気丈にふるまっていたが、その眼は悲しみに濡れていた」

 

提督「無理もないだろう。あいつらはほぼ二人揃ってうちに来たし、その練度もお互いほぼ一緒の時間の中で成長してきたんだ。二人の間に強い絆があったのは明白だった」

 

瑞鳳「大佐......」

 

提督「だが、それでも俺の事を気に掛けて努めて明るい顔で許してくれたあいつの笑顔が俺には相当堪えてな。以降はこうやって時間がある時に冥福を祈って自己満足をしている次第だ」

 

武蔵「その木は?」

 

提督「昔、偶然見つけてな。あまりにも立派だったから土地の所有者に相談して全て自費で購入した。この石段もしめ縄も全部自前で用意した」

 

武蔵「なるほどな。ではここはさながら大佐にとっては慰霊の地というわけだな」

 

青葉「そ、そんな大事な場所、大事な事を青葉達は......」ジワ

 

瑞鳳「っ......!」ギュウッ

 

提督「よしよし」ナデナデ

 

提督「いや、そこは気にするな。さっきも言った通り別に隠していたつもりはない。それに沈んだ奴らだって仲間が来てくれれば嬉しい筈だ」

 

青葉「そんな......でも......」

 

提督「気にするなと言ったろ? それにせっかくここまで来たんだ、どうせならこの景色も見て行け」

 

青葉「景色? あ......」

 

武蔵「瑞鳳、瑞鶴見ろ」

 

瑞鳳「ぐす......ん......? あ......」

 

提督「良い眺めだろう? 俺がここに来たのはこの景色を見る為でもあるんだ」

 

武蔵「山を登っていた自覚はあったが......こんなにも高い所に来ていたんだな」

 

瑞鳳「わぁ......きれい......」

 

青葉「あ、わたし達の基地も見えます! 小っちゃいですねぇ!」

 

提督「ああ、そうだな、小さい。だが俺たちはこの手を広げば全て覆う事が出来るこの地を今までずっと守ってきたんだ」

 

瑞鳳「大佐......」

 

青葉「そう......ですね。守ってきました」

 

武蔵「誇らしいな。自惚れでなく、本当にそう思える」

 

提督「そうだ。誇りだ。未だ過去を引きずっている俺が言ってもあまり格好にならないが、お前達はそのあり方をゆめ忘れるな。常に強く、潔く、正しくいてくれ。これは俺からお前達への、昔から一貫して変わらない心からの願いだ」

 

武蔵・青葉・瑞鳳「了解!」バッ

 

提督「......良い部下を持った本当に」




ちょっとほんわか良い話にしたつもりですが、ま、これは実体験が元ネタです。
最後の改造が目前に迫っていた千代田の轟沈は自分にとっては結構衝撃でした。
轟沈もあれが初めてでしたしね。

その後、中破進撃や夜戦を警戒して行わなかったりと、前より多少は考えて行動するようになりました。
教訓になったとは言え、なるべくこういう事態は本当に避けたいですね。


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第44話 「音楽」

村雨が提督の机の上にあるデジタルオーディオプレイヤーを見ています。
何が保存してあるのか気になっているのか、チラチラ見てます。

そんな彼女に提督が気づいて、声を掛けます。



村雨「大佐これ」

 

提督「ん? それがどうかしたか?」

 

村雨「あ、ううん。どんな曲が入っているのかなぁって」

 

提督「まさに言葉の如くいろいろだな。ジャンル問わず気に入ったものを入れている」

 

村雨「へぇ、アルバム一枚丸ごと入れたりはしないんですか?」

 

提督「俺は聞きたい曲だけを選んで入れる方だからな。おかげで中間クラスのモデルながら、未だに容量は余裕がある」

 

村雨「ふーん......」

 

提督「聴いてみるか?」

 

村雨「えっ、いいんですか?」

 

提督「興味がありそうに見えたからな。それにもしかしたらお前が気に入る曲もあるかもしれないし」

 

村雨「大佐が許してくれるなら聴いてみたいわ」

 

提督「ほら。好きに操作していいぞ」

 

村雨「ありがとー♪ ん......」カチッ

 

 

村雨「大佐、アニソンも聴くのね」

 

提督「実際に教えて貰ってアニメの曲だと知ったものある。が、好きなものは好きだな」

 

村雨「他にはクラシックに......フォークソング? に、わっ、急に激し......これロックですか?」

 

提督「そうだ。ロックは特に色々ジャンルがあるから聞いていて飽きない」

 

村雨「へぇ、レゲェ風っていうのかしらこれ。ん......よく聴くと激しくてもちゃんとリズムが取れてていい感じね」

 

提督「ああ。なんでもじっくり聴いてみるものだぞ」

 

村雨「んー、これは民謡? 演歌、歌謡曲、何かのサントラかしら......本当にいろいろですね」

 

提督「まぁな」

 

村雨「......あ、これ」

 

提督「何か良いのがあったか?」

 

村雨「大佐これ、これなんていうの?」

 

提督「......アイリッシュパンクだな。歌詞がないタイプの曲だが、そうかこれが気に入ったか」

 

村雨「このアーティストいいかも、他にも聴いてみたいわ。でもこの曲良いわねぇ」

 

提督「どういうところが気に入った?」

 

村雨「最初は普通のアイリッシュ曲だと思ったんだけど、徐々に曲調が早くなってドラムの音がリズミカルになるところかしら。後半のエレキギターもいいわね。こんな曲調初めて♪」

 

提督「このアーティストは結構なベテランだ。だが、少なくとも俺たちの国では知っている人はあまりいない」

 

村雨「そうなの? こんなに良い曲なのに」

 

提督「本国ではどうかは知らないが、何故かな。だが、これを好きな人は本当に好きな人ばかりみたいだ。おかげでアンチもあまり見かけない」

 

村雨「へぇ~」

 

提督「村雨はどういのを聴くんだ?」

 

村雨「私ですか? 私は意外にも思うかもしれませんが、激しめのロックが好きです」

 

提督「なるほど。確かに普段のお前のイメージからしたら意外だな。俺のやつには気に入ったのはなかったか?」

 

村雨「結構もう私が聴いてるのが多かったですから」

 

提督「やるな。お前は本当にそのジャンルが好きそうだ」

 

村雨「人によってはうるさく感じるだけかもしれませんが、私は逆にこういう曲を聴くと元気になるんですよねえ」

 

提督「解る。感情がフィルター無しで歌になった感じが俺は好きだな」

 

村雨「良い例えですね。私もそんな感じです♪」

 

 

――数分後

 

村雨「じゃ、これとこれと......」

 

村雨「これが欲しいです」

 

提督「結構見つかったんだな。良かった」

 

村雨「いえ、おかげで私のプレイヤーにも新しいジャンルが加わります♪」

 

提督「曲は俺のパソコンから直接入れるか?」

 

村雨「そうですね。その時に今度は私のも聴いてみてください。気に入るのがあればその時に交換しましょう」

 

提督「了解した。楽しみにしてる」




筆者もいろいろ聴きます。
最近は本文に出ていましたが、アイリッシュパンクがブームです。

その中でも特に好きな曲があるのですが、これが残念ながらPVが見当たりません。
演奏しているところ是非見てみたいなぁ。


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第45話 「髪型」

近海で出撃任務中の暁達。
夜戦に突入して残存勢力の掃討に入りました。
暁はやる気満々で戦闘態勢に入ったのですが――


暁「夜戦! 残りの敵にはこの暁がしっかり淑女としての礼儀作法を......」

 

チュドーン

 

暁「 」

 

朧「え?」

 

千歳「よしっ」

 

天津「ち、千歳さん?」

 

谷風「い、今のって雷撃だよね。なんで? どうして?」アセ

 

初春「ん? どうしたのじゃ、お主ら?」

 

千代田「へ?」

 

 

~鎮守府

 

天津「ああ、水上機空母の千歳さんだったの」

 

谷風「いやぁすっかり航空の方の千歳さんかと思ってたから、夜戦の時はびっくりしたよー」

 

千歳「そうですよ。見分けが付くようにちょっと髪伸ばしてたんだけどな。気付かなかった?」

 

暁「あ、そういえば。千代田さんも......」

 

千代田「そ、わたしも水上機の方の千代田よ。髪の毛、伸ばした千歳姉より更に長いからわたしは分かり易いと思うけど」

 

朧「イメージチェンジしたのかと思ってました」

 

初春「ははは。皆気づいてなかったと見える」

 

暁「初春は気付いてたの?」

 

初春「然り」

 

朧「よく判りましたねー」

 

初春「それは、ほれ。年期じゃ。妾の方が年寄なのじゃ」コツン

 

谷風「こんな可愛くて愛嬌のある年寄いないよー」

 

千歳「ふふ、初春さんは昔から居るものね。少しくらいの違和感でも直ぐに判るのよね」

 

千代田「初さんやるぅ」

 

初春「あまり褒めないでくりゃれ。照れるわ」ポッ

 

 

暁「にしても、見た目が一緒だと例え種類が違っても暁はやっぱり見間違えそう」

 

千歳「伸ばすだけじゃダメかしら」

 

朧「そうですねー......。あ、伸ばした髪をポニテールにしたりして、航空の方の千歳さん達とは違う髪型にしてみてはどうでしょう?」

 

千代田「あ、それわたしも思ってた。いろいろ試したい髪型あったんだよねー」

 

谷風「お、いいねそれ。ついでにストパーとかもやってみちゃう?」

 

初春「面白い思い付きじゃの。千歳殿は単純に髪型を変えるだけで済むとしても、千代田殿は少々くせっ毛じゃからの、ストレートにすると大分見た目が変わるかもしれぬの」

 

谷風「ついでに伊達眼鏡もいっとく?」

 

「いいね!」

 

 

提督「......それでそんなに変わったのか」

 

千歳「はい。どう、でしょう?」

 

千代田「えへへー、この髪型気に入っちゃったぁ♪」

 

提督「二人揃って......千歳は眼鏡も掛けたんだな」

 

千代田「わたしより明らかに千歳姉の方が見映えする気したからねっ。で、似合ってるでしょ?」

 

千歳「ちょ、ちょっと千代田......」カァ

 

提督「そうだな。似合っている。まるで空母になった霧島のようだ」

 

霧島「た、大佐?」

 

千歳「......艦隊の頭脳と言われるように、頑張ります!」キリッ

 

千代田「おー、似てる似てる!」

 

千歳「あ......わ、私ったら」カァ

 

霧島「う......似ている上になんか可愛い......。ちょ、ちょっとこれはアイデンティティの危機を感じますね」アセ

 

提督「そこまで意識する事ないだろう。お前にはお前の魅力がある。変に意識する事もないさ」

 

霧島「あ......はい......♪」

 

千歳「ですよ。霧島さんは霧島さんです」

 

提督「その通りだ。ふむ、それにしても千代田、お前は」

 

千代田「はい?」

 

提督「千歳もそうだが、単純な見た目ならお前が一番変わった気がするぞ」

 

霧島「確かに。ストレートパーマをかけたのね。凄くイメージ変わったわ」

 

千代田「そ、そう? そこまで変わっちゃってる?」

 

千歳「自信持って大丈夫って言ったでしょ? 私は良い意味で代ってると思うわ。凄く素敵よ」

 

千代田「そ、そうかな?」テレ

 

提督「すまん。言葉が足りなかったか。ああ、俺も良くなっていると思う。前のが劣るという訳ではないが、新鮮味があるという意味も含めて良い感じだ」

 

霧島「ふふ、ポニテール似合ってるわよ」

 

千代田「あ、ありがとう♪」

 

霧島「......んー、私も髪型変えてみようかな......」ボソ

 

千代田「え、霧島さんも?」

 

霧島「あ、いや。ちょ、ちょっと......ね」

 

千歳「ふふ、その時は比叡さんも誘って一緒に変えれると良いと思いますよ」

 

霧島「え、お姉様を?」

 

提督「ああ......長さ、か?」

 

千歳「そうです。霧島さん達姉妹の中で髪が短めなのは霧島さんと比叡さんですからね。どうせ変えるのなら一緒に変えてみては、と思います」

 

千代田「なるほどー、それいいかも!」

 

霧島「え、えっと......そんな急に言われても......」

 

提督(迷ってるな)

 

千代田(迷ってるわね)

 

千歳(もうひと押しすればいけそうね。でも......)

 

千歳「ふふ、ごめんなさい。無理強いは良くないですね。でも比叡さんに会った時にこの事をお話ししてみても良いといと思いますよ」

 

霧島「ん......そうね。考えてみるわ。アドバイス有難う千歳さん、千代田さん」

 

千歳「いえいえ」ニコ

 

千代田「変えたら教えてくださいね!」キラキラ

 

提督「ふっ、早速期待されてるみたいだな」

 

霧島「た、大佐」

 

提督「俺も少し楽しみにしてるぞ」

 

霧島「あ......えっと......は、はい」コク

 

千歳(あ、陥落?)

 

千代田(大佐ナイスー!)

 

提督「?」




水上機使うクエスト未だにずっとやってるので、うちには千歳姉妹が二組います。
二人剃って既に水上機のままレベル60を超えているので、エリア2までは余裕をもって臨める感じです。

索敵、艦爆、砲撃、雷撃、加えて夜戦と、個々の専門には流石に負けますが、この器用貧乏な所が結構好きだったりします。
劣化版レ級と言うのはちょっと言い過ぎかなw

という訳で新たな水上機空母として神威の参戦を筆者は期待してます。


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第46話 「意外2」

朝、提督が執務の準備をしていると、後ろからこっそり近づく影が。
影の主は気付かれないようにゆっくりと忍び寄りそして――


皐月「たーいーさっ」ギュッ

 

提督「ん、急にどうした」

 

皐月「えへへー、ただこうしたかっただけー♪」

 

提督「......?」

 

ササッ

 

電「うーん......8点!」

 

文月「9点です!」

 

敷波「な、7点......ふんっ」

 

 

皐月「合計24点かぁ。まぁまぁかなっ」ピョンッ

 

提督「......なんだ?」

 

電「一番恋人っぽいセリフを言った人が勝ち! ゲームなのです」

 

提督「......」

 

皐月「僕はまぁまぁいい線いってたみたいだね。敷波の評価がちょっと厳しい気がしたけどなぁ?」チラ

 

敷波「べ、別に嫉妬とかじゃないからねっ。こ、公平に評価した結果だもん!」

 

文月「本音がダダもれですね~」

 

電「敷波ちゃんは大佐が大好きなのです♪」

 

敷波「ち、ちが......! ちが......違わないけど、さ」カァ

 

提督「もしかしてお前達もするつもりなのか?」

 

文月「当然!」

 

電「なのですよ」

 

敷波「だ、だめ?」

 

提督「......一応聞いておこうか」

 

文月「やったぁ。それじゃあ今度はわたしですねぇ」

 

文月「大佐、ちょっとベッドに寝て貰えますか?」

 

提督「何故?」

 

文月「このゲームはシチュエーションも評価の対象なのです。だからお願ーい」

 

提督「......分かった」ゴロン

 

文月「あ、布団も被って下さいねー」

 

提督「ああ」バサッ

 

文月「ありがとうございますー。それじゃ文月いきまーす」

 

 

文月「大佐、大佐起きて。もう起きないと遅刻しちゃうよ」ユサユサ

 

提督「......」

 

皐月「うーん、これは......7点!」

 

電「ちょっと惜しいのです。7点!」

 

敷波「っ......7点!」

 

文月「合計21点ですかー。残念ですねぇ」

 

提督「......因みに皐月との点差が出た理由は?」

 

皐月「雰囲気は良かったけど、でもこれはどっちかというと」

 

電「幼馴染なのです」

 

敷波「惜しかったけどね!」

 

文月「なるほど~。これは迂闊でしたぁ」

 

提督「それで、次は誰だ?」

 

電「電です! 大佐、今度はまた椅子に座っててもらえますか?」

 

提督「わかった」ギシッ

 

電「それではいくのです!」

 

 

電「おはようございます大佐。昨夜はその......」ポッ

 

提督「......」

 

皐月「え? それで終わり?」

 

電「なのですよ」

 

皐月「ごめん、よく分からなかった。5点!」

 

文月「じゅ、10点......」カァ

 

敷波「10......」カァ

 

皐月「えっ」

 

電「合計25点。トップなのです♪」

 

皐月「えっ、えっ? な、なんで? どうして二人ともそんなに点数が高いの?」

 

文月「そ、それはぁ......」

 

敷波「えっと......」

 

電「金剛お姉ちゃんの言う通りにやったら上手くいったのです。ブイッなのです♪」

 

提督(あいつか......)

 

皐月「え~、なんかよく分からないよ~」

 

文月「ま、まぁ次行きましょう。はい、敷波ちゃんですよ」

 

敷波「は、はいっ」ビクッ

 

提督「今度はどうしてたらいいんだ?」

 

敷波「あ、大丈夫そのまま座ってて」

 

提督「分かった」

 

敷波「すぅ......はぁ......。行きます!」

 

 

敷波「大佐」

 

提督「ん?」

 

ガシッ

 

皐月・文月・電「えっ」

 

提督「ん? おい、敷な――」

 

チュ

 

敷波「だ、大好き......」カァァァ

 

皐月・文月・電「......」

 

敷波「......ど、どう?」

 

皐月「はっ。......ひゃ、100点!」

 

文月「これは100点です」

 

電「これは予測外なのです。100点!」

 

敷波「......ありがと。や、やった」

 

提督「敷波......」

 

敷波「大佐、宜しく......な?」




敷波はただのツンデレではないのですよ。
実はとても素直であざとい子なのです。

大淀がイベント報酬になるみたいですね。
嬉しい筈なのに、このやる気の出なさは一体......。


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第47話 「守秘」

遠征から帰ってきた鈴谷と白露が偶然出会ってガールズトークを始めました。
二人は以前から仲が良いようで、早速女子特有の雰囲気醸し出してます。
違う場所にはそんな二人の様子を眺めている初雪と白雪と最上がいました。


白露「あ、スズヤンだ。おーい!」

 

鈴谷「あ、ツユッチ! やっほー」

 

白露「スズヤン今帰り?」

 

鈴谷「そ、丁度遠征から戻ってきたとこ。ツユッチも?」

 

白露「そうだよ。偶然だねー♪」

 

鈴谷「だねー♪」

 

キャッキャッ

 

 

初雪「なんかあの二人って並んでて違和感ないよね。どっちも駆逐艦にも重巡にも見える......」

 

最上「二人の雰囲気が似てるからじゃない? どっちもギャルっぽいっていうか」

 

白雪「なるほど」

 

最上「あ、ほら何かパンツ見せあってるよ」

 

初雪「あ、穿くようになったんだ」

 

白雪「え?」

 

初雪「鈴谷さん達今までパンツ穿いてなかったんだよ」

 

白雪「ええ!?」

 

最上「冷房が効くようになたからね。穿いてないとお腹冷えちゃうし」

 

白雪「そ、そういう問題? 冷房がなかったら穿いてないのもどうかと思うだけど......」

 

最上「因みに航巡組は全員穿いてなかったよ。勿論僕も」

 

白雪「 」

 

初雪「あ、白雪が白くなった」

 

最上「そんなにショックだった?」

 

初雪は「良い子だからね」

 

最上「なるほど」

 

初雪「ほら、パンツもその性格を表す様にしろ......」ペラ

 

最上「......黒いね」

 

初雪「しかもレースが入った大人びたやつ......意外」

 

最上「意識が戻る前に手を放した方がいいと思うな」

 

初雪「そだね」パッ

 

 

鈴谷「あれっ、モガミンとハユッチじゃーん」

 

白露「あ、ホントだー。白雪ちゃんもいるねー。というかなんか白い......?」

 

初雪(マズイ、今この場で一番厄介なのが)

 

最上「任せて」ヒソ

 

最上「白雪は今考え事をしてるんだ。話し掛けちゃダメだよ?」

 

鈴谷「え? そうなん? わー、流石ゆーとーせー。真面目だねー」

 

白露「白雪ちゃんはわたし達駆逐艦の中でも委員長こと、綾波ちゃんと双璧をなすお姫様だからねー。そりゃ真面目だよー」

 

初雪「双璧? 磯波が抜けてるよ?」(最上さんナイス)

 

白露「磯波ちゃんはねー、清楚で守ってあげたい系てういかぁ」

 

鈴谷「弄りたくなっちゃうタイプ?」

 

白露「そーそー」

 

初雪(今度から磯波はあまり鈴谷さんには近づかない方がいいかも。あの子本当にメンタル弱いからなぁ)

 

最上(なんとなく初雪が考えている事が分かるな。磯波ちゃんの事は注意してあげよう)

 

鈴谷「んー? さっきから二人ともどーしたの?」

 

白露「ホントだ。なんか心ここに非ず、みたいな?」

 

初雪「わたし達もちょっと考え事してたの」

 

最上「そ。ちょっと初雪とお話ししててさ」

 

鈴谷「へぇ、なになに? 鈴谷にも教えてー」

 

白露「あ、わたしも。わたしにも教えてー」

 

初雪(この二人って戦いでは凄くしっかりしてるのに、ホント)

 

最上(プライベートでは屈託がないというか、“今どきの女の子”だよね。ま、それが魅力でもあるんだけど)

 

鈴谷「ちょっと二人とも聞いてる?」

 

白露「内緒話は共有しないとダメなんだよー?」

 

初雪「あ、うん......ごめん」

 

最上「いや、別に話すような事じゃないんだけどさぁ」

 

最上(う......躱すのが段々面倒になってきた)

 

 

「こんなところで何してるんだ?」

 

 

鈴谷「あ、大佐」

 

白露「大佐ー、今帰ったよー」

 

初雪(なんというタイミング!)

 

最上(タイミング良すぎだよ。あーでも一番頼りになる人が来てくれた)

 

提督「ああ、そうか。二人は遠征に言ってたんだったな。お前達はどうした?」

 

初雪「別に。ちょっと最上さんと白雪と話してただけ」

 

最上「そ。ちょっと話が長くなっちゃてさぁ」

 

提督「そうか。ん? 白雪?」

 

白雪「 」

 

鈴谷「あ、なんかお姫様考え事してるみたいだよ」

 

白露「でも、いい加減長いよね。周りが見えてないみたい?」

 

初雪(あ、悪い流れ。これは......)

 

最上「いや、だからそっとしてあげ――」

 

鈴谷「こういう時はやっぱショック療法っしょー。こうやってスカートを......」

 

スカンッ

 

鈴谷「きゅう」

 

提督「いらん事をしないでさっさと補給をして来い。白露もだ」

 

白露「あはは。はーい、了解でありますっ」

 

鈴谷「ふぁーい、いてて......きまーす」テテッ

 

 

提督「全く......ん? なんだ二人とも俺を見て」

 

初雪「大佐......わたしは今とても感動してる」ウル

 

最上「うん。やっぱり大佐こそ僕たちの提督だよ!」

 

提督「......は?」




白雪の意識が戻ったのはこの後直ぐだったそうです。
お蔭で二人は例の秘密を何とか守り通せることができました。

明日ついに夏イベントですね。
弾薬は1万しかありませんが、なんとかなる......わけないだろうなぁ(トオイメ


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第48話 「トレーニング2」

長門がジムでトレーニングをしています。
陸奥はその横で特に何もせず、その様子を見ています。
やがてその日の日課が終わったのか、段々ペースを落としてきた長門に陸奥が離し掛けます。


長門「......っ。......ふっ」

 

陸奥「精が出るわねぇ」

 

長門「......陸奥、お前も鍛えに来たか?」

 

陸奥「いや、わたしは別にいいわよ」

 

長門「......そうか? ......ふっ。鍛えるのも......ふっ、プロポーションの維持には有効だぞ」

 

陸奥「筋トレって苦手なのよねぇ」

 

長門「ふぅ......。同じことを繰り返すだけだ。難しい事じゃないぞ?」ゴトッ

 

陸奥「そうだけど。長続きしないって言うか......」

 

長門「汗を流した後のシャワーや水分補給は最高だぞ? ごく......ごく......ぷはっ」

 

陸奥「うーん......」

 

長門「そして何より......」

 

長門「スタイルが良い方が大佐だって嬉しい筈だ」

 

陸奥「う、それは......」

 

長門「陸奥、少し動くな」

 

陸奥「え? 長門? あ、やっ......」

 

むにゅ

 

長門「胸は......ふむ、相変わらずだな」

 

陸奥「ちょ、ちょっとぉ」

 

むにっ

 

長門「む、腰は......ふむ」

 

陸奥「や、やめてってば」

 

もみっ

 

長門「ん、尻は胸と一緒か。張りがあるな」

 

陸奥「っ、はぁ。もう、いきなりやめてよ」

 

長門「すまんすまん。乳と尻は良い感じだったぞ。何もしなくてもあの状態を維持しているとは大したものだ」

 

陸奥「別に、何もしてないわけじゃないわ。最低限のエクササイズくらいはしてるもの......」

 

長門「うむ、それは重畳だな。だがな」

 

陸奥「う......腰?」

 

長門「そうだ。僅かにだが余分なに――」

 

陸奥「そ、それ以上は言わないで!」

 

長門「ここが油断すると一番付き易いからな」

 

陸奥「分ってる。分ってるんだけどね」

 

長門「その部分だけでも落とすトレーニングしてみてはどうだ?」

 

陸奥「長門は何かしてるの?」

 

長門「私? いや、知らん」

 

陸奥「は?」

 

長門「私は、私が好む筋トレを毎日やってるだけだ。その結果脂肪がついてないだけなんじゃないか? 部分的な脂肪を落とすためのトレーニングは私も分らないな」

 

陸奥「言いだしておいてそんな適当な......」

 

長門「いいじゃないか。私と同じメニューをずっとこなせばその内こうなるぞ?」スラッ

 

陸奥「だから続けるだけの根性がないって言ってるじゃない」

 

長門「我儘な奴だな。なら大佐との夜の運動をもっと活発にやってみてはどうどうだ? アレは特に腰を使うからな?」ニヤ

 

陸奥「ちょ、ちょっと」カァ

 

長門「ははは、冗談だ」

 

陸奥(絶対に冗談じゃなかった)

 

長門「だが、そうなるとな。やっぱり部分的に鍛えるしかないわけだが」

 

陸奥「誰か詳しい人いないかしら」

 

長門「いや、いるぞ。その道のプロが」

 

陸奥「いるの!? 最初からその人紹介しなさいよ!」

 

長門「いや、でもな。その人物は厳しいんだ。私だってちょっと挫けそうになった事があるんだぞ?」

 

陸奥「長門が? そ、それは怖いわね......」

 

長門「だがまぁ、部分的なものだからな。全メニューこなすわけじゃないし、案外陸奥でもいけるかもな。紹介してやろうか?」

 

陸奥「うーん、それじゃ話だけとかダメ? できそうならやる」

 

長門「いいと思うぞ。やるのは本人なんだし。それじゃ、ちょっと待っていろ」

 

バタン

 

 

不知火「どうも。ご紹介に預かりました不知火です」

 

陸奥「......長門のトレーナーって不知火だったの」

 

長門「ああ、そうだ」

 

不知火「で、早速ですが腰のに――」

 

陸奥「そ、そうです!」

 

不知火「......なるほど。それじゃこれをやってください」カラン

 

陸奥「これは......フラフープ?」

 

不知火「そうです。セット型のエクササイズもあるのですが、これが一番単純で続けられると思います」

 

陸奥「な、なるほど。それでどれくらいやればいいのかな」

 

不知火「泣くまでです」

 

陸奥「え?」

 

長門(うわ......)

 

不知火「お腹が熱くなって痛くて泣きそうになるまでやって下さい。それを毎日です」

 

陸奥「そ、それは......」

 

不知火「長門さんや不知火のようになりたいんですよね? ならやって下さい」

 

陸奥「いや、確かにそうだけどさ。でも不知火は長門程むね――」

 

長門「あ」

 

ピシッ

 

不知火「はい?」

 

陸奥「え? ひっ」

 

不知火「......陸奥さんは大変やる気があるようですね。分りました。では、不知火が直接指導してさしあげます。喜んでください」

 

陸奥「い、いや。私はまだやるとは――」

 

不知火「喜べ」

 

陸奥「や、やったー!」

 

長門(......いつも思うが、キレた時の不知火は駆逐艦とは思えない程の威圧感があるな)

 

不知火「良い返事です。それでは始めましょうか」ゴトッ

 

陸奥「え、その重りで何をするの......?」

 

不知火「長門さん?」

 

長門「ん? ああ、それじゃ陸奥後は頑張れよ......武運を祈る」

 

陸奥「え?」

 

長門「悪い、達者でな」

 

陸奥「え、ちょっと長門? え、なに? 何が始まるの!? 待って、置いてか――」

 

バタン

 

陸奥「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

長門「陸奥......お前なら乗り切れるさ」




結果、陸奥はたった3日で理想の腰を手に入れたそうですが、何があったのかそれから1週間寝込んだそうです。
長門は一人、彼女しか知らない地獄を乗り切った陸奥の健闘に涙を流したとか。

さぁ、イベ――その前に仕事だ!


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第49話 「見舞い」

提督が不知火と陸奥のお見舞いに来ました。


提督「......それでこの有様な訳か」

 

不知火「......すいません。ついやり過ぎてしまいました......」シュン

 

陸奥「い、いいの......よ。不知火は実際に私の希望を叶えてくれたし......ね」ゲッソリ

 

不知火「陸奥さん......」

 

陸奥「ただ、次からはもう少し優しく、ね? わたしも口には気を付ける......から」

 

不知火「了解です。そして本当にごめんなさい」

 

提督「まぁ一時的な過労なようなものだからな。暫くはゆっくり休め」ポン

 

陸奥「う......ごめんなさい」

 

不知火「......っ」

 

提督「不知火もそんなに自分を責めるな。陸奥の為に良かれと思ったんだろ? まあ陸奥はこんな感じだが、結果的にはこいつの希望を叶えたわけだし」

 

不知火「で、でも......」ウル

 

陸奥(大佐......)クイクイ

 

提督(ああ。分った)

 

ギュッ

 

不知火「あ......」

 

提督「よくやってくれた。これは陸奥の分のお礼だ」

 

不知火「たいさぁ......ぐす」ギュゥ

 

提督「ん......」ナデナデ

 

陸奥「......」

 

クイクイ

 

提督「ん?」

 

陸奥「......」ジッ

 

提督「......」

 

ポン、ナデナデ

 

陸奥「~♪」

 

 

提督「二人とも落ち着いたか?」

 

陸奥「わたしはもう大丈夫よ。ありがと♪」

 

不知火「不知火も......どうもすみませんでした。ありがとうございます」

 

提督「いや、いい。では何か作ろうか」

 

陸奥「え?」

 

提督「腹減ってないか? 良かったらラーメンでも作って来るぞ」

 

不知火「大佐のラーメン......いいのですか?」

 

提督「運動の後は腹が減るからな。お前たちが良ければ」

 

陸奥「食べたいっ」

 

不知火「私も、お願いします」

 

提督「分った。待ってろ」

 

 

提督「そら、例によって台湾風の辛いラーメンだ。辛さは2人とも疲れている様だから少し控えめにしてあるから食べ易いと思う」コトッ

 

陸奥「ん......美味しそう♪」

 

不知火「これは......」キラキラ

 

提督「遠慮なく食べてくれ」

 

陸奥「ありがとう♪ それじゃ」

 

不知火「頂きます」

 

陸奥「んー、美味しい♪」

 

不知火「......」チュルチュル

 

提督(無言で食べてる。気に入ってくれたみたいだな)

 

提督「そうか。それは良かった」

 

陸奥「あれ、大佐は食べないの?」

 

提督「この時間だからな。あまり夜食は摂らないんだ」

 

陸奥「でも食べる事もあるんでしょ?」

 

提督「まぁな」

 

陸奥「そう。なら、はい」

 

提督「ん?」

 

陸奥「あーん」

 

不知火「......」ピタッ

 

提督「いや、ラーメンは......箸を咥えないといけないだろ......」

 

陸奥「いいの、気にしないから。ねっ」

 

提督「......」パク、チュルル

 

陸奥「ふふ、美味しい?」

 

提督「ああ」モグモグ

 

クイクイ

 

提督「......」

 

不知火「私のも食べて......欲しいです」

 

提督「......」アーン

 

不知火「! 失礼します。はい......どうぞ」

 

提督「......美味い」モグモグ

 

不知火「良かった。嬉しいです」

 

陸奥「......ねぇ、今度はスープはどう?」

 

提督「ん? ああ、ならちょっと丼を」

 

陸奥「......」チュゥ

 

不知火「!」

 

提督「 」

 

陸奥「ふぁい」

 

提督「それは流石に......」

 

 

「そうだぞ」

 

陸奥「っ! ごくんっ。ふはっ、な、長門!?」

 

長門「全く、様子が気になって来てみれば、元気そうじゃないか」ニヤニヤ

 

陸奥「や、これは......」

 

長門「陸奥、お前は疲れているんだから大佐に言われた通り今は休んだ方がいいぞ。ほらラーメンも貰ってやる」

 

陸奥「それ、絶対長門が食べたいだけでしょ?」

 

長門「ふふ、まぁな。くれるか?」

 

陸奥「......どうぞ。わたしもう結構食べたし。仕方ないわね」

 

長門「おお、悪いな。......うん、美味い♪」

 

提督「長門......」

 

長門「大佐よ。邪魔してしまったか? なら悪かったな」

 

提督「いや、いい。それよりお前も美味いか。良かった」

 

長門「ああ。この辛さ中々に癖になる......と、どうした不知火? 頬がちょっと膨らんでいるぞ」

 

不知火「......!」フルフル

 

陸奥(多分、入ってるわね)

 

不知火「ごくっ......ふぅ、なんでもありません」キリッ

 

長門「ふふ、そうか?」

 

不知火「......」プイッ

 

提督「......それじゃ、そろそろお暇しようか。長門後は頼んだ」

 

長門「ああ任せてくれ。大佐も不知火も今日は陸奥を見に来てくれてありがとうな」

 

陸奥「そうね、ありがとう。嬉しかったわ」

 

提督「いや、早く良くなるといいな。それじゃ」

 

不知火「お大事に。そして重ね重ねになりますが、ごめんなさい。失礼します」

 

 

バタン

 

長門「......陸奥~?」ニヤニヤ

 

陸奥「ちょ、そんな顔で見ないでよっ」カァァ




仕事の前にもう一つ、できてよかったです。

陸奥はやはり可愛い......そして長門はやはりカッコイイ、その安定感惚れます。
不知火は今回少し居心地悪そうでしたね。
それでもしっかりやる事はやろうとしていましたがw


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第50話 「休養」

本部より新しい作戦指示が下されたようです。
いつもなら士気旺盛に遂行に臨むところなのですが......。


加賀「新しい作戦指示が本部から来てるみたいですね」

 

金剛「イエス。 but......」

 

長門「大佐があの状態ではな......」

 

 

提督「......」

 

 

叢雲「まさか、過労で倒れるなんてね」

 

川内「え、え、でもわたしたちが仕事をお手伝いするようになって負担は減ってたんじゃないの?」

 

足柄「そうよ。でもそれ以前に溜まってた疲労は解消されずに残っていたみたいで......」

 

イク「無意識のうちに限界を超えてしまったのね」

 

鈴谷「大佐......」

 

鳳翔「症状はどうなのですか?」

 

大淀「命の危険があるような状態ではないけど......それでも暫くは安静と療養が必要ね」

 

大井「そうすれば元気になるのね? そうなのよね?」

 

明石「それは間違いありません。病気ではありませんから」

 

あきつ「ほっ......。良かったであります」グス

 

日向「問題はいつまでこの状態が続くかね」

 

青葉「そうですね。回復の見通しがはっきりと判らない以上、このままでは今回の作戦のが遂行自体が......」

 

大淀「......」

 

神通「せっかく作戦成功の暁に大淀さんの戦闘参加許可あったのに......。大淀さん、どうか気を落とさないで下さいね」

 

大淀「大丈夫ですよ。確かに少し残念でもありあますが、でも今は......この人の回復だけが願いですから」

 

島風「大佐おき......てよ。島風、静かに、良い子にしてるから......」

 

雪風「島風ちゃん......」

 

龍驤「ま、皆で不安がってもしゃーないわ。ここはさっきも決めた通り皆で順番に交代で看病しよ」

 

赤城「そうね。じゃあ皆一旦出ましょうか。最初は、確か鈴谷ちゃんね。お願いね?」

 

鈴谷「おっけー、任せて」グッ

 

 

バタン

 

鈴谷「......」

 

鈴谷「ばーか。鈴谷があんだけモーション掛けてたのに乗らないからだよ」ツン

 

提督「......」

 

鈴谷「さっさとわたしとエッチしてたら元気になってかもよー?」ツンツン

 

提督「......」

 

鈴谷「せっかく冷房が入る前までノーパンでいたのにさ......もう、しつぼーってやつ?」

 

提督「......」

 

鈴谷「ばーか、ばーか。早く元気になーれ」ツンツン

 

提督「......」

 

鈴谷「......」スッ

 

ぽよん

 

鈴谷「鈴谷のおっぱいだよー。気持ちいいでしょー。治ったら直に触らせてあげるよー」

 

提督「......」

 

鈴谷「......」パッ

 

鈴谷「つまんない......」グス

 

提督「......ぅ」

 

鈴谷「!」グシグシ

 

鈴谷「えっと、何......? あ、意識はまだない......のか。えっと......あ、口」

 

カサカサ

 

鈴谷(......乾いてる。喉渇いてるのかな。ちょっと唇湿らせてっと)チョン

 

提督「......」

 

さわ......カサ

 

鈴谷(うん。やっぱ直ぐに乾いちゃう。水だねこれは)

 

鈴谷(こうやって腕と胸で頭を支えてあげて......)

 

鈴谷「よいしょっと、大佐ちょっとごめんね」

 

提督「......ん」

 

鈴谷「これで......大丈夫かな。はい、大佐水だよ」ツゥ

 

提督「......こくっ」

 

鈴谷「飲んだかな......? ん、喉が動いた、よしっと」

 

鈴谷「はい大佐ー、元に戻すよー」スッ

 

提督「......」

 

さわ

 

鈴谷(ん、乾きは収まったかな)

 

鈴谷「......早く良くなってよ、もう......ばーかっ」




はい、というわけで例によって悪い癖が出てしまい、面倒臭くなってイベントに参加する気がなくなってしまったダメ提督こと筆者です。

イベントが終わるまで艦これ自体やらないかもしれないので、その関係で投稿も途切れがちになるかもしれません。
あ、それならそれで提督サイドじゃなくて本部の方の話とか考えればいいのか。

もしかしたら普通に更新するかもしれません。

大淀さんごめんなさい。
本当に気が向いたらイベントに挑戦してみますので許して下さい。


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第51話 「奮闘」

他鎮守府の支部から研修に来た子がほんぶの大将の訓練に参加しています。
もうボロボロで明らかに限界そうにも関わらずそれでも必死に着いていこうとするのですが......。


潮「うっ、げほっ。ひぃ......ぜぇ......はぁ......えっ、ぐぇっ......」

 

大将「立て! 立たんか! もう限界か!?」

 

潮「う、うぅ......。ぐっ......へぐっ。ぜぇ......はぁ......」プルプル

 

大将「......雷」

 

雷「は、はい!」

 

大将「潮を医務室に連れて行ってやれ」

 

潮「! か、閣下! っぐ......ふぅ......はぁ。......う、潮はまだ......まだやれまっ......がひゅっ」

 

大将「心は折れてないようだが、体はもうそれ以上は無理だ。大人しく休んでろ」

 

潮「だい......じょう、ぶです!」プルプル

 

大将「休め。初日からここまで着いてこれただけでも大したものだ」

 

潮「......くっ」ジワ

 

雷「大丈夫よ。大将は本当に褒めてくれてるわ。大人しく命令に従うのも立派な態度よ」ヒソ

 

潮「......分かりました。ありがとうございます。失礼します」

 

大将「ああ、ゆっく休め」

 

 

 

「お前達は、まだやれるな!?」

 

「イエッサー!」

 

「よしっ、ならその心意気を今日も証明してみせろ!!」

 

「イエッサー!!」

 

 

 

潮「......」トボトボ

 

雷「気にする事ないわ。大将の訓練が厳しいのは有名だもの。あなた、支部から来た子でしょ? ここまで着いてこれたのは本当に凄いわ」

 

潮「研修を.....」

 

雷「ん?」

 

潮「研修を甘く考えていた自分が情けないです......」

 

雷「......」

 

潮「提督に......提督にあんなに自信たっぷりに強くなって帰ってくるって約束したのに......ぐす」

 

雷「......」

 

潮「わたしは......わたしは、自分が情けなくて、それが恥ずかしくて......悔しくて......」

 

ポン

 

潮「あ......雷さん......」

 

雷「大丈夫。そこまで言えるようになっているだけでも貴女は立派に成長しているわ。他の子だと大体辛くて泣いちゃってその日の内に帰っちゃうんだもの」

 

潮「雷さぁん......」ブワァ

 

雷「泣くの我慢してたのなら今はうんと泣きなさい。そしたらスッキリして今より強くなってる筈よ。次の訓練はきっと耐えれるわ」

 

潮「う、うわぁぁぁぁん」

 

雷「よしよし。ちょっと寂しくて申し訳ない胸だだけど。わたしので良かったら好きなだけ泣いてね」ナデナデ

 

潮「うぇぇぇぇぇん!」

 

 

 

大将「潮の様子はどうだ?」

 

雷「熟睡してます」

 

大将「そうか」

 

雷「......よく......耐えれたと思います」

 

大将「そうだな。今まで見てきた研修生の潮の中では一番かもしれん」

 

雷「......あの、できれば......」

 

大将「見舞いに行く。着いて来るか?」

 

雷「はい!」

 

 

~医務室

 

大将「潮、大丈夫か?」

 

潮「っ! か、閣下!」

 

大将「起きるな。今はいい」スッ

 

潮「あ......う......」

 

大将「よく耐えたな」

 

潮「.....っ。う......うぅ......」ジワ

 

大将「それは悔し涙か?」

 

潮「はん.....えぐっ......半分、は」

 

大将「ほう。では残りの半分は?」

 

潮「か、閣下に......褒められたのが......ぐす......うれひくてぇ......」

 

大将「そうか。頑張ったな」ポン

 

潮「あ......ふぇ......。あ、ありがとうごじゃ......ざいます......!」

 

雷「......」ニコニコ

 

大将「ああ。後で何か美味しい物でも届けさせる。それを食べて入渠して、今日はゆっくり休め」

 

潮「はい! ありがとうございます」

 

大将「ああ。......次の訓練にも参加するか?」

 

潮「大将さえよろしければ、是非! 次は耐えてみせます!」

 

大将「そうか。期待しているぞ」

 

潮「はいっ。ありがとうございます! がんば......全力で応えてみせます!」

 

大将「良い返事だ。それじゃな」

 

雷「......♪」ガッツポーズ

 

潮「......!」コクッ

 

 

~廊下

 

雷「~♪」

 

大将「嬉しそうだな」

 

雷「はい。支部の子にしろ研修生にしろ、自分の仲間が逞しくなる様子は見てて頼もしくて心が温かくなりますから」

 

大将「そうだな」

 

雷「大将」

 

大将「ん?」

 

雷「雷はもっと激しくしていいんですよ?」

 

大将「......そのセリフ、他の奴の前では言うなよ。誤解されかねん」

 

雷「?」クビカシゲ




大将のロリ○ーン!
じゃなかった、潮と雷可愛い!

さる筋からご質問頂きました。

『前の話の中で主人公の提督が倒れた描写と、筆者さんが艦これを暫くやらないのとは関係があるのですか?』

......まぁ、イベントが始まってから現時点まで取り敢えずやる気が出ませんからね。
提督業は少しの間休業くらいに考えて頂けたら結構ですよ。

それではっ。


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第52話 「駆け引き」

本部の司令官の方の中将がなにやら同僚(部下?)の信濃にお願いしています。
何をお願いしているんでしょう。


中将「ラーメン」

 

信濃「はい?」

 

中将「ラーメン食べたい」

 

信濃「はぁ」

 

中将「信濃さん食べたくない?」

 

信濃「別に」

 

中将「......」ジトッ

 

信濃「そんな目で見たって食べないわよ」

 

中将「天龍は?」

 

天龍「食べたい!!」

 

中将「そ」ポス

 

天龍「ん? なんだこの金?」

 

中将「注文してきて。それでついでにこっちに運んできて」

 

天龍「普通に出前頼めよ!」

 

中将「そこ出前やってないのよ。でも俺の名前出してくれたら受け取りは特別に対応してくれるからさ」

 

天龍「で、食った後も皿返しに行かねーといけないんだろ? メンド――」

 

ポス

 

天龍「ん?」

 

中将「これでお菓子買っていいからさ。お願い」

 

天龍「! 任せとけ!」パァ

 

中将「龍田、龍田」ヒソ

 

龍田「はぁい?」

 

中将「天龍が無駄遣いしないように監視宜しく。煙草でも酒でも安いのだったらお前が好きなの買っていいからさ」ヒソ

 

龍田「まぁ。やったぁ♪」

 

天龍「おい! なにコソコソやってやがる! ていうか龍田は隠す気ねーだろ!」

 

龍田「うふふ、なんのことかしかしらぁ? それじゃ中将、行ってきますねぇ」フリフリ

 

中将「うん。宜しく」

 

エ、オマエモイクノ? ナニカモンクデモ? ベ、ベツニ

 

 

信濃「......相変わらず人を使うのが上手ね」

 

中将「信濃さんは上手く扱えないけどね」

 

信濃「そうね」

 

中将「えっ、それだけ?」

 

信濃「仕事しなさい」

 

中将「......はい」

 

信濃「......」

 

中将「......追加で何か注文する?」

 

信濃「別に欲しくないわよ」

 

中将「......さいですか」

 

クイクイ

 

中将「おお、朝日どした?」

 

朝日「お仕事、終わりました」

 

中将「え、もう?」

 

朝日「......」コク

 

信濃「どこかの司令官とはエライ違いねぇ」

 

中将「......」

 

朝日「まだお仕事あります?」

 

中将「......」

 

信濃「自分の分をやらせないでよ?」

 

中将「ギク」

 

信濃「やらせるつもりだったの......」

 

中将「朝日」

 

朝日「はい」

 

中将「信濃さん手伝ってあげて」

 

朝日「分かりました」コク

 

信濃「あら、いいのかしら?」ニッ

 

中将「殆ど信濃さんが誘導したようなもんじゃん......」ボソ

 

信濃「何か?」

 

中将「いえいえ。仕事楽しいなー」

 

朝日「楽しーなー」

 

信濃「ダメよ朝日さん。あんなオジサンの真似したらあなたもダメになるわよ」

 

朝日「ダメ?」

 

中将「ダメ......」

 

信濃「ふふ、何でもないわ。取り敢えずこれお願いできる?」

 

朝日「了解しました」

 

 

~その頃、とあるスーパー

 

天龍「おい! なんでタケ○コの里がダメでキ○コの山はオッケーなんだよ!? 俺はタケ○コが食べたいんだ!」

 

龍田「ダメよぉ? あんなサクサクしたのよりキ○コのカリッっとした食感の方が良いに決まってるじゃなぁい」

 

天龍「だからって俺が欲しいお菓子にまで口を出す事ないだろ!」

 

龍田「ごめんね天龍ちゃん。これだけは譲れないの」キリッ

 

天龍「意味わからねーよ!! タケ○コ買わせろ!」

 

龍田「その後ろ手に持ってるポテ○やポ○キーを戻したらね?」

 

天龍「っ!」ギク

 

龍田「オヤツは350円までよぉ?」ニコ

 

天龍「なんだよその中途半端な金額は? ていうか龍田、お前こそその手に持ってる酒やめろよ! そっちの方が高いだろ!」

 

龍田「私はこれだけだもぉん」チャプン

 

天龍「なっ、ズルイぞ!」

 

龍田「ハイハイ。取り敢えず早く決めましょう? 中将がお腹空かせてるわよ」

 

 

~再び、本部

 

中将「遅いな」グー

 

朝日「遅いです?」

 

信濃「取り敢えず司令は手を動かしなさい」




本部の話だけで結構書けそうですね。
でもやりすぎると主人この影が薄くなっていくような。

ま、でも楽しいならいいか(ア


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第53話 「早起き」R-15

まだ夜明け前、暗い部屋の中で二つの影が重なって寝ていました。
外は嵐、大粒の雨が窓を打ち鳴らす音に一つの影が反応します。

*明らかな性的描写あり


ザァァァァァ......。

 

???「!」ピクリ

 

バサッ、タタ......

 

???「わぁぁ......♪」

 

スゴイナー フッテルナァ ワァ、キャッキャ

 

 

???「んむぅ......武蔵ぃ?」

 

武蔵「ああ、起こしてしまったか。悪いな」

 

彼女「素っ裸で何やってるのよ」

 

武蔵「台風だ台風、凄いなぁ外は嵐だ♪」

 

彼女「子供か......いいから下着くらい着なさいよ」

 

武蔵「お前も裸じゃないか」プルン

 

彼女「ドヤ顔で何言ってるのよ」

 

武蔵「胸を隠すなんて乙女な事するじゃないか」グイッ

 

彼女「あ、ちょっと......」

 

バッ

 

武蔵「私の前では隠さないで欲しい......」

 

彼女「......もう」

 

武蔵「可愛い胸だな。私ほど大きくはないが、それでも十分な大きさだしそれに綺麗だ」ツン

 

彼女「んっ......」ピクッ

 

武蔵「ココは小さくて可愛らしいな」クニクニ

 

彼女「ちょっと......ん......こんな夜明け......あっ、前から......また」ピクンッ

 

武蔵「下の方はどうかな? 上だけ可愛がってる所為で寂しくて泣いて、ないか......」スッ

 

彼女「だめよ」ガシッ

 

武蔵「えぇっ」ガーン

 

彼女「今日は朝早くからやる事があるからね」

 

武蔵「ちょ、ちょっとだけっ......」

 

彼女「だ・め。メリハリが大事なの」

 

武蔵「そんなぁ」

 

彼女「それに、ほら」スッ

 

武蔵「え?」

 

彼女「陽炎、どうしたの?」

 

武蔵「 」

 

陽炎「あ、あの......わ、わたし。司令の声の様子がおかしかったからその......」

 

武蔵「あ......う......」パクパク

 

彼女「陽炎」

 

陽炎「は、はいっ」ビクッ

 

彼女「おいで」

 

武蔵・陽炎「え?」

 

彼女「お・い・で」

 

陽炎「えっと、わたし......」

 

彼女「大丈夫だから、ね?」ニコッ

 

陽炎「あ......はい......」フラフラ

 

ギュッ

 

陽炎「きゃっ」ムニュ

 

武蔵「ああ......」

 

彼女「裸でごめんね。気持ち悪い?」

 

陽炎「///」フルフル

 

彼女「そう。いい子ね。ね、私が言いたい事判るかしら?」

 

陽炎「ぜ、絶対に誰にもいいまふぇん......」ポォ

 

彼女「よく出来ました」ナデ

 

陽炎「しれえぇ......」

 

彼女「秘密を守ってくれるならいいわよ。ほら、もっとおいで」

 

ギュゥ

 

彼女「ふぁぁぁ......しれぇぇ......」

 

武蔵「......ぐす」ギュッ

 

彼女(我慢しなさい)チラ

 

武蔵「ふにゃぁぁぁ!?」ガーン

 

 

――数分後

 

武蔵「......ぐす......すん」←イジケて二度寝

 

陽炎「すぅ......すぅ......すき......」←夢心地

 

彼女「......朝から......はぁ......」

 

阿賀野「司令ー?」

 

彼女「阿賀野......」

 

阿賀野「コーヒー飲む?」ニッ

 

彼女「......ありがと」クス




阿賀野持ってない......。
欲しいなぁ。

あ、久しぶりに百合っぽいの書いた気がする。


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第54話 「日常」

叢雲デレのT督の一日。


T督「叢雲ーただいまー♪」

 

叢雲「おかえり。ダーリン♪ 演習の指揮お疲れ様っ」

 

チュ

 

T督「えへへ」

 

叢雲「うふふ」

 

イチャイチャ

 

 

隼鷹「......」イライラ

 

吹雪「......」ブスッ

 

妙高「......」ヒクヒク

 

山城「......あのー」

 

T督「あ、ちょっとごめんね叢雲。山城どうかした?」

 

山城「あ、お邪魔してごめんなさい」

 

T督「ああ別にい――」

 

叢雲「別にいいのよ。手短に、ね?」

 

ピキッ

 

 

山城「ど、努力します」ヒクヒク

 

T督「あ......うん。それで、えっと......どうかした?」

 

山城「いえ、大したことじゃないんですけど......ね?」

 

T督「うん」

 

山城「私達もその......演習頑張りましたよね?」

 

T督「うん。そうだね。君達のお蔭で勝てたよ」

 

山城「君達......まぁいいです。勝てたのは提督の指揮のお蔭でもありますし。あの、それでですね」

 

T督「うんうん」

 

山城「私達もその......ご褒美が欲しいなぁって思うんです」

 

T督「なるほど。うん、そうだね。構わないよ。僕にできる事ならなん――」

 

叢雲「ダメ。それ以上は言っちゃダメ」

 

T督「む、叢雲?」

 

山城「っ、叢雲......」

 

ピリピリ

 

 

叢雲「......」

 

T督「え? え?」(なに、この空気?)

 

叢雲「山城さん達は頑張ったのは本当だと思うわ。でも、その見返りに求めるご褒美って何かしら? 先に内容を伺いたいわ」

 

T督「ああ、なるほど」ポン

 

山城「......別に大したことじゃないのよ? ちょっとね、私達とケッコ――」

 

叢雲「ダメ!」

 

T督「え?」(なんて言おうとしたの?)

 

山城「叢雲......あなと提督が愛し合っているのは理解してるわ。でもね、もう私達、貴女が提督を独り占めしている事に対して結構キてるのよ」

 

T督「ひ、独り占めってそんな......ま、まぁ愛しているのは本当だけど......」

 

叢雲「そういう事。申し訳ないけど、ケッコンした相手にのみ愛を捧げるというのは提督の方針なの。山城さん達は気の毒だと思うけどここは......」

 

T督「ああ、なるほど。独り占めってそういう......う」アセ

 

叢雲「あ、提督は気にしなくていいのよ。これは女同士の問題だから」

 

T督「叢雲でも......」

 

叢雲「大丈夫。私に任せて」

 

T督「......いや、やっぱりダメだ。叢雲、ここは僕に話をさせてくれ」

 

叢雲「......」

 

T督「それと、今更だけどどんな結果になってもできればそれを受け入れて欲しい。大丈夫、僕の一番は常に君だから」

 

叢雲「提督......仕方ないわね。でも、約束――」

 

チュ

 

叢雲「ん......」

 

T督「うん。約束だ」

 

叢雲「うん......なら、いいわ」

 

T督「ありがとう」ニコ

 

 

T督「待たせたね。要求を聞こうか。いや、もうこの際だから当てよう。ケッコンの事かい?」

 

山城「そうです。私達、提督とケッコンしたくて今まで頑張ってきました。その結果既に艦隊の八割以上は既に成長限界に達しています」

 

T督「うん、そうだね。お蔭で僕の艦隊は数ある鎮守府の中でも中の上に入るくらいには強い事で有名だ」

 

叢雲(中の上って......ふふっ、自分で言っちゃうからカッコウ付かないのよね)

 

T督「山城、君はその全員と僕とケッコンして欲しいと言うのかい?」

 

山城「そうです。別に叢雲のように一途な愛を貰えなくてもいいの。ただ、今以上の絆が、提督とやっとここまで来たっていう実感が欲しいの」

 

T督「ふむ......。山城、僕はケッコンは愛の証だと思っている。だからこそ今この時までその関係は叢雲とのみとしてきたんだ。それは分かるね?」

 

山城「ええ」

 

T督「僕は皆が嫌いなわけじゃない。寧ろ逆に大好きだ。でもね、それは愛情とはやっぱり違う」

 

山城「っ......」ジワ

 

隼鷹「提督っ。もう少し柔らかく言ってくれたって......!」

 

T督「隼鷹、まだ話は終わってないよ?」

 

隼鷹「でも、こんな話あたしは聞いてらんないよ!」

 

吹雪「そうです! これ以上はやめてください!」

 

妙高「結論は見えています。もう......いいでしょう」

 

T督「いや、ダメだ。さっきも言った通りまだ話は終わってないからね。山城?」

 

山城「......いや! 聞きたくない!」ビクッ

 

T督「聞くんだ」ズイ

 

山城「きゃっ」(ち、近い......)カァ

 

ギュッ

 

T督「山城、確かに君たちに叢雲ほどの愛情は捧げられない。これは不変だ」

 

山城「......うん」

 

T督「でもね。僕は君たちの態度と想いを確認して今思ったんだ。これほど自分を慕ってくれてる子の想いに報いてやらないわけもいかないって」

 

山城「提督それって......」

 

T督「叢雲......」クルッ

 

叢雲「......なに?」

 

T督「僕は山城たちとケッコンをしようと思う」

 

山城「提督!」パァ

 

隼鷹「嘘!? 本当!? じょ、冗談じゃないよね!?」

 

吹雪「......っ」ブワァ

 

妙高「てい......とく......」ジワ

 

叢雲「そう......貴方がそう言うのなら仕方ないわね。でも......」

 

T督「大丈夫! 確かに結婚はするけど、それは山城がさっき言っていた通り今より強い絆を結んでより良い関係を構築する為だから!」

 

全員「え?」

 

T督「山城......隼鷹、吹雪、妙高......。君たちの気持ちは確かに僕は理解したよ。ケッコンしよう......そして今よりもっと仲の良い最高の“友達”になろう!」ドーン

 

 

全員「......」

 

叢雲「......]

 

カチャ

 

T督「あれ? どうしたの叢雲? なんで鍵翔けるの?」キョトン

 

叢雲「......あなた......、山城さんごめんなさい。今日は何も言うつもりはないわ。好きにして」

 

山城「......言われなくても......」ゴゴゴゴ

 

T督「え。ど、どうしたの山城なんか雰囲気が......」

 

隼鷹「提督......あたしゃ確かにアンタは鈍いとは思ってたけど、ちょっとこれは......ねぇ?」

 

吹雪「ふふふ......」

 

妙高「ねぇ?」ニコォ

 

T督「ちょっ。ど、どうしたの皆!? な、なんか凄くこわ――」

 

山城・隼鷹・吹雪・妙高「やっかましぃぃぃ!!!」

 

T督「!?!?!?! ちょ、ちょ、皆ま......ギャーーーーー!!!」




その後、少将の鎮守府の皆さんは、希望する者は叢雲公認の元、恋人以上妻未満の関係の条件に限りケッコンを許される形になったようです。

週の初めだというのに艦これまだやる気起きない筆者です。
大淀欲しいなぁ......でもイベント面倒だなぁ......春イベントくらいの難易度を期待していただけに。

あ、トランスフォーマー観てきました。
相変わらずビジュアルだけは良かったです。
他はやっぱりカラッポでした。はぁ......。


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第55話 「問題」

ハーレム一直線、快男児丁督の一日。


丁督「だーっしゃぁぁ!!!」

 

大井「荒れてるわねぇ」

 

金剛「あれガ? キッドみたいで可愛いケド?」

 

長門「仕方ないさ。なんたって今回の作戦は私たちにとっては致命的だからな」

 

翔鶴「艦隊を編成する数が足りませんからねぇ......」

 

加賀「少数精鋭がここに来て裏目に出てしまいましたね」

 

日向「まぁ私たちは元々そんなに作戦による出撃はしてない方なんだけどね。新しい作戦、割と興味があったみたいね」

 

熊野「て、提督落ち着いて下さいまし! ほら、熊野が慰めて......」スルッ

 

巻雲「え? 脱ぐんですか? というかここでヤるの?」

 

羽黒「わ、私は嫌じゃないけど......明るいところでヤるのは......」

 

丁督「だーーーーまれいっ!!」ドン

 

全員「!」ビクッ

 

 

丁督「......すまん。ちょっと熱くなっっちまった。青葉、茶っ!」

 

青葉「生憎切らしてます。青葉の胸で落ち着いて頂けますか?」ムニムニ

 

丁督「ん......いや、悪いがそういう気にはならないんだ。だから全員脱ぐなよ? 半裸もダメだぞ?」

 

ハーイ

 

丁督「はぁ~」

 

長門「それで、どうするんだ? 作戦」

 

丁督「無理やり遂行しようとすれば出来ないこともない気はするんだけどなぁ」

 

日向「全艦隊で出撃する気? それはリスクが大きいと思うけど」

 

大井「私達は別にいいけど、提督が危ない目にあるのは嫌よ?」

 

丁督「お前ら......いい女だな。ほれ」ナデナデ

 

大井「きゃっ♪」

 

日向「ん......♪」

 

長門「提督......」ススッ

 

金剛「テートクぅ......」ススッ

 

丁督「あ、しまった。つい。ナシナシ。だから今はそういうのはしない!」

 

ちぇー

 

丁督「拗ねるな拗ねるな。今日はなんもやる気起きないからいくらでも相手してやるから」

 

キャー♪

 

丁督「だが、その前にやっぱり準備運動がしたい。体を動かしたい! 性的運動以外で!」

 

翔鶴「南方の海域でもちょっと荒してきます? 適当にいろいろ沈めます?」

 

電「電、やっちゃうのです!」

 

丁督「や、それはしない。前もやったし」

 

加賀「では?」

 

丁督「んー......」

 

 

レ級「僕たちと戦う?」ヒョコ

 

丁督「なんでぇ、おめぇ藪から棒に」

 

全員「!?」

 

レ級「あれ? 全然驚かないんだね?」

 

丁督「俺以外は驚いてるだろ」

 

大淀「警報も反応してない......一体どうやって」ゾッ

 

レ級「一人で来たからじゃない? ススイッって一気に抜けてきたから」

 

丁督「......やっぱお前が一番今のところ危険だわ。ま、それで何しに来た?」

 

レ級「戦わないの?」

 

丁督「お前にその気がないからな」

 

レ級「分かってるじゃーん」ニッ

 

丁督「うるせっ。敵と慣れ合うつもりはねーよ。で?」

 

レ級「なんか最近海軍が新しい作戦実行したみたいじゃん? それで僕らの所も」

 

丁督「ははっ、負けて縄張り追い出されたか?」

 

レ級「ううん。全部蹴散らしたよ?」

 

全員「!」

 

丁督「......ほう?」ゾワ

 

長門(あ、提督の奴マジ切れ寸前だ)

 

レ級「ま、それはいいんだけどね。一働きして帰る途中に此処の前を通たからさ。ちょっと寄ってみようかなって思ったの。前にも一度戦ってるし、状況はアレだったけど一応僕達顔見知りじゃん?」シレッ

 

丁督「......へぇ、本当に暇潰しで来たんだな」

 

レ級「まぁね。今まで僕らと戦って負けてないのは此処と本部くらいだもん。直ぐに勝負がつかない相手ならそんなにを決着を焦ることもないでしょ?」

 

ピキッ

 

丁督「......舐めてるのか?」

 

艦娘達「!」ゾクッ

 

レ級「え? 全然! 寧ろ君達には敬意を持ってるよ! 強いもん!」

 

丁督「......」

 

レ級「?」

 

丁督「ま、茶でも飲んでけ。青葉、茶っ......は切らしてるんだっけか。コーヒーでいいか?」

 

レ級「くれるの?」

 

丁督「せっかく来たんだ。飲んでけ。青葉用意してくれ」

 

青葉「は、はい」パタパタ

 

レ級「意外。君の事だから怒るのかと思ったのに」

 

丁督「そんなに素直に賞賛されたら、軍人として冥利に尽きるってもんだろ。それも強敵からなら尚更だ」

 

レ級「ぷくくっ、君変わってるなぁ」

 

丁督「うるせっ。ほら、煎餅食うか?」

 

レ級「えー? コーヒーに煎餅?」

 

丁督「文句言うならやらん」

 

レ級「嘘嘘。ちょーだい」

 

丁督「......変な奴」

 

レ級「それはお互い様じゃない?」

 

丁督「ははっ、ちげーねぇ」

 

大淀(奇妙な光景ねえぇ......)




丁督の肝っ玉凄いですね。
俺も見習いたいものです。

ちょっと話としては強引な展開だったかなぁ(ナニヲイマサラ


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第56話 「経歴」

司令部の中将の経歴を何となく考えて浮かんだ話(?)です。



大本営海軍本部第三司令部司令官の中将は、他の司令部を務める司令官とは違って唯一人最初から軍人としてではなく、公安の刑事としての実績が認められて海軍に提督として起用された異色の経歴の持ち主。

 

本人は当初軍人へと転職に難色を示したが、その起用自体がお上からの勅令だったので公務員だった彼は本気で逆らう気にはなれなかった。

これは海軍にとっては幸運だった。

 

もう一つ転職を決意した理由としては元居た職場との確執だった。

勤務姿勢に一部難ありとされつつもその仕事ぶりと能力には一定以上の評価があった彼は、保有するモラルもまた一定以上のものがあった。

 

やる気がない風を装いつつも、職場の腐敗を不快に思っていた彼は徐々にではあるが、その腐敗を明るみに出し追い詰めていった。

それが上層部との確執を決定的にし、ほぼ解雇同然の閑職への異動の一因となった。

海軍からの誘いがあったのは正にその職場に移されんとする直前だったのだ。

 

そんな事情もあって完全に本人の意思によるものとは言えないものの、軍人へと転職した彼は、その持ち前の“一定以上の能力”で着実に実績を積んでいった。

そして、その実績に対する評価はいつのまにか本部への司令官を任される程になっていた。

 

しかし、ここで彼にある悲劇が起こる。

それは、信濃事変と言われるとある事件だ。

晴れて本部の司令官となった彼はあろう事か、自分の専属艦として配属された秘蔵艦の信濃に対して冗談でお茶汲みに任命してしまったのだ。

当然信濃の逆鱗に触れた中将は、絶対零度の彼女の笑顔の下、“凄惨な仕打ち”を受ける事となり、それが以降の(悪い意味で)上司と部下の関係とは思えぬ関係を構成する決定打となってしまった。

 

そして現在に至る。

 

 

彼女「知りませんでした。中将殿にそんな過去が......」

 

老体「なぁ? 面白いだろう? 儂もあいつを見た時妙な奴だとは思っていたが......ぷっくくく、あはははは! 妙ではなく面白い奴だったわけだ!」

 

大将「おい、あんまり大口で笑うな。カスがこっちに飛ぶ」

 

中将「いやー照れますねー」

 

元帥「中将、言われっぱなしでいいのかね? ここは一つガツンと反撃でもしないか?」

 

中将「いやぁ、私にはそんな反論できる取り得なんて」

 

老体「おいっ、中年とは言え、儂らより一回り以上も若い癖に何を言うか! ほれっ、この老いぼれの心に響く一喝でも言ってみろ!」

 

中将「いやぁ、そんなのありませんって......」パクパク

 

老体「かぁ、何を情けない事を! いいからさっさと何か......て、おい。お前何を食ってる? それ、儂のツクネじゃないか?」

 

中将「え?」パクパク

 

老体「ああっ、やっぱり儂の......! て、ああっ!? 言ってる傍から完食だと!?」

 

ゴクン

 

中将「いや、名誉中将殿ごちそう様です」アリガタヤー

 

老体「ふざけるなぁぁぁ!!」

 

大将「うるさいっ! カスが飛ぶと言ってるだろうが!!」

 

元帥「お、おい。二人とも落ち着け!」

 

彼女「あ、あははは」(なんなのこの状況......)

 

 

――数刻後、第三指令室

 

中将「ただいまー」

 

信濃「おかえりなさい」

 

中将「はいお土産」

 

信濃「そこに置いておいて。後で頂くわ」

 

中将「まだ仕事やってたの? 偉いなー手伝おうか?」

 

信濃「飲み会に行くからって一日分の仕事を無理して片付けた人が何言ってるのよ。あなたこそもう休んだ方がいいわ」

 

中将「そ?」

 

信濃「ええ、ご遠慮なく」

 

中将「......よっこらせっと」ギシッ

 

信濃「ちょっと......」

 

中将「まぁまぁ」

 

信濃「......」

 

中将「さっさと終わらせて食べよう」

 

信濃「そうね」

 

中将「うん」

 

信濃「ね」

 

中将「ん?」

 

信濃「ありがとう」

 

中将「どういたしまして」ニッ




なんかここまで書くと中将のモデル分かる人にはまる分かりでしょうね。
いやぁ、それにしても本部の人たち大分性格分けができてきました。
後は......総帥かぁ。

うん、それは後で考えよう(オイ


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第57話 「決意」

深海棲艦の隠れ家で何やらル級が興奮して話しています。
面白い事が大好きなレ級達は何事かと早速話を聞きました。


レ級「ケッコンカッコカリ?」

 

ル級「そう! 私聞いちゃったの!」

 

ヲ級「なにそれ?」

 

早速興味を持ったヲ級が質問する。

 

タ級「提督と結婚できるっていう例のアレ?」

 

ル級「あ、タ級知ってるの? そうだよ。それ!」

 

レ級「提督と結婚?」

 

提督という言葉を聞いてレ級も興味深そうに聞いてきた。

 

ヲ級「それってどういう事?」

 

ル級「え? それは......えっとぉ......」

 

タ級「あなた達結婚の意味知らないの......」

 

自分で話題を振っておいて早々に壁にぶつかって悩むル級の姿に、呆れ顔でタ級が溜め息をつく。

その落ち着いた様子に、どうやら彼女は詳細を知っているようだと判断したタ級以外の三人は同時に同じ言葉を発した。

 

レ級・ル級・ヲ級「教えて!」

 

タ級「はいはい。いい? 結婚というのはね......」

 

 

レ級「ずっと一緒!?」キラキラ

 

ル級「奥さん!?」キラキラ

 

ヲ級「子供!?」キラキラ

 

タ級「いや、ヲ級はちょっとそれ結論早いから。過程飛んでるから」

 

レ級「でも、結婚したら提督とふーふってのになれるんでしょ?」

 

結婚の意味を知ったレ級が目をキラキラさせて身を乗り出して聞いてきた。

 

ル級「そしたら提督の奥さんになるのよね?」

 

ヲ級「つまりずっと一緒になる?」

 

タ級「あくまで効率的な艦隊運用様の仕組みだと思うけど......まぁ、結婚という言葉を使っている以上、建前上はそうとっても問題はない、かな?」

 

タ級「でも完全じゃないからこそ、敢えてその名称を漢字じゃなく片仮名で表記......」

 

結婚の意味に盛り上がる三人に対して、その仕組みの根本的な問題も理解していたタ級はレ級達の勢いを宥める為に説明を続けようとしたが――

 

レ級「結婚したい!」

 

案の定、レ級の元気いっぱいの期待に満ちた声に遮られた。

 

ル級「したーい!」

 

ヲ級「したら。基地のごはん毎日食べられるー♪」

 

ル級とヲ級も後に続く。

が、ヲ級の動機は明らかに結婚本来の目的とはかけ離れていた。

 

タ級「......ヲ級はご飯目当てで結婚? レ級とル級は?」

 

レ級「僕は大佐好きだし結婚してふーふになりたい!」

 

ル級「私も大佐のこと嫌いじゃないけど、やっぱりヲ級と一緒でご飯たべたいなぁ」

 

タ級「レ級以外は動機が不純ね......」

 

本日二度目の呆れ顔で苦笑しつつタ級は今度はレ級の方を向く。

 

レ級「タ級は?」

 

タ級「え?」

 

レ級の不意の言葉にタ級は聞き返す事しかできなかった。

 

レ級「タ級は大佐のこと、好き?」

 

タ級「え、ちょっ、な、にゃに.....なに言ってるのよ」カァ

 

ル級(噛んだ)

 

ヲ級(噛んだね)

 

レ級「? なんでそんなに照れてるの? 好きかどうか訊いてるだけじゃん?」

 

タ級のあからさまな動揺にレ級が首を傾げてキョトンと不思議そうな表情をする。

 

タ級「だ、だからって急にそんな事言われたら困るじゃない......」

 

ル級「好き?」

 

ヲ級「嫌い?」

 

天然なレ級に対して多少は心の機微に聡い二人が面白そうな顔でレ級の質問に乗って来た。

 

タ級「もう、あなた達まで......。別に......嫌いじゃ......ないけど」

 

レ級「本当!? じゃ、僕と一緒だね! 大佐とけっこ――」

 

その言葉にタ級も自分と同じ見解だと判断したレ級は嬉しそう顔をした。

そんなレ級に対して少し申し訳ない気持ちで今度はタ級が彼女の言葉を遮った。

 

タ級「でもね」

 

レ級・ル級・ヲ級「?」

 

タ級「私達、深海棲艦なのよ?」

 

ル級・ヲ級「あ」

 

タ級「結婚できるわけ、ないじゃない......」

 

明瞭にして普遍の事実だった。

そう、これがなによりの問題だった。

 

レ級「艦娘に戻ればいいじゃん」

 

そんな事実を前にしてもレ級は結婚への意志を諦めることなく、子供の様にちょっと不機嫌な顔で解決策を提示する。

 

タ級「今のところ敗けて沈むしか艦娘に馬割れ代る手段はないでしょ? それに生まれ変わったとしても過去の記憶が残ってるかも分らないし......」

 

レ級「僕は忘れないもん!」

 

ついにレ級が叫んだ。

普段子供の様で、その実芯はしっかりしていて、何事にも動揺しない彼女がこうも激しい感情を露にするのはとても珍しい事だった。

その証拠に今まで面白そうな顔で話に乗っていたル級とヲ級も、今では目を丸くして二人の様子を伺うにとどまっている。

 

タ級「子供みたいに意地張らないの。自信はあっても保障はないでしょ?」

 

レ級「......」

 

ル級「レ級......」

 

ヲ級「元気出して!」

 

黙り込んでしまったレ級を心配してル級達が励ましの言葉を掛ける。

 

タ級「残念だけど今は諦めるしか......」

 

レ級「深海棲艦のまま......」

 

タ級「え?」

 

レ級「深海棲艦のまま結婚しちゃダメなの?」

 

我儘な答えだった。

でもそれしかもうレ級には考えが浮かばなかった。

彼女の目尻には悔しさからか僅かに涙の滴が滲んでいた。

そんなレ級を可哀そうだと思いながらも、丁寧に諭してやる事しかできないタ級はこう言った。

 

タ級「レ級、あなた何を言って......。ダメに決まってるでしょ、そんなシステム元々ないし、それに私たちと海軍は敵同士なのよ?」

 

レ級「姫に相談して僕達の一派だけでも海軍の味方になるっていうのは?」

 

タ級「仕事とは言え、今までどれだけの艦娘を沈めて来たと思ってるの。その中には生身の人間、提督だって少なからずいた筈よ? その行いを海軍が赦して受け入れてくれると思う?」

 

レ級「その時は......」

 

タ級「ダメよ」

 

レ級「えっ」

 

短いながらも今まで一番強く厳しい口調で即座にタ級が否定の言葉を放った。

 

タ級「自決して自分一人で責任取るつもりだったでしょ? ダメよ。恥を晒さない為の自決ならまだしも、そんな我儘の私情による自決なんて私の矜持が許さないわ」

 

レ級「うぅ......でもぉ」ウル

 

タ級「ほら、泣かないの。何も絶対無理とは言ってないわ。姫に相談して襲うのを止めて、話し合いの機会を伺うという手段もあるわ」

 

ついに泣き出してしまったレ級をタ級は優しく抱き寄せ、その頭を撫でながら語りかけた。

 

レ級「ぐす......待つの?」

 

タ級「こういう問題は直ぐには解決はできないの。あなただってそれは判るでしょ?」

 

レ級「......うん」コク

 

タ級「いい子ね。それじゃ、まずは姫に相談するところから一緒に考えましょう。どうやって切り出すか。そして、それが上手くいったら大佐にも相談する......順序を踏まなくちゃね」ナデナデ

 

レ級「うん......そうだね。分った」グシグシ

 

ル級「レ級......大丈夫よ!」

 

ヲ級「そうよ! わたし達も協力するから!」

 

レ級「ル級、ヲ級......皆ありがとう!」

 

友人達の温かい言葉にレ級は涙で少し赤くなった目を拭いながら、いつも通りの明るい笑顔でお礼を言った。




姫許してくれるでしょうかね。
ま、それを考えるのは自分なんですがw

深海棲艦のままケッコンしていみたいんですよねぇ。


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第58話 「お話」

早速レ級は姫に海軍との和睦の相談をしに行きました。
成功するかな?


姫「......本気?」

 

姫「お前達だけ抜けて投降するというのは?」

 

レ級「それじゃ意味がないでしょ? 目的はあくまで敵対関係の解消なんだから」

 

姫「私がそれに同意するとでも?」

 

レ級「勿論思ってないよ。だから説得しに来たの」

 

姫「......」

 

レ級「答えは分かってるよ。でも――」

 

姫「わかった」

 

レ級「やっぱり? でもさ......え?」

 

姫「交渉に臨んでもいい。聞こえた?」

 

レ級「......ほん......とに?」

 

姫「信じられないのは分かるけど本当。嘘じゃない」

 

レ級「でも、なんでそんなにあっさり......」

 

姫「お前達と行動を共にしてるとね......。降参した敵には絶対に手を出さなかったり、どんな相手にも強さに関係なく敬意をもって戦いに臨んだりする姿勢が昔の、艦娘だった頃の私を思い出させるのよ」

 

姫「誇り......矜持と言うのかしら、艦娘だった頃に軍人として持っていた実直な精神を思い出したの」

 

レ級「姫......!」パァッ

 

姫「他の子には私から言い聞かせるけど、でも、本当に和睦が実現すると思う?」

 

レ級「分からない。でも頑張るよ!」

 

姫「......それもそうか。応援はさせてもらうわ。頑張りなさいよ」

 

レ級「うん。任せて! あ......姫?」

 

姫「ん?」

 

レ級「その答えは本心、だよね?」

 

姫「疑うのも無理はないけど本当よ。嘘じゃない」

 

レ級「......」ジッ

 

姫「......」

 

レ級「......」ツカツカ

 

姫「ん? なに? って、え、ちょ......」

 

ギュッ

 

姫「......」

 

レ級「......姫、ありがとう。僕、姫を信じるよ」

 

姫「レ級......」

 

レ級「じゃ、僕はまた折を見て大佐、知り合いの提督に聞いてみるから」

 

姫「そう。わかった」

 

レ級「姫っ、ほんっ......とうっに、ありがとう!」ニパ

 

姫「もう、分かったからさっさと行きなさい。眠るから」

 

レ級「はーい。おやすみー♪」フリフリ

 

 

シーン

 

姫「......おやすみ」ボソ

 

側近「......姫様?」ヌッ

 

姫「勘ぐってるの? 本気よ。もう憎しみに駆られた行動は飽いた。ここでひとつ、かつての仲間......人間に期待してみるのも一考じゃない?」

 

側近「大丈夫でしょうか?」

 

姫「不安は誰でも同じ。ここはレ級達を信じなさい」

 

側近「そうですね。失礼しました」スッ

 

姫「待て」

 

側近「はい?」

 

姫「一緒に寝ない?」

 

側近「え?」

 

姫「どう?」

 

側近「あ......///」コク

 

姫「ふふ、ありがとう♪」




短っ、文字制限最少ギリギリだしw
ま、久しぶりなのでこれくらいでいいかもというのは甘えですねかね。

イベント楽しみました。
また通常運行に戻ります。


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第59話 「気遣い」

所謂恋人同士の“定期的な連絡”のようなものが暫くない事が気になった彼女から提督の鎮守府に通信が来ました。
そこでようやく事態を知るに至った彼女が取る事を決めた行動とは。


彼女『寝込んでる?』

 

加賀「はい、そうです。どうやら過労が原因らしくて」

 

彼女『大丈夫なの?』

 

加賀「それは問題ありません。ちゃんと医師の方にも診て貰ってますし、私達も細心の注意を以て看護していますので」

 

彼女『......そう。あなたがそう言うのなら間違いないわね。でもそっか......寝込んでるんだあいつ......』ブツブツ

 

加賀「少将殿?」

 

彼女『あ、いえ。でもないか、加賀?』

 

加賀「はい」

 

彼女『今度査察の任務の帰投中に近くを通りかかる時があるの。だから――』

 

加賀「分かりました。予定をお教えいただければ出迎えの準備を致します」

 

彼女『話が早くて嬉しいわ。それじゃ、よろしくお願いできるかしら?』

 

加賀「委細承知致しました。了解です」

 

彼女『ありがとう。それじゃあ宜しく......え? なに? あなたも何かあるの?』

 

加賀「?」

 

彼女『あ、ごめんなさい加賀、ちょっと代わるわね』

 

加賀「? はい」

 

武蔵『聞いたぞ加賀! 私の大佐が――』

 

ガチャン

 

 

加賀「......」

 

Z1「切ってよかったの? なんかまだ話し声が聞こえた気がしたけど」

 

加賀「私の、なんて図々しい......」ボソ

 

Z1「え?」

 

加賀「なんでもないわ。それより、近く大佐の元......いえ、復縁した彼女さん、少将がここに来るわ」

 

Z1「そうなの? やったぁ。僕あの人優しいから好きだなぁ」

 

加賀「確かに優しいですね。というより人物的に隙がない強敵というべきでしょうか」

 

Z1「え、強敵?」

 

加賀「恋のライバル、というやつですよ」

 

Z1「へぇ......ねぇ加賀さん」

 

加賀「なんですか?」

 

Z1「僕も恋のライバル?」

 

加賀「......」

 

Z1「加賀さん?」

 

加賀「訂正します。恋の仲間です。略して恋友」

 

Z1「あれ? “仲間”は?」

 

加賀「“恋仲”だと恋人になってしまいます。日本語の妙ですね」

 

Z1「えっと、つまりライバルじゃなくて大佐が好きなもの同士の仲間っていう事?」

 

加賀「その通りです。流石はレイスですね。賢いです」ナデナデ

 

Z1「ん......ダンケシェ......加賀に撫でられるのも好き♪」

 

加賀(可愛い......)

 

 

Z3「......」ジー

 

Z1「あれ? ジェーン? どうしたの?」

 

Z3「ジェーンの方が可愛いわよ......」ボソ

 

Z1「え?」

 

Z3「こほん、なんでもないわ」

 

Z1「?」

 

Bis「無理はよくないわよ!」

 

Z1「あ、マリアさん」

 

加賀「これはこれは、海外組が勢揃いですね」

 

Bis「ジェーン、羨ましかったら私が撫でてあげるわよ!」

 

Z1「え?」

 

Z3「......っ」カァ

 

加賀「......」

 

Bis「恥ずかしがらなくていいのよ? ほら、お姉さんが撫でて――」

 

Z3「加賀さんお願いします」フイ

 

Bis「!?」

 

加賀「私でいいのかしら?」

 

Z3「デリカシーがないドイツ人はドイツ人じゃないわ」キッパリ

 

Bis「え!?」

 

Z1「え? それってマリ――」

 

加賀「レイス、それ以上はダメ」

 

Z1「......?」

 

加賀「......」チラチラ

 

加賀が目配せしてる方を向くと、そこには涙目になったマリアがいた。

 

Z1「えっ、マ、マリアさんどうし――」

 

Bis「うわぁぁぁぁぁん!!」ダッ

 

バタン!!

 

Z1「......行っちゃった」

 

Z3「......ふん」

 

加賀「ジェーン」

 

Z3「っ......」ビクッ

 

加賀「ちゃんと後でマリアさんに謝るのよ?」

 

Z3「......分かってるわ」コク

 

加賀「そう。ならいいの」ナデナデ

 

Z3「ん......♪」

 

Z1(早く大佐にも撫でて貰いたいなぁ......)




もうすぐ第四部終了ですね。
第五部は提督の復活とイベントの話にするつもりです。
それまでは残りの話の間、今暫く彼には休んでいてもらいましょう。


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第59話 「お仕置き」

彼女が提督の鎮守府に来ました。
目的は勿論提督のお見舞い。

予定通り加賀が出迎えに来ていました。


彼女「こんにちは。そちらは相変わずつつがないかしら?」

 

加賀「ようこそお待ちしておりました。ええ特に、大佐以外は問題なく」

 

武蔵「それが一番の問題だろ?」

 

彼女「武蔵」

 

武蔵「う……」タジ

 

彼女「ごめんなさいね。悪気はないの」

 

加賀「いえ、構いません。心配して頂けるのはこちらも嬉しいですから」

 

武蔵「あ……その、悪かった。そうだな。一番心配してるのはお前たちだよな」

 

加賀「別に心配はしていません」

 

武蔵「え?」

 

加賀「大佐の容体も大分良くなってきたので目を覚まされるのも時間の問題だと思います。だから、心配はしていません」

 

武蔵「む……それでもお前たちの主人だろう?少しは……」

 

加賀「ええ、気にしてはいますよ。寝てる間ずっと寂しかったですから」

 

武蔵「ん……」

 

彼女「でしょうね。全く、アイツったらこんな上司思いな子達に寂しい思いをさせちゃって」

 

加賀「あ、いえそれは……」

 

武蔵「何を謙遜しているんんだ。起きたら抱き着くくらいしても許してくれると思うぞ? ああ、寧ろそれは競争か」ニヤ

 

加賀「……///」フイ

 

彼女「むさし~?」

 

武蔵「ふふ、ニヤつきながら怒られても全然怖くないぞ?」

 

彼女「そこは突っ込まないの。それじゃ加賀、案内してもらえるかしら?」

 

加賀「失礼しました。どうぞこちらへ」

 

 

~提督私室

 

彼女「……よく寝てるわね」

 

武蔵「本当だったか……。いや、疑ってたわけじゃないが、でも実際に見るとなんだか胸にくるものがあるな」

 

提督「……」

 

加賀「そんなに不安な顔されなくても大丈夫ですよ。本当にもう全快一歩手前の状態なんです。顔色も倒れられた時と比較にならない程良くなっていますし」

 

彼女「そうね。穏やかな顔だと思うわ」

 

武蔵「そうだな。普段は殆どしかめっ面……」

 

加賀「?」

 

彼女「武蔵? どうしたの?」

 

武蔵「いや、普段ガードが堅くてイロイロつるめなかった大佐が今は無防備の状態がちょっと、な」

 

彼女「は?」

 

加賀「……」

 

武蔵「ちょーっとイタズラくらいして――」

 

バン!

 

 

武蔵「貴様! それでも私のオリジナルか! 恥をしれ!」

 

無蔵(彼女側の武蔵)「なっ!?」

 

武蔵「殊勝にも大佐の見舞いに来た事に感心して敢えて静観していれば調子に乗り折ってからに!」

 

無蔵「貴様覗き見していたのか!? ならそっちこそ恥をしるがいい! 仮にも大和型たる戦艦がそのような不埒な真似をよくもまぁ……」

 

武蔵「なんだと! 自分の痴態を棚にあげるか!」

 

無蔵「お前の醜態の方が看過できないからな。当然だ!

 

武蔵「なにを!」

 

無蔵「やるか!?」

 

 

彼女「……あなた達」

 

加賀「ちょっと」

 

彼女「静かにしなさい」 加賀「静かにして下さい」

 

武蔵・無蔵「 」

 

彼女「せっかく具合が良くなっているのにあなた達が騒いだ所為でまた悪くなったらどうするのよ?」

 

加賀「その通りです。これはちょっとお二人には反省してもらわなければいけませんね」

 

武蔵「なっ、私もか!? 悪いのは明らかにこいつだろう!」

 

無蔵「いや、そもそも最初に騒ぎ出したのはこいつだ!」

 

武蔵「ああ!?」

 

無蔵「事実だろう? ああ!?」

 

 

彼女「ふぅ……」

 

無蔵「は!」ビクッ

 

加賀「……」スッ

 

加賀が無言で矢をつがえる所作を見せた。

 

武蔵「ちょ、加賀!? そ、それ実戦用の爆薬積んで……!?」

 

彼女「ごめんね加賀。お願いできる?」

 

加賀「本部の少将の片の頼みとあらば無碍に断るわけにはいけませんね」

 

無蔵「ちょ、おい!?」

 

彼女「じゃぁね。後でまた入渠区で会いましょ」ニコ

 

武蔵・無蔵「……!」ゾゾッ

 

加賀「それではお二方、覚悟はいいですか?」ゴウンゴウン

 

三本の矢を纏めてつがえた加賀が弦を引き絞り、2人の武蔵に狙いを定める。

矢を放つ前だというのにその矢先からは彼女の気合が伝わっのか、既に艦載機のエンジン音が響いていた。

 

武蔵「ま、待て!」

 

無蔵「話を――」

 

加賀「第一航空戦隊の怒り、思い知りなさい」

 

ズババババババ!

 

武蔵・無蔵「ぎゃー!!」




はい、一番煩かったのは結局誰だったでしょうか。
正解は言ったら怖いので言いません。

病院や床に臥せる人がいる所では静かにしましょう。


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第60話 「侵入」

レ級達が大佐に例の話(*第四部第58話参照)をする為に基地に忍び込んだようです。


そ~……コソッ

 

レ級「……」キョロキョロ

 

ヲ級「どう?」

 

レ級「うん。誰も居ない」

 

ル級「チャンスね!」

 

タ級「でも変じゃない? この時間帯に執務室に秘書艦どころか大佐も居ないなんて」

 

レ級「きっとトイレだよ」

 

ヲ級「そうだよ!」

 

ル級「そう……かしら?」

 

タ級「……まぁ誰も居ないなら機を逃す事もないわね。でもちゃんと警戒するのよ?」

 

レ級「はーい」ヨジヨジ

 

ドテッ

 

窓からよじ登ったレ級は部屋に何とか入ったものの、窓枠に足をひっかけてしまい盛大にこけることによって侵入を果たした。

 

タ級(言ってるそばから!)

 

ヲ級「レ級大丈夫!?」

 

レ級「いてて……大丈夫。気付かれて……ないみたい」

 

ル級「ほっ」

 

ヲ級「じゃ、わたしも行くね。んちょっと……」ヨジヨジ

 

ヲ級も危なげに窓をよじ登って侵入に成功するが、窓から部屋に身を乗り出した瞬間上半身から部屋に転げ落ちた。

 

ゴロン

 

ヲ級「わぷっ」

 

タ級「あなた達ね……」

 

タ級は眉間に手を当てて悩ましげな表情をした。

 

ル級「二人とも背が低いからね。次は私っ……っと」

 

スルッ

 

ル級は先の二人と打って変わり、窓枠に両手を掛けると勢いをつけて危なげなく飛び越えて侵入した。

 

レ級「ズルイ!」

 

ヲ級「卑怯!」

 

ル級「ええ!?」ガーン

 

タ級「何やってるんだか……。ふっ……!」

 

ヒョイッ

 

タ級もル級と同じ要領で軽快な動作で片手で飛び越えた。

 

レ級「すごーい!」

 

ヲ級「カッコイイ!」

 

パチパチ

 

ル級「なんでぇ!?」ウル

 

タ級「騒がないの。……確かに誰もいないわね」キョロキョロ

 

レ級「あ、もう一つドアがあるよ。ここも調べてみよう!」

 

タ級「あれは、大佐の私室ね、多分」

 

ヲ級「え? 大佐の部屋に入るの?」

 

ル級「お、男の部屋に……」ポッ

 

レ級「え? これ大佐の部屋なの? へぇ、どんな部屋なんだろ」キラキラ

 

タ級「目的見失ってるわよ。他人のプライベートはあまり侵害したくないけど……まぁ仕方ないわね。行くわよ」

 

レ級・ル級・ヲ級「はーい」

 

ガチャ

 

 

タ級「……あ」

 

レ級「誰か居た? 大佐?」

 

タ級「そう……ね。大佐が居たわ」

 

ル級「わわっ。き、気付かれちゃった?」

 

タ級「いえ……寝てるみたい」

 

ヲ級「今お昼だよ? まだ寝てるの? ぷぷ、おねぼーさんだね」

 

レ級「大佐寝てるの? ねぇ、入れて! どんなのか見たい!」

 

タ級「ちょっと、押さないでよ。はい」

 

トテトテ

 

 

ル級「あ、本当に寝てる」

 

ヲ級「寝て……あれ?」

 

レ級「大佐の寝顔いっただきー!」テテッ

 

タ級「あ、こらっ」

 

レ級「くふふ、大佐のどんな顔をして……ん?」

 

タ級「どうしたの?」

 

レ級「確かに寝てるんだけど、だけど……なんか……」

 

ヲ級「元気がない?」

 

レ級「うん。そんな感じ?」

 

ル級「えぇ? あ、ホントだ」

 

タ級「……疲れて寝てるのとはちょっと違うわね。意識がないみたい」

 

レ級「大佐病気なの?」

 

ル級「違うと思う。気力は確かに弱いけど、活力はちゃんとあるみたい」

 

ヲ級「そうね。多分電気の充電みたいに大佐も今体力を貯めてるのよ」

 

レ級「へぇ……つまり疲れて寝てるけど、体力が戻るまで起きないって事?」

 

タ級「恐らく」

 

 

レ級「そうなんだ! それなら……」

 

タ級「あ、ちょっとレ級? 何を……」

 

グニッ、グニッ

 

提督「……ぐむ」

 

レ級「ぷっ……く、あはは。変な顔ー♪」グニグニ

 

ル級「……ぷっ」

 

ヲ級「あ……くふふふ」

 

タ級「何やってるのよ……」

 

レ級「お話できないならちょっと遊んで帰ろうかなぁって」

 

タ級「だからって眠ってる人に……」

 

ヲ級「わたしもやる!」

 

ル級「え? あ……わ、私も!」

 

タ級「あなた達ねぇ……」

 

ガチャ

 

 

レ級「あ」

 

ル級「え?」

 

ヲ級「ん?」

 

タ級「……」

 

赤城「……ふふ」ビキビキ

 

タ級「逃げるわよ!」ダッ

 

レ級「ちぇーもうちょっとあそ――」

 

ビュッ

 

ル級「きゃっ」

 

赤城「逃がすか!! ふん捕まえてやるんだから!」ゴゴゴゴ

 

ヲ級「きゃー♪」

 

タ級「余裕かましてるんじゃないの! そんな事したら……」

 

赤城「もう容赦しないわ! 覚悟しなさい!」

 

レ級「最初から本気のクセにー。ま、今日は帰ろっか」

 

ル級「早く早く!」

 

タ級「ごめんなさいね。この子達にはちゃんと言っておくから!」

 

赤城「にーがーすーかぁぁぁぁ!!」ズゴゴゴゴ

 

レ級・ヲ級「わー♪」

 

ル級「ひぃぃ」メソ

 

タ級「全くなんでこんな事に……」




さて、次の話で大佐が目を覚まします。(予定)

ネタが溜まってるので暫くはスランプになる事もなさそうです。


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第61話 「起床」

そろそろ目覚めの時が近いんじゃないかということで、日に日に見舞いに訪れる人の数が増えてきていたある日。


島風「大佐はまだ起きないの―?」

 

那智「まだだ。だが、もう直ぐだぞ」

 

雪風「本当ですか!?」

 

加賀「間違いないわ。あれからどれだけ時間が経っていると思ってるの? 休養はもう純分なはず。後は……」

 

金剛「目覚めの kiss ネ!」

 

足柄「え?」

 

加賀「そうでした。後は接吻だけですね。なら私が……」

 

金剛「ちょ!? ナンバーワンの wife はワタシなのヨ!? ならワタシがすべきだと思いマス!」

 

那智「金剛さんナンバーワンというのは、ケッコンした順番の事だろう? 愛情の順番ならまだ一考の価値はあるがそれではな」

 

足柄「え、那智? なんで大佐の所に近づいて……」

 

那智「いや……ちょっと大佐の汗でも拭いてやろうかと」

 

加賀「ハンカチも持たずにですか?」

 

那智「っ……」

 

金剛「那智ぃ?」

 

加賀「那智さん?」

 

那智「わ、私にだって好きになる権利はあるだろう。だろう、足柄」

 

足柄「え? あの、その」アセアセ

 

加賀「……埒が開きませんね。やはりここは一航戦の代表として私が......」

 

金剛「No! 大佐への love が一番強いワタシが!」

 

足柄「あの、私……私も、その......」

 

4人「……」

 

 

島風「ねぇなんか加賀さん達急に黙り込んじゃってどうしたのかな?」

 

雪風「お、女同士の戦い……」ゴク

 

島風「へぇ~」

 

雪風「……」チラ

 

提督「……」

 

雪風「……!」カァ

 

島風「雪風ちゃんどうしたの?」

 

雪風「えっ? な、なんでもないよ」

 

島風「もしかしてキスの事?」

 

雪風「えっ」

 

島風「大佐にキスをしたら起きるのかな」

 

雪風「ど、どうだろ……」

 

島風「ね、してみたら?」

 

雪風「え!?」

 

島風「雪風ちゃん幸運の艦ってよく言われるじゃん。幸運のキス今こそって思わない?」

 

雪風「そ、そんな急にいわれてもぉ……わ、わたしは……」

 

島風「雪風ちゃんがしないならわたしがやっていい?」

 

雪風「ええ!?」

 

島風「あ、やっぱり雪風ちゃんも大佐の事が好きなんだね」ニヒ

 

雪風「あ、あう……」

 

島風「ねぇ、してみなよ。雪風ちゃんがしてダメならわたしがやってみるからさ」

 

雪風「でも……」チラ

 

提督「……」

 

島風「ゆ・き・か・ぜ・ちゃん?」

 

雪風「っ……、わかった」ポツリ

 

島風「おうっ」

 

雪風「分かったよ島風ちゃん! わたしやって――」

 

 

那智「だから! ケッコンしていようがいまいが、好きならキスをする権利くらいだれにでも……!」

 

スポーン

 

金剛「あ、連装砲……」

 

つい感情的になってその気持ちを身振りで表そうとした那智の振り上げた手から、艦装の連装砲がすっぽりと抜けた。

 

ヒュ~

 

それは綺麗な放物線を描き提督が眠るベッドへと向かっていき……。

 

雪風「分かったよ雪風ちゃん! わたしやって――」

 

ゴンッ

 

提督「!?」

 

バタッ

 

雪風「え?」

 

島風「 」

 

金剛「た、大佐ァ!」

 

加賀「 」サァ

 

足柄「あ、青くなっている場合じゃないわよ! あの落ち方ちょっと……」

 

那智「あ……あ……」ガクガク

 

その場にいた全員が蒼白の顔でベッドから落ちた提督の姿を目で探した。

だが、落ちた拍子に掛け布団も一緒に落ちたので実際にどういう状態になっているのか判らなかった。

 

加賀「くっ……大佐!」

 

やがて冷静さを取り戻した加賀がまっきに様子を確認しようと動こうとした時だった。

 

「ぐ……むぅ……」

 

声がした。

明らかに低い男の声だ。

その場に提督と艦娘しかいなかったので、その声の主は一人しかいない。

 

皆が声がした方を見つめる。

やがて提督と一緒に落ちた布団が明らかに中からの力で動き、徐々にその中身にいたモノが立ちが上がり、それと同時に布団が滑り落ちていった。

 

ムクッ

 

提督「っ痛……。なんだ? 此処は……。皆どうしたんだ?」

 

あまりにもあっさり目覚めてしまった男は、鈍く走る痛みに耐えながら不思議そうな顔で、揃って自分を見ている部下たちを確認してそう呟いた。




ということであっさりですが、提督復活です。

ではまた次の章で。


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メインストーリー(第五章)
第1話 「誓約」


提督が復活しました!
これより艦隊の指揮を……執る前に艦娘達からお話があるようです。


提督「そうか、そんなに眠っていたのか」

 

数日振りに目覚めた提督はいつもと変わらない様子だった。

だがよく見ると微妙に眉間の皺が減っているようにも見える。

鈍った体力を取り戻すのに少し苦労したが、それも体がまともに動くようになるにつれて自身の予想より早く回復した。

不測の事態だったとはいえ、今回の療養は提督の身体に大きな恩恵をもたらしたのは確かのようだった。

 

金剛「そうヨ? 大佐ったらあれだけ無理はしないデってお願いしたのにっ」プクッ

 

雪風「でもこうやって元気になってくれて良かったです!」

 

提督「雪風、金剛……すまないな。ありがとう。他の皆もだ。心配かけてすまなかった。そして恩に切る」

 

加賀「いいのです。あなた……大佐さえ元気になってくれればそれだけで私は満足ですから」

 

利根「右に同じくじゃ! 大佐よ、待っておったぞ!」

 

雷「大佐、おかえりなさーい!」

 

「おかえりなさーい!」

 

 

提督「ああ、ただいま。この礼は何れさせてもらう。期待しててくれ」

 

龍田「あらぁ、お礼なんてぇ♪ じゃぁ、ここにいる娘全員に練度関係なしに指輪くれたりしてくれるのかしらぁ?」

 

シーン

 

 

提督「……む」

 

ジーッ

 

提督の鎮守府に所属する艦娘達全員が彼を見つめていた。

 

提督(まさか? 冗談だろう?)

 

提督「まさかとは思うが、全員俺としたい……と?」

 

山城「ダメなんですか?」

 

比叡「それはあんまりです!」

 

大井「私、大佐となら……北上さんと同じくらい愛してあげても……いい、のよ?」

 

男に興味がない代表格の三人がこんな事を言う時点で最早答えは明らかだった。

 

長門「大佐よ。まぁ既婚者としてはちょっと妬けてしまうが、器の大きい所を見せてくれると私も惚れ直すと思うぞ」

 

明らかに意図的なタイミングで長門が割り込んできた。

妬けるとか言っておきながらその顔は、この事態を楽しんでいるかのように面白そうに笑っていた。

 

提督「長門……。俺は前に恋人ならとは言ったが、まさか全員とケッコンとは、な……」

 

榛名「大佐ごめんなさい。榛名はしたいです。ゼッタイ」

 

秋雲「諦めてしちゃってよー。あ、勿論わたしもだかんねっ」

 

提督「……分った。流石に練度の件は無視するわけにはいかないが、条件を満たした者とは……その、しよう」

 

足柄「何をしてくれるのかしら?」

 

提督「足柄、お前……」

 

足柄「な・に・をしてくれるのっ?」ズイ

 

いつになく真剣な表情で足柄が提督に迫る。

彼女があやふやな答えではなく、提督自身の口から明確な答を言うことを欲しているのは明らかだった。

 

提督「ケッコン――」

 

足柄「それはあくまで手段でしょ? 違うの。私は提督に......その......」モジモジ

 

提督「……足柄、一度皆の所に戻ってくれ」

 

足柄「……分った」

 

テテッ

 

 

提督「んんっ」

 

「……」

 

艦娘達が提督を見つめていた。

期待している言葉が出るのだろうか、あの提督が果たしてそんな言葉を発してくれるのだろうか。

期待と不安が入り混じった空気がその場の雰囲気に立ち込める。

 

提督「皆」

 

「はいっ」

 

提督「ケッコンの暁には……いや、関係なく意思ある者は愛する事を誓う」

 

ワァァァァァァァ!!

 

 

提督(次に生まれ変わるとしたら女がいいな……)

 

湧き上がる完成の中、何故か提督はそんな事を思った。

 

 

 

~同刻、大本営海軍本部技術研究室

 

技術将校(以降、将校)「ん? これは……」

 

中将「どしたの」ヌッ

 

将校「わっ。ちゅ、中将殿どうしてこんな所に?」

 

中将「トイレからの帰りだよ」

 

将校「トイレなら司令室にあるではありませんか。何故わざわざ此処まで……」

 

中将「悪い事してないか確かめるのも管理職の仕事だからね」

 

将校「べ、別に私は……」

 

中将「分ってるって。それで、どうしたの?」ズイ

 

将校(う……なんだこの威圧感は? 中将からこんな気配がするなんて……くっ、逆らえない)

 

将校「こ、これを……」スッ

 

中将の威圧(本人にその気なし)に負けた技術将校は折れ線グラフが印字された紙を中将に見せた。

 

中将「ん? このグラフは……」

 

将校「詳細につきましては最高機密の技術ですので特別な許可がない限りお教えできませんが、これは有る方法にて艦娘達の感情レベルをグラフ化したものです」

 

中将「へぇ……。これ、凄く盛り上がってるみたいだね」

 

将校「そうなんです。ここの鎮守府は以前から落ち着いていたのですが、急にこんな数値が……。まぁ流石にこの変動は急激すぎるのでバグだと思いますが」

 

中将「ふーん、因みにこれを管理して艦娘の反乱の意志とかをチェックしたりしてたの?」

 

将校「……おおよそその通りです。優れた存在とはいえ、所詮は兵器ですから。そのくらいの管理は絶対に必要です」

 

中将「……そうだね。人間、これくらい臆病でないと生き残れないよね」ボソ

 

将校「は? 中将殿今何と……」

 

中将「いや、よく出来たシステムだなと思ってね」

 

将校「あ、ありがとうございます!」

 

中将「うん。君の艦娘が兵器と言う認識は間違っていないと思うよ。これからもそのつもりでしっかり管理してね」

 

将校「はっ、お任せ下さい!」

 

中将「うんうん。お願いね。それじゃ」

 

将校「はい。おつか……って、その、それっ。グラフを!」

 

中将「ああ、ごめんごめん。はい」ポン

 

将校「ああ。ありが……タバコ?」

 

中将「ダメ?」

 

将校「……」

 

中将「頼むよ」

 

将校「……中将殿この事は……」

 

中将「俺が守らないとでも?」

 

将校「いえ、信じております。どうぞ」

 

中将「うん。ありがとう。今度また何か奢るよ」

 

将校「い、いえそんな」アセアセ

 

中将「気にしない気にしない。若い子の面倒を見るのもオジサンの仕事だから。じゃ、頑張ってねー」

 

将校「あ、はい。すみません。ありがとうございます……」

 

 

~廊下

 

中将「……」

 

中将(何か艦娘に仕込んでるみたいだな。今度調べてみるか)




次は夏のイベントのお話です。
いやぁいろいろありましたホントorz


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第2話 「作戦」

久しぶりの執務の仕事。
その前に秘書艦の扶桑から提督が寝ている間に本部から来ていた作戦の事について話がありました。


提督「新しい作戦か」

 

扶桑「はい。大佐がお休みになられている間に本部より新しい作戦遂行指示がきておりまして」

 

病み上がりの提督に仕事の話をする事をきにしているのか、すまなそうな表情で扶桑は言った。

 

提督「なるほど。それで概要は?」

 

扶桑「はい。こちらを……」

 

 

提督「ふむ……」

 

提督は作戦の概要書を見て顎に手を当てる。

その渋い表情から今回の作戦の難度の高さが伺い知る事ができた。

 

扶桑「ご覧の通り今回の作戦我が鎮守府の総力を賭すものと考えても間違いないものだと思います」

 

提督「第二次AL/MI作戦か……」

 

扶桑「総力戦である以上所費する資材も相応の量が予測されます。加えて、ほぼ全戦力を投入するため、主力の第一艦隊以外の艦隊にも奮闘してもらわなければいけません」

 

提督「ふむ……」

 

提督はまた考え込むように手で顎撫でた。

 

扶桑「……大佐、失礼とは思いますが私個人の正直な見解を述べてもよろしいでしょうか?」

 

提督「……言ってみろ」

 

扶桑「今回の作戦、大事を取って不参加を決意するのも手だと思います」

 

提督「……資材、弾薬と主力以外の艦隊の事か?」

 

扶桑「はい、そうです。弾薬以外の資材は問題ないものと判断できますが、やはり弾薬が2万では少々キツイと……」

 

提督「して戦力は?」

 

扶桑「第二艦隊以降の戦力は、主に成長レベルが60に達していない者がほとんどです。この戦力で今回の作戦に臨むのは些か不安に思います……」

 

提督「なるほどな」

 

提督は特に表情を変えることもなく、いつもの調子で短く答えただけだった。

 

扶桑「大佐……如何致しますか?」

 

提督「……」

 

目を閉じて瞑想しているかのように考え込んでいる様子の提督。

扶桑はその時ある事に気付いた。

考え悩んでいるはずの提督の表情がどこか先程までと違い、穏やかに見えたのだ。

 

提督「扶桑」

 

暫くして目を開けた提督が静かに扶桑の名前を呼んだ。

 

扶桑「はっ」

 

提督「この作戦、実行する」

 

扶桑「……はっ」

 

予想してなかったわけではなかった。

ただ、自分たちの提督は基本的に慎重派なので、この選択を選ぶ可能性は作戦を実行しない選択に比べて低いだろうと思っていたんのだ。

 

提督「扶桑、心配しなくていい。これから説明してやる」

 

扶桑「大佐……ええ、よろしければお願いします」

 

提督「まず今回の作戦だが、AL作戦に投入する戦力は基本、作戦の目的が搖動にある為、主力以外、所謂二軍を投入することになる。ここまではいいな?」

 

扶桑「はい。その判断は間違っていないと思います」

 

提督「ありがとう。だが、気になるのは二軍の戦力だろう?」

 

扶桑「はい。その通りです」

 

提督「扶桑、我が鎮守府には確かに主力と比較して戦力が劣る艦娘がいる。お前が言った通り主力との戦力差は重要だろう」

 

扶桑「はい」

 

提督「だがな。一つ気付いて欲しいのはその劣る戦力がどれだけいるか、だ?」

 

扶桑「え? どれでだけ、ですか?」

 

提督「そう。数だ。我が鎮守府には一つの育成方針がある。それは知っているな?」

 

扶桑「はい。『総合武力向上計画』ですね」

 

提督「そうだ。この計画に則り俺たちは各艦種にあるノルマを課しているな?」

 

扶桑「はい。戦艦はレベル75、空母は80、重巡は70、軽巡は60、駆逐は50でしたでしょうか?」

 

提督「そうだ。潜水艦を敢えて計画に入れてないのは常に基地周辺の警戒をさせる事によって練度の向上が全艦種の中で特に著しいからなのだが、それはひとまずここでは置いておこう」

 

提督「それでだな。現状その育成方針に則り、お前達を鍛えてきたわけだが。その結果今はどのような状態だと思う?」

 

扶桑「そうですね……。全ての子がノルマを達成しているわけではありませんが、方針のお蔭で現状、新人の要育対象の子を除けばレベルが40より低い子は一人もいなかったと思います」

 

提督「その通りだ。そしてそれが今回俺が、この作戦を実行可能だと判断した肝なんだ」

 

扶桑「レベルが低い子がほぼいないのが重要だと?」

 

提督「そうだ」

 

扶桑「でも大佐、いくらレベルが低くないとはいえ、平均しても50半ばの子で編成を組むのはやはり戦力としては不安では?」

 

提督「そこに関しては出撃前に、遠征前に必ず行っていた集中力強化訓練を行う」

 

扶桑「遠征の前の……あっ」

 

提督「気付いたか? そうだ。この集中力強化によってお前達艦娘は戦果の向上を図ることができただろう? それが遠征の成功率の高さでも証明されているわけだが」

 

提督「今までは単発的にしかこれを行わなかったが、今回は慎重に慎重を重ね、全ての出撃に置いて全艦にこの訓練を義務付ける。それこそいくら面倒でも構わない。必ずこれを実行する」

 

提督「これによって艦隊の攻撃の正確さ、被害の軽減の実現性が増す。更にこれが何に繋がるか?」

 

扶桑「資材の節約、です」

 

提督「満点だ。流石だな扶桑」

 

扶桑「そ、そんな……」ポッ

 

提督「以上の対策により作戦の長期化にさえ焦りを憶えなければ、MI作戦も含めて今回の作戦は十二分に遂行が可能だと俺は判断したわけだ」

 

扶桑「なるほど……慎重の上に慎重を重ねて......。あ、でもそれだと作戦が実行期間が終わってしまう可能性も……」

 

提督「その時はすっぱり諦める」

 

扶桑「大佐……」

 

提督「扶桑、ダメか?」

 

扶桑「……いえ。これなら……この計画なら私も本作戦は十分に遂行可能だと思います!」

 

提督「そうか、ありがとう。なら、今から今回の作戦について全員にミーティングを行うから皆を集めてくれるか?」

 

扶桑「はい! 分かりました!」




実際にこの通りにしました。
全員常にキラキラで実行です。
結果は……次の話で分かるといいなと思いますw


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第3話 「開始」

いよいよAL/MI作戦が始まります。
ミーティングも何時もより緊張感が立ち込めているようです。


提督「ではこれより作戦の説明と指示を行う」

 

提督「皆は既に知っていると思うが、今回の作戦は総力戦の構えだ。戦力を二つに分けて同時に行動し、目的の達成を図る」

 

提督「まず搖動が主な目的なAL方面軍だが、搖動が目的である以上こちらに主力を割くことはできない。よって第二艦隊以下の第二戦力にここは奮闘してもらう」

 

提督「先ずは駆逐艦だ。陽炎、不知火、いけるか?」

 

呼ばれた二人は背筋を伸ばして返事をした。

 

不知火「愚問です。どうぞお随意に使い潰し下さい。2軍とは思えぬ戦果をご覧にいれてみせます」

 

陽炎「ここでわたし達を選ぶとは良いセンスね! 任せて!」

 

提督「結構。次に重巡。摩耶、鳥海、愛宕、頼めるか?」

 

鳥海「頼めるかなんて……大佐の頼みなら勿論です!」

 

麻耶「おうっ! 待ってたぜ! あたしの活躍に期待してなっ」

 

愛宕「ふふふ~。ひっさりぶりの出番ですね~♪ がんばります♪」

 

難しい作戦だというのに普段から活躍できる機会に恵まれてない所為か、三人とも嬉しそうな顔で応じた。

 

提督「頼もしいな。次は空母。隼鷹、飛鷹、どうだ?」

 

飛鷹「えっ私!? ……」

 

提督に名前を呼ばれた飛鷹は心から意外そうな声で驚きの声を上げた。

 

提督「ん? 不安か? なら他の者でも……」

 

飛鷹「違うわ! 嬉しいのよ! やってやろうじゃない!」

 

提督「そうか、ありがとう。隼鷹は?」

 

隼鷹「あたしと飛鷹を組ませる時点で勝ちは保障されてるよっ! 勿論征くよ!」

 

自信のこもった声で返事をする隼鷹、久しぶりの飛鷹とのコンビに燃えているようだった。

 

提督「頼んだぞ。 ……そして最後は、北上、お前だ」

 

北上「やっと北上様の出番ってわけねー。ま、期待してていいよ。間違いなく沿うから」

 

いつもの飄々とした調子で受け応える北上だったが、どことなく声が僅かに嬉しそうに弾んでいるように聞こえた。

 

提督「ふっ、相変わらずの自信だな。分かった、期待させてもらおう」

 

提督「以上の者をAL方面攻略艦隊とする。何か質問や異議のある者は?」

 

不知火「道中の支援はありますか?」

 

提督「ない。支援は全て敵の主力に対する決戦支援のみに力を注ぐ。よって主力までの道のりは各自集中力の強化によって自力で乗り切ってもらう」

 

不知火「そうですか……」

 

提督「すまないな。こればかりは資材の関係で仕方なかった。だが、無理はしなくていい。危険だと判断したら任意での撤退を許可する」

 

不知火「ご配慮ありがとうございます。ですが、無用な心配です。支援がないと聞いて俄然やる気が出ましたので……ふふ」

 

陽炎(こんなに楽しそうな不知火初めてみるなぁ。ま、それはわたしもだけど♪)

 

提督「他に質問はないか? では、AL作戦の説明は以上とする」

 

 

提督「MI作戦は敵主力の撃破だ。故にこちらも主力で行く。AL方面の敵の主力も強力だろうが、こちらは間違いなく我が鎮守府最高の戦力で挑まなければ危険な相手だろう」

 

提督「こちらも道中の支援は行わず、支援は決戦のみとするが、その替わり戦力の出し惜しみはしない。要撤退レベルの被害を受けた者が出たら直ぐに交代の者を出せるように万全の体制を敷く」

 

提督「MI方面攻略艦隊に参加する者については今更言うまでもないか。それぞれの艦種を代表して意気込みを聞かせて欲しい。加賀?」

 

加賀「お任せください」

 

提督「それだけか?」

 

加賀「これ以上の言葉は必要ないと判断しました」

 

短い言葉だった。

だが、加賀と共に並ぶ赤城、飛龍、蒼龍の顔は彼女の言葉に込められた意味を解しているのか、全員頼もしい笑みを浮かべていた。

 

提督「……そうか。頼んだぞ」

 

加賀「了解しました」

 

提督「次はなg」

 

Bis「任せてちょうだい! 大佐の妻としてきっちりと――」

 

金剛「ちょっとマリア、ズルイよ!?」

 

ギャーギャー

 

提督「……比叡」

 

比叡「あっ、は、はい!?」

 

自分に声が掛かるとは思ってなかったのか驚いた表情をする比叡。

そんな彼女の頭に提督は優しく手を置いて喋った。

 

ポン

 

比叡「あ……」

 

提督「あの危なっかしい姉や義姉の事を頼んだぞ」

 

比叡「あ、はい! お、お任せください!」

 

提督「……よし。長門」

 

長門「ん……何しろ帝国海軍の旗艦と象徴のコンビだ。心配するだけ無駄というものだろう。なぁ武蔵?」ニヤ

 

武蔵「当然だ」ニッ

 

提督「……流石だな。宜しく頼む」

 

提督「利根? 大丈夫か? 震えているが」

 

利根「……しょ、正直興奮もするが……ちょ、ちょっとだけ怖くてな……」

 

筑摩「姉さん……」

 

利根「な、情けなく見えるかもしれんが。心配無用じゃ。必ずやり遂げ――」

 

ギュッ

 

利根「あ……」

 

提督は最後までは言わさず、小刻みに震える利根の体を優しく抱きしめた。

 

提督「怖がるのは恥じゃない。むしろ当然だ。だが、どうかその恐怖を乗り越えて頑張って欲しい。大丈夫だ、皆がいる」

 

利根「大佐……」グス

 

筑摩「そうですよ。姉さん! 私たちがいます!」

 

鈴谷「ま、ここは鈴谷達を頼って欲しいわけでありましてー。ね? 神通ネーサン」

 

神通「え? ね、姉さんって……あの、私軽巡なんですが……」

 

三隈「そんなの関係ないですわ! 神通さんは頼もしい方ですもの」

 

提督「そういう事だ。利根、神通頼んだぞ」

 

利根「う……ぐす……。ふぅ……うむ! 任せるのじゃ!」ニコッ

 

神通「もう……仕方ないですね」ニコッ

 

提督「大丈夫そうだな。奮闘に期待する」

 

提督「駆逐勢は特に大所帯だ。改二組は勿論、今回は島風と雪風にも参加してもらう。行けるか?」

 

名前を呼ばれた島風と雪風が直ぐに元気良く反応する。

 

島風「当然だよ! 早く征きたい!」

 

雪風「雪風の『幸運』を見せる時が来ましたね!」

 

続いて改二組で最高レベル保持者の響がいつも通り静かに進み出てきた。

 

響「……作戦が終わったらご褒美だよ?」

 

提督「ああ、分かった。期待してていいぞ」

 

 

提督「これで全員だな。残りの者は鎮守府と教育生の守りに就いてもらう」

 

提督「それでは諸君、我が鎮守府始まって以来の大規模な作戦だが、諸君らなら必ず完遂できるもの信じ、ここに作戦の発令を宣言する」

 

提督「第二次AL/MI作戦開始せよ」

 

全員「はっ!!」




通常に戻るとか言っておきながら遅くなりましたね。
やっぱ日常ネタ向きなんだろうなぁ俺……。

でもエタらないので、そこは安心して頂けたらなぁと思います。


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第4話 「横殴り」

AL作戦遂行中の不知火達、北方港湾の主力まで目前と言った所まで何とか辿り着いたようです。


提督「AL方面の方はどうだ?」

 

扶桑「順調です。今はようやく搖動の本詰め、北方湾港の主力に向かっているところです」

 

提督「部隊の状況に問題は?」

 

扶桑「愛宕と北上が負傷したそうです。大事には至ってないようですが、作戦の続行は難しいらしく、本人達はなかなか受け入れなかったみたいですが、今やっと帰投の途に就いたみたいです」

 

提督「そうか。北上たちの悔しそうな顔が目に浮かぶな。それ以外は?」

 

扶桑「今のところは。後は上手く敵主力を補足してくれればこちらからも支援砲撃を行うだけです」

 

提督「そうか……」

 

扶桑「大佐、大丈夫ですよ。あの子ならきっと――」

 

重苦しい雰囲気の中、その空気を裂くように通信機のブザーが突如鳴った。

 

ビー、ビーッ

 

提督「こんな時に通信? 火急……悪い報せか」

 

扶桑「取り敢えず出ますね。はい、こちら――」

 

提督「……」

 

扶桑「あ、あなたは……」

 

提督「? どうした?」

 

 

~北方AL海域、北方湾港付近

 

鳥海「どう? いる?」

 

岩礁の陰に身を潜めている鳥海が緊張した声で偵察をしている不知火に聞く。

 

不知火「……いますね。確認しました」

 

麻耶「よっしゃ! 後はそいつらをぶっ潰せばこっちは終わりだな!」

 

陽炎「簡単に言わないで下さいよ……。MI方面程でないと言ってもこっちの主力なんですよ?」

 

飛鷹「んー、予定通り決戦に持ち込めば支援砲撃が来るはずだし、それがあれば割と余裕で……」

 

飛鷹が支援を織り込んだ攻撃の計画を立てようとしたときだった。

その時僅かだが隼鷹には砲撃の発射音が聞こえた。

 

ドッ……。

 

隼鷹「飛鷹!」

 

飛鷹「えっ?」

 

ガーン!!

 

麻耶「ちっ、バレたか!」

 

不知火「いえ、泳がされていたのでしょう。油断しているとこを一網打尽を狙ったのでしょうね」

 

いつも通りの冷静な表情で戦闘態勢を取る不知火。

その動作には隙がなく、突如の奇襲にも些かも動揺の色は見られなかった。

 

陽炎「落ち着いてないで反撃行くわよ! 飛鷹さんは大丈夫!?」

 

飛鷹「ええ、なんとか……隼鷹、ありがとう」

 

隼鷹「いいってことよ! でも、これじゃ支援は期待できないかもね……」

 

鳥海「キツイ戦いになりそうね。……っく」

 

不知火「だから何だと言うんです?」

 

支援の可能性が低くなった事で全員が暗い気持ちになりそうだったところに再び不知火の冷静な声が飛んだ。

 

陽炎「不知火、あんた……」

 

不知火「2軍とは思えぬ戦果を見せると約束したんです。違えるつもりはないわ……」

 

背中を見せたまま表情が窺えない不知火はそう淡々と言った。

そっけない態度だったが、そのいつも通りの不知火らしさにその場にいた全員が勇気づけられた。

 

麻耶「駆逐艦の癖に生意気言いやがって……おおっし、やるぞ!!」

 

隼鷹「あいよ! 皆準備はいいかい!?」

 

陽炎「敵補足! 接敵まであと10!」

 

鳥海「了解! さぁ勝負所よ!」

 

飛鷹「いいわね! 負ける気がしないわ!」

 

不知火「勝つんですよ。3、2……会戦します!」

 

不知火達の前に敵艦隊が姿を現した。

規模こそ大きくはないが、フラグシップ級やエリート級のみで構成された精鋭艦隊だった。

 

不知火(相手にとって不足無し……!)

 

覚悟を決めた全力の一砲を見舞おうとしたその時だった。

 

ズドドドドドッ……ドォォォォン!

 

突如あらぬ方向から猛烈な砲撃が敵艦隊を真横から襲った。

 

不知火「っ、これは!?」

 

隼鷹「うわっ、ちち! 熱っ! え、何これ? 大佐達の方からの砲撃じゃないよ!?」

 

飛鷹「あれは……」

 

北上「おーい、みんなー!」

 

麻耶「おいっ、あれ北上じゃないか!?」

 

愛宕「私もいるわよー!」

 

鳥海「愛宕さんまで……え、あの艦隊は……!」

 

 

丁督「おうっ、大佐のとこの! 大丈夫か?」

 

不知火「あなたは……」

 

珍しく驚きに目を見開いた表情で突如現れた知らない提督を見つめる不知火。

 

丁督「お前の所の提督のダチだ。暇だから助けに来たぞ」

 

鳥海「ひ、暇だからって……」

 

丁督「うちは艦隊の数が少なくて作戦に参加できなくてな。だからこうやってお前たちを支援してやろうと探してたところで」

 

北上「帰投中のわたし達に偶然出会ったというわけ」

 

愛宕「ベストタイミングだったみたいね♪」

 

飛鷹「わざわざ提督自ら?」

 

飛鷹は呆れれた目を提督に向けた。

だが、提督はそんな視線を気にする様子もなく、歯をむき出して笑いながらこう

言った。

 

丁督「おう、そうだ! 悪いか?」

 

隼鷹「いや、助かったけどさ。でも……」

 

オオオオオオオ!

 

既に半壊状態にありながらも未だに戦意の衰えを見せず、寧ろ怒りから狂乱状態となった敵が雄たけびをあげて接近しようとしていた。

 

飛鷹「敵はまだ沈んでないわよ!」

 

丁督「へぇ、第一射を乗り切ったか。やるな」

 

不知火「支援は恩に切ます。ですが、油断はしない事です!」

 

丁督「別にしてねーよ。お前ら第二射だ。酸素を燃やせ。次は何も残すな」

 

金剛「了解ヨ! 行くわヨ長門!」

 

長門「ああ、次で決める」

 

日向「艦載機、準備良し」

 

翔鶴「こちらも問題ありませんよ」

 

加賀「……潰します」

 

大井「それは私のセリフよ!」

 

歴戦の強者が提督の指示に意気揚揚に応じ、準備の万端を告げる。

 

丁督「おし……やれ」

 

……ゴォォッ!!

ズ……ォォォォォオオオオン!!

 

2度目の艦砲射撃はまさに圧巻だった。

最初より明らかに濃密な弾幕が逃げ場のない熱の塊となって容赦なく敵を襲い、その上を航空機が悪魔の如く火の雨を降らせた。

 

丁督「油断するなよー慢心するなよー恥かかせるなよー」

 

爆熱で髪の毛が焦げるのも構わず、提督が艦娘達に手を抜かないように激を飛ばす。

 

陽炎「うっ……凄いけど、これ……」

 

隼鷹「うん。流石にやり過ぎじゃないかな……」

 

一部分だけ真昼の様に明るい状況に隼鷹は、提督の艦隊の戦力に戦慄し、冷や汗を流した。

 

不知火「……」

 

丁督「ん? なんだ悔しいのか? 手柄を立てれなくて」

 

皆が事の展開に驚嘆としている中、一人だけ無言で俯いていた不知火に気付いた提督が彼女に話しかける。

 

不知火「……いえ」

 

丁督「間違いなくお前たちだけでもやれたさ」

 

不知火の心中を即座に察した提督は言った。

 

丁督「まぁ今回はアイツの元に無事に戻れる手伝いをしてもらったくらいに思っとけばいい」

 

不知火「……」

 

丁督「そんな顔すんな。大丈夫だって、戻ってアイツの顔を見りゃ直ぐに安心するさ」

 

不知火「……ありがとうございます。ご協力に心から……」

 

丁督「そんな堅苦しい礼の言葉なんていらねーよ。いつものお前みたくビシッとしろ」

 

不知火「……すぅ……ふぅ……」

 

不知火「感謝します」

 

丁督「ああ、それでいい」

 

提督は持ち直した不知火の顔を見て心地よさそうにニッっと笑った。




ゲームでは普通に支援したんですけど、それだと面白味がないので退屈してた中佐に活躍してもらいました。

AL作戦、イベント初戦にしては過去最高の難易度とか言われてるだけありました。
でも慎重に行って時間さえかければ、多少面倒ですけど割と何とかなる感じはしましたね。


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第5話 「小休止」

AL作戦に参加していた艦隊が戻ってきたようです。


陽炎「ただいま!」

 

不知火「戻りました」

 

隼鷹「お疲れさーん!」

 

飛鷹「戻ったわよ」

 

摩耶「帰投したぜ!」

 

鳥海「攻略完了しました!」

 

北上「ま、当然だけどねー。た・だ・い・ま」

 

愛宕「ぱんぱかぱーん! ぶいっです♪」

 

提督「皆、よく戻って来た。ご苦労だった」

 

提督「中佐も、すまないな。助かった」

 

丁督「気にすんなって。それよりこいつらを褒めてやれ。俺達は補給を受けたらまた支援に出るぜ」

 

提督「いいのか?」

 

丁督「俺とお前の仲だろ? これ以上の言葉が必要か?」

 

提督「……本当にすまないな」

 

丁督「いいって事よ。そん代わり補給はしっかりさせて貰うぜ?」

 

提督「ああ、勿論構わない。……頼りにしている」

 

丁督「おうっ、それでいい。んじゃ、また後でな」ヒラヒラ

 

中佐はそういうと自分の指示を待つ部下の向かう為に早々に部屋を出て行った。

 

 

バタン、扉が閉まる音と同時に不知火が提督に質問をした。

 

不知火「MI作戦の方はどうですか?」

 

提督「今のところは、問題ない。お前達が……お前達の搖動のお蔭だ。あと、中佐の支援もな」

 

陽炎「じゃぁまだ遂行中なのね?」

 

扶桑「そうよ。今はMI島の攻略に向けて前進しているところね」

 

隼鷹「そっか。皆頑張ってるねー」

 

飛鷹「私達だってこんなに頑張ったんだもん。主力が頑張らなくてどうするのよ」

 

北上「そだね。ま、あのメンバーならいけるよきっと」

 

愛宕「豪華なメンバーだものねー。でも私達もその内必ず同じ所に行くわよ♪」

 

摩耶「あったり前だっつーの! 今回の作戦、結局支援に最後は助けられりまったが、かなり手応えを感じたしな!」

 

鳥海「そうね。自分の実力に少し自信が持てわよね♪」

 

提督「皆……本当にご苦労だった。作戦が終わるまで部屋で待機して休んでいていいぞ」

 

隼鷹「あ、その前に大佐」

 

提督「ん?」

 

不知火「少々報告が」

 

提督「なんだ?」

 

北上「んふふー、2つあるんだけど1つはまぁ直接確認してもらった方がいいかな」

 

陽炎「いい? じゃ、入れるわね。さ、入ってらっしゃい」

 

提督「?」

 

陽炎がそう言うと、報告の内容をイマイチ予測できずに何事かと訝しんでいた提督の前に見知らぬ少女が部屋に入ってきた。

 

 

トコトコ

 

春雨「は、春雨です……。く、駆逐艦の白露型……五番艦です」

 

提督「……この子は?」

 

愛宕「ALの主力をやっつけた時に一人だけ艦娘に戻った子がいたんです」

 

麻耶「で、回収して来たってわけ」

 

鳥海「大佐に是非、彼女の保護とこの鎮守府への配属をお願いしたく……」

 

提督「ふむ……」

 

提督はそう言うと静かに春雨の前に歩み寄って彼女に問いかけた。

 

提督「春雨、と言ったね?」

 

春雨「は、はい」

 

春雨は提督に話し掛けられて緊張した面持ちでビクリと反応した。

 

提督「そんなに緊張しなくていい。君は深海棲艦だったのかな?」

 

春雨「は、はい。多分……そうです。ごめんなさい。それだった時の事は全然憶えていないんです……」

 

春雨は申し訳なさそうな声で提督にそう言った。

その顔はまだ艦娘に戻れた現実に慣れていない所為か、不安一色だった。

 

提督「そうか。まぁそんなに気にする事はない。難しいかもしれないが、あまり気負わずに楽にしてくれ」

 

春雨「は、はい……」

 

提督の言葉を受けて安心した春雨は、少しだけ震えていた身体から強張りが抜けるのを感じた。

 

提督「それでいい。では、此処に来て早々だが俺から君に一つ頼みがあるんだが、聞くだけ聞いてくれるか?」

 

春雨「は、はい。何でも言って下さい!」

 

提督「はは、別に君に助けた見返りを要求するわけじゃない。頼みは2つだけだ。一つは先程鳥海たちが言ったが、君をこれから我が鎮守府で保護させて欲しい」

 

春雨「保護……あ、ありがとうございます!」ペコリ

 

提督「礼儀正しい子だな。では2つ目だが、俺はこれから君を我が鎮守府の一因として迎え入れる事ができるように本部に願い出てみるつもりだ。それで、あわよくば許可が取れたら……」

 

春雨「……」

 

春雨は提督の話を半ば放心した状態で聞いていた。

拾われたばかりの身寄りのない自分をここまで暖かく迎えてくれるとは思っていなかったからだ。

 

提督「君を正式に我が鎮守府の大切な一員として迎え入れさせてし欲しい」

 

春雨「え……こ、此処にですか?」

 

提督「そうだ。聞いてもらえるか?」

 

春雨は提督のその言葉を聞くと、驚きに見開いていた目から涙を溢れさせた。

 

春雨「……っ!!」

 

提督「不安だったかな? ならどうか安心してほしい。この頼みを聞いて貰えれば俺は提督として最善を以て君を――」

 

春雨「そ、そんな事言わないで下さい!」

 

提督「……ん」

 

春雨「う……ぐす、……こそ」

 

提督「ん?」

 

春雨「こちらこそお願いします! どうかわたし、春雨を提督、大佐の下に置いてください!」

 

春雨は涙で赤くなった目を恥じることも忘れ、感謝の言葉をハッキリとした声で提督に伝え、彼の提案を快諾する意を示した。

 

提督「そうか。ようこそ我が鎮守府へ。これから宜しく頼む」

 

春雨「はい! 宜しくお願いします!」

 

北上「おめでとー、よろしくねー♪」

 

陽炎「よろしく! 陽炎よ!」

 

春雨が提督の提案を快諾すると同時に、今までその様子を見守っていた北上達が暖かい言葉で彼女を迎えた。

 

提督(……感情抑制装置は、深海棲艦からの回収だから無いとは思うが、一応叢雲たちに調べて貰おう。もしなければ、ダミーを用意させるくらいはさせた方がいいかもな)

 

提督(装置を作った奴らなら必ず報告の時点で装置の有無を確認したがるはずだ。回収の経緯もある程度改変した方がいいかもしれない。報告の前に一度親父に相談してみよう)

 

 

提督が春雨たちの様子を眺めながらそんな事を考えていると、誰かが自分の服の袖を引っ張っている事に気付いた。

 

提督「うん?」

 

隼鷹「そいでさー、報告の2つ目なんだけど」

 

提督「ああ、そういえば2つあるとか言ってたな。なんだ?」

 

隼鷹「ん。今回の作戦の成功でさ」

 

提督「ああ」

 

飛鷹「大淀さんの実動部隊への参加の許可がもらえるわよ」

 

提督「大淀の……」

 

扶桑「ああ、そう言えば作戦の概要書に一定の戦果を挙げた人にそんな報酬があったような」

 

鳥海「大佐、これはチャンスですよ」

 

摩耶「大淀の奴にこの事を伝えて喜ばせてやれよ! 大佐が寝ている間、あいつ半分その事を諦めてたんだぜ?」

 

ここぞとばかりに鳥海たちが提督に決心させる為に畳み掛けてきた。

 

提督「……そうだな。誰か大淀が何処にいるか知っているか?」

 

愛宕「この時間帯なら鳳翔さんと明日の朝食の仕込みをしているんじゃないでしょうか?」

 

提督「そうか。皆、悪いが少し行ってくる」

 

北上「あ、もうあの話したの? うん。頑張ってねー」

 

提督「ああ」

 

提督は短くそう受け応えると、足早に部屋を出て行った。




MI作戦の話は大淀の話が終わった後にしようかと思います。

……なんか使用キャラとしてのグラに違和感を覚えたのは自分だけでしょうか。


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第6話 「狂喜」

吉報を伝える為に早速厨房に向かった提督。
扶桑の言っていた通り、鳳翔と一緒に朝食の仕込みを行っていた彼女を直ぐに見つけることができました。


提督「大淀、ちょっといいか?」

 

鳳翔「あら、大佐。どしたんですか? 大淀さんならこちらに」

 

大淀「大佐? どうかしましたか?」

 

提督「ああ、ちょっとお前に報告があってな」

 

大淀「え、私に報告ですか?」

 

鳳翔「大佐が艦娘に報告……あっ」

 

大淀「鳳翔さんどうかしました?」

 

鳳翔「ふふふ、大佐、私少し席を外しますね」

 

大淀「え?」

 

提督「いや、別に居ても構わな――」

 

鳳翔「ダメですよ?」ズイ

 

提督「……分かった」

 

大淀「え? え?」

 

鳳翔「それでは少しの間失礼しますねー」パタパタ

 

大淀「行っちゃった……いったい……?」

 

提督「さぁな……?」

 

大淀「あ、ごめんなさい。それで、えーと、私にご報告でしたっけ?」

 

提督「ああ、そうだ。そんなに大した事……いや、お前にとっては重要な事か」

 

大淀「私に? はい、なんでしょう?」

 

提督「先ほど、隼鷹達が作戦から戻りAL作戦の完遂を確認した」

 

大淀「本当ですか? それは、良かったですね!」

 

提督「ああ、そうだな。あいつらはよくやってくれた。後はMI作戦を何とか成功させるだけだが、まぁその前にだな」

 

大淀「あ、そうでしたね。私に何か?」

 

提督「ああ。AL作戦の目的達成、この戦果を上げた者には本部よりある報酬があってな」

 

大淀「あっ……」

 

提督「気付いたか? まぁ、そういう事だ。その……今更だがよろしく頼む」

 

大淀「……」

 

提督「大淀?」

 

ゴンッ

 

提督「っ!?」

 

放心状態に見えた大淀は、何を思ったのか厨房の流し台に立つといきなり拳を振り上げ、それを力いっぱい振り下ろした。

 

提督「お……大淀?」

 

予想だにしない行動に困惑の表情で提督は大淀に話し掛けたが……。

 

ゴンッ、ゴンッ

 

彼の声が聞こえていないのか、大淀はひたすら流し台を叩くだけだった。

 

提督(一体どうしたというんだ? 俺は何か不味い事でも言ってしまったのか? 怒らせてしまったのか?」)

 

提督は大淀の行動の原因を頭脳をフル回転させて推測しようとしたが、まるで見当がつかなかった。

 

提督(ん……?)

 

その時提督は大淀のある変化に気付いた。

 

大淀「……く……くく」

 

大淀は耳を澄ませてなければ分からないくらいの小さな声で俯いて拳を打ち据えながら低く笑っていたのだ。

 

提督(これは、もしかして……)

 

提督はそこでようやく大淀の行動について理解、もとい理由が解った気がした。

 

俯いて笑っている大淀の姿は一見すると近寄りがたい雰囲気だったが、長い髪から僅かに覗く彼女の顔は紅潮し、何かを我慢するように小さく身体を震わせていた。

そうつまり彼女は――。

 

提督(嬉しさは必死に堪えているのか?)

 

もう一度耳を澄ましてみると彼女の低い笑い声の後から

 

「くぅっ……」や「もうっ、ふふ……」といった嬉しそうな声が僅かだが漏れ聞こえた。

 

提督「大淀――」

 

ゴンッ、ゴン

 

提督(流し台が最早見る影もないくらいデコボコに……。俺は、今まであんな力で抱きしめられたりしていたのか……)ゾッ

 

提督(……なるべく落ち着かせるようにして話し掛けなければな)

 

提督「大淀、嬉しいのは分かるが、それくらいで一度……」

 

大淀「大佐!」

 

提督が最後まで言葉を言わないうちに大淀は自分の方から彼の方を向き、満面の笑みで嬉し涙が滲んだ瞳で続けてこう言った。

 

大淀「ありがとうございます!」

 

ギュウゥゥゥッ

 

提督「ふっ……ぐぅっ……」

 

大淀「大佐……私、私……本当に嬉しくて頭がどうにかなってしまいそうです……♪」

 

ギュウウウゥゥゥ……

 

提督「……」(た……耐えろ、俺……。こ、ここで意識を失うわ……け……)

 

大淀「……? 大佐? どうかしました? さっきからどうして無言で……」

 

提督「 」

 

大淀「あっ」

 

大淀「大佐ぁぁぁぁ!!」

 

 

その後、大淀の悲鳴を聞いて直ぐ駆け付けた鳳翔が見たのは、自分の予想に反して提督を抱き上げてオロオロしている大淀の姿だった。

 

幸い意識は直ぐに回復したものの、これが原因となったのかは定かではないが、以降提督が艦娘に自分から近づくことはあまりなくなったとかなんとか。




現在大淀の改グラを目指して演習奮闘中。
やっぱ最初のグラは違和感を感じるんですよねぇw


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第7話 「成功」

MI作戦参加組、なんやかんやで順調にボス手前まで到達してます。
作戦は無事成功するでしょうか?


~MI島沖

 

武蔵「こちら武蔵。今からMI作戦の最終目標、島確保の任務を開始する」

 

提督『……了解した』

 

武蔵「大佐? どうかしたか?」

 

提督『いや、長い作戦で疲労しているだろうが、これが最後だ。健闘を……いや、全員無事の帰還を願う』

 

武蔵「大佐……。参ったなそんな嬉しい事を言われたら気が抜けてしまうじゃないか。だが、了解した。必勝・必生を約束する」

 

提督「頼んだ……待っているぞ」

 

プッ――

 

 

武蔵「聞いたか?」

 

長門「ああ、これはもう絶対に成功させないとな」

 

金剛「うぅ、大佐に凄く会いたくなっちゃったヨ……」

 

Bis「これはもう、帰ったらたくさん甘えるしかないわね!」

 

加賀「煩悩は少し抑えて下さい。こちらも我慢しているのです」

 

加賀はそう言って胸元からある物を大事そうに取り出し、それを見つめ始めた。

 

赤城「! 加賀さん、それ! 大佐の写真!?」

 

利根「何じゃと!?」

 

加賀「意外ですね。誰もこういうのは持ってないんですか?」

 

筑摩「……なんで考え付かなかったんでしょう」ズーン

 

神通「あ、あの……最後の作戦なのに士気を下げるのは……」

 

響「……」プイッ

 

時雨「どうしたの? 響。悔しいの?」

 

榛名「し、時雨ちゃん!」

 

木曽「ふっ……、ははははは。なんだよこれ、最後だって言うのに締らないな!」

 

目に涙を滲ませて可笑しそうに笑う木曽。

 

長門「全くだ。だが、実に私達らしい。なぁ?」

 

武蔵「ふっ、そうだな。さて、気を抜くのも大事だが、それぐらいにしておけよ。そろそろ、行くぞ」

 

金剛「リョーカイ!」

 

響「……Да-с(ダー)」

 

時雨(あ、ロシア語? 恥ずかしさを隠してるのかな)

 

神通「あ、レイスちゃん達が戻って来ましたよ!」

 

 

Z1「ただいま! 敵を確認して来たよ!」

 

長門「戦力は?」

 

Z3「確認した感じ、あれは姫級の空母だと思うわ」

 

龍驤「取り巻きはフラグシップクラスの軽空母ヌ級2隻、同クラスの戦艦ル級と駆逐艦ニ級の……あれは、多分最新型やな」

 

武蔵「ふむ……どれも出撃前に軍の調査資料を見た限り、その中でも最近確認されたものばかりみたいだな」

 

利根「相手の力が判らないという事か? それくらいで吾輩は怖じづいたりはしないぞ!」

 

筑摩「姉さん、落ち着いて下さい。それはみんな同じですよ」

 

響「寧ろここまでの道のりは、元々ないものだと思っていた道中支援もあったからね。正直今の時点の響達の戦力はまったく消耗していないよ」

 

加賀「その通りです。加えて今から出向く最後の戦いには大佐の友人、中佐殿の支援があるとの事。慢心と油断さえしなければ……ただ前に集中すればいいのです」

 

赤城「本当に……中佐殿には感謝ですね」

 

長門「そうだな。なら私達も自身の活躍をもって感謝を伝えるとしよう」

 

神通「皆さん準備はよろしいですか?」

 

Z1「勿論、大丈夫だよ。いつでも!」

 

Z3「ここまで来て負ける事なんか考えられないわ」

 

龍驤「ええ気合や! うちも行けるで!」

 

飛龍「蒼龍?」

 

蒼龍「大丈夫だって。そっちこそしっかりやってよね」

 

木曽「よしっ、皆覚悟はいいみたいだな。なら行こうぜ!」

 

長門「了解した。ならば――」

 

武蔵「出撃だ!」

 

 

 

~某鎮守府提督執務室

 

提督「皆、ご苦労だった。よく帰って来てくれた」

 

金剛「当ったり前ヨ! 約束したじゃナ――」

 

Bis「大佐っ、ただいま! 作戦成功させたわよ! 抱き締s」

 

比叡「ああっ!? な、なに一人だけズルイで――」

 

提督「!!」ビクッ

 

ササッ

 

マリアが提督に抱き着こうとしたその瞬間、提督は驚異的な身のこなしで彼女を紙一重で躱した。

 

Bis「え……? っわぷっ」ビタンッ

 

比叡「え?」

 

丁督「お?」

 

艦娘達「……」

 

 

提督「……こほん、失礼した。マリア、すまないがそういうのは後だ。金剛もいい――」

 

トコトコ

 

神通「あ、響ちゃんっ」

 

響「……」

 

ギュッ

 

提督「響?」

 

響「大丈夫。怖くないよ。響は皆とは違うから」

 

響以外の艦娘「!!」

 

丁督「ほほう?」ニヤリ

 

提督「響お前何を――」

 

金剛「そうネ! 大佐、どういう事ヨ!? 大佐はワタシ達が怖いの!? だから避けたノ!?」

 

Bis「ええっ!?」ブワッ

 

加賀「大佐、ご説明願います」

 

提督「お前たち落ち着け。作戦から戻ってきたばかりだろう。こんな規模の作戦を成功させたんだ。その祝辞くらいさせ――」

 

利根「そんな事はどうでもいいのじゃ! 大佐は、吾輩達を恐れているのか!? そうなのか!?」

 

提督「ど……どうでも……」

 

筑摩「大佐っ、筑摩も教えて欲しいです!」

 

ワー、ワー!

 

 

北上「なに? これなんの騒ぎ?」

 

時雨「大佐が僕達の事怖がってるんだって」

 

北上「へぇ? どうせまぁ勘違――」

 

不知火「聞き捨てなりません。不知火は怖くないです」

 

陽炎「や、怖いわよ? 今の不知火」

 

摩耶「大佐っ、聞いたぜ! こ、この態度は照れ隠しなんだからな!? 誤解するなよ!?」

 

飛龍「そ、そうなの……? 怖がってるの?」ウルッ

 

蒼龍「勘違いだと思うんだけどなぁ」

 

長門「……木曽、止めてくれ」

 

木曽「いや、いくら長門姐に言われても……。それに、ほら……」

 

長門「ん?」

 

長門が木曽が指を指した方向を見ると、そこには武蔵が涙目になって駆逐艦達と一緒に提督に言い募る姿が見えた。

人目を憚らずに子供の様に提督に自分は怖くないと必死に訴えるその姿は、先程までの頼もさは最早どこにもなかった。

 

武蔵「せ、戦艦だから怖いのか!? なら大丈夫だ! 私は大和型、他の戦艦とは違うぞ!」

 

丁督「くっくっく……ふく、ははははははっ」

 

長門「中佐殿、笑ってないで止めて貰えると助かるのですが」

 

丁督「いや、悪いが断る。こんな光景俺の鎮守府では見る事ないからな。面白い」

 

神通「性格悪いですよ……」

 

丁督「悪いな。ま、これも一種の幸せ? ってやつだろ。ま、俺はこれでお暇する。またな」

 

長門「ふぅ……。支援ありがとうございました。大佐に代り、改めてお礼を申し上げます」

 

神通「ありがとうございました」

 

丁督「まったく、出来た女達だな。いいっていいって。もうそれで十分来た甲斐があったってものだ」

 

神通「また何か御用がありましたらいつでも」

 

丁督「ああ。なるべくそうならないように気合入れるわ。じゃーな」

 

 

神通「……どうします? この収集」

 

長門「なんか考えるのが面倒になってきた。私達も一緒になって混ざるか?」

 

神通「大佐が困りますよ?」

 

長門「ああ、一緒になって困らせ(甘え)よう」

 

神通「……」

 

長門「どうだ?」

 

長門が悪戯っぽい笑みを浮かべて神通に問うた。

 

神通「いいですね」ニコッ

 

言葉に含まれた意味を悟った神通が、顔を赤らめながら同じ笑みを浮かべて同意した。

 

長門「じゃぁ行こうか。大佐の奴、珍しく混乱してるみたいだぞ。チャンスだ」

 

神通「そうですね。お助けしましょう♪ 大佐っ」




ALに続いて肝心の戦闘描写はカットであっさり終了させてしまいました。
ごめんなさい戦闘描写とか苦手なんです。

え? 投稿が遅いのはそれが原因ではありません。
マイ○ラとモバ○スにちょとハマ――。


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第8話 「大量」

提督の執務室に何やら艦娘が何人か集まっています。
どの子も初めて見る子ばかりです。

加賀から報告を受けた提督もこの事態に少し困惑しているようです。


舞風「舞風でっす!」

 

初風「初風よ」

 

浜風「浜風です」

 

早霜「早霜です……」

 

時津風「時津風です!」

 

雲龍「雲龍よ。よろしくね」

 

提督「……加賀?」

 

加賀「はい?」

 

提督「この子達全員先の作戦で見つけて来たのか?」

 

加賀「いえ、雲龍さんだけは違います。彼女はMI作戦の成功に貢献したと認められた提督にのみ与えられる本部からの褒賞です」

 

提督「褒賞……」

 

加賀「あっ、すみませ……」

 

提督「いや、いい。俺達がどう思おうが本部はそのつもりでくれたんだろう」

 

雲龍「? 私が何か?」

 

加賀「雲龍さん、大佐はね、あなたが本部から褒賞として送られてきた事がまるで物の扱いの様で気に入らないの」

 

雲龍「そんなこと……現に私達は兵器だし……」

 

提督「雲龍」

 

雲龍「はい」

 

提督「確かに君の言う通りだ。俺の考えは倫理ばかり気にした軍人としては甘い考えだと思う。だがな、これは俺の信条なんだ。どうか我慢してくれないか」

 

雲龍「そ、そんな我慢だなんて……」

 

提督「それでも俺は軍人だ。場合によっては君を冷徹に扱う事もあるだろう。だが、極力そうならないようには最善は尽くす」

 

提督「そしてそれ以外の時は俺は君を、君たちと人と同じように接するつもりだ。ようこそ我が鎮守府へ。歓迎する」

 

雲龍「提督……」

 

提督「ああ、それと。ここでは皆俺の事は『提督』ではなく、『大佐』と呼んでいる。よかったら皆もそう呼んでくれると嬉しい」

 

時津風「大佐? 提督は准将じゃないの?」

 

加賀「愛称みたいなものよ。皆この呼び方が好きなの」

 

初風「へぇ……でも、甘くない? さっきの発言だって……」

 

舞風「でも、わたしは好きだなー。りょーかい、大佐! これからよろしくね!」

 

早霜「……巡り巡って、こんな素敵な殿方と出会えるだなんて……」

 

トトッ

 

早霜はそう言うと静かに提督に歩み寄り、そっと抱き着いた。

 

提督「ん?」

 

早霜「大佐……早霜、この貴方との出会いに感謝致します……。どうぞ、よろしくお願いします、ね?」

 

提督「……ああ。よろし――」

 

ギュッ

 

提督「ん?」

 

服を引っ張られる感触がした方向を向くと、そこには顔を赤らめて視線を逸らしている浜風がいた。

 

浜風「その……私も……よろしく、です」

 

提督「ああ。2人ともよろしく頼む」

 

雲龍「……いい、人みたいね。分ったわ。私も大佐の全てに従います」ペコリ

 

どことなくマイペースで掴みどころのない雰囲気を纏っていた雲龍が、此処に来て初めて心からと思える温かい笑みを浮かべて提督に頭を下げた。

 

時津風「時津風も! よろしくお願いしたいです! トッキ―、って呼んでね大佐!」

 

提督「それは絶対しないが時津風、お前もよろしくな」

 

時津風「えー? 呼んでくれないんですかー? でも、いいや。えへへ♪」ギュッ

 

初風「……」

 

気付いてみれば初風は一人だけその場に残されたいた。

厳しい意見を言ってその場の雰囲気を引き締め、あわよくば提督にそれを評価してもらう算段がもろくも崩れた形だ。

 

加賀「無理しなくていいのよ?」

 

地面を見つめながら半分泣きそうになっていた初風に気付いた加賀が優しくそう言った。

 

初風「でも私……」

 

加賀「大丈夫よ。大佐はこのくらいの事、気にする人ではないわ。寧ろ今はあなたが自分から動かないと。このままこれが禍根となって大佐との確執に繋がってもいいの?」

 

初風「う……」

 

ポン

 

初風「あ……」

 

加賀「安心して行ってらっしゃい」

 

頭を撫でられて気持ちの整理がついたのか、初風は意を決して提督との距離を縮め始めた。

 

 

トコトコ

 

初風「あ、あの……ごめんなさい大佐。さっきは私……」

 

提督「いや、初風、君の意見は正しい。だから俺は皆にお願いしたんだ」

 

初風「うん、分かってる……」

 

提督「初風、君もよかったらこの甘い男の戯言に少しだけでいい、耳を傾けてくれないか?」

 

初風「そ、そんな下手にでないでっ。わ、私のほうこそ、その……あの……」

 

いざ言葉にしようとすると気恥ずかしさからなかなか言葉にならなかった。

ただ一言、「よろしく」というだけなのに。

 

提督「……」スッ

 

提督はそんな初風の様子を見て静かに彼女の前に手を差し伸べた。

 

初風「大佐……?」

 

提督「さっそく一つ頼みを聞いてくれたか。ありがとう」

 

初風「え、頼みって……あっ」

 

提督「そう、『大佐』と呼んでくれた。これからもそう呼んでもらえるか?」

 

初風「……! はい!」

 

提督「ありがとう。では諸君、改めてようこそ。我が鎮守府へ」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

加賀「流石は大佐、掴みはバッチリですね」ボソ

 

加賀はその様子を少し離れた位置で見ながら改めて自分が愛した提督を惚れ直すのであった。




磯風は諦めました。
E-6なんて自分みたいなダラダラした提督には無理です。

その代わりに新しい子がたくさん仲間に入りました。
早霜は知っていたけど、初風達まで出るとは思ってなかった筆者は、喜びを通り過ぎて呆然としたのは内緒ですw

そして清霜、見つけられなくてごめんなさい。
また偶然出会えるまで待っててね。


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第9話 「食べ物」

食堂がまだ開いていないと言うのに赤城は早くも一人席に着き、開店をを待っていました。
その姿は日常で、提督も既に見慣れた光景でした。
そんな彼女に提督は用があるらしく、頬杖を付いている待ちぼうけている横から話し掛けます。


赤城「お腹空いたなぁ……」

 

グ~

 

提督「資材ならあるぞ? 弾薬以外、だが」

 

赤城「大佐……。わざとそれ言ってますよね? 資材はあくまで私達が艦娘として戦う為のエネルギーなんですよ!」

 

提督「そうだったか?」

 

赤城「むぅ、からかってますね? いいですか? 大佐は私達が美味しそうに水の代わりに重油を飲んで、口を黒色に汚している光景を想像できます? そんな唇で接吻とかされたいですか?」

 

提督「……」

 

赤城「できないでしょう? 他の資材だって同じです。どうやってボーキや弾薬、鉄を食べろって言うんですか? あんなの味がどうこう以前に硬くて食べられるわけないじゃないですか」

 

提督「そうだったな。いや、悪かった」

 

赤城「もうっ、やっと分ってくれました? 補給だってイチイチ原形に戻らないといけなかったから面倒だったんですよ」

 

提督「ふむ、それだけにあのナノ資材には本当に助けられたな」

 

赤城「そうっ、それですよ! あんなに簡単にお薬を飲むように処方するだけで補給できるなんて……素敵です♪」

 

提督「その分、消費に対して感覚を狂わせないように苦労しているがな」

 

赤城「ふふ、ちょっとパラパラ落とすだけで戦艦も建造できちゃいますからね」

 

提督「恐ろしい話だ」

 

赤城「本当ですね、ふふふ。それで大佐、どうしたんです? 私に何かご用ですか?」

 

提督「ああ、空腹のところ悪いがお前に渡すものがあってな」

 

赤城「ご飯ですか?」

 

提督「流石にこれは食べられると困るんだが……。これだ」

 

コトッ

 

小さな箱から光る物が覗いていた。

それはケッコン指輪だった。

 

赤城「あ……これ」

 

提督「昔から空母の主力として支えてくれていたのに待たせてしまったな」

 

赤城「……」(あ、私……もう限界まで来てたんだ……)

 

提督「受けてくれるか?」

 

赤城「……5人目ですか?」

 

提督「そう……だな。そう言われると心が少し痛いが……」

 

赤城「嘘です! 何番目でもいいですよ! 嬉しい! ありがとうございます大佐!」ダキッ

 

提督「……! む……」

 

赤城「ふふ、怖かったですか? 大丈夫ですよ。私は、大事な旦那様を締め付けたりなんかしませんから♪」

 

提督「助かる……。だがな」

 

赤城「あっ、そうですね。やっと夫婦になれましたからね! 先ずはキスを……」

 

提督「いや、違う。扶桑が……」

 

赤城「え?」

 

その言葉に赤城がハッとして顔を上げると、そこには黒いオーラ全開で『笑ってない笑み』を湛えた扶桑が佇んでいた。

傍らには山城が重鎮の如く控え、ただでさえ黒いオーラを一緒になって倍増させていた。

 

扶桑「ふ・ふ・ふ~、大佐、い・い・て・ん・き・ですね♪」

 

提督「扶桑……」

 

山城「本当、良い天気ですねぇ。赤城さん♪」

 

ピシャッ、ゴロロロロロ!

 

提督(毎度思うが、この2人には何か超自然的な力でもあるのか?)

 

赤城「扶桑さん、山城さん……。これは……」

 

扶桑「別にいいんですよ~? 成長限界になったんですものね。その資格を行使するのは当然だと思います」ニコッ

 

提督「扶桑……」ゾッ

 

山城「大佐、こっちも見て下さい? いいですね、指輪。私達も早く欲しいなぁ。ね? お姉様」

 

扶桑「山城、我儘を言って大佐を困らせてはダメよ。私達も成長限界まで達したらいいだけの話なんだから♪」

 

山城「あ、そうですね! 忘れてました♪」

 

提督(脅迫されてるよな、これ………? 早く鍛えろって)

 

扶桑「それで、大佐ぁ……今後の出撃や演習にでる艦隊の編成についてなんですが……」

 

提督「いや、それはあくまで予定に則った……」

 

山城「その予定を少しだけ歪ませて欲しいんですけど……?」

 

扶桑と山城が凄まじい圧迫感(若干柔らかな物理敵圧力有り)で提督に詰め寄る。

その事態に提督の身の危険を感じた赤城は、密かに忍ばせていた練習用の艦載機の矢を手に持つと、一瞬で2人から間合いを取って洗練した動作で弓を使わずに手投した。

 

解き放たれた烈風が、扶桑達の気を逸らして提督が危機を脱する為の隙を作るべく突進する。

 

ボンッ

 

赤城「え?」

 

赤城は目を疑った。

もう少しで扶桑達の気を逸らす筈だった烈風が小さな被弾音と共に力なく墜落したからだ。

 

扶桑「赤城さん、邪魔しないでくれます?」ニコッ

 

山城「危ないですねぇ。偶然気付けて良かったです♪」

 

赤城(偶然? いや、それより艦載機の運用で私が戦艦に負けた!?)

 

山城「ふふふ、数では負けますが、一対一なら結構自信あるんですよ?」

 

扶桑「山城、良い子ね」ナデナデ

 

山城「ああん、お姉様♪」

 

赤城「う……大佐」

 

扶桑「大丈夫ですよ? 別に獲って食べようという訳ではないから。ただちょっと……」

 

山城「お話したいだけですよ♪」

 

提督「赤城、ありがとう。だが、もういい。ここからは俺に任せろ」

 

赤城「大佐……そんな、嫌です。せっかく指輪をもらったばかりなのに……!」

 

提督「……後で今日の定食3人前持って行ってやるから」

 

赤城「大佐、頑張ってくださいね! ご武運をお祈りしています♪」

 

テテーッ

 

 

提督・扶桑・山城「……」

 

扶桑「あ、あの大佐……」

 

提督「何も言うな……」

 

山城(なんか不憫……)

 

扶桑「あ。そ、それじゃぁちょ、ちょっとお話しましょうか。あ、じゃなくて、させて下さい。お願いします」

 

提督「急にしおらしくしなくていい。話ならちゃんと聞いてやる」

 

山城「あ、あの……ホントごめんなさい。それじゃ次の出撃なんですが……」

 

 

結局、無意識とは言え、赤城のお蔭でその日の扶桑達の交渉は、特に揉めたりする事もなく少し出撃の頻度を増やすだけで事なきを終えた。

 

だが、それと同時に提督の赤城に対する認識も少し変わったという。




どう考えても筆者には艦娘達が美味しそうに資材を食べてる姿は想像できません。
なので本作ではこういう設定にしているわけですが。
賛否両論張るかもしれませんが、お蔭で自分はスッキリした気持ちで書けてますw

やっぱり彼女たちには美味しそうにご飯を食べて貰いたいので。

赤城と結婚しました。やったね!


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第10話 「交流①」

この鎮守府では仲間になったばかりの艦娘と提督との交流の時間を設けるのが暗黙のルールとなっています。
今回は舞風と早霜。


舞風「大佐ー、いるー?」

 

提督「ん、どうした」

 

舞風「えへへー、暇だから来ちゃったー」

 

提督「暇だから……」

 

舞風「あ、駄目だった? そういうのここでは禁止?」

 

提督「いや、今は休み時間だしな。それに良識の範囲であれば提督と艦娘との交流に特に規則は設けていない」

 

舞風「良識の範囲? 曖昧な例えだとわたし分かり難いから具体的に教えて欲いナー?」

 

提督「単純だ。過激なスキンシップだ」

 

舞風「あー、大佐が男だから?」

 

提督「それもあるし、一応俺達は軍人だからな。国の守り人として、公務員としてある程度は市民の規範でならなくてはな」

 

舞風「はぁ、堅苦し……や、真面目なんだねぇ」

 

提督「そこまで堅物のつもりはないぞ。さっきも言った通り良識の範囲なら問題……オーケーだ」

 

舞風「あ……」

 

提督「解ったか? 今みたいにお前が砕けた口調で俺に話し掛けても、それが場の雰囲気を壊したり問題となる可能性がなければ、俺はとやかく言うつもりはない」

 

舞風「なるほどー、それは……」

 

早霜「良い事を聞きました」

 

舞風「ひっ!?」

 

提督「早霜、いきなり出てくるな」ヌッ

 

早霜「あら? 私はずっと大佐の椅子の近くにいたではありませんか?」

 

提督「そうだが、舞風が全く気付いてなかった」

 

舞風「えっ、今までずっと居たの? だったら『ここに居ますよー』くらいのアピールあっても良かったのに」

 

早霜「ごめんなさいね。大佐のお側があまりにも居心地が良かったから、つい失念してしまっていたわ……」

 

提督「……そこは絨毯の上とは言え、床なんだが?」

 

早霜「はい、だから?」

 

提督「そこにずっと座っていて居心地が良かったのか?」

 

早霜「大佐の側ですから」

 

提督「……舞風もそうだが、なんでここに来たばかりのお前がもうそんなに俺に好意的なんだ? 艦娘だからか?」

 

早霜「……そうですね。艦娘だから、大佐に惚れてしまいました……」

 

提督(しまった。墓穴を掘ったか)

 

早霜「というのは冗談ですが好意を持っているのは本当ですよ?」

 

提督「何故?」

 

早霜「あの時……大佐が私達を迎えてくれた時に掛けてくれた言葉に私、感激してしまいまして」

 

提督「……」

 

早霜「……」

 

提督「ん? それだけか?」

 

早霜「はい。いけませんか?」

 

提督「……いや、もういい。好きにしろ」

 

提督(こいつの押しの強さは加賀や榛名に通じるものを感じるな。何故大人しかったり冷静な奴に限ってこうも恋路には直情的なのか)

 

舞風「……はぁ」

 

提督「ああ、すまない。舞風は暇を潰しに来たんだったな。何か食べて行くか? 軽く作ってやるぞ?」

 

舞風「え? ああ……それもいいけど、なんかなー」

 

提督「? どうした?」

 

舞風「やー、なんかさっきの大佐と早霜のやりとり見てたらちょっとねー」

 

提督「?」

 

トコトコ

 

提督「舞風?」

 

舞風「よいしょっと」

 

舞風は提督の近くまで歩み寄るとおもむろに、椅子によじ登り彼の膝に座った。

 

早霜「!」

 

舞風「えへへー、別に嫉妬ってわけじゃないかもだけど。なんか見てたら羨ましくなっちゃってねー。これくらいしてもいいでしょ?」

 

提督「それだと何も作ってやれないぞ?」

 

舞風「いいのいいの、今はこれで。このままなんかお話しよー」

 

早霜「……舞風さん」

 

舞風「ん? なにー?」

 

早霜「この早霜、貴女の積極的な行動に少し感銘を受けてしまいましたわ。だからその……」

 

舞風「うんっ。代り番こしよっ」

 

早霜「! ええっ」パァッ

 

提督「俺の了承を得るつもりはないのか?」

 

舞風「えっ、断わるの?」

 

早霜「大佐……」

 

提督「お前たち、そういうのはズルイとは思わないか?」

 

舞風「艦娘でも一応女の子だしねー。で、いいでしょ?」

 

早霜「お願いします、大佐……」

 

提督「初めからそう言ってくれ。いいだろう」

 

舞風「さっすがー、男前ー!」

 

早霜「素敵です……」

 

提督「煽てても何もでないぞ」

 

舞風「出せるでしょ? 何か面白いお話してよー」

 

早霜「そうですね。私も大佐のお話聞きたいです……」

 

提督「話か……そう言われると急には思いつかないものだな」

 

舞風「じゃぁ、質問してあげるよ! 好きなものは何ですか!?」

 

提督「平穏だ」

 

舞風「なにそれ!?」

 

早霜「それでは私からもさせてください。大佐は私の事が好きですか?」

 

提督「時間と仲良くなれば、今よりかは好意を持つかもな」

 

早霜「ズルイです……」

 

舞風「ならならっ、今度はー」

 

提督「俺は質問されるだけか?」

 

舞風「私達が飽きるまでね!」

 

早霜「私も大佐の事もっと知りたいので……」

 

提督「……仕方ないな。まぁいいだろう」

 

舞風「ありがとう! じゃあねじゃあね、次はー」

 

早霜(聞きたいことが有り過ぎて困っちゃうわ……)

 

 

~執務室前廊下

 

不知火「……」ジー

 

金剛「ドウ? 新しい子達と大佐は?」

 

不知火「非常に……非常……」ギリッ

 

伊勢「あー、うん。もう答えなくていいよ」

 

翔鶴「今回仲間に入った子達は今までの中で最多ですからね。全員の交流が終わるまでは私達も少し我慢しないとね」

 

島風「うー! その替り落ち着いたらいっぱい構ってもらうんだからね!」

 

加賀「それ乗ります」

 

日向「私もな」

 

天龍「表情一つ変えずに即話に乗るのな……」

 

愛宕「ふふ、妬けるわねー♪」

 

長門「ほどほどにしておけよ? ほら、もう直ぐ訓練の時間だ行くぞ」

 

「ハーイ」

 

 

武蔵「……」ジー

 

Bis「……いいなぁ」ボソ

 

長門「おい、武蔵、マリア行くぞ」

 

武蔵「はっ!?」

 

Bis「え!?」

 

長門(こいつらが一番心配な気がするな)




作中にも書きましたが、今回初めて手に入れた艦娘過去最多でした。
しかもまた個性は揃いときたものです。
お蔭でネタには困りませんが、育成をほぼ演習と遠征に依存している筆者にとっては結構悩ましい状況だったり……。

まぁ贅沢な悩みなんですけどねw


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第11話 「捕獲」

海の上に少女が浮かんでいるのを、ある提督が発見した。
その提督の艦隊は何故か彼も含めて身なりが全員半裸だった。


丁督「……あ? なんだお前?」

 

磯風「い、磯風……だ」

 

丁督「あ?」

 

磯風「っ……磯風……です」

 

丁督「ん? ああ、悪い。ちょっと声が小さくて聞き返しただけだ。そっか磯風か」

 

 

丁督達は大佐達への支援を終えて帰路に就いている途中にある深海棲艦の群れを偶然発見した。

その群れは、今回の作戦に多くの戦力が向けられている隙に本土への直接攻撃をせんとする極めて危険な別働隊だった。

丁督達は当然の如く存在を確認した瞬間に戦闘態勢に移行、そして見事不意打ちに成功した。

 

偶然の発見ではあるが奇襲に成功し、初手こそ有利に進める事ができたものの、いざ交戦してみるとその部隊は、戦艦棲姫2隻からなる特一級の危険度に相当する精鋭中の精鋭だった。

丁督は、もしかしたらこの戦いで戦死するかもしれないと、心の中で久しぶりの強敵との出会いに興奮し、狂喜した。

彼の色にすっかり染まっていた部下の艦娘達も同様だった。

久しぶりに心の底から本気を出せるかもしれないと、凶暴な笑みを皆無意識に浮かべ、中にはエクスタシーまで感じて絶頂する者までいた。

 

が、結局結果は敵側も奮闘したものの、味方側少破数隻、敵側完全沈黙による戦果Sクラスの勝利で終わった。

お蔭で丁督達は若干不完全燃焼気味となっており、艦隊の空気はぎすぎすして最悪のものとなっていた。

これは、乱交でもして皆のストレスを晴らすしかないかと、全員が高速艇に集まり脱衣し始めた矢先に磯風は彼らに偶然見つかったのだ。

はっきりいってお互い第一印象が最悪の出会いだった。

 

磯風(な、なんで? なんでこの人たち裸になろうとしていたの?)

