白い部屋の最高傑作、ボーダーにて (齏琥梦)
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幕間
幕間 出水公平の独白 〜天才〜


まずはお詫びを。
投稿出来ずにすいません。
実は2000文字程度書けているんですがその後の展開がどうも上手く書けなくて。
このままだと大規模侵攻編がズルズル行っちゃいそうなんでどうしたもんか悩んでおります。
12月中にはどうにか形にしたいと思ってます。
それまでは少し幕間を挟みたいと思います。

…失踪はしないです!
書き切りたいです!


──出水ダウン、2-0、綾瀬川リード。

 

機械音が俺のダウンを告げる。

 

今までに見たことのない速度で距離を詰めた綾瀬川は俺のトリオン体をいとも容易く斬り裂いた。

 

 

 

…いや、綾瀬川と会ったばっかの時もこんな攻撃食らったっけ。

 

 

──

 

第一印象はパッとしない、地味な奴。だった。

 

 

C級の戦闘服に身を包み、何故か友人である三輪秀次とつるんでいた。

 

「よう、三輪。お前がランク戦ブースにいるなんて珍しいな。」

 

俺は三輪の肩を小突きながら話しかける。

 

「…出水か。陽介が探していたぞ。」

 

「ああ。それならさっきランク戦してやったよ。槍バカは太刀川さんに絡まれて太刀川さんとやり合ってる。」

 

三輪の言葉にそう返す。

 

「…見ない顔だなー。C級か?」

 

三輪の隣にいる男に声をかける。

 

「…B級だ。隊に入ってないから隊服はそのままだ。」

 

その男の代わりに三輪が答える。

 

「…綾瀬川だ。三輪の友人なんだな。よろしく頼む。」

 

聞いていると気が抜けそうなくらいの抑揚のない声。

瞳はビー玉のように無機質だった。

 

「ほー、綾瀬川ね。俺は出水。太刀川隊で射手をやってる。お前はどのポジションなんだ?」

 

「奇遇だな。オレも射手をやってる。」

 

「マジ?!ちょっと撃ち合おうぜ!」

 

ボーダーでは数少ない射手と言うポジションに俺は興奮気味に綾瀬川を誘う。

 

「…分かった。」

 

 

 

 

 

「アステロイド!!」

 

俺の放ったアステロイドが綾瀬川を包み込む。

 

 

『綾瀬川ダウン、9-0、出水、リード。』

 

 

二宮さんや加古さんと戦ってきたからか。

綾瀬川はものすごく手応えのない相手だった。

 

「うーん、やっぱあの人達がおかしいだけかぁ。」

 

目を細める俺の前に綾瀬川が戻ってくる。

 

「悪いな、手応えなくて。」

 

「いや、別に…」

 

そう言いながら俺はトリオンキューブを構える。

 

まあいいか、終わらせよう。

 

 

そう思ってフルアタックの構えを取ろうとした時だった。

 

 

 

目前に綾瀬川が迫っていた。

 

 

「ッ?!」

 

「…メテオラ。」

 

いつの間にか綾瀬川の背後に作られていたトリオンキューブ。

 

それは光り輝くと仰け反った俺に襲いかかる。

 

「ちっ…!」

 

どうにかシールドを展開。

 

爆風を防ぐ。

 

「アステロイド!」

 

サブトリガーでアステロイドを生成。

綾瀬川目掛けて撃ち出す。

 

 

 

 

 

綾瀬川の目はそれ一つ一つを見定めるように高速で動いていた。

 

 

 

高いトリオンから放たれた弾幕に、綾瀬川は為す術なく穴だらけにされる…

 

 

 

 

…ことは無かった。

 

 

 

煙が晴れるとそこには無傷の綾瀬川が。

 

 

 

そのまま、綾瀬川は俺との距離を一瞬で詰めると、弧月を一閃。

 

 

俺のトリオン体を真っ二つに斬り裂いた。

 

 

 

──

 

 

「あの時もこんな風に俺をぶった斬りやがったよな?綾瀬川。」

 

俺は過去の事を思い出し、綾瀬川に尋ねた。

 

「あん時はお前火事場の馬鹿力とか言ってたけど…全部計算づくだったって事か?」

 

「今のお前に偶然だったと言ってお前は信じるか?」

 

「…信じねえな。」

 

「なら無駄な問答だ。言っただろ?時間も惜しい。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構える。

 

「希望があれば聞こう。バイパーでの撃ち合いでも構わない。」

 

「いんや、弧月でいい。…随分余裕そうじゃねえか。ぜってー穴だらけにしてやる。」

 

太刀川さんや緑川とやってたおかげだ。

 

 

 

…目で追えねえ速度じゃなかった。

 

メテオラでの広範囲爆撃、あとは視線で綾瀬川の動きを読む。

 

 

俺は神経を研ぎ澄ませる。

 

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

 

 

 

──は?

 

綾瀬川の姿がぶれたかと思うと、綾瀬川は弧月を抜いていた。

 

 

音は遅れてやってきた。

 

 

キィと甲高い旋空の音。

 

 

隣の家屋や、電柱は切られたことを自覚したように綾瀬川が弧月を鞘に収めた瞬間に崩れ始める。

 

 

 

俺が切られたと自覚したのもその瞬間だった。

 

 

生駒旋空。

 

攻撃手6位の生駒さんの代名詞だ。

 

 

「ハッ…マジかよ…。」

 

 

 

──出水、ダウン。3-0、綾瀬川リード。

 

 

 

「お見逸れしたぜ、綾瀬川。爪を隠してやがったな?」

 

「隠していたつもりは無い。使う機会がなかっただけだ。」

 

「どーだか…。俺にその爪を見せやがったのはどういう訳だ?」

 

俺は綾瀬川に尋ねる。

 

「言っただろう。合成弾を教えて欲しいと。」

 

「本気で言ってんのか?今までわざと負けてまで実力を隠してきたお前がそれだけのために俺に本気を見せるってのか?」

 

その言葉に綾瀬川は少し考えた後口を開いた。

 

「…お前はなにか勘違いしてるみたいだな、出水。」

 

綾瀬川は弧月の鍔を触りながらそう話す。

 

 

「お前の技術、センスは賞賛に値する。…オレはここであらゆるトリオン技術を学んだ。攻撃手、射手、銃手、狙撃手、特殊工作兵、オペレーター。…エンジニアもだ。」

 

 

綾瀬川はさらに続ける。

 

 

「だが…弾トリガーを混ぜるなんて発想は思いつかなかった。…その生みの親がお前なんだろう?出水。お前が簡単に扱う合成弾もオレにとっては未知の技術。それを教わる以上リスクのある対価を支払うべきだ。」

 

「…なるほどな。そこまで俺の合成弾を褒められるとは思わなかったぜ。」

 

綾瀬川の言葉に俺はトリオンキューブを生成しながらそう返した。

 

「合成弾だけじゃないさ。お前にも興味がある。」

 

綾瀬川は俺の目を見ながらそう話した。

 

 

「ボーダーでもトップクラスのトリオン能力、センス、発想力。オレにないものをお前は持っている。そんな奴と戦ってみたかったんだ。」

 

話は終わりと言うように綾瀬川は弧月を抜いた。

 

 

 

 

「…オレに敗北を教えてくれ、出水。」

 

 

 

 

そう言って弧月を振るう怪物に俺は為す術なく蹂躙された。

 

 

 

 

「っ…クソ…。」

 

 

 

敗北数は重なり、既に90回俺のトリオン体は切り裂かれた。

 

 

「あー、もう降参。弧月持ったお前に勝てる気がしねー。」

 

俺は諦めたように両手を広げ仰向けに寝転がる。

 

 

「ラスト10本は俺の得意でやらせてもらうぜ。」

 

「撃ち合いか。分かった。正直撃ち合いは不利だな…。」

 

「勝てねえって言わねーのがムカつくな。」

 

俺はトリオンキューブを生成しながら立ち上がる。

 

「そうでも無いさ。完勝は出来なそうだ。」

 

 

綾瀬川もトリオンキューブを分割。

 

俺のバイパーと綾瀬川のバイパーが衝突した。

 

 

 

 

──綾瀬川ダウン。90-5.綾瀬川リード。

 

 

 

「やるな、出水。」

 

「たりめーだ。舐めんなよ。」

 

撃ち合いが始まってから5本。

俺は連続で綾瀬川から得点を上げていた。

 

 

「トリオンも高いし、技術もだ。バイパーをオレより扱えるやつがいるとは思わなかった。」

 

真顔で褒められる。

なんだかむず痒い。

 

 

「…それに合成弾はどれだけ見ても意味がわからない。なんで混ぜようと思ったんだ?」

 

「何となく。曲がるメテオラとかめちゃくちゃ強くね?って思ってバイパーとメテオラ合わせたら出来たんだよ。」

 

「やはりお前はオレの想像以上の男だ、出水。」

 

綾瀬川は改まってそう言った。

 

「だが…お前の弾はもう見切った。悪いがここからは気持ち良く勝たせてやることは出来なそうだ。」

 

「言うじゃねえか。やってみろよ。…メテオラ+バイパー、トマホーク!」

 

俺の合成弾に合わせて綾瀬川はトリオンキューブを生成。

 

バイパーか?

 

そう思った瞬間に、綾瀬川の姿が掻き消える。

 

 

 

予想通り。

 

「回り込んでアステロイドだろ?!分かってんだよ!」

 

俺は合成弾を消して振り返り、メインはシールド、サブでアステロイドを放つ。

 

「…メテオラ。」

 

 

距離を詰めた綾瀬川の掌底から、押し出すようにメテオラが至近距離で放たれる。

 

分割もされなかったそのトリオンキューブは俺のシールドを砕き、トリオン体に風穴を空ける。

 

 

 

「…は?」

 

「分割なしのメテオラだ。お前のトリオンがどれだけ多くてもそんなに広げたシールドじゃ防げないぞ?」

 

「んだそれ…。」

 

その後も綾瀬川の猛攻は続く。

 

シールドを纏った手から撃ち出される至近距離でのメテオラ。

化け物じみた反射神経で俺だけ爆風に包まれ綾瀬川は何ともないように避けやがる。

 

 

「だーっ!至近距離でメテオラとか頭おかしいだろ!?なんでお前は避けれるんだよ!?」

 

「まともな撃ち合いじゃオレはお前には勝てない。お前がオレには無いトリオン能力の高さとバイパーの技術を活かしてオレに勝ったようにオレはお前に無いもの使ってお前と戦っているだけだ。」

 

「それが至近距離のメテオラって事かよ…。」

 

「自分の作り出したメテオラの爆撃範囲なんて簡単に演算できる。この演算能力はオレのサイドエフェクト。お前には無いものだ。」

 

「!…サイドエフェクト…道理で。」

 

「緑川や米屋が言っていたことがわかった気がする。強い奴との戦いはいい刺激になった。

 

 

…お前とのランク戦は楽しかったぞ、出水。」

 

「何終わった気でいやがる、まだ5本残ってんだろ!」

 

俺は笑みを浮かべてトリオンキューブを生成、綾瀬川もトリオンキューブを作り出した。

 

 

 

 

──出水ダウン。95-5、勝者綾瀬川。

 

 

 

「5本だけか〜、マジで化け物だなお前。でも楽しかったわ。約束通り合成弾は教えてやんよ。帰ろーぜ。」

 

「…」

 

そう言って出口に歩き出した俺を綾瀬川は何も言わずに見ていた。

 

「どうした?」

 

「…聞かないんだな、オレが実力を隠していた事、この施設の事も。」

 

 

その言葉に俺は苛立ちを覚える。

 

「か〜っ!めんどくせえなお前は。聞いて欲しいのか?あぁ?」

 

俺は綾瀬川の頭を叩く。

 

「聞いてお前が真面目に答える気がないのは分かってんだよ。気ぃ遣って聞かないでやったんだからお前からその話すんじゃねえよ。」

 

「いや、お前になら話してもいいと思ってたんだが…そういう事なら何も言わない。」

 

「え…?マジ?」

 

「…え…。」

 

 

──

 

今じゃB級トップの万能手としてボーダーに名を馳せた綾瀬川。

 

活躍する度に思う。

綾瀬川は俺を高くかっていたが、俺では綾瀬川に遠く及ばないのだと。

 

綾瀬川がその実力を徐々に発揮していくのを見ると嬉しい気持ちになった。

ボーダーはそれだけ綾瀬川の予想を超える場所だった。

 

二宮さんに撃ち合いを仕掛けた綾瀬川を見て俺は静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「出水、お前はオレのサポートだ。

 

…太刀川さんとブラックトリガーを抑え込む。」

 

無機質な目で敵を見据える綾瀬川。

 

 

 

「…りょーかい。」

 

 

 

綾瀬川の隣で出水公平はトリオンキューブを構え、笑みを浮かべた。




時系列
綾瀬川との本気の模擬戦(原作前ROUND2の後)

綾瀬川との出会い

綾瀬川との本気の模擬戦(原作前ROUND2の後)

原作前ROUND8

黒鳥争奪戦



綾瀬川清澄→天才射手。自分に無いものを持っている。



幕間ではこんな感じで原作キャラと綾瀬川の絡みを書きたいと思ってます。
大規模侵攻についてはどうにか形にしますのでもう少々!もう少々お待ちを!

感想、評価等お待ちしております。


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幕間 柿崎国治の独白 〜隊長〜

すいません、幕間です。

大規模侵攻の続きは3日以内に書き上げます。
半分くらい書けてるんで。



…しれっと3位かよ…あのロン毛…!


第一印象は不気味な奴だった。

ぶっちゃけそれは今でも変わってない。

 

どこか遠くを見るような無機質な瞳。

こちらへの関心などまるでない様だった。

 

「えっと…なんでウチに入りたいって思ってくれたんだ?」

 

「…友人に勧められて。」

 

ポツリと目の前の少年は作戦室でそう返した。

 

「友人?」

 

「はい。」

 

「…ちなみにその友人の名前は?」

 

お茶を口に含みながら尋ねる。

 

「三輪秀次って言う奴なんですけど。」

 

「ぶっ!!」

 

その言葉に俺はお茶を吹き出す。

 

「三輪って…は?A級三輪隊の三輪か?」

 

「順位とかランクのことはよく分からないですけど…隊長はやってるって言ってました。」

 

その言葉に俺は目の前の少年を見る。

 

 

三輪秀次。

A級三輪隊を率いる、万能手。

かつてボーダーきっての智将、東春秋の下で戦略を学び、その頃の東隊はA級1位に君臨していた。

解散後は隊長として隊を組み、A級に駆け上がった、まさにエリート。

 

 

目の前にいるのはその三輪の勧めで柿崎隊に来たらしい。

 

 

 

 

「詳しく聞こう、ポジションは?」

 

「射手ですね。」

 

「…すまん、まずは名前からだな。」

 

 

 

 

 

「…綾瀬川清澄です。」

 

そう名乗った青年の瞳はやはり無機質だった。

 

 

──

 

「隊長…あの人入隊させるんですか?」

 

保留。

という形で綾瀬川を帰らせた後、隊員である照屋文香が俺に尋ねてきた。

その後ろには巴虎太郎と、宇井真登華も控えている。

 

 

 

「うーん、ちょっと三輪に話を聞いてみる。」

 

 

 

 

──

 

「悪いな急に押しかけて。」

 

次の日俺は三輪隊の作戦室に足を運んでいた。

 

「…いえ。」

 

目の前の三輪秀次はただ一言そう返した。

 

「あれ?ザキさんじゃん。ウチになんか用ッスか?つーかソロやりましょーよ。」

 

三輪隊攻撃手の米屋陽介は俺をランク戦に誘う。

 

「後にしろ、陽介。」

 

三輪はそう窘める。

 

「ちぇー。」

 

「悪いな米屋、野暮用でな。また誘ってくれ。」

 

「へーい。ランク戦ブース行ってこよーっと。」

 

米屋は口を尖らせて作戦室を後にした。

 

「はい、柿崎くん。お茶どうぞ。」

 

「月見…悪いな。お構いなく。」

 

「そういう訳には行かないわ。」

 

そう言って三輪隊オペレーター、月見蓮は俺の前にお茶を置くとデスクに腰掛けるとデスクワークを始めた。

 

「…早速本題に入るんだが…綾瀬川にウチの隊を勧めたらしいな。…どうしてだ?」

 

「綾瀬川の戦力、性格を見て柿崎隊が合っていると判断しました。」

 

三輪は淡々とそう返した。

 

「…ぶっちゃけウチの隊は今負け続きだ。そこに入って綾瀬川の為になるのか?」

 

俺がそう尋ねると三輪は目を細める。

 

「…戦績は関係ないでしょう。それに…為になるならないはあなたが決めることじゃない。」

 

三輪はバッサリとそう言った。

 

「俺にその話をしてきたってことは…綾瀬川を隊に入れる気は無いんですか?」

 

「いや、そう言う訳じゃないんだが…。4人に増えりゃ真登華…オペレーターの負担も増えるだろ?それに戦略も練り直す必要がある。」

 

「それは柿崎隊と綾瀬川の問題です。オペレーターの支援が難しいのなら入隊を断ればいい。」

 

それを言ってしまえばそうなのだが…

 

「…じゃあなんで綾瀬川をウチに推薦したんだ?」

 

三輪が推薦したということは柿崎隊の現状も分かっているはずだ。

 

「柿崎隊のスタイル、隊員の性格が綾瀬川に合っている…。そう判断したからです。…これをどう取るかはあなた次第だ。」

 

そう言って三輪は立ち上がる。

 

「だが…前回のランク戦を見る限りこのままじゃ柿崎隊は順位を落とし続ける。…それはあなたが1番分かっている事じゃないのか?」

 

「…っ…。」

 

 

 

「三輪くんがごめんなさいね、柿崎くん。」

 

しばらくすると、月見が話しかけてきた。

 

「いや、別に…事実だからな。」

 

俺は握りこぶしを作る。

 

このままじゃダメな事くらい分かっている。

文香は歌川や奈良坂と新人王を争ったほどの逸材。

虎太郎は当時、唯一の小学生正隊員。

真登華もだ。

B級中位でも下の方。

こんなところにいていい人材じゃない。

頭では分かってる。

隊長である俺のせいだ。

 

それを年下である三輪に言われると来るものがある。

 

 

「綾瀬川…か。

 

 

 

…よし…!」

 

 

 

──

 

「という訳で俺は綾瀬川を隊に迎え入れたいと思う。」

 

作戦室で俺は文香、虎太郎、真登華の前でそう切り出す。

 

「え?!入れるんですか?!」

 

虎太郎が声を上げる。

 

「うーん…私オペ出来るかなー。」

 

真登華は不安そうにそう言った。

 

「理由を聞いても良いですか?」

 

文香は冷静に尋ねた。

 

「…ぶっちゃけ1番の理由は三輪からの推薦ってのが大きい。後は銃じゃなくて弾トリガーを使った中距離の火力強化を視野に入れてる。」

 

「うーん、でも真登華先輩の負担が大きくないですか?B級じゃ4人部隊なのは生駒隊くらいです。」

 

「それは分かってる。真登華には負担をかけちまう。だが…何か変えなきゃ俺たちは上に上がれねえと思うんだ。

 

 

 

…俺は綾瀬川に賭けてみようと思う。」

 

「「「…」」」

 

3人は真剣な表情で俺を見ていた。

 

「…はぁ…忙しくなるなぁ。綾辻先輩に弟子入りの打診してみよーっと。」

 

「4人に増えるってことは戦略の幅も増えますね!オプショントリガーの追加とか考えてみますか?」

 

「…後衛…ってことになるのかしら?早めに綾瀬川さんに連絡取って連携の練習をしましょう。次のシーズンまであまり日が無いですよ。」

 

真登華、虎太郎、文香はそう反応する。

 

「言っときますけど1番の忙しいのはザキさんですよ!早く綾瀬川先輩に連絡取ってください!」

 

「…お前ら…

 

 

 

…ああ!分かった!」

 

 

 

そうして俺たち柿崎隊は綾瀬川を隊に迎え入れた。

 

 

──

 

「…え?いいんですか?」

 

綾瀬川は少し目を見開きそう反応した。

 

「ああ。次のシーズンまで時間がねえ。作戦室に来てくれるか?」

 

「…了解です。」

 

 

 

 

「えっと…綾瀬川清澄です。ポジションは一応射手やってます。えっと…まぁ…よろしくお願いします。」

 

 

歯切れ悪く綾瀬川は自己紹介をする。

 

「改めて自己紹介するぜ。俺は柿崎国治だ。ポジションは万能手。隊長をやらせてもらってる。」

 

「照屋文香です。同じく万能手です。よろしくお願いしますね?綾瀬川先輩。」

 

「巴虎太郎です!銃手です。今は万能手目指して頑張ってます!」

 

「オペの宇井真登華ですー。」

 

俺たちの自己紹介に綾瀬川はどこか居心地悪そうに頭を搔く。

 

「…よろしくお願いします。」

 

そう言って綾瀬川は改めて頭を下げた。

 

 

 

 

次の日の歓迎会で分かったことだが、綾瀬川はかなりの古参らしい。

だから三輪と仲が良いのか…。

虎太郎と同じく万能手を目指しているそうだ。

 

結論から言うと綾瀬川はそこまで強いと呼べる奴じゃなかった。

仮想戦闘も1分。

正隊員にしちゃ遅い。

防衛任務の時はいい動きしてたんだがな…。

 

 

そしてその翌日、とんでもない事実が発覚する。

 

 

綾瀬川 清澄

 

弧月 5000P

スコーピオン 5000P

アステロイド 5000P

ハウンド 5000P

メテオラ 5000P

バイパー 5000P

イーグレット 5000P

 

「…うわー…気持ち悪ー…。」

 

真登華が引き気味に苦笑いをうかべる。

 

そりゃそうだ。

こんな綺麗に揃ったポイントは見たことが無い。

まずこれだけのトリガーに手を付けてる奴も初めて見た。

 

「まぁ…偶然ってことも有り得る…のか?」

 

「いやいや、ザキさん本気で言ってます?」

 

「…だよな。…聞いてみるか。」

 

 

 

 

 

「偶然って怖いっすね。どのトリガーがオレに合うか迷走してたらこんな事になってました。」

 

綾瀬川は呆気からんとそんな事を言って見せた。

 

「…でも全部のポイントが5000ですよ?偶然で片付けられますか?」

 

文香の疑問はご最もだと思う。

俺だってそう思う。

 

「狙ってポイントなんて揃えれるはず無いでしょう…。」

 

綾瀬川の言い分もご尤もだ。

 

 

 

…だがもしこれを狙って揃えてるのだとしたら…。

 

 

そう考えて俺は首を横に振る。

 

 

だがこの時の俺の予感は正しかった。

 

ROUND1ではその片鱗を。

ROUND2以降では思い知ることになる。

 

 

綾瀬川という怪物の恐ろしさを。

 

 

──

 

「…強い…。」

 

ROUND3村上とカゲとやり合っている清澄を見て虎太郎がそう呟いた。

 

俺も息を飲む。

 

 

ROUND2でも確かに凄かった。

しかしまさかここまでとは思わなかった。

 

 

そのまま清澄は4点取って帰ってきた。

 

だと言うのに表情は変わらない。

何を考えているのかまるで読めない。

 

 

今日俺は清澄を心強いと思うと当時に底知れない恐ろしさを感じた。

 

 

何者なんだ?

 

 

この一言はついに清澄に尋ねることは無かった。

 

誰にだって秘密はある。

文香にはそう言ったが多分俺は清澄の裏を知るのが怖かっただけだ。

 

 

 

 

 

「虎太郎は清澄の事どう思ってるんだ?」

 

迷っている時俺は虎太郎に聞いてみた。

 

「どうって…頼れる先輩ですね。清澄先輩が柿崎隊に来てくれて良かったです。」

 

虎太郎は無邪気な笑みを浮かべてそう言った。

 

「…そうか…。」

 

そう言って俺は考え込む。

 

「…隊長の気持ちも分かりますよ。」

 

そう呟いた虎太郎に目を向ける。

 

「え?」

 

「謎ですもんね、清澄先輩って。俺は難しく考えないようにしてます。清澄先輩はもう柿崎隊の一員なんで。」

 

虎太郎は笑みを浮かべる。

 

「謎だけど面倒見はいいしどこか抜けてるのも面白いです。緑川と同じにはなっちゃうんですけど…清澄先輩は俺にとって兄みたいな感じなんです。

 

 

 

…それに同じ柿崎隊の清澄先輩がめちゃくちゃ強いって喜ぶべきことだと思いません?」

 

「…」

 

俺は虎太郎を見て吹っ切れる。

悩んでた俺が恥ずかしくなるほど虎太郎は割り切っていた。

 

「…ハッ…違いねえな。」

 

俺はそう言って虎太郎の頭をクシャッと撫でた。

 

 

 

 

 

 

「オレは柿崎さんが隊長で良かったと思ってますよ。」

 

清澄からまっすぐ目を見られて、そう言われた時は涙が出そうになった。

てか出た。

何故かようやく同じチームになれた気がした。

 

 

 

 

 

「…柿崎さん…オレは柿崎隊万能手綾瀬川清澄です。…隊長の決めた事に異論なんてありません。」

 

頼れるチームメイトの清澄。

 

 

 

「オレはオレに与えられた任務を遂行するだけだ。道を開けろブラックトリガー。この状況でまだ抵抗を選ぶのか?」

 

城戸司令の懐刀にして切り札である清澄。

 

 

 

 

『…怒ってくれていいんですよ。オレが手を抜いてたから虎太郎は落ちたんだ。』

 

そしてどこか不器用で迷いを見せた清澄。

 

 

どの一面も同じく綾瀬川清澄と言う柿崎隊万能手にして、ダブルエースの一角。

 

 

 

 

 

 

『ザキさんザキさん!清澄先輩がブラックトリガー倒したって!!』

 

真登華が興奮気味に通信を入れる。

 

『…ハハッ、さすが俺たちのエースだな。』

 

『…わ、私だって…。』

 

俺の言葉に文香は気合いを入れ直す。

 

『こっちからですけど俺もやれることやりますんで!』

 

虎太郎も気を引きしめる。

 

 

 

 

だからこうして清澄の勝利を喜べる。

 

 

 

 

「清澄に負けてられないな…

 

 

 

 

…行くぞ!」

 

 

「「「了解…!!」」」

 

 

 

 

 

清澄はいつか俺に秘密を打ち明けてくれるだろうか?

 

 

いや、打ち明けてくれなくても関係ない。

 

 

 

 

 

隊長として俺を受け入れてくれた清澄と同じく俺は、清澄をエースとして受け入れるだけだ。





綾瀬川清澄からの印象


迷える駒

頼れる駒

頼れる隊長


感想、評価等お待ちしております。


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幕間 宇井真登華の独白 〜笑顔〜

宇井ちゃんの独白ですね。
どうぞ。


 

こんなに表情が変わらない人っているんだなぁと。

先輩との初対面で私が抱いた感想はそれだった。

ピクリとも吊り上がらない口角。

何よりその無機質で、ビー玉のような瞳。

 

それは時が経っても一緒。

 

試合に勝った時。

負けた時。

美味しい焼肉を食べた時。

B級のトップに立った時だってそう。

 

 

この人が笑うのはどんな時なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…誰の隣で笑うんだろうか。

 

 

 

 

──

 

 

「結局真登華ちゃんってさ…

 

 

 

…綾瀬川くんとどうなの?」

 

 

ROUND8、最終戦を終えて2週間。

どら焼きを齧りながらそう尋ねてきたのは私の先輩であり、師匠の嵐山隊オペレーター、綾辻(あやつじ) (はるか)だった。

 

「どうって…?」

 

「またまた〜。噂になってるよ?」

 

「噂?」

 

「うん。話題の天才万能手、綾瀬川清澄は後輩のオペレーターと毎日一緒に帰ってるとか、学校でも一緒にいるのを見た、とか、ボーダー帰りにデートしてるとか。」

 

「デートって。一緒に帰ってるのはザキさんが帰り道危ないから一緒に帰ってやれって清澄先輩に言って、帰り道途中まで一緒だから一緒に帰ってるだけですよ。学校はボーダーの用事の伝言だったり、勉強教えてもらったりですよ。それにほら、ヒカリ先輩と清澄先輩仲いいんで。それにデートって言うかただ帰りにご飯食べに行っただけですよ?…あ、それで思い出した。聞いてくださいよ、綾辻先輩、この前清澄先輩と防衛任務帰りにご飯食べに行ったんですけど。」

 

「うんうん。」

 

「清澄先輩、タピオカ飲んだこと無かったんですって。だから試しに飲んでみようってなって飲んだら、タピオカが喉に飛び込んだみたいで…人が大勢いる前でむせて…ぷっ…ふふ…、ダメだ、思い出しただけで笑える…!」

 

「綾瀬川くんがむせるって…何その絵。私も見てみたい。」

 

「その写真ありますよ。」

 

そう言ってタピオカを持ってツーショットの写真を見せる。

清澄先輩はむせたあとの為、少し涙目だ。

 

「あ、これ猫カフェ行った時の写真です。」

 

猫をまじまじと見る清澄先輩の写真を見せる。

 

「へー、綾瀬川くん猫カフェとか行くんだ。」

 

「隠岐先輩んちの猫の写真見たらしくて。触ってみたいって言ってたんで。」

 

「…へー。」

 

そう言って綾辻先輩は含みのある笑みで私を見つめる。

 

「…何ですか?」

 

「いや、仲良いなって思って。最初は1人増えて私に不安そうに相談してきたのに。」

 

「さ、最初は…まあ…。でも今は面白くて頼りがいのある先輩です。」

 

口にすると恥ずかしい。

 

「ふふ、良かったぁ。」

 

「何がですか?」

 

「ほら、柿崎さんの隊を真登華ちゃんに薦めたの私だし。今じゃB級1位のオペレーターだもんね。師匠として鼻が高いなって。」

 

「ま、まだまだですよー。清澄先輩に頼ってばっかだし…。これからも色々教えてください…。」

 

「もちろん。でも凄いよねー。綾瀬川くん。あの二宮さんに勝っちゃうんだもん。」

 

綾辻先輩は続ける。

 

「今度ボーダーの高2組何人かでチーム戦やろうって話になってさ。ほら、里見くんとかスカウト旅で暫く会えなくなるじゃない?私綾瀬川くんが隊長やる隊のオペレーターやる事になってるんだよねー。」

 

「あー、なんか清澄先輩そんな話してたかも。だから私に清澄先輩の事聞いてきたんですか?」

 

「それもあるけど…謎じゃない?綾瀬川くんって。」

 

「謎…ですか?」

 

「うん。まずあの三輪くんと仲良いってだけで謎だよね。」

 

三輪先輩。

A級三輪隊の隊長であり、清澄先輩が1番仲のいい先輩だ。

清澄先輩は三輪先輩の紹介で柿崎隊に入ってきた。

 

「綾瀬川くんと話してる時って三輪くんたまに笑うんだよねー。」

 

「へぇ⋯。」

 

失礼な話だがあの三輪先輩が笑ってるところは想像つかない。

 

「清澄先輩は笑わないですけどね。」

 

「確かに見たことないかも。笑わない同士気が合うのかな?…でもそれがミステリアスでいいって言う人が多いんじゃない?」

 

「…そうなんですか?」

 

「うん。知らないの?綾瀬川くんって結構女子隊員とか、オペレーターに人気なんだよ?」

 

「えぇ?!」

 

私は勢いよく立ち上がる。

 

「あの天然KY表情筋死んでる清澄先輩がですか?」

 

「酷い言い草だね…。ほんとだよ?何より強いし。夏凛ちゃんとか最近よく綾瀬川くんのこと聞いてくるし。歌歩ちゃんもこの前綾瀬川くんと初めてお話したって喜んでたよ。」

 

「あー…結束先輩は私のところにも来ました。三上先輩は分からないけど結束先輩はそう言うのじゃない気がします。」

 

「私もそう思う。それにほら、綾瀬川くんって結構イケメンじゃない?」

 

「イケメン?清澄先輩が?」

 

「そうそう。ボーダーのイケメンランキング5位にいたよ。」

 

「…なんですか?そのランキング。」

 

「出処は私もわかんない。あ、根暗ランキングにもいた。」

 

「それは分かります。」

 

そう言って私は考え込む。

 

 

…そっか。

 

清澄先輩って結構モテるんだ。

確かにイケメンと言われればイケメンな気がする。

強いし、KYだけど気は利くし優しい。

私のワガママに付き合ってくれるし面倒見もいい。

勉強はまあ私に教えるくらいにはできるし、運動もできる…はず?

 

あれ?清澄先輩ってハイスペックなんじゃ…?

 

それに清澄先輩は結構異性との関わりもある。

小南先輩や、加古さん、ヒカリ先輩。

その隣にいる清澄先輩を想像する。

 

いや、よくある光景だな。

 

 

綾辻先輩と別れたあと、そんなことを考えながら作戦室に着く。

 

 

「…あれ?清澄先輩いるじゃん。」

 

作戦室にはソファに腰掛ける清澄先輩が。

 

「清澄先輩…?」

 

近付くも返事は無い。

代わりに規則的な息遣いが聞こえる。

 

「…寝てる。」

 

目の前には何やら資料が広げられている。

 

「…」

 

私はそれとなく清澄先輩の隣に座る。

 

別にやましい気持ちがあるわけじゃない。

 

誰にでもない言い訳をするがそれは本当だ。

 

…ただ気になるのだ。

 

 

私はそっと清澄先輩の顔に手を伸ばす。

そしてほっぺを両手でつまむと上にあげる。

 

 

「…あ。」

 

 

瞬間、清澄先輩と目が合う。

 

「…何やってるんだ?」

 

「き…」

 

「き?」

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

 

 

 

そして私は清澄先輩の頬を思い切り叩いた。

 

 

 

 

 

「…ほんと…ごめんなさい、清澄先輩。」

 

「いや別に。あそこで寝てたオレも悪いだろ。…で?オレの頬をつまみ上げて何がしたかったんだ?」

 

「えっと…その…」

 

恥ずかしさのあまり私は目をそらす。

 

 

なんてことは無い。

私がやりたかった事はただ1つ。

 

清澄先輩の頬をつまみ上げて強制的に笑顔にしたかっただけだ。

 

…あれ?これ説明したら私かなりやばいやつじゃない?

 

 

 

「…なんでもないです…。」

 

「?」

 

「そ、それよりそれは?勉強ですか?」

 

「まあな。前にも言ったろ?今度同級生何人かでチーム戦をすることになったんだ。どう言うわけか隊長にされてな。色々作戦を考えてるところだ。」

 

「そういえばどんなメンバーなの?」

 

「オレの隊の1回戦目のメンバーはオレと綾辻、里見と隠岐だな。」

 

「普通に強そう。」

 

「まあ悪くないメンバーだが…相手に天敵がいるからな。」

 

清澄先輩はそう言って考え込む。

 

「天敵…ですか?」

 

「ああ。奈良坂だ。1km先から当ててくる。意識外からの狙撃はさすがに演算しきれない。」

 

「…もしかしたら弱点バレちゃうかもですね。」

 

「ああ。どうにかなればいいんだけどな。」

 

「…ふーん…。」

 

──

 

清澄先輩は最近各マップの射線を調べてるらしい。

ザキさんがそう言っていた。

きっと1人でどうにかしちゃうのかな。

 

そう思うとちょっと寂しい。

 

 

「ね、ねえ清澄先輩。清澄先輩の弱点だって言う意識外からの狙撃なんだけどさ…。仮に私が清澄先輩のいる位置からの射線を全部把握しといて清澄先輩に伝えればどうかな?」

 

気付いたらそう口にしていた。

 

「それは願ってもない話だが…かなりの手間だぞ?把握しきれるのか?綾辻だって全部は把握してないだろ。」

 

「射線管理が綾辻先輩より上手い人は私の前にいるからね。」

 

「…」

 

「清澄先輩、私に射線管理、教えてくださいっ!」

 

私は清澄先輩に頭を下げる。

 

「はあ…分かった。やるからには徹底的にだぞ?」

 

「!…はいっ!」

 

きっと私は悪い顔をしてる。

清澄先輩に色々2人きりで教えて貰える。

それに清澄先輩の役に立てる。

 

 

一石二鳥だ。

 

そう考える私は悪い女なんだろうな…。

 

 

───

 

自覚したのは本部長の命令で、玉狛にあるというブラックトリガーを守ると言う任務を受けた時だった。

清澄先輩は何故か不参加となる。

 

しかし、清澄先輩は現れた。

 

城戸派最強の刺客として。

 

 

その圧倒的な強さはまさに圧巻だった。

 

嵐山隊、諏訪隊を瞬く間に緊急脱出させると、ブラックトリガーを使った迅さん、太刀川さんを圧倒。

ボーダー最強部隊と言われる玉狛第一も1人で手玉に取る実力。

 

目が離せなかった。

 

 

驚愕。

恐怖。

実力を隠していた事への憤り。

 

 

色んな感情が入り混じる中、1番強く感じたのは…

 

…かっこいい。

 

 

ザキさんも文香も色んな感情で清澄先輩の戦闘を見ていただろう。

私はモニターを見ながら興奮してた。

 

 

これが本当の清澄先輩。

 

表情を変えず、ただ淡々と敵を屠っていく。

 

いつもと同じ無機質な瞳だ。

 

 

 

 

 

…それを堪らなく愛しいと思ってしまった私はきっとどうかしてる。

 

 

 

 

───

 

季節は巡り、新シーズンがやってくる。

 

清澄先輩は相変わらずだ。

 

 

 

 

…ムカつくけど相変わらず女の人と仲がいい。

 

 

 

それでも…

 

 

『真登華、射線。』

 

『今やってる!もうっ!人使い荒いんだから!』

 

 

清澄先輩のオペレーターは私だけだ。

 

 

 

 

 

 

榎沢さんにも小南先輩でもない。

 

 

 

 

 

清澄先輩の笑顔を見るなら私の隣がいい。




宇井真登華→先輩。敬愛。

宇井真登華←後輩。信頼出来るオペレーター。替えの効かない駒。


書くかどうかは読者の皆様次第の17歳組チーム戦
計3試合

1試合目

綾瀬川1番隊

メンバー
AR 綾瀬川清澄
GN 里見一馬
SN 隠岐孝二
OP 綾辻遥


佐伯2番隊

メンバー
AR 佐伯竜司
AT 米屋陽介
AT 辻新之助
OP 氷見亜季


那須3番隊

メンバー
ST 那須玲
SN 奈良坂透
GN 若村麓郎
OP 三上歌歩


三輪4番隊

メンバー
AR 三輪秀次
ST 出水公平
AT 熊谷友子
OP 仁礼光



2試合目

綾瀬川1番隊

メンバー
AR 綾瀬川清澄
SN 出水公平
AT 熊谷友子
OP 綾辻遥


佐伯2番隊

メンバー
AR 佐伯竜司
AT 辻新之助
SN 奈良坂透
OP 氷見亜季


那須3番隊

メンバー
ST 那須玲
SN 隠岐孝二
AT 米屋陽介
OP 三上歌歩


三輪4番隊

メンバー
AR 三輪秀次
GN 里見一馬
AT 若村麓郎
OP 仁礼光


3試合目


綾瀬川1番隊

メンバー
AR 綾瀬川清澄
AT 熊谷友子
AT 辻新之助
OP 綾辻遥


小南2番隊(那須の体調を考えて急遽乱入)

メンバー
AT 小南桐絵
GN 里見一馬
AT 米屋陽介
OP 三上歌歩


佐伯3番隊

メンバー
AR 佐伯竜司
GN 若村麓郎
SN 奈良坂透
OP 氷見亜季


三輪4番隊

メンバー
AR 三輪秀次
ST 出水公平
SN 隠岐孝二
OP 仁礼光


こんな感じで考えてます。

書くかわからんけどw


感想、評価等お待ちしております。


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幕間 日常小話①(無機質なボーダー隊員の誕生日)

幕間です。


 

「清澄せんぱーい?どうして黙ってたんですかー?」

 

ハイライトの無い目でオレに詰め寄るのは、柿崎隊オペレーターであり、後輩の宇井真登華。

何故かオレは正座させられている。

 

「いや、聞かれなかったし…。」

 

「聞いてないですけど…チームメイトじゃないですか!」

 

「なんで教えてくれないんですか!」

 

真登華に加えて、虎太郎もオレに詰め寄る。

 

「いや、だから聞かれなかっ「だから、自分から言うっていう選択肢は無いんですか?!」」

 

「すいません…。」

 

オレは助け舟を求めるべく、柿崎に視線を向ける。

 

「今回ばかりは擁護できないな、清澄。大人しく夜食べたいもの決めとけ。」

 

「そうです!それで…これもつけてくださいっ!」

 

そう言って真登華はオレに襷をかける。

 

「は、おま、どこから出したんだ?これ。」

 

「いいから!」

 

そこにはこう書かれていた。

 

 

「本日の主役」

 

と。

 

 

今日は10月20日。

オレがこの世に生を受けて、丁度17年の日だった。

 

 

 

事の発端はこうだった。

 

「そう言えば今日、緑川が誕生日らしいですよ。ランク戦ブースで「本日の主役」って書かれた襷つけてました。」

 

虎太郎が課題を解きながらそう話す。

 

「へー。駿くん今日なんだー。」

 

真登華も課題を解きながらそう返した。

 

「ここ、途中式ミスってるぞ。」

 

オレは虎太郎の間違いを指摘してやる。

 

「えっ!?」

 

「…そういや前に三輪の誕生日を祝った時に次は俺の番とか言ってたな。…途中式はそれであってるぞ。」

 

「ありがとうございます。…そう言えば清澄先輩の誕生日っていつなんですか?聞いたこと無かったなーって。」

 

「あ、私も気になるー。」

 

「10月20日だな。」

 

「「ん?」」

 

「10月20日だ。

 

 

 

 

…ああ、今日か。駿と誕生日同じみたいだな、オレ。」

 

 

 

 

 

 

 

───その後何故か正座させられ、冒頭へ。

 

 

 

 

 

 

 

・三輪秀次の場合

 

「お前…この前俺の誕生日を祝ってくれただろう?なぜその時に言わない…?」

 

そう言いながら三輪はオレの胸ぐらを掴んだ。

 

「え、いや、別に聞かれなかったからな。」

 

「っ…お前…」

 

三輪は何かを言いかけてやめる。

そして、呆れたようにため息を吐いた。

 

「いや、お前はこういう奴だったな…。聞かなかった俺が悪い…か。…来い。」

 

そう言ってオレは三輪に自販機の前に連れてこられる。

 

「好きなものを選べ。」

 

「…いいのか?」

 

「当然だろう。俺の時もそうしてもらったからな。今日は柿崎隊で誕生祝いをやるんだろう?…だったら明日空けておけ。陽介達には俺が声を掛けておく。」

 

「あ、ああ。ありがとう。」

 

 

 

・3バカの場合

 

「「綾瀬川ー!」」

 

「あやせせんぱい!」

 

 

三輪と別れたあと、ラウンジに愉快な声が響く。

声の方向に視線をやるとそこには米屋、出水、そしてオレと同じ襷を付けた駿がいた。

 

「秀次から聞いたぜ、お前今日誕生日なんだって?」

 

米屋はオレに肩を組む。

 

「てめっ、なんで言わねーんだよっ!」

 

出水は米屋とは逆方向から肩を組んだ。

てか出水には言ったことあるような気がする。

 

「あやせせんぱい!俺も今日誕生日!祝って祝って!」

 

そして駿は正面からオレに飛びついて来た。

 

 

 

 

…騒がしすぎる。

 

 

 

その後何故か、

 

「綾瀬川、緑川を祝う誕生日ランク戦」なるものが開催。

通りすがりの隊員達がこぞって参加した。

 

米屋、出水曰く、

 

 

 

「「俺たちからの誕生日プレゼント。」」

 

 

らしい。

 

 

 

 

嬉しくない。

 

 

 

・小南桐絵の場合

 

玉狛支部

 

「そう言えば今日、綾瀬川先輩の誕生日らしいッスね。」

 

防衛任務から帰った烏丸京介はポツリとそう呟いた。

 

 

「…は?」

 

烏丸のその言葉に小南桐絵はキッチンで持っていた包丁を落とす。

 

「ちょ、こなみ、危ない。」

 

宇佐美栞は慌てて包丁を拾う。

 

「ちょ、とりまる、それホントなの?」

 

「?、はい。本部で緑川達と誕生日ランク戦してましたよ。なんでも今日は誕生日だから好きなだけ戦えるらしいです。」

 

「…多分綾瀬川くんそれ嬉しくないよね…。」

 

 

「…小南先輩知らなかったんですか?」

 

「き、聞いてないわよ!

 

 

…あ、あいつぅ〜!!」

 

 

 

 

 

・辻新之助の場合

 

「今日一日それ付けてるの…?」

 

弧月を交えながら、辻はオレの襷尋ねた。

 

「真登華に外したら殺すって言われた…。めっちゃ怖かった…。」

 

「ははは…。明日もそれ、付けてきてね。」

 

「明日はもう誕生日じゃないだろ…。」

 

「黙ってた綾瀬川が悪い。なんか欲しいものある?」

 

そう言って辻は体勢を低くして、切り込む。

 

 

「…ポイント。」

 

 

そう言って辻の弧月を避けると、辻の手を蹴り、弧月を落とさせる。

 

「っ…?!」

 

 

そしてそのまま、辻のトリオン体を切り裂いた。

 

 

 

・黒江双葉の場合

 

「綾瀬川先輩!誕生日おめでとうございます…!」

 

ランク戦の休憩中、黒江は行儀よく頭を下げた。

 

「…黒江か。ああ、ありがとう。」

 

「その…次は私が申し込んで良いですかっ?」

 

「構わない。」

 

「えー…双葉、次俺が予約してんだけどー。」

 

駿が唇を尖らせた。

 

「お前とは5回目だろ。譲ってやれ。」

 

そう言って出水が緑川の頭を叩く。

 

「ちぇー。双葉の次俺だからねー?」

 

 

 

『ランク戦終了。9-1、勝者綾瀬川。』

 

 

アナウンスがオレの勝利を告げる。

 

 

「ふう、また韋駄天の制御が上手くなってるな。」

 

「ありがとうございます!…その…なんかアドバイスとかありますか?」

 

「…そうだな…韋駄天は上手くなってる。後は剣術じゃないか?まあこれに関しては経験あるのみだからな。オレだけじゃなくて色んな奴とやってみるといい。お、丁度いい所に辻が…」

 

言いかけた瞬間辻は物凄い速さで逃げていった。

 

「ちっ、逃げたか…。」

 

「あの…これからも色々教わって良いですか…?」

 

黒江は目を逸らしながらそう尋ねる。

 

「構わないが…オレなんかでいいのか?」

 

「綾瀬川先輩が良いです!」

 

「まあ模擬戦に付き合うくらいなら。」

 

「!、よろしくお願いします!

 

 

 

 

…ししょー!」

 

 

「待て。その呼び方については異議がある。」

 

 

 

・柿崎隊の場合

 

「じゃ、清澄先輩の誕生日を祝ってー…カンパーイ!」

 

「「「乾杯!」」」

 

そう言ってジュースの入った紙コップを優しく合わせる。

 

「清澄先輩、誕生日おめでとうございます。」

 

そう言って文香が頭を下げる。

 

「ああ、ありがとう。」

 

「これプレゼントです。」

 

そう言って文香はオレに紙袋を渡した。

 

「…いいのか?」

 

「はい。お世話になってますから。如何せん急だったので喜ぶか分かりませんが。」

 

文香はジト目でオレにそう言った。

 

「悪かったって。…これは…?」

 

「包丁です。」

 

「…はい?」

 

オレは文香に尋ねる。

 

「お料理をされると聞いたので。」

 

「いや、すごい高そうなんだが。」

 

「?…安物を贈る訳にもいきませんし。」

 

 

そう言えば文香の家って…。

 

 

…これだから金持ちは。

 

 

「…大事に使わせてもらう。」

 

 

 

「私はちょっと待ってください!今度ちゃんとしたの用意しますから!」

 

そう言って真登華はオレの紙皿にピザを乗せる。

 

「…もうっ!もっと早く言ってくれれば今日に間に合わせたのにっ!」

 

「面目ない。でも、プレゼントなんて気にしないでくれ。気持ちだけで嬉しい。」

 

「…は?」

 

そう言って真登華は持っていたピザカッターをこちらに向ける。

 

「怖いって。」

 

「…真登華先輩って清澄先輩が絡むと性格変わりますよね…。」

 

「これに関しちゃ清澄が悪い。」

 

何故か頷き合う虎太郎と柿崎。

 

「にしてもこんなジャンクフードなんかで良かったのか?」

 

柿崎が作戦室のテーブルの上に並んだピザやチキンなどのジャンクフードを見てオレに尋ねた。

 

「最近ジャンクフードにハマってて。」

 

「太りますよー?」

 

返す言葉もない。

以前学校帰りに隠岐と里見に誘われて行った、某ハンバーガーチェーン店のポテトを食べてからジャンクフードにハマった。

そろそろ城戸さんに何か言われそうなので控えようと思っているが、誕生日くらいは別にいいだろう。

 

「まあお前がいいならそれでいいけどよ。つーか、ほんと、もっと早く言えよな…?買い出し大変だったんだぞ…?」

 

「すんません。…でも聞かれな…たうわっ!?」

 

真登華に脇腹を突かれる。

 

「来年はもっと早く言います。」

 

「誕生日は変わらないですからね…?」

 

 

こうしてオレの誕生日は過ぎて行く…

 

 

 

 

柿崎隊での誕生日パーティーが終わり、真登華を家に送った後、オレは帰路に就く。

 

 

帰り道、携帯のバイブが震えた。

 

 

『誕生日おめでとう。清澄にとっていい一年になることを祈っている。今度時間を作って食事でも行こう。』

 

城戸さんからメールが届いていた。

 

 

「…」

 

少し冷たくなってきた三門市の夜。

 

 

誕生日を祝われる経験など初めてだった。

 

 

オレは歯痒い気持ちを紛らわすように、帰路を急いだ。




ちなみに誕生日翌日の三輪主催の誕生日会の参加者は、

三輪、米屋、出水、緑川、里見、佐伯、仁礼、隠岐、三浦、熊谷、奈良坂、辻、です。
小南には数日後噛みつかれました。


各キャラからの誕生日プレゼント
柿崎:バスケットボール(今度やろう。)
照屋:包丁(料理すると聞いたので。)
巴:万年筆(清澄先輩に似合いそうな色でした!)
宇井:マフラー(これから寒くなるので。)
出水、米屋:ランク戦(好きだよな?)
緑川:ランク戦いつでもやってあげる券(同じの俺にもちょーだい!)
三輪:コート(風邪は引くな。)
小南:カレー(タッパーいっぱいに入れといたわ!)
隠岐:猫カフェサービス券(うちの猫見てや。)
城戸:お小遣い(と言うには大きな額。無駄遣いはしないように。)
辻:ハンカチ(恐竜の柄。)
黒江:弟子(ししょー!)

ちなみにイコさんから自作のバースデーソングを貰ったらしい。

感想、評価等お待ちしております。


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幕間 日常小話② ボーダー女子会 〜噂の天才万能手〜

遅くなりすいません!
間に合わなかったよ…パトラッシュ…。


 

嵐山隊作戦室

 

「ランク戦お疲れ様、ひゃみちゃん。」

 

そう言ってB級2位二宮隊オペレーター、氷見亜季を労ったのはA級5位嵐山隊オペレーターの綾辻遥だった。

 

「わざわざありがとう。…で?これなんの会?」

 

「うーん、女子会的な?」

 

そう言って笑うのはA級3位風間隊オペレーター、三上歌歩。

 

「本当は真木ちゃんも誘ったんだけど、急な仕事入っちゃったみたいで…。」

 

「別にそれはいいけど…。」

 

「女子会って…わざわざ話すことも無いでしょ。」

 

氷見の言葉を代弁するように言ったのは、A級8位片桐隊オペレーター、結束夏凛だった。

 

「学校でも会えるわけだし。」

 

「まあまあ。ランク戦やら防衛任務でこうして話す機会なかったじゃん。ほら、お菓子食べよ?」

 

そう言って綾辻は、テーブルの上にお菓子を広げた。

 

「まあいいけど。」

 

そう言って氷見はポッキーを口に運ぶ。

 

「みんな最近どう?」

 

「…おかげさまで私達はB級2位に落ちたよ。」

 

「あ、あー…。」

 

氷見の言い草に三上は苦笑いを浮かべる。

 

「さ、最後は惜しかったと思うよ?どっちが勝ってもおかしくなかったじゃん。」

 

三上がフォローを入れる。

 

「冗談。慰めて貰おうなんて思ってないよ。柿崎隊の方が強かった。それだけ。」

 

「凄かったよねー。真登華ちゃんからちょくちょく聞いてたけどまさかB級1位になるなんて。」

 

「弟子なんだっけ?」

 

結束が綾辻に尋ねる。

 

「うん。今やB級1位のオペレーターだもん。師匠として鼻が高いよ。」

 

「まあ二宮さんは柿崎隊でもあの天才にご執心みたいだけど。」

 

氷見が溜息を吐きながらそう言った。

 

「あはは…。」

 

「二宮さんに勝っちゃうんだもん。凄かったよねー…

 

 

 

 

…綾瀬川くん。」

 

 

そう言って綾辻はクッキーを齧る。

 

「私、綾瀬川くんと関わりないんだよね。風間さんも注目してるみたいなんだけど…。」

 

そう言うのは三上だ。

 

「面白いよ?綾瀬川くん。なんかズレてるって言うか。」

 

「面白い?あれが?ズレてるって言うかあれは計算ボケ野郎よ。」

 

綾辻とは逆に、結束は綾瀬川を酷評する。

 

「へー、夏凛ちゃん綾瀬川くんと仲良いんだ。」

 

「仲良くないわよ!」

 

そう言って結束は否定する。

 

「計算ボケ野郎って…?」

 

氷見が結束に尋ねた。

 

「綾瀬川の個人ポイント…見たことある?」

 

「弧月がマスタークラスってことは知ってるよ?」

 

綾辻がそう言う。

 

「気持ち悪いわよ、あいつの個人ポイント。」

 

そう言って結束は携帯端末を3人に見せる。

 

 

 

綾瀬川清澄

 

弧月 8888

バイパー 7777

イーグレット 6666

アステロイド 6666

スコーピオン 6000

ハウンド 6000

メテオラ 5555

 

 

 

 

「「「…」」」

 

3人は黙る。

 

「…え?何これ?」

 

「キモイでしょ?」

 

「気持ち悪いって言うか…ありえるの?こんなポイント。」

 

氷見が結束に尋ねる。

 

「まあたまにゾロ目になることはあるでしょ。」

 

結束はポイントがゾロ目になってはしゃぐ一条を脳裏に浮かべた。

 

「…でも全部のポイントが偶然揃うなんてありえない。…狙って揃えてんのよ。」

 

「そんな事出来るの?」

 

三上が尋ねた。

 

「…私も気になってあいつに聞いたのよ。そしたらあいつなんて言ったと思う?」

 

「なんて?」

 

「一言こう言ったのよ…。…ゴホン…「ポイントを狙って揃える?お前は何を言ってるんだ?そんな事出来るわけ無いだろ?偶然だ偶然。オレもびっくりしてる。…第一そんな馬鹿な事をするメリットも無いだろ。…しつこいぞ、だから偶然だろ?知らない。数字なんてどうでもいいだろ?数字が全てじゃないって辻も言ってたぞ?とにかく偶然だ。知らん。」…だって!」

 

結束は声を低くし、抑揚の無い声でそう言った。

 

「結構喋ったね…。」

 

「辻くんにも飛び火してるじゃん。」

 

「喋り方めちゃくちゃ似てる。」

 

「真顔で数字がどうでもいいってほざきやがったのよ…。」

 

 

頬をひくつかせてながら結束はそう言った。

 

 

「あはは…。でも、偶然…じゃないよね?こんなポイント見たことないよ?」

 

三上が尋ねる。

 

「まあありえないでしょうね。…でも本人かそう言うんだから知らないわよ。…あー、ポイント見てたらムカついてきた。」

 

そう言って結束は紛らわすようにお菓子を口に運んだ。

 

「ポイントもそうだけど綾瀬川くんって謎だよねー。」

 

綾辻がポッキーを齧りながらそう言う。

 

「謎?」

 

氷見が尋ねる。

 

「だってあの三輪くんと仲良いんだよ?ヒカリちゃんが学校でもよく三輪くんと一緒にいるって言ってたよ?」

 

「確かに…。城戸派筆頭の三輪くんが本部長派の綾瀬川くんと仲が良いのは不気味ね…。」

 

氷見はそう言って考え込む。

 

「ああ、あいつは城戸派よ。」

 

結束はそう言った。

 

「あれ?でも柿崎さんって…。」

 

「まあ柿崎隊はあいつ以外本部長派だから分かりづらいけど…あいつ城戸司令にわがまま言ってトリオン誤魔化してるんだって。それゲロった時にあいつ、「…オレは城戸派だからな…。まあちょっとわがまま聞いて貰ってるんだ。内緒で頼む。」…って言ってた。」

 

「あははっ!夏凛ちゃん似てる!」

 

「あれ?内緒の話だよね?」

 

「…やっぱ誤魔化してたか。数値5にしてはキューブがでかいと思ったんだよね。」

 

氷見はそう言って頷く。

 

「サイドエフェクトを隠すためらしいわよ。「サイドエフェクト持ちって目立つだろ?目立つのは面倒で苦手なんだ。」…だって。どの口が言ってるのかしら。」

 

「モノマネはもういいから。」

 

氷見が呆れたようにそう言った。

 

「まあでも実際サイドエフェクトのおかげでめちゃくちゃ強いよね、綾瀬川くん。…ねー?藍ちゃん。」

 

そう言って綾辻は少し離れた所で書類とにらめっこをしていた綾辻と同じく嵐山隊の万能手、木虎藍に話しかけた。

 

「…なんで私に振るんですか…?」

 

「ほら、藍ちゃん前に綾瀬川くんのサイドエフェクト体感してるじゃない?それに、そろそろ疲れたでしょ?藍ちゃんもお茶しない?」

 

「結構です。仕事が残ってますので。」

 

木虎はキッパリとそう断る。

 

「残念。」

 

 

 

「木虎も綾瀬川と戦ったことあるの?ログなかったけど…。」

 

結束が綾辻に尋ねた。

 

「うちの仮想空間で模擬戦しただけだから。シールド使わないで藍ちゃんの攻撃全部避けてたよ。」

 

「うわ、相変わらず変態ね、あいつ。」

 

結束は嫌そうな顔でそう言った。

 

 

「そっかー、でもこう聞くと興味出てきたかも。話しかけてみようかな…。」

 

三上がそう言う。

 

「まあ不気味だけど人畜無害そうだから心配ないと思うよ。」

 

「あはは…。今度話しかけてみるね。」

 

結束の言い草に、三上は苦笑いの後にそう答えた。

 

 

 

「でも残念だなー。柿崎さん達とA級の舞台で戦えると思ったんだけど…。」

 

綾辻がそう言って肩を落とす。

 

「上がらないんだっけ?」

 

三上が尋ねる。

 

「うん。話し合ってそう決めたみたい。」

 

「まあ全部が全部じゃないけど綾瀬川に頼り切りな所もあったしね。妥当じゃない?」

 

「私としてはリベンジ出来るから願ってもない話だけどね。」

 

氷見はそう言ってお茶を口に運んだ。

 

「来シーズンも綾瀬川くんの活躍特等席で見れるかもね。特に私たちは。」

 

「実況ね…。あいつの実況するのはもうごめんだわ…。」

 

結束はそう言って舌を出す。

 

「桜子ちゃんに頼んで解説席にも呼んでみる?」

 

「誰に得があんのよ、それ。」

 

「あはは、綾瀬川くんに辛辣ー。喜ぶ人はいるんじゃない?今シーズンのMVPだし。C級でも噂になってたから。」

 

「ま、私はスカウト旅があるからしばらくは実況は出来なそうだけど。」

 

結束はそう言ってお茶を飲む。

 

「冬だっけ?」

 

「そ。片桐隊と玉狛の林道さん、クローニンチーフと一緒にね。」

 

「へえ…気をつけてね。」

 

 

 

「…あっ!いけない!もうこんな時間!」

 

三上が時計を見て立ち上がる。

 

「ごめーん、私この後防衛任務なの!」

 

「結構話しちゃったねー。片付けとくから大丈夫だよ。」

 

綾辻もそう言って立ち上がる。

 

「じゃ、お開きね。」

 

「またやろうね、女子会。」

 

「うーん…」

 

 

氷見は考え込む。

 

 

 

 

 

 

「…ま、気が向いたらね。」

 

 

 

そうして女子会はお開きとなった。




なんかよく分からん話を書いてしまった。
こう言う話の中心になる綾瀬川を書いてみたかったんで。

時系列的には、原作前ROUND8終了後2~3日の話です。

この話を見てわかる通り結束ちゃんとは結構仲がいい(笑)です。
結束ちゃんは私の推しオペコちゃんなので。


感想、評価等お待ちしております。


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幕間 日常小話③ 〜無機質なボーダー隊員のバレンタイン その1〜

幕間です。

こなせんと宇井ちゃんですね。


 

「あの…さ、清澄先輩って甘いもの好き?」

 

今シーズン、ROUND4。

相手は二宮隊、玉狛第二、東隊の3チーム。

 

その対策に向けた会議の後、柿崎隊オペレーター、宇井真登華はオレにそう尋ねた。

 

「…甘いもの?そうだな…まあ、甘すぎないものだったら。」

 

「ふ、ふーん。じゃあチョコレートとかなら少し苦い方が好きな感じ?」

 

真登華は追加でそう尋ねた。

 

「そうだな。前にスーパーにカカオが多く入ってるチョコレートがあったんだが…それくらいが丁度よかった。」

 

「へ、へー。」

 

そう言って真登華はメモ帳に何やら書き込む。

 

「ちなみに何パーセント?」

 

「確か72だった気がする。」

 

「72ね!」

 

そう言ってまた何かを書き込む。

 

「チョコレートの好みなんか聞いてどうするんだ?」

 

「別に何もー。じゃ、遅いし帰ろ?清澄先輩、虎太郎。」

 

「ああ。」

 

そう言って真登華は足早に出口に歩く。

それを見てオレは隣にいる虎太郎に視線を向けた。

 

「何だったんだ?」

 

「あはは、楽しみにしとけばいいと思います。」

 

「?」

 

 

──

 

「その…真登華、少しいいかしら。」

 

柿崎隊攻撃手、照屋文香は私に話しかけた。

 

「んー?どした?」

 

そう言って私は文香の隣に座る。

 

「その…そろそろバレンタインじゃない?」

 

「あー。ザキさんにあげるの?」

 

「そうなんだけど…。」

 

「いいんじゃない?毎年あげてるでしょ?」

 

そう言うと文香は私にジト目を向ける。

 

「え?何?」

 

「はぁ…真登華も清澄先輩にあげるんでしょ?」

 

「ま、まあ…。義理的な?」

 

「いや、隠さなくていいから。清澄先輩、ボーッとしてる割にモテるじゃない?」

 

酷い言い様。

 

「小南先輩、黒江さん…他にも清澄先輩にあげる人はいるんじゃない?」

 

「それは…そうかも。」

 

そう言って肩を落とす。

 

「落ち込んでる暇ないわよ、真登華。」

 

そう言って文香は私の肩に手を置く。

 

「1番美味しいチョコを渡して清澄先輩にアピールするのよ。」

 

「文香…もしかして私が毎年バレンタインの度に茶化してるの根に持ってる?」

 

 

 

その後冒頭へ。

 

 

 

──

 

・小南桐絵の場合

 

「…あ、綾瀬川。」

 

2月14日。

時刻は早朝8時30分。

B級ランク戦ROUND4を翌日に控えた綾瀬川に、本部基地入口の前で声がかかる。

 

「…びっくりした。…こんな所で何してるんだ?小南。」

 

綾瀬川に声をかけたのは、玉狛第一の攻撃手、小南桐絵だった。

 

「お前が本部にいるなんて珍しいな。」

 

「っ…。」

 

しかし、小南は何も言わずに俯いていた。

 

「?、どうしたんだ?」

 

綾瀬川はそう言って小南の顔を覗き込む。

 

「っ…こっ!これ…!!」

 

小南は思い切り顔を上げると、持っていた紙袋を勢いよく綾瀬川の前に差し出す。

 

「昨日の余りのカレーよ!勿体ないからあんたにあげるわ!」

 

「カレー?」

 

綾瀬川は小南から紙袋を受け取ると、中身を覗こうと広げる。

 

「そういう訳だから感謝して食べなさいよ!!」

 

そう言って小南は玉狛支部の方へ走って行く。

 

「?」

 

「感想…!聞かせなさいよ!」

 

小南は立ち止まりそう言うと、今度こそ走り出した。

 

「あいつ…オレが連絡通路使ってたらどうする気だったんだ…?」

 

寒空の下ずっと待つことになる。

綾瀬川はここを通って良かったと思いながら紙袋の中身を見た。

 

そこには小南の言った通りカレーの入った大きめのタッパー。

そして隠すように何やらラッピングされた箱が。

 

 

「これは…チョコレート…か?」

 

 

──

 

・宇井真登華の場合

 

「…という訳で小南にカレーと一緒にチョコの差し入れもらったんですよ。美味しそうなんで皆で食べません?」

 

柿崎隊作戦室に着いた綾瀬川は、作戦室で待っていた柿崎にそう提案する。

 

 

 

「清澄…お前マジか。」

 

 

 

柿崎は笑みを消した表情でそう言う。

心無しかドン引きしている。

 

「面白い顔してどうしました?」

 

「今日は2月の14日だぞ?」

 

「?…はい。明日ROUND4っすね。」

 

「っ…はぁ…お前…。頭良い癖になんでそんな世間知らずなんだ…?…いや、いいか。そのチョコは小南がお前のために作ったんだよ…。お前が1人で食え。」

 

柿崎は天を仰いで顔を手で覆い、疲れた様子でそう言った。

 

「?、分かりました。」

 

 

 

「清澄先輩。そのチョコ…小南先輩からですか…?」

 

 

後ろからの悪寒。

綾瀬川は肩を弾ませ振り返る。

 

「なんだ…真登華か。おはよう。」

 

「おはようございます。それで?そのチョコは?」

 

「あ、ああ。入口の所で小南に貰ったんだよ。」

 

その言葉を聞いた柿崎隊オペレーター、宇井真登華は脱力したようにしゃがみ込んだ。

 

「大丈夫か…?」

 

 

「先越された…。」

 

 

真登華はそう言ってしゃがみながら付けていたマフラーの中に顔を埋めた。

 

「越された?何をだ?」

 

「今日バレンタインじゃないですか…。」

 

そう言いながら宇井は綾瀬川に紙袋を差し出す。

 

「私が1番だと思ったのに…。」

 

宇井は肩を落としながらそう言った。

 

「…バレンタインってあれか。豊臣秀吉が…」

 

「それはバテレン追放令です、清澄先輩。」

 

宇井に続いて入って来た柿崎隊攻撃手、照屋文香がそうつっこんだ。

 

「おはようございます。清澄先輩。柿崎さん。ハッピーバレンタインです。」

 

そう言って照屋は柿崎、綾瀬川にチョコを手渡す。

明らかに柿崎のチョコのラッピングの方が豪華だった。

 

「ま、毎年悪いな…。」

 

「いえ。感想聞かせてくださいね。あ、虎太郎もおはよう。はいこれ。」

 

そう言って照屋は後から入って来た柿崎隊万能手、巴虎太郎にもチョコを手渡した。

 

 

 

 

 

 

「バレンタインって言うのは女性が男性にチョコレートをプレゼントする特別な日なんですよ。」

 

「へえ…。」

 

文香の説明を聞き、オレは小南がチョコをくれた理由を知る。

 

 

「知らなかったんですか…?」

 

文香は呆れたように尋ねる。

 

「と言うより経験が無いな。…知る機会があれば知っていたさ。」

 

「?」

 

物心付いた時からあの部屋にいた。

そんな経験あるはずが無い。

 

「それは分かったが…真登華はなんであんなに落ち込んでるんだ?」

 

「ま、まあちょっとした事情で…。」

 

虎太郎が苦笑いで濁しながらそう言った。

 

「どーせ私は2番目ですよーだ。」

 

落ち込んでいたかと思うと、今度は不貞腐れながら真登華は作戦室のソファーに寝転がる。

 

 

「…真登華の…今食べていいか?」

 

「え…?」

 

オレは真登華にそう尋ねる。

 

「その…あれだ。貰ったのは小南のが1番だが…食べるのはお前のが最初だ。」

 

その言葉を聞いて真登華は勢いよく起き上がる。

 

「た、食べてください!」

 

「じゃ、ありがたく。」

 

そう言って紙袋から、チョコレートの入った袋を取り出す。

中にはハート型のチョコレートと、カップケーキが入っていた。

 

「こ、これは違うんですよ!家に型がこれしかなくて!!」

 

「?、何も言ってないが?」

 

何故か慌てる真登華にオレはそう言う。

 

「と、言いつつ柿崎さんと虎太郎のは猫の形ね。」

 

「文香…!!」

 

クスリと笑いながらそう言う文香に、真登華が顔を真っ赤にして声を上げた。

 

「冗談よ。」

 

 

「じゃあ…いただきます。」

 

オレはチョコレートを口に運び歯を突き立てる。

ゴクリと、真登華から息を飲む音が聞こえる。

 

「…そんなに見られると恥ずかしいんだが。」

 

オレはチョコレートから口を離し、真登華にそう言う。

 

「なんのフェイントですか!早く食べて下さいよ!」

 

「分かったって。」

 

何故か怒った真登華に急かされ、オレはチョコレートを1口齧った。

その瞬間、カカオの風味が鼻を抜ける。

舌には最初に甘みが来るが、直後にカカオ特有のほろ苦さがやって来る。

丁度いい。

チョコレートは口内の熱で5回噛むまでもなく溶け、更に口の中一杯に味を広げた。

 

美味い。

 

 

「美味いな。苦さが丁度いい。」

 

「…ほんとですか…?」

 

何故か真登華は疑るような目でそう尋ねた。

 

「嘘なんかつかない。本当に美味い。」

 

そう言ってオレはもう一口齧る。

 

「そ、そっか…。清澄先輩顔変わらないから分かんないや…。カカオも72パーセントにしてみたんですけど…。」

 

「ああ。あの時の。…丁度いいな。滅茶苦茶美味い。カップケーキも食べていいか?」

 

「!、はい!」

 

真登華は嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 

 

「…ふふ、じゃあ作戦会議の前にお茶にしましょうか。」

 

 

そう言って文香は立ち上がった。




幕間を2話に分けるという鬼畜の所業。
だって後書く予定の人達が、双葉ちゃん、加古さん、月見さん、にれぴか、那須さん、みかみかがいるから分けないと1万文字超えちゃいそうなんだもん。
気分によって増えるかも。

ま、楽しみは分けた方がね?
いいよね?

感想評価等お待ちしております。


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幕間 日常小話④ 〜無機質なボーダー隊員のバレンタイン その2〜

多くのご心配の声、回復を喜んでくださった読者の皆様、ありがとうございます。
これまでにない感想の量に、待っていてくださった事への感謝と心配をかけてしまった申し訳なさで胸がいっぱいになります。
ですが1番は回復を喜んでくれて嬉しい!です。
本当にありがとうございます。

…感想返すの大変そうw

さて、幕間はバレンタイン回の続きになります。

バレンタインに間に合わなかったけどw


2月14日

 

ランク戦ブース

 

「よーよー、綾瀬川。収穫はどーよ?」

 

そう言って綾瀬川に肩を組むのはA級1位太刀川隊射手、出水公平。

 

「?、収穫?」

 

綾瀬川は疑問符を浮かべた。

 

「ばーか、今日はバレンタインだぜ?チョコレートに決まってんだろ。」

 

出水は呆れたようにそう言った。

 

「で?」

 

「どうなんだよ?」

 

「…いつの間にランク戦ブースに来たんだ?お前。」

 

出水とは逆の肩に腕を回すのは、A級7位三輪隊攻撃手、米屋陽介だった。

 

「…3つ貰ったな。どれも美味しかった。」

 

「3つって…柿崎隊で2つだろ?…もう1つは?」

 

出水が尋ねる。

 

「ああ、朝一で小南に貰ったな。」

 

「小南って…玉狛だろ?わざわざ持ってくるってことはお前…。」

 

米屋がニヤニヤとそう言う。

 

「?、カレーと一緒に持って来たぞ?」

 

「「はぁ…。」」

 

出水と米屋は呆れた様にため息を吐く。

 

「ほら、コイツ鈍感だろ?」

 

「いや、鈍感以前の問題じゃね?察せなくて女の子を泣かせるタイプだな。」

 

「何コソコソ話してるんだ?どうせランク戦だろ?早くしてくれ。」

 

「あー、その前に綾瀬川、お前の事呼んできて欲しいって言われてるんだが…。」

 

「オレを…?」

 

米屋の言葉に綾瀬川は疑問符を浮かべた。

 

 

──

 

・月見蓮の場合

 

三輪隊作戦室

 

「ごめんなさいね、綾瀬川くん。私の方から出向けば良かったのだけれど、手が離せなくて。」

 

そう言って作戦室のソファに座るオレに謝罪をしたのは、三輪隊オペレーターの月見蓮だった。

 

「いえ…月見さんにはお世話になったので。」

 

そう言いながら作戦室を見渡すが、月見以外の姿は見当たらなかった。

 

「三輪くんは城戸司令に用事、奈良坂くんと古寺くんは狙撃手の合同訓練よ。」

 

そんなオレを見て、月見は察した様にそう言った。

 

「米屋くんは一緒じゃなかったかしら?」

 

「あいつは弾バカとランク戦ですね。」

 

「そう。フフ、そう固くならないで。大した用事じゃないから。」

 

そう言いながら月見はラッピングされた小さな箱をオレの前に置いた。

 

「ハッピーバレンタイン。綾瀬川くんに。」

 

「…どうも。」

 

大きさから何となく察しが付いたオレは、月見にお礼を言う。

 

「あら?嬉しくなかったかしら?」

 

「いや、嬉しいしありがたいですけど…わざわざ呼び出して渡すものですか?それこそ米屋にでも渡してもらえば。」

 

「フフ、世間知らずなのは相変わらずね。」

 

オレの言葉に月見は、口元に手を当てながら上品に笑う。

 

「こういうのは直接渡すことに意味があるのよ。それに…私から機器操作の技術を盗むだけ盗んで、それ以降顔を出さなくなった誰かさんと久々にお喋りしたかったの。」

 

「…すいません…。」

 

「冗談よ。」

 

そう言うと月見は立ち上がる。

 

「お茶を入れるわ。…ぜひ食べて行って。」

 

「…じゃあお言葉に甘えて。」

 

 

 

 

月見蓮との小さなお茶会は三輪が戻ってくるまで続いた。

 

 

──

 

・仁礼光の場合

 

「おー!いたいた!綾瀬川〜!」

 

時刻はまもなく短針が時計の真上を刺す頃。

ラウンジで先程までランク戦をしていた二宮隊の辻と、昼食を食べていたところに何やら騒がしい声が響いた。

その騒がしい声の正体は、B級3位影浦隊オペレーター、仁礼光だった。

仁礼の登場に辻はこちらに助けを求めるような顔をするが、どうにも出来ないし知ったこっちゃないので無視をする。

 

「何か用か?ヒカリ。」

 

「いやー、今チョコ配っててよー。綾瀬川にもあげようと思ってなー。」

 

片手には紙袋を持っていた。

 

「おっ、辻ちゃんも一緒じゃねーか。ん、辻ちゃんにもやるよー!」

 

そう言って仁礼は机の上にラッピングされた小さな袋を2つ置く。

 

「ああ、わざわざありがとう。」

 

「あ…えと…お、俺に…?ド…ドウモアリガトウゴザイマス…。」

 

しりすぼみするような声で辻は、何故か片言でお礼を言った。

 

「おー!100倍のお返し期待してっからなー!」

 

そう言って仁礼は去っていく。

 

 

 

 

…嵐みたいな奴だな。

 

 

 

「お、お返しって…

 

 

 

…どうしよう?!」

 

 

目の前で縋るようにそう言う辻を見て、オレはそう思った。

 

 

──

 

・黒江双葉の場合

 

「ようやく見つけたわ。清澄くん。」

 

「ひっ…。」

 

口元の黒子が特徴の女性隊員、A級6位加古隊隊長、加古望の登場にオレは思わず悲鳴を抑える。

 

「あら?驚かせちゃったかしら。」

 

「えっと…生憎昼食を済ませたばかりですので…。」

 

オレはそそくさと加古の前から逃げようとする。

 

「ああ、用があるのは私じゃなくて、双葉の方よ。」

 

加古はそう言って視線を加古の後ろに隠れるツインテールの女子隊員に向けた。

 

「…びっくりした。いたのか、双葉。」

 

加古隊攻撃手、黒江双葉。

 

不本意ながらオレの弟子にあたる攻撃手だ。

 

「むぅ、最初からいました!」

 

黒江の存在に気付かなかったオレに、黒江はそう言ってむくれた。

 

「気配を消すのが上手くなったな。」

 

「!、当然です!この調子でししょーに不意打ちを決めてみせますから!」

 

 

チョロい。

 

 

「で?用事ってなんだ?ランク戦の誘いなら悪いな、明日はROUND4だからこの後作戦室に戻るんだ。」

 

「違います。ししょーにえっと…その…」

 

黒江は両手を後ろに隠しながら、照れた様に言い淀む。

 

「…チョコレートか?」

 

「!、そ、そうです!」

 

そう言って黒江は持っていた紙袋を差し出す。

 

「あら、清澄くん。それを言っちゃうのは野暮じゃなくて?」

 

加古はそう言って笑う。

 

「…まぁ今日は行く先々で貰ってるので察しは付きますよ…。」

 

「まあ。モテモテね。」

 

そう言って加古は笑う。

 

 

 

「ししょー、その話詳しく。あのツインテにも貰ったんですか?」

 

 

 

 

…ツインテって…お前もだろ。

 

と言うツッコミは黒江の圧に押し殺された。

 

 

ついでに加古さんからも貰った。

 

 

 

 

…怖すぎる。

 

 

──

 

・三上歌歩の場合

 

「なあ、なんか機嫌悪くないか?」

 

「別に悪くありませんよ?」

 

そう言いながらも前を歩く柿崎隊オペレーター、宇井真登華の歩く足は速い気がする。

それなりに宇井との付き合いも長くなったオレの経験からするに、こういう時の宇井は放って置いても、変に突いてもめんどくさい。

どうしたものかと考えながら、心当たりを探す。

 

昨日はあの後、熊谷、綾辻、何故か顔も知らないC級の女子隊員2人からチョコレートを手渡された。

ちなみに熊谷からは、今日は本部に来れないからと那須の物も渡されている。

 

 

「あっ、綾瀬川くん。丁度いい所に。」

 

色々考えていると、そう声をかけられる。

 

「…三上。」

 

「三上先輩!」

 

「こんにちは。真登華ちゃんも。」

 

声をかけて来たのはA級3位風間隊オペレーターの三上歌歩だった。

 

「丁度柿崎隊の作戦室に行こうと思ってたんだ。」

 

そう言って三上は紙袋を差し出す。

 

「ハッピーバレンタイン。1日遅れだけど…。」

 

三上は申し訳なさそうにそう言った。

 

「…オレにか?」

 

「うん。綾瀬川くんには色々お世話になってるから。」

 

「大した事はしてないと思うが…。」

 

「そんな事ないよ。よく歌川くんとランク戦してくれてるでしょ?この前も私が落とした書類拾って、一緒に運んでくれたし、ROUND1ではランク戦があるのに解説引き受けてくれたよね。」

 

こうも細かく言われると、何も言い返せなくなる。

 

「じゃあお言葉に甘えて。」

 

そう言って三上から紙袋を受け取る。

 

「綾瀬川くんのおかげで歌川くん、弾トリガーの扱いが上手くなったって風間さんが褒めてたよ。」

 

「ただランク戦してるだけなんだけどな。」

 

「でも歌川くん綾瀬川くんとのランク戦の後いつもログ見直してるから。」

 

そう言って三上は笑う。

 

「それは…ライバルを増やしてるみたいで複雑な気分だな…。」

 

そう言ってオレは頭を搔く。

 

「ふふ、そう言わずこれからも歌川くんをお願いね。」

 

「まぁ、ランク戦をするくらいしか出来ないけどな。」

 

「それがありがたいんだってば。…あっ!私これから中位の方で実況やるんだった。夜の部は見に行くから頑張ってね!」

 

そう言って三上は可愛らしくガッツポーズを作る。

 

「ああ、ありがとう。」

 

「じゃ、またね。綾瀬川くん、真登華ちゃん!」

 

三上は駆け足気味に歩いて行った。

 

 

「じゃ、行くか。真登華。」

 

「…はい。」

 

「え…やっぱり怒ってるよな?それもさっきより。」

 

 

 

「べ!つ!にー?

 

 

 

…怒ってませんよーだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、この30秒後、国近、米屋に捕まった綾瀬川が、宇井の機嫌をさらに損ねるのは、別の話である。





各キャラからの印象&各キャラへの印象

月見蓮→弟子。久しぶりに話せた。
仁礼光→友達。お返しは弁当な!
加古望→双葉がお世話になってるわね。ひっ!って。失礼しちゃうわね。
黒江双葉→ししょー!…他に誰からチョコ貰ったんですか?
三上歌歩→友達。歌川くんがお世話になってます。
宇井真登華→だーかーらー…怒ってませんよ〜?

月見蓮←師匠。頭が上がらない。
仁礼光←友人。嵐みたいなやつ。
加古望←ボーダー最強(恐もしくは狂)。あのチャーハンには勝てる気がしない。
黒江双葉←弟子。チョロい。
三上歌歩←友人。聖人ミカミエル。
宇井真登華←後輩。なんで怒ってるん?ごめんて。

那須さんはちゃんと書こうか迷ったんですが、迷った結果まぁ直接は渡さないよねと言うことになりました。
ifだったら書いてるけど、原作に寄せるとこうかなと。
見たかった人すいません。

あとは小佐野と真木理佐を書こうと思ったけど、途中まで書いてこの2人は絶対にチョコ渡す性格じゃねえわということで断念です。


感想、評価等お待ちしております。


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原作前
オリ主設定&プロローグ


思い付きで書きました。
書ける時に書くつもりです。
最初なんで短めです。
本編どうぞ。


オリ主設定

 

 

名前 綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)

 

所属 B級柿崎隊

 

ポジション 射手

 

男子高校生、17歳。

 

家族構成 父

 

 

トリオン 5

攻撃 5

防御・援護 5

機動 5

技術 5

射程 5

指揮 5

特殊戦術 2

 

 

「ようこそ実力至上主義の教室へ」の綾小路清隆をリスペクト。

抑揚のない喋り方で常に無表情。

 

 

 

 

ポイント

 

弧月 5000

アステロイド 5000

ハウンド 5000

メテオラ 5000

 

 

トリガー

メイン:孤月、アステロイド、ハウンド、シールド

サブ:アステロイド、メテオラ、バッグワーム、シールド

 

トリガーは試合によって変える。

 

 

 


 

「なあ三輪、やっぱりオレには向いていなかったのかもしれない。」

 

「…何がだ?」

 

会って開口一番の嘆きに三輪秀次は眉をひそめた。

 

「入隊だよ…。」

 

「いつまでもソロだと目立つと言ったのはお前だろう。…それに柿崎さんの隊の雰囲気は良さそうだった。」

 

「そこが問題なんだよ。確かに柿崎さんは気さくでいい人だし後輩2人も良い奴そうだった。でもあのアットホームな感じがオレには向いていない気がする。」

 

「知るか。入隊したいと言ったのはお前だろう、綾瀬川。そんな物言いだと柿崎隊に失礼だ。」

 

オレの言葉をそう一蹴すると三輪は立ち上がる。

 

「…どこに行くんだ?」

 

「言っただろ。防衛任務だ。お前もそこでグズグズしていないで隊室に戻ったらどうだ?」

 

「ああ、話を聞いてくれてありがとう。」

 

オレのその言葉に三輪は返すことなく行ってしまった。

 

 

 

「…はぁ…」

 

今日何度目かも分からないため息がオレの口から零れた。

 

 

 

 

 

三門市・人口28万人

ある日この街に異世界への(ゲート)が開いた

近界民(ネイバー)

後にそう呼ばれる異次元からの侵略者が、ゲート付近の地域を蹂躙、街は恐怖に包まれた。

こちらの世界とは異なる技術を持つ近界民ネイバーには地球上の兵器は効果が薄く、誰もが都市の壊滅は時間の問題と思いはじめたその時…

 

突如現れた謎の一団が近界民ネイバーを撃退し、こう言ったのだ。

「こいつらのことは任せてほしい。」

「我々はこの日のためにずっと備えてきた。」

近界民の技術を独自に研究し「こちら側」の世界を守るため戦う組織、

界境防衛機関「ボーダー」。

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民ネイバーに対する防衛体制を整えた。

 

…それから4年

 

ゲートは依然開いているにも拘わらず、三門市を出て行く人間は驚くほど少なく

ボーダーへの信頼によるものか、多くの住人は時折届いてくる爆音や閃光に慣れてしまっていた……。

 

 

 

──ボーダーB級 柿崎隊隊室

 

恐る恐る扉を開けると、そこには既に他の隊員が集まっていた。

 

「あ〜!先輩やっと来たー!」

 

そう声をあげたのは柿崎隊オペレーター、宇井(うい) 真登華(まどか)だった。

 

それを皮切りに隊員がこちらに寄ってきた。

 

「遅いじゃないか。心配したぞ。」

 

隊長の柿崎(かきざき) 国治(くにはる)は心配そうに歩み寄ってきた。

 

「今日はみんなで集まって先輩の歓迎会をしようと思ってたんですよ!」

 

柿崎に続いてこちらに寄ってきた(ともえ) 虎太郎(こたろう)は嬉しそうにそう言った。

 

「虎太郎、それ言っちゃったら意味ないじゃない…。」

 

呆れたように言うのはお下げが特徴の万能手、照屋(てるや) 文香(ふみか)

ここにいるのがB級13位柿崎隊のメンバーだ。

 

「遅くなってすいません。まだ隊室の場所ちゃんと覚えてなくて。」

 

「それは悪かったな。迎えに行きゃあ良かった。」

 

「いえ、気にしないでください。」

 

「あ!ザキさん早く!予約の時間に間に合わなくなっちゃう!」

 

宇井が時計を見てそう言った。

 

「おっと、もうそんな時間か。じゃあ綾瀬川、さっき虎太郎が言っちまったが、今日はお前の歓迎会だ。俺の奢りだ。たんと食えよ。」

 

そう言ってオレの肩を優しく叩くと、隊室を出る。

 

「やっほーい!隊長太っ腹!」

 

巴は嬉しそうにその後に続く。

 

「ほーら、綾瀬川先輩?」

 

「行きましょう。」

 

宇井と照屋に言われ、オレは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?綾瀬川先輩ってボーダー設立当初からいるんですか?!」

 

「まぁ一応は。その後ちょっと家の用事で休隊してて戻ってきたのはつい数ヶ月前くらいなんだ。」

 

「へぇ〜!道理で見なかった訳だ〜。」

 

話し上手な宇井がありがたかった。

いい感じにオレに質問を振って、リアクションしてくれる。

巴も、話を広げてくれて、話を広げすぎると照屋が話を戻してくれる。

それに照屋は気配りが上手で、焼肉を取り分けたり、焼くのは照屋だった。

 

なんだかいろんな面で後輩3人に負けてる気がして心の中で涙した。

 

「だから古参だからと言ってポイントとかはあんまり高くないんだ。」

 

「射手でしたよね?」

 

「万能手名乗りたいけどポイントがな…。」

 

「ま、まぁそれは個人ランク戦とかで稼ぎましょうよ!俺も付き合いますよ!」

 

後輩にフォローされ、さらに虚しい気持ちになる。

 

「だがまぁ、うちに入ってくれて助かったよ。ここのところランク戦は負け続きだからな。」

 

柿崎の言葉に少し雰囲気が暗くなる。

 

「だがこのまま負け続けるつもりは無い。綾瀬川が入ったことで連携の選択肢が増えたんだ。明日からは大忙しになるぞ、虎太郎、文香、真登華。…清澄もな。」

 

 

 

 

「…お力添え出来るよう頑張ります。」

 

 

 

笑顔で歓迎する4人にビー玉のように空っぽな目を向けながら、そう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうか、上手くやれそうなら良かったな。」

 

次の日。

またしても三輪に昨日のことを話すと、三輪は表情を変えることなくそう返した。

 

「知っていると思うが、柿崎隊は一枚岩の連携が特徴だ。ひたすら手堅いからな。柿崎隊の連携に慣れる必要がある。

 

 

 

…頑張れよ。」

 

「!…ああ、ありがとう。」

 

まさかそんな言葉が貰えるとは思わず、一瞬たじろいだもののなんとかそう返した。

以外に優しいところもあるんだな。

 

「それよりもお前は個人ランク戦をしたらどうだ?」

 

「…え?」

 

「万能手を目指すんだろう。そんなB級上がりたてに毛が生えたようなポイントで何がボーダー古参だ。恥じるべきだ。」

 

 

 

前言撤回。

さすがに言い過ぎじゃね?

ツンツンツンデレくらいな気がするわ。

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

三輪秀次←同期。気を許せる友人。口と目付き悪すぎだろ。
柿崎国治←隊長。気さくでいい人。
宇井真登華←チームメイト。…猫?
照屋文香←チームメイト。聖人。フミカエル。
巴虎太郎←チームメイト。ほんとに14歳かってくらいしっかりしてる。



三輪秀次→同期。気を許せる友人。もっとやる気を出せ。なんだかんだ心配。
柿崎国治→チームメイト。これからに期待。
宇井真登華→チームメイト。もっと笑えば良いのに。
照屋文香→チームメイト。無表情でちょっと怖い。
巴虎太郎→チームメイト。一緒にランク戦しましょ!



感想、評価等よろしくお願いします。


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綾瀬川清澄①

2話目です。
前書きって何書けばいいんですかね。


「よーし、じゃあ早速お手並み拝見と行こう。」

 

歓迎会が終わった翌日。

柿崎隊の面々は隊室にある訓練室に集まっていた。

 

「真登華。」

 

「はいはーい、ちゃんと綾瀬川先輩の分もできてますよ。」

 

「?」

 

宇井の言葉によくわからず首を傾げるオレに、昨日渡しておいたオレのトリガーを手渡された。

 

「ほらほら、トリーガーオンして。」

 

「あ、ああ

 

 

 

…トリガーオン。」

 

 

そう言うと全身が光に包まれ、3秒も経たないうちに、オレンジ色の隊服に様変わりした。

 

「おぉー!先輩似合う!」

 

巴は嬉しそうに、駆け寄ってきた。

 

『急いで作った甲斐があったわ〜。』

 

「お似合いです、綾瀬川先輩。」

 

「うん、ようやくちゃんと入隊したって感じだな。」

 

…なんと言うかむず痒いな…。

 

「…ありがとうございます。」

 

その言葉に3人は嬉しそうに笑う。

 

「さて!いつまでも感傷に浸ってられないな!早速始めよう。真登華。」

 

『はーい。』

 

それと同時に目の前に仮想トリオン兵が現れた。

 

「とりあえず簡単に射撃の腕を見る。入隊の時にやるやつだ。1分切れればいい方らしい。」

 

「…分かりました。」

 

 

 

 

──

 

 

「これはなんと言うか…。」

 

『ま、まぁ…ふ、普通っすね〜。』

 

 

──記録、1分。

 

 

無機質な機械音がそう告げた。

 

 

先程柿崎が言った、1分切れたらいい方というのは入隊時の話である。

経験を積めば積んだだけ時間は短くなる。

ましてや休隊していたとはいえ、古参、それもB級だ。

つもりこの記録は…

 

 

 

(遅い…わね、綾瀬川先輩には悪いけど…。)

 

照屋は目の前で息をついている綾瀬川を見て、そう考えていた。

 

申し訳ないが、古参のB級の記録とは思えなかった。

 

この試験、入隊時に、A級の黒江(くろえ) 双葉(ふたば)は、11秒、木虎(きとら) (あい)は9秒、最速では緑川(みどりかわ) 駿(しゅん)が4秒という記録をたたき出している。

入隊時点でだ。

それに比べるとどうしても見劣りする結果だった。

それは柿崎も同じだったのか気を遣うように尋ねた。

 

「えっと…メインはアステロイド…でいいんだよな?」

 

「?、まあ一応射手なので。弧月も使えますけど。」

 

「じゃあそっちでやって見てくれ。」

 

 

 

 

 

 

──記録、1分。

 

 

またしても記録は1分ピッタリだった。

 

『ま、まぁ射手は援護が主な仕事だから。』

 

宇井が歯切れ悪く話す。

 

「とにかく大体の実力は分かった。攻撃用のトリガーはアステロイド、弧月にハウンド、メテオラ…だったか?」

 

「一応バイパーも使えますよ。個人ランク戦は長らくやってこなかったのでそこまでポイントは高くないですけど。」

 

「なるほど…分かった。…さて、そろそろ防衛任務の準備をしよう。」

 

今日の夕方から柿崎隊は防衛任務が入っているため、柿崎のその言葉でお開きとなる。

 

「…真登華、悪いが清澄の個人ポイントとか、戦績をまとめられるだけまとめといて貰っていいか?」

 

柿崎は宇井に耳打ちでそう頼んだ。

 

「あ〜…了解です。」

 

 

 

 

 

ボーダー基地南部。

そこが柿崎隊の今日の防衛担当地区だった。

 

「文香は虎太郎と。清澄はこの隊での防衛任務は初めてだからな、俺と一緒だ。真登華、文香と虎太郎の支援を頼むぞ。」

 

『分かってますって〜。』

 

 

 

 

 

──

 

 

「清澄!バムスターそっち行くぞ!」

 

「了解。」

 

弧月を一閃。

瞬時にバムスターの目を切り裂く。

 

「アステロイド。」

 

トリオンキューブを展開し、アステロイドで柿崎の援護射撃をする。

 

『トリオン兵、綾瀬川先輩とザキさんのところに向かってるよ。それで最後だと思う。虎太郎と文香のところはもう片付いてる。』

 

「了解、清澄。」

 

「はい、援護します。」

 

「…いや、お前がやれ。俺が援護する。」

 

「…了解。」

 

その言葉に、オレは弧月を構え直す。

そしてトリオン兵目指して駆け出すと、柿崎さんが銃のアステロイドで援護射撃をしてくれる。

 

体勢を崩した隙に、弧月でバムスターを真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

「結構動けるじゃないか。」

 

「まぁ一応古参ですから。」

 

柿崎さんにそう返すと、照屋と巴がこっちにやって来た。

 

「お疲れ様です。」

 

「お疲れっす。そっちはどうでした?」

 

「ああ、清澄の援護のおかげで大分楽だった。そっちは大丈夫だったか?」

 

「ええ、いつも通りです。」

 

「そうか、真登華もよくやってくれた。」

 

『どーもでーす。』

 

「じゃあ戻るか。」

 

そうして初めての防衛任務も終わり、今日はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

隊員が揃うまで時間がかなりあるためオレは三輪に言われた通りランク戦のフロアに来ていた。

 

「あれ?綾瀬川じゃん。ランク戦のフロアにいるのは珍しいな。」

 

そう言ってオレに声をかけるのはA級1位太刀川隊の出水(いずみ) 公平(こうへい)だった。

 

「三輪に万能手目指すんだったらランク戦をしろと言われて様子を見に来たんだ。」

 

「お、じゃあ俺とやるか?」

 

「断る。NO.1部隊の射手と個人ランク戦なんてしたら万能手への道が遠ざかる一方だろ。」

 

オレがそう言って断ると出水の名前を呼ぶ声がした。

 

「おーい、いずみんせんぱーい!」

 

「よ、緑川。相変わらずお前もランク戦か?」

 

「うん!あれ?この人は…」

 

「柿崎隊射手の綾瀬川だ。」

 

オレの自己紹介に驚いたのは出水だった。

 

「え?お前柿崎隊に入ったのか?」

 

「ああ、三輪に相談に乗って貰ってな。」

 

「へぇ〜、俺は緑川(みどりかわ) 駿(しゅん)。よろしくね、綾瀬川先輩。それより相手を探してるんだったら俺とやろーよ。」

 

「お、確かに。緑川はまだ戦ったことないだろ?やってみたらどうだ?」

 

出水のその言葉にオレは少し考える。

 

「…分かった。頼めるか?緑川。」

 

「モッチロン!」

 

 

 

 

 

 

 

──柿崎隊隊室

 

「ザキさん!」

 

「?、どうした?真登華。」

 

隊室にやってきた、柿崎に宇井は慌てた様子で話した。

 

「昨日頼まれた綾瀬川先輩の資料、集めてみたんですけどおかしいんですよ。」

 

「おかしい?」

 

「ほら!」

 

そう言ってパソコンを開き、画面を柿崎に見せる宇井。

 

「!…おいおい…こりゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

『トリオン供給機関破損、緑川緊急脱出(ベイルアウト)。5ー4、綾瀬川リード。』

 

 

 

 

「へえ、やるね、綾瀬川先輩。」

 

「?、これでも古参だからな。中学生に負けてやる気は無い。」

 

にしてもこの新入り強すぎないか?

グラスホッパーの使い方がいやらしい。

 

乱反射(ピンボール)と呼ばれる動きでこちらを撹乱してくる。

てかポイント見てなかったけどかなり強いんじゃないか?

まぁさすがにマスタークラスってことは無いだろう。

中学生だし。

 

 

 

「アステロイド。」

 

「!」

 

オレの周りに展開されたグラスホッパーをアステロイドで相殺する。

 

「…」

 

そのまま弧月で緑川に斬り掛かる。

 

「…メテオラ。」

 

その言葉と同時にオレはしゃがむ。

 

「!、置き玉?!ちょ、待っ…」

 

そのまま緑川は爆撃に包まれた。

 

 

『トリオン供給機関破損、緑川緊急脱出(ベイルアウト)。10本勝負終了。勝者、綾瀬川。』

 

 

「ふぅ…。」

 

一息着いてフロアに戻ると、出水ともう1人、三輪隊の隊服を着た男が待っていた。

 

「よ、綾瀬川。」

 

「米屋か。来てたんだな。」

 

出水と一緒に待っていたのは米屋(よねや) 陽介(ようすけ)。三輪隊の攻撃手だった。

 

「…ギャラリーが多いな…。どうしたんだ?」

 

「そりゃお前…入隊式で4秒って言う最速記録を出した緑川と互角以上にやり合って勝ったんだ。注目されるだろ。」

 

「…あいつそんなにすごいやつだったのか?」

 

「ああ、スコーピオンはもうマスタークラスだぞ。」

 

「…」

 

そうして自分のポイントを見るとかなり点が上がっていた。

 

「…まじかよ。」

 

「もう1回!!綾瀬川先輩もう1回!!」

 

戻ってきた緑川は駄々をこねるようにそう言った。

 

「…そうだな、やろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──柿崎隊隊室

 

「これ…狙って揃えたんですかね…。」

 

「いや、それはさすがに…だが…このポイントは…」

 

 

 

 

 

 

綾瀬川 清澄

 

弧月 5000Pt

アステロイド 5000P

ハウンド 5000P

メテオラ 5000P

バイパー 5000P

 

 

 

 

 

 

 

 

緑川とは10本勝負を5回して1回目は俺が勝ち、他は緑川の勝ちという結果になった。

 

 

 




出水公平←同い年の射手仲間。弾バカ。
米屋陽介←三輪経由の知り合い。槍バカ。
緑川駿←初対面。こんな強いと思わなかった。


出水公平→同い年の射手仲間。万能手より射手で上目指そうぜ。
米屋陽介→三輪経由の知り合い。ランク戦しよーぜ。
緑川駿→初対面。最初取られた時はびっくりした。結構強いね。

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綾瀬川清澄②

投稿します。


B級ランク戦のシーズンがやって来た。

個人の力ではなく、チームとしての力が試される場だ。

柿崎隊が綾瀬川を隊に引き入れたのはランク戦のためと言うのが大きい。

1人増えればその分火力も上がるし、柿崎隊のような一枚岩の隊にとっては1人の差は大きいだろう。

その分オペレーターの負担、連携の難しさなどの問題は出てくるわけだが。

だがそんなものは柿崎然り、照屋、巴、宇井も分かっている。

その為、綾瀬川が柿崎隊に入ってからは、殆ど毎日連携の練習をしていた。

隊員全員が、近・中距離を担えることもあり、連携の幅は広く、難しい分、やりごたえがあった。

そうして時間はあっという間に過ぎるもので、翌日にはランク戦が幕を開ける。

 

「やれるだけの事はやった。清澄との連携も板に付いてきた。」

 

柿崎はこの日の練習の後、隊室でそう切り出した。

 

「俺はこのチームは中位に留まるようなチームじゃないと思ってる。」

 

笑顔を浮かべて話す柿崎に、照屋も巴も宇井も笑みを浮かべる。

 

「絶対に勝とう…!」

 

「当然です…!」

 

「勝ちましょう!」

 

「うん!この5人で…!」

 

 

 

「…お力添え出来るよう全力を尽くします。」

 

 

 

 

 

 

そう言う彼の瞳を見ると無機質なまでにどこまでも冷えきっていた。

柿崎隊長と真登華に彼の個人ポイントを見せてもらった。

全て5000で揃えられた不自然なまでに平凡なポイントを。

個人ランク戦のデータは殆ど無く、休隊明けにやったランク戦のものしか無かった。

それも特に目を張るものはなく、仲がいい、出水先輩、米屋先輩、三輪先輩、最近だと緑川君、その他B級下位のチームの人とのランク戦のみ。

A級の4人に負けては、下位の人間に勝ち、まるでパズルを揃えるかのように気付くとポイントが5000になっていた。

 

「偶然だ。ポイントなんて狙って揃えられる訳ないだろう。」

 

私が彼に聞いた時彼はいつも通りの無表情でそう答えた。

全くその通りである。

ポイント狙って揃えるなんてありえない。

勝って得られるポイント、負けて失うポイント。

 

それら全てを計算して揃えたのだとしたら…

 

 

 

照屋は考えるのをやめて、隊室から出ていく彼、綾瀬川清澄を見送った。

 

 

 

 

 

 

──

ボーダー内食堂

 

「明日の柿崎隊、荒船隊、鈴鳴第一のランク戦の解説を俺が引き受ける事になった。」

 

「…え?」

 

三輪のその言葉に掴んでいた中華丼のうずらの卵を箸から落としてしまう。

 

「最終的に選んだのはお前とは言え柿崎隊を勧めたのは俺だ。デビュー戦ぐらいは1番いい席で応援してやる。…無様な試合にはするなよ。」

 

「…そうか。それは下手なことは出来ないな。」

 

そう言って中華丼を頬張る。

 

「どこも柿崎隊にとっては格上だろう。」

 

「…そうだろうな。だから柿崎隊よりランキングが上なんだろ。」

 

「…」

 

その言葉に三輪は眉間に皺を寄せた。

 

「?…どうしたんだ?難しい顔をして。…唐揚げいらないなら貰うぞ。」

 

「はぁ…誰がやるか。」

 

そう言って伸ばした箸を持つ手を叩かれる。

 

「…呑気に話しているが勝算はあるのか?」

 

「…さあな、デビュー戦ってこともあるし初戦の作戦は隊長と照屋、宇井に任せてるんだ。オレは柿崎さんのオーダーに従うだけだ。」

 

オレのその言葉に三輪はため息を吐く。

 

「ポイントの方はどうなってる?万能手にはなれそうなのか?」

 

「どうだろうな。緑川って言うかなり強いのに目をつけられてな。ポイントを搾り取られる毎日だ。毎日搾り取られては元のポイント辺りに戻す生活だよ。断りたいんだがしつこくてな。米屋と出水が加わった日なんかは手がつけられん。」

 

「…そう言えば初見で緑川に勝ち越したらしいな。」

 

三輪が思い出したように切り出した。

 

「偶然だ偶然。こっちの手が割れてなかったのと、あっちがスコーピオンとグラスホッパーの乱反射戦法ってのは出水にチラッと聞いてたからな。乱反射戦法には射手が有利だからな。」

 

「…ともあれそんな体たらくじゃ万能手なんて程遠いぞ。」

 

「だったら米屋をどうにかしてくれ…。」

 

そう言ってオレは匙を投げるように言った。

 

「なんだよあの戦闘狂は。オレのポイント枯らしたいのか?」

 

「…それはすまないな。」

 

三輪の手にも負えないのだろう。少し考えたあと、申し訳なさそうに謝った。

 

「…まぁ万能手にならなきゃ弾トリガーと孤月一緒に使っちゃいけないなんてルールないだろ?荒船隊の隊長だってライフルと孤月使ってたしな。万能手はゆっくり目指すさ。」

 

そう言いながら味噌汁を1口啜った。

 

「ごちそうさま。三輪、この後どうするんだ?オレは個人ランク戦フロアに寄ってから帰ろうと思うんだが…。」

 

「…俺も行こう。」

 

「分かった。待ってる。」

 

 

 

 

 

 

初めてあった時から綾瀬川清澄という男はよく分からない男だった。

姉を殺した近界民を絶滅させる為ボーダー設立時の隊員募集で入隊した時の入隊式で初めて出会った。

なんの感情も篭っていない目。

抑揚のない話し方。

父は教育者で母は第一次近界民侵攻の際に亡くなったのだと言う。

その話をする時も瞳はまるでビー玉のように無機質だった。

それから家の用事で休隊。

連絡も取れずに3年半が経った頃、こいつは突然戻ってきた。

結果、3年半も休む、家の用事とやらは分からなかった。

 

 

 

三輪秀次は綾瀬川清澄と言う男に少なからず好感を抱いていた。

と言うのも三輪が隊長を勤める三輪隊はスナイパーが2人と前衛が2人のため、同じ前衛である、米屋陽介と言う無駄に騒がしい男と一緒にいることが多い。

そのため、物静かな綾瀬川は一緒にいて楽だった。

それに加えて、近界民に家族を奪われたという似た境遇。

自然と気にかけてしまう相手だった。

 

「ポイントは今どんな感じなんだ?」

 

「弾トリガーと弧月が5000くらいだな。あと1000Pt欲しいんだが…。」

 

「そうだな、お前は射手だ。とりあえずアステロイドのポイントを稼いだ方がいいだろう。」

 

「…相手がなぁ…三バカ(あいつら)は殆ど毎日ランク戦フロアにいるからなぁ…。」

 

綾瀬川が目を向けた方向にはいつもの3人がはしゃいでいた。

そしてこちらに気付いたのかよってくる。

 

「よう、綾瀬川、秀次。」

 

「今日は三輪と一緒なんだな、綾瀬川。」

 

そう言う出水に返したのは米屋だった。

 

「綾瀬川が話してるのは俺ら以外じゃ秀次くらいだろ?」

 

「まぁな、休隊してて知ってる人間が三輪くらいしか居ないからな。それに同期だし。」

 

「はあ?三輪と同期って…相当な古参じゃねえか。」

 

「?、言ってるだろ?古参だって。」

 

「そんな昔だとは思わなかったんだよ。なんで休隊してたんだ?」

 

「家の用事でな。」

 

「そんな事よりあやせセンパイ!ランク戦しよ!ランク戦!」

 

大人しく待っていた緑川だったが、痺れを切らして手を引いてくる。

 

「はぁ…分かったよ。明日の相手は荒船隊と鈴鳴第一だからな。攻撃手との経験を積みたいと思ってたんだ。」

 

そう言うと米屋も反応した。

 

「お、鋼さんとやり合う気か?」

 

鋼さんというのは鈴鳴第一のNo.4攻撃手、村上(むらかみ) (こう)の事だ。

 

「やり合う気がなくても配置によっちゃやり合わなきゃいけなくなる場合もあるだろ。まぁ勝てる気は毛頭しないけどな。」

 

「うっわ、綾瀬川弱気だなー。よしっ!じゃあ一番乗りいただき!」

 

「あ〜!よねやんセンパイずるい!俺が先に誘ってたのに!」

 

「うるせえ、先輩に譲れよ後輩!」

 

 

そんな2人の様子に出水は笑い、三輪は呆れていた。

 

そんな時だった。

綾瀬川の携帯が震えた。

 

 

「…すまない、急用が入った。」

 

「え〜!」

 

「悪いな緑川。3人も…」

 

「気にすんな。明日のランク戦頑張れよ。」

 

出水が代表して応援してくれた。

 

「お、じゃあ秀次、久しぶりにランク戦しよーぜ!」

 

綾瀬川が無理だとわかるとすぐに三輪を誘う米屋。

 

「断る。…ランク戦…頑張れよ。」

 

「…ああ…

 

 

 

 

 

…ありがとう。」

 

 

 

 

 

──

 

そのまま呼ばれた通り、オレはある扉の前に立った。

 

「入りたまえ。」

 

「…失礼します。」

 

高圧的な扉をくぐるとそこには目的の人物が座っていた。

 

「…呼び立ててすまなかったな、清澄。」

 

「…いえ。何のご用でしょう?」

 

「明日からB級ランク戦だろう。親として応援してやろうと思ったのだが。」

 

「…結構ですよ。」

 

オレのぶっきらぼうな返事に目の前の男は眉を顰める。

 

「自信が無いのか?」

 

「それ以前の問題ですね。勝てない戦いに自信も何もないでしょう。あの隊は欠点が多すぎる。A級なんて程遠いでしょう。」

 

「ほう…。」

 

興味深そうに目を細める男はさらに続ける。

 

「ならば君でも無理だと?」

 

「…程遠いとは言ったがなれないとは言ってない。柿崎隊の照屋と巴は伸ばせばA級レベルの逸材です。」

 

「…柿崎くんはどうだね?」

 

「…はっきり言って論外ですね。確かにそこそこの実力はある。だが、B級中位にとどまっているのはどう見てもあの人が悪い。」

 

「…そうか。」

 

「そんな顔しなくても約束は守りますよ。あんたへの恩はしっかりと覚えているつもりだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…城戸さん。」

 

 




ちなみに作者のワートリ推しキャラは出水と弓場ちゃん、オペだったら結束ちゃんです。


感想、評価等よろしくお願い致します。


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B級ランク戦ROUND1 VS鈴鳴第一、荒船隊①

戦闘描写ムズいっすね。


『皆さんこんばんは!B級ランク戦ROUND1夜の部実況を務めさせていただきます、嵐山隊の綾辻です!解説席には太刀川隊の出水隊員と三輪隊の三輪隊長をお招きしています!』

 

「どうぞよろしく。」

 

「…よろしく頼む。」

 

『初日の夜の部は鈴鳴第一、荒船隊、柿崎隊の三つ巴対決になりますが、解説の御二方はどのような展開になると予想されますか?』

 

『うーん、どうだろうな。どこもそんなに実力差があるってわけじゃないだろ。柿崎隊が選ぶマップによって大きく変わりそうだな。』

 

『なるほど…三輪隊長はどのチームが勝つと予想されますか?』

 

『…出水の言う通り予想は出来ないな。だが荒船隊はマップによっては不利になるだろう。狙撃手3人のチームだからな。』

 

『逆に言えば柿崎隊は狙撃手がいないのとマップ選択権がある分スナイパー対策が出来るマップを選んで来るだろうな。それに…今回の柿崎隊は一味違うからな。』

 

『綾瀬川隊員ですね。』

 

『お、あいつ目立たないと思ってたのによく知ってるな。』

 

『同じ「綾」仲間ですので。お2人から見て綾瀬川隊員はどうでしょう?射手とお聞きしていますが…』

 

『良くも悪くも普通だ。チームとしての腕は未知数だがな。』

 

『まあデビュー戦だからな〜。変に気を張って無ければいいけどな。』

 

 

 

 

 

 

 

──

 

柿崎隊隊室

 

「マップは予定通り市街地Dで行く。」

 

柿崎は作戦板の前でそう切り出した。

 

「そうですね。」

 

「いやー、荒船隊には申し訳ないね〜。」

 

市街地Dは大きな建物が多く、射線が通りにくいため、狙撃手には不利なマップだ。

それに加えて、屋内戦が起こりやすいため、尚更狙撃手は不利だろう。

スナイパーの居ない、柿崎隊にとっては好都合だった。

鈴鳴第一にも狙撃手はいる為、妥当な選択だろう。

 

 

 

 

──

 

『たった今ステージが決定されました!ステージは…「市街地D」です!』

 

『か〜、やっぱりか〜。荒船隊は相当しんどいぞ。』

 

『そうだな。だが荒船さんは元攻撃手だ。おそらく荒船さんメインで他2人が援護する形になるだろうな。鈴鳴第一にも狙撃手はいる。間違いなく柿崎隊が有利だろう。』

 

『たけど鈴鳴第一にはNo.4攻撃手の鋼さんがいるし転送位置によっちゃ分からないんじゃないか?』

 

『そうだな。荒船隊と鈴鳴第一はいかに柿崎隊を合流させないかが鍵になってくるだろう。』

 

 

 

 

 

──

 

ボーダー鈴鳴支部作戦室

 

「市街地Dか。やっぱり狙撃対策か。これは大分きついね。」

 

鈴鳴第一の隊長、来馬(くるま) 辰也(たつや)が言う。

 

「でも柿崎隊に合流させる前に1人でも落とせば勝機はあります。腐らず行きましょう。」

 

 

 

 

 

荒船隊隊室

 

 

「…やっぱりそう来るな。

 

 

 

 

 

…計画通りだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

『さあ、各隊転送開始!…転送完了!ステージは市街地D!天候は雨、時刻は夜!B級ランク戦ROUND1、夜の部、スタートです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『合流優先だ!』

 

内部通信で柿崎の指示が入った。

 

『綾瀬川先輩が少し遠いです。中間地点で落ち合いましょう。』

 

『そうだな、真登華、マーク付けてくれ。』

 

『りょーかい。4人レーダーから消えたよ。荒船隊と太一君だと思う。気をつけてね。』

 

『『『『了解。』』』』

 

 

 

 

 

──

 

『まずは荒船隊の3人と別役隊員がバッグワームをつけました。』

 

『荒船隊はデパート目指してるな。室内戦じゃ不利だろーに。何か案があんのか?』

 

『それはそうだろうな。マップの選択権が柿崎隊にある以上、狙撃手対策をされるのは分かりきっていたことだ。』

 

『そして鈴鳴第一は村上隊員と来馬隊長が合流する流れでしょうか。』

 

『おいおい、合流より柿崎隊の合流を防いだ方がいいだろ。』

 

『天候とマップで別役が機能しない分慎重なんだろう。綾瀬川のトリガー構成も分かってないからな。』

 

『なるほど。さて、その綾瀬川はどんな戦いを見せてくれるのやら…』

 

 

 

 

 

 

──

オレだけかなり端の方に転送されてしまった。

て言うかかなり端だな…。

オレは隊長の指示通り合流優先で走り出す。

 

 

 

あれ?てかこの位置…

 

 

 

 

『ここで鈴鳴第一の2人が合流!このまま、柿崎隊の合流を防ぐ動きに入る模様です!』

 

『これは綾瀬川がかなりキツいな。このまま行きゃ分断されるぞ。』

 

 

 

 

 

『…隊長、鈴鳴第一の2人がレーダーに入ってすぐに消えました。』

 

『やり過ごせそうか?』

 

『…やれるだけやってみます。死んだらすいません。』

 

そう言ってオレはバッグワームを羽織る。

 

 

 

 

 

「綾瀬川がレーダーから消えました。」

 

『今ちゃん、予測位置マークできる?』

 

『了解。トリガー構成も分からないのであんまり当てにしないでくださいね。』

 

『了解。』

 

「さて、この辺りの筈ですね。」

 

村上は弧月を構え、臨戦態勢のまま、来馬に話しかける。

 

「建物の中の可能性もある。僕がメテオラで建物を崩すから鋼はくまなく探すんだ。」

 

「了解です。」

 

来馬はアサルトライフルを構えると、近くの建物にメテオラを放った。

 

 

 

 

「おいおい、一発目で当てるなよ。」

 

建物の揺れに綾瀬川は悪態をつきながら何とか窓からの脱出を試みる。

 

「しんどいな…。」

 

『隊長、おそらく無理です。増援頼めますか?』

 

『そうか…分かった。こっちは虎太郎と合流した。文香がそっちに向かってる。何とか持ちこたえられるか?』

 

『いやー…ま、頑張ります。』

 

 

内部通信を切って、窓から飛び降りた時だった。

 

バッグワームを羽織り、弧月を振りかぶった村上先輩が目の前にいた。

 

「っ…と。」

 

何とか後ろに上体を反らし躱す。

 

「…スラスター。」

 

そのまま顔目掛けてスラスターを投げてくる。

 

「…っぶね…。」

 

顔を左に逸らしそれを交わす。

 

「!」

 

(躱された?)

 

「…」

 

村上の猛攻は止まらず、さらに弧月を振り抜いた。

 

「…」

 

それを小さな動きだけで躱すと、後ろに飛び退く。

 

 

「最初の2連撃で仕留めたと思ったんだがな。」

 

「…まぁ…古参なんで。」

 

「…なるほど。」

 

 

「鋼!!」

 

来馬さんの合図で村上先輩が飛び退くとアステロイドでのフルアタックがオレを襲う。

それをシールドを展開して何とか交わすが、横から村上先輩の弧月が迫っていた。

 

「…」

 

それをジャンプで交し、瓦礫の上に飛び乗る。

 

 

 

 

 

『鈴鳴第一の猛攻が綾瀬川隊員を襲う!しかし綾瀬川隊員何とか凌いでいます!』

 

『へ〜、鋼さんの連撃を躱しやがった。あいつ結構動けるな。個人ランク戦の時もあの動きすりゃいいのに。』

 

『しかし、ピンチは変わりません。綾瀬川隊員、防戦一方か!』

 

 

 

 

 

「仕掛けます。援護お願いします。」

 

「分かった。」

 

勘弁してくれよ…ほんと。

 

村上先輩が構える。

オレはトリオンキューブを8分割し、放つ。

 

「…ハウンド。」

 

山なりの軌道で放った弾は、村上先輩を超えて、来馬さんを襲った。

 

「お前の相手は…俺だろう…!」

 

振り下ろされた弧月をギリギリ避ける。

 

「メテオラ。」

 

撃つ直前に、視線を来馬に向けるのを忘れない。

 

すると村上先輩はすぐに後ろに飛び退きながらレイガストを構えた。

 

 

 

『上手いな。来馬さんの射線に上手く村上先輩を置くように動いてる。さらに視線を利用した釣り。メテオラで来馬さんを狙われるって分かったらレイガストで庇わざるを得ない。』

 

『あいつまだ孤月も抜いてねーしな。』

 

『綾瀬川隊員は射手では?』

 

『綾瀬川は万能手を目指している。孤月もそれなりに使える。』

 

『なるほど。』

 

『それに弧月を持っていることは村上先輩の目にも見えているだろう。現に少し慎重に動いている。綾瀬川としてはこのまま時間を稼いでこっちに向かっている照屋と合流したいんだろう。

 

 

 

 

…まあその望みは薄そうだがな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

鈴鳴第一と綾瀬川先輩はもう戦い始めてる…。

まだベイルアウトしてないって事はどうにか凌いでるのね…。

 

急がなくちゃ…。

 

 

 

 

 

キン…

 

 

 

 

「!」

 

 

 

ギィン!!

 

急いで抜いた弧月と、私を襲った弧月が衝突する。

 

 

「ちっ、やるじゃねーか。」

 

私の前で笑みを浮かべているのは元マスタークラスの攻撃手、荒船先輩だった。

 

 

 




明日もう1話出す予定です。
あくまで予定です。

感想、評価等よろしくお願い致します。


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B級ランク戦ROUND1 VS鈴鳴第一、荒船隊②

投稿します!
一応言っておくと私の作品の主人公は綾小路君をリスペクトであって、綾小路君ではないです。
その辺を理解した上で読んでいただければ幸いです。



下の方ですけどランキングに入ってたみたいで…嬉しいです!


『おーっと!ここで照屋隊員と荒船隊長がぶつかった!』

 

『荒船隊は他の2人はデパート目指してたけど荒船さんだけ潜んでたな。これは増援の望みは薄いか?』

 

『いや、柿崎さんと巴も向かってる。照屋が凌げば合流して荒船さんを落として綾瀬川を助けに行くことも出来る。いくらNo.4攻撃手の村上先輩と言えど柿崎隊4人が揃えば勝てないだろう。…もっとも、2人が凌げればの話だろう。』

 

『それに正確な射撃はできないだろうが太一が地味に双方を狙えるいい位置を取ってる。なかなかきついんじゃないか?』

 

 

 

 

 

──

 

『すいません、綾瀬川先輩。荒船先輩と交戦になりました。』

 

『…やっぱりか。』

 

『やっぱり?』

 

『いや…なんでもない。…隊長、どうします?』

 

『くそ…文香との合流を待ってから清澄を助けに行くべきだった!虎太郎と向かってる!少し大回りして清澄を拾ってから文香を助けに行く!それまで2人とも凌いでくれ!』

 

『私は大丈夫です。でも綾瀬川先輩は…』

 

『…何とかします。それに最悪オレが落ちても鈴鳴は荒船さんと照屋の所に向かうでしょう。そうすれば照屋が逃げる隙もできます。

 

…まあ、死んだらすいません。』

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと…

 

レイガストを構える村上先輩に対してオレは弧月を抜く。

 

「少し先で荒船と照屋が交戦しています。」

 

「そうみたいだね…。」

 

『…隊長は照屋と荒船が交戦している隙に太一と合流してください。…こいつは俺一人で落とします。』

 

『…分かった。』

 

村上先輩が弧月を振りかぶると同時に来馬さんが別方向に走り出した。

 

ギンッ!

 

「…ハウンド。」

 

弧月を弧月で止めると走り出した来馬さんにハウンド放つ。

しかしフルガードで防がれ失敗に終わる。

 

「お前とは俺一人で戦った方が落としやすそうだ。」

 

「…勘弁してくださいよ。」

 

 

 

『ここで鈴鳴第一、二手に分かれた!綾瀬川隊員を村上隊員一人で落とそうと言う考えか!』

 

『まあそうだろうな。弾トリガーと孤月どっちも使える綾瀬川を落とすには言っちゃ悪いが来馬さんは的にされるから邪魔だろ。来馬さんは太一と合流する気だろ。荒船隊が荒船さん以外どこにいるか分からない今ここで一人落とされるのは避けたいだろーしな。』

 

 

 

 

 

『ザキさん。鈴鳴第一の来馬さんが狙撃手と合流します。恐らくそっち行きますよ。バッグワームもつけたんで気を付けてください。』

 

『くそ…うちが集中狙いされてるな…分かった。』

 

『…オレは多分ここで落ちますね。オレよりも照屋の援護に入ってください。』

 

『…そうか…分かった。』

 

 

 

 

『市街地D北西、村上隊員と綾瀬川隊員の一騎打ちは村上隊員優勢か!綾瀬川隊員が徐々に押されている!』

 

 

 

 

 

村上は綾瀬川を追い詰めるように弧月を振るう。

 

「っと…アステロイド。」

 

弧月で受けつつ、弾で牽制するが、レイガストで簡単にいなされ、追撃をかけられる。

 

「…あぶね…。」

 

それを弧月で受け流す。

 

 

(躱すのが上手いな。押してるのはこっちなのに一太刀も入らない。)

 

連撃を繰り返しながら村上はそんな事を考えていた。

 

「いい動きだな。何か習っていたのか?」

 

「…ピアノと書道なら。」

 

「…そうか。隊長もお前の射線から外れた。」

 

「…みたいですね。」

 

「悪いが本気で行くぞ。」

 

「今日デビューの相手に大人気ないッスね。」

 

「悪いがそうも言ってられない。お前を倒して俺は先に行く。

 

 

 

…旋空弧月。」

 

No.4攻撃手の本気の斬撃が綾瀬川を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

『一方の照屋隊員と荒船隊長の交戦は荒船隊長が有利か!照屋隊員が徐々に削られる!』

 

『元マスタークラスの攻撃手だからな。照屋ちゃんも弧月の腕はいいけどまだ荒船さんには届かないだろ。』

 

『だが柿崎隊の2人がもう時期照屋と合流しそうだ。』

 

『ではこのまま合流して荒船隊長を3人で落とすと言う流れでしょうか?』

 

『…合流できるかどうかは分からないがな。命中率は低いが狙撃は死んでいる訳じゃない。』

 

 

 

 

 

 

 

二筋の閃光がデパートの屋上から放たれる。

 

そのうちの1つは巴虎太郎の足に当たり、巴はその場に倒れ伏した。

 

「虎太郎!」

 

『狙撃手注意!』

 

宇井の通信で急いで巴を抱えると、柿崎はデパートの射線から身を隠した。

 

 

『あーっと!ここで巴隊員が片足を失う!』

 

『早々にデパートを取った荒船隊の2人だな。今のは穂刈先輩のが当たったな。』

 

『この天気、夜という時間帯の中当ててきました!』

 

 

 

 

「くそ…大丈夫か?虎太郎。」

 

「すいません、隊長…。これ、どうします?」

 

「くそ…」

 

柿崎は頭を抱える。

どこで狂った?

狙撃手対策の市街地Dと天候、時間帯。

連携の練習だってしてきた。

清澄との連携も板に付いてきたところだ。

 

『くそ…文香の援護に行けねえ。…文香、そっちはどうだ?』

 

 

 

『…ごめんなさい隊長。』

 

 

 

その言葉と共に一筋の光が空に上がった。

 

 

 

 

『ここで照屋隊員が緊急脱出(ベイルアウト)先制したのは荒船隊です!』

 

『照屋が落ちた。この後の荒船さんの動き次第だな。』

 

『柿崎隊の数の有利は無くなった、それに巴隊員は足を削られる大ダメージを受けています。予想の展開とは一転、柿崎隊が不利な試合展開になってきたか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『今、今のは誰だ?』

 

『柿崎隊の照屋さんね。柿崎隊の2人も動きはないけど…荒船くんが姿を消したわ。そっちに向かってるかも。』

 

「…そうか。増援の望みはないらしいな。」

 

「みたいっすね。」

 

酷く冷えきった瞳だった。

表情どころか、眉、瞳孔すら動かない。

こいつは早く落とさなきゃまずい気がする。

 

村上有利の状況とは対照的に、村上は内心焦っていた。

 

「…旋空弧月。」

 

村上は距離をとると、レイガストをしまい、斬撃を飛ばす。

 

「…っ…ぶね。」

 

まただ。

やはり躱される。至近距離の旋空だぞ?

太刀筋を見切っているのか?

 

確実に押しているのはこちらだ。

現に綾瀬川は攻撃をする暇もないほどの連撃を受けている。

それでも一太刀も通らない。

孤月で受け流すか、躱されていた。

 

だがそれよりも村上が感じていたのは底知れない恐怖だった。

目の前の男はまだ何か隠している気がしてならなかった。

 

「…どうした?受けてばかりじゃないか。もう時間稼ぎは意味ないぞ?」

 

「なら手加減してくださいよ。」

 

「お前はチームで勝つ気がないのか?」

 

村上は戦闘中に手を止めて話しかける。

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

『ここで柿崎隊、潜んでいた鈴鳴第一の2人の奇襲を受けた!巴隊員がさらに削られる!柿崎隊長のフルガードでどうにか凌いでいる!』

 

「虎太郎、太一がどこかに潜んでる!気をつけろよ!」

 

「了解!」

 

巴はシールドで来馬のアステロイドを防ぎながら、拳銃からハウンドを放つ。

来馬は建物を盾にしながらハウンドを放っている。

 

『俺が詰める!援護しろ!』

 

『ザキさん!狙撃手警戒!』

 

「!」

 

急いで一歩引くと、先程いた場所に弾が着弾した。

別役の狙撃だろう。

 

「ちっ、慣れてきやがったな…。」

 

『別役先輩を落とせればこの状況は何とかなりそうですね。デパートの2人が落としてくれればいいんですが…。』

 

『いや、射線から上手く外してやがる。』

 

 

 

 

『柿崎隊、鈴鳴第一の試合展開は膠着状態に入ったか!』

 

『どうにか太一を落とすか、射線を切りたいところだな…。でも太一の射線を切ると今度はデパートからの射線が入っちまう。来馬さん相当いい位置取ったな。』

 

『来馬さんの射撃を防ぎながら別役を落としに行くのは難しいだろうな。荒船さんも姿を消してる。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ…確かにオレもそろそろチームの役に立つとするか…。」

 

目の前で綾瀬川はそう呟いた。

 

「えっと…村上先輩。この勝負あなたの勝ちです。」

 

そう言うと綾瀬川は予想外の物を取り出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンッ…!

 

 

 

 

 

鈍い音が耳に響く。

 

 

 

 

 

 

──トリオン供給機関破損、緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

 

『こ、これは…緊急脱出!

