秋宮ゆららは青を喰む (Ni(相川みかげ))
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1.ゲヘナちゃん

生き返りました。
リハビリ作品になります。ぼちぼちやっていくのでよろしくです。


 はてさて、どうしてこんな事になってしまったのやら。

 青一色の背景(ブルーバック)に貼り付けられた、アニメのキャラクターのような猫耳少女のイラストが口角を上げる。私の引き攣った顔とは違ってにこやかに。その違いが私と彼女が全く別の存在だと主張するように。

 パソコンの画面に映し出されたキャラクターは近頃新たにできた単語であるVtuberというものの一人だ。正確にはたった今、初めてのコンテンツである初配信を行うデビューしたてのVtuberだ。

 ようtubeで配信や動画コンテンツを提供するバーチャルなキャラクターだからVtuber。まあ、ようtube以外の配信サイトで活動してる人も一まとめにされてるみたいだけど。

 そんなVtuberの所謂『中の人』がこの私というわけだ。

 中の人と言えばこの界隈では声優を表す言葉だが、私は声による演技を職にはしていない。そもそも職にも就いていない。親の遺産のお陰で社会の片隅で死んだように生きている職なし高卒限界引きニート21歳児だ。もうどうしようもないね。

 演技ができないわけではないし、配信の経験もある(人気があるとは言ってない)が、どうにも荷が勝ちすぎている。

 なにせ、私が演じる彼女――『秋宮ゆらら』は企業勢。Vtuber事業をメインコンテンツとする企業『@Link(アットリンク)』所属のキャラクターだ。ベンチャー企業だが、既にVtuber企業としては一、二を争うレベルの最大手。そんな企業勢の新人としてはあまりにも私の経歴は不釣り合いだった。

 こういう企業所属のVtuberの中の人を選ぶ時にはオーディションやスカウトで決めるらしい(ネット調べ)。実際に私と同時期にデビューする同期の三人はオーディションで合格したからデビューする事になったようだ。

 私はこのオーディションを受けてはいない。かといってスカウトされるに値する人材でもなかった筈だった。

 

「……まあ、なるようにしかならないか」

 

 そんな私がVtuberの中の人としてスカウトされるに至った理由。そして、Vtuberとして活動する事を微塵も考えていなかった私がそのスカウトを受けるに至った理由を思い出し、私は気持ちを切り替える。

 大丈夫。『秋宮ゆらら』として求められている役割をこなすのに、私以上の適任者はいない。それを確信できているから迷う必要はなかった。

 配信ソフトの準備は既に終わっている。ブルーバックから切り抜いた彼女は(私の現実の部屋とは違って女の子してる)一人部屋のイラストを背景に笑っていた。

 楽しいわけじゃないんだけどね。そう独り言ちて、私は配信を開始した。

 

きちゃ?

始まった!

きちゃー!

もうかわいい

こんみゃです!

 

 流れ出したコメントを確認してから、頭を少し振って私と『秋宮ゆらら』が同期しているのを確認した後に初めての言葉を発する。

 

「はい、こんみゃ。@Link所属三期生の秋宮ゆららだよ~。これからよろしく」

 

 ダウナーに、それでいて幼さを残す事を意識した声色。今まで生きてきた中で、こんな声は配信のために練習した時にしか出した事はなかったけれど、存外似合ってるじゃないか、(秋宮ゆらら)

 画面に映る私は満足気に笑っていた。

 

 

 

 

夏休み明けの登校日に小学生からの親友から彼女ができたと言われました。僕の好きな女の子でした。僕から彼女を奪ったアイツは許せないけれど、それでも僕はアイツの親友です。ゲヘナちゃん、僕はいったいどうすればいいのでしょうか?苦しいです。ちなみに高校二年生です。

 

 

「ntrに見せかけたBSSだ。よくあるよね。どういう奴によくある話かは武士の情けで言わないけど。にんにん」

 

はいクソ童貞

武士なのか忍者なのかハッキリしろ

こんなのお童貞様の戦い方じゃない…

 

「君みたいな純情ボーイはなにかイベントがないと好きな女の子に話しかける事すらできないんだろうけど、イベントは起こすものだからね? 文章を読む限り、夏休みの間にその親友さんと好きな女の子の間に進展があったんでしょ? それは親友さんが行動した結果じゃん。……ってか、親友なのにその辺知らないのって、あっ……」

 

親友、妙だな……?

やめてやれw

親友だと思っていたのはお前だけ定期

ほら、親友でも言わない事ってあるから……(震え声)

 

「あー……、うん。これ以上はなにも言わないけど。まずは異性同性とか関係なく友達を遊びに誘う所から始めた方がいいんじゃないかなあ。受け身でいるとロクな事になんないぜ? ……ま、このままゴミみたいな青春送ってもいいと思うよ。なんせ、底辺にはこの僕、ゲヘナちゃんがいるんだから。アオハルせずに青を()んで、お先真っ暗な所まで落ちてくるって言うなら歓迎するよ。歓迎するだけだけどね」

 

ここから先は地獄だぞ

ゲヘナちゃんがいるならおじさんも底辺に行っちゃおうカナ!

こんなつまらん事で底辺に行くな

社会人になったらもっとハードモードだから学生の内にちょっとは頑張るべき

 

「はいはいもう人間として最底辺のおじさんは黙ってようね~。それじゃ次のマロ読んでいくよ~」

 

 

推しのVtuberへのスパチャに親のクレカを使ってしまいました。馬鹿でした……翌月の請求で親にバレてしまうとどうなってしまうかわかりません。二十万円を手に入れる方法はないですか?

 

 

「うわあ、逆にリアルな金額だなあ……」

 

バチャ豚もようみとる

バイトしろ

クレカの請求なんてネットでも見れるし、通知届くようにもできるんやからもうバレてると考えていいぞ。震えて眠れ

 

「まあ二十万でどうこう言ってるなら多分バイトできない中学生以下……って事にしておくけどさ。そもそも二十万集めた所でクレカの使用履歴は消せないんじゃない?」

 

そうだぞ

素直に謝った方がいいんですかね、これは……?

(消え)ないです

 

「謝った方がいいニキ、このマロ送った人でしょ。僕の配信でそんな健常者みたいなコメントしちゃダメだよ。……けど、この期に及んで謝らずに済む方法を探している辺り、君こっち側の才能あるよ。一緒に奈落に堕ちようね♡」

 

かわい子ぶるのは上手いな、お前ほんと

お前もこちら側に来ないか?

ゲヘナちゃんがVやったら破産する人続出しそう

 

「はー? 破産する奴が悪いでしょ。というか、Vにスパチャする事自体は否定してないからね。いっつも言ってるように僕達底辺は他人の事を考えるよりもまずは自分が幸せになる事を考えるべきなの。Vにスパチャする事が幸せならそれはそれでいいんじゃないの、別に」

 

それはそう

で、ゲヘナちゃんはVやる気はあったりするの?

スパチャに親の金使う奴は情けないだろ

 

「Vやる気があるなら、もっとみんなに媚びてるよ」

 

Vやる気なくてもいいからもっとサービスしてくれ

そもそも女さんなのに真っ黒画面とマロしか映さない当たり、視聴者の数なんて興味ないでしょ

いつもの塩対応

 

「お前らの事なんて気にしてないからねー。ここは適当に身にならない話を駄弁る場所だから。……ま、それはそれとしてさ。僕がVやるにしてもやんないにしても、いつか何も言わずにふらっといなくなる予定だから、その時はお前らも僕の事はスパッと忘れるんだぞー」

 

はいはい

忘れるような奴は貴重な時間使ってこんな底辺配信見てないぞ

忘れるか忘れないかは俺が決める事にするよ

 

「はいはいツンデレニキありがとうねー。で、なんの話だっけ?」

 

 

 

 

「ふぃ~。今日の定期配信終わりぃ~」

 

 配信が確かに終わった事を確認して、配信中は作っていたキャラを崩してうんと伸びをする。

 一週間に一度、視聴者からもらった悩みだとか失敗談を小ばかにしながら雑談する。そんなどうしようもない配信が配信者『ゲヘナちゃん』のメインコンテンツ。

 私が社会と繋がる唯一の場所……といってもそこまで思い入れはない。所詮いつ失ってもいいもの。そういうインスタントな社会で人と繋がっているぐらいが丁度いいダメ人間なのだ、私は。

 

「おなか減った……」

 

 時計を見ると午後8時。おおよそ2時間配信をしていたことになる。

 今日は早い時間に配信したからか、やけにキッズが多かったな。若い内からこんな肥溜めのような場所に浸っているのは感心しないけれど、そもそも私の少ないフォロワー数1200人から考えるとキッズなんて精々数人程度だろう。どうせ人生が辛すぎて自分をキッズと思い込んでいるおじさんの作り話だと切り捨てる。

 それよりも今はお腹が減った。二階の自室から出て一階へと向かう。

 親と死別してから随分と広くなった私の家。階段を降りる中で香辛料の匂いが鼻孔をくすぐった。……ああ、今日も来てるのか。

 

「あっ! あさひちゃん、配信おつかれー! ご飯できてるよ~。おつかれだけにカレー! なんちって」

「それ言ったの何回目なの、チカ」

「えへへ……」

 

 リビングに入ると、私服の上からエプロンをつけた姿の少女が私に気づいた。くるっとこちらを向いてにかっと笑う。

 彼女の名前は新谷千景。呼び名はちかげだからチカ。幼稚園の頃からの幼馴染で、私と違って都内の大学に通う現役女子大生。下手をすると、中学生に間違われさえする童顔と低身長がコンプレックス(私的にはここすきポイント)の女の子。

 私の家に通ってお世話してくれる幼馴染の女の子。私が男だったらこれだけで人生勝ち組だったな、と思っていると、チカが何かを思い出したように声を上げた。

 

「そういえば! なんで連絡見てくれなかったの?」

「連絡? Limeに通知はなかったけど?」

「わたしの連絡じゃないよ。ゲヘナちゃんのついついッターアカウントにダイレクトメールを送ったって聞いたよ?」

「え、誰? もしかして友達のトックティッカー? 陽キャの塊みたいなのとは関わる気ないし、そもそもダイレクトメールなんて通知切って見てないよ。ゲヘナちゃんはコラボも案件もお断り、社会の表舞台から切り離された孤独な存在だし」

「もう、そんな事わかってるよ。はいこれ」

 

 チカが差し出したのは白色の封筒。

 

「なにこれ?」

「スカウトだよー! やっぱりあさひちゃんの魅力に気付いてくれる人はいっぱいいるんだよー!」

「チカ、私がいらなくなったからって風俗に沈めようとするのはどうかと思うよ……」

「わたしがあさひちゃんを捨てるわけないじゃん! そうじゃなくてVtuber企業からのスカウトだよ!」

「……は?」

 

 風俗云々は冗談だったけれど、チカからのまさかの返しに思考が止まる。

 ……いや、正気か?

 

 



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2.スカウトの理由

 翌日。私は件の企業に足を運んでいた。

 渡された資料を読み、チカからスカウトについて詳細を聞き出した上で採用責任者とコンタクトを取るとすぐにでも面接がしたいと伝えられてしまったため、引きこもりの重い腰を上げざるを得なかったのだ。

 ちなみにだが、私が引きこもっているのに大した理由は無い。社会性を放棄した結果、外に出る理由がなくなってしまっただけだ。外に出る事自体に忌避感は持っていないので、面接のための外出も別に苦ではなかった。……前言撤回。精神的にはともかく、肉体的にはかなり苦しかった。8月後半のお外は冷房の効いた部屋が生息地の引きこもりには優しくない世界だ。ぶっ壊したくなる。

 受付で待つ事数分、仕事ができて堅物そうなイメージの女性社員が私を出迎える。

 

「ゲヘナちゃん様でよろしかったでしょうか?」

「あの、すみません。リアルでそう呼ぶのは勘弁してもらっていいですか」

 

 悪いのは全部私だけれど、ちゃんに様付けされると、こう……なんかすごく恥ずかしくなる。

 いくら最初から誰とも関わらない予定だったとはいえ、もう少しマトモな名前で活動しておけばよかったと後悔した。

 

「瀬戸です。本名の方で呼んでいただければ」

「かしこまりました。ただ、弊社所属になった場合には身バレ防止のためにタレント名でやり取りさせていただきますので、本名は弊社社員相手でも無闇に明かさないようにお願いします」

「はぁ」

 

 まだスカウトを受けるなんて言ってないんだけどなと思ったが、それは口にせずひとまず案内された小部屋に入る。

 

「それでは改めまして。本日は弊社『@Link』にお越しいただきありがとうございます。Vtuber事業タレント採用責任者兼総括マネージャーの山崎です。よろしくお願いいたします」

「頂戴します」

 

 名刺をいただいてしまった。へえ、名刺ってこんな感じなのか、ちょっとオシャレだな……

 ジロジロと見ている内に、山崎さんが会社概要などを話しだす。

 @Link。去年立ち上げられたVtuberタレントの運営が主要事業のベンチャー企業。現在の所属タレントは一期生の3人と二期生の5人を合わせた計8名。タレントの業務内容は主にようtubeを中心にした各種配信プラットフォームでの配信活動。そして所属タレントはバーチャルアイドルとして視聴者を楽しませる。

 昨日、ネットで軽く下調べしてきた内容を簡潔に説明された後に、山崎さんはこう切り出す。

 

「瀬戸様は新谷さんから既に聞き及んでいると思いますが、つい先月まで弊社は新たなタレント――3期生としてデビューするタレントのオーディションを行っていました」

「それは、聞きました。……失礼かもしれないですが質問してもよろしいでしょうか?」

「はい、なんなりと」

「単刀直入に伺いますけど、なんでそこから私をスカウトする話になるんですか? 客観的に見て私にスカウトされるに足る能力はないと思いますし、人気も大してないからそもそもどうやって見つけたのか本当に疑問なんですけれど……」

「そうですよね。新谷さんも弊社のオーディションを受けていた事は知っていますか?」

「ええ、それも聞いてます。……昨日、御社の書類を急に渡してきた際に全部話させました」

 

 ……とは言っても、下手な口笛混じりで誤魔化した質問も多かったからまだ隠している事があるんだろうけど。

 チカに私へのスカウトの書類を渡したり、山崎さんが『様』付けじゃなくて『さん』付けで呼んでいるあたり、察せられる事はあるけれど、それが私に繋がる理由がわからない。

 

「ああ、やっぱり聞いていなかったんですね……」

「何ですかその憐れむような目は」

「新谷さんは配信未経験者として弊社が求める人間性に実にピッタリな方でした。よく通る声に愛嬌の良さ、面接における受け答えも完璧。コミュニケーション能力はオーディション応募者の中でも群を抜いていて、配信環境さえ整えればすぐにでも弊社のタレントとしてやっていけると確信し、最終面接まで進めたのですが……そこで彼女、何をしたと思います?」

「何やったのかは知らないですけど、その疲れた顔を見ればわかります。ウチの幼馴染のせいで、ホントすみません」

「いえ、愚痴みたいなものですので。……彼女は社長の前で最終面接の30分間、全ての時間で瀬戸様の――正確にはゲヘナちゃんの事について語りました。あれは本当に良くできたプレゼンでしたね」

「うわあ……」

 

 何やってんだ、チカァ!

 遠い目をして語る山崎さんに同情すると同時に、幼馴染の奇行にドン引きする。昔から大事な場面で突拍子もない事をする子だったけど、まさかここまでだったとは……

 というか。

 

「……え、その流れで私をスカウトするんですか!? いや、その前にチカも採用する気ですよね絶対!」

「もし、そうだと言ったら?」

「頭おかしいんじゃないですか?」

「フフ……覚えていてください瀬戸様。Vtuberは、頭がぶっ飛んでる方が、人気が出るのです!」

 

 山崎さん、壊れちゃった……

 こんな真面目そうな人でも一年Vtuberのマネジメントをするとこんな風になっちゃうんだなあ、かわいそう。

 それはともかく、こんな勢いだけで押し切られるのは嫌だ。

 

「あのですね。自分で言うのもなんですけど私、炎上系配信者一歩手前って感じですよ。それに御社のタレントイメージとも合わないと思いますけど」

「もちろん新谷さんの紹介を受けてから、瀬戸様の配信アーカイブと直近の配信は確認させていただきました。週一の雑談配信に不定期のゲーム配信。視聴者を増やそうとする意思が見られない事以外は、オーディションに応募していただいた配信経験者の方と遜色ない能力を持っていると判断しました」

「いや、能力はこの際置いとくとしても……アイドルらしい配信って感じじゃないでしょう」

 

 山崎さんは私の言葉を鼻で笑ってこう言った。

 

「弊社タレントの配信でずっとアイドルらしい方なんて一人もいませんよ」

「本当にそれでいいんですか? ちゃんとマネジメントした方がいいと思いますけど」

「はい」

「はいじゃないが」

 

 なんで私の方が真面目に応答しているんだろう。そんな気持ちになったところで山崎さんが緩くなった雰囲気を正して話を切り出す。

 

「きっかけはどうあれ、瀬戸様に弊社のタレントとして活動していただきたいと考えているのは事実です。詳しい契約内容についてはこれから詰めていく事になりますが、いかがでしょう。お察しの通り、新谷さんも3期生として活動していただく予定なのですが……」

「それ、私が断ったら新谷もオーディションを落とすとかじゃないですよね?」

「いえ、瀬戸様の契約に関係なく新谷さんには弊社タレントとして活動していただく予定です。……もっとも本人に断られてしまえばそこまでですが」

「そうですか。それならお断りさせていただきます」

 

 ペコリと頭を下げる。部屋の温度が下がったような気がした。

 

「理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

「私の配信を見てもらったらわかる通り、金銭や承認欲求のために配信活動をしているわけではないので。御社の事業はとても魅力的だとは思いますが、私が活動する理由を見出せませんでした」

「……それでは一つだけ質問を。瀬戸様が配信活動をしている理由を教えていただければと思います」

 

 その言葉に、一瞬硬直してしまう。

 理由、か。とりたてて隠すものでもないし喋ってしまっても構わないだろう。

 

「社会と繋がるため、です。私が許容できる社会が誰もが他人に期待しなくて、他人の事をどうでもいいと思っていて、誰とも繋がらない社会で。一人ぼっちがただ集まっているだけの場所がなかったから自分でそれっぽいものを、ギリギリ許せるラインの社会を作った。配信をしている理由なんてただそれだけです」

 

 我ながら最低だなあと思うような事を躊躇いなく口にする。

 

「ああ、そういう事でしたか」

「新谷がなにか言ってましたか?」

「いえ、それは言わないでおきます」

 

 山崎さんがファイルから一枚の紙を取り出す。

 これは……キャラクターの三面図?

 

「これは……?」

「瀬戸様に担当していただく予定のキャラクターの三面図です。元々イラストレーターに制作の依頼はしていたのですが、新谷さんのプレゼンを聞いてから、より瀬戸様に合うようにキャラを修正しました」

「『秋宮ゆらら』……猫耳にロリにジト目でフード被った姿がデフォって。そんなイメージ持たれてたんですか」

「あくまでイメージですので。そして、こちらが新谷さんに担当していただく予定のキャラクターです」

 

 そうしてもう一枚差し出されたキャラクター三面図には活発な印象を与える犬耳の少女が描かれていた。

 

「『夏風たま』……犬なのに、たまですか。それよりもやっぱりコンビ売りの予定だったんですね」

「詳しいんですね」

「それなりにオタクコンテンツにも触れてきたので」

 

 予想はしていた。コンビ売りはこういうコンテンツだと常套手段だ。気に入った人材に配信者の友人がいて、私が納得しているかはともかく配信能力の面も問題はないと判断したなら、その関係を活かそうとするのもわからなくはない。犬と猫。コンビとしては割とポピュラーなものだろう。

 

「それで、これを見せられてどう反応すればいいんですか?」

「瀬戸様の考える通り、瀬戸様には3期生の中でも新谷さんとのコンビを前提に活動していただきたいのです。……そして、こんな事を言うつもりはなかったのですが」

 

 山崎さんが躊躇うような素振りの後に意を決したようにこう言った。

 

「弊社、そして私は新谷さんを弊社のアイドルとして輝く存在にしたいと考えています。新谷さんのための引き立て役(・・・・・)として最適だと思ったのが瀬戸様をスカウトさせていただいた一番の理由です」

 

 ……まさかここまでハッキリと言われるとは思ってなかったけれど。そうか、そういう事か。

 山崎さん、優秀な人だなあ。チカから私について何を聞かされたからこんな事を言おうと思ったのかは知らないけれど。

 思い至ったとしてもこんな事、そうそう言えないだろうに。

 

「……それなら早く言ってくださいよ。最初からそう言われてればもっと真面目に考えてました」

「初対面の、それもスカウトさせていただいた相手にこんな失礼な事を言うつもりはありませんでした。それに、タレントが直接関わっていないなら瀬戸様がお怒りになって内容を暴露された所で私の首一つが飛ぶだけで済みますでしょう。ダメで元々ですよ。……それで、この理由であれば弊社タレントとしての活動を検討していただけますか?」

 

 再度の問いかけ。答えはもう決まっていた。

 

「……詳細な契約内容、聞かせてもらっていいですか」

 

 経緯についてはともかく、目的について不満はない。

 私はチカの引き立て役としてVtuberになる事を承諾した。

 

 

 



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3.イかれたメンバーを紹介するぜ!

ご報告ととあるVtuberの方にお詫びします。
Vtuberの名前の方は実在のVtuberと名前が被っていないか確認していたのですが、主人公の名前に関しては「あさひって名前にするけど、苗字どうしようかな。よくある名前だしどこかしらで被りそうだけどまあ下調べなしで苗字決めてええやろ^_^」と軽い気持ちで苗字を決めたところ、偶然実在の、それもよりにもよってVtuberの方と同性同名であった事をここにご報告させていただきます。瀬戸あさひ様すみませんでした。今度動画見ます。
 感想にて教えてくださりありがとうございます。主人公の苗字はあまり使わないと思うので、とりあえずこのまま進めさせていただきます。よろしくお願いします。




 

 契約に関しての話はとんとん拍子に進み、当初の思惑通り私は@Linkの3期生タレントとしてデビューする事になった。

 それから同期とのディスコのやり取りなどを経て、1週間後には公式からの3期生デビューのお知らせを控えた頃。

 

冬城ことは アカン、ワイ死んだわ

秋宮ゆらら また冬城殿が死んでおられる……

 

 同期の一人である冬城(ふゆき)ことはがディスコの同期用チャット部屋で泣き言を言い出した。1日ぶり17回目の泣き言である。

 

冬城ことは ワイこういうの苦手なんやって…自己紹介で成功した事ないんや…ああ、小中高と忌まわしい記憶がどんどんと蘇ってくる…

秋宮ゆらら デビューは1週間後で、初配信はその更に1週間後なんだから。それだけネットで喋れるならなんとかなるんじゃない?知らんけど

冬城ことは ワイをネット弁慶って言いたいんか?

秋宮ゆらら その通りでござろう

冬城ことは 返す言葉もないでござる。。(;ω;)

 

 彼女は配信経験者枠としての採用なのだが、初めての同期の通話では震える声での自己紹介の後は「あっ」と「あの」と「いいと思う」しか言葉を発さなかった生粋のコミュ障を患っている。

 ……一応フォローをすると、紹介の際に言っていた配信者名で検索して配信アーカイブを見たところ、1人の配信なら問題なく喋れるどころかうるさいくらいのハイテンションだった。ここまで典型的なコミュ障と実際に付き合うのは初めてなのでなんだか新鮮だ。

 

春原さくや なに、またことちゃんが愚図ってるの?

秋宮ゆらら あっ、さく姐だ。仕事はどうしたの?

冬城ことは あっ、さく姐だ。仕事終わるの早かったね?

春原さくや 仕事なんてないわよバーカ!くたばれ世界!

 

 くだらないやり取りで時間を潰していると、もう一人の同期がチャット部屋に入ってくる。

 春原(すのはら)さくや。中の人は27歳にしてフリー(事務所所属経験なし)の声優くずれ。もちろん地上波アニメの声を担当したことはない。主戦場はエロゲのモブ声と中々大変な人生を送ってきた人である。

 

春原さくや 死ぬ死ぬ言いたいのはわたしの方よ! 貧乏声優人生10年でようやく掴んだチャンス!わたしは!田舎に!帰りたくない!!!

冬城ことは かわいそう…

秋宮ゆらら さく姐、こんどご飯奢ろうか?

春原さくや 頼み…いや、貴重な配信のネタが…でも久しぶりのマトモなご飯…んごご…

冬城ことは 真面目すぎるって!まだデビューもしてないんだから素直になりなよ!

秋宮ゆらら 冬城も一緒にこない?同期の仲を深めるって感じで。まだリアルで顔合わせしてないしさ

冬城ことは あっ…ソウッスネー…予定が空いてたら、ご一緒させてもらおうかなー

春原さくや こない奴の台詞じゃん

 

 とまあ、ここで改めて@Link3期生のイかれたメンバーを紹介するぜ!

 配信経験者枠――社会性を投げ捨てた世捨て人、高卒限界引きニート(21)、秋宮ゆらら!

 配信経験者枠――超絶コミュ障、ネットでなら現実の53万倍言葉を呟ける女、多分この中だと一番マシな奴、冬城ことは!

 配信未経験者枠――こなした仕事は両手の指で数えられる程度、親の仕送りとバイトで食いつなぐ声優くずれのアラサー女、春原さくや!

 

 いや、ヤバいって。(真顔)

 初めての顔合わせの時にも思ったけれど、やっぱり山崎さん頭がおかしくなってるよ! 3期生採用の4人の内、3人が限界女ってどういう事だよ! 頭がぶっ飛んでればいいってもんじゃないでしょ!

 

夏風たま また私の授業中に楽しくお喋りしてる!ズルい!

 

 このメンバーを集めた採用担当者である山崎さんの正気を疑っていると、3期生唯一のマトモな人間であり、私の幼馴染であるチカが担当するキャラクター、夏風たまがチャット部屋に入ってきた。

 ちなみに今の時刻は午後2時。マトモな学生や社会人はそれぞれの本業に励んでいる時間である。

 

冬城ことは 隙を見せたたまちゃんが悪い

春原さくや 授業…学生って良かったよね。無邪気に夢を追っていても許される…どうして私はこんなふうになっちゃったんだろうなあ…

夏風たま もう!ことちゃんもさく姐も暗くなりすぎだよ!デビューが近づいて緊張するのはわかるけど、いつも通りの自分でいけばなんとかなるなる!

冬城ことは うっ、陽キャの輝き…バタっ

春原さくや うっ、若さの輝き…バタっ

秋宮ゆらら デビュー前に同期同士の殺人事件が起こってしまった…

夏風たま 殺してないよ!? って今ので死んじゃうの!?

冬城ことは 神妙にお縄についてもらおうか

秋宮ゆらら 軽率に生き返るな

 

 その後も中身がほとんどないチャットに参加しながら、私はチカの事を考える。

 もちろんだがチカの引き立て役という目的を隠したまま、@Link所属のVtuberとして活動する事を報告すると、チカは同期として活動できる事を私がビックリするくらいに素直に喜んでいた。

 チカの奇行の真意はついぞ明かされぬままだ。私をVtuberとして活動させたいという事だけは事実なんだろうけれど……

 ……ともかく、目的はただ一つ。私の存在を使って夏風たまをVtuberとして輝かせる。そのためになら同期だって利用する……せいぜいやれる事なんて、たまが活動しやすいように同期の仲を取り持つ程度だから言い方としては最悪だけど、利用する気だという事に変わりはない。

 もう後がない地獄に片足突っ込んでいる限界女同士、仲良く頑張っていきたいものである。

 

夏風たま あっ、そうだ!デビュー記念にみんなで何処か遊びに行こうよ!さく姐のためにわたし、お弁当作っちゃうよ!

春原さくや そういうのは初配信の後に……いや、ごめんなさい。やっぱりご馳走になりますお腹が空いて死にそうですm( ; _ ; )m

秋宮ゆらら よし!これで同期3人で行けるね!やったあ!

冬城ことは ひん。見捨てないで…泣

 

 

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

初めてのついーとで大喜利をしないといけない風潮に私は流されない。

 

@Link3期生としてこの度デビューした秋宮ゆららだ。

都合のいい時だけリスナーの君たちには媚びていくつもりなので以後よろしく。

 

…あっ、よろしくみゃ❤️

 

#アットリンク

#はじめてのついーと

 

 



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4.初配信のその前に

誤字報告ありがとうございます。ゆららの一部表記がうららになっていました。原因:マスターデュエルのやり過ぎ


 @Link公式からの3期生のデビュー発表の後に、秋宮ゆらら名義のSNSアカウントが開設された。

 同じ事務所のVtuberの先輩達(一応、ディスコでは既に挨拶している)からのリプライに返答したり、ディスコで話すように同期のついーとにリプライするなど、ひとまずは特にウケを狙わず無難に運用している。

 そんな特筆する事がない日が続き、ついに初配信の日がやってきた。

 

「いや〜。ごめんね、あさひちゃん」

 

 もう数時間後には初配信が始まるという中で、私は、配信未経験者であるチカがちゃんと配信の設定ができているか確認しに彼女の家に来ていた。

 私にはクソ配信者としての経歴だけしかないが、腐っても配信経験者である事に変わりはない。配信機材やソフトの使い方は一通り把握している。マネージャーからは家の近い私に、それとなくチカの様子を確認してほしいと言われてるし、なんなら本人からも頼まれた。

 

「いいよ別に。チカの次が私の配信なんだから、チカが配信事故って面倒くさくなるのは私でしょ」

「たしかに! なら、いいバトンを渡せるように頑張らなくちゃね!」

 

 私達の初配信は1時間間隔でのリレー形式で行う事になっている。苗字の頭文字が春夏秋冬の順番でさく姐からチカ、私、冬城の順に配信を行う。

 冬城がトリで大丈夫か、と心配する声も多かった(9割本人の声)が、失敗してもそれはそれで面白そうだし、まあいいでしょ。トリだから失敗しても私達に迷惑かからないし。

 

「うん、設定は大丈夫。後はディスコに乗せたマニュアル通りにやれば配信開始するから」

「ありがとー!」

 

 パパっと確認した感じでは配信設定や機材に問題はなかった。

 配信のやり方自体はずっと前から周知していたし、非公開設定でテスト配信もしているから問題ないだろうとは思っていたけど、こうして確認して一安心だ。

 ふと、画面に映る『夏風たま』。中身()がなく微動だにしない2Dアバターを見る。

 

「ねえ、たま(・・)

「……なあに、ゆら(・・)ちゃん」

 

 私はパソコンを見つめたまま彼女に問う。

 

「私を(秋宮ゆらら)にしたかった理由はどれだけ聞いても教えてくれる気はないんだろうけどさ、あなた(チカ)あなた(たま)になりたい理由ってなんだったの?」

「どうしてそんな事聞くの?」

「だって、チカはこういうコンテンツにはあんまり関わってこなかったでしょ。面接でだって私のことばっかり言ってたみたいだし、本当にVtuberやりたかったのかなって」

 

 ……初配信の直前に言う事じゃなし、本当に今更だけど、そんな言葉が飛び出てくる。

 

「配信のためだけにマイクを買ったり、こんないいパソコンに買い替えちゃってさ、私をVtuberにしたいだけでVtuberになるんだったらここまでする必要ないでしょ」

「ここまでする必要あるよ。あさひちゃんと遊ぶためならこれくらいの出資は惜しくないの! あと、わたしがVtuberになりたかった理由は他にもちゃんとありますし……」

「え、本当? なんで?」

 

 意外だった。てっきり本当に私をVtuberにするためだけに自分も付き合っているのだと思っていたのだけれど。

 振り返ってじっと見つめると、彼女はモジモジとした後に口の前で指でバッテン印を作った。

 

「……恥ずかしいから、ないしょ」

「まーたかわいこぶって。私か男子にしか通用しないからね、そういうあざといのは」

「うぐ、ごめんなさい……」

 

 彼女は「最近、内緒にしてばっかりだなあ……」としょぼんとする。それを見て思わず私は笑ってしまった。

 

「ふふっ、いいよ別に気にしないで。どんな我儘言われたって今更だし。たまにはやりたい事があって、(ゆらら)にはやるべき事がある。うん、それだけわかればもう十分」

「……あさひちゃんはそれで大丈夫?」

「うん、大丈夫。そんな事よりさ、ここまで手伝ったんだからちゃんとした配信にしなよ?」

「もちろん!」

 

 自信満々にチカはそう言い放つ。この感じだと問題なさそうだな。

 私も自身の配信の準備をするために、チカの母さんに挨拶をしてから家へと戻った。

 

 

 さく姐の配信は大きな問題もなく終わった。声優としての活動歴(仕事歴とは言っていない)が長かったからかどうかは知らないが、初めての配信だというのにかなり話し慣れていた。

 大人しめのお姉さんキャラで初配信は通していたけれど、いつ化けの皮が剥がれるか楽しみだ。

 

「たまの犬耳はたこ太郎とお揃いなのです! いいでしょ〜」

 

かわいい

すこだ…

ぴょこぴょこしてる

これは清楚

 

 今はたまの配信を見ながら最終チェック中だ。

 画面上のたまは、笑顔のまま腕にかかえたデフォルメされた犬のマスコットと同期するように頭の犬耳を動かしている。私の猫耳もそうだけど、あれってどうやって動いてるんだろうね。

 それよりも私はその配信のコメント欄と視聴者数を見てげんなりしていた。

 

「視聴者数1万とちょっと。コメント欄もすごい早いし。いくら視聴者増やそうとしてなかったっていってもこんなに違うものなのか」

 

 さっきのさく姐の配信もこれくらいの人が来ていたけれど、企業勢というだけで初配信の盛り上がりは、ゲヘナちゃんとしての普段の配信の時より100倍近くは違っていた。ちなみにゲヘナちゃんとしての活動はスカウトを受けた日から一度もしていない。グッバイ、ゲヘナ。

 もちろんこれは私達の力ではなく、いわゆる箱推しと呼ばれる人たちが@Linkに期待して見に来ているからであり、もっと言えばここまで@Linkを成長させた先輩Vtuber達のお陰だが……

 たまには調子に乗って変な事言わないように注意しとかないと。そう思った時だった。

 

「好きなのはカレーとゆらちゃん!」

 

!?!?!?

てえてえ…

大胆な告白は女の子の特権

てえてえ…

 

 プロフィール紹介の途中だったのだろう、たまがとち狂ってそんな事を言い出した。あのさあ……

 

[秋宮ゆらら]カレーと同列に語るな

本人降臨www

カレーと同列の女

 

「あっ! ゆらちゃん! ちゃんと配信できてるよー! 準備手伝ってくれてありがと〜!」

 

たまゆらてえてえ…

初配信からてえてえの過剰摂取で死にそう

もう死んだゾ

 

 とりあえずコメントは打ち込んでおく。こういう絡みは視聴者にも人気だし。

 それはそれとして、まだ関係性も固まっていない初配信の中で唐突にぶっこまれた爆弾に頭を抱える。

 『夏風たまを人気にするための冴えたやり方』で安直に考えていた、炎上商法と媚び売りで集めた視聴者を、たまの方にトスする作戦はそのまま使うわけにはいかなくなった。

 たまからコンビ売りを示唆するような事を言っちゃったから、私との関係を簡単に切れないのが痛い。それに、私が変な炎上したらたまにも影響が出る可能性まである。アンチは絶対突っ込んでくるだろうし。

 

「はあ、前途多難だ」

 

 どうしてこんな事になってしまったのやら。

 Vtuberに誘われ、受けて、こうして始めるまで、何度も繰り返した自問自答の後に、私は思考を放棄して当初予定していた自分の初配信の構成を変更し始めるのだった。

 

 

 




百合だねえ…


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5.【初配信】始めるということ【秋宮ゆらら/@Link所属】

「はい、こんみゃ。@Link所属三期生の秋宮ゆららだよ~。これからよろしく」

 

かわいい

かわいいいいいい

声めっちゃ好き

うわ、めっちゃイメージ通りの声

 

 配信を始めて声を発すると、少し遅れて反応が返ってくる。ゲヘナちゃんとして活動していた頃とは比べようもないコメントの早さだったが、流し見する限りでは声に関しての文句はないらしい。

 

「ありがと、君たち。今日は初配信だからいっぱい猫被ってサービスしちゃうぞ〜。みゃ〜♡」

 

たすかる

あっ、すき

猫が猫を被るのか…

猫被りたすかる

やめてくれ、その甘い声は俺に効く

 

「君たち、チョロすぎない? ざーこ、ざーこ♡」

 

は?チョロくないが?全然好きになんてなってないが?

ざこ助かった

ネコガキがよ…

 

 残念だったな、オタク共。長年の研究で(秋宮ゆらら)のようなロリ体型の女の子に煽られるのが三度の飯より好きなのがオタクという人種だということは把握しているぞ。(偏見)

 

「ふーん、なんだこういうの好きじゃないの? 別に私はやめたって構わないんだけどな〜」

 

やめないで

やめないで

ごめんなさい

 

「アハハ、面白いなあ、君たちぃ。……ま、茶番はこのくらいにして、自己紹介やってこうかな」

 

 ソフトで作っておいた、私の立ち絵とデビュー時に出された公式からの紹介文を載せた画像を配信画面に出す。

 

「『遠い世界からふらっとやってきたさすらいの猫。1人でいるのが好きだと言うが、実は寂しがり屋。素直になれない自分を好きになってくれる誰かを探し求めた旅の果てに配信を始めた』……はーい、公式怪文書ありがとうございまーす」

 

いつもの怪文書

公式設定を捨てるのが早すぎる

こいついっつも怪文書書いてるな

 

「こんな紹介をされた私の身にもなってほしい。恥ずかしいし」

 

それはそう

公式くんさあ…

 

「それはそれとして、どう? 私、可愛いでしょ?」

 

かわいい

かわいいです!

かわいい(半ギレ)

 

 公式紹介文の横においた私の全身立ち絵と同じように首を傾げて見せると、コメントがかわいいで埋まった。初配信とはいえ視聴者の目が甘々なのは楽でいい。

 

「この拾っただぼっとしたパーカーがお気に入りなんだよね〜」

 

拾 っ た

ダボダボパーカーのロリは性癖すぎる…

華奢な女の子がゴツい服着てるのすこすこ侍

 

「ああ、そうそうこれをこうするとー……じゃん、フードを被る事もできる」

 

猫耳……

猫耳隠れちゃった

猫耳でちょっとだけフード動くのかわいい

 

「猫耳がデフォだと何やっても猫キャラなんだよね。そりゃあ私は生まれた時から猫だけど、たまには猫じゃない気分になりたいよね」

 

キャラ言うなw

猫要素捨てないで

猫キャラを享受しろ

 

「しょうがないにゃあ」

 

[春原さくや]雑にゃあたすかる

[夏風たま]にゃあかわいー!

同期もようみとる

 

「さく姐もたまもこんな雑営業配信見てないで冬城にチャットでもしたほうがいいんじゃない? きっと緊張して裏で吐くほど泣いてるよ」

 

[冬城ことは]泣いてねーし!

同期みんな見とるやん

早速イジられてて草

 

 その後は、用意してきたスケジュール通りに配信用のハッシュタグなどを決めて、次の冬城の初配信まで後十数分程度になった。

 

「それじゃあ、とりあえずノルマは終わったし、残り時間はちょっとだけマロ食べてこうかなー……うわ、カプ厨多っ」

 

うわで草

カプ厨言うたるなw

 

 時間潰しにリスナーからのマロを返答していこうと確認すると、新着で届いていたマロは少し前のたまの配信のせいで殆ど同じ内容だった。

 

「今マロ見たけど、みんなおんなじ事で質問しすぎじゃない? はい代表してこれ」

 

 

こんみゃです!同期のたまちゃんとの関係がわたし気になります!

 

 

「あんな雑てぇてぇでこんなに反響あるんだなあ」

 

雑てぇてぇwww

初配信で話題も少ないから仕方ない

実は俺も気になってた

 

「まあ、同期で私とたまだけケモミミなあたり察してくれって感じだよね。これからもっと濃厚な営業てぇてぇやってくつもりだからよろしく」

 

うおおおおおおお!!!

濃厚な営業…?

営業てぇてぇはそれはそれでたすかる

最初から営業宣言するのは逆に新しい

いいや、これは営業に見せかけたガチだね

 

「ガチじゃないでーす。はい次」

 

 

君たち呼びたすかる

 

 

「残念だけど次の配信からはお前ら呼びでーす。はい次」

 

お前らたすかる

そんなあ…

舌っ足らずなお前ら呼びかわいい

 

 

同期の好きなところを教えてください!

 

 

「まだまだ一緒にいた時間は短いけれど……とりあえずさく姐は同期の中で最年長なのに一番ポンコツなのがかわいいね。初配信だとできるお姉さん風吹かせてたけど騙されちゃダメだよ」

 

[春原さくや]おい

あっ…

圧がすごいw

 

「やべ、まだ見てる。とりあえずほっとこ。たまは……たまはそうだなあ」

 

 言葉に悩む。どうせコンビ売りしていくんだし、多少はサービスした回答でもいいかな。

 

「どこにも行く場所がなくなった私の手を引いてくれて、私を私にしてくれた大切な友達、かな。一番好きなのはそういう自由なところ、なのかなあ」

 

ガチやん…

営業とはなんだったのか

唐突なクソデカ感情で草

たまゆらてぇてぇ…

公式怪文書が怪文書じゃなかった…?

 

「あっ、ごめん、今のなし。顔が好きって事にしといて。私と君たちだけのヒミツだよっ♡」

 

無駄ですよ

録画した

[夏風たま]ジー(^ω^)

嫁もようみとる

たまちゃんご満悦で草

 

「あー、やっぱり見てる。たま、勘違いしないでよね、配信でサービスしただけだからね」

 

サービスたすかる

ツンデレたすかる

ツンデレかわいい

 

「はいはい。あと冬城は……そうだ。めちゃくちゃ面白い子だよ。ディスコで話している時も私達のムードメーカーって感じでさ。きっとこの後の初配信もすごく面白いんだろうなあ、楽しみだなあ……」

 

プレッシャーをかけていくw

[冬城ことは]秋宮ァ!

ひどいキラーパスが特に関係ない冬城ちゃんを襲う

 

「あっ、いい時間になったんで初配信はここで終わりまーす。この後は3期生初配信の大トリ、冬城の爆面白配信が始まるから君たちもそっちを見に行ってくださーい。それじゃあ君たち、おつみゃー」

 

おつみゃー!

おつみゃーw

おつみゃー、冬城ちゃん頑張れw

 

 マイクをミュートにし、エンディング用の画像とbgmを流す。そうして1分後には配信を終了した。

 

「ふぅ……ちょっとやり過ぎたかな」

 

 一息ついてから配信内容を振り返る。

 とりあえず媚び気味で。たまとの関係性もちゃんと出していく。最低限の目標は達成したけど……これで人気が出るかなんてわからないしなあ……

 まあ、私はクソ配信のプロであっても配信のプロじゃないし。これまで気にしていなかったネット上での人気の出し方はこれから試行錯誤していかないといけないな。

 

「……ふふっ」

 

 同期からチャットがきて少し笑ってしまう。あれだけ適当にイジってもそれはそれで面白いと思っているらしい。

 あんまり手応えを感じてはいないけど、とりあえず頑張っていこうと思うのだった。

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

初配信おつみゃ。次は冬城の初配信、大トリだぞ!

 

ちなみに配信後のディスコ

春原さくや ゆらちゃん?お話があります

冬城ことは 私も!この後どうするのさ!

秋宮ゆらら 私にはないでーす

 

夏風たま ゆらちゃん、わたしも好き。だいだいだいすきだよ

秋宮ゆらら 愛が重てえ…

 

 

 

 



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5.5.@Linkについて語るスレ

掲示板オンリー。本当は前話に入れるつもりだったけど文字数多かったので分けました。


 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

178:名無しのV ID:Ex9H1D/EV

いやあ、3期生初配信良かった

 

181:名無しのV ID:YIKSqLmvf

春:隣の部屋に住んでそうなお姉さん

夏:妹系元気いっぱいワン娘

秋:ダウナー系営業ネコガキ

冬:おしゃべりクソ陰キャ

3期生も個性豊かだなあ…

 

188:名無しのV ID:yeu0A6ZNz

後半2人さあ…

いや、一番好きなのはゆららだけど。媚びっ媚びの声と落ち着いた声どっちも好き。見た目もドストライク。オレンジ色の外ハネショートヘアに翡翠色のジト目、ルーズソックスになんといっても華奢な体を膝の上まで隠す萌え袖黒パーカー…最高のロリ過ぎる…わからせてえ…

 

193:名無しのV ID:+1Ocq1/r2

ゆらちゃん、あのぶっかぶかのパーカーの下はスパッツしか履いてないって防御力低すぎでしょ。3D化の時どうするんや

 

199:名無しのV ID:FsPgTOI6z

首元はあんまり開いてないし、3D化してスパッツになるのはみんな同じだから無問題

けどえっちなのはえっちだと思います。

それはそれとして俺達のパンツを返して

 

200:名無しのV ID:uZnBVgylZ

ネコガキより春原さんの方がワイの性癖にくる。縦セタのおっとり系お姉さん…これは清楚枠やな!

 

203:名無しのV ID:v5j5fxhFY

ゆららの配信でめっちゃ圧かけてたぞ

 

209:名無しのV ID:t0KeTp5iq

どうせみんな清楚じゃなくなる。俺はVに詳しいんだ

 

213:名無しのV ID:rEHOI5m++

「おい」は笑っちゃった

 

216:名無しのV ID:xF4pwWl/X

真に清楚なのはどう考えてもたまちゃんでしょ

 

218:名無しのV ID:xSCmgKqx1

スレてない感じがいいよね…学校制服のシャツとカーディガンの姿があんなに似合う子Vでは少ないでしょ

 

226:名無しのV ID:KD6/ASS07

本人もあんまりネット慣れしてないって言ってたな。トークは流暢やったけど、言われてみれば配信ソフトの扱いには手間取ってる感じあったわ

 

228:名無しのV ID:dziKE2h6W

とにかく可愛いの暴力って感じ。あと同期の中でもゆらちゃん好きすぎなの笑っちゃった。

 

232:名無しのV ID:J/hlo+qds

ゆらら「営業だぞ」

 

238:名無しのV ID:aedEGstvK

ファッキューユッラ

 

248:名無しのV ID:k4oaXb5mi

ゆらら「たまは私を私にしてくれた大切な人。好き」

 

255:名無しのV ID:K1iVFRrTl

サンキューユッラ、サンキュータッマ

 

263:名無しのV ID:QlnRiVSrj

ちょっと改竄されてるの草

 

273:名無しのV ID:hidAxZiof

ネコガキの方がクソデカ感情なの笑っちゃうんすよね

 

275:名無しのV ID:xx85pMVqs

百合豚ワイ、初配信からてぇてぇの過剰摂取で死亡

 

285:名無しのV ID:5yv8oOKv4

それでもワイはやっぱりことはちゃん!

 

288:名無しのV ID:gy3n+c3ok

同期がコメントする度に急にどもりだすのほんと草

 

294:名無しのV ID:Q2TX+U0JD

秋「やば!お前の配信めっちゃ人気やん笑」

冬「あっ…スゥーッ、あ、秋宮、あ、後でおぼえとけぇ〜」(よわよわ伸ばし声)

 

300:名無しのV ID:i+nokbptB

ネコガキさあ…

 

305:名無しのV ID:EeT67bpIQ

夏「ことちゃん綺麗な声!」

冬「あっ、えっと。あり、ありがと…ござましゅ…」

 

315:名無しのV ID:XsFQMDs3X

うーん、これは完全に陽キャに話しかけられた陰キャ

 

321:名無しのV ID:V/5U5v6Tz

なぜ同期に返事するだけで言葉がここまで覚束なくなるのか…これから大丈夫か?

 

328:名無しのV ID:DWmjfUJr/

見た目は着物美人な女の子やのになあ…口を開くとオタクムーブか隠キャムーブのどっちかが出るのほんま…

まあキャラ紹介的にも合ってると思うけど

 

330:名無しのV ID:PIomm4WzW

『昔ながらの屋敷に住むお嬢様。甘やかされて育てられたため性格はワガママ。好きなものはゲームに漫画と非常にオタク趣味で大和撫子には程遠い。趣味が高じて配信を始める事になった。』

珍しく怪文書が怪文書じゃないパターン

 

336:名無しのV ID:O3S8XBk7+

それでもソロでやってる時の安定感は流石、ニヤ動上がりの配信者って感じやわ

 

337:名無しのV ID:/vXTRJFE1

あんま表では言うなよ?

ニヤ動に上がってた転生前の動画見たらあんまりにもまんまで草生えたけど

 

340:名無しのV ID:EPF5YTv1m

同期の中で冬城だけ魂即バレしてるの草生えたわ

 

342:名無しのV ID:8an+8JI2l

他3人もニヤ動の配信者上がりなんか?

 

352:名無しのV ID:ASzlwOk2i

配信経験者から採用した方が普段の配信のクオリティは保証されるからな、その可能性は高い。

たまちゃんはネット慣れしてなさそうな感じだから、アイドル関係から引っ張ってきてる可能性はある

 

354:名無しのV ID:vvmLCc/TN

さくやさんとゆららちゃんはめっちゃ自然に配信してたけど、どうにもキャラかなり作ってるっぽいし、声質ぐらいしか判断材料なさそう

 

358:名無しのV ID:UQTBErzs2

アイドル…?

 

363:名無しのV ID:4oYWQzmDK

事務所の先輩はみんな素晴らしいアイドルやぞ^ ^

 

368:名無しのV ID:uSxlmejq2

ラナ様、自演は良くないですよ!

 

378:名無しのV ID:jKL41bsCK

これからは3Dの配信も多くなってくるだろうし、そっちの業界からも人は来そうだよな

 

383:名無しのV ID:urIfiqY2+

《悲報》箱推しワイ、3期生がみんな魅力的なせいで睡眠時間がさらに削られる

 

385:名無しのV ID:mUXBDL5GI

それはもう2期生のあたりからそうだったし…Vの箱は他にもいっぱいあるしな。外部コラボもそのうち見てみたい

 

392:名無しのV ID:QxRf4pK1p

その前にまずは同期コラボだけどな。たまゆらのコンビは安定してやれそうだし、さくやさんも大丈夫そうだけど…ことはちゃんはダメそうですね

 

393:名無しのV ID:WmAXCMTCI

これから慣れてくやろ…(震え声)

 

402:名無しのV ID:MHuhLkI7s

箱内の先輩ともコラボしていくんやから、まずは同期で慣れてもろて

 

409:名無しのV ID:K7pCKbmpy

同期3人とも面倒見良さそうやから何とかなるって。明日からの配信が楽しみやな!

 



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6.相談

 

うにたら子@unitara_ko

うちの子可愛すぎんか…?

#あきみゃー監視中

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

返信先:@unitara_koさん

ママ、産んでくれてありがと。ちゅっちゅっ

うにたら子@unitara_ko

返信先:@Akimiya_Linkさん

あっ、しゅき…(そんな雑なキッスで、私を落とせると思うなよ!٩(๑`^´๑)۶これから配信がんばってね!)

 

 配信終了後、私の配信に反応してくれていたうにたら子先生のついーとに返事をしておく。

 このうにたら子先生は、イラストレーターにして秋宮ゆららのイラストを担当した絵師さんだ。これからも何かとお世話になるので、なるべく関係は良好にしておく方が良いだろう。

 それはそれとして、初配信の後思う所があった私はマネージャーに連絡をとっていた。

 

秋宮ゆらら お疲れ様です。マネージャー

ちょっと相談いいですか?

マネ2連絡用 秋宮さん、初配信お疲れ様でした!とっても良かったですよ!

それで相談とは…?

 

 相手のマネージャーは面接の時に対応してくれた山崎さんとは別の方。元々は2期生の先輩タレントである「エレノア・レッドハート」の担当マネで、この度私のマネージャーも兼任する事になった中村さんという女性のマネージャーだ。

 

秋宮ゆらら これからの方向性をどうしようかと

最初は炎上商法でとりあえず人を集めようと考えていましたが…

たまと距離を詰めすぎたので他の方法でいこうと考えています

マネ2連絡用 意図して炎上しようとしないでくださいよ!?

秋宮さんは我が社の大切なタレントなんですからね!

 

 怒られてしまった。プンプンと頬を膨らませている様子が思い浮かぶ。

 

マネ2連絡用 山崎さんもそこまでやってもらうつもりじゃ絶対ないですから…

普通に活動していく中で夏風さんとユニット売りしていくくらいで考えてください

秋宮ゆらら 申し訳ないです

もちろん会社に迷惑かけない範囲で私だけ炎上する形で注目を集めるつもりだったのですが…

マネ2連絡用 ダメです!!

秋宮ゆらら はい

とにかくあんまり気軽に炎上できなくなったので、なにか他の方法で注目を集めたいのですが、いい方法はありませんか?

マネ2連絡用 気軽じゃなくても炎上はやめてほしいのですが…

あと、そんなに心配にならなくても、秋宮さんは普通に配信すればちゃんと人気が出ますよ!

この1年弱、マネージャーとしてライバーのみなさんを見てきた私が保証します!

 

 意外だったが、中村さんから見て私の配信は高評価だったらしい。

 その言葉自体は本当なのだろう。ここで私を安心させるためだけにそんな事を言うのはマネージャーの仕事としてはよくないだろうし。

 でも……

 

秋宮ゆらら それでは認識が甘いと思います。

よその箱の『ふるから』さんは2週間前に新たに8人デビューして40人のVtuberが在籍しています。向こうは箱内で男女コラボができるというこちらにはない強みがあります。Vが男女の絡みで炎上するような時期が過ぎ去った以上、向こうの勢力はどんどん大きくなっていくかと。

個人勢だって馬鹿にはできません。むしろ企業のバックアップなしで企業勢並みの登録者がいるライバーは企業勢以上の脅威です。

とにかく、今でさえ人材は供給過多で、リスナーの時間が足りなくなってきているというのに先輩方や@Linkの社員さん達が築いてきた人気にあぐらをかいて、ありきたりな配信をするだけでは衰退を招くと私は思うのですが…

マネ2連絡用 そこまで思いつめなくていいですから…

そういうのは私達マネージャーや会社の方で考えますので、秋宮さんは配信の時と同じくらいもっと気楽に活動してください

秋宮ゆらら はぁ…それでいいならいいですけど…

 

 まあ、私の考える事なんて私よりも長くこの業界にいたマネージャーの方々も考えてるか。たまとのコンビ売りだってその対抗策の一つだろうし。

 

秋宮ゆらら 大きな方向性を考えなくていいのは楽ですが、どっちにしてもこれからどうやって人気を集めていくか決めてないんですよね

とりあえずたまと雑にオフコラボしようとは思ってますけど…ニヤ動のサブ垢を作って同期の切り抜き動画を投稿するとかどうです?

マネ2連絡用 オフコラボはどんどんやってください! ただステマはやめときましょう

切り抜きを自分で作れるなら自チャンネルで普通に投稿しませんか?

秋宮ゆらら 自分のチャンネルで動画を出しちゃうと外部の人が入ってこないイメージがあるんですよね…どうしても内輪ノリになるというか。

あと、それだけだとコンテンツとしては弱いような気もします。それに私のチャンネルで他の人の切り抜きって投稿していいんですか?

マネ2連絡用 各々に許可を取ってもらえれば大丈夫ですよ。

ただコンテンツとして弱いというのは、確かにそうかもですね…

あっ、秋宮さんが同僚として切り抜きに反応するとかどうでしょう? 他の切り抜きチャンネルには絶対にマネできない強みですよ。

秋宮ゆらら それいいかもですね。ニュースみたいな形式で、朝配信のワンコーナーにした方がいいのかな。ただそれだと切り抜きの気軽さが失われちゃうし…ちょっと検討してみます。アイデアくれてありがとうございます

マネ2連絡用 いえいえ!これもマネージャーの仕事なので!

 

 中村さんのアイデアはすごく正攻法な感じだった。確かに私がうまくやれれば一つのコンテンツにもなるし、切り抜きで紹介した同僚の方にも人を流せる。

 自分の切り抜き動画を出しづらいといった欠点はあるが、そもそも自分の切り抜き動画はあまり出したくなかったから問題ない。むしろ出さない理由があるのは助かるくらいだ。

 やっぱり配信業を仕事にしている人の発想は違うなあと感心する。

 

マネ2連絡用 秋宮さんがこんなに考えて配信するイメージはあんまりなかったですけどねw

秋宮ゆらら 考えて配信してこなかったから困ってるんですよ!相談に乗ってくださってありがとうございました!ヽ(`Д´#)ノ

 

 ひとまず、マネージャーへの相談をそこで終える。

 とりあえず、たまに人気を集めるためのネタはできたし、私自身はどうにも普通に配信した方がマネージャー的にはウケがいいようなので、しばらくの間は奇をてらった事はしないで活動してみようと思う。

 一安心した所で配信の感想をエゴサするために、ついついッターを開く。そこで目に飛び込んできたのは……

 

夏風たま@Natsukaze_Link

デビュー記念!

明日19時からペヤンゴ涅激辛完食耐久やります!

やるぞやるぞー!

 

 初配信直後にしてリアクション芸人がやるような配信を強行しようとする幼馴染の姿だった。

 清楚系アイドルの姿か? これが……

 呆然としている場合じゃない。再びディスコを開き、今度は同期のチャットルームに入る。

 

冬城ことは すげーっす、たまさん…ワイにはマネできねえ…

秋宮ゆらら いや何やってんのたま!?

夏風たま いやあ我ながらいい案だよね!

初配信直後に変わった事すれば注目集めれるでしょ?

