セキエイリーグチャンピオン(合法ロリ転生者)の憂鬱 (大小判)
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転生者掲示板
各世界に転生した者、通称転生者たちは、時空を超えて思考と直結している掲示板に書き込みが出来るという設定です
1:名無しのポケモンマスター
誰か助けてください
2:名無しの転生者
おっ。ポケモンの世界に転生したイッチじゃないか
3:名無しの転生者
オッスオッス
4:名無しの転生者
脈略無いな。一体どうした?
5:名無しの転生者
ポケモンとか比較的平和な世界に転生した憎たらしいイッチじゃないか。こちとらFate世界で毎日死にそうなんですが。そんな俺たちに何を助けてほしいんだ?
6;名無しの転生者
は? こっちは鬼滅世界で毎日ヒーヒー言ってるんだが?
7:名無しの転生者
俺はヒロアカ世界。前世を思い出した頃には雄英入学→秩序壊れててピエン超える
8:名無しの転生者
みんなヤバい世界に転生してて草
9:名無しの転生者
転生ガチャ自慢だったら……どうなるか分かるな?
10:名無しの転生者
まぁまぁ、俺たちなんだかんだ言って転生特典で何とかしてるし、まずはイッチの話を聞こうじゃないか
11:名無しの転生者
状況をkwsk
12:名無しのポケモンマスター
りょ。
実はこの度、セキエイリーグチャンピオンになりまして
13:名無しの転生者
カァー! いきなり成功自慢かよ! タヒね!
14:名無しの転生者
転生特典で順調に頂点に立っちゃったわけですか。良い御身分ですねぇ。こっちは全然チヤホヤされる気配がないっていうのに
15:名無しのポケモンマスター
……全然、マッタク、ヨロシク無イデスヨ
16:名無しの転生者
イッチ?
17:名無しの転生者
どうしたイッチ?
18:名無しの転生者
そういえば、最初はポケモン世界に転生できるってすごい浮かれポンチになってたよなイッチ
19:名無しの転生者
あー、言ってたな。面倒事は主人公が解決してくれるから、お気にのポケモンと平和に暮らすんだって言ってたっけ
20:名無しの転生者
なんだかんだ言って、ホウエンにさえ行かなきゃ主人公がどうにかしてくれそうだもんな、ポケモン世界って
21:名無しの転生者
あれ? だったらなんでイッチがチャンピオンになってるんだ? バトルとか興味ないって言ってたのに。
22:名無しのポケモンマスター
バトルは、ポケモンとの付き合いの関係上覚えました。野生で生きるための本能っていうんですかね……私の手持ちは強さを求める気質がありましたから、嗜み程度のつもりで
ただやっぱり負ける時も多々あって、そうなったらなったらで悔しいからそれをバネにまた強くなってを繰り返してたら、いつの間にか
22:名無しの転生者
それでトントン拍子でチャンピオンに?
23:名無しの転生者
なろう主人公かよ。そんなに上手くいってるなら、俺と交代してくれ(血涙)
24:名無しの転生者
涙を拭けよ
25:名無しの転生者
で? そんな勝ち組のイッチは何が不満なんだ? 言葉には……気を付けろよ?
26:名無しの転生者
ただの自慢なら、全ての転生者が時空を超えて貴様を討つ
27:名無しのポケモンマスター
レインボーロケット団に命を狙われてるっぽい
28:名無しの転生者
は? それってUSUMの?
29:名無しの転生者
どういうこと? なんでそうなった?
詳しく説明しろ
30:名無しのポケモンマスター
チャンピオンになるまでの経緯は長いから、チャンピオンになった後からの事を話すんですけど、チャンピオンとしての仕事で色んな地方に行くんですけど、なんか行く先々で悪の組織の妨害をしちゃったんですよね。
所用があってシルフカンパニーに言ったらロケット団がやってきたからオールバックのおっさんを張り倒して撃退したり。
ホウエンに行ったら色んな所でドンパチ騒ぎを起こしてるマグマ団とアクア団を張り倒したり。
シンオウに行ったら湖に爆弾を落とそうとしているギンガ団の飛行艇を撃墜したり。
イッシュに行ったら緑髪の電波野郎が「ポケモン解放しようぜ」とか言いながら勝負仕掛けてきたのをボコしたら変な片眼鏡の保護者が出てきたからそいつもボコしたり。
カロスに行ったら「腹立ったから人間とポケモン滅ぼす」とか言ってる真っ赤なライオンキング男をボコしたり。
31:名無しの転生者
主人公が仕事しなさ過ぎてグラスフィールド
32:名無しの転生者
実はイッチが主人公だった!?
33;名無しの転生者
待て待て待て! 原作主人公はどうした!?
34:名無しの転生者
原作主人公なんていなかった世界線だったの? それともイッチが原作主人公に転生したの?
35:名無しのポケモンマスター
いや、レッドさんは一応いました。ただ時系列的に多分ロケット団は私が先に壊滅寸前に追いやりましたし、レッドさんはレッドさんで、リーグ戦で私に負けたから……ストーリー的には、バッドエンド?
36:名無しの転生者
原作ブレイクwww
37:名無しの転生者
何やってんだイッチwwww
38:名無しの転生者
主人公の夢を壊しててハードプラントwww
39:名無しの転生者
実はイッチがラスボスポジなんじゃなかろうか?
40:名無しのポケモンマスター
ちょ!? 言い方悪くないですか!? 挑戦者を倒すのが私の仕事なのに!
それに完全に原作崩壊とは限りませんよ? リーグに挑んできた赤い帽子の人とかボコられても私に勝つためだって言ってシロガネ山で修行してますし!
……まぁ、あの宣言以来、姿は見ていませんが。
41:名無しの転生者
それ単なる引き籠りやww
42:名無しの転生者
レッドさんからレジェンド要素を抜いたら悲惨になるな……。経歴なし、職なしで山に引き籠ってるのか
43:名無しの転生者
それで? 各地方で悪の組織の野望を挫きまくってたら、悪の組織が結託してレインボーロケット団になって、イッチの命を狙っていると?
44:名無しのポケモンマスター
そうなんです(泣)。何なんですかもう……主人公にどうにかしてもらえると思って気楽に構えていたのに、それらしい人物が活躍してる様子はないし、私を殺さない限り野望を叶えられないとか何とか言ってくるし……。私が思い描いていたほのぼのポケモンワールドからどんどん離れて行ってる……。
しかもポケモン協会とか国際警察は私が「悪に対する最大の抑止力だ」とか言って、何かにつけては私を矢面に立たせようとしてくるんです。私目立つのも苦手なのに……。
45:名無しの転生者
イッチも、大変なんだな……。
46:名無しの転生者
まぁ自分で選択した上で追いやられてるんだから自業自得感あるけど。
47:名無しの転生者
頑張れイッチ! 負けるなイッチ!
48:名無しの転生者
でもイッチにだって転生者特典があるだろ。 それを使えばどうにでもなるんだし、深刻に考えなくてもいいんじゃね?
49:名無しのポケモンマスター
無いんです。転生者特典
50:名無しの転生者
え?
51:名無しの転生者
え?
52:名無しの転生者
どういう……ことだ……?
53:名無しの転生者
いやいや、それはないだろイッチ。転生者は皆特典を貰える、これ常識ぞ
54:名無しのポケモンマスター
失礼、語弊がありました。正確には、ポケモン関連で活用できる転生特典がないが正しいです
55:名無しの転生者
あー、そういうパターンか
56:名無しの転生者
ちなみにどんな転生特典貰ったの?
57:名無しのポケモンマスター
転生特典は二つ。一つ目は凄い美形に育つ。もう一つは生涯合法ロリになる
58:名無しの転生者
イッチの写真送って。100枚くらい
59:名無しの転生者
待て、俺が先だ
60:名無しの転生者
(*´Д`)ハァハァ お嬢ちゃん……ど、どんなパンツ履いてるのかな……?
61:名無しの転生者
早速ロリコンが湧いてきましたねぇwww それはそうとイッチ、素晴らしい提案をしよう。俺とお医者さんごっこをしないか?
62:名無しのポケモンマスター
キモイ! 本当にやめてくれません!?
63:名無しの転生者
一生老けないとか、特典ガチャ大当たりじゃないかイッチ。何が不満だというんだ
64:名無しのポケモンマスター
私の現状と全く合っていないんですよ。今は容姿うんぬんよりもバトルの実力を底上げする特典が欲しかった……! ゲームと違ってポケモンの攻撃でトレーナーが大怪我を負うなんて、よくある事ですからね、この世界!
65:名無しの転生者
確かにそれはキツイな。ゲームと現実のギャップあるあるって奴か。ポケモンとかだとそこらへん顕著だろうし
66:名無しの転生者
下手すれば人間がポケモンになったりする世界だもんな
67:名無しのポケモンマスター
こういう特典貰うくらいなら、ロリコンを攻略する乙女ゲーの世界にでも転生して、イケメンにチヤホヤされる方がマシだった
68:名無しの転生者
そんなニッチな乙女ゲーある?
69:名無しのポケモンマスター
しかもこないだなんて、8歳下の弟に身長追い越されたんですよ……。あの子トレーナーとして独り立ちしたばっかりの10歳児なのに……! こちとら毎日牛乳飲んでたのにおかしくないですか?
どれだけバストアップ体操してもおっぱい小さいままだし! 13歳の時から体のサイズが1ミリも変わらないって、なんでなんですかもぉおおおおおおおおお……! 成長期が終わっても身長が140を超えないって、そんなのないですよ神様ぁああああああああああああああああ!
70:名無しの転生者
イッチ……涙ぐましい努力してるんだな……。
71:名無しの転生者
気にするなイッチ! 貧乳&低身長はステータスだ!
72:名無しの転生者
そのまま君でいてくれてええんやで?
73:名無しの転生者
たとえどんなイッチでも、俺だけはイッチを受け入れるよ。だから自撮りをプリーズ。
74:名無しの転生者
ロリコン共がここぞとばかりにイッチに優しくし始めましたwwww
75:名無しの転生者
落ち着けイッチ! 思考直結型の掲示板にイッチの隠しておきたいであろう葛藤が駄々洩れになってる!
76:名無しの転生者
でも話を聞く限りかなり注目度高そうだよなイッチ。合法ロリ美少女でセキエイリーグチャンピオンだろ? ビジュアルと実力を両立するチャンピオンとかシロナやカルネくらいしかいないし、結構人気あるんじゃね
77:名無しのポケモンマスター
だから私は目立つのは苦手なんですってば! 人気があっても嬉しくないんです! それより、話の本題に戻ってほしいんですけど
78:名無しの転生者
待って待って、最後にイッチの情報を教えてほしい。主にビジュアルとか、手持ち構成とか。あと二つ名みたいなのってある? 仮にもバトル物の世界観なんだから、そこら辺気になる。
79:名無しの転生者
確かに。バトル物の世界観に転生した奴の二つ名とか異名は掲示板の華だもんな
80:名無しのポケモンマスター
えぇ……それ言わないとダメですか?
81:名無しの転生者
おっ。その反応は二つ名あるな
82:名無しの転生者
SA☆RA☆SE! SA☆RA☆SE!
83:名無しの転生者
観念しろイッチ。恥ずかしい二つ名を晒して自爆するのは掲示板の伝統だぞ
84:名無しのポケモンマスター
なんて嫌な伝統だ。私はなんてところに書き込んでしまったんだ。これも試練か
85:名無しの転生者
某《闇黒の聖剣》さんの時みたいに皆からダイソウゲン生やされると良いぞイッチ
86:名無しの転生者
イッチも某《光と闇の竜王滅神剣の担い手》と書いて《シャイニングダーク・ドラゴンゴッドブレード・マスター》と読む人の時みたいに大量のwを掲示板で量産すべきだ
87:名無しの転生者
《闇黒の聖剣》と《光と闇の竜王滅神剣の担い手》と書いて《シャイニングダーク・ドラゴンゴッドブレード・マスター》と読む人、オッスオッス
88:名無しのポケモンマスター
分かった、分かりましたよ。これ以上グダグダやって相談にも乗れないのは嫌ですし……。
とは言っても、流石に上2人みたいな奇抜な二つ名じゃない……と思いますよ? 二つ名界隈だと結構シンプルな部類で、私の髪の毛の色と戦闘スタイルが合わさって出来た二つ名ですしね。
89:名無しの転生者
二つ名界隈とは一体……
90:名無しの転生者
それで、どんな二つ名なんだ?
91:名無しのポケモンマスター
銀髪の砂パ使いだから、《銀色の砂塵姫》
92:名無しの転生者
銀髪幼女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
93:名無しの転生者
パンツ下ろしました
94:名無しの転生者
はえーよwwww
転生者掲示板の伝統
バトル物の世界に転生した者は、二つ名がついた時はそれを自爆覚悟で晒さなければならないという、謎の風習がある。
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約束された勝利の主人公の挫折
ただ主人公を引き立てるために原作キャラがアンチされてるって思われる描写になっている可能性は否めないので、そこら辺だけはご注意ください。
「凄まじい快進撃だな、今年のルーキーたちは」
セキエイリーグ。ポケモンリーグの総本山ともいえる、世界中から挑戦者が集う場所で、目の前のポケモンバトルを見ながら感嘆の声を漏らしたのはポケモン協会カントー支部の支部長だった。
1年に1度、地方の各地に設立されているポケモンジムに挑戦し、バッジを8個を集めてきた選りすぐりの挑戦者たちをトーナメント形式で戦い合わせ、その優勝者だけが門番である四天王を倒し、最強であるチャンピオンに挑む権利を与えられるのだ。
しかし近年では余りに狭すぎる門を広げることとなり、セキエイリーグではトーナメントを2つに分けることで、四天王及びチャンピオンへの挑戦権を毎年2人に与えるようになっている。
それでも過酷な道のりなのには変わりはない。トーナメントへの参加条件であるジムバッジの獲得は言わずもがな、トーナメントは世界各地から強者が集う。これらを潜り抜けて四天王たちに挑むのは並大抵のことではない。
そんな過酷な試練を乗り越えて、四天王に挑み、チャンピオンの前まで辿り着いたのが同じ年に2人……それもどちらも11歳の少年であるのだから、カントー支部長の感嘆と驚きは当然と言えるだろう。
「1人はオーキド博士の孫グリーン……サラブレッドの血、という訳か」
初代ポケモンリーグの優勝者であり、ポケモン研究の権威として世界に名を轟かせているオーキド博士の孫。トーナメントや四天王との戦いの時も常に自信に満ち溢れた不敵な笑みを絶やすことなく、次々と四天王を打ち破ってきた正真正銘の天才少年だ。
年齢に比例して、精神的に未熟な面が多々見られるが、順調に育てばチャンピオンとして相応しい器と強さを得られるだろう…………他の地方でなら。
「そしてもう一人は無名の少年、レッド……彼もマサラタウン出身なのか」
おそらくグリーンと互角……あるいはそれ以上の才覚と実力を兼ね備えた寡黙な雰囲気の少年の資料に目を通す。
まるで相手が繰り出すポケモン、技、戦略を直感的に予知しているかのような天啓的な指示をポケモンたちに飛ばし、それら全ては実に的確。グリーンが知識に裏付けられた戦略家なら、レッドは天才的な直観の持ち主といったところか。
2人の手持ちのポケモンたちもそう。付き合い方に差はあれど、どのポケモンたちもトレーナーであるグリーンやレッドの事を深く信頼しているということは見ればわかる。
どちらも幼いながらも1流のポケモントレーナーであると、数多くのトレーナーをその目で見てきたカントー支部長は内心で太鼓判を押す。もしかしたら、オーキド博士の薫陶の影響かもしれない。あれほどの天才児、一地方に1人いればいい方だろう。
(だからこそ……不安でもある。彼らが《姫》を前にして、絶望しないかどうかが)
バトルフィールドを映すモニターが設置された観戦室の外からポケモンセンターから派遣された医者の慌ただしい声と、カラカラと車輪を鳴らすストレッチャーの音を聞きながら、カントー支部長は着任して1年しか経っていないチャンピオンの姿を思い返し、前途ある2人のトレーナーの無事を祈るのだった。
=====
初めてトレーナーズスクールでポケモンに触れ、バトルをした時から、自分は他の子供たちとは何かが違うのだと、レッドは自覚していた。
他の子供たちが考えなしにポケモンの状態を考えずに指示を飛ばす中、レッドには自分のポケモンの体力や状態、相手のポケモンが何をしてきて、どんなポケモンを使ってくるのかが直感的に理解できてしまったのだ。
これはポケモンバトルにおいて大きなアドバンテージとなる。ポケモン自体の能力と同様、トレーナーの指示が勝負の明暗を分けるポケモンバトルにおいて、自分のポケモンの状態を明確に把握し、相手の手の内が事前にわかるのは反則と言ってもいい、まさに天賦の才能だ。
そんなある意味で異常者と紙一重だったレッドが人との関わりを絶つようになったのは、ある意味必然だった。
同年代の誰もが……時にはトレーナーズスクールの教師たちですら、レッドの才能を妬んだ。ポケモンバトルに勝利しても浴びせられるのは称賛の目ではなく、嫉妬と逆恨み、諦観に満ちた視線のみ。
そのような環境に身を置いた少年が、果たして真っすぐで純真な心など手に入れられるだろうか?
答えは、否。人から悪意の視線を向けられるようになったレッドはいつしか人との関わりを拒絶し、ポケモンと、ポケモンバトルにのみ関心を向けるようになった。
本能的な部分が強い分、ポケモンは人間と違って純真だ。人間に対して敵意を向けるポケモンもいるが、人間ほど複雑怪奇なほの暗い感情は抱かない。レッドとしても、ポケモンとの付き合いでだけなら、年相応の少年として接することが出来た。
ポケモンバトルに関心を抱いたのは、まだ何も知らなかった幼い頃からの延長によるものだ。どれだけ人との関わりに絶望したとしても、かつてテレビに釘付けになるほど熱中したポケモンバトルへの熱は冷めることはなかったし、ポケモンたちとチャンピオンという頂を目指して旅をするのは本当に楽しかったから。
強くなるための努力など碌にせず、人の才能を妬むばかりの三流トレーナーなど捨て置き、ジムリーダーや四天王のような心身ともに鍛え抜かれたトレーナー以外に、レッドが興味すら示さなくなって久しく、気が付けば彼は11歳という幼さで四天王を打ち破り、チャンピオンの前まで辿り着いていた。
……同年代の中でレッドが唯一認めたトレーナーであり、ライバルでもあるグリーンとの約束を果たすために。
人付き合いが極端に希薄になったレッドにとって、家族を除けばグリーンだけは例外だった。
初代チャンピオンにしてポケモン研究の権威の孫という血統がなせる才能はレッドに勝るとも劣らず、何時も自信に満ち溢れた態度に反することのない確かな実力を持つグリーン。そんな彼とは昔から何かと縁があり、何かにつけては勝負をしたものだ。
グリーンの人を煽る性格もそうだが、それ以上に自分と同じ年齢で、同じようにポケモンバトルの才覚に恵まれていた分、この男にだけは負けられないのだと、レッドは柄にもなく対抗意識を燃やし続けた。
そんなグリーンと同じ日に旅を出て間もなく、レッドとグリーンは約束をした。何時かポケモンバトルの頂点、ポケモンリーグの総本山であるセキエイリーグで決着を付けようと。
約束は推進力となってレッドたちの足を動かし、2人とも無事にリーグへの参加条件を満たすことは出来た。早く決着を付けたいという気持ちとは裏腹にトーナメントで当たることはなかったが、むしろそれで良かったとすら思っていた。
何せ2人とも四天王を乗り越えることが出来たのだから。きっとこの扉の先では、以前までのチャンピオンを先に倒したグリーンが、新たなチャンピオンとしてレッドを待ち構えている。
きっと「この俺様が世界で一番強いってことなんだよ!」と言わんばかりの顔をしたグリーンと、頂点を賭けて戦えるのだと、レッドは疑っていなかったのだ。
だから信じられなかった。
チャンピオンの部屋から、ストレッチャーに乗せられたグリーンが運ばれていく光景なんて。
怪我をしたのは攻撃で吹き飛ばされたポケモンの下敷きになってしまったらしい。幸いにも軽症で意識のあったグリーンに詰め寄って聞いたところ、グリーンはチャンピオンと戦い、そして敗れたのだとか。
それも信じられないことに惜敗ではなく、チャンピオンの手持ちポケモンを1匹も倒すことが出来ないという、惨敗という形で。
「気を付けろ、レッド……あの扉の向こうにいるのは、正真正銘の化け物だ……!」
何時もの強気な態度など見る影もないグリーンが運ばれるのを見届けた後、レッドはどうしようもない口惜しさと、得も言われぬ高揚と共にチャンピオンの元へと向かう。
グリーンとの約束が果たされなかったことは遺憾だ。セキエイリーグでチャンピオンの座を懸けて戦うという、これ以上はない大舞台でライバルと雌雄を決したかった。
だがそれと同時に、あのグリーンすらも完膚なきまで叩きのめしたというチャンピオンの実力を見てみたいという欲求が膨れ上がるのも抑えられない。少なくとも、この先にはまだ見たことのない強さを誇るトレーナーが待ち構えている。レッドが立ち止まる理由など存在しなかった。
「ようこそ、挑戦者」
そしてバトルフィールドまで辿り着いたレッドを出迎えたのは、鈴を転がしたような綺麗な声を放つ、ポケモンにしか興味を示さないレッドですら可憐と感じる小柄な少女だった。
年は自分と同じくらいか、下手をすればそれよりも下かもしれない。足まで届く長い銀髪と輝くような碧眼、そして舞台衣装のようなパーティードレス姿はどこか現実感を感じさせない。
一見するとただの飾り立てられた少女にしか見えない彼女だが、静かな威圧感を感じさせる……そんな姿だった。
「本当ならチャンピオンとしての言葉を贈りたいところですが、生憎と言葉を弄するのは苦手でして…………伝えるべきことは、
それはまるで、武人が言葉ではなく剣で信念を語るかのように、ペコリと頭を下げたチャンピオンから向けられたモンスターボールに反応し、レッドも腰のモンスターボールを手に取る。
「セキエイリーグチャンピオン、タチバナ。全力で挑戦者を迎え撃ちます」
レッドとチャンピオン、タチバナ。2人のモンスターボールが放たれ、中からポケモンが飛び出してきたのは同時。
レッドは二門の大砲を背負ったような外観をしたポケモン、カメックス。そしてタチバナのモンスターボールから飛び出してきたのは――――
「ぐっ……サ、サンドパン……!?」
目を覆いたくなるような〝すなあらし〟と共に現れた、背中に無数の棘を背負った小柄なポケモン、サンドパンだ。
チャンピオンが使うにしては随分と平凡なポケモンが出てきたとレッドは思った。このような言い方も何だが、サンドパンというポケモンはお世辞にも強いポケモンではない。
ポケモンの能力というのは種族によるところが大きい。自分の相棒のような例外もいるにはいるが、サンドパンという種族自体は中の下程度のポケモンであり、これまでの旅で何度か戦っても苦戦した覚えがない。
似たような戦い方が出来るドリュウズという強力なポケモンの存在もあり、強いトレーナーがサンドパンを使っているところなど、少なくともレッドは見たことがなかった。
だがそれらを考慮してもチャンピオンの手持ちだ。見ただけでよく鍛えられているのは分かるし、油断は厳禁。
幸い、タイプの相性ではこちらが勝っている。フィールドを舞う猛烈な砂嵐でカメックスの体力が徐々に削られているのが気になるが、ここは一気呵成に弱点を突いて勝負を決めに行くべきだ。
「カメックス、〝なみ――――」
そう判断したレッドはまずオーソドックスともいえる最善手を取ることにした。カメックスの得意な広範囲に及ぶ水技でサンドパンに大ダメージを与えようとして…………その直前に、いつの間にかサンドパンがカメックスに触れるほどに近づいていた。
(……〝すなかき〟……!)
天候が砂嵐の時、素早さを大幅に上げる特性〝すなかき〟。あのサンドパンがボールから飛び出ると同時に〝すなあらし〟を使い、フィールドの天候を変えていた。それはカメックスにダメージを与えるだけではなく、特性を発動させるための行動だったのだろう。
もちろん、レッドとて〝すなかき〟を警戒していなかったわけではないが……このサンドパンは本来鈍足な種族とは思えないほどに速いのだ。フィールドの外から俯瞰していたレッドだけでなく、人間よりもはるかに動体視力で勝るカメックスですら、間合いの内側に入れられるまでサンドパンの動きを捉えられなかった。
「〝からにこもる〟!」
だがこの程度でやられるようではここまで勝ち上がってこられない。レッドは即座にカメックスの頭を手足を強固な甲羅の中に収納させた。
レッドのカメックスは強固な甲羅の中に手足と頭を入れることで弱点部位を消し、両肩の砲から攻撃するという、攻防一体の戦法を得意としている。この状態のカメックスを倒すのは至難の業だ。
故にレッドはこの選択は正しいと、そう思っていた。…………実際は、悪手であるということも知らずに。
「〝じしん〟」
大気が激震するほどの振動が、カメックスへと叩きつけられた。気が付けばカメックスは甲羅から力なく手足と頭を垂らし、ピクリとも動かない。誰の目から見ても明らかな瀕死だ。
自分が知っている〝じしん〟とは明らかに違い過ぎる……レッドはサンドパンが何をしたのか、まるで理解が出来なかったが、それも無理はないだろう。
本来、〝じしん〟という技は発動したポケモンを中心として全方位に向けて地面を伝う衝撃波を叩き込む技だ。その固定観念を打ち砕き、本来広範囲に及ぶ衝撃波を、一匹のポケモンに全集中させて放つことで体内部まで破壊、威力を飛躍的に向上させるように技を改良させたなど、一体誰が思うだろうか?