 

基本的に勝ち気で男勝りな性格だった磯風だが、発見されて早々この異様な集団に心を折られてしまった。

対して丁督達はこの時点ではまだ機嫌が悪い状態だった為に、不意に現れた艦娘に敵意の籠った視線を投げてしまい、更に彼女の心を折る形となってしまったのだ。

 

 

ーーそして現在に至る。

 

磯風「あ、あの……わ、私……」プルプル

 

丁督「あー、さっき潰した敵から艦娘に戻ったのか?」

 

磯風「は、はい。そう……だ…...と、思います」

 

丁督「なるほどなー。駆逐艦かぁ」

 

長門「いいのではないか? うちは駆逐艦もそんなに多くは無いわけだし」

 

丁督「いや、別に拒むつもりはねーよ。ただほら、駆逐艦の新米なんて久しぶりでさ」

 

金剛「Oh そういえばそーネ。ふふっ、雷久しぶりの後輩で喜びそーネ」

 

磯風「……」

 

磯風はまだ震えていた。

会話の内容があまり穏やかに聞こえなかったからだ。

 

磯風(私もしかして凄く怖い所に配属になっちゃうかも……)

 

翔鶴「あの……提督、仲間同士の会話はその辺にしておいた方が……。磯風ちゃんすっかり怯えちゃってますよ?」

 

丁督「へ? あ、ああ。なんか不良っぽい会話に聞こえちまったか」

 

加賀「あながち間違いとも言い切れませんけどね」

 

磯風「……っ」ビクビクッ

 

大井「ちょっと加賀さん」

 

加賀「失言でした。失礼」

 

丁督「あー、磯風?」

 

磯風「は、はいっ」ビクッ

 

丁督「いや、悪い悪い。怖がらせるつもりはなかったんだ。いきなりこんなの見せつけられて不安かもしれないが、俺達は……あー、まぁそんなに悪い奴じゃないぞ?」

 

日向「提督……そんなにとか言ってしまったら、少しは悪い奴という風にも取れてしまうぞ?」

 

磯風「……」ジワッ

 

丁督「ああっ、泣くな泣くな! ほら、今のは表現だ。言葉のあやだ。俺達はちょとガラが悪いだけで一応これでも海軍の中では期待されている戦力なんだぜ?」

 

長門「階級は未だに中佐だけどな」

 

金剛「部隊も少ないから big な作戦は support くらいしかできないけどネー」

 

日向「ついでに資材を使いまくるから本部からの印象も悪いけどな」

 

加賀「オマケに提督も含めて基地の所属員は全員が好色で淫乱……風紀の乱れもここまで来てしまったかという感じです」

 

丁督「お前たちなぜそれを今ここで、このタイミングで言いやがる……」

 

磯風「……」

 

大井「わ、わたしは言ってませんよ?」

 

翔鶴「私も言ってませんからね!?」

 

提督「そうだな。じゃぁ有難い補足を入れてくれたそこの4人には、お礼に暫くセックス抜きにしてやろう」

 

長門・金剛・日向・加賀「!?」

 

大井「て、提督私達は……?」

 

提督「ああ、お前たちは基地に帰ったらちゃんと相手して……いや、愛してやる」

 

翔鶴「提督ぅ……♪」ポッ

 

長門「ま、待て提督! さ、さっきのはだな……!」

 

金剛「NO! 提督ゥ! sorry ネ! だから……だからぁ……!」ジワ

 

日向「し、暫く……? 提督から暫くと言う言葉は初めて聞いた気がする……い、一ヶ月か? い、いやもしかしたら……?」ガクガク

 

加賀「私は今から提督の犬です。犬は主人には絶対服従するもの。だから許してください。お願いします」

 

丁督「ああ? 聞こえんなぁ?」

 

長門・金剛・日向・加賀「提督!!」

 

磯風「ぷっ……くすす」

 

丁督「お?」

 

磯風「ふふふ、あははははは」

 

丁督「やっと笑ってくれたか? 少しは緊張は取れたか?」

 

磯風「はい。ええ……本当にガラが悪くて淫乱そうだが、悪い人じゃないんだな提督は」

 

丁督「だからそう言ってるだろ」(口調も本調子に戻ったか)

 

磯風「……私にも手を出すのか?」

 

丁督「信じられないかもしれないが、俺は自分から手を出したことは無い。全員要求されて同意した上での関係だ」

 

磯風「あら、そう。じゃあ私は大丈夫なのね?」

 

丁督「ああ、お前が俺に惚れなければな?」

 

磯風「面白い人……それに凄い自信……いいわ。磯風、これより貴方、提督の指揮下に入ります!」

 

丁督「そうか、ありがとな。よろしく」

 

長門「な、なんだ。やっぱりこれは磯風の奴を安心させる為だけの……」

 

丁督「いや、あれはマジだ」

 

長門・金剛・日向・加賀「 」

 

磯風(あ、白くなった。表情もなんか……)

 

大井「大井よ。 これからよろしくねっ」

 

翔鶴「翔鶴です。困った事があたら提督や私を頼ってね♪」

 

磯風「あ、うん。宜しくお願いする」

 

提督「よっし、じゃ帰るか。半端になって悪いが、お前ら服着ろよ」

 

大井「あ、そういえば私達下着だけね」

 

翔鶴「あら、本当。きゃっ」ポッ

 

磯風「……」(本当にこの艦隊大丈夫かな……)




という事で筆者は磯風ゲットできなかったので、他の人に迎えてもらうことにしました。
磯風、せいぜい惚れないように頑張ってくださいw

でも筆者もいつか欲しいですね。
あ、浦風も欲しいなぁ。


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第12話 「交流②」

新人組の交流第2弾。
次の主役は初風と春雨です。


初風「初風、春雨、改めて大佐に挨拶に来たわ」

 

春雨「来ました!」

 

提督「ん、わざわざありがとうな。まぁ座って楽にしててくれ」

 

初風「ええ、ありがとう」

 

春雨「失礼しますね」

 

提督に促された二人は部屋に置いてあるソファーに座った。

 

提督「ああ」

 

カリカリカリ……

 

提督「……」

 

初風・春雨「……」

 

カリカリカリ……

 

提督「……」

 

初風・春雨「……」

 

カリカ――

 

 

初風「ねぇ」

 

放置に耐えかねた初風が声をあげた。

 

提督「ん?」

 

初風「私達は座ってる間何をしてたらいいの?」

 

春雨「は、初風さん」

 

提督「ああ、すまない。まだ執務が残っていてな。気が利かなくて悪かった」

 

初風「えっ、いや別にそこまで言わなくてもいいけど……」

 

春雨「ご、ごめんなさいっ」

 

提督「いや、気にするな。これは俺が悪かった。そうだな……何か本でも見るか?」

 

初風「何があるの?」

 

提督「兵法書や戦史書といった専門書もあるが、一応少ないが漫画もあるぞ?」

 

初風「あらそう。なら私は戦史書を――」 春雨「わたしは漫画がいいです!」

 

初風「 」

 

提督「分かった。じゃぁこれを読んで少しだけ待っていてくれ。もう直ぐ終わるからな」

 

提督「ほら、初春」スッ

 

初風「あ、ありがとう……」

 

提督「春雨も、これでいいか? ちょっと男性向けの漫画だが」

 

春雨「わぁ、ありがとうございます♪」

 

 

初風「……」ペラッ

 

春雨「わぁ」

 

初風「……」ピクッ

 

提督「面白いか?」

 

春雨「はいっ。確かに最初はアクの強い画風だと思いましたが、読んでみるとセリフ回しが独特でちょっとカッコイイし、ギャグもワザと適当に描いてるところなんて凄く面白いと思いました」

 

提督「そうか。それは良かった」

 

春雨「この漫画、山口提督も出るんですね!」

 

提督「ん? ああ、歴史上の人物が異世界で戦うというような感じの漫画だからな」

 

春雨「へぇ~、日本の漫画だから歴史上の人物も日本字が多いのかな。ふふふ♪」

 

初風「……」チラッ

 

春雨「?」

 

初風「っ」バッ

 

提督「……」

 

 

カリカリ……

 

初風「……」チラッ、チラッ

 

春雨「~♪」

 

初風「……」グス

 

提督「……」

 

提督「初風」

 

初風「な、なに!? ちゃ、ちゃんと読んでるわよ!? お、面白いし!」

 

提督「なら丁度いい。春雨と同じ漫画になってしまうが、これを読んでみないか? 一応、歴史ものだ。作者がよくリサーチして描いてるから結構面白いとおもうぞ? 勉強にもなる」

 

初風「え……?」(大佐もしかして……)

 

提督「どうだ?」

 

初風「そ、そうね。勉強になる漫画というのも興味深いし、読んでみようかしら」

 

春雨「わぁ、どんな漫画? 読み終わったらわたしが読んでるのと交換してくれませんか?」

 

初風「! し、仕方ないわね。いいわよ」

 

春雨「ありがとうございます♪」

 

 

初風「……へぇ」

 

春雨「ぷっ、くすす」

 

提督「ふむ」コク

 

カリカリ……

 

初風「大佐、大佐」クイクイ

 

提督「ん?」

 

初風「これ、これって本当? こんな昔にもう地球が丸いって考えてた人がいたの?」

 

提督「ああ、当時は異端とされていたがな。だが理論的に考えれば当然行きつく答だ。恐らく一般人の中にも気付いてた人はいただろうが、賢い人程異端扱いされたくないから気付いてないふりをしていただろうな」

 

初風「へぇ~」

 

提督「面白いか?」

 

初風「うん、予想以上に。戦争の描写ばかりの淡々とした歴史ものかと思ったら、意外にそうでもなかったもの。トリビア的な要素がもあって読んでて飽きないわ」

 

提督「そうか。良かった」ポン

 

初風「あっ……」

 

提督「む、すまない。無意識とは言え気易かったな」スッ

 

初風「あ、ううん。いいの、構わないわ」

 

提督「そうか。ありがとう」

 

カリカリ……

 

初風「えっ」

 

提督「ん?」

 

初風「あ、な、なんでもないっ」カァ

 

提督「?」

 

春雨「……」ジー

 

トコトコ

 

春雨「大佐っ」

 

提督「ん? どうした?」

 

春雨「わたしも……春雨も撫でて貰えますか?」

 

初風「!」

 

提督「ん? ああ、まぁ別にいいが……」

 

ナデナデ

 

春雨「ん……えへへ♪」

 

初風「……」

 

パタン

 

提督「ん? 初風、もう読み終わったのか? 早いな――」

 

トコトコ

 

初風「……」スッ

 

提督「初風?」

 

初風「そ、その……素直になる事にしたの。大佐本当にいい人そうだし……。あ、あまり見栄を張るのも……損になっちゃうかなって」

 

春雨「初風さん……」

 

初風「だからその……お、お願いできるかしら?」ジッ

 

提督「……」

 

ポン

 

初風「ん……」

 

提督「これでいいか?」ナデナデ

 

初風「うん……。ね、もうちょっとしててくれる?」

 

提督「いや、あまりするのもな。仕事がもう少しで終わるからそれまでは……」

 

ギュッ

 

提督「ん」

 

初風「あっ。ご、ごめんなさい」パッ

 

クイクイ

 

提督「……む」

 

春雨「あ、あの。わ、わたしもできたらもう少し……」

 

初風(春雨……協力してくれた……?)

 

提督「……分かった。だが、これが終わったら暫く大人しくしてろよ?」

 

春雨「はい!」

 

初風「分かったわ!」

 

 

ナデナデ

 

初風「ん……♪」

 

春雨「んー……ふふふ♪」

 

提督(まるで猫をあやしてる気分だ)




初風のような気が強い駆逐艦ってどうしても一度はこんな感じで甘く書いてしまうんですよね。
ま、そこは新しく手に入れた子の中でも割と気に入っている方なんで、少し贔屓目に見て貰えたらなと思いますw


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第13話 「交流③」

交流のお話第三弾は浜風と時津風のお話です。
釣りをしている提督の姿を浜風達が見つけました。


浜風「釣り、ですか?」

 

時津風「釣れてるー?」

 

提督「いや、さっぱっりだ」

 

浜風「ふふ、そうですか」

 

時津風「えー、釣れてないんですかー?」

 

提督「ふむ、釣りの醍醐味というのを教えてやろうか?」

 

浜風「それには及びません。釣りをする事自体に意味があるんですよね?」

 

提督「そうだ。浜風はよく分っているな」ポン

 

浜風「ありがとうございます……♪」

 

時津風「えー? 何それー? というか浜風ズルーい! 大佐ぁ、わたしも! 時津風も!」

 

提督「ん? 釣りの良さが分からない奴は褒める気にならんな」

 

時津風「えぇ!?」ガーン

 

浜風「大佐、今日は何を釣りたいですか?」

 

ポイントを先制した事によって気を良くした浜風が自然な動作で提督の隣に座った。

更に何気に寄りかかり、駆逐艦としては潮も超えているのではないかと思える豊かな胸も何気に押し付けていた。

 

時津風「あっ、浜風胸……」

 

浜風「あら、どうかしましたか? 時津風?」タユン

 

時津風「う、うぅ~」

 

提督「浜風、時津風をそう弄るな。後、当てるな」

 

浜風「っ、すいません」バッ

 

提督(無意識にやってたのか?)

 

浜風「私、この体あまり好きではなかったのですが、初めて有効に使えると思ったらいつの間にか……」カァ

 

時津風「いいなぁ。時津風そういう事したくてもできないしー」

 

提督「別に親しくなる方法なら他にいくらでもあるだろう。無理にやらなくてもいい」

 

浜風「そう、ですか?」

 

時津風「なになにー?」

 

提督「時津風、それはお前が今からやってみたいという事をやってみればいい」

 

時津風「時津風が? んー……?」

 

提督「難しく考えるな。自分が仲の良い友達といつも接しているようにすればいいんだ」

 

時津風「あっ」

 

提督「分ったか?」

 

時津風「うん! こうでしょうっ? たーいーさ!」

 

時津風はそう言うと提督の後ろに回って軽く抱き付いた。

それは女子同士のコミュニケーションとしては一般的なものと思われたが、一つだけ誤算があった。

それは、軽く抱き着いたつもりだったのはあくまで時津風の感覚だったという事だ。

 

ドンッ

 

提督「そう、この……」

 

ドボーンッ

 

時津風「あ」

 

浜風「大佐!?」

 

 

~数分後

 

提督「……とまぁ、力加減は取り敢えず置いておくとしてコミュニケーションに関してはそこまで難しく考えなくてもいいんだ。解ったか?」ビッショリ

 

浜風「は、はい……」

 

時津風「ごめんなさい……」シュン

 

提督「まぁワザとじゃないんだ。気にするな」ゴソ

 

浜風(あ、タバコ)

 

提督「……」

 

提督の手に握られた煙草は当然の如く水浸しで吸えない代物となっていた。

ついいつもの感覚で吸おうと出してしまった事が、かえって提督を海に落としてしまった時津風に罪の意識を感じさせることになってしまった。

これは、提督にとっての誤算だった。

 

時津風「っ、ふぇ……」ジワッ

 

提督「いや、大丈夫だ。吸えない事は判っていたのについ出してしまっただけだ。怒ってない」

 

時津風「ひっく、で……ぐす……」

 

提督「ほら、来い」ヒョイ

 

提督はそう言うと時津風を抱き上げて自ら膝の上に乗せて頭を撫でた。

 

時津風「う……ぐす。ごめんなさ……ひっく」

 

提督「大丈夫だ。だからこれで少し落ち着いてくれ」ナデナデ

 

時津風「……ん」コク

 

浜風「……」

 

浜風「大佐?」

 

提督「うん?」

 

浜風「濡れたままでは寒いでしょう。私が温めます」

 

提督「温める? いやそこまでは……」

 

浜風は提督が言い終わらない内に後から彼を優しく抱き締めた。

 

ギュッ

 

提督「……風邪をひくぞ」

 

浜風「大丈夫です。艦娘はそれほどヤワではありません。だと思います」

 

提督「やめろと言ってもそうしたくないんだろうな」

 

浜風「はい。これは半分浜風がしたい事でもありますから」

 

提督「まぁ、天気も良いしな。だが程々にしろよ?」

 

浜風「……はい」キュッ

 

提督「……」

 

 

浜風「あ」

 

提督「どうした?」

 

浜風「いえ……ふふ。時津風がいつの間にか寝てるものですから」

 

提督「ああ」

 

時津風「すぅ……ん……」

 

提督が自分の膝元を見ると、浜風の言う通り時津風はいつのまにか彼の腕の中でうずくまるようにして寝息を立てていた。

 

提督「これは、起きた時に魚の一匹は二匹を見せてやりたいな」

 

浜風「いい考えだと思います。応援します」

 

提督「お前は大丈夫か? 寒くないか?」

 

浜風「私は大丈夫です。ただ、もう少しだけ寄りかからせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

提督「ん……」

 

浜風「胸、気になりますか?」

 

提督「スキンシップと思えばそれほどでもない。お前がよければ別にもう何も言うつもりはないが」

 

浜風「ならどうか、このままもう少しお願いします」

 

提督「ああ」

 

浜風「……釣れるといいですね」

 

提督「今日は何となくいける気がする。お前のおかげでな」

 

浜風「ふふふ、嬉しいです。では、釣りをする時はいつでも呼んでくださいね」

 

提督「まぁ気が向いたらな」

 

浜風「はい。気軽にどうぞ」




浜風のおかげなのかは不明ですが、その日は珍しく2匹も釣れたそうです。
目覚めた時津風は目の前に大きな魚がいて大喜びしたのだとか。


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第14話 「交流④」

ある夜の事、提督の部屋のドアを激しく叩く音がしました。
何事かと返事をする前に勝手にドアが開き、入って来たのは……。


飛龍「らいはぁ~、ひふえーひあーふ!」

 

バン!

 

勢いよくドアを開けて飛龍が入ってきた。

 

蒼龍「やっほ~、はいふぁのんでふ~?」

 

飛龍に続き蒼龍も入って来た、二人とも明らかに酔っぱらっていた。

 

雲龍「二人とも飲み過ぎだよ」

 

そして最後に雲竜、こちらは飲んでいるのかは定かではないが、一見すると素面だった。

 

提督「……一体どうした」

 

雲龍「二人が私の歓迎会開いてくれたんだけど……」

 

蒼龍「わーい、ソファらぁ。ばくへき~」ポスッ

 

提督「見事に二人が先に酒に飲まれたのか」

 

雲龍「そう。二人がこんなにお酒に弱いなんて知ら――」

 

飛龍「よっへはい! よっへはふぇんよ!」

 

提督「そうか、取り敢えず水を飲め、ほら」

 

飛龍「あ……ありがと。んっく……んぐっ」ゴクゴク

 

飛龍「っぷはぁ」

 

提督「少しは酔いがさめたか?」

 

飛龍「んー……そうです……」フラフラ

 

提督「ん?」

 

コテッ

 

蒼龍「わぷっ」

 

飛龍「……ね。すぅ……すぅ……」zz

 

蒼龍「ん~、飛龍~あふぃ、~重い~」zz

 

提督「……」

 

雲龍(一応、これ私の先輩達なのよね……」

 

提督「困った先輩たちだな」

 

雲龍「え? そうね。ふふ」

 

提督「?」

 

雲龍「何でもない。一瞬大佐に心の中を読まれたのかと思っただけよ」

 

提督「ん? ああ、先輩という言葉か」

 

雲龍「読みが鋭いのね。読唇術ならぬ読心ってやつからしら」

 

提督「ふっ、そこまで大それたもんじゃないさ。単に勘が当たっただけだろう」

 

雲龍「あら、そこは残念ながら、とか着けるものだと思っていたのに」

 

提督「期待に沿う事が出来なくて申し訳ないが、俺はそういった能力は別段欲しいと思ったことがないからな」

 

雲龍「そう?」

 

提督「そうだ。と、ちょっと待て二人を寝かせてくる。手伝ってくれるか?」

 

雲龍「部屋に運ぶの?」

 

提督「いや、俺の私室だ。俺は今日はここのソファーを使う」

 

雲龍「……二人、起こそうか?」

 

提督「いや、いい」

 

雲龍「優しいのね」

 

提督「ただのおせっかいだ。っと」ヒョイ

 

飛龍「ん~……」ギュッ

 

提督「……」

 

飛龍「えへぇ~♪ ん~……」zz

 

雲龍「大した寝相ね」

 

提督「……恐らく本人は知らないだろうな。雲龍、蒼龍を頼めるか?」

 

雲龍「はーい。よっと」ヒョイ

 

蒼龍「ん……んんぅ?」(あ……マシュマロ……)

 

ポスッ

 

雲龍「んっ……」

 

蒼龍「ふかふか~♪ きもひい~♪」スリスリ

 

雲龍「あ……ちょっと、そんなに頭を……」

 

プチッ

 

雲龍「あ……」ハラリ

 

提督「……先に寝かせて来い。そこで直すといい」

 

雲龍「うん……」カァ

 

 

 

――数分後

 

雲龍「失礼しました」

 

提督「いや」

 

雲龍「……」

 

提督「……酒」

 

雲龍「え?」

 

提督「酒、まだ飲めるか?」

 

雲龍「あ、うん。まだ全然平気」

 

提督「楽しんで飲めるか?」

 

雲龍「気は使わないでいいよ。大丈夫、どっちかというと今は良い気分だから」

 

提督「そうか。なら……」

 

雲龍「はい。喜んでお付き合いさせてください」

 

提督「了解した。歓迎する。ん……」

 

雲龍「どうしたの?」

 

提督「いや、今ちょうど洋酒しか無くてな。ウイスキーだが、いけるか?」

 

雲龍「どっちかというと洋酒派なの。寧ろ歓迎よ」

 

提督「そうか、よかった。飲み方は?」

 

雲龍「オン・ザ・ロックで」

 

提督「わかった」

 

 

トクトク……カロン

 

雲龍「大佐はハーフロック派?」

 

提督「ストレートもオンもどっちもやるが、一番飲み易いのはやっぱりこれだな」

 

雲龍「へぇ」

 

提督「お前はそれだけか?」

 

雲龍「うん。これが一番好きなの。あ、これ、ちゃんとグラスも冷やしてくれてるのね」

 

提督「酒は嫌いではないからな。冷蔵庫には常に冷やしたグラスが入っている」

 

雲龍「いいわね。これから通っちゃうかも」

 

提督「うちにも何人か酒飲みがいるからな。頭数揃えて楽しく飲むのもいいし、こうやってゆっくり飲みたいなら他の面子と被らなければいつでもいいぞ」

 

雲龍「あら、それって誘ってくれてるのかしら?」

 

提督「俺は一人で飲むのも好きだがな」

 

雲龍「ちょっと……なんでそこでそう言うのよ」

 

提督「? 煙草を燻らせながらゆっくり一人で飲むのもいいぞ?」

 

雲龍「いや……そうじゃなくて……」

 

提督「ん……? ああ」

 

雲龍「遅い。もう知らないから」プイ

 

提督「いや、悪かった」

 

雲龍「嫌よー」

 

提督「ふっ、これは参ったな」

 

雲龍「む、大人の余裕というやつからしら。なんか悔しいわね」

 

提督「もう30だからな」

 

雲龍「ふふっ、何でそこで肯定するのかしら?」

 

提督「酔っている所為かもな。ツマミも無いし」

 

雲龍「あ、口がさみしいと思ったら」

 

提督「何か作るか?」

 

雲龍「いいの?」

 

提督「ああ。料理は嫌いじゃない。軽く用意してくるちょっと待ってろ」

 

雲龍「ありがとう」

 

提督「ほら、お代りだ。これを飲んで時間を忘れててくれ」スッ

 

雲龍「本当に気が利く人なのね」

 

提督「酒に関してはな。じゃぁちょっと外す」

 

雲龍「うん。お願い」

 

 

トントン……ジュ~

 

野菜を切る音と時折肉の焼ける香ばしい匂いがするなか、雲龍はひとり酒を飲んでいた。

 

雲龍「……」チラッ

 

ジャッジャッ

 

雲龍「……」ゴソゴソ、プチッ

 

雲龍(なにやってんだか……)

 

 

提督「待たせた。サラダとウインナーだ……が」

 

雲龍「うん。ありがとう。十分よ」

 

提督「……そうか」

 

雲龍「どうかした?」

 

提督「胸元、緩めて……暑いか?」

 

雲龍「お酒が回ったのかも」

 

提督「そうか。じゃぁこれを片付けたら取り敢えず今日はこれで終わりにしようか」

 

雲龍「えっ」

 

提督「ん?」

 

雲龍「いや、そこでそう言う? 普通」

 

提督「仕事を言い訳にもできるが……」コツコツ

 

雲龍「……?」

 

ポン

 

雲龍「んっ……」

 

提督「なんだかんだでまだお前はここに来たばかりだ。いきなりそういう事は早いと思う」

 

雲龍「真面目なのね……」

 

提督「そこは男して融通が利かないだけだと思う。悪いなこれは性分だ」

 

雲龍「はぁ……大佐との間にある堀……直ぐに埋めてみから」

 

提督「距離があるような言い方だな」

 

雲龍「あるじゃない」ムスッ

 

提督「ははっ、お前もそういう顔をするんだな」

 

雲龍「大佐にだけよ」

 

提督「早速堀を埋めに来たか」

 

雲龍「どれくらい埋めれた?」

 

提督「さてな。取り敢えずこれを空けるまでにはそれなりの成果が出せるんじゃないか?」

 

雲龍「了解。雲龍突撃します」キリッ

 

提督「おい、記念すべき最初の戦果を酒にするつもりか」




雲龍の胸、とういかあの服は明らかに狙ってますよね。
中破グラもなんかいろいろと凄い気がします。

改造したいけど勲章が足りませんorz


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第15話 「暇」

AL・MI作戦後の本部の日常の一幕。
相変わらず第3司令部の中将は暇そうです。


~大本営海軍本部第3司令室

 

中将「……」

 

信濃「さっきから何を見てるの?」

 

中将「いやぁ、ちょっとね」

 

信濃「何それ、グラフ?」

 

中将「うん。まぁ」

 

信濃「何の数値かしら?」

 

中将「……」

 

信濃「司令?」

 

中将「信濃さん」

 

信濃「なに?」

 

中将「好き」

 

信濃「は?」ピシッ

 

空気が痛い、多分凍ってる。

信濃さんの顔が怖い、そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいのに。

 

中将「ごめんなさい。仕事します」

 

信濃「全く何を言ってるよ……」

 

中将「でも、ちょっとドキッとしたでしょ?」

 

信濃「……ドキッとさせてあげましょうか?」

 

中将「遠慮します。なんか信濃さんのそれ、心臓止められそうだし」

 

信濃「そうね。よく分ってるじゃない」

 

中将「……」(恋愛感情にもあの装置は働くのかな。だとしたらやはり管理し易く……か?)

 

 

トコトコ

 

朝日「終わりました」

 

中将「おうっ、ご苦労さん。じゃ、お礼に煙草でも……」

 

信濃「司令?」

 

中将「やっ、よくやったよくやった」グワングワン

 

中将は無造作に朝日の頭を掴むとそのまま頭を軽く揺らす様に撫でた。

振り子のように頭を振られ朝日は目をくるくると回した。

 

朝日「あ……んぅ……」

 

信濃「ちょっと、駄目よそれじゃ。加減しなさい」

 

中将「……はい」

 

朝日「……」クラクラ

 

信濃「大丈夫?」

 

朝日「ふぁ……?」

 

コシコシ

 

朝日「はい」

 

信濃「そう。なら、休憩に入ってもいいわよ」

 

朝日「分かりました。失礼します」

 

バタン

 

 

中将「……」

 

信濃「どうかしたの?」

 

中将「ん?」

 

信濃「さっきから何処となく上の空じゃない?」

 

中将「んー……」

 

信濃「そのグラフが関係あるの?」

 

中将「まぁね」

 

信濃「そう」

 

中将「訊かないの?」

 

信濃「それの事?」

 

中将「そう」

 

信濃「待つわ」

 

中将「そっか」

 

やれやれ、できた同僚が近くにいると肩身が狭く感じるから困ね。

 

 

中将「そういやさ」

 

信濃「ん?」

 

中将「ついこの前までやってた作戦」

 

信濃「第二次AL・MIの事?」

 

中将「そう。久しぶりに大きな作戦だったよね」

 

信濃「そうね」

 

中将「総帥は何か大きな動きにでも出るつもりかな」

 

信濃「それは判らないけど。でも、それとつい最近あった本部への奇襲は関係あるのかもね」

 

中将「ああ、あの時のか。いやぁ強かったねお嬢ちゃん」

 

信濃「そうね。あの若さで大したものだわ。敵の戦力も油断ならないものだったのに自分の艦隊だけで退けたものね」

 

中将「俺は何もやらなかったから申し訳なかったよ」

 

信濃「あんな精密な後方支援しててよく言うわよ」

 

中将「それはまぁ信濃さん達の力だよ。俺はただ命令してただけだし」

 

信濃「はいはい。そうね」

 

中将「でも、もし本当にこれからもっと大きな動きがあるのだとしたら」

 

信濃「私達の出番かしら」

 

中将「本部の実動部隊は実質お嬢ちゃんの第四艦隊のみと言われてるからね。俺たちが動くっていうのはそういう事なんだろうさ」

 

信濃「自信あるの?」

 

中将「ありません」

 

信濃「……」

 

中将「嘘です。多少あります」

 

信濃「よろしい」

 

中将「……まぁ、そんな事がない事を祈るけどね」

 

信濃「そうね」

 

 

~第4司令室

 

彼女「はぁ? もっと改造しろ?」

 

武蔵「そうだ! 前の戦い快勝したとは言え、満足のいく結果ではなかったからな」

 

彼女「だからもっと強くしろっての?」

 

武蔵「そうだ」フンス

 

彼女「武蔵……あなた、ただでさえ武蔵の素体で妹(複製)達よ5割増し以上の力を持っているのに、まだそれ以上必要だと言うの?」

 

武蔵「大和の奴だって改二の改造を受けてるじゃないか。私も受けたい!」

 

彼女「あれは大和だから耐えれたような改造なの。まだ大和型の実質的な上位改造の技術は完成していないのよ?」

 

武蔵「大和が耐えれて私も耐えれないわけないだろう!」

 

彼女「いいえ。これだけは言わせてもらうわ、絶対とは言わないけどやめておきなさい」

 

武蔵「……なんで?」ジトッ

 

彼女「拗ねないの。あの改造はね、本当に危険なものだったの。成功したとしても感情を失うとか副作用の可能性だって示唆されていのよ?」

 

武蔵「……怖くないとは言わないが、なら何故大和はその改造を受けたんだ?」

 

彼女「中将の為よ」

 

武蔵「……む」

 

彼女「あの人が求めたわけでもない。あれは大和自身の意思で、自分を改造の実験体としてデータを提供する提案までして行ったものだったの」

 

武蔵「どうしてそこまで……」

 

彼女「愛して欲しいからよ。第3司令部の中将は分からないけど、それ以上の提督、つまり今の海軍の体制を作った創設時のメンバーである中将、大将、元帥は何故かケッコンシステムを使った艦娘の能力の向上を計っていない」

 

彼女「武蔵、あなたはそれがどういう意味か解る?」

 

武蔵「絆……か?」

 

彼女「そう。中将達は何故かあなた達と強い絆を結ぶことを拒んでいるの。嫌っているわけでもない、寧ろ長い時間苦楽を共にした戦友であるにも関わらずよ?」

 

武蔵「それは何故だ?」

 

彼女「分からない。どうやら軍事機密に関わる事らしいから。その内知る事にはなると思うけど」

 

武蔵「……」

 

彼女「武蔵、あたはそんな状況でも中将の事を好きな大和の気持ち、理解できる?」

 

武蔵「……ああ」

 

彼女「そう、なら私が言っている事も分かるでしょ?私はあなたにわざわざ危険な事をして欲しくないの。だってこんなに私達はこんなに強い絆で結ばれているんだから」

 

武蔵「……そう、だな。悪かった」

 

彼女「分かってくれればいいのよ」

 

武蔵「なぁ」

 

彼女「ん?」

 

武蔵「今夜……」

 

彼女「ダメよ」

 

武蔵「そんなっ」ガーン

 

彼女「今日はちょっと遅くまでかかっても終わらせないといけない仕事があるの」

 

武蔵「な、なら私も手伝うぞ」

 

彼女「あなた事務処理全くできないでしょ」

 

武蔵「 」

 

彼女「もう補助は霧島や鳥海に頼んであるから大丈夫よ」

 

武蔵「わ、私は……」

 

彼女「あなた今日は非番じゃない。寝てれば?」

 

武蔵「あまりにも扱いがぞんざいだ!」ガーン

 

彼女「愚図らないの。暇だったら何処かに出かけてきたらいいじゃない」

 

武蔵「む、何処……か?」ピク

 

彼女「そう。何処か面白そうな所か誰かに会いにでも……」

 

武蔵「……」

 

彼女「武蔵? 聞いてる? むさ――」

 

シーン

 

彼女「あら?」




武蔵が何処に行ったのかは予想は容易だと思います。
問題はこの武蔵が問題を起こさない事を祈るだけです。


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第16話 「悩み」

ある日提督は、海岸沿いに並んだ防波堤に一人座っている明石を見つけた。
なにやら考え事をしている様子だった。


「どうしたんだ? そんな所で一人で」

 

「あ、大佐……」

 

「何か悩み事か?」

 

「うん。まぁ……」

 

「相談なら乗るが、俺では話し難いか?」

 

「いや、どっちかというと大佐じゃないと駄目な悩み事です」

 

「ふむ?」

 

「……」

 

明石はまだ話すことを躊躇っている様子だったが、やがて決意したのか小さく息を吐くと大佐の方を向き話し始めた。

 

「実は、私の……工作艦としての存在意義についてなんですが……」

 

「む……」

 

「あ、もう分りました? そうなんですよね。私、実戦に参加するようになってからというものまだ1回も工作艦として艦の整備とかした事がないんですよねぇ」

 

「……」

 

提督は黙り込むしかなかった。

事実、明石の言った通りこの鎮守府では彼女に艦の整備を指せた事が本当に一度もなかったからだ。

やってもらった事と言えば……。

 

「エアコン、テレビ、パソコンやネットの接続、製氷機……思い出してみれば私って整備関連のお仕事と言えば基地の設備のお仕事しかしていないんですよね」

 

「確かに……」

 

「いえ、嫌じゃないんですよ? 整備自体は好きですし」

 

「ただ、こう艦に関わらずに設備の整備ばかりしていると工作艦として虚しいというか、他の道がある気がして……」

 

「明石……」

 

「あ、理由なら分かってますよ。資材ですよね?」

 

「ああ」

 

提督の鎮守府は資材に関しては常に弾薬以外は豊富な事は基地の所属員なら誰でも知っている共通の認識だった。

加えて高速修復罪や開発資材も潤沢にあるので、基本的に修理や建造に関しては手間を惜しむと言う考えがないのだ。

つまりそれは、艦の整備能力がある明石本来の存在意義を否定しているのと同意義でもあった。

 

元々修理に時間を全く使わない所為で入渠ではなく、今では完全に通常の入浴をする習慣まで艦娘達に就いてしまった鎮守府である。

修理完了後に意気揚々と入浴絵と赴く艦娘達を傍らで見つめていた明石の心情たるいや如何ほどのものであっただろうか。

 

「私、こんな艦ですから実戦でも戦力としては微妙じゃないですか。だから今の状況って私的にどうなのかぁって」

 

「そうだな……」

 

「大佐、私これからもここに居ていいのかなぁ」

 

明石はそう言って再び虚空を憂いで満ちた瞳で見つめた。

中々に深刻な状態だった。

も少しフォローが遅れていたらどうなっていたか分らない。

 

「明石、ハッキリ言って申し訳ないが現時点ではこの環境は変わらないと思う」

 

「はは……まぁそうですよね」

 

乾いた笑いが哀愁漂う雰囲気より増すなか、それを意識しつつ提督はヒヤヒヤしながらこう続けた。

 

「そこでだが、俺から1つ提案がある」

 

「提案?」

 

「そうだ。明石、お前、遠征部隊に参加してみないか?」

 

「遠征ですか……」

 

あまり興味がなさ気な様子だったが、それでもそこに自分が活躍する居場所があるかもしれないと思ったのか明石は僅かに身を乗り出して聞いて来た。

 

「それって編成の都合上余った枠に私が入るという事でしょうか?」

 

「ただ、それだけではない。遠征と言えども参加したメンバーに不測の事態が起こらないとも限らない」

 

「お前にはそんな事態が発生した時の保険という意味でも参加して欲しいんだ」

 

「……」

 

明石は再び考え込むように俯いた。

表情こそ窺えないが雰囲気事態は最初に彼女を見つけた時よりかは良い感じに思えた。

やがて暫くの後、顔を上げた明石はポツリと言った。

 

「一つ、確認せて欲しいんですが」

 

「なんだ?」

 

「それは命令ですか?」

 

なかなかに厄介な質問だった。

軍人としては命令の一言で終わるが艦娘と言えど明石は女性、単純な答でも気を遣えなければ機嫌を損なう事になる。

 

「……」

 

「ふふ、意地悪でしたでしょうか?」

 

明石は悪戯っぽい笑みを浮かべて提督を見つめている。

明らかに彼が考え込む様子を楽しんでいた。

 

「部隊にさっき参加して欲しいと言ったな」

 

「はい」

 

「あれは嘘だ。訂正する」

 

「……」

 

「あいつらを守ってやって欲しい。これは、俺からお前への頼みだ」

 

「……」

 

明石は黙って提督を見つめた。

瞳は何も語らないが、提督の答えを吟味している様だ。

 

「ふふ……仕方ないですね」

 

「受けてくれるか?」

 

「こう真摯に頼まれると断れませんよ」

 

「ありがとう。そして悩みに気付いてやれなくて悪かった」

 

「お礼なんて、それに誤るのは私の方ですよ。困らせるような質問をしてしまってごめんなさい」

 

「いや、俺も提督として気を配るべきだった。今回は謝るべきは俺だ」

 

「そ、そんな。そこまで言わなくても……」

 

提督に再び謝罪され、流石に明石は恐縮した様子だった。

だが、提督の言葉はこれでは終わらなかった。

続いて出て来た言葉は明石が予想もしなかったものだった。

 

「いや、ここはキッパリ謝らせてくれ。それでだな」

 

「あ、はい?」

 

「もしお前さえよければ罪滅ぼしとは言わないが、埋め合わせをさせて欲しい」

 

「う、埋め合わせだなんてそんな!」

 

「そんなに畏まらなくていい。軽い気持ちで受けてくれ。何処かに付き合えとか、何かが小物が欲しいとか。俺に出来る事なら応えさせてもらう」

 

「え、えぇ……参ったなぁ」

 

思わぬ攻勢(提督に自覚なし)に明石は困った顔をした。

 

(しまった、大佐の性格を考えてなかった。ここまで律儀だなんて)

 

「じゃ、じゃぁ思いついたら言います」

 

「ああ、それで構わない。ところでお前はまだそこにいるつもりか?」

 

「え?」

 

「特に用がないのなら、基地まで送るぞ」スッ

 

そう言って提督は明石に手を差し伸べた。

 

「あ……」

 

明石は頬を赤くしながらも嬉しそうにその手を取った。

 

「……大佐」

 

「うん?」

 

「埋め合わせ、これでもいいですよ」

 

「これって、今この事のか?」

 

「はい♪」

 

「お前がそれでいいなら構わないが、何かをしたと言う自覚がないんだがな……」

 

「それでも十分です♪」

 

提督は釈然としない様子だったが、彼と手を繋いなだ明石は嬉しそうな顔をしていた。

 

二人が基地への帰路に就いてから暫く経った時の事だった。

基地まで後数分というところで、海岸の方から何かが水を切り提督たちへ近づく音がしたのだ。

 

ズバババババ……!

 

「……ん?」

 

「っ、大佐下がって下さい!」

 

危機を察知した明石が素早く提督の前に立ち、近づいてくる音を警戒した。

 

(レ級か?)

 

提督は明石に守られながらそんな事を予想していたが、表れたのは全く予想外の人物だった。

 

ザパーン!

 

「よっ」

 

大きな水音と共に勢いよく堤防を乗り越えて来たのは……。

 

「大佐! 遊びに来たぞ!」

 

ムギュッ

 

「なっ……!」

 

「んぐっ……?」

 

明石が驚愕して固まっているのも気に留めることなく、その豊満な胸に提督の顔を抱きしめたのは海軍本部の武蔵だった。




登場人物が少ない時は発言者の表記を無くす事にしてみました。
人数が少ないのに毎回同じ人物の名前が出るのって妙な感じがしたので。
少しは読み易くなっていたら幸いです。


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第17話 「天獄」

突然の武蔵の訪問後、彼女を執務室で迎えた秘書艦の不知火は何処となく不満げな顔でした。
素直になりつつある不知火は、その不満の原因になっている疑問を押し隠すことなく提督に質問しました。


「大佐、二つお聞きしたいのですが」

 

「明石が不機嫌な理由は想像に任せる。本部の武蔵がここに居るのは遊びに来たからだそうだ」

 

「なるほど……」

 

不知火はあくまで冷静な顔で納得したが、その実心中は嫉妬の炎が渦巻いていた。

何故ならーー

 

「大佐! 久しぶりだと言うのに反応が薄いぞ! ほら、もっと喜べ!」ムニムニ

 

先程から凶悪な風船を愛しの提督に我が物顔で押し付けてる目の前の戦艦が癇に障ってしかたないからだった。

 

「武蔵、俺はお前が来る事を知らなかったんだが」

 

「それは当然だ! お忍びサプライズというやつだからな」ムニィ

 

「押し付けるな」

 

「……ッ」ギリ

 

不知火は歯噛みした。

何故自分にはアレがないのだろう。

 

「遠慮するな。触っていいのはアイツと大佐だけだからな!」グニグニ

 

「俺は仕事中なんだ。風紀が乱れる。やめ――」

 

「やめてください。大佐が困っています」

 

ついに我慢できなくなった不知火が介入してきた。

 

「んん? まぁ固い事は言うな。これは遠く離れた本部から来た私なりの大佐への労いだ」

 

「なんで俺が労われるんだ。普通は逆だろう」

 

「お? 大佐は私を労ってくれるのか?」

 

挙げ足を取ったと思ったのだろう、これを機に更に自分の望む展開に運ぼうと言う魂胆が見え見えの勝ち誇った笑みを武蔵は浮かべた。

 

「そうだ。不意とは言え、わざわざ本部から来た客人をもてなさないのでは、この鎮守府の提督としての沽券に拘わるからな。不知火」

 

「はい」

 

「客人にお茶と菓子を」

 

「分かりました」

 

「ん、私は別にそういうのはいらないぞ? 大佐と話していれば……」

 

「だからそういうい訳にもいかないと言っているだろう。仕事中だ。不知火、頼んだぞ」ポン

 

「……はい。失礼します」

 

バタン……テテッ

 

部屋を出る前に頭を撫でられた不知火は、少し紅潮した嬉しそうな顔で部屋を退出した。

その直後、嬉しさを押さえきれなかったのか足取り軽く小走りで廊下を行く足音が聞こえた。

 

 

「なぁ大佐」

 

「ん?」

 

「なんでさっき不知火の奴の頭を撫でたんだ? 敢えて必要な場面でもなかっただろう?」

 

「本当にそう思うか? これでも機微には聡いつもりなんだが」

 

「……なぁ」

 

「お前は撫でん」

 

武蔵が言い切る前に提督は即答した。

 

「な、何故!?」ガーン

 

「客人としてはもてなすが、問題児を甘やかすほど俺は優しくはない。分ったら茶が出るまでそこで大人しくしてろ」

 

「むぅ、茶が済んだら構えよ?」

 

「済んでかつ、俺の仕事が終わってたらな」

 

「午前の仕事の書類はそんなに多くは見えなかったからな。誤魔化そうとしても分るからな」

 

「……まぁ、大人しくしてろ。言った事は守る」

 

主導権は全てこちらが握っていると思っているのだろう。

余裕綽々の武蔵を尻目に提督は何故か始終涼しい顔だった。

それもそのはず、提督にはある勝算があったのだ。

 

 

「美味い! なんだこれは!? こんな美味いアイスは初めてだ!」

 

目の前に出されたアイスを夢中で頬張る武蔵を提督と不知火は少し呆れた目で見ていた。

 

「不知火、少し割に合わないがお代りは絶やさないようにしてくれ」

 

「了解しました。上手くいきましたね」

 

「ここのアイスは好評だからな。ましてやそれを満足いくまで出されれば時を立つのも忘れるというものだ」

 

「でもやはり、このまま出し続けると言うのは……」

 

不知火が少し不安そうな顔をして提督に聞いた。

 

「大丈夫だ。人には必ず許容量というものがある。いくら美味しくていくらでも食べられる気でも、そういう奴に限って自分の限界に気付かないものだ」

 

「? どういう事です?」

 

「まぁ、その内分かる」

 

その時の不知火は提督の言葉の意味を理解できなかったが、暫く後直ぐにその意味を知る事となった。

アイスの美味しさに夢中になり自分の限界に気付かずに食べ続けた武蔵は、提督の予想通り途中で軽度の低体温症と腹痛に見舞われたのだった。

 

結局武蔵はその日ほぼ一日を医務室で過ごす事になった。

 

 

これでやっと提督に甘えられる。

 

「~♪」

 

昼休み仕事も終わった提督と幸福な過ごす為に不知火は意気揚々と執務室に向かっていた。

しかし、現実はそう理想通りにはいかなかった。

挨拶と共に不知火の目に入って来た光景には……。

 

ガチャ

 

「失礼しま――」

 

長月「大佐! 最近新人ばかりに構って私の事を忘れてないか? いや、いいんだがな。でもちょっとは気にしてもいいんだぞ?」

 

菊月「待て。それを言うなら私もだ。そして、私は長月の様に自分の心を偽ったりはしない。提督、構え!」

 

初風「ちょ、ちょっと! 少しは新人に気を遣ってくれてもいいじゃない!」

 

三日月「た、大佐。み、三日月もその……し、失礼します!」ダキッ

 

朝潮「三日月さんやりますね……私も負けてはいられません!」ギュッ

 

浜風「大佐……ここは、浜風に……」ポッ

 

夕雲「大佐? 夕雲にも甘えていいんですよ?」ソッ

 

提督「……お前達、ここは休憩所じゃない」

 

最近構って貰えてなかった者、積極的に提督にモーションをかける者、執務室は複数の既存、新米の駆逐艦が集う託児所の様な形相を呈していた。

 

「くっ、何故……」

 

「ありゃぁ、今日は満員だねー」

 

がくりとうなだれる不知火の後ろから声がした。

 

「秋雲……」

 

「そんなお前もか、みたいな目で見ないでよー。ま、目的はそうだけどさ」

 

「あなたもあの中に入るつもりですか?」

 

「んん? 『も』ってことは不知火も?」

 

「いえ、私は……」

 

「そか、安心した。じゃ、今日は秋雲頑張っちゃおうかなー?」チラ

 

不知火の言葉を聞いてわざと意地悪い顔で秋雲はそんな事を言った。

 

「……」ピクリ

 

「……秋雲、何故あなたはそんなに自信有り気なんですか?」

 

「えー? だって、ヌイヌイが参戦しないのはやっぱ大きいっしょー?」ニヤニヤ

 

「……挑発しているのですか?」

 

「さぁ? ま、参戦しないならその方がいいけどね。それじゃーー」

 

「待ち……待って。私も、行き……ます」

 

「うん。そうこなくっちゃ。素直になるところを誤っちゃダメよー?」

 

秋雲は嬉しそうな顔で不知火の参戦表明を歓迎した。

 

「もう、あなたには敵いませんね」

 

「それはこの勝負の結果次第でいいんじゃない? それじゃ」

 

「了解しました。負けません」

 

「行ってみようか!」

 

「「大佐!」」

 

 

 

所変わって、海軍本部

 

「……」

 

大佐の鎮守府の武蔵は本部の武蔵と入れ違いで本部に研修に来ていた。

出迎えたのは訓練を担当する大将とその麾下の艦娘達だった。

 

「よく来た。お前か? 今日来る予定の研修生は?」

 

「はい。○○鎮守府所属の武蔵です。大将殿、今日から暫くよろしくお願いします!」

 

「……あの老体の教え子のか」

 

「え?」

 

「気にするな。よし、では早速訓練を始める。艦装を外してこいつらと手を繋いで沖に一日浮いてろ」

 

「は?」

 

一瞬何を言っているのか理解できない顔を武蔵はした。

 

「何を驚いている? 早く言う通りにしろ」

 

大将はそんな武蔵のそんな動揺を毛ほども気にしていない様子で命令した。

 

「い、いえ。指示に従わないつもりはないのですが。こ、これは艦娘の訓練と関係あるのですか?」

 

「勘違いしているようだから教えてる。ここでは心技体全てを鍛える。お前が言う艦娘の訓練というやつは『技」いわば、訓練の最終段階だ」

 

「……」

 

「まずは心と体だ。決して折れる事ない鋼の精神と屈強にして強靭な肉体に鍛えてやる。」

 

「……」

 

「覚悟しろよ? ここに来たからには結末は3つだ。途中で泣いて帰るか、運悪く訓練中に死ぬか……そして最後は一人前の兵士となるか、だ」

 

底冷えしてしまうような冷たい視線に武蔵は気付かない内に冷や汗を一筋流した。

なんだこの威圧感は? 人間か?

 

「 」

 

「分ったら。さっさとしろ! これ以上ごねたらお前だけ素っ裸でサメの餌にするぞ!」

 

帰りたい。

本部の訓練の噂は聞いていたが、ここまでとは予想していなかった武蔵は早速そう思い始めていた。

“ベテラン殺し”その噂は伊達ではなく、噂以上の地獄だった。




因みに本部の艦娘は全てこの大将の訓練を受けている設定です。
強いはずですね。

武蔵ガンバレ!

あと不知火可愛い。


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第18話 「人違い」

本部に研修に行った武蔵の話の一場面。
初日の訓練を終えて武蔵は疲労困憊です。


「うっ……ぐ……」

 

大将の訓練で心身共に疲弊し切った武蔵は、鉛のような体を引きずって与えられた部屋へと向かっていた。

 

(こ、ここまでとは……)

 

提督にも相当厳しいらしいという噂は伝え聞いていた。

しかしそれでも、大和型である自分なら耐えれる事ができるという驕りが武蔵を訓練への参加へと踏み切らせた。

 

(鎮守府が……大佐に会いたいなぁ……。でも途中で諦めて帰るなんて絶対嫌だ。それだけは絶対……)

 

「あら? 武蔵、あなた帰ってきてたの?」

 

自分を呼ぶ声に振り替えると、そこには大和がいた。

 

「やま……と?」

 

「あっ、あなた。此処の武蔵じゃないのね。ごめんなさい。私は……」

 

「知っている。中将の部下だろ?」

 

「え? ああ、あなた……」

 

「そうだ。大佐のところの武蔵だ」

 

「大佐は一緒じゃないの?」

 

「このボロボロの姿を見て分からないか?」

 

武蔵は大袈裟な素振りで疲弊した自分の姿を大和に示した。

 

「ああ、大将の……」

 

「そう。研修に来た」

 

「どう?」

 

「……聞くな」

 

「まぁ、そうよね」

 

「驚かないのか? 大和型がこんなにも弱気になっているというのに」

 

「大将の訓練を受けて平気でいる子なんて滅多にいるものじゃないわよ」

 

「そ、そうか……」

 

武蔵は少し安心した顔をした。

 

「その様子だと相当堪えたみたいね」

 

「ああ、あんなに苛酷だとは正直思っていなかった」

 

「続けられそう?」

 

「……来たからには最後までやり抜くつもりだ」

 

「そう。お世辞にしか聞こえないかもしれないけど、あなたなら大丈夫よ」

 

「それは、ここの武蔵も訓練を耐え抜いたという事か?」

 

武蔵はちょっと対抗するような目で大和を見ながら聞いた。

 

「ここの? んー……そうね。確かにあっちの方も耐え抜いたけど、でもタフさはあなたの方が上な気がするわ」

 

「そ、そうか?」

 

「ええ。これは内緒にして欲しいんだけど、あっちの武蔵は訓練が辛い事より大将が怖くて途中で泣いちゃったみたいだから……」

 

「……それは分かる。駆逐艦や軽巡ならともかく戦艦の、それも大和型にここまで畏怖を感じさせる人間がいるなんて思いもしないだろうからな」

 

「そうね。あなたも怖い?」

 

「怖い」

 

武蔵は恥じることなくキッパリ言った。

その反応が意外だったのか大和は一瞬目を丸くして驚いたかと思うと、小さく笑いながらこう言った。

 

「あなた変わってるのね。今まで何回か武蔵を見てきたけどこんなに素直な反応をする武蔵は初めてよ」

 

「ふっ、それは大佐の所為だ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。あの人と接しているとな自然と素直になってしまうんだ。その所為か、いつの間にか普段でもそうなっていたというか……」

 

「ふふ、大佐が好きなのね」

 

「うむ! ……あ」ジワ

 

誇らしげにその問いにも即答した武蔵だったが、その直後何かを思い出したような顔をして急に瞳を潤ませ始めた。

あまりにも急な変化に大和も心配する表情で武蔵の様子を伺った。

 

「どうしたの?」

 

「大佐の事思い出したら……な、なんか急に……う、ぐす……」

 

「ああ」

 

「ひぐ……ぐすっ。な、泣かないつもりだったのに……はは、こ、これではもうこっちの武蔵に勝っているとはい、言えない……な。ぐす……」

 

ギュッ

 

「ん……」

 

「女の胸で申し訳ないけど、これで少し安心して」

 

「……」

 

「寂しがるのは恥ずかし事じゃないわ。それだけ大佐が貴方たちと上手くやって、絆を育んでいる証拠だもの」

 

「……」

 

「訓練を終えて帰った時に、うんと大佐に甘えるといいわ。それを楽しみにするの。どう?」

 

大和は少し体を離すとイタズラっぽい笑みを浮かべるとそう言った。

 

「……そ……うだな。それは悪くないな」

 

「でしょう?」

 

「ああ。恩に着る。それを楽しいに思えば何とか耐え抜けそうだ」

 

「ふふ、大佐、あなたが帰ったら大変ね」

 

「ふっ、ちょっとくらい困らせたって罰は当たらないだろう。よーし! やる気出たぞぉ!」

 

「頑張ってね!」

 

「ああ、この武蔵に任せておけ!」

 

「おおうっ、頑張れよぉ!!」

 

「応援してるわよ」

 

 

唐突に二人以外の声がした。

声がした方を振り向くと、そこには何が面白いのかニヤけ顔の大和の提督(中将)と彼女がいた。

 

大和「ちゅ、中将! いらしてたんですか?」

 

あからさまに動揺した声で中将がいた事に狼狽える大和。

武蔵はその様子を見て、大和の恋愛事情を即座に悟った。

 

武蔵(ああ、大和はこの人が好きなんだな)

 

彼女「こっちの武蔵が出かけたと思ったらあの人の武蔵が来るなんてね」

 

中将の隣にいた彼女が苦笑しながら武蔵を見て言った。

 

武蔵「少将殿」

 

彼女「ようこそ本部へ。キツイかもしれないけどアイツと同じ『武蔵』であるあなたならきっと耐えられるわ。いえ、耐えられるわよね?」

 

武蔵「はっ。勿論です!」

 

中将「ぐふふ、いいツラだ」

 

大和(む……)

 

中将が武蔵の態度に感心しているのを見て、大和は僅かに不機嫌そうな顔をした。

武蔵が早々に話を切り上げ部屋に切り上げて部屋に戻りたいと言い出したのは、先程と同じように大和の心中を彼女が察したからであった。

 

武蔵「あの、お話し中申し訳ないのですが少し疲れているのでそろそろ部屋に……」

 

中将「おお、そうか悪かったな。ゆっくり休め」

 

大和「え? ええ、おやすみなさい」

 

彼女「それは悪い事しちゃったわね。おやすみなさい、お疲れ様」

 

武蔵「はい、それではこれで」

 

踵を返して武蔵が部屋へと戻った後には3人だけが残った。

 

 

「……それでは私も戻ります。中将殿、大和、おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

「おやすみなさい。少将」

 

そしてあっという間に2人だけになった。

 

「……」

 

「さて、儂らも戻るか」

 

「……」

 

「どうした大和? 何か不機嫌だな」

 

「別に……」(せっかく武蔵が気をつかってくれたのに。気付いてないのかな)

 

「んん? お前……」

 

何かに気付いたのか急に中将が大和の顔をまじまじと見つめてきた。

不意の彼の行動に大和が動揺する。

 

「な、なんですか? 中将」

 

「……ふっ、ははははは。まぁいい行くぞ」グイ

 

「きゃっ」

 

中将は大和の肩を掴んで自分に寄せたかと思うと、今度は頭を撫でてきた。

 

クシャクシャ

 

「も、もうやめてくだ……」カァ

 

「いや、やめん。このまま部屋まで送れ。はははははは」

 

「うぅ……はい」

 

「……愛い奴だな」ボソ

 

「ちょっ」ボッ

 

「うははははは。さぁ行くぞ!」

 

「や、子ども扱いはやめてくだ……もー!!」




肺炎治りました。(キリッ
大和欲しいなぁ。


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第19話 「贈り物2」R-15

ある日の夜、提督は陸奥が成長限界に達した記念に指輪をプレゼントしました。
陸奥は感激のあまりつい提督に抱き付いてそのまま押し倒してしまいました。
そして……。

*明らかな性的描写あり


「ん……ちゅ……」

 

月明かりのみが光となって照らしている暗い部屋の中で艶やかな声が響いていた。

 

「ちゅる……ぺろっ。んー……んむ、はぁ……」

 

部屋の片隅で二つの影が重なっていた。

一人は陸奥。

ベッドに腰掛けた提督になにやら奉仕をしているようだ。

 

「……」

 

一方もう一つの影の提督は、ただ眼を瞑り陸奥の奉仕に一方的に果てまいと耐えるような表情をしていた。

 

「ん……ふぅ……。気持ち良くない?」

 

どうやら陸奥にはその表情が自分の愛し方が拙い所為だと思えたらしい。

陸奥に気を遣わせてしまった事を申し訳なく思った提督は、彼女の頬を撫でながらやんわりと否定した。

 

「いや、いつ果ててしまうか分からないくらい気持ち良い」

 

「本当? なら、良かった続けるわね。あむっ」

 

「くっ……陸奥、それは……」

 

提督の言葉に気を良くした陸奥は最初より更に強い奉仕を実行した。

 

「ひふぁい?」(痛い?)

 

上目遣いで陸奥は提督の様子も気を利かせて確認する。

 

「いや、最初は驚いたがこれは……正直、こんな感覚っ……は……んくっ」

 

提督は顔を紅潮させて刺激に必死に耐える表情をしながら何とか言葉を絞り出している感じだった。

 

「ん♪ れろれろれろ」

 

提督の反応を嬉しく思った陸奥は即座に奉仕を『攻め』へと移行した。

 

「く……待て陸奥。これ以上は……」

 

どうやら提督は陸奥に迷惑を掛けまいと必死に我慢しているようだった。

だが、そんな提督の気遣いを意に介さないかのように陸奥は更に攻め続ける。

 

「んっ、んっ、んんっ……!」

 

「む……つっ、ダメだ……でっ……」

 

今わの際、最期の力を振り絞って提督が陸奥の頭を掴んで引き離そうとしたしたが、予想外な事に陸奥がそれに抵抗し引かなかった為、提督はついにそのまま果ててしまった。

 

「ん~~~っ……!」

 

どことなく苦しそうな顔を陸奥はしたが、それでも彼女は提督から離れようとはしなかった。

 

「んくっ……んく、ん、んっ……」

 

 

「ふぅ……ごちそう様♪」

 

「……よく、そんな不味いのを……」

 

提督は呆れたらいいのか褒めたらいいのか分からないと言った感じの微妙な顔で陸奥の行動を評した。

 

「まぁ確かにとてもじゃないけど美味しいとは言えないけどね。いろいろ凄いし……て、なんで味知ってるの?」

 

重要な事に気付いたとばかりに驚いた表情で陸奥は提督に訊いてきた。

それに対して提督はあっさりとなんでもないといった表情でこう答えた。

 

「それは味を確認したことあるからな」

 

「そ、それって……」

 

信じられないといった表情で僅かに震えながら陸奥は提督を見た。

 

「言っておくが正真正銘自分のもの、自慰によるものだ。俺は同性愛者ではない」

 

「そ、そう……良かった」ホッ

 

(予想通りの事を考えていたか。危なかった……)

 

「でもその……自分の確認したって……」

 

「ここの職場は本当に女だけだからな。信じられないかもしれないが俺だって男だ。偶にどうにもしんどい時もある」

 

「その時に?」

 

「ああ。トイレで処理をしていた」

 

「な、なんか作業的ね……」

 

「まぁ実際そんな感覚だったからな」

 

「じゃあその時に?」

 

「ああ。出した本人が味を知らないのではあまりにも不公平すぎると思っていたからな」

 

「相変わらず変なところが真面目ね……」

 

何とも言えないといった顔で陸奥は提督を見ながら言った。

 

「まぁそういうわけだ。だからこそ疑問なんだが……」

 

「ああ、なんでこんな事ができるのか?」

 

「ああ」

 

「そうね。さっきも言ったけど確かに大佐の言う通りお世辞にも美味しいとは言えないわ。でもね」

 

陸奥はそこで一瞬目を閉じて一呼吸置くと、再び提督に密着した。

 

「好きな人のものだと思うと、例え美味しくなくても……全部愛おしくなるの……んっ」

 

「っ、陸奥……」

 

「はいひょーふ……ん、ちゅっ。っは……ココは自分で弄るから、今日は、んむっ」

 

「わらひの……んっ、ぺろ。くひをはおひんで……」

 

陸奥はそう言うと再び提督への奉仕を開始し、自らも昂ぶっていくのを感じた。

 

くちゅ、ちゅぷっ

 

「陸奥……だめだ」グイッ

 

「ん……ふぇ? え? ちょ、ちょっと大佐?」

 

提督は何とか陸奥の奉仕を我慢すると、彼女を少し強引に引っ張ってベッドまで引き上げた。

 

「あ……」

 

ちょうどその時、窓から差し込んでいた月明かりが陸奥へと降り注ぎ、より効果的な演出が偶然にも発生した。

 

「女性の此処を『花』とはよく言ったものだな。今こうして見ると改めて綺麗に見える」

 

「や……だめ……」

 

月明かりによるライトアップは確かに人工的な照明と比べて美しく思えた。

陸奥はそんな状況につい顔を真っ赤にして恥ずかしがる。

 

「陸奥……それは本心か?」

 

「……もう、バカ……。解ってるでしょ? ……お願い。来て……」

 

「ああ、行くぞ」グッ

 

「ああっ……♪」




結局その後、提督と陸奥は朝方まで燃え上がったそうです。

エロは好きだけど、書くのは苦手というのはこれ如何に。
描くのは大好きなんですけどね。
でも載せられないので仕方ありませんねぇ……はぁ。

あ、エロ終わったのでまた今日の夜辺りから日常ネタに戻ります。


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第20話 「対抗心」

雲龍と飛鷹と隼鷹が酒を飲んで何か語らっています。



「んぐ……っはぁ……大佐ってさ」

 

一口で酒を飲んだ雲龍が溜息と共に切り出した。

 

「んーー?」

 

「付き合っている人いるのかな?」

 

ピシッ

 

空気が凍った。

雲龍の言葉を聞いてなかった隼鷹でさえ場の空気の異変に気付き、飲みかけだった酒を途中でをやめた。

 

「……なに、言ってるの?」

 

雲龍の一言で酔いが吹き飛んだ飛鷹が少し顔をひきつらせながら真面目な顔で聞き返した。

 

「いや、大佐って誰かと付き合ってるのかなって」

 

「えー? 付き合ってるも何も、ケッコンしてる人がもう6人くらいいるんだしー。そんなの今更確認する必要にゃいんじゃなー?」

 

飛鷹と違い、酒に酔う事を何よりも好む隼鷹が笑いながら雲龍の疑問が今更のものだと指摘する。

 

「いや、でもそれって結局はケッコンというシステムの話でしょ? 純粋に付き合うのならシステムとか関係ないじゃない」

 

「……だから?」

 

「同じことを何回も言わせないでよ。だから大佐って誰かと純粋に付き合ってるのかなって」

 

「ん~? それってさぁ、うんにゅーの言ってる事ってさー。公私共に常に彼氏彼女みたいな関係の人がいるのかってことー?」

 

「そう」

 

「んー、そー言われると確かにいないとは……」

 

「ちょ、ちょっと隼鷹」

 

酔いの所為かはたまた本心から言っているのかは定かではないが、思いもよらない事を言い出す隼鷹に飛鷹は焦った。

 

「ん~? どーしたのさひよー? べっつにあたしはあんたも大佐を好きなことくらい……」

 

「そ、そういう事じゃなくって」

 

「そう。そういう事ね。つまり純粋に付き合っている人はいないのね」

 

「えっ」

 

「んー、それはどーかにゃー」

 

「隼鷹、あなたさっき大佐とちゃんと付き合っている人はいないって言ったじゃない」ゴク

 

若干目が据わっているように見えなくもない雲龍は、隼鷹のいい加減とも言える反応に僅かにムッっとした表情をした。

 

「いやー、確かに言ったけどさぁ。大佐ってずっと前に自分を好きな人は無条件で受け入れて愛しますーとか言ったからねぇ」

 

「……そんな事言ったんだ」

 

「そ、そうよ! だからもう抜け駆けとかそういうのはね……」

 

「でも、愛するって言っただけで、誰を本妻にするかとは言ってないのよね?」

 

ピシッ

 

また空気が凍った音がした。

今度は隼鷹も雲龍の言葉を聞き逃す事はなかった。

 

「ほ、本妻?」

 

先程と違ってずっと真剣な表情で飛鷹が聞き返す。

 

「そ、本妻」

 

「それってつまり……」

 

「そう。誰が一番好きなのかって事よ」

 

「あー……、なるほどねー。それはちょっとあたしも気になるかにゃー」

 

「隼鷹たちの反応を見ていた限り私はいなさそうと踏んだけど、そこのとこどう?」

 

「そ、そうね……確かにはっきりと居る、とは言い難いけど……」

 

「少なくとも近い人はいるかにゃー?」

 

最初から真顔なのは変わらないが、幾分眼光が鋭くなった雲龍がすかさず訊く。

 

「……それって誰?」

 

「んー……やっぱり加賀さん?」

 

「こんごーうとマリアもかなぁ?」

 

「……後者の二人は普段から大佐の事を好きな事を隠していない人達ね。でも一方的に見えなくもない……と思わない?」

 

「えっ。そ、それは……」

 

「いやぁ、アレで心から本当に慕ってるからねぇ。大佐も満更じゃないと思うけどねぇ」

 

「大佐は押しに弱いの?」

 

「弱いというか優しいのよ。態度は素っ気ないけどちゃんと受け入れてくれるというか」

 

飛鷹は顔を赤らめて少し嬉しそうに言った。

 

「感心しないわね。そういうのは誤解させちゃうのよ」

 

雲龍はその可能性をにべもなく否定した。

その反応は若干子供っぽく見えなくもなかった。

 

「い、いやいくらなんでも誤解だと判断するのは……。それこそ一方的なんじゃ……」

 

「そうだよー、大佐はそんな人じゃないよぉ? ていうかうんゆーさぁ、あんたも大佐が好きなのは分かるけど、そんなに無理していひ番になろうとするのは、ひょっとおねーちゃん感心しないなー」

 

「……ごめん。ちょっとお酒まわってるかも」

 

「いいってことよー。いやぁ、若いっていいねぇ♪」

 

「肉体年齢成人以下の癖に何言ってるのよ……」

 

「いやぁ、それはそれっってヤツ? ほら、あたし結構やるからさぁ♪」

 

「最早何を言っているのか理解困難ね」

 

わざと呆れたような顔をして苦笑交じりに雲龍は言った。

 

「ごめんね。酒癖悪くて」

 

「ううん。お酒は美味しく飲むのに限るから」

 

「そうっ。それ! あらひはそれが言――」

 

「はいはい。分かったから今日はこれくらいにしましょ」

 

「そうね。時間もいい感じだし。それじゃおやすみ」

 

「またね、楽しかったわ。また飲みましょう」

 

「えぇ!? もうおわひぃ?」

 

「あんたは顔でも洗って来なさい」

 

「ふふ、じゃあね。お邪魔しました」

 

バタン

 

 

「……全く。隼鷹、あなたも早く……あれ、何処行くの? 顔ならそこで洗えばいいじゃない」

 

「ん、ちょっとついでに外の風にも当たりたくてさ。直ぐ戻るよぉ」

 

「もう、もう少し加減ていうものを覚えなさいよ?」

 

「あーい。そいじゃ行ってきまーふ!」

 

隼鷹はそういうと足早に部屋を出ていった。

 

飛鷹(隼鷹? んー……なんか?)

 

 

~鎮守府廊下

 

トテトテ……

 

「あ」

 

「あれ、雲龍さん? 部屋に戻ったんじゃ……」

 

「飛鷹、ダメ。こっちこっち」

 

何となく気になって隼鷹が出た後を追っていた飛鷹だったが、そこで思わぬ人物と再会した。

再会した雲龍は驚くより飛鷹の存在が何かに影響してしまうのが気になる様子で、目珍しく少し焦りがちに手早く彼女を自分が居る廊下の曲がり角に引き入れた。

 

「ちょ、な、なに?」

 

「あれ、アレ……」チョイチョイ

 

「ん? あれって……あっ」

 

雲龍が指を指している方向を見ると飛鷹は軽く驚いた表情をした。

何故ならそこには……。

 

 

「たーいさぁ。んふー」ギュッ

 

「おい、酒臭いぞ」

 

「あ、ちょっと。いきなりそれはないんじゃなーい?」

 

「夜中に訪ねてきていきなりもたれかかって来る奴に言われたくはないな。飲み過ぎなんじゃないのか?」

 

「えへへぇ、そうかもー。だからさぁ……」

 

「分かった。部屋まで送ってやる」

 

「えー? そーじゃなくてー。ねー?」

 

「何を言いたいのか解らなくもないが今日は駄目だ」

 

「むっ、誰かいるの?」

 

「いや」

 

「なら――」

 

「駄目だ。お前、最近新たな改造を目指して少し無理しているだろう? その結果疲労が溜まって珍しく酒に悪い方に飲まれているんだ」

 

「むぅ、そんな事……!」

 

少しむくれた表情をした隼鷹は、提督の心遣いに退く姿勢を見せず更に言い募ろうとした。

 

ポン

 

「無理をするな」

 

「な……い……ん……」

 

「俺は無理をしない部下が好きだ」

 

「ちょっと……そういうのってズルいと思わない?」ポッ

 

「そうだな。だが、心配しているのは本当だぞ?」ナデナデ

 

「んん……し、仕方ないね。じゃ、じゃぁさキスくらい……ね?」

 

「……」

 

「あ、そこで酒臭いから嫌だというのは――」

 

チュ

 

 

雲龍・飛鷹「!」

 

 

「……ん……」

 

「……」

 

「……。ごめん」

 

「何がだ?」

 

「臭かったでしょ? お酒」

 

「ふっ、そう気遣えるのなら次はもっと良いキスができそうだな?」

 

「あ……うん! ねぇ、今度改造を受けたらさ……」

 

「分かった。都合はつけてみる。だが……」

 

「分かってるって。素面でしょ? ちゃんと守るって!」

 

「よし、なら約束しよう」

 

「ありがとう! 絶対だよ!?」

 

「ああ。だからもう今日は休め」

 

「あいよっ。じゃ、寝るよ。ごめんね、こんな夜分に」

 

「気にするな。じゃあな。おやすみ」

 

「うん、おやすみっ♪」

 

テテッ……

 

 

~廊下、雲龍と飛鷹が潜んでいるポイント

 

「……」

 

「……やるね」

 

雲龍は感嘆とも取れる息を吐いてポツリと言った。

 

「そうね。隼鷹……くっ……」

 

「悔しい?」

 

「んー……というより、油断できないと思った、かな?」

 

「それは私も同意」

 

「ね」

 

「うん。お互いに?」ニッ

 

「頑張りましょう」ニコッ

 

薄暗い廊下で雲龍と飛龍はコツンと拳をぶつけ合った。




隼鷹のレベル上げがんばらないと!(主に演習で)

新しく行けるようになったマップ(3-5)難しいですね。
設計図欲しくても消費するコストを考えたら、一回の出撃で行く気を無くした自分はどれだけヘタレプレイヤーなんだと思わずセルフツッコミをしてしまいました。


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第21話 「料理2」

もう昼休みも半ば過ぎていましたが、提督はまだ執務を続けていました。
自分に割り当てられた分の仕事を既に終えていたその日の秘書艦の黒潮は、やることもなく少し暇そうな様子です。


「たーいさぁ」

 

「ん?」

 

「暇やなぁ」

 

提督の机に頭を乗せながら如何にも暇そうな感じで黒潮は言った。

 

「そうか? 俺は仕事をしてるが」

 

「むぅ、うちは暇なんよっ。それに今お昼休みやん!」

 

「なら陽炎達と一緒に遊んでいればいいだろう」

 

「やや! だって久しぶりの秘書艦なんやもんっ」

 

黒潮の言う通り確かに久しぶりの秘書艦の役目だった。

最近は隼鷹の育成をする為に演習に力を入れている所為か、駆逐艦が秘書艦になること自体稀という状態だった。

 

「悪いが俺は今は少し余裕がないんだ。前の執務がまだ片付いてなくてな。これを何とか処理しなくては……」

 

「うちも手伝う!」

 

「休み時間くらいゆっくり過ごせ」

 

「そん言葉そっくりお返しするわっ」

 

「……」

 

「うー……」ジー

 

「分かった。じゃぁこれを……」

 

「! 任してとき!」パァッ

 

 

それから数分後

 

「よし、もういいぞ」

 

「え? まだ大分残ってるで?」

 

「だが休み時間が残ってない」

 

「仕事するんちゃうん?」

 

「腹も減ったしな。このままでは戦がなんとやらというやつだ」

 

「ほな、うち食堂で食事貰ってくるわ」

 

「いや、給仕の必要はない。俺が作る」

 

「え? 作ってくれるん? うちの分も?」

 

「ああ。手伝ってくれた礼だ。何が食べたい? 簡単なやつなら作るぞ」

 

「ほんまに? ほならうち、うちなぁ……」キラキラ

 

「オムレツが食べたいぴょん!」

 

唐突に卯月が元気な声と共に割り込んできた。

あまりにも予想外な展開に黒潮は言葉を失って固まってしまった。

 

「 」

 

「唐突だな卯月」

 

「えへへー、大佐の部屋の前通り掛かったら何だか凄く良い事聞こえた気がしたのー」

 

「そうか。流石は卯月といったところか。耳がいいな」

 

「エッヘン」

 

「だが今日は遠慮してくれ」

 

「えぇ!? な、なんでぇ!?」ガーン

 

「お前もう食事は済ませただろう?」

 

「卯月は食べ盛りぴょん! まだまだいけ……」

 

「材料がそんなにないんだ。今日は黒潮と俺の分くらいしか作れない」

 

「えぇ……」ショボーン

 

目に見えて残念そうな表情をする卯月。

その様はまるでウサギの耳が垂れているのが容易に想像できる程だった。

 

「そう気を落とすな。今度……いや、明日作ってやるから」

 

「明日!? それって今日の次の日!?」ズイ

 

「そうだ。それなら我慢できるだろう?」

 

「うん! 分かったぴょん! 卯月今日は我慢するっ」

 

「すまないな」ナデナデ

 

「んんー……♪ 大佐が謝る必要はないぴょん。卯月の方こそ今日はいきなりごめんね」

 

「気にするな。それじゃあ悪いが今日は……」

 

「うんっ、また明日来るぴょん! 大佐、クロピョン失礼しましたぁ」

 

バタン

 

 

「ふぅ、これでよし。ん? 黒潮?」

 

「 」

 

「おい?」ポン

 

「はっ!?」

 

「どうした?」

 

「大佐! うち、うち……大佐と二人でご飯が……」

 

「そうなのか? ならよかった。卯月は今日は諦めてくれたからな」

 

「え?」

 

提督の言葉に呆けに取られて回りを見渡して見ると、確かにそこにはもう卯月の姿はなかった。

 

「い、いつも間に……。あのワガママで聞かん坊な卯月を……大佐凄いなぁ」

 

「そんなに感心される程の事をした覚えもないんだがな。まぁ、作るぞ。何が食べたい?」

 

「うちお好み焼きが食べたい!」

 

「ほう。なかなか黒潮らしい選択だな。分かった。少し待ってろ」

 

「はーい♪」

 

 

それから十数分後。

 

「できたにはできたが、おかげで休み時間が後僅かだな」

 

「ええやん少しくらい。休み入っててもちょっと仕事してたんやし」

 

「まぁ、食べ終わるくらいまではいいか。この後に急ぎの予定もないしな」

 

「そや♪」

 

「では、頂こうか」

 

提督はそう言うと相変わらず執務室の中央で異彩を放っている調理台から出来立てのお好み焼きを持ってきた。

 

コトッ

 

「ほら」

 

「わぁぁ、良い匂いなぁ♪」

 

「匂いだけかもしれないぞ?」

 

提督は笑いながらわざとそんな意地が悪い冗談を言った。

 

「こんな良い匂いするモンが不味いわけないやん。んん~♪」スンスン

 

「光栄だ。半分がイカ玉、もう半分がブタ玉だ」

 

「んっ」

 

「ご飯も食べるか?」

 

「大佐っ、分かってる! 分かってるわぁホンマ! 勿論食べるで!」

 

「了解した」

 

 

「ん? 大佐も食べるん? ご飯」

 

「ああ、お好み焼きは……」

 

「オカズやからな!」

 

タイミングを合わせて即答する黒潮。

どうやら提督と趣味が合うのが相当嬉しい様子だ。

 

「そうだな」

 

「大佐は関西に住んでたん?」

 

「まぁ子供の頃に少しな」

 

「そっかぁ、だからお好み焼きの事も……」

 

「その通り。実際、そこから引っ越した先の人から変な顔された時は戸惑ったものだが」モグモグ

 

「そうなんよねぇ。なんでやろ? めっちゃ合うと思うんやけど」

 

「やはり同じ炭水化物だからじゃないか?」

 

「せやったら、ラーメンとチャーハン一緒に食べるのも同じと思わん?」モグモグ

 

「形も関係あるんんじゃないか? ほら麺は細いだろ?」

 

「ん~、そんなもんかなぁ……。熱っ」

 

「ほら、水」

 

「ん、おーきに」ゴクゴク

 

 

「っ……ふぅ」

 

「美味かったか?」

 

「うん。めっちゃ♪」

 

黒潮は満足そうな笑顔でお腹を摩りながら言った。」

 

「そうか」

 

「ねっ」

 

「ん?」

 

「また作って?」

 

「いいぞ。また秘書になったときにな」

 

「うん。おおきに♪」

 

「さて……」

 

「お仕事やな! 任しときっ、バッチリ手伝う……ふ……ぁう……」

 

気合十分のやる気を見せようとした黒潮だったが、その意気込みを示す途中で欠伸をしてしまった。

 

「あ……。ちゃ、ちゃうで? こ、これは……」カァ

 

「……少し昼寝でもするか」

 

「え?」

 

「今は13時半か。2時まではゆっくりするとしようか」

 

「そ、そんな。うちに気を使わんでも……」

 

「お前の手伝いが予想以上に助かっているんだ。あと少しくらいは大丈夫だ」

 

「え? うちが……? そ、そんなに役に立ってたん? ホンマ?」

 

「お前はそんなに自分の仕事に自信がなかったのか?」

 

「そんなことない! うち真剣にやったもん!」

 

「だろう? 実際それは俺も確認した。そういう事だ」

 

「で、でもぉ……流石に休み時間過ぎて昼寝っちゅうのはぁ……」モジモジ

 

「ああ、大丈夫だ。お前はソファーを使え。俺はこのまま仮眠するから」

 

「え?」

 

「ん?」

 

提督の言葉が意外だったのか進呈不思議そうな顔で聞き返す黒潮。

対して提督は、黒潮が躊躇う理由を的確に当てたと確信していたのか、予想外の彼女の反応に同じく意外そうな顔をした。

 

「大佐、一緒に寝てくれへんの?」

 

「俺はそのつもりはなかったんだが……」

 

「……そや」

 

「ん?」

 

「添い寝してくれたらうちも寝るっ」

 

「添い寝って俺か?」

 

「当然やん」

 

「ふむ……」

 

既に複数の艦娘と情事を交わしているとは言え、心底真面目な本質は基本変わっていない提督は少し考えるような所作をした。

黒潮はそんな提督に答えを迫って考える時間を与えないかのように更に攻めに出た。

 

ギュッ

 

「お願い」ジッ

 

「……分かった」

 

「ホンマ!?」パァッ

 

「ああ。だが、ソファーだと狭いが……」

 

「問題あらへん。うちが大佐の上に寝るから」

 

「それだと俺がお前を抱きしめる形になりそうなんだが……」

 

「構へん、ええよ。寧ろしてほしいわっ」

 

「寝難くないか?」

 

「せやから大丈夫やって。あ、それともうちの体重が気になる……?」

 

「いや、駆逐艦で重そうだた思った奴はいないな」

 

「ほならねっ? お願いっ。頼むわぁ」グイグイ

 

「ふぅ……寝難かったら直ぐに言えよ?」

 

「うんっ♪ 大佐、ホンマおおきにな!」

 

 

それから十数分後。

 

「……」スヤスヤ

 

「……」

 

黒潮はうつ伏せに提督の上に寝ており、ちょうど抱き枕を抱く形で二人ともソファーに寝ていた。

 

(本当に一瞬で寝たな。こっちも抱き心地が良いからまんざらでもないが……だが……)

 

(暑い)

 

一見和やかな雰囲気ではあったが、提督はそんな事を考えながら寝る為の努力に専心していた。

冷房が効いているとはいえ、身近に体温を感じる状態では意外に寝難いものだ。

 

提督は、そんな意外な発見を勿論口にする事はこの後もなかったが、そんな状況でも穏やかに寝ることができる艦娘の『強さ』にまた違うベクトルで感心するのであった。




黒潮大好きです。
でもレベルはそんな高いわけではありません。

大事にするのもまたプレイの仕方ですよね? ということで。


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第22話 「大子供」

ある日、提督の執務室の扉を挨拶もなしに勢いよく開ける人物が来ました。
そんな礼儀知らずな事をついノリやってしまうのは提督の鎮守府に所属する艦娘と言ったら……。


「ヘーイ、大佐ァ!」

 

「遊びに来ましたよ!!」

 

ババン!

 

「よく来たな。取り敢えず其処に正座しろ」

 

「What!?」「ええっ!?」

 

 

「うぅ……大佐ァ、足が痺れたヨぉ」

 

「わ、わたしも……比叡、限界が……」

 

「たかが1時間くらいで音を上げるなよ」

 

「Sorry ヨ! マナー違反はゴメンするからァ!」

 

「も、もう限界……です。あ、あひの感覚が……」プルプル

 

「……はぁ。解いてよし」

 

「「!」」

 

提督の言葉にまるで生きる希望を見出したかのように救われた顔をした二人は、許可が下りるのと同時に即座に足を崩した。

 

「ハァ……これが生きてるってことなのネ……。ワタシ今とっても amazing な気持ちヨ……」ウル

 

「お姉様、比叡もです。わたし今凄く生きているって気がしてます……!」グス

 

「たかが正座くらいで大袈裟だな。おい、崩し過ぎだ。二人とも下着が見えているぞ」

 

「ワザとじゃないヨ? あ、足が今はゆーことを聞かないんデス」プルプル

 

「あ、ホントだ。でも大佐だし……恥ずかしいけど……。あ、わたしも足が今ちょっと無理です」プルプル

 

「そこは無理してでも淑女としてのプライドを示して欲しかったんだがな」

 

提督は呆れるように溜息を吐き、それ以上はもう注意をしなかった。

 

「sorry ネ大佐。でも、見たいなら好きなだけ見てネ?」

 

「私も構いません!」

 

「……何か色気も何もあったもんじゃないな。大丈夫だ。今のところお前達はただの子供にしか俺には見えないからそういった心遣いは無用だ」

 

「エー!?」ガーン

 

「そんなぁ! わたしはそんなに子供じゃないですよ!」

 

「ならもう少し慎みを持てよ……」

 

 

それから数分後

 

「それで、何しに来た?」

 

提督は、すっかり痺れが抜けて今はちゃんと俗にいう『女の子座り』をしている金剛と比叡に改めて問いかけた。

 

「え? 何しにって、タダ遊びに来ただけヨ?」キョトン

 

「わたしもです! なんか構って欲しくて」

 

「お前達は気まぐれな猫と遊び盛りの犬か」

 

「dog は大好きデス!」

 

「猫も好きですよ!」

 

「そんなことは聞いてない」

 

「BOW WOW!」

 

「にゃ、にゃ……え? ばうわ……? 何ですかそれ? お姉様?」

 

「英語の犬の鳴き声だ」

 

「へぇ、英語だとそういう風に言う? んですねぇ」

 

「そうヨ。帰国子女ならこれくらい当然ヨ!」

 

「一般的な帰国子女の認識を歪めるな金剛」

 

「えぇ!? ワタシ歪めてた!?」ガーン

 

「そ、そうなんですか大佐!?」ガーン

 

「……」(頭痛い……)ドヨーン

 

 

「……もういい。遊びに来たんだったな」

 

提督は取り敢えずそれ以上はツッコまない事にした。

それ以上のめり込むと深刻な精神的な疲労が懸念されたからだ。

 

「遊んでくれるノ!?」キラキラ

 

「本当ですか!?」キラキラ

 

「こんな夜中にやる事と言ったらもう寝るか読書くらいだったしな。いいぞ、付き合ってやる」

 

「流石 my darling ネ! I love you ヨ!」

 

「だ、ダーリン……ラブ……た、大佐! 比叡も! わたしともレベルが最大になったらケッコンして下さいね!?」ジワ

 

「大好きな姉に嫉妬するほど羨ましいのか……ああ、分かっている。条件に達すればちゃんとしてやる」

 

「約束ですよ!」

 

「um……お姉ちゃんとしてはちょっと複雑ネー。可愛い妹を嫁に出すというも中々辛いというカ……」

 

「お姉様!」ジーン

 

「って、何か辛そうな割には顔笑ってません?」

 

「エッ?」

 

比叡の言う通り金剛は胸に迫るセリフとは裏腹にその顔はどことなく引きつり、笑いを堪えているような表情をしていた。

 

「……お姉様? 辛いっていうの本当ですか? 実は大佐を独占したいだけとかじゃないですか?」

 

「ギクッ。そ、そんな事ナイヨ?」

 

「あぁっ!? 今ギクッって言いましたよね!?」

 

(策士策に……いや、最初から策が漏れていては策士ではないか)

 

「お姉様ひどい!」

 

「Oh 比叡、ごかいっ。誤解ネ! キャー♪」

 

「何笑ってるんですかぁ!!」

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「はぁ……ハ……くふ……あは」

 

「気は済んだか?」

 

「No! まだヨ!」

 

「まだ何もしてないじゃないですか!」

 

あれだけ走り回っていたというのに金剛と比叡は提督の言葉に即座に反応して姉妹揃って抗議と戯れの継続を要求した。

 

「もう十分していたと思うが……」(こいつらの元気は一体どこから湧いてくるんだ?)

 

「分かった分かった。で、何をする?」

 

「ちょっとしたクイズをしまショウ!」

 

「クイズ、ですか?」

 

「ほう、お前にしてはなかなかまともな案だな」

 

「それどういう意味ネ!?」

 

「日頃の行いを思い出せば済む事だろう? まぁ、いい。それで、クイズだったか」

 

「むぅ、後でちゃんとツイキューするからネ! コホン、それでは一人一個簡単なクイズを考えてそれに答えてもらいマース!」

 

「分かりました!」

 

「了解だ」

 

「じゃあワタシから行くワヨ! 私の下着の色を当てて下サイ!」

 

「「……」」

 

いきなりのとんでもない問題に提督と比叡は一瞬で黙り込んだ。

 

「お、お姉様……?」

 

流石に比叡も顔を赤らめながら姉を窘めるような表情をしていた。

 

「それ、クイズか?」

 

提督も比叡の援護に回る事にした。

 

「ノンノン! 誤解はいけないワヨ? 記憶を辿るのも立派なクイズよ!」

 

「記憶……あっ」

 

「そうっ。さっき大佐はワタシ達の下着を見たはずデス! それを思い出せばいいだけデース!」

 

「お前、それだと俺しか答えられないじゃないか」

 

「大佐に答えて欲しいノ」ズイ

 

「お、お姉様……」(頭良い!)

 

(どうやら比叡に金剛を止めてもらうことはもう叶いそうもないな……)

 

「……」

 

「さァ答えて!」

 

「大佐、ファイトです!」

 

「……む? いざ答えようとすると思い出せないものだな」

 

「えっ」

 

「あー、そういうのってありますよねー」

 

「大佐、ちゃんと見ててヨ!」

 

「馬鹿者。女が、自分からよりにもよって異性に自分の下着をちゃんと見てろなんて言うな」

 

「Oh 言われてみれば。でも、それはソレ! これはコレよ! 覚えられてないのもなんか魅力が足りない気がして悔しいノ!」

 

「我儘な……比叡?」

 

「ごめんなさい。私も覚えてないです」

 

あっけなく唯一の望みは絶たれてしまった。

 

「むぅ……」

 

「あっ……」

 

考え込む提督に金剛は何かに気付いたようで、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「比叡、比叡っ」ヒソヒソ

 

「え? なんですか?」ヒソヒソ

 

「……」コショコショ

 

「お、お姉様それは……」カァ

 

「比叡、これは chance なのヨ!」ヒソヒソ

 

「う~……。わ、わかりました。わたしやりますっ……」ボソ

 

「よく決断したワネ! それじゃ……」ヒソヒソ

 

「は、はいっ」

 

 

「大佐……」

 

「ん? どうした二人して立ち上がって」

 

提督はいつの間にか立ち上がって自分を見下ろしている金剛と比叡に気付いた。

 

「あの……わ、分からないならですね……」

 

「直接確かめテ!」

 

ガバッ




次回エロ(確定)です。

比叡を巧み(筆者視点)に誘導する金剛はやっぱり策士だと思います。


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第23話 「性的要求」R-15

上手く比叡を誘導する事によって夜のお楽しみへと持ち込んだ金剛。
さて、後は提督を押し倒して勢いのまま3人で楽しむだけです。

しかし、押し倒そうとした提督から思いもよらぬ贈り物が……?

*明らかな性的描写有り


ゴツンッ

 

「アウッ!?」

 

「ひっ!?」

 

そのまま勢いで主導権を握って提督と甘い時間を過ごせるものと確信していた金剛の予測は呆気なく彼の拳骨によって外れた。

 

「うぅ……痛いデス……。大佐ァ、これが恋人に対してする事ナノ……?」グス

 

「人に気も遣わず勢いだけでこんな事をしようとする方が悪い」

 

「そんぁ……大佐はワタシのこと嫌いナノ?」

 

「好きとか嫌いとかそういう問題じゃないだろ。金剛、お前は無邪気で可愛げのある奴だとは思うが、色々と無計画に勢いだけ進もうとするのは悪い癖だ」

 

「そ、そんな可愛いだんテェ……」テレテレ

 

「……訂正だ。自分に都合が良いところしか耳に入れないのも悪い癖だ」

 

ペチン

 

「きゃうっ!?」

 

「金剛、俺はお前を叱っているんだぞ?」

 

「あ……ご、ゴメンナサイ……」シュン

 

「ごめんなさい!」

 

金剛が謝るのと同時に、姉が説教を受ける様を居心地が悪そうに見つめていた比叡も一緒に頭を下げた。

 

「……金剛お前が何を考えて事に及ぼうとしたのかは解る。まぁその中には自分の欲求もあったんだろうが、それだけじゃなかったんだろう?」

 

「う、ウン……」

 

「金剛、俺はな。別にお前とこういう事をするのが嫌なわけじゃない。ちゃんと理由があるから説教をしているんだ」

 

「ハイ。余りにも無神経でシタ……」

 

「それはお前の今の行動の事だろう? だが、もう一つ反省しなければならない事があるぞ」

 

「え……?」ジワァ

 

金剛は提督の言葉にまだ自分が気付いていない悪点があるのかと、羞恥と罪悪感から本当に泣きそうな顔をした。

 

「た、大佐。お願いです。お姉様をそんなに責めないで……くだ……」

 

姉が叱られる様を見ていられなくなったのか、半泣きの比叡が懇願してきた。

 

「比叡、俺は別に責めてはいない。ただ少し、金剛に気付いて欲しいだけだ。お前の為にな」

 

「わ、わたしの……?」

 

「比叡の為……?」

 

「そうだ。金剛、お前はお前なりに比叡の事を想ってこういう事をしようしたんだろうが、肝心の比叡は全くの未経験だろう?」

 

「ハイ。そう……だと思う……」

 

「そうですよ!」

 

少し自信がなさそうに肯定する金剛に、さっきとは打って変わって顔を真っ赤にした比叡が全力で肯定した。

 

「なら、もう少し気を遣うべきだったんじゃないか? お前は一回経験すれば慣れるとか考えたかもしれないが、それは経験の仕方にもよるだろう?」

 

「あ……」

 

「大佐……」

 

「多少焦じれったく感じるかもしれないが、ここはもう少し慎重に行くべきだと俺は思う」

 

「そ、それってやっぱりわたしじゃ……」

 

「そうじゃない。こんな始まりになってはしまったが……金剛」

 

「は、ハイッ」

 

「姉としてお前がしっかりサポートしてやるんだ」

 

「あ……そ、それじゃア!」

 

「い、いいんですか!?」

 

「淑女にここまでさせたんだ。ここで応えないという事なんかしないさ」

 

 

 

シュル……。

 

「はぁ……お姉様きれい……」

 

「比叡、恥ずかしい……でもしっかり見てるのヨ?」

 

「はいっ」

 

比叡はゆっくりと服を脱ぎ白い裸体を晒していく姉の姿を惚れ惚れとした顔で見ていた。

上着、スカート……そして……。

 

「正解は、緑だったか」

 

「ふふ、そこは mint って行って欲しかったカナ」

 

ここに来てようやく先のクイズに答える提督に、優しく微笑みながら金剛は正解を補足した。

 

「ほら、比叡。あなたも……」

 

「は、はい……」

 

金剛に促されて比叡も恥じらいながらもたどたどしい手つきでゆっくりと服を脱いでいった。

 

 

「わ、わたしは黄……レモン色でした」

 

「無理をしなくていいぞ?」

 

「む、無理な……あう……」

 

金剛と同じ姿となった比叡は、流石に初心らしく恥ずかしがって提督と視線を合わせ難そうな様子だった。

 

「ご、ごめんなさい大佐」

 

「? どうした?」

 

「わ、わたし……その、今の格好も恥ずかしいんですけどその……」

 

比叡は何を気にしているのかもじもじして話し難そうに口ごもった。

そんな妹がきになって金剛が優しく訊く。

 

「比叡?」

 

「お姉様みたいに……」

 

「ウン」

 

「む、胸がなくて!」

 

「エ?」

 

「胸?」

 

二人はその言葉を受けて比叡の胸を注視した。

 

「や、やぁっ……見ないでください……!」

 

視線を感じ、両腕でそこを庇うようにして比叡は背中を向けて隠す。

 

「比叡、アナタ、胸が小さい事気にしてたノ?」

 

「だ、だって……姉妹の中で一番小さいわたしだし……」

 

「確かに姉妹の中ではそうかもしれないが、一般的な感覚で言えばそれほど貧しくもないんじゃないのか?」

 

比叡の恥じらう姿を愛くるしく思いつつ提督が正直な意見を言った。

 

「ワタシもそう思いマース。比叡、たぶんソレ気にし過ぎだた思うワヨ?」

 

「そ、そうです?」

 

二人の言葉にピクリと肩を反応させて小さく震えながらも比叡は二人の方を向いた。

 

「ああ。だから間違ってもそれと似たような事を龍驤の前では言うなよ?」

 

「へ? 龍驤? あっ……」

 

「そうヨ、比叡。上には上がいるのヨ」

 

「金剛」

 

「あっ」

 

金剛は自分の口も災いの元だと直ぐに自覚した。

提督の言葉を理解して口にチャックを引く真似をした。

 

「ゴメンっ」

 

「まぁ、分かっているのならいい。そういうわけだ比叡。見た目はそんなに気にするな」

 

「は、はい」

 

比叡はそう言って胸を庇うのをやめた。

確かに金剛に比べれば小ぶりだが、女性であることを示す膨らみは十分にあるように見えた。

 

「さぁ、比叡……今度は全部……」

 

比叡が踏ん切りを付ける事ができたのを見届けると、金剛は新たな段階へと彼女を導く事にした。

即ち提督に自分が女である事を証明するのだ。

 

 

「ん……」

 

パサッ……。

 

お互いの裸を知る仲にはなったものの、やはりいざ事に及ぶとなると完全に羞恥心を拭いきれないのか、少し顔を紅潮させていた。

 

「ふぅ……」

 

興奮して徐々に息が荒くなってきている金剛は、それでも努めて平静を装って比叡に不安を与えまいとした。

 

スル……。

 

「はい、終わりッ」カァ

 

「は……あぁ……はぁ……おね……様……」

 

比叡は金剛がまるで神々しいばかりの輝きを放っているかのうような蕩けた目で興奮しながら彼女を見つめつつも、金剛に起こっていたある変化を見逃さなかった。

 

(お姉様興奮してる……。凄い……あんなになるものなの……?)

 

女性の身体の変化に驚きと強い関心に夢中になる比叡だったが、その時に自分の体にも怒っていたある反応に気付いた。

 

ジュン……。

 

(あ……? 冷た……? えっ、これわたし? お姉様の裸を見てわたしもお姉様みたいに……?)

 

驚いた比叡はなるべく悟られない様に視線だけ下へ向けると更に驚いた。

金剛の比ではないくらいの変化が自分にも起こっていたのだ。

 

「え……!?」

 

ついに驚きで声を出してしまった比叡だったが、そんな事に気付く余裕もなく自分の体の変化に、痴態に、衝撃を受けてその場所を見つめ続けるばかりだった。

 

 

「Wow 比叡、これ凄い……」

 

「え? あ、あ……だめ! やぁ!!」

 

いつの間にか肩から金剛が比叡のソコを覗いていた。

比叡はあまりの恥ずかしさに顔をトマトのように真っ赤にさせて両手で必死に隠そうとした。

 

「ダメ……お姉様……大佐……みな……見ないでぇ……!」

 

目に涙を溜めて尚も隠そうとする比叡だったが、その手を金剛が優しく掴んだ。

 

「お、お姉様……お、おねが……」

 

「No 比叡。恥ずかしがらないデ? 今は恥ずかしくて堪らないかもしれないケド、ソレは今のあなたには凄く助けになるのヨ?」

 

「た、助け……?」

 

「そうヨ。比叡、そんなに恥ずかしがることはないワ。寧ろ興奮したらそうなるのが lady としては当たり前ナノ」

 

「ほ、本当ですかぁ……?」グス

 

比叡は尚も羞恥で顔を赤らめながらも僅かに落ち着きを取り戻したのか、縋るような目で金剛に自分が異常じゃない事を確認した。

 

「really! 比叡、こんなになるなんてある意味あなたの才能ヨ。エッチをする時は自分もうんとエッチになった方がいいノ」

 

「お姉様……」

 

金剛の言葉にようやく安心した比叡は金剛の手の力に従い力を抜いた。

 

「良い子ネ比叡……さ、ちょっと順番が逆になっちゃったケド、大佐に比叡のエッチなところ見てもらいマショ……」

 

「は……はい。た……大佐……」ウル

 

 

「金剛? あまり無理をさせなくても……」

 

先程からずっと金剛の比叡へのリードを感心した顔で見守っていた提督だったが、いざ比叡のまだ泣きそうな顔を見るとまだ彼女が無理をしているように見えたので、金剛に自制を促そうとした。

 

「だ……大丈夫です。もう……お姉様が安心させてくれました……。確かにまだ恥ずかしいけど……でも……でも……」

 

「そうヨ比叡……。手伝ってあげル……。さ、比叡?」

 

「はい……」

 

背中に感じる温かくも柔らかい感触により安心感を覚えた比叡は、金剛の導きに従って彼女の手に自分の手を重ねてた。

 

スル……。

 

「ハイ、よくできましタ♪」

 

「大佐……どうですか? わたしの……」

 

「ああ。何も問題ないぞ」

 

「いやら……そんな。あっ……んっ」ピク

 

 

提督の言葉に耳まで真っ赤にした比叡は、そこで何か身体の奥から湧き上がってくるものを感じ、小さく震えた。

 

(え? 今言葉だけで? この子どこまで才能があるの……?)

 

(これは……これだけ感じ易ければ問題ないだろうが。だが……本当に大丈夫か? 比叡の意識はもつのか?)

 

提督と金剛はそれぞれに比叡の性的興奮の激しさに内心驚愕と心配を覚えていた。

 

「あ……わ、わたし……今……?」

 

「……金剛、比叡をのままま手伝ってやれ。なるべく違う場所に意識を集中させるんだ。これは、このままだとこいつがどうなるか分からないぞ」

 

「りょ、了解デス。比叡、外すヨ?」プチッ

 

「あっ……」

 

 

「んっ、恥ずかし……」

 

「比叡、しっかりするですヨ?」キュッ

 

「ああっ!? だ……う……んぁぁ!!」ピクピクンッ

 

 

「Oh……」

 

金剛は比叡の性感の高さに再び驚いた顔をした。

 

「……金剛、そのままだ。行くぞ」

 

「ハイ。比叡……ゆっくり息をして……落ち着いテ」

 

「はぁ……はぁ……お姉様? っ、た、大佐それ……」ビクッ

 

「比叡、怖がるなとは言わない。だが、どうか俺を信じて欲しい。なるべく苦しくはさせない」

 

「う……た、大佐……でも……でも……」ブルブル

 

「比叡、大佐を……信じて」

 

「お姉様……」

 

「比叡」

 

「大佐……」

 

提督と金剛、後ろと前から優しく肩を握られ、恐怖の色に染まっていた比叡の目は、徐々に落ち着きを取り戻していった。

 

「大佐……お願いします」

 

「ああ。金剛、頼むぞ」

 

「任せテ!」

 

「比叡、下を見るな。俺の顔だけ見てろ」

 

「は……あっ……? ああああああ……んんんっく、ふ……ふわぁぁぁぁぁああああ!?」

 

 

(やはり準備は事態は問題ないな。これなら痛みもそれなりに……なに、これは……)

 

(て、抵抗もなく……。 もしかしてゆる……良かった。大丈夫みたい)

 

「比叡……痛くないか? 大丈夫か?」(スムーズにいったと思ったらこの圧力……くっ……)

 

「あっあっあっ……。た、大佐、こ、これ凄……も、もっ……んっ。あああああんんん……!」キュゥ

 

「っく。こ、これなら続けても大丈夫そうだな。いくぞ比叡」(寧ろ何もしないとこっちがキツイ)

 

「っ! お、お願いします! こ、これ以上の気持ちよ……良さなん……お願い……しま……あっんん、ああああ!」

 

「ぐぁ……行くぞ、比叡……」グッ(これは今日は金剛の相手をまともにしてやれるか分からんな)

 

 

 

――数時間後。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「フフ……比叡、凄く安らかな顔してマス♪」

 

「ああ……」

 

「大佐、大丈夫ですカ?」

 

「正直、今日程軍人として体力を付けていて良かったと思った日はない……」

 

安らかな寝息を立てて眠る比叡にそれを幸せそうな顔で見つめる金剛の傍ら、体力を使い果たした提督はベッドの上でほぼ体が動かせない上体でいた。

比叡の処女を貰った後も、彼女の性的欲求は提督の予想通り高まり続けなんと、あれから7回もしたのだ。

しかもその後に比叡のサポートですっかり欲情し切って半分性の獣溶かした金剛の相手までしたので、提督は内心腹上死を覚悟までしたのであった。

 

「し……正直……比叡の相手は遠慮……いや、まぁ軽めならいいが体力が今より付くまではまともにしたくないな……」ゼェゼェ

 

「比叡……恐ろしい子……。ワタシもあそこまえは思ってませんでシタ」ピト

 

「金剛、股が当たってる……。もう……もう無理だぞ?」

 

「当てたいノ! ついでに胸もネ。ね、大佐無理なのは分かってるから大佐の体で……ゴニョゴニョ」

 

「……何もしなくていいなら勝手にしてくれ」

 

「! 大佐愛してるワ! ありがと……んっ」ピクッ

 

(女の性的欲求は……恐ろしいものがあるな……本当に……)




どうもちょい久です。
エロに悩んでいたとか、仕事が忙しかったとか、風邪をひいていたとかいろいろあしましたが、とにかくご無沙汰しておりました。
まだこんなのでも見ていたくれた方がいらっしゃったら申し訳なく思います。
いや、例えいなくても自分の為に続けますがねw

次からはまた日常、というかネタもいろいろ仕入れたので多少ペースは戻ると思いま
す。多分。

最後に、筆者の中で比叡は超エロい子です。(確信)


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第24話 「お疲れ様」

武蔵が本部に研修に行ってから一週間が経ちました。
厳しく辛かった訓練をついに最後の日まで耐え抜いた武蔵はその日、大将から呼び出しを受けました。


コンコン

 

『武蔵です』

 

「入れ」

 

ガチャ

 

「失礼しま――」

 

武蔵は息をのんだ。

というのも部屋に入った瞬間自分の視界にあるものが飛び込んできたからだ。

いつも通りといった風に椅子に座る大将の傍らに二人の艦娘と思しき女性が二人控えていた。

 

(見た感じ二人とも戦艦なのは間違いない。だが、誰だ? あんな二人、私は知らない。大和型……ではないな)

 

「どうした?」

 

「あ、いえ!」ビシッ

 

「ああ、後ろのこいつらか」

 

「……は、はい」

 

「初顔合わせだったか。まぁ基本的に表に出ることは殆どないから知らないのも無理はないな。二人とも、名乗れ」

 

大将に言われてこれまで無言だった二人が無表情のまま口を開いた。

 

「……駿河」

 

「近江です」

 

機嫌でも悪いのか何処となく仏頂面をした駿河と近江は、挨拶もなく文字通りただ名乗っただけだった。

 

「なんだ、それで終わりか?」

 

「……申し訳ないです。今日はちょっと……」

 

「虫の居所が悪いんだ……」

 

「……ほう?」ギロッ

 

3人「!!」ビクッ

 

 

大将がきつい眼光で駿河と近江を睨む。

その鋭さと威圧感に、不可抗力で武蔵も委縮して思わず背筋を正した。

 

「こいつにほぼ付きっ切りで訓練に付き合ってたから嫉妬したのか?」

 

「う……」タジ

 

「あ……う……」タジ

どうやら図星のようで、二人は言葉が出ない様子だった。

 

「……まぁ今回は大目に見てやる。せっかくの武蔵の門出だからな」

 

「……す、みません」

 

「失礼しました!」

 

「え? あ……ありがとうございます!」

 

「武蔵はそう硬くならなくていいぞ。別にお前まで叱ってはいなかっただろう?」

 

「あ……はい」

 

「だがお前達は次は無いと思えよ? 自分より立場が下の者でも決して礼は失する様な真似はするな。分かったな?」

 

駿河・近江「はっ!」

 

(やっぱりこの人怖い……)

 

「うむ。というわけで武蔵よ、せっかく自分の家に帰れるという日に呼び出して悪かったな」

 

「あ、いえ! とんでもございません!」

 

「ふっ、そう畏まるな」

 

「あ、はい……すみません」(この人も笑うのか)

 

「ん? なんだ、俺が笑うのがそんなに珍しいか?」

 

大将は武蔵の僅かな視線だけでその意を悟ったようで訓練の時とは想像もできない程の砕けた表情で訊いてきた。

 

「え!? あ、あ……」ブルブル

 

「おいおい、そう怖がるな。今は訓練をしているわけじゃないんだ。ああいう顔は必要な時だけにしかせんぞ」

 

「駿河……?」ヒソ

 

「うん。大体いつも眉間に皺よってるよな……」ヒソ

 

「……ん?」

 

駿河・近江「!!」ビシッ

 

「まぁそういうわけだ。別に怒ってはいない。俺が今日お前を呼んだのは。単純にこの訓練を耐え抜いたのを褒める為だ」

 

「あ、ありがとうございます! 勿体ないお言葉です!」

 

「大袈裟だな……いや、実際に受けた者からしたらそれくらいの気にもなるか。まぁいい、頑張ったな」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「言いたかったのはそれだけだ。あとは大手振って堂々と家に凱旋するといい。きっとお前の成長ぶりに基地の仲間は驚くだろう。よし、話は以上だ達者でな」

 

「頑張ってね」フリフリ

 

「さっきはごめんな」フリフリ

 

大将の話が終わると共に駿河と近江が謝罪と激励の言葉を贈った。

 

「本当にお世話になりました! では、これで失礼致します!」

 

バタン

 

 

「……ふぅ」

 

ようやく緊張を解き、安どの息を吐いていると。

 

「お話終わった?」

 

と、武蔵に声を掛ける者がいた。

 

「大和……」

 

話が終わるのを扉の外で待っていたのだろう、大和が微笑みながら佇んでいた。

 

「ああ、終わった。やっとこれ……鍛えてもらってやっとはないな。これで堂々と自信をもって大佐の所に帰れる」

 

「頑張ったわね、本当に」

 

「ああ、ありがとうな」

 

「あら? 私は別に何もしてないわよ?」

 

「いや、疲れて挫けそうになっている私を見る度に励ましてくれたじゃないか。あれには結構助けられたぞ」

 

「……本当に素直な『武蔵』ね。そんなに真正面から感謝されたら照れちゃうじゃない」

 

「ふっ、『ここの武蔵』はそんなに素直じゃないのか?」

 

「どうかしら。大体は同じだと思うけど……でもこっちの武蔵の方があなたと比べて少し意地っ張りかな」

 

大和はワザと意地悪い顔で武蔵を見つめながらそんなことを言った。

 

「おいおい、それじゃあ私も意地っ張りみたいじゃないか」

 

武蔵もそんな大和の誘いに乗って苦笑混じりといった顔で応じた。

 

「ふふっ、別に違わなくもないんじゃない? だって訓練を耐えたのはプライドを守る為でもあったんでしょ?」

 

「……それは否定できないな。だがそれだけじゃないぞ」

 

「大佐の為?」

 

「当たりだ」

 

「彼を守りたいのね」

 

「ああ」

 

武蔵はこの言葉にも恥じらったりせず、堂々と応じた。

そんな彼女を見て大和も真面目な表情になると、真っ直ぐに武蔵を見つめながらこう言った。

 

「……大丈夫。この訓練に耐えた成果は必ずあなたの役に立つわ」

 

「私もそう確信している」

 

二人はそう言って暫くお互いに偽りのない答えと視線を交らせ合った。

 

「……」

 

「……」

 

「……よし、激励の言葉はこんなものかな」

 

「ああ。世話になったな」

 

「基地まで送っていくわ」

 

「いいのか?」

 

これでお別れだと思っていた武蔵は、予想外の言葉に意外そうな顔をした。

 

「そのつもりでここで待っていたんだもの。中将にも許可は取り付け済みよ」

 

「ありがとう、本当にな」

 

「どう致しまして。 さ、最後にのんびりと二人で海を散歩しましょうか♪」

 

「ああ!」




こうして大和に送られた武蔵は無事、一週間ぶりに大佐の鎮守府に帰りました。
一週間ぶりに提督に会った武蔵は、会えなかった寂しさから彼に抱き付くといった以前の彼女ならありがちだった衝動的な行動もせず、少し涙を滲ませながらも朗らかな笑顔で提督に帰還の報告をしたそうです。


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第25話 「酒宴」

隼鷹が上位改造可能レベルに到達したので改二になりました。
久しぶりの軽空母の改二を祝って飛鷹はもちろん、その日は龍驤と瑞鳳も呼んで軽く酒宴を開いていました。


「ひゃっはー! 改二だぁ!!」

 

「いいなぁ」プクー

 

「おめでとー!」

 

既に改二になっている龍驤が祝辞を贈る隣で、少し不機嫌そうな顔をした飛鷹が頬を膨らませていた。

 

「あはは、むくれないむくれない! あたしがなれたんだから飛鷹だってその内だって」

 

「だったらいいんだけどねぇ」

 

「軽空母の中じゃあ龍驤の次かぁ。ま、練度はあたしの方が上なんだけどねぇ」

 

「むっ、ちょっと自分が上やからって調子のらんといてや! 上っちゅーても大した差やないやろ!」

 

「へっへぇ、それは、どうかなぁ?」ムニュ

 

何が明確に負けているのか、隼鷹は露出の多い肌着の状態を利用して前屈みとなりあるモノを強調して見せた。

 

「なぁっ!」

 

「隼鷹さんそれ反則……」

 

今までずっと黙っていた瑞鳳が龍驤に加勢する。

 

(あ、無いもの同士か)

 

「……飛鷹さん?」ムッ

 

「何かしら?」シレッ

 

「ま、改二以上の改造の噂もあるし、お嬢ちゃんコンビもまだ希望があるんじゃない?」

 

「お、お嬢ちゃん……」

 

龍驤はその言葉に絶句した。

瑞鳳は自分の胸に一瞬手を当てて隼鷹の言った言葉の意味を理解すると、顔を真っ赤にして吠えた。

 

「お嬢ちゃん言うなぁ!!」ガー

 

 

「そういえば改造で逆に小さくなることなんてあるのかしら」

 

酒が多少入った所為だろう、冗談のつもりで飛鷹がふとそんな事を言った。

 

「「え」」

 

本人にしては何気ない言葉だったが、その一言に龍驤と瑞鳳は凍り付く。

 

「いやぁ、それは流石に無いんじゃない? 多分」

 

カラカラ笑いながら飛鷹の冗談をウける隼鷹、こちらはすっかりデキあがっており周りに気を使う余裕がそもそも無かった。

だがその冗談を冗談とは到底受け止めることができない龍驤と瑞鳳は、今度は部屋の隅で二人して青くなって震えていた。

 

(こ、これ以上小さく……!?)スカスカ

 

(考えられない!)ペタペタ

 

「まぁ流石にあり得ないか」

 

「そうだよー……て、あれ?」

 

「だ、大丈夫や。う、うちは新境地を開拓するって決めたんやもん。怖くなんかない! こ、怖くなんか……」ブツブツ

 

「大佐はロリコン……じゃないけど駆逐艦みたいな子も好いてくれるって言ってた……。だから大丈夫……大丈夫。例え改造でそんなことになったとしても……わ、わたしだって……」ブツブツ

 

「二人とも深刻な顔しちゃってどうしたのかしら?」

 

「飛鷹が変な事言うからじゃーん」

 

「え? 私何か言った?」

 

「ああ? んー……何か言ったっけ?」

 

 

トントン

 

「んぁ?」

 

「はーい」

 

『隼鷹、いるか?』

 

「え、大佐?」

 

「はーい、いるよー? 入っていいよー」

 

「邪魔する。夜分に悪いな隼鷹、飛鷹……と、龍驤? 瑞鳳? あいつらどうかしたのか?」ガチャ

 

提督が部屋に入ってもその事に気付かずに未だに部屋の隅でブツブツ呟いている龍驤と瑞鳳。

提督の方が先に気付いて二人の様子を心配した。

 

「あー、ちょっとねー?」

 

「何かあったみたいよ、よ?」

 

「なんで一緒にいたお前達が分からないんだ……」

 

「まま、取り敢えず座って座って」

 

「何か用?」

 

「ん、お前改造を受けただろ? その祝いに、な」チャプン

 

「おー♪」

 

提督の土産に喜びの色を浮かべる隼鷹は浮かべた。

 

「気が利くわねぇ。勿論私も貰っていいのよね?」

 

「うちも!」「わたしも!」

 

「あ、復活した」

 

提督の声に気付いたのかいつの間にか我に返った龍驤と瑞鳳も後に続いた。

 

 

「頭数が居た方が賑やかで良い。勿論隼鷹が構わないならだが」

 

「あたしが断るわけないじゃん! もちろんいいよ!」

 

「流石隼鷹や! 話分かるでぇ♪」

 

「おねーちゃん大好き―♪」

 

「や、お姉ちゃんって誰よ?」

 

「あははー。おねーちゃんかぁ」

 

まんざらでもなさそうな顔で隼鷹は瑞鳳の言葉に頬を緩めた。

 

「まんざらでもなさそうね」

 

「うちは言ってないで!」

 

「何をムキになってるんだ?」

 

「さぁ?」

 

「元々はあんたが原因やろ!」

 

(やっぱりか)

 

「まぁまぁ、せっかくのめでたい席なんだからさぁ。今はそ・う・い・うのは無しにしよーよー」

 

「ぐぬぬ……」

 

「大佐、わたし注いであげる!」

 

「ん? ああ、ありがとう。……瑞鳳、そう言えばお前、酒が飲めるのか?」

 

「……それってどういう意味?」

 

瑞鳳は酌をしていた手を不意に止めて提督はジトっと睨んだ。

 

「……飲めるみたいだな。すまん他意はない」(しっかり酔ってるな)

 

「ほんとー?」ジー

 

「うちも飲めるで!」

 

「いや、何かお前は最初からそう見えているから気にはしていないぞ」

 

「それこそどういう意味や!?」ガーン

 

「隼鷹、ん」

 

「とと……サンキュー♪」

 

 

それから一時間ほど後。

 

「すー……すー……」

 

「ん、む……にゃ……」

 

提督や隼鷹達のペースに着いていけなかったら龍驤と瑞鳳は程なくして静かな寝息を立てていた。

 

「くすす……やっぱり見た目通りって事かしら。二人して丸くなっちゃって」

 

「ただそんなに酒に強くなかっただけじゃないのか?」

 

「まぁ確かに駆逐艦でもお酒飲む子いるからねぇ」グビッ

 

「お前は飲み過ぎだ」

 

「これでも自重してるって」

 

「あんたは飲まれているのか飲んでいるのか分かり難いのよ」

 

「ふっ、それは言えてるかもな」

 

「そりゃ気分良く酔いたいときは飲まれるけどさぁ……んぐ……っぷはぁ」

 

「焼酎だからって調子に乗っちゃダメよ? 大佐が来る前はビールとかも飲んでたんだから」

 

「チャンポンか」

 

「気持ちよく酔えるんだけどなー……なんであれすると寝起き最悪なんだろう。納得いかない!」

 

「あんたみたいなのを反省させる為じゃない?」

 

「自然の摂理ってやつだろう。諦めて享受しろ」

 

「自然にまであたしは束縛されていたのかぁ、世の中無常だねぇ……」

 

「改二になっても酒癖は改善されないみたいだな」

 

「それくらいの効果あってもいいのにね」




隼鷹の改二、改二になって少しはあの特徴的なハネっ毛が落ち着くとかと思いきや相変わらずでしたねw

ストレートな髪型の隼鷹見てみたいなーと時々思ったりしてます。


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第26話 「旧交」

隼鷹に続いて初春も改二になりました。
生まれ変わった彼女を初めに迎えたのは自分と同じ最古参の友人あの人。


「改二おめでとう」

 

叢雲が笑顔で初春の改造を祝福した。

 

「ありがとう。叢雲、先に悪いの」

 

「別に気にしなくていいわよ。私だって、まだ許可がおりてない子だってその内になれるわよ」

 

「で、あるな」

 

「で?」

 

「ん?」

 

「大佐に見せないの?」

 

「あぁ、う……む」

 

初春は叢雲にそう言われた途端、少し居心地が悪そうに視線を下に落として悩むそぶりを見せた。

 

「どうしたの?」

 

叢雲が突然の親友の態度を心配する。

 

「いや……らしくないとは思うのじゃが……」

 

「?」

 

初春はモジモジしながらこんな事を言った。

 

「改造前の方が好みとかだったら、と思うと……の」

 

余のも予想外の答に叢雲は一瞬目を丸くしたかと思うと、次の瞬間には手で口を押えて笑うまいと我慢する素振りをした。

 

「……っ」

 

「あ、こらっ。吹き出すことなかろう」カァ

 

「だって、ふ……ふふふ。ごめん、確かにらしくない……わ……く、ふふふ」

 

目尻に涙を貯めて何とか笑いを堪えるのに苦労しながら叢雲は苦笑交じりに謝る。

そんな彼女の態度に初春は拗ねたような視線で抗議をした。

 

「むぅ、いくらなんでも笑い過ぎじゃないかえ?」

 

「あ、ごめんごめん。でも……別に今も悪くないと思うわよ?」

 

「そうか……の?」

 

「初春は気に入ってないの?」

 

「ん……そうでもないが……」

 

少し長くなった髪を弄りながら視線を泳がせる初春。

その様子は改造の結果にまんざらでもない満足を感じているように見えた。

 

「なら大丈夫よ。初春が気に入っているなら大佐だって気に入るはずよ」

 

「うむ……」

 

「本当に初春らしくないわね。大丈夫って言ってるでしょ」ポン

 

叢雲はそう言って親友の肩を軽く叩いた。

 

「……ん、む」

 

「もう大丈夫?」

 

「うむ。問題ない」

 

「ま、考えてみれば最古参の割にはずっと改造がなかったものね、待ち侘びた分緊張するのも解るわよ」

 

「だからこそお主に対して後ろめたい気持ちもあるのじゃがな」

 

「私とあなたの仲じゃない。気にしないで、って言ったら本当に気にしなくていいのよ」

 

「叢雲……うむ、面倒を掛けてしまったの。すまなんだ」

 

「いいって。ほら、早く行きなさいよ」ヒラヒラ

 

「相、分かった。初春、推して参る」

 

叢雲のおかげで何とか迷いを振り切ることができた初春は、スッキリした顔でそう宣言した。

 

 

「……改二、かぁ……」

 

親友の後ろ姿が見えなくなった後、叢雲ぽつりと呟いた。

 

(羨ましくないと言ったら嘘だけど……でも……。親友の嬉しい顔見たら祝福せずになんかいられないじゃない)

 

「まっ、楽しみが後になったって思えばいいか」

 

少し溜息を吐いて気を取り直した時だった。

叢雲は服の袖を軽く引っ張られる感触に気付いた。

 

クイクイ

 

「?」クル

 

退かれた方をくるりと振り向くとそこには叢雲を励ますように微笑む電がいた。

 

「ファイトなのですよ!」

 

「電……そうね。そういえば最初は駆逐艦は、あなたと初春と私だけだったわよね」

 

提督の鎮守府に最初からいた駆逐艦は叢雲と初春だったが、提督の着任から程なくして配属となった電との時間の差はそれ程ではなかった。

その事もあってこの3人は自他共に認められる古参であり親友同士だった。

 

「電も早く上位改造を受けたいと思っていますよ」

 

「……ったく、気を遣っちゃって」ペチ

 

電の気持ちを嬉しく思いながらまるで生意気だぞ、と言うように軽くデコピンを見舞う叢雲。

 

「あうっ、えへへ……」

 

「ふふっ……よしっ」

 

「叢雲、元気出ましたか?」

 

「ええ。だからちょっと飲みに行きましょう」

 

「えっ」

 

電は叢雲の言葉に一瞬固まった。

 

「私知ってるのよ、あなたが大佐に憧れてお酒や煙草真似事をしようとしてるの」

 

「あ、あわわ……み、皆には内緒なのですよ!? 特に暁ちゃんや雷ちゃんにはお願いしたいのです」

 

余程自分にとって重大な秘密なのか、叢雲に事実を述べれれて焦る電。

 

「ふふ、バレたらどうなるのかしらねぇ?」

 

「……きっと焦って電と同じ事しようと思います」

 

「でしょうね」

 

「……」

 

「無茶、させたくないんだ?」

 

「……なのです」コク

 

電は真面目な顔で頷いた。

姿こそ幼子だったが、その顔は可愛らしいながらもしっかりとした意志が感じれる真面目な顔だった。

 

「意外よね。駆逐艦の中で一番優しくて幼そうなのに実は中身は結構大人だなんて、ね」

 

「……叢雲には言われたくないのです」プイ

 

「言うじゃない。じゃ、付き合ってくれるわね?」

 

「仕方ないですね」クス

 

電は苦笑して叢雲の誘いを快諾した。

 

 

コンコン

 

「初春じゃ」

 

『初春? いいぞ、入れ』

 

ガチャ

 

「邪魔をする」

 

「ああ。どうし……そうか」

 

初春の姿を見るなり、提督はすべてを察した様子で暫く彼女を注視した。

 

「うむ」

 

「……」

 

「どう……かえ?」

 

視線に耐えかねたのか少し頬を紅く染めた初春が感想を聞いてきた。

 

「ん?」

 

意外そうな顔で聞き返す提督。

 

「いや……その、見た目……とか、の?」

 

「特に感想はないな」

 

「っ……!」

 

ぶっきらぼうな言い方に初春はショックで黙り込む。

が、暫くして。

 

「……」

 

「……あ」

 

初春は何かに気付いたのか、小さな声をあげた。

 

「ん?」

 

「大佐、ちょっと意地悪くないかの?」

 

ジト目で提督を睨む初春。

その顔は不機嫌そうにも悪戯に興じる子供のような顔にも見えた。

 

「ん? 何がだ?」

 

「特に感想がないという事は今までと同じという事じゃろう?」

 

「まぁな」

 

「妾が一番望むものがそれだと分かってて敢えて突き放すような言い方をするのは意地が悪くないかの?」

 

初春はそう言ってズバリと自分の願望と提督の意地悪の真意を重ね当てた。

 

「それなりの付き合いだからな、ちょっと試してみたくなった」

 

「ほほう? では、そんな質の悪い冗談に付き合った礼としてそれなりの褒美は期待していいのじゃろうな?」ニッ

 

「何がいい?」

 

「それこそ当ててみるがいい」

 

初春は腕組みをして挑発するような顔をしながら微笑む。

 

「ほう?」

 

「言っておくがヒントは無しじゃぞ」

 

「……ふむ」

 

「……」

 

提督は少し考えるような仕草をした後、やがて真っ直ぐに初春の方を向き直るとゆっくりとした足取りで彼女に近づいて来た。

 

コツコツ

 

「……ん」

 

チュ

 

「……どうだ?」

 

「ふっ、大佐にしては満点じゃ」ニコ

 

どうやら提督の出した答は正解だったらしい。

満面の笑顔で嬉しそうな顔を初春はした。

 

「良かった。てっきりもっと慎みを持てとか言われて叱らるのかと思ったぞ」

 

「なんと? ふふっ、見ず知らずの男ならともかく、大佐でそれはないわ」

 

「身に余る評価だ」ペコ

 

そう言って提督は大袈裟に初春に頭を下げた。

そんな提督の演技に初春も乗り、笑いながらこう言った。

 

「苦しゅうない。だから、の?」

 

「ああ」

 

「んむ……」

 

チュ

 

2度目の口づけ、今度は少し深く、時間を掛けて行った。

 

「……ふ……ぅ。仕事中に接吻を贈るとは俺もだらしなくなったものだな」

 

キスを終えて少し複雑そうな顔で提督は言った。。

 

「そうかえ? 妾は大佐の成長ぶりに感心して更に今は幸せ一杯なのじゃが」

 

「堕落が成長、か。ふっ……」

 

「大佐、まさかこれで丸くなったとか思ってないじゃろうな? じゃったらまだだまだじゃぞ? この初春が時間を掛けて大佐をもっと真人間にしてみせよう」

 

「斬新なフォローだな」

 

「ふふふ。確かにこんなフォロー、大佐にか適用できないの」

 

提督と初春はお互いに意地が悪い顔をしながら笑い合い、共に改二の改造を祝った。




初春も改二になりました。
てっきりレベル70くらいだと思っていたら意外にも65と予想を下回り、嬉しい結果となりました。

駆逐艦改二増えてきましたね。
次は誰かなぁ。


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第27話 「独占欲」

浜辺に二人の人影があった。
一人は提督、もう一人は鳳翔。
二人は共にに水平線をのんびりとした様子で眺めていた。


「もう11月ですね」

 

「ああ」

 

「季節はもう秋なんですねぇ」

 

鳳翔はそう沁み沁みと語るが、二人の前に広がっている光景はというと……。

 

ザザーン……サァ……。

 

穏やかな風と波の音、そして眩しい程の太陽の光が海面に反射して輝く南国の光景が相変わらずそこにあった。

 

「……」

 

「……日本ではな」

 

提督はそうポツリとそう呟いた。

 

「こ、紅葉の代わりに夕暮れでも楽しみませんか?」(しまった。上手く誘ったつもりが……!)

 

「秋は夕暮れ、か。だが此処では夕暮れというより夕日という言葉の方が合っている気がするな」

 

「ゆ、夕日だって夕暮れにしか見えないのですから同じですよ! ね? 大佐?」

 

「ん、ああすまん。気を遣わせてしまったか」

 

「いえ、いいんですよ! せっかくの非番の日に私にお付き合い頂いているんですから」

 

その日鳳翔は非番だった。

基地の敷地内で運営している喫茶店で使う食材の買い出しに出かけようとしたところ、それを偶然見かけた同じく非番だった提督が自分から荷物持ちを買って出たのだった。

正直、人間より優れた身体能力を艦娘である鳳翔にとって多少の荷物は平気という自覚はあったが、それでもこの好機は逃す事はできなかった。

 

こうして上手く軽いデート気分を味わう事に成功した鳳翔は、その雰囲気をより楽しむ為に買い物の帰りに浜辺の散歩を提案したのだった。

 

「荷物を持ちを買って出たのは俺の意思だ。そう気にするな。それより」

 

「はい?」

 

「夕日を楽しむのは良いとしても、このまま夕暮れまで待つつもりじゃないだろう?」

 

「あっ……」

 

確かに今の時刻はまだ正午過ぎ。

夕暮れを楽しむにはまだ少し時間があった。

 

「そ、そうで……すね」

 

二人きりの散歩に浮かれて当たり前のことに気付けなかった恥ずかしさと、楽しい時間がもう直ぐ終わってしまうという残念な気持ちも相まって鳳翔から出る声も自然と気落ちしたものとなっていた。

 

「荷物を置いたらまた来ればいい」

 

「え?」

 

鳳翔はハッとして顔を上げて提督を見た。

 

「確か今日の仕込みは大淀だっただろう? 時間ならあるじゃないか」

 

「基地に戻ってもお付き合い頂けるのですか?」

 

嬉しさに僅かに震える声で提督に確認する鳳翔。

 

「お互い非番なんだ。今日はお前と散歩でもしながらゆっくりしようと思っていたところだ」

 

「大佐……」パァッ

 

「それにこう日差しに当たっては手持ちの食料も傷むかもし――」

 

ガシッ

 

提督は不意に腕を掴まれる感触に振り向いた。

するとそこには期待と喜びから顔を紅潮させた鳳翔の顔があった。

 

「ん?」

 

「帰りましょう」

 

「は?」

 

「帰りましょう。直ぐに。そしてまた直ぐに散歩に行きましょう」

 

「あ? ああ……」

 

(あの鳳翔が……いかんな。女性を見た目から性格を判断するのは悪い癖だな)

 

提督は鳳翔の積極性に意外に思いつつも内心自分の先入観を反省するのだった。

 

 

――それから2時間後。

 

「いい、気持ちですねぇ♪」

 

「そうだな。ワンピース着てきて良かったじゃないか」

 

「ええ。最初に大佐に勧められた時は実はちょっと迷いましたけど、でも実際に着てみるとこれにして良かったと思います♪」

 

鳳翔はそう言って微笑むと、着物姿では味わえない心地よい潮風と暖かな日差しを全身に感じて楽しんだ。

 

鳳翔は、基地を出る前に提督からどうせプライベートで外に出るのだから、こいう時くらい服装もより外の環境を楽しめるものが良いのではないかと勧められたのだった。

一応私服も持ってはいたが、提督と仲良くなるまでは基本的に私服を親しい仲間以外の前では使うことのなかった鳳翔は、最初提督のその勧めに気恥ずかしさから逡巡した。

だが今この時がそうある機会でないことも事実だったので、思い切って提督の勧めを受けたのだった。

 

「似合っているぞ。そういう服も持っていたんだな」

 

「あまり着ることはないんですけどね。流石に此処の気候だと少しは……って」

 

「確かにな」

 

「大佐はなんで私服を着てこなかったんです?」

 

「俺もあるにはあるがお前と同じで少なくてな。その上その服をクリーニングに出してから取りに行くのを忘れてしまってな」

 

「ああ、だから……」

 

鳳翔は納得といった表情で提督の姿を改めて見た。

軍服こそ来ていなかったが、その出で立ちは上着を脱いで上半身がシャツだけとなったラフな格好だった。

 

「大佐」ソッ

 

「ん、いいのか?」

 

鳳翔はポケットからマッチを取り出して提督に喫煙を促した。

 

「ふふ、そのつもりで後ろのポケットに煙草を忍ばせたのではないのですか?」

 

「……まぁ、こう気持ち良いとついな」

 

「遠慮されなくていいですよ。健康を害してしまうほどお窘めにならなければ私からは何も言うつもりはありません」ニコ

 

「ありがとう。ん……」

 

「どうぞ」シュッ……ボ……ジジ

 

「……ふぅ」

 

「美味し……気持ち良い? ですか?」

 

「どっちも正解だ。情けない事にな」

 

提督は苦笑しながら答えた。

 

 

「っ……ふぅ……」

 

提督が二口目を含んだ時だった。

 

(あら?)

 

鳳翔は提督の胸元に首飾りのような物を確認した。

 

「大佐、それは?」

 

何となく気になって鳳翔は提督の胸元を指さしながら訊く。

 

「ん? ああ、これか」ジャラ

 

「あ、認識票ですか。え、二つ……?」

 

鳳翔が言った通り提督は認識票を二つ下げていた。

一つはおそらく自分のものだろう。

ではもう一つは……。

 

「ああ、もう一つは俺の友人のだ」

 

「え、それって……」

 

悪い事を聞いてしまったと、鳳翔は申し訳なさそうな顔をした。

 

「いや、気にしなくていいぞ。これの持ち主はちゃんと生きてる」

 

「え?」

 

「陸軍の友人だが、少し前に軍を辞めてな。送別会の時に一緒に飲んだ時に記念にと言ってくれたんだ」

 

「認識票をですか? 殉職されない限りは普通は軍に回収されるはずじゃ」

 

「これはレプリカだ」

 

「レプリカ?」

 

「ああ、わざわざ俺にくれる為に作ってくれたらしい。勿論バレたら厳罰ものだ」

 

「レプリカ……厳罰……大佐、それちょっと見せてもらっても?」

 

「ああ、いいぞ」ヒョイ

 

「ありがとうございます。あ……」ジャラ

 

提督から認識票を受け取った鳳翔はあることに気付いた。

 

「これの持ち主の方って女性の方だったんですか」

 

鳳翔の言葉を聞いて提督は軽く驚いた顔をした。

 

「よく分かったな。一応俺以外は分からないように友人が予め名前や認識番号の一部を削り取っていたはずなんだが」

 

「あ、いえ。勘です」(裏に住所と電話番号が手書きで……)

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「もし、もしよろしければ」(もし大佐が妙な鈍感を発揮してこれを見ていなかったら……)

 

「なんだ?」

 

何か後ろめたい事でもあるかのようにモジモジしながらなかなか出だせないでいる鳳翔を提督は不思議に思った。

 

「このご友人の認識票、私に……」(上手くすれば……)

 

「何?」

 

今度こそ提督は意外そうな顔をした。

流石に鳳翔がそんな要求をしてくるとは予想外だったからだ。

 

「あ、いえ! ただちょっと珍しくて本当に大佐さえよければでいいんです! へ、変な事をお願いしてしまってすいません! や、やっぱりいいで……」

 

「ふむ……」

 

提督は慌てて自分の希望を取り下げようとする鳳翔を見ながら友人からこれを貰った時の事を思い出した。

 

 

『これは?』

 

『見りゃ分かるじゃん。認識票』

 

『いや、お前軍を辞めたんだろ。これは』

 

『複製したんだよ』

 

『レプリカか? おいおい、もしバレたら……』

 

『提督君だったら言わないっしょ? 大丈夫だって一応名前とか認識番号の一部は削ってあるから』

 

『だからってな……。あと、提督君はやめてくれ』

 

『お別れの記念だと思ってよ。ねっ』

 

『ふむ……分かった。じゃぁせっかくだから』

 

『良かった! まぁあくまで記念だしレプリカだから適当に扱っていいからさ!』

 

『まるで俺が失くす前提のような言い方だな』ムッ

 

『あはは。それは、どーかなー? ま、とにかく貰ってくれてありがとね!』

 

 

「……」

 

「大佐?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「え? ほ、本当ですか!?」

 

提督の言葉に心の底から驚いたような声をあげると、程なくして何故か何かに安心したような穏やかな表情をした。

 

「ああ、友人も適当に使ってくれとか言っていたしな。勿論そんなつもりはないが、お前なら大事に扱ってくれるだろう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「そんなに嬉しいか?」(随分大袈裟に感謝するんだな)

 

「あ、貰えるとは思ってなかったので」

 

「まぁそこはお前を信用してる証だとでも思ってくれればいいさ」

 

「大佐……ありがとうございます。本当に」

 

鳳翔は内心自分の行動を卑劣だと嫌悪しつつも少し安心していた。

提督が誰とでも付き合ってくれるとは言ってくれたとはいえ、やはり人間の女性には強い優位性があると思う。

だからなるべくは、そう言った強敵は、できれば少なくあって欲しいという鳳翔なりの秘めたる独占欲だった。

流石にこれを廃棄したりなどは間違ってもするつもりはないので、敢えて隠したりもせず大事に保管するつもりだが。

できれば本人にはこの事は気付かないでいて欲しい。

 

鳳翔は提督に感謝しながらもそんな事を複雑な気持ちで考えていた。




ちょっと黒い鳳翔さんでした。
この通り悪い事をしてしまったと思いつつも、提督が好きな気持ちは凄く強く秘めているというイメージが彼女は個人的にあるんですよね。

まぁ、友人の方もアクティブそうな方なので提督がまさか贈り物を貰ってからずっと認識ん票の裏の事に気付いてなかったと知れば、相応の反応をしそうですしw


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第28話 「確執」

ある日、通信将校が本部の第3司令部を訪ねてきました。
司令室にいたのは信濃ただ一人。
見たところここには来たばかりといった雰囲気の通信将校は、彼女の姿を認めると少し怪訝そうな顔をしながら言いました。



「失礼、中将殿はいらっしゃいますか?」

 

「中将なら今はお手洗いに行ってますが」

 

「ん?」

 

将校が声がした方を見ると、女性が一人いた。

 

(中将の補佐官か?)

 

「そうですか。では補佐官、この資料を中将殿に」

 

「補佐官?」

 

将校に補佐官と呼ばれた女性は眉をひそめて聞き返してきた。

 

「ん? 君は補佐官だろう? だからこれを中将殿に――」

 

「私、補佐官じゃありありませんが?」

 

「なに?」

 

「中将専属の艦娘、信濃です」

 

「は?」

 

自分が補佐官と呼んだ女性がそれを否定し、更には自分が艦娘であると答えた人物を将校は少し不審そうな目で見た。

 

(艦娘? こいつが? 何故艦娘が海軍の軍服を着ている? それに艦娘であるにも関わらず秘書艦ならまだしも、司令官の補佐官の真似事とは……。少々人間に対して驕っているではないか?)

 

「あの……何か?」

 

将校の視線に何かを感じたのだろう、信濃もどことなく不快そうな顔で彼を見つめ返してきた。

 

「む……その目。君は艦娘なのに何で補佐官の真似事などしている? 艦娘なら艦娘用に支給された服を来て秘書艦をしているべきじゃないのか?」

 

「恐れながら、ここには秘所艦はおりません。そして当然補佐官もおりません。司令には全て自分にできることは自分で行って頂いてますので」

 

「なんだと? じゃぁ君は何だというのかね?」

 

「同僚ですが何か?」

 

「はっ……」

 

将校は今度は隠す事もなく怒りの感情を露わにした。

 

(とんでもない侮辱だ。思い上がりだ。人間ではない兵器の艦娘が補佐官や秘書でさえおこがましいというのに、人間の、それも司令官の同僚だと? こいつ調子に乗っているな)

 

「き……いや、お前……」

 

怒りに震える将校がそれ以上口を開いていれば二人の間で日悶着があったのは間違いなかっただろう。

中将がトイレから戻ってきたのはそんな一触即発になろうとしていた瞬間だった。

 

「どうしたの?」

 

「司令」

 

「中将殿っ」

 

「どうしたの?」

 

「なんでもありません」

 

信濃は何事もなかったのような顔で即答した。

その顔は、さっきまで将校と剣呑な雰囲気であったことなど気にするどころか認識さえしてなかったようといったように無表情だった。

 

「そんなわけあるか! 中将殿、この艦隊娘は少将問題が有ると私は思います」

 

流石に将校の方はそうはいかなかった。

自分に失礼な(単に気に入らない受け応えをされたただけだが)態度を取られた事、そして艦娘でありながら人間と同等と思っている思い上がりなど、洗いざらいをその場で中将に訴えて信濃を糾弾しようとした。

 

「へぇ」

 

対する中将は眠そうな顔をして適当に聞き流している様子だった。

 

「中将殿、お聞き下さい! こいつは……!」

 

「同僚だよ」

 

「は?」

 

中将の予想だにしない答に将校は固まった。

それに対して中将は気にる事もなく矢継ぎ早に続けた。

 

「パートナー」

 

「え?」

 

「こいび――」

 

ビシュッ

 

「ひっ」

 

「おうっ!?」

 

二人の顔の間を高速で何かが通り過ぎた。

 

「……はい?」

 

見ると、無表情ながら明らかに怒っている信濃がそこにいた。

 

「ごめんなさい」

 

中将は速攻で謝った。

その姿は艦娘の指揮官である提督としての威厳も何もあったものではなく、頭の上がらない妻の尻に敷かれる夫そのものだった。

 

「……なっ!?」

 

まだ何が起こったか分からないでいた将校は壁を見て驚きの声を上げた。

そこには紙飛行機が刺さっていた。

ただの『紙』で折られた飛行機が壁に刺さる速度とは一体以下ほどの威力であろうか。

もし、それが自分に当たっていたら……。

 

「……っ!」ゾッ

 

将校はその結果を想像して青くなった。

 

「き、きさ……」

 

「まぁまぁ」

 

流石にそれ以上は事態が収まらなくなると思った中将が今度は信濃と将校の間に割り込むように入って、彼に囁いた。

 

「なおこちゃん」

 

「あ?」

 

急にわけのわからない言葉を言われて将校は目を白黒させた。

 

「ショートヘアーの童顔の」

 

「!!」

 

将校は今度は青から白くなった。

どうやら彼にとってかなり重要なキーワードらしかった。

 

「ちゅ、中将殿そ、それは……」

 

「?」

 

対する信濃は中将の話が理解できず遠目に二人を見て首を傾げるばかりだった。

 

「確か君は結婚してたよね? それに子供も」

 

「あ……あ……」

 

「いや、解る。解るよ? 君はそういうお店に行っただけだもんね。男っていうのはそういうもんだよ。女がアレしちゃうようにどうしても遊びたくなるもんだよ」

 

「……」

 

将校は俯き完全に沈黙していた。

 

「ま、脅しみたいになっちゃって悪いけどこの事は内密に頼むよ」

 

「は、はい……」

 

将校は肩を落として力なく返事をするしかなかった。

そんな将校に、今度は中将は明らかに今までとは違う少し真面目な表情で彼の肩に手を置きながら言った。

 

「君、ここに配属になって日が浅いかな?」

 

「え? あ、はい。3日前に支部からここに着任して参りました……」

 

「そっか。うん、先ずは栄転おめでとう」ポン

 

「は……ありがとうございます」

 

秘密に触れられて意気消沈しているところに今度は突然の祝辞。

状況が整理できずに動揺する将校は、うなだれたままだお礼を述べるしかなかった。

 

「さっき信濃が言った事はね。まぁ大体本当だよ。俺は大体自分でできることは自分でやってるんだ。だけど全部俺一人でやってるわけじゃないよ」

 

「彼女にもちゃんと仕事は割り当てて二人で分担してやってるんだ」

 

「そ、それでは秘書艦の艦娘としての意義が……」

 

「うん。まぁそういう考えはね先ずは何でも自分でできるようになってから持った方がいいよ」

 

「何でも自分で……?」

 

「そう。艦隊の指揮、執務は勿論。艦娘自体に対する理解。こういう事を全て一人で理解し実行できる自信」

 

「しかし中将殿、私は通信将校なので提督とは……」

 

「君は通信将校だろう? ならそれこそ情報に携わる機会が俺よりたくさんあるはずじゃないか。何も全部実際にしろとは言わないよ。できないのなら知識を蓄えたらいいい」

 

「知識……」

 

「何でも一方的な見方で決めつけたらいけないよ。せっかく此処に来れたんだ。先ずは俺や他の司令官と関わってもう一度君の、軍人としての有り方を考え直してみるのもいいと思うよ」

 

「中将殿……」

 

将校は顔を上げた。

ただ脅されて叱責されるだけだと思っていたら、逆にいろいろ励まされて薫陶まで受けたのだ。

彼の折れた心は中将への感謝から立ち直りつつあった。

 

「まぁ何が言いたいのかというと、秘密は守るよ」ニッ

 

「中将殿!!」

 

将校は再び青くなって悲鳴のような声をあげた。

 

 

それから十数分後、中将の取り成しで何とかその場は収まり将校とも和解するという最良の結果で事態は収束した。

 

指令室には再び中将と信濃、そして掃除から戻ってきて彼らの手伝いをする朝日の3人だけとなっていた。

 

「いい加減機嫌直してくれないかなー?」

 

「……なんの事かしら?」

 

書類から目を離さずに信濃は口だけで答えた。

 

「怒ってるじゃん」

 

「は?」ピキ

 

「信濃さん美人!」

 

「そんなので機嫌を取れる女性なんていないわよ」

 

「……そうね」

 

「司令官」

 

中将の隣で執務を手伝っていた朝日が彼に声を掛けた。

 

「ん、どした?」

 

「信濃、怒ってるのですか?」

 

「どーかなー?」チラ

 

朝日の言葉を受けて中将は再び信濃に訴えるような視線を送った。

 

「っ……。全く……」

 

「お?」

 

「今回は私も悪かったわ。久しぶりにあんな態度を取られたから癪に障ったのね」

 

「はは。まぁ新人だからちょっとあれだったけど、彼は有能だと思うよ」

 

「……どうしてそう思うのかしら?」

 

「女遊びが好きな男に悪い奴はいな――」

 

ピュッ

 

「すいません」

 

「ごめんなさい?」ペコ

 

「なんかあなたの所為で朝日がドンドンおかしくなっている気がするのだけど」

 

「感情豊かになってきていいじゃない」

 

「せめて変な知識は身に付けない様に気を付けて貰いたいものね」

 

「善処します」

 

「頑張ります?」

 

「……っ、ふふ」

 

「はは」

 

「?」

 

相変わらず妙な受け応えをする朝日に中将と信濃は笑いを零した。

そんな二人を見ながら何が可笑しかったのか小首を傾げて真剣に考える朝日。

少しピリピリしていた職場の雰囲気はいつの間にか元に戻っていた。




そういえば書いてて思いましたが、旧型の艦娘って何故か小さい子のイメージが自分の中では定着してしまっているんですよね。
イメージ的に近いのは龍鳳。
ま、恐らく完全なオリジナルキャラになると思うので、そこまで問題視はしてませんがw


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第29話 「ゲーム4」

夜、提督が私室に入って執心の準備をしようとしていると、後ろから愛宕に声を掛けられました。
愛宕はなんだかウキウキした様子で後ろ手に何かを隠しているようです。
その様子を見ただけで提督は愛宕が何をしに来たか察しました。


「た・い・さ~♪」

 

「愛宕どうした?」

 

「ゲームしましょう!」

 

「いいぞ。誰か呼ぶか?」

 

「ん~……」

 

「どうした考え込むような顔をして」

 

「えっとね、これ確かに皆でやった方が盛り上がると思うんですけどぉ……」

 

「?」

 

「初めてやるから最初は人が少ない方が……大佐と二人だけの方が遊び易い気がするんです」

 

「どんなゲームだ?」

 

「これです!」

 

そう言うと愛宕は提督の顔の前にあるゲームソフトのパッケージを突き出した。

 

「……なるほどな」

 

パッケージを見て提督は愛宕が言っていたことを全て理解した。

 

「ね?」

 

「確かにこれなら外で遊ぶのとは雰囲気が違うだろうな」

 

「うん。外だと平気だけど何か自分の家でやるのって変な気っていうか、違和感ありますよね?」

 

「まぁ一般的な家庭ではこいういのを使うしか基本的に遊ぶことができないからな」

 

「先ずは私達で遊んでみて、それで慣れたら皆を呼びましょうよ!」

 

「そうなると、俺達だけが有利になるのが必然じゃないか?」

 

「だからいいんじゃない!」ニッ

 

「ふっ……悪い顔だ」

 

 

「お待たせしました~♪」

 

一度解散してから数分後、再び提督を愛宕が訪ねてきた。

 

「なかなか気合いが入っているみたいだな」

 

ゲームをする為に提督の部屋に来た愛宕は、着替えてきていた。

髪の毛をポニテールに結い、視力の嬌声にも力を入れているのか眼鏡をかけ、上は腕まくりをしたTシャツ、下はジャージといった出で立ちだった。

 

「ふふっ、汗かいちゃうと思いますからねぇ。ちょっと気合い入れてみましたぁ♪」

 

「これは、こちらもそれなりに真剣に望まないとな」

 

提督はそう言って上着を脱ぎ、愛宕と同じくシャツのみとなった。

 

「わぁ、やる気満々ですねぇ♪ それじゃいきますしょう!」

 

「ああ」

 

提督はそう言うと、テレビに既に設置してあったゲーム機の電源を入れ、ソフトを挿入した。

 

 

夜、提督の部屋で賑やかな曲が流れていた。

よく聴くとその曲に混じって人の声も聞こえる。

その人の声とは……。

 

「~♪ ……ふぅっ! どう?」

 

額に滲んだ汗を拭いながらスッキリした顔で愛宕は提督を見る。

 

「上手いじゃないか。これなら別に俺達だけで遊ばなくても良かったんじゃないか?」

 

「そういう大佐だって中々だったじゃないですか~?」

 

「そうか?」

 

「ええ。何で歌ったのが外国語のものばかりだったのかが気にるけど……」

 

「軍歌とか交響曲が好きでな」

 

「前に誰かから洋楽のロックとかも好きって聞いた気がするんですけど」

 

「あれは聴くのは好きなんだが、何分歌おうにも舌がな」

 

「ああ……」

 

「でもだからっていきなり第九なんて歌います? 軍歌も好きなら日本語の歌だってあるじゃないですか」

 

提督が何を歌うのか楽しみにしていた愛宕は、テレビからいきなり重厚なオーケストラの音楽が流れた時に軽く混乱した。

自分はカラオケをしている筈なのになぜ交響曲が?

そう思っていると、直ぐそばで提督の流暢なドイツ語の歌声が響き始めたのだった。

 

「ん? 一応日本語の歌も歌っただろ?」

 

「ええ。何故か軍歌じゃなくて箱根八里でしたけど……」

 

「滝廉太郎も好きなんだ」

 

「いくらなんでも偏り過ぎですよ……」

 

「むぅ……」

 

(それでいて採点結果はどれも良いのよねぇ。本当になんなんだか……)

 

「じゃぁ大佐これ、これ歌ってみて!」

 

「ん? 知らない曲なんだが」

 

愛宕がリクエストした曲のタイトルを見て提督は眉を寄せた。

 

「これデュエット曲なんです。私も一緒に歌うからこれ歌いましょう!」

 

「ほう?」

 

「歌詞は違っても歌い方は同じだから私が歌ったように歌えば大丈夫ですよ!」

 

「分かった。やってみよう」

 

「そうこなくっちゃ♪」

 

 

「冗談混じりの~♪」

 

(む、曲の調子は問題無いがなかなかにこれは歌詞が流れるのが……)

 

「さ、散々躓いたダンスを~? ♪」

 

「大佐、無理に声を出そうとしないで! そう、先ずは歌詞を――」

 

――数分後。

 

ド~ン♪

 

「はぁ……はぁ……♪」

 

「ふぅ……これは、なかなかに疲れるな」

 

「ふふ、頑張って着いてきましたね」

 

「着いて行くので精いっぱいだった。流石に一回ではまともに歌えないな」

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「try again?」ニッ

 

「……いいだろう。今日はこの歌だけは攻略してみせる」

 

「わお♪ 頑張って下さいね♪」

 

 

――3時間後。

 

「こ、声が……ヒ……はぁ……」

 

「すまん、俺の所為で……」

 

「ふ……あははは。まさか、自分が納得するまで同じ歌を3時間も歌うとはお、思って……ケホッ」

 

提督と愛宕は歌の歌い過ぎで疲れ果て、力が入らない体をだらしなく床に横たえていた。

 

「つくずく申し訳ない」

 

「い……ですよ。でも疲れたぁ……。汗だくです……」

 

「そう……だな」ゼェゼェ

 

「のど……渇いたぁ……」

 

「……ちょっと待ってろ」ムク

 

「大佐?」

 

提督は達があると飲み物が入っている冷蔵庫がある方ではなく、洗面所へと姿を消した。

そして暫く後。

 

 

「愛宕」ポイ

 

「はい? わっわぷっ……っ! 冷たっ」ペシャッ

 

「先ずはそれで熱が籠った体を冷やせ。飲み物はその後だ」

 

親切にも濡れたタオルの中に小さなアイスノンまで入っていた。

これほど火照った体に瞬間的な心地よさを与えてくれるものはないだろう。

愛宕はそれを体中に押し付けながら夢心地のような幸せそうな顔をした。

 

「ふ……ふあぁ~い♪」ヒンヤリ

 

コトッ

 

頭上から音がしたので頭だけヒョコリと上げてみると傍に置いてったテーブルにティーカップに注がれた紅茶が置かれていた。

 

「え、紅茶?」(それもホット)

 

「前に金剛に貰ったのがまだ余ってたんだ。熱くはないぬるい程度だ」

 

「え~、冷たいのがいいなぁ」

 

「今の状態で冷たいのを飲むと逆にもっと声が出し辛くなるぞ。今は体を冷やすのと、これを飲んで喉に優しくしてやれ」

 

「は~い」ズズ

 

「甘いっ♪」

 

愛宕は予想外の紅茶の甘さに最初は驚いたものの、その甘さが体の中を巡り疲れを癒していくの感じた。

 

「砂糖を少し多めにしたからな」

 

「普段はあまり紅茶は甘くないのを好むんだけど、場合によっては美味しく感じるものなんですねぇ♪」ズズ

 

「口に合ったようで良かった」ズ

 

「ええ、文句なしよ♪」

 

「ほら」コト

 

提督次にお菓子を置いた。

だが、それは定番であるクッキーのような洋菓子ではなく……。

 

「え……わ、和菓子? なんですかこれ?」

 

「もち米を水飴で固めてきな粉をまぶしたやつだ。意外に合うぞ?」

 

「あ……美味しい」カリ

 

「だろう?」

 

その後、お菓子を食べ終えた二人は流石にその日は直ぐに部屋に戻った。

提督は問題なく直ぐ床に就くことができたが、部屋に同居人である妹である高雄がいる愛宕はそうはいかなかったという。

何故ならその高雄に散々提督と何をしていたのか明け方近くまで問い質されたからだ。




愛宕に嫉妬する高雄可愛いです。

家でカラオケしたくても普通の家は防音の壁とかじゃないので、何か筆者はその手のゲームを倦厭してしまうんですよねぇ。


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第30話 「婚約」R-15

丁督に拾われた磯風のお話です。
ちょっと短いですがエロいですよ。

*明らかな性的描写あり


「……っ! ……っ!」

 

 

薄闇の中で誰かが喘いでいた。

男の上で華奢な体を一心不乱に揺らしていたのは磯風だった。

 

休みなく彼女を下から突き上げているのは丁督。

彼が突き上げる度に磯風の小さな体は跳ね上がり、磯風は長く艶やかな黒髪を振り乱して嬌声をあげた。

 

「あ……はっ……て……とく! い、いい! んっ……もっと、もっとぉ!」

 

「……全く、少し前までは身持ちが固い奴だと思ってりゃ、いざ蓋を開けてみれば大した乱れよう……っだ!」

 

「ああっ! ん……っく……だ、だってぇ……こ、こん……はにきもひ……良いなんて思わ……ったんだもん……!」ハァハァ

 

「このムッツリが。俺と長門たちがヤってるところをこっそり見て発情すんだから世話ねぇよ……なっ!」

 

「にゃぁ!? ん……ふぅ……ふぅ……ご、ごめんにゃ……さい。でもあんな大きな音を立ててたらふ……ふつう……んやぁっ!!」

 

「だったら最初から自分の部屋に居ればいだろうが……ふっ!」

 

「あああああああああっ……!」

 

――――

 

――

 

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「いつになったら私も艦隊に加えてくれる?」

 

磯風は裸でベッドに寝そべって足をパタパタさせながら提督に訊いた。

 

「もう入ってるだろ」

 

「でもまだ実戦には参加した事ない」

 

「ああ、そういう事か」

 

「私、もうレベル80なんだけど。練度としては十分ではないの?」

 

第二次AL/MI作戦の折に丁督に拾われた磯風は、荒くれ者にして精鋭揃いの彼らに鍛えられ、僅か一週間足らずで見違える程に成長していた。

元々構成員が少ない事もあって艦隊には直ぐに編入されたが、それでも未だに彼女は実戦の参加は許可されていなかった。

 

「まだまだ……お前はまだ弱くなくなっただけだ」

 

磯風を撫でながら丁督は言った。

 

「ん……そ、それどういう事?」ピクッ

 

「俺の部隊は少数精鋭、数が少ないからこそ絶対に敵に負けない程に強くないといけないんだ」

 

「80じゃ……まだまだって事?」

 

「最低でも100だ」

 

「100って、それ……」

 

「そうだ。ここの艦娘は全員俺とケッコンしている」

 

「……」

 

「勿論形だけのつもりはない。ケッコンしてできた絆は絶対だ」

 

「提督……」

 

「磯風、お前、俺の女になるか?」

 

撫でていた手を止めて真面目な表情で丁督は磯風を見つめる。

 

「……それは」

 

「ん?」

 

「ケッコンは単に自分の艦隊の強さを維持する為?」

 

「そう思うか?」

 

丁督は磯風の質問に敢えて答えず疑問で返してきた。

その顔ははわざわざ答える必要あるのか? と含み笑いと共にそれを語っていた。

 

「俺は言ったぞ? 絆は絶対。それに俺の女になるか? って」

 

「……」

 

磯風は上体を起こして提督と向き合うと一度下を見た。

そうだ、自分はさっきまで提督と繋がっていたんだ。

心も体も……まだ余韻も感じる。

それは、やっぱり幸せな感触だった。

これを今こういう風な時じゃなくて、日常でも絆として感じることができるようになるのなら……。

 

「……なる」

 

磯風は顔を上げて迷いのない眼で丁督を正面から見つめながら言った。

 

「私はなる。提督の、貴女の女に、嫁になるぞ!」

 

「そうか」ニッ

 

丁督は磯風の答を聞いて短く笑って手を差し出した。

 

「改めてよろしくな」

 

「……」

 

しかし磯風は差し出された手を何故か見つめるばかりだった。

 

「どうした?」

 

丁督も磯風の反応が予想外だったのか不思議そうに尋ねた。

 

「もう一回」

 

「は?」

 

「握手の代わりにもう一回シて」

 

「おいおい……」

 

提督は呆れ顔で磯風を眺めた。

 

「別にそんな事しなくてもまだ夜は長いし、いくらでも……」

 

「違う! この一回は心に刻んで絶対に消えない思い出にしたいんだ」

 

「……ん」

 

「だから提督もう一回、握手の代わりに私に刻み付けてくれ」

 

「なるほど、そういう事なら……」

 

丁督は磯風の要求を理解すると深く抱き締めた。

そして……。

 

「……っ! あっ……ていと……く……♪」




この後、というか更に滅茶苦茶お楽しみになったそうです。

丁督の鎮守府の艦娘は全員性豪みたいなので、丁督もいろいろ大変ですね。


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第31話 「張り合い」

Z1とZ3とビスマルクは部屋割りの構成では珍しく、駆逐艦と戦艦が同居していました。
3人とも同じ出身なので気心は知れな仲なのですが、それが普段から一緒ともなるとやはり艦種の違いからくるちょっとした衝突も起こったります。
そんな偶に起こるちょっとした女同士の言い争いのお話。


「ねぇレイスー」

 

「何?」

 

「暇ねー」

 

「暇のはいいから私の上からどいてくれないかしらマリア。重いのよ」

 

ビスマルクに上から抱き付かれているZ3が迷惑そうな顔で言った。

 

「嫌よ。抱き心地がいいんだもん」

 

「あなたね……」

 

こいつは自分の事を抱き枕か何かと思っているのではないだろうか。

だとしたら寝具扱いなど絶対にお断りである。

三人の中でも特に大人びてプライドの高いZ3は据わった目でビスマルクを睨んだ。

 

(あれ多分重いのが嫌じゃなくてやっぱりマリアの胸だよね。いいなぁ僕もあれくらいまでとは言わないけど……)

 

Z1はベッドに寝転びながら二人のそんな様子を自分の願望も混えて観察していた。

 

「何? レイスも抱かれたいの?」

 

Z1の視線に気づいたビスマルクが彼女の方を向いて言った。

突然自分がターゲットにされZ1は狼狽える。

 

「えっ?」

 

「いいじゃないレイス。マリアとても暖かいわよ。抱いてもらったら?」

 

これ幸いとばかりにZ3はビスマルクをZ1に押し付ける事によって自身の、現在の状況からの脱出作戦を決行した。

 

「じぇ、ジェーン!?」

 

「もうそうならそうと早く言ってくれればいいのに!」ギュー

 

上手く誘導されたビスマルクはZ1が寝ているベッドへと這い上がり、まだ動揺して動けないでいる彼女を今度はZ3の時とは違い正面から抱き締めた。

その様子はまるで子供が可愛いヌイグルミを抱きしめている様であった。

 

「わ、わぷぷ……」ムニュ (や、柔らかい……!)

 

「あー、レイスもなかなか良いわねー♪」スリスリ

 

「……冷房、切ったらどうなるのかしらね」

 

相棒を犠牲にしてしまったのが事に早くも罪悪感を感じてきたのだろう。

Z3がポツリとそんな事を言った。

 

「え?」

 

「むぐぐ?」

 

その言葉にビスマルクもギョッとした顔をし、抱き締められてまともに話せない状態のZ1も彼女の胸の中で驚きの声をあげて自分のこれから予測される危機に焦った。

 

(あ、それは割とやめて欲しいかも。この状態でそんな事されたら僕、暑さと息苦しさできっと気絶しちゃう)

 

 

「全く納得いかないわ。海外艦だからって駆逐艦と戦艦が同じ部屋だなんて」

 

ビスマルクにいいように弄られて多少ストレスが溜まっていた所為もあったのだろう、Z3は追撃のつもりでそんな事を言った。

 

「え? そう? 私は別にいいんだけど」

 

「んむ、むぐむぐ」(僕もー)

 

片や迷惑を掛ける側故に不自由を感じた事がない者。

片や基本的にお人好しだが、最初から親しい友人と一緒に暮らせる事を嬉しく思っている者。

立場こそ違えど、意外にもこの二人の意見は一致していた。

 

「でもこのままじゃ特定の事しか仲良くできないコミュ障みたいに見られるかもしれないわよ?」

 

「コミュ……? 大佐なりに気を遣ってくれだだけだと思うけどね。それに別に私は他の子とも仲良くしてるわよ?」

 

「むぐむっ……」(僕も!)

 

「それはそうだけど……」

 

ビスマルクはともかく、どうやらこの件に関してはZ1も基本的には彼女に同意らしい。

元々ちょっとビスマルクにお灸を据える事だけが目的だっただけに、旗色が悪くなってきたところでZ3はこの問を自分の負けで早々に切り上げようと考え始めた。

そんな時だった。

 

「他に部屋がないんじゃない……て事もないか。あ、でも一人だけ自分だけで部屋を使ってる人がいるわね」

 

ビスマルクが不意にそんなことを言った。

 

「え?」

 

意表を突かれて目を丸くするZ3。

ビスマルクはそれには気付かず、自身の発言が素晴らしい名案だと確信した顔で更に嬉しそうに言葉を続けた。

 

「皆平等にするならその人も相部屋にすべきよね!」

 

「一体誰の事を言っているのかしら?」

 

「むぐー?」(誰ー?」

 

何となく嫌な予感がしてZ3はビスマルクに尋ねた。

Z1も件の問題とされる人物が誰か気になっている様子だった。

 

「大佐よ」

 

ビスマルクは少し顔を紅くしてハッキリと言った。

 

「え?」

 

「むっ?」

 

「大佐も一人じゃなくて二人以上と部屋を使うべきだわ!」

 

「駄目よ」

 

「むっ!」(ダメ!)

 

大佐と自分は一緒の部屋に住むべきである。

そう自信満々に主張するビスマルクにZ3とZ1は速攻で反対の意を示した。

 

「え?」

 

「それだと大佐に迷惑が掛けちゃうじゃない。大佐は風紀を大切にしているのよ?」

 

「そ、それは……」

 

正論である。

このままビスマルクを説き伏せるものかと思われたZ3は更にこう続けて――

 

「だから私が行くわ」

 

話を終わらせるどころか寧ろ捻じ曲げて更に厄介な問題へと発展させ始めた。

 

「え?」

 

「むっ!?」

 

「駆逐艦の私なら大佐も手を出さないだろうし、何よりマリアみたいに大きくないから部屋も一人の時の様に快適に使えるはずよ」

 

「い、いやそういう問題……あっ、ちょ……レイスくすぐった……んっ」ピク

 

予想だにしないZ3の発言に今までビスマルクの胸の中で大人しくしていたZ1がついにもがき始めた。

 

「むぐぐぐぐぐぐ……っぷは! それなら僕でもいいじゃないか!」

 

「お子様は駄目よ」

 

「え?」

 

「なっ……!」

 

衝撃的な言葉に固まる二人。

 

「見た目は幼くても考え方はそれなりに成熟してる私の方が絶対に向いている筈よ。その……その方が……大佐の、お世話……とかもできる……し、ね」

 

「ちょっと待って! それだと私はどうなるのよ!? 私は大人よ!」

 

「いえ、マリアは子供よ。金剛さんや比叡さんと同じ」

 

Z3は死刑執行人の様な冷たい眼で即座にビスマルクの抗議を否定した。

 

「えっ」

 

「あー、なるほど……」

 

「レイス!?」

 

「という事で文句ないわね。私が――」

 

「ちょっと待ってよ。僕は!?」

 

このまま相手にされないで終わるわけにはいかないZ1が今度は抗議してきた。

それに対してZ3はそんな彼女にも容赦ない態度でこう言い放った。

 

「自分の事を女なのに『僕』だなんて言っちゃうのは、ウケ狙いのお子様だと私は思うわ」

 

「う、ウケ……!?」ガーン

 

「ジェーン待ちなさい! 私のどこが子供だっていうのよ!? 私、これでも金剛や比叡よりもずっと大人よ!」

 

「本当に大人だったら部屋の中だからってパンツ丸見えで胡坐かいたりしないと思うんだけど?」

 

軽蔑するような目でビスマルクを見ながらZ3は言った。

 

「えっ……い、いやそれはちょっと違うと思うわよ。それは単にだらしないだけで子供とは関係な――」

 

「だらしない大人には余計に大佐は任せられないわね」

 

「な……」(このジェーン無敵!?)