 

 

 

 

…別役隊員が緊急脱出です!!得点は…綾瀬川隊員?!』

 

 

 

 

綾瀬川が手に構えているのは…

 

 

 

「…イーグレット…だと…?」

 

それよりも…

 

 

 

 

『あいつ今…スコープ覗いてたか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

綾瀬川清澄

 

イーグレット 5000Pt

 

 

 




各キャラへの印象&各キャラへの印象

村上鋼←強い。弱いものいじめやめてください。

村上鋼→不気味。




持たざる眼鏡「それは…そうなんですが…」
よねやん先輩「と、思うじゃん?」
実力派エリート「俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」
綾瀬川「…まあ…古参なんで。」

この作品のこれ言っとけば何とかなる四天王。


感想、評価等よろしくお願い致します。


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B級ランク戦ROUND1 VS鈴鳴第一、荒船隊③

いい感じに筆が乗ったのでもう1話出します。


『こ、これは…何が起きたんでしょう?!』

 

綾辻は解説席の2人に視線を向ける。

出水は冷や汗を流しながら、画面を見ている。

三輪も驚愕の表情を浮かべていた。

 

『…一応撃った本人も驚いてる…のか?表情変わらんから分からん!』

 

さすがに偶然だろう。

 

観客もざわめき出す。

 

『えっと…よ、よく分かりませんが、柿崎隊に1Pt入ります!そして鈴鳴第一は別役隊員が居なくなったことで来馬隊長への援護狙撃が居なくなった!』

 

 

 

 

 

 

 

『ザキさん!太一くんが落ちた!』

 

『どういうことだ?!』

 

『えっと…よく分からないんだけど綾瀬川先輩が…』

 

『清澄。』

 

『…うちだけ狙撃手が居ないんで一応入れといたんですよ。それよりも早く来馬さんを。こっちはもう限界です。』

 

「虎太郎、行くぞ!」

 

反撃に出るため、2人は来馬を追った。

 

 

 

 

 

 

「今のは…狙ったのか?」

 

敵ということを忘れ、話しかける村上。

 

「オレがそんな芸当出来るようなやつに見えます?」

 

「…なるほど。だがチェックメイトだ。」

 

村上の孤月が綾瀬川の肩を切り裂く。

 

「…オレよりもあんたのところの隊長を助けに行った方がいいんじゃないッスか?」

 

「もちろんそのつもりだ。…お前を倒してからな…!旋空弧月…!!」

 

綾瀬川は転がるように建物の中に飛び込む。

しかしすぐに建物は両断されてしまう。

 

 

「さすがに死んだな、これは。」

 

 

綾瀬川は直ぐに建物から飛び出すと、村上の前に現れる。

 

 

「アステロイド。」

 

村上目掛けてアステロイドをバラけさせて放つ。

しかしシールドで簡単に防がれる。

これ以上後ろに逃げればエリアオーバーで脱落となる。

 

 

「終わりだ。」

 

「そうですね。一思いにどうぞ。」

 

「旋空弧月…!」

 

「…そうだ、後ろ気を付けてくださいね。」

 

「!」

 

──トリオン供給機関破損、緊急脱出(ベイルアウト)

 

無機質な機械音と共に綾瀬川の身体は光となって空に打ち上がった。

 

 

 

それと同時にいくつかの弾が村上の左肩を襲い、レイガストを持つ左腕を吹き飛ばした。

 

 

 

『ここで綾瀬川隊員が緊急脱出!それと同時に鈴鳴第一、来馬隊長も柿崎隊長の銃撃で緊急脱出!柿崎隊が2人!鈴鳴第一は村上隊員ただ1人!それも綾瀬川隊員の置き土産で左腕を失った!そして荒船隊は全員残ると言う当初の予想とは真逆の展開となった!』

 

『最後のはアステロイドじゃなくてハウンドだったな。これは鋼さんなかなかしんどいぞ。』

 

 

 

 

 

「くそ…。」

 

村上は悪態をつきながら飛ばされた左肩を抑えた。

 

 

「よう。新顔に随分してやられたみたいだな。」

 

そこに弧月を構えた荒船が現れる。

 

「そうだな…不気味なやつだった…!」

 

荒船と村上の弧月が衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで試合終了…!B級ランク戦ROUND1夜の部は4対3対1で柿崎隊の勝利です…!』

 

 

その後の試合展開はこうだ。

 

来馬を落とした柿崎隊はバッグワームでどうにかデパートに、侵入。

最後に穂刈の置き弾で巴を落とされるも柿崎が穂刈、巴が半崎を落とし、デパートでの戦いを制した。

 

北西、荒船と村上の戦いは左腕を失った村上は防戦一方。そのまま荒船に落とされ、ここで鈴鳴第一は全滅。

そのまま柿崎を落としにデパートに向かうが、そこでタイムアップ。

試合終了となった。

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 2P

照屋 0P

巴 1P

綾瀬川 1P

 

合計 4P

 

 

 

荒船隊

 

 

荒船 2P

穂刈 1P

半崎 0P

 

合計 3P

 

 

 

鈴鳴第一

 

 

来馬 0P

村上 1P

別役 0P

 

合計 1P

 

 

 

 

 

『今回のランク戦、解説のお二方に総評してもらいましょう。出水隊員、お願いします。』

 

『そうだな、まずは荒船隊。狙撃手対策される前提の動きだったな。荒船さん以外の2人がマップ全体を見渡せるデパートを早々に取って荒船さんがバッグワーム奇襲。読みが当たった感じだな。』

 

『なるほど…対策される前提の動き…ですか。確かに照屋隊員と綾瀬川隊員の合流を読んだ位置で待ち構えてましたからね。…ほか二部隊についてはどうでしょう?』

 

『たく、お前もなんか喋れよ…。』

 

出水は黙って何か考え込んでいる三輪を毒づきながら続けた。

 

『鈴鳴第一は…そうだな…柿崎隊に…っつーか綾瀬川にしてやられたって感じか?鋼さんも早々に綾瀬川倒して2人と合流するつもりだっただろうな。まさかあんなに粘られるなんて思ってなかっただろーぜ。』

 

『そうだな…。』

 

ここで三輪が解説に加わる。

 

『今回の試合結果、一番大きな要因は間違いなく綾瀬川が別役を落とし、村上先輩を削った点にある。』

 

『つーかあの腰撃ちイーグレットはなんだったんだ?』

 

『…』

 

 

 

『つ、続けます。見事勝利を収めた柿崎隊はどうでしたか?』

 

『うーん、勝ちはしたけど試合運びとしては微妙だったな。終始振り回されてる気がした。雨と夜っていう時間帯で狙撃手を封じた気になってたな。実際それで虎太郎の足がやられてるし。それがなけりゃ最後虎太郎が落とされることも無くて、荒船隊との点差をもっと縮めれたと思うぜ。』

 

『なるほど。今回の試合は柿崎隊の狙撃手対策を荒船隊がさらに対策をし、試合展開を掴み、柿崎隊が苦しながらも逃げ切った。という感じですね。…それではこれにてB級ランク戦ROUND1夜の部を終了したいと思います。ご清聴ありがとうございました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

柿崎隊作戦室

 

「い、いやー!勝ちましたね!」

 

静まり返った作戦室の中宇井が切り出した。

しかし、雰囲気は暗く、特に照屋は酷く落ち込んでいた。

 

「文香、気を落とすな。勝ちは勝ちだ。」

 

「でも…私…何も出来ないまま落とされちゃって…私が綾瀬川先輩を援護出来れば村上先輩だって落とせたかもしれないのに…!」

 

「…どうだろうな。あの人化け物だろ。まるで歯が立たなかった。」

 

綾瀬川が照屋の言葉にそう返した。

 

「ははは…仕方ないですよ。ボーダートップクラスの攻撃手ですから。逆にあれだけ生き残った綾瀬川先輩は凄いですよ!No.4ですよ?No.4。」

 

巴は綾瀬川をフォローして持ち上げる。

 

「…そう言って貰えると死んだ甲斐がある。」

 

「ちょ、実際は死んでないですからね?!」

 

宇井のツッコミが入り、作戦室は少し明るくなった。

 

「綾瀬川先輩…イーグレット…使えたんですね。」

 

照屋が疑るような目で尋ねる。

 

「まあ…な。最初は狙撃手志望だったんだ。だけどスコープを使って照準を合わせて撃つのが苦手でな。撃つまでに10秒はかかってまるで使えたもんじゃない。だから辞めたんだ。」

 

「でも今日はしっかり当ててましたよね?」

 

その言葉に3人ともこちらを見た。

 

「偶然だ偶然。スコープを覗かずにあの距離を当てられる訳ないだろ?当たらなくても牽制になればいいなって思って撃ったらたまたま当たったんだ。」

 

「…偶然…ですか?」

 

「…ああ。」

 

「ま、まあおかげで勝てたんだから良いじゃないか!文香も。お前が荒船を抑えてくれたから清澄が村上の足止めをできたんだ。そこまで気を落とすな。」

 

柿崎がフォローするように言う。

 

「…はい。」

 

「さて!まだ試合は続くが初戦の勝利を祝って祝勝会でもやるか!」

 

「やったー!ザキさん、私お寿司がいいー!」

 

「俺肉食べたいです隊長!」

 

 

「…オレはなんでも。」

 

「…」

 

照屋は表情ひとつ変わらない綾瀬川の後ろ姿を怪しむような目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ボーダー鈴鳴支部作戦室

 

「すいません…俺のせいです。俺がもっと早く綾瀬川を落としていれば…」

 

村上は3人の前で頭を下げた。

 

「鋼のせいじゃないよ。僕らこそ1人も落とせなかった。」

 

「そうっすよ!俺なんてよく分からないまま落とされましたから!」

 

鈴鳴第一の狙撃手、別役(べつやく) 太一(たいち)はフォローするように言った。

 

「あれは分かってなきゃ防げないわよ…。私こそ…綾瀬川くんのトリガー構成が分かってなかったのに射線管理が甘かったわ…。ごめんなさい。」

 

そう言って謝るのは鈴鳴第一のオペレーター、(こん) 結花(ゆか)だ。

 

「今回はお互いさまだよ。それに鋼は初めて戦う相手だったんだ。仕方ないよ。…綾瀬川君の動きは今日見たんだ。次に活かそう。」

 

「…はい。」

 

「鋼くんらしくないわね。次は勝ちますっていう所じゃないの?」

 

「…ははっ、そうだな。」

 

 

チームの話をしてもまるで意欲も興味もないような冷えきった瞳だった。

戦闘意欲の無いような動き。

 

 

恐らく一度も俺を落とす気で攻撃をしていないのだろう。

 

 

 

綾瀬川清澄…か。

 

 

 

 

…何者なんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

「…で?話ってなんだ?三輪。」

 

祝勝会の後の帰り道。

そこには三輪が待っていた。

 

すると三輪はオレにお茶を手渡してきた。

 

「初戦突破の祝いだ。…やる。」

 

「…ありがとう。」

 

 

 

 

会話が止まる。

 

…気まずい。

 

「今日のスコープなしの狙撃…あれは狙ったのか?」

 

そう思っていると三輪が切り出した。

 

「はあ…ボーダー基地を出る時出水と米屋と緑川にも聞かれた。偶然だよ偶然。同期でまあまあ付き合いの長いお前なら分かるだろ?オレにそんな芸当出来ると思うか?当てたオレが一番驚いてるんだからな?」

 

「…それもそうだな。」

 

…それはそれで傷つく…。

 

「…ともあれ…

 

 

…初戦突破おめでとう。同期の仲間の勝利は嬉しいものだな。」

 

「…そうか。」

 

「…っ…忘れてくれ。」

 

三輪は顔を逸らして言った。

 

「…ああ。」

 

「…まだランク戦は続く…

 

 

…頑張れよ。」

 

 

そう言って三輪は逆方向に歩き出した。

 

 

 

 

 

──仲間…か。

 

 

だが三輪…オレはお前を仲間だと思ったことは無い。

柿崎隊のメンバーも。

オレが勝つための道具でしかない。

 

──この世は勝利が全てだ。

 

過程は関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…最後にオレが勝ってさえいればそれでいい。

 

 




各キャラへの印象&各キャラからの印象

柿崎隊→頼れる仲間。

柿崎隊←勝つための道具。


ROUND1、綾瀬川のトリガー編成

メイン:アステロイド、弧月、イーグレット、シールド
サブ:ハウンド、メテオラ、バッグワーム、シールド

最後の文一応変えたんですが、原作のパクリすぎとか注意されたら変えます。

感想、評価等よろしくお願い致します。


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ROUND2前日

テ〜テ〜テ〜、テテテテ〜テテ〜♪

オレンジの評価バーは赤色に進化した!


まじでありがとうございます!

0時に出す予定でしたが間に合いませんでしたすいません。m(_ _)m


ボーダー基地個人ランク戦フロア

 

ギンッ!ギンッ!

 

弧月とスコーピオンがぶつかり、火花を散らす。

 

「どうしたの?あやせセンパイ!防戦一方だよ!」

 

「あのな、オレの本職射手って事忘れないでくれるか?」

 

そう言ってオレは後ろに飛び退きながら、トリオンキューブを8分割する。

 

「アステロイド。」

 

「うわわっ!弾トリガーずるい!」

 

「射手だって言ってるだろ?」

 

そう言いながら弾をシールドで防いでいる緑川に弧月で斬りかかった。

 

「グラスホッパー!」

 

グラスホッパーで上に飛び退く。

 

「ハウンド。」

 

それにさらに追撃をかける。

 

「ちょちょ…タンマ!」

 

「誰が待つか。」

 

距離を取ったのをいいことに、もう片方でアステロイドを作り出し、フルアタックを仕掛けた。

 

 

そのまま弾に飲まれ緑川は緊急脱出する。

 

 

『個人ランク戦終了。6-4、勝者綾瀬川。』

 

 

オレの勝利を知らせるアナウンスが響いた。

 

 

 

 

「あやせセンパイ!もう1回〜!!」

 

涙目で緑川がオレに張り付いてくる。

 

「たまには勝ち逃げさせろ…それにこれでオレのアステロイドのポイントが6000に行ったんだ。」

 

「…あれ?て事は…」

 

これの前のランク戦で緑川を弧月で落とした為、綾瀬川の弧月のポイントは6000を超えた。

 

「ああ、これでオレも万能手だ。」

 

「おおー!やったじゃねーか。」

 

「ようやくかよ…。」

 

そう言って寄ってきたのは、米屋と出水だ。

 

「秀次に報告してやれよ。あいつも心配してたからな。」

 

「ああ、報告しておくよ。」

 

 

 

「綾瀬川。」

 

 

話しているとこちらに近づいてくる男が1人。

 

「鋼さん。」

 

「村上先輩じゃん。」

 

先日のランク戦で戦った鈴鳴第一の村上鋼だった。

 

「…村上先輩…?えっと…何か?」

 

「いや、最近ランク戦フロアによくいるって聞いてな。…俺と個人ランク戦しないか?」

 

「いや、オレさっきようやく万能手名乗れるようになったばかりなんですが…No.4攻撃手に勝てるはずないでしょう?」

 

「そう言えば万能手を目指してるって言ってたな。おめでとう。…じゃあそうだな…ポイントの変動なしでならどうだ?10本勝負。」

 

村上先輩はそう提案してくる。

 

「見てみたいかも!やりなよあやせセンパイ!」

 

緑川はキラキラした瞳でそう言う。

 

 

「分かりましたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

『個人ランク戦10本勝負…スタート。』

 

転送されると同時に村上は弧月とレイガストを構えた。

オレは内心ため息をつきながら弧月を構える。

 

 

 

 

 

目の前には無防備に弧月を構えている綾瀬川が。

とても本気の連撃を無傷でいなせるようなやつには見えなかった。

感情の籠っていない無機質な瞳。

 

村上は考えるのをやめて弧月を振るう。

綾瀬川は両手で弧月を持ち、それを止める。

鍔迫り合いになったところで村上はレイガストで綾瀬川の体を押し出し、吹き飛ばす。

 

そのまま弧月を振るうが、上体を反らし避ける。

 

「…どうして攻めてこない…?」

 

「いやいや、カウンターでやられるのがオチでしょ。オレにはレイガストは無いですよ。」

 

「弾トリガーを使えばいいだろう。緑川とやっている時には普通に使っていた。」

 

「あれはたまたま上手く行ってるだけですよ。オレがそんな器用なやつには見えますか?ましてや相手はNo.4攻撃手です。本気で勝ちに行くならそんな博打はしない。」

 

「…そうか…ならばこちらは弧月1本で行こう。」

 

そう言って村上はレイガストをしまった。

 

「…手を抜いてくれるんですか?」

 

「ふ…お前が本気を出すのならこちらも本気を出す。」

 

「オレに何を期待してるのかは分かりませんがオレではあんたの相手は務まらない。無駄だと思いますけど。」

 

「それを決めるのは俺だ。…旋空弧月。」

 

弧月を一閃。

 

綾瀬川はしゃがんで躱すとそのまま後ろに飛び退く。

そのまま弧月で斬り掛かる。

 

「…あの時の方が重かったぞ。」

 

そう言って弧月で押し返す。

弧月を突き出し、綾瀬川の顔を狙う。

綾瀬川は首を逸らし躱した。

 

「…アステロイド。」

 

村上はレイガストで受けながら下がる。

 

「…旋空弧月…!」

 

拡張された斬撃が綾瀬川に迫る。

 

そのまま躱せず、綾瀬川の体は両断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人ランク戦終了10-0勝者村上。

 

 

 

 

「ボコボコだったな、綾瀬川。」

 

「ほっとけ、食いついた方だろ。」

 

茶化してくる出水にそう返した。

 

 

「綾瀬川。」

 

戻ってきた村上に話しかけられる。

 

 

「今のは本気か?」

 

「えっと…喧嘩売ってます?」

 

「「「ブハハハハッ!!」」」

 

後ろで三バカが笑っていた。

こいつらは後でしめる。

 

「いや、煽ってる訳じゃない。B級ランク戦の時と動きが違うように感じた。」

 

「あれは初見だったから村上先輩も慎重だったんでしょ。今回は村上先輩がオレと戦ったことがあったから余裕で勝てたんじゃないですか?」

 

「そうか…付き合ってくれてありがとう。今度お礼でもさせてくれ。」

 

「こちらこそ。やりごたえがなくてすいませんね。」

 

「だから違うって…じゃ、またな。」

 

そう言って村上は去っていった。

 

「よし!じゃあ次俺ね!あやせセンパイ!」

 

「いや、もう疲れた。今日は止めておく。」

 

「えー!いいじゃーん!」

 

「オレを射手に戻さないでくれ…。」

 

駄々をこねる緑川をどうにか宥め、3人と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

「お、いたいた。」

 

柿崎隊の作戦室に寄って身支度を済ませ、作戦室を後にした時、2人組の女子がやって来た。

 

「こんにちは!綾瀬川センパイ!」

 

「えっと…誰だ?」

 

「次の対戦相手を覚えてないなんて呑気ね。私は那須隊の熊谷(くまがい) 友子(ゆうこ)。攻撃手よ。」

 

「私は日浦(ひうら) (あかね)です!よろしくお願いします!」

 

2人は熊谷と日浦というらしい。

 

「次の対戦相手…か。それは悪かったな。」

 

「それよりも綾瀬川センパイ!ROUND1のあの狙撃、とってもかっこよかったです!スコープを見ずにあの距離を撃ち抜くなんて!」

 

「偶然だ。何度もできる訳じゃない。オレは狙撃手じゃないからな。…それで?オレになにか用か?」

 

「敵情視察ってやつよ。今暇?模擬戦しない?」

 

「悪いが見ての通り帰るところなんだ。それに次戦うやつにおいそれと手札を見せる訳には行かないだろ。」

 

「そ、残念。引き止めて悪かったわね。明日のランク戦、いい試合にしましょう。」

 

「…ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

「綾瀬川、ちょっといいか?」

 

はあ…今日は客人が多いな…。

 

ボーダー基地の出口辺りで1人の男が待っていた。

トレードマークと言ってもいい帽子を被っていなかったので一瞬誰か分からなかったが、声で荒船先輩であることが分かる。

 

 

「…なんですか?」

 

「そんなに警戒しなくても取って食おうってわけじゃねえよ。…お前…万能手になったらしいな。」

 

「まあ…漸くなれましたけど。」

 

「今、イーグレットのポイントはいくつだ?」

 

「…なんでそんなこと聞くんです?」

 

怪しむように聞くと、荒船は痺れを切らす。

 

「もったいぶってないで教えろよ。」

 

そう言ってオレにヘッドロックをかけてくる。

 

「…分かりましたから…確か5000です。」

 

「!…そうか。お前には絶対負けねえからな。」

 

「?…はあ…。」

 

そう言って荒船はランク戦フロアの方に去っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

「…って事があったんだが…三輪、なんだか分かるか?」

 

2人で焼き肉を囲みながらオレは三輪に尋ねた。

ちなみに万能手になったお祝いで三輪の奢りである。

 

「…自分で言ってて分からないのか?」

 

「?…分からないから聞いてるんだが?」

 

三輪は呆れたようにため息を吐くと、箸を置いた。

 

「今、お前は割とA級の部隊からも注目されているんだぞ。何せ荒船さんが2人目になるだろうと思われていたからな。」

 

「2人目?何の事だ。」

 

「万能手を名乗るには近距離トリガーと中距離トリガーの2つのポイントを6000以上稼ぐ必要がある。万能手が増えて薄れがちだかこれは難しい事だ。」

 

「まあそうだな。オレも苦労したし。」

 

オレの返答に三輪は続けた。

 

「だが増えてる以上なれない難易度じゃない。…だがそこに遠距離、狙撃手トリガーが加わると話は別だ。遠・中・近距離全てに対応した万能手、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)。現に玉狛の木崎さんしかなれていない。」

 

「…なるほど。オレがその完璧万能手になるんじゃないかってわけね。」

 

「もっともその3つをマスタークラスにする必要があるらしいからな。お前はまだまだだろう。どれもマスタークラスには行ってないからな。」

 

「ほっとけ。」

 

「荒船さんは完璧万能手目指している。お前をライバル視しているんだろう。」

 

そう言いながら三輪はオレの皿に肉を置いた。

 

「…なるほどな。まあオレがその完璧万能手を名乗れるのは数年後だろうけどな。三輪も目指してるのか?」

 

「俺の隊は既に奈良坂と古寺、2人の狙撃手が居る。俺に狙撃手トリガーは必要ない。」

 

「さいで。」

 

「それよりも明日のランク戦対策はどうなんだ?確か那須隊と諏訪隊だったか。」

 

「…いつも通りだ。4点取ったおかげでギリギリ那須隊を抜かしたからな。マップの選択権はうちにない。いつも通りの一枚岩でやるさ。」

 

「そうか…。」

 

そう言って三輪は肉を頬張った。

 

「ほら、もっと食べろ。お前の為の席なんだからな。」

 

 

「ああ、ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

そうして翌日。

B級ランク戦ROUND2が幕を開ける。




綾瀬川 清澄

弧月 6000P
アステロイド 6000P
ハウンド 5000P
メテオラ 5000P
バイパー 5000P
イーグレット 5000P




各キャラからの印象&各キャラへの印象

村上鋼←喧嘩売ってます?
荒船哲次←帽子。
熊谷友子←ちょっと怖い。
日浦茜←キラキラした目で見るのやめろ。



村上鋼→考えすぎ…か?
荒船哲次→ライバル視。
熊谷友子→何考えてるか分からない奴。
日浦茜→腰撃ちスナイプかっこいい!!



感想、評価等よろしくお願い致します!


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B級ランク戦ROUND2 VS諏訪隊、那須隊①

なんとランキングにこの作品が載っているではないか!
めっちゃ伸びてると思ったら…!

本当に感謝しかないです。
期待に添えるように頑張ります。



…と言いながら0時間に合いませんでしたw


『皆さんこんにちは。B級ランク戦ROUND2昼の部、実況を務めます。風間隊の三上です。解説席には、二宮隊の犬飼先輩と東隊、東さんをお招きしています。』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『ROUND2は諏訪隊、柿崎隊、那須隊の三つ巴対決になります。解説のお二方はどのような試合展開になると思いますか?』

 

『数的有利で言うと柿崎隊ですね。最近4人部隊になりましたから。』

 

三上の質問に東が答えた。

 

『ですがそこまで差はないと思いますよ。火力は柿崎隊、射程で言えば狙撃手のいる那須隊、近距離で言えば諏訪隊でしょう。』

 

『俺個人で言えば全体的に中距離戦闘が得意な部隊だから熱い撃ち合いが見れそうで楽しみかな。』

 

犬飼が答えた。

 

『確かに…那須隊には射手の那須隊長が、諏訪隊は銃手2人、柿崎隊は銃手の巴隊員と万能手が3人ですね。』

 

『だから那須隊はどこで戦っても有利は変わらない。普通のマップを選ぶんじゃないですかね。』

 

『そうですね。さて、ステージはどこに選ばれるのでしょうか。』

 

 

 

 

 

 

 

柿崎隊作戦室

 

「どこのマップが選ばれるかは分からないが、いつも通りで行く。合流を優先して火力で押し切る。」

 

「了解です。」

 

「1対1でも点を取れる、諏訪さん、那須、熊谷、笹森には注意しろ。」

 

「狙撃手の茜ちゃんの射線にも気を付けてね〜。」

 

「綾瀬川先輩、今日もイーグレットを?」

 

照屋が綾瀬川に尋ねた。

 

「まあ入れるだけ入れておくよ。…あんまり期待しないでくださいね?」

 

「分かってる。それにイーグレットは牽制でも使えるだろ。」

 

「まあそうですね。」

 

「勢いこのまま勝つぞ…!」

 

「「「おお!」」」

 

「…おー…。」

 

 

 

 

 

──

 

那須隊作戦室

 

「マップはどこを選んでも変わらなそうね…戦いやすい市街地Aでいきましょう。」

 

那須隊隊長、那須(なす) (れい)はマップを市街地Aに決める。

 

「うちだけ狙撃手がいるわ。茜ちゃんは早めに高台を取るように動いてね。」

 

「わっかりましたー!」

 

日浦は元気に返事をした。

 

「でも、ROUND1では綾瀬川がイーグレットを使ってたじゃない?」

 

「綾瀬川くんはそこまでイーグレットのポイントが高くないみたい。ネタが割れてるこの試合では効果は薄いから使ってこないんじゃないかしら?…でもまあ、2人とも射線には注意してね。小夜ちゃんはサポートお願いね?」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「市街地Aか、まあ妥当だなァ。」

 

諏訪(すわ) 洸太郎(こうたろう)は煙草を加えたまま話す。

 

「まあいつも通り行くか…。」

 

 

 

 

 

 

 

──

 

『さあ、那須隊によりステージが選択されました…「市街地A」!ステージは、「市街地A」です!犬飼先輩、マップの説明をお願いします!』

 

『えー?市街地Aの説明なんていらないでしょ。うーんまあでも初めての人のために簡単に。一番普通のマップですね。建物が並んだ市街地って感じ。高い建物もあるから狙撃もし易い、開けた場所もある。少ないけど屋内戦もあるんじゃないかな?』

 

『なるほど…さて、それでは各隊転送スタートです!なお転送位置はランダムです!

 

 

 

 

 

 

 

…転送完了!ステージは「市街地A」天気は晴れ、時間帯は昼、B級ランク戦ROUND2スタートです!』

 

 

 

 

──

転送位置は小さな公園の真ん中だった。

オレはレーダーを見る。

運がいい。

照屋が近かった。

 

『隊長、綾瀬川先輩が近いです。こっちで合流してから2人で向かいます。』

 

『分かった、俺と虎太郎もそこまで遠くない。文香と清澄は1人のうちはバッグワームをしておけ。』

 

『『了解。』』

 

オレはバッグワームを付けると、照屋の元に走り出した。

 

 

 

 

『まずは那須隊、日浦隊員と柿崎隊の綾瀬川隊員、照屋隊員がバッグワームを装着!日浦隊員は高台を、柿崎隊の2人は合流しようという考えか!』

 

『柿崎隊は転送位置が良いですね。このまま行けばすぐに合流出来そうです。』

 

『でも、諏訪隊も合流は簡単そうだね。那須隊は日浦ちゃんだけ遠いけど狙撃手だから高台さえ取れちゃえば問題ないしね。那須ちゃんと熊谷ちゃんもそこまで離れてない。これは個人でってよりはチームでの撃ち合いが見れそうだね。』

 

 

 

 

 

 

「待たせたな、照屋。一応射線が通らない道を通って遠回りになった。」

 

「いえ、問題ないです。」

 

『隊長、綾瀬川先輩と合流出来ました。』

 

『分かった。ならすぐこっちに来てくれ。諏訪隊が近づいてきてる。』

 

『『了解。』』

 

 

 

 

『どの隊も2人以上揃いましたね。この動きは諏訪隊が柿崎隊の柿崎隊長と巴隊員に仕掛けますね。』

 

『ま、4人揃ったらしんどいだろーから先に削っとこうってとこかな。』

 

『那須隊も高い位置取りましたね。今回はどの隊も転送位置が良かったという感じですね。』

 

 

 

 

「いきましょう、綾瀬川先輩。」

 

「…ああ。」

 

綾瀬川と照屋の2人は、柿崎達の所へ走り出す。

 

『文香、綾瀬川先輩、那須隊が高い位置取った!攻撃来るかも!』

 

その言葉に少し離れた一際大きな建物を見ると、そこにはトリオンキューブを構えた那須が立っており、それを守るように熊谷が立っていた。

 

「来るな…照屋。」

 

「はい。」

 

那須が弾を撃ち出す。

ログで見た、バイパーでの広範囲のフルアタック。隊員の間では鳥籠と呼ばれる戦法だ。

 

2人は背中合わせシールドで全範囲を守る。

そしてシールドにバイパーの雨が降り注いだ。

 

 

 

 

『ここで那須隊長のバイパーが柿崎隊の照屋隊員と綾瀬川隊員を襲う!』

 

『那須隊は早い段階で合流と高い位置を取りましたね。これは有利に試合を運べると思います。那須の鳥籠はそう簡単には攻略できませんからね。』

 

 

 

『隊長、那須隊に見つかりました。射線を切りながら少し遠回りしていきます。』

 

『分かった、気をつけろよ!』

 

『はい。』

 

 

 

 

 

『一方の諏訪隊サイド、堤隊員と笹森隊員が合流。諏訪隊長も柿崎隊長の逆サイドから接近!』

 

 

 

「来るぞ、虎太郎。」

 

「はい!」

 

曲がり角から飛び出した堤がマシンガンを乱射。巴が防ぎつつ、柿崎もアステロイドを乱射、撃ち合いが始まった。

 

『隊長、反対側から諏訪さんが来てる!』

 

「分かった!虎太郎、少し開けた場所に出るぞ。挟まれたら不利だ。」

 

「了解です。」

 

諏訪が合流する前に2人は、少し先の空き地に向けて走り出す。

 

 

『両サイドで戦闘が始まった!』

 

『どちらも柿崎隊が少し不利ですね。諏訪隊は3人揃いそうですし那須隊は高台を取っていますから。』

 

『ではこのまま柿崎隊を全滅させてから諏訪隊VS那須隊になる…という事でしょうか。』

 

『それはどうでしょう。綾瀬川は昨日まで射手ですからね。』

 

 

 

 

『第二波くるよ!文香!先輩!』

 

那須のバイパーが2人を襲う。

 

「…照屋、ガード任せるぞ。」

 

そう言いながら俺は両手にトリオンキューブを生成する。

 

「那須先輩と撃ち合う気ですか?相手はバイパーですよ?」

 

「前に言ったろ。バイパーも使えるって。…バイパー。」

 

那須のバイパー目掛けてこちらもバイパーを撃ち出す。

それは綺麗に全弾射抜き、空中で光る。

 

 

 

 

 

 

「!、くまちゃん。あっちもバイパーを撃ってきたわ。」

 

「綾瀬川ね…。ちっ…あいつ情報が少ないのよ…。やっぱりバイパーも使えたのね。」

 

那須の言葉に熊谷は悪態を吐いた。

 

「バイパーの撃ち合いで負ける訳には行かないわ。」

 

そう言って那須はさらにバイパーを生成して撃ち出した。

 

 

 

 

『那須隊サイドはバイパーでの撃ち合いになりました!綾瀬川隊員と那須隊長のバイパーがぶつかる!』

 

『でもまあ那須ちゃん有利でしょ。なんたってB級最強のバイパー使いなんだから。』

 

『と、言うと?』

 

『バイパーは通常打つ前に弾道を設定して撃ちます。ですが那須隊長の場合はリアルタイムで弾道を設定しているので状況によって弾道を変えることができますから。』

 

『なるほど。』

 

『綾瀬川の手には余ると思いますよ。現に綾瀬川は那須のバイパーを近くまで引き付けてから落としています。那須が自分が有利なのはもう分かっているはず。弾数を増やされればきついと思います。』

 

 

 

 

 

展開は実況の言う通りになり、那須は先程以上のバイパーを放った。

 

「ちっ…」

 

綾瀬川は舌打ちしながらフルガードに切り替えた。

 

「時間差で撃ってきてますね。このままじゃ削り落とされる。」

 

「…はぁ…」

 

綾瀬川は少し考えた後、ため息を吐いた。

 

「照屋、もう一度ガード任せるぞ。」

 

「でも撃ち合いじゃ…」

 

「まあ任せとけ。

 

 

…これでもオレは古参の射手だぞ?」

 

 

 

 

 

「このまま削り落とすわ。くまちゃんはバッグワームで近付いて。」

 

「分かった。」

 

「…バイパー…!」

 

那須は今日最多の弾を柿崎隊の2人目掛けて放った。

 

 

するとそれと同時に柿崎隊サイドから弾が打ち上がったのだ。

 

 

 

「!、くまちゃん!」

 

熊谷はすぐに引き返すと、那須にシールドを張った。

 

「何を考えているの?撃ち合いなら私の方が有利よ。」

 

那須はリアルタイムでバイパーの弾道を引ける。

綾瀬川のバイパーを躱すようにすぐさま弾道を引いた。

 

 

 

 

それに合わせて、綾瀬川のバイパーも曲がる。

バイパーは空中でぶつかり、相殺された。

 

 

 

『!、これは…!!』

 

『驚きましたね…これはまさか…』

 

『飛んだ隠し球…いや、隠し弾だね。』

 

 

 

 

「まさか綾瀬川先輩、リアルタイムでバイパーを…?」

 

「言っておくがあっちの隊長程曲げれないからな?あんまり期待するなよ。」

 

そう言ってさらにトリオンキューブを9×9×9の立方体に分割させる。

 

「バイパー。」

 

無機質な瞳は、空に上がる那須のバイパーを完全に見切っていた。




ROUND2、綾瀬川のトリガー編成

メイン:バイパー、弧月、イーグレット、シールド
サブ:バイパー、メテオラ、バッグワーム、シールド



ROUND1の編成をB級ランク戦ROUND1③のあとがきに追加しておきました。
もし良かったら見てみてください。


感想、評価等よろしくお願い致します。


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B級ランク戦ROUND2 VS諏訪隊、那須隊②

遅くなりました。
投稿致します。




何時ぶりだろう…。

 

 

下から撃ち出されたバイパーに合わせて弾道を変え、空中で相殺させる。

 

 

私が後手に回るのは。

出水くんとの個人ランク戦ぶりだろうか。

私のバイパーはリアルタイムで弾道を引くから、対策の対策など容易だった。

撃ち合いでなら、B級において、二宮さんの次に自信があったから。

だからこんな体験初めてだった。

B級ランク戦で初めて…私が動かされてる。

 

初めての胸の高揚に那須は静かに笑みを浮かべた。

 

「いいわ。とことん付き合うわ、綾瀬川くん。」

 

 

 

 

 

 

『那須隊長と綾瀬川隊員によるバイパーの撃ち合い激化!解説のお2人はどっちが勝つと思いますか?』

 

『うーん、って言うか綾瀬川くんのバイパーの個人ポイント5000って嘘でしょ。まあ使ってなかっただけかもしれないけど那須ちゃんを押せるくらい弾道設定できるのに5000は少なすぎるよ。マスタークラスあってもいいんじゃない?』

 

『綾瀬川は主に弧月とアステロイド、状況に合わせてハウンドとメテオラを使っていたはず。バイパーをこれだけ使いこなせるのは予想外ですね。リアルタイムで弾道を引けるのはボーダーにおいて太刀川隊の出水、そして那須に次ぐ3人目。どっちが勝ってもおかしくはないでしょう。』

 

 

 

 

 

 

 

『くまちゃん、少し距離を詰めましょう。これ以上この距離で撃ち合っても現状は変わらないわ。』

 

『分かった。』

 

那須はバイパーを撃ち出すと同時に、ビルの屋上から飛び降りた。

 

 

 

 

『先輩!那須さんがそっちに向かってるよ。』

 

宇井からの通信が入る。

 

『ああ、今見えた。』

 

「照屋、2人が来るぞ。熊谷を捌きながら那須の相手をするのは流石にしんどい。熊谷の相手はお前に任せるぞ。」

 

「…分かりました。」

 

『綾瀬川先輩、ザキさん達の方、諏訪隊が揃っちゃった。那須隊を何とか撒いてこっちに来れない?』

 

『…そうか。那須隊をそっちに連れて行っていいなら行ける。4人合流すりゃ何とかなるだろ。』

 

『分かった。』

 

「照屋、那須隊は隊長達の方に連れていこう。まあ熊谷か、狙撃手あたりをついでに落とせればいいけどな。」

 

「分かりました。」

 

綾瀬川はバイパーのフルアタックから、フルガードに切り替えると、柿崎達のいる方角に走り出す。

 

『宇井、狙撃手が怖い。射線の通らない道表示できるか?』

 

『りょーかいっ!』

 

 

 

 

『この展開は…諏訪隊サイドの不利を考えて、那須隊を引き連れて合流しようと言う考えか!』

 

『そうでしょうね。距離がある分ガードに徹すれば難しくはないでしょう。』

 

『日浦ちゃんの場所が分からないから上手く射線の通らない道通ってるし確定だろうね。柿崎さんと虎太郎くん2人じゃ諏訪隊3人の相手はしんどいだろうしね。』

 

『そして那須隊もその意図に気付いてかさらに追撃。熊谷隊員は別ルートで先回りする動きを見せました!』

 

 

 

 

シールドで那須のバイパーを受けつつ、射線の通らない道を走る。

 

『先輩、熊谷さんがレーダーから消えました。』

 

『ああ、先回りしてるだろうな。あっちは狙撃手がいる以上オレたちが射線が通らない道を通るって分かってるだろ。…そこで1つ照屋と宇井に提案があるんだが…。』

 

『『はい?』』

 

 

 

 

『くまちゃん、私がそっちに誘導するわ。奇襲で崩して。』

 

『分かった。』

 

するとレーダーに動きが。

 

『!、茜ちゃん、もうすぐ2人が射線に入るわ!』

 

『うえぇ?!わ、分かりました!』

 

日浦はマークされた場所にすぐさまライトニングを向ける。

 

『射線よりも近道を優先したか…!』

 

熊谷はすぐに引き返す。

 

『茜ちゃん、今…!』

 

『はいっ!』

 

スコープに捉えた綾瀬川にライトニングの凶弾が放たれた。

 

 

 

 

 

ギィン!!

 

放たれた、弾は集中シールドで弾かれた。

 

 

『!、那須先輩!防がれました!』

 

『誘われたか…!』

 

『茜ちゃん!すぐに移動して!』

 

『は、はいぃ…!』

 

 

 

 

 

 

 

『先輩、弾道予測です…!!』

 

『ああ、助かる。』

 

 

 

そう言って綾瀬川は走りながらイーグレットを構えた。

 

そしてマークされた建物に走りながらノールックで射撃。

 

 

 

『…か、肩に命中!?し、しばらく狙撃はないかと…!』

 

 

『そうか、当たったか。』

 

走りながら淡々と話す。

 

『宇井、一番近いルートを表示してくれ。』

 

『わ、分かりました…。』

 

 

 

 

『こ、ここで綾瀬川隊員のイーグレットが炸裂?!日浦隊員の肩に直撃。右腕のトリオン伝達系が切断か。これにより正確な狙撃は厳しくなった!』

 

『アハハハ…何今の。東さん出来る?』

 

犬飼は苦笑いで東に尋ねた。

 

『…流石にスコープ覗かずにノールックで当てるのは無理だ。…おそらくイーグレットを弾速に全振りで当たればいいなで撃ったんでしょう。狙って撃ったのなら落としているはずですから。』

 

『なるほど、ですがこれで射線の有利が無くなった那須隊。熊谷隊員もすぐに追いますがこのペースだと守りに徹すれば合流は確実でしょう!』

 

 

 

 

 

「ふぅ…どうにか当たったな。照屋、熊谷がどこから出てくるか分からん。警戒頼むぞ。オレはどうにかバイパーを捌く。」

 

「…今のも…偶然ですか?」

 

走りながら照屋が尋ねる。

 

「当然だろ。オレは当てるつもりで撃ってない。」

 

「…」

 

「バイパーが来るぞ、構えろ。」

 

 

 

 

 

 

 

『茜ちゃん、大丈夫?』

 

『な、何とか…!でも正確な狙撃は出来なそうです。』

 

『くっ…ここでイーグレットか…!私も全力で追いかけてるけどこのペースだと無理そうね。』

 

『分かったわ。出し惜しみもしてられないわね。』

 

 

 

 

那須は走りながらトリオンキューブを2つ作り出す。

 

 

炸裂弾(メテオラ)変化弾(バイパー)変化炸裂弾(トマホーク)…!」

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、バイパー、来ます!」

 

そう言って照屋はシールドを展開する。

綾瀬川は少し視線を後ろにやる。

 

「…いや、この前の射撃との時間差が妙だ。それに弾速も遅い。」

 

「!…合成弾!」

 

 

2人はすぐさまその場に止まると、シールドを固定モードで地面から生成。

 

どうにかトマホークを受け切る。

 

 

 

 

 

『ここで那須隊長の合成弾が炸裂!綾瀬川隊員と照屋隊員、シールド固定でどうにか受け切った!』

 

『那須が合成弾使うのは珍しいですね。隠し球でしょうか。』

 

『て言うかなんで綾瀬川くんと照屋ちゃんは分かったの?』

 

『バイパーとメテオラの合成弾、トマホークはバイパーに比べて少し遅いんです。それが分かっていれば見極めることは可能です。あとはまあ…バイパーの連続射撃とのタイムラグでしょうか。合成弾を作るのは出水でもない限り時間が掛かりますから。』

 

『なるほど〜。』

 

東は画面を見ながら少し考え込む。

 

(とは言えこの戦闘の中それを見極めるのは至難の業だ。照屋か…いや、元射手の綾瀬川…か。さっきのイーグレット狙撃と言いバイパーのリアルタイムでの弾道操作…。)

 

 

『中々興味深いですね…綾瀬川隊員。』

 

 

『?』

 

 

『ここで足を止めたのが効いたか、熊谷隊員が2人を捉えました!弧月で照屋隊員に切り掛る!』

 

 

 

 

 

「ちっ…照屋、熊谷の相手、任せるぞ。どうにか隙を作る。」

 

「分かり…ました…!」

 

熊谷の猛攻を弧月で受止めながらそう返した。

 

 

 

 

まずはさっきの合成弾を撃たせないことが先決か。

オレは那須目掛けてバイパーを放った。

 

 

那須もそれに応じて、バイパーを放つ。

 

 

ここからは駆け引きだな。

どちらが相手の弾を如何に上手く動かすか。

 

弾と弾が交錯する。

空中で相殺して眩い光に包まれる。

その間に那須も少し離れた高台を取り、向かい合う形になった。

 

 

「驚いたわ。自慢じゃないけど私のバイパーと撃ち合う人がいるなんて思わなかった。」

 

「…まあ…古参だからな。」

 

「綾瀬川くん。下の名前は?」

 

「…清澄。」

 

「そう、綾瀬川清澄君…覚えたわ。…でも悪いけどこの勝負、負ける訳には行かない。」

 

トリオンキューブが那須を囲むように円を描いた。

 

「勘弁してくれ。本職じゃないんだぞ…?」

 

そう言いながらオレもトリオンキューブを生成する。

 

 

 

 

 

そして今一度2人のバイパーはぶつかり合った。




各キャラへの印象&各キャラからの印象

那須玲←出水に次ぐ弾バカ2号。まじで勘弁してください。




那須玲→全力で撃ち合いができる相手。名前覚えたかんな。
東春秋→興味。



主人公に何かしらサイドエフェクトが欲しいななんて寝る前に考えてたら、あっ、綾小路にちなんで強化Tレックスで良くね?とか考えてた。
多分私は疲れてる。


感想、評価等よろしくお願いします!


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B級ランク戦ROUND2 VS諏訪隊、那須隊③

投稿致します。
次で終わる模様。


『那須隊長と綾瀬川隊員の撃ち合いが激化する中、諏訪隊サイドにも動きがあった!巴隊員が笹森隊員により緊急脱出!諏訪隊1点獲得!』

 

『諏訪隊はまだ笹森が残っていますからね。諏訪隊と柿崎が撃ち合いになれば笹森のカメレオンには対応出来ないでしょう。これは柿崎隊長も時間の問題かもしれません。』

 

『うーん、これは柿崎隊しんどいね。那須隊に足止めされてる以上助けには行けないでしょ。』

 

 

(さて、隊長のピンチだぞ…次は何を見せてくれるんだ…?)

 

 

東はそう考えながら、無表情で那須と撃ち合っている綾瀬川に目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『綾瀬川先輩、このままじゃジリ貧です…!』

 

『そうだな。…分かった。宇井、すまないが照屋に狙撃手の射線が通らない道を表示してくれ。ここからだったら遠回りの必要もないだろう。』

 

『そうですけど…どうして?』

 

綾瀬川は1歩下がりながら話す。

 

『この2人はオレが相手する。照屋は先に隊長の所に向かってくれ。』

 

『『!』』

 

 

「そんな!無茶です先輩!」

 

照屋は内部通信ではなく、声を荒らげる。

 

「言ったろ?先にって。オレもどうにか巻いて行く。隊長と合流出来れば3対3対3になる。乱戦の方がまだ点が取りやすいだろ。」

 

「…分かりました。」

 

「…メテオラ…。」

 

 

 

 

 

 

 

バイパーじゃない…?!

 

 

綾瀬川が取り出したトリオンキューブは地面を大きく抉り、土埃を上げた。

 

 

 

『視覚支援…!』

 

 

それと同時に視覚支援が入り照屋は駆け出した!

 

『茜!照屋が抜ける!』

 

『了解ですっ!!』

 

日浦はすぐにライトニングを構え、撃ち出す。しかしそれは当たることなく、照屋は颯爽と脇道に入り込み射線を切った。

 

『ダメですっ!バッグワームもつけてて…見失いましたぁ…!』

 

「くそ…綾瀬川ぁ…!」

 

『小夜ちゃん…視覚支援を…!』

 

『了解です…!』

 

那須隊のオペレーター、志岐(しき) 小夜子(さよこ)により、那須隊の2人に視覚支援が入る。

 

 

ようやく見えるようになった熊谷の視線に飛び込んだのは弧月を抜刀する綾瀬川だった。

 

 

「っ!!!」

 

何とか対応して受ける。

すると何を思ったか綾瀬川はバッグワームを羽織ることなく取り出した。

 

「何を…」

 

それを熊谷目掛けて、投げて視界を塞ぐ。

 

「くそ…!」

 

それを切り裂く前にバッグワームは消え失せる。

土埃が晴れ、日光が眩しくなる。

 

 

『『視覚支援解除…!!』』

 

オペレーター2人の声が重なる。

 

 

 

 

 

熊谷の視界の下、足元で屈みながら弧月を構える綾瀬川が目に飛び込む。

 

「っ…!!」

 

すぐに弧月を構えて受けようとするが、綾瀬川の狙いは別にあった。

 

綾瀬川はそのまま弧月を振り抜き、熊谷の足を切断した。

 

 

「しまっ…た…!!」

 

そのまま熊谷はその場に崩れる。

 

「くまちゃん!!」

 

すぐさま那須から放たれたバイパー。

綾瀬川は前と後ろにシールドを張る。

 

ここまでの経過時間僅か数秒。

 

そのまま綾瀬川は飛び退くと熊谷をバイパーで狙う。

那須はそれを庇うようにシールドを張りながら前に出る。

 

 

『すまない宇井、また射線が通らない道を表示してくれるか?』

 

『了解ですっ…!』

 

 

 

「メテオラ。」

 

『視覚支援…!』

 

『助かる、後は大丈夫だ。隊長の援護を。』

 

 

 

 

「逃がさないわ…!バイパー…!!」

 

「…バイパー。」

 

那須から放たれたバイパーを狙わず、シールドを張りつつ、綾瀬川のバイパーは熊谷を狙っていた。

 

「っ…!」

 

両足を失い身動きの取れない熊谷はシールドだけでは受け切ることが出来ない。

それを察してか那須も弾道を変え、綾瀬川のバイパーを相殺した。

 

「玲!私はいいから綾瀬川を…!!」

 

「っ…!!」

 

 

曲がり角を曲がった綾瀬川を直ぐに追う。

 

『那須先輩気をつけて!綾瀬川先輩がレーダーから消えました!』

 

『っ…!』

 

「…玲、ごめん…油断した…。」

 

トリオン漏出過多…緊急脱出。

 

 

 

 

『ここでトリオン漏出過多で熊谷隊員緊急脱出!!なお、緊急脱出に至る一番大きなダメージを与えた隊員の点になる為熊谷隊員の緊急脱出は綾瀬川隊員の点になります!』

 

『上手いですね。盤面を良く見てる。』

 

『那須隊は熊谷ちゃんが落ちて那須ちゃんが攻め辛くなったね。相手が綾瀬川くんじゃ尚更ね。』

 

『面白いですね。曲がり角を曲がった直後のバッグワーム。瞬時にオペレーターに待ち伏せを警戒させました。』

 

『なるほど…そのためにバッグワームを…。』

 

『しかもちゃんと熊谷が自発的に緊急脱出できないよう熊谷が落ちるまで半径60mのギリギリで待ってるんですよね。オペレーターとの連携も上手く使ってますし何より相手のオペレーターの考えをよく読んでる。相当な曲者ですね、綾瀬川は。』

 

『一方の諏訪隊サイドにも動きが!先発で向かっていた照屋隊員が合流!堤隊員を削った!』

 

『綾瀬川くんも向かってるしこれは諏訪隊ちょっとまずいかな?それを追いかける形で那須ちゃんも向かってるし。これは乱戦になりそうだね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『文香…助かった…!』

 

2人で背中合わせになって諏訪隊の弾幕を受ける。

 

『まだ油断出来ませんよ。人数では負けてる上に綾瀬川先輩が那須先輩を連れてきます。』

 

『分かった。真登華、清澄はあとどれくらいで着きそうだ?』

 

『3分も…いや、2分もかからないと思う!綾瀬川先輩超足速い…!』

 

『…分かった!』

 

「凌ぎ切るぞ…文香!」

 

「了解…!!」

 

 

 

 

 

「くっそ…このまま粘られたらめんどくせぇなァ…日佐人、攻めるぞ。」

 

「分かりました…!!」

 

笹森が距離をとりながらカメレオンを起動。

視界から消える。

 

 

『真登華、笹森くんがカメレオン使ったわ!』

 

『オッケー。…隊長から見て左の家の屋根から回り込んでる!気をつけて!』

 

 

 

 

 

 

『…了解。左の屋根…だな。』

 

『『『!』』』

 

 

 

 

「日佐人!!」

 

空から放たれる弾幕。

笹森はすぐにシールドを張る。

 

「これは…バイパーだ!那須が来るぞ…!!」

 

『でもまだ那須さんの射程じゃないよ!』

 

諏訪隊オペレーター、小佐野(おさの) 瑠衣(るい)が画面を見ながら言った。

 

『じゃあ誰だ?!』

 

『諏訪さん!柿崎隊の綾瀬川です!!』

 

諏訪隊の(つつみ) 大地(だいち)が声を荒らげて指を指した。

 

「ちっ…あいつもバイパーかよ…!!堤!一旦下がるぞ…!!」

 

諏訪隊は一旦距離を置いた。

 

「すまん、清澄。助かった!」

 

「遅くなりました。…那須隊も来ますよ。」

 

那須は両隊を狙える位置に陣取る。

 

『狙撃を警戒だな。』

 

『うーん、ここを狙えるとなると…このビルが怪しいかな。』

 

宇井により、少し離れたビルがマークされる。

 

『助かるぜ、真登華。…さあ…反撃するぞ…!』

 

『了解…那須のバイパーと諏訪隊の攻撃手はオレが止めます。』

 

『…やれるのか…?』

 

 

 

『…まあ…古参なんで。』

 

 

 

 

 

 

『ここで全隊集結!乱戦にもつれ込むか…!!』

 

『これは柿崎隊の狙い通りですね。勝負の鍵を握るのは那須と綾瀬川、2人のバイパー使いと狙撃手(日浦)、後はカメレオンを使える笹森ですね。1人も落とされていない分諏訪隊は少し心に余裕があるでしょう。』

 

『那須隊は少し不利かな?狙撃手の場所はオペレーターが大体予測立ててるだろうし那須ちゃんは1人で戦況を動かせるほどの腕だけど…それは綾瀬川くんがいない場合でしょ。』

 

『さあ、現在の得点は諏訪隊が1ポイント、ノーアウト。柿崎隊は1ポイント、ワンナウト。那須隊が0ポイントワンナウト。乱戦にもつれ込み勝負の行方はまだまだ分からない!果たして勝利を収めるのはどの隊か!ここからも実況は私、風間隊の三上が、解説は東隊の東さん、二宮隊の犬飼さんでお送り致します!』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

 

 

 

 

そして戦場は動き出す。

 

まずは狼煙代わりに無機質な怪物のイーグレットが火を吹いた。

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

熊谷友子→何者…?


熊谷友子←…扱い安い。



髪下ろした照屋ちゃん可愛ええな。
ザキさんとくっつかねえかな。



感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND2 VS諏訪隊、那須隊④

遅くなりすいません!
投稿致します!


本編の前に少し。


ここで最初の順位とその変動歴をおさらいしておこうと思います。

ちなみにこのランク戦は原作で玉狛第2が加わる1シーズン前です。


初期ポイント
1位 二宮隊 15P ポイントは初期ボーナス
2位 影浦隊 14P ポイントは初期ボーナス
3位 生駒隊 13P ポイントは初期ボーナス
4位 弓場隊 12P ポイントは初期ボーナス
5位 王子隊 11P ポイントは初期ボーナス
6位 東隊 10P ポイントは初期ボーナス
7位 香取隊 9P ポイントは初期ボーナス
8位 鈴鳴第一 8P ポイントは初期ボーナス
9位 漆間隊 7P ポイントは初期ボーナス
10位 諏訪隊 6P ポイントは初期ボーナス
11位 荒船隊 5P ポイントは初期ボーナス
12位 那須隊 4P ポイントは初期ボーナス
13位 柿崎隊 3P ポイントは初期ボーナス


ROUND1終了後
1位 二宮隊 18P
2位 影浦隊 16P
3位 生駒隊 15P
4位 弓場隊 14P
5位 王子隊 12P
6位 東隊 11P
7位 香取隊 10P
8位 鈴鳴第一 9P
9位 漆間隊 9P
10位 荒船隊 8P
11位 諏訪隊 7P
12位 柿崎隊 7P
13位 那須隊 6P


試合の順番とか最初は上から3部隊ずつとかルールがあるのかもしれないけど調べた感じどこでもその件は言及されていなかったのでオリジナル設定で行きます。
賛否両論あると思いますがご理解よろしくお願い致します。


綾瀬川が狼煙代わりに撃ったイーグレットは日浦がいるであろうビルに刺さる。

当たることは無かったが、牽制になり、撃ったと同時に柿崎隊は一斉に動いた。

照屋、柿崎は諏訪隊の諏訪と堤を。

綾瀬川は那須と笹森に向けてバイパーを放つ。

那須は建物を盾にしながらバイパーを放つ。

笹森は弾トリガーが無い分、身動きが取れず、建物の影に潜んでいた。

 

 

『さーて!試合も大詰め!綾瀬川隊員の合図で柿崎隊の一斉攻撃が始まった!綾瀬川隊員のバイパーと那須隊長のバイパーが再び衝突!最後の撃ち合いになるか!一方の照屋隊員と柿崎隊員は諏訪隊におそいかかる!そして照屋隊員!諏訪隊長を弧月の間合いに捉えた!堤隊員は助けに行こうにも柿崎隊長のフルアタックを前に防戦一方!これは柿崎隊が有利か!』

 

 

 

 

『ちっ…やべぇな…!!』

 

諏訪は悪態をつきながら持っているショットガンで照屋の弧月をどうにか受ける。

そのまま、諏訪の左腕が切り飛ばされる。

 

『ちぃっ!!』

 

諏訪の体勢が崩れる。

 

「もらった…!」

 

照屋は勝ちを確信し諏訪に切りかかる。

 

その時、諏訪は不気味な笑みを見せる。

 

「!!」

 

 

 

『文香!後ろ!日佐人くんが来てる!!』

 

すぐ後ろにカメレオンを解除した笹森がやってくる。

 

 

「っ…!!」

 

照屋はどうにか振り返り、防ごうとする。

 

ダメだ…間に合わない…!!

 

 

 

『いや、いい。そのまま諏訪さんをやれ。…言っただろ。笹森はオレが止める。』

 

 

 

 

ダンッ!!

 

 

 

 

二度ならず三度目。

偶然で片付けるのは難しい。

 

笹森の弧月を構える両手が吹き飛ばされる。

 

当の本人は視線は那須先輩の方に向けていた。

それも片手ではバイパーを放ち、あろうことかリアルタイムで弾道まで引いている。

イーグレットは軽い銃とは言え片手で撃って狙いなんて定まるはずがない。

それも地面に固定している訳でもなく、片手持ちで。

 

まさに神業。

 

とても真似出来る芸当じゃなかった。

 

 

 

 

「日佐人!!」

 

そのまま、照屋の弧月が諏訪を襲う。

 

「ちいっ…!!」

 

 

──トリオン供給機関破損…緊急脱出。

 

そのまま諏訪は緊急脱出した。

そして照屋は振り返り次は笹森の番だ。

 

 

「くっ…!!」

 

 

 

 

 

ダンッ!!

 

 

 

もう一度鈍い銃声が響く。

しかしそれは綾瀬川のものではなかった。

 

戦場の数十m先。

そこから放たれたライトニング。

 

精密射撃は無理だろうと思われた彼女はここで見事頭を撃ち抜いた。

 

──トリオン供給機関破損、緊急脱出。

 

 

那須隊の日浦の狙撃だった。

 

 

 

「くっそ…!!」

 

柿崎と撃ち合っていた堤はシールドを解除。

相打ち覚悟で柿崎にフルアタックをしかけた。

 

 

結果は相打ち作戦は見事成功し、柿崎、堤は共に光となって空に上がる。

ここで諏訪隊は全滅。

乱戦開始僅か数秒。

堤、柿崎は最後に点をもぎとった。

 

『照屋…詰めるぞ。』

 

『はいっ!!』

 

勢いそのまま、照屋は弧月片手に那須に突撃する。

 

 

『茜ちゃん!!』

 

日浦のライトニングが照屋を襲う。

 

しかしただでさえ片手というハンディキャップを背負っている日浦に高速で駆ける照屋を捉えるのは至難の業だった。

 

『っ…!!』

 

弾をリロード。

すぐに撃ち出すがやはり当たらない。

 

 

そのまま、照屋の弧月は那須を捉えた。

 

 

 

「完敗よ…見事だわ…綾瀬川くん。でも…もう1点、貰っていくわね。」

 

照屋の足元が光る。

置き玉のメテオラだ。

 

死に際に大爆発を起こし、照屋を道連れにした。

 

 

 

『茜!緊急脱出しろ!!』

 

内部通話で既に緊急脱出した、熊谷の指示が入る。

 

その通信と同時に、綾瀬川はまるで弧月を振り抜くかのようにイーグレットを取り出すとそのままスコープを覗かずに標準を合わせる。

 

 

 

ダンッ!

 

『べ、緊急脱出!!』

 

 

 

イーグレットの銃声と日浦の声はほぼ同時だった。

 

 

綾瀬川が持ち込んだのが弾速特化のライトニングであれば結果は変わっていただろう。

紙一重のタイミングで、日浦の自発的緊急脱出が成功した。

 

 

 

乱戦開始の綾瀬川のイーグレット狙撃から僅か22秒。

決着はあっという間に付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

『こ、ここで決着!!得点は6対2対2!!今シーズンの柿崎隊は強い!!見事柿崎隊が勝利を収めました!!』

 

モニタールームは歓声に包まれる。

僅か20秒の攻防。

制したのは柿崎隊だった。

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 1P

照屋 2P

巴 0P

綾瀬川 1P

生存点+2P

 

合計 6P

 

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 1P

笹森 1P

 

合計 2P

 

 

 

那須隊

 

 

那須 1P

熊谷 0P

日浦 1P

 

合計 2P

 

 

 

 

 

『も、申し訳ありません!!最後の数秒、思わず実況を忘れ、見入ってしまいました!』

 

『いや、仕方ないでしょ。三上ちゃんだけじゃなくて俺や東さんもなんも喋れなかったし。』

 

『そうですね。それくらい見応えのある20秒だったと思います。まずは最初の綾瀬川のイーグレット狙撃。あれは日浦への牽制ですね。突然イーグレットを出した事で諏訪隊は驚き一歩出遅れましたね。だから照屋はすぐに弧月の間合いに持っていくことが出来た。そう言う意味でも最初のイーグレットは大きかったと思いますよ。』

 

『それよりも問題は次だよね…。笹森くんがカメレオンで消えること分かってたからイーグレット持ちっぱだったんだよね?そしてまたまたノールック狙撃。綺麗に腕だけ飛ばしてるし…綾瀬川くん何者?』

 

『…話を戻しましょう。照屋が諏訪を落とした後の堤隊員は上手かったですね。相打ち覚悟の作戦が上手くハマってました。しっかり柿崎を落としきってましたね。その後は那須隊との2対2。ここでも綾瀬川が序盤に日浦の右腕を撃ち抜いていた事が生きてきましたね。片腕であの動きをする照屋は捉えられない。那須も上手かったですね。落ちる前にしっかり1点取っています。そして最後…本当に紙一重でした。ギリギリ日浦が戦闘離脱。あの弾道だと後1秒でも遅かったら日浦の頭撃ち抜いてましたね。』

 

『アハハ、全部東さんが言ってくれたね。』

 

『では、総評をお願いします。』

 

『…まあ総評を言うとしたら…面白いね、綾瀬川くん。同じ「澄」仲間だし…ちょっと興味湧いてきたなぁ…。』

 

『もうちょっと真面目にっ!』

 

三上の叱責が犬飼に入る。

 

『分かってるって。三上ちゃんは真面目だな〜。でも綾瀬川くんの功績がでかいと思うよ、実際。』

 

『そうですね。運が絡むので有り得ない話ではあると思いますが…全体的に綾瀬川の狙撃が試合を動かしていた…というのが今回のROUND2のこの結果の要因だと思います。綾瀬川隊員は結果的に1ポイントでしたが勝利への貢献が一番大きいのは綾瀬川でしょう。序盤での日浦への狙撃や、乱戦での牽制の狙撃、そして笹森への狙撃。長年狙撃手をやってきた俺も真似できるかって言われたら少し怪しい。』

 

『さすがは荒船くんに並んで完璧万能手に近い男…だね。末恐ろしいよ柿崎隊。』

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「すいません〜何も出来ずにやられちゃって…。」

 

最初に諏訪隊に落とされた巴がゲンナリした表情で言った。

 

「気にするな。虎太郎が居なきゃ俺は生き残ってねえんだ。お前はしっかりやってくれた。」

 

「うぅ…そう言って貰えると助かります…!」

 

「今回のMVPは清澄だな!て言うかなんであれだけバイパー使えるのにアステロイドがメインの弾トリガーなんだ?」

 

「…頭が疲れるんですよ。何も考えなくていいアステロイドの方がオレの性に合ってるんです。」

 

「て言うか清澄先輩、イーグレットの腕めちゃくちゃじゃないですか!」

 

「…まあ…古参だからな。」

 

「またそれぇ?!理由になってないですよ、綾瀬川先輩。」

 

宇井のその言葉に柿崎隊の作戦室は笑いに包まれた。

 

「…」

 

そして照屋の疑いは確信に変わっていた。

 

 

──

 

『諏訪隊、那須隊の動きがはどうでしたか?』

 

『そうですね。諏訪隊はいつも通りやれていたと思います。諏訪、堤が弾幕を張ってその隙に笹森によるカメレオン奇襲。上手くハマって序盤で巴を落としてなかったらもっと柿崎隊有利の展開になっていましたからね。』

 

『なるほど…』

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

 

「諏訪さんだけ0点!諏訪さんだけ!!」

 

オペレーターの小佐野は諏訪を煽る。

 

「るせぇ…!凹んでんだから傷口に塩塗んな!」

 

「すいません…照屋さんを落としきれなくて…。」

 

諏訪隊の攻撃手、笹森(ささもり) 日佐人(ひさと)は申し訳なさそうに諏訪に謝る。

 

「いやいや、ありゃ仕方ないだろ。あそこでイーグレット飛んでくるとは誰も思わないからな。」

 

堤は笹森を励ますように言った。

 

「つーかよォ…何モンだよ…あいつ。バイパーをリアルタイムで引けて、狙撃も弧月の腕も一級品…こいつぁ荒船より先にレイジと並ぶかもな。」

 

 

 

──

 

『那須隊はどうでしたか?』

 

『うーん、ROUND1で柿崎隊と戦った鈴鳴第一と同じ感じかな?…綾瀬川くんにしてやられたね。何より最初に熊谷ちゃん落とされたのがキツかったでしょ。熊谷ちゃんは点を取るより那須ちゃんの守りに徹してるイメージだったから熊谷ちゃんがいなくなって那須ちゃんは相当攻め辛かったと思うよ?日浦ちゃんも綾瀬川くんのせいで本領発揮できなかったしね。』

 

 

 

──

 

那須隊作戦室

 

「くっそ!綾瀬川にやられた!!」

 

熊谷は作戦室の机に拳を打つ。

 

「私こそごめんなさい。綾瀬川くんの情報が少ないならもう少し慎重になるべきだったわ。」

 

「う〜!悔しいですぅ…!ほとんど何も出来なかったですぅっ!!」

 

「茜ちゃんは最後しっかり当ててくれたし綾瀬川くんも茜ちゃんが怖かったから先に狙ったのよ。だから泣かないで?ね?」

 

「でも…でも…

 

 

…やっぱり綾瀬川センパイの狙撃カッコイイ〜!!」

 

日浦を慰める那須の顔はどこか晴れやかだった。

 

「…スッキリした顔ね…玲は悔しくないの?」

 

熊谷が那須に尋ねる。

 

「もちろん悔しいわ。でも…楽しかった。綾瀬川清澄くん…

 

 

 

…次は絶対に負けないわ…!!」

 

 

 

 

──

 

『さて、6点獲得した柿崎隊は一気に順位up!B級7位!上位まで上り詰めた!!間違いなく今シーズンのB級ランク戦の台風の目となった柿崎隊!上位相手にどんな策を取るのか!見物です!さて、これにてB級ランク戦ROUND2昼の部を終了します!最後までご清聴ありがとうございました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何の用だ?照屋。」

 

ROUND2の後、綾瀬川は照屋に呼び出されていた。

 

「…単刀直入に聞きます。

 

 

 

…綾瀬川先輩…あなたは何者なんですか…?」

 

「…ただのボーダー古参のB級の万能手だが?」

 

「それは肩書きでしょう?個人ランク戦での綾瀬川先輩の動きとこれまでの2試合の動き…まるで別人です。どう言う事なんですか?」

 

「…はあ…」

 

綾瀬川はため息を吐いて続ける。

 

「逆に聞くが何でそんなに不満そうな顔なんだ?」

 

「…え?」

 

「オレが何者であれこの2試合勝ってるだろ?」

 

「それは…。」

 

「それにオレはチーム戦の方が得意なだけでいつでも全力だぞ。柿崎さんの力になるって約束したからな。」

 

「…それは嘘ですよね?あなたはチームの事なんて考えてない。」

 

「…」

 

「…私は素性も目的も分からない人と同じチームなのは怖いです。…あなたの…行動理念はなんなんですか?!」

 

 

 

「照屋…ここで約束しよう。お前たち柿崎隊をA級まで連れていくと。…ただ…」

 

「…ただ…なんですか?」

 

 

 

 

 

 

「…オレの詮索はするな。」

 

 

その瞳はいつもより冷たく、無機質に感じた。




ROUND2終了後
1位 二宮隊 21P
2位 影浦隊 19P
3位 生駒隊 18P
4位 弓場隊 16P
5位 王子隊 14P
6位 東隊 13P
7位 柿崎隊 13P
8位 香取隊 12P
9位 鈴鳴第一 12P
10位 漆間隊 11P
11位 荒船隊 11P
12位 諏訪隊 9P
13位 那須隊 8P



各キャラへの印象&各キャラからの印象


那須玲→ライバル。次は負けないわ。
熊谷友子→完敗だわ。次は勝つ!
日浦茜→か、かかか…かっこいい!!
諏訪洸太郎→何もんだァ?
犬飼澄晴→興味。
照屋文香→警戒。何者なんですか?




那須玲←やっぱり弾バカ。
諏訪洸太郎←タバコ。
照屋文香←警戒。


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ランク戦ブースにて

投稿致します。
アンケートを取ろうと思っているので回答していただけるとありがたいです!
内容は文字数についでです。


「バイパー…!」

 

「…はぁ…バイパー。」

 

前方から放たれたバイパーに対して、こちらもため息をつきながらバイパーを放つ。

あちらはしっかりと弾道をリアルタイムで引く。

オレもそれに合わせながら弾道を引き相殺させる。

 

「…ははっ、やっぱり爪を隠してやがったな、綾瀬川。まだまだ行くぜ…!!」

 

さらに放たれるバイパー。

 

「勘弁してくれ、疲れるんだよリアルタイムで弾道を引くのは。」

 

「知るか、隠してた罰だ!今日は俺と飽きるまで撃ち合って貰うぜ!」

 

「ダメよ、出水くん。次は私の番なんだから。」

 

綾瀬川の前にいるのは出水、那須のボーダーが誇る2人のトップクラスのバイパー使い。

 

ランク戦の直後、照屋との話を終えたオレはすぐに出水に呼び出された。

何事かと思い話を聞けばランク戦をしろとの事。

出水は弾バカと呼ばれる程の戦闘狂で、先程のランク戦でオレが見せたバイパーを見て居てもたってもいられずオレにランク戦を申し込んできた。もちろんバイパーで。あまりのしつこさにオレは渋々了承したが、何故かさっき撃ち合いをした那須まで着いてきたのだ。

 

 

「じゃあこうしようぜ!俺と那須、綾瀬川での三つ巴のバイパー対決!一番最初に負けたヤツが一番強かったやつにジュース奢りな!おい、緑川、槍バカ!ギャラリー集めろ!」

 

「面白そうね。」

 

「おい…三つ巴は了承するがギャラリーは…」

 

「るせぇ!こうでもしないとお前は手抜くだろ?」

 

「…手を抜くも何もオレは全力なんだが…それにバイパーはメイントリガーじゃないし三つ巴ならトリオン能力の高いお前が有利すぎるだろ…。」

 

「私は別にいいわよ。さっきのリベンジもできるし。出水くんとも久しぶりにやり合いたかったし。」

 

弾バカが2人に増えると面倒臭いな…。

 

「…はぁ…分かった…。」

 

 

 

──

ランク戦フロア

 

「…あ?なんの集まりだ?こりゃ?」

 

ランク戦フロアにやって来たのは、B級2位影浦隊隊長、影浦(かげうら) 雅人(まさと)

 

「ようカゲ。面白い対決が始まるぞ。」

 

影浦に話しかけるのは鈴鳴第一の村上だ。

隣には荒船隊の荒船、穂刈も立っていた。

 

「面白い対決?」

 

「ああ、出水、那須、綾瀬川でバイパーでの三つ巴対決を始めるらしい。」

 

影浦は出水、那須のことは知っていた。太刀川隊の射手出水公平と那須隊の那須。2人ともリアルタイムでバイパーの弾道を引ける天才射手だ。

だが…

 

「…綾瀬川?誰だ?」

 

「今シーズンから柿崎隊に加わった男だ。」

 

そう言って画面を見ると無表情の男が映る。

 

「けっ…あんな冴えねえやつに2人の相手が務まるのかよ?」

 

その質問には荒船が返した。

 

「務まるだろう。あいつは今まで2人しかいなかったリアルタイムでバイパーの弾道を引けるバイパー使いだ。」

 

「イーグレットの腕も中々だったよな?綾瀬川。」

 

穂刈(ほかり) (あつし)は倒置法でそう話す。

 

「イーグレットだあ?射手じゃねえのかよ?」

 

「射手よりの万能手だな。弧月も使える。ROUND2を見て悔しいが確信したぜ完璧万能手に最も近いのは俺じゃねえ…あいつだ。」

 

「…へぇ…。」

 

荒船にここまで言わせるほどの腕。

影浦は珍しく興味を持ったように笑みを浮かべ出水、那須と撃ち合いをしている綾瀬川に視線を向けた。

 

 

 

 

──

 

「しゃあ!俺の勝ちだぜ…!!」

 

出水がガッツポーズをしながら喜ぶ。

あの後結局10試合以上も三つ巴の撃ち合いは続き、それぞれが均等に白星をあげ、最終的な結果は出水が1位、次に那須、そして綾瀬川が3位という結果になった。

 

「約束通りジュース奢れよな!」

 

「…まあ約束だからな。…那須もなにか飲むか?」

 

「え?でも…」

 

「ついでだ。1本増えたところで手間は変わらない。」

 

「…ふふっ、優しいのね。だったらお言葉に甘えようかしら。」

 

「分かった。お茶でいいか?」

 

「ええ。」

 

そんな話をしながらランク戦ブースを出ると緑川、米屋、那須の付き添いの熊谷と何故か、村上、荒船と綾瀬川は見慣れない男が2人待っていた。

 

「よう、凄かったな。」

 

村上が3人に代表して話しかける。

 

「あれだけバイパーを使えるならROUND1でも使えば良かっただろーが。」

 

そう言って荒船は綾瀬川の肩を小突く。

 

「メインはアステロイドなんで。」

 

「あ?バイパーにした方がいいだろ。あんだけ使えるならよぉ。」

 

ボサボサ髪の男が話に加わる。

 

「…あなたは?」

 

「こいつは影浦雅人。B級2位の影浦隊の攻撃手だ。」

 

村上が代わりに紹介する。

 

「こっちは荒船隊の穂刈篤。前のランク戦も一緒だったが会わなかっただろう 。」

 

「それにしてもすげえな。バイパーの腕が。」

 

「…どうも。」

 

「そんな事ぁどーでもいい。お前中々やるなァ…俺とランク戦しろや。」

 

話を遮るように影浦が綾瀬川に詰め寄った。

 

「お断りします。」

 

「あぁ?!」

 

「…敵情視察はログでも見てください。それにB級2位の隊長の相手にオレが務まるはずないでしょ。」

 

「ちっ…てめぇ名前は?」

 

「…綾瀬川清澄。」

 

「…綾瀬川…7位で調子に乗ってるみたいだがよ…言っとくが上位はそんなに甘くねえぞ?」

 

影浦は綾瀬川をに詰め寄るように言う。

 

「そうですか。まあオレは隊長の考えた作戦に従うだけなんで。そう言うのはオレに言われても困りますね。」

 

「あぁ?」

 

流すような態度に影浦は綾瀬川を睨みつける。

 

「馬鹿、後輩脅してんじゃねえよ。」

 

荒船が影浦の頭にチョップを落とす。

 

「けっ…不気味なヤローだぜ…。」

 

そう言って影浦は出口に歩き出した。

 

「悪いな、綾瀬川。口ではああ言ってるがカゲは本当に興味のある奴にしか話しかけない。本当はお前のことを認めてる。」

 

村上は影浦をフォローする。

 

「…どーですかね。初対面で不気味なヤロー呼ばわりですからね。」

 

「ははは…根は良い奴なんだ。悪く思わないでやってくれ。それよりも早めに再戦の機会が来てくれた。次のランク戦…リベンジさせてもらうぞ。」

 

「…お手柔らかに。」

 

「いいやそうもいかない。…楽しみにしている。じゃあな。」

 

そう言って村上も影浦を追いかけるように去っていく。

そして今度は荒船が話しかけてきた。

 

「イーグレットのポイントはあれからどうだ?」

 

「ほとんど変動なしですね。それと…オレは完璧万能手とやらには興味無いんで。ライバル視されても困ります。」

 

「…はっ!生意気な後輩だぜ。いいぜ。お前が興味なかろうとお前より先になってぶった切ってやる。じゃあな。」

 

「話せなかったな。あんまり。じゃあな。」

 

そう言って荒船隊の2人も去っていった。

 

 

「あやせセンパイ!次俺とランク戦しよ!!」

 

いなくなった直後、緑川が犬のように綾瀬川の周りを飛び跳ねる。

 

「あたしともランク戦しなさいよ。」

 

熊谷もそれに便乗して綾瀬川を誘った。

 

 

「…悪いな。この後約束があるんだ。」

 

そう言って断ると米屋が反応する。

 

「…秀次か?」

 

「まあな。ほら、出水、那須。約束通り奢る。」

 

そう言って綾瀬川はランク戦ブースの出口に歩き出した。

 

──

 

「えらく綾瀬川に突っかかったな…カゲ。そんなに気になるのか?」

 

影浦に追いついた村上は先程の影浦の態度について尋ねた。

 

「…そんなんじゃねえよ…。だが…あんなに気味のわりぃヤローは初めてだぜ。」

 

「気味が悪い?…確かに表情は変わりづらいが良い奴そうだぞ?」

 

「…表情だけじゃねえよ…。

 

 

 

 

…あいつをいくら揺さぶっても何も感じなかった。」

 

影浦は相手が自分に向けている感情が分かってしまうサイドエフェクト、感情受信体質を持っている。

 

 

「…つまりあいつは俺になんの感情も向けてねえってこった。東のオッサンはよく感情を消して攻撃してくるが…

 

 

 

 

…私生活で全く感情を向けて来ない人間なんて初めてだぜ…。」

 

──

 

「2戦目も圧勝か…。やればできるんだから普段ももっと真面目にやったらどうだ?」

 

そう言いながら三輪は寿司を頬張った。

 

「勝ったやつにその言いようはないだろ…。それにオレは普段から真面目にやってる。」

 

「バイパーを今まで使うことなく隠しておいて何が真面目にだ。」

 

「隠してたわけじゃない。弾道をリアルタイムで引くのだって頭が疲れるんだからな?オレを弾バカ2人と一緒にするな。勝ったのだって照屋が那須を落としてくれたからだ。あそこで落としてくれなかったらオレは間違いなく日浦と那須に穴だらけにされていた自信がある。」

 

その言葉に三輪は少し考えた後、鼻を鳴らす。

 

「行き過ぎた謙遜は嫌味になるぞ、綾瀬川。バイパーをあそこまで使える人間はお前を入れても3人しかいない。俺もバイパーを使うがあそこまで使える自信はない。そこは誇るべきだ。」

 

「…そうだな。ありがとう、三輪。て言うか勝つ度祝ってくれるのか?」

 

「っ…俺はお前に柿崎隊を紹介した責任がある。…勝ちくらい祝わせろ。」

 

三輪は顔を背けながら言った。

 

「…まあ、嬉しいが。」

 

「…それよりも度々使っているようだがまだ明かす気はないのか…

 

 

 

 

 

 

 

…お前のサイドエフェクトについて。」

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

出水公平→隠してやがったなコノヤロー!
那須玲→意外と優しいのね。
影浦雅人→不気味。気味が悪い。
村上鋼→次は勝つ。再戦の機会が早くて楽しみ。
荒船哲次→くそ生意気な後輩。
穂刈篤→来るな。スナイプ界に新たな風が。
三輪秀次→腕を認めている。だからこそもっとちゃんとやれ。


出水公平←素直に実力を認めている。合成弾を生み出した天才。
那須玲←やたらバイパーでランク戦に誘われる。
影浦雅人←こわーい(棒)
村上鋼←ほんま勘弁してください。俺はサンドバッグじゃないです。
荒船哲次←ライバル視やめてもろて。
穂刈篤←倒置法。
三輪秀次←気の許せる友人。毎回祝ってくれて嬉しい。


ちなみにサイドエフェクトは強化Tレックスではないですw←知っとるわ。


感想、評価等よろしくお願いします!





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綾瀬川清澄③

すいません。
昨日は少し体調を崩してしまい、おやすみをもらいました。
今日から投稿再開します。
アンケート4月一杯は取ろうと思ってますけど今のまんまで大丈夫そうですねw


力を持っていながらそれを使わないのは愚か者のすることだ。

 

 

一面真っ白なその部屋であの男は俺にそう言った。

大いなる力は大いなる目的に振るわれるべきだと。

 

 

「目的のない力など空虚なものだ。だから清澄…

 

 

 

 

 

 

…お前は目的を…理想を持て。」

 

 

 

 

 

 

 

…ぱい…

 

 

…せんぱ…

 

 

 

 

 

 

 

「清澄先輩!」

 

その言葉で目を覚ました。

 

「あ〜!綾瀬川先輩やっと起きた〜!」

 

「大丈夫か?清澄。」

 

目の前にオレをのぞき込む柿崎隊のメンバーの姿が。

いつの間にかうたた寝をしていたらしい。

 

「申し訳ないです。大丈夫です。」

 

「まあ昨日は大活躍だったからな。仕方ないさ。作戦会議の前にお茶にするか。」

 

「…私、お茶入れます。」

 

そう言って照屋は立ち上がった。

 

「あ!そうだ!私綾辻先輩にクッキーを貰ったんだった!皆で食べましょ!」

 

そう言って宇井も立ち上がった。

 

なんだか申し訳ない気持ちになる。

 

「2人とも…オレは大丈夫だ。気にしなくて…」

 

「いや、いい。お前が来るまでは結構のんびり駄べってたんだ。たまにはいいだろ。」

 

そう言って柿崎は大きく伸びをする。

 

「ランク戦までまだ少し日がある。少し休もう。」

 

「そうですね。…はい、お茶どうぞ。」

 

そう言って照屋は綾瀬川と柿崎の前にお茶を置く。

 

「おっ、サンキュー文香。」

 

「…ありがとう。」

 

「じゃあ俺今のうちに学校の課題終わらせちゃっていいですか?」

 

巴はそう言って教科書を取りだした。

ボーダー隊員とはいえ、隊員の殆どは学生。

その本分は勉強だ。

もちろん課題もあるのだろう。

巴は教科書と睨めっこを始めた。

 

「…巴、そこ違うぞ。」

 

課題を解いていた巴にオレは指摘をする。

 

「えぇ?!」

 

「まず公式が違う。」

 

「マジですか。…ちょっと教えて貰っていいですか?」

 

「ああ、いいぞ。」

 

そう言ってオレは巴の隣に座ると解き方を1から説明してやる。

そうして巴の課題が終わるまでわかりやすく説明した。

 

そうしている間に10分位経っただろうか。

 

不思議そうな目でこちらを見つめる照屋、柿崎、宇井の姿が。

 

「?…どうしました?」

 

「い、いや、余り喋らない割に教えるのが上手いんだな。」

 

「綾瀬川先輩!あたしにも教えて貰っていいですか…!」

 

宇井は教科書を広げる。

 

「べ、別にいいが順番に頼む…。」

 

「…そう言えば綾瀬川先輩はどこの高校に通ってるんですか?」

 

照屋が尋ねた。

 

「…まだ通ってないんだ。今は夏休みだろ。中学は三門市だったんだが休隊してすぐに家の用事で三門市を離れててな。ちょうど2ヶ月前に戻ってきたんだがまだ家の用事が片付いてなくて学校には2学期から通うことになってる。出水や米屋と同じ高校だぞ。」

 

「そうなんですか。踏み入った事を聞いてごめんなさい。」

 

「別に気にしてない。」

 

「でも綾瀬川先輩って頭良かったんだ〜。」

 

そう言って宇井はクッキーを齧る。

 

「数学は得意なだけだ。それに中学2年の範囲だから流石に分かる。宇井はどこが分からないんだ?」

 

「…あ、えっと…

 

 

…てか前から思ってたんですけど苗字呼び辞めません?」

 

「…え?」

 

「ほら、綾瀬川先輩だけ皆のこと苗字呼びじゃないですか。私も清澄先輩って呼ぶんで真登華って呼んでください。」

 

「あ、それなら俺も!俺は清澄先輩って呼んでるんですから清澄先輩も虎太郎って名前で呼んでくださいよ。」

 

オレは困ったように照屋に目をやった。

 

「…そうですね。1人だけ苗字呼びってのは変ですね。私も文香で結構です。」

 

救いはなかった。

 

「…わかった。よろしく頼む、虎太郎、真登華、文香。」

 

それを聞いて真登華と虎太郎は喜び、文香も小さく笑みを浮かべた。

それを見ていた柿崎も静かに笑みを見せる。

 

「お、じゃあ俺のことも国は…「「「あ、隊長は隊長で。」」」…るって呼んで…も…」

 

オレと文香と虎太郎の声が被った。

言おうとした言葉は虚空に消えた。

 

「…ド、ドンマイ!ザキさん。」

 

肩を落とす柿崎の肩に真登華が手を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

──

 

作戦室を後にしたオレは、ランク戦フロアに来ていた。

 

「お、ようやく来たな。呼び出しといて待たせるんじゃねえよ。」

 

そう言って出水はオレの肩を小突く。

 

「すまない。作戦会議が長引いてな。」

 

「まあ次は相手が相手だしな。」

 

2試合で一気に上位にランクインした柿崎隊の次の相手は、2回目となる鈴鳴第一、B級6位の東隊、そしてB級2位の影浦隊だった。

初の四つ巴対決となる。

 

「それで?わざわざお前から俺を呼び出すってことは何かあるんだろ?」

 

「ああ。この前那須と戦った時に初めて合成弾を喰らったんだが…中々便利だと思った。…なんでもお前が生みの親って聞いたからな。」

 

「…なーるほど。」

 

「ああ、出水。

 

 

 

 

 

…オレに合成弾を教えて欲しい。」

 

「…ま、確かにお前ならすぐに使いこなせそうだ。でもよー…タダで教えろってのか?」

 

「もちろんそんな甘いことは言わない。…お前を弾バカと見込んでの条件だ。」

 

「…お前それ褒めてんの?喧嘩売ってんの?」

 

出水はジト目でこちらを見た。

 

「…オレの本気でのランク戦100本。これで手を打って欲しい。ただし、場所はこちらで決めさせてもらう。」

 

「!…へぇ…今までが本気じゃないみたいな言い方だな。」

 

「どう捉えてもらっても構わない。お前がこの提案に価値を見い出せなければ断ってもらってもいい。」

 

オレの目を真剣な目で見つめる出水。

 

 

「…へっ…いいぜ乗った。…教えてやる。…ただし先にランク戦をしてもらうぜ。」

 

「…構わない。時間も惜しい。そう言うと思って準備してある。」

 

そう言ってオレは踵を返して歩き出す。

出水もその後に続いた。

 

 

 

 

 

──

 

「おいおい…本当にこんなところでやるのか…?て言うかお前…マジで何者だよ…?」

 

やってきたのは放棄された地区のさらに奥にある山の小さな研究所のような施設だった。

 

「…」

 

綾瀬川は物思いにふける様にその内部を見渡す。

そして開けた場所に出るとそこには一面真っ白な部屋が広がっていた。

 

「おいおい、こんなところ勝手に入って大丈夫なのか?」

 

「…もちろん城戸さんの許可も取ってある。」

 

「…さいで。」

 

「もう一度確認する。ここの事は他言無用だ。そしてオレは約束通り全力で相手をする。」

 

「そんでそれが終わったらお前に合成弾を教えりゃいいんだろ?オッケーオッケー。んじゃ早速やろうぜ。」

 

 

──個人ランク戦100本勝負…開始。

 

 

まるでランク戦フロアのような音声が響く。

辺りに簡易的な町が形成された。

 

「アステロイド…!!」

 

それと同時に出水は得意のフルアタックを仕掛けた。

土埃が綾瀬川を覆った。

 

 

 

 

「出水、やるからにはお前も本気でやった方がいい。オレも本気で行くんだぞ?」

 

そこにはシールドを張っていないにも関わらず、無傷の綾瀬川が弧月を構えて立っていた。

 

「なっ…?!」

 

「…旋空弧月。」

 

凄まじい速度で飛んで来たそれは出水の体をいとも容易く両断した。

 

 

(おいおい…まじかよ…!下手すりゃ太刀川さんより鋭いぞ…!?)

 

──トリオン供給機関破損、出水緊急脱出。1-0。

 

 

 

すぐさま2本目が始まり、出水が戻ってくる。

 

 

「使って欲しいトリガーがあれば言ってくれ。撃ち合いでもいいぞ。」

 

綾瀬川の周りにトリオンキューブが漂う。

 

「…悪いが時間も惜しい。飛ばすぞ。」

 

無機質な瞳はさらに冷たく光る。

 

目の前の怪物を前に出水は冷や汗を流しながらも、笑みを浮かべた。

 

「…提案を飲んでよかったぜ…。今までとはまるで雰囲気が違う。…隠してやがったのか?」

 

 

 

「…オレは今まで一度たりとも本気を出したことは無い。」

 

「!」

 

その声は後ろから。

いつの間に後ろを取られたのか。

その声と同時に出水の視線は低くなる。

 

──トリオン伝達系切断…出水緊急脱出。2-0。

 

 

 

「…出水、お前はオレを負けさせてくれるのか?」

 

 

低くなった視線が捉えたのは、白い部屋の怪物の酷く冷えきった無機質な瞳と声色だった。

 

 




次回からランク戦に入れるかと思います。
無知な面も多いのでそういう場合は優しく指摘してくれると嬉しいです。


て言うかワールドトリガーを見返してて思ったんですけど照屋ちゃんの押しかけ女房感半端ないっすよねw
テレビで見て支えがいがありそうってだけで本当に入隊してくるんだもんな。

ただただザキさんが羨ましい。


感想、評価等よろしくお願い致します!


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B級ランク戦ROUND3 VS影浦隊、東隊、鈴鳴第一①

遅くなり申し訳ありません。
投稿致します。
ROUND3開始です。
戦闘描写は苦手ですが皆さんの期待に添えるよう頑張ります。


『どうも皆さんこんばんは!B級ランク戦ROUND3!上位夜の部、実況を努めます、海老名隊オペレーターの武富(たけとみ) 桜子(さくらこ)です!解説席には嵐山隊の嵐山隊長と太刀川隊の太刀川さんをお招きしています!』

 

『『どうぞよろしく(!)(〜)』』

 

『さて、ROUND3影浦隊、東隊、柿崎隊、鈴鳴第一の四つ巴対決になりますが、解説の御二方はどのような展開になると思われますか?』

 

『個人的には柿崎隊に注目ですね。』

 

『そう言えば柿崎隊の柿崎隊長は元々嵐山隊、かつての仲間の応援という事ですね!』

 

『それもありますが…柿崎隊は間違いなく今シーズンの台風の目と言えるでしょう。』

 

『確かに…今シーズンから4人編成となった柿崎隊はROUND1で4得点、ROUND2では6得点と言う大量得点を挙げて中位の13位から一気に上位に上がって来ましたね。』

 

『上位とのランク戦は初となる柿崎隊の動きに注目したいところです。』

 

『なるほど〜。太刀川さんはどうでしょう。』

 

『俺か?…俺はそうだな…柿崎隊も気になるけどやっぱり鋼とカゲの攻撃手対決とかだな。東さんの戦術も気になるところだ。』

 

『なるほど。今回のマップの選択権は鈴鳴第一にあります。はたしてどのマップを選ぶのでしょうか。』

 

 

 

──

 

ボーダー鈴鳴支部作戦室

 

「今回は市街地Bで行く。いつも通り僕と鋼が合流して2人で点を取る。太一は隙を突いて狙撃&援護だ。」

 

「「了解。」」

 

来馬の言葉に2人は頷く。

 

「今回は前回のリベンジマッチね。柿崎隊にいいようにやられたから…。」

 

「綾瀬川の動きは見ました。もう苦戦はしません。」

 

「絶対に勝とう…!」

 

 

 

 

 

──

 

『おっと…ここでマップが決定されました!「市街地B」!今回のステージとなるマップは「市街地B」です!マップの解説を嵐山さん、お願いします。』

 

『そうですね。市街地Bは市街地Aよりも高低差のあるマップ…と言った所でしょうか。高い建物と低い建物が混在して射線の通り難く狙撃手は少し不利になりますが…逆に狙われる側も思いもよらぬ隙間から狙撃をされる…なんてこともよくあります。銃手や射手なんかも建物が多く狙撃手程ではないですが不利になりますね。』

 

『つまりは攻撃手に有利なマップだな。』

 

『影浦隊には絵馬隊員と北添隊員が、東隊には東隊長がいるのと、柿崎隊は殆どが銃手よりの、綾瀬川隊員は遠中距離よりの万能手ですので対策としてはいいと思います。ただし別役隊員の射線も切れてしまうことになりますが…。』

 

『なるほど。』

 

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

 

「市街地B?どこだ?」

 

「少し僕達に不利なマップだね。ユズルの射線も通りにくいし。」

 

影浦の問いに対して、影浦隊の銃手、北添(きたぞえ) (ひろ)が答えた。

 

「一応壁抜きとかも狙ってみるけど…あんま期待しないでよ。」

 

そう言うのは狙撃手の絵馬(えま) ユズルだ。

 

「はっ!どこのマップだろうと関係ねえ。鋼と久々に切りあえるんだ…邪魔するやつはぶった斬るだけだ。」

 

影浦は獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

──

 

東隊作戦室

 

 

「これもう完全に東さん封じじゃないっすか〜!」

 

東隊攻撃手、小荒井(こあらい) (のぼる)が机に項垂れるように言った。

 

「でも、対策立ててた柿崎隊相手には有利だと思います。要警戒の綾瀬川先輩のイーグレットもバイパーも使いづらいし。」

 

同じく攻撃手の奥寺(おくでら) 常幸(つねゆき)は顎に手を当ててそう言った。

 

「そうだな。いつも狙撃手の援護があるとは限らない。それを踏まえた上で対策を立てて行こう。」

 

まとめるようにそう言うのは隊長の(あずま) 春秋(あるあき)

 

名将率いるB級6位のチームは特に柿崎隊に警戒をしていた。

 

「確かに綾瀬川の動きを制限できるのはでかい。だが柿崎隊は万能手3人のチームだ。近接にも警戒しろよ?」

 

「そうよ。綾瀬川くんはただでさえ情報が少ないんだから。」

 

見守る様に見ていたオペレーターの人見(ひとみ) 摩子(まこ)はそう言った。

 

「村上相手に初見とは言え時間稼ぎしたほどだからな。警戒するに越したことはない。今回はお前たちの連携での攻撃が鍵になってくる…。頼んだぞ。」

 

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「俺たちがちょっと不利ですね。」

 

巴がそう言ってマップを見る。

 

「今回はイーグレット無しで行きましょう。ただでさえ警戒されてますから。」

 

綾瀬川はイーグレットをトリガー候補から外す。

 

「マップが不利だからといって俺たちのやる事は変わらない。いつも通り俺たちの連携で切り開く。いいな?」

 

「「「はい。」」」

 

 

 

──

 

『さて!各隊転送スタートです!B級ランク戦ROUND3上位夜の部!ステージは「市街地B」!天候は曇り!…今、転送が完了しました…!!』

 

 

──

 

『警戒しろ!ゾエのメテオラが来るぞ…!』

 

柿崎からの通信が入る。

 

それと同時に数発の弾が空に上がる。

 

 

 

『出た〜!北添隊員に寄る通称適当メテオラ!』

 

『北添隊員のレーダー頼りの場を乱すためのメテオラですね。位置バレするリスクはありますが場を乱すには最適です。』

 

 

 

 

『虎太郎、大丈夫か?』

 

レーダーの方角にいた虎太郎に柿崎は尋ねた。

 

『な、何とか…!』

 

『警戒しろ…ゾエがそっちに撃ったってことはカゲが向かってるかもしれねえ。』

 

『了解です。』

 

 

 

 

 

『これは各隊綺麗にバラけました!合流を優先するか点取りを優先するか、どのような展開になるでしょうか!』

 

 

 

 

 

『皆、狙撃には警戒しろ!マップのせいで意識から外れるが狙撃は死んでる訳じゃねえ、絵馬も東さんも関係なしに当ててくる狙撃手だからな。』

 

『『『了解です。』』』

 

『皆、5人バッグワームつけたよ!狙撃手3人と位置的にさっきメテオラ撃った北添先輩はバッグワームつけてると思う。気をつけてね!』

 

『分かった。…1番近いのは清澄か…。そっちはどうだ?』

 

『俺も清澄先輩が1番近いです。』

 

『私は少し離れてますね。バッグワームつけます。』

 

『分かった、慎重にな。』

 

『了解…!』

 

 

 

 

 

 

『北添隊員のメテオラから始まったこの試合、まずは全体様子見、合流優先と言ったところか!』

 

『いや…これはカゲが仕掛けるな。狙いは…』

 

 

 

 

 

──

 

『ザキさん!誰かそっち向かってる!』

 

『ちっ…分かった!』

 

 

通信を切った途端再びメテオラが空に輝く。

 

 

柿崎を囲う様に落ちたそれは爆発して周りの建物を壊した。

 

 

「くっ…。」

 

土埃に柿崎は顔を覆う。

 

その爆風をかき分けて、B級トップ攻撃手はスコーピオンを振り回して現れた。

 

「よぉ…まずはアンタか…ザキさん。」

 

「ちっ…カゲ…!!」

 

『やべえ…カゲがこっち来た!急いで来れるか?!』

 

 

 

 

 

 

『了解、直ぐに向かいます。』

 

虎太郎が通信でそう答えた。

 

『オレも向かいます。』

 

オレもそう伝えると走り出す。

 

 

 

 

 

『ここで影浦隊長が柿崎隊長を襲撃!』

 

『始まって直ぐの北添隊員の援護からの影浦隊長の単騎突入…影浦隊のよくやる戦術パターンですね。』

 

『柿崎隊長どうにか堪えているがジワジワと削られる…!』

 

『巴隊員と綾瀬川隊員が向かってますね。ですが…。』

 

『間に合わないだろ。カゲにあそこまで詰められてりゃ…。』

 

 

 

──

 

(クッソ…やべえ…!!)

 

柿崎は弧月とシールドでどうにか影浦のマンティスを防いでいる。

しかし連撃でカウンターする暇がなく防戦一方となっていた。

 

(まだ清澄も虎太郎も遠いな…。くそ…始まってすぐだってのに…。)

 

 

 

 

 

──

 

 

『そしてここで…東隊の小荒井隊員と奥寺隊員が合流!』

 

『2人の連携はマスタークラスでも捌くのは難しいですからね…。今後どこを狙うか…バッグワームを着ていますので奇襲するつもりでしょう。』

 

 

『おっと…向かった先は…』

 

 

 

──

 

 

 

ガシャン…!!

 

 

 

時短のため飛び越えた建物の塀、その建物の窓ガラスが大破した。

 

 

「!」

 

バッグワームを着た2人がオレ目掛けて斬りかかってくる。

 

 

「…っと…」

 

どうにか上体を逸らしながら飛び退く。

 

「綾瀬川先輩捉えました!」

 

小荒井が声をあげる。

相手はおそらく東なのだろう。

 

『…虎太郎、隊長の所に急げるか?オレは無理そうだ。』

 

『わかりました…!!』

 

 

そのまま目の前の2人はグラスホッパーを使った連携でオレを襲った。

 

オレは受け太刀しつつ、躱す。

 

「なるべく距離を詰めるんだ!綾瀬川先輩にバイパーを使う暇を与えるな!」

 

奥寺が小荒井にそう声掛けする。

 

いい連携だ。

確かに弾トリガーを使う暇なんて無さそうだった。

ログを見てのオレ対策だろう。

 

だが…

 

 

オレはサブトリガーでもう一本の弧月を取り出した。

 

 

「いっ?!弧月二刀流?!」

 

「怯むな…!!畳み掛けるぞ!」

 

 

そう言ってグラスホッパーを増やし、高速起動と連携の合わせ技で斬りかかってくる。

 

 

オレはゆっくり目を閉じる。

 

 

そして開く。

 

 

 

 

 

 

その瞬間、オレの見る景色は停止する。

 




ROUND3、綾瀬川のトリガー構成

メイン:弧月、旋空、ハウンド、シールド
サブ:弧月、メテオラ、バッグワーム、シールド

中距離対策の対策です。


後書きは各キャラへの印象とか書かないと何書けばいいか困りますね。
…っていうのを書いて後書きの欄を埋めることにしますw


なんかリクエストとかあったらぜひ感想で下さい!


感想、評価等よろしくお願い致します!


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B級ランク戦ROUND3 VS影浦隊、東隊、鈴鳴第一②

遅れてすいません〜!!
ちょっと今日忙しくて!
まあ何とか書きましたんで読んでやってくださいw


『一方のマップ南東、鈴鳴第一の村上隊員と来馬隊員が合流!戦闘が始まっているマップ中央に向かう!』

 

『少し西に動けば東隊と綾瀬川隊員の戦いにも乱入できますね。』

 

『そしてそして、影浦隊長の猛攻を何とか受けきった柿崎隊長の元に、巴隊員が合流!巴隊員のハウンドでどうにか影浦隊長を押し返した!!』

 

『まだ北添隊員が潜んでいます。絵馬もそろそろ狙える位置に着けそうです。油断はできません。』

 

 

 

 

 

 

 

「虎太郎、助かった…!」

 

「お待たせしてすいません!」

 

謝りながら巴は影浦のマンティスを弧月で受けつつ、真横に拳銃を撃つ。

そのまま打ち出された弾は軌道を変えて、影浦を襲った。

 

「チィ…!!」

 

それをシールドで防ぐ。

体制を崩した隙に柿崎がアサルトライフルでアステロイドを撃ち込む。

 

影浦はどうにか飛び退きながらシールドで受ける。

 

 

『射線を常に意識しろよ、ゾエはこっちに向かってるだろうが…絵馬はどこにいるか分かんねえ。』

 

『了解…!!』

 

すると視界の端の曲がり角に北添が映る。

 

『警戒!!』

 

宇井の通信と北添の弾幕は同タイミングだった。

 

「クッソ…!!」

 

ただでさえ、削られていた柿崎の左腕が飛んだ。

 

 

 

 

 

『ここで北添隊員が乱入!柿崎隊長が削られる!!』

 

 

 

 

 

 

 

『くそっ、真登華、清澄はどうなってる?』

 

『小荒井君と奥寺君に絡まれてる。厳しいかも…!』

 

 

『…くそ…。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

止まった世界。

オレは数多の情報を絞る。

色を消し、辺りの家屋の情報なんかも視界から消す。

音も要らないな。

そうして情報を捨てていく内にオレの目は別の物を映し始める。

振り下ろされる弧月の位置、配置されるであろうグラスホッパーの位置、2人が動くであろう軌道。

それら全てがオレの視界に映り出す。

 

 

 

 

特殊な環境で育った俺は日常的に、自分よりも大柄な男性と多対一で戦うことがあった。

多対一な為、1人を相手している間にもう1人に攻撃される。

1人相手だとどうにかなるが大人数相手だとそうもいかない。

 

1人の蹴りやもう1人の正拳突き。それらの攻撃を脳は視界、耳、鼻、肌、舌からの情報として認知する。

しかし攻撃が多すぎると脳が対応できないのだ。

情報を整理できない。

 

だからある日オレは情報を絞ることにした。

 

例えばダーツ。

真ん中のブル目掛けて矢を放る時に必要な情報は何か。

簡単だ。

ブルの位置、ブルまでの距離。

それだけでいい。

それ以外の景色のなんてどうでもいいし、言ってしまえば場所が分かればブルの色なんてどうでもいい。

周りの音も。

そうして情報を絞り、一点のみに脳を使うと、今までとは違った景色が見えてくる。

ブルの位置、距離を元に脳が計算。

どれくらいの力、どの向き、どの軌道で投げればど真ん中に命中するか。

 

それがオレの視界、筋肉に脳から信号として送られる。

 

それは戦闘でも然りだった。

相手の呼吸、筋肉量、位置、視線。

それらに情報を絞ることでオレの脳は通常の処理能力を大きく上回る。

 

情報を絞ったことによる相手の動きの未来予知。

厳密に言えば未来予知ではなく、見切ることによる完璧に等しい未来演算であった。

 

 

だがそんな事普通の人間にはできない。

 

 

 

 

「情報の調律」

 

これがオレのサイドエフェクトだと知ったのはボーダーに入ってからの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そして世界は動き出す。

 

 

映し出される軌道を避け、相手の攻撃は先読みされているかのように空を切る。

 

 

「っ?!あ、当たらねえ…?!」

 

「押してるのは確実にこっちだ!畳み掛けるぞ…!!」

 

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

綾瀬川は弧月を引き気味に構えて斬撃を放つ。

 

 

 

『来るぞ…!旋空…!!』

 

奥寺の合図で2人はグラスホッパーで飛び退き、着地し、再びグラスホッパーで駆け出す。

 

『はぁ?!』

 

 

綾瀬川は弧月を振り抜いた。

 

 

 

ゆっくりと空をなぞるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、遅ー?!』

 

実況の武富は思わず素っ頓狂な声を上げる。

 

 

 

小荒井は駆け出すも旋空はまだ放たれていなかった。

そして振り抜いたまま、切っ先を小荒井に向けたまま止める。

 

『っ…やべ…!』

 

突っ込んだ小荒井は急いで後ろに飛び退くも、頬が斬れ、そこからトリオンの煙が漏れた。

 

 

 

 

『こ、これは一体…!?』

 

『これは…ブラフですね。旋空を起動しなきゃ弧月は伸びませんから。』

 

 

 

 

 

「クッソ…引っ掛かった…!」

 

 

 

 

弧月を納刀した綾瀬川はトリオンキューブを生成する。

 

「弾トリガー…今だ…!」

 

小荒井、奥寺は再び駆け出した。

 

 

 

『待って2人とも!警戒した方が…!!』

 

 

2人にオペレーター、人見の通信が入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンッ!!

 

 

 

 

 

奥寺の弧月を持つ腕が吹き飛ぶ。

 

 

 

 

 

綾瀬川は逆手で弧月を抜いていた。

 

 

 

『ふ、再び綾瀬川隊員の旋空が一閃!?奥寺隊員、右腕を失った!!』

 

『なるほど、弾トリガーと思わせてのノーモーションの抜刀。これは引っかかりますね。』

 

『…』

 

太刀川はそんな綾瀬川を見て目を見開いて見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…!!」

 

奥寺はすぐさま飛び退くと、グラスホッパーでさらに距離をとり、20m程離れた家屋の屋根に飛び乗る。

 

「騙された!奥寺、大丈夫か?」

 

「何とか…でも弧月はもう持てない。」

 

 

『2人とも、一旦引け。グラスホッパーを使ってできるだけ距離を取るんだ。弾トリガーが来るぞ。』

 

 

鞘に弧月を納刀しようする綾瀬川が目に映る。

 

「ちっ…行くぞ、コアラ。」

 

2人はグラスホッパーをその場に展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!、斬撃警戒!!』

 

人見が声を荒らげた。

 

 

「はぁ?!」

 

 

小荒井の隣を並走していた、奥寺の首が切断される。

 

 

──トリオン伝達系切断…緊急脱出。

 

 

 

──

 

『な、ななな…なんと!奥寺隊員緊急脱出?!これは…?!』

 

『驚きました。旋空の射程は長くても15m程のはず…ですが今のは30m程距離がありました。生駒の旋空ほどではありませんが…長い。』

 

『…はっ!間違いねえ…お前だったか…綾瀬川。』

 

『と、言いますと?』

 

太刀川の意味ありげな言葉に武富が尋ねた。

 

『…いんや、こっちの話だ。擬似生駒旋空か。器用だな。』

 

『生駒旋空…!B級3位生駒隊、生駒隊長の代名詞ですね…!効果時間を0.2秒まで縮めて距離を40mまで伸ばした唯一無二の凄技!それを綾瀬川隊員が少し射程を短くして真似たということでしょうか?』

 

『ああ。だがあれは生駒の抜刀の速さと、旋空のタイミングが噛み合っていないとできない。射程を10m縮めたとしても真似できる芸当では無い。…綾瀬川隊員の技術の高さが伺えます。』

 

 

 

 

 

──

 

何とか逃げ切った小荒井はグラスホッパーを使い、レーダーの範囲内から消えた。

 

「逃げられたか…。」

 

 

 

 

その時、もう一度戦場に動きがある。

柿崎が交戦している場所から光が空に上がる。

 

 

『すまん、皆。隊長の俺が真っ先に落ちちまった…!』

 

緊急脱出したのは柿崎だった。

 

 

 

 

 

 

『ここで柿崎隊長が緊急脱出!北添隊員の援護からのマンティス!影浦隊長の凶刃からは逃れられず!そしてこれは巴隊員もピンチか!?』

 

 

 

 

 

──

 

急いで走る。

手遅れにならないように。

 

そう思いながらバッグワームを羽織り、私は目的地に着いた。

 

 

 

そこで目に飛び込んだのは、影浦さんのマンティスに貫かれた虎太郎の姿だった。

 

 

 

「よぉ…随分重役出勤だなぁ?」

 

「っ…?!」

 

影浦さんと目が合う。

私は恐怖で一歩後退る。

 

逃げなきゃ…。

まともにやって勝てるはずがなかった。

 

振り向いて走り出した途端、私の体にとんでもない衝撃が走る。

 

アイビスによる狙撃だ。

 

 

 

──トリオン供給機関破損…緊急脱出。

 

 

 

 

『ここで影浦隊長のマンティスと、絵馬隊員の狙撃により柿崎隊が綾瀬川隊員を残して全員緊急脱出!』

 

『照屋はタイミングが悪かったな。もう少し冷静だったらカゲに見つかることもなかった。ま、あいつのサイドエフェクトもあるから分からないけどな。』

 

 

 

 

 

──

 

『ごめんなさい…綾瀬川先輩。』

 

『…ま、仕方ないだろ。1人になりましたけどやれるだけやってみますよ。援護頼むぞ…真登華。』

 

『了解…。』

 

心無しか照屋、真登華のテンションが低い。

 

 

 

 

「まああと1、2点は取るか。」

 

そう言って俺はトリオンキューブを作り出す。

 

 

 

誘導弾(ハウンド)炸裂弾(メテオラ)

 

 

 

 

 

 

 

 

誘導炸裂弾(サラマンダー)。」

 

 

 




サイドエフェクト

ランクはおそらくA(特殊技能)?(間違ってたら教えてください!)

「情報の調律」

五感から得られる情報を絞ることで局所的に処理速度を早め、未来演算や、高速思考を可能にする。
常人は目を瞑って耳を済ませたりなんかはやるけど、さらに細かく絞れる。
(見えるものを絞ったり。)
もちろんそれを可能にする頭脳や、演算によって弾き出された相手の動きに対応するだけの身体能力がなければ扱うことはほぼ不可能。




と言う訳で綾瀬川君の異常な回避能力、イーグレット腰撃ちの種はサイドエフェクトでしたとさ。
出水君の弾をシールド使わずに無傷だったのはこれのおかげ。



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B級ランク戦ROUND3 VS影浦隊、東隊、鈴鳴第一③

昨日は投稿出来ずにすいません。
投稿致します。

それと活動報告を使い始めたので、休載の時はそちらで通知することに致しました。
ぜひチェックしてみてください。


誘導弾(ハウンド)炸裂弾(メテオラ)誘導炸裂弾(サラマンダー)。」

 

トリオンキューブを8分割。

空に撃ち放つ。

 

『!、清澄先輩?!影浦隊に仕掛けるんですか?!無茶ですよ!』

 

真登華がオレを制止する。

 

『言っただろ?後1、2点取るって。真登華は鈴鳴の動きとそうだな…狙撃手の射線にだけ気を配っててくれ。東隊の隊長の狙撃が怖い。』

 

そのままオレは弧月を抜き、バッグワームを羽織る。

空に上がったサラマンダーのスピードに合わせるように駆け出した。

 

 

 

 

 

──

 

『!、狙撃警戒!!』

 

影浦隊のオペレーター、仁礼(にれ) (ひかり)からの通信が入る。

狙撃手の絵馬が空を見るとこちらに迫る8発の閃光が。

 

「チッ…メテオラかよ…!!」

 

「綾瀬川君かなぁ?」

 

影浦と北添は仁礼が予測した地点から離れる為飛び退く。

 

「どぅえぇ?!カゲ!これ合成弾!!」

 

メテオラは軌道を変えると2人の周りの地面に着弾、土埃をあげる。

 

「チィ…!!ゾエ!生きてるか!」

 

「な、何とか〜!!」

 

『!、ゾエさん、バッグワーム羽織った人がそっち飛び込んだ。柿崎隊の綾瀬川さんだと思う。』

 

「うっそ!カゲ!」

 

「チッ、なんだっててめえを庇わなきゃいけねえんだよ。死ぬなら勝手に死んどけ。」

 

「ちょ…酷くない?」

 

そう言いながらも影浦は北添の前に出る。

 

 

影浦のサイドエフェクトは「感情受信体質」。

相手が自分に向ける感情が肌に刺さるように分かる。

悪意であればあるほどそれはチクチクと痛む。

日常生活では不便でしかないサイドエフェクトだが、戦闘においては恩恵を十二分に発揮する。

敵が攻撃するであろう場所がチクチクと痛むからだ。

 

 

まだ何も感じない。

まだだ。

 

まさか別の狙いが!?

 

そう思って影浦が振り向こうとした瞬間だった。

土埃の中うっすらと眼前に迫る弧月が映る。

 

「っ?!」

 

影浦は大きく仰け反る。まさに間一髪。

影浦の髪の毛が数本散る。

 

急いで体制を立て直すと北添に当たらないようにスコーピオンを振り回す。

手応えは無かった。

 

『ユズル!どこだ?!』

 

『カゲさんの前だよ。土埃で見えないの?』

 

『んな訳ねえだろ、こっちはスコーピオンぶん回してんだぞ?』

 

『信じられないけど全部避けられてる。狙撃するからそのまま振り回してて。』

 

そう言って絵馬はアイビスを構え、スコープを除く。

そして引き金を引く。

その時だった。

 

スコープ越しに綾瀬川と目が合ったのだ。

 

頭を狙った弾は極小まで固められた集中シールドに弾かれる。

 

 

──

 

『見つけた。真登華、マーク付けてくれ。』

 

『りょ、了解…。』

 

 

オレはトリオンキューブを2個生成すると片方はハウンドを絵馬に、もう片方はメテオラを地面に放ち、さらに土埃をあげる。

そこから離れるように飛び退き絵馬に視線を向ける。

若いのに大したものだった。

上手くハウンドを引き付け躱している。

 

 

──

 

『カゲさん、俺が狙われてる。上手く逃げ切るから早くこっちに…』

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

いい切る前に絵馬の体は両断され、光となって空に上がった。

 

 

 

 

 

──

 

『ここで絵馬隊員が緊急脱出!仲間を失った綾瀬川隊員が影浦隊から1点もぎ取った!!最初の追尾するメテオラは一体…?』

 

『ハウンドとメテオラの合成弾、サラマンダーですね。おそらく視界を奪って奇襲する為のものでしょうが…影浦隊長に奇襲は通じないはず…。』

 

嵐山は考え込むように顎に手を当てた。

 

『…カゲとゾエを狙ったのは絵馬を釣るための物だろう。あんな近距離でカゲの攻撃を全ていなして、予測したように集中シールドで狙撃を防いだところを見るとおそらく綾瀬川は…』

 

 

 

──

 

「てめえ…持ってやがるな?」

 

「…何の事ですか?」

 

「チッ…とぼけやがって…だが出てきたのは失敗だったなぁ?ユズルを上手く落としたところでこっちはまだ2人なんだからよォ…。」

 

そう言って影浦は北添と並び臨戦態勢に入る。

 

 

 

『真登華…そろそろか?』

 

『はい…』

 

 

 

 

 

 

 

『『斬撃警戒!!』』

 

宇井と仁礼の声が被る。

 

 

 

「旋空弧月…!!」

 

 

全てを切り裂かんとする、No.4攻撃手の斬撃が2人を襲った。

 

 

 

 

 

『ここで鈴鳴第一が参戦だー!!』

 

『カゲと鋼が揃ったな。ここに綾瀬川(あいつ)が加わる…見ものだぞこりゃ…。』

 

解説の太刀川は興味深そうに笑い、画面を見つめた。

 

 

 

──

 

「よぉ…鋼。待ちくたびれたぜ。」

 

「太一くんもどっかに隠れてるだろうから警戒ね、カゲ。」

 

「わーってるよ、うるせえな。」

 

影浦は目をギラつかせながらも警戒体制を整える。

 

一方の鈴鳴は村上の後ろにはアサルトライフルを構える来馬の姿がある。

 

 

 

最初に動いたのは綾瀬川だった。

メテオラを地面に放つとすぐさま戦線離脱、家屋の屋根に飛び乗る。

 

 

「チッ!逃がすかよ…!!」

 

影浦はスコーピオンを伸ばし、行く手を遮る。

逆サイドからは村上がスラスターで突っ込んで来た。

 

「せっかくのリベンジの機会だ…逃がすわけないだろう。」

 

 

『『『射撃警戒!!』』』

 

オペレーターの声が重なる。

 

北添は影浦に当たらないようにアステロイドを。

来馬は綾瀬川に向けてハウンドを放った。

 

「…数の暴力って言うんスよそれ。」

 

綾瀬川は屋根を走って北添の弾の射線を切ると、ハウンドをシールドで受ける。

 

そしてそのまま隣のマンションのベランダに飛び写った。

 

「ちょこまかうぜぇなあ!おい鋼!どっちが最初にあいつを落とすか競走しよーぜ。」

 

「…敵は全員落とす。…旋空弧月。」

 

綾瀬川が飛び移った先が両断される。

 

 

──

 

『綾瀬川隊員…面白いですね。』

 

『と、言いますと?』

 

『逃げながら東さんのいるビルに近づいているんです。バッグワームをつけているので場所は分からないはずですが…マップの状況から場所を読んだのでしょうか。』

 

『おっ、コアラの奴も動くぞ。奇襲で点取る気か?』

 

 

 

──

 

マンションの階段を駆け上がる綾瀬川。

下からは来馬、北添による射撃。

村上と影浦が競うように綾瀬川を追いかける。

もちろん攻撃はお互いをお構い無しに、旋空、マンティスを飛ばしている。

 

そして階段を登りきり、通路に出た時だった。

 

バッグワームを付けた小荒井が躍り出た。

そのまま弧月を振り抜いた。

 

綾瀬川はしゃがむように躱す。

 

 

 

「メテオラ。」

 

 

爆発を引き起こし、マンションの通路が崩れる。

 

 

「チィ…!!」

 

「くっ…!!」

 

崩れるマンションから飛び退いた2人は瓦礫から身を庇う。

 

 

 

 

「あ、あぶねえ…!!」

 

ギリギリメテオラに巻き込まれず飛び退いた小荒井は息を着く。

 

 

それが命取りとなる。

 

ザンッ…ザンザンッ…!!

 

 

弧月3振りで小荒井は四肢を切り裂かれ、だるま状態になる。

 

「っ…!!」

 

小荒井はその場に倒れ伏す。

 

「ちょ…何を…もがっ…!!」

 

綾瀬川は倒れた小荒井を持ち上げると、口にトリオンキューブを詰め込んだ。

そして引き摺り、鈴鳴の2人がいる地点に投げ落とす。

 

──

 

「!、隊長!!」

 

上からの小荒井のもがくような叫び声に2人は空を警戒する。

 

「小荒井くんが降りてくる…!!」

 

来馬はアサルトライフルを上に向ける。

 

「!、いえ、隊長!離れてください!!」

 

 

そのまま、四肢がないため、受け身も取れず、四肢からトリオンが漏れ、グラスホッパーも出せない小荒井は地面に体が打ち付けられると爆散。

そのまま光となって空に上がった。

 

 

 

──

 

『小荒井隊員ここで脱落!メテオラの煙でよく見えなかったのですが…小荒井隊員の自爆か?』

 

『ポイントは綾瀬川ですね。四肢を切り落とした後小荒井にメテオラを持たせて落としたんでしょう。』

 

『え、えげつない…!!しかしこれで東隊は2人脱落!残るは東隊長だけとなった!只今のポイントは影浦隊が3ポイント柿崎隊も同じく3ポイント、鈴鳴第一と東隊は未だに0ポイントとなっています。』

 

 

 

 

──

 

オレは影浦隊と鈴鳴第一に追いかけられ、マンションの屋上に着いた。

そこでオレは止まる。

 

「なんだよ?追いかけっこは終わりか?」

 

「…小荒井にメテオラを咥えさせて落とすなんて…随分と趣味の悪い真似をするな。」

 

「あんたらが非力なオレを2人がかりで追いかけ回すからでしょうが。…いや、4人か。」

 

2つある屋上への扉が開くと来馬と北添がアサルトライフルを構えながらやってくる。

全員臨戦態勢で、今にでも戦いの火蓋が切って落とされる…

 

 

 

その時だった。

 

 

綾瀬川が横目で少し離れたビルを一瞥。

 

 

 

 

そして顔を右に傾けた瞬間…

 

 

 

 

 

 

…アイビスの凶弾が、影浦の体を撃ち抜いた。

 

 




各キャラからの印象&各キャラからの印象

影浦雅人→気持ちわりぃ。
村上鋼→警戒。策が読めない。
北添尋→常に無表情で怖い。


影浦雅人←くねくねスコーピオンの人。
村上鋼←そういえばデコ広い。
北添尋←寝心地良さそうな腹。



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B級ランク戦ROUND3 VS影浦隊、東隊、鈴鳴第一④

いつから今回で終わると錯覚していた?



…まあ決着は着く予定です。
まあ見てやってくださいな。


『ここで東隊長のアイビス狙撃が炸裂!影浦隊長が緊急脱出!!』

 

『遠くで戦況を見ていましたね。綾瀬川隊員ギリギリの狙撃。影浦隊長のサイドエフェクトを考慮してギリギリで撃ったんでしょうか。』

 

嵐山はそう考察する。

 

『いや…あいつの仕業だろ。』

 

『と、言いますと?』

 

『…あいつ、東さんを利用しやがった。影浦隊も鈴鳴も東隊も全部あの化け物の手のひらの上で踊らされてるに過ぎないって訳だ…。』

 

 

 

 

──

 

緊急脱出した影浦。

その事に一番驚いていたのは他でもない、影浦を撃ち抜いた東本人だった。

 

(綾瀬川を狙ったつもりだった…。まさか俺があそこで狙撃することを読んでいたのか?)

 

点にはなったものの落としたのは綾瀬川と言っても良いだろう。

 

「本当に…恐ろしい奴だな…。」

 

そう呟きながら東はアイビスを向けた。

 

──

 

影浦が落とされた瞬間、ここにいる人間は東の射線が通らないようにしゃがむ。

 

『真登華、鈴鳴の狙撃手も狙える位置にいるはずだ。予測でいい、ある程度絞ってくれ。』

 

『分かりました…!!』

 

そう言うとオレは屋上の塀に立つ。

 

「じゃあオレはこの辺で。生きてたらまた戦闘になるかもしれませんね。」

 

そう言って後ろに倒れ込み落下する。

 

『!、太一!!』

 

来馬は2時の方向で待機していた別役に通信を入れる。

 

『了解っす…!!』

 

すぐさまライトニングを向けて放つ。

 

 

 

ギィン…!!

 

一瞬こちらに目を向けたかと思うと、極小の集中シールドで防がれる。

 

『見つけた。真登華、マーク付けてくれ。』

 

『は、はいっ。』

 

そして建物で射線を切ると着地し、バッグワームを羽織り、別役のいるマンションに駆け出した。

 

 

 

 

──

 

一方のマンション屋上は綾瀬川が消えたことにより、鈴鳴と影浦隊で2対1になる。

 

「ちょ、鋼くーん?太一くんがまずいんじゃない?さっきまでみたいに共闘して綾瀬川くんやろーよ。こ、弧月降ろして…!!」

 

「悪いなゾエ。うちはまだ0ポイントなんだ。…旋空弧月。」

 

「どひ〜!!」

 

 

 

ここで北添が緊急脱出。

 

しかし、北添は死に際にメテオラを鈴鳴第一の足元目掛けて射出。

屋上の床が崩壊し始めた。

 

──

 

『北添隊員緊急脱出!!鈴鳴第一1ポイント獲得し、ここで影浦隊が全滅した!死に際のメテオラで点を取ろうと試みるも得点にはならず!しかしマンションが崩れ始めたぞ…!!』

 

『鈴鳴は全員残っていますからね。別役隊員の元に向かった綾瀬川隊員を追う形になるでしょう。…まあこの隙を東さんが逃すとは思いませんが。』

 

 

 

 

アイビスの銃声1発。

 

瓦礫の隙間を縫って来馬を吹き飛ばす。

 

ここで来馬は緊急脱出し、東隊が2ポイント目をあげた。

 

 

 

「っ…!!」

 

村上は何とか体制を立て直すとバッグワームを羽織り、建物で射線を切った。

そして別役の元に向かうべく走り出した。

 

 

『村上先輩!やばばっス!!綾瀬川先輩がこっち来てます〜!!』

 

『撒けそうか?』

 

『やってみるッス!!』

 

『すぐに向かう。今、ルート表示してくれ。』

 

『了解。』

 

 

──

 

『…清澄先輩、東さんがレーダーに写ったり映らなかったりするんですけど…これどうします?』

 

『…真登華への嫌がらせだろ。無視しておけばいい。』

 

『あ、なるほど…。清澄先輩は凄いですね。1人で3点取って…私なんて必要ないかも。』

 

『…馬鹿言うな。まだ働いて貰うぞ。射線はお前に任せるからな。』

 

『…了解です。』

 

そう言う真登華はやはり暗かった。

加わってこない柿崎隊の面々からも重い空気を感じた。

 

『!、村上先輩がレーダーから消えました。気を付けてください。』

 

『ああ。少し集中する。真登華はなにか動きがあったらすぐに教えてくれ。』

 

『了解。』

 

 

 

情報を記憶に絞りこむ。

ランク戦前に見たマップの建物の配置、さっき撃った時の別役の位置。

そこからの動きを計算して位置を割り当てる。

 

 

 

…見つけた。

 

 

オレはトリオンキューブを2つ取り出すと2つを合わせる。

 

 

 

その瞬間、目前に弧月が現れる。

 

「っ…!!」

 

俺はどうにか後ろに飛び退いて躱す。

バッグワームを羽織った村上だった。

 

『ご、ごめんなさい先輩!アラートミスです…!!』

 

『…問題ない。射線が通らない道はあっちも分かってるだろ。…真登華は東さんと別役だけを警戒しててくれ。』

 

『分かり…ました…。』

 

──

『ここでついに綾瀬川隊員と村上隊員が衝突!勝負の命運を分ける一騎打ちとなるか!』

 

『一見すると村上隊員有利ですが…東さんも潜んでる以上お互い攻めづらいでしょう。射線は通らないとはいえ、東さんは近距離でも当ててきますからね。バッグワームで近づかれたら気付かないでしょう。』

 

 

 

──

 

 

「やっぱりなにかやってただろう、綾瀬川。」

 

「言ったでしょ?ピアノと茶道やってたって。」

 

「ふっ…前に聞いた時は書道だったがな。」

 

「…茶道もやってたんですよ。」

 

「…そうか。」

 

村上はそう言うとレイガストと弧月を両手に持ちオレに切りかかる。

 

それに対してオレは弧月を2本抜いた。

 

 

「!…流石に…お前に太刀川さんの真似(それ)は早いだろう…!!」

 

「…」

 

村上先輩の攻撃を弧月2本で受ける。

 

「スラスター。」

 

村上先輩は距離をとるとレイガストをスラスターで射出する。

弧月てそれを弾くと、隙を突いて村上先輩が切りかかる。

上体を傾け、それを避けると、村上先輩はさらに連撃を繰り出してくる。

それを弧月で受けるか躱して捌く。

 

 

 

そうやって村上先輩の攻撃を分析する(視る)

弧月を振る速度、切り返しのタイミング、レイガストの動き。

 

 

それを分析した脳は相手の動きを演算する。

 

 

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

「!」

 

その言葉に村上先輩は一歩引く。

 

しかし、旋空は放たれず、弧月はただ空を切る。

 

 

「っ?!」

 

 

オレはその隙を逃さない。

 

視界を覆うようにガードのスタイルを取る村上先輩の視界のさらに下から切り込む。

そして2本目の弧月が下から村上先輩の弧月を持つ手首を切り裂く。

 

「っ?!」

 

村上先輩はどうにか後ろに飛び退きレイガストを構え直す。

 

 

 

──

 

『で、出た〜!!綾瀬川隊員のブラフ!…からの奇襲で村上隊員、利き手を失ってしまう!!』

 

『さすがの鋼も初見のあれはビビるだろ。これは綾瀬川の勝ちだな。』

 

 

──

 

レイガストを構えどうにか飛び退き、引き気味にオレの弧月を受ける村上先輩。

防御が上手いな。

サイドエフェクトで読んでも、鉄壁の守りに隙は後ろしかない。

 

オレは弧月で村上先輩のレイガストを止めながらトリオンキューブを分割する。

 

「っ…スラスター…!!」

 

村上先輩はスラスターでオレの弧月を弾くと、その勢いのまま上に飛び退く。

 

 

 

 

瞬間、村上先輩を貫くアイビスが襲いかかった。

 

 

その方向を見るとバッグワームを羽織り、アイビスを構えた東さんの姿があった。

 

 

「ちっ…。」

 

流石にこれだけおこぼれを拾われると腹が立つな。

 

距離は35mってとこか…

 

 

 

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

 

放たれたそれは建物を切り倒しながら東さんに迫る。

東さんはアイビスを盾にしてどうにかそれを受ける。

 

そのままオレは距離を詰める。

 

「っ…!!」

 

東さんはすぐさまアイビスを取り出しオレに向ける…

 

 

 

「!」

 

ことは無かった。

 

オレの斜め後ろ?

 

 

 

そこに目をやるとトリオンキューブが置かれている。

 

置き玉か?

だがその距離じゃあ巻き込めない…。

 

 

 

そう思った時、視界のすぐ右に大量のトリオンキューブが目に入る。

 

 

撃たれたトリオンキューブが爆発すると、連動するようにいくつものトリオンキューブが爆発を起こす。

 

 

メテオラの連鎖爆発だった。

 

東さんは爆発に気を取られたオレにライトニングを向けた。

 

 

 

 

 

「…やられましたよ。だけど勝ちは譲らない。」

 

 

オレはそのライトニングを蹴り飛ばす。

 

「おいおい、大人しくやられてくれよ。」

 

 

そのままオレは東さんの首を切り飛ばした。

 

 

 

 

 

そして爆風がオレを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

──

 

『こ、ここで試合終了!!結果は4対4対3対3!東隊と柿崎隊の同率1位という結果になった…!!』

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 4P

 

 

合計 4P

 

 

 

東隊

 

 

東 4P

小荒井 0P

奥寺 0P

 

合計 4P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 0P

絵馬 1P

 

合計 3P

 

 

鈴鳴第一

 

 

来馬 0P

村上 1P

別役 0P

生存点+2P

 

合計 3P

 

 

 




東さん凄いやつ設定は崩したくないんだよなぁ。


綾瀬川無双と見せ掛けた綾瀬川&東さん無双。

各キャラからの印象&各キャラへの印象

宇井真登華→凄い。私なんて…
東春秋→とんでもないな。
小荒井登→怖い。まじでトラウマ。


宇井真登華←後輩。頑張ってる。
東春秋←やられた。俺がしてやられるとは思わなかった。
小荒井登←ちょっとやりすぎたと思ってる。



感想、評価等よろしくお願いします!!