「……戻れ、カメックス……!」
「戻ってください、サンドパン」
レッドは瀕死のカメックスをボールに戻すと同時に、無傷のサンドパンをボールに戻すタチバナを見て、思わず舌打ちをする。
相手のポケモンを倒すと同時に自分のポケモンをボールに戻すことで、次に相手に出させるポケモンを悩ませると同時にポケモンのスタミナを回復させるのはトレーナーのテクニックの1つだ。勿論ケースバイケースな戦法ではあるが、チャンピオンであるタチバナも慢心していない証拠である。
本来ならこの強敵とのバトルを楽しみたいところだが、こうもあっさりと自慢のポケモンが倒されては、このような当たり前のテクニックですら脅威に感じる。
それでもレッドは臆していなかった。闘志は枯れるどころがむしろ燃え上がったくらいだ。これまで見たことのない強さを誇るトレーナーをどうやって倒してやろうか……そう思いながら次のポケモンを繰り出した。
……それが、悪夢の続きであるということに気付かずに。
自分が繰り出したエーフィに対し、タチバナが同時に繰り出したのは鍵束のような小さなポケモンだった。少なくともカントー地方では見かけないポケモンではあるが、レッドは一切の油断をすることなく、数多のバトルの経験からあのポケモンはサポートが得意なのではないかと直感する。
その直感は今まで通り間違いではなかった。あの鍵束のようなポケモンが主に使ってきたのは〝リフレクター〟や〝ひかりのかべ〟を始めとした豊富な補助技だ。……問題は、その異常なまでの展開速度。
特性〝いたずらごころ〟によって大量の〝ひかりのかべ〟が高速で張り巡らされ、エーフィの攻撃をさながら城塞に引き籠るかのように防ぎ切り、素早い身のこなしを得意とするエーフィの動きをこれまた大量の〝リフレクター〟や〝まきびし〟で阻害……まるで障壁で檻を作り出すかのようにエーフィの身動きを完全に封じ、〝ラスターカノン〟の集中砲火でエーフィもあっけなく瀕死に追いやられてしまった。
次に出してきたのはレッドも他地方から来たトレーナーとバトルした時見たことがある、四本足の巨体を持つ岩単タイプのポケモンだ。対するこちらは背中に大輪の花を背負った草タイプのポケモン、フシギバナ……完全なる出し勝ちだった。
後々調べて種族的にサンドパン以上に動きの遅いポケモンだと知っていたし、それはチャンピオンのポケモンだとしても例外はなかったので、レッドはフシギバナに強烈な催眠効果を持つ粉塵を振りかける技、〝ねむりごな〟を指示し、見事命中。チャンピオンのポケモンを眠らせることが出来た。
「フシギバナ、〝ハードプラント〟!」
そして繰り出すのは草タイプ最大火力の技。巨大な樹木の根が岩タイプのポケモンに叩き付け、一気に戦闘不能へと追いやろうとしたのだが……相手のポケモンは、ビクともしなかった。
砂嵐によって舞い上がる大量の砂塵が岩タイプのポケモンの表皮に張り付くことで肉体硬度を引き上げると聞いたことがあるが、いくらなんでも効果抜群の超火力技を受けてほぼ無傷というのは尋常ではない硬さだ。
しかも今の一撃を受けて即座に覚醒し、凄まじい咆哮と共に〝じならし〟をすると同時に、地面から無数の岩の刃を突き出す大技、〝ストーンエッジ〟によってフシギバナは切り刻まれ、あっという間に瀕死に。
信じられないほどの超耐久と超火力を併せ持つポケモンに呆気を取られるのも束の間。次に出してきたのは、鳥を擬えたかのような奇妙な姿をした、首と思われる部分に宝玉が付いたアクセサリーを付けた飛行ポケモンだった。それに対してレッドが繰り出したのは尻尾に火を灯す竜のような姿をしたポケモン、リザードン……三次元的な動きを見せる飛行タイプはそれだけでも有利であると考えれば、十分に出し勝ちと言える出だしだったはず。
ところが、砂嵐によって少しずつ傷付いていくリザードンに対し、岩や鋼、地面タイプなど、砂嵐によるダメージを受けないタイプには見えないタチバナのポケモンは一切傷付く様子が見られなかった。
そしてその火力と機動力も尋常ではなく、高い飛行能力を誇るリザードンの背後にピッタリと張り付きながら、極大の風の刃で撃ち落とされ、そのまま瀕死にされてしまう。
次にレッドが繰り出したのは彼の手持ちの中で最も重量級のポケモンであるカビゴン。それに対してタチバナが繰り出したポケモンは……砂嵐に紛れて、その姿を見せなかった。
レッドは特性〝すながくれ〟によるものであると即座に看破できたが、その隠形は尋常ではない。傍目から見ても、タチバナのポケモンがどこにいるのか全く分からないのだ。
実はまだ、タチバナはポケモンを繰り出していないのではないのか……? そんな疑問が脳裏に沸き上がった、その瞬間。突如として現れた、砂で形成されたかのような巨大な腕にカビゴンは鷲掴みにされ、そのまま持ち上げられてしまった。
体重400キロを優に超えるカビゴンを持ち上げるなど凄まじい力だ。カビゴンも必死で藻掻き、技を放つが、まるで実体のない砂そのものに攻撃しているかのような虚しい手応えを感じるばかりで、一向に脱出できないまま、上空から地面へと叩きつけられる。
この時になって、レッドは初めて相手のポケモンの全容を見た。まるで砂の城を象ったような体を持つ、これまで出会ってきた中でも特に大きな巨人の姿を。
結局カビゴンは地面が吹き飛ぶほど強力な〝だいちのちから〟を無防備な背中にゼロ距離から浴びて瀕死に。タチバナの手持ちポケモンを1匹も削ることが出来ず、レッドに残されたのは1匹だけとなった。
これほどまでに絶望的な状況は、今までで一度でもあっただろうか? レッドは走馬灯のようにこれまでのバトルを振り返る。
これまでの道中で戦ってきた木っ端トレーナーたち。難敵であったジムリーダーたち。何度も何度も危ない場面に持ち込まれた四天王。そして永遠のライバルであった、グリーン。無敗であったなどとは言わない。だがここまで圧倒的で絶望的なポケモンバトルが、今までになかった。
……いや、こんなものは最早ポケモンバトルですらない、一方的な蹂躙だ。これまで培ってきた経験も、練り上げてきた戦略も、鍛え上げてきた力も、天賦の才能も、その全てを磨り潰すかのような圧倒的な実力差。まさしく、レベルが違うとはこのことだ。その上、戦い方も明らかに異常。従来のポケモンバトルとはまるで違う、レッドの常識の埒外にある。
それでも、レッドの胸の中の闘志の火はまだ消えていなかった。何故なら彼の手に握られたモンスターボールの中には、レッドにとって一番の相棒がいるからだ。
電気技が効かないはずの地面タイプを電気技で倒し、種族として圧倒的上位に君臨するドラゴンポケモンを倒し、これまで数々の困難を共に乗り越えてきた、小さいけれど誰よりも頼もしいポケモン。
状況は絶望的。しかし彼ならばやってくれるはず……根拠はなくとも、そんな全幅の信頼と共にレッドは最後のポケモンを繰り出した。
「頑張れっ! ピカチュウっ!!」
「ピッカァァッ!!」
普段物静かな〝おや〟の叫びに応えるように、頬の電気袋を激しく帯電させるねずみポケモンは戦意を滾らせる。自分たちならばきっと奇跡を呼び寄せることが出来る……ピカチュウがともす雷の光は、まさに希望の光そのものであった。
レッドとピカチュウの枯れない闘志を突き付けられたタチバナは兜の緒を締めるように改めて真剣な表情となり、ポケモンを繰り出す。
――――現れたのは、全ての希望を砕く絶望の化身だった。
もはや何が起こっているのか、何をされているのか、レッドには全く理解できなかった。気が付けば一寸先の前すらも分からない濃密な砂嵐がピカチュウの体を削りながら上空へと巻き上げ、漆黒に輝く極大のエネルギー波がピカチュウを天空ごと貫いた。
ボロボロの姿になり、気絶して落下してくるピカチュウを何とか受け止めるレッドだが、その目は焦点が合っていない。決死の覚悟も、相棒へ寄せられた信頼も希望も、何もかもを一瞬で打ち砕かれた彼が思い出したのは、かつてレッドに嫌な視線を送ってきた、弱いトレーナーたちの姿だった。
自分の弱さを棚に上げ、碌に努力もせずに他人を誹り、妬むことばかり一人前の軟弱なトレーナーの事が嫌いだった。そんな思考や行動に時間を割くくらいなら、ポケモンと共に強くなるための努力をするべきなのだと、レッドも内心で彼らを誹り、見下していた。
だが今なら、彼らの気持ちが痛いほどに理解できる。自身の埒外にある力とは、努力が虚しくなるほどの才能の差とは、何もかも諦めたくなるような実力差とは、こんなにも恐ろしいものなのかと……!
戦いが終わり、よろいポケモンが主人に勝利を捧げるかのように上げる咆哮がレッドの鼓膜に鳴り響く。圧倒的な強者が放つ威圧と、それを従えるトレーナーの威光に目が眩んだレッドは、目の前が真っ暗になった。
=====
セキエイリーグチャンピオン、タチバナ。若干14歳でセキエイリーグで殿堂入りを果たし、それから4年に至る現在まで最強の座に君臨し続ける、歴代最強と名高いチャンピオン。今まさに世界でもっとも有名と言って過言ではない彼女には数多くの異名がメディアやファンによって付けられる。
その髪色と砂嵐を活用した戦法を得意とすることから、《銀色の砂塵姫》。
神秘的で幼い美貌で可憐にバトルフィールドに立つ姿から、《戦場の妖精姫》。
チャンピオンとの兼業でもある広告を兼ねた副業から、《蒼銀の歌姫》。
上記のようなプラスイメージを持つ者たちからは、略して《姫》という一文字で呼ばれることもしばしば。世間では彼女の事を若く可憐な凄腕のトレーナーであり、ポケモン犯罪に対する大きな抑止力として好意的に受け止めている。
……しかし、実際に彼らと戦ったトレーナーたちの一部からは、世間一般でのイメージとはかけ離れた異名を付けられてもいた。
曰く、冷徹に相手のポケモンを完膚なきまで叩きのめす《碧眼の悪魔》。
全てを削り砂に変える現象である風化をイメージして付けられた《滅びの風》。
チャンピオンを夢見て旅立つトレーナーたちの夢と希望を砕く《絶望の魔王》。
神すらも想定外であった野生のチートによって、本来辿るべきだった未来が捻じ曲がっていくこの世界で、彼女が一体何をなしていくのか……それはまだ、誰も知らない物語。
先に言っておきますけど、作者はレッドさんのことが嫌いな訳じゃないですよ? あのコミュ障っぷりを察するに、こういう事情でもあったのかなって思ってのキャラ設定でしたし、嫌いだからポケモンもメンタルもボコったわけじゃないという事だけはご理解いただきたいです。
ちなみに主人公のタチバナの名前の由来は、蜜柑の昔の名前である橘のことです。ポケモンのキャラ名は植物がモデルであることが多いですし、被りのない名前で良い感じのを探すのに苦労しました。
ちなみに、次回は手持ちポケモンの解説も兼ねた掲示板会にしようと思いますのでお楽しみに
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ウチの手持ちポケモンたちは天使なんだよ!(前編)
1:名無しのポケモンマスター
で、本題に戻るんですけど、レインボーロケット団ってどう対処したらいいと思いますか? 正直かなり大々的に敵対しちゃったから、チャンピオン辞めても逃げられそうにないんですけど(´;ω;`)
2:名無しの転生者
チャンピオン辞めても無理なのか
3:名無しの転生者
話を聞く限りイッチがヤベェってなったからサカキたちが結託しちゃったらしいもんな
チャンピオンの肩書を持つトレーナーが邪魔なら、大抵のシリーズで悪の組織はチャンピオンを排除しようとするだろ
4:名無しの転生者
原作でまともに悪の組織と戦ったチャンピオンって、アデクと破壊光線ワタルくらいしかパッと思い出せないもんな。他はあくまでサポートキャラっていうか
5;名無しの転生者
破壊光線ワタルww
6:名無しの転生者
二つ名みたいになっててはっぱカッター
7;名無しの転生者
どうなんだイッチ。ワタルは現実でも人に向かって〝はかいこうせん〟ブッパしてんの?
8:名無しのポケモンマスター
メッチャしますね。こないだもレインボーロケット団の用心棒の空手王軍団をカイリューの〝はかいこうせん〟で薙ぎ払ってましたし
9:名無しの転生者
マジかよwwwwwwww 冗談のつもりだったのにwwwwww
10:名無しの転生者
原作だけじゃなくリアルでも〝はかいこうせん〟くらったのかwwwww
11:名無しの転生者
空手王が一体何をしたっていうんだwwww
12:名無しの転生者
空手王が死んだ!
13:名無しの転生者
この人でなしー!
14:名無しのポケモンマスター
いや、擁護させてもらいますけどワタルがやってるのは合法ですよ? 流石にワタルみたいに大技は使いませんけど、私もよくレインボーロケット団の団員に〝サイコキネシス〟とか〝どくばり〟とか使いますし、場合によっては〝ギガインパクト〟で相手のポケモン諸共吹っ飛ばしたこともありますし
15:名無しの転生者
イッチもクソヤベェじゃんwwwwww
16:名無しの転生者
セキエイリーグチャンピオンはヤベェのしかいないのか……。
17:名無しの転生者
いかんぞイッチ! 全てのトレーナーの模範であるチャンピオンが、相手トレーナーにダイレクトアタックなんて反則をしたら!
18:名無しのポケモンマスター
そのセリフ、アニメの主人公にも言ってください。私だって普通のバトルじゃルールを守ってます。故意的に相手トレーナーに怪我を負わせるようなことはしませんて。でも悪の組織との戦いはバトルじゃなくてルール無用の殺し合いですからね?
冷静に考えてみてください。世界を支配したり滅ぼそうとしたりする最終目標を持つヤベェ連中が、なりふり構わずこちらを殺しにかかってくるんですよ? そんな連中を相手にお行儀よくポケモンバトルのルールなんか守って、世界を守れると思いますか?
19:名無しの転生者
ヒエッ。ポケモン世界も超シビアじゃん……
20:名無しの転生者
そう考えたらトレーナー潰しはかなり合理的な戦法だよな。司令塔から潰せば残りは烏合の衆だし
21:名無しのポケモンマスター
チャンピオンになった時、ポケモン協会の会長と国際警察の一番偉い人が来て、私に
四天王とかチャンピオンとかジムリーダーとか、協会所属のトレーナーはポケモン犯罪を対処するのが義務ですからね。そういう時に相手取るのは倫理観のない悪党で、そういう奴らに限って強くて狡猾なんですよ。そうなるとこっちもなりふり構っていられませんから……
22:名無しの転生者
ワタルの〝はかいこうせん〟も当然っちゃあ当然だったのか……初めて原作で見た時は散々ネタ扱いして来たけど、当人たちからすれば殺らなきゃ殺られるって感じだったんだな
23:名無しのポケモンマスター
勿論、極力殺さないようにしないとダメなんですけどね。大抵のポケモン犯罪者もジムトレーナーくらいの実力があれば生け捕りできるから、殺人許可証の出番とか殆どないですし
ワタルにしたって、トレーナーを攻撃する時は威力を調整した〝はかいこうせん〟を撃ちますし。……まぁ正直、他の技でよくね? って何度も思いましたけどね。なぜか〝はかいこうせん〟ばっかり撃つんですよ、あの人
24:名無しの転生者
破壊光線好きすぎだろワタルww
25:名無しの転生者
何が何でも人間に〝はかいこうせん〟を撃ちたいっていう意気込みを感じるwwww
26:名無しのポケモンマスター
一見平和なんですけどね、この世界。その平和を守るために裏で凄いダークな戦いが偶に繰り広げられてて泣きたいんですよ……
業務はきついし、期待の視線は辛いしで、もう本当にチャンピオン辞めたい。でも辞めたところで色んな恨み買ってるし、それだったらチャンピオンとして色んなサポートを即座に受けられる立場にいる方が安全っていうね
原作やアニメがどれだけキッズを考慮した物語だったのかがよく分かりますよ。何も知らない一般トレーナーとして生きていればどれだけ幸せだったことか……私の知ってるポケットモンスターを返して
27:名無しの転生者
ポケモン世界に転生って聞いたらアニポケをイメージするけど、実際はポケスペをよりハードにしたような世界だったんだな
28:名無しの転生者
よくよく考えれば、人間離れした力を持つ生物と共存する世界だから犯罪も起こりやすいのか……転生ガチャ当たりと思って嫉妬してごめんなイッチ
29:名無しのポケモンマスター
良いんです……もう腹を括りましたから。この掲示板で愚痴を零せるだけ、私はまだ救われます。それに、道徳にかなり力を入れてる教育が世界中で行われる分、皆さんが思ってるほど荒廃した世界でもないですし、何よりポケモンたちに支えられてますしね
30:名無しの転生者
それでイッチの手持ちとか、これまで育ててきたポケモンはどんなのがいんの? 自分と相手の戦力確認は必須ぞ
31:名無しの転生者
敵を知り、己を知ればって奴だな
32:名無しの転生者
砂パ使いって言ってたけど、やっぱりドリュウズとかカバルドンは当然いるんだろ? 砂パならこの2体は鉄板だし
33:名無しのポケモンマスター
いませんよ
34:名無しの転生者
え?
35:名無しの転生者
え?
36:名無しの転生者
砂パは嘘疑惑発生。この二体が砂パに居ないとか嘘だろwwww
37:名無しのポケモンマスター
いやいや、先に言っておきますけど、現実の性能とゲームの性能ってまるで別物ですからね。バトルに関しては漫画やアニメ準拠で考えた方が良いと思います
38:名無しの転生者
確かにピカ様とかゲームじゃ絶対にありえない性能してるもんな
39:名無しの転生者
転生あるある、いただきました
40:名無しの転生者
それじゃあイッチ、手持ちの解説を踏まえてそこら辺の説明もどうぞ
41:名無しのポケモンマスター
りょ。それじゃあまず一匹目の簡単なプロフィール↓
種族:サンドパン 性別:♀ 特性:すなかき 性格:健気
可愛さ:世界一 世話焼き:世界一 優しさ:世界一 面倒見の良さ:世界一 いじらしさ:世界一
好きな食べ物:オボンの実(可愛い) 好きな持ち物:さらさらいわ(可愛い)
総合評価:地中から出てきた天使。ピカチュウは今すぐマスコットの座をウチのサンドパンに譲るべき
こんな所でしょうか?
42:名無しの転生者
待て待て待て! ツッコミどころ多過ぎぃ!
43:名無しの転生者
性格:健気ってなんやねんwwwww
44:名無しの転生者
公開された情報の過半数がバトルと一切関係なくてリーフストームwww
45:名無しのポケモンマスター
え? ウチのサンドパンの素晴らしさを簡潔に述べたつもりだったのですが?
46:名無しの転生者
俺らが知りたいのはそういう事じゃねーから!
47:名無しの転生者
真面目に相談する気あんのかイッチ!
48:名無しのポケモンマスター
あー、すみません。手持ち語りになったからもんですから、つい……
49:名無しの転生者
……おや!? イッチの様子が……!
50:名無しの転生者
なんか様子がおかしくないかイッチ
51:名無しのポケモンマスター
そうですか? 気のせいでしょう。それより話を戻すんですけど、性格に関してはゲームみたいなステータスに補正を与えるみたいな影響はないと思います。例えば物理に下降補正がある性格をしたポケモンの物理技の威力がやけに高いなって思うこともあるし、その逆も然り。
そもそもウチのサンドパンは素直で頑張り屋で控えめで穏やかと、色んな側面を持っていますから、ゲームみたいにどんな性格をしているのかとか、一概に言えないんですよね。親の立場から敢えて言うなら健気な性格かなって思って書き込みましたし
52:名無しの転生者
そこら辺はやっぱり現実味が強いんだな。人間の性格にも色んな側面があるし、ポケモンもそこら辺は同じってことか
53:名無しの転生者
それじゃあ種族値とか個体値とかは?
54:名無しのポケモンマスター
種族値と個体値はありますね。種族や個体毎に得意不得意が分かれますし。ちなみに技範囲や特性に関してはゲーム準拠っぽいです。シリーズで1度でも習得できる技なら覚えれますけど、その逆にシリーズで1度も覚えられない技は現実じゃ習得不可能って感じですね。試しにサンドパンに〝ほのおのパンチ〟とか覚えられないか色々試してみたんですけど、無理でしたし。
55:名無しの転生者
そう考えると、やっぱりサンドパンはお役御免じゃね? 生き残るためなら手持ちから外すこと考えた方がいいぞ
56:名無しのポケモンマスター
……あ?
56:名無しの転生者
厳しいことを言うかもだけど俺も同意かなー。種族値と技範囲が現実でも適用されてるっていうなら、より高性能なドリュウズにした方がいいって
57:名無しのポケモンマスター
…………
58:名無しの転生者
攻撃も素早さもドリュウズの方が上だし、技範囲もサンドパンより優れてるからなぁ。特性も〝すなかき〟が被ってるし、サンドパンに出来てドリュウズに出来ないことってほぼないんじゃね? やっぱり砂パならドリュウズいるって
59:名無しのポケモンマスター
黙れ小僧! お前にサンドパンが救えるか!?
60:名無しの転生者
イッチが切れた!?
61:名無しのポケモンマスター
ウチのサンドパンはねぇ、本当に良い子なんですよ! 私が何も言わなくてもそっとお手伝いしてくれる出来た子なんです! 控えめだけど傷ついたり困ったりしている人やポケモンがいれば率先して駈け寄る優しさを持ち、恩を受ければペコリと頭を下げるという、本当にポケモンなのかと疑いたくなるくらい礼儀正しい!
その上責任感も強く、強敵を前にしても仲間を守るために立ち向かう勇気を持ち、その心の清らかさによって野生を含む他のポケモンからも一目置かれ、好かれている、我がパーティに決して欠かすことが出来ない、しっかり者の優しい長女ポジション! レインボーロケット団に命狙われて落ち込んでる私にもそっと寄り添ってくれる癒し担当!
ウチのサンドパンこそ、まさに地上に舞い降りた天使ならぬ、地中から出てきた天使なんです(地面タイプなだけに)! そんな彼女を手持ちから外せなんてとんでもない! 二度と言わないでくださいよ!!
62:名無しの転生者
うん、わかったから。ちょっと落ち着こうかイッチ
63:名無しの転生者
おめでとう! イッチは親バカに進化した!
64:名無しの転生者
何か……ごめんなイッチ
65:名無しのポケモンマスター
後、サンドパンをドリュウズと比べてディスるような言い方も止めていただきたい。昔の事を想い出して冷静じゃいられないんですよ
66:名無しの転生者
おっ。イッチとサンドパンのドラマの予感
67:名無しの転生者
何があったのか話してみたまえ、君たちの過去を
68:名無しの転生者
どの目線だよwwww
69:名無しのポケモンマスター
実はウチのサンドパン……まだ駆け出しの時に出会った時はサンドだったんですけどね、元々は他のトレーナーの手持ちだったんですよ。でもそのトレーナーはサンドパンよりもドリュウズの方が強くて使い勝手が良いからって言って、サンドをこっ酷く捨ててモグリュー育てだしたらしいんですよ。
そのことがショックだったサンドは私と出会った時は拒食症気味でかなり弱ってたから色々と世話してたんですけど、その場面を見ていたサンドの元トレーナーは「そんな雑魚にかまうだけ時間の無駄ww」みたいなふざけたこと抜かしやがったんで、手始めにドロップキックと共にバトルを申し込んで奴のドリュウズをボコりました
70:名無しの転生者
バトルの申し込み方が斬新すぎんかwwwww
71:名無しの転生者
アニポケのヒトカゲとかポカブを思い出した。よくやったぞイッチ!
72:名無しのポケモンマスター
我ながら、はっちゃけた行動だったと思う。でも後悔はしていない。
で、それが切っ掛けになってサンドが正式に私の手持ちに加わったんですよ。だからサンドパンを手持ちから外すっていうのは、とんでもなく抵抗がある事なんです
73:名無しの転生者
昔のトラウマって奴かぁ。それは確かに手持ちから外し難いよな。サンドパンの心境とか考えると猶更。こうやって詳しく聞くと、改めてイッチがいる世界がゲームなんかじゃないってよく分かるわ
74:名無しの転生者
サンドパン外してドリュウズなんて入れた日には、イッチとサンドパンの間に深い溝が生まれそうだ
75:名無しのポケモンマスター
そもそも、手持ちポケモンを簡単に外すなんて言う奴は実際にポケモンに触れたことがない人か、人の心がない人ですよ。
サンドパンに限らず他の手持ちも外したくないんです。一緒に旅をしながら過ごしてたからスッゴイ愛着湧いちゃって……。
アニメのサトシ君はシリーズごとにピカチュウ以外の手持ちをリセットしてるらしいですけど……販促アニメやゲームとして見ていた時ならともかく、実際にポケモンの世界に来てしばらく経ってから思い返して、よくサトシ君はあんなことが出来たなって戦慄しましたもん。ピカチュウ以外の手持ちに愛着とか無いのかって
76:名無しの転生者
イッチにとってはもう、ポケモンの世界はフィクションじゃないもんな
77:名無しのポケモンマスター
それになんだかんだ言って、サンドパンも凄い頑張って強くなったんですよ。ドリュウズなんて目じゃありません
ワンピースの白ひげ、知ってます?
78:名無しの転生者
読者なら知らん奴は居ないだろ。
79:名無しの転生者
主要キャラじゃないとはいえ、世界トップクラスの知名度を誇る漫画の最強キャラだしな。最高にカッコよかったし、エース共々、惜しいキャラを亡くしたもんだ
80:名無しのポケモンマスター
ウチのサンドパン、白ひげと似たようなことが出来ます
81:名無しの転生者
は?
82:名無しの転生者
どういう事だってばよ?
83:名無しのポケモンマスター
〝じしん〟ってあるじゃないですか。あれ現実だと地面を伝う衝撃波を全方位に向けて放つ技なんですけど、振動や衝撃波を操れるんだったら何とか白ひげみたいなこと出来ないかなって色々と試してみた結果……衝撃波に指向性を持たせて放つことに成功しました。
全方位に向かうはずの衝撃波を一方向に収束させることで威力が飛躍的に上がったんだから、サンドパンはもうポケモン界の白ひげと言って過言ではないでしょう。しかも従来の〝じしん〟と違って空中の敵にも当たる
84:名無しの転生者
( ゚д゚)
85:名無しの転生者
何時の間にグラグラの実を食べたんだサンドパン
86:名無しの転生者
ポケモン界の木の実、実は悪魔の実だった説について
87:名無しのポケモンマスター
更にウチのサンドパンは〝じしん〟の振動を自分の爪に留めることでナットレイも切り裂く高周波ブレードみたいな感じにできるし、〝じしん〟の衝撃波と振動を直接相手ポケモンに叩き込むことで体内まで破壊する防御無視の必殺技を使えるんですよ!
これでもウチの子がドリュウズの劣化なんて言えますかo(`・ω´・+o) ドヤ
88:名無しの転生者
ドリュウズが先の時代の敗北者だった……だと!?
89:名無しの転生者
サンドパン「種族値で勝っとるから言うて油断しとりゃあせんか? お前は所詮、鋼と地面の複合タイプ。わしは1つのタイプを極めつくすことが出来る地面単タイプじゃ! お前とわしの能力は完全な上下関係にある」
90:名無しの転生者
リアルなポケモン世界の自由度とイッチのやらかし具合に、嫌な予感が止まらない((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
91:名無しの転生者
リアル白ひげなんて育てたんだから、それはレインボーロケット団も放っておきませんわ
92:名無しの転生者
ある種の前世知識チートだな。この分だと、他の手持ちはどんな魔改造を施されているんだ……?
主人公、一見平和なポケモン世界の裏の闇とサトシリセットに戦慄する。
次回は残りの手持ちの紹介を済ませられる……と思います
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ウチの手持ちポケモンたちは天使なんだよ!(後編)
594:名無しの転生者
よーし、次の手持ち解説に行くぞー
595:名無しの転生者
イッチによるサンドパンが如何に素晴らしいかを伝える説明会なんてなかったんや……
596:名無しの転生者
まさか500レス以上も費やすだなんて、あの時の僕たちは知る由もなかった
597:名無しのポケモンマスター
待ってください! せめてウチのサンドパンがガーデニングにハマった経緯と、サンドパンに麦わら帽子が如何に似合うかの説明をさせてもらってもいいですか!?
ほんの15万文字程度に収めますから!
598:名無しの転生者
ふざけんなイッチ!
599:名無しの転生者
さも簡単に説明するみたいに言ってるんじゃねぇ! 分厚いラノベ一冊出来上がるレベルじゃねぇか!
600:名無しの転生者
何でガーデニングにハマってるんだよ地面タイプwwww
601:名無しの転生者
おいよせやめろ。学習してなかったのか!? イッチにこの手の質問なんかしたらまた親バカ講演会が始まるだろ!
602:名無しの転生者
ていうかイッチ、時空を超えて俺たちを手持ちポケ自慢に巻き込むな! そういうのは他のトレーナーとやってこい!
603:名無しのポケモンマスター
それが出来ないから掲示板で発散してませんよ! リアルで手持ちの自慢なんかやったら口論になって収拾付かなくなるんです! 私が「ウチのポケモン、最高ですよね?」って言ったら、「俺のポケモンが一番に決まってんだろうがぁあ!」みたいな感じになって、全然気持ちよく自慢できないんです!
604:名無しの転生者
親バカしかいなくてリーフストームwww
605:名無しの転生者
ポケモンへの愛に溢れた優しい世界
606:名無しの転生者
これで裏の世界なんてなかったら、俺も転生したくなるんだけどなぁ。これも全てサカキとかゲーチスとかのせいか
607:名無しの転生者
改造サザンドラについてはマジで許さん
608:名無しの転生者
とにかくイッチ、もう手持ちの自慢話は無しだ。俺たちだって暇じゃないし、簡潔に説明しなさい……ね?(^言^)
609:名無しのポケモンマスター
りょ、了解しました……それじゃあ遺憾ながら、次の子を説明に入ります
種族:クレッフィ 性別:♀ 特性:いたずらごころ 性格:甘えん坊
好きな食べ物:ヒウンアイス(可愛い) 好きな持ち物:ひかりのねんど(可愛い)
総合評価:私の自宅のカギを予備含めて全部回収して離さない困ったちゃん。何かにつけては私の懐に入り込んで甘えてくる末っ子ポジション。ゲーム通りに補助技が得意で、主力戦法は壁張り。レインボーロケット団との戦いの時、私に攻撃が届かないようにしてくれる(優しすぎて泣けてくる)。
610:名無しの転生者
ちょいちょい親バカになってるけど、まぁいいか。
一貫した弱点の多い天候パへのダメージを減らすサポート要員ってところ?
611:名無しの転生者
クレッフィ……いたずらごころ……うっ!? 頭が……!
612:名無しの転生者
対戦で嫌な目に遭った記憶が頭をよぎる……
613:名無しの転生者
小学生の時、壁張られて竜舞の起点にされて、伝説含めて三縦された時は泣いた
614:名無しの転生者
ネット対戦とか小学生絶対殺すマンばっかりだもんな。キッズにも優しいゲーム設定だったはずなのに、何時の間に廃人御用達のゲームになってしまったんだ
615:名無しの転生者
ダメージ計算もできねぇのにレート対戦の世界に入ってくるんじゃねぇよって言われてる気分だったわ
616:名無しの転生者
でもリアルだと、リフレクターとか光の壁ってどうなってんの? ゲーム通りの性能じゃないような気がするんだけど
617:名無しのポケモンマスター
お察しの通り、一定時間味方ポケモンに与えるダメージを半減するとか、そういう技じゃないですね。それぞれ物理と特殊に対応した障壁を張る技とでも言いましょうか……一定以上の攻撃を受けたら砕けるけど、それまでは一部例外の攻撃を完全に遮断する、文字通り壁を張る技です。特質上、粉技とか電磁波、鬼火といった変化技も防げますが、ゴーストタイプが使う〝のろい〟とか、実体のない変化技は防げませんね
618:名無しの転生者
他の作品でいうところの、物理干渉特化の防御結界みたいなもんか
619:名無しの転生者
となると、クレッフィはスタンダードな育ち方してるんだな。なんか意外っていうか拍子抜けっていうか
620:名無しの転生者
サンドパンを白ひげにした幼女とは思えん
621:名無しのポケモンマスター
幼女言うな(怒)。ただまぁ、ウチの子の本領は防御だけじゃなくて妨害もなんですけどね。
リフレクターは物理攻撃を防ぐ能力があるんですけど、ポケモンの四方を囲めば動きを封じる檻としても使えるんですよ。相手を囲い込むように素早く張れば、どんなにすばしっこい相手でもゆっくりと料理できるようになって、凄い便利なんです。張れる壁の数はポケモンの力量にもよりますけど、ほぼ制限はないですし
622:名無しの転生者
歩行は〝たいあたり〟みたいな扱いになってんのか……ん?
623:名無しの転生者
クレッフィの特性は〝いたずらごころ〟……相手の行動よりも早く壁を張れるから……
624:名無しの転生者
…………っっ!?
625:名無しの転生者
落ち着け! 心を乱すな! 下手にクレッフィを褒めてイッチに隙を与えればまた親バカリサイタルが始まるぞ!
626:名無しのポケモンマスター
……気にせずウチのクレッフィが如何に素晴らしいかを聞いてってくれてもええんやで……?
627:名無しの転生者
イッチ?