秋宮ゆらら それはそうかもだけど…

そういう体張った配信はさく姐と冬城に任せようよ。たまは純真無垢な清楚系アイドルでがんばろ、ね?

冬城ことは おいこら

春原さくや まあ確かにそうだし、人気のためならなんだってする覚悟はあるけど…でもああいうカップ焼きそばって高いのよねえ。食費がが…

夏風たま やーだよー

 

 くそう。もうチカはやる気満々だ。経験上こうなったチカは止まらない。

 なんでたまの担当マネージャーは止めてくれなかったんだ。このままではたまが色物アイドルになってしまう……

 なにか、なにかここからでもたまのイメージを保ついい方法はないか……?

 ……ひとりでやるからおかしく見えるんだ、よし。

 

秋宮ゆらら さく姐、冬城、何でもするって言ったよね?

冬城ことは いや、ワイは言ってないですが。

秋宮ゆらら ……3期生ペヤンゴ完食リレーやろう。さく姐の分もペヤンゴ買うからさ

冬城ことは えっ

春原さくや 面白そうだし一食浮くなら喜んで!

冬城ことは えっ

夏風たま 本当に!?みんなもやるの!?やったあ!実は一人でやるのは不安だったんだよね…

冬城ことは えっワイもやるんですか!?

秋宮ゆらら みんなで一緒に地獄に堕ちよう

どうせこれからの活動で虫とか食わされるんだろうし、激辛焼きそばなんて序の口だよ

冬城ことは えぇ…こわ…

秋宮ゆらら 同期の絆、ここで見せていこうよ

冬城ことは 同調圧力の間違いでは?

秋宮ゆらら 困難を共に乗り越える事で絆はより強く結ばれていくんだよ、一緒に頑張ろう?

冬城が頼りなの。冬城にしかできないの!

冬城ことは そうかなあ…そうかも…?

夏風たま ようし、みんなで頑張ろー!

春原さくや 悪女がおるで

 

 というわけで。

 

春原さくや@Sunohara_Link

デビュー記念!

たまちゃんの1時間前、明日の18時からペヤンゴ涅激辛完食耐久に挑戦します。

同期リレー企画です!リスナーのみんなも応援してね?

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

デビュー記念同期リレー企画のお知らせ

たまの1時間後、明日の20時からペヤンゴ涅激辛完食耐久やるぞ。

ところで猫に辛いものを与えちゃダメなんだよね…

みんな、ワイの死にざま見てて…

冬城ことは@Fuyuki_Link

デビュー記念同期リレー企画らしいです。

明日の21時からペヤンゴ涅激辛完食耐久…???

まあ、なんとかなるでしょ(震え声)

食べきれなくても怒らないでね?(ウルウル

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

返信先:@Fuyuki_Linkさん

ダメです

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

やあだあああああ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。

 

 次の配信内容が決まった。

 




配信タグは最初#みゃー速VIPにするつもりだったけど、実際にあったからやめました。


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7.【ペヤンゴ完食耐久】猫は香辛料がダメってそれマジ?君たち、今までありがとみゃ…【秋宮ゆらら/@Link】

 

「野良とものお前ら、こんみゃ〜。@Link3期生、秋宮ゆららだよ〜」

 

こんみゃー

みゃーみゃー

ゆらちゃん死なないで泣

ここにゆららの墓を建てるみゃー…

ゆらちゃんきたみゃー!

 

 私の立ち絵と「※猫に香辛料を与えてはいけません」とでかでかと書かれた文字の画面で配信を始めるとコメント欄の多くが語尾にみゃーをつけて私を出迎える。

 私の配信ではみゃーをつけて出迎えるようにと初配信でリスナー(ファンネームは野良とも)に言い聞かせたからだ。

 

「コメントもようみゃーみゃー鳴いとる。恥ずかしくないの?」

 

お前が、やれって、言ったんやろがい!

俺は泣いた

キレそうで…ございます…

優しくしてたらつけ上がりやがって…

は?

 

「きゃー、こわーい♡」

 

かわい子ぶって誤魔化すな

かわいい

このネコガキ…!

甘えるな

 

 正直一回梯子を外してみたかっただけだったのだが、思った以上にノってくれるリスナーが多くて驚いた。コメントの速さがとんでもないことになってる。

 

「まあまあ、落ち着きなよお前ら。これからみんなが待ち望んだわからせタイムだからさ」

 

自分でわからせ言うなw

待ち望んだ(2回目の配信)

初配信の次にやる事じゃないだろw

わからせうおおおおおおお

 

「生意気なネコガキが香辛料にわからされるところ、お前ら見ててね……

というわけで今日は3期生デビュー記念の同期リレー配信、このペヤンゴ涅激辛を完食するまで終われない配信やってくぞー」

 

そこまでやれとは言ってない

わかるな

死なないで…

 

 画面に事前に撮っておいたお湯を入れる前のカップ焼きそばの写真を映す。

 

「今下でお湯入れて作ってもらってるからさ。出来上がるまでちょっと雑談しよう?みんなはさく姐とたまの配信見てた〜?」

 

見てたよ〜w

見てた!

たまちゃんは可愛いリアクション見れて満足だった

さくやさんは…なんなんだろうねアレ

 

「私もビックリしたよ。さく姐、食レポしながら余裕で完食しただけじゃなくて、予備のもう一個も食べきっちゃうんだから。味覚が壊れてて食い意地も張ってる女がリレー企画のトップバッターでゴメンね」

 

ひっでえ言われようw

[春原さくや]ご馳走様でした。

あっ…

やべ…

 

「さく姐見てんじゃん。私が奢ってあげたペヤンゴ美味しかったみたいで何よりだよ。もっと感謝するみゃあ」

 

やさしい

やさしい…?

みゃあ助かる

それは普通の人なら嫌がらせなんよ

 

「たまは……良かったよね。こう、なんというかな。悲鳴をあげててもずっと可愛いんだよね。わからせ勢の気持ちがちょっとだけわかったような気がする」

 

お前もこちら側にこないか?

ゆらがわからせ勢になっても、俺たちはゆらをわからせるからな

綺麗な悲鳴も汚い悲鳴も助かる

 

「わからせ勢こわ。近寄らんとこ……」

 

すーぐ梯子外す

 

 部屋のドアがガチャリと音を立てて開く。

「ゆらちゃん、持ってきたよ〜!」

 

!?

たまちゃん!?

えっ!?

 

 声だけでみんな気づくらしい。コメント欄にビックリマークが並んでいる。

 

「たま、ありがと。というわけでみんなー、ゲストのたまです」

「野良ともの皆さん、こんたまー! それとさっきぶり! ゆらちゃんの同期の夏風たまでーす!」

 

初コラボがこれ!?

唐突過ぎるw

オフコラボ!?告知なしで!?

えっ、同棲してるんですか!?

やっぱりガチやん…

百合豚を軽率に殺すな

 

 たまが名乗るとコメント欄の速度が更に上がった。おもろ。

 とりあえず、用意していたたまの立ち絵を画面に出す。顔認識用のカメラがないので静止画だ。

 

「多分まともに配信できなくなると思ったから先にたまに助けてって言っておいたよ。お前らこういうの好きでしょ? 私えらくない?」

 

えらい

助けてって言えてえらい!

好き

だいすき

 

「まだ口の中がヒリヒリしてるけど……ゆらちゃんに助けてって言われたら飛んででも駆けつけるよ」

 

やさしい

てぇてぇ…

イケメンだぁ…

配信終わってからまだ10分くらいしか経ってないし、ほんとに飛んできたくらいじゃんw

同棲してるんか?

 

「ど、同棲!? 付き合ってはいないよう……」

「ご想像にお任せしまーす」

 

想像の余地を残してくれてありがとう

付き合って『は』ないんですね、ふーん

てぇてぇしか言えねえ…

ふーん、えっちじゃん

 

 とまあ、百合豚に餌を撒くのはこれくらいにして。

 

「まあ、あんまりダラダラ話してたら焼きそば伸びちゃうからね。実食いきます……たま、なんか入れた? タバスコとか追加で入れたでしょ」

「入れてないよー?」

「嘘じゃん。もう匂いだけで辛いんだけど。これ猫が食べちゃダメじゃない?」

「それ言ったら普通のペヤンゴも猫は食べちゃダメだと思うよ」

 

配信タイトルと画面見ろ

それはそう

 

 まだ口にも入れていないのに刺激を感じる。

 見た目は普通のカップ焼きそばだと言うのに。これが数々のようtuberを亡き者にしてきた悪ノリ商品の力か……

 

「たま〜♡あーんしてあげるから……」

 

 甘い声を出して、たまに半分食べさせようとする。

 が、しかし。

 

「はい、あーん♡」

 

 それを読んでいたかのように、たまが先に焼きそばをこんもりと掴んだ箸を私に差し出していた。

 

「あの、たま……」

「ちゃんとリスナーのみんなに教えてもらった牛乳、生卵、ヨーグルトも持ってきてるよ。一緒にがんばろ?」

「ひん……君たちー、野良ともの君たちー。たまと一緒に協力して完食する方が見たいでしょ? そっちの方がてぇてぇでしょ。ね、見たいって言って〜」

 

ズルするな

ちゃんと一人で食え

ゆらちゃんが苦しむ姿が見たい

は?

都合のいい時だけ俺たちに媚びるな

てぇてぇ…

レギュレーション違反やめろ

 

 コメントに助けを求めるが当然のように無視される。

 

「そ、それが配信2回目の新人Vtuberに対する態度かー!」

「はいはい、時間もないからゆらちゃんいくよー」

「待っ……むぐ、ん……みゃあーーーっ!?!?」

 

 無理矢理口の中に焼きそばを突っ込まれ、数秒後に口内を襲った刺激に私は猫らしく悲鳴を上げたのだった。

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

346:名無しのV ID:2kVJTeYRd

3期生ペヤンゴリレーようやく終わったな…

 

349:名無しのV ID:1GYTOeXRq

冬城だけグズって2時間かかった上に同期全員集結したの笑っちゃった

初同期コラボがあんなんでいいのかw

 

351:名無しのV ID:9w0hXuO3D

秋「ほれ、がんばれ♡がんばれ♡ 私もやったんだからさ」

冬「秋宮がやろうって言ったんじゃんか! もうやだー!」

人見知り超えてことちゃんが大声出したここで笑っちゃった

 

352:名無しのV ID:PUOpMRz++

やっぱりネコガキ提案だったのほんと草

 

355:名無しのV ID:DXlyl4CyZ

まあ、他に言い出しそうな人いな…いや、さくやさんはあの食べっぷりだと言い出しててもおかしくない。

 

360:名無しのV ID:vtv3ziR6N

ネコガキに焼きそば奢ってもらった上に味音痴で食い意地が張ってる女(ネコガキ証言)

清楚どこ?

 

362:名無しのV ID:ZBpvktj5j

清楚は死んだもういない

 

366:名無しのV ID:vs7l6KJkq

夏「はいヨーグルトだよ〜」

秋「みゃ〜」

夏「生卵混ぜておいたよー」

秋「ありがとみゃー…」

夏「はい、あーん」

秋「みゃ……みゃあぁあ!」(床を転げ回る音)

夏「ゆらちゃんかわいいなあ…」

 

夏風たま、ゆら虐の民だった事が判明

 

370:名無しのV ID:Bo8394f59

ほら、好きな子ほど虐めたくなるってよく言うし…

 

372:名無しのV ID:Ca+cFRrYc

唐突なオフコラボ助かりすぎた

 

377:名無しのV ID:glfkG7PnV

最後の方、ゆららが人語忘れてたの笑っちゃった

 

381:名無しのV ID:YXLo5jj7A

因果おほー

 

383:名無しのV ID:qvX+KfUh6

たまちゃん自枠では健気に頑張る子って感じなのに、ゆらちゃんの前だとなんというか見た目相応に子供っぽいんだよな、かわいい。百合豚に目覚めそう

 

385:名無しのV ID:0Y+1TUbYu

豚は出荷よー

 

388:名無しのV ID:gust2GFsb

(´・ω・`) そんなー

 

 

 

 

 

 

 







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8.リレー企画が終わり……

 

「みんなお疲れ〜!」

 

 冬城のペヤンゴ完食耐久配信が終わってすぐ、たまがディスコの通話を通して同期2人に呼びかけた。

 私の配信が終わった後、そのまま私の家で2人で冬城の配信を見ていたのだが……冬城が途中で駄々をこね始めたのでさく姐と一緒にディスコ通話で応援する事になったのだ。

 

『お……』

『お疲れ様。すごいわね、ついついッターのトレンドに乗ってるわよ』

「さく姐のインパクトすごかったからねえ。コメント欄ドン引きだったよ。私も草生えた」

『しばらくは清楚キャラでやってくつもりだったけれど、こっちの方がインパクトあると思ってね。思い切って路線変更しちゃった』

『あ』

「ウケはバッチリだったよ! わたし1人でしてもこんなに面白くならなかっただろうし、さく姐、一緒にやってくれて本当にありがとう!」

『どういたしまして。チャンネル登録がいい感じに増えてわたしも助かったからおあいこよ。それより、3人共もう口の痛みは引いた?』

「わたしはだいぶ楽になったかなー」

「ヨーグルト食べながら冬城の配信の応援してたけど、まだ口の中痛いわ。これ、明日まで響きそうだね」

『あ! あの……みんな来てくれてありがとう、ございましゅ……』

 

 急に大声を出した冬城がどんどんと尻すぼみになっていきながらも私達に感謝の言葉をかける。

 

「ことちゃんも頑張ってくれてありがとー! 付き合わせちゃってゴメンね?」

『い、いいえいえいえ! たま、ちゃんが謝ることなんてないんで! ホントどうしようもないダメ人間でゴメンなさい! ゴメンなさい!』

「おう、もっと感謝してよね冬城」

『あ、う、うん……』

『ことちゃん、そこはちゃんとプロレスしてあげないと』

『あ、え、えーっと……』

 

 言葉に詰まった冬城。カタカタとタイピング音が聞こえてきた。

 

冬城ことは 秋宮に感謝するのはなんか違うと思うんですけど!

 

 そうしてすぐに、通話しているというのに冬城のチャットが同期のチャットルームに反映される。

 

「通話中にチャットするの……? 口で言うのとなんの違いが……?」

『あう……』

「もう! ダメだよゆらちゃん、ことちゃんはことちゃんなりに頑張ってるんだから!」

『とはいえ、ずっとこの調子だと大変だけどね。ちゃんとしたコラボが早くできるように、せめてわたし達と話すくらいは慣れようね、ことちゃん』

『あっ、は、はい。が、ガンバリマス……できなくても怒らないでね……

 

 人と話すだけでこの調子なのに、なんで冬城はオーディションに受かったんだろう……@Linkの採用担当はやっぱりガバガバなのでは? そんな疑念が浮かんできた。

 

『もう少しで12時になっちゃうし、そろそろお開きにしましょうか?』

「そうだねー。また明日からもみんなで頑張っていこーっ!」

「あっ、ちょっと待って。冬城、まだちょっとだけ話せる?」

『ぴえっ!? な、生意気言ってゴメンなさい……

 

 冬城に声をかけると蚊の鳴くような声で謝られる。

 おそらくさっきのチャットの件だろう。それか、さっきの配信中に急に大声出した事か。そんなんで謝るとかどれだけ小心者なんだ……

 ともあれ、いちいち付き合うのも面倒くさいし、とっとと本題に入る。

 

「冬城ってFPS得意なんでしょ。配信でやるって初配信でも言ってたし、Vtuberやる前も結構配信でビペやってたって聞いたよ」

『えぇと……と、得意って言ってもガチ勢には全然及ばなくてー……リスナーに助けてもらってもランクはプラチナが精一杯で……』

「なんだ十分上手いじゃん。私もビペやってみようかと思っててね。FPSはほとんど触ったことなかったから先生を探してたんだよ。冬城、私に教えて」

『あ、アタシが!? むりむりむりむり!? 人に教えるなんておこがましい事アタシにはむりですーぅ!?』

 

 自虐の時だけえらく饒舌だな、とチャットなら打っていたであろう言葉を呑み込み、説得のため言葉を続ける。

 

「無理じゃないよ。冬城はさ、多分うまく教えられなかったらどうしようって思っているんだろうけど、私はすぐに上手くなりたいってわけじゃないからそれでもいいんだよ」

『へう……? そうなの?』

「だってそっちの方が冬城と一緒に長く遊べるでしょ? 私はそっちの方がいいな」

『へっ、あああ、アタシ、と!?』

 

 冬城の声が動揺して大きくなる。

 横で座っているたまが呆れた顔をしていたが無視して、言葉を続ける。

 

「うん、冬城と。冬城は私と遊びたくない?」

『そ、そんなことない、です! アタシも秋宮、と遊びたい!』

「よし、じゃあ決まり。今週の空いてる時間にでも事務所のパソコン借りて一緒に遊ぼうよ」

『えっ、オフ!?』

「そっちの方が教えやすいでしょ? ある程度できるようになったら一々事務所まで来てもらわなくてもいいからさ。……ああ、オフで会って話すのはもっと緊張しちゃうよね。前デビュー祝いでみんなで集まった時もカチカチだったもんね」

『う、うん……ゴメ』

「帰りに一緒にマックとか寄りたいなあって思ってたんだけど……同期だしさ。私的には仕事の付き合いだけじゃなくてもっと仲良くやっていきたいなって思いがあるんだよね。ま、ちょっと急ぎすぎたかな。今回は……」

『あっ! あのっ! お、オフでも、いいよ……?

 

 ボソボソとした小声だったが、冬城から望んだ言葉を引き出す事に成功した。

 

「ホント? 嬉しい。それじゃあ後で個人チャット繋ぐからスケジュール教えてよ」

『う、うん!』

悪女やあ……

さく姐、しっ!

 

 さく姐とたまが小声でやりとりしていたが、幸いにも冬城には気付かれなかったらしい。スルーしただけかもしれないが、まあいいだろう。

 

「それじゃ、私の用事も終わったし、お開きにしようか。みんなお疲れ様ー」

『お疲れ様。明日からも頑張りましょうね』

『お、おお疲れ様でしたっ!』

「お疲れ様ー!」

 

 たまの言葉を最後に通話が終了する。

 それを確認したたまが大きくため息をついた。

 

「……あさひちゃん、あんまりことちゃんをからかっちゃダメだよ? 一応、わたし達より歳上なんだからね?」

 

 配信モードも終わり、チカが私の呼び方を変える。

 

「歳なんて関係ないでしょ。明らかに押しに弱いタイプなんだからドンドン押していった方がいいんだよ、ああいうのは」

「それはそうだけどさ、そもそもあさひちゃんFPSなんて興味ないでしょ」

「失礼な、FPSやりたいってのは本心だよ。Vtuberは結構やってる人多いからコラボのツールとしては優秀だもん」

 

 嘘は言っていない。わざわざ冬城に声をかけた理由の一割にも満たない本心ではあるが。

 

「冬城が乗ってくれそうな話題だから選んだってのは否定しないけどねー」

「そっちがメインでしょ。ちゃんとわかってるんだからね」

「……まあ、チカならわかってると思ったけどさ」

 

 むしろ露骨にやったぐらいだからなあ。冬城は気付かなそうだからそれでもいっかと思ってやったのだから当然か。

 

「さっさとあの人見知りをなんとかしないと同期コラボも全部放送事故になっちゃうからね。今日のも冬城が元々喋れる状態じゃなかったから事故にならなかっただけだし。今度、同期コラボする時までに何回かオフで会って会話に慣れさせるよ。とりあえず、どもらずに最低限の受け答えができるくらいにはする」

 

 ……そうしないと、チカが同期コラボという大きな武器を使えないし。

 できれば2週間、最低でも1ヶ月で同期コラボが問題なくできるようにするためにも冬城の意識改革は急務だった。

 

「そんな事だろうと思った。わたしも行った方がいい?」

「いや、しばらくは2人っきりでマンツーマンの会話に慣れさせるよ。そのうちまた同期で遊びに行く計画は立てるから、その時はよろしく」

「りょーかいしました。……あさひちゃんもあんまり無理しちゃダメだよ?」

「こんなの、私にとっては部屋で寝っ転がってゲームしてるのとおんなじだよ。心配しなくても大丈夫」

 

 そう、おんなじだ。別に何をしようが何も変わらない。

 

「そんな事より。チカは今日みたいな一発芸人みたいな配信はもうやらないでね。人気なんか私がなんとかするから、チカはちゃんとアイドルらしくやりなさい! いい!?」

「えー、どうしよっかなー」

「ちゃんと、聞きなさいっ!」

 

 ……その後。チカに正統派アイドルと色物アイドルの将来の差について1時間弱こんこんと説明した。

 最終的にはそれでも「うん」と言わなかったチカに根負けする事になったのは不覚としか言えなかった。

 

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

みゃー、みゃー、みゃー……

(お前ら配信見てくれてありがとみゃ。明日の配信はマシマロ焼いて食うからドンドン送って欲しいみゃー。よろしくみゃ)

 

マシマロ

 

 

 

 




最後のリンクからマシュマロに飛べます。
とりあえずゆらちゃんにマロを送る感じで使ってください(その他の理由で使っていただいても構いません)作中で使わせていただく場合があります。
マシュマロに返事や反応などをするつもりは基本ないので、その点だけご了承ください。反応する際はこちらのあとがきで反応します。

読者がどう思おうが、送られたマロが使われるかどうかはオレが決める事にするよ


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9.【雑談】マロやいてくう【秋宮ゆらら/@Link】

「はふー、あったかー。あっ、お前らこんみゃ」

 

こんみゃー

配信3回目なのに挨拶もう雑になってて草

みゃー

もうマロ焼いてるやん

 

 私の立ち絵とコメント欄の間にいらすとやから拾ってきた焚き火とマシュマロのイラストを貼り付けた画面で配信を始める。

 初めてちゃんといらすとやのサイトを見たけど、本当になんでも素材があって驚いた。今後はお世話になります。

 

「最近肌寒くなってきたよねえ。私もこたつで丸くなりたいよ……」

 

もうすぐ10月だからな

まだこたつは早くない?

半袖キツくなってきたよね

 

「こたつ出すか悩んだけど、どうせ配信中は入れないしやめといたんだよねー。そのうち、ついキャスとかで猫はこたつで丸くなる雑談やろうかな」

 

いいね

そういうダラっとしたのも好き

やってくれ

 

「おー、お前らそんな見たいの? しょうがないにゃあ。じゃあちゃんとした配信する気分じゃない時にでもやってみるよ」

 

たすかる

もっとにゃあとかみゃあって言え

 

 最初の配信ではコメントの流れる速さに面食らったが、3度目となると少しは慣れてきた。流れてきたコメントを適当に拾う。

 

「もっとにゃあとかみゃあとか言え? わがままだなあ……みゃあ〜♡ これでいい?」

 

いいねえ

ビジネスみゃあ助かる

甘えた声もっとだして

もっと野良ともに媚びてけ

 

「野良ともがどう思おうが、媚びるかどうかは私が決める事にするよ」

 

…お前は結論を急ぎすぎる

そうとも言えるし、そうでもないとも言える

それが野良ともに対する口の聞き方かぁ!

あーあ、コメント欄が語録まみれ

 

「語録でしか喋れないのはどうかと思うのです」

 

お前が始めたんだろ

は?

ネット住民のほとんどに刺さる暴言やめろ

はいチクチク言葉

 

「みゃう……ゴメンなさいみゃあ……」

 

いつもの

かわいい、殴りたい

殴ってから媚びるパターン定着し始めてるな

ゆるした

 

「お前ら、冷静にパターン読むのやめろよう。私の中のメスガキシチュなんてそんなにないんだからな。こっちだってガキっぽさ出すのに必死なんだぞ」

 

ぶっちゃけるなw

3回目の配信でもうネタ切れなのか…

キャラは崩れるもの

 

 流石に何度も続けてるとリスナーも慣れてくるか。こういうキャラ、って事で押し通すのもそれはそれでいいと思うけど……まあ、こんな事配信中に考えなくてもいいか。

 

「ひとまず雑な雑談はこれくらいにしてー、マシマロ読む前にお前らにお礼です。チャンネル登録者が4万人を突破しましたー」

 

おめ!

4万うおおおおお

おめでとう!

 

「初配信とペヤンゴ食っただけなのに、こんな沢山の人に登録してもらえて本当にありがたいです。偉大な先輩達と会社に感謝ですみゃあ」

 

今だとこんなすぐに4万人登録されるんだあ…なんか感慨深い

まだ1年くらいしか経ってないけど本当にV界隈大きくなったなあ

謙虚ねこ

 

「この勢いをもっと加速していけるように頑張るよー。お前ら応援してね。というわけで最初のマロはこちら」

 

 画面の焚き火の上に事前に用意したマロの画像を貼り付ける

 

 

好きもしくは憧れている@LINKの先輩はいますか?

 

 

「私、Vtuberにわかだから憧れとかそんなに強い感情はないね。単純に好きって意味で根津ゆのみ先輩かなあ。甘やかしてくれそうな人に弱いんだよねえ。あと、ゆのみ先輩のASMRはVやる前からちょこちょこ聞いてたよ」

 

 名前を挙げたのは2期生の先輩の根津ゆのみ先輩だ。ASMR配信が人気で、Vtuberの配信はたまに、もしくはニヤ動の切り抜きくらいでしか触れてこなかった私も睡眠導入としてよく利用していた。

 

ゆのちゃんいいよね…

Vtuberにわかやったんや意外

胸もネコと違って包容力がある

 

 コメント欄を見ると、ゆのみ先輩の事よりも私がVtuberにわかなのに驚く声がチラホラとある。

 

「そんな私がにわかなの意外? ちょっと前までのVtuberって女の子ばっかりが注目されてあんまり女の子向けって感じじゃなかったじゃん」

 

まあ男のVtuber全然伸びんかったしな

最近は男性Vtuberも伸びてきてるから…

男とコラボするだけで燃えてたからな

 

「私も一応アイドルらしいし、男の人とコラボするかわかんないなー。ま、女の子も見てて楽しい配信になるように頑張るからにゃー。……あ、私の胸が包容力ないって言ったやつは許さんぞ、こちとら豊穣の秋担当じゃい」

 

豊穣……?

秋らしいのは髪色くらいだろ

膨らみが一切ないですが

ロリに胸を盛るな(過激派)

 

「こんなパーカー着てて膨らみが出るわけないだろー。脱いだら凄いんだぞ、脱がないけどな」

 

新衣装はよ

アトリンサマーはよ

夏になったら運営から水着着せられるぞ

 

「こんなちっちゃい女の子も脱がせる鬼畜企業を許すなー。はい次」

 

 

湿ったチワワ

 

 

「………………?」

 

宇宙みゃ

宇宙猫みたいな表情やめろw

クソマロの洗礼

 

「こういう意味不明なマロ、何個か拾って雑に消費したいよね。はい次」

 

 

お前はネコ、オレはタコ

 

おうおうおうおうおうおwwwwwwwwwwwwパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうおうおうおうおうおおうおうおうおうおうおwwwwwwパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうおうおうおうおうおwwww

 

 

「オットセイコピペでむりやりオチを作るな」

 

タコ要素どこ?

韻踏みたいだけなのやめろ

タコ焼きにしてやろうか

 

「おうっ! おうっ! オットセイの真似、かわいい?」

 

かわいい

急にかわいい声を使うなよ、びっくりするだろ

かわいい

 

「いや、ちょっとはサービスしといた方がいいかなって。それじゃ次」

 

 

ゆらたんすきすき単推しします

 

 

「いやせんでええが」

 

塩対応で草

もっとガチ恋リスナーを大事にしろw

 

「私だけを推すんじゃなくて、たまも推せ。たまゆらてぇてぇは定期的に供給するから。そもそも私1人推されるより箱推しが1人増える方が私的には嬉しいかな」

 

相方の宣伝を欠かさない女

たまゆらはもっとくれ

当然すでに箱推しだが?

 

「妻より愛人ポジの方が好きなんだよねー。適当に遊びに来て、適当に愛でて、適当に捨ててくれるような関係の方が気楽ですにゃあ」

 

は?捨てないが?

爛れてるなあw

 

「猫は気まぐれなので。野良とものお前らもそのくらい緩い気持ちで私のことを推してくださいみゃ」

 

 あんまり私にのめり込まれても正直重いし、単推しなんてされたらたまの人気に悪影響が出る。なので、私のスタンスだけここでハッキリさせておく。

 

「まあ別にガチ恋してくれてもいいけどねー、にゃふふ」

 

ガチ恋したら雑に捨てられそう

それはそれでご褒美でしょ

ガチ恋許可助かる

 

「変態野良ともはほっといてー、はい次」

 

 

声とっても好きです。ASMR配信の予定はありますか?

媚び媚びASMR全裸待機してます

 

 

「服は着てくださーい」

 

ASMRやって

ASMRやれ

ASMR楽しみ

 

 ASMR配信には専用のバイノーラル録音用マイクが必要だが、あいにくとそんなハイテクなものは持っていない。

 

「おー、思ったよりお前らやってほしいんだね。と言っても機材ないしなー……君たちー、好きだぞー♡

 

アッ……(尊死)

しゅき…

さっきの言葉はなんだったのか

こんなんガチ恋するしかないだろ

 

 戯れで小声で囁いてみる。コメント欄の反応は意外に良かった。

 そのうち登録者稼ぎのためにASMR配信をやろうと思っていたけれど、これだけ反応がいいなら早く機材を買ってもいいかもしれない。

 

「思ったよりウケいいみたいだし、今度バイノーラルマイク探してみるよ。それじゃあマロは次で最後にしまーす」

 

 

なんのシャンプー使ってるかおしえて

 

 

「グルシャン勢ですねえ」

 

バレテーラ

でたなグルシャン

初マシュマロ配信の恒例のやつや

 

「たまと同じのだよ。イロドリのオレンジ系の香りのやつ。私のシャンプーとたまのシャンプーでカクテルグルシャンとかやりたかったんだろうけど、期待に添えなくてゴメンなー」

 

それって、一口で二度おいしい……ってコト!?

カクテルグルシャンw

やっぱり同棲してんじゃん

 

 同棲はしていない。私の身の回り品をたまが全て用意してくれているだけだ。

 

「じゃあ今日のマロ読みはここまでー。30分くらいで終わるかなーって思ってたけど、コメント見たり反応したりしたら1時間経っちゃったね」

 

こんくらいが丁度いい

お疲れ様でしたー

明日も配信ある?

 

「明日は配信休みまーす。冬城とデートしてくるんで。ほな、おつみゃー」

 

!?

待て、終わるな!

おつみゃー…!?

これはたまちゃんに報告ですね

ことゆらてぇてぇ……?

3期生は秋宮のハーレムだった……?

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

配信おつみゃー。配信内で言った通り明日はお休みです。

 

冬城、明日は寝かせないぜ……ちゅっ

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

誤解されるからやめろバカ!

夏風たま@Natsukaze_Link

返信先:@Fuyuki_Linkさんと@Akimiya_Linkさん

ことちゃん、ゆらちゃんのことよろしくね?^ ^

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Natsukaze_Linkさんと@Akimiya_Linkさん

(アカン)

 




マシュマロは引き続き開けていますので好きなように使ってくださいみゃー
送ってくださった方々ありがとうございますみゃー

ましゅまろ


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10.冬城と遊ぼう

 昼下がり、昼食を適当に済ませた後に私は事務所を訪れていた。

 すれ違う社員さんに適当に挨拶を交わしながら、事務所内の配信用スペースに向かう。

 配信環境の不調で自宅から配信ができない場合や、オフコラボの企画の際に事務所からも配信できるように事務所には何台か配信用の共有パソコンがある。平日の真っ昼間で他に使う人もいなかったという事もあり、マネージャーに相談してみるとアッサリと使用許可が出た。

 

「あ、いたいた。冬城、お待たせー」

「ぴえっ!?」

 

 まだ待ち合わせ時間の20分前だったが、冬城は既に来ていた。

 一人でパソコンの前で座り、周りをチラチラ見ている彼女に背後から声をかけると、彼女は上擦った声を上げた。

 

「まったく、顔を合わせるのは2回目なんだからそんな驚かなくてもいいでしょ」

「ご、ごめんなさい……秋宮、さんみたいな陽……イケてる人と関わってこなかったので……」

「うん、対面で喋る時にコミュ障拗らせて、さん付けに呼び方が退化するのまずやめようか。あと私、イケてる人間からは程遠いと思うけど……私のどこを見て陽キャと言いかけたの?」

「……ほら、服とかカッコいいし! お母さんに服を買ってもらってるアタシと大違い!」

「今日の服、100パーたまセレクトだよ。お揃いだね」

 

 今日着てきたのは長Tシャツにジーパンの上からトレンチコートとカッコいい系の服装だ。チカは私に服を着せる時は可愛い系とカッコいい系どちらも着せたがるが、私的にはカッコいい系、正確にはズボンの方が体勢に気を使わなくていいから楽だ。

 ちなみにだが、冬城はゆったりとした長袖ロングスカートのワンピースにベレー帽とメガネといった格好。雰囲気のせいで非常に野暮ったい印象を受ける。顔立ちはいい分、もったいないなと思わない事もない。

 

「あっ……コミュ力高いし!」

「冬城と比べたらだいたいの人はコミュ強になるんじゃない?」

「デスヨネー……」

「さ、バカな事言ってないで遊ぼうよ。今日はよろしくね、冬城せんせ」

「ひえっ……! かかか顔近っ、うわめっちゃいい匂いだった……

 

 目と目を合わせて揶揄い交じりに名前を呼ぶと、顔を真っ赤にしてバッと目を逸らした後に小声でボソボソと何かを言っていた。反応が完全に童貞のそれだ。おもろ。

 それはさておき、今日の表向きの目的であるFPSゲーム『BPEX』を起動する。

 Vtuberでもメインコンテンツにしている人が多い基本無料プレイが可能なゲームで、3人1組のチームを作って最後の1チームになるまで戦うバトルロイヤル系のゲームだ。

 

「こういうチームを組むのが前提のゲームってソロでやっても勝てない印象だからやってこなかったんだよねー。ほら、私ボッチだし」

「大丈夫……だと思う。初心者はだいたいソロだし、セオリーなんて知らないから」

「ま、そりゃそうか。味方から怒られてもソイツは有名配信者の動画とかwikiで見たことを自分の知識と勘違いしているイタい奴って思えって事だよね。いやー、せんせの教えはタメになるなあ」

「そこまで言ってないですが!?」

「まあまあ。それで何からやっていけばいい? ちなみにゲーム内容は一切知らないよ」

「あー……それなら潜るよりトレーニングモードと射撃訓練場で一通り触った方がいいかも」

 

 言われた通りに私は隣の冬城から助言を受けながらゲーム内チュートリアルとして用意されているトレーニングモードを進めていく。

 

「わっ、ホントに初めて? エイムめちゃくちゃ上手だよ?」

「学生の時にシューティング系のアーケードゲームを友達と何回かやった事ならある。視点とかは違うけど感覚は似てるね」

「へー……アタシみたいな陰キャには一生縁がなさそうな体験だあ……」

「? この後帰りにゲーセンよってく?」

「いえいえいえ! 周りに人がいる中であんな目立つゲームするのはアタシにはハードル高いですう!」

 

 冬城がブンブンと手を大きく振る。やりたいのかやりたくないのかどっちなんだか。もうちょっと信頼を得てから誘った方がいいかな。

 そんな事を考えながらトレーニングモードを終えて、私は一通りの操作方法とテクニックを身につけた。その後、エイムにも問題なさそうとの事で冬城と一緒にカジュアルマッチを何戦かして今日のFPS教習会はお開きになった。

 

 

 事務所を出た後、冬城と喫茶店に入る。

 

「冬城、奢るよ。コーヒーとジュースどっちがいい?」

「えっ、あっ……じゃあジュース。コーラがいい、です」

「りょーかい。すいません。コーラとアイスコーヒー1つずつ。あとしろのわーる1つで」

 

 店員に注文だけして向かい合って座る冬城に目を向ける。目が合うとパッと目を逸らされた。

 

「あっ、ありがとう、秋宮」

「別にいいけど……まだ目を合わせて話すの恥ずかしい?」

「それは、恥ずかしいけど。後、こういうお店に入った事なくて、なんか緊張するというか……」

「チェーン店でそんな緊張しなくても……マックと一緒って考えれば全然問題ないでしょ」

「マックだって緊張するに決まってるじゃん。人がいっぱいいるんだから」

「ええ……?」

 

 それはもう家くらいしか緊張しない場所はないのでは?

 呆れてしまった所で飲み物だけ先に届く。

 

「でも今日遊んでてちょっとだけ安心したよ。冬城、ゲームしてる時はちゃんと喋れるじゃん」

「それは……ゲームに集中してたし、それに喋ってる事はゲームの内容だけだから話題を考えなくてよかったし……」

「うんうん。やっぱり配信者病なのかな。この感じだと今後ビペコラボやる時は配信事故はなさそうだね」

「……っん!?」

 

 私の言葉を聞いてストローでコーラを飲んでいた冬城が咽せた。

 

「えっ、コラボ? ……アタシと!?」

「そりゃそうじゃん。別にビペじゃなくてもいいけど、同期なんだからコラボはそのうちしないとでしょ」

「いや、それは……そうかもだけどぉ……」

「私だけじゃないよ。たまやさく姐はまず同期繋がりで定期的にコラボする事になるし、先輩達だってそのうちコラボする事になるんだから。事務所所属なんだからその辺は覚悟してたんじゃないの?」

「……うん。そう、だけどぉ……ほら、私って陰キャだし、コミュ障だし。面白いことなんにも言えないし……ダメだ、病みそう」

 

 自虐で鬱々しい雰囲気をまとい、がっくりと冬城は俯いた。

 

「秋宮、は、いいよね。コミュ力高いし、カッコいいし。私みたいなのにも付き合ってくれるくらいできてる人間で。羨ましいなあ」

「……まあ、うん。顔の良さとコミュニケーション能力に頼りきった人生だったからね」

「自分で言っちゃうんだ」

「自分で言うよ。私の長所だもん」

 

 コミュニケーション能力、顔の良さのお陰で随分と楽をさせてもらった身としては冬城が羨ましいと思うのもなんとなくわかってしまう。

 

「……冬城の気持ちがわかるわけじゃないけどさ。みんなが持っていて当たり前なものを自分だけが持っていない。そんなコンプレックスなら、私もなんとなくわかるよ」

「秋宮が? そんな事思うの?」

「だからこんなダメ人間やってる。というか、冬城だって私が自分と同種の人間だと思ったからこんなにすんなり遊びの誘いに乗ってくれたんでしょ?」

「うっ……バレてる。いや、陰キャって思ったわけじゃなくて、なんというか、こう雰囲気が暗いというか……その、同期の中だと一番話しやすそうだったし」

 

 まあ、チカは外面通りにバリバリの陽キャだし、さく姐は年上な上に環境的な面で余裕が全然なくてギラついた雰囲気だしねえ。陰キャが仲良くしたいと自発的に動くにはハードルが高い相手だ。

 

「うんうん。まあそうだろうね。で、話を戻すけどこのコンプレックスって別に他の事ができるから埋まるってもんじゃないじゃん。

5教科のテストで500点満点中400点、そこそこいい成績の中、国語の点数だけ0点で他の4教科が満点取ったって状況だとして、どう間違っても国語の点数が良かったって事にはならないじゃん」

「すごい極端な人だね」

「そういう極端な人が私達って事。冬城だってV始める前、それなりに人気の配信者だったのに未だにコミュニケーション能力で悩んでる。結局ね、コンプレックスは他のもので埋めれないんだよ。短所は長所で補えても、短所は短所のまま残り続けるんだよ。ヤな話だよね」

 

 そんな話をしてると、注文したデニッシュの上にソフトクリームが乗ったデザートが運ばれてきた。

 

「ま、これから活動していく中でコミュニケーション能力に難ありってのは確かに不安だよね。冬城がどうにかしたいなら私も協力するよ?」

「どうにかできるの?」

「どうにかするのは冬城だよ。こうやって会話するだけで緊張するのが原因なら、もっと過激な体験をして会話程度で緊張しないようにすればいい。それに、顔を見てコミュニケーションを取るのは大切な事だからね。というわけで〜」

 

 机の上のデザートを一口大にして、フォークを差し出す。

 

「はい、召し上がれ」

「ぴうっ!? え、秋宮のじゃないのこれ!?」

「私だけでこんな量食べ切れるわけないだろ。最初から半分冬城に上げる予定だったよ。せっかくだし、全部食べさせあいっこしようか。そしたら嫌でも私の方を見ないといけないでしょ?」

「そそそそんなハードル高い事私にはむぅりぃ!?」

「無理だからいいんでしょ。それともラブホにでも連れ込まれる方がいいの?」

「ひゅえっ!? え、エッチなのはダメです!」

「私だってそんなのヤだから。ほら、口開けてあ〜ん……あっ、もっと可愛い声の方が良かったら言ってね。私、ロリからお婆ちゃんの声までできるから」

「あう……そ、そのままの声でいいから……」

 

 観念したのか、冬城が真っ赤な顔で口を小さく開く。

 

「ほら、ちゃんと目を開けて。フォークなんだから自分から咥えないと危ないよ」

「うっ……うう」

 

 冬城のギュッと閉じていた目が開く。よく見ると若干涙目だった。そんな目で非難気に私を弱々しく睨むが全然怖くない。ただただか弱くかわいい生き物だった。

 そのまま彼女はプルプルと震えながら差し出されたフォークを口に含み、すぐにその上のデザートを飲み込んでフォークから口を外した。

 

「は、恥っずう……! こ、これってすっごいイケない事してるんじゃ……

「よくできました。それじゃ次は冬城が私にやる番だね」

「……えっ」

 

 冬城の反応を待たないまま口を開く。

 

「ほら、早く」

「あわ、あわわ……」

 

 言われるがままにフォークを差し出してくる。めちゃくちゃ手が震えてて顔はこちらを向いていない。

 

「目を逸らさないで。私の方を見て。フォークだよ、危ないよ」

「ひう……こ、こう?」

「あむ」

 

 冬城の目を見たまま、フォークの上のソフトクリームを舌で舐めとる。

 時間をかけてゆっくりと。口の中でソフトクリームが溶けるのを確認してから口を離す。

 

「うん、そんな感じ。ちゃんと目逸らさなくてえらいえらい」

「……え」

「うん?」

「えっちだよっ! こんなのコミュ障には荷が重すぎるよっ! っていうか普通の友達でもこんな事しないよっ!」

「そうだよ。冬城向けの荒療治だし。でも、今はちゃんと私の顔見れてるじゃん」

「……ほんとだ」

 

 私に指摘されてようやく気がついたのか、目線が泳ぎ、また冬城と目が合わなくなった。

 

「ほら、こっち見て」

「ひう……あの、まだやるの?」

「やるよ。どもりや会話能力はともかく、目を合わせる事くらいはこれで慣れよう。ほら、あーん。早くしないとソフトクリーム溶けちゃうよ。」

「あ、あうぅ……」

 

 冬城は渋々といった形で、私の差し出したフォークを咥えた。

 結局、半分も食べてないうちにソフトクリームは溶けきっていた。

 

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

ただいまにゃー。冬城とケーキ食べさせあいっこしてきたよ。

 

メッチャ顔真っ赤で草だった。かわいいね♡

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

ばかばかばかばか

 

 

 

 




冬城で遊ぼう

公共の場で何やってんだコイツら…
身バレ云々は気にしないで。気になるようなら外で会話している時は別の名前で呼んでいるものと思ってください。


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11.【スマブラ】ふえぇ…殴らないでほしいみゃ…【秋宮ゆらら/@Link】

 

 ゲーム配信。それはVtuberのみならず配信者とは切っても離せないコンテンツの一つだ。

 「人がゲームをやっている所」を見たい人間は意外と多いらしいし、Vtuberというキャラクターが行うゲーム配信の場合、ゲームが上手でも下手でもそれが配信者の個性になる。

 なので、必要な能力はどちらかと言えばゲーム能力よりもゲームをしながら無言の時間を作らないようにトークを続けるマルチタスク能力だ。これがなければ、クソ配信を超えるクソを垂れ流すだけの配信になる。

 まあ、そういうわけで。クソ配信者だった私には一応、ゲーム配信の心得が多少はあった。そんな私がVtuberになってから初めてのゲーム配信を今から行う。

 

「…………」

 

こんみゃー

みゃーみゃー

ミュート?

 

 配信を開始してコメントが流れ出すのを確認してから、画面外に用意していたネズミ(いらすとや)をクリックしたまま自分の立ち絵に何度もぶつけるようにマウスを動かす。

 

「ピカ! ピカピー! ピカー!

あう、ん゛えっ! 痛いよう……虐めないでぇ……顔はやめてぇ、お腹にしてえ……」

 

茶番たすかる

ネコが電気ネズミに負けるな

無駄にモノマネ上手いのやめろw

腹パン懇願ボイスは草

ダメージボイスたすかる

猫界の恥さらし

 

「猫がピカ様に勝てるわけないだろ。というわけでども、こんみゃ。@Link所属新人ライバーの秋宮ゆららですみゃ〜」

 

 今からやる対戦アクション系のゆかいなパーティーゲーム()にも出てくるキャラクターの物真似をしながら自分をボコボコにする茶番を行った後に、いつも通り挨拶をする。

 

こんみゃw

それはそう

こんみゃー

 

「1日ぶりだね。昨日はお休みいただいて冬城とデートしてましたー。

いやー、Vtuberってだけで同期の顔がいい女に優しくしてもらえるし、いい身分になったのを実感するこの頃ですにゃあ」

 

言い方w

ことゆらてぇてぇ……?

Vの特権を悪用するな

デビュー1週間で同期の3分の2に手を出したのか…

 

「これで後はさく姐に手を出せば3期生はワイのハーレムって事でいいすか?」

 

ええで

もうお前の勝ちでいいよ

ガチレズロリだったのか…たまげたなあ…

 

「むっ、恋愛感情とかそういうのじゃないんだよなあ……女のかわいい所を見たいって思うのは男も女も一緒だよ。というか、お前らも女の子同士でキャッキャしてるの見るの好きだろ?」

 

好きですが?

当たり前なんだよなあ…

だから俺は豚になった

 

「でしょー。これからも野良とものお前らには百合営業を提供していくからよろしくにゃー」

 

結局営業で草

ホントに営業なんか…?ことちゃんの反応完全にガチだったけど

営業でもガチでもたすかる

 

 と、オープニングトークに一区切りついた所でゲームを始めていく。

 

「今日は初めてのゲーム配信ということでスマブラやってくよ。先輩達がやってる負けたら即終了系の企画でも良かったけど、今回はゆったり野良ともと遊ぶ感じにするね」

 

ネコガキわからせ始まったな

Vのリスナーは猛者多いけど大丈夫?

ネコガキがわからせられちゃう…

ゆらちゃんはスマブラ経験者?

 

「わからせ期待勢多いな。言っておくが私、スマブラつよつよだからな。わからせとかそんなんないから」

 

ほんとぉ?

はいフラグ

フラグ立ったな

 

 何故か負ける前提で話が進んでる。まあ、Vtuberでガチガチにスマブラやり込んでる人ってそんなにいないしなあ……

 そんな感じでコメントと話している間に対戦用の部屋の作成が完了した。

 

「はーい、部屋建てたから画面出すよー。……うわ、一瞬で部屋満員になっちゃった。お前ら、どれだけ私をボコボコにしたいんだ?」

 

わからせの民がんばれ

みんな秋宮が負けるとこが見たいんだよ

 

「ふーん、まあちゃんと私が勝ってメスガキ煽りするんですけどねー。キャラ選択は当然ピチュー! 私、猫なので!」

 

???

ガオガエン「ワイは?」

強キャラやめろ

ネコ関係なくて草

 

「復帰よわよわ♡なのはちょっと……あと猫なのに二足歩行するな」

 

もどして(サンムーン初プレイ時の僕)

よわよわのとこだけリピートしてくれ

はいブーメラン

立つなニャビー

おまいう

 

「あっ、私も二足歩行だった……まあ、そんな事はおいといて始めていくよ。みちみちの腸詰めさん対戦よろしくお願いしまーす」

 

 そうして私の初めての対戦が始まる。

 

動きがガチすぎて草

永遠に空N擦るのやめろ

ちゃんとコンボするやんw

 

「対戦ゲームは相手の嫌がる事を嬉々としてやれる奴が強いんだよなあ。つまり私が強いって事だよ。負けちゃえ、おらっおらっ」

 

 私を舐め切っていた視聴者の使うキャラクター相手にコンボを決めてそのまま何もさせずにストックを減らす。2ストック制の対戦なので相手の残機は残り1つ。

 

「あれれ〜、私自傷ダメしか受けてないよ〜? 野良とも弱くなぁい? ざーこ♡」

 

ネコガキ……!

舐めやがって…!

わからせ民がんばえー!

 

「おい、お前ら私の応援しろよ」

 

 チラ見でコメント欄を見ると私を応援するコメントがほとんどなかった。解せない。

 ただ、完全にアウェーの雰囲気になったとはいえ、序盤で掴んだアドバンテージをひっくり返される程の相手ではなかったため、難なく勝利する。

 

「はい、対ありぃ! 私の勝ちぃ〜、野良ともの負けぇ〜! 負け負けぇ〜♡」

 

野良ともわからせられちゃった…

かわいい

メスガキたすかる

ゆら虐どこ…?

 

「はい。私が勝ってる時はこんな感じでやってくんで、野良とものみんなはちゃんと私の事わからせてねえ♡ みちみちの腸詰めさん対戦ありがとみゃあ。えー、リングに戻ってー……はい、ポニテムシャムシャさん対戦お願いしまーす」

 

 一応、生意気なメスガキが負ける前提でタイトルをつけたので、勝ってる時は煽り全開だ。そうした方がタイトルに釣られてやってきたリスナーも満足できるだろう。

 そうして2戦目、3戦目と続けて対戦を続けていき、5戦目が終わった所で。

 

「……あのー、もしかして忖度されてます?」

 

 ストックを1つも落とされないまま5連勝した所で私は思わずロールプレイをやめてコメントに問いかけた。

 

普通にボコボコにされましたが?

なろう主人公かな?

わからせどこ?

煽りじゃないんだろうけど煽りにしか聞こえなくて草

秋宮が強すぎるだけだぞ

 

「あっ、ポニテムシャムシャさん。さっきは対戦ありがと。しかし、そうなのか。忖度とかなくてこれかあ……なんかずっとメスガキ煽りしててゴメンね。先輩達の配信見る限り、もうちょっと負けるものなんだと思ってたよ」

 

ええんやで

弱い俺らが悪い

むしろずっとメスガキやってていいぞ

それは参考にする相手が悪いw

 

「わからせ配信をやるには私は強すぎたみたいですにゃ。強すぎてスマン」

 

企画倒れで草

事実だから困る

もう勝ち抜けじゃなくて負け抜けにした方がスムーズに進むのでは?

 

「あー、負け抜け制いいかもねえ。今度スマブラ配信やる時はそうしてもいいかも……って、これ本物? 本物のダルパゴスさん?」

 

 先程対戦したリスナーが部屋から抜け、すぐに入ってきたプレイヤーの名前には見覚えがあった。スマブラのオフライン大会や解説・実況動画で有名な方だ。

 

プロゲーマーだあああああ

名前の後ろに団体名つけてるし多分ほんもの

本物なら面白い

ネコガキわからせだああああ!!!

 

「マジ? 解説動画見てイキってるだけのネコキッズに容赦なさすぎない? ……まあ、いいや。これでタイトル回収はできそうだし。それじゃあプロと戦う前に残ってる野良ともをボコっていきましょうかね。34歳、実家の隅っこぐらしさん対戦よろしくぅ」

 

 

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇スレ目

 

478:名無しのV ID:rQxk0o4xJ

秋宮、わからせ配信おつみゃ~

 

481:名無しのV ID:pF/wd3zEL

>>478

わからせられましたか…?(震え声)

 

482:名無しのV ID:EGRlIB72W

秋宮の本日の戦績 11勝4敗

まさかリスナーわからせ配信だとは思わなかった

 

483:名無しのV ID:JiVOCKc+r

ネコガキ、お前そのキャラでゲーマー枠なのか…

最初の茶番はなんだったんだ

 

488:名無しのV ID:RHNID3SK1

>>482

4敗(うち3敗はプロゲーマーとオン大会常連実況者が相手)

実質リスナーは1勝しかしてないんだよなあ

 

490:名無しのV ID:3/+5nBha6

あまりにも勝ちすぎて煽り途中でやめるの草なんだ

 

492:名無しのV ID:R4etLY1WV

スマブラ初回配信なのに猛者集いまくるの草

秋宮のダメージボイスと命乞いボイスがちゃんと聞けたし、ついついでもわからせ報告して宣伝してくれてるしでホンマたすかるわ

 

497:名無しのV ID:bubxSOWDZ

>>482

プロの人とかもリスナーではあるからセーフ

聖職者もプライベートはV見てブヒってる時代やぞ

 

498:名無しのV ID:NrusZLr64

うまい人の動画見て覚えた強いムーブと攻撃を押し付けてるだけって言ってたけど、それで強くなれるなら苦労しねえんだよ!

 

503:名無しのV ID:TQPvY1rF3

>>497

はえー、みんなVが好きなんすねー

 

504:名無しのV ID:5ZtKiNvuk

>>498

単純に立ち回りがいいので…

メスガキ煽りしときながらプレイングがひたすら冷静で丁寧なんだよな。

キャラに合ってない()

 

507:名無しのV ID:VZZx12de9

勝ち抜けの設定にしてたせいで何回も秋宮がリングからはじかれるの笑っちゃった

 

510:名無しのV ID:B9CyZSskX

>>507

ゲームシステムにわからせられるのは草

 

515:名無しのV ID:cFhdIHR5c

ネコガキ(が)ボコボコ(にする)配信

タイトルに偽りなしやったな

 

517:名無しのV ID:iWI+fnKiw

おい、ゲリラでたまゆらキャスだってよ

 

                            

夏風たま@Natsukaze_Link

今日はついついキャスでの初配信!

ゆらちゃんとお話ししながら、ゆらちゃんの晩ご飯作ります!

21時から、モイモイっ!

 

 

521:名無しのV ID:qKmkAwCrJ

>>517

二回行動うおおおおおおおおおおおお

 

523:名無しのV ID:BKkzW3v9D

>>517

やっぱりたまゆらがナンバーワン!やっぱりたまゆらがナンバーワン!

 

527:名無しのV ID:O4eOYFM76

>>517

やっぱりガチやん…

 

532:名無しのV ID:HUCg0KuOa

>>517

有言実行百合営業たすかる

 

536:名無しのV ID:NjPr8QZ/6

>>517 

雑談枠でそこそこガチ目の反応してたことちゃんが血の涙流してそう

 

 

 

 

 

 




ニャオハは立たないと思うよ!
もし立ったら木の下に埋めてもらっても構わないよ

ましゅまろ
→マシュマロは自由に使ってくれ。


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12. モイ!キャス配信中 -ゆらちゃんのご飯作るよ!

「あさひちゃん、配信お疲れさまー! ゲームはよくわからないけど、強かったねえ! あっ、こういうのつよつよって言うんだよねえ。リスナーさんにこの前教えてもらったんだぁ」

 

 配信を終えて1階に降りると、エプロン姿のチカが私を待っていた。いつもの事だけどさっきの配信もリアタイで視聴していたらしい。

 

「配信見てたんだったらコメントしなよ。そっちの方がリスナーは喜ぶよ」

「うーん……あんまりコメントしすぎると野良ともさん達に嫌な思いさせちゃわないかな? 自分のコメントは反応してもらえないのにーって」

「そんなの気にしなくてもいいよ。チカがコメントしてもしなくても元々、コメントの9割以上はスルーしてるし。むしろメンバー同士の絡みの方が見たいリスナーがほとんどだから」

「ふーん、よくわかんないけどわかった! これからはちゃんとコメントするね!」

「そうしなー」

 

 あんまりわかってなさそうな感じの返事をするチカ。経験則上、こんな返事でもちゃんと理解してるのは知っているけど。

 

「にしても珍しいね。いつもなら配信終わったらもうご飯できてるのに今日はまだ準備中って。大学忙しいの?」

 

 キッチンを見ると皮を剥いた玉ねぎをみじん切りしている最中だった。本当に料理を始めてからすぐといった様子だ。

 

「大学の方はそんなに忙しくないんだけど、サムネ作りについつい夢中になっちゃって……ゴメンね、遅れちゃって」

「別にいいよ。私の生活リズムなんて元々ゴミみたいなもんだし、ちょっとご飯を食べる時間が遅れたって誤差みたいなもんでしょ。てか、チカも配信も始めて滅茶苦茶忙しいんだからわざわざご飯作りに来なくたっていいんじゃない?」

「ヤダ! あさひちゃんにご飯を作るのがわたしの楽しみなの!」

 

 チカが食い気味に私の提案を退ける。ぷぅと頬を膨らませていた。

 チカがそうしたいというなら私に止める理由はない。

 

「そう。大丈夫だと思うけど無理しちゃダメだよ? あと、サムネ作りなんて私に任せなさい。チカは大学もあるんだし、サムネを作る時間なんてもったいないよ。もっと配信しなさい」

「えー……でも、サムネ作るの面白いよ? 最近はサムネ作るのも上手くなってきたし!」

「そう……」

 

 何故か自信満々に答えるチカ。なんであの顔をアップにした立ち絵と無駄にデカくて変なグラデーションの文字のクソサムネでこんなに自信満々なんだろう……?