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綾瀬川清澄④

日が空いてしまいすいません。
リアルが忙しかったので。
投稿再開致しますね。




『ここで試合終了!!4対4対3対3、柿崎隊と東隊の同率1位という結果になりました!!』

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 4P

 

合計 4P

 

 

 

東隊

 

 

東 4P

小荒井 0P

奥寺 0P

 

合計 4P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 0P

絵馬 1P

 

合計 3P

 

 

鈴鳴第一

 

 

来馬 0P

村上 1P

別役 0P

生存点+2P

 

合計 3P

 

 

 

 

 

 

『今回のランク戦、解説のお2人から見てどうでしたか?』

 

『柿崎隊の新人、綾瀬川が試合を動かしていた…という感じでしょうか。』

 

『それと同時に東さんの恐ろしさを再認識したぜ。』

 

『なるほど…ではまず影浦隊から。影浦隊の動きはどうでしたか?』

 

『いつも通りでしょう。影浦隊長が暴れて北添隊員のメテオラ、絵馬隊員の狙撃でサポートする。現に生存点が取れなくても3ポイント挙げていますから。動きは悪くなかったと思いますよ。…相手が悪かったでしょうね。』

 

『…では続いて鈴鳴第一の動きはどうでしょう?太刀川さん。』

 

『…そうだな、出遅れた感が否めないな。最初鋼が来馬の合流を待たずに太一を後ろに着けて戦場に参加してたらもっと点を取れたかもしれない。…まあかもの話だけどな。』

 

『なるほど。確かに鈴鳴第一は村上隊員が来馬隊長を庇って少し積極性がなかったかもしれませんね。…東隊に関してはどうですか?』

 

『…序盤で奥寺隊員が落とされたのが痛かったですね。小荒井隊員と奥寺隊員の連携で点を取り隙を着いて東さんが狙撃。それがいつもの流れでしたが今回は序盤で奥寺隊員が落とされてしまっています。それにより小荒井隊員が積極的に動けなかった…というのがでかいと思います。それでも東さん1人で4ポイントあげている時点でおかしいんですけどね。』

 

『そういえば最後綾瀬川隊員を道連れにした遠距離のメテオラはなんだったんでしょう?』

 

『あれは誘爆ですね。大きいメテオラを見えやすいところに置いておき届かないと油断させての小さなメテオラを無数に配置しておく。1つ1つの威力は高くありませんが一気に爆発すると一溜りもないでしょう。』

 

『そんなカラクリが…!!東さん恐るべし…!…では最後に柿崎隊の動きについてどう思われますか?』

 

 

『どうも何もこのランク戦はほとんど綾瀬川(あいつ)の手の上だっただろう。トリガーセットから柿崎隊が綾瀬川以外落ちた後の動きと言い…全部読んでいたとしか思えない動きだった。』

 

『全部読んでいたというのは流石に…仲間が落とされるのも分かっていた…ということでしょうか?』

 

『さあな。そこの所はあいつにしか分からないだろ。ただ

 

 

 

…もしこのまま行けば柿崎隊は大きな壁にぶち当たることになる…。』

 

 

──

「どーです?二宮さん。面白いでしょ、彼。」

 

 

「…ふん、確かに反射神経や状況判断能力は評価できる。…だがそこまでだ。」

 

足を組みながらスクリーンを見ていた男は間を置いてそう返した。

 

 

「そうですか?あ、そうだ。彼イーグレットも使えるんですよ。俺が解説担当した時だってノールック出当ててましたからね。」

 

「…綾瀬川のことはどうでもいい。綾瀬川が脅威になろうと柿崎隊は脅威では無い。」

 

「あー…そうですね。」

 

「犬飼、綾瀬川のログをよく見ておけ。綾瀬川さえ先に落としてしまえばほかはどうでもいい。生駒隊の動きに警戒しておけばいいだろう。」

 

そう言うと男、二宮(にのみや) 匡貴(まさたか)は立ち上がる。

 

「戻るぞ。」

 

「はーい。」

 

 

 

 

 

 

──

 

オレはゆっくりとベッドから起き上がる。

 

まさか落とされるとは思わなかった。

 

東春秋…か。

 

 

 

 

 

作戦室に戻ると4人が寄ってきた。

 

「すいません、死んじゃいました。」

 

「謝る必要はないだろ、お前がいなかったら柿崎隊は1ポイントも取れなかったんだ。」

 

「そうですよ!!清澄先輩めっちゃ強いじゃないですか!!なんで黙ってたんです?!」

 

「…作戦が上手くハマっただけだ。」

 

「本当にすげえな。東さんだって落としちまうし…。お前何者なんだ?」

 

そう言って柿崎は笑いながらオレの肩に腕を回した。

 

「…でも清澄先輩がいれば柿崎隊は安泰ですね!」

 

真登華は笑いながらそう言った後、表情を暗くした。

 

「…私なんて…いらないかも。清澄先輩についていけずに迷惑かけちゃったし…。」

 

真登華がそう言うとほかの3人も表情を暗くした。

 

「そうだな…。」

 

「今回は清澄先輩に任せっきりで何も出来ませんでした…。」

 

 

 

 

 

 

「清澄先輩、お願いがあるんです。」

 

 

しかし文香は表情を暗くしたあと、顔を上げた。

 

 

 

「…私を…弟子にして貰えませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

「…なるほど。…話を聞こう。」

 

 

オレは無表情のままだが、文香の言葉に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「ドンマイ、カゲ。あのタイミングで感情消して東さんが狙撃してきたら誰だって避けれないよ〜。」

 

「そうだぞ。あんま落ち込むなよ。」

 

「るせえ!落ち込んでねえっつってんだろーが!」

 

影浦を励ます、北添と仁礼に影浦が怒鳴った。

 

「…それに誰だって避けれないっつったか?いただろーが避けたヤローが。」

 

影浦のその言葉に絵馬は表情を変えた。

 

「まさかあの人…狙って…?」

 

「東のおっさんだって最初はあのヤローを狙ってただろーぜ。綾瀬川…か。俺のクソサイドエフェクトも役に立たなかった…。」

 

そう言いながら影浦は瞳孔をギラつかせた。

 

 

 

「おもしれえ…喉元かっさばいてやる…!」

 

 

 

 

──

 

ボーダー鈴鳴支部作戦室

 

「う〜…すんません…なんも出来なかったす〜!!」

 

別役が泣きながら村上と来馬に謝る。

 

「謝るのは僕の方だよ。太一は最後まで生き残ってくれたから…3ポイント取れたのは太一のおかげだ。僕こそ何も出来なかった。太刀川くんが言った通り鋼を先に行かせるべきだった。ごめん。」

 

「俺の方こそ。綾瀬川に勝てませんでした。」

 

「…鋼くんから見てどうなの?綾瀬川くんは。」

 

今が村上に尋ねた。

 

「強いな。ROUND1の時も個人ランク戦の時も本気じゃなかったらしい。」

 

「そう…。」

 

「でも…次は勝つさ。負けっぱなしは性にあわない。」

 

そう言って村上は笑う。

 

 

 

 

──

 

東隊作戦室

 

「東さん流石っす!!1人で4点取るなんて…!!」

 

戻ってきた東に奥寺が駆け寄った。

 

「まあギリギリな。小荒井はどうしたんだ?」

 

椅子の上で顔を俯かせている小荒井を見て東が尋ねた。

 

「あー…綾瀬川先輩がトラウマになっちゃったみたいで…。」

 

「…そんなに酷い落とされ方したのか?」

 

尋ねる東に小荒井は顔を上げる。

 

「無表情で口の中にメテオラ詰め込まれたんですよ?!手足落とされて動けないし!!そのまま引き摺られてドカンですよ!!」

 

そう叫んだあと小荒井は顔を俯かせる。

 

「もう綾瀬川先輩と顔合わせられる自信ないっすよ…。」

 

「それはまた…。」

 

「いつまで凹んでるの。東さんが綾瀬川くんを落としてくれた。それでいいじゃない。」

 

「でも…」

 

「切り替えろよ小荒井。」

 

東は小荒井の隣に座る。

 

「綾瀬川は今シーズンで二宮に並ぶほどの脅威になるぞ。」

 

「え?」

 

「…とんでもない男だよ。まだ何か隠してそうだ。」

 

そう言って東は笑った。

 

 

 

 

 

──

 

「とんでもないな。さすがはあなたの最高傑作と言った所か。」

 

男、唐沢(からさわ) 克己(かつみ)は目の前の男に話しかける。

 

「…」

 

答えることなく男は立ち上がる。

 

「もうお帰りになるんですか?」

 

「…つまらん内容だった。興が冷めた。」

 

「そうですかね。さすがはあなたに作られた天才。それを見せつけるような内容だったと思いますけど。」

 

唐沢がそう言うと男は振り返る。

 

「お前は何か勘違いをしている…。

 

 

 

 

…清澄はまだ本気を出していない。」

 

 

 

──

 

弧月を振り抜く時の構え、太刀筋。

間違いなかった。

 

 

 

忘れもしない半年前。

 

 

城戸司令に呼び出された俺は城戸直々の命により、山奥の小さな研究所のような施設で1つのマネキン人形のようなものと向き合っていた。

なんでも自動戦闘機能の着いたトリオン人形らしい。

 

 

 

 

『君が太刀川慶君…か。』

 

聞いたことも無い声が白い部屋に響く。

どこか威圧感のある声に一瞬城戸司令かとも思った。

 

「…誰だ?アンタ。」

 

『城戸の知り合いだ。安心したまえ、表に出ていないだけで私はここの…ボーダーの関係者だ。君をここに呼んだのは私だ。』

 

「で?その関係者サマが俺になんの用なんだ?」

 

『君はボーダーでもトップクラスの攻撃手と聞いている。簡単な話だ。私が開発したあのトリオンでできた人形と戦ってもらう。』

 

「なんで俺がそんなことを?なんの意味がある?」

 

『…城戸から聞いていないのか?

 

 

 

…これは命令だ。』

 

 

「チッ…。」

 

 

俺は渋々弧月を構える。

 

 

 

「壊しても文句言わないでくださいよ。」

 

『…問題ない。』

 

 

──個人ランク戦10本先取…スタート。

 

無機質な機械音がランク戦の始まりを告げた。

 

 

 

 

 

俺は忍田本部長の下で剣を習った。

ボーダー最強のノーマルトリガー使い。

その忍田さん直伝の弧月。

俺に勝てるのは忍田さんだけだと思っていた。

 

 

 

 

 

──トリオン供給機関破損、太刀川緊急脱出。個人ランク戦終了。10-0勝者被検体NO.0。

 

 

その音声はいつもより冷たく感じた。

 

 

1本も取れなかった。

そうして立ち尽くしていると先程の男の声が響く。

 

『…ご苦労だったな太刀川君。戻ってもらって構わない。城戸にもよろしく伝えておいてくれ。』

 

そう言ってマイクが途切れる音がした。

 

戦っていたトリオン人形は俺に無機質な目を向けると振り返る。

 

 

 

「…待てよ。」

 

その言葉にトリオン人形は歩みを止める。

 

「!」

 

こいつ…人形じゃないのか?

 

「…覚えておけよ。次はぶっ壊してやる。」

 

 

そう言うとトリオン人形はこちらを一瞥。

俺は目をもくれることなく出口に歩き出した。

 

 

 

 

 

『お前はオレに敗北を教えてくれるのか…?』

 

 

 

「!」

 

そう聞こえた気がして振り返る。

が、そこにやつの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう…会いたがったぜ綾瀬川。半年前のリターンマッチだ。ランク戦ブースに入りやがれ。」

 

そして、No.1攻撃手、太刀川(たちかわ) (けい)は無機質な目をした少年にそう声をかけた。




ROUND3終了後
1位 二宮隊 24P
2位 影浦隊 21P
3位 生駒隊 20P
4位 弓場隊 19P
5位 王子隊 17P
6位 東隊 17P
7位 柿崎隊 17P
8位 香取隊 15P
9位 鈴鳴第一 15P
10位 荒船隊 14P
11位 漆間隊 13P
12位 諏訪隊 11P
13位 那須隊 11P


各キャラからの印象&各キャラへの印象

二宮匡貴→評価はする。
犬飼澄晴→面白い。
影浦雅人→次は喉元かっさばいてやる。
太刀川慶→ようやく会えたな…。
唐沢克己→興味。



影浦雅人←歯ギザギザ。
太刀川慶←えっと…どなたですか?


ワートリ次回休載ですってね。
残念な気持ちとお大事にって気持ちです。
それと同時にワ民の優しさが見れて良かったです。


感想、評価等よろしくお願い致します。


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お好み焼き「かげうら」にて

幕間的な感じです。
ストーリー自体はあんま進みません。



「お断りします。」

 

目の前の髭の男はオレのその言葉に驚愕の表情を見せた。

 

「はぁ?!おいおい、それはねーだろ綾瀬川。俺はお前を倒すためにこの半年鍛えたんだぜ?」

 

「まずあなたは誰なんですか?半年前に会った記憶もなければオレが目標にされる筋合いなんてないんですが。」

 

「おま…太刀川さんを知らねーのか?!」

 

隣にいた米屋が呆れたように言った。

 

「太刀川…ああ、出水の…。」

 

思い出した。

確か出水はA級1位太刀川隊に所属していたはずだ。

 

「すいませんね。家の都合で休隊してて。古参ではあるんですが戻ってきたのはつい数ヶ月前なんですよ。」

 

「そんな事はどうでもいい。お前には借りがある。きっちりここで返させてもらうぜ。」

 

「いや、借りも何も今回が初対面でしょ。オレはあなたの事を知らない。」

 

「…覚えてすらねえって事か…。いいぜ。なら尚更だ。ランク戦しろよ。」

 

ダメだ会話が成立しない。

て言うかボーダーには戦闘狂しかいないのか?

 

 

 

「あれ?太刀川さん、清澄に何か用ですか?」

 

そこに助け舟が。

照屋と柿崎がやって来た。

 

「柿崎か。こいつにランク戦挑んでるとこだ。」

 

「なるほど…やればいいんじゃないか?」

 

ブルータス…お前もか。

それだけ言って2人は帰ってしまう。

 

「ほら、隊長がこう言ってる。どうする?隊員。」

 

「…この後友人と約束があるんですが?」

 

「知るか。俺優先だ。」

 

横暴な。

 

 

 

 

そんな事を思っていると太刀川は後ろから背中を叩かれる。

 

「いてえ!!」

 

「何をやっている?太刀川。」

 

小柄でおそらく年下の少年が太刀川を叩いた。

 

「年下を困らせるな。」

 

「…邪魔しないでくださいよ…風間さん。」

 

「黙れ。このバカがすまなかったな。」

 

「いや、助かった。」

 

オレがそう答えると米屋、太刀川は顔を青くした。

 

「…風間(かざま) 蒼也(そうや)だ。歳は21。お前より年上だぞ。綾瀬川。」

 

「…それは失礼しました。風間さん。」

 

オレは急いで頭を下げる。

 

「よくある事だ。気にしてない。…戻るぞ太刀川。」

 

「いや、俺まだこいつに…」

 

「レポート。」

 

そう一言言うと太刀川は黙る。

 

「これ以上本部長に迷惑をかける気か?」

 

「わーったよ!…おい綾瀬川!次会った時は覚えとけよ!!」

 

そう残して太刀川は風間に引き摺られて連れていかれた。

 

 

 

 

「お前…太刀川さんと知り合いなのか?」

 

「…さっきも言ったが初対面だ。誰かと勘違いしてるんじゃないか?」

 

「ふーん…。ま、いいや。太刀川さんもいなくなった事だし…「ランク戦はしないぞ。」ランク戦…。」

 

「…言っただろ…?約束があるって。」

 

「また秀次かよ…。てかそれなら出水誘ってオレも行っていいか?」

 

「いいんじゃないか?三輪に聞いてみる。」

 

 

 

 

 

──

 

「あ、あやせセンパイのも俺が焼いたげるよ〜。」

 

目の前で焦げたお好み焼きを見て緑川がそう言った。

 

「ああ、すまない…頼む。」

 

「にしてもお好み焼き初めてなんて珍しいな。」

 

米屋は水を1口飲んでからそう言った。

 

「そうでも無いだろ。行く機会がなければ行かない。」

 

「そう言うもんか…。」

 

「ちらっと聞いたがこいつは産まれてすぐ海外だったらしい。そして日本戻ってボーダー入ったらすぐに家の用事でまた国外だとよ。だからそう言うのに疎いんだろ。」

 

出水がそう言った。

 

「なるほどな。そんな事話す機会あったのか?」

 

米屋が尋ねる。

 

「…まあちょっとな。」

 

 

「どうせ2学期からは同じ高校だろう。」

 

三輪が切り出した。

 

「行きたいところがあったら言え。お前よりは詳しい。」

 

「…ああ、ありがとう。」

 

「秀次って綾瀬川には優しいよなぁ…。」

 

「確かに。心無しかみわセンパイの目付きが優しい気がする。」

 

「…ふん、とっとと食え。焦げるぞ。」

 

「うわっ…やば…!!」

 

 

そうやってお好み焼きを楽しんでいると、見知った顔の一団がこちらにやって来た。

 

「あ?お前ら来てたのかよ。」

 

「よう、打ち上げか?」

 

やって来たのは、影浦、村上、北添の3人だった。

 

「カゲさん、鋼さん、ゾエさん。」

 

米屋が代表して答える。

 

「まあそんなところっす。3人も打ち上げですか?」

 

「ランク戦帰りにカゲんち行こうってなったんだよ。」

 

北添が答える。

そう言えば店の名前はかげうらだった気がする。

 

「…へっ…乗り気じゃなかったがこいつがいるなら話は別だぜ。」

 

そう言いながら影浦はオレに近づいた。

 

「よう…今日はやられたぜ。次はぜってぇその変わんねえ表情歪めてやるよ。」

 

「…それは東さんに言ってもらえますか?あんたを落としたのはオレじゃない。」

 

「…はっ…とぼけやがって。」

 

そう言って影浦を含む3人は隣の席に座る。

 

「とんでもない回避能力だな。サイドエフェクトか?」

 

村上が尋ねた。

 

「…まあ。」

 

「「はぁ?!」」

 

オレがそう言うと、米屋と緑川が反応した。

 

「…まだ言ってなかったのか…?」

 

三輪は呆れたように言った。

 

「言う機会もなかったからな。」

 

「…カゲのサイドエフェクトに似てるな。似たようなやつか?」

 

「…まず影浦先輩のサイドエフェクトがオレは分からないんですけどね。」

 

村上の質問にそう返すと、影浦が返した。

 

「けっ…こいつのサイドエフェクトはそんな生ぬるいもんじゃねえだろ。俺のクソサイドエフェクトより100倍つえーだろーが。まるで未来が見えてるみてーに躱しやがる。」

 

「!…えぇ?!未来予知?」

 

北添が反応する。

 

「…オレのサイドエフェクトはそんな便利な事出来ませんよ。…まあ…内緒です。」

 

「端から聞き出そうと思ってねえよ。…今回はてめえの勝ちだ。次はその喉斬り裂いてやるからな。」

 

「…はあ…。」

 

「俺もだ。随分と悪趣味だな。手を抜いてたのか?」

 

村上がそう尋ねる。

 

「個人戦では…ね。オレの旋空は村上先輩のデータにはなかったでしょう。あなたに勝つには初見の技ぶつけないと勝てませんから。いつ再戦するかも分からないのに村上先輩に手の内明かすわけないでしょ。ましてやあなたもサイドエフェクト持ちなんだから。」

 

「…なるほど。だがもうお前の旋空は見た。次は何を見せてくれるんだ?」

 

「そんな期待されてももう無いですよ。」

 

「ふ…どうだか。」

 

「勘弁してください…。」

 

 

「問題は次だぞ。綾瀬川。」

 

村上に答えたあと、三輪が切り出した。

 

「そうだな、B級1位の壁は高い。」

 

村上も同調する。

 

「確かNo.1射手がいるんだったか。」

 

オレは知っている情報を出した。

 

「そうだ。お前は回避能力が高いが二宮さんはそれすらもゴリ押しでお前に当ててくるだろう。」

 

三輪は続ける。

 

「それに二宮さんだけじゃなくてマスタークラスの銃手の犬飼さん、マスタークラスの攻撃手、辻がいる。一筋縄じゃ行かないぞ。」

 

「…まあそうだろうな。」

 

「それに二宮隊だけじゃなくて確か次は生駒隊もでしょ?」

 

緑川が付け足すように話に入る。

 

「あやせセンパイの旋空もだいぶ長いけどいこまさんはそれ以上だよ。人数も柿崎隊と同じ4人だし。」

 

「まあ今の柿崎隊じゃきついだろうな。」

 

オレは淡々と答えた。

 

「きついだろうってお前…。」

 

米屋は呆れている。

 

「今のって言っただろ?」

 

「何かあんのかよ?」

 

「さあな…。

 

 

 

 

…だがここで変わらなければそれまでだ。」

 

 

 

酷く冷えきった瞳にここにいるものは息を飲んだ。

 

 

「てめえ、本当に何者なんだ?」

 

影浦が睨むように尋ねる。

オレが視線を向けるとさらに舌打ちをする。

 

「…ちっ…気持ちわりぃ…。」

 

そう言って影浦は立ち上がる。

 

「カゲ!」

 

「せえな。便所だよ。」

 

そう言って影浦は歩いて行ってしまった。

 

 

 

「カゲがすまないな。あいつのサイドエフェクトは『感情受信体質』って言ってな。相手に向けられた感情が肌に刺さるように分かるらしい。それで昔から苦労して…まああんな性格になった。だが…お前からはなんの感情も感じないらしい。」

 

「!」

 

オレは目を見開く。

 

「だから綾瀬川の事…その…気味悪がっててな。お前が悪いわけじゃない。気にするなよ。」

 

「…はい。」

 

「いやー、戦闘でも私生活でもカゲにとって綾瀬川くんは天敵だね。」

 

北添が、空気を戻すように話す。

 

「…俺たちはそろそろ出よう。」

 

三輪がオレを一瞥すると立ち上がる。

 

「…そうだな。今回は俺も払うよ。」

 

「気にするなと言ってるだろう。お前のための席だ。」

 

「いや、毎度悪い…。払わせてくれ…。」

 

「甘えとけって綾瀬川。それにお前と違って俺らはA級の固定給も貰ってんだよ。」

 

自慢するように出水は伝票をかっさらう。

 

 

「すまない。ありがとう。」

 

 

「じゃあ次のランク戦頑張れよ。」

 

村上と北添もそう言って送り出してくれた。

 

 

 

B級ランク戦もまだ半分。

外に出ると蒸し暑い風が三門市を吹き抜ける。

 

 

次の相手はB級最大の壁。

オレは無機質な瞳を空に輝く月に向けた。

 

 

 

感情が無い…か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局オレはボーダー(ここ)に来ても白い鳥籠から逃げることは出来なかった。




各キャラへの印象&各キャラからの印象

太刀川慶→俺を忘れるとはいい度胸だ。ぶった斬る。
風間蒼也→俺は年上だ。年上だからな?年上だぞ?
緑川駿→サイドエフェクト?!
米屋陽介→サイドエフェクト?!
出水公平→境遇を知ってる?
三輪秀次→気にかける。友人。
影浦雅人→気持ちわりぃ。
村上鋼→強い。腕を認めている。
北添尋→以外に喋るなぁ。



太刀川慶←すいません、ご存知ないです。
風間蒼也←ちっこい。年下かと思った。
緑川駿←良い奴。弟がいればこんな感じかな。
米屋陽介←戦闘狂。マジでランク戦ランク戦うるさい。
出水公平←境遇を教えた?
三輪秀次←毎回祝ってくれて嬉しい反面ちょっと申し訳ない。友人。誤解されやすいが良い奴。
影浦雅人←…苦手。
村上鋼←警戒。
北添尋←いい人。


次回は1話挟んでROUND4に行こうと思います。


感想、評価等よろしくお願い致します。


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ROUND4に向けて

遅くなりすみません。
投稿します。

皆さんお待ちかね、某騙されやすいあの人が登場します。

こちらで告知しますが、明日…っていうか今日かw
リアルの都合で投稿出来ません。
楽しみにしてくださっている方に深くお詫び申し上げます。


「…うちの弱いところはなんだと思います?」

 

「っ…それは…」

 

オレの質問に4人は俯く。

 

「簡単です。チームの合流を優先しすぎていること。合流を優先しすぎて戦況に目がいかない事だ。」

 

「でも…それがうちの強みですよ…?清澄先輩。」

 

「それはそうだな。だが転送位置によっては合流出来ないことがある。過去3試合も合流前に誰か落とされている。」

 

「でも…それ以外に勝てる作戦が…」

 

文香が顔を俯かせながら言った。

 

「あるだろう。そのためにオレに弟子入りを頼んだんじゃないのか?1人でも戦えるようになればいいだろ。」

 

「!…そんな…一朝一夕で強くなれる訳ないじゃないですか…!」

 

「オレは戦えるようになればいいって言ったんだ。強くなれとは言っていない。」

 

「…同じことだろ?」

 

柿崎が呆れたように言った。

 

「違いますよ。1人じゃ勝てなくても…他のチームメイトが合流するまでの時間稼ぎを1人でもできるようになればいい。1対1でぶつかった時、相手に勝つように戦う必要は無いんです。うちの強みはチーム戦でしょう?なんで連携攻撃の練習しかしないんですか?チーム戦を有利にできる作戦なんていくらでもあるでしょう。極論を言ってしまえばチーム戦で点を取るなら2人はサポートに専念、2人が攻撃に専念。これでいいんですよ。」

 

「…なるほど…。」

 

文香が考え込む。

 

「連携の練習は散々した。それでも上位相手に点が取れないのが現実だ。うちには文香って言う攻撃に特化させれば点を取れる駒もいるんだ。お前が柿崎隊のエースになるんだよ。」

 

「…っ…私には無理ですよ…。昨日の試合だって影浦さんが怖くて周りが見えなくて…そのまま絵馬くんに落とされました。私1人じゃどれだけ頑張ったって…」

 

「だから…うちはチームだろ。」

 

「!」

 

俯いていた文香が顔を上げる。

 

「エースに点を取らせるのがチーム…ですよね?」

 

それだけ言ってオレは柿崎と虎太郎に視線を向けた。

 

「ああ…!」

 

「はい!やりましょう…!!」

 

2人の表情が力強くなる。

 

「でも…具体的にどうすれば…。」

 

真登華が言う。

 

「それはこれから考えるんだろ。…まあ1つ言うとしたら…虎太郎。」

 

「は、はい。」

 

「お前はあれをトリガーにセットしてただろ?なんで使わないんだ?」

 

「え?でもあれはまだ使い勝手が…」

 

「使えるものはなんでも使った方がいいだろう。」

 

「…分かりました。やってみます。」

 

虎太郎が答えると、今度は柿崎が冷や汗を浮かべてながら切り出した。

 

「ROUND4まであと3日か…。…間に合うのか?」

 

「間に合わないでしょうね。」

 

「でしょうねってお前…。」

 

「いいじゃないですか。

 

 

 

 

…ROUND4は捨てましょう。」

 

 

「「「「!」」」」

 

俺の言葉に4人は目を見開く。

 

「B級トップの二宮隊、生駒隊相手に今の柿崎隊で戦って課題を探すんですよ。まあ勝つ気ではやりますけどね。」

 

「…そうだな。」

 

「ちょ、ザキさん?!いいんですか?!」

 

オレに賛成した柿崎に真登華がつっこむ。

 

「弱気になる訳じゃないが…分かる。今の俺たちじゃ二宮隊にも生駒隊にも勝てない。カゲ達に勝てたのだって清澄がいたからだ。いつまでも隊長の俺が清澄に頼ってばっかいられねえだろ…!文香、虎太郎、真登華…強くなるぞ…!!」

 

「…はい…!隊長を支えるのは私の仕事ですから…!」

 

「やりましょう…!」

 

「私も綾辻先輩に弟子入りしてきます…!」

 

オレはその様子を見届けると作戦室を後にする。

 

 

 

ここからが見物だな。

 

 

 

 

 

…布石は打った。

変わらなければそれまでだ。

 

 

 

 

──

 

「待ってください!清澄先輩!!」

 

出て行ったオレを文香が追いかけてきた。

 

「どうした?」

 

「…清澄先輩じゃダメなんですか?」

 

「何がだ?」

 

文香は間を置いて答える。

 

「エースです。柿崎隊のエースは清澄先輩じゃダメなんですか?私より清澄先輩の方が強いし…。1人でも点を取れます…。」

 

その言葉にオレは目を細める。

 

「逆に聞くが…お前はそれでいいのか?」

 

「!」

 

「…お前はもっと…負けず嫌いなやつだと思ってたんだが…買い被ってたみたいだな。」

 

「なっ…?!」

 

それだけ言うとオレは振り返り歩き出す。

 

 

「…上等です…!!絶対負けませんから…!清澄先輩が必要ないくらい強くなりますから…!!」

 

 

その言葉を聞いてオレは止まる。

 

「そうだな。その調子なら大丈夫だろ。

 

 

 

 

…この後時間あるか?紹介したいやつがいるんだが。」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?ここに来たって訳?」

 

やって来たのはボーダー玉狛支部。

そして目の前で不機嫌そうに足を組む少女。

 

「急にボーダー戻ってきたと思ったら師匠である私に挨拶もせずに?」

 

「…それは自称だろ…。」

 

「戻ってきたんなら連絡くらいしなさいよ…!知らないうちに柿崎隊に入ってるし…!!」

 

そう言ってオレにヘッドロックをかけてくるのは小南(こなみ) 桐絵(きりえ)

玉狛支部所属の攻撃手だ。

 

「その…清澄先輩と小南先輩…お知り合いなんですね…。」

 

「…まあ休隊する前にちょっとな。」

 

「私が弧月を教えてやったのよ。」

 

「…勝手に師匠面されてるだけだけどな。」

 

「あら?入隊してすぐに私にボコボコにされたのはどこの誰かしら?」

 

「入隊して2日目のやつを大人気なくボコボコにするのはどこのボーダー最古参隊員だろうな。」

 

「何?何か文句でもあんの?」

 

「…分かったよ。俺の師匠でいいから…俺の頼みを聞いてくれ…。」

 

そう言うと小南は勝ち誇ったような顔をする。

 

「ふん、それでいいのよ。…で?私に文香の師匠になってくれって?」

 

「ああ。お前と同じで弧月と弾トリガー使うしな。」

 

「アンタが教えればいいじゃない。ログ見たわよ。まあ少しは認めてあげてもいいくらい強くなったじゃない。」

 

「…まあ少しは…な。でも教えるのは下手だからな。そこでオレに弧月を教えてくれたお前に声をかけたんだ。実力もボーダーNo.1で、人格も優れたお前にな。」

 

「ちょ…それは言い過ぎよ…!!た、確かにボーダーNo.1だけど…人格も容姿も優れてるなんて…!!」

 

小南は顔を赤くして照れる。

容姿のことは別に何も言ってないんだがな。

 

 

チョロい。

 

 

「もちろん手が空いてる時でいい。頼めないか?」

 

「私からも…お願いします…!!」

 

文香も頭を下げた。

 

「そ、そこまで言われたら仕方ないわね…!いいわ、面倒見てあげる!言っとくけど私は厳しいわよ。」

 

そう言って文香に視線を向けた。

 

「あ、ありがとうございます…!よろしくお願いします!!」

 

「じゃあ早速今から頼む。」

 

「任せなさい!」

 

 

 

 

 

 

──

そしてあっという間に日は進み、B級ランク戦ROUND4の日がやって来た。

 

 

『み〜なさ〜ん、こんちは〜。B級ランク戦ROUND4上位昼の部〜。実況担当の太刀川隊国近で〜す。解説席にはゾエさんと緑川くーん。』

 

『『よろしく〜。』』

 

『と言う訳でゆるーい感じの3人でお送りするが大丈夫なのか〜。…ROUND4は二宮隊と生駒隊、そして最近上位入りした柿崎隊の三つ巴になります。』

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「今回は俺たち3人を中心に動く。今まで通り合流優先だ。」

 

「清澄先輩は?今日はどのトリガーで行くんですか?」

 

真登華が尋ねた。

 

「まあ普段とあんまり変わらない。一応イーグレットも入れてくれ。」

 

「了解です。…え?これも入れるんですか?」

 

「…一応な。」

 

 

「マップは「工業地区」で行く。清澄が来るまではよくここを選んでたからな。…はっきり言って勝てる気はしない。各自課題を見つけるのが今回の目的だ。勝とうなんて言わないが…次に繋がる1戦にしよう。」

 

 

 

 

不安と次への望みをかけた、B級ランク戦ROUND4が幕を開けた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象


照屋文香→負けませんから!!
小南桐絵→弟子。戻ってきたんなら連絡くらいしなさいよ!!


照屋文香←期待。
小南桐絵←チョロい。入隊二日目に絡まれた仲。それ以降休隊するまで絡まれた。

こなせんが綾瀬川に目をつけたのは当時初心者だった割に太刀筋が鋭く興味を持ったからです。

前書きでも告知しましたが1日休載致します。
申し訳ありません。


感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND4 VS二宮隊、生駒隊①

遅れてすいません。
投稿します。
昨日は休載すいませんでした。


生駒隊作戦室

 

「やばない?きよぽんやばない?」

 

「きよぽんって誰です?」

 

「誰って…綾瀬川クンに決まっとるやろ。」

 

生駒隊隊長、生駒(いこま) 達人(たつひと)は開口一番でそう言った。

 

「なんなんです?その渾名。」

 

水上(みずかみ) 敏志(さとし)は呆れたようにツッコミをする。

 

「ええやろ?きよぽん。ほら、きよぽん無表情で近寄り難いとこあるやん?渾名くらい可愛くせんとと思て。」

 

「でも実際やばいッスよ。綾瀬川クン。ノールックの狙撃とか反則やろ。」

 

生駒隊の狙撃手、隱岐(おき)孝二(こうじ)は冷や汗を浮かべながら言った。

 

「それに俺の旋空まで真似とるやん。合成弾だって使うし…あれや、パーフェクトなんちゃらってやつやない?」

 

完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)ですよ。でもポイントはそこまで多くないみたいですわ。」

 

「そうなん?全部マスタークラスあってもええくらい使いこなしてるやん。ROUND3とか見た?東さん落としとったで?」

 

「カゲも鋼もしてやられてましたわ。」

 

「2万回見ました!!」

 

元気に答えたのは生駒隊の攻撃手、南沢(みなみさわ) (かい)

 

「嘘つけ…。」

 

「実際どうします?」

 

水上の質問に生駒は顎に手を当てて考える。

 

 

 

 

 

「せや!

 

 

 

 

 

 

 

 

…誰が先にきよぽん笑わせられるか勝負せん?」

 

 

 

──

 

二宮隊作戦室

 

「どーします?二宮さん。綾瀬川くん。」

 

「ふん…生駒、綾瀬川とは1人では戦うな。…他は誰が来ようといつも通り撃ち落とす。」

 

「「了解。」」

 

犬飼と二宮隊の攻撃手、(つじ) 新之助(しんのすけ)は短く答えた。

 

 

 

──

 

『さて、ステージが選ばれる前に、解説の2人はどー見る?』

 

『うーん、柿崎隊は前回で弱点って言うか…綾瀬川くん以外はすぐ落とされちゃって大変だったから…上位2部隊相手にはちょっとしんどいんじゃない?』

 

『そーかなぁ。俺はあやせセンパイはまだ何か隠してると思うけど?』

 

『何かって?』

 

『さあ?でもソロの時はいつも本気じゃないみたいだよ。』

 

『へ〜…っと…ここで柿崎隊がステージを「工業地区」に決定。』

 

『綾瀬川くんが来るまでは柿崎隊はよくそこを選んでたよね。狙撃手の射線は通りにくいし撃ち合いがしやすいステージだね。…でも今回は二宮さんがいるけど大丈夫なのかな?』

 

『まあ無策って事はないんじゃない?んふふ、あやせセンパイ…どんな手を使うのか楽しみだなあ。』

 

『…さて、時間だね。全隊員転送開始〜。

 

 

 

…転送完了〜。マップ「工業地区」。時刻は昼〜。』

 

 

 

 

──

 

さて。

転送が終わるとオレは大きな貯水タンクの上にいた。

 

『隊長、転送位置高台でした。バッグワームでいつでも狙撃できるよう潜んどきます。』

 

『分かった!真登華、バッグワームつけたのは?』

 

『1人だけ。多分隠岐先輩だと思う。』

 

『分かった。文香、虎太郎。先ずは中間地点で落ち合うぞ。』

 

『『了解。』』

 

 

 

 

 

──

『さあ、全体的に綺麗にバラけた〜。そして綾瀬川隊員と隠岐隊員がバッグワームを装着〜。』

 

『今回あやせセンパイは狙撃手として動くのかな?』

 

『う〜ん…マップ的に狙撃は厳しけど…綾瀬川くん高台取ってるからその可能性もあるかもね。』

 

『生駒隊と柿崎隊は綾瀬川隊員と隠岐隊員を除いて合流の動き。二宮隊も合流を優先する動きかな〜?』

 

『でも今回はマップが少し狭いからいつ戦闘が起きてもおかしくないよね。生駒センパイの射程にいつ入るかも分からないし。』

 

『おっと、ここで生駒隊長と南沢隊員が合流〜。…おっと、この動きは…?』

 

 

 

──

 

「旋空弧月…!!」

 

 

 

 

『斬撃警戒!!』

 

生駒の放った旋空は立っている倉庫や、貯水タンクを切断し、合流を目指していた柿崎に襲いかかる。

 

「っ…危ねぇ…!!」

 

ギリギリで柿崎は躱した。

 

「生駒が近くにいやがる。」

 

そう言って柿崎はバッグワームを羽織走り出した。

 

 

──

 

「なんや、当たらなかったわ。」

 

『なら離れますよ、イコさん。二宮さんに狙われたら一溜りもないっすから。』

 

「せやな…行くで、海。」

 

「了解っす!」

 

 

──

 

『開始早々の生駒旋空〜。柿崎隊長どうにか防いだ〜。』

 

『やっぱ長っ!』

 

緑川が声を上げる。

 

『そしてすぐさまその場所を後にする生駒隊長〜。』

 

『二宮さん、どこから狙ってくるか分からないもんね〜。』

 

──

 

『隊長、虎太郎と合流しました。すぐそっち向かいます。』

 

『分かった。こっちは生駒がいるみたいだがすぐに離れた。警戒しつつそっちに向かう。』

 

『分かりました。』

 

──

 

『二宮さん、今ちらっとですけど北の貯水タンク。柿崎隊の隊服が見えました。』

 

犬飼の通信が二宮に入る。

 

『俺も辻ちゃんも向かってるんでひゃみちゃんの合図で仕掛けられますよ。』

 

『…分かった。』

 

そう言って通信を切ると、トリオンキューブを生成。

 

「ハウンド。」

 

四角錐の形に分けると空に放った。

 

 

 

──

 

『!、清澄先輩!!』

 

『…ああ。見えてる。』

 

 

「バイパー。」

 

トリオンキューブを分けるとバイパーを空に放った。

 

 

──

 

『おっと、これはマップ北、二宮隊長のハウンドが綾瀬川隊員を襲う。綾瀬川隊員すぐさまバイパーで向かい撃つ。』

 

『撃ち合いじゃ流石に綾瀬川くん厳しいかな?相手が二宮さんだしね。』

 

『そして左右からは犬飼隊員と辻隊員も迫っているぞ〜。』

 

──

 

バイパーでどうにかハウンドを相殺したオレはレーダーに目をやるとこちらに迫る1つの反応が。

 

『隊長。二宮隊に狙われました。』

 

『っ!?分かった。すぐに向かう。』

 

『…いや、合流してからでいいです。それまでどうにかもたせます。』

 

『清澄先輩それは流石に…!相手は二宮隊ですよ?!』

 

『…時間稼ぐだけだ。二宮さんはまだ遠いし2人を捌くだけならなんとかなる。まぁ早めに来てくれると助かるけどな。』

 

『…分かった。任せるぞ、清澄。』

 

『…了解。』

 

 

 

通信を切ると降り注ぐ第2陣のハウンドの雨。フルガードで受けているとタンクの裏から、バッグワームを羽織ったスーツの攻撃手が現れる。

 

振り抜かれた弧月を上体をそらし避ける。

そして弧月を抜刀。

二宮隊の辻に斬りかかった。

 

「辻ちゃん!!」

 

その合図で辻が飛び退くとアステロイドの乱射がオレを襲った。

 

「お、綾瀬川くんじゃん。まあ高台とってる時点でそうだとは思ってたけどね。」

 

シールドで受けていると後ろから辻が弧月を抜刀。

旋空がオレに襲いかかる。

どうにか飛び退くと、辻にバイパーを放った。

 

二宮さんが来るまでの時間稼ぎだな。

ハウンドの雨は止んだし、2人とも距離を取りつつ戦っている。

まあそう思い通りにはさせない。

 

オレはそのままシールドを背中に張ったまま犬飼に背を向け辻に向かってかけ出す。

 

「!」

 

もちろんフルガードだ。

弧月なんて抜けない。

 

辻は一瞬目を見開くも無防備なオレに斬り掛かる。

 

 

だが止まったオレの視界で、それを避けるのは容易いことだった。

そのまま斜めに飛び退くと、膝で辻が握る弧月の柄の部分を蹴り上げ、弧月を蹴り飛ばす。

 

「っ?!」

 

そのまま辻の首を掴み体を反転、犬飼に向けて投げ飛ばす。

 

「おっと、危ない。」

 

辻を撃つ訳にも行かず犬飼のアステロイドは止んだ。

辻はすぐに弧月を抜くと臨戦態勢に入る。

 

──

 

『うお、綾瀬川隊員上手い。挟み撃ちの状況を打破した。』

 

『よくあのタイミングで辻ちゃんの弧月避けれるよね。回避能力はうちの隊長にも引けを取らないんじゃないかな。』

 

北添は綾瀬川の動きを見てそう称した。

 

──

 

「さっすがー。やっぱそう一筋縄じゃ行かないね、辻ちゃん。」

 

「…次は外しません。」

 

「残念だがお前の弧月はオレに当たることは無い。あんたの銃撃も。」

 

そう言ってオレは弧月を抜き、トリオンキューブを生成した。

 

「ヒュウ♪これはやばそうだね。でも、こっちもそろそろ来ちゃうんだな。」

 

犬飼がそう言うと犬飼の後ろから4発の弾が打ち上がった。

 

そしてボーダーNo.1射手のハウンドがオレに襲いかかった。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

犬飼澄晴→面白そう、警戒
辻新之助→警戒。無表情の印象仲間。
二宮匡貴→回避能力は評価。1対1は危険だな。
生駒達人→やばない?旋空仲間。笑わせたい。きよぽん。
水上敏志→頭も良さそう。寝顔イケメンやろ。きよぽん。
隠岐孝二→ノールック狙撃やばいわ。ネコ好き?きよぽん。
南沢海→ログ2万回見たっす!!ほんとっすよ!きよぽん。


犬飼澄晴←援護が上手そう。
辻新之助←スーツ剣士。
二宮匡貴←警戒。


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B級ランク戦ROUND4 VS二宮隊、生駒隊②

サボったお詫びに長めですw
ごめんちゃい(ノ≧ڡ≦)☆

多分タグにある言葉を追加します。
それは後書きにて。

本編どぞ。


『ここで柿崎隊、綾瀬川隊員以外の3人が合流〜。綾瀬川隊員を助けに行く流れか〜?』

 

『そうだよね。このままじゃ綾瀬川くんちょっと厳しいよ〜。』

 

──

 

『真登華、隠岐の警戒頼むぞ。』

 

『りょーかいっ。』

 

「さっき生駒が俺の近くにいた。警戒して行くぞ。」

 

「「了解です。」」

 

3人ともハンドガン、アサルトライフルを構えながら移動する。

 

「隠岐の射線にも常に気を配れ。あいつは確かグラスホッパーを入れてる。どこから撃ってきてもおかしくないぞ。」

 

「分かりました。」

 

『真登華、隠岐先輩が隠れてそうなところ一応マークつけておいて。』

 

『分かった。』

 

 

 

 

 

 

 

…キン…

 

何かを抜く音が響いた気がした。

 

 

『!、警戒!!生駒さんの反応が40m右手前に現れました!!』

 

「っ?!生駒旋空の範囲だ…やべえ…!」

 

そう言った時には凄まじい速度で飛んできた旋空が建物を斬り裂く。

 

「隊長!!」

 

巴が柿崎を突き飛ばす。

その瞬間、巴の右腕が宙を舞った。

照屋はギリギリのところで飛び退き、射程から外れる。

 

「っ…虎太郎!」

 

「問題ないです、右手だけで済みました!」

 

『みんな警戒して、生駒隊が近づいてるよ。3人いるから隠岐先輩以外がそっちに向かってる!!』

 

 

 

「アステ…ロイド…!!」

 

建物の影から勢いよく飛び出した水上が柿崎達目掛けて弾を放った。

 

「!、遅い…メテオラだ!シールドで受けるな!!」

 

「あら、バレとるやん。海!」

 

「りょーかいッス〜!!」

 

その下から南沢が現れて浮いた照屋に切り掛る。

 

 

 

 

ギンッ…!

 

それを守るように大きな盾を構えた柿崎が飛び出す。

 

 

──

 

『ここで生駒隊と柿崎隊が交戦〜。柿崎隊長が取り出したのはレイガスト…!』

 

『確かROUND3では入れてなかったはず。新戦術かな?』

 

──

 

「なんやザキ。レイガストなんか入れとったんか?」

 

生駒が弧月を構えながら柿崎に尋ねた。

 

「へっ…付け焼き刃だよ。だが文香と虎太郎は俺が死んでも守る。」

 

「好きやで…そういうの…旋空弧月…!!」

 

NO.6攻撃手の伸びる旋空が柿崎隊を襲った。

それを柿崎が前に出てレイガストで受ける。

 

「虎太郎!」

 

その合図で柿崎のレイガストの陰から巴がハウンドを放つ。

 

「なんや、うざい戦法やな…。」

 

生駒が呟きながらシールドで受ける。

その守りを崩すように水上がアステロイドを放つ。

巴がどうにかそれをシールドで防ぎ、照屋を守る陣形をとる。

 

「なんや、照屋ちゃん守っとるんかいな。」

 

『隠岐、狙撃出来そうか?』

 

『しんどいっすね〜。上手く射線切ってますわ。』

 

『りょーかい。俺らで崩すわ。行くで、海。』

 

『りょーかいッス。』

 

南沢はグラスホッパーの高速起動で柿崎隊の周りを飛び回る。

柿崎はそれに合わせていつでも守れるようにレイガストを構えた。

 

 

 

「…旋空弧月…!!」

 

空いた隙を狙って生駒旋空が飛んでくる。

 

「っ…!!」

 

柿崎は瞬時にレイガストを動かしそれを受ける。

 

「チャンス…!!」

 

その隙を逃すことなく南沢が斬り掛かる。

 

「虎太郎…!!」

 

どうにか弧月を抜き南沢の攻撃を受けた。

 

 

 

──

 

『おお〜!柿崎隊粘る〜!』

 

『でもこのままじゃ不味いよね。』

 

『そうそう。綾瀬川くん助けに行きたいのにこれじゃ先に綾瀬川くん落ちちゃうよ。隠岐くんがいい場所とったらこっちもいつまでもつか分かんないし。』

 

『そうだね〜。どうにか打破してくれる人がいたらね〜。』

 

そう言う国近の視線は柿崎のエースに向けられていた。

 

──

どうしよう…私がどうにかしなきゃ…。

 

照屋の頭の中はそれだけだった。

 

 

 

 

そんな時、清澄先輩がいる辺りから緊急脱出の光が上がる。

 

二宮隊の辻先輩だった。

清澄先輩が落としたんだ。

3対1の状況で。

 

私には到底できない。

 

 

…やっぱり柿崎のエースは清澄先輩にこそ向いてる。

 

私は静かに俯く。

 

 

そんな時だった。

柿崎からの内部通信が入る。

 

 

 

『文香…不甲斐無い隊長で悪い。…覚えてるか、お前が入隊してきてくれた時のこと。

 

 

 

 

…俺を支えてくれ、文香。』

 

「!」

 

『…大丈夫よ文香。私がサポートするわ。』

 

『そうッスよ。清澄先輩ほど頼りがいはないけど…俺が支えます、文香先輩!』

 

『うちのエースはお前だ、文香。好きに動け。サポートする。失敗したっていい。ROUND4は捨てるつもりだったんだ。』

 

そうだ。

元々柿崎隊長を支えたくて入隊したんだ。

 

清澄先輩にエースを譲ろうとした時の清澄先輩の目を思い出す。

 

酷く冷たい目だった。

まるで私に何も期待していないような。

 

ふざけるな。

勝手に見限るな。

 

いくら清澄先輩の方が相応しかろうと柿崎のエースと言うポジションは譲らない。

柿崎隊長を支えるのは私の仕事だ。

隊長の隣に立つのは…

 

 

 

…私だ。

 

 

 

 

 

 

「…分かりました…!」

 

そう言って私は腰に下げた弧月に手を伸ばした。

 

 

 

──

 

『ここで柿崎隊に動きがあったぞ〜。照屋隊員弧月抜刀〜。左手にはハンドガンを構えている〜。』

 

『ザ・万能手って感じの構えだよね〜。』

 

『さて、綾瀬川隊員がピンチの中どんな策を見せてくれるのか〜?』

 

──

 

『隊長、虎太郎、ガード任せます!』

 

『分かった!』

 

『任せてください!』

 

走り出した照屋を追うように柿崎達も走り出す。

 

「お、なんや、照屋ちゃんやる気やないか。…旋空弧月…!」

 

放たれた生駒旋空を柿崎が前に出てレイガストで受ける。

 

「スラスター、ON!!」

 

そして旋空の通った上の建物の影から南沢が飛び出すも南沢に向かって柿崎はスラスターで突撃した。

 

「おわわ!やばいやばい〜!!」

 

南沢はどうにか弧月で受けるとグラスホッパーで後ろに飛び退いた。

 

「アステロイド…!!」

 

水上の射撃。

照屋は何が来るかわからず視線を向ける。

 

『文香先輩!気にせず走ってください!何が来ても俺が止めますから!!』

 

虎太郎が前に出て、シールドを張る。

 

「ハウンドだ!!」

 

柿崎はそう叫びながら、照屋の上にシールドを張ってハウンドを防ぐ。

そのまま照屋は生駒に向かって行く。

 

「俺とやる気かいな。照屋ちゃん。」

 

生駒は弧月を構える。旋空の構えだ。

その瞬間、照屋は急停止、キューブのメテオラを地面に穿つ。

 

爆煙で視界が遮られる中、生駒旋空が通り抜ける。

 

 

「マリオ!当たったか?!」

 

『当たってへん!下や!!』

 

細井の通信を受けた生駒が視線を下げると、弧月を構えた照屋が立っていた。

 

 

 

 

「その動きはROUND2のきよぽんやな。」

 

生駒は弧月の軌道を見切り、足を守るように弧月を構える。

その通りに抜かれた弧月は生駒の弧月で簡単に防がれてしまった。

 

「研究せん訳ないやろ?今シーズンの台風の目を。終いやな。」

 

そう言った時、照屋は口元に笑顔をうかべる。

 

 

 

そして弧月を持つ生駒の腕が切り飛ばされる。

 

 

 

「!」

 

「隊長!!」

 

「イコさん!」

 

地面から現れたスコーピオンが足を守るために下げられた生駒の腕を切り飛ばしたのだ。

 

 

──

 

もぐら爪(モールクロー)だね。でもそんな長く伸ばせないから、いこまセンパイの足を狙って腕を下げさせたんだ。』

 

『なるほど〜、でもそれならもぐら爪で生駒隊長の足を削った方が良かったんじゃないの?』

 

『うーん、俺なら腕の方がいいかな〜。いこまセンパイ、足より手の方が怖いもん。』

 

『『確かに〜…。』』

 

──

 

直ぐに水上のアステロイドが襲うが、直ぐに巴が前に出て防がれる。

 

そして、そのまま照屋の弧月が生駒に振り下ろされる…

 

 

 

…ことは無かった。

 

 

振り下ろそうとした右腕は吹き飛ばされる。

生駒の後ろから放たれたライトニングによって。

 

「ギリギリセーフやな〜。」

 

そこにはライトニングを構えた隠岐がこちらに銃口を向けていた。

 

「隠岐!落とさんかい!」

 

「助けられといて酷くないッスか…?それに落とそうとしたらイコさん巻き込んじゃいますて。」

 

 

「っ?!」

 

照屋は直ぐに飛び退く。

そしてそれを庇うように柿崎が前に躍り出た。

 

 

絶対絶命のピンチ。

 

 

 

 

 

そんな時、向かいの空に、無数の弾が打ち上がった。

 

 

 

 

 

 

…時は10分ほど遡る

 

 

──

 

降り注ぐハウンドをシールドで受けつつ下がる。

それに合わせて犬飼のアステロイド乱射とそれを守るように辻が弧月を構えて立っている。

流石にちょっとしんどいな。

 

「耐えるね、綾瀬川くん。でもそろそろきついんじゃない?」

 

「そう思うならやめてくださいよ。」

 

降り注ぐ弾をシールドで受け、犬飼の弾は上手く体を動かし避ける。

 

──

 

『二宮さん、いくらなんでも避けるの上手すぎません?』

 

犬飼の通信が二宮に入る。

 

『…合成弾で押し切る。辻、隙を作れ。犬飼は辻の援護だ。氷見、隠岐の射線に気を配っておけ。』

 

『『『了解。』』』

 

犬飼と辻、二宮隊オペレーター、氷見(ひやみ) 亜季(あき)は短く答えると動き始める。

 

──

 

弾幕が止んだ?

いや…合成弾か。

辻がオレに斬りかかってくる。

ようやく隙らしい隙ができた。

弧月を受け太刀する。

それに合わせてサイドに動いた犬飼のアステロイド。

流石はB級1位。

連携も上手い。

シールドで受けるとオレは辻に足払いをかける。

 

「っ?!」

 

どうにか体制を立て直す辻を犬飼の射線に入れるように動く。

 

「やっば、辻ちゃん。」

 

「…っ…問題ありません。」

 

その隙に今日のためにセットしておいたトリガーを起動。

 

 

2人の目の前に青色の板が現れる。

 

「!、グラスホッパー?!辻ちゃん!!」

 

俺はそれをバク転の要領で踏むと、一気に加速。そのまま建物を障害物にして貯水タンクのある建物から落下する。

辻が斬りかかるも、紙一重で躱す。

 

 

 

「逃がすか。…サラマンダー。」

 

出来上がった合成弾が二宮から放たれる。

 

オレはすぐさま倒れ込んだ先にグラスホッパーを展開。

一気に飛び上がる。

 

そのまま空中にサラマンダーを引きつけると、護るようにグラスホッパーをサラマンダーの予測軌道上に複数展開。

 

グラスホッパーに当たった弾はグラスホッパーと共に消える。

 

 

「!」

 

二宮はこの試合で初めて驚愕を顔にうかべた。

 

 

──

 

『なんだこれは〜!グラスホッパーに当たった二宮隊長のサラマンダーが消えた?』

 

『あ、これ俺あやせセンパイとのランク戦でやられたよ。なんでもグラスホッパーと弾トリガーがぶつかると相殺?されるらしいよ。』

 

『あ!それ蔵内くんに聞いたことあるかも!』

 

『へ〜グラスホッパーを盾にしてるって訳だね〜。』

 

──

 

放たれたサラマンダーを打ち消すと、オレはイーグレットを二宮に向け放った。

 

「二宮さん!」

 

犬飼がシールドで二宮を庇う。

 

「ちっ…。」

 

流石カバーが上手い。

オレは弧月を抜くとグラスホッパーで加速し辻に斬りかかった。

 

少し離れた場所では銃声や、建物が崩れる音が聞こえる。

 

『清澄先輩、生駒隊と戦闘になりました。』

 

真登華の通信が入る。

 

『分かった。場合によっちゃ連れてくから狙撃手の射線だけ気を配って後は隊長達を援護してやってくれ。どうにか離脱して向かう。』

 

『了解です。』

 

 

さてと…。

 

辻と鍔迫り合いをしながらオレはグラスホッパーで飛び退く。

 

「逃がさないよ。」

 

すぐさま犬飼のアステロイドがオレを襲う。

後ろからは二宮のハウンドも。

サイドエフェクトをフル活用して犬飼のアステロイドを避ける。

そのまま二宮のハウンドを引きつけると、両手でグラスホッパーを2個重ねて展開。

2個分のグラスホッパーでフル加速。

二宮隊と距離をとる。

 

「それで逃げたつもりか?」

 

が、二宮は距離を取ったオレを見るや否やすぐさまフルアタックに切り替える。

無数のハウンドがオレに降り注ぐ。

シールドとグラスホッパーを利用し、引き付けて躱すか、シールドで受ける。

その隙に犬飼と辻もオレを追ってやってくる。

 

「本当に避けるのが上手いね。君何者?」

 

犬飼はそう尋ねながらオレにアステロイドを乱射。

辻は弧月を構える。

旋空の構えだ。

 

オレはシールドを外し、グラスホッパー2個に切り替える。

 

「!、二宮さん!」

 

「分かっている。…逃がさない。」

 

 

 

 

 

…ここだ。

 

サイドエフェクトで演算された軌道。

見えるのは旋空、アステロイド、ハウンドの3つの軌道。

 

 

 

…それらを抜けることの出来る本当に人一人分の隙。

 

相手は上手くこのグラスホッパーを逃げに使うと思ってくれたらしい。

グラスホッパーを2個重ねて展開。

そのまま急加速して、その隙間を通り抜ける。

 

 

「!、辻ちゃん!!」

 

「!」

 

犬飼の声は虚しく、グラスホッパーで加速したオレは逆手になってしまったが、どうにか弧月を抜刀。

 

辻の首を切り落とした。

 

──

 

『上手い!綾瀬川隊員、攻撃の隙間を縫ってグラスホッパーで急接近、辻隊員が緊急脱出〜。圧倒的不利な状況で1点もぎ取った〜。』

 

『グラスホッパーを両手で使って重ねてスピードをあげる…いいね、俺も真似てみよっと。』

 

『確かにスコーピオンと相性良さそうだね〜。スコーピオンはどこからでも出せるし。』

 

『て言うか本当にどういう反射神経してるんだろうね。あんな一瞬の隙、未来が見えてなきゃ抜けられないよ。』

 

──

 

「犬飼!綾瀬川を逃がすな!」

 

「了解…!!」

 

犬飼はアステロイドをオレの逃げ道を塞ぐように乱射する。

 

「本当に、君には何にか未来でも見えてるのかな?」

 

「さあ?まぁ…古参なんで。オレはそろそろお暇しますよ。あんたの所の攻撃手の仇は生駒隊にでもぶつけて取ってください。」

 

そのままグラスホッパーを使い上に飛ぶ。

それを狙う二宮のハウンドも飛んでくるが、トリガーを2つ使い、グラスホッパーを重ね、スピードでそれを躱す。

 

 

 

このハウンドも生駒隊にどうにかしてもらおう。

 

──

 

『!、綾瀬川が接近中!』

 

生駒隊の通信にオペレーター、細井(ほそい) 真織(まおり)の通信が入る。

 

『じゃあマリオ、一緒に連れてる弾トリガーもきよぽんのかいな。』

 

『!、射撃警戒しいや!』

 

『隠岐!!』

 

その言葉に隠岐はグラスホッパーで距離を取り、近くの建物に着地、すぐさまライトニングを放つ。

綾瀬川は弾を引き付け、グラスホッパーを展開、上に飛び退くと隠岐のライトニング狙撃を躱す。

ハウンドは地面に着弾。二宮の豊富なトリオンから放たれたハウンドは地面を抉った。

そしてそのまま空中で隠岐にスコープ無しでイーグレットを向け放った。

 

「やばいわ…!!」

 

隠岐はすぐさまグラスホッパーで躱した。

 

そしてそのまま綾瀬川は柿崎達の前に着地した。

 

「…お待たせしました。」

 

「清澄…!」

 

「清澄先輩…!」

 

巴は右腕を失っている。

照屋もだ。

 

 

「…ごめんなさい…清澄先輩。私…。」

 

「…何終わった気でいるんだ?

 

 

 

 

…まだ試合は終わってないだろ。」

 

 

 

そう言って現れた柿崎隊2人目のエースは無機質な瞳を生駒隊に向け、弧月とトリオンキューブを構えた。

 




トリガーセット

綾瀬川清澄

メイン:弧月、イーグレット、グラスホッパー、シールド
サブ:バイパー、グラスホッパー、バックワーム、シールド


照屋文香

メイン:弧月、旋空、アステロイド(ハンドガン)、シールド
サブ:スコーピオン、メテオラ、バックワーム、シールド


柿崎国治

メイン:レイガスト、スラスター、アステロイド(アサルトライフル)、シールド
サブ:レイガスト、メテオラ(アサルトライフル)、シールド、バックワーム



追加するタグは原作キャラ強化です。

照屋ちゃんのメテオラ+二刀流(片方スコーピオン)は小南の影響ガッツリ受けてます。
綾瀬川のグラスホッパーバリアは原作ROUND8のオビニャンと戦ってる空閑を解説している蔵内の説明を聞いて思いつきました。
これガードに使えるんじゃね?って。
もし矛盾点等あれば教えてくれると助かります。
理由を添えていただけると助かります。




…ザキさんのレイガスト構想中にコメ欄で予想的中させてる人がいてびっくりです。
変な汗出た…w
ですがそのまま使います。
よく分かりましたねw


感想、評価等よろしくお願いします!




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B級ランク戦ROUND4 VS二宮隊、生駒隊③

遅くなりすいません。



『おーっと〜!ここで柿崎隊と生駒隊の戦闘に二宮隊と戦っていた綾瀬川隊員が合流〜。』

 

『いこまセンパイは右手やられてるしここであやせセンパイが加わると生駒隊はしんどいかもね。』

 

『あれ?でも綾瀬川くんがここに来たってことは…』

 

『『…あ。』』

 

 

 

──

 

『きよぽんバケモンっすわ。あの状況でライトニング避けれます?』

 

隠岐はグラスホッパーを使って距離をとる。

 

『ごちゃごちゃ言ってないで早く高台とりーや。このままじゃウチが不利やで。』

 

隠岐の悪態に細井が返した。

 

『ハイハイ。もう着きますわ。イコさ…

 

 

 

 

 

…嘘やん。』

 

そんな隠岐の視線に飛び込んだのはこちらに放たれる弾の雨。

隠岐は急いでグラスホッパーを展開し、離脱を図る。

しかし降り注ぐ弾に次第にガードを優先し、動けなくなる。

 

「ごめんね、隠岐くん。ウチは1人やられちゃったから…1点貰ってくよ。」

 

「ホンマ勘弁してくださいよ…。」

 

そのまま、隠岐は犬飼のアステロイドで緊急脱出した。

 

 

──

 

『二宮隊からは逃げられず〜、ここで隠岐隊員が緊急脱出〜。』

 

『ていうか普通受けきれないよね。二宮さんと犬飼くんの連携なんて。』

 

『そーだよね〜…。』

 

そう言って国近は生駒隊の前で弧月を構える綾瀬川に目を向けた。

 

──

 

『隠岐が落ちたで。』

 

細井からの通信が生駒隊に入る。

 

『すんません。ありゃ無理ですわ。』

 

作戦室に戻った隠岐は謝る。

 

『てかきよぽんあの二人から逃げてきたん?辻ちゃん落として?ヤバない?』

 

『ヤバいっす〜!』

 

『戦闘中やろ。仕掛けて来ますよ、きよぽん。』

 

 

綾瀬川はトリオンキューブを分割するとバイパーを放つ。

 

『イコさん、引きますよ。さすがにしんどいでしょ。』

 

「…せやな。」

 

生駒はシールドを構えて飛び退く。

 

「ホンマは戦いたかったわ。今度は右手がある時にやろな、きよぽん。」

 

「…きよぽん…?」

 

首を傾げながらも綾瀬川は逃がすまいとバイパーで追う。

しかし陽動の為に放たれた水上のアステロイドに阻まれる。

 

「直ぐに追いましょう!」

 

照屋は片手で弧月を構えた。

 

「いや、2手に分かれよう。」

 

照屋の意見に柿崎はそう返した。

 

「二宮隊が消えた。下手すりゃ二宮さんの弾幕で全滅だ。清澄は生駒隊を追ってくれ。俺たちはバッグワームで回り込む。」

 

「「「了解。」」」

 

「二宮隊がどこにいるか分からねえ。気をつけて動けよ。」

 

『真登華、清澄のサポート頼むぞ。』

 

『りょーかい。』

 

 

──

 

『清澄先輩、生駒さんは手負いです。』

 

真登華の通信が入る。

 

『…了解。文香か?』

 

『そうです。もぐら爪使ってて…本当に凄かったんですよ?』

 

真登華が興奮気味に言った。

 

『…そうか。』

 

『…真登華、こっちにも聞こえてる…。』

 

照屋の恥ずかしそうな通信が入った。

 

『あ、ごめんごめん。』

 

 

メテオラでの陽動から弧月を囮にしたスコーピオン奇襲…ってところか。

小南に預けて正解だったな。

大方予想通りの方向に進んだ。

 

予想外なのはその成長速度。

 

これは化けるかもな。

 

 

そう考えているとレーダーに動きが。

誰かがレーダーに入った。

 

『生駒先輩がレーダーに移った。他の2人もバッグワームつけて一緒にいるかも。』

 

オレは足を止める。

 

いや、この場合は…

 

オレは隠れられそうな建物の陰に視線を移す。

そこにはバッグワームを羽織り、弧月を構えた南沢が。

 

「ちょ…バレてます〜!!」

 

南沢の奇襲を弧月で受ける。

鍔迫り合いになり、オレは南沢の腹を蹴飛ばす。

 

後ろに飛ばされるも、グラスホッパーで直ぐに体制を立て直す。

 

「ダメっすわ、イコさん。バレました。」

 

そのすぐ後ろの建物から水上が顔を出す。

話している相手は生駒なのだろう。

 

こちらにアステロイドを放って来た。

 

 

…いや、メテオラか。

 

シールドを解き、オレは飛び退く。

 

土埃をかき分けて、南沢が飛び込んできた。

 

「気いつけや海。辻ちゃん倒した相手やで。」

 

「分かってますって〜!」

 

本当に分かっているのか、舌を出しながら楽しそうに俺に斬りかかってくる。

オレは弧月を交えつつ、それを避ける。

そして飛び退くと旋空の構え。

 

「旋空弧月。」

 

「!、やば…!!」

 

南沢は直ぐに飛び退く。

しかしオレが放つのは隠れて作っておいたバイパー。

オレの後ろにあるトリオンキューブが輝き、オレを避けるようにそれが放たれる。

 

「ちょ、マジでやばい!」

 

南沢は直ぐにシールドを張るも、バイパーは弾道を変えてシールドを躱すように曲がる。

 

「なんや水上。お前の嘘つき真似られとるやん。」

 

しかし現れた生駒により張られたシールドにそれは防がれる。

 

「つーかヤバない?3対1でも負けそうやん。」

 

「…いや、さすがにしんどいでしょ…」

 

そう言ってオレはグラスホッパーを展開。

 

 

 

 

「…もう1度二宮隊とやるのはごめんなんで。」

 

 

 

 

「「「!」」」

 

 

生駒隊の後ろの貯水タンクが破壊される。

 

「おいおい、嘘やん。」

 

水上がポツリと零した。

 

その奥には、両手をポケットに入れ、トリオンキューブを分割する二宮が立っていた。

その隣には犬飼が二宮を守るように立っている。

 

オレはグラスホッパーで柿崎達の元に向かいつつ、イーグレットを二宮に向け放つ。

 

しかし犬飼の集中シールドに防がる。

 

「っと…油断も隙もないね、綾瀬川くんは。」

 

「放っておけ。今は生駒隊だ。点を取るぞ。」

 

「了解。」

 

 

二宮はハウンドを放つ。

 

「ちょ、きよぽん逃げる気かいな!」

 

「最悪やな…。」

 

 

「覚えときやきよぽん!絶対その変わらん面笑わせたるからな!!」

 

生駒のよく分からないセリフを背にオレは戦線を離脱した。

 

 

 

 

──

 

『うわ!綾瀬川くん上手い!っていうかえげつない!手負いの生駒隊に二宮隊をぶつけちゃったよ。』

 

『本人はさっさと離脱しちゃうしね〜。』

 

『生駒さんは旋空なしでも強いけど利き手失ってちゃさすがに無理だよね…。』

 

──

 

『二宮隊を生駒隊にぶつけました。今からそっち向かいます。』

 

『清澄先輩えげつな〜。絶対生駒隊清澄先輩の事許しませんよ。』

 

『知るか。…て言うかきよぽんってなんだ?』

 

『あだ名でしょ。いいじゃないですか。私もきよぽん先輩って呼びましょうか?』

 

『絶対にやめろ。』

 

すると離脱した戦場から緊急脱出の光が上がる。

 

『今のは誰だ?』

 

『生駒隊の水上先輩だね。二宮さんの点になったよ。』

 

柿崎の質問に真登華が返した。

そのタイミングでオレは3人と合流する。

 

「決着が付いたタイミングを見計らって俺達も行くぞ。」

 

「了解。」

 

そう言ってオレはバッグワームを羽織った。

 

さらに緊急脱出の光が上がる。

 

『…不味いよ、少しペースが早い…今落ちたのが海くんで生駒さんだけになっちゃった。』

 

そういった直後さらに光が2つ上がる。

 

『生駒さんと犬飼先輩が相打ちになった。急がないと…!』

 

オレはグラスホッパーで急加速する。

 

 

 

 

しかし、もう1つの光が空に上がってしまった。

 

 

 

 

 

『二宮隊長が自発的に緊急脱出〜。そしてここで試合終了〜。4対3対1B級ランクROUND4は二宮隊の勝利と言う結果になった〜。』

 

 

 

 

二宮隊

 

 

二宮 3P

犬飼 1P

辻 0P

 

合計 4P

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 1P

生存点+2P

 

合計 3P

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 0P

南沢 0P

 

合計 1P

 

 

──

 

「…すいません。間に合いませんでした。」

 

「…まあしょうがないさ。新しいスタイルも試せたし問題ないだろ。…皆よくやってくれた。戻るぞ。」

 

「「「了解。」」」

 

 

 

──

 

『二宮さんの勝ち逃げだね〜。水上くんが落ちる時二宮さんの片腕奪って無かったら二宮さんも柿崎隊とやり合うつもりだったかもね。』

 

実況の国近がそう説明する。

 

『さてさて、今回のランク戦2人はどう見るかね〜?』

 

『うーん、ほとんど1人で生駒隊を全滅させちゃう二宮さんは相変わらずヤバかったね〜。』

 

『生駒隊もいつも通り動けてたと思うよ。ただ後手に回っちゃってた感はあるかな〜。特にイコさんが利き手失っちゃったのが大きかったかな〜。』

 

北添は口をとがらせて説明する。

 

『あ!それで思い出したけど照屋センパイの新しい戦い方が面白かったね!柿崎センパイもレイガスト使ってたし!』

 

『確かにそーだね。今シーズン初めての負けだったけどこのスタイルを確立させれば柿崎隊はもっと強くなりそうだよね。…相変わらず綾瀬川くんもやばかったし。二宮隊3人と戦って生き残るなんて…うちの隊長でも無理なんじゃない?』

 

『…確かに。太刀川さんでも無理かも…。っと、話が逸れちゃったね。じゃあ今回ランク戦は柿崎隊にとって良い学びの場になったかもね。さて!今回のランク戦の結果を受けて順位が変動〜。柿崎隊は5位に躍り出ました。そして次の相手は王子隊と香取隊だね。』

 

『お、香取隊と柿崎隊が当たるのは久々だね。今は鈴鳴に抜かれちゃったけど元々は上位で柿崎隊が上位入りして押し出される形で中位になっちゃったから勝ちたいとこだよね。』

 

北添はそう話した。

 

『そうだね〜。さて、じゃあこの辺で終わろっか。次はROUND5で会いましよ〜う。さよーならー。』

 




ROUND4終了後
1位 二宮隊 28P
2位 影浦隊 25P
3位 生駒隊 21P
4位 弓場隊 21P
5位 柿崎隊 20P
6位 王子隊 19P
7位 東隊 19P
8位 鈴鳴第一 18P
9位 香取隊 17P
10位 荒船隊 15P
11位 漆間隊 14P
12位 那須隊 14P
13位 諏訪隊 13P


各キャラからの印象&各キャラへの印象

生駒達人→許さん!笑わせなきゃ気がすまんわ!こっちみいや!…生駒達人、歌います!
水上敏志→頭ええな。よく見たらイケメンやん。↑なんでやねん。
隠岐孝二→ヤバいな。きよぽんやばいな。今度ノールック狙撃教えてもらわな気がすまんわ。
南沢海→ヤバいっす…!今回のランク戦のログ2万回見るっす!!
二宮匡貴→戦闘能力の高さを認める。頭の良さも。
犬飼澄晴→興味。予想以上にすごい。
辻新之助→強い。


生駒達人←…きよぽん?
水上敏志←嘘つきブロッコリー先輩。
隠岐孝二←グラスホッパースナイパー。バイザー俺もつけようかな。
南沢海←元気。いい子そう。
二宮匡貴←さすがNO.1射手。強い。
犬飼澄晴←仲良くなれそう。
辻新之助←太刀筋がいい。話しやすそう。


ちょっと雑な感じに終わりましたがROUND5はこれで終わりです。
あの二宮が勝ち逃げする訳ない!って思う方もいると思いますが私は普通に二宮はすると思ってます。
4点も取って片腕失ってるんで。


感想、評価等よろしくお願いします。


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ROUND4を終えて

遅くなりすいません。
投稿致します。


柿崎隊作戦室

 

「皆今日はよくやってくれた。初めての黒星だったが…それ以上のものを身につけられたと思う。」

 

ランク戦の総評を聞き終えた柿崎はそう切り出した。

 

「ROUND5までは時間がある。それまでに俺たちのスタイルを確立させるぞ。」

 

「はい!」

 

「あ〜、でもしばらくは厳しいかもしれませんね…。」

 

真登華は歯切れ悪く言った。

 

「…確かに…。」

 

虎太郎も賛同し文香も頷いている。

 

「?、どうしてだ?明日からまたここに集まって作戦会議や訓練をすればいいだろ?」

 

柿崎は首を傾げる。

 

「…いや、ザキさんは大学生だからまだ休みだろうけど…」

 

「?…ああ!すまん!もうそんな時期か…!」

 

 

 

──

 

「え〜…

 

 

…えっと…綾瀬川清澄です。

 

 

え〜…

 

 

…よろしくお願いします。

 

 

…得意なことは特にありませんが…

 

 

え〜…

 

 

…仲良くなれるよう頑張ります。」

 

 

 

拙いオレの自己紹介。

まばらながらも拍手をしてくれた。

 

後ろの席の方では米屋と出水が笑いながら動画を撮っていた。

…絶対に後で殴る。

 

ROUND4を終えた翌日。

オレにとって三門市立第一高等学校への編入の日だった。

 

先生に促され、オレは1番後ろの窓側の席に座る。

前には出水、隣には米屋がいた。

 

「よう、まさかマジで同じクラスになるとは思わなかったぜ。」

 

「オレが1番驚いてる。動画消しといてくれよ。」

 

「やだね〜。17歳組のグループチャットに流してやる。」

 

「…もう好きにしてくれ…。」

 

「て言うか自己紹介地味すぎだろ。」

 

「ここ何日かはランク戦のことで頭がいっぱいで考えてなかったんだよ。」

 

 

 

「おい後ろ!ホームルーム始めるぞ!」

 

先生からの叱責で3人は急いで前を向いた。

 

 

 

 

「ねぇねぇ!綾瀬川くんもボーダー隊員なの?!」

 

「米屋くん達と仲良さそうだよね!」

 

「えっと…ああ…まあ…。」

 

ホームルーム後オレは一気にクラスメイトに囲まれ質問攻めに合う。

 

「三門市来る前はどこにいたの?」

 

「…国外に。」

 

出水を一瞥してそう答える。

2人は相変わらず楽しそうに動画を撮っていた。

 

 

 

 

「別のクラスには秀次もいるぜ。1個うえにはカゲさんや鋼さんもいる。」

 

クラスメイトの質問攻めをどうにか巻いたあと、米屋にそう言われた。

 

「…随分とこの学校に偏ってるんだな。」

 

「ボーダーの提携校なんだから当然っちゃ同然だろ。」

 

「…なるほど。」

 

すると17歳組のグループチャットを見た、他のボーダー隊員が2-Bの教室に集まってくる。

やってきたのは影浦隊のオペレーターの仁礼、那須隊の熊谷、そして見たことの無い男子生徒2人だった。

 

「お、まじで綾瀬川いるじゃねーか。」

 

仁礼はズカズカと教室に入り、こちらによってきた。

 

「よ、私は仁礼光。この前綾瀬川にやられた影浦隊のオペレーターやってるからよろしくな!」

 

「…どうも。」

 

「綾瀬川はB組かぁ…うちのクラスはあんまり綾瀬川の知り合いいないから良かったわね。」

 

熊谷がそう言った。

 

「…まあ。」

 

それに続いて2人の男子生徒が近付いてくる。

 

「よう、俺は香取隊の若村(わかむら) 麓郎(ろくろう)だ。よろしく頼むぜ、綾瀬川。」

 

そう言って若村と名乗った男の手を取り握手をする。

 

「よろしく。」

 

「僕は三浦(みうら) 雄太(ゆうた)。ろっくんと同じ香取隊だよ。よろしくね、綾瀬川くん。」

 

「…ああ、よろしく。」

 

「この学校で分からないことがあったらなんでも聞いてね。」

 

「ああ、助かる。…三輪はどこのクラスなんだ?」

 

「それなら僕と同じ2-Dだけど…。」

 

「私とも一緒だぞ?」

 

三浦が片手を上げて答えた。

仁礼もそれに続けて答える。

 

「そうか。ありがとう。」

 

 

忘れ物しても困らなそうだな。

 

 

──

二学期初日であるため学校は午前中で終わりとなる。

 

「綾瀬川は今日基地に行くのか?」

 

「そのつもりだ。今回は狙撃手の訓練に参加しようと思ってる。」

 

「お、珍しいな。完璧万能手目指す気になったのか?」

 

「そう言う訳じゃないが…柿崎さんも文香も虎太郎も最近ずっと訓練ばっかで…オレも負けてられないだろ。」

 

「なるほど。そのまま行くのか?」

 

米屋が尋ねる。

 

「まあどっかで腹ごしらえしてから行くつもりだが…。」

 

「お、じゃあ秀次も誘ってみんなで飯食ってから行こーぜ。」

 

「いいなそれ。んじゃ今日はA級1位の射手様が奢ってやるよ。」

 

そう言って出水は財布をヒラヒラと見せつけた。

 

「マジで?俺今月金欠だから助かるわ!」

 

「てめぇは自分で払えよ槍バカ。」

 

「んだと、弾バカ。」

 

「「ああ?!やんのか?!」」

 

 

 

──

 

そのまま、学校の近くの定食屋で三輪も交えて昼食を取った後、オレは本部基地の狙撃手用の訓練室に顔を出していた。

 

「綾瀬川?お前がここに顔出すなんて珍しいな。」

 

そう言って俺に話しかけてきたのは三輪隊の狙撃手、奈良坂(ならさか) (とおる)

三輪繋がりで知り合った仲だった。

 

「まあたまには。イーグレットもたまには練習しないと最近は防がれてばっかだからな。」

 

「いや、お前のは普通の狙撃とは違うだろ…。」

 

そう話しているとこちらに近付いてくる2人の男が。

 

「お、噂の綾瀬川じゃねーの。俺は当真(とうま) (いさみ)よろしくな。」

 

リーゼントのような髪型の男は当真と名乗った。

 

「よろしくお願いします。…確か絵馬…だったよな。」

 

そしてもう1人、影浦隊の絵馬ユズルに話しかけた。

 

「…どうも。」

 

「よろしく頼む。」

 

「あ!綾瀬川先輩だあ〜!!」

 

そう言って俺に駆け寄ってきたのは那須隊の狙撃手、日浦茜。

ROUND2以降やたらと俺を見ると目を輝かせて近付いてくる。

 

「今日は狙撃訓練参加するんですね!」

 

「…まあな。」

 

「綾瀬川先輩って万能手じゃないの?なんで狙撃訓練なんかするの?」

 

絵馬がオレに尋ねてきた。

 

「え〜!?絵馬くんログ見てないの?!」

 

「ムービーはあんまり見てない。」

 

「まあROUND3じゃイーグレット使ってなかったもんな、綾瀬川。」

 

当真はさらに続ける。

 

「まあ今日の訓練で分かるだろうぜ。」

 

「?」

 

 

 

──

 

今日の訓練の内容は、レーダーサーチ訓練。

レーダーに表示された的を的確に撃ち、撃ち抜くと次の的が表示されると言うもの。

制限時間内にどれだけの的を撃ち抜けるかで成績が決まる。

 

 

訓練室は俺に向ける奇異な目で溢れていた。

 

 

「すっごーい!綾瀬川先輩ダントツで1番じゃないですか?!」

 

「…俺の場合スコープは覗かないからな。その分撃つのは早くなる。」

 

「まずそれがおかしいんやけどね。」

 

そう言って俺の元によってきたのは生駒隊狙撃手、隠岐孝二だった。

 

「…スコープ無しにあの距離狙えないやろ。どうなっとるん?コツとかあったら教えて欲しいんやけど。」

 

隠岐はオレに尋ねる。

 

「別に構わないが…言っても真似はできないぞ。」

 

「…サイドエフェクト?」

 

絵馬が尋ねた。

 

「…まあな。」

 

「ほ〜、きよぽんサイドエフェクト持ちかいな。」

 

「一応。て言うかその呼び方やめてくれ…。」

 

「考えたイコさんにゆーてや。俺は可愛くてええと思うんやけどな〜。あ、それで思い出したんやけどイコさんがきよぽんの事探しとったで。」

 

隠岐は思い出したように言った。

 

「嫌な予感しかしないんだが…。」

 

 

 

 

 

──

 

「見つけたで、きよぽん。」

 

ランク戦フロアで緑川と休憩していると、ゴーグルをかけた、NO.6攻撃手、生駒達人が声をかけてきた。

 

「あ、いこまセンパイ。」

 

「…どうも。」

 

「…どうも…やない!きよぽんにどうしても言わなあかん事があんねん!」

 

「?、なんです?」

 

「耳の穴かっぽじってよーく聞いてや。小さい頃、夜中トイレ行く時とか1人だと怖かったやん?」

 

何の話かは分からないが、生駒は続ける。

 

「そんで俺はじいちゃんによくついてきて貰っとってん。」

 

「…はあ。」

 

「そんでよく、トイレの前で待っとってくれとったんやけど、ドア閉まってるからほんとに待ってくれとるか分からんやん?」

 

「…まあ確かに。…何の話ですか?」

 

「いいから聞きや。…そんでじいちゃんいる〜?って聞きよんけど、そしたらじいちゃんはおるで。って返してくれるんやけど、2回目くらいからちょっと声が違う気がしたんや。」

 

「はあ…。」

 

「そんで怖くなってちょっとドア開けて覗いてみるんやけど…」

 

「はあ…。」

 

「そしたらそこにおんねん。」

 

「…もしかして怨念が…とかいう気ですか?」

 

 

 

 

 

 

「…いや、じいちゃんが。」

 

「じいちゃんかいな!」

 

後ろから現れた、生駒隊の水上が生駒にツッコミを入れる。

 

「まだ続きがあんねん。そんで安心してトイレ続けるんやけど…ふと気になったんや。今の声誰?って。そう思ったら急に背筋が凍るでそして恐る恐る後ろを見たらそこにおんねん。

 

 

 

 

…怨念が。」

 

「結局そのオチかい。」

 

 

「…怨念がおんねん…!!」

 

「何回ゆーてもきよぽん笑ろてませんよ。イコさん。」

 

「あら?おかしいな。自信作やったのに…

 

 

 

 

 

 

…怨念がおんn

 

 

 

──

 

「ま、それは置いといてや。俺とランク戦やらん?」

 

「…申し訳ないですけどこの後柿崎隊のみんなとご飯行くんですよ。」

 

「そっか、残念やなぁ…。じゃ、また暇な時旋空対決しよーや。」

 

「…分かりました。でもオレの旋空じゃ。生駒さんの旋空には敵わないと思いますけど。オレはあんなに伸ばせないんで。」

 

「そ、そか?」

 

「ええ。旋空以外にも剣術の高さは尊敬しますよ。」

 

「ちょ、褒めてもなんもでーへんよ?男に褒められても嬉しくないで?

 

 

 

…今度うちの隊でタコパするんやけどきよぽんも来る?」

 

「めちゃくちゃ喜んでますやん。」

 

 

「考えときます。それじゃ、失礼します。駿もまたな。」

 

「うん、またね、あやせセンパイ!」

 

 

──

 

その後、柿崎隊のメンバーと合流し、焼肉店に来ていた。

 

 

 

…のだが。

 

 

「あれ?綾瀬川くんじゃん。柿崎隊揃って食事〜?いいね、席隣にしてもらおーよ。良いですよね?二宮さん。」

 

「…ふん、好きにしろ。」

 

 

 

NO.1射手はそう言って隣の席に着いた。




各キャラへの印象&各キャラからの印象

出水公平→クラスメイト。すげえ奴。
米屋陽介→クラスメイト。席近くなれて良かったぜ。
仁礼光→大人しそうだけど割とイケメン。
若村麓郎→愛想はないけど良い奴そう。
三浦雄太→学校で分からないことあったら聞いてね。
奈良坂透→三輪繋がりの友人。レーダーサーチ訓練は絶対勝てない。
当真勇→興味。
絵馬ユズル→狙撃手でもやって行けそう。凄い。
日浦茜→やっぱりカッコイイ!!
隠岐孝二→話しやすくていい人。バイザー似合うと思うで。
生駒達人→笑へんやんきよぽん。褒め上手やな。…怨念がおんn
緑川駿→強くていい人。最近名前で呼んでくれて嬉しい。


出水公平←クラスメイト。良い奴。弾バカ。
米屋陽介←クラスメイト。面白い奴。槍バカ。
仁礼光←口は悪いけどいい人そう。
若村麓郎←眼鏡。仲良くなれそう。
三浦雄太←苦労人そう。優しい。
奈良坂透←三輪繋がりの友人。話しやすい。
当真勇←リーゼント。狙撃手1位すげえ。
絵馬ユズル←凄い才能。話しやすくていい子。
日浦茜←目を輝かせないでくれ…。礼儀正しくていい子。
隠岐孝二←バイザー似合う?マジ?買お。
生駒達人←面白い。タコパって何?
緑川駿←弟みたいに可愛がってる。名前呼びに変えた。



日常パート後1、2話ほどやる予定。
そのうちBBF風の人物紹介出したいなとか思ってます。

感想、評価等よろしくお願いします!


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無機質なボーダー隊員の日常①

少し長めに書きました。
アンケートを見た感じ長めに書いて欲しいって言う意見もあったのでたまに長めに書く時があるかも?

ROUND4が終わり丁度真ん中なので少し日常パートが続きます。
ランク戦を楽しみにしてくださっている方しばしお待ちを。

それでは本編どぞー。


「えっと…カルビ3つに牛タン塩2つ…飲み物は?」

 

「オレは烏龍茶で。」

 

「私も烏龍茶で。」

 

「じゃあ俺はオレンジジュースがいいです。」

 

「私も〜。」

 

「じゃあ烏龍茶3つとオレンジジュース2つで。」

 

「かしこまりました。」

 

丁寧にお辞儀をして店員は厨房に去っていった。

 

 

「いや〜、綾瀬川くん凄かったね。」

 

隣の左前の隣の席に座った二宮隊の犬飼がオレに話しかけてくる。

 

「どうも。」

 

「凄い回避能力じゃん、どう言う仕掛けなの?」

 

「さあ?」

 

「うわ、惚けるの?辻ちゃんも気になるでしょ?」

 

「…まあ。…っ…」

 

辻はこちらに視線を向けるが、オレの隣にいる真登華と目が合い、恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

 

「…ふん、サイドエフェクトだろう。それ以外考えられない。」

 

二宮がジンジャーエールを1口飲み、そう言った。

 

「まあそうですね。」

 

それを聞いて前に座っていた柿崎が目を見開く。

 

「ちょ…は?はあ?!聞いてねえぞ清澄…!」

 

「?…聞かれなかったんで。」

 

「聞かれなかったっておま…

 

 

 

 

…はあ…もういい。お前そういう奴だもんな…。」

 

柿崎はため息を着く。

 

「アハハハッ!ザキさんにも言ってなかったの?」

 

「隊長だけじゃないですよ清澄先輩!俺らも聞いてませんからね?!」

 

虎太郎も立ち上がる。

 

「いや、聞かれなかったから…カルビ焼けたぞ。」

 

「いただきます!…じゃなくてなんで言ってくれなかったんですか!?」

 

「いや、だから…「自分から言うって選択肢はないんですか?!清澄先輩は?!」」

 

真登華も立ち上がる。

 

「…すいません。」

 

 

「アハハ、やっぱり面白いね、清澄くん。」

 

いつの間にか呼び名が変わる。

コミュ力お化けだなこの人。

 

「ちなみにどんなサイドエフェクトなの?」

 

「…言うと思います?」

 

「え〜、ケチだなぁ…。」

 

犬飼は項垂れるように言った。

 

「みっともない真似は寄せ犬飼。」

 

「え〜?でも二宮さんも気になりません?」

 

「ならない。分かったところで今の柿崎隊は脅威では無い。」

 

二宮はこちらに顔を向けるとそう一刀両断する。

 

「柿崎、今のままじゃ宝の持ち腐れだぞ。何故俺が今回のROUND4緊急脱出を選んだか分かるか?」

 

「…分かってますよ…。清澄が生きてたからでしょう?」

 

「分かっているなら良い。」

 

そう言って二宮は店員を呼ぶ。

 

「…ジンジャーエール1つ。」

 

 

──

 

「そう言えば綾瀬川くんは習い事やってたの?武道とか。」

 

そう尋ねてきたのは辻だ。

 

「…ピアノと書道ならやってたぞ。」

 

「ピアノって…さすがに嘘でしょ。」

 

犬飼が笑う。

 

失敬な。

今この場にピアノがあれば幻想即興曲くらいなら弾いて見せてやってもいい。

 

「武道は何もやってなかったの?」

 

「やってないが…それがどうかしたのか?」

 

「いや、弧月でやりあった時綾瀬川くんは弧月以外に体の使い方が上手いって思って。太刀取りもされたし。足払いなんかも鋭かった。」

 

「…たまたまだろ。」

 

そう言ってオレは肉を頬張る。

 

「ほら虎太郎、もっと食え。」

 

そう言って虎太郎のさらに肉を乗せてやる。

 

「ありがとうございます。」

 

「…今度ランク戦…やろうよ。」

 

「そうだな。ぜひ頼む。」

 

辻にそう返すと文香も話に加わる。

 

「あ、私もいいですか?辻先輩。私攻撃手に転向しようと思ってて。」

 

 

 

「え…あ…えっと…それは…」

 

 

文香にそう言われて辻は顔を真っ赤にする。

 

「アハハ、ごめんね照屋ちゃん。辻ちゃんちょっと異性が苦手で…。」

 

「なるほど…すいませんでした。」

 

「その…ダイジョブ…デス…。」

 

 

 

 

「…氷見さんは大丈夫なんだな。」

 

オレは辻の隣にいる氷見を見て尋ねた。

 

「うん。ひゃみさんとは付き合いが長いからね。もう慣れたよ。」

 

「…うむ。」

 

隣にいる氷見は頷く。

 

「…綾瀬川だ。よろしく頼む。」

 

「あ、ご丁寧ににどうも。氷見亜季です…。」

 

少し顔を赤くしながら氷見は返した。

 

 

 

「…真登華、席変わるか?」

 

「綾瀬川くん?!」

 

辻はオレンジジュースを吹き出す。

 

「悪い…冗談だ。」

 

 

──

 

 

「じゃ、またね〜。」

 

犬飼が柿崎隊の面々に手を振る。

 

「清澄くん、オレともランク戦しよーね。澄仲間どうし仲良くやろー。」

 

「…なんですかそれ…。」

 

「ほら、俺は澄晴、そんで清澄。…ね?」

 

「なるほど…。ランク戦の件はオレはよく米屋達と一緒にいるんで声掛けてください。」

 

「はーい。照屋ちゃんと宇井ちゃんもまたね〜。」

 

「二宮さん。」

 

柿崎が二宮を呼び止める。

 

「俺たちはこの順位で留まるつもりはありませんから。」

 

「…ふん。やってみろ。」

 

そう言って二宮隊は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

さて、学校生活2日目。

授業が始まって分かったことがある。

 

 

「米屋、お前成績大丈夫なのか?」

 

「…ンが?」

 

隣で気持ちよさそうにいびきを掻いていた米屋に尋ねた。

一限の体育で楽しそうにサッカーをしていたと思ったら二限から昼休みまでぶっ通しで机に突っ伏していた。

 

 

「ほっとけよ。こいつはもうどうしようもねーから。」

 

前の出水が振り向いて言った。

 

「食堂行くけどお前も行くか?」

 

「いや、オレは弁当がある。」

 

そう言ってオレは机の上に巾着袋を出した。

 

「…お前ボーダーの寮で一人暮らしだったよな?…まさか自分で作ってるのか?」

 

「当たり前だろ。出水や米屋と違ってオレはB級なんだ。節約しないとやっていけない。」

 

「へ〜、んじゃ俺もなんか買ってくるわ。行くぞ槍バカ。」

 

「…んあぁ?」

 

 

出水と米屋が戻ってくるのを待っていると、教室がざわめき出す。

 

 

「おい、ちょっとツラ貸せ。」

 

目の前に缶コーヒーが置かれる。

 

顔を上げるとそこには制服姿の影浦が立っていた。

 

「…そう言えば同じ学校でしたね。」

 

 

 

 

 

 

「…その…なんだ、この間は…悪かった。」

 

同じ階にある少し人通りの少ない教室の前。

そこで影浦は俯くようにオレに頭を下げた。

 

「別に気にしてませんよ。…村上先輩からチラッと影浦先輩の事は聞いたんで。…オレこそすいません。昔から感情表に出すのは苦手で。」

 

「それは関係ねえだろ。…俺が一方的にお前に暴言吐いたのがわりぃ。…悪かった。」

 

「…分かりました。これでもうこの話は終わりにしましょう。」

 

「…助かる。

 

 

 

…んじゃ話は変わんだけどよォ…ランク戦…付き合えや。見たぜ?この前のROUND4。二宮隊相手にあそこまで生き延びるなんて俺にも出来ねえ。俄然興味が湧いてきたぜ。」

 

マスクから少しでた影浦の口は獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「…だと思ってましたよ。」

 

 

 

──

 

「お、戻ってきたな綾瀬川。トイレか?」

 

「…まあそんな所だ。」

 

教室に戻ると、出水、米屋、そして三輪が待っていた。

 

「三輪も来てたんだな。」

 

「おう、購買にいたから連れてきた。」

 

米屋は笑みを浮かべる。

 

「ふん…食事くらいは静かに取らせろと言ったんだがな。」

 

「…それは悪かったな。お前が嫌だったら別に…」

 

「嫌とは言っていないだろう。」

 

オレがそう言うと三輪は買ってきたパンを齧る。

 

「そうか…。」

 

そんな様子を見て出水と米屋は苦笑いを浮かべた。

 

「お、綾瀬川の弁当超美味そうじゃん!唐揚げいただき!」

 

「おい、育ち盛りの高校生からタンパク質を巻き上げるな。」

 

「俺も育ち盛りなんだよ。それに午前中の授業で頭使って疲れてんだ。」

 

米屋はあっけからんとそんなことを言ってのける。

 

「お前午前中殆ど寝てただろ…。」

 

俺がそう言うと米屋は顔を青くする。

 

「…なんだと?それは本当か?綾瀬川。」

 

三輪が物凄い表情でオレに尋ねる。

 

「いや、その…綾瀬川の見間違いだろ。…な?綾瀬川。俺は超真面目に授業受けてたぜ。な?出水。」

 

「そうだな〜。槍バカは真面目にやってたぜ。」

 

出水のその言葉に米屋は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「…と、思うじゃん?爆睡だったぜ〜。」

 

「ちょ…弾バカてめぇ!!」

 

「これ以上成績を落としてどうする。来い陽介。」

 

「…綾瀬川…助けて…」

 

「…唐揚げの恨みだ。」

 

 

 

「…覚えとけよてめぇらァァァ!!」

 

 

そう言い残して米屋と三輪は消えた。

 

放課後、三輪隊の作戦室では、三輪とオペレーターの月見、そして年下である古寺に勉強を教えられている米屋がいたとかいなかったとか。

 

 

 

──

香取隊作戦室

 

ログの映像を見ながら。

そこで2人の隊員は息を飲んでいた。

 

「なんだよこれ…。次こんな奴と当たるのか…?」

 

眼鏡をかけた隊員、若村は冷や汗を流す。

 

「弧月…バイパー…それにイーグレット…なんて言うか万能手の完成系って感じだね…。僕ら2人でも勝てるか分かんないや。」

 

「いや…流石にそれは…。」

 

プライドが三浦の言葉を否定する。

 

(…化け物じゃねえか…!あんな大人しそうな見た目で?!影浦隊と鈴鳴…そして東隊相手にたった1人で4点?!なんだってこんな化け物が柿崎隊なんかに…!)

 

柿崎隊が一気に上位に上がった理由が分かった。

 

こいつだ。

 

「…だが逆に分かったぜ。柿崎隊はこいつ以外はすぐに落とされてる。…そこまで脅威じゃない。合流される前に巴でも照屋でもいいから落とすぞ。葉子にも言っておけ。」

 

「そうだね…。」

 

 

 

──

 

ボーダー玉狛支部

 

「反対がガラ空きよ…!!」

 

「ッ?!」

 

鋭い一撃で照屋の腕が飛ばされる。

 

「メテオラッ…!!」

 

そのまま照屋の体は爆風に包まれた。

 

 

──ランク戦終了。9-1勝者、小南。

 

 

 

 

「太刀筋は良くなってきたわよ。1本取られちゃったし。」

 

「…ありがとうございます…。でも1本しか取れてません…。…まだ…このままじゃ…。」

 

そう言って俯く照屋の両頬を小南は覆うように掴み、視線を合わせる。

 

「弱気になってどーすんのよ。私から1本取るだけでも凄い方よ?…それにそんな簡単に強くなれる訳ないじゃない。」

 

「…そう…ですね、すいません、小南先輩。」

 

「…休憩にしましょうか。」

 

 

 

 

「そう言えば綾瀬川の奴はどうしてんのよ。」

 

「今日もランク戦フロアにいると思います。」

 

「…も〜!!ムカつく!!あれ以来1回も顔出してないじゃない?!普通有り得る?!私にお願いしておいて!」

 

小南は頭を抱えながら怒る。

 

「…前から思ってたんですけど…小南先輩って清澄先輩に…その…気があるんですか?」

 

「なぁっ?!そ、そんな訳ないじゃない!!いくら文香でも怒るわよ?!」

 

「え?あ、すいません。」

 

照屋は急いで小南に謝る。

 

 

「お、珍しい客人がいるな。なんの話ししてたんだ?」

 

そこにやってきたのはゴーグルを首から下げた男。

 

「迅…アンタには関係ないわよ!」

 

「お邪魔してます、迅さん。」

 

「久しぶり、照屋ちゃん。ゆっくりしてってね。」

 

ボーダーS級隊員、(じん) 悠一(ゆういち)は照屋に手を振りながらそう言った。

 

「今日はなんで玉狛に?」

 

「…そう言えばアンタ最近ここで会わなかったわね。…弟子に取ったのよ。文香の事。」

 

「へ〜、小南に弟子か。…小南で大丈夫か?照屋ちゃん。」

 

「どういう意味よ…!?」

 

小南は迅を小突く。

 

「いてて…冗談だって。でも珍しいな。お前が弟子取るなんて…。」

 

「綾瀬川の奴にどーしてもってお願いされたのよ。どーしてもってね!」

 

「なんで2回言ったんですか…。」

 

その言葉に迅はキョトンとなる。

 

 

 

「綾瀬川ってダレ?」

 




各キャラへの印象&各キャラからの印象

二宮匡貴→評価。手負いじゃ勝てなそう。
犬飼澄晴→やっぱり面白い。澄仲間。
辻新之助→見た目の割に面白い。話しやすくて仲良くなれそう。
氷見亜季→雰囲気がちょっとあの人に似てて照れる。
米屋陽介→覚えとけよ…!!
影浦雅人→わりぃ…っと、よし許されたな。ランク戦しろや。
若村麓郎→は?化け物だろ。
三浦雄太→勝てるかな…。
小南桐絵→なんで顔出さないのよ…!!別に気がある訳じゃないんだからね?!
迅悠一→ダレ?


二宮匡貴←戦術、戦闘力どれも尊敬に値する。
犬飼澄晴←澄仲間。コミュ力お化け。
辻新之助←話してみると面白い奴だった。仲良くなれそう。
氷見亜季←優しそう。なんで顔赤いの?
米屋陽介←成績大丈夫か?
影浦雅人←根はいい人なんだろうな。ボーダーに溢れかえっている戦闘狂の1人。
小南桐絵←文香の事よろしく〜。
迅悠一←???

本当にあくまで予想なんですけど二宮さんの「烏龍茶2つ、オレンジジュース。…ジンジャーエール。」

のうちのオレンジジュースは絶対に辻ちゃんだと思ってる。

これからも読んでいただけると幸いです!


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無機質なボーダー隊員の日常②

活動報告使うとか言って三日坊主になってる作者です。
正味な話皆見てないっしょw
予め言っとくと主に毎日更新、たまに予告無しで休むかもです。
原作に追いついてきたら多分ペース落とします。




止まった世界。

視界に映し出されるのは、オレの事を切り裂かんとするスコーピオンの連撃。

しかもそのどれもが長く伸び、不規則に曲がる。

 

「…」

 

演算ではじき出された起動を最小限の動きで避ける。

 

「ちっ…見切り始めやがったか…!!」

 

目の前でスコーピオンを振り回す男、影浦は悪態を着く。

 

オレは、後ろに飛び退き、バイパーを放つ。

 

「ちいっ…!!」

 

影浦はシールドで受けるも、シールドを見てから曲げられたバイパーに削られる。

 

「…バイパー。」

 

オレはさらに腰の辺りにトリオンキューブを生成。

それを見た影浦は自分を覆うようにシールドを張る。

 

…しかしそれを見るやいなやオレは逆手で高速の抜刀。

 

ノーモーションからの旋空が放たれる。

 

「…ハッ…やるじゃねえか…!!」

 

シールドを割られ、影浦の体はトリオン供給機関を切り裂かれる。

 

 

──トリオン供給機関破損。影浦、緊急脱出。ランク戦終了。5-5ドロー。

 

 

──

 

「やられたぜ。まさかあそこで旋空に切り替えるなんてよォ。」

 

そう言って影浦はオレの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 

「次は見切ってやる。もう一度だ。」

 

そう言って影浦は歩き出す。

 

「もう!ダメだよカゲ先輩!次は俺の番なんだから!」

 

しかし、見ていた駿がそれに待ったをかけた。

 

「あぁ?てめえは散々こいつとやってんだろーが。」

 

「最近負け続きだもん!次は俺が勝つんだから!!」

 

「…おもしれえ。じゃあこうしよーぜ。俺とてめえでランク戦をして勝った方がこいつと戦う…どうだ?やるか?」

 

「やるに決まってるし!!」

 

 

…このやり取り3回目だぞ。

 

その都度僅差で負けた駿が影浦に試合を譲っている。

 

「…影浦先輩、大人気ないですよ…。」

 

見かねたオレはそう声をかけた。

 

「大丈夫!次は勝つから!」

 

しかし駿がそれを突っぱねる。

 

…お前のために言ってるんだぞ?

 

「…オレはさすがに疲れたんですけど…。」

 

そう言ってオレはソファに座る。

 

「ちっ…少し休むか…。」

 

そう言って影浦は自販機の方に歩いていった。

 

 

 

「よねやん先輩といずみん先輩は?」

 

駿がオレに尋ねた。

 

「米屋は補習。課題全くやってなかったんだと。」

 

「よねやん先輩らしいや。」

 

「よく言う。お前もオレが手伝わなきゃ間に合わなかっただろ?」

 

「べ、別に間に合ったからいーじゃん。」

 

そう言って駿は口を尖らせた。

 

「出水は防衛任務だ。」

 

「ふーん。じゃあ今日は俺と一杯ランク戦できるね!」

 

「できるねじゃない…。疲れるんだよ。それに今日は影浦先輩以外にも約束がある。」

 

オレはこちらに近づいてくるスーツの隊員を見てそう言った。

 

「待たせてごめん。綾瀬川くん。」

 

「問題ない。影浦先輩と時間潰してたからな。」

 

謝る二宮隊の攻撃手、辻にオレはそう返した。

 

「つじセンパイだ!」

 

「緑川くんも一緒にいたんだね。」

 

 

「あ?いつの間に増えてやがる。」

 

それと同時に飲み物を3本持った影浦が戻ってきた。

 

「どうも、影浦先輩。」

 

辻はそう言って頭を下げた。

 

「…ちっ、3本しか買ってねえよ。ほら、自分の分買ってくるから飲んで待ってろ。」

 

「すいません、ありがとうございます。」

 

そう言って影浦はオレと駿と辻に飲み物を押し付けると再び自販機に歩いて行った。

 

「…意外と優しいんだな。影浦先輩は。」

 

「そう?割といつもあんな感じだと思うけど。」

 

辻はそう言ってオレの隣に腰掛ける。

 

「10本でいいか?」

 

「うん。よろしく。」

 

 

 

 

──トリオン供給機関破損、辻、緊急脱出。7-3勝者、綾瀬川。

 

 

機械音がオレの勝利を告げた。

 

「…完敗だよ。あの旋空とバイパーの使い分けは攻略できる気がしない…。」

 

辻はお手上げと言うように言った。

 

「…まあこれがオレ本来の戦闘スタイルだからな。」

 

そう話しながら戻るとそこにはこちらを鬼の形相で睨んでいる影浦が。

 

「…早く戻った方が良さそうだね。」

 

「そうだな…。」

 

 

「…オォイ、綾瀬川てめぇ、飲んで待っとけっつったよなァ…?」

 

影浦はオレにアイアンクローをしながら言う。

 

「…誘ってきたのは辻なんで。」

 

「え?ちょ、綾瀬川くん?!」

 

そう言うと影浦は視線を辻に向けた。

 

「…ハッ、いいぜ。別の奴ともやりたかったとこだ。

 

 

 

 

…ランク戦ブース、入れよ。」

 

 

 

──

 

辻が影浦とのランク戦をしている間、オレは駿とソファで休んでいた。

 

「ねーえー!俺ともやろーよー!!」

 

駿はオレの腕を引きながら駄々をこねる。

 

「…分かったから引っ張るな。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「やっほーい!!ランク戦〜ランク戦〜!」

 

オレの周りを飛び跳ねながら駿は着いてくる。

可愛いやつだな…。

 

──

 

「もう1回!あやせセンパイもう1回!!」

 

「お前な…。」

 

駿とのランク戦を終えて戻ると、影浦とげんなりとした辻、そしてもう1人。

生駒が待っていた。

 

「やっぱりきよぽんや!防衛任務帰りにランク戦ブース顔出しといて正解やったな。約束通りランク戦…しよか?」

 

どうやらオレはまだまだ帰れないらしい。

 

 

 

──

 

「ふぅ〜!戦った戦った!」

 

駿が大きく伸びをする。

 

「俺は結構負けてポイント取られたけどね…。」

 

辻はそう言って肩を落とした。

 

「やっぱめっちゃ強いな、きよぽん。リアルタイムで引けるバイパーと旋空の組み合わせとか反則やない?」

 

「どうも。」

 

生駒の言葉に素直に礼を言う。

 

「しかもバイパーからかなり距離とって躱しても長い旋空飛んでくるしね。」

 

辻もそうつけ加える。

 

「その戦闘スタイル続けてれば攻撃手の中でも7位くらいに食い込めるんやない?6位は譲らんで。」

 

「いやいや、オレは万能手なんで。」

 

「…そう言えばあやせセンパイ結構勝ってたよね?ポイントどうなったの?」

 

「聞いて驚けよ。…弧月がマスタークラスまで行った。」

 

「「「...」」」

 

「お〜!!おめでと!あやせセンパイ!!」

 

自分の事のように喜んでくれる駿とは対象的に影浦と辻、生駒はその場に止まってオレを見ていた。

 

「…何か?」

 

「いや、綾瀬川くん…」

 

「きよぽん…」

 

「お前…」

 

 

「「「弧月マスタークラスじゃなかった(ん)(の)(のか)?」」」

 

3人の声が重なる。

 

「…まぁ、訳あって最近まで休隊してたんで。ランク戦に関しちゃビギナーなんですよ。」

 

「数字だけが全てじゃないとは言うけど…。」

 

辻は顎に手を当てて考える。

 

「綾瀬川くんって他になんのトリガー使ってるの?」

 

「そうだな…。弾トリガーは基本全部使ってるぞ。元射手だからな。それにイーグレット。後は…あんまり使わないがスコーピオンも使えるっちゃ使える。」

 

その言葉に影浦は目を見開く。

 

「成程な…荒船のヤローがお前を認める訳だ。」

 

「今度またランク戦やろうよ。」

 

「ああ、いつでも誘ってくれ。」

 

「お、俺とも遊んでな?」

 

生駒は自分を指さし言った。

 

「もちろん。」

 

「お前らこの後暇か?」

 

生駒にそう返すと影浦が3人に尋ねた。

 

「暇ですけど。」

 

「帰るだけですね。」

 

「暇やで。」

 

「暇だよ?あれ、もしかして…」

 

 

「…うち来いよ。俺が奢って...」

 

「いやいや何ゆーとるんやカゲ!奢るんは1番年上の俺やろ!」

 

影浦の声に被さるように生駒が言った。

 

「おっしゃ着いて来い野郎共!今夜は寝かさへんで!」

 

「やった〜!生駒センパイ太っ腹!!」

 

「寝かせないって…お好み焼きでしょ…。」

 

「じゃ、お言葉に甘えて。」

 

「俺んちだっつってんだろ…。」

 

 

そう言って4人は歩き出した生駒の後に続いた。

 

──

 

「そう言えば清澄先輩って迅さんに会った事無かったんですか?」

 

翌日、柿崎隊の作戦室で巴と柿崎が来るのを照屋、宇井、綾瀬川で待っていると、照屋は綾瀬川に尋ねた。

 

「そうだな…。S級隊員って事と未来予知のサイドエフェクトを持ってるって事だけは知ってるが…会ったことは無かった気がする。…それがどうかしたのか?」

 

「いや、昨日玉狛で迅さんに会ったんですけど、清澄先輩に会ったことないって言ってたから…。」

 

「へ〜、意外。迅さん清澄先輩に興味持ちそうなのに…。」

 

宇井は意外そうに言った。

 

「…まあ玉狛支部なんて頻繁に行くわけじゃないからな。」

 

「それで思い出したんですけど小南先輩が清澄先輩に文句言ってましたからね。」

 

「文句?なんであいつが?」

 

綾瀬川はキョトンとした顔で尋ねた。

 

「小南先輩曰く、「文香を私にお願いしておいてどうしてあれから1度も顔を出さないのよ?!忙しい合間を縫って文香の事見てあげてるのに!!早く玉狛に顔を出しなさい!!そして私と戦いなさい!!」…との事ですよ。」

 

「…やけに似てるな…。」

 

「10分に1回聞かされてればこうなりますよ。…可哀想なので早く顔出してあげてください…。昨日なんて半べそかいてましたよ。」

 

「…それはなんと言うかすまないな。近いうちに行くよ。…それじゃオレはあいつの師匠としての腕を見るか…。5本先取…やるか?」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「望むところです!」

 

綾瀬川は宇井に顔を向けた。

 

「はいはーい。準備しますね〜。」

 

 

ROUND5まであと少し。

自分を磨くため、柿崎隊のエースは立ち上がる。

 




ちょっした時系列説明

ROUND4翌日
綾瀬川の転校、二宮隊との食事。

影浦にランク戦を誘われる、緑川、生駒、辻、影浦とのランク戦。玉狛で迅が綾瀬川について知る。

最後の柿崎隊の作戦室のシーン。

綾瀬川の現在の個人ポイント

弧月 8111
アステロイド 6222
ハウンド 5555
メテオラ 5666
バイパー 7333
イーグレット 5555
スコーピオン 5000


各キャラからの印象&各キャラへの印象

影浦雅人→強い。気持ち悪いとか言ってごめん。良い奴。
緑川駿→お兄ちゃんみたい。課題手伝ってくれてありがとう。
米屋陽介→俺の課題は?手伝ってくんなかったよね?
辻新之助→強い。面白い。友達になろう。
生駒達人→やばいな。きよぽんやばいな。1発ギャグ行くで?
小南桐絵→グスッ…顔…出しなさいよ…!!


影浦雅人←いいよ。俺こそごめんね。いい人。
緑川駿←弟みたい。課題は次からは自分でやるように。
米屋陽介←知らん自業自得だ。
辻新之助←良い奴。話しやすい。友達になろう。
生駒達人←あ、ギャグは結構でーす。
小南桐絵←ごめんね。


感想、評価等よろしくお願いします!


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無機質なボーダー隊員の日常③

遅れてすいません。
投稿致します。
それと前回の話少し修正しました。
話っていうかあとがきの印象を書くコーナーで他の話はフルネームなのに前回だけ苗字のみになっていたので修正しました。


──トリオン供給機関破損、照屋、緊急脱出。

 

照屋の緊急脱出を告げる機械音が響く。

 

 

 

「ふぅ、いい感じじゃないか?結構ヒヤヒヤしたぞ。」

 

「…」

 

綾瀬川の言葉に照屋はジト目で睨む。

 

「攻撃当たらなすぎじゃないですか?私の初見殺し全部効かないじゃないですか…。」

 

「拗ねるなよ…。オレにはサイドエフェクトがある。オレ以外の相手なら何発かは引っかかるだろ。」

 

「…そう言えば清澄先輩のサイドエフェクトって結局何なんですか?あの後も後で話すとか言ってまだ聞いてませんよ?」

 

「そうだな…。それは皆の前で話した方が良さそうだ。」

 

そう言って綾瀬川はこちらに歩いてくる柿崎と巴に目をやった。

 

 

──

 

「なるほど、分からん。」

 

オレの説明に柿崎はキッパリとそう言った。

 

「でしょうね。オレが説明をしなかった理由に言っても意味が無いって言う理由があるんですよ。虎太郎、分かったか?」

 

「え?いや、俺は…分かろうと努力はしました。」

 

「それに話した所でオレにしか使えないんじゃ意味無いでしょう。」

 

「それもそうだな…。」

 

柿崎は苦笑いでそう言った。

 

「でも攻撃手にとっては喉から手が出る程欲しいものかもしれませんけど…使いこなせる人は少なそうですね。」

 

照屋は考え込むように言った。

 

「確かに…それ使いこなしてる清澄先輩って何者なんですか?…人間やめてます?」

 

「失礼な奴だな…。まあ…あれだ。

 

 

 

…古参だからな。」

 

「またそれかよ…。一応俺もかなりの古参なんだがなぁ…。」

 

柿崎は呆れるように言った。

 

「…ま、そのサイドエフェクトを持ってる奴がうちの隊に来てくれて良かったよ。…それよかまだ何か隠してる訳じゃねーよな?」

 

柿崎が疑るような目でオレを見る。

 

「…どうでしょうね。」

 

「お前なぁ…。ま、無理には聞かねえよ。人には事情ってもんもあるからな。」

 

オレのとぼけるような言葉に柿崎はそう返した。

 

「よし、じゃあそろそろ休憩は終わり。新戦術の練習始めるぞ!」

 

「「「「了解です。」」」」

 

 

 

──

 

「それじゃあそろそろお開きにするか。明日の夕方は防衛任務だからな。忘れるなよ。それが終わったら明後日のROUND5の最終調整だ。」

 

「分かってますって。」

 

「じゃ、私この後綾辻先輩と約束あるので失礼しまーす。」

 

そう言って真登華は手を振る。

 

「私玉狛行くんですけど清澄先輩はどうします?そろそろ行かないと小南先輩が…。」

 

文香はそう言ってオレに尋ねた。

 

「…そうだな。オレも行くよ。」

 

「じゃあ俺も行くかな。迅とも久々に会いたいし文香を見てもらってる礼を言いに行かなきゃな。」

 

オレに続いて柿崎もそう言った。

 

「じゃあ俺は母が迎えに来てくれるので。」

 

虎太郎は親が迎えに来てくれるらしい。

 

柿崎隊の作戦室の前でお開きとなった。

 

 

 

 

──

 

「やっと!やっと来たわね!!綾瀬川!!」

 

そう言って小南はオレにヘッドロックをする。

 

「悪かったからやめてくれ…。」

 

「なんで!あれから!1度も!顔を出さないのよ?!」

 

しかし小南は緩めることなくオレを押さえつける。

 

「まあ色々忙しくてな。…主にランク戦。」

 

「それなら来れる時間あったじゃないのよー!!」

 

小南は涙目でさらに強める。

 

「ま、まあまあ小南、清澄も次のROUND5のために色々腕を磨いてたんだ。転校のこともあったんだし許してやってくれ。な?」

 

柿崎がまるで子供をあやすように言った。

 

「その辺にしとけ小南。入口の前でみっともないぞ。」

 

そう言うのは木崎(きざき) レイジ。

ボーダー唯一の完璧万能手だ。

 

「…何事っすか?」

 

木崎の後ろからやって来たのは烏丸(からすま) 京介(きょうすけ)

玉狛の万能手だ。

 

 

「ちょっと訳ありでして。大人数で押しかけてすいません。お邪魔して大丈夫ですか?」

 

柿崎は木崎に申し訳なさそうに言った。

 

 

──

 

「なるほど。最近照屋がここに来るようになったのにはそう言う訳があったのか。」

 

木崎はキッチンで料理をしながら言う。

 

「…うちの小南がすまなかったな綾瀬川。」

 

「いえ、オレが顔を出さなかったのが悪いんで。」

 

小南はリビングの端でオペレーターの宇佐美(うさみ) (しおり)と烏丸に正座をさせられていた。

 

「なんだ、ずいぶんとさわがしいでわないか。」

 

そこにカピバラに乗った幼児が現れる。

 

「…」

 

なんだ、カピバラに乗った子供か…。

 

2度見する。

 

「…なんすか?これ。」

 

林藤(りんどう) 陽太郎(ようたろう)だ。まあ気にするな。」

 

「そうだ、きにするな。」

 

「…気になりますけどね。…てかオレ木崎さんに名前言いましたっけ?」

 

オレは木崎に尋ねた。

 

「お前は最近何かと話題になってるからな。荒船からも良く聞いてる。なんでもあいつよりも完璧万能手に近い奴らしいからな。」

 

「あー…オレは別に興味ないんですけどね…。」

 

「荒船は負けず嫌いだからな。」

 

話しているとあちらの話も終わったようだ。

 

 

小南は不機嫌そうにオレの前のソファーに座る。

 

「その…あれだ。悪かったな、中々顔出せなくて。」

 

「悪かったな…じゃないわよ!私と戦いなさい!そうじゃないと許さないわ!!」

 

ビシッとオレに指をさしながらそう言う。

 

「…分かった。それで収まるならそうしてくれ。」

 

オレは諦めたように立ち上がった。

 

 

 

──

 

「メテオラッ!!」

 

小南の放ったメテオラを躱すと、爆風をかき分けるように小南が双月を振るう。

双月は玉狛特製のトリガー。

コネクターという専用のトリガーで連結させて威力を増すことができる。

 

その軌道に当たらないよう、上半身を傾ける。

そのまま後ろにバク転で躱すとトリオンキューブを分割。

アステロイドを放つ。

 

「なかなかやるじゃない!でもまだまだこれからよ!!」

 

アステロイドをシールドで受け切るとこちらに双月を構えて向かってくる。

 

「…旋空弧月。」

 

オレは抜刀の構えでそう呟く。

小南はすぐさま後ろに飛び退く。

 

だがオレが放つのはバイパー。

 

「!、はあ?!」

 

小南はすぐにシールドを張るが、自在に曲がる弾に足を削られる。

 

「残念だがオレは今回旋空を入れてないんでな。」

 

オレはもう一本の弧月を抜刀。

二刀流の弧月で小南と斬り合う。

 

「面白いじゃない…!!」

 

弧月と双月が激しくぶつかり合う。

 

小南は距離をとると、双月を連結させる。

 

「それ反則じゃないか?」

 

「問答無用よ!!」

 

そうして振り下ろされた大斧に、オレはたまらず飛び退く。

弧月で受けたら絶対折れるな。

 

 

 

「…メテオラ!!」

 

距離を取ったオレにすぐさまメテオラを放った。

 

 

「…おいおい勘弁してくれ。」

 

オレはどうにか距離を取りそれを躱し、牽制のアステロイドでさらに距離をとる。

 

「終わりよ!!」

 

小南は体制の崩れたオレに双月を構えで突撃してくる。

 

「バイパー。」

 

「それはもうくらわないわよ!」

 

シールドを全方位を覆うように張ると小南は飛び上がる。

 

 

「…旋空弧月。」

 

「ちょ…はぁ?!」

 

小南はオレの放った旋空で切断される。

 

「すまん、嘘だ。旋空は入れてる。」

 

「だ、騙したわね?!」

 

そのまま小南は緊急脱出した。

 

 

 

 

 

「もう1回よ!!あんな騙し討ち卑怯よ!!」

 

小南はオレの胸ぐらを掴み叫ぶ。

 

「いや、騙される方が悪いでしょ。」

 

「うんうん。」

 

見ていた烏丸はそう言い、宇佐美は頷く。

 

「そうだとしてももう1回よ!!次は負けないわ!!」

 

「後輩待たせるなよ…。文香とやる時間無くなるぞ…。」

 

苦笑いをしている文香に顔を向ける。

 

「ぐぬぬぬぬ…!!いーい?!まだ帰っちゃダメよ!!文香の特訓したらアンタともう1回やるんだから!!」

 

「分かったから…。文香を頼むぞ。」

 

「言われるまでもないわよ!私はアンタの師・匠!なんだから!」

 

「ああ、師匠。」

 

「そ、それで良いのよ!!」

 

小南は嬉しそうに文香と一緒に歩いていった。

 

 

 

「ずいぶん小南先輩の事扱い慣れてるんスね…。」

 

「えっと…」

 

「烏丸京介です。よろしくお願いします。」

 

烏丸は礼儀だだしくオレに頭を下げた。

 

「…綾瀬川清澄だ。悪かったな、オレのせいであいつ随分騒がしかっただろ。」

 

「いえ、あの人いつもあんな感じなんで。」

 

「…確かにそうかもな。」

 

「お茶どーぞ、綾瀬川くん。」

 

話しているとオレの前にお茶が差し出される。

 

「ああ、ありがとう。」

 

「私は宇佐美栞。こなみに勝つなんてすごいね〜。」

 

「…まあ古参…いや、何でもない。綾瀬川だ。よろしく頼む。」

 

宇佐美にそう返す。

 

「凄かったです。今度俺ともやってもらっていいですか?」

 

「まあここに来たらな。」

 

 

 

 

 

 

「お、小南との戦いは終わったのか、清澄。」

 

そうしていると、出ていた柿崎が戻ってくる。

その後ろにはゴーグルをかけた隊員が。

 

 

 

 

 

「初めまして…だな。ザキから話は聞いたよ。俺は迅悠一。よろしく頼むよ、綾瀬川清澄くん。」

 

 

これがオレの最も警戒する人物、迅悠一との初対面だった。




各キャラからの印象&各キャラへの印象


小南桐絵→ようやく来たわね!勝負よ!!…もう1回〜!!
木崎レイジ→荒船が認める奴。
烏丸京介→小南先輩に勝った凄い人。今度俺ともやりましょう。
宇佐美栞→眼鏡かけません?
林道陽太郎→なにかかくしてそうだな。
迅悠一→初めまして。


小南桐絵←チョロい人。なんだかんだ一緒にいて楽しい。
木崎レイジ←完璧万能手ゴリラ。
烏丸京介←イケメン。礼儀だだしくて良い奴そう。
宇佐美栞←俺の顔何かついてるか?
林道陽太郎←なにこれ?
迅悠一←最警戒。

ちなみに小南とやった時のトリガーセットはこんな感じ。

メイン:弧月、アステロイド、旋空、シールド
サブ:弧月、バイパー、シールド、free



次回1話挟んでからROUND5に行く予定です。
ランク戦を楽しみにしてくださっている方はあと1話お付き合いください。

感想、評価よろしくお願いします。


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無機質なボーダー隊員の日常④

こんな時間に珍しいと思ったでしょ。
それにはこんな訳があるんです…。

昨日の夜中
ヨシ!投稿出来たな。寝るか。(つ・ω・(-ω-*)スヤァ..

翌日
あれ?UA伸びてないな。まあまだ朝だし…仕事行くか!

昼休み
あれ?感想もない?( ・᷄-・᷅ ).。oO



…あ、投稿できてねぇ‎٩(๑>؂<๑)


申し訳ございません。
今日夜もう1話出すんで安心してくださいw



「ザキから聞いたよ、大活躍なんだって?」

 

「役に立ててるなら良いですけどね。」

 

迅の言葉にそう返す。

 

「何言ってんだ。お前がいなきゃ俺達はB級上位にはいねーよ。」

 

そう言って柿崎は座っているオレの頭をポンポンと軽く叩いた。

 

「ログも見たぜ〜、派手なことやってるな〜。」

 

迅はオレの前に座るとお菓子の袋を取り出す。

 

「…ぼんち揚…食う?」

 

「…貰います。」

 

 

 

 

──

 

「じゃ、久々に会えてよかったぜ、迅。俺は文香を送っていくよ。小南も。文香の事見てくれてありがとう。今度お礼でもさせてくれ。」

 

「お邪魔しました。」

 

そう言って柿崎と文香は玉狛支部を後にした。

 

 

「じゃ、オレも帰ります。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「待ちなさいよっ!」

 

小南はオレの肩をがっちり掴む。

 

「私との模擬戦の約束忘れたの?!」

 

「いや、もう遅いし。」

 

「関係ないわ!どうせ私は今日ここに泊まりだし!」

 

「…いや、お前が良くてもオレは…」

 

「いいから勝負しなさい!負けっぱなしじゃなんかこう…ムカつくのよ!!」

 

「へー、小南に勝ったのか。」

 

迅は驚いたように言った。

 

「ま、負けてないわよ!!」

 

「どっちだよ…。」

 

迅は呆れたようにつっこむ。

 

「か、勝ちを譲ってやったのよ!!」

 

「じゃあ次はオレがお前に勝ちを譲れば良いのか?」

 

「ダメに決まってるでしょ?!手抜いたら絶対許さないわよ?!」

 

オレの言葉に小南はオレの胸ぐらを掴む。

 

「あははっ、小南の扱いが上手いな。」

 

「まあ数週間だけですけど付き合いはあったんで。…分かったよ。明日は防衛任務やら、ROUND5の最終調整やらで忙しいんだ。1本勝負で頼むぞ…。」

 

「ふ、ふん!1本だけでいいのね?負けて泣いてももう1回やってあげないわよ?」

 

「いいから早くしてくれ…。」

 

 

──

 

「でりゃああっ!!」

 

大斧が振り下ろされる。

紙一重で避けたが地面が大きく抉れた。

 

「さっきから避けてばっかじゃない!そんなんじゃ勝てないわよ!!」

 

「あのなぁ…そんな大斧弧月で受けたらオレごと真っ二つだろ。」

 

そう言って躱しながらアステロイドを放つ。

 

「小賢しいわね…!!」

 

「小賢しさがオレの取り柄だからな…。」

 

そう言ってオレはさらにトリオンキューブを生成する。

それを見た小南は笑みを見せる。

 

「面白いじゃない…まだまだ行くわよ!!」

 

 

 

 

──

 

「こなみとあそこまでやり合えるなんてすごいな…。」

 

「だよねー。こんなに強いのに無名だったのが驚きだよ。」

 

「ふーん、確かに俺も知らなかったな…。おっ、終わったな。」

 

模擬戦が終了し、ドヤ顔の小南と、綾瀬川が出てくる。

 

「どう?これが私の実力よ。」

 

「へいへい…。」

 

「お疲れ様。やっぱり強いねー。こなみ結構危なかったんじゃない?」

 

「そ、そんな事ないわよ!私まだ本気出てないし!」

 

「そうか。オレも本気出してないぞ。」

 

「はあ?!手抜いたら許さないって言ったじゃない?!」

 

小南は綾瀬川に突っかかる。

 

「冗談だよ…。まあこれで一勝一敗だな。」

 

「何言ってんのよ、休隊する前のも含まれてるわよ、それに1回目は私負けてないから…!」

 

「強情だな。…分かったよそれでいいから…。文香の事…よろしく頼む。」

 

そう言って綾瀬川は頭を下げた。

 

「そ、そこまで言われたら…え、A級レベルまで育ててあげるわ!太刀川なんてイチコロなんだから!」

 

「…それは頼もしいな。」

 

それを迅は不思議な様子で見ている。

 

「こんな小南は珍しいな。ひょっとして小南お前綾瀬川の事…」

 

「ぬわぁあああ!!そんなんじゃないわよ!」

 

小南は迅にヘッドロックをする。

 

「変な事言ったらぶん殴るわよ?!」

 

「?」

 

当の綾瀬川は首を傾げた。

 

「…悪かったって…じゃあ俺は綾瀬川を送るよ。小南と宇佐美はとっとと寝ろよー。」

 

「はーい。」

 

「絶対また顔出しなさいよ?!来なかったら殴り込みに行くわ!!」

 

「分かってるよ…。」

 

そう言って綾瀬川は軽く手を挙げる。

 

「…じゃ、行こうか綾瀬川。」

 

「…別に1人でも平気なんですけどね。」

 

「おいおい寂しいこと言うなよ。年下は年上に甘えとけ。」

 

迅は綾瀬川に肩を組むと歩き出した。

 

 

──

 

「長らく休隊してたらしいな。何やってたんだ?」

 

夜道。

街灯の下を歩きながら迅はオレに尋ねた。

 

「まあ…家の用事で少し。」

 

「家の用事…ね。俺はこれでも旧ボーダー時代の頃からいるんだ。小南は俺より先輩だ。お前も古参なんだろ?」

 

「まあ人よりはって感じですね。」

 

迅の質問にそう返す。

 

「当時は隊員も少なくてな、こんなに会わないってのも珍しい。俺も…まあ本部での用事で忙しかったのもあるが知らなかったぐらいだ。」

 

「オレは身近にあなたのファンがいたので2日に1回はあなたの素晴らしさを力説されてましたけどね…。」

 

駿の顔を思い出してそう話す。

 

「ははっ、駿か。あいつに懐かれるってことは良い奴なんだな。綾瀬川は。」

 

「それはどうですかね。案外冷酷な男かもしれませんよ。」

 

「…それは…まあ無いだろ?」

 

迅は歯切れ悪く尋ねた。

 

「…それを決めるのはあなたでしょう。…何の話をするためにわざわざ着いてきたんです?」

 

オレは迅に切り込む。

 

「お見通しって訳ね。」

 

「あなたは未来予知が出来るんでしょ。腹の探り合いなんて時間の無駄ですから。オレが尋ねることも分かっているんでしょう?

 

 

 

…オレがアンタの邪魔をする未来でも見えましたか?」

 

 

 

オレの質問に迅は真剣な表情になる。

しかしすぐに笑みを見せ頭を掻く。

 

「…参ったな。お前本当に何者なんだ?」

 

「ただの古参のボーダー隊員ですよ。言っときますけどあなたとこれまで会わなかったのはわざとじゃないですからね?」

 

「どうかな。上手く躱されてそうだ。」

 

「買い被りすぎですよ。」

 

オレは目を伏せそう返した。

 

「綾瀬川、お前は俺の敵になるのか?それとも味方になってくれるのか?」

 

「…敵か味方かそれを判断するのはオレじゃなくてあなただ。

 

 

 

…オレはただオレに課せられた使命(・・)を全うする。…オレの邪魔をするのであれば誰であろうと…

 

 

…オレの敵だ。」

 

 

 

「本当に…お前は一体…」

 

「…でも、あなたとはいい関係でいたいと思ってますよ、迅さん。

 

 

 

…じゃあ…

 

 

 

 

…いずれ、また。」

 

 

 

生ぬるい風が夜の三門市を吹き抜けた。

 

 

 

──

 

「よし、やれるだけのことはやった。あとは明日勝つだけだ。」

 

防衛任務の後作戦室で一通り明日の作戦を確認したあと、柿崎は切りだした。

 

「生まれ変わった柿崎隊を見せてやろう。文香、虎太郎、清澄、真登華。頼りない隊長だが支えてくれると助かる。」

 

「もちろんです。」

 

照屋はやや食い気味に言った。

 

「隊長を支えるのは私の役目ですから!」

 

「俺もです!絶対勝ちましょう!」

 

巴もそれに続いた。

 

「そうだね!この調子でA級まで行っちゃおー!」

 

宇井も元気よく言う。

 

「…そうですね。お力添え出来るよう全力を尽くします。」

 

綾瀬川もそれに続いた。

 

 

──

 

「清澄、ちょっといいか?」

 

解散になる時、オレは柿崎に呼び止められる。

 

「はい。」

 

少し暗い様子の柿崎にオレは足を止めた。

 

 

 

「清澄、お前から見て俺は…しっかり隊長としてやれてると思うか?」

 

自販機の前。

コーヒーを手渡しながら柿崎はオレに尋ねた。

 

「文香はかつて奈良坂や風間隊の歌川と新人王を争う程の逸材だった。虎太郎もそうだ。うちに入った時は唯一の小学生隊員。これほどの逸材が揃っていながら…お前が来るまでは中位の中でも下の方を争ってたんだ。その原因は嫌でも分かる。隊長の俺のせいだ。」

 

柿崎は顔を伏せながら続ける。

 

「お前が来てからだって…お前に頼りっきりだ。俺は…お前にとって良い隊長でいれてるか?」

 

「…オレは柿崎隊が初めて入った隊なので他の隊のことはよく分かりません。…確かにオレと隊長が戦えばオレが勝つでしょう。」

 

「分かってるけどバッサリ言われると来るものがあるな…。」

 

柿崎は胸を抑える。

 

「でも、柿崎隊の隊長は柿崎さんしかいないと思ってますよ。」

 

「!」

 

「オレは柿崎さんのように隊を動かす事はできません。文香や虎太郎をやる気にさせるのだって…あなただからです。文香も虎太郎もあなたを尊敬してボーダーに入ったと言ってるんです。隊員から尊敬される…隊長としてこれ程適している人はいないでしょ。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「…文香が柿崎隊のエースとして強くなったのも虎太郎が強くなったのもあなたがいたからでしょう?