 

「ウケ狙い……」ズーン

 

 

 

「……それで俺の所に来たのか」

 

「そう! どっちが大人か教えてあげて!」

 

「全く、そんなの聞くまでもないと言ったのに……」

 

「大佐、僕は『僕』って言ったら変!?」

 

深夜、提督の前には三人の、自分は子供ではないと言い張る海外娘がいた。

睡眠中に叩き起こされた事もあって、多少思考に余裕がなかった提督はそんな三人に対してこう判決を下した。

 

「結論から言おう。俺からすれば全員子供だ」

 

「 」

 

三人揃って固まる海外娘達。

余程予想外だったのか言葉も出ない様子だった。

 

「そんな事で言い争って俺に意見を求めるに来るなんて、親に泣きつく子供みたいだとは思わないか?」

 

提督の言葉に氷結から解けた三人はそれぞれたじろいだ反応を見せる。

 

「……う」

 

「そ、それは……」

 

「あ、全員子供なんだ。良かったぁ」ホッ

 

「大人の女性を目指すなら。そうだな……雲龍とか叢雲、それに長門とかがいるだろう。そいつらに訊いてみる事だな」

 

「雲龍……叢雲……」

 

「勿論それだけじゃない。他にも神通や足柄とか艦種に限らずたくさんいるはずだ。先ずはそういった奴らを手本に――」

 

「待ってください」

 

不意にビスマルク達の後ろから声がした。

 

「加賀……」

 

提督は眉間に手を当てながらその名前を言った。

その顔にはこれから起こるであろう面倒事に対する苦慮の表情が浮かんでいた。

 

「大人の女性として代表者を絞って言うのはいいのですが、何故そこで私ではなく雲龍なのですか?」

 

どうやら加賀は大人の女性として提督に言われた空母の代表が雲龍だった事が気に入らない様子だ。

 

「加賀、いいか? そういう風に直ぐに対抗しようとするのがそもそも――」

 

「胸じゃない?」

 

Z1がふとそんなことを言った。

 

「え?」

 

「 」

 

Z1の言葉に俯いて反省していたビスマルクが顔を上げる。

それに対して加賀は何を予想したのか言葉を失って発言の主であるZ1を見た。

 

「雲龍さん胸凄く大きいじゃない。加賀さんよりも」

 

「おい……」(これ以上は勘弁してくれ)

 

「大佐は胸の大きさ判断したんじゃないかな?」

 

Z1は決定的な止めの一言で更なる混沌への扉を開いた。

 

「ちが――」

 

提督は何とか止めようとしたが時すでに遅く、案の定、復活したビスマルクがまた訴えてきた。

 

「なら私だって大人よね! だって雲龍ほどは無いにしても加賀よりかはあるし!」

 

「はい?」ピキ

 

正に売り言葉に買い言葉。

加賀が無表情ながら視線で全てを射殺せるような顔でビスマルクを睨んだ。

 

「あら? 加賀ってもしかして着痩せするタイプだったのかしら?」

 

流石はドイツ最後の最強の戦艦である。

そんな加賀の視線などものともしないといった顔で更に挑発した。

 

「マリアさん……あなたちょっと何を言っているのか解っていますか?」

 

「事実だけど?」フンス

 

「……頭にきました」ピキピキ

 

両者一触即発。

お互いに艦装こそ装備していなかったが、二人は睨み合い合いながら身構えた。

そして――。

 

 

「お前らいい加減にしろっ」

 

ポカカンッ

 

「きゃっ」

 

「……っ」

 

ついに提督の拳骨が彼女達を降り注いだ。

 

「そういう風に直ぐに張り合うのが子供だと言うんだ」

 

「ご、ゴメン……なさい」グス

 

「……申し訳ございません」ペコ

 

提督に説教され流石に我に返って反省するビスマルクと加賀だったが、その後ろでは……。

 

「む、胸……」ペタペタ

 

恐らく今日一番絶望的な顔をして意気消沈するZ3と――

 

「なんだ、やっぱり全員子供なんだ♪」

 

自分の発言が招いた結果に一人満足そうに天使のような顔を浮かべてホッとしているZ1が居た。




ビスマルク早く改造三にしたいですね。
戦艦が魚雷発射するなんて「艦これ」では垂唾ものですw


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第32話 「勇気」

提督の楽しみは4つあります。
1つ目は、釣り。
2つ目は、風呂。
3つ目は、お酒。
4つ目は、煙草。

傍から見ると3番目と4番目はダメな大人臭がプンプンですが、提督はそんなに無茶苦茶はせず、軽く嗜む程度なのでOKなのだそうです。


「……ふぅ」

 

提督は電気を消した部屋の中で月明かりだけを唯一の明かりにして一人煙草を吸っていた。

空けた窓から吹いてくる風と波の音が心地よい。

日中は暑くてきついが夜は流石に幾分マシなので、こうやって冷房や照明を消して窓から覗く風景を楽しみながら吸っているのだ。

机の上には一杯の酒、正に至福の時を提督は過ごしていた。

 

(ここに来てからもうどれくらいになるだろう。最初は叢雲・初春・電しかいなかったこの基地も、今では複数の艦隊を構成できる程の人員と規模を誇っている)

 

「月日が経つのは……早いな……」

 

提督は誰にともなくそう呟いた。

その時、

 

コトッ

 

後ろで音がした。

 

「?」

 

提督が後ろを振り向くとそこには開けた扉の前で棒立ちしている名取がいた。

 

「大佐、それ……」

 

名取は震える声で提督が吸っている煙草を指差した。

 

「ん?」(なんだ? 名取を見ると何か忘れている気がする。何か約束をしたような……?」

 

「煙草がどうかしたか?」

 

「タバコ……」

 

「名取?」

 

「ふぇ……」ブワッ

 

急に顔をくしゃくしゃにして泣き出す名取を見て瞬時に提督は思い出した。

名取とした約束を。(*第二部 第7話 「ゆとり」参照)

 

「名取、待て」

 

提督は煙草をもみ消して足早に名取のもとへ行き、廊下に誰もいない事を確かめて扉を閉めると少し屈んで彼女と同じ視線になって言った。

 

「約束は覚えている。これは偶々だ。毎日吸っているわけじゃないぞ」

 

「ぐす……ほ、本当ですか?」

 

「ああ。こんなの一本二本くらいじゃ俺は死なない」

 

「っく……すん」

 

「お前との約束はちゃんと守って煙草を吸う数量も減らしている。体調は今のところ至って快調。健康そのものだ」

 

提督はそう言って名取が安心するように努めて笑ってみせた。

あまり子供をあやすような笑い方には慣れていなかったので若干ひくついた笑みになっていたが、名取はそんな提督の顔を見てようやく安心して泣くのを止めた。

 

「ごめんなさい……わたし本当に泣き虫で……。大佐の健康の事考えたら凄く不安になっちゃって……」

 

「いい、気にするな。お前は優しい子だな」ポン

 

「ん……大佐ぁ」

 

提督に撫でられて名取は嬉しそうに目を細める。

 

「それで、どうしたんだ? こんな夜分に」

 

「あ、ドアに執心中の札が下がっていたのに執務室の中で音がしたので……気になって」

 

「ん、もしかしてノックとかしたか?」

 

名取は提督の質問にフルフルと頭を振って否定するとこう答えた。

 

「……大佐はもう部屋で寝てると思ってたから」

 

「ああ、そうか。俺が執務室にいない時は自由に出入りして良い事になっているからな」

 

「……」コク

 

名取は黙って頷いた。

俯いて顔を伏せている彼女の態度からは、勝手に部屋に入ろうとした事に対して罪の意識を名取が感じているのを見て取れた。

提督はそれを察してまた名取の頭を撫でながらこう言った。

 

「一応、それも基地の警備上気になってやったんだよな?」

 

「……」コク

 

名取は再び俯きながら頷いた。

 

「なら気にする事はない。お前は基地の仲間として当たり前のことをしただけだ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「本当も何も、もしお前がその事で後ろめたさを感じているのならそれは見当違いだぞ? 寧ろ俺はお前のその行動をよくやったと思っている」

 

「……大佐!」ギュッ

 

「……ん」(しまった少々甘やかし過ぎたか。軽巡の中でも特に名取は繊細だから扱いが難しいんだよな)

 

「名取は良い子だな。だからもう安心して眠ってもいいぞ」

 

提督はそう言って名取を何とか寝かしつけようとした。

夜はまだ長い、できる事ならもう少し至福の時を楽しみたかった。

 

「……また吸うんですか?」

 

「ああ。吸いたいと思っている。許して貰えるか?」

 

ここで嘘をつく事はできなかった。

この後も吸うなら今ここで名取の同意を受けておいた方がいいのは間違いなかった。

 

「分かりました。ちゃんと気を付けているならいいと思います」

 

「ありがとうなと――」

 

「でもお願いがあります」

 

提督がお礼を言い終わらない内に名取は思い切って切り出した。

 

「お、おタバコを吸い終わるまで……そ、その……大佐……と一緒に……」

 

そう言って名取は少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら提督の服の裾を握った。

 

「勿論構わない。寧ろ願ったり叶ったりだ。名取、今日は俺の話し相手なってくれるか?」

 

「……はい!」

 

名取はその言葉に本当に嬉しそうに満面の笑顔を見せた。

 

―――

 

――

 

 

「名取、そういえばお前もこの基地の中では古参の方だったよな。確か電の次にここへ着任したのがお前だった気がする」

 

ソファーを窓側に動かして二人揃って腰かけた提督は、名取にそんな質問をした。

 

「あ……そう、だったと思います。確かに私の前に居たのが電ちゃんでした」

 

提督の肩にもたれてその腕を抱きながら名取は答えた。

 

「やっぱりそうか。その、他にもお前が来る前にいた奴らを憶えているか?」

 

「電ちゃん以外にですか?」

 

「ああ。いや、それに叢雲と初春も含めてそれ以外に、だ」

 

「そうですね……」

 

名取は指に手を当てて考え始めた。

 

「あ、北上さんと川内さんですね」

 

「ほう」

 

「大佐が言った三人を覗けばその二人が確かに私が来る前に先に基地にいたと思います」

 

(この自信がありそうな顔、どうやら間違いなさそうだな)

 

「北上と川内か……。あまり表に叢雲達はともかく、お前やあいつらはそういうのを表に出さないからつい忘れがちになってしまうんだよな」

 

「大佐はその人たちに何かご用なんですか?」

 

「いや、昔の事をここで思い出していてな。俺がここに着任したばかりの頃は誰がいたかな、って」

 

「そうだったんですか……」

 

名取は提督の言葉に自分も昔を思い出したのか、懐かしそうな顔をした。

 

自分がこの鎮守府に着任した時はまだ自分を含めて艦娘は6人しかいなかった。

丁度一艦隊の編成分だ。

あの頃、あの場所にいた6人が『主力』という意味ではなく、『最初』といういみでの第一艦隊……。

 

(あの頃は鎮守府近海の任務をこなすだけでも精一杯だったなぁ……)

 

名取は今では余裕をもってこなせる任務も昔は未熟だったこともあって苦労していた事を思い出してた。

 

「大佐」

 

「うん?」

 

「あの頃、まだわたしが来たばかりの頃って艦隊の旗艦って誰でしたっけ?」

 

「旗艦か、そうだな……強さだけで言えばお前達軽巡組の3人の内誰かだったと思うが……」

 

「ふふ、軽巡は正解です」

 

「答を知っているのか?」

 

提督は意外そうな顔で名取を見た。

それに対して名取は少し自慢げに

 

「はい」

 

と元気に返事をした。

 

「ふむ……もしかして名取、お前か?」

 

「正解です!」

 

名取はそう言って嬉しそうにより強く提督の腕を抱きしめた。

 

「そうかお前だったか……」

 

「今は流石に他の子たちの練度の差とかもあって務める事は殆どないですけど、あの時のわたし、頑張っていたんですよ」

 

「そうだな。泣き虫の割にはよく頑張っていたと思うぞ」

 

「た、大佐っ」

 

名取が顔を赤くして抗議した。

 

「はは、悪い。だがお前はよくやっていたと思うぞ?」ポン

 

「ん……その言葉、あの頃に聞ければもっと頑張れたのにな……」

 

名取は嬉しそうにしつつも、少し複雑そうな表情で提督の手の温もりを喜びながらそんなことをポツリと言った。

 

「名取……待たせたな」

 

提督は今と違って自分と艦娘との間に心の壁を作っていた頃を思い出しながら言った。

 

(そういえばあの頃の名取は今ほど俺に懐いてはいなかった気がする。何か指示を出す度にビクビクして、俺はその度に何か気に障る事をしてしまったのかと悩んでいたっけな)

 

「大佐……」

 

名取が不意に提督の事を呼んだ。

声が明らかに緊張していた。

 

「ん?」

 

「す、好き……」フルフル

 

「……ありがとう」

 

提督は顔を真っ赤にしながらも勇気を出して告白した名取を優しく撫でながらそう言った。




もう1年近く前の事なので全く覚えてませんが、記録を見るに自分の艦隊の初期メンバーはこんな感じだったはずです。

普通の人と比べて明らかに偏った遊び方をした筆者でもここまでこれた上に課金要素も皆無なこのゲーム。
人気を博した今となってはアンチの方もいろいろいるみたいですが、自分はやって良かったと心から思ってますねぇ。


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第33話 「内緒」

今まであまり出る事がなかった元帥と紀伊の小話。
彼女と他の艦娘も少し出てくるのでメイン扱いには少し遠い感じですが。

元帥は司令室で執務をしていました。


「閣下」

 

「ん?」

 

「お茶です」

 

「おお、悪いな」ズズ

 

元帥は紀伊が差し出したお茶を飲んだ。

温度が若干温めで暫く飲み物を飲んでなくて微妙に喉が渇いていた元帥にはちょうど良かった。

 

「如何です」

 

「ああ、悪くない」

 

「そうですか」

 

「ああ……」カリカリ

 

元帥の言葉を素っ気ない態度で紀伊は受け取った。

対する元帥も特に気にもしない様子で再び書類へと目を通し始めた。

 

「……」

 

 

「紀伊」

 

「はい」

 

「確認を頼む」ペラ

 

「承知いたしました」

 

元帥から書類を渡され訂正すべき点がないか確認する紀伊。

その顔は無表情ながら怜悧で、ただ黙って書類を確認しているだけだというのに凛とした雰囲気常にあった。

 

「……」

 

「どうだ?」

 

「はい。問題はないかと」

 

「そうか。ではそれを届けておいてくれ。私は総帥府に報告に行ってくる」

 

「了解です。護衛は誰を付けましょう?」

 

「天龍を。彼女一人で十分だろう」

 

「……」

 

紀伊は元帥の言葉を聞いて黙って彼を見つめた。

異議さえ唱えなかったがその目は明らかに反対していた。

 

「ふむ。『十分』では充分ではない、か?」

 

「はい」

 

「では、矢矧と妙高も付けてくれ。これでいいだろう?」

 

「はい。万全かと思います」

 

今度は紀伊も太鼓判を押した。

その構成なら大丈夫だろうと判断できる人員と数だった。

 

「うむ。では手配を」

 

「畏まりました」

 

「あ、それと悪いがもう一つ。雑用を頼めるか?」

 

「はい。何でしょう」

 

元帥は少し申し訳なさそうな顔をして紀伊にある物を手渡した。

 

「これを……使えなくなったのでな。悪いが処分しておいてくれ」

 

 

 

「……司令ー?」

 

「ん? どうしたの陽炎」

 

第4司令部の女司令官、少将の膝に乗った陽炎が足をパタパタさせながら、直ぐ上にある彼女の顔に尋ねた。

 

「元帥と紀伊さんってさぁ、なんかいつも淡々としていますよねー」

 

「元帥と紀伊? ああ……」

 

「わたしたちや他の司令官と比べてなーんか専属艦にしてはあまり親しさを感じないというか……」

 

「プロ意識ってやつじゃない? 本来の上司と部下の関係はあんなものじゃないかしらね」

 

「っ! わたしは司令とはこのままがいです!」

 

何気ない一言だったが陽炎はその言葉に何か危機感を感じたのだろう。

ハッとした表情で自分はまだ少将の膝の上にいたいと訴えた。

 

「こら、膝の上であまり動かないの。分かってるから」ナデナデ

 

「えへへ♪」

 

(陽炎、なーんか武蔵がいない時によく甘えるようになっちゃったわね)

 

コンコン

 

ノック音が聞こえた。

 

「……」

 

「あ、不知火」

 

扉を閉め忘れたのだろう、振り向くといつの間にか扉の前に不知火がいつもと変わらない無表情で立っていた。

 

トコトコ

 

「司令、定時報告書です」

 

「ありがとう。ご苦労様」

 

「……」

 

不知火は報告書を少将に渡した後も、何故かそこを去らずその場に立ったまま何か言いたげな様子で少将と陽炎を見つめていた。

そんな不知火の様子に気付いた少将が訊いた。

 

「不知火? どうしたの?」

 

少将に声を掛けられるまで無意識の内に見つめていたのだろう。

彼女の声を聞くとピクリと少しだけ肩を震わせて不知火は訊いた。

 

「いえ、差支えなければお教え頂きたいのですが……」

 

「何?」

 

「先程から陽炎は司令の上で何をやっているのですか?」

 

「司令の膝の上でご飯食べてるのよ。見ての通りでしょ?」

 

少将の代わりに陽炎が答えた。

その顔に邪気はなく、あくまで質問に答えただけといった様子だ。

それに対して不知火は小刻みに震えながら、何かを我慢する様にさらに質問をした。

 

「……何故、部下である艦娘があろうことか上司である司令の膝の上なんかで食事を摂っているのかしら……」

 

「それだけわたしと司令が仲良しって事よ」

 

その質問に対しても陽炎はあっさりとそう答えた。

 

「仲良し……」

 

陽炎はその言葉に何故か俯いてしまった。

 

「不知火?」

 

陽炎はその様子に流石に心配になって今度は気遣うような声調で不知火に声を掛ける。

 

「司令」

 

ポツリと不知火は言った。

 

「うん?」

 

「私と司令は仲が良く……ありませんか?」

 

「えっ」

 

突然の質問に意外な内容に陽炎は驚きの声をあげたが、少将は先程からずっと二人のやりとりを見ていて何かを察したのか落ち着いた態度でこう答えた。

 

「いえ、決してそんな事はないと思うけど」

 

「あの、それではその……」

 

不知火は提督の言葉に明らかな喜色の色を浮かべながら何やら話し難そうにモジモジし始めた。

 

「……陽炎」

 

「なんですか?」

 

「ちょっといいかしら」

 

少将はそんな不知火の様子を眺めながら陽炎にある提案をした。

 

 

「えへへー、司令の膝枕ー♪」

 

「司令……司令……ん……♪」スリスリ

 

少将はソファーに座りながら左右か陽炎と不知火に膝枕をしていた。

更におまけに彼女達の頭を撫でながら少将は言った。

 

「はいはい、お昼の間だけだからね。武蔵が戻ってくる前にはちゃんと戻るのよ?」ナデナデ

 

「はーい♪」 「分かりました……」

 

(ほんと、武蔵が演習の指揮に出ててよかったわ)

 

武蔵がダダをこねる姿を想像しながら少将はしみじみととそう思った。

 

 

――ところ変わって本部のとある廊下。

 

「あ、紀伊姉!」

 

「紀伊お姉さん」

 

一人食堂へと歩いていた紀伊に後ろから聞き覚えのある声が掛けられた。

 

「駿河、近江……」

 

「紀伊姉もこれから食事?」

 

「ええ」

 

「では、ご一緒しても?」

 

「ええ。構わないわ」

 

「よしっ」

 

「やった♪」

 

二人は揃って嬉しそうな顔をしたが、その時駿河が紀伊が持っているある物に気付いた。

 

「ん?」

 

「どうしたの? 駿河」

 

「紀伊姉そのペンどうしたの?」

 

「……ちょっとね」

 

駿河に訊かれても明確な答えをしなかった紀伊は、彼女が指摘したペンを大事そうに両手で握りしめ直した。

 

「あら」(随分使い込まれた古いペンね)

 

「きったないペンだね。捨てるの?」

 

「……」

 

駿河の何気ない一言で紀伊の空気が一変した。

その一瞬の変化で駿河より心の機微に聡い近江は全てを悟り、心の中で駿河を止めた。

 

(あ、もしかして……ダメ! 駿河!)

 

「え?」

 

駿河も紀伊の変化に遅れて気付き始めたがもう遅かった。

 

「駿河、あなたは今何て言ったのかしら?」ゴゴゴゴ

 

いつもと変わらない声だった。

だがその声は明らかに威圧が込められており、聞くだけで駿河は背筋が冷たくなり、冷汗が流れた。

 

「あ……えっと……」ガタガタ

 

あまりの威圧感に恐怖で言葉が出ない駿河。

そんな彼女に近江は必死の形相で助け舟を出した。

 

「と、とても古くて時代を感じるペンですね姉さん! ね、ねえ駿河!」

 

「あ……う、うん! そう! あたしもそう思ったんだ! だ、だからその……言い方は悪かったけど……そういう意味で……」

 

近江の助け舟に駿河はすかさず乗り、何とか釈明をしようとした。

そんな二人の態度に紀伊も機嫌を直したのか、先程まで醸し出していた威圧感をあっさりと引っ込めた。

 

「……そう。ならいいの」

 

「……っ、ふぅ……」

 

肩で息をする駿河。

ダメだ、姉だけは絶対に怒らせてはいけない。

そう心から駿河は痛感した。

そんな恐ろしい姉に近江は純粋な興味からある質問をした。

 

「姉さん」

 

「ん?」

 

「そのペン……閣下から?」

 

「……想像に任せるわ」

 

紀伊は僅かに紅に染まった顔でそっぽを向いてそう言った。




紀伊型戦艦実装あるといいですが。
まぁ、それは夢の又夢くらいに思っています。
だからこそこうやって今はやりたいようにやれているわけですしねw


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第34話 「偶然2」(挿絵あり)

実戦に参加できるようになっても朝の予定確認は大淀の役割のまま変わってませんでした。
その日も大淀は提督に予定を伝える為に彼の待つ執務室へと向かっていたのですが……。


「大淀」

 

朝、提督にその日の予定を伝えるために執務室に向っていた大淀に、珍しく提督の方から声を掛けてきた。

既に部屋の前にいたところを見ると彼女が来るのを待っていたようだ。

 

「あ、大佐。どうしたんですか?」

 

「ちょっと来てくれ」

 

「……? はい」

 

提督の様子が変だ。

大淀を手招くいて部屋に入れると周囲に人がいないか確認して扉を閉めた。

 

「……大佐?」

 

今まで見た事がない提督の不自然な態度に大淀も不安になった。

 

「一応鍵も閉めておいてくれ」

 

「え? 鍵もですか?」(え、それって……)

 

ついさっきまで不安だった気持ちはどこえへやら、大淀はその一言で何かを思いついたようだ。

 

ガチャ

 

「閉めましたよ。それであの……なんでしょう? いえ、分かってはいるんですけどこういきなりだと個人的にも心の準備というか……」

 

大淀は床と提督に視線を交互に変えながら頬を紅くして言った。

 

「流石大淀だな。そこまで予想できて心の準備の事まで考えているなんてな」

 

「そ、そんなに褒めたってすんなりと受け入れるとは思わないで下さいね。確かに私も大佐の事が好きですけどいきなり……なんてもうちょっとムードというか段階的なものを考えて欲しかったというか……」

 

「大淀?」(舞い上がっている……? 何か勘違いさせているようだ)

 

「で、でも大佐! あ、朝からなんてその……やっぱり仕事もありますから、今は……き、キスだ――」

 

 

「大和です。宜しくお願いします!」

 

全く予想だにしない方向から声がした。

それも提督の声ではなく、彼女がこの基地で初めて聞く女性の声だった。

 

「……」

 

すっかり言葉を失って首だけを声がした方に向けてみるとそこには……。

 

「え」

 

「?」

 

驚いて固まっている大淀を不思議そうな顔で見ている大和がいた。

 

【挿絵表示】

 

「あの、大佐……?」

 

驚いた表情のまま大淀は提督に訊いた。

 

「ああ」

 

「なんですかこれ」

 

「 」(これ!?)

 

「大和だ」

 

「なんで?」

 

「分からん」

 

「は?」

 

「怒るな。本当だ。俺にもさっぱりでな」

 

提督も何と言ったらいいのか分からないと言った顔をしていた。

その顔は若干緊張で引きつっており、僅かに脂汗のようなものも滲ませていた。

 

「えーと……今朝は建造は?」

 

「建造はもう大分行っていない。勿論お前をここに招くまでもな」

 

「彼女が此処に来たのは?」

 

「俺が身だしなみを整えて部屋に入ったら既に……」

 

「……」

 

大淀は考える表情をして大和の方を向いた。

 

「あの」

 

「は、はい?」

 

今までずっと蚊帳の外扱いで戸惑っていた大和は緊張した声で応えた。

 

(わ、私何かしたのかしら?)

 

「失礼ですがどのような経緯でこちらに?」

 

「私ですか? そちらの提督に仕える為に『建造』されて此処に着任したんですが……」

 

彼女からしたら当たり前のことだったのだろう、大淀の質問に驚きと不安が織り交ざったような表情でそう答えた。

 

「大佐?」ジト

 

「分からん。本当だ」

 

大淀の視線に焦る提督。

だが、本当に心当たりはないようで弁明する口調も真剣そのものだった。

 

「そうですか。では記録を見てみますね」

 

取り敢えず提督を信じた大淀は前日の工廠の使用記録を調べ始めた。

今朝着任したばかりで建造されたというのなら前日の記録を調べれば分かるはずだ。

 

「あ……」

 

大淀はあっさり思い当たる節を見つけたらしく、記録を調べ始めてものの数分で小さな驚きの声をあげた。

 

「どうした?」

 

提督は大淀の持つ記録書を覗き込む。

 

「あのこれ……。投入する資材桁全部間違ってません? その割には指示内容は開発のままですけど……」

 

「なに?」

 

「これ……」

 

大淀が指を指した個所を確認すると確かに彼女の言う通りの内容が記録されていた。

 

「……これは」

 

「昨日開発を指示したのは誰です?」

 

「雪風だな」

 

「……なるほど」

 

「つまりこういう事か」

 

ここまで来て真相が想像できてきたのか提督が説明を始めた。

 

「俺が誤って資材の投入量を指示してしまい、その指示書を見た雪風が気を利かせて俺が開発ではなく建造を指示したんだろうと判断した結果……というところだろうか」

 

「恐らく。私もそう思います」

 

「ふむ……」

 

「これは……あはは。まぁ結果オーライというか、幸運を呼んでしまいましたね」

 

「雪風を責める事はできんしな。元々の原因は俺なんだし」

 

「ですねぇ」

 

「あ、あのぉ」

 

着任してから挨拶も返されず、歓迎もされないまま更に放置されていた大和が二人に話し掛けてきた。

 

「わ、私……来て……良かったんですよね……?」

 

さんざん放置された結果痛く自尊心が傷つけられたのか大和は震える声でそう言った。

その目尻には僅かに涙の粒も滲んでいた。

 

「え? も、勿論です! というかごめんなさい! 歓迎しますよ! ね? 大佐」

 

「ああ、大淀の言う通りだ。放置するような真似してすまない。ようこそわが鎮守府へ」

 

「……っ! あ、ありがとうございます! や、大和……大和頑張ります!」

 

自分が歓迎されている事が余程嬉しかったのか、泣きそうだった顔から打って変わって輝くような笑みに変わった大和は本当に嬉しそうにそう言った。

 

 

「……ところで、大佐」

 

「うん」

 

「桁を間違った結果資材は?」

 

「いつも通りだ。弾薬がマズイ」

 

「はぁ……またこれで節約生活ですね……」

 

「弾を消費しない分平和という考え方もできるが……」

 

「反省してください。開き直りは許しません」ムッ

 

「……申し訳ない」

 

大和が喜ぶ裏でそんなやり取りを提督と大淀は行い、密かに揃って溜息を付くのだった。

 




というわけで大和が仲間入りしました。
後心から欲しいのは401くらいですね。
彼女さえでれば、暫く資材を貯めながらゆっくりできるんだけどなぁ。

あ、あと18禁の絵が解禁されたみたいですね。
いろいろ(自分の中で)盛り上がって参りました♪


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第35話 「不機嫌」

その日、本部からある指令が提督に来た。
提督はその指令書を確認すると、僅かに渋い顔をして溜め息を吐いた。


「西村艦隊の再現、か……」

 

「はい」

 

提督の言葉に扶桑は淡々とした態度で肯定した。

 

「あまりこういうのは好きじゃないんだがな……」

 

「閣下は喜ばれないと?」

 

「そうではないが、軍人として戦死されたんだ。偲ぶだけなら黙祷や墓前に赴くとか他にやりようがあると思うんだがな」

 

「大佐……」

 

「ん、悪い。俺一人がこんな事を言っても始まらないよな」

 

提督は居住まいを正すと艦隊の編成に必要な艦娘に召集をかけた。

 

 

「皆集まったな。ではこれより、西村閣下の艦隊をここに再現し、これによってかの英霊の鎮魂を祈るものとする」

 

(えっ)

 

集まった仲間達を見て扶桑はハッとして提督を見た。

 

「お姉様……」コショ

 

「山城、あなたも気付いた?」ヒソ

 

「はい。大佐、凄いミスをされてますよね……」コショ

 

(うーん……、これは僕もフォローできないなぁ)

 

扶桑と山城の会話を肩越しに聞いた時雨は困った顔で提督を見ていた。

 

(時雨や扶桑さん達も気付いてるみたいね。大佐……これは、ダメよ……)

 

一緒に並んでいた満潮も何かに気付いている様子だった。

隣にいた時雨と目が合うと、互いに気付いている事が同じだという事を言葉を交わさずに確認した。

 

「姉さん?」ヒソ

 

「んー? ふふ」

 

一人周りの状況が理解できていなかった筑摩が密かに姉に聞いた。

声を掛けられた利根は皆と同じようにある事に気付いているらしく、その顔は他のメンバーと違って悪戯をする子供のように面白そうに笑っていた。

 

「皆何を困った顔をしているの?」ヒソ

 

「んー? それはな。ほれ、あそこを見てみろ」コショ

 

「……?」

 

尚も面白そうに笑う利根を不審に思いながらも、筑摩は彼女がが指差す方向を見た。

そこには――

 

(最上?)

 

筑摩の視線の先には執務室の扉の隙間からこそっと様子を覗く最上の姿があった。

 

(最上、どうしたのかしら? なんだか凄く拗ねてる顔をしている……?)

 

「気付いたか? 筑摩」ヒソ

 

「ええ、あそこに最上がいるのは……」コショ

 

最上の存在に気付きはしたものの、それでもまだ筑摩は事の真相は理解していない様子だった。

 

「ああ、そうか。筑摩は追加要員として後から呼ばれたから聞いておらんかったのか」ヒソ

 

「姉さん?」コショ

 

「実はな、今回のこの艦隊の編成は……」コショコショ

 

「!!」

 

利根の話を聞いて筑摩の顔は青くなった。

 

「ね、姉さんそれ……!」ヒソ

 

「の? 大佐の奴いつ気付くかの。くふふ……」

 

「姉さん……」

 

筑摩はまだ愉快そうに笑う姉の顔を呆れた顔で見つめた。

 

 

「――話は以上だ。それではしゅ……」

 

「た、大佐!」

 

突然何かいたたまれなくなった様子で困った顔をした扶桑が提督に発言をしてきた。

 

「どうした扶桑急に」

 

「ちょ、ちょっとお話が」

 

「帰還してからじゃダメか? 今日はあまり予定に余裕もな……」

 

バンッ

 

「いいえ……。今直ぐにです。直ぐに、済みますから」

 

「……分かった」

 

出撃を促そうとした提督を、机を叩いて沈黙させるという扶桑らしからぬ手荒な方法に、流石に提督は言いかけた言葉を飲み込んで了解した。

 

 

「ありがとうございます。では少々こちらに」

 

「ああ」

 

 

――数分後

 

「待機」

 

突然提督は招集した艦娘達に待機命令を出した。

 

「命令あるまで各自部屋で待機するように」

 

だが、そんな突然の待機命令にも拘らずその場にいた艦娘達は、扶桑から何を聞いたのか脂汗をかく提督に対して、利根を除き、同情とも憐みともつかない視線を送るだけだった。

そして、彼女達は部屋を退出する時にその去り際に「がんばって」や「今回ばかりは仕方ない」といった激励や少し責めるような言葉を提督に残していくのだった。

 

そうして部屋に提督が残って暫くして、提督は扉の向こうにいるであろうある艦娘に扉越しに声を掛けた。

 

「最上いるんだろう? 入って来い」

 

提督の呼びかけに対して特に反応のない扉だったが、やがて暫くしてギギ、と開く音と共に明らかに不機嫌そうな顔をした最上が現れた。

 

「……何?」プクー

 

「すまん」

 

提督は開口一番頭を下げて最上に謝った。

 

「何を謝ってるの? 大佐何か悪い事したのかな?」ツーン

 

お互いに原因は分かっているはずだが、流石に当の被害者である最上は自分から言うつもりはない様だった。

 

「悪かった。お前の事を忘れていた」

 

「利根姉妹がいたじゃん」

 

「いや、西村艦隊を構成していた航巡はお前だ。だというのに俺は……本当にすまない」

 

「べっつにー。どうせ利根姉妹の方が練度も上だしー、大佐の考えは間違いないなかったと思うけどねー」

 

最上はまだ許してくれそうになかった。

 

「最上すまん。本当にワザとではないんだ」

 

「わざとだったら僕本当に泣いてるから」

 

「ああ」

 

「反省してる?」

 

「してない様に見えるなら、更に反省して見せよう」

 

「……」ジー

 

「……」

 

「お願いがあるんだけど」

 

提督の顔をジッと見つめながら最上が言った。

 

「なんだ?」

 

「それしてくれたら許してあげる」

 

「聞こう」

 

「先ず、二度と僕を忘れないって誓って」

 

「分かった」

 

「キスで誓って」

 

「……ああ」

 

「……」

 

最上は提督の返事を確認すると、提督の正面に立って目を瞑り、少し背伸びをして彼からの接吻を待った。

 

チュッ

 

「……ん」

 

「……どうだ?」

 

「……まだ。抱き締めて」

 

「ああ」ギュッ

 

「……最後に質問に答えて」

 

「なんだ?」

 

「さっきまで僕がしたお願い、こんな事がなければ聞いてくれなかった?」

 

提督は最上を見た。

最上は少し不安そうに視線を揺らしながら提督の答を待っていた。

そんな彼女に対して提督が取った行動は

 

ギュッ

 

「あ……」

 

再び最上を強く出し締め直し、そして

 

チュッ

 

「……ぅ……ふ……」

 

「……これが答だ」

 

「合格っ、許してあげる♪」

 

最上は少し紅潮した顔に満面の笑みをたたえながら提督にそう言った。




どうも、新しい任務で何故か西村艦隊の編成に必要な航巡を利根姉妹だと勘違いして任務に臨んだ挙句、S勝利を3回とるまで自分の間違いに気付かなかったダメ提督こと筆者です。

最上にはとても悪い事をしてしまったと思います。
だから艦隊に入れた瞬間からあんなにクリティカルを出したんでしょうねぇ……(ガクブル


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第36話 「妬きもち」

霧島がレベル100になりました。
それを知った提督は指輪を用意して霧島を呼びます。

さて、霧島のお返事は?


「け、ケッコンですか?」

 

「ああ、お前も成長限界に達したしな。お前さえよければ、だが」

 

「あ……え、えーと……。そう言われましても、まだ比叡姉様もケッコンしてないのに私がなんて……」モジモジ

 

「ケッコンする順番については姉妹で相談すればいい。が、ケッコン自体はお前が決める事だ。俺は……する以上は特別扱いとは言わないが、した事を後悔させないくらいの事はしてやるつもりだ」

 

「大佐……。で、でも私ってメガネだし、地味だし……」

 

(確かに、霧島は姉妹の中で一番理知的で常識がありそうだよな。だが、実はこいつが姉妹の中で一番武闘派でもあるんだよな)

 

提督は恥ずかしがる霧島を見ながらそんなちょっと失礼な事を考えていた。

 

「そ、それに……」

 

(何か無理に悩んでいるように見えるな。これはあれか、俺の押しが足りない? 求めているのか?)

 

「霧島……」

 

提督が霧島に近づく。

顔と顔が触れ合いそうな距離だ。

じっと彼女を見つめる提督の目は霧島に、ケッコンのプロポーズの代わりにある行為をしてもいいかと訴えていた。

 

「あ……大佐……」

 

霧島も提督の目を見つめてそれを理解した。

二人は徐々に顔を近づけ合いそして……。

 

 

「大佐、失礼します!」バンッ

 

「 」

 

「……っ!!」バッ

 

「あ、霧島。来てたんだ。大佐に用事?」

 

見計らったかのようなタイミングで比叡が元気よく部屋に入って来た。

今は昼休みで、仕事中の時間意外は出入り自由なのでノックもなしの突然の急襲だった。

 

「え……ま、まぁ……」

 

顔を赤くして視線を逸らす霧島。

対して提督は瞬時に態度を切り替え、平静を装って比叡に聞いた。

 

「比叡、お前こそ何か用なのか?」

 

「そうでした! 大佐、これ!」

 

提督に部屋に来た目的を聞かれた比叡は、後ろ手に持っていたある物を提督の前に突き出した。

 

「鍋……料理か。お前が?」

 

「はい! 作りました!」

 

「お前料理作れたのか」

 

「あっ、ひどい! それ偏見ですよ! わたしだって料理くらい作れます!」プクー

 

提督の意外そうな反応に比叡はちょっと拗ねた顔で抗議をした。

それに対しては霧島も、元々比叡が料理を作れるのを知っていたようで、姉のフォローをしてきた。

 

「大佐、比叡姉様は本当に料理を作れますよ。というか、上手いです。榛名と同じくらい」

 

「ほう」

 

「ふふー♪ 解ってもらえました? という事で如何ですか?」

 

「いや、今俺は霧島とな……」

 

提督はさっきまでの霧島とのやり取りを思い出し、こちらを優先する事が大事だと考えた結果、比叡の誘いを断ろうとしたが……。

 

「私は別に構いませんよ」

 

流石姉想いの金剛姉妹にして頭脳派(普段の生活では)の霧島である。

私心を押し隠し、姉の希望を優先してきた。

 

「霧島ありがとう! ね、大佐どうです? 勿論霧島も一緒ね!」

 

そんな妹の健気な心遣いを知ってか知らずか、比叡は嬉しそうな顔で霧島にお礼を言い、食卓に食器を用意し始めた。

 

「……まぁ霧島がいいなら。カレーか?」

 

霧島が同意するならこれ以上は何も言えない。

提督は食事の用意をしている比叡に鍋の中身を訪ねた。

 

「いい予想です! 海軍と言ったらカレーですものね! でも残念ながら違います。正解は……」

 

カパッ

 

「シチューか」

 

「わぁ」

 

比叡が明けた鍋の中身は白い液体から香ばしい牛乳独特の甘い匂いを放つシチューだった。

 

「えへへ、作り方はカレーとあまり変わりませんけどね。ちょっと意表を突いてみました!」

 

「ふむ、確かにこれは意外だが美味そうだ」

 

「ホントですか!? やったぁ♪」

 

「比叡姉様、まだ大佐が実際に食べる前にそんなに喜んでしまうと、後の楽しみがなくなってしまいますよ」

 

「あ、それもそうね! さ、食べましょう大佐!」

 

食器を並べ終わった比叡が会食を促す。

 

「ああ。ご相伴に預からせてもらおうか」

 

「戴きます比叡姉様」

 

 

「比叡、俺の匙がないんだが」

 

食事が始まったのはいいものの、提督の前にはにシチューが入った皿だけが置いてあり、スープを掬う為の匙が無かった。

 

「大佐には私が食べさせてあげます!」

 

「えっ」

 

目をキラキラさせてそんな事を言い出す比叡に、予想外の発言だったのか霧島は意表を突かれた顔をした。

 

「いや、そこまでしなくてもいい。おい、それお前が使ってた匙だろう。そ……」

 

「はいっ」

 

頬を染めた比叡が明らかに関節キスを意識しているのは間違いなかったが、元々それも狙いの一つであったらしく、真剣な顔をして提督にシチューを掬った匙を向けた。

 

「……」

 

提督は口を一文字にして拒否の意を表した。

 

「あーん」

 

「……」

 

「あーんです。大佐」

 

「……」

 

「あーん!」

 

「……」

 

「あ……あ……」ジワ

 

「……」パク

 

「……!」パァッ

 

「どうですか?」

 

「……まぁ美味い」

 

比叡の涙に負けた提督は自分を不甲斐なく思いながらも、味に関しては正直に意見を述べた。

 

「本当!? 良かったたぁ」

 

「はい!」

 

気分を良くした比叡は更に提督に勧める。

 

「いや、もう……」

 

「お願いです!」

 

「……」パク

 

「……!」パァッ

 

「……」

 

霧島は突然新婚の様な(提督は明らかに半強制的だが)食事を始めた二人をモヤモヤしながら見つめるしかなかった。

気のせいか、シチューもあまり味がしなかった。

 

 

「ふぅ、ご馳走様」

 

「……ごちそう様です」

 

「お粗末さまでした♪」

 

「さてこれで……」

 

(食事も終わったことだし、これで比叡には取り敢えず帰ってもらい、霧島との話の続きを……)

 

提督がどうやった比叡を上手く部屋に返すか掛ける言葉を練っていた時だった。

 

「大佐、食後にこれをどうぞ」

 

「ん……スムージー?」

 

比叡は次にピッチャーに収められた緑色の液体を出してきた。

 

「はい、比叡特製の栄養ドリンクです!」

 

「ほう」

 

「……」(早く大佐と話の続きがしたいな……)

 

流石にこの時点で霧島は、これ以上姉の甘い雰囲気を味わされる事に対して若干不満に思い始めていた。

しかし当の比叡は持ち前のマイペースさで、残酷にも霧島の思いに気付かずに話を続ける。

 

「まぁ特製という程そんなに凝ったレシピではありませんけどね。材料は小松菜・レタス・バナナ・リンゴです」

 

「やっぱり緑が強いんだな。色からは果物が入っている事が判らない」

 

提督はグラスに注がれた液体を見ながら、比叡のレシピを聞いて少し興味がありそうな顔をした。

 

「でも味は果物が濃いので見た目よりずっと甘くてフルーティですよ!」

 

「ほほう」

 

「どうぞ!」

 

「戴こう……おい、比叡」

 

「はい?」

 

「なんでグラスにストローが2つ……」

 

提督の言った通り今度はグラスが2つしか置かれていなかった。

1つは比叡、もう一つは自分か比叡かと思いきや、自分の前に置かれたそれにはストローが2つ。

 

「!」

 

霧島は比叡の更なる攻めの大胆さにショックを受けた顔をした。

 

「もうっ、それを聞きますか?」

 

「……」

 

「んっ」パク

 

「いや、それは流石に……」

 

提督は流石に横に霧島が居る状態でその誘いに乗るのは気が引けた。

さっきまで霧島と話していた内容を思い出せば余計にだった。

 

「んーっ!」

 

それでも子供の様に顔を膨らませて催促する比叡に、結局提督は根負けしたのだった。

 

「……」パク、チュロロ

 

「~♪」ズズ……

 

 

「大佐、今日はありがとうございました!」

 

全てをやりきって満足したのかとても晴れやかな顔で比叡は提督と霧島にお礼をいった。

心なしか比叡が輝いて(絶好調に)見えた。

 

「いや、礼を言うのは俺だ。ご馳走様」

 

本心ではあったものの、心労のせいか少し疲れた顔で提督は比叡にお礼を返した。

 

「気にしないでください! 美味しく頂いてもらえたらそれで満足ですから!」

 

「……そうか」

 

「あの」

 

「ん?」

 

「また持ってきてもいいですか?」

 

「……まぁ頻繁でなければな」

 

「そうですか、ありがとうございます! それじゃ、わたしはこれで失礼しますね! 霧島、今日はお邪魔しちゃってごめんね!」

 

「いえ……」

 

「それは失礼致しました!」

 

バタンッ

 

 

「……」

 

「……」

 

「大佐?」

 

「ん」

 

「ケッコンしましょう」

 

ポツリと霧島が言った。

 

「え?」

 

「ケッコンです直ぐに」

 

「おい、霧島?」

 

改めて話の続きをするつもりがいきなり結果を突き付けられて、霧島の急変に提督は動揺した。

 

「指輪ありますよね? 早く契約しましょう」

 

「急にどうし――」

 

「早く」ズイ

 

「……分かった」

 

女の嫉妬は怖い。

そう思った提督だった。




という事で霧島とケッコンしました。
これで7人目ですね。
やっぱりレベリングをあまりしないとどうしても演習で活躍しがちな戦艦か空母と先にケッコンしてしまいます。

他の艦種とケッコンするのはいつになるのかなぁ……。


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第37話 「駄々っ子」

ビスマルクが改三になりました。
彼女は意気揚々と提督に報告しに来たのですが、当の提督は何故か祝福の言葉もなく呆れた顔をしています。
何故でしょう?


「ビスマ……マリア、新たな改造を受けて今戻ったわ!」

 

「別にビスマルクでもいいだろう。それが本当の名前なんだから」

 

「いや! マリアがいいの!」

 

「……そうか」

 

ビスマルクは最近、ようやく実装の第一段階として許可が出された上位改造以降の更なる強化の改造を受けたのだった。

 

「そんな事より大佐! どう? 私、艦隊の中でついに唯一の改三実装者になったのよ!」

 

「ああそうだな。俺もまさか海外艦が先にその改造を受ける事になるとは意外だった」

 

「もうっ、そうじゃないでしょ? 改造を受けて更に優れた艦として戻って来た私の魅力はどう? って訊いてるの!」プクー

 

「ん……魚雷を撃てるようになったのか。ますます器用になったなお前」

 

「でしょ? 観測機も積めて魚雷も撃てるなんて、これでまた私の死角はなくなったわね!」

 

「ああ、後は潜水艦にも対応できるようになったら完璧だな」

 

「任せて! いつか対応できるようになってみせるわ!」

 

「そうか、頑張れ」(本気の目だな。それくらい浮かれてるって事か)

 

半分冗談で言ったつもりの提督のその言葉にもビスマルクはキラキラと輝く目で自信満々に宣言した。

 

 

「ああ早く出撃か演習をしてみたいわね♪」

 

「悪いが、ケッコンの練度に達した艦娘は基本、それ以外の艦娘の成長を促すために出撃の出番は減る。お前や金剛たちの出番は本気で挑まないと危ういと判断した時というのは変わらないぞ」

 

「それは分かってるわ。あーでも、でもなぁ……♪」

 

頭でも体の制御ができていない好例だった。

ビスマルクは提督に釘を刺されても、いつ勢いで出撃するかわわからないくらい子供の様にウキウキしていた。

 

「もうレイスやマックス達には自慢したのか?」

 

「ちょっと、自慢ってなによ! ……まぁ結果的にはそうだけど」

 

「したのか」

 

「う……うん」カァ

 

「はは、照れるな。浮かれる気持ちは分かる。それでどうだった?」

 

「それがね。ふふ、レイスは自分の事の様に祝ってくれたんだけど、ジェーンは……」

 

「拗ねたか?」

 

「あ、やっぱり分かる? そうなの。一人だけそっぽを向いちゃってね『別に、そのうち私もなるし』とか言っちゃってもー。ふふふふ♪」

 

(ちょうど逆の立場だったらマリアがそう言ってそうだな)

 

提督はビスマルクを見ながらその様子をまざまざと想像することができた。

 

「大佐?」

 

「ん?」

 

「今何か思った?」ジト

 

「いや?」

 

「そう? ふーん……」

 

「……」

 

「まぁいいわ。それでね、それからジェーンの機嫌を直すのに苦労してね……」

 

「あまりやりすぎるなよ。その所為でヘソを曲げられたらそれはそれで厄介な気がするからな」

 

「だからなんで私を見ながらそう言うのよ!」

 

「なんだ気付いていたんじゃないか」

 

「私はそんなに子供じゃないわよ!」

 

「そうか。じゃあ偶に一緒に寝てくれと言ってきても断ってもいいんだな?」

 

「Nein!(ナイン)」

 

母国語で即答するビスマルク、その反応に提督は呆れ顔で溜息を付きながら言った。

 

「お前、戦艦なんだからもう少し大人らしく振舞えよ」

 

「それとこれとは話は別だもん!」

 

「そうは思わないが……」

 

「と、とにかく嫌なものは嫌なの!」

 

「だからといってあまり頻繁に来るのは遠慮しろよ? 風紀は守りたいからな」

 

「う……じゃぁ週4くらいで……」

 

「それだと一日減っただけじゃないか。月1だ」

 

「そ、それはいや!」

 

「毎週駄々をこねるお前をあやして部屋に返す俺の労力を考えろ」

 

ビスマルクは自身が言う様に頻繁に夜中に実は提督のもとを訪れていたがそこは軍人の提督、その度に睡眠時間を削って律儀に彼女を部屋に帰していた。

 

「ちゃ、ちゃんと皆が寝静まった頃に来てるんだからいいじゃない!」

 

「俺には迷惑を掛けていいような答だぞそれ」

 

「お、お嫁さんなんだからそれくらい甘えて当然なの!」

 

「ドイツ出身の規律正しい軍人ならもう少し質実剛健に震えよ……」

 

「う……ど、ドイツ人は頑固なところもあるんだもん!」

 

「それは頑固ではなくただの我儘だ」

 

「……っ!」ジワァ

 

「む」(泣くか、だがここで厳しくでなくてはいつまで経っても……)

 

泣いて帰るかと思われたビスマルクだったが、提督の予想に反して意外にも泣く寸前で我慢する表情をすると、俯きながら彼に近づきそっと服の裾を握ったてきた。

 

トテトテ、ギュッ

 

「ん?」

 

「お、お願いします。甘えさせて……下さい」

 

上目遣いで瞳を潤ませてせがむビスマルク、その姿は正に大きな子供だった。

 

「……だからこんな時間にわざわざ遅れて改造の話をしに来たんだろう?」

 

「……」コク

 

「……まぁ改造初日だしな。一緒に寝るくらいなら」

 

「! ほ、本当!?」

 

「その代わりに月1だ」

 

「そ、それは…………や」

 

「頑固だな」

 

「交渉しましょう!」

 

「頼むから寝かせてくれ……」

 

提督は折れそうな心を何とか保ちながらそう愚痴るのであった。




次は扶桑ですねー。
秋イベントでは上手くすれば改造できるかもと楽天的に予想してます。
でもきっとその頃には新たな改二も増えているんでしょうねぇ(遠い目


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第38話 「ネコ女」

堤防に龍田が座っていました。
釣竿を抱えた提督は当然発見する事になったので声を掛けます。


「龍田、か」

 

「あらぁ大佐。釣りですかぁ?」

 

「まぁな」

 

「そ」

 

龍田は海を見つめながら髪が潮風になびくのに任せて、提督の方を見ずに気怠げに返事をした。

 

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「何処行くの?」

 

龍田は先程言葉を交わしたばかりの提督が自分を通り過ぎて何処かへ行こうとしているのを呼び止めた。

 

「いや、邪魔したら悪いと思ったから別の場所をな」

 

「……座って」

 

「え?」

 

「座って、いいから」

 

「いいのか?」

 

「邪魔じゃないし」

 

龍田は提督の判断が気にくわなかったのか、若干拗ねたような据わった目をして提督にそこで釣りをするように促した。

 

「……そうか」ドカ

 

 

「乙女心に相変わらず妙に鈍感よねぇ大佐って」

 

「耳に痛い言葉だな、自覚しているだけに」

 

「なんで私がここにいたか分からなかったの?」

 

「……俺を待っていたのか?」

 

「正解」

 

「俺がいつ釣りに来るのかわからないのにか?」

 

「そればっかりは勘、かな」

 

「今日みたいに天気が曇りで雨が降りそうなのに?」

 

「ここ暑いから、少しでも涼しい方が良くない?」

 

「ふむ……」

 

「はい」

 

龍田はおもむろにポケットからライターを取り出して火を着け、提督の前にそれを差し出した。

 

「お」

 

「待ってたのよ?」シュボッ

 

「……すまん」ジジ……

 

提督も龍田の厚意を受け入れて胸ポケットから煙草を一本取り出して咥えると、その火をもらった。

 

「ふぅ……」

 

「ふふ、美味しい?」

 

「ん、まぁ」

 

「私も吸おうかなぁ」

 

「止めはしないが、うちで吸ってる奴見た事ないからな。お前が吸ったら第一号になるかと思うと少し勿体ない気がするな」

 

「あはは、なにそれ~?」

 

「なんだろうな。ふー……」

 

「ね、大佐」

 

「うん?」

 

「私も早くレベル99になりたいなぁ」

 

不意の申し出だった。

相変わらず気ままなで予想できない龍田の言葉に提督は内心意外に思いながらも申し訳なさそうな顔をしてこう言った。

 

「今は駆逐艦を中心に育てているからな」

 

「全員平均65だっけ? 時間かかりそうねぇ」

 

「まぁ、それでも既に何人かはクリアしている。精度が求められる遠征にいつでも行けるようにしたいんだ」

 

「ぶぅ……」

 

本気で気を悪くしたわけではないのは明らかだったが、それでも龍田はわざとそんな不満そうな声をあげて提督の気を揉もうとした。

 

「まぁ駆逐艦が済んだら次はお前たちのつもりだ。それまではお前は……60だったか? それで我慢しててくれ」

 

「大淀や夕張は育ててる癖に」

 

「それでもまだお前には及んでないだろう?」

 

「私じゃないのが気になるの」

 

「ん? はは、珍しく我儘だな。まぁ、あいつらは軽巡の中で装備できる艦装の数が唯一他の奴らより多い二人だからな。少し鍛えていざという時に神通達に代われる戦力にしておきたいんだ」

 

「装備が適わなくたって私だってそれなりにやるのよ?」

 

龍田は今度は本当に少し不満そうな顔と声だった。

自分が戦力外の様に聞こえたのだろう。

 

「分かってる」

 

「分かってないわよ」ブス

 

「解ってる、さ」ポン

 

「あ……」

 

「……すまないとは思ってる」ナデナデ

 

「うん……」

 

龍田は提督に頭を撫でられながら嬉しそうに目を伏せてその心地を楽しんだ。

 

「機嫌を直してくれたか?」

 

「まーだ。今度は寄りかからせて」

 

「俺は竿を握ってるんだが」

 

「じゃぁ大佐の竿を私が……」

 

「帰るぞ」

 

「嘘、嘘よ」

 

「全く……」

 

「じゃあ膝で寝かせて」

 

「……」ジュッ

 

(あ、煙草……)

 

提督は携帯用の灰皿を取り出すと何食わぬ顔でまだ大分残っていた煙草をその中に入れた。

 

「灰が落ちるから?」

 

「お前の希望を受け入れた証だ。ほら」スッ

 

「やん♪」

 

 

「大佐ぁ」

 

「ん?」

 

「曇ってるわねぇ……」

 

「そうだな……」

 

空は未だに曇天。

普段燦燦と降り注いている日差しも今はなく、代わりに厚い雲のカーテンの向こうから少しだけ温い鈍い光を送っていた。

 

「でも涼しいわよねぇ……」

 

「そうだな……」

 

「……風、少し強くなってきてない?」

 

「うん? そうか?」

 

「うん。ほら風でスカートが」ピラッ

 

「抑えてろよ」

 

提督は風で黒い下着が丸見えとなった龍田の方をなるべく見ないように意識しながら渋い顔をしてそう言った。

 

「いいじゃない二人きりなんだから。それにいちいち抑えてたら寝難いし」

 

「目のやり場に困る」

 

「え? 見てくれるの?」

 

「おい、痴女」

 

「違うわよ。それだけ親しい仲ってだけでしょ?」

 

「慎みを持って欲しいんだが……」

 

「だ・か・ら、お互いこれくらいは気にならない仲なら問題ないじゃない」

 

「下半身が冷えると風邪をひくかも」

 

「ひいたら大佐に看病してもらうから大丈夫」

 

「俺が看病するのは確定なのか」

 

「風が吹きすさぶ中女性を下着丸出しで放置した結果と思えば……」

 

「酷いな」

 

あまり表情を変えない提督にしては珍しく、彼はジトっとした目で龍田を見つめながらそう言った。

 

「大佐が?」

 

「いや、お前だ」

 

「ふふ、何のことかしらぁ?」

 

「……もういい。好きにしろ」

 

「……うん♪」ゴロン

 

(多摩とは別の意味で猫らしいな)




龍田いいですよね。
初期からいる軽巡ですが、最初からキャラが立っていたので否が応にもほとんどの提督は印象に残っているのではないでしょうか?

彼女が改二になったらどうなるんでしょうね。
今の状態でも十分に満足しているだけに、その事を考えると余計に気になります。


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第39話 「差し入れ」

朧と大潮が基地の中庭でキャッチボールをしていました。
それを偶然見かけた青葉は早速実況体制を整え……。


「朧さーん、いきますよー!」

 

「大潮! あんまり強く投げちゃだめだからねー!!」

 

「分かってまーす! せー……の、よっ!」

 

「あ……」

 

「大潮選手振りかぶって投げました。これは……凄い!手加減して投げたつもりなのでしょうが、大潮選手の投げたボールは朧ちゃんを遥かに越えて基地の二階に……あ、あそこの窓って……」

 

「青葉、あんた何してんの?」

 

「あ、衣笠。てへへ、暇だったのでつい実況を。というかあのボールが飛んでいった方って……」

 

「え?」

 

 

大潮がボールを投げる数分前の執務室。

 

「大佐、これ作ってみたんですけど……」

 

昼間、大和と長門が提督に差し入れがあると彼を訪ねてきた。

部屋に入るなり大和はちょっと恥ずかしそうにしながらも、提督にあるお菓子を彼の前に出した。

 

「ケーキ……。大和、お前が?」

 

「私も一緒に作ったんだがな」

 

自分を忘れてもらっては困ると言いたげな目で長門が口を挟む。

 

「長門と一緒に作ったのか?」

 

「なんでそんな意外そうな顔で見る?」

 

「ああいや……悪い」

 

「まぁ分からなくもないけどな。でもな、私はこれでも意外に器用なんだぞ?」

 

「そうですよ大佐。これ、確かに一緒に作りましたけど、作り方は殆ど長門が……」

 

ガシャーン!

 

窓ガラスを割って突如何かが部屋に侵入してきた。

長門は一瞬で警戒態勢に移るも間に合わず、彼女の反応を嘲笑うかのように侵入物はその横を通り過ぎてそして……。

 

グシャッ

 

ケーキがボールの直撃を受けて四散した。

 

「 」

 

「あ、ケーキ……」

 

「……ボール」

 

目の前で起きた事が信じられず言葉を失って硬直する大和。

ボールによって粉々になったケーキを唖然とした顔で見る長門。

ケーキを壊した後に力を失って足もとに転がって来たボールを見て全てを理解し、渋い顔をする提督。

三人とも反応はそれぞれだったが、全員共通してその場に不運な事故が起こったことは無意識に自覚をしていた。

 

 

「ごめんなさい」「申し訳ございません」

 

時は昼過ぎ、提督の目の前にはボールが割った窓がある場所を特定して青い顔をして訪ねてきた大潮と朧が深く彼に頭を下げていた。

 

「まぁ悪気はないのは分かるからあまり責めるつもりはないが。だが……な」チラ

 

提督がふと視線を向けた先には、ケーキを破壊されたショックで部屋の隅でしゃがみ込んで落ち込んでいる大和と、

 

「すん……」

 

それを励ます長門の姿があった

 

「まぁそう落ち込むなよ。また教えてやるから」

 

 

「まず謝るのならあいつらにだろう」

 

「は、はい!」

 

「そ、その通りです!」

 

「大和さんごめんなさい!」

 

「わたしが加減しなかったばっかりにごめんなさい!」

 

「ぐす……い、いいの……二人とも気にしないで。私もそんなに……うっ……」

 

(も、もの凄く気にしてる……)

 

(わ、わたしは何という事を……)

 

(大和ってこんなに打たれ弱かったか?)

 

(少なくとも私の認識では違うな)

 

(勝手に人の心に入って来るな)

 

(ふふん♪)

 

提督と長門はともかく、当事者の二人は予想以上の大和の悲観に暮れている様子にタジタジするしかなかった。

ちょうどそんな時に長門が提督を肘で小突いてきた。

 

「大佐、出番だぞ」ヒソ

 

「慰めろと?」ヒソ

 

「当事者が謝って立ち直らなかったんだ。それしかないだろう?」ヒソ

 

「……むぅ」

 

長門の押しに提督は負け、取り敢えず声を掛ける。

 

「大和」

 

「……ぐす、はぁい……」

 

「まぁそのなんだ。俺はどちらかというと洋菓子より和菓子の方が好きだからそう落ち込まなくてもいいぞ」

 

「……っ!」

 

大和は提督の言葉にその日一番に目を大きく開いて更に涙を溢れさせた。

 

「そこでそう言うか……」

 

対して長門はかなり呆れた顔をして溜息を吐く。

 

(や、大和さんが……!)

 

(た、大佐何をしたの!?)

 

(なん……だと……)

 

「た、大佐ごめんなさい……。わ、私……大佐が和菓子が好きなのにケーキなんか……」

 

(ああ、そういう事か)

 

提督はようやくそこで自分の発言の不味さを理解した。

 

「いや、大和さっきのはそういう意味ではない。お前を励まそうとして返って傷つけてしまった俺の無神経さに非がある」

 

「そんな……」

 

「俺は別にケーキが嫌いなわけじゃない。ただ、比べるとというだけの話だ。今回はこんなことになって残念だが、またお前が作ってきてくれるのなら喜んで食べさせてもらうぞ」

 

「大佐、それは私達が大佐に食べさせ――」

 

「お前は黙ってろ」

 

「ふっ……」

 

「え、なんでそこで笑うの? 大潮?」ヒソ

 

「ごめんなさい。わたしも分からないです……」ヒソ

 

ギュッ

 

「ん?」

 

「大佐」

 

「うん?」

 

「それ、本当ですか?」

 

提督は何だか凄く嫌な予感がした。

 

「大和、本当とは?」

 

「私が大佐に食べさせても……?」ジッ

 

(そんな期待する目で見る……長門、さっきの笑いはそういう事か)

 

「大佐……?」ジッ

 

「……まぁそれでお前の気が済むのなら……」

 

「!! ありがとうございます! 私今度は今日よりもっと頑張りますね!」

 

「あ、ああ……」

 

「え? え? どういう事?」

 

「ふ、ふぇ~ん長門さぁん」

 

混乱する朧と訳が分からず理由が気になって半泣きになる大潮に、長門は半ば呆然としている提督を面白そうに眺めながら優しい声で答えた。

 

「まぁ大人になれば分かるさ」




なんか青葉の出番の少なさというか、扱いに本人から文句がきそうですね。
や、でも青葉が嫌いなわけではなりませんが(寧ろ好き)

大和、強いんですけど燃費半端ないですねぇ(遠い目)
まぁ弾薬しか痛くないんでが、それでもそのおかげで演習にすら気を配らないといけない始末にw


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第40話 「実力」

第二次AL・MI作戦。
海軍が行ったこの大規模な作戦は、提督たちの獅子奮迅の活躍もあってなんとか無事成功に終わった。

だが、作戦後もこれらの海域は未だに完全に安全になったとは言えず、定期的に出撃して残存、ないし増援勢力を発見して駆逐しなければ他の海域と比べても危険なままだった。


「第一艦隊帰投しました」

 

「制圧、ならずか」

 

主力艦隊の出撃からの帰還を加賀から聞いた提督は、事前に受けていた結果報告に目を通しながら淡々とした声で言った。

 

「はい。後一歩のというところですが、まだ決定打には及んでいないようです」

 

「ふむ、できればあそにはあまり出撃させたくないんだが、こうやって定期的に叩かないと危ないしな。飛龍達は大丈夫か? 再出撃は可能か?」

 

どうやら作戦実行中の海域はなかなか難度が高いようで、出撃も複数回及んでいる所為か提督は艦隊の娘たちの状態が気になるようだった。

 

「……飛龍以外は高速修復によって出撃可能です」

 

「む、疲労か?」

 

提督は加賀の言葉に、唯一入渠を必要としない被害を受けつつも彼女が出撃可能メンバーから外された理由を即座に察知した。

 

「はい。被弾こそしていませんでしたが、精神的にはそろそろ限界がきていたみたいです」

 

「そうか……」

 

 

バン!

 

「第一艦隊帰投したぞ! 大佐、もう一度! もう一度じゃ! 今度こそ決めてくる!」

 

余程悔しいのか、ノックも無しに利根がイライラした様子で勢いよく作戦司令室に入ってきた。

提督も普段なら嗜めるところだったが、彼女たちの苦労を思うと敢えてそこは注意せずに彼女の帰還を目認するだけに留めた。

 

「ね、姉さん落ち着いて」

 

「利根、焦ってはダメよ」

 

筑摩と妙高が二人して気が立っている利根を宥める。

 

「疲れたぁ……でもまだいけるよ? ね、飛龍?」

 

「ふぁ……え? も、勿論!」

 

「……」(飛龍?)

 

蒼龍と雲龍は疲れている様子でこそあったものの、それでもリベンジする気は満々ようでその目からは闘志の燃える炎が滾っていた。

だが、そんな彼女達に対して飛龍だけは、大佐の懸念通り疲労が溜っていると見え、蒼龍の問いにも一歩遅れた反応を見せた。

 

「皆、度重なる出撃にも拘らず意気軒昂で結構だ。それでは準備が整い次第再度出撃、と言いたいところだが……飛龍」

 

「は、はい?」

 

唐突に自分の名前だけ呼ばれた飛龍は何か嫌な予感を感じた。

 

「お前は此処に残って休憩しろ」

 

予感は的中した。

そして当然の如く飛龍は自身の万全を訴える。

 

「っ! 大佐! わたしまだやれます!」

 

「やる気があるのは分かる。体力もまだ大丈夫そうだしな」

 

「なら……!」

 

「だが、心の方はそうもいかんだろう。お前、個人の戦果データが段々落ちてきているぞ」

 

「そ、それは!」

 

提督の私的に飛龍は動揺した顔をした。

それでも無理に虚勢を張らずに言い募るだけにしようとしたのは、彼女自身もその事を自覚していた証拠と言えた。

 

「別に責めてはいない。それだけお前の精神的疲労が限界に近くなっていただけだ」

 

「う……で……くぅっ……!」ポロポロ

 

ついに効果的な言い訳が思いつかなかった飛龍は悔し泣きをする。

そんな彼女の頭に手を乗せて、提督はなるべく温かく聞こえるように優しい声で言った。

 

「飛龍よく頑張ったな、大丈夫だ。お前の働きのお蔭でここまで来れたんじゃないか。後は任せろ」ポン

 

「……」

 

「いいな?」

 

「……了解です。皆ごめんなさい!後は……」

 

提督の指示を素直に受け入れた飛龍はまだその目に涙を浮かべつつも、努めて明るい顔をして蒼龍達の方を振り返るとすまなそうに言った。

そんな彼女に仲間たちも頼もしい顔で応える。

 

「任せるがよい!」

 

「飛龍さん、お疲れ様です。後は姉さんと私達で何とかしてみせます」

 

「筑摩の言う通りです。あなたは安心してゆっくり休んでくださいね」

 

「うん、絶対大丈夫だから」

 

「皆……」

 

飛龍はその言葉に感動して再び涙を流しそうになったが、雲龍の続いて出た言葉にそれは止められた。

 

「で、飛龍が抜けた穴は誰が塞ぐのかしら?

 

 

当然の疑問である。

そしてその疑問に答える為に、提督は傍らに先程から佇んでいたある女性に声を掛けた。

 

「……加賀」

 

「!!」

 

名前を呼ばれた女性にその場にいた全員の視線が集中した。

 

「はい」

 

「頼めるか?」

 

「……二ケ月ぶりの出撃ですか、了解です」

 

提督の鎮守府では、ケッコンまでに到達した艦娘は他の仲間の成長を促すために一時的に遠征以外の表に出る任務から身を引く決まりとなっていた。

それは一見怠惰にも思えるが、そこまでに到達すること自体が艦娘にとって一種の栄誉とも言えた。

勿論そのままだらしなく過ごしているわけではなく、その分基地の内務に身を置き、対象となった艦娘はしっかり仕事はしていた。

 

「赤城にも入ってもらうか?」

 

「いえ、ここまでやってくれていたら十分です、交代は私だけで。飛龍達はよくやってくれました」

 

「加賀……」

 

てっきりいつもの無愛想な顔で憎まれ口を叩かれると予想していた飛龍は、加賀の意外な思いやりのこもったそんな言葉に感動した顔をする。

 

「飛龍、お疲れ様です。あなたの成果は成ります。安心して」

 

「……うん。お願い」

 

ここは自分も素直に礼を言わなければ、飛龍がそう判断して続いて加賀に礼を述べようとした時だった。

 

「あら、随分しおらしくて聞き分けが良いのね。ま、二航戦だからそんなものかしら」

 

なんともひどいタイミングでいつもの加賀がそこにいた。

 

「なぁ!?」

 

「ちょっ、なんですって!?」

 

思いがけないカチンと来る言葉に真っ先に飛龍だけでなく、蒼龍も反応する。

 

「元気じゃない」

 

加賀はポツリと言った。

加賀に抗議をしようとした矢先に更に予想外な事を言われ飛龍と蒼龍は目を点にする。

 

「……え?」

 

「は……?」

 

「……出撃します」クス

 

「ああ、行って――」

 

提督は加賀のそんな悪戯めいた励ましにの行動を内心微笑ましく思いながら出撃の許可を出そうとした。

しかし、

 

「大佐」

 

不意に加賀は大佐の方を振り返ってを呼んだ。

 

「もしかしてこの出撃って前の時の罪h」

 

「いや違う、公私混同はしない。必要だと判断したからお前を頼んだだけだ」

 

加賀が言おうとしたことを察した提督は彼女がそれを皆の前で言い切る前に、誤解を解いた。

 

「……なら、いいんですけど。では、行って参ります。第一艦隊出撃」

 

「んん? 加賀? 大佐? あ、ちょ……引っ張るでない!」

 

「で、では大佐行ってきますね!」

 

「朗報をご期待ください」(大佐と加賀さん、何かあったわね)

 

「え、何よちょっとー!? 気になるじゃなーい! あ、大佐行ってきまーす!」

 

「……むぅ。了解」(なんか面白くない)

 

 

 

――そして出撃から間もない頃。

 

○AL海域北方、第一目標地点付近。

 

「何この空気……。一人変わっただけで緊張感が……」

 

蒼龍が強張った顔でぽつりとお漏らす。

飛龍に代わり加賀が新たに入ったその艦隊の仲間達は、場を支配する空気に言いようのない緊張感を感じていた。

 

「飛龍さんと蒼龍さんの賑やかな空気も好きなんですけどね。でもこれはこれで身が引き締まりますね」

 

「うむ、そこは流石は加賀と言ったところじゃな」

 

「姉さんは基本誰と一緒でも変わらないですよね……あはは」

 

「……」

 

「雲龍、どうかしたの?」

 

一人だけ先程から無言だった雲龍に加賀は声を掛ける。

 

「……別に」ブス

 

「気になる事があるなら今言った方がいいわ。作戦行動中に気が散ったら困るもの」

 

明らかに機嫌が悪そうな雲龍に、加賀は部隊の士気を保つために彼女に不満を吐露させようとした。

 

「別に大丈夫。へい……あれ? 加賀?」

 

尚も雲龍が理由を話すのを拒否しようとした時だった、彼女は加賀のある点に気付き不思議疎な顔をして逆に訪ねてきた。

 

「何かしら?」

 

「それ、あなたが装備してるの。いつも装備してる烈風改じゃないのね」

 

「……」

 

加賀の肩がピクリと動く。

 

戦闘機烈風改は今のところ提督の基地には一つしかない最強の戦闘機で、装備するのは大体空母の中で一番の実力のある加賀であった。

このような理由もあって烈風改は半ば加賀の専用の装備となっており、その事については加賀自身は勿論、他の仲間たちも暗黙の内に認めるところとなっていた。

専用装備、本人は態度には出してないつもりだったが、加賀はこの戦闘機をとても大切にしており、その整備自体も自ら整備妖精に整備の仕方を習う事によって常に自分で行っていた。

 

故にその装備を加賀が持っていない事は不可解であり、雲龍の疑問も当然と言えた。

 

「ちょっと……ね」

 

表情こそいつもの通りだったが、加賀は雲龍の質問に答えたくないのか視線を僅かに泳がせる。

 

「あ、本当だ、珍しい。あんなに大切にしてた戦闘機なのに持ってないなんて……もしかしてさっき提督と話してた事とかんけ……もが!?」

 

雲龍の指摘に気付いた蒼龍が興味がありそうな顔で更に加賀を問い詰めようとするも、その口は唐突に妙高によって背後から塞がれた。

 

「蒼龍さん、ダメ。これ以上は」

 

「もがが?」(妙高?)

 

「私も妙高さんに同意です。蒼龍さんここは大人しくしてま……」

 

「む、何やら気になるぞ! 加賀よ! 一体なにが……もがぁ!?」

 

筑摩の想像以上にやはり筑摩だった彼女が蒼龍に続いて加賀を追及しようとしが、意外にもその口は事の発端である雲龍にふさがれた。

 

「雲龍さん……」パァ

 

「……任せて」

 

雲龍は気付いていた。

皆から質問をされそうになっている間、加賀が俯き僅かに肩を震わせていたことに。

これは触れない方がいい。

雲龍は即座にそう判断したのであった。

 

「……取り敢えず行くわよ。皆着いて来て」

 

肩を震わせていた加賀はいつの間にか元に戻っており、いつもの落ち着いた声で進軍を促す。

だが心なしか彼女の目つきはついさき程の時と比べて険しくなっており、何を思い出したのかその身からは怒りとも恨みともつかぬ黒いオーラが湧き出していた。

そしてその感情の矛先は理不尽にもこれから敵である深海棲艦たちに向けられようしていたのであった。




3-5、1時間くらいかけて利根姉妹・妙高・二航戦コンビ・雲龍で攻略していたのですが、どうにも最後が上手くいかず、そんな時に飛龍が一人だけ無傷だったけど疲労状態だったので久しぶりに加賀を動かしてみたらあら不思議。
北方棲姫を小破未満の被害で夜戦で仕留めた上に、その勢いのままボスを全員被弾無しでクリアまで導いてくれました、一回で……。
最強の空母は伊達ではないですね。

あ、烈風改の話については既出ではありません。
これから出す予定ですw


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第41話 「アクシデント」

AL北方出撃任務の話の前に起こったちょっとした出来事。
加賀に何があったのか。
何故提督は一瞬狼狽えるような様子を見せたのか。
実はこんな事がありました。


「攻撃機(五十二型丙)の改造ですか」

 

「そうだ。代償として烈風二機のパーツを使ってしまうが、それを補って余りあるくらいの性能は期待できるらしい」

 

「それで私の艦載機を?」

 

「悪い。確かに格納庫には他にも烈風があったが、丁度近くにお前がいてな」

 

「いえ」

 

加賀は言葉こそ普段通りで落ち着いていたが、微妙にそわそわした態度をしていた。

どうやら提督に装備を渡す時に航空甲板ごと預けたので配備したままだった『ある機体』の事が気になっているようだ。

 

「大丈夫だ。使った機体の代わりはちゃんと……」

 

 

提督が少し読みが違う気遣いの言葉を加賀に掛けよとした時だった。

執務室の扉がノックもなしに勢いよく開かれ、緊張した顔の青葉が入って来た。

どうやら何かトラブルでもあったらしい。

 

「大佐!」

 

「どうした?」

 

「あ、あの……失敗です」

 

「ん? なにが?」

 

「戦闘機……烈風を使った新しい機体の開発です」

 

「何か問題でもあったか? 改造に回す前に機体のチェックはちゃんとしたはずだが」

 

「機体の状態自体は確かに全く問題ありませんでした。でも問題は状態ではなく機体自体にあったんです」

 

「……どういう事だ?」

 

ここにきて流石に提督も原因が予測できなくなったのか、若干強張った顔で訊いた。

 

「開発に使った一機が烈風じゃなかったんです」

 

「なに?」

 

「その……ほら、今回使ったのは加賀さんが装備してた烈風だったじゃないですか?」

 

「ああ。演習前に装備させたところで開発の事を思い出したついでに……」

 

「それ、烈風改だったんです……」

 

恐る恐るといった口調で青葉は衝撃の事実を口にする。

 

「なに……?」

 

提督はその事実を聞いた瞬間、全身から血の気が引くのを感じた。

別に貴重な艦装が消失した為ではない。

確かにそれもショックといえばショックだったが、理由は他にあった。

それは……。

 

「……っ!!」ブァッ

 

提督の後ろで加賀が目を見開いて大粒の涙を流していた。

 

(うわ、あの加賀さんが……)

 

青葉はここでようやく自分の予想以上の事態の深刻さに気付く。

 

「か……」

 

提督は一瞬で乾いてしまった口腔から言葉を絞り出すことができず、言葉にならない掠れた声だけが出た。

 

(大佐が加賀さんを見て真っ青になってる……)

 

青葉は迅速に行動した。

この場にいてはマズい。

早くここから立ち去るべきだ。

 

「あ、あの取り敢えず失礼しました! し、暫く誰も入らない様に貼り紙しておきますから!」

 

 

バタンッ

 

執務室には再び提督と加賀だけとなった。

ただ前と違うのは、場に立ち込める雰囲気が提督がかつて感じた事がない程重苦しいという事だ。

 

「……加賀」

 

提督はその雰囲気の中、なんとか気合で全身に力を送り、気力を振り絞ってようやく言葉、加賀の名前を呼ぶことができた。

 

「……ひぐっ、ぐす……。」プルプル

 

加賀は提督が言葉を掛けた瞬間とうとうその場に膝を付き、子供の様に声を我慢して泣き始めた。

 

「か……」

 

その、絶対に見る事がないであろう加賀のあまりにもの悲壮感漂う様子に提督は再び言葉を失う。

 

「加賀……」

 

だがそれでも今は、何をおいても先ず謝らなければ。

提督は再びその身を気合で奮い立たせ、鉄の意志でそれを敢行しようとしたが、

 

「……っ」フイッ

 

自分と目が合った瞬間に加賀にそっぽを向かれてしまった。

 

(……そりゃそうだよな)

 

「加賀、謝って済むことではない事は重々承知している。だが、謝らせてくれ。悪かった。本当に」

 

「……」

 

「あれはお前専用の装備だったからな。本当に悪い事をしたと思っている」

 

「……」

 

「月並みな台詞だが何でも言ってくれ。償いはする」

 

確かに月並みのセリフだったが提督は本気だった。

贖罪の為なら自分のできる限りのことは何でも応える所存であった。

その誠意が伝わったのか、『何でも……』という提督の言葉の辺りで加賀はピクリと肩を反応させてようやく提督の方を振り向く。

 

「……ほ……っとう……?」チラ

 

「ああ」(泣きはらした目が赤い……ぐっ……)

 

普段見る事のない純心な加賀の顔に、提督の胸は再び締め付けられるような罪悪感を感じた。

 

それに対して加賀は提督のその答を聞くと無言で近付き、彼の目の前に立つとジッ見つめてきた。

 

トコトコ

 

「……」ジッ

 

あくまで無言。

だが、お互い付き合いの長い間柄である。

提督はその無言のメッセージを理解すると彼女を優しく自らの胸に抱き寄せた。

 

「……」ギュッ

 

どうやら正解だったようで、加賀は俯いたまま提督の胸に顔を埋める。

 

「……暫く、この……まま」スン

 

「分かった」ナデナデ

 

提督は空いた片手で加賀の頭を撫でながら静かに時の流れに身を任せた。

 

 

1時間後。

 

「落ち着いたか?」

 

「……」コク

 

まだ胸に顔を埋めたまま加賀はコクリと頷く。

 

「本当に悪かったな」

 

「もう……いいです」

 

「俺はそうは思ってない。いつかまた手に入れることができたら、必ずお前に配備する。それまでは六〇一の方の烈風で我慢してくれ」

 

「……六〇一でも十分です。大佐、ありがとうございます……」

 

「礼は言わなくていい。ここは俺の謝罪だけ受け入れておいてくれ」

 

「……はい」

 

「……ところで、もう離れないか?」

 

加賀に対する贖罪の気持ちは本当だったが、それでも些か抱き締めてから時間が経っているように感じた提督は、確認するような口調で聞く。

 

「さっき何でもするって言いました」

 

ちょっとだけ顔を上げ、視線だけを提督に向けて子供の様に拗ねた顔で加賀は言った。

 

「ああ、言ったな」

 

「じゃあ、まだこのまま……」

 

「ずっと立ったまま抱き締めてたらいいのか?」

 

提督の細やかなこの疑問に暫し黙考する様子を見せた加賀は、先程のより明らかに少し顔を赤らめてこう言った。

 

「……じゃあ、座って膝に載せて……それでまた胸に抱いて下さい」

 

「……分かった」

 

ギシッ

 

「ほら」

 

ソファーに腰かけた提督は両手を広げて加賀にそこに来るように促す。

 

「……ん」

 

加賀は自分の希望通りに抱かれると、また無言になった。

提督はそんな彼女をあやしながらちらりと横目で見た。

 

「……」チラ

 

「……すん」グス

 

(まだ完全には立ち直ってなかったのか。これは本当にとんでもない事を俺はしたな)

 

ナデナデ

 

提督が再び頭を撫でるとそれに反応して加賀も強く抱き付いてきた。

 

「……」ギュー

 

「……良い子だ」

 

「……!」カァッ

 

自分の行動を振り返って恥ずかしくなったのだろう、加賀は座って抱き締める事を提案した時より更に顔を赤くして、より深く提督の胸に顔を埋めた。

 

「今は恥ずかしさは忘れろ。誰もいない」

 

「……はい」

 

(……良い匂いだな……)

 

 

更に1時間後。

 

「すぅ……ん……む……すぅ……」スリスリ

 

提督の膝には丸くなってすっかり安らかな寝息を立てている加賀がいた。

 

(寝たか)

 

(さて、どうするか。確かに六〇一でも問題はないくらいの性能だが、ずっとあれを愛機として大事にしていたからこそのあの動揺だ)

 

「……ぃ……さ……き……」zzz

 

「何とかしてやりたいな」ナデナデ

 

提督は彼女の頭を撫でながら解決策を模索するのであった。




はい、リアルに誤って烈風改を廃棄してしまいました。
その少し後にアップデートで装備のロックができようになったので、そのやるせなさと来たら筆舌に尽くし難いものがありますw

まぁ、いいんですけどね。
あまり装備の性能とか数値の計算したり気にしないいい加減な遊び方をしていたので。

でも今はどうやっても手に入らないという事を考えると、やっぱりちょっと後悔もしますね。


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第42話 「悩み事」

大和が悩まし気な溜息を吐いて砂浜に座っていました。
大和型は燃費の関係で演習以外ではあまり出番がないので実務がないと結構暇を持て余しています。
武蔵も当然同じ境遇であり、そんな大和を見掛けて雑談に興じる事にしたようです。


「……はぁ」

 

「どうした大和、浮かない顔だな」

 

「武蔵……」

 

体操座りをして俯いていた大和が顔を上げた。

 

「何かあったのか?」

 

「うん、まぁ……」

 

「どうした?」

 

「……私って」

 

「うん」

 

「私の練度なんだけど……」

 

「ああ」

 

「他の戦艦の人たちがレベル75以上なのに、どうして私だけ60で止まってるのかなぁって」

 

「ん? そうなのか?」

 

「ええ、改造を受けてからずっとこのままなの」

 

「へぇ……」

 

「私、一応大和だから、自惚れのつもりはないけど戦力にはなるでしょう?」

 

「そうだな」

 

「なのに、なんで60から育てて頂けないのかなぁって……」

 

「ふむ……」

 

大和がこの鎮守府に来てまだ間もない事は事実であった。

しかし、大和型はその火力が示す通り艦隊の切り札とも言える貴重な戦力、その彼女が自分のレベルが高くないことを気にしているのはある意味当然のことと言えた。

 

「燃費の事は理解しているつもりよ? だから活躍の場は演習だけだったとしても不満はないの。でもそれもない……」

 

「大佐の事だからお前が懇願すれば育ててくれるとは思うが……」

 

「何か意図があってそうしているのなら私からそんな事をするのはちょっと気が引けるかな……」

 

「……ふむ」

 

「なんでだと思う?」

 

ちょっと泣きそうな顔で大和は武蔵に聞く。

そこまで思い詰めていたのか、顔には出さなかったが武蔵は大和の意外なナイーブさに内心驚いていた。

 

「そうだな、単純に」

 

「うん」

 

「取り敢えずお前を最低でも改造の域には達しておきたかっただけなんじゃないか?」

 

「最低でも……まぁそう考えるとちょっとは気が楽になるけど……」

 

武蔵の言葉に大和は少し考えるような顔をする。

 

「私が推測するに、大佐の今の育成優先度は駆逐艦の全体的な練度の底上げと、次いで成長限界に近い艦娘、つまり戦艦の育成だと思う」

 

「なる……ほど。それなら確かに駆逐艦は別としても私以外の戦艦の人たちが演習に加わっているのは説明が付くわね」

 

「空母とかも軽空母じゃなくて正規空母を優先しているのは、今はこれ以上改造できる艦がいないからであって、結局は練度の差と戦術的な意味合いも含めて演習に参加させているだけだろう」

 

「……」

 

「ま、あくまでこれは私の推測だがな。個人的にはこんなところだと思っている。納得できたか?」

 

「……うん。武蔵の説明を聞いて改めて自分で考えてみるとそれが自然というか、納得できるわね」

 

大和は今度は明らかに前と比べて表情が柔らかくなっていた。

どうやら武蔵の説明にかなり納得がいったようだった。

 

「ん、そうか。まぁ理解してもらえたのならなによりだ」

 

「武蔵、大佐の事よく見ているのね」

 

「はは、一応お前よりかは先にこっちにいるからな。それに……」

 

「それに?」

 

「愛しているからだ」

 

「愛……」カァ

 

迷いのない武蔵のハッキリとした言葉に大和は顔を赤くする。

 

「まぁ艦娘だから提督に惚れ易いようにできているのかもしれないがな。でも私はこの気持ちは偽りでないと信じている」

 

「そう……」

 

「……お前は本部の大和とは随分違うな」

 

「え?」

 

「ああ、いや。海軍の本部の方にも大和がいるんだが、そいつとお前とは随分違うんだなぁってな」

 

「それは……当然じゃない。見た目は同じでも育つ環境によっては性格だって多少は変わるわよ。ましてや本部となればそれなりにしっかりして当然よ」

 

「ん? 私はまだ本部の大和の性格までは説明していないぞ?」

 

「でもしっかりしてるんでしょ?」

 

「まぁ……な」

 

「やっぱり」

 

「その、すまん」

 

「え? あっ……別に謝らなくていいわよ。大丈夫、私だって大和だもん」

 

「そうか……」

 

「うん……」

 

「あ」

 

「なに?」

 

「そういえばお前、この前大佐にケーキを作ったらしいな?」

 

「あ……ま、まぁね」

 

何か嫌な事を思い出したのか、大和は一瞬顔をひきつらせたかと思うと目を逸らしながら答えた。

 

「喜んでくれたか?」

 

「え……えぇ、いろいろあったけど結果的には丸く収まったわ」

 

「は? 丸く?」

 

「う……ちょっと事故があって作り直したのよ」

 

「へぇ」

 

「結果的には最初より更に上手くできたし、大佐もちゃんと食べてくれたから万事問題なしよ」

 

「そうか」

 

「うん」

 

「……」

 

「……」

 

「さて、戻るか」

 

「そうね、お腹も空いたし武蔵のお蔭で悩み事も晴れたし」

 

「それは良かった」

 

「うん、ありがとうね」

 

「いいさ、気にするな。あ、そういえば今日は大佐が飯を作ってくれるらしいぞ」

 

「え?」

 

武蔵の言葉に大和は目を丸くする。

 

「食堂に行ってみろ。大佐が厨房に立っているはずだ」

 

「な、なんで大佐が……」

 

「料理が好きなんだそうだ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「これは大佐の好みの味とか知る好機だと思うぞ?」

 

「……! なるほど!」

 

「次はケーキ以外も作ってみるがいいさ」

 

「そう、ね。……ん?」

 

「どうした?」

 

「武蔵は何か作ったりはしないの?」

 

「え? いやぁ、はははは。私は食べる専門だからな」

 

「そ、そう」(料理作れないのかしら……?)

 

「まぁいいじゃないか。行こう」

 

「そうね」クス




本文にも書いてある通り、大和はレベル60で止まったままです。
まぁそれでも十分に強い事には変わりはありませんが。

風邪で頭が回らない所為か特にオチもない話ですね。
うーん……。


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第43話 「迂闊」

夜。
皆が寝静まった中、提督の執務室からはまだ灯りが漏れていました。
ちょうどお手洗いに行く途中だった川内はそれを見つけ、こっそり部屋に入って提督の後ろに立つと……。


「……」カチャカチャ

 

「大佐ー、何してるのー?」ピョン

 

「っと、おい」

 

後ろから飛びついて来た川内に提督は何か焦った様子の声を出す。

 

「え?」ビクッ

 

「危うく失敗するところだったぞ」

 

「ご、ごめんなさい……。何してたの?」

 

「これだ」

 

「……艦? 玩具?」

 

川内が机の方を見ると、そこには作りかけの軍艦の模型と切除されたプラスチックのパーツが散らばっていた。

 

「ま、厳密にいうと模型だ」

 

「うん。ミニカーみたいなものよね」

 

「そうだな。こっちは自分で組み立てて完成させないといけないやつだが」

 

「何作ってるの?」

 

「そこの箱を見てみろ」

 

箱には川内達の間でも珍しい存在である水上機母艦の瑞穂の絵が描かれていた。

 

「んー? 瑞穂……ね」

 

「ああ」

 

「なんで瑞穂なの?」

 

「なんでと訊かれると困るが、まぁ強いて言うと水上機母艦だからだな」

 

「え?」

 

「ほら、うちにいるのは、意図的に止めている結果ではあるが千歳と千代田しか水上機母艦はいないだろう?」

 

「うん」

 

「何となく玩具屋の模型コーナーを立ち寄った時にふとその事を思い出したらつい、な」

 

「へぇ~」

 

「水上機母艦は確かに強力とは言えないが、通常の空母では対応できない夜戦もこなせるし装備によっては砲撃や雷撃も可能な器用な艦だ」

 

「そだね。私も昔は千歳さん達に……あっ」

 

「分かったか?」

 

「うん! 練度が低い子たちの育成と護衛も兼ねてるのね」

 

「そうだ。器用な上に燃費も良い。お前たちはもうあまり世話にならなくなったから忘れがちかもしれないが、こいつらによる貢献は大きいぞ」

 

「そうだね! 初心は忘れちゃだめって事よね」

 

「その通りだ」

 

「ふ~ん、そう考えると確かに千歳さん達以外の水上機空母がいたらなぁって思うよね」

 

「残念なことに今のところうちでは発見には至っていないがな。だがいつかは見つけたいものだ」

 

「そうだねぇ。ねぇ大佐って艦の模型が好きなの?」

 

「ん?」

 

「やっぱり海軍の提督だもんね。それも仕方な――」

 

「いや、どちらかというと俺は戦車の方が好みだな」

 

「え」

 

提督の言葉に川内は固まる。

 

「軍艦もいいが戦車の方が個人的に惹かれるところがある」

 

「そ、そうなの……? でも大佐は海軍の人だよね? なのにどうして陸の物が好きなの……?」プルプル

 

「確かに、俺も士官学校に入学したての頃は戦車にはさほど興味はなかった」

 

「そ、そうだよね!」パァッ

 

「だがな、当時、今はもういないがその頃の友人に陸軍の人間がいてな」

 

「あ……?」

 

せっかく風が自分に向いて来たと思っていた矢先、川内はまた不穏な予感を感じた。

 

「そいつは女性なんだが、それはもうそこら辺の男の兵士なんか比較にならない程優秀な奴だったんだ。所謂女傑というやつだな」

 

「は、はぁ」

 

「俺は彼女とよく飲みに行ったりしてたんだが、その時にいろいろ陸軍の面白い話を聞かされている内に特に戦車に惹かれたんだ」

 

「……そう。で、でも戦車な……戦車より軍艦の方が種類や数が多いじゃん! わ、わたしは軍艦の方がいいと思うなぁ」

 

川内は動揺して焦りつつも何とか自分、陸から海へ風向きを戻そうと努力する。

 

「いや、海と陸、活躍する場所が根本的に違う物を比較して優劣を決めるのは俺は間違いだと思う」

 

「……ぅ」

 

「俺はあくまでどちらが好きかという事なら戦車の方が魅力を感じると言っただけであって、軍艦は軍艦でそれにしかない魅力があるだろう?」

 

「そ、そうだけどぉ……」ジワ

 

「川内?」

 

「で、でもわたしはぁ……大佐は提督なんだから……ぐ、軍艦の方が好きって……ひっく……言って……」グス

 

皆が慕っている提督である。

そんな彼が、例え一部だけであっても海より陸に思いを馳せているのが川内は悔しくてならなかった。

 

「おいおい、泣く程のことか」

 

「う……ご、ごめんなさい」

 

「いや、俺もちょっとお前の前で無神経だった」ペコ

 

「そ、そんな」

 

「お前にちょっと見て欲しいものがある」

 

「え?」

 

「ほら、あそこの戸棚あれを見てみろ」

 

「棚……? あっ」

 

そこには提督が今まで作ったと思われるいくつもの軍艦の模型が並べられていた。

 

「あの模型の中に戦車はあるか?」

 

「ううん……ない」

 

「恥ずかしい話だが、艦の模型を作っている内にそれに慣れてしまってな。戦車が好きなのは本当だが、いざ作るとなるとどうしても作り慣れたものにしか手がいかなくなったんだ」

 

「あ……軽巡もある!」

 

「ん? 『川内型』も作ってあったと思う」

 

「本当だぁ……♪ 神通もある! あ、こっちは那珂ね! ……あれ?」

 

川内はそこである重大な事実に気付く。

それは……。

 

「ん? どうした?」

 

「大佐、確かに『川内型』はあるけど肝心の、ネームシップの……わたしが……」

 

「ああ、川内か。店を訪れる度に確認はしてるんだが、なかなか店頭に並んでなくてな」

 

「……作って」ボソ

 

俯いて表情が窺えない状態で川内がポツリと言った。

 

「え?」

 

「作って! わたしも作って!」

 

「おい、せんd」

 

「妹達だけあってわたしだけ無いなんてやだ!」

 

「いや、そうは言っても店に在庫が無いんだから仕方ないだろう」

 

「注文は?」

 

「ここが日本からどれだけ離れていると思っているんだ。定期的に入荷する荷物の中にそれがあるのを期待するしかないだろ」

 

「ね、ネット! ア○ゾ○使えばいいじゃん!」

 

「俺はネット通販は使ったことが無くてな。だからアカウントもない」

 

「あ、じゃぁわたしが代わりに注文してあげる!」

 

「川内が川内を注文するのか? なんだかシュールだな」

 

「この際妙な事は気にしないで! はい、注文するよ! パソコン貸して!」

 

「今からか? まあいいが……」

 

「……」カタカタ

 

川内が提督のパソコンを使って自分の通販サイトのアカウント情報を打ち込むと、画面に川内のそのサイトを利用記録を反映したオススメ商品の情報も表示された。

提督はその情報を見て顔をしかめる。

 

「ん? 川内、お前何を買ってるんだ……」

 

「!? こ、これは……ち、ちが……見ないで!」

 

提督に指摘されて川内が画面を確認すると、そこには提督はもちろん妹達にも言えないような物が群れを成して表示されていた。

川内は顔を一瞬で沸騰させたように真っ赤にすると、素早くパソコンの前に回り込み半泣きで必死に提督から画面を隠す。

 

「別に追及する気はないから安心しろ」

 

「いやぁぁぁぁ! 大佐忘れてぇぇぇぇぇ!!」

 

「無理を言うなよ……」




川内が買っていたものって何でしょうね。
特に考えもしないで書いていたので、書き終わった後にそれが何か筆者自身が考え始めるという異常な事態に。

あ、予告ですが近々既出の話ではありますが、R-18の絵をアップする予定です。
また追加したら活動報告の返信でお知らせします。


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第44話 「提案2」

長門が食堂に向っていた時に赤城を発見しました。
赤城も丁度向かうところだったらしく、後ろから掛けられた長門の声に振り返ります。
しかし彼女はそこでとんでもない、あるいはあまりお目に掛かりたくないものまで目にするのであった。

*登場人物がちょっと多いので一部キャラにセリフの前に名前を入れてあります。


「赤城」

 

「あ、長門さん」

 

「これから昼か?」

 

「ええ」

 

「そうか。なら一緒にいいか?」

 

「ええ、構わないですよ」

 

「そうか。良かったなお前達」

 

「え?」

 

長門一人しか認識していなかった赤城は、この言葉に疑問の声を上げる。

後ろを振り返った時は彼女しか見えなかった。

つまり『お前達』というのは彼女の後ろにいる人の事なのだろう。

赤城が少し視線をずらして彼女の後ろを覗いてみると……。

 

レ級「やったー!」

 

ヲ級「ご飯♪ ご飯♪」キャッキャ

 

ル級「はぁ……またあのお味噌汁飲めるんだぁ」キラキラ

 

タ級「……」

 

すっかりお馴染みになった深海棲艦四人組が、一人を除いてにこやかな顔でそこにいた。

 

「……」

 

「ん? どうした赤城」

 

黙り込んだ赤城に気に掛けるような声色で声を掛ける長門。

 

「え、あの……」

 

「ん?」

 

「なんで……」

 

「ああ」

 

「なんですかこの人達」

 

「レ級達だ」

 

赤城の疑問に長門はこともなげに答える。

それに呼応するようにレ級達もタイミングを合わせてきた。

 

レ級「だぁ!」

 

ヲ級「だー!」

 

ル級「え、えっと……」オロオロ

 

タ級「……」ハァ

 

訂正、レ級とヲ級のみがノリ良く合わせてきた。

 

「そんな事分かってるわよ!!」

 

赤城の悲鳴に似た怒声が廊下に木霊した。

 

 

「……」ブス

 

レ級「ねー長門」

 

「うん?」

 

レ級「なんで赤城怒ってるの?」

 

「分からないか?」

 

レ級「分からない!」

 

ヲ級「わからなーい」

 

ル級「いや、ヲ級は分かってるよね?」

 

タ級「……わざとに決まってるでしょ」

 

「……」ビキビキ

 

「落ち着け赤城、別に無断で来たわけじゃない。一応私に断ってはある」

 

「長門さん……でも……」

 

長門の言葉に赤城はなんとか苛立ちを収め落ち着きを取り戻そうするが……。

 

レ級「ねぇ赤城ー、何が気に入らないの?」

 

ヲ級「のー?」

 

タ級「ヲ級、いい加減にしないと怒られるわよ」

 

ル級「そ、そうだよ」

 

能天気なレ級とヲ級の言葉に再び機嫌を損ねて、ムスっとした顔のまま答えた。

 

「……っ、不戦の協定を結んでいるとはいえ所詮は公式なものではない口約束だし、それになによりつい最近まで敵同士だったあなた達といきなり仲良くできるわけないでしょ!?」

 

レ級「えー、でも僕赤城たちとは戦った事ないよ?」

 

ヲ級「ちょっと前までやってた競争はいつも大佐たち時間守ってたしね」

 

「直接的に敵対してなくても勢力的には未だに深海棲艦は海軍の、世界の敵でしょ!」

 

レ級「でも、僕たちの一派はもう暴れるのやめて大人しくしてるもん」

 

ル級「うん……おかげで楽……じゃなかった、のんびりできて嬉しい♪」

 

タ級「二人とも、赤城はそういう事言ってるんじゃないの……」

 

タ級は呆れ顔で新たに能天気組に加わったル級も含めて注意する。

 

「そうです!タ級さ……タ、タ……」

 

タ級「別に呼び捨てで構わないわよ?」

 

「う……た、タ級……サンが言ったとお……」ゴニョゴニョ

 

レ級「え? なに?」

 

ヲ級「聞こえなーい」

 

「う……う……」プルプル

 

「赤城、もういいだろう」ポン

 

「な、長門さぁん、でも……」グス

 

慣れ合いを受け入れきれる事が出来ず、言葉をなかなか紡ぐことができないでいた赤城に長門が苦笑しながら彼女の肩に手を置く。

 

レ級「ね、なんで赤城泣いてるのかな?」ヒソ

 

ヲ級「わ、分かんない。な、何かしたのかなわたし達……」ヒソ

 

タ級「取り敢えずあなた達はこっちで大人しくしてさい」グイッ

 

レ級「あっ、ちょ……むー、むぅー!」

 

ヲ級「ひゃわっ!? んー、んんぅ!?」

 

タ級「ル級、ちょっと頼んだわよ。あの事も伝えておいて」ズルズル

 

ル級「う、うん……」

 

そう言うとタ級は二人の口を両腕でそれぞれ塞いだまま、何処かへ連れて行った。

 

 

「それで、話というのは?」

 

「あ、はい。今日はちょっと……急に来て悪いとは思ってるんだけど……」チラ

 

「……もう気にしなくていいです。どうぞ続けて」

 

自分を気にする目に、レ級達とは違ってル級が気遣いができる性格だと判断した赤城は、軽く溜息をついて長門と同じく先を促した。

 

「は、はい。え、えっとね」

 

「ああ」

 

「私たちまだ海軍とは正式に不戦協定結べてないけど、あくまで私たちの間だけの認識にはなるけど、大佐とは一度ちゃんと皆の前で約束がしたくて……」

 

「ほう」

 

ル級の提案に興味深そうな顔をする長門、対して赤城は僅かに警戒する雰囲気だ。

 

「……それで?」

 

「え、えっとだから……わたしたちの上司……姫に会ってくれないかなぁって」

 

「姫……」

 

「えっ」

 

「……姫は一応大佐が承諾してくれたら会うつもりはあるみたいなの」

 

「待て、姫というと姫級の深海棲艦の事か?」

 

珍しく少し動揺して強張った顔で長門はル級に質問した。

 

「姫は……一応海軍の人たちからは鬼姫級に分けられてるって言ってた気がするけど……」

 

「鬼姫……!」

 

「え、それって……」

 

長門は今度は明らかに驚きの表情する。

赤城も信じられないといった顔だ。

 

「確認例が少なくて公式のデータには詳細は記録されていないが、未確認要注意事項に警告を促す形で存在をほのめかす程度だが載っている。鬼級や姫級を凌ぐ化け物だ」

 

「え、でもそれって大分昔に本部の中将が討伐したんじゃ……」

 

「一体じゃなかっただけだろう。まあそれから暫く海が穏やかになったのは、それだけ配下の連中に及ぼしていた影響力が大きかったという事だろうが」

 

「あ、あの、一応断っておきますけど、その姫と私たちの姫は別です。私たちの姫は生まれたのはそんなに昔じゃない筈だから……」

 

「ふむ」

 

「でも危険な存在には変わりないのよね。そんなのと大佐を安易に会わせるわけには……」

 

警戒と緊張を明確に表に出した赤城がここでル級の提案に異議を唱える。

そんな様子にル級は慌てた様子でこう言ってきた。

 

「あ、ちゃんと武装は解除します! それでも確かに人間よりかは強いけど……な、長門さ……んたち総出なら抑える事はできると……思います。多分だけど……」

 

「……でもねぇ」

 

「……確かに危険だ」

 

「っ、お願い姫を信じて! 姫はあなた達が危害さえ加える気がないなら彼女も何もしないから!」

 

「でも確約は? 保証はできないでしょう?」

 

「……」

 

「そ、それは……」

 

「保証する」

 

返答に困って俯くル級に背後から援護する声がした。

 

「む」

 

「タ級!」パァッ

 

「あなた……」

 

「保証する。その証拠として私は私の命をあなた達に預ける」

 

「えっ」

 

「……」

 

「ちょっとタ級!?」

 

予想外の提案に赤城と長門とル級は三者三様の反応を示す。

だが三人ともタ級のその提案が彼女の覚悟の程を示すものである事は

理解している様だった。

 

「これぐらいはしないと信じてもらえないでしょう?」

 

「でも、でもそんな事レ級は……!」

 

「勿論、内緒。いい?」

 

「あ……う…………ん」コク

 

ル級は諭すような懇願するような、そんな目でタ級に見つめられ、やがて困った顔をしながらも小さく頷いた。

それを確認したタ級は満足そうに微笑んで、今度は赤城達の意思を確認する為に再び彼女たちの方を向く。

 

「どうかしら?」

 

「どうかしらって言われても、いきなり過ぎて……」

 

「……もし仮にお前たちが約束を破ってその代償として私たちがタ級を葬ることがあれば、姫はともかくレ級や他の仲間たちが黙っていないだろうな?」

 

長門が無表情で半ば確信のこもった声でタ級に訊く。

 

「……その時はル級が全力で止めるわ」

 

「ええ!? わ、私!?」

 

「何驚いているのよ? 私達四人の中でレ級の次に強いのはあなたじゃない」

 

「で、でもぉ……」

 

「大丈夫、私を、長門たちを信じなさい」

 

「えっ」

 

「ほほう?」

 

タ級の言葉に赤城は目を丸くして驚き、長門は面白そうににやりと笑った。

タ級は背後のそんな彼女達の顔を知ってか知らずか、タ級自身もまた微笑みながらル級を安心させるように言った。

 

「ね?」ニッ

 

「……信じていいの?」ジッ

 

ル級の心配そうな視線に赤城はしどろもどろする。

 

「え? あ……え? ああ、いや……えぇ……」

 

「ははは、赤城もういいじゃないか。信じよう」

 

そんな赤城達の様子が可笑しくてついに堪え切れなくなって声高く笑いだした長門が赤城に言った。

 

「長門さん……」

 

「ここまで言ってきたんだ、私たちとて相応の態度で示すべきだろう」

 

「……はぁ、分かりました」

 

「ホント!?」パァッ

 

赤城の言葉にル級は心から嬉しそうな顔をする。

 

「ありがとう。信じて……いいの、ね?」

 

タ級もル級ほどではないが、どこか安心した声で改めて念を押すように赤城に聞いた。

 

「大佐には私から伝えます。恐らくあの人の事だから了承するとは思うけど……返事はまたあなた達が来た時にでも。もし了承なら、その時に改めて日取りをこちらから伝えるわ。それでいいですか? 長門さん」

 

「ああ、異論ない」

 

「だそうです。そちらは?」

 

「文句なしよ。ね? ル級」

 

「う、うん!」

 

「じゃぁそろそろ……」

 

お開きにしたかったのだろう。

赤城が解散の合図を取ろうとした時、最後にタ級から衝撃の事実が告げられた。

 

「そうね、レ級達そろそろ連れてこないと食堂の食材がなくなるかも」

 

「え?」 「は?」

 

この言葉には赤城だけでなく長門も目を丸くした。

 

「タ級、レ級とヲ級何処に連れて行ったの?」

 

「食堂よ。元々ご飯を頂くつもりだったんでしょ? 連れて行ってる途中で自分から目をキラキラさせて食堂に走って行ったわ」

 

「おい、あか……早いな」

 

長門が赤城に警告しようとした時には既に彼女がいた場所には姿がなかった。

 

「……っ!!」ダッ

 

(鳳翔さんにお情けでご飯だでも追加で貰っていたのに、あの二人の所為でそれがなくなるかもしれないなんて、私は絶対に……防ぐ!!)

 

 

「……騒がしくてすまんな」

 

「いえ、何処にも似たようない人がいるのね」

 

「いや、赤城とレ級は大分違うと思うぞ? まぁそれでも今あいつが必死なのは間違いないが」

 

「そ、そうなんだ……」

 

赤城が残していった気迫を感じたのだろう、ル級は少し怯えていた。

 

「なぁ」

 

「うん?」

 

「飯、食って行くんだろう?」

 

「ふっ……そう、ね。せっかくだし私も頂いて行こうかしら」

 

「う、うん! お腹空いた!」

 

「はは、じゃぁ行こうか」

 

長門は、まるで気心のしれた友人をもてなすようにタ級とル級を笑顔で食堂へと促した。




姫や鬼以上の敵って出るんですかね。
単純な思考で『鬼姫』なんてオリジナルを作ったりしましたが。

あとまだ筆者は未だにレ級とはあいまみえた事がないです。
出現するマップは俺提督のレベル的にアレ過ぎるので絶賛尻込み継続中です。
彼女の強さは解説だけで十分すぎる程伝わるので……できれば戦いたくないなぁ。


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第45話 「改造3」

潮が上位改造を受けて改二になりました。
普段内気な潮もこの時ばかりは嬉しそうな顔ではしゃぎがちです。


『大佐見てください! 潮、改二になりました!』

 

『お、そうか。お前もついに改二か』

 

『そうなんです! ねぇ、どうですか?新しい潮は!』クルーリ

 

『うん……まぁなんだ、龍驤が騒がなくてよかった』

 

自分の晴れ姿を見てもらいたくて目の前ではしゃぐ潮の姿に、提督は何故か何とも言えない表情で見つめながらぽつりとそんな事を言った。

 

『え?』

 

『いや、なんでもない。良い感じだぞ』ナデナデ

 

『あ……えへへ、ありがとうございます♪』

 

 

『……』ジー

 

そんな提督と潮のやり取りを僅かに開いた扉の隙間から覗く一つの影があった。

 

『……まぁ、アレなら別に……』

 

龍驤は扉から目を離すと小さな溜息を吐いた。

 

『あら龍驤、どうしたの? そんなところで』

 

気付いたら矢矧が直ぐ近くにいた。

ここまで接近されて気付かなかったとは、どうやら様子見に集中し過ぎていたようだ。

 

『ヤハギン……』

 

龍驤はチラッと横目で見た。

だが、ほんの少し視野に入れただけのつもりだったのに龍驤の目に飛び込んできたのは……。

 

『ん?』バインッ

 

『……っ』

 

程よく張って服を内側から押して自己主張している豊かな胸だった。

 

『え? なに?』

 

『な、なんでもない!』

 

『そうは見えないけど……』

 

『大丈夫や。ちょーーーーっと気になることがあっただけや』

 

『それ、大分気になってない?』

 

『……別に』プイ

 

龍驤はなるべく自分の視界にアレが入らないように努めながら不機嫌そうに顔を横に振る。

矢矧は、そんな彼女を不思議に思いながらも気を遣った言葉を掛ける。

 

『……? まぁあまり思い詰めない方がいいわよ? 一人で抱え込んで負担に潰される前に大佐や他の子に相談するのをお勧めするわ』

 

『ふっ……、寧ろ潰せる程のモノすらないんやけどな……』

 

『え?』

 

『……なんでもない』

 

『……?』

 

 

 

「という事があったの」

 

ところ変わって再び執務室。

矢矧は用事で提督を訪ねた際にその時に抱いた疑問を提督に律儀に相談していた。

 

「そうか、聞かなければよかった」

 

「え」

 

「冗談だ」

 

「いや、その顔冗談に見えないんだけど……」

 

「ま、どっちにしてもあいつの悩みに対して相談に乗れる奴は限られている。残念ながら矢矧、お前では無理なのは確かだが、そこはまぁ気にするな。本当にどうしようもないからな」

 

「一体なんだっていうの……」

 

仲間が何か思い悩んでいるというのに提督はそれに対してかなり達観した様子だった。

矢矧はそれを疑問にこそ思ったが、それ以上に提督の言葉に確信が篭った何かを感じ、それ以上は追及する気にはならなかった。

 

「気にしても仕方のない事だ。取り敢えず龍驤を呼んできてくれ」

 

「分かったわ」

 

 

それからまた暫くして―――

 

コンコン

 

『大佐、ウチや』

 

「入れ」

 

ガチャ

 

「呼んだ?」

 

「ああ、新境地の開拓の方はどうだ?」

 

「 」

 

部屋に入るなり歯に衣を着せぬ革新を突く提督の言葉に龍驤は固まる。

 

「ん?」

 

「い、いきなり何を言いよるん!?」カァ

 

「矢矧から聞いたぞ。お前、潮の改造後の姿を見て安心してたらしいな。何だかんだ言ってまだ気になっているんだろ」トントン

 

提督はそう言って自分の胸を辺りを指で軽く叩く。

 

「う……」

 

「俺も仕組みは分からないが、改造を受けても変わらない奴だっているさ。それが偶々お前もそうだったというだけだ」

 

「……」

 

龍驤は俯いたまま答えない。

提督はそんな彼女を眺めながら自分もまた何も言わず、ポケットから煙草を出して火を着けた。

 

シュボッ

 

「ふぅ……」

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「でも、でもな?」

 

「ああ」

 

「ウチ思うんやけど、やっぱり艦娘ん中で一番ないのウチちゃう?」

 

提督は龍驤の質問に少し目を瞑って考えるような表情をしたが、直ぐに目を開いてこう言った。

 

「……いや、そう言われてもな。流石に全員の大きさ何て俺は分からないし元々そんなに意識もしていないしな」

 

「その言葉ホンマやと思いたいわ……」

 

「お前、本当に気にし過ぎだぞ。誰かに執拗に揶揄されているのならまだ考えようがあるが、傍から見てると自分で追い込んでいるだけだぞ?」

 

「せやけど……っ、はぁ……」ドヨーン

 

「……」ポリポリ

 

(あかん、呆れられた!?)ビクッ

 

眉間に皺を寄せて何か悩むような顔をした提督を見て龍驤はとっさに自分の態度が彼を不快にさせたのではないかと焦る。

 

「あ、あの……う、ウチ……ご、ゴメしつこか……」

 

「龍驤」

 

「はい!?」ビクン

 

「……」ポンポン

 

「え……? 膝?」

 

龍驤は軽く膝を叩いて自分を見る提督にどういう反応をしたらいいのか判断しかねている様子だ。

 

「ま……座れ」

 

「……っ、大佐!」ダッ

 

滅多にない提督自らの慰めに、龍驤は歓喜して即座に彼の元へと走った。

 

 

「……まぁこういう事だ。とにかく俺は気にしていない」ナデナデ

 

「うん……」

 

龍驤は提督の膝の上で足をぶらつかせて彼の手の撫で心地を幸せそうに楽しんでいた。

 

「一人しかいない男の俺が言うんだ。これで少しは気楽になれ」

 

「はぁ……大佐、ホンマに甘くなったなぁ……」

 

「甘いと言われるとアレだな」

 

提督はちょっと複雑そうな顔で苦笑した。

 

「んじゃ柔らかくなった?」

 

「そっちの方ががいいな」

 

「ふふっ♪」

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「ウチも早く嫁さんにして大きくして欲しいわぁ」

 

龍驤の言いたい事を察した提督は、一瞬考えるような表情をしてやがてこう言った。

 

「……意外にソレ根拠が薄いらしいぞ」

 

「えっ、そうなん?」

 

「女性ホルモンとかいろいろと納得そうな要素もあるが、根拠に欠ける点もあるみたいだ」

 

「そうなんや~」

 

「ああ。前にも言わなかったか?」

 

「んー、言われてみれば……? まぁええわ。なぁ大佐、大佐は何が一番効くと思うん?」

 

「うん? そう……だな……」

 

「……」ジー

 

経験からくる大人の案に期待しているのか、龍驤はジッと提督を見つめる。

 

「やっぱり身体に気を遣うのが一番なんじゃないか?」

 

「気を遣う?」

 

「ああ。しっかり睡眠をとって、栄養もバランス良く摂るのは身体に良い影響を与える筈だ」

 

「堅実やなぁ」

 

期待とはやや違ったが、如何にも提督らしい答に龍驤はカラカラ笑う。

 

「しかしこれはこれで説得力があるだろう?」

 

「まぁ確かに」

 

「即効性のあるのを知りたいのか?」

 

「あればね」

 

「あるのか?」

 

「どやろ?」

 

「俺は手術くらいしか思いつかん」

 

「それは嫌や」

 

龍驤は即答した。

それは逃げだ、そして自分の身体を性能向上の改造目的以外で提督以外の人間に弄られるのは想像できなかった。

 

「ああ、俺もそこまでするのは行き過ぎだと思う」

 

「やっぱ高望みなんかなぁ」

 

「不相応何て事はないだろうが、望んだところで直ぐ叶うものでもないしな。開き直るのが一番だ」

 

「えー」

 

あんまりと言えば言えなくもない結論だった。

それでは結局いつもの自分と変わらないではないか。

 

「得意だろう?」

 

「ちょ、それどういう意味?」

 

自分の心を読まれたような気がして提督の言葉に龍驤は焦る。

だが、焦りつつも彼女は……。

 

「顔がニヤけてるぞ。笑うのを我慢してるんじゃないか?」

 

「ふ……っ、あははは。ホンマ大佐には適わんわぁ」

 

龍驤は、降参したように手を上げながら、窓から覗く晴れた空によく響きそうな声で笑った。




秋イベント始まりましたね。
自分はチキンなので、もっと情報が揃ってから臨む予定です。

潮、改二のレベルが予想より低くて意外でした。
しかし、おかげで改二の駆逐艦が揃ってきました。
やっぱり駆逐は改二までいかないと何か戦力的に安心できないんですよねw


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第46話 「災難」

本部の少将こと彼女から大佐個人の携帯に電話がありました。
提督は仕事でもあまり携帯を使わないので、発信者が彼女だと分かった時は「半分置物と化している携帯+意外な相手」という事もあって最初は戸惑います。
しかしスピーカーから聞こえたのは間違いなく彼女の声だったので提督は安心しその声に傾けているですが、そんな彼に声の主はある事を伝えてきました。


「休暇?」

 

『そう、ただの休暇じゃないわよ。帰国の許可まである一週間の連休。今度の作戦終わったらあなた、それを貰えるみたいよ』

 

ただの休暇でも珍しいのに帰国の許可まである連続した休暇など、提督にとっては本当に予想外の話だった。

 

「……」

 

『どうしたの?』

 

電話口で何か息をのんで考えている雰囲気を察した彼女が提督に訊く。

 

「休暇の件は取り敢えず置いておくにしても、作戦の事を携帯で伝えるなんて君らしくないじゃないか」

 

そう、名実ともに優秀な軍人である彼女が軍の通信を使わずに、直接このような方法で自分に連絡を取って来た事が提督はどうも腑に落ちなかった。

だが彼女は、それを予測していたように特に気にもしていない声色でこう言った。

 

『別に公私混同はしてないわよ。休暇の件は上の人たちの特別な取り計らいなの』

 

「上の? 親父たちか?」

 

『まぁ、そんなとこ。だから公式の手段で伝えるのも気が引けるでしょ?』

 

「ふむ……」

 

『そういうワケなの。だからありがたく受け取りなさい』

 

「まぁそういう理由なら、作戦が終わった時にありがたく頂戴しよう」

 

親父絡みなら十分に考えられる事だ。

特に何をしたわけでもないが、自分にこのような処遇を与するという事は何か考えあっての事だろう。

これは帰郷は必ずしなければならないし、帰った際は本部にも顔を出すべきだ、提督はそう考えて納得した。

 

『ええ、そうしなさい』

 

それに対して電話口の向こうにいる彼女は、どこか安心したような声でそう言った。

 

「しかし急だな。特に今は故郷に帰る用もないから、帰ったとしてもどう過ごしたらいいものか」

 

『なにー? 作戦開始する前からもう完遂した気でいるわけ? やるわねぇ』

 

「ん? はは、まぁやる気があるのは良い事だろう?」

 

『ふふ、そうね』

 

「よし、作戦の件、休暇の件は分かった。作戦の詳細は近い内に通達があるんだろう?」

 

『ええ、翌朝までには来るわ』

 

「了解した。じゃぁこれで……」

 

『あ、待って』

 

提督が話を切り上げようとした時彼女がそれを止める。

 

「うん?」

 

『休暇、取るつもりなのよね?』

 

先程とは打って変わってどことなく緊張しているような真剣な声だった。

 

「ん? それはまぁ、せっかくの厚意だしな」

 

『そう。なら……さ、あなたが休暇の間の何日か私の休みも被ってるの。帰郷するって事は私が居る所に来るって事でしょ? だから都合がつけば久しぶりにちょっとデ……』

 

彼女が提督に自分の真の目的を告げようとした時、彼の近くで大きな声がした。

 

タイサァー!

 

『え?』

 

その声は電話口の向こうの彼女にも聞こえたらしく、久しぶりに二人きりで会話をしていた穏やかな雰囲気を破る大きな声に驚いた声をあげた。

 

タイサァー!!

 

また聞こえた。

しかも今度は先程より明らかに近い距離だ。

どうやら自分を呼んでいるらしい。

提督は声の主と状況を確認するために一度、携帯を置いてその場を離れることした。

 

「ん? 悪い、ちょっと待ってくれ」

 

『あ、ちょっと――』

 

彼女は彼女で何があったのか確認しようとしたが間に合わず、代わりに提督が置いた携帯を通して少し声が遠いがこんなやりとりが聞こえた。

 

 

ドウシタ? トキツカ?

 

タイサー! リュウホウチャンガハダカデオフロカラ!

 

ナニ?

 

『え?』

 

彼女はまた驚いた。

裸?

リュウホウって、あの軽空母の龍鳳?

状況が掴めず混乱する彼女に少し焦った様子の提督が電話に再び出てこう告げてきた。

 

「少将、悪い。今日はこれで」

 

「あ、待って! 少しだけd」

 

ピッ、ツー、ツー、ツー……

 

呼び止めようとしたが駄目だった。

電話は一方的に切られ、彼女の耳には虚しくも不通を告げる音のみが響いていた。

 

「……」

 

「……」プルプル

 

「……っ」

 

彼女は呆然とした様子で暫く立っていたが、やがて小さく肩を震わせると口惜しそうな顔をして心の中に不満を漏らし始めた。

 

(もう! なんなのよ! 後ちょっとくらいいいじゃない! せっかく私が中将たちに口添えをしてあいつの休み用意したってのに、これじゃ私の休みをあいつに合わせた意味がないじゃない!!)

 

「……」(もう一度電話を……)

 

彼女が提督に再度電話を掛けようとした時、執務室に入って来た武蔵が彼女に声を掛けてきた。

 

「おい少将、そろそろ行かないと」

 

「待って、ちょっと電話して要件を済ますから」

 

「いや、今日は遅れるのはマズイだろ。何しろ作戦の成功を祈った総帥主催の晩餐会だ」

 

そうだった。

今日は新しく発令される作戦の成功を祈って、総帥自ら本部の提督たちの士気向上と忠勤に対する労いを兼ねて軽い晩餐会を開くのだった。

 

「……そう、ね」

 

彼女は何とか落ち着き払って視線を落とすと携帯を持った手を下げた。

 

「何かあったのか?」

 

武蔵が彼女の異変に気づいて声を掛ける。

 

「……別に」フイ

 

「ふーん」ニヤ (大佐と何かあったな)

 

「なに?」

 

「ん、いや?」

 

「……行くわよ」

 

「ああ」

 

(……あいつ、携帯で話してる時くらい私の事名前で呼んでくれたっていいのに……。そういうところも堅物なんだから、これは絶対に休暇に入ったら逃がさないわよ)

 

彼女の珍しい痴態を面白く思って含み笑いをしている武蔵を尻目に、少将は今回の失敗の挽回を早くも心の中で誓うのだった。

 

 

 

――ところ変わって提督の鎮守府。

 

「お父さん!」

 

バンッ

 

パタパタ、ダキッ

 

恐らく入渠所からそのまま来たのだろう。

素っ裸で勢いよく執務室に入って来た龍鳳は大佐を見つけるや、そのまま彼に抱き付く。

提督はそんな彼女に少し呆れた顔をしてこう言った。

 

「龍鳳お前、軽空母になったら一人で風呂に入るって言ったろ」

 

「やっぱり嫌です! 時々は一緒に入って下さい!」ギュー

 

少し前に潜水母艦から軽空母に生まれ変わっていた大鯨もとい龍鳳は、その際に提督に改造と共に自分の人間的な成長を約束し、その証に風呂は彼とは一緒に入らないと約束していた。

龍鳳の提督に対する依存体質に困っていた彼にとって、その申し出はとてもありがたいものだった。

 

「取り敢えず風呂に戻るか服を着ろ」

 

「一緒に入る約束をしてくれたら戻ります!」

 

「いや、お前……」

 

「あ、龍鳳ちゃん発見!」バッ

 

「 」

 

龍鳳を追って来たと思われる時津風が現れた。

提督は彼女に龍鳳を何とかする為に協力してもらおうと考えていたが、その考えは時津風の部屋に現れた際の姿を見た瞬間に霧散した。

 

「あ、大佐」

 

「なんでお前まで服を着てないんだ」

 

提督の言う通り時津風は龍鳳と同じく素っ裸だった。

しかもたちが悪い事に彼女も龍鳳と同じく、裸を見られることに対して羞恥心を感じていないようだった。

何故だ? やっぱり見た目通り精神状態が幼子とそう変わらないからか?

提督は呆れ返った頭でそんな事を考えていた。

 

「んぅ? あ、直ぐにお風呂に戻るから大丈夫だよ」

 

「……もういい。早く龍鳳を連れていってやれ」

 

「はーい。さ、龍鳳ちゃんいこー」

 

「嫌っ!」

 

「いこ!」

 

「やっ!」

 

「頼むから執務室で裸で騒がないでくれ」

 

「約束してくれたら行きます!」

 

「約束? なんの約束?」

 

龍鳳の言葉に興味を惹かれた時津風が彼女の手を握って引っ張っていた力を緩めて訊く。

 

「お父さんとお風呂に入るんです」

 

(あ、何か嫌な予感が)

 

提督は全身に寒気が走るのを感じた。

 

「大佐! 時津風も一緒に入りたい!」

 

「だめだ」(やっぱりか)

 

提督は当然却下した。

 

「なんで!?」

 

「俺は子供と風呂に入る趣味はない」

 

「親子なら問題ないです!」

 

「お前もういい年だろ」

 

「生まれてから経っている時間はそんなに長くないです!」

 

「それを言うなら時津風もだよ!」

 

(埒が明かん)

 

子供の屁理屈ほど諭すのに苦労する問題はない。

提督はウンザリした顔でどう収拾を着けたらいいものか考えていた。

そんな時――

 

 

「……何をやってるんだ」

 

凛とした大人の声がした。

三人が振り向くと開きっぱなしとなっていた扉の向こうから那智が険しい顔で提督達を見ていた。

 

「あ、那智さん」

 

「那智おねーちゃん」

 

「……」

 

「大佐……」

 

那智の冷たい視線に、既に言い訳する気も失せる程にこの混沌した状況に精神的に打ちのめされていた提督は、それでも何とか言葉を絞り出してこう言った。

 

「信じろとは言わん。ただ、何とかしてくれ」

 

言い訳もしないで自分に助けを求めてきた提督に何か感じるものがあったのだろう。

那智は黙って彼の視線と言葉を受けると龍鳳と時津風に向き直って言った。

 

「……ほら、二人とも風呂に戻れ」

 

「えー」

 

「嫌です!」

 

「大佐はそんな風に駄々をこねる子が一番嫌いなんだぞ?」

 

「「え」」

 

『嫌い』という言葉に龍鳳と時津風は固まる。

那智はその機を逃さず更にこう続けた。

 

「大佐は人前では滅多にそういう事は言わないが、この人も人間だ。自分の主張ばかりして人の話には聞く耳を持たない、そんな我儘な子を疎ましく思うのは普通じゃないか?」

 

那智の追撃に今度は二人は沈鬱な表情で下を向いて黙った。

子供を躾けている親のように見えなくもないが、残念ながらその怒られている二人が幼い外見と言っても小学校高学年以上の身体でしかも全裸、加えてすぐ近くに成人の男性(提督)がいるという状況の所為で些かしまらない雰囲気となっていた。

 

「「……」」

 

「お前達は方法が間違っているだけだ。私は今は大佐の言う事をちゃんと聞いて改めてきちんとした姿勢でお願いした方がいいと思うぞ?」

 

「……」

 

「……龍鳳ちゃん行こ」

 

時津風がポツリと言った。

 

「……トキツちゃん」

 

「わたし大佐に嫌われたくないもん。だからここは大佐の言う事を聞いて良い子にしよ」

 

「……分かりました。大佐、後でまたお願いに来てもいいですか?」

 

時津風の言葉に反省し、思い直した龍鳳は、すっかり落ち着いた真面目な顔に戻っていた。

 

「ああ。今度はちゃんとした格好でな」

 

「はい!」

 

「りょーかーい!」

 

「よし、良い子だ二人とも。じゃぁ大佐に挨拶して早く風呂に行け」

 

「はい! 大佐失礼しました」

 

「大佐、ばいばーい」

 

バタン

 

 

こうして事態は那智の活躍によってなんとか収拾した。

だが、部屋に残った二人に立ち込める雰囲気は何処か重かった。

提督と那智は暫く何も喋らずお互い無言だった。

 

「……」

 

「……」

 

 

「那智、助かった。礼を言う」

 

沈黙に耐えかねたのか提督から切り出す。

 

「なに、このくらい」

 

「いや、本当にたすか……那智、なんだその目は?」

 

「ん? いや……もしかしたら邪魔をしてしまったのか、とな」

 

「頼むからそんな目で見るな。徐々に離れるな」

 

態度こそ普段通りだが、間合いを取るようにじりじりと自分から距離を取る那智を提督は悲痛な思いで止める。

 

「あ、ああ……」ジリジリ

 

(一体どうしたら)

 

「証拠」

 

提督が新たな局面を乗り切る策を考えていた時だった、那智の方から彼に提案をしてきた。

 

「ん?」

 

「大佐が変質者でない証拠を提示してもらいたい」

 

「変質……どうすればいい?」

 

那智の言葉に内心ショックを受けるも提督は何とか平静を装って条件の詳細を求めた。

すると那智は少し頬を染めてもじもじしながらこう言った。

 

「わ、私を女として扱ってくれ」

 

「は?」

 

予想だにしなかった言葉に抵当は目を丸くする。

 

「な、なんだその顔は?」

 

「いや、俺はお前の事を女としか思ったことがないんだが……。今更女として扱えと言われてもな」

 

どこか見当違いな提督の答に今度は那智が目を丸くする。

 

「え?」

 

「ん?」

 

「……」

 

「……」

 

二人はお互いの言葉に混乱し、真意を探る為に暫し見つめ合っていたが、やがて那智の方から何かを堪え切れなくなったように笑い始めた。

 

「……ふっ、はははは。やっぱり大佐は大佐だったな。申し訳ない、今の言葉は忘れてくれ」

 

「……?」

 

提督はただただ那智の言葉の意味が理解できず顔をしかめるだけだった。

 

「そんな顔をしないでくれ。全部私の誤解だと認める」

 

「ならいいんだが」

 

「腑に落ちないという顔だな。ならちょっと大佐のお酌でもさせてもらおうか。それで私はいい」

 

「酌をしたいのか? 普通逆じゃないのか?」

 

「私はそれでいいんだ。大佐、私を女として見てくれているのは嬉しいが、まだ私個人の事は解っていないようだな」

 

「……む」

 

「ほら、いい加減そんな顔はよしてくれ。今夜は飲もう」

 

「ああ、分かった。お前の話、いろいろ聞かせてもらおう」

 

こうして意外な展開で二人の晩酌が始まった。

きっかけこそ良かったとは言えないが、それでも二人が交わした酒は話に花が咲いたこともあり美味しかったという。




秋イベ、E-3まで終わりました。
続きをやるかどうかは現在検討中です。
が、新キャラはしっかり何人かゲットしたので話のネタも確保できました。

と、ここでまたちょっと告知します。
まだ先の話になりますが、提督が日本に帰る時艦娘も何人か連れて行く流れにしようと考えています。
その時に連れて行くメンバーで「誰がいい!」という希望があれば 活動報告の「はじめまして」に返信か、ダイレクトメッセージ適当にどうぞ。

偶にある完全な気まぐれなので、しっかりアンケートを取る為の場は敢えて設けませんw

もう一つついでに。
初R-18絵投稿しました。
詳しくは活動報告の「挿絵始めました」をご覧ください。


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第47話 「頼り」

少将から電話があった翌日、彼女の言う通り基地に本部から作戦の通達がありました。
提督は一同を集めて早速ブリーフィングを始めます。


「それではこれより第二次渾作戦のおおまかな概要について説明を行う」

 

「総員、傾注」

 

バッ!!

 

秘書艦の矢矧の合図で全員が姿勢を正して提督の方を向く。

皆の視線が自分に十分に集まっているのを確認して、提督は軽く咳払いをして説明を始めた。

 

「本作戦は前回の第二次AL・MI作戦と同じように第一、第二艦隊を合わせた連合艦隊で臨む。以前との違いは今回は道中、敵主力との会戦時に支援攻撃がある点だ」

 

「それは前の作戦でもありましたが?」

 

その時の作戦にも参加していた神通が早くも疑問点に気付き、提督に質問をした。

 

「あの時は半分中佐に手伝ってもらっていたからな。今回は全て自力で行う。つまり本当の意味で総力戦だ」

 

「なるほど」

 

「作戦は三段階に分けて行う。まず第一段階は水雷戦隊を中心に編成した連合艦隊で敵の前哨部隊を叩き、後半の第二、第三段階で戦艦を中心にした重火力編成の連合艦隊で主力を含め残りの敵勢力を殲滅する」

 

「第一段階は誰が行くの?」

 

伊勢が早速艦隊の編成を聞いてきた。

彼女の目はやる気に満ち、久しぶりの出撃に気分が高揚している様だった。

 

「龍田、大淀、長月、菊月、白雪、初雪、伊勢、日向、那智、三隈、木曽、名取だ」

 

「あらぁ~、久しぶりに私たちの出番~? やったぁ♪」

 

艦隊のメンバーに自分が入っていた事を心から嬉しそうに、龍田は薄く笑う。

だがその笑みにはどこなく酷薄な雰囲気が漂い、いつも以上に凄味があった。

 

「第二、第三段階は?」

 

那智が次の出撃メンバーの構成を聞く。

彼女も何となく自分が選ばれる気がしているのだろう、その顔はいつも以上に凛々しく意気軒昂な様子だった。

 

「金剛、武蔵、長門、加賀、利根、筑摩、大井、神通、響、時雨、夕立、ジェーンで行ってもらう」

 

「ほう……? 大和型の本格的な実戦参加か。ふっ……昂ぶるな♪」

 

武蔵が初めての実戦、それも本格的な作戦への参加に嬉しそうな声をあげる。

まだ艦装を装備していないというのに、彼女の手は早くもまるでそこに自分の砲があるかのように何もない中空を撫でる仕草をした。

 

「赤城、飛龍、龍驤、隼鷹、比叡、霧島、扶桑、山城、早霜、春雨、天津風、時津風にはそれぞれ艦隊の支援をしてもらう」

 

「加賀さんに続いて私も久しぶりの実戦ですね。ふふ、腕が鳴ります♪」

 

残念ながら加賀とは同じ艦隊ではないが、赤城もまた久しぶりの出撃で嬉しそうだった。

これは演習に参加できなかった時も自己鍛錬に励んでいた成果を見せるときね、赤城は心の中で熱く闘志を燃やす。

 

「以上のメンバーで本作戦に臨む次第だ。何か質問は?」

 

「作戦の遂行時間は?」

 

既に艦隊のメンバーに選ばれていた時雨が作戦にかける時間を聞いてきた。

 

「一日だ」

 

「え?」

 

提督の返答に目を丸くして驚く顔をする比叡。

流石に一日とは思っていなかったらしく、隣にいた姉の金剛も比叡と同じく驚いた顔をしていた。

 

「今回の作戦に向けて多少ではあるが資材の備蓄に努めてきた。それを今回は全て使い潰すつもりで臨んで欲しい」

 

「だから一日?」

 

夕立がやる気に満ちた顔で提督に確認する。

資材使いたい放題で支援もある進軍なんてまるで祭りの様だ。

こんな艦娘冥利に尽きる事はない。

夕立は燃えに燃えまくっていた。

 

「そうだ。勿論それ以上かかる事も想定している。が、早く終わらせる事ができればそれに越した事はないしな」

 

「大佐、今回はやる気ありますね」

 

扶桑が微笑みながら提督に話しかける。

傍らにいた山城も頼もしく笑みを浮かべており、今回の作戦にかける意気込みが窺えた。

 

「おいおい、俺は仕事に対しては常に真摯な態度で臨んでいるつもりだ。ただ今回は久しぶりに本当の意味で全力だからな。多少気分が高揚しているのは否定しない」

 

「あはは、これは失礼しました」

 

飛龍が提督の皮肉っぽい答に面白そうに笑う。

 

「ふっ……いや構わない。憎まれ口を叩く余裕があるのは良い事だ」

 

「はぁ……」

 

「長月、大丈夫か?」

 

「ん……何せ私たち駆逐艦の腕の見せ所だからな。少しは緊張する」

 

「お前たちは基本遠征にばかり行かせていたからな。こういう時に緊張するのは仕方ないだろう。長月、行けそうか?」

 

「問題ない。伊達に古参のつもりはないからな。期待してくれ」ニッ

 

「そうか。頼んだぞ」

 

「ん」

 

長月は提督の言葉に頼もしい笑顔で親指を立てて見せた。

 

ギュッ

 

「ん?」

 

服を引っ張られる感覚に提督が後ろを向くと、何か不満そうな顔で彼の服の裾を掴んでいる菊月がいた。

 

「大佐、長月に声を掛けておいて私には掛けてくれないのか?」ムスッ

 

「いや、別にそんなつもりは……。ただ全員に声を掛けているとそれはそれで時間が掛かるしな」

 

「……そうか」シュン

 

「……」

 

ポン

 

「!」

 

あからさまに落ち込んだ表情をする菊月を見て提督は彼女の頭に手を置いた。

作戦開始前に士気を下げるわけにはいかない。

それも、落ち込んでいるのが自分を慕う部下なら尚の事だ。

 

「頑張れ」

 

「あ、ああ! 任せておけ!」

 

提督に励まされて菊月は先程までの落ち込んだ顔はどこへやら、一転して輝くような笑顔を見せた。

 

「む、大佐。菊月の頭は撫でて私はないのか?」

 

菊月が頭を撫でられるのを見て早速長月も口を挟んできた。

 

「いや、それを言うなら俺だって」

 

何故か天龍もその流れに乗る、明らかに条件反射的な行動だった。

 

「まぁ天龍ちゃんかっわいい♪」

 

「なぁ!?」カァ

 

「大佐、吾輩も当たを撫でてもらいたいぞ! 所望する!」

 

顔を真っ赤にした天龍を押しのけ利根も撫でてもらう権利を主張してきた。

 

「まさか私を撫でないとは言わないわですよね。た・い・さ?」ニコォ

 

大井も明らかに不機嫌なそうな笑顔で提督に迫って来る。

 

ギャーギャー、ワーワー

 

 

「……」

 

緊張感が満ちたブリーフィングだったはずなのに、いつの間か提督に撫でてもう権利の争奪戦となってしまったその有り様を提督は呆れた顔をして眺めていた。

そんな彼に長門が面白そうに笑いながら話しかける。

 

「ふっ、頼もしいじゃないか。一応それなりの規模の作戦だというのにこうもリラックスできるとは」

 

「そうだな。そしてお前も何気に腕に胸を押し付けてアピールしてこなければ、そのセリフも様になっていたんだがな」

 

「ふふ、私は強かなんだ」ニッ

 

(俺はこいつらの中で一番油断ならないのはお前だと思っているぞ……)

 

「分かった。全員個別に激励してやるから並べ。ただしそんなに時間は掛けないからな」

 

ヤッター♪

 

提督の提案に艦娘たちは争いを直ぐにやめ、一斉に歓喜の声を上げた。




まだE-4はやってません。
やっぱり諦めようかな……。
でも勲章欲しいし……。


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第48話 「自尊心」

作戦が開始して皆が部屋を退出した後、そこには提督と秘書艦の矢矧だけが残りました。
いや、残るっているはずでした。

しかし提督は二人しか残っていない筈の部屋にまだ気配を感じたのです。
しかもなにやら負のオーラを纏った黒いモノを……。
提督が気になって振り返るとそこにいたのは意外な人物でした。


「で、お前達は何をしているんだ?」

 

「べ、べっつにー?」

 

「……」プイ

 

提督が振り向いた先には部屋に設えたソファーに困った顔で座っている足柄と、何故か不機嫌そうな顔をして彼女に宥められる様に頭を撫でられている大和がいた。

 

「足柄、大和、お前達は待機中だろ? なんでここにいるんだ?」

 

「部屋にいるのも退屈だったのよ」

 

「……」コクコク

 

「だからってここに来ることはないだろう」

 

「執務の手伝いくらいするわよ?」

 

「……」プイ

 

「それ、今は私の仕事なので」

 

足柄の提案に自分の立場を脅かされると思ったのか、矢矧がそれを妨げるように目の前に立つ。

 

「まぁそれもそうだが、それより大和はどうしたんだ? さっきから」

 

提督は先程から足柄の反応に無言で相槌ばかりうっている大和の様子が気になるようだ。

彼女はふくれ面をして時折何かを訴えるような目でこちらを見ている。

 

「あー……それがね」

 

「……」フイ

 

「大和さん、そろそろいいんじゃない?」コショ

 

「……」フルフル

 

足柄が声を潜めて大和の機嫌を窺うように聞いたが、大和は子供の様に首を振るだけだった。

 

「大和?」

 

「どうしたの? 大和さん」

 

「えっとね……大和さん?」

 

「……」コク

 

恐らく自分が大和の代弁をする許可を確認したのだろう、足柄の言葉に大和は小さく頷いた。

 

「……なんだ?」(大方、足柄は大和を慮って残った感じか)

 

「さぁ……」

 

提督は提督で不可解な大和の様子に戸惑うばかりの様だ。

傍らにいた矢矧も意見を求める提督の視線に困惑した顔をするしかなかった。

 

「大和さん今度の作戦に出れなくてちょっと……」

 

「ん? 拗ねてるのか?」

 

「……っ」

 

「あ」(うわ、直球)

 

「え?」(大和さんの様子が……)

 

「ん?」

 

「…………っ」ジワッ

 

提督に歯に衣を着せぬ指摘を受けて、大和は自分の行為に対する情けなさから悔し涙を滲ませた。

 

「……ふぅ、武蔵が出撃しているから余計に悔しいんだろう」

 

「……ふ……う……っく……」ポロポロ

 

「あ、だ、大丈夫ですか?」アセアセ

 

「……」(『大和型の誇』というのも時には重荷になるものだな)

 

「大佐……」

 

「分かっている」

 

泣き出した大和がいたたまれなくなった矢矧が提督に事態の改善を求めてきた。

提督も流石に放置する気はなかったので、彼女の求めに応じて大和になるべく柔らかい声で話し掛けた。

 

「大和」

 

「……っ」ビクッ

 

「お前の気持ちは解らないでもない。武蔵も最初はそうだったからな」

 

「……」

 

「最もあいつの場合はお前と違って、出撃していない間は暇潰しと称して任務に関係のない事をして遊ぶこともあったから、真面目な分お前の方がマシとも言えるが」

 

「……」

 

「大和、お前はもっと肩の力を抜けばいいと俺は思う。出撃できなかったり練度が低くてもお前は大和だ。強力な、この基地でも指折りの頼りになる存在なのは間違いないんだぞ?」

 

「ぐす……大佐ぁ……」

 

大和はようやくそこで、子供のようにしゃくりあげながら提督を見上げ口をきき始めた。

 

「悪いな。お前の自信、誇り、脆さを把握できていなかったのは俺の落ち度だ。だから今回は俺の謝罪で機嫌を直してくれないか」

 

「そ、そんな! 悪いのは私です! 戦艦なのに大人げない事しちゃって……!」

 

「ま、そういうのを含めてお前たちを管理するのが提督だ、指揮官というものだ。……ん?」

 

「大佐?」

 

自分を慰めている提督が急に何かを考えるような顔をしたので、大和は気になって声を掛けた。

 

(私の態度が悪かったから……)

 

やがて、話しかけてもまだ上の空な様子の提督を見て大和は、口をつぐんでしまった原因が自分にあるかもしれないと考え焦る。

 

だが、当の提督は実はそんな事は関係なく、こんな事を考えていた。

 

(戦艦なのに……か)

 

「ねぇ、どうしたの?」

 

「大佐?」

 

足柄と矢矧も異変に気づき、提督に声を掛けるが依然として彼は黙ったままだった。

 

提督の頭の中には大和のその言葉に引っかかる戦艦の艦娘が二人ほどいた。

 

(金剛と比叡……そういえばどうしてあの二人に限っては、なんかこう子供っぽいというか、アレなんだろうな。やはり他の奴らと違って4姉妹と数が多いから性格にも差が……)

 

「大佐!」

 

「……ん」

 

足柄の大きな声に提督は我に返った。

 

「大佐どうかされたのですか?」

 

「体調が悪いなら指示さえしてくれれば横になっててもいいのよ?」

 

「ん? ああ、いや悪い。ちょっと考え事をな」

 

「そうですか……あの、私の無礼の事でしたら改めてお詫びを……」

 

提督の言葉に安心した大和は、再び居住まいを正し彼に詫びをいれようとする。

だが提督はそれをバツの悪そうな顔で軽く笑いながら止めた。

 

「いや、そうじゃない。ああ、このくらいあいつらのおてんばと比べたらなに、可愛いものだ」

 

「え?」

 

「あいつら?」

 

「おてんば?」

 

不意を突く意外な提督の返答に大和、矢矧、足柄は疑問の声をあげる。

 

「気にするな。おてんばなのもいいが、お前達はお前達であいつらと比べて手が掛からない分、それはそれで可愛いという事だ」

 

「そ、そんな可愛いなんて……♪」

 

「可愛い……。ね、もう一度言ってくれるかしら? できれば今度は『矢矧』って明確に私に向けて」キラキラ

 

「なんか気になるのよね……。誰と比較したの? でも私ももう一度言って欲しいかしら」

 

一気に和やかな雰囲気になったと思いきや、今度は自分に甘え始めるという切り替えの早さを見せる大和達に、提督は呆気にとられた顔をして溜息を着きながらも、最後は苦笑してこう言うのだった。

 

「作戦中だぞ。元気なのは良いが、そいういうのは後だ」




E4クリアしました! ヤッタね!
仕事が忙しい時期でやる気が起こりませんでしたが、次はやっとの休みだし、イベントも無事終える事ができたので、新キャラの話も含めていろいろ書きたいですねぇ。

あ、その前に「フューリー」を観に行かなくては……(オイ


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第49話 「甲斐」

作戦が開始してから半日後、今回の作戦は完全な自力による総力戦で挑んだ割には、前回の作戦と比べて難度がやや劣るお蔭か、提督の執務室には順調な作戦の進行と成果を告げる報告が間断なく伝えられてきました。

そして作戦の大詰、第三段階も流石に簡単とはいきませんでしたが、慎重に用心深く臨んだ結果、危なげなく作戦は完遂する事ができました。

そんな作戦の成功をイの一番で直接報告に来た艦娘がいました。
それは……。


「大佐! 作戦、無事本日をもって全てを完了したぞ!」バンッ

 

「武蔵……まぁ今日はノックなしは見逃してやるか」

 

「ああ、見逃せ! それとな、大佐……分かっているだろう?」ジッ

 

「ん? ああ、そうかお前」

 

何かを待ち焦がれたような顔で期待が篭った視線を向ける武蔵に、提督は彼女の胸の裡を悟る。

 

「そうだ。だから、な? くれるのだろう?」

 

「それでそんな勇み足でここへ来たのか」

 

「ああ、楽しみだったからな。だから早く、な?」

 

「そうがっつくな。ちゃんと用意はある」

 

「うむ、そうでなくては! あ、畏まらなくていいぞ。投げてくれ」

 

武蔵はそう言うと両手を胸の前に出してちょうどキャッチボールで相手の投げるボールを待つ姿勢を取る。

 

「おい、流石に投げてよこすのは……」

 

「私は構わない。これはこれで親しい仲というか、私らしい感じがするだろう?」

 

「お前は……分かった。ほら」ピン

 

提督は呆れた顔をしながらも苦笑すると、武蔵に向って何か小さな物を指で弾いてよこした。

 

「ん」パシッ

 

武蔵はそれを流石の反射神経で難なくキャッチする。

彼女が捕まえたその手に握られていたのは、指輪だった。

 

「ああ、これだ……」

 

恍惚とした目で手にした指輪を見上げる武蔵。

 

「武蔵、ご苦労だったな」

 

「なんの。今までの苦労、たった今これを貰った瞬間に吹き飛んださ」

 

「そうか、それはお前にあげた甲斐があったというもんだ」

 

「ふふ、私も頑張った甲斐があった♪ な、嵌めていいか?」

 

「指を与えておいて嵌めるなとは流石に言えない。それはもうお前の物だ。好きにしろ」

 

「うむ」スッ

 

武蔵は提督の承諾を確認してまるで至宝を扱うかのような所作で、ゆっくりとその瞬間を味わうように片手の薬指へと嵌めた。

 

「……」

 

「……」

 

武蔵は指を嵌めた後暫く、感無量と言った様子で目を閉じていた。

提督もそんな武蔵の様子を若干こそばゆく思いながらも、暖かい目で見守る。

 

「……これで」

 

「ん?」

 

「これで私は、もう身も心も余すことなく大佐のものだな」

 

「所有物のような言い方は抵抗を感じるな」

 

「いいんだ。私が『大佐のもの』になったという実感が何よりも大切なんだ」

 

「その理屈でいくと俺はお前のものになるな」

 

「いや、それはない。私はあなたに仕える側だ。だからその逆になるような事は決してない」

 

「……」

 

「こう言ってはなんだが、私はこの立場が凄く心地よく感じるんだ。凄くあなたに独占されている感じがする。これが絆なんだな……」

 

「なんか言葉の端々に背徳感を感じるんだが」

 

「いっその事首輪をつけても構わないぞ?」

 

「俺にそいういう趣味はない」

 

「そうか」

 

「あからさまに残念そうな顔をするなよ」

 

「いや、もう嬉し過ぎて大佐にならどんな事をでもされたくてな」

 

「暴走し過ぎだ。他の奴らが聞いたらまた面倒な事になりそうだから少しは遠慮しろ」

 

「ならん! 今この時は止められない。この瞬間は今しかないんだ。だから楽しむ事しか考えられない」

 

「……程ほどにな」

 

提督はついに根負けして武蔵の細やかな暴走を認める。

 

「恩に切るぞ。な、キスしてくれ」

 

「いきなりだな。だが駄目だ。まだ仕事中というのもあるし、なにより今のお前とそれをしたらそれ以上の行為に及ばれそうな気がするからな」

 

「もう直ぐ残りの連中が来るかもしれないというのにそんな事はしないさ。だから、な? お願いだ大佐」ズイ

 

ガシッ

 

「……がっちり人の頭をロックしておいてよく言う」

 

「逃がしたくないからな」ジッ

 

「……」

 

「……」

 

「……分かった。一回だ」

 

「大佐……!」

 

チュ

 

 

 

 

「……なるほど。理由は分かりました」

 

「分かったなら、明らかに嫉妬で震えているその手で矢を番えるのをやめろよ」

 

提督と武蔵の前には、見計らったようなタイミングで見事に提督と武蔵の逢引の場を目の当たりにして、表情こそいつも通りの鉄面皮だが目には明確な不満の色を湛えた加賀が仁王立ちでで弓を構えんとしていた。

 

「……すいません。ちょっと頭に……血が上っているもので」

 

(血が上っている割には滑らかな動きだな)

 

「ふふん、嫉妬か」

 

「おい、武蔵」

 

「あなた、今の立場を解っているのかしら?」ギリ

 

「ああ、ようやくお前と同じ立場になったぞ」

 

「……」キッ

 

「……」フフン

 

「……ふぅ、分かりました。もういいです」

 

「なんだ、許してくれるのか?」

 

「他の人の大佐への愛を許さない程私は狭量ではないつもりなので」

 

「そうか。やっぱり加賀だな。話がわか――」

 

「ですが、誰よりも大佐を愛しているのは私ですけどね。これは覆りようのない普遍不動の事実です」

 

「……あ?」

 

加賀の言葉に武蔵は暖かい笑顔を途中でやめ、愛想笑いへと移行した笑顔で威圧を籠めた声を出した。

 

「なにか?」

 

加賀も負けじと武蔵の威圧などものともしないと言った風の冷やかな目で見つめ返す。

 

「いやいや、なにか今古株ぶった空母殿があまりにも稚拙な理論を展開した気がしてな?」

 

「おや、あなたにはさっきの完璧な論理で構成された理屈が解らなかったのですか。これはしたり、どちらが幼稚なのかしら、ね?」

 

(どっちも論理の『ろ』の字もない感情論だろ)

 

「大佐、なにか?」

 

「ん、なんだ? 大佐」

 

「いや、なんでも。というか、俺は何も言っていないんだが」

 

「……武蔵さん、ちょっとそこで話しましょうか」

 

「ん? トイレか? 格納庫裏か? 何処でも私は構わないぞ」

 

「いい覚悟です。ではこちらに……」

 

「臨むところだ」

 

 

 

「あ、あのぉ……大佐?」

 

二人が出ていった後、加賀に次いで部屋に入っていた筑摩が、先程までの焼けるような緊張感に当てられて戸惑った様子で提督に声を掛けてきた。

 

「筑摩、結果報告を頼む。あと、矢矧を呼んできてくれ。喉が渇いた茶を飲みたい」

 

「あ、はい」

 

提督のいつも通りの様子に安心した筑摩は、パタパタと矢矧を呼びに行った。




武蔵ともケッコンしました。
次に可能性があるのは飛龍ですが……ほんと、戦艦や正規空母以外とケッコンするのはいつになるんでしょうねぇ(遠い目)


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第50話 「ようこそ」

無事作戦が成功した後、提督の前には今回の作戦中に発見された艦娘達が彼に挨拶をする為に並んでいました。

その数六名。
前回の作戦と同じ大人数です。
しかしその形相を眺める提督の顔はどこか浮かない感じです。
何故でしょう?

*今回も登場人物が多いので、途中から一部のキャラにセリフの前に名前が入ります。


「能代です。よろしくお願いします!」

 

「朝雲よ。よろしくね!」

 

「野分です。よろしくお願いします」

 

「浦風じゃ、よろしゅーの!」

 

「初めまして、秋月です!」

 

「プリンツ・オイゲンです。よろしくお願いしますね!」

 

「……」

 

提督は、新たに発見され部下に加わることになった艦娘達を眺めながらもその口からは歓迎の言葉が出る事はなかった。

彼の呆然とした胸中をよぎった考えはただ一つ。

 

(また増えた……しかも多い)

 

「あ、あの大佐……?」

 

黙ったまま中々喋らない提督が心配になって矢矧が声を掛ける。

 

「ん、ああ悪い。ちょっと新入りの数が多かったから驚いていただけだ」

 

「ああ、確かに結構揃った数ですよね」

 

(そうだよな。多いよな……)

 

 

浦風「あのー、うちら何かした?」

 

提督が人数だけに驚いていないことを何となく悟っただのだろう、新メンバーの一人、浦風が申し訳なさそうな顔で彼に聞いてきた。

 

秋月・野分・能代・pri「え?」

 

浦風の言葉に秋月達が驚いた顔をする。

だがそんな彼女達に対して朝雲は、浦風と同じく提督の心の機微に気付いたようで、彼女の意見に同意する様にこんな事を言った。

 

朝雲「あ、やっぱり浦風もそう思った? なーんか提督さん、私達を見る目がそんな感じじゃなかったよね」

 

「え? 大佐?」

 

二人の意見を受けて矢矧も提督に様子を窺うような目で見た。

 

「……」

 

提督はそんな彼女達の問いかけに渋い顔をしていたが、やがて軽く息を吐くと観念したようにこう言った。

 

「分かった正直に言う。なんだ、ほら……また女性が増えたな、そう思っただけだ」

 

浦風「それの何がいけんの?」

 

「ああ」

 

そこで矢矧がようやく納得したといった顔で声をあげた。

 

pri「え? なに? どういう事です?」

 

野分「矢矧さん?」

 

秋月・能代「?」

 

首を傾げるプリンツ達に矢矧はちょっと困ったような顔で苦笑しながら説明をした。

 

「大佐、つまり提督はね、女ばかりに囲まれたこの環境にまだ違和感を感じているのよ」

 

朝雲「違和感?」

 

「そう。艦娘の提督である以上それは必然的な事なんだけど、この人はその……真面目だから……。ね? そういう事でしょう? 大佐」

 

「ま……概ね矢矧の言う通りだ。こう一気に増え所為で不甲斐ない事に動揺してしまったんだ」

 

秋月「なるほど……あの、それで提督の事を階級で呼ぶのは?」

 

「それは単なる俺の要望だ。ここの基地の者は皆俺のことをそう呼ぶから、お前達も同じように呼んでもらえると仲間としても馴染み易くなるんじゃないかとな」

 

朝雲「へぇ~。ん、いいよ! て……大佐がそう望むのならわたしは呼んであげる!」

 

野分「私も異論はありません。寧ろそっちの方が好ましいかも」

 

能代「わたしもりょーかい。改めてよろしくね、大佐!」

 

秋月「そういう事なら。私も了解しました、大佐」

 

浦風「うちもじゃ! 仲良うしてね!」

 

pri「……」

 

皆が口々に同意する中、プリンツだけは発言をせず黙考して提督をジっと見ていた。

 

「プリンツさん、どうかしたの?」

 

pri「え? あ……あはは」

 

秋月「プリンツさん?」

 

pri「えっとね、ちょっと考えてたんだけど、もしここでわたしが提督の事をそう呼ばずに違う呼び方をしたら、この基地での私の存在ってどうなるのかぁって」

 

野分「自分だけ違う呼び方……?」

 

プリンツの意外な発言に野分は考えるような表情をする。

 

pri「うん。まぁわたしにはビスマルク姉さんがいるから、それをやっちゃうと浮気……になっちゃうのかな? えへへ」テレ

 

朝雲「いや、流石に呼び方が一人だけ違うだけで新参者のわたし達の立場がいきなり変わることはないんじゃないかな」

 

秋月「同意です。それに私はそんな図々しい真似はしたくないですね」

 

浦風「図々しいっちゅう言葉が気になるけど、うちもそういうのは正々堂々したいね」

 

野分(ん……やっぱりそうよね。いけないわね、私ったらなにを)カァ

 

能代「二人とも積極的なのね。まぁ……私も……あれ? 矢矧?」

 

「……」

 

能代が矢矧の方を見ると、彼女は野分と同じく何か真剣な顔で考えるような表情をしていた。

 

「矢矧? どうした?」

 

「えっ、ああえっと……な、なんでもないの。ごめんなさい」アセアセ

 

能代(あ、もしかして矢矧……)

 

「そうか? まぁ他に報告があれば後で聞こう。というわけで皆、改めて我が基地へようこそ。これからの事についていろいろ説明もあるが……取り敢えず交流の時間だったな? 矢矧」

 

「はい。皆には……そうですね。二人一組、3グループに分かれてもらって少し時間を掛けて大佐と交流してもらいます」

 

能代「じゃぁ駆逐艦の子は駆逐艦同士で組んでもらって、わたしはプリンツさんと組むといのはどう?」

 

pri「いいよ!」

 

野分「異議なしです」

 

朝雲「じゃ、わたしは野分と」

 

秋月「なら私は……」

 

浦風「うちとじゃね」

 

「決まったか? なら一度ここで解散とする」

 

「一同、気をつけ」

 

バッ

 

「よし、解散」




イベントに関係ない登場済みの艦娘では浦風と能代が数か月後氏の仲間入りとなりました。
清霜と401は残念ながら見つける事がは出来ませんでしたが、次の機会を待つことにします。

後は磯風ですね。
見た目がとても気に入っているだけに、早い建造落ちを願うばかりです。←基本掘るのが面倒な人


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第51話 「交流⑤」

最初に呼ばれたのは朝雲と野分。
性格的に少し対照的に見えるこの二人。
さて、提督と何を話し、どういう風に親睦を深めるのでしょうか。


コンコン

 

「朝雲です!」

 

「野分です。参りました」

 

『入れ』

 

ガチャ

 

「失礼します」

 

「お邪魔しまーす」

 

「ん、来たな。ま、楽にしろ」コト

 

提督はそう言って二人の前に紅茶と菓子を出した。

 

「わ、お菓子。もしかして大佐が?」

 

「まぁな」

 

「……いいのですか?」

 

「何を遠慮しているんだ。先ずはこれは親睦を深めるのが目的なんだぞ? 遠慮するな」

 

「そうですか、なら……」

 

「ありがとう! いっただきまーす♪」

 

パクッ

 

「美味しい―♪」

 

「……おいし」

 

「そうか、良かった。茶も飲め。金剛の影響で紅茶だが、その菓子には合っていると思う」

 

「そうなの? どれどれー?」

 

「頂きます……」

 

ズズ……

 

「んっ、いいわね。確かに合ってるわ」

 

「……は……ふ……」

 

「野分? どうした? お前には合わなかったか?」

 

「あ、いえそんなことは。ただこのお菓子といいお茶といい、美味しい上に待遇が良すぎて心地が……。すいませんちょっと上の空になっていました」

 

「はは、そう畏まらなくていい。この場では楽にしてくれて構わない」

 

(朝潮や不知火と同じ真面目なタイプだな。まだ着任したばかりだから若干固くなっている感じか)

 

「そうだよ野分! 大佐凄くいい人じゃない! ここは厚意に甘えるのも礼ってやつよ」

 

(こいつは秋雲と陽炎を足した感じか。賑やかで場の雰囲気を引っ張る元気な奴だ)

 

「そうだな。ま、朝雲ほど遠慮がないのも時には考え物だだが、ここはこいつの言う通り寛いでくれ」

 

「ちょっと、大佐それってないんじゃない!?」

 

「やかましい。俺はもうお前には遠慮しないと決めたんだ」

 

「ええっ、何それー」

 

「食べながら喋るんじゃない。ほら、口にカスが」

 

「……っ!」バッ

 

「これを使え」スッ

 

提督はそう言ってポケットからハンカチを取り出すと朝雲に差し出した。

 

「まだ一度も使っていないから綺麗だ。ほら」

 

「……」チラ

 

朝雲はそのハンカチを前にして手で口を押えながら恥ずかしさで赤くなった顔で、提督に本当にそれを借りていいのかと目で訊いてきた。

 

「遠慮するなと言ったろ? いいから、ほら」

 

「……ん……」ゴシゴシ

 

「大佐、優しいんですね」

 

そんな様子を横で見ていたお蔭か、野分もすっかりリラックスした様子で柔らかく笑い掛ける。

 

「甘い、の間違いじゃないか?」

 

「いえ、これは大佐の優しさです。私はそう思います。だから居心地が良い……」

 

「そうか。まあ少しは気に入ってもらえたようなら何よりだ」

 

「はい。私は今とても楽しんでいます」ニコ

 

「んっ、ありがと! 大佐、それは私もよ! こんなに良くしてもらえるなんて思ってもみなかったわ」

 

「あまり逆上せ上るなよ? いざ演習や出撃の時になって腑抜けになってもらっては困るからな」

 

「それは大丈夫よ。これでも艦娘だもの。良い提督、良い上司には相応の活躍で応えてみせるわ!」

 

「同じく、私も大佐の事が気に入り……失礼しました。その……こ、好ましい方だと思いました。だから、私も朝雲と同じくあなたの期待には全力で応えようと思います」

 

二人の頼もしくも初々しい反応に、提督も久しぶりに新しい風の様を受けた時の様な心地良さを感じ、笑顔で応える。

 

「そうか。その言葉しっかりと胸に刻ませてもらおう。朝雲、野分、これで何度目かになるが、よろしくな」

 

「はい、宜しくお願いします」

 

「こちらこそ!」

 

「ふむ、それでは後は二人で寛ぐといい。俺は次の奴らが来るまで執務でもしていよう」

 

「えー、大佐もいてよ」

 

「朝雲、大佐のお邪魔をしてはダメよ」

 

「う……で、でも一応これ親睦会みたいなものでしょ? だからできたら大佐にも、さ」

 

「大佐、気にしないで下さい。二人でも会話は楽しめます」

 

「……いや、偶には俺もゆっくりさせてもらおう」ドカッ

 

提督はそう言って再び朝雲達の前のソファーに座り直すと、残っていた茶菓子を摘まむと口に含んだ。

 

「ん……うん、美味いな」モグモグ

 

「大佐、いいんですか?」

 

「ああ。執務と言っても今日は作戦の指揮が殆ど仕事みたいなものだったからな。実は事務の方はそう多くない」

 

「じゃ、最後まで話し相手になってくれるのね?」

 

「お前達の時間が終わるまではな」

 

「やったぁ♪」

 

「恐縮です」ペコ

 

「いいんだ。それで、話すと言ってもな。俺に何か質問でもあるのか?」

 

「あ、それいいわね!」

 

「質問……大佐にですか……」

 

「こんな繋げ方で悪いな。どっちかというと受け答えの方が性にあっているんだ」

 

「じゃあさじゃあさ、わたしが訊いてもいい?」

 

朝雲が一人しかいない回答者に向かって元気よく手を挙げながら訊いてきた。

 

「ああ、いいぞ」

 

「大佐って彼女いるの?」

 

「っ……けほ、あ、朝雲!?」

 

「彼女?」

 

「そう、付き合っている人とか」

 

「……一応仲間の中には何人かケッコンしている奴がいるな」

 

「そうなの? それって誰?」

 

「戦艦では武蔵、長門、陸奥、金剛、霧島、マリア。正規空母では赤城、と加賀の合わせて八人だ」

 

「マリア?」

 

「ビスマルクの事だ。ここではあいつはそれで通っている」

 

「へぇ……」

 

「戦艦と空母しかいないのね……。ね、駆逐艦とはケッコンする気はないの?」

 

「ないとは……言わないが、何分こちらの育成方針の関係上、どうしても戦艦と空母以外は練度が上がり難くてな。まぁそれでもケッコンできる練度に達して、かつそいつに俺と一緒になる意思があればするのも吝かではない」

 

「そっか、じゃあ私達でも脈有りなのね!」

 

「ごふっ……、わ、私達!? ねぇ、それって私も入ってるの?」カァ

 

野分は再び朝雲の不意を突く発言に、飲みかけの紅茶にむせながら顔を真っ赤にする。

 

「何照れてるのよー? 野分だって結構大佐の事気に入ってたみたいじゃん?」ニマニマ

 

「そ、それは……」

 

「……いつも思うがお前達の好意というのは本当に突拍子もない嵐のようなものだな。そんなに簡単に判断していいのか?」

 

「いいの! 私は大佐が気に入った、だから好き! だからケッコンしたい!」

 

「あ、あまりにも単純で性急過ぎない!?」

 

「……同感だ」

 

朝雲の息つく間もない思考の展開に目を白黒させる野分に、提督は呆れた顔で頷いた。




「フューリー」来週だった……ま、代わりに「インターステラ―」を観てきましたが、これも面白かったので良しとします。

野分、見た目のちょっとワイルドな感じに対して意外にも真面目な性格が好印象でした。
朝雲はちょっとさわやかな秋雲?(ナンダソレ
ま、これはこれで良かったと思います。

あ、まだ帰国の時の話の意見は受け付けていますので、興味がある方はどうぞ。
*第五部第46話「災難」のあとがき参照。


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第52話 「交流⑥」

朝雲と野分の面談が終わり、続いては秋月と浦風です。
先の彼女達と同じく性格が少し対照的に思えるこの二人、さてどういう展開になるのやら。


コンコン

 

「浦風、来たよ」

 

「秋月、参りました」

 

『いいぞ、入れ」

 

ガチャ

 

「失礼しま――」

 

「……」

 

「大佐、どうかしたん? 何か凄く疲れた顔してるよ?」

 

部屋に入った瞬間にソファーにうなだれて座っている提督を見て浦風が驚いた顔をして心配そうに言う。

 

「……なに、ちょっと元気がいい奴の相手をしていただけだ」

 

(朝雲かな)

 

(朝雲じゃろな)

 

「まぁ気にするな。取り敢えず座れ。ほら、茶菓子」コトッ

 

「わぁ、気が利くんね大佐」

 

「……! ど、どうもありがとうございます!」キラキラ

 

「ん? 秋月は甘いものが好きなのか?」

 

「え?」

 

「何だか目が凄く輝いているように見えるが」

 

「あ、ホントじゃ。秋月、結構可愛いとこあるねー」

 

「あ、や……」カァ

 

「別に隠す必要はないと思うが」

 

「うぅ……」

 

「そうよ? 女の子が甘いもの好くんは普通やとうちも思うよ?」

 

「ですけど、防空駆逐艦として隙を見せるわけには……」

 

(どういう理屈だ……)

 

(甘味くらいで突かれる戦術的隙ってなんなん……)

 

 

「……」

 

「……」

 

「え、あの……」

 

「まぁ取り敢えずここでは気にするな。お互いの親睦を深める場なんだからな」

 

「そうよー」

 

「そ、そうですか? なら……」

 

「うちも頂くね」

 

「ああ、遠慮するな」

 

パクッ

 

「はぁ……美味しい……」キラキラ

 

「ん、確かに美味しいね♪」(けど……)

 

「……」

 

「ん~~♪」パクッ

 

(秋月ちょっと喜び過ぎ?)