628:名無しの転生者
ちょっと……黙ろうか?(^言^)
629:名無しのポケモンマスター
すみませんした(……チッ)
630:名無しの転生者
油断も隙も無いイッチだ
631:名無しの転生者
前言撤回。クレッフィも十分ヤベェ奴だった
632:名無しの転生者
壁張り悪戯心……ゲーム以上の害悪ポケになってんのか……。
メジャーな起点作成要員なのにアニポケで見かけないあたり、制作側の大人の事情が垣間見える
633:名無しのポケモンマスター
それじゃあ次の子たちなんですけど、この2体に関しては単純にステータスが高くて技量があるくらいで、これと言っておかしな戦い方はしないと思います
種族:ギガイアス(色違い) 性別:♂ 特性:すなのちから 性格:ナルシスト
好きな食べ物:おいしいみず(可愛い) 好きな持ち物:じゃくてんほけん(可愛い)
総合評価:やたらと美意識が高くて水ばっかり飲む次男ポジション(水の中のミネラルが体の結晶体を形成するのに役立ってるらしい)。攻撃を受けると凄い怒るけど、一度割れて再生成された時の結晶体はより綺麗なのが生えるから、なんだかんだでバトルに出る。どこで学んだのかレディーファーストを心得ている紳士
種族:シンボラー 性別:♀ 特性:マジックガード 性格:ヤンキー
好きな食べ物:ポフィン(可愛い) 好きな持ち物:いのちのたま(可愛い)
総合評価:好戦的で短気な、顔芸担当の次女ポジション。やたらと血走った3つの目でメンチを切りまくっていて、初対面のポケモンや人ならまず間違いなくビビる。その反面、面倒見のいいところもあって、そんな性格がバトルにも表れているのか、攻撃特化な戦法が得意な反面、他の手持ちのサポートも得意
634:名無しの転生者
おかしな戦い方の奴らじゃなくて、おかしな性格の奴らじゃねぇかwwww
635;名無しの転生者
私がイメージしてたギガイアスとシンボラーを返してwwww
636:名無しの転生者
鏡見ながら自分の事を「……美しい……」とか言ってるギガイアス想像して吹いたwwwww
確かに色違いのギガイアスは技出す時に光って綺麗だけどもwwwww
637:名無しのポケモンマスター
あ、多分ですけど鏡見ながら「……美しい……」ってやってますよwwww
私の家には各手持ちポケモンの為に用意した区画があるんですけど、ギガイアスは大きい鏡持ち込んでましたし、会いに行ったら大抵鏡に映ってる自分をガン見してますしww
あとディアンシーに対して並々ならぬ対抗意識を燃やしてますねwww
638:名無しの転生者
マジモンのナルシストでマジカルリーフwww
639:名無しの転生者
エスパータイプがヤンキーキャラっていうのも新しいな。ガラの悪いポケモンって悪タイプが多いと思ってたわ
640:名無しのポケモンマスター
そこはやっぱり個体差ありますねー。鳴き声も妙に低くてドスが効いてて、初対面の時は「え……何このシンボラー? 怖っ」って、普通にドン引きしてましたもん。血走った目で至近距離からメンチビームされましたしwww
641:名無しの転生者
メンチビームとはまた懐かしいゲームをwwww
642:名無しの転生者
それで、こいつらの戦い方はサンドパンほど変じゃないってことは、ギガイアスは砂嵐込みの高耐久で耐えて弱保発動からの反撃、シンボラーは玉のデメリットを特性で無効化って感じか
643:名無しのポケモンマスター
ですね。あとギガイアスは〝じならし〟が得意です。リアルでの〝じしん〟と似た感じに見えるんですけど、衝撃波によるダメージじゃなくて相手ポケモンの脚に強い振動を与えることで痙攣を起こし、動きを封じる技って感じの技で、広範囲の敵の移動を封じた上で高火力技で仕留めるのが主力戦法です
対してシンボラーは玉の火力での制圧の他にも、〝トリック〟で火炎玉やスカーフとか押し付けたり、トリルで足の遅い手持ちのサポートしたりしてくれる、乱暴なところもあるけど本当は優しくて良い子なんです
644:名無しの転生者
リアルでもスカーフとかハチマキみたいな持ち物あんの?
645:名無しのポケモンマスター
ありますね。持ち物はゲームと似たような感覚で運用できる分、転生者からすれば使い勝手が良いんです。ただ、食べ残しは食べればすぐに無くなっちゃうから、どう足掻いても回復木の実以下の性能ですけど。〝リサイクル〟のメカニズムはポケモン世界に来ても謎のままです
646:名無しの転生者
原作じゃどの世代でも使える有能アイテムだったんだけどなー
647:名無しの転生者
でもイッチ、ギガイアスの特性は〝すなおこし〟じゃなくて良かったん? 高耐久で耐えてからの弱保なら〝すなおこし〟で良かったんじゃね?
648:名無しのポケモンマスター
あぁ、ウチの手持ち、〝すなあらし〟が使える子は皆0.1秒以内に天候を砂嵐に出来ますから。ボールから出た瞬間に即発動してるんですよ
649:名無しの転生者
え?
650:名無しの転生者
それって実質、〝すなおこし〟と合わせて二つの特性を持ってるみたいなもんじゃねぇーか!
651:名無しの転生者
下手したら〝じんばいったい〟よりえげつねーぞ!?
652:名無しの転生者
正直に吐けイッチ! 本当は神様からチートポケモンを生み出す転生特典貰ってんだろ!?
653:名無しのポケモンマスター
違いますよ! 本当に頑張って練習しただけなんです! ゲームじゃ素早さ絶対主義みたいなところがあったポケモンですけど、リアルだと技の出の速さに限れば練習次第でどうとでもなる世界ですから、起点作りにかかる手間を練度次第で省けるんです!
654:名無しの転生者
ええー? ほんとにござるかぁ?
655:名無しのポケモンマスター
私はアニポケ殆ど見なかったからあまり知らないけど、アニポケの方も随分と滅茶苦茶やってたらしいじゃないですか。私の事をどうこう言いたければ、まずはアニポケの方に文句をどうぞ!
656:名無しの転生者
あぁー……確かに。前世じゃ無茶苦茶やってやがると何度思ったことか……
657:名無しの転生者
アニメ補正の塊、サトシゲッコウガはマジで許さん。私の好きな第二世代御三家はメガシンカすらもらえなかったのに!
658:名無しの転生者
後輩のホウエン御三家はメガシンカ貰えたのにな。対戦でもやたらと不遇だし、ジョウト御三家が一体何をしたっていうんだ……
659:名無しの転生者
メガニウムをメガシンカしたらメガメガニウムになって語呂が悪くなるから説
660:名無しの転生者
それでイッチ、5匹目の手持ちはどんなんだ?
661:名無しのポケモンマスター
次の子はこんな感じですかね
種族:シロデスナ 性別:♂ 特性:すながくれ 性格:のんびりマイペース
好きな食べ物:パンケーキと生命力(可愛い) 好きな持ち物:ひかりのこな(可愛い)
総合評価:何かと私やポケモンに覆いかぶさってくる構ってちゃん。自分の体を崩して砂嵐に紛れることで完全に姿を消したり、〝すなあつめ〟を連発することで巨人みたいな姿になり、大きさで相手を圧倒するのが得意。出会った時から砂アートが好きな、芸術肌の三男ポジション
662:名無しの転生者
これまでで一番ヤベェのがきやがった!
663:名無しの転生者
パンケーキ程度の可愛らしさじゃ中和できない好物wwwww
664:名無しの転生者
それ構ってちゃんじゃなくて確実に命狙いに来てるってwwww
665:名無しの転生者
ポケモンのゴーストタイプはヤベェのしかいないのは本当だったのか……
666:名無しの転生者
目を覚ませイッチ! その手持ちは可愛いで済ませられるポケモンじゃねーから! とんでもねーバケモンだから!
667:名無しのポケモンマスター
失礼なことを言わないでください! ウチのシロデスナは優しい子なんです! 野宿しなくちゃいけなくなった時に巨大化して自らテント代わりになってくれる献身的な子なんです! 苦手な雨も我慢して私を守ってくれる可愛い子なんです! その対価にちょっと私の体力を吸ってくるだけで!
668:名無しの転生者
あかん……イッチが正気じゃねぇ……
669:名無しの転生者
これが親バカのなせる業だというのか……! 逆に言うとこのくらいの愛がないとポケモン世界で生きていけないという訳で……
670:名無しの転生者
ていうか巨大化ってなんやねん。 え? 〝すなあつめ〟したら巨人になるの?
671:名無しの転生者
駆逐してやる……この世から、一匹残さず……!
672:名無しの転生者
それ巨人を駆逐する側や
673:名無しのポケモンマスター
リアルのシロデスナはダメージを負うと砂の体が削れて小さくなっていくポケモンで、〝すなあつめ〟で削れた分を取り戻すことで体力回復するんですけどね、ふとした切っ掛けで、万全の状態で〝すなあつめ〟したらシロデスナの体が大きくなることに気が付いたんですよ。それなら〝すなあつめ〟をしまくったらどんどん体が大きくなるんじゃないかと色々試したら……巨人化しました。イメージ的にはダイの大冒険の鬼岩城の上半身?
674:名無しの転生者
バトル物においてデカさ=強さだからな。格闘技の世界でも、地球の自然界でも、体がデカいだけで有利だし
675:名無しの転生者
そう言えば、アニポケでも巨大化したシロデスナ出てきたよな
676:名無しの転生者
サトシが飲み込まれて最終的にバッドエンド風に終わった回だろ? 見た見た
677:名無しの転生者
先に公式がやらかしたか……シロデスナには、それだけのことが出来るポテンシャルがあるって先に公式が証明しちゃってたのな
678:名無しの転生者
この調子じゃ、6匹目にどんなのが出てきても驚きそうにないな。最後の手持ちはどんなのだ?
679:名無しのポケモンマスター
種族:バンギラス 性別:♂ 特性:すなおこし 性格:ツンデレ
好きな食べ物:グレン風火山ハンバーグ(可愛い) 好きな持ち物:バンギラスナイト(可愛い)
総合評価:一見素っ気なくて暇があれば寝てばかりだけど、お腹を空かしたポケモンや落ち込んでる人を見かけると気付かれないように木の実を渡そうとするという、不器用な優しさを持つ素晴らしい子。手持ちの間で優劣を付けるのは不本意ですが、贔屓目抜きに私の手持ちポケモンの中で間違いなく最強のエース。私との付き合いは一番長い
680:名無しの転生者
トゥクン……
681:名無しの転生者
え……優しい……
682:名無しの転生者
イッチのメガシンカ枠はバンギラスかー。砂嵐関連の特性はコンプしてんのな
683:名無しの転生者
お腹を空かせているオタチとオオタチの親子の元にそっと木の実を転がして、気付かれないように立ち去っていくバンギラスの後姿を想像してほっこり来たwwww
684:名無しの転生者
害悪戦法にナルシストとヤンキー、ヤバいゴーストポケモンときて不器用なツンデレが出てくるギャップよwwww
685:名無しの転生者
砂パのエースとして申し分ない一体だよな。かくいう俺も前世からバンギラスが大好きだ!
686:名無しの転生者
バンギラスグリーンなんて言葉が出てくる人気ポケだし、素早さが重要視されがちな対戦環境でも厨ポケ扱い。ハーメルンでもオリ主の手持ちに採用される率高いし、納得の一体だ
687:名無しの転生者
でもイッチの手持ちって、砂嵐を0.1秒以内に撒くんだろ? バンギラスの特性腐ってない? メガシンカしても〝すなおこし〟だし
688:名無しのポケモンマスター
そのことは私も考えて色々やってたんですけどね。チャンピオンになった翌年くらいでしょうか……上手い事他の手持ちとの差別化も図れたんですけど、オーキド博士が遠いカロス地方からプラターヌ博士を連れてきて、バンギラスの事を色々調べていったんですよね
689:名無しの転生者
……うん?
690:名無しの転生者
何だろう……イッチがまた何かやらかしてる気がする
691:名無しの転生者
それでイッチ、オーキド博士たちは何でイッチのバンギラスを調べていったんだ?
692:名無しのポケモンマスター
簡単に言うと……
ウチのバンギラスがメガシンカして天候を砂嵐にした時、従来の砂嵐よりも性能が上がったものになってたかららしいです。言うなれば、〝はじまりのうみ〟や〝おわりのだいち〟の砂嵐版みたいな感じに
693:名無しの転生者
( ゚д゚)
694:名無しの転生者
何時からバンギラスは超古代ポケモンになったねん
695:名無しの転生者
メガバンギラスじゃなくて、ゲンシバンギラスでしたか
アニポケのシロデスナ。アニメ補正全開のサトシゲッコウガ。公式がこれだけやってるんだから、この小説のシロデスナとバンギラスなんてそう滅茶苦茶な設定じゃないと思っています
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傍から見たロリチャンピオン(キクコ編)
カントーとジョウト、二つの地方に跨るポケモンリーグの最高峰、セキエイリーグ。その頂点に僅か14歳という若さで君臨した女性チャンピオン、タチバナの最強のエースポケモンであるバンギラス。
強大で珍しい種族ではあるか、総体的に特別という訳でもないポケモンの調査にポケモン研究の権威であるオーキド博士が乗り出したのは、他のチャンピオンと比べてメディアへの露出が少ない彼女のバトルシーンを目にしたからだ。
尋常ではない攻撃性能を持つサンドパンに、絶対防御と呼ぶべき壁系の技の展開速度を誇るクレッフィ。これまでに聞いたことすらないほど能力が高いギガイアスやシンボラー、大量の砂を集めて巨人化するシロデスナ……どれもこれも型破りであり、常識破りの、種族としての限界を超えているとしか思えないポケモンばかり。
そんなポケモンたちを育て上げたタチバナの手腕にも興味があるが、今回オーキド博士が何よりも興味を引いたのがバンギラス……より正確に言えば、そのバンギラスがメガシンカした姿であるである、メガバンギラスだ。
カロス地方を発祥とする、リザードンやカメックスなど進化の限界に辿り着いたはずのポケモンを、一時的にだがもう一段階進化させるメガシンカ。珍しくはあるが一部の有力なトレーナーならば使える者もチラホラ見受けられる技術であり、タチバナもその内の一人だ。メガシンカを使えるだけならばオーキド博士もわざわざ動こうとは思わなかっただろう。
メガシンカすることでタイプや特性が変わるとされるが、バンギラスにはそれがない。メガシンカしようがしまいがタイプは岩と悪の複合であり、特性は〝すなおこし〟……これはメガシンカを専門に研究しているカロス地方のプラターヌ博士も提唱していた。
だがタチバナのバンギラスは、その常識を打ち砕いた。
ボールから出て戦闘態勢を取った時に発動する〝すなおこし〟。技としての〝すなあらし〟。そしてメガシンカした時に再び発動する〝すなおこし〟。この三つの工程によって三度巻き起こる砂嵐は、ポケモンが発生させる天候の一つである従来の砂嵐よりも遥かに強大なのだ。
「……凄いですね。メガバンギラスの事は幾度も研究してきましたが、このような現象は見たことがありません」
「うむ。間違いなくバンギラスというポケモン……ひいては砂に纏わるポケモンの研究の歴史に名を遺すじゃろう」
セキエイ高原研究所敷地内で、タチバナのバンギラスを研究するにあたって協力を要請したプラターヌ博士は、オーキド博士と共に強化ガラス越しにその力を振るうメガバンギラスを見ながら目を輝かせてキーボードを叩く。
実験場の各地に設置されたカメラのレンズは吹きすさぶ砂嵐によって傷だらけになり、強化ガラスからはバチバチバチと絶え間なく砂がぶつかる音が響き渡る。幾度が実験に付き合ってもらったポケモンと軽くバトルをしてもらった結果、この強力な砂嵐の事で分かったことが3つ。
1つは、メガバンギラスになった時に〝すなあらし〟を使うことで発生すること。恐らく特性によるものなのか、あるいは特性と技が合わさって発生しているのか、確かなことはまだ分からないが、ただ砂嵐を発生させる特性や技を他のポケモンが重ね掛けするだけでは同じことは出来ないだろう。
2つ目は、一度発生してしまえば、メガバンギラスがその場から居なくなるまでいかなる技や特性でも上書きが出来なくなることだ。恐らく同等の力を持つ特性か、〝ノーてんき〟のような天候そのものを消し去る特性でもなければ対処できないだろう。
3つ目は、従来の砂嵐以上のおよそ2倍もの効力があるという事。巻き上がる砂塵が岩タイプの表皮に張り付くことで耐久力が上がるのはこれまでの研究で明らかになっているが、その砂塵の量が増えれば増えるほど表皮に張り付く砂も増え、その分耐久力が上がる。
従来の砂嵐によって岩タイプの耐久力が1.5倍になると仮定するならば、タチバナのバンギラスが巻き起こす砂嵐は岩タイプの耐久力を2倍近くにまで跳ね上げるだろう。
「さらに砂嵐が強くなるということは、岩・地面・鋼タイプなど以外の、この天候に適応できないポケモンに与えるダメージも増加するという事。しかもピカチュウなど体重の軽いポケモンなら、砂嵐に巻き上げられてまともに動けなくなるじゃろう」
「その上、砂が目に入って視界も封じられることでしょうしね。あのバンギラスを倒せるのは、同じ土俵に立てるポケモンだけだという事ですか」
岩・地面・鋼タイプのポケモンなどは、主に砂漠や洞窟内といった、粉塵が巻き上がる場所に生息していたり、地中の中を動き回ることも多々ある。
そういったポケモンは長い年月をかけて特殊な角膜によって目を保護するように進化しており、この砂嵐の中でも問題なく活動できるだろうが、それ以外のポケモンではタチバナのバンギラスの前に立つだけで視界を封じられ、まともに戦うことすら出来ないだろう。
「いずれにせよ、彼女のバンギラスが他のバンギラスとは違うというのは明らかじゃ。ポケモンと人間は互いに影響を受け合って変化するという説があるが……うぅむ、実に興味深い」
「数百種ある数々の技を独自に改良、組み合わせることで新たな技を作り出していると言いますしね。アローラのククイ博士にも意見を聞きたかったところですが……」
「彼にも話を通してみたんじゃが、先約があるからと断られてしまってのぅ。ククイ博士も悔しがっておったよ。外せない用事がなければセキエイ高原まで飛んで行ったのにと」
南の地方でポケモンの技を専門に研究している変人を思い浮かべながらオーキド博士は苦笑する。
いずれにせよ、チャンピオンとしての責務や副業に忙しい彼女と、何かと多忙な自分たちの予定がかみ合ったのは本当に運がいい。この幸運に感謝し、観測と実験を続けようとしたその時、杖を突いた一人の老婆が部屋に入ってきた。
「タチバナが何かやってるって聞いて様子を見に来てみれば……オーキド、アンタいたのかい」
「おぉ、キクコか! 久しぶりじゃな! そっちは四天王の仕事か?」
「元、四天王だよ。セキエイ高原に来たのは単なる引継ぎ作業の為さ。それも今日ようやく終わって、肩の荷が下りたところだってのに、何たってお前の癪に障る面なんぞ見にゃならないんだい」
「そっちからここに来たんじゃろう。相変わらず性格のキツいやつじゃ」
長年に渡りセキエイリーグの四天王を務めてきた、世界でも屈指のベテラントレーナー、キクコ。かつてはオーキド博士とライバル関係であり、顔を突き合せればバトルに発展するような血気盛んな間柄だったが、今は2人ともいい年をした老人。キクコの方は棘がある態度だが、2人の間にあるのは穏やかな空気だった。
「……そうか。お主もとうとう引退か。セキエイリーグも寂しくなるのう」
「まぁね。だが後進は育っているし、あたしとしては後悔はないさね」
キクコは強化ガラス越しにメガバンギラスと、そのトレーナーであるタチバナの姿を眺める。その瞳は、険のある態度が目立つ彼女にしては珍しい、優しさすら感じられるものだった。
「そういえば、お主はタチバナとは深い交流があるらしいのう。何でも、彼女が駆け出しトレーナーの時からの知り合いで、次期チャンピオンとして指導したとか」
「へぇ、そうなんですか?」
「チッ……耳聡いジジイだね。一体どこからそんな話を耳にしたんだか」
キクコは忌々しそうに舌打ちをし、ポケットにしまっていた煙草を咥えて火を点けた。
それは前回のセキエイリーグ開催時、トーナメントを突破したタチバナとキクコが親しげに会話しているのを見た観客や他の参加者が流した噂話だが、事実は違う。
「バトルを指導したことはあるけどねぇ、別に大したことは教えちゃいないし、リーグに勧誘もしちゃいないよ。あたしはちょっと背中を押して、後はタチバナが勝手に育っただけさ」
=====
ジムリーダー、四天王、チャンピオン……肩書は数多くあるが、ポケモン協会に所属するトレーナーはポケモン犯罪やトラブルへの抑止力となるように義務付けられている。
警察や自衛隊に変わって犯罪を犯したトレーナーや暴れている野生ポケモンを制圧する権限を与えられており、キクコ自身も長年四天王として数多くのポケモン犯罪に対処して来た。
しかし、キクコも彼女のポケモンたちも歳だ。体力的に限界が近づいて来ていたし、近年活発化していた指定犯罪組織、ロケット団との戦闘でキクコは足を負傷している。
動かせないほどではないが、杖を突いての歩行を余儀なくされるほどの後遺症を抱えてしまい、キクコは引退に向けて行動に移すことにした。
だがカントーだけではなく、様々な地方できな臭い組織が動き出している今、四天王の席に穴が開くのは大きな痛手だ。その上、ここ十数年の間は平和だったこともあって、世間のトレーナーの質が大幅に落ちている節がある。キクコの後継となるトレーナーを見つけるのは、容易なことではなかった
そんな肉体に鞭を打ちながら四天王としての業務と後継探しを両立していたある日。所用があってハナダシティに数日滞在することになったキクコは、ハナダジムの様子を覗いてみることにした。
ここ数年の大会で目ぼしい実力を持つトレーナーは新たに現れず、トーナメントを突破したトレーナーも四天王の1人目にあえなく敗退する者ばかり。ならば無名のトレーナーの中から才ある者がいないかどうか、キクコは殆ど期待することなく若いトレーナーたちの様子を見に行ったわけである。
その際に見かけたのが、後のチャンピオンのタチバナだ。
まだまだ10歳の子供……と言っても、容姿だけは昔と殆ど変わらないが、年相応に未熟であったタチバナはジムリーダーに挑むでもなく、観客席から他の挑戦者たちとジムリーダーの戦いぶりを、手持ちのヨーギラスとサンドと共にジッと眺めていた。
『そこの貴女! 今日はどうする? 挑戦しないの?』
その様子に気が付いた当時のジムリーダーはタチバナにそう声をかけたが、タチバナは静かに首を振ってジムを去っていった。
それが少し気になったキクコはジムリーダーに話を聞いてみることに。キクコが四天王であると知っていたおかげか、快く答えてくれたジムリーダーによると、タチバナは初めてハナダジムを訪れた数日前からずっとあの様子で、ジムリーダーの戦い方を偵察しているらしい。
それを聞いたキクコはタチバナの腹積もりを理解できた。ハナダジムは代々水タイプを専門とするジム。それに対して彼女が連れていたヨーギラスとサンドは、水技が苦手なポケモンだ。
相性が不利なりに敵を偵察し、対抗しようとしているのだろう。少なくともジムに挑戦するつもりだというのは、ヨーギラスとサンドの闘争心を宿した目を見ればわかった。
だが同時に解せない。ハナダシティの近隣には草タイプのポケモンも電気タイプのポケモンの姿も見られたのに、なぜそういった水タイプに強いポケモンを捕獲して挑戦しようとしないのか……その答えをキクコは翌日になって知ることになる。
朝になって滞在しているホテルのバルコニーで一服していると、木の実を片手に野生のビリリダマへ話しかけるタチバナの姿を見かけたのだ。一体何をしているのかと思って様子を眺めていると、ビリリダマに木の実を渡して、視線を合わせながら何かを話しかけて居たタチバナだったが、ビリリダマは胴体と一体となった頭を左右に振り、そのまますたこらと逃げて行った。
『何やってんだい。捕獲したけりゃ弱らせてボールを投げりゃいいだろうに』
慰められているのか、ポムッとサンドパンとヨーギラスに背中を軽く叩かれるタチバナ。そんな様子を見かねて思わず話しかけたのが、二人の交流の始まりだった。
タチバナは驚くほど整った容姿を持つことを除けば普通の子供だった。普通にポケモンが好きで、普通に優しくて、普通に旅を楽しみたいだけの、どこにでもいる駆け出しトレーナー。
ビリリダマに木の実をあげて話しかけていたのも、やはりと言うべきかハナダジムへ挑戦するために新たな手持ちとして加えたい為であり、連日ジム戦を様子を眺めていたのも水技が苦手なヨーギラスたちと共に対抗策を練っていたかららしい。
だがそれだと、なぜバトルで弱らせてビリリダマを捕獲しようとしなかったのか……それを聞いた時、タチバナは凪のように静かな瞳でこう答えた。
『……私たちの都合の為だけにいきなり攻撃して、いきなり捕獲するのは、何か違うと思ったから……だから会話で何とかならないかと思って話しかけました。……断られましたけど』
それを聞いた時、タチバナはあまりバトルに向いていないとキクコは思った。聞けばジム挑戦も闘争心に燃える手持ちポケモンたちに請われたから挑戦するだけであり、リーグなどには興味もないのだとか。サンドとヨーギラスにしてもバトルを介さず、ひょんなことから手持ちに加わったらしい。
バトルの才能云々は置いておいて、気性が優しすぎる。それ自体は尊いものだが、ポケモンの身になって考えすぎて、ポケモンバトルで上に行くことが出来ない類のトレーナーだ。この世界でトレーナーとして生き抜くには向いていない。
『ポケモンと人間はそう変わりゃしない。良い奴も嫌な奴も、真面目な奴も怠け者も、臆病な奴も勇敢な奴もいる。色々さ。でもね、過酷な野生の中で生きてるだけあってどんなポケモンでも大なり小なり闘争本能を隠し持ってんのさ。だからポケモンバトルなんて興業が成り立つんだよ。力も示さずアンタに従ってくれる奴なんてそうそういやしない。だからトレーナーがポケモンを捕獲する時はバトルを介するのさ。このトレーナーになら付いて行って安心だ、このトレーナーにこそ付いて行きたいって思わせるためにね」
『…………』
『アンタがどうしようが知ったこっちゃないけどね、そんな甘ったるいやり方で新しい手持ちを迎えられなかったらどうするんだい? ジムは諦めんのかい?』
少しキツいが、長年をかけて辿り着いたポケモンとトレーナーの真理を交えて聞いてみると、意外にもタチバナは首を横に振った。
『前もってこの子たちと話し合って決めました。新しい手持ちを迎えられなくても、強くなってジムに挑もうと。バトルは苦手ですけど、私はこの子たちの親ですから……私と一緒にいることを選んでくれた分、この子たちが望むなら、私も出来る限りのことをするって……一緒にいて良かったって思えるようなトレーナーになると決めたんです』
静かで、感情の起伏はあまり感じられないが、ポケモントレーナーとしてタチバナなりの芯を感じさせる言葉だった。少なくとも、ただ優しいだけで臆病な少女などではないとキクコに思わせる程度には。
それを聞いたキクコは少しだけ愉快な気持ちになった。世の中、信念を持ち合わせず、中身のないトレーナーなど掃いて捨てるほどいる。トレーナーの殆どがチャンピオンになりたいだの、ポケモンマスターになりたいだの、ただ自分の夢ばかりを見てポケモンを利用する者であり、自分なりのポケモンとの向き合い方とは何なのかという答えを持つ者は、意外なほどに少ないのだ。
『ポケモンの為の生き方ってかい? はっ! 甘い、甘いねぇ! ポケモンっていうのはバトルをさせてなんぼさ! 力が物言うこの世界、そんな消極的な考え方じゃ、自分自身も自分のポケモンも守れやしないんだよ! アンタだってここまでの旅で、野生のポケモンなり悪質なトレーナーなりに襲われて危ない場面くらいあったんじゃないのかい?』
『それは……はい』
タチバナはこの幼さでその答えを持っている……キクコは緩みかけた頬を引き締め、やれやれと言わんばかりに肩をすくめながら悪態をつく。
少しお節介をしたくなった。長年ポケモンに関わってきた1人のトレーナーとして、この少女が将来どのようなトレーナーになるのか、その成長を促すことで見てみたくなったのだ。その為に危険を排除し、艱難を乗り越える力を少しくらい与えてみても良いだろう、と。
『特別サービスだ。この四天王のキクコが直々にタイプ相性をひっくり返す戦い方っていうのを教えてやるよ。アンタみたいなナヨナヨしてて覇気のないトレーナーは見てられないからねぇ』
今思えば、短い間ながら自分とタチバナは師弟の関係だったのではないかと思える。自分のブルンゲルを相手に必死に策を巡らせ、戦い方や技の出し方を工夫するタチバナを見た時、何とも言えぬ穏やかな気持ちを抱いたものだし、自分が教えた技術と知識をモノにして、見事ジムリーダーに打ち勝った時は思わず拳を握ったのを、キクコは今でも思い出せる。
その後、ハナダシティの入り口で別れを済ませ、遠くなっていく小さな背中を見送ってからタチバナの姿を直接見ることは4年近くなかったが、弟子の話題は地方を超えてキクコの耳にも届いていた。
ジムや地方のバトルの大会、コンテストなどに挑戦する傍ら、ポケモン犯罪と直面し、成り行きで解決へと導いていると聞いた時は驚くとともに声をあげて笑ったものだ。どうやらあの日見た優しさはメッキなどではなかったらしく、義によってポケモンの誘拐組織や密猟団体を幾つか壊滅させ、それが出来るまでには強くなったというのだから。甘さを克服し、他の為にその力を振るえる、優しさと強さを兼ね備えたポケモントレーナーに。
そして出会いと別れから約4年後……タチバナがセキエイリーグへと挑戦したと知った時は、キクコは年甲斐もなく血が滾った。あの少女の成長をバトルで直接確かめることが出来る……もしかしたら、長らく四天王の座に居座り続けたロートルである自分に、終止符を打つかもしれないと。
その期待に応えるかのように、タチバナは破竹の勢いでトーナメントを勝ち抜き、3人の四天王をも乗り越えて、チャンピオンであるドラゴン使い・ワタルを守る最後の四天王のキクコの元へと辿り着いた。
『ふん……少し見ない間に、ちょっとはマシな目をしたトレーナーになったもんだね』
『だとするなら、それはキクコ先生のおかげです。強さこそが自分とポケモンたちを守る術……先生の言葉を胸に、何とかトレーナーとしてやってこれました』
『はっ! こっ恥ずかしいセリフを吐くんじゃないよ。……それで? 何たってセキエイリーグに挑戦しに来たんだい? また手持ちのポケモンが望んだからとか、そういう理由かい?』
『……それもあるのですが、その……』
『この場所なら、先生に私たちの成長を見てもらえると思って、私から進んでリーグに参加しました』
少し言いにくそうにしながら精いっぱい伝えられたその言葉に、キクコは思わず胸が詰まった。
高齢と怪我の後遺症で引退を余儀なくされても、なぜ今日まで四天王の座に居座り続けたのか……それは、タチバナという新しい時代のトレーナーが、キクコという先の時代の残党を超えていく瞬間を見たかったからではないのか。4年前にお節介を焼いた自分の本音に、ようやく気付けた気がした。
『言うじゃないか。だったら見せてもらおうか。新しい時代のトレーナーの力って奴をねぇ!』
こうして始まった師弟対決。その結果だけを言えば、清々しいまでにキクコの完敗だった。
かつて教えたバトルの基礎を軸とし、砂嵐を活用した見事な戦術に、オリジナルと言って差し支えないほどの改良、洗練された技の数々。そして何よりもタチバナと深い信頼で繋がった屈強で異色な戦い方をするポケモンたち。
いずれも新時代の幕開けを告げるかのような強さを携えたタチバナとそのポケモンたちは、勢いに乗ったままワタルすらも打倒し、見事セキエイリーグの頂点へと上り詰めた。
『見事だったよ、アンタたちは。まさしく新時代に相応しい戦いぶりだった』
『……先生』
『さぁ、胸を張りな! 今日からアンタは最強の看板を背負って立つんだ。……この世界の平和を頼んだよ』
その言葉の後に、キクコは大々的に引退を宣言。トレーナーとして一線を退くこととなった。
悔いはない。最後の試合は負けこそしたが、かつての弟子が見事に師を超えたことを証明して見せたのだ。これからチャンピオンとして、頭角を現して久しいロケット団などといった犯罪組織と向き合うこととなるだろうが、タチバナならば大丈夫だと確信している。
チャンピオンや四天王、ジムリーダーがポケモン犯罪の抑止力として悪質なトレーナーと戦うことを義務付けられているのは周知の事実だし、タチバナもその辺りのことを踏まえた上でリーグに挑み、頂点を極めたはずだ。
しかもタチバナは幾度もポケモン犯罪組織と戦い、その悉くを壊滅へと追いやってきたという、年端のいかぬ少女とは思えないほどの実戦経験を積んでいるし、これから先も悪と戦う気構えが出来ているだろう。
これでセキエイリーグも安泰だ……キクコは長年背負い続けた重責を下ろし、数十年ぶりに一息つくのであった。
『…………え? ちょ、あの、先生? 世界の平和って、それどういう…………?』
なお、そんな新チャンピオンの言葉は、万雷のような歓声に紛れて誰の耳にも届いていなかった。
=====
そして現在。タチバナにセキエイリーグの未来を託したのは間違いなどではなかったのだと、キクコは改めて確信している。
年若く型破りな戦法を取るチャンピオンに影響されて、この1年にも満たない期間で多くのトレーナーがその質を向上させつつあるし、最近ではカントーやジョウトで活動しているロケット団のみならず、地方を跨いで数多くの悪の組織に大打撃を与えたことで、名実ともに最強の抑止力として君臨しているのだから。
中には余りの実力差にバトルを引退してしまうトレーナーもいるらしいが、ここはポケモンバトルの最高峰であり、一流トレーナーのみが戦うことが許されるセキエイリーグ。敗北を己の糧にもできない弱卒に居場所などない。
本物の一流とは、心身ともに鍛え抜かれた不屈の者を指すのだから。
「しかし、彼女の後に続く新米トレーナーたちも大変ですね。チャンピオンの座を手に入れるには、歴代最大の壁を越えなければならないのですから。確か、博士のお孫さんも今年トレーナーとして旅だったのでは? 今10歳ですよね?」
「ほう? そりゃいいねぇ。オーキドの孫ということはさぞ自信満々な癪に障る面してるんだろう? タチバナに負ける瞬間を是非とも拝んでみたいもんだ」
「相変わらず趣味が悪い奴じゃ。じゃが、わしの孫は贔屓目抜きにしても中々のものじゃぞ? 案外チャンピオンすら喰らってしまうかもしれんな!」
観測室に3人の話し声がしばしの間響き渡る。
後に、カントー・ジョウトに住まう数多のトレーナーから「チャンピオンになる」という夢と希望を打ち砕き、《絶望の魔王》と呼ばれるようになるチャンピオン・タチバナ。そのエースであるバンギラスがメガシンカした際に発動される新特性に、〝ぜつぼうのさじん〟と名付けられる、少し前の出来事である。
この小説のキクコさん、原作の赤・緑開始時にはすでに引退していて、レッドたちが倒した四天王の内の一人は登場予定すらないモブになっています。
尚、キクコの人物像に関しましては、設定資料の少なさから作者の独断と偏見に満ち溢れた、未熟だった頃の主人公の師匠ポジに落ち着きました。
キツイ性格をしたツンデレ老婆で、自分なりの信条を持つトレーナーに交換とか抱いちゃう、なんだかんだで弟子が可愛いと思ってる人。
そんなキクコさんに萌えたという読者の皆様には、大小判から特別なバンギラスを配布いたします。詳細は以下。
バンギラス
性別:♂
性格:いじっぱり
特性:ぜつぼうのさじん
個体値:6Ⅴ
持ち物:絶望のバンギラスナイト
技構成 ストーンエッジ
じしん
れいとうパンチ
りゅうのまい
本小説に登場する主人公、タチバナのエースポケモン。このバンギラスに特別な持ち物、「絶望のバンギラスナイト」を持たせた状態でバトルに出すとメガシンカ(剣盾・BDSPではフォルムチェンジ扱い)して種族値が大幅上昇し、バンギラスが場にいる限り天候を〝つよいすなあらし〟状態にして、岩タイプのポケモンの特防を2倍、更に岩・地面・鋼タイプ以外のポケモンの命中率を2段階下げ、毎ターンの終わりに最大HPの8分の1のダメージを与える。
更に特殊な特性以外では天候を上書きできない。簡単に言えば〝おわりのだいち〟などの砂嵐版。
20022年、4月1日に配布予定。
配布後のランクマ使用率がどうなるのかが気になる。
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掲示板で明かされる衝撃の真実
1:名無しの転生者
イッチのバンギラスヤバかったな
2:名無しの転生者
ゲームで配布されるなら使ってみたい感はあるなぁ。ホウエン禁伝と同じ感じの天候操作なら、別に砂パに限らず色んな組み合わせできそうだし
3:名無しの転生者
相変わらず格闘には弱いのは呪いか。ゴーストタイプとの組み合わせをやったら読まれやすいし、アレさえなければ前世でもっと使ってたんだけどな。エースバーン強すぎるんよ
4:名無しの転生者
変幻自在とリベロは制作側の依怙贔屓と悪意を感じる
それで技範囲と素早さまでおかしいのはダメだろ
5;名無しの転生者
600族は強すぎるステータスの代わりに4倍弱点与えられてる感あるし、しゃーないべ。それでも対戦で使われてるし
6;名無しの転生者
なお、4倍弱点のないスパコンと、同じく4倍弱点のない環境トップ勢の霊竜がいる件について
7:名無しの転生者
おい止めろ。同じく4倍弱点のないヌメルゴンさんにその2匹の話題は辛すぎる
8:名無しの転生者
は? ヌメルゴンさんはアニメでサトシくんの手持ちとして活躍し、特性ぬめぬめでローションプレイが出来るんだが?