 

 

 

…オレは柿崎さんが隊長で良かったと思ってますよ。」

 

「そうか…っ!!」

 

「…泣いてます?」

 

「な、泣いてねえよ…!」

 

そう言いながら誤魔化すように乱暴に涙を拭う柿崎。

 

「…ありがとう清澄。おかげで自信が着いた。俺もお前が柿崎隊に来てくれて良かったと思ってるよ。それから、うちのエースは文香って言ってるが…

 

 

 

…お前もだよ清澄。虎太郎だってそうだ。真登華だって。メンバー全員がうちのエースだ。1人でも欠けたらそれは…柿崎隊じゃねえ。」

 

柿崎は眩しい笑みを見せそう言った。

 

「そうですか…。

 

 

 

 

…だってよ、皆。」

 

オレはそう言い、少し離れた曲がり角に目をやった。

 

そこには目に涙を浮かべる文香、虎太郎、真登華の3人が。

 

「お、お前らいつの間に?!」

 

「えっと…結構前から…。」

 

虎太郎は気まずそうに頬をかく。

 

「盗み聞きするつもりはなかったんですけど…その、気になって…」

 

文香ももじもじしながらそう言った。

 

「そっかー…全員がエースか〜…」

 

真登華ははにかみながら柿崎の肩に手を置く。

 

「き、聞いてたのかよ…!!」

 

柿崎は恥ずかしそうにそう言った。

 

 

「「「全員がエースか〜。」」」

 

真登華、文香、虎太郎の声が合わさる。

 

 

「うるせえ!本当にそう思ってんだよ!悪いか?!」

 

「…いいえ。エースとして絶対勝ちます。」

 

柿崎の言葉に文香は優しげな笑みを浮かべそう返した。

 

「そうですね!清澄先輩ばっかにいいカッコさせられないです!」

 

「生まれ変わった柿崎隊を見せつけよー!」

 

3人の言葉に柿崎は顔を背ける。

 

「あれー?ザキさん泣いてる?」

 

「な、泣いてねえ!」

 

 

 

 

 

そうして翌日。

B級ランク戦ROUND5が幕を開ける。




次回からROUND5に突入します。
ランク戦を楽しみにしてくださっていた方お待たせしました。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND5 VS王子隊、香取隊①

不本意ながら今日2話目になりますw
前の話を読んでいない方はそちらからどうぞ。

あと、とある読者様のご意見を参考に、ランク戦の話に分かりやすいよう対戦相手の名前(例:「VS○○隊、○○隊」)を入れました。
ご意見をくださった読者様ありがとうございます。


ちなみに現時点で香取ちゃんは銃手と言うことにしてます。
半年で万能手に転向したとは書いてあったのですが、時期については明言されてなかったので、オリジナルになりますが、多分この頃はまだ銃手だろって事で。


『皆さんこんにちは!B級ランク戦ROUND5上位昼の部、実況を努めさせていただきます、片桐隊の結束です、解説席には風間隊隊長、風間さんと生駒隊、生駒隊長、水上隊員をお招きしています。』

 

『よろしく頼む。』

 

『『よろしく〜。』』

 

『ホンマは俺だけやったんやけどイコさんがどうしてもついて行きたいって言うから…。』

 

『ええやんけ。面白そうやし。あ、風間さん、後でランク戦しません?』

 

解説担当という事を忘れ、生駒は風間に話しかけた。

 

『真面目に解説したらな。』

 

『ホンマ?!約束やで!』

 

『えっと…解説席の3人は今回の、王子隊VS柿崎隊VS香取隊はどのような試合展開になるとお考えですか?』

 

結束は流れを戻すように尋ねた。

 

『機動力なら王子隊、火力なら柿崎隊だろう。』

 

『成程、王子隊はB級随一の機動力、柿崎隊は4人編成ですから。香取隊はどうでしょう?』

 

『香取隊の所はエース一強やからな〜。香取ちゃんの動き次第やろ。』

 

水上はそう返す。

 

『まあマップ選択権は香取隊にあるから、ステージによっては香取隊有利やと思います。』

 

『…なんや水上、お前解説っぽいこと言ってるやん。』

 

『いや、解説やから。イコさんも頼んますよ。』

 

 

 

 

『…ROUND5この後すぐ。ブラウザバックはNGやで?』

 

『ブラウザバック?何を誰にゆーてますん?』

 

 

──

 

王子隊作戦室

 

「さて、今回最も警戒すべきはカトリーヌと利根川だけど…カトリーヌとやるのは2回目、前回のようにジャクソンとミューラーを落として援護を無くす、そうすれば僕らのハウンドで押し切れる。問題は利根川だ。2人は利根川の1番警戒すべき点はどこだと考える?」

 

王子隊隊長、王子(おうじ) 一彰(かずあき)は隊員の、蔵内(くらうち) 和紀(かずき)樫尾(かしお) 由多嘉(ゆたか)に尋ねた。

 

「…一番はバイパーでしょうか?リアルタイムで引けるバイパーは警戒すべきです。」

 

樫尾が答えた。

 

「ノールックの狙撃も警戒すべきじゃないか?今回はどのチームにも狙撃手はいない。」

 

「そうだね、その2つは警戒すべき点のうちの2つと言える。でも最も警戒すべきは手段の多さなんだ。」

 

「手段の…」

 

「多さ?」

 

蔵内と樫尾が聞き返す。

 

「じゃあ2人はバイパーとノールック狙撃、そして利根川には旋空もある。ROUND3ではクラウチの得意な合成弾、サラマンダーも使っていた。これのうち今回はどれで来るか…2人には分かるかい?」

 

王子の質問に2人は黙ってしまう。

 

「この通り利根川については予測で対策をするしかないんだ。だから柿崎隊については利根川以外の3人を先に狙う。まあ数で押しても相手は二宮隊3人相手に生き残ってるから勝てるかどうかは賭けだけどね。」

 

 

 

──

 

香取隊作戦室

 

「…っていうのが俺の考えた作戦なんだが…。」

 

香取隊、若村は三浦、そして香取隊隊長、香取(かとり) 葉子(ようこ)に尋ねた。

 

「転送位置次第で台無しになりかねない作戦ね…。」

 

オペレーターの染井(そめい) (はな)は若村の考えた作戦をそう一蹴した。

 

「うっ…。」

 

「でも転送位置次第ではいい作戦だと思うわよ。マップはそこでいいと思うわ。」

 

「…」

 

若村は作戦会議には参加せず携帯端末をいじっている香取を見て痺れを切らす。

 

「…葉子、お前も少しは作戦会議に加わったらどうなんだ?」

 

「作戦もなにもいつも通りでしょ。王子隊は戦闘を避ければいいし柿崎隊なんてまぐれで上位に上がって来ただけ。これまでだって柿崎隊に負けてないし柿崎隊と当たれば4点ゲット。これでいいじゃない。それに援護だけの人に偉そうにされたくないんだけど。」

 

「っ…あのなぁ、今シーズンの柿崎隊は今までとはちげーんだ。綾瀬川って言う化け物がいるんだよ!」

 

「はあ?1人増えたところでやることコロコロ変えて…それで勝てるって言うわけ?第一私より銃手のランク下の人に偉そうにされたくないんだけど。」

 

「なんだとてめえ!」

 

「ま、まあまあろっくん。」

 

三浦が若村を止める。

 

「3人とも。」

 

染井が切り出す。

 

 

「…時間よ。」

 

 

 

 

──

 

『さて、ステージが決定されました。香取隊によりステージは「河川敷A」に決定されました。マップの解説よろしくお願いします。』

 

『河川敷Aは真ん中に大きな川の流れる市街地という感じだ。逆サイドに渡るには中央にある橋を渡る必要がある。それ以外は他の市街地マップと違いはない印象だ。』

 

『成程。…と、転送準備が整いました。それでは転送開始…!

 

 

 

 

 

…転送完了!ステージは「河川敷A」、時刻は昼…

 

 

…天気は雨…!』

 

 

 

──

 

転送されてすぐ、レーダーを見る。

オレと同じ岸には虎太郎がいるようだ。

 

『分かれたな、じゃあこの場合は俺は文香、そっちは清澄と虎太郎だ。』

 

『『『了解。』』』

 

『バッグワーム3人つけたよ。多分今までの経験的に王子隊は全員付けてるかな?王子隊は隠密行動で合流することが多いし。初期位置から計算すると多分…清澄先輩達のところに2人、対岸、ザキさん達の方に1人王子隊がいると思う。』

 

『了解、助かる。』

 

柿崎はそう言って通信を切る。

 

『じゃあ俺たちは王子隊ですね。俺の転送位置橋が近いんで「準備」に入りますね。』

 

虎太郎の通信がはいる。

 

『分かった。じゃあオレは極力見つからないように動く。』

 

そう言ってオレはバッグワームを羽織った。

 

 

──

 

『転送位置は香取隊が有利か、橋から右に、香取隊長、若村隊員、三浦隊員が綺麗に揃った。右サイドにいるのは柿崎隊、柿崎隊長、照屋隊員、そして王子隊の樫尾隊員。右サイドは王子隊が不利か。そして一方の対岸には柿崎隊の巴隊員と綾瀬川隊員、王子隊の王子隊長と蔵内隊員が。』

 

『樫尾はどうにか王子と蔵っちと合流したいとこやな。さすがに1人はしんどいやろ。』

 

『柿崎隊は綺麗に割れて戦いやすいだろう。』

 

『ですが柿崎隊の今までの動きは合流優先だったはずですが…。』

 

風間はスクリーンに目をやると間を置いて話す。

 

『…今回は違うらしいな。』

 

『おっと、ここで右サイドに動きがあった、香取隊長が照屋隊員にしかけた!』

 

 

──

 

『隊長、香取さんがこっちに来ました。上手く捌きながらそっちに行きます。やれそうなら落としますが…射程的に厳しそうですね。』

 

『分かった。』

 

『あ、今度は2人、ザキさん達の方でバッグワームつけてそっち向かったよ。…これは分かりやすいね。』

 

『じゃあ…。』

 

『うん、多分こっち側に香取隊が揃ってる。』

 

宇井は落ち着いて分析する。

 

『そうか。文香、俺もそっちに向かう。無理はするなよ。』

 

『問題ありません。出来そうなら1人落とします。』

 

──

 

落ち着いた柿崎隊とは反対に香取隊サイドは慌てていた。

香取の単身突撃。

若村、三浦は急いでバッグワームを羽織り、香取の援護に急いだ。

 

「ちっ…また勝手に動きやがって…!」

 

若村はそう悪態を着く。

 

『相手は誰だ?』

 

『柿崎隊の照屋さんね。』

 

『こっちは柿崎さんが見えたよ。華、タグ付けといて。』

 

『分かった。』

 

『んじゃこっちに綾瀬川はいねーな。ラッキーじゃねえか。このまま柿崎隊をやるぞ。』

 

作戦通り。

若村は笑みを浮かべた。

 

 

 

「…」

 

香取のハンドガン乱射。

照屋は慌てるでもなく、ただ堅実にシールドで玉を受けていた。

シールドが割られれば反対のシールドで。

そうやって後退りながら柿崎との距離を縮める。

その立ち回りに香取ら苛立ちを見せる。

 

「ちっ…とっとと仕掛けてきなさいよ…!ビビってるわけ?」

 

「…」

 

香取は照屋にそう煽るも照屋は何も言わず、ただ弾を受けている。

 

『文香、バッグワーム付けてた2人がレーダーに写った。多分カメレオン使ったと思う!』

 

宇井からの通信で、後ろから迫る反応に照屋は警戒する。

 

『問題ねえ、俺も間に合った。』

 

 

 

 

 

「…エスクード…!!」

 

 

照屋の後ろの地面から4枚の盾が現れる。

 

武器を出すために姿を表した若村と三浦は柿崎の乱入に1歩下がった。

 

柿崎は左手にレイガスト、片手にアサルトライフルを構えて照屋と背中合わせに立つ。

 

「よう、待たせたな。」

 

「いえ。でもこれで思い切り戦えます。…守り、任せましたよ隊長。」

 

「へっ、当然だ。暴れて来い!」

 

柿崎はアサルトライフルをしまうと地面に手をつける。

 

 

「エスクード。」

 

そして照屋と香取の間にバリケードのように3つ盾が出現する。

 

それを見るや否や照屋は一気に駆け出す。

 

「葉子ちゃん!」

 

三浦は援護に入ろうとする。

 

「おっと…残念だが行かせねえ。エース対決に茶々入れんなよ。」

 

柿崎はさらにレイガストを深く構える。

 

「ちっ…!」

 

若村はアサルトライフルを乱射。

しかし柿崎はエスクードとレイガストを上手く使い射撃を捌く。

 

それを見た三浦は弧月を抜いて柿崎に接近、近接での攻撃を試みる。

 

「スラスターON...!」

 

柿崎はスラスターで応戦、若村の射線にエスクードを入れて立ち回る。

 

「ちいっ!...柿崎さん、アンタは照屋の援護に行かなくていいのかよ...!」

 

余裕があるように尋ねるが若村は内心焦っている。

香取は後先考えずに突っ込むことがよくあった。

だからこそ作戦も何もないまま突撃した香取に不安を覚えていた。

 

「文香は負けねえよ。なんたってうちのエースだからな。」

 

 

 

「っ...!!」

 

香取はハンドガンを乱射するが、照屋は上手くエスクードの影に隠れながら接近。

照屋を捉えられずにいた。

 

「ちょこまかと…正々堂々戦いなさいよ!!」

 

「あなたの言う正々堂々が分からないけど…これがチーム戦よ。」

 

キンッ…

 

 

「旋空弧月。」

 

エスクードを切り裂きながら照屋の放った旋空が香取に迫る。

 

「っ!!」

 

香取は飛び退いて旋空を躱す。

 

その隙に照屋は1つ前のエスクードに距離を詰めた。

 

『隊長、数増やせますか?』

 

『了解。』

 

柿崎は若村の射撃をエスクードの影で防ぐと地面に手を置き、照屋と香取の間にさらに3つのエスクードを生やす。

 

「ちっ、ムカつく…!」

 

射撃は不利だと感じた香取はスコーピオンに切り替える。

 

それを見た照屋はハンドガンを取り出しアステロイドを放った。

 

 

 

──

 

『照屋隊員と香取隊長の一騎打ち!柿崎隊長のエスクードを利用した照屋隊員がやや有利か!』

 

『なんやザキ、レイガストだけやなくてエスクードも使い始めたんか。』

 

『エースを攻撃に特化し自分は守りに特化…。悪くない、むしろいい案だろう。それに柿崎は隙を見て若村と三浦に仕掛けてる。』

 

『随分作戦を練ってきた動きに見えますね。』

 

──

 

ムカつく…。

 

上手く攻めきれない現状。

それも格下相手に。

 

『麓郎、あんたこっち来れないわけ?!』

 

『やろうとしてる!だがエスクードとレイガストが邪魔で…っ!!』

 

柿崎のアステロイドに若村は後ずさる。

 

「っ…!」

 

文香は余裕を持った表情でこちらにアステロイドを放ち続けている。

 

「…その余裕そうな顔…歪ませてやる…!!」

 

アステロイドが止んだ途端、香取は飛び出し、ハンドガンとスコーピオンを構えかけ出す。

牽制でアステロイドを放ち、照屋がエスクードに隠れた隙にさらに距離を詰める。

 

 

 

 

「…メテオラ。」

 

ここで照屋も仕掛ける。

 

メテオラで香取の隠れたエスクード目掛けて爆撃。

2人の視界は土埃に包まれる。

それに合わせて照屋には視覚支援が。

 

うっすらと見えた弾丸の光に香取はシールドを張りアステロイドを受ける。

そして香取にも視覚支援が。

 

 

目に飛び込んだのは弧月を抜刀した照屋の姿。

 

「っ?!」

 

どうにかスコーピオンで受けるも、スコーピオンは折られてしまう。

 

「このっ…!!」

 

ハンドガンを照屋に向けるがそれに合わせて2人の間にエスクードが現れた。

 

 

 

 

 

…そして地面から現れた刀身。

 

 

香取の右足が切り飛ばされた。

 

 

 




トリガーセット

柿崎国治
メイン:レイガスト、スラスター、メテオラ(アサルトライフル)、シールド
サブ:アステロイド(アサルトライフル)、エスクード、シールド、バックワーム


照屋文香
メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:スコーピオン、アステロイド(ハンドガン)、バックワーム、シールド


ザキさんの新戦法エスクードによるバリケード戦術
自分は他の隊員に援護に行かせないようにレイガスト、アステロイドで立ち回り、照屋を得意の1対1に持っていく。
エスクードは盾にもなるし、死角にもなると言うことで起用。


ちなみに王子の考えた綾瀬川のあだ名は「利根川」。
綾瀬川と言う川は、利根川水中系川ですのでそこから取ってます。


感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND5 VS王子隊、香取隊②

明日早いのでこの時間に失礼します。

そしてROUND5、2話目になりますが、ROUND5ばこの話で決着が着きます。


王子の虎太郎のあだ名なんですけど調べた感じまだ出てきていないのでオリジナルにしました。


『一方の対岸、王子隊長と蔵内隊員が合流、橋を目指し対岸へ渡る動きでしょうか。』

 

『おそらくそうだろう。樫尾は対岸に1人の状態だ。綾瀬川もバッグワームを羽織って隠れているから動きにくいだろう。』

 

『王子や蔵っちからすれば対岸の香取隊と柿崎隊の方に向かったと思うやろーしね。』

 

『成程…一方の香取隊サイド、照屋隊員により香取隊長、右足を失う大ダメージ!これは一体…?』

 

『エスクード越しのモールクロー。分かっていなければこれは避けれないだろう。香取がスコーピオンに切り替えた後の動きからしても柿崎隊は随分と作戦を練って来ているんだろう。』

 

 

──

 

「っ…!!しまった!!」

 

香取は右足を失ったことでその場に崩れる。

 

「葉子!!」

 

若村と三浦が助けに入ろうとするも、柿崎のレイガストに阻まれる。

 

 

照屋はそのまま、香取との間に現れたエスクードを切り裂き、香取に弧月を振り下ろす。

香取はその場でどうにか転がり弧月を躱す。

 

そしてハンドガンを照屋に向けるも、地面から現れた刃に、胸を貫かれた。

 

「っ…ムカつく!!」

 

そのまま光となって空に打ち上がる。

 

 

──

 

『ここで香取隊長が緊急脱出!初得点を挙げたのは柿崎隊!』

 

『あら、香取隊はここまでかもな〜。香取ちゃん一強の部隊やから香取ちゃんいなくなったらキツイやろ。』

 

──

 

「おいおい…嘘だろ、葉子…!!」

 

若村は冷や汗を浮かべ、信じられないといった様子で香取の居なくなった地面を見る。

 

「ろっくん危ない!!」

 

「っ?!」

 

柿崎から放たれたアステロイドをどうにかシールドで受ける。

 

『2人とも一旦引いて。』

 

染井の通信が入る。

 

『このまま引き下がれってのか?!』

 

若村は声を荒らげる。

 

『冷静になって。柿崎隊がもう1人こっちに向かってるかもしれない。葉子を落とされた2人で柿崎隊の連携に勝てるって本気で思ってるの?』

 

『行こう!ろっくん!!』

 

「っ〜!!クッソが…!!」

 

若村、三浦はフルガードに切り替えて走り出す。

 

 

 

『よし、予想通りだ。文香、行くぞ。』

 

 

『…了解。』

 

2人は焦ることなく2人を追いかけた。

 

 

──

 

『今の緊急脱出は?』

 

『香取隊の香取さんね。柿崎隊の得点になったわ。』

 

王子の質問に王子隊オペレーター、橘高(きったか) 羽矢(はや)は答えた。

それを聞いて王子は足を止める。

 

(カトリーヌが柿崎隊に?まさか利根川はそっちにいるのかな?)

 

『照屋さんの得点よ。』

 

『てるてるの?』

 

その言葉に王子はさらに考える。

 

『なるほど、腕を上げたって訳か。だったらカシオを早く迎えに行こうか。』

 

『今橋の手前に着きました。ここで合流してこちら側の柿崎隊に仕掛けましょう。』

 

『!、気をつけて!橋に誰かいる。』

 

『…僕も見えたよ。あれは…』

 

橋には弧月を構えた巴が立っていた。

 

『巴タイガーだね。逃げ遅れたのかな?丁度いい、1点もらおうか。カシオ挟み撃ちだ。』

 

『気をつけてね、綾瀬川くんがどこにいるか分からないから。』

 

『了解。見た感じ橋にはいなそうだけどね。』

 

通信を切り王子、蔵内は駆け出す。

 

巴は焦ったように左右を見て慌てふためく。

 

王子隊はスピードを挙げ、巴に接近。

蔵内の射程と言う所まで来ていた。

 

 

 

──

 

『…真登華先輩、清澄先輩、今です!』

 

『了解。』

 

『了解!

 

 

 

 

 

…ダミービーコン、起動…!!』

 

──

 

『こ、これは!橋の上に柿崎隊全員の反応が?!』

 

『ダミービーコン。虎太郎は元々ダミービーコン入れとったはずやからそれやろ。』

 

──

 

『ダミーだ!なんのつもりかは知らないけど巴タイガーは見えてる。騙されずに行こう。』

 

『王子くん待って!1つ、トリオン反応が重なっている場所がある!!』

 

レーダーに記された箇所。

確かにそこだけ反応が重なっている。

 

『でも隠れる場所なんて…』

 

王子はそこで気付く、ダミービーコンは不自然に橋の支柱の周りに散らばっている事に。

 

 

『上だ!!』

 

そう言って上に視線をやる。

 

 

しかしそこには誰もいない。

 

 

 

 

 

 

…キンッ…

 

抜刀の音が響く。

 

それと同時に注入されたトリオンが切れ、ビーコンは落下。

起動時間わずか5秒。

目の前にいる巴と後ろに現れた存在の2つのトリオン反応だけが残る。

 

後ろに目をやると先程まで誰もいなかった場所に弧月を構えた綾瀬川が。

 

 

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

王子は何とか反応、間一髪でそれを避ける。

 

しかし、蔵内は反応出来ずに真っ二つに切り裂かれてしまった。

 

 

──

 

『蔵内隊員緊急脱出!!柿崎隊、綾瀬川隊員の得点となった!!』

 

『なんやこれ?誰も居ないところから急にきよぽん現れよったで?』

 

生駒は訳が分からないと言ったように首を傾げた。

 

 

──

 

『すまん、1人逃した。』

 

『問題ないです、射手の蔵内さんを落とせましたから!畳み掛けましょう!』

 

『ああ。』

 

頼もしい虎太郎の合図で2人は王子に切りかかる。

 

「この!!」

 

反対から詰めてきた樫尾がこちらに向かってハウンドを放った。

 

 

 

 

 

 

『…アカンやろ、そこは。

 

 

 

 

 

 

…きよぽんの射程や。』

 

 

 

 

 

 

「カシオ!離れるんだ!!」

 

虎太郎はグラスホッパーで空に飛び上がる。

王子も何とか橋から川に落ちることで離脱する。

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

 

グラスホッパーで虎太郎が飛び退いたと同時に、オレの放った旋空が、樫尾目掛けて放たれた。

 

「くっ…そ…!!」

 

樫尾との距離は26m。

その距離を通り抜けた旋空は樫尾がガードをする暇もなく切り裂いた。

 

 

──

 

『樫尾隊員もここで緊急脱出!!綾瀬川隊員がさらに得点を挙げた!』

 

『やっぱなっが。イコさん特技取られてますやん。』

 

『なんでや!まだ俺の方が長いやろ!』

 

『一気に2人を失った王子隊長は川へエスケープ。柿崎隊は一気に3得点、独走状態となった!』

 

『て言うか結局きよぽん出現マジックのカラクリはなんなん?』

 

生駒は尋ねた。

 

『…大体の見当は着くが…ここで言うのはフェアじゃないだろう。』

 

『なんでやー!風間さんケチやなー。』

 

 

──

 

「王子先輩を逃がしましたね…。」

 

「問題ないだろ。離れたところで離脱するんじゃないか?…まあ仕掛けてきたところでこっちには2人残ってる。…そろそろ隊長達がこっちに来る頃だ。」

 

「そうですね。俺は行きます。」

 

そう言って虎太郎はバッグワームを羽織った。

 

「じゃあオレはここで。っと…見えたな。」

 

目をやると川の岸に柿崎と文香から逃げる若村、三浦の姿が。

 

 

 

炸裂弾(メテオラ)変化弾(バイパー)変化炸裂弾(トマホーク)。」

 

 

 

──

 

『爆撃警戒!2人とも、合成弾よ!』

 

「おいおい嘘だろ…!!」

 

若村、三浦の2人はその場に止まり、2人で固定シールドを張り、何とかトマホークを受け切る。

 

爆風に包まれる中、バッグワームを着た巴と、照屋が2人に切り掛る。

 

「くっそ…野郎が!!」

 

若村はアステロイドを乱射。

しかし視覚支援のある2人は颯爽とその中を駆け抜ける。

 

「まず1点。」

 

巴の弧月が三浦の胸を貫いた。

 

「クソ…!!」

 

若村は爆風からどうにか巻いて外に出る。

 

しかし弧月を構えた綾瀬川がすぐそこに迫っていた。

 

「ちくしょう!!」

 

最後の最後フルアタックに切り替え、綾瀬川向けてアサルトライフルを乱射。

 

だが、単調な動きを綾瀬川が見切れないはずもなく、躱され接近を許した。

 

 

 

 

…が、ここで綾瀬川はその場を飛び退く。

 

そして何者かのハウンドが若村に刺さった。

 

「ごめんね利根川。うちにもポイント分けてくれると嬉しいかな。」

 

川から上がってきた王子。

そこから放たれたハウンドが若村を落とした。

 

「利根川?オレは綾瀬川ですが…。」

 

「細かいことは気にしない。もう1点、貰ってくよ…!!」

 

王子は片手にスコーピオン、もう片方の手に弧月を構えて切りかかる。

 

『2人とも近づくなよ、置き玉もある。』

 

綾瀬川は冷静に分析しながら王子の攻撃を捌く。

 

「2人が寄ってこないって事は置き玉もバレてるね…。やられたよ利根川。」

 

「バイパー。」

 

王子はバイパーを警戒して覆う様にシールドを展開。

 

…だが、

 

 

 

 

『得意パターンやな。きよぽんの勝ちや。』

 

 

 

 

「そう来ると思ったよ。個人戦のログはよく見てるよ。」

 

王子はシールドを張りながらその場に倒れ込み、旋空を避ける。

 

「いいんですか?オレだけじゃないですよ。柿崎隊は。」

 

下から現れたエスクード。

オレはそれを利用して飛び上がる。

 

「旋空弧月。」

 

照屋から放たれた一手。

 

王子はシールドごと切り裂かれた。

 

「やるね、てるてる。僕の…僕らの負けだ。」

 

 

 

 

 

『ここで試合終了!7対1対0!圧倒的点差で柿崎隊の勝利となります!!』

 

『つっよ。まともにやり合いたくないわ、柿崎隊。…何してるんです?イコさん。』

 

水上は顔を覆って恥ずかしそうにしている生駒に尋ねた。

 

 

 

『ドヤ顔できよぽんの勝ちやとか言ってもた!実際は王子躱したのに…!照屋ちゃんの点になったのに…!』

 

 

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 2P

巴 1P

綾瀬川 2P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

 

王子隊

 

 

王子 1P

蔵内 0P

樫尾 0P

 

合計 1P

 

 

香取隊

 

 

香取 0P

若村 0P

三浦 0P

 

合計 0P

 

 

 

 

『さて、今回の結果を受けて柿崎隊は暫定ではありますが2位に順位up!夜の部の結果次第ではこのまま暫定2位に食い込むことになります。』

 

『やっば。イコさん俺ら抜かされましたやん。』

 

『やばいな。柿崎隊やばいな。』

 

『さて、解説の皆さん、総評をお願いします。』

 

『いやー、柿崎隊の新戦術モリモリやったなー。ザキのエスクード+照屋ちゃんのエスクード越しのモールクロー、そんできよぽんと虎太郎の出現マジックやろ?王子隊と香取隊は負けてもしょうがないやろ。実際王子は1点取ってるしよくやったと思うで?』

 

『香取隊、王子隊は常に柿崎隊に振り回されていた。文句なしの柿崎隊の勝利だ。』

 

『なるほど…。』

 

『そんで風間さん、結局きよぽんの出現マジックの種教えてくれへんの?』

 

『言っただろ。フェアじゃないと。知りたければ本人に直接聞け。』

 

『ケチぃ。』

 

『イコさんの「ケチぃ」誰にも需要ないっすよ。気持ち悪いし生駒隊の恥なんでとっとと帰りますよ。』

 

『…言い過ぎやない?』

 

『それではB級ランク戦ROUND5上位昼の部を終了します。ここまでの実況は片桐隊の結束でした。』




各キャラからの印象&各キャラへの印象

王子一彰→やられた。
蔵内和紀→わけもわからず落とされた。無理。
樫尾由多嘉→このっ!!

王子一彰←利根川?…利根川?
蔵内和紀←作戦を考える中で1番先に落としたかった。
樫尾由多嘉←…いたのか?


虎太郎のあだ名は「巴タイガー」です。巴+虎太郎の虎から取って「巴タイガー」です。


さて、綾瀬川くんと虎太郎の出現マジックの種ですが…


クイズ形式にしようかと。
次の話で種明かしをするので感想に予想を書いてみてください。
まあ分かると思いますけど…。
ヒントとして2人のトリガーセットを載せておきます。


綾瀬川清澄
メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:バイパー、カメレオン、バッグワーム、シールド。


巴虎太郎
メイン:ハウンド(ハンドガン)、アステロイド(ハンドガン)、グラスホッパー、シールド
サブ:弧月、ダミービーコン(試作)、バッグワーム、シールド



感想、評価等お待ちしております。


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ROUND5を終えて (BBF風キャラ紹介)

本編の前にまず皆様にお詫びを。

前回の最後に綾瀬川出現マジックについてクイズ形式にして、正解は次の話で、的なことをしたんですが何をとち狂ったのか1人の読者様が答えてくれた回答に偉そうに採点までして「惜しい」だとか「ほぼ正解」だとかネタバレ紛いのことをしてしまいました。
言い訳をさせていただきますと、普通に寝ぼけてうっかりです。
言い訳もクソも無いですが。

解答を楽しみにしてくださっていた方本当に申し訳ございません。
解答については本編で王子くんの口から解説していただきます。


さて、本編ですが、最後の方に前回ちらっと告知していたBBF風の人物紹介を載せております。
長い線で区切られているところからですね。
暇な時にでも目を通していただけると嬉しいです。


王子隊作戦室

 

「やられたね。」

 

「何も出来ずにやられた。こうも圧勝されるとさすがに傷つくな…。」

 

王子の言葉に蔵内は顔を伏せた。

 

「俺も…迂闊でした。綾瀬川先輩の旋空の長さは警戒すべきだったのに…!」

 

「あれは仕方ないよ。僕も避けれたのが奇跡だったと思ってるし。」

 

悔しがる樫尾に王子はそうフォローした。

 

「王子くん、結局綾瀬川くんが急に現れたカラクリ…王子くんは気づいてるの?」

 

オペレーターの橘高が王子に尋ねた。

 

「憶測だけどね…。まず転送位置。僕とクラウチがいた場所には利根川と巴タイガーも来ていた。中でも巴タイガーは橋に近い場所だったんだろうね。僕らは最速で合流したはずなのに準備は整っていたから。」

 

「その準備っていうのは…ダミービーコンの事か?」

 

蔵内は王子に尋ねた。

 

「それもあるけど…利根川も既に橋にたどり着いていたんだ。僕らみたいに合流の時間は取られなかったからね。」

 

「でも、橋には巴くんしかいなかったはず…。」

 

樫尾は顎に手を当てて考える。

 

「そこに利根川の出現マジックのカラクリがある。もう一度言うけどこれはあくまで憶測だ。…橋にいた巴タイガーはまず橋の中央、橋の支柱の周りにダミービーコンをばらまいた。そして巴タイガーと合流した利根川は…トリガーがかつかつのはずだから多分巴タイガーのグラスホッパーだね。支柱の上でバッグワームを羽織って待機してたんだ。」

 

「!、支柱の上?」

 

「確かに…そこなら見落としてもおかしくないわ。橋の上にいる巴くんに意識を裂かれるもの。」

 

「あとは簡単、僕らが支柱に近づいた時に内部通信で巴タイガーの合図。オペレーターのダミービーコン起動と同時に利根川はカメレオンを起動して僕らの背後に飛び降りた。そしてダミービーコンが無くなった途端あら不思議。さっきまではいなかったはずの利根川が僕らの背後から旋空を撃ってきた…って言うカラクリだと思うよ。」

 

「なるほど…。確かにそれなら説明は着く。」

 

蔵内は頷く。

 

「柿崎隊はしっかりと作戦を練っていた。あの不意打ちで僕が生き残れたのはクラウチ、君が最優先で狙われたからだろうね。旋空の位置が君寄りだった。射手で合成弾まで使う君はその後の戦闘では僕やカシオより厄介になる。そう考えたんだと思うよ。」

 

「なるほどな…警戒すべきは綾瀬川だけじゃなかったか…。」

 

蔵内は天を仰ぐように言った。

 

「どんな手を使ってくるか分からない…恐ろしい部隊だよ…柿崎隊は。」

 

 

 

 

──

 

香取隊作戦室

 

「葉子てめえ、物に当たるのやめろよな…。」

 

作戦室の机は乱雑に倒され、物は散乱している。

 

「は?何?別にそんなんじゃないんだけど。第一私が落とされたのはアンタ達がとっとと柿崎さん落として助けに来なかったからでしょ?」

 

「あのなぁ…!柿崎さんはレイガストとエスクードで守りと援護に徹してた。崩そうにも崩せなかったんだよ!」

 

「だから何?2人がかりで1人に粘られてたんでしょ?それどころか私の方…照屋への援護を許したんでしょ?何、その体たらく。」

 

香取は乱暴にクッションに腰掛けると携帯端末を取り出した。

 

「あ〜あ!私のチームメイトも柿崎隊みたいに援護が上手い人達が良かったわ!こんな地味臭いメガネなんかじゃなくて。」

 

 

「なんだとてめえ!!」

 

「葉子ちゃん、それは流石に言い過ぎだよ…ろっくんも落ち着いて!」

 

三浦が仲裁に入るも香取は無視、若村は苛立ちを露わにしていた。

 

「そうだわ。私が銃手辞めて万能手になればいいのよ。」

 

「…はぁ…?!」

 

若村は怒りを通り越し呆れる。

 

「そうすれば援護なんて必要ないし。」

 

「てめ…何を言い出すかと思えば…!!」

 

三浦はいつも仲裁してくれるオペレーターの染井に視線を向ける。

 

 

「葉子は…葉子のしたいようにすればいいと思うよ…。」

 

だが、染井は俯いてそう言うだけだった。

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「みんなお疲れ様ー!!」

 

戻って来た4人に宇井は元気よく声を掛けた。

 

「凄い凄いよ!!7点取って勝つなんて…!!」

 

「真登華のサポートがあったおかげよ。」

 

女子2人は手を取り合って喜んでいる。

 

「虎太郎の考えた作戦が上手くハマったな。」

 

「徹夜で考えた甲斐がありました!」

 

そう言って虎太郎と真登華と俺は3人でハイタッチをする。

 

「…文香、良くやったな。流石はうちのエースだ。」

 

文香の頭をくしゃりと撫でながら柿崎はそう言う。

柿崎のその言葉に文香は頬を少し朱に染め、心底嬉しそうに微笑んだ後、柿崎に向き直り、

 

 

 

 

「当然です。隊長を支えるのが(エース)の仕事ですから…!」

 

 

頼もしい表情でそう言った。

 

 

 

 

 

「…なあ、もしかして文香って柿崎さんの事…」

 

「「しーっ!!」」

 

文香に尋ねようとしたオレを虎太郎と真登華が止める。

 

「今いい雰囲気なんだから邪魔しちゃダメですよ!!」

 

「清澄先輩馬鹿ですか?!」

 

そう言って真登華に思い切り背中を叩かれる。

 

 

 

 

 

 

「…すいません。」

 

 

 

 

 

 

ROUND5の夜の部では影浦隊が4点を取り、2位の座を死守。

柿崎隊は暫定3位と言う結果になった。

 

 

 

 

──

 

「凄かったね、昼の試合。見てたのは作戦室だったけど二宮さんも釘付けになって見てたよ。」

 

そう言って辻はストローでオレンジジュースのパックを1口すする。

 

「まあ作戦考えたのは虎太郎だけどな。上手く決まって良かったよ。」

 

辻の言葉に俺はそう返した。

 

「そんな事より俺なんかと一緒でいいの?あんな圧勝したんだし今日くらいは柿崎隊でお祝いしてもいいんじゃない?」

 

「まだランク戦は続くからな。祝うのは全部終わってからにしようって柿崎さんが言ったんだ。」

 

「そっか。じゃあこれは俺からの勝利祝い。」

 

辻は自販機でいつもオレが飲んでいるお茶を買うと手渡す。

 

「ありがとう。」

 

「じゃ、俺は明日朝から防衛任務だからこれで帰るよ。」

 

「ああ、ありがとう。またランク戦誘ってくれ。」

 

「うん、じゃあね。」

 

そう言って辻は手を振り出口に歩いていった。

 

 

──

 

そのまま、自分も帰ろうと歩き出した、綾瀬川は自販機に向かって歩いてくる、2人の隊員に気付く。

1人は怒っている様子で、もう1人はそれをなだめている。

2人の隊員、香取隊の若村と三浦はこちらに気付くと止まった。

 

「…確か若村と三浦…だったよな。」

 

「よ、よう…綾瀬川。」

 

若村は凄く気まずそうに挨拶する。

 

「今日は戦う機会が無かったな。」

 

「そ、そうだね、学校では明日はよろしくとか言っちゃったけど…。」

 

オレの言葉に三浦もやはり気まずそうだ。

それもそうだろう。

昼の試合であれほど圧倒的に負けた相手なのだから。

 

「…悪かった。そんなつもりで話した訳じゃないんだ。本部で会うのは今日のランク戦以外じゃ初めてだったからついな。」

 

気まずそうな2人を見て綾瀬川はようやく理由に気付き、謝る。

 

「い、いや別に…。」

 

「オレは三輪と約束があるから失礼する。…今度ランク戦でもしよう。」

 

そう言って綾瀬川は早歩きで去って行った。

 

 

 

「ちっ…ランク戦なんかして俺らが勝てるわけねえだろ…。イヤミかよ…。」

 

若村は綾瀬川が去った後、そう零した。

 

「まあまあ、綾瀬川くんはそう言うつもりで言ってないよ…。」

 

「…分かってる…。あー…くそっ!他に当たってたらあいつの事言えねえじゃねえか!」

 

若村は自分の発言に後悔する。

 

「葉子の奴…!!」

 

そう言って若村は自分のストレスの種にもう一度悪態を着いた。

 

 

──

 

「B級3位か。A級も近い、気を抜くなよ。」

 

「分かってる。柿崎さんや文香も言ってたよ。…勝って兜の緒を締めよって言うだろ?その辺は心得てる。」

 

「…ならいい。」

 

三輪はそう言ってお茶を口に運んだ。

 

「次の相手はどうなってるんだ?」

 

「確か弓場隊、東隊、あと今回で順位を上げた那須隊とだな。」

 

「そうか。今のお前には頑張れと言うのも野暮だな。」

 

「そんな事ないぞ。応援は普通に嬉しい。ありがとう。」

 

「ふん。」

 

オレの言葉に三輪はお茶を1口飲むと顔を逸らした。

 


 

 

BBF風キャラ紹介

 

 

 

 

綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)

 

 

『…古参なんで。』

 

 

PROFILE

ボジション:射手(シューター)万能手(オールラウンダー)

年齢:17歳

誕生日:10月20日

身長:177cm(よう実では176cm1学年進んでるので。)

血液型:不明

星座:みかづき座

職業:高校生

好きな物:みんなと食べる食事、小南のカレー

 

 

 

 

FAMILY

 

RELATION

三輪秀次←同期。気の許せる友人。

柿崎国治←隊長。

辻新之助←友人。

出水公平、米屋陽介、緑川駿←ランク戦仲間。

小南桐絵←師匠(小南の自称)。

城戸正宗←ただならぬ関係。

 

 

 

 

PARAMETER

入隊時

トリオン 5(7)※1

攻撃 5

防御・援護 5

機動 5

技術 5

射程 5

指揮 5

特殊戦術 2

TOTAL 38(40)

 

※1

サイドエフェクトを隠すために城戸司令にわがまま言って改竄。()の中が正確な数値。

 

 

 

現在

トリオン 5(7)※1

攻撃 9

防御・援護 7

機動 6

技術 9

射程 4(8)※2

指揮 5

特殊戦術 4

TOTAL 49(55)

 

 

※2

()の中はイーグレット使用時。

 

 

 

SIDE EFFECT

 

『情報の調律』

五感から認識した情報を調律し、要らない情報、必要な情報を取捨選択。

1つの情報に対して脳をフル活用することで、その情報からその物の未来演算などを可能にする。

使用者本人の動体視力や判断力、身体能力に依存するため、使い勝手の難しいサイドエフェクト。

 

 

TRIGGER SET※いつも使ってるトリガーセット

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド

サブ:アステロイド、バイパー、バッグワーム、シールド

 

その他

イーグレット、グラスホッパー、ハウンド、スコーピオンなど、ランク戦の相手チームや作戦に合わせて組み替える。

 

 

〈おまけ〉

 

コミック裏カバー風のキャラ紹介

 

 

舐めプマシーン あやせがわ

 

実は本当の実力の半分も出していない可能性もあるとかないとか。

はたまた本気は出したくても出せないとの噂もあるとかないとか。

表情に驚くほど変化がなく喜怒哀楽が分かりづらい。

特殊な環境で育ったためか、美味しい物には目がなく、外食が多かったが、城戸さんの一喝で節約。

料理を始めました。

小南のカレーを食べてる時は無表情だが幸せそうなオーラが溢れている(らしい)。

美味しそうにカレーにがっつく姿は小南の母性本能をくすぐった(らしい)。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

王子一彰→やられたよ。利根川。
蔵内和紀→何も出来なかった。生駒さん並の旋空の鋭さ。
樫尾由多嘉→先輩なのにこのっ!!とか言ってごめんなさい。
若村麓郎→当たって悪かった。絶対に勝てなそう。
三浦雄太→強い。絶対に勝てなそう。

王子一彰←利根川ってあだ名?止めてください。
蔵内和紀←警戒してた。なんだかんだ射手は残しとくと面倒。
樫尾由多嘉←ああ、あの時のハウンドの。忘れててごめん。いい子そう。
若村麓郎←空気を読まずにすまん。メガネ。
三浦雄太←空気を読まずにすまん。苦労人オーラがすごい。



ROUND5終了後
1位 二宮隊 31P
2位 影浦隊 29P
3位 柿崎隊 27P
4位 生駒隊 25P
5位 弓場隊 24P
6位 東隊 21P
7位 鈴鳴第一 21P
8位 王子隊 20P
9位 荒船隊 19P
10位 那須隊 19P
11位 香取隊 17P
12位 漆間隊 16P
13位 諏訪隊 16P

BBF(風)は次回かその次に柿崎隊のメンバーの分と柿崎隊全体についてのやつをやろうと思ってます。

感想、評価等よろしくお願いします。


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ROUND6に向けて

投稿遅れましてすいませんです。

後めちゃくちゃどうでもいい話なんですがこの度Twitterを開設致しまして。
と言っても投稿報告する用のアカウントなんですけどね。
良ければフォローしてやってください。
アカウント
⤵︎ ⤵︎
@a_tom_u





──トリオン供給機関破損、影浦、緊急脱出。ランク戦終了6-4、勝者、綾瀬川。

 

 

 

「ふぅ…。」

 

一息ついて起き上がる。

 

ROUND5翌日。

日曜日の為、学校は休みだ。

いつも通りランク戦ブースに顔を出したオレは暇そうにソファに座っていた影浦に絡まれ、勝負を挑まれた。

 

スコーピオンを2つ繋ぎ合わせた荒業『マンティス』か…。

サイドエフェクトがあっても避けるのは至難の業だな。

 

そんなことを考えながら戻ると、既に戻っていた影浦とその隣にはNo.4攻撃手の村上が立っていた。

 

「よう、綾瀬川。」

 

「どうも。」

 

「カゲとやってたんだな。」

 

「ランク戦ブース入った途端絡まれたんで。不本意ながら。」

 

村上の言葉にオレはそう返した。

 

「カゲに勝つなんて凄いな。」

 

「いや、No.4攻撃手にそんな事言われても。」

 

「…」

 

オレのその言葉に村上は黙る。

 

「?、どうしました。」

 

「確かに俺はNo.4攻撃手だが…カゲに勝ち越した事はない。」

 

「…いやいや、No.4攻撃手でしょ。影浦先輩個人ポイント6000くらいしかないですよ。」

 

「ああ?!」

 

オレのその言葉に影浦はオレを威嚇するが村上は無視して続ける。

 

「こいつはこう言う性格だからな。上と問題起こしてポイント没収喰らってる。確か-8000…だったか?」

 

「…ケッ…」

 

影浦は目を逸らしてそう言った。

 

「実力はマスタークラスどころか10000ポイント越えだ。」

 

「…」

 

「そのカゲに勝ったんだ。凄いことだろ?俺が勝てないカゲに…だ。」

 

「そうっすね。」

 

オレのその言葉に村上は笑みを浮かべる。

 

「…だとすると俺がお前に9-1で勝てるのはおかしいよな?」

 

「相性の問題でしょ。オレには影浦先輩のサイドエフェクトが効かないらしいですよ?」

 

そう言ってオレは影浦に視線を向けた。

 

「…ハッ、確かにそうだな。

 

 

…だがそれだけじゃねえ。こいつは体術も1級品だ。生身の戦闘だったらウチのゾエより…いや、玉狛の木崎さんより動けんじゃねえか?もし俺のクソサイドエフェクトがこいつに機能したとしても俺はこいつに勝てるかは分からねえ。」

 

「…って言ってるが?」

 

「それなら村上先輩も弾トリガー使えば勝てるんじゃないですか?バイパーとかオススメですよ。」

 

「リアルタイムで弾道を引けるのは3人しかいないらしいな。

 

 

…お前含めて。」

 

「…村上先輩の鋭い旋空ならスコーピオン壊せるでしょ。」

 

「そういえばお前の旋空は長く伸ばせたな。最大射程35mだったか?」

 

逃げ道が少なくなってきたな…。

 

「…何が言いたいんです?」

 

「分かってるだろう?…ランク戦をしよう。本気のお前とやってみたい。」

 

よく見るとギャラリーも集まってきている。

 

「次は生駒隊とやるんだ。生駒さんを想定した練習相手は中々見つからなくてな。」

 

「ンなもんこいつしかいねーだろ…。」

 

影浦は呆れたようにつっこんだ。

 

「…いや、この後作戦会議あるんで。」

 

「時間は取らせない。1本だけでいい。カゲと10本やる時間があるんだ。俺とやっても大丈夫だよな?」

 

どうやら逃げ道はないらしい。

 

 

──

 

「どうして!手を!抜いてるんだ?」

 

そう尋ねながら村上の連撃はさらにスピードが上がる。

 

「…知ってるからですよ。あなたが『強化睡眠記憶』のサイドエフェクトを持ってるって。そりゃそんな相手に手の内は晒さないでしょ。」

 

そう言いながら村上の弧月を受ける。

 

「俺だけじゃないだろ?最初は緑川や米屋にも手を抜いていただろ?どうしてなんだ?」

 

「…オレをあいつらみたいな戦闘狂と一緒にしないでください…。手を抜いていたんじゃなくて相手の動きに慣れていただけです。」

 

「どうかな。」

 

村上が少し距離を取り溜めた一撃を切り出した。

 

「お前の戦闘スタイルはかなり戦闘狂っぽく見えるぞ。」

 

右手に弧月、左手にトリオンキューブを構えるオレを見て村上は笑みを浮かべる。

 

「…心外です。」

 

トリオンキューブはオレの周りに散らばりながら浮くと光り輝く。

 

「バイパー。」

 

レイガストとシールドで防ぎながら村上は下がる。

 

それを見るや否やオレは抜刀の構え。

 

「旋空弧月。」

 

村上はレイガストを構える。

 

しかし旋空は放たれることなく、オレの後ろのトリオンキューブが輝く。

放たれたバイパーは村上のレイガストを躱して村上に襲いかかった。

 

「なるほど、これがお前の勝ちパターンか。確かに攻略は難しそうだ。」

 

そう言って村上は緊急脱出した。

 

 

 

 

「確かにサイドエフェクトが効かないならカゲが負けるのも頷ける。強いな、綾瀬川。」

 

「どうも。」

 

オレが短く答えると村上は笑みを浮かべる。

 

「今の動きはもう憶えた。次は負けない。またやろう、綾瀬川。」

 

「勘弁してください…。」

 

そう言いながらオレは差し出された村上の手を取った。

 

 

──

 

「清澄先輩。この後玉狛行くんですけど清澄先輩も来ますか?」

 

作戦会議を一通り終えた後、文香がオレに尋ねた。

 

「いや、遠慮しとく。駿と辻とランク戦の約束があるんだ。」

 

「そうですか。でもそろそろ顔出してあげてくださいね?昨日小南先輩に清澄先輩は来てないのか聞かれましたから。あの感じじゃ明日くらいにはぐずり始めますよ。」

 

後輩に散々な言われようだなあいつ。

 

「了解。近いうちに顔出すよ。」

 

 

 

 

 

ランク戦ブース

 

いつも通り駿が待っているであろう場所に向かうと、そこには駿、辻の他に2人の女性隊員が立っていた。

那須隊の那須と熊谷だ。

 

「お、やっと来たわね。綾瀬川。」

 

「あ、綾瀬川くん…!」

 

辻は駆け足でオレの元によってくるとオレの後ろに隠れる。

 

「…何したんだ?」

 

「ふふ、綾瀬川くんが早く来ないから辻くんで遊ん…辻くんとお話してたのよ。」

 

今遊んでたって言いかけなかったか?

 

「あんまりからかってやるなよ…。それで?なんで2人はここにいるんだ?」

 

「綾瀬川くんを待ってたの。明後日のランク戦の前に綾瀬川くんと戦っておきたくて。」

 

「それは構わないが…。」

 

そう言いながらオレはオレにしがみついて隠れている辻に視線を向ける。

辻は全力で首を横に振った。

 

「…駿、辻とランク戦でもしてきたらどうだ?」

 

「そうだね。つじセンパイとは今日一勝一敗だし!100本勝負でもする?」

 

辻は全力で首を縦に振ると、熊谷、那須と目を合わせないように緑川の方に向かう。

 

「辻くん!」

 

唐突に話しかけられ辻は肩を弾ませる。

 

 

「またお話しましょうね。」

 

 

「…は、ははは…はぃ!!」

 

そう言って辻は走り出す。

 

「あ!待ってよつじセンパイ!!あやせセンパイ、後で俺ともやってよね!」

 

「ああ。」

 

「ふふ、仲良いのね。」

 

「…まあな。時間も惜しい、始めるか。」

 

──

 

「見たよ、綾瀬川くん。ROUND5でトマホーク使ってたの。」

 

「…合成弾は一通り出水に習ったからな。」

 

そう言いながら2人は向かい合い、トリオンキューブを作り出す。

 

「…私ね、生まれつき体が弱くて…運動なんかはやらせて貰えなかった。近所の子達が楽しそうに鬼ごっこなんかしてるのを見てると羨ましくて堪らなかったわ。…そんな時にボーダーについて知ったのよ。」

 

そう言うと那須は手を広げて自分の体に目をやる。

 

「このトリオン体なら私は自由に動ける。ボーダーに入ったおかげでくまちゃんだけじゃなくて茜ちゃん、小夜ちゃんにも会えて…今がとっても楽しいの。…私は今のチームが好き。このチームで上に行くために柿崎隊…いえ、綾瀬川くん、あなたには負けない。」

 

「…まあオレも勝ちを譲る気は無い。」

 

一拍置いて2人のトリオンキューブが光り輝く。

 

「「バイパー。」」

 

2人の声が重なると一斉にバイパーが放たれた。

 

 

──

 

「そういえば綾瀬川くんと撃ち合うのは久しぶりだったわ。」

 

「…まあお互い忙しかっただろ。…ほら。」

 

そう言ってオレはお茶を那須に手渡すと隣に座る。

 

「ありがとう。優しいのね。」

 

「女子の前で格好付けたいだけの男だと笑ってくれてもいいぞ。」

 

そう言ってオレはお茶のキャップを開けると1口飲む。

 

「そんな事ないわ。ありがとう。…綾瀬川くんとこうやってちゃんと話すのは初めてだね。」

 

「そうだな。」

 

「くまちゃんからよく聞くの。学校では出水くん達とバカやってるって。」

 

「バカやってるのは出水と米屋だけなんだがな…。」

 

オレがため息混じりに言うと那須は笑う。

 

「ふふ、いいなぁ…。私はあまり学校には行けないから。」

 

那須は上を見ながらそう言った。

 

「私ね、ボーダーでトリオンを使った治療の研究に協力してるの。」

 

「…そういえばテレビにも出てたな。」

 

「うん。研究が上手く進めば私もみんなと一緒に学校に行ったり、色んな物直接見たり触ったり出来るから。」

 

「…健康体のオレが言うのも筋違いかもしれないが…良くなるといいな。応援してる。」

 

「うん、ありがとう。」

 

 

「おーい、玲〜。戻って作戦会議!」

 

「うん、今行くね、くまちゃん。」

 

熊谷に呼ばれ那須は立ち上がる。

 

「今日は付き合ってくれてありがとう。ROUND6、楽しい試合にしましょうね。…次は絶対に負けない。」

 

「…そうだな。こっちも負けてやる気はない。」

 

「楽しみにしているわ。」

 

そう言ってオレは差し出された那須の手を取った。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

影浦雅人→強い。戦いがいがある。
村上鋼→強い。手加減してたな?
辻新之助→友人。女子とあんなに話せてすごい。
那須玲→ライバル。優しいのね。

影浦雅人←マンティスやべえ。8000点没収って。
村上鋼←警戒。やばいサイドエフェクト。
辻新之助←友人。女子苦手だからって俺にしがみつくな。
那須玲←色々大変だな…。話上手だし聞き上手で話しやすい。


BBF風は次の話でやろうと思います。

これからも読んでいただけると嬉しいです。


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ROUND6前日(BBF風人物紹介)

遅くなり申し訳ございません。

最後に柿崎隊のBBF風の紹介を乗せてあります。
暇な時に見てみてください。

今回なんですがお試しで特殊フォントを使ってみました。
揺れて動くやつです。
お試しなので違和感等あれば教えて欲しいです。
好評であれば使います。
不評であればやめます。



「今日も本部行くだろ?」

 

授業を終えた放課後。

出水がオレに尋ねてきた。

 

「ああ、明日はランク戦だからな。」

 

「んじゃ一緒に行こーぜ。米屋、お前も行くだろ?」

 

「もちろん。緑川と100本やる約束してんだ〜。」

 

「はは、相変わらずの戦闘狂だな。」

 

「…オレも最後の調整が終わったらランク戦ブースに顔を出すつもりだ。暇だったら誘ってくれ。」

 

「OK。」

 

 

──

 

「そういえば清澄って銃手トリガーは使えないのか?」

 

連携の練習を終えたあと、柿崎がオレに尋ねた。

 

「使えないかで言ったら使えますよ。ただトリオンキューブの方がオレには合ってるってだけです。入隊して1週間くらいは今の虎太郎みたいにハンドガンと弧月でやってましたから。」

 

「ほえ〜、さすが清澄先輩なんでも出来る〜。」

 

「器用貧乏なだけなんだけどな…。」

 

「清澄先輩が器用貧乏なら殆どの万能手が器用貧乏ってことになりますよ…。」

 

虎太郎は呆れたようにそう言った。

 

「そういえば虎太郎は万能手目指してたな。どんな感じだ?」

 

「弧月がもうちょっとなんですけど…。…すいません。」

 

そう言って虎太郎は謝る。

 

「別に焦ることないだろ。オレだって入ったばっかの頃は射手だったし、銃手が弧月使っちゃダメなんてルールないしな。逆に万能手名乗らない方がランク戦では有利だろ。」

 

オレのその言葉に他の4人は頭に疑問符を浮かべる。

 

「有利って…何がですか?」

 

文香が尋ねる。

 

「簡単な話だ。荒船さんなんかがいい例だな。狙撃手が弧月を急に抜けばびっくりするだろ。…どの生物にも言えることだが…有利な対面ほど人間っていうのは油断する。狙撃手相手に近づけば勝ちを確信するだろ?そんな相手に弧月でのカウンター。知らないやつはまず間違いなく引っかかる。この前の文香のモールクローが生駒さんに刺さったのだって文香がスコーピオンを使うなんて思ってなかったからだ。ましてやモールクローなんて初見じゃ避けれない。」

 

「なるほど…。」

 

柿崎は納得したように頷く。

 

「それなら清澄はなんで万能手になったんだ?」

 

「オレの場合は相手の隙を増やすためですね。」

 

「隙を…増やす?」

 

真登華は訳が分からないと言ったように首を傾げる。

 

「オレは一応、遠・中・近距離全てのトリガーが使える。どのトリガーのポイントも6000超えててある程度使えるって思わせておけば相手はこっちが何を使ってくるか分からないだろ?そうすれば相手は嫌でも考える時間ができる。慎重な相手にはよく効くと思うぞ。」

 

「「「「…」」」」

 

オレの言葉に4人は黙ってしまう。

 

「?、どうしました?」

 

「いや、俺が万能手になった時はそんなこと微塵も考えなかったから…。」

 

「そうですね。私も近距離と中距離どっちも使えればいいなくらいにしか思ってなかったので。」

 

柿崎と文香は苦笑いを浮かべる。

 

「て言うかそれが普通ですよ。」

 

「…まあそうでしょうね。でも、射手でも狙撃手でも弧月やスコーピオンが使えるなら万能手って言うポジションはいらないじゃないですか。…だけど万能手って言うポジションがある…利用しないと勿体ないでしょ。勝つためなら使えるものは使う。それが俺のモットーなんで。」

 

「なんか清澄先輩が強い理由…分かった気がします。」

 

オレの言葉に虎太郎は納得した表情で頷く。

 

「清澄先輩、今度俺に狙撃手トリガー教えてください。」

 

「いや、無理。」

 

「…えぇ?!」

 

真剣な表情だった虎太郎が拍子抜けした声でそう言った。

 

「オレの狙撃はサイドエフェクトありきなんだよ…。でもまあ…基礎くらいなら教えられるか…。」

 

「本当ですか!?約束ですよ!!」

 

「ああ。」

 

嬉しそうにはしゃぐ虎太郎の頭を軽く撫でる。

そんなオレと虎太郎を見た柿崎は立ち上がる。

 

「よし、じゃあ休憩は終わりだ。ラストスパート行くか!」

 

 

その言葉にオレたちは立ち上がった。

 

 

──

 

「あ、あの…綾瀬川センパイ!!」

 

最終調整を終え、ランク戦ブースに向かう途中、後ろから声をかけられた。

 

「こんにちは…自分は弓場隊の帯島(おびしま) ユカリっスッ!」

 

「…ご丁寧にどうも。何か用事か?」

 

「あの…綾瀬川センパイの戦闘スタイルと自分の戦闘スタイル…実は似てまして…。」

 

「そう言えばそうだったな。」

 

ログの映像を思い出してそう返した。

 

「その…えっと…」

 

帯島は言い淀む。

 

 

 

 

「帯島ァ!!」

 

 

 

オレの後ろから物凄い声量で帯島を呼ぶ声が響いた。

 

「お前…何ウジウジ下向いてんだァ?まさか…

 

 

 

…ブルってんのか?テメェ。シャキッとしろやコラァ!!」

 

「スッ!!

 

 

…綾瀬川センパイ!明日のランク戦の前に、1つ手合わせお願いします!!」

 

帯島は声を張ってそう叫んだ。

 

 

「…分かったらから声量抑えてくれ…。」

 

 

 

 

 

 

「ウチの帯島がいきなり悪かったなァ。驚かせちまっただろ。弓場(ゆば) 拓磨(たくま)だ。」

 

どっちかって言うとオレはこの人の声に驚いたんだけどな。

 

「綾瀬川清澄です。」

 

弓場隊の作戦室に案内されたオレはそう自己紹介する。

 

「帯島もお前と同じでトリオンキューブと弧月を使う万能手でなァ…お前の戦いを見て痺れちまったらしい。」

 

「それはどうも。」

 

「つーわけで綾瀬川ァ…。帯島の腕見てやってくれるよなァ?」

 

サングラスを光らせて弓場はオレに顔を近づけた。

こっわ。ボーダーっていつからヤクザの入隊OKになったんだ?

断れない雰囲気だなこれは。

 

「…1本だけなら。明日やる相手にあまり手の内は晒したくないんで。」

 

「スッ!ありがとうございますっ!!」

 

 

 

──

 

「じゃあ俺が合図をする。帯島、気合い入れていけよ。」

 

「スッ。」

 

そう言って帯島は弧月を構える。

 

「…始めッ…!!」

 

合図と同時に帯島は綾瀬川に切りかかる。

それを少しの動きで避けながらトリオンキューブを2つ作り出す。

 

「この間合いでフルアタック?!」

 

帯島はさせまいとさらに距離を詰める。

 

「っ…なんで…当たらない…!!」

 

 

 

通常弾(アステロイド)通常弾(アステロイド)。」

 

 

次の綾瀬川の行動に帯島だけでなく弓場も目を見開く。

 

(これだけ距離を詰められてるのに合成弾?無防備すぎんだろ。)

 

弓場はサングラスのブリッジを押し上げる。

 

 

「ハウンド…!!」

 

帯島もトリオンキューブを生成、ハウンドを放つ。

しかし綾瀬川は引きつけると、電柱1つで防いでしまう。

 

 

 

「…徹甲弾(ギムレット)。」

 

そして合成弾は出来上がってしまう。

 

「っ?!」

 

帯島はフルガードで受けるが、貫通力の増した弾に為す術なく削り落とされてしまった。

 

 

──

 

「面白ェ。どんな反射神経してやがんだ、綾瀬川ァ。あぁ?」

 

「…逃げるのが上手いだけですよ。」

 

「綾瀬川センパイ、ありがとうございました!!」

 

帯島は頭を下げる。

 

「気にするな。…明日はよろしく頼む。」

 

「はいっス!!」

 

「じゃあオレはこれで失礼します。」

 

「…あぁ。ありがとよ、綾瀬川ァ。」

 

 

 

 

 

「帯島ァ…どうだ?」

 

「攻撃が全く当たらなかったッス。まるで未来でも見えてるみたいで…。」

 

綾瀬川が去った後弓場と帯島は綾瀬川の動きについて話していた。

 

「あいつには生駒と同じ伸びる旋空がある。俺がタイマンで相手しても勝てる保証はねぇなァ…。おもしれぇ…神田と外岡を呼べ。〆の調整すんぞ。」

 

「はいっス!!」

 

 

──

 

「へえ、遅いと思ったら帯島ちゃんとやったんだ。」

 

先程のことを緑川に話すと興味深そうに返した。

 

「弧月の一撃も鋭かったしハウンドへの切り替えも良かった。中学生なのに大したもんだな…。…ちゃん?」

 

「え、帯島ちゃんは女の子だよ?」

 

緑川の言葉に目を点にする。

 

「弓場さんの前で言うと怖いから気をつけなよ…。」

 

「…教えてくれて助かった。」

 

 

 

 

そうして翌日。

 

ROUND6当日。

 

 

弓場隊との初試合、東隊、那須隊との再戦の日がやってきた。

 

 

 


 

B級3位(暫定)

 

柿崎(かきざき)

 

B級では珍しい4人編成の部隊。

最初は万能手2人、銃手1人の3人編成だったが、射手の綾瀬川が加入。

その後、綾瀬川の活躍で着実に勝利を重ね上位入り。

照屋の攻撃手への転向もあり、現在は万能手2人、攻撃手、銃手が1人の中・近距離寄りの部隊。

照屋、綾瀬川の点取り屋を柿崎、巴がサポートする戦闘スタイル。

 

 

 

 

MEMBER※パラメーターは強化後

隊長

AR 柿崎(かきざき) 国治(くにはる)

TRIGGER

メイン:レイガスト、スラスター、メテオラ(アサルトライフル)、シールド

サブ:アステロイド(アサルトライフル)、エスクード、シールド、バックワーム

 

トリオン 7

攻撃 6

防御・援護 9

機動 5

技術 8

射程 4

指揮 7

特殊戦術 3

TOTAL 49

 

 

隊員

AT 照屋(てるや) 文香(ふみか)

TRIGGER

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド

サブ:スコーピオン、アステロイド(ハンドガン)、バックワーム、シールド

 

トリオン 7

攻撃 8

防御・援護 5

機動 7

技術 8

射程 3

指揮 5

特殊戦術 4

TOTAL 47

 

 

GU (ともえ) 虎太郎(こたろう)

TRIGGER

メイン:ハウンド(ハンドガン)、アステロイド(ハンドガン)、グラスホッパー、シールド

サブ:弧月、ダミービーコン(試作)、バッグワーム、シールド

 

トリオン 5

攻撃 7

防御・援護 7

機動 8

技術 7

射程 2

指揮 3

特殊戦術 3

TOTAL 42

 

AR 綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)

 

OP 宇井(うい) 真登華(まどか)

 

トリオン 2

機器操作 8

情報分析 7

並列処理 8

戦術 6

指揮 6

TOTAL 35(トリオンは除く)

 

 

 

PARAMETERS

遠 2

近 3

中 5

 

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

巴虎太郎→尊敬。
帯島ユカリ→戦闘スタイルが似てる。
弓場拓磨→回避能力に痺れる。


巴虎太郎←可愛い後輩。
帯島ユカリ←女の子…?
弓場拓磨←ヤクザ。怖い。


弓場隊についてですが、この頃はオールラウンダーの神田がいるので、コミックでの神田や、説明のあった弓場隊の戦闘スタイルを参考に想像で書いてみたいと思ってます。
何かアドバイスがあれば感想で教えていただけると嬉しいです。

感想、アドバイス、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND6 VS弓場隊、東隊、那須隊①

投稿致します。

あととある読者様からそう言えば上位と中位の混合戦ってあるの?と言う質問を受けまして調べてみたんですね。

そしたらねえのw←にわかやろうが。

やっべマジかって思って色々考えたんですよ。
その読者様はオリジナルで良いんでね?って言ってくれたんですけどやっぱり合わせたくて。

でも考えれば考えるほど分けちゃうと柿崎隊が上位にいることで原作が始まってからめちゃくちゃなことになってしまうのでは?
…て思ったのでこの作品では混合にさせていただきます。
原作壊すなと言う意見もあるかもしれませんがご了承いただけるとありがたいです。




『皆さんこんばんは。B級ランク戦ROUND6夜の部、元気に実況していきます。海老名隊オペレーターの武富桜子です!解説席には嵐山隊、時枝先輩と王子隊蔵内隊員をお呼びしています。』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『さて蔵内先輩。まずは上位復帰おめでとうございます。』

 

『どうも。ROUND5では何も出来ずに落とされたので汚名返上出来て良かったです。』

 

『そうですね。さて、夜の部は柿崎隊、弓場隊、東隊、那須隊の四つ巴になりますが、解説のお二方はどのような試合展開になると思われますか?』

 

『そうですね、やっぱり柿崎隊の作戦が気になるところですね。』

 

蔵内は顎に手を当ててそう答えた。

 

『ROUND5は柿崎隊の作戦にまんまとハマりましたから。今回も何か用意しているかもしれません。あとは元同じチームなので弓場隊の戦闘についても。』

 

『なるほど…。時枝先輩はどうでしょうか?』

 

『柿崎さんの戦術も気になるところですが…僕は東さんの戦術も気になるところですね。あとは那須隊長と綾瀬川隊員のバイパーでの撃ち合いでしょうか?』

 

『…と、言いますと?』

 

武富は分かっているが観覧席のC級隊員達を一瞥し、時枝に視線を向ける。

意図を察してか時枝は続けた。

 

『バイパーは予め弾道を決めてから撃つのが普通なんですが…トリオン操作に長けた人…この場合だと那須隊長と綾瀬川隊員ですね。2人のバイパーは別です。リアルタイムでバイパーの弾道を引けるため相手の動きを見てから弾道を変えられるんです。…って言っても今の所ボーダーでリアルタイムでバイパーが引けるのは3人だけ。バイパーを使いたいって人は予めいくつか弾道を用意して状況によって切り替えて使うようにしましょう。』

 

『解説ありがとうございます。…さて、マップの選択権は那須隊にあります。那須隊はどのステージを選ぶのでしょうか…。』

 

 

──

 

『さて、ここで那須隊によりステージは『市街地A』に決定!』

 

『まあ説明要らないだろうとは思いますが一応説明すると普通のステージですね。射線もある程度通るし、入り組んだ場所もある…と言った感じです。』

 

『ありがとうございます。さあ試合までは残りわずか!各隊緊張が高まってきた所でしょうか…!!』

 

──

 

那須隊作戦室

 

「今回のマップだけど…うちも柿崎隊も弓場隊も東隊も全隊が狙撃手がいる。…まあ綾瀬川くんは別だけど…。だからそこまでマップによる優位は取れないと思うの。」

 

「確かにそうね…。」

 

熊谷はそう返す。

 

「だから市街地A…普通のマップで行くわ。」

 

「了解です!」

 

日浦も元気よく答えた。

 

──

 

東隊作戦室

 

「やっぱり怖いのは弓場さんと綾瀬川先輩ですよね。」

 

奥寺のその言葉に小荒井は頷く。

 

「俺ら2人がかりでも勝てる気がしないっすよ…。」

 

そして匙を投げるように言った。

 

「確かに正面から当たればそうかもしれない。だったら正面からやり合わなければいい。」

 

東は2人の言葉を聞いてそう返した。

 

「相手、状況に応じた作戦、対策で迎え撃つ。格上の相手にどう戦うか。これもランク戦の意義の1つだ。」

 

名将は後輩2人を見て不敵な笑みを浮かべた。

 

 

──

 

弓場隊作戦室

 

「それじゃあ弓場さんがタイマンで点とって、俺らはいつも通り…ってことでいいッスかね。」

 

弓場隊万能手、神田(かんだ) 忠臣(ただおみ)は弓場にそう尋ねる。

 

「ああ。変更はねェ。相手が誰だろうと蜂の巣にしてやる。」

 

獰猛な笑みで弓場は笑う。

 

「怖いっスよ…。」

 

「弓場ァ、柿崎隊の万能手には気をつけろよ。あいつの旋空は生駒並だぞ。」

 

オペレーター、藤丸(ふじまる) ののは弓場にそう指摘した。

 

「分かってる。それにあいつは旋空だけじゃねえ。神田、トノ、帯島ァ。気ぃ張って行けよ!」

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「どこが選ばれようと俺らのやることは変わらねえ。転送位置に応じた作戦で切り開く。」

 

「清澄先輩、今回のトリガーセットはどうします?」

 

宇井が綾瀬川に尋ねた。

 

「まあ那須がいるしバイパーは確定だな…。イーグレットも入れて置いた方が良さそうだ。今回は文香か隊長と合流出来ればベストだからオレは作戦通り射手で行く。」

 

「了解でーす。」

 

「うしっ!勝つぞ…!」

 

「もちろんです。チームを勝たせるのがエースの仕事ですから。」

 

「勝ちましょう。」

 

「…そうですね。」

 

 

──

 

『転送準備が整いました…!これより転送開始…!!

 

 

 

 

…転送完了!ステージは『市街地A』時刻は昼!B級ランク戦ROUND6夜の部、スタートです…!!』

 

──

 

『さて、各隊ランダムに転送されましたが…これは弓場隊がいい位置に転送されましたね。神田隊員と帯島隊員がすぐ近くに転送されました。』

 

『外岡は狙撃手、弓場さんは単独で動くことが多いですからね。』

 

『さすが元弓場隊、お詳しいですね〜。…そして一方の東隊は少し不利か。狙撃手の東隊長が照屋隊員と那須隊長、巴隊員と弓場隊長に囲まれるような配置になってしまった!』

 

『小荒井隊員と奥寺隊員は近いですが…この状況を見てかバッグワームで合流に向かってますね。』

 

『さて、どのような展開になるのでしょうか…!!』

 

──

 

『この配置は…俺と清澄、文香と虎太郎だな。』

 

『5人バッグワームつけました。狙撃手3人と…傾向的には東隊は全員つけてると思う。』

 

真登華の通信が入る。

 

『了解だ。文香、虎太郎、気をつけろよ。俺は清澄と合流する。』

 

『了解です。こっちは近くに誰かいるみたいなんで落とせそうなら落とします。』

 

『無理はするなよ。』

 

『はい。』

 

文香と虎太郎の通信が切れる。

 

『柿崎さん、中間で落ち合いましょう。レーダー見た感じ誰もいなそうなんで。真登華、狙撃の警戒頼むぞ。』

 

『りょーかい。射線通らない道表示します。東さんは壁抜きしてくるかもなんで過信しすぎないでくださいよ。』

 

『了解だ。』

 

 

 

通信を切る。

オレは柿崎との中間地点目指して走り出した。

 

──

 

『まずは全隊合流を優先か。東隊長はすぐにバッグワームを羽織り、家屋に潜伏。上手くやり過ごすつもりか。』

 

『そうでしょうね。狙撃手は位置バレすると不利ですから。まあ東さんなら上手く逃げ切りそうな気もしますが。』

 

『そしてマップ北。神田隊員と帯島隊員が合流。そのまま西に向かう。』

 

『柿崎隊に仕掛けるつもりでしょうか。早めの合流で合流前の綾瀬川隊員を落とそうと言う動きですかね。』

 

時枝はそう分析する。

 

『でも綾瀬川はそう一筋縄では行かないと思いますよ。』

 

蔵内は笑みを浮かべてそう言った。

 

──

 

『清澄先輩、上から2人、そっち向かってるよ。』

 

『ああ、見えた。柿崎さんの方に連れてった方が良さそうだな。柿崎さん、おそらく2人こっち来ました。そっち連れていきますんで。着いたら援護頼みます。』

 

『分かった。無理だと思ったらフルガードで最速でこっちに来いよ。』

 

『了解。』

 

そう言って通信を切るとトリオンキューブを構えた。

 

──

 

『マップ南西の那須隊長も北上、南のごちゃっとした場所には向かわず、中央に配置された熊谷隊員と合流する動きか。』

 

『これは合流するとなると位置的には柿崎隊と弓場隊が戦闘している当たりでの合流になりそうですね。奇襲も有り得るかもしれません。』

 

──

 

「弓場さん、綾瀬川発見。戦闘開始します。」

 

オレの前に現れた弓場隊の神田はそう言ってアサルトライフルを構える。

隣の帯島は弧月を抜いた。

 

『柿崎さん、弓場隊でした。戦ったことない相手がいるんで急ぎめで頼みます。』

 

『分かった。』

 

「アステロイド。」

 

まずは牽制でオレが弾を放つ。

 

帯島はシールドでそれを受けると、神田のアステロイド乱射。

後ろに飛び退きつつシールドで受けると帯島か弧月で斬りかかった。

 

「っと…。」

 

少ない動きで避けると帯島は体制を低くする。

そして後ろから神田の乱射が襲いかかる。

 

神田の援護射撃からの帯島の近接、たまにハウンドを交えると言った戦い方か。

何より神田の牽制が上手いな。

 

シールドでアステロイドを受けながらオレは1歩下がり距離をとる。

 

「ハウンド!!」

 

帯島のハウンドが襲う。オレは神田の弾の起動から外れると、シールドで受けた。

 

ハウンドも合わさると面倒だな…。

 

さて…

 

オレはバッグワームを取り出す。

 

「!、バッグワーム?!」

 

帯島は警戒して1歩引く。

 

それを投げるとオレは一気に距離を詰める。

 

「ブラフだ!構えろ帯島!」

 

「はいっス!!」

 

振り下ろされた一撃、帯島は弧月で受ける。

 

「!」

 

オレの手の甲から生えた刃に帯島は目を見開いた。

 

「綾瀬川センパイの…スコーピオン?!」

 

 


 

BBF(風)付け足し

BBFを読んだ方なら分かるかと

 

綾瀬川のデータランキング

 

・ボーダー入隊時期

4年前の現ボーダー設立時

(同期は三輪とか嵐山さんとか)

 

・モテるキャラグラフ

ちょっとモテる、別にモテなくてもいいけどちょっとモテたい。

(国近と同じ辺り)

 

・キャラ別派閥グラフ

ゴリッゴリの城戸派

(1番右下)

 

・通っている高校

普通校2-B

(米屋、出水と同じクラス)

 

・成績グラフ

ど真ん中

(雷神丸と同じ位置)

 

・生身の運動能力

ど真ん中

(出水の少し左上)

 

・異性の好み

元気明るい、性格重視

(小南がいる辺)

 

()の中はBBFを持っている人が分かりやすいようにしています。

色々な情報が載っているのでオススメです。

 




ROUND6綾瀬川のトリガーセット
メイン:アステロイド、メテオラ、スコーピオン、シールド
サブ:バイパー、イーグレット、バッグワーム、シールド

不意打ちでBBF(風)の付け足しでした。

感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND6 VS弓場隊、東隊、那須隊②

昨日は出せずにすいません。
投稿致します。


『ここで綾瀬川隊員、帯島隊員に仕掛けた!これは…スコーピオン!前情報では綾瀬川隊員のスコーピオンのデータはなかったはず…。』

 

『いや、有り得ない話じゃないですよ。イーグレットだって、リアルタイムでのバイパーだって彼は情報が無かった。今更スコーピオンが出てきてところで驚きません。』

 

蔵内は真顔でそう言った。

 

『うちの王子が言っていたんですが…綾瀬川の怖いところはどんな手を使ってくるか分からないという所。バイパーを対策しても綾瀬川はバイパーで来るか分からない。そういった駆け引きをさせられるんです。こう言っちゃなんですが…

 

 

 

…正直なところ手に負えませんよ。綾瀬川は。』

 

 

 

──

 

(つっ!!鋭い…!!)

 

綾瀬川のスコーピオンの連撃に帯島は防戦一方となる。

 

「帯島!」

 

連撃の間に回り込んだ神田がアサルトライフルを向ける。

帯島はそれに合わせて飛び退いた。

 

そしてアステロイドが綾瀬川向けて放たれる。

 

綾瀬川は動かない。

 

 

アステロイドが綾瀬川に当たるその直前に綾瀬川の目の前に地面から盾が現れる。

 

そしてレイガストを構えた柿崎が綾瀬川と神田の前に躍り出た。

 

「…遅かったっすね。」

 

「生意気なエースだな…。外岡が怖くて遠回りしたんだよ。てか少しは守る素振り見せろよ。間に合わなかったらどうするんだよ?」

 

柿崎は呆れるように尋ねた。

 

「?、間に合わせたでしょう?隊長なら。」

 

「…嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。」

 

柿崎は綾瀬川の頭を乱暴に撫でた。

 

「じゃあ次はお前の番だぜ。…好きに動け。サポートする。」

 

「…了解。」

 

綾瀬川はトリオンキューブを2個生成、フルアタックの構えをとった。

させまいと帯島、神田はハウンドを放つ。

 

それを見た柿崎はエスクードを2人を囲むように生やした。

 

──

 

『ここで柿崎隊長が乱入!!エスクードによるサポートに入った!』

 

『ROUND5でも似たような動きがありましたね…。ですが今回は綾瀬川隊員。直感ですけどこれは弓場隊…なにか策を打たないとまずい気がします。』

 

──

 

「帯島、一旦引くぞ。」

 

同様の直感を神田も抱いていた。

 

「でも…!」

 

「今は下がれ。トノがいい場所取るまでは引き気味に行くぞ。…やばいのが来る気がする。」

 

その言葉と同時にエスクードの上からトリオンキューブが姿を見せた。

 

「やべえ…帯島!!」

 

そのまま大量に分割され放たれる。

 

「っ…!!」

 

「!、帯島!メテオラだ!」

 

弾速を見て神田が帯島を引っ張った。

放たれたメテオラは地面を抉る。

 

綾瀬川はエスクードを飛び越えると爆風をぬけてスコーピオンで切りかかる。

 

「女子にしてはいい太刀筋してるな…。」

 

帯島の弧月を受けながら綾瀬川はそう零した。

 

「…隊長。」

 

「ああ、スラスターON…!」

 

綾瀬川はそれに合わせて、スコーピオンを消す。

 

「あっ…!!」

 

弧月で押していた帯島は力を受け流され、前に倒れ込む。

そして綾瀬川は倒れるように視界から消えたかと思うと帯島の弧月を蹴り上げた。

 

急いで体制を立て直した帯島の視界に飛び込んだのはシールドモードの状態のレイガストを構えた柿崎が物凄いスピードで突進してきている光景だった。

 

「帯島!!」

 

トラックにはねられたような衝撃を受け、帯島は宙を舞う。

 

「くそっ…!!」

 

神田はすぐに綾瀬川にアサルトライフルを向けるが、分断するように5つエスクードが横並びに現れる。

 

「ハウンド!!」

 

神田は冷静にアサルトライフルを上に向けハウンドを放つ。

 

「こっちは気にすんな!帯島を取れ!」

 

「…了解。」

 

綾瀬川はスコーピオンを構えて、突き飛ばされた帯島に切りかかる。

 

「っ…ハ、ハウンド!!」

 

空中でどうにかトリオンキューブを作って綾瀬川にハウンドを放つ。

しかし、咄嗟の一撃など綾瀬川には通じず、簡単に防がれてしまう。

 

「ちっ…。」

 

しかし綾瀬川は舌打ちをすると、飛び退いた。

 

『ザキさん!那須さんが射程に入った!!』

 

「くそ!目立ちすぎたか!清澄!」

 

「了解。」

 

綾瀬川は柿崎が作り出したエスクードの砦に入る。

 

『ユカリ!那須隊が来てる!ガードしろ!ユカリ…!!』

 

藤丸の通信が帯島に入る。

しかし目の前の相手に気を取られていた帯島は那須隊の位置を捉えられずにいた。

ようやくレーダーでの反応を見て、視線を那須隊の方向に向ける。

 

 

 

それと同時に降り注いだバイパーが、帯島を貫いた。

 

 

──

 

『ここで那須隊が柿崎隊VS弓場隊の戦いに合流!帯島隊員が緊急脱出!初得点は那須隊となった!』

 

『横取りされましたね、柿崎隊。メテオラでの陽動から綾瀬川と柿崎隊長による二段攻撃。面白い作戦でしたが目立ちすぎましたね。』

 

──

 

那須隊の登場に綾瀬川はエスクードの隙間からイーグレットを向け、那須に向けて放つ。

 

しかし、傍に控えていた熊谷のシールドに防がれてしまった。

 

「ありがとう、くまちゃん。…バイパー。」

 

バイパーでのフルアタック。

那須の代名詞の鳥籠が柿崎隊、弓場隊に襲いかかった。

 

──

 

『一方のマップ中央、柿崎隊の照屋隊員と巴隊員が合流!その近くには東隊長が息を潜めています。』

 

『東さんは他の隊に囲まれると言う不利な位置に転送されましたからね。このまま潜んで柿崎隊と弓場隊長をぶつけたい所。奥寺隊員と小荒井隊員も向かっているのでぶつけてそのまま奇襲…という作戦も東さんなら考えついてそうですね。』

 

──

『文香、清澄先輩とザキさんが弓場隊と那須隊とやり合ってる。こっちにいるのは神田さんと帯島ちゃんだから…そっちに残ってるのは多分弓場さんだと思う。』

 

『ひえ〜、弓場さんかぁ…。』

 

(…私が転送された時はもう2人いたはず。狙撃手?それとも小荒井くんか奥寺くん?)

 

照屋は警戒しながらも考える。

 

そうしていると、少し離れた場所で銃声が数発。

緊急脱出の光が空に上がる。

 

『!、真登華!今のは?!』

 

『東隊の小荒井くん、弓場さんの点になったよ!』

 

『東隊…。』

 

『もう1人写ってるからこれは奥寺くんね…。』

 

「!、虎太郎、東さんが近くに潜んでるわ!警戒して!!」

 

「えぇ?!」

 

照屋と巴は弧月を構える。

 

「転送されてすぐに5人バッグワームをつけたでしょ。その少しあとに近くにいた誰かがバッグワームをつけた。多分那須隊の誰か。東さんなら警戒してむやみに動かないわ。それに…」

 

「あ!東隊の2人がこっちに来てる?!」

 

「そういう事。…奥寺くんが弓場さんを引き付けてくれてる間に焼き出しましょうか…。」

 

「目が怖いです…文香先輩…。…射線が通っちゃうかもなんで壊すのはなしですよ…俺らもバッグワームしましょ。」

 

──

 

『小荒井隊員が弓場隊長により緊急脱出!恐るべし弓場隊長の早撃ち!弓場隊が1点もぎ取った!…と、ここで巴隊員と照屋隊員がバッグワームをつけた。そして家屋を念入りに探していますね。』

 

『東隊の2人がこっちに来てますからね。那須はバッグワームでここを離れたので東さんはむやみには動かないはず…ってことで東さんが近くにいると踏んだんでしょう。』

 

『なるほど…。』

 

 

 

──

 

「参ったな…。」

 

家屋の2階。

東は冷や汗を浮かべて零した。

 

このまま奥寺と小荒井の到着を待つ予定だった。

だが小荒井が弓場に見つかってしまうと言うミス。

その動きから東が近くにいると予測したのかバッグワームをつけて消えてしまった。

 

「どうにか動きたい所だが…。」

 

ばったり出会したなんて洒落にならない。

 

「どうしたものか…人見、そろそろダミービーコンを…」

 

言おうとした時だった。

 

 

 

…キンッ…

 

『前方、反応あり!』

 

人見の通信が東に入る。

 

「!!」

 

潜んでいた家屋を通り抜ける弧月。

それと同時に家が傾き始める。

 

「くそ…もうバレたか…!」

 

東はバッグワームを着たまま、ライトニングを構えて飛び降りる。

 

「虎太郎!そっちに抜けるわよ!」

 

「了解!」

 

巴がハンドガンと弧月を構えて回り込む。

 

「…驚いたな。どうして分かったんだ?」

 

「ここほど狙撃に適した場所はないんで。」

 

「なるほど。」

 

そう言いながら東はバッグワームを解除する。

 

「ROUND3とは大違いだ。…強くなったんだな。」

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

柿崎隊エースの旋空が東を襲った。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

帯島ユカリ→尊敬、女子って分かって貰えた。スコーピオン?!
神田忠臣→噂の万能手。
蔵内和紀→手に負えん。

帯島ユカリ←女の子だよな…そうだ、女の子だ。
神田忠臣←サポートが上手い。ここぞってタイミングで邪魔してくる。


感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND6 VS弓場隊、東隊、那須隊③

2日ほど投稿できずにすいません。
ちょっとリアルが忙しくて…。
隙間見つけて書いたのでどうぞ。


「旋空弧月…!」

 

照屋の放った旋空が東を襲う。

東はアイビスを盾にどうにか受け切った。

しかし後ろからは巴も接近している。

 

「っ…!」

 

 

 

「東さん!!」

 

声の方向にはグラスホッパーでこちらに飛んでくる奥寺が。

 

「奥寺!お前弓場は…」

 

「逃げてきたに決まってるでしょ、使ってください!」

 

東の足元にグラスホッパーが展開される。

 

「逃がさない…!」

 

巴はハンドガンを向ける。

 

 

「!、虎太郎!物陰に隠れて!!」

 

しかし、照屋の合図で巴は塀の裏に引っ張られた。

 

 

その瞬間無数の弾丸が3人がいた道を通り抜けた。

 

 

『弓場隊長を連れてやってきた奥寺隊員!見事東隊長のピンチを救った!そして弓場隊長のフルアタックが炸裂!』

 

『弓場さんのフルアタックは受け切るのは難しいですから。物陰に隠れたのは正解ですね。』

 

『奥寺隊員、東隊長はその隙に離脱。弓場隊長と照屋隊員、巴隊員の対決となりましたが、戦場は膠着状態となりました!…と、一方の那須隊、柿崎隊、弓場隊の三つ巴の方にも動きがあったぞ…!』

 

──

 

「隊長…弓場隊を任せていいですか?」

 

オレの問に柿崎は目を見開いた。

 

「那須隊をお前一人でやるのか?」

 

「はい。うちはまだ0点なんで点を取りましょう。隊長は射線に注意して弓場隊の相手をしていてください。」

 

「…たく、無茶言いやがる…。だけどお前ならやっちまうんだろうな。分かった。任せたぞ…清澄。」

 

「了解…。」

 

那須のバイパーが止んだタイミング。

そこで柿崎は地面に手を着いた。

 

 

「エスクード。」

 

オレの足元からせり上がった盾。

その反動でオレは飛び上がる。

そのままイーグレットを構えて熊谷に向けて放った。

 

「っ…!!」

 

熊谷はどうにかシールドで受けるが、その隙にオレはバッグワームを羽織り、那須隊の視界から消える。

 

「くまちゃん、場所を変えましょう。接近されたら不利よ。」

 

「そうね。」

 

そう言ってバッグワームを羽織った時だった。

1発の弾が空に打ち上がる。

 

『真登華、どこだ?』

 

『この辺りだと思う。那須さんは機動力もあるから誤差はあるかもだけど。』

 

オレの視界に予測の位置が表示される。

 

『いい…こっちで修正する。』

 

そのままオレの放った1発のトマホークは軌道を変えて、那須隊がいるマンションの屋上目掛けて障害物を躱しながら迫る。

それに合わせてオレも駆け出した。

 

 

 

 

『前方爆撃注意!』

 

那須隊オペレーター、志岐の通信に2人は背中合わせでシールドを張る。

 

「!、1発だけ?!」

 

「威力と射程重視よ、シールド、1枚じゃ足りないみたい。」

 

那須のその言葉に2人はバッグワームを解除し、フルガードに切り替えた。

 

『綾瀬川先輩、レーダーから消えました、接近してるかもです。』

 

『分かった、ありがとう、小夜ちゃん。』

 

2人はフルガードでトマホークを受ける。

土埃に包まれるその中を、切り裂くようにオレは接近した。

 

「っ!綾瀬川!!」

 

手の側面から生やしたスコーピオンを熊谷が弧月で受ける。

 

そのままオレのスコーピオンを弾くと、熊谷は距離をとる。

 

 

「旋空弧月。」

 

放たれようとしている旋空にオレは身構える。

 

しかし、その旋空は放たれることなく、代わりに後ろから熊谷を避けるようにバイパーが飛んできた。

 

──

 

「この攻撃って…?」

 

ボーダー玉狛支部。

テレビ画面で試合を見ていた烏丸は目を見開く。

 

綾瀬川(あいつ)の技ね。2人で再現したって事ね。」

 

小南はポテチを頬張りながらそう考察した。

 

──

 

熊谷に目をやるとバイパーとの時間差で熊谷も旋空を放ってきた。

2人だとオレのより凶悪だな…。

 

旋空の位置は見切った。

オレは上に飛び退きながら、シールドを展開。

バイパーを受け切る。

 

『清澄先輩!前方、狙撃警戒です!!』

 

真登華の通信。

ここから100mほど手前の建物。

そこが一瞬光った。

 

「ちっ…。」

 

ライトニングはしんどいな…。

 

オレは首を最小限に動かして、ライトニング狙撃を避ける。

 

 

 

『どぅえぇぇ?!自信満々の一手躱されたんですけど?!』

 

『茜!絶え間なく撃て!!』

 

『りょ、了解!!』

 

 

 

ちっ…狙撃が邪魔だな…。

 

放たれるライトニングを避けながらシールドでバイパーを受け、スコーピオンで弧月を受ける。

 

 

──

 

『那須隊の集中攻撃!綾瀬川隊員防戦一方か!』

 

『まず、あれで死なないのがおかしいですけどね。…ライトニングなんて撃たれる場所が分かってなきゃ普通避けられませんよ…。』

 

蔵内は呆れたように言った。

 

『でも綾瀬川先輩が不利なのは変わらないです。そろそろ何か手を打つ頃じゃないでしょうか。』

 

──

 

「メテオラ。」

 

熊谷から距離を取った刹那に、メテオラで屋上の床に穴を開ける。

 

「玲!下!」

 

熊谷がそう叫んだ直後。

オレは階下に移ることなく、熊谷に突っ込む。

 

「っ!!」

 

弧月でどうにか受ける熊谷。

 

「この…!!」

 

日浦の射線を熊谷で切るとそのままスコーピオンを消す。

 

「っ?!」

 

勢いそのまま、熊谷は体制を崩す。

オレはすかさず崩れた足に足払いをかける。

 

崩れた体制の足払いに為す術なく、熊谷は倒れる。

 

「隊長からのオーダーなんでな。点、貰ってく。」

 

倒れ込んだ熊谷の胸に、地面から生えたスコーピオンが突き刺さった。

 

──

 

『熊谷隊員ここで緊急脱出!倒れ込んだ先には綾瀬川隊員のモールクロー!柿崎隊1点獲得です!』

 

『モールクローにあんな使い方があるなんて…綾瀬川先輩の戦術には毎度驚かされます。』

 

時枝はそう称した。

 

『熊谷隊員が落ちたことにより那須隊長の守りが薄くなった!』

 

『近接だと綾瀬川が圧倒的有利。那須は厳しい状況になりましたね。』

 

──

 

「っ…バイパー…!!」

 

那須は後ずさりながらバイパーを放つ。

しかし全方向に張られたシールドにそれは防がれる。

 

日浦の狙撃も飛んでくるが意に介さず。

少ない動きでそれを避けた。

 

「ここまで…ね。」

 

「ROUND3以降横取りは我慢ならなくてな。1点貰うぞ。」

 

そのまま那須の胸にスコーピオンを突き刺した。

軌道を変えて返ってきた那須のバイパーも後ろに張ったシールドで防ぐ。

那須は悔しそうな顔で目を伏せる。

 

「…バイパー使いの死に際には注意しろって出水に言われたからな…。」

 

「そう…。本当に強いね、綾瀬川くん。…そっか…またあの体に戻るのね…。」

 

そのまま那須は緊急脱出。

 

柿崎隊が2点目を獲得した。

 

──

 

『那須隊長もここで緊急脱出!綾瀬川隊員からは逃げられず!』

 

『最後の相打ち狙いのバイパーも読んでいましたね。那須隊はあとは日浦だけ…でしたがここまでみたいですね。』

 

蔵内が言いかけた瞬間、日浦のいた建物から緊急脱出の光が上がった。

 

『日浦隊員は自発的に緊急脱出!那須隊がここで全滅。残るは弓場隊、柿崎隊、東隊の三つ巴となった!』

 

『さっきの狙撃で日浦隊員の位置は割れましたからね。いい判断だと思います。』

 

 

──

 

『よくやった清澄!』

 

『隊長の方は大丈夫ですか?』

 

『何とか…な!守りに徹してる!外岡がどこにいるか分からねえ。エスクードで射線は切ってる。』

 

『直ぐに向かいます。』

 

そう言ってオレは駆け出した。

 

 

──

 

「エスクード!」

 

壊れたエスクードの代わりにさらにエスクードの数を増やす。

 

「柿崎さん、それズルくないっすか…?」

 

神田は呆れたように言いながらハウンドを放つ。

合間に旋空を混じえてエスクードを切り裂いた。

 

「俺は守り専門なんでね。エースの到着まで粘らせて貰うぜ。」

 

『トノ、狙えそうか?』

 

『エスクードどうにかしてくれればその隙に撃つんスけど…エスクード壊される度に新しいのが出てくる以上きびいッス。』

 

神田からの通信に弓場隊の狙撃手、外岡(とのおか) 一斗(かずと)はそう返した。

 

那須隊か綾瀬川の手により全滅。

出来れば綾瀬川(エース)が来る前に柿崎を落としたいというのが神田の本心だった。

 

『迷ってられないな…トノ、弓場さんの事頼むぞ。』

 

『は?先輩?』

 

そう言うと神田はアサルトライフルをしまい、弧月1本に切り替えた。

 

「…旋空弧月。」

 

神田の旋空でエスクードが切り裂かれる。

柿崎はすぐさま、地面に手を置く。

しかし神田は構わず突撃、柿崎との距離を詰めた。

 

「単身突破かよ…!」

 

柿崎はレイガストをブレードモードに切り替え、神田を迎え撃ち、エスクードを混じえながら神田の攻撃を捌く。

 

「ちっ…!トノ!綾瀬川が来るぞ!!」

 

神田が叫ぶ。

すぐ近くの建物からバイパーが放たれた。

外岡は直ぐにイーグレットを綾瀬川に向けた。

 

『真登華。』

 

『うん…ここ…!!』

 

表示された建物に綾瀬川もイーグレットを向ける。

 

同時に放たれたイーグレットは、空中で衝突し相殺された。

 

 

『いぃ?!すいません先輩、場所を移します…!』

 

神田はすぐにその場を離脱した。

 

「くそ…!!」

 

放たれたバイパーをシールドで受けながら、神田は1歩下がる。

そのタイミングで柿崎はスラスターをON。

神田に切り掛る。

 

 

 

 

…その時だった。

 

後ろの建物から神田の後方40m程。

 

そこから放たれた砲撃が神田を貫き、あろう事かその直線上にいた柿崎をも貫いたのだ。

 

「…は?」

 

「何…が…?!」

 

 

何が起こったか分からないまま2人は緊急脱出。

 

 

砲撃が放たれた先。

バッグワームを羽織った天才、東春秋は静かな笑みを浮かべていた。




神田のトリガーセット

メイン:アステロイド(アサルトライフル)、弧月、旋空、シールド
サブ:ハウンド(アサルトライフル)、バッグワーム、シールド、free

神田のトリガーセットは作者の偏見によるオリジナル設定ですのでご了承ください。

ちなみに綾瀬川が放ったトマホークは原作のROUND6で蔵内が放った丸ごと1発サラマンダーのトマホークバージョンです。
オシャレすぎて真似ました。後悔はしてません。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND6 VS弓場隊、東隊、那須隊④

投稿出来ずにすいません〜!
ちょっと夜勤続きでしてw
まあそれも昨日で終わったんで投稿ペースは戻る模様です。


『な、ななな、なんと!東隊長の2枚抜き炸裂!神田隊員と柿崎隊長が緊急脱出!!東隊が一気に2点獲得!!』

 

『もう驚きませんよ。東さんならできるって思うことにします。』

 

蔵内は諦めたようにそう言った。

 

 

──

 

東と向き合うように綾瀬川は着地する。

 

綾瀬川の目の前にいるのはボーダートップクラス男。

かつてA級1位部隊を率いた最初の狙撃手。

綾瀬川はいつぶりかの武者震いを抑える。

動かない綾瀬川を見てか東は止まってこちらに視線を向ける。

 

「お前とは戦場じゃない場所でゆっくり話したいと思っていた。」

 

「オレもですよ…。

 

 

…東さん…

 

 

 

 

 

…アンタはオレを負けさせてくれるのか…?」

 

 

綾瀬川の静かな激情。

東は一瞬目を見開いた後、静かな笑みを浮かべた。

 

「…やはりお前は面白いな。」

 

 

戦術の天才と作られた天才。

2人の天才は同時に動き出した。

 

──

 

『一方の弓場隊長VS柿崎隊の2人の対決は拮抗しているが、弓場隊長がやや有利か!』

 

『弓場さんの火力は中々突破出来ないと思いますよ。』

 

元チームメイトの蔵内はそう評する。

 

『ただ照屋隊員もココ最近で急成長を見せています。巴隊員もサポートが目立っている印象。2人なら何か見せてくれるかもしれません…。』

 

時枝はそう言ってスクリーンに目を向けた。

 

──

 

巴がハンドガンで攻撃、弓場は片手はガード、もう片方で巴の隙を着いた早撃ち。

それを照屋がガードする。

2対1の撃ち合いになっていたが、早撃ちが目立つ弓場が押していた。

 

(っ…これがトップクラスの銃手の実力…!)

 

照屋は2対1でも押されている現状に歯痒さを覚える。

 

『文香先輩、このままじゃジリ貧です…!』

 

『そうね…。』

 

(どうする?一旦引くか?…いや、神田さんと帯島さんが緊急脱出した以上外岡さんはこちらに向かってきているはず…。時間はかけてられない…!)

 

『メテオラで崩すわ…!』

 

『了解。』

 

照屋は弧月を構えると走り出す。

 

「…面白ェ、1対1(タイマン)か?」

 

弓場は握っているハンドガンに力を込める。

 

「…メテオラッ!!」

 

しかし、その場で急停止、弓場目掛けてメテオラを放つ。

 

「ちっ…!!」

 

爆風が弓場を包み込む。

 

それを合図に、巴も弧月を抜いて走り出す。

 

爆風の中、弓場はフルガードでメテオラを防いでいた。

 

 

それが大きな隙となる。

爆風を切り裂きながら照屋と巴が切り掛る。

 

 

 

「ハッ…遅せぇよ…!!」

 

振り下ろされるより早く、弓場は拳銃を抜いた。

 

「!、文香先輩!!」

 

巴は照屋を突き飛ばす。

 

「虎太郎!!」

 

ここまで早いとは。

弓場の早撃ちに巴は容赦なく蜂の巣にされる。

 

 

「っ!!」

 

シールドで防ぎながら照屋は転がるように弓場から距離をとる。

 

 

──

 

『巴隊員ここで緊急脱出!やはり早い!弓場隊長のフルアタックを前に柿崎隊絶体絶命!』

 

『僕が弓場隊にいた頃よりも早撃ちに磨きがかかっていますね。照屋1人になった今相当厳しいと思いますよ。』

 

『照屋隊員には一応メテオラとハンドガンのアステロイドがありますが…射程でも弓場隊長が勝っている。ピンチですね。』

 

──

 

「くっ…!」

 

私は転がりながら塀の裏に身を潜める。

しかし、バイパーによる弾道変化で塀の裏まで狙われる。

 

「ぐっ…!!」

 

シールドで受けるも、受けきれなかったバイパーに左腕を撃ち抜かれた。

 

このままじゃ…!!

 

 

『文香、落ち着け…!』

 

 

 

隊長の通信が入る。

 

『冷静になれ。強くなったお前なら大丈夫だ。』

 

『…はい。』

 

バイパーをシールドで受けながら隊長の言葉に耳を傾けた。

 

『いいか、弓場は無限に撃ち続けられる訳じゃねえ、どこかで隙ができる。その隙を付けばお前なら勝てるはずだ!』

 

深呼吸をする。

 

『…分かりました。合図お願いします…!』

 

『ああ。…勝つぞ…!』

 

シールドが割られる。

すぐさまサブのシールドで防ぐ。

バッグワームを羽織り、少し動くことでバイパーの軌道を迷わせる。

弓場さんは清澄先輩とは違ってリアルタイムで弾道は引けない。

 

 

 

弓場さんのバイパーが止んだ

 

『今だ…!!』

 

その合図で私はバッグワームを弓場さんのいる路地に脱ぎ捨てる。

 

バッグワームは一瞬で蜂の巣になる。

その隙に私は塀に飛び乗り、弓場さん目掛けて飛びながら、スコーピオンを伸ばした。

 

「…好きだぜ、そういう泥臭い戦い方はよォ。最高に痺れるじゃねえか。」

 

弓場さんの拳銃の照準が私に向く。

そこから放たれるアステロイド。

 

私は一瞬で蜂の巣になる。

 

 

 

 

そして私のスコーピオンは弓場さんの胸直前で音を立てて崩れてしまった。

 

 

 

 

──

 

『惜しい…!!』

 

蔵内は珍しく、そう叫んだ。

 

『惜しかったですが照屋隊員もここで脱落!弓場隊長が3点目を挙げて単独1位に躍り出た!現在のポイントは弓場隊が3P、柿崎隊、東隊が2Pt、那須隊が1Pt!そして柿崎隊の命運は何かと話題のこの男!綾瀬川隊員に託された!!』

 

 

──

柿崎隊作戦室

 

「…ごめんなさい…私…。」

 

「まだだ。まだ終わってねえよ。」

 

柿崎は照屋の頭を軽く撫でると画面に視線を移した。

 

「…はい…!」

 

照屋は泣きそうな目を拭って、モニターに視線を向けた。

 

──

 

同時に動き出したオレと東さん。

東さんはバッグワームを羽織りながら、後ろに飛ぶ。

オレはバイパーを放つと、東さんのいる前の建物の影に曲げた。

 

「!」

 

「気付かない訳ないでしょ。あなたは味方の援護なしにオレの前に現れない。」

 

建物の影でバッグワームを羽織り潜んでいた奥寺はどうにかシールドでバイパーを受けた。

 

「ぐうっ!!」

 

レーダーに奥寺が映る。

 

『清澄先輩ごめんなさい。私が勝てなくて…弓場さんもそっちに向かってます。』

 

文香の通信が入った。

 

『…了解。』

 

グラスホッパーで飛びながらこちらに振り下ろされる弧月を避ける。

その隙に東さんは奥寺が設置したであろうグラスホッパーで離脱する。

 

潜伏した東さんが怖いな。

 

『…真登華、射線を…』

 

スコーピオンで奥寺の弧月を受けながら、そう言いかけた時。

曲がり角からバッグワームを羽織った弓場が現れる。

 

「ちっ…」

 

思ったより早いな…。

 

オレは奥寺を塀の影に蹴り飛ばす。

これ以上点はやらない。

そのままシールドで受けながら後ろに飛び退いた。

 

 

「アステロイド。」

 

牽制を入れつつ、物陰に隠れる。

 

こういう時グラスホッパーずるいよな。

グラスホッパーで離脱する奥寺に目をやりながらそう思う。

 

『真登華、射線は?』

 

『今やってる!…ここと…ここっ!!』

 

最後に真登華がマークした場所。

そこからイーグレットを構えた外岡が顔をのぞかせた。

 

オレの世界が停止する。

銃口の向き、外岡の視線、過去のログ。

そこから演算された外岡の狙撃箇所。

 

 

…足か。

 

極小に固められた集中シールド。

アイビスをも防ぐシールドが的確にイーグレットを防ぐ。

 

そのままシールドを構え飛び退き、弓場のバイパーを躱す。

そして外岡目掛けてイーグレットを向けた。

 

 

 

「やっべぇ…!!」

 

外岡は倒れ込むように首を引っこめる。

間一髪、イーグレットを躱した。

 

「あ、あぶねえ…

 

 

 

 

…あ。」

 

向かいの建物。

そこにはライトニングを構えた東が。

 

「やっちまった〜…。」

 

凶弾炸裂。

外岡はここで緊急脱出した。

 

──

 

「バイパー。」

 

弓場との一騎打ち。

物陰に潜みながらオレはバイパーを放つ。

バイパーでの撃ち合いに置いてはオレが圧倒的に有利だ。

山なりに、上からバイパーが弓場を襲う。

 

「ちいっ…!」

 

弓場はフルアタックを止めてシールドを前方と上に展開。

バイパーを受ける。

 

 

オレはその隙にバッグワームを羽織り、レーダーから消えた。

 

 

 

 

──

 

『さて、膠着状態になってきたぞ〜。試合時間も残り僅か!あまり時間はかけられない。現在の点数は東隊、弓場隊が3点、柿崎隊は2点となっている!このまま時間が来れば弓場隊、東隊の同率1位となりますが…解説の御二方はどう予想されますか?』

 

『綾瀬川がこのまま黙ってるとは思えません。』

 

『そうですね。ほら、動き出しましたよ。』

 

そう言って時枝はモニターに視線を移す。

 

──

バッグワームを羽織ったまま、オレはスコーピオンを構えると、路地に出る。

 

「来やがったか、綾瀬川ァ。」

 

弓場の早撃ち炸裂。

 

停止したオレの世界。

 

音を消し、色を消す。

弓場の目の動き、トリガーに掛かった指の速さ、銃口の向き。撃った拳銃の反動。

 

情報をそれだけに絞り、弓場の弾道を見る。

隙間があるとするなら下だな…

 

 

 

 

 

…いや、ダメだ。

 

視野を広めろ。

このタイミングをあの男が逃さない訳ない。

 

オレの横の建物。

そこからバッグワームを羽織り、弧月を構えた奥寺が見える。

奥寺の位置、先程外岡を落とした時の東の位置。

 

 

 

…そこから逆算したオレと弓場、両方まとめて狙える位置。

 

 

「…そこか。

 

 

 

…見つけた…。」

 

後方のマンション。

何階かは分からない。

…見てから合わせる。

弓場さんの射線が切れる場所はさっき見た。

ならば必要な情報は奥寺の未来。

 

 

…逃げのグラスホッパーの位置だ。

 

 

 

 

イーグレットを取り出しながら、スライディングの要領で弓場のフルアタックと奥寺の弧月を避ける。

そのまま、体を反転。

うつ伏せの状態で東のいるマンションにイーグレットを向ける。

3階、そこから東は顔を出していた。

そして照準を合わせて直ぐに引き金を引く。

 

その間、コンマにして1.5秒。

 

弓場の弾道が下がる。

 

奥寺は直ぐに回避するため、グラスホッパーを設置しようとする。

 

 

 

「…借りるぞ。」

 

「え?」

 

オレはイーグレットを捨て、転がるように、奥寺の元に飛び退く。

そのタイミングで飛び退いた先にグラスホッパーが展開される。

オレは飛びながら、奥寺の首元を掴む。

2人の居た場所を弓場の弾幕が通り抜ける。

奥寺は両足を、オレは右腕を撃ち抜かれるが、緊急脱出には至らなかった。

 

そして放ったイーグレットは東の額を撃ち抜いた。

 

 

そのままオレと奥寺はグラスホッパーで民家の庭にフェードアウトした。

 

 

 

 

「弓場さんに取られるところだったな…。」

 

エスケープ先の庭。

そこでオレは奥寺の上に乗り、スコーピオンを構えた。

 

「ちょ、まっ…」

 

「4点目。」

 

オレのスコーピオンが奥寺の胸に突き刺さった。

 

──

 

『…えっと…は?…あ!…あ、東隊長と奥寺隊員が緊急脱出!こ、これは一体?!』

 

『『…』』

 

解説の2人は固まってしまう。

どうにか言葉を絞り出そうとする。

 

 

しかしそれよりも先に試合の制限時間が来てしまった。

 

 

『こ、ここで試合終了!最後は何が起きたのでしょう?!結果は4対3対3対1!!まさかまさかの大逆転!』

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 4P

 

合計 4Pt

 

 

 

弓場隊

 

 

弓場 3P

神田 0P

外岡 0P

帯島 0P

 

合計 3P

 

 

東隊

 

 

東 3P

奥寺 0P

小荒井 0P

 

合計 3P

 

 

那須隊

 

 

那須 1P

熊谷 0P

日浦 0P

 

合計 1P

 




見せつける天才の片鱗。
怪物がサイドエフェクトを最大限に活かすとこんな芸当をやってのけます。


各キャラからの印象&各キャラへの印象

東春秋→興味。警戒。
奥寺常幸→やばい。
弓場拓磨→痺れる。
外岡一斗→狙撃効かねえの?

東春秋←興味。2度も出し抜かれた。
奥寺常幸←後ろ角。グラスホッパー借ります。
弓場拓磨←ァ
外岡一斗←隠密能力すごい。


感想、評価、意見、アドバイス等お待ちしております。


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ROUND6を終えて

遅れてすいません。
投稿致します。


めっちゃお気に入り増えとるやん!


…って思ったらランキング17位…?!


『ここで試合終了!4対3対3対1!見事ROUND6を制したのは柿崎隊だ!!』

 

『各隊隊長、エースに点が偏っていますね。今回のランク戦ではマップの各地で戦闘が起こっており、混沌としている感じでした。』

 

『今回のランク戦は色々とツッコミどころが満載でしたので、解説の御二方に各隊の総評を頂きたいのですが…。』

 

『そうですね。どの隊も悪くなかったと思いますよ。柿崎隊は後にするとしてまずは那須隊。合流からの動き、帯島への不意打ち。どれも綺麗に決まっていました。言うとすれば…相手が悪かったですね。』

 

『日浦隊員の緊急脱出の動きはいい判断だったと思います。試合の間にみせた、那須隊長のバイパーと熊谷隊員の旋空の合わせ技。あれは磨けばいい武器になると思いました。』

 

 

──

 

那須隊作戦室

 

「玲、大丈夫?」

 

緊急脱出用のマットで横になる那須に熊谷は心配そうに尋ねた。

 

「くまちゃん…悔しいね…。」

 

那須は腕で顔を覆い、熊谷にそう言った。

 

「…そうね…。」

 

熊谷も悔しそうに俯く。

 

「私…なんにもできなくて…。」

 

日浦も泣きそうな顔で俯いてしまう。

 

「私もあれくらい…強くなれるのかな…。」

 

那須は仰向けになりながら、虚空を掴む。

 

「超えたいな…綾瀬川くん…。」

 

 

 

──

 

『弓場隊についてはいつも通り弓場さんが1対1、その間に神田が指揮を執るって言うスタイルでしたが、柿崎隊長と綾瀬川隊員の合流を許してしまったのが痛かったですね。単体でも強い綾瀬川隊員が柿崎隊長のサポートにより手が付けられなくなっていました。』

 

『弓場隊長はいつも通り凄かったですね。きっちり3点取って最後まで生き残ってましたから。』

 

──

 

弓場隊作戦室

 

「すいません!自分が冷静にならなかったばかりに…!」

 

帯島は他の隊員の前で頭を下げる。

 

「…いや、那須隊の奇襲はもっと早く気づけた。目の前の相手に夢中になった俺が悪い。」

 

神田はそう言って目を伏せた。

 

「私も…もっと那須隊の動きに注意しとくべきだった。すまねえ、ユカリ。」

 

「反省はそこまでた。…問題はその反省をどう次に活かすか…だ。…帯島ァ!いつまでもクヨクヨしてんじゃねえ!シャキッとしろやコラ!神田もだ!てめえがそんなんだと安心してタイマンできねえだろーがァ!トノ!」

 

「え?俺も?」

 

 

 

 

「外しすぎだコラァ…!!」

 

 

 

──

 

『続いての東隊ですが東さんが相変わらずやばかったですね。』

 

時枝は続ける。

 

『アイビスでの2枚抜き。ランク戦で決めてるところは初めて見ました。』

 

『柿崎隊長、神田はお互いに意識を取られていた。その隙を突いた不可視の砲撃でしたね。おそらく絶好のタイミングを待っていたんでしょう。』

 

『東隊は東隊長の転送位置が厳しかったですが、奥寺隊員の機転で上手く離脱。そこからの立ち回りはいつも通り凄かったですね。さすがは東隊長です。』

 

 

──

 

東隊作戦室

 

「やられたな…。」

 

東はため息をつきながら椅子に腰掛ける。

 

「そんな時もありますよ!」

 

「そうですよ!たまたま綾瀬川先輩と目が合っちゃっただけで…。」

 

「小荒井、奥寺。」

 

東が小荒井と奥寺の言葉を遮る。

 

「俺の労いよりもお前たちの課題からだ。…何故俺の命令を無視して、俺のところに来た?」

 

「それは…東さんがピンチだったから…。」

 

「確かにそうかもしれない。だが、お前らの動きを読んだ柿崎隊が見事俺の位置を突き止めてきたぞ。」

 

「「!」」

 

「何度も言っているが…不利な状況こそ冷静になれ。空回りしてちゃ解決できる問題も解決できない。」

 

「はい…。」

 

「すいません…!」

 

小荒井と奥寺は俯きながら謝る。

 

「…まあ俺も怒れる立場じゃないか…。完敗だったからな。」

 

そう言いながら東は対峙した無機質な天才を思い出していた。

 

 

──

 

『さて、続いての柿崎隊ですが…まず隊全体の動きは良かったと思います。ROUND5からの新戦術、綾瀬川隊員と照屋隊員の2人のエースを軸とした2:2に分かれて点を取る動き、それが今回も上手く合流していました。…照屋隊員と巴隊員は冷静に東隊長の位置を推理していましたから。弓場さんと照屋隊員の1対1は惜しかったですね。どちらが勝ってもおかしくなかったと思います。』

 

蔵内は照屋をそう評した。

 

『僕個人的には柿崎隊長の動きが良かったですね。あ、元チームメイト贔屓じゃないですからね。…柿崎隊長が神田隊員を止めていた。それにより綾瀬川隊員が那須隊相手に神田さんに意識を裂かれることなく戦うことが出来た。これにより生じた2点はでかいです。』

 

『なるほど〜。確かに!スラスターやエスクードの扱いもROUND5より磨きがかかっていたような気がしました!』

 

『綾瀬川に関してはもう言うまでもありませんね。那須隊との戦闘や最後の狙撃。戦闘能力は然ることながら、その戦術、視野、思い切りの良さには感服です。…まだまだ強くなりますよ、柿崎隊は。』

 

『総評ありがとうございます。さて、柿崎隊は順位こそ変わりませんが影浦隊とポイントが並んだ!そんな柿崎隊の次の相手は影浦隊と生駒隊!どちらもトップクラスの攻撃手を抱えたチーム!B級トップクラスのチーム相手にどう戦うか!まだまだ目が離せません!さて!これにてB級ランク戦ROUND6夜の部を終了します!ここまでの実況は私、海老名隊オペレーター、武富桜子が、解説は嵐山隊、時枝隊員と王子隊、蔵内隊員でした!!』

 

 

──

 

「ふう…。」

 

深呼吸して息を整える。

 

久々に緊張感のある試合だった。

 

オレは立ち上がり、作戦室へと戻る。

そこには笑顔を向けた柿崎、文香、虎太郎、真登華の姿が。

 

「すっごい清澄先輩!!本当に勝っちゃうなんて!!」

 

真登華はオレの手をブンブン振り回しながら喜ぶ。

 

「さっさと死んじまって悪かったな。…良くやってくれた。やっぱりすげえな、清澄。」

 

「…まあ、古参なんで。」

 

「私は結局1点も取れなかったです。…悔しいですけど今回の試合のエースは清澄先輩でした…。」

 

文香は目を伏せながら俺にそう言った。

 

「でも!次は絶対清澄先輩より点を取りますから!絶対…負けません…!」

 

文香は悔しそうだが、どこかスッキリした顔でそう言った。

 

「そうだな、頼むぞ、エース。」

 

そう言ってオレは4人の間を抜ける。

 

「?、どこ行くんだ?」

 

「…少し風に辺りに。」

 

「?、風?…まあ、何かあったら言えよ。」

 

「…はい。」

 

 

 

 

 

出水と撃ち合った時と同じ高揚。

オレは手の震えを抑える。

 

オレは一瞬だがあの時本気で戦いに挑んでいた。

普段は絶対にやらない博打のような戦い方。

上手くいったことに安心しているオレがいる。

久しく忘れていた感情だった。

そうして、自販機の前のベンチで手の震えを止めていると、頬に冷たい感触が。

 

「…出水…。」

 

「…よう。飲めよ。落ち着くぞ。」

 

そう言って出水は水を差し出して来た。

 

「…ああ…助かる。」

 

 

 

 

「どういうつもりなんだ?」

 

隣に座りながら出水はオレに尋ねる。

 

「最後のあの数秒、お前本気でやってただろ。」

 

「…何を言ってる。オレはいつだって本気だ。」

 

「…そんな冗談言えるってことは大丈夫か。」

 

そう言って出水はパックジュースを啜る。

 

「まあ俺としては嬉しいけどな。」

 

「…何が…?」

 

「東さんはお前が本気を出せる相手だったって事さ。…東さんだけじゃねえぜ?ボーダーにはまだまだ強い人はわんさかいる。…面白いところだろ?ボーダー。」

 

出水は白い歯を見せながら笑う。

 

 

 

「…そうだな。ここでならオレは…」

 

 

 

 

 

 

 

──

 

「レパートリーが無くなってきたか?オレは別にお祝いなんて…「とっとと食え。焦げるぞ。」…ああ、悪い。」

 

目の前で肉を頬張る三輪はオレの問いを一蹴した。

 

「俺が元いた隊の隊長はよくこうして焼肉を奢ってくれた。」

 

「なるほど。師匠から焼肉も受け継いだってわけね。」

 

オレは1人納得する。

 

「…サイドエフェクトはもう全面に見せつけるつもりなんだな。」

 

「もう隠せないだろ。…まあこれで城戸さんにわがまま言う必要もなくなるか。」

 

「当たり前だ馬鹿。これ以上城戸司令に迷惑をかけるな。」

 

「へいへい。」

 

詫びれながらオレは米を頬張る。

 

 

 

「お、秀次。お前も来てたんだな。」

 

そうしていると横のテーブルに座る団体。

 

先程サイドエフェクトで何度も捉えようと思った男の姿がそこにあった。

 

 

「ふ…綾瀬川も一緒か。丁度いい。東隊(うち)と相席しないか?ランク戦の途中でも言った通りお前とは1度ゆっくり話したかったんだ。」

 

 

そう言いながら小荒井、奥寺を引き連れた東は静かな笑みを見せた。




ROUND6終了後
1位 二宮隊 34P
2位 影浦隊 31P
3位 柿崎隊 31P
4位 生駒隊 29P
5位 弓場隊 27P
6位 東隊 24P
7位 王子隊 24P
8位 鈴鳴第一 23P
9位 荒船隊 22P
10位 香取隊 21P
11位 那須隊 20P
12位 漆間隊 19P
13位 諏訪隊 19P

これからも読んでいただけると幸いです!


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無機質なボーダー隊員の日常⑤

遅くなりすいません。
投稿致します。
日常回です。


お気に入りしてくれる人が増えて嬉しいです!
感想は全部読み、Goodは制限があるので1日5個までですが返信は最新話投稿した後に絶対にしますので遠慮せずにどうぞ。


「よし、焼けたぞ。遠慮せず食べてくれ。」

 

「よっしゃー!いただきまーす!」

 

「いただきます。」

 

東の言葉に奥寺、小荒井は焼肉に箸を伸ばした。

 

「秀次と綾瀬川も。2人とも遠慮しなくていいからな。」

 

そう言って東は烏龍茶を一口飲む。

 

「はい、いただきます。」

 

「どうも。」

 

そう言ってオレと三輪も焼けた肉を取る。

 

「そう言えば9月から学校通い始めたんだって?」

 

「ええまあ。」

 

「秀次から聞いたよ。学校は慣れたか?」

 

「…どこかの2人組のせいで編入してすぐに「2年生の三バカ」って言う不名誉すぎるあだ名をいただきましたけどね。」

 

「ハハ、出水と米屋か。いいクラスに入れてよかったな。」

 

東は笑いながらそう言う。

 

「いやいや、オレは三輪と同じクラスが良かったですよ。そっちの方が気が休まる。あいつらは騒がしすぎます…。」

 

その言葉に三輪の表情が和らいだ気がする。

 

「そうか?お前は物静かだから丁度いいと思うけどな。」

 

「静かな人間には静かな場所がいいですよ…。」

 

そう言ってオレは肉を頬張る。

そして話を邪魔しないように肉を食べている奥寺と小荒井に目を向けた。

 

「小荒井と奥寺だよな。ちゃんとした自己紹介がまだだったよな。綾瀬川だ。…オレと三輪に気は遣わなくていいから遠慮しないで話してもらって構わないぞ。」

 

「ひっ…!」

 

俺の言葉に小荒井は肩を弾ませた。

 

「?」

 

「おいコアラ!すいません綾瀬川先輩!」

 

奥寺は小荒井を叱ると、すぐにオレに頭を下げた。

 

「ハハハ、小荒井が悪いな。…でもお前のせいだぞ?」

 

「…心当たりが無いんですが。」

 

「ROUND3。随分と小荒井の事を派手な落とし方してただろ。」

 

ROUND3?

 

 

 

「…ああ…。」

 

思い出す。

そう言えば口の中にメテオラ詰め込んだ気がする。

 

「あれ以来トラウマらしいぞ。」

 

「オレの席から1番離れたところに座ったのはそういう訳か…。それは悪かったな。だがあの時は小荒井の奇襲でこっちも必死だったんだよ。」

 

そう言うと東は笑う。

 

「よく言う。今日なんて俺の奇襲を奇襲前に場所を見抜いて対処して見せたじゃないか。…なんで俺の場所が分かったんだ?」

 

東がオレに尋ねた。

 

「…弓場さんが射線コントロールをしっかりしてくれてたおかげですよ。」

 

「弓場のおかげ?」

 

東は疑問符を浮かべる。

 

「弓場隊の狙撃手を落としたのもあれ以上弓場隊に点を渡さないためでしょう?あの時弓場隊と東隊は点が並んでいた。点差的にも落としたかったのは点が並んでいる弓場さんだ。恐らくですけど奥寺がこっちに来たのは予想外だったんでしょう?あの状況ならどう考えても奥寺は潜伏して下手に落とされるようなことはしない方がいい。奥寺が右の路地から出てきた時点で東さんは後ろか左にしかいないのは明白。外岡を落としてからあの時間で弓場さんに後ろに回り込むのはまず不可能。そして弓場さんはあの場所で唯一射線の通るマンション、つまり東さんのいたマンションの射線をオレで切っていた。だからあなたが狙ったのは…」

 

「…2枚抜き…か。」

 

三輪が箸を止めてそう言った。

 

「弓場との1対1の間にそんな事を考えてたのか…?」

 

東さんがオレに尋ねた。

 

「弓場さんよりも東さんの方が怖かっただけですよ。」

 

「…なるほど。」

 

「じゃ、じゃあなんで俺のグラスホッパーの位置が分かったんですか?!」

 

奥寺は俺にそう尋ねる。

 

「オレが展開する前からグラスホッパーを出すのも、出す位置も分かってる動きでした。なんで分かったんですか?」

 

「そうだなぁ…

 

 

 

…それは内緒だな。」

 

「ええ〜!?」

 

「いつ当たるか分からないからな。そう易易と教えてやる訳ないだろ?」

 

「うっ…確かに…。」

 

「綾瀬川、お前は隊を作る気は無いのか?」

 

その問いに俺だけでなく、三輪も箸を止めた。

 

「リアルタイムでバイパーを引けるほどの視野、空間計算能力、旋空を長く伸ばせるほどの技術、ノールックでの狙撃…それに頭の回転の速さ。…お前は隊長に向いてると思うぞ。」

 

「それはないっすね。指揮がてんでダメなんで。」

 

「そうか?俺はお前はまだ何か隠している気がするよ。」

 

「…買い被り過ぎですよ。」

 

そう言って俺は烏龍茶を一口飲む。

 

「それに柿崎隊の雰囲気は割と気に入ってるんで。」

 

「…そうか。野暮なこと聞いて悪かったな。」

 

「いえ。」

 

 

──

 

「今日は邪魔して悪かったな。色々話せて楽しかったよ。」

 

「いえ、ご馳走様でした。」

 

オレは東さんに頭を下げる。

 

「秀次も。飯はちゃんと食えよ?」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

「奥寺と小荒井も。いろいろ話せて良かった。…オレはランク戦ブースによくいるから声掛けてくれ。」

 

「は、はい。」

 

「ありがとうございます。次は負けません。」

 

そう言って挨拶を済ませると解散となる。

 

 

「そう言えば三輪と東さんって結構親しい仲なんだな。」

 

帰宅中、オレは三輪に尋ねた。

 

「元々同じチームだからな。」

 

「…ん?」

 

「元々同じチームだった。」

 

「…何それ聞いてないぞ。…ああ、

 

 

 

 

 

…焼肉の師匠って東さんかよ。」

 

 

今日一の驚きだった。

 

 

──

 

「やぁーっと!