 

(一体どれだけ自分を抑制してたんだ……)

 

 

――数分後

 

「失礼しました」ペコ

 

「いや、別に謝る必要は……」

 

「そうよ? お菓子食べてただけじゃけん」

 

(秋月はある意味、真面目さでは朝潮や野分を上回るな)

 

「菓子ならまだあるぞ。お代わりいるか?」

 

「あ、うん。もらお――」

 

「はい!」キラキラ

 

「……」

 

「……」

 

「あ」

 

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「どうするつもりじゃ?」

 

「何をだ?」

 

「いや、あれ……」

 

浦風が指を指した方向には自分のはしゃぎ様に羞恥で部屋の隅でうずくまっている秋月がいた。

 

「どうすると言われてもな……」

 

「大佐の所為じゃないとは判ってるよ? でも、ここは男として、提督としてバシッと決めて欲しいな?」

 

「浦風、お前、単に面倒だから俺に押し付けようとしてないか?」

 

「ぜんっぜん! そんな事ないよ?」ニコ

 

「……」(図星だな)

 

「もー、ほらほら早く何とかする!」グイグイ

 

「分かった。分かったから押す……おい、胸が当たってるぞ。体全体で押すな」

 

「サービスじゃ」

 

「そんなものはいらん」

 

「お堅いのぉ。ほれ、いいから早く!」ポン

 

 

「秋月」

 

「……」

 

「別に慰めるつもりで言うわけじゃないが、この基地にはお前と同じくらい真面目で自尊心が強い奴が何人かいる」

 

「……」ピク

 

「そいつらも最初はお前と同じように体面を気にしていてな。人から見れば何でもないが、お前の様な個人的嗜好を隙だと考えてなかなか素直になれなかったんだ」

 

「……」

 

「だが、そいつらは今どうしていると思う?」

 

「……どう、してるんですか?」

 

秋月は体操座りをして俯いていた状態から、顔を僅かに上げて目だけ提督に合わせてきた。

 

「自分からある程度素直にならないと、相手に誤解や不快感、そして……まぁ、慕っている相手にも気に入ってもらう事ができないと自分で気付き、今は大分素直になっている」

 

「素直……ですか」

 

「そうだ」

 

「でも私、いきなりそうなる事は……」

 

「それは当然だ。今言ったそいつらだって直ぐに直せたわけじゃない。時間を掛けて徐々に良くなっていったんだからな」

 

「……」

 

「秋月、お前はまだここに来たばかりだ。第一印象を大事に思う気持ちも解るが、無理にそれを通すことで自尊心に自分自身が潰されては意味がないぞ?」

 

「大佐……」

 

「そう硬くなるな。力を抜け。此処には素のお前を見て幻滅する奴なんていない。何故なら無理して体面を取り繕っているお前を知っている奴は、今日仲間になったあいつらと此処にいる俺達だけなんだからな」ポン

 

提督はそう言うと、秋月の目の前で屈み、彼女の頭に手を置いて優しく撫でた。

 

「あ……」

 

「あ、悪い。駆逐艦だからといって気軽に頭を触ってしまったな」

 

提督は馴れ馴れしい事をしてしまったと手を引こうとしたが、その手を少し頬を紅く染めた秋月が握って引き止める。

 

「ん、秋月?」

 

「大佐……分かりました。私、この暖かさに触れて、素直になることがどれだけ大切なのかを」

 

「……」

 

「だから謝らせてください。先程の事、申し訳ございませんでした。これからは大佐や仲間の前ではもう少し自分を偽らずに行こうと思います」

 

「そうか。なら、よかった」ニッ

 

「……っ」(大佐、こんな風に優しく笑えんだ)

 

「? どうした?」

 

「あっ、いえ! な、なんでもありません」

 

「そうか? じゃぁまあ仕切り直しといこうか。まだ時間も菓子も残っているしな」

 

「あ、はい。頂けるな……いえ、是非」

 

「ああ。遠慮するな。浦風はどうする?」

 

「……」

 

提督がようやく秋月を説得できた事に安堵して浦風の方を振り向くと、そこには何か真剣な顔してこちらを黙っままこちらを見ている彼女の顔があった。

 

「浦風?」

 

「あ? ああ、うん。うちも貰うよー」

 

「どうかしたのか?」

 

「……何でもない」(確かに秋月を何とかしてって言ったけど、あそこまで優しくしてるのみたら……ちょっと妬けるよ)

 

(浦風……? っ! もしかして……いや、そうならここは私が素直になった事を二人に示す絶好の好機!)

 

ギュッ

 

「ん?」

 

「え?」

 

提督が腕を圧迫される感触に、そこを見ると秋月が彼の手を両腕で抱き締めていた。

 

「秋月、どうした?」

 

「いえ……ダメですか?」

 

「駄目とは言わないが、このままだと茶屋菓子の用意ができないんだが」

 

「……今はこれでいいので」

 

「? ああ、まぁそれがいいなら」(何だ?)

 

(浦風、見ましたか。私の成長!)

 

(いくらなんでもそれはズルイ! ちゅーか反則じゃぁ!)

 

ギュー

 

「あっ」

 

「浦風、お前まで何だ? というかちょっと痛い」

 

「うちも!」

 

「は?」

 

「うちもしたいんじゃ!」

 

「……! 浦風、負けませんよ」

 

ギュッ

 

「……っ。秋風お前も少しいた……」

 

「うちも負けんけんね!」グッ

 

「お前ら、なんなんだ? 痛い、加減しろ」(どうしてこうなった?)




浦風可愛いですね。
素晴らしい。
秋月も良いのですが、何かステが最早……暁型の皆が不憫に感じてしまう程の性能に吃驚です。

最近の駆逐艦は最初の改造も結構要求レベルが高めですね。
その点、島風と雪風やっぱりチート的存在だなと改めて思いましたw


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第53話 「交流⑦」

面談最後の艦娘はプリンツと能代の重巡・軽巡コンビ。
こちらも前の2組ほどではないにしろ、ノリの良さに少し差がありそうな二人です。

提督は何事もなく(些事は除く)最後まで彼女達の相手をできるのか?


コンコン

 

「プリンツ・オイゲン来ました!」

 

「能代です。大佐、いますか?」

 

『いるぞ、入れ』

 

ガチャ

 

「失礼っ」

 

「しま……え?」

 

「……」

 

プリンツと能代が部屋に入ると、そこにはやや憔悴して疲労の色が見える提督がいた。

 

「……ん?」

 

「いや、その……」

 

「大佐、疲れてる?」

 

「ん? ああ、ちょっと前の面談で体力を使っただけだ。気にするな」

 

「はぁ……」

 

「え? ただの面談よね? どうしてそんなに体力を……」

 

プリンツは提督の様子を見ると何かよからぬ想像をしたらしく、両腕を胸を守るように組んだ。

 

「プリンツ、なんでそんな警戒する様な態勢を取るんだ。やめろ、いらん誤解をされる」

 

「え? 誤解って、あっ……」カァ

 

一人会話に着いていけないでいた能代が、そこで誤解の意味を理解して顔を赤くする。

 

「違うからな?」

 

「本当にぃ?」ジッ

 

「本当だ」

 

「ふ~ん……ならいいいよ、信じてあげる! 今回はね」

 

「今回も次回もそういう事はない。それはさっきの矢矧の説明で俺の人となりを理解してくれ」

 

「そ、そうよね。だめじゃないオイゲンさん。大佐を疑っちゃ」

 

「能代さんも疑ってたように見えたけどー?」

 

「そ、そんな事……」アセ

 

「……二人とも取り敢えず座れ。その事も含めてこれからお互い親睦を深めるとしよう」

 

「はーい」

 

「分かりました」

 

「茶と菓子だ」コトッ

 

「あ、わざわざありがとうございます」

 

「わぁ、ありがとーう! 大佐っていい人ね♪」

 

(何だか凄く単純な性格をしてそうだな……)

 

(プリンツさんって凄く解り易いな)

 

提督が用意した茶菓子を目にして早速ご機嫌になったプリンツを見て、彼と能代は心の中でそんな事を思った。

 

 

「ふむ、能代は……矢矧の姉なんだな」

 

「あ、はい。矢矧が先に来ていたようで、妹がお世話になってます」ペコ

 

「ん、いや。あいつは出来た奴だよ」

 

「そう言ってもらえるとわたしも嬉しいです」ニコッ

 

「プリンツは……ああ、マリア以来の海外艦だなそういえば」

 

「マリア?」

 

プリンツが耳慣れない言葉に反応する。

 

「ビスマルクの渾名だ。此処ではそれで通っている」

 

「へぇ、ビスマルク姉さんここではマリアって呼ばれてるんだ! なんかいいですね。可愛い感じで!」

 

「はは、まぁそう言ってもらえると名前を付けた身としても嬉しいな」

 

「え? 大佐が付けたんですか?」

 

名付た人物が提督だと知ってプリンツは今度は目を丸くする。

それは能代も同じようで、食べかけていた菓子を口元で止めて提督を見ていた。

 

「へぇ……なんか意外ですね」

 

「そうか?」

 

「あっ、別に悪い意味じゃないんですけど、大佐ってやっぱり真面目そうだから」

 

「確かに自分でもある程度は真面目なつもりではあるが、それと名前を付ける行為はあまり関係ないと思うけどな」

 

「ね、どういう風に姉さんに名前付けたの?」

 

「ん? ああ、それはな……」

 

 

―――数分後

 

「というわけだ」

 

「へぇ、結構自分の知識? というか教養から付けたんですねぇ」

 

「良いセンスだと思います。ネーミングじゃなくて、そういう風に幅広い知識から考え出すというのは」

 

「はは、そう褒めるな。買い被りだ」

 

「ううん、わたしも姉様のマリアって名前凄く良いと思います! ……あ、もしかしてレーベやマックスにも?」

 

「まぁな」

 

「聞かせて聞かせて!」

 

「あ、わたしも聞きたいです」

 

「ああ、いいぞ。あいつらはな……」

 

 

―――更に数分後

 

「へぇ、レーベ、レイスちゃんはともかく、マックス、ジェーンちゃんはなかなか思いつかないですね」

 

「いや、レイスはギリギリ余地があるとしても、マリアとジェーンに関しては、普通は名前の音を聞いただけではその過程なんて連想できないと思うぞ。自分で言うのもなんだが、かなり無理やりだしな」

 

「ふふ、マリアさんはともかく、ジェーンちゃんは確かにそうですね」

 

「へぇ~いいなぁ。ね、大佐」

 

「うん?」

 

「わたしにも渾名、ここでの名前付けてよ!」

 

自分以外の仲間が独自の名前を持ってる事を羨ましく思ったプリンツが身を乗り出して提督にお願いしてきた。

提督はそれに対して特に考える間もなく一言言った。

 

「……お前はプリンでいいんじゃないか?」

 

「ぷっ。あ、ごめんなさい。でも、ちょっと何かかわい……」クス

 

「えー、何それ―? なんか甘そうでドイツっぽくないー!」

 

「マリアだってそうじゃないか?」

 

「姉さんはまだちゃんと人の名前だし、マリアっていう名前も姉さんの容姿のおかげもあって凛々しい感じするじゃないですかぁ」

 

「ふむ……?」

 

「だから、わたしもプリンなんて名前じゃなくて全く違うコレー! って名前がいいです!」

 

「ふ……む、そう言われてもな。ちょっと待て」

 

「うん、考えて考えて!」

 

(どんなのを思いつくんだろ)ワクワク

 

 

―――また数分後

 

「よし」

 

「決まった!?」

 

「教えてください」

 

「うん。フランソワ、なんてどうだ?」

 

「フランソワ……!」

 

名前の音の響きにプリンツは目を輝かせる。

 

「は……ぁ、良い感じだと思います」(本当に予測できない。どうやって考えたんだろ)

 

「うん! 凄く良いと思います! ね、ね! 一体何から付けてくれたの?」

 

「ん、今回はそう複雑じゃない。お前の名前、プリンツ・オイゲンというのは実在した昔の軍人に因んで付けられたんだろ?」

 

「ええ、そうよ」

 

「その軍人の名前はドイツ語読みだが、それをフランス語にするとウジェーヌ=フランソワ・ド・サヴォワ=カリニヨンとなる。そこから取ったんだ」

 

「ながっ」

 

「あれ? でも名前の中にプリンっぽい響きが無いよ?」

 

「プリンツというのは公子という称号の事なんだ。だから本名は別にあってフルネームはこんな長い名前なんだ。それをフランス語読みにするとこうなるというわけだ」

 

「へぇ~。わたしプリンツも名前だと思ってた」

 

「ドイツ生まれならドイツの単語くらい知っててもいいんじゃ……」

 

あっけらかんとさり気なく爆弾発言をするプリンツに、能代は少し呆れたように笑いながら言った。

 

「え? あはは。に、日本で見つかったからかな」

 

「ははは、かもな。で、どうだ? もし、受け入れてくれるのなら、フランソワと毎度呼ぶのもアレだから、普段はフラン、と愛称で呼びたいんだが」

 

「フランかぁ……んっ、いいよ! たった今からわたしはフランソワ! フランって呼んでね!」

 

「ああ、分かった」

 

「分かったわ。じゃぁ改めてよろしくね、フランさん」

 

「うん! 大佐、良い名前を付けてくれて本当にありがとう!」

 

「いや、俺もそう喜んでもらえて何よりだ」

 

「うんうん、お菓子も紅茶も美味しいし、もう言う事無しだよ♪」

 

「そうね。わたしも凄く心地よい雰囲気だと思います」

 

「そうか、それは良かった」(今までの面談の中で一番楽だ)

 

提督は今までの面談を思い出しながら考え深げにそう思った。

 

「流石重巡と軽巡、と言ったところか」ボソ

 

「え?」

 

「んっ?」

 

「いや、何でもない。それよりまだ時間はある。今日はゆっくりしていくとい」

 

「はーい、ありがとう大佐!」

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えちゃいますね」




能代もプリンツも良いキャラしてますね。
阿賀野型は残すはネームシップである阿賀野と酒匂となりました。
矢矧を手に入れてから数か月越しによやくゲットした阿賀野型なんですよねぇ彼女。

残り姉と妹はいつになる事やらw


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第54話 「おねだり」R-15

作戦と新メンバーとの親睦会も終わり、提督はその日の疲れを癒すために入浴していました。
風呂は彼にとっては数少ない楽しみの一つ。
艦娘たちと違って風呂は自分専用の個室があるので、余裕をもって自分の時間に浸る事ができます。

そんな提督の貴重なひとときに遠慮しがちに介入しようとする戸を開く音がしました。

*明らかな性的描写あり


「ふぅ……」

 

カラ……

 

「大佐、今日はお疲れ様でした。お背中お流ししましょうか?」

 

提督が湯船に浸かって良い心地でいると、軽く戸を開く音と共に浴室に赤城が入って来た。

タオルも携えずに入って来た彼女は、一糸纏わぬ姿だった。

 

「赤城……」

 

「あれ? あまり驚かれないんですね?」

 

てっきり真っ先に苦言を貰うことになると予想していた赤城は、提督の落ち着いた反応に意外な顔をする。

 

「ここまで入って来た女性を裸のまま追い出す気には、流石になれないんでな」

 

「あ、じゃあご一緒してもいいんですね?」

 

「今更……だが、こんな風に頻繁に不意に入って来るのは自粛しろよ? 次からはちゃんと事前に承諾を……」

 

「分かってますよ。もう……少しくらい雰囲気を意識してくれてもいいのに」

 

「一般的な男性なら喜ぶところなんだろうがな。生憎俺は真面目で堅物で通ってる枯れた男なんでな」

 

「え? た、大佐?」

 

一瞬顔に影がさしたかと思うと、それと一緒に愚痴のような事を言い始めた提督に赤城は動揺する。

 

「……何でもない忘れてくれ」

 

(新しく仲間になった子が多かった事を素直に喜べなかったのを気にしているのかしら……?)

 

 

「あ、お背中流しますよ」

 

「……俺はもう湯船に入ってるんだが」

 

「洗いっこしません?」

 

「今はしない。湯が気持ち良い」フゥ

 

「むぅ、じゃ、私を洗って下さい」

 

「断る。さっきも言ったが今はそういう気分じゃない」

 

「えぇ。……あ」

 

尚も断る提督に赤城は子供の様に残念そうな顔をするが、ちょうどその時に彼のある部分の反応を見て、何となく納得したような顔をした。

 

「なんだ?」

 

「大佐、元気じゃないですね」

 

「……そういう気分じゃないって言ったろ? 今は湯が気持ち良いんだ」

 

「殿方に柔肌を晒しているというのに反応を全くして頂けないというのは、これはこれで複雑ですね」

 

「ま、こういう事もあるさ」

 

「はぁ、いいです。自分で洗います」プク

 

「そうしてくれ」

 

 

ごしごし、ごしごし

 

赤城は身体を洗いながら横目で提督を見る。

 

「……」チラ

 

「……」フゥ

 

わしゃわしゃ、むにゅむにゅ

 

「……」チラ

 

「……」ハァ

 

(本当に全く反応してない。なんか女としての自信に危機感を抱くなぁ……。あ、次は……)

 

提督が全く興味を示さないことに軽くショックを覚えながらも、赤城は次に体を洗う場所に気付いてちょっと恥ずかしそうな顔をした。

 

「大佐」

 

「……ん?」

 

「あの……お願いなんですけど、今から少しの間だけ私がいいって言うまでそのまま目を閉じて頂くか、後ろを向いていてもらえますか?」

 

「……? 別に意識して裸を見た覚えはないが?」

 

現にさっきまで本当にその通りだったので提督は下心なしに赤城にそう答えた。

それに対して赤城は言い辛そうにモジモジして彼と視線を合わせないように意識しながら恥ずかしそうに言った。

 

「あの……を洗うので」

 

「うん?」

 

「あ、あの、だから……そのぉ……」カァ

 

(ああ……)

 

「悪い、無神経だった。目を瞑ってる」

 

提督は直ぐに納得した。

それは確かに入浴するうえで当たり前の行為だが、男と違って女性のそれは何故か背徳的な感じがする。

ましてやそれを人前で何て恥ずかしく思って当然だろう。

 

「はい、お願いしますね」

 

赤城は提督の言葉に安心しながらも、敢えて最後に念を押すように少し強く言った。

 

 

にゅ、にゅっ

 

「……」

 

「……」

 

こしこし

 

「……」チラッ

 

「……」

 

赤城は隣に提督がいる影響で顔を赤くしながらも、時折横目で彼の様子を確認しながら着実に洗っていた。

 

(見て、ないわね。早く洗っちゃ……あ)

 

その時赤城の脳裏にある考え、突拍子もない思い付きが過った。

 

(見ていない、という事は……)ゾクッ

 

 

 

「……」

 

にゅっ、にゅっ……

 

「ん……んっ……」ピクッ

 

「……?」(何だ? 洗ってる音がやけに大きく……いや、近く感じる?)

 

「……っ」(声を出しちゃ……ダメっ)

 

「……」(赤城の奴……)

 

ザバッ

 

「あっ、た、大佐!?」

 

「全く、こんなになるまで……」

 

「やっ、は……ぁぁぁぁんっ」

 

提督の不意の攻勢に赤城は最早隠さずに悦楽に喘ぐ嬌声を響かせる。

 

「大佐……あっ……♪」

 

提督に攻められながらも赤城は、彼の身体のある変化に喜びの色をその目に浮かべる。

 

「……流石にここまでしてならないわけがないだろう」

 

「大佐……もう、もういで……すか……ら、あっ。だから、お願い……」

 

「湯船から出るぞ。中ではしたくないからな」

 

「はい♪」

 

 

「いくぞ」ズッ

 

「はい。あ、ん……ふっ……」ピクッ

 

「声が響くからあまり大きな声はなるべく我慢しろ……よ。ふっ」

 

「は……あんっ、は……っ」

 

「そのまま支えてろ。もっといくぞ……ふ……っ」

 

「きゃっ、あ……あはっ♪ 好き、これ……すきで……あっ」

 

「くっ……これは……」

 

「いい……ですよ。私も今……ちょうどいっしゅ……ん……てくださいっ」

 

「ふぅ……いくぞっ」

 

「は……あ……ああっ!!」

 

 

 

「……洗い流すのに随分時間が掛かったな」

 

「ふふ、そうですね。大佐ったら凄いんですもの。どれだけ洗ったか忘れてしまいました」

 

提督は再び湯船に浸かり、彼の膝の上には赤城が抱きかかえられるようにして一緒に湯に入っていた。

 

「そりゃ、4回もやればそのくらいにはなるだろう」

 

「だって……ん」

 

「こら、もう我慢しろ」

 

「そうですか……ふふ、残念」

 

「これ以上望むのなら、続きは上がってからだ」

 

「あ……はい♪」

 

久しぶりに提督を肌で感じられる機会が増えた事に赤城は心から嬉しそうな顔をした。




何か唐突に思いついたのでエロい話を投稿しました。
風呂プレイは何故か赤城と鳳翔を直ぐ連想してしまいます。
なんでだろう……。


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第55話 「悪夢3」

秋月が執務室に入るとそこには、彼女が知る提督ではなく見知らぬ男がいた。


『え……あ、あなたは誰?』

 

『何だ聞いてないのか、新しい提督だ。此処のな』

 

『……え?』

 

秋月は愕然とした。

目の前の見知らぬ男がこの基地の、私の新しい提督?

せっかくこれから仲良くなれる、あの人の為なら頑張れると思っていたのに、そんな期待に満ちた日々への希望がもう覆るというの……?

 

『あ、あの……』

 

『?』

 

秋月は、動揺を悟られまいと必死に我慢しながらも、震える唇は隠し切れずにたどたどしい言葉使いで新しい提督だという目の前の見知らぬ男の聞いた。

 

『あ、あの人は……。前任者の大佐は何処へ行ったのでしょうか?』

 

その言葉を聞いた瞬間男の表情が急変した。

不機嫌に顔を歪ませながら眉間に皺を寄せると、足早に秋月に近づくと彼女の小さな頬を平手打ちする。

 

パンッ!

 

『あ……きゃっ」

 

『貴様なんだその言いようは!? 前の提督は階級が准将だったというのにそれを下げて呼ぶとは……。いやそれは置いておくとしても、新たな提督である私を前にして早速前任者の事を気にするとは無礼であろうが!!』

 

パァン!

 

『……っ。し、失礼しました……』

 

再び頬を叩かれた秋月は突然の体罰に混乱するも、気力を振り絞って恐怖を抑え自分の無礼を新しい提督に詫びた。

 

『……ふん』

 

新しい提督はその言葉に一応は振りかざした手を引いたものの、未だにその顔は不機嫌なままで、表情は険しかった。

 

『服を脱げ』

 

『え?』

 

予想だにしない言葉に秋月はまたも愕然とする。

今、この人はなんて言ったの……?

 

『服を脱げと言ったんだ。これは司令官を軽んじた罰だ。今日からお前は私が許すまで常に裸でここに来い。なに、女としての尊厳など気にする事はない。お前はただの兵器なのだからな』

 

『そ……そんな……』フルフル

 

秋月は今度こそ泣き出した。

少し、少し前まではあんなに楽しかったのに、心地よかったのに……。

こんな……こんなのって……。

 

「めそめそと泣いて鬱陶しい……さっさと脱がんか!!」

 

「……っ」ビクッ

 

秋月は、怒声と共に飛んできた明らかに命令の範疇を逸脱したこの提督の暴言に、抵抗する気力を完全に奪われてしまった。

耐えがたい羞恥心を感じながら震える手をその服に掛ける。

そしてついに……。

 

 

「!!」バッ

 

「……はぁ……はぁ」

 

信じられない悪夢から目を覚ました秋月は、自分の荒い息に驚きながらも直ぐに周囲を確認する。

 

「……」

 

自室だ。

自分の部屋が決まるまで一時的に割り当てられた仮の部屋だった。

 

「すぅ……すぅ……」

 

ふと、横を見ると先に部屋が決まった能代とプリンツを除いて一緒になった野分達が静かな寝息を立てていた。

 

「……」

 

秋月はその穏やかな顔を見て安堵から顔を綻ばせる。

そうだ、あれは夢だったんだ。

だから気にする事はない、提督は……大佐は、あの人のままだ。

 

「そう……その、はず……」

 

秋月はそいう自分に言い聞かせて安心しようとしたが、悪夢にうなされた所為で掻いたべっとりとした汗を掌から確認する内にどうしてもある事が確認したくなった。

それも今直ぐに。

 

(確かめたい……直ぐにでも……!)

 

 

パタン、トテテ……

 

秋月は皆を起こさないように静かに部屋を出ると、足早に提督の部屋へと向かった。

 

キィ……。

 

静かに執務室の扉を開ける。

提督の私室はこの部屋の隣なので、今は執務室には誰もいない。

 

「……」

 

部屋の内装は提督の趣味で無造作に置かれて異彩を放っている調理台を除いて夢で見た通りだった。

 

「……っ」ブルッ

 

秋月は再び悪夢を思い出して震え、考え直す事も浮かばずにそのまま執務室に入ると提督の部屋の扉の前まで走った。

 

 

コンコン

 

「……?」

 

僅かな音だったが提督は目を覚ました。

 

「誰だ……?」

 

『……!』

 

聞き慣れた、聞き望んだその声に、秋月の目は安心と嬉しさから輝く。

 

『大佐……秋月です』

 

「秋月?」

 

提督は意外な訪問者に内心驚いた。

 

(なんで秋月が。何かあったのか?)

 

『はい、そうです。あの、お願いがあります。部屋に……部屋にまずは入れてもらえませんか?』

 

親睦会の時とは明らかに異なる彼女の緊張した声に、提督はにべもなく許可をした。

 

「ああ、いいぞ。入って来い」

 

ガチャ……

 

「失礼、します……」

 

「秋月、お前どうした?」

 

彼女自身も気付いていなかったらしい。

提督は安堵の涙を流した所為で目を赤くした秋月を見て、ベッドから降りると彼女の傍まで行った。

 

「え……?」

 

秋月は最初提督の言葉が理解できずに、心配した表情で近づいて来た彼に驚いた顔をする。

 

「泣いているぞ。何かあったのか?」

 

提督にそう言われて自分の頬を触り、秋月は初めてそこで自分が泣いていた事に気付いた。

 

「あ……」

 

「……悪い夢でも見たか?」

 

秋月の様子を見て提督は直感でそう判断して訊いた。

 

「……はい。恥ずかしい事ですが、本当に……本当に怖い、夢を見ました」

 

「……そうか」

 

「その夢はここの基地での出来事で……それが……」ガタガタッ

 

秋月はそこで再び夢の内容を思い出し、恐怖と絶望から小さく震え始めた。

 

「……寝るか?」

 

「え?」

 

提督の言葉に秋月はハっとして顔を上げる。

 

「内容は確認するつもりはないが、その悪夢はどうやら俺に関係しているみたいだ。なら、それが本当にただの夢だと確認する為に一緒に寝るか?」

 

「い……いんですか……?」

 

提督の申し出に嬉しさを感じながらも秋月はそこまでしてもらっていいものか考えあぐねている様子だ。

 

「流石にそこまで怯えているお前を見ると、な。まぁお前がそうしたいならだが」

 

「お、お願いします! 今日は……今日は秋月と……提督と一緒に寝かせてください!」

 

「分かった。じゃぁ俺はベッドの隣にソファーを……」

 

「え?」

 

この流れで何故そういう考えになるのか、秋月は執務室に戻ってソファーを持って来ようとする彼の服を急いで握って引き止めた。

 

「ん?」

 

「どう……して」

 

「ん、なんだ?」

 

「どうしてそうなるんですか!?」

 

「え?」

 

基地に来て初めて見て、聞いた秋月の怒った顔とその声に提督は驚いた顔をする。

 

「普通は……普通はここでベッドで一緒になって添い寝をしてくれるところじゃないんすか……?」

 

「……悪い。他の駆逐艦ならまだしも、お前はまだ来たばかりだし性格の事もあったからついそう判断してしまった」

 

秋月の言う事を理解した提督は申し訳なさそうに言った。

 

「私は大佐と面談した時から素直になると決心しました。なのに大佐がいきなりそれでは……」

 

「ああ、悪い。本当にすまなかった」

 

提督はそう言って秋月をそっと抱き寄せ安心させるように頭から背中を撫でた。

 

「……一緒に寝てくれますか?」ジッ

 

「ああ」

 

「本当に?」

 

「本当だ。ついでに約束もしよう。この事は皆には秘密にする」

 

「……大佐!」ダキッ

 

「……っと」

 

秋月はやっと心から不安が消えていくのを感じながら、幸せ一杯といった風に提督に抱き付いた。




すいません秋月をちょっといじめてしまいました。
しかし、ネタというものは鮮度が大事なのです!
思いついたらやれるときにやってしまわねば……!

という気持ちで投稿しました。

話変わりますが、最近、最初の方の話からぽつぽつと全体的に修正しています。
当初は挿絵を追加する毎にと予定していたのですが、それだといつ手を付ける事になるか分からないので。
まだ3話くらいしか修正してませんが、手直ししながら今よりも拙い自分の文を、恥ずかしさや呆れを通り越して逆に楽しんでしまっています。


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第56話 「可能性」

秋月が提督に添い寝してもらった話の続きです。

一緒に寝てもらった秋月ですが、どうやらまだ不安そうです。
提督は彼女がまだ僅かに震えていることに気付きます。


「秋月、まだ怖いのか?」

 

秋月まだ先程見た悪夢が忘れられないようで、提督にしがみつく形で寝ていながらも、その身体は小さく震えていた。

 

「あ……そ、その……申し訳ございません……」

 

「謝る事はない。だがまだ気になるか」

 

「はい。少し印象に残ってしまっていて……」

 

「……なぁ」

 

「?」

 

「よかったら。夢の内容を話してくれないか?」

 

「え……」

 

提督の頼みに秋月は戸惑った顔をする。

悪夢の内容が内容なだけに、それを思い出すというのも気が重かったし、何より提督に話すのが躊躇われた。

 

「あ、あんまりいい内容ではないので……」

 

「悪夢なのだからそれはそうだろう。秋月、俺が言いたいのはな、悪夢を自分だけ抱え込まない方がいいという事なんだ」

 

「え?」

 

「人は自分にとって不快な事は忘れようと努めるものだが、逆にそれが自分の中で印象が強く残ってしまう事がしばしばある。今のお前がそれだ。ここまで解るな?」

 

「……はい」

 

「ん……忘れたい故に口に出さないでいると、結果的に自分だけで悪夢を処理する事になる。しかし、そこで結局忘れる事ができなければ、それは一生のトラウマになってしまいかねないだろう?」

 

「そう……かもしれませんね」

 

「ならその悪夢を信用できる人と共有すればいい。内容を理解してくれる人が自分以外に一人でもいれば、それは自分の負担の軽減になる。そうは思わないか?」

 

「……」

 

秋月は提督の話を考えた。

確かに未だに悪夢は忘れられずに自分を苛んでいる。

忘れようと必死になればなるほど、二度と見たくないという思いの所為でかえって眠るのが怖くなっている始末だ。

提督の話は一理ある。

秋月はそう思った。

 

「……怒らないでくれますか?」

 

秋月は消え入りそうな声で不安気に訊いた。

 

「夢の内容か? ……ここの夢か?」

 

「はい。大佐は出てきませんが、それでも艦娘が提督を拒む内容なので……嫌われたくないんです」

 

「その夢の中に出てくる提督はひどい奴だったのか?」

 

「……少なくとも私には耐え難い性格でした」

 

「……そうか、なら心配ない。その提督より恐らく俺はマシな奴だと思うからな」

 

「え……」

 

秋月はちょっと意外そうな顔で提督を見た。

彼なりに自分を安心させるための軽口のつもりだったのだろう。

提督は秋月に優しく微笑んでいた。

 

「大丈夫だ。決して怒りはしない」

 

「大佐……分かりました。お話します」

 

秋月は提督の笑顔に安心し、拙いながらも少しずつ話し始めた。

 

「こんな夢でした……」

 

 

 

「……なるほどな」

 

話を聞き終えて提督は考えるように天井を見つめていた。

 

「私はその提督が怖くて……そ、その……い、嫌な人だと思いました……。そして二度と大佐に会えないと思うと、もう……」グス

 

「……」ナデナデ

 

「大佐っ」ギュッ

 

夢の内容を話した事によってその内容を鮮明に思い出したのだろう、秋月は自分を撫でる提督の手を抱きしめた。

 

「秋月、俺が思うにな」

 

「はい」

 

「お前を不安がらせるつもりはないが、現実を教える為に敢えて言うが」

 

「はい」

 

「恐らくお前が話したような提督がいる可能性はあると思う」

 

「……っ」

 

認めたくはなかったが可能性の上では否定できない現実を指摘する提督の言葉に、秋月は言葉にできない恐怖を感じ、再び彼の手を強く抱き締めた。

 

「提督にもいろいろいるだろうからな、ショックかもしれないがまずはこれを理解してもらったうえで続けるが、いいか?」

 

「……」コク

 

「お前が夢で見たような提督が実際にいたとする。だが、何故かその提督が居る基地に限って意外にもそこで艦娘の目立った反抗は見られず、本部もそんなに問題視しなかったりする。何故か分かるか?」

 

「……」

 

秋月は提督の質問に悩んだ。

艦娘にとって提督との絆は任務は勿論、基地での日々を送るうえで絶対に疎かにできないものだ。

だが、自分が見た夢に出てきた提督は、彼女が考える限りその絆を到底維持できる人物には思えなかった。

では何故そんな提督がいる基地で問題が起こらないのか。

秋月はいろいろ考えてみたが、結局分からなかった。

 

「分かりません……何故ですか?」

 

「ん、それはな。そういう提督に限って性格に難はあるものの、任務を遂行する手腕に掛けては有能ないし、優秀だったりするからだ」

 

「……どういう事です?」

 

提督の答えを聞いて、秋月は余計に分からなくなった。

いくら優秀でもそれだけで艦娘との絆は維持できない、そう考えたからだ。

 

「秋月、艦娘というものはまぁ言ってはなんだが、戦闘が主な仕事だ。そんな彼女たちは日々戦いの中で任務をこなしながら徐々にその心の中にあるものを育んでいく。それは何分かるか?」

 

「……自尊心……誇り?」

 

今度の質問は秋月にも何となく予想ができた。

それは間違いなく自分の中にもあったからだ。

 

「そうだ、誇りだ。艦娘もそうだが、軍人というものはその職務柄名誉や誇りに重きを置き易いものだ。さて、ここでまた質問だが」

 

「はい」

 

「そんなお前達を指揮する提督が、性格が悪くてもその指揮能力は抜群で、バンバン成果を上げる優秀な指揮官だったとする。そんな提督をその人の下で働いてきた艦娘達はどう思うか?」

 

「……従います。この指揮官ならと」

 

秋月は今度も迷いなく答える事が出来た。

彼女には段々と提督が言いたい事が解ってきた。

 

「そうだな、俺もそう思う。恐らく余程の事が無い限りお前達はその提督の下で数々の名誉を授かる内に、性格の事は気にしないまでとは言わないが、自主的にあまり深く考えなくなるだろう」

 

「……だから反抗もなく本部も問題視しない、あるいは深刻な問題があったとしても気付かない……?」

 

「そうだ。お前が見た悪夢は、お前が知らない基地の艦娘達にとっては案外慣れた日常だったりするのかもしれない」

 

「……」

 

秋月は再び考える顔をした。

まだ完全とまではいってなかったが、その顔からは最初と比べれば大分恐怖感は減っているようだった。

 

「……優しく慰めてやれなくて悪いな。だが、俺はお前ならこう話した方が一番いいと思った」

 

そう口にする提督の顔は言葉の通り、彼女に対して申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「大佐」

 

「うん?」

 

「ありがとうございます。おかげで大分最初と比べれば気分は楽になりました」

 

「……そうか」

 

「でも」

 

「ん?」

 

「私はそれでも、この基地が、大佐がいいと思います。初めて来たのが此処だったというのもあるかもしれませんが……。もう、私は大佐の、あなたの艦娘になってしまったから……多分他の提督では……」

 

秋月はまるで告白する様に顔を赤くして俯きながらただたどしく言葉を紡いでそう言った。

そんな彼女に、提督は微笑みながら優しくその頭に手を置いた。

 

ポン

 

「あ……」

 

「その決心、確かに受け取った」

 

「大佐……!」ギュッ

 

「改めてよろしくな秋月」

 

「はい……! よろしくお願いします!」

 

提督の身体に抱き付きながら秋月は本当に嬉しそうにそう言った。




秋月に当てられたわけではなありませんが、思いついたものは仕方ないですよね。

関連の同人誌を読んでて、いろんな提督見ている内になんとなく思いついた話ですw


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第57話 「協定」

提督と一緒に寝て貰った秋月は、日が昇る前に目を覚まし、彼を起こさないようにそっと部屋を出ました。
それは彼女なりの提督への配慮だったのは言うまでもありません。

ですが秋月は、周りの目を気にすることなくいつか提督とこんなふうに自然に一緒に居られる関係になりたいと、密かに想いながら自室へと戻ったのでした。

そして日が昇り、朝になりました。


「秋月、おはようございます」

 

「あ、不知火。ええ、おはよう」

 

秋月は自分と同じく朝早くに目覚めている不知火と廊下で出会った。

それはなんの変哲もない挨拶のしあいだったが、不知火は挨拶を交わして彼女とすれ違った瞬間、何かに気付いたのかピタリと足を止めて秋月の肩を掴んだ。

 

「……」

 

「なに?」

 

クンクン

 

「えっ!? ちょ、な、なに!?」

 

「……大佐の匂いがしますね」

 

「 」

 

「ちょっとこっちに来てくれませんか?」

 

「え」

 

「来てください」

 

「い、いきなりそんなこと言われても……」

 

「早く」

 

「だ、だから」

 

「来い」

 

「……っ!?」ゾクッ

 

ガシッ

 

「え、やっ……ちょっ、離してー!!」ズルズル

 

 

秋月は不知火に引きずられるような形で捕獲され、まだ誰もいない入渠ドッグに連れてこられた。

 

「さて、先ずは単刀直入に訊きます」

 

「……」

 

「大佐とヤりましたか?」

 

「え……!?」

 

「秋月には少々直球過ぎましたか。では、少し表現を和らげましょう。大佐と寝ましたか?」

 

「ね……あの、それって……」カァ

 

「意味は流石に解りますよね? どうなんですか?」ズイ

 

「寝たかどうかという事なら、それは……」

 

「別に私はあなたが提督の名誉を傷つけるような後ろめたい事をしているとは思っていません。だからこの質問には、ただはっきりと事実だけを答えて頂けてたら結構です」

 

「……寝たわ。いえ、寝てもらいました。ただ、本当に寝ただけよ」

 

「……何故か訊いても?」

 

「寝て貰った理由? そ、それは……」

 

「笑いません」

 

「……怖い、夢を見たの」

 

「……なるほど。理解しました」

 

「不知火、あなたは大佐と私たちがその……そういう関係になるのが気になるのですか?」

 

「嫉妬ですか? まぁそれに近いものだとは思いますが、それでもお互いに相思相愛かケッコン済みの関係なら流石にそれに水を差すような事はしません。私があなたに伝えたいのは……」

 

「……」

 

「この駆逐艦同盟に加入してもらい、誓約を尊守して欲しいという事です」スッ

 

「え?」

 

不知火はそういうと秋月に一冊の小冊子を渡した。

 

『駆逐艦同盟』

 

冊子の表紙には達筆な文字でそう書かれていた。

 

「あの、これは……?」

 

予想外な展開過ぎて秋月は戸惑うばかりだ。

 

「この同盟は駆逐艦のみを対象とし、かつ大佐に特に好意を持っている事が加入条件です」

 

「は、はぁ……え? こ、好意って……」カァ

 

「そうですよね?」ジッ

 

「は、はい」

 

「素直ですね。良い事です」

 

「あ、ありがとう……」

 

「この同盟の目的は単純に本人、大佐の意思に反してあの人を籠絡しようとしないこと、そしてそういった抜け駆け行為の自粛を促す為です」

 

「な、なるほど。だからケッコンや相思相愛は……」

 

「そういう事です。だからこの同盟の加入者の中には、叢雲さんや初春さんといった方もいます」

 

「叢雲、はつは――」

 

「さん」

 

「え?」

 

二人の名前を挙げようとしたところで唐突に不知火が口を挟んできた。

 

「その二人には『さん』と、敬称を付けるように」

 

「え、な、何故?」

 

「その二人は大佐との付き合いが最も古いからです。そして誰よりも最初にあの人に好意を持っていたからです」

 

「なるほど」

 

「まぁ私も古参と言えなくもない頃からここにいますが、それでも私の前には十人以上の『先輩』方がいます。ですからその人たちに関しては、艦種に関係なくこの基地では特別な存在だと思って下さい」

 

「……了解」

 

「勿論その先輩方は自分からその事を主張するなんて事は基本的にありませんから、仲間としての接し方には変わりはありませんけけどね」

 

「配慮、ね?」

 

「そうですね。あからさまに行う必要はありませんが、その人達と大佐が触れ合っているときは少し気を遣って欲しいという程度です」

 

「分かったわ。でも、気付けない時は仕方ないわよね」

 

「ふふ、そうですね。こちらもそこまで厳しくするつもりはありません。ですが……」

 

「?」

 

「解るものなんですよ意外に」

 

「そうなの?」

 

「ええ、何となくですが、雰囲気的に」

 

「そう……」

 

「それで」コホン

 

「あ、うん」

 

「加入してもらえますか?」

 

「ええ、加入するわ。こういう仲間意識も悪くない、ものね」

 

「理解が早くて嬉しいです」

 

「ううん、話を聞いていてこういうのもいいなって思えたから」

 

「そうですか。では、ここに署名を」

 

「ここ? 血判とかいる?」

 

「え? 血判ですか? そこまではやってないのでいりませんが、やりたいのなら」

 

「そう? じゃ、せっかくだしやろうかな。何かこれはこれで特別な感じがするし」

 

「……なるほど」

 

グッ

 

「……と、これでいいわね」

 

グッ

 

「え、不知火?」

 

秋月が署名と血判を終えると、その隣で不知火も自分の名前の下に彼女と同じく血判を押してきた。

 

「……なんかそれを見てたら私もしたくなったので」

 

「え? ふふ、そうなんだ」

 

「……ふむ、確かにこう見ると私達だけ何か特別な感じがしますね」

 

「なら私と不知火は特別な仲間という事ね」

 

「そう、ですね」クス

 

「あ、それじゃあもう用が済んだのなら私は行くけど」

 

「あ、待ってください」

 

「?」

 

「一つだけ訊きたい事があるのですが」

 

不知火は、少し頬を染めながら真剣な表情で戻ろうとした秋月を呼び止めた。

 

「何?」

 

「その……あなたが大佐に添い寝をしてもらった時、どうやってお願いしたか教えてもらえませんか?」

 

「え?」




秋月出番多いですね。
が、話の流れ的には仕方ないし、別にそれが嫌とも思ってないのでいいのですがw

古鷹改二来ましたね。
うちはあと20くらいレベル上げないといけませんが。
ま、それ以前に新しく入った子たちのレベルを先に上げたいので、今度の改二はちょっと先になりそうです。


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第58話 「強化」

扶桑と山城が新たな改造を受けました。
航空戦艦としては提督の基地の中では初の改二です。
二人はどこか誇らしげな顔で提督に報告に来ました。


「扶桑、山城、新たな改造を受けて参りました」

 

「大佐、これが改造後の参考数値になります」スッ

 

「ああ。ふむ……」

 

提督は山城から結果通知書を受け取り目を通す。

扶桑と山城は彼が書類に目を通すのを緊張した様子で見守っていた。

 

「……」ドキドキ(大佐喜んでくれるかしら……)

 

「……」ドキドキ(もう不幸じゃない不幸じゃない……)

 

「……凄いな、これは」

 

提督は一言そう言った。

 

「……!」パァッ

 

「本当ですか!?」

 

その言葉に扶桑は顔を輝かせ、山城は提督の机に身を乗り出してその感想が本当か確認してきた。

 

「本当も何もまさかここまでとはな」

 

提督は素直に心から感嘆していた。

扶桑達は、航空戦艦として戦術に富んだ戦いが可能なのが長所だったが、しかしそこには航空戦艦故の火力不足という、戦艦として一番と言ってもいい程の手痛い悩みが常に付きまとっていた。

しかしその悩みも、今回の改造で火力が一気に長門型に匹敵するほどに強力になったうえ、更に艦載機の搭載数まで得たのだ。

これは驚くべき成果であり、まごうことなき改良であった。

 

「姉様やりましたね!」

 

「ええ……ええ……こんな……こんな日が来るなんて……っ」

 

山城は扶桑と手を取り合って喜びはしゃぎ、そんな妹に対して姉はは感極まって言葉も出ない様子だった。

 

「そんなに凄いのか?」

 

秘書艦の長門が提督の後ろから改造結果の数値を覗こうとしながら言う。

 

「ああ、本当だ。ほら」ピラッ

 

提督から通知書を受け取った長門はその内容を実際に自らの目で確認すると、感心するような顔で言った。

 

「……ほう。そうだな、これは本当に……ふふ、負けてはられないな♪」

 

「嬉しそうだな長門」

 

「ん? まぁな。扶桑達の悩みは私も知るところだったし、理解もできたからな。同じ戦艦として悩みが解決して喜ぶ姿を見れたのは、やっぱり仲間として嬉しいものだよ」

 

「ああ、そうだな」

 

「長門……」ウル

 

「長門さん……」

 

「よかったな。二人とも」

 

「ええ♪」

 

「大佐、長門さん。これからの私達の活躍期待してくださいね!」

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

「良いやる気だな。だが、私も負けないからな?」

 

 

 

それから数分後、短い祝福と報告を終えて扶桑達は退出し、部屋は提督と長門の二人だけとなっていた。

 

「……」

 

長門は提督の隣で黙って執務の手伝いをしていたが、提督はそんな彼女の様子に僅かな違和感を感じていた。

 

「長門」

 

「ん?」

 

「どうかしたか?」

 

「え?」

 

「いや、気のせいならいいんだがな。何となく……いや、やっぱり気のせいか」

 

「……何が気になった?」

 

「黙って仕事を手伝ってくれているお前の様子が何か普段と違う気がしてな」

 

「どう?」

 

「はっきりと言うのは難しいが……こう、焦っているような……というか、な?」

 

「……」

 

長門は提督の答えを聞いて彼の目を真剣に見つめながら考えるように口に手を当てた。

 

「どうした?」

 

「……当たりだ。流石大佐、もとい提督と言ったところか」

 

「やっぱり扶桑達の改造のその効果か?」

 

「ああ。あの時にも言ったが、改めて本当に凄いと思っているよ。それこそ大佐が言うように焦る程に、な」

 

「……ふむ」

 

「私と陸奥は大和に次いでこの大佐を支える重要な火力だと、自惚れではないがまぁ自負みたいなものはあった。が、それが今、私達に匹敵する火力を得た上に航空能力まで強力になった扶桑達に脅かされている……。ふふ、情けない事だが本当にそう思ったよ」

 

「……」

 

「誤解はしないでくれよ? 例え能力で劣ることになろうが私は長門型だ。そのくらいの差、これまで培ってきた経験による的確な行動で埋めるくらいの自信はある」

 

「ああ、それは俺も信頼している」

 

「ふふ、ありがとう。……だが、まぁ確かに今こうして抱えている嫉妬とも脅迫感ともつかないモヤモヤした気持ちは気分がいいものではないな」

 

「お前も新たな改造を受けられるようになるといいな」

 

「まぁそれに越した事はないが、だがそうなると……」

 

「なんだ?」

 

何か不敵な顔で答えを出し渋るような態度を取る長門に提督は訊いた。

 

「もしそんな改造を受けたとすると私達は大和達に匹敵する戦艦になるかもしれないな」

 

「その可能性は十分になるだろうな」

 

「ま、それも大和達が同じように新たな改造を受けてしまえば、差なんてまた開いてしまうだろうがな」

 

「自分でそれを言うか」

 

「十分に考え得る可能性だろ?」

 

「まぁな」

 

「なら、私はただ認めるだけだ。あり得ないなんて逃げないぞ」

 

「こんなとこまでお前は誇り高いんだな」

 

「いや、単に負けず嫌いなのを悟られまいと取り繕っているだけだ」ニッ

 

提督は何とも言えない顔で長門を見る。

すると彼女も同じ顔で見つめ返すが、やがて堪え切れない様に……。

 

「……ふっ」

 

「っ……く、はは……」

 

「ははははは」

 

「あははははっ」

 

「ははは。全く、お前という奴は……」

 

「良い女だろう?」

 

「異論の余地もない」

 

提督は、そんな風にわざと自惚れてみせる長門に改めて頼もしさを感じたのでった。




いや、本当に強くなりましたね扶桑姉妹。
ま、その分燃費も重くなりましたがそんな事は些細な問題です。
演習でバリバリ活躍するようになった彼女達は本当に頼もしいですね。

長門も焦るかもしれませんが、同じ航空戦艦である伊勢姉妹も他人事とは思ってないかも。
次はその話でも書こうかなぁ。

あ、提督が日本に帰る話は新しい部が始まってからにしようかなと思ってます。
それまでは、今の部が終わるまで毎度の小話で埋めるつもりです。


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第59話 「大人」

提督の執務室で何やら飛龍が蒼龍に自慢をしていました。
蒼龍はそんな飛龍に対して悔しそうな顔をするものの、言い返す事ができないようで口から言葉を出すことなく飲み込んでいます。

提督はそんな二人を執務をしながら少し呆れた顔で暁と見ていました。


「どう? どうっ? 羨ましいでしょう?」

 

「う……うぅ……」プルプル

 

 

「……暁」

 

「なに? 大佐」

 

「飛龍は何を蒼龍に自慢してるんだ? というか何故ここにいる?」

 

「やっぱり本人の前で自慢したかったじゃないかしら」

 

「本人?」

 

「そうよ。飛龍さんが自慢しているのはね大佐。ゆ――」

 

「指輪よ」ヌッ

 

「ひっ!?」

 

「雲龍、どうした?」

 

「呼ばれた気がしたの」

 

「呼んでないわ!」

 

「そうだな。呼んでない」

 

「……二人とも冷たいのね」

 

提督と暁の冷静な返しに雲龍は不貞腐れた顔をする。

 

「機嫌が悪そうだな」

 

「……別に」プイッ

 

「指輪でしょう? 雲龍さん」

 

「……」ピクッ

 

「ん? ああ、飛龍もこいつももしかしてそれで?」

 

暁の言葉で事態を察した提督は手をポンと叩いた。

 

「そうだと思うわ」

 

「……別に。私はまだ練度が足りない事くらい分かるもの。気にしてない」

 

「雲龍さん、だったらなんで大佐の目をちゃんと見て言わないのかしら?」

 

「……」ジト

 

「……っ」ダキ

 

暁は半目の雲龍の視線を受け、そのプレッシャーに耐えかねて提督に抱き付く。

 

「雲龍、大人げないぞ」

 

「……だ、大丈夫。暁は平気よ」ブルブル

 

「震えながら言うな」ナデナデ

 

「ごめんなさい、暁の言う通りよ。やっぱり自分以外の誰かが、それも近くで指輪を自慢してるのを見ると嫉妬しちゃうものね」

 

「そうか?」

 

「そうよ。どうしてそんな事を改めて訊くの? 私を見て解らないかしら?」

 

提督が意外そうな顔で訊き返してきたので雲龍は少し怒ったような声を出した。

今までの会話を聞けば誰だって、ましてや提督くらいの人間なら察する事はできるというのにどうしてそんな事を言うんだろう?

雲龍は自分を突き放すような提督の言葉が気にいらなかった。

 

「いや、機嫌を損ねてるのは分かる。が、お前の言う通りそれが指輪が原因なら、何故お前と同じで指輪をもらえていない暁はこんなに落ち着いているんだ?」

 

「ん……」

 

雲龍はその問いに考えるように口に手を当てる。

 

「大佐……」

 

暁は自分を褒めるような事を言う提督を見上げ、感激した様な顔をする。

提督はそんな暁の頭に手を置いてこう言った。

 

「暁、雲龍に説明してやれ。レディ……淑女らしく、な?」ポン

 

「……! 任せて!」パァッ

 

 

「雲龍さん」

 

「うん」

 

「わたしたち駆逐艦は、雲龍さんたちとは違って夜戦以外ではあまり目立った活躍を見せる事が少ないわ。演習も大佐の方針故にあまり出る事がないしね」

 

「……」(さり気に俺への皮肉も混ぜてきたか。上手いな)

 

「……」

 

「だから練度も上がり難いし、結果として同じくケッコンしている人が一人もいない軽巡や重巡回、潜水艦の人たちよりも更に指輪への道のりが遠いの」

 

「……」(耳に痛いな。ここで自分以外の艦種のやつらへのフォローも忘れないとは)

 

「……」

 

「ならどうしてわたしたちは平然としているのか。別に平気なんかじゃないのよ? わたしや他の子だって早く大佐とケッコンしたいって思ってるもの」

 

「……なら、どうして?」

 

雲龍は依然として駆逐艦らしからぬ毅然とした態度で論じる暁を興味深そうな顔で見る。

そんな彼女に対して暁は自信に満ちた声で断言した。

 

「いつか必ずできるって信じてるからよ。大佐を信じているから」

 

「……」

 

「……」

 

「今は戦艦や空母優先だけど、その人たちが全員ケッコンまで到達すれば、次は重巡、軽巡……そしてやっとわたしたち駆逐艦の出番じゃない!」

 

「……随分気が長いのね。よく待てるなって思う」

 

「んー、これでも遠征の主力だしね。ゆっくりだけど今まで何回も遠征に行ってきた結果、わたしたち駆逐艦の平均レベルは実は重巡や軽巡の人たちを上回ってるの」

 

「だから自分たちの番が来た時はある程度ケッコンへの道も近づいていると?」

 

「希望的観測だけどね。その頃には全員70くらいにはいってるんじゃないかしらって思うわ」

 

「……」

 

雲龍はここまで語って聞かせた暁を前にして素直に感心していた。

彼女たちを甘く見てはいけない。

駆逐艦だからと言って、自分たちより能力が劣るからといって、決してその存在を軽んじてはいけない。

彼女たちは自分たちの力を把握した上でその役割を理解し、文句も言う事なく今までずっと大佐や基地、自分たちを支えてきてくれたのだ。

 

「……偉いのね暁は」ナデナデ

 

「わ……ん……ありがと……♪」

 

暁は雲龍の柔らかい手で頭を撫でられて気持ちよさそうに目を細める。

 

「意外ね。撫でられるのは嫌がられると思ったんだけど」

 

「昔はね。嫌というより恥ずかしかっただけだけど。でも今はそうじゃないわ。だって褒めてくれてるのにそれを嫌がるなんておかしいじゃない」

 

「今は恥ずかしくないの?」

 

「恥ずかしがって褒めてもらえない事の方が損だって考えられるようになったもの。レディは『大人』の女なのよ? だから暁は損得勘定もしっかりしてるの」フンス

 

「……」(それはある意味開き直りとも思うんだがな)

 

「暁……」(可愛い……)ホワァ

 

 

「ね」

 

「っ、なに?」

 

暁はいつの間にか目の前まで近づいていた雲龍に小さく驚く。

 

「ぎゅってしていい?」

 

「え?」

 

「暁が可愛いから抱きしめたいの」

 

「え、いや……褒めてくれるならいいけど……か、可愛いからっていうのはちょっと……」

 

「褒めるわ」ズイ

 

「え、ちょ……」

 

ポフ

 

「~♪」スリスリ

 

「ん~! んー……!」ジタバタ

 

ムニュゥ

 

「!!」(や、やわらかい……)

 

雲龍に抱き締められて若干抵抗していた暁はその時、自分にはない圧倒的なボリュームと言葉にできない感触を感じた。

 

「……」

 

「……?」(大人しくなった? なんで? ……まぁいいか)ギュー

 

(いいなぁおっきくて。わたしなんて……)ペタペタ

 

 

「……」(さて、仕事するか)

 

提督はそんな二人の和やかな雰囲気に満足し、手を止めていた執務の続きに向かうことにした。

ところがその時……。

 

「あれぇ? 雲龍、暁を抱きしめて何やってるんですか?」ヒョイ

 

「大佐! 早くわたしともケッコンしてよ! 飛龍に負けたままなのが悔しいの!」

 

「ダメダメ。次はレベル的には比叡だから。蒼龍はその後よ」

 

「いや! 次はわたし! ね、お願い大佐ぁ!」

 

「……」(忘れていたこいつらがいた)

 

提督は仕事が遅れそうな予感に溜息を付きながら、蒼龍をどう説得したものか考え始めた。




飛龍とケッコンしました。
帰港時のケッコン後の専用のセリフが短いので、いつかアップデートで変わる事に期待ですね。

12月は忙しいですね……。
お金も彼女もいらないから時間が欲しいですねぇ……。


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第60話 「対面」

「はじめまして」

『その時』は突然訪れた。


「……レ級」

 

提督は眉間を指で摘まみながら苦渋の表情で、当然のように執務室にいるレ級に声を掛けた。

 

「ん? なーに?」

 

「対面の時は事前に連絡する約束じゃなかったか?」

 

「連絡したじゃん」

 

「今日な。そしてその日の内に来るなんて流石に予想できるわけないだろう」

 

提督はそう言って今度はちゃんと顔をあげてレ級達を見ながら言った。

レ級はそれに対して相変わらず自分の行動を特に気にしていない様子でのほほんとしていたが、タ級がすぐ横から申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。

 

「ごめんなさい大佐。一応注意したんだけど……」

 

「姫もさっさと済ませたいって聞かなくて……」

 

「早く済んだ方がいいんじゃないの?」

 

タ級に同調してル級も謝ろうとしたが、レ級に負けないくらい能天気なヲ級は不思議そうな顔でそんな事を言う。

 

「そうだよねヲ級。皆なんでそんなに困った顔してるのかな?」

 

「んー……分かんない!」

 

「僕も!」

 

「「あはははははは」」

 

 

心から可笑しそうに無邪気に笑うレ級とヲ級を前にして、提督を守るように立ちはだかっていた赤城は顔をひきつらせながら見ていた。

 

「……」ピクピク

 

「落ち着け赤城」

 

「分かってますよ。分かってますけど、でも……」チラ

 

キャッキャッ

 

「……」イラ

 

「赤城さん落ち着いて」

 

加賀も弓に手を伸ばそうとする震える手をなんとか我慢している赤城を宥める。

壁側には長門、叢雲、初春が立っており、その様子を苦笑交じりに見守っていた。

 

「ま、今回は仕方ないだろう」

 

「はぁ……姫や鬼にも楽な戦いはした事ないのにいきなり敵の本大将だもんね。そりゃ緊張もするわよ」

 

「まぁよいではないか。今回は和解の場なのであろう? なればそう構える事もないじゃろ」

 

それぞれ落ち着いた様子で冷静な意見をする長門達に、提督はいつも通りの固い表情で油断を感じさせない声で言った。

 

「和解ができれば、な。最悪でも和睦にまで持っていかなければ本部との交渉は到底無理だろう」

 

 

「む、姫はそんなに分からず屋なんかじゃないよ! 前とは違うんだから」

 

どうやら会話が聞こえていたようだったレ級が頬を膨らませて提督の言葉に抗議する。

 

「前はそうだったのか?」

 

「ちょっとね」

 

「直ぐ怒るから怖かったよね」

 

提督の問いにヲ級とル級はあっさりと自分たちの上司を擁護する事なく、反対に下手をすれば疑心感を与えそうな事を言った。

 

「あなた達……レ級がああ言ってたんだから少しは姫をフォローしなさいよ……」

 

タ級は呆れた顔で溜め息を吐いた。

 

 

 

――それから一時間程した頃。

 

「大佐、来たよ!」

 

レ級が元気の良い声でドアを開けてその日最大にして最重要と言える不意の来訪者を連れてきた。

 

コツコツ……

 

「……レ級、こちらが?」

 

「うん! そうだよ!」

 

提督の前に静かに一人の女性が部屋に入ってきた。

女性は艶やかで長い銀髪をまるで昔の日本の姫の髪型のようにし、少し乱れた前髪から覗く切れ長の目は非常に落ち着いた光を宿していた。

深海棲艦特有の特徴的な青白い肌を包む服装は意外にもワイシャツにジーパンと言った非常にラフな格好であり、先の印象も合わせて高貴さを醸し出しながらもそれをあまり意識させない不思議な雰囲気を纏っていた。

 

「初めまして提督。それとも大佐と呼んだ方がいいのかしら? 私がこのレ級達の首領、深海棲艦日本攻撃群南方群司令の鬼姫だ。角とかは隠したから人間に見えるだろう?」

 

提督はその雰囲気に飲まれて動揺すまいと努めながら、一応平静を装って応えた。

 

「こちらこそ初めまして。本日はよく来てくださいました。私がこの基地の提督の大佐です。早速ですが南方群司令……? 深海棲艦はそんな具体的で明確な軍組織を構成していたのですか?」

 

「当たらずとも遠からずと言ったところだ。私たちに明確な指揮系統は存在しない。基本的に誰かに従うかは自由意志だ」

 

「では群司令というのは?」

 

「少なくとも日本を攻撃する仲間の群れは私を含めて大きく4つ存在する。私はその内の一つの首領のようなものだから、軍人を相手にする話をするには理解し易い肩書だと思ったのよ」

 

「なるほど。では東と西と北にも鬼姫……貴女のような者が?」

 

「ミナミ」

 

鬼姫は唐突に言った。

 

「は?」

 

「鬼姫という響きはあまり好きではないし、敬称も腹を割って話す場には相応しくなく感じる。だからミナミと呼んで欲しい。どうしてミナミなのかは解るな?」

 

「いや、流石に初体面でありますし。しかも今の段階では不戦の約定を結んだに過ぎない関係ですから……」

 

「ならん。レ級達だけ個体名で呼んで私だけそうでないというのは気に入らん」

 

「……ではおに――」

 

「は?」

 

鬼姫の目が不機嫌に赤く光る。

髪がざわつくように揺らぎ、それだけで部屋の室温がまるで灼熱にまで上昇するのではないかと思わせる程、圧倒的な威圧感をその部屋にいた者は感じた。

 

「……ミナミさん」

 

提督は危機を察知した自らの本能に即座に従い、鬼姫の要求を飲んだ。

 

「あ、それと言葉遣いは敬語じゃなくていい。なんかレ級達と違って差別されているようで嫌だ。私ももう少し話し方を柔らかくするから。あと、さん、もいらない」

 

「……」

 

「分かった?」

 

「……分かった、ミナミ」

 

「よし。それで? ああ、他の首領についてだったわね」

 

「……ああ」

 

「いる、とは思う。だけど実際に会った事はないからね。断言はできない」

 

「? 会った事はないのにどうして仲間の群れについて知っているんだ?」

 

「うちには流れ者、元々別の所にいた子も結構いるの。その子たちから話を聞いてきた結果、他にも大きな群れがさっき言った通り3つある事が判ったのよ」

 

「そうか。ではあn……ミナミの群団の規模についてだが……」

 

「……総力で動けば国一つ動かすことになる規模だとは思うけど、それでも他の首領には会った事がないからな。他の群れの規模を知らない以上明確にどれ程のものかは答えるのは難しい」

 

「……なるほど」

 

「言っておくけど別に庇いだてはしてないからね? 本当に知らないのよ」

 

「……分かった。実際に本部の面々に顔合わせしてもらう前に確認しておきたかった事は以上だ」

 

「そう。じゃあ次は個人的、か?」

 

ここまで提督の一挙手一投足をまるで品定めをするかのように面白そうに眺めていた鬼姫は、彼の心の裡を見透かしたかの如く薄く笑いながらそう訊いた。

提督はそれに対して主導権を握られている事を悔しく思いながらも、確信を突いてきた鬼姫の視線から目を逸らすことなく落ち着いて肯定した。

 

「そうだな……。何故急に和平を結ぼうと?」

 

「疲れたのよ」

 

「え?」

 

あまりにも短い答えに提督は虚を突かれた顔をする。

 

「疲れたんだ。もう、何かを憎みながら戦うのは」

 

「……憎み、か」

 

提督は鬼姫の言葉に何かを察したようだった。

彼は深刻に何かを考えている表情になると、顔の前で手を組んだ。

 

「大佐たちはもう何となく察しがついているかもしれないけど、私たちは元艦娘よ」

 

「……」

 

提督の周りの艦娘達が息を飲む様子が伝わったが、誰一人としてその事実に動揺する者は出なかった。

ここもやはり鬼姫の言う通り、知らされずともとも無意識にその答えに辿り着いている者が何人かいるようであった。

 

「戦いで沈んだ艦娘がどうして私たちのような存在になるのかは解らないが、生前に軍や司令に対して憎しみや悲しみと言った深い負の感情を持っていた者ほど変わり易いのは確かだ」

 

「負の……」チラッ

 

鬼姫の言葉聞いて提督は無意識に直ぐ近くにいた気になる存在をチラリと見た。

それに対してレ級は何故提督がこちらを見てきたのか解らず不思議そうな顔をし、ル級は反対に恥ずかしそうに眼を逸らした。

 

「え? なに?」キョトン

 

「きゃっ。な、なに?」(見つめられちゃった)ポッ

 

そしてヲ級とタ級に至っては……。

 

「えっちー♪」

 

「ヲ級!」

 

 

「……」

 

その負の感情とはあまりにも遠いものを感じさせるレ級達を見て、何とも言えないと言った顔でその様子を見つめる提督に、鬼姫は面白そうに笑いながら言った。

 

「……あぁ、あいつらの事は私もよく分からない。何しろ初めて会った時からあんな感じだったからね。まぁ恐らくそういった感情以外にもどうしても成就したい目的があったりすると変わるのかもね」

 

「なるほど……。因みに何故疲れたのか訊いていいか?」

 

「あいつらの所為」

 

鬼姫はにべもなく即答した。

 

「……」(やはりか)

 

「その顔、予想は着いているみたいね。そう、レ級達よ」

 

「え? 僕達?」

 

「あなた、自分で姫にいろいろ頼んでたの忘れたの?」

 

ヲ級を叱っていたタ級が今回のこの機会を作った立役者だるにも関わらず、自覚が全くない顔をするレ級に呆れながら言った。

 

「タ級、それはちょっと違う。確かにそれもあるけど、一番の理由は普段からお前達の姿を見ていたからよ」

 

「え?」

 

「わたし達?」

 

ル級とヲ級も不思議そうな顔をする。

 

「そうよ。大多数の仲間が人間、特に海軍に強い敵意を持っていたのに対してレ級達は何故か最初からそういったものを全く持っていなかった」

 

「ああー」

 

レ級が鬼姫の言いたい事を理解したらしく、軽く手をポンと叩く。

 

「だというのにいざ行動するとなるとこいつらは全く迷いがなく、何かこう仕事と割り切って淡々とこなしていた様子が他の子たちは明らかに違う気がしてたの」

 

「ねぇ、それって褒めてくれてるの?」

 

ヲ級が期待するような目で鬼姫を見る。

 

「ん? まぁ少なくとも今日こうして私がここに来るまでに至ったのは、あなた達のおかげだとは思っている」

 

「そっか。えへへ、なんか嬉しいなぁ♪」

 

「……」

 

「変わった奴でしょう?」

 

「確かに。反論する気は起らないな」

 

「それから私はレ級達が元々海軍本部の、しかもまだ生きている提督の配下だったかもしれないという事を聞いて。しかも、やっぱりその人間に対して全く負の感情を見せない事に……。何て言ったらいいのかしら、可能性のようなものを感じたのよ」

 

「なるほど」

 

「曖昧だけどこれが今日ここに来る決断に至った動機よ」

 

「分かった。流石にいきなり納得はできないが南の言いたい事は何となく理解できたよ」

 

「そう。堅物そうな顔してるのに意外に柔軟なのね」

 

「ふっ、よく言われる」

 

「それじゃ、一応これで和解成立という事でいいのかしら?」

 

「少なくとも今の時点ではこの基地のみという範囲に限られるが、実際に成立するとどうなる?」

 

「取り敢えず今の時点から私の一派は全て生息する海域での敵対行為を停止し、危害を加えられない限り静観に徹する。残念ながら大佐の基地は私が幅を利かせている海域じゃないからその恩恵には預かれないけどね」

 

「いや、十分だ。それだけで直ぐに本部は先ず異変に気付くだろう」

 

「それを本番への足掛かりに?」

 

「そういう事だ」

 

「分かったわ。じゃあこれ以降の段取りについては大佐に任せる。私の出番が必要なときはまた適当にレ級達に言って」

 

「言ってよ!」

 

「言ってね!」

 

「い、い……!」

 

「ル級、無理しないの」

 

「……了解した。では」スッ

 

鬼姫は提督が差し出してきた手を最初不思議そうに見ていたが、その意図を理解すると初めて温かい笑顔を彼に向けてその手を握った。

 

「……ふふ、頼んだわよ」




提督と深海棲艦の和解の話でした。
新しい部を始めるに当たり、そろそろ回収しておかなければいけないネタだと思ったので、急遽ラスト一歩手前に入れる一歩手前に入れることにしました。

最後の話は提督が一時的な帰国に当たって誰を連れて行くかというものになる予定です。

……どうでもいい事ですが、プリンツを改造する為に無理やり5-4に通い続けてレベリングをした結果、弾薬がまたエライことに……。
古鷹申し訳ない、改二はもう少し待ってね……。


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第61話 「指名」

ある日、執務室にいた秋月は提督の私室から響く物音を耳にした。
ドアは開けっ放しになっており、そこから垣間見えた提督の姿は何やら荷造りをしている様だった。

*後半、登場人物が多くなるのでセリフの前に名前入ります。


「大佐、どうして荷物をまとめてるんですか?」

 

「ん? ああ、国に帰るからその準備をしてるんだ」

 

「え?」

 

「ああ、そういえば話してなかったか。前の作戦が終わったらちょっと国に帰る予定でな」

 

「国……日本に、ですか?」

 

「ああ。急で悪いが叢雲たちには言っておく。基地の事は頼んだぞ」

 

『国に帰る』『基地の事は頼んだ』

何気ない一言だったが、提督のその言葉は秋月にある結論を連想させて激しく動揺させるのに十分な効果があった。

 

「基地の事って……。そ……あ……れは……もしか………その……」ジワ

 

「秋月?」

 

提督は背後で異変を感じ、振り返るとそこには目に涙を溜めて今にも泣きださんとしている秋月がいた。

 

「……っ」ダッ

 

「……?」

 

状況が理解できずに戸惑った表情をする提督に、秋月はついにその場にいる事が堪え切れなくなりその場を走り去ってしまった。

提督はその背中を呆然と見つめる事しかできなかった。

 

 

 

「長門さん! 加賀さん! あ、良かった金剛さんも!」

 

基地内の喫茶店で軽食を食みながら憩いのひと時を過ごしていた長門達は、酷く狼狽した秋月の声に一斉に振り向く。

 

「ん? どうしたんだ秋月。血相を変えて」

 

「大丈夫? 落ち着いて」

 

「Oh どーしたノ? 何かあッタ?」

 

「大佐が……大佐が……」フルフル

 

「大佐が?」

 

「どうかしたのですか?」

 

「n?」

 

「大佐が国に……日本に帰っちゃうんです!!」

 

「は?」

 

「え?」

 

「What?」

 

「大佐が……大佐が……い、いなく……う……ぇ……っ」

 

突然の報告に長門達は目に点にする。

そして、そんな一同の前で秋月は、今度こそ自分が知った事実に耐え切れなくなってその場に泣き崩れた。

 

「まぁ落ち着け。ほら」ヨシヨシ

 

「大佐が日本に? 本部に立ち寄る用でもできたのかしら?」

 

「う……ぐす。ちが……違うと思います。き……基地のこと……は、頼んだって」

 

「HAAAAAA!?」

 

「何ですって……?」

 

「ほう?」

 

新たな事実に金剛と加賀が動揺の声を上げる。

幸いに長門はまだ普段通りだった。

 

「多分大佐は本部に着任になるのではないでしょうか……。だから新しい提督が来るまで基地の事は……」

 

「それは聞き捨てならないネ!! ちょっと大佐を search してくるヨ!」

 

「私も付き合います。可及的速やかに、即刻真実を確認する必要があります。最優先事項です最優先事項ですさ……」

 

「おい、待てお前達まで動揺してどうする。おちつ……」

 

「私も行きます!」

 

「Goooooood! 行くヨ!」

 

「了解」

 

「はい!」

 

「おい、ま……」

 

バタンッ

 

 

「……行ってしまった」

 

「長門さん?」

 

「 龍鳳」

 

一人残された状況に唖然としている長門が声がした方を向くと、そこは喫茶店の入り口からひょこりと顔を出して不安そうにこちらの様子を窺っている龍鳳がいた。

 

「どうかしたんですか? 加賀さん達。何だか凄い勢いでしたけど」

 

「んー……」(これはまだ広める段階ではないな)

 

「長門さん?」

 

「ん? ああ、悪い。何でもないよ。ちょっとゲームでつい熱くなってしまっただけだ」

 

「ゲーム?」

 

「連想ゲームだ。出題者がヒントを出してそれを当てるのがルールでな。金剛が言ったヒントがどうしても納得できないとか言って実際に本人も含めて確認しに行ったんだ」

 

「はぁ……なるほど」

 

「はは、まぁ金剛はともかく、加賀や秋月のあんな姿を見れば驚くのも仕方ないな。あいつらも根は無邪気という事なんだろうな私みたいに」フンス

 

「え?」

 

「ん? なんだぁ? 龍鳳。私は無邪気には見えないか?」

 

つい反射的に疑問の声を上げてしまった龍鳳に長門は面白そうに笑い掛ける。

 

「あ、いえ、そんな事は!」アセ

 

「ふふ、気にするな。ちょっとからかっただけだ」

 

「えぇ……もう、驚きました。でも正直に言うとわたしは長門さんは、無邪気というよりカッコイイと大人という感じがします」

 

「ほほう? それはそれで光栄だな。 だがな龍鳳、私だって結構無邪気で純情な乙女なんだぞ?」

 

「え?」

 

「私はカワイイものが大好きなんだ。だから部屋にはヌイグルミやハニワがだな」

 

「え? は、ハニワですか? ハニワってあの埴輪ですか? ヌイグルミは分かりますけど、ハニワ……」

 

「ん? 可愛くないか? あのつぶらな瞳とか」

 

「ん、ん~……」(瞳何て無いよ。空洞だよ……)

 

「ふむ……龍鳳には一度、可愛らしさについてじっくり……」

 

「えっ」

 

「ふふ、冗談だ」

 

「は、はぁ……」(長門さん……この人だけは本当によく分からないなぁ)

 

「ま、そんな事よりだ。龍鳳、ちょっと訊きたいんだが?」

 

「あ、はい。なんでしょう?」

 

「大佐が何処にいるか知っているか?」

 

 

 

「大佐、出立の準備完了しましたよ」

 

堤防の上で釣りをしている提督に大和が後ろから声を掛けてきた。

 

「ああ、すなまないな大和」

 

「いえ、このくらい。それで、どのくらい滞在される予定なんですか?」

 

「ああ、その事なんだがな。実は今度の休暇は艦娘の随伴も何人特別に許可もされているんだ」

 

「え?」

 

「どうだ? お前さえよければ一緒に来るか?」

 

「そ……い、いいんですか!?」ズイ

 

大和は不意の誘いに目を丸くしたかと思うと、今度は真剣な顔をして提督に迫る。

 

「予め連れて行く奴が決まっていれば前と違って騒ぎも大きくならないだろうしな」

 

「あ、なるほど。でも、そのお誘い……いえ、好機逃すわけにはいきませんね!」

 

「ん、それじゃあ?」

 

「はい! 是非ご一緒させてください!」

 

 

「よかったここにいたか」

 

「おとーさん!」

 

 

自分達に掛かってきた新たな声に大和と提督は振り向く。

するとそこには、長門と龍鳳堤防の下から彼らを見上げていた。

 

「ん?」

 

「あ、長門。それに龍鳳ちゃん」

 

「いや、ここにいて良かった。今頃基地の中は凄い騒ぎだろうからな」

 

「何かあったのか?」

 

「ま、それは後で話す。それより大佐ちょっと小耳に挟んだんだが、帰国するのか?」

 

「え?」(何それ。聞いてない!)

 

長門に着いて来ていた龍鳳は思わぬ事実に驚いた顔をする。

もしかして加賀達が血相を変えていたのはそれが理由だったのでは?

龍鳳はここに来てようやく長門が自分に教えた連想ゲームが彼女なりの方便だった可能性に気付いた。

 

「耳が早いな。秋月に聞いたか?」

 

「まぁな。だが、ふむ……二人が話していた感じから察するに今回の帰国は本部に用事があるわけではなさそうだな」

 

「ああ。なんでも親父たちに特別に用意された特別な機会らしい。つまり純粋な休暇だ」

 

「なるほどな……理解した。前の作戦の成功報酬みたいなものか?」

 

「勘が良いな。そう聞いている」

 

「ふーん……」

 

「長門?」

 

「あ、すまない。大佐、大和も一緒でいい。ちょっと話が……」

 

 

 

「――というわけだ」

 

「……なるほど」

 

「あー……」

 

「……」ヒシッ

 

長門から話を聞き終えた提督は腕を組んで考え込む沈鬱な顔をしていた。

その傍らでは大和が何かいろいろと納得した様子で半笑いを浮かべ、そして何故か龍鳳は彼の足にまるで親から離れる事を拒む子供の様にひしりとしがみついていた。

 

「秋月の誤解が広まっているわけか。いや、俺も断片的に情報を与えるような話し方をしたのが悪かったな。それと龍鳳離れろ」

 

「や!」

 

「……まぁあいつらの誤解は俺が直接解く。長門、報告ありがとう」

 

「ああ、気にするな。私は最初からなんとなく予想してたしな。それよりだ」ズイ

 

話し終えた長門は屈託なく笑いながら提督に近づく。

 

「ん?」

 

「他に誰を連れて行くつもりなんだ? 後何人くらい?」

 

「確か3人だったかな。丁度いい、長門おま……」

 

「わたしも! お父さんわたしも連れて行って下さい!」

 

提督が目の前の女性を誘う前に龍鳳が置いて行かれまいと声を上げる。

 

「分かった。連れて行ってやるから離れろ」

 

「……本当ですか?」ジッ

 

「ああ」

 

「……っ」パァッ

 

ヒシッ

 

 

「~~♪」

 

「……」

 

「あはは、結局何も変わらなかったな」

 

「……」(可愛い……)

 

自分も連れて行ってもらえる事に安心した龍鳳は、歓喜の笑顔を浮かべると更に今度は提督の腕に嬉しそうに抱き付いた。

その屈託のない無邪気な反応に母性をくすぐられた大和はほんわりとした顔でその光景を眺めていた。

 

「で、長門どうだ?」

 

「お? 最後の一人に私を誘ってくれるのか。そいつは嬉しいな。だが、ふむ……」

 

提督は流石に長門が即答で快諾するとは予想していなかったが、真剣に悩む様子の彼女を意外に思った。

 

「どうした?」

 

「ああ、悪い。大佐、せっかくだがその誘い、今回は辞退させてもらおう」

 

「「え?」」

 

提督と違って恐らく長門が二つ返事で快諾すると予想していたのだろう。

大和と龍鳳は心から驚いた声を同時に出した。

 

「ん、そうか」

 

「ああ。誤解しないでくれよ? 別に嫌なわけじゃない。ただ、、大佐が不在の間の基地の方も気になってな」

 

「ふむ、なるほど」

 

「う……」

 

「あ……」

 

長門の答えに大和と龍鳳は恥じる顔をする。

どうやら自分の欲求に素直に従った自分を恥ずかしく思っている様だった。

 

「はは、二人ともそんな顔してくれるな。私だって最初に誘われていたら行っていたかもしれない」

 

「長門……」

 

「長門さん……」

 

「替わりと言っては何だが大佐、私から随伴を推したい奴がいるんだがいいか?」

 

「勿論だ。誰だ?」

 

「ああ、それはな……」

 

 

 

「え!? わ、私ですか!?」

 

堤防での一件から暫く後の事、既に提督から直接話もあり、誤解が解かれた基地は普段の落ち着きを取り戻していた。

その時に秋月は提督から一緒に帰国の際に随伴しないかと誘われたのであった。

騒ぎの原因といえば言い方が悪いが、そんな自分を提督が誘ってきた事に秋月は心底驚いた。

 

「ああ。なが……んんっ」

 

「?」

 

「秋月、耳を貸せ」ボソ

 

「え? あ、は、はい」

 

「この前の夢の件からまだお前のことが気になっていてな」ヒソ

 

「あ……」カァ

 

「それで、どうだ? お前さえ良かったら、だが」

 

「あ、はい。私でよろしければ!」

 

 

金剛「ウぅ~、く、悔しいデス~」

 

秋月が顔を輝かせて嬉しそうに提督と話している様子を、何とも言えないといった微妙な雰囲気で見守る一団がいた。

 

加賀「でも、大佐の直接の指名なら仕方ないですね。それに今回は1週間の留守。用心の為に戦力は残すという長門さんの考えは理解できます」

 

金剛「hm......まぁ、そうネ。確かにそれは間違ってはいないワ」

 

提督「皆、納得してくれて助かる。なに、お土産はちゃんと買ってきてやるから」

 

背後で囁かれる声に気付いたいのだろう。

提督は声が聞こえた方を振り返り、彼女たちのご機嫌を取ることにした。

 

隼鷹「大佐、お酒! 内地のお酒頼むよ!」

 

深雪「ん~、あたしは美味しいのならなんでもいいけど……でも別に食べ物以外でもいいよ!」

 

敷波「食べ物以外かぁ……じゃ、ゲーム、とか?」

 

愛宕「いいわね! それ!」

 

川内「あたしもなんでもいいよ! でもなるべくなら可愛いのかな」

 

加古「わたしは元気なのがいいなぁ」

 

あきつ「二人ともあまりにも希望するものが抽象的過ぎるのであります。大佐が困っていますよ」

 

ハチ「本、お願いできるかしら?」

 

明石「大佐、私は工具がいいです! このリストに載っているものをですね……。あ、これ自作の衛星電話です。ちゃんと2つ用意したので追加をお願いしたい時はこれに掛けます」

 

提督「分かった分かった。お前たちも他にも欲しいのがあったらこれを使え」

 

ハーイ

 

提督「じゃぁ、行ってくる」

 

 

 

飛龍「はぁ、行っちゃったなぁ」

 

提督を載せた高速艇が消えた方の海を眺めながら飛龍がぽつりと言った。

 

神通「寂しいですけどお土産を楽しみにしましょう」

 

長門「そうだな。ま、久しぶりに実家に帰るんだ。両親とも積もる話もあるだろう。偶には大佐もゆくりさせてやろうじゃないか」

 

金剛「エ?」

 

不知火「は?」

 

ざわざわ……

 

長門の言葉に一部の娘たちがピクリと反応する。

その反応はやがてざわめきとなり、さざ波の様に広がっていった。

 

長門「ん? 皆、どうしたんだ?」

 

榛名「あのー、長門さん」

 

榛名がおずおずと手を挙げながら質問してきた。

 

長門「ん?」

 

榛名「大佐は実家へお帰りになるんですか?」

 

長門「そりゃそうだろう。1週間時間あるんだぞ? そりゃ実家にも帰るだろうし親にだって会うだろ」

 

まるゆ「……! 確かに、考えてみれば!」

 

榛名「大佐の……」

 

不知火「ご両親……」

 

加賀「不覚でした……」

 

武蔵「……お、おい長門」

 

場の雰囲気に不穏なものを感じた武蔵が長門を小突いて異常を知らせる。

 

長門「むぅ……これはしまったかもな」

 

加賀「追います。直ぐに準備を」

 

鳳翔「え?」

 

金剛「大佐の parents......! shit! shiiiiiiit!!」

 

陸奥「あらあら……」

 

長門「……叢雲さん、初春さん」

 

暴走しようとする金剛達を自分たちで止めるのは些か部が悪いと考えただろう。

長門は助けを求めるように叢雲と初春を呼んだ。

さん付けで呼ばれた叢雲と初春が面倒そうな顔で振り返る。

二人は古参ではあるが基本的に他の駆逐艦と同じ扱いを本人達の意思で望んで受けている為、榛名の様に大人しくて真面目な性格の娘を除いて普段は長門たちからも呼び捨て呼ばれている。

だが、そんな戦艦たちからさん付けで呼ばれる時、それは立場を明確に意識した彼女たちへの本当の意味でのヘルプだった。

 

叢雲「はぁ、仕方ないわねぇ……」

 

初春「ふふふ、ほんにの。ま、ここは図々しく先輩面をしようか、の?」

 

叢雲と初春は、駆逐艦とは思えない頼もしい雰囲気を醸しながら苦笑交じりに暴走の根源へとしっかりとした足取りで向かっていった。




最近投稿のペースが遅いですね。
寒いし、仕事忙しいし、観たい映画を纏めて劇場やDVDで消化している結果です。
本当にすいません。
冬は本当にこんな感じで動きが鈍くなります。
別に飽きたり放置決め込んでいるわけではないので、その辺は安心していただけたらと思います。


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第六章 「提督の帰郷」
第1話 「失念」


休暇を利用して帰郷する事にした提督達は、無事本土に着いた。
だが船から外に出た時、彼は思い知る事になった。
自分の油断、迂闊さを……。


「しまった……」

 

 

ビュゴァァァァ!!

 

凍てつく冬の風が吹きすさいでいた。

その冷たさは軍服のままだった提督は勿論、基地にいた時からそのままの服装だった大和達を容赦なく襲った。

 

「さ……寒……ぃ!」

 

「う……」

 

「二人とも私に身を寄せて。た、大佐もよろしければ……」ポッ

 

 

「いや、俺はいい」

 

「そうですか……」シュン

 

(しまった。日本は今冬だった。加えて大和達をあいつらの薄着の制服のままで来させてしまった。寒いどうのこうの以前に艦娘の存在はまだ機密扱いなのにこれでは……)

 

「お、お父さん寒いよ……」

 

「……っ」

 

「もっとひっついて」

 

(本部に立ち寄るのを後にしたのは失敗だったな。まさか鹿児島までこんなに寒いとはな。これなら素直に伊丹から直行便に乗ればよかった)

 

「……」ジッ

 

三人「?」

 

(この中で一番幼く見えるのはやっぱり秋月だな。こいつなら一緒に居ても親子か……歳の離れた妹くらいには見えるだろう。龍鳳は見た目が中学生くらいだから三十路の俺が連れて歩くには世間の目がきになる。大和は上着を貸してやっても足が出てしまうからな)

 

「秋月」

 

「あ、はい」

 

「悪いが船の中で二人の服のサイズを大凡でいいから計ってきてくれ。服を買って来る。秋月は計り終わったら俺に同行をして欲しい。俺の上着を羽織れ、足は少し出てしまうがお前からしたら十分に大きいからある程度寒さを凌げるはずだ」バサッ

 

「あ……は、はいっ」

 

「……え」

 

「あう……」

 

「さ、皆さん船の中に行きましょう!」

 

「え、ええ……」(うぅ……いいなぁ)

 

「はぁい……」(秋月さんいいなぁ……)

 

「なるべく早く頼むな。俺も正直この寒さは堪える」

 

「分かりました!直ぐに!」

 

 

―――数分後

 

「お待たせしました」

 

「寸法は大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「よし、行くか」

 

「はい!」

 

 

 

~港近辺の街服屋

 

「わぁ……いろんな服がありますねぇ……」

 

「服屋なんだからこれくらいはな。まぁ俺もあっちでは殆ど制服しか着ていないから偶にこういうのを見ると何とも言えない気になるな」

 

「あの、大佐」

 

「ん?」

 

「私が選んでいいんでしょうか? その、センスにはあまり自信は……」

 

「大丈夫だ。少なくとも男である俺よりかはあるさ。そうだな、ここは敢えてデザインには拘らずにお前から見て防寒性がありそうなのを選んでみてはどうだ?」

 

「機能重視ですか」

 

「そうだ。それならセンスの事も少しは言い訳がたつだろう」

 

「なるほど分かりました。それでは……このコートとこのマフラーと……。あ、同じ物は流石に駄目ね。デザインが違う物で同じくらい暖かそうなのは……」

 

「……」(やっぱり女だな。服を選ぶのが楽しそうだ)

 

 

――三十分後

 

「4万680円になります」

 

「えっ」

 

「じゃぁこれで」スッ

 

「4万1千円頂戴します」

 

「ありがとうございました」

 

「……」

 

 

 

「……どうした?」

 

船へと戻る道の途中で提督は秋月が先程から落ち込んだ様子で口数が少ない事に気付いた。

 

「あ、いえ。お金を使い過ぎてしまったと……」

 

「ん? ああ、大丈夫だ。最初から俺が払うつもりだったからな」

 

「い、いえそういうわけには……!」

 

「これは強がりでも見栄でもない。単に俺が普段から金を使わないからこれくらい出費する余裕は十分にあるんだ。だから気にするな」

 

「で、でも」

 

「今はいくら安く買おうとしても需要がある時期だからな。そう簡単にはいかないものだ。ならここは開き直って質を重視するのも選択肢の一つだ」

 

「は、はい……」

 

「……ところで」

 

「はい?」

 

「まだ寒いか? 俺の服……」

 

「あっ」

 

「……服が大きいから歩き難いと思ったんだが、大丈夫か?」

 

「あ、はい。大丈夫です! これ全然邪魔じゃありません!」フリフリ

 

「そうか。ま、俺も今は着替えたしな。使わなくなったら袋に入れておいてくれればいい」

 

「分かりました。ありがとうございます!」

 

「ああ」

 

 

 

~港

 

「悪い、待たせた。服を買ってきたぞ」

 

「お待たせしました」

 

「あ、おかえりなさい。わざわざありがとうございます」(あ、まだ大佐の服着てる……)

 

「わぁ、これわたしの服ですか。暖かそ~♪」(いいなぁ、お父さんの服……)

 

「それじゃ、俺は外で待っているから。準備ができたら出てきてくれ」

 

「「「分かりました」」」

 

 

~船内

 

「秋月ちゃん」

 

「はい?」

 

「その……もし良かったらなんだけど」

 

「? なんでしょう?」

 

「その大佐の服、私にもちょっとだけ貸してくれない?」

 

「っ! あ、秋月さん! わ、わたしも! 龍鳳にもお願いします!」

 

「え? これですか?」

 

「うん。私もそれを着ればより大佐を身近に感じられる気がして……」ポッ

 

「わ、わたしも! わたしもお父さんの服着てみたいです!」

 

「ふふっ、勿論いいですよ」

 

「ありがとう!」パァッ

 

「ありがとうございます!」パァッ

 

 

――数分後

 

「大佐、お待たせしました」

 

「お待たせして申し訳ございません。これ暖かいですね。ありがとうございます♪」

 

「似合いますか?」クルリ

 

「ああ、似合ってるぞ。ん? 秋月、もう服はいいのか?」

 

「あ、はい。ありがとうございました。服はもうこの袋に大佐のズボンと一緒に入れてあります」

 

「そうか」(気のせいか大和と龍鳳の顔が少し赤い……? 服が暖かくて嬉しいんだろうな)

 

「よし、それでは行くか」

 

「ここが大佐の故郷ですか」

 

「いや、違う」

 

「「「え?」」」

 

「俺の故郷はここから更にフェリーに乗る」

 

「フェリー……鹿児島本島ではないのですね」

 

「そうだ。実は大阪で飛行機に乗れば直行だったんだが、今の日本の気候の事をすっかり忘れて旅行気分を重視してしまってな」

 

「ああ、それで港に着いた時あんなに驚かれていたんですね」

 

「まぁそもそも最初から本部に寄る予定もなかったというのに、俺はともかくお前達に私服に着替えさせてなかった事自体が間違いだったんだがな」

 

「んー、でも結局私服でも服はあっちの気候に合わせて夏用だったから寒さは変わらなかったかも?」

 

「あ、それは言えてますね」

 

「とは言ってもあっちでは冬物の服は買えなかっただろうな。結局ここで買う事になるのは変わらなかっただろう」

 

「お父さんの故郷はなんていう所なんですか?」

 

「ああ、俺の実家があるところはな。ん? 実家……」

 

提督は実家と言う言葉に何やら言いようのない不安を覚えた。

自分は何かを忘れている。

まとまった日数の休暇だ。

それを帰郷に使うこと自体は間違いではない。

問題なのは……。

 

「……」(こいつらを親にどう紹介すればいいんだ?)

 

「大佐?」

 

深刻な顔で悩む顔をし始めた提督を大和達は不思議そうな顔で見つめていた。




相変わらず投稿ペースが戻らなくて申し訳ないです。
ちょっと本文の作文スタイルを前に近くして投稿ペースをマシしようかなと考えてみたり。
古鷹を早く改二にしてまた駆逐艦の養成に戻りたいなぁ……。


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第2話 「注意」

ピリリリッ

港で立ち尽くし、悩んでいた提督のポケットの中で不意に何かが小さな振動と共に音を発した。


「ん? 携帯? 衛星の方じゃない。普通の方か。もしもし?」ピッ

 

『あ、出たわね。もう着いたの?』

 

スピーカーからは聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「ああ、君か。着いた。今鹿児島だ」

 

『……は?』

 

一瞬張りつめた緊張を伝える沈黙の後、唖然とした彼女の声が返ってきた。

 

「今、船でようやく鹿児島に着いたところだ」

 

『……え? なんで? なんでもう鹿児島にいるの? だって本部には来てないじゃない」

 

「ああ、本部に寄るのは後にしようと思ってな」

 

『……!』(しまった! こいつ……こいつは……ああ、もう! そうよ!こいつはそこういう奴だったわ!)

 

本部の執務室で彼女は口に手を当てて自分の迂闊さを恨んだ。

 

『……?』

 

その後ろで餅を食べていた武蔵は彼女の動揺ぶりを不思議そうな目で見ていた。

 

 

「……? どうかしたか?」

 

『……迂闊だった』

 

「え?」

 

『油断した……』

 

「おい、どうした?」

 

聞き慣れない彼女の恨めしそうな声に、何故か波乱を予感した提督は僅かに戦慄した。

 

『……なんでもない。はぁ……えーと、今鹿児島にいるってことはそのまま田舎に行くのね?」

 

「ん? ああ、そうだが」

 

『そ、私も行くから』

 

「は?」

 

『前に一回行った事あるから実家の場所は覚えてるわ。そこで間違いないでしょ?」

 

「いや、そうだが……別にわざわざ来なくていいぞ? 後の方にはなるが、本部には寄るわけd」

 

『行くから?』

 

有無を言わさぬ迫力があった。

これは断れない、止めてはいけない。

提督はそう直感した。

 

「……分かった」

 

『じゃ、着いたらまた連絡するから』ピッ

 

 

「……」

 

先程とは違う雰囲気で再び沈思する表情を浮かべる提督に大和達は心配そうに声を掛ける。

 

「大佐?」

 

「お父さんどうしたの?」

 

「大佐……?」

 

「いや、なんでもない。……それより、そうだ。どうしようか」

 

思い付きとはいえこれも重要な事だ。

提督は自分の不安を彼女達に悟らせない為にに話題を変えることにした。

 

「どうしたの?」

 

「いや、実家に帰る以上親にお前達の事を説明しなければならない。それをどう言ったものかと思ってな……」

 

「ご両親に紹介……!」

 

提督の言葉をまるで衝撃的な事実を知ったかのような顔で目を見開く秋月。

 

「いや、説明だ。まぁ意味は同じ……か?」

 

「大佐の……お義父様とお義母様……!」

 

「大和……?」(なんだ? なんかあの表情を見ると言葉の意味が違って聞こえる……?)

 

「別に悩む必要はないと思います。だってお父さんは龍鳳のお父さんですから」

 

「……」(これが一番の問題かもな)

 

「取り敢えずその事はフェリーの中で考えよう。そうだな、それじゃぁ親に会う前に注意し無ければならない事があるからそれを伝える」

 

「注意、ですか?」

 

「わ、私大佐のよ、よ……ぇとして恥ずかしくないように頑張ります!」

 

「わ、わたしも! 龍鳳も大佐の娘として……!」

 

「二人とも落ち着け。そういう事じゃない。俺が伝えたいのは父親の性格の事だ」

 

「大佐のお父さん?」

 

「そうだ。俺の親はな。母親は問題ないんだが、父親の方はなんと言うかこう……かなり昔気質でな」

 

「厳格、ということでしょうか」

 

秋月がおずおずと聞く。

 

「良く言えばな。悪く言えば頑固……いや、偏屈か? まぁともかく難しい性格なんだ」

 

「どのような性格なのですか?」

 

提督の父親という貴重な情報をより詳細に確かめる為に大和が真剣な表情で秋月の後に続いて質問してきた。

 

「特徴を伝える良い例を挙げるとすれば……。そうだな……大和、襖の溝、鴨井と言うんだが。それと敷居を含めた木の部分があるだろう?」

 

「え? ええ、はい」

 

「それを踏むとな、凄く怒る」

 

「えっ」

 

「そ、それだけで……?」

 

秋月と龍鳳はその一言で一瞬で不安そうな顔になった。

 

「ああ、流石に家族以外の、女性にはしないとは思うが、俺が子供頃それをついしてしまうと物がよく飛んできた。硯や茶碗とかな」

 

「も、物が……」

 

秋月は、自分の目の前に硯や茶碗といった、当たれば痛いだけじゃ済なそうな固い物が飛んでくる様を想像して冷や汗を垂らした。

 

「あと、元々無口なんだが、食事中は完全に無言だ。話し掛けられるのは勿論、食事中に会話が混ざるのも嫌う」

 

「無言の……食事……」

 

いつも提督や仲間と食事を摂る時は楽しい雰囲気なのが当たり前であった龍鳳にとって、会話がない食卓の風景はとても想像が難しかった。

 

「と、まぁこんな気難しい性格をしているわけだ。そんな親父にどうお前達をどう説明するか……。ああ、これはフェリーで考えるんだったな。取り敢えず行こう」

 

「は、はい」(提督のお義父様……かなりの難敵みたいね)

 

「硯……茶碗……」(ちゃ、ちゃんとご挨拶できるかな……)

 

「こ、怖そう……」(お父さんのお父さんなのに凄く怖そう……)

 

提督の説明を聞き終わった大和達はまだ見ぬその父親に言いようのない不安を感じるのであった。




今回の話は完全に筆者の身内ネタです。
ま、艦これにはいろんな提督がいるのでこういう設定とネタの使い方も悪くないと思ったわけです。
この作品を書き始めた当初はまさか提督の両親までネタとして使う事にになるとは思わなかったですねぇ……(遠い目)
いや、勿論ネタに詰まったとかではなく、面白そうと感じたのでやるわけですが。


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第3話 「自己責任」

そんなこんで提督達は鹿児島からフェリーに乗って難なく故郷の地に着きました。

そこは、丁度鹿児島と沖縄の間の辺り。
鹿児島よりかは寒くはなりませんでしたが、沖縄程は暖かくない丁度春や秋の初め頃と言った気温でした。

提督はその気候に懐かしさを感じながら大和達を連れて、家路へと就きます。
そして程なくして実家らしき住宅の前に着きました。

*提督(主人公)の本名バレあり


「ただいま」

 

言えの前で花の世話をしていた女性は、提督の声が特に大きかったわけでもなかったにも関わらず、その言葉に直ぐに反応を示し、玄関先に佇んでいる提督を見て目を丸くして驚きの声をあげた。

 

それは、その女性が提督と親子の絆を持っている事の何よりの証拠に他ならなかった。

 

「え? あらー忠哲! はぁ……どうしたのー? 連絡もせんでー」

 

「ただてつ?」

 

秋月は見知らぬ女性が提督の事を聞き慣れない言葉で呼ぶのを不思議そうな顔をした。

提督は特に表情を変える事無く正面を向いたままポツリと答えた。

 

「俺の名だ」

 

「えっ、大佐の……」

 

「名前……」

 

秋月と大和はそれを初めて知ったようだった。

龍鳳も目を丸くして提督を見上げていた。

 

「お父さんの、名前……」

 

秋月達はその言葉に何か重大な事を知ったかというようにハッとした顔をした。

それには理由があった。

海軍にはある規則があった。

それは公式な物ではなかったが、提督と艦娘との間に暗黙的なものとして海軍が艦娘を兵器として使い始めた当初から存在していた。

 

『艦娘は、提督に本名を訊く事これ禁ず。故にこれ、知る事も不能ず。また、例え知ったとしても、その名で提督を呼ぶべからず』

 

これは提督と艦娘が例え深い絆で結ばれていたとしても、時として必要とあらば私情を捨て、兵器として扱う事を徹する為の信条のようなものだった。

良く言えば軍人としての心構え、悪く言えば人間と艦娘を同列の存在として意識しないための差別的線引きと言えた。

だが提督は、艦娘達に自分の本名を知られ、また声に出して言われてもここでは特に注意する事はなかった。

 

「気にする事はない。というか寧ろここでは大佐ではなく、名前で呼んでくれ」

 

「大佐を名前で……!」

 

秋月が目を輝かせて再度確認する様に提督を見た。

 

「そ、それはまだ早くないですか?」

 

続いて大和が何故か照れながらそんな事を言う。

 

「龍鳳はお父さんはお父さんなので……」

 

「お父さん?」

 

提督の母(*以下母親)がその言葉を聞き逃す筈が無かった。

彼女は耳聡く反応し、そこで初めて提督が連れてきた少女達に注意を向けた。

 

「……っ」

 

提督はハっとした。

しまった、散々対処せねばならない事だと解っていた筈なのにここにきて完全に失念てしまっていた。

提督は自らの油断を地獄に落ちる思いになりながら呪った。

 

「忠哲、お父さんって?」

 

「……ただの呼び名だよ母さん。だからどうか悪い誤解はしないで欲しい」

 

「ふ~ん……」

 

母親はそう言いながら改めて大和達を見た。

 

(背の高い娘は20代か手前くらい? 他の子は……どうみても中学生か小学生よねぇ……)

 

「……」

 

「忠哲」

 

「ああ」

 

「取り敢えず疲れたでしょ。入りなさい。お連れの娘達もどうぞ遠慮しないでいいよ」

 

母親は取り敢えずその場はそれ以上追及することなく笑顔になると、提督と大和達を笑顔で出迎えてくれた。

その優しさと、彼女が提督の母親だという事実に、大和が緊張しながら挨拶をしようとする。

 

「あ、ありがとうございます。お、おか……」

 

「あっ、ズルいです大和さん! お、義母様わ、私秋月って言います。どうか末永……」

 

大和にイニシアティブを握られまいと秋月が負けじと大和が挨拶を言い終わる前に横から入って来た。

 

「ちょ、ちょっと何を言ってるの秋月ちゃん!?」

 

そして、自分より秋からかに踏み込んだ発言をしようとした秋月に大和は慌て、ここに帝国最高クラスの防空駆逐艦と最強クラスの戦艦との提督争奪戦もとい、痴話喧嘩が発生した。

 

ギャー、ワー!

 

 

「……おとーさん?」キョトン

 

呆然と立ち尽くして普段より多く汗を掻く提督に、一人だけ大和達の話に着いて行けず不思議そうな顔をしていた龍鳳が提督の袖を引っ張って事の状況の説明を求めた。

 

「……」

 

だが提督はそれに対して言葉を返すことができず、頭を巡る言い訳の嵐から最適な言葉を探しながら龍鳳の気を紛らわせるために彼女の頭を撫でる事しかできなかった。

母親はその様子を見て愉快そうに笑い、改めて提督達に家に入る様に促してきた。

 

「っ、あははは。賑やかな娘達だねぇ! ほらほら、早くあがって。おかえんなさい」

 

「あ……ああ……。ただいま……」

 

提督はそんな暖かい母の言葉に感謝しながらも、これから自分を待つであろう絶望的な状況にどう対処するか考えるので精一杯だった。

この時点で彼は、既に帰郷できた事に対しての喜びを霧散してしまっており、代わりに言葉にできない程の精神的な疲労に襲われていた。

そう、地獄は今始まったばかりなのだ。

 

 

 

ピシッ

 

提督の実家のとある一室で一人将棋の駒を指して詰め将棋をしている初老の男性がいた。

 

「……」

 

男性は玄関の方から聞こえてくる賑やかな声に一瞬眉間に皺を寄せてその方を向いたが、直ぐに盤上に目を戻し続きをやろうとした。

だがどこで間違ったか遊戯はそこで詰んでしまっていた。

 

「……っ」

 

ポイッ

 

男性は小さく舌打ちして歩の駒を投げると、傍らに置いてあった酒が入った一升瓶を片手に掴んで声のする方向に投げた駒の代わりに自ら『歩』を進めた。




お待たせしまた。
帰郷辺の続きです。

さんざん日常ネタの話を投稿していた所為で実質的なナンバリングとしてはこれが実はこれが3話目という奇妙な状況となってしまいました。

E-2、Fマスでワンパン喰らい撤退しました。
やっぱりキラ付けしてても、気休めですね。
まぁ今週中にクリアできればいいか。


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第4話 「緊急事態」

提督が実家に戻って家の中に入ると、そこには彼の父親が居た。
父親は提督を見ると、片手に持っていた酒が入ったグラスを静かに置き、石の様な表情でゆくりとこちらに近づいて来た。
その時提督と一緒にいた彼の母親は何かを察し、勢いをつけて迫ろうとした父親にとっさにしがみついたのだった。

*登場人物が多いので、大和・秋月・龍鳳に関してはセリフの前に名前を入れてます。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「……っ、この……!」

 

「あんたダメ!」ガシッ

 

「放せお前っ、放さんかぁぁぁぁっ!!」クワッ

 

秋月・龍鳳「ひっ」ダキッ

 

大和「大丈夫よ」

 

凄まじい剣幕でこちらに迫ろうとした提督の父親に、秋月と龍鳳は恐怖に震え、思わず近くにいた大和に抱き付いた。

対して提督は、顔を真っ赤にして理解できない言葉を喚き散らす自分の父親を疲れた目で見ていた。

 

「!@%#?!!」

 

「……」(やっぱりこうなったか)

 

大和「あの、た……だてつ、様……あ、さん? こ、これは?」

 

「まぁ、大方予想通りだ」

 

「と言うと?」

 

「俺が連れて来たのが女ばかりだったから何か勘違いしたんだろう」

 

「え? 勘違い……?」

 

「忠哲! 貴様! お前ナァ! 自分が今なにを……! っ、放せと言っているだろぉ!」

 

父親は未だに怒り狂っていた。

母親が必死にしがみついて止めていなければ直ぐにでも提督に飛びつかんばかりの勢いだ。

提督は努めて冷静に静かな口調で父親に語り掛けた。

 

「父さん、はっきり言わせてもうけど父さんは誤解しているだけだ」

 

「ああ!?」クワッ

 

秋月・龍鳳「ふぇっ」ダキッ

 

大和「よしよし」

 

「誤解ってなんだこら!? こんな若い女連れてきてこぶつ付きみたいなのも二人もよぉ!? 子供なんて言い訳きかんぞ! 明らかに歳合わないだろうが!」

 

「……本当に落ち着いてくれ。俺が娼婦に手を出したと思ってるんだろ? やめてくれ、本当に。俺はともかく、この子達に失礼だろ」

 

「……っ、失礼……?」

 

「そうだ。さっきも言った通り誤解しているだけだ。目の前の息子をどうか信じて欲しい」フカブカ

 

「……」

 

父親はそこでようやく少し静かになり、土下座をして弁明する息子を冷めつつある頭で見る。

母親もそのタイミングを逃さず、すかさずフォローに回った。

 

「ほら、忠哲もああ言ってるじゃない。あたしらの子があんたが思ってるような事するわけないでしょ……?」

 

「……もし本当にしてたら腹を切ってる」ボソ

 

提督の呻くような呟きが聞こえたのか、父親はやっと落ち着いて怒っていた肩を下げた。

 

「……まぁ……。いい、取り敢えずはまぁ……」

 

「……説明していいか?」

 

「……悪かった。座れ」

 

 

「まず連れてきた彼女達だけど、こちらは大和さん、俺の仕事仲間だよ」

 

提督は大和達を自分の後ろに座らせて、改めて説明を始めた。

母親はそれに合わせて相槌を打つかのようにポンと手を叩く。

 

「あら、やっぱり」

 

「随分若いな……。事務の……お仕事ですか?」

 

まだ疑念が晴れない父親は、訝しむ目で大和に質問した。

大和は初めて父親に話し掛けられて、驚きつつも何とか受け応える。

 

大和「え? あ、は、はい!」

 

「そうですか。あ……さっきは申し訳ない」

 

大和「い、いえ。だ、大丈夫ですから!」

 

「……それで」

 

今度は大和の横に並んでいた秋月と龍鳳の方を見る父親に提督は説明を続けた。

 

「ああ、この二人は大和さんの妹だよ」

 

「……なるほど」

 

「思った通りだわぁ。あなた達、さっきは怖がらせちゃってごめんなさいね。お名前、聞いていいかしら?」

 

秋月「あ、秋月と言います! 初めまして! よろしくお願いします!」

 

龍鳳「龍鳳……です。あの……よろしくお願いします」

 

秋月と龍鳳はそれぞれ挨拶をしたが、龍鳳の方はまだ恐怖で身体が固くなっている様だった。

自己紹介する口ぶりもどこかたどたどしい感じが拭えない。

提督の母親はそんな彼女を安心させるように優しい笑顔で言った。

 

「秋月ちゃんはさっき聞いたわね。龍鳳ちゃん……? カッコイイお名前ね」

 

「あ、ありがとうございます!」パァッ

 

「ん? おい、苗字は?」

 

名前だけしか聞いてなかったのが気になった父親が、当然のことを聞いて来た。

提督は苗字の事までは叶えていなかったので焦る。

 

「苗字? あ……苗字な。苗字は、あー……」

 

大和「クレです」

 

不意に大和が発言した。

父親は聞き慣れない苗字に眉を潜める。

 

「クレ?」

 

大和「はい。日暮れの“暮れ”という感じ一文字で暮です。お義父様、お義母様、改めて自己紹介致します。お初にお目にかかります。暮大和と申します」

 

(なるほど。呉工廠からから取ったのか。……なんか親父たちの呼び方に違和感を感じるな)

 

「暮さんか……」

 

「はい」

 

最初こそ訝しむ気持ちがあったものの、父親は丁寧な大和の態度に警戒心を解くことにした。

居住まいを正すと、改めて大和の方に向き直り母親と一緒にお辞儀をしてきた。

 

「忠哲の父、哲刻です。こっちは妻のはなえです。皆さん先程は本当に失礼しました」ペコ

 

「ごめんなさいね」ペコ

 

大和「い、いえ。本当に気にしないでください!」

 

秋月「そうです。私達はもう大丈夫ですから!」

 

龍鳳「……!」コクコク

 

「ありがとうございます。……で、忠哲よ」

 

「ん」

 

「今日はどうした?」

 

当然の質問である。

だが、それには容易に答えられる。

提督は落ち着きを取り戻した態度でゆっくりと答えた。

 

「まぁ、久しぶりの帰郷なんだけど、大和……さん達に仕事でお世話になってるからちょっとお礼の代わりに連れてきたんだ」

 

「ふむ……」

 

「本当にただのお礼だよ。誘ったんだから経費は全部俺持ちだ」

 

大和(ただの……)シュン

 

秋月(お礼……)シュン

 

龍鳳「?」キョトン

 

「ま、そういう事なら問題ないか。なぁ」

 

「ええ、そうね。一時はどうなるかと思ったけど、波風立たなくて良かったわぁ」

 

「問題? 波風……?」

 

提督は何故か明らかに違う事で安堵の表所をする自分の両親が気になり、探るような顔をする。

 

「丁度良い。その内話すつもりだったからこの際に言うがな」

 

「……ああ」(凄く嫌な予感が)

 

「忠哲、あんたもう30でしょ? 軍人さんの仕事ばっかりやってたら良い人探すのも難しいと思って」

 

「……」(まさか)

 

「そうだ。見合いだ。相手を探しておいた」

 

大和・秋月「!?」

 

龍鳳「おみあい?」

 

「……まぁ、うん」

 

キョトンとした顔で提督にその意味を乞う龍鳳だったが、残念なことに提督はそれに答えてやるほどの余裕が既になかった。

 

「いや、俺も無理矢理とは思ってない。だけどな、探した相手は全く問題ないとは思うんだ」

 

「そうなの。あ、別に本当に無理矢理じゃないのよ? でもお父さんが言っていた通り本当にピッタリだと思うから!」

 

「ピッタリって……どうしてまた、妙に自信があるような?」

 

「そう、それだ。その相手な。お前の知り合いだ」

 

「え?」

 

「前に陸軍で働いていた人なんだけど。覚えてない? あの子、あなたと顔馴染って言ってたわよ」

 

「陸軍の……顔馴染……。もしかして」

 

提督の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。

まだ士官学校を卒業して晴れて軍人となって間もない頃だ。

 

「思い出したか? 信条要さんだ」

 

「あ、ああ……確かに覚えてる。しかしまたなんで、彼女なんだ?」

 

「え? なんでってお前、あの子はお前に言伝してあるからその気になったら必ずここに帰って来るはずだって言ってたんだぞ?」

 

「言伝? いや、覚えが」

 

「ええ? 忘れてるだけじゃないの? 要ちゃん、ちゃんと言伝の代わりに大事な物あなたにあげたって言ってたわよ? ほら、なんでしたっけお父さん、えっと……」

 

「認識票だ。裏にこっちの住所を書いておいたって」

 

「認識票……裏……!」

 

提督は更に思い出した。

彼女が軍を辞める時に自分と話した時の事を。

 

「やぁ、まさか生まれの土地が一緒だったとはな。ここに来たっていう事はもうあの子には会ってきたんだろ?」

 

「……」

 

提督はかつてない程焦りの汗を流していた。

まさかこんな展開など予想などしていなかったから。

 

大和・秋月・龍鳳「……」

 

後ろの三人はそれぞれ何か言いたそうにこちらを見ていた。

龍鳳は単純に状況が理解できていないようなだけみたいだったが、他の二人は違った。

大和と秋月は今にも泣きだしそうな顔でこちらを見ていた。

 

(切り抜けなければ、どうする……)

 

提督は心中、頭をフル回転させる。

様々な方法を模索はしてみるものの、その過程で彼女もここに来ることを思い出した。

 

「……」

 

目の前が真っ暗になりそうだった。

災難というレベルではない、これは自分の名誉の大事に繋がりかねない。

考えなければ何か、何かを……。

提督がそうして死にそうな顔で五里霧中の中を模索していると、災難の一つが早速自ずから彼に寄って来た。

 

「ごめんくださー……って、おい! おま……来てくれたんだ!」

 

明るい声に感動で滲み出た涙で僅かに震えも感じた。

提督がその声に反応して、後ろを見ると、そこには見覚えがある褐色の肌に相変わらずのはねっ毛が特徴的な、陸軍のかつての知り合いがいた。




大分遅くなってすいません、遅々とした更新となっておりますが、帰郷編の続きです。
4月には大分進めます。


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第5話 「一時撤退」

絶望的な状況は待ってくれそうになかった。
実家を訪れて驚愕の事実に提督が焦る中、災難は自ずと現れたのだった。

*登場人物が多いので、大和・秋月・龍鳳に関してはセリフの前に名前を入れてます。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「忠哲、来てくれたんだね!」

 

ギュッ

 

「……」

 

大和・秋月・龍鳳「 」

 

「ふ……」

 

「あらぁ、はははは」

 

元日本帝国陸軍“准将”信条要(しんじょう かなめ)は歓喜の笑顔に涙を浮かべながら人目も気にせずに目の前の提督に抱き付いた。

 

彼女が軍を辞めてからまだ1年ほどしか経っていないので、見た目は軍に籍を置いていた時と比べて髪が伸びているくらいしか違いはなかった。

活発そうな雰囲気、明るい笑顔、引き締まった身体はどれも過去の彼女と何一つ変わっていなかった。

 

まだ20代前半の彼女が若くして周りから将軍と呼ばれるまでの地位に着けたのは、親類縁者にその軍関係者が多かった事、生まれが旧家で家柄に恵まれていた事などが理由にある。

だがそれは彼女にとっては不本意以外の何ものでもなかった。

勤勉と努力を美徳とする彼女は不本意ながら明らかに回りより早く准将まで昇進すると、そのまま幹部コースに進むとお思いきや、なんと周りの予想を裏切って前線の指揮官となる事を選んだ。

 

その結果、出世コースを歩んでいた頃は親の七光りなど仕方のない誹謗中傷を時折受けていたが、現場に自ら出るようなってからは元々持っていた優れたセンスを開化させた。

そしてめきめきと頭角を表し、気付いた頃には最良の前線指揮官のひとりと周りから認められるまでになっていた。

 

そんな彼女はある日突然軍を辞めた。

理由は、今本人が抱き付いている男にあった。

何がきっかけで惚れたかはよく覚えていないが、彼に好意を抱くようになってからは、軍人としてではなく女として彼に好かれたいと希望を抱くようになり、その結果“軍を辞めて女を磨く”という極端な答えに辿り着いたのだった。

 

だが、ただ辞めて彼から離れただけでは意味が無い。

自分が離れた結果彼が誰かと恋添い遂げる可能性は否定できなかった。

故に彼女は保険を掛けることにしたのだ。

認識票を使い、自分の気持ちを贈るという行為を。

 

その結果はどうやら功を奏し、今目の前に来てくれた。

正直言って、一年程度で自分の前に現れるとは思っていなかったので、花嫁修業はまだ完全とは言えない状態だったが、それでも要は彼が自分に会いに来てくれた事が本当に嬉しかった。

 

だが肝心の抱き付かれている提督は、どうやら彼女の突然のこの行動に意表を突かれてどう反応したらいいのか困っている様子だった。

抱き付いた腕に力を入れて揺らすたびに力なく彼の顔はふらふらと揺れていた。

それも仕方のない事だ。

要は一旦その昂ぶる感情を落ち着かせると、まだ目尻に残る涙を拭いながら話し掛けた。

 

「忠哲、お前本当に来てくれたんだね……。お前変なところで針の穴に糸を通すような鈍感見せるからさ。正直、あたしに会いに来てくれるか不安だったんだけどさ、嬉しいよ……。認識票見てくれたんだな」

 

「……准将……」

 

提督は、何故か青ざめた顔で、そして更に生気のない眼で彼女を見て、やっとの思いで喉の奥から言葉を発した。

その様子に要は心配半分不満半分と言った顔でちょっとむくれながら言葉を返した。

 

「ちょっと、准将何て堅苦しい言い方よしてよ。もう軍人じゃないんだからさ。名前で呼んでよ。それに、大丈夫? なんか調子悪そうだね」

 

「……」

 

提督はただ黙る事しかできなかった。

 

「長旅で疲れたんでしょ。ね、こっちで休んだら家に来なよ。色々話したいし、紹介し……」

 

早速提督に猛アピールを始めようとしたところで要はようやく気付いた。

彼が連れてきていた大和達に。

 

「あれ……? えっと、あれ、は失礼だね。えっと、あの子達って……」

 

軍に身を置いていた彼女は当然ながら艦娘の事は知っていた。

自分の回りにも兵器を模した似た存在がいたから尚更だ。

私服を着ていたとは言え、過去に関連の資料や実物を見た事があった為、彼女には一目で大和達が艦娘だと判った。

 

だがそれはまだ現時点では軍事機密だった。

提督は枯渇し掛けていた気力を振り絞って、なんとか正気を保つと、彼女にそれ以上言わせない様に口を抑えた。

 

「んぐっ?」カァッ

 

「じゅ……信条さん」

 

「……」ジトッ

 

要が不満そうな半目で提督を見た。

どうやらまだ呼び方に問題があるらしい。

 

ここは彼女を不機嫌にさせてはいけない。

即座にそれを悟った提督は速やかに呼び方を改めて言った。

 

「要、悪い。ちょっと外で話そうか」

 

「ん……♪」

 

要は直ぐにほんのりと顔を赤らめて嬉しそうな顔になり、口を抑えている提督の手を握って小さくコクリと頷いた。

 

「というわけで、父さん母さん、ちょっと出かけ来る。直ぐ戻るから」

 

「おう」

 

「はいはい♪」

 

大和「……た……」

 

暗い表情で大和が途切れそうな顔で提督を呼ぼうとしていた。

 

「大和、悪い。ちょっと皆をみていてくれ。……直ぐに戻るから」

 

提督はそう言って、さっと何かメモに書くとそれを大和に渡した。

 

ソッ

 

大和「……?」

 

大和は提督が見知らぬ女性を連れて家を出ていく後姿を、悲しみに暮れた顔で見送っていたが、その際に渡されたメモを思い出し、手を開いてそれを見た。

そこには……。

 

『心配するな』

 

と一言だけが書いてあった。

 

「た……さ」

 

そんな素っ気ない言葉だったが、大和は少し安心した。

だから横で泣いていた秋月と、まだ状況がつかめずポカンとしている龍鳳を優しく抱き締めて安心させる事ができた。

 

その様子を微妙な表情で提督の両親は見ていた。

 

「なぁ、どう思う?」

 

「んー、寂しいとはちょっと……うーん」

 

哲刻の疑問に対して妻のはなえは何となく波乱の予感を覚えながらも、少し楽しそうに笑っていた。




帰郷編の続きです。
新キャラ、案外気に入ってたりします。


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第6話 「謝罪」

提督は要を連れてとある公園にやって来ていた。
彼は彼女を前にすると突然その場に膝を突き、懐から何か箱のようなものを出してその中身を自分の前に並べると、深々と頭を下げたのだった。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「なるほどねー」

 

「……本当に申し訳ない」

 

提督は要の前で深々と土下座をしていた。

 

時刻は昼過ぎ、場所は公園。

元々町の住民の数が少ないという事と平日という事もあり、この一見舞台のワンシーンのような様子に気付く者は幸いにも誰もいなかった。

 

「……」

 

要は何とも言えないというような複雑な表情で頭を下げる提督を見ていた。

 

公園に連れてこられた時はこれから甘い時間を過ごせるものかと彼女は期待していたが、待っていたのは衝撃の事実と提督の心からの謝罪だった。

彼女は彼から今は過去に別れたた元恋人と復縁している事、加えて艦娘の何人かとケッコンを行っており、既にその内の幾人とは情事も交わしている事など、赤裸々な事実を包み隠さず伝えられた。

 

(はぁ、まぁ、らしいと言えばらしいけどね)

 

正直失望の気持ちは大きかったが、要は目の前で頭を下げ続ける男にそれでも強く責める気は起きなかった。

それは提督に好意を抱いたその日から彼の率直で真面目な性格を理解しており、今回このような事実を既に行っていたとしても決して軽率な気持ちからきたものではないと信じる事ができたからであった。

 

「……それで、て・い・と・く君は一年もの間、あたしがあげた認識票の裏の事に普通に気付かなかったんだ?」

 

重い雰囲気の中、ようやく彼女から掛けられた問い掛けに、提督は尚も頭を下げたまま真摯に答えていった。

 

「……はい」

 

「で、更にあの認識票、部下の艦娘にあげちゃったんだよね?」

 

「……そうです。君からあの時聞いた言葉を考慮した結果、彼女ならぞんざいには扱わないだろうと判断して、その希望を叶える形で譲りました」

 

「ふーん……」

 

要は腕組みをしながらジトーっとした目で提督を見ていた。

その顔は、表情こそ不機嫌そうだったがその内心は、実際は彼に対する憤りではなく別の事を考えていた。

 

(その認識票が欲しいって言った子、本当に純粋に欲しかっただけって感じはしないな。やっぱり……アレよね。ま、それだけ慕われているとも言えるけど)

 

「それで、そのあたしの前に置いてある物はどういうつもりなの?」

 

「それは……」

 

要の言う通り、提督と彼女の間には、何処に忍ばせていたのか懐刀と拳銃が並べて地面に置かれていた。

提督はそれを見ながら説明した。

 

「俺は君に本当にひどい事をしてしまったと心から思っている。それは君が希望するなら死をも受け入れると言う意志表示だ」

 

「し、死って……」

 

「だが俺は出来る事なら君を殺人犯にはしたくないから、もし希望をされればそれを使って自決するつもりだ」

 

「じ、自害するつもりなの? それで?」

 

「ああ、それで腹を切って、介錯の代わりに自分の胸を撃つ」

 

「……」

 

とんでもない事を目の前で言い切る提督に要は割とドン引きしていた。

真面目だとは思っていたが、ここまで自分に厳しい人間が現代にどれだけいるだろうか?

彼はもしかしたら生まれる時代を間違ったのではないだろうか?

彼女はそんな事を考えながら、短いため息を一つ吐いた。

 

「はぁ……」

 

「……」ゴツン

 

「あ、ちょっと」

 

溜めわ息を聞いて額を地面に打ち付けた提督に要は慌てた様子で声を掛ける。

 

「もう、やめてよ。怒ってないからさ。顔、上げてよ、ね?」

 

「だめだ。例え許しを貰ってもまだ俺は自分を許せない」

 

「いや、確かにいろいろショックだったけどさ、でもまぁ……うん。忠哲は忠哲のままだったわけだしさ。まずは、それが嬉しかったよ」

 

「……」

 

「ケッコンや元カノと寄りを戻してたのはまぁ……」

 

「……」

 

「や、やっぱり今も付き合ってるの?」

 

「俺はそのつもりだ」

 

「……それって結婚が前提?」

 

「……」

 

その問いにかなり重要なものを感じ取ったのだろう。

提督はどう答えたらいいものか考えた。

この問いには慎重に慎重を重ねた上で答えねば。

 

「変に気を遣わないで事実だけを言って。彼女の気持ちじゃない。忠哲はそのつもりだったの?」

 

「……ハッキリ言って、そこまでは考えていなかった」

 

「……そう。彼女からは?」

 

「ない。が、自分から復縁を申し出てきたんだ、その考えがある可能性は十分に有ると考えている」

 

「……もうそのお願いされた?」

 

「……いや」

 

「……そっか」

 

「……」

 

「いいよ」

 

「……?」

 

提督は上から掛けられた短い言葉に僅かに顔をあげた。

『いい』とはどういう事だろう?

その言葉だけでは肯定とも否定とも取れる。

ましてや自分が犯した罪をそんな短い言葉で決着が付けられるもんどろあうか?

そんな事を考えてい彼に、要は更に続けてこう言った。

 

「許す」

 

「……いい、のか?」

 

「うん。もう怒ってないし、許すよ」

 

「しかし……」

 

「そんな顔しないでいいって。もう大丈夫だから」

 

「……」

 

「まっ、まだあたしにもチャンスはあるみたいだしね」

 

「は?」

 

自分の罪に未だに苦悩していた提督はそこで、ハッとした顔になって要を見た。

そんな彼を見返す彼女の顔はいつも通りの元気な笑顔を既に称えていた。

提督はその笑顔を見て何故か全身に凄まじい悪寒が走った。

 

(なにか……とんでもなく、嫌な予感が……)

 

「確かに寄りを戻して付き合ってても、結婚が決まってないならまだあたしにも忠哲を奪えるチャンスはあるよね。せっかくだから今日はこの機会を利用して彼女との縮めさせてもらうよ!」

 

「待て、し……要。それはうわ……」

 

「違う。これは闘い、女のね。ついでに艦娘の事も決着つけるからね! あの背が高い子凄く忠哲好きそうだったもんね。ケッコンはまぁそういう仕組みだから仕方ないけど、でも好意はあたしが一番ってのは伝えないと、だしね!」

 

「要、それだと俺の尊厳が地に落ちて欠片も残らないんだがそれは」

 

「大丈夫。彼女が来たときはあたしが前に出て堂々とあたしも忠哲が好きだから、って宣言するから」

 

「いや、だからこそには俺の意思が……」

 

「だから今日は会えなかった分差を詰めるからね?」

 

「……」(その差を詰めている間に当の本人が来るかもしれないんだ)

 

「大丈夫心配しないで! 忠哲はあたしが守るから!」

 

(死にたい……)

 

頼もしい笑顔でそう宣言する彼女の顔を見ながら提督は、自分が招きつつある更なる混沌に絶望感から心が折れそうになるのだった。

 

 

丁度その頃、提督の実家では……。

 

「すいません、ごめんください」

 

若干疲弊した様子のもう一人の彼女が提督を追って、早々に目的地に着いたところだった。




話のペースちょっと遅いですかね。
でも楽しみながら書けてるので個人的にはOKです。


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第7話 「真・災難」

実家に戻ったら更に一難待っていた。
それも最も厄介な災難が……。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「……」

 

黒いワンピース姿に滑らかな長髪をなびかせながら不機嫌そうに腕を組んで要と対峙しているのは、最近提督と復縁した元彼女、もとい現彼女。

日本帝国海軍本部第4司令部司令官、上級少将の周防鐸(すおう さなき)だった。

 

「……」

 

二人は提督が実家に戻ってきたところで偶然出会い、そして今、彼を間に挟んでにらみ合うという事態になっていた。

 

「……」ダラダラ

 

「ねぇ」

 

目はしっかり要を見据えたまま、鐸が提督に話し掛ける。

 

「はい」

 

「こちらは?」

 

「……知り合いです」

 

「ちょっと」

 

要が直ぐに割り込んできた。

紹介の仕方が気に入らないらしい。

提督はここは気を遣って謙虚になって欲しかったが、直ぐに諦めて改めて言い直した。

 

「……元陸軍の……」

 

「そうじゃないでしょ?」

 

「……信条さんです」

 

「……」ジッ

 

「要。元陸軍将校の俺のしり……極めて親しい友人だ」

 

「よしっ」

 

「待って。今のは誘導じゃないかしら? 彼に自分の名前を言わせて親しく見せる為の」

 

「元々あたし達は親しいわよ?」

 

「え?」

 

「はい?」

 

秋月・龍鳳(怖い……)ブルブル

 

「ねぇ、どういう事?」

 

冷たい目で鐸が提督を睨む。

提督は要との馴れ初めと今のような関係に至るまでの事の発端を話していいか、許可を求めるように彼女をチラリと見た。

 

「……」チラ

 

「いいよ、話して」

 

「実は……」

 

了承を得た提督は粛々と話し始めた。

 

 

 

「……なるほど」

 

話を聞き終えた鐸は神妙な顔でまだ腕組みをしたままそう一言呟く。

その顔は当初の険悪な雰囲気の時と比べれば、幾分柔らかくなってる様な気がした。

要はその場にいた人間に大体の話が行き渡った事を確認すると、半歩前に出て今度は鐸だけでなく、その場にいる自分以外の全ての人間に聞こえる様に大きな声で言った。

 

「そういうわけ。で、丁度ど良いからちょっと宣言させてもらうね」

 

「え?」

 

「……」(胃が……悪寒が……)キリキリ

 

「皆聞いてください。あたしも忠哲の恋人の候補になります! 勿論、結婚前提で!」

 

大和・秋月・龍鳳「!!」

 

「あらあらぁ♪」

 

「……」ミシミシ

 

大和達が驚きに目を見開き、母親がどことなく楽しそうに笑顔で、そして父親が手に握ったグラスにヒビを入れる中、鐸も焦った様子で直ぐに抗議してきた。

 

「な、こ、恋人って……。聞かなかったんですか? 彼は私と……」

 

「復縁したんでしょ? 知ってるわ。でもあたしが見た限りまだ昔付き合っていた時ほど寄りは戻っていないんじゃない?」

 

「それは……」

 

鐸は口ごもる。

それは仕方のない事だ、同じ職業とはいえお互いの勤務地は大分離れている。

士官学校時代とは違ってお互いの時間などそう簡単に取れないのだ。

 

「ね? あたしにもチャンスあるよね?」

 

「……」(不純異性交遊を理由に否定はできないわね。だってもう艦娘の提督をシてるという時点で彼も例に漏れず……)チラッ

 

鐸の視線で何かを察した提督は、まるでその場にだけ見えない重力があるかのようにうなだれていた。

彼は今、この状況を招いた罪とお互い同意の上だったとは言え、基地での部下の艦娘との情事を思い出し、激しい自責の念に襲われていた。

 

「……」ズーン

 

対して要は要で、ライバル宣言をしたものの自分の現在の状況を冷静に分析して、次なる手を思案していた。

 

「……」(このまま一対一でもいいけど、やっぱり元彼女という立場は有利よね。とすれば敢えてこの場はより状況の混迷を図るのも一興、かな?)チラ

 

大和「え?」ドキン

 

予想外の視線を要から感じた大和は驚いて身を震わせた。

鐸は彼女が自分から視線を外している事に気付き、軽く咳払いをして再び自分に傾注させて色々考えた末、要を見ながら言った。

 

「こほん、どこを見てるんですか? まぁ、いいでしょう。その勝負受けて立ちます」(相対する恋敵はぶつかって勝つに限るわ。その方が後腐れないもの。それに、復縁、職業が一緒という点ではやはり私が有利なのは変わらないし)

 

「あ、ごめん。一個だけお願いいいかな?」

 

「? なんです?」

 

この期に及んで更にお願いとはなんだろう?

鐸は不審そうに眉を寄せながらも、その答えを促す。

 

「どうも忠哲が好きなのはあたし達だけじゃない気がするの。だからここは、よりその機会を公平に与える為に彼女にもこの闘いに参加してもらうかなって思うんだけど?」ビッ

 

そう言って要は今度は視線だけでなく指で直接大和を指した。

いきなりそんな指名を受けた彼女は当然慌てふためく。

 

大和「わ、私ですか!?」

 

「え? 大和……?」(あの子も彼が好きなのは何となく解る。でも、この人の提案はその意を汲んでるとは思えない。とすれば……)

 

「ね、大和さん。君も忠哲の事が好きだよね?」

 

自分より背が高い大和に“上目使いの様な視線”で圧力を掛けて答えを促すと言う器用な真似で迫る要に、大和はまんざらでもなさそうな様子で頬を染める。

 

「えっ、えっ、わ、私は……」カァ

 

 

パリンッ

 

何かが割れる音がした。

 

「……!」ビクッ

 

音がした方を提督質が見ると、そこには顔を真っ赤にして青筋を立てている提督の父親、刻哲がいた。

割れたグラスの欠片の幾つかが手に刺さって血が流れているが、彼は怒りで気にならない様子だった。

 

「……」ピクピク

 

秋月・龍鳳「ふ、ふぇぇぇん!」

 

その圧倒的な気迫に、その場にいた人間の中では見た目が一番幼い二人が、遂に恐怖に耐えられず泣き出した。

母親のはなえが直ぐにそれをあやすように笑いながら優しく二人に言葉を掛ける。

 

「はいはい、ホント怖い人達よねぇ? ほら、おばさんと一緒に台所にいきましょ。ふてぃもちあるよ」

 

秋月「ふ、ふてぃ……?」

 

「甘くて美味しいのよー。食べんね?」

 

龍鳳「甘い……? うん……食べたい……ぐす」

 

秋月「わ、私も……ぐす」

 

「ほな行こうね。ほらほら、怖い人達がなんか騒ぎ出したからねぇ」

 

「……」

 

提督は、はなえが二人を台所に連れて避難する背中を見送りながら、今から起ころうとしている地獄に自らの死を確信するのだった。




なんか思い返してみれば、前の話一人も艦娘出てこなかったんですよね。
艦これの話なのに。

クレームは当然受け付けますw


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第8話 「理解」

提督は所謂“修羅場”と言われる地獄を覚悟していた。
そしてそんな彼を待っていた予想外な展開とは……。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「……経緯?」ギロッ

 

「……そ、そうです」(相変わらず怒るとうちの大将くらい怖いわね)

 

日本帝国海軍第4司令部司令官周防鐸少将は今、怒りで顔を真っ赤にした提督の父親である刻哲の形相と気迫にやや気圧されながらも必死に説得して宥めようとしていた。

 

「……」

 

対して怒りの対象である提督は、罰を潔く受ける罪人よろしく土下座をして額を畳に着けたまま黙していた。

刻哲は大和に後ろから羽交い絞めにされていた。

要が提督争奪戦(景品には最早抗議する気力無し)に参戦を表明し、自身の立場的不利を緩和する為に大和の提督に対する想いを看破し、彼女にも争奪戦の参戦を提案した辺りで刻哲が激怒して息子(提督)に殴りかかろうとしたからだ。

刻哲が怒った理由は提督の不純異性交遊ひとつのみ。

邪まな動機ではなく、加えてお互い同意の上での関係とはいえ、鐸や要との関係はともかく刻哲が海軍の機密事項である艦娘の存在など知ってるわけもなく、ましてや提督と艦娘との間にケッコン(仮)などといったシステムがあるなど予想も着く筈が無かったので、一人の子の父親として彼が怒るのも当然の反応と言えた。

 

「俺の息子がやった事に何か納得できる事情があるってのか!?」クワッ

 

「ひっ……」ビクッ

 

「そ、それを今から忠哲に代わって私が説明しようと……」

 

「……」(へぇ、提督君のお父さんって怒るとこんな感じなんだ。うちの父さんと似てるなぁ)

 

刻哲の怒りを前に、提督の艦隊の最高戦力である大和はすっかり怯えていた。

彼女も女性である。

戦場の恐怖には慣れていても異性の怒りに触れる機会など提督の部下をしていてあるわけがなかった。

そしてそんな刻哲を必死に宥めようとしている隣で提督に片想いを寄せる元陸軍将軍の信条要は、流石に男と交って実戦を想定した訓練や教育を受けてきた事と元々の豪胆な性格もあり、ケロっとした顔で彼の父親が怒る様を眺めていた。

 

「お願いですから少しだけ話を聞いてぇ!」

 

「……」スクッ

 

とうとう鐸が刻哲の暴走に根負けして半泣きで自分の訴えを叫んだ時だった。

要が不意に達が上がりポン、と彼女の肩に手置いた。

 

「え……?」

 

涙を滲ませた目で要を見る鐸、そして力では余裕で勝ってホールドをかけながらも刻哲の怒りの迫力に半べそをかいていた大和もまた、要が立ち上がった事に気付いて驚いた顔をした。

 

「あたしに任せて」ボソッ

 

要は鐸の耳元で小さな声でそう言った。

 

 

「……ん?」

 

羽交い絞めにされていた刻哲が自分の前に立ちはだかるようにして立った要に気付いて見上げる。

対して要はその睨むような視線に怯む事もなく、どことなく自信に満ちた笑顔を浮かべながら刻哲の両肩に手を置いた。

 

ギュッ

 

「……」ピクッ

 

軍を辞めても鍛える事を怠っていない要の腕の筋肉が僅かに膨らむ。

刻哲はその自分の肩を掴む力に、本気ではないとはいえ女性には似つかわしくない頼もしさを感じた。

要は刻哲が自分の力に反応して気を取られた好機を見逃さずしっかりした口調で話し掛けた。

 

「聞いてください」

 

「……む」

 

刻哲は焼けた褐色の顔から覗く要のくっきりとした大きい目に何か強い意志を感じ、取り敢えず落ち着いた様子を見せた。

 

「色々思う事はあると思います。だけど断言します。忠哲はお義父さんが思っている人じゃないです」

 

「……」ピクッ

 

“お義父さん”という響きに未だに伏せたままの提督がピクリと反応する。

音こそそれは『おとうさん』だが、何故かそこに彼は違うニュアンスを感じたのだ。

だが今この場においては自分はとやかく言える立場でも気力もない。

色々気になる事はあったが取り敢えず提督はその場はそのまま黙っている事にした。

目敏くその事に気付いていた要は内心くすりと笑うと、尚も刻哲から目を逸らさずに続けた。

 

「あたしは周防さんほど彼と長く付き合った事はありませんが、それでも所属が違うとはいえ同じ軍属として短い時間でも彼と関わって解った事があります」

 

「……なに、かな?」

 

刻哲は喉から絞り出し様な声で訊いた。

 

「彼は愚直です」ニッ

 

「……」

 

「意味、解りますよね? あの人は理由や責任、考えもなく女性と付き合って不幸するような事は決してしません。その動機には思わず笑っちゃいそうなくらい愚かしくも真面目な彼の性格故の理由が必ずあります」

 

「……やけに自信ありげに言いますね。周防さんより過ごした時間が短いのに何故そこまで言えるんですか?」

 

明らかな感情押しという事は自分でも判っていた。

だがそれでも相手の目を見て誠意を伝えるという行為に自信を持っていた要の思いが刻哲に伝わり、彼の心に疑惑はまだあったものの、怒りの熱が下がった事を確信した彼女はこう答えた。

 

「今ここにいる人、そして今日連れてきた子達を思い出して、見てください。彼女達がそんな不純な動機に同意するような濁った子に見えますか?」

 

「……」

 

刻哲はそう言われて目の前の要と鐸、そして今時分を捕えている大和を見上げた。

 

「……っ」ビクッ

 

「……」

 

大和はまだ怯えていたが頑張って涙が出るのを堪えて努めて真剣な表情をしようとした。

要は完全に落ち着きを取り戻し、凛とした空気まで纏って彼の視線から目を逸らさずに真剣な目でそれに応えた。

 

「……」

 

そして刻哲は目を瞑って考える。

今は妻が避難させた幼い二人の事を。

 

(……流石にそれはない。でなければ、あんな歳の子が息子にあれほど慕った様子を見せるわけもない、か)

 

 

「解った」

 

刻哲はポツリと言った。

その言葉に彼を除いた4人は揃って反応して彼を見る。

 

「話は解かりました信条さん。まぁ……あれだ根拠はまぁ、アレだが言いたい事は解った。だから信じる事にしますよ、愚息を」

 

「お義父さん……」

 

要はそこでやっと表情を綻ばせて柔らかい笑みを浮かべた。

刻哲は少し体裁が悪そうにこめかみを掻きながら居住まいを正すと、手に着いていた血を着物の袖で軽く拭ってこう言った。

 

「取り敢えず酒だ。せっかくこんな息子を慕って5人もうちに来てくれたんだ。ちょっと祝い事くらいしないと何も始まらない」

 

「父さん……」

 

ようやく額を少し上げて自分を見る息子に対して刻哲はまだ僅かに複雑そうな表情をしながら言った。

 

「まぁ、多少は脚色してもいいから少しくらいは話、聞かせろよ?」




帰郷編の続きです。
ペースが何か変な事になってますが、今月中には終わらせて妙なナンバリングも整理するつもりです。

申し訳ございません!


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第9話 「続・災難」

提督の父親が怒りの暴走をする直前で何とか事態は収拾した。
そして今度は提督の実家を訪れた客人をもてなす為に細やかな宴会が開かれた。
時刻は夕刻、夕暮れに染まった空から少し涼しい風を吹き、酒に酔った者達の上気した体を優しく撫でていた。

*登場人物が多いので、大和・秋月・龍鳳に関してはセリフの前に名前を入れてます。

*一部登場人物の個人名が出てきます。


「っぷぁ……はっはっは!」

 

ビールを口に運んで、その唇に付いた泡を拭わずに上機嫌な顔で刻哲は大きな声で笑った。

 

大和・龍鳳・秋月「……」

 

その様子を見て少し前まで怒りの形相をしてとんでもなく怖かった時との落差に大和達は唖然とした顔をしていた。

反対に鐸と要は慣れた様子で彼に接待をする様に愛想良く肩を揉んだり、酌をしていたりした。

 

「ふふ……相変わらず良い飲みっぷりですね。はい、飲みます?」(ホント、この人お酒飲むと人が変わるわよね。アイツは違うのに)

 

「んっと……。っし……っと、どうですかお義父さん気持ち良い?」(酒が入ると機嫌が良くなるところもうちの父親に似てるなぁ。ふふ、なんか良いなぁ)グッグッ

 

大和「……」

 

「ふふっ、凄いでしょ? うちの人。お酒飲むとこんなに変わるんよ」

 

まだ呆然としていた大和にはなえが面白そうに笑いながら彼の癖を教える。

 

秋月「お、お酒って凄いですね。たい……あ、えっと、た、ただ……てつさんもこんなに変わるんですか?」

 

「……いや、俺は酔いはしてもあそこまでは。多分」

 

「そうね、この子はあの人よりお酒は強いものね。あの人が特別お酒に弱いのよ」

 

龍鳳「あ、でも酔いはするんですよね?」

 

「ん? まぁ、それはな」

 

お酒に酔った提督を一度見てみたい、そんな事を思いながら自分を見る龍鳳に提督がその意図が読めずに不思議そうな顔をしたときだった。

 

ガシッ

 

「んぶっ……」

 

「おーぁあぁぁ、飲んでるか? おい、馬鹿よ! 息子よぉ!」

 

完全に酔っぱらった彼の父親が真っ赤な顔で提督の首に腕を回して絡んできた。

提督は危うくグラスを落としそうになるのを何とか堪え、彼にしては滅多に見る事が無い嫌気がさした顔をした。

 

「父さん、酒に飲まれる癖いい加減に直せよ。他の人にもめいわ……」

 

「ああ、うっせいなぁ! お前、お前よぉ忠哲よ? 今日は、俺……嬉しいんだぞぉ」

 

「……?」

 

突然絡んできたと思ったら今度は泣きそうな顔をして自分は嬉しいという父親に提督は不可解そうな目を向ける。

 

「あーっだぁ! わかんねーか? おれぁあん時怒ったけどよぉ……まさか、久しぶりに返ってきたお前が……」

 

「俺が?」

 

「はぁ……。お・ま・え・が! あんなにできたべっぴんさんをよぉ! お前が……ひっく……ぐす……」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「うっせぇよぉ! だ、だがらなぁ? あんなに良い娘を……お前んこと好きだっつー娘をよぉ……まさか3人も連れ……」

 

もう最後は言葉にならず、男泣きをして震え始めた刻哲に提督はその時何故か心に不安が過った。

 

3人、父は確かに3人と言った。

自分の事を慕う娘が3人と。

それは常識的に考えれば成人した女性の事を言うだろう。

つまり、要と鐸と大和だ。

 

「……」チラッ

 

提督はさり気なくその三人の様子を気付かれない様にちら見した。

 

「……♪」ポォ

 

「……っ」グッ

 

すると先ず確認できたのは一人凄く嬉しそうに下を向いて頬を染めてる鐸と、刻哲に公認の仲と言われた事に小さくガッツポーズを取る要がいた。

そして自分の横では……。

 

大和「……っ」ジワッ

 

感動に瞳を潤ませて声にならない嗚咽を口で押えている大和がいた。

 

「……」ゾッ

 

これは不味いと提督は思った。

何故ならその3人が彼女達なら当然無意識に除外されたのは……。

 

「……」チラッ

 

秋月「……」ズーン

 

龍鳳「……」プクー

 

提督が視線を変えた先には青い顔で一人俯いている秋月と、凄く不機嫌そうな顔で頬を膨らまし、自分の袖を握っている龍鳳がいた。

 

「あららぁ♪」

 

その様子を見てはなえが愉快そうに笑う。

どうやら提督と同じく彼が不安そうな顔をしている原因に気付いたようだった。

しかし彼女は息子と違って彼にもう直ぐ訪れるであろう面倒な事態を予測して楽しみにしているようだ。

 

 

龍鳳「お、お嫁さんならりゅ、龍鳳だってなれます!」

 

案の定先ず龍鳳が爆発した。

彼女は提督の袖を掴んでいた状態から今度はその腕にしがみ付き、決して彼を誰にも渡さないとでも言うようなアピールをする。

 

秋月「……」ズーン

 

一方秋月はまだショックから立ち直れず俯いたままだった。

 

「あっはっはっは」

 

その可愛らしくも純粋な嫉妬の様にはなえがついに堪え切れず笑いだし、笑いすぎて出た涙を拭いながら龍鳳の頭に撫でながら言った。

 

「そーねっ、龍鳳ちゃんも可愛いもんね! 龍鳳ちゃん達だけ仲間外れにするのはいかんよねー」

 

秋月「……!」(達? 今、達って言った!)ピクッ

 

はなえの言葉に、仲間外れにするのは良くないという対象に自分が含まれていると確信した秋月は耳聡く反応する。

 

秋月「お、おか……あ……お、おば様。そ、それって私も……秋月も入っているんですか?」

 

「もちろんよー。秋月ちゃんも可愛いもんねー」ナデナデ

 

秋月「……っ、おば……お義母様!」パァッ

 

龍鳳「むー……」プクー

 

「二人ともホント可愛いねぇ。おばちゃん何だか急に娘が2人できた気分よー♪」

 

龍鳳・秋月(娘……!)

 

大和(な……!?)ガーン

 

「へぇ……ふふ」(あの娘達面白っ)

 

「……まぁ」(何か負けた気分ね。でも大和、なんであなたまで子供みたいな反応してるのよ……)

 

はなえの発言に秋月と龍鳳は満更でもない反応を示し、大和は大人げなくショックを受けた顔をしていた。

対して鐸と要は流石に然程気にした風もなく余裕がある様子だったが、鐸だけは同型の艦娘が自分の職場の近くにいる事もあり、一人微妙な表情をしていた。

そしてはなえが最後にこんなとんでもない発言をしてきた。

 

「さって、時間ももう良い感じだしお風呂入って来なさい。忠哲、あんたこの子達入れてあげなさい」

 

「……ごふっ」

 

「え……」

 

「は?」

 

「娘じゃない……」ズーン

 

「ぐーがー……」zz

 

きっとはなえ自身は半分冗談のつもりだったのだろう。

だがその気持ちも流石に心から提督に心を寄せるその場の娘達には質の悪い本音に聞こえた。

その時、落ち込んで彼女の言葉には気付いていない大和と酔いつぶれて寝てしまった刻哲は蚊帳の外だった。

だが、一緒に風呂に入って来いと言われて満更でもない顔をしていた龍鳳と秋月以外は、青い顔をした提督にそれぞれ微妙な視線を注いでいた。

そう、災難はまだ続いていたのだ。




帰郷編まだ続きますよ!


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第10話 「選択」

提督の母親が衝撃的な発言をした瞬間、事態を把握した大人組の対応は素早かった。

*一部登場人物の個人名が出てきます


「いやー! 離してくださいー! 龍鳳は、龍鳳は大佐とお風呂にー!」ジタバタ

 

「はい、大人しくてね」

 

際どい所で独り落ち込んでいた大和は正気に戻り、龍鳳を担いで外に出て行く。

 

「あ、秋月はその……。べ、別にたい……忠哲さんとならあ、あの……!」

 

「この事については一度落ち着いて考えた方がいいわ。だから秋月、いらっしゃい」

 

「あ、あの本当に私はだいj」

 

「秋月」ジッ

 

「はっ! 失礼致しました! 同行致します!」ビシツ

 

秋月は何とか自分は理性的に振舞って目の前の鐸の説得を試みようとしたが、やはり直接の配下でなくとも彼女は“提督”だった。

鋭い視線で見つめられ、命令するようなはっきりとした声に秋月は無意識に否応なく艦娘としての反応をしてしまった。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

果たして不測の事態はあっという間に収束し、はなえも酔い潰れて寝てしまった刻哲に無理矢理肩を貸す形で連れて行って、その後後付や就寝前の準備に取り掛かってしまった為、その場には危機を脱してホッと息を着く提督と思わぬ好機に僅かに口元を緩めて笑う要だけが残された。

 

「……申し訳ないな、騒がしくて」

 

落ち着くために二人で縁側に移動していた提督が何ともすまなそうな声で言った。

その言葉の中には今に至るまでに彼女自身に対して犯してしまった過ちに対する謝罪の気持ちも含まれていた。

 

「いいよ。気にしてない。賑やかで凄く楽しかった」

 

要は本当に気にしていないような明るい笑顔でそう答える。

 

「ねぇ提督君」

 

「う……やっぱりまだ怒ってるか」

 

「え? ああ、ごめん! 呼び方つい引っ張っちゃった。ううん、もう気にしていないから」

 

「……それで?」

 

「あ、うん。それでね忠哲」

 

「ああ」

 

「私さ、君の事が好きじゃん?」

 

「いや、俺に疑問形で言われてもな」

 

「ふふっ、まぁまぁ。それで好きなんだけどさ」

 

「……ああ」

 

「君、周防さんとの付き合いもあるし、その……艦娘の子たちのとの『カンケイ』もあるでしょ? だから今この場では私も君にあたしの気持ちに応えてもらえるとは思ってないから」

 

「……」

 

“艦娘の子たちとのカンケイ”という言葉に僅かに提督は痛い所に触れられたように気まずそうな顔をする。

艦娘の提督である以上、彼女たちと成り行きや恋愛で情事を経るのは不思議ではない事だが、それでもそれを実際に自分以外、それも自分を慕ってくれている異性に指摘されると提督は何とも言えない罪悪感居た堪れない気持ちになった。

 

「そんな顔しないでいいよ。大丈夫、私も所属する軍は違ってもその辺の事情は解っていたから。ほら、陸軍にもあの娘たちみたいな子いたいし」

 

「……すまない。ん……陸軍にも、か。あきつ丸みたいな?」

 

「うん、そう。陸軍にはね、戦車の娘ともいたんだよ」

 

「戦車……か。それ、侮辱するつもりはないが、戦力としては問題はなかったのか?」

 

「あ、っふふ。やっぱり気になるよね? 旧軍の日本の戦車は世界のと比べると性能がアレだったからねぇ。その疑問も解るよ」

 

世界大戦の折、旧日本軍が使っていた戦車の能力の足りなさは現代でも有名だった。

日本が海洋国家である為戦車の発達が遅かったのは仕方ないとは言っても、その性能の低さを愛くるしいとさえ思う人がいる始末である。

提督の心配もある意味当然と言えた。

 

「その笑い、俺が思っているほど実態は悪くないみたいだな?」

 

「正解。陸軍はねー、旧兵器の性能が海軍のと比べて大分劣っていた事は解っていたからねー。だから陸軍だけは特別に海軍とは一線を画す強化法を実行する許可を取り付けたの」

 

「一線を画す?」

 

提督は要の言葉に興味ありげな視線を向ける。

 

「うん。勿論、チハやあきつ丸も通常の戦力としてはいるよ? だけどそのままだと能力的に劣るのは解り切ったことだから海軍の艦娘と違って陸軍の娘は“最初から”強化された状態で生まれてくるの」

 

「……最初から、強化?」

 

「うん、そう。今陸軍が人用の戦車として正式に採用してる戦車があるでしょ? 実はアレを拠り所にした娘もいるんだけど、強化されたチハとかはその娘と能力を比べてもそんなに見劣りしないくらい強いのよ?」

 

「……それは、凄いな」

 

要の話を聞いて提督は心から驚いた顔をする。

現在軍が採用している人用の戦車はそれこそコンピュータなどを搭載し、砲撃の際の砲塔の照準も自動で行うようなハイテクのものだ。

そんな戦車の艦娘が既に存在するというのに、更にその娘と比較して見劣りしない力を持つチハとは最早チハとは名ばかりの別物ではないか。

一体どれほどの強化が施されたチハなのか、提督には全く想像がつかなかった。

 

「ふふ、良い顔ね。だからねー、当然海軍に派遣されているあきつ丸とかも陸軍に所属しているあきつ丸と比べたら大分違うのよ」

 

「ほう……。じゃぁ陸軍のあきつ丸もチハ同様に?」

 

「そう、海軍に派遣してるあきつ丸は実はアレ、かなり能力落とした状態なんだよね。勿論あきつ丸はその事に対して一切文句も言わないし、不満も感じない。何故ならあの子たちはあくまで“海軍のあきつ丸”として忠哲君たち提督を手伝いに来たという自覚を持ってるから」

 

「……真面目なんだな。彼女たちは」

 

「そうね。元が兵器だからというのもあるかもしれないけど、あの娘たちにとっては姿は違ってももう一度武器として軍の役に立てることが何よりの、至上の喜びであり誉なのよ」

 

「……」

 

自分が今も艦娘達に対して持っている複雑な思いを陸軍の娘たちに対しても持ったのだろう。

提督は目を瞑って苦悩するような顔をする。

要はそんな提督の肩をそっと抱き寄せて優しい声で言った。

 

「勿論、そんなあの娘たちの固定価値観を変化させて人間と兵器の垣根を越えた絆を芽生えさせるのも、指揮官である提督の力量とも言えるんだけどね」

 

「……要s」

 

「さん、は付けて欲しくないな」

 

「……要」

 

「うん。やっぱりね、あたし。忠哲君の事が大好きだよ」

 

チュッ

 

要は満面の笑顔で頬を染めてそんな事を言ったかと思うと、おもむろにそのまま自然のような動作で提督にキスをした。

 

「……」

 

提督はそれを黙って受け入れ、またキスをした要もその時、彼と唇を交わした喜びを感じながらもある別の事を考えていた。

 

(……やっぱり諦められないよ。軍に、戻ろうかな……。今度は海軍に……)




帰郷編のネタというか話はまだもう少しあるんですよね。
あと5話くらいかな。
何とか今月中に完遂したいですね。


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第11話 「寝起き」

実家での騒動がひと段落し、提督はようやく一息ついてその日は休む事が出来ました。
色々疲れが溜まっていた事もあってその日は完全に熟睡。
寝ている間に誰かが布団に忍び込んでいても分る筈もなく……。

*一部登場人物の個人名が出てきます


モゾッ

 

「……」ピクッ

 

早朝、提督は布団の中に違和感を感じて早々に目を覚ました。

自分の腰に何かが引っ付いている。

 

「……」ムクッ

 

起き上がってみてみると、ちょうど腰から下の辺りの掛布団が不自然に盛り上がっていました。

 

「……」

 

半ば予想は着いていたが、一応念の為状況を確認する為に提督は布団をめくった。

そこには……。

 

「すー……ぅ……に……」

 

案の定、丸くなった龍鳳が自分の腰に抱き付いて寝ていた。

 

「……」

 

提督は軽く溜息を付くと、龍鳳を起こさない様にゆっくりとした動作で彼女を自分の体から引き剥がそうとした。

だがその時――

 

 

ぐっ

 

「?」

 

布団をめくったのとは別の腕が何か重りが着いたように動かない事に提督は気付いた。

 

「……」

 

提督は恐る恐るといった様子で動かない腕の方を見た。

するとそこには……。

 

 

「ん……たいさ……」

 

「……」

 

自分の腕に抱き付くようにして寝ている秋月がいた。

 

 

「あら、おはよう」

 

一番見られたくないところを見られてしまった。

通常なら焦るところだが、提督が状況を把握する前に掛けられたその声は、幸運な事に彼の母親だった。

 

「母さん……」

 

「龍鳳ちゃんも秋月ちゃんもね、あんたが起きる前のずっと早い朝に布団に潜り込んだみたいよ」

 

「潜り込んだみたいって、母さんはじゃあ二人が動いた事に気付いたのか」

 

「まぁねー」

 

「……確かに二人ともまだ子供だけどさ、だけど俺の年齢も考えれば普通はそこで止めるとこじゃ?」

 

「あんたがそんな事するわけないでしょー」

 

「……」

 

「ほぉら、起きたんならさっさと顔洗わんね。龍鳳ちゃんは起きるまでそのまままでいいから」

 

「ああ。……あ?」

 

母の言葉に提督は疑問を覚えた。

何故母は自分に絡んで寝ている二人の内龍鳳の事だけを言ったのだろう。

その答えは、提督が再び秋月が抱き付いている腕の方を見ると直ぐに解った。

 

「…………っ」

 

秋月が真っ赤な顔で腕に抱き付いたまま自分を見つめていた。

あまりにも動揺して恥ずかしさから提督の腕から離れる事にすら気が回らないようだった。

 

「秋月、落ち着け。俺はどうもおm」

 

「忠哲っ」

 

母の注意に提督は直ぐに言い掛けた言葉を途中で飲み込んだ。

どうやら今のはデリカシーに欠けるところだったみたいだ。

 

「秋月……おはよう」

 

提督は努めて冷静に、秋月をそれ以上動揺させない様に彼女の頭に手を置いて撫でながら朝の挨拶をした。

 

「あ……あの、た……い……。あ、ちが、た、ただて……てっ」

 

「大丈夫落ち着け。俺は怒ってないから。だからほら、先ずは挨拶だ」

 

「あ、は、はい! お、おはよ……」プシュー

 

「……」

 

羞恥と動揺でついに挨拶の途中で顔を赤くしたまま気絶してしまった秋月を見ながら、提督は何故こんなにウブなのに彼女がこんな大胆な行動をとれたのか不思議に思った。

 

「あはは」

 

その様子を一通り眺めていたはなえは堪え切れず笑った。

 

 

 

「……なるほど。龍鳳が布団から出るのに気付いて着いて行ったら」

 

「自分も退けに退けなくなんだね」

 

「……はい」

 

朝食の場、話を聞いて事情を理解した鐸と要の確認に、龍鳳はご飯を運ぶ箸の動きもぎこちない様子でションボリと頷いた。

 

因みに今この場に提督はいない。

起き上がろうとした時に腰に抱き付いていた龍鳳がどうしても離れなかった為、抱き上げる事もできずに手だてなく項垂れていたところを運悪く父親に見つかり、また謂れのない罪で説教を受けている。

 

 

「龍鳳もそうだけど秋月、あなたも意外に大胆なのね」

 

「……っ」カァ

 

鐸の指摘に再び真っ赤になる秋月を面白そうに見ていた要がふとある事に気付いて誰にともなく訊いた。

 

「あれ? そういえば大和さんは?」

 

「大和なら二人に先手を取られたショックで……ほら、そこの庭の隅でいじけているわ」

 

「え?」

 

鐸の言葉が一瞬理解できず、要は唖然とした顔をしたが、彼女が指した方向を見ると確かに大和が暗い雰囲気を纏って庭の隅にしゃがみ込んでいた。

雨も降ってないのに何故か傘までさして地面のののじを掻きながら蟻と戯れているようだ。

 

「……ねぇ」

 

大和を見たまま呆然とした声で要は鐸に訊いた。

 

「うん?」

 

「あの人……あの子って“戦艦大和”なんだよね?」

 

「まぁ……ね」

 

「いや、陸軍の子も例外じゃないと思うけどさ。艦娘ってそんなに指揮下に入る提督によって元の気性って変わるものなの?」

 

「それはもう。例えば、本部の総副司令、名誉中将の中老なんて言われてる人の専属艦も大和なんだけど、あの子と比べたらこっちの子は大分子供っぽ……柔軟な感じかしら」

 

「へぇ……」

 

「第二司令官の上級大将、この人も大老なんて呼ばれてるけど。その人の麾下の艦娘ともなると、戦艦から駆逐艦に至るまで全員質実剛健って感じよ」

 

「そうなんだ。本当に司令官によって大分変るんだね」

 

「まぁね」

 

「ね」

 

「うん?」

 

「周防さんの艦娘はどうなの? 専属の子とか」

 

「私の……?」

 

要の問い掛けに鐸は口元に手を当てて本部に置いてきた武蔵の事を思い出した。

 

「……」

 

「? どうかした?」

 

なかなか答えずに考える顔をしていた鐸に要が不味い事を聞いたのではと、申し訳なさそうな声で言った。

その声に我に返った鐸は、苦笑して手を振りながらこう答えた。

 

「ああ、ごめんなさい。なんか私のところの武蔵も気性はちょっとあの子に似ていたような気がしたから」

 

 

 

~日本帝国海軍軍令部(海軍本部)

 

「ぶぇっっくしゅ!!」

 

「きゃぁ! ちょっと何をするんですか武蔵!」

 

「ああ、悪い悪い何か急に……」

 

「もぉ……気を付つけてよぉ……」(閣下に会う前に着替えないと)

 

「いや、本当に申し訳ない。ん……」ジッ

 

「……? な、何ですか? なに……?」タジッ

 

武蔵が急に黙って自分を見つめてきたので大和は怪訝な顔をする。

心なしか何故か嫌な予感がした。

 

「いや、うちの提督が留守でちょっと寂しくてな。お前の胸を見てたら……」

 

「撃ちますよ!?」

 

自分の貞操は絶対に閣下に捧げると決めていた大和は、胸を守るように抱き締めながら久しぶりに焦った声を出した。




いやぁ……まぁ何というか。
すいません、頑張りますorz


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第12話 「クリスマス①」

深海棲艦と大佐不在の鎮守府のクリスマスの様子。



「じーんべーじーんぐべー♪ すーながーる♪」

 

「すーずのりーむずーにひかーりわーがまー♪」

 

キャッキャッ

 

レ級とヲ級が何やら妙な歌詞を口ずさみながらはしゃいでいた。

その様子を冷めた目で見ていたタ級の傍らで、鬼姫は逆に興味深そうに眺めながら言った。

 

「……レ級達は何を歌っている?」

 

「どうもクリスマスとかいう人間の祭日を祝う歌らしいわ」

 

「良い音色……私も楽しくなるなぁ」ニコニコ

 

歌詞は元々崩壊していたので意味は解らなかったが、その音色からは楽しげな雰囲気は伝わるらしい。

ル級はレ級達の歌を嬉しそうに聴いていた。

 

「クリスマスね……。そういえば去年も歌っていたような気がするわね」

 

「ええ。あの時はレ級がサンなんとかをやるって言って聞かなくて……」

 

「私、トナカイとかいう動物をやらされたの……。ただレ級にお馬さんにされただけだったけど……」ク

 

「姫、タ級にル級! 皆も歌おうよ!」

 

「レ級、今年は誰がサンタするの?」

 

「わ、わた……!」

 

今年もトナカイにされそうな予感がしたのだろう。

危機を回避する為にル級は自らサンタに立候補したようとしたが……。

 

「あ、ル級は今年もトナカイお願いね!」

 

「え……ふぇぇ……?」グス

 

「ル級哀れな……」

 

「今年は姫がサンタやって!」

 

「えっ」

 

「……」(あーあ、余裕ぶってるから……)

 

「タ級でもいいよ!」

 

「嫌よ」キッパリ

 

「「えーー」」ブーブー

 

「レ級、私今年はトナカイは……」

 

「私もだ。何故私がサンタなんてわけの分からないものを……」

 

「でももうタ級いないし」

 

「代わりいないもんねー」

 

「「えっ」」

 

ヒュー……

 

二人が振り向いた先には既にタ級の影はなかった。

 

「「……」」

 

「さぁクリスマスだー♪」

 

「やっほー、サンタサンタぁ♪」

 

「ふぇぇ……もう私トナカイ嫌だよぉ……」

 

「あ、ちょっ、何をするの!? え、髭? これ付けるの? なんで?」

 

ヒョコッ

 

「……」(暫く戻らない方がよさそうね。……大佐の所でもいこうかな)

 

 

 

一方その頃、大佐不在の基地は……。

 

赤城「さぁ、大佐が留守の間は私たちがしっかりここを守りますよ!」

 

金剛「イェース! ちょっと残念だけど、christamas は大佐が帰ってからネ。それまでは皆で力を合わせて頑張りまショーぉ!」

 

電「が、がんばるのです!」

 

麻耶「応っ! 任せとけ!」(大佐、頼んだアレちゃんと買ってきてくれるかな……)

 

ハチ「了解しました。ハっちゃんの腕の見せ所ですね」

 

長良「まっかせといてぇ! さぁやるわよー!」

 

日向「やる気になるのもいいが、空回りしないようにな」

 

熊野「安心してくださいまし! この熊野が皆さんの気を常に引き締めて見せますわ!」

 

明石「一人だけジャージ姿な上に寝癖だらけで言われても信じられないんですが……」

 

天龍「ああ、昨日徹夜で一緒に麻雀してたから寝坊したんだろ」

 

曙「な、なんか早速不安なんだけど……」

 

ワーワー

 

 

と、まぁこんな感じで提督不在の間その責務を果たしてみせようと皆、意気軒昂の様子だった。

 

 

「ふぅ……」

 

「あら? 今日は大佐はいないの?」

 

一人離れて海を見つめていた加賀に誰かが声を掛けてきた。

振り向いた加賀は声の主を確認すると、僅かに目を細めて声低く応えた。

 

「タ級さん……」

 

「大丈夫。約束はちゃんと守るわ」

 

タ級の問いには答えず目で警戒する加賀に、タ級は両手を上げてわざと大袈裟に敵対の意思が無い事を改めて示した。

当然、ここに姿を現した時点で武装も解除していた。

 

「……ん、ごめんなさいね。まだ堂々とあなたたちと話すのには慣れてないの」

 

「気にする事ないわ。それは当然よ」

 

「……大佐に会いに来たのですか?」

 

「えっ」

 

「大佐に会いたいからここに来たのでは?」

 

予想外の問いかけにタ級は珍しくしどろもどろになる。

 

「あ……ちが……違うわ。ちょっとうちが騒がしかったからここに逃げてきただけで、別に大佐個人に会いに来たわけじゃないわ」

 

「……本当に?」ジッ

 

「え、ええ」

 

「じゃぁタ級さんは大佐に別に特別な好意を持ってはいないと判断していいんですね?」

 

「えっ」

 

「え?」

 

「なんでそれだけでそうな……。あ、いえ、うん。そうよ」

 

「……大佐は優しい方です。好意を寄せる相手が例え深海棲艦だったとしても、それが純粋な思いなら無碍に拒否はしないでしょう」

 

「それ、ほんt……あっ」

 

「……」ジー

 

「……」(参った。これ絶対レ級達を見てきたせいで私も当てられた)

 

「好き、なんですよね?」

 

「……分からないわ。でも嫌いじゃないのは確か」

 

「……まぁいいです」フイ

 

「どれくらい大佐留守なの?」

 

「……そんなに長くはないです」

 

「そう」(口ぶりから察するに一週間くらいかしら)

 

「寂しいのね」

 

「……凄く」ポツリ

 

「えっ」

 

「何ですか?」

 

意外な顔で驚くタ級に加賀が即座に反応する。

 

「あ、いえ。その、凄くストレートなのね」

 

「良い事を教えてあげましょう。ここでは恋に対して奥手だと置いて行かれるだけですよ」

 

「そ、そう……」

 

タ級は視線を逸らしながら考えるそぶりをする。

その様子は加賀の言葉に対して満更でもない反応に見えた。

 

「……ふぅ」

 

「早く帰って来るといいわね」

 

「ええ、そうね。本当にそう思うわ」

 

この基地の中ではかなり冷静な性格の方に見えるが、実は根は案外一番子供みたいに純粋じゃなのでは。

短く溜息を吐く加賀の横顔を見ながらタ級はそんな事を思うのであった。

 




レ級が楽しげにクリスマスを(意味も解らずに)はしゃぐ様子、脳内再生余裕でした。
こんな感じで、提督の帰郷の話は少し置いておいて各登場人物のクリスマスの過ごし方を少し書こうと思っています。


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第13話 「クリスマス②」

クリスマスの過ごし方。
T督と丁督の場合。


「むっらっくもー今日はクッリスマッスだよー♪」スリスリ

 

提督は叢雲を見るなり幸せが溢れんばかりの笑顔で叢雲を後ろから抱き締めて頬ずりをしてきた。

 

「もう、分かってるわよ。でも今は執務中なんだから楽しむのは後だからね」ギュッ

 

一応窘めるようなことを言いながらも明らかに嬉しそうな顔で叢雲は抱き締めている提督の手を胸の前で握り返す。

 

「あ、ごめんね。年に一回しかないクリスマスだからさ。早く君と楽しみたくて」ニギニギ、フニ

 

「提督……。あっ、ん……だっ、ダメだからね。後なんだから」

 

「ああ、本当にごめんね。急かすつもりはなかったんだ。あーでも楽しみだなぁ」

 

「私も楽しみよ。その……プレゼント、もね」

 

「え?」

 

「あ、ううん」(ちょっと図々しかったかな)

 

「なんてね。勿論用意してるよ」

 

提督はそう言うと軽く自分の胸を叩いて見せた

 

 

「あ……私もよ」

 

叢雲は背後からその振動を感じ、提督への感謝と愛情からより深く彼の手を握り締めた。

自分の胸の前で提督の手を握っている為、当然彼は胸の感触を感じているわけだが、そのくらいの事は彼らにとってはお互いの愛を確認し合うための軽いスキンシップでしかなかった。

故にその時の二人には淫らな感情が沸上がる事など皆無であり、幸せそうお互い見つめ合うだけに終始するのであった。

 

「ありがとう。期待してるよ」

 

「私も、期待してるから……ね」

 

キラキラ

 

 

「……」

 

榛名「相変わらずですね……」

 

瑞鳳「ズルい……」

 

伊勢「いつもこんなの見せつけられてたら嫉妬するのも仕方ないよね……」

 

龍田「そうねぇ……今日はクリスマスだしねぇ。特に夜の事なんて考えるとなんかもう、いろいろと殺りたくなるわよねぇ……」ギラッ

 

望月「龍田さん殺気立ち過ぎー。でもムカつくー、提督かまえー。叢雲ちょっと譲れ―」

 

那智「……ふん」プイ

 

龍驤「まぁ、一応提督さんからはプレゼントもろてるんやけどなぁ。しかも全員が欲しい物を個別に」

 

扶桑「でも、それだけじゃ……。いえ、形ではない物が欲しいのよね……」

 

名取「む、無理ですよ。だって提督さん本当に叢雲さんしか基本見ないし……」

 

磯風「……任せておけ」

 

青葉「え? あ、磯風さん何をする気です!?」

 

 

トコトコ

 

「提督!」

 

「ん? ああ、磯風どうしたんだい?」

 

「磯風?」

 

「提督、そして叢雲に一つ頼みがある」

 

「頼み? 何かな?」

 

「言って御覧なさい」

 

「今日はクリスマスだ。だから、な。んんっ、平等にとは言わない。だけど今日くらい少しは私達に構って欲しい!」ドーン

 

 

黒潮「い、言いおったぁ!!」

 

 

磯風の宣言のようなお願いに提督と叢雲はきょとんとして黙って彼女を暫く見つめていた。

気まずい沈黙が磯風とその成り行きを見守っていた者たちを包む。

 

「……」

 

磯風は黙って平然を装ってはいたものの、内心はかなり緊張していた。

果たして彼らは自分の願いに対してどう応えるのか。

 

「「……」」

 

提督と叢雲はまだ黙って磯風をみつめていたが、やがて顔を見合わせると……。

 

「叢雲」

 

「ん?」

 

「今日はクリスマスだね」

 

「そうね」

 

「なら、一日中とまで言わなければ今日くらいは……?」

 

「ふふふ、遠慮はする必要はないわ。こういう時くらい皆で楽しまないと損じゃない」

 

「……! そ、それでは!」

 

機体に満ちた目で磯風は提督と叢雲を見る。

 

「ああ、分かったよ。叢雲も許してくれたし、提督としても僕は君たちの期待に応えたい」

 

オオオ!