9:名無しの転生者
フォローになってねぇじゃねぇかwwwww
10:名無しの転生者
特防高いって言っても、結局砂バンギに負けてるんだよなぁ。どの特性も使いにくいし
11:名無しの転生者
校舎裏に行こうぜ。久々に切れちまったよ
12:名無しの転生者
なお、ここまで一切話題に触れられないジャラランガさんについてww
13:名無しの転生者
奴は名実ともに600族の恥だからな
14:名無しの転生者
火力が絶妙に足りない上に、剣盾でZ技を没収されてしまい、代わりに与えられたのは使いどころを選ぶソウルビート。耐久型600族を謳いながらも弱点だらけで、特に4倍弱点がフェアリーなのが対戦環境で致命的な上に速すぎる600族ドラゴンのドラパルトが台頭。そんなジャラランガさんに何が残っているのか……そう、何も残っていないのです
15:名無しの転生者
なんでや!? ジャラランガさんカッコええやろ!?
16:名無しの転生者
使用率圏外常連の上に、600族人気投票で8位のボーマンダに2倍以上の差を付けられてぶっちぎりの最下位だったけどな
17:名無しの転生者
対戦だけじゃなくて人気投票でも恥を晒しているのかwwwwww
18:名無しの転生者
ダイマ禁止ルールならイッチバンギラスはゲームになってもエースバーンに勝てる見込みあるけどな。エースバーンの格闘技って言ったら飛び膝だし
19:名無しの転生者
砂展開すると同時に特防二倍にして相手の命中下げるってなんやねん……実はイッチがロケット団の一員で、ヤバい改造を手持ちに施してるって言われても疑わないぞ
20:名無しの転生者
不正なチートを使っている予感がひしひし伝わりますねぇ
21:名無しの転生者
まぁ転生先のリアルな事情なんて、実際に転生してみないことには分からないしな。イッチの言う通り、バトル関連の自由度は俺らが思うよりも高いと思うぞ
22:名無しのポケモンマスター
ただいま戻りました
23:名無しの転生者
お、イッチじゃないか。おっすおっす
24:名無しの転生者
前回のレスからしばらく見かけなかったけど、レインボーロケット団対策はどうなったんだ?
25:名無しのポケモンマスター
とりあえず、前回皆さんからアドバイスしてもらったとおり、適当な理由を付けてNの素性を調べてもらってるところですかね。それ以外は相変わらず対処的な方針……レインボーロケット団を探して見つけてとっちめるって感じです。今のところ複数の犯罪組織が合併しているだけで、これと言った活動をしていないから、こっちも手をこまねいてるんですよ……
26:名無しの転生者
いざ行動に移されないと動けないパターンか
27:名無しの転生者
早速Nを味方につけるために動き出したか。感心感心
28:名無しの転生者
ポケモンシリーズには色んな悪役が出てくるけど、主人公の味方になりそうなのはNだけだしな。敵を寝返らせるのは戦略的にかなり有効だし
29:名無しの転生者
結局のところ、ゲーチスに良いように言いくるめられてるからポケモンの解放とか言ってるだけだし、上手くやればNをイッチ側に引き込める。実際、Nって強かったんじゃないの? 作中でチャンピオンに勝った唯一のトレーナーだし、仲間になれば心強い
30:名無しのポケモンマスター
原作通りの境遇かどうかは分かりませんから、味方に引き込めるかどうかは完全に未知数ですけどねー。ちなみにNは普通にポケモンバトル強かったです
先生曰く、Nはマジでポケモンと会話できるんじゃないかってくらいに意思疎通が図れてるとか何とか
31:名無しの転生者
あぁ、キクコか
32:名無しの転生者
金銀時代じゃ既に引退しててアニメでもほとんど出番ないから四天王の中じゃ影が薄い方だけど、駆け出し時代のイッチにポケモンバトル教えてくれたんだっけ?
33:名無しの転生者
そう言えば何年か前にそんなこと言ってたなぁ
34:名無しの転生者
何だったらイッチのヤバい育成に一枚噛んでる疑惑あるよな。流石は四天王ってところか
35:名無しの転生者
そう言えば詳しく聞いてなかったけど、イッチってなんでリーグに挑戦したん? チャンピオンなんて危ない仕事に就きたくなかったら、挑戦とかしなかったら良かったんじゃね?
36:名無しの転生者
確かに。そこんとこどうなんだイッチ
37:名無しのポケモンマスター
ふっ……私だってね、チャンピオンがハードで危険な仕事だなんて知ってたらリーグになんて挑戦しませんでしたよ。チャンピオンになったら富と名声の代わりに協会所属のトレーナーとしてポケモン犯罪を解決しなきゃいけないとか、本当にやってらんないです。
38:名無しの転生者
うん? ってことは、イッチはチャンピオンの仕事がどんなとか知らなかったのか?
39:名無しのポケモンマスター
知りませんでしたよ(´・ω・`)。と言っても、周りじゃ知らなかったのは私だけみたいでしたけど。細かい内容はともかく、ポケモン犯罪の解決を義務付けられるっていうのはメディアで取り上げられてたから常識みたいなところがあったらしいんですけどね……私自身は新聞やテレビを殆ど見ない上に、リーグ事態に興味がなかったから。こんなことならちゃんとメディアに触れておくんだった……!
39:名無しの転生者
後の祭りって奴か……そういう事ってよくあるよなぁ
40:名無しの転生者
前世でも特に内容も読まずに契約書交わして痛い目見る奴もいるし
41:名無しのポケモンマスター
私自身、先生に成長を見てもらいたくて参加したところがありますけど、それなら別にリーグじゃなくても良かったですよ……。チャンピオンとしての責務の内容を知ったのはリーグ制覇直後で、取り返しがつかなくなる前に辞退しようかと思ったんですけど、新しいチャンピオンの登場に大勢の観客が湧きたつリーグ会場のど真ん中で、信頼してると言わんばかりの目をした先生に「世界の平和を頼むよ」なんて言われたもんだから辞退するタイミングを完全に逃しちゃって……先生も歳の上に怪我してたから、早く引退したかっただろうし
42:名無しの転生者
ノーとは言えない日本人wwww
43:名無しの転生者
分かる……俺も同じ状況だったら、チャンピオンの座を放り出すとかできんわ
44:名無しの転生者
社会で生きてたら責任とか期待とか色々あるからなぁ。好き勝手に振舞う主人公とか存在せぇへんかったんや……
45:名無しのポケモンマスター
しかも先生、協会のお偉いさんに私の事をなんて紹介したのか、私の与り知らぬところで、私はポケモン博愛主義で、ポケモンを虐げる悪を許さない正義の人みたいな印象持たれてる節があるんですよ!
もう掲示板だからぶっちゃけますけど、私って自分の手持ちさえよければ、他の見ず知らずのポケモンとかどうでも良いんですよ!
46:名無しの転生者
マジでぶっちゃけるやんけイッチwwww
47:名無しのポケモンマスター
そりゃあポケモンにだって人間と同じく意思がありますからそこらへんは尊重しますけど、私は別に聖人君子って訳じゃないですからね!? なのに気が付けば、私は実力・人格共にチャンピオンに相応しいとか過大評価する人がいてすっごく居た堪れないし! くそぅっ! せめてリーグ会場のど真ん中じゃなければ全力で断ってたのに!
あぁ、本気でチャンピオン辞めたい……! 誰か私に敗北を教えてくれ
48:名無しの転生者
頑張れイッチ。レインボーロケット団さえ倒しちまえば、後はイージーモードの人生だ
49:名無しの転生者
なお、ガラル地方でも特大トラブルの種が眠ってる模様
50:名無しの転生者
イッチの事だからまた首突っ込みそうだよなwwww
51:名無しのポケモンマスター
笑えない冗談はよしてくださいよ……他の地方に行く機会が多いから、本当に巻き込まれるかもしれないんですけど
52:ゲスの転生者
良い事を思いついたぞぞイッチ。転生特典のビジュアルとロリボディを活用してシリーズの悪役を相手に枕営業すると言うのはどうだ? どうせあくどいことしてる大人なんて裏じゃ若い女子相手に色々やってるだろうから、イッチロリボディなら喜んで買ってくれると思う
53:名無しの転生者
ゲスニキ!?
54:名無しの転生者
ちょっと時空を切り裂く魔法の開発をしてきます
55:名無しの転生者
待っててイッチ! 今世界線の壁を破壊してるところだから!
56:名無しの転生者
やらせるか! 美幼女に踏んでもらうのは俺だけで十分なんだよ!
57:名無しの転生者
銀髪ロリっ子に「ざぁこ♡ ざぁこ♡」と煽ってもらいたいだけの人生を完遂しに逝ってきます
58:名無しの転生者
色んな異世界でチートやってるロリコン共が一斉に騒ぎ出してダイソウゲンwwww
59:名無しのポケモンマスター
やるわけないでしょそんなこと! ロリコン共も騒がない! ゲスニキの適当な冗談だって分かるでしょ!?
後ゲスニキ、次に神様の元で再会した時は覚えていてください。私の発育を侮辱したことを後悔させますから
60:名無しの転生者
ははは、勿論じゃないかイッチ(……ちっ)
61:名無しの転生者
俺たちは本気と冗談の区別がつく男だからな(あともうちょっとだったのに……チッ)
62:名無しの転生者
YESロリータNOタッチを信条としている紳士だぞ俺たちは(ちょっとくらいいいじゃないか……ちっ)
63:名無しのポケモンマスター
ヤバいこいつら……9割方は本気だった……!
64:名無しの転生者
転生者のロリコン率の高さよwwww
65:名無しのポケモンマスター
本気で勘弁してくださいよ……チート技の「かわせ!」も通用しないリアルポケモン世界で、転生特典持ち相手に貞操を守れる気もしないんですから……
66:名無しの転生者
…………うん?
65:名無しの転生者
イッチ……今、なんて言った?
66:名無しの転生者
嘘だろイッチ……アニポケ伝統の「かわせ!」って、リアルじゃ無いの?
67:名無しのポケモンマスター
いや、正確にはあると言えばありますよ。アマチュアトレーナーとか、プロでも大半のトレーナーが「かわせ!」とか叫んでますし。でもアニメほどチートっぷりはないと思いますし、むしろ実力のあるポケモンとのバトルで「かわせ!」なんて指示を出したら、それは被弾フラグですよ
68:名無しの転生者
何……だと!?
69:名無しの転生者
アニポケの神器、とりあえず言っておけば何とかなるチート技、かわせパイセンが使えない子だった……だと!?
70:名無しのポケモンマスター
ポケモンは人間の言葉を完全に理解することが出来て、ある程度の実力……四天王レベルのポケモンとなると、相手トレーナーの指示に合わせて、自立して行動しますからね。「かわせ!」とか指示されて回避行動をとろうとしたポケモンの回避先を読んで追撃を当てるなんて、普通にやってきますよ
71:名無しの転生者
マジかよ……リアルポケモンバトルってそんな高度な駆け引き要求されんの?
72:名無しのポケモンマスター
トレーナーの機転よりも、バトル前から如何に得意な戦法と作戦を編み出せるか、ポケモンにどれだけの実戦経験を積ませるかが肝になる世界ですねー。
あとアニメじゃ「かわせ!」の他にも「回り込んで○○」とか「最大パワーで○○」とかやたらと細かい指示を矢継ぎ早に出す描写がありましたけど、あれもリアルでやったらダメな奴です
73:名無しの転生者
マジで!? 俺、ポケモン世界に転生したらそんな感じで指示出せばいいもんだと思ってたんだけど!?
74:名無しのポケモンマスター
私も先生に教わるまで気付けなかったんですけど、ポケモンは独立した意思を持つ生き物で、それぞれの判断というのがあります。
相手ポケモンによる攻撃への対処の仕方1つとって見ても、避けるか防御するか相殺するか、色んなパターンをポケモンたちは考えて判断を下す訳です。なのにトレーナーがいちいち事細かく指示を出すと、ポケモン自身の判断とトレーナーの指示の間で板挟み状態になって思考と一緒に動きまで硬直することが、アマチュア大会じゃ良くあるんです
そもそも外野にいるトレーナーと実際に戦ってるポケモンとじゃ見えているものが違うから、安易な指示は自分の首を絞めますね。口頭で長い指示を出しても状況的に間に合わないこともありますし
75:名無しのポケモンマスター
実際、とある短パン小僧のイシツブテとウチのバンギラス(当時はまだヨーギラスだった)がバトルした時、ヨーギラスの攻撃に対して両腕を駆使して受け止めようとしていたイシツブテに対し、短パン小僧が「かわせかわせかわせかわせぇええええ!」とか指示して、イシツブテが「えぇっ!?」って顔でトレーナーに振り返った瞬間、ヨーギラスの攻撃がモロに入ったことありますし
76:名無しの転生者
その場面想像したらグラスフィールド生えたwwwwwww
77:名無しの転生者
アニポケのトレーナーとか、イッチから見れば全員アマチュアクラスだったのか……というか、リアルポケモンバトルが難しすぎ……?
78;名無しの転生者
少なくとも、トレーナーが指示を出す時は慎重に、的確な指示を出さないとダメなんだな。アニポケとは全然違ってて驚いた
79:名無しの転生者
嘘だ……かわせパイセンが、いらない子だったなんて……!
80:名無しの転生者
……………………イッチ、まさかとは思うが一応聞いておくぞ……?
スーパーマサラ人も……リアルじゃいないのか……?
81:名無しの転生者
っ!?(ガタッ)
82:名無しの転生者
な、なにをバカなことを!? お前たちはサトシ君伝説を知らないのか!? ピカ様の10万ボルトやリザードンの火炎放射を浴びて気合を入れる耐久力と、10歳にして重量級ポケモンを平然と持ち上げる膂力とを併せ持つ超人を!
83:名無しの転生者
スーパーマサラ人は実在する! それは確実だ! そうだろう!? イッチ!
84:名無しの転生者
こいつらにとってスーパーマサラ人ってなんなのwwwww
85:名無しの転生者
なぜレスを返さないんだイッチ!? 何とか言ってくれ! スーパーマサラ人は居るんだろ!? なぁ!?
86;名無しのポケモンマスター
…………本当は、皆さん気が付いてるんじゃないですか?
視聴者が揚げ足を取るのも同然にネタにしていたというだけだったということに。
今後、ポケモン世界にマサラ人として転生する皆様が過剰な筋トレによって人生を費やさないために、敢えて本当のことを言わせてもらいます
87:名無しの転生者
嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁあああああ!!
88:名無しの転生者
止めろイッチ……! 止めてくれぇえええええええええええええええ!!
89:名無しのポケモンマスター
スーパーマサラ人の正体は…………単なるアニメ補正、またはギャグ補正です
90:名無しの転生者
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!
91:名無しの転生者
てんせいしゃは めのまえが まっくらになった
92:名無しの転生者
だよなwww
93:名無しの転生者
知ってたwww
ハーメルンのポケモン小説投稿者や読者様たちはスーパーマサラ人の実在を信じてる節があるので、《絶望の魔王》ことタチバナさんが現実という名の絶望を叩き込んでみた話
ちなみに転生者たちから見たスーパーマサラ人は、小学生にとってのサンタさん的なアレです
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傍から見たロリチャンピオン(シロナ編・前編)
『さぁ始まってまいりました! 本日はここ、イッシュ地方のホドモエシティで開催された一大バトル大会、チャンピオンズトーナメント! 世界各地から最強の称号、リーグチャンピオンが結集し、遂にその雌雄を決しようというのです!』
イッシュ地方、ホドモエシティの南に建設されたバトル施設。そこには世界中から観客やトレーナーたちが隙間も出来ないほどに集まり、これから始まる戦いの一部始終を見ようと熱気を放っていた。
おそらく人類史でも五本の指に入るほどの盛り上がりを見せるこの大会の名は、チャンピオンズトーナメント。世界中のファンが長年に渡って熱望してきた要望に応え、世界各地のポケモンリーグの頂点に立つ最強トレーナーたちが集まり、真の意味での最強を決めようという、ポケモン協会企画の一大決戦である。
ある者はチャンピオンたちの戦いを己の糧にしようとし、またある者は純粋なファンとして応援に駆け付け、またある者はチャンピオン打倒のための偵察の為と理由は様々だろうが……まず間違いなく、この大会が見た者全ての記憶に残ることが間違いはないだろう。
そんな世紀の決戦の場に立つのはいずれも世界に名を轟かせる者たちばかりであり、実況席からの紹介と共にチャンピオンたちが1人ずつ舞台に上がるたびに、観客席からは爆発のような歓声が上がる。
ホウエンリーグチャンピオンにして大企業デボン・コーポレーションの御曹司。鋼使い、ツワブキ・ダイゴ。
古代と神話を追い求める考古学会のホープにしてシンオウリーグチャンピオン、シロナ。
今大会の最年長。過酷なポケモンリーグにあって、ギネス級の在籍記録を持つイッシュリーグチャンピオン、アデク。
芸術の都、カロス地方のリーグチャンピオンにして世界的大女優という、世の女性の憧れを一身に集めるカルネ。
10歳にしてリーグ制覇を果たし、それ以降の公式戦では無敗の記録を誇るガラルリーグチャンピオン、無敵のダンデ。
その他のチャンピオンたちも、ポケモンバトルという世界的興行を牽引してきた、頭に超が3つは付きそうな一流トレーナーばかり。リーグファンであるならば、誰もが一度は共演を夢見るスーパースターが一堂に会し、観客の興奮は最高潮に達するが、未だに真打が残っている。
『そして最後はこのお方! カントーとジョウトが誇る歌姫にしてポケモンリーグ総本山に君臨する覇者! 妖精の如き可憐さで戦場を舞う天才少女! 他地方の王者をも喰らい、最強の座へと君臨するのか!? セキエイリーグチャンピオン、タチバナァァァァァァアアアッ!!』
舞台装置から噴き出る花火とドライアイスと共に現れる、長い銀髪と湖畔のような碧眼が特徴的な、この世の者とは思えないほどに整った容姿をしている小さく、華奢な姿に会場は一瞬だけ静かになり…………そして、万雷のような歓声が上がる。
特にカントーとジョウトから来た観客からの歓声は凄まじいが、それはタチバナが地元を代表するチャンピオンであるからというだけが理由ではないということを、シロナは感づいていた。
(……彼女がセキエイリーグチャンピオン、タチバナ。こうして相まみえるのは、初めてね)
黒を基調としたパーティードレスに身を包んだ、どこか浮世離れしているチャンピオン・タチバナのメディアに対する露出は、他のチャンピオンと比べても圧倒的に少ない。
年に1度開催されるポケモンリーグの予選トーナメントでタチバナの元まで辿り着けないトレーナーばかりであるというのもそうなのだが、当の本人は関心がないのか、単に忙しいのか、テレビ出演のオファーなどを悉く断っているのだ。
それどころか、リーグ以外の公式戦でも出てくること自体が非常に稀で、このような企画でもなければ誰もタチバナとバトルが出来ないほどだ。
ネットに流れる映像も彼女の歌唱力と演奏力を活かしたものばかり(ちなみにシロナはよくタチバナの曲を聴いている)で、数多くのバトルファンはヤキモキしていたに違いない。
そんな謎に包まれた部分が多い異色のチャンピオンのバトルが見れるだけでもファンの盛り上がりは否応が無しに高まるだろう。中には余りの露出の少なさからタチバナのバトルの実力を疑う者も多くいるようだが……少なくとも、この舞台に上がったチャンピオンたちに、そのような油断を抱く者は1人もいない。
なぜならば、タチバナは全チャンピオンの中で最もポケモン犯罪の解決率が高いという、世間で公表されることのない記録の持ち主だからだ。
チャンピオンを始めとする、ポケモン協会所属のトレーナーにはポケモン犯罪の解決を義務付けられる。強いトレーナーが世間に味方するだけでも抑止力となるからだ。平和のため、強者としての義務の為、事件の際には解決のために積極的に動く者は多い。
そんなトレーナーたちの中にあって、タチバナの非公式の功績は全ての協会所属トレーナーの中でも頭1つ分は飛びぬけている。
仔細は不明だが国際警察すらも上回っている凄まじい情報網を有しているのか、はたまたそう言ったものに吸い寄せられる因果の持ち主なのか、密猟を主な活動とする数多くのポケモンハンターや、非合法なポケモン売買、ポケモン誘拐犯や虐待犯の摘発と逮捕を始めとし、カントーのロケット団、ホウエンのマグマ団・アクア団、カロスのフレア団……主に伝説のポケモンを狙って各地方で勢力を活発化させていた巨大組織を、チャンピオン就任からわずか2年足らずで壊滅に追いやっているのがタチバナだ。
シロナの管轄ともいえるシンオウ地方においても、協会や国際警察よりも先んじてリッシ湖を爆破しようとしていたギンガ団の野望を阻止し、これもまた壊滅へと追いやっている。
メディア受けはともかく、間違いなくバトルではない実戦では最高峰の実力の持ち主だ。それがルールありきのポケモンバトルでどれほどの力を発揮するかは未知数だが、間違いなく強敵であることに違いはない。
いずれにせよ、故郷で起こった事件を解決してくれたことへの感謝も含め、同じチャンピオンとして色々と話してみたい相手だ。
(……ただ、穏便な会話になるかは分からないけれど)
協会の上層部などからは悪の組織壊滅に大きく貢献しているからか、かなり好意的に扱われているが、その一方でタチバナとバトルをしたトレーナーの多くが引退に追い込まれているという、黒い噂もある。
実際、タチバナに挑んだ某有名トレーナーは、バトルの末に敗北し、トレーナーを引退することをSNSに投稿している。彼女に纏わる黒い噂に信憑性を持たせるには十分だった。
ポケモンバトルは勝ち負けよりも、いかに楽しむかどうか……それがシロナの価値観だ。見極めなくてはならない。もしもタチバナが未来ある若いトレーナーたちの夢と希望をポケモンバトルで砕き、楽しむ心を奪っているというのなら止めなければならない。チャンピオンとしてだけではなく、1人のポケモントレーナーとして。
『さぁこれよりトーナメント表を発表します! 皆様、スクリーンにご注目ください!!』
司会進行役の言葉に反応し、チャンピオンたちと観客が一斉に大型スクリーンに視線を向ける。そこには第1回戦の組み分けが左端に記されていた。
シロナVSタチバナ
思ったよりも早く彼女の真意を知ることが出来そうだ……シロナは戦意が滾る鋭い視線をタチバナに向けるのだった
=====
予選トーナメントの振り分けも終わり、いよいよ試合開始前となったわけだが、こういった大会ほど待ち時間やら余興やらが長い。呼び出されるまで手持無沙汰になったシロナは自販機からコーヒーを購入し、静かな場所で試合前の精神統一をしようと、人気のないバルコニーへと足を運んだのだが、そこには先客がいた。
「あら……?」
「…………あ」
シロナの対戦相手であるタチバナである。その手にはモーモーミルクの紙パックが握られていることから、彼女もここに一服しに来たのだろう。
「そっちも一服? お邪魔しちゃったなら他を当たりましょうか?」
「あ……いえ、大丈夫です……」
「そう。なら私もお邪魔しようかしら」
コーヒー缶のプルタブを開け、タチバナと並ぶようにバルコニーで風に当たる。横目で隣の様子を見てみると、タチバナもストローに口を付けているところで、両手で紙パックを持っている姿が幼く可憐な容姿と相まって、どこか微笑ましくて可愛らしい。
(それにしても……こうして並んで立ってみると、本当に小さいのね)
チャンピオン就任から3年が経ち、今は17歳と聞いているが、とてもそうには見えない。シロナ自身が女性としては長身であるというのもあるが、並んで立ってみるとまるで子供のような身長……少なくとも、トレーナーとして旅立つ10歳の平均を下回っているのは間違いないだろう。
正直、シロナも最初に写真を見た時は彼女の実年齢を信じられなかったものだ。
「遅くなってしまったけれど、貴女にはお礼が言いたかったの」
「……お礼、ですか?」
「ギンガ団の件。リッシ湖に爆弾を落とそうとした奴らを倒してくれたと聞いているわ。チャンピオンとして、シンオウに住む1人の人間として、心からお礼を言わせてほしい。本当にありがとう」
「あ……いえ、仕事の一環ですから……」
表情は変わらないが、少し顔を赤くして照れたように顔を背けるタチバナを見て、シロナは思わず笑ってしまう。
浮世離れしているように見えて、こういう普通の少女のような一面も併せ持っているのはかえって好感が持てた。初めて顔を見た時はどこか冷たく、とっつきにくい印象を与えられただけに、身近で見た時のタチバナのギャップも相まって余計にそう思える。
(特に悪い子には見えないけれど……だったらあの噂は何だったのかしら?)