 

 

 

…やっと来たわね綾瀬川!!」

 

「よう。」

 

「よう。…じゃないわよ!!顔出しなさいって言ったでしょ?!」

 

ボーダー玉狛支部。

この日は学校終わり、防衛任務の後、文香を玉狛まで送っていた。

 

 

目の前で騒ぐ、小南桐絵はオレの首を絞める。

 

「苦しい…だからこうして顔出しただろ?」

 

「おっそいのよ!!」

 

「あのなぁ、こっちはランク戦の真っ最中なんだよ。」

 

「むぅ…!!」

 

小南は何も言えなくなる。

 

「…ああ、そうだ。小南に頼みがあったんだが…。」

 

「な、何よ…!」

 

「カレー。久しぶりに食べたいと思ってな。」

 

その言葉に小南の表情はみるみる明るくなるが、途中っではっとしたようにそっぽを向く。

 

「は、はあ…?!な、何よそれ…。急にそんなこと言われても…。」

 

「…だよな。無理言って悪かったな。」

 

「べ、別に無理なんて言ってないでしょ?!今日丁度料理当番だし?!アンタがどうしても食べたいって言うなら作ってあげるけど…?!」

 

小南はそっぽ向きながらも横目でオレに尋ねた。

 

「!、それは嬉しいな…。」

 

 

──

「…で、なんで小南先輩はウキウキでカレー作ってるんすか?」

 

「さあ?綾瀬川くんと照屋ちゃんが来てるしご馳走でもするんじゃない?」

 

烏丸の言葉に宇佐美はそう返した。

 

「…綾瀬川先輩と照屋はどこに?」

 

「ああ、綾瀬川くんなら…。」

 

そう言って宇佐美はモニターに目を移す。

 

そこにはスコーピオンで斬り合っている照屋と綾瀬川の姿が。

 

「…前のランク戦で思ったんすけど綾瀬川先輩ってスコーピオンも使えたんすね。」

 

 

「当たり前じゃない。」

 

 

そう尋ねると、一通り仕込み終わった小南がエプロンを外しながらやって来た。

 

 

「…文香にスコーピオン教えたのはアイツなんだから。」

 

 

──

 

「!、っぶね…。」

 

地面から飛び出るスコーピオン。

オレはバク転でそれを躱す。

 

「キレが増してきたな。」

 

「余裕で躱す人に言われても嬉しくないです…!」

 

そう言いながらさらに追撃をかける文香。

 

「まあまだ負けてやる気は無いからな。」

 

そう言いながらオレはスコーピオンを繋げて伸ばす。

 

「!、それってマンティスですか?」

 

「まあな。カゲさんに少し教わった。次の相手は影浦隊だ。…丁度いいだろ?」

 

オレのその言葉に文香の目付きが好戦的なものに変わる。

 

「上等です…!!」

 

 

 

──

 

「お疲れ様です。綾瀬川先輩。」

 

「お疲れ様〜。いやー、やっぱりすごいね綾瀬川くん。」

 

「まあまだ後輩に負ける訳には行かないからな。」

 

訓練室を出ると小南の他に烏丸と宇佐美が待っていた。

 

「晩飯食べて行くんすよね?」

 

「ああ。邪魔して悪いな。」

 

「そんな事ないよ。大人数の方が楽しいし。照屋ちゃんも食べてくでしょ?」

 

宇佐美は文香に尋ねた。

 

「はい。ご馳走になります。」

 

オレと文香は席に着く。

そうしてると皿に盛られたカレーが運ばれて来る。

 

4年半ぶりだな…。

 

「いただきます。」

 

そう言ってカレーを口に運ぶ。

 

小南はゴクリと固唾を飲んだ。

 

「…美味いな。」

 

そう言ってオレはさらにカレーを掻き込む。

 

「?、どうした文香?」

 

食事の合間水を飲みながらオレはオレを見つめる文香に尋ねた。

 

「いや…なんて言うか幸せそうですね。」

 

「?…まあめちゃくちゃ美味しいからな。」

 

「も、もっとゆっくり食べなさいよ!お、おかわりいっぱいあるわよ…!」

 

「!、そうか…。」

 

 

 

 

(もしかして小南先輩が清澄先輩に玉狛に来て欲しい理由って…。)

 

幸せそうなオーラを出しながらカレーを食べる綾瀬川。

おかわりのために綾瀬川から差し出された皿を取る小南の顔はとても嬉しそうだった。

 

 

(((なるほど。謎が1つ解けた気がする…。)))

 

 

後日3人は語った。

 

あの時の(清澄先輩)(綾瀬川先輩)(綾瀬川くん)は笑ってないけど笑っていた…と。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

東春秋→面白い。興味。
三輪秀次→…俺も同じクラスが良かった。
小荒井登→トラウマ。でもちょっと克服。
奥寺常幸→強い。小荒井がすいません…!
烏丸京介→スコーピオンも使えるのすごい。
照屋文香→先輩。スコーピオンの師匠。
小南桐絵→やっと来たわね…!!カレーを美味しそうに食べてくれて嬉しい。



東春秋←優しい。焼肉ご馳走様でした。
三輪秀次←気の許せる友人。同じクラスが良かった…。
小荒井登←トラウマにしちゃってごめんね。
奥寺常幸←いい子。気遣いがいい。
烏丸京介←イケメン。今度模擬戦しようね。
照屋文香←後輩。一応スコーピオンの弟子。
小南桐絵←世界一カレー作るのが上手なやつ。チョロい。


この作品の謎のひとつ、小南の綾瀬川への執着の理由は「私のカレー好きでしょ?!食べなさい!!」でした。
でも素直に言えず、「ランク戦しなさい!!」になってたみたいですね可愛い。
カレーをがっつく綾瀬川を見た小南の母性本能がトゥンクしちゃったみたいです。

次回1話挟んでからROUND7に入ります。


感想、評価等お待ちしております。



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ROUND7前日

投稿できずにすいません〜。


…実は新型コロナウイルスにかかりまして…。

熱で寝込んでおりました。
熱も引いてこれから数日は自宅療養なので書く時間はいっぱいあります。(*^^*)



「次!生駒さん達との再戦だってね!!」

 

駿は二刀流のスコーピオンで斬りかかりながらオレに尋ねた。

 

「ああ、生駒隊と影浦隊だ。」

 

オレはそれを同じくスコーピオンで捌きながらそう返した。

 

「スコーピオンで行くの?弧月?」

 

「そりゃ弧月だろ。前回は奇襲の面でスコーピオンの方が良かっただけで弧月の方が得意だからな。」

 

「でもモールクローの使い方とか凄かったじゃん。スコーピオンでもマスタークラス目指そうよ。」

 

そう言いながら駿はグラスホッパーをオレの周りに複数展開。

得意の乱反射でオレを狙いに来た。

 

「まあ文香とか王子先輩みたく両方使うのもありかもな。」

 

繰り出される連撃を弧月で受ける。

 

「っと、無傷で受けるなんてやるじゃん。」

 

「当たり前だ。何回お前のそれ受けたと思ってるんだ?」

 

「あはっ、確かに…!!」

 

駿はさらに距離を詰めて切りかかる。

 

「バイパー。」

 

そう言ってオレは手をかざす。

 

「あやせセンパイが俺の乱反射見切ってるみたいに俺もそれ見切っちゃったからね…!」

 

ノーモーションから放たれた旋空を駿は横に飛び退いて躱した。

 

「何回あやせセンパイのそれ受けたと思ってんの?」

 

「違いないな。…通常弾(アステロイド)通常弾(アステロイド)…」

 

得意げに言う駿にそう返すとオレは両手を広げて合成弾の構えを取る。

 

「ちょ!すぐ弾トリガー使う〜!」

 

そう言いながら駿はグラスホッパーで距離を詰める。

 

「…残念、今回オレは弾トリガー入れてきて無いぞ。」

 

トリオンキューブの代わりに俺の右手から伸びるスコーピオン。

 

「どわっ!!」

 

覚えたての為、射程や自由さは影浦に大きく劣るが、不意を着くには充分過ぎるマンティス。

駿の右足を切り落とした。

 

「…あやせセンパイの嘘つき!!」

 

「作戦勝ちだよ。」

 

そう言って倒れた駿の胸に弧月を突き立てた。

 

 

──

 

「マンティスのおかげでブラフのレパートリーが増えたね、あやせセンパイ。」

 

「そうだな。バッグワームの目眩しなんかと合わせても良さそうだ。」

 

「うわっ、何そのクソゲー。」

 

話しながらフロアに戻ると、そこには生駒、辻が待っていた。

 

「おっ、待っとったできよぽん。」

 

「どうも、生駒さん。辻も防衛任務お疲れ様。」

 

「うん、ありがとう。」

 

「ランク戦のお誘いですか?」

 

生駒に尋ねた。

 

「それもええんやけどこの後作戦会議やねん。

 

 

 

…作戦会議やねん。」

 

「2回言わなくても分かりますよ…。お誘いならオレもこの後作戦会議なんで断ろうと思ってたんで。」

 

「あれ?だったらなんの用事なの?」

 

駿が生駒に尋ねた。

 

「会議の後うちの隊室でタコパやろうと思ってるんやけどきよぽんも来る?辻ちゃん誘ったんやけどこの後デートらしいねん。」

 

「ちょ違「いや、辻に限ってそれはないでしょ。」…そうだけど傷つくな…。」

 

「きよぽんと丁度ええ、緑川もどや?」

 

「うーん、この後一馬センパイとご飯行く約束しちゃったから遠慮しとく。」

 

「そか、きよぽんはどーする?」

 

オレは考える。

てか、

 

 

 

「タコパってなんですか?」

 

 

 

 

──

 

「っていう訳できよぽん連れて来たで。」

 

「どう言う訳やねん。」

 

生駒隊オペレーターの細井真織がつっこむ。

 

「いや、きよぽんタコパ知らないって言うんやで?関西人としては連れてこない訳にはいかんやろ。」

 

「イコさん出身京都ですやん。」

 

今度は水上がつっこんだ。

 

「細かいことは気にせんでええねん。関西ならみんな同じやろ。」

 

「イコさーん!俺たこ焼きにウインナー入れたいっす!」

 

空気を読まず南沢が元気に手を挙げた。

 

「そんなもんこうてません。」

 

「ええー!美味いのに!」

 

「ほら、きよぽん座りーや。」

 

「どうも。」

 

 

騒がしすぎやしないか生駒隊。

 

 

そう思いながらオレは空いていた隠岐の隣に座った。

 

「ごめんな、きよぽん。うちの隊騒がしいやろ。」

 

隣の隠岐が話しかけてきた。

 

「賑やかでいいんじゃないか?…何か手伝うことあるか?ご馳走になるだけじゃ申し訳ない。」

 

そう言って立ち上がる。

 

「あー…別に座っとってええよ?特にやることもないしな。」

 

水上はそう言って水と卵、小麦粉を混ぜる。

 

「後これだけやし。イコさんタコつまみ食いせんといてください、イコさんのだけタコ無しにしますよ。」

 

「ちゃ、ちゃうで!これさっきスーパーで買った酢だこやねん。」

 

そう言って生駒は水上に酢だこを見せた。

 

「なんでタコパの前にそんなもん買ってるんです?」

 

「美味いやん酢だこ。俺酢だこにはうるさいねん。」

 

「そーですか、初耳ですわ。」

 

そんな漫才を聴きながらオレは座る。

 

「あ!じゃあちょっとの間俺とランク戦しましょーよ!」

 

そう言って自分を指さしながら南沢は立ち上がる。

 

「もう出来るゆーてるやんけ。座りーや。」

 

隠岐が呆れたように言った。

 

「また今度な。」

 

「マリオちゃん、油取ってや。」

 

「ん。」

 

「しゃ!始めるできよぽん…!」

 

そう言って生駒はボールに入った溶液を構える。

 

「浪速のたこ焼き名人とは俺の事、その最大射程は40mやで。」

 

「何の話してるんですか…?てかイコさん出身京都ですやん。何回言わすんです?」

 

生駒さんがボケで水上先輩がツッコミなんだな。

 

「お笑いみたいだな。」

 

「やろ?いつも通りやで。」

 

隣の隠岐がほのぼのした様子で話した。

 

「俺以外みんなこんな感じで自由人やねん。…せや、俺ん家の猫見る?」

 

「いや、隠岐も大概自由人だと思うぞ。」

 

「ぼさっとしてないで早く焼きや。きよ…綾瀬川クン待っとるやん。」

 

「マリオちゃん今言い直した〜。照れんでええのに。」

 

「う、うっさいわ!」

 

「いや、どっちかって言うとそれオレのセリフですから。」

 

「ちゃ、ちゃうで綾瀬川クン。この馬鹿共がきよぽんきよぽん言うからウチもつい呼んじゃっただけやねん。」

 

細井はあたふたしながらそう言った。

 

「別にもう慣れた…好きに呼んでくれて構わない。」

 

「そ、そか…。」

 

「きよぽん、うちのマリオ口説かんといてや〜?」

 

水上はいたずらっぽく笑みを浮かべてそういった。

 

「そんなんじゃないですよ…。」

 

そんな話をしていると生駒がたこ焼き器に溶液を流し込む。

 

「反面だけでどうやって丸くするんですか?」

 

オレは水上に尋ねた。

 

「きよぽん頭良さそうなのに本当に知らんの?こん中にタコぶち込んでひっくり返すんや。お好みで天かすとか入れる人もおるで。まあ天かすは昼に海がうどんに使って無くなったんやけどな。」

 

「へへっ、やっちまったっす!」

 

そう言いながら南沢は舌を出して頭を描いた。

 

 

「ほい、焼けたできよぽん。」

 

そう言って竹串でオレの前の紙皿にたこ焼きを置く生駒。

 

「ここにソースとマヨ、鰹節を乗せるんやで。」

 

「なるほど、タコ玉のちっちゃいやつですかね。」

 

「大阪人の前で随分なこと言うやんけ。…まあカゲんちのは美味いけどな〜。」

 

「…いただきます。」

 

そう言ってオレはたこ焼きを口に運ぶ。

 

「火傷せんと食いや。」

 

そう言って細井はオレの前に水を置いた。

 

「あっつ…!」

 

どうにか口に入れ噛む。

しかし中身はトロトロで、すぐにタコに歯が当たる。

 

ソースとマヨネーズがトロトロの衣にマッチしていた。

そしてその中にいい弾力のタコが。

 

「美味い…。」

 

そう言ってもう1つのたこ焼きに箸を伸ばす。

 

「良かったわ〜。ゆっくり食べ。まだまだ焼くで。」

 

 

 

 

「そう言えばROUND6凄かったやん。東さん落とすところとか俺普通に感動したんやけど。」

 

「どうも。」

 

「実際凄いよな。あれもきよぽんのサイドエフェクトが成せる技なん?」

 

水上がオレに尋ねた。

 

「まあそうですね。…教えませんよ。」

 

生駒が分かりやすく期待の眼差しでこちらを見ていたのでそう一蹴した。

 

「そういやノールック狙撃もサイドエフェクトのおかげって言っとったな。」

 

隠岐が顎に手を当てながら考える。

 

「攻撃も分かってる見たいに躱すっすよね。…もしかして未来予知とか?」

 

「ちゃうやろ。きよぽんのはどっちかって言うと…

 

 

 

 

 

 

…演算やろ?」

 

水上はそう推理する。

 

「演算?その根拠は?」

 

「だってきよぽんいつも敵の動き見てから動いてるやん。予知なら動き見んくても避けれるんちゃいます?」

 

 

…凄いな。ログの映像だけでそこまで見抜いたのか。

 

 

水上敏志…。

生駒(絶対的エース)を引き立たせる射手の基本スタイルを貫く生駒隊の参謀。

 

生駒隊で1番厄介なのはこの男なのだろう。

 

 

「どーなん?きよぽん。」

 

「…どれだけ考察しても答えは教えませんからね。」

 

「ちっ、ケチやなきよぽん。」

 

そう言って水上はオレの肩に肘を乗せる。

 

「…まあたこ焼きのお礼です。明日は旋空対決でもします?」

 

オレは生駒に尋ねる。

 

「!、乗った!」

 

「…ええん?使うトリガー教えて。」

 

「相手が影浦隊と生駒隊の時点で水上先輩なら大方予想してたでしょ。弧月使うって。教えても別に問題ありませんよ。」

 

「ほー…。」

 

水上は目を細める。

 

「きよぽんとは仲良くなれそうやわ。」

 

「奇遇ですね。オレも水上先輩とは仲良くやれそうです。」

 

水上の細められた目が柔らかくなる。

 

「ほら、まだたこ焼き沢山あるで。」

 

そう言って水上はオレの皿の上にたこ焼きを乗せる。

 

「!、いただきます。」

 

 

 

 

そして翌日。

B級ランク戦ROUND7が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てか酢だこうるさい設定…あれなんなんです?」

 

「いや、スーパーでたこ焼きの材料買ってる時に目の前のおっちゃんがそう言っとったの聞いて俺もやりたくなってん。」

 

「しょーもな。」

 

「酢だこにうるさいイコさんもええやろ?」

 

「いや意味わからん。」




各キャラからの印象&各キャラへの印象

緑川駿→お兄ちゃんみたいな人。最近勝てない。
辻新之助→友人。表情変えずに女子と喋れるの凄い。
生駒達人→旋空仲間。タコパ楽しいやろ?
水上敏志→近くで見たら普通にイケメンやな。頭良さそう。
隠岐孝二→友人。うちの猫見る?
南沢海→ランク戦しましょーよ!!!
細井真織→ミステリアス。うちのと違って静か。

緑川駿←弟分。可愛い。
辻新之助←友人。今度メイド喫茶でも行けば?
生駒達人←面白いけどたまに何言ってるかわからん。
水上敏志←マヨネーズかけて食べたら美味しそうな頭。キレ者。
隠岐孝二←友人。猫いいな…。
南沢海←声でかい。元気。
細井真織←まじでマオリなのかマリオなのかわからん。

次回からROUND7突入致します。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND7 VS影浦隊、生駒隊①

読者の皆様へ。

連続投稿ができない日が続いて申し訳ございません。
前回の話でも言った通り新型コロナウィルスに感染してしまいまして。
ただの風邪って舐めてたら痛い目あってて…1回高熱が引いたと思ったらずっと37°後半をウロチョロしてる状態です。
なので少し投稿ペース落として大丈夫ですかね?
割と…( ・᷄д・᷅ しんどい)



『皆さんこんにちは!B級ランク戦ROUND7、実況を務めます、風間隊の三上です!解説席には嵐山隊の木虎隊員と加古隊の加古隊長をお招きしています。』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『久しぶりね木虎ちゃん。どう?私の隊に入らない?』

 

加古隊隊長の加古(かこ)(のぞみ)は隣に座る木虎(きとら) (あい)に尋ねた。

 

『私はもう嵐山隊なんで。遠慮しておきます。』

 

『あら残念。』

 

そう言いながらも加古は笑みを浮かべた。

 

『今回ぶつかるのは影浦隊、柿崎隊、生駒隊のB級上位チームとなりますが加古さんはどの部隊が勝つと思われますか?』

 

『そうね〜、普通に考えれば影浦くんのところだと思うけど…私B級のランク戦あんまり見てないのよね。柿崎くんB級上位に来てたんだ。』

 

『柿崎隊は今シーズンから4人部隊となり、中位の13位から一気に順位を上げ今は3位に位置しています。』

 

『あら?1人増えたのね。』

 

そう言って加古はモニターに映し出された綾瀬川を見る。

 

『嵐山さん曰く今シーズンの台風の目…らしいですよ。』

 

木虎はそう補足する。

 

『そう、それは楽しみね。』

 

『そうですか?攻撃手トップクラスの影浦さんと生駒さんが相手ですよ?案外簡単に落とされるんじゃないですか?』

 

木虎はそう考察する。

 

『お二人共ROUND3や、ROUND4のログはご覧になってないんですか?』

 

『大学のレポートが忙しくって。防衛任務もちょこちょこ入ってたし見る時間なかったのよね。』

 

『私は広報の仕事があったので。』

 

『なるほど…

 

 

…でしたら面白いものが見られると思いますよ。』

 

 

──

 

生駒隊作戦室

 

「もし俺が夢の中で可愛い女の子と入れ替わったとするやん?」

 

生駒が尋ねた。

 

「…唐突ですね。」

 

「そんで入れ替わった女の子が密かに恋を寄せてるごっつイケメンな男に告られたとするやん?」

 

「はあ…。」

 

水上はため息を着く。

南沢はワクワクしながら話を聞き、隠岐は苦笑い、細井は何も言わずに呆れていた。

 

「そう言う場合ってどうやって断るのが正解なんやろな。」

 

「知りませんよそんなの。てか断るんですね。OKしてやったらええんちゃいます?」

 

「アカンやろ!その女の子は最後入れ替わった男の子と結ばれるべきやろ!!」

 

「知りませんしどーでもいいですやん。ランク戦前に何の話してるんですか。」

 

「はーい!俺なら…「他に好きな人がいるので…」って言って断ります!」

 

南沢は元気よく答えた。

 

「普通やんけ。じゃあ女の子を振った経験が2桁ある隠岐くんはどや?」

 

「いや、まずそんなに告られませんから。」

 

「そんなにって何回や!ちなみにイコさんは0回やで!」

 

生駒は自信満々に自分を指さしながらそう言った。

 

 

 

 

「…言ってて死にたくなってきたわ。」

 

「勝手に話して勝手に凹まんといて下さいよ…。マップどこにするか決めたんですか?」

 

「俺の心は今悲しみに溢れてんねん。雨…降らせといてや。」

 

「りょーかい。あとは適当に決めときますわ。」

 

 

──

 

『ここで生駒隊によりマップは「市街地C」に決定されました!マップの解説をお願いします。』

 

『山の斜面に作られた住宅地って感じね。坂道があって道路を間にはさんで階段状の住宅地が斜面に沿って続いてるわ。上に行くにはどこかで道路を横切らないといけないから狙撃手は高い位置を取るとかなり有利になるわね。

 

『逆に下からは建物が邪魔で身を隠しながら相手を狙うのが難しなって不利になります。 』

 

『なるほど、ありがとうございます。』

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「カゲ、Cだって。」

 

「C?どこだ?」

 

「狙撃手有利なとこ。ユズルは最優先で高台狙った方がいいかな。隠岐くんと被らないように注意してね。ボクも転送位置次第じゃ上からメテオラするからカゲ、よろしくね。」

 

北添が影浦にそう言う。

 

「わかった。」

 

「どこだっていい。綾瀬川との再戦だ。俺があいつの喉元かっさばいてやるぜ…!」

 

獰猛な笑みで影浦は笑う。

 

「楽しみだぜ…。」

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「随分と極端なマップ選んできたな、生駒のやつ。」

 

「隠岐先輩を活かす作戦でしょうか?」

 

「だが絵馬の手助けをしてることになるぞ?絵馬が暴れだしたら手に負えないだろ。清澄もイーグレット入れとくか?」

 

柿崎が綾瀬川に尋ねる。

 

「…そうですね。まあ狙撃銃は使いますよ。上を取るように動きます。…転送位置が悪かったら接近して狙撃手を落としましょう。」

 

「そうだな。今回はマップが狭い。分かれる動きよりも合流して動いた方が良さそうだな。」

 

「「「了解。」」」

 

「清澄先輩、弾トリガー何入れます?」

 

「バイパーだけでいい。後の枠は…」

 

 

──

 

『さて!転送準備が整いました、各隊一斉に転送開始。

 

 

 

 

 

…転送完了!ステージは「市街地C」、天候は…雨!』

 

 

 

──

 

オレが転送されたのは1番下。

レーダーを見ると、全員綺麗にバラけていた。

 

『中間で合流するぞ。』

 

柿崎から通信が入る。

 

『オレは1番下なんでバッグワーム着て向かいます。』

 

『分かった。絵馬か隠岐が上の方に転送されてるかもしれねえ、射線には気をつけろ。』

 

『了解。』

 

『みんな、2人バッグワームつけたよ。多分絵馬くんと隠岐先輩だと思うな。』

 

『了解。俺は虎太郎と合流してから向かう。文香、清澄は気を付けて動けよ。』

 

『『了解。』』

 

──

 

『各隊綺麗にバラけたわね。』

 

『バッグワームをつけたのは絵馬隊員、隠岐隊員、そして綾瀬川隊員の3人、バッグワームを着た3人は一斉に高台目掛けて走り出した!』

 

『綾瀬川くんは狙撃手を押さえに行くのかしら?柿崎隊だけ狙撃手がいないんじゃ不利よね。』

 

『…いや、綾瀬川隊員は狙撃手を抑えて自分も狙撃できる位置を取る動きだと思いますよ。』

 

『狙撃?万能手の綾瀬川先輩が?』

 

『ええ、綾瀬川隊員はイーグレットも使える万能手ですから。』

 

三上のその言葉に2人は目を見開きモニターを眺めた。

 

 

──

 

『そろそろゾエが撃つぞ。みんな警戒しろよ。』

 

柿崎の通信が入る。

 

『…あー…オレみたいです。バッグワーム付けてたんですけどね。北添先輩は結構上の方取ってますよ。オレの事見えてたみたいです。』

 

空に打ち上がったメテオラ。

オレはシールドを構える。

 

『清澄先輩気を付けて!メテオラに合わせて誰かそっちに向かってる。多分…』

 

『ああ、カゲさんだろうな。文香、どうにか抑えとくからこっち来れるか?』

 

『了解です。』

 

『俺と虎太郎も向かう。あんま無理すんなよ。』

 

『了解。』

 

そう言って通信を切った。

 

──

 

『北添隊員のメテオラ炸裂!綾瀬川隊員シールドを構え、距離をとる!』

 

『いい動きね。少し引いて奇襲対策をしっかりしてるわ。』

 

『しかし、左から影浦隊長が接近!綾瀬川隊員に仕掛ける動きでしょうか。』

 

──

 

爆風の合間を縫ってスコーピオンが迫る。

オレは首を横に動かし避け、バク転しながら距離をとる。

 

「よぉ、遊びに来たぜ、綾瀬川ァ。」

 

「忙しいんで。ほか当たってくれます?」

 

そう言いながらオレは弧月を構える。

 

『真登華、すぐ動ける位置で1番射線が通らない場所にマークつけてくれ。』

 

『分かりました。』

 

繰り出されるマンティス。

オレはシールドと弧月で受けながらマークされた位置に移動する。

 

そして攻撃の合間に地面に手を置いた。

 

「…エスクード。」

 

「!」

 

地面を伝い、建物の外壁に5つ盾が現れる。

 

 

──

 

『これは…建物の外壁にエスクード?!』

 

『いくつか穴があって完璧にって訳じゃないけど…上手く射線にエスクードを置いてるわ。』

 

『なるほど、狙撃手の射線を防ぐ狙いが…。』

 

木虎は顎に手を当てて考える。

 

──

 

「警戒しなくても逃げませんよ。」

 

そう言いながら弧月を握る手に力を込める。

 

「とは言え北添先輩が怖いんでこっちも増援は呼びました。それまで遊びましょうか。」

 

そして左手にはトリオンキューブを構える。

 

「…ハッ、おもしれえ…!」

 

ギラついた瞳孔を全開に開き笑みを浮かべる影浦。

 

 

ボーダー屈指のスコーピオン使いの変則スコーピオンがオレの喉元目掛けて放たれた。




ちなみに現在の綾瀬川の個人ポイント

弧月 8360
アステロイド 6360
ハウンド 5555
メテオラ 5757
バイパー 7630
イーグレット 5775
スコーピオン 5252

少しずつ上がってます。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND7 VS影浦隊、生駒隊②

投稿空いてしまいすいません。
お陰様で熱は引きました。
今のところ味覚がおかしいくらいしか問題はございませんので投稿する運びとなりました。
あんまり味を感じないので食事がまじでつまらないですw


『一方の生駒隊、水上隊員と南沢隊員が合流!少し離れた位置に転送された生駒隊長と合流する動きか!』

 

『生駒さんは動きませんね。』

 

 

 

──

 

『水上…俺もカゲときよぽんの戦いに混ざりたいんやけど。』

 

『いやいや、ゾエも照屋ちゃんも絶対向かってますよ。1人で行くんは危険でしょ。俺らそっち向かってるんで待っとってください。ユズルどこにいるか分かりませんよ。』

 

『でもきよぽんと旋空対決しようって約束したもん。』

 

『もんじゃないです。すぐ向かうんで大人しくしといて下さいよ。』

 

『了解。』

 

──

 

「バイパー…。」

 

「ちいっ!!」

 

綾瀬川のバイパーをシールドで受けながら影浦は後ろに飛び退く。

 

「旋空弧月。」

 

「ハッ!そのパターンは何度も見てんだよ!」

 

体を捻らせながら旋空を避け、綾瀬川にスコーピオンを伸ばす影浦。

 

「オレもあなたのマンティスは何度も見てます。当たりませんよ。」

 

そう言いながら伸びたスコーピオンを避け、追加でバイパーを放つ。

 

 

──

 

『綾瀬川隊員VS影浦隊長の一騎打ち激化!旋空、バイパーのコンボに影浦隊長はマンティスで迎え撃つ!』

 

『へえ、バイパー。珍しいトリガー使ってるのね。』

 

『綾瀬川隊員は那須隊員、出水隊員に次ぐ3人目のリアルタイムで弾道を引けるバイパー使い、射程の有利がある分綾瀬川隊員がやや有利か!』

 

『あら、そうなの?…へぇ…。』

 

加古は興味深そうに笑みを浮かべながらモニターに視線を戻した。

 

(バイパーも凄い…でも何より凄いのは…)

 

『回避能力…高すぎじゃないですか?影浦先輩のマンティスをあんな少ない動きで避けるなんて…。』

 

『そうね。影浦くん相手にあそこまで戦えるなんて。』

 

加古はますます興味深そうに綾瀬川に視線を向けた。

 

『そして生駒隊、生駒隊長がバッグワームを装着!隠密行動で点を取る狙いか!』

 

『水上くんの指示かしら?』

 

『レーダーから消える生駒さんほど怖いものは無いですね。』

 

──

 

『清澄先輩!もう1人レーダーから消えました!』

 

『…分かった。生駒さんだったらめんどくさいな。』

 

影浦のマンティスを捌きながら真登華の通信を受ける。

 

『文香はどれくらいで着きそうだ?』

 

『もう少しかかりそうです。絵馬くんと隠岐先輩の射線が怖いので。』

 

『了解。』

 

 

「エスクード。」

 

バイパーで影浦から距離をとると、エスクードを発動。

オレと影浦の間に3つの盾が現れる。

 

「そんなのガードに入んねえんだよ!!」

 

エスクードの裏に隠れたオレに合わせてスコーピオンが曲がる。

 

「エスクード。」

 

しかし時間差で発動したエスクードに弾かれる。

 

「バイパー。」

 

エスクードの影から姿を見せるトリオンキューブ。

 

影浦はフルガードで後ずさる。

 

「うぜえ戦法使いやがるぜ。

 

…ちっ、時間かよ。」

 

『清澄先輩!北添先輩です!!』

 

その言葉と同時にこちらに放たれるのは北添のメテオラ。

豊富なトリオンから放たれたそれはエスクードを吹き飛ばした。

 

「ちっ…エスクード。」

 

北添と影浦を分断するようにエスクードを生やす。

 

しかし、時間稼ぎにはならず、影浦のマンティスを弧月で受けている間に、エスクードは壊されてしまった。

 

『ちょっとしんどいな。文香、急げそうか?』

 

『…了解。』

 

『ああ、絵馬の射線は俺が何とかする。』

 

『何とかするって…清澄先輩?』

 

『…まあ見とけ。早撃ち狙撃はオレの得意分野だ。』

 

──

 

『ここで北添隊員が乱入!綾瀬川隊員が一気に不利になった!』

 

『あら、ここまでかしら?もっと見てたかったのに。』

 

『いくら回避能力が高くても北添先輩が混ざれば射程の有利も無くなりますしここまでですね。照屋先輩や柿崎さん達が間に合えば別ですけど…それまで生きてられないでしょう。絵馬くんも良い位置取りましたし。』

 

──

 

影浦のマンティス、北添のアステロイドをエスクード、シールド、サイドエフェクトをフル活用してどうにか捌く綾瀬川。

常人離れした綾瀬川の回避能力に北添は少し焦っていた。

 

『ちょ…当たらなすぎじゃな〜い?綾瀬川くん。』

 

『あ?いつもこんなもんだろ。』

 

『カゲさん、ゾエさん。狙える位置取ったよ。射線に入ったら撃つから上手く誘導して。』

 

そこに絵馬の通信が入る。

 

『了解。』

 

──

 

攻撃が多角的になったな。

北添先輩のアステロイドもオレを誘導させるような動きだ。

 

恐らく絵馬がこちらを狙える位置に着いたのだろう。

 

『真登華、ここを狙撃できる場所を表示してくれ。』

 

『分かりました。』

 

しばらくするとここを狙える3つのポイントが表示される。

 

エスクードの位置的にもここがいいな。

 

そう考えながら、アステロイドの合間に地面に手を置いた。

 

「エスクード。」

 

「「!」」

 

オレの発動したエスクードは射線を潰すように、建物の外壁から生える。

 

「何を考えてやがる。」

 

そう言いながらマンティスを振り回す影浦のスコーピオンを弧月で受ける。

 

「さあ?…バイパー。」

 

バイパーで北添のアステロイドを牽制。

シールドを誘う。

 

それと同時に残ったエスクードの影(定位置)に飛び退いた。

 

「!、てめぇ、何を…ユズル…!!」

 

 

──

 

「詰めが甘いよ。射線を潰したつもりかもしれないけど…1箇所忘れてる。」

 

絵馬は先程の位置から少し移動。

綾瀬川が外壁に生やしたエスクードの死角にならない位置に移動し、アイビスを向けた。

 

 

 

そこで絵馬は信じられないものを目撃する。

 

 

スコープ越しに見た綾瀬川はこちらにイーグレットを向けていたのだ。

まるで絵馬がこの位置から狙撃するのを分かっていたように。

 

『ユズル!!』

 

そこに影浦の内部通信が入る。

 

しかし時すでに遅し。そのまま綾瀬川のイーグレットが火を吹いた。

 

咄嗟のシールドも間に合わず、綾瀬川のイーグレットは絵馬のトリオン供給機関を撃ち抜いた。

 

──

 

『絵馬隊員が緊急脱出!まさかの狙撃に最初の得点は柿崎隊となった!!』

 

『何よ今の…。』

 

有り得ないと言うように木虎は口を覆う。

 

『エスクードで射線を全部潰したと思わせて残っていた射線に絵馬くんを誘導したのね。影浦隊は綾瀬川くんを絵馬くんの射線に誘導したつもりだったでしょうけど…誘導されていたのは絵馬くんだったのね…。ふふっ、面白いじゃない、彼。』

 

『あそこまでの精度で狙撃も出来るなんて…まさか綾瀬川先輩って…』

 

『ポイントはまだ足りないみたいだけど…完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)って言っても遜色ないくらい使いこなしてるわね。なるほど、柿崎隊が上位に来た理由も分かったわ。』

 

『いえ、綾瀬川隊員だけでは無いですよ、柿崎隊は。』

 

最近の試合を見ていた三上は笑みを浮かべながらそう言った。

 

──

絵馬を落としても、影浦隊有利な状況は変わらず、影浦のマンティス、北添のアステロイドと、エスクードを消し飛ばすメテオラの応酬に綾瀬川は防戦一方となっていた。

 

有利な状況を見越してか、北添は山なりに、メテオラを放ち、アサルトライフルをこちらに向けた。

時間差による攻撃。

エスクードの上からの爆撃だ。

 

 

 

「メテオラッ!!」

 

 

しかし、山なりに放たれたメテオラは同じくメテオラに撃ち抜かれ、少し上空で爆発する。

 

「間一髪でしたね、清澄先輩。助かりました?」

 

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ…。だがまあ…助かったよ、文香(エース)。」

 

柿崎隊のダブルエースが影浦隊の前に揃ってしまった。

 

 

──

『照屋隊員、綾瀬川隊員のピンチに救いのメテオラ狙撃!柿崎隊のダブルエースが揃った!!』

 

『へぇ、ダブルエース。』

 

『て言うか照屋先輩って攻撃手に転向してたんですね。』

 

『今シーズンの柿崎隊は照屋隊員、綾瀬川隊員を点取り屋に柿崎隊長が守り、巴隊員がサポートすると言う戦闘スタイルで大量得点を上げています。中でも照屋隊員の弧月、スコーピオン、メテオラによる変則攻撃は強力です!』

 

──

 

「じゃあ隊長達が来るまではオレがサポートする。」

 

そう言って綾瀬川はトリオンキューブを構えた。

 

「了解です。」

 

照屋の視線は鋭くなり、右手に弧月、左手にはハンドガンを握っていた。

 

「ハッ、残念だがてめぇじゃあ俺の相手は務まんねえよ。」

 

そう言って放たれた影浦のマンティスが照屋の喉元目掛けて放たれた。

 

 

しかし、それを下から生えたエスクードが弾き飛ばす。

 

「っ?!」

 

そして影浦の足元にチクリと痛みが走る。

 

(下!!)

 

影浦が飛び退くと、モールクローがエスクード越しに飛び出す。

 

「カゲ!前!前!」

 

エスクードの影から飛び出すバイパー。

すぐに北添が影浦を覆うようにシールドを貼る。

 

「旋空弧月。」

 

「ちいっ!!」

 

体に突き刺さる痛み。

それを感じて影浦はしゃがむようにエスクードを切り裂きながら放たれた照屋の旋空を避けた。

 

しかし目の前の照屋も旋空を撃ったと同時に横に飛び退く。

そこには弧月を構えた綾瀬川が。

 

「旋空弧月。」

 

「くそ…!!」

 

影浦はスコーピオンを重ねてどうにか綾瀬川の旋空を受けるが、脇腹を切り裂かれ、トリオンが漏れる。

 

 

 

「…おもしれえじゃねえか。」

 

影浦は好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

…キンッ…

 

 

『『斬撃警戒!!』』

 

 

「ちっ、来やがったか…!!」

 

突き刺さる痛みに影浦は飛び退く。

 

「エスクード。」

 

そう言いながら綾瀬川は照屋を引き寄せると、下からせり上がった盾に乗る。

 

それと同時に建物をなぎ倒しながら伸びる旋空が通り抜けた。

 

 

 

 

「なんや、当たってへんやん。」

 

「相手がきよぽんとカゲじゃしゃあないでしょ。」

 

「でも建物越しやで?オペ優秀すぎやろ。」

 

「じゃあもう1発撃ったらええんちゃいます?」

 

「せやな…」

 

生駒は高速の抜刀。

 

 

「ちっ、ゾエ!」

 

「どぅえぇ?!」

 

影浦は北添を突き飛ばし、飛び退く。

 

「文香、離れてろ。」

 

そう言って綾瀬川も弧月抜刀。

 

縦向きに放たれた旋空と横向きに放たれた旋空が衝突。

2つの旋空は火花を散らしてぶつかり、相殺した。

 

「お出ましかよ。」

 

「気引き締めろよ、文香。」

 

「分かってます…!」

 

 

影浦隊、柿崎隊、生駒隊が集結。

 

ROUND7は混沌の乱戦へともつれ込む。




ROUND7綾瀬川のトリガーセット

メイン:弧月、旋空、エスクード、シールド
サブ:バイパー、イーグレット、バッグワーム、シールド


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B級ランク戦ROUND7 VS影浦隊、生駒隊③

味があるって最高ですね。



『ここで生駒隊が柿崎隊と影浦隊の戦いに参戦!綾瀬川隊員と生駒隊長の旋空が激しくぶつかった…!!このまま乱戦にもつれ込むか…!』

 

『柿崎隊は巴くんと柿崎さんがそろそろ着きそうですし生駒隊も4人全員います。序盤で絵馬くんを落とされた影浦隊が少し不利ですね。』

 

『そうね。それにさっきの攻防で影浦くんのトリオンも少し漏れてるし。万事休すってところかしら?』

 

──

 

ピンチの状況だと言うのにお構い無しに目の前の猛者2人相手に影浦は目をギラつかせる。

 

「ゾエ、援護しやがれ。」

 

「うえぇ!?勝負挑む気?立て直そうよ。」

 

「知るか。こんな楽しめそうなバトルみすみす逃せるかよ。」

 

「…分かった。援護する。頼んだよカゲ。」

 

「…たりめえだ…。」

 

影浦は短く返すとスコーピオンを構えた。

 

「すっげえ。ワクワクしてきたッス!」

 

南沢は弧月を握り直し、冷や汗を浮かべながらも笑みを浮かべた。

 

「正念場やで。勝って祝いのタコパしようや。」

 

ゴーグルの奥の生駒の目が見開く。

 

「りょーかい。援護しますわ。…隠岐、ザキさんと虎太郎の警戒頼むで。」

 

好戦的な生駒に水上はそう返した。

 

「文香、ここからは2人で攻めよう。各自援護し合って点を取る…いいな?」

 

表情は変わらない。

だがいつもの綾瀬川よりも声色が力強かった。

 

「…わかりました。」

 

悔しいが今の自分では2人には敵わないのだろう。

だがそこで腐ったりはしない。

 

柿崎隊のダブルエース。

2人で点を取る。

 

照屋は一呼吸置いた後、メテオラと、弧月を構えた。

 

そして戦場は動き出す。

 

北添のグレネードガンから放たれたメテオラ。

それを空中で照屋が相殺する。

 

辺りを爆風が包み込んだ。

 

 

「「旋空弧月。」」

 

 

その爆風を切り裂くように2つの旋空がぶつかる。

 

「海!」

 

「任せてくださいっ!」

 

グラスホッパーで、綾瀬川に組み付く南沢。

弧月で受け太刀すると、そんな2人をまとめて切り裂かんとする、スコーピオンが襲いかかる。

影浦のマンティスだ。

 

しかしそれを防ぐように照屋が弧月でスコーピオンを砕いた。

 

「!…へぇ、おもしれえ…!!」

 

影浦は笑みを浮かべながらスコーピオンをうねらせた。

 

「旋空弧月!」

 

 

 

そんな2人を引き裂くように放たれる生駒の縦向きの旋空。

それを横に飛び退いて避けると、そこに目掛けて水上のアステロイドが放たれる。

 

 

 

「エスクード。」

 

混沌とした戦場にいくつもの盾が現れる。

 

 

『水上先輩すんません!ザキさんと虎太郎見失いました…!』

 

 

 

「スラスターON!」

 

物凄いスピードで生駒目掛けて突っ込んでくる柿崎。

生駒はどうにか弧月で受けるが、勢いは殺せず後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

「遅くなってすまねぇ!」

 

レイガストを構えた柿崎、その後ろには巴も立っていた。

 

「清澄、文香。好きに動け。俺と虎太郎でサポートする。」

 

 

その言葉に綾瀬川と照屋は息を吐き、弧月を構える。

 

「「…了解。」」

 

──

 

『ここで柿崎隊長と巴隊員も合流!全隊員ここに集結!まだまだ何が起こるか分かりません!』

 

『影浦隊は引かずに構えるのね。影浦くんらしいわね。』

 

──

 

「「エスクード。」」

 

綾瀬川と柿崎の声が重なる。

戦場にいくつもの盾が生える。

 

「バイパー。」

 

その盾の影を縦横無尽にバイパーが曲がりながら通り抜ける。

 

「邪魔やな…!!」

 

生駒の旋空はエスクードを切り裂きながら綾瀬川に襲いかかる。

 

「グラスホッパー!」

 

巴が自分と綾瀬川の分の2つのグラスホッパーを出したことでそれに乗り2人は飛び退く。

 

「バイパー来ますよ、イコさん。」

 

そう言いながら水上は自分の分のシールドを生駒の周りに張る。

 

しかし、バイパーは当たる事なく、弾道を変えた。

 

「!、俺やんけ…!」

 

「任せてくださいッス!」

 

水上を守るように南沢のシールドが張られる。

 

「ナイスやで、海。…隠岐!!」

 

 

 

 

 

『了解。』

 

 

エスクードの隙間を縫うように放たれるライトニング。

 

「くっそ…!」

 

巴の右肩から下を吹き飛ばす。

 

『撃ったな。真登華、マーク付けてくれ。』

 

『了解!虎太郎、行ける?』

 

『問題ないです!行きます!』

 

マイク越しの宇井の言葉に巴はグラスホッパーを構える。

 

「エスクード!」

 

柿崎のエスクードが巴の足元から隠岐のいるマップの上目掛けて迫り上がる。

 

そのまま巴は勢いよく飛び上がるとグラスホッパーを複数展開、隠岐目掛けて空中を駆け出した。

 

「マジかいな…!!」

 

隠岐はライトニングを連射、しかし巴はグラスホッパーを巧みに使って避けると、飛びながら隠岐にハンドガンを乱射する。

隠岐はたまらずシールドで防ぐも、巴に接近を許してしまい、弧月でトリオン供給機関を切り裂かれた。

 

『すんません…。先落ちますわ。』

 

そのまま隠岐は光となって空に上がる。

 

『俺もここまでみたいです。すいません。』

 

続いて右半身を撃ち抜かれた巴もトリオン漏出過多で緊急脱出。

生駒隊、隠岐のポイントとなった。

 

──

 

『生駒隊隠岐隊員と柿崎隊巴隊員が緊急脱出!巴隊員の捨て身の特攻が功を奏したか!緊急脱出前に1点もぎ取った!』

 

『エスクードとグラスホッパーを使った立体超速攻ね。なるほど、面白いじゃない。』

 

──

 

2人が緊急脱出したが戦場は変わらず動き続ける。

水上の援護で生駒、南沢で点を取りに来る生駒隊。

北添のメテオラ陽動でその爆風からマンティスによる奇襲を繰り出す影浦隊。

柿崎、オレのエスクードを利用しつつ、照屋のメテオラによる陽動、オレのバイパーによる変幻自在の攻撃で点を狙う柿崎隊。

 

 

1歩離れた位置から戦場を動かしているのはあの男だった。

 

 

『水上先輩が邪魔ですね。上手く盤面をコントロールされてます。』

 

オレはエスクードの影で水上に視線を向ける。

 

『…分かった。清澄、俺も攻撃に回る。メテオラで水上を崩す。文香の守り頼むぞ。』

 

『了解。』

 

そう言うと柿崎はレイガストを構えたまま、水上の上空にアサルトライフルでメテオラを数発放った。

 

「水上!」

 

「行かせませんよ。」

 

「!」

 

生駒目掛けて文香が旋空を放つ。

生駒はどうにか弧月とシールドでそれを防ぐ。

 

 

「やってくれるやんけ…。」

 

そう言って生駒は弧月を力強く振り抜いた。

 

「おいおい、楽しそうな事始めようとしてんじゃねえよ…!俺も混ぜやがれ…!」

 

「…援護する。気負わず行けよ。」

 

「…はい。」

 

ボーダートップクラスの攻撃手と柿崎隊のダブルエースが向き合った。

 

──

 

「スラスターON!」

 

水上の周りに着弾したメテオラの煙をかき分けるように柿崎はスラスターで突進。

一瞬で水上との距離を詰める。

 

「どわっ!あっぶねー!」

 

しかし、南沢が前に現れ、弧月でそれを防ぐ。

 

「ええで海。抑えときや…アステ…ロイド…!!」

 

そう言いながら降り注ぐのはメテオラ。

 

 

爆風の隙を見て水上は脱出を図る。

 

 

『!、ダメや水上!そこ北添先輩回り込んどるで!!』

 

「ちっ、ちゃっかりしとるやんけ、ゾエ。」

 

「うちはまだ0点だからね〜。点取っとかないと!」

 

いつの間にかバッグワームで回り込んだ北添のアステロイドに水上はシールドごと削り落とされた。

 

 

──

 

『乱戦激化!隙を着いた北添隊員が水上隊員を落とし影浦隊が1点取り返した!』

 

『ゾエくんはしっかり盤面見て点を取りに来たわね。こう言うの見ると欲しくなるわねゾエくん。…マスコットとして。』

 

『『マスコット?!』』

 

──

 

「ちっ…!!」

 

水上のメテオラをどうにかレイガストで受けた柿崎だったが、庇いきれなかった左腕を失い、爆風から後ずさる。

 

「点貰ってくっス!」

 

元マスタークラスの攻撃手、南沢海の連撃にレイガストが吹き飛ばされる。

そのまま柿崎は弧月に貫かれた。

 

「へっ、だがただじゃ落ちねえよ…エスクード!!」

 

南沢の足元からレイガストが迫り上がる。

 

「どわっ!!」

 

南沢を吹き飛ばし、柿崎は緊急脱出。

生駒隊が2点目を獲得した。

 

 

浮いた駒は逃がさない。

 

北添のアステロイド乱射が南沢を襲う。

 

 

「ハッ!そのままシールド誘っとけ。」

 

そう言って照屋に組み付いていた影浦は後ろに飛び退くとスコーピオンを南沢目掛けて伸ばした。

 

「させるわけないやろ…!!」

 

生駒は影浦に切りかかる。

しかし、それを援護するように北添のアステロイドが生駒に降り注ぐ。

 

「すいません、後頼むッス…!」

 

マンティスに貫かれ、南沢も緊急脱出。

影浦隊も2点目をあげ、3チーム2点ずつ点を獲得した。

 

「…」

 

生駒のゴーグルの奥の瞳が鋭くなる。

 

「…旋空弧月…!!」

 

生駒は北添目掛けて弧月一閃。

生駒旋空が北添に襲いかかる。

 

「やっば!!」

 

急いで飛び退くも神速の一閃に北添は右足を失った。

 

 

「ちっ!」

 

影浦は北添を守ろうと駆ける。

しかし邪魔するように綾瀬川が前に躍り出た。

 

「綾瀬川ァ…!」

 

「北添先輩は邪魔なんで。生駒隊の点になってでも退場してもらいます。」

 

そして2度目の旋空が北添を切り裂いた。

 

──

 

『柿崎隊長、南沢隊員に次いで北添隊員もここで脱落!残ったのは生駒隊長、影浦隊長、そして柿崎隊のダブルエース、綾瀬川隊員と照屋隊員のみとなった!!』

 

『こんな白熱した試合久しぶりね。息を飲むのも忘れちゃいそう。』

 

『…すごい…。』

 

木虎はただ一言そう零した。

 

 

 

 

 

ボールテージの上がった観客席の視線は4人のエース隊員に向けられる。




各キャラからの印象


三上歌歩→すごい。風間さんも認める程の逸材。
加古望→面白い。興味。
木虎藍→…悔しいけどすごい。

今回で終わる予定だったんですけど終わらなかったので現在のポイントのおさらい。


柿崎隊
 
 
柿崎 0Pt
照屋 0Pt
巴 1Pt
綾瀬川 1Pt
 
合計 2Pt
 
 
 
影浦隊
 
 
影浦 1Pt
北添 1Pt
絵馬 0Pt
 
合計 2Pt
 
 
 
生駒隊
 
 
生駒 1Pt
水上 0Pt
隠岐 1Pt
南沢 1Pt
 
合計 3Pt
 



感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND7 VS影浦隊、生駒隊④

コロナの味覚への症状の影響か濃い味のものばかり食べている今日この頃です。
皆さんは私のようにコロナにならないように気をつけてくださいね。

さてさていよいよ決着です。


どうしよう…。

動かなきゃ…。

 

目の前では影浦先輩、生駒さん、そして清澄先輩による高レベルの戦いが繰り広げられている。

 

「隙だらけじゃねえか…!」

 

私が動かなきゃ…。

 

影浦先輩のマンティスが私の喉元目掛けてうねる。

 

ギンッ!!

 

それを清澄先輩の弧月が砕く。

 

「チッ!!」

 

「エスクード。」

 

私を囲むように清澄先輩のエスクードが展開される。

 

「旋空弧月…!!」

 

それを見越した生駒さんの旋空がエスクードに迫る。

 

「旋空弧月。」

 

しかしそれは清澄先輩の旋空に相殺された。

 

「バイパー。」

 

清澄先輩の目の前に張られたエスクードの影から生駒さん目掛けて放たれるバイパー。

生駒さんがシールドで受けている間に清澄先輩は影浦先輩に組み付いた。

 

 

 

…ダメだ。

私が完全に足を引っ張ってる。

清澄先輩は何も言わずに私を庇いながら戦ってくれているんだ。

 

…このままじゃ…。

 

でも…

 

 

 

勝てるわけない。

トップクラスのスコーピオン使いとトップクラスの弧月使い。

清澄先輩はそんな2人相手に私を庇いながら引けを取らずに戦ってる。

 

遠すぎる。

 

こんなの…普通に戦ってる清澄先輩がおかしい。

 

 

『文香、動けるか?』

 

『!』

 

『バイパーで2人まとめて狙う。どうにか隙を着いて虎太郎みたいに離脱させる。相打ちまで持ってけば生存点はうちに入る。生駒さんとカゲさんどっちかが生き残ってもお前は緊急脱出すればいい。』

 

『…私は…』

 

 

 

『どうする?文香。

 

 

…いや、エース。』

 

震えが止まるのが分かった。

 

『!』

 

 

腹が立つ。

 

いらない気を遣ってくる清澄先輩に。

 

 

 

…でもそれ以上に腹が立つのは清澄先輩にそんな気を遣わせた私に…だ。

 

 

思い出せ。

これまで特訓してきたことを。

 

 

『見くびらないでください。』

 

私は弧月とスコーピオンを構え直す。

 

 

『清澄先輩は生駒さんを。

 

 

 

 

…影浦先輩は私が倒します。』

 

『…分かった。頼むぞ。』

 

 

──

 

『さて、満を持して始まったエース対決は人数の差に反して柿崎隊が押されているか!』

 

『照屋ちゃんが気負いすぎてるわね。清澄くんがどうにかカバーしてるみたい。』

 

『なんで名前呼びなんですか?』

 

木虎は呆れたように尋ねた。

 

『だって下の名前だとKが入るじゃない?だからスカウトしても良いような気がしない?』

 

『知りませんけど…加古さんはそれでいいんですか?』

 

『ふふ、冗談よ。』

 

『…照屋先輩、動くみたいですよ。』

 

『これは、照屋隊員、影浦隊長に仕掛けるつもりか!』

 

『清澄くんが当たり前のように躱すから薄れがちだけど…影浦くんのマンティスはA級の頃から1対1の状況じゃほぼ無敵の技だったわ。照屋ちゃんに相手が務まるかしら?』

 

──

 

「エスクード。」

 

「「!」」

 

綾瀬川のエスクードが戦場を分断する。

 

生駒と綾瀬川、影浦と照屋。

1対1になるように分断された。

 

「…あぁ?綾瀬川のヤロー何考えてやがる。お荷物に俺の相手させる気か?」

 

「お荷物じゃありません!柿崎隊エース照屋文香です!」

 

そう言って照屋は弧月を構え直す。

 

「…」

 

今の照屋からは先程感じられた恐怖や不安の感情は感じられなかった。

ただ勝つと言う気迫のみ。

 

「…おもしれぇ。相手してやるよ…。」

 

──

 

「なんやなんや、きよぽんと1対1か?!」

 

「約束通り旋空対決…しましょうか?」

 

綾瀬川は抜刀の構えを取る。

 

「!…乗った。負けへんで…!」

 

そう言って生駒は距離をとる。

 

 

 

 

「「旋空弧月。」」

 

 

 

お互いの渾身の一振り。

 

弧月と弧月がぶつかり激しい火花が飛び散った。

 

 

──

 

『綾瀬川隊員のエスクードにより戦場が分断された!生駒隊長VS綾瀬川隊員!影浦隊長VS照屋隊員の一騎打ちとなった!』

 

『迷いは無くなったって感じの顔ね、照屋ちゃん。』

 

『…でもそれだけじゃ実力差は埋められませんよ…。』

 

──

 

影浦先輩のマンティスが絶え間なく繰り出される。

私はどうにか弧月で受け流すが防戦一方となってしまう。

 

 

 

 

 

(「俺相手でカゲさんのマンティス対策…か。それは構わないが本番相手にするなら気を付けろよ?あの人のマンティスは俺の覚えたてのマンティスとは格が違うぞ。」)

 

 

 

問題ない。

ROUND3での雪辱…影浦先輩に背中を見せてしまったあの時から影浦先輩のマンティスの鋭さは何度もログで見た。

 

捌ける。

 

 

連撃の隙を見て私は影浦の足元にメテオラのトリオンキューブを転がした。

 

「!」

 

影浦は飛び退きながらも連撃の手はやめなかった。

 

「メテオラッ!」

 

爆風が私と影浦先輩の視界を奪う。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

私は爆風を切り裂くように旋空を放った。

 

──

 

「旋空弧月!」

 

生駒は抜刀の構えを取る。

 

綾瀬川が生駒と向き合ってからもう何度目かと言う光景だ。

 

 

綾瀬川は視覚情報を絞る。

生駒の視線、弧月の傾き具合。

 

 

…そして頭の中でこれまでの生駒との戦闘の経験を加味して生駒が旋空を放つであろうルートを演算する。

生駒が抜くよりも早く動き出す。

 

 

 

まるで軌道が見えているかのように生駒の旋空は綾瀬川の頭上スレスレを通り抜ける。

 

 

「アカンわ。当たる気せえへん。」

 

「バイパー。」

 

綾瀬川のバイパーが生駒目掛けて放たれる。

生駒は全面にシールドを展開する。

 

 

「エスクード。」

 

「!」

 

しかしバイパーと同時に下からせりあがった盾に生駒はバランスを崩す。

いくつかの弾を防ぐがいくつかの弾はシールドを無視して通り抜ける。

 

 

「旋空弧月。」

 

崩れた体。

どうにか起こして視線を向けると綾瀬川は弧月を振りぬこうとしていた。

 

「っ?!」

 

ノーモーションで弧月を振る。

どうにか旋空を放ち、旋空と旋空がぶつかり合った。

 

 

だが…

 

 

「後手後手やな。俺の負けや。」

 

先程生駒を無視して通り抜けたバイパー。

生駒の後ろで軌道を変えると生駒目掛けて引き返したのだ。

 

シールドも間に合わず生駒の体はバイパーに貫かれた。

 

 

──

 

 

 

「カゲさんのサイドエフェクトの対策?

 

 

 

…知るか。」

 

「え?でも清澄先輩は影浦先輩とのランク戦で普通に攻撃当ててますよね?」

 

「まあ俺はカゲさん相手には相性がいいからな。…まあ1つ言えるとしたら…

 

 

 

…あの人は感情が向けられた箇所が刺すように分かるらしい。なら簡単な話だ。攻撃するって言う感情を向けなければいい。」

 

 

 

 

 

 

簡単に言ってくれる。

 

でも清澄先輩ならきっと卒なくこなすんだろうなぁ…。

 

本当に敵わない。

心ではわかってる。

柿崎隊の絶対的なエースは清澄先輩だ。

ボーダートップレベルの回避能力、バイパーの腕、旋空の長さ、スコープを覗かない狙撃。

まさに万能手の理想形。

それだけじゃない、戦況を見通す戦略眼。予想外の事態に対する対応力。

どれをとっても私が勝てる所なんてない。

 

 

 

…でも…

 

 

柿崎隊のエースで在りたいという気持ちは清澄先輩にだって負けてない…!!

 

 

続けて旋空を放つ。

もちろん影浦先輩の事なんて見えてない。

影浦先輩のサイドエフェクトに対する対策…。

 

それは私と影浦先輩両方の視界を塞ぐこと。

影浦先輩に当たるかは分からない。

だけど今の私に出来ることはこれだけだった。

感情を消して攻撃するなんて私には無理だ。

 

爆風の煙の中2つの光が見える。

 

視覚支援の目の光だ。

 

渾身の攻撃だった。

でも敵わない。

これがボーダートップクラスの攻撃手の実力。

 

爆風を掻き分けてスコーピオンを振り回す影浦先輩の姿が映る。

 

 

凄い。

あの視界の中、サイドエフェクトが効かないあの攻撃を避けたんだ。

この局面で勝ちにいけるそんなエース。

 

私もこうなりたい。

私が最後に影浦先輩に向けた感情。

 

それは他ならない、『憧れ』であった。

 

 

そのまま私はスコーピオンに貫かれ緊急脱出する。

 

 

最後に目に映ったのは目を見開き、硬直する影浦先輩の姿であった。

 

 

 

…そして私のメテオラの置き玉が光り輝いた。

 

 

──

 

「照屋ちゃん…落ちたみたいやな。」

 

「そうみたいですね。」

 

オレの目の前で息を着く生駒さんのトリオン体に亀裂が入り始める。

 

「剣術には自信があったんやで?…ほんま化け物やな…きよぽん。」

 

「あなたとこれまで戦闘した経験があったからですよ。…おかげであなたの攻撃はほぼ完璧に演算できた。」

 

「なるほど。でもきよぽんとのランク戦はやめへんよ?楽しいからな。」

 

「いつでもお待ちしてますよ。」

 

そう言ってオレは弧月を振り抜く。

 

「…食堂のナスカレーおすすめやでー!!」

 

最後によく分からない事を言い残して生駒は緊急脱出した。

 

 

 

「…どうです?強いでしょ、うちのエースは。」

 

 

エスクードの影から這うように影浦が現れる。

両足、左腕が吹き飛ばされていた。

 

 

──

 

しくじった。

最後の最後だ。

 

俺のクソサイドエフェクトは敵の最後の感情をも感じ取る。

大抵の人間は「恐怖」「悔恨」だ。

どれもチクチクと突き刺さりやがる。

 

だがあの女から感じられた感情は『憧れ』。

 

初めての事に動揺した俺は置き玉に気付かず手傷を食らってしまった。

 

 

──

 

「…ハッ!まだまだ足りねえな。まだまだ弱ぇ。…だがおもしれぇ。今回はあいつの…あいつらの勝ちなんだろ。」

 

影浦のトリオン体はさらに亀裂が入る。

 

「てめえとやり合えなかったことが心残りだぜ。」

 

「それは文香に言ってください。あんたを落としたのは文香だ。」

 

「抜かせ。次はその余裕そうにひけらかした喉元かっ捌いてやるよ。」

 

影浦もここで緊急脱出。

 

 

 

混沌のB級ランク戦ROUND7はこうして幕を閉じた。

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 1P

綾瀬川 2P

生存点+2P

 

合計 6P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 1P

絵馬 0P

 

合計 3P

 

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 1P

南沢 1P

 

合計 3P

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

照屋文香→頼れるチームメイト。高すぎる壁。超えたい。、
生駒達人→ライバル。旋空仲間。笑わせるの諦めてへんからな。ナスカレーおすすめ。
影浦雅人→ライバル。良い奴。次は絶対サシで勝つ。


照屋文香←頼れるチームメイト。後輩。スコーピオンの弟子。
生駒達人←旋空仲間。面白い。ナスカレー今度食ってみます。
影浦雅人←ランク戦仲間。見かけによらずいい人。


感想、評価等お待ちしてます。


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ROUND7を終えて

お気に入りめっちゃ増えてんだけどなにこれ?



…感謝です!ありがとうございます!

お気に入りが増えたところで宣伝させてください!
投稿報告用のTwitterやってますんで!
⤵︎ ⤵︎
@a_tom_u

投稿したらツイートするのでぜひフォローお願いします!
報告用なんでフォローは返さないと思いますけどリプなんかは返すつもりですので。

後、ちょっとした事なんですけど感想欄の投票システム無くしました。
個人の意見なんでGoodとかBadつけるのは違うかなと。

感想はめちゃくちゃ楽しみに待ってますんでぜひ!
一気ににはなるんですが絶対返信しますんで!
アドバイスなんかもお待ちしてます!

多くの作品のあるこのサイトで私の作品を手に取って下さり感謝しております。
これからも読者の皆様、快適に投稿できる様、日々尽力してくださっているハーメルン運営者様に感謝しつつ投稿頑張りたいと思っております。


『影浦隊長もトリオン漏出過多により緊急脱出!ここで試合終了!激動の乱戦を制したのは柿崎隊!』

 

『見応えのある試合だったわ。呼んでくれた桜子ちゃんと三上ちゃんには感謝ね。』

 

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 1P

綾瀬川 2P

生存点+2P

 

合計 6P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 1P

絵馬 0P

 

合計 3P

 

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 1P

南沢 1P

 

合計 3P

 

 

 

『さて、今回のランク戦の結果を受けて各チーム総評を頂いてよろしいでしょうか?』

 

『そうね…どのチームも総力を尽くして戦っていたと思うわ。1チームずつ見ていくとまずは影浦隊。序盤で絵馬くんが落とされたのがかなりきつかったわね。マップが狙撃手有利だっただけに絵馬くんがいたらって考える場面が多かったわ。』

 

『確かに。綾瀬川隊員はそれを見越して絵馬隊員を優先的に落としたということでしょうか?』

 

『それは彼にしか分からないわね。』

 

『影浦先輩と北添先輩はいつも通りでしたね。北添先輩のメテオラの陽動、それで崩れた相手に影浦先輩が切り込む。シンプルながら強力な戦法だと思います。』

 

『ゾエくんもいい動きしてたし影浦隊の動きは良かったんじゃないかしら?ただ最後。影浦くんがちょっとドジっちゃったわね。相手が女の子だからって油断したのかしら?』

 

加古は笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「チッ、あのファントムババァ。余計なこと言いやがって。」

 

そう言って影浦は悪態を着く。

 

「まあまあ。でも珍しいね、カゲがあそこで油断するなんて。」

 

「るせえ。分かってら。」

 

そう言って影浦は頭を搔く。

 

「ユズル〜、いつまで落ち込んでんだよー。元気出せって。ヒカリさんが胸貸してやろーか?」

 

何も喋らない絵馬に仁礼が絡む。

 

「別に落ち込んでないし。あの人の方が上手だった。それだけでしょ。次は負けないし。」

 

今までにないほど絵馬の瞳は闘志に満ちていた。

 

「うんうん、カゲの背中見てしっかり育ってるようでゾエさん嬉しいよ〜。悪いところは真似しちゃダメだよ?」

 

「あぁ?!なんか言ったかゾエ?」

 

 

 

──

 

『生駒隊に関してもいつも通りでしたね。影浦先輩と綾瀬川先輩の一騎打ちが始まっても合流までは焦らない。しっかり4人で連携して点を取ってましたね。ポイントも綺麗にバラけてますし。』

 

『ただ水上くんと隠岐くんが柿崎隊に優先で狙われてたみたいだからそれがちょっとキツかったわね。終盤柿崎隊有利な対面に隠岐くんか水上くんどっちかが生きてたら結果は変わってたと思うわ。』

 

『なるほど。』

 

『生駒くんはいつも通り。点を取れるところで点を取ってたわね。最後は惜しかったわね。』

 

──

 

生駒隊作戦室

 

「ヤバいな。きよぽんヤバいな。えっ、ヤバない?最後俺マジでなんも出来ひんかったで?」

 

「ヤバいっスね。きよぽんもやけど柿崎隊ヤバいッスね。」

 

生駒の言葉に水上が返す。

 

「虎太郎の大ジャンプ見ました?あいつあそこまでグラスホッパー使いこなせたんやね。」

 

「柿崎隊はきよぽんだけじゃないっちゅうことやな。

 

 

 

…どないしたん?海は。」

 

緊急脱出用のベッドに横たわったままの南沢を見て生駒は細井に尋ねた。

 

「…本人に聞きーや。」

 

「?、おーい海くーん?」

 

 

「もうお嫁に行けないっす。」

 

「だからどないしてん?」

 

「ザキさんのエスクードがちょっとあれな位置に当たったみたいで…。」

 

 

 

「イコさん、俺もマリオ先輩見たく「海ちゃん」って呼んでください。」

 

 

「「「「やかましいわ。」」」」

 

 

──

 

『最後に柿崎隊。殆ど文句なしの動きだったわ。でもやっぱり清澄くんの動きに注目かしら?ねえ、木虎ちゃん?』

 

『なんで私に振るんですか?』

 

『だって木虎ちゃん清澄くんの動きに終始感動してたじゃない?同じ万能手として木虎ちゃんの意見を聞こうと思って。』

 

『…加古さんが言った通り一番大きかったのは綾瀬川先輩が絵馬くんを落とした所だと思います。綾瀬川先輩も上手かったですけど柿崎隊はエースの援護を潰す動きをしていました。巴くんが隠岐先輩を強引にでも落としに行ったのも生駒隊としては堪らなかったと思います。』

 

『そうね。柿崎くんも水上くんを崩す動きだったし。結構対策立てて来たみたいね。照屋ちゃんも。最後は上手かったわ。あそこでの置き玉。まだ経験値不足なところはあるけど攻撃手に転向したのは今の柿崎隊にとってはいい判断だと思うわ。これからに期待ね。』

 

『て言うかやっぱりおかしいですよ。綾瀬川先輩のあの回避能力。被弾0ですよ?』

 

『うーん言われてみればそうねぇ…。三上ちゃんは何か知ってるの?』

 

『そうですね、綾瀬川隊員が今シーズン緊急脱出したのはROUND1で村上隊員による旋空、そしてROUND3で東隊長と引き分けた時の2回のみ。今シーズンでは二宮隊長と並んで生存率トップです。』

 

『東さんと引き分けた?あの東さんと…ですか?』

 

『お2人とも本当にログを見てないんですね…。前回のROUND6ではしっかり東さんに勝ってますよ。』

 

三上が苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

『…へぇ…。』

 

『綾瀬川隊員の異常な回避能力ですが以前ROUND3の解説の際に私は観覧席で見ていたのですが太刀川さんと風間さんお二人共同じ考察をしていました。おそらくサイドエフェクトだろう…と。』

 

『本当に今回解説を担当してよかったわ。』

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「さっすが清澄先輩!」

 

「加古さんベタ褒めじゃねえか!」

 

そう言って柿崎は笑いながら綾瀬川の頭をクシャクシャと撫でる。

 

「まあ古参なんで。」

 

「アハハ、またそれ〜?」

 

「清澄先輩。」

 

そこに照屋が歩み寄る。

 

「やっぱり私にはまだエースを名乗るには早すぎました。でも…絶対負けません。次は絶対…っ…!」

 

そこで照屋は言葉を詰まらせる。

 

 

「…分かってるよ。

 

 

…虎太郎、真登華。喉乾いた。飲み物でも買いに行こう。」

 

そう言って綾瀬川は巴と宇井の背中を押す。

 

「わっ、ちょ、清澄先輩?」

 

「いいから。…隊長と文香の分も買ってきますよ。」

 

「…ああ。

 

 

…清澄!」

 

そこで柿崎は綾瀬川を呼び止める。

 

「ありがとな。」

 

「いえ。」

 

 

 

 

 

 

「ごめん…なさい…。私…また勝てなくて…!」

 

3人が出ていった後、照屋は柿崎の前で泣き崩れる。

 

「清澄先輩だけじゃなくて小南先輩にも…あんなに指導してもらったのに…私っ…!」

 

「文香…。」

 

「不安なんです…っ!次は勝つなんて言ったけど…影浦先輩や生駒さん、村上先輩みたいなエースに本当に私…勝てるんでしょうか…?」

 

「最初から勝てるやつなんていねーよ。」

 

照屋の言葉を一言一句聞いたあと柿崎は口を開く。

 

「カゲや生駒、村上だってそうだ。太刀川さんや風間さんだって最初は負け続けただろうぜ。でも…その負けの経験があったからこそあそこまでの攻撃手になってる。負けて良いじゃねえか。チームのためにそこまで本気で勝ちたいって思ってくれてる時点でお前はもう立派なうちのエースだよ。」

 

「っ…!!隊長…!」

 

その言葉を聞いて照屋はさらに涙を流す。

 

「…どうすっかなこれ。あー…もう…今は好きなだけ泣け泣け!」

 

そう言って柿崎は照屋の頭を撫でる。

 

「…そんで泣いた分…悔しいと思った分強くなればいいんだよ。期待してるぜ?エース。」

 

「…はいっ…!!」

 

 

 

 

──

 

「…清澄先輩、気…遣えたんですね。」

 

真登華が自販機で買ったジュースを飲みながらそう言った。

殴っていいか?

 

「人の事なんだと思ってるんだ…。」

 

「…アンドロイド…宇宙人に感情抜き取られ…ブフォッ…!!」

 

言いかけて吹き出す真登華。

 

「殴るぞ。」

 

「…俺も負けてられないです。清澄先輩、例のアレ…頼んで良いですか?」

 

虎太郎は文香に感化されてそう切り出した。

 

「構わないが…今からだとROUND8には間に合わない。次のシーズンになるけどいいのか?」

 

「問題ないです。すぐに強くなれるなんて思ってませんから。それに今シーズンは清澄先輩がいるんで!」

 

「お前な…。」

 

呆れてため息を着いたあと、作戦室のドアの隙間から照屋に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

『次は勝つ。』

 

 

 

…か。

 

 

 

 

…オレには次なんて…無かったけどな。

 

 

負けたらそこまで。

 

 

そこで用済み。

 

 

 

 

 

 

 

 

…勝たなきゃ次なんて無いんだよ。




なんか後書きに書いて欲しいことあります?
各キャラの印象とかはこれからも続けるつもりですが他にも何かあればな〜っておもって。
何かこう言うの書いて欲しいってのがあれば感想欄に。
お待ちしてます!

感想、評価等よろしくお願いします!


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無機質なボーダー隊員の日常⑥

遅くなりすいません!
日常回です!
作者が一番絡ませたいキャラ登場です!


「B級2位だってね。おめでとう、綾瀬川くん。」

 

「1位の奴に言われてもな。」

 

そう言いながらオレは辻から渡された缶ジュースを開ける。

 

「今日はランク戦ブース行かないの?米屋くんが探してたよ。」

 

「オレをあの戦闘狂達と一緒にするな。…今日は駿と約束があるんだよ。」

 

「結局ランク戦だね…。」

 

「今日は違うぞ。紹介したい奴がいるらしい。」

 

「あー…何となく察しが着いたかも。二宮さんと弓場さん相手にあの戦いぶりだもんね…。」

 

「?」

 

「あ、おーい!あやせセンパーイ!」

 

そうしていると駿の姿が見える。

 

「待たせてごめん。」

 

「別にそこまで待ってない。」

 

後ろには眼鏡を掛けた隊員と髪の毛を中央であげた隊員がいた。

駿と同じ草壁隊の隊服を着ている。

 

「紹介するね。俺と同じ草壁隊の銃手の…」

 

「いいっていいって。自分でやるよ。いつも駿を可愛がってくれてるみたいでありがとね、俺は里見(さとみ) 一馬(かずま)。学校では隣のクラスだから声かけようか迷ったけどどうせなら基地で挨拶したくてさ。よろしく頼むよ。」

 

「同じく草壁隊万能手の 佐伯(さえき) 竜司(りゅうじ) だ。よろしくな。」

 

「…綾瀬川清澄だ。よろしく。」

 

「辻ちゃんも一緒だったんだ。」

 

「うん。でも俺はこの後犬飼先輩と約束あるから。ここで失礼するよ。」

 

「ああ、ジュースありがとう。ROUND8ではよろしく頼む。」

 

「うん。負けないよ。」

 

「バイバイつじセンパイ。またランク戦しよーねー。」

 

そう言うと辻は手を振って二宮隊の隊室の方に歩いていった。

 

「ROUND7見たぜ。生駒さんとカゲ先輩に勝っちゃうなんて凄いな。俺も万能手でエスクードを使うんだが綾瀬川の使い方は参考になったよ。」

 

「それよか見たよ!二宮さん…て言うか二宮隊相手にあそこまで戦えるなんて…!A級でもいないんじゃないの?!」

 

里見は興奮気味に話す。

 

「お、おお…。」

 

「それにROUND5では弓場さんに一歩も引けを取らずに戦ってたじゃん?!めちゃくちゃすごいよー!!」

 

「あ、ああ、まあ。」

 

「一馬センパイ!あやせセンパイ困ってるじゃん!」

 

「悪いな。一馬は生粋の二宮さんファンでな。そんで弓場さんの弟子だからその2人相手に互角以上に渡り合った綾瀬川とずっと話したかったみたいでな。」

 

「…なるほど。まあ…古参だからな。」

 

「古参?」

 

「あー…あやせセンパイいつもこれ言っときゃなんとかなるって思ってるから…。」

 

「次のROUND8ではどんな戦い方するの?良ければトリガー構成教えてよ!俺が実験台になるからさ!」

 

そう言って里見は自分に指を指す。

 

「そう言えばグラスホッパーで二宮さんのサラマンダー相殺してたよね?ハウンドならわかるけどなんでサラマンダーも消せたの?!てか、次はバイパーと旋空の合わせ技使うの?!」

 

「…ちゃんと答えるから1個ずつ質問してくれ…。」

 

 

 

──

 

「いやー、ごめんごめん!次のROUND8二宮さんVS弓場さんVS綾瀬川くんが見れるって考えたらいてもたってもいられなくてさー!俺こう見えて二宮さんのファンなんだよね〜。」

 

「こう見えてって言うか…会って数分で痛い程分かったよ…。」

 

「綾瀬川くんには聞きたいことだらけでさ〜。まずあの回避能力の秘訣はなんなの?」

 

里見がズバリ切り込む。

 

「…サイドエフェクトだな。」

 

「…綾瀬川のサイドエフェクトって「精密身体操作」じゃないのか?」

 

佐伯が尋ねた。

 

「せいみつしんたいそうさ?」

 

「うちの隼人が持ってるんだけどよ。綾瀬川って走りながら狙撃するだろ?うちの隼人…つっても分かんねえか。うちの狙撃手も走りながら狙撃出来るんだ。それはその「精密身体操作」のサイドエフェクトのおかげなんだ。」

 

「…へぇ。オレのはそういうのじゃないな。…まあ秘密だ。」

 

「なんだそりゃ!?めっちゃ気になる!」

 

声でかいな…。

 

「まあ無理に聞こうなんて思ってないさ。じゃあ二宮さんのサラマンダーをグラスホッパーで防いでたのは?二宮さんとやる時の参考にしたくてさ。」

 

「それは別に教えて構わないが…オレのサイドエフェクトありきだから真似するのはオススメしないぞ。…グラスホッパーの裏に一緒に細かく分割したシールドを張って爆発を防いでる。弾は消せても爆風なんかは防げないからな。」

 

「なるほど!確かにそれなら防げそうかな…。」

 

里見は納得したように顎に手を当てて頷く。

 

「じゃあ最後に!

 

 

 

…綾瀬川くんって銃手はやってみようって思わないの?」

 

「思ったことはあるぞ。てか最初オレは弧月とハンドガンのスタイルだったからな。」

 

「えっ!!そうなの?!」

 

駿が驚いた様に尋ねる。

 

「ああ。だがオレはトリオンキューブを分割して撃つ方が向いててな。」

 

「あー…確かに。バイパーの弾道をリアルタイムであそこまで引けるんだもんな。」

 

「ウンウン。」

 

佐伯の言葉に駿は頷く。

 

「そういう事だ。銃手トリガーも使えない訳じゃないが射手トリガーの方がオレに向いてるってだけだ。」

 

「なるほどね〜。次のROUND8、二宮さんと撃ち合うの?」

 

「撃ち合いで勝てるって思えるほど自惚れてない。まあ…他の方法でやれるだけやってみるさ。」

 

「いやー、二宮さんが負けるところは想像出来ないけど綾瀬川くんならもしかしてって思ってるよ。次のランク戦、実況の結束に頼んで俺が解説引き受けたから!特等席で見させてもらうよ。」

 

そう言って里見は立ち上がる。

それに続いて佐伯も立ち上がった。

 

「今日はありがとな、綾瀬川。いろいろ話せて楽しかった。今度時間ある時にランク戦しよーぜ。」

 

「おっ!俺も俺も!」

 

「あやせセンパイ俺も〜!!」

 

「お前は殆ど毎日やってるだろ…。」

 

 

──

 

「へぇ、里見にねぇ…お前大物に気に入られる体質でも持ってるのか…?」

 

柿崎と真登華の付き添いで嵐山隊の作戦室に向かっている途中、柿崎が呆れた様に尋ねた。

 

 

「大物…?」

 

「知らないのか…里見は銃手ランクNO.1の猛者だぞ…?」

 

「…へぇ。」

 

「カゲや太刀川さんからもやたら期待されてるし…やっぱ凄いな…。」

 

「…まあ…古参なんで。」

 

「俺もあんま変わらねえだろ…。嵐山の前では絶対言うなよ…。」

 

「あの人も大概でしょ。A級の隊長なんだから。」

 

そう話していると嵐山隊の作戦室に着く。

真登華が嵐山隊のオペレーターに色々教わっているため、そのお礼にと菓子折りを持参したのだが、何故か引っ張られる形で俺も連れていかれた。

柿崎は作戦室のインターホンを押す。

 

「嵐山、俺だ。開けてくれるか?」

 

『柿崎!今行く!』

 

元気な声が聞こえたあと、作戦室の扉が開いた。

 

「忙しい所悪いな。真登華がお世話になってる礼をしたくてな。」

 

「構わないさ!…おっ!綾瀬川くんも一緒なんだな!」

 

「…どうも。」

 

「嵐山隊の嵐山(あらしやま) (じゅん)だ。よろしく頼む!」

 

「…綾瀬川です。」

 

「あはは、清澄先輩緊張してる?」

 

「ほっとけ。」

 

茶化してくる真登華にそう返す。

 

「遠慮なく入ってくれ。」

 

嵐山に通され、俺たち3人は作戦室の中に入る。

 

「あっ!ザキさーん!!」

 

「柿崎先輩!」

 

「柿崎さんだー!!」

 

「…どうも。」

 

さすが隊長だな…。

元嵐山隊とはいえここまで慕われてるのか。

 

 

「あっ、綾瀬川先輩。」

 

そのうちの1人、マッシュルームヘアで眠たそうな目をしている隊員が柿崎の後ろにいたオレに気付く。

 

時枝(ときえだ) (みつる)です。ROUND6、解説担当として見てました。モールクローの使い方…とても勉強になりました。」

 

「…どうも。綾瀬川清澄だ。急にお邪魔して申し訳ない。」

 

「そんな事ないっスよ!俺、佐鳥(さとり) (けん)って言います!狙撃手やってるんですけど綾瀬川先輩の狙撃いつ見てもすごくて…俺もいつかあんなアクロバティックな狙撃決めたいなって思ってるんスよ!今度見てくれます?俺のツインスナイプ!」

 

「ツインスナイプ…?…あ、ああ。まあ…。」

 

「わぁー!綾瀬川くんだー!」

 

「あ、綾辻先輩。」

 

真登華が反応する。

 

「真登華ちゃんもいらっしゃい。初めましてだね、綾瀬川くん。綾辻(あやつじ) (はるか)です。よろしくね。」

 

「綾瀬川だ。いつも真登華が世話になってるみたいだな。…ありがとう。」

 

そう言って俺は頭を下げる。

 

「いいのいいの。真登華ちゃん覚えるの早くて教えがいがあるから私もつい気合い入っちゃうの。」

 

「そ、そんな事…。」

 

真登華は照れくさそうにそう言う。

 

「立ち話もなんだ。お茶を入れる。座ってくれ。」

 

「…私お茶入れます。」

 

そう言ってショートカットの女性隊員が立ち上がった。

 

──

 

「そうか!綾瀬川くんは俺や柿崎と同期なんだな!」

 

「まあ一応。休隊したんで知ってたのは三輪と小南くらいですけどね。」

 

「ああ、桐絵からもよく話を聞く。桐絵は俺の従姉妹なんだ。」

 

今日一の驚きである。

 

「…そうなんですね。」

 

「綾辻、真登華の事見てくれてありがとな。これ、つまらない物だがみんなで食べてくれ。」

 

そう言って柿崎はたくさんのクッキーや洋菓子が入った箱を綾辻に手渡す。

 

「わぁー!!こんなに沢山!!良いんですか?!」

 

「ああ。殆どお前への礼だからな。遠慮せず食べてくれ。」

 

「やったー!!」

 

そう言って綾辻は早速包みを開けてクッキーを頬張り始めた。

 

「ROUND7見てたよ。B級2位だってな。凄いじゃないか!」

 

「はは…殆ど文香と…ここにいる清澄のおかげだよ。俺は0点だった。」

 

そう言って柿崎はオレの頭に手を置く。

 

「いや…隊長の守りと援護ありきですから。」

 

「でも1対1で生駒に勝ってただろう。あそこまで戦えるのはもうA級レベルだぞ?太刀川さんともいい勝負出来るんじゃないか?…な?木虎。」

 

嵐山は喋らずに話を聞いていた女性隊員に声をかけた。

 

「なんで私に振るんですか…?」

 

「いや、ROUND7の解説の後綾瀬川くんのログばっか見てただろ?」

 

「なっ!そんなんじゃありません…!!」

 

「えっと…申し訳ないが…誰だ?」

 

「なっ…嵐山隊の木虎(きとら) (あい)です!!これでも嵐山隊は広報部隊なんですが…!!」

 

「そうか。知らなかったよ。悪かったな。」

 

「っ…!」

 

そんなオレを見て木虎はさらにヒートアップする。

 

 

 

 

「綾瀬川先輩…私と模擬戦してもらって良いですか…?」




私が一番絡ませたかったキャラ…それは里見…


…ではなく、綾辻…


…でもなく佐伯ですw
外見から話し方からまじで好み過ぎる。
綾瀬川の親友にしたいくらい好き。
けど戦い方とか性格がまるで分かんねえ!
葦原先生!草壁隊の戦い早く書いてくれ…!!


各キャラからの印象&各キャラへの印象


里見一馬→尊敬。二宮さんと渡り合った凄い人。駿と仲良くしてくれてありがとう。
佐伯竜司→すげえ奴。話しやすくて良い奴そう。駿と仲良くしてくれてありがとう。
嵐山准→興味。桐絵と仲良くしてくれてありがとう。
時枝充→尊敬。スコーピオンの使い方を参考。
佐鳥賢→見ます?俺のツインスナイプ!
綾辻遥→「綾」仲間。真登華ちゃんからよく話を聞いてる。
木虎藍→知られてなかった事に腹が立つ。悔しいけど凄い。


里見一馬←二宮さんファン。興奮すると手に負えん。
佐伯竜司←声でかい。話しやすくて良い奴そう。
嵐山准←…実はちょっと苦手。
時枝充←礼儀正しくて良い奴そう。
佐鳥賢←…ツインスナイプ…??
綾辻遥←「綾」仲間…?美味しそうに食べるなぁ…。
木虎藍←知らなくて悪かったな。なんで怒ってるの?


各オペレーターからの印象(A級編)
意見の多かったオペレーターからの綾瀬川への印象ですね。

国近柚宇→太刀川さん、出水くんが興味を持つ人。何かあるのかな?
真木理佐→誰それ?…ああ、噂の…。まあ悪くないんじゃない?
三上歌歩→風間さんが一目置いてる人。話してみたい。
草壁早紀→駿がお世話になってるみたいね。ありがとう。
綾辻遥→「綾」仲間。真登華ちゃんからよく話を聞いてる。
小早川杏→加古さんとログを見た。凄い。
月見蓮→三輪繋がりで会えば話す。三輪くんと仲良くしてくれてありがとう。
結束夏凛→数字以上の才能を持ってると思う。緑川くんや、影浦先輩との勝率のデータ取らせてもらっても…?
宇佐美栞→眼鏡…掛けてみなーい?



ROUND7終了後
1位 二宮隊 39P
2位 柿崎隊 37P
3位 影浦隊 34P
4位 生駒隊 32P
5位 弓場隊 30P
6位 王子隊 28P
7位 東隊 27P
8位 香取隊 25P
9位 鈴鳴第一 24P
10位 荒船隊 23P
11位 那須隊 22P
12位 漆間隊 22P
13位 諏訪隊 22P

感想、評価等お待ちしております!


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VS木虎藍

まずい…木虎との模擬戦で3000文字以上書いてしまった…!
タイトルがシンプルになってやがる。

…まあシンプルisベストってね〜。


「断る。」

 

木虎の言葉を綾瀬川はバッサリ切り捨てた。

 

「っ…!どうしてですか?」

 

引きつった笑みで木虎は尋ねる。

 

「やってやればいいんじゃないか?」

 

そんな木虎を見て柿崎はフォローとばかりに綾瀬川に話しかける。

 

「ここに来る前に出水と辻、駿と散々バトってきたんですよ…。今日はもう疲れました。」

 

「…1本だけで良いですから…!」

 

木虎は我慢の限界とばかりに不機嫌そうに言った。

 

「…何をそんなに怒ってるんだ?」

 

「なっ!怒ってません!」

 

「…はぁ…。」

 

さらに声を荒らげた木虎に綾瀬川は訳が分からないと言うように嵐山隊の面々に視線を向けた。

 

「た、確かに綾瀬川先輩と木虎の模擬戦は見てみたいかもー…なんて。」

 

「そ、そうだよ!お願い綾瀬川くん、やってあげて!」

 

佐鳥、綾辻が演技っぽくそう言った。

 

「…分かったよ。1本だけな。…ちょうど試したいこともあったしな。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「じゃあ私準備するね!」

 

「悪いな。」

 

 

──

 

──ランク戦1本勝負…始め。

 

機械音が響き、綾瀬川と木虎は簡易的な市街地に転送された。

 

 

先手必勝。

木虎はハンドガンを構えて綾瀬川に駆け出す。

 

綾瀬川は弧月を持ってはいるがまるで脱力した様に動かない。

 

「…無防備じゃない…。」

 

ボソッとそう呟きながらハンドガンからアステロイドを撃つ。

 

それと同時に綾瀬川は体を動かしアステロイドを避ける。

 

「!」

(動き出しが私より早い…?まさか…)

 

そんな訳が無いと木虎はスコーピオンを取り出し、綾瀬川に突き出す。

 

「…」

 

しかしそれも綾瀬川は少ない動きで弧月で捌く。

 

「面白い形のスコーピオンだな。改良してるのか?」

 

「私はA級ですから!」

 

木虎はA級を強調するように言うとさらに連撃を早める。

 

「っ…!」

(やっぱり当たらない…?それなら…!)

 

木虎はハンドガンからスパイダーのワイヤーを取り出し高速起動で綾瀬川を翻弄する動きを取る。

 

「それも改良か。便利そうだな。」

 

だがどれも弧月で捌かれる。

 

「バイパー。」

 

「!」

 

いつの間にか出来上がっていたトリオンキューブ。木虎は前方面にシールドを構えながら下がる。

 

「!」

(あれが来る…!)

 

「旋空弧月。」

 

木虎は急いでスパイダーを引いて躱した。

 

「さすがだな。初見で避けられたのはまだ2回目だ。」

 

木虎は体制を崩す。

 

「…しまった…!」

 

しかし綾瀬川は突っ立ったまま動かなかった。

 

「舐めてるんですか…?」

 

「いや?オレはお前のトリガーセットを何も知らないからな。迂闊に踏み込んで反撃食らうのは怖いからな。A級なら尚更だ。」

 

「っ…!」

(その割には…)

 

「無防備すぎますね。やっぱり舐めてるんですか?」

 

「…」

 

「無視ですか…!」

 

一気に距離を詰めた木虎のスコーピオンが綾瀬川の顔目掛けて迫る。

 

「っと…悪いな。そういうつもりじゃない。脱力しといた方が体を動かしやすいだけだ。」

 

綾瀬川は深く踏み込み、一気に距離を詰めた。

 

「っ!」

 

木虎はシールドとスコーピオンで受けると距離を取る。

 

「エスクード。」

 

「あっ…!」

 

地面スレスレの塀から横向きにエスクードが飛び出す。

木虎はバランスを崩してしまうが、どうにか手を付き空中で体制を整える。

 

(綾瀬川先輩は…いない?!でもレーダーには…!)

 

レーダーには綾瀬川の反応がある。

 

「…カメレオン…!!」

 

木虎は綾瀬川のいる方向に視線を向ける。

 

「…初見で対応されるとは思ってなかったな…。」

 

カメレオンを解いてスコーピオンで切りかかった綾瀬川に木虎はどうにか対応する。

 

「丸わかりですよ…!」

 

強がっているが内心木虎は焦っていた。

 

(手の内が読めない…!)

 

木虎は距離を取り、アステロイドを乱射。

だがどこに撃つのか分かっているかのようにその射線にエスクードを展開して封殺する。

 

「ハウンド。」

 

そしてトリオンキューブを分割。

木虎にハウンドが降り注いだ。

 

「っ…!」

 

木虎はシールドでハウンドを受ける。

 

(多彩過ぎる…!でも…この違和感は何?)

 

 

戦闘の途中から木虎は何かは分からないが違和感を覚えていた。

 

 

──

 

「多彩だな。これだけのトリガーを使いこなしてるのか…。」

 

「ああ、出来すぎた後輩だよ。」

 

嵐山の言葉に柿崎は自慢げに答えた。

 

「でもおかしくないですか?」

 

そういうのは時枝だ。

 

「おかしい?時枝くん、何が?」

 

宇井が時枝に尋ねた。

 

「これだけトリガー入れてたら…

 

 

…シールド入れられなくないですか?」

 

 

!!

 

その言葉にここにいる全員はモニターに視線を移した。

 

 

──

 

「っ!なんで当たらないのよ…!!」

 

木虎のアステロイド、拘束用のスパイダー、スコーピオンの連撃はどれも綾瀬川に掠りもしなかった。

 

「…足元がお留守だぞ。」

 

綾瀬川の足元がひび割れる。

 

「!」

(大丈夫、モールクローでもこの距離は届かない…!)

 

ブラフだ。

 

 

 

 

 

「ブラフだ。…そう思ったか?想像力が足りないな。」

 

「!」

 

足元から生えたスコーピオン。

木虎の右足を奪う。

 

「なん…で…?!」

 

「こういうカラクリだ。」

 

綾瀬川はスコーピオンを繋ぎ合わせて木虎目掛けて伸ばした。

 

「マンティス…!!」

 

どうにかスコーピオンと拳銃で受けるが、不規則に曲がるマンティスに拳銃を持つ手が落とされる。

 

「ハウンド。」

 

「くっ…!」

 

弾トリガーでの追撃に木虎は苦しそうにシールドを張る。

 

「旋空弧月。」

 

しかしハウンドは放たれることなく、代わりに凄まじい速度で弧月が迫った。

 

「嘘…!」

 

「結局は初見殺しか。実践的じゃあないな。」

 

綾瀬川のその言葉を背に木虎は緊急脱出した。

 

──

 

「うちのエース相手に被弾0か。やっぱり凄いな綾瀬川。」

 

戻ってきた綾瀬川を嵐山が賞賛する。

 

「どうも。」

 

木虎は悔しさを顕に作戦室に戻ってきた。

 

「お疲れ様木虎ちゃん。強いでしょ?うちの清澄先輩。」

 

戻ってきた木虎に宇井が話しかける。

 

「完敗です…。」

 

「つーかよー、清澄お前…シールドはどうした?」

 

「!」

 

木虎は目を見開く。

そうだ。

試合の途中で感じた違和感。

 

 

 

綾瀬川先輩はこの模擬戦で一度もシールドを使ってない。

 

 

 

「言ったでしょう?試したいことがあるって。サイドエフェクトに頼り切って見たんですよ。まあ木虎がハウンドやバイパーを入れてなかったから何とかなっただけですね。それに結局初見殺しの延長でしかありません。チーム戦では使えないですね。転送位置次第じゃ隊長と合流出来れば強いかもしれませんが…実用性は低いかと。…いや、エスクードをメインとサブ両方に入れる手もあるか…。」

 

綾瀬川は考え込む。

 

「無茶なこと言い出すな…お前。」

 

「まあでも一枠はバッグワームで取られるんでやっぱりなしですね。」

 

「じゃ、じゃあさっきの試合、シールド入ってなかったんですか…!?」

 

木虎が綾瀬川に詰め寄る。

 

「まあお試しでな。」

 

それだけ言うと綾瀬川は綾辻の隣に座る。

 

「オレもクッキー貰っていいか?疲れたのか小腹が空いた。」

 

「…え…あ…う、うん!どうぞ。」

 

綾辻が寂しそうに答える。

 

「…やっぱ帰ってからにするよ。」

 

 

「うえ?!じゃあ綾瀬川先輩シールドなしで木虎に勝ったってこと?!」

 

「失礼なんで言うの控えてましたけど…化け物ですね。」

 

佐鳥と時枝も驚く。

 

「さっきも言ったが木虎がハウンドやバイパーを入れてたら結果は変わってた。…まあたまたまだ。」

 

「っ…!私がそのたまたまで負けたって言いたいんですか…?!」

 

「だからなぜ怒る…?」

 

「「今のは清澄(先輩)が悪い(わ〜)。」」

 

柿崎と宇井の言葉が被る。

 

「?…まあなんか悪かったな。」

 

「適当に謝らないでください!」

 

「じゃあどうすればいいんだよ…?」

 

綾瀬川は呆れたように尋ねる。

 

「もう1回です!次は負けません!」

 

「はぁ…ボーダーには戦闘狂しかいないのか…?」

 

「なっ!誰が戦闘狂ですか…!!」

 

 

「清澄、お前もう黙れ。」

 

「木虎も。先輩に対して失礼でしょーが。」

 

 

綾瀬川には柿崎が。

木虎には時枝がチョップを落とした。

 

 

「「いて。」」




VS木虎での綾瀬川のトリガー構成

メイン:弧月、旋空、スコーピオン、バイパー
サブ:スコーピオン、ハウンド、エスクード、カメレオン

・サイドエフェクトを使ったシールド無用のゴリ押し回避戦法
文字通りです。
バッグワームはどうしても必要だし、多対1じゃ限度があるのでランク戦じゃ無理だとお蔵入りした。

各オペレーターからの印象(B級編)

氷見亜季→雰囲気が烏丸くんに似てて照れる。あの二宮さんが一目置いてる凄い人。
仁礼光→学校で出水、米屋、三輪と合わせてよく一緒にご飯を食べる仲。強い奴。後弁当が美味い。
細井真織→ええ奴やな。イコさんに勝った凄い人。マリオやなくてマオリやで!いつでもたこ焼き食いにきーや。
藤丸のの→化けもんだな。次は負けねえぞ。
橘高羽矢→実力だけじゃなくて戦術も凄い。アイコン作成中。
人見摩子→東さんに勝っちゃった人。
染井華→凄い。尊敬。
今結花→強い。頭も良さそう。学校で話しかけた時は戦いぶりとは裏腹にめっちゃキョドってた。
小佐野瑠衣→今何かと話題の人。学校で挨拶した時めっちゃキョドってた。可愛い。
加賀美倫→荒船くんのライバル。どっちが先に完璧万能手になるか穂刈と賭けてる。
志岐小夜子→那須さんが注目してる。話してみたい…かも…?
宇井真登華→チームメイト。頼れる先輩。天然。KY
武富桜子→実況しがいがある。今度解説…どうですか?


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最終戦に向けて

寝落ちしちゃってたぜ!(´>∀<`)ゝ

てなワケでこんな時間ですがどうぞ。


「おーす!また寂しく男だけで食ってるな!ヒカリさんが来てやったぞー!」

 

2-Bの教室を開け放ち入ってきたのは影浦隊オペレーターの仁礼だった。

その手には購買の袋が握られている。

 

「お前もっと静かに入ってこいよ…。」

 

出水がパンを齧り、呆れたように言った。

 

「わりーわりー。…おっ、タコウインナー1個貰うぞー。」

 

そう言って仁礼はズカズカとオレたちのいる机に向かってくるとオレの弁当箱からタコウインナーをかっさらった。

 

「おい、残り1個だったんだぞ。」

 

「細けーこと気にすんなって!」

 

そう言って仁礼はオレの肩を小突くとタコウインナーを口に運ぶ。

 

「うんま!」

 

…まあいいか。

 

美味しそうにタコウインナーを頬張る仁礼を見てオレは諦めることにする。

 

「てか5限体育なのしんどすぎるだろ…。育ちざかりなのに食いすぎると絶対死ぬ。」

 

出水が文句を言う。

 

「だよなー。」

 

そう言いながらも米屋のパンは5個目だ。

 

「サッカー終わったし次は体育館だろ?何やるんだろーな。」

 

 

「バスケらしいでー。」

 

そう話しているとこちらに弁当を持った隠岐が近づいてきた。

 

「よ、隠岐じゃん。」

 

「俺も混ぜてや〜。仁礼ちゃん隣ええ?」

 

「おお。使用料としておかず1個なー。」

 

「なんやそれ…。まあええけど。きよぽんも隣お邪魔するわ。」

 

そう言って隠岐はオレと仁礼の間に椅子を置いて弁当箱を取り出した。

 

「ROUND7はやられたわ〜。イコさんにサシで勝つなんて滅茶苦茶やん。」

 

「まあ何とかな。」

 

「うっそー?一太刀も受けてへんくせに。イコさん凹んどったで?

 

 

…またきよぽん笑わせられへんかった…って。」

 

「ハハハッ!イコさんらしいな。聞いてたらイコさんとランク戦したくなってきたわ。」

 

そう言いながら槍バカが笑う。

 

 

 

「…なんて言うか凄い弁当だな。」

 

隠岐の弁当箱を覗く。

そこには海苔やチーズで猫を象ったおにぎりが鎮座していた。

 

「可愛ええやろ。うちの猫さんやねん。写真みる?」

 

「この前飽きるほど見せてもらったし遠慮しておく。」

 

「お、うまそーだな。いただき。」

 

そう言って仁礼は猫の耳の部分のハムチーズをかっさらう。

 

 

 

「仁礼ちゃん人の心ないんか…!!」

 

 

 

 

──

 

「俺らこのままソロだけど綾瀬川はこの後作戦室か?」

 

放課後、ボーダー本部のエントランスで米屋と出水が尋ねる。

 

「ああ。次は相手が相手だからな…。」

 

 

今シーズンの最終戦であるROUND8。

柿崎隊は二宮隊、弓場隊、王子隊との再戦を控えていた。

 

中でも二宮隊にはROUND4で惜敗している。

 

「お、二宮さんと撃ち合うのか?」

 

「撃ち合いで勝てないのは分かってるよ。…まあどうするかこれから考える。」

 

そう言ってオレは2人と別れた。

 

 

──

 

「はぁ…やっぱ化け物だな…二宮さん。」

 

ログを見ながら柿崎が冷や汗を浮かべ、ため息を吐いた。

 

高いトリオンから打ち出されるアステロイド、ハウンドの猛攻。

そこに合成弾も混ざってくる。

 

「お前よく二宮隊相手に1人で生き残れたな…。」

 

「まああの時は初見だったんで。今は辻とランク戦しまくってるんでROUND4みたいには行かないと思います。」

 

「そうか…。どうしたもんかな…。」

 

「作戦なんて上手くいかないことの方が多いです。」

 

「…は?」

 

柿崎が素っ頓狂な声で聞き返す。

 

「例えば二宮さん相手に俺と文香、柿崎さん、虎太朗の俺たち全員で相手できる状況になったとしたらどうです?二宮さんに1人に…です。」

 

「そりゃさすがに…勝てるかもしんねーけどよ。」

 

「そうですね。その状況ならまず間違いなく勝ちます。…でもそうは行かないでしょ?転送位置、王子隊が選ぶマップ、弓場隊、王子隊の介入もあるかもしれない。」

 

「何が言いたいんだ?」

 

柿崎が痺れを切らして尋ねる。

 

「作戦って言うのはあくまでこうなればいいなって言う理想です。相手の動きを想定したとして相手がその動きをするかどうかは分からないでしょう?」

 

「…まあ…。」

 

「…本当の戦場では作戦ミスは命取りになります。…でもこのランク戦は違うでしょう?頭を撃ち抜かれようが緊急脱出するだけ、四肢を落とされようが生身は傷1つつきません。…要は失敗も経験って事ですよ。」

 

「…」

 

「オレは柿崎隊の万能手です。あなたがオレに…二宮さんに勝て…と言うならそのオーダーに全力で答えます。…つまり何が言いたいかって言うと…」

 

 

 

「「「チームメイトをもっと頼れ!」」」

 

 

「…ですよね?清澄先輩?」

 

文香、真登華、虎太朗の3人も作戦室に入ってきた。

 

「ああ。…作戦が上手く行かない…そんなの当たり前です。予想外の事態で想定通り作戦がハマらなかった時の対処。…それをチーム全員で補うのがランク戦でしょう?」

 

「…わりぃ…気負い過ぎてたみたいだ…。次が最終戦って考えるとちょっとな…。」

 

「まあ隊長らしいですけど。」

 

そう言って文香は人数分のお茶を入れると席に座る。

 

「まあ気負いする気持ちは分かるわ〜。私も滅茶苦茶ログ見たけど化け物すぎるよ二宮さん。」

 

「そうだな。カゲさんなんかもサイドエフェクト関係なしにシールドごとゴリ押しで削り落とされてたからな…。」

 

なんでこの人B級にいるんだ?

 

「…二宮さんが今シーズン緊急脱出したのはROUND4での自発的緊急脱出とROUND5で弓場隊と生駒隊に囲まれた状況で東さんに狙撃された時だけだ。それ以外の試合じゃしっかり点とって生き残ってやがる。」

 

柿崎はログを再生しながらそう言った。

 

「それに弓場隊、王子隊も前回と同じようには行かなそうですもんね。」

 

虎太朗はそう言って考え込む。

 

「…ま!清澄の言う通り考えても仕方ねえ。俺らの武器は俺と虎太朗のサポートで文香と清澄が点を取るスタイルだ。連携の再確認からやっていくぞ!」

 

そう言って柿崎は立ち上がった。

 

「「「「了解。」」」」

 

 

 

──

 

「よう、お前から誘うなんて珍しいな。」

 

作戦会議を終えたオレは出水を呼び出していた。

 

「まあ…な。米屋は?」

 

「イコさんとやってるよ。俺は抜け出してきた。それで?頼みってなんだよ?」

 

「次の相手は二宮さんだからな。里見曰く二宮さんとまともに撃ち合えるのはお前だけなんだろ?」

 

「…なるほど。ランク戦ブースじゃ目立つな…うちの作戦室に来いよ。」

 

「助かる。」

 

──

 

太刀川隊作戦室

 

「あれ〜、綾瀬川くんだ〜。」

 

太刀川隊の作戦室でオレを出迎えたのは太刀川隊オペレーターの国近(くにちか) 柚宇(ゆう)だった。

 

「…どうも、お邪魔します。」

 

「ROUND7見てたよ〜。凄いじゃーん。」

 

「…ありがとうございます。…今日は太刀川さんいないんですか?」

 

「うん。…呼ぶ?」

 

「絶対やめてください。」

 

「あれ〜?太刀川さんは苦手?」

 

「…まあ少し。」

 

「柚宇さん、俺のトリオン量二宮さんと同じに設定してもらっていいですか?」

 

出水が国近に頼む。

 

「オッケ〜。なるほど〜、二宮さん対策で出水くんか〜。」

 

 

──

 

片方は大きく分割した威力重視の弾で集中シールドを誘いだしもう片方の細かく割った弾で削り落とす。

逆に小さな弾でシールドを広げさせて、大きな弾でシールドごと削り落とす。

 

シンプルながら強力な戦法だな。

 

そう考えながら出水の撃ち出す弾をフルガードで受けつつ、避けれる弾は避ける。

 

「まだまだ行くぜ…!」

 

出水はさらに弾数を増やす。

 

「…頼む。」

 

 

──

 

 

「前回はグラスホッパー使ってたよな?今回も使うのか?」

 

一息着いていると出水が尋ねた。

 

「一応。でも前回は初見だったから上手くいっただけだ。今回は上手く行かないと思う。」

 

「…ふーん。」

 

そう言いながら出水は笑みを見せる。

 

「…どうした?」

 

「…二宮さんならお前…本気を出せそうか?」

 

「…どうだろうな。ただ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…楽しめそうな相手だとは思ってる。」

 

 

そう言いながらもその瞳は酷く冷えきっていた。

 

 

 

 

 

そして今シーズン最終戦、B級ランク戦ROUND8夜の部が幕を開ける。




各キャラからの印象&各キャラへの印象


仁礼光→静かだけど面白くて良い奴。おかず美味い。
国近柚宇→大人しそうだけど話してみるとそうでも無い。


仁礼光←勉強大丈夫か?おかず奪うのやめろ。
国近柚宇←ゆるふわ。話し方好き。


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊①

投稿致します。
こんなタイトルですがまだ戦闘は始まらない模様。


『さて!いよいよやって参りました、B級ランク戦ROUND8夜の部!今シーズン最終戦の実況は片桐隊オペレーター、結束が担当させていただきます。よろしくお願いします。そして解説席には草壁隊里見隊員、そして冬島隊の当真隊員にお越しいただいています!』

 

『『どうぞよろしく〜。』』

 

『最終戦は二宮隊、柿崎隊、弓場隊、王子隊の四つ巴対決になりますが…解説のお二方に見どころなどを教えていただきたいのですが…。』

 

『なんと言っても二宮さんと弓場さん、そして綾瀬川くんの対決でしょ!』

 

『…それはアンタが見たいだけでしょ。』

 

結束がジト目で里見にボソッと言った。

 

『いや、そうは言うが実際楽しみにしてる奴は多いぜ?俺もその1人だからな。個人ランク2位で射手ランク1位の二宮さんとB級トップの銃手弓場さん。…そして柿崎隊を上位に導いた立役者、天才万能手綾瀬川の対決だからな。ここに集まってる奴はそれを見に来た奴もいるだろうよ。』

 

観戦席には多くの隊員が集まっていた。

NO.1攻撃手の太刀川や、No.2攻撃手の風間。

他にも嵐山隊や玉狛の小南と烏丸、鈴鳴第一のメンバーなど支部から来ている隊員もいる。

 

『…それに結果次第じゃB級トップが変わるぜ?』

 

『なるほど、現在二宮隊のポイントが39ポイント、それを追う柿崎隊は37ポイント。2点差ですね。』

 

『まあ1位になるには3点差つけなきゃだからちょっとしんどいかもね〜。二宮さん今シーズン生存率高いし。』

 

『それで言えば前回三上も解説してた通り綾瀬川もだろ?確か二宮さんと並んで生存率トップだ。』

 

『確かにそうですね…。』

 

 

 

──

 

「あの人そんなに強いんですか?そんな強そうには見えないですけど。」

 

隣にいた風間に尋ねたのは風間隊の攻撃手、菊地原(きくちはら) 士郎(しろう)だ。

 

「B級のログもたまには見ろ。…お前より強いぞ、菊地原。」

 

「…はあ?僕より強いって?流石にそれは…」

 

「あいつは影浦や村上にも勝ち越している。」

 

「っ…じゃあ…

 

 

 

…風間さんとやったらどっちが勝ちますか?」

 

「…さあな。だが…

 

 

…負けてやる気はない。」

 

 

──

 

「ふーん、あいつこんなに注目されてるのね。」

 

周りのざわめきに小南はそう呟いた。

 

「まあ注目度で言ったらNO.1ですね。てか小南先輩も綾瀬川先輩の最終戦だから見に来たんスよね?」

 

「ち、違うわよ!私は文香の応援!弟子の最終戦なんだから応援に来るのは当たり前でしょ!!」

 

「それは小南先輩酷いですよ…。」

 

「ど、どういうことよ?」

 

「…綾瀬川先輩にメールで小南先輩が応援に来るって言ったら滅茶苦茶喜んでて…小南先輩が見てる前では負けられない。絶対勝つって言ってましたよ。」

 

「えぇ?!なっ…!なっ!

 

 

 

…何よ…それ…。普段そんな気見せないくせに…。」

 

小南は頬を朱に染めながらモジモジと照れる。

 

「すいません嘘です。」

 

「…え?」

 

「だから嘘です。綾瀬川先輩、今日小南先輩が応援に来ること多分知らないですよ。」

 

「だ、騙したわね!?」

 

 

 

──

 

「あれ、太刀川さんも来てたんですね。」

 

観覧席にいる太刀川に話しかけたのは米屋と出水だ。

 

「よう。まあな。」

 

「レポートは終わったんですか?」

 

「…」

 

「本部長に怒られても手伝わないですからね…。」

 

黙って目を逸らした太刀川に出水はキツく言い放つ。

 

「そりゃねーぜ。隊長命令だ。」

 

「なんですかそれ…レポートサボってまで見たかったんですか?」

 

「…まああいつが出るからな。」

 

そう言って太刀川はモニターに表示されている綾瀬川に目を向けた。

 

「そういや前に綾瀬川のこと知ってる感じでしたよね、何かあるんスか?」

 

米屋が尋ねる。

 

「…まあな。」

 

「太刀川さんはこの試合どこが勝つと思いますか?」

 

「柿崎隊だ。」

 

米屋の質問に太刀川は即答する。

 

「即答ですか…。でも二宮さん相手じゃさすがの綾瀬川もキツくないですか?」

 

「綾瀬川が二宮の奴に負けるはずがねえだろ。」

 

「?」

 

米屋は疑問符を浮かべる。

 

「…」

 

出水は考え込むように太刀川を見ていた。

 

 

(そう。

 

 

…あの時俺に圧勝した綾瀬川が気まぐれでも本気を出せばそこで試合が終わる。)

 

 

 

 

「…つくづくふざけた野郎だぜ…。」

 

──

 

「駿、あなたも見に来てたのね。」

 

観覧席で同じ草壁隊の佐伯と楽しそうに開始を待っている緑川に話しかけるのはボーダー最年少A級隊員、黒江(くろえ) 双葉(ふたば)だった。

 

「あれ?双葉じゃん。双葉も観戦ー?」

 

「…私は別に。」

 

「私が連れてきたのよ。」

 

黒江の後ろから現れたのはA級加古隊隊長の加古望。

 

「かこさん。こんばんは。」

 

「こんばんはっす。」

 

「ふふ、こんばんは。隣いいかしら?」

 

「うん。どーぞ。」

 

その言葉に黒江は緑川の隣に座る。

 

「駿はあの人と仲良いのよね?」

 

「あやせセンパイの事?うーん仲良いって言うか…あっ!お兄ちゃんみたいな感じ?」

 

「何よそれ…。…そんなに強いの?あの人。」

 

「あら?双葉にも清澄くんの話はしたでしょ?」

 

「…この目で見ないと信じられません。」

 

「あやせセンパイは強いよ。最近じゃ全然勝てない。…まあ最初の方は手を抜いてくれてたみたいだけどね。」

 

緑川は楽しそうに言う。

 

「…何それ。ムカつかないの?」

 

「…最初は少し。でも…

 

 

 

…いつか勝つって思ったらそうでも無い。」

 

そう言って緑川は頭の後ろで手を組みながら笑った。

 

「ふーん。」

 

そう言って黒江はモニターに視線を戻した。

 

──

 

『王子隊についてはどうでしょうか?』

 

『そうだなー…王子は前回柿崎隊にしてやられたからなぁ。滅茶苦茶作戦練ってきてると思うぜ?前回のようには行かないだろうよ。』

 

『王子くんはしっかり考えて動く隊長だからね。そして何より元弓場隊!…いいね〜、この響き。』

 

『…解説したいって言ったのアンタなんだからちゃんとやってよね…。』

 

『分かってるって。それとボソッと言ってるみたいだけどマイク拾ってるからね。』

 

──

 

王子隊作戦室

 

「さて!いよいよ最後だ。ここで柿崎隊にリベンジと行こうか。」

 

「でもどうするの?綾瀬川くんだけじゃなくて照屋さんも強くなって…前より益々手が付けられなくなってきたわよ。柿崎隊。」

 

モニターの前で切り出した王子に橘高が尋ねた。

 

「柿崎隊の強み。それはザキさん、巴タイガーの守り、援護から点を取る連携プレーだ。ザキさんと巴タイガーはサポートに重きを置いてる。2人を落とせばてるてるも落としやすくなる。…マップは地図が頭に正確に入ってる市街地Aで行こう。初心に帰って…ね?」

 

「次は負けません!」

 

「ああ。前回は何も出来なかったからな。その借りを返そう。」

 

「二宮さんと弓場さん、そして利根川には会ったら即撤退だ。利根川とザキさん、巴タイガーが合流されたら利根川以外の方を優先狙い。転送されたらバッグワームで即合流だ。」

 

「敵は柿崎隊だけじゃないわ。常に周りを見るようにね。」

 

「はい。」

 

「分かってます。」

 

 

──

 

『さて、ここで王子隊がマップを「市街地A」に設定。』

 

『説明不要のチュートリアルマップだな。』

 

『まあみんな戦い慣れてるしね。』

 

『王子なんかは地図が頭の中に入ってそうだ。』

 

──

 

弓場隊作戦室

 

「Aですって弓場さん。」

 

弓場隊万能手、神田は弓場にそう言う。

 

「どこだろうと関係ねえ…。勝つぞ。

 

 

 

 

…お前の最後のランク戦だろうがァ…。」

 

 

 

 

──

 

二宮隊作戦室

 

「期待通り綾瀬川くんとやり合うんですか?二宮さん。」

 

犬飼が二宮に尋ねた。

 

「それは転送位置次第だ。綾瀬川、弓場とは2人以上でのみ戦闘を許可する。いいな。」

 

「りょーかいです。」

 

「はい…実力差は分かってるつもりです。」

 

「氷見、外岡と綾瀬川のイーグレットの射線には常に気を配れ。」

 

「はい。」

 

「B級1位は死守する。例え綾瀬川だろうと弓場だろうと関係ない。誰が来ようと撃ち落とす。…それだけだ。

 

 

…行くぞ。」

 

 

 

「「「了解。」」」

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「最終戦だろうと俺たちのやる事は変わらねぇ。俺と虎太朗の援護で文香と清澄が点を取る。俺と文香、虎太朗と清澄が合流出来ればベストだ。二宮さんのハウンドは遠距離でも飛んでくる。気をつけろよ。」

 

「外岡先輩の射線にも警戒してね。清澄先輩、今回イーグレットは?入れる?」

 

「いや、種の割れたオレの狙撃は結局は初見殺しか牽制だ。今回は入れなくていいだろ。グラスホッパーと入れ替えておいてくれ。」

 

「そうだな。それに持ってると思わせるだけで牽制になる。」

 

「ん、りょーかい。」

 

「…不甲斐ない隊長だがここまで着いてきてくれて感謝してる。ここまで来れたのはお前らのおかげだ。」

 

「隊長…まだ終わってませんからね?」

 

いい感じのことを言って締めようとした柿崎に照屋がつっこむ。

 

「そ、そうだな…。」

 

「アハハ…。」

 

「締まらないわー、ザキさん。」

 

「う、うるせえ。あーもう!つまりあれだ!

 

 

 

…勝つぞ。」

 

「「「「了解…!」」」」

 

 

──

 

『さて!時間です。…各隊転送開始…!

 

 

 

 

 

 

…転送完了!

 

ステージ「市街地A」、時刻は昼!

 

 

今シーズン最終戦、ROUND8スタートです!!』




各キャラからの印象&各キャラへの印象

結束夏凛→今シーズン最注目の万能手。
里見一馬→尊敬。ROUND8での活躍が楽しみ。
当真勇→興味。天才万能手。
風間蒼也→興味。評価。
菊地原士郎→本当に強いんですか?静かそう。
小南桐絵→べ、別にアンタを応援しに来たんじゃないわよ…!!
太刀川慶→評価。ふざけた野郎。次は負けねえ。
出水公平→すげえ奴。
黒江双葉→実力見極めさせてもらいます。
緑川駿→お兄ちゃんみたい。ライバル。
王子一彰→前回のリベンジさせてもらうよ。利根川。
二宮匡貴→評価、警戒。


結束夏凛←辻と同じクラスか…いいな。
里見一馬←銃手1位すごい。二宮さんファン。
当真勇←狙撃手1位すごい。リーゼント似合う。
風間蒼也←駿やカゲさんとランク戦してるのよく見てる。…牛乳はもう手遅れですって。
菊地原士郎←名前は知ってる。サイドエフェクト持ち。
小南桐絵←友人。師匠(らしい)。カレー美味しい。
太刀川慶←苦手。ご存知ないです。
出水公平←天才射手。射手の技術では勝てない。
黒江双葉←名前は知ってる。確か11秒の人。
王子一彰←キレ者。利根川呼びやめて。きよぽんはいいけど利根川はなんかヤダ。
二宮匡貴←なんでこの人B級にいんの?


感想、評価等よろしくお願いします。


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊②

投稿間隔空いてすいません!
ちょっとリアルが忙しくて…。
よう実の最新刊も買えても読めてない状況です( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )




『転送完了!各隊ランダムな位置からのスタートになります!』

 

『お、結構バラけたな。』

 

『そして転送直後外岡隊員と王子隊の3人がバッグワームでレーダーから姿を消しました。』

 

『合流の動きだな、これは。』

 

──

 

『皆、4人レーダーから消えたよ。外岡君は多分確定だとして…他3人消えてるから気をつけてね。』

 

『わかった。クソ、全員結構離れたな。』

 

柿崎は悪態を吐く。

 

『流石に外岡はまだ高台取ってねえだろーが…射線には注意しろよ。俺は文香と合流する。清澄と虎太郎も合流してくれ。』

 

『了解です!』

 

『了解。』

 

──

 

『各隊まずは合流しようと言う動きか。』

 

『合流の早さで言えば王子隊だろーな。バッグワーム付けて大胆に走り回ってやがる。』

 

『流石B級一の走れる部隊だね。』

 

『そうですね。王子隊長と樫尾隊員が合流出来そうです。』

 

──

 

「隊長、おまたせしました。」

 

「待ってないよ。むしろ僕らが最速だよ。じゃあこのままクラウチを拾って作戦通り仕掛けようか。利根川とてるてるが合流する前にザキさんか巴タイガーを落としたい。」

 

「了解です。」

 

『羽矢さん、射線管理頼んだよ。』

 

『了解。二宮さんと綾瀬川くんの旋空の射程にも十分気をつけてね。』

 

『了解。』

 

──

 

『合流した王子隊長と樫尾隊員は蔵内隊員の元へ駆け出す。そして弓場隊は神田隊員と帯島隊員が合流しようと言う動きか。』

 

『弓場さん結構離れちゃったからね〜。まあ弓場さんは1人でも強いし。なんせタイマン最強だからね。』

 

語尾に星でも付いて居そうな声で里見は解説をする。

 

『けどよ、二宮さんが結構近いぜ?綾瀬川も遠くはねえ。』

 

『里見隊員から見てその3人の1対1対1になった場合誰が勝つと思われますか?』

 

『うーん、有利で言ったら二宮さんかな。射程も1番だし。…次点で綾瀬川くん。』

 

『意外だな。お前なら弓場さんを選ぶと思った。』

 

『いや、弓場さんの間合いなら弓場さんが1番だと思いますよー?…でも、豊富なトリオンから繰り出される相手のシールドに対応して来るフルアタック、生駒旋空並の旋空とバイパーでの駆け引き…綾瀬川くんはそれすらも織り込み済みで他の手を使ってくるかもしれない…弓場さんは確かに強い。得意の間合いだったらボーダー1番かも。…でもこの2人相手じゃ不利すぎるんだな〜…。』

 

『しかし弓場隊長は臆することなく進んで行きますが…』

 

『弓場さんらしいね。あの人タイマン大好きだから。』

 

そう言って里見は笑った。

 

『そして柿崎隊は柿崎隊長と照屋隊員、綾瀬川隊員と巴隊員の2人ずつで合流しようと言う動きか。』

 

『柿崎隊は最近じゃ2人ずつってのが多いからな。特にザキさんと照屋は相性いいからな。合流してーだろ。』

 

『蔵内隊員が綾瀬川隊員に仕掛けられそうな位置にいますね。しかし、すぐに離れてしまいました。合流を優先したか…?』

 

『意味深な動きだな…。』

 

──

 

『王子、こっちは綾瀬川だった。』

 

『OK。だったら逆サイドを仕掛けよう。利根川の方に向かってるのがてるてるだと嬉しいけど…もしこっちにてるてるがいても3人なら射程でゴリ押せる。クラウチは遅れて来てくれ。後ろから合成弾で援護して欲しい。』

 

『分かった。』

 

『じゃ、ROUND5のリベンジと行こうか。』

 

王子は微笑を浮かべて走り出した。

 

──

『一方の二宮隊は犬飼隊員と辻隊員が合流。そのまま二宮隊長と合流する動きでしょうか?』

 

『犬飼と辻ちゃんどっちかが二宮さんに付いている時こそ二宮さんの火力が活きる。合流するまでは仕掛けないつもりだな。』

 

『そして弓場隊、神田隊員と帯島隊員が合流。マップ東に動き出しました。』

 

『マップ東つったらザキさんと照屋が合流を目指してる場所だな…。王子隊もそっちに動いてる…。乱戦も有り得るぞ。』

 

──

 

『ザキさん!レーダーに誰か映ったよ!北西から下りてきてる!…1人…2人!』

 

『分かった!文香、北西に警戒しつつ合流だ。』

 

『分かりました。』

 

照屋はスピードをあげて駆け出す。

 

──

 

『照屋隊員、弓場隊の接近を察してかスピードをあげた!』

 

『これなら合流出来そうだね。』

 

『いや、どーかな…。』

 

──

 

「ハウンド+メテオラ。

 

 

 

 

…サラマンダー。」

 

空に1発の弾が打ち上がる。

 

 

『隊長…!』

 

 

「っ…エスクード!」

 

地面に複数の盾を展開しレイガストを構え、衝撃に備える。

 

 

柿崎の前の地面に着弾したメテオラは大きく爆ぜると柿崎の視界を奪う。

 

 

 

それを切り裂くように2つの影が飛び込む。

 

 

「ハウンド!」

 

「っ?!」

 

柿崎はそのハウンドをどうにかレイガストで受けるが、体勢を崩してしまう。

そして目前にはスコーピオンを構えた王子の姿が。

 

「っ…王子隊…!」

 

 

 

 

ガラン…

 

レイガストを持っていた右手が飛ばされる。

 

「クソ…!」

 

柿崎はエスクードで壁を作り距離をとる。

 

「サラマンダー。」

 

しかし、目の前の家屋の屋根から蔵内が8発の合成弾を放つ。

 

柿崎はすぐさまレイガストを左手に持ち、エスクードの陰でそれを防ぐ。

 

 

──

 

『王子隊の連携攻撃!柿崎隊長、為す術なく削られる!』

 

『ザキさん落とせりゃ後々楽だからな。ザキさんのエスクードは地味にうぜえ。』

 

──

 

「やべえ…!」

 

樫尾の放った旋空に、柿崎の右足が落とされる。

 

「エスクード!」

 

エスクードでさらに壁を作るが、すぐに弧月で切り裂かれる。

 

「ザキさんを落とせばてるてるが落としやすくなるからね。」

 

「この野郎…。」

 

柿崎はそう言いながらも笑みを見せる。

 

 

 

 

「…だがうちのエースはそんなに弱くねえよ。」

 

 

 

『!、皆!警戒して!!』

 

橘高の通信が入る。

 

その瞬間、王子の後ろの建物が爆発する。

 

 

「予定より早すぎる…。どういうカラクリかな?てるてる。」

 

「…うちの隊長に触らないでいただけますか…?」

 

怖いほど眩しい笑みを見せながら近づいてくる照屋。

 

 

その右手には分割されたトリオンキューブが。

爆風が晴れるとそこから3棟ほどの建物が崩されていた。

 

「なるほど。メテオラで建物をぶち抜いて。それなら爆風でトノくんも狙えないね。」

 

 

「エスクード!!」

 

「「「!!」」」

 

王子隊と照屋を分断するようにエスクードが展開される。

 

「!、旋空が来る!」

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

 

そのエスクードを切り裂くようにB級2位のエース攻撃手の鋭い旋空が王子隊目掛けて放たれた。

 

 

 

──

 

『隊長のピンチに照屋隊員が駆けつける!!』

 

『建物ぶち抜いて最速で来やがったな。王子はザキさんと照屋を組ませたくなかったみたいだが…照屋の方が上手だったみたいだな。』

 

『ですが3対2…王子隊が有利な展開でしょうか…?』

 

『それはどうかな。照屋はここ最近弓場さんやカゲなんかのボーダーでもトップレベルの点取り屋とやり合ってるから目立たねえが…間違いなくエースレベルに成長してやがる。B級じゃカゲや鋼みたいな攻撃手には経験値が足りねえが…ザキさんと連携した照屋は別だ。この連携はザキさんがサポートと守り、照屋が攻撃に特化してる分最早B級トップの連携だぜ。』

 

 

──

 

「いけっ!文香!王子隊なんかやっつけちゃいなさい!!」

 

観戦ブースで手を挙げながらそう叫んでいるのは照屋の師匠である小南だった。

 

「声でか過ぎです、小南先輩。あと手を挙げるのだけはマジでやめてください。」

 

隣にいた烏丸が呆れたようにそう言った。

 

「…改めて見ると本当に強くなりましたね、照屋。」

 

「あったりまえじゃない!この私が鍛えたんだから!!」

 

「確か昨日やった時は6対3の1引き分けでしたっけ?」

 

「言っとくけどコネクターなしだから!あったら1本も取られてないし!」

 

小南はそう釘を刺す。

 

「分かってますよ…。でも最初は双月1本でも全然勝てなかったのに。凄い成長速度ッスね。」

 

「私の!教え方がいいのよ…!!」

 

「感覚派が何言ってんすか…。」

 

 




各オペレーターへの印象(A級編)

国近柚宇←話し方好き。ゲームはあまりやった事ないです。
真木理佐←知らない。
三上歌歩←前廊下で見かけた。めっちゃ荷物持ってたから手伝おうか迷ったけど風間さんが来た。
草壁早紀←駿の所の隊長。オペ隊長珍しい。
綾辻遥←美味そうに食うなぁ…。お菓子いる?
小早川杏←知らない。
月見蓮←三輪繋がりで合えば話す。俺もゴキブリ見たことない。
結束夏凛←辻と同じクラスか…いいなぁ…。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊③

投稿空いてしまい申し訳ないです〜( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )
ちょっと仕事繁忙期でして。
まぁ空いても3日以内には何とか出すようにしますんで。
最近熱い日が続いてますね。
熱中症には気をつけましょう。


…葦原先生!お大事に!!