 見てる分には面白いから指摘するつもりはないけどね。あと、サムネはたまに作ってあげようと思う。単純にチカにもっと配信させて早く人気になってもらいたいし、サムネの出来が日によって明らかに違うとそれはそれで面白そうだと思ったからだ。

 そうだ、配信といえば……

 

「チカ、ライバー用のスマホ持ってきてる?」

「一応持ってるよー?」

「よし。せっかくまだ作ってないんだし、今から配信しよう。たまゆらコラボやるぞ」

「えっ、でもパソコンないよ?」

「キャスならスマホだけで配信できるから大丈夫。……いや、別にようtubeでもできない事はないけど、キャスは立ち絵出さなくても許される風潮があるからこっちでやるよ。サムネに使えそうなファンアート探すわ。チカは配信告知しといて」

「んー……? よくわかんないけど緩い感じの配信なんだねえ。あ、配信する時もいって言うんだ。面白いしそのまま使おっと」

 

 

「……始まった? 聞こえてるかなー。あっ、コメント動いてる。けだまのみんなー、こんたまー。夏風たまです! もいっ!」

 

もいもい

こんたまー!

もいっ!

 

「ほえー、キャスって本当にスマホだけで配信できるんだねえ。すごいねえ」

 

かわいい

反応がおばあちゃんなんよ

いつもの機械音痴

 

「むぅ、またそうやってバカにする。ふーんだ、どうせわたしは機械よわよわのおばあちゃん系女子ですよーだ」

 

拗ねないでw

配信難しいからね仕方ないね

 

 スマホの画面に流れるコメントを見ているたまの横から口を挟む。

 

「たま早くー、おなかすいたー」

「あっ、ゴメンねゆらちゃん。というわけで今日はゆらちゃんの晩御飯を作りまーす!」

「作ってもらいまーす。あ、こんみゃ。野良ともはさっきぶり。秋宮ゆららでーす。もーい」

 

こんみゃー

もいー

 

「今日はハンバーグ作ってくれるんだって。たまの手料理だぞ、どうだお前ら羨ましかろ〜」

 

ずるいぞ

一人で楽しむな

いいなー

キレそう

 

 私の煽りに乗っかって、コメントの流れが早くなる。

 

「うわわ、コメントが……多分野良ともさんだよね、これ。いっつも配信見てる時にも思ってるけど、こんな怒らせちゃって大丈夫なの?」

「本気で受けとらなくていいって。ネタみたいなもんだから」

 

なんかごめんね…

おこってないよ

様式美みたいなものだから気にしないで

たまちゃんは気にしないでいいよ!

俺たちの事は壁だと思ってくれ…

 

「そうなの? やっぱりネットの事、勉強しないとなあ」

「しなくていいから……たまはそのままでいてほしいなって、私は思うのです。それより早くご飯作ってよー」

「わわ、そうだった! それじゃあ、ゆらちゃんはもうちょっと待っててねえ!」

 

 たまがそう言い残してスマホを置いて、キッチンに向かう。

 

「それじゃあ、料理できるまでは私とお話しよっか」

 

さっきはナイスだったぞ、あきみゃ

たまちゃんにネットの汚い部分は見せてはいけない(使命感)

気軽にオフコラボしてるけど、やっぱり同棲してるの?

 

「あー、オフコラボね。そもそも今日はコラボ配信する気はなかったんだよね。でも、裏で私だけ楽しむのもアレかなって思ったし、こういうのオタクは好きなんだぞってたまに理解(わか)ってもらうためにも今日は配信取ったんだー」

 

たまゆらコラボは毎秒しろ

好きだぞ

3期生のわからせてくる奴

よく俺たちのこと理解ってるじゃん…

 

「ほらねえ。たまー、コラボもっとしろってさー」

 

 肉をペチペチと丸めていたたまに声をかける。

 

「そうなのー? それじゃあ私毎日ご飯作りに行くねえ!」

「やったぜ」

 

やったぜ。

俺たちをダシにつかうな

同棲じゃなくて、通い妻……ってコト!?

ワ……

 

「まあ、これからも気が向いたらこういう緩い感じのたまゆらコラボをキャスでやるから、みんなたまのアカウントの通知入れといてね」

 

たすかる

早く金投げさせろ

通知ボタン2回押したわ

 

「あー、一応キャスの方はもう収益化できるけど……でも、やっぱりようtubeの方が通ってからにしたいから、もうちょっと待っててね」

 

謝らなくていいよ

むしろ無料で見ていいのかって思うわ

 

 ようtubeで収益を得るには色々と条件がある。収益化の条件は一応、満たしているし、もう申し込みもしているけど、いつ認められるかはわからない。

 私は別に活動で金銭が発生しなくても大丈夫だけど、収益化するまでは金銭的に大変な人も沢山いるらしい。リスナーが金を投げたくなる心理は、Vtuberとして活動してきた先達の苦労話を聞いてきたからというのもあるのかもしれない。

 ……まあ、同期に1人、金銭的に瀕死状態の人がいるし、あながちそういった考えも的外れではないのだが。

 そう考えているとキッチンの方からジュージューと肉を焼く音が聞こえてくる。

 

いい音

腹減ってきた

 

「お、もうちょっとでできそうだね」

「できるよー!」

「だって。みんなも晩御飯用意しといてねえ」

 

カップ麺もってきたぞ

コンビニで弁当買ってきた

もうご飯食べちゃった

 

 その後はリスナーのコメントを拾いながら、たまとご飯を食べた。

 大丈夫だとは思っていたけど反応は上々。新規の獲得という意味ではキャス配信はあまり効果的ではないが、コアなファンを作れるし、何より私のリスナーがたまの方に興味を持ってもらうにはこういった地道な活動が大事だ。

 たまゆらコラボは基本的にたまのチャンネルでやるようにすれば、たまのチャンネル登録者も増えやすいだろう。最初考えていた炎上商法と比べるとささやかなやり方だし、効果がどの程度あるかわからないけれど、どうせ手探りでやっていくしかない。頑張っていこう。

 

 

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇スレ目

 

764:名無しのV ID:gQ3GCAsoB

たまゆらありがてえ…

 

767:名無しのV ID:AYbvSRW2b

百合を見ながら食べる飯はうまい

 

770:名無しのV ID:VAH2mZa+Y

食べさせあいっこ良かったよね…イイ…

 

774:名無しのV ID:olNin3VTE

ゆら「は? 食べさせあいっこ? お前ら強欲すぎじゃない?」

たま「えー、私やりたーい!」

ゆら「ええ…(困惑)まあ、たまがやりたいならやってもいいけどさあ…」

ノリノリなたまちゃんと、嫌々だけどちゃんとやってくれるゆらちゃん

コメントが有能すぎる

 

775:名無しのV ID:6rQKI4onp

あーんボイス助かった

 

778:名無しのV ID:e3kRU4Beq

たまゆらの時は2人とも普段の配信とは雰囲気違うよね

たまちゃんはあきみゃ相手だと少し軽口出るし

あきみゃは擦れた感じのキャラ崩れてたまちゃんに甘えきってるし

なんというか、てぇてぇ

 

780:名無しのV ID:qIA/+s0wK

くそっ…じれってーな、俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!

 

784:名無しのV ID:CjAJ/B4rg

>>780

…すぞ

 

788:名無しのV ID:C02r/RGEF

>>780

百合にやらしさはいらない(鋼の意思)

 

792:名無しのV ID:gUsrQZdjM

元々リア友っぽいよね

この前、たまちゃんがさく姐とコラボしてたけど距離感やっぱり違うし

 

796:名無しのV ID:4qxOZDZRO

>>792

まあ、そうなんじゃない

たまちゃんが配信とか機材に弱いっぽいから配信者上がりってわけでもなさそうだけど

 

800:名無しのV ID:tcBDXkzOI

>>792

元々仲いい人連れてきた方が運営方針的にも百合営業的にもやりやすいんだろうな

知らんけど

 

803:名無しのV ID:Pj2SZm0PV

個人的には早くことゆら見たい

冬城だけまだコラボやってないし(ペヤングは別)

 

805:名無しのV ID:xpJrAsftR

>>803

コミュ障だからコラボ誘えないって言ってたなw

まあ、まだデビューして一ヵ月も経ってないし気長に待とうや

 

806:名無しのV ID:CDdv7XAEW

正月はまた箱全体で大きな企画やるだろうし、それまでになんとかなってるといいな

 

 

 

 

 




マシュマロ
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13.冬城と遊ぼうその2

 

 最終局面。残るは私達のチーム含めて2チームのみ。正真正銘の一騎打ちだ。

 

「冬城、突っ込むからフォローよろしく」

「う、うん!」

 

 実質的な制限時間が迫る中、私は先に仕掛ける事を選択する。

 冬城に声をかけ、敵へと突貫。私の後に冬城とついでに野良のチームメイトがついてくる。

 物陰を飛び出した瞬間に鳴り響く銃声。当然だけど敵だって黙って見ているだけじゃない。幸いにして被弾はない。私は敵の攻撃に当たらないよう動きを止めずに応戦する。

 

「一人落ちた、けど体力ヤバい!」

 

 敵チームが1人ダウンして、残るは2人。 

 

「ゴメン、落ちた!」

「まか、せてっ!」

 

 私の残り少なかった体力が削られきると同時に、私をダウンさせた敵が冬城によってダウンさせられる。

 

「これで、残りひと……」

 

 残った1人に冬城が照準をあわせようとした所で、野良のチームメイトの攻撃によって敵が倒された。

 画面に大きな「CHAMPION」の文字が映る。

 

「あっ……」

「よっし、勝った。GGぃ~」

「あ、うん! じぃじぃ!」

 

 少し締まらない最後にはなったが、冬城の方を向いて声をかけると彼女はにへらと笑って返事をした。

 こうやって事務所で顔を合わせて遊ぶのは3回目だが、合間合間で距離感近めで荒療治的に接してきたおかげか、冬城の目を見ないで話す癖はほとんどなくなっていた。

 

「チャンピオン、そこそこ取れるようになってきたよね。私もちょっとだけ立ち回りわかってきたよ。ありがとね、冬城」

 

 ゲームを一度終わり、ジュース片手に一息つく中で冬城に礼を言う。

 

「そ、そう。それじゃあ、もうこうやって遊ぶのも、終わり、だよね……?」

 

 おそらく私がそれなりにFPSをできるようになったから、助けは必要なくなったと思ったのだろう。

 寂しそうな顔でおずおずと尋ねる冬城。

 人と接するのが明らかに苦手だった彼女が表面上とはいえ、私と遊べなくなるのを残念に思っている。……ひとまず、最低限の意識改善は済んだかな。

 健全なコミュニケーションは一方向からだけでなく、双方向からの働きかけがないと長続きはしない。話が上手いか下手かが重要ではなく、コミュニケーションを取りたいと自分と相手の双方が思っている事が大事だと私は思っている。相変わらず受け身だけど、冬城の方からこういう働きかけを行うようになってきたのは大きな前進だろう。

 心の中でガッツポーズをしながらも、態度には出さずに言葉を返す。 

 

「え、なんで? もっとこれからも遊ぼうよ、同期なんだからさ」

「う、うん! そうだよね、同期だもんね!」

 

 いやあ、同期って便利な言葉だなあ……

 無理矢理な行動もある程度は正当化できる関係性に感謝していると、私たちがいた配信用スペースに人が入ってきた。

 

「あれ? 人がいますよ。今日はスタジオの予定私たちだけでしたよね?」

「見ぃへん顔やな。新しく入社したマネさんか?」

 

 おっとりとした雰囲気の女性と、関西弁で私と同い年くらいと思われる女性の2人組だ。若干声色が違うがその声には聞き覚えがあった。

 席を立ち、2人に向かって声をかける。

 

水無瀬凪海(みなせなみ)さんと明星(あけぼし)ラナさんですか?」

「そやけど……」

 

 名前を伺うと、戸惑いながらも関西弁の女性が肯定した。やっぱりそうだったか。

 おっとりクール系女子高生のキャラで主にゲーム配信を主軸にしている水無瀬凪海と歌配信を主軸に活動する関西弁ヤンキー女子高生のキャラの明星ラナ。どちらも@Link所属のVtuberで1期生の先輩にあたる。

 

「ディスコで挨拶はしたけど、こうやって顔を合わせるのは初めましてになりますね。3期生として活動を始めた秋宮ゆららです。これからよろしくお願いします」

「えっ、秋宮ちゃんなの?」

「うわー……声全然ちがうやん。それにキャラと違ってスラっとした美人さんやなあ」

 

 私が名乗ると、2人ともビックリしていた。まあ配信中はローテンションでもハイテンションでもメスガキでもどんな時でも幼さを残すよう意識してるし当然か。

 

「猫を被るのは得意なので。ま、猫だから当たり前ですけどねー」

「わっ、配信の時の声だ」

「はー、声使い分けれるのはええなあ。ウチはいっつもこんな話し方やし、リア友にすぐに身バレしたわ」

「ラナちゃんはもうちょっと気をつけた方がいいと思うなあ。……それで、後ろで固まってる子は? もしかして冬城ちゃん?」

 

 名前を呼ばれて私の後ろで隠れていた冬城がビクンとわかりやすく動揺した。ちなみに、冬城は2人が入ってきてからずっと私の服の裾を握りながら背中に隠れていた。

 

あ、あわわ……どうしよう秋宮ぁ……

「ほら先輩だよ、ちゃんと挨拶しなさい。特訓の成果を見せる時だよ」

「ひん……」

「お前、ママか?」

「ママだねぇ……」

 

 先輩2人がなにか言っているが、とりあえずそれは置いておいて。

 私は冬城が泣き言を言ったりする前に、腰をがっしり掴んで逃さないようにして先輩の前に突き出した。

 恨みがましい目線を向けていたが、避けられないと悟ったのか意を決して冬城が口を開く。

 

「あ、あああのっ! 冬城ことはですっ! よろしくお願いします!」

「ああ、やっぱり。水無瀬凪海です。これからよろしくねえ」

「おう、明星ラナや。これからよろしくな」

 

 相変わらず声は震えていたが、私たち3期生との初対面の時よりはよっぽどマシな挨拶を先輩方は苦笑しながらも受け入れた様子を見せた。

 

「すいません、先輩方。うちの子はコミュ障でして……」

「ママやん……」

「ああ、それは配信見てたから知ってるよ。秋宮ちゃんが冬城ちゃんのママだったのは知らなかったけど」

「あ、秋宮はママじゃないですし」

「冬城は私の子だよ。いい加減認知してよ」

「認知もなにも初耳ですが!?」

 

 私たちのやり取りを見て、明星先輩が笑う。

 

「アハハ! 3期生は仲ええんやなあ。ウチらはもうちょっと仲良くなるの遅かったよなあ、ナミ」

「そうだったっけえ? 割と最初からラナちゃんは距離感近かったけどなあ」

「そうかあ? Vtuber始めてからは時間が経つのが早すぎてあんま覚えとらんわ」

 

 先輩方が思い出話に花を咲かせた所で私は口を開いた。

 

「今日は確か、1期生でコラボ配信でしたよね? ぽぷら先輩に挨拶しないまま帰るのは気がかりですけど、もともと今日は先輩方が来るまでスタジオのパソコンを使って遊んでいただけなので、私たちはこの辺りで退散しますね」

「ん、そか。また、同期以外とのコラボ解禁されたらコラボ配信誘ってくれや」

「その時はよろしくねえ」

「こちらこそ、その時はよろしくお願いします。ほら、冬城準備して」

「う、うん」

 

 冬城を促してさっさと荷物を纏めると、私と冬城は配信用スペースを後にする。

 

「……ふぅ、ビックリしたねえ」

「そう? 配信の予定が入っていない時間を狙ったって言っても、事務所で遊んでたんだからいつかは先輩とも顔合わせてたでしょ。それより、ちゃんと喋れてたね。特訓の成果出てるよ」

「えぇ? 声震えてたし、陰キャ丸出しだったよ? 恥ずかしいなあ……」

 

 冬城が大きなため息を吐いてがっくしと肩を落とす。

 3期生の初めての挨拶の時は一度も目が合わずに自発的に口を開く事がなかったのを考えると大きく成長しているのだが、やはり自分では気づいていないらしい。

 

「いいのいいの。コミュ障もある程度のレベルなら個性として受け入れられるみたいだから」

「そうかなあ……?」

 

 未だに私の言葉に冬城は懐疑的だ。

 ただ当初懸念していた冬城のコミュニケーション能力もある程度は改善したと私は思っている。自信をつけさせる意味でも、そろそろ次の段階に進んでいいだろう。

 

「ねえ、今週のどこかでFPSのコラボ配信しようよ」

「……え、誰と?」

「冬城と私でやるに決まってるじゃん」

「え、えええええええ!!!???」

 

 私の突拍子のない提案を聞いて、冬城の絶叫が事務所に響き渡った。

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

明日の20時から同期の冬城と初のサシコラボでビペやってくみゃ。

FPSはほとんど未経験なので野良とものみんなは暖かい目で見守ってくれー

 

ハッシュタグは #3期生ちっちゃい組 でよろしくみゃー!

 

 

 




マシュマロ
→自由に使ってくれ。使うかどうかはわからん。


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14.【#3期生ちっちゃい組】冬城とびぺやる【秋宮ゆらら/@Link】

「冬城、配信始めるけど大丈夫?」

「だだだだ大丈夫……」

 

 無理っぽいな、これ。私はその声を聞いてそう思った。

 コラボ配信の5分前、冬城のディスコ通話越しの声は震え声に沈んだ声という配信者にあるまじき状態だった。

 ダメダメなアタシは誰も愛してくれないぞ。最近V界隈でも流行ってるボカロ曲を思い出しながら、私はなんとか冬城のテンションを上げようと声をかける。

 

「そんな緊張しなくても。企画でもないんだから事務所の時と同じようにダラダラ駄弁りながら緩くやればいいでしょ」

「で、でも、アタシ、誰かと配信するなんてこれが初めてだし、配信中に急に喋れなくなったらどうしようって……うう、発表役を押し付けられて陰キャ拗らせて断る事も出来ずに黒板の前でなんにも喋れなくなった高校生の時のグループワーク思い出しちゃった……おなかいたい」

「そんな事ある?」

 

 おっと、思わず反応してしまった。悲しい陰キャあるあるなんて聞いている暇はない。

 

「ソロ配信ならバッチリ面白い配信できるんだから。いつも通りやればいけるって」

「コラボ配信をソロと同じようにやれるなら陰キャなんてやってないよう……」

「それはそう。でも、口答えできるならなんとかなるでしょ。配信中でもちゃんと殴りかかってきてね。こっちも配信中はキャラ作ってイジり倒すから」

「……もし、アタシが何にも言えなくなって配信事故ったらゴメン、ね?」

 

 冬城が申し訳なさそうに小さな声で謝る。あれだけ色々やったけど、自信をつけさせるにはやっぱり配信を成功させるしかないらしい。

 コラボ配信といえど、今日はFPSを2人でやるだけ。なんでもない配信だが、冬城のこれからの活動、ひいては私たち3期生のこれからの活動のためには大切な一歩目だ。それに……

 

「配信事故ったなら事故ったでいいでしょ。それなら次の配信で事故らないように色々考えるからさ。オフコラボでもドッキリでも百合営業でも企画でも、何でもやるよ」

「アタシが駄目駄目でも、また一緒に配信してくれるの……?」

「冬城がコラボを『苦手』じゃなくて、『やりたくない』って言うまでは何回だってコラボするよ。当たり前じゃん。あと、配信事故った時は冬城だけじゃなくてフォロー出来なかった私も悪いんだからね。連帯責任だよ、連帯責任。少しでも私に申し訳ないって思うなら、この配信で『アタシだってちゃんとやれるんだぞー!』って私を安心させてよ」

「……うん。うん! アタシ頑張る!」

 

 とりあえずやる気は引き出せた、かな? 配信中も保てばいいけど。

 冬城が前向きな意思を見せたところでちょうど配信開始時間が訪れた。

 

「時間だね。始めるよ」

「うん……!」

 

 合図を出して、私は配信開始のボタンを押した。

 

 

「配信始まるよー……はい、配信始まった。みんな聞こえてるー? 音量チェックするから冬城、声出して」

「わっ……わっ……」

 

ことちゃんの声小さい

こんみゃー

いつもの声量の半分も出てない

ワッ……!

声小さい

 

「声ちっさいって。おら、もっと腹から声出せ」

「ひん……」

 

同期イジメの現場

音量上げてやれw

ことちゃん始まる前からよわよわじゃん

 

「こいつ初めてのコラボでド緊張してんの。野良とももふゆきっず*1もみんな笑ってやってねー」

「だ、大丈夫だし、やれるし……!」

 

アカン(アカン)

あっ……(察し)

なんとかしろあきみゃ

不安しかない

 

 コメント欄は冬城の様子を見て、既に心配の声で溢れかえっていた。

 冬城の配信の方のコメント欄は見てないけれど、多分向こうもこっちと同じような感じなんだろうな。

 そう思いながら、音量調整を行っていく。

 

「じゃ、音量調整も終わったし改めて。こんみゃー、秋宮ゆららとー」

「冬城ことは、です!」

「二人合わせて3期生ちっちゃい組でーす」「ですっ!」

 

ちっちゃい(胸元)

背も胸も足りてない

自虐が過ぎる

哀れな程薄っぺらな……

 

「お? 背も胸も足りてない……? お前ら、喧嘩なら買うぞ?」

「ちっちゃいのは背の事ですー! 胸はそのうち大きくなるし!」

「冬城は3期生の冬担当だから貧しいけど、私までちっちゃいグループに入れられるのは納得いかないみゃ。こちとら豊穣の秋担当やぞ。脱いだらばいんばいんやぞ。マッマにいくらでも盛ってもらえるんやぞ」

「冬担当は関係なくない!?」

 

冬に対する偏見がすごい

はいはいすごいすごい

盛るな

盛るという発想が出てきてる時点で…

[うにたら子]ロリには盛りません

マッマもよう見とる

 

「たら子マッマ見てるし。マッマには裏でロリ巨乳の良さを布教するとしてー。今日は冬城と初コラボみゃ。BPEXやってくぞー」

「わ、わー……!」

 

 私の言葉に合わせて、冬城がいまいち乗り切れてない声で相槌をうつ。

 

どうせなら3人コラボにした方がよくない?

なんでBPEXで2人コラボ?

たまちゃんとか呼べばよかったのに

 

「あっ、ほら冬城、BPEXなのになんで2人コラボって聞かれてるよ」

「えぅ……やっぱり聞かれる?」

「あのね、冬城にいきなり3人コラボとかさせたら絶対事故るだろ。みんなわかってないみゃあ。まずはタイマンで無理矢理喋らせないとね」

 

優しいのか厳しいのか…

コラボ地蔵は見ててこっちも辛くなる

同期の絆()

ことちゃん、そんな陰キャだったのか

 

「『え、陰キャ極めすぎてコラボできないwwwって話してたの本気だったんですか!?』……本気に決まってるだろー!」

「草」

 

 向こうのコメント欄に流れてきたコメントなのだろう。冬城がキレていた。

 

「まあ、そんなおもしろいおもちゃ……ゴホン」

「秋宮?」

「間違えたみゃ。そんなかわいそうなぼっちの冬城のコラボ処女を私がいただいて大人のレディにするのがこのコラボの目的でーす」

「なんだろう。言い直してるのに馬鹿にされてる気がする……」

 

あきみゃさあ…

言い方w

一応アイドルやぞ

同僚を食い散らかすな

 

「はい。トークはこれくらいで、そろそろゲームやってこうか」

「う、うん」

「ちなみに私、FPSはほぼ初心者なんで。冬城がそこそこやってるから今日は姫プしてもらいまーす」

「が、頑張る!」

 

 トークを適当な所で切り上げて、ゲームを始める。

 無難な初動から敵と交戦することなくアイテムを回収していく。

 

「敵もいないし、しばらくは暇そうだねー。冬城なんか話そうよ。会話デッキは持ってきてるでしょ?」

「え? スウーッ……今日は、天気いいね」

「そうだね」

「……ひん」

 

あーあ、泣いちゃった

天気デッキはもう環境落ちしてるぞ

会話を広げようとする意志をもて

コミュ障をイジメるな

 

「天気きっかけで会話を広げるのは難しくない? コメント欄なんか話してほしい事ある?」

「ふゆきっず~、助けて~」

 

ことちゃんとのデート

あきみゃが同僚アイドルを誑かしてる件

デートの話ちゃんとしろ

ことちゃんとワンナイトしたってホント?

 

 リスナーに話を振るとコメント欄が冬城とのデートの話で埋まった。

 

「そういやデートの話って私からしてなかったっけ。冬城は雑談配信でちょっと話してたよね」

「恥ずかしいからほとんど喋ってないけど……」

「じゃあ、私からもちょっと喋っちゃおうかな。この前、二回目のデートしたんだー。二人っきりでカフェとか服屋行ったんだよねー」

 

初耳だが

個人的に楽しむな定期

正妻が黙っていませんよ…

 

「足が出るスカート着せた時に『あ、あてぃしにこんなの似合わないって……』って照れながら言ってきたの可愛かった。完全にその時の冬城は萌えキャラだったね」

「アタシの真似下手すぎない!?」

 

モノマネうまいけど悪意があるw

そんな声出せるのかw

モノマネ無駄にうまくて草

 

「みんなモノマネ上手いって言ってるけど?」

「う、裏切りものぉ……」

 

すまんやで

実際似てるし…

本物よりかわいい

 

「だいたい冬城とはもっとすごい事したし、こんな事で恥ずかしがらなくてもいいじゃん。食べさせあいっことかポッキー……」

「わー!? わー! 敵きた! 敵来たからその話はやめてぇ!?」

「しょうがない、倒してから改めて……」

「ダメーーーー!」

 

!?!?!?

kwsk

おい、そこまで言ったなら最後まで話せ!

ことゆらもガチやん……

 

 

 

@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇スレ目

 

125:名無しのV ID:BMMq8h6Or

おつみゃー

最初はどうなるかと思ったけど、全然事故らなかったね

ことゆらてぇてぇ

 

129:名無しのV ID:f/HrWg3kG

あきみゃも何だかんだ言って、話題振ってあげるのやさしい

というか二人ともそれなりにゲームも上手いんだよな

 

132:名無しのV ID:RfuOhS/UW

ことちゃんはともかく、あきみゃ初心者であれだけできるならこれからが期待できそうやな

あと、裏でやってる百合は百合営業なんだろうか…?

 

137:名無しのV ID:3SRNoGnWO

あれだけ営業うんぬん言ってるのに表に出さないのホンマ…

いいぞもっとやれ

 

140:名無しのV ID:5ifQktNks

ことちゃんは反応可愛いからからかいたくなる気持ちはすごくわかる

 

143:名無しのV ID:MaotpOvp3

女誑し……いや、純愛だからセーフ

 

147:名無しのV ID:9Oow5X6uk

>>143

同期に手出しまくってんだよなあ…純愛とは?

さくやさんも時間の問題でしょ

 

152:名無しのV ID:eaAg9ebqe

あきみゃ、完全にオタクに優しいギャルなんだよな

ことちゃんが懐くのもわかるというか…

 

156:名無しのV ID:uuv6B9xX3

百合ハーレムはそれはそれでアリ

 

161:名無しのV ID:tkJxhog53

>>152

無理矢理手を引っ張って自分の知らない世界に連れて行ってくれる女の子、オタク好きがち。僕もソーナノ

 

163:名無しのV ID:uuvdk26k

ことゆらとたまゆらどっちを推せばいいんですか!?

 

167:名無しのV ID:nfnU2hG

>>163

どっちも推せ

*1
冬城のファンネーム




マシュマロ
→自由に使ってくれ。使うかどうかはわからん。

2023.1.15 ミスがあったので一部描写変更しました


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15.箱企画をやるらしい

「今日のさくさくクッキングは~……これ! もやし炒め!」

 

も う み た

一週間もやし生活とはたまげたなあ…

はやく収益化してくれ

もしかして……ループしてる!?

ひもじいなあ…

 

「さく姐頑張ってるなあ……『今度、奢るからご飯行こうね…』っと」

 

 スマホでさく姐が毎日やっている料理+雑談の朝配信を見ながら私も朝ご飯を食べる。

 メロンパンをハムハムと頬張り、リスナーが喜びそうなコメントを打ち込んでいると、ディスコの通知音が鳴った。

 

「……マネさんから? こんな朝早くに何だろ?」

 

 表示された名前は私の担当マネージャーの中村さんが使うアカウント名だ。

 朝早く、と言ってももう8時半だから、社会人なら出社していてもおかしくない時間か。

 

マネ2連絡用 秋宮さん、おはようございます!

起きたら改めてご連絡ください

今後の企画について説明があります

 

 ……今後の企画? ああ、そういえば。

 文面を見て一瞬疑問が浮かんだが、ある事を思い出した。

 私達3期生に限らず、ウチの事務所ではデビュー1ヶ月程度の間は先輩とコラボ配信は行わないという決まりがある。この期間はリスナーに新人のキャラクター性を認知してもらうためといった意図があるらしい。

 ずっと推してきたアイドルとよくわからん新人がいきなり絡むのはリスナーも戸惑うよなと私も思う。そういう意味では1ヶ月という期間はちょうどいい期間なのかもしれない。

 ちなみにだが、もちろん同期間のコラボは自由だ。そうじゃなきゃとっくに怒られている。

 もし、自主的にコラボをしないようなら運営の方からコラボの提案などするつもりだったようだが、ここ数週間の活動を見てその辺りの予定は私達に任せる事に決まったらしい。

 それはともかくとして。そんな私達が先輩とのコラボを解禁されるのが、デビューからしばらく経った後に公式が企画する全員参加の配信の後からという形になる。おそらく中村さんの言う企画はこの事を言っているのだろう。

 ひとまず返信をする。

 

秋宮ゆらら おはようございます

起きてます

マネ2連絡用 あっ、起きてましたか。おはようございます

配信していないライバーさんと朝からコンタクトが取れるのは新鮮ですね

秋宮ゆらら えぇ…?

 

 そんな事ある?

 私も人の事を言える程しっかりした生活はしていないけど、Vtuberは生活リズム狂ってる人ばかりっていうの本当だったんだなあ……いや、兼業で午前中はコンタクトが取れないって話の方が実際は多いんだろうけど。

 

マネ2連絡用 それでは企画の説明を。

デビュー直後ぐらいに説明していた箱全体企画を11月前半に行う予定です!

その名も『第二回@Link学力テスト!~Vaka王は誰だ? 3期生襲来編!~』です!

秋宮ゆらら あっ、それ見た事あります

 

 中村さんから伝えられたのは予想していた通り全員参加の企画配信についてだった。企画タイトルも見覚えのあるものだ。

 @Link所属になるにあたって、先輩達がどんなキャラクターかを知るために公式アカウントの企画配信のアーカイブは全て確認している。その中でも色んな意味で参考になったのがこの@Link学力テスト配信だ。

 贔屓目に見積もっても中学生レベルまでの知識があれば解答できる問題群を相手にポンコツを晒す先輩方の姿を見て、『Vtuberってこういう感じなんだなあ……』と呆れ……いや、色々と参考にさせてもらったのだ。

 

秋宮ゆらら 困りましたね。第一回は確認してますけど、私あんなに面白い解答できないですよ?

私のキャラ的に真面目にやらずにちょっとはネタに走った方がいいですかね

マネ2連絡用 それ、みんな前回の時に言っててあの結果ですからね?

秋宮ゆらら えぇ…?

 

 そんな事ある?(二回目)

 真面目に解いた結果が500点満点で350点が1位になる訳ないから中村さんが話を盛ってるんだろうな、うん。

 リスナーに馬鹿と思われるのは癪だから真面目にやるとして、前回の先輩方の醜態からどういう解答がウケがいいかはなんとなく傾向が掴めてる。取れ高と注目も欲しいし、ネタ解答をワザとだと思われない程度に入れて400点程度を目標にするかな。

 そう決めて、スケジュールの確認と問題文について中村さんから説明を受けた後に話題が変わる。

 

マネ2連絡用 あと、遅くなりましたが登録者数5万人超えと収益化おめでとうございます!

幸先いいスタートで安心しました

秋宮ゆらら ありがとうございます

といっても、先輩方と箱推しリスナーのお陰でしょうけどね。まだバズれてないですし

マネ2連絡用 そんな事ないです!

ニヤニヤでも3期生の切り抜きがランキングに上がる事が何度かありましたし、純粋に実力と考えて頑張っていきましょう!

秋宮ゆらら そうですかねえ…

 

 中村さんは呑気だなあ。

 初配信には1万人を超える人が見に来ていたけれど、初配信から2週間程度経った今のソロ配信では4000人前後、コラボ配信でも1万人に同時視聴者数は届いていない現状だ。

 デビュー直後のブーストがかかっている実感はまだあるし、その上でそれなりにはチャンネル登録者数も伸びているけれど、これでは私がいる意味なんてないだろう。

 たまを人気にするために私が活動する。その目的を達成するにはまずは私が伸びなければいけない。私が集めたリスナーをたまに流す事が最もわかりやすいやり方だし、そもそも私が注目される立場にならないと何をやったって意味がない。兎にも角にも私が伸びないと話にならないのだ。

 デビュー直後にたまゆらコラボを連打して話題になったお陰か、今の所はたまのチャンネル登録者数は3期生の中で一番上だ。ただ、たまが54000人、私が51000人、冬城が50000人、さく姐が45000人と大して差がある訳でもないし、当然ではあるが、先輩方のチャンネル登録者数とはまだまだ差がある。

 先輩方の中で一番登録者数の少ないべる先輩の9万人超えを当面の目標にしたとしても、このままではかなり難しいだろう。ここまでのVtuber業界の伸び具合から見て、真っ当にやっていたらおおよそ半年程度はかかると私は考えている。

 やはりバズりは必要か。ニヤニヤの切り抜き動画がランキング上位に載るとわかりやすく登録者数が伸びるし、ブーストがかかっている今のうちに切り抜きやすくて面白い行動を意識的にどんどんしていかないといけないなあ。

 

マネ2連絡用 収益化配信などするつもりはありますか?

 

 がんばるぞいと気合を入れていたところで届く中村さんからのメッセージに返答する。

 

秋宮ゆらら そのうちします

みんなも収益化通ってるみたいですし、今日、3期生コラボの打ち合わせするのでその時にスケジュールが被らないように調整するつもりです

マネ2連絡用 そうですか!

秋宮さんに任せていれば安心です!よろしくお願いしますね!

 

 いや、マネージャーとしてその返しはどうなんだ。私はそう思ったのだった。

 

 

「……それじゃあ、明日の配信の段どりはこれくらいにして。収益化配信どうするー? あんまり日にちは被らせない方がいいだろうから一日置きにやるとして。さく姐がなるべく3期生推しの人からスパチャ投げてもらえるような順番にしたいからいつも通り春夏秋冬の順番でいい?」

 

 中村さんとの連絡をしたその日の夜。ディスコ通話で明日の3期生コラボの打ち合わせ、といっても配信開始時の段どりだけ決めた後に収益化配信について話を切り出す。

 

『すまねえ……かたじけねえ……』

『謝らなくても大丈夫だよー。明日のコラボ配信で収益化配信の告知をすれば、リスナーさんもいっぱい見に来てくれるだろうしいい考えだと思うよー!』

『ア、アタシもそれでだい、丈夫』

「この決め方だと毎回、冬城がトリになっちゃうんだよねえ。今回は大丈夫そう?」

『が、がんばる……!』

「えらいじゃん」

 

 相変わらず頼りなさげだったが、冬城もそれなりに会話に参加できている。自称保護者としては誇らしい気分だ。

 

『えらいねえ』

『え、えらいとかそんなんじゃないし……同期だからこ、このくらい当たり前だし』

『ことちゃん、たまちゃんもありがとう……極貧生活から脱却するためにも収益化配信頑張るわ!』

「おー、気合入ってるね。……ところでみんなは収益化配信なにするつもり? 全員が雑談配信ならともかく、ゲームとかするなら配信内容も別にした方がよくない?」

 

 同じ内容だと折角のリレー配信方式なのにもったいないと思って、私はこう提案する。

 

『あー、確かに。わたしはリズム地獄の耐久配信する予定ー』

『あ、アタシも耐久配信。ビペでチャンピオン何回か取るまで、やろう、かな?』

『二人が耐久配信するなら、わたしは雑談配信でゆったりめにやる事にするね』

 

 さく姐、冬城、たまとそれぞれ返答がくる。

 耐久配信はスパチャ目的でやる分には結構いいだろうけど、たまの言う通りリスナーの負担を考えると耐久配信が続くのはあまりよろしくはないだろう。

 

「それなら、私もゆったりめの配信にしようかな。……歌配信にするか。一応、私たちアイドルだし一人ぐらいは記念日に歌っといた方がいいでしょ」

『『そ、そんな決め方でいいの!?』』

『わー! ゆらちゃんのお歌久しぶり! 楽しみ~!』

 

 私が適当に配信内容を決めてさく姐と冬城が驚く中でたまだけが嬉しそうに喜んでいた。

 

 

 




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16.【3期生桃鉄コラボ】みんなで仲良く桃鉄やるぞぉ~! #あらやしき組【夏風たま/@Link】

 

「始まった?」

「始めたよぉ~」

「よし打ち合わせ通りに挨拶いくぞー」

「ほ、ホントにやるのぉ……?」

 

こんたまー

はじまったな

こんたまー!

止まるんじゃねえぞ…

ことちゃん嫌そうにしてて草

 

「それじゃあ……3期生我が世の春担当! 春原さくやと~」

「3期生祭りの夏担当! 夏風たま!」

「そしてー、3期生豊穣の秋担当の秋宮ゆららとー」

「さ、3期生おこたの冬たんとぉ~、冬城ことはぁ~」

「せーの、4人合わせて、@Link3期生! あらやしき組!」

 

 準備した台本通りに用意してきた口上を名乗ってから、全員でユニット名を言う。

 奇跡的に通話のラグもなく、4人の声が綺麗に揃った。

 

「……ふっ、決まったな」

「決まったねぇ」

「いや、なにこれ?」

 

あらやしき組うおおおおおおお

1人、気の抜けとる奴おるな

ツッコみが追い付かない

芸人集団かな?

なにこれはこっちの台詞だが?

 

 無事に挨拶ができて満足している私とたまにさく姐が口を挟んできた。

 

「なんだよー、さく姐だってノリノリで打ち合わせ通りやってくれてんじゃん。何が文句あるんだよー」

「やったけどさあ。我が世の春って自分で言うのはすごい調子乗ってる感でちゃわない?」

「まだ調子に乗れるほどの成果は出してないから大丈夫でしょ」

「急に辛辣!?」

 

泣いちゃった

同期を殴るな

秋宮、尖ってるなあw

あきみゃ、たまちゃんのチャンネルだぞ、ステイだ

不仲か?

 

「さく姐には早く我が世の春が来てほしいな、って思ってこんな口上にしたんだから感謝して欲しいよね」

「なるほど……? まあ、そういう事にしといてあげる」

「……ねえ秋宮、じゃあアタシのは?」

「おこたってなんか響きが可愛いじゃん……?」

「ねえええええ!!! アタシをオチ担当に使うのはどうかと思うんですけど!」

 

隙あらばこと虐

おこたの女かわいいと思うぞ

ことちゃんもオチ担当が定着してきたな

 

「着物のことちゃんに似合うなあって思ってわたしが考えたんだけど……なんかごめんね?」

「あっ……」

 

あーあ

あっ…

たまちゃんを悲しませるな

はいプレミ

 

 冬城の嫌そうな声を聞いて、たまがしょんぼりとした反応を見せる。

 冬に繋がる単語が核の冬しか思いつかなかったから流石にマズいと思って、実は冬城の口上だけはたまにお願いしていた。

 打ち合わせの時には特に言及しなかったから、冬城は自分の口上も私が考えたと思ったんだろうな。アドリブで私に殴り掛かってきたんだから、私が助け船を出すのもおかしな話だし(あと、面白いし)黙って見ていると。

 

「すぅーっ……嫌じゃないです! アタシ、おこたの女!」

「良かったぁ!」

「いや草」

 

軽率にそんな事言ったらこの先定着するぞ

おこたかわいいね

おこた、今日はちゃんと喋れてるな…

あだ名になるなこれは

 

 テンパった冬城は結局自分で名乗りだした。しばらくは擦られそうだな。「ことは」だからニックネームに使えない事もなさそうだし。

 それはそれとして。とりあえず冬城も配信内でコミュニケーションになってるやり取りができていて一安心だ。何とかなるだろうと思って同期全員でのコラボに踏み切ったけれど、最悪地蔵になった冬城の介護もやる覚悟だったからね。

 

「そう言えば、ユニット名決めたのはゆらちゃんだったよね。どんな感じで決めたかとか言わなくていいの?」

「あー、聞いちゃう?」

 

 さく姐が話題を変える。

 

「私達の名前は春夏秋冬つながりだから何かしらの形でユニット名に入れたいじゃん? 四つの季節って書く『四季』を含んでいる単語の中で、私達のいるバーチャル世界と君たちリスナーは根本の所で繋がってるんだぜーって思いを込めて『阿頼耶識』の単語を借りてあらやしき組と名付けたみゃ」

「おお、秋宮がかしこそうな事言ってるー」

 

かしこ宮じゃん

止まるんじゃねえぞ…はどこ?

絶対オルフェンズだと思ってたわ

うわあ!急に知性を出すな!

 

「……っていうのは後付けの理由でー」

「うん?」

「実際は『ひととせ』か『しき』のどっちをユニット名に入れるかで迷ってる時にちょうどラナ先輩のフリージア*1を聞いてたから『あらやしき』にしたみゃ」

「バカバカ、ラナ様巻き込むな! 大先輩でしょ!」

 

やっぱりオルフェンズじゃねーか!

止まるんじゃねえぞ…

そんな理由でこれからずっと使うユニット名を決めるな

あきみゃさあ…

よりによってラナ様を巻き込むなw

 

「怒られる時は私に任せたみんなも連帯責任で怒られようにゃ……」

「ヤだけど?」

「わたしもついてくから、配信終わった後に先輩に頭下げに行こうねぇ~」

「秋宮、ごめん……」

「この薄情者どもめ」

 

残当

見捨てられてて草

ラナ様怖いからね、仕方ないネ

 

 ちなみにラナ先輩にはこんな感じで名前を使う許可は先にもらっている。後で怒られるのやだし。

 これから3期生配信の待機コメントは「止まるんじゃねえぞ…」で溢れるんだろうなと思っていると、台本通りにさく姐がオープニングトークの締めの言葉を告げる。

 

「……というわけで、@Link3期生改め、あらやしき組として活動していきますので、これからもリスナーの皆様は私達の応援よろしくお願いいたします」

「よーし、挨拶も終わったし、桃鉄の時間だぁ~!」

「うおー」

「う、うおー!」

 

 4人の立ち絵が並ぶ配信画面のレイアウトが切り替わり、たまのゲーム画面が中心に大きく表示され、横隅に私達の立ち絵が並ぶ。

 ゲームの設定自体はオープニングトーク前にある程度済ませておいたので、つい先程ゲームを開始した形だ。

 

「今日の桃鉄は3年決戦でやってくよ~、最初の目的地は長崎!」

「先攻は私がもらうみゃ。私は手札から魔法カード『急行周遊カード』を発動。効果でサイコロを2つ振り出た目の合計分私の駒を進めるみゃ」

「いや、すごろくに先攻とかないでしょ、あと魔法ってなに?」

 

別のゲームやってる奴おるな

先攻は第一コーナーを取ったデュエリストのものではないのか!?

あきみゃ、デュエリストだったのか…

 

 さく姐の冷静なツッコミをスルーし、無難に駒を進めて止まったのはカード駅のマス。

 このマスでは私が今使ったカードのようにゲームを有利に進めるためのカードを手に入れられる。

 

「あっ……」

 

あっ……

初手から友情破壊カードw

よりにもよってあきみゃの手に渡ってしまったか…w

 

 出てきたカードの名前を見て、さく姐が何かを察したような声を出した。

 

「私が引いたカードは『屯田兵カード』だ。これでいつでも冬城を北海道送りにする事ができる!」

「……えっ!? アタシぃ!?」

「私は冬城の鳴く声が聞きたいな♡」

 

はい、こと虐

こと虐たすかる

流石こと虐のエキスパートだ、面構えが違う

ちっちゃい組の絆、どこ…?

(絆なんてそんなもの始めから)ないです

 

 ゲーム開始直後なので、私のこの攻撃を防ぐ方法はほとんどないわけで。つまり今は一方的に私がイニシアチブを握っている状態だ。

 誰を飛ばすのも私の思うがままで盛り上げるためなら、やっぱり飛ばすのは面白いリアクションしてくれる冬城だろう。

 

「見逃してほしかったらさあ、それなりの頼み方とか命乞いがあるべきじゃないのかみゃ?」

「ひ、ひん……アタシ以外にもそのカードは使えるじゃん……そんな物騒なカードは捨てて仲良く桃鉄やろうよう……!」

「……あー、次はわたしの番だー」

「わたしもいいカードが欲しいなあ!」

「ねえ! さく姐もたまちゃんもスルーしてないで助けてよぅ!」

 

絆、ゼロ!w

誰も止めに入らないのは草

前々から思ってたけど、たまちゃん絶対Sでしょ

皆で仲良くこと虐

あきみゃは絶対カードつかうだろうしねw

 

 矛先を向けられないようにか、私達2人を無視して自分の番を始めるさく姐。

 次のターンに無言でさく姐を北海道に飛ばすのも面白そうだけど、ここは初志貫徹だ。

 

「冬城。命乞い、して?」

「か、勘弁してくださいぃ……」

「人にモノを頼む時にはもっとかわいく媚びないと、ほら、みゃあって言って♡」

 

同期に猫要素を侵食させるなw

個人的にはたすかる

おこたの媚びとかめっちゃレアじゃん

 

「そ、そんなの……いや、ここでなにか移動系のカードを手に入れればそんな事しなくても……うんちカードなんていらないよぅ!」

「ようし、私のターンがきたぞう」

 

 さく姐とたまのターンの次に冬城のターンがやってくるが起死回生のカードを手に入れる事はできず。再び私のターンがやってくる。

 画面上では屯田兵カードにカーソルを合わせ、冬城にもう一度問いかける。

 

「さあ、懺悔の用意はできているか?」

「ゆ、許してみゃあ……!」

「うおー、かわいー、さいこー! いけー! 屯田兵カード!」

「なんでえええええええ!!!???」

「本当にやりやがった……」

「ゆらちゃんはやると言ったらやるからねぇ」

 

しってた

おこたの鳴き声は体にいい

かわいいけど草

テンポ感よw

たすかった

 

 ちゃんと媚びてきたけどお約束通りに私は冬城にカードを使い、冬城は悲鳴をあげながら北海道へと飛んで行った。

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

 

388:名無しのV ID:kubaXR9id

3期生改めあらやしき組コラボ良質だったな、ついのトレンドにも乗ったし上出来やろ

切り抜き禁止なのが惜しい

 

392:名無しのV ID:NdB2E9CjE

あらやしき組内の力関係

たまちゃん>あきみゃ=さくやさん>>>>おこた

おこたがよわよわすぎる

 

394:名無しのV ID:ZXad0l6ty

おこた呼び放送中に定着してて草

 

397:名無しのV ID:jaLLDdMBW

デビュー直後めっちゃキョドってたおこたが今回のコラボではそれなりに喋れるようになってて…

なんか成長する子供を見る親の気持ちになるな…

 

400:名無しのV ID:3Xx4Tw7sh

>>397

あきみゃとのコラボやったお陰か、あきみゃには割と話しやすそうにしてたな

なお、あきみゃはこと虐大好きの模様

 

403:名無しのV ID:MgNnxqxe4

おこた「ねえ! あてぃし最下位だからもうやめようよ!」

あきみゃ「やられたらやり返す、倍返しみゃ」

おこた「最初にやったのはそっちじゃんかああ!?」

仲良く最下位争いしちゃうちっちゃい組てぇてぇだわ……

 

408:名無しのV ID:l8OMUgIAk

>>403

たま「あっ、ベビキュラーカードだ」

ゆらら「いいカードじゃん」

たま「えい(ノータイムで3位のあきみゃにベビキュラーカード)」

ゆらら「……えっ?」

たまゆらもてぇてぇだったぞ

 

410:名無しのV ID:MFpQWwEUD

>>408

やっぱりたまちゃんが攻めなんだなあ

 

413:名無しのV ID:XI0PdZXSj

>>408

たまちゃんは全方位殴ってるんだよなあ…

 

416:名無しのV ID:P0/6PGU3z

さくやさん「仲良くやるっていったい……」

 

418:名無しのV ID:D/ci0gsCO

>>416

たま「こういう事だよ~(指定うんちカードで閉じ込め)」

さくや「うん……!?」

ゆら「さらにもう一発(デビル派遣カード投げつけ)」

さくや「ねえええええ!!!」

 

419:名無しのV ID:yCpMcl6Xu

>>418

スピード感が良すぎて笑っちゃった

たまゆらのコンビネーションが良すぎる

 

422:名無しのV ID:SWcOq+F5h

たまちゃんがバチバチに殴りあうタイプなの本当草なんだ

清楚ボクサー……アリだと思います

 

426:名無しのV ID:Zn+ktVFdj

それより、全員収益化通ったの良かったな

ようやくさくやさんが極貧生活から抜け出せるんやなって…

 

428:名無しのV ID:92ka3QDMz

>>426

みんなでスパチャしような…

収益化配信もリレー配信でするあたり、あらやしき組はあんなんでも仲良さそうで何よりや

 

429:名無しのV ID:p2hYRtXHX

>>426

たまちゃんとおこたはいつも通りの配信って感じだけど、あきみゃが歌配信なの意外だよな、今まで一回もやってこなかったし

さくやさんは体張ってるなあ…

 

434:名無しのV ID:cxgmmwaxi

>>426

ボーナスはまだ半分残ってるぞ(半分は既にスパチャとボイスに溶けた)

 

435:名無しのV ID:RJgXvODQn

>>429

歌配信するならさくやさんだと思ってたな、歌枠一回やってたし

あんまりあきみゃがガチで歌うイメージ湧かんなあ。

 

436:名無しのV ID:kglEhzUpX

>>426

収益化も初配信から一ヵ月経たない内に通るようになったんやな、本当V文化の成長を感じるわ

 

440:名無しのV ID:ErywSfclN

>>426

たまちゃんの収益化記念よっぱっぱ配信楽しみやわ

いい酒買ってこよ

 

 

 

 

*1
アニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のEDテーマ。深刻なミーム汚染に侵されている




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います


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17.チューニング

 

 朝6時、珍しく早起きした私は真っ先にようtubeを確認する。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ~~~!」

 

えー、ラストステージ到達からこれで2時間です

【悲報】終わらない収益化配信

もう寝ろ

¥3,000

8時間ぶっ続けでテンション保てるのはすごいなって…

さくやさんがんばえー

清楚どこ?

 

「うわあ、さく姐まだやってる……」

 

 昨日の夜10時から始まっていた筈のさく姐の収益化記念の耐久配信はまだ終わっていなかった。

 寝る前にちらっと初めの方だけ見た感じだと、全クリまで時間がかかりそうだなとは思っていたけどまさかまだやっているとは……

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

起きたらまだやってて草なんだ

#すのはライブ

 

「よし、と」

 

 さく姐の配信タグをつけてついーとを投稿した私は朝食を適当に済ませた後で自室の隣の部屋に入る。

 

「こんな事やるのも久しぶりだなあ」

 

 その部屋は書斎と呼ぶべきだろう部屋だ。

 扉がある面以外の三方の壁が本棚に収められた本に埋め尽くされ、中央にポツンと椅子が置かれているだけの部屋。

 今となっては私の買った本しかないこの部屋に、掃除以外の目的で最後に入ったのはもう大体3年前くらいになるか。なんだか懐かしい気持ちになりながら、なんとなく一つの本を手に取る。

 

「『このストレス社会でうまく生きていくということ』……ふふっ、結局上手に生きられなかったなあ」

 

 ポイと本を適当に投げ捨てる。わざわざこんな部屋に朝早く起きてまで入ったのだ。自己啓発本なんて読んでる暇はない。

 椅子に腰掛け、持ってきたヘッドフォンを耳にあてる。

 

「とりあえずネタ曲じゃなくてちゃんとした曲から練習した方がいいかな」

 

 ヘッドフォンから音が流れ出す。

 本家の原曲の後に、人気の歌ってみたの動画があれば再生数順に5曲、後は人気のVtuberさんがその曲を歌っていればそれも5曲程度が順番に流れるようにしたリストを1つの曲毎に事前に作成しているので、後はただ目を瞑ってそれを聞くだけだ。

 もうここまで来れば説明するまでもないが、今から私が行うのは明日の歌枠のための練習だ。

 気軽に歌を歌うと言ったはいいが、よくよく考えてみれば私はキャラ声で歌うという事を一度もした事がなかったため、歌枠配信を明日に控えた今日に慌ててそのイメージトレーニングと練習を行う事になったのである。

 ただ原曲をほぼコピーするだけ、もしくは音程をぴったり合わせて歌うだけならここまでしなくたっていいけれど、『秋宮ゆらら』として歌うからにはそのどちらでも許されない、らしい。ネットの反応を見た感じ、キャラのロールプレイの声と歌声があまりにも乖離すると解釈違いを起こすのだとか。面倒くさいなオタクは。

 ネタ曲なら別にあまり練習しなくても秋宮ゆららとして出している声で歌う事はできるだろうが、真面目な曲やアップテンポな曲でその声では逆に浮いてしまう事は私でも想像はつく。

 秋宮ゆららを無視した声でも、秋宮ゆららの声でもどちらでもダメだと言うのなら、その両者を掛け合わせて秋宮ゆららとして許される範囲の声を調声する必要がある。

 ……とはいえ。私は歌のような明確な解答がない分野についてとやかく言えるほどの知識を持ち合わせてはいない。自分の感性はアテにならないので実際の反応は明日出してみてからのお楽しみかな、と正直投げやりな気持ちでもある。

 

「別に歌が下手でもそれはそれで推すんだろうしなー、オタクはほんとチョロい奴らだ」

 

 ちょうど2人目のVtuberが曲を歌い始めた所でそう呟く。

 1人目のラナ先輩が歌っていた時は歌を主戦場にしているだけあって、なんとなくだけど上手いなと思っていたが、この人はハッキリと下手だとわかるくらいには下手だ。メリハリがないし、歌詞は間違えるし、音程は外れてるし。

 けど、不快かと言われるとそうでもない、と思う。普段の喋り方と変わらない『キャラクターとしての声』のまま歌っているからだろうか? ……そもそも普段からキャラを作らず素の自分で活動している人がこの界隈には多いみたいだからなんとも言えないけどね。

 多分だけど私が今、参考にしなきゃいけないのはこういう歌だ。声だけじゃなく、歌い方でも『秋宮ゆらら』っぽさを意識する。

 自由気ままな猫であり、感情を表に出さない捻くれ者で、社会に溶け込めないはぐれ者。

 要素を挙げていく。……歌ならもうちょっと抽象的なテーマの方がいいかな。

 

「『無関心』は歌には合わないか。『孤高』って言えるほどカッコ良い人間、いや猫じゃないしなあ。というより、一応アイドルだし暗い感じは抑え目で……『流星』かな」

 

 人の手の届かない空に流れて、そして闇に溶ける光。

 一瞬の輝きと後に何も残らない静寂によって美しさを表現する消失する星。

 うん、秋宮ゆららにはこういうテーマの方が似合う気がする。

 

「普段の声のトーンを中心にして、透明感とやらを意識、高音の所で消えそうで消えない儚さと力強さを表現してってなるとこんな感じかな」

 

 ちょうど準備してきた1曲目のリストを聞き終えたのでここからは実践だ。

 ヘッドフォンから伴奏が流れ出す。

 秋宮ゆららの声のままだが、抑揚を意識して。聞いた中では歌い手の『そふぃー』さんの歌い方が一番私の目指す歌い方に近かったのでそれを参考に。後は普段と同じように相手に伝えたい感情を言葉に乗せる。

 歌を最後まで歌い終わると、スマホで録音した私の歌声を確認する。

 

「……うん、まあこんなもんでしょ。後は秋宮ゆららとしてこれが受け入れられるかって問題だけど……こればっかりはチカに感想を聞いても『とっても良いよー』としか返ってこないしなあ」

 

 身内に全肯定オタクしかいないと、判断基準に困るんだよね。

 音程的には問題ないし、声質的にも秋宮ゆららの声とほぼ変わらないまま歌えている。これ以上は自分で改善する点も見当たらないので、後は他の曲も今の歌い方で歌えるように練習するか。

 私は2つ目の曲のリストの再生を始めた。

 

 

「……練習終わった〜」

 

 準備した20曲の練習が終わる。

 歌声のベースを最初に決めたので他の曲は1曲目程には時間はかからなかった。

 2時間の歌枠の予定で途中に雑談も挟むだろうから、20曲全部歌う事にはならないだろうし、ましてや歌える曲がなくなるなんてこともないだろう。最悪、歌声だけは定まっているので、知っている曲を秋宮ゆららの声で歌うだけでそれなりの出来にはなるだろう。

 集中していたせいか、気づけば午後の6時まで時間が経っていた。お腹も空いていたので遅めの昼食を食べに部屋から出る。

 

「あっ」

「……何してんの、チカ? もうすぐ配信でしょ」

 

 部屋の前にはチカが座っていた。

 8時から記念配信するんだから、もう準備もしとかないとダメだろう。

 

「えへへ……配信の前にご飯だけ作りにきたら、あさひちゃんが歌ってたからつい、ね?」

「何時間、廊下で座ってたのよ。言ってくれれば椅子くらいは用意したのに。それに部屋の外で聞くより中で聞いた方が良い感じで聞こえるんじゃないの?」

「それはやだ。ちゃんとした歌は明日の配信で聞きたいな」

「そう。それならバッチリ……いや、ちょうどいいから聞いておこうかな」

 

 予想していた通りの回答が返ってくるのだろうと思いながらもチカに尋ねる。

 

「私の歌どうだった? ちゃんと秋宮ゆららっぽかった?」

「ゆらちゃんっぽさ? 相変わらず難しいこと考えてるねえ。わたしはとっても良かったって思ったけど、あさひちゃんはやっぱり不満なの?」

「……チカなら良いって言ってくれるだろうなって思って聞いただけ」

 

 私がそう返した瞬間、チカが私の手を握る。

 

「何度だって良いって言うよ。わたしが言いたいからね。あさひちゃんが良いものを作ろうと思って頑張ったなら、それはもうわたしにとっても良いものなんだよ〜?」

 

 ……相変わらず、ずけずけと私の中に入り込んでくるなあ。

 私自身が大嫌いで理解できない『私』をチカは好ましく思っていて、どれだけ私が道を踏み外そうと、簡単に引き上げてしまう。

 その度に私は劣等感と虚無感に襲われるのだ。

 望めば何にでもなれるような人間であるチカが私と幼馴染であったという理由だけで『私のお世話がかり』に甘んじているような現状が。それを心底幸せそうに感じているチカが。そして、チカがいなくなるだけで生きていけなくなる自分自身が、嫌いだ。

 

「……配信準備、しなくていいの?」

「忘れてた! 唐揚げ作って下に置いてあるからチンして食べてね〜」

 

 そう言葉にすると、チカは足早に帰っていった。

 

「……たまの配信見ながらご飯食べよっと」

 

 折角晩御飯も作ってもらった事だし、たまの配信もあと1時間ちょっとで始まる。どうせならと、私は配信を見ながらご飯を食べる事にした。

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います

曲は流石に既存曲使わせてもらうつもり。オリジナル曲とか作れん。
あと、マシュマロでファンアートに関して質問あったので。
基本的に自由に描いてもらって大丈夫ですよ。
一応、ゆららの外見を箇条書きで下に続けときます。
・外ハネショートのオレンジ色の髪
・ジト目気味の薄い翡翠色の目
・猫耳猫しっぽ(しっぽはパーカーの中に収納してるので見えない)
・ロリ体型(身長135cm前後)
・膝のところまであるくらいぶかぶかの黒色のフード付き萌え袖パーカー、下はスパッツのみ(見えない)
・ルーズソックス+スニーカー


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★18.【歌枠】収益化+5万人記念! ゆららおんすてーじ、みゃ【秋宮ゆらら/@Link】

設定は是非「挿絵表示 有り」にしてくれ


 

「みゃ〜みゃみゃみゃ〜♪ こんみゃー、君たちぃ」

 

こんみゃー

¥340

みゃー!