噂の内容が真実であるとは限らないとは思うが、火の無いところで煙も立たない。いずれにせよ、タチバナに黒い噂が立つ何かがあるのは間違いないだろう。
研究者としての性か、気になることがあれば何事であっても知りたくなるシロナだが、こう言ったプライベートに関わりかねないことに関しては、流石にどういう風に詮索すればいいのか悩む。
(…………いえ、もういっそのことストレートに聞いてしまいましょう)
だがそんな悩みなどすぐに振り払った。元々遠回しに聞いて真相に辿り着いたり、僅かな機微も見逃さないほどの交友があるわけでもないのだ。そもそもこのようにウジウジと考えるのは自分の性分ではない。
「でも少し意外だったわ。色々と黒い噂のあるチャンピオンだと聞いてたから少し身構えていたのだけれど、結構穏やかそうな性格だったから」
「……黒い噂」
「心外かもしれないけれど、色んな情報ツールを通じてシンオウにまで伝わってるわよ。若いトレーナーを何人も再起不能にまで追いやっているって」
「…………」
タチバナは何も答えなかった。代わりに瞳に滲み出てくるのは、ほんの僅かな罪悪感の感情。
「その顔は、心当たりがありそうね」
「…………はい」
「なぜそのような事を? リーグチャンピオンなら、全てのトレーナーたちの憧れとして、彼らを導くような立ち振る舞いが求められるでしょうに」
噂が真実だと分かってしまい、シロナは沈痛な面持ちになるが、また結論を急ぐようなことはしない。落ち着いた口調で静かに問いかけると、タチバナは少しだけ逡巡してから、ゆっくりと口を開いた。
「……道を歩くだけで、私は多くのトレーナーたちに勝負を挑まれます。……どうやら私は、あまりチャンピオンとして認められていないようでして。そういったトレーナーほど、私と戦えば暗い顔をするんです」
「それは……」
それは仕方ないことかもしれない。メディアへの登場も少なく、実力を世間に示していないチャンピオンと聞けば、実力を疑い、邪推する者も多くいるだろう。
(特に彼女は見た目が幼過ぎる……チャンピオンとしての威厳が出しにくいのも無理はない)
だが実力も無く、協会に媚びを売るだけでなれるほどチャンピオンの座は安くない。それを知らない者たちが油断と慢心を抱きながらタチバナに挑み、そして心が折れるほどに打ち負かされる光景を想像するのは容易だった。
恐らく、この大会への出場はタチバナというトレーナーの実力を世間に示し、ポケモン犯罪への抑止力として完成させるために、協会が仕組んだことなのではないのか……シロナは半ば確信にも近い予想を抱いた。
「……煌びやかな印象とは裏腹に、チャンピオンはとても危険なことをしなくてはならないから。憧れだけでなってしまえば、きっと後悔するから……」
きっと生来、喋るのが苦手なのだろう……たどたどしいが、それでも必死に紡がれた、確かな実感が籠った言葉にシロナは何も言えなくなる。言葉少なさはあるが、タチバナの言ったことにはシロナ自身にも覚えがあったからだ。
「……だから、ただ闇雲に頂点を目指すだけの人に、簡単にチャンピオンの座を譲るわけにはいかないんです」
「貴女は……」
丁度その時、2人のスマホから音が鳴る。どちらも試合開始のための準備をしてほしいとの連絡だった。
不本意ながら、この会話だけで全てを知るには至らなかったが、それでもいい。後はバトルを通じて、彼女の真意を確かめよう。自分とは別の登場ゲートへと向かうタチバナの背中を見送ってから、シロナも歩み出したのだった。
=====
『さぁ観客の皆様お待ちかね! ついにチャンピオンズトーナメント第1回戦の始まりです! ルールは手持ちポケモン3匹まで。持ち物は自由、入れ替え禁止の変則勝ち抜き戦とさせていただきます!』
爆発的な歓声と司会進行役の声と共にシロナはバトルフィールドに向かって歩き出す。地面の装置から噴き出る花火と共に姿を現し、ドライアイスをかき分けながら進むと、そこにはすっかり馴染みがあり、それでいて今までにないほどの規模を誇る公式戦の空気が充満していた。
『東から現れたのは北の地が誇る才媛! 今宵はどんな華麗な戦いを私たちに魅せてくれるのか!? シンオウリーグチャンピオン・シロナァァァァ!!』
歓声を上げる観客たちに片手を上げながら笑顔で応え、シロナは自分が潜ってきたゲートとは真逆……西の登場ゲートを見やる。
『そして西から現れるのは《銀色の砂塵姫》! 未だ謎の多い実力、そのベールを遂に脱ぐ時が来たか!? セキエイリーグチャンピオン・タチバナァァァァ!!』
ポケモンバトルとは楽しむべきものであると同時に、相手への敬意と共に臨むべきもの。そのことを一般トレーナーの誰よりも理解しているシロナとタチバナ。相対する2人の王者は、バトルフィールドを挟み、真剣な顔でモンスターボールを構える。
『両者ともに若くしてポケモンリーグという1つの頂点を極めた美しい女性トレーナー! 彼女たちの戦いに、会場の期待は大いに盛り上がっております! …………それでは第1回戦、シロナVSタチバナ! バトル……スタートォオオオオオオオオオオオッ!!』
今月歯石取りに行ったら「お前の歯石ポリ2並みに硬ぇww」と言われて草。
というわけで次回はがっつりバトル回となっております。タチバナの強さの他にも、シロナの人の良さとかも描写できればと思っております。
そして本日、レジェンズアルセウスが遂に発売! 私は早速買ってきましたが、皆様は御三家は何を選びましたか?
私はヒノアラシ即決です。何故なら最終進化のビジュアルが一番期待できるから。
ゲームでポケモンやってる時も、性能よりもビジュアル重視しちゃうんですよね。化石ポケモンとかだとカセキメラとオムナイト以外を育てますし、エースバーンやゲッコウガを含めたガラル御三家やアローラ御三家、カロス御三家も一切育てませんし、シンオウ御三家ならドダイトス一択ですし。
他にも伝説ならビジュアルの好みから外れるザシアンは育てずにドストライクなルギアやギラティナ(オリジン)を育てたり、600族だとバンギラスとボーマンダとジャラランガとサザンドラと好みの外見をしたのだけ育てて、環境トップのドラパルト含む他の600族は見向きもしない。
やっぱりモンスター育成ゲームなんだから、見た目こそが一番重要だと思っちゃうんですよね。
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傍から見たロリチャンピオン(シロナ編・後編)
お気に入り登録5000突破……?
一体何が起こっているのが分かりませんでしたが、沢山の方からの応援があって嬉しい限りです!
原作キャラから見たチャンピオン・タチバナのお話は今後も投稿しようと思います。読者の皆様が気になる原作キャラとの絡み、出てきてほしい好きなポケモンがあれば、是非とも活動報告に設置したアンケートに答えていただければ幸いです
ボールを投げたのは同時。現れると同時に強烈な砂嵐をフィールド全体に吹かせつつ、戦場に降り立ったのはサンドパン。対してシロナが繰り出したポケモンは――――
『シロナ選手が繰り出したのはトゲキッス! そしてあの顔に付けているのは……〝ぼうじんゴーグル〟でしょうか? 砂嵐対策はバッチリのようです!』
ゴーグルを装着し、舞い上がる砂塵から目を保護しているトゲキッスが空中を旋回する。
タチバナのバトルの詳細は、同じチャンピオンにすら伝わっていない部分も多いが、彼女がその異名の通り砂嵐という天候を味方につける特性を持つポケモンを使うことは確かだ。
恐らく長期戦になるだろう……そうなった時、砂嵐によって徐々に体力を削られるのは見過ごせない。
(本当ならミカルゲやミロカロスで様子見を考えたけれど……それは余り得策とは言えないかもしれないしね)
そして砂嵐使いであるとは別に、タチバナのポケモンたちは攻撃的な戦法を取ることが多いとも聞く。下手に防御に回っては何もできないまま貫かれて倒されるかもしれない……それならば、こちらも攻めの姿勢は崩さない。攻撃を最大の防御として、飛行タイプ特有の強さを活かして翻弄しながら立ち向かう。
「さぁ、行きなさい! トゲキッス!」
シロナの声に応え、トゲキッスが上空へと舞い上がる。サンドパンの爪による攻撃も届かないほど、どこまでも高くに。
飛行タイプを始めとする、空中戦が可能なポケモンの最大の強みはバトルフィールドを三次元的に移動できるという点だ。ただそれだけで同じ土俵に立てないポケモンは攻撃を満足に当てることが出来ず、一方的に甚振られることも珍しくはない。
特に地面技を得意とするサンドパンにとって、これほどやりにくい相手は居ないだろう。まして特殊なルールで交代が出来ないとなれば猶更だ。
「〝ステルスロック〟」
しかし、それを打破してこそのリーグチャンピオンのポケモン……サンドパンは鋭く尖った無数の岩を空中に浮遊させた。
素早さを活かしたポケモンにとって、この手の障害物を大量に生み出す技は鬼門だ。それは空中戦を得意とするトゲキッスも例外ではなく、自分のフィールドである上空に無数の岩を設置されたことでその動きは制限されてしまう。飛行ポケモン対策としては正解の1つと言っていいだろう。
「でも、その程度で止まるほど私のトゲキッスは軟じゃないわよ!」
トゲキッスは臆することなく大量の岩が浮かぶ空間に突貫する。一見するとただの自殺行為にしか見えない所業だが、なんとトゲキッスは岩と岩の間を的確に縫うように潜り抜けていった。
『トゲキッス、華麗かつ鋭い動き! 〝ステルスロック〟による妨害をものともせず、サンドパンを攻撃の直線状に捉えたぁぁああ!』
技が岩に当たることもなく、それでいてサンドパンの攻撃も届かなさそうな絶妙な位置。更にそれだけではなく、〝かげぶんしん〟によって無数の虚像を生み出して判断に迷いを生じさせる。
分身による攪乱は恐らく数秒ほどしか持たないだろうが、それだけあれば十二分……トゲキッスは得意技、〝エアスラッシュ〟でサンドパンに先手を取ろうとしたが、それよりも先に違和感に気が付いたのはシロナだった。
(あのサンドパン……目を瞑っている……!?)
無数の分身の中から本物を見分けようとするどころか、敵前で目を瞑るなど自殺行為だ。並のトレーナーやポケモンなら絶好の好機とばかりに全身全霊の力を込めた一撃を叩き込もうとするだろう。
だがシロナもトゲキッスも並ではない。好機と感じるよりも警戒が先立ち、それは一気に悪寒と化した。
「トゲキッス、〝まもる〟!」
攻撃から反転し、トゲキッスが防御態勢を取るのとほぼ同時……凄まじい衝撃波がトゲキッスを吹き飛ばし、バトルフィールドを覆う安全用のシールドに叩き付けた。
今トゲキッスが使った技、〝まもる〟は連発は効かず、範囲も狭いながらも破壊不可能の強固な障壁を展開する技だ。故にトゲキッスは衝撃波の直撃を受けるのは免れたが、〝まもる〟を使ったポケモンを正面から吹き飛ばす威力の技など、ごく一部の例外を除けば見たことも聞いたこともない。直撃を受ければ大抵のポケモンは瀕死確定だ。
(なんだというの、今の技は……!? 今まで見たことが無い上に威力もさることながら、あれほどの技をノーモーションから死角である背後に向かって放つだなんて!)
無数の分身に紛れたトゲキッスはサンドパンの背後を取り、攻撃しようとしていた。だがあのサンドパンはトゲキッスの位置を正確に察知し、振り返ることもせずに背後に向かってノーモーションかつ不可視の攻撃をしたのだ。
そしてその威力も極めて強力……少なくとも、トゲキッスではどう足掻いても出すことが出来ない破壊力だ。
(……もしかして、砂? フィールドに舞う砂塵の流れから、トゲキッスの位置を正確に割り出した……?)
技の正体は不明だが、トゲキッスの位置を正確に割り出した方法にシロナは見当をつける。
所詮、〝かげぶんしん〟で生み出される分身は実体のない虚像だ。煙は素通りするし、雨を弾くこともない。故に分身と本体を見分ける方法はいくらでもあるのだが、あのサンドパンは砂嵐の僅かな気流の変化を察知して本体の位置を見分けたのだ。
まさに砂使いとはよく言ったものだ。この砂塵がフィールドを舞い続ける限り、目晦ましは通用しないと考えた方が良いだろう。
「トゲキッス! 再び上空へ!」
不可視の攻撃による衝撃で思考能力が阻害されたトゲキッスの状態を察知したシロナの指示でトゲキッスは再び上空へと舞い上がる。瀕死になっていないのなら何度でもチャンスを窺えばいい……そう思っての指示だったが、それだけでは足りなかった。
特性〝すなかき〟によって加速したサンドパンが、浮遊する岩を足場にして上空にいるトゲキッスを自身の間合いの内側に収めたのだ。
(しまった……! 最初の〝ステルスロック〟は動きを制限するのではなく、こっちが本命――――!)
判断ミスを悔いるよりも前にサンドパンが動き、毒を纏った十字斬りがトゲキッスの急所を裂いた。
「トゲキッス!?」
効果は抜群だ。辛うじて意識はあるが、このままでは地面に叩き付けられるだろうし、サンドパンは追撃を仕掛けようとしているのが分かる。恐らく、あの不可視の衝撃波でだ。
このままではトゲキッスは単なる犬死になってしまう……そうはさせるものかと、シロナは今出来うる最善の指示を飛ばした。
「〝はどうだん〟!」
ポケモンの波動に反応し、その軌道を自在に操ることが出来るエネルギー弾が放たれるのと、不可視の衝撃波が放たれたのは同時。トゲキッスは地面に減り込んで気絶し、衝撃波を迂回したエネルギー弾が空中で足場を失ったサンドパンに直撃してダメージを与える。
倒すには至らないが、防御が間に合わない絶妙なタイミングで一撃を入れてくれたトゲキッスに内心で感謝しつつボールに戻し、シロナは先ほどまでの攻防を思い返す。
(さっきサンドパンが見せた技……〝クロスポイズン〟? サンドパンがあの技を使うなんて、聞いたことが無いけれど……)
知的好奇心が豊かなシロナは、専門である考古学の他にもポケモンの生態に関する知識が深い。ポケモンの技を研究するククイ博士の論文には全て目を通したし、様々なポケモンの研究結果にも目を通してきたが、サンドパンが〝クロスポイズン〟を使うなどという研究結果があっただろうか……?
如何せん、リーグではマイナーなポケモンなので情報も少ない。シロナは頭を切り替え、次のポケモンを繰り出す。
「行きなさい、ガブリアス!」
自身の相棒にして最強のポケモンの登場に観客席から一斉に喝采が湧く。そんな余計な音には一切耳を貸さず、隙も無く構えるサンドパンを睨むガブリアスが、シロナには何時にも増して頼もしく映った。
『ここでチャンピオン・シロナの相棒、ガブリアスの登場だぁあああ! これまで打ち破ってきた挑戦者は数知れず! まさにエースと呼ぶに相応しい貫禄です!』
……だが、トゲキッスをほぼ一方的に倒し、余力も残しているあのサンドパンは尋常な個体ではない。ガブリアスであっても、何の代償もなく倒せるような甘い相手ではないだろう。
(ならば温存はしない、最初から全力で挑むのみ!)
シロナのブレスレットに嵌め込まれていたキーストーンが放つ光と反応し、ガブリアスはその姿を変える。
体格はより優れ、両腕は極めて攻撃的な形状をした鎌へと変化し、ステータスが大幅に上昇した姿……メガガブリアスへの限定的な進化だ。
「〝りゅうせいぐん〟!」
ガブリアスはメガシンカすることで特攻も大幅に上昇するポケモン。そこから放たれる攻撃は決して無視できるものではない。
加えて、敵に向かって無数の隕石を振らせるドラゴン技の秘技。攻撃範囲はもちろんのこと、威力もまた尋常ではないのだ。あのサンドパンは必ず繰り出すはず。
『何という技だ! メガガブリアス、無数の隕石を振らせますが…………それら全てを打ち砕いたサンドパン! 一体何をしたのでしょう!? 私の目には、何か見えない攻撃で相殺したように見えますが……!?』
迎撃の技である、不可視の衝撃波を。
そしてその僅かな隙を、メガガブリアスは見逃さない。強力なエネルギーを推進力にして体当たりをする技、〝ドラゴンダイブ〟によって加速と攻撃を両立させながら一気に間合いを詰める。
それに対してサンドパンは両爪を盾にして受け止めるが、そこで止まらないのがシロナのエースポケモン。直撃は防がれたものの、メガガブリアスは姿勢を低くしながら両腕の鎌でサンドパンの体を拘束。そのままかち上げるように、サンドパンを遥か上空へと連れ去った。
(……〝すなかき〟でサンドパンのスピードはガブリアスを超えている。長期戦はかえって危険……だったらダメージを覚悟で速攻に倒す!)
そしてサンドパンを下敷きにする形で上空から急速落下……重力による加速を加えた、〝ドラゴンダイブ〟最大パワーだ。
これをまともに食らって耐えられるポケモンはそうは居ない。特攻を犠牲にし、〝りゅうせいぐん〟を囮にしたこの一撃でサンドパンを沈めようとしたメガガブリアスだったが……突如叩き込まれる衝撃に意識が飛んだ。
「ガブリアス!! お願い、耐えて!」
ノーモーションで衝撃波を放つ以上、こうなることも織り込み済みだった。故にサンドパンの一撃を最低1回は耐えなくてはならない……まさにここが勝敗を分ける分水嶺だ。
とても種族としての力で劣るポケモンが放ったとは思えない一撃に意識が飛び、サンドパンを拘束する両腕の力が緩みそうになったメガガブリアスだったが……その脳裏に仲間のポケモンたちと、シロナの姿が浮かび上がる。
自分はチャンピオンの手持ちポケモン、その柱なのだ。ここでむざむざと敗北し二枚抜きされる絶望は、チーム全体に波及するだろう……メガガブリアスは牙を食いしばって無理矢理意識を覚醒させ、全身から更なるエネルギーを噴出し……サンドパンを地面に叩きつけた。
そしてそこで油断はしない。追撃として、相手の砂嵐を逆手に取った特性〝すなのちから〟で強化された〝じしん〟を叩き込む。
『き、決まったぁ~~~~~! メガガブリアスの強烈無比な猛攻がサンドパンに直撃! バトルフィールド全体が砕け散ったぁあああああ!』
まさに爆心地と表現するに相応しい破壊の中心部から砂煙を突き破ってメガガブリアスがシロナの目の前まで跳躍し、その膝を地面に付ける。
(なんてダメージ……! まさかメガシンカを含め、サンドパン1匹に半壊させられるとは……!)
もはや気力で持ちこたえている状態のメガガブリアスを見て、シロナは苦虫を噛んだような表情を浮かべる。
ボールから放たれるリターンレーザーの光が見えたことから何とかサンドパンは倒せたようだが、まさかたったの一撃でメガガブリアスをここまで追い込むとは……シロナはまだ見ぬ2匹のポケモンを考えて頭を抱えそうになる。
しかし現実は待ってくれはしない。少しのスタミナも回復させないと言わんばかりにタチバナが繰り出してきたのはバンギラスだった。
(この威圧感……! 見ただけで分かる……あのポケモンこそがタチバナのエースであると……! そして……)
シロナはタチバナの首から下がるネックレス、その装飾台に嵌め込まれたキーストーンを見逃さない。
キーストーンから放たれる強い光はバンギラスと結びつき……体内で渦巻く膨大なエネルギーで背中が裂け、一本の長い角が聳え立つ。
バンギラスがメガシンカした姿……、メガバンギラス。その出現と共に、フィールドの砂嵐がさらに激しく吹き荒ぶ。
『さ、先ほどまでとは比較にならない凄い砂嵐です! チャンピオン・タチバナが繰り出したバンギラスがメガシンカした瞬間、実況が困難なほどの砂嵐が……!』
もはやトレーナー側からはフィールドの全容を視認するのが難しいほどの砂嵐。これが噂に聞く、タチバナの特殊な力を持つバンギラスかと、シロナは冷や汗をかく。
だがタイプの相性だけならメガガブリアスの方が有利。それを知らずに出してきたとは思えないが、まだ勝機があるはずだ……そう思ったシロナだったが、遠くに離れたメガバンギラスが拳を引いた瞬間、背中に氷柱でも差し込まれたかのような悪寒に襲われた。
「いけない! ガブリアス、避けなさい!」
アマチュアトレーナーのような指示を出してしまったシロナだったが、今回はそれが功を奏することをすぐに思い知ることとなる。
メガバンギラスが何もない空間に向かって拳を突き出した、その瞬間。絶大な冷気を伴う衝撃波がメガガブリアスに向かって真っすぐに放たれたのだ。
瀕死寸前の体で何とか攻撃の範囲内から逃れるメガガブリアスだったが、フィールドは先ほどまでとは一転。大量の砂が混じる大量の氷が散乱していた。
「な、なんなの……これは……!?」
先ほどのサンドパンの時も思ったが、このような技は知らない。チャンピオンとして数多くのポケモンと戦ってきたシロナも……この大会をテレビ越しに観戦していた、ポケモン研究者たちも、メガバンギラスが何をしたのか理解できなかった。
ただ分かるのはサンドパンと同じく見えない衝撃波を放ったことと、その衝撃波に氷の力を付与していたという事だ。
(まさか、技と技を組み合わせたとでもいうの……!?)
今思えば、サンドパンが〝クロスポイズン〟を使った時も違和感があったが、あれも複数の技……〝シザークロス〟と〝どくどく〟を組み合わせたものなのだとしたら……そう思ったシロナだったが、すぐに頭の中で否定する。
2つの技を同時に使い、複合する。言うだけなら簡単だが、ポケモンは技を1つ使うのにもかなりの集中力を必要とする。タチバナのポケモンがしたようなことをするなど、脳が2つはないとできない芸当なのだ。
(でも現実として実際にやっている……! そんな、これまでのポケモンバトルの常識を覆すようなことが、可能だというの……!?)
そう思っている間にも、メガバンギラスは再び拳を引く。……その動作を見た時、シロナは希望的ではあるがある推測を思い至る。
似たような攻撃をする2匹だが、サンドパンと違い、メガバンギラスは手を起点とした一定の動作が無ければ不可視の衝撃波は放てないのではないか……もしそうならまだ回避の余地はある。実際に初見の状態でもギリギリ対処できたのだから。
そう考えてメガガブリアスに指示を出そうとしたシロナだったが……メガガブリアスは先ほどよりも明らかに悪い顔色で両手と両膝を地面に付けてしまった。
「ガブリアス!?」
そのまま無慈悲に冷気を纏う衝撃波の直撃を喰らい、メガシンカが解除されたガブリアスが瀕死に追いやられる。
一体どうして……そう思ったシロナは、ガブリアスの首筋に刺さった、一本の針を見つけた。
「まさかサンドパン!? 倒される直前、〝どくばり〟を打ち込んでいたというの!?」
とんでもない練度だ。自分が倒される瀬戸際に、後続が有利になれるように毒を仕込むポケモンを育てるトレーナーなどそうそう居るものではない。
技も力も格上の敵を久しぶりに見た……瀬戸際に追い込まれたシロナはガブリアスをボールに戻し、最後のポケモンを繰り出す。全身を強固な鱗で覆った格闘ポケモン、ジャラランガである。
詳細不明な氷の技を使ってくるものの、バンギラスにとって格闘タイプは天敵中の天敵。更にこのジャラランガの特性は〝ぼうじん〟であり、普通ならまともに戦うことが出来ないであろう強烈な砂嵐の中でも戦えるだろうと、シロナが対タチバナ専用に連れてきたポケモンである。
「そしてこの子はあなたのバンギラスとの戦いを想定した切り札でもある! ジャラランガ、〝ブレイジングソウルビート〟!」
キーストーンが嵌め込まれた腕輪が装着されたのとは逆の腕の手首、そこに装着されたZクリスタルが光り輝き、ジャラランガを中心とした破壊的な音波攻撃がバトルフィールド全体に響き渡る。
この砂嵐下、岩タイプであるバンギラスをそれだけで倒すことは出来ないだろう。だがシロナがアローラ地方を旅し、その地に伝わるこのZ技の真骨頂は、攻撃をしながらジャラランガの全能力を底上げすることにある。
これでメガシンカポケモンすらも圧倒しうる能力を得たジャラランガは、ほぼ無傷の状態のメガバンギラスに向かって防御を捨てた超近接攻撃、〝インファイト〟を繰り出す。
反撃も許さない怒涛の連撃によって4倍の弱点を取れるメガバンギラスを一気呵成に倒し、残りの1匹もそのまま倒してしまおう……そう思っていたシロナだったが、砂嵐の向こうにうっすらと見える光景に、愕然とする。
「嘘でしょう……!? 格闘タイプの攻撃を、同じ近接戦闘で凌いでいる……!?」
ジャラランガが放つ打撃の雨を、メガバンギラスは冷気を放つ拳で1つ1つ的確に撃ち落とし、逸らしているのだ。
メガガブリアスの時に見せた剛撃とは一転して、風のごとく柔らかな動き……その戦い方は、もはや膂力と耐久を武器とする、鈍重な大型ポケモンのそれではない。
(あの近接戦闘のテクニックは軽量級の格闘タイプのそれに匹敵している……一体どんな育て方をすればあのようなバンギラスが――――!?)
もはやマシンガンの撃ち合いにも見える打撃の応酬だったが、その均衡が見る見る内にメガバンギラスの方へと傾いていき、シロナは今度こそ言葉を失った。
始めの内はジャラランガの攻撃を凌いでいただけだったのに、気が付けばジャラランガに攻撃をするだけの余裕を見せつけ始めている……恐るべきことに、メガバンギラスのパワーとスピードが、ジャラランガを圧倒するほどに上がっていっているのだ。
話は少し変わるが、〝りゅうのまい〟や〝ちょうのまい〟といった、ボールに戻さなければ半永久的に自身の能力を上げる技は、効果の強力さとは裏腹に使用するトレーナーは少ない。
理由は単純。普通の攻撃技と比べても高い集中力が必要かつ、特定の動作をする必要があり、敵の前で悠長に使える技ではないからだ。それこそ、ジャラランガのように全方位への強力な攻撃と両立する特殊な技でもない限りは。
だがタチバナのポケモンは違う。使い難い技という先入観を排し、編み出したのだ。攻撃、回避、移動、防御といった戦闘中の動きの中に、自身の能力を引き上げる舞を組み込む技を。踊りの中に技の秘奥を隠した格闘家のように、戦いと舞踏が一体と化した戦舞とでも呼ぶべき体捌きを……!