『清澄先輩、虎太郎、王子隊と交戦になったよ。しばらくサポート出来ないかも!』

 

その言葉と共に機器を操作する音が聞こえる。

 

『…こっちはいい。あらかた射線は絞ってくれたからな。』

 

『そっちに集中してください!』

 

『虎太郎、オレたちは合流後すぐに東に行くぞ。見つかると面倒だ。バッグワームを付けておけ。』

 

『了解です。』

 

 

──

 

『マップ中央の柿崎隊、バッグワームでスピードを上げましたね。』

 

『照屋と柿崎が交戦してんだ、上からは弓場隊の2人も来てる。とっとと合流して援護に行きてえだろ。』

 

『外岡くんの射線関係なしに走ってるね〜。』

 

『外岡は当たらねえ弾は撃ちたがらねえ。位置バレすっからな。そう言う意味じゃ動き回った方が効果的だろーよ。』

 

『なるほど〜。』

 

『一方のマップ東、王子隊と柿崎隊の戦闘は数の不利をものともしない照屋隊員と柿崎隊長の連携に樫尾隊員が削られる!』

 

──

 

「くそっ…!」

 

切り飛ばされた樫尾の左手からトリオンが漏れる。

 

『どうする?王子。一旦引くか?弓場隊が来るぞ。』

 

『いや、弓場隊が来る前にザキさんは落としておきたい。距離を取って戦おう。僕らも少し引くからクラウチはメテオラ解禁だ。』

 

『了解。』

 

「「ハウンド!」」

 

照屋目掛けて王子と樫尾2人のハウンドが襲いかかる。

 

「…っ…」

 

照屋はシールドで受けながらエスクードの陰に隠れた。

 

「!、文香!蔵内のメテオラが来るぞ…!」

 

「了解です!」

 

文香はすぐにシールドを固定する。

 

メテオラはエスクードを吹き飛ばし地面を抉る。

その土煙の中からハウンドが飛び出す。

 

「エスクード!」

 

照屋の前に大きな盾が現れる。

 

『わりぃ文香。もうトリオンが少ねぇ。エスクードはあと1回が限界だ。』

 

『…分かりました。問題ないです。隊長の受けた分はきっちり王子先輩に返しますから。』

 

そう言いながら照屋は凛々しい表情で弧月を構える。

 

土煙が晴れる。

 

そこには弧月を振り被らんとする王子の姿が。

 

「!、隊長!!」

 

柿崎の右後ろの塀。

そこからバッグワームを羽織った樫尾が飛び出した。

 

「くそっ…!グラスホッパーとバッグワームで回り込んでやがった…!」

 

片足、片手を失っていた柿崎に避ける術はなく、トリオン供給機関が切り裂かれる。

 

 

「…ハッ悪ぃな…これでも隊長だ…。最後に格好つけさせてもらうぜ…。無駄にすんなよ!文香(エース)!」

 

ヒビの入った身体で最後に地面に手を着く。

 

「カシオ!離れるんだ…!」

 

「ぐっ…!」

 

カシオはバッグワームを解除。

すぐにグラスホッパーを展開する。

 

「残念だがお前じゃねえ。頭を貰ってくぜ。」

 

エスクードを地面を伝い、王子の足元数cm程の塀から横向きに飛び出した。

 

 

これは柿崎隊、綾瀬川が木虎との戦闘の際に見せたエスクード。

 

「!」

 

王子の足首に直撃、王子はバランスを崩す。

 

 

 

その隙を逃すほどB級2位のエースは甘くなかった。

 

照屋は1歩で距離を詰めると、王子に切りかかる。

だが相手もB級上位の攻撃手。

どうにか左手で地面に手を付きながら弧月で受け止める。

 

 

…だが、

 

 

「正直見くびってたよてるてる。お見事だね。」

 

背後の地面から飛び出したスコーピオンが、王子の背中を貫いた。

 

 

──

 

『柿崎隊長、王子隊長が緊急脱出!ROUND8夜の部の初の得点は柿崎隊、王子隊が序盤で各隊長を失う形となった!』

 

『蔵内のメテオラから自分を囮に使った樫尾の奇襲。さすがの戦術だな。』

 

『でも最後はエースを信じてエスクードでのサポート!いいね、こう言う熱いの好きだなぁ。』

 

『ああ。ザキさんが上手く照屋の得意パターンに持っていきやがった。最近は得点も少なくて目立たねえが…照屋と組んだ時のザキさんの援護はB級トップクラスだぜ。』

 

『しかし残ったのは照屋隊員1人!王子隊は中・近距離が残っている現状、照屋隊員ピンチか…!』

 

──

 

「っ…このっ…!」

 

樫尾はすぐにグラスホッパーを展開、照屋に切り掛る。

 

しかし照屋は冷静にそれを捌く。

 

『クラウチ、カシオ、一旦引くんだ。』

 

そこに既に緊急脱出した王子の通信が入る。

 

『でも…!』

 

『…僕は一旦って言ったんだ。少し距離をとろう。弓場隊が来る。てるてるを挟み撃ちにする。』

 

『分かった。樫尾。』

 

『了解です。』

 

「ハウンド!」

 

ハウンドを撃ちながら距離をとる。

 

照屋はシールドで受けながらハンドガンを取り出した。

 

『文香!後ろ!弓場隊が来てるよ!』

 

『了解。』

 

照屋の後方、弓場隊の神田がアサルトライフルを乱射する。

 

すぐにフルガードに切り替え、王子隊と弓場隊の射撃を受ける。

 

──

 

『ここで弓場隊も乱入!照屋隊員を挟み撃ちにする形になった!』

 

『あちゃー、王子先輩の狙い通りかな?樫尾くんと蔵内先輩も距離とって戦ってたし。』

 

『しかもやべえな…二宮隊の動きも怪しいぜ。』

 

──

 

「っ…!」

 

私は巧みに体を動かして射撃を躱す。

 

『文香、もう少しこらえて…!今虎太郎と清澄先輩が向かってるから!』

 

『了解。』

 

虎太郎と清澄先輩の位置を確認する。

虎太郎が先行して向かっているようだ。

それもそうだ。

二宮隊と弓場さん、外岡先輩がどこに潜んでいるか分からないから。

 

4対1。

絶体絶命のピンチだけど…清澄先輩なら絶対に何とかするんだろうな。

 

 

…負けてられない。

 

「メテオラ!!」

 

帯島さんと樫尾くん、蔵内先輩がトリオンキューブを分割する、ほんの少しの隙。

その隙に私は地面にメテオラを放つ。

土埃が巻き上がり視界を奪った。

 

真登華の支援を受けて私は近くの塀に飛び乗った。

 

 

 

その時だった。

 

塀のある屋根の上にバッグワームを羽織ったスーツの隊員が。

 

「やっほー、照屋ちゃん。」

 

こちらに向けて犬飼先輩はPDWを向ける。

 

「っ…!」

 

私は急いでシールドを展開、バランスを崩しながらもどうにか銃撃を受け切った。

 

しかし落ちたのは敵のど真ん中。

土埃が晴れると王子隊、弓場隊はこちらに矛先を向ける。

 

私は急いでシールドを固定。

 

その直後、銃声、そして3人の弾トリガーが光り輝き、私のシールドを襲う。

 

シールドはすぐに割られてしまう。

 

そして神田先輩の射撃に私は蜂の巣にされてしまった。

 

 

──

 

『ここで照屋隊員緊急脱出!弓場隊の神田隊員の得点になりました!』

 

『こう言う時に銃手トリガーは有利だからね〜。』

 

『犬飼がいい仕事しやがるな。照屋を突き落とした後すぐにバッグワームで消えやがった。』

 

──

 

『ごめんなさい、清澄先輩、虎太郎。』

 

『問題ない。最後の最後にお前はよくやってくれた。』

 

 

 

 

照屋の稼いだ時間は無駄では無かった。

 

 

 

 

屋根の上からバッグワームを羽織った巴がとびだし、王子隊の樫尾に切りかかる。

 

「!、柿崎隊!!」

 

片腕だけの樫尾だったが、どうにか弾くと後ろに飛び退く。

 

 

 

 

 

 

 

 

キンッ…

 

 

 

 

 

…そして死神が鎌を振りかぶる音が聞こえる。

 

 

 

 

巴は口元に笑みを浮かべると飛び退いた。

 

 

 

『カシオ!引くんだ…!』

 

王子の通信が入る。

 

 

 

 

 

『『警戒!!』』

 

 

 

 

オペレーターの通信を受けて理解する。

 

 

巴がここに来たということはあの男もここに来ている。

 

 

レーダーに映ったのは既に20mの距離にある反応。

 

 

 

そこは既に死神の射程だ。

 

…そして鎌は振り下ろされる。

 

 

 

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

 

 

 

キィと、不気味に甲高い音が響く。

 

 

 

 

家を斬り倒しながら高速で襲いかかったその攻撃は樫尾だけでなく、前衛にいた帯島をも切り裂いた。

 

「ちっ…お出ましかよ…!」

 

神田は苦笑いを浮かべながら悪態を着く。

 

 

 

 

「お前が生き残ってくれたおかげで間に合った。流石だな、助かった…エース。」

 

 

 

 

チームメイトを労いながらもその表情は変わらない。

ただ淡々と目の前の敵を屠る。

 

 

 

 

 

無機質な死神が王子隊、弓場隊に牙を剥く。




各オペレーターへの印象(B級編)
氷見亜季←辻が平気な女子。結構内気…?
仁礼光←友人。人の弁当弁当よく取るけど良い奴。
細井真織←マオリと間違えるけどマリオだよな?生駒隊皆そう呼んでるし。
藤丸のの←話したことない。弓場隊のオペレーターだから女ヤクザだと思ってる。
橘高羽矢←話したことない。王子隊のオペレーターなら優秀なんだろ。
人見摩子←話したことない。東隊のオペレーターなら優秀なんだろ。
染井華←メガネオペレーター2号。
今結花←前話しかけられた。進学校組だと思ってた。
小佐野瑠衣←前話しかけられた。飴貰った。
加賀美倫←髪型すごい。
志岐小夜子←話しかけづらい。
宇井真登華←チームメイト。後輩。猫飼いたいな…。最近舐められてるんじゃないかと不安。
武富桜子←めっちゃ話しかけられた。解説?俺が?正気か。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊④

遅くなりました!
投稿致します。

ひよりの声優、高橋李依さんですって!!
めっちゃ合う!
よう実の中で1番好きなキャラなんで登場が楽しみです!
ちなみに2番目は天沢。


『ここで柿崎隊の2人が到着!綾瀬川隊員の旋空により樫尾隊員が緊急脱出!帯島隊員も緊急脱出には至らなかったが右腕を失う大ダメージ!トリオンも結構漏れているか!』

 

『ヒュウ〜、なっげえ!』

 

『綾瀬川隊員の旋空の射程は35m。生駒旋空には及びませんが攻撃手トリガーの中ではトップクラスの射程を誇ります。樫尾隊員を失ったことで蔵内隊員が一気にピンチになった!』

 

──

 

「ちっ…家越しだと狙いづらいな…。」

 

切り倒された建物の瓦礫の上を弧月を持った怪物が歩いてくる。

 

『虎太郎、お前は蔵内だ。』

 

『了解です!』

 

柿崎からの通信で、巴は蔵内の方に振り返る。

 

「っ…。」

 

蔵内はすぐさまハウンドを放つと距離をとる。

虎太郎はシールドでそれを受けると蔵内を追った。

 

『清澄、お前は弓場隊だ。2対1だが…行けるな?』

 

『無茶振りしないでくださいよ。…まぁ…了解です。』

 

「…ってことはお前の相手は俺らかよ…。」

 

神田は冷や汗を浮かべながらそう言った。

 

「隊長からの司令なんで。2対1なんで手加減してくださいよ…。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構え、トリオンキューブを生成する。

 

「よく言うぜ。そりゃこっちのセリフだよ。」

 

帯島はもう弧月を握れない。

それにトリオンも漏れていた。

 

『トノ…!』

 

『…すんません、上手く射線切られてます。狙えません。』

 

「わかった。帯島、弾で援護してくれ。」

 

「了解ッス!」

 

神田は弧月を抜く。

 

「バイパー。」

 

綾瀬川のトリオンキューブが輝くと、神田目掛けてバイパーが襲い掛かる。

 

「っ!」

 

バイパーを受けようとすぐさまフルガードに切り替える。

 

「帯島!」

 

「ハウンド!!」

 

帯島は綾瀬川の横に飛びながら、ハウンドを放つ。

 

それを見た綾瀬川はバイパーの弾道を変えると弧月を神田目掛けて振り下ろす。

 

帯島のハウンドをバイパーで相殺しながら、神田と鍔迫り合いをする。

 

「相変わらずの鋭さだな、嫌んなるぜまったく…!」

 

弧月で受けながら神田は片手でアサルトライフルを綾瀬川に向ける。

 

「っと…。」

 

綾瀬川は弧月を弾くと後ろにバク転しながら飛び退く。

 

「ハウンド!」

 

飛び退いた綾瀬川目掛けて帯島のハウンドが放たれる。

 

それをシールドで受けると綾瀬川は弧月を構え直した。

 

──

 

『弓場隊の連携!綾瀬川隊員攻めあぐねているか!』

 

『まあ2対1だからな。神田が受けつつ綾瀬川の動きを止めて帯島のハウンド。地味にうぜえ連携してやがるな。』

 

『でも、綾瀬川くんはまだ様子見してるみたいですよ?こんなもんじゃないでしょ、綾瀬川くんは。』

 

『確かに。いつもより動きが遅いな。』

 

『そして一方のマップ中央!巴隊員が蔵内隊員を追い詰める!』

 

 

──

 

「ハウンド!」

 

走りながら放たれたハウンドをシールドで受けると、巴はハンドガンでハウンドを放ち、蔵内の弾トリガーを封じる。

 

その間にグラスホッパーで距離を詰めた。

そして蔵内に切りかかる。

 

「くっ…!」

 

蔵内は転がるように避けると走り出す。

 

──

 

『こりゃヤベーな。』

 

『そうですね…

 

 

 

 

 

…このままじゃ二宮隊の点だ。』

 

 

 

 

──

 

キンッ…

 

 

「!」

 

聞き覚えのあるその音に巴は飛び退く。

 

その瞬間、蔵内を切り裂くように弧月が通り抜けた。

 

『やっばいです!清澄先輩!こっちに辻先輩がいました!!』

 

蔵内は横取りされたものの、何とか体を傾かせて、二宮隊、辻の奇襲を防いだ巴は綾瀬川に通信を入れる。

 

『ごめん!私のミスだ〜!』

 

『問題ないです!グラスホッパーで離脱して清澄先輩の援護に入ります!』

 

そう言って巴は後退りながらグラスホッパーを展開、辻から距離をとる。

その瞬間レーダーに映るもう1つの反応。

 

そこにはトリオンキューブを分割した二宮がたっていた。

 

『虎太郎!逃げて!』

 

「やっば…!!」

 

巴はグラスホッパーを両手で展開。

重ねると急加速する。

 

 

──

 

『これは…ROUND4で綾瀬川隊員が見せたダブルグラスホッパー?!』

 

『ほー、確かにスピードは上がるだろうが身体の使い方が難しいだろーに。成長したのは照屋とザキさんだけじゃねえって訳ね。』

 

『だがこれは…?』

 

『なるほど、蔵内の横取りを狙ってたのは二宮隊だけじゃないって訳ね。』

 

 

『うおお〜!弓場さぁん!!』

 

里見はマイクが入っているのにも関わらず興奮気味に声を上げた。

 

──

 

屋根の上から、弓場の早撃ちが炸裂。

シールドも間に合わず、巴は蜂の巣にされてしまった。

 

『クソ…すいません!清澄先輩!』

 

巴もここで緊急脱出。

弓場隊が2点目を獲得した。

 

──

 

『巴隊員緊急脱出!弓場隊の得点となりました!』

 

『さすが弓場さん!巴くんのシールドを寄せ付けない早撃ちだったね!』

 

『これで弓場隊は2点目!現在のポイントは柿崎隊、弓場隊が2ポイント!二宮隊、王子隊は1ポイントとなります!』

 

『綾瀬川がかなりやべえな。弓場隊、二宮隊はフルで残ってやがる。』

 

『でも弓場さんもかなりやばいですよ。これじゃ二宮隊からは逃げられない。』

 

『そーだな。でも弓場さんなら引かねえだろ。おっ、犬飼は弓場隊と綾瀬川の戦いに茶々入れる気だぞ…。』

 

 

──

 

「お前の後輩落ちたみたいだぜ。」

 

そう言いながら片腕になった神田は弧月を振るう。

 

「そうみたいですね。」

 

それを避けながらオレは帯島目掛けてバイパーを放った。

 

『真登華、弓場さんと二宮隊は?』

 

『あっちでやり合うみたい。犬飼先輩は…やっば、清澄先輩後ろ~。』

 

『おい。』

 

通信を切って飛び退く。

 

オレが避けたことで犬飼先輩のアステロイドは代わりに帯島に襲いかかり、帯島はどうにかシールドで受けた。

 

 

「やっほー、清澄くん。ピンチ?助けに来てあげたよ。」

 

「アンタ今オレ狙ってたでしょーが。」

 

「あれ?気のせいじゃない?」

 

そう言いながらも犬飼はこちらに銃口を向け、アステロイドを放った。

 

「避けるなよ〜、澄同士仲良くやろーぜー。」

 

「じゃあ避けないでください…よっ。」

 

そう言いながら弧月を振り抜き、旋空を放つ。

 

「おわっ!あっぶね〜。」

 

「帯島、畳み掛けるぞ!」

 

「はいッス!」

 

そう言って2人はオレ目掛けてハウンドを放った。

 

「ちっ…。」

 

これは賭けだな…。

 

俺はグラスホッパーを使って飛び上がる。

 

その状態で辺りを見渡すと、予測した建物の方から、一瞬光が反射する。

 

ビンゴだな…。

 

そのまま、シールドを張ってハウンドを受け切ると、サイドエフェクトをフル活用。

10時の方向のマンション。

そこから放たれたイーグレット狙撃を俺は空中で体を捻って躱す。

 

「っ…ぶね…。」

 

体を捻ったまま、弧月に手をかける。

 

「!、帯島!」

 

 

「旋空弧月。」

 

 

帯島は縦向きに放たれる旋空を予測し飛び退く。

 

 

 

 

──

 

『空中で狙撃を躱しながらの旋空弧月?!』

 

『外岡の奴綾瀬川とは相性悪ぃ見てえだな。どう言う訳か撃つ場所予測してやがる。』

 

『いや、それでも空中で躱すとか化け物過ぎますって。』

 

──

 

「うひょー、流石だね、清澄くん。」

 

地面に着地する瞬間を狙った犬飼の射撃。

それをシールドで受けながら綾瀬川は帯島に食いつく。

 

「っ…!」

 

「帯島!」

 

神田はこちらにアサルトライフルを向ける。

それをシールドで受けながら距離を取る。

それと同時に綾瀬川に目掛けて放たれた犬飼のアステロイドが距離をとった綾瀬川を通り抜けて帯島を貫いた。

 

それを見た綾瀬川は犬飼を睨む。

そして犬飼に斬りかかった。

 

 

「っ…やば…!横取り怒っちゃった?」

 

右腕を飛ばされ、犬飼は飛び退く。

 

そのタイミングで綾瀬川はグラスホッパーを展開。

 

「ちょ、追撃?怒りすぎじゃない?神田くんの方が…えっ…?」

 

言いかけて犬飼は浮遊感に襲われる。

 

そのまま犬飼の体は空高く打ち上がる。

 

──

 

『これは…!犬飼隊員にグラスホッパーを踏ませた?!』

 

『考えることがおもしれえな。こんな隙外岡なら逃さねえだろ。』

 

──

 

ダンッ!

 

渇いた銃声1発。

それと同時に綾瀬川はバイパーを犬飼目掛けて放った。

 

「やるね。でも柿崎隊にはもう点はあげられないかな。」

 

そう言って犬飼は囲うように丸くシールドを展開。

 

綾瀬川のバイパーを防ぎ切るが、削られたシールドを外岡の狙撃で破られてしまった。

 

──

 

『犬飼隊員緊急脱出!これは弓場隊の得点になりました。』

 

『犬飼先輩は柿崎隊の点にならないようにあえてシールド広げてバイパーを防いだね。』

 

『妥当な判断だろ。これ以上柿崎隊に点をやる訳にはいかねーしな。』

 

──

 

そのまま綾瀬川はグラスホッパーを複数展開。近くのグラスホッパーに目掛けて駆ける。

その軌道の先には先程狙撃で位置が割れた外岡が。

 

『!、トノ!緊急脱出しろ!綾瀬川が行くぞ!』

 

「っ…くそ、緊急脱出!」

 

外岡は自発的に緊急脱出。

 

 

 

 

「…でしょうね。オレでもそうする。」

 

 

「!」

 

綾瀬川はグラスホッパーに足をかける事無く、地面に足をつけ、方向を変えると神田に切りかかる。

 

「ぐっ…!」

 

神田は弧月で受けるが、既に片腕を失った神田では力不足であった。

 

「くそ…負ける訳にはいかねえ…!」

 

神田にとってこれは最後のランク戦。

 

神田の弧月を持つ手に力が篭もる。

 

 

…しかし綾瀬川の押す力が急になくなり、神田はバランスを崩す。

 

綾瀬川は弧月を手放していた。

 

 

(くそ…バイパーか…?!)

 

神田はバランスを崩しながらシールドを展開する。

 

 

しかし綾瀬川からバイパーは放たれることは無かった。

その手には青色のトリガー反応。

 

「グラスホッパー?!」

 

 

展開されたグラスホッパーに手放した弧月が落ちると、弧月は急加速し、神田の胸を貫いた。

 

(グラスホッパーで落とした弧月を?!)

 

「はっ…そんなのありかよ…。」

 

 

神田の緊急脱出と共に、マップの南から2筋の緊急脱出の光が空に上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そして柿崎隊、二宮隊、弓場隊にそれぞれポイントが入った。

 

 




感想で言われそうなんで先に書いとくと弓場さんVS二宮さん、辻ちゃんの戦いは次回でちゃんと書きます。

ポイントおさらい

柿崎隊
 
 
柿崎 0P
照屋 1P
巴 0P
綾瀬川 2P
 
合計 3P
 
 
 
二宮隊
 
 
二宮 0P
犬飼 1P
辻 1P

合計 2P
 
 
弓場隊
 
 
弓場 1P
神田 1P
外岡 1P
帯島 0P
 
合計 3P
 
 
王子隊
 
 
王子 0P
蔵内 0P
樫尾 1P
 
合計 1P
 

綾瀬川のトリガー構成

メイン:弧月、旋空、???、シールド
サブ:バイパー、グラスホッパー、バッグワーム、シールド

感想、評価等お待ちしております!


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊⑤

言い訳させてください。
言い訳というか仕方ないんですけど…私はauユーザーでして…。
しかも運悪く出張中でWiFiが無い環境だったんですね。


もうお分かりですよねw

遅れを取り戻す形ですが明日も出します。

それではどうぞ。


『弓場隊の2人と綾瀬川隊員の戦いに犬飼隊員が乱入!綾瀬川隊員に仕掛けた!』

 

『弓場隊と挟み撃ちにする作戦ですね~。』

 

『犬飼はこういう所ちゃっかりしてっからな。盤面をよく見てやがる。』

 

『と、言いますと?』

 

『弓場さんと二宮隊の戦闘に綾瀬川を介入させたくねえんだろ。弓場さん相手に辻ちゃんは不利すぎる、二宮さんの援護に入るだろ?二宮さんなら火力でごり押せるかもしれねえが、弓場さんも奇襲目的でここに来てんだ…見ろよ、弓場さんの間合いに二宮隊が2人とも入ってやがる。弓場隊と綾瀬川の戦いは人数差があるが…おそらく綾瀬川が勝つ。そんで綾瀬川が二宮隊の後ろから回り込みでもしたら一気に不利になっちまう。』

 

『でも、その場合辻ちゃんが綾瀬川くんを抑えればいいんじゃ?』

 

『それは得策では無いかもしれません。…辻隊員と綾瀬川隊員は日々ランク戦でしのぎを削るランク戦仲間。辻隊員の援護に重きを置いた弧月と超攻撃型の綾瀬川隊員の弧月では辻隊員が不利ですね。勝率は綾瀬川隊員が80%に対して辻隊員が20%。1対1では無理があるかと…。』

 

『そんなことも調べてあるのね…。』

 

『辻もそれを分かってて犬飼に任せたんだろ。せめて弓場さんをどうにかするまでは綾瀬川を抑えておきたいだろーぜ。』

 

 

──

 

弓場は得意の早撃ちで辻のシールドを削る。

 

「っ」

 

完全に弓場の優勢。

狭い路地、20mと言う距離に辻は攻めあぐねていた。

 

 

「ちっ…。」

 

二宮も狭い路地という事もあり、距離を取ろうと動き出す。

 

しかしそれを許す弓場ではなかった。

拳銃から放たれた弾は辻を躱すように弾道を変える。

 

弓場の放ったバイパーが二宮の動きを止める。

 

辻を狙うアステロイドの早撃ちと二宮を狙うバイパーが二宮隊を襲う。

 

(外岡が潜んでいる以上開けた場所に出るのは得策では無いか。)

 

弓場のバイパーを受けながら二宮は考える。

 

 

 

 

(辻が邪魔だなァ…。さすがは二宮隊。全員が曲者揃いだ。だったら…)

 

 

ここで弓場は仕掛ける。

 

 

 

二宮を狙ったバイパーをさらに曲げる弾道を設定する。

 

アステロイドでの早撃ちと、後ろからのバイパーが辻を襲う。

 

弓場はここで辻を落としに来たのだ。

 

 

──

 

『弓場隊長上手い!ここでアステロイドとバイパーが辻隊員を襲う!』

 

『こう言う搦手も使うから弓場さんは強いんだよねぇ~!』

 

里見は興奮気味にそういった。

 

──

 

「…」

 

しかし、辻はそれを読んでいたかのように後ろにシールドを張り、防ぐ。

 

「テメェ…。」

 

「失礼かもしれませんが…

 

…弓場さんより切れのあるバイパーは何度も見てるんで。」

 

攻撃の手が止んだ隙に、辻は一気に距離を詰める。

 

「ちっ!」

 

弓場は後ろに飛びながらアステロイドをフルアタック。

 

辻はトリオン供給機関以外への被弾を気にすることなくシールド1枚で弧月を構えながら距離を詰める。

そして無言で弧月を振り抜いた。

 

 

鋭い旋空は弓場の左手を落とす。

 

「クソ…!」

 

 

 

そしてもう1つの戦場から緊急脱出の光が。

 

 

『氷見。』

 

『弓場隊の外岡くんです。…自発的な緊急脱出のようです。』

 

 

『分かった。』

 

 

 

片腕でもボーダートップクラスの銃手。

 

辻との間合いを一気に引き離すと、片腕での早撃ち。

 

シールドを打ち砕くと、辻のトリオン体は胸部を穴だらけにされる。

 

 

「俺の仕事はここまでですから。

 

 

 

…後、任せます。」

 

そう言って辻のトリオン体にヒビが入る。

 

 

 

それと同時にいつの間にか家屋の屋根に立っていた二宮のハウンドのフルアタックが弓場に降り注いだ。

 

 

 

次いでもう1つの戦場から弓場隊、神田が緊急脱出した。

 

 

──

 

『ここで辻隊員、弓場隊長、神田隊員が緊急脱出!!』

 

『流石辻ちゃん。あくまで援護が仕事…か。』

 

『二宮さんも上手かったな~。狙撃がないって分かってからの動き。しっかり自分の形に持ってった所は流石だよ。』

 

『つーか綾瀬川の奴…グラスホッパーをあんな使い方するのな…。』

 

当真は賞賛半分、呆れ半分でそう言った。

 

『確かに。グラスホッパーで落とした弧月を飛ばすとは…。』

 

結束も感心したように頷く。

 

『失礼しました。…続けます、弓場隊長、神田隊員が緊急脱出したことにより、弓場隊はここで全滅、ROUND8夜の部の勝敗は柿崎隊、綾瀬川隊員と二宮隊、二宮隊長に託された!』

 

──

 

「随分と急いでここに来たようだな。」

 

二宮はスーツのポケットに手を入れたまま振り返る。

 

「B級1位…狙ってるんで。」

 

「お前は1位にこだわっているようには見えんがな。」

 

「不可抗力ですよ。オレにかかってるみたいなんで。申し訳ないですけど逃がしませんよ。」

 

「ふん、元より逃げるつもりは無い。かかって来い。たとえお前が相手だろうと撃ち落とす。」

 

 

射手の王と無機質な天才万能手。

 

2人の強者は向かい合う。

 

二宮のトリオンキューブが分割される。

 

それと同時に綾瀬川は深く息を吸い、弧月を構える。

 

 

そして二宮のアステロイドが炸裂。

そのタイミングで綾瀬川は深く踏み込み、アステロイドを走りながら躱す。

 

圧倒的なトリオンの暴力に綾瀬川は近づくことすら出来ず、二宮との距離を離される。

 

──

 

『二宮隊長のアステロイドが綾瀬川隊員に炸裂!綾瀬川隊員、近づけない!』

 

『タイマン最強だからね、二宮さんは。綾瀬川くんの回避能力は驚異的だけどあのトリオンから放たれる広範囲攻撃はさすがに避けきれないでしょ。』

 

『しかも距離を取っちまったってことは…』

 

──

 

目の前の二宮はさらにトリオンキューブを生成する。

 

二宮のフルアタック。

知っているものからしたら悪夢でしかない。

 

おいおい、勘弁してくれよ。

 

俺はグラスホッパーを複数展開して、空中も使って二宮のアステロイドを避ける。

 

「ハウンド。」

 

今度は威力重視のアステロイドとは違う、こちらを追尾する、ハウンドがアステロイドに紛れ込むようにオレに襲いかかる。

 

反則だろ…。

 

オレはシールドと遮蔽物を利用してどうにかハウンドを千切る。

 

「バイパー。」

 

遮蔽物が2人を遮った間にオレはトリオンキューブを分割。

山なりにバイパーを撃つ。

 

しかし、それでも二宮はポケットから手を出すことはなく、シールドで簡単に防がれる。

 

そしてさらにトリオンキューブを分割。

フルアタックがオレに襲いかかる。

 

 

 

 

これが射手NO.1。

弾トリガーの扱い、センスで言えば出水の方が上なのかもしれない。

 

それでもNO.1はこの男、二宮匡貴だ。

 

 

撃ち合えるのは出水だけ。

 

 

高揚がオレの体を支配する。

 

 

オレはアステロイドが着弾する刹那に飛び上がり、家屋の屋根に着地する。

 

無防備に立ち尽くすオレを見て二宮は攻撃の手を止めた。

 

 

そしてオレの行動に二宮は目を見開く。

 

メインにバイパー。

 

そしてサブトリガーでオレはもう1つトリオンキューブを生成した。

 

──

 

『フルアタック?!』

 

解説の里見が声を上げる。

 

『悪手も悪手だろ。二宮さんと撃ち合いをする気か?あいつ。』

 

『二宮隊長のトリオン量14に対して綾瀬川隊員のトリオン量は…5?いや…それにしてはトリオンキューブが大きい…?…兎に角、トリオンの差は2倍以上。にも関わらず綾瀬川隊員はフルアタックの構えをとった!』

 

──

 

「何考えてんのよあいつ!!いくらバイパーが上手いからって二宮さんと撃ち合い?!」

 

小南は頭を抱えながらそう叫ぶ。

 

「知らないんですか?綾瀬川先輩は相手とのトリオン量の差が倍以上ある時だけに使える特殊トリガーのおかげでトリオン量が一時的に100まで上がるんですよ?」

 

烏丸はそう返した。

 

「…そーなの?!なら安心ね!行けっ!綾瀬川!!100になったトリオンで二宮さんをゴリ押すのよ!!」

 

「…まあ嘘ですけど。」

 

「…え…?」

 

「だから嘘です。…2倍以上のトリオン量の差がある二宮さんに撃ち合いは悪手ですよね。どうする気なんでしょう。」

 

そう言って烏丸は考え込む。

 

 

 

「…騙したわね?!」

 

──

 

「どう言うつもりだ?まさか撃ち合いで俺に勝てると思ってるんじゃないだろうな。」

 

二宮は射殺すように綾瀬川を睨む。

 

「さあ?やってみなくちゃ分からないでしょ。アンタは射手1位。あの出水を抑えて…だ。オレは元射手でね。撃ち合いは好きなんですよ。米屋や出水みたいな戦闘狂と同列にされるのは不本意ですが…撃ち合い…しましょうよ。」

 

「ふん、良いだろう。二度とそんな気が起きぬよう真正面から叩き潰してやる。」

 

そう言うと二宮が分割したトリオンキューブが光り輝く。

 

それに対して綾瀬川のトリオンキューブも光り輝いた。

 

 

 

 

 

「二宮さん、アンタは俺に敗北を教えてくれるのか?」

 

 




トリガーセット

メイン:弧月、旋空、バイパー、シールド
サブ:バイパー、グラスホッパー、バッグワーム、シールド


まさかここまでROUND8が続くとは…。
次回決着予定です。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND8 VS二宮隊、弓場隊、王子隊⑥

投稿致します!
今回で決着です!


「太刀川さん、どう思います?この勝負。」

 

米屋が太刀川に尋ねた。

 

「綾瀬川の奴が何考えてるかは知らねーが…弧月使わねえってんなら勝つのは二宮だろ。撃ち合いじゃ不利すぎる。」

 

「あいつ…。」

 

出水は呆れたように苦笑いを浮かべていた。

 

「お前はどーよ、出水。弾バカとしてはどっちが勝つと思う?」

 

「…さあな。だがまあ…撃ち合いが不利ってのはあいつも分かってるだろ。それでもあいつは二宮さんに撃ち合いを仕掛けた。ブラフか策があるのかそれとも…。

 

 

 

…そういう感情を抑えきれなくなったか…だな。」

 

「やっぱお前、綾瀬川となんかあるのか?」

 

「何もねーよ。…始まるぜ。」

 

 

──

 

先に仕掛けたのは綾瀬川だった。

 

バイパーを二宮目掛けて放つとそのバイパーに合わせて縦横無尽に駆け出す。

 

それを見た二宮も応戦。

フルアタックのバイパーをメインのアステロイドのみで撃ち落とすと、サブのアステロイドで綾瀬川を狙う。

 

「さすがトリオン14。」

 

まるでパルクールかのように障害物を利用しながら駆ける綾瀬川は走りながら二宮の攻撃を避けると、さらにトリオンキューブを生成。バイパーを撃ち出す。

 

複雑な軌道を描きながら、バイパーは二宮に襲いかかる。

 

「ハウンド。」

 

しかしトリオンの差は小細工すら受け付けない。

ハウンドで簡単にかき消してしまった。

 

「小細工など通じない。お前は撃ち合いでは俺には勝てない。分かったらとっとと弧月を抜け。」

 

「…」

 

綾瀬川は建物の陰に身を潜めながらもトリオンキューブを生成した。

 

──

 

「本当に強いんですか?あの人。二宮さんに撃ち合いを挑むなんて。まるで歯が立たないじゃないですか。」

 

菊地原はパックジュースを啜るとそう呟く。

 

「綾瀬川の戦い方は単純だが強力だ。バイパーでシールドを広げた所にノーモーションで最速の旋空が放たれる。逆に旋空で相手のシールドを固める、もしくはレイガスト、弧月で旋空をいなそうと思わせた所に自分の背中、死角からのバイパー。しかも綾瀬川の旋空の射程は生駒程ではないが35mと攻撃手トリガー使いの中でも生駒に次ぐ長さ。中距離にも対応出来るはずだ。…それでも綾瀬川は弾トリガーで二宮と撃ち合う事を選んだ。何か策があるのか…。」

 

「二宮さんに似てますね、戦闘スタイル。」

 

「…そうだな。」

 

──

 

「駿、あの人本当に大丈夫なの?」

 

「どーかな~。あやせセンパイは強いし頭も良いから…無策って事は無いんじゃない?」

 

緑川は黒江の問にそう答える。

 

「それにあやせセンパイにはサイドエフェクトがあるし。」

 

「あら?緑川くんは清澄くんのサイドエフェクト知ってるの?」

 

黒江の隣に座っていた加古が緑川に尋ねた。

 

「ちらっと聞いたよ。俺馬鹿だからよく分からなかったけど…。」

 

「ふーん。私としては撃ち合いで二宮くんが負ける所は見たいけど想像出来ないわ。」

 

「アハハ、そーだね。でも…俺としてはこの状況であやせセンパイが負ける所の方が想像出来ないかな。あやせセンパイって結構負けず嫌いだから。ほら…

 

 

 

 

…そろそろ見切り始める頃だよ。」

 

 

──

 

二宮の連撃は続く。

アステロイドのフルアタックがじわじわと綾瀬川を追い詰め、遮蔽物を砕いていく。

 

「いつまで下らん鬼ごっこを続ける気だ?」

 

物陰から放たれたバイパーをアステロイドで相殺する。

 

「俺はお前のことを高く見すぎていたようだ。とっとと弧月を抜け。穴だらけにされる前にな。」

 

「…それはこっちのセリフですよ。オレはアンタの事を高く見すぎていたみたいだ。」

 

「…あ?」

 

「オレがただ逃げていただけだとでも?二宮さんの弾を見て確信した。

 

 

 

…二宮さんの攻撃はもうオレには当たらない。

 

 

…アンタじゃ…オレには勝てない。」

 

 

「図に乗るなよ。」

 

二宮はトリオンキューブを分割。

無数の弾を容赦なく綾瀬川に撃ち込む。

 

「…」

 

「!」

 

刹那綾瀬川の姿を見失う。

放ったアステロイドは虚空を通り抜け、家屋を倒した。

 

 

『二宮さん、上です!』

 

氷見の通信に二宮は空を見る。

 

空中で綾瀬川はトリオンキューブを分割。

バイパーが二宮目掛けて放たれる。

 

「舐めるな。」

 

バイパーを相殺しようと二宮が放ったアステロイド。

 

 

…バイパーはそれを避けるように二宮に襲いかかる。

 

「っ…!」

 

二宮はシールドを展開し、バイパーを防ぐ。

 

そのまま綾瀬川はトリオンキューブを分割すると、グラスホッパーを展開。

バイパーとともに二宮目掛けて駆け出す。

 

二宮も負けじとアステロイドで綾瀬川を狙う。

 

しかし、綾瀬川はシールドを張るでも無く、巧みにアステロイドの合間を抜け、避けきれない弾はバイパーで相殺する。

 

──

 

『綾瀬川隊員、二宮隊長との距離を一気に詰める!』

 

『なんつー回避力してんだよ…。シールド使わずに二宮さんとの距離を詰めやがった。』

 

『いや…シールドがあっても普通は二宮さん相手に距離を詰めるなんてこと出来ないですよ。』

 

里見は冷や汗を浮かべながらそう言う。

 

「見ろよ、二宮さんも余裕が無くなってきたぜ。フルアタックを止めてサブはシールドで手一杯になってやがる。」

 

──

 

速すぎる。

 

二宮は狙いを綾瀬川に設定してハウンドを放つ。

 

しかし綾瀬川は放った弾がハウンドであるのを分かっているかのように、グラスホッパーで引き付けてハウンドを避ける。

 

放つバイパーは二宮の弾を受けるためではなく、二宮を狙ったもの。

 

ガードのためのシールドなど張らない。

アステロイドなら強引に避け、ハウンドならグラスホッパーで引き付けて躱す。

 

あったはずの間合いはいつの間にか先程の半分になっていた。

 

(ならば…視界を奪う…!)

 

二宮はメテオラのトリオンキューブを生成する。

 

 

 

 

「…メテオラ…か。だろうな。オレでもそうする。」

 

 

『右!警戒!!』

 

氷見の叫び声に、二宮は右方に目をやる。

 

そこから2発のバイパーが二宮のトリオンキューブを刺した。

 

 

メテオラはそこで暴発。

二宮の左腕が吹き飛んだ。

 

 

(2発だけ俺の死角に回り込んで…!)

 

どこまで見えているのか。

 

爆風の中を切り裂きながら迫る綾瀬川に二宮は後ろに飛び退きながらハウンドを放つ。

 

「近距離のハウンドは悪手だぞ。NO.1射手。」

 

綾瀬川は体を傾けて、ハウンドを躱すと、グラスホッパーで二宮を飛び越え、後ろに着地する。

 

「!」

 

そして二宮の目前からは、綾瀬川を追うように引き返してきたハウンドが綾瀬川への通り道にいる自分目掛けて迫ってくる。

 

「っ…!」

 

二宮は転がるように避ける。

 

綾瀬川はそのハウンドをシールドで受けると、トリオンキューブを分割。

 

バイパーの凶弾が体勢を崩した二宮に襲いかかる。

 

「くっ…!」

 

二宮は片膝をつきながらシールドを固定。

 

バイパーを受け切った。

 

──

 

「…あやせセンパイのサイドエフェクトはこっちの攻撃、守りを無力にする。攻撃力が高いとか防御力が高いとかそう言うのは関係ないんだって。攻める時は相手の防御を読んだ軌道でバイパーを撃ってくるし、シールドを広げたら弧月で割られる。こっちの攻撃もそう。あやせセンパイにはどこを狙ってくるかが分かってるから避けるのだって簡単。相手の癖をランク戦や、戦闘中に見切ってそこを突いてくる。ランク戦するごとにあやせセンパイには当たらなくなるし、あやせセンパイの攻撃が避けれなくなるし、防げなくなる。はっきり言ってカゲセンパイとかむらかみセンパイのサイドエフェクトよりもタチが悪いんだよね。」

 

「何それ…未来予知?」

 

「あやせセンパイのサイドエフェクトは『情報の調律』?だって。未来予知じゃなくて…未来を予測してるんだよ。」

 

「「!」」

 

黒江、加古は目を見開く。

 

「相手の視線、動き、ログなんかから相手の動きを分析して、次どの手を使ってくるか演算してる。」

 

「そんなの…!」

 

声を上げそうになって黒江は口を閉じる。

 

(そんな高度な計算をあの戦闘中にやってるって言うの…?!)

 

黒江はスクリーンに視線を戻した。

 

 

 

──

 

「王手だ。」

 

綾瀬川はトリオンキューブをさらに分割。

 

固定されたシールド目掛けて、一点集中攻撃。

 

高いトリオン能力を誇る二宮のシールドだが、一点を狙われては一溜りもない。

 

シールドはその場所から崩れ始める。

 

 

「ふん、認めてやる。確かにお前は俺と撃ち合える程の技量の持ち主だった。出水にも匹敵する。…だが…

 

 

…勝敗は別だ。」

 

 

綾瀬川の視界の端、転がったトリオンキューブが光り輝く。

 

「!」

 

フルガードではなかった。

サブトリガーであの一瞬で置き玉を置いていた。

 

 

「…トリオンの暴力って言うんすよそれ。」

 

「言ったはずだ。勝敗は別だと。」

 

「オレも認めますよ。撃ち合いじゃアンタには勝てない…。」

 

 

 

綾瀬川はグラスホッパーで勢い良く飛び上がり、置き玉を躱すが、数発だけ綾瀬川の足に穴を開ける。

二宮は空中で無防備になった綾瀬川目掛けてさらにトリオンキューブを生成する。

 

「撃ち合いでならオレは今アンタに負けた。

 

 

…でも…

 

 

 

 

…ランク戦の勝敗は別だ。」

 

 

ここで綾瀬川はついに弧月を抜いた。

 

 

 

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

その差は二宮がトリオンキューブを扱う射手であったという点だろうか。

射手は一つ一つのモーションに時間をかける。

 

そのタイムロスが勝敗を分けた。

 

ボーダーでも屈指のスピードを誇る綾瀬川の抜刀。

 

 

…伸びた弧月が二宮のトリオン体を切り裂いた。

 

 

 

 

──

 

『こ、ここで試合終了…!』

 

結束の言葉に、観戦席から小南の嬉しそうな声が上がる。

それに合わせて観戦席はどよめき出した。

 

『最終スコア6対4対3対1!今シーズン最終戦、ROUND8夜の部は、柿崎隊の勝利です…!!』

 

──

 

終わった…か。

 

綾瀬川は空を見上げる。

 

 

 

 

…まだまだ楽しめそうな場所だな…ボーダー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 0P

綾瀬川 3P

生存点+2

 

合計 6P

 

 

 

二宮隊

 

 

二宮 1P

犬飼 1P

辻 1P

 

合計 3P

 

 

弓場隊

 

 

弓場 2P

神田 1P

外岡 1P

帯島 0P

 

合計 4P

 

 

王子隊

 

 

王子 0P

蔵内 0P

樫尾 1P

 

合計 1P

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

太刀川慶→やっぱおもしれえ。勝負しやがれ。
出水公平→友人。俺とももう一度本気で撃ち合いしやがれ。
菊地原士郎→へー、強いですね。…ほんとに。
黒江双葉→すごい…!
緑川駿→兄貴分。強い。
二宮匡貴→優秀な万能手。お前の勝ちだ。


太刀川慶←苦手。だから知らねえっつってんだろ。
出水公平←友人。理解者。
菊地原士郎←ロン毛サイドエフェクト。
黒江双葉←ツインテ11秒。
緑川駿←弟分。ランク戦仲間。
二宮匡貴←トリオンお化け。撃ち合いじゃ勝てん。


感想、評価等よろしくお願いします!


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最終戦を終えて

オリキャラが登場します。
前にチラッと登場してたキャラですけどね。

ワートリ公式TwitterのQ&A見ました?
銃手と射手のランキングは予想通りでしたね〜。

ネタバレになっちゃうかもなんで多くは語りませんけどw
気になる方は見てみてください。(宣伝して媚びを売るスタイル。)


『ここで試合終了!B級ランク戦ROUND8夜の部は柿崎隊の勝利です!!』

 

『うおー!二宮さんに勝っちまいやがった!』

 

『え…ほんとに…?』

 

里見は信じられないというように口をあんぐりと開けている。

 

『しかも柿崎隊が6点で二宮隊が3点っつーことは…二宮隊からB級1位の座まで奪っちまったぞ。』

 

『『…マジ?』』

 

結束、里見は実況、解説を忘れて声を揃えた。

 

『コホン…気を取り直して…今回のランク戦の総評を解説のお二方にいただきたいのですが…。』

 

『そうだな…一部隊ずつ見ていくならまずは王子隊。ザキさん狙いの思い切った動きは良かったと思うぜ。…だが、照屋の成長が予想外だったろうぜ。序盤も序盤で王子を落とされちまったのが痛かったな。樫尾と蔵内もレベルは高いが…統率の取れなくなった隊ってのは駒が強かろうと弱ぇ。王子が裏で指揮してるみたいだったが…結局は遠巻きだ。蔵内は綾瀬川の奇襲に前回の教訓もあってか、上手く動けてねえ印象だった。樫尾もだ。ザキさんが落ちたあと、弓場隊が乱入して焦っちまったんだろうな。綾瀬川と虎太朗の奇襲に対応できてなかったな。』

 

──

 

「やられたね。てるてるの成長が予想外だったよ。」

 

王子は総評を聞いてそう語る。

 

「巴もだな。グラスホッパーの扱いが上手くなってた。接近されたら勝てる気がしない。」

 

蔵内もお手上げと言うようにそう言った。

 

「すいません…俺…また…。」

 

樫尾はそう言って俯く。

 

「ま、これが今の僕ら…なんだろうね。終わったことを嘆いても仕方ない。次のシーズンに向けてもう一度B級部隊について研究しよう。頼りにしてるよ、羽矢さん…みんな。」

 

「「「了解。」」」

 

──

 

『弓場隊の動きは良かったと思いますよ。神田さんが帯島ちゃんと連携して奇襲。その間に弓場さんはバッグワームで虎太朗くんと二宮隊に仕掛ける。外岡くんも点を取れるところで取りに行ってたしね。』

 

『しっかり4点中2点上げてるあたりさすが弓場さんだな。』

 

『でも…やっぱり、二宮隊と天才万能手相手にはしんどかったかな?特に弓場さんは辻ちゃんに削られたのが痛かったかな。神田さんも、帯島ちゃんが綾瀬川くんの奇襲で弧月使えなくなったのが痛かったね。外岡くんはいつも通りだった。』

 

『…外岡隊員は綾瀬川隊員のグラスホッパーでのブラフに引っかかってしまったのが運の尽きでしたね。』

 

『いやー、あれは荒船さん以外の狙撃手全員緊急脱出するんじゃない?綾瀬川くんがグラスホッパーで飛んでくるんだよ?東さんでも逃げるって。』

 

──

 

「柿崎隊には負けたが…結果としちゃ悪くねえ。4点っつー高得点を上げることができた。」

 

弓場は腕を組んでそう話す。

 

「でも…最後くらいは勝ちたかったかな…。」

 

そう言って神田は天を仰ぐ。

 

「っ…神田センパイ…。」

 

帯島の目に涙が浮かぶ。

 

「おっと、泣いてる暇なんかないぞ帯島。俺が居なくなったら弓場さんを支えるのはお前だ。」

 

そう言って神田は立ち上がり、帯島の頭をポンと叩く。

 

「…ちょっと飲み物買ってきます。」

 

「あ、俺も〜。」

 

作戦室を出ていった神田を追いかけようと外岡が立ち上がる。

 

「トノ。…座れ。」

 

弓場はサングラスのブリッジを上げ、外岡にそう話す。

 

「1人にしてやれよトノ。神田にとって最後のランク戦だぞ?」

 

藤丸は外岡に肩を組みながら続ける。

 

「…何も思わねー訳ねーだろ?」

 

「「っ…。」」

 

帯島、外岡は俯く。

 

「神田が居なくなった途端負けてたらあいつに合わせる面がねぇぞ。

 

 

 

…気ぃ引き締めろやコラァ!」

 

「「はいっ(ス)!」」

 

──

 

『二宮隊はいつも通りでしたね。今回の場合は犬飼先輩が場荒らし、辻ちゃんが二宮さんの援護。特に犬飼先輩が上手かったなー。照屋ちゃんの退路を塞いで即離脱。その後は綾瀬川くんを弓場さんとの戦闘に介入させない為の時間稼ぎ。ポイントは抜かされちゃったけど、最後柿崎隊の点にならないように外岡くんからの狙撃を無視して綾瀬川くんのバイパーにシールドを使ったのもいい判断だね。』

 

『辻の奴も上手かったな。攻撃手で弓場さんをあそこまで追い詰めたのはイコさんを除けばカゲと辻ちゃんくらいじゃねえの?バイパーも見切ってるっぽかったしな。』

 

『これは推測ですが…辻隊員は綾瀬川隊員と模擬戦を頻繁に行っています。』

 

『『あー、なるほど。』』

 

里見、当真が声を揃える。

 

『そりゃバイパーも見飽きてるわな。』

 

『それよりも信じられないのは次だよね。まさか二宮さん相手に綾瀬川くんがあそこまで撃ち合えるなんて…!』

 

『最後の置き玉は上手かったですが…綾瀬川隊員の旋空の方が速かった。勝敗を分けたのはそこだと思います。』

 

──

 

「いやー、負けちゃいましたね〜。」

 

そう言って犬飼は作戦室のソファに寝転ぶ。

 

「まさか二宮さんに勝っちゃうなんて。…さすがの二宮さんも予想外…って感じですか?」

 

犬飼は視線だけを二宮に移す。

 

「…そうだな。綾瀬川は強かった。」

 

その言葉に辻も握りこぶしに力を入れる。

 

「あいつはボーダートップクラスの万能手だ。…もう一度戦術を改める必要がある。」

 

そう言って二宮は立ち上がる。

 

「氷見、今シーズンのランク戦のログをまとめておけ。」

 

「了解です。」

 

「…柿崎隊がA級に上がるのなら1位は次こそ死守する。もしもB級に残るというのならば…

 

…失った王座は取り戻す。…たとえ4人でも…だ。」

 

その言葉に犬飼、辻、氷見はかつての二宮隊狙撃手を思い浮かべる。

 

「犬飼、辻、氷見。お前達には今よりも働いてもらうぞ。」

 

 

「「「了解。」」」

 

 

──

 

『柿崎隊は序盤の照屋とザキさんの連携が良かったな。王子隊はザキさんを落として柿崎隊を崩したかったようだが…ザキさんと照屋の方が一枚上手だった。あー、ちなみに柿崎隊のことを綾瀬川一強とか言ってる馬鹿がチラホラいるみたいだから言っとくが…ザキさん、照屋、虎太朗も着実に成長してやがる。ザキさんはボーダーでもトップクラスの援護、防御力を、照屋は攻撃手にコンバートしてエースを張れる攻撃力を、虎太朗は目立たねえがサポート、浮いた駒を狙う…って言った縁の下の力持ちって感じだな。グラスホッパーの扱いだったら緑川に次ぐぜ。…ますますB級上位らしくなってきやがった。』

 

『綾瀬川くんは相変わらずやばいね。…て言うか本当に二宮さんに勝っちゃったの?』

 

『いつまで言ってんのよ…。』

 

『だってぇ…。

 

…まぁでも、その綾瀬川くんを倒せば俺がタイマン最強ってことだね〜。』

 

そう言って里見は笑った。

 

 

──

 

『おっと。…おい。』

 

作戦室に戻ったオレに、真登華、虎太朗が飛びついてくる。

 

『『清澄先輩〜!!』』

 

そう言って真登華は涙を零す。

 

『俺、今でも信じられないです!俺たちが…B級1位だなんて…!!』

 

『まさか撃ち合いを仕掛けるとは思ってなかったからヒヤッとしたぜ。でもまあ…お前ならって思ってたら案の定だ。…さすがだな。』

 

そう言って柿崎はオレの頭をクシャッと撫でる。

 

「どうも。」

 

そう言ってオレは隣に立つ文香に視線を下ろす。

 

「B級上位の隊長攻撃手に派手にやったみたいだな。」

 

「まだまだ足りませんよ。私なんてまだまだです。これからも清澄先輩の事…師事してもいいですか?」

 

「当たり前だろ。お前にはカゲさんや生駒さんを倒せるくらいになってもらわないと困る。」

 

「はい…!」

 

 

 

 

「清澄。こんなタイミングだが…いいか?

 

 

 

…俺たちのA級昇格についてだ。」

 

 

 

──

 

『さて、これにて今シーズン全ての試合が終了しました。ランキングをおさらいしましょう。』

 

 

 

1位 柿崎隊 43P

2位 二宮隊 42P

3位 影浦隊 39P

4位 生駒隊 37P

5位 弓場隊 34P

6位 王子隊 29P

7位 東隊 29P

8位 香取隊 28P

9位 鈴鳴第一 26P

10位 漆間隊 25P

11位 諏訪隊 25P

12位 荒船隊 24P

13位 那須隊 23P

 

 

『柿崎隊はA級での活躍に期待と言った所でしょうか。』

 

『上がりゃーな。』

 

『綾瀬川くんと戦えるなら大歓迎だよ〜!』

 

『これにて今シーズン最終戦、B級ランク戦ROUND8夜の部を終了します。解説は冬島隊、当真隊員と草壁隊、里見隊員が。実況は私、片桐隊オペレーター、結束でした…!』

 

 

 

──

 

「入りたまえ。」

 

 

その言葉にオレはゆっくりと扉をくぐる。

 

「せっかくの祝いの場に水をさしてすまなかったな。清澄。」

 

 

 

 

「祝いの場?笑わせるな。お前にとってはまだこれからだろう?清澄。」

 

目の前に立つ顔に傷の入った男、城戸(きど) 正宗(まさむね)の言葉を覆い隠すように後ろに立つ男はそう言った。

 

「まさかB級1位になって満足しているわけでは無いだろうな?」

 

「ちっ、アンタも居たのか。」

 

「…随分と減らず口を叩くじゃないか…

 

 

 

…実の父親に向かって。」

 

「生憎と俺はアンタを父親だと思ったことが無いからな。」

 

「…ふん。まぁいい。それよりも…だ。確かにお前のボーダーでの活躍は見事だった。柿崎隊…と言ったか?彼らの成長も目覚しい。…だが…A級レベルかと言われたら俺は疑問を覚える。所詮は清澄、俺の最高傑作であるお前の力だ。」

 

「…」

 

「それで?A級昇格試験…どう乗り越えるつもりだ?俺はそう簡単には認めないぞ?」

 

「…その事なら柿崎隊で話し合った。

 

 

 

 

 

…柿崎隊はA級への昇格試験を辞退する。」

 

「なんだと…?」

 

その言葉には聞いていた城戸も目を見開いた。

 

「立場を分かっているのか?ボーダーでのお前の有用性を見出すための特務だ。柿崎隊がA級に上がらなければお前の有用性は証明されない。なんのためにボーダーに来たと思ってるんだ?」

 

「これが話し合っての総意だ。オレも了承した。」

 

──

 

「清澄…俺たちはA級には上がらない。」

 

柿崎のその言葉にオレは目を見開く。

 

「天狗になってた訳じゃないが…ROUND8の前に清澄のいない所で俺たち4人だけで話したんだ。もし二宮さんに勝って…A級への切符を手に入れたとしても…それは果たして俺たち全員の実力って言えるのか…って。もちろんお前は柿崎隊の大事なチームメイトでありエースだ。でも…これからもお前ばかりに頼っていたら…俺たちは前に進めない気がする。」

 

柿崎に続いて文香が続ける。

 

「ここまで来れたのは…ハッキリ言って清澄先輩の力が大きいです。私は…まだまだ未熟です。」

 

「俺もです!まだ万能手にだってなれてない。」

 

「私も…まだ操作ミスとかしちゃうし…。まだ…自信が無いんです…。」

 

虎太朗と真登華も続けた。

 

「勝手に話し合って、勝手に決めちまって悪いとは思ってる。…でも…これが俺たちの意見だ。ここまで助けて貰ったのにこんなわがまま言って…本当にすまない…。」

 

そう言って柿崎は俺に頭を下げた。

 

「…顔を上げてください。」

 

その言葉に柿崎は顔を上げた。

 

「…柿崎さん…オレは柿崎隊万能手綾瀬川清澄です。…隊長の決めた事に異論なんてありません。」

 

「清澄…。」

 

「「「清澄先輩…!」」」

 

 

 

「…まぁオレ抜きで話してたことは引き摺りますけど。」

 

 

──

 

「…って訳でオレは来シーズンも柿崎隊としてA級を目指す。今日はその報告を城戸さん伝いでアンタにしてもらおうと思ったんだが…アンタがいるなら丁度良かった。」

 

「ふざけるな。そんな話が通ると思っているのか?4年前のあの日からホワイトルームは活動を停止している。これ以上ボーダーにお前の…俺の時間を使っていられない。」

 

「知ったことか。元々オレが顔も知らない母親の復讐のためにアンタが始めた事だろ?これ以上オレを巻き込むな。」

 

「黙れ!道具風情が一端の口を利くな!…俺の手で柿崎隊のA級昇格を妨害する事だってできるんだぞ…?」

 

 

…は?

 

「残念ですが綾瀬川先生。私はそこまでの権力をあなたに与えていません。」

 

そう言って城戸はオレの父親に近付く。

 

「!!」

 

 

…それよりも先にオレはあの男の前に歩み寄った。

 

 

 

「柿崎隊に何かする気なのか?」

 

「清澄…!」

 

ネクタイを締め上げこちらに顔を引き寄せる。

城戸が止めようと歩み寄るがオレはさらに続ける。

 

「どうなんだ?」

 

「手を離せ清澄。2度は言わんぞ?」

 

「こっちの質問に答えろ。…アンタが柿崎隊に何か危害を加えると言うなら…オレは二度とアンタの下らない計画には付き合わない。」

 

 

 

「…ふっ…

 

 

 

…ハッハッハッ!

 

 

 

…そこまであの隊に情を抱いていたのか?!清澄!

 

 

 

 

…面白い。これは貴重なデータだ。

 

 

…いいだろう。もう少し様子を見る。」

 

そう言ってオレの手を乱暴に振りほどくと父は胸元を整え立ち上がる。

 

「…城戸、今後も清澄の事は君に任せる。」

 

そう言って父はオレの横を抜け城戸の肩に手を置いた。

 

「送ります。」

 

「結構だ。

 

 

…精々足掻けよ清澄。そして痛感する事になる。

 

 

 

 

 

…お前はただの道具だとな。」




各キャラからの印象&各キャラへの印象

里見一馬→マジで二宮さんに勝ったの?!…ランク戦しよーよ!!
当真勇→強ぇ…。二宮さんに勝ちやがった!
結束夏凛→二宮さんに勝った?!
城戸正宗→直属の隊員。息子のように接する。
綾瀬川→最高傑作。手段、道具。


里見一馬←友人。銃手1位。
当真勇←あ、師匠ヅラする枠は小南で埋まってるんで。狙撃手1位。
結束夏凛←なんか柿崎隊に俺の事聞きに来たらしいね。データ?何言ってんの?辻と同じクラス良いなぁ。
城戸正宗←父親。身の回りの事とか学校の手配とかしてもらってる。感謝してもしきれない人。
綾瀬川←嫌い。


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無機質なボーダー隊員の日常⑦

投稿します!


「じゃ、B級1位を祝して…乾杯!」

 

 

「「「カンパーイ!」」」

 

「…乾杯。」

 

そう言って5人は飲み物の入ったジョッキを合わせた。

 

「あっ!俺焼きますよ!」

 

そう言って虎太朗は肉の載った皿に手を伸ばした。

 

「じゃあそのタンを頼めるか?オレはカルビを…」

 

「あ〜!ダメですよ清澄先輩!後輩である私の仕事です!」

 

そう言って真登華はオレから皿をかっさらった。

 

「あ、ああ。助かる。」

 

そう言ってオレは烏龍茶を1口飲む。

 

「はは、清澄は今シーズン大活躍だったからな。後輩として色々やりたいんだろ。好きにさせてやれ。」

 

「…別に気にしなくて良いんですけどね。オレはもう柿崎隊の万能手なんですから。」

 

「こうして5人で食いに行くのも久々だな。清澄はあれから学校の方はどうだ?慣れたか?」

 

「おかげさまで。どっかの槍バカと弾バカと一括りにされて、2-Bの三バカとか言う不名誉な称号を貰いましたよ…。」

 

「それはご愁傷さまだな…。出水と米屋と仲良いもんな。…まぁ、楽しそうにやってるみたいで良かったよ。」

 

「まぁそれなりに。文香はどうだ?小南とは上手くやってるのか?」

 

「はい。でも…学校ではボーダーでの話をしないように言われてるんです…。何か知ってますか?」

 

「あー…あいつ学校では自分はオペレーターって言う設定になってるらしいぞ。だからじゃないか?」

 

「なるほど…。なんでなんでしょうね?」

 

「さあ?あいつにも色々あるんだろ。」

 

「小南先輩と言えば今日基地から出る前に、小南先輩、加古さん、清澄先輩で話してましたよね?珍しい3人だなって思ったんですけど…。小南先輩やけに騒がしかったですよね?」

 

「ああ、あれは…」

 

──

 

「綾瀬川!」

 

基地を出る直前。

オレは小南に引き止められる。

 

「よう小南。お前が本部に来てるのは珍しいな。」

 

「文香の応援よ。とりまると来てたんだけどあいつバイトで先に帰っちゃってたから。…言っとくけどあんたを応援しに来たんじゃないから!」

 

「?、別に何も言ってないが…?」

 

そう言ってオレは首を傾げる。

 

「そんな事より!今日はカレー食べに来るんでしょうね!?」

 

「いや…この後柿崎隊で焼肉行くんだが…。」

 

「…え…。」

 

その言葉に小南はあからさまにショックを受ける。

 

「…でもまあ…そろそろ食いたいかもな。近いうちに行っていいか?」

 

「し、仕方ないわね!そん時は私とバトルもしなさいよ!」

 

「ああ。」

 

 

「…あら?桐絵ちゃんと清澄くんじゃない。」

 

 

そこにやってきたのは金髪で口の下に目を引くホクロのある女性だった。

 

「加古さん。」

 

「久しぶり桐絵ちゃん。どう?私の隊に入らない?」

 

「…私玉狛から出るつもりありませんから。」

 

小南はジト目で加古にそう返した。

 

「あら残念。」

 

そう言うとその女性は視線をオレに移した。

 

「置いてけぼりにしちゃってごめんなさいね。私は加古(かこ) (のぞみ)。ROUND7では解説してたのよ?よろしくね、清澄くん。」

 

そう言って加古はオレに手を差し出す。

 

「どうも。綾瀬川清澄です。」

 

そう言って差し出された加古の手を取る。

 

…なぜ名前呼び?

 

「綾瀬川はイニシャルにKはつきませんよ。」

 

何故か小南が食い気味に返した。

 

「そうなのよね…下の名前ならKが着くのに…。私の隊は全員イニシャルKで揃えてるの。だから清澄くんの苗字にKが付いてたら誘ってたのに…。…あ、そうだわ。あなた桐絵ちゃんと仲良いのよね?」

 

「…まあ。」

 

 

「だったら…

 

 

…桐絵ちゃんのところに婿入りすれば?」

 

 

「は、はあぁぁぁ!?!?」

 

加古のその言葉に小南は声を上げる。

 

「だってそうすればイニシャルKになるじゃない?」

 

「そ、そんな…!そんなデタラメな事…!」

 

「じゃあ私?」

 

「ダメに決まってるじゃない!!」

 

「あら?どうして桐絵ちゃんが決めるのよ。」

 

「そ、それは…!」

 

 

「申し訳ないですけど、オレは柿崎隊なんで。仮に小南に婿入りしたとしても…お断りします。」

 

 

「む、婿入りしてもってあんた…!!」

 

小南は何故か顔を真っ赤にしてオレの胸ぐらを掴む。

 

「仮にって言ってるだろ…。」

 

「あら残念。いいアイデアだと思ったのに。」

 

 

──

 

「…って事があったんだ。あの後何故か小南がキレてな。宥めるのに時間かかった。」

 

「「「「…」」」」

 

「…どうした?」

 

黙ってしまった4人にオレは尋ねる。

 

 

 

「…清澄先輩ってこういう所ありますよね…。」

 

「もしかして小南先輩が文香を弟子にとったのってそういう理由?」

 

「仲がいいのは知ってたが…。」

 

「確かに私が玉狛行くとよく清澄先輩の話してるし、大体カレー作って待ってます。清澄先輩が来ないとキレるし。」

 

「いや、でも清澄先輩って空気読めないし天然だし…ほら、表情筋死んでるし。」

 

4人は細々と話し始める。

 

 

…おいコラ、最後(真登華)

 

 

普通に悪口だからな?

 

 

 

「でも…加古さんにスカウトされるのは流石だな。…焼けたぞ。」

 

そう言って柿崎はオレの皿に肉を載せる。

 

「どうも。…イニシャルKで揃えてるのは理由があるんですか?」

 

「さあ?こだわりだろ。」

 

「でもそう考えるとボーダーってイニシャルKのすごい人って多いよね。小南先輩とか風間さんとか。国近先輩だってそうじゃない?…もちろんザキさんもね!」

 

「ありがとよ…。…言われてみりゃそうだな。玉狛なんか烏丸もレイジさんもそうだしな。」

 

「カゲさんもそうだな。」

 

「…あー、まぁカゲは加古さんのこと苦手だけどな。」

 

「…へぇ。…まぁ確かに苦手そうですね。」

 

 

「あっ!清澄先輩、タン焼けました!」

 

そう言って虎太郎はトングでタンを取る。

 

「いいよ、虎太郎が食え。食わないと大きくなれないぞ?」

 

そう言ってオレは虎太郎の皿に追加で肉を載せてやる。

 

「でも加古さんだけじゃなくて今回のランク戦でお前はかなりの注目を浴びたぞ?明日からはもっとランク戦を挑まれるんじゃないか?」

 

「…三バカで間に合ってますよ…。…虎太郎、米のおかわり行くか?」

 

「いただきます!」

 

 

 

「オレはいつも通り平穏に過ごします。」

 

 

 

 

 

 

──

 

「そっか。B級残留か。俺としては嬉しいよ。次のシーズンでリベンジマッチ出来るからね。」

 

柿崎隊での食事の翌日。

本部の食堂で辻と昼食を取りながら話していた。

 

「そうだな。お手柔らかに頼むよ。」

 

「でも…ランク戦も終わってようやくゆっくり出来るね。」

 

「…だといいんだけどな…。ちっ…。」

 

そう言って綾瀬川は辻の後ろに立つ人物を見て舌打ちをする。

 

「?」

 

 

 

「よう、探したぜ。綾瀬川。ランク戦ブースに来いや。」

 

「…どう見ても今飯食ってるでしょ。」

 

辻の後ろに立つ男、太刀川慶に綾瀬川はため息交じりに返した。

 

「そうか。ならとっとと食えよ。」

 

「お断りします。…て言うかこの前1回やったでしょ。」

 

「そうだな。10-0で俺が勝った。…あからさまに手抜いてただろーがてめえ。半年前のリベンジはまだ果たせてねえ。つべこべ言わずにやるぞ。」

 

「だから半年前俺は休隊中でボーダーにはいませんよ。しつこいと風間さん呼びますよ。」

 

 

 

「俺がどうかしたか?」

 

 

その言葉に振り返るとそこには風間が立っていた。

 

「見てたんならどうにかしてください…。」

 

 

 

 

「…本気でやってやったらどうだ?」

 

「は?」

 

風間のその言葉に目を点にする。

 

「太刀川がいつまでもお前に絡むのはお前と本気で戦いたいからだろう。ならば本気で相手をしてやればいい。」

 

「いや、でも太刀川さんレポートとかいいんですか?」

 

「生憎と今こいつに溜まってるレポートは無い。俺も止める理由が無いな。」

 

太刀川はドヤ顔で綾瀬川を見る。

 

「いや、でも…」

 

「逆にお前はなんで太刀川と戦いたがらないんだ?」

 

「いや、人間違いでオレに挑まれても迷惑ですよ。」

 

 

「それはねえ。」

 

綾瀬川のその言葉を太刀川は一刀両断する。

 

「あの太刀筋は忘れねえ。お前は半年前に俺を負かしてる。…10-0でな。」

 

「「!」」

 

その言葉に風間と辻が目を見開いた。

 

「…だから人違いだって言ってるじゃないですか…。」

 

 

「ほう…それはますます興味深いな。…人違いかどうか確かめる必要がある。」

 

「…そうですね。」

 

風間の言葉に辻も続く。

 

「おい、辻…お前はこっち側にいてくれよ。」

 

「いや、俺も気になるし。」

 

「裏切り者。」

 

 

 

「おし!じゃあ…ランク戦ブースに行くか。

 

 

 

 

…なあ?綾瀬川。」

 

個人総合1位の男はそう言って怪しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

…どうやら逃げ場はないらしい。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

宇井真登華→頼れる先輩。チームメイト。天然、KY、表情筋死んでる。
加古望→興味。Kからじゃないの残念。
小南桐絵→私に婿入りってアンタ…!…冗談…よね?
辻新之助→友人。次のシーズンでもよろしく。
太刀川慶→ランク戦〜♪
風間蒼也→興味。本気を見てみたい。


宇井真登華←可愛い後輩。チームメイト。おいコラ。
加古望←変人。冗談が面白い。
小南桐絵←友人。なんで顔赤いの?
辻新之助←友人。今度那須隊の作戦室に放り込んでやるからな。
太刀川慶←苦手。まじで勘弁してください。
風間蒼也←ブルータスお前もか。…チビ。

後数話で原作突入する予定です。


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無機質なボーダー隊員の日常⑧

投稿遅れてすいません。



「太刀川さん!」

 

ランク戦ブース。

多くのボーダー隊員が互いにポイントをかけてしのぎを削る、戦闘狂御用達のフロア。

そこで1人の隊員が太刀川に話しかけた。

 

「よう、村上。本部に来てたのか。」

 

「はい。この後カゲと約束があるので。…綾瀬川と一緒なのは珍しいですね。」

 

「ふ、この後こいつと本気のランク戦をするんだよ。」

 

そう言って太刀川はオレの肩に肘を置く。

 

「!、へぇ。…風間さんもですか?」

 

村上は後ろにいた風間に視線を移した。

 

「ああ。太刀川の次にな。」

 

 

…あれ?いつの間にか風間さんともやる事になってないか?

 

 

「…じゃあその次は俺が綾瀬川とやってもいいですか?」

 

「いいぜ。そんで、少し休憩して綾瀬川とやりあって、強くなったお前とランク戦をする。一石なんちゃらってヤツだな。」

 

「一石二鳥だ。馬鹿め。」

 

「オレ抜きで話進めないでくださいよ。」

 

…まず村上先輩は太刀川さんじゃなくてオレに確認を取れ。

 

「二宮さんに勝ったんだ。ここまで来て今までが本気だったとは言わせないぞ?綾瀬川。」

 

村上は好戦的な笑みを浮かべる。

 

「…ボーダートップ攻撃手達が寄って集って、ただのB級万能手をいじめるとか、いい趣味してるっすね。」

 

「ふ、わざと手を抜いていたお前に言われたくないな。」

 

「…なんか頭痛くなってきたな。」

 

そう言ってオレはわざとらしく頭を抑える。

 

「おっと、逃がさねーよ。」

 

そう言って太刀川はオレの肩をがっちり掴んだ。

 

「…はあ。」

 

 

 

 

──

 

「あれ?何の人集り?」

 

二宮隊、犬飼澄晴はランク戦ブースの人集りに疑問符を浮かべる。

 

「あ、おーい、辻ちゃん、イコさん。」

 

そう言って近くでモニターを見ていた辻と生駒に話しかけた。

 

「犬飼先輩。…ドリームマッチですよ。」

 

そう言ってモニターに目をやるとそこには弧月を構えた太刀川と、綾瀬川が立っていた。

 

「…へぇ。」

 

そう言って犬飼は興味深そうにモニターを注視した。

 

「ちなみに次は風間さん、そんで鋼、辻ちゃんがやってその次が俺やねん。」

 

「へぇー、風間さんもやるんだ。」

 

──

 

「おい、とっとと弧月構えろよ。やる気あんのか?」

 

弧月を構えず、無防備に立ち尽くす綾瀬川に太刀川はイラついた様子で尋ねた。

 

「…やる気はないですね。心底気乗りしないので。」

 

太刀川の言葉に綾瀬川は表情も声色も変えることなくそう返した。

 

「本気でやんなかったらもう1回だからな…。」

 

太刀川はそう釘を刺す。

 

 

…個人ランク戦10本勝負…スタート。

 

機械音がそう告げると、太刀川は勢いよくこちらに駆けだす。

 

 

そのまま、振り抜かれた弧月を綾瀬川は体を巧みに動かして避ける。

 

「なんで弧月を抜かねえんだ?」

 

「弧月じゃ勝てなそうなんで。…まあお気になさらず。」

 

「ちっ、その余裕を無くしてやる。」

 

 

NO.1攻撃手太刀川慶の本領、二刀流の弧月による絶え間なく振り下ろされる弧月。

距離を取ったものなら、そこから放たれる鋭い旋空に切り裂かれる。

 

 

…さて、どう乗り切るか。

おそらく多くのボーダー隊員がこの試合を見ているのだろう。

でも目の前の男は手を抜いたと分かったらまた絡みに来る。

 

どうやり過ごす…

 

 

 

「っ…!!」

 

その途端、鋭い弧月の突きが、綾瀬川のトリオン体の頬を掠めた。

 

「分かるぜ、綾瀬川。…てめぇ今どうやって乗り切るか考えてんだろ?」

 

「まさか。避けるのしんどいなとは思ってますけど。」

 

「集中しろ。無駄な事考えんな…。俺との一騎打ちに集中しやがれ…!」

 

太刀川の連撃はさらに鋭くなる。

 

「ちっ…。」

 

綾瀬川はようやく弧月を抜くと、太刀川の弧月を捌き始める。

そして後ろに飛び退いた。

 

「旋空弧月。」

 

太刀川から放たれた2本の旋空。

鋭い連撃に綾瀬川のトリオン体が切り裂かれた。

 

──

 

「ヒュウ、さっすがー。清澄くんでも太刀川さんはしんどいのかな?」

 

犬飼がそう呟く。

 

「綾瀬川くんが本気を出してれば…ですけどね。」

 

──

 

「おし、まず1本。いくらお前の回避能力が高くても俺は当たるまで切るだけだ。」

 

「…脳筋は米屋で間に合ってますんで。」

 

「…まだまだ行くぜ…構えろよ。」

 

「はぁ…。」

 

綾瀬川は何度目かも分からないため息を着いた。

 

 

 

 

…個人ランク戦終了10-0勝者、太刀川。

 

 

 

「おいてめえ、本気出せって言っだろ。」

 

「…いや、避けるので精一杯ですって。」

 

太刀川の言葉に綾瀬川はそう返した。

 

「…確かに回避能力は目を張るものがあった。」

 

風間は綾瀬川を賞賛する。

 

「だが、それだけで二宮に勝てるとは到底思えないな。」

 

「辛勝も辛勝ですよ。フルアタックのブラフが上手くいっただけです。次は一瞬で穴だらけですね。」

 

「そんな事はどーでもいい。もう1回だ。」

 

「ふざけるな。次は俺だ。」

 

「いや、風間さんとはやる約束してないでしょ。」

 

風間にそう返した。

 

「俺とやるのは嫌なのか?」

 

「嫌ですね。ボコボコにされる未来しか見えません。」

 

 

「ふざけんな、本気でやらなかったらもう1回っつったろ!」

 

「それはますます相手をしてもらう必要があるな。」

 

 

太刀川、風間はさらにオレに詰め寄った。

 

 

 

 

「おーい、綾瀬川〜。」

 

 

困っているとそこに助け舟が。

出水がこちらに手を振りながら走ってきた。

 

 

 

「加古さんがお前を指名だ。新作が出来た。ってよ…

 

 

 

 

 

…そういえば太刀川さんと風間さんも呼べって言ってたような…。」

 

出水は太刀川と風間に視線を向ける。

 

 

 

 

「…やべぇ、俺忍田さんに用事あるんだったわ。またな、綾瀬川、風間さん。」

 

太刀川はそう言ってそそくさと、どこかに歩いていく。

 

「…俺もだ。菊地原の勉強を見てやる約束をしていた。じゃあな、綾瀬川。」

 

 

 

 

「…助かった。」

 

「たく…もっと上手くやれよな。抜け目無いように見えて抜けてるよな、お前。」

 

「ほっとけ。これでも人付き合いは上手くなった方だ。」

 

そう言ってオレは自販機の前に立ち止まる。

 

「…どれにする?」

 

「別にいらねーよ。それよりもお前は早く加古隊の作戦室に行った方がいい。」

 

「加古隊?…そう言えば、さっきも加古さんがとか言ってたな。」

 

綾瀬川は思い出したように出水に視線を向けた。

 

 

「いや、さっきの話マジだから。…てかお前を助けるためにわざわざ加古さんの所に行ってきた。…新作が出来上がってるぞ。」

 

「?…新作…?」

 

 

 

 

──

 

「ふんふふーん…。」

 

心地よい鼻歌が作戦室に響き渡る。

 

「そんなに炒飯が好きなのね。出水くんが清澄くんの誕生日がもうすぐって言うから私にわざわざお願いしに来たのよ?」

 

「…はあ…。」

 

「友達のために私に頭を下げるなんて…素敵な関係なのね。…そこまでされたら私だって負けてられないわ!」

 

その途端、中華鍋から異質な音が響き渡る。

 

そして、黒い液体が加古の頬に飛び散った。

 

「あら?ごめんなさいね。」

 

「…熱くないんすか?」

 

「トリオン体だもの。」

 

「…なるほど。」

 

トリオン体になって作る炒飯ってなんだよ。

そう思いながら、オレと一緒に出来上がりを待っている少女に視線を向けた。

 

「…黒江は駿と幼なじみなんだよな?」

 

「は、はいっ。」

 

「…」

 

ジーッとこちらを見つめてくる黒江にオレはどうしていいか戸惑う。

 

「ごめんなさいね、双葉ったらこの前のROUND8を見てから、清澄くんに憧れちゃったみたいで…緊張してるのよ。」

 

「そ、そんなんじゃないですっ!」

 

黒江は立ち上がり抗議する。

 

「あら?バイパーをトリガーにセットしようとしてたのは誰だったかしら?」

 

「そ、それは…っ!」

 

「ふふ、冗談よ。からかいすぎたわ。…できたわよ。」

 

コトリと目の前に皿が置かれる。

 

「さ、おかわりも沢山あるわよ。」

 

「えっと…これは…?」

 

「練乳いちご&カレー納豆イカスミ炒飯よ。」

 

「…」

 

 

 

…前言撤回。

出水、お前だけは絶対に許さん。

 

 

 

──

 

玉狛支部

 

「はーい。」

 

ドアのチャイムが鳴り、小南はエプロン姿のままドアを開けた。

 

 

 

ドサッ…。

 

「ふえぇ?!」

 

開けると同時に見知った人物が小南に覆い被さるように倒れ込んできた。

 

「ちょ、綾瀬川?!いきなり何して…

 

 

 

…綾瀬川?」

 

ただならぬ様子の綾瀬川に小南は綾瀬川の顔を覗き込んだ。

 

「…加古さん…炒飯…いちご練乳…カレー…。」

 

「あー…。」

 

ボソボソと呟く綾瀬川に小南は察したように目を細める。

 

 

 

なお、小南のチキンカレーを食べて無事に回復した模様。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

太刀川慶→本気でやりやがれ。…炒飯のことは少し申し訳ないと思ってる。
風間蒼也→お前…俺の事舐めてるな?炒飯の事は別に悪いと思ってない。
村上鋼→ライバル視。本気でやり合おう。
出水公平→友人。…悪ぃ。
加古望→興味。Kからだったら誘ってた。
黒江双葉→尊敬。憧れ。
小南桐絵→し、死んでる…?!


太刀川慶←警戒。
風間蒼也←チビ。裏切り者。
村上鋼←警戒。
出水公平←友人…だと思っていたんだがな。
加古望←ボーダーNO.1。俺が勝てない相手がいるとは思わなかった。
黒江双葉←ツインテ11秒。駿の幼なじみ。
小南桐絵←天使(カレー)。そういやそのアホ毛どうなってんの?



ちなみに綾瀬川は半年前の太刀川との決戦の事は…




…覚えてます。普通にとぼけてます。

あと2話くらい?で原作行きます。

感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑨

投稿遅れてすいません。
そろそろ原作。


「韋駄天…!!」

 

目の前の少女が光を帯びたかと思うと高速でこちらに迫る。

そのまま為す術なく、オレのトリオン体が切り裂かれた。

 

 

…トリオン供給機関破損、緊急脱出。2-0黒江リード。

 

オプショントリガー『韋駄天』か。

駿にチラッと聞いていたが本当に目で追えないな。

それを13歳と言う若さで操る少女、黒江双葉。

 

「凄いな。本当に速い。」

 

「!、と、当然です!まだまだ行きますから。」

 

そう言うと黒江は弧月を構え直す。

そして体が光を帯びる。

 

 

 

「メテオラ。」

 

その瞬間にオレは、メテオラのトリオンキューブを周りにバラ撒いた。

 

「っ?!うそ…!」

 

そのまま黒江はメテオラに突っ込んでしまう。

 

 

…やっぱりバイパーと似た感じか。

 

「ブランチブレードなんかも効果ありそうだな。」

 

…トリオン供給機関破損、緊急脱出。2-1黒江リード。

 

 

「っ…なんで…。」

 

戻ってきた黒江は悔しさ半分、混乱半分でオレを見る。

 

「自慢じゃないがこれでもバイパーの扱いはボーダーの中でも自信があるんでね。」

 

「あ…。」

 

「目も慣れてきた。…とことん付き合うぞ。」

 

そう言ってオレは弧月を構える。

 

 

「お願いしますっ!」

 

 

 

 

…個人ランク戦終了。8-2勝者、綾瀬川。

 

 

 

 

「っ…ありがとうございました…。」

 

悔しそうに俯きながら黒江はオレに頭を下げた。

 

「どういたしまして。本当に凄いな。その年であんな難しそうなトリガーを使うなんて。」

 

「…ありがとうございます…!」

 

俯いていた黒江はすぐに顔をあげるとお礼を言った。

 

 

 

 

…気まずい。

さすがのオレでも分かる。

 

…なんでこんなに目キラキラさせてオレを見てるんだ?

日浦で間に合ってるんだけどな…。

 

そんな事を考えていると、こちらに歩いてくる影が。

 

「ほら、あやせセンパイは強いでしょ?」

 

自慢げに緑川駿は黒江に話した。

 

「…なんで駿がドヤ顔なのよ。」

 

「あれ?確かに。でもあやせセンパイが勝ってるの見るとなんか嬉しいんだよね〜。」

 

「何それ…。」

 

駿の言葉に黒江は呆れたように返した。

 

嬉しい事言ってくれるな。

 

オレは駿の頭をクシャッと撫でると自販機に歩き出す。

 

「少し休憩にしないか?奢るぞ。」

 

「!、やっほーい!」

 

「ありがとうございます…!」

 

 

 

──

 

「あの…綾瀬川先輩から見て、私になにかアドバイスとかありますか?」

 

黒江がオレに尋ねる。

 

「アドバイス?…オレはそんなためになる様な事は言ってやれないぞ?」

 

「あ、綾瀬川先輩の意見を聞きたいんです…!」

 

「…そうだな…」

 

オレは少し考える。

 

「まぁ一つダメ出しするとしたら…黒江って意外に頭に血が上るのが早いんだな。」

 

「…なっ…!」

 

「別に怒りっぽいとか、性格の話をしてる訳じゃない。まぁよく言えば好戦的って言うか…負けず嫌い?だな。…でも、そのせいで視野が狭まってないか?」

 

「…」

 

オレの言葉に黒江は黙ってしまう。

 

「さっきの模擬戦だって3本目のメテオラで落とした後のセットは、動きが単調で分かりやすかった。」

 

「…確かに。モニターで見てたオレでも分かりやすかったよ。」

 

オレの言葉に、駿も賛同する。

 

「負けず嫌いは別に短所じゃないが…勝ちたいんだったら想定外のことが起きた時こそ冷静になればいいんじゃないか?…ま、中1の女の子なら年相応でいいと思うけどな。」

 

「…」

 

そう言ってオレは立ち上がり、ペットボトルをゴミ箱に捨てる。

 

「駿、どうせお前もやるんだろ?」

 

「もっちろん!今日は絶対勝ってやるんだから!」

 

「言ってろ。」

 

そう言って駿の頭を乱暴に掻き回す。

 

 

「綾瀬川先輩!」

 

「ん?どうかしたか?」

 

後ろから声をかけた黒江に振り返る。

 

「その…また模擬戦して…アドバイス貰ってもいいですか?」

 

「…模擬戦は構わないが…アドバイスはしてやれるか分からないぞ?」

 

「気付いたときで大丈夫ですから!」

 

「分かった。いつでも誘ってくれ、暇だったら相手になる。」

 

そう言った途端、黒江の目がキラキラと輝く。

 

「!…じゃ、じゃあ私は防衛任務があるので失礼します。」

 

そう言って黒江はそそくさと、ランク戦ブースを後にした。

 

「あいつ…あやせセンパイの弟子になりたいってハッキリ言えばいいのに。」

 

去って行く後ろ姿を見て、駿が呟いた。

 

「…そうなのか?」

 

「あやせセンパイ鈍感すぎ…。」

 

「…師匠って器じゃないだろ…オレは。」

 

「そうかなぁ?俺はあやせセンパイが師匠だったら嬉しいよ。」

 

駿はそう言って笑う。

 

「…ま、でも俺はあやせセンパイの弟子になって色々教わるよりは…

 

 

 

…自分の手で超えたいけどね。」

 

 

「…お前らしいな。」

 

そう言ってオレは駿の頭を軽く触る。

 

「…時間無くなるぞ。」

 

「あ!うん!」

 

そうして2人は今日もランク戦に勤しむ。

 

 

 

──

 

「綾瀬川。…少し付き合え。話がある。」

 

 

 

いつものようにスーツでは無く私服を着たその男は、基地の出口の前で待っていた。

 

「…ここで…ですか?」

 

「夕飯はまだか…?」

 

NO.1射手二宮匡貴のその言葉にオレは、一拍置いた後に頷いた。

 

 

 

 

 

 

「ボサっとしてないで食え。」

 

そう言って二宮は俺の皿に肉を載せる。

肉の焼けた匂いに食欲がそそられる。

訪れたのは焼肉店。

個室タイプの席を予約していたようだ。

 

「いや、外食って焼肉っすか?」

 

「心配しなくても俺の奢りだ。…食え。」

 

「…じゃあ遠慮無く。」

 

そう言ってオレは肉を頬張った。

 

 

「…ROUND8、何故お前は俺に撃ち合いを挑んだ?」

 

二宮は箸を置いてオレに尋ねた。

 

「…」

 

「お前の旋空とバイパーの合わせ技…あれは1対1の状況なら間違いなく大抵の相手は落とせるだろう。」

 

「…どうも。」

 

「だがお前はそうはせずに俺に撃ち合いを挑んできた。…何故だ?」

 

二宮はオレを睨みながら尋ねる。

 

「…理由なんて無いですよ。単純な興味です。あなたと撃ち合いをしてみたかった、ただそれだけだ。」

 

「…そうか。」

 

一拍置いて二宮はそう答える。

 

「バイパーは誰に習った?出水か?」

 

「独学ですよ。…空間計算能力はある方なんで。…那須や出水には敵わないですけどね。」

 

「あの時のバイパーは出水よりも切れがあった。バイパーは扱いの難しいトリガーだ。リアルタイムでの弾道操作など一朝一夕で身に付くものでは無い。」

 

「…何が言いたいんですか?」

 

「単刀直入に聞く。

 

 

 

 

 

…お前は休隊中何をしていた?」

 

二宮の視線がさらに鋭くなる。

 

「…家の用事で海外に。…なんでそんな事を?」

 

「お前がボーダーに入り休隊するまでの期間は3週間。そして、復帰したのは今年の4月。つまりお前はボーダーに1年も在籍していない。ROUND2でバイパーを見せたあの時、お前はまだボーダーに半年も在籍していない訳だ。」

 

「…」

 

「どこで覚えた?」

 

「…」

 

「きびきび答えろ。」

 

何も話さない俺に二宮はきつく尋ねた。

 

「…聞きたい事はそれですか?」

 

「…」

 

「それを聞いてあなたはどうするんですか?」

 

そう言うと二宮は1枚の写真を取り出し、俺に見せる。

 

「…この女に見覚えはないか?」

 

頬に少しのそばかす。

どこか儚げな雰囲気で笑う女性だった。

 

「こいつは鳩原(はとはら) 未来(みらい)。お前と入れ替わるようにボーダーから消えた女だ。」

 

「知らないですね。…この人がどうかしたんですか?」

 

「こいつは民間人にトリガーを横流し、そのまま近界に消えた。記憶封印措置も適用になる最高レベルの違反行為だ。」

 

「オレの休隊理由とこの人になんの関係が?」

 

「…上層部はこの隊務規定違反を鳩原が主犯だと結論づけているが…俺に言わせればこの馬鹿がそんな大層な事をできるとは思えない。馬鹿を唆した主犯格がいる。」

 

「…まぁその鳩原さんがどんな人なのかは知らないですけど…話を聞く限りオレとは全く関係ないと思うんですが…。」

 

「この日、この女以外に消えたボーダー隊員はいない…。だが…休隊中のお前は別だ。ハッキリ言っておくが…俺はお前を怪しんでいる。」

 

「…なるほど。でもオレは近界に消えた訳でもなくてここにいますよ。それが何よりの潔白の証拠じゃないですか?」

 

オレは二宮にそう返す。

 

「…ゲートの発生位置を予測して向こう側に行くなど…少しの計算、知識でできる芸当じゃない。…近界に行っていないにしても、ボーダー内部に協力者がいる可能性もある。」

 

「それがオレだと?」

 

「そうだ。」

 

二宮ははっきりと肯定する。

 

「…違います…としか言えないんですが。証拠になるようなものなんて無いですよ。」

 

「だからお前の休隊理由を聞くために呼んだ。…休隊していたにも関わらずトリガーの扱いが長けている理由もな。」

 

「…前者は家の用事、後者は…オレの努力を認めて貰うしかないっすね。」

 

「家の用事と言うのは具体的になんだ?」

 

「仕事の手伝いですね。」

 

「3年もか?」

 

「研究職なんで。…証拠の資料持ち出すとか無理ですからね?」

 

「だったら両親に会わせろ。証拠を提示出来ないなら証人を出せ。」

 

その言葉にオレは目を細める。

 

 

「母親は死んだ。…父親は…

 

 

 

…オレに父親はいない。」

 

 

 

「…そうか。…まぁお前があの馬鹿に協力する理由も無い…か。気分を害させたなら謝る。…悪かったな。」

 

「いえ別に。焼肉奢ってもらってるんで。」

 

そう言ってオレは肉をひっくり返す。

 

「話は変わるが…B級に残るらしいな。」

 

「ええ、まぁ。B級1位の肩書きはしばらく預かりますよ。」

 

「ふん、直ぐに取り返す。慢心はしないことだな。」

 

「肝に銘じておきますよ。」

 

「…ほら、もっと食え。出水はもっと遠慮しなかったぞ。」

 

 

 

 

「どうも。」




各キャラからの印象&各キャラへの印象

黒江双葉→尊敬。師事。
緑川駿→勝ってるとなんか嬉しい。兄貴分。
二宮匡貴→怪しむ。

黒江双葉←目をキラキラさせるな。
緑川駿←可愛い弟分。
二宮匡貴←焼肉ゴチです。

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未来へ

投稿遅くなりすいません。
ちょっと忙しくって…。



「遅くなって悪かったな。」

 

目の前に座る三輪が箸を置いて話す。

 

「…何がだ?」

 

「祝勝会だ。防衛任務やら何やらで遅くなった。」

 

オレの質問に三輪はそう返した。

 

「謝ることじゃないだろ。こうやって祝ってもらえるだけでオレは嬉しい。謝られるとオレが申し訳なくなる。」

 

「そうだぜ秀次。それにお前の奢りなんだろ?」

 

米屋が三輪に肩を組みながら絡む。

 

「俺が金を出すのは綾瀬川と俺の分だけだ。お前たちは自分で払えよ。」

 

「「「…え…。」」」

 

米屋と出水、そして仁礼の箸が止まる。

 

「そらそーやろ。三輪くんはきよぽんと2人で行くつもりだったんを俺らが面白そーやからって邪魔したんやし。」

 

そう答えるのは生駒隊の隠岐だ。

 

「そりゃねーぜ、秀次!俺今月ピンチなんだって!」

 

「知るか。」

 

「てか米屋くんはA級やろ?毎日ピンチやない?給料どこに消えとるん…?」

 

隠岐が呆れたように言った。

 

「ほら、焼けたぞ綾瀬川。」

 

「ありがとう。…でも2日連続の焼肉はちょっと太りそうだな。」

 

「…2日連続?昨日も焼肉だったのか?」

 

出水が尋ねた。

 

「ああ。二宮さんに誘われてな。」

 

「いぃ?!お前二宮さんと焼肉行ったのか?!」

 

米屋が米粒を飛ばしながら尋ねる。

ちなみに仁礼は話を聞いていないようで肉を頬張っている。

 

…汚ねえな。

 

「落ち着きや…。辻ちゃんとか犬飼先輩も一緒に…やろ?」

 

「いや、2人でだが?」

 

「いぃ?!2人きり?!」

 

今度は出水が米粒を飛ばしながら尋ねる。

 

…いい加減怒るぞ。

 

「詳しく聞かせてや〜。二宮さんときよぽんの2人で焼肉とか、おもろそうな予感しかせーへんやん。関西の血がそう言っとるわ。」

 

「別にただ雑談しただけなんだけどな…。」

 

「そうか、別の場所にすればよかったな…。」

 

三輪が申し訳なさそうにそう言った。

 

「別に気にしてない。太るかもとは言ったが、焼肉は好きだし、こうしてみんなと食べるなら焼肉だろ。」

 

そう言ってオレは肉を頬張る。

 

「さっきも言ったが祝ってくれるだけで嬉しい。」

 

「そうだぞ三輪〜。だから綾瀬川に免じてアタシの分も奢ってくれよ〜。」

 

そう言って仁礼は三輪に肩を組む。

 

「却下だ。」

 

「え〜…三輪のケチィ…。」

 

「そういえばB級に残るらしいな。」

 

そんな仁礼を無視して、三輪は続ける。

 

「ああ。柿崎さんの意向でな。」

 

「おっ、じゃあ次のシーズンも綾瀬川とやれるじゃねーか。」

 

仁礼は顔を上げる。

 

「せやな。イコさんも喜ぶと思うわ。」

 

仁礼の言葉に隠岐も続いた。

 

「俺としては残念だぜ。せっかく綾瀬川とランク戦の舞台でやり合えると思ったのによ。な?秀次。」

 

「…まぁ…お前がA級に上がって来たとしても容赦はしない。」

 

「わかってるよ。

 

 

 

…まぁその時は…

 

 

 

…お手柔らかに頼む。」

 

 

──

 

 

「スカウト旅?」

 

「しーっ!これホントはまだ言っちゃいけねえんだよ!」

 

オレの問に佐伯竜司は人差し指を立てる。

まずその声がデカいけどな。

 

17歳組との祝勝会の翌日。

佐伯との個人戦を終えた休憩中に、雑談をしていた。

 

「…なら話すなよ…。いつからなんだ?」

 

「詳しくは追って伝えるらしい。冬頃になると思うぜ。」

 

「なるほど。草壁隊で行くのか?」

 

「草壁隊とあとは片桐隊だな。」

 

「片桐隊か…。あまり関わりがないから分からないな。」

 

唯一観測手(スポッター)がいた隊だったのは覚えてる。

 

「片桐と一条、結束は第二期東隊だからな。戦術に関しちゃ相当だぜ。」

 

「…そうなのか…。」

 

東さんの教え子…か。

確か二宮さんとか、月見さん、三輪もだよな?

 

「あの人ほんとにすごいな。」

 

「何を今更。」

 

「…そうか。じゃあしばらくは寂しくなるな。駿や里見もいなくなるのか。」

 

「一馬はそうだが…安心しろ。お前の弟はいなくなんねえよ。駿はお留守番。」

 

話を戻して呟くと、佐伯はそう返した。

 

「弟じゃないけどな…。…あー、でもまあ、あいつまだ中2だしな。落ち着きがないし心配だ。」

 

「うんうん。」

 

オレと佐伯はお互いに頷き合う。

 

「て言う訳だからよ、たまには一馬ともやってやれよ。」

 

「…そうだな。今度誘ってみるよ。」

 

「さて、防衛任務だから俺はそろそろ行くぜ。綾瀬川はどうするんだ?」

 

「この後約束があるから作戦室に戻る。ちょっとしたら行くよ。」

 

「そっか。じゃな。…さっきの話は他言無用で頼むな〜!」

 

そう叫びながら佐伯は手を振りランク戦ブースを後にする。

 

…だからその声がデカいんだよ。

 

「分かってるって。頑張れよ。」

 

「おう!」

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「…やっぱり虎太郎にはアイビスより、イーグレットが向いてると思うぞ?」

 

「…でもイーグレットは清澄先輩が使えますし…それよりも破壊力のあるアイビスを持てば攻撃のバリエーションが増やせると思ったんですけど…。」

 

何時だったか約束した、虎太郎に狙撃手トリガーを教えると言う約束。

前のシーズンでは、色々立て込んでおり、教えることは叶わなかったが、ランク戦が終わってしまえば時間は沢山ある。

そのため、オレは虎太郎に頼まれて、狙撃を教えていた。

 

…まさか本気だったとは。

 

「それはそうだが…そのためだけに使い辛いアイビス持っても、元も子もないだろ。アイビスは重いしグラスホッパーとの相性も悪いぞ?」

 

「うっ…。そうですよね…。」

 

虎太郎は黙り込んでしまう。

 

「…ならライトニングとかはどうだ?覚えたてじゃ、照準を合わせて、撃つまでに時間がかかるだろ?ライトニングで少しでも速い弾を撃てれば、命中率も上がると思う。…それに恥ずかしい話、オレはアイビスをあまり使った事がなくてな。」

 

「なるほど…。」

 

 

 

「お、自主練とは感心だな。」

 

そこに柿崎、文香がやって来る。

 

「はい。清澄先輩に狙撃を教わってました。」

 

「…虎太郎、あれ本気だったの?」

 

文香が呆れたように尋ねた。

 

「あはは、私も最初はそう思ったわ〜。」

 

真登華も諦めたように笑う。

 

「当たり前じゃないですか!前のシーズンでは俺あんまり活躍出来なかったんで!これからは狙撃と立体機動でチームの役に立とうと思います!」

 

「ははっ、心強いぜ虎太郎。俺も負けてられねーな。清澄、俺も教えて貰っていいか?」

 

「そ、それなら私も…!」

 

柿崎に、文香も続く。

 

「勘弁してください…教えるのは苦手なんですよ…。」

 

「そーだよ、ザキさん。文香も。全員狙撃手部隊は荒船隊がもうやってるから…。」

 

「…って、もうこんな時間かよ。ほら、お前ら解散だ。明日の防衛任務は朝からだから忘れんなよ。」

 

「うわ〜、私も寝坊するかも〜。」

 

「私が起こしに行くから問題ないわ。」

 

そう話しながら、柿崎、真登華、照屋は出口に歩き出す。

 

「あっ、ちょっと待ってくださいよ〜!」

 

その後に虎太郎も慌てて続く。

俺も虎太郎の後ろに続いた。

 

「明日も訓練お願い出来ますか?」

 

「ああ。防衛任務ちゃんとやって、学校が終わったらな。」

 

「あ、私綾辻先輩と約束あるから遅くなるかも。」

 

「別に問題ない。ひたすら撃つだけだからな。来なくてもいいぞ。」

 

「うわっ、何その言い方。清澄先輩冷たーい。」

 

俺の言葉に真登華は不貞腐れる。

 

「はははっ、清澄はいつもこんなもんだろ。気にすんな。」

 

「フォローになってないっすよ…。」

 

 

 

「じゃ、俺と文香はこっちだな。」

 

「3人ともまた明日。」

 

柿崎と文香が手を振る。

 

 

 

…一陣の風がボーダー基地の前を抜ける。

 

それに舞った枯葉を目で追う。

 

「…」

 

「どうしました?清澄先輩。」

 

「せんぱーい、置いてきますよ〜。」

 

「ああ、悪い…

 

 

 

…今行く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯車は動き出す。

 

 

 

 

 

「…よう、無事か?

 

 

 

 

 

…メガネくん?」

 

 

 

 

 

 

持たざる者。

 

 

逆に多くのトリオンを持つ者。

 

 

未来を見据えるブラックトリガー使い。

 

 

異世界からの来訪者。

 

 

 

 

 

…そして白い部屋で作られた天才。

 

 

 

 

彼らはついに巡り会う。

 

 

 

 

 

 

 

 

『清澄…

 

 

 

 

 

…特務だ。』

 

 

 

 

『…了解。』

 

 

 

 

そして未来は動き出す。

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

三輪秀次→気の置ける友人。同期。
米屋陽介→友人。ランク戦仲間。クラスメイト。
出水公平→友人。ランク戦仲間。クラスメイト。すげえ奴。
仁礼光→友人。…今日の弁当のおかずなんだ?
隠岐孝二→友人。おもろい。
佐伯竜司→友人。ランク戦仲間。良い奴。
巴虎太郎→頼れる先輩。狙撃の師匠。
柿崎国治→頼れるチームメイト。エース。
照屋文香→頼れる先輩。スコーピオンの師匠。
宇井真登華→頼れる先輩。ちょっと抜けてて可愛い。


三輪秀次←気の置ける友人。同期。何かと気にかけてくれる。
米屋陽介←友人。クラスメイト。槍バカ。成績大丈夫か?
出水公平←友人。クラスメイト。弾バカ。天才。
仁礼光←友人。今日のおかずはだし巻き玉子だ。
隠岐孝二←友人。猫の写真見せて。
佐伯竜司←友人。ランク戦仲間。声でかい。
巴虎太郎←可愛い後輩。チームメイト。
柿崎国治←頼り甲斐&支え甲斐のある隊長。
照屋文香←頼れる後輩。チームメイト。スコーピオンの弟子。
宇井真登華←生意気な後輩。チームメイト。…猫飼いたいな。



お待たせしました、次回から原作突入致します。
繁忙期のため不定期になるかもしれませんが、長い目で待ってくれると助かります。

感想、評価等お待ちしております。


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原作開始
異世界からの風


更新致します。
いよいよ原作開始です。
それに伴い、章分けすることにしました。




突然だが、少し考えてみて欲しい。

 

 

──人は平等であるか否か。

 

現代社会は平等、平等と訴えてやまない。

ある偉人が、『天は人の上に人を造らず、人の下にも人を造らず。』と、言った。

だが、これには続きがある。

 

生まれた時は平等だが、その後に差が生まれるのは、学問に励んだか、励まなかったか。

 

…そこに違いが生じる…と。

 

 

 

だから…

 

 

 

 

 

 

「お前らの点が悪いのはお前らの責任だろ。オレと三輪を巻き込むな。」

 

「そんな…!綾瀬川の馬鹿…!鬼畜…!」

 

「人でなし!B級1位万能手!…バイパー使い!!」

 

そう泣き言を言うのは、米屋、仁礼のボーダーが誇る生粋の馬鹿。

 

…てか最後2つは悪口じゃないだろ。

 

「あ、綾瀬川っ。俺忙しいから帰っていい?」

 

そう尋ねるのは、俺の隣で気まずそうにしている辻だった。

 

「…仁礼さんがいるなんて聞いてないよ…!」

 

「言ってないからな。」

 

「なんで?!」

 

「はっきり言ってこいつらの馬鹿さ加減は手に負えない。」

 

三輪が諦めたように言う。

 

「てな訳で進学校組の辻に助けてもらおうと思って。…じゃ、後頼んだ。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「帰さないよ?!」

 

そう言って辻はオレの鞄を掴む。

 

「…冗談だよ。ヒカリは俺が見るから米屋の事見てやってくれよ。」

 

B級ランク戦が終わって数ヶ月。

何事も無く過ごしていたオレだったが、期末試験を目前に、米屋と仁礼に泣き付かれた。

 

…次赤点を取ったら留年らしい。

 

「てか留年すれば良いんじゃないか?一個下にも知り合いは結構いるだろ。」

 

「綾瀬川って結構キツいよね。」

 

「そ、それは先輩としての威厳がだな…。」

 

「赤点取りまくって進級がピンチなんだろ?威厳もクソもないだろ。」

 

「お前ほんとにキツイな!!」

 

そう言って仁礼はオレの首に掴みかかる。

 

「冗談だって。…オレもそんなに頭良くないからあんまり期待するなよ?」

 

「…いつも全教科50点ピッタリだよな、お前。」

 

「…何それ、綾瀬川、狙って取ってる?」

 

「偶然だ。」

 

辻の言葉にそう返した。

 

「はぁ…時間も無いし喋ってないでとっとと終わらせるぞ。」

 

三輪がそう切り出して、勉強に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

「…だあ!疲れた!終わりだ終わり!!」

 

いち段落着いたところで米屋が項垂れる。

 

「本当に酷いな。どうやって2年生になったんだ?」

 

オレの言葉に米屋、仁礼は苦笑いを浮かべる。

 

「まあ、これで赤点は避けられるだろう。後はお前次第だ。」

 

「まじで助かったぜ、秀次、綾瀬川、辻ちゃん。」

 

「じゃあ俺は防衛任務があるから。」

 

そう言って辻は帰りの支度を始める。

 

「巻き込んで悪かったな。今度何か奢る。」

 

「約束だからね…。じゃ、行くよ。」

 

「まじで助かったぜ。」

 

「うん。」

 

「ありがとな!辻ちゃん!」

 

「えっと…あ…ハイ…。」

 

仁礼の言葉に辻はそそ草とその場を後にした。

 

「防衛任務と言えばよー、昨日の防衛任務で不思議な事があったんだよ…。」

 

「不思議な事…?」

 

米屋の言葉にオレは尋ねる。

 

「警戒区域にネイバーの反応があったのに現着した時には派手に倒されてたんだ。」

 

「他の部隊がやったんじゃないか?他にも担当はいただろ?」

 

「それが他の隊は来てなかったみたいでよ。俺らが一番乗りだったんだよ。」

 

「へー、不思議な事もあるもんだな〜。」

 

仁礼が呑気に返した。

 

「しっかし、弾バカがいねーと暇だな〜。」

 

米屋は頭の後ろで腕を組みながら呟く。

 

「遠征に行ってもう暫く経つな。もうそろそろ帰ってくるだろ?」

 

「そうだな。それまでは綾瀬川とやりゃいいし。この後基地行こーぜ。」

 

 

 

 

──

 

ボーダー本部

B級1位柿崎隊作戦室

 

「警戒区域外にネイバー?」

 

「ああ。昨日嵐山隊が対応したらしい。」

 

翌日、柿崎からそんな事を聞かされる。

 

「まぁ死人は出なかったみたいだけどな。」

 

「…なんて言うか最近物騒ですね…。」

 

「そうだな…何も無いといいんだがな…」

 

 

だが、柿崎の願い虚しく、その日の夕方、市街地にイルガーと呼ばれるネイバーが現れ、10人以上の死者を出す、第一次近界民侵攻以来の惨劇を招くことになった。

 

 

 

 

 

 

「で、その原因がこの気持ち悪いトリオン兵って訳ですか…。」

 

そう言いながら俺は「ラッド」と言われる小型のトリオン兵に弧月を突き立てた。

 

「ああ。見つけたのはC級隊員らしい。」

 

「こっちにもいました。デカい虫みたいで気持ち悪いですね…。」

 

虎太郎は穴だらけになったラッドの死骸を持ってくる。

 

イルガーの市街地襲撃の翌日。

ボーダー上層部からの司令で、最近警戒区域外で発生する門の原因はこの「ラッド」と呼ばれる小型トリオン兵だと発表された。

その数は数千体。

ボーダー総出での駆逐作戦が決行された。

 

『その近くまだ反応あるよ。…これはみんな徹夜だね〜。』

 

『助かるぜ真登華。』

 

「おし、少し散らばろう。異変があったらすぐに連絡しろよ。」

 

「「「了解。」」」

 

 

それから昼夜を徹して行われた駆逐作戦は終了した。

 

 

──

 

ギンッ!

 

米屋の槍と俺のスコーピオンがぶつかり合う。

 

「最近三輪は忙しそうだな…。何かあるのか?」

 

「近界民絡みで城戸司令から命令でね。…まだ憶測の段階だからなんとも言えねーな!」

 

そう言いながら米屋は槍を突き出した。

 

「ちっ…幻踊か。」

 

──トリオン供給機関破損。緊急脱出。6-4勝者、綾瀬川。

 

 

 

 

「だー!負けた!」

 

「最後の幻踊はウザかったな。」

 

「お前弧月使ってねーじゃん…。もう一回だ!」

 

「へいへい。」

 

そう言っていると、米屋の背後から、三輪が現れる。

 

「それはまた今度だ。陽介、動きがあった。行くぞ。」

 

そう言って三輪は米屋の襟首を掴む。

 

「ちょ…!この後弧月使った綾瀬川と…!」

 

「今度にしろと言っている。…悪いな、綾瀬川。」

 

三輪はオレに謝る。

 

「仕事なら仕方ないだろ。行けよ、米屋。

 

 

 

…三輪、あんまり無理するなよ。」

 

「…」

 

三輪は1回止まってこちらを一瞥する。

 

「…忠告感謝する。

 

 

 

…だが近界民は駆逐する。」

 

 

そう言って三輪は、米屋を引っ張り歩いて行った。

 

 

──

 

「っと…モールクローの鋭さが上がったな。足を持ってかれた。」

 

足元から伸びたスコーピオンに俺の足からトリオンが漏れ出す。

 

「当然です…!」

 

 

 

 

米屋、三輪と別れた後、俺は作戦室で文香と模擬戦をしていた。

 

「スコーピオンもそろそろマスタークラスになるんじゃないか?」

 

「あと500くらいですね。」

 

「あっという間に抜かれたな…。」

 

「清澄先輩はスコーピオンあんまり使わないですもんね。」

 

文香は缶ジュースを飲みながらそう話した。

 

 

文香が攻撃手に転向してから数ヶ月。

持ち前のセンスから着実にポイントを伸ばし、弧月はもうマスタークラス、スコーピオンの腕もかなりのものになっていた。

 

「虎太郎も万能手になったし、次のシーズンが腕の見せ所ですね!」

 

真登華も自慢げにそう言った。

 

「それで言えば清澄先輩、完璧万能手まで後どのくらいなの?」

 

「いや、まだまだだよ。虎太郎に教えてるだけでオレはあまり狙撃訓練には参加しないからな。」

 

「もったいないなー、清澄先輩なら直ぐなのに…。まあ虎太郎も狙撃は苦労してるみたいだしね。」

 

「大変なんだぞ?狙撃手って。オレも専門じゃないから教えるのも難しいし。それに…そこまで完璧万能手に興味ある訳じゃないからな。」

 

「でも、2人目ですから。やっぱりなれればかなり注目されると思いますよ?」

 

「…興味無いな。」

 

「アハハ、知ってた。」

 

「そう言えば、隊長はどうしたんだ?」

 

「忍田本部長から呼び出し。最近なんかバタバタしてるよね〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節はうつろいゆく。

 

草壁隊、片桐隊のスカウト旅。

新型トリオン兵「ラッド」。

 

 

ここ数日は色々な事が起きていた。

 

 

 

 

…そして3日後。ボーダートップチームが遠征から帰還を果たす。

 

 

 

 

綾瀬川の平穏は異世界からの白い風により、脅かされようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…特務だ、清澄。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…天羽の道を作れ。』

 




各キャラ、ポイント
タグにもある通り原作キャラは強化されてるのでポイントも高くなっております。

照屋文香

弧月 8062
スコーピオン 7463
メテオラ 6708



巴虎太郎

アステロイド(ハンドガン) 7451
弧月 6231
ハウンド(ハンドガン) 6002
ライトニング 3200(初期ポイント3000)


綾瀬川清澄

弧月 9602
アステロイド 7563
ハウンド 6000
バイパー 8230
スコーピオン 6500
イーグレット 7000


原作序盤は綾瀬川はあまり関わらないので、次回から黒トリ争奪戦になります。
原作主人公ズは次回から登場予定。

感想、評価等お待ちしております。


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(ブラック)トリガー争奪戦 〜怪物〜

投稿致します。
原作は大きく飛んで黒トリガー争奪戦になります。
それ以前は綾瀬川くん関わってこないので。
ちなみに黒トリガー争奪戦はオリジナル展開になるのでご了承ください。


「空閑の親父さんが上層部と知り合いって事は…空閑はもう大丈夫って事ですよね?」

 

メガネを掛けたB級隊員、三雲(みくも) (おさむ)は隣を歩く、迅に尋ねた。

 

空閑。

空閑(くが) 遊真(ゆうま)

突如三門市に門を抜けてやってきて、三雲と同じクラスになった近界民。

 

ここ数日のイレギュラー門の原因となった「ラッド」を見つけた張本人だ。

 

先程の三輪隊との戦闘で存在が明るみとなり、ボーダーに近界民として狙われる身となってしまった。

 

それを防ぐべく、動き出したのはS級隊員、迅悠一、そして三雲修。

 

 

「うーん、それはどうかな。」

 

迅は困ったように言う。

 

「メガネくんももう気付いてると思うけど…ボーダーは今3つの派閥に分かれてる。」

 

そう言って迅は三雲の前に指を三本立てた。

 

「1つは近界民に恨みのある人間が多く集まった『近界民は絶対許さない主義』の城戸さん派。」

 

三輪隊などが含まれるのだろう。

 

「2つ目は近界民に恨みはないけど街を守るために戦う『街の平和が第一だよね主義』の忍田さん派。」

 

忍田(しのだ) 真史(まさふみ)

ボーダー本部の本部長だ。

 

「そして、『近界民にも良い奴いるから仲良くしようぜ主義』の我らが玉狛支部。」

 

玉狛と城戸派は仲が悪い。

迅悠一は黒トリガー使い。

そこにもう1人、空閑遊真と言う黒トリガー使いが入れば戦力差はひっくり返ってしまう。

それほどまでに強大なのが黒トリガー。

 

迅の予知は、城戸派の強行を見抜いていた。

 

空閑遊真の持つ、黒トリガーを巡って、ボーダー始まって以来の派閥争いが起きようとしていた。

 

 

 

「…てな訳だから遊真…

 

 

 

 

…お前ボーダーに入らない?」

 

「俺が?」

 

空閑は目を見開いたものの、すぐに冷静になり尋ねた。

 

「ボーダーって言っても本部基地に連れてこうって訳じゃない。うちの支部、玉狛に来ないか?うちの隊員は近界民の世界に行ったことがあるやつが多い。お前がむこう(・・・)出身でも騒いだりしないぞ?…とりあえずお試しで来てみたらどうだ?」

 

「ふむ…。」

 

空閑は少し考えると顔を上げる。

 

「オサムとチカも一緒ならいいよ。」

 

その言葉に迅は三雲、そしてその幼なじみである、雨取(あまとり) 千佳(ちか)に視線を向ける。

 

「…決まりだな。」

 

 

 

 

 

そしてその日、空閑遊真、雨取千佳はボーダーに入隊を決める事になる。

雨取は近界民に攫われた友人、兄を探す為、そして空閑は雨取、三雲の手伝いを。

ここに三雲隊が結成したのだった。

 

 

──

 

『門発生、門発生。付近の隊員は直ちに避難してください。』

 

その3日後。

ボーダートップチーム、太刀川隊、冬島隊、風間隊の3チームが遠征から帰還する。

 

 

 

 

「玉狛の黒トリガー?」

 

帰還した、ボーダートップチームに新たに与えられた任務。

それは玉狛支部にある黒トリガーの回収だった。

ボーダーのパワーバランスを考慮しての策。

 

「三輪隊、説明を。」

 

「はい。」

 

そう言って立ち上がった奈良坂の説明が始まる。

三門市に現れた人型近界民。

 

…そして問題はその近界民が黒トリガー使いである…と言う事だった。

 

 

 

 

 

この作戦の指揮に選ばれたのはA級1位、太刀川隊隊長の太刀川慶。

そして、黒トリガー捕獲作戦は近界民、空閑遊真の持つ黒トリガーの性能を加味して今夜行われる事となった。

 

 

 

──

 

「どうなっている?!迅の妨害のみならず、忍田派の嵐山隊…

 

 

 

 

…B級部隊である、柿崎隊、諏訪隊の介入だと?!」

 

ボーダー開発室長、鬼怒田(きぬた) 本吉(もときち)は声を荒らげた。

 

黒トリガー捕獲作戦決行から数分。

作戦部隊の太刀川隊、No.1狙撃手、当真勇、風間隊、三輪隊の前に立ち塞がったのは玉狛支部所属、S級隊員の迅悠一、そして玉狛と組んだ忍田本部長派の嵐山隊、柿崎隊の柿崎国治、照屋文香、諏訪隊だった。

 

 

 

 

 

 

「アンタはどう思ってるの?この介入について。」

 

モニターを見ながら尋ねるのは、ボーダーのもう1人のS級隊員、天羽(あもう) 月彦(つきひこ)だった。

 

「柿崎隊の介入については知っていた。オレにも声がかかったからな。諏訪隊もある程度は推測出来た。あっちは予知があるんだ、十中八九オレたちの介入を見越しての事だろう。」

 

「ふーん、じゃあどうする?

 

 

 

…清澄さん。」

 

その言葉に、綾瀬川は目を細める。

 

「さあな。今の所オレが城戸さんから受けてる命令は待機…だ。指示を待つだけだな。それはお前もだろ?天羽。」

 

「戦う事になっても良いの?アンタは確かに強いけど…あっちにはアンタの仲間もいる。」

 

「関係ない。オレはただ…

 

 

…オレに課せられた特務を全うするだけだ。」

 

 

その時、城戸からの通信が2人に入る。

 

 

 

『…特務だ、清澄。…天羽の道を作れ。』

 

 

「了解。」

 

そう言って綾瀬川はトリガーを起動すると、鞘に入ったままの弧月を取り出した。

 

『天羽、お前の相手は玉狛の黒トリガーだ。』

 

「…了解。」

 

天羽は不服そうに答えると通信を切る。

 

「…なんで俺もなの?清澄さんがそのまま回収すればいいじゃん。」

 

「あのなぁ…このままだと俺迅さんと玉狛の黒トリガー、2人の黒トリガーを相手にしないと行けないんだが?」

 

綾瀬川が呆れたように尋ねる。

 

「…とにかく、オレに与えられた任務はお前の為の道掃除。とっとと終わらせるぞ。」

 

 

 

そうして、戦場に、無機質な怪物が投入されたのだった。

 

 

 

 

──

 

黒トリガー捕獲作戦。

当初の予定より、それははるかに難航していた。

 

玉狛、迅の介入。

そして、それをサポートする、A級5位嵐山隊、B級1位柿崎隊の2人、B級11位諏訪隊。

忍田本部長派による助っ人だった。

 

 

「おいおい、嵐山さん…数の暴力って言うんだぜ?それ…。」

 

太刀川隊射手、出水公平は苦笑いを浮かべる。

 

出水、三輪、米屋、当真の前に立ちはだかるのは嵐山隊、諏訪隊の2部隊だった。

 

嵐山隊による連携、それをサポートするように、諏訪、堤の弾幕。

隙を突いた笹森の奇襲に手を焼いていた。

それに見つからない嵐山隊狙撃手の佐鳥に当真も迂闊に狙撃は出来ないと言う現状だった。

 

 

それは反対側も同じ。

太刀川、風間隊、三輪隊の狙撃手2人の前には風刃を抜いた迅、そしてB級トップチームの2人が立ち塞がったのだ。

 

特に序盤で、風間隊の菊地原が風刃の奇襲により落とされ、風間隊の代名詞である、菊地原の耳を使ったカメレオンのステルス戦闘が封じられた事が戦力差を引き離す要因となってしまった。

その後も、太刀川、風間を1人で押さえ込んだ迅、柿崎、照屋の連携により、風間隊の歌川(うたがわ) (りょう)が落とされてしまう。

 

それは三輪隊サイドの方も同じで、序盤にリーチのある攻撃手、米屋を嵐山隊の時枝と同じタイミングで落とされてしまった。

 

戦局は玉狛、忍田本部長派の合同部隊の圧倒的有利。

 

撤退も視野に入れなければならない状況に陥ってしまったのだ。

 

 

 

 

「…1つ聞かせろ、迅。」

 

トリオンの漏れた腕。

それを抑えながら、太刀川は迅に尋ねる。

 

「これほどの戦力差を作ったのは何故だ?そして…B級1位の攻撃手照屋、柿崎の連携、そこにお前の予知が合わされば…お前は風刃を抜かなくても俺たちを撤退させることが出来た。…何を企んでやがる。」

 

「…いやー、風刃はどの道使うつもりだったよ。…それに…城戸さんはまだなにか隠してるでしょ?」

 

「…何だと?」

 

風間が顔を顰める。

 

「あんた達にも通達が来てないってことは…秘密にしてるのか。」

 

 

迅は考え込む。

 

 

 

…その時だった。

 

 

もう1つの戦場から緊急脱出の光が上がる。

 

 

 

…その数は5つ。

 

 

 

 

 

「すまん…ザキ。こうなる未来も見えてたんだ。…あいつがお前と一緒に来なかった時点で伝えて置くべきだった。」

 

 

 

──

 

『!、嵐山さん!前方からトリオン反応確認!』

 

『諏訪さん、警戒して!!』

 

綾辻、小佐野の2人のオペレーターから通信が入る。

その通信の後、膠着した戦場に足音が近づく。

 

 

 

「!…綾瀬川…先輩…?」

 

 

そう呟いたのは木虎藍だった。

 

嵐山隊、諏訪隊の前に現れた綾瀬川は目の前の戦力を把握するように目を動かす。

相手は無傷。

こちらは佐鳥の狙撃により、出水、三輪が片手を失っていた。

 

「…綾瀬川…。」

 

三輪は俯きながら呟く。

 

「だから言った。無理はするな…と。」

 

その片手には鞘に入ったままの弧月が握られている。

 

「…出水、状況は?」

 

「こっち側は槍バカが死んであっちはとっきーが落ちてる。太刀川さん達の方は風間隊の菊地原、歌川が落とされた。奈良坂達は撤退の準備をしてる。」

 

出水は淡々とそう答える。

 

「…そうか。」

 

そう言うと綾瀬川は視線を嵐山隊、諏訪隊に向ける。

 

「綾瀬川くん…何故君がここに…。」

 

「…上からの命令なんで。」

 

「隠れた刺客…という訳か。」

 

嵐山はこちらにアサルトライフルを向ける。

 

「出水、三輪。お前らは太刀川さんの方に行け。」

 

「!…ふざけてるんですか?この数相手に1人で戦うなんて…!」

 

木虎は綾瀬川を睨みつけながらそう言った。

 

「…まァ、お前は確かに強ェが…これだけ数がいちゃ…出水の言うところの…数の暴力になっちまうな。」

 

そう言いながら諏訪もショットガンをこちらに向けた。

 

「そうだぜ綾瀬川…ここは俺も…」

 

 

 

「聞こえなかったのか?…行け。」

 

 

酷く冷たい声と瞳。

その言葉に出水は黙ってしまう。

 

 

「…分かった。」

 

「っ…。」

 

 

出水と三輪はバッグワームを着て走り出した。

 

「…日佐人。」

 

「はい…!足止めだけでもしてみせます!」

 

笹森はカメレオンを起動。

走り出した、三輪、出水を追う。

 

そして弧月を振り抜こうとした時だった。

 

 

!!

 

 

弧月の柄を綾瀬川は足1つで止めていた。

 

だがそれよりも…。

 

 

「…いつ移動しやがったんだ…?」

 

 

「数の暴力…か。だが、その言葉を使えるのはアンタ達全員の力がオレを上回っている必要がある。その事を分かっているのか?」

 

「…あァ?」

 

その言葉に諏訪は顔を顰める。

諏訪だけでは無い、木虎も見るからに怒っている。

それもそのはず。

佐鳥を含め6対1なのだから。

それもA級5位、嵐山隊を含む…だ。

にもかかわらず、綾瀬川は表情1つ変えない。

それが嵐山にとっては堪らなく不気味だった。

 

 

 

 

…連携、戦術。

それらを嘲笑うように、怪物は弧月を抜いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいるアンタ達だけじゃ…オレは止められない。」




各キャラからの印象&各キャラへの印象

天羽月彦→先輩。強い。

天羽月彦←生意気な後輩。S級隊員。


感想、評価等お待ちしております。


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(ブラック)トリガー争奪戦 〜侵略〜

投稿致します。



B級1位柿崎隊万能手、綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)

綾瀬川は確かに強い。

それは木虎、嵐山、ここにいる全員が分かっている。

柿崎隊をB級1位に導いた立役者であり、弧月、バイパーの腕は既にマスタークラス。

完璧万能手に最も近いと言われる男。

侮ったりなどしていない。

 

それでも、A級5位の連携力ならばボーダートップクラスの嵐山隊、中距離の火力に定評のある諏訪隊。

この2部隊に綾瀬川1人で戦うと言うのは些か無謀である。

 

開戦の狼煙は諏訪、堤によるショットガンの音だった。

それに合わせて、笹森はカメレオンを発動して、綾瀬川の視界から消える。

木虎、嵐山もアサルトライフル、ハンドガンを綾瀬川に向けた。

 

 

「…」

 

綾瀬川はゆっくり弧月を構えると地面を踏み込む。

 

 

その踏み込み1回で綾瀬川は嵐山の眼前に現れる。

 

「!」

 

そのまま弧月を振り、嵐山の右腕を奪う。

片腕は既に三輪の鉛弾(レッドバレット)により、封じられているため、嵐山はここでアサルトライフルを持てなくなった。

 

「!、嵐山さん!」

 

「…ヤロォ…!」

 

諏訪は再び綾瀬川にショットガンを向ける。

 

綾瀬川は弧月を諏訪のショットガン目掛けて投げると、ショットガンの銃口に刺さり、ショットガンは暴発。

諏訪の片腕が吹き飛ぶ。

 

「なっ…?!」

 

その致命的な隙に、綾瀬川は既に諏訪の懐に潜り込んでいた。

 

「諏訪さん!!」

 

笹森はカメレオンを解除し、綾瀬川に切りかかる。

しかし、全て空を切る。

綾瀬川は数回弧月を躱した後に、弧月を振るう笹森の腕を掴み、足払い。

 

「っ?!」

 

そのまま、バランスを崩した笹森を回し蹴りで諏訪の方に蹴飛ばすと、弧月で諏訪諸共貫いた。

 

「このっ…」

 

堤が言い切る前に、いつの間にか距離を詰めた綾瀬川はスコーピオンの生えた足で堤の胸に飛び蹴り。

そこから一気にトリオンが吹き出す。

 

着地した綾瀬川は嵐山に向き直る。

 

『賢!!』

 

佐鳥に背中を見せた綾瀬川に、嵐山は佐鳥の名前を呼ぶ。

 

『は、はいぃ!!』

 

 

その瞬間、綾瀬川の背後から銃声2発。

 

佐鳥のイーグレット2丁による狙撃。

 

 

しかし、綾瀬川は少ない首の動きで後ろを向いたまま避ける。

 

「…くそ…!化け物か…!」

 

嵐山はスコーピオンを足から生やすと、テレポーターで綾瀬川の後ろに回り込む。

 

 

しかし、綾瀬川の後ろにテレポートした途端、飛んできた弧月に胸を貫かれる。

 

「…なっ…?!」

 

「驚く事じゃないだろ。…視線からテレポート先くらい逆算できる。」

 

「くそ…すまない…迅。」

 

 

 

「…嘘でしょ…」

 

決着は一瞬だった。

あまりの呆気なさに、木虎はハンドガンを落とす。

 

その瞬間、木虎の視線は低くなる。

 

 

気付くと木虎はその場に倒れ、三門市の夜空を見ていた。

木虎の両足は切り落とされ、木虎は仰向けに倒れ込んだ。

 

 

A級としてのプライド、経験。

嵐山隊の戦略、連携。

 

 

それらを踏みにじるように、綾瀬川は木虎の顔に足から生えたスコーピオンを突き立てた。

木虎が最後に見たのは、こちらを見下ろす怪物の、無機質な瞳だった。

 

 

 

「う、嘘だろ…嵐山さん…木虎…?諏訪さんまで…?」

 

遠くからその状況を見ていた佐鳥は眼を疑う。

 

「っ!!」

 

佐鳥はすぐに切り替え、スコープを覗く。

 

「!!」

 

スコープに映ったのはこちらに視線を向ける綾瀬川だった。

もちろん狙撃のあとは位置を変えている。

それでも綾瀬川はこちらに視線を向けていたのだ。

 

慌てて、スコープから目を離したその時。

 

 

 

 

佐鳥の頭は撃ち抜かれた。

 

 

 

 

 

 

「…アンタも生きてたんだったな。」

 

佐鳥を撃ち抜いた当真は、綾瀬川のいる小さな広場に降りてきた。

 

「…まあな。…にしても…バケモンだな、おめー。」

 

「…」

 

綾瀬川は当真の横を抜けると歩き出す。

 

「敵はまだ残っている。

 

…アンタらの尻拭いはしてやるから手伝え。」

 

「…へいへい。」

 

──

 

『嘘…嵐山隊と諏訪隊が全滅しちゃった…。』

 

5つの光が空に上がった数秒後、もう1人佐鳥も緊急脱出する。

柿崎隊オペレーター、宇井真登華は信じられない報告を柿崎、照屋にする。

 

 

『迅さん、全員落ちました…。…諏訪さん達もです。…そっちに向かってます。』

 

『すまない、迅…何も出来なかった。』

 

嵐山隊、綾辻、嵐山の通信に迅は俯いた。

 

 

「すまん、ザキ。未来が確定した。…新たな刺客の正体は…」

 

 

 

 

 

太刀川の後ろに、出水、三輪が到着する。

 

「お前達、何故ここに?何が起こっている?」

 

到着した出水、三輪に風間が尋ねた。

 

「はぁ…城戸さんが切り札(ジョーカー)を切ったんすよ。」

 

「…」

 

三輪もやるせなさそうに俯いた。

 

「…でもまあ…俺らの勝ちですよ。」

 

 

 

 

 

 

「刺客の正体は、やっぱりお前だったか。綾瀬川。」

 

無防備に。

まるでコンビニに出かけるかのように無防備に。

ポケットに手を入れながら歩いてきた綾瀬川に迅は冷や汗を浮かべながらそう言った。

 

「清澄…か?」

 

「清澄先輩…。」

 

チームメイトの名前を柿崎、照屋は信じられないと言った様子で呟いた。

 

 

「…どう言う事だ、綾瀬川。お前の加勢など聞いていないぞ。」

 

風間が綾瀬川に尋ねた。

 

「…どう言う事も何も、俺は上からの命令でここに来た。迅悠一が柿崎隊、諏訪隊を応援に呼んでいた時点でオレが加勢する未来は確定していた…という事だ。」

 

「?…何が言いたい?」

 

「分からないのか?…A級トップチームが揃いも揃ってブラックトリガー1人とA級5位に負ける未来が見えてたって事だ。

 

…オレはその尻拭いに来ただけだ。」

 

「「っ?!」」

 

風間、太刀川は目を見開く。

 

綾瀬川はゆっくりと弧月を抜く。

 

「ここからの指揮はオレが執る。片腕だろうがなんだろうが働いてもらうぞ。」

 

形勢は逆転した。

ブラックトリガーの風刃があるとは言え、6対3。

 

迅は冷や汗を流す。

 

「何がパワーバランスだよ…お前みたいな化け物がいるならあいつのブラックトリガーは必要ないだろ?ここは1つ引いちゃくれないか?綾瀬川。」

 

「知った事か。オレはオレに与えられた任務を遂行するだけだ。道を開けろブラックトリガー。この状況でまだ抵抗を選ぶのか?」

 

綾瀬川、迅は睨み合う。

 

 

 

 

「…どうかな?お前でも予期しない助っ人がいるかもしれないぜ?」

 

 

 

ギィン…!!

 

 

 

綾瀬川は後ろからの弧月をノールックで受け止める。

 

 

「どう言うつもりだ?…太刀川さん。」

 

「太刀川!何をやっている?」

 

予想外の行動に風間も声を上げる。

 

「…フッ…気が変わった。今ならお前の本気が見れそうだぜ…綾瀬川。」

 

「ちっ…戦闘狂が…。」

 

──

 

「ザキ…綾瀬川が刺客として現れる時点で…太刀川さんがこっちに着く未来も確定してた。…だから…その…。」

 

「謝んなよ。ここに来る前に何となく分かってたんだ。お前の言う手強い刺客が清澄なんじゃないかって。」

 

「はい。」

 

迅のその言葉に、柿崎、照屋は笑みを見せる。

 

「言っとくが迅!お前に味方した訳じゃねーからな!綾瀬川の次はお前だ!」

 

そう言って太刀川は弧月2本をクロスさせ、綾瀬川目掛けて駆け出した。

 

「それよりも太刀川さんがあいつを抑えている間にやる事をやろう。」

 

柿崎は三輪、出水、風間に視線を向けた。

 

 

『当真先輩も生きてるよ。気をつけてね。』

 

宇井の通信に柿崎、照屋は臨戦態勢に入る。

 

 

 

「三輪、風間さん、当真さんは柿崎隊の相手を。相打ちでも良いから落とせ。」

 

 

太刀川の連撃を捌きながら綾瀬川は淡々と告げる。

 

『…その柿崎隊ってのはおめーも入ってんのか?』

 

当真が尋ねる。

 

『…誤射は構わないがその場合アンタから落とすぞ。』

 

『おー、こえーこえー。』

 

 

「…出水はオレのサポートだ。

 

 

 

 

…太刀川さんとブラックトリガーを抑え込む。」

 

綾瀬川は太刀川の弧月を上に弾くと、迅に切りかかる。

 

「そう来るよな…!」

 

迅は風刃でそれを受け止める。

 

「出水、絶え間なく撃て。トリオンが切れても良い。」

 

「使い潰しかよ…りょーかい。バイパー。」

 

出水はトリオンキューブを分割、迅目掛けて曲げる。

迅は、建物を射線に入れて飛び上がる。

 

 

「お前の相手は俺だ…!綾瀬川…!」

 

笑みを浮かべながら太刀川は綾瀬川に切りかかる。

 

綾瀬川はギリギリで避けると弧月の隙間を縫うように、鋭い突きを太刀川に入れる。

 

「っ?!」

 

肩を切り裂かれ、太刀川は飛び退く。

 

そのまま、距離を詰めようとした綾瀬川だが、壁を伝った斬撃を見抜き、急停止する。

 

 

「おいおい、風刃を初見で避けられたのは初めてだぜ?」

 

「…」

 

「ハハッ!おもしれぇ!やっぱり爪を隠してやがったな綾瀬川!!そう来なくちゃ面白くねえ!…旋空弧月。」

 

綾瀬川、出水をまとめて切り裂くように、太刀川は旋空を放つ。

 

出水はどうにか飛び退いて躱す。

 

「ひー、あっぶねえ。」

 

しかし、そこに綾瀬川の姿はなかった。

 

「はっ…お前ならこれくらい避けるよな…。」

 

反撃を警戒して、太刀川は距離をとる。

 

 

 

 

「随分と呑気だな。」

 

 

「!」

 

「!、太刀川さん!!」

 

太刀川の眼前に迫った綾瀬川は太刀川の首を掴むと地面に叩きつける。

 

 

 

 

そして、地面から生えたスコーピオンに後頭部を貫かれた。




綾瀬川清澄
本気の時のトリガーセット

メイン:弧月、旋空、スコーピオン、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、バイパー、スコーピオン、シールド

そしてパラメーター…







…はまだ時期尚早かなw

感想、評価等お待ちしております。



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(ブラック)トリガー争奪戦 〜狂想〜

まさかの執筆中に寝落ち!
こんな時間になってしまった…。


三輪、風間が任されたのは柿崎隊の柿崎、照屋の相手だった。

 

こちらは風間、三輪のA級部隊の隊長2人に加え、遠くからはNO.1狙撃手、当真が目を光らせている。

嵐山隊との戦闘で三輪は片腕を失っていたが、相手はB級。

有利なのはこちらだ。

 

…と風間、三輪は考えていた。

 

 

しかし、戦闘が始まってみれば、その認識は間違っていたと痛感する事になる。

 

まず、三輪の鉛弾と柿崎のエスクードの相性が悪く、尽く防がれてしまう。

 

そして、なにより計算外だったのが、前シーズンのランク戦からの照屋の成長であった。

 

メテオラでの陽動の中繰り出される鋭い弧月の一振。

どうにか反応した風間が後ろに引くも、後ろにはいつの間にかせりあがったエスクードの大きな盾が。

エスクードが退路を塞ぎ、風間の頬からトリオンが漏れ出す。

 

「くっ…!」

 

(くそ、三輪が片腕削がれているのが災いしたか…。)

 

それを差し引いても風間は風間隊以外での連携など、あまり経験は無い。

しかし、今の柿崎隊の柿崎、照屋の連携はA級3位である、風間隊に匹敵するほどのものであった。

 

元NO.1攻撃手、小南桐絵に師事して数ヶ月。

学び舎が玉狛支部だったこともあり、目立たず、それでも着実に腕を磨いていた照屋と、サポートと防御に重きを置いて、特訓をしてきた柿崎。

その連携力は間違いなくA級と言われても遜色無い程であった。

 

そして、それはオペレーターである、宇井真登華にも同じ事が言えた。

 

B級上位とのランク戦のあとは、積極的に他の部隊とも関わり、そこのオペレーターから戦略、機器操作の技術、処理能力などを吸収。

中でも、射線管理に関しては、チームメイトである、綾瀬川に師事しており、ボーダーでもトップクラスの腕となっていた。

 

「ちっ、隙がねえな…。ここまで徹底的に対策されると笑っちまうねぇ…。」

 

遠くから戦場を見ていた当真は、宇井、柿崎のエスクードの連携による徹底的な射線潰しに、思わず笑みを見せる。

 

 

 

綾瀬川には太刀川による絶え間無い連撃、迅の未来予知によるサポート。

それにより、戦場はブラックトリガー防衛側の有利に思えた。

 

 

 

 

だがここで、怪物が動き出した。

 

 

 

 

──トリオン供給機関破損、緊急脱出。

 

「っ…!!」

 

太刀川が光となって空に上がる。

 

 

「はは…まるで反応出来てないじゃん…太刀川さん…。」

 

迅は苦笑いを浮かべて、綾瀬川に視線を向け、風刃を構え直す。

 

「抵抗はやめておけ、ブラックトリガー。アンタでも俺は止められない。」

 

綾瀬川は無機質な冷たい瞳を迅に向ける。

 

「…どうだろうな。ここまで視えてたかもしれないぜ?」

 

そう言って迅は風刃を振る。

壁を伝って、斬撃が綾瀬川の首目掛けて飛び出す。

綾瀬川は少ない動きでそれを避ける。

 

「未来予知のサイドエフェクト…か。…くだらない。たとえアンタに未来が見えようと…

 

…オレはアンタが未来が見えると仮定した上で(・・・・・・・・・・・・・)演算するだけだ。」

 

踏み込み1回。

迅の懐から弧月を振る。

まるでテレポーターでも使っているのかと疑いたくなる程の速度。

 

「!」

 

迅はサイドエフェクトをフル活用してそれを避ける。

 

(速い…!!)