久々の君たち呼びだ

¥7,530

あきみゃ、収益化おめ!

¥2,500

ご機嫌じゃん

収益化と登録者5万、俺もうれしいよ…

(後方腕組厄介野良とも)

 

 普段より愛想よく配信を開始すると、コメント欄に投げ銭機能のスーパーチャットが色とりどりに流れていく。

 まだ何にもしてないのに気前がいいなあ。配信前の待機画面の時に赤スパ*1をいっぱい流してリスナーがレッドカーペットを作ろうとしてたのは流石にどうかと思ったけどね。スーパーチャットなんだから私に読んでもらえなきゃ意味ないだろうに。

 まあ、それはともかく。

 

「今日は私の収益化記念とチャンネル登録者数5万人記念、お祝いコンサートにお集りいただき誠に感謝! みゃ。野良とものみんな早速スパチャをたくさん投げてくれてありがとみゃ~。君たちのスパチャは私の食費になって、たまが美味しく料理しますにゃ」

 

¥700

もうたまちゃんの飼い猫じゃん

首輪あきみゃ……閃いた

¥25,000

焼肉代、あらやしき組で収益化記念の打ち上げして♡

¥1,000

たまゆらてぇてぇいつも助かってます

アイス代、二人で食べて

¥10,000

焼肉代

スパチャ多いw

¥3,000

ケーキでも買って食べて

 

「わー、キレイ。スパチャはちょっと思ったより多いから、この放送の後にキャス配信でスパチャ読みしまーす……あと、私まだ歌ってないけど君たち大丈夫? その調子じゃこの放送が終わる頃にはみんなスカンピン丸出しになっちゃうよ?」

 

その時は自己破産するから大丈夫

親のカードだから平気

パチンコで取り戻せるから…

リボ払いはいいぞ

¥3,000

年末ジャンボで3億円戻ってくるからおすそ分け

 

「野良ともはダメ人間のロールプレイがうまいなあ。えらいえらい。限度額があるからって言ってもあんまり調子に乗って投げすぎないようにね。……まあ、こんな事言っといてなんだけど、今日の歌はみんなが喜んでスパチャ投げたくなるようにばっちり仕上げてきてるんだけどにゃ」

 

 自信満々にそう言うと、コメントも「楽しみ!」などの好意的なコメントで沸き立つ。

 

「にゃふふ~。もうちょっと雑談で時間を稼ごうと思ってたけど、もったいぶらずに歌っていこうかな。秋宮ゆらら、最初の歌枠の記念すべき1曲目は~『Be mine!*2』!」

 

 曲名を告げた後に数秒の空白の間で空気を変える。

 かわいさとカッコ良さを前面に出して、この1曲で私の虜にするぐらいの気持ちで。

 そして、私はマイクにエコーをかけて曲の音源のスタートと同時に歌いだした。

 

Be mine(ビー マイン)! あらがえない~欲望にKiss and cry(キス エン クライ) てーっぺんで見下ろしたい完全掌握の結末をー♪」

 

!?

[明星ラナ]うっま

かわいいいいいいい

¥10,000

やっば

マジですげえ

 

 とりあえずコメントを見る感じ、仕上げてきた歌声に問題はなし。

 出だしのロングトーンの最中でそれだけ確認して、そのまま押し切る事にする。

 

「やりたいようにやったって~誰か邪魔してくれないかな 勝負は~いただき♪」

 

[冬城ことは]死ぬ程うまいやん…

[べる・しとりぃ]@Linkに本物のアイドルが入ってきてしまった…

[霧ノ江アザミ]

¥20,000

かわいい、かっこいい、すきだ…

[天羽あうろら]かわ……

[白峰ぽぷら]うーん、これは声量足りてるw

 

 ……それにしても先輩方見すぎじゃないか? アザミ先輩は赤スパまで投げてるし……

 

きりおじがまた同僚に限界スパチャ投げてる…

[根津ゆのみ]歌うっまー…

みんな見とるやんw

[水無瀬凪海]こんな透き通った声の持ち主が@Linkに来るとは…

きりおじさあ…

[エレノア・レッドハート]高音すっげー…

 

 コメントを流し見しながら歌っていると、まだコメントがなかった先輩方のコメントも流れていく。

 いや、全員見てるのかよ。

 「耐久配信はともかく、なるべく配信時間は被せないようにするよ」とは事前に言ってもらえてたけれど。時間が空いてるからって私の配信をみんな見に来るなんて暇……いや、後輩思いの先輩達だなあ。

 

 とにかく、ここまで盛り上げてもらえてるなら、なおさら無様な真似は見せられないね。

 

「──遊びはー おしまい Be mine! 私の名は本能の共犯者ー♪」

 

 ラスサビ、ラスト30秒でさらにギアを上げ、声の揺らぎと共鳴を全力で使って、見てる奴らの感情をぶち壊す位の勢いで!

 

It's mine(イッツ マイン)! あらがえない欲望にKiss and cry♪ てーっぺんで見下ろしたい完全掌握の結末をー♪」

 

すっげー…

高音綺麗すぎる

しゅき…♡

¥50,000

あきみゃすこ

かっこかわいいいいいいい!!

 

「──♪ ……みゃ。というわけで、『Be mine!』でしたー。どうだった?」

 

 最後のロングトーンまでしっかり歌って、音源の終わりを確認するといつものテンションでコメント欄に問いかける。

 

88888888

¥50,000

ガチで仕上げてくるやん…

¥7,000

88888888

生歌でこの完成度とかつよつよすぎる…

¥10,000

あきみゃが歌勢だったとはこのリハクの目をもってしても見抜けなかった…

¥4,500

これ生歌ってマジ?歌唱力が高すぎるだろ…

 

「にゃはは~。そうだろ~すごかろ~。うむ、野良ともを歌唱力でわからせるのは楽しいねー。あ、そういえば。先輩方ー! みんな見てたよねー? アザミ先輩はスパチャありがとうございますみゃー。後輩ネコガキに貢ぐなんて悪い人、みゃ♡」

 

[霧ノ江アザミ]

¥10,000

心のチソチソがイライラしてきた…もっと貢がせろ

きりおじ、ステイ

全方位に百合営業しかけるなw

きりおじがネコガキにカモられてる…

 

 ちょっと媚び声を出してみると、まだ見ていたらしいアザミ先輩がまた赤スパを投げてくる。いやー、流石は先輩だ。配信の盛り上げ方をわかってる。

 

「先輩まで狂わせる私は罪な女だにゃ。放っておこ」

 

ひでえw

またきりおじが雑にフラれてる…

[根津ゆのみ]うちの同期がごめんね…

[夏風たま]次はかわいさマックスの歌うたってー!

たまちゃんもよう見とる

 

「おっ、たまも見てんじゃーん。それじゃあリクエストにお応えして2曲目は『すーぱーぬこわーるど*3』! 全力で媚びてくぞー」

 

もふれえええええじゃん

うおおおおおおおおおお

¥5,930

あきみゃの全力媚び、もってくれよオラの体…

落差よw

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

200:名無しのV ID:Uk0FeCU1Y

おつみゃ~

いやあ、まさかあきみゃが歌勢だったとはたまげたなあ(白目)

 

202:名無しのV ID:IF3HLK4Zc

>>200

なんであれだけの歌唱力があって、今までいっさい歌に関してアピールせずにメスガキムーブを繰り返してたんだ…理解不能だ…

 

205:名無しのV ID:Z8Lp6SpEW

>>200

@Link運営はどこからあのネコ拾ってきたんだ

採用担当が有能過ぎる

 

206:名無しのV ID:M8sJfo9s4

>>200

あきみゃの前世まだ割れてなかったよな。

歌い手か?

 

210:名無しのV ID:OuoLsXEl5

>>206

一応まだ割れてないけど、配信関係で戸惑った様子が今までなかったから配信経験者の可能性は高い

あと、生歌であのレベルは歌い手でもそうそうおらんやろ

 

215:名無しのV ID:gzkpCC7TX

ニヤニヤの切り抜きもう1万再生されてて草

まだ放送終わって2時間経ってないぞw

 

216:名無しのV ID:9ZCE7F3Nj

>>206

言っちゃ悪いけどVで比較できる人は数える程度やろ

@Link運営が歌本業の人連れてきたようにしか思えん

 

220:名無しのV ID:8Cho97SxZ

>>215

@Link3期生がとうとう(2週間ちょっと)発見されてしまったか…

あきみゃのボカロ曲めちゃくちゃ良かったなあ

 

223:名無しのV ID:9ARF6uEIn

>>220

やっぱりスタートのBemine!が最高過ぎる。

プラチナ*4もよかったし、今度坂本真綾曲縛りしてほしい…

 

224:名無しのV ID:KceoCVtQ+

>>206

普段の声とほとんど声変えてないんだよな。Vで歌うまい人だと歌う時だけ声変える人結構多いのに。

それでいて力強くて高音が死ぬ程透き通ってんの。いやー、誰だよコイツをRP勢って言った奴

 

227:名無しのV ID:9CG3mHwvB

>>215

3 期 生 の わ か ら せ て く る 奴

開幕の迫真赤文字すき

 

228:名無しのV ID:tOth1jTsZ

>>224

おで、たまに出してた低音ボイスとがなり声にやられた

もっとカッコ良さマシマシの歌も歌って欲しい…

 

230:名無しのV ID:w9VMBFOkz

いや草なんよ

 

                            

冬城ことは@Fuyuki_Link

こんな歌がうまいなら収益化配信のトリは秋宮にやってほしかった

秋宮の配信が収益化配信リレーの盛り上がりのピークだよ。後は下り坂だよ。ひん……(´;ω;`)

#あきみゃー監視中

 

233:名無しのV ID:WZ2zuk0A8

>>230

急なプレッシャーがおこたを襲う!

 

234:名無しのV ID:XKgIGRNHI

>>230

かわいそうだけどちょっと草

 

235:名無しのV ID:z84mH86DJ

>>230

案の定スパチャ読み配信中のあきみゃに鳩が飛ぶ

あきみゃ「え、冬城がヘラってる? 歌があんなにうまいなら先に言ってくれ? いやー、聞かれなかったから答えなかっただけですしー。私は悪くないみゃ」

 

236:名無しのV ID:h//bN7Rg3

>>235

畜生ネコがよ…

 

240:名無しのV ID:QsWgTf/6o

>>235

うーん、これは猫畜生w

 

241:名無しのV ID:DCnfHJIZ8

>>216

対立煽りになりそうなレスは程々にな…

それはそれとして、@Link歌うま勢のラナ様とあうあうと一緒に歌動画とか出してほしい

 

244:名無しのV ID:dvGmCaIKZ

あきみゃのチャンネル登録者数、現在進行形でめっちゃ伸びてるな

 

 

秋宮ゆららさんがリツイート

べねぼれ@benevolepwd

だいだいだいすきだよ

#ゆらあーと

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

*1
10,000~50,000円の高額スパチャ

*2
『世界征服~謀略のズヴィズダー~』のOPテーマ。私のものになって♡ あ、ちなみにだけど2014年放送だって、時が経つのは早いね

*3
まふまふさん作詞作曲のボカロ歌。ぬこしりーずすこ

*4
『カードキャプターさくら』のOPテーマ。性癖を歪めてくるやべーやつ




べねぼれ様(@benevolepwd)からファンアートをいただきました。ほとんど描写してなかったのに同期全員のキャラデザまでしてくれて愛をすごく感じましたね。ワイが書いてたってことにならんか…?
これからもファンアートは自由に描いていってください。キャラデザの細かい違いはちゃんとキャラ外見の描写をしていない私が悪いって事で。ファンアートなんでその辺は目くじら立てずに楽しんでもらえればと思います。


マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います


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19.なんか謎にバズった

 

「えぇ……? なにこれ?」

 

 収益化配信、その際に送られてきたスパチャを読む配信の後、ディスコに送られてきていた先輩方からのお褒めの言葉に反応して少しやり取りしてから就寝した翌日。

 目覚めた私は中村さんからの「チャンネル登録凄いことになってますね!」とのメッセージで自分のチャンネルページを見て、困惑の声を漏らした。

 

「1万人くらい増えてない……?」

 

 表示されていたチャンネル登録者数は65386人。昨日の配信前と比べると1万人以上、登録者数が増えていた。

 寝る前に確認した時には55000人くらいで、「先輩達が宣伝してくれたお陰で箱推しの人がいっぱい登録してくれたんだろうなー」と思っていたけれど、1日でこれはいくらなんでも増えすぎじゃないか?

 

「ひとまず……」

 

秋宮ゆらら と、登録者は買ってないです…私は無実です…

許してみゃ…

マネ2連絡用 怒ってないですが!?

 

 どうやら疑われているわけではないようだ。

 たまのために活動しているのにいまいち結果を出せていない私が、形だけでも人気であるように見せかけるために登録者数を水増ししている、などと言いがかりをつけられる可能性もあるかと思ったが、そんな事はないらしい。

 

秋宮ゆらら それじゃあ、なんでこんな事に…?

チャンネル登録を盛るなら私じゃなくてたまの方にしてくださいよ

マネ2連絡用 盛ってないですって!

なんでって昨日の歌配信がすごく良かったからじゃないですか!

切り抜きなんてすごく再生されてますよ!

 

 ……?

 

 いまいち言っている意味がわからなかった私の元に、中村さんがスマホでスクショした画像を送ってくる。

 ニヤニヤ動画の全ジャンルランキングのスクショ。1位だったのは、サムネに私の立ち絵が大きく映されている『バーチャルネコガキ、死ぬほど歌がうまい』という動画だった。

 昨日の歌配信の切り抜きなのだろうその動画は、まだ投稿されてから半日程度しか経っていないのに4万回以上再生されている。

 

秋宮ゆらら なんかすごい伸びてますね

Vtuberなんて今じゃ腐るほどいるんだし、歌がうまいだけでバズる時代はもうとっくに終わってるでしょ

謎ですねえ

マネ2連絡用 謎とかじゃなくて本当に歌だけでバズってるんですって!

企業所属だから初期から一定数のリスナーに見てもらえたり、今までの秋宮さんのキャラとのギャップとか理由は他にもあるんでしょうけど…

とにかく!それくらい!本当によかったんですよ!

秋宮ゆらら 圧がすごい…

オタクくん、おちついて…

 

 中村さんの押しが強い……なんでこんなに興奮してるんだ?

 引き気味の私を置き去りにして、中村さんからのメッセージがさらに届く。

 

マネ2連絡用 落ち着いてられますかーっ!( ゚Д゚)

同接だって最高1.8万人までいってたじゃないですか!

ソロ配信でこんな事滅多にないです!もっと自信もってください!٩( 'ω' )و

秋宮ゆらら はあ…?

昨日は箱内の配信被りもなかったし、先輩方が狂ったように配信タグ付けて宣伝ついーとしていたみたいですし…

あんまり参考にならなくないですか?

マネ2連絡用 なんでそんなに過小評価してるんですか…

何度でも言いますけどほんっっっっとうにすっごく良かったんですって!

個人的に歌って欲しい曲をリクエストしたいぐらいに、秋宮さんの歌は魅力的なんです!自覚、大事!

秋宮ゆらら えぇ…ホントに私のオタクくんじゃないですか…

別に言ってもらえればいつでも歌いますけど…

マネ2連絡用 しょ、職権乱用になるから…そんな事頼めないです…グギギ

 

 そんな血涙流しそうなほど悔しがらなくても……

 とにかく、どうにも本当に歌がうまいだけでこんなにバズっているという事らしい。

 私としてはあまりピンと来ていない。配信中に聞いていたなら「同僚もマネージャーも狂わせる私って罪な女だみゃ……」ととぼけるくらいには実感がなかった。

 定められた音程と拍子通りに感情を乗せて言葉を発するだけでいい歌は、芸術系の分野では珍しく得意だと自負できるジャンルだけれど、それで飯を食っていけると言える程の腕を持っているとは言えない……というより、良いか悪いかを判断できる程、音楽に明るくないし。

 仮に私の歌がプロ並みにうまかったと仮定しても、だ。私はVtuberだから、視聴者は歌の上手さなんて最初から求めていなくて、そのキャラらしい歌声を聞きにきているんじゃないの?

 キャラソンでそのアニメのキャラクター声じゃなくて、担当する声優の地声が前面に出ている時のような残念感さえなければなんとでもなるだろうと思っていたので、そもそも歌で人気になろうという発想は最初からなかったのだ。

 そもそもだ。私よりチカの方が友達と行ったカラオケでは人気だったんだよね。そういう所も私が歌でバズる程うまいと言われても実感できない所で……

 

秋宮ゆらら あっ…

マネ2連絡用 どうしました?

秋宮ゆらら 歌でバズれるなら私じゃなくてたまに歌わせればよかったと…

なんで私が歌ってしまったんだ…私がバズってどうするんだ…

マネージャーも止めてくださいよ。オーディションしてたんだから、たまが歌うまなの知ってたでしょ

マネ2連絡用 いや、秋宮さんが歌が上手い事すらマネージャー一同誰も知らないですからね!

秋宮ゆらら 言ってないし、配信で歌った事もないから、知らないに決まってるでしょ?

マネ2連絡用 ええ…なんで諭すように言ってるんですか…?

夏風さんが歌うまなのは知ってますけど、私は秋宮さんの歌の方が好きですよ!

秋宮ゆらら そう…

くそう…たまを人気にするどころか、私自身がたまがバズるチャンスを奪ってしまうとは

誰が生めと頼んだ…誰が作ってくれと願った…

マネ2連絡用 ミュウツーでヘラらないでください…

 

 ショックだ。チカが本来享受する筈の利益を、よりにもよって私自身が横からかすめ取ってしまうとは。

 ……いや、まだ何とかなる筈だ。元々、私が炎上上等で悪目立ちしてチャンネル登録を増やして、たまのチャンネルに視聴者を流す計画だったんだ。意図していない形ではあるが、その前提条件は達成されている。

 そして、私が歌でバズったからといって、チカが歌でバズれなくなったという理屈も実際にはイコールではない筈。チカの歌が下手になった訳でもなし、多少インパクトは落ちるかもしれないが、私が歌でバズれるならチカだってバズる。いやバズらせる。

 私は切り替えが早い女。こんなミスでいつまでも立ち止まってはいられない。

 

秋宮ゆらら マネさん、歌ってみた動画の作り方教えてください、そのあたり全然詳しくないので

あと、たまとの定期ラジオを近日中に始めます

エンディングでデュエットして、たまも歌うまなのを周知させていきます

私目当ての視聴者をたまに流す絶好の機会です

またオケ確認とかお願いするのでよろしくです

マネ2連絡用 わかりました!

注目がある内に精力的に活動していくのには賛成です!どんどん頼ってくださいね!

 

 

 「それはそれとして。今日はボイス販売についてと、学力テストの問題文ができたので…」と言ってきた中村さんと少し打ち合わせをして、その後でもらった学力テスト企画の問題文を解いて、としているうちにお昼になる。

 

「チカはゼミ行ってるんだっけ。土曜なのに大変だね。……昼食は外食にするとして、今のうちにチカに予定聞いとくかな」

 

 私がやろうって言えば、チカなら無理矢理予定を空けるんだろうけどねー。

 そう思いながらも、中村さんとの話の中で思いついた定期ラジオの日程を決めようとディスコを再び開いたと同時に。私宛の個人メッセージが届く。

 

春原さくや ゆらちゃん、今時間空いてる?

ちょっと相談したい事があって…

 

「ん……」

 

 さく姐からのメッセージ。

 特に何の変哲もないメッセージだけど、相談と言いながら担当のマネさんじゃなくて、私に送ってきている事が気になる。本当になんとなく、だけど。

 少しだけ悩んだ後、私はそのメッセージに返信した。

 

秋宮ゆらら 空いてるよー

ちょうどご飯食べに行こうと思ってたからさ、一緒に今からご飯行こうよ。昼から焼肉食って酒飲もうぜー

この前奢るって言ったしね、話も聞くよ

 

 すぐに返ってきたメッセージを見て、私は外に出る準備を始めた。

 

 

 




マシュマロ
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★20.好きな事で生きていくって

設定は是非「挿絵表示 有り」にしてくれ


 

 連絡の後に合流して焼肉屋に入った私達。

 食べ始める前は「本当に奢ってもらっちゃっていいの? いや、給料はまだ入ってきてないからお金は全然ないんだけど……」と申し訳なさそうにしているさく姐だったが、「いいからどんどん頼みなよ。食べ放題飲み放題コースにするから」と私が言ってからはもう遠慮なしにどんどん飲み始め……

 

「うぅ~……もうやってらんないわよぉ~……!」

 

 ドンと勢いよくジョッキが下ろされる。

 さく姐は完全に出来上がっていた。普段は金欠でお酒も買えないみたいだし、明らかに飲むペースを間違えてるなとは思っていたけど、私は黙って見ていた。

 悪酔いする上司の面倒を見る部下の気分……社会に出た事はないけど今はそんな気持ちだ。この人、私より6歳上なんだけどなあ。もう少し年上の威厳を見せてほしいものだ。

 とにかく、これくらい酔わせれば少しは口も軽くなったかなと、今までしていた雑談から話題を変える。

 

「それで、今日はどうしたのさ? なにか相談したいんでしょ?」

「あぅ、そうだったぁ……あのねぇ、わたしって人気ないのかなあ……チャンネル登録者数も同期の中で一番少ないし~、配信の同接もどんどん減ってきてるしさあ~」

「あー……」

 

 そういう悩みかあ……

 さく姐からの相談内容に頭を抱える。先日の謎バズりのせいで同期の中で一番チャンネル登録者数が多いのは私になっちゃったし、私の立場から変に慰めたりすると余計に反感買う奴じゃん。

 

「この前の収益化配信は良かったじゃん。朝までやってたのに8000人見てたのは愛されてる証拠だよ」

「わたしがやりたいのはあんなリアクション芸人みたいな配信じゃなくて! もっと声優っぽい事がやりたいの! 演技つよつよって言われたいの! それなのに、マネさんはもっとアクションゲームとかホラーゲームとかやろうって言うし……わたしは面白お姉さん枠じゃないのぉ!」

 

 さく姐は面白お姉さん枠だよ。と思ったけど言わないでおいた。

 それにしても声優っぽい事かあ。

 さく姐がリスナーから募集したセリフを読む配信を中心に活動してる事は、一応知っている。

 セリフ読み配信は個人的に盛り上がりに欠けるなと思っている。事前に自分で読むセリフを決めて、それを読み上げていくという性質上、どこまで行っても配信は予定調和に進んでいくので盛り上がるポイントを作り辛いというイメージがあるからだ。……同じような性質の歌枠でバズった後なので、私の素人考えなんて当てにならないのだろうけど。

 あと、Vtuberが何かになりきって演技をすると、『Vtuber』が演技をしている、より『Vtuberの中の人』が演技をしている感じになっちゃうんだよねえ。多分、リスナーはVtuberのうまい演技より、ヘタクソなシチュエーションボイスの方が聞きたいと思う。そうじゃなきゃボイス販売なんて売り上げも見込めないししないでしょ。

 

 セリフ読みで人気を集めるなら……リスナーの喜びそうなちょっとエッチなセリフを読むとそこだけ切り抜きとかされたりするんだろうけど、それで人気になれるかと言われるとなんとも言えないよね。

 ちなみに私はあまりにもバズらなければエッチなキャラでオタクを釣っていくつもりだった。

 

 さく姐担当のマネさんの提案も至極真っ当だしな、と思っていると、ビールを再度注文したさく姐が机に突っ伏したまま呟いた。

 

「……ゆらちゃんはいいよねえ。今すごくバズっててさぁ。……いいなあ、やりたい事でリスナーに認めてもらえて」

「やりたい事……歌の事?」

「それ以外何があるのよぅ。あれだけ歌がうまいなら、歌がやりたいから@Linkに入ったんでしょ~?」

「……? ああ、そういえば言った事なかったっけ? 私、スカウトだからオーディションは受けてないんだよね。だから別にVでやりたい事とかないの」

「なにそれ初耳。スカウトって配信者じゃなくて歌手の人にもしてるのね~……」

「私、歌手じゃないよ。ネットの場末でクソ配信やってた引きこもりのニートだよ。人前で歌を歌ったのは昨日の配信を除くと友達と一緒に行くカラオケくらいかな」

「……なんでそれでスカウトされたの?」

「さあ……?」

 

 それは私が聞きたいくらいだ。

 とまあ、そんな話はおいといて。いい感じの慰めの言葉も思いついた。

 

「ま、私はこんなんだからさ、さく姐はカッコいいと思うよ。今はまだ結果は出てないかもしれないけれど、自分の好きな事で勝負したいって気持ちは変わってないんでしょ? そういう拘りとかプライドを持ってる人、私は好きだよ」

「でも、それでみんなに置いてかれたらカッコ悪いよぅ……」

「置いてかれるって。チャンネル登録者数だけで強さが決まるバトル漫画的な世界じゃないじゃん。さく姐が今やってる事は未来への投資だよ」

「みらい……?」

「Vの人って人気な人でも棒演技の人が結構いるし、声の仕事に強いってのはVtuberにとっては大きなプラスだと思うんだよね。リスナーだけに目を当てると成果が見えづらいだろうけど、運営とか外部の会社に認知してもらえれば、ナレーションとかゲームの声当ての案件とかもらいやすくなると私は思うな」

「そうかなあ……そうだといいなぁ……」

 

 「私は拘りもプライドもなんにもないからなんでも平気でやれるけど、好きなことで生きていくって本当に大変だし、マゾゲーだなあ」という本音を隠しながら、それっぽい事を言うと、さく姐もある程度は納得したような素振りを見せた。

 

「そうなるよ。まだまだ私たち始まったばかりでしょ? 愚痴ならいくらでも聞くからさ、頑張ってやってこうよ」

「わたし、もう頑張ってるよぅ……?」

「私が頑張るんだよ。さく姐が好きな事やって人気になれるようにさ。そのくらいの協力はするよ、同期でしょ」

 

 ……こうなると、チカとやる予定だったラジオは延期かな。まあチカに歌を覚えさせる期間も欲しかったし、ちょうどいいか。

 今はさく姐のメンタルケアを優先した方がいいだろう。

 

「ほんとぅ……? ありがとぉ~……!」

「わー、泣くな泣くな。ほら、ハンカチ……」

「……うぇ、吐きそ」

「ほら、立って!! トイレ行くよ!」

 

 

「やほー、呼ばれたからきたよー」

「秋宮~! ありがと~!」

 

あきみゃきちゃ

お!

助っ人きたな

あきみゃー!

 

 家に帰ってから、冬城の収益化記念のビペ耐久配信を見ていたところ、あまりにも勝てなさすぎて私にSOSの連絡がきた。

 今は先輩たちとのコラボはまだできないし、助けを求める先が私しかいなかったからだろう。

 私もまだそんなにうまい訳じゃないし、上手なリスナーに助けてもらった方がいいと思うけどなと思いながらも、こういう突発的なコラボは盛り上がるらしいので、私は快くその申し出を受けた。

 

「記念配信なのに、私が来てよかったの?」

「いーの!」

「そう? ま、いいや。こんみゃー、知ってると思うけど冬城の同期の秋宮ゆららでーす。お邪魔しまーす」

 

はい、いらっしゃい

絶賛バズってるよね

ソロだと沼ってたしなー

こんみゃー

 

「あ、そうだ! あ、秋宮のせいで変な期待がかかってたんだからね! アタシ、あんなスゴい事できないのに……」

「それって、私のお陰で記念配信が盛り上がってるって事だし、冬城はむしろ感謝するべきなのでは……?」

「もー! 秋宮がバズってるせいでリスナーから色々……」

「ゆらちゃーん……水ぅ……」

 

!?

誰?

さくやさん!?

親フラか?

 

 冬城と話していると、後ろで私のベッドで寝ていたさく姐が水を求めて呻きだした。

 

「あー、はいはいお水飲もうねー」

「……え、ちょっと! 秋宮どういう事!?」

「今日さく姐とご飯食べに行ったんだよね。それでべろんべろんに酔わせてお持ち帰りしたんだー」

「お持ち帰りしたんだー、じゃないよ!? ズルい!」

 

¥1,500

まーた、あきみゃが同期を誑かしてる…

同期コンプリートじゃん

ズルいってなんだよw

無差別百合営業女さあ…

¥3,000

てぇてぇの供給過多たすかる

 

「あぇー? ことちゃんー? おはよー……ぐぅ」

「あっ、さく姐また寝ちゃった……で、冬城ぃ、ズルいってどういう事ー? もしかして自分だけ私の家に行ってないから嫉妬しちゃった?」

「う……だってぇ。アタシだけ仲間外れは嫌というかなんというか……」

「ふふっ、可愛いね」

「かわっ!? か、からかうなー!」

 

かわいい

さく姐ガチでぽやぽやしてるじゃんw

女を家に連れこんでおいて別の女に手出すのほんと…w

¥10,000

素直になれないのいいね

もうこんなんえっちじゃん…

 

 その後は冬城をからかいながら耐久配信の手助けをして、私たちの収益化記念リレー配信は終わったのだった。

 

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

耐久配信お疲れ様みゃ。冬城の枠でてぇてぇの安売りしてきたからまだ見てない野良ともはアーカイブを見るように

 

あと、明日はさく姐のチャンネルにお邪魔してセリフ読みコラボ配信するよー

私たちに読んで欲しいセリフ募集中、私かさく姐にましまろを投げてね

お前ら、明日はサービスしてやるにゃ♡

 

マシマロ

 

秋宮ゆららさんがリツイート

べねぼれ@benevolepwd

あ、秋宮が悪いんだよ…

#ゆらあーと

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




またべねぼれ様(@benevolepwd)からファンアートをいただきました。本当にありがてえ…前回、ファンアートをいただいてから二話しか進んでないってマジ? 遅筆すぎるだろ…
是非、リンクから元ツイのリツイートなどしていただければ。


マシュマロ
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21.【#はるゆらら】セリフ読みオフコラボ! さく姐なら私の隣で寝てるよ【秋宮ゆらら/@Link】

 

「昨日はすみませんでした……」

 

 昼過ぎになり、ようやく起きたさく姐が私のベッドの上で土下座しそうな勢いで平謝りする。

 こんな時間まで寝こけていた事か、酔ってボロボロだった昨日の事か、それとも家主をベッドで寝かせなかった事か。何に対して謝っているのかはさておき、申し訳ないという気持ちは伝わってくる。

 ちなみに、昨日の夜はさく姐にベッドを譲って私は布団を敷いて寝た。いくら無差別に百合営業をしかけてるとはいえ、寝ゲロとかかけられると嫌だし。

 

「いーよ別に。それより二日酔いとか大丈夫?」

「体は大丈夫です。ハイ」

「ならよかった。今日の夜はコラボでセリフ読み配信やるよ。私の家からさく姐のチャンネルで配信すると設定が面倒くさいらしいから、私のチャンネルになるけどね。配信予定もなかったし別にいいよね?」

「え、まって、すごく急」

 

 さく姐が驚いた様子で私の言葉に反応する。

 さく姐の了承を取らずに勝手にコラボ告知したしなあ。驚いて当然だろう。

 まあ、ここは昨日の焼肉代の代わりに私に振り回されてもらうという事で納得してもらおう。

 

「新人Vtuberに休んでる暇なんてないよ? 昨日の内に冬城の枠でもコラボ告知したからマロにも沢山台本が届いてるし、つまりもう逃げ道はないって事」

「……うわ、ホントだ。知らない間に外堀が埋められてる……」

 

 さく姐が自分のスマホでマシマロやついついッターを確認して呟く。

 

「男を人生の墓場にオトすためにはその親から懐柔するように、ライバーをオトすためにはリスナーを懐柔するのが一番だね」

「やっぱり悪い女じゃん……!」

「そうだよ。さく姐はもう私に捕まってるんだから観念してよね。ほら、たまがお昼ごはん作り置きしてくれてるから一緒に食べながら台本選んでこ」

「え、たまちゃんにご飯だけ作らせて帰らせたの!? ホントに悪いってそれは!」

 

 失礼な。帰らせたんじゃなくて、用事があるから帰ったんだよ。

 

 

 たまの作ってくれた肉じゃがを食べながら、リスナーが送ってきた台本を選定していく。

 

「……えっと、さっきは急すぎて聞きそびれたけど。なんでわたしなんかとコラボしてくれるの? 自分で言うのもなんだけど、わたしとコラボしたってメリットないでしょう?」

 

 先程からちらちらとこちらの様子を窺っていたさく姐が、聞いてて悲しくなるような自虐と共に訊ねてくる。

 実際には私にもメリットは沢山あるけれど、言わない方がいいだろうな。

 

「さく姐にメリットがあるならそれでいいよ。コラボするメリットとかあんまり気にしてないし」

 

 というか、これから箱内外問わずにどんどんコラボをしていくのに、一々メリットを考えるのは面倒くさいと思う。

 一応アイドルだし、男V相手ならコラボしないよりで考えていたりはするけど、スケジュールがあうなら基本的にはコラボは断らないつもりだぞ、私は。

 

「それにさく姐が言ったんじゃん。声優っぽい事やって人気になりたいって。だったら今の私の状況を利用しない手はないって話だよ」

 

 しばらくは私の配信を見にくる視聴者は増えるだろう。昨日、冬城の配信にお邪魔した時にも同接が2000人ぐらい上がったし。

 それだけ注目されてる中でコラボ配信をすれば、普通に活動するよりも手っ取り早くコラボ相手のチャンネル登録に誘導できるという算段だ。

 本当はたまのチャンネル登録者数を伸ばすための作戦だ。さく姐に対して効果がないなんて事はないだろう。むしろ効果がなかったら活動方針の見直しをしなくてはいけない。

 

「それは、ありがたいけど……利用って」

「使えるものはなんでも使いなよ、好きな事やって望んだ結果を出せる人なんてほとんどいないんだからさ。過程も結果も大事にしたいなら、それなりの努力と工夫は必要だよ」

 

 こちとら結果だけ欲しくても、中々思ったようにはいかなくて悩んでるんだからさ。

 

「特に声の演技なんて、複数人で掛け合いとかやった方が見てる側は面白いんじゃない? 他の箱のVだってそういう企画やって盛り上げてたんだから、私の今の状況とかを無視してもそういうコラボ企画をやってくのはアリだと思うんだよね」

 

 あまり演技関係のコラボにいいイメージを持っていなかったが、昨日、他箱の類似の企画配信を参考に確認してみると、単発の企画だとそこそこの集客能力はあるらしい事が判明した。

 「企画がよかったから人を呼び込めた」か、「そもそも人気の人が参加してるから人が見にきた」か。どちらかと言えば後者なのだろうけど、素人演技のわちゃわちゃした感じを見るのが好きなリスナーが一定数はいるのだろうと思う。

 さく姐の場合だと、個人配信でやってるセリフ読み配信にゲストで呼ぶって形で継続的なコラボコンテンツにも使えるし案外悪くはないと思う。……伸びるかどうかは正直わからないけど。

 

「……ああ、私の演技力については心配はいらないよ。演技指導は受けた事ないけれど、演劇部の助っ人も何回かやってたから、声優レベルまではいかなくても見れるレベルにはできる、と思う」

「いや、配信と裏ですごい声使い分けてるのは知ってるし、最初っから演技力については心配してないけど。むしろ、それで演技指導受けてないって方がビックリだわ」

 

 そうなんだ。

 そこまで自分の演技に自信を持ってる訳じゃないけれど、本物の声優さんがそう言ってくれるならまだまだ捨てたものでもないらしい。

 

「……うん、そうよね。今のやり方で結果が出てないのなら色んな事を試していかないと、か。わかったわよ。今更ウダウダ言ったってドタキャンする訳にもいかないしね。ゆらちゃん、今日はよろしくね」

「任せてよ。バッチリ面白くするからさ」

 

 スッキリとした様子のさく姐に私はニヤリと笑って答えた。

 

 

始まった!

こんみゃー

みゃー!

おはるー、今日はお邪魔しまーす

¥1,500

みゃーみゃー!

 

 配信が始まった事を確認し、裏で小さくBGMが流れる中でさく姐がマイクに向かって第一声を発した。

 

「ああ、人生しんどい~……生きてるだけでえらいって言われたい~……」

 

ぬるっと始まるやんw

さく姐演技しろ

挨拶なしで始まったなw

ダメ人間の演技が板につきすぎてるんよ

 

「ふふっ、どーしたの。おねーさん? また私に甘えに来たの? もう本当におねーさんはダメな人ですね?」

 

 聞いてるだけで力が抜けるような腑抜けた言葉に対して、私は押入れから引っ張ってきたお古のマイクに、クスリと笑い声を入れてからいつもより幼さを強めにした優しい声で返す。

 

「よしよーし。いーこいーこ。今日も一日お疲れ様ぁ」

「あ、しゅき……」

 

えっちだ……

¥5,000

ばぶー!ばぶー!

お疲れ様とか言うな!ゆらら!

てぇてぇ

バブみを感じてオギャルな

 

「……うわ、コメント欄やば」

 

もどして

もっと媚びてけ

急に突き放すな

もっと俺らにも優しくしろ

 

 声をいつもの声に戻してコメントに反応すると、コメント欄からも反応が返ってくる。

 

「ねえ、ゆらちゃんのチャンネルのコメントっていっつもこんな感じなの?」

 

 コメント欄を見てさく姐は若干、引いていた。私のチャンネルはこういう所だから我慢してほしい。

 

「はい、という訳でオープニングは『人生に疲れ切ったOLを甘やかす小学生ロリママ』でしたー。お前らー、こんみゃー。秋宮ゆららとー」

「おはるー! 春原さくやでーす! 今日はゆらちゃんちにお邪魔してまーす」

 

こんみゃー!

あっ、酔い潰されてお持ち帰りされたお姉さんだ

女2人、1つ屋根の下、何も起こらない筈もなく……

[冬城ことは](´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

昨日はお楽しみでしたね

 

「昨日はホントになんにもなかったからね!? あと、ことちゃんはなんで泣いてるの!」

「えっ、昨日の夜はあんなに激しく私を求めてきたのにもう捨てられちゃうの? 酷いみゃ……」

「こらそこ! リスナーさんの悪ふざけに乗っかるな!」

 

キマシタワー

リスナーに、乗っかる…?ひらめいた

[霧ノ江アザミ]ずるい。私もあきみゃにお持ち帰りされたい

きりおじもよう見とる

 

 あ、またアザミ先輩見てくれてる。

 ディスコでも好き好きコール来てるし、コラボ解禁後は真っ先にコラボに誘った方がいいかな、これは。 

 まあ、今はアザミ先輩の事はおいといて。

 

「今日のコラボ本当に急に決まったよねー」

「実際、昨日はご飯食べに行こうってだけだったからにゃー。さく姐が酔い潰れたから急に私の家にお泊りになって、ついでに今日コラボしようぜーって私から言い出したんだよね」

「その節は本当にすみません……」

 

リアルでもダメなお姉さんじゃんw

あきみゃに世話焼かれるのは相当アレなのでは?

突発オフコラボたすかる

 

「詳しい話はまた後日、雑談枠とかで話すとして。それじゃあ次のセリフいこっか。さっきはさく姐が選んだ台本だから次は私のね」

「わかったわー。ゴホン……あー、疲れたぁ。パソコンの使い過ぎでもう肩が痛くて痛くて……」

 

 咳払いを入れてから、さく姐が色っぽさを若干混ぜたお姉さん声で役に入る。

 

「おーおー、お疲れだねえ。おじさんが肩を揉んで労ってあげようか?」

 

あきみゃ、そんな声も出せたんか

ニヤニヤしてそう

えっちの導入か?

 

 声のトーンを上げてお調子者っぽく振る舞う。

 

「ちょっと、手をワキワキさせないで。……それじゃあお願いしようかな」

「お任せあれ~。肩がこる原因に対処させていただきまーす。このたわわに実ったお胸に、突撃~!」

「ひゃ……うひゃあああ!? 本当に揉んできたあああ!?

 

 マイクから離れ、後ろから持ち上げるようにさく姐の乳を揉む。

 台本を見ながら演技に集中していたさく姐が、マイクの近くで演技ではない驚きの声を上げた。

 

えっど

うるせえ!

鼓膜ないなった

こーれ、やってます

はいセンシティブ

 

あ、ちょっ、ん……

 

 ……揉まれる側しか経験してこなかったけど、案外楽しいな、これ。

 

「やめっ、てっ……」

「はーい」

 

 ブラの感触の奥に秘められた柔らかな感触をひとしきり楽しんだ後に手を離す。

 

「はぁ、はぁ……へ、変態っ、けだものぉ……たまちゃんにことちゃんにも手を出しといて、私にまで手を出すなんて……」

「まあ猫だから、けだものっていえば、けだものだけど」

 

 息も絶え絶えに私に非難気な目を向けるさく姐。

 

「台本は事前にオッケーもらったみゃ」

「胸揉んでいいなんて言ってないんですけど!?」

「逆にここまでくれば揉まない方が失礼!」

「言い切った!?」

 

あきみゃさあ…

たすかる

¥3,000

いいぞもっとやれ

 

「声優ラジオとか見てみなよ。あの人ら平気で女同士で胸揉んでるよ」

「いや、少数派でしょ……」

「百合営業はもっと積極的にやっていくべきだと思うみゃ」

「営業って言えばなにやってもいいと思ってない?」

 

 さく姐、意外とアドリブもいけるんだね。私が適当な事言ってもちゃんとツッコミを返してくれるし。

 心の中で感心しながらも、会話を続ける。

 

「焼肉奢った分は体で返してもらわないとね」

「それは給料入ったらちゃんと埋め合わせするから……」

「それじゃあ、しょうがないから私のも揉んでいいよ?」

「え」

 

えっ

エッ!

たわわとまな板では等価交換にならないのでは?

¥1,000

誘い受けあきみゃ……

自分から誘うのか…(困惑)

 

「おいコメント欄、まな板だとは失礼な奴にゃ。お前らが思ってるよりはあるからな」

「わたしまで巻き込むのやめない? もう3期生の関係ドロドロだよ?」

「もっとドロドロにしちゃおうよ。ほら、触っていいよー」

 

 迎え入れるように両腕を上げると、さく姐はおずおずと私の胸部に触れた。

 

「うわ、ホントだ。思ったよりある……」

「さっきのさく姐みたいにえっちな喘ぎ声出した方が良い?」

「やめなさい!」

 

本当にあるのか…

もうてぇてぇ通り越して生々しいんよw

あきみゃに胸があるなんて信じないぞ

てぇてぇ…?

 

「……はい、この変な雰囲気終わり! 終わりー!」

 

 顔を若干赤らめながら私の胸から手を離して、さく姐がそう言う。

 

「もう……台本くれたリスナーさんごめんね? 演技どころじゃなくなっちゃった」

「リスナーさんは想像以上のものが見れて喜んでると思うよ」

「そうかもしれないけど……もういいです、次行きます。ゆらちゃんの欲望に付き合った分、私のにも付き合ってもらうからね」

「次のやつ、趣味丸出しだもんね。いいよ、全力でやるね」

 

 次はさく姐がリクエストした『年上のお姉さんにアタックするショタと、それをあしらうお姉さん』の台本だ。

 私はショタ役。少年の役なら演劇部の助っ人の頃に何度か経験した事があるので、それを参考にすればいいだろう。

 一息入れて、高音と低音が混ざり合った声変わり前特有の少年声を意識して言葉にする。

 

「……ねえ、ボクのものになってよ」

「な、なりましゅ」

「おい、演技しろよ」

 

¥10,000

ショタ声めっちゃいい…

即落ちw

おねショタの主導権をショタに握らせるな!

よっわw

 

「だって! ……ズルいじゃん! 不意打ちで理想の少年声聞かされたら、メスになるしかないじゃん!」

「いや、知らんが……?」

 

 さく姐のまったく弁明になってない言葉に私は困惑した声を出すのだった。

 ちなみにこの後、3回リテイクした。

 

 




ちょっと長くなったので掲示板などは次回に持ち越しで。

マシュマロ
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21.5.オフコラボ配信が終わり……

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇スレ目

 

670:名無しのV ID:JXWNJkrel

おつみゃー

コイツ、ホントなんでもできるな…

 

674:名無しのV ID:QTyLXdJEj

さく姐「みゃ、なんでもできるのズルくない? こんなん勝てないが」

あきみゃ「なんでもはできないみゃ、できることだけ。えりーとだからね」

ちょっとは謙遜しろ

 

677:名無しのV ID:N+2qzdIUa

>>674

えりーと(真)

自称エリートで本当にハイスぺ人間なのやめろw

 

681:名無しのV ID:iLh9y+Vk6

>>674

先輩達のえりーと(ポン)を見習え

 

682:名無しのV ID:Pw4KYCvb8

>>674

さく姐、放送途中で「ちゃん」付けやめて「みゃ」呼びになったの笑っちゃった

 

686:名無しのV ID:0vzH/z4rg

秋宮が今バズってるからって擦り寄ってくるのやめてほしい

 

691:名無しのV ID:NIn2onGlq

>>682

「ゆらちゃん」→「あきみゃ」→「みゃ」

距離近くなった感あっていいよね

 

692:名無しのV ID:YCRYE5d27

>>682

あきみゃ「その呼び方でいいの? これから猫キャラやる時に苦労するよ?」

さく姐「同期が猫なのに猫キャラをやる機会はないと思うけど」

あきみゃ「わかんないよ、Vtuber軽率に猫耳生やすし。……へっ、どうせ猫キャラは安直なキャラ付けですみゃ」

さく姐「キャラ付けって言っちゃ駄目でしょw」

ここすこだった、やさぐれ猫かわいい

 

693:名無しのV ID:IBQML3Opy

無料ボイスたすかった

はやくボイスだせ

 

699:名無しのV ID:AbZxbfub3

>>693

次回のボイス販売の時には出すって言ってたから楽しみ

 

703:名無しのV ID:+zcJz0X8e

どさくさに紛れて胸揉んだのホント百合猫…

それはそれとして、思ってたよりさくゆら相性良いの意外だった

 

709:名無しのV ID:mHPyWa2I/

>>703

ロリキャラと、振り回されるダメなお姉さんキャラのおねロリ百合いいよね…

 

711:名無しのV ID:O6/+R9HBd

 

                            

冬城ことは@Fuyuki_Link

秋宮の家に一人だけ行った事ないイジリやめろよぅ

泣くぞ?

#あきみゃー監視中

おこたー……(´;ω;`)

 

714:名無しのV ID:oj03QVBma

>>711

いや草

 

719:名無しのV ID:Mb0/2XABp

>>711

 

                            

夏風たま@Natsukaze_Link

返信先:@Fuyuki_Linkさん

今度ゆらちゃん家でお泊り会しようよー!

 

                            

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Natsukaze_Linkさん

たまちゃん、すこだ……。゚(゚´Д`゚)゚。

やさしいせかい

 

721:名無しのV ID:ZT3CJvtb5

>>719

本人不在で勝手に話が進められるの草

 

726:名無しのV ID:Lm8xCAS52

>>719

正妻と愛人の図

 

730:名無しのV ID:Iyyi9DMWE

>>721

同棲してるからな。あきみゃの家はたまちゃんの家だよ

 

731:名無しのV ID:OGzxonxQE

>>726

あらやしき組人間関係がドロドロしすぎぃ!

昼ドラかな?

 

736:名無しのV ID:pMTauXcv7

>>730

たまゆら過激派おるな

 

 

 

 

「……はい、配信切れたよ。おつかれ」

「おつかれさまー。色々疲れたわ……」

 

 配信が無事に終わり、さく姐がぐでっと力を抜く。

 

「もう。みゃも過激なスキンシップを取るなら先にそう言ってよ。変な声出しちゃったじゃない」

 

 配信中にさく姐の私への呼び方は「ゆらちゃん」呼びから「みゃ」呼びになった。「なんか、ちゃん付けで呼ぶの嫌なんだけど」と言い出して、新しい呼び方は最近リスナーがつけたあだ名の「あきみゃ」を短くして「みゃ」呼びらしい。

 呼び方はデビュー前にお互い決めたものだから、変わっていくならそれはそれでいいと思う。関係性の変化がリスナーからもわかりやすいしね。

 それはともかくとして、だ。

 

「え、なに。先に言ったらスキンシップしても受け入れちゃうの? えっちだなあ」

「えっちゆーな。……もう。どうせ、ことちゃんにもこんな感じでぐいぐい攻めてったんでしょ、あんまり色んな子に思わせぶりな態度は取らない方がいいわよ?」

「関係性はどんどん拗らせていきたいよね。そっちの方が面白いし」

「やめなさいな……まったく」

 

 やれやれといった様子でさく姐が嘆息する。

 

「そういえば、思ってたより同接多かったね。記念日でもない普通のコラボ配信で1万超えるなんて思ってなかったよ」

「……みゃがすごいからだよ。単純な演技だけじゃなくて、無言にならないように私の話しやすい話題をどんどん出してくれるし、コメントも面白く返すし……配信者ってこんな風にすればいいんだなって、コラボして思った」

「大げさだなー。そんなの数こなせば慣れるよ」

「そうかもしれないけど。自分のやりたい事をやるにしても、気を配らないといけない事って多いんだなと実感できたといいますか……みゃみたいになんでもできるわけじゃないのに、自分から選択肢を減らしてる場合じゃないんだなって思ったんだ。マネさんにももう一回ちゃんと相談してみるよ」

「そうしなー。……あ、あと、配信中にも言ったけど私だって、なんでもはできないよ。できることだけ。猫だけに、ね」

「ゆららキャットってことでしょ、そのネタ、もう結構懐かしい寄りよ?」

 

 いいんだよ、オタクの大半は懐古厨だし。とは流石に言わなかった。

 

 

「……もう寝ちゃった?」

「…………」

「寝ちゃったのね。……まったく、警戒感なさすぎでしょ」

 

 同じベッドでぐっすりと眠っている秋宮を見る。

 かなり遅くなってしまったので今日も秋宮の家に泊まることになったのはいいとして、だ。

 昨日、わたしが醜態を晒してベッドまで占領しちゃったから、今日こそは家主に譲ろうと思っていたのだが、秋宮は断固として譲らず。その折衷案として2人でベッドを使うことになってしまった。

 

「あれだけ配信でも百合営業を繰り返してるから、手を出されるかと思ったけど。そんなことはないのね」

 

 期待してた訳じゃないけど、少し意外だった。キスとかまで行かなくても抱きついてくるくらいはしてきそうだったけど。

 やっぱり本人が言ってる通り、配信中の言動はキャラ作りの一環なのかな。

 良し悪しはともかくとして、秋宮くらいなんでもできる人があの手この手でリスナーの注目を集めるために頑張っているのに、わたしなんかが我儘を言ってはいられないのだろう。

 

「……頑張らないと、な」

 

 昨日、活動の相談をした時には秋宮に嫉妬する気持ちも少しはあったけれど、今はもうない。スゴい人が上のステージに行く。どこにいってもそれだけは変わらないのだろう。

 この同僚であり、同期であり、新しくできた友人に負けたくない。今はただその気持ちだけだ。

 幸い、デビューしてからまだ間もない。立て直しはいくらでもできるだろう。

 

「……それにしても。秋宮、いいところに住んでるのね。こんな立派な一軒家に一人暮らしなんて」

 

 羨ましくない、とは言えないけれど。どう見てもわたしより年下の彼女が、こんないい家に1人で住んでいるのにはなにか色々と事情があるのだろう。

 どう考えても、1人で住むには大きすぎる家だ。そして、食事の際にチラッと見た食器棚には1人で使うにしては多すぎる食器があった。

 わたしだって馬鹿じゃない。頭がいい方ではなかったけれど、ここまで材料があれば察する事くらいはできる。

 この家は元々、秋宮が家族で住んでいた家で、親は海外出張等で家を長い間留守にしているか、もしくは……

 

「……本人は隠すつもりはないのだろうけど。踏み込むには関係性がまだ足りないか」

 

 たまちゃんはVtuberとして活動する前から秋宮と仲がいいらしいし、事情を聞くならこっちから聞いた方が良さそうかな。変に地雷を踏みたくないし。

 

「距離感がやけに近いのも一人で寂しいから無意識でやってるのかな? そういうとこはあんまり猫っぽくないね。……ふわぁ、眠くなってきたし、私も寝よ」

 

 大きな欠伸で思考が乱れ、わたしは微睡に身を任せ目を閉じた。

 




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22.前世記事

seeds24よかったね、よかったと言いなさい。


ぶいぶいまとめ


秋宮ゆららの前世(中の人)は誰? 歌い手? 声優? 顔バレ画像や年齢などプロフィール!

…………

 

「おもろ」

 

 Vtuberの名前を検索する際には必ずと言っていいほどサジェストに出てくるのが前世、中の人についてだ。

 その前世について、私に関する記事ができていると冬城からタレコミがあり覗いてみたのだが、これがなかなかデタラメばかりで面白い。

 この前、歌い方を参考にさせてもらった『そふぃー』さんの他にも著名な女歌い手の名前に加え、有名アイドルゲームの声優も中の人候補に挙げられた挙句に、顔写真まで載せられている。

 全くの無関係なのにやりたい放題だな。

 

「『いかがでしたでしょうか? 前世については声域が広すぎる+ロールプレイ重視の配信のため、特定は難しいと言った結論になりました。参考になりましたか?』……よくこれで参考になったかなんて聞けたな」

 

 まあ、実際は底辺配信者だしな。こんなのバレたってなんにも面白くない。

 ゲヘナちゃん時代の僅かなリスナーのそのまた極一部が、秋宮ゆららのついついッターアカウントをフォローしていたり配信にスパチャを投げているのは確認しているけど、前世情報について出回っていないのは単純に秋宮ゆららがゲヘナちゃんだと気付いていないのだろう。ゲヘナちゃんの時は中性的な声のボクっ子で通してたからな。秋宮ゆららとの一致点は一つもない。

 それでも陰気な本性を見抜かれて、前世バレしている可能性はなくはないけど……きっと私と同じように言っても「誰やねん」で終わると思ったのだろう。あるいは、「自分だけが前世を知っているんだぞ」といった優越感を得るためか……流石にないか。

 ゲヘナちゃんについては元々、終わる時には何も言わずに終わると公言している。宣言通りにVのスカウトを受けてからはついついッターすら全く動かしていない。

 しばらくはポツポツとDMがあったが、今となってはゲヘナちゃんなどいなかったかのようにリスナーの反応はないし、もう忘れ去られているのだろう。

 私はそれでいいと思う。見る側にとっては消費娯楽の一種でしかないんだから、好きなように楽しんで、好きな時に忘れてくれればいい。そっちの方が私も気楽だ。

 

秋宮ゆらら 前世記事デタラメしかなくて草

底辺配信者と比べるのも失礼な名高いビッグネームばかりでブルっちゃった

春原さくや 前世の配信アーカイブは見たけど、宗教っぽいなにかでしょ、あれは……

というより、一応、ネットでそれなりに活動しているのに前世割れてないわたしはなんなの?