「……そして、〝わるだくみ〟も終わりです」
ボッ! という音速の壁を突き破る音を置き去りにし、冷気を纏う強烈なボディーブローがジャラランガの腹に突き刺さり、そのまま上空へとかち上げる。
そして上空で逃げ場を失ったジャラランガに対し、口から放たれた強烈な冷凍光線が直撃。冷気を苦手とするドラゴンタイプのポケモンは、全身を氷漬けされてそのまま地面に落下した。
『しょ、勝者セキエイリーグチャンピオン・タチバナァァァ!! これがポケモンリーグ総本山を預かる王者の実力なのか!? 3匹目を見せることなく、シロナを圧倒しましたああああ!!』
お互いのポケモンをボールに戻し、響き渡る歓声の中で二人のチャンピオンは互いの健闘を称え、手を握り合う。
完敗だった。理不尽に感じる気持ちが一周回って、むしろ清々しいまでに。……それでも、シロナの中に恨み節はなかった。タチバナとそのポケモンたちは革新的な戦い方を以てして、見事自分を下して見せたのだ。
まだ少女と呼ぶべき年の頃にはシンオウリーグに君臨し、それ以降は無敵の戦績を誇っていたが、今宵タチバナには更なる上のステージを見せてもらった。
悔しさは勿論ある。自分の愛するポケモンたちが殆ど何も出来ずに敗れていったこと、それはトレーナーとして不甲斐ないばかりだ。だがそれ以上に、自分たちにもまだまだ強くなる余地があるのだと、教えられた。
(それに……私の心配は杞憂だったようだしね)
タチバナは試合前に言った……生半可な気持ちだけでチャンピオンを夢見る者に、頂点の座は渡せないのだと。
一見平和なこの世には理不尽が渦巻いている。正しく生きようとしている者たちを狙ったポケモン犯罪は絶えることなく、10歳で冒険に出た頃に抱いていたはずの夢と希望の世界は、力ある者が戦わなければ守れない、夢幻に等しいものだったとシロナも思い知らされた。
自分の好きな世界、そこに住まう人やポケモンを守りたい……そう思って邁進し、チャンピオンになったことにシロナは後悔はない。それはきっと、他のチャンピオンたちも同じだろう。
だが、何の覚悟もなく社会の裏に渦巻く闇に直面することとなる少年少女たちはどうだろうか? 外見だけで相手を侮り、慢心してチャンピオンに挑むようなトレーナーが、たとえ実力があったとしても、血と陰謀に塗れた裏世界で戦い続けられるだろうか?
否だ。未来のことを決め付けるのは趣味ではないが、シロナ自身だって精神的に未熟なトレーナーに犯罪抑止力であるチャンピオンの座は任せられないと思う。
きっとタチバナは、篩にかけるつもりで挑戦を受けたのだろう。ポケモン犯罪者との戦いはルール無用の理不尽さが付きまとう……いくら声高に叫んでも、卑劣と呼ぶべき手段を厭わない者たちは大勢いるのだ。それこそ、ポケモンや人を人質にし、時に殺してしまうような悪が。
(そんな者たちと戦い続ければ、心の未熟さが目立つトレーナーはいつか心を病んでしまう。それこそ、バトルで大敗することで自信を失うよりも深刻なレベル……人間不信や、ポケモン恐怖症に陥るレベルに。そうなってしまえば本格的に社会復帰が出来なくなる)
夢だけでなく、守るための戦いを覚悟したシロナでさえも身に覚えがあるのだ。生半可な覚悟もなくチャンピオンの座は譲れないというのは理解できる。
だからこそ、タチバナはチャンピオンを目指す者たちを夢を砕いてきた。各地方で巨大な組織が一斉に結成されるほどの悪の最盛期、そんな時代に生まれた王者の宿命として、その小さな体に悪の矛先を一身に集めているのだ。
トレーナーたちに、本当の意味での絶望を与えないために。あえて仮初の絶望を与えることで、子供たちを世界の闇から遠ざけるために。ただバトルで酷い負け方をしただけで立ち上がれない弱者を守るために。
彼女のポケモンたちも、そんな親の覚悟を共にすると腹に決めているのだろう。ポケモンは純粋な分、トレーナーの精神の影響を直に受ける。
倒される間際に毒を打ち込む精神力を持つサンドパンと、想像を絶するような鍛錬で理不尽なまでの力を身に付けたバンギラスは、真っ直ぐにトレーナーを慕う眼をしていた。だからこそ、バトルをすればタチバナの言葉に嘘はないのだと分かる。
もしも彼女を代わる者がいるのだとすれば、それはタチバナが与えた絶望を乗り越えた、心身ともに磨き抜かれたトレーナーだけなのだろう。そういった意味でも、彼女は自分に挑む者たちを篩にかけてきたのかもしれない。
(……でもこれは、違う意味で放っておけないわね)
何という不器用な優しさだろうか。タチバナにそうさせているのは、彼女と比べて自分たち大人の不甲斐なさゆえだろう。
強くならなければならないと、シロナは思った。今よりももっと強くなって、この小さなチャンピオンが背負う重責を分かち合う、そんなチャンピオンになろうとシロナは思いを新たにするのであった。
他のチャンピオンの強さは、メガシンカ込みならバンギラス以外のポケモンを倒せるくらいに強くしておきました
今回のバトル回は寝落ちとの戦いでした。仕事とか書籍化活動とか色んなことをやってる合間の息抜きで執筆してるんですけど、それでもなお眠くて眠くて投稿が遅れてしまい、読者の皆様には心よりお詫びしたい。
なんかこう、眠気を一発で吹き飛ばすような運動とか無いものですかね? 腕立て伏せとかスクワットをしたら眠気飛びます?
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ネットで叩かれるのは割と本気で辛い
旧来の設定や元の9話を気に入ってくれた読者の方には大変申し訳ありませんが、あそこまで言われると作者も我慢ならないものがあったので、どうかご了承いただけますよう、お願いいたします。
よろしければ第1話から軽く中身を確認してくだされば幸いです
原作キャラから見たチャンピオン・タチバナのお話は今後も投稿しようと思います。読者の皆様が気になる原作キャラとの絡み、出てきてほしい好きなポケモンがあれば、是非とも活動報告に設置したアンケートに答えていただければ幸いです
1:名無しの転生者
何故だ……なぜスーパーマサラ人がいないんだ……
2:名無しの転生者
嘘だ……こんなのって、嘘だよ……
3:名無しの転生者
お前らどんだけ引きずってんだよww
4:名無しの転生者
たかがアニメ補正に夢見過ぎててナゾノクサ
5:名無しの転生者
だってさぁ! アニメで10万ボルト喰らってたりヨーギラス簡単に持ち上げたりしてたら、サトシ君は超人だって思うじゃん! マサラ人は戦闘民族だって勘違いするじゃん!
6:名無しのポケモンマスター
まぁ昔から超越生物であるポケモンと共存していただけあって、この世界の人間が地球人よりかは強いのは確かですよ? 私でもお米15キロは持ち運べますし、10万ボルトの直撃を受けても2日寝込むだけで全快しましたし
7:名無しの転生者
小学校高学年以下の身長で女子のイッチでも15キロ持ち運べるとかヤバいな
8:名無しの転生者
ということは……やっぱりスーパーマサラ人は……!
9:名無しのポケモンマスター
だからって、前世のネットで騒がれていた、マサラタウンの人を過大評価しまくって生まれたスーパーマサラ人は流石に居ませんよ
10:名無しの転生者
ガッデム!!!!
11:名無しの転生者
実はイッチがマサラ人ってことでワンチャン……
12:名無しのポケモンマスター
私は生まれも育ちもニビシティです
13:名無しの転生者
全ての希望は……絶たれたというのか……!
14:名無しの転生者
さりげなく判明したけど、イッチの出身てニビシティだったんだ。タケシとは知り合いだったとか?
15:名無しの転生者
ていうか、イッチと原作キャラの交友関係とか気になる。イッチがチャンピオン就任して人間関係とか変わってそう
16:名無しの転生者
ちょっとそこらへんkwsk
17:名無しのポケモンマスター
そうは言っても、ちょっと分かりませんね。プライベートの交友関係は狭いですし、キクコ先生みたいに仲の良い原作キャラとかも居ますけど、私という存在が他のキャラの交友関係にどう影響しているのかは未知数です。
ちなみにタケシとはチャンピオン就任後に初めて顔を合わせました。旅に出た当時はジムリーダーに就任してたわけでもないし、同じ町でも広いですし、バッジ集めはジョウトでやってましたしね(セキエイリーグはカントーとジョウトの計16のジムの内8つ攻略すれば挑戦可)
18:名無しの転生者
ゲームとかだと建物の数が10もない小さい町でも、リアルだとやっぱ広いんだな。アニメとかはそこら辺を良く描写してた
19:名無しのポケモンマスター
一番最近連絡取るようになった原作キャラとなると……シロナさんを始めとした、各地方のチャンピオンですかね?
20:名無しの転生者
シロナキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
21:名無しの転生者
シリーズ屈指の人気キャラ! これで勝つる!
22:名無しの転生者
どういう経緯で他の地方のチャンピオンと連絡取るようになったの? やっぱりリーグ関係繋がり?
23:名無しのポケモンマスター
大体そんな感じです。ほら、BW2でチャンピオンズトーナメントっていう大会があったじゃないですか。あんな感じで、世界中のチャンピオンが一堂に会して戦うみたいな大会にほぼ無理矢理出場させられたんです。
24:名無しの転生者
そう言えばあったな、そんなのも。
25:名無しの転生者
ポケモンのバトル施設はキッズには難易度高すぎて泣いた記憶ある
26:名無しの転生者
昔はそうでもなかったんだけど、最近の作品だと努力値ちゃんと振らないと勝てない仕様になってるしな。BDSPのバトルタワーなんて完全な魔境だったぞ
27:名無しの転生者
つーか、ほぼ無理矢理出場ってことは、大会出るのはイッチの本意じゃなかったのか?
28:名無しのポケモンマスター
そうなんですよね……大勢の人の視線とか本当に苦手だから、こういう大会のオファーは何とか言い逃れして来たんですけど、流石に連続で断り続けるのはセキエイリーグチャンピオンとしての沽券に係わるってことで、協会のお偉方に無理矢理ね
29:名無しの転生者
そういう仕事って断れるもんなん?
30:名無しのポケモンマスター
そこはほら、大義名分をフル活用ですよ。悠長に大会に出ている間にも虐げられているポケモンたちがいるのは放っておけないとか適当なことを言って遠くに逃げるから、私は大会とかに出て注目されずに済むって訳です(笑)
31:名無しの転生者
おいwwww
32:名無しの転生者
何やってんだイッチwwww
33:名無しの転生者
汚い。流石はイッチ、汚い
34:名無しのポケモンマスター
知らなかったんですか? 私、コミュ障気味で内弁慶だから表向きは大人しい性格ですけど、素の性格は結構悪いですよ?
まぁポケモン犯罪の解決してくるって言った以上はちゃんと仕事してましたし、責められる謂れはないと言いますか。正直危険な仕事もしたくないですけど、人前に出て注目集めるよりかはマシかと思いまして。
……ただ、この言い訳も最近通用しなくなってきたんですよね。チャンピオンズトーナメント以降、犯罪発生率が下がったとか何とか言って、ちょっとずつ色んな所への顔出しが増えてる気が……
35:名無しの転生者
あららー……ご愁傷さま、イッチ
36:名無しの転生者
変に真面目な性格が仇となったか……イッチのほのぼの生活はどうなるのか
37:名無しのポケモンマスター
……そう言えば、その時にシロナさんから色々と話を聞いて、私がバトルしたトレーナーを徹底的に打ちのめして引退に追いやってるっていう噂が立ってるって聞いたんですよ
38:名無しの転生者
イッチ、ラスボス系疑惑が急浮上wwwww
39:名無しの転生者
なにやらかしたんだイッチwww シロナの性格的に、それは揉めたんじゃないの?
40:名無しの転生者
ていうかそんな噂が違う地方にいるシロナの耳にまで届くもんなの?
41:名無しのポケモンマスター
1年前までは全チャンピオンの中で1番影が薄かったんですけど、それでもチャンピオンはチャンピオン。ちょっと野良試合するだけでネットに拡散されますからね。噂の巡りだけは早い早い。それにテレビ出演とか大勢の観客の前に出るような仕事はしなかったですけど、それとは違う形で顔出しする副業もしてましたから、私の顔と名前だけは知っている人も大勢いるんです
42:名無しの転生者
あぁ、なるほどな。それで、イッチはシロナさんとの修羅場をどう乗り越えたんだ?
43:名無しの転生者
どうせ何かひと悶着あったんだろ?
44:名無しのポケモンマスター
正直、緊張しすぎて具体的には覚えてないんですよね。シロナさん雰囲気は終始穏やかでしたけど、美人な大人からの圧力って普通に怖い……。
ただあの時は、それっぽい嘘と本音を適当に混ぜながら言って誤魔化した気が……。頭の中グチャグチャでかなりドモった覚えはありますけど、なんとか上手く乗り切ったと思います。今では時々連絡する間柄ですし
45:名無しの転生者
それで、イッチはその噂とやらに心当たりはあったのか?
46:名無しの転生者
噂になるくらいだなんてかなり信憑性高そうだけど、そこらへんどうなん?
47:名無しのポケモンマスター
結論から言うと……心当たり、あります
48:名無しの転生者
あるんかいwwwwww
49:名無しの転生者
何やってんだセキエイリーグチャンピオンwwwww
50:名無しの転生者
チャンピオンとしてそういうのはどうかと思うぞイッチ。なんだかんだ言っても人気職なんだから
51:名無しのポケモンマスター
あのですね……一応言っておきますけど、私に非はないと思いますよ?
52:名無しの転生者
おっ? 開き直りかイッチww
53:名無しの転生者
良いだろう、言い訳を言ってごらん
54:名無しのポケモンマスター
じゃあ言わせてもらいますけど……勝手に湧いて出てきたアンチと、勝手に挑んで勝手に挫折したトレーナー、そんな連中に私がしてやれることなんてあります?
55:名無しの転生者
ひょ?
56:名無しの転生者
どういう……ことだ……?
57:名無しのポケモンマスター
簡単に言うと、町を歩いていると喧嘩売られることが多いんですよ。露出の少なさや見た目の時点で私が過小評価されがちなチャンピオンだったこともありますけど、私くらいなら簡単に倒せそうと考えるイキったトレーナーが多いのなんの。それはもう幼稚で語彙力に乏しい悪口で、私の心の三大地雷原を綺麗に踏み抜いてくれました。
58:名無しの転生者
何だろう……イッチが怖いぞwww
59:名無しの転生者
文章から尋常じゃない怒りのオーラを感じる……! ヤベェ、ヤベェよ……!
60:名無しのポケモンマスター
こっちは手出しする気なんてなかったのに、向こうから喧嘩吹っ掛けてきたから受けたまで。チャンピオンだからって野良試合したらダメなんて決まりもなし。
私、何か悪いことしました?
61:名無しの転生者
特にないです
62:名無しの転生者
ちなみに、どんなこと言われたのイッチ
62:名無しのポケモンマスター
そうですね……思い返すのも腸が煮えくり返るので簡単に書きますが……。
①私の身長の事
②私のおっぱいの事
③私の手持ち、実は弱いんじゃねーの?m9(^Д^)プギャー
以上の3つでお察しください。
63:名無しの転生者
あっ……(察し)
64:名無しの転生者
それはボコられても仕方がないwwww
65:名無しのポケモンマスター
24時間道端で待ち構えているゲームのトレーナーよろしく、私を見かけた途端にバトルを申し込んでくる。これ自体は別にいいんですよ。よほどの急用でもない限り、ちょっとしたファンサービスに付き合うくらいはします。うちの子たちもなんだかんだでバトル好きですから。
でもね、時には断らないといけない事情があるのも、分かりますよね?
66:名無しの転生者
あ、はい
67:名無しの転生者
そ、そうですね
68:名無しのポケモンマスター
トレーナーはとにかく数が多くて色んな人がいますが、バトルを断った私にやる気を出させるためなのか知りませんが、人様の身体的コンプレックスを無神経に逆撫でしまくった挙句、頑張って戦ってきたウチの手持ちたちを雑魚呼ばわりしてくる連中が、どこの町にも一定数いたんですよ。そんな連中に何時までも好き放題言わせて黙っていられるほど、私は人間出来てないんですよ。
69:名無しの転生者
「ざぁこ♪ ざぁこ♪」と煽ってくるトレーナーたちを、合法ロリのイッチが解らせたという事か
70:名無しの転生者
パンツ脱いだ。続きはよ
71:名無しの転生者
何を期待してやがるwwwww
72:名無しのポケモンマスター
それでも私は大人ですから? 仮にもチャンピオンですから? 同じ土俵に立つ相手には全力で挑みますけど、リーグへの参加資格もないアマチュアのポケモンを必要以上に甚振るような真似はしません。前にも言ったとおり、普通に戦っただけですから。何なら加減だってしました
73:名無しの転生者
えぇ~? ホントにぃ~?
74:名無しの転生者
なにせ魔改造に定評のあるイッチだしなぁ~
75:名無しのポケモンマスター
ホントですって! 私の体のことを悪く言ったのは絶対に許しませんけど、手持ちの事まで侮られて悪く言われるようになったのは、私がなんやかんや理由を付けて、公の場でのバトルに出なかったことも理由の1つですし、そこに関しては私に非があるから見縊られても仕方ありませんし、ウチの手持ちたちに申し訳なかったです。原因を作ったのは私なんですから、責任の所在をはき違えて必要以上に痛めつけるだなんて八つ当たりするほど、私も子供じゃありません
76:名無しの転生者
ちなみに、どんな戦い方を?
77:名無しのポケモンマスター
こういうリーグトーナメントを勝ち抜いてもいないアマチュアとのバトルの担当は、気遣いが出来るサンドパンかギガイアスの出番ですからね。加減が上手いですし、必要以上に傷付けることなく優しめに倒してくれます。ちなみに試合形式は1対1。
バンギラスはパワーあり過ぎるし、クレッフィとシロデスナは害悪戦法担当でファンサービスバトルには向いてませんからね。あと器用に立ち回れると言ったらシンボラーなんですけど、あの子は性格的にそういうの嫌いですからね。特に仲間を悪く言われて黙っていられる性格でもなく、バトルに出したら本当にトラウマ与えかねない。
78:名無しの転生者
あぁ、確かメッチャ柄が悪いんだっけ?
79:名無しのポケモンマスター
むしろシンボラーを宥める方が大変なくらいです。元々縄張り意識の強いポケモンは仲間内に対する情が深いところがありまして。普段はツンケンしているのに仲間への侮辱は許さないウチのシンボラーはまさにポケモン界のゴール・D・ロジャーと言って過言ではありません……! 尊過ぎて泣けてくる……!!
80:名無しの転生者
いや過言だろwww
81:名無しの転生者
イッチの親バカ劇場とかどうでも良いから巻いて巻いてー
82:名無しの転生者
でもイッチは一応チャンピオンだろ? 格上相手に一回負けたからって、バトルを引退するようなことか?
83:名無しのポケモンマスター
この世界は地球と同じくSNSやネットで情報が巡ってますからね。実際に私とバトルした結果、引退を決意したトレーナーが何人かいるのは事実ですし、シロナさんの質問も否定しきれなかったのは確かです。
でも全員が全員、そうって訳じゃないですよ! 私の大量の野良試合情報と、引退トレーナーの話題がネットに同時に上がって、私アンチ勢が憶測塗れの悪評垂れ流した結果、シロナさんに悪い噂が届いたってだけです!
84:名無しの転生者
イッチ嫌われとるんかww
85:名無しの転生者
十代でセキエイリーグチャンピオンっていうだけでも反感を覚える奴はいるだろうしな。特にイッチはダンデみたいに明るいキャラクターじゃないし、むしろ根暗だし、引退したトレーナーにもファンがいたって考えると、イッチのアンチは一定数居そう
86:名無しのポケモンマスター
総体的にファンの方が多いと思いますが、なんでや……不本意な地位とはいえ、これでも真面目にポケモン犯罪の解決に勤しんできたんですけど
87:名無しの転生者
ちなみに、イッチがロケット団と戦ってるとか、ポケモン犯罪者を逮捕してるとか、そういう情報って出回るもんなの?
88:名無しの転生者
徹底的に規制されますね。事件が解決したっていう結果だけ公表されて、誰々が解決したっていうのは公開しないようにって………私が、頼んだんでした……
89:名無しのポケモンマスター
おいwwww
90:名無しの転生者
自業自得じゃねーかイッチwwwww
91:名無しの転生者
最初は! 最初はこれ以上目立ちたくないと思って情報規制をするように頼みました! でもいざ人気職としての側面に触れてみると、アンチの存在とか凄い気になっちゃうんですよ! 私の悪口をネットに書き込まれると、凄く心が痛むんです!
その度に私と手持ちポケ宛の応援メッセージを読んで心が癒され……あぁ、チャンピオン業って、チヤホヤされないと成り立たないんだなぁって、心の底から思いましたね。だから急に辞めて期待を裏切るようなこともできず、精神泥沼状態に……
92:名無しの転生者
イッチには他のチャンピオンにはない、どうしようもない人間臭さがあるよなwww
それでも気に入らないものは気に入らないっていうのが、人間の醜いところ。出る杭は打たれるって言葉の通り、合法ロリチャンピオンに対して反感を感じるのは無理もない。実際、ダンデとかアイリスもリアルじゃ苦労してるんじゃね?
93:名無しのポケモンマスター
誰が合法ロリチャンピオンだ。ぶっ飛ばすぞ(怒)
そうは言いますけど、私は私なりに頑張ってきた結果が今なんですよ? 出会いたくもないポケモン犯罪者と遭遇したり、暴れ回る強ポケの群れと鉢合わせたりがやたらと多く、初めの内は普通のバトルに負ける回数の方が断然多かったから試行錯誤を繰り返してきて。のんびり旅をするつもりが、いつの間にかトラブルだらけの武者修行でしたよ
94:名無しの転生者
トラブルホイホイ過ぎてリーフストームwww
95:名無しの転生者
ある意味イッチには主人公補正があるなwww トラブルに巻き込まれる補正がwww
96:名無しのポケモンマスター
いりませんよ、そんな主人公補正!
とにかく、私が言いたいことは1つ。たとえ私とのバトルで何人のトレーナーが敗北、スランプ、引退をしようが、それは彼ら自身の問題であって、私に責任を求められても困るという事です!
97:名無しの転生者
えぇ~……それはチャンピオンとして無責任すぎんか?
98:名無しのポケモンマスター
逆に聞きますけど、私にどんな責任があると? 私はただバトルをして勝っただけ。アマチュア相手にえげつない戦法を取ってるわけでもない。バトルで勝つのが仕事のチャンピオンなのに、それすら許されないなんて本気でやってられませんよ
99:名無しの転生者
イッチに論破された……だと……!?
100:名無しの転生者
確かにそれを言われたら何も言い返せんな
101:名無しのポケモンマスター
大体、チャンピオンや四天王が結果的に大勢のトレーナーに夢を諦めさせて引退に追いやるなんて日常茶飯事です。ジムリーダーと違って勝たせないようにするのが仕事ですから。
地球にいた時も似たようなケースはあったでしょう? ネットの書き込みを見てみたら、あのシロナさんですらそういう極一部のトレーナーからアンチの対象になってるんですから、私だけ責められるっていうのは違うんじゃないですか?
102:名無しの転生者
生身の人間が増えれば心ない連中も多くなるしな。負けたからって逆恨み同然にアンチになる奴もいるってことか
103:名無しの転生者
実際に戦ったこともない連中からのアンチも考えると、やっぱりチャンピオン業も大変なんだなって思えるわ
104:名無しのポケモンマスター
チャンピオンズトーナメントを切っ掛けに好意的に受け止めてくれる人が大勢出来ましたけど、他のチャンピオンのファンが私アンチになったっていうのも少なからずあります。自分が支持している人が負けたんだから、負かした相手を快く思えないのは理解できますけどね……リアルで何の影響もない、全員顔見知りの転生掲示板だからこそぶっちゃけたい。
実際に挑みに来るわけでもない、やっかみ飛ばすだけの品性のない連中は黙っててもらえます?
105:名無しの転生者
本当にぶっちゃけやがったぁーっ!?
106:名無しの転生者
リアルで呟いたら大炎上間違いなしのセリフが転生掲示板を襲うぅうううっ!!
107:名無しのポケモンマスター
書き込みを見てみれば筋の通ってない粗探しばっかり。特に腹が立ったのは私の手持ちたちの戦法が分からん殺しで卑怯だなんだのと騒ぎ立てる連中ですよ!
ふざけんなって話です! あの戦い方は、私とあの子たちで必死に磨き上げてきた、バトルで勝つための努力の集大成です! そもそもポケモンリーグは結果と実力がものをいう世界で、相手の勝ち方が卑怯とか、手持ちが準伝説や600族で固めてて卑怯とか、そんなの言い訳にもならないんですよ! 甘えたことを言わないでもらいたい!
その点、シロナさんを始めとしたチャンピオンたちは、私なんかと違って実に素晴らしい心持ち! 敗北を潔く認め、見方によっては年下の生意気な小娘である私のポケモンたちを参考にしてより強くなろうと、熱心に鍛錬に励んでるんですよ!?
そんな素晴らしいトレーナーたちのファンにあんな品のない連中が混じってるなんて……シロナさんたちが可哀そうになってきます!
108:名無しの転生者
スゲェ……こんなにキレてるイッチは初めて見た
109:名無しの転生者
よっぽどストレスたまってたんだな、イッチ
110:名無しのポケモンマスター
まぁこんなことを表立って言えませんからね。
私たちの努力を理解しろとまでは言いませんけどね、バトルで負けたのも引退するのもその人の責任なんですから、勝者のせいにするのは止めてほしいですよ。しかもそういうトレーナーに限って、負けた責任をポケモンに押し付けるから質が悪い
111:名無しの転生者
そういうものじゃないの? だって実際に戦うのはポケモンだよな?
112:名無しのポケモンマスター
確かに戦うのはポケモンですけど、効果的な訓練を立案するのも、戦略戦法を考えるのも、コンディションを整えるのも、技を覚えさせたり改良するのも、全部トレーナーの仕事ですからね。トレーナーはいわば責任者、バトルに勝てればそれはトレーナーに応えてくれたポケモンのおかげであり、負ければポケモンの実力を引き出せないトレーナーの責任なんです
113:名無しの転生者
……イッチがなんか立派なことを言ってる
114;名無しの転生者
なんか意外……というか似合わない
115:名無しのポケモンマスター
どういう意味ですか(怒)。私だってね、生のポケモンと長く触れあってれば、色々考えるんです
116:名無しの転生者
でもそう考えると、イッチが原作に与えた影響っていうのは計り知れないよな。悪の組織関連もそうだけど、大会とかで戦った四天王やチャンピオンの意識にも変化があるんじゃないの?
117:名無しのポケモンマスター
不本意ながら、その自覚はありますね。実際、大会でシロナさんに勝った私ですけど、そのシロナさんのガブリアス、ウチのサンドパンやバンギラスが使う白ひげアタック……指向性を持たせる地震だから収束地震っていう仮称で読んでるんですけど、それを真似して再現可能な域まで習得しつつありますからね。皆さん私の事をチート扱いしてきますけど、私からすれば原作キャラも十分チートでした
118:名無しの転生者
クソヤベェ事になってんじゃねぇかwwwww
119:名無しの転生者
ポケモン世界で白ひげ大量発生するフラグ立っててダイソウゲンwww
120:名無しのポケモンマスター
あの大会以降、ウチの子たちの戦い方を真似しようとするトレーナーが急速に増えてますからね。完成形には至らないまでもサカキには収束地震を5割くらいの完成度で真似されてましたし、今更ですけど
121:名無しの転生者
自分で難易度上げていくスタイルwwww
122:名無しの転生者
敵がヤバい攻撃使ってたら、そりゃ対策として真似するよねwwww
123:名無しのポケモンマスター
最初見た時は私も愕然としましたよ……簡単にできる事じゃないから再現する人は極僅かなのが幸いですけど。
それに敵も強くなってるけれど、それに比例して味方も強くなってるからプラマイゼロです。特に魔改造された協会所属の原作キャラと言えば、ジョウト四天王の面々。特にカリンですかね。
124:名無しの転生者
ここで意外なキャラが出てきたな
125:名無しの転生者
何故にカリン? 何かイッチと関わりが深いとか?
126:名無しのポケモンマスター
実はあの彼女、私と一緒に旅をした幼馴染でして、ウチの子たちの戦い方とか、カリンと一緒に考えたんですよ。カリンのポケモンたちの戦い方も私が一緒に考えるという、持ちつ持たれつな関係でして。
後これは非公式な記録ですけど……私との6対6のフルバトルでの戦績、カリンの平均勝率は4割以上5割未満です
127:名無しの転生者
ファーッ!?
128:名無しの転生者
イッチ……カリンさんに一体何をしたんだ……!?
129:名無しのポケモンマスター
ちょっと!? 私が悪いみたいに言わないでくださいよ!?
二次創作は二次創作で難しいと思い知らされましたね。原作リスペクトを怠ったつもりはなかったんですが、やはり読者一人一人捉え方が違うという事でしょう。
というわけで、原作主人公たちの下りはレッド以外を完全に消してみました。一応登場予定はありますが、従来の設定とは全然違う形での登場を予定しております
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傍から見たロリチャンピオン(カリン編)
ポケモンバトルが興行として、あるいは軍事力として成り立つこの世界において、強いポケモンというのは絶対だ。
強くなければ勝利を得ることも、何かを守ることもできない。何かを証明し、手に入れたいというのならば、勝利を掴むしかない。それが揺ぎ無い現実である。だから強いポケモンは尊ばれるべきであると思う。
だが、そうだとしたら……弱いポケモンはいつまでも弱いポケモンのままで居続けなければならないのか? 人間の勝手で見下して、見限って、嘲って、虐げても良いというのか? 強くなることすらも許されないというのか?