 

しかし、いつの間にか、腰に着けていたハンドガンを抜いていた綾瀬川は迅に銃口を向けていた。

もちろん、迅はこの未来が見えていた。

 

 

 

しかし、速すぎる。

 

と、言うよりは()すぎる。

 

見えた未来が来るのが早すぎて、その未来に対応できない。

 

「くっ…!」

 

 

こんな経験は初めてだった。

予知した未来はすぐにやってくる。

 

ならば対策は1つ。

 

さらに遠くの未来を見る事。

今見えている未来のさらに未来。

 

(視えた。弧月での連撃。

 

…その隙を狙ったモールクロー!)

 

迅は足元に視線を向ける。

 

 

 

…だがそこで未来は切り替わる。

 

 

 

 

「──()が疎かになってるぞ?…ブラックトリガー。」

 

 

 

 

振り抜かれた弧月で、肩を切り裂かれる。

 

「っ?!」

 

 

「出水、お前は風間さんと三輪のサポートに入れ。

 

…迅さんはオレ一人でも問題なさそうだ。」

 

 

「…りょーかい。」

 

 

ついに牙を向いた、城戸派の最終兵器。

 

その実力を知っていた出水でも、驚愕する。

 

過去に綾瀬川の本気とやりあった際の100本勝負の戦績は、95対5。

出水が取った5回というのは、撃ち合いと言う縛りだった。

それも撃ち合いをしたのは、100本中10本。

撃ち合いのうち半分は取られた事になる。

 

 

まさに化け物。

それでも、ブラックトリガーには及ばない…。

そう思っていた。

 

 

「…どうした?この未来は見えてなかったのか?」

 

挑発するような言葉。

しかし、表情、声色は全くもって変わらない。

 

 

「…嫌になるぜ、こんな化け物隠しといて何がブラックトリガー捕獲作戦だよ全く…。」

 

迅は肩を抑えながら立ち上がる。

 

「ならこっちもフルスロットルで行く。」

 

迅の持つ風刃の帯が輝く。

そして、地面を光の筋が走る。

 

綾瀬川は後ろに後退しながら、5m程後ろで上に飛び退く。

 

 

「ちっ、お見通しか。」

 

綾瀬川が飛び退いた地面から、風刃の斬撃が飛び出す。

 

「でも、空中じゃ躱せないだろ?」

 

迅はさらに風刃を振り、家屋の壁を斬撃が伝う。

 

「!…おいおい嘘だろ…?」

 

綾瀬川は弧月とスコーピオンで斬撃を受け流す。

そのまま家屋の壁を踏み台に、迅に切りかかった。

 

「今のを避けるか?普通。」

 

「未来を知れるのが自分だけだと思ってるのか?」

 

綾瀬川の飛び退く位置を予測した、風刃の斬撃。

しかし、綾瀬川は分かっているようにそれを避け、ハンドガンを抜く。

 

迅の視界(予知)に映るのは右脚を狙う綾瀬川の姿。

 

(右脚…!)

 

 

 

迅は飛び退く。

 

 

 

しかし、飛び退いた場所で、トリオンキューブが光り輝く。

 

 

「は…?」

 

 

「言ったはずだ。アンタにオレは止められないと。」

 

綾瀬川はハンドガンを手の上で弄りながら無表情で告げる。

 

「アンタには未来が視えるんだろ?だったらアンタが視た未来を予測すればいい。…その未来の先にアンタは必ずいるからな。

 

 

 

 

 

…バイパー。」

 

 

 

「っ…本当に…化け物だな…。」

 

 

そのまま、撃ち出されたバイパーが迅に襲いかかった。

 

 

 

 

 

「あれを避けるのか。化け物だろ、迅さん。」

 

目の前で膝を突く迅。

片腕は吹き飛び、体は穴だらけ。

しかし、トリオンの供給機関は上手く外れていた。

 

「はは…お前にだけは言われたくないな。」

 

 

 

それと同時にもう1つの戦場から緊急脱出の光が3本上がる。

 

柿崎、照屋、そして風間のものだった。

 

出水の介入により柿崎が削られ、そのまま押し切られるように柿崎は緊急脱出。

そして、照屋は最後、風間を道連れにしての緊急脱出となった。

 

 

「…これがアンタの視えてた未来か?」

 

 

「お前が介入した時点でどうしようもなかったよ、綾瀬川。」

 

そう言いながら迅は諦めたようにその場に寝転ぶ。

 

「お前ほどの奴がいながら城戸さんは何のためにあいつのブラックトリガーを狙うんだ?」

 

「…」

 

「答える気無しか。…でも…

 

 

…未来はまだ決まってない。」

 

迅は笑みを見せると、風刃を地面に走らせる。

 

「「!」」

 

出水、三輪の首が飛ぶ。

 

綾瀬川は予測していたようにそれを避ける。

 

 

「…無意味な抵抗だな。その状態で何ができるんだ?」

 

「俺はあいつを守る1つの砦に過ぎない。玉狛にはまだあいつを守る盾が待ち構えてるんだよ。」

 

綾瀬川は足音の方向に目を向ける。

 

 

「遅くなった。」

 

「…すいません、迅さん。」

 

 

 

「…綾瀬…川…?なんで…あんたがここにいんのよ…。」

 

 

「小南か。…まあ対象が玉狛にいる時点である程度予測はしていたがな。」

 

現れたのは玉狛支部の木崎、烏丸、そして小南だった。

 

「ナイスタイミングだ、3人とも。」

 

綾瀬川は視線を迅に移す。

 

「理解に苦しむな。何故ここまでしてブラックトリガーを守る?」

 

「ふっ、俺は実力派エリート。

 

 

…見てるのは常に未来だ。

 

 

…トリガー、OFF!」

 

迅は笑みを見せると換装を解き、走り出す。

 

「…オレが生身だからって攻撃しないと思ったか?」

 

綾瀬川は走り出した迅に弧月を振るった。

 

 

 

 

 

ギィン…!!

 

 

「何…してんのよ…?!あいつは今生身なのよ?!今の振り…全力だったわね?!」

 

間一髪。

小南が前に躍り出て、綾瀬川の弧月を受け止める。

 

 

「…知ってるか?小南。

 

 

 

 

…生身ってのはトリオン体より切りにくいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初(・・)はな。」




現在の柿崎隊の2人のトリガーセット

柿崎国治
メイン:レイガスト、スラスター、メテオラ(アサルトライフル)、シールド
サブ:ハウンド(アサルトライフル)、エスクード、シールド、バックワーム


照屋文香
メイン:弧月、スコーピオン、メテオラ(ハンドガン)、シールド
サブ:スコーピオン、ハウンド(ハンドガン)、バックワーム、シールド

※変更点
柿崎 サブ:アステロイド(アサルトライフル)→ハウンド(アサルトライフル)
照屋 メイン:旋空→スコーピオン、メテオラ→メテオラ(ハンドガン)
サブ:アステロイド(ハンドガン)→ハウンド(ハンドガン)


各キャラからの印象&各キャラへの印象

迅悠一→化け物。勘弁してくれ。

迅悠一←ブラックトリガー使い。


次回くらいで黒鳥編終わると思われる。

感想、評価等お待ちしております!


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(ブラック)トリガー争奪戦 〜ERROR〜

投稿遅れてすみません。



「はぁ…あの人はオレ一人に何人用意したんだ…?」

 

目の前には双月を構えた小南。

後ろには、木崎と弧月を構えた烏丸が立っている。

 

「…あんた、迅を殺す気?」

 

「…だったらどうするんだ?」

 

「っ…あっそ。…それなら何も考えずにあんたを斬れるわね。」

 

小南の双月を綾瀬川に向ける。

 

「…京介、いつも通りだ。小南が暴れて俺たちがサポートする。…相手は風刃を使った迅を圧倒した奴だ。気を抜くなよ。」

 

「了解。」

 

木崎の言葉に烏丸は短く答えた。

 

 

開戦は、小南の双月と、綾瀬川の弧月の衝突からだった。

 

それを受け止めている間に、烏丸が後ろから綾瀬川に切りかかる。

 

綾瀬川は小南の双月を上に弾くとハンドガンを烏丸に向ける。

 

 

──コネクターON。

 

「でりゃああ…!!」

 

小南は双月を素早く連結。

綾瀬川目掛けて振り下ろす。

 

「ちっ…。」

 

烏丸、小南の連携に、綾瀬川は上に飛び退く。

 

そこに、木崎のガトリング砲による、アステロイドが襲いかかる。

 

 

「3対1で大人気ないっすね。」

 

綾瀬川はシールドで受けながら、家屋の壁を走り、木崎に切りかかる。

それを、前に躍り出た、小南が受け止める。

 

空中で小南の双月と綾瀬川の弧月が火花を散らす。

 

「これまでと比にならないくらい重いわね…!手、抜いてたわけ?」

 

「さあな。」

 

「小南先輩!」

 

烏丸の合図で小南は大斧で綾瀬川を弧月諸共、上に弾く。

 

木崎のアステロイド、烏丸のバイパーが綾瀬川を襲う。

 

「…」

 

空中の為逃げ場はない。

 

綾瀬川はフルガードで受けながら、体を強引に捻り、避けきる。

 

しかし、休む暇も無く、着地した所を小南のメテオラが撃ち込まれる。

シールドで受けながら後ずさると、爆風を切り裂きながら小南が双月を横薙ぎに振るった。

 

「…っぶね、物騒だな…。」

 

綾瀬川は体を大きく仰け反らせて避ける。

そんな綾瀬川の視界には、上から拳を振り下ろす木崎が。

手にはレイガストが握りこまれている。

 

飛び退くと、木崎の拳は地面を砕き、土煙をあげる。

 

その土煙を抜けて、木崎はさらに綾瀬川に殴り掛かる。

それを手のひらで捌くか受け流す。

そして、連撃の隙を見て、木崎の側頭部目掛けて蹴りを入れる。

 

「!」

 

木崎はそれを、腕と、シールドで受けるが、あまりの衝撃に吹き飛ばされる。

 

「レイジさん!」

 

「…旋空弧月。」

 

「「!」」

 

0.1秒にも満たない神速の抜刀。

建物を薙ぎ倒しながら放たれた旋空が小南、烏丸に襲いかかった。

 

 

2人はどうにか避けたものの、烏丸は脇腹、小南は太ももからトリオンが漏れ出す。

 

 

 

「…迅さんから聞いてはいましたが…化け物ッスね…。」

 

戻ってきた木崎に烏丸が話す。

 

ボーダー最強の部隊、玉狛。

その3人の連携でも、今のところ綾瀬川には傷1つ付いていない。

 

「予定を繰り上げますか?」

 

「…いや、まだだ。俺たちの目的を忘れるな。…時間を稼ぐ。気張って行けよ、小南、京介。」

 

「「了解!」」

 

そう言って3人は目の前の怪物に視線を向けた。

 

 

 

──

 

「迅、嵐山隊、柿崎隊、諏訪隊に次いで玉狛まで…一体どれだけの刺客を用意しとるんだ…。」

 

ボーダー本部。

司令室で戦場を遠くから見ていた鬼怒田は頭を抱えた。

 

「しかし…彼は一体何者なんですか?」

 

ボーダーのメディア対策室長、根付(ねつき) 栄蔵(えいぞう)は城戸に控えめに尋ねた。

 

「…」

 

しかし、城戸は答えることなく目を閉じる。

 

「城戸さん…。危険すぎる。生身の迅に躊躇なく切りかかるような男を刺客に使うなど…!」

 

忍田は複雑そうな表情で尋ねる。

 

「…」

 

しかし、城戸は何も言わない。

 

「っ…!!」

 

忍田は立ち上がる。

その右手にはトリガーが握られている。

 

「沢村くん、サポートを頼めるか?」

 

「…了解。」

 

忍田の言葉に、本部長補佐、沢村(さわむら) 響子(きょうこ)は短く答える。

 

 

「…止めておけ、忍田くん。…君でも清澄には敵わない。ブラックトリガーは必ず手に入れる。」

 

「…」

 

その言葉に忍田は少し止まるも、司令室を後にした。

 

 

 

 

──

 

「っ…くそ…。」

 

烏丸が短く悪態を着く。

そして、光となって空に打ち上がった。

 

木崎、小南も悔しそうな顔で綾瀬川に目を向けた。

これだけの連戦。

これだけの精鋭を揃えても、未だに綾瀬川には傷1つ付いていなかった。

 

「これだけの連戦だ。…もうトリオンが少ないだろう?綾瀬川。」

 

木崎が綾瀬川に尋ねる。

 

「…そうッスね。」

 

迅の目的。

それは連戦による綾瀬川のトリオン切れ。

そのために時間差で玉狛を当てた。

 

もっとも、ここまで無傷で生き残るのは迅も想定外ではあっただろう。

 

「言っとくけど…まだトリオン使ってもらうわよ...!」

 

小南はそう言って立ち上がる。

 

「やめとけ小南。片手で大斧は振れないだろ?」

 

綾瀬川との戦闘で小南は左腕を失っていた。

 

「余計なお世話よ。それにこのまま引き下がるのも性にあわないわ…!」

 

そう言って小南は双月を振る。

 

「…」

 

綾瀬川は危なげなく躱すと、後ろで木崎が取り出した、アサルトライフルの銃口にハンドガンを発砲。

木崎の右腕ごと吹き飛ばす。

 

「諦めろ、玉狛。あんた達にオレは止められない。」

 

「…」

 

それでも小南はこちらに双月を振るう。

 

「あんた…今までどんな気持ちで私と戦ってたわけ…?」

 

小南が絞り出すように尋ねた。

 

「…本当に…あんた…

 

 

…綾瀬川なの?」

 

「質問の意図が分からないな。オレはオレ以外の何者でもない。」

 

そう言って綾瀬川は小南の持つ双月を上に弾き飛ばした。

 

「っ…」

 

そのまま弧月を振り下ろす。

 

 

ギィン…!

 

しかしそれは、前に出た木崎のレイガストに受け止められる。

 

「スラスターON。」

 

レイガストからトリオンが噴出され、綾瀬川を押す。

 

「…」

 

しかし、綾瀬川が少し力を入れるとそれは止まる。

 

 

「バイパー。」

 

片手でトリオンキューブを分割。

木崎の後ろから、バイパーが襲いかかる。

 

「シールド...!」

 

小南のシールドがそれを受けると、木崎の背中を踏み台に、小南が双月片手に飛び上がる。

 

 

 

「出番だぞ、NO.1狙撃手。」

 

 

──

 

 

 

「…ったく、人遣いがあれーな。」

 

そう言いながら、遠くから戦場を見ていた当真は小南の頭に照準を合わせた。

 

 

 

しかし、引き金は引かれる事無く、当真のトリオン供給機関は切り裂かれる。

 

 

「っ…よくここが分かったな、迅さん。」

 

 

「悪いな当真。俺には予知が付いてる。」

 

当真もここで緊急脱出。

当真を落としたのは、先程、トリガーを解除し消えた迅だった。

その手にはもう遠隔斬撃用の帯は出ていないが、風刃が握られていた。

 

確かにレーダーには映らないが、生身で高台を虱潰しに当たるのは無理がある。

予知のある迅だからこそできる芸当だった。

 

「…さて、予知も大詰めだ。あと少し頼むぜ?小南、レイジさん。」

 

そう言って迅は背伸びをして、本部基地目掛けて走り出した。

 

 

──

 

「ああ、本当にオレ一人になったみたいだな。」

 

綾瀬川は小南の振る双月をヒラヒラと避けながらそう呟く。

 

「っ…!」

 

剣の腕は自信があった。

かつて弧月でNO.1攻撃手となり、ランク戦に参加できなくなった今でもまだ太刀川と風間さんにしか抜かれていない。

 

それでも目の前の男には一太刀も届かない。

 

 

「なん…でよ…!」

 

小南は太刀を止めて俯く。

 

「私とやってた時も…心の中では嘲笑ってたわけ?そうよね、こんなに弱い相手の弟子になって…!毎回毎回弱い私の相手をさせられて…!そうやって私の前では自分を偽り続けてたのね…!」

 

小南は怒り任せに双月を振る。

 

「…」

 

しかし、綾瀬川は何も言わずにそれを避ける。

 

「別に…派閥なんてどうでも良かった。あんたが城戸派でも。玉狛に遊びに来てくれるのが楽しみだった…。文香の事…私に任せてくれて嬉しかった。…でも…それは私だけだった。

 

 

 

…嬉しそうに私のカレーを食べてた…あれも嘘なわけ…?」

 

 

 

「!」

 

儚げに。

寂しそうな泣きそうな。

そんな声と表情。

 

 

「っ…綾瀬川…!」

 

 

振り下ろされた双月が、目を見開いた綾瀬川の右腕を飛ばした。

 

 

「っ…!!」

 

初めて入った一撃。

綾瀬川は肩を抑えて飛び退く。

 

「小南!下がれ!」

 

そう言って木崎はガトリング砲を構えて、小南の前に躍り出る。

 

綾瀬川が一瞬見せた隙。

木崎はさらに追い打ちをかける。

 

 

「…は…?」

 

 

…しかし、そこで木崎の視界は低くなる。

 

 

 

「やはり、お前は危険だ。お前から落とすべきだった。

 

 

 

…小南。」

 

 

その声は木崎の後ろ、小南の目の前からだった。

左手には弧月が握られている。

 

訳も分からず、首を落とされた木崎はそのまま緊急脱出した。

 

 

──

 

「…」

 

上から睨むオレに、小南は静かに目を閉じた。

 

「っ…ちっ…!」

 

まただ。

また何か分からない感情が込み上げる。

 

全部こいつのせいだ。

こいつがいるから。

 

オレは小南目掛けて、弧月を振り下ろした。

 

 

 

 

ギィン…!!

 

 

「そこまでだ!綾瀬川くん。」

 

 

弧月を構えた男。

 

俺の弧月を止めたのはノーマルトリガー最強の男。

ボーダー本部本部長、忍田真史だった。

 

「あんたが出る幕じゃないだろ。…引っ込んでろ。」

 

さらに弧月を振り下ろす。

受け太刀されたのでもう一度。

何度も振り下ろすうちに、忍田の表情にも、余裕が無くなってくる。

 

 

 

 

 

『清澄、作戦終了だ。…撤退しろ。』

 

 

そんな時、城戸からの通信が入る。

 

動きを止めたオレに、忍田がさらに切り掛る。

 

 

 

「…ちっ…これがあんたの見た未来か。

 

 

 

…最悪な未来だよ…迅さん。」

 

 

そう言ってオレは弧月を手放し、忍田の弧月に切り裂かれた。

 

 

夜の三門市でひっそりと行われた派閥争い。

その争いはここでついに幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太刀川隊

太刀川慶…綾瀬川清澄のスコーピオンにより緊急脱出。撃破数0。

出水公平…迅悠一の風刃により緊急脱出。撃破数1。

 

冬島隊

当真勇…迅悠一の風刃により緊急脱出。撃破数2。

 

風間隊

風間蒼也…照屋文香の相打ち狙いのモールクローにより緊急脱出。撃破数1。

歌川遼…迅悠一の風刃により緊急脱出。撃破数0。

菊地原士郎…迅悠一の風刃により緊急脱出。撃破数0。

 

三輪隊

三輪秀次…迅悠一の風刃により緊急脱出。撃破数0。

米屋陽介…木虎藍のスコーピオンにより緊急脱出。撃破数0。

小寺章平、奈良坂透…劣勢を見て撤退。撃破数0。

 

嵐山隊

嵐山准…綾瀬川清澄の弧月により緊急脱出。撃破数0。

木虎藍…綾瀬川清澄のスコーピオンにより緊急脱出。撃破数1。

時枝充…当真勇のイーグレットにより緊急脱出。撃破数0。

佐鳥賢…当真勇のイーグレットにより緊急脱出。撃破数0。

 

柿崎隊

柿崎国治…出水公平のトマホークにより緊急脱出。撃破数0。

照屋文香…風間蒼也のスコーピオンにより緊急脱出。撃破数1。

 

諏訪隊

諏訪洸太郎…綾瀬川清澄の弧月により緊急脱出。撃破数0。

堤大地…綾瀬川清澄のスコーピオンにより緊急脱出。撃破数0。

笹森日佐人…綾瀬川清澄の弧月により緊急脱出。撃破数0。

 

玉狛

木崎レイジ…綾瀬川清澄の弧月により緊急脱出。撃破数0。

小南桐絵…最後まで生存。撃破数0。

烏丸京介…綾瀬川清澄のアステロイドにより緊急脱出。撃破数0。

 

 

 

 

 

迅悠一…トリガーOFFをして撤退。撃破数5。

 

 

 

 

綾瀬川清澄…乱入した忍田真史の弧月により緊急脱出。撃破数8(内1は太刀川慶を含む。)

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

小南桐絵→だ、騙したわね?!(シリアス)

小南桐絵←???



綾瀬川清澄
パラメーター※1

トリオン 7
攻撃 20
防御・援護 15
機動 15
技術 20
射程 4(13)※2
指揮 10
特殊戦術 4(10)※3
TOTAL 95(110)


※1…とあるボーダー協力者の資料参照。
※2…イーグレット装備時。
※3…特殊工作兵(トラッパー)トリガー装備時。


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棒人間

投稿遅くなり申し訳ないです!

後、読者の感想で「俺」→「オレ」の方がいいのでは?という感想を頂いたんですよ。
実は50話くらい出した時に私も同じこと考えてたんですけど…ほら、修正めんどくせぇじゃないですかw
だからいっかなーって思って放置してたんですよね〜。

…ところで話変わるんですけど皆さん「誤字報告」という機能はお使いになられているでしょうか。

何が言いたいかって言うと「皆誤字報告で修正送ってちょ。」

…って事ですw

勝手な話ではありますが何卒よろしくお願いします!いやまじで勝手な話ですけど!<(_ _)>〈 ゴン!〕

ちなみにみんなが協力してくれると信じて今回の話から「オレ」になってますw


ゆっくりと緊急脱出用のベッドから起き上がる。

 

「…」

 

「…らしくないね、清澄さん。一発喰らうなんて。」

 

戻ると、紙パックのジュースを啜る天羽が待っていた。

 

「…悪かったな、仕事させられなくて。」

 

「気にしてないよ。根付さんと鬼怒田さんは反対してたんだ。どの道俺は出れなかったと思うよ。」

 

「…そうか。」

 

「城戸さんが呼んでたよ、清澄さん。」

 

 

 

「ああ。」

 

 

 

──

 

「この結末が不服か…?清澄。」

 

ボーダー本部司令室。

城戸がオレに尋ねた。

 

「アンタが決めた事だ。文句なんて無いですよ…。」

 

そう言ってオレは出口に向けて振り返る。

 

「…でも…疑問だな。何故、諦めたんだ?あのまま行けばブラックトリガーは回収出来た。…それに、風刃なんてオレ一人で問題なく対処できる。未知のブラックトリガーを回収しておく方が将来的に城戸派が有利になるはずだ。」

 

ブラックトリガー捕獲作戦はS級隊員、迅悠一がボーダー本部に風刃を渡すことにより作戦中止という事になったらしい。

これで本部には天羽と風刃。

ブラックトリガーが2本になった。

 

「…」

 

「…まぁ…理由なんて今更どうでも良いですけど。」

 

「清澄…最後手傷を負っていたな。あれはわざとか?」

 

「…」

 

「いや、忘れてくれ。ご苦労だった。」

 

「…いえ。」

 

 

──

 

 

「「「…あ。」」」

 

「…」

 

ボーダー基地の出口に向かう途中。

自販機の前でぼんち揚げを食べている、迅、風間、太刀川と目が合った。

 

オレは一瞬止まって3人を見ると、すぐに出口に向かって歩き始めた。

 

 

 

「「「待てコラ。」」」

 

「…何ですか…?」

 

「何ですかもクソもあるか。この作戦…なんでてめぇが出て来やがった。目立つのは嫌いっつってただろーが。」

 

そう言って太刀川はオレの胸ぐらを掴む。

 

「なんでって…オレは城戸さんの命令に従っただけだ。…アンタ達と同じ理由だろ?」

 

そう言ってオレは胸ぐらを掴む太刀川の手を払う。

 

「風間さんにも言った通り…オレはアンタ達の尻拭いをしただけだ。…それ以外に理由なんて無いですよ。」

 

そう言ってオレは太刀川の横を通り抜ける。

 

「あれがお前の本当の実力か…?綾瀬川。」

 

そう尋ねた風間に視線を落とした。

 

「正直半信半疑だった。太刀川の興味を引く男がどれほどの強さなのか。…だが…蓋を開けてみればこれ程の化け物だったとはな。…能ある鷹は爪を隠す…これ程お前に合う言葉はないだろう。…何故お前ほどの男がボーダーにいる?

 

 

 

…お前は一体何者だ?」

 

風間の視線が鋭くなる。

 

「…何者も何もオレはただのB級万能手ですよ。」

 

そう言ってオレは風間、そして迅の横を抜ける。

 

 

「なあ綾瀬川…

 

 

 

 

 

…お前玉狛(ウチ)に来ない?」

 

「「!」」

 

太刀川、風間は目を見開く。

 

「おい、迅。てめぇどう言う「オレが玉狛に入る未来でも見えたのか?」」

 

太刀川の言葉を遮るように迅に尋ねた。

 

「うーん、五分五分ってとこかな。でも…今のお前からは色々な未来が見える。…悪く言えば不安定だ。」

 

「…この未来はアンタが仕組んだ未来だろ?オレには柿崎隊が…いや、でもまあ…

 

 

 

…柿崎隊を追い出されたらまた誘ってください。」

 

そう言ってオレは今度こそ歩き出す。

 

「そうか。

 

 

 

…そりゃ残念だ。」

 

 

その言葉を背に歩いていると、携帯が震える。

 

 

相手は柿崎だった。

 

 

──

 

ボーダー本部柿崎隊作戦室

 

「よう、来たな。清澄。」

 

「こんばんは。清澄先輩。」

 

作戦室に行くと、柿崎の他に、文香、真登華が待っていた。

 

「…早く帰って寝た方がいいんじゃないのか?文香、真登華。」

 

そう言ってオレは、作戦室の椅子に座る。

 

「それを言うなら清澄先輩もでしょ〜?」

 

そう言って真登華はオレの前にお茶を置いた。

 

「…」

 

 

「何も言わなくて良いぞ。清澄。」

 

 

「!」

 

柿崎のその言葉にお茶を持ち上げる手を止める。

 

「普段表情の読めないお前だが…今はハッキリ分かるぜ。迷ってんだろ?このまま柿崎隊にいても良いのかどうか。」

 

「…」

 

「そんなの迷うまでもねえ。お前は柿崎隊の一員だ。…事情があるんだろ?お前が実力を隠してたのも、城戸派として迅の前に出てきたのも。…俺は元嵐山隊だからそのまま本部長派だが…俺の隊は別に派閥なんか気にしちゃいねーよ。

 

 

 

…だがまあ…いつか教えてくれよ?虎太郎も交えてな。」

 

「…」

 

「…んじゃ、帰るか。お前は真登華を送ってやれよ。」

 

「…はい。」

 

 

──

 

「いやー、それにしても凄かったね、清澄先輩。迅さんを圧倒するだけじゃなくて玉狛まで1人で相手しちゃうんだもん。」

 

隣を歩く真登華が興奮気味に言った。

 

「その前には嵐山隊と諏訪隊も全滅させちゃったんでしょ?ザキさんと文香は戦いたがってたけど私は御免だわ〜。」

 

「…」

 

「…」

 

何も言わないオレに真登華は黙る。

 

「…ザキさんも色々考えてああ言ったんだよ?清澄先輩って分からないことだらけだったから。…本当は私と文香は清澄先輩がうちに入るの最初は反対だったたし。」

 

「…そうなのか?」

 

「最初は…だよ?実力も分からないし。4人に増えて私がちゃんとオペ出来るかも分からないし。…でも三輪先輩の紹介だったしうちも負け続きだったからザキさんが思い切って入隊を許可したの。」

 

「…」

 

「今じゃ清澄先輩のおかげでB級1位。ザキさんも文香も虎太郎もみんな強くなって…。私も清澄先輩のおかげで結構オペの腕上がったと思うし。…みんな清澄先輩に感謝してるんだよ?今じゃ清澄先輩が居ないなんて考えられないから。」

 

「…そうか…。」

 

真登華の家の近くに着いた。

 

「…じゃ、また明日ね、清澄先輩。」

 

「…ああ。」

 

「清澄先輩…

 

 

…隠し事…もうあんまりしないでね?

 

 

…ほら、後で知ったらその…寂しいじゃん?」

 

「!」

 

「それだけだから!じゃ!」

 

「…」

 

 

泣きそうな、悲しそうな…そんな顔だった。

 

 

 

(私のカレーを嬉しそうに食べてた…あれも嘘なわけ…?)

 

 

 

先程の小南の表情を思い浮かべる。

 

「玉狛なんて…行けるわけないな。」

 

迅の誘いを思い出して1人で否定する。

 

 

 

 

 

そして、こちらを隠れるように見ている男に視線を向けた。

 

 

 

 

 

「…真登華のストーカーか?」

 

「…ふん、気付いていたのか。…実の父親にストーカー呼ばわりか?」

 

曲がり角から現れたのはオレの父親だった。

 

 

「後ろからつけてたんだ。変わらないだろ?」

 

「…乗れ。」

 

視線の先には車が停まっていた。

 

──

 

 

「今回の戦績でハッキリした。やはりお前はボーダーにいるべきではない。」

 

「…そんな事…アンタが勝手に決めるな。」

 

父親の言葉にそう返す。

 

「元々前シーズンまでの予定を繰り下げたんだ。今回のブラックトリガー捕獲作戦でお前の実力は証明された。

 

 

…だが…何故最後右腕を失った?」

 

「…」

 

「…小南桐絵…玉狛所属の攻撃手。元攻撃手1位…か。ボーダーでの実力は確かに評価に値する。だがお前が傷を負うほどの相手では無いはずだ。」

 

父親は続ける。

 

「…下らん情でも芽生えたか?」

 

「アンタには関係ない。」

 

「今のお前は見てられん。清澄、お前…

 

 

 

…弱くなったな。」

 

「!」

 

「中途半端にボーダーの人間と関わったからか?やはりあの場所は私にとって不利益でしかない。…お前にとってもだ。柿崎隊もだ。ボーダーの人間と関わってお前は弱くなった。…何故あのまま忍田の一撃を受けた?何故ブラックトリガーを回収しなかった?何故力を隠す?命令だからか?違う。教えてやろう、お前は皆に恐れられるのが怖かった…

 

 

…違うか?」

 

「…っ…」

 

「人間関係ほど脆く、己を弱体化させる物はない。全くもって不利益。お前には必要の無い物だ。」

 

着いたのはあの場所。

 

 

無機質な怪物を産んだ鳥籠だった。

 

 

「言ったはずだぞ?お前は道具だと。道具ならば道具に徹しろ。だがまあ…面白い事例ではあった。

 

 

 

…今のお前は人間にも道具にもなりきれない哀れな怪物だな。

 

 

 

 

 

 

 

…お前はもう、道具に戻れ。」

 

 

 

 

「…オレは…」




ブラックトリガー捕獲作戦報告書(綾瀬川清澄、天羽月彦について)

・綾瀬川の投入は秘密裏に行うものとする。(とあるボーダー協力者による指示。)
・未知のブラックトリガーの相手は天羽とする。
・民間人へのイメージ保持、上層部2名の反対により、天羽の投入は作戦を妨害する戦力を排除してからとする。(根付栄蔵、鬼怒田本吉の反対。)


事後報告

・S級隊員、迅悠一の持つ風刃の本部提出により、空閑遊真のボーダー入隊を認め、ブラックトリガー捕獲作戦を中止。
・太刀川隊隊長、太刀川慶の命令違反は、敵味方の分別不可、情報の無さ、綾瀬川清澄の希望により、免除とする。



城戸さんと迅さんの取り引きについては後々書くつもりです。

感想、評価等お待ちしております。


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綾瀬川清澄⑤

更新します!

前回の前書きでも書いたんですけど…

「俺」→「オレ」の誤字報告待ってます。
まじで面倒くさすぎるからやりたくないw

オナシャス( ̄^ ̄)ゞ

いやまじで厚かましい話だなw


「あんた、なかなか良い太刀筋してるじゃない!」

 

「…」

 

そうだ。

あの日、あいつの綺麗な太刀筋を見て話しかけたんだっけ…。

 

「なんでそれだけ太刀筋が良いのに負けるのよ…?」

 

「…弧月は今日初めて使った。オレは射手だからな。」

 

そう言って話しかけた男、綾瀬川はぶっきらぼうに答えた。

 

「はぁ?!勿体ない…!…たく、仕方ないわね、私が弧月を教えてあげるわ…!」

 

 

「…結構です。」

 

「…」

 

そう言って綾瀬川はそそくさと去って行く。

 

 

 

 

 

「…待ちなさいよ…!!」

 

──

 

「私のカレーを嬉しそうに食べてた…あれも嘘なわけ…?」

 

「!」

 

 

初めて見た表情だった。

まずあいつに表情なんてあったのかも定かではない。

 

 

 

 

「あいつの事…なんも知らないのね…私。」

 

 

 

 

 

 

「…小南先輩、大丈夫なんですか?」

 

ボーダー玉狛支部

 

三雲修が師匠である、烏丸京介に尋ねた。

 

「昨日からずっとあの調子ですよね…。」

 

ボーッと何か物思いにふける様子の小南を三雲は心配していた。

 

「まぁ色々な。だが俺は小南先輩よりもお前の方が心配だけどな。」

 

烏丸との今日の戦績は10連敗。

三雲は肩を落とした。

 

「うっ…。」

 

「ほら、休んでないで走り込み行くぞ。」

 

「は、はい…!」

 

 

 

 

「こなみ先輩、今日はやらないの?」

 

「…」

 

空閑遊真の問に、小南は視線を向ける。

 

 

「…そうね。付き合いなさい。」

 

そう言って小南は立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ…今日は1本も取れなかった…。こなみ先輩強いね。」

 

「…当然でしょ。」

 

そう言って小南は座って考え込む。

 

「何かあったの?こなみ先輩。」

 

「…別に、何も無いわよ。」

 

「…つまんないウソつくね、こなみ先輩。」

 

「…別にあんたには関係ないわ。」

 

 

 

 

そんな時、玉狛支部のインターホンが鳴った。

 

 

 

 

…時は昨晩、ブラックトリガー捕獲作戦終盤に遡る。

 

──

 

ボーダー本部司令室

 

 

「お前がここに何の用だ…?

 

 

 

…迅。」

 

立っていたのは身体中に穴が空き、緊急脱出寸前の迅だった。

 

「単刀直入に言います。綾瀬川に撤退命令を出してください。」

 

「…何を言い出すかと思えば…そんな話を私が聞くと思うか?」

 

「いや、城戸さんなら聞いてくれるね。

 

 

 

 

…だって城戸さんじゃないでしょ?綾瀬川を参加させたの。」

 

「!」

 

「やり口が城戸さんらしくない。太刀川さんや風間さんが綾瀬川が参加することを知らなかったんだ。…城戸さんがこんな大事な通達をしない訳が無い。」

 

「…」

 

「ましてや同じ隊の柿崎隊と敵対する事も分かってたのにね。…俺はこの作戦の裏に何かしらの陰謀を感じるね。」

 

迅はいたずらっぽく笑みを浮かべる。

 

「…あいつを戦場から引き剥がす策がある。それも城戸派にとって大分都合の良い話が。」

 

城戸は迅の瞳を見たあと、立ち上がる。

 

「…場所を変える。付いてこい、迅。」

 

鬼怒田、根付、唐沢の視線を気にして城戸は立ち上がった。

 

 

 

──

 

「…詳しく話せ。」

 

「驚いた。お前の介入する未来は見えなかったから知らなかったよ。お前もいたんだな、天羽。」

 

移動した部屋は緊急脱出用のベッドだけが置かれた部屋だった。

 

「…俺、場所変えた方が良い?」

 

「そうしてくれ。」

 

「…わかった。」

 

 

 

「俺の策を話す前にさ…この作戦の全容について教えてくれない?俺がさっき言ったのはあくまで推測。詳しい事が分からないとどうにもね。」

 

「…」

 

城戸は少し考えた後、語り出した。

 

「…清澄は…大恩があるボーダーのスポンサーの息子だ。多額の寄付の交換条件として…私が面倒を見ている…。」

 

ポツリと語り出す。

 

怪物が表舞台に上がった真実を。

 

 

 

──

 

「…ブラックトリガー捕獲作戦で清澄を…?」

 

「そうだ。清澄の力を示す絶好の機会だ。」

 

「っ…しかし、相手はブラックトリガーだ。いくら清澄でも…。」

 

そう言った城戸の言葉を目の前の男は遮るように告げる。

 

「問題ない。そこで負ければそこまでだ。」

 

「しかし…っ…。」

 

 

──

 

 

「私は反対だった。清澄に…息子にブラックトリガーの相手をさせるなど…。」

 

今まで見た事もないような表情で話す城戸に迅は息を呑む。

 

 

──

 

「偉くなったものだな、城戸。私に楯突くのか?…誰のおかげでここまでボーダーが大きくなったと思っている?今日帰還した遠征部隊も…誰のおかげで遠征に行けたと思っている?」

 

「っ…。」

 

「貴様には清澄の生活の面倒を任せただけだ。…下らん情を私の道具に持つな。」

 

「!…くっ…。」

 

 

 

 

 

「お呼びでしょうか。城戸司令。」

 

「呼び立ててすまなかったな…清澄。

 

 

…お前に特務がある。」

 

「!」

 

特務。

これは城戸と綾瀬川の間に設けた合言葉。

城戸が綾瀬川に頼らざるをえなくなった状況でのみ使われる言葉だ。

 

『すまない…君の父親からの指示だ。…私には…どうすることも…。』

 

「オレは城戸派直属の隊員です。…ご命令は…?」

 

『!…清澄…。

 

 

 

 

 

 

…すまない…。』

 

──

 

「ふん…何故、玉狛のブラックトリガーの相手を清澄に任せなかった?」

 

「…相手は未知のブラックトリガーです…。」

 

「…まあいい。A級部隊とB級2部隊、それに風刃…相手としては充分だからな。」

 

そう言って綾瀬川の父親は立ち上がる。

 

「別席で見させてもらおう。

 

 

 

…清澄のボーダーでの経験の集大成を。」

 

 

──

 

「これが真実だ。…息子に頼らざるをえない私を…お前は笑うか…?」

 

「…笑いませんよ…。」

 

迅の瞳が鋭くなる。

 

そんな時だった。

モニターで綾瀬川が小南の双月を受けた。

 

「!、未来が変わった…。時間もないんで単刀直入に言います。」

 

そう言いながら迅は換装を解いて、城戸に風刃を差し出す。

 

「風刃と引き換えに玉狛のブラックトリガー、空閑遊真の入隊を認めて欲しい。」

 

「!…何…?」

 

「そうすれば本部にブラックトリガーが2本。綾瀬川って言う戦力もいる以上パワーバランスが変わることも無い。それどころかそっちが有利だ。…これ以上この作戦を続ける必要も無いでしょ?」

 

「…何を言っている…?…それではこちらにあまりに…。」

 

「終わらせる方法はこれしかない。俺は遊真(あいつ)のブラックトリガーを渡したくない。あんたは綾瀬川を戦場から離したい…利害は一致してる。」

 

モニターでは、玉狛との戦闘に忍田が介入していた。

 

「ほら、早く決めないと。」

 

 

「っ…」

 

 

 

 

『清澄、作戦終了だ。…撤退しろ。』

 

 

 

 

 

「…最後に聞かせろ、迅。」

 

司令室から出ていこうとした迅を城戸が呼び止める。

 

「何故、風刃を…最上の形見を手放してまで清澄を…ブラックトリガーを守ろうとする?」

 

その質問に迅は少し考えたあと笑う。

 

「ぜーんぶ未来の為だよ。綾瀬川と遊真…あいつは城戸さんの真の目的にも役に立つ。」

 

「!」

 

「それに…形見を手放したくらいで最上さんは怒らないでしょ。…それじゃ。」

 

 

 

「…すまない…迅…。」

 

 

そう呟いた瞬間、司令室に緊急脱出した綾瀬川が戻ってきた。

 

 

 

 

──

「やはりここに来ましたか。綾瀬川先生。」

 

「…城戸…それに…迅悠一…か。」

 

「どーも、初めまして〜。」

 

放棄された地区の小さな研究所。

その入口で待っていたのは城戸、そして迅だった。

 

「何故お前たちがここにいる?…部外者は出ていけ。」

 

そう言ってオレの父親は横を抜ける。

 

「オレが呼んだ。あんたがオレと真登華をつけていた時点で呼んでる。ここに来ることも分かっていた。」

 

オレは淡々と父親に告げる。

 

「何だと…?」

 

「オレはここに戻るつもりはない。」

 

その言葉に父親の表情は険しくなる。

 

「冗談が過ぎるぞ…?清澄。」

 

青筋を浮かべながら父親はオレに歩み寄る。

 

「冗談だと思うか?」

 

「俺の命令に逆らうのか?」

 

「あんたの命令が絶対だったのはホワイトルームの中での話だろ。そこを出た今、命令を聞く必要も無い。」

 

オレはさらに付け加える。

 

「…あんたはオレを人間にも道具にもなりきれないと言った。…だったらオレは道具よりも人間を選ぶ。ましてやあんたの道具なんて御免だ。オレは…城戸さんの息子がいい。」

 

そう言ってオレは城戸に視線を向けた。

 

「言葉は慎重に選べよ?清澄。今まで俺がどれだけボーダーとお前に金をかけたと思っている?お前の言動1つでボーダーに流す金が潰えるんだぞ?」

 

 

 

「…その心配はご無用ですよ、綾瀬川先生。」

 

 

そう言いながらこちらに歩いてきたのは、タバコを咥え、スーツを着た男だった。

 

「!…唐沢…。」

 

ボーダー外務営業部長、唐沢克己は、タバコの火を吐き出す。

 

「ボーダーはもうあなたの寄付なしでも動ける。…あなたには散々吐き出してもらいましたから。それにあなたより寄付金は少ないが信用できるスポンサーも取れましたから。」

 

「っ…!唐沢…貴様…!」

 

「そう言う事らしいな。」

 

オレは父親に視線を向ける。

 

「あんたはオレを産んでくれた。オレを少なからず育ててくれた。

 

…だがオレはあんたを父親だと思ったことは無い。」

 

冷たく言い放つオレに父親は顔を赤くする。

 

「オレの居場所はボーダーにある。ここじゃあない。」

 

「ちっ…不良品が…。」

 

そう言って父親の視線は鋭くなる。

 

 

「…後悔するぞ?

 

…人の皮をかぶった化け物が…

 

 

…人間になれると思うなよ…?」

 

そう言って父親はオレの横を抜けて行った。

 

 

 

「こっわ。城戸さんより迫力あるんじゃない?」

 

緊張感のある現場は迅の間の抜けた声で台無しになる。

 

 

「…清澄…帰ろう。」

 

「…」

 

オレはゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

──

 

「綾瀬…川…?」

 

ブラックトリガー捕獲作戦の翌日。

 

玉狛支部のインターホンを押したのは綾瀬川だった。

 

 

「今…少しいいか?小南…お前に話がある。」

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

迅悠一→いい未来への1ピース。
城戸正宗→息子。
唐沢克己→興味。
綾瀬川→道具風情が。後悔するぞ?
小南桐絵→話したい。


迅悠一←恩人。
城戸正宗←父親。
唐沢克己←敵に回したらヤバそう。
小南桐絵←話したい。

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綾瀬川清澄⑥

投稿します!

「俺」→「オレ」の誤字報告待ってます。←そろそろ自分でやれ。




「じんさん、あの人誰?」

 

空閑遊真は来客を見て、迅に尋ねた。

 

「小南の友達。遊真はまだ会うべきじゃないな。…ほら、メガネくんと一緒に走り込みに行こうぜ。」

 

「ふむ…。じんさんが言うならそーする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…小南。」

 

「な、何よ!」

 

 

 

 

「…もう一度オレに怒ってみてくれないか?」

 

「…は?」

 

玉狛支部のリビング。

突如そう切り出した綾瀬川に小南は素で聞き返す。

 

「オレはあの時お前の攻撃を食らうつもりはなかった。…だが…事実オレは攻撃を食らった。…その理由を知りたい。」

 

「そ、それでわざわざ玉狛に来たわけ…?」

 

小南は俯きながら綾瀬川に尋ねる。

 

「?…ああ。」

 

「謝るとか…そう言うのじゃなくて?」

 

「?」

 

「っ〜!!」

 

小南は勢いよくテーブルを叩き、立ち上がる。

 

 

 

 

「私と模擬戦しなさい!!」

 

 

 

 

 

──

 

「本気でやりなさいよ?!」

 

「…何を言ってる。オレはいつも「うるさい!いいから本気でやるのよ!!」」

 

「…はい。」

 

──1本勝負…スタート。

 

 

「メテオラッ!!」

 

小南は駆けながら、トリオンキューブを8分割。

綾瀬川目掛けてメテオラを放つ。

 

爆風が綾瀬川を包み込んだ。

 

──コネクターON。

 

機械音と共に、小南の双月が連結し、大斧に変わる。

 

それを振り下ろそうと、綾瀬川に視線を向ける。

 

綾瀬川は弧月で双月を受け止める。

 

「!…折れるわよ?」

 

綾瀬川の弧月にヒビが入る。

その瞬間、綾瀬川は弧月を傾けた。

 

「!」

 

双月の一撃は地面に流される。

 

そのまま足から生えたスコーピオンで小南に蹴りかかる。

 

「っ!!」

 

小南はどうにか体を捻ってそれを避ける。

しかし、片腕が切り飛ばされる。

 

小南は片腕を抑えながら飛び退く。

 

「っ…メテオラ!」

 

それでも小南は旧ボーダーの時代からいる最古参隊員。

歴戦の猛者。

すぐさまメテオラで視界を奪い距離をとる。

 

 

…しかし、その爆風をかき分けるように、綾瀬川が小南に突進してきた。

 

 

「メテオラが奪うのは何も相手の視界だけじゃない。」

 

「私のメテオラを利用したのね…!」

 

綾瀬川の今までとは比にならないパワー。

片手の小南は徐々に押されて行く。

 

「仕返しよ…!」

 

小南は双月を持ち替えて綾瀬川の弧月を滑らせる。

 

 

 

「…だろうな。」

 

綾瀬川のバランスが崩れる。

 

…小南の視界には光り輝くトリオンキューブが映った。

 

綾瀬川はバランスを崩したと言うよりも、しゃがむように避けている。

 

 

「バイパー。」

 

 

「っ…シールド…!」

 

慌てて張ったシールド。

しかし、それはしゃがんだ綾瀬川が振った弧月に簡単に割られてしまった。

そのまま、バイパーは小南に四方八方から襲いかかった。

 

 

──模擬戦終了、勝者綾瀬川。

 

 

無機質な音声が綾瀬川の勝利を告げた。

 

 

 

 

 

 

「これで満足か?」

 

「…」

 

そう尋ねた綾瀬川に小南は俯く。

 

「…これまで私とやってた時は…あんな動きじゃなかった。一撃も軽かったし、遅かった。」

 

「…」

 

「馬鹿にしてたわけ?弱い私を哀れんで…わざと負けてたのね。」

 

小南は軽蔑した目で綾瀬川を見る。

 

「…わざと負けてたのは否定しない。」

 

そんな小南から目を逸らしながら綾瀬川は答えた。

 

「っ…。」

 

「だが…オレはお前を弱いと思った事は無い。馬鹿にするつもりも無い。」

 

淡々と話す綾瀬川。

 

「だったら…なんでわざと負けてたのよ?!本気でやってた私が馬鹿みたいじゃない…!私1人だけあんたとの戦いを楽しんで!それなら、私じゃ相手にならないって言って…断ってくれた方が良かった…。」

 

「…」

 

小南はそのまま俯く。

声は震えていた。

 

「…悪い…。…信じて貰えないかもしれないが…お前だけじゃない、オレもお前との戦いが楽しかった。戦いだけじゃない、玉狛でお前の馬鹿な話を聞いたり、オレが玉狛に来る度お前が作ってくれるカレーが大好物だった。

 

 

 

…オレはお前といる時間が楽しくて好きだった。」

 

 

 

「っ…いつもみたいに…騙されると思ってそんなこと…。」

 

「嘘じゃないさ…嘘じゃない。」

 

表情はやはり変わらない。

瞳だっていつもと同じビー玉のように空っぽで、無機質だった。

 

それでも…これが綾瀬川清澄と言う男だった。

 

 

「そう言う時の顔…出来ないわけ…?」

 

「嘘ついてるように見えるか?」

 

「見えるに決まってるでしょ。そんな感情の籠ってない顔で言われても。」

 

「…」

 

「今度…手、抜いたら許さないから。」

 

「!」

 

 

「…言ったでしょ?負けっぱなしは性にあわないって。これからも模擬戦…付き合いなさいよ…。」

 

小南は顔を赤くして目を逸らしながらそう言った。

 

「小南…。」

 

「私だってあんたの事…なんも知らなかったから。わざと負けてたのは腹立つけど…何も知らないのに勝手なこと言って…悪かったわね…。」

 

「…」

 

そう言う小南を綾瀬川はまじまじと見つめる。

 

「な、何よ…!何か言いなさいよ!」

 

「いや、素直なお前は珍しいなと思って。」

 

「なっ…!なんですって!?」

 

そう言って小南は綾瀬川の胸ぐらを掴む。

 

「悪い、冗談だ。」

 

「反省してないわね?!いい度胸じゃない!模擬戦よ、模擬戦!」

 

「それは構わないが…いいのか?ポイントを賭けない模擬戦は代わりにトリオン体の身長を賭けてるらしい。…縮むぞ?」

 

「…え?!そーなの?!た、確かにあんたとやる前と比べてちょっと視線が下がったような…「嘘だけどな。」…え…?」

 

 

「だから嘘だ。」

 

 

 

「だ、騙したわね?!」

 

 

 

 

 

 

──

 

「はぁ…!はぁ…!迅さん…どれだけ…走らせるんですか…!」

 

すっかり日も落ちて星が見え出した頃。

迅、修、遊真の3人は走り込みから帰って、息を整えていた。

 

「メガネくんは体力つけないと。」

 

「うむ。そうだぞオサム。…あれ?こなみ先輩?」

 

玄関に目を向けると、小南が立っており、誰かと話している。

そして手を振って別れていた。

 

「あの人は…」

 

「うーん…メガネくん達がA級を目指すなら1番の障害になる奴かな。」

 

「「!」」

 

迅の言葉に目を見開く。

 

「まぁすぐに挨拶できるよ。」

 

話していると小南は3人に気付きこちらに視線を向けた。

 

「お疲れ様。…ご飯出来てるわよ。」

 

「おー、今日は何?」

 

 

 

 

 

 

「…カレーよ。」

 

スッキリした笑みで小南は答えた。

 

──

 

「小南とは無事仲直り出来たみたいだな。」

 

帰り道。

オレは後ろから話しかけられる。

 

「迅さん…。」

 

「お前も小南の事は偉く気に入ってたみたいだな。」

 

その言葉にオレは考え込む。

 

「…なんでオレが小南の一撃を食らったのか…、なんでオレが小南の表情を見て動揺したのか…。オレはそれが知りたい。

 

 

…それを知るためにはこれからも小南との関係はあった方がいい。そう思っただけだ。」

 

「…そうか。」

 

「あんたには借り1つだ。…いつか返す。」

 

そう言ってオレは振り返る。

 

「よくゆーよ。唐沢さんも俺も城戸さんも、全員利用してたくせに。」

 

その言葉にオレは足を止める。

 

「お前が遊真のブラックトリガーを回収しようと思えばとっとと俺たちを全滅させて回収出来たはずだ。なのにお前はわざと俺に時間を与えた。あの時のバイパーも…急所は狙ってなかっただろ?」

 

「…外しただけですよ。」

 

「…ここまで来てしらばっくれるのかよ?」

 

迅が呆れたように尋ねる。

 

まあこの人に隠す意味もないか。

 

「…天羽の投入が防衛戦力を全て除外してからと決まった時点でオレは迅さん、あんたの時間を稼ぐように動いていた。混乱してた小南も…生身のあんたに斬り掛かる事で本気にさせた。」

 

「おいおい、俺に当たってたらどーすんだよ…?」

 

オレは無視して続ける。

 

「あんたが風刃を手放すのは予想外だったが…どんな形であれあんたはこの作戦の裏を知り、この作戦を中止という形で終わらせた。…恐らくその後かな…あんたは見た訳だろ?オレがホワイトルームに戻される未来を。その時点でオレは城戸さんに頼んで唐沢さんも待機させておいた。…後はあそこで起きたままだ。」

 

「…全部お前の手の上だった訳だ。でも気になるな。そうまでしてお前はどうして親父さんを敵に回したんだ?」

 

迅が尋ねる。

 

「さあな。まあでも…これ以上邪魔されたくなかったからかもな。」

 

そう言ってオレはボーダー基地に目をやった。

 

「借りの件は気にすんなよ。後輩の願いは叶えるのが実力派エリートだ。」

 

「いや、返す。

 

 

 

 

 

…あんたに少しでも借りがあるのは気に入らない。」

 

そう言ってオレは今度こそ三門市の寒空の下を歩き出した。

 

──

 

「…よろしかったのですか…?」

 

三門市を走る車の車内。

 

秘書の男が尋ねた。

 

「…清澄様をボーダーに奪われた形になりましたが…。」

 

「…ふん、ボーダー内に既に布石は打ってある。」

 

綾瀬川の父親は吐き捨てるように言った。

 

「不良品が…私を裏切った事を後悔させてやろう…。」

 

 

 

 

──

 

ボーダー本部諏訪隊作戦室前

 

「C級かァ?こんなところで何してんだ?」

 

作戦室の前にいた、紫髪のツインテールの女性隊員に諏訪は声をかけた。

 

「迷子か?」

 

「あっ…えっと〜、ちょっと人を探してて〜。」

 

「誰だ?嵐山か?」

 

「?…誰ですかソレ?」

 

頬に人差し指を当ててあざとく首を傾げる少女に諏訪は冷や汗を流す。

 

「嵐山を知らねえのかよ…。」

 

「あっ、てかおじさん。」

 

「まだ21だ!おじさんじゃねェよ!!それに諏訪だ。」

 

「諏訪さんって…あっ!諏訪隊の隊長さんだ!」

 

「そーだよ…。」

 

話してて疲れた諏訪は頭を抱える。

 

「なら丁度良かった。諏訪さんの隊結構負けてるでしょ?」

 

「てめぇ…まあ否定はしねーがよォ。」

 

諏訪は青筋を浮かべながら答える。

 

「しかも諏訪さんの隊って銃手が2人の中距離特化でしょ?」

 

「こだわってるつもりはねーけどな。で?何が言いてえんだ?」

 

 

 

「…あたしはB級フリーの榎沢(えのさわ) 一華(いちか)!今の状況を変えてくれる優秀な銃手ならここにいるけど?」




オリキャラ登場でした。
誰モチーフかはよう実読んでる人なら分かるかw


感想、評価等お待ちしております。


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嵐の前の嵐

投稿します!


「優秀な銃手って…オメーの事か…?」

 

「?…他に誰がいるの…?」

 

きょとんとした様子で尋ねる榎沢(えのさわ)に、諏訪は呆れながらも榎沢を今一度見る。

 

(日佐人と同じくらいか?)

 

隊に所属していない為かC級の訓練服に身を包んだ少女。

綺麗な紫色の髪は両サイドで纏められて、ツインテールになっている。

まさに今どきの少女と言った感じで、とても戦えるようには見えなかった。

 

(どうすっかな…。)

 

「榎沢…だったかァ?生憎うちは隊員募集してねェんだ。悪ぃが…「お邪魔しまーす。」…おいコラ。」

 

諏訪の言葉を無視して榎沢は諏訪隊の作戦室にズカズカと入って行く。

 

「うわっ…これ雀卓ってやつ?作戦室で麻雀やってるの?」

 

「お前な、作戦室に勝手に入るんじゃねェ。」

 

そう言って諏訪は榎沢の頭をチョップする。

 

「あれ?諏訪さんお客さんですかって…榎沢?」

 

作戦室の奥から出てきた笹森が榎沢を見て尋ねる。

 

「なんだなんだ?知り合いか?」

 

「?…誰だっけ?」

 

榎沢は知らないらしい。

 

「ほら、同じクラスの笹森だよ。二学期からうちのクラスに編入してきた榎沢だろ?」

 

「あー…うん、そうかも。同じクラス同じクラス。」

 

「覚えてねえなテメー。」

 

「でもなんで榎沢がうちにいんの?」

 

笹森が尋ねた。

 

「あたし、諏訪隊に入るから。よろしくねー。」

 

そう言って榎沢はヒラヒラと手を振る。

 

「募集してねェつってんだろーが。」

 

そう言って諏訪は2度目のチョップを榎沢に落とす。

 

「えー、でもあたし強いよ?トリオンも高いし。」

 

榎沢は不貞腐れながらも自慢げにそう言った。

 

「多分〜…

 

 

…諏訪さんより強いかも。」

 

そう言った後、榎沢は笹森を一瞥した。

 

 

「…へぇ。そこまで言うならやってやるよ。」

 

「待ってください。」

 

それを止めたのは笹森だった。

 

「俺にやらせてください。」

 

笹森の目付きが鋭くなる。

 

「…わーったよ。…日佐人、相手してやれ。」

 

「はい…!」

 

 

 

──

 

「じゃあポイントの変動はなしの5本勝負だね。」

 

転送された市街地で、榎沢が目の前の笹森に話しかける。

 

「…ああ!」

 

笹森は力強く頷いて弧月を抜く。

 

 

──模擬戦5本勝負、スタート。

 

 

始まったと同時に笹森はカメレオンで姿を消した。

 

 

「わあ、それがカメレオンってやつ?」

 

榎沢はハンドガンを適当に撃つが、狙いが定まらず当たらない。

 

「全然当たらないや。」

 

その間にも笹森は榎沢との距離を詰める。

 

「じゃーあ…

 

 

 

 

 

 

…こっち♡」

 

「!」

 

そう言って榎沢が取り出したのは巨大なガトリング砲。

ボーダーだと、玉狛の木崎が使っているものだ。

 

「これなら関係ないよね。」

 

そう言いながら榎沢が艶やかな笑みを浮かべると、ガトリング砲の銃身が回転を始めた。

 

笹森はすぐさまカメレオンを解除し、シールドを張るがあまりの威力に一瞬で大破。

そのまま穴だらけになってしまった。

 

「くそっ…!」

 

 

──1-0

 

「よし!まずは1本。2本目行こっか。」

 

「っ…!」

 

笹森は先程のガトリング砲を警戒してか、引き気味に弧月を構える。

 

「アハハ、そんなに警戒しないでよ、あれはそんなに使い慣れてないから。さて…じゃあ次はどれで行こうかな?」

 

その言葉に笹森は身構える。

 

 

 

…その瞬間、1発の銃声。

 

「え…?」

 

笹森の額には1発の銃痕が。

 

 

「ダメだよ、そんなに距離とっちゃ。あたしに勝ちたいならまずは抜かせないようにしなきゃね。」

 

 

そのまま笹森は緊急脱出。

 

2本目も榎沢の点となった。

 

 

──

 

「おいおい、下手すりゃ弓場並みだぞ?今の早撃ち。」

 

見ていた諏訪が思わずタバコを落とす。

 

「さすがに日佐人じゃ不利すぎますね。」

 

堤は笹森に同情するように言った。

3本目も榎沢の早撃ちで、笹森は撃ち抜かれる。

 

「…まあ自画自賛するだけあるな。…にしても個人ポイント4000って…上がり立てじゃねェか…。」

 

そのまま模擬戦は終了。

笹森は一太刀も与えることが出来ず、榎沢の勝利となった。

 

 

 

──

 

「すいません、諏訪さん…!負けてしまいました…!」

 

笹森は悔しそうに頭を下げる。

 

「どーお?欲しくなってきた?」

 

「…テメー、日佐人をわざと挑発しやがったな?」

 

諏訪は目を細めて尋ねた。

 

「…なんの事ー?」

 

「しらばっくれんな。でもまあ…腕は確か見てーだな。」

 

諏訪は首を鳴らしながら榎沢に近付く。

 

「B級になったのはいつだ?」

 

「昨日。」

 

「昨日って…マジでB級成り立てじゃねえか!…入隊は?」

 

「3ヶ月くらい前かな…?」

 

「3ヶ月何やってたんだ…?」

 

「ちょっとねー。」

 

「はぁ…もういい。…トリオンが高ぇつったな。いくつだ?」

 

「えー、じゃあ教えたら入れてくれるの?」

 

「…それは聞かねえと何とも言えねェな。」

 

「うーん…じゃあ諏訪さんいくつ?」

 

榎沢は少し考えたあと尋ねた。

 

「俺ァ6ぐらいだった気がする。」

 

 

 

「じゃああたしはそれの倍だね。」

 

「「「!」」」

 

「へぇ…二宮や出水レベルって事ね…。…日佐人、おめーはどう思う?」

 

「俺は…負けましたから。何も言うことはありません…。」

 

「堤。」

 

そう言って諏訪は堤に視線を向けた。

 

「…いいんじゃないですか?他の隊に取られる方がやばい気がします。」

 

「なるほどなァ…後は小佐野だけだな。」

 

「あれ?て事は諏訪さんも認めてくれるの?」

 

「俺ァ勘は良い方なんだよ。テメーを逃したら後々後悔しそうだぜ。」

 

「…ふーん、あたしの前で(・・・・・・)勘が良いとか言っちゃうんだ。ますます気に入っちゃいそう。」

 

そう言って榎沢は笑みを浮かべる。

 

「て言うか榎沢ってボーダーだったんだね。ボーダーにはなんで入ったの?」

 

笹森が尋ねる。

 

「…逢いに来たんだ〜…

 

 

 

 

…あたしの神様に。」

 

 

 

──

 

「綾瀬川…少し話せるか?」

 

「…すごいくまだぞ?大丈夫なのか?」

 

話しかけてきた三輪に綾瀬川はそう返した。

 

「…問題ない。」

 

そう言って三輪は持っていた缶コーヒーを口に運んだ。

 

 

「…綾瀬川…この前は助かった。そして力及ばずすまなかった。」

 

そう言って三輪は頭を下げた。

 

「言ったはずだぞ。オレは城戸さんの指示に従っただけ。お前と同じだ。」

 

「…っ…だが結局近界民は迅の思い通り玉狛に収まった…!ブラックトリガーもだ…!」

 

三輪は悔しそうに握りこぶしを作る。

 

「迅や玉狛の連中は分かってない…近界民の恐ろしさを。」

 

三輪は4年前の大規模侵攻の際、唯一人の姉を失っている。

 

「…三輪…寝れてないのか?あれから。」

 

綾瀬川が三輪に尋ねる。

 

「…ボーダーに近界民がいるんだ…俺は…俺は不安で夜も眠れない…。」

 

三輪は悲痛そうにそう言いながら頭を抱えた。

 

…そして綾瀬川に尋ねた。

 

「…お前は何とも思わないのか…?」

 

 

「…思わないな。」

 

 

「!」

 

綾瀬川の言葉に三輪は目を見開く。

 

「…何だと?」

 

そして目を細めた。

 

「オレは城戸派だが近界民に恨みがある訳じゃない。」

 

そう言って綾瀬川は無機質な瞳を三輪に向けた。

 

「母親を殺されたんじゃなかったのか…?」

 

「会ったことないからな。母親を近界民に殺されたと聞いても特に何も思わなかった。」

 

そんな事をなんでもない様子で言ってのける綾瀬川。

三輪は思わず綾瀬川の胸ぐらを掴んだ。

 

「ふざけるな…近界民は…敵だぞ?」

 

「敵対するなら…な。オレの敵は敵だけだ。…分かるか?」

 

「っ〜!!」

 

そう言うと三輪は俺を射殺すように睨む。

そして、乱暴に胸ぐらを離すと歩いていった。

 

 

 

 

「…」

 

「お前は小南の件で反省しなかったのか〜?」

 

そう言って近付いてきた男は俺にぼんち揚げを渡してくる。

 

「…近界民への恨みなんてオレにはない。偽ってあいつと一緒にいるのも居心地が悪いからな。…三輪とは正直な関係でありたいと思っただけだ。…おかしいと思うか?」

 

そう尋ねながら俺は迅からぼんち揚げを受け取る。

 

「おかしくは無いけど…言い方とやり方ってもんがあるだろ?」

 

「…そうか…。で?何か用か?」

 

「そう警戒しなさんな。近々起こる大規模な侵攻についてだ。

 

…綾瀬川…お前さ…

 

 

 

 

 

 

 

…風刃、使ってみる気無い?」




榎沢一華トリガーセット

メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド(アサルトライフル)、free、シールド
サブ:アステロイド(ガトリング砲)、ハウンド(ハンドガン)、free、シールド


各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢一華)

諏訪洸太郎→興味。生意気。
堤大地→強い。興味。
笹森日佐人→負けました。クラスメイト。

諏訪洸太郎←気に入った。
堤大地←無関心。
笹森日佐人←無関心。クラスメイト(だったんだ。)


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邂逅

遅くなりすいません!
おそらく次回かその次から大規模侵攻編に入ると思われます。


「じゃじゃーん!どーお?諏訪さん。」

 

そう言って榎沢は諏訪の前で一回転する。

 

 

…榎沢の穿いていたスカートが風になびき裾が浮き上がる。

 

 

「…小佐野、デザインしやがったのはテメーか?」

 

「えー、可愛いじゃん。一華ちゃんの要望通りに作ったんだけど?」

 

小佐野は不貞腐れたように答えた。

 

白と黒のラインの入った濃い緑色のジャージタイプの隊服。

それは諏訪隊共通であり良かった。

 

問題は下。

 

隊服のズボンと同じ色のミニスカート。

足は黒のハイソックスに守られている。

 

「そんなもん着てランク戦出来るわけねーだろォが。作り直せ。」

 

「えー、でも下にパンツ穿いてるよ?

 

 

 

 

…見せたげよっか?」

 

榎沢はお世辞でもなく美少女。

その言葉に笹森は顔を赤くする。

 

 

「バーカ、ガキの下着なんざ興味ねェよ。小佐野、とっとと作り直せ。今日の防衛任務には間に合わせろよ。」

 

「えー…はぁい。」

 

 

 

 

「にしても…よく認めたな、小佐野。」

 

諏訪は小佐野にそう問いかけた。

 

「?、何が?」

 

「あいつの入隊だよ。お前の負担が1番でかいだろ?」

 

「だって強いんでしょ?だったら柿崎隊みたいにそれくらいは思い切らないと。」

 

「…まあ、柿崎隊の場合は迎えたのがバケモンだったけどなァ。」

 

諏訪は柿崎隊の綾瀬川を思い浮かべて呟いた。

 

 

「…ねえ、そのバケモンって誰の事?」

 

「「!」」

 

目の前にはいつの間にか榎沢が近付いていた。

 

「お、おお…換装し直したのか。」

 

そこには黒のハイソックスは健在だが、ミニスカートからショートパンツに変わった榎沢が立っていた。

 

「…まあいいんじゃねーか?」

 

「でしょ?…それよりさっき言ってた柿崎隊のバケモンって…

 

 

 

 

…誰?」

 

 

 

──

 

「今日は緑川が一緒なんだな。」

 

「お邪魔します、ザキさん!」

 

その日の防衛任務。

柿崎隊の巴虎太郎が風邪を引いてしまい、代わりに草壁隊の緑川駿がやって来た。

 

「ほら、うちのメンバー今スカウト旅行っちゃってるから。…よろしくね、あやせセンパイ、てるてるセンパイ。」

 

そう言って緑川は手を振った。

 

「じゃあ緑川は清澄と組んでくれ。文香は俺とな。」

 

「「了解。」」

 

「やっほーい!あやせセンパイとの防衛任務だー!終わったらランク戦ね!」

 

「へいへい、行くぞ。」

 

「うん!」

 

元気に返事をして、緑川は綾瀬川の後ろに続いた。

 

 

──

 

「最近みわセンパイと一緒にいるとこ見ないね。…何かあった?」

 

駿がオレに尋ねた。

 

「…別に何も無いぞ。あいつはA級の隊長だから忙しいんだろ。」

 

「ふーん…。あやせセンパイ分かりやすくなったね。…何かあったなら早めに仲直りしなよ。」

 

「…分かってるよ。」

 

 

『清澄先輩、緑川くん、門発生するよ。構えて。』

 

「りょーかいっ!あやせセンパイ、どっちが多く倒せるか勝負しよーよ。」

 

「何だそれ…まあいいけどな。」

 

そう言ってオレと駿はスコーピオンを構える。

 

「おっ、スコーピオン。…いいね…!」

 

 

──

 

「今日は助かったぜ、緑川。虎太郎の風邪が長引いたらまた頼む。」

 

そう言って柿崎は緑川に手を差し出した。

 

「うん。俺こそ楽しかったよ。俺もあやせセンパイと同じ隊でやってみたいな〜。」

 

そう言って緑川は口を尖らせた。

 

「里見と佐伯が拗ねるぞ…。」

 

綾瀬川は呆れたようにため息を吐いた。

 

 

そうしていると、柿崎隊の後に防衛任務を担当する隊がこちらにやって来る。

 

緑色の隊服の集団がこちらにやってきた。

 

「そういや次は諏訪隊でしたね。」

 

「よォ、柿崎。照屋もな。緑川も一緒だったのか。」

 

「うん!」

 

そして諏訪は綾瀬川に視線を移した。

 

「…綾瀬川もなァ。」

 

「…どうも。」

 

「そういや紹介するぜ。うちは1人増えたんだ。こいつァ…」

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは!綾瀬川センパイ♡あたしは榎沢一華!よろしくね。」

 

 

 

 

 

 

いつの間にか諏訪の後ろから移動した榎沢は綾瀬川に顔を近付けながら自己紹介をする。

 

「あ、ああ。綾瀬川だ…て言うか自己紹介したか?」

 

「やだなぁ、同じ学校の後輩ですよ。2年Bクラスの出席番号1番、綾瀬川清澄センパイだよね?」

 

「なんで日佐人は覚えてねえクセに綾瀬川の事はそこまで詳しいんだよ…。」

 

諏訪が呆れながら呟いた。

 

「前シーズンのランク戦見てからずーっとファンなんだ♡スーツの射手の人とかロン毛の凄いおじさんとの戦いとか私感動しちゃって。」

 

さらにずいっと榎沢は綾瀬川に近付く。

 

「二宮と東さんな。」

 

そう言いながら諏訪は榎沢の首根っこを掴んで引っ張る。

 

「ちょっと!あたし今綾瀬川センパイと喋ってるんだけど。」

 

「防衛任務までそんな時間ねェんだよ。後にしろ。つー訳でこいつはうちの新入りだ。次のシーズンから世話になるかもな。」

 

「本当は綾瀬川センパイと同じが良かったんだけど…ほら…綾瀬川センパイ以外に3人隊員がいるじゃん?」

 

明らかにトーンの下がった声の後に柿崎、照屋、緑川に冷たい視線を向ける。

 

「あ、俺柿崎隊じゃないからね。」

 

緑川がそう言った後、榎沢は冷ややかな視線を止める。

 

「…そーなんだ!よろしく〜。」

 

「よろしく。」

 

「ほら、とっとと行くぞ。」

 

そう言って諏訪は榎沢の頭をチョップする。

 

「本当はもっと話したかったんだけどな〜。あ、これあたしの連絡先ね。」

 

そう言って榎沢は綾瀬川に連絡先の書かれたメモを手渡す。

 

「じゃあ、またね、綾瀬川センパイ…?」

 

小悪魔のような笑みを浮かべて、榎沢は綾瀬川に手を振って諏訪の後に続いた。

 

 

──

 

「今のって榎沢さんだよね…。清澄先輩どういう知り合い?」

 

作戦室に戻ったオレに真登華が尋ねた。

 

「いや、さっき会ったばかりだ。真登華は知り合いなのか?」

 

「知り合いって言うか…同じ学校で同じ学年だから。丁度清澄先輩と同じタイミングで編入してきたんだけど…それから勉強も運動も常に1番。男子にも大人気だよ。友達はあんまりいないみたいだけど。」

 

「…そうか。」

 

「清澄のファンって言ってたな。…良かったな。」

 

「清澄先輩、いくら可愛いからって手出したらダメだよ?」

 

真登華がむくれながらオレに忠告する。

 

「そんな事しない…。…なんでむくれる?」

 

「なんでもなーい。…ほんとかなー?清澄先輩って無自覚天然KY表情筋死んでる系の女たらしだからな〜。」

 

 

 

 

「おいコラ。」

 

 

 

──

 

迅悠一が、大規模な侵攻を予知してから数日がたった。

起きた事とすれば、入隊式があった事。

そして、仮想戦闘訓練で、最速記録だった駿の4秒が大幅に更新された。

その記録は0.4秒。

風間さんと引き分けるものもいたらしい。

 

 

何気なくランク戦ブースに足を運んだ時だった。

 

何やら人だかりが出来ている。

 

「お!よう、綾瀬川!」

 

米屋がオレに話しかけてきた。

 

「米屋か…。なんなんだ?この人だかりは。」

 

「見てみろよ。」

 

そう言われて俺は視線をモニターに移す。

 

 

 

駿が8-2で負けていた。

 

 

 

 

その光景にオレは目を見開く。

 

「お、さすがのお前も驚くか?」

 

「…そりゃあな。」

 

そう言って歩き出した米屋に続く。

 

「よーし、白チビ。今度こそ俺と対戦「遊真、メガネくん。」」

 

米屋がいい切る前に、何やら2人を呼ぶ声が。

 

「!…迅さん!」

 

メガネの隊員が答えた。

2人を呼んだのは迅だった。

 

「どもども、ちょっと来てくれ。城戸さんたちが呼んでる。」

 

「城戸司令が僕たちを?」

 

「ふむ…誰?」

 

 

「あっ!迅さん!!」

 

そう言いながら駿は柵を飛び越え、階下に降りてくる。

 

危ないな…。

 

「迅さんS級やめたの?!じゃあ対戦しよ対戦!」

 

「お、相変わらず元気だな〜駿。」

 

駿の迅さん好きは健在らしい。

米屋が白髪の隊員に説明している。

 

「ほら、兄貴が来てるぞ。あいつにやってもらえ。」

 

そう言って迅はオレに視線を向けた。

 

「あやせセンパイ!」

 

そう言って駿はオレの元に駆け寄ってくる。

 

しかし、それよりも先にメガネの隊員に向き直った。

 

 

「…三雲先輩、すいませんでした。」

 

そうして頭を下げたのだ。

 

 

なんでも駿は玉狛、すなわち迅のいる玉狛に入った、メガネの隊員、三雲に嫉妬したらしい。

そしてギャラリーを集めてボッコボコ。

それに怒った、白髪の隊員、空閑が逆に駿をボコボコにしたらしい。

 

駿に8-2は村上先輩とかそんなレベルだろ。

 

そう思いながらオレは空閑に視線を向けた。

 

駿と話し終えた空閑は俺の視線に気づき、こちらに目を向ける。

 

「おや?1人知らない人が増えてる。」

 

「あなたは…あの時玉狛に来てた…。」

 

「綾瀬川だ。…そうだな…小南の知り合いだ。」

 

「み、三雲です!」

 

そう言いながら三雲は頭を下げる。

 

「ふむ、どーもどーも。はじめまして、あやせがわせんぱい。空閑遊真です。」

 

「…ああ…

 

 

 

 

 

…よろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

三雲修

 

空閑遊真

 

そして、榎沢一華

 

 

 

3人との出会いにより、無機質な天才の未来が大きく動き出した。

 

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

諏訪洸太郎→化け物。
榎沢一華→???
宇井真登華→無自覚天然KY表情筋死んでる系女たらし。モテるんだ〜ふーん。別に怒ってませんけど?
米屋陽介→本気でバトろーや!
三雲修→前玉狛に来てましたよね?
空閑遊真→はじめまして。

諏訪洸太郎←タバコ。ちょっと怖い。
榎沢一華←オレのファン?正気か。
宇井真登華←後輩。チームメイト。なぜ怒る?
米屋陽介←クラスメイト。ランク戦は今度な。
三雲修←メガネ。
空閑遊真←駿に勝ったやつ。強い、白い、小さい。

これからも読んでいただけると嬉しいです!


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榎沢一華①

遅くなりすいません!



「俺に頼みだと…?!

 

 

 

 

…断る。他を当たれ。」

 

「おいおい、話だけでも聞いてくれよ…。」

 

三輪の言葉に迅は呆れながらも食いつく。

 

「今回の大規模侵攻の流れのどこかでうちのメガネくんがピンチになる。その時に助けてやって欲しいんだよね。」

 

迅悠一は未来予知のサイドエフェクトを持っている。

 

「…三雲が?…なぜ俺に頼む?あんたなり玉狛の連中なり、それこそお供の近界民にやらせるなりすればいい。」

 

三輪の言葉に迅は口を尖らせる。

 

「そうしたいとこだけど、その時駆けつけられそうな人間がお前しかいないっぽいんだよな。」

 

「…」

 

三輪は少し考えたあと立ち上がる。

 

「三雲は正隊員だ。自分の始末は自分でつけさせろ。

 

 

…それが無理なら玉狛に閉じ込めておけ。」

 

そう言って屋上の出口に歩き出す。

 

「…城戸さんが…。」

 

その言葉に三輪は足を止める。

 

「風刃を誰に使わせるか悩んでるらしい。第一候補の風間さんが辞退したんだと。…木虎と嵐山も広報の仕事があるから無理だ。候補から外れた。」

 

三輪は振り返り、迅の言葉に耳を傾ける。

 

「今候補に上がってるのは9()人。加古さん、佐伯、生駒っち。片桐、雪丸、弓場ちゃん、鋼。

 

 

 

…そして綾瀬川とお前だ。」

 

「!」

 

 

綾瀬川と言う言葉を聞いて三輪は俯く。

 

「悩むまでもないだろう、綾瀬川に持たせるのが適任だ。あんたと同等かそれ以上に使いこなせるんじゃないか?」

 

「もちろん。綾瀬川にも聞いたよ。近々ある大規模侵攻ではあいつが持ってた方がいいかもしれない。…大規模侵攻では…ね。」

 

「…それで?」

 

「もしお前が俺の頼みを聞いてくれるなら…俺はお前を推薦する。」

 

「…何…?!」

 

「風刃があればお姉さんの仇を討ちやすくなるぞ?」

 

三輪は迅を睨んだまま黙る。

 

「パワーアップはできる時にしておいた方がいいだろ?」

 

「ふざけるな。あんたの一存でブラックトリガーの持ち手が決まるわけが無い。…話は終わりだ。」

 

「…お前はきっとメガネくんを助けるよ。

 

 

 

…俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

 

笑みを浮かべながらそう言う迅を一瞥し、今度こそ三輪は屋上を後にした。

 

 

 

──

 

あたしは『天才』だった。

勉強、スポーツ、どれをやらせても私にできないものなんてなかった。

それはあそこ(・・・)でも同じ。

周りの人間よりも頭1つ抜けたあたしの才能に、誰もが私を褒める…

 

 

 

 

…そう思っていた。

 

 

──1年前の最高傑作の方が凄かった。

 

──最高傑作を超えろ。

 

──最高傑作には及ばない。

 

 

待っていたのは比べられる毎日。

周りの人間はその最高傑作に対して憎悪した。

どうやっても超えられなかったから。

そして憎悪を抱き続けた人間は次々と脱落。

気づけばあたし1人だった。

 

 

…でもあたしはその最高傑作に対して憎悪なんて抱いたことは無い。

抱くわけない。

 

だって…

 

『天才』のあたしがたどり着けない領域に彼はいるのだから。

 

 

 

 

…それを『神』と呼ばずして他に何と呼ぶのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「榎沢って…アンタ?」

 

「…何?」

 

突然赤い髪の女に話しかけられた。

 

「アンタが榎沢かって聞いてんの。」

 

「…誰?尋ねるなら自分の方から名乗りなよ。」

 

その言葉に目の前の女はあたしを睨む。

 

「はあ?何?ふざけてんの?アタシよ。」

 

いや、知ってるでしょって感じで言われても…

 

「?…知らない。誰?」

 

「っ〜!香取よ!香取葉子!本当に知らないわけ?」

 

「初めて聞いたかな〜。で?あたしが榎沢だけど…何か用?」

 

「…ちょっと付き合いなさいよ。」

 

香取はイライラを隠すことなくあたしを誘う。

 

「いや、あたしこの後用事あるから早退なんだけど…。」

 

「諏訪隊の防衛任務はまだでしょ?サボりたいからって適当なこと言ってんじゃないわよ。」

 

「あれ?あなたもボーダーなんだ。」

 

「はあ?!B級8位、香取隊の香取よ!」

 

「いや、だから知らないって。ん?…あー、香取隊ってROUND5で綾瀬川センパイ達にやられた…」

 

「っ〜!いいから付き合いなさい!」

 

そう言って香取はあたしの腕を引っ張った。

 

 

 

 

「何〜?こんな人気の無いとこで。…カツアゲ?あんまりお金持ってないよ?」

 

「アンタ…なんでこの高校に来たわけ?」

 

「…なんでって…家の都合だけど?」

 

「アンタ成績いいんでしょ?進学校にでも行けば良かったじゃない。」

 

いまいち掴みどころの分からない質問。

 

「家からだとここの方が近いんだよね。…わざわざ呼び出して聞きたいことってそれ?」

 

「アンタなんでクラスで友達作らないわけ?」

 

「?…なんでそんなこと聞くの?」

 

「いいから答えなさいよ!」

 

そう言って香取はさらにあたしに詰め寄る。

 

「何?あたしと友達になりたいの?」

 

「は?怒るわよ?」

 

香取はあたしを睨みつける。

 

「そんなんだから孤立するのよ。ちょっと成績が良くて顔もまあまあ整ってるからって調子に乗らない事ね。」

 

「…あー…嫉妬?」

 

「っ…!!」

 

香取はあたしの胸ぐらを掴む。

 

「ちょ、どーどー…ぼーりょくはんたーい。」

 

「そう言う態度がムカつくのよ…!」

 

「いや、初対面の人にそんな事言われても…。…あ、そろそろ時間だ。ふふ、あたし達仲良くやれそうだね。」

 

「っ…ムカつくっ…!」

 

そう言ってあたしの胸ぐらを乱暴に離すと教室に戻って行った。

 

「…何ちゃんだっけ?

 

 

…暇なのかなぁ…。」

 

 

 

 

今度こそあたしは昇降口に歩き出す。

するとそこには見知った顔が。

 

「日佐人くーん。」

 

「榎沢。」

 

同じ隊の笹森くんに声をかける。

 

「一緒に行こ…嘘、ちょっと待って…。」

 

「?」

 

それよりも視界に写った光景に口を覆う。

そこには通学カバンを持った綾瀬川センパイが、外履きに履き替えていた。

 

そういえば大規模侵攻があるからとか言って防衛任務の人数を増やしたんだっけ。

しかもあたし達の時間は柿崎隊と被ってた気がする。

 

「ごめん、日佐人くん。あたし他の人と行くね!」

 

「あ、おい…!」

 

 

 

 

「綾瀬川セーンパイっ♡」

 

あたしは綾瀬川センパイに声をかける。

 

「っ…ビックリした。…榎沢…だったか。」

 

「うん!なんで連絡してくれないの〜?」

 

「え?…ああ、登録はしたんだが何を送るべきか迷ってな。」

 

 

何それ可愛い。

 

 

「もう、なんでもいいのに〜。」

 

「…榎沢も防衛任務か?」

 

「うん。柿崎隊と被ってたよね。…一緒に行かない?」

 

「別に構わないぞ。」

 

「やった…!」

 

そう言ってあたしは綾瀬川センパイの横を歩く。

 

──

 

「諏訪隊に入ったんだったか…ポジションはどこなんだ?」

 

気まずさを紛らわすようにオレは榎沢に質問する。

 

「えー…どこに見える?」

 

「え…そうだな…。」

 

オレは榎沢を見る。

 

「意外と攻撃手だったりするんじゃないか?」

 

「残念。正解は…」

 

そう言うと榎沢はオレに人差し指を向けて拳銃の形を作る。

 

「銃手か…?」

 

「そ。綾瀬川センパイは銃手トリガー使わないの?」

 

「オレは射手用のトリガーの方が向いてるからな。」

 

「へえ…あたし使ったことないや…。そうだ!防衛任務終わったらあたしに射手教えてよ。」

 

まさかの提案を受ける。

 

「…オレがか?そうだな…オレよりも本職に習った方がいいぞ。1人紹介出来るやつがいる。弾トリガーが好きないわゆる弾バカだけど腕は確かだ。」

 

オレは出水を思い浮かべて提案する。

 

「えー、あたしは綾瀬川センパイに教えてもらいたいな。」

 

榎沢は不貞腐れながらそう言った。

 

「…分かった。防衛任務の後は特に予定はないからな。」

 

「!、本当に!?」

 

「ああ。さっきも言ったが本職じゃないから上手く教えられるかは分からないけどな。」

 

「じゃあそれが終わったら一緒にご飯食べに行こうよ!あたしこの街来たばっかだから色々教えて欲しくて。」

 

榎沢は上目遣いでさらに提案する。

 

「…別に構わないが…それこそ諏訪さんとかに聞いた方がいいんじゃないか?」

 

「いいの。」

 

そう言って榎沢は嬉しそうにオレの前を走る。

 

「そうと決まったらほら!早く防衛任務終わらせちゃおうよ。」

 

「シフト制だから早く行っても終わる時間は変わらないぞ…。」

 

──

 

目的は忘れてない。

 

目の前にいるのは『神』であり『敵』だ。

 

でも…

 

 

やっぱりあたしにとっては憧れ…

 

いや、憧れや尊敬なんかじゃ弱すぎる。

 

あたしはこれまでずっと『崇拝』してきたんだから。

 

 

自然と口元が緩む。

 

 

 

しかし、その直後、あたしの()がそれを察知する。

 

 

「…急ごう、綾瀬川センパイ。」

 

「?…だからシフト制だって…」

 

「違う…

 

 

 

 

…来るよ。」

 

 

 

 

その直後、暗く分厚い雲が警戒区域の空を覆い始めた。

 

…そして無数のゲートが発生する。

 

 

 

あたしと綾瀬川センパイの携帯端末が緊急呼び出しを鳴らす。

 

 

「…緊急呼び出し…迅さんの言ってた大規模な侵攻か?悪いな榎沢。街の案内は出来なそうだ。…トリガー起動(オン)。」

 

そう言って綾瀬川センパイはトリガーを起動する。

 

あたしもトリガーを起動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふーん…

 

 

 

 

 

…邪魔するんだー…。」




榎沢一華パラメーター

トリオン 13
攻撃 9
防御・援護 5
機動 8
技術 8
射程 7
指揮 2
特殊戦術 1
TOTAL 53


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大規模侵攻 〜開戦〜

遅くなりすいません!
今回より大規模侵攻編が開始致します!
まず先に言っておくとオリジナルです!
マジでめちゃくちゃオリジナルになるかもしれません。
色々構想していた為投稿が遅れました。
賛否両論あると思いますが私自身が書きたいと思ったので。
それでもいいよって方はどうぞ。


ゲートの数は依然増していく。

そこからは今までに見た事もない数のトリオン兵が出てくる。

市街地に入られないよう、大規模な防衛作戦が忍田本部長により発令された。

 

『諏訪隊、現着した!近界民の駆除を開始する!』

 

『鈴鳴第一現着!戦闘開始…!』

 

『東隊現着。攻撃を開始する。』

 

『生駒隊現着。近界民の処理を開始する。…今のめっちゃカッコよない?あ、通信切ってへんかっ…』

 

『二宮隊現着した。…処理を開始する。』

 

『柿崎隊現着した!戦闘開始する!』

 

その他にも、風間隊、嵐山隊のA級二部隊。

荒船隊、茶野隊などのB級部隊数隊が現着する。

 

 

 

 

──

 

B級11位諏訪隊

 

「おい榎沢、単独で動くんじゃねえよ!」

 

「…」

 

諏訪の制止の声を無視して諏訪隊銃手、榎沢一華はトリオン兵の群れに単身突撃。

次々とトリオン兵を蜂の巣にして行く。

 

 

 

 

「あたしと綾瀬川センパイの時間を邪魔したんだから…まだまだ憂さ晴らしの相手になってもらわないとね〜?」

 

 

──

 

B級4位生駒隊

 

「旋空弧月…!」

 

生駒隊隊長、生駒達人の旋空がトリオン兵をまとめて両断する。

 

「イコさん、ここ仮想マップやないんやからそんなバカスカ家切っちゃダメですよ。」

 

射手の水上敏志が忠告を入れる。

 

「マジで?…じゃあ…」

 

そう言うと生駒は縦に弧月を振った。

 

 

「縦なら問題ないやろ…!」

 

 

「いや結局家切れてますやん。」

 

 

 

──

 

B級2位二宮隊

 

「辻、犬飼。今までの防衛任務とは訳が違う。囲まれないように注意して戦え。単体が弱くても囲まれれば一気に落とされるぞ。氷見、他のチームの状況や、戦況は逐一報告しろ。」

 

二宮隊隊長、二宮匡貴は部下の3人にそう指示した。

 

「犬飼、了解。」

 

「辻、了解。」

 

「氷見、了解。」

 

B級トップクラスの部隊は目の前の敵に視線を向ける。

 

…そして、射手の王の蹂躙劇が幕を開けた。

 

 

──

 

B級1位柿崎隊

 

「うじゃうじゃいやがるな…。」

 

大量のトリオン兵を前に柿崎は呆れたように言った。

 

「二手に分かれますか?」

 

柿崎隊万能手、巴虎太郎が柿崎隊隊長、柿崎国治に尋ねた。

 

「そうだな。清澄は虎太郎と、文香は俺。いつも通りで行くぞ。」

 

「「「了解。」」」

 

 

──

 

「ちっ…榎沢の奴…。」

 

少し離れた場所で、トリオン兵を駆逐する榎沢に視線を向けて、諏訪は悪態を吐いた。

 

「どうしますか?俺、援護に回った方がいいですか?」

 

諏訪隊銃手、堤大地が諏訪に尋ねた。

 

「あー…ほっとけほっとけ。あいつはムカつくが実力は確かだ。…ムカつくがなァ。あいつが暴れる事で他の隊の負担も減らせる。…だがまァ…小佐野、あいつに何かあったら直ぐに報告しろ。」

 

『ほいほーい。』

 

 

『諏訪さーん。』

 

すると榎沢本人からの通信が入る。

 

『あ?どうした?限界か?』

 

『違うし。…来るよ。』

 

『は?』

 

『…ヤバいのが。

 

 

…あたしの()だけどね。でも…』

 

 

 

その瞬間、諏訪の近くのバムスターの装甲がひび割れた。

 

 

 

 

『あたしの勘ってよく当たるから。』

 

 

──

 

B級7位東隊

 

 

「なんだ?こいつもトリオン兵か?」

 

東隊攻撃手、奥寺常幸はバムスターの中から出てきた見たことも無いトリオン兵に身構える。

 

 

(新手の群れか?…少し間合いが近すぎるな…。)

 

東隊隊長、東春秋はじっくりと新型を見定める。

 

「東さんは向こうをやってください。ここは俺らが…「奥寺!!」」

 

東の声に振り返ると、そこにはいつの間にか距離を詰めた新型が立っていた。

そしてその大きな腕を奥寺目掛けて振るった。

 

「なっ…!」

 

とんでもない衝撃に、奥寺は家屋をいくつも突き破りながら吹き飛ばされる。

 

『奥寺!応答しろ!!』

 

『だ、大丈夫です…!』

 

「この野郎…!!」

 

奥寺と同じく、東隊の攻撃手である、小荒井登は新型目掛けて切りかかる。

 

「止せ!小荒井!奴の狙いはチームの分断だ!奥寺が戻るまで待て!」

 

しかし、東の制止虚しく、小荒井は新型に簡単に捕まってしまう。

 

そのまま新型は小荒井の腕をもいだ後、胸部を広げた。

 

「な、なんだこれ?!東さん…!!」

 

「ちっ…!」

 

東は新型目掛けてアイビスを放つ。

 

 

 

…しかし、アイビスは手の装甲に弾かれた。

 

 

(!…アイビスを弾いただと…?)

 

「…」

 

東は小荒井に標準を合わせて、小荒井の頭部を撃ち抜いた。

 

 

 

『…忍田さん、こちら東!』

 

東は本部長である、忍田に通信を入れる。

 

『新型トリオン兵と遭遇した!サイズは3m強、人に近い形態で二足歩行。小さいが戦闘能力は高い!…特徴として隊員を捕らえようとする動きがある!各隊警戒されたし!以上!』

 

『隊員を捕らえる?…分かった、増援まで凌いでくれ!』

 

 

──

 

「隊員を捕らえる新型トリオン兵…?」

 

「なるほど、そういうことか。」

 

三雲修の問いに答えたのは、空閑遊真のお目付け役である、自立型トリオン兵、『レプリカ』だった。

 

 

『シノダ本部長。その新型はおそらくかつてアフトクラトルで開発中だった捕獲用トリオン兵、「ラービット」だ。』

 

『!…捕獲用?…捕獲は大型の役目じゃないのか…?!』

 

レプリカの言葉に忍田は尋ねた。

 

『役目は同じだが標的が違う。

 

 

 

…ラービットはトリガー使いを捕獲する為のトリオン兵だ。』

 

『なんだと…?!』

 

『他のトリオン兵とは別物の性能と思った方がいい。A級であっても単独で挑めば食われるぞ。』

 

 

 

──

 

「新型?まさかこいつの事ちゃうやろーな?」

 

基地南東部。

他のトリオン兵の残骸から出てきた新型を目の前に生駒隊は警戒態勢を整える。

 

「アイビスも凌ぐくらい硬いらしいですわ。」

 

『ありゃ?じゃあ俺のライトニングとイーグレットじゃ意味なそうですやん。』

 

水上の言葉に、遠くで狙撃をしていた、生駒隊狙撃手、隠岐孝二は冷や汗をうかべる。

 

 

忍田の通信を聞いた生駒隊は新型トリオン兵、ラービットと対峙していた。

 

「海、先走ったらアカンで。連携攻撃でやりましょう。」

 

「せやな、俺の旋空も効くか分からへんし。

 

 

…こいつは全員でやらなヤバそうやな。」

 

 

 

生駒隊VS新型トリオン兵ラービット

 

 

──

 

同じく南東、二宮隊

 

『二宮さん、生駒隊、東隊、諏訪隊、柿崎隊、鈴鳴第一が新型との戦闘を開始しました。』

 

『ああ。そのようだな。』

 

そう言いながら二宮は目の前に現れた新型に視線を移す。

 

「辻、犬飼。掴まれないように警戒しろ。辻は予期せぬ攻撃に備え俺の援護、犬飼は時間を稼げ。…火力で削り殺す。」

 

そう言いながら二宮はトリオンキューブを2つ作り出した。

 

「「了解…!」」

 

 

 

二宮隊VS新型トリオン兵ラービット

 

──

 

『隊長、新型が現れました。戦闘開始します。』

 

本部基地南。

柿崎隊の万能手である綾瀬川清澄と巴虎太郎は新型トリオン兵と対峙していた。

 

『分かった!こっちは新型はまだいねえがトリオン兵の数が多い。そのトリオン兵は分かってないことが多い。…無理はするな。俺と文香が着くまで持ちこたえてくれ!』

 

『『了解。』』

 

 

「…まずは様子見…か。」

 

そう言いながら綾瀬川はトリオンキューブを生成する。

 

「捕獲用なら近距離はやめておいた方が良さそうですね。」

 

そう言いながら巴はハンドガンを構える。

 

「装甲が硬いらしい、合成弾で崩す。虎太郎は援護してくれ。」

 

「了解。」

 

 

 

 

綾瀬川&巴VS新型トリオン兵ラービット

 

 

──

 

本部基地北東。

 

諏訪隊は現れた新型トリオン兵、ラービットと交戦していた。

 

「くそっ!アホみてーに堅えなオイ!」

 

諏訪、堤によるショットガン乱射。

しかしそれでもラービットの硬い装甲は崩せずにいた。

 

「日佐人、こじ開けろ!」

 

 

『了解…!』

 

諏訪隊の攻撃手笹森日佐人がラービットの上から弧月を突き立てた。

 

 

しかし、その瞬間、ラービットの頭から突起が現れる。

 

 

「なっ…!」

 

 

そしてその突起から放たれたのは電撃だった。

 

「かっ…」

 

 

「日佐人…!」

 

『くそっ、榎沢!てめぇ今どこにいやがる?!』

 

『あー…新型?と交戦中〜。2体いるからそっちには行けないかも。』

 

「2体?!くっそ…野郎…」

 

そう言いながら諏訪はラービットにショットガンを向ける。

 

「吹っ飛べ…!」

 

そう言って諏訪はラービットにショットガンを放った。

その間に堤は笹森を回収。

 

 

しかし、その爆風を抜けて、ラービットの大きな腕が諏訪を捕らえた。

 

「うおっ…!」

 

そのまま諏訪はラービットの胸部に取り込まれてしまった。

 

 

「諏訪さん…!」

 

そして、ラービットは次なる標的、堤と笹森に襲いかかった。

 

 

 

 

 

「あれ?思ったより小さいですね。」

 

「舐めてかかるなよ。見た目より手強いぞ。」

 

「分かってますよ。いきなり退場はもうコリゴリだ。」

 

そう言いながら諏訪隊の3人はラービットに視線を向ける。

菊地原、歌川が笹森と堤を救出していた。

 

「か、風間さん…!俺らより榎沢を!少し南に行ったところで榎沢が…ツインテールの隊員が新型2体と交戦しています!」

 

堤は風間にそう訴える。

 

「ああ。だが加勢は必要ないと判断した。…それだけだ。」

 

 

 

A級3位風間隊VS新型トリオン兵ラービット

 

 

 

──

 

「ふう…少し休憩っと…。」

 

そう言って諏訪隊銃手榎沢は近くの瓦礫に腰をかける。

 

「綾瀬川センパイは基地南部かあ…諏訪さんたちのところには小さい人が向かったし…あたしも南に行こーかなぁ?」

 

そう言って榎沢は立ち上がる。

 

「それにしても…」

 

榎沢は後ろに視線を向ける。

 

 

 

 

そこには穴だらけになったラービットが2体転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより弱かったなぁ…。」

 




オリジナル要素として、二宮隊、生駒隊が参戦しております。
使わなきゃ勿体ねぇよ忍田さん…!
まあB級は全員揃うまで待機だったらしいですけどね。
全員揃ったってことで。



大規模侵攻各隊員トリガー構成

綾瀬川清澄

メイン:弧月、旋空、アステロイド、シールド
サブ:バイパー、アステロイド、スコーピオン、シールド


巴虎太郎

メイン:アステロイド(ハンドガン)、弧月、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド(アサルトライフル)、グラスホッパー、シールド


榎沢一華

メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド(アサルトライフル)、メテオラ(グレネードガン)、シールド
サブ:アステロイド(ガトリング砲)、ハウンド(ハンドガン)、グラスホッパー、シールド


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大規模侵攻 〜篇首〜

遅くなりすいません。
投稿致します。


「…ギムレット。」

 

本部基地南東。

二宮隊とラービットの戦闘。

二宮の作り出したアステロイドとアステロイドの合成弾、徹甲弾(ギムレット)が、ラービットの装甲を削る。

体勢が崩れたラービットに犬飼がすかさずアステロイドを乱射。

ラービットは口をガッチリ閉じて弱点を守った。

 

「いや、ホントに他のトリオン兵とは別格ですね。」

 

「俺の合成弾がかなり効く。もう一度ギムレットで崩す。辻、援護しろ。犬飼は注意を引け。注意を引くだけでいい。近付きすぎるな。捕まったら終わりだぞ。」

 

「「了解…!」」

 

犬飼は間合いを取りつつ、アステロイドを乱射。

煩わしく思ったラービットは犬飼と距離を詰める。

 

「どわっ、あっぶな。」

 

さらに掴もうと伸ばした腕を伸びた弧月で弾かれる。

 

「ナイス辻ちゃん。」

 

 

その間に二宮の合成弾が完成する。

 

「ギムレット。」

 

放たれたトリオンの嵐。

ラービットはたまらず崩れる。

 

その隙を狙って、辻の弧月、犬飼のスコーピオンがラービットの口の装甲を切り飛ばした。

 

 

 

「…メテオラ。」

 

そのまま8つに分割された二宮のメテオラが、ラービットを今度こそ吹き飛ばした。

 

 

『こちら二宮隊、対象の沈黙を確認。…本部長…?』

 

 

──

 

「イコさんの旋空かなり効きますね。」

 

「せやな、あっちもそれを警戒してイコさんとの距離詰めたがってるしな。」

 

同時刻、本部基地南東、生駒隊。

生駒隊攻撃手、南沢海の言葉に水上はそう返した。

 

「任せといてくださいっ!俺のグラスホッパーでイチコロっスよ!」

 

南沢が元気よくそう言った。

 

「アホか。掴まれたら終わりやゆーとるやろ。マリオ、他の隊はどーなっとんの?」

 

水上はオペレーターである細井真織に尋ねた。

 

『風間隊、二宮隊、柿崎隊の綾瀬川クンと巴クンが新型と戦闘開始しとるわ。』

 

『りょーかい。どこも大丈夫そうやな、柿崎隊んとこもきよぽんおるし。』

 

そう言いながら水上はトリオンキューブを分割。

アステロイドを放った。

 

「あかんわ。硬すぎやろこいつ。」

 

「詰められたら不利やな。もしもし、隠岐くーん?」

 

『ハイハイ。他のトリオン兵は問題ないですよ。俺が見ときますんで。あ、逃げ遅れた猫さんおるやん。おいで〜。…あ〜…行ってもうた。』

 

『何遊んどんねん。手、空いたら手伝いーや。』

 

『りょーかい。』

 

伸ばされる大腕を生駒は弧月で受け流し、距離をとる。

 

「メテオラ…!」

 

水上は生駒が距離を取った瞬間に、メテオラで視界を塞ぐ。

 

 

「…旋空弧月。」

 

生駒の代名詞、生駒旋空。

伸びた弧月が、ラービットの腕を落とす。

 

「ナイスです、イコさん。」

 

水上はさらにメテオラで追撃をかける。

 

「嘘つき使わへんの?」

 

生駒が尋ねた。

 

「いや、トリオン兵相手にやったって意味無いでしょ…。…隙、見逃さんといて下さいよ。メテオラ…!」

 

さらに爆撃による追撃。

 

「海!」

 

「りょーかいッス!」

 

南沢のグラスホッパーで、生駒は近くの家屋の屋上に飛び乗る。

 

「旋空弧月。」

 

しかし、流石は新型。

視界の中にうっすら移った生駒の旋空を間一髪で躱す。

 

 

 

「…ええ釣りですわ、イコさん。」

 

銃声1発。

 

隠岐の放ったイーグレットがラービットの口を撃ち抜いた。

 

 

──

 

「数が増えたな。ここは引いた方がいい。」

 

「でも、ここを通したら千佳達が…!」

同時刻。

基地のすぐ南西。

玉狛所属のB級隊員、三雲修は数が増えたトリオン兵を相手にしていた。

レプリカの言葉に、修はそう返した。

 

「B級は全員合流せよとの指示が出ている。1箇所ずつの各個撃破に切り替えたらしい。確かにB級単体では新型に捕まる可能性が高い。」

 

「1箇所ずつ…?!じゃあその間他の場所は…?!千佳達はどうなるんだ?!」

 

「トリオン兵の排除は避難の進んでいない箇所が優先される。避難の進んでいる千佳達は後回しにされると思われる。」

 

「そんな…!」

 

その時、近くの建物が壊される。

 

そこから現れたのは新型トリオン兵、ラービットだった。

 

「っ…新型…!」

 

振るわれた大きな腕。

レイガストのシールドモードで受け止めるが、あまりの衝撃に押し倒される。

 

 

『強』印(ブースト)五重(クインティ)。」

 

 

その瞬間、横からのとんでもない衝撃で、ラービットは吹き飛ばされる。

ブラックトリガーを身にまとった遊真が立っていた。

 

「空閑!」

 

「こいつかってーな。」

 

「お前…ブラックトリガーは使うなって言ったろ!ぼくや林道支部長じゃ庇いきれなくなるぞ!」

 

修はブラックトリガーを使った遊真に詰寄る。

 

「けどこのままじゃチカがやばいんだろ?」

 

「!」

 

「出し惜しみしてる場合じゃない。一気に片付けるぞ。」

 

そう言った瞬間、銃撃が遊真を襲う。

 

「!」

 

「命中した!」

 

「やっぱこいつボーダーじゃねえぞ!人型近界民だ!」

 

『本部、こちら茶野隊!人型近界民と交戦中!』

 

B級19位茶野隊。

遊真を撃ったのは茶野隊の2人だった。

遊真の事を敵だと思っているようだ。

 

「そこのメガネ!早く逃げろ!」

 

「なっ…違…」

 

その時、茶野隊の横に手負いのラービットが迫る。

 

「しまった!新型?!」

 

すぐに銃を向けるが、茶野隊の藤沢がラービットに捕まってしまった。

 

 

しかし、そこに弾幕が降り注ぐ。

 

 

「…目標沈黙!」

 

「あ、嵐山さん…!」

 

「三雲くん!無事か?!」

 

そこに現れたのは嵐山隊、嵐山、時枝、木虎の3人だった。

茶野隊を説得するとこちらに降りてくる。

 

『本部!新型を一体討伐した!…本部…?』

 

繋がらない通信を不思議に思い本部に目を向ける。

 

 

 

 

…そこには爆撃型トリオン兵、イルガーが本部に迫っていた。

 

 

 

──

 

「爆撃型トリオン兵接近!」

 

「砲台全門撃ちまくれ!」

 

ボーダー本部通信司令室。

爆撃型トリオン兵、『イルガー』の接近に、鬼怒田は声を荒らげた。

 

「一体撃墜!もう一体が来ます!」

 

「衝撃に備えろ…!」

 

忍田の言葉の直後。

 

イルガーが本部基地に衝突。

大爆発を起こした。

 

 

 

…しかし、本部基地は無傷。

 

「ふぅ…この間の外壁ぶち抜き事故以降、装甲の強化にトリオンを使って正解だったわい。」

 

「第二波、来ます!3体です!」

 

「装甲の耐久度は?!」

 

忍田が鬼怒田に尋ねた。

 

「後1発までは何とかもたせる!」

 

「一般職員はシェルタールームに退避!迎撃砲台に限界までトリオンを回せ!砲撃を集中!1体だけでいい、確実に撃墜しろ!」

 

「!…いや、1体だけでは…」

 

根付がそう呟いたと同時にイルガーが1体撃墜される。

 

「1体撃墜確認!残り2体…!」

 

「忍田本部長!2発は保証せんぞ!」

 

「…問題ない。

 

 

…残りは1体だ。」

 

 

 

──

 

本部基地屋上からグラスホッパーを使って飛び上がる影が1つ。

 

そのまま、弧月を2本抜き、クロスさせ、イルガーを斬り裂いた。

 

 

 

『太刀川…!!』

 

NO.1攻撃手太刀川慶。

太刀川の放った旋空で、イルガーは1体撃墜された。

 

──

 

「通信繋がらんと思ったら…えっぐ。さすがやな、太刀川さん。」

 

基地のすぐ南東。

ちょうど上空で撃墜されたイルガーを見て、水上が呟いた。

 

「隠岐、海…グラスホッパー貸しーや…!」

 

それを見ていた生駒は瞳の奥を輝かせる。

 

「あらー、火ぃ着いちゃいました?」

 

そう言いながら隠岐はグラスホッパーを展開。

 

「ワクワクして来たッス!」

 

南沢も上空に向けて、グラスホッパーを展開した。

生駒はそれに足を乗せ飛び上がる。

 

 

 

 

 

「…旋空弧月…!」

 

 

──

 

「もう1体が来ます!」

 

「衝撃に備えろ…!」

 

その瞬間、イルガーは真っ二つに両断された。

 

 

 

モニターにドアップで映ったのはNO.6攻撃手、生駒達人だった。

 

「生駒…!」

 

「おお…!太刀川…!生駒…!」

 

「…何故カメラ目線…?」

 

カメラ目線の生駒を見て根付が呟いた。

 

「後続は?」

 

「ありません!」

 

「よし…今のうちに外壁の強化を。次に警戒しろ。」

 

そう言うと今度は太刀川に通信を繋ぐ。

 

『慶、お前の相手は新型だ。切れるだけ切ってこい。』

 

『了解。』

 

『生駒隊は二宮隊と合流。南東の守備を任せる。指揮は二宮が執れ。』

 

『『了解。』』

 

「本部長、南東は新型が多い。大丈夫なんですか?」

 

根付が尋ねた。

 

「問題ない。二宮隊、生駒隊はそれぞれ新型を討伐している。それに…

 

 

 

 

 

 

…南東にはあの男がいる。」

 

 

──

 

「…なんでお前がここにいるんだ?諏訪隊は東を担当してるんじゃなかったか?諏訪さんは捕まったって聞いたぞ?」

 

その質問にオレに覆い被さる少女は笑みを見せる。

後ろには先程まで戦っていたラービットが穴だらけで転がっていた。

 

「諏訪さん捕まったんだ。…ウケる。」

 

「こんなことしてる場合じゃないだろ…どいてくれ…榎沢。」

 

その質問に、榎沢はさらに微笑む。

 

「それはこっちのセリフだよ。…なんで手…抜いてるの?出し惜しみしてる場合じゃないでしょ…?チームメイトも緊急脱出しちゃったじゃん。」

 

「…何を言ってる。…オレは…」

 

「あたしは知ってるよ。綾瀬川センパイはこんなもんじゃないって。…もしかして怖いの…?みんなに怖がられるのが。」

 

「…っ…何言って…」

 

言いかけたところで、榎沢はさらに身体を密着させる。

そしてオレの胸に耳を当てた。

 

「あたしは怖がったりしない。あたしだったら綾瀬川センパイに合わせられる。あたしだけが理解してあげられる。

 

 

 

 

…ねえ、柿崎隊やめよーよ。あたしと隊組も?」




めちゃくちゃ迷ってることがあるんですけど…アフトクラトル側にオリキャラ出そうかなって。

でもそうすると結構矛盾点とかも出てきそうで怖くて…


反対意見も多そうw


皆さんどう思います…?


感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜躍動〜

投稿遅くなりすみません。
前の話でちらっとしたオリ敵ですが、多分出さない方向で行くと思います。
まあ矛盾点とか、原作キャラとの兼ね合いも考えて。



ボーダー本部司令室

 

「城戸さん…1つ確認しておきたい。」

 

三雲修、木虎藍にC級部隊の援護を任せた後、忍田真史は城戸に向き直る。

 

「…何をだ…?」

 

「城戸さんの直属の部下…綾瀬川清澄について。今回彼の指揮権は誰にある…?」

 

「…無論…私だ。」

 

「どこまで彼を使うつもりなんだ?規模によっては出し惜しみしている場合ではない。柿崎隊の巴隊員が緊急脱出した。…彼は同じ隊の隊員が緊急脱出しても本気を出していない。」

 

その言葉に城戸は目を閉じる。

 

「…分かった。清澄…いや…

 

 

 

 

 

…綾瀬川の指揮権は忍田くん…君に任せる。」

 

 

 

──

 

「所詮お前は失敗作。最高傑作(清澄)には程遠い。故に…お前には何も期待していない。」

 

あそこを出る時。

あたしはそう告げられた。

 

当たり前じゃん。

あたしが綾瀬川センパイに及ぶわけない。

 

 

 

あんなにも無機質で…

 

 

あんなにも美しいのだから。

 

 

 

 

 

──

 

「ダメだよ…綾瀬川センパイ。最高傑作の綾瀬川センパイがそんなに弱くちゃ。」

 

「!…榎沢、お前…まさか…」

 

「あたしは強くて無機質な綾瀬川センパイが大好きなんだから…。」

 

うっとりと笑みを浮かべながら榎沢はそう言った。

近くの建物が壊れる。

 

オレの嫌な予感は的中する。

そこに現れたのはラービットだった。

 

「…おい、来たぞ。新型だ。退くかそいつを片付けてくれ…。」

 

「退いてどうするの?二宮隊と生駒隊が来るまでのらりくらりやり過ごす?」

 

「さっきみたいにお前が蜂の巣にしてくれると助かるんだけどな…。」

 

「…ふーん。本気でやる気ないんだ?」

 

そう言うと榎沢はオレの上から離れる。

 

ラービットはこちらに気付くと普通のトリオン兵とは比にならない速度で襲いかかってきた。

 

榎沢はラービットを一瞥するとこちらに視線を向ける。

そして静かに微笑んだ。

 

「これはあんまりやりたく無かったけど…綾瀬川センパイが悪いんだよ…?」

 

意味が分からない。

この女は一体何を言ってるのか。

 

 

「ふふ…

 

 

 

 

…トリガーOFF。」

 

 

「!」

 

──

 

分かってる。

こんな事してもきっと綾瀬川センパイはあたしを助けない。

 

相手はあの白い部屋の最高傑作。

 

あたしなんてただの道具の1つ。

死のうが壊れようが関係ない。

 

だからきっと綾瀬川センパイはあたしの事を見殺しにする。

 

迫り来るラービット。

あたしは振り返り綾瀬川センパイに笑みを向ける。

 

 

「…さて、どうするのかなー?綾瀬川センパイ♡」

 

 

 

 

 

 

──刹那、あたしは浮遊感に襲われる。

 

 

気付くとあたしは、ラービットの真上を飛んでいた。

 

顔をあげると、そこには綾瀬川センパイの顔がすぐ近くに。

あたしは綾瀬川センパイに抱き抱えられていた。

 

ラービットは急所を的確に切り裂かれ、その場に崩れた。

 

 

「馬鹿な真似はやめて早く換装し直せ。」

 

 

ああ、この目だ。

この無機質な瞳があたしは大好きなんだ。

でも…

 

 

 

「なんで…?なんであたしを助けたの…?あの人の道具のくせに。あたしだって…「その件を含めて」っ!?」

 

「お前には聞きたいことがある。…それに…オレはボーダー隊員だからな。」

 

酷く冷たい目だ。

そんな事、そんな目で言うことじゃない。

 

「早く換装してくれ…。」

 

「綾瀬川センパイ…。」

 

あたしの呼び掛けに綾瀬川センパイはこちらに無機質な目を向けた。

 

そんな綾瀬川センパイの胸にあたしは顔を埋める。

 

 

 

 

 

 

「もうちょっとこのままじゃダメ?」

 

 

「お前な…。」

 

 

 

 

──

 

『綾瀬川くん、聞こえるか?忍田だ。』

 

『…聞こえてますよ。』

 

『城戸司令より、君の指揮権を私が預かった。』

 

『…了解。俺は何をすれば?』

 

『君には東率いる南部のB級連合に合流してもらう予定だったが…君の位置的に南東部、二宮指揮の二宮隊と生駒隊の合同部隊に合流してくれ。』

 

『…諏訪隊の榎沢と一緒なんですが彼女はどうします?』

 

『…何故諏訪隊がそこにいるんだ?』

 

『オレに聞かれても困ります。』

 

『…諏訪隊の堤、笹森は風間隊が取り戻した諏訪のトリオンキューブを持って本部に帰還している…仕方あるまい、君と一緒に二宮隊、生駒隊と合流してくれ。』

 

『了解。』

 

『綾瀬川くん…

 

 

 

…出し惜しみする必要は無い。…新型を蹴散らせ。』

 

 

 

 

その言葉を聞いて綾瀬川は通信を切る。

 

「上からの命令だ、榎沢。新型を蹴散らせ…だと。…足引っ張るなよ。」

 

「ふふ、引っ張るわけないじゃん。綾瀬川センパイに合わせられるのはあたしだけなんだから…!」

 

 

 

本部基地南東部。

 

 

 

…白い部屋の怪物達が解き放たれた。

 

 

 

──

 

「ひゃー、えぐい数やな…。新型だけ相手してたらどんどん市街地に流れ込むで…。」

 

生駒隊隊長、生駒達人は崩れた家屋の瓦礫の上でトリオン兵の群れを見渡す。

 

「俺、犬飼、生駒、水上は新型を、辻、南沢、隠岐には雑魚の掃除を任せる。」

 

生駒隊と合流したのはB級2位二宮隊。

南東のB級合同部隊…と言っても、二宮隊と生駒隊だけだが、その合同部隊の指揮を任された二宮隊隊長の二宮匡貴は部下と生駒隊にそう指示を出した。

 

「近距離戦闘は不利だ。隠岐は状況に応じてこちらの援護をしろ。」

 

『りょーかいです。』

 

隠岐との事通信を切ると、二宮は目の前の敵に視線を向ける。

 

「合成弾で崩す。犬飼と水上は援護しろ。最後はお前に任せるぞ、生駒。」

 

「犬飼了解。」

 

「あー、コホン…生駒、了解。…なんかやる気出てきたわ。」

 

「お気楽で良かったですわ。…水上、りょーかい。」

 

そう言いながら水上は手の上にトリオンキューブを作り出す。

 

「って言っても俺のトリオンじゃ装甲壊せへんなぁ…。」

 

「足止め足止め。少しでも新型の気を引けば後は二宮さんとイコさんが何とかしてくれるよ。」

 

諦めたように言った水上に犬飼はそう言った。

 

「…せやな。アステロイド!」

 

水上の放ったアステロイドに、ラービットは水上に視線を向けた。

 

「ええで、こっち来いや。」

 

水上は挑発するとさらにトリオンキューブを分割。

アステロイドを放つ。

 

煩わしく思ったラービットは水上に狙いを定めた。

その瞬間、ラービットは口をガッチリ閉じて手の装甲で口を守る。

 

「あれ?バレてるや。」

 

死角からの犬飼のアステロイド。

いち早く察知したラービットはそれを防いだ。

 

「やっぱり一筋縄じゃいかないねー。」

 

「まあある程度稼げれば充分やろ。」

 

そう言って水上は視線を射手の王に向けた。

 

 

「ギムレット。」

 

 

二宮のギムレットがラービットに襲いかかる。

 

 

 

…しかし、ラービットは装甲で受けるでもなく、飛び退いた。

 

 

「やはり厄介だな。学習している。…だが…」

 

「読めてるで。さすがは二宮さんやな。

 

 

 

 

…旋空弧月。」

 

飛び退いた先。

生駒の旋空がラービットを切り裂いた。

 

「まずは1体やな。まだ出てくるんか?」

 

「何体来ようが関係ない。…蹴散らすぞ。」

 

二宮はそう言って歩き出す。

 

「さっすがイコさん!」

 

「お疲れ様です。」

 

そこに南沢と辻が寄ってくる。

 

「こっちは大方片付きました。一応隠岐くんが見張ってくれてます。」

 

「分かった。」

 

『本部、こちら二宮。新型を1体駆除した。トリオン兵を片付けながら…』

 

その瞬間。

南沢、辻の背後に黒いゲートが現れる。

 

現れたのは紫色と青色。

 

先程とは色の違うラービットだった。

 

「海!」

 

「辻ちゃん!」

 

2体の奇襲に、南沢、辻は弧月で大きな腕を受け止めながら下がる。

 

「どっひゃー、まじヤバいっス!」

 

「問題ありません。」

 

『南東、色の違う新型2体と遭遇。交戦開始する。』

 

紫色のラービットはじっくりとこちらを観察するように首を動かす。

 

そして地面に手を付いた。

 

 

 

その瞬間、南沢の体は地面からの未知の攻撃に貫かれた。

 

「なっ…?!」

 

その間に青色のラービットが南沢を捕らえようと、大腕を伸ばした。

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

 

遠くから放たれた旋空。

その旋空は青色のラービットの腕を吹き飛ばす。

 

 

「うわぁ、2体もいるよ、綾瀬川センパイ。」

 

「しかも色が違うな。」

 

 

そこに現れたのは柿崎隊万能手、綾瀬川と諏訪隊銃手、榎沢だった。

 

 

 

『綾瀬川、榎沢現着した。

 

 

 

 

 

 

…処理を開始する。』




各キャラからの印象&各キャラへの印象

忍田真史→優秀な万能手。
榎沢一華→崇拝。


忍田真史←この場限りの上官。
榎沢一華←警戒。

ボーダー側が戦力過多な気もするけどよく考えたらアフト側ってブラックトリガー4本あるんだよな…。
その辺はうさぎちゃん(ラービット)に補ってもらおうと思います。

感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜乱入者〜

遅くなり申し訳ございません。
ちょっと忙しくて…。
なるべく早く出せるようにしますんで何卒。


数分前。

 

『清澄、大丈夫か…?』

 

南部でトリオン兵を駆逐していた柿崎が綾瀬川に通信を入れる。

 

『…怒ってくれていいんですよ。オレが手を抜いてたから虎太郎は落ちたんだ。』

 

『…それは全部終わってからだな。今はお前が心配だ。』

 

『…問題ありません。諏訪隊の榎沢と一緒に南東部の二宮隊、生駒隊の合同部隊と合流することになりました。真登華、合流するまでの索敵頼めるか?』

 

『…』

 

『…おい、真登『今のところ反応ありません。』』

 

宇井は食い気味に答えた。

 

『あ、ああ。助かる。』

 

『…ほら、早く二宮さん達と合流してくださーい。』

 

『…悪かったから怒らないでくれ…。もう出し惜しみはしない。』

 

『別に怒ってませんよ?チームメイトが緊急脱出したって言うのにほかの隊の女の子とイチャイチャしてたことなんて別に?別に怒ってませんけど?』

 

宇井がキーボードを乱暴に叩く音が聞こえる。

 

『お、おい真登華、清澄だってなにか事情が…』

 

『へー、虎太郎が落ちて、市街地が危ない中榎沢さんとイチャイチャする事情かー、それは気になるなー。』

 

『うっ…。』

 

綾瀬川を庇おうとした柿崎も宇井の言葉に黙ってしまう。

 

『その…すまん。』

 

『だーかーらー…

 

 

 

…別に怒ってませんよー?』

 

作戦室では笑みを浮かべながらそう言う真登華。

隣にいた巴は思わず後退る。

 

『真登華…その辺にしてやれ。その話は全部終わってからだ。こっちも新型が出やがった。』

 

『…りょーかい。』

 

柿崎の言葉に宇井は渋々と言ったように納得する。

 

『清澄は二宮隊、生駒隊との合流を急げ。』

 

『…了解。』

 

そう言って綾瀬川は通信を切った。

 

 

──

 

…今度飯でも奢ろう…。

 

通信を切ったオレは走りながらそんなことを考えていた。

 

「綾瀬川センパイ?だいじょーぶ?」

 

「…問題ない。…見えたぞ。」

 

「ん、りょーかい。って…あれまずいんじゃない?」

 

地面からの未知の攻撃。

生駒隊の南沢が貫かれる。

 

「そうだな…

 

 

 

 

 

 

 

…旋空弧月。」

 

 

──

 

間一髪。

南沢を捕らえようとしたラービットの腕を切り飛ばしたのは、柿崎隊万能手、綾瀬川だった。

後ろには諏訪隊銃手、榎沢も控えている。

 

「た、助かったッス…。」

 

そう言い残して南沢は緊急脱出する。

 

「きよぽんやん。それに…誰や?」

 

「どーも初めまして。綾瀬川隊銃手の榎沢一華でーす。」

 

生駒の質問に榎沢はそう自己紹介する。

 

「綾瀬川隊?」

 

二宮が眉をひそめる。

 

「あー、諏訪隊銃手の榎沢です。…忍田本部長の命令で南東部に合流することになりました。…まずは新型を片付けます。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構え、新型に歩み寄る。

 

「榎沢、紫の方は地面からの攻撃がある、警戒しろ。」

 

「オッケー。青色も何かあるのかな?」

 

「色ごとに個体差があるんだろうな。」

 

そう言いながら綾瀬川、榎沢は前に躍り出る。

 

…そして綾瀬川は踏み込み1回。

ラービットとの距離を一気に詰めた。

 

そのまま口目掛けて弧月を振る。

 

「ちっ、さすがに別格か。」

 

ギリギリで反応。

ラービットは後ろに避ける。

そして腕の輪郭を歪ませ、地面に着いた。

 

 

 

「…遅いな。」

 

 

 

いつの間にか弧月を振った綾瀬川。

ラービットがそれを認識した頃には、綾瀬川の放った旋空がラービットを上半身と下半身に両断していた。

 

 

 

 

「うわっ、センパイ、こいつ空飛ぶよ。」

 

トリオンを吹き出しながら空に飛び上がった青色のラービットを見て、榎沢は興奮気味にそう言った。

そして榎沢もグラスホッパーで空に飛び上がる。

その瞬間、青色のラービットの口が光り輝く。

 

「あー、そう言う感じ?」

 

そう言いながら榎沢は後ろを一瞥。

グラスホッパーで少し右にズレる。

 

そして、ラービットの口からレーザーが放たれた瞬間にもう1つ展開したグラスホッパーで空に飛び上がる。

 

放たれたレーザーは榎沢を通り抜け、後ろの大型トリオン兵に命中した。

 

そしてハンドガンを2丁、ラービットに向ける。

放たれたハウンドとアステロイドのフルアタック。

 

高いトリオン能力を誇る榎沢のフルアタックはラービットの装甲を傷つける。

 

 

 

「アステロイド+アステロイド…

 

 

 

…ギムレット。」

 

「さすがセンパイ♡」

 

後ろから綾瀬川の援護射撃。

レーザーを放とうとしたラービットは綾瀬川に視線を向ける。

 

その隙をついて榎沢はグラスホッパーで空中でラービットに急接近。

口の中にハンドガンを突っ込んだ。

 

 

「ばいばーい。」

 

至近距離のアステロイドにラービットの顔は穴だらけにされた。

 

 

『こちら綾瀬川。色の違う新型を2体駆除した。紫色の新型は地面を伝う、モールクローのような攻撃を、青色はトリオンを噴射して飛ぶ。口からレーザーも出してました。』

 

 

綾瀬川は淡々と忍田に報告をする。

 

 

「速…今のきよぽんの弧月の振り見えました?二宮さん。俺見えへんかったんやけど。」

 

「あの子のトリオンも二宮さん並みじゃないですか?」

 

生駒、犬飼が冷や汗を浮かべながら二宮に話した。

 

 

「…綾瀬川と…榎沢、だったか。南東部の指揮は俺が執る。ここの担当になった以上俺の指揮に従ってもらう。」

 

「うわー、偉そうだなー。あたし綾瀬川センパイ以外に従う気ないから。」

 

「あ?」

 

二宮は榎沢を睨みつける。

 

「不服か?」

 

「うん。綾瀬川センパイが指揮執った方が絶対いいよ。」

 

「榎沢。二宮さんの指示に従え。」

 

喧嘩腰で二宮に突っかかる榎沢に綾瀬川はそう告げる。

 

「えー…。」

 

「オレの指示には従うんだろ?命令だ。二宮さんの指示に従え。」

 

「はぁ…仕方なくだからねー。」

 

 

 

「なぁ、きよぽん。その可愛い子…

 

 

 

…きよぽんの彼女なん?」

 

そんな中なんとも空気を読まない質問が生駒の口から放たれた。

 

「いや、空気読んでくださいよ、イコさん。」

 

水上がツッコミをいれる。

 

「誰だか知らないけど…」

 

榎沢は生駒に近づきながら話す。

 

「分かってるじゃん!あたしは綾瀬川センパイの彼女だよ!」

 

「違います。」

 

「やっぱりそうや!きよぽんの裏切り者ぉ!!」

 

生駒はその場で泣き崩れる。

 

「うわっ、イコさんマジ泣きやん。」

 

「違うって言ってるでしょ…。」

 

否定する綾瀬川に榎沢は頬を膨らませた。

 

「アハハ、緊張感ないなぁ…。辻ちゃんも相変わらずだし。」

 

犬飼がそう言いながら笑う。

ちなみに辻は女子が現れたことにより犬飼の後ろに隠れている。

 

「ち、ちなみにイコさんの方がきよぽんより旋空長いで?ゴーグルだってあるし…「あはは、興味なーい。」」

 

「秒殺やん。」

 

生駒はさらに血の涙を流す。

 

「くだらない話は後にしろ。トリオン兵はまだいるぞ。隠岐は離れた位置で援護しろ。辻は隠岐を守れ。」

 

「りょーかいです。」

 

「辻、了解。」

 

そう言って隠岐、辻は離れる。

 

「他は各自トリオン兵を蹴散らせ。

 

 

…トリオン兵を市街地に1歩たりとも入れるな。…行くぞ。」

 

怪物2人を交えた南東のB級合同部隊は南東部の市街地を守るべく動き出した。

 

 

──

 

本部基地南西部

 

A級5位嵐山隊の木虎藍が、ラービットにより捕獲されてしまった。

絶体絶命のピンチ。

そこに駆けつけたのは、ボーダー最強の部隊、玉狛第1だった。

 

「南東で戦闘中の綾瀬川からの情報だ。色ごとに性能が違うらしい。」

 

玉狛第1の完璧万能手、木崎レイジは烏丸京介、小南桐絵にそう告げる。

 

「なるほど、じゃあこの青いのは砲撃タイプね。…黄色は?」

 

「さぁな。だがそのうち分かる。」

 

そう言って玉狛の3人はC級、後輩である三雲修と雨取千佳を守るべくラービットの前に立ち塞がった。

 

 

──

 

「あ…。」

 

感知する。

 

榎沢は南部に視線を向ける。

 

「どうした?」

 

綾瀬川が尋ねた。

 

「うわ、どうしよう。そっちだけじゃないや…。」

 

 

諏訪隊銃手、榎沢一華の持つサイドエフェクトは「超直感」。

簡単に言えば、勘が良かった。

日常生活の何気ない事から危機察知まで。

百発百中の勘を持つ榎沢。

その榎沢が足を止めて空に目を向けた。

 

 

 

「またー?もう…新型だけで充分だっての。」

 

 

 

 

ボーダー基地南西部、南部、東部。

 

『ラッド』によるゲートが開いた。

 

 

 

 

 

『転送完了…

 

 

 

 

…作戦開始です。』




各キャラからの印象&各キャラへの印象

柿崎国治→信頼出来る部下。
宇井真登華→別に怒ってませんけど?怒ってないけど任務中にほかの女の子とイチャイチャするのはどうかなーって思っただけです。だから怒ってませんよ?なんで謝るんですか?