泣きたい…

冬城ことは アタシ、初配信の次の日にはこの手の前世記事あったんだよねー

かーっ、有名すぎて辛いわーw

夏風たま ことちゃんはことちゃんそのままだったもんねえ

秋宮ゆらら お前はもうちょっと隠そうとする努力をしろ

冬城ことは へへっ、まったく演技もできないもんで…スイヤセン…

 

 同期とのディスコで前世記事について話題が出て、久々にゲヘナちゃんの事を思い返したが、さく姐の言う通りロクな配信はしてなかったなあ、と思う。あんなリスナーの事を一切気にしない気楽な配信は今となってはもうできない。

 ……メン限*1ならアリか? たまに一切影響を及ばさないからメンバー機能は使わない予定だったけれど、わざわざ金を払ってメンバーに入る酔狂なリスナーに表に出してもまったく取れ高のない気楽なクソ配信をぶつけるのは面白いかもしれない。

 ちょうど、ASMR用のマイクをそのうち買う予定だし、リスナーの耳元で私がなにかやるだけの「お前のとなりで」シリーズとかやってみようかな。「お前のとなりでコーラとポテチを食うだけの配信」とか、「お前のとなりでラーメンを食うだけの配信」、「お前のとなりで映画を同時視聴する配信」……意外と色んな事やれそうじゃん。

 

春原さくや そういえば、今週末よね。学力テスト

みんなは問題解けた?

 

 ASMR以外にも表でやらないような配信を考えていると、話題が変わる。

 少し前から配信準備をしていた箱企画についてだ。

 

夏風たま わたしはバッチリ!現役学生の意地見せてやるです!

冬城ことは んー、まあ余裕だったかな?5000兆点取ってるわ

秋宮ゆらら 私、今回ノー勉だったから点数悪いかもしれんわー

ちなみに前回は自信満々だった奴はみんなヤバかったってマネさんが言ってたよ

春原さくや 実際は勉強してるやつでしょ、それ

わたしはあんまり自信ないわ、中学生レベルの問題でも久しぶりにやると案外解けないものね

 

 「ババくさいなー(お母さんみたいな事言うね)」と打ち込もうとしてやめる。年下の私が言うとホントにシャレにならなそうだし。

 本人が自虐してくれるか持ちネタとかじゃないと、年齢関係はイジりづらいよね。

 ツッコミ待ちかもしれないけれど、ここはスルーしてみる。

 

秋宮ゆらら 当日どうするー?みんなでオフで集まるし、帰りにご飯食べに行く?

あ、先輩方ともう約束してるならやめとくけど

春原さくや わたしは大丈夫よー

夏風たま いいねー!

せっかくだし、センパイ達にも声かけてみんなでご飯行く?

冬城ことは えっ

秋宮ゆらら ……初対面の先輩方呼んだら冬城がますます喋れなくなるから、こっちから誘うのはやめとこうか

冬城ことは ちょっとはコミュ障マシになりましたし…(強がり)

 

 当日、冬城がすみっこで震えてる様子がもう目に見えてるけど大丈夫なんだろうか……

 チカはそういうの勝手にうまくやるから、当日は冬城の方をフォローした方がいいか。わたわたしてるのを隣で見るのはそこそこ楽しそうだ。

 

 その後も私たちは、さく姐が配信準備で抜けるまでとりとめもない話をしばらく続けていた。

 

 

「チカ、明日の配信の準備は大丈夫? 曲ちゃんと覚えた?」

「バッチリだよー」

 

 夜、チカと一緒に晩御飯を食べながら、明日の配信に向けて打ち合わせをする。

 いよいよ予定していたたまゆらコラボのラジオ配信だ。

 さく姐とやったコラボのお陰で、コラボ相手にどの程度の恩恵があるかはある程度データが取れた。今回のコラボ配信はたまのチャンネルでやるから、もっと直接的にチャンネル登録に結び付けられるだろう。

 幸いにもまだ私のチャンネル登録者数は伸び続けている。明日のコラボで上手くたまのチャンネルに誘導できれば、少なくとも私が今伸びてる分くらいは届くはず……

 

「えへへ、楽しみだねえ」

 

 そんな事を考えていると、チカが笑顔でそう言った。

 

「……? そんなに楽しみにするもの? 今までだって何度かコラボ配信はしたじゃん」

「そうだけど、でも、ちゃんとしたコラボは初めてでしょ? 『楽しい』をリスナーさんに届けるために2人で話し合うだけでもワクワクが止まらないんだもん。きっと本番はもっと楽しくなるよぅ!」

「これからも定期でやっていく配信のつもりなんだけど……そんな文化祭の準備をする時みたいなテンションで毎回やってたら疲れちゃうよ?」

「特に疲れとか感じてないけど、あさひちゃんと一緒にやる事で感じる疲れはむしろご褒美!」

「えぇ……?」

 

 あいかわらずだけど、チカのこういうところはよくわからない。

 なんで私の事こんなに好きなのこの子……?

 

「……まあいいや。私の歌でバズれてるんだから、たまが歌えばたまの方に客が流れるはずだよ。運営が期待してるのはたまの方なんだから、私の事を完全に食うくらいのつもりで頑張りなさい」

「あさひちゃんを食べる!?」

「性的な意味じゃないぞ、えっちかげめ。というより、チカがそうしたいなら勝手に好きにすればいいじゃん」

「う、うう……我慢、します。もっとあさひちゃんが『好き好きー』ってなってくれないとイヤなの」

「なにそれ、変なの」

 

 私、割とチカの事、好きだと思うんだけどなあ。

 チカのためならなんだってするし、だから今こうしてVtuberやってるんだけど……変に拘らなくたって私の事を抱きたいと思ってるならそうすればいいのに。女心は複雑だなあ。

 

「……コホン。わたしがエッチなのは置いといて。明日はちゃんと頑張るよぅ。あさひちゃんの後ろをついてくだけじゃヤダもん。隣で一緒に頑張るためにも、まずはリスナーさんに認めてもらわないと、だね」

「そう。それならいいの。それじゃあ、後でデュエットの練習するから付き合いなさい」

「りょーかい!」

 

 勢いよく返事をするチカ。

 『隣で一緒に頑張る』程度の目標じゃ、私としては満足できないけれどな。私の事は通過点にして、もっと圧倒的に人気になってくれないといけないのだけど、チカはちゃんとわかっているのだろうか?

 いまいち、気合の入れ方がズレているなと思いながら、私は夕飯を食べ進めるのだった。

 

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

おまたせー

たまゆらの2人で行う定期ラジオ配信、その名も『たまゆらじお(仮)』!

いよいよ明日が初回配信ですみゃ

 

明日はたまのチャンネルで20時から

野良とものお前ら、全員見に来てくれよにゃ?

 

↓マシマロでハガキ募集中みゃ。

マシマロ

 

 

*1
メンバー限定配信の略。詳細はググって




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23-1.【コラボ雑談】たまゆらじお(仮)いっかいめ~!【夏風たま/@Link】

 

「せーのでいくよー、せーの」

「「たまゆらじおかっこかり、始めるわん(みゃー)♡」」

 

こんたまー

ワンたすかる

始めて聞く語尾ザウルス

かわいい

急にかわいい声を出すのずるいぞ

 

「どしたん、普段は『わん』とか言ってないじゃん」

「ゆらちゃんとお揃いでやりたかったんだもん。いいでしょ?」

「くそう。普段からリスナーに媚びてたせいでたまに媚び芸をやらすハメになるとは……」

 

あきみゃが悪いよ、あきみゃがー

俺らのせいにするな

俺が悪い

もっと媚びて

 

「……という訳で。たまゆらじお(仮)、記念すべき第一回目です! けだまのみんなー、こんたまー! 夏風たまと」

「お前ら、こんみゃー。秋宮ゆららでーす。いやー、ついにちゃんとしたコラボする時が来たかって感じだね」

「今まで突発やキャスでだらだらコラボはしてたけど、ちゃんとしたコラボは初めてだよねぇ。……ゆらちゃんがことちゃんやさく姐とコラボ配信してるのを見ながら、いつになったら声をかけてくれるのかなって、わたし、ずっと待ってたんだよぉ?」

 

あっ……

カナシミノー

どうしてこんなになるまで放っておいたんだ…

気のせいか声のトーンが低いように感じる

¥10,000

あきみゃ、責任取れ

 

 たまが隣でニッコリと笑ってこっちを見ている。ちょっと怖い。

 普段は、あんまりこんな感じで迫って来る事はないんだけど……もしやコイツ、"圧"のかけ方を学んできたのか?

 まだ一ヵ月ちょっとしかインターネットの深層に触れていないのに既にこの戦闘力……流石は私の幼馴染だ。

 内心で感心しながらも、配信を止めないようにノータイムで返事をする。

 

「たまは知ってるでしょ。私はお楽しみは最後に取っておくタイプなのだよ」

「うん、知ってるよぉ。突発コラボも含めたら、ゆらちゃんの最初も最後も私のものって事だもんね。嬉しいなぁ」

「私の全部奪われちゃった。ごめんね。冬城、さく姐……」

 

[冬城ことは]人のいない所で負けた感じ出すのやめない?

昼ドラ組がよ…

[春原さくや]私まで巻き込むなw

2人ともよう見とる

 

「げ、見てんじゃん。2人とも私の事好きすぎ?」

「2人とも、ゆらちゃんといつも遊んでくれてありがとねぇ」

「保護者か?」

 

保護者でしょ

¥5,000

正妻ムーブたすかる

逆にそれ以外のなんなんすかね…

保護猫あきみゃ

 

「お前ら、私への認識おかしくない? 確かに私は料理、洗濯、掃除、買い物と色んな事をたまに世話してもらってるけど……これって、もしかして保護者?」

「ゆらちゃんは甘え上手だもんねぇ」

 

たまゆらてぇてぇ

ヒロインレースで同棲は禁止カードだろ…

正妻…圧倒的正妻力…!

あきみゃ、裏でダメ人間すぎない?

 

 私たちの関係をそのまま表に出すだけでコンテンツになるのは楽でいいなと思いながら、たまに合図を出す。

 

「そろそろコーナー始めていこっか。ふつおた*1のコーナー!」

「いえー。このコーナーでは送られてきたマロの中から拾いたいと思ったものを適当にひろっていきまーす。最初はさっきの話の流れもあるし、滅茶苦茶多かったこの質問から~」

 

 

結局、たまゆらの2人ってどういう関係なんですか?

 

 

「さんざん匂わせてきたけど、ただの友達だよ」

「友達だよねえ。もう10年以上の付き合いになるよね。幼馴染って言ってもいいくらいの付き合いでもあるかなぁ」

 

 幼稚園の頃からの付き合いだもんなあ。

 実際には15年前からの付き合いになるけれど、それを口にすると私とたまの実年齢がアラサー近いとリスナーに思われそうなので、たまとは事前に打ち合わせでどう言うかは決めている。

 

「ちゃんと数えるとそのくらいだよね。やっぱりそんくらい長いと距離感もバグってくるよねー……」

「友達以上になりたくもなっちゃうよね」

「急にぶっこむのやめない? これ配信だからね。オフだからって押し倒すのはやめてね。ノータッチ!」

「はーい」

 

抱けっ! 抱けー!

まーたこの2人オフやってます

配信中じゃなければ抱かれてもいいんですか!?

えっちだ…

質感がすごい

 

「それじゃあ、次のマロいくねえ」

 

 

愛してるゲーム、して♡ しろ♡

 

 

「うーん、私利私欲。一応、解説すると、片方が『愛してる』って言って、どっちかが照れたり笑ったりしたら負けって感じのゲームだよ」

「配信だったら、いつもよりもっと可愛い声で言ってくれるでしょ?」

「ええ、もしかしてリスナーに媚びてる時みたいにやれって? リアルでやるのはキツくない?」

「どんなゆらちゃんでもわたしは好きだよ?」

「そうだろうけど……まあいいや。どうせたまが一発で負けるんだろうし、先に言ってよ。ほらこっち向いて」

「えへへ、こうしてじっと見つめてるとなんだか恥ずかしいねぇ」

 

自分でキツいと思いながらやってたのか…

素でメスガキじゃん

恥ずかしがってるたまちゃんかわいい

うーん、この慢心っぷり

 

 隣にいるたまを見つめる。……マイクにちゃんと音入るのかな、これ?

 声が遠くから聞こえるのはそれはそれでいいか。

 

「愛してるよぅ」

「はいはい」

「愛してるの……」

「腕絡めてきたって無駄だよー、これじゃ勝敗決まらないし私の番いこっか」

「むぅ。ちょっとくらい照れてくれてもいいのに」

 

 ぷくうとたまの頬が膨らむ。かわいいね。

 次は私の番だ。じっと見つめたまま、普段はたまに向けては絶対出さないような甘ったるい声色で……

 

「愛してる♡」

「ふひっ。やだ、もう顔見ないで~」

「はい、私の勝ちー。よゆー」

 

知ってた

¥1,000

かわいい…

たまちゃんが弱いのか、あきみゃが強いのか…

クソザコわんこがよ…

 

「あ、こら、暴力はんたーい」

 

 煽ってるとたまがポカポカと叩いてくる。

 力が弱いからノーダメージです。照れ隠しで実力行使してくるのもかわいいよね。

 

「むむむ……ズルいなあ」

「私がこの手のゲームで負ける訳ないんだよねー。次のおたよりいくよー」

「……いつか絶対勝つもんねー」

 

 

たまちゃん、あきみゃへ。いつも楽しく配信見ています。

質問です。たまちゃんの得意料理はありますか? あと、あきみゃの反応がよかった料理のお話しなど聞かせていただけると助かります。

 

 

「うーん得意料理かー……あんまりパッと思いつかないや」

「カレー作ってる印象が多いかなあ。たまの好物だし、何日か分のご飯になるからよく作ってくれるんだよね」

「ゆらちゃん、一日三食全部カレーでもなんにも言わないもんねぇ。それどころかわたしがご飯作らないと食事抜いちゃうし、もう、ダメなんだよ?」

「へへ、スイヤセン……」

 

 たまがいないと、私って水を飲むのも忘れるからね。本当に感謝しかない。

 

要介護かな?

私生活がダメダメすぎる…

やっぱり通い妻じゃん

あきみゃさあ…

 

「あと、ゆらちゃんの好きな料理とかも特にないよねぇ」

「なんでもたまが美味しく作ってくれるからねー。まあ、そもそも食べ物に拘りとか持ってないけど。でも、たまが作ってくれるご飯は好きだよ?」

「えへへ、ありがとぉ」

 

てぇてぇ

これが友達以上の関係じゃなかったらなんなの?

なんだろう…この暖かい気持ちは…これが、てぇてぇ?

もう付き合ってるって事にしないか?

 

「それじゃあ、次のおたよりだね」

 

 

最近の浮気猫の動向について、正妻のたまちゃんはどう思っていますか?

 

 

あっ……(本日2回目)

たまちゃんの明るい声でこの文読まれると怖くなるな…

 

「あれ、もしかして私刺される? ナイスボートしちゃう?」

「刺さないよぉ! ……ゆらちゃんが楽しそうにしてるだけで、わたしも幸せな気持ちになれるのです。だから、同期のみんなにはとっても感謝してるのです」

 

 しみじみとたまがそんな事を言う。

 独特な価値観だなあと思うけど、私の事が好きならこんなものなのかもしれない。

 

「だから、ゆらちゃんがいくら女の子を誑かしてても、わたしは別に気にしてないよ? むしろ、ゆらちゃんの大切な人が増えていくのは嬉しいなあって思うのです」

「誑かす言うなよう。同期で仲良くやってるだけだよ」

 

仲良く(隠語)

仲良く(食べさせあいっこ)

仲良く(乳揉み)

仲良くの定義がガバガバすぎる

 

「でも、いっぱい大切な人ができたからって、わたしの事、捨てないでね。わたし泣いちゃうよ?」

「私からたまを捨てる事なんてある訳ないじゃん。むしろ捨てられるのは私の方でしょ」

「わたしはゆらちゃん絶対捨てないもん。一生離さないからね」

 

 ジッとたまが私を見つめてくる。

 

「こわ……ヤンデレモードはやめよう? 抱き枕にでもなんでもなるからさ」

「ホント? やったあ! 今日は一緒に寝ようねぇ!」

 

愛が重すぎるっピ!

これは、てぇてぇ…?

¥5,000

てぇてぇ(確信)

あきみゃが食べられちゃう…

友達に向ける感情じゃないよ、これ!

¥10,000

感情がクソデカすぎる…

 

「おい、お前ら。ヤらしい意味じゃないみたいだからな。明日のついーとに『エッチなことしたんですね?』の画像は貼るなよ」

「エッチな事なんてしないもん。ゆらちゃんをギュッとして寝るだけだもん……」

 

それだけで十分えっちなんだよなあ…

同衾がエッチ認定じゃないならなにがエッチなんだよ!

拗ねるたまちゃんかわいい

¥10,000

すけべじゃのう…

2人が寝てる部屋の壁になりたい…

 

「あー、はいはい! 次のおたよりいくよ!」

 

 コメ欄がピンクな空気に染まってしまったのを見て、私は大声で強引に進行するのだった。

 

 

 

*1
ふつうのおたよりの略。普通ってなんなんだろうね




長いので続きはまた次週で。お悩み相談やる予定です。

マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います


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23-2.【コラボ雑談】たまゆらじお(仮)いっかいめ~!【夏風たま/@Link】

 

「それじゃあふつおたのコーナーはこのくらいにして。次はお悩み相談コーナー!」

「あーい」

「いやあ、なんだか久々って感じがするねぇ」

 

 たまがしみじみとそんな事を言いだす。

 お悩み相談っぽい事をするのも確かに久々(・・)だ。懐かしい気持ちがないわけではないけれど、そこまで感慨深いものだろうか? よくわからないなあ。

 

「……まあ、そうだね。とりあえず最初はジャブで軽めのこんなのから」

 

 適当に相槌を打って、最初のマロを読む。

 

 

こんたまゆら~(気さくな挨拶)

突然ですけど、明日の晩御飯はクリームシチューとビーフシチューどっちがいいでしょうか?

 

 

「……とのことー。お前ら、重い内容と軽い内容の差が激しすぎなんだよね」

「でも、この人は本気で悩んでるかもしれないよ?」

「んなわけないでしょ。いっせーのーせで私たちがどっちがいいか答えるからそれで解決って事でいいよね?」

「もし被らなかったらどうするのぉ?」

「その時は二種類とも食えよ」

 

ひどいw

シチュー二種は中年の腹にはきつい…

子連れだったらどう説明するんだよ…

「パパー、どうしてクリームシチューとビーフシチューどっちも作ってるのー?」

Vオタが結婚してるわけないでしょ

 

「それじゃあ、いっせーのーせ」

「「ビーフシチュー」」

「被っちゃった。ちえっ」

「ゆらちゃんに作るのはいっつもビーフシチューだもんねぇ」

「クリームシチューは米に合わないからね」

 

悔しがるなw

わかる

日本のクリームシチューは米にあうように作られてるぞ

バ、バゲット…

クリームシチューで米食う奴は馬鹿

 

「バゲットとか言ってる生意気な奴おるなあ」

「別にゆらちゃん、米でもバゲットでもいいんでしょ」

「まーねー。という訳で、明日はビーフシチューを食べましょう。はい、問題解決!」

 

 軽い内容の相談なので適当に回答して、次の相談に進める。

 

 

たまちゃん、あきみゃ。こんたまゆらー

お悩み相談です。生まれてこの方、外見に自信がない喪女です。

周りのキラキラした女の子を見ていると、私の醜い体に対するコンプレックスが大きくなるのを感じます。ダイエットとはいかずとも1日5食をやめよう、メイクもちゃんとしようと思うのですが、思うだけで一向に行動に移せない自分が嫌で嫌で仕方ありません。

美人にはなれなくても普通の女の子になりたいです。どうすれば私は普通になれるのでしょうか…?

 

 

「……との事です。いや、流石に食べすぎなんよ」

「朝、昼、おやつ、晩、夜食の5食かな? 身体によくないよぅ?」

「というより理由はもう自分でも分析できてるし……わかっていても改善できないのかあ。悲しき獣やで……」

「わたしたちと同じだねー。わおん!」

「みゃー。ま、私たちは獣は獣でも悲しき業は背負ってないけどねー」

 

 たまが急に犬っぽい鳴き声を出したので、私も猫っぽく鳴いておく。

 

かわいい

動けデブ

前の相談との温度差がひどい

太ってる女の子も需要はあるから…なお限度

 

「実際原因がわかってるなら、これ以上私たちがなにか言うのもなんだかって感じだよねー」

「ゆらちゃん。これは多分、解決してほしいって話じゃなくて、がんばれーって応援してほしいって話だよ」

「なるほどねえ。……普通ってなんなんだろうね。ご飯を食べる量を減らして、外見に気を遣って。周りの人たちに自然に溶け込めるようになれば、自分が普通って思えるのかな、この人は」

「難しい話だよねえ。まずは外見から変えていこうって頑張るのは間違ってないとは思うけど……」

「なんだかんだ言って外見は大事。私なんて可愛くなかったら色んな人に疎まれてそうだし」

「ゆらちゃんは可愛い以上にいっぱいいいとこあるもん」

「そうかあ?」

 

 たまはそんな事を言うけど、人間の印象なんて実際7割ぐらいは外面でしょ。

 そういう点で苦労した事がない私からしたら、こういう悩みとは無縁だけど……

 

「ま、私の事はともかくさ、やってない事で自分を嫌いになるより、やった事で自分を好きになれるように生きるのがいいんじゃない? 何が好きかで自分を語れよ! って奴だね」

「そうだねぇ。嫌いにならないためにじゃなくて、自分を好きになれるようにした努力なら、周りと比べた普通よりももっとカッコいい自分になれるんじゃないかな?」

「そゆ事。何をやればいいかなんて私たちから言うまでもないだろうし、たまがさっき言ったように励ましの言葉だけ送りましょうか。いっせーのーせで頑張れ、ね」

「りょーかいですのだ。いっせーのーせ」

「「頑張れ♡」」

 

かわいいね…

がんばりゅ…

これで俺達も頑張れる

たすかる

 

 優しい声で励ましの言葉を送る。

 

「はい問題解決! あと、私たちの言ってる事に納得できなくても食べる量は減らせよー」

「流石に食べ過ぎだからねえ……食事は程々に、ね」

「はい、次いくよ」

 

 

弄ばれてもいいから手を握ってくれるパートナーが欲しいです…

誑かしたり誑かされるコツを教えてください浮気猫様…

 

 

「童貞くんさあ……」

「こら、ゆらちゃん。女の子かもしれないでしょ」

「心が童貞なんだよなあ。こういう相談多すぎだよ」

 

どどど童貞ちゃうわ

童貞ちゃうわ

心が童貞ってなんだよ()

 

「誑かされるについてはよくわからないけれど、お望み通りこの浮気猫様が教えてしんぜよう」

「あ、浮気猫でいいんだ」

 

 隣でたまがそう呟くが無視して、回答する。

 

「人を誑かすとかやっちゃ、ダメだと思うみゃ」

「え、ゆらちゃんがそれ言うの!?」

「私は純粋な気持ちで人に向き合ってるよ。邪な気持ちなんて一切ないね」

 

ほんとぉ?

浮気する奴はいつもそう言う

浮気猫がよ…

 

「恋愛で受け身になっていいのはベッドの上でだけだよ。アドバイスするならそれくらいかな。好きな子の手を自分から握れるように頑張ろうね」

 

名言じゃん

はえー、やっぱりたま×ゆらなんすねー

さすみゃ

 

 

「──はい、という訳で。たまゆらじお(仮)記念すべき第一回目、みんなどうだった~?」

「今回は他のラジオでやってるような事しかやってないけど、次回からはこのラジオ特製のコーナーとか作りたいよねー。あっ、そうだ次回はリスナーからコーナー募集とかありなんじゃない?」

「それ、いいね! 次回も楽しみだよぉ!」

 

すごい良かった!

¥1,500

ワイも楽しみやで!

次回もあるんですね、やったー!

¥5,000

たまちゃんとあきみゃがワイワイやってるだけでワイら満足やで…

 

 ひとまず予定していたコーナーが全て終わり、エンディング前のフリートークタイムに入る。

 たまは気を抜いているが、むしろ私としては本番はここからだ。

 

「ほら、たま。進行」

「あっ、そうだった。えーこのたまゆらじお(仮)ではエンディングに私たち2人がデュエットで歌います、まる」

 

!?

2人で歌うの!?

あきみゃのお歌だヤッター!

あきみゃ滅茶苦茶うまいけどたまちゃん大丈夫?

うおおおおおおおお

 

「はい、そゆこと。今回は私たちの方で選んできたけど、次回からは事前に歌って欲しい歌を募集するから、お前らも協力よろしくね、って事で。たま、準備はオッケー?」

「バッチリ! それじゃあ、みんないくねぇ? わたしとゆらちゃんで『secret base~君がくれたもの~*1』!」

 

 たまが曲名を口にしたと同時にメロディーが流れる。

 ふと、たまを見るとたまもこっちを見てて、ニッカリと笑顔を見せてきた。こっちの苦労も知らないでって感じだけど、たまはこれでいいと思う。

 たまがたまのやりたいようにやっているのが、私の望みなんだから。

 さあ、始まるぞ。無駄な思考は投げ捨てて、集中し、たまに合わせて口を開く。

 

「「君と夏の終わり 将来の夢 大きな希望忘れない」」

 

 たまの少女らしい活発な歌い方を際立たせるように、私は普段の声色に低音を少し加えた落ち着いた歌い方でハモリ部分を合わせる。

 

「「最高のー思い出をー♪」」

 

うっま…

もう成仏した

杞憂でしたわ、申し訳ない

えもえもがいっぱいだよー!?

しゅき…

 

 コメントを見ても反応は上々だ。

 ひとまずこの調子なら問題ないかなと判断し、私はソロパートを歌いだすのだった。

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

400:名無しのV ID:dWqrxoTA6

たまゆらじお、最後でエモすぎてエモーショナルドラゴンになった

感情が溢れ出しそう……!

 

404:名無しのV ID:fiEtGYv99

たまゆらの2人であの曲歌うとあまりにもエモなんよ

というか、たまちゃんもめっちゃ歌上手くなかった?

 

408:名無しのV ID:Ul0ProH/9

>>404

実際上手い

まさか、たまゆらが歌うまユニットだったとは…

 

409:名無しのV ID:LECeUN0PO

>>404

歌唱力の暴力だった

運営はもしかしてこれを見越して、たまゆらという関係性を前面に押し出したデビュー方法を…?やはり天才か…

 

414:名無しのV ID:E1SASBVQ9

>>408

ラジオ内で幼馴染だって話だったけど、実際こんだけ歌うまい2人でそんな事あるの?

どっかの歌手とか声優上がりの人がそういう設定で百合営業してるだけじゃないの?

 

416:名無しのV ID:ufLaTMF1a

>>404

あきみゃもたまちゃんももっと歌を売りにしてクレメンス…

 

418:名無しのV ID:ieNEeHb1G

>>414

あきみゃはゲーム配信中に自分はスカウトでこの業界入ってきたってサラっと言ってたぞ

だから、たまちゃん経由のスカウトって事なら、まあありえん事もない

 

420:名無しのV ID:OSgYItlJi

>>414

頻繁にオフコラボしてるから実際に幼馴染って言われると納得

そもそも、あきみゃは普段から百合営業って言ってる定期

あと、裏ではそんなに仲良くない2人が放送中だけてぇてぇ売りしてるのはそれはそれで好き

 

421:名無しのV ID:2AFQoPrbn

>>418

あきみゃ、スカウトだったのか…あの歌の上手さも納得だわ。@Link運営有能

 

423:名無しのV ID:vcIas8Z2G

みゃ「恋愛で受け身になっていいのはベッドの上でだけ」

至言が出てしまった…

 

426:名無しのV ID:UVPTXqRTP

>>423

それって、誘い受け……ってコト!?

やっぱりあきみゃは右固定だわ。受け性能が圧倒的すぎる

 

428:名無しのV ID:UDRGfVvkg

ポケモンかな?

 

429:名無しのV ID:sXSVlmtV5

>>420

ビジネスてぇてぇからしか得られない栄養素がある…

それはともかく、たまゆらはビジネス感ゼロなのがほんといい。

たまちゃんは本当に楽しそうだし、あきみゃがたまちゃんの前では殆どリスナーに媚びないの、たまちゃんに見られたくないからでしょw

 

433:名無しのV ID:IqHEMdKEU

放送内でも言ってたけど、3期生の同期以外とのコラボ解禁もうちょいなんやなあ。

週末の学力テスト配信待ち遠しいわ

 

438:名無しのV ID:0iD5vNXfn

>>433

1・2期生に負けない学力()を見せてほしいね

誰が前回王者アザミちゃんから王座を奪うのか楽しみや

 

 

 

 

 

*1
アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」でエンディングテーマとしてカバーされたZONEさんの名曲。色んな人がカバーしてるしVの人達もいっぱい歌ってるよね




マシュマロ
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0.追憶-起-

ちょっと短いです。


 

「──人生に苦難が満ちているからほんの僅かな幸福がなかったことになるのか。決められた生き方しかできない人生は退屈なのか。生命に終わりがあるのなら人生は無意味なものなのか。……思えば。私のこの学園での生活はそんな正解のない問いと向き合ってきた日々だった」

 

 校内の生徒、教師全てが集う体育館に凛とした声が響きわたる。

 少女の声以外は物音一つない静寂の空間だからこそ少女の声がよく通るというべきか、少女の立ち振る舞いこそがこの静寂の空間を生み出しているのか。

 ただ一つ言える事は、二年前から続く生徒会長、今は元生徒会長の瀬戸あさひの挨拶の途中で不要な物音を立てる人間はいないという事実だけだ。

 

「諸君らの悩みを通し、様々な問題に直面して。それでもなお答えは出ないままだが……これだけは言える。プラスもマイナスも全てを含めて人生であり、それにどう向き合ってもいいし、向き合わなくてもいい。どんな選択をしようとただそこに在るだけで人生はかけがえのない物なのだと、私はそう思いたい」

 

 それは、他者への慈愛に満ちた言葉だった。

 聞いた人間のほとんどが彼女の言葉には欺瞞がないと感じている。彼女の劇的で、無敵で、そしてその上で他者への奉仕に捧げてきた生き方を間近で見ていたからだ。

 

「……ふふっ、最後だから湿っぽくなってしまったな。なにはともあれ、だ。──生きよ、老若男女よ! 諸君らの人生は、祝福に満ちている! 以上! 元生徒会長、瀬戸あさひでした!」

 

 彼女が頭を下げると同時に、体育館には手を叩く音と喝采が鳴り響いた。

 

 

「相変わらずかっこよかったね、生徒会長」

「あんなの私たちが言っても恥ずかしさしかないけど、あさひ先輩が言うと様になるから不思議だよね~」

「生徒会長もいよいよ卒業か、少し寂しくなるね……」

「この一年、三年生向けの勉強会を放課後に毎日やりながら、自分は七橋大学に合格してるんでしょ? さすがあさひ先輩。無敵すぎてもう嫉妬とか以上に感心するしかないわー」

「ふむ、そう褒めてくれるな。流石の私でもむず痒いものがある」

 

 放課後、廊下で二年生の女子生徒があさひについて話していると、その当人が後ろから声をかける。

 

「うわっ! びっくりしたー!」

「はは、すまんな」

「みんなごめんね? あさひちゃん、こんな感じで気配消して自分の事を話してる人の耳元で囁くのが趣味なんだよね」

「卒業間際にそんな趣味知りたくなかったなぁ!?」

 

 あさひの隣にいた元生徒会副会長の千景が申し訳なさそうに謝ると、女子生徒は悲痛な声を上げた。

 

「もう。あんまり後輩をからかうのは良くないよ?」

「たまにはいいだろう? 気やすい一面も見せておかねば畏怖されてしまうからな」

 

 女子生徒達の横をすれ違い、生徒指導室へと入ったあさひと千景。

 ぷくっと頬を膨らませ、呆れたように注意する千景に対して、あさひはまったく気にした様子を見せなかった。

 

「それにしても、受験対策の勉強会も2月いっぱいで終わり、生徒指導の題目で続けたお悩み相談も今日で終わりだというのに誰も相談しにこない……とうとう私も暇になってしまったか」

 

 あさひが生徒会長に就任して以来、『校内の全ての悩みを解決する』という公約のために利用していた生徒指導室。少し前までは私物もそれなりに置いてあったが、あさひの卒業に伴いその活動も終わるため、今はガランとした殺風景な部屋へと戻っている。

 そんな部屋を見ながらしみじみと呟くあさひを見て、千景はにこやかに笑う。

 

「あさひちゃんが暇になるなら、みんなの悩みをちゃんと解決できたって事だねー。卒業間際にやっと公約達成だ」

「ふっ、そうだな。そう考えると、私は任期中に公約達成できなかった不甲斐ない生徒会長という事になってしまうが……まあ、いいか。チカも長い間ご苦労だったな」

「あさひちゃんの隣にいる事を苦労だと思った事はないけど、労りの言葉はありがたく受け取りますのだ」

 

 ぴしっと敬礼のポーズを千景が取ると、あさひはクスリと微笑を浮かべた。

 

「人が来ないのなら早めに終わってもいいかもしれないな。とはいえ、今日は家に帰っても1人だし、やる事がないのには変わらないが」

「あさひちゃんのお父さんとお母さんは旅行に行ってるんだっけ?」

「ああ、結婚記念日で温泉旅行だよ。学校もあるし、夫婦水入らずで過ごしてほしいと思い、私はついていくのを辞退したのだが……2人とも寝る暇もない程に仕事が多忙だというのに、結婚記念日だけは毎年ちゃんと祝うのだから不思議なものだな、まったく」

「お医者さんと弁護士だもんねえ。でも夫婦の仲がいいのは良いことだよー」

「歳の離れた弟か妹ができてしまったらどうしようか。ちゃんと私はお姉ちゃんを出来るだろうか……」

「わたしたち、どっちも1人っ子だからわからないけど、あさひちゃんなら大丈夫じゃないかなあ」

 

 少しだけ呆れた顔をする千景が、「あっ、そうだ」と声を上げた。

 

「今日はあさひちゃんのお家でお泊まり会しちゃおうよ! 明日も休みだし、夜更かしして遊ぼうよー!」

「……たまにはハメを外すのもありか。そうだな。チカ、なに食べたい? なんでも作るよ」

「やった! それならカレーがいい!」

「いつもそれだな。どれだけカレーが好きなんだか。……よし。スーパーに買い出しに行こうか」

「お菓子とジュースもいっぱい買っちゃおう!」

「はいはい」

 

 学生生活のほとんどを費やした活動の終わりに対して、2人は特別な感情を抱くこともなく、生徒指導室の鍵が閉められる。

 帰路につくあさひと千景。窓の外には透き通るような青い、青い空が広がっていた。

 ――瀬戸あさひの両親が亡くなったのは、そんなありふれたなんでもない日のことだった。

 

 

 

 




だれぇ……こわいぃ……

過去あさひ…漫画の中の生徒会長みたいな超人。それ以上でもそれ以下でもない。

過去編の続きはまた25話くらい後になる予定です。
ほんへでシリアスなんてないから気長に見てくれ。

マシュマロ
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24.本番前の打ち合わせ

 

「あっ、マネさんだ」

 

 学力テスト配信の当日、私とたまが事務所に着き、集合部屋を見ると、私の担当マネの中村さんが2人の女性と談笑していた。

 もしかして先輩方か? まだライバーの集合時間には30分ぐらいあるし、私たちが一番乗りかなと思っていたから意外だ。

 

「おはようございま~す」

「まーす」

「あっ! 秋宮さん、夏風さん、おはようございます。いつもお早い集合で助かります」

 

 中村さんがこちらの方を向くと同時に中村さんと話していた2人もこちらの方を向く。

 

「うっわ、かわよ……マネさん、あの子らがあきみゃとたまちゃんなの? マジ? 声だけじゃなくて顔も抜群にいいじゃん……絶対いい匂いするよ。嗅がせてくれないかな……」

「霧ノ江さん、配信中ならともかく配信外で後輩にセクハラはやめてください」

「あい……」

 

 そのうちの1人……中村さんの言葉からすると2期生のアザミ先輩がにやけながら、中村さんに早口で問いかける。

 別に配信外でやられても話のネタになるから別にいいんだけどなと思っていると、アザミ先輩がたまに話しかける。

 

「あの、初めまして。へへ……あきみゃだよね。歌配信すっごくよかったです」

「すいません。秋宮は私ですが」

「ええ!?」

「たまです、よろしくお願いします」

「うっわ、やらかしたあ!」

「ちょ、すげえプレミするじゃん」

 

 頭を抱えるアザミ先輩を見て、もう1人の先輩と思われる女性が草を生やしそうな勢いで笑っていた。声質的にはエレノア先輩かな?

 

「えぇ……あきみゃ、めっちゃ清楚でフリフリな服着てるじゃん……かわよだけど解釈違いだよ!」

「まるで普段が清楚じゃないみたいな言われよう。後輩は悲しんでいます。……まあ、自分でも似合わないとは思ってますけど、今日はたまが私にかわいい服を着せたい気分だったらしいので、しゃーなしです」

 

 今日の私はパステルカラーを基調にしたフリル多めのワンピースを着ている。ファッションにこだわりを持っているわけではないが、自分から中々着ないタイプの服だ。

 隣のたまが身長が小っちゃい上に、秋宮ゆららのアバターに近いパーカーにショートパンツといった動きやすい服装だったので、まさか私の方が秋宮だとは思わなかったのだろう。

 

「似合ってるよう! 折角だし先輩たちにはバチバチにかわいいゆらちゃんを見てもらいたいじゃん!」

「着飾らなくても私は私のままで無駄にかわいいでしょ」

「生たまゆらだ……てぇてぇ……」

「アザミ〜、オタク出すなって〜。かわいい後輩に引かれちゃうだろ〜」

 

 口元に手を当て感動している素振りを見せるアザミ先輩をニヤニヤしながらもう1人の女性が肘で小突く。

 

「2人とも初めまして。エレノア・レッドハートって名前で活動やってます。名前長いし、エレちゃんとかはーとちゃんとか好きに呼んでね」

「わかりました、エレちゃん先輩」

「わっ、それいいね。わたしもエレちゃん先輩って呼んじゃお〜」

「おお、先輩って響き、なんか新鮮だー……」

 

 声でそうじゃないかと思っていたけど、もう1人の女性も2期生ライバーのエレノア先輩らしい。

 魔女学校に通うポンコツ劣等生とかいう設定で外見は赤メッシュ交じりの黒髪でパーカーの上から制服のブレザーを着たアバターのアザミ先輩と、バーチャル日本に異世界転移してきたお嬢様設定で金髪ロリ巨乳のエレノア先輩。2人ともクソガキムーブが特徴的で割と仲がいい(百合にあらず)イメージだ。

 2期生はファンタジー色が強くてキャラ設定が濃い人ばかりで、公式紹介文が怪文書と呼ばれるようになったのはだいたい2期生の先輩方のせいだったりする。……正直、天使とか悪魔とかタイムスリッパーとか魔女とかお嬢様とか言われてもロールプレイが大変だし、しょうがないんじゃないかなと思うけど。

 

「というか! 秋宮、全然配信の時とキャラ違うじゃん! 将来有望なクソガキ枠が入ってきたと思ったのに!」

「まあ、意識してメスガキやってますし……コホン。配信の時の声ならそんな事ないでしょ、センパーイ?」

「いつもの声だ! でも、こんな清楚な恰好でやられると違和感がすごい!?」

「そんなに?」

「実際、初配信の時はびっくりしましたからね」

「そっかあ……」

 

 中村さんにまでそんな事を言われてしまう。

 私のカワボってそんなにギャップあるのか……気づかなかったなあ。

 

「アザミ先輩は、私がかわいい声出すの意外?」

「えっ!? ……配信の時のかわいい声も今の落ち着いた声もどっちも好きだよ?」

 

 甘ったるい声でアザミ先輩に問いかけると、彼女は驚いた声を上げた後にすぐにキメ顔とイケボ(笑)で囁いてきた。

 配信中じゃないのにこんな茶番に乗ってくれるなんていい人だなあと思いながら、私もイケボで囁き返す。

 

「ふふっ、ありがと。これからもいっぱい私の事、応援してね。アザミ先輩♡」

「……ズルいって!? 顔面と声でぶん殴ってくるズルい女だよー!!」

「なんか前も聞いたな」

「うわ、先輩まで墜としにかかるのか。ちょっと引く……いや、アザミがVの女に堕ちてるのはいつもの事だけど……」

 

 顔を真っ赤にしてエレノア先輩の背に隠れるアザミ先輩。エレノア先輩は呆れた様子で呟いた。

 

「うんうん。ゆらちゃんはいつでも可愛いからしょうがないよね」

 

 そんな先輩たちの様子を見て、たまは隣で静かに頷いていた。いや、どこ目線なんだ……

 

 

 配信前の打ち合わせが終わり、自由時間になる。

 先輩方が席を立つ中、私はたまとさく姐と一緒に机に突っ伏している冬城に声をかけた。

 

「おーい、冬城、無事か?」

「ことちゃん、大丈夫?」

「ひん……みんなぁ……アタシ、頑張ったよねえ?」

「めっちゃ声上擦ってたけどね」

「まだ配信してないのにやり切った感出されても……」

「この調子で本番も頑張ろうねぇ」

「うぇぇ……」

 

 先輩方と私たちはディスコで挨拶したきりで顔を合わせる機会は今回が初だったので、打ち合わせの前に私たちは簡単に自己紹介をする事になった。

 ここで冬城のいつものコミュ障が発動して、すごくしどろもどろになりながらの自己紹介になってしまったのだ。ちゃんとやり切った分、以前よりはマシになってるとは思うけれど、その後の簡単なリハーサルでの反応を見ると、かなり緊張しているみたいだ。

 初対面の相手に冬城からプロレスを仕掛けるなんて無茶な事は最初からできないと、自他共にわかっているので、冬城個人で弄られる機会は最初から少なめにしてるらしい。ただ、それでもその少ない機会にちゃんとリアクションできないと配信の進行が滞るだろう。

 もう既にボロボロになっている冬城を放置するのはマズいだろうなというのが同期の総意だった。

 

「あー、よしよし、頑張ってた頑張ってた」

「本番はわたしたちも弄った方がいい? そっちの方がまだ喋りやすいでしょ」

「そうして……この人数の前で面白いリアクション、多分無理……」

「あんまりキツく刺しちゃダメだよねぇ?」

「えっ、たまちゃん、そんな刺してくるつもりなの……?」

「たまはこういう時、滅茶苦茶刺してくるよ」

「えぇ……」

「刺していい相手と刺しちゃいけない相手の区別くらいはできるよぉ!」

 

 そういうとこなんだよなぁ……

 まあ、外から見れば、天真爛漫な小動物系美少女である事は間違いないんだけどね。

 

「3期生の皆さん、大丈夫です?」

「あっ、ぽぷら先輩」

 

 私たちに声をかけてきたのは1期生で@Linkの看板的な存在の白峰ぽぷら先輩だ。

 今回の企画でも進行役なので、冬城の様子を気にかけてくれたのだろう。

 

「なるほどなるほど……それなら私が多めに喋る方がよさそうですね」

「あざます。こっちでもフォローしますんで」

「ふふ、同期の仲がいいようで何よりです。それじゃあ今日は楽しくやりましょう!」

 

 事情を説明すると、ぽぷら先輩は私に任せなさいといった様子で胸を叩いた。

 カッコいい先輩だなあ。自枠では悲しきおしゃべりマシーンと言われるぐらいのコミュ強だ。任せておけば何とかなるんだろうけど、あまり負担はかけないようにこっちでも頑張らないとな。  

 

「配信開始までもうちょっと時間あるし、みんなで台本読みこもっか」

「そうしよう。冬城、事前に何言うか決めてれば何とかなる?」

「が、がんばる!」

「よーし、やるぞー!」

 

 そうして4人で本番に向けて打ち合わせをする。

 休憩から戻ってきた先輩方から「3期生は真面目だなあ……」と言われたりするのだった。

 

 




マシュマロ
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25-1.第二回@Link学力テスト!~Vaka王は誰だ? 3期生襲来編!~【白峰ぽぷら/@Link】

 

「第2回、@Link学力テストー!」

「わー!」「ふー!」「やんややんやー」

 

きちゃー!

うおおおおおおおおお

きちゃ!

 

 ぽぷら先輩の配信開始の声に合わせて、私たちは思い思いに掛け声を発する。

 

「今回もわたくし、白峰ぽぷらが司会を務めさせていただきます。『Vは馬鹿ばっか』と言われるきっかけになった前回の学力テストから約半年、こんなにも早くみなさんに汚名返上の機会が回ってくるとは思いませんでしたね。頑張ってもらいたい所です」

 

お前も頑張らないとなんだよなあ…

238

他人事みたいに言ってるけどぽぷちも大概やぞ

238(8人中5位)

 

「おい、238はやめろぉ! 前回はノー勉だったからセーフ! ノー勉だったからセーフ!」

 

 ……ノー勉だったとしても中学生レベルの問題で500点満点の条件の中、238点は低すぎるんじゃないかな。

 そう思ったけど、ここにいるだいたいの人に刺さるので口にはしなかった。

 

「……はい、いつメンの挨拶も済んだので、ここからは先月デビューしたわたくしたちの新しい仲間の3期生を紹介していこうと思いますよー。それじゃあ、まずは春原さんから!」

 

 先輩方の自己紹介の後にさく姐とたまの自己紹介が続く。

 

「高校生なのでね! 中学生のテストなんかお茶の子さいさいなのです! 今日はよろしくお願いしま~す!」

「はい、晩酌配信する高校生の夏風さん、ありがとうございました~。じゃあ次は相方の秋宮さん」

「はーい」

 

酒飲む高校生…?

さらっと相方扱いは草

未成年飲酒はまずいですよ!

人間年齢なら成人してるからセーフ…(震え声)

 

「お前らの心をがくがくゆらら~。新人バーチャルライバー、えりーと猫かぶりの秋宮ゆららでーす。どうぞよろしくぅ」

「あの、初めて聞く口上なのですが」

「初めて言ったからねー」

 

誰も知らない口上を唐突に使うな

こんみゃって言え

猫かぶりじゃなくて本物の猫なんよ

自称エリート……あっ()

 

「エリートなのでこんなテストは余裕でしたね。先輩方には申し訳ないけど、1位はいただきますということで。今日はよろしくおなしゃーす」

「はーい。よろしくお願いします。ほんとコイツ生意気なメスガキだな。わからせてやりてえよ……」

 

 ぽぷら先輩が悔しそうな声を出すと、周りから笑い声が漏れた。

 生意気な感じでやってもちゃんと拾ってくれるいい先輩だ。

 

「それじゃあ最後、冬城さん!」

 

 私の挨拶が終わり、隣に座る冬城の番が回ってくる。

 

は、ハヒッ!……スウーッ

落ち着いてー

やれるよー

 

いつもの陰キャでてる

今日はオフだし人も多いからな…

同期あったけえ…

 

 いつもの通り、挙動不審な様子を見せる冬城を小声でさく姐とたまが励ます。

 私は冬城の手を握って耳元で囁いた。

 

がんばれー、冬城のカッコいいとこ見たいなー

「ひゅいっ!? ふ、冬城ことはです! よろしくお願いしますぅ!?」

「えー、リスナーの皆さんには伝わってないですけど、秋宮さんが冬城さんの手を握りながらめっちゃ甘い声で囁いています。わたくしは何を見せられてるんだろう……」

 

てぇてぇ…

ほんとだよw

これが3期生なんだよなあ…

ほんとゆりゆりしてるなあw

あきみゃは面白がってるだけだぞ。ほんとからかい上手のあきみゃさん

 

「冬城はいい子なんです。そんな呆れた目で見ないでやってくだせえ」

「いや、呆れた目で見てるのはお前だよ」

「えぇ!?」

 

えぇじゃないが

迫真のえぇ!やめろw

こんな時だけ迫真の声出すなw

百合猫さあ…

 

 

「それじゃあ、挨拶も終わった所で早速テストの結果を見ていきましょうか。まずは国語から。今回、国語の教科での1位ですが~……あの、スタッフさん、これ書き間違えじゃないですよね?」

 

 全員の挨拶が終わった所でぽぷら先輩が次のコーナーへ進行する。と同時に台本を見て怪訝な顔をしてスタッフさんに問いかけた。

 

「あ、合ってるんですか。そうですか」

「なになに~? そんな意外な人が1位だったの?」

「じゃあ、ウチやな」(←前回6位)

「いやいや、私ですよー」(←前回最下位)

「絶対ワタシだってー!」(←前回7位)

「はいはいバカ三人は黙ってましょうねー」

 

とりあえずこの3人じゃない事だけはわかる

じゃあ3期生か?

絶対エレちゃんじゃないとは思う

一日一善を一日一全って書く奴らはやっぱ面構えが違うわ

 

 ぽぷら先輩がラナ先輩、アザミ先輩、エレノア先輩の妄言をまとめて一蹴する。

 

「えー、じゃあ合ってるみたいなので改めて。今回、国語の教科で1位を取ったのは~……秋宮ゆららさんです!」

「えええええ!?」

 

マ?

自称エリートでほんとにエリートなのやめろ定期w

嘘だろ…

お前、ほんとに何でもできるな…

 

 発表と同時に驚きの声が上がる。

 

「こら、3D体じゃないのにコロンビアポーズはやめなさい。リスナーに伝わらないから」

「いやー、かしこで申し訳ないっすわー」

「秋宮は馬鹿だと思ってたのに……こ、この裏切り者めー!」

「ははは、愉快愉快。これなら先輩方を見習って大喜利した方がよかったかなー」

「大喜利してる訳じゃないですが? ほんとイキリ散らかしてんなー、このネコガキめ……」

 

イキリ猫w

エレちゃんw

秋宮かしこ枠なのかー…

こーれ、前回バカ枠は固定のままみたいです

 

「それでは問題の方を見ていきましょう。第一問、次の漢字の読みを答えよ、という訳で答えはこちらの通りになります」

 

1.名札 答.なふだ

2.神主 答.かんぬし

3.到底 答.とうてい

4.緩和 答.かんわ

5.煉獄 答.れんごく

 

「これは間違えないでしょー」

「……」

「え、なにその間」

「えー、こちら凪海ちゃんと秋宮さんと夏風さん以外の解答になります」

 

4.緩和 答.えんわ!

 

 配信画面に9人分の解答が一斉に並び、全員が全員同じ間違え方をしていた。

 

「うわぁ、みんな同じ間違いだ」

「えぇ……デュエリストかよ」

「こんなので引いてちゃ身が持たないよ2人共……」

 

この始末だよ…

エンワなっつ

恒例のミナちゃん以外不正解…仲間が増えてよかったね

デュエリストなら間違えないんだよなあ…

今どきのデュエリストはエンワネタ知らないと思うぞ、あきみゃ

 

 水無瀬先輩が遠い目をしながら、私とたまに声をかける。

 これは……動画ならともかく、現場にいると頭がおかしくなりそうだ。大変だなあ……

 

「わたくしも間違えてるんでなんにも弄れないんですよね。次回があるなら凪海ちゃんに司会を変えませんか?」

「ツッコミ役は身が持たないから勘弁して」

「ちえっ……続いて、アザミちゃんの解答」

 

3.到底 答.トッティ

 

確信犯かな?

こんなんだから大喜利会場って言われんだよw

到は百歩譲って読めなくても底は読めるだろ

 

「あのさあ……」

「ちゃうねん、ていで終わる文字でパッと思い浮かんだのがそれだけやってん……」

「関西弁で誤魔化されないぞ、とまあ、このくらいにして最後の問題だけ全員解答を見せます」

 

5.煉獄 答.れんごく

 

「はい、全員正解でーす。これはもう完全に最近あったアニメのお陰ですね。みなさん感謝しましょう」

 

ありがとう煉獄さん…

これから死ぬんだよね…

うまい!うまい!

ネタバレやめてください!

 

 人気だったもんね鬼〇の刃。アニメとか漫画に出てくる難読漢字ならオタク読めがち。

 

「それでは次の問題を見ていきましょう」

 

 このノリだと終わる時にはかなり疲弊してそうだなと思いながら、次の問題へと向かうのだった。

 

 




マシュマロ
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25-2.第二回@Link学力テスト!~Vaka王は誰だ? 3期生襲来編!~【白峰ぽぷら/@Link】

 

 その後も色々あり……

 

「『AさんとBさんが同じ場所から池に沿って同じ方向に歩きます。Aさんが分速60mで歩き、Bさんが分速40mで歩いたところ、1時間後にAさんがBさんを追い越しました。さて、池の周りは何メートルでしょうか?』というわけで、秋宮さんの解答……(60-40)×60=1200mで正解でーす!」

「いえー」

「当てずっぽうじゃない綺麗な式での模範解答です。他の人にも見習ってほしいですね。はい、綺麗な解答を見れたところでバカ三人の解答」

 

ラナ→A.一人だけ先に行く奴はクズ

アザミ→A.私は時速300kmで動ける

エレノア→A.私は池の周りを歩かない

 

「この問題に限った事じゃないけれど、算数の文章問題に感情移入するのはやめましょうねー」

「……これ、真面目に解くとバカを見る奴?」

「そうだよ」

「アザミ、また非公式wikiに変な設定追加されるよ、これ」

「そして、油断しきってる冬城さんの解答」

「ひゅいっ!?」

 

A.そんなに歩けない

 

「歩かない奴と歩けない奴が出てきましたね」

「わたしも多分歩けない」

「実際3キロも歩きたくない」

「ライバー、運動不足の人間が多すぎない?」

 

 本当に色々あって。

 

「†白夜(ホワイトナイト)†……ルビとダガーを付けてるので三角でーす」

「答えは当たってるのにひどいみゃ」

「こっち見んな。不正解にしてやろうか……」

 

 本当の本当に色々あり、

 

「『次の1月~12月を意味する英単語を1月から順番に並べてください』、前回の学力テストでも出したこちらの問題ですが……全て正解していたのは5人、その内2人はたまゆらなので前回参加組は8人中3人しか正解してないです。どうなってんだお前ら!」

「ぽぷらちゃんも間違えてるじゃん」

「だから私が司会やるの嫌なんだよなぁ!」

 

 本当の本当の本当に色々あり……

 

「Yurara is my significant other.(ゆららは私の大切な人です)……正解!」

「わ~い」

「スタッフにたまゆら推しおるって」

「自己紹介でそんな事言わなくても……そもそも恋人じゃないから不正解なのでは?」

「あ、秋宮もこう言ってるし、不正解、不正解です!」

「なんで冬城がそんな必死に否定するの」

「あー、3期生の生ドロドロは効くなぁ~」

「わたしは無関係なので巻き込まないでもろて……」

 

 ひとまず、学力テストは無事に終わった。

 ちなみに1位は予想していた通りたまだった。もうちょっと撮れ高を意識してほしい。

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

200:名無しのV ID:LewjJ0OfX

おつおつ~

たまゆら滅茶苦茶頭いいじゃねえか!

 

203:名無しのV ID:nPTMtlomC

おつー

まさかなみちゃんが3位になるとは…Vのテストなのに1位2位が強すぎる…

 

207:名無しのV ID:ZZedPDAKA

>>200

たまちゃん…国95点、算100点、理93点、社90点、英92点…計470点

あきみゃ…国98点、算100点、理88点、社56点、英78点…計420点

問題のレベル考えても400点以上は取りすぎだって!