大抵の人間はそうじゃないと思うだろう。だが世界にはその通りであると断言し、ポケモンを粗雑に扱う者たちが確かに存在し、それらは消えることはない。
ポケモンのコンディションを考慮しない無茶な特訓を課すトレーナー。自分の至らなさを棚に上げてポケモンを怒鳴り散らすトレーナー。弱いからと簡単にポケモンを捨てるトレーナー。
中には厳選というポケモンの意思を蔑ろにして無理矢理交配させ、生まれた大勢のポケモンの中から僅かに存在する強い個体だけを選び、残りはまともに面倒を見ることもなく野に放つという、強さだけを追求して重犯罪を犯す許しがたいトレーナーもいる。
あぁ、何という人の勝手だろう。一体ポケモンを……そこに存在している、たった1つの命を何だと思っているのか。
何の因果か、幼少期の頃からトレーナーの身勝手によって傷ついて来たポケモンたちと多く出会ってきたカリンは、この不条理が確かに存在する世界でどのようなトレーナーになるべきなのか、それを探して旅をしてきた。
様々な価値観のトレーナーや個性豊かなポケモンたちと出会い、自分に何が出来るのか、それを知る為の旅の途中……カリンは自らの運命を変える出会いをすることとなった。
=====
セキエイ高原の一角に存在するバトルフィールド。そこは今まさに、戦場というべき激闘が繰り広げ垂れていた。
通常の個体とは違う、水色に輝く結晶を体中から生やす巨体のポケモン……チャンピオン・タチバナのギガイアスは咆哮を上げると共に地面を前足で叩いた瞬間、フィールド全体を埋め尽くすように〝ストーンエッジ〟が勢いよく立ち並び、上空から無数の〝いわなだれ〟が降り注ぐ。
例えるならば、まさに巨大な岩の怪物の口の中に放り込まれたような気分だ。おまけにフィールド全体には強力な〝じゅうりょく〟までもが掛けられている。生半可なポケモンなら碌に対処もできずに戦闘不能に追いやられるだろう。
「ドラピオン、〝つじきり〟」
だが相対するサソリのようなポケモン……四天王・カリンのドラピオンもまた生半可なポケモンではない。尻尾を含め、頭の両側から生える触腕の計3本を巧みに操り、襲い掛かる岩を切り裂き、最小限の動きだけで躱していく。
(ドラピオンはよくやってくれている……けれど、このままでは先に倒れるのはこっちね)
タチバナのギガイアスの主力戦法は、地に足を付けてどっしりと構えながら、広範囲、高威力を誇るオールレンジ攻撃を繰り出し続けることだ。その分技に使うためのエネルギーの消耗が激しいのだが、ギガイアスは太陽光からエネルギーを無限に供給するポケモン。ただ避けるだけではドラピオンのスタミナが先に尽きるだろう。
その上、タチバナの代名詞でもある砂嵐がフィールドに舞っている。ただそこに立つだけでダメージを与えてくる砂塵がある以上、ただ逃げるだけの戦法は通用しない。
(これまでの攻防で猛毒状態にはしたのはいいけれど)
砂嵐の影響下では非常に厄介な耐久力を誇る岩ポケモンだが、それ故に耐久力を無視したダメージを与え続ける毒は鬼門だ。タチバナもドラピオンが出てきた時は顔を顰めていたくらいだし、一刻も早くボールに戻したいところだろう。
「どうしたの? 猛毒状態になったポケモンは、一度ボールに戻せばダメージを抑えらるわよ?」
「……意地悪言わないでください。〝おいうち〟を使ってくるくせに」
カリンの挑発に少しムッとした表情を浮かべながらも、安易に交代という手段を選ばないタチバナ。本当なら交代したいのだろうが、それをすればギガイアスが落とされることを一番よく知っているのが彼女なのだ。
ポケモンをボールに戻す間際を狙った一撃を当てることで、与えるダメージが倍加する技、〝おいうち〟。これまでの戦闘でギガイアスが受けたダメージから考えれば、ドラピオンなら一撃で倒せる技だろう。
(だからこそ今はギガイアスとドラピオンの根競べになっているんだけれど……流石と言ったところね。このままでは先に倒れるのはドラピオン)
とても毒に侵されているとは思えない、反撃も許さないほどの猛攻振りにはドラピオンも思わず回避が手一杯だ。反撃を仕掛けようものなら、相応のリスクが伴うだろう。どうするべきか、トレーナーとして決断を迫られているカリンに、ドラピオンは一瞬だけ視線を向けた。
ポケモントレーナーのトップ勢、セキエイリーグ四天王であるカリンは手持ちの目くばせによるサインを見逃さない……あれは間違いなく、覚悟を決めて突き進むことを決めた眼だった。
「いいわ、ドラピオン。存分に魅せてあげなさい、貴方の強さを」
詳しい内容を相手のポケモンに聞かせることはない、抽象的な指示をカリンは出す。それに応えるようにドラピオンはより鋭く、的確に岩という岩を切り裂いていくが、地面から突き出た無数の岩の刃が突如として枝分かれし、ドラピオンを穿たんとばかりに向かってきた。
代表的な岩タイプの物理技とはすなわち、ポケモンの体内エネルギーを使って鉱物を操る物が大半となる。
〝ストーンエッジ〟とは岩を剣のように鋭く錬成し、敵を切り裂く技……ならば、一度外れた岩の刃に干渉し、そこから更に刃を作り出すことも可能なはず……そう考えた鬼才、タチバナによる奇襲だったが、ドラピオンは体を捻って何とか回避する。
「ギッ……!」
だが四方八方から伸びてきた岩の刃は、まるで中に人が入っている狭い小部屋の中に無数の棒を差し込んで動きを封じるかのように、ドラピオンの動きを阻害する。
車を簡単にスクラップに変えるパワーを持つドラピオンならば脱出は簡単だが……その僅かな隙を見逃さず、ギガイアスは上空へと跳び上がり、全身から光の尾を引きながらドラピオンに向かって落下して来た。
その威容はまさしく地上に向かって落下する隕石そのもの……その威力もまた、それに匹敵するだろうということをカリンは全身で感じ取った。
(あの光は恐らく〝メテオビーム〟……! 特殊攻撃を不得手とするギガイアスというポケモンだけれど、その特殊技を純粋な攻撃としてではなく、攻撃の威力を引き上げる推進力として使うなんて……!)
しかもよく見てみれば、ギガイアスの全身が鋼鉄化しているのが分かる。つまりあの技の正体は重量級ポケモンの十八番、〝ヘビーボンバー〟が主体となっている合わせ技……身動きを封じた敵に対するトドメの一撃。
特性〝すなのちから〟×〝じゅうりょく〟による加速×ギガイアスの全体重×〝メテオビーム〟の推進力による、〝ヘビーボンバー〟最大パワーである。
「〝まもる〟!」
即座に岩の拘束を解いたドラピオンだが、回避は間に合わない。そう判断し、破壊不可能の障壁を真上に展開。直撃を防ごうとするが――――
「無駄です……! 直撃しなくとも、障壁ごと上から押し潰せばいい……!」
幾ら破壊できない壁で遮られても、技を展開するポケモンの体は動くもの。
技の威力、重さに耐えきれず、ドラピオンの足元から地面が吹き飛ぶように爆散する。もはや中心部で何が起きているのかも分からない土と石の幕が地面に落ちる頃には、本当に隕石が落ちてきたのではないかと思えるほどの巨大なクレーターによって、バトルフィールドは上書きされていた。
これほどの一撃を受けてはドラピオンも戦闘不能になる。そう思ってタチバナは倒れ伏しているであろうドラピオンの姿を確認しようとしたが……土煙が晴れても、ドラピオンの姿がどこにもなかった。
「……〝あなをほる〟攻撃……!」
不可解の正体を察したのと同時に、ドラピオンが勢いよく地中から飛び出し、ギガイアスの背後を取った。
やられたと、タチバナは歯噛みする。先ほどの〝まもる〟はギガイアスの攻撃から自分の身を守る為だけに使ったのではなく、穴を掘ってギガイアスの死角に回り、奇襲を仕掛けるための時間を稼ぐことこそが本命だったのだ。
回避も防御も間に合わない、実に見事な〝だましうち〟である。猛毒を受けて既に弱っているギガイアスならば、この一撃で沈むだろう。
「なら……攻撃で撃ち落とす……!」
だがこの土壇場の危機を覆してこそチャンピオン。半ば勝利も確信しそうになったドラピオンの胴体に、〝ストーンエッジ〟が突き立てられる。
相変わらず凄まじい執念と練度だ。あれほどの一撃を放った後でも、即座に次の技を放つための余力を残していたと、一体誰が思うだろう?
「その一撃、読んでいたわ……!」
何千、何百とチャンピオン・タチバナと戦い、その強さを誰よりも信じていたカリン以外に――――!
不敵な笑みを浮かべる自身のライバルの様子を見て、タチバナはドラピオンの口元についている食べカスに気が付く。
(あれは、オボンの実……!? 地中で体力の回復を……!? 不味い……ドラピオンを倒す目算が狂って――――)
今度の今度こそ隙を晒したギガイアスに対し、攻撃を受けた報いであると言わんばかりに、ドラピオンによる水を纏った〝しっぺがえし〟が炸裂し、ギガイアスはその巨体をゆっくりと地面に横たえた。
=====
それから数時間後。荒れに荒れたバトルフィールドの整備に駆り出される職員たちを尻目に見ながら、自らの手持ちポケモンたちに囲まれて食事をするカリンは、同じく手持ちポケモンと共に食事を摂っているタチバナを見ながらコーヒーを口に含む。
「この香り……今日もコーヒーですか? 昔から飲んでますけど、苦くないですか……それ」
「それを楽しむための飲み物よ、これは。好き嫌いが分かれるとは思うけど」
「……もしかして、カフェインには凄い発育効果があったりします……? だからカリンのスタイルが良いとか……」
「それはコーヒーに夢を見過ぎね。むしろ夜眠れなくなって発育に悪いんじゃない?」
「…………むぅ」
いじけたような視線を向けてくるタチバナの姿に、カリンは思わず微笑みを零す。どうやら18歳になった今でも、自身の発育のことを諦め切れないらしい。
子供の頃、旅の道中で出会った時からそうだったが、タチバナにとって自分の発育不良はコンプレックスであり、以前本気で1000年の内に7日間しか目覚めない幻のポケモンを見つけようとしていたほどだ。
「いいですよね、カリンは。隅から隅まで良い意味で大人っぽくて……私なんて他所の地方のリーグ会場歩いてたら迷子扱いされるのに。貴女って本当に私と同い年ですか……?」
「……ごめんなさい、タチバナ。私にはどうしてあげることもできないわ。だから私の胸を恨みがましく凝視するのは止めてくれない?」
「……可哀そうなものを見るような目で見ないでもらえませんか……!? 同情するなら乳をください……!」
決して姦しくはないが、気心の知れた間柄であると分かる気安い様子で話すタチバナを、彼女の家族やカリン以外の者が見ればきっと驚くだろう。
本人は割と俗っぽい普通の性格をしているが、世間におけるタチバナの印象というのはどれもこれも浮世離れしているものばかりで、タチバナが特別な存在であると本気で思っているものが一定数存在するのだ。それも決して少なくない数で。
まぁさもありなん。本人の儚げな美貌とコミュ障ゆえの口下手っぷりが合わさり、変な方向に向かって大多数に勘違いされているという、傍から見る分には面白い状況になっているのだから。……当の本人からすれば、笑えない話だろうが。
人間離れした美貌の他にも、チャンピオン業の他にも弾き語りのアーティストとしての活動もあってファンの数は多いが、その分何かを拗らせているファンも一定数いて、タチバナは果物を主食にしていて肉類は食べない新種の生物だと冗談交じりにネットに零しているそうだ。
そう言われる心当たりはカリンにもある。他でもないタチバナが愚痴っていたが、以前インタビューを受けた時に馬鹿正直に自分の好物を答えたら、「イメージが壊れるんで果物ってことにしておきましょうか」と、ポケモン協会やリーグ関係者の上役が圧力をかけ、タチバナの好物が果物であるというのが公式となったのだ。
おかげでファンから果物ゼリーが大量に送られたこともあって辟易しているらしい。ちなみに当の本人は果物も決して嫌いではないが、好きな食べ物はおでんと刺身とノンアルコールビールである。おっさん趣味の役満である。
以前屋敷に招かれた時、ラフな格好で嬉々としておでんを煮込み、鯛を捌いてる姿からは18歳とは思えない、社会に疲れた中年のようなオーラが出ていたものだ。
普段着のように着こなすドレスも実は趣味というより仕事着……舞台衣装のようなものであるという認識で、凡そ世間からの印象とかけ離れた人物であるというのが分かる。
素の自分を出せばいいんじゃないかとカリンは思うが、世間体や周囲の評価をやたらと気にするタチバナは泣く泣く理想のチャンピオンを必死に演じている訳だ。カリンはそんなタチバナに呆れながらも見かねて、傍で支えるために四天王に上り詰めた。
半ば自業自得とはいえ、泣きながら愚痴ってくる親友を見捨てられるほど、カリンも薄情ではない。これと言って特定の仕事に就いていたわけでもないし、四天王になったからこそ得られるものも数知れないので結果オーライである。
「……それにしても、あの……〝アクアテール〟を使えるようになったんですね、ドラピオン……オボンの実も見事に隠し抜かれましたし、アレさえ予見できれば今日のバトルはうちの子たちの勝ちだったのに……」
「タチバナの手持ちには水タイプの攻撃が良く刺さるもの。〝じゃくてんほけん〟を持っていることが多いギガイアスにはトドメとして使わせてもらったけれど、本当ならシロデスナやバンギラス対策に覚えたのよ。中々やるものでしょう、あの子は」
「えぇ……本当に、凄い子です。初めて会った時と比べると、見違えました……」
サンドパン、シロデスナ、クレッフィ、ギガイアス、シンボラー、バンギラスらと交じり、時折悪ポケモンらしく悪ふざけをしながら訓練後の食事を摂っている、ドラピオンを始めとした、ブラッキー、ヘルガー、サザンドラ、ミカルゲ、ドンカラスといったカリンのポケモンたちを眺めながら、二人は出会ったばかりの時を思い返した。
=====
タチバナとカリン。セキエイリーグを牽引する2トップにして、ポケモンバトルの新しい世界を切り開いたトレーナーたちの出会いは単なる偶然だった。
お互いが10歳とまだまだ駆け出しのトレーナーとして各地を旅していた頃、とある町でバトル大会が開かれると聞き、イーブイとデルビルを伴ってその町のポケモンセンターに訪れたカリンは、声を荒げるドリュウズを連れたトレーナーと、何かを必死に訴えようとしているタチバナを見かけたのである。
何事かと思って聞き耳を立ててみると、どうやらドリュウズのトレーナーは以前手持ちだったサンドを手酷く捨て、その結果精神から衰弱して入院させるまでに至ったことを、タチバナが抗議しているらしい。……尤も、相手の剣幕に押され気味で、逆に言い負かされそうになっていたが。
良識的なトレーナーならばタチバナと同じような反応を示すだろう。だが相手のトレーナーは普通の倫理観など持ち合わせていなかったらしく――――
『使えない雑魚を捨てたからって何だっていうんだよ! 俺は悪くねぇ! そいつらがバトルに勝てないのが悪いんだろ! 大体進化系のサンドパンなんて種族的にもドリュウズに劣ってるんだから、役割が被ってて弱い方を捨てたっていいだろうが!』
その言葉を聞いた途端、カリンは激しい憤りを感じた。何せカリンの手持ちであるイーブイもデルビルも、普通の個体よりも弱いからと、トレーナーの身勝手で捨てられ、傷付いて来たポケモンたちだったからだ。
ドリュウズのトレーナーとは何の関係もない話だが、あのような発言を聞いて黙っていられる奴はポケモントレーナーじゃない……そう思って飛び出そうとしたカリンだったが、不意にタチバナの雰囲気が変わったの気付く。
『ぼげぇっ!?』
そしてそのまま無言でドロップキックである。あの気弱で大人しそうな雰囲気は鳴りを潜め、怒りで興奮した様子で荒く鼻息を吹くタチバナは、尻餅をついたドリュウズのトレーナーに啖呵を切った。
『だったらドリュウズとサンド、どっちが強いかをバトル大会で叩き込みます……! く、首を洗って待っててください……!』
この日カリンは、大人しい人ほど怒ると何するか分からないという事を知った。後ろから怒鳴り散らすトレーナーの声を無視して走り去っていくタチバナが気になって後を追いかけると、彼女はポケモンセンターの物陰に隠れて――――
『や、やってしまいました……! つい怒りに任せて……サンドでドリュウズに勝つとか無理ゲー過ぎ……バカなんじゃないですか、私……! もう取り返しつかない……!』
猛烈に後悔していた。それを見たカリンは思わず脱力しそうになったのを堪えて話しかけ、これからどうするつもりなのかを問いかけると、初対面の相手だからか、タチバナはしどろもどろになりながらも、しっかりとした意思を宿した声でこう答えた。
『やります……一度言ったことを覆すのは、アレですし…………この子のことも、このままにするのは心が痛むから……』
『そう……なら、私にも手伝わせてもらえない? ああいうトレーナーに何時までも好き勝手に振舞われるのは腹が立つもの』
こうしてカリンは急遽バトル大会への出場を取りやめ、タチバナと共にサンドのトラウマ克服やドリュウズ対策を行うことにした。
バトル大会まで日にちが少ない間、当然のように四苦八苦したし、サンドが立ち直ってドリュウズと戦う時もかなりギリギリではあったが、結果だけ言えば何とかドリュウズ使いのトレーナーをサンドの活躍もあって見事下すことが出来た。
結局その後の試合で敗退したタチバナだったが、サンドもかつて自分を捨てたトレーナーへの未練を断ち切ることが出来、タチバナの新たな手持ちとして彼女の旅に付いて行くことに。
『あの……ありがとう、ございます……私だけだったら、どうにもできなかったかもしれない……』
『いいのよ、私も好きでやったことだし。それじゃあ、そろそろバスの時間だから私はこれで』
数日間共に過ごし、同じ目標を掲げた者同士ではあるが、別れ自体はあっさりとしていたものだと、今になって思い返す。我ながら淡々としていた子供だったと。
それに別れ自体は悲しくはなかった。同じくポケモンと旅をする同士、縁があればまた会う日も来るだろう……そう思いながらカリンは旅を続け、その先々でトレーナーの身勝手で傷ついたポケモンたちを保護、もしくは手持ちに加えていった。
今でこそ四天王の手持ち、その一軍として活躍しているブラッキーも、ヘルガーも、ドラピオンも、サザンドラも、ミカルゲも、ドンカラスも、他のトレーナーたちが能力不足、素質不足と捨てたポケモンたちだ。
今思えば、タチバナとの出会いをきっかけに、将来を見据えることが出来たんだろうと、カリンは今までの事を振り返る。
煌びやかで平和に見えるこの世界の中、確かに存在する心無いトレーナーたちによって傷付いたポケモンたちにも光を当てたい。目の前で起こる理不尽に鈍感になることが成長することでは決してないのだと、かつてタチバナと共にサンドに光を当てた経験がカリンの道を定めたのだ。
とは言っても、現実は残酷だ。弱いからと捨てられたポケモンたちは、そうされるだけの欠点を抱えている。そんなポケモンたちによる下克上を目指し始めたカリンだったが、当初は上手くいかなかった。覚悟していたことだがバトルでは連敗だったし、その度に自分の不甲斐なさに打ちのめされてきた。
そんな時に再開したのが、タチバナである。あの時のサンドは立派に進化を果たし、トレーナーとして着実に成長をしていた彼女だったが、タチバナはタチバナで手持ちのタイプが偏ってしまってバトルで負けることが多くなっていたという。
そんな2人が、あの時のように協力し合い、己を高めようとするのは当然の帰結だったのかもしれない。
一緒に色んな地方を旅し、色んなトレーナーやポケモンと出会い、自分の手持ちポケモンたちにできる最強の戦い方を追求する……女2人で何とも色気のない武者修行だったが、実に充実した楽しい旅でもあった。
心身ともに早熟なカリンと色んな意味で小さいタチバナ。正反対なところがある2人だが、意外なほどにウマが合っていたのも大きい。
共に行動をし始めてすぐに分かったことだが、タチバナの表面的な性格はお世辞にも褒められたものではない。それでもカリンがタチバナを気に入ったのは、口ではなんだかんだ言いつつも、性根の優しさと責任感の強さが隠せない不器用さが好ましかったからだ。
裏の顔なんてないとばかりにポケモン愛を語る者の言葉よりも、良くも悪くも人間臭くて身内以外には関心が薄いのに、苦しんでいるポケモンがいれば衝動的に助けてしまうタチバナの行動にこそ血肉が通っているように見えた。
そんなタチバナと数多くの困難を乗り越え、力を付け、周囲に翻弄されながらも得たのがセキエイリーグの2トップ……その影響力を以てして、「ポケモンの強さを引き出すのはトレーナーの指導力次第である」という、かつて世界に知らしめると決めた価値観を徐々に広めることが出来た。
(あの日、貴女は私にありがとうと言ったけれど……礼を言うのは私の方だったわ、タチバナ)
タチバナがいたから、この高みまで上り詰めることが出来た。タチバナがいたから、自分というトレーナーが見定めた本懐を遂げる力を身に付けることが出来た。
だから何度だって、親友として彼女を助けよう。悪の勢力が社会の陰で隆盛を極めるこの時代、タチバナが求める安寧の生活が少しでも早く手に入るように。
=====
「やぁ、久しぶりだねカリン。姫におかれましてはご機嫌如何かな?」
「……イツキ。貴方も来ていたの?」
追憶から意識を現代に戻すと、カフェテリアにはいつの間にかマスクで素顔を隠した正装の男……セキエイリーグ四天王の一角でもある、エスパー使いのイツキが入ってきていた。
しかも彼だけではない。その後ろからは格闘使いのシバに毒使いのキョウ……図らずして、セキエイリーグの頂点に君臨する四天王とチャンピオンが一堂に会し、遠巻きから眺めていた職員たちからは歓声にも似たざわめきが起こる。
「………………」
チラリとタチバナの様子を見てみると、先ほどまで表面化していた個人としての側面が引っ込み、人形にも例えられる公人としてのチャンピオンの表情を浮かべている。
相変わらず変わり身が早い。これで内心では色々と慌てふためいているのだと思うと笑ってしまいそうだ。特にイツキのような超能力者に素の性格がバレないように苦心しているらしいので、この能面の向こう側では冷や汗を掻いていることは容易に想像できる。……少し離れた場所からシンボラーが力を使っているから問題なさそうではあるが。
「バトルフィールドの有様を見たよ。いくら昔からの友人だからと言って、君ばかり姫の相手を務めるだなんて不公平だと思わないかい?」
修行明けで力を持て余しているのか、腰のモンスターボールに手を添えて好戦的な笑みを浮かべるイツキ。どうやらその後ろのシバとキョウも同じらしく、タチバナとのバトルを望んでいるらしい。
いきなり四天王3人に勝負を申し込まれて、視線だけで必死に助けを求めてくるタチバナに、カリンはどうやって助け舟を出そうかと考えながら割って入った。
強いポケモンも、弱いポケモンも、そんな尺度や価値観は人の勝手。ポケモントレーナーとはその名の通りポケモンを育てる者であり、何がポケモンが秘めた可能性を見限ってはならない。
本当に強いトレーナーなら、本当にポケモンを愛しているのなら、自分を慕ってくれるポケモンたちが勝てるように頑張るべき。
そんな確固たる信念を胸に秘めたカリンは、今日も明日もこれからも戦い続けるだろう。
いつか世界中の人々に、真のポケモントレーナーとは何たるかを思い知らせるその時まで。
ゲーム本編においてもカリンの設定資料の少なさが目立つので完全に憶測なのですが、カリンの名言の裏にはトレーナーの身勝手によって傷付いてきた大勢のポケモンたちの姿があったのではないかと、妄想してみました。
なのでこの小説におけるカリンは、クールに見えてポケモン大好きな良い人という設定です
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貴方はおでんの具の中で何が一番好きですか?
ちょっとWEB小説サイトで出版社主催のコンテストが応募されてたんで、それ向けにライトノベル一冊分のオリジナル小説を執筆していました。
この作品と同じく、合法ロリが主人公の作品でタイトルはズバリ。
「ドラゴン舐めんなチート共」
現在、「カクヨム」と「小説家になろう」で掲載中なので、よろしければ見ていってくださると幸いです
1:名無しのポケモンマスター
ぶっちゃけ、私の影響もあるかもしれませんけど、カリンの魔改造っぷりがとんでもないです。下手したら私も負け越しますし
2:名無しの転生者
あるかもじゃなくて、百パー転生者であるイッチの影響だろ。
3:名無しの転生者
チャンピオン相手にほぼ互角に張り合う四天王とは一体……。
4:名無しの転生者
それを言ったらジムリーダーのミクリは大誤算より強いって設定なかったっけ? 別にチャンピオン=最強って訳でもないし
5:名無しの転生者
ミクリって誰だっけ?
6:名無しの転生者
ルビサファに出てくる水のジムリ。エメラルドだったらチャンピオンになってる
7:名無しの転生者
まぁ話を聞く限り、イッチがいるポケモン世界はゲームやアニメよりもかなり自由度が高い世界だし、原作キャラの強さが俺たちが思ってるのよりも違いがあるっていうのは、十分あり得る話だけどな
8:名無しの転生者
ぶっちゃけ、カリンってどういう風に魔改造されてんの?
10:名無しのポケモンマスター
そうですね……ウチのポケモンたちが技の威力に重きを置いてるのに対し、カリンの所のポケモンたちは技の巧みさに重きを置いている…‥とでも言いましょうか?
悪技を始めとした、癖のある技を得意としてるんですけど、カリンが育てたポケモンたちはこれを決めるのがとにかく上手いんですよ。
11:名無しの転生者
力のイッチ、技のカリンみたいな?
12:名無しのポケモンマスター
世間からの評価は大体そんな感じですね。実際的を射ていると私も思います。
なにせやしっぺ返しやダメ押し、不意打ちの成功率が90パーセント超えてますし、追い打ちに限っては外したところを見たことないですからね……比較的緩い条件とは言え、こっちにとっても有益な行動を逆手にとって高威力の悪技がポンポン飛んでくるんですから、そりゃ強いですよ。
13:名無しの転生者
そりゃ強いっすわwww
14:名無しの転生者
そんなんがHGSSのリーグで出てきたら、3DS叩き割る自信しかないんだが
15:名無しの転生者
一定条件下で威力が上がる悪技ってゲームじゃそこまで成功しない印象あるけど……一体どうやったら90パー越えなんて数字が叩き出せるん?
16:名無しのポケモンマスター
不意打ちとかしっぺ返し、ダメ押しに関して言えば単純に相手ポケモンに合わせて使えば効果を発揮します。まぁそれでも癖が強いんですけど、個人的に厄介なのは追い打ちですね。
どんな訓練を積んだかは教えてくれませんけど、カリンのポケモンたちは相手トレーナーの動きも察知してるみたいで、ボールに戻そうとする頃には追い打ちを何時でも撃てる状態になってるらしいです。
しかも厄介なことに、そういった悪技と他のタイプの攻撃技を複合させて使ってくるんですよね
17:名無しの転生者
……?
18:名無しの転生者
つまり……どういうことだってばよ?
19:名無しのポケモンマスター
そうですね……例えばこの間の練習試合なんですけど、カリンのドラピオンが私のギガイアスに止めを刺した時、しっぺ返しとアクアテールの合体させ、後攻で繰り出せば威力が二倍になる威力90の、フライングプレスみたいな感じの水と悪の両タイプの技を使ってきたんですよね
あの時ギガイアスが喰らったダメージをゲーム的に表せば、威力90×タイプ一致1.5倍×弱点2倍×しっぺ返しの効果で2倍……くらいのダメージですね。
しかも恐ろしい事に、カリンはどんな悪技にも他のタイプの攻撃を組み合わせることが出来ますから、タイプ一致で弱点を付ける不意打ちとか追い打ちとかガンガン撃ってきますし。
20:名無しの転生者
クソ強ぇんだがwwwww
21:名無しの転生者
威力90の技がタイプ一致と二倍補正乗るって、威力だけ見れば電撃嘴やエラガミより強いんだがwww
22:名無しの転生者
イッチといい、カリンといい、チャレンジャーを勝たせる気が無さ過ぎてナゾノクサwww
23:名無しの転生者
ていうか、技と技を合体させるとか、そんなこと出来んの!?
24:名無しのポケモンマスター
はい、一応できますね。ただかなりの訓練が必要ですから、簡単な事じゃないですけど。例えばうちのバンギラスとか、悪の波動と火炎放射を合わせて黒い炎出したり、ドロポンと十万ボルトを合わせてリザードンに4倍弱点を叩き込んだりしてましたし
25:名無しの転生者
そういえば、サトシのピカチュウがアイアンテールとエレキボールを合体させるみたいなことしてたなぁ
26:名無しの転生者
先に公式がやってたから、転生先で出来ても不思議じゃないってことか……?