 

「皆でクリスマスを楽しもう! それとええっと……す、スキンシップもあまり過剰なやつじゃなければ特別に許可するよ!」

 

キャー♪

 

「……妬けるけど、許すわ。あと、聞いてね。別に今日だけじゃない。これからは、さっき提督が言った通り目に余る程じゃなければ私の目を気にしなくていいわ」

 

金剛「そ、それは本当デスカ!?」

 

信じられない宣言に色めく群衆の中から早速金剛が顔を紅潮させて聞いてきた。

 

「二言はないわ。ね、提督?」

 

「叢雲がそれでいいなら。僕としても皆に喜んでもらえるのは嬉しいしね」

 

テイトクー!!

 

歓喜の声が木霊し、幸福が満ち溢れようとしている部屋の中で提督は改めて自分を今まで支えてきてくれた部方たちを眺めながら言った。

 

「さぁ皆、パーティーをしよう!」

 

 

 

そんな微笑ましい光景が広がらんとしていた鎮守府の一方、丁督の鎮守府では……。

 

 

長門「提督、今日はクリスマスだな」ヌギ

 

「ん? ああ、そうだな。うーさぶっ。……つーか、寒いのによく脱ぐな」

 

既に上着を脱ぎかけている長門を前に、提督はどこか気だるげな様子だった。

 

加賀「子供を……こほん、体が火照って仕方がないのです」ヌギ

 

「それは年中じゃねーか」

 

大井「ねぇ、提督ぅ……。し・ま・しょ?」ヌギ

 

発情真っ最中の加賀と大井を前にしても提督の態度は特に変わる事もなく、すまし顔でこう言ってきた。

 

「何も外で全員でスることはないんじゃねーか?」

 

翔鶴「今日はクリスマスじゃないですか。寒空の下で性夜を楽しむのも悪くないと思いますよ?」ヌギ

 

「字、なんか間違ってねーか?」

 

金剛「テ・イ・ト・ク、イジワルしないデ?」ハラリ

 

「お前もう全裸かよ。つーかな……」

 

磯風「どうした?」フニフニ

 

半裸から全裸、それどころか既に露出した肌を彼に押し付けている者がいる中、それでもやはり提督の態度は変わる事なく、更にこう続けてきた。

 

「磯風、ちょっと胸から手ぇ離せ。……あのな。この際だから一つお前達に教えておくが」

 

日向「まさかここまできてお預けとか言わないよな?」シュルッ

 

「いや、それはないけどな。ただな。一つ教えてやりたいのはなんでクリスマスだからってそう熱くなるんだよ? 」

 

加賀「熱くなるのがいけないのですか?」プニプニ

 

「まだ話してる途中だ。押し付けんな。だからな? クリスマスって言ったらアレだろ? 神の生誕祭だろ? そんな日にこんな気分になっちまうなんてアジアの中でも日本とかくらいしかないんじゃねーか?」

 

長門「ふむ……つまり提督は本来の意味を知っているからそういう気分になれないと?」

 

「クリスマスっていう言葉さえなけりゃな。俺からすれば愛し合うのにいちいちそれを理由にするのが滑稽なんだよ。俺、宗教は仏教とか神道とか、そっちの方がだから」

 

雷「仏教と神道は全然違うわよ司令官」チュッ

 

「……ちゅ、分かってるって。だから俺が言いたいのはな。そんなの理由いらねーから欲しいときははっきり言ってくれって話だ」

 

潮「え、えーと……でも、なんていうかその……。ん、ぺろっ」

 

対照的な身体の幼女に両サイドから責められながら、提督は雷の接吻に応えると同時に潮のつたない奉仕の裏に隠れた彼女の考えを見抜いた。

 

「んあ? プレゼントか? それならちゃんと毎年やるよ。ほれっ」ポーイ

 

翔鶴「わぁ♪」

 

「プレゼントはクリスマスでもいいが、愛情は求めるのにいちいち理由つけんな」

 

金剛「提督ぅー♪」

 

「で、プレゼントと俺からの愛情、どっちが欲しい?」ニッ




丁督達はこの後無茶苦茶s……。

クリスマス終わりましたね。
なんかこっちはリアルの仕事の所為で年の瀬という印象が強いのですが。
ケーキどころか焼き鳥片手に酒飲んでたし……。
美味しかったらいいけど……。


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第×1話 「ワンコ」

提督と比叡がケッコンしました。
という事で、比叡は早速提督に甘えだします。
その様子はまごうこと無く、主人に甘える子犬そのものでした……。


「大佐! ケッコンありがとうございます!」

 

「いや、なんかケッコンしてもらってお礼を言われるのは男として複雑な気持ちなんだが……」

 

「だってだって、やっと大佐とケッコンできたんだもん。最初は金剛お姉様だったのは当然として、でもやっぱり妹の霧島に先を越されてしまったのは正直きになっていましたから」

 

「そういうものか?」

 

「はい!」

 

「ふむ」

 

「これでわたしは身も心も大佐の……えへへ、大佐のものですからね」テレ

 

「俺はもの扱いする気はないぞ」

 

「分かってます。わたしがそう言いたいだけですから。……ふふふ、えへへぇ♪」

 

「……」(犬だったら尻尾が切れそうなくらい振ってそうだな)

 

「ねぇ、大佐」

 

「ん?」

 

「撫でてください」ズイ

 

「ん? ああ……」ナデナデ

 

「ん……ん~♪」スリスリ

 

「……金剛にベッタリだったお前とは思えないな」

 

「お姉様はお姉様、大佐は大佐です!」

 

「そういうものか?」

 

「はい!」

 

「そうか……」

 

「手」

 

「ん?」

 

「今度は頭だけじゃなくてその……い、犬を可愛がるように全体的に撫でてて欲しいです……」カァ

 

「……ほら、膝に乗れ」ポン

 

提督は仕事用の椅子からソファーに座り直すと膝をポンと叩いた。

 

「は、はい!」

 

比叡はそれを見て嬉しそうにソファーへと駆け寄りその上に乗ると、横になりながら上半身を提督の膝に預けた。

 

 

「……」ナデナデ

 

「ん~~、んふふ♪」スリスリ

 

「大佐ぁ……」

 

「うん?」

 

「わたし、大佐とケッコンできて本当に嬉しいです」

 

「そうか? 俺はお前以外の奴ともケッコンしてる甲斐性なしだぞ?」

 

「そんな事ありませんよ! これは皆が同意して望んだ事ですから」

 

「……まぁそう言ってもらえると俺も多少は罪悪感が軽くなって気が楽になるが」

 

「罪悪感なんて感じなくていいんですよ。大佐は、こうしてわたしたちを迎えてくれているだけで、十分にわたしたちの期待に応え、満たしてくれていますから」

 

「比叡……。ありがとうな」

 

「お礼なんて! あ、でもそういう気持ちがあるならもう少し甘えさせてください……なんて。えへへ」

 

「ふっ……」ナデナデ

 

「~~♪」

 

 

 

「……」

 

「榛名、何してるネ?」

 

執務室の前でじっと動かずに何かを覗いている様子の榛名を目にとめた金剛が声を掛ける。

それに対して榛名はそっけない態度でこう返した。

 

「別に……」

 

「っ! お、お姉様ダメです!」ヒソ

 

金剛と一緒にいた霧島が榛名の発言から何かを察したのか焦った様子で姉に注意を促す。

 

「エ?」

 

「榛名は今とても黒い状態です!」ヒソ

 

「あ……」

 

「……わ、私だってもう直ぐ、もう直ぐだもん……」ブツブツ

 

榛名は執務室を除きながら周りが見えないかのように独り言を言っていた。

 

「は、榛名。そう気にする事ないネ! だって榛名は今レベルは98! もう直ぐじゃナイ!」

 

「……」(お姉様ダメ! そのくらいのフォロオーじゃ……)

 

「……でも、霧島に先を越されてしまいました……」

 

「ファッ? い、イヤ! 姉妹同士でそういう事気にしちゃダメよ! jealousy は姉妹以外にすべきネ!」

 

「お姉様、それはそれでひどい論理です……」(でも、榛名の嫉妬の矛先を変えようとしてくれた事には感謝です)

 

「……姉妹以外ならいいんですか……?」

 

「え? あ……」

 

「姉妹以外なら嫉妬しても……いいって言いましたよね?」

 

「え、や、ちょっ……そういう意味じゃ……」アセアセ

 

「は、榛名。こう考えるのよ。楽しみが先に延びただけだって」

 

「……先に?」

 

「そう。姉妹の中で最後にケッコンした分、自分は思いっきり大佐に甘えるんだって」

 

「最後に……我慢した分……」

 

(我慢とは言ってなかったような……)

 

(最早、願望が欲望となって漏れている……。これは早々に大佐に榛名とケッコンしてもらわないと……!)

 

「そうですよね。お姉様、ごめんなさい。榛名、ちょっと大人げなかったです」ニコ

 

「榛名……! うウン、いいのよ。お姉ちゃんの話を解ってくれれば、それでい――」

 

「それじゃぁ、榛名が大佐と結婚したら、その日はお姉様達や霧島は絶対に榛名の視界に入らないで下さいね!」

 

「 」

 

「え?」

 

「榛名、我慢した分、思いっきり大佐に甘えたいんです。だから、その間は余計な事を……余計なものを……感じたくないんです」ニコ

 

「か、感じ? feel もだめナノ?」

 

「はい。完全に大佐と二人っきりがいいです! だから気配とかもできれば……」テレ

 

「あ……アハ、あはは……。う、ウン。お姉ちゃん頑張るヨ! ま、任せておいテ!」

 

「え? ま、任せてってお姉様何を……?」

 

金剛の突然動揺した声で何かを請け負った発言をしたので、霧島はその真意を確かめようとした。

 

「霧島、榛名がケッコンしたらその間は、全力でここに誰も近づかないように防衛するワヨ!」

 

「お姉様!!」パァッ

 

「は、はぁ!? そ、そんな無茶な!? だ、だってもし非常事態とかで直ぐに報告しないいけない事があったら……」

 

「お姉様達でなんとかしてください」ニコ

 

「 」

 

「お、オッケーヨ! お、お姉ちゃん達に任せておいテ!」ナキワライ

 

「霧島、そう心配しなくても大丈夫よ。だって、もしお姉様達の手にも終えなくて、敵が大佐と私の邪魔をするような事があれば、その時は……」

 

「は、榛名?」

 

「……」ゴク

 

「そんな不貞な人はぜっ…………たいに許しませんから♪」ニコ

 

「ヒィ!?」(榛名怖いよぉ!)ブァッ

 

「……!」(大佐助けて……)グス

 

 

 

「……? 何か外が騒がしいな」

 

「そうですか? わたしは別に気になりませんけど? ふにゃぁ……♪」スリスリ




ダメです。
忙しいです。
そして、続きの話を考えている内に日常の話が浮かんだらそっちの事しか考えられなくなってしまいました。
なので、この話は正式なナンバリングが決まるまではこんな形にしようと思います。
筆者の暴挙を見逃してください(土下座)


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第×2話 「心待ち」(R-15)

足柄が改二になりました。

その日、彼女はそれを伝える為に提督のもとを訪れたのですが、何故かなかなか伝えずに普通の晩酌を続けています。

*明らかな性的描写あり


「……」ソワソワ

 

「足柄、どうした?」

 

グラスに入った酒を飲むでもなく何かを気にしている様でそわそわする足柄に提督は気付いた。

 

「えっ、う、うん……。あの、ね」ソワソワ

 

「?」

 

「ど、どう?」ジッ

 

「ん? 何がだ?」

 

「えっと、ほら、私改二になったじゃない。だから、さ?」

 

「……ああ、悪い。お前だと自分から自慢してきそうな印象があるから言われるまで気付かなかった」

 

「や、やっぱり? い、一応言おうとしたのよ? でも、ほら、なんかそういうのって恥ずかしいじゃない? 大人げないっていうか……」

 

足柄はそう言って照れくさそうに眼を逸らした。

 

「足柄……ふっ、ははは」

 

「な、なに?」

 

「いや、お前は本当に初めて会った頃と比べて大人しく、いや落ち着いたか? そんな感じになったな」

 

「あ……。や、やめてよ。自分で言うのもなんだけどその時の自分を思い出すのは結構恥ずかしいんだから」

 

「そうか? でも他の所にいるお前は大抵ああいう感じで自信に満ちているか、好戦的みたいだが?」

 

「それは私でも知ってるわよ。でもここの、『私』は違うの! ここの私はその……お、大人なんだから……」

 

「足柄……。ふっ、本当にお前は……」

 

「もう、いいじゃないその事は。で、さ。どう?」ジッ

 

「ん? ああ、そうだな……」

 

「……」ドキドキ

 

「うん。性能抜きにしてもその、月並みな言い方だが素敵だ。魅力的になったぞ」

 

「ほ、本当!?」パァッ

 

「ああ、本当だ」

 

「そ、そう。そう……ふふ♪」

 

「……」(嬉しそうだな)

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「どの辺が魅力的になった?」

 

「ん? それはもう全体的にだ。お前が自分から何も言わなくても全身から自信と頼もしさが伝わってくるぞ」

 

「……それだけ?」

 

「ん? 足柄……?」

 

自分なりに心から褒めたつもりだったので、それに対してあまり満足そうな顔をせずに詰め寄る足柄に提督は不思議そうな顔をする。

 

「ねぇ、大佐。それだけ?」ジッ

 

「……きれいになった」

 

「っ! ありがとう!」ダキッ

 

「っと」

 

「その言葉、待ってたのよ♪」スリスリ

 

「……やれやれ、俺もまだ女の扱いがなってなかったな。すまなかった」

 

「ううん。気付けただけ全然マシ! 合格よ」

 

「そうか。それは良かった」

 

「……ね」

 

「ん?」

 

「記念」

 

「……」

 

「記念、欲しいな?」ジッ

 

提督の胸から顔をあげた足柄の瞳は濡れており、その目は女として提督を求めていた。

 

提督は時計を見た。

時刻はタイミングを見ていたかのように深夜を既に回っており、基地は少なくとも自分が感じる限り夜の静けさを提督に伝えていた。

 

「……分かった。ちゅっ」

 

「あ……♪ ん……ちゅ……」

 

承諾のキスに足柄は喜びと安堵のキスを返す。

 

「……どうする?」

 

足柄の服に手をかけながら提督は彼女に自分でするかを聞いてきた。

 

「……今日は、大佐にお願いしよう、かな」

 

「分かった」スルッ

 

自分が愛する男に肌を晒されていく過程を足柄は何とも言えない、幸福感と、羞恥に快感を憶え、恍惚とした表情をする。

 

「ん……。はぁ……」

 

「ねぇ」

 

「うん?」

 

「上は、ズラすだけにして欲しい……」

 

「外さない方がいいのか?」

 

「その内に外れると思うから。だからそれまではその方がなんか……」カァ

 

「……お前、本当に良い女に、魅力的になったな」スッ

 

「あっ……ん」

 

足柄の意図を理解した提督は彼女に言われた通りにした。

 

「はぁ……」(ちょっと久しぶりだから……すごく敏感かも……)

 

提督によって晒された肌に、まだ触れさえされていないにも関わらずえも言えぬ快感を足柄は感じ、性感は高まる一方だった。

 

「もう感じているのか……」

 

「やっ……言わ、ない……ああんっ」

 

「……ん」ムニ

 

「んっ、ああっ、あっ。はぁ……」

 

快感に喘ぎながら足柄は片手をそっと提督へ向けた。

 

ギュッ

 

「あ……。大佐も……感じ……あっ、るじゃない……」ピクッ

 

「お前の様な女を抱いて感じない男はいないだろう。ちゅ……」

 

「はぁ……はぁ……。大佐、たい……ああっ……」ピクピクッ

 

「……」

 

提督は足柄のある変化に気付き、刺激が十分にいきわたっている事を確認した。

 

(かなり感じているな。もうこれは……)

 

「下も、脱がすか?」

 

「あ、待って」

 

「?」

 

「下は今……から自分で脱ぐから。今日はそのま……前にあなたのをしたいの……」

 

「分かった。頼む」

 

欲情した目で自分を見上げる足柄が何をしたいの理解した提督は、彼女の胸から一旦離れるとベッドに腰を下ろした。

 

「ん……ちょっと待ってね」スルッ

 

足柄は跪くと腰を下ろした提督にゆっくりと近づいて行った。

そして……。

 

「きゃっ、は……はぁぁ……♪」(凄い……)

 

「……っ」

 

「それじゃ……始めるね? ん……ちゅ」

 

「……あ……しが……ら……。ふぅ……く……ぁ」

 

「ひもひぃい?」

 

「ああ……」

 

「ん……よはっあ……ふぅ……んぐ、ちゅぅ……」

 

……ッ、……ック

 

(……ん?)

 

いつの間にか足柄によるもの意外に別の音が響いていた。

提督が快感に耐えながら音のありかを確かめると、それは足柄が無意識に起こしていたものだった。

 

「足柄……もう、いい……」

 

「っぷぁ……はぁ……。もう、いいの? 私、まだやれるわよ? ううん、やり……たい、かも」

 

顔を赤くしながらそんなけなげな事を言う足柄に提督は指摘をした。

 

「いや、大丈夫だ。それより自分の手を見ろ」

 

「手? あ……」

 

提督に言われて自分の手を見た足柄は特にその指の部分を見て一気に顔を赤くさせた。

 

「無意識にするくらいもう我慢できなくなっていたみたいだな。今のお礼とは言わんが、そろそろ、いいか?」

 

「うん。来て大佐……。あっ……」

 

 

それから数時間後。

 

「ん……」モゾ

 

「……」

 

あれから幾多に及び行為に及んだ提督は、今は自分の腕の中で静かに寝息を立てる足柄寝顔を、その頭を優しく撫でながら静かに見つめていた。

 

(こいつもそうだが、重巡と軽巡の育成にもう少し力をいれてやりたいものだな)

 

提督がそんな事を考えていたときだった。

 

ぎゅっ

 

「ん?」

 

提督が手を握られる感覚に目を向けると、そこには足柄が自分の手をそっと握りながらある寝言を言っている光景があった。

 

「す……き……ゆび……コ……わ」

 

「……ふ、はは」(ケッコンの前に指輪を渡したらどんな顔をこいつはするだんろうな)

 

足柄のそんな愛らしい様子を見て微笑んだ提督はそんな事を考えたのであった。




今年最後の休みなので勢いよくいきたいですね。
足柄改二待ってました♪


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第×3話 「改めて」

足柄に続いて古鷹も改二になりました。
その報告の為に今度は彼女が提督の下を訪れるのですが……。


「大佐、古鷹改二になってきました! どうですか?」クルリ

 

「……ああ、古鷹か」

 

「え?」(え? なに? 今の間?)

 

「ああ、悪い。ちょっとボーっとしてただけだ」(言えるわけがない。一瞬古鷹の事を完全に忘れていたなんて)

 

「……」

 

「……」(え、なにこれ? 何だか凄く気まずい?)

 

何とも言えない雰囲気に包まれる中、古鷹は突如訪れた沈黙に早速混乱した。

 

(あ、そういえば私って大佐とあんまりちゃんと話した事がなかったかも。それで緊張しちゃってるのかも。あ、改めて考えると何を話せばいんだろう? 今日は良い天気ですね、とか?)

 

「……」(古鷹の奴、もしかして俺の失礼に気付いたか? なんか話難そうにしているし、やっぱりそうか?)

 

古鷹が混乱する一方で提督は提督で一人こんな感じの空回りをしていた。

 

「……」(取り敢えず煙草でも吸うか)

 

気分を取り直す為に提督が煙草に手を掛けようとした時だった。

それに気づいた古鷹が気を遣って火を付けようと彼に近寄ってきた。

 

「あ、タバコですか? 火、お着けしますよ」(これはチャンス! これを機に大佐と親しく……)

 

ゴトッ、バシャッ……

 

「あ」

 

「む」

 

焦って近づいた行動が祟ってしまい、古鷹は提督の机にあったサボテンの鉢を倒してしまった。

鉢に上の部分に敷き詰められていた小石が、勢いよく毀れて執務の途中だった書類の上に広がる。

 

「ご、ごめんなさい! す、直ぐに片付けますから!」

 

自分の不手際に青くなって謝罪しながら古鷹は急いで手で小石を集めて、机の上を掃除しようとする。

 

ビリッ

 

「あっ」

 

「……」

 

今度は勢い余って小石と一緒に書類も引きずってしまい隅の方を少し破ってしまった。

 

「……」

 

「古鷹き――」

 

『気にするな』と提督が言おうとした時だった。

 

「ふぇ……ぐす……」

 

提督と目が合った古鷹は目から涙を溢れさせて自分の不甲斐なさに今にも泣き出さんとしていた。

 

「いや、待て。大丈夫だ。大丈夫だから、な?」

 

「た……うわぁぁぁぁん。ごめ……ふぇぇぇぇん」

 

急いで宥めようとした努力もむなしく古鷹の涙腺にあったダムは決壊し、案の定大泣きしてしまった。

 

 

ガチャ

 

「何かありましたか?」

 

声を聞きつけた鳳翔が心配そうな顔で部屋に駆けつけてきた。

 

「鳳翔……」

 

「ふぇぇぇぇん」

 

「ああ、これは……」

 

部屋に入ってきた鳳翔の目には、困った顔で立ち尽くす提督と同じく立ったまま小さな紙の切れ端を握り締めて泣いている古鷹といった光景が飛び込んできた。

 

「鳳翔これはな……」

 

なんと説明したらいいのか考えあぐねていると言った様子の提督。

そんな彼の姿を見て鳳翔は、艦隊の母の異名に相応しい判断力で一瞬で状況を把握した。

 

「あ、大丈夫ですよ大佐。はい、古鷹さんも泣かないで。大佐は怒ってませんよ」ナデナデ

 

「う……ぐす……で……。えぐっ、でもぉ……」

 

「大丈夫。大丈夫ですよ。ね? 大佐?」

 

鳳翔の助け舟に心の中で最大の感謝を送りながら提督は即答した。

 

「勿論だ。古鷹、そんなに気にするな。確かにお前はミスをしてしまたっが、机は掃除すれば済むし、この書類だってコピーをすれば済む程度のものだ」

 

「……ひぐ……うっ……ぐす」

 

「ほら、古鷹さん。大佐もああ言ってますから。大丈夫ですよ?」ナデナデ

 

「鳳翔の言う通りだ。俺は全く気にしていない。いや、今はお前が泣き止んでくれることの方がきになる。だから、な? もう安心しろ」

 

「……」コク

 

未だに目には涙が滲むものの、古鷹は俯いて表情を見せない様にしながらも、小さく頷いた。

 

「……大丈夫そうですね。大佐、後はお任せしても?」

 

「ああ、大丈夫だ。鳳翔、本当に助かった」

 

「いえ、このくらい。それでは」

 

パタン

 

 

「……」

 

「……」

 

部屋にまた沈黙が訪れた。

しかし今度は、お互いに理由が分かっている沈黙だった。

 

「大佐……」

 

意外にも先程まで泣いていた古鷹から口を開いた。

 

「ん?」

 

「ごめんなさい……」

 

「ああ。分かった」

 

「本当に……」

 

「大丈夫だ、本当に。お前はこれ以上心配する事はない」

 

「……はい」

 

目に見えて落ち込んでいる古鷹をどう励ましたらいいのか。

少し悩んだ末に提督は結局は始まりに戻る事にした。

 

「古鷹」

 

「……っ、はい」

 

「改二おめでとう。良かったな」

 

「……大佐」

 

「こんな事くらいお前の活躍であっという間に忘れさせてくれ。期待しているぞ」ポン

 

「……はい!」(大佐、やっぱり良い人だ。うん……頑張ろう!)

 

こうしてその日起こったちょっとした事件は、何とかお互いの親交を温めるだけに落ち着いたのであった。

 

そしてその日の晩――

 

 

「たーいーさ、しっつれいしまーす!」

 

元気のよい声と共に古鷹の妹の加古が提督を訪ねてきた。

 

「なんだ加古、用か? もしかして姉の件か? あれはな――」

 

「ああ、いいよ。その事は分かってるから。今日来たのは別件、とは言わないけど直接関係はないよ」

 

「そうか。で、なんだ?」

 

「いやー、今まで大佐と古鷹ってほら、なんかすれ違いとか多かった所為かちょっと壁、みたいなものがあったじゃん? 今日の事でそれが完全になくなって良かったなぁって事を大佐に直接言いたくなってさ」

 

「……そう、か」

 

突然と言えば突然の申し出に提督は戸惑った声を出すばかりだった。

 

「あー、もうそんな顔しないでよ。妹として姉が提督と仲良くなったのが嬉しいってことを伝えたかっただけなんだから」

 

「……姉思いなんだな」

 

「まぁね!」

 

「それ以外は姉の方がしっかりしてる印象があるな」

 

「まぁn――ってちょっと!」

 

「はは、冗談だ」

 

「嘘だ」

 

「そう思うか?」

 

「うん」

 

「まぁ半分だな。もう半分は元気が良くて一緒にいると楽しい奴だと思っているぞ」

 

「え? むぅ……そんなんで懐柔されないんだからね」

 

「ほう、懐柔とは難しい言葉を知ってるんだな。偉いぞ」

 

「え? えへへ、ありが――って、ちょっとぉ!」

 

「ははは。まぁノリが良くて楽しい奴だとは思っている。これは本当だ」

 

「むぅ……じゃ、さ」

 

「うん?」

 

「撫でてよっ」

 

「は?」

 

急な申し出に提督は戸惑った声を発した。

 

「この基地では艦娘と提督が仲直りする時にその印に艦娘からは握手、提督からは頭を撫でて貰える決まりがあるんだよ」

 

「なんだそれは。俺はここの提督なのにそんな決まり初めて知ったぞ」

 

「そりゃ仕方ないよ。だって今思いついたんだもん」

 

「……」

 

「……」

 

「……なぁ」

 

「ん、なに?」

 

「その決まり。いや噂、広めるなよ?」

 

「じゃ、撫でて」

 

「……」

 

「……」

 

「……分かった。ほら」ポン、ナデナデ

 

「えへへー♪」ニコニコ

 

(なんか重巡にしては感じが駆逐艦に似てるな。フランと似たタイプなのかもな)

 

「うん、決めた」

 

「ん? 何をだ?」

 

過去は不意に宣言するような口調で言いだした。

 

「私も重巡同盟に加入しよっと」

 

「重巡同盟? なんだそれは?」

 

「大佐が好きな子の組合? みたいなやつ。別に重巡だけじゃないよ。艦種ごとに同盟があるんだ」

 

「なんだそれは……そんなもの知らなかったぞ」

 

「そりゃ本人を前にして堂々と言うものでもないしね」

 

「……まぁ、確かに。で、お前は口ぶりから察するにそれに入ってなかったようだが?」

 

「うん、そうだよ。別にわたしは大佐の事嫌ってはなかったけど、敷いて皆ほど強い好意を持ってたわけじゃなかったしね」

 

「なら入らなくていいだろ」

 

「ちょ、自分に好意を寄せる女の子の同盟に目の前でわたしが入るって言ってるのにそんな事普通言っちゃう!?」

 

「なんかあれだ。そういうのの人数が増えると疲れる気がする」

 

「理由があまりにもあんまりだぁ!?」

 

「……」

 

「……」

 

「……で、入るのか?」

 

「まぁね。わたしもなんかさっきまでのやりとりも含めて大佐の事気に入っちゃったし」

 

(それでいいのか? あまりにも安直じゃないか?)

 

「……そうか」

 

「え? なんでそんな残念そうな顔をするの?」

 

「いや、なんだかお前に悪い道に引き入れてしまった気がしてな」

 

「だからなんでそういう事を本人の前で言うの!?」




古鷹も改二になりました。
やったね♪

……本文にも書いた通り自分の中で今まで古鷹は重巡の中でも特に何故か印象が薄い存在でした。(*加古は何故か姉よりかは印象が強い)
ま、それも改二にして見た目が凄く気に入ったので問題解決しましたがw

重巡の改二増えてきましたね。
次は誰でしょうか。


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第×4話 「要求」

例によって提督が堤防で煙草を吸って和んでいると、それに気付いた艦娘が近寄ってきました。
今回来たのは……。


「ふぅ……」

 

「あら、大佐」

 

「熊野」

 

「おタバコですの?」

 

「ん、まぁな。吸うか?」

 

「なんで自然に勧められるの!? 吸うわけないじゃありませんか!」

 

「そうなのか?」

 

「寧ろ何で疑問形なのかお聞きしたいのですが……」

 

「いや、なんかお前やさぐれてる時に吸ってそうなイメージがな」

 

「理由があまりにも失礼じゃありませんか!?」

 

「……そうだな」フゥー

 

「どうかされたんですの?」

 

「ん?」

 

「大佐、いつもと違う感じがしますよ?」

 

「……ん」

 

熊野の指摘が的を射ていたのだろう。

提督は彼女の指摘にちょっと気まずそうに視線を逸らした。

 

「日本で何かありました?」

 

「まぁ、いろいろと、な……。疲れた」

 

「え?」

 

「……ふぅ」

 

「……そこ、よろしいですか?」

 

「ん? ああ、かまわ――」

 

トス

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「何で膝の上に座るんだ?」

 

「これで煙草が吸えないでしょう?」

 

「ああ」

 

「私は大佐にタバコを吸ってほしくありませんの」

 

「……今ここで吸うのを止めたらどいてくれるか?」

 

「嫌ですわ」キッパリ

 

「何故……」

 

「レディにそんな事聞くなんて失礼ですわ。セクハラです」

 

「お前、セクハラの意味解っているか?」

 

「馬鹿にしないでくださいまし。ちゃんと鈴谷に聞いて知ってますわ」

 

「鈴谷に……。因みに何て教えてもらった?」

 

「レディを機嫌を損なわせる行為がセクハラと聞きましたわ」

 

「……」(あながち間違ってないのが質が悪いな。更に教えた相手が熊野だというのがその厄介さの度合いを上げている)

 

「何か間違ってまして?」

 

「いや、全部間違いと言うわけじゃないが。熊野、ちょっといいか?」

 

「何です?」

 

「セクハラと言うのはな。一応今こうやってお前がやっている事も該当するんだぞ?」

 

「? どういう事ですの? 私は今特に機嫌は悪くありませんわ」ポヨポヨ

 

「跳ねるな。だからそれだ。異性が特に理由もなく過剰なスキンシップを強要したり、しかけるのも該当するんだ」

 

「過剰? これが?」フニフニ

 

「だから膝の上で座ったまま動くな。お前は今、俺の膝の上で自分の尻を乗せていて何も感じないのか?」

 

「お、尻だんなんて。大佐、ちょっとはしたないですよ!」カァ

 

(そこに反応するか)

 

「そうか。じゃぁそれを服越しとは言え今密着させているのもはしたないとは思わないか?」

 

「? どうしてですの?」

 

「……」(こいつ、鈴谷や最上に弄られて価値観がちょっとズレたな)

 

基本的にお嬢様のイメージで通っている筈の、わかには信じられない熊野のズレ方に提督は嘆息した。

 

「大佐?」キョトン

 

「……何でもない。もう好きにしろ」

 

「ほ、ほんとですの!?」

 

「前言撤回だ。何をする気だ?」

 

「殿方が前言展開するだなんて情けないとは思いませんか?」

 

「それはお前が何をするかによるだろう。自分に害が及ぶ可能性を事前に回避するのは純然たる正当防衛だ」

 

「が、害なんかじゃないもん!」

 

「おい、言葉使いがちょっと幼くなったぞ」

 

「っ、コホン。が、害だなんてあまりにも失礼ですわ」

 

「じゃぁ実行する前にそれが有害でない事を口頭で証明しろ」

 

「……」プイ

 

「……さて、基地に戻るか」

 

「だ、だめ!」

 

「何をするつもりだった?」

 

「き……」

 

「ん?」

 

「き、キス……とか」

 

「そうか。そういうのは好きな奴とするといい。鈴谷とかとな」

 

「ちょっと、自然に人を同性愛者にしないでください!」

 

「む……」(意外にこれは勘が外れたみたいだな)

 

「わ、私だって理由もなくキスとかしたりしませんわ。大佐が、そのす……だから」ゴニョゴニョ

 

「……お前も同盟に入ってるのか? なんだったか、ああそうだ。重巡同盟ってやつに」

 

「っ! 何故それを!?」

 

「図星か。因みに訊くが、他には誰が入ってるんだ?」

 

「え? 全員ですけど?」

 

「……全員?」

 

衝撃の事実に提督は唖然とする。

 

「はい」

 

「那智もか?」

 

「ええ」

 

「妙高に、麻耶達……高雄型も奴らもか?」

 

「勿論ですわ」

 

「……」(全員を愛する、ケッコンの対象にすると宣言したのはいつだったか。そうだ、確かあの時だ。水泳大会の閉会式だったか。あの時は、まさか宣言したとは全員が俺に好意を寄せるなんて思いもしなかったが……)チラ

 

「大佐?」キョトン

 

「……」(何故だ)

 

「どうかいたしまして?」

 

「いや、取り敢えず今日はキスはしない」

 

「ええ!? そ、そんな……!?」(せっかく同盟の中では足柄さんの次に一歩リードできると思ったのに!)

 

「悪いが。俺にも一応は矜持と言うものがある。今回はそれを保たせてくれ。そうでないと俺はこのままではただの……」ズーン

 

「た、大佐?」(お、落ち込んでる? 何で? どうして?)

 

「替わりと言っては何だが、キス以外でそれ以上に過剰なスキンシップでなければ応えてやる」

 

「えぇ……そんなぁ……。うーん……あっ」

 

「何か思いついたか?」

 

「抱っこ! お姫様みたいに抱いてくださいまし! そして今日はそのままお昼寝したいですわ!」

 

「抱っこ……まぁ、それなら」

 

「ありがとうございます!」パァッ

 

「座ったままでいいか?」

 

「はい!」

 

「そうか。そじゃぁ流石に両腕でずっとお前を支えるできないから……そうだ。うん、上半身は俺の胸に預ける形にしろ。そう……それで……」

 

 

それから十数分後、堤防にはすやすやと寝息を立てる熊野を抱きかかえる提督がいた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「……はぁ」

 

提督が意味深いなため息を吐いた時だった。

 

「おっ、いー事してるじゃーん」

 

「……」

 

ギギ……と音がしそうな鈍い動きで声がした背後を見る提督。

そこにはいたのは……。

 

「鈴谷……」

 

「次、熊野が起きたら鈴谷ね!」

 

「却下だ。お前は海で泳いでろ」

 

「なんで!? ひーきだひーきぃー」ブーブー

 

「うるさい。ちゃんと日本語を使え」

 

「ちゃんと使ったらやってくれる?」

 

「だめだ」

 

「ひーきだー!!」ブーブー

 

(戦いのときは頼もしいのに何故非番の時はこうも普通の女子高生みたいなんだ……)

 

「大佐っ、鈴谷も! すーずーやぁもー!」グイグイ

 

「やめろ、引っ張るな。熊野が起きる」

 

「熊野が起きたら交代できるじゃん」

 

「それは熊野が許さないだろうな」

 

「ふふん、鈴谷これでもこーしょーとか得意なんだからね。熊野ならちょっとこうしょーすればすぐオッケーくれるもん」

 

「……交渉?」

 

「そ、こーしょう! 熊野にこの大佐の寝てる写真渡させば……」

 

「長門」

 

「呼んだか?」

 

「えっ!?」

 

「こいつを連行しろ。そして写真を全部回収しろ」

 

「ふむ……その写真証拠品としてこちらで預かっても構わないよな?」

 

「……悪用するなよ? 信じているからな?」

 

「任せておけ! それでは行こうか鈴谷」ガシッ

 

「えっ、や……ちょ、なに!? はーなーしーてぇ!」ジタバタ

 

「なに、心配するな。ちょっと島風達と一緒に鬼ごっこしてもうらだけだ。直ぐに開放する」

 

「島風達と!? なにそれ死ぬ、死んじゃう! やだやだ!」

 

「大丈夫だ。私も付き合ってやるから」

 

「そういう問題じゃ……え?」

 

尚も鈴谷が抵抗しようとした時、長門がそっと彼女に耳打ちをしてきた。

 

「大佐は今回全部の写真を回収しろとは言ったが、発生元まで対処しろとは言っていない。今回は写真の回収だけで見逃してやる」ボソ

 

「う……はぁ……。たーすーけーてー」

 

「はっはっは。堪忍したか。それじゃいくぞー」

 

 

「……静かになったな」(なんか最後二人とも話し方が棒読みのようだった気がしたが、気のせいか……?)




大分、作風が前のに近づいてきました。(手抜き)
こっちの方が書き易いし、ペースも上が……いや、続きものが苦手というのもありますが(汗)

しかしこのペース、投稿したての頃を思い出します。

*追記報告
「登場人物」に瑞鳳とレ級の絵を追加しました。


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第×5話 「感謝」

丁度執務室に入ろうとしていた提督を阿賀野が見かけました。
彼女は提督の姿を認めると満面の笑顔で走って行き、そして……。


「あー! たーいーさーぁ!!」

 

タタタッ

 

「なんだ阿賀野声が……ふく……っ」ドム

 

「えへへ、大佐みーっけ♪」スリスリ

 

「ど……ぁ……ぐぅ、し……ぜぇ……た? あ、阿賀野……」

 

「大佐を見つけたのが嬉しくてつい♪」

 

「そ……ぅか」ゼェゼェ

 

「? 大佐、どうしたの?」

 

阿賀野的には単純に甘えただけのつもりだったので、彼女は提督の調子が悪そうな様子にキョトンとした顔をしていた。

 

「お前に奇襲を受けたんだ」

 

「えっ!? あ、阿賀野大佐にそんな事絶対にしないもん!」

 

「……いいか? 阿賀野」

 

「え?」

 

「お前は女性である前に艦娘だな?」

 

「ううん! 阿賀野は大佐のものだもん!」

 

「……まぁ、なんでもいい。取り敢えずお前は艦m」

 

「だめ! 阿賀野は大佐のなの!」

 

「人の話を聞け」

 

ゴン

 

「きゃうっ」

 

「……いいか? お前は艦娘だな?」

 

「……」フイ

 

あくまで自分は大佐のものだという事を主張したいのだろう、阿賀野は拗ねたように横を向いて脹れっ面をする。

提督はそんな彼女に対して子供をしかる親の様に噛んで含めた言い方で改めてもう一度言った。

 

「か・ん・む・す・だ・な?」

 

「……」

 

「阿賀野」

 

「っ、うん……」シュン

 

「よし、いいか? 艦娘であるお前は普通の人間と比べていろいろ身体能力が優れているんだ。当然力もな?」

 

「だ、だから阿賀野は別に大佐に悪さなんか……!」

 

「加減抜きに抱き着かれたら俺とて苦しいんだ」

 

「え? あ……」

 

「さっき息も絶え絶えだったのはお前の特攻に俺の体力が削られたからだ」

 

「ご、ごめ……」グス

 

「まだ泣くな。取り敢えず聞け。いいか? 阿賀野。この基地ではな、全ての艦娘に俺とスキンシップを取る時は加減するように言ってある」

 

「うん……」

 

「力の加減が大事なのも勿論だが、さっきから言っているがお前達は俺の部下でもある。部下が上司に対してある程度敬意をもって接するのは普通だろ?」

 

「す、捨てないで……!」ブァッ

 

「話を飛躍させるな、誤解するな、曲解するな。そして落ち着け」

 

会話の流れから何を想像したのか、阿賀野は急に両目から涙を溢れさせて泣きじゃくりそうになる。

 

「……ぜったい、ぜったい阿賀野は大佐と離れたくない……! 大佐と離れるなんて絶対に嫌……!」

 

「……」

 

「……ぅ……ぐす……」プルプル

 

「……阿賀野」ポン

 

「……っ」ビクッ

 

「俺はお前を捨てたりはしない」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「最初からそんなこと言ってなかったろ? 俺はただお前に他の奴らと同じように触れ合うときに加減をして欲しいだけだ」

 

「加減……うん、わかった!」

 

「……お前があっちでいろいろ辛い思いをしたのは知ってる。だがここでは必要以上に怖がるな。誰もお前を傷付けたり捨てたりしない。いいな?」

 

「うん。ありがと……。好き、大佐」

 

大佐の言葉に心から安堵したらしい阿賀野は再び甘えるような顔になると、また唐突に愛情を表現し始めた。

その顔を見て先程までのやり取りの繰り返しの可能性を恐れた提督は、そこで一度彼女を躾ける事にした。

 

「……あと、あんまりベタベタするな」

 

「え!?」

 

「ショックを受け過ぎだ。好意を寄せてくれるのは嫌ではないけどな、だがあまりにもこう過剰だとその、周りの奴らが、な?」

 

「だ、だって阿賀野大佐の事が本当に……!」

 

「俺は節度を守る奴が好きだ」

 

「阿賀野これからあんまり大佐にベタベタしません! 大佐を見つけても急に抱き付いたり思いっきり抱き締めたりしません!」

 

正に提督の事を本当に好いている者の反応と言えた。

阿賀野は提督の好みを瞬時に理解すると、即座にその好みに沿う選択肢を取った。

 

「よし、いいぞ」

 

「あ……えへへ♪」

 

「じゃぁ俺は仕事があるからちょっと外れてくれ。時間がある時はちゃんと相手をしてやるから」

 

「うん、分かった! 阿賀野いい子にするね!」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

「任せといて! それじゃまたね。大佐っ」

 

バタン

 

 

「……」

 

「能代」

 

一人になった提督は誰もいない空間に不意に阿賀野の妹の名を呼んだ。

その声に机の下でガタッ、という音と共に誰かが反応する。

 

「!」ビクッ

 

「いつまで机の下にいるつもりだ」

 

「あ、もう阿賀野姉出ていきました? あ、あはは、ごめんなさい。ちょっと姉に気を付かちゃって」

 

机の下から遠慮しがちに出てきたのは阿賀野の妹の能代だった。

どうやら阿賀野が部屋に入る前にその気配を察して、咄嗟に机の下に隠れていたらしい。

 

「姉想いなのはいいけどな、でも机の下に隠れる事はないだろ? 俺の部屋に行っていればよかったじゃないか」

 

「ごめんなさい。ちょっと焦ってしまいまして」

 

「まぁいい。ふぅ……」

 

「お疲れ様、大佐」

 

「ん」

 

「阿賀野姉ったら本当に大佐にべったりですね」

 

「そうだな。だが流石に疲れる」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「お前が謝る事じゃないさ。まだ落ち着くまで時間がかかるだけだろう」

 

「うん……」

 

「やっぱり気になるか?」

 

「え? あ、そ、そうですね。ただ姉を出撃中に発見しただけだったらここまでは気になる事はなかったかもしれません。だけど流石にここに来た経緯がちょっと……アレだったので……」

 

「俺も偶然見つけただけだったからな。運が良かった」

 

阿賀野は提督が基地に居る時に発見されたのではなく、少し前に日本に帰った時に彼の目に留まり、とある事情からそのままその身柄を保護する形で此処に連れて来られたのだった。

 

「大佐……本当にありがとう……」グス

 

姉が初めてここに来た時の事を思い出したのか、能代は少し涙目になりながら提督にお礼を言い始めた。

 

「わたし、実際に姉と再会するまで自分の中で姉のイメージがなんとなく決まってたから、初めて会った時は本当にショックだったんです。あんな、あんなに小さくなって震えていたから……」

 

「……そうだな。ここに迎えてからまだそんなに日にちは経ってないが、それでも大分マシになったよな」

 

「大分どころじゃないわ。本当に元気になったと思います」

 

「ああ、そうだな」

 

「大佐、本当に感謝しているんですよ? もちろん矢矧も」

 

「俺は自分の気持ちに素直に従っただけだ。お前も俺と同じ立場だったらそうしていただろう?」

 

「勿論です」

 

「ならもう気にするな。これからは自然に接してやるのが阿賀野にとっては一番な筈だしな」

 

「うん、そうね……そうします」

 

「よし、じゃぁこの話はこれで終いだ。さて、仕事を……」

 

「ねぇ大佐」

 

「うん?」

 

「わたしも……わたしも好きですからね? 阿賀野姉と張り合うつもりないけど、この気持ちだけは負けてないつもりです」

 

能代は恥ずかしそうに眼を逸らしながら仄かに赤く染まった顔でそう言った。

 

「……そうか」

 

「うん……」

 

「ね」

 

「ん?」

 

「ぎゅっと、して欲しいな?」

 

「……したら仕事しろよ?」

 

「うん!」




実は少し前に古鷹の改二の為に5-4でレベリングをしてたら阿賀野をゲットしたりしていました。
彼女がここに来る前に経験していた辛い事については、提督が日本に行った時の話で触れるつもりです。
ま、ベタな展開なのでそういう意味では変に不快な気持ちになる事はないと思いますがw


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第×6話 「刺激」R-15

提督は出撃中に山雲を発見して新たな仲間として迎え入れました。
そして山雲は、早速提督に挨拶をする為に彼の下を訪ねてきました。

*明らかな性的な描写あり


「山雲で~す。よろしくお願いしま~す」

 

「こちらこそよろしく頼む。ようこそ我が基地に。俺の事は大佐とでも呼んでくれ」

 

「ふふふ~、丁寧なご挨拶ありがとうございま~す。提督の事は大佐とお呼びすればいいのですね~。分かりました~」

 

「ああ、できればそう呼んでくれると嬉しい。愛称のようなものだ」

 

「准将さんなのに低い階級でお呼びするのはそういう理由なんですねぇ。納得です~」(良い人そうね。この人なら信じて着いていっても大丈夫そう……かな?)

 

「ああ、気軽に呼んでくれて構わない」(龍田だ。駆逐艦の姿をした龍田のような感じがする)

 

 

パキッ

 

「ああっ!? 龍田なにしやがる!? 俺の船底にヒビが入ったぞ!」

 

『天龍』の模型を持った龍田はつい力を入れ過ぎてひび割れてしまったそれを見て薄く笑いながら言った。

 

「あ、ごめんねぇ? なにかと~っても気になる事言われてるきがしてつい力が入っちゃったぁ」

 

「何わけの解らない事言ってやがる! お前の貸せ! それもヒビを入れてやる!」

 

「あ?」

 

「……っ」

 

「私に、なに~?」

 

龍田の圧倒的な威圧感に天龍は言葉が出ずに口をパクパクさせる事しかできなかった。

 

「あ……う……」

 

「なんてね、冗談よ。割っちゃったのは本当にごめんね? ちゃんと直すから、ね?」

 

「……しょ、しょうがねぇな」

 

「えーと、接着剤でひっつけて隙間にパテをちょびっと……あれ? 天龍ちゃん何処に行くの?」

 

「ちょっとトイレ」

 

「あ、おしっこね?」

 

「っ、いちいち具体的に言う必要ねぇだろ!」カァ

 

「赤くなっちゃってか~わい~♪」

 

「うっせぇ! ちゃんと直しておけよ!」

 

「おっけ~。天龍ちゃんもちゃんと拭いて……」

 

「やかましい!」

 

バタン!

 

 

 

「……」(ったく龍田のやろう……ん?)

 

「あ……」

 

「……おめぇ、新入りか?」

 

「はい。山雲です~。軽巡天龍さんですね~? よろしくお願いしま~す」

 

「……ああ。よろしく、な」

 

「? どうかしました~?」

 

「ああ、いや。悪い、なんでもねぇ」(龍田だ。ちっちゃい龍田だ)

 

 

バキッ

 

「……あれぇ?」(なんでかな。凄く胸がもやもやする……?)

 

 

 

(……トイレの前に、ちょっと大佐のとこ寄って行くかな)

 

山雲との遭遇にちょっとした驚きを受けた後、特に何事もなく挨拶を済ませ廊下を歩いていた天龍は執務室にへと足を向けていた。

 

コンコン

 

「大佐、いるか?」

 

『天龍か。どうした? 入っていいぞ』

 

ガチャ

 

「ちっす」

 

「よっ、どうした?」

 

「いや、別に用とかはないんだけどよ」

 

「ん? ……まぁいい。ちょっとお茶でも飲んでいくか?」

 

「え? いいのか? じゃ、ちょっと貰おうかな」(トイレに行く前に茶を飲むのはちょっとアレだけど、せっかくの機会だしな、見逃せないよな)

 

「緑茶しかないが、いいか?」

 

「ん? ああ」

 

「口の寂しさはこれで紛らわせてくれ」スッ

 

「沢庵かよ」

 

「ちょうど菓子がなくてな。悪い」

 

「いや、気にすんな。別に嫌いじゃなねーし」ポリポリ

 

「それは良かった」ズズ

 

「……あちち」ズズ

 

 

「そういえば」

 

お茶を飲み始めてから暫くして提督がふと口を開いた。

 

「ん?」

 

「お前とこうして二人で茶を飲むのは随分久しぶりな気がするな」

 

「……そんな事判るのか?」

 

天龍は、提督が自分と過ごした時間を憶えてくれていた事に密かに胸が暖かくなる喜びを少し感じた。

 

「これでも一応提督だ。何気なしにお前たちと過ごしているわけじゃない、と大見えを切らせてもらおうか」

 

「っく、なんだよそれ。ははは」

 

「お前はそういう性格だから昔から気兼ねなく話せているよな。それが俺にとっては結構ありがたかったな」

 

「はぁ? 男勝りなら良いって事か? だったら麻耶の姉貴や木曽でもいいだろ?」

 

「性格のみに限ればな。だが、お前とはそれなりに長い付き合いだ。時間が長い分、お前の方が接し易いところもあるという事だ」

 

「……なんだよそれ」ズズ

 

「む、悪い。機嫌を損なわせたか」

 

「えっ、いや別に」(なんか俺の方が良いみたいな事言われて嫌なわけないだろ)

 

「そうか。んむ」ポリポリ

 

「……」

 

「なぁ」

 

「ん?」

 

「隣、行っていいか?」

 

「うん? ……ああ、構わないぞ」

 

「え、本当か?」

 

「なんでそこで驚くんだ」

 

「いや、なんか大佐ならいろいろ気にして断りそうな気がしてさ」

 

「……確かに昔の俺なら断ったかもな。だが、いろいろあっただろ。俺もなるべく頑なにならないようにしたのさ」

 

「……そっか。なら」

 

トス

 

「へへ……♪」

 

「……」(意外だな。いや、今の方が気が楽なのかもな)ズズ

 

「なぁ」

 

「今度はなんだ?」

 

「……」

 

「? どうした?」

 

先程とは違い、今度は明らかに躊躇いとも遠慮とも取れる天龍の奥ゆかしい態度を提督は不審に思った。

 

「あ……」

 

「うん?」

 

「ちょっと……甘えたい」ジッ

 

彼女なりにあらゆる条件から判断し、決断したんだろう。

恥ずかしさで頬を染めながらも気丈にも目は逸らさずにまっすぐに自分を見つめてそう言ってきた天龍に、提督は躊躇うことなくこう言った。

 

「……肩を貸すか?」

 

「……膝、それに乗りたい……」

 

肩ではなく、いきなり膝を希望してきたのは提督にとっては予想外だった。

 

「……」(こいつもか。なんだ? そういうブームなのか?)

 

「あ、駄目なら……」

 

「いいぞ。乗れ」

 

「っ! さ、さんきゅ」

 

ポス

 

「……!」

 

「ん? どうした?」

 

「あ……。い、いや」(忘れてた。トイレ我慢してたんだ。あ……直接パンツで乗っちまったから振動が……。こういう時にスカートは……!)モジモジ

 

「おい、本当に大丈夫か?」(下着で直接乗っている事を注意しようかと思ったが、後にするか)

 

「だ、大丈夫。大丈夫だからあまり動かないでくれ。す、座り心地を楽しみたいんだ」

 

「? 分かった。疲れたら適当にもたれかかれ。俺はこのまま少し仮眠を取る」(不本意だがこいつの温もりが心地よいから眠い。天龍には悪いがここは寝て過ごすか)

 

「あ、ああ構わないぜ。俺も少ししたら部屋に戻るから」

 

「そうか。悪いな。それじゃ……」

 

 

十数分後

 

「……」zz

 

「……」(ね、寝たよな)チラ

 

「……」zz

 

「……」(よし)モゾ

 

「……っ、はぁ……」(これ、あ……いいかも)ピクッ

 

「はぁ、は……ぁ。はぁ……」(これ以上はマズイな。どうせトイレに行くし、後は自分で処理すっか)

 

スッ

 

「……」チラ

 

「……」zz

 

「……続きは、また今度な」ボソ

 

バタン

 

「……!」(あ……。だ、大丈夫。ちょっと、ちょっとだけだ。ば、バレない……よな?)

 

 

 

「天龍さん遅いですね~」

 

「そうねぇ。ところで山雲ちゃぁん?」

 

「はい。なんでしょ~?」

 

「私達、ちょっと似てると思わない?」




自分の性癖全開です。
こいうの苦手な人は申し訳ないです。

あと、山雲ゲットしました。
1-5で出るとは知らなかった。


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第×7話 「予想外2」

提督は蒼龍とケッコンしました。
蒼龍はとても上機嫌で指にはめた指輪を嬉しそうに見つめています。
そのあまりにも嬉しそうな様子に珍しく、それが気になった提督の方から感想を聞いてきました。


「嬉しそうだな」

 

「そりゃぁもう! だってずっと待ってたんだもん!」

 

「飛龍より後になったのは気にしていないのか?」

 

「え? んー、まぁ全く気にならないと言ったら嘘になるけど、でも今はそれくらい些細な事に思えるくらいには気分いいよ!」

 

「そうか」

 

「うん! だってこれでさらに強くなれるんだもん!」

 

「ん? 蒼龍、お前もしかして成長限界が伸びるからケッコンが嬉しいのか?」

 

「うん、そうだよ? それがどうかした?」

 

「ああ、いや。俺はてっきり……」

 

「あれー? もしかして大佐、わたしが大佐の事が好きだから喜んでいると思ったぁ?」ニヤニヤ

 

「自惚れを肯定する様で恥ずかしいが、正直言ってそうだ。だが、そうかお前はそれが理由だったっか……」

 

蒼龍にケッコンの理由を聞いた提督はそう言うと、考え事をするように俯いた。

 

「あ、ごめん。傷ついた? いや、私も大佐は嫌いじゃないよ? 寧ろ好きな方だけど、でもちょっとわたしは恋愛とかそういうのとは違うかなーって感じなだけだから」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべながらそんな提督をからかうような事を言う蒼龍。

だが実はその内心は言葉とは裏腹にこんなことを思っていた。

 

(なーんてね。こう言った後に実は好きって言った方がインパクトあるもんね)

 

そう、全ては蒼龍の悪戯も兼ねたムード作りだったのだ。

だがそんな計画のことなど露ほども知るわけがない提督は、顔を上げあると蒼龍に言った。

 

「いや、別に傷ついてはいないさ」

 

「え?」

 

「正直な、目から鱗な気分だった……。ああ、考えさせられたよ」

 

「えっ、そ、それってどういう……」

 

「お前みたいにケッコンを自分を高めるための目的に考える奴もちゃんといるんだなという事だ」

 

「 」

 

「いや、改めて考えてみればそれが一人の軍人、兵士として当たり前とも言えるのかもな。勿論、金剛や加賀のように俺への好意故にというのも否定する気はないけどな。だが、これはこれでいいものだな」

 

「あ……えっと……」(これはヤバイ……!)

 

「蒼龍、俺はお前の事を侮っていた。単に飛龍より少しおてんばな奴だと思っていたが、実はこういう事も真面目に考えていたんだな」

 

そう言って提督は蒼龍に温かい笑みを見せた。

その笑顔は、親が子供に見せるような愛情からくるものとは明らかに違った信頼する部下に何かを諭された事に感銘を受けたような、そんな眩しい笑顔だった。

 

基本的に真面目なこの提督は、その実直な性格ゆえか日常に置いてあまり目に見えて明るく笑ったりはしない。

故に今彼が蒼龍に見せている表情は理由こそ違えど、非常にレアなものだと言えた。

だがそれは、その場に置いては蒼龍にとってありがたいものではなくまるで死の宣告のようなものであった。

 

「あ……ちが……て……ね……?」(あれ? 不安で言葉が上手く出ない……)

 

「蒼龍、これからも俺の部下としてよろしく頼む。期待しているぞ」

 

「!!」

 

この一言が決め手となった。

蒼龍は自身の取り返しのつかない過ちからついにその場で我慢ができなくなり大泣きし始めた。

 

「ふ……うぇぇぇぇえええん!! うぁあああああん!!」

 

「は……? お、おいどうした蒼龍?」

 

突然の事態に提督は心底動揺した声を出す。

 

「ちが……ちが……ぅの。ちょっと……ぐす。ちょっといたぅわしただけなのーー!! うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「……なに?」

 

 

それから十数分後。

 

「ぅ……ぐす……」

 

「なるほどな……」

 

蒼龍は事の真相を知った提督の胸にソファーの上で体を預けていた。

まだしゃくりあげてはいるが、提督に頭も撫でて貰っている事もあって大分落ち着いた様子だ。

 

「ごめんなさい……」グス

 

「いや、まぁお前らしいと言えばお前らしい」

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「失望した?」

 

「? 何にだ?」

 

「……わたしがちゃんと真面目じゃなかったから……」

 

「お前は自分は真面目じゃないと思っているのか?」

 

「そんなことない! いつもはこんなんだけど、任務の時は真面目だもん!」

 

「ふ……よく分かっているじゃないか。そうだな、その通りだ。俺もそう思っているよ」

 

「ほ、本当?」

 

「本当だ。信頼している」

 

「大佐ぁ……」ジワ

 

「……やっぱりお前はこっちの方が合っているな」

 

「ぐす……ふ……ぇ?」

 

「普段はおてんばだがやる時はやる、そういうイメージが合っていると思ったんだ」

 

「じゃ、じゃぁわたしは今のままでもいいの? わたしも大佐を好きでいいの?」

 

「心配し過ぎだ。俺は自分の部下を、それもケッコンまで頑張った奴を無碍に拒否したりしない」

 

「大佐……」

 

「改めて、これからもよろしく頼むぞ蒼龍」ポン

 

「……っ」ギュッ

 

「おっと……ん」ナデナデ

 

「大佐……好き! 大好きだから!」

 

「ああ」ナデナデ

 

「本当だからね? これは嘘じゃないんだから!」

 

「ああ」

 

「わたし大佐とケッコンできて本当に良かった……そう思ってるのよ?」

 

「分かっている。十分伝わっている」

 

「ホント? じゃぁさ……」

 

「うん?」

 

蒼龍は今まで流していた涙とは違う潤んだ瞳で提督を見上げてきた。

 

「キス……してよ。ケッコンの記念にさ。大佐の言葉が本当だってわたしに信じさせて」

 

「……全く、手のかかる奴だ」

 

「ん……」

 

チュッ




蒼龍とケッコンしました!
これでケッコンしてない正規空母は翔鶴と瑞鶴のみです。

え? 大鳳ですか?
申し訳ないです。
大鳳は艦これを始めてからまだ一度も狙ったことがないので……(汗)
何故か未だに欲しいと思ったことがないんですよね。
何故だ……。


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第×8話 「切望」

蒼龍に続いて提督は榛名ともケッコンしました。
経つ続けのケッコンにより更に甘い雰囲気が執務室を満たすのかと思いきや、提督を待っていたのは……。


「榛名……榛名……」プルプル

 

ケッコン指輪を握りしめて榛名は感激に身を震わせていた。

 

 

『『『……』』』

 

その様子を執務室の扉の隙間から彼女の三人の姉妹が息を潜めて覗き、見守っていた。

 

 

「大佐、ありがとうございます。榛名……榛名は今、本当に感激しています……!」

 

「あ、ああ」

 

感激に未だに震える榛名を前にして、提督はその狂喜ぶりに若干引いていた。

 

(これはこいつを姉妹の中でケッコンを最後にしたのは失敗だったか?)

 

「あの、大佐」

 

「あ、うん。なんだ?」

 

「ケッコンを記念して榛名から厚かましいのですけど、お願いがあるんです……」

 

「聞こう。言ってみろ」

 

「あの、これ……」

 

そう言って榛名は服のポケットから何かを取り出した。

 

 

『お姉様、あれなんだと思います?』

 

『hm......榛名は今 happy ゲージが振り切れているワ。そんな状態で逆に榛名から大佐に贈り物……。と言えば……』

 

『私なりに分析した結果、アレは恐らく何かの誓約書の類かもしれません」

 

『誓約書? 霧島、それどういう事?』

 

『Oh 分かったワ! 榛名はあれで独占欲が強いカラ……』

 

『その通りです。まぁ、それでもあからさまな独り占めは流石にしないとは思いますが、それでも二人きりの時はこうして欲しいとかそういう希望を書いた紙を用意したのかも』

 

『へぇ……榛名が……。あ、大佐に渡すよ!』

 

扉の向こうでこんな事を生暖かく妹を見守りながら議論していた姉妹達であったが、果たして榛名が提督に渡したものはそんなやや現実的な物とは程遠い、ある意味普段の彼女のイメージからは到底予想できない物だった。

 

 

ジャラッ

 

「 」

 

提督の手には首輪と、それに繋がれた鎖が渡されていた。

 

 

『『『 』』』

 

それを見て提督は勿論、扉の向こうの三人も絶句していた。

 

 

「榛名……これは……」

 

「あぅ……お、お恥ずかしい話ですが。榛名、大佐とのケッコンを夢見てずっと待っていたらなんかこう……いろいろ溢れてきちゃいまして……」ポッ

 

「そ……その感情とこれとどういう関係が?」

 

「あ、はい。それであの、大佐とのケッコンを待っている間、榛名は早く大佐のものになりたいと思うようになったんです」

 

「それがこれとどう繋がるんだ……?」

 

「榛名、大佐の為なら何でもします! なんでも応えます! あ、勿論本当に悪い事はしませんけど。というか大佐がそんな事言うわけないですよね」

 

「落ち着け、落ち着け頼むから。いや、だからこの首輪と鎖で俺の要望に応えたいと、そういう事か?」

 

「はい! 大佐、は、榛名を……榛名をメチャメチャにし……きゃっ」ポッ

 

「 」

 

 

『……』

 

『お、お姉様……』

 

『わ、私は榛名はや、やればできる子だと思っていたわ……』

 

『わ、ワタシは……』

 

『お姉様?』

 

『ワタシはどこで榛名の教育を miss して……うっ……!」ジワ

 

『お姉様、比叡もです! 比叡もどうしてこうなっちゃったのか……!」グス

 

『……』(まぁ普通はこうなるわよね。榛名……頑張って下さい大佐……!)

 

 

そんな金剛達の期待と不安をよそに、提督は手に握ったそれを見ながらぽつりと言った。

 

「……なんでもするのか?」

 

「はい♪」

 

 

『大佐ぁぁぁぁぁぁ!?』

 

『ノォ! NOよォォォォォ!?』

 

『お姉様達落ち着いて』

 

 

「……そうか。なら一つさっそくお願いがある」

 

「命令してください♪ しろ! とかそんなキツイ感じでもいいですよ」ポッ

 

「……なら命令する。榛名」

 

「はい!」

 

「まともに、いや。俺は真面目でしっかり者で、努力家で、謙虚なそんな可愛らしい榛名が好きだ」

 

「え……?」

 

「演じろとは言わん。だが、そんな俺の好きな榛名が俺は本来のお前だと思っている。だから今からでいい、俺と一緒にそんなお前に近づいて言ってくれないか?」

 

「大佐……大佐はこんな榛名はお嫌いですか?」プルプル

 

「嫌いという言葉で拒否する気はない。だが、俺は初めて出会った頃のお前が好きだ。だからどうか……命令だ。俺と初心に戻ったつもりでケッコンしてくれ」

 

「っ、大佐……!」ダキッ

 

 

『Yeahaaaaaaaaaa!!』

 

『ブラボー! ブラボーです大佐! 比叡は、比叡は大佐に惚れ直しました……!』グス

 

『……ふぅ、流石大佐です。信じていました……』

 

 

「榛名、良い子になります! もう何回言ったか分かりませんけど、こうしてちゃんとケッコンしてくれた大佐に約束します! 榛名、大佐の為に良い子になります!」スリスリ

 

「ありがとう……榛名。俺も嬉しい」(これで、最悪の事態は回避できたか……)

 

「あ、でも……」

 

「うん?」

 

「大佐の要望に何でも応えるというのは本当ですから……ね? 今でも有効です」ポッ

 

「……なるべくそんな展開にならないように努力しよう」

 

恥じらいながらそんな事を言う榛名に、提督は心の底からその事態だけは避けようと心に誓ったのでった。




さて、わが鎮守府の榛名は黒か白か。
いや、黒は黒で魅力はありますが、白過ぎるというのもなんかこう、現実味が無いというか。

というわけでグレーな榛名が一番です。
そんな榛名いないかなw


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第×9話 「痴話喧嘩」

提督と川内が堤防に座っておしゃべりをしていました。

お互い暇な時間を潰すために取り止めのない会話をしていましたが、川内がふとこんな話題を振ってきました。


「ねー大佐ー。大佐って何か苦手な物とかってないの?」

 

「なんだ川内、藪から棒に」

 

「いや、だってさー。大佐って怒ったり笑ったりしても基本静かじゃん? だからなんかもっとこう、ワーってなる苦手なものとかないのかなーって」

 

「別にリアクションを求めているのなら苦手なものじゃなくてもいいだろ。感動するものとか」

 

「そんなのわたしがつまらないもん!」

 

「……遠征メンバーからお前を外すぞ」

 

「えっ!? ダメダダメそれはダメ! ただでさえ最近は夜戦に出る機会も少ないのに遠征の出番まで少なくなっちゃったらわたしストレスでどうにかなちゃうよ!」

 

「ならもう少し慎みを持て。偶に本当にお前は神通の姉かと疑問に思うときがあるぞ」

 

「ちょ、それってどういう意味!? わたしってそんなにおねーちゃんに見えない!?」

 

「どちらかというと神通が姉でお前と那珂は双子の姉妹だな」

 

「ひどっ!?」

 

「なら、偶に夜中に忍者ごっこと称して俺の部屋に忍び込んで悪戯をしようとするのをやめろ」

 

川内だけではないが、提督の基地では常夏の暑さの所為で寝付けずに偶に夜中に起きて騒ぐ輩が何名かいる。

その殆どが駆逐艦なのだが、彼女たちのまとめ役(首謀者)が川内であった。

 

「あれはわたしの制服がいけないの! あれじゃぁ忍者しろって言っているようなもんじゃん!」

 

「夜は寝間着姿だろ? その癖にそれで忍者とは片腹痛いぞ?」

 

「うっ……」タジ

 

「ま、もう少し大人しく、な?」ポン

 

「う、うぅ……」コク

 

「よし、それでなんだったか。苦手な物か?」

 

「教えてくれるの!?」

 

「……」(ここは敢えて自分の生活の安静を優先してみるか)

 

「大佐?」

 

「ああ、悪い。俺が苦手なものはな」

 

「うん!」キラキラ

 

「じょせ……」

 

「あ、女性とかいうのは無しね。絶対ダメ。許さないから」

 

川内が提督が言いかけた答えを遮り問答無用といった様子でそれ以上言わせなかった。

 

「……一応聞くが、何故だ?」

 

「同盟が意味なくなるから。それに嘘だっていうの分かるし」プクー

 

「……そうか」(軽巡にも同盟はあるんだな)

 

「で、苦手なものって何?」

 

「そうだな。せんだ……」

 

「川内とか言ったら泣くからね」

 

「……せんだ」

 

「っ、ふぇ……」グス

 

本当に言われるとは思っていなかったのだろう。

自分の名前が出かけて川内の目に涙が浮かんだ。

 

「冗談だ」

 

「本当に言い掛けないでよ馬鹿ぁ!!」グス

 

「すまん。だけどな、急に言われても改めて考えると思いつかないもんだぞ? ふしだらな女性関係とかじゃダメか?」

 

「それだとわたしたちの関係がふしだらみたいだからダメ」

 

「別にそういうつもりはないんだが……」

 

「じゃぁ所構わず大佐にじゃれたり甘えたりしてもいいの?」

 

「駄目だ」

 

「じゃぁ無し」

 

「……」

 

「仕方ないなー。じゃぁわたしが苦手なものを教えてあげるよ」

 

「どうしてそうなる? 俺はお前が苦手な物を知ったところでなんの得もないぞ」

 

「わたしが言いたいんだからいいの! えっとねーわたしが苦手なのは……」

 

「今から考えるのか」

 

「ちょ、ちょっと忘れちゃっただけだもん!」

 

「……それで何だ?」

 

「お菓子!」

 

「……そうか。今度からお前だけ食事は三食沢庵だけにしてやろう」

 

「なんでそうなるの!?」

 

「魂胆がまる分かりだ馬鹿」スカンッ

 

「いたっ。うぅ……」

 

「もういい。俺が当ててやろう」

 

「え、分かるの?」

 

「そうだな。半年間待機任務だ」

 

「それってただの拘留じゃん! 軟禁じゃん! しかも何も悪い事してないのに!」

 

「拘留は日本の刑法上30日未満のはずだからこの場合は軟禁が意味合いとしては近いな。でも嫌だろ? 退屈は」

 

「うぐ……」

 

「勝負ありだな」

 

「えー! ねぇ大佐、本当に大佐が苦手な物ってないの?」グイグイ

 

「俺は本当に思いつかないんだ」

 

「むぅ、ならこれでどうだっ」

 

そう言うと川内は提督の手を取り、勢いよく自分の胸に押し付けた。

 

フニッ

 

「……」パコン

 

「きゃあっ!?」

 

「あまりそういう事を軽々しくするな」

 

「いったぁぁ……。ぬふふ、でも苦手だったでしょ?」

 

「これは苦手とかじゃないだろ。節操の無さを不快に思っただけだ」

 

「ふふふー、大佐もわたしのこの慎ましい胸でそう感じるなんて結構意識してるんだー?」

 

「嬉しそうに何を言っているんだ。しかもそれで慎ましいとか、龍驤に言うぞ?」

 

「ごめんなさい。すいませんでした本当に」

 

「……それはそれで傷つくだろうなアイツ」

 

「はぁあー、結局大佐の苦手なの分からなかったよー」

 

「……いや、あるぞ。今分かった」

 

「え、なに?」

 

「お前たちだ」

 

「えっ?」

 

まさか自分たちが提督にとって苦手な存在とは思わなかったが、それでも第一声がそれだった事に川内は心底驚いた顔をした。

 

「提督としてお前たちを失うのが何より俺は苦手だ」

 

「……なにそれ。それ苦手っていうより怖がってるじゃん」

 

「はは、そうだな。だが、本当にそれは苦手でもある。だから可能な限りお前たちには提督として気を遣ってるつもりだぞ?」

 

「……ま、それでいいって事にしてあげる」

 

「そうか、ありがとう」

 

「……ねぇ」

 

「うん?」

 

「おんぶしてよ」

 

「基地までか?」

 

「うん」

 

「ほら、乗れ」

 

「やったー♪」ピョン

 

「っと……軽いな」

 

「忍者だもん♪」

 

「今はただのワンピースだろ。おい、ちゃんと裾を抑えてから乗れよ。風で捲れるぞ」

 

「大丈夫だよ。この道基地にしか行かないから人いないし、捲れても大佐見えないじゃん」

 

「恥ずかしいとは思わないのか?」

 

「大佐にはね」

 

「なんだか男として複雑な気持ちになるな」

 

「これだけ胸押し付けられてるのに平然としててよく言うよ。どっちかというとそんな気持ちになるのはわたしの方だと思うけどなー」

 

「……慣れだなこれは完全に」

 

「あ、でもわたしが雲龍さんくらい大きかったらどう?」

 

「それはないな絶対に」

 

「ちょっと、それってどういう意味!?」

 

「ははは、さぁ行くか」

 

「こらー! 答えろー!!」

 

心地よい潮風が吹く基地への一本道を、明るい太陽に照らされながら親子とも兄妹とも取れるそんな二人が和やかな雰囲気で歩いていた。




川内あまり使ってませんが(それでも改二ですが)偶に使うと可愛いと思います。

でもうちは軽巡あまり使ってないんですよね。
だから軽巡のレベルトップは神通でもそのレベルは70ちょっと。

駆逐艦を育てたらいずれは、と考えていますが、気の長い話ですね。


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第×10話 「由来」

時は少し遡ってプリンツが仲間になったばかりの頃の話。
プリンツは自分の部屋を宛がわれて早々、早速自分が慕っている戦艦のビスマルクを訪ねました。


「おっねっえっさまー♪ お久しぶりでーす!」

 

バンッ

 

「うるさいわ。帰ってちょうだい」

 

「 」

 

「ちょっと、ジェーン!」

 

「え? もしかしてプリンツ?」

 

部屋には先客のZ1とZ3がおり、ノリ良く現れたプリンツを様々な形で早速出迎えてくれた。

 

「……はっ。あっ、お姉様~♪」ダッ

 

「ちょっと、部屋の中で走らないで」

 

「まぁまぁ」

 

「ジェーンごめんね。わっ……と、久しぶりねプリンツ」ナデナデ

 

「ん~、おね……マリアお姉様~♪」スリスリ

 

「もう、相変わらず甘えん坊なんだからプリンツは」

 

「あ、フランです」

 

「え?」

 

「はい?」

 

「ん?」

 

「わたしも大佐に名前を貰ったんです。マリアお姉様、今日からわたしのことはプリンツではなく、フランソワかフランでお願いします!」

 

「あ、そうなんだ。あなたも大佐に……良かったわね」ナデナデ

 

「うん!」

 

 

豊満な身体に似合わず子供の様な無邪気な笑顔で嬉しそうに撫でられるプリンツに対して、それを何となく冷めた目で見ていたZ3がポツリと言った。

 

「……まぁ、ジェーンの名前の方が可愛いけどね」ボソ

 

「えっ」

 

「え?」

 

「じぇ、ジェーンてば!」

 

「あの~……さっきから妙に冷たい態度のジェーンちゃんは一体何を言ってるのかな~?」ヒクヒク

 

「ちゃん付けはよしてフランさん、呼び捨てで構いません。私、一応これでもFräulein(フロイライン)なのだから」

 

「え? フロ……なに?」

 

「あーもう、ジェーンさっきからどうしたの?」

 

「……丁度いい機会だと思ったのよ。ここにいる4人、大佐に名前を貰った者として誰が優れているかを決めるのに」

 

「優れた名前? ジェーン、それってどう意味なの? 良かったらもう少し詳しく教えてくれないかしら?」

 

プリンツを撫でていたマリアがその言葉に興味を持ち、訊いてきた。

 

「分かりました。いいですか? 私達は大佐に名前を付けて貰ったけど、その名付けられ方にそれぞれ微妙に違いがあるの」

 

「違い?」

 

「そう。その違いの差の結果、私の名前の方が優れているという事よ」

 

「いやいやいや、全然説明になったないじゃん! なんでフランよりジェーンの方が優れてるの? 可愛いの!?」

 

Z3の説明に納得できず、今までビスマルクに撫でられていたプリンツが早速噛みつく。

 

「ジェーン、せめてそこは説明した方がいいと思うよ。皆納得できていないもん……」

 

「……そうね。私としたことが気が利かなかったわ。謝ります」

 

「いいのよ。それで、名付け方にどういう違いがあるの?」

 

「はい。それでは順番に説明していきます。まず一つ言っておかなければならないのは、大佐のこの名前の付け方には大きく2種類あるという事です」

 

「2種類?」

 

「そう。一つは元の名前から由来や同じ音を持つものを探す方法」

 

「私とフランね」

 

「そうです。そしてもう一つは元の名前を元に、その音や使われている文字から全く新し名前を考える方法よ」

 

「僕とジェーンだね?」

 

「そうよ。この名前の付け方において、明確なアドバンテージがあるのは後者だと私は考えます。何故なら元の名前から連想する方法より、無から付けられている私たちの方がもっと考えられているからよ」ビシッ

 

「なっ!」ガーン

 

「ええ!?」ガーン

 

衝撃の断言にビスマルクとプリンツが固まる。

 

 

「えっ、僕の名前ってマリアさん達より良いの?」

 

「誤解しないでください。別に私はマリアさん達の名前を批判してるわけじゃないです。ただ、どちらが優れているかという点においては私達の方だという事を理解してほしいだけです」

 

「そ、そんなの納得いかない!」

 

「こら、フラン。……でもそうね、私もその説明ではちょっと納得できない、かな」

 

プリンツほど動揺はしていないものの、明らかに何かの火が着いた目でビスマルクが異議を唱える。

 

「そうですか? 私なりに理解し易く説明したつもりですが?」

 

「名前の付け方についてはね。まぁそれは百歩譲って納得したとするわ。でもねジェーン、あなたは一つ大事な事を失念しているのよ?」

 

「何でしょうか?」

 

「本当に大事なのはやっぱり名前の響きじゃないかしら? 確かにどうやって付けたかも大事だと思うけど、でも結局はそれを人が聞いて聞こえが良い方が最終的に私は優れていると思うの」

 

「……なるほど。つまりマリアさんは自分の名前の方が響きが女性らしくて可愛いと」

 

「そういうことになるかしら」

 

「流石お姉様! どう? ジェーン! その理由ならわたしとお姉様の方がすぐれr」

 

「残念ですが、それは間違いよ」

 

ビスマルクの反論に活力を取り戻したプリンツが牽制しよとしたが、あっさりとそれはZ3に途中で遮られた。

駆逐艦を相手にまともイニシアティブを取れなかったショックでプリンツはその場で再び固まる。

 

「 」

 

「……何故かしら?」

 

妹分の悲壮さを見かねたビスマルクが更に議論する為に理由を訊く。

 

「確かに私とレイスの名前は『マリア』と『フラン』という名前と聞き比べると多少女性らしさが弱いのかもしれない」

 

「そ、そうよ! だからわたし達の方g」

 

「プリンさんはちょっと黙っていてください」

 

「ぷ、プリン……」ガーン

 

「ちょ、ジェーン!」アセアセ

 

「こほん、続けます。確かに聞こえはマリアさん達の方が優れているかもしれない。でもその結果は、最終的な名前と本人とのギャップによって覆ります」

 

「? どういう事?」

 

「ジェーン、この名前は女性らしさを感じさせながらもどこか凛とした大人の雰囲気があります。でもそのイメージ対して実際に名前を持つ私は見た目が幼い」

 

「それはジェーンにとって不利ということじゃないの?」

 

「いえ、違います。先程言いましたが重要なのはギャップです。大人の雰囲気がある名前に対して幼い姿の私は、見た目は子供なのに名前に負けない大人らしさ持つ女性という事になるわ」

 

「……ねぇ、あまりにもそれは無理矢理なこじつけじゃないかな?」

 

「そんな事ないわ。レイスだって立派よ」

 

「えっ、ぼ、僕も?」

 

「『レイス』この名前は私の名前以上に男か女か判り難い……。でも実際の本人は可憐な少女で、更に一人称が不器用にも『僕』だなんて男性のもを使っている。ほら、もうこのギャップで私たちは二人に勝っているわ」

 

「ひ、贔屓だ! そ、それはただの贔屓よ!」

 

「ムキになるようで恥ずかしいけどそれには私も同意だわ。そんな単純なギャップで元から女性らしい私達が劣っているとは思えないもの」バイーン

 

「そうよ!」プリン

 

「うっ……。じぇ、ジェーン、悔しいけど僕もそう思う……」タジ

 

圧倒的な肉感的な魅力を持つ二人の身体に一瞬で気圧されたZ1が旗色の悪さを認める。

だがそんな状況においてもZ3の凛として自信に満ちた態度は変わらなかった。

 

「レイス諦めないで。……嘆かわしいわねマリアさん」

 

「なんですって?」

 

「そんなの私から言わせれば、名前の通り過ぎて単純であまりにもありきたり。つまり地味なだけです」ビシッ

 

「なっ!?」ガーン

 

「ふにゃぁ!?」ガビーン

 

(あ、心折れた)

 

どうやらそれで勝負は決したようだった。

ビスマルクとプリンツはそれ以上は何も言わなくなり、暫く何も喋らなかくなった。

 

 

「……」

 

「う……ぐす、ふぇ……」プルプル

 

(き、気まずい)

 

「ジェーン」

 

悔し泣きをするプリンツに対して一人静かに沈思していたビスマルクが顔を上げてジェーンに話し掛けてきた。

 

「はい」

 

「この勝負、この場においては貴女の勝ちを譲るわ。でもまだ納得していないからね」

 

「構いません。私を納得させる事ができる説明ができるのならいつでも相手になります」

 

「いい度胸ね。……それじゃちょっと」

 

「あ、何処に行くんですか? マリアさん」

 

「……ちょっと、ね。直ぐ戻るから。それまでの間プリ……フランをお願いね」

 

バタン

 

「うわぁぁぁぁぁぁん、レイスちゃーん!!」ガバツ

 

「わわ!?」

 

(ふっ……勝った)

 

 

 

「……なるほどな。それでここに来たのか」

 

「う……ぐす……」

 

部屋を出てから直ぐに大佐のもとを訪ねたビスマルクは、部屋に入って彼の顔を見るなり、半泣きになって彼に飛びついた。

そして今に至る。

 

「まぁそんなに気にすることはないと俺は思うぞ。マリアという名前だって俺はちゃんと考えて付けたし、お前に似合っていると思う」

 

「で、でもぉ……」グス

 

「ジェーンは元々勝気な性格だからな。だからここは、勝負に負けたにも関わらずそれを感じさせない普段通りの態度で接した方が、お前の大人として余裕を逆に見せつける良い機会だと思うぞ?」

 

「……なる……ほど」グス

 

「解ったか? というわけで俺は大人なお前が好きだからそろそろ大人らしく立ち直って部屋に戻ってもいいと思うぞ」

 

「やっ!」ダキ

 

「っと、おい」

 

「大佐の前では子供でいたいの! 大佐の前では泣きべそかく女の子でいいの!」

 

「……とんだ甘えん坊だな」

 

「ねぇ、もっと撫でて……抱き締めてよ」

 

「そうしたら落ち着いてくれるか?」

 

「わ、わたしが眠るまでお願い……」カァ

 

「手の掛かる Fräulein だな」

 

「……っ」(今更だけど実際に言われてみると、死語でも嬉しいな……♪)ギュッ




久しぶりにビスマルク書きたくなったので、名前の話も混ぜて書きました。
あ、プリンツ登場人物に追加しないと。
あ、ついでに山雲とかもしておこう……。


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第×11話 「応援」

那智が一人竹刀の素振りをして汗を流していました。
彼女は元々身体を動かし修練によって自分を鍛えるのが好きで、こういった海戦とはあまり関係のなさそうな事も、武道を身に付ける楽しさからよく行っていました。
しかし最近はその頻度が以前より多く、かつ修練に励む姿もどことなく充実感とは違った焦りの様なものが時折見えるようになっていました。

それに気付いていた提督は、その日彼女にタイミングを見て声を掛ける事を決めていました。


「ふっ、ふっ、ふっ……!」

 

「那智」

 

「あ、大佐」

 

「精が出るな」

 

「……いや。ふぅ……」

 

「ほら」チャプッ

 

提督は那智にスポーツ飲料を差し出す。

 

「ありがとう。……っく、ん……っはぁ」ゴキュゴキュ

 

「喉が渇いていただろう。ちゃんと水分は取れ」

 

「ん……」

 

「それを忘れるくらい余裕が無かったか?」

 

「……やっぱり解るか?」

 

「取り敢えず俺はな。改装の件か?」

 

「……ああ。後は私一人だからな」

 

「焦っているか? 羽黒達が先に改装を受けて」

 

提督のその言葉に那智は特に気分を害した風もなく、逆に自嘲気味な笑みを浮かべながら答えた。

 

「……全くないということはないが、どちらかというと妹達より自分も早く強くなりたいという方向での焦り、か」

 

「なるほどな、お前らしい」

 

「ふっ……自分らしくもない。これでは大佐以外の誰かにもこの焦りが伝わっているだろうな」

 

「否定はしない。なにせ、この鈍い俺でも解るからな」

 

「えぇ? はは、なんだそれ自虐か。ふふふふ」

 

「はは、これでも自覚している分マシだろう?」

 

「そうだな。だが、やはり女としては気付いて欲しいときには気付いて欲しいものだからな。できる事ならそれも徐々に直っていく事を期待するぞ」

 

「身に余る期待に戦々恐々といった思いだ」

 

「……なぁ」

 

「うん?」

 

「今日はやっぱり私の様子が気になって来たんだよな?」

 

「ああ」

 

「うん。なら事のついでで試すようで悪いが、私の……その、な」

 

「ん?」

 

「いや、やっぱりやめておこう! なんか本当に事のついでに機会を利用しているようではしたない感じがするからな」

 

「……まぁそこは無理はしないでお前のペースでいいと思うぞ」

 

『そこは』という提督の言葉に那智はピクリと反応する。

やはり提督は自分の考えを察していたと。

だから彼女は背中を向けたまま意を決して言った。

 

「……やめた」

 

「ん?」

 

「好きだ」

 

「……ああ」

 

「艦娘としてではない。女としてだぞ?」

 

「解っている」

 

「……そうか。なら」クル

 

那智は提督の方を向いてその目を見ながら言った。

 

「私も大佐の女になりたい」

 

「……俺でいいなら」

 

「本当か……!?」

 

「この期に及んで嘘は俺は言わない。だがな、俺は……な?」

 

「ああ、何人とケッコンしていようが私もそれに立候補した以上承知しているさ。だが、もうあなたへの好意を我慢しないと決めた以上これからは積極的にいかせてもらうつもりだ」

 

「……そうか」

 

「そんな困った顔しないでくれ。私は今、自分の気持ちに従って率直に行動できて晴れがましい気持ちなんだぞ?」

 

「ああ、悪い。ありがとう、那智」

 

「あ……う、うん」ポッ

 

「……」

 

「……抱き締めてくれるか?」

 

「汗とかいいのか?」

 

「こんな事言ってはなんだが、大佐なら気にしないと思って、な?」

 

「そのと通りだ。俺はお前さえよければ拒んだりはしないさ」ギュッ

 

「あ……。うん……いいな。うん……♪」ダキッ

 

 

 

「……」

 

夕暮れに映えるその二人を、静かに見守る人影が建物の陰に3つ程あった。

 

「那智姉さん……良かったわね」

 

妙高型4姉妹の三女、足柄が那智の想いの成就に優しい笑みを浮かべる。

 

「う、うん……良かったぁ」

 

その様子に感動して涙を浮かべていた羽黒が続いた。

 

「流石大佐です。那智もやっと自分から動いてくれたし」

 

一人和らな表情をしながらも、凛とした雰囲気はそのままに発言したのは長女の妙高。

 

「……あとは妙高姉さんだけね?」

 

「え?」

 

「あ、そういえば……」

 

「私……? ふふ、そうね。私は那智以上に素直じゃないからちょっと時間掛かってしまうかもね」

 

「ええー? 素直じゃないというか、姉さんの場合はどちらかというと……ね? 羽黒」

 

「うん……。素直に告白しても態度が普段と変わらないから逆に大佐に想いが伝わらないのを不安に思ってる……?」

 

足柄の問いかけに羽黒は感動していた顔から瞬時に真面目な表情になると、冷静な声で妙高の恋愛事情をそう評した。

 

「は、羽黒……」(なんかこの子、恋愛が絡むと凄く饒舌ね)アセアセ

 

「あ、姉さん図星?」

 

「もう、知りませんっ」

 

「お姉ちゃん、私力になるよ?」

 

「え?」

 

「お、羽黒積極的じゃない」

 

「や、やめてよ足柄お姉ちゃん……。私はただ皆で大佐の事好きになりたいだけだよ……」

 

「もう、この子ったら……」

 

「仕方ないわね。羽黒がこう言ってるんだから私も力にならないわけにはいかないわね」

 

「足柄も……。はぁ、そうね。それじゃちょっと助けてもらおうかしら」

 

「そうこなくっちゃ。まずは服のコーディネートからね!」

 

「え? そ、そこからなの? 皆は制服のままだったじゃない?」

 

「お姉ちゃん、意外性は大事なの。そうすれば大佐も印象に残るし、その後もスムーズだと思うよ?」

 

「そ、そうなの……?」(す、凄い自信……)

 

「羽黒解ってるじゃない! じゃぁ先ずは何にする? メイド? 警察官?」

 

「足柄お姉ちゃんそれ違う……」

 

羽黒の冷めた声に妙高は笑いながら補足する。

 

「ふふ、羽黒、これはワザとよ。足柄も変に緊張を解そうとしなくていいから、ね?」

 

「あはは、やっぱり適わないわね姉さんには。それじゃ姉さん、頑張りましょうか? ね?羽黒」

 

「うん。妙高お姉ちゃん私達に任せてね!」

 

「ほ、程ほどにお願いね?」

 

何やらかつてない妹達のやる気若干気圧された妙高は、不安半分感謝半分と言った様子で苦笑するのだった。




提督が日本へ行った話が絶賛滞っていてすいません。
でも、こうして思いついた話を投稿しないとまた間が空きそうなので。

那智が素直になったら凄く可愛いと思います。


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第×12話 「ごめんなさい」

電と雷と暁は同じ部屋に住んでいました。
その日は3人とも非番。
暁は食堂でまだ朝食を摂っており、電と雷の二人は部屋で思い思いに過ごしていました。


「ねー電ぁ」

 

ベッドに横になった雷が電に話し掛ける。

 

「ん? なーに?」

 

「暇ぁ」ゴロゴロ

 

「あっ、だ、だめだよその上でゴロゴロしちゃ! 暁ちゃんのヌイグルミが……」

 

雷が寝そべっていたのは暁のベッドだった。

そのベッドには彼女のお気に入りのクマのヌイグルミも乗っており、雷はそれを転がるのに任せて……。

 

ぐにゅぅ……プチッ

 

ガチャッ

 

「「あっ」」

 

「……」

 

食堂から遅れて戻って来た暁がドアを開いて固まっていた。

その視線の先には雷に轢かれてその圧力によって無残な姿になった彼女のヌイグルミがあった。

 

「あ、暁ちゃん……」

 

「お、暁ーおあえいー」

 

「……なにしてるのよ!!」

 

廊下に暁の怒声が短く響いた。

 

 

「ごめんね、痛かった?」ナデナデ

 

暁は雷に潰されたヌイグルミを腕に抱き、看病する様に撫でる。

 

「暁ー、ヌイグルミなんか抱いちゃってさぁ。レディらしくないわよー?」

 

「うっさい! ヌイグルミもレディの嗜みなの!」

 

「はわわ、ご、ごめんね暁ちゃん……」

 

「電はいいのよ。悪いのは雷だもん」

 

「えー? ただゴロゴロしてヌイグルミを轢いちゃっただけじゃなーい」

 

「そのせいでクマちゃんの目が飛び出ちゃったんでしょうが!」

 

反省の色を見せない雷に我慢できなくなった暁は、そう言って彼女の前に雷に潰された拍子にその圧力で、目の部分が解れて半分外れてしまったヌイグルミを突き出した。

その無残な姿に電は小さな悲鳴をあげる。

 

「ひっ」

 

「うわ、わりとグロ……。ぷっくく……」フルフル

 

「笑うなぁ!」

 

「お、落ち着いて暁ちゃん」

 

「むぐぐ……。はぁ、どうしようこれ……」

 

「暁ちゃん直せないの?」

 

「さ、裁縫は苦手で……」

 

「誰かできそうな人に頼むしかないわね」フンス

 

「元凶が偉そうに正論言うんじゃないわよ!」

 

「できそうな人……結構誰でも出来そうだけど……」

 

「ここはやっぱり鳳翔さんなのです!」

 

「ほうひょーはんはひょーはえんへーひひっへふはほ」(*鳳翔さんは今日遠征に行ってるわよ)

 

「物を食べながら喋るじゃないわよはしたない!」

 

「そうなのですか。鳳翔さんは今はいないのですか……」

 

「じゃぁお友達繋がりで夕雲は?」

 

同じ駆逐艦で何となく器用そうなイメージが浮かんだ暁は次の候補を挙げる。

だがその可能性も、その日の遠征メンバーを把握していた雷の言葉によって断たれる事になる。

 

「夕雲も遠征に行ってるわよ」

 

「えー!」

 

「アテがどんどんなくなるのです……」

 

「わたしが良い人知ってるわよ!」

 

「え?」

 

「……誰よ?」

 

何故か不安を感じつつも、半信半疑といった顔で暁は雷に訊いた。

 

 

 

「……俺に? これを……?」

 

提督は暁達の突然の願いに戸惑った声をつい出した。

電と暁もそれを察したのか、どこなく申し訳な顔をしている。

 

「あ……その、出来たらでいいのですけど……」

 

「そ、そう! 別に無理はしなくていいから!」(ちょっと雷ー!)ヒソ

 

「できないなら仕方ないもんね!」(ん? なに?)コショ

 

(なんで大佐なのよー!?)

 

(だって面白そーじゃない?)ニカッ

 

(あ、あなた……覚えておきなさいよー!)

 

「……雷と暁は何を話しているんだ?」

 

「き、気にしなくても大丈夫だと思うのです!」

 

「そうか? っと、これだったな。ふむ……」

 

提督は暁から受け取ったヌイグルミを確かめるように見る。

電はそんな提督に対して恐縮しきった様子で謝ろうとした。

 

「あ、あの……出来ないの分かってて訊いてしまってごm」

 

「いや、できるぞ?」

 

「「「え?」」」

 

予想外の返事に三人は固まった。

 

「た、大佐できるの……? 裁縫を……?」

 

言い争うのをやめた暁が驚いた顔で提督を見る。

同じく雷も目を丸くしていた。

 

「え、嘘……」

 

「す、凄いのです! 流石大佐は提督なのです!」

 

そんな二人とは対照的に電は、少し興奮した様子で提督のこの意外なスキルに感心して目をキラキラさせていた。

 

「まぁこれくらいならな。これでも士官学校時代で一人暮らしをしていた頃は服の解れとかは自分で直していたものでな」

 

「い、意外ね。彼女さんがしてくれたんじゃないの?」

 

尚も信じられないと言った様子の雷が事の真偽を確かめようとする。

 

「彼女と同棲していたのは短い間だけでな。その頃の俺はすでにそれなりに裁縫の腕が板に付いていたから全部自分でやっていた」

 

「大佐は紳士の鑑ね!流石はこの暁の提督さんよ!」

 

「へ、へぇ……」

 

「ん? 雷、お前はまだ俺が裁縫ができるのが信じられないか?」

 

「い、いやそういうわけじゃないんだけど……何かイメージと違って……」

 

「はは、そうか。それは仕方ないな。改めて考えると自分でもそう思う」

 

「そんな事ないのです! 電は大佐ができても変とは思わないのです!」

 

「暁もよ! 大佐、このクマちゃんを直して雷の鼻をあかしてやって!」

 

「え……雷は別にそこまで疑ってなんか……」

 

どことなく批判の風向きが自分に向いてきて雷は動揺して目を泳がせる。

 

「ふふん、雷、今更開き直っても遅いんだから!」

 

「雷ちゃん大佐を信じてあげて欲しいのです」

 

「いや、だから雷は……」

 

「雷、見苦しいわよ!」

 

「だ、だから雷は……」ジワッ

 

誤解であるのに二人の勢いからそれが言いだせず、気圧され気味となった雷は不安と罪悪感から二人に見えない様に俯くと泣きそうな顔をした。

それを見た提督は取り敢えずこの場を収めるべく行動した。

 

「……暁、取り敢えずこれを預かるぞ。電と一緒に部屋で待っていろ」

 

「分かったわ」

 

「雷ちゃんは?」

 

「これは雷がやってしまったんだろう? だったら直ったらこいつに持って行かせる。雷、お前はこれが直るまでここに居ろ」

 

「……」コク

 

提督の言葉に俯いたまま黙って頷く。

 

 

「それじゃ大佐、お願いね」

 

「お願いしますなのです」(あ、あと雷ちゃんの事も……)

 

「ああ、分かった」

 

「「失礼しました」なのです」

 

バタン

 

 

「……さて」

 

「……っ」ビクッ

 

雷は提督に話し掛けられてびくりと肩を震わせる。

 

「できたら一緒に届けに行こう。その時にちゃんと謝ればいい」

 

「……!」

 

「な?」ポン

 

「大佐ぁ……」ジワッ

 

頭に置かれた提督の手を見て雷は安心感から涙を溢れさせた。

 

「縫い方教えてやろうか? 今度はお前が直してやるといい。そうしたら暁もお前の事を見直すぞ」

 

「……っ、うん! 教えて!」

 

「よし、じゃぁ俺の手をよく見ておけよ。まずは……」




電よりは雷派の筆者です。
吹雪改二が実装されたようですね。
その改造可能レベルは70だとか。
因みにうちの吹雪はまだ58でした。
気長にやりましょうかw

そういえば艦これのアニメが始まったらしいですね。
その事実を知ったにも関わらず、何故か興味が湧かないのは何故だろう……。


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第×13話 「疲労」

提督が何やら疲れた様子で廊下の窓から煙草を吸っていました。
大井がそれを見掛け、心配するように話し掛けます。

振り向いた提督の顔には珍しく疲労の度合いを確かに示す隈がありました。





「た、大佐大丈夫ですか?」

 

「ん……ああ。単に寝不足なだけだ」

 

「一体どうしたんですか?」

 

「いや、なに。偶にある本部からの訓練指示に二一駆逐隊を編成したものがあってな」

 

「二一……えーと……」

 

「初春、子日、初霜、若葉だ」

 

「ああ、はい」

 

「訓練の代わりにで警備任務を兼ねた出撃をさせたんだ」

 

「ええ、それで?」

 

「あいつらも突出して練度が高いというわけではないが、お前と同じように定期的に遠征や警備に長く従事してきたこともあって特に練度が低いということもない。だろう?」

 

「私はもう88ですけど、確かに駆逐隊の子たちは平均で50以上はいってますからね」

 

「そうだ。だからちょっと警備は警備だがここの近海ではなく、あいつらの練度に丁度よさそうな海域に行かせたんだ」

 

「北方海域、モーレイ海だ」

 

「モーレイ……」

 

大井はその海の名前を聞いて少し考えた。

確かにあそこは練度の低い艦娘には確実にキツイ所だが、少し前に改二にもなった初春が率いる二一隊なら、容易とは言わないまでも攻略は数をこなせば可能な気もした。

 

「その顔、出撃させる前の俺と同じ事をかんがえているみたいだな」

 

「えっ、そ、そうですか?」アセアセ

 

「そう、俺も数をこなせばあそこの目標の最終ラインまでは行けると思っていた。だが実際は……」

 

「上手くいかなかったんですね?」

 

提督は大井の言葉に少し苦い顔をしながら肯定した。

 

「ん……まぁな」

 

「被害が大きかったんですか?」

 

「被害はまぁ、毎回中破が2人出るくらいの程度だった。問題だったのは……」

 

「だったのは?」

 

「初春以外のメンバーがちょっとな……」

 

「え? 子日ちゃん達に何か問題が?」

 

大井はそこで心底驚いた顔をする。

提督がまるで自分の部下を批判するような事を言ったように聞こえたからだ。

たしかに上司である以上、それも軍属である以上、その関係において指導的立場からキツイことを言う事もあるだろう。

だが自分たちの提督はどちらかというと、功を焦らず時間をかけて確実な成果を目指す堅実な戦略を取るタイプだ。

そんな彼がそんな事を言うのは大井にとっては本当に意外だった。

 

「ん、誤解するなよ。別にあいつらが何か失敗をしたとかいうわけじゃないんだ」

 

「と言いますと?」

 

「出撃した時な、あの時に限ってあそこの海域が結構荒れていたんだ」

 

「はぁ」

 

「おかげで進路通り向かおうとしても気付いたらコースから外れていたり、順調だと思っていたら途中で敵に遭遇して相手をしている内に進路を見失ったりして結構大変だったんだ」

 

「なるほど」

 

「そういうわけもあってなかなか目標地点まで辿り着けずに出撃と撤退を繰り返していたんだが」

 

「ええ」

 

「途中で初春が何となく今回は不調に終わりそうだと予感したんだろうな。あいつが出撃はもうこれで終わりにしないかと進言してきたんだ」

 

「初春さんが……」

 

「あいつらに原因が無い事は俺も分かっていたし、初春自身も単に運が悪かった程度にしか思ってなかったと思う。そんなに悔しそうな顔をしていなかったからな」

 

「そうですね、私もそう思います。初春さんならあまり無理はしないでしょう」

 

「だから俺もあいつの進言を受け入れて出撃を終わらせようとしたんだ。訓練の名目は既に十分果たしていたしな」

 

「そうですね」

 

「だがそうしようとしたら……」

 

「あ、もしかしてその時に……?」

 

大井は提督の声が微妙に低くなった事に気付いた。

 

「そうだ。子日達が異議を唱えてきたんだ」

 

「子日ちゃんが……。やっぱり悔しかったから……?」

 

「そんな感じだった。あと、艦隊のリーダーだった初春に多少申し訳ない思いもあったみたいだ。初霜と若葉も直ぐに子日に賛同してきたからな」

 

「あ、何となく想像できます」(あの2人は子日ちゃんと比較するわけじゃないけど真面目なタイプだもんね)

 

「初春も最初は三人を説得しようとしていたんだがな、子日達があまりにも熱く挑戦を訴えるものだから途中でその熱意に圧されてしまったんだ」

 

「ああ、折れちゃいましたか」

 

「ああ。……それが長い戦いの始まりだった」

 

 

 

「え?」

 

そこまで話した提督は、今度は声だけでなくその表情も明らかに沈鬱になった。

重苦しい雰囲気を放ち始めた提督に大井は動揺した声をつい出してしまった。

 

「艦隊が駆逐艦のみで編成されている関係上、今回は被害は中破のみで納まっていたが大破の被害を受けたとしても修復に消費する資材は知れているだろう?」

 

「ええ、まぁ……。あっ」

 

大井はそこで提督が言いたい事が理解できた気がした。

被害が出てもそんなに資材を消費しない駆逐艦たち。

という事は後は修復に掛かる時間だけ……。

 

「あの、結果的に何回くらい出撃したんですか?」

 

「気付いたか。ああ、出撃した数は44回だ」

 

「よ、よんじゅう……」

 

「そう。つまり消費した高速修復剤は176個」

 

「ひゃ、ひゃく……!」

 

「結局その犠牲のお蔭で何とか目標地点には到達できたが、その達成に湧く子日達はともかく初春がな……」

 

「疲労、じゃないですよね。やっぱり責任感……?」

 

「ああ。出撃しながら消費した修復剤を数えていたんだろうな。任務を終えた後は一人だけ暗い顔をして部屋に戻って行った」

 

「うわぁ……」

 

「そしてそれに付き合った俺はこの通り寝不足だ」

 

提督は苦笑交じりにワザとらしく大きく腕を広げて見せた。

大井はその姿からはを見て、提督から哀愁も漂っているよな気がした。

 

「少しくらい大佐も休んだらどうです? 私、加賀さん達に代行をお願いしてきますよ?」

 

「……気持ちは有り難いが、初春の奴が立ち直るまではここを堅持しておきたいんだ」

 

「大佐……」

 

自分の進言を聞き入れず、あくまで仕事に従事しようとする提督に大井は心配した顔をする。

 

「そんな顔をするな。確かに寝不足だが俺はあいつらほど過酷な事はしていない。ずっと部屋で指示をしていだけだしな」

 

「でもだからって、私たちと大佐は体力が……」

 

「分かっている。けどまぁこれは俺の我儘だ。悪いが今は通させてくれ」

 

「無茶よ……」

 

「大井、ありがとう。だが大丈夫だ心配するな」

 

「月並みなセリフですね。お蔭で信憑性が薄いですよ?」

 

「耳に痛い」

 

「……分かりました。何か困ったことがあったら言って下さいね? 私もできるだけサポートしますから」

 

「悪い」

 

「いいえ♪」

 

 

「……」

 

「な、なんですか?」

 

ここまで言い終えた大井だったが、ふと気づくとそんな自分を微妙に眉を寄せて見つめる提督に気付いた。

 

「いや、お前って意外に優しいんだな」

 

「……は?」

 

『優しい』という言葉が自分にとって意外だと言われ、大井はその言葉が提督から出た事に身体が衝撃に襲われた。

 

「いや、俺はお前は何となく男には淡々としたイメージがあったんだ」

 

「な、何を……」

 

「お前と北上は特に仲が良いだろ? その仲の良さを見ていたらいつの間にか俺の中でお前のイメージができあがっていてな」

 

「だから私が女にしか興味が無いと……?」

 

提督が言いたい事を何となく理解した大井が冷めた声でじろりと提督を睨む。

 

「そこまでは言わないが、北上とあそこまで仲が良いから男よりかは女とつるむ方が性が合っているんだろうな、てな」

 

「……」

 

「大井?」

 

「大佐」

 

先程とは打って変わり満面の笑顔で大井は提督に言った。

その眩しい程の笑顔に、提督はその代わり様に心中に何故かざわめきを覚えた。

 

「ん?」

 

「あなたはひとつ誤解をしています」

 

「誤解……?」

 

「ええ、そうです。私は確かに北上さんは大好きですよ? それはもう親友だから。北上さんとならそれ以上の関係でも構わないくらい」

 

「ああ」

 

「でもだからって……」

 

「うん?」

 

満面の顔から一転、一瞬俯いたと思った大井は今度はかなり不機嫌そうな顔でこう提督に一喝した。

 

「私が男(大佐)に興味が無いと結論付けられるのはすっ……ごく遺憾です!」

 

「……」

 

「大佐、私が一度でも大佐を毛嫌いした事がありましたか?」

 

「……ないな、多分」

 

「多分じゃなくて絶対にないはずです!」

 

「……そうだな」

 

「ええ、そうですよ。だから、ね? 分かりましたか?」

 

「……? 何をだ?」

 

「……っ」ピキ

 

提督のタイミングの悪い鈍感ぶりに再び笑顔となった大井のこめかみに青筋が立つ。

これはもうしっかり説明してやらねば。

その何とも言えない威圧感を放つ大井の笑顔に提督は自身の失言を理解し、冷汗を垂らしながら言った。

 

「俺はまた何か……?」

 

「大ありです!」

 

その日、大井が自身について提督に持たれた誤解を解くのに説教と怒りのコンボが夜明け近くまで炸裂した。

おかげで彼女の話が終わる頃には初春も気を取り直し元気な姿で執務室に現れたのだが、その訪れた先には心身ともに疲弊しきって机に突っ伏している提督の姿があったという。




二一駆逐隊の出撃任務のお蔭で昨日は本当に疲れ果てていました。
流石に実際に駆逐艦だけで出撃していたわけではなく、最初は+航空戦艦、空母→+潜水艦、空母→+高速戦艦、空母、と言った具合に変えていき夜明け近くにやっと達成しました。
結局、最後の選択が個人的に一番正解だったような気がします。

というかバケツの残りがヤバイです。
どうしよう……(汗)


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第×14話 「無用」

本部から提督の基地に電話がありました。
何やら無線ではなく直接提督でないと話せない要件らしく、秘書艦の三隈から受話器を受けた提督は訝しみながら電話に出ます。
その内容は……。


「艦娘の回収?」

 

『はい。本部の指示で今各拠点で不要な艦娘を微量ではありますが、資材と交換にその回収を行っておりまして』

 

「不要の……」

 

その言葉に提督は穏やかでないものを感じた。

今の海軍では艦娘の人権の保護について一定のものを認めている筈だ。

その環境において『不要』というその言葉は、今の軍規の内容に抵触しているのではないか?

 

『ああ、別に回収した艦娘は無碍に扱いはしません。回収した艦娘は本人の意志を確認して同意を貰えたモノのみを対象とし、新しい装備と既存の艦娘の性能向上の為の素材にします』

 

「素材……。それは、海軍が保障している艦娘の人権として問題は?」

 

『はい。こちらとしては確実に同意を受けたモノのみとしていますので。それに素材とは言いましたが、実際は解体と一緒です。還元機によって再び意識の無いエネルギー体に戻るだけですよ』

 

「……」(他から回収して転用を必要とするほどの規模の何かを進めているという事か)

 

『はは、期待して頂いて大丈夫ですよ』

 

電話口に出ている相手もそれなりの切れ者らしい。

お互い顔は見えていないというのに提督のその一瞬の沈思の間から彼の考えを察したらしく、そんなことを言ってきた。

 

「……因みに同意しなかった艦娘はどうなるのですか?」

 

『ああ、その場合は厳格に選定した結果、問題ないと判断した新人の提督に本部からの補充要員として提供して再び活躍の場を与えています』

 

「……なるほど」

 

『他に気になる事がありますか?』

 

「この話が書面ではなく、基地の電話に直接というのはやはり……」

 

『はい、お察しの通りです。配下の艦娘に情報が漏れて不要な混乱を避けるためです』

 

「やはりそうでしたか」

 

『他にはもうありませんか? 私としては貴方はなかなか優秀な方の様ですので、回収できてもできなかったとしてもその判断には、個人的に一定の評価と理解ができると思います』

 

「はは、買い被りですよ。ご用件は分かりました」

 

『そうですか。では、また提供頂ける際は、こちらの直通までお願いします』

 

「了解しました。ご苦労様です」

 

『いえ、こちらこそ。それでは失礼致します』

 

ガチャッ、ツー、ツー……。

 

 

「大佐、お話長かったですね。どういったご用件だったんですか?」

 

提督が電話している様子を見守っていた三隈が彼が受話器を置くと同時に訊いてきた。

提督はそんな三隈の姿をチラリと横目で見た後暫く目を瞑り、そして再び目を開けると彼女の方を向いて面と向かって話し始めた。

 

「……今本部で他の基地で持て余している艦娘を回収しているそうだ」

 

「持て余している……ですか」

 

「ああ。どうもその目的は新しい研究か何かのエネルギーとして転用する為らしいが……」

 

「……わざわざお電話でお話されるという事は、もしかして強制ですか?」

 

「いや、単に変にお前達にこの話が漏れて不要な混乱が起こるのをを避ける為だ」

 

「では、本部に提供するかどうかは提督の任意なのですね」

 

「そうだ。回収された後もちゃんと本部で同意を受ける事ができた奴だけを利用しているらしい」

 

「拒んだ方は?」

 

「厳しく選定した新しい提督に助っ人として送っているらしい」

 

「そうなんですか。良かった……」

 

緊張している様子はなかったが、真剣な顔で提督の話を聞いていた三隈はそこでやっと安心したように表情を柔らかくした。

 

「三隈」

 

「はい?」

 

「もし、俺がお前に本部に行けと言ったらお前は大人しく行くか?」

 

三隈は提督のこの、聞く相手によっては失望を与えかねない問い掛けに、特に動揺も見せず、彼の方をしっかり向きながらきっぱりと言った。

 

「はい。それが大佐のご命令でしたら。余程理不尽な命令でない限り艦娘として、軍人として三隈は最後まで大佐に従いますわ」

 

「そうか……」

 

「大佐?」

 

「じゃぁ訊き方を変えよう。お前は行きたいか?」

 

「嫌です♪」

 

三隈はこの質問にも、今度は満面の笑顔でまたきっぱりと答えた。

 

「ふっ……そうか」

 

「はい。それに三隈は大佐が自分を持て余していると思うほど、役立たずのつもりはありませんもの」

 

「……そうだな。お前は頼りになるしっかり者だよな」

 

「はい、その通りですわ♪ それで大佐?」

 

「うん?」

 

今度は三隈の方から彼の機嫌を窺うように前屈みになって、下から覗くように上目遣いで質問してきた。

 

「大佐は誰かを本部に行かせるつもりなんですか?」

 

「……お前の考えている通りだ」ポン

 

提督はその質問に敢えて明確に回答はせず、優しく三隈の頭に艇を置いた。

三隈はその答えと行為を受けて今まで隠していた不安と恐怖が安心と喜びに転じ、その感情が爆発するのを抑え切れなくなって提督に飛びついた。

 

「……っ、やっぱり! 大佐、やっぱり大佐は三隈の提督です!」ダキッ

 

「っと……恰好を付けて良い顔をしてるだけかもしれないぞ?」

 

「大佐は嫌な事は嫌、不正も隠さず堂々とする方です。決してそんなうわべだけの事なんかしない方だと三隈は知っていますわ」スリスリ

 

「おい、前者はともかく後者は軍人云々以前に一組織人としてどうなんだ」

 

「ただの例えです。ふふふっ♪」ギュー

 

「分かった分かった、だからもう離れろ。仕事するぞ」

 

「はーい。あ、お茶ここに置いておきますね」コトッ

 

「ああ、ありがとう」

 

「さぁ、今日もやりますわよ!」

 

こうして三隈の日常が、その日も始まった。




解体っていろんな解釈されてますが、実際のところどうなんでしょうね。
あ、それはアニメを見ればいいのか。

やるのか……? そこは……?



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第×15話 「運」

黒潮が大佐の膝に寝転びながら何かを訴えていました。
特に駄々をこねいるといった感じでもなく、黒潮は寝そべって大佐の顔を下から見上げながらリラックスした様子でこんな事をお願いしていました。


「大型建造を?」

 

「せや。久しぶりにやらへん?」

 

黒潮の問い掛けに大佐はちょっと苦い顔をしながら言った。

 

「いや、建造は、特に大型はいろいろあって気が進まなくてな……」

 

「それ、大佐が間違って指示出したり、無い資材で遊び感覚で運試しした所為やろ」

 

「……まぁ、な。実際行った回数は数えるくらいしかないが」

 

「相変わらず弾薬がないからなぁ」

 

「全くだ」

 

「いや、そこ何とかしよ? いっつも同じ遠征ばっかりやからやん、それ」

 

「だがおかげで弾薬以外は困った事がないぞ?」

 

「せやな。とりわけ、空母や戦艦に至ってはいつでも修理可能っちゅう感じやな」

 

「まぁそれも今は高速修復剤の数が心許ないから単純に保有している量しか誇れないがな」

 

「明石さんも頑張ってくれる思うけど、流石に戦艦や空母の修理ばっかりやと疲労で倒れてしまうやろなぁ」

 

「ふむ、というわけでうちは現在弾薬はいつもの事だが、バケツも足りない。よって大型建造は無理して行わない方がいいと思うんだが?」

 

「うーん……やっぱそうかなぁ」

 

提督の結論に黒潮は納得した様にも見えたが、それでもまだ何か言いたい事があるようで、彼の膝の上で未練がましくズボンの生地を掴んで離さなかった。

 

「一体どうしたんだ?」

 

「や、うちってさっき大佐も言ってたけど大型建造自体はあんまりしてへんやん?」

 

「ああ」

 

「せやから、せやからな? うちも……うちも一回やってみたいなぁ、なんてぇ……えへへ」

 

黒潮はそう言って照れながら言い難そうに本当の理由を正直に言った。

提督はそれを聞いて考えるように顎に手を当てながら呟いた。

 

「確かに駆逐艦にはまだあまりやらせた事がなかったな」

 

「やろ!? せやろ!? せやから……なっ? ねっ、お願いや大佐」

 

提督の言葉に確かな希望を感じた黒潮は、勢いよく半身を起すと今度は彼の服を握って期待に満ちた目でせがんだ。

 

「ふむ……。建造機の使い方は解るか?」

 

「ばっちしや! 投入する資材決めて建造イメージを本部に送ればいいんやろ?」

 

「そうだ。だが言っておくがイメージ通りにいくとは……」

 

「わかってるって。練度や艦種も影響するんやろ?」

 

「ああ、なにぶんまだシステム的に不安定らしくてな」

 

「ええて、ええって。ちょっちやってみてその事を皆に自慢したいだけやし」

 

「……建造の理由が不純だが、まぁ確かに最近やってなかったしな。分かった、だが1回だけだからな?」

 

「ホンマおおきに大佐! ほな、やってくるね」

 

「ああ」

 

 

 

――そして次の日。

 

「本日着任となりました大鳳です。よろしくお願いします」

 

装甲空母大鳳が新規着任艦として提督の執務室を訪れていた。

 

「……」

 

「はぁ~……」キラキラ

 

大鳳は自分の着任の挨拶に対して鈍い反応を見せる二人に戸惑った顔をした。

 

「え、あの……ど、どうかしましたか?」

 

「いや、ちょっとこいつの引きの良さに放心していただけだ。よろしくな大鳳。そしてようこそ我が基地へ」

 

「あ、はい! 早速の歓迎のお言葉、ありがとうございます提督!」

 

「ああ、俺の事はできたら大佐と呼んでくれ。ここでの愛称みたいなものだ。心さえちゃんと意識していれば、そう硬く考えなくていい」

 

「大佐……ですか。了解しました。では改めてよろしくお願いします大佐!」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「黒潮さんもよろしくお願いしますね」

 

「へ? あっ、ひゃ、はいな!」

 

大鳳に声を掛けられ我に返った黒潮は、ビクりと身体を震わせるとその場を取り繕うように慌てて返事をした。

大鳳はその様子にキョトンとする。

 

「え?」

 

「……悪い。こいつもちょっとお前が来たことに気が動転してたみたいだ」ポン

 

「あ……う……」カァ

 

「あら、それは。ふふふ」

 

「大鳳、実はな。今回のお前が生まれたきっかけを作ったのはこいつなんだ」

 

「え? そうなのですか? では黒潮さんが建造を?」

 

「そうだ。うちもお前は初めて迎える艦だ。そういう意味でもこいつは動揺してたんだろうな」ポンポン

 

「う……堪忍や。うちも初めての大型建造やったから大鳳さん見た時は正直現実が信じられんくてビビってん……」

 

黒潮は提督に頭を撫でられながらそのフォローを有り難く思いつつ、恥ずかしそうに大鳳に釈明した。

大鳳はそんな黒潮に特に気を悪くした様子もなく、微笑み、彼女の頭を撫でながら言った。

 

「いえ、そんな。私がここに来るきっかけを作ってくれたのが黒潮さんという事なら、私はそれに感謝するだけですよ」ナデナデ

 

「あぅ……さ、『さん』は流石にちょっとアレやから、呼び捨てで構わへんから、そう言ってくれへん?」

 

「え? んー、そうですねぇ……。なら黒潮ちゃんでいいですか?」

 

「あ……う、うん」コク

 

「では黒潮ちゃん、私を導いてくれてありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」スッ

 

「……っ、うん! うちこそよろしゅうに!」ギュッ

 

大鳳が差し出した手を黒潮は満面の笑みを浮かべて嬉しそうに握り返した。

 

 

 

それから暫くして、提督は定例となっている交流の場を時間を設けて作り、改めて大鳳を呼んだ。

 

「騒がしくてすまないな」

 

「いえ、寧ろ初めての出会いが賑やかで心に残りました」

 

「そうか、それなら良かった」

 

「……大佐?」

 

「うん?」

 

提督が振り向くと、そこには最初の挨拶をした時よりも明らかに凛とした雰囲気で真面目な表情をして佇む大鳳がいた。

 

「私、大鳳は艦隊唯一の装甲空母として奮戦、奮闘し、国に、海軍に、提督に、貢献する事を約束します。だからどうぞご期待ください」

 

「ふ……頼もしいな。ああ、期待させてもらおう」

 

厳かにそう言って一礼し、自身の決意を表明する大鳳を提督は心から歓迎した。

 

「はい、失望はさせません! ……ところであのぉ」

 

しかし、そんな凛とした雰囲気だった大鳳であったが、その意志を伝え終わると何やら言い難そうにしながらも何か困った顔をして提督に質問をした。

 

「ん? どうした?」

 

「先程から気になっていまして、可能ならお教え頂きたいのですが……」

 

「?」

 

「何故、執務室に調理台があるんでしょう?」

 

大鳳の視線の先には、相変わらず無造作に置かれている提督愛用の調理台が何とも言えない存在感を放っていた。

 

「ああ、俺の趣味だ。何か食べるか? 歓迎祝いで何か作るぞ」

 

「え?」

 

予想外の誘いに大鳳は目を丸くした。




まだ大型建造で空母レシピ回した事が無かったので、イベント前に一回回してみるかと回して見たら何か大鳳が出ました。
個人的には401が出て欲しかったのですが、まぁ結果オーライといったとこでしょうか。

提督の日本帰国編もそうですが、最近艦これのアニメをさわりだけ見てなんとも言えない違和感に創作意欲が湧かず、最近ちょっと混乱していました。
(レギュラーの娘全てに、謎の欲求に駆られ何故か2重のキラ付けを敢行するいう行為に没頭していたというもありますが)

今度一回自分の中のイメージを整理する為、この作品の艦これの世界の設定のあらましのような場を設けようと考えています。
相変わらず作業は亀以下なので何時になるか判りませんが。


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第×16話 「望み」

提督は執務をしながらふと最近仲間に加わった大鳳の事を思い出した。
彼女が自分の事をある言葉で言い表していた事を思い出したのだ。
それは……。


「装甲空母、か……」

 

「大鳳さんの事ですか?」

 

傍らで書類の確認をしていた翔鶴が提督の呟きを耳にして顔を上げた。

 

「ああ」

 

「彼女いいですよね。装甲の防御力のおかげで耐久性もありますし」

 

「中破以上の被害を受けたら攻撃能力を維持し難いお前達にとっては羨望の的か?」

 

「え? んー、そうですね。憧れではありますけど、でも私たちは装甲が無い分機動力はありますからね。一長一短ですよ」

 

「確かに」

 

「赤城さん達強いでしょう?」

 

「なんだ、そこで自分を出さないのは一航戦に遠慮でもしているのか?」

 

翔鶴はその問いにあくまで答えず、わざと微笑むだけにとどめた。

 

「どうでしょう?」ニコ

 

「お前も瑞鶴も立派に戦っているさ。ん……」ゴソゴソ

 

「あ、どうぞ」シュボッ

 

提督が口に煙草をくわえた時点で、火種の用意をしていた翔鶴が手早くそれを彼の前に差し出す。

 

「ん、すまない。……ふぅ」ジジ……

 

「……最近、煙草の数が増えてません?」

 

「ん……」

 

「お仕事の最中に吸うのは、大佐の場合は大体心労からくるものだと私は捉えていますけど……。大丈夫ですか?」

 

「よく見ているな」

 

「あっ、ご、ごめんなさい……」

 

「別に誤る事じゃないさ。ふぅ……そうだな」

 

「?」

 

「前にな、日本に帰っただろ? 俺」

 

「あ、はい」

 

「その時にな、大和達を連れて行っただろう?」

 

「ええそうですね。確か大和さんと……大鯨ちゃんと秋月ちゃんでしたよね」

 

「そうだ。そいつらを連れて実家に帰ってからな」

 

「?」

 

「まぁいろいろあって、結果だけ端的に言えば親は俺の近くに女性がいる事に安心したんだ」

 

「え?」

 

「まぁ親も若いとは言えない歳だからな。あのくらいの年代になると子の結婚とか孫の事とか気になるんだろうな」

 

「え? あ……はい……。え?」

 

「それからというもの、よく親から俺に結婚の話とか軍を辞めて落ち着いた生活をしないかとか、そういった話がされるようになってな」

 

「……」

 

「勿論真剣に考えていないわけじゃないが、それでも今はその事に専心する気にはなれないわけで……ん? 翔鶴? どうした?」

 

提督がふと翔鶴の方を向くと、彼女は何やら深い悩みでも抱えている様に俯いていた。

提督の言葉で我に返った翔鶴は慌てて反応するも、その動揺ぶりは提督が訝しむのに十分なものだった。

 

「え? ああ、いえ!」

 

「……? まぁ俺ももう30過ぎだからな。親にその話をされるようになってから最近はよくその事が頭にチラつくようになったんだ」

 

「なるほど……」

 

「流石にここでは何人かと既にケッコンしているとは言えなかったな」

 

「……。大佐は」

 

何やら真剣な表情をした翔鶴が提督に訊いてきた。

 

「ん?」

 

「艦娘と本当に結婚できるとしたらどうします?」

 

「……お前たちに生殖能力が備わっていれば、俺はもうその時点で艦装を外してさえいれば普通の人間と変わらないと俺は思う。だから……」

 

「だから?」

 

「もしさっき言った点がクリアされていれば、軍からある程度の制約はあるだろうが、お前が言う本当の結婚というのも十分にありだと思う」

 

「そうですか……!」パァッ

 

艦娘でも本当に結婚する事ができる可能性がある。

本部による正式な回答ではなかったが、翔鶴はその答えが提督の口から出たことに何とも言えない喜びを感じ、その感情が笑みとなって顔に表れた。

 

「……しかも幸か不幸か今の日本政府は戦後の人口減の問題もあってかなり厳しい条件付きだが、結婚に対する考えを緩和させる為に一夫多妻制も一妻多夫制も認めているしな。提督が艦娘と本当に結婚できるようになれば、それはそれでいいことなんじゃないか?」

 

「じゃぁあとは私たちが子を授かれるようになれさえすれば……」

 

「確かにそうだが、それにはいろいろ技術的な問題以外にも倫理的な問題もあるからなぁ……」

 

「倫理、ですか」

 

「そうだ。お前たちは人間と違って生物本来の方法より容易にその存在を創る事が可能だ。そんなお前たちと結婚して子供ができるようになればその時点でもう人口減の問題は表面上は解決したも同じだ。だが……」

 

「人の価値観がそれを許さない?」

 

「大部分は懐疑か嫌悪の目で見るだろうな。またそれが当たり前になれば国民どころか人間としてのモラルの低下にも繋がりかねないし」

 

「……確かに」

 

翔鶴は提督のいう事を十分に理解できた。

確かに見た目は人間でもその実態がそうでないと判れば、人は混乱し、生物の特性としてそれを忌諱するだろう。

“異端”なものとして。

人との結婚の可能性が暗礁に乗り上げたように感じた翔鶴は暗い顔をした。

その様子が気になった提督は、彼女に希望はある事を示すようにその肩に優しく手を置き、笑いながら言った。

 

「……そんな顔をするな。途中で論点が混ざってしまったが、艦娘との結婚を軍関係者に限った上でそれを政府の監視下に置くとかすれば、さっきも言ったが本当に結婚できる可能性は十分になると思う」

 

「は、はい……!」

 

「……結婚したいのか?」

 

「はい。あ、ケッコンじゃないですよ? いや、ここでならそれでもいいですけど」

 

「……俺とか?」

 

「……」コクコク

 

「……節操の無い人間だと思われたくないんだが、それだと俺はここの奴らと全員そういう関係になる事にならないか?」

 

「嫌ですか?」

 

「嫌とかそんな次元じゃなくないか? それを受け入れた時点で多分世界一妻を持つことができる国になるぞ」

 

「そこは愛ですよ。私たちは誰か心に決めた人にとことん尽くすと言った特性がりますから。人間関係の崩壊は普通の人間と比べてそう心配するほどでもないと思いますよ?」

 

「……なかなか攻めるな。珍しい」

 

「真剣に必死ですから♪」ニコッ

 

「……ま、子を授かれるかという問題をクリアできれば真剣に考えよう」

 

「本当ですか!? ちょっと明石さんに相談してきます!」

 

「待て、なんで明石なんだ? というかやめろ、今はその話題を広めるな。頼む、後生だ」

 

踵を返して部屋を出て行こうとした翔鶴を提督は慌てて止めた。

 

「あ、そうか……そうですね。相談するなら本部でしたね」

 

どうも翔鶴の暴走を止める事は難しそうだ。

そう判断した提督は彼女に魔法の言葉を使う事にした。

 

「……なんでも言う事を聞いてやる。だから今は俺のいう事を聞いて大人しくしてくれ」

 

「!」

 

その言葉の効果はどうやら絶大だったようで、翔鶴はそれを耳にするなり直ぐに暴走を自粛した。




翔鶴は提督に何をお願いしたんでしょうね。

結構いろんな作品で艦娘の妊娠の機能があったりなかったりしますが、個人的に自分は後者です。
だからこそ解決すべき問題としてネタにできると思ったりもしますが(ゲス顔


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第×17話 「散歩2」R-15

ヴェールヌイこと響はとある出撃任務中に大破のダーメージを受けました。
そのダメージはギリギリ轟沈しなかったという程度であり、厳密には瀕死の状態でした。
意識を失った状態の響が基地に運ばれてきました。


「響搬送完了です」

 

抑揚のない落ち着いた声で響の回収を大淀が伝える。

 

「了解。入渠による修復は後回しにしろ。先ずは延命を最優先に」

 

「了解しました」

 

 

――それから30分程が経ち、提督は張りつめていた緊張を解すかのように深く息を吐いて改めて椅子に座り直した。

 

「……ふぅ」

 

「危ないところでしたね」

 

「まだ安心はできないな、意識を回復していないし」

 

「そうでした……。申し訳ございません」

 

「お前が謝る事じゃない。だがまぁ……」

 

「?」

 

「もし助からなかったとしても轟沈ではなく、ここで看取る事ができるからな。最悪それだけでも響にしてやれるのは幸いだ」

 

「大佐……」

 

「悪い。不謹慎だった」

 

「いえ、私も叶うなら最期はここで迎えたいです」

 

大淀は少し笑いながらそう言った。

提督はそんな大淀の顔を眺めながら自身のポケットに手を伸ばす。

緊張が解れたので煙草を吸って更に落ち着こうという算段らしい。

 

「……ん」ゴソゴソ

 

「あ、どうぞ」シュボッ

 

「悪い。……ふー。……不味いな」

 

「でしょうね」

 

 

 

「……ぁ」

 

白い天井が見えた。

意識を回復した響はベッドから身を起こして辺りを見回す。

 

「……」キョロキョロ

 

最後に戦った記憶が蘇る。

どうやら自分は助かったらしい。

 

「……」

 

自分の両掌を見ながらボンヤリとそんな事を実感していた時だった。

 

ガチャッ

 

「目が覚めたか」

 

「大佐……」

 

「良かったな、助かって」

 

「……」プイッ

 

「どうした?」

 

「……悔しい」

 

「そうか。あのまま沈んだ方が良かったか?」

 

「……意地悪。それは絶対に嫌」

 

「そうか」

 

「……」

 

「……」ジッ

 

「ん?」

 

脹れっ面をしてそっぽを向いていた響が不意に提督の方を向いて、彼をじっと見つめる。

そして、見つめていると思っていると彼女の両目から涙が滲んできた。

 

「……っ」ジワッ

 

「響?」

 

「良かった……。また大佐に会えた……」グス

 

「……ほら」ヒョイ

 

そんな安堵の涙を流す響を提督は優しくその胸に抱き上げて安心させようとした。

 

「……んっ」ギュッ

 

「おかえり」

 

「うん……」スリスリ

 

「もう大丈夫か?」

 

「……まだ1分も経ってないんだけど」

 

間髪入れない言葉に不機嫌な顔をする響。

もう少し空気を呼んでくれてもいいのではないか、彼女はそう思った。

 

「仕事があるからな」

 

「意地悪……。じゃぁわたしも手伝う」

 

「駄目だ。お前はこの後修復剤を使わない安静(リラックス)入渠だ」

 

「じゃぁ上がったら手伝う」

 

「それまで仕事が残ってたらな」

 

「残しておいて」

 

「いいのか? もし早く終わって時間が空いたら今度こそお前の為に時間を作ろうと思っていたのに」

 

「上がるまでに全部終わらせておいてね。今日は寝るまで遊んでもらいたいから」

 

「は? 寝るまで? おい、無茶言う――」

 

聞き流せない要求に提督が慌てて響を呼び止めようとようとしたが……。

 

「お風呂行って来る」テテッ

 

バタン

 

「……」

 

意識を回復したばかりとは思えない流れるような動作で素早く提督の腕から降りた響は、一瞬の間で彼が言葉を言い終わらない内に扉を開け、医務室から姿を消したのだった。

 

 

 

ガチャ

 

「あ」

 

提督が医務室から出るとそこには、大潮が心配そうな顔で佇んでいた。

 

「響なら風呂に行ったぞ」

 

「え? そうなんですか。という事は元気になったんですね! よかったぁ」

 

提督の言葉に大潮は心から安心したようで、満面に笑顔を浮かべる。

 

「あの時お前が懸命に頑張ってくれたおかげだ。だからあいつも轟沈せずにここまで連れてくることができた。よくやったな」ナデナデ

 

「あ……はぅ……。あ、ありがとうございます。でもわたし一人の力じゃないですよ?他の人も皆必死になって響ちゃんを守ってくれてました」

 

「そうだったな。皆良くやった。皆に会ったらよろしく言っておいてくれ『大佐がよくやった』と褒めていたぞ、とな」

 

「はい! お任せ下さい!」

 

「頼んだぞ。後で直接俺からも健闘を称えに行くとも伝えておいてくれ」

 

「はい。了解しました!」

 

早速大潮の健闘を称えた提督は、そう言ってその場を後にした。

 

 

 

ガチャ

 

「あ、大佐。響ちゃんどうでした?」

 

「問題ないようだ。さっき自力で浴場に走って行った」

 

「え? 走って? もう?」

 

提督の報告に大淀は目をパチクリさせる。

 

「そうだ。凄いだろう?」

 

「ふ……く、ふふふふ。そうですね、響ちゃんらしいと思います」

 

「全くだ。よし、大淀執務を再開しよう」

 

「畏まりました。こちらに整理してあります」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

 

結局その日、響は夕方になっても何故か現れなかった。

提督がその事を不思議に思っていながら寝支度をしていると……。

 

ガチャ

 

「遊びに来た」

 

「もう夜だぞ?」

 

「そうだね。夜だね。風が気持ちよさそうだね。と、言えば?」

 

「散歩か」

 

「正解。久しぶりに散歩したい」

 

「分かった。いいぞ」

 

「ありがとう。肩車ね」

 

「分かった」

 

 

「それっと――」ヒョイ

 

ピトッ

 

提督が軽々と響を持ち上げてその肩に乗せた時、彼の首筋に何か妙に生暖かくてやたら柔らかいモノが触れた。

その感触に提督は一瞬黙り込む。

 

「……」

 

「? どうしたの? 大佐」

 

「響、お前下着どうした?」

 

「あ、お風呂あがった時に履くの忘れてた。あ、大丈夫だよ? 綺麗だから」

 

「そういう問題じゃないだろ。おり――」

 

ギュー

 

響はそれ以上提督に発言させず、彼の頭を抱きしめて拒否の意を表す。

 

「おい」

 

「大佐は駆逐艦の力には適わない。つまり下ろせない。つまり響は気にしていない。このまま行こ?」

 

「三段論法のつもりか? ……夜道じゃなかったら変態扱いされるな。恐らくされるのは俺だけだろうが」

 

「大丈夫、その時はちゃんとわたしが弁護するから」

 

「せめて擁護してくれ。まぁいい。他の奴らには言うなよ?」

 

「うんっ」ギュッ

 

「あと、あまりひっつくな」

 

「? なんで?」

 

「……行くぞ」

 

「?」

 

不思議そうな顔をする響に、提督は天然の厄介さを痛感しながら彼女疑問には答えず黙って歩を進めた。

 

 

「夜風が気持ち良いね」

 

「そうだな。お腹壊すなよ」

 

「履いてないから?」

 

「そうだ」

 

「大丈夫。今暖かいし」ギュッ

 

「……何故か俺の心は冷える一方だな」

 

「シベリアの様に?」

 

「ヴェールヌイと呼んでやろうか?」

 

「やだ」

 

「ふむ、相変わらずロシア関係の話題は嫌か」

 

「ロシアが嫌なわけじゃないんだけどね。でもやっぱり日本の艦なのに自分だけ外国の名前で呼ばれるのは寂しいから」

 

「Да(ダー)」

 

「ちょっと」ツネッ

 

突然の提督のロシア語に響は拗ねた顔をして彼の頬をつねる。

 

「っつ、はは、悪い悪い」

 

「使うのはわたしが使った時だけにして」

 

「了解した」




投稿のペースがまた落ちてますね。
皆艦これや面白いモバゲーが悪いのです(オイ


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第×18話 「尻取り2」

前回同様唐突に始まった尻取り大会二回目。
前回の雪辱を晴らす為、金剛は闘志を燃やし、ビスマルクと比叡と榛名は楽しそうにしています。

提督はなんとなく迷惑そうな顔をしながらもゲーム自体には乗り気の様です。


「第二回金剛姉妹歴史上の人物尻取リ大会デース!」

 

「いいわね、面白そうじゃない。負けないわよ」

 

「今回はマリアも参加するんだな」

 

「あ、はい。マリアさんは霧島の代わりなんです。彼女、今日は扶桑さんと飲んでまして」

 

「大佐! 遅ればせながら扶桑さんとのケッコンおめでとーございます! 第11夫人としてわたし、大佐にお祝辞を申し上げます!」

 

「ん、ありがとう。扶桑の奴指輪を握って飛び出していったと思ったら……そうだったのか」

 

「ケッコン当日に飲みに行くなんて……」

 

扶桑の事を聞いてビスマルクは唖然としていた。

 

「扶桑、よっぽど嬉しかったんデスネ」

 

「フランも大佐に懐いているみたいだし、大佐、練度に達したらあの子ともケッコンしてあげてね」

 

「本人にその意思があればな」

 

「え、フランちゃんもうそんなに大佐に懐いているんですか? 流石ですね大佐ぁ。このこのー」

 

「榛名、フランさんを応援しますよ!」

 

「ワタシもよ。マリア、フランが advice で困っていたらワタシも力になるからネ!」

 

「みんな……Danke schon! フランに伝えておくわ」

 

 

「……フランシスコ・ザビエル」

 

「「「「 」」」」」

 

唐突なゲーム開始に4人は言葉を失う。

だが提督はそんなことを気にしている様子もなく、榛名の方を向くと続きを促してきた。

 

「榛名、お前だ。今度は歳下から上がってマリアの順にしよう」

 

「えっ、わ、私ですか? え、えーと……る、ルドルフ・シュタイナー!」

 

「誰それ!? むぅ、大佐、無理矢理話題変えましたね? いいですけど……あ、浅井長政!」

 

「シュタイナーは昔の思想家か哲学者だったはずネ。浅井はえーと……侍だったわよネ? さ……さ、佐々木小次郎!」

 

「へぇ、流石四姉妹の長女、よく知ってるわね。宇田川玄随!」

 

「マリア、お前の方こそそんな人物どうやって知ったんだ……? 金剛も勉強したんだな。いや、元々知っていたのか? だとしたら知識の幅が解らんな」

 

「フフーン、ワタシだってあの後マリアに負けない様にって頑張ったのヨ!」

 

金剛は依然最初の尻取り大会で辛酸を舐めた後、知識を蓄える為にマリアと歴史の勉強をしたのだった。

今回はその勉強の成果が出たようだった。

提督はそんな彼女に感心しながらゲームを続ける。

 

「やるじゃないか……伊藤博文」

 

「いとうひろふみ?」

 

金剛の不思議そうな言い方に場の空気が凍った。

 

「えっ」

 

「金剛お姉様……?」

 

比叡がびっくりした様に、榛名は口に手を当てて信じられないといった顔で金剛を見た。

ビスマルクも何処か険しい顔をしながら言った。

 

「え? 金剛、その人知らないの? 日本の軍艦でしょ? あなた」

 

「金剛……」

 

自分を見つめる冷めた視線に提督のものも加わったことによって金剛は不安に目を震わせる。

 

「え? え? わ、ワタシまた何カ……?」

 

「金剛お姉様、その方はですね。日本の初代総理大臣ですよ」

 

「え!? p......prim minister(*首相)......the first!?」

 

自国の初代総理大臣を知らなかったという事実に衝撃を受ける金剛に慌てた様子で比叡がフォローを入れる。

 

「け、結構今の世の中若い子だと知らない子もいるみたいですし。そんなに気にする事ないですよ!」

 

「……じゃあなんで比叡や榛名は知ってたノ?」

 

「えっ」

 

「そ、それは……」

 

金剛の当たり前の指摘に比叡と榛名は狼狽え、ビスマルクは自分だけ無視されたと誤解して慌てて吠える。

 

「ちょっと、私も知ってたわよ!」

 

「マリアさんちょっと黙ってて!? えっと……わ、わたし達が初めて建造された当時からしたらそんなに昔の人じゃなかった……から、かな? ね? 榛名」

 

「え? あ……え、ええそうです! 榛名達が知っていた理由はその程度ですよ金剛お姉様! だからそんなに気にする事はないですよ!」

 

「というかその当時の人たちからしたら江戸に代わる新しい時代の象徴みたいな人だからな。寧ろ知らない方がおかしいと思うぞ」

 

「た、大佐!?」

 

「同感ね。今の日本の国父と言っても差支えない人だもの、一般人ならともかく国防が使命である軍人がそれを知らないのはどうかと思うわ」

 

「マリアさん!?」

 

空気を読まない容赦のない二人の指摘に比叡と榛名が真っ青になる。

 

「差支えか、マリア、お前もしかして他に国父の本命が?」

 

「ヤー。個人的に実績的には大久保利通だと思っているの。彼、暗殺さえされてなかったら間違いなくあの人が最初の chancello(*首相【独】) になってた筈だもの」

 

「なるほどな、確かにそれは解る。が、俺としては彼の政治手法が少し気になるところがある。だから俺は完全にあの人が総理大臣になっていればとは思えないな」

 

「性格の事ね? それには私も同意よ。でも当時の日本が列強の支配……」

 

 

「た、大佐、マリアさん!」

 

「そ、それくらいにした方が……」

 

何やら議論を始めた二人に比叡と榛名が半泣きで口を挟んできた。

見ると彼女達の後ろで金剛がしゃがみ込んで泣いていた。

 

「……ひっく、ぐす……」プルプル

 

「む……」

 

「えっ、ど、どうして泣いてるの? 金剛」

 

「っ……」ブァッ

 

「マリアさーん!?」

 

「駄目ぇぇぇ!!」

 

ビスマルクの鈍感な発言に二人は絶望の悲鳴をあげるが、意外にも守られていた本人がその雰囲気を壊してきた。

 

「わ……」

 

「ん?」

 

「え?」

 

「ワタシだって最初の人は分からなくても二代目なら知ってるモン!」

 

「え……」(初代知らなくても二代目は知ってるから大丈夫ってこと……?)コショ

 

「こ、金剛お姉様?」(た、多分……。個人的にはどうかと思いますが……)ヒソ

 

「へぇ、それはそれで良いことだわ。人間ってどうしても一番初めと最後に目が行きがちで、二番目とか結構疎かにしがちだもの。二代目だって初代から引き継いだ実績や構想をより確かなものにして地盤を固めないといけないから結構大変なのよ」

 

「そ、そーデス! 確かに初代を知らなかったのは not impressed(*感心できない)な事だと思うケド、二代目だって大事ネ!」

 

金剛はビスマルクの予想外な援護に気を取り直し、未だに涙を滲ませながらも強気な笑顔に戻っていた。

 

「その意見にはかねがね賛成だ。で、二代目は誰なんだ? 言ってみろ」

 

「オッケイよ! それはトーマス・ジェファーソンね!」

 

「え……?」

 

「は?」

 

「なに?」

 

「……」

 

再び場が凍り付いた。

 

「……エ?」

 

「金剛、それは三代目だ」

 

「えっ!?」

 

「お姉様……それアメリカの大統領です。しかも当時の敵国……」

 

「ふぁっ!?」

 

「英国ですらないですね……」

 

「因みに二代目は黒田清隆よ。アメリカの方はジョン・アダムズ。英国の方は1700年代と800年代のどっちの連合法を起点にするかで変わるわね」

 

「ふわぁっ!?」

 

「金剛……」

 

数々の指摘と最後の提督の冷めた視線を再び受けて、金剛はついに羞恥に耐えきれず棒立ちのまま泣き出した。

 

「ふ……ぅぇぇええ……」ジワッ

 

「はいストップ! ゲーム一回ストップです!」

 

「そ、そうですね! きゅ、休憩にしましょう! 榛名ちょっとお腹空いちゃいました」

 

「え、ええそうね」(まだ5分も経ってないけどね……)

 

「大佐、わたし達ちょっとお茶の用意してきます。その間お姉様のお相手をお願いしますね。いこっ榛名、マリアさん」

 

「はい、分かりました!」ビシッ

 

「えっ、私も? 私も大佐と一緒にいた……あ、ちょっと。ねぇ、待ってよ! やだぁっ」ジタバタ

 

「一番頭良さそうだった癖になんでこんな時は子供っぽいんですか! ほら、行きますよ!」グイ

 

「マリアさんごめんなさい。比叡お姉様お手伝いします」

 

「いやぁぁぁぁ……」ズルズル

 

バタン

 

 

「……」

 

「……」グス

 

「こんg」

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「ワタシ、頭悪くないネ……」

 

「ああ」

 

「本当ヨ? 偶々なんだかカラ……」グス

 

「……金剛」

 

「ホントよ!?」

 

「いや、別に疑っているわけじゃない。ほら、ちょっと来い」グイ

 

「やぁ……。ホントだモン」

 

「だから疑っていないと言っているだろう、こいつは」ポン

 

まだ提督の信用を取り戻せてないと駄々をこねる金剛の頭に、提督は手を乗せて撫でながら言った。

 

「うぅ……」

 

「俺はな、お前は知識の幅はあると思っている。だがその使い方がただ少し不器用なだけだ」

 

「大佐、ワタシ不器用ぅ……?」ジワッ

 

「だから泣くな。別に頭が悪いと言っているわけじゃない。知識の引き出し方がちゃんとできればお前だってマリアに負けないさ」

 

「……ホント? それができればワタシもマリアに負けナイ?」

 

「ああ、本当だ。だから次は弁論の勉強でもするといい」

 

「弁論……? talking?」

 

「そうだ。口の使い方が上手くなれば相手と話をする時にミスも減るし、自分の立場を優位に保つことだってできるぞ」

 

「ゆーい……!」キラキラ

 

「優位だ」

 

「大佐、ワタシ頑張るワ! そして今度こそ皆の……特にマリアの頭を明かしてみせるワ!」

 

「鼻だ。まぁ頑張れ」

 

 

――そして数日後。

 

「Hello my lord. 今日も良い天気デスネ。ん……ちゅ」

 

「……」(マイロード? 英国風の言い回しのつもりか?)

 

「あ sorry. ちょっと朝の挨拶をしてしまいマシタ。お許しくだサイ」

 

「いや、それよりもな……」

 

「あっ、今日の予定を申し上げますネ。今日の予定は……」

 

口調こそ丁寧に、落ち着いていたが、合わせて話し掛ける態度や雰囲気も妙に色っぽくなっていた事に提督は違和感を感じた。

それは金剛の勉強の成果を確認しに来た彼女の妹達とビスマルクも同じで、その変わり様を呆然とした顔で見つめていた。

 

「「「「……」」」」

 

「あ、4人ともいたんデスカ? どうデス? ワタシの喋り方。喋り方だけじゃないデスヨ? 今は heart を落ち着けて冷静な talk も……」

 

「「「こんな落ち着いたお姉様、お姉様じゃない!」」です」 「ちょっと、大佐を独り占めしないで!」

 

「ええ!?」ガーン

 

「……」(まぁそうなるよな)




吹雪改二になった! と思ったら初霜と那智ですか。
レベルが低いわけじゃないけど育成追いつかないなぁ。


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第×19話 「差別化」

提督と木曽が廊下でばったり会いました。
木曽は直ぐに挨拶をしようとしたのですが、提督はなにやら彼女を注視して直ぐに口を開こうとしません。

その視線は感情を感じるようなものではなく、明らかに何かを確認しているような妙な視線でした。


「ん……」

 

「あ」

 

「……」

 

「……? どうした? 大佐」

 

木曽は軽く挨拶を交わしてすれ違うだけだと思っていたが、自分を見たまま動かない提督に、居心地の悪さを感じて取り敢えず木曽の方から声を掛ける事にした。

 

「ああ、木曽か。いや、なんでもない」スタスタ

 

「ちょっと待て! ちょっと待て! 今の何だ? 今の間は何だ!?」

 

「いや、別に」

 

「俺の目を見て言えよ! 俺が判らなかったんだよな!? そうだよな!?」

 

「……何を言っているんだ? ちゃんと名前を言っただろ?」

 

木曽に問い詰められている提督は一見平静を装っていたが、その目は明らかに動揺し、泳いでいた。

 

「じゃぁ何で言うまでに時間掛かったんだ? 明らかにさっきの間思い出そうとしてたよな!?」

 

「……悪い」

 

「俺の名前を忘れるくらいボケてたのかよ!?」

 

確かに自分は提督とあまり話した事はなかったが、それでも戦闘ではそれなりに役に立ってきたつもりだし、その度に彼から褒められたりもしてきた。

全く接点がなかったわけではないのに、不意に受けたこの扱いに納得ができなかった木曽は尚も提督に詰め寄った。

 

「いや、ちょっと人違いをな」

 

「は?」

 

「一瞬、お前が天龍に見えたんだ」

 

「え」

 

「あくまで個人的な感覚なんだけどな。俺にはお前と天龍がよく似ているように感じるんだ」

 

「……なるほどな」

 

提督の答えを聞いて木曽は少し大人しくなった。

あまり自覚こそしていなかったが、改めてそう言われると分からなくもない事だったからだ。

 

「その男勝りの口調と眼帯。服や髪型をちゃんと見れば分かるんだが、どうしてもパッと見だと一瞬混乱してしまいがなんだ」

 

「……つまり差別化が必要って事だな」

 

「いや、そこまでする必要はないと思うぞ。さっきも言った通りちゃんと見れば俺も分かるし」

 

「でも俺は大佐に間違えられたくないし名前も忘れられたくない」

 

「それについては努力、いや、以降は間違いないようにする」

 

「本当かぁ? じゃぁ訊くが、俺と天龍の違いって何だ?」

 

「艦種だ」

 

「そこじゃねえよ! そんなの見なくたって名前聞きゃ誰だって判るだろ!?」

 

「……つまり身体的な特徴とか性格の事か」

 

「そうだ」

 

木曽は若干呆れ顔で提督の答えを肯定する。

 

「……性格は天龍より冷静だな。いや、比較対象にする程性格は近くはないか。戦闘自体は好きな方だが、それより周りの状況を見て判断し行動する冷静な性格だよな」

 

「……まあ悪くないな」ポリポリ

 

「次に身体的な特徴か。ふむ……む」

 

「ん? どうした?」

 

「いや、別に」

 

「おい、なんで目を逸らす? 何考えた? 言えよ」

 

「すまないが拒否する。というかあまり言いたくない」

 

提督は再び詰め寄る木曽にバツが悪そうな顔でかぶりを振るばかりだった。

そんな彼を訝しみながらも木曽は彼の視線が一瞬自分のある部分に向いていた事に鋭く気付いた。

 

「……? っ、まさ……いや……」カァ

 

(気付いたか?)

 

「そうだよな……。パッと見て判るくらい俺って天龍に負けてるよな……」

 

「だから言いたくなかったんだ」

 

「大佐は……」

 

木曽は視線を胸元にお歳ながらぽつりと何かを提督に訊こうとした。

提督はそんな彼女に敢えて最後までは言わせず、即答した。

 

「俺はどっちでもいい。愛おしければ取り敢えず問題にはしない」

 

「……本当?」ジッ

 

「本当だ」(口調が……。もしかしてこれが素か?)

 

「なら、いいけど……な」

 

「気が済んだか? ならもうこの話はよそう。俺は今後お前と天龍を間違わないし、今までもそうだったがその……大きさで好みが分かれたりもしない。いいな?」

 

「ああ……」

 

「なんだ? まだ気になる事があるのか?」

 

「いや、別に……」

 

「……話し方変えてみるか?」

 

「え?」

 

意外そうな目で提督を見る木曽。

その顔はまだ提督が何を言いたいのか解らず混乱しているようだった。

 

「さっき差別化をしたいとか言ってただろ? なら俺と二人の時にだけ話し方を素にしてみてはどうだ?」

 

「話し方を素に……? よく分からないな。どうしたらいいんだ?」

 

「どうするもなにも、その男っぽい口調をやめて自然な感じの喋り方にしたらいいだけだ」

 

「自然に……」

 

「そうすれば、少なくとも俺の前では天龍との違いが判るようになる」

 

「……なるほど」

 

木曽は提督の提案を静かに考える。

自分には全くなかった考えだった。

 

「さっき俺に大きさの事で真偽を訊いただろ? その時のお前は口調は自然だったぞ」

 

「大きさの事を訊いた時? あっ……」カァ

 

「勿論今の口調が慣れてて楽なら無理に変える必要はないだろう。これは単純に“差別化”に対する俺の提案だ」

 

「……分かった」

 

「ん?」

 

「大佐の前ではその……しおらしくする」

 

「しおらしく……無理はするなよ? 話し方を変えて負担になるだけなら意味がないからな」

 

「いや、大丈夫だ……あ、大丈夫。その、こういうのも何か大佐だけ特別みたいな感じで悪くないし……な。あ、悪くない……し」

 

「まぁお前がそう思うならいいが」

 

「うん……」

 

提督の提案を飲んだ木曽は、少し顔を赤らめながらもこの新たな試みによって自分の心が妙に温められる感じがした。

この感覚、悪くないな。

木曽はそう思った。

 

「……木曽、ちょっと付き合わないか?」

 

「え?」

 

「予行練習だ。茶でも飲みながら慣らそう」

 

「……っ。ああ! あ、いや、うん!」パァッ

 

「……本当、無理はするなよ?」

 

提督は木曽の変化に戸惑いながらも、少し心配そうな顔で彼女を自室へと導いた。




吹雪と初霜が改二になりました。
次は那智だ、頑張ろう!

あ、大鳳さんは12のままもう少し待っていて下さいorz


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第×20話 「酔っ払い」R-15

夜更け、提督がその日の残務の処理を行っていると。
扉を隔てた廊下の方から何かが聞こえた。
それは人の声の様で、どこか悲鳴の様にも聞こえた。

やがてその声は段々と大きくなり、彼の部屋へと近づいてきた。

*明らかな性的描写あり


アアアア……

 

「?」

 

やぁぁぁぁ……

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

バンッ

 

「大佐っ、た、助けてください!!」

 

「なんだ霧島、夜中にこん……な……」

 

夜中、突如前触れもなく半泣きの霧島が執務室に駆けけ込んで来た。

提督は先ずその失礼を問い質そうとしたのだが、入って来た霧島の顔と、その彼女に絡みつくように覆いかぶさっている一人の人物を確認すると、その有様に途中で言葉を失った。

 

「扶桑……? 何をやっているんだ」

 

「ふふふ……。霧島さん逃がしませんよぉ……」

 

 

助けを求めてきた霧島の顔は、半泣きでありながら顔は紅潮し、涎を口の端から垂らしているというだらしのない表情をしていた。

その原因は明らかに霧島に絡みついている扶桑のようであった。

彼女は霧島にのしかかる様にして片腕でその身体を逃さない様に首元をがっちりと腕で固め、そして空いたいた片手で……。

 

「ふふ、どうですか? 気持ち良いでしょう?」チュクチュク

 

どうやら霧島はケッコン祝いに扶桑の酒に付き合った結果、絡まれてしまったらしい。

 

「んっ、いやぁぁぁ! だめっ、やめてください! それ以上はだめ!」

 

「あ、霧島さんもまだだったんですね。もしかして大佐の為に……?」

 

「そうっ……そうです! まだケッコンしてから一度もシてな……。あっ、おねが……やめ……!」グス

 

抵抗の言葉を吐きながらも体を襲う快感の波に力が入らない霧島は、ただ泣く事しか出来ず、口で扶桑に慈悲を、目で大佐に助けを求めていた。

提督は流石にいろいろと見過ごすことができなかったので、取り敢えず扶桑を止めにはいった。

 

「……扶桑やめてやれ。霧島が可哀想だろ」

 

「え……? あれ、大佐……? え、何で私執務室に?」キョロキョロ

 

「場所が変わった事に気付かない程酔っているのか……。とにかくやめてやれ」

 

「あん……や! 嫌です! せっかくケッコンしたのに途中でやめるなんて」

 

「俺は霧島を開放してやれと言っているんだ。ほら、腕を解いてやれ」

 

「えぇ……? 霧島さん……?」

 

呆けた顔で若干目の焦点が合ってきた扶桑が、再び霧島を見る。

そこには普段のきびきびとした態度からは想像ができないほど、子供の様に泣きじゃくっている霧島の顔があった。

 

「う……ぐす……。もう、やめてぇ……」

 

「……え」

 

「正気に戻ったか?」

 

「っ! ご、ごめんなさい! 私ったら!」パッ

 

「っ、大佐ぁ!!」ダッ

 

正気に戻った扶桑に解放された途端、霧島は泣き顔のまま提督に飛びついた。

霧島は完全に動揺して力の加減をする余裕が無かったので、その衝撃は彼女の感情も含めてきれいに提督に伝わった。

 

ドスッ

 

「っ……う……ぐ……。だ、大丈夫だ……大丈夫……。もう心配ない」ポンポン

 

一体どっちが大丈夫なのか分からない絵面であったが、提督は健気にも冷汗を垂らしながらも霧島を優しく抱き締めてやった。

 

「う……もう、もうダメかと思いましたぁ。扶桑さんに……ハジメテ取られちゃうかと……ぐす」

 

「ごめんなさい、ごめんさい……。本当にごめんなさい」

 

震えて安堵の声を漏らす霧島の裏で扶桑は土下座しながら念仏の様にひたすら謝罪の言葉を唱えていた。

 

「扶桑ももういい。結局はケッコンの事で舞い上がってただけなんだろ? なら今度からは酒に飲まれない様に自制を心掛けろ。霧島も少し甘く感じるかもしれないが、あいつに悪気はなかったんだ。許しれやれ」

 

「大佐……。いえ、私は別に分かってましたから……。扶桑さんが酔っぱらっていた事は……。それに謝って反省もしてくれてるみたいですし、私としてはもう……」

 

「そうか、すまないな。扶桑もそれでいいな? 霧島はお前の態度を見て許してくれるそうだ。これで一応蟠りが出来ない事を俺に確約しろ」

 

「は、はい! ……霧島さん本当にごめんなさいね」

 

「い、いえ。もう大丈夫ですから……。大佐、私も約束します」

 

「ん、ならこれで一件落着だな。二人とももう部屋に戻っていいぞ」

 

「え?」

 

「え……?」

 

提督はこれで万事解決とばかりに手を振って二人に解散を言い渡したのだが、それに対して霧島と扶桑は意外そうな声を出した。

 

「あの……大佐……。仰っている事も分かりますけど、でも……ここで解散というのはそのぉ……」

 

先程まで霧島を襲っていた手を恥ずかしそうに見ながら扶桑は言った。

 

「私も扶桑さんに同意です……。大佐、こんな状態なんですからせめてこのまま……」

 

霧島も、はだけた服を恥じいがらも目を逸らしがちに言った。

提督はそんな二人に自身の配慮の足りなさを感じ、ふと時計を見た。

 

「二人一緒でいいのか? こんな時に不躾なのは承知で言うが、明日は早いから俺としては助かるが……」

 

その言葉にに扶桑と霧島は顔を輝かせて同時に返事をした。

 

「はい……! 感謝します、大佐!」

 

「お願いします。不束者ですが……」

 

 

 

「扶桑、先ずはお前からだ」

 

「はい……。お願いします。ん……」

 

行為に及ぶと決まる前から霧島のを弄って興奮していたのだろう。

扶桑は既に準備が整っている様だった。

 

「……これはもう前座は必要なさそうだな」

 

「はい……準備はもうできています……。というか、ずっと前から身体が疼きだしてもういろいろと限界で……。お願いです大佐、きて……」

 

「分かった。いくぞ」

 

「ああ……それが大佐の……。素敵ですぅ……。はぁ、はぁ……早く……どうぞ……。扶桑をお召し上がりください……」

 

「……」グッ

 

ズッ……。

 

「あ……はぁっ♪」

 

「……狭いな。くっ……」

 

「っ……んく、あ……いま……あ……♪」

 

その途中で一瞬鋭い痛みが扶桑を襲った。

痛みはそれなりにくるものがあったが、それでもそれが自分が提督の女になったという事、大佐にハジメテを捧げる事が出来たと事だと考えると、言葉にできない幸福感が扶桑を包み、精神的に痛みを緩和させた。

 

「扶桑、大丈夫か? 痛くないか?」

 

提督は扶桑を気遣ってうっくり動き、彼女に苦痛がないか確認した。

そんな提督に扶桑は目に涙を溜めながらも幸福と快楽に満ちた顔で嬉しそうに言った。

 

「あ……はぁ……だいじょう……ぶです……。痛みはさほどでも……。だ……ああっ。だは……らっ、もっと激しく……どう……ぞ」

 

「そうか。なら今から少し早くいくぞ。……ふっ」

 

「あああっ、あ……はぁっ♪」

 

 

「はぁ……大佐、扶桑さん……凄い……」

 

霧島はそんな提督と扶桑が愛の営みにふける様子をベッドに腰掛けながら恍惚とした顔で眺めていた。

 

「ん……んっ……」ピクッ

 

彼女も扶桑が服を脱ぐのに合わせて自分も脱ぎ終わっており、二人の淫行を見ている内に無意識に手が大事な所に触れていた。

 

「霧島、お前も来い」

 

悶々としている霧島を見て不憫に感じたのだろう。

提督がに彼女に声を掛けた。

 

「えっ。で、でも大佐は今扶桑さんに……」

 

「このままでも別にお前を相手にする事はできる。扶桑がいいならだが」

 

「あっ……いひ……。いいです……! たい……あっ♪ 大佐……どうか霧島さんも……い……イっ! ……いっしょにぃ……」

 

「だそうだ。俺も構わない、霧島、来い」

 

「あ、でも、私はどうしたら……?」

 

「扶桑を組み敷くように四つん這いになれ。そうだ。ああ、そして……」

 

「えっ、こ、この格好た、大佐に……」カァッ

 

思考が蕩けて考えが追い付かなかったのだろう、霧島が気付いた時には既に態勢は整っており、彼女の全てが提督の目の前に晒されていた。

 

「霧島も準備はできているみたいだな。だが今は扶桑の番だからな。今はこれで我慢してくれ。ちゅ……」

 

「っ!? ひゃっ……ふぁぁっ」

 

提督に見られていることですら恥ずかしいのに、それどころかソコを彼の口で攻められた霧島は今まで感じた事が無い感触に悲鳴の様な嬌声をあげる。

 

「大佐駄目で……んふっ! そ、それはもうしわ……けっ……!」ピクン

 

「はぁ……霧島さん……可愛い……。あっ」

 

自身も提督に攻められながらも霧島の痴態に母性を擽られた扶桑は、目の前に自分程ではないが、形がよく美味しそうなモノが二つ揺れている事に気付いた。

 

「美味しそう……んっ。霧島さん……いただきま……あっ……すね。んちゅ……」

 

「ふぁぁぁぁ!? ふ、扶桑さ……む……それ私のむ……ああっん」

 

「ん、ちゅぅ……ぺろっ。はぁ……あっ、あああ! はぁ、はぁ……ふふ、霧島さん美味しいですよ? 」

 

「は……だ、だめ……。そ、そんな二人同時に……な……んてっ。ああっ」

 

「くっ……」

 

「あ……。んん……あああっ♪ た……いさ……イッてしまわれました……か?」

 

「……すまん。お前はまだだったか……」

 

「いいえ、いまちょう……ん……。お腹……あったかくて良い感じです……♪」

 

「……そう……か。それなら良かった……」

 

「はい、ありがとうございました。じゃぁ次は……」

 

「霧島、準備はいいか?」

 

 

「はい……私は大丈夫です。ですから、遠慮なく今度は私、霧島に……」

 

「わかった……いくぞ」グッ

 

「っく……ぅぅ」

 

扶桑より霧島は隙間が少ないらしい。

最初こそ平気だったが、提督が問題の部分に触れると霧島は痛みに耐えかねてつい声を漏らしてしまった。

 

「やめるか……?」

 

その表情を見て提督も行為の中断を提案したが……。

 

「う……ぐす……だいじょうぶ……とは言いませんが……はぁ、はぁ。でもお願いです。最後まで……」

 

「……」

 

扶桑は、涙を滲ませながら痛々しい表情でそうお願いする霧島を見かねて、彼女をそっとその豊かな胸に抱き締めた。

 

「……霧島さん」ギュッ

 

「っ!? ふ、扶桑さん?」

 

「ん……安心して。気を楽に……。私がついていますから……」

 

「扶桑さん……」

 

霧島は、扶桑のその柔らかく温かい胸に包まれて何とも言えない安心感を感じた。

 

(女の胸でこんな気持ちになるなんて……。提督の胸も安心するけど、そっか、これが女性ならではの包容力なのかもな……)

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ……はい。ありがとうございます。でも、できればその……」カァ

 

「ふふ♪ いいですよ、このままで。大佐?」

 

「ん、霧島大丈夫か? このまま進めていいか?」

 

「あ、はい。もう大丈夫です。今だったら……お願いします」

 

「わかった。いくぞ……っ」ズン

 

「~~っ、あっ、は……あああああ!」

 

「霧島さん、落ち着いて。大丈夫よ」ギュッ

 

「はぁ、はぁ……大佐……? もう最後まで……?」

 

「ああ」

 

「良かった……。んっ……」

 

「痛いか?」

 

「はい。ジンジンします……」

 

「暫く動かないでいる。少し慣れろ」

 

「はい。ありがとうございます……ふぅ……」

 

「ふふ、霧島さん本当に可愛い……」ナデナデ

 

「む……」

 

優しい表情で自分を撫でる扶桑に霧島は何となく負けた気がした。

彼女には感謝しているし、この状況も悪くはなかったが、だがこのまま彼女の世話になりっぱなしというのもちょっと悔しく思った。

だから霧島は細やかな反撃に出る事にした。

 

「……」チュゥ

 

「っ、き、霧島さんっ?」

 

「扶桑さん本当に胸大きいですね……。ふふ、自分が言うのもなんですけど、龍驤が胸のある人に嫉妬するのも分かる気がします。ん……ぺろ」

 

「きゃうっ、ああ……んっ」ピクン

 

「はぁ、はぁ……それに柔らかい……」

 

「ん、ふっ……もう……霧島さ……んんっ」

 

キュゥッ

 

霧島と扶桑が交わっている様子を見て小休止していた提督は下半身に僅かに違和感を感じた。

 

(ん?)