 

212:名無しのV ID:w7JycfKLh

>>207

社会性がない女すこ

 

222:名無しのV ID:obi29JeDx

>>207

あきみゃ「もうちょっと大喜利しといた方がよかった……たまはもっと撮れ高意識しないと」

たまちゃん「どうせ尺的には各教科数問しか使われないから、そんなに間違えなくても大丈夫だよ~」

あきみゃ「やだ……うちの子が策士すぎる……」

なお点数調整もしてる模様

 

226:名無しのV ID:+dkIYrzjh

>>212

社会性がない(社会の順位12人中5位)

 

229:名無しのV ID:hkZYsIGPO

>>222

撮れ高を意識してなくてもアレな先輩達に絡まれてたの面白かった

 

239:名無しのV ID:N1RxOZ1oK

>>226

Vなんてみんな社会性ないやろ(過言)

 

241:名無しのV ID:E7s8ZRpDE

>>222

国48点、算42点、理35点、社38点、英26点…計189点の素晴らしい先輩に絡まれて三下になるあきみゃ面白かったw

 

245:名無しのV ID:eBZ6Y1/e9

>>207

さく姐…国67点、算85点、理58点、社48点、英50点…計308点

ことちゃん…国54点、算46点、理48点、社38点、英32点…計218点

残りの3期生はさく姐が真ん中くらいでことちゃんがバカよりだったね

というより、ことちゃんの成績でも超えられないバカ三人組はいったい……

 

255:名無しのV ID:ZDw79Ke8R

>>241

「トップ2を新人がかっさらっていくとはいい度胸してるなあ……な、秋宮?」

「みゃ……勉強ができなくたってラナ先輩は素晴らしい先輩ですみゃ……」

「勉強ができないは余計やねん!」

媚びボイスで刺してたの草

 

263:名無しのV ID:+tr9v8/wY

>>245

アザミ…国28点、算36点、理20点、社34点、英8点…計126点

エレノア…国16点、算24点、理22点、社12点、英88点…計162点

はい……

英語でかさ増しできる分エレちゃんの方が有利だとは思っていたけど、やっぱりアザミちゃんの二連覇だったね…

 

269:名無しのV ID:FiFIONPAo

>>263

(アカン)

 

277:名無しのV ID:D6DnFgVox

3期生、先輩達と初絡みだけどちゃんとワイワイやれててよかった…(後方腕組み厄介リスナー)

 

279:名無しのV ID:N+UKXCqa2

たま「ゆらちゃんは私の恋人です!(意訳)」

みゃ「恋人じゃないが?」

こと「あきみゃもこう言ってるし不正解!」

みゃ「なんでそんな必死なんw意識しすぎやろw」

こと「はーっ!?別に意識なんてしてないし!(してる)」

たま「ことちゃんも素直になろうよ~」

こと「たまちゃんから言うのはなんか違うでしょ!?」

今日も3期生の空気がうまかった……

 

289:名無しのV ID:NlwSXzA22

>>279

ぽぷち「うーん、これは正解!w」

 

290:名無しのV ID:bZ4qlYOW0

>>279

「そこの三角関係に私を巻き込まないでもろて……」

とかさく姐が言ってたけどむしろどんどん巻き込まれてほしい

もっと3期生はドロドロしろ

 

299:名無しのV ID:D/egXe9oO

>>290

一人ぼっちは寂しいもんな…

 

302:名無しのV ID:U1c+zt5bd

>>290

2期生の天使と悪魔コンビとは違った良さだよね、3期生。

ガチっぽくていい。営業とはなんだったのか…

 

309:名無しのV ID:R7HRsIS7c

コラボも解禁されるし、これからの絡みも期待やね

 

 

 

「あきみや~、たすけて~」

「がんばー」

 

 部屋のすみっこにいた冬城がさく姐に引っ張られて先輩方が集まる方に向かう。

 手を伸ばす冬城を私は手を振って見送った。

 

 配信終了後に事務所で軽い打ち上げを行うことになり、軽食をしながらさっきまでは私が先輩方にかわいがられていたのだが、入れ替わりで冬城がそのポジションに収まる事になった。さく姐もいるし、私がフォローに回る必要もないだろうとその場を離れる。

 たまもぽぷら先輩とアザミ先輩と話しているのでそこに交ざるのはやめて、さっきまで冬城がいた部屋のすみっこに移動してちびちびとジュースを飲みながらボーっとする。

 

「おーい秋宮、1人でどないしてん?」

 

 そんな私を気にかけたのだろう、部屋に戻ってきたラナ先輩が私に声をかけた。

 

「あっ、ラナ先輩。お疲れ様です。ハブられてるとかじゃないのでお気になさらず」

「そうか? それならええけど……」

「ああ、それと配信中は生意気な口きいて申し訳ないです。勉強のできるできないは人の魅力にはまったく関係ないと思いますし、ラナ先輩はカッコいい先輩だと思ってます。お気を悪くしたなら申し訳ないです」

「か、かたいて! そんなん気にしとったらこんな企画出とらんし、あんくらいのイジリやったらどんどんしてくれてええからな」

「はぁ。2期生の先輩方を見てるとラナ先輩に軽口叩くのは勇気いりますけどね」

「みんな大げさにロールプレイやりすぎやねん。エレノア以外はウチの方が年下やのになぁ……」

 

 ラナ先輩が溜息を吐く。

 裏では普通に仲がいいようだが、表の配信だけ見ると先輩ムーブがすごく板に付いてる人だ。年上相手でそれなりの気苦労はあるのかもしれない。

 

「……まあ、わかりました。次に表で絡むのがいつになるのかはわかりませんけど、その時は生意気な後輩やらせていただきます。キャラ的には私がやるのが一番自然でしょう」

「なんか、それはそれでやらせたみたいで嫌やねんけど……ホントに大丈夫? 無理しとらん?」

「大丈夫ですよ。むしろ面白そうですね。周りから怖がられてる先輩にちょっかいかける後輩の構図はリスナーからもそれなりに人気が出そうです」

「めっちゃ撮れ高考えるなあ。ま、面白そうやし今度お互いのスケジュール合う時にコラボ配信やろうや……ああ、それと」

 

 たった今、思い出したかのような素振りでラナ先輩は私に提案する。

 

「歌ってみたのコラボ動画、ウチと出さへん?」

 

 思いがけない誘いに、私は戸惑いを覚えたのだった。

 

 

 




マシュマロ
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26.【雑談】学力テストの感想とか話したり話さなかったり【秋宮ゆらら/@Link】

 

「──今回は3位だったけれど、私的にはバカ組に落ちないだけでありがたかったかなー。学生の頃の成績は上の下くらいだったし。それにしてもたまちゃんとあきみゃちゃんすごかったよねー」

 

 学力テスト配信の翌日。雑談配信の準備だけ整えてから水無瀬先輩の配信を見ていると、学力テストの感想の中で私たちの話題が上がる。

 

普通に400点越えするのはすごいよね

年取るとああいうの解けなくなるよね…

¥1,500

学力テストお疲れ様ー!

今回3期生と初絡みだったけどどんな印象だった?

雰囲気はほんわかしてるのに、たまちゃんがガチすぎる

 

「りきゅうさん、スパチャありがとー。そうだなー……たまちゃんは配信の時と全く同じだったなあ。もう裏でもずっと明るかったし、グイグイ距離詰めてきて話題とか振ってくるし、真の陽キャだよ、あの子。あ、冬城ちゃんは表も裏もガチガチだったよ。真の陰キャだね、あれは。事前の印象と変わらなかったのはその2人かなあ」

 

陽と陰が混ざり合う3期生…

ガチ陽ってVだと希少種だよね

本配信でも大概だったけどおこたさあ…

たまちゃんみたいな子が近くにいたら勘違いして好きになっちゃいそう

かよわい小動物だから仕方ない

 

「さくやちゃんは意外とちゃんとお姉さんしてたなあ」

 

さく姐にお姉さん感…?

元々お姉さんキャラなんだよなあ…

極貧ポンコツお姉さんすこすこ

意外と言うのはやめたげてw

 

「あと、あきみゃちゃんとは昨日のコラボの前にも一度会ってるんだけど、その時はすごいびっくりしたなあ。めっちゃクールな子だ……って感じで。ただ昨日一緒に配信してだいぶ印象変わったかなあ。クール系の皮を被ったパッション系だよね、あきみゃちゃん」

 

真顔でボケかますタイプの子だから…w

裏でクールな感じなんだ

[秋宮ゆらら]パッション(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎

配信でもメスガキやってない時はわりかしクール系だよねw

あきみゃもよう見とる

変な顔文字で草、パッション系がよ…

 

「あっ、あきみゃちゃんだ。昨日はおつかれ~」

 

 コメントをすると水無瀬先輩も私のコメントを見つけて反応する。

 今のところは活動も順調とはいえ、こういう地道な営業活動も欠かせない。先輩方の配信へコメントすると、自然と私の話題を先輩方が出してくれるし、リスナーにも話題を提供できるしで一石二鳥だ。

 

「こんな反応だけど、あきみゃちゃん裏ではめちゃくちゃ真面目だったよ」

 

だろうねw

ファッションメスガキだからなw

[秋宮ゆらら]はい、営業妨害

知性を隠しきれてない

 

 

「お前らこんみゃー。今日はゆるゆる雑談でーす」

 

こんみゃー

みゃー!

こんみゃー、テスト配信2位おめでとー!

こんみゃみゃみゃー

 

「おうお前ら、昨日のテスト配信見てたかー? 私が頭いいの意外だったろー? こちとらただのメスガキじゃないんだよね。インテリメスガキと呼んでくれていいよ」

 

いや別に…?

ゲームの文章で漢字読めてないとかもなかったし、それなりに教養はあるんだろうなとは…

¥3,000

総合2位おめでとー!

算数100点満点つよつよ理数系コンビのたまゆらすごい!

頭が悪いイメージが特にない

社会性がないだけで頭はいいもんな…!

 

「ポニテムシャムシャさん、スパチャありがとー。理数系つよつよって算数で言われてもなあ。算数レベルなら普通に解くだけでなんとでもなる……なるくない?」

 

ならない奴らがいっぱいいたんだよなあ…

シンプル失礼だからやめとけw

けどそうはならなかったんだ…

煽りが強すぎる

それでも100点はすごくない?

 

「ええ……?」

 

 数学ならともかく、算数なんて公式を知ってればケアレスミスでしか間違えようがないと思うんだけど……大喜利したら流石にわざとらしくなりすぎると思って普通に100点取ったけれど、この反応なら多少は遊んでもよかったかもしれない。

 あと、ゲームの漢字が読めるだけで教養があるとか言われても……その、反応に困る。

 

「これ以上、なにか言うと先輩方に刺さりそうだな……なにか他に聞きたい事とかある?」

 

もう刺さってるぞ

社会だけ(相対的に)点低くない?

先輩との初コラボどうだった?

今日のパンツの色

 

「パンツの色は言うと安い女だと思われるから言いませーん。どうしても知りたいなら@LinkでVtuberとしてデビューしてくーださいにゃ」

 

ちょっと股間のブツ切ってくる

同僚に聞かれたら答えるのか…(困惑)

そんなー

ライバーになれば教えてくれるんですか!?

 

「配信では答えないよ。お前らに聞かれたくないし。写真でえっちな自撮り渡すのは流石にダメなんだろうし……リアルで会う時に見せてって言われたら別に見せるよ」

 

ネコガキさあ…

安い女すぎる…

[霧ノ江アザミ]ガタッ

コラ!はしたないからやめなさい!

きりおじに餌を与えるな

 

「アザミ先輩もよう見とる。冗談だよー。……ちなみになんだけど、おまえら的にそんなに女の子のパンツって見たいものなの? 布面積的に水着と変わらなくない?」

 

あきみゃのパンツは見たい

女の子のパンツには付加価値がある

水着もパンツも見たい、おらっ早くアトリンサマーになれっ!

[霧ノ江アザミ]普段は隠してるものを見れる事に興奮を覚える

自分だけが見れるのがいいんだよ!

 

「変態多いな。きも」

 

[霧ノ江アザミ]ひどいみゃ…

泣いた

きもたすかる

梯子を外すな定期

 

 リスナー(ついでにアザミ先輩)がこういう時にノリよく返事してくれるのは助かるなあ。実際パンツなんかにそこまでの興味はないだろうに。

 私もチカのパンツだけで興奮する事なんてないしなあ。

 

「あと社会の低得点についてだよね。これには理由があるんですよ」

 

ずっと大喜利してたよねw

社会性の欠如ね

言うほど低得点じゃないけどねw

 

「事前に配布されてる問題見てもらえればわかるんだけど、社会は結構、時事問題が多かったんだよね」

 

確かに4割くらい時事問題だったよね

先輩が学校で習ってる事ほとんど忘れてるからしゃーない

そうじゃないと点数取れないからね、仕方ないね

 

「まあ、そうなると私は無理だよね。もう2、3年は2chまとめでたまにしかニュース見てないもん」

 

えぇ……

本当に社会性がなかった…

時代に取り残されてる…

それはしゃーないw

 

 実際、今の総理大臣の名前すらわからなかった時はちょっと冷や汗かいたなあ。

 Vtuberになったからにはあんまり世情に疎いのもまずいだろうし、ちょっとは社会に関心を持たないとなと少し反省したくらいだ。

 その後も先輩方に可愛がられた話などをした後に、当初予定していた話題へと話を変える。

 

「学力テストについてはこのくらいにして。ちょっと前にVの仕事でいただいたお賃金が入ってきたんだよー。さく姐の生活水準が上がったのは同期として喜ばしいですみゃ。君たち、応援ありがとね」

 

さく姐がついに極貧生活脱出かあ…ちょっとほっとした

おちんぎん入ってきちゃう

¥5,000

あきみゃ、新しいおちんぎんよ!

ええんやで

もっと推させろ

 

「寝落ちみかんさん、スパチャありがとー。それで、君たちからいただいたお金ですし、私がどんな風に使ったかわかったら君たちも嬉しいかなと思ったので、今日は買ったものの内、二個、写真で紹介しまーす」

 

 まだ活動を始めたばかりだというのに、先日それなりに入ってきた給金を私は正直持て余していた。生活費は親の遺産がまだまだ残っているから気にしなくていいし、なんなら残っていなくても気にする必要はない。

 ゲームや漫画を少し買うだけの私の生活には不要だった賃金を私はこのように話のネタに使う事にした。

 

ありがとね

野良とも思いであきみゃやさしいね…

やさしいあきみゃ…

写真は反射大丈夫?

 

「写真は写っちゃいけないもの写ってないかマネさんに確認貰ってるので大丈夫だよ。それじゃあ、まず一枚目。はいドン、ブルーアイズホワイトドラゴンのレリーフ。7万円で買ったよ~。かっこいいでしょ」

 

なんで?(半ギレ)

俺たちのスパチャが紙になった

(無言の腹パン)

デュエリストのガキがよ…

かっこいいね(白目)

うらやましい

 

「やっぱり初めてのお賃金はブルーアイズホワイトドラゴンに使わないとデュエリストは名乗れないよね」

 

そう……

デュエリストの鏡

遊戯王以外にもカードゲームやるの?

あきみゃがカードゲームやるの正直意外だった

 

「カードゲームはね、リアルカードも集めているけどリアルではやれないんだよね。私、カドサーの姫になっちゃうだろうし、今はVもやってるしね。今やってるカードゲームはポケカ海外公式のオンラインのやつと遊戯王のデュエルリンクスだけかな。カードゲームは運と実力とやり込みが丁度いいバランスで先攻取った奴が勝てるゲームだから面白いよねー」

 

 どちらかと言えば今あげた理由よりも、じっくりと考えてから自分の行動を選べるところが自分にあってるって理由の方が大きいけどね。

 だからデジタルゲームでも、コマンド入力型のゲームの方がどちらかと言えば性に合ってるし、その場その場で相手の動きに合わせての行動判断や反射的な動きが必要なアクション系のゲームはどちらかと言えば苦手。まあ、どっちのゲームでも下手って事はないんだけど。

 

先攻取れば勝てるは草

実際、あきみゃみたいなのがいたらカードで遊ぶの二の次になりそうだわ

浅い認識だけどだいたいあってる

リンクスは強いカード実装されてないし、実質キャラゲーだから嫌い

はやく遊戯王もできるギャルゲーの新作出せ

 

「やっぱり最新カードも使えるギャルゲーの新作出てほしいよね。できればスマホゲーにしてほしい」

 

 配信じゃ権利関係もあるからできないけど、今後パックの開封をしながらの雑談配信をやるのもいいかもしれない。パックをあけていいカードが出たら喜声を出すだけでコンテンツになるのはコスパがいい。

 

「こちらのブルーアイズは今はわたしのお部屋のインテリアになってます。それで、もう一個はこれね」

 

 ブルーアイズの写真を消して、白色の両耳の形をしたマイクの写真を画面に出す。

 

「ASMR用のマイク~。初心者にはちょうどいいと思って白dioとかいうやつ買ってみた」 

 

うおおおおおおおおお

あきみゃのASMRだあああああああ

たすかるううううううう

あきみゃ…おれ、うれしいよ…

ブルーアイズとの落差がすごい

流石あきみゃだ、需要がわかってる(ブルーアイズから目を逸らしながら)

 

「お前らにもたまには餌やらないとだからね~。とはいえASMRなんて一回もした事ないし、ぶっつけ本番で触った事もないものをお前らの前に出すのは私的に嫌だし……いい機会だから、その内ASMRの練習のためにメンバーシップ開設するよ。楽しみに待ってて」

 

待ってる!

¥10,000

メンバーシップ代先に渡しとくね…

楽しみ!

はやくあきみゃに寝かしつけてもらいてえ…

 

 リスナーの好意的な反応を見て、私はふと昨日の事を思い出す。

 ラナ先輩からの歌ってみたコラボ動画のお誘いを、私は困惑しながらも特に悩む事なく受けた。

 私とラナ先輩が歌ってみた動画を出したところで、たまの人気に寄与する事はあまりないだろう。

 もちろん、私のファンが増える事で間接的にたまゆらのコンビには興味を持ってもらえるだろうが、それは今まで通りに活動するだけでも十分だし、わざわざラナ先輩とコラボ動画を出すメリットにはならない。

 たまのためにも箱内外問わず友好関係やつながりを持つのはたしかに今後の目標ではあるが、動画作成のための時間とお金をかけて得られるのは僅かばかりの再生数とコラボ動画を出したという事実だけでは流石にコスパが悪いとも思う。

 今回のメンバーシップの件にしても、お金を投げてまでメンバー限定の配信が見たい酔狂で熱心な私のファンが多少いたとして、たまにほとんど関係ないだろうとは思っている。

 こんなほぼ無意味な活動をやる意味を、正直私は見いだせていない。

 ……見いだせてはいないけれど、まあ別にいいだろう。

 今の私は、完璧超人の瀬戸あさひじゃなくて、猫かぶりの秋宮ゆららだ。衝動に身を任せて回り道に勤しむのも悪くない、と思う。

 

 

「──というわけで、今日の配信はこのくらいで終わりになりまーす。あ、まだ帰らないでね。告知あるから」

 

おー!

告知?

もしかしてさっそく先輩コラボ?

 

「はい、お察しの通り先輩コラボですみゃ。昨日の配信以降、有り難い事に箱内外どちらからもコラボのお誘いをいっぱいいただいております。ありがてえ」

 

忙しくなるねえ

ありがてえてえ

ほぼ毎日配信してるし無理しない程度にな

 

「だけど、今回はちょっと前からお話をいただいていたコラボなんだー。相手は今日も配信見に来てくれていたアザミ先輩で内容はいつものやつです」

 

ああ、オタ活かあ

いつものってなんすか?

アザミ先輩、本当にあきみゃの事好きだなw

 

「はい、コメントでも出ている通り、アザミ先輩がやってる定期コラボ雑談配信の『アザミのVオタ活』にゲスト出演させていただきまーす。明日の夜9時からだからみんなも見に来てね~。それじゃあ、おつみゃーでしたー」

 

 




マシュマロ
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27.【コラボ雑談】アザミのVオタ活! 第18回ゲスト:秋宮ゆらら【霧ノ江アザミ/@Link】

 

「あざ民のみんな~、こんちゃー! 魔女学園に通うちょっぴりオタクな女子高生Vtuberの霧ノ江アザミでーす!」

 

こんちゃー

ちょっぴり…?

こんちゃー

 

「気になっている同僚でブヒりたいという私の願望から始まった毎月恒例のラジオ配信、アザミのVオタ活も今日で18回目! それでは早速ゲストをお呼びします! あきみゃ~!」

「は~い。こんちゃーです。新人えりーと猫かぶりの秋宮ゆららでーす。アザミ先輩、お邪魔しますですみゃ」

「うおおおおお! あきみゃに先輩呼びされちゃったああああ! かわいいいい!」

「こわ……」

 

発作定期

あきみゃかわいいね、きりおじも少しは見習ってどうぞ

こわい

敬語あきみゃかわいい

あきみゃごめんね…

 

 アザミ先輩に呼ばれ、マイクのミュートを外して挨拶をすると、通話越しに発狂する声が聞こえた。

 今日はオンラインでコラボだけど、よくもまあ本人が目の前にいないのにここまで迫真のオタクの演技ができるなあ。まさか素じゃないだろうに、1人でやってて虚しくならないのだろうか。

 リアルで初対面の時も大概気持ち悪かったと思うけれど、キャラ作りって大変だなあ……

 

「へへ、羨ましいだろおまえらー、あきみゃに先輩呼びされちゃったぜ。@Link入ってよかったー!」

「そんなに先輩呼びってレア度高いですか……? それなら今度ASMRやる予定なんですけど後輩シチュとかやればリスナーにも受け良いんですかね?」

「えっ、やだ……やだやだ! あきみゃの先輩呼びは私たち@Linkだけのものなの! オタクに先輩呼びなんてしたらガチ恋増えちゃうからダメなの!」

「いくらなんでもそんなにチョロくないと思うんですけど」

「あきみゃは自分の魅力がまったくわかってない!」

「えぇ……?」

 

1人で楽しむな

大概のオタクはチョロいぞ

あきみゃの後輩ASMRはおれらのものだから駄々こねんでもろて

どけ!俺が先輩だぞ!

需要はあるからやれ、やって♡

 

「はーい、というわけで今日は私の初めての後輩から、このかわいすぎてキレそうなネコガキ、あきみゃこと秋宮ゆららちゃんに来ていただきました~。あきみゃは今回が初めての同期以外とのコラボだよね?」

「はいです。これからアザミ先輩に私の"はじめて"奪われちゃいます。優しくしてみゃ……」

「お、おふ……や、優しくするね、ぐへへ……」

 

ゴブリンだすな

えっちだ…

あきみゃのはじめて!?

はじめてがこれでいいのか…?

あきみゃまでボケに回るとツッコミ役がいないんだよなあ…

 

「そ、それじゃあ、今日はあきみゃの事もーっと知りたいから、リスナーのみんなから集めたおたよりを読んでくね」

「はーい、たいよろでーす」

 

 

あきみゃがVtuberになったのはスカウトを受けたからって話だったけれど、

スカウトを受けようと思ったのはどうしてですか?

 

 

「──との事です。私の同期だとあうあうもスカウトされて@Linkでデビューしてるんだよね。あきみゃも時々配信中にスカウト受けて入ったって言ってたけど意外だよね。あきみゃって別にVtuberになりたいって感じの人じゃないし。@Linkが特別好きってわけでもないもんね」

 

 リスナーから届いた文章を読み上げた後に、アザミ先輩がそんな事を言う。

 あうろら先輩ってスカウトだったのか。知らなかったな。

 そんな事を思いながら返事をする。

 

「そうですね。一応スカウトの話が来る前からVtuberの事は知っていたんですけど、その時にはまた新しいオタクコンテンツができたくらいの認識でしたねー。偏見もないし、それなりに切り抜き動画もみていたけれど、Vtuberを見る側じゃなくて、なる側としては特に興味もないというか……正直な話、自分には縁遠い世界だなとは思ってました」

「うんうん」

「ぶっちゃけると、私の受けたスカウトってたまからの紹介だったんですよね。コネ入社っす」

 

コネで入れるのか…

ほんとにぶっちゃけるやんw

 

「あっ、やっぱりそうだったんだ。私たちにも友達で良さそうな人いたら紹介してって言ってたからもしかしてと思ってたけど……にしても運営さん思い切った事するなあ。デビュー前のたまちゃんの紹介であきみゃまでよく話がいったね」

「なんか、たまが面接の時に私についてプレゼンしたらしいんですよね。それで面白がって私までスカウトする事になったんだろうけど……ほんと変な方向に思い切りいいよね、運営さん」

 

 「たまの踏み台になる」なんて本当の理由を言うわけにはいかないので、言ってもいいと思われる範囲で質問に答えていく。

 

「もしかして普段の配信みたいにやったの!? 面接で全く関係ないあきみゃの話するって、たまちゃんもすごい事するなあ……」

「その辺りの詳しい話は知らないけど……たま、私の事好きすぎですよね」

「いや、そんなレベルじゃなくない? てぇてぇだあ……」

 

たまちゃんのあきみゃプレゼン…いつもの配信じゃん!

雑談で30分くらいあきみゃの事喋ってる時あるからな…

運営の思い切りがよすぎる

終身名誉ゆらオタさあ…

運営「うーん、面白いから2人とも採用!w」

 

「まあ、それが私にスカウトが来るまでの経緯ですね。今だから言うと、たまからの紹介じゃなかったらスカウトはノータイムで遠慮してたと思います。私にデビューの枠使うくらいなら、オーディションを受けるぐらい熱意のある人がデビューした方が業界としてはいいし、もうその頃にはVtuberは人気コンテンツとして周知されてましたもん」

「あー……私の時はともかく、3期生の採用倍率すごかったらしいもんね」

「それでもスカウトを受けた理由はやっぱりたまですよね。こんな回りくどい事して、色んな人を巻き込んでまで私をVtuberにして。そこまでするくらいにたまにやりたい事があったんだろうし、もうそれは付き合うしかないかな、と」

 

あきみゃ、強火で焼かれてるなあ…

行動力の化身か?

てぇてぇ……

そこまでされたらもう付き合うしかねえよな

たまちゃん、あきみゃの事好きすぎる…

 

「──ま、未だにたまが何をやりたくてVtuberになったのか教えてくれないんですけどねー。アザミ先輩、たまをオタ活配信に呼ぶ時にはこの辺ばっちり質問してやってください」

「いや、こんな大事な事は私越しに聞いちゃダメでしょ! ちゃんと2人で話してもろて!」

「ちえっ、はーい。……というわけで、スカウトを受けたのはこんな感じの不純な理由なのです。ちょっと申し訳ないとは思ってるけど、今はちゃんとVtuberの活動が意外と面白いなと思ってるし、その分、リスナーには楽しんでもらえるように営業は頑張っていくから、これからも応援よろしくねー」

 

ずっと応援するやで

たまゆらに挟まらない良心はあったのか…

(百合)営業

いい話だと思ったけど、最後に営業に帰結するのあきみゃっぽいなあw

たまゆらに挟まらないきりおじ

 

「なんか、思ってたより関係性オタク歓喜な内容だったなあ……というか、あきみゃ真面目すぎだって! 敬語じゃなくて、いつもの野良ともをあしらう感じの砕けた感じでしゃべってよう!」

「配信中にため口でほぼ初絡みの先輩に生意気な口利いたら炎上するでしょうが」

「私なんてそれくらいの扱いでいいんだよ!」

「それは先輩の趣味では?」

「私は生意気なメスガキに振り回されたいとか思ってないもん!」

 

裏の真面目さでちゃったねw

願望だすな

これは真面目

かしこい

嘘つけ、100%趣味だゾ

 

「むう……でも、敬語ロリもそれはそれで……」

「もうなんでもいいじゃん」

「あー、このそっけない感じキく~、それじゃあ次のおたよりいくね」

 

 呆れる私をおいて、アザミ先輩は次のおたよりを読み始めた。

 

 

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇〇スレ目

 

364:名無しのV ID:Jmy+4w9uj

おつみゃ~

あきみゃ、先輩とのサシコラボだとあんな感じなんやね

 

369:名無しのV ID:hGqqsYslI

おつみゃ~

借りてきた猫って感じじゃなかったけど、いつもと違ってだいぶ落ち着いた感じだったな…

目的:炎上回避の猫かぶり敬語ロリなのにちょくちょく刺してるの面白かったw

 

372:名無しのV ID:H7uncH998

裏で真面目って話だったけど、あきみゃは素で真面目だよなあ

コネ入社だとか言ってふざけてるけど、自分がデビューで1枠使ってるのそれなりに気にしてそう

 

377:名無しのV ID:MZrWBkMmo

>>372

デビュー2ヵ月で銀盾*1目前の超大型新人ならコネ入社でもまったく問題ないんだよなあ…

むしろ今日のデビューの話の流れでよく運営はあきみゃスカウトしたなw

 

379:名無しのV ID:CEgbJwALX

Q.あきみゃが苦手な事、苦手なもの、苦手な食べ物ってありますか?

 決してわからせようなどとは思っていません。

 

あきみゃ「強いて言うならきらきら輝くものが苦手ですねー。ラピスラズリは特に苦手ですぅチラッチラッ」

アザミちゃん「ま、まんじゅうこわいだ、リスナーに貢がせようとしてる…最近の若い子は怖いなあ…」

あきみゃ「そんな事言ったって若い子はアザミ先輩の所には来ませんよ?」

アザミちゃん「なんでそんな酷い事言うの?泣いちゃうぞ?」

 

返しがつよい

 

383:名無しのV ID:cxGj5iLmp

>>377

そっかもう10万人いくのか…

たまゆらコンビがべるちゃんの登録者数追い抜いたのは知ってたけど、あっさり2期生の登録者に追いつきつつあるのは1野良ともとしては嬉しいけれど、箱推し勢としてはなんだか複雑だな…

 

386:名無しのV ID:WzOsZTvM6

ちょっとエッチ(R-15くらい)なシチュボが欲しいですとかいう欲望まみれなマロよかったなあ…

 

389:名無しのV ID:doKhMZRSj

>>383

2期生のデビューの時とは界隈の賑わいも違うからな。

歌の切り抜きがバズってるおかげやね

 

391:名無しのV ID:P4mf0L9aT

>>386

「アザミ先輩がこのマロ選んだんですよね?」

「こんな小っちゃい子にえっちな事言わせたいんだ」

「ダメなおねーさんだなあ」

「ねえ、なんて言ってほしいんですか?」

「私に言わせたいえっちな言葉、言葉に出しておしえて?」

きりおじ「もう既にえっちだあ…」

 

シームレスに演技に入って、きりおじがブヒり倒してたのホント草だった

さく姐の時もそうだったけど、あきみゃ、お前、敬語ロリの才能あるよ…

 

394:名無しのV ID:kTm8/sqs1

>>389

韻を踏むな

 

397:名無しのV ID:MZs7Um4sp

あきみゃをVにしてまでたまちゃんがやりたい事ってなんなのかな?

知りたいけれど、あきみゃにも言わないぐらいだからしばらくはわからないままなんだろうなあ…

 

400:名無しのV ID:AB8uJUq5G

あきみゃは誰がコラボ相手でも不安感がまったくないから、3期生の初めての同期以外とのコラボがあきみゃが最初でよかったわ。後発のさく姐やたまちゃんも緊張せずにやってもらいたいね

 

405:名無しのV ID:UP6LrcPyi

てぇてぇって感じじゃないけど、アザミちゃんとは相性よさそうだったね

またコラボしてほしい

 

409:名無しのV ID:5KhS1sNPr

>>400

さく姐がゆのちゃんとで、たまちゃんがぽぷちとだっけか。

たまちゃんは1期生とだけど大丈夫かな

 

414:名無しのV ID:/tWK7Duoh

>>400

はやく同期以外とのコラボしろ、おこた

 

 

 

 

*1
チャンネル登録者10万人を達成したクリエイターに送られる




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28.冬支度ボイス販売

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

初ボイスが販売開始しましたみゃ~!

ねこだからおこたも準備しました。冬さん、たいよろみゃ。

 

サンプルボイスもようtubeに上げといたから、興味のある野良ともは見に行くみゃー

 

                            

アットリンク公式@Link_VLive

【お知らせ】

期間限定「@Link冬支度ボイス20XX」が本日11月XX日(金)12時より販売開始‼️

 

オリジナルシチュエーションボイスをぜひお楽しみください

詳細はこちらから!▽

………

#アットリンク冬支度ボイス

 

「はい、投稿っと」

 

 少し前に収録していた期間限定シチュエーションボイスがとうとう販売開始した。昼過ぎに公式からの宣伝を引用する形でついついッターに投稿する。

 @Linkでは季節限定でボイス販売をしている。毎回全員参加ではないが、去年は6作品の販売をしていて、今回私が初参加した「@Link冬支度ボイス20XX」(各1000円)は今年の9作品目だ。このままのペースでいけば、今年は月1でボイス作品を出す事になるだろう。この集金姿勢、運営はオタク(の財布)を狩る死神を名乗ってもいいと思う。

 それはともかくとして、だ。

 

秋宮ゆらら 冬城くんさあ…ボイス、どこやったの?

冬城ことは だって台本作れなかったし…

つ、次のクリスマスボイスは出すもん…(震え声)

秋宮ゆらら 冬支度ボイスなのに冬担当いないのはダメでしょ

冬城ことは その通りでございます…

 

 グループチャットで冬城を問い詰める。

 3期生の初めてのボイス販売、冬城だけ不参加です。3期生の冬担当の自覚を持ってほしい。

 というか、ここまでくるともうマネージャーのせいな気もしてきた。私たちみたいなダメ人間はちゃんと管理しないとダメなんだよなあ。

 

夏風たま 今回は準備期間が短かったし、しょうがないよねー

春原さくや まあまあ、ボイスは自由参加だから…

秋宮ゆらら 2人とも甘ーい!

甘やかすと、次のクリスマスボイスも出さないよ。私にはわかる

冬城ことは そんなことないもん

秋宮ゆらら じゃあ聞くけど、次のボイスの台本どれだけ書けてるの?

冬城ことは ……なんの成果もありませんね

おかしいなあ

春原さくや 台本書くの難しいよね

私がやれてるのも、お金がないから音声作品の台本を自分で書いた日々があるからだし…

 

 さく姐はこう言ってるけど、多分甘やかしてるだけだな、これ。

 販売するボイスはワンフレーズ、長くても5分程度のものを合わせて精々10分程度でいい。ネット声優としての音声作品と比べると文量が全然違うだろう。

 冬城にその能力を求めるのはお門違いだって事はわかってるけどね。

 

夏風たま そうだ!ことちゃんが良かったらだけど、わたしがことちゃんのボイス書こっか?

もうわたし、お正月ボイスまで出してるから時間はあるよ~

秋宮ゆらら なら私も手伝うよ、クリスマスボイスもう出したし

冬城がボイス出したいならだけど

春原さくや 2人ともはっや

こういう分野ではわたしが先輩だし、それならわたしもちょっと手伝おうかな

冬城ことは みんなぁ、ごべぇぇん…!;;

おで、がんばるからぁ…!

秋宮ゆらら あ、やる気はあるんだ…

それならみんなで集まって、配信で台本作りしない?

春原さくや あっ、それ面白そう

夏風たま リスナーさんの意見も取り入れられるし良さそうだね~

冬城ことは お、おねがいしますぅ…

 

 意外と冬城も乗り気だったので、私が提案したボイス台本作り配信の予定を立てた後。

 

秋宮ゆらら そうだ、みんなリアルのクリスマスに予定ある?

彼氏と予定あるならそっち優先でいいよ

春原さくや 配信ぐらい? 彼氏はしばらくはいいかなあ…

冬城ことは 恋人いない歴=年齢ですが?

夏風たま ゆらちゃん以上に優先するものなんてないよ!

春原さくや 愛されてるなあ…

夏風たま 今年もゆらちゃんちにケーキ持ってこうと思ってたけど、なにかやるの?

 

 クリスマスついでにみんなの予定を聞くと全員参加ができそうだったので、たまの質問に答える形で提案する。

 

秋宮ゆらら 冬城が私の家に来たがってたし、折角だから3期生クリスマスオフコラボ配信って名目でタコパとお泊り会しない?

 

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

158:名無しのV ID:kNSYfngHl

冬支度ボイス発売されたねえ

オススメ教えて

 

162:名無しのV ID:nZh9X1ZyK

>>158

ゆのちゃんはいいぞ…

わたしの母になってくれる女性だ

 

163:名無しのV ID:RCdY6Npl+

>>158

エレちゃんよかった

エレちゃんの食べるみかんの筋を取る仕事をしたい…

 

167:名無しのV ID:aiLzBRZVV

参加ライバー:…、春原さくや、夏風たま、秋宮ゆらら

あっ……(察し)

 

170:名無しのV ID:nlRqtGPaD

>>158

今回初めてだけど、さく姐のボイスはかなりオススメ

ダメ男を養う才能がある

 

173:名無しのV ID:bATxTpokl

>>167

冬担当の自覚をもて、おこた

 

178:名無しのV ID:nGZ0wyATl

>>167

おこたさあ…

前回のハロウィンボイスで3期生全員いなかったから、次のボイスが待ち遠しかったのに

 

180:名無しのV ID:4szvJ9R+u

>>167

3期生(おこた除く)は初めてのボイスだったけどみんなよかったよね。

たまちゃんとあきみゃはようtubeに導入のサンプルボイス上げてるから聞きに行って損はない

 

182:名無しのV ID:MC8GD2luy

>>180

情報サンクス

聞いてくるわ

 

183:名無しのV ID:6UtMAO5ra

>>180

サンプルボイス、文章起こししたるわ

たまちゃん↓

「すっかり寒くなってきたね~」

「ふーふー、手がかじかんじゃうね。手袋付けてくればよかった~」

「ねえ手、握って?」

「ありがと。えい(ごそごそ音)。ふー、君のポッケの中あったかいや~」

「……あっ。雪、降ってきたね。今年初めて、だよね?」

「早く買い物を済ませて、家に帰ってあったかいお鍋食べよっか~」

あきみゃ↓

「あー、さむい~、動いてないからさむいよ~」

「こちとら体毛がないから普通の猫より寒さに弱いんだぞ。家にいないと死んじゃうよ」

「あー、さむさむ。ねこはおこたで丸くなるにゃ、おりゃどけどけ」

「(ごそごそ音)ふいー、あったかー。……ねえ、もうちょっとそっち行ってよ、狭い」

「隣じゃなくて反対側に入ればいいだろ、って?……はあーっ(クソでか溜息)君は全くわかってないなあ」

「こっちの方がいいもん(拗ねたような感じ)」

「あっ、もしかして……こたつの中で、足でぐにぐにーってイジワルされたいの? 変態だー」

「ぷふっ! そんな慌てて否定しなくてもいいじゃーん」

「君にはいくらでも付き合ってあげるからさ、今は大人しく私の抱き枕になりなよー」

 

187:名無しのV ID:SL8OYI3Dn

>>183

もう彼女やん…しゅき

 

188:名無しのV ID:aNpesc/5k

>>183

サービスが過ぎるぞあきみゃ

そういうのは俺の前だけにしろって言ったろ?

 

192:名無しのV ID:Qii5/i+ZK

>>183

たまちゃんと一緒に生活したいだけの人生だった…

 

193:名無しのV ID:vMKxXakRt

>>183

ボイス買いました

 

197:名無しのV ID:upUC6WgXh

>>183

相変わらずあきみゃは面倒くさい(誉め言葉)彼女のロールプレイがうますぎる

 

 

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。

マロでキャラクター設定まとめページ作ってくれと言われたので、何処かのタイミングで作ります。更新来たとぬか喜びさせたくないので公開は活動報告でやる予定。

あと、作中月を勘違いしてハロウィンボイスの導入を作っちゃったので、(公開する機会が多分ないし)以下に公開しときます。感謝してください。

「トリックオアトリート、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ~♡……はい、お前らこれで満足したかー?」
「私にお菓子を貢ぐのも、イタズラされるのもどっちもお前らならご褒美だしなー。私にメリットがないし気が乗らねー」
「……えっ、なに? トリックオアトリート……って君たちが言っちゃうの? こんなちっちゃい女の子にお菓子をねだるなんて大人としてどうなの? うわー引くわー」
「あっ、もしかして……私にイタズラしたいんだ?」
「私にイタズラされる側とする側、どっちも味わいたいなんて。欲張りだなあ、まったく」
「しょうがないにゃあ、いいよ……なーんてね。こんな事もあろうかと重い腰を上げてクッキーを焼いてきたのでした。同期のみんな用だったけど、お前らにもわけてやるよ。感謝して食らいたまえー」
「ぷぷ、なにそのちょっとがっかりした顔。おもろ」
「……ところで、私へのお菓子はまだなの?イタズラされたいなら、素直にそう言いなよ、君たちぃ♡」
「……ほんとに言っちゃうんだ。『イタズラしてください』って自分で言うの情けなくならないの?」
「しょうがない奴らだな、お前らは。そこまで言うなら、私が弄んでやるから覚悟しろよなー」



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29.【雪山人狼】おおかみですよろしくおねがいします【秋宮ゆらら/@Link】

 

「はーい、自己紹介も終わった所でそろそろ一戦目始めていこっか~」

 

 水無瀬先輩がそう促す。

 今日は水無瀬先輩が集めてくれた3期生4人とべる先輩、アザミ先輩、エレノア先輩に水無瀬先輩自身をあわせた8人でのゲームコラボ配信だ。

 やるゲームは私たちがデビューする少し前にV界でも流行りだしたPROJECT:WINTER、通称雪山人狼と呼ばれるゲームで、タスクをこなして雪山を脱出するのが勝利条件のサバイバー6人と、サバイバーが脱出できないように妨害してサバイバーを全滅させるのが勝利条件である人狼の役割のトレイター2人に分かれて戦う、名前の通り人狼系のゲームと聞いている。

 配信前にこのメンバーで操作方法の確認がてら軽くお試しでプレイした感じでは、パッションやアクションでなんとかなるので人狼とは全然違うゲームだなと感じたけどね。

 

「それじゃコメ欄消すねー。ばいにゃ」

 

ばいにゃー

がんばってー

がんばー

 

 ゲーム開始と同時にコメントからのネタバレを防ぐためにコメント欄を消す。

 スタート地点のキャビンへ場面が変わると、今回の自分の役職が発表された。

 

あっ

早速トレイターか

トレイターきちゃ

相方エレちゃんか

殺せええええええ

 

「おっしゃ殺すぞー」

「やるぞやるぞー」

「おっしトレイター」

『エレちゃん先輩どします?』

『全員殺そう!』

『りょですー。壊しましょう』

 

物騒w

クソガキコンビだ

殺る気満々だあ…

 

 開幕の喧騒に紛れてトレイターの初期装備である青のトランシーバーで仲間のエレノア先輩と会話をする。

 このゲームはゲーム内ボイスチャット式で、ゲーム内の距離が離れている相手とは会話ができないのだが、同じ色のトランシーバーを持っている相手となら距離がどれだけ離れていても秘密の会話ができる。

 そのトランシーバーを最初から持っているトレイターのアドバンテージは大きい。その代わりに序盤に死んだときにトランシーバーを持っているとトレイターである事がバレたり、他のトランシーバーを持てないといったデメリットもあるので気をつけないといけない。

 まあ、全員殺せば問題ないか。

 

『経験者狙ってガタガタにしたいっすね。水無瀬先輩イっちゃいますか』

『ナミちゃんは二人がかりでもワンチャンキツくない? アザミ殺ろう』

『じゃそれで。上手い事3人か4人になりましょ』

「アザミー、物資探しに行こー」

「おっけー」

 

 初動で武器をみんなが作った後に、エレノア先輩がアザミ先輩を誘って上の方へと探索しに行く。

 私はまだ周りに人が多かったので、怪しまれないようすぐには追わずにキャビンの周りで物資を漁る。

 

「冬城ー、食糧作ったら修理素材集めに行こ」

「う、うん!」

 

おこた…

ぼっちでいるから……

ついでに殺っちまうか

 

 他の面々が下の方に探索に行く中、一言もしゃべらずに黙々と薬草を刈っている冬城に声をかけると、嬉しそうな声で返事をして私についてきた。

 まあ、今から殺すけどね。すまんやで。

 

『冬城ヤってから上で合流します。返り討ちにあうかもなので、トランシーバーで話しかけるの禁止で。私からの返事なければ察してください』

『マジ!? いってくれ!』

「わ、こっち修理素材いっぱいあるよ!」

「ふーん、良かったね」

「えっ」

 

 建物の中にあった素材が入っている箱を漁り私に報告をする冬城に、私は適当な返事を返して無防備な背中に鎌を振り下ろした。

 呆然とした声を漏らし立ちすくむ冬城にさらにもう一撃追撃を加える。

 

「ちょっ、えっ早いって!? やめっ死ぬー! 最初に死にたくないー!」

「や、やってんの秋宮じゃん!? 嘘ついてますコイツ! 誰かぁ!」

 

ことゆらてぇてぇ…?

ムーブが狂人すぎる…

てぇてぇじゃん

迫真の悲鳴を上げながら殴るなw

 

 誰にもバレないように初期地点から少し離れた場所で犯行に及んだが、万一誰かに聞かれている時の対策で私は悲鳴を上げながら、冬城に攻撃を仕掛け続ける。

 建物の入り口に陣取っている私がいるせいで逃げ道がない冬城は手にした武器で応戦してくるが、同じ武器で同じダメージしか与えられない以上、先にダメージを受けている方が不利なのは明白だ。

 

「あう!」

 

 体力がゼロになり、冬城がダウンする。

 

「ひん、ゆるして、あきみやぁ、たすけてぇ……あっ、死ぬ! 死……」

 

無言で草

こーれ、DV現場です

あー、サイコサイコ

うわぁ!急に冷静になるな!

愛の鞭だね

 

 殺した相手に命乞いされてもなと思いながら無言で殴り続け、完全に殺しきると冬城の声は聞こえなくなった。ごめんね……

 

「……ぬ! あー!死んじゃったあ!」

「よし」

 

よしじゃないが

まずは1人

ビューティフォー…

鮮やかな手口だったね()

 

「それじゃあ次は……っと」

「……うん?」

 

 このゲームでは、死んだプレイヤーの皮を被るとそのプレイヤーの見た目と表記になって擬態する事ができる。

 した所で声でバレるからほとんど意味がない場合が多いけれど、今は配信中なのでなるべく面白いプレイを意識した方がいいだろうとの判断で、私は冬城の死体を漁り、声を作る。

 

「あ、あ、あー……あてぃしの勝ちぃ~! 私に歯向かうからこんな事になるんだよ秋宮ぁ~」

「ちょおおおっ! 乗っ取られたんですけどぉ!?」

 

似てるw

おこたの中すごくあったかいナリ~

キマシタワー

生意気おこたの真似かわいい

ことゆら合体(意味深)しちゃったね…

 

『エレちゃん先輩、冬城殺りました。ここから先は私が冬城なんでよろしくお願いします』

『おお! ナイスぅ……うん? どゆこと?』

『私がトレイターの秋宮を返り討ちにしたって設定です。今の私の見た目は冬城です』

『いや草。とりまアザミ殺るか』

『りょ』

 

 よし、後は……

 

「だれかぁ~。誰もいないのぉ……? 秋宮がトレイターです! ひぃん、あてぃし、一人ぼっちはヤダよぉ~」

「アタシ、そんな事言わない」

 

誰もいない所で面白い事をするなw

なんで逃げてるのに拠点の方に行かないんだよw

おこた、死んだあとも辱められてて草

 

「……おこたちゃんの声聞こえない? なんか泣いてるけど」

「ぷっ……ホントじゃん。おーい、おこたちゃーん」

「あっ、気づいてください先輩!」

 

 冬城のモノマネをしながら、トレイターだけが開けれる物資の入ったチェストを開けたりしてしばらく進むと、遠くの方から声が聞こえてきた。

 

「あっ、スゥーッ……せ、先輩だ……たまちゃん、さく姐どこぉ……

「めっちゃ声小っちゃくなってる……おこたちゃん、怖くないよー」

「……ぷぷっ」

「秋宮さあ……先輩もこれ気づいてないよぉ……」

 

バレてないなこれw

流石に草

エレちゃん笑ってるやんw

 

 怯えた声を出すと、アザミ先輩が優しい声で呼びかけてくる。

 エレノア先輩は噴き出すのをやめてほしい。バレちゃうから。

 そうこうしている内に視界の先に先輩方の姿が見える。

 このゲームは下方向の画面表示が若干狭い。この位置ならば私の姿が見えていない可能性もあるだろう。

 まあ、見えていてもやる事は同じだ。私は先程チェストから見つけた銃を構えた。

 

『エレちゃん先輩、ちょっとアザミ先輩から離れてください。銃で撃ちますんで追撃お願いします』

『わかった!』

「あっそうだ! えとえと、秋宮がトレイターで! さっき襲われて! えっと、それからえーっと……」

「うんうん、落ち着いて……」

「死んでください」

「ちょーっ!?」

 

これアザミちゃん視点サイコすぎるだろw

判断が早い!

おこたこわ…

 

 銃声が響く。多分当たったけど、反応が薄くてわからない。

 とりあえずこのまま撃ち続けるか。

 

「おらっ! これがあてぃしのエイムじゃ! おりゃおりゃ!」

「痛っ、痛いっ! ってかあきみゃじゃん!?」

「あてぃし、冬城! あてぃし、冬城!」

「モノマネが急に雑!? はーちゃん2対1で殺ろう!」

「さっきまでも大概雑だって!」

「了解!」

「私じゃないってえ!?」

 

連携うまくハマったなあ

ないすぅ!

 

 エレノア先輩が後ろから斬りかかり、アザミ先輩がダウンする。

 

「2対1でやった!」

「ナイスゥ!」

「ひどいぃ……あんまりだぁ……」

「おら、ぱーんち!」

「ぱんちぱーんち」

「いたいぃ……イジメないでー! あ」「っ……ワイ死んだ」

「なんかごめんなさいです……」

 

クソガキたすかる

これがイジメの現場です

クソガキ共がよ…

 

 エレノア先輩と寄ってたかってダウンしたアザミ先輩を殴って殺しきる。

 

「いやー、ナイス秋宮! すっごい気持ちよく決まったなー!」

「上手くハマりましたねえ。……ノリでやっちゃいましたけどここから先どうしましょうか?」

「流石に4人で行って2人で帰ると怪しまれるよねー。秋宮はおこたちゃんの皮被っちゃってるし、このまま単独行動して、私が向こうに戻って潜伏にする?」

「逆にしましょうよ。そっちの方が面白いし」

 

 序盤に2人落とせたならもうだいたい勝ちだろう。それなら面白いプレイに重きを置いた方が得だ。

 向こうにはたまがいるけど……まあ、しばらくの間はバレないだろう。たぶん。

 

「秋宮、思ったよりアグレッシブだねー。じゃあそうしよう。トランシーバーはそろそろ傍受されてもおかしくないし使用は慎重に、だからね!」

「わ、わかりましたぁ! あてぃし、がんばる!」

「あ、もうモノマネ始めるんだ」

「む、ムカつく~~~!」

「おー、怒ってるおこたちゃんレアだ……ありがてえ」

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

468:名無しのV ID:8qFE+aq4U

雪山人狼面白かった~

おこたちゃんがどんどん人を信用できなくなっていくのホント草

 

470:名無しのV ID:a/0a1L5c7

あきみゃinおこた、顛末まで含めて最高だった

 

475:名無しのV ID:upctk5YZC

>>468

1戦目:あきみゃに即死させられ皮被られ生き恥

2戦目:あきみゃを警戒して、ついていったたまちゃんの仕込んだ毒で毒殺

3戦目:さく姐についていくも最後の最後で銃殺

4戦目:「俺はソロだ……(半泣き)」

おお…もう…

 

480:名無しのV ID:XbLS267nE

>>470

あきみゃinおこた「たしゅけてぇ……あてぃし、斬りかかられて……あっ、アザミ先輩が倒されてっ、トレイターは秋宮とエレノア……」

たまちゃん「(無言でニコニコしながら殴りかかる)」

判断が早すぎる

 

485:名無しのV ID:AVhY7jEHb

>>475

不憫かわいい

 

490:名無しのV ID:tm+OLgFH1

>>480

この後の試合も懲りずに、おこたの声でトランシーバー使ってふざけ倒してたの草なんだ

あきみゃ「あてぃし、この戦いが終わったらアイドルになるんだ……」

おこた「あてぃしの声で変な事言うな秋宮!」

あきみゃ「あてぃしの夢を否定しないで秋宮ぁ!」

さく姐(トレイター)「2人共あてぃしあてぃしうるさい!」

おこた「ひん、あてぃし悪くないもん……」

なみちゃん(ニコニコしながらトランシーバーをトレイターボックス内に捨てる)

 

491:名無しのV ID:pWMchaC9y

>>480

秋宮ゆらら過激派オタクすぎる…

 

496:名無しのV ID:rMXM3lhic

>>475

4戦目は不憫に思った先輩達に優しくされてて良かったよね

同期はもう少しこう何というか…手心というか…

 

497:名無しのV ID:kc6FUNRph

>>480

トランシーバーで即死した事を伝えられたエレちゃんほんと…

 

500:名無しのV ID:DkWKhTt0k

>>475

たまゆらはトレイターの時にサイコの片鱗出しすぎなんだよなあ…

こんたまー!こんたまー!(アザミちゃんを殴打)

 

505:名無しのV ID:P6CCRInZO

>>497

あきみゃ「すみません、たまに殺されます。私の事は見捨ててください」

エレちゃん「即死じゃんwww」

あきみゃ「思い出したけど私、狼じゃなくてねこ……(死亡)」

エレちゃん「(大笑い)」

とはいえ1戦目のクソガキコンビ面白かったわ

 

508:名無しのV ID:g5pzHGghi

>>500

(倫理)ゆるふわ系

 

513:名無しのV ID:rmg36MH54

>>496

おこたとべるちゃんが陰キャ繋がりで仲良くなったの草なんだ

 

517:名無しのV ID:ov4S9KZKF

>>513

べる「ぼ、ボクの傍から離れないでねえ」

おこた「あ、ありがとうございましゅ、す」

ぎこちないやり取りほんとすこ

この後なみちゃんに2人共やられるのも含めてすこ

 

520:名無しのV ID:rRrVjaV6F

>>500

殴られて嬉しそうな声出すなきりおじ

 

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。

キャラ設定まとめ思ったより時間かかりそう。気長に待ってて。


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30.朝活とカラオケ

やれそうなのことちゃんしかいなかったし…
嫌がらせで毒塗ったらなんか勝手に死んじゃった。ことちゃんごめんね
ついででやった、後悔はしていない
ねえええええ!!!

アキミ屋の一幕


 

「……というわけで今週のアキミ屋は『明星ラナ、ガチャ配信で沼り台パン』、『おこた、雪山で同期全員に裏切られる』『酒カス天使あうあう、配信3時間遅刻』の3本立てでお送りしました~。初めての試みだったけど、お前らどうだった?」

 

裏切ったのはあきみゃもなんだよなあ…

あきみゃがこういうのやるの意外…意外でもないか?

面白かったよー!

切り抜きチャンネルアキミ屋開くか

こういうの配信者側がやってくれるのすごくありがてえ

 

「うむ、評判は上々だね。よかったよかった。これからも毎週土曜の朝9時はアキミ屋をどうぞよろしくにゃ。あと、今日は夜もスプラ配信やるから見に来てねー。じゃあ、ばいにゃー」

 

 そうして、配信エンディングを少し流した後で配信を切る。

 少し前から考えていた、ライバー目線から@Linkのライバー達の紹介をする切り抜き型朝番組の新コーナーとしてアキミ屋を始めてみた。

 毎週土曜の朝9時から今週あった事件を切り抜き動画(自作)と本人・関係者のコメントと共にまとめていくニュース番組のような形式だ。

 切り抜き動画の手軽さを失う分、取り上げる出来事の一つ一つを濃密にやっていく方針にしたが、これに関しては要検討かもしれない。

 これからの同時視聴者や動画再生数の伸び次第では、切り抜き動画をやめる事で編集の手間を減らして1回の配信も1時間目安から30分目安に。その分、毎朝やるといった路線変更も考えている。ただ、そうするとネタの消費量がなあ……

 毎日切り抜くような面白いネタなんて出てこないだろうし、その内なんにも取り上げる事がなくなって『今日のにゃんこ』とか言って可愛く媚びるだけのコーナーやる羽目になりそうなんだよね。

 うーん、悩み。

 

「後は、っと」

 

 午後からの予定まで、冬城の配信を見ながら裏で進めているコラボの連絡を返していく。

 冬城は最近、ゲームを極めると言って個人配信ではびぺやスプラなどの対人ゲーに精を出している。さく姐も(私も参加予定のものがあったりする)声劇関係のコラボの予定を立ててるみたいだ。

 

秋宮ゆらら 予定空いてる所に先輩との予定入れといたから

歌ってみたの音源は来週までによろしくね

あと、明日の配信も

夏風たま 了解しましたのだ!