27:名無しのポケモンマスター
しかもカリンのポケモンは皆、普通に能力値が高いですからね。巨大化したシロデスナが、カリンのメガヘルガーに天候を晴らされ不意打ちで引っ叩かれた後、至近距離から黒いソーラービームを喰らって回復する間もなくノックアウトさせられた時は、流石に呆然としましたもん
28:名無しの転生者
それはヤバすぎるwwwww
29:名無しの転生者
ゲーム的に言えば、威力120×サンパワーで1.5倍×タイプ一致で1.5倍×弱点で4倍か。
30:名無しの転生者
そりゃワンパンされますわwwwww
31:名無しのポケモンマスター
しかも一番ヤバいのはそういった攻撃面じゃなく、変化技をこちらに気付かせないように使ってくる巧みさなんですよね。
相手に気付かれないように猛毒状態にしたり、マヒ状態にされたり。欠伸で眠らせたり、しまいには気付かない内に道連れを使われて、メガバンギラスが1:1で持ってかれたり……。正直、私とカリンの勝敗は、如何にバンギラスをミカルゲにぶつけないように立ち回れるかに掛かってますし
うちの子たちも相手に気付かれないように変化技使うことは出来ますけど、流石にカリンのポケモンたちほど上手くは出来ませんよ。
32:名無しの転生者
そんだけ強かったら、他のリーグ行ったらチャンピオンになれそうだよな
33:名無しのポケモンマスター
何なら、セキエイリーグのチャンピオンになってもいいですよ。むしろチャンピオンの座なんてカリンに譲りたいんですけど、当の本人が面倒くさがっていて引退させてくれないです……目立つのは性に合わないとか言ってますけど、私だってそうですよ……はぁ
34:名無しの転生者
そういえば、イッチとカリンって仲がいいらしいけど、普段一緒に遊びに行ってたりしてるの?
35:名無しの転生者
それは私もちょっと気になる
36:名無しの転生者
銀髪美女美幼女の百合百合なプライベートを聞かせてくれ
37:名無しの転生者
パンツ脱いで続きを待機してます
38:名無しの転生者
ティッシュの貯蔵は十分だ
39:名無しの転生者
はえーよwww
40:名無しの転生者
馬鹿野郎! 麗しい銀色の百合に対してそんな汚れ切った欲望の視線を向けるとは何事だ!?
41:名無しの転生者
ちなみに、どちらがお姉さまで、どちらが妹なんですか?
42:名無しの転生者
スールの契りはちゃんと交わしてる?
43:名無しのポケモンマスター
人の事をレズみたいに扱うの止めてくれません?(怒) 私たちは至ってノーマルですから。あと美幼女って言ったやつ、出てこい
44:名無しの転生者
えー……がっかりなんだけどぉ
45:名無しの転生者
同人展開を期待してたのに
46:名無しのポケモンマスター
何を期待してたんですか、何を。
プライベートだって、普通に遊んでるだけですよ。一緒に服を買いに行ったり、ポケモン用品買いに行ったり。あぁ、昨日は私の家でご飯作って食べましたね。おでんと刺身を肴に、ノンアルコールビールで二人で夜中まで大盛り上がりでしたよ
47:名無しの転生者
待って。俺の中のイッチとカリンのイメージが大爆発した
48:名無しの転生者
おっさん臭くてリーフストーム吹き荒れるわwwww
49:名無しの転生者
チャンピオンと四天王が揃って何やってんだwwww
50:名無しの転生者
あの人の目を気にするイッチがノンアルとはいえビール飲むとは意外だな。バレたらまた色々言われるんじゃない?
51:名無しのポケモンマスター
私たちだってね、気分だけでも酔っぱらわないとやってらんないんですよ。お互い色々と忙しい立場ですし、愚痴を兼ねたお疲れ様会をやりたいんです。そうなると、気分的にはやっぱりお酒が欲しいじゃないですか
大好物である、具にしっかりと出汁を沁み込ませた濃口おでんに生姜醤油とからしを付けて、しゃきしゃきの新鮮な身にわさび醤油を付けて食べ、その後味をノンアルコールビールで流し込む……この快感がたまらんのですよ
52:名無しの転生者
それでノンアルか
53:名無しの転生者
まぁ一応合法だしなー
54:名無しの転生者
社会に揉まれて苦労した前世を思い出して泣けてくるんだが、この銀髪コンビ
55:名無しの転生者
あぁ~、聞いてたら俺も刺身とおでんで一杯やりたくなってきた
56:名無しの転生者
中世西洋風異世界に悪役令嬢として転生しちゃって、刺身もおでんもない私には辛すぎるんよ……(´・ω・`)
57:名無しの転生者
そういえば、ポケモン世界の刺身って何喰ってんのイッチ?
58:名無しの転生者
まさかとは思うけど、コイキングとかそういう魚っぽいポケモンを膾斬りに……?
59:名無しのポケモンマスター
いやいや、この世界にはポケモン以外の生き物がちゃんといますからね? ケンタロスやミルタンクとは別に食用の牛とか豚とか鳥とか居ますし、地球に居るような海産物も多いんです。何もポケモンだけの世界じゃないんですよ
60:名無しの転生者
まぁ言われてみればそうか。そうじゃないと栄養が偏るし
61:名無しのポケモンマスター
……尤も、野生のサメハダーとか野生のリングマに食い散らかされたポケモンもいるにはいますけどね
62:名無しの転生者
サラッと混じる実は怖いポケモンの裏話
63:名無しのポケモンマスター
まぁ人間がポケモンを食べる、なんてことはほぼないですよ。食べるとしたらミルタンクのミルクやマホイップのクリーム、アブリボンの花粉団子やラッキーの無精卵、トロピウスのバナナとか、ポケモンが生み出す副産物くらいなもんで、肉を食べるとしたらヤドンの尻尾くらいなもんです。栄養もない上になぜか甘いので、私はあんまり好きじゃないですけど、千切ってもトカゲみたいに生えてきますし
64:名無しの転生者
となると、ポケモン世界の食生活っていうのは、地球のそれとそこまで大きい違いはないんか。
65:名無しの転生者
なんとなく木の実ばっかり食べてる印象もあったけどな
66:名無しのポケモンマスター
ポケモンのアニメーションに出てくるのは、どれも木の実が主体の料理ばっかりですからね。そう思うのも仕方ないかと
でも普通に肉や魚、何なら加工食品も食べますよ。じゃないとおでんなんて作れませんし
67:名無しの転生者
おでんといえば、イッチはおでんの具で一番何が好き?
68:名無しのポケモンマスター
そんなの決まってるじゃないですか。長時間グツグツ煮込んで中までバッチリと出汁が染みた、おでんの主役。おでんの王様
糸コンニャクです
69:名無しの転生者
この外道がぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!
70:名無しの転生者
何考えておでん食ってんだ、この外道!
71:名無しの転生者
まったく、とんでもないイッチだ!
72:名無しのポケモンマスター
な、何でですか!? 美味しいじゃないですか、糸コンニャク!
極めてストレートな出汁の味を独特の食感と一緒に味わうことが出来る美味しさが分からないんですか!?
73:名無しの転生者
ていうか、コンニャクって中まで味が染みたりするもんなの?
74:名無しの転生者
マジで長時間煮込んだら、淡口おでんの出汁でも染み込む。特に糸コンニャクは細い分、普通の三角に切ったコンニャクより味が染みやすい
75:名無しの転生者
おでん好きを自称しておいて糸コンニャクはないだろイッチ! 出汁の味を楽しむなら大根こそが至高だろーが!
76:名無しの転生者
は? 出汁の味を楽しむならガンモこそが最適解なんだが? つまりガンモこそがおでんの王様。はい論破
77:名無しの転生者
それって76の感想ですよね? おでんの王様は卵一択。異論は認めん
78:名無しの転生者
体育館裏に行こうぜ。久々に切れちまったよ
79:名無しの転生者
さっきから何言ってんでしょうねこの人たち。おでんといえば竹輪。竹輪なくしておでんにあらず。つまり竹輪こそがおでんの王様なんですよ!
80:名無しの転生者
おでん好きの転生者たちによって炎上してまいりましたwwwww
81:名無しのポケモンマスター
な、何なんですか!? 人の好みくらいでグダグダ言わないでくださいよ! 大体、こちとら女性なんです! 花も恥じらう乙女なんです! 大根ならともなく、卵とか練り物とか、いくら美味しくてもカロリーがヤバそうなのを好んでたくさん食べる訳には――――
82:名無しの転生者
あれ? イッチ?
83:名無しの転生者
どうした? おーい
84:名無しの転生者
その後、イッチの姿を見たものは誰も居なかった……
85:名無しの転生者
不吉なモノローグやめーやwww
86:名無しの転生者
でも本当にどうしたんだ? 思考直結型の転生掲示板でいきなり退室するって、イッチに何かあったんじゃ……?
87:名無しの転生者
レインボーロケット団でも襲撃して来たか?
88:名無しのポケモンマスター
すみません、急用が出来たんで今日は退室します。ヤベェ……ヤベェよ……!
89:名無しの転生者
おっ。無事だったかイッチ
90:名無しの転生者
戻ってきたと思ったら不穏な雰囲気。本当に何があったの? イッチ
91:名無しのポケモンマスター
忘れてました……完全に忘れてました……! あと十五分で到着するって電話来ました……! カ、カリンを叩き起こして全力土下座しながらお願いしなきゃ……!
92:名無しの転生者
到着? さっきから何の話してんだイッチ
93:名無しのポケモンマスター
テレビが……
94:名無しの転生者
は? テレビ?
95:名無しのポケモンマスター
もうじき、有名トレーナーのリッチな暮らしを世間に知らせる、みたいな番組の取材が私の家に来るんです……寝落ちしてそのままになってるおでん鍋や刺身の皿、ノンアルコールビールの空き缶が散乱する、ジャージ姿で寝癖付いてる私の家の取材に……!
遅まきながら、ポケットモンスター第9世代、スカーレット&バイオレットの発売……それに伴う、バンギラスの内定確定おめでとうございます!!
めでたい! ほんとうにめでたいです! 株式会社ポケモンの勢いは留まるところを知りませんね!
非常に残念なことに、レジェンズアルセウスではバンギラスが出てこなかったので、その無念を見事に晴らしてくれました! 今から冬が待ち遠しくて仕方ないですよ
ところで皆さんは、スカーレット&バイオレットで最初に選ぶ御三家は、もう決めましたか?
今のところ一番人気はニャオハのようですが……これだけは自信を持って言えます
ニャオハは、立ちます
確定情報は今のところありませんが、ほぼ間違いなく立ちますよニャオハは
ただでさえ6世代以降から「御三家の最終進化は人間要素入れておけばいいだろ」みたいな感じになってますし、路線変更しない限りはニャオハも立つでしょう
ちなみに、作者はホゲータを選びます。正直、最近の御三家を見る限り、どれを選んでも私の好みからは外れそうですが、「御三家は人型になる」という謎過ぎる風習から外れる可能性がありそうですし。
ちなみに根拠としては、爬虫類をモチーフにした御三家にはビジュアル的なハズレが無いから、ですね。是非ともオーダイルみたいなシンプルで癖のないカッコよさがある最終進化になってほしい物です。
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傍から見たロリチャンピオン(モブキャラ編):前編
題して
「ドラゴン舐めんなチート共~チートスキルを持った人間たちがドラゴンを淘汰した後の世界で始まる、合法ロリドラゴン最強への道~」
です。
興味を持っていただければ、読んでくださると幸いです
《今日のポケモントレーナー》……世界中の様々な有名トレーナーの私生活を追うこの番組で、これまで現場に赴いてポケモンインタビュアーが結婚に伴い電撃引退したことで、急遽レギュラーとして抜擢された新米ポケモンインタビュアーのハナムラは、移動中のワゴン車の中でガチガチに緊張していた。
彼女にとって初めてのレギュラー番組での初仕事なのも緊張の理由の一つだが、その何よりの理由は今回の取材相手だ。
(ま、まさか……初仕事の相手があのタチバナだなんて……!)
タチバナ……それはポケモントレーナーや、それに纏わる仕事をしていて、その名を知らない者は居ないといって過言でもない人物だ。
史上最年少でセキエイリーグチャンピオンとして君臨し、公式戦における試合では勝率9割以上を叩き出す、まさに怪物といってもいい天才少女。
カントー・ジョウトが誇る歌姫としても有名で、その人間離れした可憐な美貌と神秘的な雰囲気、そして他のリーグチャンピオンすらも寄せ付けない圧倒的な実力で人気を博している、まさにポケモン業界のトップレディと言えるだろう。
(新人がインタビューする相手として、色々間違えてないかな……?)
本当なら失礼のないように、ベテランのインタビュアーが行くべき相手だ。しかしポケモン協会やテレビ局、そしてタチバナ本人の意見がどういう風に反映されたのか分からないが、「もう別に新人だろうが素人だろうが何でもいいから、取材するならさっさと済ませろ」ということになったらしい。
局に予定が空いている他のベテランインタビュアーがいないことと、多忙を極めるタチバナの予定を兼ね合わせた結果だろう。それで新人であるハナムラが選ばれたのは幸運な事であり、同時に不幸な事でもあるのだが。
(もし失礼なことをしたら……私のクビが飛ぶ……!)
これは考えすぎでも何でもない事実である。セキエイリーグチャンピオンの座というのは、それほど重い物なのだ。緊張するなという方がおかしい。
無意識の内に呼吸が浅くなり、混乱状態になるハナムラ。そんな彼女の耳に、涼やかな風鈴の音色が聞こえてきたかと思ったら、不思議なことにさっきまで感じていた緊張が嘘のように消えた。
「……チリーン」
ハナムラの相棒ポケモン、チリーンの〝いやしのすず〟の効果である。親であるハナムラの緊張が、チリーンにも伝わっていたのだろう。
「ありがとね、チリーン」
宙に浮かぶ小さな体を優しく撫でると、チリーンも嬉しそうに身を捩る。
新人だろうが何だろうが関係ない。どんなに不安でも現場に立てば自分はプロだ。ならばプロとしての仕事を全うするまで……そう気持ちを持ち直したハナムラは、目的地に到着して停車したワゴン車から降りると、目の前には大きな塀に囲まれた屋敷が建てられていた。
ハナムラはカメラマンを始めとしたスタッフと共に撮影準備をし、自分の中のスイッチを切り替えるかのようにマイクを握り、塀の外側から見た屋敷の外装に関するコメントを録画していく。この辺りの撮影に関しては事前に許可を貰っているので、タチバナ抜きでも大丈夫だ。
「それじゃあ、チャンピオンをお呼びしますね」
そして本番はここから。これからの自分の一言、一動作が編集を経てテレビに放送されるのだ。
軽く深呼吸をして、タチバナが出てくるのを待つこと暫く。思ったよりも少し時間が経ったが、大きな門がゆっくりと開くと、その少女は姿を現した。
白い肌を映えさせる漆黒のドレスを身に纏い、足元まで届く銀色の髪をした、まるで人形のように可憐な少女……セキエイリーグチャンピオン、タチバナの姿を見て、ハナムラは思わず感嘆の息を零す。
(うわぁ……やっぱりすごい美少女……顔と鼻と口は小さいし、目は大きいし)
職業柄、美人は見慣れているハナムラだが、タチバナの美しさは並の女優やアイドルのそれを上回っている。これで極端な無口でなければ、純粋なアーティストとしてではなく、アイドルとして活躍もできただろう。
「初めましてチャンピオン。インタビューを担当させていただく、ハナムラと申します。本日はよろしくお願いします」
「…………よろしく、お願いします」
やや落ち着かない様子で答えるタチバナ。その様子に、ハナムラが訝しむようなことはなかった。
世間ではバトル中の凛々しい姿や、夢中になってピアノの弾き語りをする姿ばかりが放映されているが、それ以外のプライベートでは引っ込み思案で話すのが苦手なところがあるから、接し方には注意してほしいとポケモン協会からも伝達されているからだ。
強い口調でガンガン話しかけては委縮させてしまう可能性もある。なるべく穏やかな口調を心掛けようとしたハナムラだったが、ふとある事に気が付いた。
「チャンピオン? 何やら顔が赤いですが、大丈夫ですか?」
「ひゃいっ!?」
よくよく観察してみると、タチバナの白い肌が紅潮しているのだ。息も少し上がっているし、目立たない程度だが髪も僅かに乱れている。
もしや風邪なのではないか……心配するハナムラの言葉に、タチバナの肩が大きく跳ね上がった。
「だ、だだ、大丈夫、です……! こ、これはその……あの……う、運動っ。さっきまでその、運動に熱が入り過ぎて、あの……!」
「運動というと、ポケモンバトルの訓練でしょうか?」
「え……? あ、はい……っ。チャンピオンとして、その……悪い人たちに負けないように……」
おおぉ……! と、ハナムラだけではなく、スタッフたちからも思わず感嘆の声が漏れる。
チャンピオンを始めとした、ポケモン協会所属トレーナーには、ポケモン犯罪の解決に尽力する義務がある。バトルの腕を磨くのもまた義務といった差支えがないが、こうして自分たちの平和を守る為に尽力する、ポケモンバトルの第一人者を目の当たりにすると、やはり感動を覚えるものだ。
(しかもポケモンたちと一緒に自分自身の心身も鍛えるなんて、流石はチャンピオン。一般のトレーナーとは心構えが違う……!)
バトルの訓練中、大抵のトレーナーはポケモンに指示を出すばかりで自ら汗を流すことはない。トレーナーという立場から考えればある意味当然ではあるが、タチバナは「自分自身もポケモンたちと共に成長する」という、四天王のシバやレンブ、ガラルジムリーダーのサイトウを彷彿とさせるスタイルをとっているのだろう。
チャンピオンという頂に立っても尚、取材の直前まで訓練に明け暮れるストイックさこそがその証。外見や大人しい性格からは想像もできないような情熱と志の高さに、ハナムラはただただ感心させられた。
「あの……私たちの家とか暮らしの取材って聞いてたんですけど、えっと……それじゃあ先にポケモンたちの固有スペースの紹介からで、良いですか……?」
「はい、大丈夫です!」
事前資料によると、タチバナは全ての手持ちポケモンたちにそれぞれ自分だけのスペースを屋敷内に確保しており、そこではそれぞれの個性が現れた空間となっているのだとか。
軽く後ろを振り返って監督に視線を送ると、「OK」というハンドサインが送られて来たので、ハナムラとスタッフたちは、タチバナの後に続くようにして屋敷の中へと入っていった。
改めて塀の内側に入ってみると、かなりの敷地面積だ。
「えっと……まず最初に紹介するのは、ここです……」
敷地内に入ってまず目を引いたのは、オボンの実が生る木や、色とりどりの花が咲き誇る見事な庭園だった。花の香りに包まれ、アブリーやアゲハントなどといった、花の蜜を集めるポケモンたちが楽しそうに戯れており、その中央には屋根付きの渡り廊下で屋敷の本宅と繋がっている、立派なツリーハウスが存在している。
「これは随分と立派な庭園ですね! こちらはチャンピオンが管理を?」
「あ、いえ……その……ここは全部サンドパンの固有スペースになってます……」
タチバナの視線を追いかけてみると、そこには麦わら帽子を乗せた棘の塊……もとい、麦わら帽子をかぶったサンドパンが、薔薇に水やりをしていた。
ポケモンがガーデニングをしている!? という驚愕を露にするハナムラたちの視線に気付いたのか、こちらに振り返ったサンドパンはペコリとお辞儀をすると、爪を器用に使って満開の薔薇を一本切り取り、棘を落とすと、それをハナムラにそっと差し出した。
「わぁ、ありがとうございます! 私、ポケモンから花を頂くなんて初めて経験しました! サンドパンと言えば砂漠や荒野に生息するポケモンであり、こういう花を育てるような生態はなかったと思いますが、なぜこのように花を育てるようになったのでしょうか?」
「……えっと、えっと……よ、4年前にセキエイリーグの開催に合わせて実家に戻った時、しばらく住んでたんですけど……お、お母さんが趣味で植木鉢の花を育てて……それにサンドパンも興味を持って、それから……」
要約すると、タチバナの母親が植木鉢で花を育てているのに感化され、自分も育ててみたらガーデニングに目覚めたらしい。
しかもサンドパンはオボンの実や花を使ってジャムやアロマオイルを自作するらしい。ポケモンは人間の影響を強く受ける生物だが、こんなにも珍しい一例があるとは……驚くと共に感心したハナムラは、庭園の中央に鎮座するツリーハウスに目を向ける。
「あちらのツリーハウスはサンドパンの寝室か何かでしょうか? 地面タイプのポケモンには珍しく、サンドパンは樹上で寝起きするポケモンで、木登りも大好きですし」
「は、はい……そうです。あそこは寝室になってて、ガーデニングの道具も、あそこに……」
タチバナが出入りする時に使う木製の階段を上って中に入らせてもらうと、そこは木製の暖かな内装によく似合う、サンドパンの身長に合わせられた可愛らしい寝具や机に椅子が並べられている。
「ところで気になっていたのですが、こちらのツリーハウスを支えているのは何の木でしょうか? 触ってみた感じが普通の木とは違うような……」
「こ、これはシルフカンパニーに特注で作ってもらった、人工樹木です……サンドパンが好きな木の上に家を建てられないかと思って……。ツリーハウスに合った大きな木を植え替えるのは大変だし……台風とかで枝が折れたら怪我するから……」
「えぇっ!? こんな大きな人工樹木を!? 立派な庭園と言い、ここだけでどれだけお金が掛かっているんでしょうか?」
こじんまりとしているとはいえ、建物一つを支えるだけの人工樹木を特注で作らせるなど、相当金が掛かっているだろう。
テレビ番組《今日のポケモントレーナー》のメインともなる、有名トレーナーの贅沢な暮らしぶりを象徴するかのような話題を、自然な風を装って聞き出すと、タチバナは指折りに数えながら答えた。
「……えっと、確か……全部合わせて、1500万円くらい……?」
「1500万円っ!?」
リーグチャンピオンともなれば、年俸が億単位のスーパースターだが、たった一匹の手持ちポケモンの為だけに動いているという事実に愕然とするハナムラ。タチバナに限らず、リーグトレーナーは豪快な金の使い方をする者も多数いるが、タチバナもその例に漏れず一般人からは想像もできない金銭感覚だ。
「ちなみに、他のポケモンたちにも大体同じくらいの額をかけているんでしょうか?」
「……さ、差はありますけど……はい……。皆の欲しい物を揃えてたら……大体、そのくらいに……」
だがタチバナは、得た金の殆どをポケモンたちの為に使っているらしい。事前に貰った資料の中には屋敷の大まかな見取り図もあったのだが、その殆どが手持ちポケモンたちと共有スペースが占めており、タチバナ本人の固有スペースは敷地の片隅に小さく確保されている程度だった。
(人ってお金があればあるほど欲に歯止めが効かなるなるものなのに、それを抑えて自分よりもポケモンたちの為に大金を使うなんて……やっぱりこの人は本当の意味でチャンピオンなんだなぁ……! 私より若いのに凄い!)
流石である。
ポケモンにしっかりと愛情を示す……トレーナーとして当たり前のように聞こえるが、ポケモンの住居などボールの中だけで十分と考えるトレーナーたちも多いのだ。ポケモン一匹一匹に対して適切かつ快適な場所を用意するこの甲斐性は、まさに誰もが羨み、尊敬する模範的なトレーナーに相応しいだろう。
「えっと……その、次……行きましょう、か……?」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
そして次に案内されたのは、サンドパンの固有スペースの右隣に位置する、シンボラーの固有スペースだ。
色彩豊かなサンドパンの庭と打って変わって、こちらはどことなく神殿や祭壇を彷彿とさせる、全て石造りの建造物が建っていた。
「あ……その、こ、ここは……シンボラーの故郷をイメージして建築してもらったんです……」
「シンボラーのですか?」
話を聞くところによると、この固有スペースは今は無きシンボラーの縄張りだった古代遺跡に寄せて造られたという。
シンボラーというポケモンは遺跡の番人であり、侵入者を排除するという特異な生態を持つ種族で、タチバナのシンボラーもその例に漏れず、遺跡を守るシンボラーたちに一匹だったそうだが、とあるポケモンハンターたちによる大規模な密猟活動の際に遺跡は倒壊。縄張りを失い、行き場を無くしたシンボラーをタチバナが引き取ったというのだ。
「だからその、あんまり中に踏み込むのは控えてくれると……知らない人やポケモンが入るの、あの子が嫌がるから……」
「わかりました。……ちなみに、こういう建物を建てるのにどれくらい掛かりました?」
「…………確か、2000万円くらい……? 現代的な建物じゃなくて、昔の神殿をできるだけ再現してほしいってお願いしたら、このくらいに……」
恐るべきことに、サンドパンの固有スペースよりも高く掛かってるらしい。維持費を含めればサンドパンの方が上だろうが、シンボラーの心情に寄り添った環境作りの為なら金に糸目など付ける気は全くないようだ。
ちなみにカメラマンを含むスタッフは中に入ることは出来なかったが、タチバナに依頼して高性能カメラを持ったまま中を撮影してみると、映画のセットのように石像が並び、奥には壁画付きの祭壇がある、本物の神殿のような建物だった。
ある程度撮影も終わり、次の場所へと移動しようとした矢先、ハナムラは神殿から、自身の周囲に幾つもの物体を浮遊させるシンボラーが出てくるのを目にした。
「ん……? チャンピオン、シンボラーは何をしているのでしょう? 空き缶を幾つも動かしているみたいですが?」
「……っ!?」
その一声に、タチバナはなぜかビクリと肩を跳ねさせ、カメラがシンボラーの姿を遠目から収める。恐らくズーム機能を使って、その動きを事細かに追っているのだろう。
「あ、あれはえっと……じ、自主練ですっ……! 潰れやすいアルミ缶を潰さないように……〝サイコキネシス〟で何個も動かすことで、その……より精密に念動力を操れるように鍛えているんです、はい……っ!」
「なるほど……流石はチャンピオンの手持ちですね。ストイックなところは親譲りで……って、あれ?」
ここで話は変わるが、ハナムラのささやかな自慢の一つに、視力の良さがある。
登山が趣味であり、高いところから遠くを見渡す事が好きなことが影響してか、両目ともに2.0。おまけに卓球もしていたから動体視力も良い。そんなハナムラだからこそ、一つ気付いたことがあった。
「なぜかビール缶ばかり動かしてるみたいなんですけど、あれには何か意味があるんでしょうか?」
「ゲホッゲホゲホっ!?」
「チャ、チャンピオン!? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫……大丈夫です……!」
なぜか急に咳き込んだタチバナは何度も深呼吸を繰り返し、息を整えてからゆっくりと答える。
「ビ、ビール缶ばかりなのは、特に意味ないです……あ、あれはその……えっと、全部捨てられてたので、偶々ビール缶が多かったってだけで……」
「捨てられていたのを、拾ってきたんですか?」
「は、はい……ほ、本当に偶然で……なぜかビール缶ばっかりポイ捨てされてたから……訓練に再利用して、後で潰して業者に出そうと……」
今にも消え入りそうな声で答えるタチバナを前に、ハナムラの脳裏に過るのは先日ニュースになったある出来事。
タマムシシティのとある大学の生徒グループが、成人祝いにと大量のビールを購入し、河川敷でバーベキューをしていたのだが、初めての飲酒で何人もの学生が悪酔いして騒ぎを起こしたというニュースを、ハナムラが所属するテレビ局で放送したのだ。
この際、大量のビール缶が川に捨てられ流されていったという情報もあったのだが……それをタチバナが拾ったのだとしたら辻妻が合う。
(……い、良い子……! 今時居ないくらい純粋な良い子……!)
昨今、川に不法投棄されたゴミを拾う若者がどれだけいるだろうか? ネットなどにもそういった情報はなく、例え誰の目にも触れられていなくても、第一人者として皆の手本とならんとする在り方を忘れていない。
それでいて偉ぶった様子が一切見受けられないのだ。むしろそういう風に見られないように、「訓練の為だ」と言い訳をしているあたり、タチバナという人物の生来の謙虚さが現れている。 先ほどからやたらと動揺しているのがいい証拠だ。まさかこんな大人しくて清純を絵に描いた様なタチバナが飲酒などしているはずもないし。
(しかもゴミ拾いで拾った缶をそのまま訓練に使うなんて……)
流石である。
ポケモンバトルの訓練であっても、同じ内容ばかりではポケモンたちも慣れてしまい、却って逆効果になるという。
志の高さだけではない。偶発的に行った美化活動も無駄にしない、チャンピオンの柔軟な発想にハナムラはまたもや感心するのであった。
スカーレット&バイオレットの最新情報を待ち望む今日この頃。
バンギラスの内定が確定した今、次に内定してほしいポケモンはいっぱいいますが、やはり最低でも個人的に好きなポケモントップ10はいてほしいと思いますね。剣盾の時みたいに有料DLCでもいいから。
ちなみに、個人的に好きなポケモントップ10はこんな感じです。
1位:バンギラス(不動の絶対王者)
2位:ガチゴラス・ウインディ
3位:アマルルガ・グレイシア
4位:オーダイル・バクフーン・ルギア
5位:アーマルド・ストライク・バクーダ
6位:サンドパン(通常とアローラの両方)・シンボラー
7位:ユレイドル・ボスゴドラ・シャワーズ
8位:リーフィア・ルガルガン(真昼の姿)・サイドン
9位:ディアンシー・トリデプス・オノノクス・ブースター
10位:ミミッキュ・サンダース・クレッフィ・ドードリオ
……トップ10じゃなくね? というツッコミは無しの方向でお願いします。
だってしょうがないじゃないですか。一番好きなポケモンを絞りだけならともなく、絶対に同列2位とか同列3位とか、選んだら出てきますってポケモンファンなら。
……え? ピカチュウ……? 知らない子ですねぇ。
メガシンカ入れてもいならメガリザードンがXYの両方入ってましたね。3D化して良い事も増えましたけど、心なしか普通のリザードンが太って見えるようになったのは弊害ですねぇ。
ちなみに、エースバーンとゲッコウガが人気なのは、外見じゃなくて性能面に由来するものだと、半ば本気で思ってます。
皆さまの個人的に好きなポケモントップ10はどんな感じでしょうか?
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