 

キュン、キュゥゥ

 

「むぅ……」

 

快感からか余裕によるものかは判らなかったが、最初の時より明らかに霧島の感度が良くなっており、彼を痛いほどの快感が襲った。

 

(これならいけそうだな)

 

「霧島」

 

「ん……ちゅっ……。はい?」

 

「今なら行けるんじゃないか?」

 

「え? あ……はい、そうですね。動いてください大佐」

 

「了解した。そのまま扶桑の奴も可愛がってやれ」

 

「ふふ、了解しました!」

 

「え? 別に私は……ああんっ。き、霧島さ……」

 

「さぁ、扶桑さん。今までお世話になった分今度は私がお返ししますね。覚悟してください。ん……」

 

「あ……はぁ……。もう、こんな顔大佐と山城だけにと思っていたのに……。ふふ、それでは改めてよろしくおねが……ああっ、もう♪」

 

「ふふふ、よ……はぁぁぁ、ふぅ……。余裕は……あたえ……ませんか……ら……っ」

 

(本当に余裕がないのはこっちかもな)

 

提督は自分を霧島が自分を締め付ける力が更に強くなったのを感じ、腰を動かしながら密かにそう考えていた。




扶桑と霧島との情事がまだだったので二人纏めて消化しました。
腕の未熟さによる描写不足は申し訳ないです。
しかしこの意外なカップリング、書いてて結構楽しかったりしました。


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第×21話 「嫉妬」

午前、いつもだったら執務をしている頃の時間ですが、その時に限っては提督は仕事が出来ずに困っていました。
その原因は彼の机に乗っているアルモノが原因でした。
それは……。


「……山城」

 

「なんですか? 大佐」

 

「机に座ったままだと仕事ができない。下りろ」

 

「……」フイッ

 

その日の秘書艦であった山城は何故か、その時にに限っては提督の傍らで執務の手伝いをするのではなく、彼の机の上に座ってその仕事を邪魔していた。

邪魔をしている山城は少し頬を膨らませ、何故か不機嫌な様子だった。

 

「邪魔するなら邪魔するで、せめて後ろを向いてくれないか」

 

「大佐はわたしのお尻が見たいんですか? セクハラですね」

 

「堂々と前を向いて俺に下着を丸見えにしているお前に言われたくはない。だからせめて後ろを向けと言っているんだ」

 

提督の言う通り山城は提督の方を向いて机に座っていた。

だが、その座り方が体育座りであった為に、彼女の淡いピンク色の下着は提督に丸見えとなっていた。

山城はその事に提督に指摘されて初めて気づいたらしく、顔を真っ赤にした。

 

「……!」カァッ

 

「恥ずかしいだろ?」

 

「……」フイ

 

(子供じみた強がりだな。後ろを向かなければ、座り方も変えないとは)

 

提督は溜息を吐きながら若干あきれ気味に訊いた。

 

「あれか。俺が扶桑とケッコンしたから機嫌が悪いのか?」

 

「……」

 

山城はその質問には答えず、横を向いたままだ。

 

「言っておくが俺にお前から姉を奪ったという考えはないからな。あくまでお互い同意の上だ」

 

「……そんな事解ってますよ」

 

「なんだ。それで拗ねたんじゃないのか?」

 

「拗ねてって……。別に違います」

 

「なら何故機嫌が悪いんだ? 原因がそれじゃなかったら俺には皆目見当がつかないんだが」

 

「……別に」

 

「……?」

 

(言えるわけないじゃない。姉様が先にケッコンしたのがちょっと悔しくて機嫌が悪いなんて)

 

「……取り敢えず仕事がしたい。いい加減下りろ。そのままずっと俺に下着をみせているつもりか?」

 

「……見ていればいいじゃないですか」

 

「なに?」

 

「……っ」(わたしったら何を……!)カァ

 

「おい、強がりもそのくらいにしておけよ」

 

「強がりなんかじゃないです」

 

「強がりじゃなかったらお前それ、ただの痴女だぞ」

 

「ち……!」カァッ

 

(よく赤くなるな。まるで瞬間湯沸かし器だ)

 

「~~~っ」クルッ

 

(やっと後ろを向いたか)

 

 

「もういい。私室で仕事をして来る。やる気のない秘書艦はそこで反省していろ」

 

後ろこそ向いたものの、それでも机の上から意地を張って動こうとしない山城に、提督は本気か演技か相当呆れた様子で席を立ち、書類を纏めてその場を立ち去ろうとした。

山城はそこにきてやっと慌て、焦った様子で彼の服の裾を掴んだ。

 

「あ……」

 

ギュッ

 

「ん?」

 

提督が振り返った先には叱られた子供の様に自分の行動を後悔している山城の泣き顔があった。

 

「ご、ごめ……待って……」ジワッ

 

「……却下だ。子供の我儘に構うつもりはない」

 

「あ……。……っ、あや……まります。ごめ……えぐ……なさ……い」

 

「なら理由を言え。それで納得すれば取り敢えず仲直りという事にしてやる」

 

「……しくて」

 

「ん?」

 

「くや……しくて」

 

提督は山城の言葉を聞いて、たった一つだけ思いついた理由を意外そうな顔で尋ねた。

 

「……扶桑にケッコンで先を越されたから?」

 

「……お、お姉様には内緒にして……」

 

「……悪い、それは本当に分からなかった。意外過ぎて」

 

「……」

 

「お前は完全に姉っ子だと思っていたからな」

 

「……お姉様は大好きです。……でもわたしは大佐も好きだから、その……。ごめんなさい。こういう気持ち初めてでどうしたらいいか考えてたらつい機嫌が……」

 

「なるほどな」

 

「……」シュン

 

「分かった。大方理解した。取り敢えず先ず仲直りだ」スッ

 

提督は下を向いて俯いている山城に手を差し出した。

表情こそいつもの通り不愛想だったが、それでもその顔は彼女を叱っていた時より明らかにどこか柔らかく見えた。

山城はその顔を見て安心が小さな息となって口から洩れるのを感じた。

 

「あ……」

 

「握手だ」

 

「う、うん……」

 

ギュッ

 

 

「よし、それじゃ仕事を始めるか」

 

「!? ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

むず痒い反省の雰囲気も、ほろ苦い恋の雰囲気も微塵もない唐突の展開に山城は信じられないという様な声で叫んだ。

 

「ん?」

 

「え? なに? これで終わり? 終わりですか!?」

 

「ん? ああ、そうだな。お前も早くケッコンできるように頑張れ。応援しているぞ」

 

「え……あぅ……えぇ……? あまりにもあっさりし過ぎてないですかぁ……?」

 

「そう言われてもな。俺はお前の気持ちを知って光栄に思うくらいしか……」

 

「人のパンツまで見たのにそれだけ!?」

 

「あれはお前が見せたんだろ。それに、別に俺はそれによって劣情は抱いたりはしていない」

 

「興奮しなかったっていうの!?」

 

「おい、人を年中発情しているような獣の様な言い方するな」

 

「だって、ねぇ? 人ってそうじゃない? 違うんですか?」

 

「発情というよりかは『常に興奮できる』だろ。さっきの場合は、日中、仕事中、この二つの環境下で俺が性的興奮を覚える可能性は皆無だったという事だ」

 

「そんな……」

 

山城はそれを聞いて今まで感じていた羞恥が、言いようのない虚脱感へと転じるを感じた。

何か恥ずかしさを我慢して一瞬でも意地を張った自分が凄く馬鹿に思えた。

 

「こんなことで女のプライドの無駄遣いするなよ……。良識の範囲内で行動すれば済む話だろ」

 

「う……」

 

「どれだけ余裕が無かったんだ」

 

「あ、改めて考えてみれば凄く子供っぽい事してた……」カァ

 

「今更か」

 

「はぁ……もう嫌ぁ……。不幸だわ……」

 

「自分で墓穴を掘っただけなのに、それを運の所為にするな。ほら仕事しろ」

 

「せめて慰めて欲しいんですけど……」ジトッ

 

「……昼休みになったら構ってやる」

 

「っ、本当? 本当ですね? お、お姉様みたいに優しくしてくれます?」

 

「……どう優しくしろって言うんだ」

 

「ひ、膝に乗せてくれたり、そのままあ、頭……撫でて、くれたり……とか……」

 

「ああ、分かった分かった。ついでに飯もたべさせてや……」

 

「口移しで!? い、いきなり大胆ね……」

 

「話を勝手に捻じ曲げるな。何もしないぞ」

 

「あ、嘘、嘘だから! 山城頑張ります! 先ずは何が食べたいですか?」

 

「今日の献立は決まってただろう。鳳翔に迷惑掛けるな。あと仕事しろ」

 

提督は頭痛を覚えつつ溜息を着きながら言った。




こんばんわ、扶桑よりかは山城が好きな筆者です。
山城がデレたら可愛いんだろうなという妄想をよく抱きます。
そんな彼女もほぼ演習だけをこなしながらレベル97になりました。

頑張ろう!


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第×22話 「強がり」

仕事中、突然部屋を訪れた初風はツカツカと提督に歩み寄ると、机にもたれた。
そしてまるで暇を持て余して相手を求める猫の様な顔でこう言ったのだった。


「ご飯、まだなの?」

 

提督の机に顔を乗せた初風が暇そうな声で提督に訊く。

 

「初風、何故俺に言う? 飯の準備なら鳳翔や間宮がしてるだろ? あいつらに訊け」

 

「むぅ、いいじゃない。大佐はここのさいこー責任者でしょ? それくらい把握しててよ」

 

「悪いが飯時にまで関心はないんだ」

 

「……」プクー

 

「なんだ? 初風は空腹で機嫌が悪いのか? ならこの長門お姉さんが何か作ってやろうか?」

 

提督と初風のやり取りを後ろで楽しそうに見ていたその日の秘書艦の長門がここで話に入ってきた。

 

「……遠慮するわ。だって長門さんにご馳走されたらなんかわたしまで食べられそうだもの」

 

提督の基地の長門は一般的に知られている“長門”の性格とは大分変っていた。

一般的に認知されている長門の性格と言えば、誇り高く、口数が少なく、それでいて強情が祟って素直になれない面を持つ、そんな“凛々しい大和撫子”を体現したような高潔で頼りになる艦娘となっている。

ところがここの長門は、誇り高くて頼りになる、までは合っているが、他は、よく喋り、自分を偽らず、可愛いものは有象無象を問わず好きと豪語し、その上人懐っこいときている。

故に初風はそんな彼女だったからこそ冗談のつもりで言ったのだろう。

しかしそれを単なる冗談として流さず逆に相手を弄る為の材料として使うのが“ここの長門”であった。

 

「ん~? まぁ、今日は節分だしな。可愛いお前の『マメ』を食べるのもいいかもな」ニマニマ

 

「わたしの、豆?」キョトン

 

「長門」

 

「はは、冗談だ」

 

「大佐、長門さんが言った意味解るの? どういう意味? 確かに今日は節分だけどわたし豆なんて持ってないわよ?」

 

「気にするな。大方お前がもし豆を持っていたら取り上げて、それを涙目で取り返そうとするのを見て楽しもうってとこだろう」

 

「おいおい、私はそんなに性格は悪くないぞ?」

 

「わ、わたし豆なんて持ってないからね! それに取られたって泣かないんだから!」プンスカ

 

「む、大佐の所為ですっかり私が悪者になってしまったじゃないか。この責任は追及させてもらうぞ」

 

「元々お前がタチの悪い冗談を言ったのが原因だろうが……」

 

「そーよ! 大佐は何も悪くないわよ! それに責任って何よ? 長門さんが大佐にどうやってそれを請求するっていうの?」

 

「あぁ? そりゃお前決まっているじゃないか。ベッドの上で、だよ」

 

「ベッド?」

 

「おい……」

 

「伽だ伽。よ・と・ぎ」

 

「よと……? ……!」カァッ

 

「ははは、やっと解ったか? 真っ赤になって、あーもう可愛いなぁ」スリスリ

 

「ひゃ!? ちょ、ちょっとひゃめ……」ジタバタ

 

「おー、これは良く伸びるほっぺだ」グニーン

 

「みゅひー!?」

 

「……」(仕事ができん)

 

提督が呆れている中、長門に玩具にされていた初風は必死に暴れる事で何とか彼女の腕から脱出した。

 

バッ

 

「お?」

 

「う、うぅ……。お、覚えておきなさいよ! ぜっったい仕返ししてやるんだからぁ!」

 

テテテッ、バタンッ

 

 

「……涙目だったな」

 

「ああ」

 

「可愛かったな」

 

「お前、歪み過ぎだぞ」

 

「ふふ、冗談だよ。ちゃんと後で謝るさ」

 

「……全く、なんでお前はこうなったのか」

 

「ん? なんだ? 私の性格の事か?」

 

「初めて会った頃からは想像ができない程変貌してると思うんだが」

 

「ああ、だって、なぁ?」ニヤニヤ

 

「……なんだ?」

 

長門は提督の思いを聞くと、何やら悪戯っぽく笑いながら机の正面に回り、身を乗り出してきた。

前屈みになる事によって彼女の“谷間”が提督の目の前にきた。

提督は最初それを彼女が故意にやっているのだと思ったが、それに対して長門は特に意識している風には見えなかった。

恐らく提督と初めて会った頃を思い出しているのだろう。

最初こそからかう様な顔をしていたが、今では昔を懐かしんで柔らかい表情をしていた。

 

「私も最初は確かに大佐の言う通り、なんていうか……優等生だった。……そうだったよな?」

 

「なんで改めて確認するんだ。まぁそれくらい変わったという自覚はあるって事か」

 

「ふふ、まぁな。まぁ確かに今でも仕事の上では優等生なのは変わらないつもりだが、性格がそうでなくなったのは仲間の影響だよ」

 

「ふむ?」

 

「ここの奴らは大体大佐に好意を寄せているからな。そんな中で私は“自分を保ち続ける”事に段々不安になって来たんだ」

 

「不安?」

 

「そうだ。まぁ私は優秀だから? 大佐の役に立つことによって信頼は得る事は難しくないだろう。だがそんな中私は、他の奴らと比べて差が付けられてしまっている事に私は気付いたんだ」

 

「ふむ」

 

「距離だよ、単純に。大佐との距離。親しさだ」

 

自分から問い掛けるように語っておきながらあっさりと自ら答えた長門の顔は優しかった。

 

「……」

 

「最初の私のままでもそりゃ時間を掛ければ親しくなれただろうが、だがそれだと他の奴らは持っているのに、私だけが持っていない“大佐との仲”ができてしまいそうでな」

 

「……」

 

「結論、私はそれを損だと考えた」

 

「もしかして」

 

長門の話を静かに聴いていた提督は呟いた。

 

「うん?」

 

「最初のお前の一番の敵は駆逐艦たちだったか?」

 

「ふふ、正解だ」

 

「なるほどな」

 

「大体理解できてきたか? なら褒美に私の頭を撫でさせてやろう」ズイ

 

「何故褒められる側が上から目線なんだ」

 

「なんだ不満か? ならむ……にぃ?」

 

長門はそう言うと差し出していた頭を引っ込めて徐に胸元に手を掛けた。

提督はそれ以上はさせず、彼女の顔を掴んで引き寄せると、やや強引な形だったが黙って頭を撫でてやった。

 

「よしよし」ナデナデ

 

若干棒読み気味の声だったが、長門はその撫で心地を気持ちよさそうに受け止め、目を細めた。

 

「ん……。まぁいい♪」




那智改二になりました。
初風可愛い。
他にはえーと……早く暖かくなって欲しいorz

艦これアニメ、金剛姉妹が出ると聞いて4話だけ観ました。
が、観始めて5分くらいで観るのやめました。
何故だろう……。
なんかそれ以上観たいとは思えなかった……。


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第×23話 「大物」

提督は釣りをしていた。
それは何気ない日常で、彼にとっては貴重な憩いのひと時。
魚は釣れなくても煙草をふかしながら波の動きを見ているだけでも彼の心は和んだ。
そんな風にリラックスしていると、釣り糸を垂らしている海の方からチャプリと音がした。


「……」

 

丸くて赤い瞳が提督を見つめていた。

海面から頭を出していた人ならざる白い肌をした物体は、明らかに深海棲艦だった。

それもレ級以上に幼い外見から察するに、提督の頭の中の敵資料から導き出された答えは……。

 

(北方棲姫……)*以下『北方』

 

基本的に鬼クラス以上の実力を持つとされる姫級は深海棲艦の中でも特に警戒すべき存在。

そんな敵が何故基地の警戒網にひっかからず自分の目の前まで来れたのか提督には解らなかったが、一つだけ確かだったのは今彼が命の危機に直面しているという事だった。

少なくとも彼はそう考えていた。

 

(突然の死、か……。いざ直面するといろいろと心残りが浮かぶものだな)

 

レ級の仲間かどうかわからない以上、攻撃されないとは限らない。

提督は敵の手にかかるならせめて自決しようと、釣り糸を切る為のハサミに手を掛けながらそんな思考を巡らせていた。

 

「……」

 

対する北方は未だに提督を見つめたままその場にいたが、やがて彼が身じろぎをせずにその場を緊張と警戒から動かないでいると、なんと自分からゆっくりと近づいてきた。

 

ちゃぷ……。

 

「……」

 

水面を漂いながら堤防のへりまで北方は来た。

しかしそこからまた動かずに真上にある提督の顔をじっと見つめる。

 

(まさか……)

 

提督はその時ある考えが浮かんだ。

彼は一旦ハサミから手を放すと、片手に持ったままとなっていた釣竿のリールを巻いて、その糸を北方の近くまで近づけた。

 

「……」

 

北方は釣り糸に繋がれて水面に浮かんでいた重りが自分の近くに来た事に気付くと、装備だか服なのかは解らなかったが、それっぽい物にそっと釣り針にひっかけたようだった。

それを確認して提督は半信半疑の思いでリールを巻き上げる。

 

キリキリ……。

 

驚くことに少女一人を釣り針一つで引き揚げているというのに、提督はその時重さと言うものを全く感じなかった。

おかげで北方のサルベージは難なく進み、数秒足らずで彼女を自分が立つ堤防の上まで引き上げることができた。

 

「……」

 

提督の間近に引き上げられた北方は、釣り上げれたことによって宙に浮いた状態のままだというのに器用に釣り針を外すと、落ち着いた様子でコンクリートで出来た堤防の上に降り立った。

 

トンッ

 

その時初めて提督は彼女から重さを感じるような音を聞いた。

どうやら彼女には重力をある程度操る能力があるらしかった。

 

「……」

 

北方は提督の横に立ったかと思うとまたそのまま動かずに提督の事を見つめていた。

 

「……」

 

何をしたらいいのか考えあぐねた提督は、取り敢えず最初していたようにその場に座り直すことにした。

 

「……んっ♪」ギュッ

 

すると北方は提督が座るのと同時に彼の腰に嬉しそうに抱き着いてきた。

それは提督がその時初めて見た北方の感情が感じられる表情だった。

 

 

 

「大佐……」

 

夕刻、いつも通り執務を行う提督の横で、秘書艦の赤城は顔をひくつかせながら彼に訊いた。

 

「ああ」

 

「訊いていいですか?」

 

「こいつの事か?」

 

「はい」

 

「~~♪」スリスリ

 

提督の膝の上では北方が子供のように彼にはしゃぎ、彼にじゃれついていた。

 

「どうしたんですか? それ……」

 

「……釣れた」

 

「は?」

 

「……」

 

「……え?」

 

「嘘じゃない。本当にそれしか言いようがないんだ」

 

「そんな……」

 

「敵意がないところを見るとレ級の仲間なのかもな」

 

「そんな安易に……」

 

心配そうな表情をする赤城を、提督の膝からその様子を見ていた北方は、何を思ったのかふわりと飛んで今度は彼女の胸に抱き着いた。

 

「ひっ……!」

 

突然の行動に赤城は短い悲鳴をあげる。

自分にとっては宿敵とも言える種類の敵が、今彼女の胸に嬉しそうに抱き着いていた。

 

「赤城落ち着け」

 

「でも、でもぉ……」ジワッ

 

涙目で無防備の状態で敵を抱える恐怖に震える赤城だったが、北方はそれを全く気にしていない様子で尚も純真そうな瞳で彼女を見つめながらこんなことを言ってきた。

 

「おかぁ……さんっ♪」

 

「え?」

 

「……」

 

不意の言葉に赤城と提督は固まる。

 

「今……え? これ、この……子? なんて……」

 

「えへへ~♪ あかぎおかーさんー♪」スリスリ

 

「ちょ!? だ、誰がお母さんよ!!」

 

愛しの提督の前で突然一児の母親にされた赤城は半泣きで否定する。

北方はそれも気にする事もなく不思議そうな表情で更にこう言ってきた。

 

「ん~? あかぎ、ほっぽのおかーさんになってくれない? たいさはおとうさんなのに?」

 

「えっ」

 

その言葉に赤城は顔を赤らめて一瞬提督を流し見た。

提督はその視線に気づき、冷や汗を一筋流した。

 

(嫌な予感が……)

 

「大佐、この子飼いましょう」

 

「おい」

 

間髪入れずとんでもない事を言いだした赤城を提督は珍しく焦った様子でツッコミを兼ねた制止を敢行するのだった。

 

 

 

一方その頃、レ級たちの棲みかでは……。

 

「ねぇ姫ー」

 

「ん?」

 

「ほっぽちゃん知らない?」

 

「北方ノ? いや、見てないけど……」

 

「んー、そっかー。どこか遊びに行っちゃったのかな」

 

「あいつはお前と違って本当に根っからの子供だからな。ちょっと目を離すとこれだ」

 

「んー……もしかして大佐の所にいったのかな」

 

「だったら迎えに行って来るか? 大佐も困っているだろう」

 

「迎えに行くのは賛成だけど、その心配はないかな」

 

「ん? 何故?」

 

「ほっぽちゃんには困ったら先ず男をお父さん、女をお母さんって言って頼りなさいって言ってあるからね!」

 

「……」

 

鬼姫はその言葉を聞き絶句した。

そして僅かの間で気を取り直すとすぐさまレ級にこう言った。

 

「レ級」

 

「ん?」

 

「すぐ行け」

 

「え? 何処に?」

 

「迎えにだ」

 

「え? なんd」

 

「いいから行け。おい、ル級」

 

レ級のすぐ近くで昼寝をしていたル級は鬼姫の一言で直ぐに起きた。

 

「……ふぇ? あ、は、はい! なに? 姫」

 

「お前の大好きな大佐が北方ノに取られようとしている。直ぐに行って連れ戻して来い」

 

「だ、大好きってそ……え? ええ!?」

 

「レ級があいつに大佐の事を父と呼ぶように教えたそうだ」

 

「!? い、行く! わたし行きます! 行こ、レ級!」

 

「え? え? 皆どうしたの?」

 

片や真剣な表情で指示を出す上司、片や真剣な表情で焦燥を見せる親友。

レ級は自分が蒔いた種が起こそうとする事態をまだ予想ができず、戸惑うばかりだった。




イベント前に3-5をクリアしたら何となくこの話が浮かびました。
そして何となく401が欲しくて大型回したらまた弾薬が1万切りました。
はい、自業自得です、すいません。

帰郷の話がなかなか進まず日常の話ばっかですね。
暫く続きがちゃんと出来るまでふらふらしようかなと考える今日のこの頃です。


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第×24話 「バレンタイン」

ある日、早霜が叢雲を訪ねてきました。
数が多い駆逐艦の中でも個性派に属す早霜。
彼女はその中でも更に我が強く、独特の雰囲気を放っている影響からか、少し近寄り難い娘として仲間から認知されていました。
そんな彼女が自分から他人の元を訪ねるのはとても珍しい事でした。
果たしてその理由は……。


「叢雲……ちょっと訊きたい事があるのだけど……」

 

「ん? どうしたの早霜? 改まって」

 

「うん……。ちょっと、ね……」

 

「?」

 

早霜が自分から誰かを訪ねるのも珍しいのに、この時に限っては更に彼女はどこか言い難そうに口ごもる様子まで見せていた。

叢雲は内心その事に驚いていた。

暫くして早霜はようやく決心したように顔を上げると、口を開いた。

 

「もうすぐ……」

 

「うん」

 

「もうすぐ、バレンタインよね……」

 

「ああ、そういえばそうね。もうそんな時期になっていたわね」

 

「……」ジッ

 

早霜は、自分の質問に事も無げに応じる叢雲をどこか注意深く窺う様子で見つめた。

 

「? なに?」

 

「ううん……。それでね……」

 

「ええ」

 

「……やっぱり言うわ。さっきね、叢雲を見ていても思ったんだけど……」

 

「私? ええ」

 

「バレンタインが近いのに、なんか皆……大人しい気がして……」

 

「ああ」

 

「理由を知っているの……?」

 

「そうね。少なくともあなたの疑問には答えることができるわ」

 

「なら教えてくれるかしら……?」

 

「その前に一応確認するわね。早霜、あなたが気になっているのは皆が大佐に好意を向けている筈なのに、何故かチョコの話題をあまり聞かないから。それを疑問に思っているのよね?」

 

「完璧よ……。そんな中で自分だけ行動するのって、なんだか私だけ間違った事をしている様な気分になるでしょ……? それが居心地が悪くて……」

 

「なるほどね。それは当然だわ」

 

「どうしてかしら……?」

 

「ま、答えは簡単よ。この基地ではね、バレンタインにチョコ、いえ、それも含めて大佐に贈り物をするという習慣があまりないからよ」

 

「え……? そうなの……? 何故……?」キョトン

 

早霜はその答えに目を丸くして本当に意外そうな顔をした。

 

「最初の頃はね、私も含めてだけど大佐にチョコを贈る話題で盛り上がってたりしてたわ。でもね」

 

「でも?」

 

「そんな折に大佐がこう言ってきたの」

 

『日本ではバレンタインは女性が男性にチョコを贈るのが風習になっているみたいだが、実際は恋人同士の仲を深めるのが本来の目的だ。だからそんなにお前達が一方的に贈り物に執心する必要はない』

 

「――って言ったの」

 

「 」

 

「ふふ、あなたもそんな顔をするのね。ま、確かにちょっと冷たい突き放すような言い方だとは思うわ」

 

「そう、ね……」

 

「まぁそれも、私たちが大佐と今ほど親しくなかった頃だったから、仕方ないと言えば仕方なかったけどね。とにかく、それがきっかけで取り敢えず私たちの間でバレンタインの日にチョコの話題が上る事はあまりなくなったの」

 

「それじゃあ叢雲も大佐に何もしてあげないの……?」

 

恐らく駆逐艦の中でもいろいろ考え抜き、結果として相談相手として彼女を選んだのだろう。

早霜は今後の自分の行動の指針になるヒントがもしかしたら得られないのではないかと言う不安に駆られていた。

叢雲はそんな早霜の心内を察しているかのように小さく笑いながらこう答えた。

 

「少なくとも贈り物に傾倒する事はそうないわね。でも」

 

「でも?」

 

「さっき言ったけど、バレンタインの本来の目的は恋人同士がお互いの仲を深め合う事なの。だからその日が近くなれば、自然と大佐に甘えるようになるわね」

 

「甘え……」

 

「ちょっと表現が間違っていたかしら。まぁ自分から大佐に近づいて多少ひっついちゃったりなんかしても、結構多めに見てくれるのよ」

 

「ふむ……」

 

「流石に人数が多いからその日だけってことはないわ。少なくともその前後の間は大佐のガードはそんなに硬くないわよ」

 

「そう……?」

 

「ええ」

 

「そう……」

 

「ふふ、頑張ってみる?」

 

「え……?」カァ

 

「その調子だと例えチョコをあげたとしても、土壇場で恥ずかしがって義理とか言ってたかもね」

 

「……悔しいけど、否定しきる自信は、ないわね……。私、素直に感情を表現するのってちょっと苦手だから……」

 

「贈り物だって立派な手段だから、別に無理してそれを諦める事も無いのよ? 例えばチョコじゃなくても軽く食事を作ってあげたりして誘うのもいいんじゃない?」

 

「! なるほど……」

 

早霜は叢雲の提案にその手があったかとばかりに目を見開く。

 

「ちょっとはやる気が出た?」

 

「ええ……。叢雲、ありがとうね……」

 

「気にしないで」ニコ

 

 

 

そして時は流れ、場所は所変わって提督私室。

 

「……それで、おでんという事か」

 

提督は目の前でぐつぐつと美味しそうな匂いを湯気とともに上げるおでんを見ながら言った。

 

「そう……。あ、熱燗もあるわよ……?」

 

「酒か……」チラッ

 

提督は壁に掛けられた時計を見た。

時刻はもう直ぐ日付が変わるといった頃合いだった。

 

「い、一応時間にも気を遣ったつもりよ……?」

 

「ああ、すまん。一応な。早霜」

 

「っ、は、はい」

 

「その誘い有り難く受けよう」

 

「……っ」パァッ

 

「では、先ずは一献」スッ

 

「え? そ、そんな私からなんて……」アセアセ

 

「遠慮するな。お互い楽しむのが目的なんだから」

 

トクトクッ

 

「あ、あ……」ササッ

 

「……よしっ」

 

「……」チラッ

 

「飲んでいいぞ」

 

「ん……」コクコク

 

「どうだ?」

 

「……ふぅ……。美味しい、です……」ポー

 

「はは、そうか。お?」

 

「大佐、次は私が……」

 

「ありがとう」スッ

 

トクトク……

 

「はい、どうぞ……」

 

「ん……ぐ、ごく……」

 

(あ、良い飲みっぷり……)

 

「……ふぅ」

 

「どうでした?」

 

「ああ、美味い」

 

「良かった……」ニコ

 

「さて、それじゃあ早速だからおでんも頂こうか。いいか?」

 

「ええ、勿論です……。あ、取りますよ」

 

「ありがとう」




少し離れるつもりがバレンタインのネタを思いついたので投稿しました。
俺は辛い物が好きなので例えバレンタインでも貰えるならチョコより台湾ラーメンとかがいいですね(ア
因みにおでんは大根とこんにゃくが好きです。

冬イベ始まりましたね。
うちは弾薬がせめて3万くらい貯まるまではのんびり通常モードです。


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第×25話 「憂慮」R-15

ある日利根が自分たちの生活寮の前を歩いていると、おそらく加賀の部屋だと思われる窓から彼女が暇そうにテーブルに頬杖をついているのを見かけました。
普段あまり見ぬ気の抜けた加賀の様子に利根は興味を引かれ、利根は自分の暇潰しも兼ねて加賀の様子を直接確認する事にしました。

*明らかな性的描写あり


「……」

 

「なんじゃ加賀ぼーっとして」

 

「利根さん……」

 

「お主らしくないではないか。覇気を感じぬぞ?」

 

「ちょっと……」

 

「ん?」

 

「ちょっと暇をしていまして」

 

「はぁ?」ズルッ

 

「……そんなに驚かなくてもいいではないですか」

 

「あ、いや、すまぬ。意外でな」

 

「そうですか? 手が空いてい暇なときは割と私はこんな感じですよ?」

 

「そ、そうなのか?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

「はい」

 

「……」

 

「……」

 

(か、会話が続かん!)

 

「?」

 

「あ」

 

「な、なんじゃ?」

 

「利根さん、ちょっと」

 

「ん?」

 

「ちょっと私の前に。そう、そこ」

 

利根は加賀の手招きに応じて彼女の目の前にまで近づいた。

すると、それを確認した加賀は……。

 

「んん? 内密のはにゃぁぁ!?」グニーン

 

自分の間合いに入った瞬間、素早い動作で利根の頬を両手で摘まむと、いつか加賀が初風にしたように左右に伸ばした。

 

「ふふ、やっぱりよく伸びますね。可愛い」グニグニ

 

「にゃ、にゃにをしゅりゅのじゃあ!?」

 

「長門さんの真似になりますが、なるほど。これは確かに癖になりますね」グニグニ

 

「ひゃ、ひゃめりゅのじゃ!」ジタバタ

 

「無駄ですよ。例え利根さんでもこの基地最強の空母である私の力には適いません」ガシッ

 

「にょわぁぁぁ!!」

 

 

―――30分後

 

「う……ぐす……ひっく……」

 

「ふぅ……」キラキラ

 

「いや、そこは謝るところであろう!? 何を満たされ切った表情をしているのじゃ!?」

 

「え? ああ、どうもありがとうございました。お蔭で満たされました」ニコッ

 

「違ぁぁぁぁう!!」

 

「利根さんは私に弄られたのが不満で怒っているの?」

 

「それ以外に何があると言うのじゃ!!」

 

「それは確かに。ふむ……」

 

「……っ」(また何を言い出すか分からぬ。ここは警戒じゃ!)ササッ

 

加賀を警戒して間合いを離す利根だったが、それに対して加賀はそんな彼女の警戒心からは予想が着かない事を言ってきた。

 

「じゃぁ私にもしていいですよ」

 

「いいわけないであろう! またな……へ?」

 

「私の頬も伸ばしていですよ」

 

「え?」

 

「ですから私の頬も」ガシッ

 

「あ、ちょ……」

 

「こうつかんで……」グニッ

 

加賀は利根が油断している瞬時に間合いを再び詰め、彼女の手を掴むと手を添えて自分の頬を掴ませた。

 

「や、なにを……」

 

グニーン

 

「……ひょうれす?」

 

加賀は、頬を伸ばされた状態でも特に変わる事なく、いつもの落ち着いた雰囲気と半目で利根にそう訊いた。

 

「……え? あ……」(や、柔らかい……)

 

「こへではたりはへんは?」

 

「い、いやそういうわけではないが……」

 

「?」

 

「……っ」(なんで頬を伸ばされたままでもいつもの通りなのじゃ! なんか逆に可愛くおも……)

 

「あ」

 

「どうしました?」

 

「あ、いや……」フイッ

 

 

「ふぅ、これでお相子でいいですか?」

 

それから暫くして、加賀によって半ば無理やり彼女に報復をする事に成功した利根は、腑に落ちない気持ちながらもそれ以上は文句は言わなくなっていた。

 

「な、なんか納得がいかんが。まぁ……いいっ」

 

「そうですか」

 

ムニッ

 

「ひょわっ!? こ、今度は何をするのだ!?」

 

「あ、すいません。そこも柔らかそうだったので」

 

「ここは女人であらば、誰であろうと柔らかいであろう!?」

 

「いけません」バッ

 

「むぐっ!?」

 

「その言葉、人によっては限りなく該当しなかったりするんですよ。どこでそれを聞いてその人を傷付けてしまうか分かりません」ムニュムニュ

 

「むぐぐー!?」(そう言いながら揉むなー!!)

 

「あ、すいません。私のも触りますか? はい」ムニュ

 

「ふぐー!!」(そういう事じゃなーい!!)

 

 

―――それからまた30分後

 

「う……はぁ、はぁ……」グテー

 

「大分いい感じに仕上がってきましたね」

 

「だ……だへほ……へぇはと……」

 

クチュッ

 

「にゃうっ!?」

 

「ここも大分良い塩梅みたいですね」

 

「や、そこは……だめなのじゃ……!」

 

「もしかしてまだ大佐とは……?」

 

「~~~っ」コクッ

 

加賀の問いに利根は首下まで肌を赤くして照れ、小さくこくりと頷いた。

 

「そうでしたか。それではいけませんね。ごめんなさい」スッ

 

加賀はそれを確認して利根を惑わせていた手を大人しく引いた。

すると利根は、それをどこか名残惜しそうな目で見つめながら小さく声を漏らした。

 

「あ……」

 

「?」

 

「あ、いや……」カァ

 

「……利根、そこに座って足を開け」

 

「えっ!?」(た、大佐!?)

 

「……」ニッ

 

「……っ」カァッ

 

「大佐に思えましたか?」

 

「ふ、不思議なものじゃの。声は違うのに雰囲気が大佐だった……」

 

「それは光栄ですね」

 

「でも……」

 

「はい?」

 

「誠に残念というか複雑なのじゃが、大佐は自分からそういう事はあまり言わない、気がする……」

 

「……確かに。誘いには乗ってくれても自分から誘ってくれた事はありませんね」

 

「であろう? さっきみたいなセリフも吾輩たちの感情が昂っている時にそれを補助する時くらいではないか? 大佐はあんなノリノリな感じでは言ってくれないであろう」

 

「そうですね……」(まだ未体験だというのによく解っているわね。それだけ大佐がアレ、という事かしら)

 

「そうであろう?」

 

「「……」」

 

「「はぁ……」」

 

「……なんか興が冷めてしまいましたね。私は大丈夫ですけど、利根さんは大丈夫ですか? 希望なら手伝ってあげますが」

 

「……心誘われるが、遠慮しておこう。なんか部屋に戻って一人で勤しむ気も失せてしまったからのう」

 

戯れもそれまでというかのように利根が立ち上がると、加賀はそのまま立ち去ろうとする彼女にある物を手渡した。

 

「そうですか。あ、これを」

 

「ん?」

 

パサッ

 

「 」

 

「よかったらどうぞ」

 

「え、これ……」(冷た、もしかして……)

 

「私のです。一応感じていましたので」

 

「え? だ、だから……?」

 

「交換しません? あなたのと」

 

「なんで!?」

 

「何となく?」

 

 

 

それから暫くして、利根は廊下を一人歩いていた。

 

「……」(はぁ、なんで受け取ってしまったんじゃろう……)

 

恥ずかしそうに俯きながら利根は、ポケットから小さな布きれを少しだけ引き出してそれを見つめた。

 

「……」(加賀の、か……)スッ

 

「ふぅ……まぁいいか」

 

利根は誰にもともなくそう呟くと、それからは特に何かを気にしている様子もなく自分の部屋へと戻って行った。

 

 

 

「……」(どうやら計画は成功したようね)

 

その様子を廊下の曲がり角の陰から密かに確認する加賀の影があった。

その彼女の肩を後ろから叩く者が更に一人。

 

トントン

 

「……時間通りね」

 

「はい。勿論です」

 

「……どうぞ」スッ

 

「わぁ、ありがとうございます♪」(姉さんの……!)

 

筑摩は加賀から渡された物を嬉しそうに抱きしめる。

加賀はその様子を少し呆れた顔で観ながら言った。

 

「……姉妹なのですから面と向かってお願いすれば良かったのでは?」

 

「それでは意味がありません! この背徳感がいいんです!」

 

「……そうですか。私にはちょっと理解が難しいですが。でも私はそれを得る為に自分のを犠牲にしたのですが」

 

「え? そうだったんですか!? それは申し訳ございません。え、えーと……」ジッ

 

「? なんです?」

 

恥じらうような上目づかいで自分を見る筑摩に加賀は眉を寄せる。

 

「私の、いります?」ポッ

 

「……私が言うのもなんですが、この基地の風紀がちょっと心配です。大佐には何とか全員を女にして頂かないといけないわね」

 

「あ、や、やっぱりその所為なんでしょうか。最近ケッコンしている方が増えてきたから……」

 

「せめて駆逐艦の子たちにはこの空気が及ばない様に努力しないといけないわね」

 

「そう、ですね」

 

「「……」」

 

「「はぁ……」」

 

加賀と筑摩は先程加賀が利根とした様にお互い顔を見合わせると、再び共通の悩みに対して溜め息を吐いた。




意外にイベントをゆっくりやっているお蔭で取り留めのない話は思いつく余裕はあるようです。

まだE-1ですが、ゲージは半日掛けて3回破壊しました。
何故そんなに時間が掛かっているのかと言うと、それはバケツを使わず極力自然回復に努めているからです。
休みじゃないとこんな事できませんね。
というか、イベント前に無い弾薬で大型回した自分が一番悪いのですがw

利根はやっぱり弄られ役だと思います。


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第×26話 「本気」

軍の重要拠点に敵の襲撃が予想されているという。
提督は上からの指示でその拠点周辺に存在する敵勢力の駆逐と防衛を任された。
だが、相変わらず資材に余裕がない提督は、指示に従いながらも任務に出す艦隊の編成をバランスと省エネを重視して少し軽めのものにした。
その結果……。

*登場人物が多いのでセリフの前に名前あり


隼鷹「大佐、帰ったよー!」

 

利根「戻ったのじゃ!」

 

大淀「戻りました」

 

加賀「帰投です」

 

扶桑「只今戻りました」

 

山城「ただいまぁ」

 

基地に帰投した艦娘の格好は一働きした事を表すように、ところどころ傷つき、汚れていた。

提督はそんな彼女達の帰還を労いながら迎えたのだが……。

 

「ご苦労。……なかなか苦労してるみたいだな」

 

利根「……」ムスッ

 

扶桑「そうですね。敵の本体がいる地点は補足できているのですが、守りがまだ……」

 

「ふむ……」

 

返ってきた艦娘達の表情は一部を除けばお世辞にも明るいとは言えず、どことなく浮かない顔をしていた。

どうやら戦果自体は出しているものの、作戦の目的を達成するという本懐は遂げる事ができてないようだった。

 

大淀「個々の働きは問題はないと断言します。しかしそれに対して敵の勢力が……」

 

隼鷹「役に立ってないつもりはないけど、ありゃぁちょっと分が悪いかもねぇ。後一歩攻めきれない感じなんだよ」

 

加賀「流石に悔しくて頭にきてます」

 

 

「……なるほど。仕方ない少し編成を変えてみるか」

 

利根「む、吾輩はまだやれるぞ!」

 

山城「私もよ!」

 

艦隊を代表する子供組が早速吠えた。

ただちょっと残念だったのは、その吠えている子供の様な艦娘が戦艦と航巡という、艦種の印象からは少々想像し難い大人げなさだった。

 

「分かっている。お前達を責めているわけじゃない。ただ、倹約重視の守編成から重消費を前提とした攻編成に切り替えるだけだ」

 

大淀「資材、大丈夫でしょうか?」

 

「短期必勝を願うしかないな。勿論攻撃に転じるからには完遂するつもりだが」

 

扶桑「力及ばず申し訳ございません……」

 

加賀「……」プクー

 

隼鷹「まぁまぁ加賀、別に悪い事をしたわけじゃないんだから」

 

「その通りだ。これ以上お前たちを出撃させるのも返って疲労をだけが蓄積してしまう事にもなりかねないからな。ここは戦略的一時撤退と思っておけ。敗退ではない」

 

利根「……了解じゃ、ちょっと寝る!」

 

「いや、先ずは風呂に入って来い」

 

汚れて破損した服の所為で半裸に近い恰好となっていた利根が、執務室のソファーに横になろうとしたのを提督がすかさず注意した。

 

 

山城「お風呂! 姉様お背中流します!」

 

扶桑「そう言いながら胸揉まないで。怒るわよ?」

 

大淀「分かりました。では申し訳ないですが、入渠の後、待機任務に入りますね」

 

「ああ、皆ゆっくり休んでくれ」

 

隼鷹「やっほー! おっふろー♪」

 

加賀「……まぁいいでしょう」

 

「ああ、お前達二人は修復剤使ってシャワー浴びたら直ぐに戻って来い。次の出撃にもお前達にはそのまま参加してもらう」

 

隼鷹・加賀「 」

 

山城(あ、二人とも固まった。隼鷹はともかく、加賀もお風呂が嬉しかったのね)

 

利根(二人ともご愁傷様じゃ。そして申し訳ない)

 

 

「大淀」

 

大淀「え、あっ、わ、私も……?」

 

「いや、そこの二人をシャワー室に連れて行ってやってくれ。扶桑も頼む」

 

大淀「あ、そういう事ですか。分かりました」(よかったぁ)

 

扶桑「分かりました。お任せ下さい」

 

 

 

―――それから三十分後。

 

陸奥「それで、私達が呼ばれたのね」

 

武蔵「ふふー、久しぶりの実戦だな。楽しみだなぁ♪」

 

提督の前に基地の重火力を代表する戦艦達と航空戦術のエキスパートが集まった。

陸奥と武蔵は久しぶりの出撃に目をキラキラさせ、長門は興奮で疼く体を抑えるように腕を組みながら嬉しそうに言った。

 

長門「右に同じだ。偶には動かないと太ってしまうからな」

 

赤城「長門さん、私太ってないですよ?」

 

何故か名指しもされていないのに赤城が直ぐに長門の言葉に反応した。

提督は早速緊張感が崩れる場の雰囲気に内心苦笑しながら目の前の頼もしい部下たちに言った。

 

「誰もそんな事言ってないだろ。長門、そこで白くなっている加賀と隼鷹を艦隊に編入して準備が出来次第出撃しろ」

 

長門「了解だ。任せてくれ。赤貧基地が火を起こすとどれだけ恐ろしいか敵に刻み込んでみせよう。ところであいつらに色が着くまで遊んでいいか? 私は隼鷹がいいのだが」

 

「駄目に決まっているだろ。いい加減にしろ」

 

武蔵「あー、楽しみだなー♪ 46cm全然撃ってなかったからなぁ♪」

 

陸奥「武蔵、やり過ぎちゃダメよ? ムダな消費は避けるのは絶対なんだからね?」

 

赤城「今回は加賀さんと隼鷹さんまで一緒なんですね。これなら敵に“空は無い”様なものです。期待してて下さい大佐♪」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

 

こうして利根達の代わりに新たに編成された艦隊は、彼女たちの奮闘と提督の期待に応えるかのようにものの見事に出撃してから一刻も経たない内に敵本隊を撃破し、目的を達した。

提督の基地は、普段演習で勝つ事より試合を経験させ育成を重視しているので偶に外から甘くみられがちだが、このように本当の主力と呼べる火力はちゃんと保持している。

今回はその事を内外に示す良い機会になったようで、戦闘後の残り火によって赤く染まった空を背景に帰還する彼女たちを見た敵はそれを恐れ、また偶然近くを通った味方はそれを見て頼もしく感じたという。




E2、扶桑・山城・加賀・隼鷹・利根・大淀でE2を攻略していたのですが、どうもボスへの到達が悪かったので、少ない資材を振り絞って編成を本文に著した様に少し重くしました。
すると、あっけなくクリアできたという……。

1週間くらい早くこれやっとけば良かったかなぁ。


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第×27話 「お酒2」

大佐は前回、本部から受けた任務を見事完遂し、その功績を称えられてある物を貰いました。
それは大和型しかまともに扱えない装備であり、使用者として受け取った武蔵は何故かそれを装備せず大佐にある提案をしました。
それは……。


「51cm……砲……! た、大佐こ、これ……い、一体?」

 

大和は目を輝かせて提督から貰った装備を使用するためのパスカードを見ながら言った。

 

「前の任務で達成の功績に貰ったんだ。受け取ったのは武蔵だから、これはあいつからお前への贈り物という事になるな」

 

「武蔵が……? どうして私に……」

 

「お前偶に戦艦の中で一番自分が練度が低い事を気にしていじけていただろう? 壁を向いてしゃがみこみながら傘をさしている様が見ていられなったんだと」

 

「 」

 

「武蔵に感謝し……おい?」

 

「……ぐすん」

 

「……」(結局いじけてるぞ……)

 

提督は大和を慰める言葉を見つけることができず、取り敢えず自分が部屋を出て彼女を一人にしてやることにした。

 

 

「大佐、大和の様子はどうだ? あいつ喜んでいたか?」

 

廊下で贈呈の提案をした本人に出会った。

その顔は大和が喜ぶのを確信しているからか、提督と話す顔も既に綻んでいた。

 

「……いや、いじけている」

 

「はぁ!?」

 

「なに、それは本当か!?」ヒョコ

 

「むぅ、なんだ長門?」

 

「決まっている。見に行くんだ。写真撮るぞ。いじけているならスカートを捲っても気付かないかもしれん!」キラキラ

 

「お前は何を言っているんだ!?」

 

「取り敢えず行くぞ!」ビューン

 

「おい、待てよ!? クソ、阻止しないと。大佐また後でな。待て長門!」ダダッ

 

「……」

 

提督は長門の奇行を武蔵が止められる事を心から願いつつその場を後にした。

 

 

「あらぁ、大佐どうしたのぉ?」

 

基地の出入り口近くで龍田と出会った。

お互い進行方向が逆なところから察するに、彼女は遠征からの帰りのようだった。

 

「龍田、いや別にちょっと部屋に居辛くてな」

 

「あらぁ、そうなのぉ? なら私たちの部屋に来る~? 歓迎するわよぉ」

 

「せっかくだが遠慮しておこう。堤防で煙草でも吸ってくる」

 

「あら、ざんね~ん。でも煙草も程々にねぇ? また後でね~」ヒラヒラ

 

意外にあっさり自分を解放した龍田に珍しさを憶えつつ、提督は本来の目的を達する為に喫煙の定スポットである堤防へと向かった。

 

 

「……ふぅ」

 

「ああっ! 大佐タバコ吸ってるー! ダメよあまり吸っちゃ! 身体に悪いんだから!」

 

堤防の下から声がした。

見ると曙が下から提督を見上げ自分を指差していた。

 

「曙、解ってるさ。2、3本でやめるつもりだ」

 

「本当ね!? それ以上吸ったら許さないわよ!」

 

「なんなら横に居て確かめるか?」

 

「え……う……そ、そうしたいのはやまやまなんだけど、わたし今日の遠征の出撃メンバーだから……」

 

「そうか、なら仕方ないな」

 

「あ、でも今日くらい誰かと代わっても!」

 

「ダメだ。行け」

 

仕事に関してはある程度真面目な提督は、ここでは曙を甘やかさずしっかりと遠征に行くように促した。

曙も頭から許しを貰えるとは思っていなかったようで、特に提督の命令に残念そうな顔もする事なく苦笑いしながら言った。

 

「あぁ……ま、そうよね。でもちゃんと約束守ってよね。それじゃ行ってきます!」

 

「ああ、気を付けてな」

 

 

「……」シュボッ

 

「戴きだ」パシッ

 

ようやく落ち着いて喫煙できると二本目に火を点けた瞬間誰かに横からそれを奪われた。

その方向を向くと、いつの間に自分の横に並んでいたのか日向が小さく笑いながら座っていた。

 

「日向」

 

「火が欲しいな」

 

「お前吸うのか?」

 

「大佐の前でだけな。ん、ふぃ」ピョコピョコ

 

「ほら」シュボッ

 

「ん……すぅ……っ、う、げほっ」

 

「おい」

 

「こ、こんなものよく吸えるな。海に落としてしまった」

 

「……勿体ない」

 

「取ってこようか?」

 

「いや、いい」

 

「ふふ、冗談だよ。すまなかった。お礼にこれを」ゴトッ

 

日向は懐から紙で栓をした徳利を出した。

どうやらここで軽く一杯やるつもりらしい。

 

「流石に昼間から酒は……」

 

「徳利一本だからそんな大した量でもないさ。二人で猪口でチビチビやればあっという間だろう」

 

「……」ジッ

 

「ん? どうした?」

 

「お前、酒は飲めるのか?」

 

「……だいじょうぶ」

 

提督の質問に日向は目を逸らして答えた。

その態度は明らかに彼女が酒が苦手、あるいは飲めないと語っていた。

 

「おい」

 

「ほ、本当だぞ? 飲むからこれを隼鷹から借りてきたんだ」

 

「それ、お前が元々飲めない証拠のように思えるんだが」

 

「だから飲めると言っているだろう。見てろ」

 

トクッ

 

「……」

 

日向は自分で注いだ酒を見るばかりで飲もうとしなかった。

見れば緊張で指が僅かに震えていた。

 

「飲まないのか?」

 

「ん? いや、飲むさ」

 

「……」

 

「どれだけ苦手なんだ」

 

「そんな事は無い。大丈夫だ。う……」

 

「別に酒も煙草もしなくても俺は話し相手くらいにならなるぞ」

 

「えっ?」

 

提督の言葉に日向は意外な顔をして振り向いた。

その時点である事実が確定した。

 

「やっぱり飲めないのか」

 

「あ、いや。その……飲めないと言うか、飲んだことがなくてな。酔った隼鷹とかを見てるとあまり良い印象はなくて」

 

「煙草は良いのか?」

 

「それは大佐が吸ってるから」

 

「善悪の判断を俺を基準にするな。俺もそんな責任は持てん」

 

「む、私は大佐を信じているんだ。部下に慕われて大佐は嬉しくないのか?」

 

「さっきの答えは慕うというより、信奉に近い気がするんだが……。まぁあまり篤く信頼されても俺は困る」

 

「いけずだな」

 

「そういうのじゃない」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「いや、共通の趣味がないとなんかこう、な」

 

「なら俺から話題を振ってやろう。日向、猪口を貸せ」

 

「ん? ああ」スッ

 

提督は日向から酒が注がれたままとなっていた猪口を受け取ると、その場で直ぐに一口で飲み干した。

 

「ありがとう。ごくっ……さて、お代り、注いでくれるか?」

 

「あ……。ああ、分かった」パァッ

 

トクッ

 

「ん、……ごく」クイッ

 

自分が注いだ酒を美味いと言われただけなのに何故かそれに対して言いようのない嬉しさを感じていた日向は、提督が酒を飲む様を彼女らしくもなく惚けた顔で見つめていた。

 

「はぁ……どう、だ?」

 

「美味い」

 

「そうか……」ポッ

 

「……日向、ほら」

 

「え? 私に?」

 

自分に向けられた猪口に日向は小さく驚き、ピクリと肩を震わせた。

その彼女に対して提督は猪口を差し出しながら言った。

 

「今なら飲めるような気がする」

 

「何故?」

 

「俺が飲んだのを見て嬉しそうだったからだ。その気持ちなら大丈夫だと思う」

 

「そう、かな……?」

 

「ま、猪口一杯だ。どうする?」

 

「……もらおう。大佐」

 

提督の言葉を信じた日向は猪口を受け取ると提督に注がれるのを待った。

提督もそれを確認して徳利を傾ける。

 

「ん、ほら」

 

「あ……」

 

トクッ

 

「……んっ」ゴクッ

 

「どうだ?」

 

「……はぁ、あ……。なんか、喉が熱い……な」

 

「味は解らないか」

 

「ん、正直美味いかどうかはまだ。でも、気分は悪くないな」

 

猪口一杯だと言うのに日向は胸を押さえながら少し火照った顔でそう答えた。

明らかに酔いは感じているようだったが、悪い方にはいってないようだ。

提督はそれを確信するとそれ以上は彼女の意思に任せる事にした。

 

「それが酒を楽しむというものだ。飲み過ぎて酔うのとはまた違う」

 

「なるほど……大佐」

 

「ん?」

 

「もう一杯」

 

「大丈夫か?」

 

「今なら」

 

「ふ、そうか」スッ

 

自分から猪口を差し出してきた日向に仄かな愛らしさを感じた提督は、再び徳利を彼女の猪口に傾けた。




日向は普通に酒は飲めるイメージですが、ここでは本編で一度も酒を飲んだ場面がない事を利用して下戸にする事にしました。

伊勢型の改二まだかなー。


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第×28話 「自己」

ゴオオオオオ!

砲弾が風を切る轟音が聞こえた。
どうやら仲間の援護が始まったようだった。
音に気付いた山城が連合艦隊機関の姉にそれを知らせる。

*登場人物が多いので途中までセリフの前に名前あり。


山城「姉様! 支援砲撃来ました!」

 

利根「良いタイミングなのじゃ!」

 

扶桑「そうね。これならいけそう。皆、まだいけますか?」

 

加賀「……お風呂……」ボソ

 

赤城「あ、大丈夫だそうです」

 

筑摩「え? あ、はい。私は大丈夫です。第二艦隊の方はどうですか?」

 

 

筑摩の声に僅かな間の後、ノイズ混じりの声が返ってきた。

 

ゴーヤ『大丈夫でち!』

 

初春『余裕じゃ♪』

 

潮『任せてください!』

 

吹雪『右に同じく! 初霜ちゃん?』

 

初霜『任せて! 大丈夫よ!』

 

神通『絶対に負けません。心配はしないでください』

 

 

扶桑は彼女達の声を聞いて決断した。

敵目標への最終攻撃を。

 

扶桑「……皆、頼もしいですね。では……征きます! 全艦突撃!」

 

ドッ!!

 

深海棲艦達「……!」

 

 

 

それから数十分後、扶桑達の連合艦隊は、支援砲撃の助けもあって被害らしい被害も受ける事無く、完勝と言っても差支えが無い程の圧倒的な勝利を収める事ができた。

 

利根「ふぅ、完勝じゃな♪」

 

山城「姉様、やりましたね!」

 

神通『目標の沈黙を確認しました。任務完了です』

 

加賀「お風呂、お風呂……」ヌギッ

 

赤城「加賀さん、ここで海に入っちゃうと傷に沁みるわよ」

 

筑摩「ふぅ……。やりました♪」ニコッ

 

初春『ふむ、上々じゃ。ようやったのう潮』

 

潮『あう……。え、えへへ。ありがとうございます』テレッ

 

吹雪『何とかなりましたね』

 

初霜『お疲れ様ぁ♪』

 

皆が口々に勝利の結果に安堵し、喜びの声をあげるなかで旗艦の扶桑の声が無線から聞こえていない事に気付いたゴーヤは気付いた。

彼女はその事が気になり扶桑に呼びかける。

 

ゴーヤ『扶桑さんどうかしたの? さっきから静かね』

 

扶桑「あ、ゴーヤちゃん。あなたの位置からならここよりよく見えないかしら。あそこ、私達が戦っていた場所に何か見えない? 何か動いているような……」

 

 

扶桑の言葉を聞いて直ぐに緊張感のある顔に戻ったゴーヤは、先程の戦いでまだ残り火が消えずに残っている場所を注視した。

 

ゴーヤ「んん……?」

 

確かに何かが見えた。

火が燃える海の上で何かの黒い影が動いているのが。

 

ゴーヤ「……」

 

討ち損ねた敵かもしれない。

ゴーヤは静かにその身を海に浸けると、音を立てずに静かに影が見えた個所へと近づいて行った。

 

???「……っ、……っ!」

 

段々影の主の声が聞こえてきた。

どうやら何か焦っているらしい。

これは好機かもしれない。

仲間が敗北したことに動揺して混乱しているのかも。

 

ゴーヤ「……」カチャッ

 

ゴーヤは魚雷の発射装置を構えつつその影を撃沈するか追い払うか、危険度を判断する為に更に近付く。

影の主の声が今度は明瞭に聞こえた。

 

???「あちっ、熱っ!」ゴロゴロ

 

ゴーヤ「……ん? あれはぁ……」

 

ゴーヤは影の正体を確認して驚いた顔をした。

 

 

 

「初めまして! 呂500です! ロウと呼んでもらえると嬉しいですって!」

 

「……」

 

提督の前に白い肌に銀色の長髪といった出で立ちの大人しそうな少女がいた。

だがその少女は大人しそうなその様な外見をしていたものの、意外にも活発そうな笑顔と明るい声で自己紹介をした。

自分の自己紹介に特に何も言わずに鈍い反応を見せる提督に、呂500と名乗った少女は困惑した顔をする。

 

「あの、提督? わたし、何か気になる事でも?」

 

「ああ、いや……。すまない、少し待っててもらえるか?」

 

「はい、 分かりました!」

 

ようやく自分の声に反応してくれた提督に呂500は安心した様に再び明るい顔に戻り、元気よくそう答えた。

 

 

 

「扶桑」

 

提督の後ろで成り行きを見守っていた扶桑を提督は声を潜めて呼んだ。

 

「はい」

 

「言いたい事は解るな? どういう事だ?」

 

「はい、ユウちゃんの事ですよね」

 

「ユウ……。やはりドイツの、潜水艦なんだな?」

 

「ええ、まぁ……」

 

「自分の名を日本式に言っているが、どういう事なんだ? 改修を受けて最終的にそうなるとしても、あの姿でそれを名乗るとは……」

 

「私達も最初は驚いたんですが、本人によると……」

 

 

『なんだか凄い衝撃で目が覚めたんです。そしたら文字通り海面は火の海で……。熱くて転げまわっていて気付いたい時には自分をそう認識していましたって!』

 

 

「……という事らしいです」

 

「……龍鳳の時と似たような既視感を感じるな」

 

提督の脳裏に初体面でいきなり自分の事をお父さんと呼んだ大鯨の頃の龍鳳の姿が浮かんだ。

彼女は自分を移送していた船が敵の攻撃を受け、運よく無事だったものの機能停止中に受けた衝撃が原因で提督を自分の主人として認識する為の機能にエラーが生じてしまったのであった。

今回の呂号の件もシチュエーションは違えど、受けた衝撃によって艦娘の自己認識機能に影響が出てしまったという点で龍鳳の件と類似していると言えた。

 

「あの時の戦いはまさしく完勝でしたが、それも支援砲撃のタイミングとピンポイントの着弾、それと私達の奮闘があってこそでした。ですが当然それを可能にした攻撃の激しさは相応のものでして……」

 

「結果、お前達が倒した深海棲艦の一人が交戦中に艦娘に戻る際にその衝撃を受けてしまったという事か」

 

「恐らくは」

 

「大体把握した。まぁ問題はないだろうが、一応記録はしておけ」

 

「分かりました」

 

 

「待たせて悪かったな。……ロウ?」

 

「いえ、大丈夫ですって、なんですか? 提督」

 

呂500は提督の様子を窺うような声にも相変わらう元気な声で応じた。

 

「ん、そうだな。先ずは俺の事は提督でもいいが、ここでは大佐と主に呼ばれている。だからできればお前にもそう読んで欲い。階級は気にするな。お互いの信頼を表すための愛称とでも思ってくれ」

 

「大佐ですか? 分かりました! じゃぁわたしもこれからは提督をそう呼びますねって!」

 

「ああ、ありがとう。それとな」

 

「はい?」

 

「お前の名前なんだが、自分でも分かっているとは思うが今の姿は……」

 

「あ、はい。ドイツの艦である事は解っています。本当は改修を受ける事によって段階的に自己認識も変化するんじゃないかなって思いますって!」

 

「ああ、いや。その事は解っている。まぁ気にするな。その事じゃなくてな」(改修で性格も変わるのか? だとしたらドイツ艦の時はどういう性格だったんだ?)

 

提督は呂500の本来の性格が少しだけ気になった。

やはり見た目通りの大人しい性格だったのであろうか。

それに対して呂500は提督のそんな思いなど知る由もなく、話の続きを促した。

 

「はい、なんですか?」

 

「お前の呼び方だが、ロウよりユウと呼びたいんだが」

 

「え? ユウですか? それってドイツ艦の方ですよね? 確かに今はその姿をしているけど、どうせ呂号になるのならこっち方が……」

 

呂500は提督の提案に不思議そうな顔をした。

どうも自分が日本の艦だという意識が強いようで、海外艦の方の名前に若干抵抗があるようだった。

 

「いや、そういう効率的な理由ではないんだ。その、なんだ。ユウの方が女らしくて良くないか? 俺もその方が呼び易いと思うし」

 

「え? お、女らしい? だからそうわたしを……?」

 

呂500は提督の言葉を聞いて目をパチクリとさせた。

 

「そうだ。お前さえ良ければだが」

 

「……大佐は」

 

「ん?」

 

「大佐は、わたしを艦娘としてじゃなくて、女の子と意識してくれるのって?」キラキラ

 

呂500の提督を見る目が輝いていた。

その反応は明らかに提督の提案を彼女が喜んでいるのを表しているようであった。

 

「……一応兵器という認識は持っている。だが軍人としては甘いとは思うが、少なくとも俺はお前たちの事は人と同じように接したいと思っている」

 

「……っ」プルプル

 

「? どうしたユ――」

 

「うきゃー!!」ダキッ

 

「っと……。ぐ……ど、どうした……?」ギリギリ

 

妙な奇声と共にいきなり抱き付いていた呂500を何とか抱き留め、提督は締め付けられる感触に耐えつつ彼女に訊いた。

 

「大佐! わたし今とっっても嬉しいって! なんかそう言ってもらえて何というかなんと……う……えへへ♪」スリスリ

 

「そうか、じゃぁ呼び方は?」

 

「はい! どうぞユウと呼んでください! わたしもその名前がいいって!」

 

「そうか、じゃぁよろしくなユウ」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

こうして見た目はドイツでも既に中身は日本という奇妙な艦娘がその日、新たに提督の基地の仲間になった。




E-3クリアしました。
結果的にはストレートに4回ゲージ撃破で直ぐに終わる事ができましたが、最後の一回の連合艦隊の編成を攻略でよく見る機動部隊のものにしたところ、何か最後までヒヤヒヤする事にw

ボスまでは運よくスムーズに辿り着いたものの、決戦支援がE-2で空母を入れたデフォルト編成が敵をほぼ壊滅させたのに対して、威力と命中率を重視して空母を入れない戦艦4隻を入れたものを使ったら前者と比較して結構残念な結果だったり。

取り敢えずE-4まではクリアしたいですね。
難易度どうしようかなぁ。


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第×29話 「カレー①」

金剛はあるアニメを見た。
その内容は可憐な少女たちがある一人の男を慕う想いから、近しい存在となる為にその主導権を賭けて料理で勝負するという内容だった。
金剛は燃えに燃えた。
自分も同じことをして提督にもっと自分を好きになってほしいと。

*舞台裏的でメタな発言あり。
*登場人物が多いのでセリフの前に名前あり。


「マイクの音量いいですか? チェック……チェック、あー、アー? あ、ワン、ワンツー、ワン……はいっ! 皆な様お待たせしましたカレーの味勝負大会の始まりです!」

 

ワアアアアアアア!

 

 

「解説は私、霧島が行います! 実況は那珂さんになります! 那珂さん、よろしくお願いします!」

 

「はーい! 那珂ちゃんでーす! 今日は頑張って実況するから皆よろしくねー!」

 

「おっと、今日は珍しくアイドル発言はないのですね。どうしたんですか?」

 

「ぶっちゃけアイドル言うの飽きただけ! 別にアイドルに拘らなくても目立って可愛いければ満足かなって!」

 

「なるほど、今更その結論に辿り着いたわけですね。無駄な回り道ご苦労様です!」

 

「ちょっと! いくらなんでもそれひどくない!?」

 

 

「さて、今回勝負に参加するチームを紹介します。まず最初は私の姉、金剛がいる金剛チームです!」ムシ

 

「イェーイ! 大佐ァ! 今日は頑張るから期待しててネ!」

 

「フォローは任せてください! ちゃんと食べられるものを作ります!」

 

「ちょ、ちょっと比叡!?」

 

 

「はい、是非お願いしますね、お姉様。では続いては加賀さんと赤城さんによる一航戦チームです!」

 

「ブイッ」ビシッ

 

「加賀さん、まだ勝利宣言は早いわよ。まぁやる気があるのは良い事だけど。あ、がんばりますねー」フリフリ

 

 

「おお、そこはかとなく感じる危なげが何か良いですね。ご活躍に期待します! では次は翔鶴さん率いる五航戦チームです!」

 

「なんか出番があまりないので、今日は凄く頑張ります♪」

 

「右に同じく! 美味しいの作って優勝して、大佐と一緒の出番獲得よ!」

 

 

「はい! 限りなくメタな発言ありがとうございます! さて次は、規格外駆逐艦コンビ、雪風&島風チームです!」

 

「ちょっと! なんで島風の名前が先じゃないの!?」キーッ

 

「ちょ、ちょっと島風ちゃんいきなり熱くなっちゃダメだよ」アセアセ

 

 

「はい、相変わらず元気いっぱいですね! そしてお次は先に紹介したチームと比べて能力に差があるという事で唯一の4人チームになります! 暁型、雷電響(らいでんきょう)チームです!」

 

暁「ちょっと! なんで暁の名前だけ外したのよ!?」

 

響「多分、暁の漢字の音読みが『ギョウ』だからじゃない? わたしの『キョウ』と音が似てるし、横に並べても離して読んでも語呂が悪いから……」

 

雷「あー、それで濁音がある方を敢えて使わなかったのね。『ギョウ』より『キョウ』の方が耳に優しい感じするものね」

 

電「納得なのです。暁ちゃん、気持ちは分かりますけどここは我慢なのです」

 

暁「う~、ぜっったい勝って皆の鼻を明かしてやるんだから!」

 

 

「響ちゃん雷ちゃん、解説ありがとうございます。そして電ちゃん、フォロー感謝します。暁ちゃんの奮闘に期待しましょう! では最後のチームになります! 最後は足柄、羽黒姉妹による妙高型下妹チームです!」

 

「下妹って……まぁ出るからには勝つつもりでやるけど」

 

「足柄お姉ちゃん頑張ろうね」ニコッ

 

 

「はい、凄く安定感のあるチームに思えます。それでは最後に紹介するのは試食によって判定をする審査員の方二名になります! 長門さん、大佐、よろしくお願いします!」

 

「カレーは大好物だ♪」

 

「……」

「あ、あれ大佐……? どうしました?」ヒソッ

 

いつも通りの長門に対してどこか沈鬱そうな表情をする提督に、霧島は心配そうな顔で話し掛けた。

 

「いや、こういう催し物は久しぶりでな。そして何故か頭が痛い」

 

「だ、大丈夫ですか? お願いしますね。それでは勝負を開始といきましょう! 那珂さん、合図をよろしくお願いします!」

 

「おっけー! それじゃぁいくよー、第一回カレー勝負大会……はっじっめー!」

 

パーン!

 

ワァァァァァァァ!

 

 

○金剛チーム

 

「……」ドゲザ

 

「お姉様……」

 

「お願いヨ、比叡。ワタシ実は cooking 全然できないノ……。助ケテ……」グス

 

「はい、分かりました。この比叡にお任せ下さい。先ずは野菜を切りましょうね。火が通り難いのからにしましょう」

 

「んー…… carrot?」

 

「正解です! 流石ですお姉様!」ナデナデ

 

「えへへ~♪」

 

那珂「だ、大丈夫なのかなこのチーム……」

 

 

○五航戦チーム

 

「翔鶴姉、パイナップル使うの?」

 

「うん。これ、缶詰のものを使わないところがポイントなのよ?」

 

「んー……甘み?」

 

「正解、缶詰だと実に詰まった甘みが果汁と一緒に殆ど出ちゃってるの。だから直ぐ使うのならなるべくパックに入った物がいいのよ」

 

「なるほどねー、どれくらい入れるの?」

 

「お鍋一つくらいなら輪切り一個で十分よ。これ、結構酸味あるからあまり入れ過ぎると、甘さもそうだけど匂いも結構キツくなっちゃうから」

 

「ふーん、そうなんだ。分かったわ! あ、お肉切るね」

 

那珂「はぁ、美味しそうなのが出来そう……。これは期待だね!」

 

 

○一航戦チーム

 

「加賀さん、その葉っぱなに?」

 

「シナモンよ」

 

「え」

 

「なに?」

 

「なんで葉っぱのままなの……?」

 

「? このままじゃいけないの?」

 

「生のままだと防臭や防虫くらいしか使い道が……。それでも多少は乾燥させないとダメなんだけど……」

 

「……」ハムッ

 

「ちょっと、加賀さん!?」

 

「……」ジワッ

 

「だ、大丈夫? もう普通のカレー作りましょう。ね?」

 

那珂「……」(見なかったことにしよう)

 

 

○規格外チーム

 

「カレーといったらゴールデンよね!」

 

「んー、わたしはどっちかというとバーモンドかなぁ」

 

「そうなの? じゃぁ一緒に入れる?」

 

「こっちは辛口だよ? 島風ちゃんは何口?」

 

「んーっとねぇ、甘口!」

 

「二つ合わせれば中辛になるのかな……? うん、そうしよ!」

 

「オッケイ! それじゃ入れるねー!」ドボドボ

 

「あ、もう入れて大丈夫なの? 具とかは?」

 

「もう切ったよ」

 

「流石、早いね。じゃぁ雪風はお水に浸けた鶏肉切ってくね。あ、フライパンの用意してもらっていい?」

 

「もうできてるよー。そのお水ちゃんと砂糖とか塩入ってる?」

 

「大丈夫、ちゃんと入れたよ。ほら、お肉ぽよぽよ」

 

那珂「な、なんか意外に凄く手馴れててテキパキしてる……。これが規格外の駆逐艦の力……?」

 

 

○雷電響+1チーム

 

雷「人参切ったわよ!」

 

暁「意外に手際いいわね……普段は悪戯ぱっかりする癖に。 電、油敷いた? もう炒めてる?」

 

電「バッチリなのです! 玉ねぎもお肉も良い感じなのです。人参、どうぞ!」

 

響「あ、人参入れるならこれも入れて。入れるの忘れてた」

 

雷「ん? なぁにこれ?」

 

響「クミンシード。一応香辛料だよ。香り良いの」

 

暁「へぇ~、いいじゃない! これは出来が期待できるわね!」

 

雷「美味しそうね、早く食べたい!」

 

暁「審査してもらうまでダメよ!」

 

那珂「あ、こっちはこっちで結構良い感じ。これも美味しそうなのができそうだなぁ」

 

 

○下妹チーム

 

「あ、姉さんチョコ使うんだ。それ、ダーク?」

 

「ええ、カカオ90%の苦ーいやつよ。これなら入れてもまろやかさが増すだけで変に甘くなったりしないものね」

 

「……ふふ」

 

「な、なに……?」

 

「やっぱりバレンタインだから?」

 

「……まぁ、ね」カァ

 

「うん、良いと思う! あれ、このお肉……」

 

「ああ、マトンよ」

 

「マトン……羊? 癖とか大丈夫かな?」

 

「相性がいい香辛料探しておいたから大丈夫よ。まぁ今回はチョコも入れるから結構調整難しいけど」

 

「……足柄姉さん、私頑張る!」

 

「いいじゃない。その意気でお願いね」ニコッ

 

那珂「おー、ここはここでいろいろ凝ってる。どんなカレーができるか一番楽しみなのはここかも!」

 

 

「なかなか良い感じに料理が進んでいる様ですね! それではここで審査員の方にこの大会に対するメッセージを頂こうかと思います。先ずは長門さんお願いします!」

 

「うむ、皆がどんなカレーを作っても私は平らげて見せる。味は二の次だ!」キリッ

 

「ちゃんと審査員してくださいよ!? あ、えっと……つ、次は大佐、お願いします!」

 

「まぁ頑張れ」ヒラヒラ

 

「……あ、ありがとうございます」(な、なんなのこの審査員の不安定さ……)

 

片ややる気はあるもの真面目に審査する気があるのか疑わしい者、片や真面目なのは間違いないがやる気があまり感じられない者。

霧島はそんな審査員二人の様子を見て大会の成り行きを不安に思うのだった。




アニメ観て自分の艦娘たちだったらどうなるかを考えて思いついた話です。
催し物は水泳大会以来ですが、良い感じにまとめられたと思います(というか水泳大会がひどいだけか。早く修正したい……)


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第×30話 「カレー②」

料理が出来たようです。
それぞれのチームのテーブルを回り、完成を確認した那珂が解説隻の霧島に向って呼びかけた。

*舞台裏的でメタな発言あり。
*登場人物が多いのでセリフの前に名前あり。


「霧島さーん! 皆料理できたみたいだよー! 那珂ちゃん確認しましたー!」

 

「あ、そうですか。ありがとうございます。それでは試食といきましょう!各チーム、順番にここに運んできてください。先ずは金剛チームからですね」

 

 

コトッ

 

「頑張って作りました! 味は保証しますよ!」

 

「ほ、ホントよ? ワタシも頑張って作りマシタ! だから食べてミテ!」

 

「そうか、では頂くか」

 

「うむ!」

 

パクッ

 

「ん……美味い」

 

「ほ、本当デスカ!?」パァッ

 

「ああ、だが点数としては50点くらいだ。本当に普通のカレーだからな」

 

「エッ」ガクッ

 

「……」(まぁ本当に普通に作っただけだしね。でも意外に厳しい採点だなぁ。次の機会は本気で頑張ろう!)

 

がくりと項垂れる金剛に申し訳なさそうな顔をしながら、比叡は既にこの時今回の結果の挽回に静かに心の中で燃えていた。

 

「おかわりっ!」

 

「あなたはしっかり審査してください! はい、金剛チームありがとうございました。次、一航戦チームお願いします!」

 

 

コトッ

 

「どうぞ」ニコッ

 

「……」ズーン

 

「頂きます」(加賀……?)

 

「いただきます! もぐ……辛っ!?」

 

「……」ヒリヒリ

 

口に入れた瞬間、思わず水の入ったコップに手を伸ばしたくなる様な衝動に駆られる辛さに提督と長門は襲われた。

赤城はそれを予想していたらしく、辛さに口ごもる提督と長門を見て苦笑しながら言った。

 

「あ、やっぱり?」テヘッ

 

「……っ」ビクッ

 

「赤城、これは?」

 

「えっと、ちょっとカレーの味で失敗してしまって、それを隠すために香辛料を沢山使いまして……」

 

「なるほどな」

 

「……」プルプル

 

「取り敢えず、30点といったところだ」

 

「……っ」ジワッ

 

「まぁ、同感だな。おかわり!」ガツガツ

 

「ほんと、何でも食べますね」

 

「……」グス

 

涙を滲ませて落ち込む加賀に提督は声を掛けた。

 

「加賀」

 

「……はい」

 

「一航戦のプライドに拘らずよく料理を出したな。立派だと思うぞ」ナデ

 

「た……いさ……。はい、次は本当に美味しいものを作ってみせます」

 

(そういう慰め方もあるのね。流石大佐)

 

赤城はそう提督が加賀を慰めるのを見て、彼の気の回し方に感心していた。

 

 

「はい、一航戦チームの方ありがとうございました。次の奮闘に期待ですね! では次、五航戦チーム尾根がします!」

 

コトッ

 

「どうぞ♪」ニコッ

 

「おお、これは……」ジュルッ

 

「美味しい、筈よ。うん、絶対に大丈夫よ!」

 

「ふむ、頂きます」

 

「美味い!」

 

「挨拶くらいしてください」

 

食事の挨拶もせずいきなり歓喜の声をあげる長門に霧島は鋭く注意をした。

 

「うん、これは美味いな」モグモグ

 

「本当ですか? やったぁ♪」パァッ

 

「良かったぁ……」ホッ

 

提督の言葉を聞いて翔鶴と瑞鶴は嬉しそうに胸を撫でおろした。

 

「パイナップルを入れたんだな。うん、まろやかな酸味が良い感じだ」

 

「うまいうまい!」ガツガツ

 

「……もういいです」

 

「ああ、これは80点くらいでもいいな」

 

「……それでも80点なのね。大佐、厳しくない?」

 

出来にそれなりに自信があったのだろう。

提督の採点を聞いて瑞鶴は少し不満そうな顔をした。

 

「瑞鶴っ」

 

「翔鶴、いいんだ。まぁ美味しいのは間違いない。だけど簡単に高い点数をあげてもお前達の後にもっと美味いのがきたら採点の時に困るだろう?」

 

「……なぁるほど。つまり80点以上は無いという事ね」ニヤッ

 

「良い自信だ」ニッ

 

「ず、瑞鶴……」アセアセ

 

「翔鶴、美味かったぞ。機会があったらまた食べたいくらいだ」

 

「え? あ……よ、喜んで!」パァッ

 

「その時は私も呼んでくれないと嫌よ? お願いね」

 

それは姉を独り占めされるかもしれないという焦りからか、それとも提督への恋心故か。

はっきりとは分からなったが、瑞鶴は翔鶴の後に直ぐにそう続いて提督に言った。

 

 

「はい、五航戦チームの方ありがとうございました。はい、次は規格外チームの方です。どうぞ!」

 

コトッ

 

「もう! 島風達が先に出したかったのに!」

 

「まぁまぁ」

 

「頂きます。ん……これは肉が凄く柔らかいんだな。うん、味も文句ない」モグモグ

 

「はぁ、こんなにカレーが食べられるなんて幸せだなぁ♪」モグモグ

 

「……長門さん、さり気なく何処かの空母のポジションも食べようとしてませんか?」

 

「どう? 美味しかった?」

 

「ああ、美味かったぞ。70点だ」

 

「えーーー!? 100点じゃないのー!? 頑張ったのにー!」

 

提督の採点に明らかに不満そうな声をあげる島風。

それに対して雪風は先程の翔鶴のカレーを見ていて思うところがあったのか、そう気にしてもいない様子だった。

 

「んー、まぁこれくらいだよ島風ちゃん。翔鶴さん達の方が味は美味しそうだったし」

 

「ぶぅ、悔しい!」ムスッ

 

「島風ちゃん……」

 

「……だが、確かに料理ができたのはお前が一番早かったな」

 

「! でしょ!? 島風と雪風ちゃん凄く頑張ったもん!」パァッ

 

(え? そんなのでいいの!?)

 

島風の態度の急変に雪風は危うくこけそうになった。

 

「今度は味も一番を目指せばいい。期待しているぞ島風」

 

「うん! 任せておいて!」

 

「雪風、美味しかったぞ。今度はもっと美味いのを頼む」

 

「は、はい! 雪風頑張ります! ありがとうございます、大佐!」パァッ

 

 

「はい、規格外チームの方ありがとうございました。残すところ後2組となりましたね! では、雷電響+1チームの方どうぞ!」

 

コトッ

 

暁「ぷ、ぷら……」ヒクッ

 

電「暁ちゃん、我慢なのです!」

 

響「興奮しちゃだめ」

 

雷「はい! 雷達のカレーよ! 食べてみて!」

 

「ん、頂きます。……ほう」

 

「おお、これは!」

 

暁達のカレーを口に含んで提督と長門はお互いに驚いたような表情をした。

 

暁「美味しいでしょ?」

 

雷「当然だわ!」

 

電「頑張ったのです!」

 

響「優勝は間違いないね」

 

「うん、これは本当に美味いな。香辛料が良い感じだ。肉も柔らかい」

 

「お前達、凄いじゃないか。お姉さん感動でおかわりしてしまうぞ」

 

「さっきから他のもしてるじゃないですか」

 

「うん、点数は79点だな」

 

暁・雷「えー!?」

 

電「はわわ……」

 

響「なんと」

 

翔鶴達のカレーに勝っている自身があったらしい。

暁達は目に見えて残念そうな顔をした

 

「悪いな。カレーとしての出来は翔鶴達に匹敵するのは間違いないが、如何せん先に食べた翔鶴達の物の方が俺の好みだったんだ」

 

暁「そ、そんなぁ」

 

雷「むぅ、これは痛いわね。そういえば大佐の好みを考えてなかったわ」

 

「ん? 私の好みは?」

 

「あなたはなんでも食べるじゃないですか」

 

響「だね」

 

電気「なのです!」

 

「む、これは手厳しいな。はは」

 

「そういう事だ。だが事実上は同格だと思っている。誇っていいぞ」

 

暁「むぅ……ちょっと納得いかないけど、まぁいいわ。今度は大佐好みのカレーを作ってあげるね!」

 

「ああ、期待してるぞ」

 

 

「はい、暁ちゃん達ありがとうございました。さて、次で最後ですね……下妹チームどうぞ!」

 

コトッ

 

「だから、その下妹ってやめてくれないかしら」

 

「はい。大佐どうぞ」

 

「ありがとう。頂きます」モグ

 

「お? 何か匂いが翔鶴達の時と様に独特の……もぐ、ほほう」

 

「これは……美味い」

 

「ほ、本当ですか!?」パァッ

 

今ままでも美味いという言葉を提督は言ってきたが、今度のそれは他のものとは違う感じだった。

口に含んだ後、その美味しさからか少し口元が緩んでいるように見えた。

その言葉に羽黒は泣き出しそうな笑顔をし、足柄は素っ気ないながらも髪をかき上げながら恥ずかしそうにその賛辞を受けた。

 

「……そ」ホッ

 

「具や辛さ、匂いもさることながら、このまろやかさ……チョコか」

 

「まぁね。でも甘くはないでしょ? 普段はあまり使わないんだけど、今回のは香辛料も使ったの。調整に苦労しけど、その甲斐あったみたいね」

 

「90点」

 

「え?」

 

提督の突然の採点に霧島は驚いた顔をした。

だが一緒に並んで座っていた長門はその決定に異論はないようで、目を閉じて座りながら落ち着いた態度で言った。

 

「ん、まぁ文句ない」

 

「90……? え、それって大佐……! ね、姉さん!」ウルッ

 

「……いいの? 私達で?」

 

「先に頑張った奴らには悪いが、これは正直な気持ちだ。美味いぞ」

 

「……そう。ありがとう」ニコッ

 

「おおっと、これは最後の最後で勝負が決まったようですね! 優勝は下妹チーム、足柄さん達です!」

 

 

 

出場した選手の控え場所では、各々がその結果を感慨深げな様子で見つめていた。

 

翔鶴「ふぅ……残念。でも仕方ないわね」

 

瑞鶴「翔鶴姉、ちょっとあのカレー食べてみようよ。大佐好みの味見逃せないもの」

 

暁「むぐぐ……最後の最後で……」

 

響「薄々には感じてたけど、やっぱり足柄さんが一番の強敵だったね」

 

雷「やるわねー! あ、作ったカレー皆に配り始めたわよ!」

 

電「研究なのです! 皆行こう!」

 

 

加賀「……」モグモグ

 

赤城「加賀さん美味しい? え? 美味しいのが逆に辛い? そう。ふふふっ」

 

島風「もぐもぐ……。はぁ、こんな美味しいの早く作れるかなぁ」

 

雪風「島風ちゃん早く作る必要はないよ。こういうのは『一番』を目指せばいいんだよ」

 

金剛「Oh! delicious ネ! こんなのいつか自分で作りたいナァ……」

 

比叡「お手伝いしますよ。お姉様!」(でもこれ本当に美味しい。これは研鑽に励まないといけないわね!)




今日は月曜なので、真面目なイベントの攻略の続きは次の休みにでもするつもりです。
難易度を全て甲でクリアした人に贈られるあの勲章。
何か意味があるんでしょかね……。


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第×31話 「断念」

本部から下された作戦を実行していた提督ですが、何かあったのかある日突然基地にいる全員に召集令を掛けました。

*登場人物が多いので一部セリフの前に名前あり


「皆集まったか? ……よし、皆にひとつ報告がある」

 

突然の召集令に艦娘たちは緊張して固唾を飲んで提督の言葉を待った。

 

「今回の作戦は、我が基地においては誠に遺憾ながら現時点を以て降りる事となった」

 

艦娘達に動揺の声が広がる。

作戦は決して容易な内容ではなかったが、それでもその推移は順調だったはずだ。

作戦を降りる理由が思い当たらない者は多いらしく、動揺の波の後に続いて不満そうな声が上がり始めた。

 

夕立「ちょ!? それってどういう事!? 夕立はまだやれるよ!」

 

不知火「不知火もです。まだ音を上げるには早いかと」

 

駆逐艦の中でも負けん気の強い二人が早速異議を唱えたところで、状況を落ち着いて見守っていた足柄と那智が口を開いた。

 

足柄「皆落ち着きなさい。別に大佐は私たちの力不足の所為とは言っていなじゃない」

 

那智「足柄の言う通りだ。皆、ここは大佐の話の続きを聞くんだ。大佐、続きを」

 

「すまん。皆、さっき足柄が言ったように作戦を降りるのはお前たちの所為ではない。理由は別にある」

 

加賀「理由とは?」

 

「……正直言って、資材がない」

 

ざわめきは一瞬で静まり返り、重い沈黙に包まれた。

その中で果敢にも多摩が原因の詳細を訊いてきた。

 

多摩「えと、それって……?」

 

「……弾薬が尽きた。0だ」

 

提督は苦渋に満ちた顔で本当に申し訳なさそうに答えた。

 

赤城「え……」

 

龍驤「全くないん?」

 

「そうだ。故に事実上作戦の続行は無理だと内外共に判断された」

 

再び重い沈黙に包まれた。

もう誰も声をあげる者はいなかった。

 

「皆、本当に申し訳ない。弾薬の不足には作戦開始前から対処に努めていたが、先日の作戦で全て消費し尽くしてしまったんだ」

 

武蔵「ああ、もしかして前の支援砲撃か?」

 

「ああ。おかげであの作戦に関しては文句の付けようが無いほどの戦果を以て完遂できたが、俺たちの仕事もある意味完遂してしまったわけだ」

 

秋雲「結果的にはリタイアだけどねぇ。まぁ、復帰ができないくらい敵にやられちゃった所為とかよりかはマシなんだけどさ」

 

「……重ね重ね申し訳ない」フカブカ

 

天龍「えちょ、や、やめろよ! 大佐だって頑張ったんだろ。そんなに頭下げる事ないって!」

 

麻耶「そうだぜ。大佐頭上げてくれよ。あたしはあんたを責める気なんて全くないぜ」

 

「……皆悪い。そういわけだから我が基地は暫く資材の備蓄に努める事になる。それまでは最低限演習と基地近海の警備は行うが、それ以外については、命令あるまで待機とする。以上、解散」

 

真っ先に不服の態度を取りそうな武闘派の意外な気遣いを有り難く思いつつ、提督はひとまず召集令の解除をし、解散を告げた。

 

 

 

「……」

 

秘書艦の望月を除き、全員が退出した後、提督は暫く皆が出て行った扉を見つめていたと思ったら力が抜けた人形のようにソファーに倒れ込んだ。

 

バタン

 

「ちょ、ちょっと大丈夫なの?」

 

望月が珍しく慌てた様子でパタパタと提督に駆け寄る。

 

「望月、すまん。本当にすまん……。暫くね……」

 

「え? たい……あ……」

 

「……」zzz

 

「あー、無くなってたのは弾薬だけじゃなかったんだね」

 

「……」

 

「……んしょっと」

 

提督が完睡を確認するとその頭を優しく持ち上げて自らの膝に乗せた。

 

「お疲れ様、大佐」ナデナデ

 

「……」

 

「本当に誰も大佐の事を責めてる人なんていないからさ。今はゆっくり休んでよ。残りの仕事とかは皆と協力して片付けるからさ」

 

「ぐ……この書類は……今日ま……」

 

「夢の中でまで仕事すんなよ」ペシッ

 

「……む……ぐ……」

 

「貧相な身体で悪いけどさ、これで我慢してね。ほら、」ナデナデ

 

コトッ

 

「んー?」

 

僅かな物音に気付いた望月が音がした方を見ると、そこにはこっそり残って隠れていたらしい初雪の姿があった。

 

「あ……」

 

「初雪、どしたの?」

 

初雪は見つかった事を気まずそうにしていたが、特に気にも留めない様子で声を掛けてきた望月の態度に安心した顔で聞いてきた。

 

「ん……気になって……」

 

「そ、勘いいね。ドンピシャだよ」

 

「大佐、大丈夫?」

 

「寝てるけど、まぁかなり無理してたっぽいね。これ暫く起きないよ」

 

「そうなの? じゃ、わたしも撫でても大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫。寧ろ撫でて悪い事ないって」

 

「そう? じゃぁいい?」

 

「ん、大佐の代わりに許可するよー。ほらおいでよ」

 

「うん……」テテッ

 

「わたしの隣に来るといいよ。そう、うん、背中に膝入れて……」

 

「……本当に寝てるね」

 

「だよ。ほら、起きない」ペシペシ

 

「あ……だ、だめ……だ……じゃない?」

 

提督の額を軽く叩く望月に初雪は慌てる。

 

「殆ど力入れていないって。ほら初雪も撫でてみなよ」

 

「ん……」ナデナデ

 

「ね? 起きないでしょ?」

 

「うん……。凄く疲れてるみたい」

 

「まぁね。多分皆の前で話してた時も結構キツかったんじゃない?」

 

「がんばり過ぎ……。っ……ひぐ」

 

「別に初雪が泣く事ないって。どっちかっていうと大佐が一人で頑張り過ぎた所為だよ」

 

「頼られなかった……。わたしたちの所為じゃない?」

 

「あー、なるほどねぇ。そう考えるとちょっち悔しいかもねぇ」

 

「悔しい?」

 

「うん。もうちょっと気が利いていれば大佐の助けになれたかもしれないしね。それに気付けなかった事がちょっと悔しいかな」

 

「……」

 

「ま、次がんばろ?」

 

「……うん、絶対、やる」コク

 

初雪は、望月の言葉に貴重な真面目な顔でそう言って頷いた。

 

 

ガチャ

 

「おーっす、大佐ぁ元気ー?」

 

提作戦の続行断念の話の直後にも拘らず、相変わらずの明るい声で秋雲が提督を訪ねてきた。

どうやら彼を慰めに来たらしい。

 

「秋雲……」

 

「アッキー何しに来たの?」

 

「何しにってそりゃ愛しのダ……あー」

 

秋雲は望月達の膝で寝る提督を見て一瞬目を丸くした。

 

「そ、ダウン」

 

「大佐、疲れてたみたい……」

 

「寝てんの? 落書きしても平気?」

 

「するの? ダメだよ」

 

初雪は、秋雲の言葉を警戒して半身で提督の顔を覆って守るような格好をする。

 

「冗談だって、悪気はないよ。ん、ほら何もしないから秋雲さんも仲間に入れてー?」

 

「……じゃ、秋雲は大佐の腰のとこ……」

 

「さんきゅうっ、モッチーいい?」

 

「いいよ。あ……ダメかも」

 

快く承諾するかと思った望月は何かを思い出しように秋雲をジト目で見た。

秋雲はその意図が解らずパチパチと瞬きをする。

 

「へ? なんで?」

 

「だって、アッキー大佐の腰でしょ? なんか悪戯しそうじゃん」

 

「えぇ? 悪戯って……ああ、なるほど」ニヤリ

 

「?」キョトン

 

「ん、初雪は解らなくていいんだよ」ナデナデ

 

「え……なに……?」

 

「今度わたしの本見せてあげるよ」

 

「ちょっとー、あんまり刺激の強いのはダメだよー?」

 

「大丈夫だってそこは秋雲さんちゃんと選ぶから。それに悪戯もしないから入れてっ」

 

「はいはい。どうぞ」

 

「ありー。よっと……ん」モゾモゾ

 

「大佐も幸せ者だねぇ。女の子3人に膝布団してもらってるんだからさぁ」

 

「膝布団? おお、それは斬新だね。なんか閃きそう!」

 

「……さっきから秋雲は何を言ってるの……?」

 

「気にしなくていいよ。寧ろ知ったらダルいよ?」

 

「……じゃぁいい」

 

「あぁ、それってちょっとひどくなーい?」

 

「どこがさ。さり気に基地で一番ある意味オトナな癖にー」

 

「え? 秋雲って大人なの? 見た目あまりわたし達と変わらないのに?」

 

「やだなーユキユキそんな事信じちゃだめだよー。望月も、わたしはちょーっと耳年増なだけだってぇ」

 

「どーだか。あ、さっきアッキー大佐のお尻触らなかった?」

 

「え……」カァ

 

「触ってないよ? ん、なに、触りたいの?」

 

「無防備な人に手を出す程趣味悪くないです」

 

「……」カァ

 

「ユキユキは可愛いなぁもー♪」ギュッ

 

「んわ!? ちょ、やめ……」

 

「ちょっと、あんまり騒いで大佐起こしちゃだめだよ?」

 

「……」(寝れん……)




という事で今回の冬イベは恐らくE3までで諦める事になりそうです。
香取、天城申し訳ない!
あ、あと何だっけ……なんとか霜も申し訳ない!

休みの日でもいろいろと都合でできなかったり、仕事の帰りが遅いとかいろいろと生臭い事情が重なった結果、やる気がドロップアウトしてしまったようです。

あー、でも勲章とか改修素材欲しいなぁ……。


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第×31話 「新人教師」

提督が疲労で寝ている間に、艦娘たちは指示された遠征を行った。
しかしただ行っただけではなかった。
普段は長時間の遠征を行う事によって艦隊メンバーのローテーションに余裕を持って行うのが提督の基地のスタイルであったが、この時は弾薬のみを重点的に集める為に比較的短時間で実行可能なものを集中的に行ったのだ。

提督が短い眠りから覚めると、そこには先の作戦で消費した分に相当するだ弾薬が備蓄されていた。
提督は部下たちの意を汲み取り、作戦への復帰を決定した。
その結果……。


「練習巡洋艦香取です。提督、よろしくお願い致します」ペコリ

 

「練習巡洋艦……」

 

「はい、何分教練に重きを置いた艦なので、性能は残念ながら他の方々には劣ると思います。ですが、この香取、“導くこと”には殊の外自信があります。ですので、艦隊の指揮、作戦の補助の際にはどうぞご期待ください」

 

「成程、了解した。こちらこそ宜しく頼む。俺の事は大佐と、経緯や理由については他のやつらに訊いてくれ」

 

「准将殿でいらっしゃるのに大佐ですか……。成程、敬愛からくる親愛の標のようなものですね。了解いたしました、大佐殿」

 

「理解が早くて助かる。君に割り当てた部屋へは後ほど案内する。それまでは基地の中を見学でもしていてくれ」

 

「お心遣い感謝致します。あの、大佐殿。早速で恐縮なのですがおひとつお伺いしたい事が……」

 

「ん?」

 

「あちらの、窓に寄りかかっているお三方はどうされたのですか?」

 

「ああ……」

 

提督は香取が気にした方向を少しバツが悪そうな顔で見た。

提督と香取のその視線の先には、利根と龍驤とビスマルクが揃って窓枠にもたれて気だるげに外を眺めていた。

 

利根「……ふぁ」

 

龍驤「ふに……ぁぁ……」

 

Bis「……」プクー

 

 

「あまり気にしないでいい。あいつらはその、何というか君を見つけるきっかけとなった作戦の折にちょっと、な」

 

「え? それでは、あの方たちがあのように無気力な様子なのは私にも原因が?」

 

どうやら香取は提督の話を悪い様に受け取ったらしい。

先程落ち着いた態度で丁寧に挨拶した時と変わって、眼鏡ごしに悲しそうな目をした。

 

「いや、違うんだ。あいつらがああなのは……」

 

 

提督は香取に説明した。

利根達があの様な状態になった理由を。

 

提督は疲労の眠りから覚めた後、部下たちの気遣いによって一度断念した作戦への復帰を決定した。

その甲斐あって作戦は成功し、今目の前にいる香取の発見の成果まで挙げるという行幸を提督の基地にもたらした。

作戦の成功と新たな仲間を迎え入れた事によって喜びに沸く艦娘たちであったが、この時点である結末を完全に迎えた事を彼女たちはまだ知らなかった。

 

そう、この成功によって基地の弾薬を再び完全に消費し尽くし、その後に控えていた最後の作戦に完全に参加できなくなったのだ。

最後の作戦に参加できなかったのは、資材だけの問題ではなく時間の問題もあった。

先の作戦が成功した時点で実は最後の作戦はその進行が最終段階に既に入っており、提督の基地の資材に再び余裕ができる頃には終わってしまっていたのだ。

 

事実を知った利根達は先の作戦の成功によって戦意も高揚していただけあって、その落胆ぶりは目に余るものであった。

勿論、作戦に参加した皆が皆落胆したわけではなかったが、艦隊の中でもとりわけ“精神年齢が若干幼い”者たちがこの様な状態になったのである。

 

「……とういうわけだ」

 

「成程……。資材もそうですが、時間は本当にどうにもなりませんからね。仕方ない事だとは思います。ですが……」チラ

 

「……ふむ、早速“導いて”みるか?」

 

「お任せ頂けますか?では」ニコッ

 

香取は提督から下された初任務を笑顔で了解した。

 

 

「ぶぅ、納得いかないのじゃ。資材があれば吾輩達だって活躍して、作戦だってもーっと早く終わっていのじゃっ」

 

「せやけなぁ作戦に参加してた他の基地の人見たやろ? あの人らものごっつまたかぁ、みたいな顔しとったで? ちゅーことはぁ……」

 

「それだけ危険で攻略が難しい戦場だったって事でしょ? 解ってるわよでも、でもさぁ……」

 

「あの、少し宜しいですか?」

 

「おお、これは香取殿。もう大佐への挨拶はよいのか?」

 

「ええ、おかげさまで。ここの基地は良いところみたいですね。ていと……大佐殿の影響力がよく解ります」ニコッ

 

「なんや香取さん先生みたいやなぁ。うち香取さんの事先生って言いたくなるわ」カラカラ

 

「そんな、私のような若輩が貴女方のような古強者を前にしていきなり先生だなんて……恐縮してしまいます。どうかそれはご容赦ください」

 

龍驤の言葉に恐縮する香取だったが、その様子を眺めていたビスマルクが彼女を励ます様にフォローをしてきた。

 

「経験と人格は別よ。龍驤の言いたい事、私も少し解るわ。香取さん、そこは素直に褒め言葉として受け取っても問題はないと思うわよ」

 

「ビスマルクさんまで……ありがとうございます」

 

「気にしないで。あ、それと私の事はここではマリアって呼んでもらえるかしら。理由は後で話すわ」

 

「あらビスマ……いえ、マリアさんも? はい、ふふ、分かりました」

 

「ほう……香取さんには何やら底知れぬ包容力を感じるの。吾輩達の気だるさが幾分緩和された気がするぞ」

 

「あ、それなんか解るわー。なんかこう、ほわわーってなるー」

 

「ふむ、抽象的過ぎる表現なのに私も何となく理解できるわ。凄いわね香取さん」

 

「いえいえい、私なんて……。あ、これお近づきのしるしにどうぞ」

 

ドンッ

 

『清酒鬼○ろし』

 

「「「 」」」

 

突如出された思わぬ歓迎の贈り物に利根達は揃って言葉を失ってその場に固まった。

 

 

「あら? どうされました?」

 

「い、いや……そのぉ…。あ、あははぁ、香取さん先生みたいやのに結構パンチ効いた冗談言うんやねぇ」

 

「? 冗談?」

 

「ふふ、そうね。まさか昼間に、それも大佐の執務室でお酒を出すなんて、なかなか考え付かないジョークだわ」

 

「ふむ、そうじゃの。この、時に和ませ、時に意表を突いて相手のペースを崩し自分の流れにする行動力、流石じゃ」

 

「いえ、冗談ではありませんよ。大佐には許可を頂いてますし」

 

「えっ」

 

香取の言葉に龍驤は驚きの声をあげた。

それはビスマルクも同じようで、龍驤ほどではないが彼女もどこか疑いの眼差しで香取を見ながら言った。

 

「ほ、本当……? だって一応待機中って言っても非番じゃないし、真昼間よ?」

 

「大佐が取り敢えず貴方方は今の段階では出撃する余裕はないから大丈夫と仰っていました」ニコッ

 

「なんと……」

 

利根が意外な提督の判断に目を丸くして彼の方を見た。

それに対して提督は少し居心地が悪そうに軽く咳払いをしただけだった。

 

「……コホン」

 

 

「た、大佐も偶に思い切った事やりよるな」

 

「でもお酒はねぇ。私日本のお酒飲んだことないし」

 

「これは日本酒ですがドイツの方でも結構愛飲してる方はいるみたいですよ」

 

「え? そうなの? じゃぁちょっと飲んでみようかしら……」

 

「はい、どうぞ。あ、龍驤さん達も飲みます?」トクトク

 

「酒に逃げてる気がせんでもないけど、まぁ嫌いでもないなぁ。もらうわっ」

 

「はい♪」トクトク

 

「むぅ、じゃぁ吾輩も……」

 

「どうぞ。それじゃぁ私も……」トクトク

 

 

「杯は皆さんに行き渡りましたか? それでは僭越ながら私が、この場を借りて皆さんと私の出会いを祝して……」

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

「ん……あ、美味しい」

 

ビスマルクは初めて飲んだ日本酒の柔らかな味と喉越しに感心した顔をした。

龍驤は幾分飲みなれた様子で杯をあおりながらビスマルクが羽目を外さない様に注意をする。

 

「ん……ふぅ、まぁこれそんなに高い酒でもないしなぁ。飲みやすいかもしれへんけど、でもあんまり飲むと悪酔いするで」

 

「ふふ、ごめんなさい。これ、隼鷹さんから飲みかけの物を譲ってもらったものでして」

 

そんな感じで皆が和気藹々とする中、利根は何故か一人だけ杯を持ったまま黙り込んでいた。

 

「……」

 

「ん? 利根さんどうしたん?」

 

「利根にはこれ合わなかったのかしら?」

 

「……ない」

 

利根はぽつりと言った。

龍驤がそれを僅かに漏れ聞き、聞き返す。

 

「え?」

 

「……のじゃ」

 

「なに?」

 

「なんか甘いのじゃ!」

 

「「え?」」

 

龍驤とビスマルクは意外な利根の訴えに揃って驚いた。

 

「なんかこれ甘い、というかジュースっぽい気がするのだ」

 

「はぁ? 何言ってどれ……あ」チビ

 

「ん……あれ、これ」

 

「どうじゃ?」

 

「利根さんのこれ、なんかアレやろ。水に果物の果汁が入ったやつ」

 

「ああ、なんとかの天然水ってやつ? 確かに、それっぽいわね」

 

「……香取殿?」

 

龍驤質の推理に利根は疑問に満ちた顔で香取を見る。

それに対して香取は特に気にする風もなく、落ち着いた様子で答えた。

 

「え? あ、はい。それジュースですよ?」

 

「なんで吾輩だけ!?」

 

「ごめんなさい。何故か利根さんはお酒は飲んじゃいけないような気がして」

 

「何故じゃ!? 子供っぽいと言うなら龍驤の方がそうであろう!?」

 

「えと……龍驤さんは何と言うか……」

 

「んー?」グビ

 

「妙に様になってるわね……」

 

「ちょ、ちょっと待つのじゃ! な、なら胸はどうじゃ!? 胸なら吾輩の方が大きいし大人に見えるであろう!?」

 

予想外のところで自分と龍驤の間に看過できない差が作られそうなことに利根は焦った。

龍驤はそれを面白そうモノを見つけたとばかりにニヤつきながら利根に話し掛けてきた。

 

「ふっふっふー、と・ね・さぁん」

 

「な、なんじゃ?」

 

「大人の価値ってのは別に胸だけで決まるものじゃないんやでぇ?」

 

「な、なんと!?」

 

「確かにうちは胸では殆どの娘に負けとるかもしれない。せやけどその品格は少なくとも利根さんよりかは大人っちゅーことや!」

 

「そ、そんな!」ガーン

 

「なるほど。つまり利根は私よりも下なのね」

 

龍驤だけでもその事実は受け入れ難いというのに、ここで更にビスマルクが参戦してきた。

 

「何故そうなるのじゃ! 龍驤には負けておるかもしれぬがマリアは明らかに吾輩より下であろう!」

 

「なんですって!」

 

「なんじゃぁ!」

 

ギャーワー

 

 

「あー、エライことになってもーたな」

 

「そうですねぇ。これは気だるげにしているわけにはいけませんね」

 

「え? あ……香取さんもしかして……?」

 

「ふふ、なんですか?」

 

柔らかく笑い返す香取に龍驤は、笑いは笑いでも乾いた笑顔でしか返す事できなかった。

 

「あぁ……あはははぁ、なんでもないです!」

 

「そうですか? 何か気になりましたら遠慮なく仰って下さいね。……そういうわけで大佐殿、任務完了しました」

 

「……なかなかの力技だったな」

 

提督は笑顔で任務の完了を伝える香取に、若干気圧されながらその功績を称えた。




ということで冬イベは攻略は結局E4までとしました。
天城はまぁ特に欲しくはなかったので、またどこかでドロップでもしたらいいなと。

土日が仕事じゃなかったらE5なんとかなったかもしれないんですけどねぇ……。


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第×32話 「雰囲気」

山城が秘書艦を務めていたある日、提督は執務に勤しむ傍ら何かを思い出したらしく、傍らで書類の確認をしていた彼女に声を掛けた。


「山城」

 

「ん? なーに」

 

「指輪だ。いるか?」

 

「え?」

 

提督は引き出しから指輪が納められていると思われる小箱を出した。

 

「お前もう練度が最高になっただろう。一応用意はしておいた」

 

「あ……」(そっか、もう私そこまで来てたんだ)

 

「あくまでお前にその気があるなら、だ。俺はお前が姉を慕っている事を知っている。能力を上げる為と割り切るのも方法の一つだが……」

 

「……ん」スッ

 

山城は恥ずかしそうに提督と視線を合わせない様にしながら手を突き出した。

 

「ん?」

 

「……いい。ちょうだい」

 

「いいのか?」

 

「もう、何度も確認するほど信用できないんですか?」

 

「いや、そうじゃないが。なんか意外でな」

 

「……じゃぁいい」ムスッ

 

山城は内心凄く舞い上がっていたがそれを悟られるのも癪なので少し突き放してみることにした。

勿論それは本心からの行動ではなく、あくまで提督を動揺させてその様を楽しもうと言う僅かな悪戯心だった。

だが……。

 

 

「ん、そうか。まぁ気が向いたらいつでも言ってくれ」

 

「!?」

 

提督は動揺するどころかあっさりと机面に視線を落とし執務の続きを始めた。

山城は予想外過ぎるこの反応に言葉を出す事も出来ず目を白黒させる。

 

「ん? どうした?」

 

「え……あ……」

 

「無理に受け取らなくていいと言ったろ? これくらい想定してたさ」

 

「あぅ……」

 

「これと同じように艦娘同士がより絆を深め合う事によって能力を向上させる仕組みが開発されればいんだがな。今度それとなく親父に伺ってみるか……」

 

「ぁ……ぅ……」

 

「山城、そこの書類取ってくれ。ん? 山城?」

 

「……」

 

「どうしたんだ黙りこくって」

 

「……っ」ジワッ

 

「……おい?」

 

俯いて黙りこくっていた山城が突如唇を震わせて涙を滲ませたので提督は慌てた。

その様こそ山城が見たかった提督の姿だったのだが、残念なことに今の彼女のにその余裕は無いようだった。

山城は視線を床に落としたまままるで悪戯をした子供が親にその事を謝るような態度でぼそぼそと話し始めた。

 

「嘘です……」

 

「え?」

 

「嘘です。指輪欲しいです。ちょうだい……」ポロポロ

 

「……俺はまた……。すまん」

 

とうとう涙を零しながらそう懇願してきた山城に、提督は自身の浅慮と気の効かなさを痛烈に反省しながら言った。

 

「ううん、私もさっきので自分のそういう所が凄く嫌になった……から」

 

「指輪、貰ってくれるか?」

 

「うん……ちょうだい」コク

 

「ほら」スッ

 

「……ぁ、きれい……」パアッ

 

少し回り道をしてしまったが、山城は掌に置かれた指輪の箱を開けて顔を輝かせた。

 

「一応、渡した指輪には全て名前を刻印してある」

 

「え?」

 

「知らなかったか?」

 

「え、どこ……ないですよ?」

 

「内側だ」

 

「内側? 内側って……あ」

 

「な?」

 

 

確かに指輪の内側に文字が刻印してあった。

それは大抵の女性なら嬉しくもこそばゆく思える演出だった筈だが、提督のそれは一般的なケースからややズレていたようだった。

その証拠に文字を見つけた時の山城の目は一瞬喜色に染まったが、その後直ぐに“何だこれは?”という疑問に満ちた目に変わっていた。

 

「……ねぇ」

 

「うん?」

 

「なんで漢字なんですか?」

 

指輪の内側には『山城』と、達筆な行書体でそう刻印されていた。

なまじその字が綺麗なせいで力強さすら感じた。

その雰囲気は明らかにケッコン指輪が本来放つ温かなものとは異なっている様に山城は感じた。

 

 

「その方がより自分の物だという気がしてな。それに内側だからこそ目立たないから良いと思ったんだ」

 

「妙な心遣いね……。というかこんな所に掘った職人も凄いですね。凄く字も綺麗」

 

「流石に掘るのは無理なんじゃないか? 熱か何かを利用したんだろう」

 

「へぇ……だとしたら綺麗にできるものですねぇ」

 

「そうだな」

 

「ね、はめてもいい?」

 

「その為の物だろう。いちいち許可を取る必要はない」

 

「……もうちょっと雰囲気考慮してくれてもいいじゃ……あ」

 

山城は提督のその素っ気ない態度と相変わらずの妙なセンスに苦笑しながら指輪をはめようとしたが、何かを思いついたのかその手は指輪を摘まんだまま途中で止まった。

 

「ん? どうした?」

 

「……」スッ

 

「うん?」

 

先程と同じように手を突き出してきた山城を提督はその意図が解らず見返す。

すると山城は右手で指輪を持って提督に差し出してきた。

 

「はめて」

 

「俺が?」

 

「うん」

 

「なるほど……。分かった」

 

山城の意図を理解した提督は彼女から指輪を受け取り、その細い指に手を取りながらそっとはめた。

 

スッ……。

 

 

「ん……ふふ♪」

 

「どうだ?」

 

「うん、良い感じよ♪」

 

「そうか」

 

「うん!」

 

「仕事しろよ」

 

「ちょっと眺めてからでいいですか?」

 

「ああ」

 

「ありがとう大佐。……本当に、ね」

 

子供のような純粋な笑顔で山城は本当に嬉しそうに提督にそう言った。




山城のケッコン後の母港ボイスいいですね。
初めて聞いた時は意外過ぎて思わず聞き直しましたw

香取とユーは潜水艦狩りと補給艦狩りで順調に育っています。
しかし最初の改造可能レベルが35以上なので、戦力的にマシになるのはもうちょっと先になりそうですね。


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第×33話 「18禁」

提督の親友である中佐からある荷物が届きました。
提督は荷物を見て送り主を確認すると物珍しそうな顔をして、着荷の連絡をする為に中佐に電話をしました。


「アダルトビデオ?」

 

『ああ、そう。そっちに届いたか?』

 

「お前から送り物なんて珍しいと思ったらなんでまたそんなものを……」

 

提督は荷封筒から取り出したコピーされたと思われるDVDディスクを見ながら呆れた声で言った。

 

『いやぁ、正直言うとな。ただの興味本位だ。お前に見せたら面白そうだなってな』

 

「別にこの歳でそんなもの珍しいとも思わないが……」

 

『いやな? ちょっとそれが内容が特殊なやつなんだよ』

 

「特殊? ……俺はそっち方面の性癖はないぞ」

 

『何を想像したかは何となく判るから聞かないが、そういうんじゃない。どっちかというとなぁ……うーん、ネタ系か』

 

「ネタ? ……一応タイトルを教えてもらってもいいか? ネットで情報を調べてみる。それで興味を持つ内容なら観るよ」

 

『ああ、いいぞ。別に隠すつもりはなかったしな。タイトルは……』

 

 

「ふむ……」

 

「大佐、どうしたんですか?」

 

「……ちょっと、な。友人にビデオを貰ったんが」

 

「え? ビデオですか? なんです? どんなビデオです?」ワクワク

 

「訊いて後悔するなよ。アダルトビデオだ」

 

「えっ」

 

「……」

 

「え?」

 

青葉の二度の確認に、提督は居心地が悪そうに目を逸らしながら再び肯定した。

 

「本当だ」

 

「な、なんでまた……」

 

「何でもネタ的な意味で面白いと思ったから俺にも観て欲しいと思ったんだそうだ」

 

「アダルトビデオでネタって……。あ、もしかして人気のアニメのイメージ崩壊レベルのパロディものとか?」

 

「俺も最初はそういうのやもっとアレなのは想像したんだがな」

 

「もっとアレ?」

 

「お前は知らなくてもいい。それで一応気になってタイトルを教えてもらって、それを調べてみたんだが」

 

「うんうん」

 

「……そこから先は秘密だ」

 

「えー! なんですかそれ! 青葉教えて欲しいです!」

 

「ダメだ。自己責任にしても俺は個人的に見せたいとは思えないものだったからだ」

 

「そこまで言っておいてそれはないですよー。ねぇ教えて大佐!」

 

「ダメだ」

 

「教えて!」

 

「ダメだ」

 

「おし――」

 

「ダメだ」

 

「……むぅ」プクー

 

「拗ねてもダメだぞ」

 

「じゃぁタイトルだけ教えて下さい! それで自分で調べて観るかどうかは自分で判断しますから!」

 

「ダメだ。逆に興味を持って結局観た所為でトラウマにでもなったら申し訳ないからな」

 

「青葉は重巡ですからちょっとくらいの衝撃は大丈夫です!」

 

「それは物理的な衝撃の事だろう。精神的な衝撃にも強いとは限らない」

 

「青葉は心の装甲も頑丈です! だから教えてくださいよ大佐ぁ」グイグイ

 

「やめろ、服を引っ張るな」

 

「おーしーえーてー!」グイグイ

 

「……じゃぁさわりだけ見せてやる。それでダメそうならそれまでだ」

 

「やた! て、大佐も一緒に観るんですか? あ、アダルトビ……なのに?」ポッ

 

「まぁ一応な」

 

「?」キョトン

 

 

そして数分後、提督は私室に青葉を連れて再生機の電源を入れた。

時刻はまだ昼頃。

成人向けの動画を見るには幾分場違いな時間帯に思えた。

 

「さて観るか」

 

「え、部屋は暗くしないんですか?」

 

「確かに人目は忍びたいところだが、これの場合はな。まぁ観れば解る」

 

「?」

 

提督が言っている意味が解らずキョトンとする青葉を尻目に彼は再生機の再生ボタンを押した。

 

「さて……」ポチッ

 

「わくわく♪」

 

一分後

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

ガバッ

 

「っ……ぐ……」

 

「と、止めて下さい大佐ぁぁぁ! いやぁぁぁぁ」

 

「止める。止めるから離せ」

 

ピッ

 

 

「……ひっ、うぇ……」ガタガタ

 

「だからダメだと言ったんだ」

 

「い、一体……なんなんですかアレ。アレのどこが……どこが……うぇぇぇん」

 

「……」ポンポン

 

「……大佐」

 

「ん?」

 

「人間って怖いですね……」

 

「……そうだな」

 

「あんなので興奮するなんて信じられません」

 

「中佐の奴も俺が軍人だから耐性があると判断した上で送ったんだろうな。まぁ、確かに観れない事はなかったが、流石に気分は良くなかった」

 

「……作り物ですよね?」

 

「そこは俺が保証する。経験と医学的見地からある程度説明もしてやれる」

 

「そうですか……」ホッ

 

「さて、もう昼休みも終わりだな。青葉、お前は飯とかもう済ませたのか?」

 

「あ、はい。大丈夫です。お仕事のお手伝いはできま……あ」

 

「? どうした?」

 

「大佐あの……」モジモジ

 

青葉は何に気付いたのか急にもじもじし始めた。

 

「うん?」

 

「と、トレイに行きたいです……」

 

「行ってくればいいだろう」

 

「ひ、一人が怖い……」ガタガタ

 

「まだ昼間だぞ」

 

「で、でもぉ……」ジワッ

 

「俺じゃなくても他の奴に頼めばいいだろう。せめて同性にしろ」

 

「あ……」カァ

 

(正常な思考ができない程動揺していたか)

 

「日向でも呼ぶか?」

 

「……」コクコク

 

「分かった」ピッ

 

「日向、いるか? ああ、悪いが頼みが……」

 

 

 

「……全く。大佐も可哀そうな事をするな」

 

夜、青葉の面倒を見た日向は、その労を労う為に提督に晩酌に呼ばれていた。

ソファに腰掛けた日向はどことなく呆れ顔をして酒をゆっくりと喉に通しつつ言った。

 

「一応何回も止めたんだがな。相手が青葉ならある程度先に情報を出した上で判断させた方が良かったと、今になって反省してる」

 

「確かにな。それで、私も青葉から聞いて調べたがまた随分趣味が悪い内容のアレだな」

 

「まぁな」

 

「アレでは青葉もトラウマになっても仕方ないだろう」

 

「ああ、それに関しては本当に申し訳ないと思っている」

 

「うん、そこは反省してもらわないとな。ん……それでな大佐」ジッ

 

グラスを口に運ぶ手を不意に止めて日向は提督を見つめた。

彼女の顔は酒が回った所為か少し赤くなっていたが、その目は焦点はハッキリとしており、提督をちゃんと捉えていた。

その態度はどことなく昼間の青葉のものと似ていた。

提督はそれを見て何となく予想を着きながらも敢えて確認した。

 

「どうした?」

 

「あ、いや……夜、だな」

 

「ん? ああそうだな。それが?」

 

「……その……」

 

「お前、観たのか?」

 

「まぁ……戦艦だし、大人っていうところを示したくてな」

 

「伊勢と一緒に観たのか?」

 

「うんまぁ……伊勢は冒頭で泣きながら直ぐに出て行ったよ……」

 

「そうか、じゃぁ殆ど一人で最後まで?」

 

「あ、ああ……」

 

「……大佐」

 

「……ん」

 

「そ、その頼みが……」

 

「……まぁ夜中だしな。前で待ってるだけでいいか?」

 

「あ、ありがとう」

 

日向は青くなった顔で心から安心した顔で弱く笑った。




もう観たのは随分前ですが、ああいうのって本当にピンからキリまでジャンルがありますよね。
まぁそれはエ○ゲにも言えた事ですが。

泣いて出て行ってしまった伊勢は何処へ?
多分無敵の長門お姉さんの抱き枕になってのではと、推測しますw


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第×34話 「妹」

相変わらず提督の基地は弾薬の不足に喘いでいました。
そんなわけもあって提督は久しぶりに、自分の事を先輩と慕う階級が上の提督に連絡を取り、資材のトレードを本部の許可の下にする事にしました。

もちろん相手側の提督は快く受け入れ、早速取引の為に派遣した彼の部下が提督の基地を訪ねてきました。



「少将殿の部下の方ですね。此の度はこちらから取引をお願いしたというのに、わざわざお越し頂き恐縮です。あなたは……」

 

提督は基地を訪ねてきた艦娘が初めて見る姿だったので、にその名前が分らなかった。

 

「雲龍型航空母艦二番艦、天城でございます。准将殿、そのように畏まらないで下さい。こちらの提督の命令で貴方をお訪ねたしたとはいえ、私は艦娘ですから。敬語などは不要ですよ」

 

「いえ、そうはいきませんよ。例え艦娘であったとしても貴方は私の部下ではありませんし、何よりこの基地の窮状を救って頂けるのですから。この程度の敬意、当然ですよ。少なくとも私はそう思います」(雲龍型……。雲龍の妹か)

 

「あ……そ、そうですか。その……そういうこと、でしたら。えと、きょ、恐縮です」

 

天城は、気を遣わない様に申し出たにも関わらず、それでも敬意を払い、自分の事を大切な客人としてもてなす提督に、戸惑いながらもその気持ちを有り難く思った。

 

(この人が提督が慕う准将……。階級はこちらの提督が上だけど、彼がこの人の事を先輩って呼ぶ理由が何となく解るな……)

 

「どうかされましたか?」

 

「あっ、い、いえ! なんでもありません。失礼しました!」

 

「はは、こちらの基地は僻地ですからね。少将殿の所と比べれば見劣りしてしまうのは否めません。いや、お恥ずかしい」

 

「そ、そんな事! 別にきにしてませんから。う、海が綺麗だし暖かくて良い所だと思いますよ!」アセアセ

 

「お気遣い感謝します。それでは早速ですが取引を始めましょうか。先ずは交換する資材の確認をしましょう」

 

「あ、はい。えっと……こちらからは弾薬2万でしたによね」コトッ

 

天城は懐からナノ資材化した弾薬が入った小瓶を出し目の前のテーブルに置いた。

 

「確かに。ではこちらからは……」スッ

 

提督は天城が出した資材を確認すると、元々机の上に置いてあった天城が出した物と同じ形をした瓶を彼女の前に差し出した。

 

「どうぞ、鋼材とボーキ、各2万です」

 

「……あの」

 

天城は、差し出された資材を直ぐに受け取ろうとはせずに、どこか窺いを立てるような様子で提督に訊いた。

 

「本当にいいんですか? こちらは弾薬2万だけなのにそれに対して2つも資材を交換して頂けるなんて。割に合わないのでは?」

 

「いえ、大丈夫です。本当に弾薬以外ではうちは困っていませんから。このくらいは余裕の内にも入らないくらいなんです。ですからどうぞ遠慮なく」

 

「そ、そうですか。では、その……ありがたく」(なんかこの基地、敵の襲撃があっても鋼材とボーキだけで艦娘の壁で凌げそうね……)

 

 

 

「もうお戻りになるんですか? お茶くらいご馳走したかったんですが」

 

取引が終わって間もなく自分の鎮守府に帰ろうとする天城に提督は港で声を掛けた。

 

「はい、慌ただしくてすいません。実は遠征の途中でこちらに寄ったものですから」

 

「ああ、なるほど」

 

「ご厚意は今回はお気持ちだけ頂きますね。ありがとうございます」

 

「いえ、お礼を言うのはこちらですよ。また機会がある時に都合が付けば、その時はゆっくりしていって下さい」

 

「あ、ありがとうございます」(本当に礼儀正しい人。うちの提督もそうじゃないわけじゃないけど、どちらかというとあの人は『優しい人』って感じよね)

 

「それでは准将殿、これで失礼しますね」

 

「はい。少将殿によろしくお伝えください」

 

「了解しました。それでは……」

 

 

 

「……」ジー

 

「ん? どうしたんだ雲龍?」

 

取引が済んで部屋で一息着いていた提督は、扉の隙間からこちらを見つめていた雲龍の視線に気付いた。

 

「……もう、行った?」

 

「ん? 行ったって、もしかしてさっきの天城か?」

 

「うん」コクッ

 

「ああ、さっき帰ったところだ。どうした?」

 

「……入っていい?」

 

「ん? ああ、いいぞ」

 

「ありがとう。失礼します」

 

ガチャッ、トト……ポス

 

 

雲龍は入室の許可を貰うとそそくさとした仕草で提督が座るソファーの隣に座った。

 

「どうした?」

 

「ちょっと、遊びに来たら彼女がいたから……」

 

「なんだ遠慮してたのか? 妹分なら話したい事もあっただろうに」

 

「うんまぁ……。でも彼女別の鎮守府の子でしょ? だからあまり親しくなるのもちょっと、って思ったの」

 

「そう気にする事か?」

 

「……何れうちにも天城が来たらちょっと気まずいじゃない?」

 

「それは……ふむ」

 

「ねぇ」クイ

 

「ん?」

 

「期待して、待っててもいい?」

 

「ん? ああ……そうだな。何れ、な。逢わせてみせる」

 

「そ……。ならいいの」ニコッ

 

ギュッ

 

「ん……」

 

提督はさり気なく自分の腕に抱き着いてきた雲龍に少し戸惑った顔を見せた。

雲龍はそんな彼を不思議そうな顔で見る。

 

「どうしたの?」

 

「いや、胸がな」

 

「抱き着きく過程で当たるのなら仕方ないじゃない。それとも大佐は嫌?」

 

「お前が気にならないならいいが。その、やっぱり寂しかったか?」

 

「ここで天城を見た時はちょっとね。でも周りを見れば皆がいるし。それに」

 

「それに?」

 

「貴方もいるし」ギュッ

 

「……身に余る光栄だ」

 

提督は幸せそうに抱き着く雲龍に苦笑しながら言った。

 




天城手に入れてませんが、何らかの形で出したいと思っていたので今回出しました。

天城ってキャラ的にどうなんでしょうね。
個人的に雲龍のキャラ結構好きなので、彼女を手に入れる事ができなくてもそんなに気にはなってませんが。

まぁ雲龍はもう慣れたけど、天城の胸がもう少し大人しかったら雰囲気に合うのになぁと、内心ちょっとそんな我儘な事を想ったりしてますw


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第×35話 「発見」

なんか戦艦武蔵の当時の船体が海底で見つかったようです。
その事を知った海軍本部の少将こと彼女は、面白半分で早速武蔵に教えました。


「武蔵、あなたの船体が見つかったってニュースになってるわよ」

 

「なに?」

 

「フィリピンの方で見つかったんだって。ほら今丁度ニュースでやってるわよ」

 

「ほえぇ、頼みもしないのによく見つけるもんじゃのぉ」

 

「あ、中将殿」

 

「武蔵が見つかったって?」

 

「はい。それを今丁度テレビで放送しているようなので……あ、武蔵、出たわよ」

 

「ほう、傷だらけの私の体を見てさぞや当時の私の勇士に驚いているだろうな。どれ……」

 

武蔵はまんざらでもない顔でその事を放映中と思われるテレビの音に耳を傾け、映像を覗き込んだ。

 

 

『このバルブは何ですか?』

 

女性リポーターが一緒に出演してる専門家に、海底の船体の一部の画像を見ながら質問した。

 

『船内にあったと思われる物ですね。これが外に出てるという事は受けた攻撃の凄まじい衝撃がよく解りますね』

 

武蔵はテレビに映った無残に放り出されたかつての自分の一部を見て言葉を失った。

 

「 」

 

『なるほどぉ。あ、この大きな穴は……?』

 

『それは第一主砲があったと思われる個所だと思われます。これはその跡ですね』

 

『あ、これは船首ですね。菊花紋は……』

 

『外れてますね』

 

「……」ヒクヒク

 

立て続けに流れる残骸の映像とそのリポートに武蔵は顔を引きつらせて黙って眺めていた。

 

 

「あ、何処に行くの?」

 

放送が終わって間もなく、踵を返して部屋を出て行こうとした武蔵に彼女が気付いた。

 

「……ちょっと元帥殿の所に」ムスッ

 

「あなたが? 珍しいわね」

 

「……ちょっとな。すぐ戻る」

 

 

コンコン

 

「ん? 誰だね?」

 

『武蔵です。元帥殿、今宜しいでしょうか?』

 

「武蔵? ああ、構わないよ。入りなさい」

 

ガチャ

 

「失礼します」

 

「おや? 君一人なのか、珍しいね。何か用かな?」

 

珍しそうにしながらも柔らかい笑顔で自分を迎えた元帥に、武蔵は真面目な顔で切り出した。

 

「単刀直入に申し上げます。一つ元帥殿にお願いしたい儀があって参りました」

 

「ふむ? 何かな?」

 

「総帥殿に会わせてください」

 

「……」スッ

 

武蔵の申し出を不躾だと判断した紀伊が厳しい顔をして武蔵の前に出ようとしたが、元帥がそれをやんわりと止めた。

 

「紀伊、いい、大丈夫だ。こほん、悪いね。それで、総帥に? それはまた急だね。理由は何かな?」

 

「元帥殿は最近、海外で私の当時の船体が見つかったという情報をご存知ですか?」

 

「ああ、知ってるよ。いやぁ、今になって見つかるとはね。それも戦後70年の節目に……。何か感じ入るものがあるね」

 

「確かにそれは私も思います。ですが私は、その事で少し気になった事がありまして」

 

「ふむ?」

 

「先程私はテレビでその様を見たのですが」

 

「うん」

 

「発見者が公開した動画に悪意を感じました」

 

「えっ」

 

「……」

 

予想もしない武蔵の言葉に元帥は目を丸くして彼女を見つめる。

対する武蔵は真面目な表情のままだ。

あくまで本気らしい。

そして先程元帥に止められた紀伊は一層武蔵を見る視線を厳しくした。

 

「何なのですかあの動画は。艦の全体像を移さずにあんな局所的な損傷個所ばかり映しては、帝国海軍の威信を傷つけているのと同じです。映すなら傷だらけの雄々しい艦全体にすべきです」

 

「え、いや。君は当時相当な規模の攻撃を受けて沈没したのだろう? なら艦だってまともな状態でないのは仕方ないんじゃないかな」

 

武蔵のそんな持論に元帥は少し動揺しながらも律儀に応対する。

 

「だとしたら文字だけでそれを伝えて、当時の映像資料を使うなりして感動的な演出を図れば良かったではありませんか」

 

「いや、それは流石にねつ造になりかねないから無理だろう……。大体発見したのは我々ではないし、軍事国家ではないのだからその発見に君の様な観点から口を出すわけにもいかんだろう」

 

「それは承知しています。ですから今回は、その……こ、個人的なレベルで総帥殿には、発見した国に対して苦情とか……」

 

自分の最終的な願いの無謀さに気付いたのだろう。

話が核心に近づくにつれて言葉がどんどん尻すぼみになる。

 

「それはアメリカ政府に直接、という事かね」

 

「武蔵、貴女いい加減にしてください。自分が何を言っているのか解っているのですか? 子供じゃないのだから身をちゃんと弁えてください」

 

武蔵の無謀な訴えについに我慢できなくなった紀伊が、珍しく怒りの感情を顔に出して彼女を注意する。

 

「き、紀伊! と、年上に対してその言い方はなんだ!」

 

「紀伊、いい。私から言うから」

 

「閣下……」

 

「紀伊」

 

「……はい」

 

優しくもはっきりとした元帥の窘める言葉に、紀伊は不詳不詳といった態度で大人しく引き下がる。

彼はそれを確認すると佇まいを正して改めて武蔵の方を見ながら口を開いた。

 

「君の気持ちは解るよ? でもね、先ず君が総帥に面会したいと願い出た事だが、それが容易ではない事くらい判るだろう?」

 

「そ、それは……ですから元帥殿にお願いを……」

 

「うん、それは間違ってはないね。でもね、そういう重要なお願いなら君の司令官である少将に先ず願い出るのが筋というものじゃないのかね?」

 

「う……」

 

「例え本部の司令官直属の部下とはいえ、艦娘である君の一存で総帥に会おうなどという願いは先ず叶わない。それは解っているね?」

 

「はい……」

 

「まぁそこは、元帥である私にまでは君を含めて一部の専属艦にのみ、直接意見する権利を認められているという優遇で我慢してもらうとして」

 

「はい……」

 

「だけどね、あんまり感情だけで動いては君の上司である少将に迷惑が掛かってしまうぞ? 彼女に迷惑は掛けたくはないだろう?」

 

「う……は、はい……」

 

「うん、分かってくれたかな。では、今回の件については」

 

「はい、すいませんでした」

 

武蔵は元帥に諭されて反省したようで、シュンとした顔ですごすごとその場を立ち去ろうとした。

元帥はまだ話の続きがあるのか、後ろを向き始めた彼女を慌てた様子で止めた。

 

「ああいや、まぁ総帥に会わせることは無理だが、その願い、一部だけだが叶えてあげよう」

 

「え!?」

 

「閣下……?」

 

武蔵と紀伊は揃って目を丸くして驚いた顔をする。

しかしその心境は二人とも違うので紀伊は元帥の言葉に不安そうな顔をする。

対して武蔵は目を輝かせて元帥の前に進み出る。

 

「そ、それは本当ですか!?」

 

「うん、まぁ。取り敢えず君は発見者か、その彼の国であるアメリカに文句が言いたいのだろう?」

 

「は、はい!」

 

「ならその点だけ私になりに叶えてあげよう。幸いあっちの軍関係者に私の親しい知り合いがいてね。彼にちょっと連絡を取ってみよう」

 

「ぜ、是非お願いします!」

 

「あの……本当に大丈夫ですか?」ヒソ

 

「なに、心配はいらんよ。まぁその結果が彼女の満足いくものになるものかは分からないがね」ヒソ

 

「え……?」

 

 

「あー、君かな? あ、 sorry. eng...... え? 日本語で? ああ、ありがとう。実は君にちょっと頼みが……」

 

元帥は武蔵に提案してから直ぐにその知り合いに電話を掛け、軽く挨拶を済ませると早速本題に入り始めた。

 

 

「……武蔵、待たせたね。電話に出てくれるかな?」

 

「あ、はい! あの、電話の相手は? 私英語はあまり……」

 

「それは大丈夫だよ。彼女は一時期ここに研修に来てた事があってね。その事もあって日本語はそれなりに堪能だよ」

 

「彼女?」

 

「まぁ出てみれば分かるよ」

 

「は、はぁ……。ああ、もしも――」

 

『faaaaaaaaaaaack!!』

 

「!?」

 

武蔵が電話に出た瞬間、電話口からいきなり英語の暴言が響く。

彼女はわけがわからずその大声から耳を咄嗟に守る事しか出来なかった。

だが、電話口の相手はそんな事をお構いなしに立て続けに喋ってきた。

 

『てめぇがムサシか!? 今日はまぁ随分図々しい話があるみたいだな!』

 

「な、なんだ貴様は!? 初対面から失礼な!」

 

『顔なんて見えてねーじゃねーか! まぁどんな顔してるかは簡単に想像付くけどよ。きっとキャンキャン吠えてやかましい犬っころみたいな面してるんだろーな』

 

「い、犬だと!? 貴様今私の事を犬だと言ったか!?」

 

『どう聞いたって犬っころじゃねーか。キャンキャン喚いてうるせーんだよチワワが!』

 

「ち、チワ……」プルプル

 

どっちかというと大型犬が好きな武蔵は、自分の事を室内犬で可愛らしい外見のチワワと形容する相手に怒り、受話器を持つ手を震わせる。

 

『お? 傷ついたか? 泣くか?』ニヤニヤ

 

「大人しく聞いていれば貴様……お前は何者だ!? 先ず名を名乗らないか!」

 

『ああ? そういえば名前言ってなかったな。俺は戦艦ニュージャージーだ』

 

「なっ……なに?」

 

聞き覚えのある名前に武蔵はハッとした顔をする。

 

『アメリカの艦娘だよ。戦艦ニュージャージー、分かるか? 分かるよな? だってあんとき俺もお前もいたんだからな』

 

「き、貴様……よくもぬけぬけと」

 

『もう戦争してねぇのにいちいちちっせぇ事言うんじゃねーよ。だからチワワなんだよおめーは』

 

「ああ! ま、またチワワと言ったな!?」

 

『うっせーなぁ、えーとなんだっけ。ああ、うちがお前をボコボコにした事に文句があるんだっけ?』

 

「な、なんだと! 私はお前なんかに負けていない!」

 

『はぁ? 負けただろうが、俺たちに』

 

「私は認めん!」

 

『まぁその気持ちも解るけどよ。つーか、その事についてはこっちも文句あるんだぜ?』

 

「何……? 勝ったお前たちが私に何の文句があるんと言うんだ。寄ってたかって私に集中攻撃したくせに」

 

『それだよ。あの時な、おめー沈めるのに俺たちがどれだけ苦労したと思ってんだ。あれだけボコボコにしてやったのにちんたら沈みやがってよ。おまけにその状態で反撃までしてきやがって化物かよ」

 

「はぁ!? 攻撃に対して反撃するのは当然だろう! 大体沈むのが遅かったと言うが、あれはお前たちの攻撃が稚拙だっただけだろう!」

 

『何言ってんだよ、普通あれだけ蜂の巣にされりゃ機関部が爆発するか、浸水で直ぐに沈むっつーの。なのに浸水してもなんか沈むのがおせーし、装甲は馬鹿の一つ覚えみたいに厚いしよ。全くこっちの苦労も考えやがれ!』

 

「それは我が国の技術が優れていた証拠だろうが! 大体あの時に大和型がもっと揃っていればお前たちになぞ負けなかったわ!」

 

『資源貧国がナマ言ってんじゃねーよ! 大体航空火力も重視されていたあの時にまだ大艦巨砲とか時代遅れだっつーの』

 

「それは輸出を止めたお前の所為だろうが!」

 

『敵国に資源輸出する馬鹿がいるかよ! 馬鹿だろおめー、馬鹿だろ!』

 

ギャーギャー!

 

 

「……」

 

電話で喧嘩を始めた武蔵の様子を元帥は苦笑して見ていた。

部屋にその大音声に紀伊は溜息を付きながら、同じく苦笑しながら元帥を見て言った。

 

「閣下、お見事です」

 

「ん? はは、まぁこれで武蔵も少しは気が晴れるんじゃないかな」

 

元帥は時を超えてかつての敵と闘いを始めた武蔵を面白そうに見つめながら言った。




アメリカの艦娘って出るんですかね。
暫くはドイツ勢が続くのでしょうが何れもしかしたら? なんて思ってます。

武蔵のニュースを見た時は驚きました。
何故ならとっくに見つかっていたと思っていたのでw
しかし大和と違って武蔵は更に深いところに沈んでるみたいですね。
これは今の艦の状態がどうなっているのか調べるのは難しいかな。


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第×36話 「発見2(大佐のとこの武蔵の場合)」

本部の武蔵があの反応なら、提督の所の武蔵はどうでしょう?

提督の基地でも武蔵の船体が見つかった事はニュースで流れており、それを知った提督は武蔵に教えます。
さて彼女の反応は……。


「武蔵、お前の当時の船体が見つかったらしいぞ」

 

「んむ?」

 

「米国の資産家がフィリピン沖で見つけたらしい」

 

「へぇ……」

 

自分の船体が見つかったという割には武蔵は気のない返事をした。

その顔もどこか他人事のように真顔だ。

提督はその反応を意外に思い彼女に訊いた。

 

「意外に反応が薄いんだな。特に感じ入る事はないか?」

 

「んー……確かに半世紀以上の時を経てまた世に知られる事は感慨深いとは思うんだが」

 

「どうした?」

 

「いや、何分昔の事だからな。それに当時私に乗艦していた幾千もの将兵たちの事を思うと、その船体は墓標の様なものだろう? 彼らの鎮魂の為にもそのまま触れずに置いてくれていた方がいいかな、とな」

 

「……なるほどな、至極理解できる」

 

「今はどういう状況なんだ?」

 

「発見後の動向についてか? フィリピンと日本の政府が協議するかもしれないな」

 

「まさか引き上げ……いや、それは流石にないか」

 

「艦にまだ無傷の重油が残っていないとも言い切れないからな。環境や遺族の意向なども考えると引き上げはまずないだろう」

 

「そっか、ならいいんだ」

 

「……」

 

「ん? どうした?」

 

武蔵は自分事を見つめる提督の視線に気付いた。

 

「いや、さっき抱いた印象と重複するが、意外に大人しいんだな、とな」

 

「おいおい、私はそんなに感情的に見えるか?」

 

「そうは言わないが」

 

「ふふっ、まぁ或いは他の基地や鎮守府の私なら違った反応があったかもしれないが、ここでの私はこの通りだ。それにな、一応さっき言った事以外にも大人しい理由はあるんだぞ」

 

「なんだ?」

 

「私がこの基地の仲間と大佐の事を滅法好いているからだ。この心地良さ、当時の記憶を思い出して感傷に浸るに勝る」

 

「ん……」

 

「なぁ大佐」

 

自分の言葉に口をつぐんで納得した顔をする提督に、武蔵はそっと身を乗り出して甘えるような声で言った。

 

「うん?」

 

「撫でてくれ」

 

「どうした急に」

 

「いや、さっき自分で心地良いとか言ったら大佐に甘えて……構って欲しくなった」スリスリ

 

「……」

 

突然自分の胸に頬ずりを始めた武蔵を、提督は注意するでもなく何やら微妙な表情をして眺める。

その生暖かいとも言える視線に武蔵は悪戯っぽく笑いながら訊く。

 

「もしかして今ちょっと犬っぽいとか思ったか?」

 

「いや……」

 

「いいんだ。大佐の前では、私は従順で大人しい女であり、犬で構わない」

 

「……」(それってメス犬……)

 

「お? もしかして野生に還ってもいいのか?」

 

上着を抜いて上半身をさらしだけの格好になろうとする武蔵を提督は直ぐに止めた。

 

「人の思考を読むな。いいわけないだろう、仕事中だ」

 

「じゃ、撫でてくれ。まだしてもらってない」

 

「……ほら」ナデナデ

 

「んー……♪」

 

「もういいか?」

 

「いや、今度は頬とか顎を撫でて」

 

「おい、それもう犬みたいじゃなくて犬と同じ扱いだぞ」

 

「今はそういう気分なんだ。そう扱われても悪い気はしない。なぁ早く」

 

「いや、だから仕事……」

 

「私が見つかった記念日という事でひとつ」

 

「そうきたか。よく口が回る」

 

「……舌も回したいな」

 

武蔵はそう言って小さな舌をチロリと出した。

どうやら目の前の犬はスキンシップとして接吻を求めている様だった。

 

「駄目だ」

 

「むぅ、ケチ」

 

「だらしない顔してるぞ。自制できないならこれ以上はしてやらん」

 

「む、それは困る。分かったこれで最後でいいから早く頬とか顎も」ズイ

 

「……ちゃんと仕事しろよ」ナデナデ

 

「ふ……あぅ……んん……♪」ポー

 

「……これでいいか?」

 

「え? ああ、うん」

 

「後は昼まで我慢しろ」

 

「なにっ、昼になったら続きをしてくれるのか?」

 

「飯まで我慢しろって事だ。飯を食ったら眠くなるだろう? 特別にそこのソファーで寝る事を許可してやる」

 

「待て、食ったら寝るってそれ犬だぞ? 猫だぞ? 豚だぞ?」

 

「豚と言うほど太ってもいないし、猫と言うほど小さくもないじゃないか。ならやっぱり……」

 

「私はシェパードかハスキーがいいな」

 

犬として扱われるなら自分好みの犬種で、という事なのだろう。

武蔵は自分から希望の犬種を提案した。

だが提督は、そこで敢えて彼女のその希望を逆手に取り、心理戦に持ち込むことによって仕事を進める計画に出た。

 

「……ここは間を取ってチワワだな」

 

「なんでそうなる!? それ、間を取るどころか完全に通り過ぎて小型じゃないか!?」

 

「仕事中にこんなに甘える犬が軍用犬や狼犬なわけないだろう。明らかに室内犬だ」

 

「なぁ!?」

 

「勘に障ったか? ならそうじゃない事を今から証明してもらおうか」

 

「む……上手く誘導するものだ。ふふ、いいだろう、武蔵の力とくと見せてやろうじゃないか」

 

「何海の方を見ながら言っているんだ。お前が力を見せるのは白い海だ。ほら、早くこの紙の波を何とかしろ」

 

「はぁ、書類仕事は苦手だ……」

 

「なら大和に代わるか?」

 

「やる!」

 

「その意気だ。頼むぞ」

 

提督は犬の様に態度をコロコロ変える武蔵を内心面白く思いながら、仕事に集中し始めた彼女に期待の言葉を掛けた。




何故本部と提督のところの武蔵は反応が違うのか?
多分本部の方の武蔵は他の武蔵の元となっているオリジナルなので、戦艦武蔵としての自覚と自負心が複製された武蔵と比べて強い所為かもしれません。
まぁ、一番の原因はやっぱり上司の影響でしょうが。
彼女も真面目な性格ですが、やっぱり女性同士という事もあって少しじゃれ癖が強いのだと思います。
一方提督の方の武蔵も甘えん坊ですが、提督の性格が真面目だという事も併せて異性同士という事もあってその辺のメリハリがしっかりしているのかも。


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第×37話 「故障」

提督の私室の風呂が壊れたようです。
お湯の蛇口を捻っても湯が温まらず、水が出た思ったらいきなり止まったり。
困った提督は状態を診てもらう為に整備のエキスパートを呼びました。


「どうだ? やっぱりどこか故障しているか?」

 

「ええ、正確には給湯器の故障ですねこれは」

 

基地の外から戻ってきた明石は工具をしまいながら、提督に検査の結果を報告する。

最初は浴室を調べようと思ったが、提督に症状を聞いて直ぐに原因は外にあると予想したのが正解だったようだ。

 

「給湯器……」

 

「ここの土地はシャワーは浴びても湯に浸かる習慣はありませんからね。元々設えていた給湯器もジャンクショップから見つけた様な物を急ごしらえで設置した物だったみたいです」

 

「なるほど」

 

「あ、因みに私たちの大浴場の物は流石にちゃんと日本から取り寄せたものみたいですね。元々基地の設備として計画されていたんでしょう」

 

「ふむ、俺の風呂は完全に個人的に用意してもらったものだったからな。元々はシャワー室だったものを無理を言って変更してもらったんだ」

 

「あ、そうだったんですか。大佐お風呂好きなんですね」

 

「まぁな」

 

「……となると暫くは風呂は使えそうもないな。業者を呼ぶか?」

 

「いえ、それには及びません。大佐に買ってきてもらった新しい工具もありますし、この程度私でも直せますよ。伊達に工作艦を名乗っていません」

 

「そいつは頼もしい、流石だな」

 

「ふふ、ありがとうございます。あ、それで大佐は直るまでの間お風呂はどうします? これくらいなら……そうですね完璧に直すなら2日頂けたら大丈夫ですけど」

 

「3日で直せるのか?」

 

提督は思ったよりも早い復旧までに掛かる時間に驚いた。

 

「はい。復旧だけが目的なら今日中でOKですけど、今後も使用するのならただの修理じゃなくて改修しちゃった方が良いと思います。それなら3日ですね」

 

「今より良くなるのか?」

 

「ふふ、給湯器だけが良くなると思わないで下さいよ? 浴槽にバブルジェットも付けて、断熱材もマシにして、浴室には……専用の水式乾燥機も付けちゃいますよ」

 

「そこまで……? 大丈夫なのか? 現地でそこまで器材用意できるとは思えないが」

 

「あ、大丈夫です。全部私が造りますから」

 

明石はあっけらかんと言い切った。

そこまでの設備を充実させるというのに、器材を用意するどころか一から造ってみせると断言する彼女の自信に提督は畏敬の念を覚えた。

 

「……そう、か」

 

「はい!」

 

「本当に頼もしいな。それで費用はどれくらい必要だ? 報酬も含めた金額を提示してくれ」

 

「あ、費用についてはここの様子をもうちょっと調べてから後で書面で提出します。でも報酬はいらないですよ。これも仕事の内です」

 

「そうもいかないだろう。元々俺の我儘で設えた物であるわけだし。それにこれは個人的依頼だ」

 

「そんなに気にしなくてもいいのに……。あ、じゃぁ一つだけいいですか?」

 

「ああ、何でも言ってくれ」

 

提督の心遣いに少し困った顔で顎に手を当てて暫し考えた明石は、何か思いつたようだ。

浴槽を撫でながらこんな事を提案した。

 

「完成したら私もこのお風呂に入ってもいいですか? 自分の腕を疑うわけじゃないんですけどテストはしておきたいんで」

 

「そんなのでいいのか? 他にも飯や金銭とかでも」

 

「大丈夫ですって、それで構いません。大佐専用のお風呂を部下の私が使うという体験もなかなかできる事じゃないですから」

 

「……そうか。まぁお前がそれでいいなら」(実は何人か既にいるんだよな。内容が内容だけに流石に言えないが)

 

「はい、それで結構です。あ、それでお風呂どうします?」

 

「そうだったな。まぁ……海で」

 

「えっ」

 

提督の答えに明石は驚いて目を丸くする。

だが提督はそんな自分の考えに特に問題があるとは考えていないようで、明石の顔も気にする風もなく続けた。

 

「3日だろう? それくらいなら汗を流すだけなら海でいいだろう」

 

「そんな! それじゃぁ髪とかベトベトになっちゃいますよ!」

 

「頭は後で水道水でも……」

 

「私たちがちゃんとしたお風呂に入ってるのに大佐にそんな真似させるわけにはいきませんよ!」

 

「しかし流石にここ土地には風呂はないしな。かと言って民家のシャワーを借りるわけにもいかないし」

 

「大浴場を使えばいいじゃないですか。入っている間『大佐入浴中』とか看板でも立てて」

 

「ふむ……」

 

「入渠設備も使おうと思えば使えると思いますけど、大佐用にちょっと換装する必要もありますし。その手間を考えたら浴場を使ってもらうのが一番だと思いますよ」

 

「……なら、深夜寝る前に使わせてもらおうか」

 

「そうして下さい。その時間帯なら誰も入る人はいないと思います。立て看板何て直ぐにご用意しますよ」

 

「本当に悪いな。看板に貼る紙くらいはこっちで用意しておく」

 

「分かりました」

 

「では、頼むな」

 

「はい! お任せください!」

 

 

それから数時間後、時刻は23時を回った辺り、執務室にとある駆逐艦が三人、提督に呼び出され部屋に揃っていた。

 

「若葉、朝潮、野分。こんな夜遅くに来てもらって悪いな。実は三人に頼みたい事があるんだ」

 

「大佐、遠慮何て無用だ。いつでもこんな風に呼んでくれて構わない」

 

「私もです! 朝潮、大佐の命令ならいつでも応える覚悟があります!」

 

「み、皆凄い気合いね……。あ、大佐私も、遠慮しなくていいですから」

 

「お前たち、悪いな。お前たちに頼みたいのは簡単な事だ。俺が風呂に入っている間、誰も入らない様に見張っていて欲しい」

 

「……え?」

 

「はい?」

 

「え……」

 

予想外の提督の命令に三人は揃って鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

提督はその反応を予め予想していたかのように、ちょっと申し訳なさそうに苦笑しながら続けた。

 

「まぁそういう顔をするような。だが念の為だ。立て看板も用意した、これを使ってくれ」トンッ

 

『何人の立ち入りを禁ず』

 

「ず、随分物々しい……?」

 

「普通に『大佐入浴中』でも良かったのではなないでしょうか?」

 

「な、なんか凄く拒絶の雰囲気を感じますね」

 

「間違っても誰かが入らないようにする為だ。こうしてハッキリと示しておけば多少危ない連中も諦めるだろう。加えてお前たちに見張りをしてもらえばもう万全と言える」

 

「……なるほど、了解した。大佐、この若葉に任せてくれ」

 

「朝潮も了解です。しっかりお勤めを果たしてみせます」

 

「同じく。ちゃんと注意して見ておきますね」

 

「悪いな。この仕事は俺の個人的な依頼になる。果たしてくれれば後でお礼をしよう」

 

「お礼など不要だ。大佐、私はそんな物がなくてもちゃんと任務を果たせるぞ」

 

「私もです。お礼何て気を遣わないで下さい」

 

「まぁ……うん、大丈夫よ」

 

「はは、そんなに大したものじゃないからそう気を張るな。礼と言うのは明日にでも菓子を用意してお前達をお茶に招待するくらいだ」

 

「お菓子……? やる気……でた。頑張る!」

 

「お茶なんて……でも、光栄です! 楽しみです!」

 

「お茶ですか……うん、私も楽しみ」

 

「味は約束する。それじゃぁ頼むな」

 

「了解した!」「はい!」「分かりました」

 

一見真面目な三人だが、お菓子に反応するという駆逐艦らしい子供っぽさを可愛く感じながら提督は、浴室へと向かっていった。




次は久しぶりにエロい話になるかもしれません。
多分二部構成……?

確実に明日までには全部投稿できないと思いますw


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第×38話 「脅威」

龍田が廊下を歩いていると摩耶とすれ違いました。
龍田はすれ違う数分前にも入浴道具を持った彼女とすれ違っていたので、直ぐに引き返してきた理由が気になりました。
ワケを訊いてみた結果、摩耶は龍田に滅多にない朗報を授けてくれました。

*野分達のキャラ分けが難しかったので三人に関してはセリフの前に名前あり


「あらぁ、摩耶さんお風呂に行ったんじゃなかったの?」

 

「おう、龍田。やな、行ったんだけど丁度大佐が入っててさ」

 

「……大佐が?」

 

「ん? おめー知らなかったのか。大佐、今、自分の部屋の風呂が壊れててあたしらの浴場使ってるんだぜ。ま、大佐も不便だよな。このくらいの時間しか落ち着いて入れないし」

 

「……ふーん……」

 

スタスタ

 

聞くが早いか、龍田は摩耶の話に軽く理解を示すと彼女が戻ってきた浴場がある道へ足早に進んで行こうする。

摩耶はなんとなくそんな龍田が纏っていた雰囲気が気になり、それを止めた。

 

「ん? おい、どこに行くんだ?」

 

「え? 何ってお風呂ですけど?」

 

「え、はぁ!? いやいや、お前確か夕方くらいに入ってたよな? ていうか大佐が今風呂に入ってるって言ったろ?」

 

「……部下として提督のお背中を流しにいくだけですよぉ。ご・ほ・う・しです」

 

「ご、ご奉仕って、お、お前なぁ……」カァ

 

「大丈夫です。なにもやましいことなんてしないですよぉ♪」

 

(その割には上気気味で目が楽しそうじゃねーか……)

 

「まぁ待てよ。行っても無駄だぜ。入り口には大佐に見張り頼まれた野分達がいるからよ」

 

「……見張りだなんて、大佐は私達のこと信用してないのかしら」

 

「警戒してるから立ててるんだろうが、ていうかお前だけだ。あたしも含めるな」

 

「……まぁいいです。野分ちゃん達だったらちゃんと丁寧に“お願い”すれば解ってくれると思いますしぃ」

 

「脅す気か?」

 

「ふふ、お願いですよ。お・ね・が・い♪ それじゃ、麻耶さん、失礼しますねぇ」ヒラヒラ

 

 

「……」(行っちまった。……アイツに頼んでみるか。アイツなら真っ向から龍田に素で向かい合えるだろ)

 

摩耶は去りゆく龍田の背中を眺めながらある人物に野分達の救援と援護をお願いする事にした。

 

 

~その頃の大佐

 

「……」(……流石に広いな。そして誰もいないから解放感が堪らない)

 

提督は湯気が漂う広い浴場に一人立ちながら、一通りその様子を眺めていた。

そしてその浴場の雰囲気は彼にある考えを思い付かせる。

 

「……」(これはあまりにも気持ち良くて浴槽で寝てしま……いや、寝てみるのもいいか。若葉達には待たせた分、なにかお礼をしよう)

 

 

 

~見張りサイド

 

野分「摩耶さんに悪い事したかな」

 

朝潮「今回は仕方ないよ。それに、ここが使えなくても入渠用の浴槽使えば個人ならゆっくりできると思うから、摩耶さんならそれくらい納得すると思うよ」

 

若葉「うん、私もそう思う。摩耶さんなら大丈夫だ」

 

野分達は三人可愛く浴場の入り口の壁に並んで座り、提督が用意した看板と一緒にちゃんと見張りを続けていた。

 

野分「うん、そうね。それにしても、結構人断ったね」

 

朝潮「それは同意ね。この時間帯でも結構入りに来る人いたね」

 

野分「まぁ、隼鷹さんや長門さんがお酒持ちながら来たのは意外でもなかったけど、ね」

 

若葉「ああまぁ、あれは……」

 

若葉はどこか呆れたような心配するような顔をする。

 

野分「意外だったのはその後ろに神通さんも楽しそうに着いてきてた事じゃない? あれは本当に意外だったよ」

 

朝潮「ああ、うん。隼鷹さん達は別に気にならなかったけど、神通さんには悪い事した気がしたよね。ちょっと残念そうにも見えたし」

 

野分「……大佐がお風呂からあがったら教えてあげない?」

 

若葉「うむ、それは良い考えだ。私は賛成だ」

 

朝潮「私も。……一応、長門さん達にも教えないといけないよね」

 

若葉「それはまぁ……攫われないように注意しなければ、な」

 

野分「えっ、攫われるの!?」

 

野分は物騒な言葉に驚いた顔をする。

 

朝潮「あ、野分は知らなかった? 結構油断したらヌイグルミ代わりにされるのよ?」

 

野分「ぬ、ヌイグルミ……」

 

若葉「因みに隼鷹さんも油断ならない。私は前に晩酌中に尋ねた為にあの人の酒気だけで頭がクラクラしてしまった」

 

朝潮の注意喚起に続いて、若葉がその時を思い出した所為か冷汗を垂らしながら、更に隼鷹についても注意を促す。

 

野分「え、若葉お酒飲めないの?」

 

若葉「……酎ハイなら。ジュースみたいだし……」

 

若葉はお酒に強くない事を気にしているのか、俯き加減で恥ずかしそうに答えた。

 

朝潮「あ、それ解る。私も初めは酎ハイだったよ」

 

若葉「初めは? じゃぁ今は?」

 

朝潮「ん、今も基本酎ハイよ。それ以外のは付き合いで飲むときだけ」

 

若葉「そうか……」ホッ

 

自分と一緒のお酒を好む人がいる。

その事実だけで若葉は少し安心した気持ちになった。

 

朝潮「野分は飲めるの?」

 

野分「ん? 私? 私は飲めるよ。基本的に朝潮と一緒で酎ハイしか飲まないけど、私の場合は付き合いでないとお酒はあまり飲まないかな」

 

若葉「なるほど。では野分は私と同じで酎ハイしか飲まないんだな」

 

野分「そうよ。仲間ね」ニコッ

 

若葉「……うん!」パァッ

 

朝潮「……あの、私も一応お酒は酎ハイ派だからね?」

 

若葉「解っている。朝潮も勿論私たちの仲間だ」

 

野分「ね、今度飲み会しない? あわよくば大佐とか誘ってさ」

 

若葉「ほう、いいな」

 

朝潮「大佐付き合ってくれるかな」

 

若葉「2月から3月の間はバレンタインとホワイトデーの期間とされているから、大佐もきっと付き合ってくれる。間違いない」

 

朝潮「そう? なら、うん。いいかもね」

 

野分「だね。大佐がお風呂から出たら早速訊いてみようよ」

 

キャッキャッ、ワイワイ

 

 

「……目標かくに~ん。さて、どう攻め……お願いしようかなぁ」

 

ワイワイとささやかな楽しみに湧く駆逐艦たちに、とある脅威が静かに忍び寄ろうとしていた。




エロ書くとか言っていおきながら先にこっちの話を間に入れたくなったので投稿する事にしました。
暖かくなってきましたね。
そろそろエンジンをかけていきたいと思います。
……今週中には。
あと、モバゲやめたい。


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第×39話 「対峙2」

浴場の前で番をしていた駆逐艦三人娘の前にとある人物(脅威)が現れた。
その人物の姿を目にした瞬間、彼女達の心の中に無意識に言いようのない不安が過った。


「あらぁ、あなた達、こんな所でこんな時間に何をしているのぉ? 」

 

朝潮「あ、龍田さん」

 

野分「大佐が入浴している間誰かが間違って入らな用に番をしているんです」

 

若葉「そういう事だ……です。龍田さんもお風呂? なら今は入れないですよ」

 

「へぇ、そうなんだぁ。それじゃ仕方ないわねぇ」

 

スタスタ

 

野分「えっ、えっ。ちょ、ちょっと待ってください! 大佐が入っているからダメですよ!」

 

野分は自分達の話を聞いた直後に浴場へと歩を進める龍田を慌てて止める。

だが龍田は特に気にもしてない様子でこう答えた。

 

「大丈夫よぉ。別に入りにいくわけじゃないからぁ」

 

若葉「入らないのなら何をしに……?」

 

「大佐のお背中を流しによぉ。部下として大佐の労を労いにいくの。ご奉仕よ、ご・ほ・う・し」

 

朝潮「ご奉仕……」

 

「そう、だから問題ないでしょう? 通っていいわよねぇ?」ニコォ

 

若葉「っ……。だ、だけど……大佐は男なので……」

 

朝潮「そ、そうですよ。龍田さんは恥ずかしくないんですか?」

 

「ん~? そうねぇ」

 

スルッ

 

野分・朝潮・若葉「!?」

 

朝潮「な、なにこんな所で脱ぎ始めてるんですか!?」

 

今度は朝潮が目の前でパジャマのボタンを外して上の服を脱ぎ始めた龍田を慌てて止める。

しかしそれでも龍田はいつも変わらない調子でやんわりと答える。

 

「命を預ける上司だもの。私は大佐になら裸を見られても他の人よりかは気にしないわぁ。これはそのしょ・う・こ」

 

朝潮「証拠って……」

 

「あなた達にはできないでしょぉ? だから私が代わりに、ね?」

 

若葉「あ、あ……」

 

朝潮(ど、どうしよう……!)

 

野分(私たちじゃ断り切れない……!)