 

 なにより、チカは私がいなくても先輩方とのコラボに精力的に取り組んでいる。元々コミュ強だしそう言う面で不安に思った事はないのだけれど、あまりにもやりがいがない。

 界隈を盛り上げていければ最終的に私の目標も達成できるんだけど……

 

「みんな頑張ってるなあ……」

 

 なんだかなあ、とそう思わずにはいられなかった。

 

 

「というわけなんですけど、どうすればいいんでしょうかね」

「いや、秋宮は頑張りすぎやって……」

 

 カラオケルームの一室でそんな事を相談すると、ラナ先輩は真顔でそう言った。解せない。

 

「今日やってた朝配信だって突然連絡きたからなんやろって思ってたけど……切り抜き配信まで作ってあんな凝った事毎週やろうと思わんし、この後だって帰った後で配信やるんやろ? ってかほぼ毎日配信しといて何言うとんねん」

「個人事業主は無限に働いていいんですよ」

「んなわけないやろ。そんな命がけでやるもんやないって」

 

 配信のほとんどは喋りながらゲームで遊んでるだけだし、そんな大げさなと思うけれど……

 まあ、先輩方は3D配信の関係でダンスレッスンとか配信外での活動も多いらしいし、今の私と比較するのもおかしな話か。

 

「なんというか……私の頑張りがちゃんと成果に繋がってるのか不安になるんですよね。正解がない事をやるのはやっぱり苦手です」

「あー……まあ気持ちはわかるわ。ウチらもVtuber始めた頃は中々成果でーへんかったしなあ」

「先輩方からしたら恵まれた環境なのはわかっているんですけどねー。こんな風にヘラってる所をリスナーや同期の前で見せるのはキャラ的にも個人的にも嫌といいますか……」

「うん、わかるよ。ほんと真面目な子やなあ」

 

 ラナ先輩は呆れながらも優しく笑う。

 

「1年しか先輩じゃないから偉そうな事は言えへんけどな。Vtuberなんてやりたい事をやりたいようにやってなんぼやろ。そんな不安がる理由は知らへんけど、秋宮はよーやっとるよ」

「ふふっ、なんか適当ですね」

「こんくらい適当に生きてええねん。そうじゃなきゃVtuberなんてやらへんよ」

「……そうですね」

 

 ラナ先輩の言葉を聞いて、昔、チカからも似たような事を言われたなと思った。

 やっぱり人は中々変われないものだなあ。

 まあ、言われた直後からずっと引きこもってたし変わりようもないか。

 

「へへっ」

「そんな卑屈に笑わんくてもええやろ……」

「ああ、スイマセン。陰気な面が漏れちゃいました。愚痴聞いてもらってありがとうございます」

「お、おう。あんま役立った気はせーへんけど……これでも先輩やからな。どんどん頼ってや」

 

 ラナ先輩がトンと胸を叩くジェスチャーを見せる。

 素晴らしい先輩だあ……

 ジッと見つめてると、恥ずかしくなったのかラナ先輩は咳払いをして話を変える。

 

「コホン。ほら、早く歌ってみたの曲なんにするか決めよ。今日はそのためにカラオケ来たんやから」

「そうですね。私的にはラナ先輩はカッコいい感じの曲歌ってる時が一番好きなんで、そっちに合わせたいです」

「ウチはありがたいけど……秋宮はそれでええんか? もっと綺麗目で落ち着いた感じの曲の方が得意なんちゃうん?」

「別に得意とかないです。どんな曲でもクオリティは変えずに歌えますし……あと、私って大人しい感じのキャラじゃないですか。カッコいい感じの曲歌ったらギャップ萌えが狙えると思うんですよね」

「……?」

「無言で首を傾げないでくださいよ」

 

 前にやった記念歌枠でちょっとだけそういう曲調の歌も歌っちゃったから、あんまりギャップ萌えの点では効果ないかもしれないけどさ……失礼しちゃうな、もう。

 

「それに、ラナ先輩的にはバチバチにやり合う感じの方が好きでしょ?」

「……なるほどな。そのためにウチの土俵で張り合おうってか。ウチの事よーわかっとるやん」

 

 ラナ先輩が私の言葉を受けてニイっと好戦的な笑みを浮かべる。

 うん、これでいい。どうせ出す作品なら私に気を使ったものより、お互いの全力に全力を掛け合わせたものの方がリスナーも喜ぶだろう。

 

「売られた喧嘩は買わんとな。それじゃあカッコいい曲で試しに何曲かデュエットで歌おか」

 

 気合が入ったラナ先輩の言葉に私は頷く事で答えた。

 

 

 




マシュマロ
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スプラ3始めたので、キャラ設定まとめはしばらく作れません。ゆるして


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31.【ベストカップル決定戦】百合営業なんかに負けないが?【天羽あうろら/@Link】

 

「ベストカップル決定戦、司会進行は配信1週間前になぜか巻き込まれた根津ゆのみが務めさせていただきます」

 

 タイトルコールの後に、司会担当で呼ばれたゆのみ先輩が呆れた声で進行を始める。

 今日は2期生の天羽あうろら先輩とべる・しとりぃ先輩、あと、司会役で呼ばれた根津ゆのみ先輩とのコラボだ。

 外見清楚、中身清楚(笑)な喋らなければ素敵な歌うまお姉さん天使のあうろら先輩と、慣れ親しんだ相手には距離が近くなるタイプの陰キャ小悪魔(子供の悪魔)のべる先輩の2人は「あうとりぃ」というコンビ名でたびたびコラボ配信をしたり、大型企画に呼ばれたりしている。

 カップル売りはまったくしてないけれどね。

 

「それでは本日の出演者をお呼びいたしましょう。天使と悪魔の2人組、今日は先輩の意地を見せつけられるか!? 天羽あうろらちゃんとべる・しとりぃちゃんです!」

「はーい、あうとりぃの天使担当! 酒・金・女が大好き! 俗世に染まったダメダメ天使、あうあうこと天羽あうろらでーす」

「どうもー、あうとりぃの悪魔担当。みんなが見惚れるかわいい悪魔のべる・しとりぃですー」

「はい、ありがとうございますー。ねえ、あうろらちゃん」

「なーにぃ?」

「急に司会に呼ばれた事とかはともかくとして。後輩との初めてのコラボがこれってよくないと思うよ?」

「それはそう」

「たしかに……」

 

それはそう

あうあうさあ…

本当にそれはそう案件すぎる…

¥2,000

司会代

 

「という事で続きまして。今日の被害者の新人2人組、犬と猫の営業?コンビの夏風たまちゃんと秋宮ゆららちゃんー?」

 

 ゆのみ先輩に名前を呼ばれ、私はミュートを解除して口を開く。

 

「たまー、ジュース取ってー」

「うん?」

「はい、どーぞ」

「あんがと。ごくごく」

「こんたま~、夏風たまでーす」

「あ、どーも。秋宮ゆららです。今日はオフでーす」

「くっそ緩いなぁ!?」

「オフとかズルいぞ!」

 

生活感を出すなw

オフはずるいだろ…

ずるいぞは草

もうこれ勝ちじゃん

盤外戦術やめろw

 

 あうろら先輩の負け犬の遠吠えが響く。

 放送で言った通り、今日は私の家にたまが来てオフでコラボに参加している。

 百合営業対決で幼馴染に勝てるわけないんだよなあ……

 

「勝った方が正義なので。ズルくないですみゃ」

「まだ負けてないが!?」

「でも、ぶっちゃけあうとりぃのコンビってあうろら先輩がべる先輩を好きすぎるだけじゃ……」

「あー! 言っちゃいけない事言ったぁ! そっちなんて最初から営業じゃないか!」

「営業は営業でもわたしのゆらちゃんへの愛情は本物なのです!」

「わー、バチバチだあ……」

 

 べる先輩が呆れた声を出す。おそらく遠い目をしているのだと思う。

 

「はいはい、もうこのまま放送が終わりそうだからたまゆらコンビはそのくらいでやめとこうね」

「はーい」

「よし。それじゃあ自己紹介も終わった所で今日の企画の説明をしていきます。本日はあうとりぃとたまゆらのどちらがお互いのパートナーの事を理解しているベストカップルかを決めていただきます! ……いや、ほんとなんなの、この企画? どっちも別にカップルじゃないでしょ」

「カップルって言い続ければカップルになるんだよ」

「ならないよ」

「なんでべるたそそんなに冷たいのー……」

「営業ですけど頑張りますです~」

 

カップル……?

決めなくてよくない?

百合営業は実質カップル

ゆのちゃん困惑で草

営業とはいったい、ンゴゴ……

 

 そっけなくべる先輩にフラれるあうろら先輩を放置して、ゆのみ先輩がコーナーの説明をしていく。

 まずは、お互いのパートナーに関する質問に対して回答するクイズ対決らしい。解答が必要な問題に関しては事前に解答を司会のゆのみ先輩に提出済みだ。

 

「第1問目の回答者はべるちゃんとゆららちゃんです。問題は、お互いのパートナーの誕生日。カップルを自称するならこれくらいは解答しないと駄目だよね」

「えっ、ボク、あうろらの誕生日とか知らんけど……」

「おーい!」

 

7月24日、7月11日

べるたそ相変わらずの塩対応

ダメみたいですね……

 

 ここで言う誕生日とはもちろん現実のではなく、Vtuberとして設定された誕生日だ。

 ちなみに私の誕生日は9月10日。誕生日記念配信とかやるのは面倒くさかったので、デビュー前に過ぎ去ってくれていたのはありがたかった。

 それはともかく、たま……チカの現実での誕生日は7月12日で、たまとしてはその一日前で誕生日を設定したと言っていたから……

 

「それでは解答を見ていきましょう。べるちゃん、6月20日、不正解! ゆららちゃん、7月11日、正解!」

「いえー。まあ、付き合いは長いんでね。当然ですみゃ」

「ゆららちゃんお見事です。やっぱり今年の誕生日もたまちゃんの事を祝ってあげたりしたんですか?」

「うん。ケーキ焼いたよ」

「普段料理しないゆらちゃんが私のためだけに頑張ってくれたんだよね~」

「もうこれ勝てなくない?」

「あうろら、今のうちにギブアップした方がいいよ。あうとりぃにてぇてぇはないんだよ」

「てぇてぇあるもん!」

 

もうあうあうの負けでいいよ

てぇてぇ…

純度が高すぎてあうとりぃじゃ勝負にならない…

 

 あうとりぃ組が既に諦めムードに入る中、ゆのみ先輩が仕切り直す。

 

「もう早速勝負がつきそうな感じですが、配信時間的に途中棄権はないのでこのまま進めていきましょう! 第2問目はお互いのパートナーのチャームポイント! 回答者はあうろらちゃんとたまちゃんでお願いいたします。それではシンキングタイム、スタート!」

「うーん、チャームポイントかあ……ちっちゃな悪魔の翼が生えてる真っ白な背中、控えめなサイズのお胸、おっきなお尻、柔らかい太股……うーむ、甲乙つけがたいですなあ」

「セクハラやめてくださーい」

 

 あうろら先輩のそれは自分が触りたい箇所の間違いなのではないだろうか?

 心底冷めたべる先輩の言葉を聞いてそう思った。

 

「うん、書けた」

「迷ってないね。そんなんで当てれるの、たま?」

「大丈夫!」

「自信満々ですね~。あうろらちゃんからの解答もきましたので答え合わせしていきましょう。まずはたまちゃんの解答はこちらです」

 

 そうして画面上に映し出されたのは「全部!」という頭の悪そうな解答だった。

 

「えー、チャームポイントの意味を辞書で調べた方がいいと思うのですが、こちらの解答……なんと正解です」

「いえー!」

「いえーじゃないが。え、なんでわかったの? こわ……」

「ゆらちゃんは全部かわいいよ」

 

 隣にいるたまがジッと私を見つめてくる。私の事好きすぎない?(呆れ)

 仕込みとかじゃないのに私の思考回路を読んで当ててくるのは流石としか言いようがないね。

 

「あっ、ハイ。そうですね」

 

あきみゃ引いてて草

そうですねじゃないが

こわいぃ…

あきみゃ過激派オタクこわ…

 

 私はそんな返事をするしかなかった。

 あうろら先輩はこの後、おっきなお尻と解答して不正解をもらっていた。たまもこういうのを見習った方がいいと思う。

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

670:名無しのV ID:aaljN5rg/

ベストカップル決定戦よかったね…てぇてぇ分を取得できた

 

672:名無しのV ID:8k5n4XkV8

あうとりぃにカップル要素なさすぎて草だった

 

674:名無しのV ID:urt0ggoOM

あきみゃも言ってたけどあうあうがべるたそを好きすぎるだけ定期

でも、あうあうに引っ付かれて鬱陶しそうにしながらも内心の嬉しさを隠しきれてないべるたそはてぇてぇなんだよな…

 

675:名無しのV ID:F8StCleg+

たまちゃんの名誉厄介あきみゃオタクっぷりが存分に発揮されてましたね…

 

678:名無しのV ID:or+UWeLlu

>>674

あうあうの妄想やめろw

 

679:名無しのV ID:Fbw1NsQYk

たまちゃんの解答、おおまかな目で見れば全問正解だったのほんと草

あきみゃの反応的に仕込みじゃないっぽいのがさらに草

 

682:名無しのV ID:f5Yiig9IA

>>679

あきみゃ「お前頭おかしいよ……(ドン引き)」

たま×ゆらの左側がたまちゃんの理由

 

685:名無しのV ID:ko6NwdSU6

たまゆらもたまちゃんがあきみゃの事好きすぎるだけの可能性が微レ存……?

 

689:名無しのV ID:FxZRRKSjQ

あきみゃ「誕生日にケーキ焼いてあげるね」

たまちゃん「好きな人の事なら全部知りたくなるのは当たり前だよ?」

あきみゃはかわいいなあ…()

 

692:名無しのV ID:f1yzNyNiJ

>>689

温度差で風邪を引きそう

 

696:名無しのV ID:0WxwIuNIt

>>685

あきみゃはそこそこ解答外してたからねw 特にこれ好き

Q.パートナー(たまちゃん)が自分に対して感じた第一印象は?

あきみゃ「やだ、超絶プリチー…ワイの運命の人♡」

たまちゃん「変な人」

あきみゃ「えぇ……」

 

698:名無しのV ID:G6sPYdIbf

あうあう「ベストカップルの座はたまゆらに取られたけれどあたし達も見習っててぇてぇしていこうね…」

べるたそ「やだけど…そもそもボク達カップルじゃないし」

あうあう「あうとりぃ解散だよ……!(涙声)」

いや草

 

700:名無しのV ID:q7gZ+3SCh

>>696

完全に出会いが「ふーん、おもしれー女」枠なの草生えるんだよな

 

704:名無しのV ID:93rCEVG9f

>>698

後日お泊りデート(意味深)する事になったからセーフセーフ

 

708:名無しのV ID:XIuz0pZ/K

>>704

あうとりぃお泊りデートとかべるたその貞操がピンチなんだよなあ…

 

 

 

 




マシュマロ
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あうとりぃのコラボ名「あうろりぃ」にしようと思ってやめました。ぼくかしこい


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32.新衣装

ちょっと短いです


 先日チャンネル登録者数10万人を突破していたらしい。

 Vtuber的には他社の企業勢でも登録者5万、10万となると新衣装や3Dモデルの制作など今後のキャラクター展開にも関わってくる重要な節目だ。

 

秋宮ゆらら@Akimiya_Link

チャンネル登録者数が10万人を突破していたみゃ~

おまえらサンクスちゅっちゅ

これからもどうぞよろしくにゃ

 

 

秋宮ゆらら

 

101,264

 

 

夏風たま@Natsukaze_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

おめ~!

霧ノ江アザミ@Kirinoe_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

あきみゃ10万人おめでとう~!

BIG LOVE___

冬城ことは@Huyuki_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

あきみやおめでとー!

あきみやがビッグになっておれ嬉しいよ…!

エレノア・レッドハート@Eleanor_Link

返信先:@Akimiya_Linkさん

クッソ微妙な数字でスクショ取ってて草

秋宮おめでとー!

 

 ついついッターの報告にはリスナーからだけでなく、同期と先輩方全員からのリプも来ている。

 活動期間が短いので感慨深いという思いはまったくないし、まだ10万人を突破していない先輩もいるにも関わらず、私みたいなぽっと出が大した苦労もなく節目の数字を達成してしまった事と、その上でまだサシでコラボもしていないのにこうやって温かくお祝いの言葉をいただいてしまった事に正直申し訳ない気持ちがある。

 とはいえ、今の状況は私が最初に望んでいたものである事も確かだ。こんな感情を表に出すのは失礼だというのは重々承知の上だが、そもそもこんな感情を抱く事自体が間違いであるのだろう。

 いつも通り生意気なクソガキロールで感謝のリプを返していく中で、今後の事を考える。

 つい先日。たまもチャンネル登録者数10万人を突破した。

 単純に数字だけで評価するつもりはないが、短期間で先輩方に匹敵する程の爆発的な人気を得ていると言っていいだろう。私のいた事による効果がどの程度あったのかはわからないが、とにかく成果はでている。このまま活動を続けていければ第一線で活躍するVtuberとして認知される日も近いだろう。

 ……まあ、箱内トップの登録者数はぽぷら先輩の36万人だし、Vtuber全体のトップ層は50万とか100万とか途方もない数字だから、山崎マネがそのあたりを目標にしているならまだまだなんだけどね。

 

「さて、と」

 

 リプを返し終えた所で、私はある人にディスコ通話をかける。

 @Linkでも他社の企業勢Vtuber同様、登録者数の増加に伴うキャラクター展開がおおやけにはしていないが存在する。

 Vtuberとしての活動の幅を広げるきっかけになる3Dモデルの制作については登録者数に関係なく裏で進行されているらしい。その代わりというのもなんだが、チャンネル登録者数が5万人に到達すると会社の方で新衣装を用意してくれるというのだ。

 ここでいう『新衣装』は配信に出している2Dキャラクターの着ている服を新調する事を指す。ようするに配信で使える新しい立ち絵がもらえるという事だ。自分で担当絵師さんやLive2Dモデラーさんに依頼するとなると、それなりの金額が必要になるのですごく太っ腹な話でもある。

 

『あ、聞こえてますか? 初めまして~』

「初めまして、うにたら子先生。いつも配信に反応してくれたり、コメントくれてありがとうございます」

『わっ、裏だと落ち着いた感じの声なの本当だったんだ~……なんか違和感がすごい』

「みんなそれ言いますね……」

 

 そんな訳で、電話の相手は『秋宮ゆらら』の立ち絵イラストを担当したイラストレーター、Vtuber的には私の『ママ』のうにたら子先生だった。

 5万人到達のご褒美ではあるが、私たち3期生のチャンネル登録者数の伸びが今までの比ではなかったため、運営の側もてんやわんやと混乱していたのだという。そのため、こうして新衣装の打ち合わせをするのも今になるまで延びたといういきさつがあった。この分だと、私たちの後輩である4期生がデビューする時にはこのご褒美の新衣装は10万人到達が条件に変わるかもしれないね。

 それはともかくとして。うにたら子先生とはついついッターやディスコのチャットで何度かやり取りしていたけれど、通話で直接話すのは初めてだ。女性だという事は知っていたが、思っていたよりもほわほわとした感じの優しい声の人だ。Vtuberやれそう。

 

『それにしても、あきみゃちゃんと新衣装の相談するって、数か月前を思い出すなあ~』

「……? 話すの初めてですよね?」

『あ、話したのはたまちゃんだよ。たまちゃんの要望で、提出したデフォの立ち絵デザインをたまちゃんと一緒に通話とかラフ描きまくって一から作り直したんだよね。いやあ、あの時のデスマーチは本当大変だったなあ……』

 

 なにやってんの、チカ?(真顔)

 「衣装案のラフはたまちゃんがいっぱい出してくれたから一人でやるよりは楽だったし、あきみゃちゃんが動いて喋ってる所を見ると頑張って良かったな~って思えたけどね」と笑いながら言ううにたら子先生に私は何も言えなかった。ウチのチカが振り回してしまい本当に申し訳ない……

 というより、そんな事やってたから私へのスカウトがあんなデビュー直前だったのか。私が断ったならどうするつもりだったんだよほんと……運営やマネさんはこんな無茶苦茶やって、もしかしてチカに人質をとられているのだろうか?

 

『それで、今回の新衣装はどうします?』

「あ、私からは特に要望ないです」

『えぇ!? かわいいの、とかカッコいいのとかそういうふわっとした方向性とかもないの?』

「はい、特にこうしたいとかないです」

『は、はあ……なんというか、たまちゃんと正反対だね』

「それは……そうですね」

 

 服は自分で選んだ事ないしなあ。自分で買った服も修学旅行の時に買った『働かないで食う飯は美味い』と胸とお腹部分にでかでかと書かれた安いシャツくらいだし。

 その分、チカは私を着飾る事に対して自分の事のように真剣だし、私以上に私の着飾り方を確実に理解している。私的には似合わないだろうなと思うような服も平気で着せてくるし。

 

「そこで、相談があるのですが。今回もたまに要望を聞いてもらってもいいですか? まさかデフォルト衣装でもたまが関わっているとは思ってなかったですけど」

『それだったら大歓迎ですよ~! いや~、てぇてぇだあ……』

 

 快く私の要求に頷いていただいたうにたら子先生。

 

「あと、こっちは本当に無理だったらNG出していただいていいんですけれど」

 

 たまが散々振り回して迷惑をかけた後でこんな提案をするのは、本当に迷惑だろうなあと思いつつ。それでも面白くなるだろうという思いから私はそう前置きしつつ、もう1つの提案を口にした。

 

「うにたら子先生、配信出演は可能ですか?」

『え゛?』

 

 私の言葉を聞いて、本当に驚いたのか濁点交じりの声が返ってきた。

 

 




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33.【#あらやしき組】同期みんなで冬担当女のクリスマスボイス作るぞ【秋宮ゆらら/@Link】

 

「あ、配信始まった。どーもー、@Link3期生あらやしき組でーす」

「2回目にして既にゆるゆるじゃん」

 

こんみゃー

止まるんじゃねえぞ…

おはあらやしき~

¥5,000

あらやしき組たすかる代

口上どこ?

 

 配信開始と共に適当に挨拶すると、さく姐がツッコむ。

 「毎回口上言うの面倒くさくない?」という本音はさておき、軽く自己紹介を済ませて早速本題に入る。

 

「ところで……冬担当の癖に冬支度ボイス出さなかった奴がいるってマジ?」

「そんな人いないよねー」

「いないでしょー」

スマセン……ほんとスマセン……

 

おこたボイス出せ

失望しました。ゆらちゃんのファンやめます

平謝りw

冬担当の自覚がない

 

「というわけで、あらやしき組コラボ第2回の内容はリスナーの切実な要望にお応えして……あらやしき組のみんなで冬城のクリスマスボイス作り~」

 

¥1,000

ボイスたすかる

うおおおおおおお

あきみゃ神

ボイスたすかるううううう

 

「今日は公式から発売予定のクリスマスボイスの納品を既に終えているさく姐、たま、そして私の3人でクリスマスボイスのシチュエーションや台本を作成して、冬城にはサンプルボイスとしてこの場で一部実演してもらいます」

「めっちゃ恥ずいやつだ」

「こうでもしないとボイス出さないことちゃんが悪いんだよ」

「しょうがないじゃん、クリスマスなんて親にしか祝ってもらった事ないもん」

 

あっ…

あっ

かなしいね

あっ…(察し)

しってた

 

 冬城のその言葉に一瞬、無言の間が流れる。

 

「ごめんね……」

 

 申し訳なさそうに謝ってるけど、たまの立場からやっても煽りでしかないと思うよ。

 

「はいはい。冬城の悲しい経歴はさておいて」

「さておくなよぅ……」

「リスナーのお前らもみんなで楽しいクリスマスを味わえるように、リクエストとかやってほしい事とかあればどんどんコメントしてくれよー」

 

まかせろ

おこたちゃんにはマイクロビキニサンタが似合うと思うの

¥10,000

家で僕の帰りを待つおこたちゃん。玄関で僕を出迎えた彼女は僕の手に持つケーキの箱を見て嬉しそうに綻んだ笑顔を見せる。「わぁ~、ケーキだー! あてぃし、チョコのやつがいい!」「…あ、お、おかえり。えへへ」「食い意地張ってるわけじゃないもん! …ほんとだよ?」「今日もお仕事お疲れ様。メリークリスマス!」彼女との長い夜はまだ始まったばかりだ…

聖夜(意味深)したい

妄想も大概にしろよ赤スパ

 

「あーあー、コメント欄が滅茶苦茶だよ……」

 

 さく姐が呆れてる。面白いね。

 

「みゃ、収拾がつかないからとりあえずわたしたちの考えてきた案発表していこ」

「そうしますかー。まずは言い出しっぺのさく姐からね」

「げ、いらない事言っちゃったか。まあいいけど。それじゃあわたしの考えてきたシチュエーション出して」

「あーい」

 

 返事をし、事前に受け取っていたパワポで作成されたプレゼン資料を画面に出す。

 さく姐が提案したクリスマスボイスのテーマはクリスマスに冬城とクリスマスデートをするというもの。

 街路樹のイルミネーションを見て歩くといったトラック毎のシチュエーションと第1トラックの仮台本を紹介した後に私とたまは声を合わせてこう言った。

 

「「なんか普通」」

「普通で悪かったわねえ!」

「さく姐がやるならわかるけど、ことちゃんはクリスマスに外出しないと思う」

「ひん、事実陳列罪……」

「冬城にそんな普通の女みたいな事できないでしょ」

「死ぬ程煽られてる……でも確かにそうかも」

「さく姐!?」

 

ボロクソ言われてて草

それはそう

たまちゃんすら辛辣で草

おこたにお洒落なデートは無理だよ…

さく姐も諦めてて草

 

「さく姐のはボツで。次はたまの案出すね」

「おっけー!」

「はい、それじゃあたまのテーマはこちら。『リスナーくんが買ってきたサンタ衣装を着せられることちゃん』」

 

 画面にたまから送られてきた資料を出す。

 表紙にはおへそが出ているミニスカサンタ衣装を着て顔を真っ赤にしている冬城のイラストが貼り付けられていた。

 

「やっぱりクリスマスと言えばサンタ! という事でサンタ衣装のことちゃんを描かせていただいたのです」

「えっ、これたまちゃんが描いたの!? うっま!」

 

エッチコンロ点火!エチチチチチ!ボンッ!

マ!?

えっっっっ!!!!!!!!

ミニスカサンタおこたたすかった

神絵師おるて

 

「でもちょっとエッチすぎない? アタシこんなの着ないし需要ないよう……」

「わかってないなあ、ことちゃんは。普段、和装で重装甲なことちゃんがリスナーに押し切られて防御力の低い服を着せられるというシチュエーションだけで需要ありありなのだよ」

「うえぇ……?」

「というか、男も女も美少女のミニスカサンタは大好きですのだ!」

 

そうだぞ

かわいいぞおこた

たま先生…!

おめめぐるぐるなのかわいい

たまちゃん先生はいい仕事するなあ…

 

「たまもどんどんオタク(こっち)側に染まってきてるなあ。おまえらのせいだぞ、秋宮は悲しいです」

 

 熱心に良さを説いてるたまを見て、私はリスナーに向けてそう呟く。

 

「いや、みゃのせいでもあるでしょ。いっつも外出する時、たまちゃんの着せ替え人形になってるの知ってるんだからね」

「それはそれ、これはこれ」

 

 少なくとも私に着せる服はこんなにオタク趣味にアジャストしてなかったし。

 ……いや、一年前くらいに着せられたスク水とブカブカのシャツの組み合わせ(室内)と何処から買ってきたのかわからないメイド風ビキニはよく考えるとオタク寄りだな。そう考えると結構前から汚染されていたのかもしれない。くそう、守れなかった……

 

「にしても、全体的に完成度高いわね。強気に押されて言われるがまま色々しちゃうところは解釈度高いと思うわ」

 

 たまの発表を聞いた後に、さく姐が感心しながらそう呟く。

 

「へっ、イラストで点数稼ぐなんて汚いマネするような奴には負けないみゃ」

「なんで急にかませみたいな事言い出すの?」

「みんな肝心な事を忘れてるんだよなあ。私たちは配信者、クリスマスに配信しないなんて舐めた事をする奴は敗北者と言っても過言」

「あっ、過言なんだ」

「……だがしかし、それで彼氏役を放置するのも愚の骨頂。というわけで私からの提案はこちらみゃ」

 

 画面を切り替える。

 

「『クリスマスをみんなで祝う配信をしながら、裏で彼氏とイチャイチャするシチュエーション』」

「いや燃えるがな」

 

 私の案はさく姐に一刀両断された。おかしいなあ……

 

 

 

@Linkについて語るスレ ○○スレ目

 

347:名無しのV ID:CAdzxUFM4

おつあらやしき~

ほとんどたま先生のお陰でおこたのクリスマスボイスが聞けそうでなにより

 

351:名無しのV ID:LQWxkzd7/

おつあらやしき~

ついついッターでたま先生の神絵配布たすかる

 

354:名無しのV ID:IppBbvBmh

>>351

たまちゃん先生も大概多才だなあ

歌って絵が描けてボイス台本も書ける、とても今までオタク趣味に触れてこなかったとは思えない…

 

358:名無しのV ID:aJzDHFWOc

>>351

ワイイラストレーター、廃業を決意

 

360:名無しのV ID:0r/c14oJY

あきみゃがボケに走ってたからな

クリスマスに配信しないは他のVに刺さるからやめてさしあげろ

 

365:名無しのV ID:JoiEDwyaR

>>358

絶望しないで頑張ってVのファンアートを書き続けてクレメンス…

 

369:名無しのV ID:ndeQiGTVb

>>360

過言だから…(震え声)

まあワイはクリスマスぐらいは中の人もリアルを楽しんでほしい派だけど

 

371:名無しのV ID:GFx4PfBNp

>>360

たまちゃん先生の原案をさく姐が補助しながらあきみゃが茶々を入れる…

うん、完璧だな!

 

372:名無しのV ID:VGVusBHhh

>>360

結果的にいい感じになったからセーフ

おこたが消え入りそうな声で「こんな、え、エッチな服…ばかぁ……!」って言うのめっちゃ可愛かった…

 

375:名無しのV ID:W1N0wfnph

>>372

演技指導のさく姐がいい仕事してたな

「今日だけ、なんだからね…」が最高

 

376:名無しのV ID:fJYLvSIT/

>>371

あきみゃもおこたのために参考用の仮版ボイス演じてただろ!

…あんな恥ずかしがるあきみゃ滅多に見れないから新鮮だった

 

378:名無しのV ID:JAWMD1J05

あらやしき組はこのわちゃわちゃ感とそれはそれとしてみんな仲いいのが最高なんだよなあ…

 

383:名無しのV ID:XY7dthaXZ

>>369

リスナーとしてはクリスマスにはなにかやってほしい派だけどなあ

なにもやらないとコーン*1もうるせえし

 

384:名無しのV ID:AJYAjnQck

>>378

おこたもデビュー当時と比べたらだいぶ喋れるようになってきたなあ…

べるちゃんの成長を思い出して涙が出そう

 

387:名無しのV ID:L4ygKHqG3

クリスマスボイス早く発売されてほしいわ

 

 

 

 

*1
オタク用語。ユニコーンの略。主にアイドルに対して「誰とも付き合ってほしくない」という理想像を押し付け、男の陰が見える行為を嫌悪するファン層。節度をもって推し事しようね




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34.雑談ネタ作り

 

「ちょっと遅れちゃったなー」

 

 本来乗るはずだった電車に乗り遅れたせいで待ち合わせ時間ギリギリになってしまった。

 私は早足で駅前の待ち合わせ場所に急ぐ。

 今日は雑談ネタ作りのため、さく姐とデートだ。雑談配信とゲーム配信はVtuberのメインコンテンツだが、過去の名作も含めて許諾さえ取れればネタに困る事のないゲーム配信と違って、雑談のネタには限りがある。

 話のネタになる面白い経験なんてそうそうないからこそ聞いていて面白いのだ。

 私は「これ漫画やドラマで見た事あるやつだ!」って感じで色んな事に首を突っ込んできたから、色々な経験はあるけれど、そのせいで現実的にもキャラ的にもコンプラ的にも話しづらい事が多いし大変だ。学内賭博の撲滅とか家出少女の捜索の末に山に登って一緒に星を見た話とか言っても嘘扱い確定だよ。

 そういうわけで、雑談ネタという名のトークデッキは常に更新し続ける必要がある。ペットの話やVtuberの同僚と遊びに行った話は先輩達の配信を見ていても頻出するので、リスナー的にも需要があるのだろう。

 チカは平日に学校があるし、冬城は外出に対するフットワークが重いので、(定職に就いていなくて暇人の)さく姐を誘って映画を見に行く事になったんだけど……

 

「お、さく姐発見……なんか話してるな」

 

 待ち合わせ場所にいたさく姐はこちらからは顔が見えないが、目の前にいる男性となにかを話しているようだった。知り合いかな?

 たまたま見つけて声をかけただけだろうし話し終わるまで声をかけるのは待とうかなと思いながら、私は彼女に近づいていく。

 

「……いや~、久しぶりだけどすごい可愛くなってんじゃん」

「はいはい、お世辞はいいから。わたし今待ち合わせ中なの。さっさとどっか行って」

「なに、もう新しい男作ったの? 昔はその辺適当だったのになあ」

「うっさい。もう関係ないでしょ」

 

 あ、これ面倒くさいトラブルの方か。

 さく姐が適当にあしらっているのが聞こえてきたので、私は助け舟を出すべく彼女に声をかける。

 

「あーや~! 遅れてごっめーん! 寝坊しちゃった!」

「えっ、み、えっ……?」

 

 流石に知り合いがいる前でライバー名で呼ぶのはマズいと思い、さく姐の本名から今考えたあだ名を呼んで、ついでに身バレを控えるために活発なキャラを演じて腕を絡めると、さく姐はわかりやすく困惑した。

 私は彼女に小声で囁く。

 

「ほら、ライバー名はマズいでしょ」

「あ、ああ、そっか」

 

 さく姐は納得いったのかどうか曖昧な様子だが頷いてみせる。

 

「で、だれアレ? ナンパ?」

「……元カレ。貸した金も返さずに1年前に音信不通になったきりだったのに、なんで今更出会っちゃうかなあ、もう最悪」

「うわ、ダメ男じゃん」

 

 男を改めて見る。全体的にチャラチャラとした恰好に肩に担いだギターケース、その上でさく姐の話をあわせてみると、彼は典型的な売れないバンドマンというやつだろう。

 声優を目指しながらも芽が出ずにバイトで食い凌ぐ生活をしていた上で、こんなダメな男に引っかかっていた過去まで知っちゃうとは。さく姐が不憫でしかたないよ……

 そんな事を思っていると、目が合った男が喜色を浮かべて私に話しかけてきた。

 

「うわ、すっげーかわいい。なんだよ、綾乃。お前こんな可愛い子と友達だったんならもっと前に俺に紹介してくれよー。ね、きみ、名前は? どこ住み? ラインやってる?」

「あんたねえ……! ほら、無視して行くよ」

 

 さく姐が腕を引いてくるが、このまま放置していてずっと付きまとわれるのも面倒だし、ここで対処しておいた方がいいだろう。

 

「私のあーやにこれ以上付きまとわないでくれません?」

 

 さく姐が「何言ってんのお前!?」と言いそうなくらいにギョッとした顔で私を見る。おもろ。

 売れないバンドマン(仮)の彼が困惑した顔でさく姐を見た。

 

「え、なに。お前そっち系だったの?」

「そ……」

「そうですよー。私とあーやは真実の愛で繋がれた最愛のパートナーなの。わかったらさっさとどこかに行ってくれません、元カレさん?」

 

 さく姐の言葉を遮り、男の言葉を肯定する。

 

「んー……よくわかんねーけど、男がいた方がよくない? ほら一緒に楽しもうぜ」

 

 男が私とさく姐の間に入り、肩を組んでこようとする。

 その伸ばされた手をひらりと躱し、捻り上げる。

 

「痛っ、いでででで! 握力つっよ!?」

「触らないでもらえます?」

 

 さっきまでの明るい声と打って変わって低い声で男に告げる。

 

「百合に挟まる男は投げ飛ばしてもいいって言うのが私の信条ですけど、そうなっちゃうとギターが貴方の下敷きになって壊れちゃいますね。もったいない」

「あだだだ!! ギブ! ギブ!」

「まあ、私のあーやから奪い取ったお金で買ったものだろうし、別にいっか。それじゃあ……」

「待った! 悪かった! 悪かったって!」

 

 グッと力を入れて引き寄せようとすると、謝罪の言葉が出てきたので手を離す。

 

「騙された! こんなゴリラに付き合ってられるか!」

 

 手を押さえしばらくの間呻いていた男は、息を整えた後に捨て台詞を吐いて駅の方へ去っていった。

 引きこもり生活で劣化した私に対して背中を見せて逃げるとは……ふっ、雑魚が。さく姐には相応しくないな。

 

「やったぜ」

「あ・ん・たねぇ~!! 変な誤解されちゃったでしょうが!」

 

 ふんすとドヤ顔でさく姐を見ると、そう怒られてしまった。解せない。

 

 

「まったくもう……」

 

 少し目立ってしまっていたので駅前を離れ、映画館近くのカフェに入ると疲れた様子でさく姐がそう呟いた。

 

「いやあ、貴重な体験だったね、さく姐。配信のネタにも使えるよ」

「みゃさあ。あんたはともかく私まで変な属性つけないでよ……」

「女の子同士の愛ってのもいいものだと思うよ、あーや♡」

「やめなさい」

 

 さく姐が大きな溜息をつく。

 

「さっきの元カレ、さく姐の家知ってるの? もし付き合ってた時と変えてないなら引越した方がいいよ。身バレ的にも後々また金銭的に迷惑かけられないためにもね」

「そうするわ……はあ、4年住んできた格安アパートも卒業かあ。思っていたよりお給金はもらえているから問題ないけれど、こんな形で引っ越す事になるとは。急いでも1週間くらいかかるだろうし、その間配信どうしよう……」

「配信なら私の家使っていいよ。なんならしばらく泊まってく? はるゆららウィークとか言って同居生活配信してもいいかもね」

「あー……考えとくわ」

 

 申し訳なさがあるのか遠慮気味だが、身バレ云々で迷惑を受けるのはさく姐だけじゃないし、そもそもこんな面倒な事になったのは私にも責任がある。

 さく姐があのダメ男ときっぱりと縁を切るためには助力は惜しまないつもりだ。

 

「にしても、大変だね。さく姐も」

「ほんとよ。わたしって男運ないのかしらね……高校の時のサッカー部の彼氏はマネージャーに浮気するし、上京してできた彼氏のあの男はフリーターとか言いつつ、デートではわたしにたかってくるわ金は持ち逃げするわで……ダメだ、思い返すと泣けてきた」

「おー、よしよし。きっといつかいい相手が見つかるよ」

 

 当たり障りのない言葉でさく姐を慰める。

 今は配信者なんだから、身バレ云々も考慮してちゃんとした相手を見つけてほしいけれど……この有様だとまたダメな男に引っかかりそうだなあ。心配だ。

 ……そうだ。

 

「……? どうしたの、みゃ? 恥ずかしいって……」

 

 さく姐の頬を両手で挟んで、じっと見つめながら私は口を開く。

 

「どうせ、ダメな人に引っかかるのなら、私に引っかかってみない? 男運は悪くても女運はいいかもよ?」

「なっ!? ば、バカっ! バーカ!」

 

 顔を真っ赤にさせて私を振り払うさく姐。

 彼女はさっきまで私が触れていた頬を自分の手で覆う。

 

「あー……顔あっつ。もう……もう! そういうのはわたしじゃなくてたまちゃんとかことちゃんにやりなさいよ!」

「なんで? 私、好きな人になら誰にでもやるよ?」

「っ……! な、なおさら悪いわ!」

 

 さく姐の鋭いツッコミが私の頭に炸裂した。いたい。

 

 

 後日談として。

 

「そういえば、この前さく姐と映画デートに行ったんだよねー。そしたら男の人にナンパされちゃってさあ。この時ばかりは可愛すぎてスマンって思ったね」

 

それいっつも思ってる事じゃん

映画デートの詳細をくわしく

まーた同期タラしこんでる…

そのナンパ野郎はどうしたの?

百合に挟まる男は…すぞ

 

「その後どうしたかって? 『私たち付き合ってるんで~、この後、ホテルに行くんでお呼びじゃないです』って言ったらなんか応援された」

 

エッ!!!!

ヤったな

百合に挟まらない男だったからヨシ!

自宅に連れ込んだ次はホテルに連れ込むとか…こーれ、完全にヤってます

[春原さくや]そういうんじゃないから!

 

「あっ、さく姐いるじゃん。この前は激しかったね」

 

 当日の事は脚色を入れて配信のネタとして消費された。

 この後、冬城からのチャットがうるさかったけれど、リスナーの反応は良かったのでオッケーです。

 

 




マシュマロ
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木月(きづき)綾乃(あやの):さく姐のリアルでの本名。多分この先ほとんど使わない。


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35.【コラボ雑談】うにママと初おしゃべりやるぞやるぞ【秋宮ゆらら/@Link】

ネタバレになるから何も言わないけど。

ババーン(埋まってる作者)


 

「はーい、お前ら、こんみゃー。今日はおねだりして配信に出てもらう事になったうにママとの親子雑談だよー。ほら、うにママ。ミュート解除して」

「は、はーい……これでできてる? みなさん、どーもぅ」

 

 チャット越しにうにたら子先生、もというにママに声をかけると、少し緊張した様子の声が返ってきた。

 

¥10,000

親子コラボたすかる代

うにママ声かわいいな

うにたら子先生、女だったのね

かわいい

 

「というわけで、今日のゲストは私をこの世界に産み落としたイラストレーターのうにたら子先生です。めっちゃかわいい声だよね、私も初めて通話した時びっくりした」

「あきみゃ~、もうそんな煽てるなよう~」

 

おまかわ

どっちもかわいい

かわいいね

 

「あ、そうだ。うにママをバーチャル世界に呼ぶために、たまにアバターを用意してもらったよ」

「えっ、なにそれ聞いてない」

「言ってないからね~。うにママも配信画面見てみて~」

 

 配信ソフトを操作して、事前にたまに描いてもらったイラストを配信画面の秋宮ゆららの立ち絵の横に出す。

 白と水色の明るい色の組み合わせの長袖ミニスカートマリンセーラーに身を包む金髪ツーサイドアップの少女がウインクをしながら敬礼のポーズを取っている一枚絵だ。

 流石に私たちの立ち絵のようにLive2Dで動かせるようにするのは難しいので、立ち絵ではなく一枚絵という形でたまに依頼したら1日でこれが提出された。

 前の冬城のイラストの時もそうだけど、完全に今どきのイラストの画風と塗りをマスターしてるんだよな。どこで学んだんだ、いったい……?

 

たま先生の新作だ!

絵うっまいなあ…

神絵師だあ…

たま先生いつもありがとう

たまちゃんからうにママが産まれて、うにママからあきみゃが産まれて、あきみゃがたまちゃんを孕ませる…無限ループってコト!?

 

「……うわ、ちょーかわいい! ……もう、たまちゃん私の代わりにイラストレーターやらない?」

「じゃあうにママが代わりにVtuberやらないとだね」

「私、ただのイラストレーターなんだが? 1人で配信するとか絶対虚無るが?」

「絶対うにママはV向いてるって。一緒にオタクにちやほやされよ?」

「うえ~? そうかなあ~?」

 

ちやほやするぞ

Vになれ、うにたら子

ちょっと乗り気じゃんw

オタクをなめすぎで草

おかわいい事

 

 疑問形ながらも、まんざらでもない喜色を含んだ声色でうにママが反応する。

 実際、人気でそうだけどなあ……私も人気イラストレーター様の人気にあやかりたいぜ、ぐへへ。

 

「いやあ、それにしてもデザインいいなあ……海の衣装って言えばやっぱりマリンセーラーは王道だけど、腕はガード固くして脚は惜しみなくさらけ出すアンバランスさはなんかこう、エッチだね……髪留めの赤い球のアクセサリーはたらこモチーフ、にしては粒少ないし色濃いね?」

「ああ、それはいくら」

「んぅ??」

 

矛盾塊じゃん

???

そんな当たり前みたいなトーンで言われても…

なんで?

 

 いや、困惑されても。たまに言ってよ。

 それはともかく。うにママのイラストを公開した後は、事前にリスナーから募集したマロを読んでいく。

 

 

親子コラボたすかる

うにママは娘が色んな女の子誑かしてるのどう思ってるの?

 

 

「──だって。似たようなマロをみんないっぱい送ってきてたけど、誑かすだなんて人聞きが悪いなあ。仲良くさせていただいてるだけだよ。私は悪くない」

 

仲良く(意味深)

周りが勝手にガチになってるだけだから…()

タチが悪いんだよなあ

 

「いーや、これはあきみゃが悪いね。たまちゃんにお世話されてる身でおこたとデートに行ったり、さく姐お持ち帰りしたり……手あたり次第に手を出すのはママとして感心しないです」

「あっ、さく姐は来週からしばらく私の家で同棲するよ」

「こらー!」

 

!?!?

さらっと重要な情報を出すなあ!

さく姐またお持ち帰られるのか…

2泊!?

これでてぇてぇ否定するのは無理があるでしょ

 

「まったくもう……めっ、だよ? 健全なお付き合い以外ママ許しませんからね」

「はーい。……ところでうにママっておいしそうな名前だね」

「ひーい!? 娘に食べられるー!?」

 

食べやすそうな名前が悪い。誘ってる

いいぞもっとやれ

親子丼はマズいですよ!

親を墜とそうとするな

 

 そんな本気で悲鳴あげなくてもいいのに。無理矢理襲い掛かるなんて事はしないよ、私。

 ……なんか、これだと同意があれば襲うみたいな感じで語弊があるな。

 

「まあ、うにママ食べ放題コースはまたの機会にして」

「そんな機会ありませんからね!?」

「次のマロはこちら」

 

 

あきみゃの衣装デザインが今のスタイルに決まった経緯が知りたいです

 

 

「というわけで。私はだいたいいっつもこの服着てるんだけど、デビューするにあたってお前らの前で見せる衣装の提案をうにママがしてくれてたんだよね」

 

説明口調で草

そういう建前だからな

 

「そんなボツ衣装のラフから今回は2枚、マネさんからオッケーもらったので紹介できることになったよ。そういえば私の衣装御仕立てはたまとやってたって話だったよね、うにママ」

「そうだよー。いやあ、たまちゃんの拘りが凄くて何度もボツになっちゃったんだよねえ」

「ウチの幼馴染がすみませんね……というわけで、私の初期案のイラストから、どうぞ」

 

 配信画面にイラストを出す。

 たまと同じ制服だが、あちらがミニスカートなのに対してこのイラストの秋宮ゆららはロングスカートだ。髪は腰ほどまで伸びていて、ブレザーにマフラーを組み合わせて口元が隠れていて物静かな印象を受ける。あと、明らかにロリではないくらいに身長がある。

 こう見てみると、髪色と目の色、そして猫耳ぐらいしか面影がないね……。

 

誰?

ぼく、こっちの綺麗なお姉さんがいい!

完全に別人で草

ロリじゃないやん!

たまちゃんとおそろなのいいね

 

「まあ、私クールなお姉さん属性だから、この方向性でもアリだったよね」

 

は?

勘違いだぞ

パッション枠がよ…

盛るな

???

 

「この初期案見たら、たまちゃんが『こんなのゆらちゃんじゃない』って解釈違い起こしちゃって……」

「まあ、解釈違いもクソも今とはだいぶ違うもんね」

「もっと身長減らせって言うのは第一として、制服なんて着させないでダークな雰囲気を感じさせるようにって方向性でたまちゃんと何個か衣装案を出していったんだよね。今回野良ともさんに見せるのはその内の1枚です」

「じゃあ、うにママお気に入りの衣装案出すね、はい」

 

 画面から先程のイラストを消して、新たにイラストを出す。

 名家のお嬢様風の黒のワンピースに身を包んだ大人しそうな少女といった印象だ。

 

「目に光がないの、うにママの趣味?」

「ロリを曇らせるの好きなんだ、へへ……」

 

特殊趣味がよ…

うにママのR18絵、レイプ目多すぎなんだよなあ…

裏で虐待されてそう

なにわろてんねん

こんなかわいい声して、エロ絵はえぐいの描いてるしな

 

「こわ……」

「あきみゃでエッチな絵は描かないから安心して!」

「でも半裸ぐらいにはされるんでしょ?」

「え? 入れられてなきゃエッチな絵じゃないでしょ」

「こわ~……」

 

 いったいなにを入れられるんでしょうねえ……(すっとぼけ)

 

「私のエッチ絵でフォロワー稼ぐつもりなんだ……うにママのへんたい」

「そんな可愛い声で罵倒される程悪い事してないもん! 描いても水着とかダボシャツまでのつもりだもん!」

 

十分エッチなんだよなあ…

変態リピート不可避

スクール水着求む

あきみゃ、うにママ神をイジメるな

¥5,000〜

あきみゃのバニー描いてうにママ……

 

 その内全裸にされるんだろうなと思いながら、私はうにママの必死な弁明を聞き流した。

 

 

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇〇スレ目

 

543:名無しのV ID:1Qngw+N2U

親子コラボおつみゃ~

最後に告知されたうにたまであきみゃ新衣装コンペ楽しみだなあ

 

546:名無しのV ID:gPOXiERBo

>>543

5万人記念の新衣装とかあったね

3期生が全員爆速で5万人突破してたから忘れてた

 

547:名無しのV ID:tSwb5VyFe

>>543

娘の彼女(?)と新衣装のコンペするってよく考えると謎なシチュエーションだな

あきみゃもあきみゃで「私に服の良し悪しがわかるとでも?」とか開き直っちゃうしさw

 

549:名無しのV ID:nXmlglff1

うにママ、初めて声聞いたけどめっちゃ可愛い声だよね

お前もVにならないか?

 

554:名無しのV ID:12z08TtK8

>>549

シコの領域に近い

あと、Vになればもっと気軽に親子コラボやってくれそう

 

558:名無しのV ID:AfIB/gP7N

>>549

イラストレーターだから立ち絵はタダで作れるし、今回たま先生が描いたイラストのデザインそのまま流用できるから楽だろうけど…

Live2Dちゃんとした所に依頼するとそれなりにお金かかるしなあ。それにワイらみたいな厄介リスナーにも目を付けられるしあんまり気軽にやってくれとは言えんよな

(やってくれるなら嬉しい)

 

562:名無しのV ID:wX7Mmijj7

それよりもさく姐同棲ってマジ?

 

567:名無しのV ID:CJKXZ+0K4

>>562

さく姐は否定してるぞ

 

                            

春原さくや@Sunohara_Link

引っ越しの間、しばらくみゃの家にお世話になるだけだから!

誤解だから!

#あきみゃー監視中

 

572:名無しのV ID:I6xo9dRPK

>>567

……結局それって同棲では?

もういい加減さく姐は素直になっていいんじゃないかな?

 

576:名無しのV ID:gTdQdJ8i2

>>567

そのついーと、おこたが見たらどう思うでしょうか?

 

                            

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Sunohara_Linkさん

(°_°)

 

581:名無しのV ID:0vqzTR6iB

>>576

感情を失ってる…

 

582:名無しのV ID:10ljR7SZc

>>576

なおその後

 

                            

春原さくや@Sunohara_Link

返信先:@Fuyuki_Linkさん

誤解です

 

                            

冬城ことは@Fuyuki_Link

返信先:@Sunohara_Linkさん

(;_;)

 

583:名無しのV ID:JjaxkdrBh

>>576

一方、たまちゃんは正妻の余裕を見せつけていた

 

                            

夏風たま@Natsukaze_Link

うにママと一緒にゆらちゃんの新衣装考えるの楽しみだな~!

いっぱい衣装案考えちゃお!

 

来週からさく姐がゆらちゃんちに泊まるからご飯も作り甲斐があるね!頑張るぞ~!

#あきみゃー監視中

 

586:名無しのV ID:pEQtv722x

>>582

あーあ、泣いちゃった

 

589:名無しのV ID:2LEz4u2N9

あきみゃ、罪作りな悪い女やでえ…

 

 

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。

投稿遅れてスマヌ…
今年中にあと12話更新したいけど、それって週2~3で更新しなきゃいけないんですよね。
ぼくのスプラやる時間どこ?


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36.さく姐とまったりASMR

ちょっと短かった


 

いらっしゃいませ、ご指名ありがとうございます

ひゅいっ! み、耳元やめて……」

「客を放置して2人でイチャイチャするなぁ!」

「マイクの近くでやれー!」

 

腐女子大歓喜

あうあうw

さく姐がホスト漬けにされちゃう…!

ゆら太×さく太…┌(^o^┐)┐

 

「ちょっと、恥ずかしいからあんまりアーカイブ見ないでよ」

 

 さく姐の太股に頭を預けながら、昨日参加したアザミ先輩とあうろら先輩をホストとしてもてなす企画のアーカイブを見ていると、そんな声と共にスマホを取り上げられてしまう。

 昨日から私の家にさく姐が泊まっていてこの企画も2人で一緒に出演したんだけど、男の子の声でちょっかいをかける度にさく姐がいい反応を返してくれるから面白かったんだよね。

 

「えー、かわいいのに」

「……そういう事、気軽に言わないの」

「本気なのにー、すりすり」

「くっ、体で支払えって言われてなければこんな事させないのに……!」

 

 そんな言葉を真に受ける方が悪いんだよー、と思いながらも口には出さないまま、腕を回してさく姐の太股に顔を擦りつける事数分。

 飽きたので顔を上げる。

 

「うわ、びっくりした」

「そうだ、さく姐に相談したい事があったんだった。ちょっと待ってて」

 

 そうして私が部屋の奥から持ってきたのはちょっと前に買ったバイノーラルマイク。

 

「これの使い方教えて。さく姐、ネット声優やってたんだし何回か使った事あるでしょ? 今週中にメン限で初ASMRやろうと思ってるから、事前にちょっと触っておきたいんだよね」

「バイノーラルマイクかあ。わたしも音声作品で何度か触っただけだからそんなに詳しくはないんだよね……ゆのみ先輩にお願いした方が良くない?」

 

 ASMRとなるとやっぱり名前が出てくるのはゆのみ先輩だろう。@Linkの面々で唯一ASMRをメインコンテンツにして半年以上活動しているわけだし。

 

「うーん……いや、やっぱりさく姐に教えてもらおっかな。初回はそんなにキッチリしたものをだすつもりじゃないし」

「そう? それならいいよ。なんだかんだ、みゃにわたしがなにかを教えれるのって、ちょっと嬉しいからね」

 

 ……? なんで嬉しいんだろう?

 まあ、いっか。

 

「ありがと。じゃあ、今から私にやってみてよ」

「え゛? いいけどさ……」

 

 さく姐は渋々と言った様子で、私が準備したバイノーラルマイクの前に座る。

 私は両耳にイヤホンを付けて、メモとペンを持ち準備万端だ。

 

「そんな真面目に聞かなくても」

「いーや、さく姐が私のためだけにやってくれるんだから一言一句聞き漏らさないよー」

「まーた、そんな事言って……とりあえずやっていこっか。みゃはVtuberのASMR配信は見た事ある?」

「うん。ゆのみ先輩のを何度か」

「そっか。Vtuberが出る前だとスライムとか咀嚼音の純粋に良い音を聞く方が主流だった感があるかな。例えばこんな風に……」

 

 さく姐がそう言いながら、さっきまで食べていたじゃがりこをバイノーラルマイクの近くで食べる。

 ザクリ、ザクリとスナック菓子を噛み砕く時特有の咀嚼音がイヤホンを通じて私の耳に入ってくる。

 

「あ、こんな感じなんだねー。コーラとか合いそう」

「まあ、耳元で炭酸水の音聞かせたりするのもあるからナシじゃないとは思うけど……とにかく。Vtuberもそういう普通のASMRもやる一方で、人気なのはシチュエーションボイスかな。どちらかと言うと文化がわたしもやってたような音声作品に近いんだよね」

「ふむふむ、シチュエーションボイス。ゆのみ先輩がやってたみたいなヤンデレ幼馴染とか独占欲が強い彼女みたいなやつだよね」

「そう、そんなの。そういうリスナーが好きそうなロールプレイとか、あと、囁き声も見た感じは反応良さそうだよね」

「さく姐、やってみてよ」

「ええー、じゃあ……他の女の子に浮気しちゃ、ダメだからね?

 

 怒られちゃった。浮ついた気持ちで接してないからセーフなのに……

 それはともかくとして、吐息交じりの囁きで背中がビクリとなる。

 

「おおー、ちょっとゾクッてしたあ」

「一々感想言われると恥ずかしいんだけど……あとは耳かきがやっぱりメジャーかな。はい、これで終わり! 後は自分で試しなさい」

「もっとやってくれてもいいのにー」

「駄々こねても、わたしだってもう引き出しないからね」

「ちえー……あっ、そうだ。さく姐、実験台になってよ。ほら、交代ね」

「えっ、えっ……?」

 

 困惑するさく姐を寝転ばせ、私の付けていたイヤホンをさく姐の耳に突っ込む。

 私は梵天耳かきを手に取った。

 

人に耳かきするの初めてなんだ。ちょっと楽しみ

「あっ、耳弱いから囁くのダメ……ってか、そんな初めてを私で消費するなぁ!」

それじゃあ感想よろしくね。カリ、カリ、カリカリ

「ひえぅ、どこでこんなの習ったのよぅ!」

 

 耳かきの動きに合わせて、擬音を囁くとさく姐があられもない声を上げて身悶える。

 

「ゆのみ先輩がよくやってた、私も好き。続けるね〜。ガリ♡ ガリ〜♡

「あっ、ちょっとぉ。ダメ、だってぇ……」

ほんとに嫌ならイヤホン取ればいいのに。さく姐は欲しがりさんだね〜。ふぅ〜っ

「ひゃう。ち、違うし、そんなんじゃないし……」

耳かきの途中で息吹きかけるのって普段しないからなんか新鮮だね。カリカリ、ふぅ〜。カリカリ、ふぅ〜

「あっ、ちょっとぉ……!?」

ふふっ、かわいいねえ

 

 この後、10分程続けたら、ASMR耳かき免許皆伝(さく姐認定資格)をもらった。

 涙目でプルプルしながら睨みつけてくるさく姐を見て、私は満足したのだった。

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。

ちなみにボク、ASMRは全然詳しくないよ。ホントダヨ。


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37.【#はるゆらら(だいたい)ウィーク】2人でまったり1-2-switch【秋宮ゆらら/@Link】

コロナでごめねむしてました。今年度の目標はあきらめました!w

ひとまずベッドの上からできるだけ投稿。


 

「どうも〜。お前らこんみゃ。私とさく姐が同棲するだいたい1週間、毎日この2人で企画に参加したり、配信したり、だらだらなんかする予定のはるゆららウィーク2日目。今日はワンツースイッチで一緒に遊ぶよ」

「同棲じゃありませんけどねー。……コホン。リスナーさん、おはるー! 春原さくやです。昨日のホスト企画に引き続き、みゃの家にお邪魔してまーす」

 

こんみゃー

連日オフコラボたすかる

おはるゆらら~

コイツ、いっつも家に女連れ込んでるな

みゃあ~

 

 スイッチのジョイコンを分け合い、片手に持った状態で挨拶する。

 今日やるゲームは1-2-switch。任天堂TVゲーム特有のコントローラーと体を駆使するタイプのパーティーゲームだ。

 特になにをするか決めてなかったので、適当に2人で遊べるゲームという事でこの前たまと一緒にやったこのゲームを選んだわけだが……

 

「今更だけど、こういう体動かすゲームって3Dの体を貰ってからの方が画面映えするよね」

「本当に今更すぎる」

 

この前もたまちゃんとやってたやろがいw

それはそうだけど

 

「あと、さく姐、あんなにお昼にひいひい言わせてあげたのに、まだそんな態度だとあきみゃ、傷ついちゃうなー」

「言い方ぁ! 違うからね! ホントにやらしい事はしてないからね!」

 

エッッッ!!

昼間からお盛んですね

もういい加減素直になっちゃいなよ、さく姐

語るに落ちたな

エッチなことしたんですね?