 

 

「龍田さん」

 

朝潮達が龍田の迫力に圧し負ける瞬間、突如として凛とした声が救いの声となって響いた。

彼女達はそのよく澄んで通った声にハッとなって声が聞こえた方を振り向く。

 

野分・朝潮・若葉「!」

 

「……香取さん?」

 

龍田は朝潮達を気圧していた笑顔を収め、一転して真面目な顔になった。

細めた目の彼女の視線の先には、柔かい笑みを浮かべながら腕を組んで立っている香取の姿あった。

朝潮はその頼もしい救いの主の姿を見て安心感から顔を輝かせる。

若葉と野分もそれに続くようにホッとした表情を見せていた。

 

「失礼、偶然見かけたものですから」

 

朝潮(香取さん……!)パァッ

 

「……偶然、ねぇ……。それで、何かしらぁ?」

 

「んっ、いえ、対した事ではありませんが、ご奉仕とは言え“今”大佐の下に行くのは如何と思うのですが?」

 

「大丈夫よぉ。大佐にはちゃんと了解を得るからぁ」

 

「そういう問題ではありませんよ」

 

「……どういう事かしらぁ?」

 

野分・朝潮・若葉「……!」ゾッ

 

香取の問い掛けをのらりくらりといった態度で躱す龍田だったが、それに対抗する様に一歩も引かずに尚も彼女を質そうとする香取の態度に龍田は初めて少し険のある顔で冷たい一瞥をくれた。

その迫力に駆逐艦の三人は揃って縮こまる。

 

「誤解しないでくださいね。貴女の、大佐に対する敬愛の念に関しては私も敬意を表しています。ですが、今この場においてはその示し方に問題があると思うのです」

 

「何が、かしら?」

 

「如何に大佐のお背中をお流しするだけとはいえ、このような時間にこの子達の前で、そのような内容の言動を発するというのは、風紀を重んじる大佐のこの基地に置いて、その意に反しかねない些か問題のある行為ではないでしょうか?」

 

「……」

 

香取の率直な指摘に、龍田はいよいよ無表情になって無言のまま香取を見返す。

その様子からは怒っているのか香取の言葉を考慮しているのかは判断がつかなかったが、少なくともその場にいた朝潮達には冗談でも彼女の機嫌が良さそうには見えなかった。

香取はそんな龍田の雰囲気にも臆することなく、先程と変わらない穏やかな調子で更に続けた。

 

「重ねて申しますが、誤解しないでください。大佐も殿方、私達が身をもって……艶のある奉仕をするというのも一興。私は貴方にそれができないなどとは微塵も思っておりませんし、必要とあらば私とて所望頂ければそれにお応えする用意はできております」

 

「……“用意”ね。もし、そこで“覚悟”とか言ってたら、ちょっと怒ってたかもねぇ。大佐はそんな人じゃないもの」

 

「愚問です。それくらいの事、私もこの基地に迎え入れて頂いた日から理解しております」

 

「……そ」

 

「龍田さん」

 

「なぁに?」

 

「いろいろ回りくどい言い方をしてしまいましたが、率直に申します。ここは、私の顔を立てて頂けないでしょうか?」

 

「ん……」

 

「……」ニコッ

 

野分・朝潮・若葉「……」ハラハラ

 

笑顔の香取、そして龍田ももういつもの顔に戻っていたが、それでも二人が対峙しているその場の雰囲気は朝潮達にとってはまだピリピリしたものに感じた。

 

 

「……ふふ、分かったわ。貴女にそこまで言われると、ね。私もつまらない事で貴女との間に波風なんて立てたくないもの」

 

張りつめた雰囲気を解いてきたの龍田の方からだった。

 

「ご承知頂きありがとうございます」ペコッ

 

「やだぁ、頭なんて下げなくていいわよぉ。香取さんは何も悪くないわぁ。むしろ、気を遣ってくれてありがとう、ね?」

 

「いえ、とんでもございません。こちらこそ不躾な物言い失礼致しました」

 

「……」ジッ

 

「……」ジッ

 

「「ふふっ」」

 

「それじゃ、私は戻るわね。野分ちゃん達もごめんなさいね? 怖かったでしょ?」

 

野分「い、いえ!」ブンブン

 

朝潮「わ、私は大丈夫です!」

 

若葉「若葉も……!」

 

「ふふ、そう? お勤めご苦労様ね。それじゃぁ、ね。バイバイ」フリフリ

 

 

野分・朝潮・若葉「……」

 

去りゆく龍田の背中がようやく見えなくなると三人は揃って脱力する様にその場にへたりこむ。

そんな彼女達に香取が笑いながら声を掛けた。

 

野分・朝潮・若葉「……はぁ~」グテー

 

「ふふ、三人ともよく頑張ったわね」ニコッ

 

野分「香取さん……助かりましたぁ……」

 

朝潮「本当に……ありがとうございます!」

 

若葉「礼を言います!」

 

「大したことはしてないわ。丁寧にお願いしただけよ」

 

朝潮「それでも、あの龍田さんにあんなふうに正面から意見できるなんて凄いです!」

 

若葉「間違いない。香取さんは凄いと思う」

 

野分「確かにね。流石香取さんです」

 

「まぁ、ふふ……。この子達は……でもね」ジッ

 

口々に自分を称賛する三人の言葉に嬉しそうな顔をする香取だったが、ふと真面目な顔になるとメガネの奥から鋭い視線を向けた。

朝潮達はその視線にビクリと反応し、思わず姿勢を正して揃って直立の態勢をとる。

 

朝潮・若葉・野分「!」ビクッ

 

「いくら怖いと言っても最初からそんな風に身構えていては相手も気を悪くするのよ? さっき見ていたから解ると思うけど、龍田さんだってちゃんと説明すれば解ってくれます。だからあなた達も筋が通った事ならちゃんと頭から怖がらずに言うのよ?」

 

朝潮・若葉・野分「は、はい!」

 

「うん、良い返事ね。それじゃ、私も戻るけど、あなた達もお勤めを追えたら直ぐに部屋に戻るのよ?」

 

朝潮「はい、分かりました!」

 

若葉「了解!」

 

野分「はい!」

 

「ふふ、おやすみなさい」

 

カツカツカツ……

 

 

香取を見送り、ようやく再び三人だけに戻った事によって緊張が解けた朝潮と野分はお互いに苦笑いをしながら息を吐いた。

 

朝潮「……はぁ」

 

野分「はは、ちょっと疲れたね」

 

若葉「……」

 

朝潮「? 若葉、どうしたの?」

 

平穏を噛み締めていた自分達に対して先程から固い雰囲気を変えずに、一人黙っていた若葉に朝潮は気付いた。

 

若葉「いや、大佐、お風呂に入ってからちょっと時間経ってないか?」

 

野分「え? んー……そうね、30分くらいに……なる、かな?」

 

野分は浴場の入り口の真上の壁に駆けられた時計を見て大凡の経過時間を計算した。

朝潮はその言葉に然程心配していない様子でこう言った。

 

朝潮「それくらい? 大佐って風呂好きだから長風呂なんじゃ?」

 

若葉「……少し、様子を見てくる」

 

若葉はそんなやや楽観的な二人より事態を深刻に考えている様だった。

その意外な言葉に朝潮と野分は驚きの声をあげる。

 

朝潮・野分「えっ」

 

若葉「大丈夫だ、もんだ……こういう時は気にする事じゃない」

 

野分「それはそうだけど……」

 

朝潮「なら、私が」

 

野分・若葉「えっ」

 

若葉に続いて様子見に立候補した朝潮に今度は若葉と野分が揃って驚きの声をあげる。

それに対して朝潮は少し顔を赤らめて恥ずかしそうにしながらも聞き返してきた。

 

朝潮「……何か?」

 

野分「あ、いや……それなら私でもいいんじゃない?」

 

朝潮・若葉「えっ」

 

野分「……なに?」

 

今度は野分が意外な事を言ってきた。

彼女も少し恥ずかしそうにしながらも、その役目には並々ならぬ関心があるようだった。

 

朝潮・野分・若葉「……」

 

若葉「一緒に行こうか」

 

若葉がポツリと言った。

 

朝潮「そうね」

 

野分「それが一番ね」

 

三人は気まずい沈黙の下で、結局考え得る最善の選択を導き出したようだった。

 

 

若葉「……」ゴソゴソ

 

野分「え、ふ、服脱ぐの?」

 

脱衣所で服を脱ぎ始めた若葉に野分がぎょっとして言った。

だが若葉は特に気にした様子もなく寧ろ野分の言葉にに不思議そうな顔で答えた。

 

若葉「上だけだ。濡れたら困るだろ?」

 

朝潮「あ、うん……」(若葉、素だ)

 

野分「……そう……ね」ゴソゴソ

 

若葉「では、行こうか」

 

朝潮「うん!」

 

野分「いいわよ!」

 

三人揃って下着姿となった幼い少女達が、決意を込めた顔で浴室の扉へと向かった。




エロは次ですね。
というか、結局一話だけになりそう。
すいません。

香取さんまだレベル低いですが、キャラ的にも絵的にも何か凄く癒されます。


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第×40話 「張り合い」R-15

提督の様子が気になった朝潮・若葉・野分の三人は濡れないように揃って下着姿になると、その安否を確かめる為に浴室へと入った。
辺りには湯気が立ち込め、直ぐには状況が理解できなかった。

*明らかな性的描写あり
*キャラ分けが難しかったのでセリフの前に名前あり


「大佐……いるか?」ガラッ

 

野分「うわっ、湯気が多くてあまり見えない」

 

朝潮「足元気を付けてね。あ……あれ」

 

若葉「ん?」

 

朝潮「あれ、湯船よね。人影みたいなのが見える。ほら」

 

朝潮が言った通り、彼女が指を指した方向に湯気の中に薄らと人の影が見えた。

 

野分「あ、本当だ。あの……た、大佐ー!」

 

若葉「申し訳ない、少々入浴が長く思えたので様子を見に……。問題なら直ぐにもど……ん?」

 

野分「ねぇ、あれ……」

 

湯気をかき分けて浴槽に近寄った時、若葉は異変に気付いた。

湯船に浸かっていた提督が彼女達の声に反応せず、ぐったりしていたのだ。

 

朝潮「……! 大佐!」タッ

 

野分「ねぇ、大丈夫!? 大佐どうかしたの!?」

 

若葉「待て、焦っちゃだめだ。……ん、大丈夫脈は、ある」

 

朝潮「寝てる……? ううん、これだけ私達の声が近くにあるのに、反応もないし……」

 

野分「のぼせた?」

 

若葉「多分」

 

野分「取り敢えず上げよう。このままじゃ危ないよ」

 

朝潮「そうだね。若葉、そっちの腕持って。野分は身体が出たら腰を支えて」

 

若葉「了解した」

 

野分「分かったわ」

 

ざばぁっ

 

幼い外見とは言え、駆逐艦でも艦娘。

それも三人も揃えば大の男を浴槽から引き上げる事など簡単だった。

 

「……」

 

朝潮「大佐!」

 

若葉「脱衣所に運ぼう。ひとまず身体を冷まさないと」

 

野分「そうね」

 

 

「……」

 

脱衣所のベンチに寝かされても提督はまだ意識を失ったままだった。

本人は睡眠中に意識を失ったので苦悶の表情こそなかったが、その身体はのぼせたことによってすっかり火照っていた。

朝潮は提督の体温を下げる為に野分と若葉に水タオルなどを用意させて持って来させる。

 

朝潮「タオルを身体にかけて。手足は出して、足は水面気に水を張って、そう、浸けてあげて」

 

野分「水タオルはおでこと……首?」

 

朝潮「脇の辺りも良いはず。足は……水に浸かってるから腿の辺りでいいんじゃない?」

 

野分「分かった。……あっ」

 

提督の脚にタオルを乗せようとした野分だったが、その時にあるモノに気付いて真っ赤になって顔を伏せた。

 

若葉「どうした?」

 

野分「あ、いや……うぅ……」カァ

 

朝潮「どうし……あ……」カァ

 

野分が見たモノに朝潮も気付き、揃って真っ赤になる。

若葉は二人ほど動揺していなかったが気まずそうに視線を逸らしていた。

 

若葉「……」(夢中で気付かなかった。これが大佐の……)カァァ

 

野分「……あ、ごめん。取り敢えず」

 

野分が何とか気を取り直してなるべく目を逸らしながらタオルを置こうとしたが、それを何故か若葉が突然止めた。

 

若葉「待て」

 

野分「え?」

 

若葉「そ、そこは私がやろうか?」

 

野分「え」

 

朝潮「……む」

 

野分「い、いや、いいよ。これくらいは私が」

 

朝潮「顔真っ赤だよ? 恥ずかしいなら代わるって」

 

朝潮の気遣い的な言葉に何故か野分は言葉にできない対抗心が湧いた。

それを自覚すると今度はそれが何とか自分がその役目を担いたいという欲求へと心の中で変わった。

 

野分「大丈夫よ。やれるわ」

 

若葉「その割には視線を逸らしがちだ。それでは上手く置けないだろう。私なら平気だ。ちゃんと見れる」

 

野分「み、見れるって……。わ、私だって平気よ!」

 

若葉「見るだけじゃだめだ。触れても平気じゃないと」

 

朝潮「ふ、触れ……!?」

 

若葉「私は握れる」

 

ギュッ

 

野分・朝潮「!?」

 

 

若葉「……」(お、思ったより柔らかい)カァ

 

野分(つ、掴んでる……)

 

朝潮(んなにしっかり……)

 

若葉「さ、さて……。これでタオルも置いたからここもタオルで覆……」

 

多少無理をした事によりまだ手に残る生々しい感覚に顔を真っ赤にした若葉は、陰茎を握っていた手を放すと、なんとか平静を装うと努めながら当初の目的通りタオルを置こうとした。

しかし……。

 

朝潮「待って」

 

今度は朝潮が間に入って来た。

 

若葉「え?」

 

朝潮「そ、その私も触る……りたい」

 

若葉「!? な、なにを」

 

『触りたい』最早看護とは離れた率直な朝潮の欲求に若葉は驚きと共に羞恥の色に染まる。

それは野分も同じで、若葉の時以上にゆでだこの様に顔を赤くして朝潮を非難した。

 

野分「そ、そうだよ。もうタオル置いたからいいじゃない」

 

朝潮「なんか若葉だけリードしてるみたいでズルイよ……。わ、私だってできるもん」

 

若葉「そ、そういう問題じゃ……」

 

朝潮「じゃ、野分はいいんだよね」

 

野分「えっ」

 

朝潮「私と若葉にリードされても、気にしないという事よね?」」

 

野分「え、いや、それは……」

 

若葉「あの、私はあくまで看護をする上であれくらいはできという事を示したかっただけなんだけど……」

 

自分は覚悟を示すためにあのような行動をとったに過ぎない。

それを変に曲解されている感じた若葉は焦った様子で取り繕おうとした。

 

朝潮「なら私も同じことをしても問題はないよね? 私だって大佐の事慕ってるもん。あれくらいできるって示す事くらいいいよね?」

 

若葉「む……ま、まぁ……」

 

野分「ちょ、ちょっと」アセ

 

朝潮「ということで……!」

 

ニギッ

 

野分・若葉「!」

 

朝潮「……!~~っ」(何これ、柔らかい柔らかい! こ、こんなにぐにゃぐにゃしたものだったの!?)カァァッ

 

 

それから数分後。

 

朝潮「……」ニギニギ

 

野分「ね、ねぇ。もうそろそろ離しても……」

 

野分の言葉で正気に戻った朝潮はその時にやっと自分の行いに気付いて真っ赤になって手を離した。

 

朝潮「え? あ、うん。そ、そうね。あっ……」バッ

 

若葉「どうした?」

 

朝潮「せ、せっかくだからここも……」

 

否、やはりまだ正気には戻ってなかった。

 

ポヨッ

 

若葉「な!?」

 

野分「え、ちょ!?」

 

朝潮「……あ」(こ、ここも柔らかい。ぐにゃぐにゃというよりふわふわ? あ、固いのが、これが……)ボー

 

野分「……っ、ズ、ズルいよ!」

 

野分は過剰になっていく朝潮の大胆な行動についに我慢できなくなったようだ。

完全に自分が置いて行かれたような敗北感に焦った彼女は、やや強引に朝潮の横に割って入りそして……。

 

ニギッ

 

朝潮「あ、ちょっと!」

 

野分「っ、ぁ……」(な、なにこれ……これが……)カァァッ

 

若葉(何この状況……)

 

三人の中で一番まともだった若葉は一人、この状況に困惑して呆然と立ち尽くしていた。

 

 

朝潮「……」ニギニギ

 

野分「……」ムニュムニュ

 

若葉「ね、ねぇもうそろそろよさないか?」

 

朝潮・野分「えっ」

 

若葉「私が言えたことではないが、気を失ってる人にその……手を出すのはよくない……」

 

若葉の恥じらいながらも的確な指摘に朝潮と小野は慌てて提督の身体から離れた。

 

朝潮「っ、そ、そうね!」バッ

 

野分「う、うん!」バッ

 

若葉「取り敢えず体も乾いてるみたいだし、服を着せよう」

 

朝潮「わ、分かったわ。じゃぁ私が持って」スクッ

 

ネチョッ

 

朝潮「あ……」

 

朝潮は何か水に濡れた様な凄く冷たい感触はお尻に感じた。

 

野分「? どうしたの朝潮? なんなら私が持ってこようか?」スクッ

 

ニチャッ

 

野分「あ……ぅ……」

 

朝潮に気を遣って自分が代わろうと立ち上がった野分もその瞬間に、顔を真っ赤にする。

どうやら彼女も朝潮と同じ状況の様だった。

若葉はそんな二人の様子を不思議そうに見ていた。

 

若葉「二人ともどうした?」(立ち上がったと思ったら直ぐに座り込んだ?)

 

朝潮「あ、えっと……ふ、服を取りに来る前に私達も服を着ない? ね、野分?」(もしかして野分も?)

 

野分「そ、そうだね。着よ! 大佐もいつ目を覚ますか分らないし!」(朝潮……分かったわ!)

 

若葉「あ、それもそうだな。迂闊だった。それじゃ私も……」

 

最もな意見に若葉もその場を立ち上がって二人に着いて着替えようとするが、何故かそれを朝潮が止めた。

 

朝潮「わ、若葉はちょっと大佐の看病をお願いできる?」

 

若葉「え?」

 

野分「そ、そうね! 先に私達が服を着るついでに大佐の服も持ってくるからそれまでの間お願い!」

 

若葉「それは構わないが……」

 

朝潮「ありがとう! それじゃ行こう、野分!」

 

野分「う、うん! じゃ、若葉悪いけどもう少しだけそのままで大佐の事お願いね!」

 

若葉「? あ、ああ、了解だ」(なに……?)

 

一人残された若葉はキョトンとした顔で二人の行動を疑問に思いながら、その後姿を見送った。

 

 

朝潮「……ねぇ」

 

脱衣所の若葉から見えないロッカーの前まで来たところで朝潮は野分に静かに声を掛ける。

野分はその声の雰囲気に彼女が言いたい事を一瞬で理解した。

 

野分「ん……?」

 

朝潮「野分、も……?」

 

野分「あ……うん、凄いぐっしょり……。朝潮も……?」

 

朝潮「うん、ちょっとこのままじゃ……ね」

 

スルッ……

 

朝潮・野分「うわぁ……」

 

二人は凄い事になった物を見て、羞恥の声を漏らすのだった。

 

 

一方その頃若葉は……。

 

若葉「……二人とも遅いな。なぁ、大佐……♪」ナデナデ

 

小さな膝にちょこんと提督の頭を載せて幸せそうにそれを撫でていた。




なんとか少しは早めに投稿できました。

摩耶がまだ改ニになってないのに新たな改ニがもうすぐ来るそうですね。
確か吹雪や何の改ニの話も作ってないのでネタに困らないのは嬉しいのですが……。

というか新たな海外の戦艦でシャルンホストの名前が囁かれてたりしてるみたいですが、個人的には同型の姉妹艦ティルピッツがいいですねぇ。


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第×41話 「自慢2」

ある日提督が執務をしていると、筆を執る手を止めて秘書艦のビスマルクが話し掛けてきた。
何やら少し不満げな顔で彼女は以前提督が風呂でのぼせた事について訊いてきました。


「大佐、お風呂でのぼせたって本当?」

 

「ああ、情けない話だがそうみたいだ」

 

「ちょっと、気を付けてよね。朝潮から話を聞いた時は凄く心配したんだから」

 

「そうか、すまないな。気を付ける」(問題は自分が目を覚ました時は既にベッドの上に一人だけだったという事だ。恐らくは朝潮達が助けてくれたんだろうが、それまでの記憶が全くないから実際にどういう状況だったのか今の時点で把握できていない。服も着せてもらっていたし……)

 

「もう……さ、最初から私を誘ってくれたらのぼせる事なんかなかったのに……」カァ

 

ビスマルクは恥じらい頬を仄かに朱に染めながらそんな事を言った。

対して提督はそんな彼女にあきれ気味な顔でツッコム。

 

「何でお前と一緒に入る前提なんだ。異性と一緒に入るのが当たり前と言う時点でおかしいだろ」(それにその様だと結局はこいつがのぼせていた気がする)

 

「ケッコンしてるんだからそんなの気にしなくていいじゃない」

 

「全く気にしないというのも司令官の体裁として問題あるだろう。公私混同はしない。加えて互いの合意も必須だ」

 

「むぅ……」ブスー

 

「どうしたんださっきから。何かあったのか?」

 

「別に……。久しぶりに二人きりなのに大佐があまり構ってくれないから……」

 

「二人きりなのはお前が秘書艦だからだろ」

 

「でも! それでも私が秘書艦をするのって久しぶりじゃない!」

 

「……そうだったか?」

 

「Ja!(ヤー)」

 

「そっか」

 

「え、それだけ?」

 

「まだ仕事があるしな」

 

「えぇ……」シュン

 

「お前、一応優秀なんだからこういう時くらい手伝ってくれ」

 

「手伝ったらご褒美くれる?」

 

身を乗り出してそんな事を訊いてくるビスマルク。

その目は子供の様に輝き、明らかに褒美を貰えることを確信していた。

 

「仕事に見返りを求めるな」

 

「Nein!(ナイン)」

 

「……」(ドイツ語が多いな。拗ねてるのか)

 

「ねぇ、ご・ほ・う・び!」グイグイ

 

「引っ張るな。……そうだな」

 

「くれるの!? キスね!?」

 

「いや、ウドンだ」

 

「 」

 

「なんだ?」

 

「え、いや……。う、ウドン? 何それ?」

 

「なんだ、食べた事なかったのか?」

 

「食べ……? 食べ物なの?」

 

「知識自体がなかったのか。なら余計にウドンだな。仕事が終わったら昼に作ってやる」

 

「……私、食べ物より大佐とイチャイチャしたいな」

 

「なら、俺が作ったウドンが不味かったらそうしろ」

 

「美味しくなかったら構ってくれるの!? 本当!? ホントね!?」

 

「おい、失礼だぞ。最初から不味い前提で話をするな」

 

 

それから暫くのち、提督は約束通り手作りのウドンをビスマルクに振舞った。

彼女は最初こそあまり美味しそうな目で見ていなかったが、箸の代わりにフォークを使ってその麺を口に含んだ瞬間、その顔は喜びに満ちた。

 

「……! 美味しい~♪」チュルルッ

 

「ほら」

 

「? なぁにそれ?」

 

「七味だ。まぁ掛けてみろ」シュッシュッ

 

「しちみ……? ん……!」ズズッ

 

「どうだ?」

 

「んく……!」ズッズズッ

 

(返事をしないくらい気に入ったか)

 

 

「……はぁ、美味しかったぁ♪」ゴロン

 

「食べ難い。離れろ」

 

「ん~……ふふふ~♪ やっ♪」スリスリ

 

「時々お前が本当にあのビスマルクなのかと疑うぞ」

 

「私はマリアだもん。他の真面目な子と一緒にしないで♪」

 

「まるで真面目が悪徳のような言い方をするなよ……」

 

「そうは言ってないわ。でも損なのは確かね」

 

「損って、お前……」

 

「私は大佐に甘えらえれるならこっちの方がいいの!」

 

「はぁ……」(これで総合的な能力は改造を受けた扶桑に匹敵する上に、艦隊唯一改三だからな。実力に裏付けられた自信と自負もある分、ここぞという時は期待に応える活躍を見せるから扱いが難しい)

 

「ん~♪ ね、抱き締めてよ」

 

「飯を食ってる」

 

「あ、じゃぁ私が食べてあげる!」

 

「お前が食べるのか……」

 

「あ、食べさせて欲しかった?」

 

あわよくば自分が望む展開へと運べると思ったのだろう、期待に満ちた顔でそんな事を言うビスマルクだったが、提督は特に気にした様子もなく素っ気なく返すだけだった。

 

「いや、別に。だけど普通はそういう思考になるんじゃないか?」

 

「だって本当に美味しかったんだもん」

 

「それは光栄だが、ウドンでそんなに感動したのか……」

 

「日本って本当に美味しい食べ物だけはたくさんあるわよね」

 

「まるで日本の良いところは食べ物だけみたいな言い方だな」

 

「あ、別にそういう意味じゃないんだけど、でも美味しいのは確かじゃない?」

 

「そうだな。本当は基地の食事も現地に馴染んだ料理になるところを国の計らいで日本の飯にしてもらってるからな。可能な限り食材に関しては現地の物を利用してるが、それでも必要な物は国から直接送ってもらっている。その事に感謝しないとな」

 

「その影響かはハッキリとは判らないけど、町にも日本風の食事ができるお店が増えてきたわよね」

 

「基地の建設は防衛と誘致の効果もあるからな。地元住民の同意は得られているとは言え、外国の軍施設に対する印象は普通は良くない。それにも拘わらずここに関してはそれなりに理解も得られてるみたいだ。これは本当に彼らに感謝すべきところだな」

 

「私たちマナー良いもの。問題なんて起こさないわ」フンス

 

「そういう主張を自分からしないのも奥ゆかしい印象を相手に与える為に必要なんだぞ?」

 

「う……で、でもあまりに大人しくても受け身に取られて、場所によってはたかられたりするじゃない」

 

「その辺りのバランスのとり方は難しいところだな。土地柄による理由が大きいから互いに馴染むことによって緩和するのに期待するしかないんじゃないか?」

 

「私、この前タクシーに乗った時ぼったくられそうになったの。でも一銭たりとも負けなかったわ!」フンス

 

「だからそういう事を自慢げに言うなよ……」

 

提督は子供の様な態度でそんな事を自慢するビスマルクに苦笑しながら食事を楽しんだ。




ビスマルク最近使ってないです。
まともなレベリングはせずに演習しか利用しない遊び方をしているのが原因ですがw

ですが、そんな事を1年くらい続けた甲斐があって、ようやく所有している駆逐艦のレギュラー勢が全員まとまったレベルになりそうです。
彼女たちの育成が終わったらやっと次は軽巡の番です。
重巡もそうですが、半端な状態が多い彼女たちをまとまった戦力にするのが楽しみですねぇ。


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第×42話 「ゲーム5」

久しぶりに愛宕にゲームの遊び相手を頼まれた提督。
彼女の部屋を訪れると意外な先客がいました。


「う、ぐす……」

 

「どう? いいでしょう?」

 

「う、うぅ……。こ、こんな……こんなの……」プルプル

 

「愛宕、一体どうしたんだ秋月は?」

 

部屋を訪れた時から秋月は感涙して咽っていた。

提督はその様子を怪訝で見ながら愛宕に訊く。

 

「大佐がいらっしゃる前にちょっと他のゲームを見せてたんです」

 

「他の? 秋月が泣いて……感動するような?」

 

「正直言ってアレはどっちかというと男の子受けするところなんですけど、予想通り凛々しい秋月ちゃんにはツボだったみたいです」

 

「一体何を見せたんだ?」

 

「RPGのワンシーンですよ。えと、名前はですね……」

 

「うわぁぁぁぁぁん! 大佐ぁぁぁぁ!」ダキッ

 

『ワンシーン』と聞いて何かを思い出したのだろう。

突然秋月は立ち上がると涙でぐしょぐしょになった顔のまま提督に抱き着いた。

 

「ん?」

 

「大佐……私、私……」プルプル

 

提督の胸に埋めた顔を上げて、秋月はまだ涙を滲ませながら赤くなった目で何かを言おうとしていた。

提督は内心戸惑いながらも努めて優しい声で訊く。

 

「どうした?」

 

「私、きっとサイラスに顔向けしても恥ずかしくないくらいの立派な騎士になってみせますぅぅぅぅ!」ブワッ

 

「……は?」

 

「……っ、秋月ちゃん……!」グッ

 

「ふぇぇぇぇぇん、グレンカッコよかったですぅぅ……! 特に魔王との決戦の時なんて……時なんて……はぁぁぁ……」ジワッ

 

「おい……本当に大丈夫か?」

 

提督は秋月の言っている意味がまるで解らず、いよいよ彼女の異常な様子に不安を感じ始めた。

だがそれに対して愛宕は実に嬉しそうな様子でノリ良く秋月に言葉を掛ける。

 

「秋月ちゃんいいのよ泣いても。泣いちゃうのは当然だもの」

 

「愛宕さん……」グス

 

「私は信じてるわよ。秋月ちゃんならきっとカエルに負けない騎士になれるわ!」

 

「っ、愛宕さん……!」ダキッ

 

「うんうん」ギュッ

 

「……一体なんなんだ」

 

一人置いてけぼりを食らう形となっていた提督は呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

「……なるほどな」

 

「すー……すー……」

 

泣き疲れて寝ている秋月を見ながら提督は複雑な表情をしていた。

愛宕から聞かされた理由が意外過ぎて反応に困っているのだ。

 

「まさかあそこまで感動しちゃうなんて思わなかったですよ。うふ♪」

 

「あの感じだと朝潮とかに見せても同じことになりそうだな」

 

「あ、それ解ります」

 

「それにしても懐かしいゲームを見せてたんだな」

 

提督は愛宕に訊いたゲームのタイトルに懐かしそうな顔で言った。

 

「やった事あるんですか?」

 

「子供の頃少しな。最後まではやった事無い筈だが、それでもそのキャラクターと専用のBGMは覚えてるくらいには強い印象が記憶に残っている」

 

「大佐も忘れないでいるなんて、本当にこのキャラは愛されてるんですねぇ……。流石世界一カッコイイ両生類です♪」

 

「最後だけ聞けば意味が解らないな」

 

「だからいいんですよ♪」

 

「なるほど」

 

「ですです♪」

 

「しかし、あれだな。今日は三人で遊ぶつもりだったのか? だが、秋月があの状態じゃな。ゲームを変えるか?」

 

「ん~……そうですねぇ。ボ○バー○ンにしようと思ってたんですけど、二人なら……。あ、これにします?」スッ

 

「カセットタイプか。また懐かしいな」

 

愛宕が取り出したゲームを見た提督は納得した様子だ。

どうやら彼も良く知っているゲームらしい。

 

「流石に大分時間が経ってるので記録維持の電池は切れてると思いますけど、格闘ゲームならあまり関係ないと思いまして」

 

「なるほど。しかしそれ、俺の記憶通りなら大分バランスが悪かったと思うが」

 

「だから面白いんじゃないですか。何を特にやってはいけないとか覚えてます?」

 

「ん……確か、相手が飛び道具を撃った時に突進系の技を使ってはいけない」

 

「ピンポンです♪ ダメージ倍になっちゃいますものね。他には?」

 

「……投げられてはいけない」

 

「そうですね。このゲーム投げが異常に強いですものね」

 

「……十字キー一回転の技は無理に出そうとしない」

 

「っぷ、くす……ふふふ。そうですね、私も未だに失敗する時があります」

 

「連打技をL・Rボタンで入力するのは難しい。こんなところか?」

 

「凄い、大体私と一緒です♪」

 

「他にどういうのがあったっけな」

 

「他には特定のキャラの弱パンチの連撃や足技のクリーンヒットを受けてはいけないとかありますね」

 

「ああ、確か行動不能になり易いんだったか」

 

「です。後は、うーん……極偶に勝手に必殺技やガードが発生するとか、かな」

 

「極偶に? どれくらいの頻度だ?」

 

「確か500回に一回くらいだったはずです」

 

「流石にそんな事にまで注意を払って遊ぶのは俺にはできないな」

 

 

「あ、3強キャラ使ってもいいですよ?」

 

コントローラを握って準備が整った提督に愛宕はふと言った。

提督は3強と聞いて直感であるキャラクターを選んだ。

それはゲームの主人公的位置のキャラクターで、飛び道具と対空技を持つ所謂オーソドックスなタイプだ。

 

「3強? これか?」

 

「あ、それ最弱ですよ」

 

「なに? じゃぁこのライバルもか? 同性能だから」

 

提督が指したキャラを見て愛宕はそれをあっさりと否定した。

 

「いえ、実はこのキャラの方が微妙に立ち直りがそのキャラより立ち直りが早いんです。だから最弱は大佐のキャラですね」

 

「……飛び道具と対空を完備した主人公キャラが最弱なのか……? このプロレス技を使う奴じゃないのか?」

 

「飛び道具を出した時の硬直時間が長いんですよ。対空技も地上にいる相手に当ててもダウンしないから反撃受けちゃうし。そのおヒゲさんは、まぁ特定のキャラとの組み合わせがなければ」

 

「……」

 

「あ、でも対抗手段はあるんですよ。しゃがんで弱攻撃を連打すれば動きを止めれます」

 

「そんな戦法考えた事もないな。それに今したとしても活かせられる自信がないな」

 

「まぁそんな事言わずにやってみましょうよ。私だってやるのは結構久しぶりなんですから」

 

「お前、そういえば生まれてからどれくらい経ってたるんだったか」

 

「え? うーん……3年くらいでしょうか」

 

「……」(たった3年程度でレトロゲームまで含めてここまでゲーマーになった奴に勝てる気がしないんだが……)

 

「あ、ハンデも付けていいですよ。私は星一個でいいですから」

 

「……」(対戦前からこの自信、もう無理だろ)

 

 

『ファイッ!』

 

「んー……やっぱり家庭用はアーケード版と比べてアニメーションが少ないのがあるからちょっと見栄えが気になりますね」

 

「……なに?」

 

「あ、余所見だめですよ」

 

ドグ、ゲシ! ピヨピ……ビシッ!

 

『ヨウウィン!』

 

提督の操作キャラは一瞬で愛宕にサンドバックにされた。

提督は愛宕のテクニックに言葉を失う。

 

「……」

 

「まだ諦めるのは早いですよ。さ、第二ラウンドです!」

 

『ラウンツー、ファイッ!』

 

 

それから1時間後

 

「……なぁ他のゲームにしないか?」

 

ついにゲームを初めてから勝利どころかラウンド勝利すら一回もできなかった提督は、少し疲れた顔で提案した。

それに対して愛宕は提督に勝った事より、ゲーム自体を楽しんでいるので凄く機嫌が良さそうだった。

 

「あ……ごめんなさい。つい」キラキラ

 

「今度はこれにしようシュミレーションだ」スッ

 

提督が箱から取り出したゲームを見て愛宕は、別に気にする様子もなくあっさりとその提案を受け入れた。

 

「あ、街作るのですか、いいですよ。じゃぁ1時間で人口が多い方が勝ちでどうです?」

 

「分かった」

 

「じゃ、私はパソコンのエミュレーターを使うので大佐はどうぞテレビの方を使って下さい。っ、しょっと……」

 

 

「おい、道路全部剥すのか? え、維持費0? 消防と民家を潰すのか?」

 

提督は横で自分の街の方針を決めている愛宕の選択内容を見て顔をしかめる。

 

「無い方が公害起こりませんからね。住民の意見なんて無視でOKですよ。短期決戦が目的なら維持費もそんなに気にする必要ないんです。地価の低い場所は公園にした方がまだ有意義ですし、警察と消防何て無駄ですよ」

 

「……」

 

 

またそれから一時間後。

 

「私の勝ちですね♪」

 

「まさか火事が起こってる街に負けるとは思わなかったぞ」

 

「生活圏広げましたからねぇ。一部が燃えても直ぐそっちに人が集まるので」

 

「なるほど……」(「どういうプレイの仕方だ)

 

「んむ……あれ……大佐? 愛宕さん?」コシコシ

 

「あ、秋月ちゃんおはよう」

 

「二人とも何をしてるんです……?」

 

「大佐とちょっとゲームで勝負してたの。秋月ちゃんもやる? 三人で遊べるの出すわ」

 

「あ、はい。パズルゲームとかあります? それなら私でも出来そうです」

 

「なるほどね。じゃぁ、王道のこれをやりましょう!」バッ

 

愛宕が取り出したのはソ連が作った有名なゲームの比較的新しいものだった。

決して自信がなかったわけではなかったが、提督は何故かこの時あらゆるゲームを愛する愛宕と、ゲームが不得意そうでありながらパズルは出来そうと言う秋月の言葉に言いよう無い不安を感じるのであった。

 

そして実際に提督はこの1時間後今度は二人にそのゲームで完敗するんのであった。




久しぶりに昔のゲームをやってみましたが、ロックマンXくらいしかまともにできませんでしたw
しかし下手でもステージの敵の配置やアイテムの場所は何となく覚えているんですよね。

それ思うと自分は小さい頃結構ゲームで遊んだんだなと思いますw


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第×43話 「予想」

那智と吹雪が改二の改造を受けてきました。
吹雪は新しい装備に向上した能力にご満悦の様子。
那智も満更でもないみたいで、その表情はいつもより柔らかく見えました。


「那智、吹雪、改造工程を終えて只今帰投した」

 

「大佐、ただいまです!」

 

「了解、ご苦労。どうだ二人とも、改造の具合は」

 

「バッチリです! 正直、ここまで変わるとは思ってませんでした♪」

 

「……」

 

「ん? どうした? 那智」

 

はしゃぐ吹雪に対して、那智はじっとして目を閉じて物思いに耽っている様子だった。

提督に続いてその様子に気付いた吹雪も不思議そうに声を掛ける。

 

「那智さん?」

 

「ん……ああ、すまない。ちょっと心境が感無量でな」

 

「ああ、お前は……そうだな。だろうな」

 

那智は妙高型重巡姉妹の次女でありながらその改二の改造の番が最後まで回ってこなかった。

表にこそ目立って出していなかったが、真面目で責任感の強い彼女が自分より先に強くなっていく妹達の姿をどのような心境で見ていたかは想像に難くない。

きっと喜ぶ妹達の姿を愛おしく思いながらも、自身は姉としての立ち位置に複雑な思いを抱いていただろう。

それだけに今回の改造は那智にとって特別な思いがあった。

 

「那智さんおめでとうございます!」

 

「ありがとう。だが吹雪、それを言うなら私もだ。改二の改造おめでとう吹雪」ポン

 

「あ……えへへ♪ ありがとうございます!」

 

「二人とも良かったな。今日は特別に休みをやろう。その新しい身体をよく慣らすといい」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「感謝する、大佐」

 

「気にするな。それじゃぁ下がっていいぞ」

 

「はい! 失礼しました」

 

「ん……」ピクッ

 

「あれ? 那智さん出ないんですか?」

 

部屋を出ようとした時、那智がその場を動かなかったので吹雪が訊いた。

 

「ああ、悪い。ちょっと大佐に用がな」

 

「そうですか。それじゃぁ私はお先に失礼しますね。大佐、失礼しました」

 

バタン

 

 

「……」

 

「なんだ? どうした?」

 

一人残った那智に間をおいて提督は声を掛けた。

だが那智はそれには答えず、無言で静かに提督へと近づいた。

 

「……」ツカツカ

 

「ん?」

 

「その……な?」ジッ

 

ちょっと困った顔をして恥じらう様子で、那智は言い難そうに口ごもりながら言った。

 

「……?」(なんだ?)

 

「……。さ、さっき、私がした事をだな……」

 

「お前がした事?」

 

「吹雪を……褒めただろ? その……だから、だな……」カァ

 

「ん……」(ああ、そういう事か)

 

ポン

 

「あ……」

 

那智は提督の掌を頭に感じた。

体温が温かく、まだ撫でられてもないのに言葉にできない幸福感が全身を緩やかに包んでいくのを那智は感じた。

 

「おめでとう、那智。新しいお前の力、期待しているぞ」ナデナデ

 

「……は……ぁ……」ウットリ

 

「……そんなに嬉しいか?」

 

「ああ、なんというか、本当に……。ふふふ、良いものだな♪」

 

「そうか」

 

「ん、もういい。大佐、ありがとう。おかげでなんだかここに来た直後より更に充実した気分だ」

 

「このくらいでか、恐縮だな」

 

「そんな事ない。本当に嬉しかったんだ。……ふ、素直になるというのは良いものだな」

 

「まぁ無理して偽るよりかはいいかもな」

 

「その通りだ。では大佐、私もこれで失礼する」

 

「ああ」

 

「……また」チラッ

 

ドアノブに手を掛けたと思った時、那智はそれから動きを止めて顔だけ小く動かして提督の方を見た。

 

「ん?」

 

「また何か成果を挙げたら褒めてくれるか?」ジッ

 

「そんな事いちいち確認する事はない。希望されなくても俺からするさ」

 

「そうか……ふふ、ではな」

 

那智は提督の答えに満足すると、今度こそ足取り軽く、部屋を出ていった。

 

バタン

 

 

「ふむ……」

 

提督はその後姿を見送って暫く経った後、ふと机の電話の内線のボタンを押した。

 

ピッ

 

「叢雲か? ああ、そうだ。もう来ていいぞ。例の資料も頼む」

 

 

 

ガチャ

 

「失礼します。持ってきたわよ、大佐」

 

「ああ、ありがとう。渡してくれ」

 

「はい」

 

「ん、どれ……ふむ……」

 

提督は叢雲が持ってきたレジュメの束を受け取り、早速目を通し始めた。

それは、まだ叢雲を含む一部の者にしか伝えていない今朝本部から通達があったばかりのある資料だった。

 

「次の改二予定?」

 

まだ内容を見てもいないというのに、提督のレジュメに目を通す雰囲気から何となくそれを察した叢雲が訊く。

その予想は正解だったようで、提督は特に驚いた様子もなくあっさりと肯定した。

 

「ああ、そうだ」

 

「ここのとこ多いわよね」

 

「まぁ今までのペースと比べたらな。だが、本来なら戦力の充実を考えるならもう少しペースが速くても問題はないと思うんだがな」

 

「……本部が出し惜しみをしてるとでも?」

 

提督の発言から叢雲は更に予想した、彼の考えを。

聞きようによっては本部に対して不信感を持っているともとれるこの叢雲の予想は、またしても提督の考えと一緒だったらしい。

彼は先程と同じように特に焦る事もなくそのまま受け止めて自分の考えを話し始めた。

 

「未だに艦娘の改造には対象となる娘の史実や縁に沿った内容のものばかりだからな」

 

「それを重視するのは寧ろ普通じゃない? ただでさえ私たちは自然からかかけ離れた存在なんだから。強化に超常的な力が必要ならそうなるのは必然だと思うけど。理屈じゃないのよ」

 

「結果を見て納得するしかないと言いたいのか? まぁそれもそうだが……」

 

「何が気になるの?」

 

「今の世の中『人間用の兵器』に至っては既に様々な物がコンピュータによって機能の自動化が図られている。戦車しかり、航空機しかり、潜水艦、艦艇しかりだ」

 

「それは、まぁ……」

 

「特に航空機に至っては今では単葉機からジェット機、武器も熱源感知ミサイルといった具合に大戦時からは想像できない程進化しているわけだ」

 

「……」

 

「その技術が艦娘にも使われていないと言い切れるか?」

 

提督のこの問い掛けに、叢雲は彼の目を真っ直ぐ見ながら、今までの話を聞いている間に自分の中である程度まとめた見解を述べ始めた。

 

「もし大佐の言う通りなら。本部の戦力は別次元ね。そして私達は必要に迫られない限り、未だに移動手段に至るまで近代化改修を施した旧式装備の使用を強いられている……」

 

「その意味するところは?」

 

「悪い意味ならいくらでも浮かぶけど、敢えて難しい良い方の可能性を考えるなら……」

 

「なら?」

 

「……囮?」

 

叢雲の素直な答えに、提督は満足げに微笑む。

 

「流石だな。俺もそう思ってた。良い意味で敵にとって俺たちが囮という事だ。それはつまり……」

 

「主に私たちとしかぶつかっていない深海棲艦は私たちの戦力こそが海軍の基本レベルだと判断する……。つまり、本部にとってそれは敵が形骸に等しい戦力になるという事……」

 

「敢えて勢力の均衡を保ち、無理に攻め入らない態度をとっている本部の意向も頷けわるけだ。絶対に負けないのなら下手に刺激して厄介になる可能性を高める事もない」

 

「私たちの戦力強化がゆっくりなのは敵を欺く為でもあり、勢力の均衡を保つ為に微妙に調整しているってわけね」

 

「あくまで予想だがな」

 

そう、あくまで仮説。

あまり本気ととられても困るので、提督は大げさに肩をすくめて見せる。

だが叢雲は提督のその予想からなんだか嫌な事を知ったという風にちょっと不機嫌そうな顔で溜息を付きながら言った。

 

「はぁ、私達は知らず知らずに間接的に本部に鍛え上げられているわけね」

 

「皮肉が効いてるな。だが、それは本部もだ」

 

「どういう事?」

 

「過去に何回か本部に直接攻撃を仕掛けた勢力もあるが、それを撃退した戦力は恐らく本気ではない」

 

「ああ、私たちが相手をしている敵のレベルが極端に上がってないものね」

 

「そういう事だ。必要に迫られれば本気を出すだろうが、それはその時点で必勝は確定。敵にとっては回避できない死の宣告も同じだから、情報が洩れないという結果は変わらないだろうな」

 

「……なるほどね。理解はできるけど趣味が悪いわね」

 

「あくまで俺の個人的な見解だからな?」

 

「分かってるわよ。でも」

 

「ん?」

 

「もし、大佐の予想が当たっているなら、例えば本部の大和とかが本気を出したらどれくらい強いのかしらね」

 

叢雲のこの疑問に、大佐は笑いながら答えた。

 

「それはちょっと俺も想像ができないな。それに、多分大和を引き合いに出す必要もないくらい、駆逐艦も俺たちの想像を超えるくらい強いだろう。レールガンを撃ったりするかもしれないぞ」

 

「……なんか嫌な駆逐艦ね。古臭いのが好きみたい聞こえるかもしれないけど、私の趣味じゃないわね」

 

「そうか? 俺はお前がレールガンを撃っている様を結構簡単に想像できるぞ?」

 

「……それどういう意味?」ジトッ

 

「怒ると怖いという事だ」

 

「ちょっと……」

 

「はは、冗談だ」

 

「目はそう言ってなかったように見えたけどね?」

 

「ん……」スッ

 

提督は叢雲のそれ以上の追及には敢えて答えず、その代わりに黙ってテーブルにある物をだした。

それはどこに忍ばせていたのか、食べかけのチョコレートだった。

叢雲はその交渉材料としては一見魅力が乏しいそれを見て、悪戯っぽく笑いながら言った。

彼女は気付いていたか定かではなかったが、もうその時点で叢雲の顔からは不機嫌そうな表情は消えていた。

 

「……買収?」

 

「いらないか?」

 

「……っ、ふふっ、仕方ないわね」

 

叢雲は敢えて誰かの食べかけの所から口を着け、美味しそうにチョコをかじった。




ホワイトデーネタなのか、改二ネタなのかよく分からない話でしたね。

ま、大戦より未来、現代が部隊の話ならジェット機くらいあって当たり前だろうなと言う作中の筆者の独自の世界観の話でもあったわけですが。



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第×44話 「嫉妬2」

遠征に出していた艦隊が帰投しました。
秘書艦の日向が提督の事務を手伝いながら情報を確認して提督に報告します。


「艦隊が帰ってきた。全艦健在だといいな」

 

「……なんだ不意に不吉な。そう難しくない遠征任務だったろ? 伊勢達なら問題ないだろう」

 

帰還報告には違いないが、提督は後の言葉が余計にな感じがした。

日向を見るとどことなく不機嫌そうにむくれているように見えた。

 

「……」ムス

 

「どうした?」

 

「……伊勢が」

 

「ん?」

 

「伊勢が、成長限界に達した。レベルは99だ」

 

「ああ」

 

「するのか? 伊勢と?」

 

「ケッコンか? 本人が望めば、その意思を示せばな」

 

「……そう」

 

提督の答えを聞いて伊勢は少し寂しそうに視線を下げる。

それを見た提督は気遣うように日向に言った。

 

「心配か?」

 

「え?」

 

「いや、妹として姉が俺とケッコンする事が」

 

「あ、いやそうじゃなくてな」(なんでそう考えるかな……)

 

「それじゃあどうしたんだ?」(姉に先を越されるのに嫉妬……? いや、それは日向らしくないよな)

 

「……恥ずかしい話だが、伊勢が大佐と先にk」

 

日向が視線を逸らして恥ずかしそうにその真意を告げようとした時だった。

不意にノックも無しにドアが開けられ、そこから遠征から帰って来た満面の笑顔の伊勢が現われた。

 

 

ガチャ!

 

「大佐ぁ! ねぇ、なったよ99、きゅーじゅーきゅー! これでケッコンできるよね? ね? 早くしよ!」

 

「……」

 

「 」パクパク

 

「ん? どうしたの大佐? 何かあ……て、日向。いたんだ」

 

「……今日の秘書艦は私だからな」ムスッ

 

「あ、そうだったよね。ごめんごめん、ちょっと浮かれちゃって」テヘ

 

「……」(これが天然だから恐ろしい)

 

「……むぅ」ムスー

 

提督は呆れ、日向は明らかに嫉妬により不機嫌そうに眼を細める。

伊勢もそのちょっと気まずい雰囲気に流石に気づき、場を取り繕う様に頭を掻きながら聞いた。

 

「え? 二人ともどうしたの……?」

 

 

 

「あー、なるほどねー」

 

「そうだったのか」

 

提督と伊勢は、日向から胸の裡を聞き、それぞれお異なる態度でその理由を理解した。

それに対して日向は、明らかに提督ではなく日向の今までの態度にまだ機嫌を損ねているようで、彼女と視線を合いそうになると直ぐに横を向くと言った仕草をしていた。

 

「……」プイッ

 

「ちょ、そんなにヘソ曲げないでよー。悪気はなかったんだからぁ、ごめんね?」

 

「……別に」

 

「まぁ、お前もはしゃぎ過ぎだったな。それで、伊勢。その態度から察するにケッコン、するんだな?」

 

「え? あ、うん!」

 

提督の問いに伊勢は直ぐに即答し、日向はその様子を半目で見つめる。

 

「……」ジー

 

「……なぁ」

 

日向の視線を感じていた提督は、伊勢にある提案をする事にした。

 

「うん?」

 

「日向と同じレベルになるまでケッコンは待ってやったらどうだ?」

 

「え?」

 

「……っ」ピクン

 

「仲良くケッコン……あ、悪い。日向、お前がケッコンを望んでいる前提で話してしまった」

 

「い、いやそれは別にいいんだ。私もどちらかというとk」

 

「あ、もしかして日向は大佐とのケッコンはあまり考えていない感じ? なら、私が先にしても問題ないよね?」

 

「え」

 

「……」(ワザと言っているなこいつ」

 

顔を凍りつかせる日向にそんな事を言う伊勢を提督は呆れた目で見て思った。

明らかに目が笑っている。

普段クールで感情的なところを見せない妹が動揺するのを可愛さ半分でからかっているようだった。

 

「ね? 日向?」

 

「いや、だから私は別に考えてないというわけじゃ」

 

「あ、“別に”っていう事はそう乗り気でもないって事じゃない?」

 

「 」

 

日向は今度は目を見開き、口を一文字にして黙り込む。

こころなしか瞳が潤んいるようだ。

 

「……」(日向のあんな顔初めて見たぞ。追い詰められて泣きそうだ)

 

「ねー?」(恥ずかしくてハッキリ言えないのは姉としてちょっとマイナスよ、日向。自分らしくもいいけど、ここは素直なあなたが見たいの)

 

「……っ」ジワッ

 

「おい」

 

「大佐、めっ」

 

流石に見ていられなくなった提督を、まだ悪戯気分が抜けない言葉で伊勢は諌めようとする。

だが、悪戯タイムはゲンコツによって早々に終わりを告げられた。

 

「……調子に乗るな」

 

スコンッ

 

「あうっ!?」

 

 

 

そして数分ほど経った執務室には、ソファに座った提督に子供の様に抱き着いてその胸で泣く日向と、その様子を床で正座しながら羨ましそうに見る伊勢、という構図ができあがっていた。

 

「……ぐす」ヒシッ

 

「……はぁ」ナデナデ

 

「ごめんなさい……調子に乗り過ぎました」(日向いいなぁ……)

 

「本当に反省しるか?」

 

「してる! あ、ちが、してます!」ビシッ

 

「だ、そうだが日向。どうする?」

 

「……伊勢なんて嫌いだ」プイッ

 

「がーん! えー、そんなぁ。ねー日向許してよー」

 

「……」ヒシッ

 

「……まだ機嫌が悪いようだな。というか日向、お前らしくないぞ。もういいだろ、はなr」

 

「……拒否する」ヒシッ

 

「えー!」(そんな時に素直になってどうするのよ日向ー!?)

 

「……離れないと伊勢と先にケッコンするぞ」(汚い手だが、ここは利用してもいいだろう)

 

「日向離れちゃだめ!」

 

「おい」

 

態度を豹変させて事態を悪化させる事を言う伊勢に提督がツッコミを入れているところで、日向がボソリと言った。

 

「……別にしたらいい」

 

「え」

 

「なに?」

 

「……確かに先を越されるのは悔しと思った。でも後からケッコンすれば先に知った伊勢の味より良いものを準備できるというメリットがあるからな」

 

日向の“味”という言葉に顔を赤くしながら伊勢は直ぐに反論する。

 

「わ、私の味って……。て、ちょっと日向? あなた、私よりあなたの方が大佐に好いてもらえる自信があるって言うの?」

 

「伊勢が普段からちょっとそそっかしい分、私は落ち着いていたからな。私はその間、大佐を観察していろいろ考えていたのさ」

 

「……」(観察されていたのか俺は)

 

「ちょ、なによそれ! ズルイじゃない!」

 

「別にズルくはないさ。私は落ち着いて大佐の仕事を手伝いながら常にその事を頭の中で計画していただけなんだし。むしろ用意周到と褒められるべきだろう」

 

「そういうのを口に出さずに一人で進めちゃうのがズルイって言ってるの! 姉の私にくらい教えてくれたってよかったじゃん! で、なに? どんな情報を持ってるの?」

 

「伊勢には言わない」プイッ

 

「えーー!」

 

「伊勢うるさいぞ」

 

「でも、大佐! その話が本当なら日向は大佐のどんな秘密を知ってるか分らないのよ?」

 

「秘密って……。伊勢、人聞きの悪い事言わないでよ」

 

伊勢の言葉に気分を害した顔で日向はそれを否定する。

そして提督も少しうんざりした顔で彼女の言葉を補足した。

 

「俺は別にお前たちに知られて困る秘密なんて今のところない。日向が言っているのは日々の人間観察の上でどう行動したら良いかを研究していたという事だろう」

 

「……流石大佐だな」ギュッ

 

「ちょ! け、ケッコンできるのは私なのよ! なに今日向が甘えちゃってるのさぁ!」

 

「知らん。どうせケッコンするんだろう? なら先に甘えさせてもらってもいいじゃないか」

 

「えーー!」ブーブー

 

「……」(煩い……。こいつら、二人揃うとこんなに煩かったのか……)

 

伊勢は元より、日向の意外な一面に新鮮な驚きを感じながら提督はそんな事を思うのであった。




てなわけで伊勢と結婚しました。
初めて間もない頃は日向の方がレベルが上だったんですけどね、どうしてこうなったんだろう。

ま、とにかくケッコンしてない戦艦はこれで日向と大和だけとなりました。
がんばろう。


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第×45話 「エイプリルフール」

昼休み、提督と一緒に執務室で昼食後の余暇を楽しいでいた長門がふと言った。


「大佐、四月だな」

 

「ん? ああそうだな」

 

「四月と言えば?」

 

「うん? ……エイプリルフールとでも言いたいのか?」

 

「正解だ。珍しく西洋文化に気付いたな」

 

「いくら俺でもそれくらい分かるぞ。単にそういうイベントに淡白なだけだ」

 

「まぁそういう事にしておいてやろう」フフン

 

「何でそんなに偉そうなんだ。で、なんだ? 馬鹿し合いでもしたいのか?」

 

「そんなところだ。ちょっとゲームでもしないか?」

 

「休み時間だから構わないが、具体的にどんな?」

 

「お互い嘘や冗談を言って相手を驚かせたりウケさせた方が勝ちだ」

 

「冗談はともかく、嘘をつくの前提を対戦相手に言っている時点でそのゲームは成立しないと思うが」

 

「まぁ細かい事言うな。先ずは私からいくぞ」

 

「杜撰だな……。いいぞ、こい」

 

「……こほん、提督、長門だ」キリッ

 

「ほう……」(出会ったばかりの、今よりずっと真面目に見えた頃の真似か)

 

「貴方の艦隊に迎えて頂いた事に感謝する。我が忠義と誇りに懸けて、この基地を守り抜いてみせよう」

 

「……」

 

「……どうだ?」

 

「ああ、本当に……どうしてこうなった」

 

「おい」

 

「冗談だ」

 

「そう思ってないだろう」

 

「鋭いな」

 

「むぅ……。まぁ、一応ウケたと思ってよさそうだな」

 

「ああ、割と良かったぞ」

 

「ふふ、先ずは一歩リードと言ったところか。では次は大佐の番だな」

 

「分かった。そうだな……。よし、長門」

 

「なんだ?」

 

「俺は近く、違う基地へ異動が決まった」

 

「はは、そうかそれは急だな」(ベタ過ぎだな。まぁ大佐ならこんなものか)

 

「ああ、何分本当に急でな。話すのが遅れてすまない」

 

「うんうん、達者でな。大佐がいなくなっても私たちは新しい提督に誠心誠意仕えて平和を守っていくから安心してくれ」

 

「長門……。頼もしい言葉だな。それなら俺も安心してここを去れるというものだ」

 

「ああ、安心して行くがいい……って、いい加減芝居もこれくらいにしな……」

 

長門がそう言って提督との芝居を切り上げようとした時だった。

提督はおもむろに引き出しから封筒を一つ取り出し、それを机の上に置いた。

 

 

ポスッ

 

「ん? なんだそれ?」

 

「本部からの辞令書だ。今朝届いてな」

 

「 」

 

「いや、本当に急で俺も驚いてな。本当なら朝礼の時点で皆には話さないといけなかったんだが」

 

驚きで言葉を失った長門は気付いた。

提督が出した封筒に開け口を封をしていたとあるモノに。

それは既に開封する際に切られていたが、赤い塊にとても見覚えのある紋章だった。

それは……長門が目を見開く。

 

「……ぁ」(封筒に海軍の封蝋が……これは本物だ……!)

 

「長門、これからこの基地の事をたの――」

 

「私も行く」

 

「え?」

 

「私も行くからな。絶対」

 

「いや、待て長門。一緒に行くってそれは……」(ん? 茶番に乗ってくれてるのか? にしては目が……)

 

提督の思っていた通りそれは長門のゲームに乗った彼の茶番だった。

提督が出した封筒は、彼が提督としてこの基地への赴任の指令を下された時にもらった初めての辞令書だった。

彼はそれを軍人としての一歩を踏み出した思い出の品として大事にとっており、常にそれを机の引き出しに閉まって身近に置いていたのだ。

それは理由が無い限り特に人に見せる物でもなかったので、今この時点においてその辞令書の存在を知っている者は基地には皆無であった。

そしてそれが理由で今、提督との思惑と長門の気持ちとの差となって、彼女が本当に提督の嘘を信じてしまっているという事を彼はまだ気付いていなかった。

 

「やだ。絶対に、絶対に行くからな!」ドンッ

 

「……長門?」(これは演技ではない……?)

 

「その辞令書には大佐一人で来いとは書いてないだろう? なら、気心の知れた秘書艦となり得る私が同伴するのは至極当然であり、必要な事だ」

 

「おい……ま――」

 

「待たない。これは絶対だ」

 

「……」

 

提督を見つめるその顔は、普段おちゃらけた態度を取る長門が久しぶりに見せた本当に真面目なものだった。

提督はその瞳に見つめられながらこれはマズイとようやくその時になって思い、なんとか誤解を解く事にした。

 

「長門、いいか。ちょっと話を聞け。これはなじょ――」

 

「連れて行ってくれるなら何でもする。いや、今までも大佐の為なら何でもするつもりだったが、今私が言っている意味はそれより重いぞ? 悪行は絶対にしないが、背徳的な淫行も、大佐が望むなら何時如何なる時も応えてみせる」

 

「……」

 

長門は静かに暴走している。

実力行使に出ずにそれを意志として示している分、言葉によって誤解を解くのは容易ではない。

そう判断した提督は、チラリと窓から差し込む日の光を見た。

白昼、自分からこういう事をするのは好まざることだが、致し方あるまい。

 

「長門……」

 

「ん、なんだ? 私は意志は変えないぞって……え?」

 

チュ

 

提督は言葉少なく長門の頭を自分の顔へ近付けると、そのまま優しく口づけをした。

 

「ん……ふ……。たい……?」

 

突然の提督らしからぬ行為に長門は珍しく動揺し、仄かに赤く染まった顔で提督を見る。

 

「長門……お前に言わなければならない事がある」

 

提督はその気を逃さずに静かに語り掛ける。

対する長門はキスの効果もあって、すっかり女の顔で提督の顔を見つめながら続く言葉を待っていた。

 

「……」

 

「いいか? あれはな、冗談だ」

 

「……」

 

「……」

 

「……え?」

 

ゆうに一分は時が止まったような顔をしていた。

提督の言葉を理解した長門は、ポカンとした顔で聞き返す。

 

「冗談だったんだ。封筒の中身も確認せずにお前があの嘘を信じるとは俺の予想外だったんだ」

 

「……な」

 

提督の話を聞いてようやくそこで長門の目に理性が戻って来た。

最初は動揺してぽかんとした顔をしていただけだったが、提督のその言葉の後には直ぐに恥ずかしそうな顔になり、彼女は思わず顔を伏せた。

 

「その……悪い」

 

提督はバツが悪そうにそう謝るしかなかった。

 

「……恥ずかしい」

 

顔を手で隠しながら長門はぽつりと言った。

 

「……すまん」

 

「いや、恥ずかしいのはな大佐」

 

「ん?」

 

「大佐の嘘を信じてしまったのもそうだが、久しぶりに情を交え合う行為以外で、素を見せてしまった事だ」

 

「……お前」

 

提督はその答えに少し呆れた顔をした。

 

「ああ……恥ずかしい……」プルプル

 

「じゃぁ今までのおちゃらけた態度は演技だったのか」

 

「いや、そういうわけじゃないが。あれはあれで楽しんでいたし」

 

「……なるほど」

 

「自分の意思で切り返していた時ならともかく、こういう不意打ちは効くものだな」

 

「……そうか」

 

「……なんか、癖になりそうだ」ボソ

 

「おい」

 

「……ふふ、冗談だ」

 

そこでやっと顔を上げた長門の顔は、僅かに涙が滲んでいたが、もういつもの顔で本当に心から面白そうに笑っていた。




仕事が棚卸で、もう次の出勤まであまり時間が無いというのに、思いついたおかげで勢いのまま投稿とあいなりました。

こういう長門も偶には良いですね。

さぁしご……の、前に少し寝よう。


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第×46話 「不安」

提督が廊下を歩いていると、先ほど遠征からの帰投の報告をしていた初春と綾波がいた。
二人は何やら戸惑った顔をして誰かの部屋の前で、途方に暮れている様子だった。


「叢雲ぉ!叢雲どうしたのじゃ!?」ドンドン

 

「どうしたんだ?」

 

「おお、大佐。その、叢雲が、の……」

 

「あいつがどうした?」

 

「改造を受けて基地に帰ってきてから部屋から出てこなくなっちゃったんです」

 

「なに?」

 

「今日の遠征は叢雲も一緒に行くはずだったんじゃが……」

 

「体調が優れないとかで初春が代わってくれたんですが……」

 

「妾達が遠征に出ている間も部屋から出ていないと聞いての。心配になったのじゃ」

 

「遠征の交代の報告は受けている。が……叢雲の改造に何か問題でも?」

 

改造後に部屋から出なくなった、この報告から提督は彼女の改造に何か問題があった可能性を見出した。

だが、それに対して初春と綾波は、それは否とかぶりを振る。

 

「その様な電文はまだ確認しておらぬな」

 

「私も大佐は見落としてないと思います」

 

「ふむ……」

 

「これ、叢雲。いい加減に出てこないか。体調は優れないのも解るが、床に伏せ続けるのも身体に障るぞ?」

 

事態の拉致が開かない事に少々呆れた叢雲が再び叢雲の部屋と扉を叩く。

すると扉に隔たれた部屋の奥からやっとそれに反応した彼女の声が返ってきた。

 

『心配しないで! ただちょっと……。えっと……と、とにかく大丈夫だから一人にして!』

 

「ふむ……」

 

「らしくないな」

 

「私もそう思います」

 

「改造を受けて早々閉じ篭ったと聞く。解せんの」

 

「あいつにとっては今回の改二の改造は単なる改造じゃなかったはずだ。なのにあの状態とは……単純に何か気に入らなかったか?」

 

「妾の時はそうでもなかったがの。結構気に入っておるが」

 

「綾波もです。特に不満とかはないのですが……」

 

「ふむ……」

 

 

「話は聞いたで!」

 

叢雲の悩みが理解できず、困りはてっていた提督達の背後で不意に声がした。

三人が声がした方を振り向くとそこには……。

 

「む?」「ん?」「え?」

 

「お待たせ! 龍驤や!」

 

「「「……」」」

 

「さて、どうするか」

 

「困ったのぉ」

 

「そうですねぇ……」

 

「ちょっ!?」ガーン

 

 

ガシッ

 

「ん?」

 

提督が袖を掴まれる感覚に視線を下げると、そこには無視されたことにショックを受けて半分涙目となった龍驤の顔があった。

 

「無視せんといてぇ!」ブワァッ

 

「……ややこしくするなよ?」

 

「うち見ただけでそれはちょっと酷いんちゃう!?」

 

「主には申し訳ないが、それは仕方のない事だと妾は思うがの」

 

「あ、あはは……」(日頃の行いって大切なんだな……)

 

「3人とも堪忍してぇな! うち、やるときはやるで! 時と場合くらいちゃんと選ぶわ!」

 

「分かった、だから騒ぐな。で、どうするつもりだ?」

 

「成功したら褒めてくれる?」

 

「うん?」

 

「褒めてぇな?」

 

「……言われなくても役に立てば褒める。大丈夫なんだな?」

 

「もちや!」パァッ

 

「ふふ、お手並み拝見といこうかの」

 

「……」(餅?)

 

 

「んー……こほん。あー、叢雲? ちょっと聞いてぇな」

 

三人の信任を得た龍驤は早速叢雲の扉の前に立ち、自身に見た顔で穏やかに話し掛け始めた。

 

『……何よ?』

 

「うちは叢雲が何を気にしてるのかめっちゃ解るで?」

 

『……』

 

「性能やない、武装でもない。ほんなら改造受けて気になるのは一つや」

 

『……』

 

「姿やろ?」

 

 

「……」

 

「ふむ……なるほど、の」

 

「えっ」

 

龍驤の推測を聞いた後ろの三人は、提督は特に表情は変えず、初春は感心したように顎をなぞり、綾波は純粋に驚いた顔をした。

 

 

『……』

 

「正解?」

 

『……まぁね』

 

「やっぱなぁ、叢雲“さん”この基地で一番の古株やもんね。大佐と過ごした時間が長い分、その姿が変われば、そりゃ気にもなるわ」

 

『……』

 

「恥ずかしいのやのうて、自信? んや、不安なんやろ?」

 

『……』

 

「新しく変わった自分の姿、大佐が受け入れてくれるか不安なんやな?」

 

『……ちょっとだけよ。ただ……ね、踏ん切りがつ――』

 

龍驤の的を射た推測に、それを肯定し自分の気持ちを吐露しようとした叢雲だたったが、それは続いて出てきた龍驤の言葉に途中で遮られた。

 

「うんうん解るで! そりゃ改造受ければ期待してまうもんね」

 

『え?』

 

「改造受けたら、誰だって前より大きなるって期待するもんや。それがいざ受けてみて変わってなかったら、そりゃ不安にもなるわ」

 

『え、ちょ……なにを……?』

 

「恥かしがらんでええよ? うちも仲間やから! 不安なんやろ? 改造受けても乳が大きな――」

 

バン!

 

「っ、ちっ……がうわよ!!」

 

的を射ていたと思われた推測だったが、実は見事に外れていた龍驤が導き出していた答えに、叢雲は堪らずに断定される前に自分から扉を開いてその姿を現した。

 

「あ」「ほう」「……」

 

「ちょっと龍驤さんあなたねぇ! 私はあなたが思ってるほど自分の身体にコンプレック……あ……」

 

「なかなか華やかでないかえ?」

 

「可愛いです!」

 

「悪くないと思うぞ? それを気にしてたのか?」

 

「……っ」ボッ

 

姿を皆に見られた叢雲は羞恥で顔を一瞬で真っ赤にするとその場にしゃがみこむ。

 

 

「あっ」

 

「恥かしがることはないと思うがのぉ」

 

「そんなに気になるか?」

 

「……だ、だって変じゃない!? か、髪だってなんか前より伸びたっていうか。か、身体だってところどころに、肉が……」

 

「え?」

 

「む?」

 

「髪、肉? ん……?」

 

しゃがんだ自分の身体に確認するような提督の視線を叢雲は感じて、悲鳴じみた羞恥の声をあげながら更に丸くなろうとする。

 

「み、見ないで!」カァッ

 

「いや、普通じゃないか?」

 

「そうじゃの。寧ろ前が少々華奢に思えるくらじゃが?」

 

「そうですよ! 叢雲凄く可愛いよ!」

 

「えぇ……? でも初春達と比べると……」

 

「んん? なんじゃぁ? 妾達の体躯が貧相じゃと言うのかえ?」ニヤニヤ

 

「え、ええ!? そ、そんな……あ、あぅ」ショボン

 

「あ、そ、そういう意味じゃ……」アセアセ

 

「ふふ、そうじゃのぉ。まぁ少なくとも胸はあまり妾達は変わらんと思うが……。どうかの? た・い・さ・殿?」

 

「俺に振るな。とにかく俺はこれといってお前にそこまで違和感は感じていない」

 

「あ……ほ、本当?」

 

「嘘を言っていると思うか?」

 

「ううん」フルフル

 

「なら言った通りだ。良い感じ……いや、可愛いぞ」

 

「大佐……。ありがとっ」ギュッ

 

ようやく不安を払拭し、その嬉しさから自分に抱きついてきた叢雲を、提督は優しく抱き返しながら片手でその頭を撫でる。

 

「長い間よく待ったな」

 

 

「あ、あのー、お取り込みのところ悪いんやけどうちは? なんか忘れられてへん?」

 

穏やかな雰囲気の中、龍驤が遠慮しがちに入ってきた。

自分の存在が半ば忘れられている事に焦った彼女は、提督に約束してもらった報酬をまだ貰っていなかったのだ。

 

「まぁ予測とは違ったとは言え、実際に結果を出したしな。良くやったぞ」

 

「そいだけ……?」

 

物欲しそうに自分を見る龍驤に提督は少々困った顔をした。

 

「……」(今日は叢雲を優先した方が良いと思うところだが)

 

クイッ

 

「ん?」

 

本日2回めの袖を引かれる感覚に提督が目を向けると、そこには優しい目をして微笑む叢雲の顔があった。

彼女はそっと耳打ちするように提督の耳元に顔を寄せると周囲に聞こえないように小さな声でこう言った。

 

「私は構わないわよ。もう十分満たさされたから」コショ

 

 

「ふむ……龍驤」

 

「な、なに?」

 

「……」スッ

 

「あっ」

 

龍驤は愛用の帽子を提督に脱がされたと思ったその時、次の瞬間には何も遮る物がなくなった頭を直接彼に優しく撫でられていた。

 

「ありがとう。助かった」

 

「う、うん!」

 

頭全体に感じる提督の手のひらの感触と暖かさに、龍驤は心から嬉しそうな顔をした。

 

 

「いいなぁ……」

 

「ま、ここは我慢じゃ」

 

「ふふ、そうね」




「暖かくなってきました」「4月からは~」詐欺ですね。
申し訳ないです。

まだ続ける気は勿論あるのですが……このいい加減さどうにかしないといけないですね。


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第×47話 「淫酒」R-15

“今晩一緒に飲みたい”

その日、演習から戻って来た雲龍が唐突に提督に酒の相手を頼んできた。
特に断る理由もなかったので提督は二つ返事でその誘いを承諾したが、その際に雲龍からもう一つお願いをされた。

“できるなら今日は二人っきりで”

この言葉を聞いて提督は彼女の意図を考える為に、自分の身の周りにある物からそのヒントを得ようと一瞬の間に探った。
演習の結果報告書をチラリと見る。
判定はS、紙面には勝利に至るまでの過程も細かく記載されており、そこには勝利の結果、能力が上昇し練度が上がった者の名前も記されていた。

『雲龍 レベル99 初期到達最高練度達成』

それを目で認めた瞬間、提督は全てを察した。

*明らかな性的描写あり


「ん……く……ふぅ……。はぁ、おいし……♪」

 

「大丈夫か? 飲むペースが大分早い気がするが」

 

「だって美味しいんだもの」

 

グラスをかたむけながら酒気によってほんのり染まって嬉しそうな顔をする雲龍に、提督はその様子から確認する様に言った。

 

「……それは同意と見ていいんだな?」

 

「流石に察してるのね。うん、そう……。私、大佐とケッコンしたい」

 

「分かった。それが嬉しくて酒が美味い?」

 

「勿論よ。でもこのお酒も本当に美味しいわよ」コクコク

 

「チョコレートリキュールなんだが、かなり気に入ったみたいだな」

 

「甘いお酒は特に好きじゃなかったけど、こういうお菓子みたいなのもあるのね。ん……うん、これ、大好き」

 

「そうか、それは良かった」ゴクッ

 

「大佐は何を飲んでるの?」

 

「ん? ああ、これはウォッカだ」

 

提督は片手に持っていた雲龍より小さなグラスを軽く揺らした。

透明の容器の中で同じく透明の液体がちゃぷんと音を立てる。

雲龍はそれを興味がありそうな目で見ながら訊いた。

 

「美味しい?」

 

「酒自体は悪くない代物のはずだが、実は飲むのは初めてなんだ」

 

「え? 試し飲みしてるの?」

 

「知り合いに慣れれば美味いと聞いてな」

 

「ふぅん……そう。でもその様子だとまだイマイチって感じね?」

 

「ん……ふぅ、まぁそうだな。まだ味よりアルコールを強く感じる」

 

「……慣れないお酒を無理に飲むのはあまり良くないわよ。私の……飲む?」

 

「ん? それじゃぁ口直しに貰おうか。グラスを」

 

「……」プチッ

 

プルンッ

 

雲龍はおもむろに服の前をはだけかと思うと、普段から服の上からでも十分存在感を放っていたものを晒け出した。

 

 

「……グラスより、こっちで飲んで欲しい、かな」

 

雲龍はそう言うと、グラスに入った酒をとろりと下に垂らす。

それを見て彼女が何を求めているのか解らない程、提督は流石に鈍くはなかった。

 

「……飲んで」

 

「……では」

 

カプッ

 

「んぁっ」ピクン

 

「ちゅぅ、ぺろ……」

 

「ん……あ……はっ……。あ、んっ」ピクッ

 

「っぁは、ふぅ……」

 

僅かな時間でそれを舐め取った提督に雲龍は潤んだ瞳で聴いた。

 

「美味しかった?」

 

「ああ」

 

「そう、良かった。ねぇ、今度は大佐のを飲みたいな……」

 

「これか?」

 

雲龍の要望に提督は自分が持ったウォッカが入った自分のグラスを揺らす。

だがどうやらそれは違ったようで、雲龍が小さく笑いながらチョコレートリキュールが入っている自分の方のグラスを揺らしながら言った。

 

「ううん、あまり強いのは今この場で飲んでも楽しめる自信ないから、やっぱりこれで」チャプン

 

「分かった。……という事は」

 

「うん……。私も、大佐の……私も味わってみたい……」

 

 

「ちゅぅ……んむ、ぺろ……」

 

程なくして二人はベッドの上で身体を重ねていた。

元々それなりに感じる質だったのか、それとも雲龍の技術が優れていたのかは定かではなかったが、提督はその刺激に小さく息を漏らす。

 

「っ……」

 

「んむぅ……っはぁ……。ふぅ……ね、どう?」

 

「……まさか男でもここまで感じるとはな」

 

「うふふ、そうね。ここを愛されて気持ち良いのは女だけじゃなないのよ。ん、ちゅっ……」

 

「っ、おい……もう無いぞ」

 

「あ、本当ね。……じゃぁ次行きましょうか?」

 

「……ああ」

 

 

スルッ……。

 

「ちょっと、恥ずかしい……わね」

 

「ちょっとか?」

 

「好きな人に見られてるんだから嬉しさもあるの」

 

「そうか……」

 

「ね、たくさん愛して……」

 

雲龍はそう言うと再びベッドに仰向けになると提督を迎えるように手を広げた。

 

「……普段からは想像も付かない格好だな」

 

「んっ……恥ずかし……けど、大佐になら見られて嬉しいかも……」

 

「酒の勢いというのもある。素面に戻ったら恥ずかしさで暫く立ち直れないかもしれないぞ?」

 

「えぇ……? ふふ、そう……ね。じゃぁちょっと私がそこまでお酒の力に頼ってないってところ見せてあげましょうか」

 

 

雲龍はそう言うと、傍に置いてあったまだ酒が残っているグラスを持ち上げた。

提督は彼女の行動を半ば予測できていたが、それでも念の為確かめるように一応効いた。

 

「雲龍? 何を……?」

 

「ふふ、見てて……」

 

トロー……。

 

「……」

 

「ふ……あぁ……っ。く……やっぱりこれもお酒ね、何か沁みる感じ……」

 

「基本的に口以外の内部機関にアルコールは触れさせない方がいい。それ以上はやめておけ」

 

「はぁ……あぁ、そう……ね。なんかあ……つい、し……チョコレートこれ、入って……るからこのままじゃいろいろ問題かも……」

 

「……これは完全に取り除かないとな」

 

提督の言葉を聞いて雲龍は彼が自分の誘いを理解して乗った事を理解した。

その瞬間、快感と歓喜が入り混じった何とも言えない感情がゾクりとした感覚と共に彼女の身体を走り抜け、感電した様にぶるっと震えた。

 

「! そう、そうね。だからお願い……。私を大佐のにする前にもう一度私で……」

 

「……これが酒の勢いに飲まれてない証拠か? どう見ても逆だと思うが……ぺろ」

 

「……っ! あぁ……っ♪ ん……ち、違うわよ。さ、流石にここま……ではっ、お酒の力借り……ても、あ! 」

 

「うん? ちゅるっ」

 

「ふぁぁぁぁ! はぁ、はぁ、はぁ……じ、自分のい……ひぃが無いと……て、出来ないと思わ……ない?」ビクンビクッ

 

「……まぁ」(これだと、逆に酒に飲まれたらどこまでエスカレートするのか少し怖いな)

 

提督はそんな事を考えながら雲龍の誘いに乗り、できる限り彼女を悦ばせようと努めた。

そんな調子で暫くの間彼女を攻め、もう何回か絶頂へと導いた思われる頃、雲龍が焦点の合わない目で息も切れ切れに提督を見つめながら言ってきた。

 

「ね……はぁ……はぁ、待って」

 

「……ちゅ……ん、すまんやりすぎたか」

 

「ふっ……っあぁ! ち、違うの……そ……その、もう、準備は……いいんだけど、そのま……えに、大佐のを……」

 

そう言う雲龍の目は提督のとある個所に熱い視線を注いでいた。

そこはもう十分に自己主張と言えるまでに大勢が整っており、提督に可愛がられながらさり気にそれを意識していた雲龍はある事を考えていた。

 

“私も提督にしてあげたい”

 

「お願い、本番のま……えに、大佐のお……」

 

「分かった。それ以上言うな」

 

何故かそれ以上雲龍の言葉を聞く事に言いようのない危うさを感じた提督は、彼女の口を塞ぐ替わりに態勢を変えて彼女の要望が通り易い恰好をした。

 

「あ……これが、た……の……。……んんっ」

 

「んく……こ……はっ……」ビクッ

 

そのあまりにも強いがっつき様から来る快感の波は半端ではなく、提督は本能のままに攻める雲龍の技に意識を危うく持って行かれそうになる。

 

「はぁ、はぁ……あ……んむっ……ぺろっ。大佐……たいさぁ……」

 

雲龍の愛情は爆発しており、その行為の広がりはとどまる事を知らない様子だった。

 

これはいけない。

このままでは本番を迎える前に何もできなくなってしまう。

 

そう感じた提督は半ば強引に態勢を変える事にした。

 

「あ……」

 

「すまないが、あのままでは果てそうでな。だが最初に果てるなら……」

 

ズ……。

 

一瞬残念そうな顔をしていた雲龍だったが、提督のその意図を理解すると再び嬉しそうに手を広げて更に彼の身体が自分に近付くのを迎えんとした。

 

「うん、来て……。私の……最初になって……。大佐……!」

 

「雲龍……いくぞ」

 

ズン!

 

「あ……♪」

 

既に暴走しそうなどの快感で痛覚が半ば麻痺していた雲龍には、初めてを捧げた痛みは殆ど感じられず、その替わりに自分の中に提督を迎える事ができたという至上の喜びのみが広がって行った。




雲龍とケッコンしました。
後久しぶりにかなりエロいの書きたくなったので、ついでにエロくしました。
ケッコン艦が増えてきました。
やっぱりレベルが100以上あると頼もしい気がします。


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第×48話 「姫遊び」R-15

最上と鈴谷は部屋で暇そうに過ごしていた。
最上は相変わらず壁を背にして本を、一方鈴谷は特に何をするでもなくゴロゴロしていた。

*明らかな性的な描写あり


「暑いー」

 

「暑いねー」

 

「何でクーラーつけないないのー?」

 

「鈴谷が直ぐ寒くなるからってつけななかったんじゃないか」

 

「えー、そうだっけー?」

 

「そうだよ」

 

「そっかー、じゃぁつけようかなぁ、暑いし」

 

「つけるの?」

 

「んー……。やっぱやめたー」

 

「なにそれ」

 

「モガミンはつけなくて平気ー?」

 

「そんなに動かなければ大丈夫だよ」

 

「そんなもんかなぁ」

 

「そんだもんだよ」

 

「……」

 

「……」

 

 

「だー、もうあっつーい! パンツ脱ごっ、蒸れる!」ポイッ

 

「また大佐に怒られるよ?」

 

「今日は自分で直接演習の指揮をするとか言ってたから、そうそう顔を合わす事ないよー」

 

「そうだっけ? んー、確かにそれなら会う可能性は少ないかも」

 

「最上も脱ぐ?」

 

「んー……そうだね。確かにそれなら今日会う可能性はそんなにないかもしれないしね」

 

「やったーなっかまー♪ ね、脱がせていい?」

 

「別に自分で脱げるんだけど……」

 

「なんか、ぬ・が・せ・た・い・の♪ ね、お願い」

 

「……はぁ、好きにすればいいじゃん」

 

「やっほーぅ。モガミン超サンキュー♪」

 

「はいはい。ん、早くしてね」

 

そう言うと最上はショーツを脱がし易いように曲げていた足を前に伸ばした。

 

 

「はいはーい、それじゃ鈴谷がエスコートしちゃいまーす♪」

 

「パンツを脱がせるエスコートなんて聞いた事ないよ……」

 

鈴谷は嬉しそうに最上のスカートの中に手を入れると、ショーツの端を掴んでするりとそれを脱がした。

 

「はーい、脱げましたー!」

 

「おめでとー」

 

「お、モガミン今日は青かぁ」

 

「まぁね」

 

「へぇ、特に汚れてないんだね」

 

「ちょっと……何見てるの」

 

脱がしたばかりの淡いブルーのショーツを広げてクロッチの部分を見る鈴谷に、最上は流石にちょっと嫌そうな顔をした。

 

「いや、汚れとかないかなぁって」

 

「一応かなり気を遣ってるつもりだからね。そうそう無い筈だよ」

 

「流石モガミーン」

 

「そういう鈴谷はどうなのさ」

 

「え? わたしー?」

 

「さっき脱いだやつ見せてよ」

 

「やーん、モガミンのエッチー」

 

「人のパンツ見ていてよく言うよ。早く」

 

「えっ、ほ、ホントに見るの……?」

 

鈴谷は最上がその要求を直ぐに撮り下げると思っていたらしく、予想に反してあくまで自分の下着を見せるように求めてきた事に幾分動揺した顔を見せた。

 

「何? もしかして汚れ……」

 

「ちょ、ちょっと待って……!」

 

ゴソゴソ

 

「……ふぅ」

 

「……」(これは油断してる時はあるって事かな)

 

「はいっ」

 

暫くして鈴谷は脱いだばかりの下着を最上に手渡してきた。

最上はそれを受け取り彼女がしていたにそれをジッと眺める。

 

「ん、ふーん……」ジー

 

「な、ないっしょ?」

 

「……あ」

 

「! な、なに!?」ビクッ

 

「……鈴谷はピンクかぁ」

 

「っ……ちょ、ちょっとぉ! そういうのやめてよねー!」

 

「なに? 自信なかったの?」

 

「そ、そういうわけじゃないけどさ。普段はあまり意識してないからちょっと心配で……」

 

「ふーん」

 

ビローン

 

「ちょっ!?」(そんなに広げたらもしかしたら……!)

 

最上が手にしていた下着を引き伸ばして確認し始めたので、鈴谷は予想外の行動に完全に慌てる。

 

「……ないね」

 

「……っ、はぁ」ガクッ

 

「ま、女の下着は特に目立ち易いから普通は気を遣うよね」

 

「まぁそうなんだけどさ。なんか改めてそう言われると鈴谷が普段気を遣ってないように聞こえるんですけどー?」

 

「そんなつもりはないよ? 気を付けているつもりでも実は、って事なんてざらだしね。そういう意味で鈴谷はちゃんとしてるって事が証明されたじゃないか」

 

「……それ、モガミンも当てはまってるよね」

 

「当然」

 

「はぁ、何か嬉しくないなぁ勝ったわけでもないしー」

 

「逆に負けてたら汚れてるって事じゃないか。そんな事態、断じて僕は招くつもりはないね」

 

「す、凄い女子力」

 

「鈴谷は一つ誤解している」

 

「え?」

 

「もしかして鈴谷は世間一般的に男性から“女はきれいな身体をしている”という幻想を抱かれている事を知らないのかな?」

 

「え……げ、幻想?」

 

「僕や鈴谷みたいに普段から何気に細かい所を気にしている人には関係がない話なんだけどね」

 

「う、うん」

 

「でも女も基本人間、一般的な男性の様に外見にあまり気を遣わないでいると、予想以上に粗が目立つものなのさ」

 

「あ、粗?」

 

「うん。まぁ、粗というのはちょっと言い過ぎなところもあると思うけど、女は基本外見が重視される分それが例え男性と同程度の粗でも、それが男性と比べて異常に目立って見えてしまうものなんだよ?」

 

「……はぁ」

 

鈴谷は想像した。

外見がお淑やかに見える代表の一人である扶桑に、もし男性によくあるような鼻毛の処理漏れが彼女に認められた場合を。

 

「……っ」

 

危うく笑いそうになったのを何とか止めた。

例え想像でもそれを笑ったりすると、超常的な力でそれを知覚した妹の山城に粛清される気がしたからだ。

滅多にある事ではないが、最上の言う事は実によく解った。

 

「ま、ある意味世の女性はそんな男の妄想の被害者とも言えるかもね。勿論、そのお蔭で大多数の女性が気を遣って、見栄えだけは良く見える様にしているという結果に繋がってるとも言えると思うけど」

 

 

「……」ピクッ

 

違う部屋で扶桑と一緒に提督に頼まれた資料を探していた山城は、ふと探していたその手を止めた。

 

「山城?」

 

「あ、いえごめんなさい。何か空が曇って見えた気がして……」

 

「? 今日は晴天よ」

 

「そうですよね、ごめんなさい。ちょっと呆けてたみたいです」

 

そう、窓から覗く眼前の空は蒼鮮やかな晴天。

それはまるで自分の姉の心の様に晴れやかできれいだった。

そんな青空が曇って汚れたように見えた気がしたのは、きっと何かの間違いだろう。

 

空を眺めながら山城は、そんな自分の気のせいだという思いが実は少し離れた場所で的中している事など流石に知る由もなかった。

 

 

「……」

 

「んー……、ひまー」ゴロゴロ

 

「……」

 

「……あ」ピコーン

 

ゴソゴソ……

 

「……ねぇ」

 

「うん?」

 

「何してるの?」

 

「モガミンのスカートの中覗いてるー」

 

鈴谷の言う通り彼女は最上のスカートの中にすっぱりと頭を入れてその中身を覗いていた。

 

「何で?」

 

「暇だから」

 

「暇だから鈴谷は人のスカートの中を覗くの?」

 

「んー、別に暇だから必ずってわけでもないしー。別にいいじゃん減るもんじゃないし」

 

「自尊心が削られてる気もするけど」

 

「前にクマノンとかにも見せてたでしょ?」

 

「あれは見せてたのであって、今は故意に覗かれてるんだけど。しかも至近距離で」

 

「えー、だめー?」

 

「別に見たって面白くないでしょ。鈴谷と同じモノなんだし」

 

「いやまぁ見た目は確かにね。モガミンもわたしと同じでツルツルだし」

 

「……ん、ちょっと見ながら話さないでよ。息が当たってこそばゆい」

 

「あ、ごめん。ちょっと匂い嗅いでた」

 

「……は?」

 

「だからぁ、モガミンの匂いをー――」

 

「そんな事一言聞けば分かるよ。なんでそんな事するの。汗臭いでしょ」

 

珍しく目に見えて赤面して恥ずかしそうにする最上だったが、鈴谷は彼女の言葉を気にする事もなく更に顔を近づけてその匂いを嗅ぐ。

 

「んー……すー」

 

「……っ、ちょっ……と」

 

「確かに汗の臭いはするけど、モガミン本当にきれいにしてるからそれ以外の匂いは何もしないよー?」

 

「だからってそんなとこ……。普通しないよ?」

 

「モガミンはきれいだからいいのー、普通ふつー」スーハー

 

「……」プルッ

 

 

「ね」

 

「……なに?」

 

「触っていい?」

 

「なんで?」

 

「なんかプニプニして凄く触ってみたい!」

 

「それもこの前熊野でやってなかったっけ?」

 

「ん? そうだっけ?」

 

「どうだったかな」

 

「ねー、おねがーい」

 

「だから目の前で話さ……あーもう、いいよ」

 

「やったー! モガミンマジ天使ー♪」

 

「何が面白くてそんな事するかな……」

 

「まぁまぁ気にしないでーって、さてぇ……」

 

ぷにっ

 

「ん……」ピクッ

 

人差し指と親指で敏感な場所を挟まれて最上は思わず小さな声を漏らす。

鈴谷はその感触が大層気に入ったようで、その後何度もプニプニと掴んでは離しを繰り返してその感触を楽しむ。

 

「ほーほー、これは良い触り心地ー♪」プニプニ

 

「……」(本に集中し難い……)

 

 

「ねー?」

 

「今度は何?」

 

「何か指に冷たい感触が?」

 

「何で疑問形なの。そんなの触ってる本人が一番判るでしょ?」

 

「んー、湿って……あ、凄い、糸みたい♪」クチュッ

 

「あ……ん……」

 

「モガミン感じてるー?」

 

「そこまでして感じない女はいないでしょ。判り切った事聞かないでよ」

 

「えへへ、モガミンのそういうドライなとこわたし大好きー♪ えいえいっ」クチュ

 

「は……ぁ……。んぅ……」

 

「あ、モガミンこれってアレじゃない? 真っ赤ぁ」

 

「ちょっと、それは本当に触らないでよ。本に集中できなくなるから」

 

「あ、うんそれ解る。これ気持ち良いけど刺激も凄いもんね」

 

「できればそれ以外も触るのをやめて欲しいんだけどね」

 

「うん、それ無理ー。てりゃっ」チュプン

 

「あっ……もう……て、え? もしかして鈴谷今……」

 

「あ……ごめん?」

 

今まで聞いた中で明らかに違う少し冷めた最上の声に鈴谷はびくりと反応して慌てた様子でスカートから手を引いた。

その手の指は僅かに濡れて外の光を反射して光っていた。

 

「絶対に破らないでね?」

 

「あ、うん。それは絶対にしない」

 

「……じゃぁいいよ」

 

操を大佐の為に立てるなど確認するだけ野暮というものだった。

それより中途半端な状態でやめられるのも消化不良でもやもやしてしまう。

そんな気分になるくらいならと、最上は続いて弄るのを鈴谷に許した。

 

「ほんとごめんね? ちょっと軽くだから」チュク

 

「ん……ふ……」

 

「~♪」

 

ペロンッ

 

「あっ」

 

「どうしたの?」

 

「モガミンどうしてわたしのスカート捲ったの? お尻丸見えなんだけど」

 

寝そべって最上に悪戯してい鈴谷のスカートは背中まで捲り上げられ、下着は穿いていなかったので女の小振りで色白い可愛らしい尻は当然丸見えだった。

 

「もし破ったら、一突きで鈴谷のも破る為だよ?」

 

「なにそれ、怖っ」

 

「……鈴谷気付いてないみたいだけど君も結構濡れてるから、これなら一瞬で破れるからね」

 

「あ……いやぁー……。うん、はい、気を付けます。だからマジでやらないでね?」

 

「約束を守るならね」

 

「うん、それはマジで分かってるって」

 

 

「おー」

 

「ん……?」

 

「モガミン凄いねぇ、ほら、こんなに……」

 

「それは鈴谷が弄ってるからでしょ」

 

「えーでもこれはー、うわぁ♪」ニチャ

 

「人のであまり遊ばないでよ」

 

「いやー、なんか自分のテクでここまで濡れてくれると嬉しくて」

 

「いや、それ単に鈴谷が弄り過ぎなだけだから」

 

「えー? ちょっとそれ心外だなー」プクー

 

「心外も何も事実だし」

 

「むー……あ」ピコーン

 

「今度はなにを……」

 

ペロッ

 

「~~っ、ちょ」

 

生暖かくぬめっとした感触を最上は感じた。

ビリっとした刺激が身体を貫き、最上はそれが鈴谷によるものだと瞬時に理解した。

スカートから顔を出した鈴谷は小さな舌をぺろっと出して悪戯っぽく笑っていた。

 

「えへへ。やっちゃった」

 

「やっちゃったって……鈴谷ぁ」

 

「もうここまで来たらこれくらいいいじゃない」

 

「何でしたの? そんなところじゃないでしょ?」

 

「そう? ヤる時は結構すると思うよ?」

 

「処女が何言ってるのさ」

 

「む、モガミンだってちょっとは想像してみなよ。もし大佐とそういう事することになって実際にこんなことをされたらって」

 

「そんな……大佐にそんな事……。汚いよ」

 

「だから汚くないって鈴谷言ってるじゃん。きっと大佐だってモガミンのここを見ればこうやって可愛がりたくなると思うなぁ」

 

「……可愛がるのがそれと繋がるの?」

 

「今のももさっきまでのも全部含めて愛情表現みたいなもんだよ」

 

「ふ、ふーん……」

 

「というわけでもっとしていい?」

 

「改めて率直に願いされると凄く恥ずかしいんだけど……。美味しいの?」

 

「んにゃ、ちょっとしょっぱい感じはするけど、殆ど味はしなかったよ。ネットで見た事あるけど、無味無臭はその人が健康な証拠なんだって」

 

「でも美味しくな……ああ、愛情表現だっけ」

 

「そ、だからモガミンも今のうちに鈴谷で慣れておきなよ?」

 

「まぁ、そういう事なら」

 

「流石モガミン話が分かるぅ! それじゃ許可も貰った事だし改めて……ん」ペロ

 

「あ……」ピクン

 

 

部屋の扉の隙間からその光景を眺める二つの瞳があった。

覗いていたのは三隈と熊野、二人は顔を真っ赤にしてその様子を固唾をのんで今まで見ていたのだ。

 

「「……」」

 

気付かれない様に静かに扉を閉めて少し離れた廊下まで二人は来ると、先ず熊野が頭を抱えてしゃがみながら言った。

それに続いて三隈が心配そうな口調で彼女に話し掛ける。

 

「な、何をしてますのー!? あの二人はー!」

 

「く、熊野さんこれは由々しき事態ですわよ!」

 

「え?」

 

「もしこのまま私達があの部屋に住み続けたら、知らない間に大佐の為に後生大事に守り通してきたしょ、処女を……あの方たちに奪われてしまうかもしれませんわ!」

 

「そ、そんな大佐の為にお守りしてきた操が!」

 

熊野は三隈の懸念を聞いて赤いんだか青いんだかよく分からない顔色で身を守る様に自分の身体を抱きしめる。

 

「熊野さん、ここは一時身の安全が期待できる場所に避難した方が賢明ではないでしょうか?」

 

「た、確かに。で、でも私にそんな安全な場所なんて心当たりが……」

 

「大丈夫ですわ。この私に一つだけ心当たりがありますの!」

 

「そ、それは本当ですの?」パァッ

 

 

 

「……なるほどな。それであたしらのとこに来たってワケか」

 

「はい! その辺の殿方より殿方らしい麻耶さんなら頼りになると思いましたの!」

 

「三隈さんこれは名案ですわ! 雄々しい麻耶さんと同じ部屋なら確かに私達の貞操に危険が及ぶ可能性はありませんわ!」

 

「……よく分かった。取り敢えずてめー達はそこに正座な?」

 

摩耶は目を輝かせて自分を頼って来た二人に対して、額に青筋を立たせながら隣で苦笑する鳥海から彼女の慈悲によって釘バッドからハリセンに変わったお仕置き様の道具を受け取るのだった。




何故か自分の中では百合的カップリングは「最上×鈴谷」がデフォなんですよね。
鈴谷と熊野はキャラが良く立ってるのでその陰に隠れがちですが、三隈の、熊野より天然さを感じるお嬢様や、最上の少しドライでマイペースな性格も結構好きです。


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第×49話 「ハグ」

U-511は改造を受けて日本式潜水艦、呂500になりました。
ユー改めローを自称する様になった彼女は、改造の報告をする為に執務室に向かいました。


「ユーちゃん改めローちゃんです! はい!」

 

「やっと見た目と中身が一致するようになったな」

 

「ふふっ、ホント。見た目はもう完全にこっちの艦になったわよね」

 

「むぅ……瑞鶴さん、ロウちゃんそんなに前はおかしかったですか?」

 

「えぇ? あはは、そうね。わたしは前の方も良かったと思うな。なんか大人しそうに見えて凄く人懐っこいところのギャップが良かったし」

 

「それ本当ですか? えへへ、それは嬉しいです!danke ですって♪」ダキッ

 

「きゃっ、もう甘えん坊さんねぇ♪」ナデナデ

 

「え、そうですか? Knuddel(クヌドエツ)おかしいですか?」

 

「え? クヌ、何? 大佐……?」

 

「俺に聞くなよ。多分雰囲気から抱擁の事だと思うが、俺もその言葉は聞いたことないな。ロー、抱擁は Umarmung(ウムアルン)じゃないのか?」

 

「……」(あ、ドイツ語が全く解らないわけじゃないんだ。でもよくそんな単語知ってるわね)

 

「あっ、えっとね。ドイツの人達はアメリカの人達みたいにあんまり人の前でえっと……は、ハグ? はしないの。でも手紙やチャットとかでは結構愛情表現みたいな言葉は使われてて、さっきのはその時に使うんだよって」

 

「ほう、スラングのようなものなのかもしれないな。あっちでは常用されててもこっちでは殆ど知らない辺り、辞書にも載ってはなさそうだ」

 

「うん、そうかも。というわけで大佐にもクヌドエーツ!」ダキッ

 

「……」ポスッ

 

「ふぁ?」

 

(あ、キャッチされた)

 

「あ、あれ? 大佐、どうしてローちゃんを高い高いするんですか?」

 

「あまりにも勢いがあったからついな。軽くて助かった」ヒョイ

 

「きゃっ……わぁ、あはは♪」

 

(なにあれ、もう完全に父親に遊んでもらってる子供みたいじゃん)

 

「ま、挨拶はこんなもんでいいだろう。これからも宜しくなロー」

 

そう言うと提督は抱え上げていたローをゆっくり下ろすと、その頭を撫でながら改めて彼女に歓迎の言葉を贈った。

ローは嬉しそうに撫でられながら笑顔で直ぐに言葉を返す。

 

「はい! ローちゃんをこれからもよろしくです! ローちゃん、たっくさん頑張って大佐のお役に立ってみせますって♪」

 

「ああ、期待しているぞ」

 

 

「本当に明るくて元気な子よね」

 

「そうだな。元気過ぎてこっちが疲れるくらいだ」

 

「ぷっ、なにそれぇ、あはは。大佐まだそんな歳じゃないでしょ?」

 

「ふっ、まぁな。さて、仕事を……ん? どうした瑞鶴?」

 

提督がふと先程まで普通に話していた瑞鶴が何か意味ありげにこちらを見つめている事に気付いた。

その様子は特に緊張感があるような張りつめたものではなく、何か行動をするのを迷っているような感じで、彼女は何やら口元に手を当ててそわそわしていた。

 

「……手洗いか?」

 

「えっ、ちょ、ち、違うわよ! えっと、何て言うかえーと……」(ローがハグしてるの見たらわたしもしてみたくなっちゃった、なんて恥ずかしくて言い難いようぉ……)

 

「? まぁ、準備ができたら手伝ってくれよ。俺は先に手を……」

 

ギュッ

 

「……」

 

「!?」

 

不意に後ろから現れて提督を抱きしめる加賀に、提督は慣れた様子で沈黙し、逆に瑞鶴はあまりにも突然の事にギョッとした。

 

「……何してる加賀?」

 

「ふふ、隙ありです」

 

「そういう事言ってるんじゃない。一体いつの間……いや、それはもういい。考えるだけ無駄な気がするしな」

 

「では続きをして構わないという事ですね?」

 

加賀はそう言うと後ろから抱き付いている姿勢から提督の前に回って更に接吻ができそうな態勢をとろうとする。

が、当然提督は止めた。

 

「やめろ。お前を暫く秘書艦の候補から外すぞ」

 

「それは絶対嫌です。ごめんなさい、失礼しました」

 

「瑞鶴さん、これくらいどうって事ないですよ」ヒソ

 

「!」ビクッ

 

加賀は去り際に瑞鶴にそう耳打ちすると意外にもすんなり部屋を出ていった。

 

「……なんだったんだ」

 

提督は呆れた顔で溜息をつくが、彼女の不意打ち的な行動は既に珍しいものではなかったので、軽くかぶりだけ振って気を取り直すと再び執務を再開する為に筆を執った。

瑞鶴がそんな提督の袖を掴んだのは、ちょうどその時だった。

 

ギュッ

 

「ん?」

 

「……ぁ」

 

「なんだ?」

 

「あ、えっと……」

 

「ああ、さっきの事か。どうした? 結局俺に用だったのか?」

 

「あ、うん。え、えっとね」

 

「ああ」

 

「わ、わたしもその……大佐にギュッとして欲しい、な?」

 

「……」

 

(やった! 言えた!)ドキドキ

 

「してやったら満足して仕事に専念できるな?」

 

最早理屈を言ってはぐらかす気も起らない辺り、俺も甘くなったな。

提督は瑞鶴の願いを受け入れながら胸の裡で自分の事をそう考えていた。

 

「う、うん! ただちょっとわたしもやってみたかっただけだから! それしてもらったらもう凄く満足よ!」パァッ

 

「分かった。じゃぁ軽く……て、胸当てまで外すのか?」

 

「え? あ、うん。なんかせっかくだし、駄目?」

 

「いや、そうしたいなら別にいいが」

 

「ありがと♪」

 

 

スル……トスッ

 

「よしっ!」

 

瑞鶴は上半身に着けていた胸当てを外して着物だけになると、気合を入れる様に力の入った目で軽く自分に声を掛ける。

提督はその様子を珍しものを見る様な目で見ていた。

 

「……」(ただのハグでここまで気合を入れる奴は初めて見たな)

 

「じゃ、じゃぁいい?」

 

「ああ」

 

「それじゃ……」

 

ギュッ

 

「ん……」

 

「……瑞鶴」

 

それは正確にはハグではなかった。

ハグは挨拶代わりに軽く抱き合うのが一般的に認知されているものだが、瑞鶴のそれは抱き合う姿勢ではなく、彼を自分の胸元に抱き締めるものだった。

それはどちらかというと愛情の篭った抱擁に近く、提督は瑞鶴の胸の柔らかさと仄かに甘く感じる匂いに包まれながら、その雰囲気に流されない様に気を入れ直さなければならなかった。

 

「あ……なに大佐? あんまり喋らないでよくすぐったい……」

 

瑞鶴は嬉しそうに顔をほんのり朱に染めながら提督の言葉に反応する。

 

「そう感じるのは自分の所為だろ。これはハグじゃないぞ」

 

「ん……ごめん、どっちかというとこうしたかったの」

 

「……」

 

提督はその言葉を聞くと、それ以上は何も言わず大人しくなった。

彼女がその事をちゃんと認識して、これが自分の望みだとはっきり言う以上、苦言を呈するのも野暮に感じたからだ。

 

「あー、早くわたしも大佐とケッコンしたいなー」

 

「少なくとも翔鶴よりかは先にできるだろ……んぐ」

 

「こらっ、そういう結果だけ求めてるわけじゃないのよ。えいっ」

 

瑞鶴はそんな雰囲気を考えない事をいう提督を懲らしめるように更に窒息しない程度に自分の胸に彼の頭を抱きしめるのだった。




遅れましたが、呂500になりました。
ユーもいいけど、こっちも良いですね。
ただ、本当に彼女は独特の言葉遣いなのでキャラとして動かす時にちょっと苦労します。


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第×50話 「衣装」

提督と最上が過ごすとある昼休み。
共に昼食を食べ終えて暇そうにしていた最上がふと、ある質問をしてきた。


「僕さ、大佐にずーっと前から聞きたかった事があるんだ」

 

「ん? なんだ改めて」

 

「大佐ってさぁ、僕の格好見て何か思うところない?」

 

「思うところ?」

 

「うん」

 

「……」ジッ

 

提督は最上に問われて彼女の姿を眺めた。

だが特に変わったところは見つけられず、提督は暫く見ている内に思案気に顎と撫でる。

最上はそんな提督の様子を見て何を思ったのか彼の目の前でスカートを両手でたくし上げた。

淡い緑色の清楚な下着が提督の目に飛び込む。

 

「はい」バサッ

 

「何故スカートを捲る」

 

「ヒント」

 

「それが?」

 

提督は鳩が豆鉄砲を食らったような目で最上を見ながら訊いた。

 

「うん」

 

「その行為がか? それとも下着がか?」

 

「どっちも」

 

「どっちも?」

 

「うん」

 

「……取り敢えずもうスカートは元に戻せ」

 

「はーい」スッ

 

 

「……」

 

「そんなに悩む?」

 

暫くして最上は10分ほど経っても未だに答えが思いつかないらしい提督に痺れを切らしたのか、少々不満げに腕を組みながら彼に訊いてきた。

提督はバツが悪そうにこう答えるしかなかった。

 

「悪いが全く見当が付かないんだが」

 

「ええ、うっそぉ」

 

「さっきのはそんなに大きなヒントだったのか?」

 

「うん。もうかなり核心だったよ」

 

「ふむ……もしかして」

 

ようやく正解を聞けそうだ。

最上は内心そんなに期待していなかったが、やっと彼から答らしい言葉を貰える事に少し嬉しそうな顔をする。

が、提督の答えはやはりというか彼女の予想通り少々方向違いのものだった。

 

「あ、分かった?」

 

「恥じらいを持っていない?」

 

「……どうしてそういう答えになるかな」

 

最上は提督の答えを聞いてついに明らかに顔も不満げな表情をする。

 

「事実だろ」

 

「いや、持ってるし。流石に僕だってパンツまで脱いだら恥ずかしいし」

 

「俺はさっきの行為の事を言ってるんだがな。というかそこまでいかないと羞恥心を感じないと言う方が異常だろ」

 

「そう?」

 

「ああ」

 

「ふーん、まぁいいや。で、結局分からない? 降参?」

 

「降参する前に一つ確認したいんだが」

 

「なに?」

 

「降参したらペナルティなんかないだろうな」

 

「あっ」(その考え良いね!)

 

「……」(しまった墓穴を掘ったか)

 

「えっとね、それはあるよ」

 

「……遊びの範囲を出ない程度だろうな?」

 

「そうだね……うーん」

 

「元々決まってなかったのならない方向で頼む」

 

「あ、ちょっと待ってよ。ある、あるから。えっとね、えっとー」

 

「やはりないようだな」

 

珍しく焦る様子を見せる最上に提督は立場的優位を確信する。

ならばこのまま押し切るべし。

そう行動を決定した彼はそのまま攻勢に転じようとするが、最上はそれを悟ったらしく、提督を押し止める様に手を前に突き出しながら言った。

 

「あるって! あ、うん。じゃ、降参したら僕の言う事何でも聞く」

 

「応用が効きすぎて遊びの範囲を超えるか否かも本人の差配次第だぞそれ。ダメだ却下だ」

 

「そんなに無理言わないから、お願い!」

 

「……思いついてないんだな?」

 

「ん……認めたらこの案を受け入れてくれる?」

 

本当に最上にしては珍しい、貴重なともいえる顔だった。

彼女は本当に困った顔で、それでいてこのまま引き下がりたくないという女心と童心が一緒になったような、端的言えば凄く魅力的な顔をしていた。

恐らく無意識なのは間違いないと思われたが、更にそう言う格好が自然と上目使いだった事でその魅力は倍増しとなっていた。

 

「先に提示した俺の条件を順守するならな」

 

提督はそんな最上の様子に何故か自分が彼女を苛めているような居心地の悪さを感じて、態度を少し軟化させることにした。

彼女を愛らしく思うより前に、それに対して自分を責めるような考えになるところが実に彼らしいと言えた。

 

「約束する、絶対」

 

最上は真面目な表情でハッキリした口調で断言する。

 

「……ならいい、降参だ。で、結局正解は?」

 

「これ」ピラッ

 

「だから捲るなと」

 

再びスカートを捲る最上を提督は即座に注意するが、彼女は尚もスカートを上げながらその生地を揺らして何やらアピールしているようだった。

 

「だからこれだって」

 

「ん? これって……スカートか? 下着か?」

 

「スカート」

 

「……それを見てどう思う事があると」

 

「僕ってさ、最初は下はショートパンツだったの覚えてない?」

 

「……そう、だったか?」

 

正解を聞いて提督は考える顔をしたが覚えていないようだ。

 

「ま、期待はしていなかったけどね。流石に」

 

「悪い、本当に全く覚えてない」

 

「いいよ。大佐なら仕方ないと思うし」

 

「なんか微妙に皮肉を感じるな」

 

「ぷ……っく、まぁね」

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「スカートとショートパンツどっちが似合うかという事か?」

 

正解こそ言えなかったものの、提督は最上が一番聞きたかった事を何と自分から訊いてきた。

こういところが鈍感そうで微妙にそうではない、場合によっては提督の質が悪い所と言えたが、少なくともその場では最上にとっては最良の言葉だった。

 

「え? あー、おー、自分からその結論に辿り着いてくれたんだ。そうだね、結局はそれを聞きたいかも?」

 

「ふむ」

 

「どう?」

 

「正直……」

 

「うん」

 

「どっちもそう印象は変わらない」

 

「ま、そう言うとは思った。じゃ、どっちが女の子らしい衣服だと思う?」

 

本当に予想通りの答えだった。

だが、故に最上はそんな答えでも苦笑する事ができた。

実に提督らしいと。

 

「それは簡単だスカートだな」

 

これは誰が訊いてもそうだろうという自信の下に提督は即答した。

 

「じゃ、スカートね」

 

「ん? 何がだ」

 

「これからもこれを穿き続ける事に決定したの」

 

「はぁ……」

 

「……はい」ピラッ

 

「やめろ」

 

「うん、ふふ……やっぱりこれにしよっと♪」

 

最上はその日3度目の注意を提督から受けながらも嬉しそうな顔をしてこれからもスカートをはき続ける事を決めたようだった。

提督はそんな彼女をなんとなく手玉に取られたような微妙な気持ちで見ていた。

 

「……」(相変わらず掴めないな)




もうすぐイベントですね。
楽しみでもあり、面倒でもあり……。
まぁ適当にします。

というか頑張る詐欺すいません。
でも消失はしませんよっ。


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第×51話 「温度差」

本部より新たな大規模な作戦の指示が下された。
そしてその作戦の発令から暫くしたある日の事、大和は提督に呼ばれたのだった。


「え!? またですか!?」

 

大和は驚きに満ちた声を上げた。

彼女の前にはある装備の使用パスカードが置いてあった。

試製51cm砲、前回の任務に置いて収めた戦果が認められ、本部にその褒賞として配備された現状最強の主砲だ。

大和は以前それを提督より拝領したが、今回もそれを彼女に賜るのだという。

大和は提督の傍にいた姉妹艦の武蔵を見た。

 

「で、でも……流石にこれを私だけが二門も頂くわけには……」

 

51cm砲はその火力故にまた、その設えも非常に重厚で、長門型でさえ装備は出来ても完璧に使いこなすのは難しい代物だった。

つまりは大和型専用と言っても良い艦装なのだ。

そんな貴重な艦装を自分だけ二つも所有する事に大和は、武蔵に対して負い目を感じたのだった。

 

「ああ、私の事なら気にしなくていいぞ」

 

「え?」

 

軽い声でそう答えた武蔵を大和は意外そうな目で見た。

武蔵はからからと笑いながら特に気にした様子もなく続けてこう言った。

 

「私は使い慣れた46cmでいいんだ。勿論それを使いこなす自信がないわけじゃないが、どっちかを選べという事なら今はまだこれでも良いという程度だ」

 

「武蔵……」

 

「はは、だから、な? 気にするな。それを使って大佐の役に立てばいい」

 

「武蔵……。うん、分ったわ。そういう事ならありがたく頂戴するわね。本当にありがとうm」

 

武蔵、と大和が心から感謝の言葉を彼女に送ろうとした時だった。

その感謝と喜びに満ちた気持ちは彼女がお礼を述べる前に武蔵がつい零してしまったセリフによって霧散したのである。

 

「まぁなんだ。大和はやっぱりそういう大きくて使い辛いのを子供みたいに喜びながら使ってる様が愛くるしいと思うからな。そういう純心で無垢な愛らしさも大佐にみせつけ……おい」

 

「ぐす……」

 

武蔵が壁の隅に目を向けると、そこには大和が受け取ったカードを胸に抱き締めながらまた独りいじける様にしゃがみ込んで泣いていた。

武蔵は戸惑った顔で提督の方を見る。

 

「大佐? 私は何か悪い事を言ったか?」

 

提督は軽く溜息を付きながら苦笑いをして言った。

 

「まぁお前もある意味純粋だという事だ」

 

ポンッ

 

「っ……ん♪ えぇ?」

 

不意に頭に手を置かれた武蔵は疑問の目を提督に向けながらも嬉しそうにするのだった。

 

 

 

「大佐、今回の作戦、調子はどうだ?」

 

ある日、秘書艦の那智が訊いた。

現在提督の基地は、本部より発令された何度目かの大きな作戦の任務に参加中で、序盤は難なくこなしているところだった。

その初期段階の作戦で挙げた戦果を認められ、先日本部よりその褒賞として試製51cm砲を拝領したばかりだ。

提督は那智の問いに普段通りの落ち着いた雰囲気で答えた。

 

「今のところは問題は……まぁ相変わらず弾薬はアレだが、消費は許容範囲で進んでいる。順調と言って差支えないと思う」

 

その答えに那智は少し顔を綻ばせて微笑みながら言った。

 

「そうか、それは何よりだ。……そういえば新しく迎えた仲間がいると聞いたが?」

 

「ああ、葛城の事か。あいつは……」

 

提督が任務遂行中に見つけた新しい空母の話をしようとした時だった。

不意に執務室の扉がノックもなしに勢いよく開かれ、ちょうど話のネタになりつつあった本人が何やら焦った様子で入って来たのだった。

 

バンッ

 

「大佐ぁ!」

 

「葛城さん失礼ではないか。もっと落ち着いて行動してほしいと何度言えば……」

 

葛城の無礼を那智は厳しくも呆れた様子で窘めた。

葛城は雲龍型空母の三番艦で、雲龍の妹にあたる。

発見した当初こそ出会う前まで提督は、特に根拠もなく姉に似て少し冷めてるか大人しい性格かと予想していたが、実際に彼女に会ってみてそのイメージは全く違っていたと即理解した。

 

『葛城よ! 言っておきますけど正規空母ですからね、正規空母! そこのところ間違えちゃ嫌よ!』

 

初見にして上司である提督に会って早々こんな態度を彼女は取ってしまったが故に、葛城は妹が見つかった報告を受けて特別な配慮でその日秘書艦を務めさせてもらっていた雲龍に早速怒られる羽目になったのだった。

 

『葛城……ちょっとこっち……』

 

葛城はまさか雲龍が目の前に現れると予想していなかったのか、冷めた目でこちらを見る彼女に殊の外驚いたようだった。

そしてさっきとは打って変わって後悔に染まった青い顔で大人しくなり、そのままズルズルと彼女に引きずられて何処かへ連れて行かれたのだった。

その時雲龍からどんな説教をされたのかは定かではないが、葛城は取り敢えずその日は大人しくなったのであった。

 

だが……。

 

 

「え、いやごめん! だけどちょっと聞いてよ!」

 

やはり根本的な騒がしさは直ってはいなかったようだ。

 

「どうした葛城」

 

更に厳しい顔で歩み寄ろうとした那智を手で制しながら提督はもう慣れたといった様子で部屋を訪れた葛城に聞いた。

 

「ねぇ、大佐! これ本当に私が使っていいの!? だってこれ烈風とか流星改とか……凄く強い艦載機ばっかじゃない!」

 

葛城はそう言って興奮冷め止まないといった顔で目をキラキラさせながら提督の前に両手に持った艦装のパスカードを突き出した。

その手には確かに彼女が言った様に、艦載機の中では強力で貴重な部類に入るものがいくつもあった。

提督はそんな葛城に対して別段慎重な口調でもなく、こう言った。

 

「ああ、構わないぞ。お前は正規空母だしこれくらいの装備でもいいだろう。それに別に艦載機はそれだけというわけじゃないしな。余裕はあるんだ」

 

提督の言う通り彼の基地は特別艦娘用の装備に関してはかなり余裕があった。

というのも一時期最低限の任務のみをこなしながら艦装を充実させる為に開発に集中した時期があり、その関係でこの基地の兵器庫には艦載機は勿論、電探から主砲、装甲などに至るまで割とあらゆる艦装が充実していた。

 

「本当!? 本当なのね!? 大佐ありがとう!」

 

葛城は勿論自分が正規空母だという自覚と自負はあったが、それでも実際の記録では戦果も無くその役目を終えた当時の自分に軽いコンプレックスを持っていた。

故に一番良い艦載機が欲しいと普段から主張しながらも、加賀や飛龍といった戦歴のある空母との性能や経験の差も実はしっかり自覚しており、結果的に流星や紫電といったワンランク下の艦載機が回されても仕方なしと思っていた。

だがその予想に反して本当に一線級の艦載機を提督からその所持を認められ、葛城はその嬉しさから顔を輝かせて飛び着くように机の前から彼に抱き付いた。

 

ギュッ

 

「……っぐ」

 

「お、おい!?」

 

久しぶりに感じる強力な圧力と締め付ける力に小さな呻き声を漏らす提督、そしてその横では那智が明らかに注意ではなく嫉妬するような顔で怒った顔をするのだった。




大和と葛城の艦装を貰った時の温度差を表してみました。

そしてこんにちわ。
絶賛投稿滞りがちのダメ男です。
今やっとイベントやってます。
E3までは楽らしいですね。
葛城可愛いです。
やっぱり巨乳より普通かそれより小さい方が俺は好みです。


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第×52話 「役割」

作戦の大詰も無事終えて、久しぶりの大きな作戦もひと段落した時のこと。
最後に出撃した艦隊が帰投中に深海棲艦から元の姿に戻って漂流していた仲間を発見して基地に連れて帰りました。
その娘とは……。


「秋津洲です! よろしくお願いするかも!」

 

「宜しくな。歓迎する」

 

「加賀です。よろしくね、秋津洲さん」

 

「はい!」

 

「大佐、こちらを」スッ

 

秋津洲の元気な挨拶に場の雰囲気が和むなか、提督は加賀からある書類を受け取った。

それは目の前の秋津洲に関する能力表通達書だった。

提督はそれを確認して少し怪訝そうな顔をする。

新しく迎えた艦娘の能力は大凡、本部からデータとして基地のコンピュータに送られてくるからだ。

なのに今回秋津洲に関してはデータとは別に紙面にてその能力について通達が来た。

これは極めて珍しい事だった。

 

「……ん」

 

提督は足された通達書の紙面を見て眉を寄せる。

 

(なるほど、別に彼女に関しての通達書が来たのはこういうわけだったのか)

 

提督は通達書の内容を確認して全てを理解した。

その内容を単純に言うと、秋津洲の運用上の注意のようなものだった。

水上機母艦ではあるが、現状装備できる艦装がかなり限られていて、加えて秋津洲本人の対空能力が前述と一部被るが、水上機母艦としては明らかに低い事。

『故に彼女の運用は本部による調整が完了するまでは、危険性の低い任務で偵察にのみ従事させるべし』

簡単に言うとそんな事が書かれていた。

 

「……」チラッ

 

提督は書類の端からちらりと目の前にいる秋津洲を覗き見た。

 

「……」ジワッ

 

見ると秋津洲は提督が見ている書類の内容を予想していたのか、彼女のみが現状唯一装備できる「二式大型飛行艇」、通称「二式大艇」のパスコードをぎゅっと胸の前で抱き締めて悔しき泣きを我慢するような顔をしていた。

 

「……」(なるほど、自覚はあるのか)

 

提督は少し難しそうな顔で目を瞑って頭を掻くと、ふと秋津洲にこう言った。

 

 

「秋津洲、そのカードを俺に渡しなさい」

 

「!!」ブワッ

 

その言葉を受けた瞬間ついに秋津洲は目を見開いて無言で大粒の涙を流し始めた。

 

「ふ……うぅ……うぇぇぇぇ」

 

「……」ギュッ

 

その様子を見ていた加賀が静かに彼女に近寄り優しく抱き締める。

 

「大丈夫、落ち着いて。大佐は何もあなたが不必要だとは言っていないわ。ちゃんとあの人を見て、話の続きを待つのよ」

 

「う……ぐす……ひっ……ぐす……」

 

加賀にあやされ、母親の如く優しい言葉に少しは落ち着いたのか、秋津洲はまだ流れる涙を止められずに拭いながらも、再び提督の方を真っ直ぐに向き直った。

提督はそれを確認して小さく咳払いをして続ける。

 

「んっ、秋津洲、まぁショックだとは思うが安心しろ。俺は別にお前から大事な装備を取り上げるつもりはない」

 

「う、うん……」グス

 

「俺はただ、お前に遠征や通常の警備任務にも出て貰って活躍の場を提供したいだけなんだ」

 

「え……? かつや……く……? わたしが……?」

 

「そうだ。先ずお前は我が基地で貴重な3人目の水上機母艦だ。遠征任務にはお前の艦種でしかこなせないものもある。だから先ずはそこに活躍の場がある」

 

「う、うん……!」ゴシゴシ

 

「先に着任している先輩の千歳姉妹がいる。遠征の事についてはあいつらに訊くといいだろう。きっと歓迎してくれるはずだ」

 

「は、はい! 了解したかも!」

 

秋津洲は此処まで来て大分持ち直していた。

自分が決して不必要な存在ではなく、逆に必要で貴重な存在だと提督に言われて、折れかけていた自信を取り戻していた。

秋津洲はもう涙を完全に拭い切り、少し充血した目で真っ直ぐに提督の目を見て元気に返事をした。

提督はその顔を見て僅かに微笑みながら続けた。

 

「良い意気込みだ。あと遠征の後に言った警備任務についてだが」

 

「はい!」

 

「お前は、あくまで今のところは対空能力に不安要素がある、だからちゃんとその点が改善されるまでは飛行艇以外の武器を使って砲撃艦として任務に当たってほしい」

 

「砲撃艦……?」キョトン

 

「ああ、そうだ。ちょうど15.5の副砲がまだ余っていたはずだ。加賀?」

 

「はい問題ありません。配備可能です」

 

「ん、お前にはそれを幾つか装備して貰って他の練度が低い駆逐艦との警備に、そして何れ練度が上がったら今度はお前自身がその子らを引率する旗艦として活躍して欲しいんだ」

 

「旗艦……! わ、わたしが!?」

 

「旗艦は何も強さだけが求められるわけじゃない。経験を積んで、それを活かして皆を導く。これが何よりも重要なんだ」

 

「う、うん……。でも……わたしにできる、かなぁ……」

 

「不安なのは当然だ。だからこれから遠征で、任務でお前は経験を積んでいくんだ」ポン

 

温かい言葉と共に方に置かれた手の感触に、秋津洲は提督を見上げる。

提督はそんな彼女を厳しくも優しい目で見ながら訊いた。

 

「努力できるか?」

 

「……うん! わたし頑張るか……頑張る!」

 

「期待しているぞ……ん?」

 

ギュッ

 

提督は不意に腕を秋津洲に抱き締められた。

秋津洲は嬉しそうにその腕を抱きながら満面の笑顔で言った。

 

「大佐、大好き!」パァッ




一体いつの話だって話ですよね
最近モチベ、いや体調?
……まぁ何とかします!


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メインストーリー(第七章)
第1話 「命名」


春に発令された作戦が終わって間もない頃、提督が自室で読書をしていると扉を叩く音がした。
どうやら誰かが彼を訪ねて来たらしい。



トントン

 

扉を叩く音に提督は読んでいた本から顔を上げある。

 

「誰だ? いいぞ、入れ」

 

 

「失礼します」ガチャ

 

「失礼します大佐」

 

提督の許可と共に部屋に入って来たのは先日仲間に迎えたばかりの戦艦リットリオとローマだった。

提督は着任して間もない二人が自分を訪ねてきた事を軽く驚きながらも、本を読むために掛けていたメガネを外して彼女達を迎えた。

 

「ん? どうした二人して」

 

「夜分に申し訳ございません。あの、不躾で申し訳ないのですが実は大佐にお願いがありまして」

 

言葉通り申し訳なさそうな顔をしたリットリオが口を開いた。

後ろに控えているローマは相変わらず不愛想にツンとした顔をしている。

 

「ふむ、で、改まってなんだ?」

 

「そのぉ少々小耳に挟んだのですが、大佐は海外艦に、この基地でのみ通じる愛称、みたいなものをお付けになっていると聞きまして……」

 

「ああ、マリア達の事か」

 

「マリア……」

 

提督の口から洩れた言葉に微かにローマが反応する。

一方リットリオはそれを聞くと明らかに明るく、期待に満ちた顔で提督を見ながら言った。

 

「そう、それです! えっとだからそのぉ……。私達も一応立場的には……と申しますか、そのぉ……」

 

「名前を付けなさい大佐」

 

「ローマっ」

 

願いを通り越して命令口調で切り出したローマをリットリオがすかさず叱る。

本人に他意はなく、これはローマの素の性格のようだが、上官である提督を前でも例外なくこの態度はやや問題と言えた。

叱られたローマは姉にだけは頭が上がらないのか、一瞬首をすくめると拗ねたような顔で視線を逸らしながら提督に詫びた。

 

「っ……ごめんなさい。失礼しました」

 

「いや、まぁいい。ふむ、そうか名前、か」

 

「はい! できましたら私達にも!」

 

「私は別にいいんですk」

 

「ロ・オ・マ?」

 

「……ごめんなさい」

 

「……ふむ。少し時間をくれるか?」

 

リットリオとローマのやり取りを苦笑いしながら見ていた提督はそこで少し咳払いをして椅子に少し深く座り直すと、顎に手を当てて暫く天井を見上げて考え始めた。

 

「ええ、どうぞ遠慮くなく!」

 

「早くしなさいよ」

 

「ローマ!」

 

「ひっ……ごめ……」

 

「……」(何と言うか見てて飽きないな)

 

 

10分程経った頃、提督は上を見ていた顔を元に戻すと再びリットリオの方を向いた。

どうやら名前が決まったらしい。

リットリオは待ってましたとばかりにワクワクした様子で、一方ローマは態度は平静を装っていたものの、時折視線をチラチラと提督に向け、気になる様子は隠せないようだった。

 

「よし、一応考えた。まずはリットリオからだ」

 

「は、はい!」

 

先に声を掛けられてたリットリオが目を輝かせて提督を見る。

 

「お前には候補が2つある」

 

「え、2つも!?」

 

「ああ。マリ―アとローザだ」

 

「マリーア、ローザ……。あの、因みに何から思い付かれたのかお聞きしても?」

 

思ったより女性らしい名前の響きにどちらの名前も気に入ったらしいリットリオは、早速その由来を提督に尋ねた。

興味に満ちた目で自分を見るリットリオの視線にややプレッシャーのようなものを感じながら、提督はなるべく彼女の期待に応えられることを願いつつ説明を始めた。

 

「ん……世にイタリアという国名が初めて出た時のな、イタリア王国国王ヴィットーリオ妃の名前だ」

 

「イタリアの王妃……!」

 

リットリオはそれをを聞いて、まるで子供が劇でヒロインの役を貰った時のような嬉しそうな顔した。

 

「まぁ王妃とは言ったが、実はこれには少し語弊があるんだがな」

 

「え?」

 

「実はな、この二人はどちらも生きている内に正式にイタリア国王の王妃にはなっていない」

 

「え、それはどういう……?」

 

「まずマリーアだが、彼女は正式な国王の妃ではあったが、国がイタリア王国に統一される前に亡くなったんだ。つまり国王の妃ではあったものの、“イタリア王国の王妃”にはなれなかったんだ」

 

「ああ、なるほど。それではもう一人のローザという方は?」

 

別にそれなら王妃として記録されなくても仕方がない、だが結果的には似たようなものだ。

リットリオは提督の説明を聞いて特にその事を気にすることもなく納得した様子で、続いてもう一つの候補『ローザ』の由来を訊いてきた。

すると提督は何故か慎重な態度でやや衝撃的な話を始めた。

 

「うん、彼女はな……。その、立場的には国王の愛人だったんだ」

 

「あ、愛人……?」

 

予想外な言葉にリットリオは驚きで目を丸くする。

そしてその傍らにいたローマは、提督が姉に不名誉な名前を付けようとしていると判断したらしく、厳しい顔で彼を見る。

 

「ちょっと大佐……」

 

「あっ、い、いいのローマ。すいません大佐。その方のお話の続きをお願いして宜しいですか?」

 

「姉さん?」

 

「大丈夫よ。大佐も何のお考えもなくその名前を選ばれたわけではない筈だもの。そうですよね? 大佐」

 

「ああ、一応思い至ったちゃんと理由はある」

 

「……お聞かせ頂きましょうか」

 

「ローマ……もう……。大佐、お願いします」

 

あくまでまだローマは提督を疑っているようだ。

冷めた目でこちらを睨むように見ている。

提督はそんな妹を宥めながら困った顔で話の続きを催促するリットリオの為に、一度軽く咳払いをすると再び話し始めた。

 

「ん、この人物はな。確かに国王が抱えた幾人もの愛人の一人ではあったが、その中でも特に彼の寵愛を受けたと見られる女性なんだ」

 

「まあ」

 

「……寵愛、と申しますとどの程度の?」

 

「国王の部下に過ぎない父親を持つローザだったが、彼はあまり身分の差を気にしなかったらしい。ローザは彼の愛人になって直ぐに彼の子を身籠るくらいには好かれていたようだ」

 

「何て節操がない……」

 

ローマは呆れ切った顔をしていた。

そんな人物が例え自分が人の姿を得る前に仕えていた祖国に直接関係ないとはいえ、その前身となる国の王だった事は認めたくなかった。

リットリオも流石に少々焦った様子で、先程の話から自分なりに美談と感じられる箇所を妹に理解してもらおうとした。

 

「え、で、でも直ぐに子供を授かるくらい好かれるなんて何だか凄く愛を感じない?」

 

「私は余りにも尻軽が過ぎると思うのですが」

 

「そ、そうかしら?」

 

「……まだ続きがあるんだが」

 

提督は旗色が悪そうなリットリオに助け船出すべく続きを話す事にした。

リットリオはこれ幸いとばかりにホッとした顔で先を促す。

 

「そ、そうよ! まだ話はおわってないのだから続きを聞きましょうローマ」

 

「これ以上自堕落な陛下の話が続くのですか?」ジト

 

「まぁ聞け。確かに彼女は国王の寵愛を受けたとは言え、愛人の一人に過ぎなかったとのは事実だ。だがな」

 

「なんです?」

 

「……」ドキドキ

 

「ある時国王が大病を患い非常に危なかった事があったそうだ。そんな折彼は自分の死期を予感してある行動を取った」

 

「ある行動……?」

 

「後継者の指名でしょうか。常識的に考えて」

 

「違う、それはな。ローザと死ぬ前に結婚をしようとしたんだ」

 

「まぁ……!」

 

「……」

 

予想外の答えにリットリオは顔を輝かせ、ローマも姉程ではないにしろ言葉が出ないくらいには意外そうな顔で驚いているようだった。

提督はここが畳み掛けどころだと判断し、更に話を続けた。

 

「国王は式を急ぐ余り教皇の到着を待たずに祝福を電報で求めたりもしたようだな」

 

「そんな……それほど亡くなられる前に彼女を……」ウルッ

 

「……しかし身分の差と言う如何ともし難い壁があります。それについてはどう決着したのでしょう?」

 

「国王はローザに爵位を与えて優遇もしたようだが、これは多分他の愛人との差を示すためだったかもしれないな」

 

「………あまりその配慮は功を奏しなかっみたいですね」

 

ローマがメガネのブリッジを上げながら勘の良い指摘をする。

 

「まぁな。式を挙げる際のわだかまりも緩和させる目的もあっただろうが、結局公式な式とは認められなかったみたいだ」

 

「貴賤結婚……ですか?」

 

「そうだ。当然彼女の子には王位継承権は認められなかった」

 

「結局身分の差は最後まで残ってしまったのですね」

 

「可哀そう……」

 

二人は目に見えて沈んだ顔をした。

リットリオはともかく、ローマも同じ顔する辺り、やはり彼女も近付き難い雰囲気を纏っているとはいえ、乙女である事には変わりなさそうたった。

提督はそんな彼女達まだ話が終わっていない事を告げた。

 

「まぁそう悲しい顔をするな。まだオチが終わってない」

 

「え?」

 

「結果が分ってしまっていると言うのにこれ以上何が?」

 

「確かに身分の差自体は埋まらずに終わった。だがな、この結婚式いつしたと思う?」

 

「え、それは……国王陛下が危篤の時ですよ、ね?」

 

「そうです姉さん。大佐はそう言っていました」

 

「いや、違う。俺はあくまでその時国王はそうしようとした、と言っただけだ」

 

「え? ああ、そういえ……ば?」

 

「……確かに」

 

「実はな、国王とローザの結婚式はその時にはしなかったんだ」

 

「え、そうなんですか?」

 

意外な事実にリットリオは再び目を丸くして驚く。

ローマも合点がいかなそうな表情をしながら、何故式を挙げなかったのか早速推理を始めた。

 

「ですが、式自体は挙げたんですよね? 時期をずらした……? いや、陛下は事を急いていた筈……。という事はまさか……」

 

「そうだ。国王はその時持ち直したんだ」

 

「えっ」

 

「やはり」

 

「正式にローザが国王と式を挙げたのは実はその時から8年後だ」

 

「8年……」

 

「そんな後に」

 

「例え貴賤結婚であろうと、一度目は死期を予感して焦り、二度目は満を持して改めてした辺り、国王の彼女に対する愛情の深さがよく解るとは思わないか?」

 

「確かに……そうですね!」

 

「……ふむ」

 

「まぁ流石に二人は一緒の墓に入れなかったが、だかそれでも俺は正式に認められなかったとはいえ、マリーアの死後数十年に渡って彼女が国王の傍に在り続けたのは相応の愛があった証だと思うぞ」

 

「そうですね。私、納得しました。大佐が彼女の名前を候補に挙げた理由」

 

「……まぁ悪くは無いと思います」

 

提督の話を最後まで聞いて、二人はどうやら納得した様子だった。

リットリオに至っては感動したのか目に涙を浮かべていた。

 

「そうか、良かった。じゃぁ理解を得られたという事で改めて訊こうか。リットリオ、お前の名前はどっちがいい?」

 

「……」

 

リットリオは提督にの問いに対して僅かな沈黙の後、やがて顔をあげると彼の顔を見て言った。

 

「ローザ」

 

「本当にそれでいいんだな?」

 

「はい! マリーアでも良いとは思いますが、それだとマリアさんと似てしまいますからね。でしたら、先程のお話を気に入ったの事もありますし、私はローザを選びたいと思います」

 

「そうか、分かった。ならこれからはお前はそう呼ぶことにしよう。宜しく頼むぞローザ」

 

「はい! 素敵なお名前ありがとうございます。大佐」

 

 

「それじゃ次はお前だな」

 

姉の命名の流れを見て、実は少し前から内心ワクワクしていたローマが提督に声を掛けられてピクリと反応する。

自分にはどんな名前が付けられるのか、姉の時同様期待に満ちた目をローマは提督に向けた。

 

「……」

 

「お前の名前は一つだが、これも一応よく考えたつもりだ」

 

「……拝聴します」

 

「パスタだ」

 

「 」

 

「え」

 

言葉に言い表せない衝撃がローマの体の中を走った。

そのあまりにもぞんざいに思える名前に彼女は言葉を失い、ついでに思考も止まった。

だが提督は無慈悲にもそんな彼女を気にかける事なく名前の決定を告げる。

 

「お前はパスタでいいだろう」

 

「 」

 

「え、ちょっと大佐それはあの……」(あ、もしかして)

 

流石に見ていられなくなったリットリオが何とかして妹を救おうと試みるも、内心は彼女は何故提督がこんな裁定をしたのか何となく予想できていた。

 

「とやかく言うつもりはなかったが、姉が再三の注意したにも関わらず直らなかった上官に対する態度。これはある程度反省をしてもらう必要があるだろう。それまではお前はパスタだ」

 

「パ……ス……」(この私がパスタ? 栄えあるローマ帝国の『Roma』の名を冠する私が……国を代表する食材とはいえ、まさかの乾燥した麺……?)

 

「誤解するなよ? 俺は規律さえ守っていたらそこまで厳しくはしない。だがお前の場合は根本的に性格に問題があるようだ。故に軍と言う組織の中で生きてもらう以上それを反省を促す意味でもこの名前を……」

 

「ごめんなさい」

 

提督が説教を言い終える前に目の前でローマが深々と頭を垂れていた。

だが提督は黙ってそれを見ている。

 

「……」

 

「Mi dispiace molto......(ミディスピアーチェモールト)」

*大変申し訳ございません

 

「反省したか?」

 

「はい」

 

「もう姉に迷惑を掛けないか? 規律を守るか?」

 

「誓って」

 

「そうか……」

 

「名前を……」

 

涙を溢れさせ、すがるような目で提督を見るローマ。

もはやそこにはついさっきまで高慢な態度をとっていた女の姿はなく、叱られた子供のように小さく反省した女子の姿があった。

提督はそれを見て考えるように腕を組む。

 

「ん……」

 

「厚かましいのは承知でお願い致します。私にも素敵な心満たされる名前を……」

 

「……いいだろう。じゃぁリウィアかユリアから選べ」

 

「あ……それって……」

 

名前を聞いただけでローマにはその由来が分かったようだ。

彼女は提督の口からそれを聞いて喜色に満ちた顔をする。

 

「流石、ローマの名を冠する戦艦なだけあるな。もう分かったか」

 

「はい、勿論です。リウィアは古代ローマの初代皇帝の妻、そしてユリアは皇帝の死後に同じ人物が名乗った名前ですよね」

 

「その通りだ。彼女は権勢欲が強かった人物とも言われるが、やはり俺は権力者でありながらその時代にしては珍しい良き妻、良き母としての面を評価したいと思うところだ」

 

「私もかねがね同意します。同じ女として尊敬し、学ぶべき点の多くはやはりその面にあると思うので」

 

「ふむ、そうか。ではローマ、選べ。お前はどの名前がいい?」

 

「……」

 

ローマはリットリオの時と同じく俯いて暫く黙考し、やがて顔をあげると提督を見て言った。

 

「では私はリウィアを拝命したく存じます」

 

「そうか、お前は姉と違って先を取るか」

 

「はい。ユリアも捨て難いのですが、やはり自分としては皇帝が死して尚威光を保ち続けた頃よりかは、妻として皇帝を支えた頃の彼女に魅力を感じますので」

 

「なるほどな。そういう意味でなら二人とも選んだ理由は似ているとも言えるな」

 

「ふふ、そうね」

 

「ふっ……言われてみれば」

 

「……ではローザ、リウィア」

 

「「はい!」」

 

新たな名で呼ばれた二人は揃って姿勢を正すと張りのある声で返事をした。

 

「改めて宜しく頼む。これからも俺を、この基地を支えてくれ」

 

「了解しました!」「了解です!」




長っ、てか最近ペース悪っ
あ、ここに投稿するようになって1年過ぎたみたいです
まぁ、その内の半分くらいは投稿してない気がするのでまだ実質的な活動は半年といったところでしょうかw


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第2話 「花見」

とある非番の日、天龍は基地の外で何処かに行く格好で車に乗ろうとしていた提督を見つけた。


「よぉ、大佐じゃねーか」

 

「ん、天龍」

 

「何してんだ? どっか行くのか?」

 

天龍は私服の姿をした提督を見て、それが気になって訊いた。

手には少ないながらも何かが入ったリュックを持っている。

 

「ああ、花見だ」

 

「は? 花見?」

 

「ああ、そうだ。春だしな」

 

「春だしって……けどよ……」

 

天龍は窓から常夏の日差しと穏やかな波が寄せている砂浜を見た。

いくら日本が今季節は春だと言っても、ここは常に夏真っ盛り。

窓から覗く風景からは桜の一本も確認できず、加えて春の雰囲気など微塵もなかった。

こんな場所で花見とは……。

天龍は不可解な顔をするしかなかった。

 

「言いたい事は解るぞ。だけど花見くらいいいじゃないか。気分だけでも」

 

「気分、ね。まぁやりたい気持ちは解らなくもないけどよ。何処でするつもりなんだ? 誰かと行くのか?」

 

「いや、一人でふらりと行くつもりだった。場所は、何処か郊外の人気のない公園でも」

 

「え、一人か」

 

「ん? ああ」

 

「いくら治安を委託されているとは言っても、他国の軍の指揮官が一人で人気のない所に行くのはちょっと不用心じゃないか?」

 

「……まぁ、絶対に安全とは確かに言えないと思うが」

 

「……連れてけよ」

 

「ん……?」

 

「……」ジッ

 

不意に一緒に花見に連れて行けと言う天龍を提督は意外そうな顔で見た。

天龍は恥ずかしそうに手を後ろで組みながらも目は真っ直ぐに提督を見つめ、やはり一緒に連れていけとしっかりその意思を訴えていた。

 

「護衛を言い訳とかにはしないんだな」

 

「勿論護衛もやる気だ。けどほらまぁ……な? 一緒に行きたい」

 

「いいぞ。行こう。服着替えて来るか?」

 

「おう! ちょっと待ってろよ!」

 

提督に動向を受け入れても貰い、天龍は子供みたいに嬉しそうな目をして着替える為に意気揚々と部屋を出て行った。

 

 

それから十数分後。

 

「よっ、お待たせ!」

 

「お、来たか」

 

元気な返事と共に現われた天龍は普段と大分違う印象を与える格好をしていた。

上は上着だけ脱いでボタンを1つ多く外したワイシャツだけとなり、袖は捲っていた。

そして下だけはスカートからジーパンに履き替えていた。

 

「下だけ変えたのか」

 

「ん? ああ、郊外とかだと蚊とか多そうだからな。刺れたくないし」

 

「なるほど」

 

「……」ジッ

 

「ん、なんだ?」

 

提督は天龍の服装を見るなり何か思う所があるように顎に手を当てる。

 

「天龍」

 

「うん?」

 

「花見に行く前にちょっと寄り道していいか?」

 

「ああ? ああ、別にいいけど」

 

 

「た、大佐ここって……」

 

天龍が居心地が悪そうに身を縮める。

提督が寄り道すると言い、彼女が連れてこられたのはとあるデパートの若者向けの物を主に取り扱っている装飾店だった。

 

「別にいかがわしい意味じゃないけどな。普段よりボタンを外したシャツを見たら、着けてたら何となく似合う気がしてな」

 

「だ、だからって別に俺なんかに」

 

「珍しく俺が気が利くような事を思いついたんだ。ここは受け入れてくれると嬉しいんだが」

 

「……まぁそれなら」

 

「悪いな。……」

 

「どうした?」

 

「いや、自分から連れてきておいてなんだが、やっぱり女性の好みとかは自信がなくてな。どれが良いか選んでくれないか?」

 

「え? そんなの大佐の好みなら何でもいいぜ?」

 

「本当か?」

 

「ああ!」(せっかく大佐からのプレゼントだしな。何を貰っても記念になるし)

 

「ふむ……じゃぁ、これは?」

 

「え? どれ? あ……」

 

提督が指した物を見て天竜の目が留まる。

彼が選んだのは天然の翡翠の小粒をペンダントに加工した非常にシンプルなものだった。

それは並んでいた物の中でも安い方ではあったが、彼が値段で判断したとも思えない。

故に天龍は逆にそれが提督らしくて彼が本当に自分の勘で選んだものだと確信できた。

 

「お、いいじゃねぇか。それでいいぜ」

 

「……本当にいいのか? 安いぞ?」

 

「大佐は値段で選んだんじゃないだろ? 俺に似合うと思ったんだよな?」

 

「まぁそうだが……」

 

「ならこれでいい。俺も気に入ったし♪」

 

「そう、か? なら……すいませんこれを――」

 

 

「っくぅ……! 天気良いなぁ、こんな所に公園なんてあったんだな!」

 

提督が気持ちよさそうに伸びをする天龍を連れてきたのは本当に人気のない郊外の自然公園だった。

自然公園と言えど、都心部と違って人工的に草木を植えずに天然に生えたものをそのまま使用し、申し訳ない程度に整えられた順路のみが唯一の人工物と言えた。

 

「花は野花くらいしかないが、代わりに大きな木がたくさんあるだろう? そこで寛ぎながらちらほら目に映る野花を肴に酒を楽しもうと思ったんだ」

 

「なるほどなぁ……。確かにこういうのも悪くないな」

 

「あの木の所に行こう。木陰も大きいから涼しいだろう」

 

「ん、分かった」

 

 

「……ふぅ、風が気持ち良いなぁ」

 

「……そうだな」

 

提督が指した一帯の中でも特に大きい木の下で、天龍は腰を下ろして気持ち良さそうに全身に風を浴びる。

後ろ手に手を付いて更に風を浴びる為に状態を前に突き出す天龍の胸元で、先程提督に貰った翡翠のペンダントが小さく輝いていた。

 

「酒、持ってきたのか?」

 

「ビールを2本だけだ。後はツマミとして現地で買った豆がある」

 

「いいじゃねぇか。別に酔いたいわけじゃないし、これくらいで丁度良いと思うぜ」

 

「ほら」

 

「ん、サンキュ」プシッ

 

天龍は提督からビールの缶を受け取ると早速蓋を開ける。

提督もそれに続いて缶を開け、懐から懐紙を取り出すとそれを芝生の上に敷いて豆を置いた。

 

「いろんな豆があるな」

 

「どれも生で食べれるぞ。酒に合うのも確認済みだ」

 

「さすが大佐だな。んじゃ、頂きます……」パクッ

 

「どうだ?」

 

「んー……んまいっ」ポリポリ

 

「それは良かった」ゴクッ

 

「あれ? 大佐が飲んだビール俺のと違くね?」

 

天龍は提督が手に持っているビールの缶の色が自分のと違う事に気付いた。

提督は天龍の指摘にビールを口に運んでいた手を止めて、そのビールの銘柄を見ながら答えた。

 

「生憎店に並んでたビールが在庫が入荷がまだで売り切れる寸前だったんだ」

 

「あー、なるほどなぁ。……なぁ」

 

「うん?」

 

「そっちのビールも味見したい」

 

「味はそんなに変わらないぞ?」

 

「いいじゃん。これしかないんだしさ」

 

「まぁいいが。ほら」

 

「さんきゅー♪ ん……」

 

提督に手渡されたビールを見て何故かそれを飲まずに見続ける天龍。

提督はそれを不思議そうに見ながら訊いた。

 

「どうした? 飲まないのか?」

 

「ああ、いや飲むよ、飲む!」ゴクッ

 

「……」

 

「どうだ?」

 

「……美味い。へへっ♪」

 

「……? そう、か」

 

「んっ」サッ

 

何故か嬉しそうな顔をする天龍が不意に彼に自分が元々飲んでいたビールを差し出してきた。

 

「ん?」

 

「大佐も、俺の飲んでいいぜ」

 

「あ? ああ、じゃぁせっかくだから……」ゴクッ

 

提督が自分が飲んでいたビールを飲む様子を見て、天龍がどこか真剣な顔をして訊いた。

 

「美味いか?」

 

「まぁ……。やっぱりあんまり味は変わらない気がするが」

 

「んっ、そっか♪」

 

素っ気ない答えだったが、それでも天龍は何故か妙に嬉しそうな笑顔でそう言った。




関節キスを意識する天龍は可愛いと思います。
一方、提督は天龍がまさがそんな事を気にするとは思っておらず、素で彼女の意図に気付いていないという設定です。

……なんか久しぶりに単調な話を書いた気がしますねぇ。


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第3話 「不一致」

暁が改二になって基地に帰ってきました。
でも改造を受けてきた割には彼女の様子はどことなく虚ろ、元気がない感じです。
暁はそんな上の空のまま、提督に改造の報告もせずに自分の自室兼相部屋の扉を開けました。
すると……。


「暁改二おめでとー!」

 

「おめでとうなのです!」

 

「おめでとう……」

 

「えっ」

 

パーンッ

 

暁が部屋に入るなり突然、雷・電・響(ヴェールヌイ)といった自分の妹分達が祝福をして出迎えてくれた。

準備良く雷などは準備良くクラッカーまで用意していたようで、部屋に入ってきた暁を見るや待ってましたとばかりにその紐を引いた。

 

「……」

 

乾いたクラッカーの音と僅かな火薬の臭いが立ち込める中、果たして祝福された当事者である暁は何故か心ここに非ずといった顔でポカンとしていた。

 

「あ、あれ暁どうしたの?」

 

「クラッカーに驚いたんじゃないのかな?」

 

「電びっくりしたのです。やっぱりいきなり鳴らしちゃうよくなかったんじゃ……」

 

雷達は暁の予想外の反応に動揺して祝福ムードから一転して心配そうな顔をする。

だがそれでも暁は特に何を話すでもなく、心配する彼女達を前にして微かに唸るような声を漏らす程度の鈍い反応しか示さなかった。

 

「……」

 

「ね、ねぇ本当にどうしたの?」

 

「暁ちゃん?」

 

「らしくないな。何かあった?」

 

「……ない」

 

やっと何か言葉らしい音が聞こえたがまだ何を言ったのか判らない。

雷はもう一度お願いする様に耳に手を当てて訊いた。

 

「え? なに?」

 

「レディになってなーーーい!」

 

「「「 」」」

 

暁の絶叫に、今度は3人が言葉を失ってポカンとした顔で暁を見た。

 

 

 

「なに?」

 

提督は怪訝な顔で暁に聞き直した。

 

「だ・か・ら! 暁、せっかく改二になったのにあんまり前と変わってないのよ!」

 

「……いや? 少なくとも改造結果を見る限りは能力は飛躍的に……」

 

「そうじゃないの!」

 

「?」

 

成長していると言うのにしてないという暁。

提督は彼女が何を言いたいのか解らず困っていた。

 

「だから、能力は上がったかもしれないけど見た目が前とあんまり変わってないじゃない!」

 

「ああ……」

 

そこでようやく提督は納得したと言った顔をした。

つまりは彼女も龍驤と同じなのだ。

 

「……もっと大人に近い外見になりたかったのか?」

 

「そう! そうなの!」

 

「……具体的にはどんな風になりたかったんだ?」

 

「え? そうねぇ……やっぱり神通さんみたいなお淑やかで大人なレディになりたいわ」

 

「お前が神通のような……」

 

提督はふと天井を見上げ、暁の口調で喋る神通を想像した。

 

 

神通『お子様言うな!』

 

 

「……無理だろう。絶対」

 

「何で!?」ガーン

 

あまりにもハッキリと否定されショックを隠し切れず涙目で叫ぶ暁。

だが、無情にも提督はその様を見ても容赦なく続けた。

 

「改造は基本的に対象の能力を向上させる為に行うものだ。その過程で五十鈴の様に副次的効果が身体的特徴として表れる事があっても、ベースとなっている艦娘の体つきが変わるなどという事は先ず有り得ないだろう」

 

「そ、そんなぁ……」ジワッ

 

「素直に前より強くなった事を喜んだらどうだ?」

 

「えぇ……でもぉ……」

 

「じゃぁ考えるんだ。今の姿のままでも得をしていると言える事を」

 

「今の姿でも……?」

 

提督の提案に滲んだ涙を拭って何とか止めた暁はふと考える。

 

(今の姿でも得を……。駆逐艦じゃないとできない……してもらえない体験……?」

 

「……」キョロキョロ

 

「?」

 

何を思いついたのか暁は、その時自分の周りに提督と自分以外の気配がないか確かめるように辺りを見回した。

そして気配がない事を確信すると今度は提督をジッと見上げてきた。

 

「……」ジッ

 

「? どうした?」

 

「だっこ」

 

「ん?」

 

「抱っこ、して」

 

「……」

 

意外なお願いについ真顔になって暁を見返す提督。

だが暁は恥ずかしそうにしながらも目は逸らさずに提督を見つめたままだ。

やがてもっとねだる様に両手まで上げてきた。

 

「抱っこ」

 

「……レディじゃなかったのか?」

 

「私は“レディの誇り高さも持つ”駆逐艦暁なの。だからレディの高貴さを大衆に自慢する事もできれば、こうやって駆逐艦の特権を行使する事もできるのよ」

 

「それただの屁理屈じゃないか?」

 

「レディは感情で物を考える生き物なのよ? だから大佐からしたらただの屁理屈かもしれないけど、レディからしたら当然の思考から導き出された真っ当な理屈なんだから」

 

「……なんか改造を受けて口が上手くというか、開き直った感がするな」

 

「もーいいじゃない! 抱っこしてよ!」

 

「それでお前の気は済むのか?」

 

「うん」

 

「……」スッ

 

「わっ」

 

暁は軽々と提督に抱き上げられ、そのまま彼の膝に乗せられた。

 

「これでいいか?」

 

「んー……なかなかの座り心地ね。あ、でももう少しこのままがいいかしら?」

 

「……まぁ改造祝いだ。今日は暫くお前のオーダーに応えてやろうか」

 

「流石大佐。レディの扱いを心得ているわね♪」

 

暁は提督の膝の上で本当に嬉しそうに笑った。




暁改二になりました。
響と違って攻撃的なステータスが何か良いですね。

あ、そういえば摩耶と鳥海の改二の話書いてなかった。
それもその内書かないと。


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第4話 「感激」

久しぶりに榛名が秘書艦で、提督が執務をしている時の話。


「……」カリカリ

 

「大佐、お茶お持ちしました。緑茶ですけど良いですか?」

 

「ん? ああ構わない。ありがとう」

 

「いえ」

 

「……」カリカリ

 

「~♪」

 

 

秘書艦としてはごく極普通の、当たり障りのない気遣いだったが、久しぶりの秘書艦で提督の傍にいられる事に榛名は無上の喜びを感じていた。

ケッコン艦や新規着任の娘が増えていく状況の中で、自分が提督と疎遠になっていくような不安を榛名は感じていた。

故に最近は表に出さないが、姉の金剛に劣らない程実は提督に対する恋慕の感情が強い彼女は、今こうして再び秘書艦を任された事に提督に対する信頼を改めて強く認識するのであった。

 

「機嫌が良さそうだな」

 

「えっ」

 

不意に話し掛けられて半分浮かれていた榛名はつい驚いた声を出す。

提督の声に我に返り声がした方を向くと提督が苦笑してこちらを見ていた。

 

「あっ、ご、ごめ……あ、申し訳ございません! 榛名、ちょっと浮かれていました!」

 

「いや、別に謝る事はしていない。何かミスをしたわけでもないし」

 

「で、でも榛名、秘書艦ですのに大佐のお傍に居ながらボーっと……!」

 

「だからそれによって俺が実害を被ったわけでもないし、今はそれほど規律を重んじている状態でもないから謝らなくてもいい。俺はただお前が何を嬉しそうにしているのか気になっただけだ」

 

「す、すいません……」

 

「大丈夫だ問題ない。で、何か良い事でも?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 

提督の質問を改めて受けた榛名はようやくそこで彼が自分に対して細やかながらも疑問を持っている事を認識する。

答えなければ。

提督自身から自分に興味を持ってくれることなどそう無い事だ。

榛名は内心歓喜の荒波の飛沫を感じながら、努めて真面目な顔で答えた。

 

「いえ、その。久しぶりに大佐の秘書艦を……お、お傍にお仕えできて凄く嬉しくて……」

 

「……」

 

「榛名、それで浮かれてしまって大佐の声にも反応が遅れてしまったんです」

 

「……そうか」

 

「は、はい……」カァ

 

「ふむ」カリカリ

 

「ええ!?」ガーン

 

 

恥を忍んで、かつ何か別の反応を密かに期待していた榛名は、答えを確認するなりあっさりと執務に戻る提督に対して思わず驚愕の声を漏らした。

提督もその声に流石に反応して、しまったというような顔で榛名を見る。

 

「ん? ああ、すまん」

 

「あ、あの大佐……」

 

「ん、ああ……」

 

「失礼を承知で申し上げますが、い、一応榛名は大佐とケッコンしています……よね?」

 

榛名から少し重い空気が出た始めているのを感じた提督は真面目な表情でそれに応じる。

 

「そうだな」

 

「榛名……そんなに魅力ない……で……っく、ぅぇぇ……」

 

榛名はついに無念の感極まって言葉途中に泣き出してしまった。

提督はすぐに椅子から立ち上がり彼女の頭を撫でて落ち着かせようとした。

 

「いや、すまん。……本当に俺はダメだな。こういうところを直さないとな」

 

「い、いえ……。途中で泣いてしまったは……ぐす……がわる……ひぐ」

 

「お前は姉妹の中でも本当に感受性が強いな。俺もそれを理解した上でお前に接するべきだった」

 

「そんな……! 榛名はそんなお気遣いで大佐に迷惑を掛けたくないです!」

 

「……そう、だな。まぁ落ち着け。ここはお互い様という事にしよう。気が利かない俺も悪いが、その、感情的になりがちなお前もこれから自制心を鍛えるという事で」

 

「そんな榛名が明らかに悪いのにお互い様だなんて……。でも分りました。榛名、これから自分自身の心を鍛えて心が強い子になります!」

 

「そうだその意気だ。俺ももっと気が回る男になってお前を失望させない様にしよう」

 

「はい! 大佐、本当にありがとうございます!」

 

「い、いや。まぁ気にするな」(凄いな、感情もそうだが今は気合いの入りようも比叡以上のものを感じる)

 

提督は、自分にとっては些細な事で何やら強い決意を新たにする榛名を見て、実は覚醒すると金剛型の中で最も強いのは彼女なんじゃないかと思った。

 

 

「ところで榛名」

 

「はい?」

 

「この仕事が終わったら昼でも食いに行くか」

 

「食堂に行かれるのですね? 了解しました。お供致します」

 

「いや、そうじゃない」

 

「? あ、やっぱりこちらにお持ちしします?」

 

「いや、そうでもなくてな」

 

「?」

 

提督が言いたい事が理解できず、榛名は不思議そうな顔をする。

そんな榛名に提督はなるべく優しげな表情するよう意識しながらこう言った。

 

 

「外に食べに行くか」

 

「えっ」

 

「二人だけがいいんだが。良いか?」

 

「は、はい……! 喜んで! 榛名お供致します!」パァッ

 

「供とか堅苦しい事言わなくていい。これはアレだ」

 

「はい? アレ?」

 

「……」

 

提督は何やら気難しそうな顔をしていた。

頭では理解していてもあまり口にしない言葉なので、自分からは言い難いのだ。

 

「デートだ」

 

「デ……!」

 

「やはりあまり口に出さない言葉は様にならないな。悪い、恥ずかしい所をm」

 

「はい! 榛名、感激です!」

 

「……そうか」

 

恐らく彼女とケッコンした時以来と思われるキラキラした瞳をした榛名を見て、提督は若干その勢いに気圧されながら自分の選択が間違っていなかった事に心の中で安堵の息を吐くのだった。




久しぶりに可愛い榛名を書きたくなったので。
まぁそれだけですw


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第5話 「イニシアティブ」R-15

扉を叩く音がした。
時刻はもうじき深夜になろうとする頃、ベッドの上で音ながら本を読んでいた提督は顔を上げた。

*明らかな性的描写あり


コンコン

 

「うん?」

 

『大佐、日向だ。夜分に申し訳ない』

 

「日向? 待ってろ」

 

日向の声を聞いた提督は執務室で応対する為に寝間着の上から羽織る物を取ろうとする。

だが、それを見越していたらしい日向が提督が羽織を着る前に扉の向こうから呼び止めた。

 

『あ、いや。執務室じゃなくてできればその……大佐の部屋で……』

 

「ここで? 分った、入れ」

 

ガチャッ

 

「失礼……」

 

「……」

 

提督は部屋に入って来た日向の姿を見てなんとなく彼女の要件を予想ができた。

日向は白色の寝間着を身に付けており、一目で判る程に体のラインが良く出ていた。

恐らく下着類は着けていないだろう。

 

 

「……」

 

日向は暫く顔を赤くして提督の前に座って正座していたが、やがて意を決した様に深呼吸をして気を落ち着かせると真面目な目で彼を見ながら言った。

 

「報告でもう知っていると思けど、その……演習で練度が最高になった」

 

「ああ」

 

「前に言った思うけど、私も大佐と……ケッコン、したい」

 

「……ん、それは勿論構わないがその恰好は?」

 

「ほら、前に言っただろ? 伊勢より満足させて見せるやるって」

 

「別にそんな方法を取らなくても……」

 

「何らかのイニシアティブが欲しかったんだ」

 

「恥を我慢してまでか?」

 

「恥……まぁ、確かに恥ずかしいけど……」モジモジ

 

「うん?」

 

「大佐とは何れこういう関係になりたかったんだ。だから恥ずかしく思いつつも心では……な?」

 

「……」スクッ

 

「えっ? た、大佐?」

 

日向はつい驚いた声を出した。

とういのも提督が不意にベッドから下りると、彼女と向き合うようにその直ぐ近くに、自らも腰を下ろして正座をしたからだ。

提督は、驚いた顔のまま日向が反射的にこちらに向き直るのを確認すると、真面目な顔をして頭を下げながら言った。

 

「その想い光栄に存ず。こちらこそよろしく頼む。指輪を、貰ってくれるか? 日向」

 

「大佐……!」

 

日向は提督の意外なプロポーズのような言葉に、嬉しさの余り涙を溢れさせてその逞し身体に抱き付いた。

 

 

 

「ん……ちゅ…ちゅっ……」

 

日向はベッドの上で提督に抱かれるようにしてキスを貰っていた。

背中に回した手で優しく自分を抱き留めている彼の手が温かくてなとも心地良く感じた。

 

「大佐……ぁ……ん」

 

「……」

 

提督はキスをしながらおもむろに日向の肩を掴む。

 

「あ……」

 

日向は潤んだ瞳で提督を見る。

提督はその目を見つめ返しながら訊いた。

 

「……いいか?」

 

「……」コク

 

日向が頬染めて頷くのを確認し、提督はそのままより近くに彼女を抱きしめる。

 

「……っ」カァァ

 

「きれいだ」

 

「あっ……あっ……ん……」ピクッ

 

提督の優しい触れ方に日向は顔を羞恥に染めながらも、不思議な心地良さと幸せを感じて可愛く小さな声を漏らす。

 

「日向、どうだ?」

 

「うん……良い……はぁ……。ね……」

 

「ん?」

 

「もっと……もっと、大佐の好きにして欲しい。もっと優しくしてほし……い」

 

「分かった」スッ

 

「んあっ……!」ピクンッ

 

より強い刺激に日向は思わず我慢できずに声をあげる。

 

「……大丈夫か?」(これはかなり敏感なようだな……比叡くらいか?)

 

気遣う声を掛ける提督に日向は新たな刺激に震えながらも、濡れた瞳でこんな願いを言った。

 

「だい……じょ……ぶ。ふぅ……はぁ……。だい、じょうぶだから……お願い、もっと……シて」

 

「……」

 

「んっ……♪」

 

提督は日向の期待に応えるように再びキスをし、他の身体への愛撫も継続した。

 

 

「た……っ、はぁ……たいさぁ……。あ……」

 

快感に喘ぎ、甘い声を漏らす中、日向はあるものを発見する。

 

「……」

 

日向は興奮と恥ずかしさから焦点の合わない目をしながらもそれに釘付けとなり、提督の愛撫もそっちのけに自然とそれに向かって体を移動させた。

 

「日向……?」

 

日向の不意の動きに提督は不思議に思って彼女に声を掛けるが、日向はそれが耳に入ってないようで、ついにそのまま今自分が最も興味を持っている場所に辿り着いた。

提督が思わず止めようとしたが、それより早く日向はそこに手を掛ける。

 

「ひゅ……」

 

「……ぁ」

 

日向は初めてそれを間近に見て、すっかり興奮して見入ってしまった。

 

「……」スッ

 

「お……」

 

「んっむ……」

 

またも提督が止めるより先に日向は行動し、提督は彼女の新たな攻めに言葉を詰まらせる。

 

「んっ……んっ……んん……」

 

「く、ひゅう……が……」

 

意外に大胆な日向の攻めに提督は表情を歪ませて快感になんとか耐える。

このままではいけない。

このままでは彼女に対して何もできずに果ててしまう。

焦った提督は自分も反撃と言うつもりはなかったが、日向をより攻める事にした。

 

 

提督は四つん這いになっていた日向の寝間着の裾に手を掛けた。

 

ペロッ

 

だが日向は気付かない。

自分の行為に夢中になって周りが見えていないようだ。

 

「……」

 

提督はそれを確認して更に攻める事にした。

日向はようやくそこで自分の身体に加えられた刺激に気付く。

 

サワッ

 

「!! ……っああ!? た、たい……?」

 

「……いいか?」

 

提督は日向の羞恥心を考慮して敢えて主語のない問いかけを彼女にした。

日向は恥ずかしで涙を流しながらも、提督に自分の一番大切なものを捧げられる喜びからくる幸せに心が満たされるのを感じて小さく頷いた。

 

 

「んっ……きて……」

 

「……ああ」

 

ズッ

 

「く……っ……。あ、あああ……!」

 

「日向、大丈夫か?」

 

「だい……じょう……ぶ。あ……あっ……! だからつづ……うれし……いんだ」

 

「苦しいなら言えよ……」グッ

 

「あっ、あああああ、ん! すきっ好きだ、大佐!」

 

腹の中に今まで感じた事が無い熱を感じ、日向は嬌声をあげて提督と共に果てた。

 

 

 

―――それから1時間程のち

 

時間も既に深夜2時、伊勢が自身の不在に気付く前に身繕いをして部屋に戻る準備をしていた日向に提督が声を掛けた。

 

「日向」

 

「うん?」

 

「お前、その寝間着のまま帰ったら目立つだろう。いや、ここに来る時も良く気付かれなかったもんだが」

 

「あ……。やっぱりそうかな? 確かに、改めて自分の格好を見ると自分でもよくこんな格好でここまで来たと思う」

 

「いくら暖かくてもそのままだと風邪をひくかもしれないし、目立つだろう。これを着て行け」

 

「え……?」

 

提督はクローゼットから替えのシャツを出して日向に手渡した。

それを受け取った日向はちょっと驚いた顔をしてそれを受け取る。

 

「いいの?」

 

「それを上から着て行け。あと、それはやる。返さなくていい」

 

「ほ、ほんと?」

 

「シャツくらいならいくらであるしな」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

提督はそう言って確かに同じシャツばかりしか並んでないクローゼトを日向の前で開けて見せ、一着くらいあげても問題が無い事を彼女に証明してみせた。

日向はそれを見て提督が気を利かせて自分にシャツをくれたわけでない事に、内心彼らしいと苦笑した。

 

 

 

 

 

 

日向が部屋に戻って暫くして、提督もようやく就寝しようとした時部屋の外で小さな音がした。

 

コトッ

 

「うん……?」

 

提督が音に反応して扉の方を見る。

すると彼が確認するより扉の方が先に開き、そこから意外な人物が姿を現した。

 

「金剛……?」

 

「大佐ァ~。やっと終わったノォ~?」

 

『終わった』提督はこの言葉に何故か嫌な予感がした。

 

「金剛お前もしかして……」

 

「あっ、べ、別に覗くつもりはなかったんだヨ? ただ、日向が先に来てただけデ……」ジッ

 

「悪いが相手ならまた次の機会に。時間ももう遅いしな」

 

提督がそう言って金剛を締め出すように扉を閉めようとした時、更に別の声が聞こえた。

彼はその声を聞いてぴたりと体の動きを止める。

 

「あの~、大佐ぁ……」

 

「……比叡?」ピタッ

 

「大佐、私もいます!」

 

「榛名……?」

 

「あの……すいません……」

 

「きりし……?」

 

まさか姉妹揃って夜這いを……?

提督は衝撃の展開に迂闊にも動揺して扉から後ずさりをしてしまい、結果、当然の如く彼女達の進入を許してしまった。

 

「ワタシ達も日向が大佐の room に入った後直ぐ帰ったらよかったんだけどネ。でもォ……」

 

「聞いている内にエンジンかかっちゃいまして……えへへ」

 

「榛名は……榛名は我慢しようとしたんしたんですが……」ジリジリ

 

「申し訳ございません大佐。私の力が及ばずに……」ポー

 

唯一の頼みの綱の霧島までもが理性の限界らしいという絶望的な状況の中で、提督はいつの間にか元いたベッドの所にまで彼女達に追い込められていた。

 

「ま、待て……」

 

「というわけで大佐ァ」

 

「よろしくお願いします!」

 

「大佐……♪」

 

「申し訳ございません……。よろしくお願いします」

 

 

姉妹に精を絞り取り尽くされ、果てには彼女達が満足するまで4人分の相手を要求された提督は、翌朝抜け殻のようにぐったりした状態で机に突っ伏していた。

そのあまりもの脱力様を足柄が見かね、長門や叢雲に召集を掛けたのはまた別の話である。




なんかまだ夏なのに寒いんですよね。
いや、言い訳ですが。
すいませんorz


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第6話 「我が、まま」

久しぶりに提督の基地に新しい仲間が来たようです。
その新しい仲間とは……。
おや? 何やら早霜の機嫌が少し悪いようです。


「朝霜だよ! 宜しくねぇ!」

 

「ああ、よろしくな」

 

元気一杯に挨拶をする少女を提督はいつもと変わらぬ落ち着いた態度で迎えた。

彼女は朝霜。

つい最近、基地の警備任務中に遭遇した敵との戦闘の際に発見した新しい仲間だ。

 

「なんだよぅ、ていと……あ、大佐か! そんな堅苦しい態度取らなくてもあたいはいいぜ?」

 

朝霜は夕雲のかなり下の妹に当たり、早霜の姉でもある。

そんな彼女は夕雲型の中でも長波以上に明るく、かつ、人懐っこさも今のところ姉妹一と言えた。

そんな見ているだけで元気が溢れていると思ってしまいそうな彼女を、何故か早霜は、その日の秘書艦だったのにいじけた様子で執務机の横に体半分身を隠し、様子を窺う様な目でこちらを見ていた。

 

 

「朝霜姉さんズルい……」ボソ

 

「おっ、おっ? なんだぁ早霜ぉ、嫉妬ってやつぅ? 拗ねてんのぉ?」

 

「……」ススッ

 

面白そうにからかってくる姉から逃げるように早霜は視線を逸らすと、今度は提督の後ろに隠れてしまった。

 

「ん? どうした?」

 

「大佐……今日は、早霜が大佐の秘書艦ですよ……ね?」

 

「ああ」

 

「姉にそう言ってやってください……」

 

「こんな間近で俺が代弁する必要ないだろ……」

 

「私、朝霜姉さんは元気過ぎてちょっと苦手なんです……」

 

「えぇ!? それってちょっと酷くね!? ねぇ、なんでよ早霜ちゃん! お姉ちゃんに言ってみ?」

 

ショックを受けたように振舞う朝霜だったが、その様子は大袈裟で面白半分にからかっているのは明白だった。

 

「早霜……ちゃん……。もう、だから姉さんは嫌いなんです」プイ

 

「くぁー、あいっ変わらず可愛い妹だねぇ! ほら、おいでー♪」

 

「え、や……やめて。私は今日は秘書艦なの。大佐から離れちゃいけな……やぁ……」

 

まるで猫みたいにじゃれあっている(少なくとも早霜は嫌がっているが)二人を見ながら提督は、これはもう敢えて親交を深める場は作らなくてもよさそうだなと思うのだった。

 

 

 

時は夕暮れ、窓からオレンジ色の光が差し込み、そろそろ証明を点けるべきかと提督が思っていところに、ノックと同時に返事を確認せずに扉を開けて誰かが入って来た。

 

コンコン

 

「ん? 誰d」

 

ガチャッ

 

「大佐ぁいるー?」

 

「……朝霜か」

 

「おー、いんじゃーん」

 

大佐を見るなりニコニコと悪びれる様子もなく部屋に入ってきた朝霜を、提督は少し呆れた顔で迎えた。

 

「お前、相手の返事くらい待てよ」

 

「えっ、あ、もしかして返事してなかった?」

 

「途中だったが?」

 

「あー……ごめんなさい!」

 

「……」

 

提督に注意をされて、朝霜は直ぐに手を合わせ謝る。

失礼をしてしまった事に関しては故意ではなく、またそれが良くない事だと解ると素直に直ぐに謝る。

提督はそんな朝霜の忙しく変わる態度に、ある意味純粋さを感じ、取り敢えずその場はそれ以上言及しない事にした。

 

「まぁ、いい。次からは気をつけろよ。ここは軍の基地で俺もお前も軍属だ。勤務中は最低限の礼節は意識するようにな」

 

「うん、分った!」

 

「……」(本当に分ったのか……?)ジッ

 

「な、なんだよぅその目は……? ほ、本当に分ったって!」

 

反省の色を確認する前に即答した所為だろう。

やや疑問を含む視線を提督から感じて、朝霜は慌てた様子で直ぐに弁明した。

 

「……まぁいい。それで、どうした?」

 

「んぇ?」

 

「用があったから来たんだろう?」

 

「あっ、そうそう! なぁ大佐」

 

「うん?」

 

「暇だからさ、遊んでよ!」

 

「……」ズルッ

 

提督はその一言で力が抜けてしまい、重くなった頭を慌てて手が額のところで覆って支えた。

朝霜もその様に驚いて提督の傍に駆け寄る。

 

「うわっ、大丈夫かよ」

 

「……お前は」

 

「え?」

 

「お前は暇だからここに来たのか」

 

「うんっ。長波姉と今まで遊んでたんだけどさ、姉ちゃん途中でバテちゃって」

 

「それで俺に代わりを?」

 

「うんっ、ほら、これも親睦を深めるってやつじゃね? 今日だけ特別でいいからさ!」

 

「親睦を……。俺からならともかく、自分でそれを言うか」

 

「元々そのつもりだったんだろ? それならあたいからでも良いじゃん?」

 

「悪くはない。だが、俺はまだ仕事中だ」

 

提督は自分の机に厚さ5cm程に積まれた書類を指さした。

束はこれだけだが、たしかにまだ仕事は残っている様だった。

 

「えっ、まだ終わってないの?」

 

「もう後1時間というところか」

 

「ふーん……じゃっさ、あたいが手伝ってやんよ」

 

「お前が?」

 

「うん! だって何か秘書艦今いないみたいだし?」

 

「いない理由はお前にあるんだがな……」

 

「へ?」

 

秘書艦だった早霜は、朝霜が長波と遊ぶより前に実は最初の提督との初対面の後に更に弄られ、とうとう完全に拗ねてしまい……提督の机の下、直ぐ足元で膝を抱えて座っていた。

 

「……」ジッ

 

足元から提督を見る早霜の目は明らかに『姉に構わないで』と言っていた。

 

「なんでもない。朝霜、気持ちは嬉しいが書類の量もそう多くはないしなここは……」

 

早霜の意を受けて提督が朝霜の申し出をやんわりと断ろうとした時だった。

 

「遠慮すんなって!」

 

ポスッ

 

「お……?」

 

「……!」

 

提督に断りもせず朝霜が強引に彼の膝に座って来た。

早霜の目の前には朝霜の下着が正面に見える形となり、彼女は事態の急展開に恥じらったらいいのか嫉妬したらいいのか思考がそれを処理し切れずに混乱した。

 

「おい」

 

「んぅ?」

 

「俺の膝に座る必要があるのか?」

 

「お? それを確認するって事はあたいが手伝う事にはもう文句はないんだな?」

 

「自分でもさっき言っていただろ……今日だけは特別だ」(早霜すまん。お前の姉は想像以上に天真爛漫だ)

 

「おおっ、やっぱり大佐はあたいが思った通り話が分る男だな! 膝に座ったのはあたいが座りたかったからさ!」

 

「……そうか」

 

「あ、大佐は今まで通り書類手に取ってくれよ。あたいは大佐が書いてない所を書くからさ!」

 

「……そんな器用な事ができるのか」

 

「ふふん、任せな! あたいの器用さは秋雲姉譲りだかんね!」

 

「……秋雲は陽炎型じゃなかったか?」

 

「でも服同じじゃん! あたいは秋雲姉好きだから姉さんでいいの!」

 

「そういうものか?」

 

「うん!」ニコッ

 

提督は朝霜の裏表のない純粋な子供らしい笑顔に苦笑するしかなかった。

 

 

一方机の下では……。

 

「あれはただの布、ただの布……大佐の裏切者……」ブツブツ

 

早霜がどす黒いオーラを放ちながら以前、半泣きで膝を抱えたままの状態で、自分にだけ聞こえる声で誰にともなく怨嗟じみた呟き漏らし続けていた。




さて、復帰します。
自分で復帰すると言う事はそれだけ放置していた、やる気がなかった、筆を放っていたという自覚があったという事です。

理由はまぁいろいろありますが、終わらせる気だったわけではないです。
まぁもう今更って感じですけどねw


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第7話 「くま」

それはいつもと同じ海からの潮の匂いと、暖かい南風から成る南国の朝。
温暖な気候のお蔭で朝に限っては、冬の時の様に布団に包まって寒さを苦痛に感じながら起きる事がない点で恵まれていると言えた。
提督も寒いのが苦手なのでここに来てからは毎日快調に朝を迎えていたのだが何故かこの時に限っては……。


「うわっ、凄い隈。大佐大丈夫?」

 

朝、執務室に入って提督に挨拶をしようとしたところ、秋雲は彼の顔を見てそれを飲み込んで開口一番そう言った。

 

「……」

 

秋雲が言った通り確かに彼は酷い顔をしていた。

髪はいつも以上にボサボサであったし、何よりその目の下には不眠までとは言わずとも明らかに快眠は得られなかったと判る程の濃い隈ができていたのだ。

提督はいつも以上に低い声で声を出すのも苦労する感じでゆっくりと言った。

 

「体調は問題ない。体調はな」

 

「そうは見えないけど?」

 

「睡眠はちゃんと取ってある。だがどうも目覚めがな……」

 

「うん、すっごい隈だよ?」

 

秋雲は本当に心配そうな顔をして提督に近寄る。

そして身長差から届かない腕をつま先立ちまでして目いっぱい上げて提督の額の熱を計らせて欲しいと目で訴えた。

提督もこの時は、体調に問題は無いと秋雲の素直な気遣いを無碍に断る事も無く、屈んでその手を受け入れた。

 

「……うん、確かに熱はないね」

 

「だろう?」

 

「でも顔は凄く調子悪そうだよ?」

 

「寝起きの調子がちょっとな。体が鈍って動き難い感じなんだが時間が経つごとに段々解れていく様に調子は戻ってきてはいる」

 

「へぇ」

 

「正直俺も心当たりがない。そうだな……強いて言うなら寝過ぎた所為で身体が怠い感覚と言ったところか」

 

「ちゃんと寝れたんだよね?」

 

「ああ」

 

「遅くまで一人で仕事もしてないよね?」

 

「ああ」

 

「じゃあ何で隈が……」

 

「分らん」

 

秋雲の問診に答える提督の態度に偽りは無いようだった。

回答こそ普段と変わらない素っ気無さだったが、その短い受け応えには秋雲が先程提督に見せた気遣いと同じ素直さが感じられた。

 

「大佐低血圧だっけ?」

 

「いや、どちらかというとやや高い方だったような」

 

「え? そうだったの?」

 

「ああ」

 

「へぇ、意外」

 

「生活習慣に問題は無い筈だからこれは親の遺伝だと思う」

 

「なるほど」

 

「まあ仕事をして時間が経てばもっとマシになるだろう。大丈夫だ」

 

「ふーむ……」

 

提督はそう言ったが、原因が判らない故に秋雲はまだ彼の調子が気になる様子だ。

故に彼女はその場で閃いた最も無難な方法を取る事にした。

 

「あっ、そうだ」

 

「?」

 

「大佐、まだ執務始めるまで時間があるよね?」

 

「ん? ああ」

 

提督は部屋の時計を見ながらそう言った。

確かに秋雲が言った通り、当然と言えば当然だが、余裕をもって毎朝起きるよう習慣付けているので、執務開始まではまだ30分以上時間があった。

 

「朝食、まだ食べてないよね?」

 

「うん? ああ、今朝はまだだな」

 

「じゃあ、あたしちょっと食堂に行って特別に少しスタミナが付くやつ貰ってくるよ」

 

「なに? いや、そこまでしなくてもいいぞ」

 

「大丈夫だって。別に手の込んだものをお願いしに行くわけじゃないから。ここは体力と食欲に自信があるある御方にちょっと、アドバイスを貰ってだね」

 

「なに?」

 

「まあとにかくちょっと待っててよ。すぐ戻るからさ」

 

「……分った。だが、本当に大丈夫だからな?」

 

「はいはい、分ってるって。そいじゃ、ちょっと失礼しまーす」

 

バタン

 

果たして提督の言葉を聞いているのかいないのか、秋雲は手を軽く振りながらそう言って部屋から出て行った。

それから程なくして、本当に5分程で誰かが扉を叩く音がした。

 

 

コンコン

 

「大佐、いらっしゃいますか? 赤城です」

 

「ん?」

 

「あ、秋雲もいるよー」

 

「ああ、入れ」

 

「失礼します」

 

「お待たせ―」

 

「……?」

 

提督はこの時はっきりと疑問を感じていた。

何故気付け薬を取りに行ったような様子だった秋雲が赤城を伴ってきたのか。

提督にはそれが判らなかった。

そして、秋雲に呼ばれたらしい赤城は、そんな彼の疑問に答える様に一歩前に出て来て真面目な顔をして言った。

 

「大佐、体調が優れないそうですね」

 

「ん、まあ寝起きがちょっとな」

 

「そうですか。秋雲ちゃんが言った通りですね」

 

「でしょ?」

 

「ところで何故お前が?」

 

「あれ? 秋雲ちゃんが言ってなかったですか? こういう時は体力と食欲に自信がある人に助言を貰うって」

 

「それでお前か」

 

提督はここでやっと納得した。

納得はしたが、同時に秋雲の判断をやや不審にも思った。

見たところ彼女に呼ばれた赤城は何も持っている様には見えない。

とすると本当に助言だけを貰ってきたのだろうか。

だがだとすると間接的に伝えたらいいだけなのに何故本人を直接連れてきたのか。

提督はその疑問を秋雲に確認しようと目で訴えが、なんとその事に関しては秋雲もよく判って無い様だった。

見ると秋雲は彼に向って拝むように手を差し出して自分も理由が判らない事を仕草で伝えていた。

 

「私、確かに食欲や体力には自信はある方ですが、別にそれを自慢にはしていません。ですが、今回に限ってはそのアドバンテージを有効に使わせて頂こうかと思います」

 

「? あ、ああ」

 

「?」

 

そして更に前に出る赤城とその行動の予測ができずに不思議そうな顔で見守るだけの秋雲。

提督も大体は秋雲と同じ心持だったが、何故かこの時、彼はその疑問と一緒に僅かだが嫌な予感を感じていた。

そして、その予感(あくまで個人的な価値観によるもの)は的中した。

 

「失礼します」

 

「っ?!」

 

「えっ」

 

秋雲は驚きの声を上げた。

そして提督はその声も上げる事が出来なかった。

それもその筈、彼は更に急接近した赤城に頭を抱かれ、やや強引な形で熱い接吻をされたからだ。

 

「……」

 

「えー……」

 

「ん……♪」

 

事態が理解できずただされるがままに固まる提督とご機嫌な様子の赤城。

そして秋雲はそのあまりにもアバウトで直情的な行動に若干呆れた顔をしていた。

 

「……ふぅ、これで元気になりました? それではありが……いえ、失礼しますね♪」

 

バタン

 

『~♪』

 

 

「……」

 

「……」

 

扉の向こうから遠ざかる楽しそうな鼻唄を聞こえる中、部屋に残された二人はただお互いに気まずそうに沈黙していた。

そしてそれから1分ほどした後に提督の方から口を開いた。

 

「……食事にするか」

 

「あ、うん」

 

「あ、そのさ」

 

「気にするな。別に害意があったけじゃないしな」

 

「うん……」

 

「どうした?」

 

「あ、ううん。何でもないよ」(これならあたしがやっても良かったじゃん?)

 

秋雲の密かな後悔にも似た疑問に提督が気付くはずもなかった。




はい、お久しぶりです。
以前から機会がある場で行っていた通り、3月から艦これを再プレイしたので、本作も再び始める事にしました。
いやぁ何というかもう……すいません語ると色々あり過ぎるのでこれくらいにしておきます(苦笑)

取り敢えず幸いにもまだ本作に関心ある方がいらっしゃったら改めて宜しくお願いします。


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第8話 「邂逅」

海風と江風。
この姉妹の駆逐艦は姿こそ見かける事がなかったが実は以前から提督の基地に所属しており、その見かけない理由とは他所の提督の基地に研修に行っていた為であった。
そしてこの度、二人は長期の研修を終えて提督の基地へと帰って来たのだった。


「グラーフツェッペリン、瑞穂、ザラ、鹿島、嵐、萩風、風雲、沖波、清霜、照月、初月、リペッチオ、伊401。以上が海風が研修先の提督の基地で見かけた艦娘の中でこちらにいないと思われる艦娘です」

 

「……」

 

提督は目の前で研修の報告をする海風の最後の内容をやや渋い顔をして聞いていた。

というのも海風と今は自室で休んでいる江風とはあまり良好と言える関係が気付けていない為だった。

それはどちらかに原因があるというように単純なものではなく、少々特殊な事情によるものであった。

 

「大佐、聞いてますか?」

 

「……ああ」

 

ややトゲを感じさせる声で海風は提督に声を掛けた。

態度こそ真面目で表情も真顔だったが、彼女が醸し出していた雰囲気ははっきりと分かるほど険悪だった。

 

海風と江風が提督の基地に着任したのは今から何年か前の事で、年数だけで言えば実は一般的に古株と認識されている金剛ら初期に着任した戦艦の娘より長い。

そんな彼女達が何故今まで長期の研修へと赴き1年も帰ってこれなかったのか、それは提督の意思ではどうにもならない軍上層部の意向によるものだった。

 

研修自体はそれほど珍しいものではなく、行われる理由は艦娘の見識の拡大と能力の向上など至って真面目なもので、機会と提督同士の了解さえ合致すれば割と頻繁に行われているものだった。

期間自体も所属する艦娘が元いた場所が恋しくならない程度に短いもので、今回の海風達のようにその期間が1年にも及ぶ事は稀も稀、先ずあり得ない長さだった。

 

「大佐、海風は正直言って失望しました。1年振りに帰って来たというのにあちらにはいた艦娘がこんなにこちらにはいないなんて。いくら大佐があまり強硬な作戦を好まない方と言ってもこの戦力差はちょっと慢心が過ぎるのではないでしょうか?」

 

「……」

 

「いえ、別に海風は怒っていませんよ? 別に着任して殆ど時間もたっていないのにいきなり他所の基地に研修に行かされて、その上その期間が1年まで伸びた事なんてちっとも気にしていませんから。その恨みつらみを今ぶつけているわけではないですよ?」

 

しっかり恨んで、もといいじけている様子だった。

当初比較的ゆるやかに基地の戦力を整えていた提督の基地は、その影響からか当時、戦力と言える艦娘は低コストで揃える事が出来る駆逐艦をメインとしていた。

当然それ故にその数は多く、その事に目を付けた提督が所属しているエリアの統括責任者は、提督よりまだ若く経験も浅い新人の提督を助ける要員として研修の名目で駆逐艦を派遣する事を指示してきたのだ。

提督はまだ少なかった貴重な火力要因である戦艦を代わりに出す事もできず、かといってメインの戦力である駆逐艦をその分多く出す事も厳しかったので、なんとか責任者と交渉して派遣人数を二人だけにまで絞ってもらい、その了承を得て二人を派遣したのだった。

 

「……」(そういえばあの時は海風も今より大人しめで基地を出る時も“すぐ帰ってきますね”とか言っていたか)

 

提督は改めて目の前の不機嫌そうな顔をした海風を見た。

その結果がこれである。

基地に帰るなり江風はふてくされた顔をして1年留守にしていた自室に閉じこもって不貞寝し、そんな妹の代わりに同じ事をしたい思いを我慢して海風はこうして彼の前にいるのだ。

 

「大佐、話を聞いていますか?」

 

「ん、ああ、悪い」

 

「……」

 

海風はまだ恨みがましそうな目で提督を見ていた。

報告が済んだというのに退室の許可も求めず、まだ何か言いたそうに、言いて貰いたそうな顔をしてそこに居た。

提督は気を取り直すように一度咳払いをすると海風を真っ直ぐ見ながら言った。

 

「ご苦労だった」

 

「……それだけですか? その言葉は私にだけですか? 江風には?」

 

「勿論あいつにもだ。この場に居れば一緒に掛けてやるつもりだった」

 

「……私が何を言いたいのか解ります?」

 

「1年――」

 

「そう1年です。私、江風と一緒にあちらの提督に引き抜かれそうになったんですけど」

 

「……そうか」

 

「それでも江風とここに戻ってきた理由、解りますか?」

 

見ると海風は目に涙を浮かべ、顔を紅潮させて泣くのを我慢していた。

提督はそれを見て全てを理解した。

彼は帽子を脱いで彼女の前に正座した。

その行動は海風にとっては予想外だったらしい。

提督の突然の行動に驚いて思わず半歩後ずさった。

 

「え? え?」

 

「やむを得ない理由だったとはいえお前の憤りはよく解る。そしてそんな思いを我慢して研修先の提督の勧誘にも応じずこうして帰ってきてくれたお前達の忠義心には頭が下がる思いだ」

 

「た、大佐……?」

 

「今は上司も部下も関係ない。そのうっ憤を思いっきり俺にぶつけるといい」

 

「え」

 

「抵抗などしない。だが流石に一方的に殴ったりすると責任問題を問われた時お前が窮地に立たされるからな。だからここはどうか3発のみで何とか憂さを晴らしてくれ」

 

「ちょ」

 

「ああ、江風か? そうだなあいつも連れてくるといい。それでもやはり二人で3発くらいの方がいいか」

 

「いや、だから……」

 

「? どうした?」

 

提督はそこでようやく海風が若干引いて自分を見ている事に気付いた。

どうやら何か対応を誤ったらしい。

自分なりに誠意を表わす形として責任を取ろうとした筈なのだが……。

 

「あ、あの大佐。もう、もういいですから」

 

「なに? いや、そういうわけにもいかんだろう?」

 

「いや、私が求めていたのはそういう事じゃなくてですね」

 

「もっと怒声を吐きだしたいか? なら場所を考えねば……」

 

「いや、そうじゃなくてね?!」

 

「?」

 

海風は彼女の考えが解らずキョトンとする提督にこれでは埒が明かないと取り敢えずその場は一時撤退する事を決めた。

少し無理をしてキツイ態度を取れば反省して優しく迎えてくれると思ったのにこれはとんだ計算違いであった。

だが海風は良くも悪くもこの結果に少し安心もしていた。

あまり話こそできなかったが提督から受けた朴卒とも愚直とも取れる人柄はあの時から変わっていなかったようだ。

1年待たされ世話になった提督からの誘いを断って戻ってきた甲斐を海風はその時感じていた。

当時と変わらない人柄と印象、だからこそやはり自分の最初の提督は信頼できると思ったのだ。

やはり自分の提督は彼だけだと。

 

(これは江風を連れて一回無茶な我侭言ったって罰は当たらないよね。見たところ今なら何でもお願い聞いてくれそうだし。この期を逃す手は無いよね!)

 

海風は自室に向かいながら、そこでいじけているであろう江風をどう説得して部屋から連れ出し、提督に思いっきり甘えてやろうかと考えながら、真面目な性格からは珍しく悪戯っぽい笑みを楽しそうに浮かべるのだった。




はい、艦これを休止する直前にイベントで手に入れた海風と江風の登場のお話でした。
内容の関係上、江風が名前しか出ていませんが、それは後に出番を考えるとして、それよりも二人を登場させる為に考えたやや強引な設定が難あったかなと思っています(苦笑)


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第9話 「余裕」

提督はつい先ほど夕張から受け取ったある報告書を見て、考え込むように口元を手で覆っていた。
その様子に秘書艦用の事務机から眺めていた磯風は興味を持ち、そそくさと椅子から下りると提督に近付いて訊いた。


「……」

 

「大佐、どうかしたか?」

 

「ん、ああ、ちょっとな」

 

「磯風でよければ力になるぞ?」

 

「いや、特に困っているわけじゃない」

 

「そうか」

 

「ああ」

 

「……」

 

「ふむ……」

 

提督はそう短く答えて再び手元のバインダーに挟まれた書類に目を通し始めた。

磯風はそれ以上どうすることもできず、ただ横で提督を見ていたのだが……。

 

「ん?」

 

提督はふと服を引っ張られる感覚に気付き下を見ると、そこには磯風が口にこそ出さなかったが子供っぽい顔で何か教えて欲しいと目で訴えていた。

 

「……知りたいのか?」

 

「……うん」

 

「この紙の内容がか?」

 

「……うん」

 

磯風は歳相応の少女の様な仕草で二度可愛く提督の問いにそうこくりと頷いた。

提督も別に書類の内容を隠していたわけではないので磯風の意思を確認するとすんなりと彼女にバインダーを向けてやった。

 

「ん? これは資材のデータか?」

 

「ああ」

 

「これを見て何を考えていたのだ? 見たところどれも枯渇しているとは思えないが」

 

「まあそうだな」

 

「? 何か問題が? 困窮しているのか?」

 

「いや」

 

「……」

 

「……おしえ……て……」

 

今度は目に涙を浮かばせ始めた磯風に提督は流石に焦った。

磯風は普段の言葉遣いと凛とした態度から性格は男勝りだと思っていただけに、こう意外に素直な面を見せられると対応に困るのだ。

 

「分った。分ったから、な?」(これは俺を信用しているという事でいいんだよな?)

 

「うん……」

 

磯風はまるで親にあやされる子供よろしく目尻に浮かんだ涙を拭うと、いつもの凛とした真面目な顔に戻って紙を見ながら提督の言葉を待った。

 

「磯風、確かにこの資材の保有量に特に問題はない」

 

「だろう?」

 

「だが全体に見るとどうだ?」

 

「うん?」

 

「各資材の全体的な割合だ」

 

「ん……なるほど、そうか」

 

「分ったか?」

 

「勿論だ」

 

磯風はようやく提督が考えていた事が解ったようで、誇らしげながらもどこかやはり子供らしく自信ありげに頷いた。

そして自身の小さな手である資材の一つを指しながら言った。

 

「資材全体の量から見て弾薬の量が少ないんだな?」

 

「その通りだ」

 

「ふむ」

 

磯風の言った通り資材自体はどれも量的には基地の運営に困る程の量というわけではなかった。

だが個々の数値に注目して見てみると、弾薬以外の資材が保有を許されている限界の量に近いのに対して、弾薬だけが7万程と、他の資材の3分の1以下の数値だったのだ。

磯風はそれを表す個所に注目しながら提督に訊いた。

 

「大佐、これはどうした事だ?」

 

「これは昔からのこの基地の弱点だ」

 

「弱点?」

 

「ああ、うちはどうも攻勢より守勢に重きを置いた作戦を取る所為か、重要視する資材もそれを維持するものを意識しがちなんだ」

 

「ふむ、なるほど。油はスタミナ、鋼材とボーキは艦の耐久力の維持、守勢を得意とする大佐の先方には必要なものだな」

 

「ああ、おかげで弾薬もそれほど消費する事無く……まあ時間は多少かかるが堅実な成果も得てこれたわけだ」

 

「だがその成果が戦果として地味でばかりでは上の覚えもあまり良くないのではないか?」

 

「そうだな。だが何か問題を起こしているわけではない。いざという時に迎撃できる力を常に保持していること自体はそう責められる事でもないしな」

 

「上からしたら扱い難くて厄介だな」

 

「まあな」

 

提督は磯風の皮肉に苦笑すると自分の机に戻り深く腰掛けた。

磯風もそれに倣うように自分の事務机へと戻る。

 

「だが別に命令自体には背いているわけではないし、大規模な作戦遂行時には、その時に限ってはうちもできる限りの事はやっているつもりだ」

 

「うむ」

 

磯風はその言葉は否定する事も冷やかす事も無く厳かに頷いて、提督の机の近くの壁に掛けられたいくつかの勲章を見た。

それは決して多くは無かったが、確かに提督が軍人として海軍の為に貢献し、それが評価された証拠だった。

 

「だが大佐よ」

 

「ん?」

 

「そんなに常日頃から気になるなら、一度大規模に弾薬だけを貰える遠征に集中してはどうだ?」

 

「勿論それは考えた事はある」

 

「え? では何故実行しない?」

 

「……磯風、遠征で主に活躍する艦種はなんだ?」

 

「勿論、私たち駆逐艦だな」

 

「そうだ。そしてここが肝心な部分なんだが、その資材の差を完全に埋めるのにかかる時間は総じてどれくらいだと思う?」

 

「ん? それは、そうだな……ふむ……。ひとつ、いや三ヶ月くらいか?」

 

「1年だ」

 

「えっ」

 

「それも主力艦隊以外の全艦隊を間断なく入れ替えで遠征に行かせてそのくらいだ」

 

「……」

 

「駆逐艦の数は艦隊の多くを占めるからな。全力で回せばそのくらいで済む、とも言える」

 

「うむ……」

 

この問答に磯風は何か厭な予感を感じていた。

1年、軽く言うが行うは難し、だ。

遠征だけに集中するならそう負担にもならないだろうが、それに合わせて通常の基地の仕事もするとなると……。

 

「さて磯風、その作戦を実行した場合基地でのお前たち駆逐艦の私的な時間はどれくらいにな――」

 

「大佐、この話はここまでだ」

 

いつもより素早く、物を言わさぬ迫力で磯風は提督の言葉を遮り、話の中断を宣した。

提督もそれを予測して多様で再び苦笑するとそれ以上は何も言わなかった。

 

「大佐」

 

「うん?」

 

「その、あれだ」

 

「私はどちらかというと遠征より任務を遂行出来たら直ぐ帰投できる実戦が好きだな」

 

「……そうか。まあそこは、皆平等にな」

 

「ああ、分っておる」

 

そう言って少し顔を赤くして俯きながらいう磯風の頭を、提督は優しく撫でてやった。




磯風はうちにいるはず。
いるはずなのにあまり使った記憶がないので、あんなに特徴的なキャラをしているのにうちの艦隊ではあまり存在感がないんですよね。
故にせめてここでは、と思ったわけです(笑)


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第10話 「トイレ」R-15

その日は大きなハリケーンが提督の基地がある地域を直撃した日だった。
嵐の影響で出撃や遠征と言った任務はこなせず、その日に限っては基地は警戒に必要な人員だけを割いて残りは各自室で待機の任務に就いていた。

*性的描写はありませんが、それでもとても人を選ぶ内容です。


夜、基地は窓を叩く暴雨と雷の音以外何の音もなく静まり返っていた。

時間自体はまだそれほど遅い時刻とは言えなかったが、天候の所為か敢えて部屋から出る者も殆どなく、皆は自室で思い思いの時を過ごしている様だった。

 

出撃任務が出来ない事もあってその日は執務に集中でき、いつもより早く仕事を終える事ができた提督は、基地の外を警戒している艦娘の事を気に掛けて、自らは内部の見回りをしていた。

そんな時に彼の向かい側から歩いてい来る者がいた。

 

「大佐、こんばんは」

 

「明石か、どうした?」

 

「ええ、ちょっと」

 

明石は提督の問いには性格に応えず少し言いよどむ態度を見せた。

提督はそれを見てなんとなく彼女の用を察した。

女性が直接言うには躊躇してしまう、奥ゆかしい日本らしさから導かれる答はそう多くは無かった。

つまりはそういう事だろう。

 

「そうか、じゃあな」

 

「あ、はい」

 

何の問題もなければその時お互いは軽い挨拶を交わしてすれ違うだけで事なきを終えるはずだった。

だがその時……。

 

ピシャッ、ゴロロ……!

 

ブツッ

 

「ひっ」

 

眩しさで思はず目を瞑ってしまうほどの雷が鳴ったかと思うと、同時に基地の照明が全て消えた。

明石はもわず小さな悲鳴をあげた。

 

「停電か。今日は荒れてるからな」

 

「て、停電ですか」

 

「ああ、だが大丈夫だ。ここは一応軍事施設だからな。電気の動力源は他にもある。少し待てば復旧するはずだ」

 

「あ、そうでしたね。うん、大丈夫な筈、うん……」

 

薄暗闇の中何か心細そうにしていた明石だったが、提督は特には気にしなかった。

突然暗闇に襲われれば誰でも多少は動揺するものだろう。

ならここは敢えてその事に気付かないふりをするというのも気遣いというものだと考えたのだ。

だが何故か直ぐに復旧するはずの電気は二人が暫くその場に佇んでいても復旧する様子がなかった。

 

「ん? ここだけ電気がきていないみたいだな」

 

「えっ」

 

明石がショックを受けたような小さな声を出すなか、提督が窓から他の建物を見てみると、今自分達が居る場所以外の個所は明かりが点いているのが確認できた。

 

「送電線に何か異常があったのかもしれん。少し様子を見てく――」

 

「あ、あの!」

 

「ん? ああ、そうか。こういうのはお前に行ってもらった方が良さそうだからな」

 

「え?!」

 

「悪いが、頼む」

 

提督がそう言って明石の肩を叩きその場を去ろうとすると、予想外にも逆にその肩を明石に掴まれて歩みを止められた。

その力は思いの外強く、提督は危うく彼女の力に逆らった影響で転びそうになった。

 

「明石?」

 

「……」

 

提督が後ろを振り向くとそこには薄暗闇の所為でよくは判らなかったが、肩を震わせていつもより心なしか小さく見える明石の姿があった。

明石は何かを恥じらうように目を逸らしているような素振りを見せながら、提督に小さく言った。

 

「あ、あの、笑わないで下さいね?」

 

「? ああ」

 

「私、暗いのが、私、苦手で……」

 

「なに? そうなのか?」

 

「は、はい。だ、だから……一人でトイレまで行くのが怖くて……」

 

「……」

 

意外であった。

誰しもがそうというわけではなかろうが、工務に強く、それ以外でも結構頼りになる事が多い明石に対して、提督はその関係から明石に頼もしい印象を持っていたのだ。

故に彼女に意外にもこんな苦手があるとは小さな驚きだった。

 

「夜戦とかするだろう? 暗闇にもある程度慣れてるんじゃないのか?」

 

「い、今は艦装何も持ってないので……」

 

「なるほど、戦闘とは根本的に比べられないか。元々暗闇が苦手だったんだな」

 

「は、はい……情けない話ですが。あと、それとかみな――」

 

ピカッゴロゴロゴロ!

 

「ひあうっ!」

 

「……雷も苦手か」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「謝る事はない。しかしトイレか……誰か起きてるの奴をよん……」

 

「いや! 一人にしないで!」

 

今度は肩ではなく服の裾を掴まれた。

先程より幼さを感じる仕草から明石の余裕の無さがよく分った。

 

「む……」

 

「あ……ご、ごめんなさいっ」

 

「分った、行こう」

 

「ほ、本当にすいません……」

 

「いや、俺もここまでとは苦手だとは思わなかった。気にするな」

 

「は、はい。ありがとうございます……」

 

「手ではだめか?」

 

「え?」

 

明石は提督の言葉を一瞬理解できてい無い様だった。

提督はキョトンとする明石が掴んでいる自分の服を指しながら空いている方の手を彼女に差し出した。

 

「このままだと少し歩き難いしな、それに手を握った方が安心すると思うが?」

 

「あっ、そ、それでいいです! お願いします!」

 

「よし、行こう」

 

 

程なくして二人はトイレの前に着いた。

ここでは運が良いのか悪いのか、人がいる気配はなく、その所為か暗所で見るトイレは思いの外その手の雰囲気があるように見えた。

これには提督も少し寒気を覚え、明石に至ってはもう言葉すら出無い様だった。

 

「……」(見事に真っ暗だな。状況が状況なだけにこう言ってはなんだが雰囲気も割とあるな)

 

「あ……あ……」

 

「一人では行けないな?」

 

明石の恐怖に震える様を見て提督は気を利かせて訊いた。

明石はそれに対して即答。

無言ながら必死の形相で何度もコクコクと頷いた。

 

「……!」

 

「仕方ない。見えないようにするからドアの隙間から俺の服を掴んでろ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「それじゃあ行くぞ。一番奥だ」

 

「お、奥ですか?! もう暗くて何も見えませんよ?!」

 

明石の言う通り、提督が行こうとしている行き先は暗闇に閉ざされており、窓もない事もあってかなり不気味な雰囲気だった。

 

「手前のだと和式なんだ。この基地は古い施設を一部改装したものだから、トイレとかまだ一部、新しくできてない所あってな」

 

「でもだからってなにもわざわざ一番奥になんて……」

 

「一番奥にはお前が独自に設備したバッテリーで駆動するウォシュレットがあっただろう?」

 

「あっ」

 

「まだ停電して時間が間もないから、今なら使えると思うが」

 

提督の言葉で明石は何かを思い出したらしく小さな声を漏らす。

基地のトイレはごく一部を除き、殆ど様式で、ウォシュレットタイプになっているのだが、その唯一つだけ、明石自身の趣味も兼ねてバッテリーでも駆動する様に改造したものがあるのだ。

勿論防水加工もバッチリ、それに暗所でも便座の位置と周囲が判る様に小型の点灯パネルまで設けてある。

自動感知式なので無駄に電気を使う事は無いが、それでも機能維持の為に電気は常に消費されている。

早く利用した方が良いと示唆する提督の判断は間違いではなかった。

 

「怖いだろうが、あそこまで辿り着ければ何とかなるだろう。お前だって男が近くにいる状態で和式を使うのは流石に嫌だろう?」

 

提督の言う事はもっともである。

だがしかし……。

 

「……」

 

明石は再び奥が全く見えない暗闇を見た。

 

「……!」

 

やはりダメだった。

いくらウォシュレットがバッテリーで動くと言っても、それを使う為にああそこまで行くとなると、かなりの勇気の必要を迫られた。

距離にして僅か10メートル足らずだったのだが、それでも彼女には奥に続く暗闇が暗黒の世界と同じに見えたのだ。

故に彼女は決断した。

羞恥で真っ赤な顔をしながらも信頼している提督だからこそ頼めるのだと自分を納得させて。

 

「わ、和式……で、いいです」

 

蚊の鳴くようなか細い声で明石はぽつりと言った。

声は小さかったが、薄闇に包まれた静かな場所にいた事もあってその言葉ははっきりと提督に聞こえた。

流石に提督は困った顔をしていた。

 

「だが、それだと服は持てないぞ」

 

「え、ええ、だから……し、シてもらえ……ますか?」

 

「……おい、まさか」

 

「お願いします……もう結構我慢してて……」

 

「いや、それは流石にな……」

 

「大佐だからお願いして……るんです。ほん……と、おね……がい……」

 

羞恥に震えながら懇願する明石の様子は確かに真に迫ったものが感じられた。

内股になり、耐える様に太ももを擦り合わせている様から察するに、今見せている震えは羞恥以外のもあるだろう。

提督は観念した。

これ以上彼女に負担を掛けて最悪の事態を避けるのを優先する為に。

 

「……分った。後悔するなとは言わない。だが耐えてくれよ?」

 

「は……はいっ」

 

提督の承諾に明石は窮地を救われたような顔を見せた。

提督もその顔を見て彼女が本当に限界が近かった事を悟った。

 

「脱いでいる間は後ろを向いている。脱ぎ終わったら合図を」

 

「はい……」

 

ゴソゴソ、パサ……

 

静かな薄闇の中で、ドアこそ半開きだが空間が狭い事もあって明石がその準備をしている音が明確に響いた。

 

「お願いします……」

 

「わかった」

 

明石の合図を受けて提督は振り向くと、後ろから明石の膝の裏に手を射し込んで持ち上げた。

親が子にアレを促す格好であった。

 

「悪いが音が聞こえるのだけは我慢してくれ。あと、位置はこれでいいか?」

 

「はい、分かってます……。あ、もうちょっと低く、そう……それで少し前へ……。あ、それでいいです」

 

「大丈夫か? よし……」

 

「……くっ……」

 

提督の合図で明石は我慢していたものを解放した。




中途半端に終わった感じは、R18版で描写の追加と続きを加える事で補完するつもりです。


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第11話 「欲求」R-15

夜が明ける直前。
その日、提督の部屋に敷かれた布団には彼だけでなく、もうひとつ誰かが入っているような膨らみがあった。

*明らかな性的描写あり


「ん……」

 

気だるい疲労感を僅かに感じながら足柄は目を覚ました。

 

「……」

 

彼女のすぐ横には静かに寝息を立てている愛しの上官がいた。

足柄は彼の顔を見て眠気から覚めると、幸せそうなほほ笑みを浮かべて上体を起こした。

上半身を覆っていた布が滑り落ちて足柄の白い裸体が露わとななったが、足柄は気にした様子も無くそのまま四つん這いでそっと提督の胸元に近付いていった。

その時に下半身も膝をついて起こした事で腰元を覆っていた布も滑り落ち、上半身に続いてついに足柄の全ての裸体が露わとなった。

桃のような丸い尻を揺らして足柄は提督を起こさないように細心の注意を払って屈むと、提督の胸に顔をそっと置いて頬ずりをした。

 

「ん……♪」

 

すりすりと犬や猫が主人に甘えるように眠っている提督の胸に足柄は頬を擦りつけて、その温もりと心地良さを満喫する。

 

「……」

 

外からは僅かに顔を出し始めた太陽の朝日が差し込もうとしていたのに、しかしそれでも提督は目を覚ます気配がなかった。

足柄はその穏やかな寝顔を見て『あっ』っと小さく声を漏らして何かを思い出した顔をした。

そういえば昨日は提督は仕事で大分疲れていた様子だった。

だがそれでも甘えたくなって自分を求めてきた足柄の求愛に嫌な顔一つせず応じてくれた。

その時にもう少し優しく微笑んでくれたり甘い言葉を掛けてくれればより気分が蕩けていただろうが、そこはそういう柔軟さを上手く出せない提督だった。

まぁそんな事は前から分かっていたし、それこそ提督らしいというものだったので足柄はちっとも気にはならなかったが。

寧ろ床ではそんな事気にならないくらいに情熱的に、愛情いっぱいに自分に愛と快感を与えてくれた。

 

「……ん」

 

昨夜の事を思い出して提督に引っ付いていた足柄は今起きたばかりだというのに身体に熱い波が走るのを感じた。

提督の胸に手を置いてその鼓動と温もりを感じていた足柄は彼の身体を覆っている布の下の方を見る。

 

「……」

 

体の向きを変えて目的の個所に辿り着いた足柄はその部分の布をそっと捲くった。

提督も自分と同じく裸だったので直ぐに期待していたモノが彼女の目の前に現れた。

足柄はそれに慎重に手を伸ばしてやがて顔も近付けた。

 

「ん……ぺろ」

 

当然だが寝ているので提督のソレは通常の状態のであり、だったが逆にその事が足柄には新鮮で面白くも感じた。

そして可愛らしさも込み上げて来て足柄はソレに対する『ご奉仕』はより情熱的なものとなっていった。

 

「ん……む……。は……ちゅっ」

 

昨夜自分をあれほど乱して愛してくれた提督。

足柄は夢中でご奉仕をしている内に今行動を実行している個所とは“違う所”にも無意識に手を伸ばしていた。

 

「あ……♪」

 

無意識でも生き物、提督も例外ではなく気持ち良く感じているらしい。

足柄はその変化に喜びの色を目に浮かべた。

 

(嬉しい。大佐、感じてくれているんだ。今、どんな夢見てるんだろ……)

 

自分の奉仕という名の愛撫で提督が感じてくれている。

その事によって提督がどんな夢を見ているのか。

それを想像した足柄は気恥かしい期待と嬉しさに心が温かくなるのを感じてより愛撫に力を入れ始めた。

 

「んっ……んっ……ちゅっ、ちゅっ……」

 

提督の変化に足柄の奉仕を更に過激なものとなり、彼女は半ば我を忘れて一心不乱に行為に没頭した。

そしてそれから十数分後……。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

そこには裸で大の字になって体力を使ったことによる疲労で熱い息を漏らしている足柄の姿があった。

あれからかなり頑張ったが提督は果てる事は無かった。

それが個人的に少し残念というか悔しかった。

現に提督自身は足柄の努力余韻が抜けていないのか彼女の横で元気なままだ。

まあこれはきっと提督は夢では果て難い質なのだろう。

そう自分を無理やり納得させて開き直った足柄は、再び提督と自分を横に除けられていた布団で覆うとまたぴったりと彼に抱きついた。

 

「……っ」

 

その時提督の足に絡めていた辺りでひんやりとした感触を感じて、足柄は小さな驚きの声を漏らした。

感触を感じた所は直ぐに予想ができた。

足柄が恐る恐るその部分に手を伸ばしてみると……。

 

「あー……」

 

足柄はそれを見てやや自嘲気味な声を漏らした。

提督に奉仕しているうちに自分も感じていたらしい。

布団から抜いた彼女の手にははっきりとその証拠が付いていた。

 

(私ったら……)

 

足柄は顔を真っ赤にして恐る恐る提督の顔を見る。

 

「ほっ……」

 

提督はまだ熟睡しているようだった。

まぁ、起きたら起きたでそれを口実に甘えるつもりだったのだが。

 

(無抵抗な人に悪戯して私ったら何感じてたんだろ……)

 

その時、心の中で反省してた足柄の脳裏にある想像が浮かんだ。

 

(これがもし逆に私だったら……?)

 

足柄は熟睡して無抵抗な自分が提督に好きに愛される様を想像した。

それはもう吸ったり揉んだりいろいろと、力が入っていない自分の身体を好きに弄られる様を。

 

「……っ」

 

足柄は三度身体に鋭い快感の波が走るのを感じた。

しかもそれは今日今までの中で一番のものだった。

 

(しまった……想像するんじゃなかった……)

 

そんな事を想像してしまって後悔した足柄だったがもう遅かった。

彼女には既に新たなスイッチが入ってしまった証拠とばかりに身体に明確な変化が起きていた。

それもさっき自分でその変化を確認した時の比ではない程のものだった。

 

「はっ……はっ……」

 

足柄の熱い視線が再び提督へと向く。

もう駄目だ。

もう我慢できない。

 

快感に身体が暴走しがちながらも、それでも提督を起こすまいと静かに再び身体を起こした足柄は、愛欲に濡れた目で熱い息を吐きながら提督に覆い被さった。

そして今度は直接、お互いが愛を感じられる行為に行動を移すことにしたのである。

足柄は自分の中に直接感じる変化に身悶えした。

 

「あ……大佐……大佐……!」

 

 

それから1時間ほどのち……。

 

「……」

 

「大佐どうしたの?」

 

朝起きてから提督はどこか睡眠が不足しているように気だるげな顔をしていた。

足柄に声を掛けられた提督は鈍い疲労感にまどろむ頭を掻いて答えた。

 

「いや、昨夜は少し無茶し過ぎたかな、ってな」

 

「えっ?」

 

それを聞いて足柄は顔を真っ赤にしてコーヒーを入れようとしてたカップを危うく取り落としそうになる。

だがすんでのとこでキャッチして事なきを得てホッっと安堵の息を漏らす。

 

「きゅ、急なに? どうしたの?」

 

「いや、悪い。確かに昨日は手を抜いたつもりは無かったんだが……」

 

「そ、そうよ。な、何も問題なかったし、私も凄く……」

 

「まだ30なんだが。これが歳ってやつなんだろうか」

 

「えっ」

 

思いもよらない処で思いもよらない結論を導き出そうとしてる提督に、足柄はその時本当にどうフォローしたらいいか悩んだ。

まさか彼が寝ている時に無抵抗な提督の身体に手を出してお互いに慰めたのが原因と言えるわけもなく。

 

「そ、そう言う事もあるわよ。でも絶対多分歳なんてことはないと思うわ!」

 

「ん?」

 

何故か顔を赤くして焦る素振りでそういう足柄に提督は不思議そうな顔をした。




R15版投稿です。
そして今、演習相手にどう向かうか向かうまいか考え中ですw
明石が修理してるっぽいから装備は外しているのかも。
いやしかし……だがもしかしたら……。


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第12話 「来訪」

朝、寝坊した加賀の代わりに一時的に秘書艦を代わっていた満潮からの報告に提督は意外そうな顔をした。


「元帥が視察に来る?」

 

朝、満潮の一方に提督は眉をピクリと上げた。

 

「そうよ。今日の昼には来るみたい」

 

「また急だな」

 

「そうね。でもこの人前からそういう感じみたいよ?」

 

呆れ顔の満潮に怪訝な顔をする提督。

そんな二人が言う『元帥』とは、海軍本部の元帥とは別の人物の事だった。

彼らが今言っている元帥とは、提督が所属している基地を含めた一定のエリアを統括している責任者の事を指す。

これらの責任者は一様に階級は大将で、かつ元帥の称号を与えられていた。

因みに本部では彼らは『○○次帥』と呼ばれ、本部の元帥と被らないようにするなど配慮がなされている。

 

 

「やぁ、こんにちは!」

 

予定通り元帥は昼頃に来た。

風貌はかなり若く、好青年然としていた。

20歳前半より下には見えず、三十路の渋い提督とはかなり歳が離れている様に見えた。

 

(それなりに優秀な証拠なんだろうか。にしては……)

 

提督は元帥と言う肩書に似つかわしくない程軽い挨拶と共に自分の基地を訪れた彼に違和感を覚えていた。

だがそんな事表に出すわけもなく、提督は軍人らしく上官に対する礼節を示して元帥を迎えたのだった。

 

「ご足労痛み入ります。本日はよくお越しくださいました」

 

「ああ、君がここの司令官かい? そんなに畏まらなくていいよ。何も問題が無ければ視察なんて直ぐ終わるからね」

 

「は」

 

どうやら元帥はエリア責任者として基地の視察に来たらしい。

視察と言えば彼の親友である特務中佐も行っているが、彼の場合は基本事前通告なしの抜き打ちである事が多いので、今回の元帥のそれは予定に沿った正しい仕事の内のようだった。

元帥は自分が気を楽にしてもよいと言ったにも関わらず、あくまで礼儀正しい部下としての態度を崩さない提督に苦笑しながら言った。

 

「はは、君は真面目だね。ああ、いや、僕が軽過ぎるのかな?」

 

「は、申し訳ございません」

 

「いいって、いいって。真面目なのは良い事だよ。一見それは本当みたいだしね」

 

元帥はそう言って基地施設周辺を一瞥して目を細めた。

 

「……」

 

その時の眼は至って真剣で、その眼のまま再び提督の方を向く。

提督はその顔を見て元帥も見た目で結論付けられるほど根から軽薄な人物でない事を確信した。

たったそれだけの事だったが、そんな僅かな時間に見せた少ない所作で相手にそれを悟らせるほどの実力を、彼からは感じるのだった。

 

「さて、それじゃあ基地の中を案内してもらおうか。あ、これは一応全部ね。艦娘の子たちの部屋もドアから見るだけでいいから雰囲気だけでも感じさせてほしい」

 

「了解しました。こちらへ……」

 

 

結果として視察は何の問題も無く進み、最後に帰投前に執務室での世間話をするにまで至った。

 

「いや、ここは良い所だね。施設はよく掃除されていて清潔だし、艦娘たちも皆健康そうだ」

 

「恐れ入ります」

 

出されたお茶を機嫌良く飲んで好評する元帥に提督は会釈をした。

 

「ん、このお茶もお茶菓子も美味しい。これは間宮が作ったのではないね?」

 

「は、何分急な起こしで時間が無かったのですが、せめてもの意外な驚きをと思いまして」

 

「かと言って高級なお菓子でもないな。もしかして誰かの手作りかな?」

 

「その通りです。これは加賀作りました」

 

「お口に合ったようで何よりです」

 

傍に控えていた加賀その時初めて前に出て元帥に口を開いた。

 

「ほう……」

 

元帥はそんな加賀を感心した目で見つめた。

 

「秘書艦の加賀です。本日はよくお越しくださいました元帥閣下」

 

「いや、うん……。君のところは秘書艦は専属かな?」

 

何故か加賀の挨拶に曖昧に相槌を打っただけで、続けて出てきた元帥の問い掛けに、提督はその時初めて何か嫌な予感がした。

 

「いえ、こちらでは能力に応じた者で交代制です」

 

「そうか。どれくらいそれはいるのかな?」

 

「一応……初期から私を支えてくれている者は全員です。個人的に過大評価はしていないつもりです」

 

「いや、そこは謙遜するところではないと思うよ。うん、自分の部下を信じられるのは良い事だ。良い事だようん」

 

「は、ありがとうございま――」

 

提督がお礼を言おうとした時だった。

元帥は提督がそれを言い終わらない内にその場にいた誰もが予想だにしない事を訊いてきた。

 

「ところでだ、ものは相談なんだけど」

 

「は」

 

「この加賀僕にくれいないかだろうか?」

 

ピシッ

 

と、空気が張りつめる音がした。

それは元帥の発言に驚いた提督が発したものではなかった。

その雰囲気を発したのは言うまでも無く……。

 

「……」

 

“明らかな”凍り付いているような無表情をした加賀だった。

その顔からは感情が窺えず、僅かに震えているように見える握りしめた拳が彼女の中で渦巻いている劇場を提督に語っていた。

提督は内心驚きながらも冷静な態度で元帥に問い返した。

 

「それはまた急ですね。どうしました?」

 

「いや、単に僕が君の所の加賀を凄く気に入ったんだよ。彼女良いね凄く良い」

 

「ありが……と……」

 

褒められたことに対して素直にお礼が言えない程加賀はまだ固まったままだった。

だがそんな彼女の様子に元帥は気付いているのかいないのか、更にこう続けた。

 

「はは、僕が元帥だから緊張してるのかい? なに、心配らないよ。僕のところに来ても必ず君は大切に扱うから」

 

「は……」

 

もはや加賀はまともに言葉も出無い様だった。

元帥の言葉にもただ俯いてついには言葉途中に黙り込んでしまった。

その様子を流石に見かねた提督が助け舟を出そうとしたが……。

 

「あの閣下……」

 

「いやぁ、いいねぇ君! 本当に良いよ! 可愛い! 綺麗だ! 正に艦娘だからこそ身近で見つける事が出来る大和撫子という感じだね!」

 

そう言うと元帥は軽く加賀のお尻をポンと叩いた。

完全なセクハラだったが、なんの遠慮も無く悪気も無い様子でそんな事をしたところを見ると、元帥は根からのプレイボーイであることが提督には見て取れた。

きっと基地でもそんな感じで誰に対しても同じように接し、また部下からは一切の苦情もないのだろう。

その予測からも元帥自身が艦娘を大切にする人物であるのは間違い無い様だった。

だが……。

 

「え?!」

 

元帥は突如大粒の涙を浮かべて泣き出した加賀に驚愕した。

 

「か……が……?」

 

それは提督も同じだった。

てっきりついに激高した加賀が何らかの粗相を元帥にしてしまうかもしれないと身構えていたのだが、これは本当に予想外の外だった。

 

「……っ」

 

加賀はその場に泣き崩れしゃがんで泣き顔を見られまいと顔を手で覆い隠した。

 

「え……え……」

 

元帥はその場でおろおろするのみだった。

一応彼には一言も発さずに静かに付き従ってきていた秘書艦の長門もいたのだが、彼女は元帥の様子を見てただ額に手を当てて悩ましげな顔をするのみだった。

提督は取り敢えず直ぐに加賀に駆け寄り、彼女を落ち着かせまいと肩を抱いて話し掛けた。

 

「おい、大丈夫か? どうした」

 

すると加賀はかろうじて聞き取れる小さな声でこう言ったのだった。

 

「……た」

 

「え?」

 

「た……さ……に……」

 

「すまん。耳元で構わないから俺に判るように言ってくれるか」

 

「たいさ……以外に……」

 

「以外? ああ」

 

「大佐以外に……お尻、触られてしまいまし……た……」

 

「……」

 

あまりに予想外の答えに提督は閉口して戸惑うしかなかった

そしてそんな大佐にしか聞こえないような小さな声であったが、艦娘の身体能力で話の内容を間接に的に長門から聞いた元帥は……。

 

「たいっっっへん、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

基地中に聞こえたのではないかと思うくらいの大音声でその場に土下座したのだった。

 

「げ、元帥殿?」

 

新たな予想外の展開に提督の頭は珍しく混乱しそうだった。

だが元帥はそんな提督に立ち直る間を与えずに続けざまにこう叫んだ。

 

「ほんと、本当に申し訳ない。ごめんなさい。本当にごめんなさい加賀」

 

「……」

 

加賀はまだ顔を覆ったままだった。

いや、いつの間にか駆け寄った提督に抱き付いてその胸に顔を埋めていた。

元帥は尚も続ける。

 

「いや、本当にごめんね? 月並みな言い方だけど悪気はなかったんだ。君を欲しいと言ったのも、お尻にタッチしちゃったのも。全部素だったんだ」

 

ゴンッ

 

元帥は額を再び床に打ち付けた。

 

「元帥殿もう……」

 

流石にこのままでいるわけにはいかなかったので提督が元帥に土下座をやめさせようと動こうとした時だった。

 

ガシッ

 

「え?」

 

それを元帥の秘書艦の長門が止めた。

 

「いいから、准将殿はそのままそいつを抱いてろ」

 

「ほんとぉぉぉに、すいませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

「悪い男ではないんだがな……。まぁこの通り純粋で誠実でもある」

 

まだ謝り続ける元帥を見ながら長門は苦笑していた。

 

 

 

「ねぇ、何かあったの? 何か凄い大声したし。加賀さんもなんか……くっ」

 

元帥が乗る船を見送りながら提督の隣にいた満潮がどこか悔しそうな顔で彼に訊いた。

因みに彼女の視線の先には提督ではなく加賀がいた。

その加賀は提督に抱っこされまだその胸に顔を埋めていた。

更に彼女は時折頭を動かし自分の頭を撫でる様に甘えていた。

提督は仕方ないと言った様子で加賀の頭を撫でながらこう呟くしかなかった。

 

「分らん……。大変だったのは確かだ」

 

 

 

 

「……やりました」

 

ぼそりと何か声が聞こえた気がした。




ここの加賀は完ぺきではありません。
計画的に甘えたがりで、私生活では気を緩めて油断もするので偶に朝寝坊する事もあります。
ただ、仕事においては非の打ちどころはありません。
え? 朝寝坊は仕事に支障をきたしている?
可愛いのでOKです。シレッ


というか投稿ペースあれですいません。
イベントクリアしました。
最後は丙でしたけど。


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第13話 「不安②」

提督は黙々と執務に励んでいた。
隣では那智が静かに書類の整理や添削をしながら提督の仕事を手伝っていた。


大佐」

 

「ん?」

 

「その……ちょっと訊きたい事があるのだがな」

 

「なんだ?」

 

「その……だな」

 

「ああ」

 

「……」

 

「?」

 

提督は怪訝な顔をして書類から目を離して顔を上げて那智を見た。

那智は彼女らしくも無く、何か言い難そうに目を逸らしながら中々言葉が出ない様子だった。

 

「た、大佐はその……」

 

「ああ」

 

「む、むねぇ!」

 

「ん?」

 

「あ……ぅ……えっと……」

 

気合いを込め過ぎたのだろう。

つい出してしまった大声を直ぐに抑えようとして、返って緊張で声が裏返ってしまったようだった。

那智は顔を真っ赤にして必死に取り繕うとしていた。

 

「どうした?」

 

「っ……。大佐は! お……女の胸はどれ位の大きさが好みだ?!」

 

「胸……?」

 

「……」

 

再び怪訝な顔をして那智の言葉を反芻する提督に那智は羞恥に染まった顔でコクコクと頷いた。

提督は一瞬困惑したが、那智突然問い掛けられた意表を突く内容にも無碍にあしらうこともなく、真面目な顔をして答え始めた。

それは普段から真面目で硬派な彼女だからこそ、それなりの理由があるのだろうと提督が判断した結果だった。

 

「……好みを訊かれると実際にはどちらというのは断言はし難いな。そりゃ、服の上からでも判るくらいに強調されているとかなら目も引くだろうが」

 

「と、という事はどちらかというと大きい方が好みという事か?!」

 

「なんでそんなに必死なんだ。大きければ目を引くのは自然だと言っただけだぞ?」

 

「っ、た、頼む! 曖昧な答は嫌なんだ」

 

「那智……。お前それ、例えば胸が平均より小さい恋人が彼氏である男にそんな事訊いてきたらどう答えると思う?」

 

「そ、それは……」

 

提督の言葉に乗り出し欠けようとしていた姿勢を那智は控えた。

その答は簡単だった。

純愛で結ばれた恋仲ならきっと彼はこういう事を言うだろう。

それは……。

 

「その二人の思いがお互い通じ合っている仲ならきっと男は彼女だけで十分と言うだろう」

 

「う……。つ、つまり大佐は慕う心に偽りがなければ、身体的特徴は好みの判断基準にはならないと?」

 

「取り敢えず俺は胸が小さい、大きい、だけで人が嫌いになる事は無いな」

 

「な、なるほど……」

 

「一体どうしたんだ?」

 

「う……。じ、実はな」

 

「ああ」

 

那智は申し訳なさそうな顔をしてぽつぽつと話し始めた。

胸の話をした直後である所為か、または自分なりにそこに自信を持っていたからだった所為か、少しその部分を腕で覆いながら恥ずかしそうにしていた。

 

「わ、私は姉妹の中で一番練度が低いだろ?」

 

「妙高型でか。ん……そう、だな。だが改二にまでなっているし、作戦でも活躍しない事は無いから弱い事はないと思うが」

 

「ま、まぁな。だけどその……なんだ。ほら、私は『姉』だろう?」

 

「そうだな。足柄と羽黒の姉だな」(競う対象を妙高から外しているのが那智らしいな)

 

「妹達より練度が低いのはまぁいいにしても、出撃の回数にその、ちょっと開きがあると思うんだが……」

 

「うん? 統計は直ぐには判らんが……。もしかしてお前、その事で自分が俺から疎遠になっていると?」

 

「わ、私は嫌いか?」

 

「……」

 

自分でも不躾な事を訊いてしまったと思ったのだろう。

那智はその問いに対して黙って自分を見つめる提督に直ぐに謝った。

その様子は普段の彼女とは大分違って、幼い娘らしい反応だった。

 

「! ご、ごめ……!」

 

「……那智」

 

「は、はい!」

 

「俺は女性を胸の大きさで好きになる事は無い。だから那智は那智で良いと思っている」

 

「ああ……あ、いや、はい」

 

「あと妹と出撃の回数で開きがあってもそれは特に俺は意識していない。が、それをお前に意識させてしまった事には悪いと思うっている。すまない」

 

「そ、そんな、やめてくれ! 私が全面的に悪いと思うこれは! だから大佐は謝らないでくれ!」

 

まさが自分が謝られるとは思ってみなかった那智は不意の提督の謝罪に完全にしどろもどろだった。

だが提督はそんな彼女に構わず続けた。

 

「そして最後にもう一つ」

 

「……っ」

 

やや鋭さが増さした真剣な声に那智はビクりと体を震わせた。

怒られると思ったからだ。

だがそれも仕方がない事だし当然の事だと思ったので彼女は黙って粛々とそれを受け止めようとしたのだが……。

 

「今晩一緒に達磨でもどうだ?」

 

「……え?」

 

掛けられた言葉はその予想とは程遠いものだった。

呆けた顔をする那智に提督は微笑みながら続けた。

 

「と言いつつ酒は洋酒なんだがな。が、日本産だ」

 

「大佐……」

 

那智は自分の瞳が潤んでいるのを自覚していた。

だが止めようがなかった。

その表情ははまるで悪戯をして怒られた子供がその後で親に慰められた時のそれに似ていた。

提督はどこか柔らかく感じる声で話を続けた。

 

「俺はお前を疎んではいない。こうして酒を飲むひと時も楽しみだし、実戦でも勿論頼りにしている」

 

「……」

 

「が、やっぱり俺は、軍人としてこれはどうかと思うが。国を守る務めよりこのひと時の方がかけがい無く感じるから好きだな」

 

「大佐……ぁ……」

 

ついに那智は大粒の涙を零して泣き始めた。

提督はそれに少し驚いたようで焦った様子を見せた。

 

「泣く程のような事を言ったか……?」

 

「っ、すまん」

 

「いや、気にする事は無い。それで、どうだ?」

 

「勿論、御相伴に預かろうではないか! あ、けどな。できれば今回は……」

 

那智は直ぐに涙をグシグシと手の甲で拭うと、一つだけ我儘をお願いしようとした。

だがその願いを予想していた提督は彼女より先にこう言った。

 

「二人だけで飲もう。ツマミも俺が作って……。まぁ、多少の無礼講は許可だ」

 

「大佐……!」

 

最後の『無礼講』は提督なりのサービスだったが、どうやらその配慮は大当たりのようだった。

那智は最初の時とは打って変わって明るい顔をして提督に感謝の意を笑顔で伝えた。




デレた時の那智は最高に可愛いと思います。
という妄想をしてたら形が出来てましたw


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第14話 「過去」

提督と一緒に酒を飲みながら酔った影響からか那智はふと昔の事を思い出した。
あまり思い出したくもないが、昔の事を……。


提督の基地に居る妙高型姉妹は最初から専属としていたわけではない。

実は彼女達は提督の基地に来る前は別の司令官の下にいた。

 

彼女達が今の提督の下に来る事になった理由はその以前いた場所でとある問題が起こった為だ。

その問題とは……。

 

妙高達が以前所属していた基地の提督は、一般的な評価では優秀な部類に入る司令官だった。

実際、部下の艦娘たちの評判も良く、特に妙高型の末っ子羽黒に目を掛けていた事で認知されていた。

羽黒はこの上官を心から慕っていた。

提督もそんな羽黒の恋慕に応えるように彼女だけは特に篤く扱い、そして少ない暇のひと時はなるべく彼女を傍に置き、仲睦まじく交際しているように見えた。

だが……。

 

その提督の性根はサディスティックな下衆であった。

表面上は羽黒を愛している様に見せて、彼女を傷つけない事を条件に那智を脅して身体の関係を強要し、歪んだ征服欲に悦びを見出してていたのだ。

ここで脅迫の対象として那智を選んだその提督の判断は妥当と言えた。

長女の妙高は姉妹の長と相応しい器量を持ち、普段柔和な態度を見せつつも、どんな状況にも動揺する事は滅多になく常にその場で適切な判断ができる女だった。

これは脅迫する対象としては提督にとってはリスクがあった。

そうしようものなら彼女は表面上では従う振りを見せつつも、その裏では早々に状況の打破の計画を立てて速やかに本部に報告するか、或いは直接粛清に出る事も考えられた。

そう、彼女は怒らせると本当に怖い女だったのだ。

次は足柄。

彼女は見た目通り直情的な性格だった。

羽黒の件を出して脅そうものなら激高して自分の身に危険が及ぶ可能性が大いにあった。

 

故に事実を知らない羽黒は提督を唯純粋に提督を慕い続け、那智は実直な性格から事実がバレて羽黒を傷つけない為に誰にも相談せずに提督に従い続けるという構図が出来上がったのだった。

だがこの提督の帝国は唐突に終わりを告げた。

一応提督は二人との情事の最中は誰も執務室に来ない時間帯を選んでいた。

だがいつ誰に見つからないとも分らないスリルにも快感を見出していた彼は部屋の扉に鍵を掛けないでいた。

その選択が終わりを招いた。

 

その日に限って羽黒が編入されていた艦隊だけ、遠征からの帰投時間を誤って覚えていたのだ。

艦隊は提督の予想より早く帰投し、旗艦だった羽黒は帰投報告をする時に提督に会えるので嬉しそうに廊下を進んでいた。

そして彼女が入室の挨拶と共に扉を開けた先に広がっていた光景とは……。

 

結果、羽黒は悲愴の余りにその場で自殺未遂を起こし、それを目にした那智は情事の跡がまだ残っている事の認識も忘れて半裸のまま直ぐに羽黒を医務室に連れて行った。

そして自分は最低限の居住まいだけ正すと一人独断で遠洋に出て羽黒を傷つけてしまった責任から自沈しようとしたのだった。

だがこの那智の自沈は密かに提督の不徳を感じ取って警戒していた妙高によって防ぐ事ができた。

異変を察知した妙高は羽黒を見守る事を足柄に任すと、自身は全力で那智の跡を追って、彼女が行こうとしているポイントを予測して勘だけで先回りしたのだった。

予測という博打的な行動ではあったが、妙高は自身の妹に対する勘は絶対の自信を持っていた。

そしてそれは完璧にに当たったのである。

 

提督は妙高の粛清を心底恐れた。

何とか彼女が戻る前に上手く話を作って自分から本部に報告して身を守る案を考えねばならなかった。

だが提督の焦りも虚しく、この時も妙高は那智を救って彼の予想より早く帰投し、そして執務室へ彼を訪ねてきたのだった。

提督は最早恐怖で言葉も出なかった。

部下が、ましてや兵器でもある艦娘が指揮官である提督に反逆するなど決してあってはならない事だったが、人間と比較して遜色ない感情を持つ彼女たちが激高してもおかしくない所業を自分は行ったのだ。

故に妙高はやるだろう。

そして自分は彼女に何一つ有効な弁解もできぬまま命乞いをしながら葬られるだろう。

だが、恐怖に震えて脂汗を流す提督に妙高が掛けた一言は、彼が全く予想だにしないものだった。

 

『提督、羽黒が……那智が……! 一体何があったんでしょう?!』

 

提督はこの言葉を聞いた時、頭が真っ白になって気が抜けそうになった。

だが妙高のセリフから彼女が妹達の救命に頭が一杯で真実に気付いてない事を予測すると、直ぐ焦燥に駆られていた様子を取り繕ってあたかも彼女を慮っている様に立ち回ったのだった。

妙高が事実を知らないという事はきっと足柄もまだしらないだろう。

那智はどうやら勝手に自沈したようだし、羽黒に至ってはあの性格だ。

きっと自分が上手く言えば姉達には真実を打ち明けずに済ますことができるだろう。

提督はそんな事を考えながら早速今後の自身の保身の算段を立てるのだった。

 

しかし、それこそが妙高の狙いであった。

先ず提督が那智が自沈したと決めつけている事を察した彼女は、その事実を敢えて知らさずに彼女を保護して密かにその身を隠した。

そして敢えて真実を一番直情的な足柄に打ち明ける事によって、彼女の怒りをこれからの自分の計画に協力させる推進剤とし、自身の計画の機密性を保持したのだ。

那智は妙高に助けられた時点で既に全て彼女に任せていたし、羽黒はあの様子だ。

暫くは塞ぎ込むだろうが、自分か足柄が傍について安心させてやればきっと大丈夫だろう。

提督は真実が羽黒から発覚する事を恐れるだろうが、そこは自分が彼女の見舞いに毎回訪れその度にその様子を適当に報告すれば疑われることは決してない。

足柄には敢えて羽黒自傷の件でイラついている様子を演じさせておけば、これも見舞いに行かせても提督は疑う事は無いだろう。

妙高はここまでの事を事件が起きて那智を救いに行くまでの間で全て考えた。

唯一つ後悔しているのは羽黒の事だった。

彼女がよもや自殺という勇気を要する行動まで起こすとは妙高も信じ切れなかったのだ。

妹達を傷つけてしまった。

提督は勿論許す気などなかったが、羽黒が自殺未遂起こしてしまった事は大きく彼女の姉としての自信に傷を付け、改めて粛清計画に闘志を燃やすのだった。

 

 

そして羽黒の事件から三日後、たった三日後、妙高の計画は電撃的に実行された。

 

『目的と所属の艦隊、そして指揮官の名を言え!』

 

海軍本部の警戒域の防壁の真正面に二つの人影があった。

それは妙高型一番艦妙高と三番艦の足柄だった。

なんと彼女達は密かに提督の基地を無断で抜け出し、海軍本部に直接自ら現状を訴えに行ったのだ。

事前の通達も無しに訪れた彼女達を本部は当然厳警戒態勢で迎えた。

直接的にも間接的(識別コード)でも味方である事が確認できたから勧告無しの迎撃はされずに済んだものの、それでも妙高のこの行動は非常に大胆かつ非常識なものだった。

 

『次は無い! 最後の通告である! 目的と所属を……』

 

「海軍本部に直接訴えたき儀がございます! どうかお気届け頂きたく……!」

 

妙高はあらん限りの力を振り絞り大声で言った。

 

 

妙高は先ず本部の第二司令官である上級大将に大喝を貰った。

しかしそれは、彼女達の非常識な行動によって警戒網に一時でも支障をきたしてしまった事に対してであって、訴えそのもを無碍に拒否したりはしなかった。

艦娘すら畏怖させる上級大将の大喝に足柄はすっかり縮こまってしまい、妙高も平静こそ装っていたが内心かなり恐怖を感じていた。

 

次に元帥が彼女達を安心させるように柔らかい微笑みを称えながら現れ、なんと後ろから名誉中将まで一緒に現れた。

しかし後者の方は安心させようとかそういう気遣いは見られず、まるで面白い物見たさに来たという様な自然な雰囲気を感じさせていた。

妙高は本部に訴えに来るまでは計画していたものの、まさかいきなり海軍の上位3人に迎らえれるとは思っていなかったので流石にこの状況には緊張した。

 

『話は解った。直ちに調査隊を派遣する故同行するように』

 

行動の大胆さと妙高の真剣な態度もあって、本部は彼女の訴えに偽りの可能性は薄いと判断して直ぐに問題を調査する一団を派遣する事を決定した。

そして妙高達が密かに出ていた事に未だに気付かないでいた提督は、実際に本部の調査団が間近に迫るまで、ついに己の非道がバレている事にも気付かずに終わった。

 

事実は速やかに確認され、提督は速やかに軍法会議に掛けられた。

判決は極刑もありえたのだが、一時でも恋していた提督の命だけは助けたいという羽黒の訴えが最終的に認められる形となり、一生監視付きの懲戒免職処分となった。

判決は軽く見えそうだが、実際は軍人としての生命は完全に断たれ、次に問題を起こした場合はその時こそ極刑以外無いというかなり重いものだった。

そして、提督がいた基地には新たな提督が配置される事になったが、妙高達4人については同じ場所には居たくないという一致した希望もあって別の提督の元に配属される事になった。

その提督と言うのが……今那智の前で酒の相手をしている提督こと、大佐だった。




次は今の提督(大佐)と妙高達との出会いの話の予定です。


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第15話 「頓挫」

『お前に預けたい艦娘がいる』

艦娘の提督になってまだ間もなかった提督は、世話になったある上官から半ば指令に近い形でこんな事をいきなり頼まれた。


上官には朴念仁のお前だから信頼できる、なんて心境的には正直複雑な事を言われたが、命令である以上従うしかなかった。

それに重巡が最初から、妙高型が全て揃って艦隊に加わるというのだから基地の戦力的には悪い話ではなかった。

 

「そろそろか」

 

提督は通達を受けた着任の予定時間を確認して呟いた。

4人とも重巡なので今回は自分達だけで直接くるとのことだった。

 

『大佐、来たみたいよ』

 

執務室に叢雲から内線が入った。

 

「分った、通してくれ」

 

提督が応答して数分後、「失礼致します」という言葉と共に4人が入って来た。

 

 

「初めまして提督。この度は私達を受け入れて頂きありがとうございます」

 

「……がるる」

 

「……ふん」

 

「……っ」

 

妙高以外は明らかに提督に好意的な態度には見えなかった。

提督は事前に彼女達の経歴を確認していたので、何故そんな態度を取るのか既にその時点で大凡の予想はできていた。

 

(ま、最初から人間に不信感を持っているならある意味こちらもやり易いか)

 

この頃の提督はまだ艦娘たちと打ち解けてなく、その接し方も今より大分素っ気無い感じだった。

故に艦娘の方から自分に近付かない事は、まだ彼女たちに苦手意識を持っていた彼からしたらありがたかったのだ。

 

「よく来てくれた。俺がここの司令官だ。これからよろしく頼む」

 

「はい、宜しくお願い致します」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「貴女達っ」

 

妙高のお叱りの声が飛んでようやく残りの3人は頭を下げて着任の挨拶を始めた。

 

「……よろしく」

 

「よろしく頼む……」

 

「お、おねが……お願いします……」

 

(これは大分重症だな)

 

自分には都合の良い状況だったが、思った以上に妙高以外の態度が硬い事に提督はこれから仕事に影響を懸念するのだった。

 

 

「お食事、ですか?」

 

ある日、妙高は提督の執務を手伝っている時にそんな話を持ち掛けられた。

提督は妙高の意外そうな顔に気付く事も無く書類に目を走らせながら続けた。

 

「まぁその、一応お前達の経歴は知っているから妹達がああなのも理解している」

 

「はい」

 

妙高は少し目を細めて真剣な眼差しを提督に向けた。

 

「だがあのままだと少し仕事にも影響が出かねないと思ってな」

 

「だから親睦を深める為に?」

 

「そういう事だ。と言っても外に食べに行くわけじゃない」

 

「え?」

 

「俺が用意する」

 

「え?」

 

妙高にしては珍しく同じ反応を2回してしまった。

提督の提案がどれも彼女にとって意外で適した瞬時に反応が浮かばなかったのだ。

妙高はなるべく動揺を悟られない様に注意しながら提督に訊いた。

 

「提督がお作りになるのですか?」

 

「そうだ」

 

「お料理ができるのですか?」

 

「いや、正直に言えば食べられるものなら作れる、と言った程度だ」

 

「え」

 

「一応一人暮らしをしていたから作れることは作れる。でも味は保証しないという事だ」

 

「あ、ああなるほど。でも、でしたらわざわざ提督がお作りにならなくても……」

 

「手料理で迎えた方がこちらに害意は無いというくらい伝えられると思ってな」

 

「あ……」

 

妙高はこの時やっと提督の心遣いを理解した。

そしてたったこれだけの事だったが彼の事を少し信用できると思った。

だからこのお誘いには快く応じる事にした。

 

「……分りました。そういう事なら是非御相伴にお預かりさせて頂きますね」

 

「誘いを受けてくれて感謝する。明日の朝でいいか?」

 

「あ、朝食ですか」

 

「ああ、まだ直ぐに予定は作れないから朝くらいならと思ってな」

 

「分りました。妹達に伝えておきます」

 

「ああ、あとそれから」

 

「はい?」

 

「俺の事はこれからできたら大佐と呼んでくれ」

 

 

そして次の日の朝、妙高達姉妹は伝えられた時間に執務室に臨時で設けられたテーブルに揃っていた。

流石にまだ妙高以外は神妙な面持ちだった。

特に羽黒は執務室にいるだけで泣きそうな様子だった。

姉達がいなければ一人でここに居続ける事ができるかも怪しかった。

 

「待たせた」

 

扉が開く音と共に料理が出来たらしい提督がそれを運んできた。

テーブルに着いていた4人は提督の方を向き、彼が持って来た料理を見て一様にポカンとした顔をした。

 

「なにそれ、オムレツ?」

 

まず足柄がテーブルに置かれた料理を指して意外そうに言った。

わざわざ食事に誘われたのでもう少し豪華な料理が出てくると思っていたのだ。

だが出されたのはそんな予想反してシンプル過ぎるくらいシンプルな卵料理だった。

皿に乗っているのは黄色く焼かれたそれだけで、申し訳程度にパセリが一つ添えられている程度だった。

 

「これはオムレツではない。スクランブルエッグだ」

 

「オムレツもスクランブルエッグも同じ様なものだろう何が違うというんだ」

 

足柄の誤りを訂正した提督に食って掛かるように那智が言った。

確かにオムレツもスクランブルエッグも見た目はあまり違いが無いように見えた。

彼女の隣に座る羽黒もこの時はその事が気になったのか純真そうな瞳で提督の言葉を待っていた。

 

「明確に違う。オムレツの方がどちらかというとちゃんと技術がいるんだ」

 

「まぁ、そうなんですか」

 

場をとりなす為とは自分でも理解していたが、提督の話に興味を持った妙高が先を促した。

 

「オムレツは先ず作って皿に乗せるまで一切味付けをしない。そしてその出来上がりもふんわりしたものになるように技術がいるんだ」

 

「あぁ、そういえばオムレツはケチャップを掛けて食べるわね」

 

「そうだ。そしてオムレツは形もなるべく木の葉になるように焼かないといけないんだ」

 

「あ、そう言えば形も今まで見てきたのは大体同じですね」

 

「ではスクランブルエッグは何だと言うんだ」

 

まだ那智は食って掛かっている感じだった。

自分以外が提督に友好的な態度を取っている雰囲気が気に食わない様子だった。

 

「スクランブルエッグは卵を混ぜる段階で塩コショウで味を付けるんだ。そして焼くときも多少かき混ぜながら仕上がりを柔らかくする」

 

「あ、だから形は木の葉ではないんですね」

 

「そうだ。寧ろスクランブルエッグの方が形に拘らなくていい分、半熟にしたりしっかり焼いたり、自分なりの好みに仕上げられる」

 

「で、なんでわざわざ招待までして出した料理が唯の卵料理なんだ」

 

「那智!」

 

流石に妙高もきつめに叱った。

那智は少しビクッすると目を伏せながら呟くように言った。

 

「……すまん」

 

「いや、いいんだ。これを出したのはスクランブルエッグが俺が作ってきた料理で一番自信をもって出せるからだ」

 

「え? 一番自信を持って出せるのが卵焼きなわけ?」

 

足柄が初めて面白そうに笑いながら提督に訊いた。

だがその顔は明らかに敵意といったものは感じさせず、どちらかというと悪戯っぽい無邪気なものだった。

そして足柄のツッコミがウケたのか、彼女の隣で羽黒も笑いを堪える様に口に手を当てて俯いていた。

 

「基本的に出来た料理は焼くものだけだったからな。ウインナーとか他にも焼くものはあったが、卵が一番これは人に出せると思ったんだ」

 

「……話は解った。だが肝心なのは味だ。そこまで言うのだから余程美味いのだろうな」

 

「卵が苦手でなければ、少なくとも不味くはないと思う」

 

「そうなんですか。ではせっかくご用意頂いた事ですし……大佐?」

 

(大佐?)

 

羽黒が妙この提督の呼び方にその時ピクリと反応した。

提督はその事には気付かずに妙高に向って頷いて言った。

 

「ああ、では食べてみてくれ」

 

『頂きます』

 

食事の挨拶と共に皆が料理を口に運んだ。

 

「! これ、イケるわね!」

 

「まぁ、美味しい」

 

「く……まぁ、悪くないな」

 

足柄の素直な表に妙高も続き、那智も少し悔しそうにしながらもそれを認めた。

そして羽黒は……。

 

「……っ」

 

「羽黒?」

 

「ちょ、どうしたの?」

 

「おい、大丈夫か?」

 

料理を食べるなり泣き出す羽黒に3人が声を掛ける。

声を掛けられた羽黒はそんな姉達の心配を否定する様にかぶりを振って震えた小さな声で言った。

 

「わ……」

 

「ん?」

 

提督が羽黒の様子に注意を向けながら訊いた。

 

「私……提督にこんな美味しい料理ごちそうしてもらったの……初めてです。こんなに……こんな風に優しくして貰った、初めて……です」

 

「羽黒……」

 

妙高が慈愛に満ちた目で羽黒の所に来て彼女を抱き締めた。

那智、足柄もそれに続くように羽黒の近くまで行くと、彼女の頭をそれぞれ撫でた。

 

「ぐす……」

 

羽黒の脳裏には以前の提督との思い出が浮かんでいた。

思い返してみれば確かにあの男には恋していたが、優しくして貰った時は誰から見ても気を遣われているというのが判るような贔屓に近いものだった。

羽黒も改めて考えればそれはあからさまな機嫌取りだという事が判ったが、その時は提督への恋慕がそれを盲目にさせていた。

ましてや食事に誘われた事なんてそう言えば無かった。

無論、外出に、デートに誘われた時もそう言えば無かった。

誘ってきたのは身体を重ねた時だけだった。

そんな不自然な愛の形を羽黒は疑う事を無意識に放棄していたのだ。

その事を思い出して、そして今こうして新たな提督に出された料理を食べていると、羽黒は今この瞬間が言葉にできない程に大きな幸せに感じた。

 

「提督……ありがとう……ございます。お料理……卵焼きとても美味しいです。ぐす……」

 

「ん、ああ、気に入ってくれて良かった」

 

素っ気無い返しだったが、何処か少し柔らかい声に聞こえた。

羽黒は一口一口その美味しさを噛み締め、ふと何が気になったのか口に運ぼうとしていた手を途中で止めて提督に訊いた。

 

「あの提督……」

 

「お姉ちゃんが提督の事を大佐と呼ぶ理由……教えてもらえませんか? できたら私も……提督を、大佐って呼びたいです」

 

 

 

「ん……」

 

「どうした?」

 

グラスを傾けていた手を少々長く止めていたらしい。

明後日の方向を見たまま物思いに耽っていた那智にようやく提督の声が届いた。

 

「ああ、悪い。ちょっと昔を思い出してな」

 

「昔?」

 

「ああ、大佐に会って間もない頃の事をな」

 

「ああ、結構前だな」

 

「そうだな……。早いものだ……ん?」

 

ようやくグラスを仰ぎ始めた那智は提督の視線に気付いた。

 

「ん? なんだ?」

 

「いや、そういえばお前、寝るときはその恰好なのか」

 

「うん?」

 

提督の指摘されて那智は自分の格好を見た。

彼女は淡い青色の可憐なネグリジェを着ていた。

 

「なんだ、変か? 一応もうこんな時間だろう?」

 

那智はどこか演技っぽい仕草で提督の疑問に答える。

 

「いや、そうだが。俺のイメージだとお前は寝るときは効率を重視してそうだと思っていてな」

 

「ジャージとかか?」

 

「そうだ」

 

提督の答えに那智は大袈裟にかくりと肩を落として見せた。

 

「おいおい、それはいくら何でも女性に対してあまりにも不躾じゃないか?」

 

「そうだな、悪い」

 

「いや、いいんだ。だが聞いてくれ。寧ろな、ジャージなのは妙高姉さんと足柄なんだぞ」

 

「なに?」

 

那智の話がかなり意外だったのか、今度は提督がグラスを運んでいた手を途中で止めて驚いた顔をした。

那智はその顔を見て面白そうに笑いながら続けた。

 

「意外だろう? 実は私の方が女らしいんだぞ」

 

実はそれは嘘だった。

提督の予想通り実は那智は寝るときは殆どジャージだった。

この服はこの時の為に意を決して彼女が今日の為に用意したものだったのだ。

そしてつまり、妙高も足柄も寝るときはジャージではなく前からネグリジェを着ていた。

もし彼女達が那智のこの些細な見栄(嘘)聞いたらどんな顔をして抗議してくるだろう。

那智はそれを想像すると何とも言えない背徳感を感じた。

と、那智がそんな事を想像していた時だった。

 

「あ!」

 

ガチャリと扉が開く音と共に足柄が驚いた顔をしてこちらを見ていた。

那智は足柄の突然の訪問に動揺して、思わずグラスを取り零しそうになる。

 

「あ、足柄?! お前、なんで?!」

 

(ん? 足柄もネグリジェを着ているな。偶然か?)

 

「いや、大佐と一緒にお酒を飲もうと思って。相手をお願いしようと思ったら那智姉さんいないし。ていうか……」

 

「っ」

 

那智は足柄の視線に気付いて思わず己の身を抱く。

 

「姉さん……へぇ……」

 

「こ、これはだな」

 

「?」

 

足柄はニヤリとからかう様な目で那智を見る。

姉妹のやり取りの意味が飲み込めず、提督は一人キョトンとしていた。

その時だった。

 

再びガチャリという音と共に新たな訪問者が来た。

 

「ああ! お姉ちゃん達!」

 

「あ、羽黒」

 

「なんでお前も?!」

 

「私もいますよ」

 

「羽黒、妙高お前達どうしたんだ」

 

その場にいた人間の中で平静としていた二人の内の一人だった提督が妙高達を見て言った。

何故か不機嫌そうに頬を膨らませる羽黒を他所に、妙高は足柄と同じ様な悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。

 

「いえ、ちょっと那智がいない事が気になりまして。予想は当たっていたみたいですけど……ふふっ」

 

「那智お姉ちゃん、足柄お姉ちゃんズルイ! 私も大佐と一緒に飲みたい!」

 

「いや、別に黙っていたわけでは……その、な?」

 

「あー、気を遣ってここは退こうかなぁと思っていたんだけどなぁ」

 

「これは仕方ないですよねぇ♪」

 

「お姉ちゃん! 私もぉ!」

 

残念ながら那智が楽しみにしていた飲み会は次回の機会になりそうだった。

だが続いて賑やかな新たな飲み会が幕を開こうとしていた。




以上、那智達姉妹と提督のお話でした。
次は久しぶりにレ級達を登場させるのも良いかな、と思ったり。


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第16話 「演技」

加賀は自他共に認める優秀な艦娘である。
しかし提督の基地に所属する加賀は、見た目はクールだがその実とても好奇心が旺盛で、またそれを特に隠したりもしていなかった。
例えば最近では秋雲や愛宕の影響でサブカルチャーに趣味を持ち、暇な時はライトノベルや所謂美少女ゲームと言った物も自分からよく嗜んでいたのであった。


「鈍感系主人公をやってみませんか?」

 

「は?」

 

突拍子のない事を偶にいう加賀の態度にには提督は慣れていたが、しかしその内容には流石に慣れなかった。

今度はまたどういう事なのだろう。

提督は取り敢えず話を訊く事にした。

 

「それは何だ?」

 

「大佐はゲームやアニメのラブコメの主人公がよくそういう設定なのが多い事はご存知ですか?」

 

「ん? いや……」

 

「この手のジャンルは、大体主人公が自分の周りの女子に好意を持たれる展開が多く、そして主人公は物語の終盤までそれに気付かない鈍感の設定もまた多いんです」

 

「はぁ……」

 

やっぱり言っている意味が解らなかった。

いや、言葉自体は判るが、意図が全く解らなかった。

この困った自分の基地最強の空母はまた何を言いたいのだろう。

 

「私はこういった主人公を見る度に思うのです。いい加減食傷気味であると」

 

「うん、つまり飽きてきたんだな?」

 

「作品自体は面白くても主人公の根本の設定がそれだと似た展開は常にありますからね。そこがちょっと……」

 

「ああまあ、なるほどな。それでなんだ、お前はそんな主人公を俺に演じろと?」

 

「そんな主人公現実にそういるわけないじゃないですか」

 

「それは女でもか?」

 

「女より男の方が圧倒的に多いんです」

 

「ふむ。で、何故そんないそうもない性質の人間を演じて欲しいんだ?」

 

「二次元の世界を体験してみたくて……」

 

加賀はそう言って少し頬を染めた。

表情自体はあまり変わっていなかったが、目は何処となく泳いでいるように見えた。

 

「仕事に支障がない程度なら多少は応えてやってもいいがな。しかしどうしたら良いか全く判らないんだが」

 

「自分に向けられる行為に対して素っ気なくして頂ければ良いのです。私はそれに対してヤキモキを……してみたい……」

 

「お前大丈夫か?」

 

どうも目の前の加賀は自分に好意を持ってから、それもケッコンを経てから性格が付き抜けつつあるように思えた。

だがそれでも優秀で頼りになる部下である事は変わりなかったし、加賀自身がそういった戯れで自分や仲間に迷惑を掛けた事も無かったので、提督は敢えて今回も彼女の遊びに付き合ってやる事にした。

 

「分かった。素っ気なくしたらいいんだな?」

 

「冷たくはしないで下さいね?」

 

「ん? まあ……ああ、分かった。何とかしてみよう」

 

「お願いします」

 

加賀は提督の承諾に嬉しそうにほほ笑んだ。

 

 

加賀にとってそれは単なる遊びのつもりだった。

いや、それは提督にとっても全く同じ感覚の筈だった。

だが彼女は予想できなかった。

自分がこれから体験する事になる事態を。

 

「大佐、お昼お持ちしますか?」

 

昼休み、加賀はいつも通り提督に昼食はどうするか訊いた。

それは彼女にとっていつもの光景で、彼の答えにいつも通り応えるだけだった。

だがその日だけは違った。

提督は彼女の問いに対して言った。

 

「いや、今日はいい」

 

「では食堂で皆さんと一緒に?」

 

「いや」

 

「では外ですか。お待ちください。準備をしてきま――」

 

「いや、俺一人で行く」

 

「え?」

 

「別に無理に付き合う必要はないぞ」

 

「え? いえ、別に無理なんて……」

 

「気遣いは嬉しく思う。だが大丈夫だ。30分程で戻るから少し頼むぞ」

 

「あ……」

 

加賀が急な展開に動揺して上手く言葉を紡ぐのに手間取っている間に提督は部屋から出て行った。

 

「……」

 

加賀は無意識に提督を追って上げてい手を見る。

そこには当然彼の姿は無く、指を動かしても虚しく空を切るだけだった。

 

(これは予想以上の衝撃ね。早く今朝の話を無しにしないと)

 

加賀は自分で言い出した事によって始まった事態だと直ぐに察した。

そして早々に提督に素っ気なくされた事に心が折れた彼女は、戯れを終える事を即決意したのであった。

 

 

「大佐、お疲れ様です」

 

「ああ」

 

夜、加賀は提督にその日の職務の終了を告げた。

あとは引き継ぎの内容や当直などを確認して休むだけだった。

 

(まさか今に至るまで話しかける機会が無かったなんて……)

 

加賀は仕事に就いている間、僅かな暇を探しては提督に声を掛ける機会を窺っていた。

だがその日に限って提督と加賀は絶妙なタイミングの入れ違い続き、ついには仕事が終わるこの時まで声を掛ける事ができなかった。

それはまるで提督が彼女の動きを予想して敢えて避けているようにも思えた。

 

(……まさかね)

 

加賀は胸の裡に浮かんだ不安を振り払うように軽く首を振って息を着くと、やっと訪れた機会を無駄にしまいと決意のこもった目で提督に顔を向けた。

 

「たい――」

 

パタンッ

 

一瞬目を離した隙であった。

時間にして5秒あったかないか。

その間に提督はさっさと退出して自室に入ってしまった。

 

「……」

 

加賀は今朝と同じように提督が去った扉をじっと見て佇むのだった。

 

 

コンコンッ

 

「ん?」

 

仕事を終えて椅子で読書をして寛いでいた提督は扉を叩く音に気付いて顔を向けた。

提督はその日気分が良かった。

加賀が提案した遊びに自分なりにかなり上手く乗ってやれたと、自分の行動に満足していたのだ。

 

(これなら加賀も不満はなだいろう)

 

だが頼まれた遊びとはいえいつまでも続けるつもりはなかった。

提督は今日の結果に満足している事を明日にでも彼女に確認してこの遊びをスムーズに終わるつもりだった。

提督はそんな事を考えながら今自分を訪ねてきた相手の事を寝つけずに遊び相手を求めてきた駆逐艦だろうと予想していた。

 

ガチャッ

 

「お?」

 

だが意外にもその時はそうではなかった。

訪ねてきた相手は遊びを提案した本人である加賀だった。

 

「……」

 

「なんだ?」

 

いつもなら『どうした?』と言うところだが、そこはまだ律儀にも遊びに乗っているつもりだった提督は敢えてぶっきら棒な言い方を選んだ。

それがいけなかった。

 

「っ……!」

 

加賀はその言葉を掛けられるなり口に手を当ててその場にしゃがみ込んだのだ。

 

「え?」

 

不意の流れに提督は慌てた。

しゃがみ込んだ加賀はそのまま俯いて肩を震わせ始めた。

 

(まさか泣いている?)

 

そう予想はできたものの何故加賀が突然そうなってしまったのかは予想できなかった提督は、困った顔で取り敢えず彼女に声を掛けた。

 

「加賀?」

 

「!」

 

加賀はその言葉にピクリと全身を震わせて反応した。

 

「初めて……」

 

蚊が鳴いているようなか細い声だった。

提督は声を聞き逃さないように加賀と同じ目線になるよに自分もしゃがんだ。

 

「ん?」

 

「初めて……今朝以降名前を呼んでくれた……」

 

「え?」

 

「大佐ぁ……」

 

顔を上げた加賀の顔は涙で濡れていた。

珍しく感情が昂った影響か頬も紅潮しているように見えた。

そんな加賀の顔を見るのは提督は床の間以外ではかなり久しぶりな気がした。

 

(これは何か失態を犯していたか)

 

「まあ、入れ。来るか?」

 

「……」

 

返事こそしなかったものの、加賀は俯いたままコクリと頷いて頭を動かした。

 

 

途中から半ば提督が予想した通り、加賀の気落ちの原因は彼女自身が始めた遊びが原因だった。

提督が加賀が思った以上に遊びに上手く応じた事で遊びの提案者本人が動揺して上手く立ち回れず、最終的にこうしてなりふり構わず構って貰いに来たとの事だった。

 

「……」

 

今加賀は、提督にしっかり抱きついて先程泣き崩れていたのが嘘のように穏やかな顔をして寝息を立てている。

提督はそんな彼女の頭を撫でながら、現実にはなかなか存在しないのではないかと加賀が言っていた鈍感設定の主人公の気が、自分にも多少あるのではと微妙に反省するのだった。




久しぶり過ぎてこの程度の文字数でもえらく時間がかかってしまいました。
かつてのように書けるようになりたいですねぇ……。
文章の出来は置いておいてw


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第17話 「駆逐艦一番」

ある日の演習の後、ついに響はレベル99になったようです。


「え? 響、練度が最高になったの?」

 

「うん」

 

「おめでとう! これでしれーかんとケッコンできるわね!」

 

「ありがと。早速行ってくるよ」

 

「頑張るのよ!」

 

提督麾下の駆逐艦の中でも最古参に近い響ことヴェールヌイ(本人の希望により以下は響)はこの日念願だった最高練度に達した。

提督は特に駆逐艦を冷遇したりはしていなかったが、普段は遠征か敵潜水艦の警官任務くらいしか割り当てられる事がない駆逐艦が彼の下でこの域に達するのは容易ではなかった。

提督からしたら単に効率を優先しての事、だが駆逐艦達にとっては少々歯痒い環境と言えた。

まあそのお陰で駆逐艦たちは基地内での仕事に関しては大抵をこなせるようになり、艦隊のお留守番にして基地の顔になったわけだが。

そんな中で響がここまでこれたのは駆逐艦の中でも対潜能力に長けていたからであった。

元々対潜能力が高い者が多い軽巡に混じって敵潜水艦の警戒任務をよくこなし、半ばレギュラーといえるほど常にこの任務には率先して立候補したのである。

そんな地道な努力の積み重ねでやっと今、こうして“ここ”にたどり着いた。

同じ特対潜駆逐艦として朝霜という妹分のライバルもいたが、なんとか彼女より先にここまで来れた。

そして響は意気揚々と提督が居る執務室の扉を叩いたのだった。

 

 

コンコンッ

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

 

提督の承諾を受けて馴染みのある少女が部屋に入って来た。

提督はそれを認めると手に持っていた筆を置き、彼女を迎えた。

 

「ん、響か」

 

「うん」

 

「どうした?」

 

「なんだと思う?」

 

「ん?」

 

なにやら響らからぬ返しだった。

彼女はいつも青い真っ直ぐな瞳で言いたい事はハッキリ言う事が常だった。

だがこの時に限っては少々違うようだった。

この時の彼女は何かを期待しているような、喜んでいるように僅かに頬を紅潮させ、気分が高揚しているようだった。

どうやら今は自分から要件を言うよりそれを当てて欲しいらしい。

提督はそんな響の子供らしさを内心ほほえましく思いながら、少し間を置いて考えて口を開いた。

 

「ケッコンか」

 

「正解。流石だね」

 

「何となくな。本当に」

 

「でも解ったね」

 

「ああ、何故かな」

 

「してくれる?」

 

「……」

 

意外にも提督は即答をしなかった。

響はそれを見ると途端に耳を垂れる犬のように落ち込み、それでも諦めることなく健気に提督をじっと見つめて待つ事を選んだ。

 

提督が響の問いに即答しなかったのには彼なりの理由があった。

艦娘には年齢という概念がない。

故に一見少女にしか見えない駆逐艦にもその定義は一応当たらず、例えケッコンしたとしても現代の日本の法的に違法というわけでもなかった。

だがそれでも見た目が幼女なのは歴然とした事実である。

要は提督はそこに道徳的な背徳感を感じ、即答ができなかったのである。

 

彼は過去に希望する者には全てケッコンには応じると艦娘たちの前で公言した事があった。

それは勿論駆逐艦も対象であったが、それでもまだその時は彼の中で彼女たちに対してだけは応える決意ができないでいた。

そして今、ついにそれに対して態度を示す時が来たのである。

 

「……」

 

提督は重苦しい雰囲気のまま口を開こうとしたがなかなか言葉が出ない。

内心は既に響の気持ちに応えるつもりであったが、行動に移すのが難しかった。

 

「大佐」

 

そうこうしている内に響の方から話掛けてきた。

 

「ん……」

 

「叢雲や初春とは良くて。私とはダメなの? あの二人とはケッコンしてないのに抱く事はあるのに響では、ダメなの?」

 

「む……」

 

痛いところを疲れて呻き似た声が提督の口から漏れた。

確かに彼女の言う通りだった。

響と同じ駆逐艦にして最古参の中の最古参、最初部下のその二人に対しては、提督はこれまでの付き合いもあってケッコンこそまだできていなかったが、身体を重ねる事があった。

勿論お互い同意の上で。

響はその例を出した上で時部ではいけないのかと懇願してきたのだ。

 

(これ以上渋ると不味いな)

 

元より断るつもりで渋っていたわけではなかったが、女としてここまで真摯にに好意を伝えてきた響の想いを提督はそれ以上無碍にする事はできなかった。

提督は引き出しから紙を一枚出して机の上に、正面にいる響に見える位置に置いた。

響はそれを見て目を輝かして走り寄る距離でもなかったのに本当に嬉しそうに小走りで近付き、その紙に見入った。

 

「ケッコン最初の駆逐艦はお前だな」

 

「叢雲や初春には今まで負けてたけど、これで勝ったね。ありがとう大佐!」

 

そう言うと響は紙を握りしめて机を乗り越え、勢いのまま提督に抱きついた。

その目尻には涙の雫が浮かび、彼女の喜びの大きさを表していた。




文字数少ないですが、かと言ってこれ以上書く内容も浮かばず、これで丁度良いのではないかという事で投稿と相成りました。
決して手抜きというわけではありません、多分。

かなり時間を置いて投降したというのにそれでも感想があると嬉しいですね。
現金ですが、それでも勢いで書けたのはただ感謝です。


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第18話 「我が意」

提督と響がケッコンしたという話は基地の中に瞬く間に広がり、特にやはり、駆逐艦たちの中での話題となった。
そしてその話に誰よりも見た目明らかに反応して早速表だって行動を始めた娘がいた。


「大佐! 響とケッコンしたって本当?!」

 

島風が鼻息荒く勢いよく執務室に駆け込み、次いで後ろから雪風も着いてきた。

 

「待ってよ島風ちゃん!」

 

「なんだ、そんなに焦って」

 

「駆逐艦で1番に響がケッコンしたんでしょ?! うぅ……負けたぁぁぁ!!」

 

「あ、やっぱりそれ……」

 

何でも1番を好む性質の島風は提督が自分より先に響とケッコンしたのが悔しかったのだ。

彼の前で地団太を踏んでやり場のないもどかしさに悶えている様だった。

 

「島風ちゃん落ち着いて。仕方ないよ響ちゃんは対潜能力高かったからわたし達より出撃する事が多かったし……」

 

親友の雪風がフォローになってないようなフォローをして島風を慰める。

慰められた島風はそこでようやく落ち着いた、と思ったら今度はその場に座り込んで「次は絶対島風!」と駄々をこね始めた。

提督はどう接したものか思案しながら目の前の困った娘の対応を始めた。

 

「悪いがそれは保証できない。というかもう2番でも良いのか?」

 

「だって……せめて次は……」

 

「島風ちゃん、無理矢理自分を納得させちゃうと逆に後でまたモヤモヤしちゃうよ? もうちょっと考えよ?」

 

「雪風の言う通りだ。ここは焦らず次に自分がケッコンする理由でも考えたら良い」

 

雪風のナイスなフォローを提督はアシストした。

これは島風にそれなりに効果があったようで、彼女は提督の『理由』という言葉にハッとした顔で反応した。

 

「理由……?」

 

「1番じゃなかったらそれ以外にケッコンしたい理由を考えてみろ。それが決まったら順番を気にせずに頑張れないか?」

 

「1番以外の理由、かぁ……うーん」

 

(こいつ、結婚という言葉の意味を考えた事なかったな)

 

提督は内心呆れ半分苦笑半分の気持ちになった。

 

「島風ちゃん、先ずケッコンは好きな人とするのが大事なんだよ?」

 

「え? じゃあ大佐で良いよね!」

 

「うん、でもね? ケッコンはえーっと……もうちょっと強い好きになってからした方が良いかなって……」

 

雪風なりに考えて説明しようとしたのだろう。

しかし自分でも結婚という言葉が持つ意味を把握しきれずについ曖昧な説明になってしまった。

 

「強い好き?」

 

「えーっと、つまり……あ! 1番の好きだよ!」

 

「1番の好き……!」

 

雪風が確信を得た言葉に島風は目を見開く。

 

「1番の好きっていうのは、その人の事が1番大事で、1番言う事を聞いてあげたいくらいの好きだと思よ!」

 

「ん……」

 

子ども特有の結論優先の話し方に提督はちょっとついていけず唸るしかなかった。

だがそれが島風には大当たりだったらしい。

彼女は雪風の言葉に再度目を見開き息を飲むと、座り込んだまま下から提督を見上げた。

 

「ん?」

 

「……」

 

島風の提督を見るその瞳は、敢えて例を挙げるなら動物の赤子が生まれた直後に見た物に最も愛と依存を覚える刷り込みのような感情が篭ったものだった。

 

「……っ」

 

提督は本能で微細な危機感に似た焦りを覚えて思わず椅子に座ったまま後ろに下がりたい衝動に駆られた。

だがそんな提督の焦りを他所に、島風は我が意を得たりと言わんばかりに勢いよく立ち上がると、提督の顔を真っ直ぐ見据えてそのまま彼に飛び掛かって抱き付いた。

 

「じゃ、島風の1番の大佐の為に島風はケッコンしたい! 島風はそこまで絶対に頑張る!」

 

「島風ちゃん……!」

 

雪風は親友の答を見つけた姿に思わず感動して涙を滲ませた。

 

「……ああ」

 

一方提督は、相変わらず急な展開を見せる元気な駆逐艦達に今回も翻弄されてしまたったと、若干混乱する頭の中で思わずため息をつくのだった。




はい、文章短いですね。
でもまとまりが良いし、これ以上は個人的に蛇足になりそうだったのでこれで良しとしました。
……なんか前にも同じ事書いた気がする。

リアルでの島風と雪風はあまり使ってませんがそれでもレベルは80台だったと思います。
気長に育てて彼女ともケッコンをいつかしたいですね。
というか自分の艦娘のレベルうる覚えなのがいい加減気になるので、人物紹介の方の更新しなきゃな……。


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第19話 「インターバル」

「……」

提督は司令部に渡された作戦指示書をずっと黙って見ていた。
傍から見ても彼が悩んでいるのは明白だった。


資材が足りないんでしょ?」

 

足柄はそんな提督の姿を見ただけで直ぐに彼の悩みを察した。

長い付き合いである以上に自他ともに提督の事を理解している彼女ならではの直感だった。

提督は足柄の声に重い声で答えた。

 

「ああ、やはり弾薬が致命的だ。後に控える作戦の為に火力を抑えた後方支援を選択したのも誤りだったようだ」

 

「支援の部隊に気を遣って少し挽回の機会を多く与えてしまったみたいね」

 

「前線の奴らもそいつらに気を遣って進んで具申をしてきたからな」

 

「結果、結局成果は上げられず、この前段階の作戦の時点で完遂できない可能性が出てきたわね」

 

「力を注げば達成は可能だろう。だが、その後の作戦については恐らくは……」

 

「そうね。今回は離脱を決意する必要があるかもね」

 

提督は足柄の結論に黙って頷いた。

今回の作戦はそれほど上手く推移していなかったのだ。

別にそれが珍しいという程彼が優秀というわけではなかったが、それでもこれまで堅実に職務を全うしてきた提督からしたら軍人として、指揮官として重く責任を感じる状態だった。

 

「……」

 

言葉が出なかった。

いや、口を開けば自分の責を認める言葉が出た。

しかしそれを敢えて提督はしなかった。

今彼の目の前にいる彼女が、そして彼に従う全ての部下がそれを望んでいなかったから。

 

もしそんな事を言えば、直ぐに皆は提督の謝罪を否定して責は自分たちにこそあると言ってくるだろう。

だが、それでは駄目なのだ。

お互いが納得し、同じ答に至らなければ今後の彼らの関係にしこりとなって残るかもしれない。

別に完璧な関係を求めているわけではない。

だが対処できるならしたかった。

そう、提督は単に性格がやや度を越して律儀だったのだ。

 

「そんなに悩まないで。少し止んで、心と体を解しましょ」

 

足柄はそう言って慣れた様子で苦笑しながら椅子に座った提督を後ろから優しく抱き締めてきた。

背もたれ越しではあったが、彼女が屈んできたのでお互い顔は間近にあり、温もりは十分に感じる事ができた。

 

「……すまん」

 

提督はただ一言そう言った。

その短い言葉は彼のいろいろな思いが込められた一言であり、足柄は当然それを理解してこう応じる事ができた。

 

「いいのよ」

 

これも提督に負けないくらい短い言葉だったが、彼にはそれだけで十分だった。

それからただ黙って目を閉じ、顔を寄せ、温かく自分を包んでくれた彼女の腕を握りなら、提督は十分に癒された。

 

(この作戦だけでも満足のいく結果にしよう)

 

提督は足柄に感謝しながらそう決意した。




はい、現在E2のラスダンで沼っており、50回くらい出撃したところで疲れて3日ほどゲームに手を付けてませんw
一度こうなると本当にやる気を出すのは難しいものです。
下手したらこれでゲームは完全にやめてSSだけは既存のキャラだけで続けるという奇妙な事態になる可能性もあります。
さてさて……。


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転勤

その日秘書艦をやっていた春風は本部より送られてきた通達書を手に執務室を訪れた。
提督は普段と変わらない態度で彼女からそれを受け取り、中身を抜き出して書面を見た所で少し硬い表情をした。
春風はその変化が何となく気になり、好奇心というよりは不意に心の中に湧いた不安の正体を確かめる為に提督に訊いた。


「大佐、それは?」

 

「転勤の辞令だ」

 

「え……」

 

春風は思わず絶句してしまった。

ここに来てから今まで彼女は充実した日々を送って来た。

決して楽しい仕事とは言えなかったし、命の危険もあった。

しかしそれは兵器である艦娘には当然の事であったし、寧ろ名誉であった。

それだけでも彼女にとっては生まれてきた甲斐を感じるものであったが、それ以上に生きる喜びというものを与えてくれたのが、共に暮らす仲間と指揮官である提督の存在だった。

辛い実戦の任務も仲間たちがいれば奮闘できた。

そして基地に還れば戦いで疲れた自分たちを待機していた他の仲間たちが温かく迎えてくれ、戦功を称えてくれた。

それは春風にとって今いる場所に配属されてから予想だにしなかった幸福だった。

訊けば、殆どの艦娘も最初はそれを感じるらしい。

故に春風は感謝し恋慕し、忠誠を心に決めた。

艦娘の運用を滞りなく行い、作戦の指揮も無難にこなす提督という存在に。

 

提督は春風のこの評価を過大だと謙遜した。

だが彼女にとってはそれは譲れない事実であり、気持ちだった。

提督は一見不愛想だが真面目で寛大な人物だった。

作戦が失敗した時があってもその原因が明確にこちらに非があるものでなければ、理不尽な叱責などは行わず、挽回の機会を与える事で更なる奮起を促し、こちらの矜持を保ってくれた。

逆に任務以外の非番の時は自分からあまり艦娘に話し掛けたりすることはなかったので、個人的に関わる事は少なかったのだが、春風がそんな提督に他の多くの艦娘と同じく好意を持つのに時間はかからなかった。

 

そんな提督が今、本部から転勤の辞令を受けていた。

春風にはショック以外の何ものでもなかった。

彼女は思わず提督の袖を引いて言った。

 

「行かないで下さいませ。絶対に……」

 

「……」

 

提督はそんな春風に是の態度を取ってやる事はできなかった。

軍人という国に仕える職に就いている以上、上からの指示は絶対というのは常識だったからだ。

だから涙ぐみ彼女の頭の上に優しく手を置いてやる事しかできなかった。

 

「大佐……!」

 

提督を見上げた春風はとうとうそこで泣き出してしまった。

 

(自分はそれなりに『提督』をしてきたんだな)

 

抱き付いてしゃくりあげながら自分の転勤の留意を促す春風を見て提督はそう思った。

故にこうして自分を慕ってくれている彼女の気持ちが純粋に嬉しかった。

 

(なんとか応えてやりたいが……。それに比較的新人の春風でこれだから古参の奴に言うとどうなるか……)

 

提督はこれから起こると予測される騒動に事前に手を打つ為にも自ら動く事を決めた。

 

「あまり期待するなよ」

 

困った顔でそう言う提督の胸に、春風は縋るように無言で顔を埋めた。




あけましておめでとうございます。
そしてお久しぶりです。

最早こうして更新すること自体意味が無いと思われる方もいらっしゃるでしょうが、ちょっと思うところがあって更新しました。

先ずここまで間が空いた事もあって今まで更新を停止していた通り、半端な状態という事は自覚しつつもこれで終わるつもりでした。
理由としては単に歳を取った事によるモチベの低下でしょうか。まだそんなに年寄ではないはずですが……なんか色々と物事に集中できなくなったと申しますか。(*鬱病ではない)

しかし、艦これ自体は好きだしSSはどちらかというと作りたい。
しかしだからと言って今ままで作って来たこの話を全部削除してしまうのは勿体なく感じる。
でも続きを作るのも……という具合で現在も悩んでいるので、この話に関しては話数を設けていません。
いやホントどうしよう……。


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転勤騒動①

提督の転勤辞令騒動が起こった日の話。
やはり様々な艦娘から反応があった模様。
これはそんな話の一部である。
なお、結構関連の話が続く模様。


「聞いたか筑摩! 大佐が転勤なんじゃと! 吾輩を置いてだぞ?! そんなの嫌じゃ?!」

 

「ね、姉さん落ち着いて……」

 

何処からどういう風に広がったのか、提督の転勤の噂が広がるのは波が広がるようにどころか空に雷が轟くかの如く早かった。

早速ショックで駄々をこねはじめたのは駆逐でも海防でもなく、なんと航巡部隊のエースであり、隊長だった利根だった。

利根は自室で筑摩と二人きりになるなり、我慢していた胸の裡をぶちまけ始めた。

元々部屋に着く前から何処かで知ったようで、無邪気な子供の様な部分がある彼女が部屋の外で動揺を見せなかった事は大した忍耐と言えた。

が、その平静も、唯一人の妹の前では装ったりしなかった。

今は枕に顔を埋めて泣き顔を見られまいとしながら足をバタバタしている。

それによって下着が見えてしまう事などお構いなしだ。

いや、元々それに関しては気にした素振りを見せた事はなかったが。

 

「嫌じゃ嫌じゃ! のう筑摩、何ぞ妙案はないか? 大佐が転勤を思い留まってくれるような妙案は?!」

 

「姉さん……いくら大佐が思い留まっても、これは辞令だから……。上からの命令なの。軍で個人の意見を通すのは流石に無理よ……」

 

「そ・れ・で・も! お前はそれで良いのか?! 大佐が行ってしまっても良いのか?!」

 

「…………嫌です……!」

 

涙でぐしょぐしょになった顔で振り返った利根にそう問い詰められ、筑摩もついにそかで瓦解した。

彼女は顔を手で覆ったかと思うと、そのまま姉の胸に飛び込み涙声でそう言った。

利根はそんな妹の頭を、まだ泣いたことによって目を赤くしながらも、そこは姉らしい気丈な優しい笑みを浮かべて撫でるのであった。

 

「そうじゃろ。そうじゃよな……っ」

 

そして利根もまた筑摩の頭に顔を埋めて泣き始めるのだった。

しかしそんな励まし合いも1時間もすれば、流石に二人は落ち着いて今はベッドの上で壁を背にして揃って体操座りをしていた。

 

「のう筑摩、どうしようかの……」

 

「それは大佐がいなくなった後の話?」

 

「うん……」

 

「新し提督の下でもしっかり務めを果たす……のみ、かな……」

 

「そう……じゃよな……うん」

 

「新しい提督か……」

 

「……一応叢雲さんと初春さんに相談してみる?」

 

「……」

 

特にそれで提督の転勤がなくなるなど考えられなかったが、筑摩はこの基地で最古参にして裏のまとめ役である二人に相談する事を提案した。

あの二人なら相談する事で、少なくとも今よりはもっと前向きな気持ちになれる気が利根はした。

 

「そうじゃの。二人の今日の勤務予定は把握しておるか?」

 

「うん、今日の夜なら空いている筈よ」

 

「うむ、では訪ねるにあたって何か土産を用意せねばな。内容が内容じゃしな。やはりお酒かの?」

 

「まだ明けていない一升瓶が幾つかあるからそれにしましょう。後は軽くオツマミでも作っていかない?」

 

「そうじゃな」

 

二人はここでやっと前向きな笑顔になる事が出来た。

料理にしろ相談にしろ、行動する事で今の悲しい気持ちは少しは紛れそうだったからだ。

 

「ツマミを作る材料は足りておるか?」

 

「特に大丈夫だけど……卵が余裕欲しいかしら?」

 

「うむ、心得た。吾輩が購買で調達してこよう」

 

「ありがとう姉さん。お願いね」

 

「うむ」

 

利根は行ってきますと部屋を出た。

その時だった。

 

「ん?」

 

「あ……」

 

タイミングが悪い(?)事に利根はちょうどそこで提督と鉢合わせてしまった。

 

「買い物か?」

 

いつもと変わらない提督の声だった。

利根はそんな普段の提督の声ももう直ぐ聴けなくなると思うと居た堪れない気持ちになり、再び目に涙が浮かび始めた。

だから震える声でなんとか返事を返す事しかできなかった。

気丈に振舞おうともしたのだが、そうしようとすると必ず失敗する。

何故かそう確信できた。

 

「うん……」

 

俯いて元気のない利根らしくない態度だった。

提督は流石に気になって大丈夫かと声を掛けようとしたが、その前に急に自分に抱き付いてきた彼女に止められた。

 

「……」

 

「……」

 

提督も利根もそのまま無言だった。

しかし暫くして利根の方から身を引き、今度は自然な笑顔でこう言ったのだった。

 

「突然すまなかったの。ちょっと卵を買いに行って来るのじゃ」

 

「そうか」

 

「うむ、またの大佐」

 

そのまま普段と変わりない足取りで立ち去っていく利根を提督は複雑な表情で見送った。




前は仕事から帰った後も書けたんですけどね。
今はしっかり話を作ろうとしたら集中できなかったり、他にソシャゲやってたりでかなり難しい感じです。
なので更新するとしたら今後は休日中心になると思います。

利根頑張れ! 提督頑張れ! 筑摩良いぞ!
それではまた。ノシ


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姉の想い

あの武蔵が新しい大規模改装が可能となる。
大抵どの基地でも最大の火力として活躍している大和型の新たな大規模改装は大ニュースだった。
それは提督の基地でも例外ではなく、早速青葉が興奮した様子で執務室に現れた。
これはそんなとある一日の話。


「大佐、武蔵さんに新しい大規模な改装が入るって本当ですか?」

 

ノックも無しに入ってくるなり青葉は興奮に肩を揺らし、まるで問い詰める様な勢いで提督に聞いてきた。

自分が改装を受けるわけではなないのに何故彼女がここまで興奮しているのか、正直提督は解らなかったが一応その問いには首肯した。

 

「そうだ。本部のみで用いられていた技術の一部が俺たちにも開放されるらしい」

 

「それは大ニュースですね! 早速武蔵さんに教えてあげないと!」

 

「大丈夫だ。そについては今朝方本人の方から確認があったからな。皆耳が早い。俺から伝える前に何処で知ったのか」

 

「まぁ艦娘独自のネットワークくらい現代ならありますからね。私もそれで知ったクチです」

 

「ラ○ンのコミュニティみたいなものか?」

 

「そんな感じです」

 

提督も携帯端末を使って上司や部下と連絡を取る事はある。

しかしそれでも提督の場合は連絡くらいにしかあまり使わず、ゲームといった娯楽は勿論、コミュニケーションアプリもそんなに進んで使う事は無かった。

 

(俺も偶には暇潰しに弄るくらいは必要だな)

 

提督はポケットから取り出した自分のスマホを見て苦笑した。

 

「それで、何かお祝いとかはするんですか?」

 

「ん? 武蔵の改装のか?」

 

「勿論ですよ」

 

提督の言葉に青葉は当然ですと言った態度で肯定する。

だが意外にも提督は、それに対してやや逡巡するような様子を見せた。

青葉は怪訝な顔をして聞いた。

 

「どうしたんです?」

 

「いや、祝おうとする考え自体は俺も悪くないと思う。だがな」

 

「? はい」

 

「今回改装を受けれるのは武蔵だけだろ? つまり先行して妹の方が受けるわけだ。それを安易に祝うべきだと思うか?」

 

「ああ」

 

青葉はしまったという表情で口元に手を当てた。

 

(そうか。そうだよね。大和さんの気持ちも考えてあげないと)

 

「まぁあの大和が妹の強化を喜ぶより強く嫉妬するなんて考え難いが。それでもあいつの様子を窺うくらいはした方が良いと思うんだ」

 

「そうですね。それは賢明だと思います」

 

「という事で大和をちょっと呼んで来てくれないか。仲間から口頭で伝えてくれた方が個人的な要件だと理解してくれるだろう」

 

「承知致しました。もう今からでいいんですか?」

 

「ああ」

 

「畏まりました。では青葉ちょっと行って参ります!」

 

そんな元気な返事をして青葉は大和を呼びに行った。

大和が提督の元を訪れたのはそれから程なくしてからであった。

 

 

「大佐、失礼致します。お呼びでしょうか?」

 

「ああ、うん」

 

「何でしょう」

 

「……率直に訊かせてくれ。武蔵の改装を祝ってやろうかと思うんだが……」

 

「え?」

 

大和はそこで不思議そうな顔をした。

それは何故その事で自分を呼んだのだろうと言う純粋な疑問からくる表情だった。

提督はそれを見て自分が抱いていた懸念が杞憂だと確信した。

 

「すまん、不要な気遣いだったような」

 

「あ……そう言う事ですか」

 

流石は大和といったところか。

彼女は提督のそんな様子を見ただけで彼の真意を何となく察した。

 

「妹を祝ってくださるんですもの。それは姉としても純粋に嬉しく思います」

 

「うん、ありがとう」

 

「え? っ、ふふ。大佐、そのお言葉はちょっとおかしいですよ? お礼を言うのは寧ろ私の方じゃないですか」

 

「……そうだな。いや、まぁそれでも、なんというか、な」

 

「……ありがとうございます」

 

大和はそんな提督に心から感謝と好意を込めた目で見つめてお礼の言葉を返した。

やはり彼は良い人だ。

軍人としてしっかり厳しい所もあるが、それでも私たちに対する人と同じ気遣いや態度はずっと変わらない。

だから自分も他の仲間たちと同様彼を慕うようになったのだ。

 

(……好きになって良かった)

 

「? どうした?」

 

何やら黙って見つめられていた事をむず痒く感じた提督はそれが気になって大和に聞いた。

大和はそれに対して微笑みを称えながら静かに提督に歩み寄った。

 

「いえ、大した……いいえ、とても大事なことですけど、いいんです。でも――」

 

「ん?」

 

「よろしければちょっとお膝をお借りさせて頂けませんか?」

 

そう言うと大和はその場で跪いて椅子に座っていた提督の腕と顔を乗せた。

その顔はとても幸せそうな笑顔に満ちていた。




はい、武蔵の改装の話と思いきや、大和のメインの話でした。
うちも運良く最初から条件を揃える事ができていたので、改二になりました。
いやぁ、凄いですね火力。
良いですね5スロ。
おかげで間違いなく現在彼女は我が泊地最強の戦艦となりました。


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閑話

タイトル通り独立した思いつきの話です


「大佐が酔っているですって?」

 

その日は泊地の総力を上げての花見の日だった。

提督が勤務している国には桜はなかったが、どうしてもやりたいとう一部の酒好きの艦娘による訴えが実ったのである。

花見は当初大盛り上がりで肝心の桜が無いにも関わらず、参加した娘全員の心の中には懐かしい故郷の桜が咲き誇っていた。

つまり雰囲気と気分が重視されていたのだ。

 

加賀が提督の異変を知ったのはそんな最中。

宴もたけなわ、皆の盛り上がり様も最高潮から心地良い余韻や酔いが冷めてきた頃。

提督が酒に酔って不安定な状態であるという報告を大和から受けて加賀は外面こそ冷静を保っていたが、その実、心中では意外な驚きの感情に満ちていた。

 

「それで、今大佐はどうしているのかしら?」

 

「何か……その、急に甘え癖が生まれたようで、今は神通さんの膝枕の感触に凄く酔いしれた顔を……」

 

「は?」

 

その一言で加賀の機嫌は一気に悪くなった。

 

 

「大佐、何をしているのです?」

 

「……放っておいてくれ。今俺は神通の太腿の感触を楽しんでいるんだ」

 

「た、大佐……」

 

言葉では拒否のニュアンスを醸し出していたが、明らかに神通の表情は幸福に満ちているように見えた。

加賀はそれを察した上で提督を彼女から引き剥がそうと試みる。

 

「大佐、貴方は酔っているわ。感触を楽しみたいなら私のを楽しみなさい」

 

「……加賀さん?」

 

てっきり加賀に提督を譲るものと思われたが、予想外にも神通は提督が自分から引き離されようとしている事を明らかに不満を感じているようだ。

いつもの謙虚で大人しい性格からは驚くほどハッキリと内心の不満を言葉で表し、提督を加賀に奪われまいとしている。

 

「神通、無理はしなくていいのよ」

 

「いえ、神通は大丈夫です」

 

 

「……!」

 

ビクン、と何処かで酔い潰れていた金剛姉妹の誰かが無意識に神通の言葉に反応した気がしたが加賀は気にしないことにした。

 

「神通、提督は酔っているわ。私が休ませるから彼を私に預けてくれない?」

 

「お言葉ですが加賀さん。大佐は今極めて心穏やかな様子です。提督に仕える艦娘としてはこの状態を維持することが何よりの忠誠心の証明だと考えるのですが」

 

「でしたら私が責任を持って大佐の安らぎを維持することを誓います。だから大佐を……」

 

「……」

 

神通はその言葉に反して提督を加賀預けるどころかより渡すまいと彼を抱きしめる。

その目は加賀に挑戦しようとする意志がありありと見て取れた。

 

「……分かりました。じゃあ取り敢えず部屋までお運びして。そこから先はお互い話にし合って妥当な落とし所を見つけましょう。それでどうですか?」

 

「……異論はありません。それで良いと思います」

 

普段は落ち着いて頼りになる二人だが、その時の姿は提督に恋慕する女だった。

この様子を傍から固唾を飲んで見守っていたそれぞれの親しい者はあわや修羅場になるのではと恐れていたのだが、どうやらそこまでに至ることも無く落ち着いたようだったので安堵を息を吐いていた。

 

「いやぁ、神通も女になったねぇ」

 

「いや、あれ割と危なかったよ? 下手をしたら私達の生活にも影響がでるような勝負事になっていたかも……」

 

「というとやっぱり……食糧難?」

 

「うんまぁ、でも神通が自分に不利な勝負に乗るとも思えないしなぁ」

 

「安心して二人共。その時は私が代理になるわ」

 

「なるほど! ……と言いたいけど、神通真面目だしね。真剣勝負に代理を頼む事は多分ないんじゃないかな?」

 

「那珂もそう思う」

 

「むぅ……確かに」

 

「あはは、残念だったね」

 

 

という会話の一部始終が本人達は声を抑えて話しているつもりのようだったが、二人はその内容をバッチリと耳聡く捉えていた。

 

「……」

 

「……」

 

「な、何かごめんなさい」

 

「……いえ、気にしないで。私も今のでちょっと頭が冷えたわ」

 

「と、取り敢えず大佐を運びましょうか。加賀さんは大佐の左腕を」

 

「いいの?」

 

「元々一人でお運びするつもりはありませんでした……というのは実は嘘ですけどね。私もさっきの会話で落ち着きました」

 

「ふ……ありがとう」

 

「じゃあ大佐を寝かした後もお互い平等に、お互いがなっと……得をする方法を話し合いましょう」

 

「いいでしょう」

 

先程までピリピリしていた雰囲気はすっかりなりを潜め、加賀と神通は小さく笑い合うと二人で提督を支えて彼を部屋に運び始めた。

そんな中で提督が途中から意識を回復し、同時に泥酔していた時の醜態を思い出して羞恥心に悶えていた事は幸運にも二人に気付かれずに済んだのであった。

 

(……これは何処まで意識を失った振りができるかだな)

 

提督はこれから待ち受けているであろうある意味での苦行に気合を入れるのでった。




もうこの作品は消してもいいかなぁと思うこの頃。
しかしネタ(面白いかは別として)が浮かんで書けるくらいには、まだモチベがあると言えるのではと悶々とした気持ちです。
うーん……。


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待っていた夕立

最近夕立とケッコンしたので。
ケッコンボイスを聞いても何か半端な感じだったので、実際にどういう反応しそうか軽く悩みましたw


「大和、夕立の練度が99になったって?」

 

「はい。旗艦を務めた午前の演習の折に達したようです」

 

「そうか……思えばあいつは古参だから、本人は『やっとか』と思われたりしたかもな」

 

「ふふっ、そうですね。でしたらその想いに報いてあげるのが宜しいかと」

 

「……うん、まぁ呼んでくれ、夕立を」

 

 

夕立は提督麾下の駆逐艦の中でも古参の存在である。

加えて彼女の戦闘力とこれまでの実績はエースと呼ぶに相応しいものであり、そんな彼女が何故ケッコンできるレベルに達するまでここまで時間がかかったのかは不思議とも言えた。

それは提督が特別夕立を大事にしたくてあまり戦闘に出さなかったとかそういうわけではない。

単純に最も在籍数の多い駆逐艦の均一的な育成で時間がかかった故というだけであった。

その目的の目処が大体立ったので、今度は対潜能力において優秀な娘のそれを伸ばす育成の段階に移ったところ、その対象に夕立もふくまれており、おかげでようやくこの機会が訪れたのだった。

 

「提督っ! 夕立を呼んだっぽい?!」

 

駆逐艦の中でも元気な子供という性格の向きが強い夕立だが、執務室に入る時はちゃんとノックをするくらいは礼儀はちゃんとしていた。

だがこの時ばかりは提督に『何か』を期待する気持ちが強い所為か興奮した様子で鼻息荒く勢いよく入ってきたのだった。

 

「夕立、ノック」

 

「あっ……ご、ごめんなさい……入り直すね?」

 

「いや、まぁいいさ。さて、ところで夕立」

 

「したい!」

 

「……ん」

 

「夕立、大佐とケッコンしたいっぽい!」

 

「ただ能力が向上した優秀な艦娘が欲しいかもしれないぞ?」

 

「それでも構わない! それに夕立知ってるもん!」

 

「うん?」

 

「大佐は私たちの気持ちを大事にして指輪を贈ってくれてる事っ。だから夕立は大佐から指輪を貰って、ついでに今よりもっと強くなれるのが凄く嬉しいの!」

 

「なるほど、そこまで心待ちにしていたのならこれ以上無駄に確認する必要はないな」

 

「!!」

 

提督が机から小さな箱を取り出すと、夕立の特徴的な跳ねた髪が犬用の尻尾が喜びを表すように一瞬ピコンと跳ねたように見えた気がした。

夕立はキラキラした瞳でその箱を見つめ、早く欲しいと無言で犬の『待て』をしているようだった。

 

「よく頑張ったな夕立。お前にこれを贈る」

 

「っ……! ありがとう大佐! 夕立、夕立……凄く嬉しいっぽい!!」

 

 

いつもは天真爛漫としているが、実は密かに自分は古参であるという自負はあった。

それは決して後輩たちにそれを誇示する類のものではなかったが、やはりその自覚はあっただけに自分より後にやって来た艦娘が先に提督とケッコンしていいく姿を目にした時は、その度に彼女は焦りと不安を覚えた。

 

(大佐は贔屓とかっはしない人っていうのは解ってる。でも、でも……やっぱり早く夕立もしたいよ……)

 

そんな中でやっと巡ってきた機会だ。

それに対する夕立の嬉しさは果たして如何ばかりのものであったか。

 

彼女は指輪が入った箱をギュッと胸に抱きしめ、箱の重みからその存在を十分に堪能すると、いつもの子供っぽさは潜めて少女らしいしおらしい態度でそっと左手を提督に差し出してきた。

提督は夕立の意外な仕草に内心驚くも、解ったと言う言葉の代わりに小さく頷いて夕立から箱を受け取ると、そこから指輪を取り出してゆっくりと彼女の左手の薬指にはめていた。

 

「はぁー……っ、ふふっ♪」

 

指輪がはまった指を改めて感慨深げな表情で嬉しそうに見つめる夕立。

その微笑ましい姿に提督もつい頬が緩み、自分も笑顔で見つめているのを提督は感じた。

 

「夕立、これからも宜しく頼む」

 

「うん、任せて! 夕立、きっと今まで以上に大佐の頼りになる艦娘になるよ!」

 

先程までの少女らしい雰囲気は何処へやら、今はすっかり子供のようにピョンピョンと小さく跳ねて嬉しさを表現する夕立。

 

「ああ、頼りにしてるぞ。よし、要件はそれだけだからもう部屋に戻って良し」

 

「はーい。あ……」

 

提督の許可を得て部屋を出て行きかけた夕立は唐突に止まって振り返る。

彼女の姿を見送る前に机の上の書類に視線を戻しかけていた提督はそれに気付きどうしかしたかと尋ねると、夕立はまたさっき見たような少女らしい雰囲気で少し恥ずかしそうに提督に訊いた。

 

「ね、ね……大佐?」

 

「ん?」

 

「い、一応ケッコンしたんだから……夕立も嫌じゃないから、ソレっぽい事したいな……?」

 

「……今、か?」

 

「ううん、今やり難い事」

 

「……ソレは誰かに教えてもらった事か?」

 

「う、うん。加賀さんとか金剛さんに……」

 

心の何処かでキスくらいのソフトな愛情表現で済むことを期待していた提督は、夕立の口から出た二人の名前を聞いてそうもいかないだろう事を確信した。

決して夕立のことを疎んでいたというわけではなかったが、『そう』いう事を駆逐艦にする事がどうしても最初に抵抗を覚えてしまうのだ。

だが本人が心から望んでいるのなら仕方なし。

お互い同意済みとはちょっとズレがあるが、提督も今までに何人かはその上で駆逐艦との経験はあったので下手を打ってしまいそうな不安はなかった。

 

「解った。夜、なるべく遅くならないようにするから、俺が向かいに来るまで待っていてくれ」

 

「えっ、大佐が迎えに来てくれるの?」

 

「うん、まぁな」(呼び出すのは何か後ろめたさを感じるんだよな)

 

「分かった! じゃあ夕立待ってる……あ……えっと、待ってます」

 

自分が提督の求めていることに対して普段と同じ調子で喜んでいる自分に恥じらいを感じたのか、夕立の言葉は最後は耳を済ませないと聞こえない小さな声でそう言った。




半端な終わり方ですね。
裏の方もすっかり更新してないので、何かやらないとですね。
まだこの作品に愛着のようなモノを持ってくれている方がいらっしゃって驚き半分嬉しさ半分の気持ちになりました。
あー、手直しをドンドンと調子良くできたらなぁ。


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構って

久しぶりに挿絵用の絵を用意したので。
簡単な手描きですが


足柄の練度は現在提督の艦隊の中では第五位。

そして重巡の中ではトップである。

皆が提督の事を慕っているのは事実であるが、足柄はその中でも彼に対する思いが特に強いと自覚する艦娘の一人であった為、自然と提督のために奮戦した結果、今のような強さの域にまで来れたのだった。

 

彼女の同一個体はよく男に飢えている、婚期に焦りを覚えている残念美人といった風評を耳にするのだが、提督の基地における足柄については少なくともその風評に当てはまる性格ではなかった。

 

(全く失礼しちゃうわ。そりゃ原型は飢えた狼とか評されたけど、それだって無骨な軍艦に相応しい精悍さとも言えるじゃない。だってのにそれが今度は恋欲に飢えた狼だなんて……)

 

足柄はチラリ自分の横で机に向かって黙々と執務に励む提督を見る。

今日は足柄が秘書の日。

彼女は真面目に仕事をする提督の顔を改めて認識して自然と微笑む。

 

(ま、いいけど)

 

いろいろ言いたいことは確かにあるが、少なくとも自分がいる今の環境については全く無い。

文句や不満などあろうはずがない。

何故ならかたわらの提督はそんな自分の想いに優しく応えてくれるし、艦娘としても満足の行く働きの場を常に与えてくれる。

足柄はそんな提督の下で尽くすことができている今の自分の人生にとても満足していた。

 

「あっ、ねぇ、ここ」

 

「ん?」

 

提督を見た時に偶然同時に捉えた書類の誤字に気付いた足柄はその部分を指差す。

提督は指摘された部分に目を凝らして一瞬考え込んだ後「ああ」と指で小さく机を叩いた。

 

「この漢字線が一本足らなかったな?」

 

「ふふっ、正解♪」

 

「ありがとう」

 

「まぁこの程度本部だって見落とすかもしれないし、仮に見つけたとしても態々再提出の指示なんてしてこないでしょうけど」

 

「そう楽観できたらいいんだけどな。だが軍で扱う正式な書類だから注意するに越したことはないさ」

 

「そうね」

 

「ふむ……」

 

提督は徐に自分の腕時計を確認した。

時刻はもう直ぐ23時を回ろうかとする頃。

今行っていた作業もあと数分で終わるところだったので仕事の進捗は悪くはなかった。

故に彼は足柄の方を向いて言った。

 

「足柄、もうお前は部屋に戻っていいぞ。添削もさっきので大丈夫だろう」

 

「そう?」

 

「ああ、これももう直ぐに終わる。だから後は……」

 

「じゃ、待ってるわ」

 

「ん?」

 

「終わるまで待ってる」

 

「……」

 

「いいでしょ?」

 

部下を労って早く勤務から開放しうよとしたのだが、提督に任務の完了を告げられて自由に行動をする事を許された足柄は、執務室のソファーに座って笑顔でそう言う。

提督もそんな幸せそうな笑顔の彼女にそう言われたら「分かった」と答えるしかなかった。

 

「ありがとう♪」

 

かくして提督は喜色に満ちた足洗の声を耳で確認して再び書類視線を落とす。

そして……ほどなくしてその日の提督の任務もようやく終わりを迎えた。

 

「お疲れ様」

 

いつの間にか自分の後ろに回っていた足柄がそっともたれかかって提督を抱きしめるようにして腕を伸ばしてきた。

 

「ねぇこの後はどうする? 少しは私が甘えられる時間ある?」

 

提督は頬をほんのり紅潮させた足柄の声を耳元で感じながら、回された彼女の片手にそっと自分の手も重ねて言った。

 

「そうだな……。取り敢えず今日はお前も頑張ってくれたしそれに感謝する意味も込めて明日の出勤時間は多少遅くしてやろうか」

 

「ええっ?!」

 

どうやら彼女が欲しかった言葉とは大分違ったらしい。

目に見えて失望した声を上げた足柄はショックでつい力を緩めてしまい、そのタイミングで提督が立ち上がった為につい彼を些細な拘束から逃してしまった。

 

「あっ……」

 

「さて、明日も早いから俺も軽く一杯だけやって寝るか。だからお前も……」

 

ギュッと自分の腕を抱く柔らかい感触がした。

提督が感触を感じた方を向くとそこには彼に甘えた子犬のように縋るちょっと涙目の足柄がいた。

 

【挿絵表示】

 

「うぅ……私も一緒に飲みたいぃ」

 

「酒か? なら一本くらい譲っても……」

 

「だーかーらーっ」

 

提督の意地悪につい堪えきれなくなった童心が足柄はそれ以上言わせないとばかりに今度は彼の胸元に顔を埋めて子供がダダをこねるようにイヤイヤと頭を振った。

提督もそこまで来てようやく軽く吹き出すと、すまなかったと言うように足柄の頭を撫でて言うのだった。

 

「はは、悪かった。じゃあグラスを二人分揃えてくれるか?」

 

「……お酒だけ?」

 

尚も何かを期待しているのかまだ若干子供のように拗ねた上目遣いでそう尋ねる足柄。

その真意を察した提督は「そうだな」と呟くと彼女の頬に触れて答えた。

 

「そこから先はお互いの雰囲気次第だな」

 

「! 任せて! ぜーったいにそういう気分にさせてあげある!」

 

目に見えそうなくらい幸せオーラを発してグラスとツマミの用意を始めた足柄の背中を提督は見て、その時彼女にピンと張った犬の耳と嬉しさで激しく振っている尻尾も見えた気がした。




やっぱり俺の嫁は足柄です


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作戦終了

今回のイベントは新規実装のドロップ艦の入手率が特に酷かったですね
俺も枯れかけました


「今回の作戦も無事完了した。皆ご苦労だった、暫くゆっくり休んでくれ!」

 

『ワアアアアア♪』

 

深海棲艦に対する作戦も最近は人間側が優勢になってきたのか攻勢の色が強くなってきた気がする。

そんな事を提督は考えながら、彼は階下の艦娘たちに今回の作戦の完了を宣言した。

未だに戦闘の興奮が冷めずにその余韻に震える者。

今回も無事に作戦が完了してホッと安心の息を吐く者。

皆反応は様々であったが、その心には共通して喜びあり、彼女たちの表情からもそれは容易に見て取れた。

提督はそんな艦娘たちを眺めて満足そうに一度頷くと踵を返して一人静かに執務室へと戻った。

 

「お疲れ様」

 

「ああ」

 

部屋で待機命令を受けていたのか部屋に入ってきた提督を叢雲が落ち着いた声で迎えた。

その時の部屋は晴れた日差しで電気がなくても明るく暖かな雰囲気だったのだが、何故か二人を取り巻く雰囲気はそれに反して冷めていた。

 

「さて……一番逼迫しているのは?」

 

「燃料。過去最低の備蓄量よ」

 

「……そうか。他は?」

 

「全て最大備蓄可能な量の半分以下。その中でも鋼材は燃料に次いで少ないけどそれでもまだマシと思えるくらい燃料がマズイわ」

 

「やはり友軍の捜索に費やしたのが原因か」

 

「それ以外ないわねぇ」

 

「ふむ……」

 

作戦遂行中提督の艦隊は友軍の救難信号を受信した。

しかしその時に限って激しい敵の攻撃と悪天候が重なり、信号の発信源の特定は困難を極めた。

提督本人は艦娘たちに負担をかけない為にも非情な決断を下すつもりであったのだが、逆に彼女たちから強い捜索の嘆願を受け、結局提督が折れる形で作戦の遂行と並行して友軍の捜索を行うことになったのだった。

しかしてそれは功を奏し、作戦遂行中に合流した艦娘以外にも波間に浮かんでいた小さな影2つ(石垣とフレッチャー)を発見して救助に成功するという奇跡的な成果を挙げることに繋がった。

その上今回の作戦も最後まで全うできたとあっては正に非の打ち所がない結果に誰もが満足するところ……であったのだが、結果として凄まじい物資の消費を招いていしまい、現在二人はこうして頭を悩ませることになってしまったのである。

 

「通常任務には支障はないと、判断するが?」

 

「肯定ではあるけど、それは明日から即資材の補充に極力努めるのが当然の条件ね」

 

「我が基地の稼働が始まって以来の危機だな」

 

「敵襲を受けているわけでもないのに最大の危機ってところが泣けるところねぇ」

 

悩ましげに大袈裟な動作で頭を振る叢雲。

しかしその顔には提督への不満は一つも浮かんでおらず、寧ろ口元には小さな笑みが浮かんでいた。

 

「なんか楽しそうだな?」

 

「あ、ふふっ、ごめんなさい。なんか昔を思い出してね」

 

「さっき言った基地が稼働した頃か」

 

「ええ、あの時は何もかも手探りだったからいろいろと苦労したわよね」

 

「……そうだな」

 

提督は背もたれに深く背中を預け、過ぎた過去を思い出す。

あの時は基地近海の哨戒が主な任務で、まだその時にいた艦娘は叢雲と……。

 

「おぉ、何処にいるかと思えばこんな時にまで仕事かえ?」

 

提督が思い出に浸りかけたところでノックをせずに部屋に入ってきたのは最古参の一人の初春だった。

普段だったら入室する時に必ずノックをする彼女がそうしなかったのは、その時は無礼講だと理解していたからだ。

 

「ちょっとぉ、せっかく二人で良い雰囲気になろうとしていたのに水をささないでくれるかしらぁ?」

 

唇を尖らせてそういう叢雲だったが、決して気分は害してなく、目は明らかに笑っていた。

 

「それは悪いことをしたのぉ。されど妾とて其処に御わす殿方を好く身。此処はお互い同じ気持ちを持つ者同士、仲良うするわけにはいかんかえ?」

 

「仕方ないわね。でも、仕事の話もするからちゃんと相談に乗ってよね」

 

「ん、やはり備蓄の事かえ?」

 

「そういう事だ。早速で悪いが明日からお前にも力を貸して欲しい」

 

「何のことはありんせん。貴方が助けを求めるのなら、妾は当然それに……いえ、それ以上の成果を携えて応えてみせましょう」

 

「遠征隊の編成と指揮に関しては私たち二人に任せて頂戴。時間の配分は任せても良いわよね」

 

「当然だ」

 

「では、悩ましい問題に光明を差す手段の予定が組めたところで、いい加減妾達も祝杯の一つでも上げようぞ♪」

 

初春はそう言うと待ってましたとばかりに背中に手を回して隠していた一升瓶を机の上に置いた。

叢雲はそれを見て呆れかけるが既に提督が酒を注ぐためのグラスを持ってこようとしていたので、呆れるのを通り越してつい笑ってしまった。

 

「あはは、何よそれ。大佐ったら」

 

「まぁせっかくだ。こういう時くらい、な?」

 

「そうそう♪」

 

「もう、仕方なわいわね。それじゃ……」

 

『乾杯』

 

酒が注がれた3つのグラスがカチリとぶつかる音と三人の祝杯を挙げる声が同時に部屋に響いた。




始まりの艦娘である叢雲と初春
この二人の名前が入手順のソートにした時に真っ先にトップに来るのを見る度にちょっと感慨深い気分になります


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転勤騒動②

前の話から大分放置していたので短くても続きをと思いました


「大佐の転勤?」

 

「うむ、そうじゃ! 叢雲は知っておるじゃろ?」

 

「まぁね」

 

「どうにかする方法はないでしょうか?」

 

「どうにかとは……また漠然とした相談じゃな」

 

利根と筑摩は叢雲と初春という基地の最古参の中でも始まりの二人とされる筆頭格に提督の転勤について相談に来ていた。

二人とも提督とは長い付き合いなだけにその話は既に把握しており、利根達の話にも特に驚いた様子は見せなかった。

 

「どうにかというと署名でも募って嘆願書にでもするつもり?」

 

「それだと基地にいる者の分しかできぬからほぼ意味は無いと思うの」

 

「いえ、署名はありなんじゃないですか? 艦娘の支えあってこその基地、艦娘の支持があってこその提督ではないですか?」

 

「うむ、例え数に不足があると言っても大佐麾下の全員の揺るぎのない意志が示せれば効果は望めるのではないか?」

 

「解らなくはないが、悪いが妾はそれだけで本部が動くとは正直思えぬな」

 

「私達だって転勤されるのは嫌よ? あれだけ付き合っているとね? これが普通の会社とかならどうにかなったかもしれないけど……」

 

「どちらにしても署名は用意する。そしてそれを持って本部に上申しに行くのじゃ!」

 

艦娘(わたし)たちだけで本部に赴くっての?」

 

「そうです。本部に来たのに提督の姿がなければ、本部の方々も状況を異様に思って注意を向ける筈です」

 

「確かに注意は引けるかもしれぬが、それだと大佐の監督能力としての評価に影響がでるのではないか?」

 

議論は一昼夜続いた。

結果として有力な方法は導き出せず、取り敢えず艦娘の総意として署名だけは募ろうという結論に一先ず落ち着くのだった。

 

 

「……という事があってね」

 

「……そうか。悪いな、何だか間者のようなことをさせて」

 

「なに、気にするでない。必要と考えた故に報せたまでよ」

 

「混乱自体はそんなに大きくならないはずよ。転勤の話は敢えて私達から各所に伝え拡めてきたから」

 

「ふふっ、いきなりそんな話が出てはそれこそ皆混乱するじゃろうから、の」

 

「確かにな」

 

夜、叢雲と初春は提督の下に彼の転勤の話が今現在基地にどれほど影響が出ているかについて報告に来ていた。

部屋はランプの灯りのみが使われ、優しい光が三人を照らし包み込んでいた。

 

「それで?」

 

「ん……」

 

叢雲の言葉に提督が彼女の方を向くと、そこには叢雲と一緒に自分を真っ直ぐ見つめる初春の顔もあった。

二人は黙って提督を見つめるのみであったが、それだけで彼には二人が何を問いたいのか用意に解った。

 

「できれば、と言うつもりだ」

 

「そう」

 

「うむ」

 

提督の言葉に二人は満足げに頷いた。

ここで「大丈夫だ」とか、「心配するな」と言う方が返って無責任で全員を傷つけることになると解っていたからだ。

だから二人は提督の自分の意思は示すという答に満足した。

それだけ自分たちの事を想って行動してくれるのなら十分に幸せだった。

 

「なんかごめんね? 追い詰めるような状況になっていて」

 

「気にするな。その所為で確かに俺達は心苦しい思いをしているが、それでもこの状況自体が俺たちが歩んできた今までの結果によるものだと考えれば提督として誇れることだ」

 

「うん……」

 

「そう、じゃの……」

 

「俺は正直、これからもお前たちの提督でありたい。残念ながらそれが叶わなかったとしてもお前たちならこれからも前に進んでいけると信じているし、もし万が一のことがあったとしたら……」

 

「したら?」

 

「なんじゃ?」

 

「必ず報せに来てくれ」

 

「「……!!」」

 

その一言は二人の瞳を潤ませ、提督の胸に飛び込ませるには十分なものだった。

配属先が変われば提督の独力で以前の配属先の状況を知るのは難しい。

故に彼は万が一の事があれば、自分の名を使ってでも窮状を本部に訴えろ、そう暗に言ったのだ。

独断で秘密裏にこのような指示を出すのは当然思い規則違反である。

だが提督はをそれを理解した上で、何かあれば自分に責任が及んででも彼女たちの助けになりたいと願った。




ひ ど い は な し を 直 し た い!
と思う今日この頃です


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五月雨の思わぬ幸運

甲乙乙で今回の2019夏イベントは抜けました。
新規実装の娘も全てお迎えできました。
やっぱり艦これのイベントは疲れますね。


「本部から作戦完了の通達が来ました。大佐、お疲れ様です」

 

「了解。お前もご苦労だったな。放送は?」

 

「はい、今マイクスイッチ入れました」

 

「ありがとう。んんっ、皆、既に直感している者もいるだろうが、その通りだ。本作戦は終了だ。皆、ご苦労だった」

 

提督の短い労いと作戦終了の通達の放送が終わると、彼がいる部屋まで段々大きくなってくる艦娘たちの歓声が聴こえてきた。

提督はその声に暫く耳を傾けると、通信機器の前に居た大淀の肩を解すように軽く、一度叩いた。

 

「二回目だがご苦労。お前ももう休んでいいぞ」

 

「いえ、まだ後処理の仕事が……」

 

「それは俺がこれから少し仮眠をとってすませるから大丈夫だ」

 

「そういうわけにはいきません。決して少ない量ではなかったはずですし」

 

「別に無理をしてやるとは言っていない。『ゆっくり』やるから大丈夫だ」

 

「……」

 

大淀は提督の言葉に込められた意味を頭の中で考えた。

作戦行動中は常に気を張って余裕があるとは言い難い状況なのだが、そうなっていた根本の原因がなくなれば多少の量の仕事でも腰を据えて望めるからそれほど苦ではないということなのだろう。

そう結論した大淀はそれでも提督の力になりたくて何か彼に提案できること事はないかと考えていたのだが……。

コンコンと扉を叩く音にその思考は中断させられた。

 

『大佐、香取です。新しく迎えました同盟国の艦娘が面会を希望しておりまして』

 

「そうか、分かった。入れ」

 

提督は入室の許可を出すと香取達が入ってくる前に大淀に目配せをして小さな声で彼女に言った。

 

「そういうわけだ。必要なときは呼ぶからお前も早く休め」

 

「……了解です」

 

本当は仕事を手伝いたい以外にも提督と二人で居たいという密かな狙いがあったのだが、こう言われては仕方がない。

大淀は少し不満げに頬を膨らませながら提督に従った。

 

 

「アブルッツィにグレカーレにジェーナス、だな? ようこそ我が基地へ歓迎する」

 

「ええよろしくね! 私、ここに来る前は日本の艦娘ばかりだと思っていたけど、意外に海外の子もたくさんいてちょっと安心したわ!」

 

「そうですね。妹も居ましたしリットリオさん達までいたのには驚きました」

 

「あたしなんてもっとビックリよ。まさかいきなり姉と妹に挟まれるなんて思ってもみなかったわ」

 

「はは、此処も大分日本以外の国の艦が増えていたからな。おかげで君等を迎えやすい環境になっていたというわけだ」

 

「あなた良い提督()そうね。いいわ、アドミラルって呼んである!」

 

「ありがとう。だが、君等が良ければ俺のことは大佐と呼んでくれ。此処での共通の俺の呼び方、愛称みたいなものだ」

 

「准将の閣下を敢えて下の階級で呼ぶくらいですから余程こちらでは親しみが込められているのでしょうね。了解しました。大佐」

 

「あたしもオーケーよ」

 

「ジェーナスも! そういう事なら no problem よ!」

 

 

「……ふぅ、元気が良いやつらだったな」

 

挨拶も兼ねた面会を終え、彼女たちが退室したことによって部屋に一人となった提督は椅子に深く座り直して呟いた。

 

(慕ってくれるのは素直に嬉しい。円滑な関係が築けそうなのもなによりだ。だからこそ……)

 

提督は軽く首を曲げて小さな音を鳴らすとやる気に満ちた眼をして再び呟いた。

 

「あいつらと国の為に頑張れるというものだな」

 

 

それから数時間ほど経った時の事。

時刻は深夜の2時過ぎ。

確かに腰を据えて余裕を持って臨むことはできたが、それだけに相応の時間がかかったことで仕事からの開放感と疲労を解すために提督が腕を伸ばしていると、徐に目の前の扉がノックもなく小さく開こうとしているのに彼は気付いた。

 

「誰だ?」

 

「っ!」

 

扉の向こうに居た者は提督に声を掛けられた事に純粋に驚いているようで、かといって立場を弁えているのか無言で逃げ去るということもしなかった。

 

「怒らないから入って来ていいぞ。誰だ?」

 

「すいません……」

 

すごすごと縮こむように部屋に入ってきたのは五月雨だった。

 

「気にするな。時間が時間だからそんなに礼儀を注意するつもりもない。まぁそれでも音もなく扉が開いたことには正直ちょっとヒヤリとしたがな」

 

「! ご、ごめんなさい! わ、わたしそんなつもりじゃ! 決して大佐を驚かすつもりなんかじゃ!」

 

「だろうな。お前がそんな事したことは多分今までなかったからな。廊下を歩いていたら扉の隙間の光に興味を引かれたんだろう?」

 

そこで駆逐艦とはいえトイレに行くところだったと言わないところが提督の紳士的な気遣いと言えた。

提督の予想は的中していたようで五月雨は彼の言葉にぶんぶんと何度も頷いて肯定した。

 

「ここももう少し密閉に関して考えてみるか。とはいえ、お前の夢心地を晴らしてしまって悪かった。ちょうど俺も今仕事が終わって寝ようと思っていたところなんだ」

 

「こ、こんな遅い時間までお疲れ様です!」

 

ペコリペコリと申し訳無さそうに今度は何度も頭を下げる五月雨の可愛らしい仕草に提督は精神的な癒やしを感じた。

彼はその事に密かに感謝しつつ頭をかいて立ち上がると、五月雨の前まで歩いてきた。

 

「……っ」

 

提督は少々のことでは強く叱ったりしない人物であるとは解っていても、自分の上司が目の前まで歩いてきたら流石に緊張と若干の恐怖心で五月雨は身を竦ませた。

ぎゅっと目を瞑って提督の次の行動に対して待機していた五月雨は、何か頭に心地の良い重さと暖かさを感じて閉じていた目を開けて上を見た。

 

「ぁ……」

 

そこには自分の頭の上に置かれた提督の手があった。

それをしている提督の眼は若干疲労の色が見えていたものの優しいことに変わりはなく、彼は何処か困っているような笑顔をして言った。

 

「大丈夫だ。明日……まぁ今日は特別に本部から全提督に休暇が出されているからな。その休みをゆっくり過ごす為にちょっと頑張っていて、それがちょうど終わったところだったというだけだ」

 

「そ、そうなんですか。良かったです」

 

「ああ。さて、五月雨。良かったら部屋まで送ってやろうか?」

 

「えっ」

 

予想外の提督の提案に五月雨は目を白黒させて焦る。

 

「そ、そんな悪いです。せっかくこれからお休みになろうとしていたところなのに」

 

「気にすることはない。お前の部屋に行く途中に手洗い場があっただろう? お前を送った後に丁度そこで顔を洗うのも良いなと思いついたんだ」

 

「あ、なるほど……。あ、はい。そ、そういうことでしたら大佐さえ宜しければ……」

 

「了解だ。じゃあ行こうか」

 

「あ」

 

五月雨は自分に差し出された掌を見て思わず提督を見た。

どうやら彼は部屋に戻るまで手まで握ってくれるらしい。

彼女は嬉しさと提督に対する申し訳ない気持ちで軽く1分ほど悩んだが、その末に手を握る方を選び、嬉しさで緩む笑顔が暫く続くことになるのだった。

 

 

「ん?」

 

「え?」

 

提督が五月雨を彼女の部屋まで送ろうとした方向とは逆の方向に五月雨が行こうとした事で二人の疑問の声が重なった。

しかし提督の方は直ぐにその疑問に対して解を導き出したようで、部屋で見せたあの困った笑顔で彼女に言った。

 

「あー……用が済むまで表で待たれるのは流石に恥ずかしいよな?」

 

「……っっ」

 

自分がどうして夜中に廊下を歩いていたかのか、その本来の目的を思い出して顔を真っ赤にした五月雨は、それでも()()()()()から自分の部屋までエスコートを結局提督にお願いすることを選んだのだった。




お久しぶりです。
他の作品にも言えることですが投稿間隔が大分開くようになってますね。
それでもこうしてまだ書けるだけマシなのですが。
嫌々とか辞めたいという考えが出ないし、これからもまだ続くと思います。


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ガングートとクリスマス

新年を迎える前に投稿できて良かったです。


「メリークリスマス!」

 

『メリークリスマァス!』

 

提督の合図に応えて大勢の嬉しそうな声が空間に響く。

提督の基地は今、その年最後のおお仕事と言えるある重大な作戦遂行の任務を無事終える事ができ、艦娘たちのへの労いの意も込めてちょっとしたパーティが開かれていた。

 

「メリークリスマスねテートクゥ!」

 

提督が律儀に艦娘一人ひとりに声をかけて挨拶していると聞き慣れた元気な声が後ろからした。

声の主は彼が振り返る前から判っていたが、実際に振り返る前に後ろから抱きつかれるのは予想外だった。

 

「金剛、できあがるのが早くないか?」

 

「ノンノン! ワタシはまだぜぇんゼン! 酔ってなんかないワヨ~?」

 

すわりかけた目でそう言う金剛の姿には全く説得力がなかったが、せっかくの良い気分になっているというのにそこに水を差すような無粋な事を言う気も提督にはなかった。

ただ彼は苦笑して片手に持っていた杯を金剛に向けて掲げ、彼女もそれを見て嬉しそうに既に空になっていたグラスを掲げてカチンと乾杯をした。

 

「気持ちは解るが次の日に響かないように注意くらいはしろよ」

 

「オーウ、テートク何処行くですカ? 一緒に飲みましょ~ヨ~」

 

腕に縋り付いて絡む……もとい甘えてくる金剛の頭を撫でてあやしながら提督は、まだ一通り挨拶ができていないから、終わったら必ず顔を出すからと約束してその場を一先ず離れる。

後ろから「ゼッタイだからネ~」という声を聴きつつ、提督はその事をしっかり頭の中の隅に留めて、挨拶回りを再開するのだった。

 

 

「慰労の言葉掛けも一段落したか?」

 

金剛の所へ行く前に自分自身への褒美として一服だけ煙草を吸う為に外へ出ようとしていたところにガングートが提督に話しかけてきた。

提督はポケットから出しかけた煙草をしまいガングートの方を見て何か言おうとしたが、その前に彼女に肩へ腕を掛けられて「取り敢えず付き合え」とそのまま外へ連れ出された。

 

「気にすることはないさ」

 

「ん?」

 

「табакだろ? 私も多嗜むのでな」

 

「た?」

 

「たばぁっくだ」

 

「煙草?」

 

「そうだ。面白いな、文字は全く違うのに言葉の音は似ている」

 

「確かに、そうだな。たぁばっくか」

 

「お、上手いな」

 

「通じたか?」

 

「うん、なかなか良い発音だ」

 

「はは、そうか」

 

提督は笑いながらポケットから煙草の箱を出してそこから一本抜いた。

そしてそれを口に咥えて火を付けようとしたのだが……。

 

「おっと待った」

 

火が煙草に触れる前にガングートの手がその間に割って入って提督の喫煙を止めた。

 

「ん?」

 

「火を付けるならちょっとお願いしたいことがある」

 

「? なんだ?」

 

「ん……ほら」

 

ガングートは懐から黒色に吸口は金の紙が巻かれた高級そうな少し細い煙草を取り出すと、それを口に咥えて火を付ける。

何故自分が先に火を付けることに拘ったのか、不思議そうに提督がその様子を見ていると、彼女が煙草を咥えたままこちらを向く。

 

「ほは」

 

「?」

 

「ほ・はっ!」

 

「???」

 

咥えた煙草をピコピコと上下に揺らして何かを要求するガングート。

だが提督はその意図が全く掴めず申し訳無さそうな顔をして眉を寄せるだけだった。

 

「……っ、もう……おい大佐! 煙草を咥えろ!」

 

「ん? あ、ああ」

 

わけが分からず火が付いていない煙草を咥える提督。

ガングートはそれを認めると待ってましたとばかりにキスをするように彼の顔の間近まで自分の顔を近づけた。

そこまできて漸く提督も理解した。

 

(ああ、そういう事か)

 

「……ふぅ、全く。あまり恥をかかせないでくれよ」

 

「ふー……すまん」

 

お互いに紫煙を吐きながら言葉を交わす二人。

ガングートから煙草の火を『分けて』もらった提督は少し目深に帽子を被って、恥じらう顔を見せまいとしていた彼女を見て言った。

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

「お前が俺のことを貴様と呼ばないようになって結構経つな、とな」

 

「え? あ、あぁ……」

 

ガングートはかつての提督に対する自分の態度を思い出してそれを誤魔化すように引きつった笑みを浮かべる。

提督の麾下に加わったばかりの彼女は今と比べると少々態度に棘がある感じで、特にそれは彼のことを“貴様”呼びしていた事に現れていた。

非番の時ならまだしも流石に公の場でそう呼ばれることには立場上看過できなかった提督は、それから幾度か注意はしていた。

しかしその度に「なら貴様の有能さを私に示してみせるのだな」などと、まるで簡単には懐柔されないと言わんばかりに妙な警戒心を見せ、提督を困惑させたのだった。

 

「あの時は、その……すまなかったな」

 

「はは、なかなか苦労させられた」

 

「わ、分ってる、それは……。だからこうして謝罪をだな」

 

「いや、こちらもすまない。ついからかってしまった。これまでお前の奮闘に救われた事もあったからな。これでお互い――」

 

提督が最後まで言う前にガングートが彼の胸に軽く拳を当てて言葉を止めた。

その振るわれた拳は左手で、更にその手の薬指にはケッコンの証である指輪が光っていた。

 

「分っている。それ以上は、必要ない」

 

「……分った」

 

「ところで、何故私がこうもあからさまにここで指輪を見せたのか、大佐は解っているか?」

 

「……記憶に自信がないから半分勘なのが申し訳ないが、確かお前とケッコンしたのがクリスマスだったから……」

 

「そうだ。記念日というやつだな。まぁ、なにしろ部下が多いからな一人ひとり覚えるのも難しいのは解っているつもりだ。だからうん、例え半分勘だったとしても当ててくれたのは正直嬉しく思っている」

 

「すまない」

 

「нет」

 

「……ありがとう」(にぇ……確か『いいえ』だったか)

 

「ああ、それでいい」

 

二人は暫く無言で煙草を吸いながら海を眺めた。

時折灰が落ちそうになった時は提督の方から私物の携帯灰皿を彼女に無言で貸すなどのやり取りのみが穏やかな雰囲気の中行われた。

 

「さて、あまり大佐を独占すると他の奴に恨みを買いかねないな。名残惜しいがもう戻るとするか」

 

「ああ、ちょっと待ってくれ」

 

「ん? もしかしてプレゼントか? 私にくれるという事は全員分用意したのだろう。なんとも大変な……」

 

提督に呼び止められて渡されたのは確かにガングートが予想した通りプレゼントらしき包装物だった。

ただ少し彼女の予想と違ったのはそのプレゼントが2つあった事だった。

一つはいかにもクリスマスらしい柄とリボンが使われた物。

そしてもう一つはいかににも提督らしい白い紙と赤いリボンだけが使われたシンプルな物だった。

 

「おいおい、まさか……」

 

声は平常心を維持しているつもりだったが、嬉しさで潤む目は堪えがたかった。

それを見られるのが恥ずかしかった彼女はいつものように帽子を目深にかぶり直し、それでも心配だったのか今回はツバを指で弾きながら念入りに目元を隠しながら言った。

 

「これ、そうなのか? 私が想像した通りの物なのか?」

 

「これでも記録はしっかり付けているんでね。渡すタイミングも考えていたから、ちょうど良かった。だが、中身はあまり期待されると――」

 

ガングートがまた提督が言い終わる前に彼の言葉を止めた。

今度は拳ではなく指が提督の口を塞ぐのに使われた。

 

「Нет проблем」

 

「……問題なし?」

 

「ダー」

 

一番聞き慣れたロシア語だった。

そう提督が認識するのと同時にガングートが彼の頬を手で覆ってキスをしてきたのはほぼ同時だった。

お互いを包む僅かに残った煙草の香りと直接口から感じる煙草の味。

少しヤニ臭い恋愛の風景がそこにはあった。

 




あ、お酒のネタも入れた方が良かったかなと今更。
ロシアといえば酒、ウォッカですからね。
ま、それは別の機会で良いか。
それでは皆さん良いお年を。


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正直な気持ち

短いです
提督の転勤騒動の榛名との一場面


「ふぅ……」

 

「煙草ですか? って思ったら吸っていませんね」

 

「ん? ああ、最近は何故か特に吸いたい気分にもならなくてな」

 

「それは良いことです。榛名も嬉しいです」

 

「ん……」

 

「隣、宜しいですか?」

 

「何処でも」

 

「ありがとうございます」

 

「……」

 

「……」

 

二人してやる事がなかったので石の階段に座っているだけだったが、それだけでも目の前に広がる海の風景が二人の気分を癒やした。

 

「……なんか」

 

「はい?」

 

「いや、こうしてのんびりするのが久しぶりな気がするな」

 

「そうですね。お休み自体はちゃんと貰っている筈ですが、こうして落ち着いてみると何かそういう気分になりそうですね」

 

「ふっ、やる事がなくて心に余裕があると人はこういう気分になり易いのかもな」

 

「ふふ、そうですね」

 

「…………」

 

「…………」

 

再び耳に心地良い漣の音が二人を優しく包む。

雰囲気に流されて何となく喋り難い空間となっていたが、別にそれさえ気にしなければ居心地はとても良かった。

そんな時ではあったのだが、榛名は丁度思い出したとある事を確かめたくて提督に話しかけた。

 

「大佐……」

 

「うん?」

 

「不躾なことをお訊きして申し訳なく思うのですが……」

 

「いい、なんだ?」

 

「転勤、されるのですか……?」

 

「……一応辞令は来ているが、俺はできれば現在の配置のままを願い出てみるつもりだ」

 

「えっ、それは本当ですか?」

 

「今回は俺個人の意思を示すくらいはしないとどうにも承服しかねくてな。軍人にはあるまじき身勝手だが」

 

「そんな……! そうして頂けるだけでも榛名は嬉しいです!」

 

「ありがとう」

 

「それもこちらの台詞です」

 

「……」

 

「……」

 

再び気不味い沈黙が間が訪れたのだが、今度もその雰囲気を破ったのは榛名だった。

 

「……差し支えなければ」

 

「ん?」

 

「差し支えなければ、そうして大佐が残りたいと思われたのかお教え頂けますか?」

 

「……自分にもお前たちにも解り易く言ってしまえば、俺が去った後の此処がただただ気にかかったからだ」

 

「……なるほどですね」

 

それは提督の偽りのない答だったのだが、それを聞いた榛名は何処となくそれ以外にも他の言葉を求めてそうな瞳で提督を見る。

提督も彼女たちは長い付き合いである。

彼はその時彼女にどういった事を言えば良いのかくらいには気を利かせられるようになっていた。

 

「勿論、お前たちへの好意もある」

 

「むぅ……そこは、今だけでも『たち』は外して欲しかったです」

 

「え? っ、ははっ。すまん」

 

「ふふふ、いいえ。でも惜しかったですね」

 

「次はぬからないようにしよう」

 

「期待してますね」

 

 

それから更に小一時間ほど二人は取り留めのない会話をした。

そして提督がそろそろお暇しようかと立ち上がり、榛名に手を貸そうとした時だった。

「大佐」と俯き目を伏せながら遠慮がちに発せられた榛名のか細い声を提督は聞き逃さなかった。

 

「なんだ?」

 

「できれば……」

 

「ああ」

 

「もしできれば、いよいよ転勤せざるを得なくなった時は……」

 

「……」

 

「榛名も貴方に着いて行きたいと思います」

 

それは無理だと、叶わない事とは二人は解っていた。

それでも言葉に出さずにはいられなかった榛名の気持ちを理解した提督は、ただただ鼻をすすってぐずる彼女の柔な肩を黙って抱きしめるのだった。




ゲームに対するモチベは下がる一方ですが、依然としてプレイは続いてます
いつサービス終了しても構わないのですが、運営が変わればこの気持も変わる……のかな?


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