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながらさく姐をからかう。

 さく姐はいつもみたいにリスナーに向けて弁明してるけど、最近はこのポジション美味しいとか思ってそうだよね。

 

「はいはい照れ隠ししてないでゲームしてこ」

「なんでわたしが怒られてるの? 釈然としない」

「負けた方が罰ゲーム……いや、胸押さえて警戒しなくたっていいじゃん」

「だって絶対、やらしい事するもん!」

「そんな人を年中発情期の獣みたいな扱いしなくても」

 

日頃の行いやぞ

セクハラ警戒されてて草

間違ってないんだよなあ…

やっぱり裏ではやらしい事してるのか…

 

 さく姐にそこまで警戒される程の事してないと思うけどな……? 不思議だ。

 

「さく姐は初見だし、今回は罰ゲームなしでいいよ。だって私が全部勝っちゃうからね。視聴者もそれじゃつまらないでしょ?」

「このイキリ猫め……えっちな事じゃなかったら罰ゲームありでやってやろうじゃないの!」

「え?」

 

あっ……

あーあ

はいプレミ

ちっ、えっちな事なしか…

さく虐たすかる

 

「えっ、なんでもうわたし負けた扱い?」

 

 さく姐の不用意な一言でコメントが爆速で流れていく。

 さく姐がどのくらいこのゲームできるかはわからないけれど……リスナーからの期待には応えなければ配信者の名折れ。

 

「言ったなあ。じゃあ、負ける度に腹筋10回ね。さく姐のお腹をバキバキにしてやるもんねー」

「あ、あのう……なんかやばそうだしやっぱなしってわけには……?」

「だーめー♡ それじゃあやってこっかー」

「ひえぇ……死にたくないぃ……」

 

かわいそうはかわいい

さく姐が(肉体的に)滅茶苦茶にされちゃう…

鬼畜猫がよ…

これ、えっちな事される方がマシだったんじゃ…

 

 よーし、あきみゃ頑張っちゃうぞー。

 という訳で、20種以上あるゲームの中から最初に選んだゲームはクイックドロウ。

 銃に見立てたジョイコンを腰に構えて、掛け声と同時に対面のプレイヤーを撃ち抜くガンマンのゲームだ。

 

『向かい合え』

「見つめ合うとドキドキするね」

「集中してるからそういうのやめて!」

 

てぇてぇ

別方向でドキドキさせるな

かわいい

あきみゃは真面目にやれw

口説くなw

 

 ゲームの指示通り、向かい合うと同時に目を見つめて微笑む。

 さく姐がふるふると首を振ってるのがかわいいなあと思いながら、にやにやしていると掛け声が鳴ったので反射的にコントローラーを上にあげた。

 

「ど、どうだ!?」

 

 さく姐の意気込みも虚しく画面には私の方に「WIN」の文字が現れる。

 

「ぷぷ、さく姐そもそも範囲内に撃ててないじゃん」

「うっさい! というかみゃは撃つの速すぎでしょ!? 人間の反射速度じゃないって!?」

「そりゃ、私は猫だし」

 

うーん、この反射神経お化け

しってた

0.2秒台は真っ当にやっても出せんのよ

これとまともにやり合ってたたまちゃんっていったい…いや、どっちも人間じゃないけど

???速すぎん?

 

「これでものび太に負けてるのが納得いかない。0.1秒は無理だよ」

「0.2秒も十分おかしいんだけど? 反射神経競うタイプのゲームで勝てる気がしない……」

「にゃふふ。まずは1回目の罰ゲームしよっか。できるだけセンシティブな声出してねー」

「出さないもん。みゃ、足押さえてて」

 

 コロンと寝転がるさく姐の足の上に乗る。

 

「ふっ、ふうーっ!」

「1かーい、2かーい。もっとえっちな吐息出してー」

「うにゃああああ!」

「うるさいですね……」

 

うるせえ!

恥ずかしがっておっきな声出すのかわいい

鼓膜ないなった

さく姐かわいいね

チノちゃんw

 

 大声を上げながらなんとか腹筋10回を終わらせるさく姐。

 ぐでーと倒れこみ、息を整えるさく姐のお腹を触る。

 

「わっ、お腹ぷるぷる震えてる。かわいー」

「お、お触り、禁止ぃ……!」

 

どえっち

声が弱々しいw

結局手出されてて草

抵抗できないさく姐の体をまさぐる…閃いた

えっちだなあ…

 

「もう、アイドルなんだから腹筋10回で疲れてちゃだめだよ」

「わたし、インドア派、だもん……ふぅ。や、やりきったぞ」

「この調子じゃ今日だけで100回くらい腹筋やる羽目になるかもねー。で、どうする? もっかいガンマンリベンジする?」

「誰が、やるかぁ……もっと、反射神経使わないゲームで、勝負しよう」

 

 一戦目で既にへろへろになったさく姐が次にやるゲームを選ぶ。

 選ばれたのはミルク。ゲーム内容はジョイコンを上下に動かして牛の乳を搾るというだけの単純なものなので、これならば確かに反射神経は関係ない。

 

「さく姐は初見だし、1回だけ練習でやってみてもいいかもね。どう?」

 

 さく姐が私の提案に頷き、まずはお試しで一回やる事になる。

 

「ねぇ、みゃ。わたしの全然勢いよく出ないんだけど」

「さく姐の手つきが激しすぎるんだよ、もっと優しく上下しないとイタイイタイになっちゃうよ」

「若干センシティブやぞ」

「あ、動かすとビクビク震えるのなんかえっちだよね」

「そこまでいくともはや思春期なんよ」

 

はい素材

まーた紳士向け音声が作られてしまう

さ、さくちゃん! 激しくしないで…!

はるゆららの2人に絞られる音声作品はここで聞けますか?

俺らも年中思春期だから仕方ない

 

「なんでたまちゃんと一緒の時は下ネタ言わないのにわたしと一緒だと、こうダメな方向に言動が振り切れるのよ……」

「そんなのさく姐がえっちな体してるからに決まってるじゃん」

「責任転嫁がひどい」

「というか、たまに下ネタなんて振れるわけないだろ!」

「なんでわたしが怒られるかなあ!?」

 

ガチトーンで草

3期生えっち担当…

確かにさく姐はえっちだけども

たまちゃんに聞かせるのはマズい

さく姐がわるいんだよ

 

 ……なんか、こう、たまは汚しちゃいけないだろ! わかれよ!

 そんな思いも込めて、この後もさく姐をゲームでボコボコにしたのだった。

 

 

 

【Vtuber】@Link3期生の秋宮ゆららについて語るスレ 〇〇スレ目

 

813:名無しのV ID:Ug5hjamOi

おつはるゆらら〜

さく姐ボコボコにいじめられてて草

 

815:名無しのV ID:PUN0La8L/

おつはるゆららー

たまゆらの人外バトルとは違って今日は平和でしたね…

 

816:名無しのV ID:ED2B/G4Es

さく姐のおなかのやわらかさ、ないなった

 

818:名無しのV ID:uXDGbWkbt

>>815

争いは同じレベルの者同士でしか成立しない!

 

821:名無しのV ID:js6rFJGcU

>>815

視聴者を置き去りにして雑談しながら永遠にピンポンし続けるのほんと人外極まってる

 

823:名無しのV ID:/BYWlWdMV

>>816

エッチだったからヨシ!

はるゆららのコラボはおかずが大量生産されるからほんとたすかる

 

824:名無しのV ID:aiZzZK4a/

さく姐を虐めるドSあきみゃすこ

 

826:名無しのV ID:V1A2G5O7P

>>824

たまちゃんにぶつけられないドロドロとした情欲をさく姐で発散……エッ!

 

829:名無しのV ID:t2QQGwafq

>>826

草、いや間違ってはないけど

 

831:名無しのV ID:kpV1SVW6G

>>826

たまちゃん清純派ではあるけど、下ネタまったくダメなわけじゃないのにねw

 

834:名無しのV ID:IyYXYHhsz

>>826

そして何故か巻き添えを食らうおこた

…まあ、おこたならいいか

 

838:名無しのV ID:okota2828

>>834

なんでえ!?

 

842:名無しのV ID:dJPV/LdE9

>>834

なんならおこたは手を出されたいとまで思ってる。Mだし

 

847:名無しのV ID:okota2828

>>842

Mじゃないが!?

でも、秋宮はいい加減同期の冬担当を構うべきだと思うな!

 

849:名無しのV ID:5oEntkmPD

>>847

おはおこた

 

 

 

 

 

 




マシュマロ
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38.初メン限

アンケート回答ありがとう。興味本位で使ってみたけど参考になりました。
気が向いたら書いて、公式二次創作みたいな感じで何処かクローズドなとこで公開するかもです。

今年最後の更新です。コロナで予定狂ったのでご褒美回で今年は締めくくりという事でここは一つよろしくです。ではどうぞ。


 

「どもー」

 

おっ始まった

バイノーラルきちゃ

こんみゃー

挨拶適当で草

初メン限きちゃー

 

 いつもの配信よりも活気のない声で挨拶をすると、私のチャンネルのメンバーシップに登録してくれたリスナーから挨拶が返ってくる。

 初メン限は予定していた通り、バイノーラルマイクを使ったASMR配信だ。そのため、耳元で囁いたわけではないが、挨拶も小声で行っている。大声出すとリスナーの方には爆音が流れるらしいからね。これはリスナー思いの最高の配信者。(自画自賛)

 そう私が思っていると、スマホからアラームが鳴った。

 

「あ、ラーメンできたみたい。取ってくるねー」

「あー、もう何やってるのよ……」

 

うるせえ!

こまくないなった

うーん、自由すぎる

さく姐もこれには苦言

おこたのメンバー解除しました

 

 お湯を入れてから時間が経ったカップラーメンを手にマイクの前に戻ってくると、何故かコメント欄が荒れていた。

 おかしい。どうしてこんなことに……

 

「ほら君たち、そんなにカリカリしないでよ。ラーメン持ってきたから一緒に食べよ」

 

事前に用意してもらえませんかねえ?

久々の君たちたすかる

おこったかんな

これがメンバーに対する仕打ちか?

 

「まあまあ。ほら、ふーふーしてあげるね。ふー。ふー」

 

耳をふーふーしろ

麺をちゃんと冷ませてえらい

あ~、麺をすする音~!

お耳ふーふーして♡

 

 麺に息を吹きかけてから、耳を模したマイクの近くで麺をすする。

 こんな感じでいいのだろうか?

 コメントの様子を見ながら、ラーメンを食べていると「さく姐に監視されてるんだねw」とのコメントがあったので、それに対して返事をする。

 

「あー、そうそう。今、私の後ろでさく姐が見てるよ。はるゆららウィークだからね」

「わたしはいったい何を見せられてるんだ……」

 

死んだ目のさく姐が見える見える…

はるゆららウィークたすかる

もしかして2人でささやいてくれるの!?

 

 

「今日のさく姐は後ろで茶々入れるだけだよ。あ、お水飲むね。ごくごく

 

ごくごくたすかる

あきみゃの喉が動いてる…

いいねー

たすかる

 

 

 私の水を飲む際の喉が鳴る音にコメントが反応する。

 実際に配信するにあたって、咀嚼音ASMRはそれなりにリサーチしたけど、あまり良さは理解できなかった。

 少し前に戯れで、バイノーラルマイクの近くで飲み食いするだけの配信とかやってみようかと思っていた私が言える事ではないのかもしれないけれど、私が理解できないだけで意外と需要はあるのかもしれない。

 そんな事を思いながら、カップラーメンを完食した。

 

「ふひー。食べた食べた。それじゃあ次はこれ。ポテチとコーラ」

 

くつろぐな

くつろぐ気満々で草

こんな夜中にお菓子食べちゃ駄目でしょ!

ささやき……

こいついっつも食ってるな

 

「飲み食いするだけでいいなんて、楽な配信だなあ。あ、コーラ注ぐね」

 

舐めくさってて草

メン限をなんだと思ってるんだw

あ、耳元炭酸はいい感じ

おぉ~

しゅわしゅわする

 

 マイクの近くでコップにコーラを注ぐ。こうするとマイクが炭酸の音を拾って、まるで炭酸水の中に耳を入れたかのように聞こえるらしい。

 リスナーの様子を見ながら、耳元でポテチをパリパリと音をさせながら食べる。

 

パリパリご飯食べた後にパリパリお菓子食べるのってパリパリちょっと背徳感パリパリあるよねパリパリ

 

モノ食いながらしゃべるなw

咀嚼音たすかる

 

「喉乾いちゃった。コーラ飲むね。ごくごくところでゲップASMRってジャンルがあるんだけど……」

 

やめなさい

アイドルの自覚を持て

そんな事するのはごく一部だけよ

やめて

汚物になるな

 

「あ、はい。コーラ飲むのはやめとくね」

 

 思ったよりコメントの反発が大きかったので、大人しく従う。

 そっか、需要ないのか。美少女のゲップ……本当によくわからないなあ。

 

「はあ……生ハムメロンも持ってきたから食べるね」

 

どんだけ食うんだよw

しっかり味わう気満々で草

デブるぞ

デザートまで用意するなw

 

「女の子にデブるとか言っちゃいけないよー。むしゃむしゃ」

「あまりにも自由過ぎる」

 

 さっきカップラーメンを取ってくるついでに、冷蔵庫から出してきた生ハムメロンを食べていると、後ろにいるさく姐から苦言を呈された。

 

「まあまあ、そう言わずにさく姐も食べなよ」

「ん、ちょーだい。わたしの咀嚼音は聞かせないけど」

「けちー。有料コンテンツなんだからリスナーさんにサービスしなよー」

「わたし関係ないでしょ。そう言うみゃこそ、ちゃんとサービスしてあげなさいよ」

 

さく姐w

ちえー

正論パンチw

コラボじゃないからね、しかたないね

さっきから食ってるだけだもんな、この猫…

 

「ふむ……一理ある。結構長い間くつろいだし、そろそろ君たちをもてなしてあげるか。さく姐、メロンの残り、食べちゃっていいよ」

 

 最初から好き勝手するのは配信の前半のみと決めていたので、さく姐の言葉をキッカケにガチ営業モードに切り替える。

 咀嚼音の良さはいまいちよくわからなかったが、囁きASMRの良さは私にだってわかる。身近に人がいる感覚がいいんだよな、あれは。

 金を払ってまでこの配信を見てくれている酔狂な彼らには、私の全力の義務媚びを味わってもらおうではないか。

 

君たち、いつもありがとね

 

ひえっ!?

急に本気出すな

すっごく、甘い声…

やばいって

こちらこそありがとうやで

 

 今までの小声でひそひそとした話し方から、耳元での囁きオンリーに変える。

 イヤホンで配信の音量を確認していたさく姐がびくりと震えているのを横目にしながら、ロールプレイを続ける。

 

私、素直じゃないからさ。表ではこんな事、絶対言えないけど……これからも私の事、いっぱい、いーっぱい。かわいがってね?

 

うん

かわいいよ、あきみゃ

うんうん

かわいい

あきみゃすき

 

……えへへ、恥ずかし。お耳ふさいじゃお

 

 コメントの反応を見て、恥ずかしがっている演技をしながら耳型のマイクに手を添える。

 そうしてゆのみ先輩がやっていたみたいに、耳の穴を塞いだり、手のひらでさすったり。

 

ぺ・た・ぺ・た~指の感触、わかる?

 

わかるよ~

あきみゃにお耳であそばれてる…

タッピングじょうずい

あきみゃのおてて…

わかる…あきみゃがいる…

 

 擬音で囁くのに合わせて、耳をトントンと優しくタップする。

 コメント欄がいい感じでノリに乗ってきたので、私は再びマイクの両耳を塞いだ。

 

お耳を塞ぎました。君たち、聞こえてる? 聞こえてないよね?

 

聞こえてないよ

キコエナーイ

何も聞いてないよ

あきみゃの手のひらの感触…

ぼくたちは何も聞いてないです

 

 マイクを塞いでいても、声が聞こえるのは事前に確認済みだ。

 それは聞こえてる人の言葉なんだよねえ、とコメント欄を茶化す事はせずに、私はマイクを塞いだまま自分の胸を押し付けて、少しだけ声量を上げて囁いた。

 

すき。だーいすき。ぎゅ~っ

 

すこ…

あー、いけません、これ

あきみゃすし…

ぼくもすき

あー…(昇天)

 

……むぅ。やっぱり聞こえてるー……野良とものバカ

 

ごめんね

バカたすかる

すんませんwww

ぼくたちはなにもきいていませんでした。

すき…

 

 コメントに反応して拗ねたような演技で囁いた後に、手を離して、胸の中心にマイクが来るように座る位置を変える。

 

私の心臓の音、聞こえる? 君たちに騙されたせいで私の心臓はバクバクです

 

ごめんてw

あきみゃが生きてる…

心音いい…

聞こえてるよ

落ち着くリズムだね

 

君たちが悪いんだから。ちゃんと責任もって、私の事見守っててね♡

 

 私はこの体勢のまま、耳元に顔を近づけて悪戯っぽくそう囁いた。

 

 

「……ふいー、義務媚び終わりー」

 

切り替えが早い!?

お か え り

義務媚びw

さっきまでのあきみゃかえして…

も ど し て

 

 30分弱の甘々シチュでのガチASMRを終えた所で、耳元から離れて声量も小声に戻す。

 

「うぷぷ。面白かったー。君たち、みーんな『あきみゃすき……』とか言っちゃってさー。ちょーっと甘やかされると好きになっちゃうのは良くないと思うよー」

 

あきみゃも相当恥ずかしい事してましたがー!?

こうやっていつも女をたぶらかしてるんだ…

このっ……!ネコガキめ!

さく姐が悪女って言ってた意味がわかったよ…

あれだけ甘やかされた後で、まったく興味なさそうな態度で煽られると、こう……(性癖が)狂いそう……!(静かなる怒り)

 

「あ、さく姐、どうだった? バッチリ?」

「いや、十分すぎるくらいバッチリだったけども……あんなに甘々で恥ずかしくないんですか?」

 

同僚の目の前でアレをやった事実w

さく姐敬語で草

あきみゃの羞恥心どこにあるの?w

 

 途中から私を畏怖するような目で静かに見ていたさく姐に尋ねると、そんな返事が返ってきた。

 別に普段のVtuber活動とやってる事自体は変わらないだろうに。変なの。

 

「恥ずかしいか恥ずかしくないかで言われると恥ずかしいけど……ほら、私って生きてるだけで恥ずかしいしノーカンって事で。Vtuberってそういうとこあるし大丈夫でしょ」

「Vtuberが生き恥はマズいって!?」

「そんな事言ってない、こわ……これが偏向報道か」

「なんも誤解じゃないと思うけど……なんか腑に落ちない」

 

生き恥は草

メン限で助かったw

さく姐悪いなーw

恥ずかしい気持ちを隠して、飄々としてるって考えると、なんかクルものがあるね…!

悪質な切り抜きで草

 

 さく姐は首を傾げつつも、さっきからまったく数の減っていなかった生ハムメロンを頬張るのだった。

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。



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39.【ゲスト:春原さくや】たまゆらじお(仮)第3回〜はるゆららウィークもあるよ編〜【秋宮ゆらら/@Link】

特殊タグで遊んでたらちょっと遅れた
あけおめ、ことよロン!w(にじさんじ麻雀杯よかったね)


「……ほら、さく姐早く言わないと今日ずっとこの画面のままだよ。たまゆらじお放送事故だよ」

「なにその変な脅し、みゃのチャンネルでしょ!?」

「私は一向にかまわんよ」

「さく姐、とびっきりかわいいのいっちゃお!」

「くそう、たまちゃんまで他人事みたいに……」

 

こんみゃー…いや草

ミュートしてないぞ

Vtuberなんだから立ち絵ぐらい出せw

きちゃ?

かまわなくないが?

 

 配信待機画面の一枚絵のまま、ミュートを解除して配信に音を乗せる。

 配信開始の茶番で私とたまに責められたさく姐は渋々といった様子で口を開いた。

 

「あ、あー……こほん。たまゆらじおかっこかり、は、はじめる、にゃー……はぁ~」

 

うおおおおお

¥5,000

さく姐、かわいい

クソデカ溜息w

かわいい

さく姐のにゃーたすかる

 

「かわい~!」

「うんうん、やっぱり恥じらいが大事だよね」

「なんで同期の前でこんなかわいこぶらなきゃいけないの……もうおうちかえる」

「おかえり」

「今のさく姐のおうちはゆらちゃんのおうちだもんね」

「同棲してないんですけど!」

「というわけで、たまゆらじお第3回兼はるゆららウィーク最終日、記念すべき初ゲストは同期のさく姐をお呼びしましたー」

「わー、パチパチー」

「おい、2人ともちゃんと訂正しろぉ!?」

 

もうすっかりあきみゃの家に馴染んじゃって…

はるゆららウィーク(既に2週目突入)

これ、ゲストが毎回タイトルコールやらされるってこと?

¥2,000

次はおこたのにゃーたのんます

一番恥じらいがない人がなんか言ってる

 

「ほら、リスナーもこう言ってる事だし、さく姐、もううちの子になる? 毎日たまのごはん付きだよ?」

「頑張りますのだ」

「美味しかったし実際住み心地はすごく良かったけどもっ……! みゃと同棲してるとリスナーに思われるのが気に食わないの!」

「フラれちゃった。かなしみ」

「おー、よちよち。ゆらちゃんにはわたしがいるからねえ」

「そうやってなんでもかんでも百合に繋げるのはやめませんかねえ!?」

 

 3期生で集まる時はさく姐にツッコミを全部任せられるから楽だなあ。

 そんな事を思いつつ、ふつおたのコーナーに移る。

 最初に読むのはさく姐が選んできたマロだ。

 

 

こんたまゆら~

あきみゃとさく姐は1週間を超えるはるゆららウィーク(?)お疲れ様です。

これだけ長い共同生活を送ると、友情を超える感情も芽生えてきたと思われます。

 

 

「芽生えてないが?」

「まだ途中だぞ」

 

 

はるゆららウィーク中は2人で先輩の企画に参加することはありましたが、

同期のたまちゃん、おこたとの絡みはありませんでしたね

裏ではなにかやり取りなどしていたのでしょうか?

たまちゃんはともかく、おこたがハブられてないか心配です。

 

 

「──との事です。さく姐、いきなり杞憂マロやめろよー」

「触れてあげないと、ことちゃんがかわいそうでしょ。元はと言えばみゃのせいだからね」

 

 呆れた目でさく姐が私を見る。

 

「わたしは裏ではよく一緒に晩御飯食べてたよー。今日の配信もあったし、配信にお邪魔するのはやめときましたのだ」

「そのせいで直近の私の配信アーカイブ欄がさく姐とのらぶらぶカップルチャンネル状態なんだよなあ……4日目ぐらいで交ざってほしかったよ」

「らぶらぶでもないしカップルでもないですけどねー」

 

いーやらぶらぶだったね!

はるゆららカップルチャンネルつくれ

さく姐はチョロい女じゃないもんね…

はるゆららに挟まらないたまちゃん

らぶらぶしろ(過激派)

 

「冬城は……別にハブってるって程じゃなくない? 私、先月2回コラボしたよ? それに、たまがちょうどはるゆららウィーク始まる前にサシでコラボしてたでしょ?」

「うん、スプラやったよー。……そう言えば、その時の配信後に通話で『さく姐が秋宮のうちに住むってホントなの!?』とか『いいなー、いいなー……』って言ってたよーぅ。羨ましいのに自分からは誘えない小動物みたいな所はことちゃんのたま的チャームポイントですな」

「最近気づいたけど、たまちゃんも大概いい性格してるよねえ!?」

「さく姐、たまのこれは本当に素直にかわいいって思ってるだけだから……」

 

 たまの畜生ムーブはいつもの事だから……隙を見せた冬城が悪い。

 とはいえ、あんまりたまの印象を悪くしたくないので、話の流れを変えるために事後報告しようと思っていた情報を前出しする。

 

「まあ、最近ほったらかしにしすぎたなーとは思ってたから、今度埋め合わせに冬城とデートする事になったよ。もう約束済み」

「え!?」

「おー、ことちゃん嬉しいだろうねぇ」

 

!?

マ!?

コメ欄ではるゆららアンチ化してない理由はそれか…

放置プレイしてる自覚はあったのか…(呆れ)

さく姐、ビックリしてて草

 

「どこ行くかって決めてるのー?」

「いや特には。というか配信で言ったら絶対お前らリスナーは数人ぐらい張り込むだろ。言わないぞ」

 

かしこい

野良ともふゆキッズのオフ会になるな

バーチャル東京だから、現地行っても会えないぞ(建前)

身バレ対策できてえらい

 

「ねえ、やっぱり私がエスコートした方がいいのかな? ラブホ2人女子会とかでいっかなって思ってたんだけど」

「いや、ことちゃんと2人でラブホは、その、ダメでしょ! センシティブやめなー!」

「えー、エッチな事なんてしないよー? さく姐のムッツリ~」

「それ以外ラブホでなにするのよう!? わたし絶対悪くない!」

 

 まあ確かに、冬城に色々なコスプレさせる以外は全部私の家でできるもんな。

 よし、ここはたまと、ラブホをエッチする場所としか考えていないさく姐に相談してデートプランを決めてもらおう。あ、リスナーに行ってほしい場所とか聞くのもアリか。

 

「なんかラブホ女子会はダメみたいだし、おすすめのデート場所とか教えてよ? 私、そういうのは全然ダメだからさあ……リスナーも意見求む~」

「ええ、わたしたちに聞くぅ? ……うーん、無難に映画とか見に行ったら?」

「ことちゃんもゆらちゃんも普段はインドア派だから、ここはあえて体を動かす施設とかどうかな! ボウリングとか楽しいよーぅ?」

 

プラネタリウムとかいいんじゃね?

水族館

ナイトプール

ガンダムカフェ

¥10,000

公園で散歩、首輪はおこたに付けよう(名案)

[冬城ことは]秋宮が行きたい所ならどこでもいいよ♡

今ちょうどアニメ映画やってるから2人にはピッタリかも

本人いて草

おるやんけ!

 

「特殊性癖と冬城が湧いてきたので、デートプラン今考えるのは中止でお願いしまーす」

「そこ同列にするのは草なんよ」

 

 いや、私はともかく、冬城に首輪付けるのはいかんでしょ(真顔)

 

 

「「ファッションモンスター ファッションモンスター」」

「鉄の首飾りを外してただ自由に生きたいだけ」

 

 2人でのハモりの後に陽気な曲調にほんの少しの寂しさを混ぜて私が歌い上げる。

 

「「ファッションモンスター ファッションモンスター この狭い心の檻も壊して自由になりたいの」」

 

 ラスサビをたまと合わせて歌いきった所で、ふぅと息を吐く。

 相手がたまとはいえ、やはりデュエットで完璧に合わせるのは大変だ。

 歌のメロディが終わった所で、いつものBGMに切り替えてから喋り始める。

 

「はーい、というわけで今日のエンディングはリスナーリクエストで『ファッションモンスター*1』を歌わせていただきましたー。さく姐どうだった?」

「……いや、ほんと凄い。というか、マジでその場で歌ってこのクオリティなんだ……」

「いやー、照れますなあ」

 

88888888

相変わらず高クオリティだなあ…

¥500

ハモりがめちゃくちゃ気持ちいい…

¥3,000

2人ともとってもかわいいモンスターでした!感謝!

 

「なーにをそんな他人事みたいに。私たちは一応、アイドルなんだからさく姐もその内誰かと一緒にやらなきゃいけないんだからね」

「うっ……精進します」

「よし。それじゃあ配信切る前に2つ告知ー。まずはこちら」

 

 配信画面を切り替えて、サムネ用の一枚絵を出す。

 

「まずはこれ、あらやしき組でクリスマスオフタコパやりまーす」

 

うおおおおおおおお

あらやしき組オフコラボだあああああ

クリスマスうおおおおおおお

ありがとう…ありがとう…

ハブられるおこたはいなかったんや!

 

「えへへ、みんなで集まれるの楽しみだね」

「ことちゃんがみゃのおうちに行きたがってたからねえ。念願が叶って良かったのやら……」

「おかげで私のおうちはすっかり3期生のたまり場なんだよねー。リスナーはクリスマス予定空けとけよなー。続いて2つ目の告知ー」

 

 続いて画面上の絵を切り替える。

 

「たまゆら初の歌ってみた動画、『ロキ*2』をこの配信後の22:00に公開ー」

「いえー! やっと出せたねえ!」

「おおー、ついにたまゆらで歌ってみた出すのね」

「初めて動画作ったけれど、色々大変だったよねえ。今日は折角だしさく姐の反応も見たいので、サビ前まで今ここで公開しまーす。えーと、ここをこうしてー……それではどうぞー」

 

 画面いっぱいに事前に編集したサビまでの部分の動画を映し、再生する。

 アップテンポなメロディと共に私達の歌声が流れだす。

 

さあ眠眠打破

昼夜逆転

VOX AC30W

テレキャスター背負ったサブカル

ボーイがバンド仲間にやっほー

 

 動画をみながら改めて、やっぱりプロの仕事は違うなあと感心する。

 MIXありの方がリスナーもやっぱりカッコいいって思うよな、多分。

 

長い前髪 君 誰の信者

 

勘違いすんな 教祖はオマエだ!

 

「はーい、おしまーい。続きはこの後投稿される動画をご覧くださーい」

 

 サビ前のハモりで動画が終わる。

 

「……いやー、ほんとすごいなあ」

 

 大盛況のコメント欄を確認していると、さく姐が拍手をしながらそう呟いた。

 

「なになに、そんな素直に褒めちゃって? 珍しい」

「別に、たまちゃんと……口に出して言うのが癪だけどみゃの事はずっとすごいって思ってるし。……うん。こういうすごいの見せられると、わたしも頑張ろうって気合が入るよね。たまちゃん、今度色々教えてー」

「お任せあれ!」

「同期なんだから私に相談してくれてもいいのにー」

 

 なぜかハブられたので口をとがらせてそう言うと、さく姐が悪戯っぽく笑う。

 

「ふふっ、やだ。みゃにこういうの頼ったらなんか負けた気になるもん」

「あっ、わかる気がする~。ゆらちゃんには頼るより頼られたいよねぇ」

「なにそれ、変なの。それじゃあ今日の配信は終わりー。お前らちゃんと歌ってみた動画見ろよなー、おつたまゆらー」

「あっ、おつたまゆら~!」

 

 2人してよくわからない意気投合してるのを眺めつつ、私は配信終了を告げた。

 

 

*1
きゃりーぱみゅぱみゅさんの曲。みこでびのカバーいいよね

*2
みきとPさん作詞作曲のボカロ曲。Vtuberのコンビはだいたい歌ってる人気の曲




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。


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40.冬城とおでかけ

 

「お、お待たせー。待った?」

 

 待ち合わせ場所のベンチに座りながらぼーっと空を見上げてると、冬城が私に声をかけてきた。

 意識を切り替えて、応答する。

 

「ううん、今来たとこ」

「ほんとぉ? また魂抜けてたよ」

「ほんとほんと。着いたの15分前」

 

 はは、Vtuberの中の人に向けて魂抜けてるとはナイスジョーク。

 適当にあしらい、私は冬城に問いかける。

 

「今日どこ行くー?」

「え、ノープラン、なの?」

「そりゃあ、今日は冬城をもてなす日だからね。冬城が行きたい所に行くよ。……あ、そう言えば、前の配信では私の行きたい所ならどこでもいいってコメントしてたっけ。ラブホに連れ込んだ方がいい? しっかりご奉仕するよ」

「ひん、ネット弁慶なだけなんです。ゆるしてー……」

 

 手をわきわきさせながら私がそう言うと、冬城はぷるぷると震えながら弁明する。

 そんなだからからかわれるんだぞ。

 

「冗談だって。友達同士でそういう事はしないって事ぐらい私にもわかるよ」

「あ、そ、そうなんだ。ヨカッター……」

「なんでちょっと残念そうなのさ」

「は、はー!? そんな事ないですけど!?」

 

 そんな図星つかれたみたいな反応しなくても……

 とはいえ、こっちのボケに反応してくれるぐらいには私にも心を許してくれているという事なのだろう。  

 うん、いい事だろう、きっと。冬城が普段ソロ配信でできてるトークをコラボ配信でもできるようになれば随分心強い。もう私が会話を回さなくてよくなる。……それは流石に求めすぎか。

 とにかく、冬城も今日の予定はノープランらしい。

 

「ふむ……じゃあ、高校生の冬城ちゃんにあわせて、高校生っぽいデートしよっかあ」

「もうアタシ、24歳なんだけどなあ……」

 

 その言葉を吐くなら、さく姐もそうだけど年齢に見合った落ち着きを持った方が良いと思うよ。

 私は優しいので、そんな言葉は言わないでおいてあげたのだった。

 

 ◇

 

「ひええ……平日なのに人がいっぱいいるう……絶対不良なんだあ、囲まれてお金出せって脅されるんだあ……」

 

 そうしてやってきたのは大型施設のゲームセンター。

 以前誘った時には断られた場所に2人でやってきたわけだが、店内に入るやいなや挙動不審な様子で冬城がきょろきょろと周りを見ている。

 

「あれ、ほんとにゲーセン初めて来たんだ? 平日のゲーセンなんてこんなもんだよ。不良生徒のたまり場……いや、それは偏見か。ま、私たちみたいに平日でも暇してる人って案外世の中に沢山いるらしいよ」

「うう……平日に働いてなくてすみません……ダメ人間でごめんなさい……」

「私たちは年中無休の仕事をやってるとも言えるけどねー」

「ブ、ブラックだあ……」

 

 実際ブラックだよね、Vtuber。長期休暇を取る人が度々いる理由もわかる気がするよ。

 1年中ずっとVtuberとして活動していると、本当の自分がわからなくなったりするのかなあ、多分。

 

「それじゃあ、色々見て回ろっかー。何か気になるのある?」

「えーと、色々あるねえ……メダルゲームは2人でやるにはちょっとなあ……あ、おっきなエアホッケーだ! あれとかいいんじゃない?」

「え……? まあいっか。やろうよ」

 

 ──数分後。そこには両膝をつく冬城の姿があった。

 

「ひどい。いったい誰がこんな事を……!」

「お前だよーーっ!?」

「そもそも私相手にこんな体動かすゲームで冬城が勝てるわけないでしょ。自分の非力さを認めなよ」

「それでも……うう、もうちょっと手加減して1点くらい取らせてくれたっていいでしょ!」

「いや、私は普通に返してるだけだったし。全部自滅だったじゃん……」

 

 ゲーマーとして鍛えた動体視力に体がまったく追いついてないんだよなあ。もったいない。

 

「も、もう秋宮とはこういうゲームしないもん。ぷい」

「あーあ、拗ねちゃった」

「他人事だなあ、もう。他のゲーム見に行こ!」

「はーい」

 

 そうして、冬城と一緒におしゃべりしながらゲーセンの中を歩いていき、立ち止まったのはプリクラ機の前。

 

「ぷ、プリクラ……陽キャの象徴だ」

「うーん、偏見。折角だし一枚撮ってく?」

「え゛。い、いいよう、恥ずかしいよう」

「いいからいいから」

 

 うだうだ言ってる冬城をプリクラ機の中に押し込む。

 私もそんなに使った事はないし、こういうのはチカがノリノリでやるから操作方法もよく知らないけどなんとかなるだろう。

 

「最近のプリ機はめっちゃ盛れるらしいよ。知らんけどー」

「急に関西人みたいになられても、あわわ、もうカウントダウン始まってる!?」

「ほら、冬城笑ってー、はい、チーズ」

 

 そうして冬城がヘタクソな作り笑いをしてピースしてる所に、私は後ろから彼女の両頬を摘まんで引っ張る。

 その瞬間、パシャリとシャッター音が鳴った。

 

「ぷぷ、変な顔になったかもねー」

「……もう絶対プリクラしないもん」

「あー、ごめんって。ほら、この後、落書きできるみたいだよ」

 

 拗ねた冬城を促して、ディスプレイを操作する。

 

「うう、やっぱり変な顔してる。秋宮は腹立つくらいいい顔で笑ってるし……この、この!」

「鬼の角とか書いても私はぷりちーなままだけど?」

「うう、だったらしっぽとひげと猫耳描いておにキャットにしてやるう!」

「じゃあ、私も冬城の顔にひげ書いちゃお。お揃いだねー」

 

 そんなこんなで落書きされきったもはや原型を留めていない写真シールが印刷される。

 

「ほら、冬城の分。いい記念になったねー」

「最悪の記念だよう……」

 

 渋々といった様子で自分の分のシールを受けとる冬城。

 

「あ、でもちょっといい、かも?」

 

 実物の写真を見て、私に聞こえないようにしたのか、冬城はぼそっとそう呟いた。

 

 

 プリクラを撮った後も、ゲーセンを回る。

 

「ここのフロアはクレーンゲームがいっぱいだね」

「結構大きいゲーセンだからねえ。お菓子のクレーンゲームは採算性を考えて、もう少し数を減らしてもいいと思うけど」

「そんな夢のない事言わなくても……あ、レムの水着フィギュアだ!」

「ああ、レムはいっつも脱がされてるよね」

「そうなの!?」

 

 人気アニメのヒロインはプライズフィギュアで頻繁に脱がされるよね。これを私は生き恥なんちゃらシリーズと呼んでいる。(呼んでない)

 そんなリゼロのレムの生き恥水着フィギュア。それの外箱にプラスチックのリングをセロテープで貼り付けて、アームを引っかける方法で移動させるタイプのクレーンゲームの機体に冬城がお金を入れる。

 

「……うっわ、むっず。こんなの入るわけないじゃん」

 

 ただ、冬城は今までゲーセンに来た事もないわけで。当然、初めてのクレーンゲームはまったくの見当違いの場所でアームが空を切る結果になった。

 

「もうやらんわ、こんなクソゲー」

「……仕方ないなあ。ほら、代わって?」

 

 冬城と交代して、500円玉を入れる。

 このタイプのクレーンゲームは一定のお金を入れる必要はあるけれど、絶対に景品が取れないアームパワーになっている事は少ない。基本的にはちゃんとやればちゃんと景品を取れるタイプだ。

 それに、さっきの冬城の1回でボタンを離してからどこでアームが止まるか、アームがどこまで開くかは確認済みだ。

 

「ぱっ、ぱっと」

「わ、すごい! 穴のギリギリにアームが入った! でもこれだけしか動かないのかあ。クソゲーだなあ」

「これってこういうゲームだからねー」

 

 気にせず次のゲームへ。箱が動いた分だけボタンを押すタイミングを変える。

 

「わ、また穴のギリギリだ。すごいすごい!」

 

 3回、4回、5回と続けて、最大効率で箱が動くようにリングにアームを入れる単純な作業を続ける。

 

「秋宮ってロボットかなんかなの?」

「こんなかわいいロボットがいたら、人類は生殖活動を行えなくなって滅亡しちゃうぜっと。ほい取れた。1000円で取れたなら結構いい方でしょ」

 

 ガコンと取り出し口に落ちた景品を手に取る。500円玉を入れたせいで2回分プレイ回数が無駄になったけどまあ構わないだろう。

 

「はい、冬城。あげるよ」

「え、いいの?」

「うん、私はいらないし。それに来週誕生日でしょ? 私からの誕生日プレゼントって事で。はいどーぞ」

「その誕生日ってライバーの設定だけど……?」

「知ってる知ってる。冬城のリアル誕生日なんて知らないんだからせめてライバー誕生日で祝わせてよ」

「あ、そっか。あ、ありがと……」

 

 そういっておずおずと冬城は私が差し出した景品を受け取る。

 

「それにさ。ライバーの誕生日とリアルの誕生日どっちも祝えるならお得じゃん。またいつか、私たちに教えてよ。その時には盛大に祝うからさ」

「う、うん! ……いや、陰キャがわざわざ祝ってもらうために誕生日を言うのはハードル高い……あ、祝って欲しくないわけじゃなくてー!」

 

 ……まあ、冬城のリアル誕生日まで私がVtuber続けてるかなんてわからないけどさ。

 とはいえ、なんかわたわたしてる冬城にそんな事告げる必要もないし、私はニッコリとその様子を見ているのだった。

 

「よーし、お腹空いたしサイゼ行こっかー」

「わ、すごい高校生っぽい」

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。

忘れていたキャラ設定、まだちょっとだけだけど活動報告の方で公開しました。
ちょくちょく更新予定です。よろしく。


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41.たま、馬券を買う

 

「──はい、オッケーです。お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様です」

 

 午前の収録の終わりを告げるスタッフさんの声に合わせてふぅと息を吐く。

 今日は来年から始まる公式番組の収録のため、午前から事務所に来ていた。

 番組の内容は2期生のエレノア先輩とアザミ先輩のコンビ『エレのえアザのあ』(今までコンビ名を決めてなかったけれど、番組を機にコンビ名を決めたらしい)の2人が3Dの体を使って、負けた方が罰ゲームといったルールでバチボコにやりあうといったものらしい。主にデジタルゲームもしくはアナログゲームを中心に、たまにロケなどもする予定なのだとか。

 ゲームはともかく、現実世界のロケはVtuberとしてどうなんだろうか? 私にはわからん……

 話を戻す。私はこの番組のレギュラーメンバーとしてナレーターを担当する事になった。3Dモデルは持っていないので、番組内で姿を現す事はなく、ゲームの内容を説明したり、2人に茶々を入れるいわゆる天の声という役割を担う事になる。

 

「いやー、お疲れー。すごいねあきみゃ! まるで別人みたいだった!」

「マジでそれ! 普段どっから声出してんのさ」

「へへっ、どーもー」

 

 3Dモーションキャプチャ用の機材を身につけたエレノア先輩とアザミ先輩に声をかけられる。

 この番組ではあきみゃモードではなく謎のお姉さん(CV:秋宮ゆらら)モードでの出演だ。なんでもクソガキ2人(先輩方)に合わせて私までクソガキモードでいると番組の進行が滞るからだとか。

 なんで私をキャストしたんすかね?(純粋な疑問)

 たまに仕事を回せとは言わないけれど、水無瀬先輩とかさく姐に仕事を回しなよ。

 とはいえ、わざわざ私をご指名していただいた仕事だ。今後ともたまをご贔屓にしてもらうためにも運営様のご意向には逆らえないのだ……

 そんなわけで、普段の演技(猫かぶり)力を評価されて担当する事になったこのお仕事。配信では出さないような大人のお姉さんボイスでナレーションを行った所、先輩方のみならずスタッフさんからも大好評をいただいたのだった。

 バラエティ番組のナレーションは参考になるものが多かったのでこちらもやりやすかった。

 

「お疲れ様です! 少し遅くなりましたがお昼休憩にしましょうか。弁当用意してますよー」

「やりー! 事務所収録はこれがあるからいいよねー」

「あ、中村さん。お疲れ様ー」

「マネちゃーん。ワタシお菓子食べたーい!」

「はいはい、チョコパイ用意してますからねー」

 

 私とエレノア先輩の担当マネさんの中村さんからお昼休憩が告げられ、話しながら控室へと向かう。

 私たちがメインキャストだからという事で、この番組のマネージャーも担当する事になったらしい。大変だなあ。

 エレノア先輩を手慣れた様子であしらう中村さんを横目に見ながらスマホを手に取ると、たまの配信通知が入っている事に気づいた。

 たしか、今日は夜から私の新衣装コンペ配信をうにママとやる予定で昼配信はなかった筈だけど。ゲリラ配信かな……?

 

「……中村さん」

「どうしました、秋宮さん?」

「たまはなにやってんですか?」

 

 立ち止まってスマホの画面を中村さんに見せると、横からエレノア先輩とアザミ先輩も覗き込んでくる。

 画面に映っているのはたまの配信で、その配信タイトルは「【競馬/有馬記念】ゲリラ配信ではじめてのけいば!100万円賭けて年末最後の大勝負ぅ!【夏風たま/@Link】」だった。

 

「100万!? たまちゃん思い切ったなあ」

「すっげー……」

 

 先輩方がタイトルの100万に反応して驚いている。

 額も驚くところだけどさあ。……そもそもライバー活動の収入もまだそこまで入ってない筈なのに、どこからそんな金出してきたんだ……? アルバイトもしてなかったでしょ、チカ。

 ……いや、そうじゃなくて! 

 

「なんでたまにこんな事させてるんですか、たまは清楚系アイドルなんだから競馬なんて悪い遊びをさせちゃいけないんですよ、高校生設定なんだから馬券だって買っちゃいけないでしょう。ちゃんと運営の方でストップかけてください」

「お酒飲んでるんだから高校生設定は今更じゃん」

「エレちゃん先輩は黙ってて」

「こわー……」

「おお、あきみゃって怒ると無表情で淡々と詰めてくるタイプなのかー」

 

 そっちの方が相手には「今、私は冷静さを欠こうとしています」って伝わりやすいからね。

 

「いや、そもそも夏風さんは私の担当じゃありませんし……本人がやりたい事ならやらせてあげればいいんじゃないでしょうか?」

「そうですよね、チクショウ!」

 

 中村さんからはド正論を返されてしまう。血迷って私をライバー採用するぐらい自由な運営方針なんだから、アイドルが競馬で散財するぐらいかわいいもんですよねー!

 くそう、なんのために私が頑張っていると思ってるんだ。汚れ役は私に任せるつもりじゃなかったのか運営──!

 運営は頼りにならないし、私が止めないと……(使命感)

 控室に入り、弁当を食べながらたまの配信を確認する。

 

「今回の有馬記念はやっぱり今までの実績からしても一番人気の子が圧倒的だねぇ。でも、ここに単勝100万は面白くないなぁ」

 

競馬は面白いかどうかで決めるもんじゃないんだよなあ(呆れ)

今回の……?はじめての競馬だったはずでは?

単勝100万はバカの賭け方なんよwww

勝って今日はうまぴょいや!

¥5,000

負けたときは切り替えてこれで美味しいもの食べてね……

 

「寝落ちみかんさんスパチャありがとーぅ! たまは負けないから平気ですけどね!」

 

ほんとぉ?

根拠のない自信すぎる…

100万失った後に上手いメシ食っても味わからないだろ

勝って俺達に気持ちよく上手いメシ食わせてくれ

 

 配信画面には「単勝100万勝負!」とでかでかと大きな文字と、立ち絵にハンチング帽とサングラスと開いた新聞(いらすとやの素材)を合わせたたまの姿が映っている。

 よりにもよって単勝1点買いをするつもりらしい。三連単一点買いとか言い出してないので多少の冷静さは残っているのだろうけど、外したらゼロになる賭け方である事に変わりはない。

 

「わたし的には今のところ2番人気の子推しかなあ。有馬記念が引退試合になるから応援したいよねー」

 

よう調べとる

素直に1番人気に賭けた方がいいんじゃ…

[秋宮ゆらら]競馬なんてやめろ

今からでも複勝買おう?

あきみゃwww

競馬案件ないなった

 

「あっ、ゆらちゃんだー。クリスマスはみんなで美味しいケーキ食べようねー」

 

はいフラグ

[秋宮ゆらら]お金は大事に使え

その言い方はフラグなんよ

そうだぞ

ネコガキ、お金には厳しい

 

「むぅ、ちゃんとパドック見て判断するもん。ゆらちゃんになに言われても今日の勝負は譲らないもんねー」

 

男や……

[秋宮ゆらら]おい、けだま誰か止めろ

パドック見て判断する競馬初心者……?妙だな……?

あきみゃが止めれないなら無理に決まってんだろ!

お前が頑張るんだよ!

 

 コメントを連投するもリスナーは面白がるばかりで止めに入る事はなかった。いっその事電凸してやろうか……!

 

「どいつもこいつも頼りにならねえ……」

「草」

 

 隣で見ていたエレノア先輩は草を生やしていた。草じゃないが。

 休憩時間中はせめて無難な賭け方になるように誘導しようとコメントし続けたが、たまの意志は固く、何を言っても暖簾に腕押しといった様子のまま休憩時間は終わってしまった。

 

[秋宮ゆらら]これから収録だからもうなにも言わないけど!複勝とか無難な賭け方にしなさい!

 

「収録頑張ってね~。……ふぅ、小うるさいママもいなくなったのだ」

 

いや草

ああ、収録で外出してたから実家凸できなかったのかwww

本当に無難で草。いつものキャラはどうしたネコガキ

あきみゃママ……アリですね

たまちゃんワルやなあw

 

 完全に舐めきったたまの声を最後に配信を切る。

 

「……くそう、後で説教してやる」

 

 ──その後、収録中に聞いた話によると、なんか+600万円ぐらいの大勝ちでついついッターのトレンドに載ったらしい。もう勝手にしてくれ……

 

 

【Vtuber】@Link3期生の夏風たまについて語るスレ 〇〇スレ目

 

403:名無しのV ID:GkYHNkEnB

たま先生のお陰で今日は美味しい寿司が食べれたのだ

(単勝1万賭け)

 

406:名無しのV ID:6y2qvJRur

競馬まで天才なんてたまげたなあ…

 

410:名無しのV ID:qfg7jCCww

>>406

たまちゃんは"先生"だからな…!

結果で黙らせる女よ

 

412:名無しのV ID:gZmjynT+P

>>406

夜にうにママとのコラボ配信あるのに大丈夫かと思ってました。

杞憂でした。先生疑ってスマン

 

414:名無しのV ID:IFD+X1N6E

>>412

うにママ「いや今日どんなテンションでやればいいの? 有馬記念670万円勝ち以上の取れ高ないが?」

 

416:名無しのV ID:lxMj1jyW5

>>412

ぼくもソーナノ…

 

419:名無しのV ID:IYxzAL4jC

>>414

そっちはそっちで取れ高あったからセーフ

 

420:名無しのV ID:zAFr3st+M

>>412

下調べしてた事はちゃんとわかったからそこまで変な賭け方はしないだろうなとは思った。絶対競馬初心者じゃないよ、たま先生

単勝100万は正気の沙汰じゃないけどw

 

423:名無しのV ID:zmeLkESwp

>>419

うにママ「色気対決ならばこれだー!ウェディングドレス風白ワンピース水着!」

たま先生「なんの!こちらは白スク黒タイツバニー猫だー!」

何も知らないコメント欄のあきみゃ「変態でち……」

温度差がひどい…

 

426:名無しのV ID:5/pHWUOJr

>>419

神絵師2人が描いた色んなあきみゃ見れて満足や

 

431:名無しのV ID:fLlHTgJeo

>>420

競馬マスターの清楚系……?

 

434:名無しのV ID:+TyEWweH1

>>431

(先輩達と比べたら相対的に)たまちゃんは清楚系だろ!

 

436:名無しのV ID:gdsI52+gf

>>434

お、そうだな()

 

437:名無しのV ID:kR1Z9C5zG

>>426

ぼくたまちゃんの書いた地雷系女子服のあきみゃすこ

 

440:名無しのV ID:71EateJII

>>437

ぼくはうにママ作の文学系女子丸眼鏡あきみゃおねーさんがすこすこ

 

 

 




マシュマロ
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馬の実名出したらまずいかもと思ったから(散々楽曲使用しといて今更だけど)ぼかしてます。


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42.お泊り会の買い出し

レアコレに脳を破壊されて投稿サボってました。
ぼちぼち復帰という事で短いけど投稿です。


 

「ケーキ、ケーキ~!」

 

 クリスマス当日、私とチカは予約したケーキを取りに行くため、街へと繰り出していた。

 チカが目の前で歌い歩きながら器用にくるくる回ってる。周りから見たら完全に女児そのものだけど、この子大学生なんだよね……

 

「その前にタコパの買い出しでしょ?」

「へへ、そうでしたぁ~」

「もう。クリスマスは毎年一緒に祝ってるじゃん。なんでそんなにテンション高いの」

「今年はみんなも一緒だもん。2人が4人になるから楽しみも2倍なのだ!」

「そうはならんでしょ。馬券当てて高いケーキ予約したからって浮かれすぎ」

「むぅ。あぶく銭はパーッと使うのが楽しいのに」

「そんなダメ人間みたいな事言わないでよ」

 

 ただでさえ私みたいなダメ人間に関わって人生台無しにしてるんだからさ。

 そう思ったが、折角のクリスマスなので苦言はこのくらいにしておく。

 スーパーについた私達は具材を確認する。

 

「ケーキもあるし、タコは少なめでいいでしょ。……なにかタコの他に入れたいものあるかさく姐達に聞いてみよ」

 

 さく姐と冬城は2人でクリスマスプレゼントを買ってから家に来るとの話だったのでLimeで連絡を入れると、さく姐からはすぐに既読がつき「焼き鳥」と返事が返ってくる。今日は酒なしだぞ。

 冬城からは既読がついたのに返事が返ってこない。

 

「わたしベーコン入れるね~」

「うむ。肉ばっかだねキミたちは。後でトマト入れとくか」

 

 さく姐ご所望の鳥ももの焼き鳥を買い物かごに入れた横から、チカがぽいっとブロック状のベーコンを投げ入れてくる。

 もうちょっと女子力とか意識した方がいいんじゃないかな。そう思いながらも口に出す事はやめて、その他の具材や、お菓子を買っていると音沙汰の無かった冬城から「チーズ」との返事がきた。

 

「そんな悩む事か?」

「どうしたの~?」

「冬城がチーズ欲しいんだって。そのくらいさっさと言えばいいのに」

「きっとあさひちゃんになにか頼むのを申し訳ないとか思ってるんじゃないのかなぁ。かわいいよねぇ、ことちゃん」

「もう知り合ってから3か月以上経ってるのに……どれだけ人見知りなんだよ。最初の内は私も大目に見ていたけどそろそろ手が出るぞ」

 

 ひん剥いて強制的に裸の付き合いでもしてやれば、冬城とももうちょっと円滑なコミュニケーションがとれるようになるのだろうか。ちょうどお泊り会だしいいアイデアかもしれない。

 

「そう? ことちゃんもだいぶ遠慮がなくなってきたように思うよ? さく姐もそうだけどあさひちゃんと2人でいる時は好き好き~って感じのオーラすっごい出てるもん。よっ、養殖人たらし~」

「それはもう完全に蔑称なんよ」

「わたしというものがありながら他の女の子を誑し込んでるあさひちゃんに文句の一つや二つくらい言ってもバチは当たらないと思うのです。浮気も重婚もいいけどかまってくれないと拗ねるからね」

「はいはい、よしよ~し」

「くぅん」

 

 抱き着いてくるチカの頭を適当に撫でると、彼女は犬みたいな鳴き声を発した。

 そもそも私の人生は全部チカのために使ってるのにこれ以上何を望んでいると言うのだろう。コラボ配信だってちょくちょくしてるのに本当に強欲だなあ。

 そこまで考えてふと思い浮かんだ事を口にする。

 

「そうだ、配信しない方がチカのために時間は使えるじゃん」

「そういう事じゃないの。もう! あさひちゃんは乙女心がわかってないなあ」

 

 されるがままになっていたチカがバッと顔を上げて怒った顔を見せる。

 乙女心ってなんだ……? くそう、もっとシンプルに物事を捉えろよ人類共……!

 しかし、今日の私は流されるまま生き恥を晒すいつもの私とは違うぞ。

 

「まあ、待ちんしゃい。なにも今すぐやめたいとかそんな話じゃないよ。お仕事だからね。色んな人を巻き込んでまで始めた事なのに、終わり方まで滅茶苦茶じゃあ申し訳が立たない。どんな事があっても切りの良い所までは続けるよ。でも、それとは別の話で。……もう私の役割は終わったでしょ」

 

 チカが反論せずにじっと見つめてくるだけなのでそのまま続ける。

 

「スタートアップはもう成功してる。人気商売なんて誰にも見られないフェーズを乗り越えた後は、勝手に周りが熱狂して盛り上げてくれるものだし、そういうのチカは得意でしょ。私がいようといなかろうと、チカは勝手に人気になってくよ」

 

 ……そもそもチカがその気なら、最初から私の存在なんて不要だったという事実は置いておく。

 『秋宮ゆらら』という引き立て役がいなくても、『夏風たま』が勝手に輝く事を確信できたというのであれば、潔く身を引く方が物語としても蛇足がなくて切りがいい。活動を辞めざるを得なくなった親友の思いを胸に更に輝くアイドル、うん。バックストーリーも完璧だな。

 私は元の自堕落な生活に戻るので、チカにとっては一石二鳥だ。

 

「……ねえ、あさひちゃん。この活動は楽しい?」

 

 唐突にチカがそんな風に問いかける。

 

「うーん……楽しいよ。多分そう思ってる」

「そっか、良かったぁ」

 

 数瞬記憶を整理してそう答えると、チカは安心したように笑う。

 

「前に、あさひちゃん言ってたよね。あさひちゃんをVtuberにさせたかった理由はなんだ~って」

「言ったね。どうせ答えてくれないんだろうけど」

 

 チカは抱き着くのをやめて私の前に立ち、大きく腕を広げて宣言する。

 

「あさひちゃんの頭の中をハッピーで埋め尽くすのが私の目標だからだよっ! ……へへっ、なんちゃって」

「まーた、はぐらかして。まったくもう」

 

 言った後に恥ずかしくなったのか、照れ隠しに舌を出すチカを呆れた目で見る。

 そんな無駄な事したって意味なんかないのにね。

 ……まあ、無駄を積み重ねるのも人間の生き方の一つか。

 

「わかったよ。蛇足だろうとチカがやりたいならいくらでも付き合うよ。よくよく考えたら私の人生そのものが蛇足だし。その代わりちゃんと私の終わり方まで管理するか、すぱっと捨ててよね。今までと同じようにさ」

「またそれ言う。わたし、あさひちゃんを捨てたりしないもん」

 

 どーだか。チカにはもっと夢中になれるものがあると思うよ。

 そんな思いを私は口に出す事はなかった。

 口に出す事で本当にチカが私への興味を失ってしまうのが怖い……などと殊勝な気持ちを持つような人間で私があれたのなら、ここまで拗れた事にはならなかったのかなとふと思ったのだった。

 

 買い出しの後、ケーキを取りに行った。ホールケーキだった。

 チカさん、タコパの後でホールケーキは食べきれないと思うよ……?

 ウキウキでケーキを受け取るチカに水を差すような事は言えなかった。ここで口に出せるような人間で私があれたのなら、もう少し幼馴染は年相応の落ち着きを持っていたのかと思うと涙が止まらなかった。

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。


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