柿崎国治←隊長。信頼出来る先輩。
宇井真登華←いや、本当に勘弁してください。すいません。


榎沢一華サイドエフェクト
「超直感」

ランクはS(超感覚)

勘がいい。
おそらくアマトリチャーナの上位互換。


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大規模侵攻 〜侵略者〜

お久しぶりです。
長らく出せずに申し訳ございません。

…実はここだけの話入院しておりました。
というかしておりますw

交通事故です。
ただいま膝にボルトが入っておりますw

腕は酷い擦り傷だけ(?)だったので投稿に至れましたw

ご心配おかけして申し訳ございません。(してくれたかはわかりませんがw)

まあ仕事も休めるんで回復に専念しつつ投稿再開致します。


本部基地南西部

 

「いやはや…子供を攫うというのはいささか気が重いですな、ヒュース殿。」

 

ゲートから現れた老人は隣と若い角付きの人型近界民にそう言った。

 

「これが我々の任務です。ヴィザ翁。」

 

「人型か…?」

 

「角付き…!!」

 

ヴィザと言う老人にヒュースと呼ばれていた青年の頭には角が付いており、修は目を見開く。

 

──

 

本部基地東部

 

「チッ…ガキばっかかよ…外れだな。」

 

頭に黒い角(・・・)の着いた長髪で男の近界民は目の前の風間隊3人を見てそう呟いた。

 

「うわぁ…人型が来ましたよ、風間さん。」

 

風間隊攻撃手、菊地原士郎は風間隊隊長、風間蒼也に気だるそうに話す。

 

「ああ、それも黒い角…

 

 

 

…俺たちは当たりのようだ。」

 

 

 

頭に角がある人型ネイバー。

 

それはアフトクラトルの特徴だった。

幼児の頃よりトリオンの受容体を頭部に埋め込み、後天的にトリオン能力を高くする。

それが角。

 

そして風間隊の前に現れた人型ネイバー。

その角の色は黒。

 

すなわちブラックトリガー使いという事になる…。

 

 

 

──

 

本部基地南部

 

ズンと威圧感のある音を立ててそれは現れた。

 

「んー?2人だけか。拍子抜けだな。」

 

東隊隊長、東春秋と鈴鳴第一狙撃手、別役太一の前に現れた男は辺りを見回しながらそう言った。

 

『距離を取れ太一。この間合いはまずい。下がって警戒区域内に誘い込むぞ。』

 

東は内部通信で別役につたえる。

 

「いや、数だけ見て侮るのは良くないな…コツコツ片付けるとしよう。」

 

『来るぞ…!』

 

人型ネイバー、ランバネインが攻撃態勢に入る。

その瞬間、横からランバネイン目掛けて弾が襲いかかる。

 

「今度こそ出やがったな!人型ネイバー!」

 

「東さん下がってください!俺たちが足止めします!」

 

 

「茶野隊!」

 

現れたのはB級19位、茶野隊の2人だった。

 

「気をつけろ!こいつは既に…

 

 

…攻撃態勢に入っている!!」

 

茶野隊の2人に目掛けて放たれた2発の弾。

 

それは嘲笑うように2人のシールドを1発で打ち砕き、茶野隊の2人を戦闘不能にする。

 

 

「一撃…?!」

 

「止まるな!走れ!太一!」

 

この威力なら連発は無い。

東はそう考えていた。

 

 

 

「…まずは4人だな。」

 

ランバネインは大きなライフルのようなものを取り出す。

 

そして先程のように強力な弾を2人目掛けて乱射した。

 

 

別役はたまらず緊急脱出する。

 

「太一!」

 

障害物もお構い無しに全てを破壊する殺戮のトリガー。

東は冷や汗をうかべる。

 

「はっはあ!!お前で最後だ…!」

 

そしてランバネインは手のひらに弾を作り出し、東に襲いかかる。

 

 

 

 

「「「目標捕捉。」」」

 

 

遠くでそれを見ていた3人はランバネインに照準を合わせる。

 

 

そして、3発の弾が放たれる。

 

 

 

「命中。」

 

それはランバネインの頭部に襲いかかった。

 

「いい釣りだ。東さん。」

 

B級11位、荒船隊の3人のイーグレットがランバネインに襲いかかった。

 

 

 

 

「…もう3人…増えたか。」

 

 

しかし、ランバネインはそれを3枚のシールドで防いでいた。

 

「これで7人。長距離戦は大歓迎だ。俺のトリガー『ケリードーン』は撃ち合いに自信がある。」

 

釣られていたのはこちらだった。

大雑把に見えて全く油断していない。

 

そして背中から放たれた無数の弾は荒船隊の穂刈篤、半崎義人をいとも容易く落とした。

 

 

本部基地南部に現れた火力兵は、東率いるB級合同の前に立ち塞がった。

 

 

 

 

──

 

本部基地南東部

 

『本部長から通達だ。東部、南部、南西部に人型ネイバーが出現。それぞれ風間隊、東さん率いるB級合同部隊、玉狛第一が処理に当たっている。』

 

二宮の通信が、トリオン兵を駆逐していた、生駒隊、綾瀬川、榎沢に入る。

 

『東部に近い俺、犬飼、水上はこのまま北上、風間隊の援護に向かう。辻、隠岐、生駒はここに残ってトリオン兵の排除、南部に近い綾瀬川、榎沢は東さんの援護に向かえ。』

 

二宮は的確に指示を出す。

 

 

 

「お前の勘ってのはこれの事か?」

 

綾瀬川は榎沢に尋ねた。

 

「多分そう。これがあたしのサイドエフェクト。まあ勘がいいってだけだけどね。」

 

そう言って榎沢は大型トリオン兵の残骸の上から飛び降りる。

 

「それよりもあたし達は南だって。ほんと偉そうだよね、あの人。」

 

『何か文句があるのか?…そう言うことは内部通信を切ってから言うんだな。つべこべ言わずにとっとと行け。』

 

内部通信で二宮が釘を刺す。

 

「はいはい。まあ綾瀬川センパイとならどこでも良いんだけどね。ね、隊長?」

 

「何度も言うがオレは柿崎隊を辞める気は無い。」

 

「えー…もったいない。あたしと綾瀬川センパイならA級1位だってすぐになれるのに。」

 

「お前とA級1位になっても意味が無い。オレは柿崎隊の万能手だ。」

 

「ふーん…ま、今はそれでいいよ。」

 

そう言って榎沢は綾瀬川の後に続く。

 

 

 

「でもさ…綾瀬川センパイ、あたしは本気だよ。」

 

 

榎沢は足を止める。

 

「あたしには無理だよ…綾瀬川センパイ。あそこには仲間なんていなかった。綾瀬川センパイもでしょ…?」

 

その言葉に綾瀬川は立ち止まり榎沢に向き直る。

 

「…こんな事をしている場合じゃないが…一緒に行動している以上白黒はっきりさせておこう。

 

 

 

 

…お前は敵か…?味方か…?」

 

「…味方って言って…綾瀬川センパイは信じる?」

 

その言葉に綾瀬川の瞳はさらに無機質なものになる。

 

「そうだよ…その目。その目をしてる綾瀬川センパイが一番強いし、一番道具らしいよ。力を持っていながらそれを使わないのは…愚か者のすることだ…。」

 

「!」

 

「…でしょ?」

 

「オレを連れ戻しに来たのか?」

 

「建前はね。まああたしは…」

 

 

そう言いかけた瞬間、東部から緊急脱出の光が上がる。

 

 

 

No.2攻撃手である、風間のものだった。

 

 

 

「…まあお前が裏切ろうともお前から落とせば済むだけの話か。…急ぐぞ。何度も言うが…

 

 

 

…足は引っ張るな。」

 

「ふふ、じゃああたしも何度でも言うね。

 

 

 

…綾瀬川センパイに合わせられるのは柿崎隊のメンバーでも綾瀬川センパイと仲がいい後輩でもなくて…

 

 

…あたしだけだから♡」

 

 

 

 

──

 

「チッ…避けるしか芸がねえのか雑魚どもが!」

 

本部基地東部。

風間隊の前に現れた人型ネイバー、エネドラは、風間を緊急脱出させた後、逃げに徹する風間隊の歌川、菊地原を見てそう悪態を着いた。

 

「あーヤダヤダ。なんで僕らが時間稼ぎなんかしなくちゃいけないのさ。」

 

「文句言うなよ…。こいつをここに釘付けにする必要がある。…三上先輩、あとどれ位ですか?」

 

『もうすぐだよ。それまでどうにか粘ってね。』

 

歌川から通信を受けた風間隊オペレーター、三上歌歩はそう返した。

 

「チッ…。」

(何を考えてやがる…リーダー格のチビが落ちて引くかと思ったらチョコマカと…!)

 

エネドラはついに堪忍袋の緒が切れる。

 

「うぜえな!猿どもがァ!!」

 

そう叫んだ時だった。

エネドラ、風間隊の2人のが居る建物が崩壊する。

 

 

「やっぱ派手やな、二宮さん。」

 

「風間隊巻き込んでません?」

 

「巻き込まないように狙ってるに決まっているだろう…。」

 

 

 

『こちら二宮。人型ネイバーを捕捉。

 

 

 

 

 

…戦闘を開始する。』

 

 

──

ボーダー本部付近の南東

 

「っ…さすがに1人で3体はしんどいな…。」

 

南部のB級合同部隊に来馬と別役を送り出した鈴鳴第一の攻撃手、村上鋼は色の着いたラービット3体を相手にしていた。

 

「だがここで食い止めてる間は他が楽になる…。倒せなくても引きつける…!」

 

 

そう言って村上はレイガストを構える。

 

 

 

その瞬間、村上に迫ったラービットは切り裂かれた。

 

 

「!」

 

「よう、村上。俺、忍田さんにこいつら斬って来いって言われてんだ…

 

 

 

 

…貰っていいか?」

 

 

その言葉に村上は目を閉じて笑みを見せる。

 

 

「どーぞ。太刀川さん。」

 

 

「…旋空弧月。」

 

個人総合1位の攻撃手、太刀川慶の放った旋空は残りのラービット3体をいとも容易く切り裂いた。

 

 

『国近、新型の撃破数ランキングはどうなってる?』

 

『えっと…新型が多かった南東B級合同が9体、嵐山さん3体、風間さん3体、小南2体、南部B級合同2体、木虎1体、ミクモ?1体。太刀川さんは今ので2位タイだね〜。』

 

『いや、俺のから2体村上につけとけ。結構ダメージ入ってた。…にしても南東か…。』

 

南東には二宮隊、生駒隊のB級上位に加えてあの綾瀬川も参加していたはずだった。

 

『南東のB級合同の撃破数の振り分けは?』

 

『二宮さん1体、イコさん1体、隠岐くん1体、綾瀬川くんが2体で…

 

 

 

…諏訪隊の新人銃手の榎沢が4体でトップだね。』

 

『へぇ…新人銃手…ね。』

 

 

そう言って考えていると忍田からの通信が入る。

 

 

『慶、東部の人型ネイバーと風間隊、二宮率いる南東B級合同が戦闘を開始した。お前は南東にいる生駒と合流して新型を片付けろ。もし、人型が南東に逸れた場合は…

 

 

 

…斬り伏せろ。』

 

 

『りよーかい。』

 

 

大規模侵攻開始から数10分。

人型ネイバーの参加により戦場はさらに混沌と化す。

 




戦況まとめ
・北部、北西部、西部
迅、天羽VSトリオン兵

・東部
風間隊、二宮、犬飼、水上VSエネドラ

・南東部
生駒、隠岐、辻、太刀川、村上VSトリオン兵(新型多め)

・南部
B級合同VSランバネイン(三バカ、綾瀬川、榎沢が合流する動き。)

・南西部
玉狛VSヴィザ、ヒュース


感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜三重奏〜

お久しぶりです。
長らく投稿出来ずにすいません。

そしてお待たせ致しました。
実は退院するまで休載しておりました。
退院したので投稿再開致します。



…てかこういう時こそ活動報告使うべきですよねw


本部基地付近の南西部

 

「三雲くんが?!」

 

「オサムが死ぬ?」

 

「最悪の場合…だ。」

 

嵐山の前に現れたA級ソロ隊員、迅悠一は三雲修が死ぬ未来を予知していた。

 

「そんでそうならない為に俺たちが行く。」

 

「ふむ。」

 

迅の言葉にC級、空閑遊真は頷く。

 

「遊真を連れてって城戸司令とかは大丈夫なんですか?」

 

嵐山隊万能手、時枝充が迅に尋ねた。

 

「さっき本部で許可をとってるよ。警戒区域から出なきゃ大丈夫だって。」

 

「!、それじゃ結局助けに行けないじゃないか!」

 

嵐山の言葉はご尤もだ。

玉狛、三雲がいるのは警戒区域外なのだから。

 

「警戒区域ギリギリでオサム達を待つってこと?」

 

遊真が尋ねる。

 

「いや、メガネくん達も基地に向かってるからな。俺たちと合流する頃には警戒区域に入ってるはずだ。

 

 

…レイジさん達がメガネくん達をそこまで連れて来てくれる。」

 

 

 

 

 

 

本部基地南部

 

「よねやんセンパイ、どうすんの?本部長は玉狛を援護しろって言ってるよ?」

 

迅と嵐山隊、遊真との会話から数分後。

烏丸、三雲の両隊員が逃げ遅れた南西のC級隊員を連れ本部基地に向かう。

それを援護すべく付近の隊員に招集がかかった。

 

「んー、どうすっかな。」

 

「もうこっち来ちまったからなー。」

 

太刀川隊射手、出水公平、三輪隊攻撃手、米屋陽介は人型ネイバー、ランバネインを見ながら考える。

 

「放っといたら玉狛の方行くかもしんねーし、ここであいつ倒しとく方がいいだろ。」

 

「だよなー、賛成。」

 

『柚宇さん、柚宇さん、ヤツの情報頂戴。米屋と緑川の分も。』

 

そう言って出水は通信を入れる。

 

『ほ〜い。東さんたちの戦闘記録送るよ。詳しいことは東さんたちに聞いてね。』

 

太刀川隊オペレーター、国近柚宇は出水、米屋、緑川に戦闘記録を送る。

出水達が見たのは茶野隊や別役、荒船隊の2人を派手に蹴散らすランバネインの戦い方だった。

 

「あちゃー。」

 

「おー。」

 

「ごついのに意外と射撃系じゃん。いずみんセンパイと同じタイプだ。」

 

「弾バカ族だな。」

 

「誰が弾バカだ、槍バカ。」

 

米屋の言葉にそう返すと出水は東に通信を入れる。

 

『東さん、出水です。米屋と緑川も一緒です。角付きと()るんでサポートお願いします。』

 

『!…わかった。相手の射撃トリガーは性能が段違いだ。射程、威力、弾速…速射性も高い。撃ち合うなら足を止めるなよ。火力勝負になると厳しいぞ。』

 

『だいじょぶです。弾除けが2個あるんで。』

 

「「おいこら。」」

 

米屋と緑川は声を揃えた。

 

『!…おい、出水。あいつもお前らの作戦の内か?』

 

『荒船さん…。あいつって…。』

 

荒船隊隊長、荒船哲次の通信に出水は視線を落とす。

 

そこにはランバネイン目掛けて走る少女の姿が。

諏訪隊の隊服を着ている。

 

「おいおいおいおい…!そこは奇襲だろ…!」

 

「えのさわセンパイ?!」

 

「じゃあねえ。俺らも行くぞ。」

 

そう言って3人は榎沢の援護に向かうべく飛び降りた。

 

──

 

「!…新手か…!!」

 

ランバネインはこちらに走ってくる榎沢に銃口を向けた。

その瞬間榎沢はグレネードガンを地面に向けて放ち地面を抉る。

メテオラは土埃を上げ、ランバネインの視界を奪った。

 

「陽動か?」

 

ランバネインは全方向に意識を向ける。

 

 

その瞬間、土埃を切り裂きながらハンドガンをランバネインに向けた榎沢が猛スピードで飛んでくる。

 

「!」

 

ランバネインはすぐさま1発榎沢に向けて放つ。

 

榎沢は空中で体を逸らしそれを避けると、ランバネイン目掛けて3回発砲。

シールドを誘った隙にランバネインの懐に潜り込んだ。

 

そして拳銃を2丁ランバネインに向ける。

 

「死んじゃえ。」

 

そしてフルアタック。

弾幕がランバネインを包み込む。

 

「うわ、手応えないな〜。」

 

榎沢はフルアタックを終えるとグラスホッパーですぐに離脱。

少し離れた地面に着地する。

 

「いい火力だ。」

 

ランバネインはそれを全てシールドで防いでいた。

 

 

 

 

『えのさわセンパイ!いずみんセンパイが撃つから離れて!』

 

『あれ?駿くんじゃん。なんだか分からないけどりょーかーい。』

 

そう言って榎沢はランバネインから距離をとる。

 

 

「メテオラ+バイパー。

 

 

 

…トマホーク。」

 

ランバネインの死角から放たれた合成弾、「トマホーク」。

それは軌道を変えてランバネインのいる地面に着弾。

その隙に緑川が飛び出す。

 

「グラスホッパー!」

 

「!…陽動か…!」

 

グラスホッパーで直ぐに離脱した緑川にランバネインは後ろに視線を移した。

 

そこには槍を構えた米屋が。

 

「幻踊弧月。」

 

「!」

 

突き出された槍はシールドを避けるように形を変えるが避けられてしまう。

 

「やっぱいきなり首は無理か。」

 

するとその瞬間、米屋がいることをお構い無しに弾丸の嵐がランバネインを襲う。

 

 

『ちょ、おい!危ねーだろーが!』

 

米屋はそう言いながらガトリング砲を構える榎沢に通信を入れる。

 

『ごめんごめん。邪魔だから退いて〜。』

 

『あのなぁ…!』

 

『邪魔しないでよ。こいつはあたしが倒すんだから。

 

 

…そうしたら綾瀬川センパイが褒めてくれるんだぁ♡』

 

うっとりとした様子でそう言った榎沢に米屋だけでなく緑川、出水も冷や汗を浮かべる。

 

 

「綾瀬川のヤロー、厄介なヤツ置いていきやがって…。」

 

 

──

本部基地東部

 

「ちぃ…!うぜえな猿どもが!そんな攻撃効かねえんだよ…!」

 

繰り出される弾幕。

エネドラは防ぐでもなく受けるが、まるで水に攻撃しているかのように通じない。

 

『三上、氷見。戦闘映像を解析班に回せ。』

 

戦闘の最中に二宮はオペレーター2人に通信を入れた。

 

「全然効いてないじゃん。大丈夫なわけ?」

 

菊地原が尋ねる。

 

「伝達能と供給機関はどっかにあるはずやろ。俺らは黙って二宮さん守ってればええねん。…っとに酔いそうやな…聴覚共有。」

 

そう言いながら水上は二宮目掛けて放たれる地面からの攻撃を遠くからフルガードで防ぐ。

 

「ちっ…雑魚が力合わせたところで俺には敵わねえんだよ…!」

 

地面から斬撃が飛び出す。

しかし、菊地原と聴覚共有をしている水上にとって躱すのは容易だった。

 

『分かってきましたよ、二宮さん。あいつのブラックトリガー、屋内戦有利っぽいですわ。』

 

『そのようだな。だが風間さんがやられた未知の攻撃がある。警戒を怠るな。菊地原、お前が作戦の要だ。歌川、犬飼は菊地原を死んでも守れ。』

 

『…はぁ…ほんと疲れるんだけど。』

 

『歌川、了解です。』

 

『犬飼了解。』

 

『水上は気付いたことはなんでも良い、報告しつつ俺の援護だ。』

 

『りょーかい。二宮さんはどうします?このままじゃジリ貧ですよ。』

 

『関係ない。お前の言う通りトリオン供給機関と伝達能は必ず存在する。それを破壊するまで削り落とすだけだ。』

 

そう言って二宮はトリオンキューブを生成した。

 

『…りょーかい。援護しますわ。』

 

 

──

 

本部基地南西部

 

玉狛の攻撃手、小南桐絵は人型ネイバー、ヴィザに切りかかる。

 

「ふむ、中々の腕前ですな。それに女性相手はやりにくい。」

 

そう言いながらもヴィザはのらりくらり、小南の連撃を捌く。

 

「っ…。」

(こいつ…。)

 

笑みを崩さないヴィザ。

明らかに舐められてる。

それでもこちらの攻撃は届かなかった。

 

(この感じ…。)

 

圧倒的強者の余裕。

以前にも味わったことのある感覚。

 

(この感覚はまるで…

 

 

…あいつみたい。)

 

 

カサリ…

 

そんな音が背後から。

 

そこには小型トリオン兵『ラッド』が。

 

「!…こいつは…!」

 

…ラッドの役割は戦闘では無い。

 

こちらに門を開くことだ。

 

背後の門から現れたのは2体の新型トリオン兵だった。

 

「っ…このタイミングで…!」

 

 

 

 

 

…その刹那。

 

2体のトリオン兵は真っ二つに切り裂かれる。

 

 

 

「ほう…これはこれは。」

 

「…オレが一番乗りか。…ああ、C級を逃がしてるのか。…だがまあ…

 

 

…こっちに来て正解だったみたいだな。」

 

2体のラービットを瞬殺した怪物は小南に歩みよる。

 

「綾瀬川!」

 

 

 

「これは…

 

 

 

…面白い戦士が来たものだ。」

 

ヴィザはその閉じられた目を少し開き綾瀬川を一瞥する。

 

『こちら綾瀬川。南西に到着。

 

 

 

…玉狛に加勢する。』

 

 

 

怪物VS怪物。

 

 

その戦いの火蓋が切られた。




やべえ…あとがきに書くことねぇ。

というわけて綾瀬川くんのトリガー構成一覧を。

そのうち質問がありそうな、

「綾瀬川ってトリガー滅茶苦茶変えてるけど咄嗟の時ごっちゃにならないの?」

に対する返答です。

「いくつかトリガー構成のパターンを用意しておいてそれを使い回してます。綾瀬川は天才なので少し使えばそれに慣れます。」

というのが返答です。


…まだ質問来てねえけどw


射手特化(ROUND1、6)
メイン:アステロイド、弧月(スコーピオン)、メテオラ、シールド
サブ:バイパー(ハウンド)、free、バッグワーム、シールド

射手特化②(変化弾主体)ROUND2
メイン:バイパー、弧月(スコーピオン)、free、シールド
サブ:バイパー、メテオラ、バッグワーム、シールド

攻撃手特化(ROUND3とか)
メイン:弧月(スコーピオン)、旋空(free)、ハウンド(バイパー)、シールド
サブ:弧月(スコーピオン)、メテオラ、バッグワーム、シールド

綾瀬川の基本スタイル
メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:アステロイド(free)、バイパー、バッグワーム、シールド

綾瀬川の本気
メイン:弧月、旋空、スコーピオン、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、バイパー、スコーピオン、シールド

トラッパー時
メイン:スイッチボックス、シールド、カメレオン、弧月
サブ:バッグワームタグ

多分まだ見ぬトリガー構成も出てくると思われる。

感想、評価等お待ちしております!

freeは状況に応じて変えてます。
主にイーグレットが多いかな。
エスクードとか、カメレオンの時もあります。

感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜戦士たち〜

投稿致します。


本部基地南部

 

ランバネインVS東率いるB級連合&A級の3人+榎沢の戦闘は火力差に反してランバネインが押されていた。

統率の取れた射撃、その合間を縫って攻撃手による奇襲も加わる。

だが、

 

 

(何より厄介なのは単身でこちらにやって来た銃使いの少女…!)

 

ランバネインはガトリング砲を狂ったような笑顔で乱射する榎沢を見て、顔を曇らせる。

 

(おそらく敵の中では一番の火力…!出来ればあの少女から先に落としたい。だが…)

 

視線を新たに現れたA級の3人に移した。

 

「…ハッハッハ!面白い…!!」

 

そう言うとランバネインはさらに飛び上がる。

 

「「ハウンド!」」

 

榎沢と出水の声が被る。

 

出水と榎沢のPDWからハウンドが放たれ、ランバネインを襲う。

 

『よう、やっぱすげえトリオンだな…。榎沢ちゃんって言ったか?』

 

出水が内部通信で榎沢に通信を入れる。

 

『どーも。何?…てかあなたがハウンド使えるならあたしはいらないね。』

 

そう言いながら榎沢はガトリング砲に切り替える。

 

『合わせてヤツを撃ち落とそう。ヤツの飛行能力を削ぐんだ。落ちりゃ米屋、緑川、照屋ちゃんの餌になる。連携してヤツを削るんだ。』

 

『うーん…

 

 

 

 

…ヤダ。』

 

そう言うと榎沢はハンドガンに持ち変えるとグラスホッパーを複数展開。

飛び上がったランバネイン目掛けてジャンプした。

 

『おい!』

 

『連携したいならあたしに合わせなよ。』

 

ランバネインは背中の死角から砲撃を放つ。

 

「っと…やっぱり死角から。今日もあたしの勘は絶好調だね。」

 

「!」

 

虚を突いた砲撃を躱されランバネインは目を見開く。

 

「ほ〜ら!落ちちゃえっ!」

 

繰り出される射撃を少ない動きで避けながら、榎沢はアステロイドを乱射。

徐々にランバネインに接近する。

 

(っ…!こうも間合いを詰められてはやりにくいな…。降りれば白兵に囲まれる…。ならば…!)

 

ランバネインは羽からトリオンを噴射。

榎沢と距離をとる。

 

『出水!そっち行ったぞ!』

 

「空中戦の無いこちらの火兵を落とすとしよう…!」

 

「けっ…俺かよ…!」

 

出水はトリオンキューブを構える。

 

「バイパー…!」

 

「エスクード…!」

 

出水ともう1人の声が被る。

 

それと同時に地面から現れた盾がランバネインの視界を塞ぐ。

そしてバイパーはそれを避けるように曲がると、死角からランバネイン目掛けて襲いかかった。

 

「ぬぅ…!」

 

ランバネインはそれをシールドで受ける。

 

「助かったぜ、ザキさん。」

 

エスクードを展開した張本人、柿崎隊隊長、柿崎国治に出水は話しかける。

 

「A級のお前らばっかに頼りきってられないからな。…来るぞ。援護する。好きに動け。」

 

そう言いながら柿崎はレイガストを構えた。

 

 

 

シュドッ…シュドッ…

 

 

そんな音ともに弧を描くように空に弾が打ち上がる。

 

『うわ、いずみんセンパイやばい!えのさわセンパイがメテオラ撃ったよ!逃げて逃げて!』

 

緑川の通信に出水は冷や汗をうかべる。

 

「あの野郎…!」

 

それと同時にメテオラは地面に着弾。

土煙を割くように榎沢が飛び込んできた。

PDWを構えた榎沢は笑みを浮かべながらランバネインに襲いかかる。

 

「あのな…!連携って知らねえのかお前!」

 

「知らないよ。あたしがこいつを殺せばいいだけでしょ。」

 

そう言いながら、榎沢はグラスホッパーを展開。

 

(っ…またも空中か…!)

 

しかしグラスホッパーは後退ったランバネインの足元に。

 

「!?」

 

空に弾かれたランバネインに榎沢のハウンドが刺さる。

 

「ぐぅ…!」

 

『おい、あんまり勝手なことすると…』

 

 

 

『いいじゃないか。』

 

 

その通信は東から。

 

『現状榎沢の機動力と火力の合わせ技がやつを追い詰めてる。俺たちは援護に回ろう。』

 

『…本気っすか?』

 

『ああ。柿崎はエスクードで護りと死角を作れ。緑川、米屋、照屋、奥寺は地上戦での白兵として、来馬と出水は榎沢に当てないように援護しろ、隙を見て俺と荒船が撃つ。ここが天王山だ。

 

 

…勝負を決めるぞ。』

 

 

ボーダートップの知将、東春秋は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

──

 

本部基地東部

 

「散々言ってんだろーが猿ども。てめえらの雑魚トリガーじゃ俺は倒せねえんだよ。」

 

「すいません、先に落ちます。」

 

そう言う歌川のトリオン体に亀裂が入る。

そのまま光となって空に打ち上がった。

 

『ヤバいですよ、二宮さん。』

 

水上は二宮に通信を入れた。

二宮を含むB級合同が交戦を始めて十数分。

数の有利に反して防戦一報。

犬飼、歌川が緊急脱出。

数はじわじわ減っていく。

 

『氷見、解析班はどうだ?』

 

『十分なデータは取れました。問題ないかと。それに菊地原くんをここで失う訳には行きません。』

 

『…そうか。

 

…引き時だ。撤収するぞ、水上、菊地原。』

 

『はぁ…ほんっとにムカつくな。なんでこんなムカつくヤツから逃げなきゃいけないの。』

 

『やつのトリガーの解析が最優先だ。解析するまでは駒として浮かせる。つべこべ言わずに引け。』

 

『…了解。』

 

『りょーかい。』

 

そう言うと二宮、菊地原、水上が消える。

 

「!…はっ、なんだよ。怖気付いて逃げやがったか。」

 

 

『エネドラ、撤収しろ。』

 

『ああ?』

 

通信の主はアフトクラトルの遠征部隊隊長、ハイレイン。

 

『何馬鹿なこと言ってやがる。』

 

『相手はお前の泥の王(ボルボロス)を解析していた。対策される前に引け。そちらはラービットが引き継ぐ。

 

 

 

 

…金の雛鳥はヴィザとヒュースが回収する。』

 

 

 

──

 

本部基地南西

 

強者2人の様子見と言った膠着状態が続く。

 

「…小南、下がれ。」

 

綾瀬川はただ一言。

そう言って息を吸い弧月を構えた。

 

「はぁ?ここで私が引くわけ?ここはあんたと私の2人で…」

 

 

「そうですな。引くのが賢明だ、お嬢さん。」

 

その言葉は鉛のように重圧として小南に襲いかかる。

 

「!?」

 

感じたことの無いプレッシャー。

小南は冷や汗を浮かべる。

 

 

「あんた…。強いな。」

 

「いやはや、私などただの老いぼれ。あなたのような戦士の相手が務まるか…どうか。」

 

綾瀬川の言葉にヴィザはそう返すと、杖を持つ手に力を込める。

 

 

刹那、綾瀬川とヴィザの弧月と杖が合わさった。

 

「やはり重い。相当な手練だ。」

 

「…」

 

綾瀬川は何も言わずに弧月を押す力を強める。

少しの競り合いのあと、ヴィザは後ろに飛び退く。

 

「だいぶ深い底があると見える。いやはや、だから戦いは面白い。」

 

ヴィザは不敵な笑みを見せる。

 

「ここで使うつもりはありませんでしたが…我々の目的は雛鳥の回収。その目的を遂げる上であなたは間違いなく一番の支障となる。玄界の強き戦士よ。小手調べはここまでです。」

 

そう言うとヴィザは杖を前に突き出した。

 

「!、小南。」

 

「はぁ?!ちょ…何すんのよ?!」

 

綾瀬川は暴れる小南を抱き抱えて飛び退く。

 

 

 

星の杖(オルガノン)。」

 

 

 

その言葉と共に杖を中心に円が広がる。

その円には1つの凶刃が付いていた。

 

 

そしてそれが通り抜けた場所は無慈悲に切断される。

 

「ちっ…ブラックトリガーか…。」

 

 

「何よ…これ…。」

 

「敵のブラックトリガーだろ。」

 

綾瀬川はそう言いながら崩れる瓦礫を避ける。

 

「…どこまで逃げる気?…てか降ろしなさいよ。」

 

小南は頬を朱に染めながらそう言った。

 

「…あのブラックトリガー使いは強い。

 

 

…お前を庇いつつ戦う余裕がなそうだ。」

 

あの時と同じ無機質な瞳。

小南は息を飲む。

 

「…私じゃ…足手まといって訳?」

 

「そうだ。」

 

「!…そう…。分かったわ。」

 

小南はそれだけ言って黙る。

 

「私はとりまるの援護に行く。修と千佳が心配だもの。」

 

「分かった。…下ろすぞ。」

 

少し離れた位置に小南を下ろす。

 

「でも…どう戦う気?いくらあんたでも…ブラックトリガー相手は…」

 

言いかけて小南は辞める。

 

 

綾瀬川がトリガーを解除したからだ。

 

「あんた…何して…」

 

「言うだろ?目には目を…ってな。」

 

懐から取り出したそれを綾瀬川は前に突き出す。

 

黒のフォルムに緑のライン。

かつて自分と同じ玉狛の隊員が使っていたもの。

 

「あんた…それ…。」

 

 

 

 

 

「…風刃、起動。」

 

 

 

淡々と、そしてただ無機質に怪物はそう告げる。

 

 

 

 

「…あんたはオレを負けさせてくれるのか…?」




あとがき書いて欲しい事募集しますw

ネタをくれ…!

感想、評価等お待ちしております!


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大規模侵攻 〜チーム〜

遅くなりすいません!
普通に行き詰まりましてw
何とか書ききったので読んでやってください!


──数日前

 

ボーダー本部

 

「綾瀬川、お前…風刃使って見る気ない?」

 

「…」

 

その言葉に綾瀬川は迅に目を向けた。

 

「…冗談か?」

 

「いやいや、こんな事冗談で言わないよ。マジマジ。」

 

「じゃあ何を企んでるんだ?」

 

「ちょ…信用ないな…。別に何も企んでなんかいないよ。俺は風刃を本部に提出したんだ。ブラックトリガーを使わず放置しとくなんて勿体ないだろ。」

 

迅はぼんち揚げを齧りながらそう言う。

 

「…何でオレなんですか?」

 

「理由は色々あるけど、大きな理由は…

 

 

 

…風刃の適合者の中で最も風刃を使いこなせるであろう隊員がお前だからだよ、綾瀬川。」

 

「…買い被りすぎですよ。それに…オレはS級隊員になるつもりは無い。柿崎隊…気に入ってるんですよ。」

 

そう言って綾瀬川は立ち上がる。

 

「なら仕方ない。

 

 

 

…この前の借り…返してくれ。」

 

迅のその言葉に綾瀬川は足を止める。

 

「…確かにオレはあんたに借りを返すと言った。…だが柿崎隊を辞めてまで返す義理はない。」

 

「落ち着けよ。何も柿崎隊を辞めろとまでは言わないさ。…ただ…今度の大規模侵攻…やばいレベルの敵がやって来る。…風刃を使った俺でも敵わない程の。ぶっちゃけ言ってお手上げなんだよね。風刃を使ったお前なら勝てるかもしれない。…大規模侵攻の時だけでいい。風刃を使ってそのやばい敵を倒して欲しい。」

 

迅はいつになく真面目な表情で綾瀬川に頼む。

 

「…迅さん、あんたは未来が見えるんだろ?」

 

綾瀬川はベンチに腰かけ、虚空を見上げながら迅に尋ねる。

 

「ああ。見えるよ。」

 

「あんたがここまで頼むってことは…それが最善の未来なのか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「…そうか…。」

 

──

 

「風刃、起動。」

 

その言葉と共に薄緑の刀身が姿を現す。

 

「なんであんたがそれを…。」

 

「話はあとだ。」

 

綾瀬川はこちらに笑みを向ける老人に視線を移した。

 

「おや、姿が変わっているようだ。…それにそのトリガー…。ふふ、やはりあなたは面白い。」

 

そう言いながら、ヴィザは杖から剣を抜く。

 

「小南、引け。」

 

そう言いながら、綾瀬川は駆け出す。

 

そして、ヴィザの星の杖と風刃の刀身が合わさった。

 

「広範囲の斬撃は使わないのか?近界民。」

 

「この一振だけです。ほんの戯れ。あなたと剣を交わしたかった。強さと言うのは剣に表れるのですよ。」

 

そう言うとヴィザは距離を取るように後ろに下がる。

 

 

「星の杖。」

 

その言葉と同時に、綾瀬川はしゃがみ込む。

 

 

 

そして、綾瀬川の周りの建物は無慈悲に切り裂かれた。

 

「…反則だろ。」

 

「今の一振で分かりました。あなたを仕留めるには私も本気を出さなければならなそうだ。」

 

「買いかぶるなよ…。」

 

 

瞬きの刹那。

 

情報を絞り込む。視覚、肌で感じる風、聞こえる音を絞り込む。

 

そして目を開けた時。

 

 

 

その目に映るのはモノクロの、色のない停止した世界だった。

 

──

 

「始まったか…。」

 

そう言うと迅は木崎に通信を入れる。

 

『レイジさん、綾瀬川とブラックトリガーが交戦を始めた。もう1人を綾瀬川の所には絶対に行かせないで欲しい。』

 

『それは分かっているが…大丈夫なのか?一応距離をとったがとんでもない威力のブラックトリガーだぞ?2対2にはなるが俺も綾瀬川の援護に入った方がいいんじゃないか?』

 

『俺たちが加わっても綾瀬川の邪魔になるだけだよ。綾瀬川と戦ったレイジさんなら分かってるでしょ?』

 

『…そうだな。もう1人の人型は全力で食い止める。お前はどうするんだ?』

 

木崎が尋ねる。

 

『遊真と一緒に京介とメガネくんの所に向かってる。小南もいるから大丈夫だとは思うけど一応ね。メガネくんと千佳ちゃんを逃がせたら俺と遊真もレイジさんの所に行くよ。…もし仮に綾瀬川が負けた場合は俺と遊真でブラックトリガーの相手をする。敵の狙いが千佳ちゃんである以上千佳ちゃんさえ逃がせれば敵も深追いはしてこないでしょ。』

 

『…綾瀬川とブラックトリガー使い…どっちが勝つ未来が見えてるんだ?』

 

『五分だ。相当な手練だよ。』

 

『…そうか。』

 

『大丈夫。風刃を使った俺とレイジさん達を無傷で圧倒したのがあいつだ。あいつで無理ならどの道無理だよ。』

 

迅はおちゃらけた様子でそう言った。

 

『宇佐美。』

 

木崎はスパイダーとメテオラでトラップを作りながら宇佐美に通信を入れる。

 

『はいはーい。』

 

『京介と修のところには小南、迅、遊真が向かってる。お前は綾瀬川をサポートしてやれ。ブラックトリガーの解析もな。』

 

『りょーかいっ!』

 

『!…未来がまた変わった。…これは…南部、東さんの所か?』

 

 

──

 

本部基地南部

 

「エスクード。」

 

地面からせり上がった盾に足をかけ、榎沢は飛び上がる。

 

「さっきから逃げてばっかじゃん。さっきまでの威勢はどうしたのかにゃー?」

 

羽からトリオンを噴出して飛び回るように逃げるランバネインに榎沢はハンドガンとPDWを向けながら話しかける。

 

(ほかの隊員の動きが変わった。明らかにこの少女を援護する動き…援護のタイミングにも無駄がない。かと言って地上に降りれば白兵戦に持ち込まれる。特にあの3人は危険だ…。)

 

ランバネインは地上で時を待つ米屋、緑川、照屋に視線を向ける。

 

それだけでなく、緑川はグラスホッパーによる榎沢の足場作り、照屋は状況に応じてメテオラでの援護を行っている。

 

(…連携にも隙がない。この戦場を遠くから見ている優秀な指揮官がいるな…。)

 

ランバネインは周りの建物に視線を向ける。

 

 

「はい、よそ見〜。」

 

その声は下から。

 

そこには空中で仰向けになりながら、こちらにハンドガンを2丁向けている榎沢が。

 

 

「落ちろ。」

 

 

スっと目を細めた榎沢。

ハンドガンが火を噴く。

 

「ぬう…!」

 

咄嗟のシールドを張るが、榎沢が狙ったのはトリオンを噴出している羽。

 

「!」

 

そのままランバネインは残った羽で榎沢から距離を取ろうとする。

 

『今だ荒船。残りの羽を狙え。やつを落とすぞ。』

 

『了解だ、東さん。』

 

その言葉の直後にイーグレットが火を噴く。

 

しかし、読んでいたランバネインのシールドに防がれる。

 

 

『よし、いい釣りだ、荒船。』

 

遅れてライトニングの銃声が1発。

 

『ちっ、美味しい所持ってってるじゃないスか。』

 

東のライトニングはランバネインの残りの羽を撃ち抜く。

 

 

「っ…!?」

 

落ちた先には既に攻撃手3人が待ち構えている。

 

「エスクード!」

 

そして5つの盾がバリケードとして米屋、緑川、照屋を隠す。

 

(っ…目くらまし目的の地面からの盾…当の本人は大きな盾で身を守っている…。地味だがいやらしい戦法だ。)

 

ランバネインは攻撃手組の後ろにいる柿崎を見て悪態をつく。

視線を戻すとランバネインは1番大きな的である米屋に銃口を向けた。

 

「お、俺みたいだぜ、ザキさん。」

 

そう言った瞬間、地面から時間差で盾が現れる。

 

「幻踊弧月…!」

 

その盾を躱すように米屋の槍は変形。

ランバネインの頬を切り裂く。

 

「やっぱ首はそう簡単に取れねーな。」

 

「グラスホッパー。」

 

今度は盾の隙間に展開されるグラスホッパー。

エスクードを利用した、立体高速起動が展開される。

 

(盾が邪魔で目で追い切れない…!)

 

「片足もーらいっ!」

 

そのまま、緑川のスコーピオンがランバネインの片足を切り裂く。

 

「っ?!」

 

ランバネインは片膝を突く。

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

エスクードを切り裂きながら、柿崎隊エース攻撃手、照屋の旋空がランバネインに襲いかかる。

 

「ぬうぅ…!」

 

ランバネインは転がるようにそれを躱すが、片腕が落とされる。

 

「ナイスだぜ、照屋ちゃん!…トマホーク!」

 

そこに出水の爆撃が襲いかかった。

 

「やったか!?」

 

『バカお前。そりゃフラグだ。』

 

荒船はそう通信を入れるとイーグレットを構える。

 

「ふぅ…ヒヤヒヤしたぞ。見事な連携であった。」

 

そう言いながらランバネインは背中から砲台を出す。

 

「マジか〜。これも防ぐのかよ…。」

 

米屋が冷や汗を浮かべる。

 

 

 

 

「…と、思うじゃん?」

 

 

 

「!?」

(銃使いの少女がいない…?!)

 

いつの間にか背後にあった盾。

その後ろから榎沢が飛び出す。

ランバネインはすぐさま手の銃口を榎沢に向けるが、榎沢はそれを蹴り上げる。

放とうとした一撃は虚空に放たれる。

 

そのままアサルトライフルを乱射。

高いトリオンから放たれる弾幕。

ランバネインは穴だらけにされる。

 

しかし、致命傷には至らなかった。

 

「タフだね〜。でも…

 

 

 

…連携も意外と悪くないかも♡」

 

 

「…俺たちはチームなんで。

 

 

 

…悪いな。」

 

「見事。」

 

 

緑川のグラスホッパーで一気に距離を詰めた米屋の槍がランバネインを貫いた。




ちなみに榎沢の使ってるアサルトライフルはPDW。
犬飼が使ってるやつですね。片手でも撃てる利便性から。

榎沢のカバー裏風人物紹介


ツインテ(病)変態(クレイジー)銃手(ガンナー)
えのさわ

オッサムと同期の突撃系銃手。
綾瀬川のことを一方的に崇拝する、綾瀬川大好きツインテ2号。
トリオン13と言う高い数値を叩き出すが、入隊後はあまり基地に来なくなった為、そこまで話題にならなかった。
綾瀬川の事以外は基本興味がなく、学校でもクラスメイトで名前を覚えているのは同じ隊の笹森だけ。
友達もおらず、香取が最初の友達()。
モチーフがモチーフなだけに下手な設定は出せない扱いが割と困るキャラだが作者は割と突っ走って書いてる。
もう自由に書こうかな。
カップ数とか、誕生日とか調べても出てこなかったけど明かされてないよね?Cくらいあんのかな。



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大規模侵攻 〜反撃〜

ほんっとに申し訳ありませーん!!!

いや、まじでモチベが無かったとかじゃないんすよ!

書く時間がねえ…!!

骨折したら働かなくていいって思うじゃん?

でもそんな甘くねえんすわ。

パソコンが出来る故の押し付けられる事務作業。
在宅とはいえ時間が無い無い。

何とか1話分書き切りました…!


ほんとすいません。


『本部基地南西部、綾瀬川隊員がブラックトリガーと戦闘を開始。…この反応は…風刃!綾瀬川隊員が風刃を起動しました。』

 

沢村の通信が司令室に響く。

 

「風刃だと?!何故綾瀬川が風刃を?」

 

鬼怒田は沢村の言葉に声を上げる。

 

『南部付近の正隊員に通達。南西部に向かえる隊員は…『ストップだ。沢村さん。』』

 

そこに迅からの通信が入る。

 

『迅?』

 

忍田が尋ねる。

 

『本部長、付近の隊員達には綾瀬川んとこにトリオン兵を近付けないようにさせてくれ。援護は必要ない。』

 

『!…ブラックトリガーを綾瀬川1人に相手させるつもりか?』

 

『そうだよ。レイジさんももう1人の人型を綾瀬川のところに行かせないように足止めしてくれてる。…下手な援護はあいつの足を引っ張る。』

 

『分かった。』

 

そう言うと忍田は城戸に視線を向ける。

 

「城戸さん、綾瀬川への指揮権は城戸さんに返す。鬼怒田さんは爆撃に備えて装甲の強化を。」

 

「分かっとるわい!」

 

『南部付近の正隊員に告ぐ、南西部でブラックトリガーと綾瀬川が戦闘開始。トリオン兵を介入させるな!』

 

 

『…清澄…』

 

城戸は綾瀬川へと通信を入れた。

 

 

──

 

 

 

本部基地南西付近

 

「…綾瀬川が人型と?」

 

本部からの通信に三輪秀次は眉を顰めた。

 

やはり風刃は綾瀬川の手にあった。

 

「迅…何を考えている…!」

 

そう言いながら三輪は、鉛弾で動けなくなったラービットの口に弧月を突き立てた。

 

──

 

「付近の隊員は南西部にトリオン兵を近づけるな…か。綾瀬川のやつブラックトリガーとやり合ってるみたいだな。」

 

「まじ?!俺も南西に行きゃ良かったな。」

 

「南西ってどっち?」

 

「お前ら…まだ終わりじゃねえぞ。」

 

本部基地南部。

人型ネイバー、ランバネインを討ち取った、南部のB級合同とA級の3人は換装が解けたランバネインを取り囲む。

 

「見事…。まさか負けるとは思っていなかった。ヴィザ翁の言う通り…玄界の進歩は目覚しい…という事か。」

 

「この数相手だからな。さすがに勝てなきゃやべーだろ。本当はサシでやりたかったが…悪いな。」

 

「謝る必要はあるまい。

 

 

 

 

 

…これは戦争だ。」

 

 

 

その言葉と同時に米屋の周りに黒い杭のようなものが現れ、米屋を襲う。

 

「おっと…。」

 

米屋は軽々と避ける。

 

「!」

 

「まあ1人で来てるわけねーわな。」

 

「はっはっはっ!不意打ちが通じんのでは完敗だな!」

 

ランバネインは豪快に笑う。

 

すると背後に黒い穴が出現する。

 

!!

 

「退却よ、ランバネイン。あなたの仕事はここまでだわ。」

 

黒い角。

すなわちブラックトリガーを意味する。

 

現れたのはブラックトリガー使いの女だった。

 

「楽しかったぞ。玄界の戦士たちよ。縁があったらまた戦おう。…火兵の少女にも挨拶をしたかったのだがな。」

 

「あっ逃げる!」

 

緑川はグラスホッパーを展開する。

 

「まて!追うな。緑川。」

 

しかしそれを東が制止した。

 

「引くならそれでいい。深追いするな。」

 

「え〜。せっかく倒したのに…。あのゲートっぽいのも敵のトリガー?」

 

緑川は出水に尋ねた。

 

「だろうな。それも黒い角ってことはブラックトリガーか?…っと…そういや助かったぜ。榎沢って言ったか...っていねーじゃん!」

 

ランバネイン撃破のMVPである榎沢に話しかけようとするも、そこに榎沢の姿はなかった。

 

「榎沢なら米屋がトドメをさしてすぐに西に向かって走ってったぞ。」

 

「ヤロォ…文句も一杯あるってのに。」

 

「お前たちはこれからどうするんだ?」

 

ここにはいない榎沢に悪態を吐く出水に東が話しかけた。

 

「逃げてるC級のサポートに行こーかなって。榎沢もおそらくそっち行ったし玉狛もいるから心配ないだろうけど人型がいるみたいなんで一応。」

 

「そうか。助かったよ。今度なんか飯でも奢らせろ。榎沢に会ったらあいつにも伝えといてくれ。」

 

「ラッキー!」

 

 

 

「「「じゃあ焼肉で!」」」

 

 

──

本部基地南西部

 

サイドエフェクトで視覚情報を絞る。

障害物は都合よく目の前の老人が無くしてくれた。

色を消し、敵の位置、攻撃に視覚を絞る。

徐々に視界が変わり、映る光景がスローモーションになっていく。

 

杖から広がるのは白い線状の円。

 

それ自体に殺傷能力はない。

オレは既にその円の上にいる。

 

 

その瞬間、その円の上を何かが高速で走る。

 

「!」

 

後ろに大きく仰け反りそれを躱す。

 

 

間一髪。

通り抜けたそれはブレードであった。

 

 

 

なるほどな。

円状に広げた軌道の上をブレードが通り抜ける。

 

それもとてつもない速度で。

 

サイドエフェクトがなければ即死だったな。

 

オレは風刃を構え直し視線を向ける。

 

さらに円が広がる。

今度は2つ。

 

 

…勘弁してくれよ。

 

内心そう思いながらオレは老人目掛けて駆け出した。

 

しゃがみながらブレードを躱し、さらに距離を詰める。

 

「これは驚きました。まさか先程の1回で星の杖の性能を見抜いて見せたと?」

 

「分析は得意分野なんだよ。」

 

 

 

もう一撃。

綾瀬川は近づいてくるブレードをギリギリで風刃で受け流すと懐に切り込む。

 

ヴィザは杖に仕込まれた剣でそれを受ける。

 

 

「やはりだ。やはり何も感じない。」

 

ヴィザは受けながらそう呟く。

 

そして距離を取ると、星の杖を下げた。

 

 

「あなたはは本当に玄界の人間なのですか?」

 

ヴィザは徐に尋ねた。

 

「他に何に見えるんだ?」

 

「そうですね。自立型の人型トリオン兵と言われた方が私には納得出来る。」

 

そう言った瞬間、ヴィザは綾瀬川に急接近。

綾瀬川に剣を振り下ろす。

 

「物騒だな、爺さん。話の途中だろ。」

 

綾瀬川は風刃でそれを受けた。

 

 

「あなたの剣からは何も感じない。なんの感情も籠っていない。だから私にとってはトリオン兵と同じなのですよ。」

 

 

星の杖を中心に軌道が展開される。

 

「!」

 

迫り来るブレードをスレスレで避けると、綾瀬川は距離を取る。

 

「あなたは危険だ。あなたがいる限り我々の任務は果たせないと私の経験が言っている。」

 

「買い被り過ぎた。オレのどこにそんな力があると思うんだ?」

 

「惚けたことを。星の杖は初見で対応できる代物じゃない。星の杖に対応している時点であなたは最警戒するに値する。それに、驕るつもりはないが私相手に本気を出さずに戦うおつもりですかな?」

 

閉じられた瞳がうっすらと開き、綾瀬川を見据える。

 

「結構必死なんだけどな。」

 

「ご冗談を。あなたの持っているブレード…そのブレードが怪しい。ただのブレードでは無いでしょう。」

 

ユラユラと揺れる風刃から伸びた光の帯。

それを見ながらヴィザは尋ねた。

 

「舐められたものですな。本気を出さずに私に勝てると?ならばそんな気が起きぬよう全力でお相手しよう。」

 

「勘弁してくれ。」

 

綾瀬川はそう言いながら目を細めると、風刃を構え直した。

 

 

刹那。

 

ヴィザが目前まで迫っていた。

 

 

「っ…ぶね。」

 

綾瀬川は振り下ろされた剣を受けると、距離を取る。

 

しかし、そこは星の杖の軌道上。

 

体を逸らしてそれを避けるが、その隙に距離を詰めたヴィザの剣が綾瀬川に襲いかかる。

 

星の杖による高速のブレードとヴィザの剣術の1人連携攻撃。

 

綾瀬川は風刃で受け、距離を取らぬよう、鍔迫り合いをする。

 

「私から距離を取らなければ星の杖のブレードは怖くないと?

 

 

 

…緩い。

 

それならば軌道を狭めればいいだけの事だ。」

 

「!」

 

ブレードが、綾瀬川に迫る。

 

綾瀬川はすぐに距離を取るが少し遅く、腕を切られ、トリオンが漏れる。

 

それを見た綾瀬川は無機質な目を細め、ヴィザを見る。

 

 

今のは避けようと思って避けたはずの一撃。

 

しかし、綾瀬川の腕からはトリオンが漏れている。

 

 

「へぇ…。」

 

綾瀬川は無機質な瞳をヴィザに向ける。

 

 

 

『清澄。』

 

そこに城戸からの通信が入った。

 

 

 

『特務だ。清澄。ブラックトリガーを足止めしろ。お前にしかできない事だ。』

 

『命令権は忍田本部長にあるはずでは?』

 

『問題ない。今は私に移っている。』

 

『なるほど。…じゃあ…

 

 

 

 

…断る。』

 

『!…なんだと?』

 

司令室で城戸は眉を顰めた。

 

『ブラックトリガーの足止め?それがあんたからの特務ならオレは断る。…あんたらしくないだろ。』

 

『…』

 

その言葉に城戸は目を閉じる。

 

『…特務だ。清澄。ブラックトリガーを…いや…

 

 

 

 

 

 

 

…近界民を排除しろ。』

 

 

 

 

 

『…了解。』

 

 

 

その言葉と共に城戸派の最終兵器はヴィザに牙を剥く。




カバー裏風人物紹介

血も涙もない
あやせがわ

行き過ぎた英才教育と4年間のボーダーの技術の詰め込みにより生まれたバグ。
4年の間は1度もトリオン体から生身に戻ったことが無い。
行き過ぎた英才教育のせいか、感情の変化が極めて低く、同じく柿崎隊の宇井からはアンドロイドと揶揄される程。
だが感情が無いわけではなく、三輪や小南には時折感情を見せている。
作られた天才故の渇望か、自分を負けさせてくれる強い相手を求めている。
柿崎隊の事を駒とか言っておきながら実は割とマジで柿崎隊の事を気に入ってるツンデレ野郎。あと無自覚天然KY表情筋死んでる系の女たらし。

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大規模侵攻 〜転変〜

えへへ。
遅くなってすいません。
お久しぶりです。

お待たせしました。
投稿致します。

ようやく落ち着いたんで投稿ペースは復活する模様。
2、3日に1話くらい??
書き悩めばちょっと落ちるかも。
わかって貰いたいのはモチベはまじでチョモランマなんですよ。

忙しい…!(切実)


ボーダー本部基地通路。

 

そこの通気口から何者かが侵入する。

 

『エネドラ。俺は撤退しろと言ったはずだが?それに基地への侵入は命令していない。』

 

『てめえのやり方はまどろっこしいんだよ、ハイレイン。撤退だあ?舐めてんのか?俺のトリガーを解析したところで猿共の雑魚トリガーで俺に勝てるはずねえだろ。…あ?』

 

エネドラは視線を前に向ける。

 

『どうした?エネドラ。』

 

『なんもねーよ。…俺は俺の好きにやらせてもらうぜ。』

 

それだけ言うとエネドラは通信を切った。

 

 

「対象捕捉。やっぱり基地の中入って来ようとしてましたわ。…っても…ギリギリ侵入防げなかったんやけど。」

 

「こいつが例のブラックトリガーか。頭の悪そうな奴だな。」

 

「どうします?中で戦うんです?」

 

「今更追い出そうったって無理だろ。」

 

予測したように通気口の前で待ち構えていたのは生駒隊射手の水上と諏訪隊の諏訪、堤、笹森の4人だった。

 

「ああ?猿風情が…

 

 

…誰にものを言ってやがる!」

 

繰り出されるブラックトリガー、「泥の王(ボルボロス)」。

広範囲の攻撃が4人を襲う。

 

「っと…!」

 

4人はその場から飛び退くと走り出す。

 

「んだよあいつ。めちゃくちゃ怒ってんじゃねえか。」

 

諏訪は悪態を吐きながら走る。

 

「いやいや、諏訪さんが挑発するからやろ…。俺らはあいつみたいに無敵やないんで下手に攻撃喰らえないッスよ。…ん?無敵…。」

 

水上は考え込む。

 

「どうした?水上。っと…あぶねえ!」

 

「ちっ…猿共が。結局逃げ回るだけかよ…!」

 

エネドラはさらに手数を増やす。

 

「!」

 

諏訪の肩が切り裂かれる。

 

「やべえぞ水上。はえーとこ何とかしねえと避難がまだ完了してねえ。」

 

「…」

 

水上は少し考えたあと笑みを浮かべる。

 

「いいアイデア思いつきましたわ。」

 

『マリオ…

 

 

 

…ここまっすぐ走ったとこに訓練室あったよな?』

 

「!…なるほどな。さすが冴えてるじゃねえか…。」

 

諏訪も笑みを浮かべる。

 

「堤!先行って準備しとけ。あとは俺らが無事辿り着けるかだなァ…。」

 

諏訪はショットガンを構えながらエネドラに向き直る。

 

「それが問題やなぁ…。」

 

訓練室にさえ入ってしまえばこっちのもの。

 

水上は苦笑いを浮かべながらトリオンキューブを構える。

 

「まあ俺らがやられても二宮さんとかいますやん?」

 

「そういう問題じゃねえし二宮しかいねえよ。」

 

「そういや俺、この戦い始まる前にイコさんと将棋しとったんやった。終わったら続きやろ…。」

 

 

 

「おま、マジで死亡フラグやめろ…!」

 

 

 

──

 

本部基地南西連絡通路

 

「っ…開かない…。ダメです!ドアが開きません!」

 

連絡通路の開閉用のパネルを叩きながら修は烏丸に声をかける。

 

「えー!何それ?!どうなってんの?!」

 

そう声をあげたのはC級隊員、夏目なつめ 出穂いずほ。

 

『宇佐美先輩、これなんで開かないんですか?』

 

『とりまるくん?!ちょっと待っててくれる?!今手、離せない…!』

 

その声と共にキーボードを叩く音が聞こえる。

 

「そこは無理だ、京介、メガネくん。通信室も繋がらないんだ。…面倒なことになったぞ。」

 

「!…迅さん!それに空閑!」

 

そこに現れたのは玉狛の迅悠一、空閑遊真の2人だった。

 

「面倒な事って?」

 

烏丸が尋ねる。

 

「本部基地の内部に侵入者だ。…それもブラックトリガー。」

 

「!、基地の中に…ブラックトリガー?!」

 

修は声を上げる。

 

「ああ。通信室の職員は避難を始めてる。大丈夫、中には二宮さんも本部長もいる。でもこの通路は使えないから直接本部を目指してくれ。…ここは俺と遊真が片付ける。」

 

その言葉と共に迅は振り返り目を細める。

 

 

次の瞬間には、10以上に及ぶゲートが開かれ、そこから新型トリオン兵ラービットが現れる。

 

「!…新型がこんなに…!」

 

「大丈夫だ。行け、京介、メガネくん。」

 

その言葉の後に、修やC級を守るようにエスクードが展開される。

 

 

「そうよ!こっちは問題ないわ!私がいるんだから!…でりゃあぁぁ!!」

 

上から振り下ろされる大斧。

その斧は見事ラービットを切り砕く。

 

「小南先輩!」

 

「よう小南。ブラックトリガーはどうだった。」

 

「…悔しいけど私じゃまだ無理ね。綾瀬川に任せてきたわ。」

 

小南は悔しさ交じりにそう言った。

 

「まだ…だから!少しすれば私だって勝てるわよ!!」

 

「ハイハイ、わーかったよ。」

 

そう言う小南を迅はどうどうと宥める。

 

「迅、あんたはレイジさんの方に行きなさい。ここは私と遊真で受け持つから。どうせまた何か暗躍するつもりなんでしょ。」

 

「うむ。こいつらは俺とこなみセンパイでどうにかするよ。レプリカも付いてるしな。」

 

「それは助かるな。じゃあ任せたぜ、小南、遊真。」

 

 

そう言って未来を見据える実力派エリート、迅悠一は走り出す。

より良い未来のために。

 

──

 

本部基地南西部

 

「っ…!」

 

ヴィザは後ろに飛び退く。

 

綾瀬川はそれを追うように距離を詰める。

しかし、数歩手前で急停止。

そこを星の杖のブレードが通り抜ける。

通り抜けた瞬間にさらに切り込む。

まるでロッカーモーションのような動きでヴィザに風刃を振り下ろした。

 

「素晴らしい。まさか星の杖をこんなにも早く見切るとは。初見で星の杖を防いだのはあなたが初めてだ。」

 

そう言いながらヴィザは風刃を剣で受け止める。

 

「戦闘中にお喋りか?随分と呑気だな。」

 

綾瀬川はそう言いながら剣を弾くとヴィザの腹に蹴りを入れる。

 

「のらりくらりやり過ごす先程までのスタイルとは打って変わって攻撃的なスタイル。どう言う心の変化ですかな?」

 

ブレードが綾瀬川の首を目掛けて走る。

 

綾瀬川は1歩引いてそれを避けた。

 

「心の変化も何も無い。それが上からの命令だからだ。」

 

綾瀬川は目を細めて風刃を構えた。

 

「なるほど。あなた程の戦士が誰かの下に付いているのですか。」

 

「それはあんたもだろ。」

 

風刃と星の杖がまたしても交錯する。

 

 

 

 

──

 

「ここで何をしている。入隊式はもう始まるぞ。」

 

その言葉に目の前の少年は振り返る。

 

「ああ…。道に迷ったんだ。あんたも入隊式に出るのか?」

 

「…三輪秀次だ。…お前は?」

 

目の前の少年に俺はそう名乗った。

 

「…綾瀬川清澄。オレは中学1年生なんだが…あんたはいくつなんだ?」

 

「俺も同じだ。施設の場所は一通り覚えてる。遅れる前に行くぞ。」

 

そう言って振り返ると綾瀬川と名乗った少年は後ろから着いてきた。

 

「同期…ってことになるんだな。よろしく頼む…三輪。」

 

「…ああ。」

 

横目で見た綾瀬川の瞳はまるで何も映していないように空っぽだった。

 

 

 

 

「お前はなんでボーダーに入ったんだ?」

 

入隊して数日だった頃。

俺は綾瀬川にそう尋ねた。

 

「まあ色々な…。三輪はどうしてボーダーに入ったんだ?」

 

「…姉が近界民に殺された。」

 

そう切り出した俺に綾瀬川はその無機質な瞳を向けた。

 

「ただ1人の姉だった。…近界民を駆逐する。俺はその為にボーダーに入った。」

 

近界民の姿を想像するだけで怒りが込み上げてくる。

自然と拳を握る力が強まった。

 

「っ…すまない。お前に話しても仕方がないことだったな。」

 

「オレは母親を近界民に殺された。」

 

「!」

 

その言葉に俺は顔を上げる。

 

「ここはそう言う理由で入ってくる奴も多いんじゃないか?」

 

「…そうか…。そうだな。」

 

この時から綾瀬川はただの同期では無くなった気がした。

どこか掴みどころのない性格。

常に無表情で何を考えているか分からなかった。

世間の常識に疎く、危なっかしい。

 

だが、隣にいるとどこか落ち着く男だった。

今思うと境遇が似ているもの同士、シンパシーを感じていたのかもしれない。

 

 

…そしてB級に上がって、綾瀬川を俺が作る隊に誘おうとした矢先だった。

 

綾瀬川はまるでボーダーに存在しなかったかのように姿を消した。

 

 

帰ってきたのはその3年半後のことだ。

綾瀬川は休隊していた。

携帯ももっておらず、連絡先を教えていなかった為連絡できなかったらしい。

 

戻ってきた綾瀬川は相変わらず無表情で何を考えているか分からなかったが、やはり隣にいて落ち着く男だった。

 

 

 

 

「オレは城戸派だが近界民に恨みがある訳じゃない。」

 

 

その言葉には失望した。

恐ろしいまでの力を持って戻って来た綾瀬川はそう言って俺に無機質な瞳を向けた。

今までと変わらない機械のように抑揚のない声。

 

だがその声と瞳はいつもより冷たく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「綾瀬川とブラックトリガーの戦いにトリオン兵を介入させるな…だと…?」

 

姉を殺された時と同じくらいの怒りが込み上げる。

 

 

ふざけるな。

 

自惚れるな。

 

 

 

まるで邪魔をするなと言われている気分だった。

 

 

 

 

こちらのセリフだ。

 

 

 

 

 

 

近界民を駆逐する邪魔をするな。

 

 

 

 

三輪秀次を舐めるな。

 

 

 

 

 

 

No.3万能手、三輪秀次は南西に向けて走り出す。




戦況

南西部
綾瀬川清澄VSヴィザ
木崎レイジVSヒュース

南部
東率いるB級合同、A級三バカ+榎沢一華VSランバネイン



三輪の過去あたりはちょい捏造。
そろそろMr.ディスカバリーチャンネルさんが痺れを切らして出てくるかと思われます。

感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜最強〜

投稿します!


「っ…!」

 

1歩後ずさる。

しかし、そこに設置されたワイヤーに引っかかり、トラップが発動。

メテオラのキューブが爆発を起こす。

 

「小癪な手を…!」

 

一刻も早く目の前の相手を落として雛鳥を追わなければ。

アフトクラトルの人型近界民、ヒュースは内心で舌打ちをする。

 

計画が狂ったのはヴィザとヒュースが分断されたところからだった。

 

目の前で時間稼ぎの戦法をとる隊員、そして何よりの誤算はヴィザを苦戦させるほどの相手。

剣の師であり、国宝「星の杖」の使い手。

玄界への遠征部隊の中では間違いなく最強。

そんなヴィザを抑え、苦戦させるほどの相手が敵戦力にいることになる。

 

「っ…」

 

ヒュースは強化トリガー、「蝶の盾(ランビリス)」を振るう。

 

 

 

 

「どうする、レイジ。トラップを仕掛けようにも障害物がなくなってきたぞ。」

 

そう尋ねるのは自立型トリオン兵、レプリカ。

その分身体であった。

 

「…京介達はどこまで逃げられた?」

 

「本部への連絡通路が使えなくなったらしい。直接基地に向かうようだ。まだ基地までは時間が掛かるだろう。」

 

「…そうか。まだ時間を稼ぐ必要がある。磁力以外に何か細工があるかもしれん。」

 

そう言って木崎はアサルトライフルで空にハウンドを放つ。

 

「防がれた。ガードが堅いな。このままじゃジリ貧だぞ。敵の気が変わりチカやオサムに矛先が向くかもしれない。」

 

そう言うとレイジは目を閉じる。

 

「仕方ない。予定より早いが出し惜しみしている場合じゃなさそうだな。」

 

そう言うとレイジはトリガーにセットしている「奥の手」を起動しようとする。

 

 

 

 

「ストーップ!…「全武装」はまだ取っておこうよレイジさん。」

 

 

「!…迅。」

 

そこに現れたのは元S級隊員、迅悠一。

 

「レイジさんはどこにでも援護に行けるように浮いといてよ。…この相手は俺が受け持つ。」

 

「敵のトリガーの情報は分かっているな?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。」

 

そう言うと迅はヒュースの前に堂々と姿を現す。

 

「どーも初めまして。アフトクラトルの精鋭さん。」

 

いつものように飄々と。

 

「…ここからはこの実力派エリート迅悠一がお相手しよう。

 

 

 

 

…どうぞ…

 

 

 

 

…お手柔らかに。」

 

しかしその瞳は未来を見据えていた。

 

 

 

──

ボーダー本部基地

 

「いや、無理ですやん、こんなの。動けませんよ。」

 

「よく動く口だなオイ!」

 

エネドラの攻撃をギリギリで避けつつ…と言っても避けきれずトリオンが漏れているが、どうにか生き延び少しずつ訓練室へと近付く。

 

「…まあしゃあないわな。諏訪さんは散弾、俺はトリオンヘボいんで生き残るなら諏訪さんやろな。」

 

水上はそう呟く。

 

「オイ、水上テメェ何しようとしてやがる。」

 

「諏訪さん、訓練室までダッシュです。ここは俺に任しといてください。」

 

そう言って水上は前に出る。

 

「何言って…「それに俺は諏訪さんと違って作戦室から色々見て指示出せるんで。」…テメェ…。分かったよ。…任せるぜ水上。」

 

「りょーかい。うっかり死なないでくださいよ。」

 

「うっせ。」

 

そう言うと連撃の隙間に諏訪は走り出す。

 

「アステ…ロイド…!」

 

「雑魚が。そんなヒョロ玉通じねえっつってんだろーが…!!」

 

エネドラは打ち消そうと泥の王を振るう。

 

「ヒョロ玉舐めとると痛い目見るで。」

 

「!」

 

触れた瞬間、弾は爆発を起こす。

アステロイド改め、メテオラは爆風でエネドラの視界を奪った。

 

「無駄なあがきなんだよ猿が!!」

 

爆風を切り裂き、エネドラは広範囲に攻撃を広げる。

 

「あと頼んます、諏訪さん。」

 

泥の王に貫かれ、水上はここで脱落。

エネドラは走り出した諏訪を追う。

 

「くっそ…頭悪そうな癖してはえーなオイ…!」

 

急接近したエネドラは泥の王を振るう。

 

「生意気な猿が。これで終いだ。」

 

そして泥の王は諏訪を貫いた。

ここで諏訪も緊急脱出…

 

 

 

 

…するはずだった。

 

 

「仮想戦闘モード…ON…!」

 

 

切ったはずの腕、貫いた胸の傷が修復する。

 

 

(!…どうなってんだ…?!今ぶった斬った腕が…?!)

 

 

「何がどうなってんのか分かんねえだろ?間の抜けた面しやがって。」

 

そう言いながら諏訪は落ちたタバコを拾う。

 

 

「来いよ、ミスターブラックトリガー。お望み通り遊んでやるぜ。」

 

 

 

…ボーダーの反撃は続く。

 

 

 

 

──

 

「ヒュース、ヴィザ、エネドラは各員戦闘を継続。このままでは雛鳥に逃げられます。如何なさいますか?」

 

そう尋ねるのはアフトクラトルの人型近界民、ミラ。

 

「ガハハ、玄界の戦士は強者揃いだな!」

 

豪快に笑うのは既に離脱したランバネインだった。

 

「…」

 

ハイレインは瞳を閉じながら考える。

 

(エネドラは放置でいい。…ヒュースはまだ分かる。だが…)

 

ハイレインが見るのは偵察用のトリオン兵の映像。

そこに映るのはヴィザと戦う隊員の姿。

 

…ヴィザ翁は強い。

それは同郷であるアフトクラトルの遠征部隊の全員が分かっていることだ。

 

65歳にして戦闘の最前線に立つ歴戦の猛者。

 

そのヴィザが足止めをされていると言う事実。

 

 

「…タイムリミットだ。ミラ、ラービットの残機はいくつだ?」

 

「15体です。」

 

「そうか…ヴィザと玄界の精鋭との戦場に5体送り込め。大型は市街地へと誘導しろ。少しでも敵戦力の意識を削げ。」

 

「了解致しました。残り10体はどうされますか?」

 

「決まっている。…雛鳥を捕獲しろ。」

 

 

 

 

──

 

本部基地南西

 

「ふむ…残念ですが時間切れのようだ。」

 

ヴィザはそう呟く。

 

「あなたとはもう少し戦いたかったが…時間は有限。そう上手くはいかないものですな。」

 

「時間切れ?何を…」

 

言いかけた瞬間、オレの後ろに複数のゲートが出現する。

 

「…なるほど。」

 

そこから現れたのは複数のラービット。

 

「不本意な結末ではありますが…終わりです。」

 

援護の望みは無い。

南西に近付かないよう本部長が通達していた筈だ。

つまり目の前の化け物と新型5体を1人で相手にすることになる。

 

「買い被りすぎだろ…。迅さん。」

 

青いラービットの口が光り輝く。

それに合わせてヴィザも剣を構えた。

 

「さて…どうするかな。」

 

 

 

 

 

 

未来が切り替わる。

それを感じてヒュースとの戦闘の最中迅は虚空を見上げる。

 

「!」

 

ヒュースは仕掛けを警戒し、飛び退く。

 

 

「お前がこっちに来たか…

 

 

 

…秀次。」

 

 

 

 

 

 

ラービットに撃ち込まれる弾丸。

それは重石となってラービットを拘束する。

 

ラービットの側方から現れたのは三輪秀次。

そのままラービットの口に弧月を突き立てた。

 

「…三輪。」

 

「…」

 

三輪はオレを一瞥すると、ヴィザに視線を向けた。

 

「これはまた面白そうな戦士が来たものだ。」

 

「黙れ、近界民。」

 

三輪はヴィザに鉛弾を撃ち出す。

ヴィザは冷静にそれを剣で受ける。

 

「!…ほう…面白いトリガーをお持ちのようだ。」

 

剣に重石が出来、ヴィザは剣を下に下げた。

 

「自惚れるなよ、綾瀬川。」

 

三輪は視線をヴィザに向けながらもオレに話しかける。

 

「援護の必要は無い?邪魔をするなどでも言いたげだな。」

 

「…」

 

「俺を…ボーダーを舐めるな。」

 

三輪は弧月を構える。

 

「三輪…」

 

「何故風刃を使わない?この状況で出し惜しみする気なのか?」

 

三輪は酷く軽蔑した目でオレを睨む。

 

「…」

 

「まあお前が何を考えているかは知らないが…お前の足を引っ張るほど俺は弱くない。何度も言うが…自惚れるな。」

 

 

 

 

 

「仲間割れは終わりですかな?」

 

星の杖のブレードが、剣に生えた重石を切り裂く。

 

「…」

 

オレはゆっくり深呼吸する。

 

「すまない。助かった。新型の相手を任せていいか?」

 

「…ふん、勘違いするな。俺はただ近界民を駆逐しに来ただけだ。」

 

三輪は俺の目を数秒見た後そう言って三輪はオレの横を抜けラービットに向き直る。

 

「なるほど。数の有利は無くなった…という事ですな。ですが…あなたのお仲間1人でラービット4体の相手が努まると?」

 

 

 

「ざんねーん。あたしもいるんだな〜。」

 

 

その声は上から。

 

 

怪物は気配を悟られる事もなく、ラービットの背中に飛び乗る。

 

「これで遠慮なく戦えるでしょ?綾瀬川センパイ♡」

 

そう言って天才銃手、榎沢一華はハンドガンを発砲。

いとも容易くラービットを仕留めた。

 

 

 

「舞台は整えてくれたらしいな。…第2ラウンドだ。悪いがこっちもあまり時間をかけてられないからな。」

 

「…面白い。全霊でお相手しましょう。」

 

 

最強VS最強。

その戦いはいよいよ決着を迎えようとしていた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

三輪秀次→自惚れんな。
榎沢一華→崇拝。


三輪秀次←仲直りしたい。
榎沢一華←警戒。



榎沢一華パラメーター
(元ボーダースポンサーによる資料参照)

トリオン 13
攻撃 13
防御・援護 10
機動 11
技術 12
射程 7
指揮 2
特殊戦術 1
TOTAL 69

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大規模侵攻 〜転〜

遅くなりすいません。
投稿します。


てか大規模侵攻長ぇなw
ランク戦が書きたくなってきた。


ボーダー本部基地

 

「遊んでやるだぁ…?猿が満足に口利いてんじゃねえぞ…!!」

 

渦巻いた泥の王の広範囲攻撃。

それはいとも容易く諏訪の体を切り刻む。

しかし、そのダメージは瞬きする間に修復される。

 

「おーおー、ナイスな攻撃だな。もう1回やってみろよ。ほれ。」

 

 

(このクソ猿…どういう仕掛けだ?不死身…?幻覚…?いや、そんな大層な性能のトリガーをこの雑魚が持ってるはずねえ。ってことは…)

 

 

 

「仕掛けがあるのはこの部屋か…!!」

 

 

そう言ってエネドラは部屋の壁を攻撃する。

 

しかし、その攻撃は全て吸収される。

 

「…!」

 

「ご名答。けど分かったとこでテメーには何も出来ねえよ。大人しくプルプルしてろスライム野郎が。」

 

諏訪は笑みを浮かべてエネドラに言い放った。

 

 

『…でもこのままじゃ俺らもあいつを倒せませんよ?』

 

そう尋ねるのは諏訪隊攻撃手の笹森日佐人。

 

『いいんだよこれで。訓練室ならこいつのトリガーを解析できる。さっき二宮達がある程度はこいつのトリガーを引き出してくれたんだ。

 

 

…丸裸にしてやるんだよ。

 

 

俺らはスライム野郎が操作盤に気づかねーように程々に相手すんぞ。』

 

そう言って諏訪は一瞬、入口の横にある操作盤に視線を向けた。

 

『あれに触りゃ馬鹿でも開けちまうからな。』

 

 

 

 

「さあ…

 

 

 

…ゲーム開始だぜ。」

 

諏訪は不敵な笑みを浮かべ、エネドラに銃口を向けた。

 

 

──

本部基地司令室

 

「おお!諏訪隊が人型を閉じ込めましたよ…!」

 

「訓練室とは考えたな!」

 

モニターを見ながらそう感嘆の声を上げたのは鬼怒田本吉と根付栄蔵。

 

「…城戸司令。」

 

それを見ていた忍田は城戸を呼ぶ。

 

 

「しばらく指揮をお願いします。」

 

「…いいだろう。」

 

忍田の言葉に城戸は短く答えた。

 

「後を頼むぞ。沢村くん。」

 

「はい!

 

 

…忍田本部長!」

 

沢村は忍田を呼び止める。

 

 

「…お気を付けて!」

 

その言葉に忍田は小さく頷く。

 

そうして視線を戻し、歩き出す。

 

 

 

 

ボーダー本部最強の虎は戦場へと歩き出した。

 

 

 

 

──

 

「!…トリオン兵の動きが変わった。」

 

そう言うのは空閑遊真のお目付け役であるレプリカだった。

 

「狙われてるのは…市街地か!」

 

「ふむ。どーする?こなみせんぱい。」

 

レプリカの言葉に空閑遊真は小南に視線を向ける。

 

「どうしても戦力を分散させたいみたいね…。それにあっちの方角は…」

 

 

──

 

「烏丸先輩?」

 

基地に向かう烏丸京介、三雲修を先頭に動くC級部隊。

足を止めた烏丸に修が尋ねた。

 

「いや…何でもない。」

 

烏丸はそう言っているが内心はそうではなかった。

 

大型のトリオン兵複数。

その群れが向かっている先には自分の家があった。

避難はしているだろう。

しかし大型の巨体に潰されれば家はタダでは済まない。

家族との思い出が詰まった大事な家だ。

 

「っ…くそ…。」

 

 

──

 

「ふむ。分かった。ここは俺とレプリカで何とかするよ。」

 

「!…でもまだこれだけ新型がいるのよ?」

 

「大丈夫大丈夫。レプリカもいるし。」

 

遊真はそう言ってラービットに向き直る。

 

「どの道誰か行かないとまずいでしょ。俺はブラックトリガーもあるしレプリカのサポートもある。」

 

『行け、小南。』

 

そこに木崎からの通信が入る。

 

『レイジさん、でも…!』

 

『問題ない。俺も今遊真のところに向かっている。俺が着くまで遊真1人で大丈夫だろう。それともお前の弟子はそれほど信用がないのか?』

 

小南は遊真に視線を戻す。

 

「…私が戻るまでにやられたら許さないわよ。」

 

そう言って小南は進軍を続ける大型の群れ目掛けて飛び出した。

 

「そりゃ負けられないな。レプリカ。」

 

「心得た。」

 

そう言って2人はこちらに迫る7体のラービットに向き直った。

 

 

──

 

拳を握りしめる。

 

 

これが最高傑作と失敗作の差なのだろう。

 

目の前の高次元の先頭にあたしは見惚れていた。

目で追えない程の剣撃。

 

ホワイトルーム唯一の成功作にして最高傑作、綾瀬川清澄の本気。

 

あたしに勝てるのは綾瀬川センパイだけだと思ってた。

 

しかし綾瀬川センパイが相手にしている人型近界民はそんな事を思ったあたしを殴りたくなる程の腕前。

あたしが勝てる相手じゃない。

 

 

 

「っ…ほんっと…凄いなぁ綾瀬川センパイは…。」

 

隣に立ちたい。

最高傑作と並び立つ程の良作に。

 

…失敗作とは言わせない。

 

 

 

そしていつかはあたしが…

 

 

 

 

「おい。」

 

「!」

 

ボーッとしていた榎沢に三輪が話しかけた。

 

「ボサっとするな。新型を片付けたのなら次は人型だ。」

 

そう言って三輪はヴィザに視線を向ける。

 

「…あの戦いに割って入るの?」

 

「…」

 

「無理でしょ。あなたじゃすぐにやられる。…ま、あたしが言えた事じゃないけどね。…それよりもセンパイは戻った方がいいんじゃない?このままだと逃げてるC級は捕まっちゃうよ。」

 

「なんだと?」

 

三輪は榎沢を睨みつける。

 

「あはは、そんな怖い顔しないでよ。忠告してあげたんだから。…急いだ方がいいよ。

 

 

 

…あたしの勘、よく当たるから。」

 

 

 

 

 

──

 

『京介、市街地の方には小南が向かった。お前は何も考えずに修とC級を避難させろ。』

 

『…了解。ありがとうございます。』

 

そう言って烏丸は通信を切る。

 

 

「大丈夫ですか?烏丸先輩。」

 

修が心配そうに尋ねた。

 

「問題ない。」

 

弟子に心配されては世話がない。

烏丸は安心させるように力強い声でそう言った。

 

 

その瞬間、後続のC級、雨取千佳がその場に止まり、空に目をやる。

 

「千佳?!どうした?!」

 

「来る…10…」

 

「!…烏丸先輩!敵が来ます!」

 

「何?どう言うことだ?」

 

「千佳のサイドエフェクトです!」

 

その瞬間、空に10のゲートが開かれた。

 

そこから現れる10体の新型トリオン兵、ラービット。

 

「修!千佳を連れて走れ!…エスクード!」

 

数が多すぎる。

 

 

 

「…メテオラッ…!!」

 

その瞬間、空から爆撃が降り注ぐ。

 

その爆風の中2人の隊員がラービットに切りかかる。

 

「硬っ、何こいつ。」

 

「ウワサの新型だろ。うじゃうじゃいんな。」

 

「緑川!米屋先輩!」

 

駆けつけたのは南部から移動してきた草壁隊攻撃手、緑川駿と三輪隊攻撃手、米屋陽介。

 

「つーか榎沢のヤローどこに行きやがった。こっち来てねえのかよ。」

 

「!、出水先輩。」

 

烏丸の隣に立ったのは太刀川隊射手、出水公平。

 

「よー、京介。先輩が助太刀してやるぜ。泣いて感謝しろよ。」

 

「泣かないっすけど感謝しますよ。C級を基地まで逃がします。迅さんの指示です。敵を引きつけてください。」

 

「迅さん!」

 

迅という言葉に緑川が反応する。

 

「りょーかい。

 

 

 

…アステロイド!」

 

 

現れた巨大なトリオンキューブに修は目を見開く。

 

「そーらこっちだ。ついてこい!」

 

出水はそう言って弾を撃ち出す。

 

「A級1位…これがトップクラスの射手…僕の何倍あるんだ…?」

 

「ボサっとするな修!3人が止めてくれても何体かは抜けてくるぞ!」

 

抜けてきたのだけでも6体はいる。

修は走り出す。

 

「うわっ!こっち来た!」

 

C級隊員、夏目出穂は迫るラービットにアイビスを放つ。

しかし、それは少ない動きで避けられ、足止めにすらならない。

 

「戦っちゃダメだ!逃げるんだ!」

 

目の前の黄色のラービットは腹から何かを撃ち出す。

 

それが地面に刺さると、修の腕に着いた磁石の楔と反応する。

磁力に引かれ、修は地面に縫い付けれる。

 

「!…人型近界民と同じ能力?!」

 

それはヒュースの操る蝶の盾と同じ磁力の能力であった。

 

「修くん!」

 

「メガネ先輩!」

 

「アステロイド!」

 

修はラービット目掛けてアステロイドを放つ。

 

しかし、ラービットは避けるまでもなくそれを受ける。

 

「僕の攻撃なんて避けるまでもないってことか…!」

 

そんな修の隣に雨取、夏目が立つ。

 

「何をやってるんだ2人とも!僕は大丈夫だ!緊急脱出が…」

 

「修くん。」

 

そう言って雨取は修の手を握る。

 

「わたしのトリオンを使って。修くんならきっともっと上手くわたしの力を使えるから…!」

 

 

──

 

「南西、ヴィザの元に送り込んだラービットは全滅。援軍があったようです。」

 

「…そうか。」

 

予想を遥かに上回る敵の戦力。

ラービットも残り少ない。

 

 

その瞬間、巨大なトリオン反応が。

 

「!…ラービット全壊…計測器がエラーを起こしました。」

 

映像に映るのはラービットを破壊した金の雛鳥の姿。

 

 

「…窓を開けてくれ、ミラ。」

 

ハイレインは立ち上がる。

 

「出るつもりはなかったが…」

 

そう言うとハイレインは苦戦するヒュース、ヴィザの映像に視線を移す。

 

「俺が出よう。

 

 

…金の雛鳥は俺が直接捕らえる。」

 

 

 

 

敵将ハイレインは微笑を浮かべて、戦地に降り立った。




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大規模侵攻 〜至高〜

お久しぶりです。
言い訳にしかならないので特に何も書きませんw
すいませんでした。



「おい、メガネくん。お前何者だ?トリオン半端ねーな!」

 

そう言って修に話しかけたのは出水だった。

 

「玉狛支部の三雲修です!こっちは同じ玉狛の雨取千佳と本部所属の夏目さん。さっきのは僕のトリオンじゃなくて千佳のトリオンを僕のトリガーで撃っただけです!」

 

「あまとりちか…?玉狛のトリオンモンスターか!」

 

出水は思い出したように言った。

 

「俺は出水。俺らで新型を片付けようぜ。撤退戦のつもりだったが…

 

 

上手く行けば全部殺せそうだ。」

 

そう言って出水は笑みを浮かべる。

 

「はい!」

 

出水の言葉に修は頷く。

 

 

「!」

 

しかし、その瞬間雨取千佳はとてつもない悪寒に襲われる。

 

「?…どした?チカ子。」

 

雨取の異変に気付いた夏目が雨取に尋ねる。

 

 

「…鳥…!!」

 

 

雨取はただ一言。

そう言って空を見上げる。

 

 

 

「もう二体目がやられたか。急ぐ必要があるな。」

 

少し離れた家屋の屋上。

そこで敵将は淡々とそう話す。

 

「人型近界民?!」

 

 

 

 

 

 

卵の冠(アレクトール)。」

 

 

 

 

 

 

「攻撃が来ます!!」

 

ハイレインの持つブラックトリガーから放たれるのは無数の鳥の群れ。

それがシールドを持たないC級隊員に無慈悲に襲い掛かる。

 

 

刹那。

 

その鳥に触れた隊員はキューブとなり地面に転がる。

 

「?!…これは…鳥に触るな!キューブにされるぞ!」

 

烏丸が声を荒らげる。

 

「人がキューブに?!」

 

そう言って修はハイレインに目を向ける。

 

第二波が来ようとしていた。

今度は魚の形をしている。

 

 

「生き物の形の弾か!」

 

そう言いながら緑川はスコーピオンを構える。

 

「動きは複雑だけど…」

 

「落とせねー速さじゃねえな!」

 

そう言いながら緑川と米屋はスコーピオン、槍型の弧月を振るう。

 

 

キンキン…

 

 

「「!」」

 

緑川、米屋は目を見開く。

 

2人の持っていたスコーピオン、弧月がキューブへと変わり果ててしまったからだ。

 

(武器までキューブに…!?)

 

無惨に散る自らの弧月を見て米屋は冷や汗を浮かべた。

それは緑川も同様。

 

 

…その致命的な隙に、A級隊員をも食らう、アフトクラトルの新型トリオン兵、ラービットは緑川、米屋に襲いかかる。

 

米屋は左腕を切り裂かれたものの、どうにか避ける。

 

しかし、緑川はがっちりと地面に押さえつけられてしまった。

そんな緑川目掛けて卵の冠が生み出した魚は緑川目掛けて空を泳ぐ。

 

「シールド!」

 

しかし、そのシールドすらもキューブに変えられてしまう。

 

そして魚は緑川にじゃれつくように衝突。

爆ぜたかと思うと緑川のトリオン体の輪郭を歪ませた。

 

「やべっ…!

 

 

 

…緊急脱出!!」

 

間一髪。

緑川は光となって空に打ち上がる。

 

新型との連携。

 

こちらにゆっくりと降りてくるハイレインを見て米屋は冷や汗をうかべる。

 

「メガネくん。女子連れて逃げろ!

 

 

…ハウンド!!」

 

出水の放ったハウンド。

それは見事にハイレインの放った鳥を撃ち抜き、キューブとなり転がった。

 

「ひよこ1匹通すかよ…!」

 

「いい腕だ。」

 

出水は足に違和感を覚える。

 

そこには無数のトカゲが。

 

「っ?!」

 

トリオン体の足が歪み出水はその場に崩れた。

 

 

 

 

「アステロイド…!」

 

 

その瞬間、側面からの射撃。

 

雨取のトリオンを使った修の射撃だった。

 

それは鳥にぶつかると大きなキューブとなり転がった。

 

「腕は拙いが…

 

 

…やはり驚異的なトリオンだ。」

 

 

卵から放たれた鳥。

 

 

それは修ではなく雨取を撃ち抜いた。

 

 

「!…千佳!!」

 

「修く…逃げて…」

 

 

そのまま雨取はキューブとなり地面に転がる。

 

 

敵将ハイレインの登場により戦局は大きく傾いた。

 

 

──

 

繰り出される無数の剣撃。

それらを見切った綾瀬川は風刃で全て受ける。

 

ヴィザは距離を取る。

 

その瞬間、綾瀬川目掛けてブレードが走る。

 

それを少ない首の動きで避けると、距離を詰め切りかかる。

 

付け入る隙のないハイレベルの戦闘。

綾瀬川は胸の高鳴りを覚える。

 

サイドエフェクトで演算してこそ分かる目の前の老人の強さ。

間違いなく今まで戦ってきたどの相手よりも強い。

 

この男なら或いは…

 

 

鍔迫り合いの刹那、綾瀬川は尋ねる。

 

「あんたは自分より強い相手と戦った事があるのか?」

 

「はて…真に己より強いか弱いかは勝負決して後分かることでありましょう。」

 

「…そうか。…オレは…無いな。」

 

綾瀬川はそう言い切る。

 

「ボーダーにもあそこ(・・・)にもオレより強い奴はいなかった。あんたを見てると近界に興味が湧いてくる。未知のブラックトリガー、経験値、戦術。ここにないものをあんたは持ってる。

 

…なあ、1つ聞かせてくれ…

 

 

 

 

…あんたはオレに敗北を教えてくれるのか?」

 

 

今までにないほど綾瀬川の瞳は冷たく輝いた。

 

 

 

 

 

「なるほど…トリオンを出し惜しみしている場合では無さそうですな。

 

 

…星の杖。」

 

 

その言葉と同時にヴィザの周りには今までの比にならない数の星の杖の「道」が展開される。

 

 

 

 

「さらばです。玄界の強き勇士よ。」

 

 

 

一瞬の瞬きの刹那。

 

 

停止したモノクロの世界を綾瀬川は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

一刃目。

オレは迫り来る刃の斜め下に重心を傾け躱す。

 

二刃目。

その場に急停止。

刃は虚空を切る。

 

三刃目。

スライディングの要領で抜ける。

 

四刃目。

足を狙った刃を飛び越え、風刃を構える。

 

五刃目

構えた風刃で刃を受け流し、ヴィザとの距離を一気に詰める。

 

「ちっ…。」

 

頬が切れる。

演算ミスか…。

 

だが問題無い。

 

すぐに修正する。

 

 

距離を詰めたオレにヴィザは飛び上がり距離を取ると、さらに星の杖の刃を展開する。

 

 

…ここだな。

 

 

風刃を数回振るう。

 

 

地面を駆け抜ける初見殺しの緑の道筋。

 

それはヴィザの下の地面を2つ、刻まれていない電柱、塀を走ると、ヴィザの足下…死角からヴィザに迫った。

 

 

 

 

「…なるほど。この遠隔の斬撃がそのトリガーの正体ですか。初見殺しとしては十分。だが私には通じないようです。」

 

しかし、それは足下に集合した星の杖の刃により防がれる。

 

「星の杖を見切りあまつさえ足下の死角から攻めてきたのはあなたで8人目です。中々悪くない攻撃だ。だが…ここまでです。」

 

 

星の杖のブレードがオレに迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「気付いてるか?オレとあんたは最初にあんたが小南と戦っていた場所に戻ってきてるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

ブレードを避けながら綾瀬川は視線をヴィザの背後に移す。

 

そこには綾瀬川が切り伏せたラービットが転がっていた。

 

「あんたの言う通り風刃は見える範囲に斬撃を飛ばすトリガーらしい。この光の帯が残数だ。今あんたに使ったので4本。ここには5()本残ってる。…そしてオレの最大数は11本。…残り2本…どこにあると思う?」

 

「!」

 

地面から伸びた2本の斬撃。

 

それは星の杖を持つヴィザの腕、右足を切り飛ばした。

 

 

 

「風刃は遠隔斬撃だけじゃない。斬撃を仕込むことも出来る。そのくらい出来ないとあんたのブラックトリガーと比べて大分見劣りするだろ?」

 

「ブラックトリガー…なるほど、私がこの場所に戻ってくるのを見越していたと?」

 

「見越した?違うな。

 

…オレがここに誘導したんだよ。」

 

「あの戦いの刹那に…ですか。」

 

「あんたは今地に這いつくばっている。それが結果だ。ヴィザって言ったか…オレが戦ってきた中であんたが1番強かった。だが…

 

 

 

 

 

…あんたじゃオレは葬れない。」

 

 

 

 

 

 

「やはり長生きはするものですな。あなたのような戦士に会えるとは。…これだから戦いは止められない。」

 

「戦闘狂が。」

 

そう言って綾瀬川はヴィザ目掛けて風刃を振り下ろした。

 

 

──

 

『!…ミラ。』

 

『は、はい。この反応は…ヴィザ翁が敗北したようです。』

 

出水との撃ち合いの最中。

ハイレインは手を止めてミラに通信を入れた。

ハイレイン、ミラは動揺が隠せずにいた。

 

『…回収に向かえ。』

 

『…承知しました。』

 

 

 

 

…ヴィザが負けた…?

 

 

 

──

 

「オレが受けた特務はただ1つ。近界民の排除だ。」

 

そう言って綾瀬川は生身に戻ったヴィザに近付く。

 

「私は負けたのです。敗者の処遇は勝者に委ねられる…当然の摂理でしょう。」

 

ヴィザは抵抗することなくそう言った。

 

綾瀬川の風刃を持つ手に力が篭もる。

 

 

 

その瞬間、ヴィザの背後にゲートが開いた。

 

「!」

 

それと同時に綾瀬川の周りに現れた無数の小さなゲート。

そこから杭のようなものが飛び出すが、綾瀬川は飛び退いてそれを避ける。

 

「お迎えにあがりました。ヴィザ翁。」

 

現れたミラはヴィザにそう言った後、綾瀬川に視線を移した。

 

「…不本意ではありますが…どうやらここまでのようだ。」

 

ヴィザは目を薄く開き綾瀬川を見据える。

 

「私もまだまだですな。…いずれまた剣を交じえたいものだ。」

 

ヴィザはそう言って起き上がるとゲートに向けて歩き始める。

 

 

綾瀬川はゲート目掛けて駆けるがその前にゲートは閉じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ…。」

 

オレはその場に腰を着く。

 

 

「…榎沢はどうしたんだ?」

 

こちらに歩いてくる三輪にオレはそう声をかける。

 

「基地の方に向かった。敵はまだ残っているからな。」

 

「そうか…残ってくれてたんだな。…助かった。」

 

「…勘違いするな。俺はただ近界民を駆逐するために来ただけだ。」

 

そう言うと三輪はオレの横を抜ける。

 

「敵はまだ残っている。…近界民は全て殺す。」

 

「三輪。」

 

オレは換装を解くと三輪に声を掛ける。

 

 

そして風刃を三輪に手渡した。

 

 

「!…どう言うつもりだ?まさか…

 

 

 

…迅の差し金か?」

 

 

三輪はオレを睨みつける。

 

 

「オレが三輪にこれを渡す未来が見えてた上で、オレに風刃を持たせたのならそうかもな。…オレにはもう必要のないものだ。お前が使ってくれ。

 

 

 

…シールドも無い、緊急脱出も出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

…そんな不便なトリガーもう懲り懲りだ。」

 

 

──

 

「三輪はもう行ったぞ。」

 

そう声をかける。

 

 

「なーんだ。気付いてたんだ。」

 

 

瓦礫の隙間から顔を出したのは榎沢だった。

 

「隠れてまで残ってたんだ…何の用だ?」

 

「そんな警戒しないでよ。…なんであの人に渡したの?あたしも居たのに。」

 

榎沢は拗ねたように尋ねた。

 

「適合してるかも分からないし、第一お前は信用ならない。」

 

「ひっどいなぁ。」

 

そう言いながら榎沢はオレの隣に腰掛ける。

 

 

「今の戦いを見てて確信したよ。綾瀬川センパイはB級にいていい人間じゃない。ましてや柿崎隊なんかじゃ綾瀬川センパイの足を引っ張るだけだよ。」

 

榎沢は声のトーンを落としてそう言った。

 

「またその話か。言ってるだろ。柿崎隊の事は気に入ってるんだよ。抜ける気は無い。」

 

「ふーん。じゃああたしが証明してあげるよ。綾瀬川センパイの隣に立つべきなのは柿崎隊でも三輪センパイでも誰でもない…

 

 

 

…あたしだって事。」

 

そう言うと榎沢は立ち上がる。

 

「次のランク戦で。」

 

その言葉にオレは目を細める。

 

「…好きにしろ。お前がA級への道を阻むなら退けるだけだ。だが…

 

 

 

…まずはこの街を守らないと始まらないだろ。」

 

「あはは、それもそうだね。」

 

 

 

 

そう言って2人の怪物は歩き出した。

 

 




綾瀬川清澄パラメーター(風刃使用時)

トリオン 37
攻撃 33
防御・援護 19
機動 10
技術 20
射程 10
指揮 10
特殊戦術 7
TOTAL 146

ちなみにぶっつけ本番でこのパラメーターです。

綾瀬川から風刃への印象は…

使いづらい。シールドと緊急脱出無いの不便過ぎブレードは軽くて丈夫だから優秀。1番の強みはこのブレードだと思ってる。
結論、普通のトリガーでやりゃ良かった。



各キャラからの印象&各キャラへの印象

ヴィザ→興味。素晴らしい。自分は井の中の蛙だった。
三輪秀次→心配。
榎沢一華→ランク戦で勝ったらお前あたしの隊長な。


ヴィザ←化け物。風刃の初見殺しがあったから勝てた。唯一自分が負けを悟った存在。
三輪秀次←仲直りしたい。
榎沢一華←ツインテは日浦と黒江で間に合ってます。


真面目な話遅くなりすんません。

感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜戦局〜

お待たせしましたー。
どうぞ。


「!…やったか…!」

 

ヒュースとの戦闘の合間。

迅悠一は声を上げる。

 

「!…ヴィザ翁が…?!」

 

目の前のヒュースは信じられないと言わんばかりに口を開ける。

 

「未来が変わった。もう少しだな…頼むぜ、みんな。」

 

──

 

『本部基地南西、綾瀬川隊員がブラックトリガーを撃破!』

 

 

「おお!綾瀬川か…!」

 

「…」

 

鬼怒田とは対称的に根付は黙ってしまう。

 

「…分かっているんですか、城戸司令。彼は危険すぎます…!」

 

「…」

 

「天羽くんと迅くんが居ても彼を抑えることは出来ない…。もし彼が反…「憶測でものを言うのは止めていただきたい。」」

 

城戸のその言葉に根付は口を閉じる。

 

「状況を見ろ。

 

 

 

…近界民はまだ残っている。」

 

その瞬間、目の前のモニターには壊された訓練室が映る。

 

「!、いかん!ブラックトリガーが出てきおったぞ!」

 

階下の仮想訓練室。

諏訪隊が相手をしていた人型近界民、エネドラのブラックトリガーが訓練室を破壊した。

 

「忍田本部長はまだ着かんのか!」

 

「もう少しかかるでしょう!この司令室から訓練室まではかなり距離がありますから…!」

 

 

 

「…ふん、あの男がまともな通路を行けばな。

 

 

 

 

…やんちゃ小僧が。」

 

──

 

外壁が切り刻まれる。

壁を壊し、ダイナミックに登場した男は弧月を抜いた。

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

キィンと甲高い音を立てて放たれたそれは、エネドラを切り刻む。

 

通路ではなく、外壁を走る奇想天外なショートカット。

 

ノーマルトリガー最強の男、忍田真史は諏訪隊に背を向け、エネドラの前に降り立った。

 

 

「よく足止めをした、諏訪隊。ご苦労だったな。」

 

「イヤイヤ、まだ死んでないスよ。」

 

諏訪はそう突っこむ。

 

 

『鬼怒田さん、悪いが壁を修復してくれ。こいつを逃がす訳には行かないからな。』

 

鬼怒田へと通信を入れる。

 

だが、それに反応したのは鬼怒田だけではなく、目の前のエネドラもだった。

 

「ああ?!誰が逃げるって?この程度で俺に勝てると思ってんのか?雑魚トリガーが!!」

 

エネドラは嘲り半分、舐められたことへの怒り半分でそう口にする。

しかし忍田はただ淡々と、

 

 

 

「当然だ。貴様のような奴を倒す為、我々は牙を研いで来た。」

 

 

 

そう言って弧月を構えた。

 

──

 

『大方予想通りやな、敵のトリガーは液体、気体と刃状の固体にトリオンを変化させるもの…それに加えて伝達脳と供給機関も硬質化でガード…って感じやな。…どうやって倒すんです?』

 

生駒隊作戦室。

 

そこで既に緊急脱出した水上が風間、三上に尋ねる。

 

『弱点以外は切ってもダメージゼロ、ダミーまで作られたんじゃマジでスライムやないスか?』

 

『弱点の硬質化は壊せないほどの硬さではない。的確に的を撃ち抜けば壊せる。それよりも厄介なのは…』

 

『来ます!気体での広範囲攻撃です!』

 

作戦室に充満したトリオン反応。

それを見た水上は考える。

 

『…堤さん、空調効かせてください。』

 

『!…なるほど!』

 

『ええ、今は本部長さんとこが風上の筈ですわ。』

 

──

 

「!」

 

エネドラの展開したガスは風に押し戻される。

 

『よくやった、水上。…やつの弱点の情報をくれ。』

 

忍田は水上を労った後、三上に通信を入れる。

 

『ダミーも同時に映ってしまいますが…』

 

『構わん。何れにしろ全て斬る。』

 

膠着は一瞬。

エネドラの泥の王と、忍田の旋空が交錯する。

 

「!」

 

驚愕の表情を浮かべたのはエネドラだ。

 

それもそうだろう。

こちらの攻撃をものともせずに目の前の男はエネドラの作ったダミーを切り伏せて行くのだから。

 

「うぜえな…クソ雑魚がぁ!!」

 

エネドラはさらに手数を増やす。

 

 

「!…この猿…止まらねえ…!」

 

しかし、忍田の手は止まるどころかさらにスピードを増す。

 

「この…雑魚トリガーの分際で…!!」

 

今度は地面を伝う液状の攻撃。

しかし、忍田はそれすらも切り伏せる。

 

「ダミーを作るのが追いつかねぇ…!」

 

 

「貴様のトリガーは火力よりもその特殊性が武器だ。ネタが割れれば強みを失う…

 

 

 

…貴様の敗因は我々の前ではしゃぎすぎたことだ。」

 

 

そう言って忍田は綾瀬川と比べても遜色ない程の速度で距離を詰め、残り2つの反応を切り伏せた。

 

「マジで全部斬りやがった!」

 

「援護する暇無かったですね。」

 

 

だが、エネドラの身体は生身に戻るでもなく液体化すると忍田に襲いかかる。

 

 

「!」

 

間一髪。

忍田はそれを弧月で受けた。

 

「ああ?!なんで生きてやがる。」

 

諏訪が皆の心を代弁するように言った。

 

『…土壇場で弱点をカバーから外したのか…!』

 

風間はそう考察した。

 

「流石よく避けたなぁ…。

 

 

…けど気をつけろよ?今はこっちが風上だぜ?」

 

!!

 

忍田の体の内部から刃が飛び出し、トリオンが漏れる。

 

「あ?即死しねえな。小癪にも身体ん中にシールドでも張ったか?けど手応えはあったぜ?伝達系はズタズタの筈だ。もうまともに動けねえだろ。あ?敗因がどうのとか言ってたなぁ?ボス猿さんよぉ?教えてくれよ俺の敗因って奴を。」

 

ふりだし。

エネドラはまたしてもカバーの中に弱点を隠した。

 

「いいだろう。すぐに分かる。

 

 

…私の仕事はもう終わった。」

 

 

 

「!」

 

 

その瞬間、諏訪、堤はエネドラ目掛けて撃ち出す。

 

「こいつらに何ができるってんだ…?」

 

エネドラは呆れたように言いながらさらにダミーを増やした。

 

『おサノ!』

 

『りょーかい、スタアメーカー、ON!』

 

諏訪隊オペレーター、小佐野瑠衣は、オプショントリガースタアメーカーを発動。

これでダミーの意味は無くなった。

 

「日佐人!」

 

「はい!」

 

その瞬間、姿を消した笹森が飛び出し切り掛る。

 

 

しかし、すぐに串刺しにされる。

 

「消えるトリガーはもう見た。気付かねえと思ったかクソガキ。」

 

その瞬間、諏訪、笹森は笑みを見せる。

 

「大分減らしたぞ!行けるか!

 

 

 

 

…二宮ァ!」

 

 

 

後ろからの悪寒にエネドラは振り返る。

 

そこには四角錐4つに分割されたトリオンキューブ。

そして、それを構えた男の姿が。

弾速重視にチューニングされたそれは光り輝く。

 

 

 

「問題ない。…撃ち落とす。

 

 

 

…ギムレット。」

 

 

NO.1射手、二宮匡貴の放つ合成弾ギムレット。

 

それはマークされた弱点を的確に撃ち抜いた。

 

「伝達脳と供給機関を破壊した。

 

 

 

 

…お前の負けだ。」

 

 

 

 

そう言って二宮はエネドラを見下ろす。

 

 

(さっきの弾使い?!このタイミングまで潜んでやがったのか…!!このっ…)

 

 

 

「クソ猿共がァ!!!」

 

 

今度こそ撃ち抜かれた弱点。

エネドラはそう叫ぶと爆ぜながら生身に戻る。

 

 

 

「二宮に気付かなかった時点でお前に勝機は無かった。言ったはずだ。お前ははしゃぎすぎた…とな。」

 

 

「この俺が…雑魚トリガー如きに…!」

 

エネドラは信じられないと言った様子でその場に立ち尽す。

 

「捕らえろ。捕虜にする。」

 

「…りょーかい。」

 

その言葉に諏訪、堤はエネドラに近づく。

 

 

「ストップ。離れて。」

 

「「!」」

 

その言葉に諏訪、堤は飛び退く。

 

するとそこに黒い穴から杭のようなものが飛び出した。

 

 

「っ…ぶねえ、助かったぜ。菊地原。」

 

間一髪。

カメレオンを解いて現れた菊地原が制止しなければ今頃諏訪、堤は串刺しだっだろう。

 

「回収しに来たわ。エネドラ。派手にやられたようね。」

 

「ちっ…遅せぇんだよ。」

 

そう言ってエネドラはミラに手を差し出した。

 

 

 

 

「…あら、ごめんなさい。」

 

 

 

 

その言葉と同時に、エネドラの差し出した左腕は切り落とされてしまった。

 

 

──

 

「おっ、また未来が動いたな。今度は誰だ?宇佐美。…ほうほう、忍田さんと二宮さん…水上もか!…なに?近界民同士で?

 

 

 

…お前の仲間が殺しあってるらしいぞ。意外とゴタゴタしてるんだな!」

 

「っ…黙れ!貴様を始末して…全てはこの目で確かめる…!!」

 

「それは困るな。お前はここで俺と遊んでてくれないと。」

 

 

 

…未来の分岐まであと少し。

 

実力派エリート迅悠一は形見のゴーグルをつけると未来を見据えて静かに微笑んだ。

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

城戸正宗→息子。懐刀。
鬼怒田本吉→強い。よくやった。
根付栄蔵→危険視。

城戸正宗←父親。直属の上司。
鬼怒田本吉←くますごい。
根付栄蔵←苦労人そう。


BBF読んでて思ったことがいくつかあってみんなの意見聞きたいんですけどいいですかね?

まず忍田さんの旋空についてなんですけど…w
あれなんですかね?w
流石に改造してますかね?

あと辻ちゃんについてなんですけど弧月と旋空だけで防御、援護9ってやばくないですか?w
スパイダーと武器破壊で援護しかできない鳩原でも8なのに弧月だけで9ってなんやねん。
A級時代改造したトリガーでも入れてたんですかね…?


これからも読んでいただけると幸いです。


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大規模侵攻 〜混〜

お待たせしました。
大規模侵攻編投稿致します。
おそらく後1、2話で大規模侵攻編は終わると思われます。


「なあ、すまないが状況を教えてくれないか?ブラックトリガーに手一杯で状況が分からないんだ。」

 

基地に走りながら綾瀬川は榎沢に尋ねた。

 

「さあ?あたしも知らなーい。ずっと綾瀬川センパイの事見てたし。あ、でも人型を1匹倒したよ?あの〜…槍の人とかと一緒に。」

 

「米屋か…。」

 

ただ戦況は分からずじまいだ。

 

 

『真登華、そっちはどうなってる?』

 

綾瀬川はオペレーターの宇井真登華に通信を入れる。

 

『女たらし先輩、どうしたの〜?』

 

冷えた宇井の言葉が綾瀬川に突き刺さる。

 

『…悪かった。今度ご飯でも奢る。許してくれ…。』

 

『…仕方ない、許してあげまーす。奢りの件忘れないからねー。』

 

『ああ、約束する。』

 

『…こっちは南東の生駒さんと隠岐先輩、辻先輩と合流して南部、南東のトリオン兵とやり合ってるよ。さすが清澄先輩、人型倒したんでしょ!』

 

どこか弾んだ声で宇井は報告する。

 

『まあ運良くな。今基地に向かってる。戦況を教えて貰えると助かるんだが…。』

 

『りょーかい。南東の人型は米屋先輩と出水先輩、駿くんと榎沢さんが合流した東さん率いるB級合同で何とか撃破。文香とザキさんも大活躍だったんだから。』

 

『…そうか。流石だな。』

 

『うわ、テキトー。…東部の人型は二宮さん達が離脱した後に基地に侵入してきたんだけど諏訪隊と水上先輩、本部長と二宮さんで応戦して倒したって感じかな。』

 

『…基地に入ってきたのか?』

 

『うん。あ、でも水上先輩と二宮さんが予測してくれたおかげで被害はほぼゼロ。通信室で怪我人が少し出たくらいだね。で、今基地正面あたりで人型がC級を狙ってる。ブラックトリガー使いらしいよ。出水先輩と駿くんは緊急脱出しちゃった。』

 

『…わかった。助かる。隊長と文香のサポートをしてやってくれ。』

 

『はーい。清澄先輩も無理しないでね?』

 

『ああ。』

 

そう言って綾瀬川は通信を切った。

 

「柿崎隊のオペレーター?」

 

榎沢が尋ねる。

 

「ああ。」

 

「ふーん…。仲良いんだね。」

 

「まぁチームメイトだからな。」

 

「あ!あたし達が隊組んだらオペレーターどうしよっか?」

 

榎沢は綾瀬川に尋ねる。

 

「馬鹿言ってないで急ぐぞ。出水と駿がやられたらしい。烏丸と木崎さんが食い止めてるみたいだが…状況は悪いみたいだな。」

 

そう言って綾瀬川はスピードを上げる。

 

 

「むぅ〜…。」

 

 

軽くあしらった綾瀬川に榎沢は頬を膨らませる。

 

「センパイの馬鹿!」

 

 

 

そうして走っていると、トリオン反応が。

 

「こっちもまだトリオン兵が残ってるな。」

 

綾瀬川は弧月を抜く。

 

「うさぎちゃんはいないね。雑魚ばっか。」

 

そう言いながら榎沢もアサルトライフルを構えた。

 

「!…綾瀬川!」

 

そう言って声をかけたのは玉狛第一の攻撃手、小南桐絵だ。

 

「小南か。…とんでもない数1人で相手してるんだな。」

 

そう言って綾瀬川はトリオン兵の群れに視線を向ける。

 

「そう思うなら手伝いなさいよ!」

 

「へいへい。」

 

「なになに?センパイの知り合い?」

 

榎沢は綾瀬川に尋ねた。

 

「まあな。」

 

「何なの?その子。」

 

小南も榎沢を見て尋ねる。

 

「センパイと仲良さそうじゃん。…センパイって女の知り合い多くない?」

 

その質問に綾瀬川は心無しか圧を感じる。

 

「ちょっと、無視してんじゃないわよ。あなた名前は?隊服的に諏訪さんのとこ?」

 

「名前を尋ねるならまず自分から名乗りなよ、アホ毛ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

「ん…?」

 

 

 

 

青筋を浮かべる小南とは対照的に榎沢は眩しいくらいの笑みを浮かべる。

 

 

 

「おい、状況見てくれ…。」

 

綾瀬川は呆れたようにため息をつきながら、大型トリオン兵に弧月を振るった。

 

──

 

『ヴィザ、何があった?』

 

出水を撤退させた後、敵将ハイレインは撤退したヴィザに尋ねた。

 

『申し訳ありません、ハイレイン殿。私の完敗です。…私を倒したブラックトリガー使いがそちらに向かっております。』

 

『…そうか。』

 

にわかに信じ難い事だった。

あのヴィザを倒す程の手練が玄界にいるという事。

そのブラックトリガー使いはこちらに向かっている。

ランバネインも敗北し撤退、ヒュースも足止めされ、エネドラは死んだ。

 

ならば一刻も早く雛鳥を回収する。

 

ヴィザを倒したブラックトリガー使いがこちらに来る前に。

 

ハイレインは目の前の2人を一瞥する。

 

 

「こっちに来て遊真は大丈夫なんスか?レイジさん。」

 

「問題ない。新型は減らしてきた。遊真もすぐに追いつく。小南のところにも綾瀬川が合流した。オサムが基地に着くまであと3分。…俺たちが足止めするぞ。」

 

「了解。」

 

ハイレインの前に立ち塞がるのは、木崎レイジ、烏丸京介のボーダー最強部隊、玉狛第一の2人だ。

 

 

『ガイスト、起動(オン)白兵戦特化(ブレードシフト)緊急脱出(ベイルアウト)まで200秒、カウントダウン開始。』

 

機械音がそう告げると烏丸の足、手首、弧月がトリオンに包まれる。

 

全武装(フルアームズ)起動(オン)。」

 

木崎の背中から銃器、盾が飛び出す。

 

 

「今までに見たことのないトリガーだな。」

 

 

木崎の背中の銃器から銃弾、交戦が放たれる。

 

「…いい火力だ。だが俺の卵の冠の前では無力だ。」

 

放たれた砲撃は全てキューブへと変えられる。

 

 

ふと気付く。

 

烏丸の姿が無い。

 

 

目で追えないほどのスピードで距離を詰めた烏丸は持っていた太刀を振り被り、ハイレインへと振り下ろす。

 

(速い…!)

 

 

そのまま為す術なく、ハイレインは切り伏せられる…

 

 

 

…ことは無かった。

 

 

「!」

 

烏丸の持っていた太刀の刃は折られたかのように無くなっている。

 

 

ハイレインのマントの下から蜂が飛び出す。

 

 

「服の下に弾?!」

 

「落ち着け京介。目的を忘れるな。オサムが基地に着くまでだ。手堅く着実に行くぞ。」

 

「…了解。」

 

未来を決める運命の分岐点まであと数分。

弟子を守るため、木崎レイジ、烏丸京介はハイレインの前に立ち塞がった。

 

 

 

──

 

「っ…ここまでか…。…もう少しだ。頼むぞ、京介。」

 

ヒュースとの戦闘で多くのトリオンを使っていた木崎は消費トリオンの大きい全武装で見事ハイレインを足止めした。

しかしトリオン切れで、ここで脱落。

光となって空に打ち上がる。

 

(レイジさん…!)

 

烏丸は自分を残し緊急脱出した木崎の緊急脱出の道筋を見て目を見開く。

 

「…了解。」

 

(あと数十秒。それで修達は基地にたどり着く。あと少し…)

 

 

「ハイレイン隊長、金の雛鳥がまもなく到着致します。」

 

「!」

 

そんな烏丸の前に現れたのは黒い角の生えた女の人型近界民。

報告にあったワープ使い。

 

「そうか、ではそちらに向かうとしよう。

 

 

 

足止め(・・・)はここまでだ。」

 

 

「!」

 

許容し難い一言だった。

 

自分が目の前の人型の足止めをしていたはずが、相手はそれを逆手に取り、こちらの足止めをしていた。

 

全ては修から自分を引き離すための時間稼ぎ。

烏丸はギリッと奥歯を噛み締める。

 

 

「っ…待て…!!」

 

 

バチッ…

 

 

そんな音がして烏丸の背中に何かがぶつかる。

 

後ろを見るとそこにはミラの作り出したワープゲート。

そこからハイレインの卵の冠により作り出された魚が飛び出していた。

 

(弾をワープ…?!そんなの…!)

 

 

「腕がいい。工夫もある。「戦う力」は持っている。

 

 

…だが勝敗はそれ以前に決まっている。」

 

 

(…クソ…。)

 

 

 

「緊急脱出…!」

 

 

弟子を守る為に奮闘した烏丸。

だが及ばす。

 

修やC級をここまで逃がした烏丸はここで戦線離脱となった。

 

 

 

──

 

木崎、烏丸の緊急脱出の後、ミラの操るブラックトリガー、「窓の影(スピラスキア)」により、戦況は一転。

金の雛鳥、雨取千佳を運ぶ三雲修は窮地に立たされる。

 

 

そんな時だった。

 

こちらに向かってくる足音がする。

 

 

(まだ兵が残っていたのか…。あれだけ派手にやれば付近の隊員は誘引できたものだと思っていたが…。)

 

 

 

 

「チッ…。」

 

現れた男は修を一瞥すると舌打ちをする。

 

 

『お前はきっとメガネくんを助けるよ。』

 

『オレが三輪にこれを渡す未来が見えてた上で、オレに風刃を持たせたのならそうかもな。』

 

 

結局はこうなる。

 

全てあの男の手の上なのだ。

 

 

 

 

「あくまで俺を使う気か…迅…綾瀬川…!」

 

 

窮地の修の前に現れた三輪秀次は自分を手の上で動かす目の敵にしている先輩、そしてかつての親友を思い浮かべ、弧月を抜いた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

綾瀬川
榎沢一華→崇拝。チーム組みたい。
宇井真登華→女たらし。…2人でご飯行くの楽しみ。
小南桐絵→手伝いなさいよ!!
三輪秀次→仲違い。

榎沢一華←後輩。柿崎隊抜ける気ねえっつってんだろ。
宇井真登華←後輩。まじすんません。なにか奢ります。もちろん柿崎隊全員で行くよな?(←綾瀬川くんさぁ。)
小南桐絵←友人。話してて楽しい。
三輪秀次←仲直りしたい。

榎沢
小南桐絵→生意気。
宇井真登華→クラス違うけど知ってる。…清澄先輩と仲良さそう。

小南桐絵←綾瀬川センパイと仲いい女。アホ毛ちゃん。
宇井真登華←綾瀬川センパイと仲いい女。オペはずるいな。


ちな榎沢は綾瀬川と仲いい女は全員敵だと思ってます。

感想、評価等お待ちしております。


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大規模侵攻 〜終戦〜

遅れてすいません。
フルスロットルで進め、大規模侵攻自体は終結致します。
少しの改変しかありませんので。


三雲修を追い詰めたハイレインの前に現れたのは三輪秀次。

修の予想とは裏腹にハイレインと三輪の戦いは三輪有利に進んでいた。

それはレプリカの読み通り、三輪の鉛弾がハイレインの卵の冠と相性がいいと言う理由だった。

それだけではなく、レプリカによる援護、ブラックトリガー相手に技術で補い、ハイレインを追い詰めていた。

 

 

 

 

アフトクラトルによる4年前の第一次侵攻を大きく上回る大規模な侵攻。

開戦から数時間。

いよいよ終幕を控えていた。

 

アフトクラトルの勝利条件は「金の雛鳥」、雨取千佳を「運び手」である三雲修から奪うこと。

ボーダー側の勝利条件は雨取千佳を基地まで逃がす事。

とは言っても基地を落とされてはどうしようもないのだが、基地を攻めていたエネドラは死に、屋上のラービットも二宮、諏訪隊、菊地原の手により退けられた。

 

よってアフトクラトルが基地を攻め落とすと言う策をとるとは考えにくかった。

 

 

「トリガー解除(オフ)!」

 

基地目前。

ミラの「窓の影」により縫い止められた修が行った一か八かの大博打。

それはトリガーを解除し拘束を解き、基地に走ると言うシンプルなものだった。

しかしハイレインにとっては効果が絶大な策。

 

 

 

 

 

『お前のトリガーはトリオン以外には効かないとみた。』

 

 

先程撃ち合った玄界の射手の言葉が脳裏を過り、ハイレインは顔を顰める。

 

出水の読み通り。

ブラックトリガー「卵の冠」はトリオンで出来たものをキューブへと変える能力。

生身となった修には通じない。

 

「チッ…ミラ!やつを…」

 

「お前らの相手は俺だ…!!」

 

しかし、三輪がそれを阻む。

大きな敵と考えていなかった三輪がここで大きな障害となる。

 

「煩いぞ。」

 

ミラの窓の影が三輪の背後にワープゲートを開く。

烏丸をリタイアさせた初見殺し。

 

…しかし、その情報は烏丸、米屋によって既に通達済み。

 

 

「来たな…馬鹿が。

 

 

 

…バイパー!!」

 

背後の穴に三輪はバイパーを撃ち込む。

 

(しまった…!!)

 

いち早く気付いたミラ。

しかし時すでに遅し。

ハイレイン、ミラのトリオン体はミラ手元のワープゲートから解き放たれたバイパーにより穴を開けられる。

 

「くたばれ。」

 

好機と見た三輪はさらに距離を詰め、ハイレインに弧月を振るう。

 

「隊長!」

 

しかし、目の前に現れた黒い穴。

抜けるとそこは先程とは打って変わって基地から離れた場所だった。

 

「ワープ女のトリガーか…!!」

 

 

三輪は歯噛みする。

 

 

 

「金の雛鳥を…?!」

 

ワープでハイレインの援護を…そう考えたミラだったが、上手くトリオンを練れなかった。

 

それもそうだ。

戦場を乱すためのラービットの大量投下。

先程の三輪によるバイパー。

ミラのトリオンは底をつきかけていた。

 

ハイレインは修目掛けて駆け出す。

相手は生身。

捕らえるなど容易い。

 

 

 

 

『強』印(ブースト)『射』印(ボルト)五重(クインティ)。」

 

 

 

そう考えていた、ハイレインの前に射撃が降り注ぐ。

 

 

 

 

 

「ざんねん。オサムの所には行かせないよ。」

 

 

 

 

ブラックトリガーに身を包んだ最後の砦、空閑遊真。

空閑の乱入により、「金の雛鳥」の捕獲は絶望的になった。

 

 

 

 

「っ…豆粒、敵の位置を教えろ…!」

 

戦場から離された三輪秀次は悔しそうにレプリカに告げる。

 

(ここまで想定して(視えて)いたのか…!迅、綾瀬川…!)

 

 

 

「風刃、起動…!」

 

 

迅からかつての親友へ。

かつての親友から自分へと託された「風刃」。

レプリカによる計算により、決死の刃が放たれた。

 

 

 

 

「…がっ…?!」

 

 

そんな刹那。

修の身体はミラの窓の影により串刺しにされる。

 

「!…オサム!」

 

後ろに気を取られた隙をハイレインが遊真の横を抜ける。

 

 

その瞬間、修は持っていたレプリカを振りかぶる。

 

(こいつの狙いは遠征艇か…!)

 

させまいとハイレインは加速する。

 

 

 

その瞬間、ハイレインの身体は未知の斬撃により切り刻まれた。

 

 

「!…斬撃…?!」

 

ヴィザの報告にあった遠隔斬撃。

だが、ブラックトリガー使いはトリオン兵が足止めしているはずだった。

 

「あぁぁぁ…!!」

 

修により投げられたレプリカは遠征艇のプログラムに侵入。

帰還の命令を遂行させる。

 

「隊長、帰還の命令が実行されています!金の雛鳥を持って早く艇へ…!」

 

 

『強』印(ブースト)『射』印(ボルト)四重(クアドラ)。」

 

 

そんなハイレインを遊真のブラックトリガーが襲う。

 

「チッ…!」

 

今このブラックトリガーと戦っているだけの時間は無い。

それに先程ハイレインを襲った斬撃。

 

「仕方ない、金の雛鳥は放棄する。」

 

「逃がすと思うか?」

 

遊真は目を細める。

 

 

「ガハッ!」

 

そんな遊真の後ろで修は血を吐く。

 

「…オサム!」

 

「…手当をせねば死ぬぞ。」

 

そんな遊真を尻目にハイレインは遠征艇へと振り返った。

 

 

 

 

 

「オサム、ユーマ。

 

 

 

…お別れだ。」

 

その言葉に遊真は目を見開く。

 

「…レプリカ?」

 

「オサム…ユーマを頼む。」

 

レプリカのその言葉を最後にゲートは閉ざされ、遊真、三輪の横を飛んでいたレプリカの分身は落ちる。

 

空をおおっていた暗雲は消え、晴空へと変わった。

 

 

──

 

本部基地東、南東部

 

「おっ、なんやなんや?晴れたやんけ。」

 

トリオン兵を切り伏せながら生駒は空を見上げる。

 

「もうひと踏ん張りやな…。」

 

 

 

「…メテオラ!」

 

 

トリオン兵へと放たれる爆撃。

 

「…旋空弧月。」

 

その爆風を切り裂き、トリオン兵は切り裂かれる。

 

「強くなりやがったな、照屋。後でランク戦やろーぜ。」

 

「太刀川さん、空気読んでください。」

 

照屋を誘った太刀川を狙った大型トリオン兵の光線を柿崎のエスクードが守る。

 

 

『気を抜くな。敵はまだ残ってるぞ。』

 

東の通信にB級合同、太刀川は気を引き締め直す。

 

残りのトリオン兵は太刀川、照屋、生駒を筆頭に次々と切り伏せられた。

 

 

──

本部基地南西

住宅街の近くのこの場所は、住民の避難が進んでおらず、嵐山隊により避難活動が行われていた。

 

「近界民が来るぞ!!」

 

「きゃあああ!!」

 

逃げ惑う住民の叫び声。

 

散らばった敵に避難は難航していた。

 

「充は住民の誘導を!賢と俺で数を減らす!」

 

「了解です。」

 

 

 

 

 

「…アステロイド+アステロイド…ギムレット。」

 

 

 

 

「!」

 

嵐山隊の前に合成弾が降り注ぎ、トリオン兵を蹴散らす。

 

 

 

 

「准!助けに来たわよ!」

 

「あっ、とっきーくんだ。やっほ〜。」

 

そう声をかけたのは小南と榎沢だ。

 

「桐絵!」

 

「…榎沢さん。」

 

 

 

「そこ、避けてください。

 

 

 

 

 

…旋空弧月。」

 

 

 

 

 

そして、怪物の旋空がトリオン兵の数を一気に減らす。

 

「助かった。…綾瀬川。」

 

「…どうも。敵はこっちで対処する。嵐山隊は住民の避難を。」

 

「…分かった。充、行くぞ!」

 

「了解です。」

 

そう言って嵐山、時枝は住民の元へと走った。

 

 

「さてさて、邪魔しないでよ?アホ毛ちゃん。」

 

「それはこっちのセリフよ。それから私は先輩よ!」

 

そんな言い合いをしていると目の前のトリオン兵が切り裂かれる。

 

 

「…残念。なんだかもう殆ど終わっちゃってるのね。出遅れたわ。」

 

「加古さん!」

 

現れたのは加古望、黒江双葉の、A級6位加古隊の2人だった。

 

「おまたせ桐絵ちゃん、清澄くん。出遅れた分はしっかり働くわ。」

 

「…ししょー、ここは私達に任せてください。」

 

黒江は綾瀬川に視線を向ける。

 

「…それは分かったが師匠呼びはやめてくれ…双葉。」

 

 

そんな様子を見て榎沢は顔を顰める。

 

 

「…は?…だから女の知り合い多くない?綾瀬川センパイ?それに名前呼び?」

 

 

 

 

「…ししょー、その人誰ですか?」

 

「あなたが誰なの?」

 

榎沢、黒江はお互い火花を散らす。

 

 

 

 

「…面倒くさ。」

 

 

 

綾瀬川は1人呆れてため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「…佐鳥もいますよ〜。」

──

 

『人型近界民は撤退、修くんは意識不明の重体だって!千佳ちゃんは基地に入ったよ!』

 

「…くあぁぁ〜!」

 

宇佐美の通信を聞いて迅は横になる。

 

『もう大丈夫だ。2人とも助かった。メガネくんは死なないよ。』

 

『ホント?!良かった〜。』

 

「…貴様…!」

 

恨めしそうに迅を睨むのはヒュース。

ヒュースは1人こちらへと置いてかれていた。

 

「足止めして悪かったな。お前をフリーにするとうちの後輩がやばかったんだ。けど多分お前こっち残って正解だったと思うよ。」

 

そう言いながら迅は起き上がる。

 

「なんか事情があるんだろ?俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

 

「!」

(こいつ…。)

 

そんな2人の後ろに車が。

 

「もう俺たちが戦っても意味は無い。投降しろ。悪いようにはしない。」

 

 

こうして迅VSヒュースの戦いも終戦を迎える。

 

 

──

「おや?ヒュース殿は…そうですか。」

 

戻ってきたハイレイン、ミラを見てヴィザは察したように俯く。

 

「…」

 

ハイレインは考え込む。

 

運び手のトリガー解除や、予期せぬ敵(三輪)

タイミングよくたどり着いたブラックトリガー使い。

 

 

…そして何よりヴィザを倒した玄界の戦士。

 

ヴィザ以上の実力者が、偶然ヴィザの前に現れ、戦いになったとは考えにくい。

 

 

何者かが仕組んでいたとしか考えられなかった。

 

 

「…まさかな。」

 

 

──

 

『迅、この結果はお前の予知の中でどの辺の出来だ?』

 

C級の数が合わなかった。

何人か連れ去られたことになる。

 

その状況を聞いた城戸が迅に尋ねた。

 

「連れ去られたC級や怪我人には悪いけど…2番目…かな。限りなく1番の出来に近い。…死人が出たり、A級やB級が連れ去られる未来もあったんだ。」

 

 

民間人

死者 0人

重症 32人

軽傷 45人

 

 

ボーダー

死者 0人

重症 1人(通信室オペレーター)

軽傷 5人(通信室オペレーター)

行方不明 32人(全てC級隊員)

 

 

『みんな本当によくやったよ。』

 

『…なるほど。分かった。…御苦労。』

 

 

近界民

死者 1人(近界民の手による)

捕虜 1人

 

 

対近界民大規模侵攻三門市防衛戦

 

 

 

…終結。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

嵐山准→味方になればこれほど頼もしい人間はいない。
黒江双葉→ししょー。
榎沢一華→だから女の知り合い多くね?

嵐山准←小南の従兄弟。
黒江双葉←頼まれて名前呼びにした。師匠呼びやめて。
榎沢一華←怖い怖いって。

照屋文香トリガーセット

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:スコーピオン、メテオラ(ハンドガン)、バッグワーム、シールド

柿崎国治トリガーセット

メイン:レイガスト、スラスター、シールド、free
サブ:アステロイド(アサルトライフル)、メテオラ(アサルトライフル)、バッグワーム、エスクード

おそらく照屋とザキさんは今後多少の変化はあれど、これで固定になると思われます。
照屋ちゃんはバリバリ小南に影響受けてますねw

怪我人などは原作と違って規模が広がった分増えてます。
ちなみに死者は、ゆきだるまさたかさんとブロッコリーのおかげで0です。
0にしたのは後々響いてきます。
遠征選抜の為ですね。
言っちゃえば死者が出なかったことにより、「どぅわぁぁ」しません。

次回、まとめ?的な話をやって大規模侵攻編は終わりです。

…長かった。

感想、評価等お待ちしております!


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はい、遅れてすみません。

今回で大規模侵攻は終わりです。
まあオッサムはまだ寝てますけど。


「韋駄天…!」

 

黒江の体が光を帯びる。

そしてこの区域に残る最後のトリオン兵を切り刻んだ。

 

「ふぅ…終わり終わり。」

 

そう言って榎沢は持っていた拳銃をホルスターに仕舞う。

 

「また韋駄天の制御が上手くなったな、双葉。」

 

「!、と、当然です!…ししょー。」

 

綾瀬川の言葉に、黒江は照れ隠しで顔を背けながらそう答える。

 

「…ま、あたしの方が強いけど。」

 

そんな様子を見て榎沢がボソッと呟く。

 

「!…別にししょーは榎沢先輩の事褒めてませんよ?」

 

「…は?」

 

「…なんですか?」

 

「まず師匠って呼び方止めなよ。綾瀬川センパイ嫌そうだけど?」

 

「別に榎沢先輩には関係ないじゃないですか。」

 

「は?」

 

「は?」

 

 

 

「「…は?」」

 

 

 

 

 

「仲良いな、2人とも。」

 

「は…?あんた目、大丈夫?」

 

「諦めてるんだよ。言うな。」

 

ツッコミを入れる小南に綾瀬川はそう返した後、目を細め、通信入れる。

 

 

 

 

『…これで借りは返したぞ。

 

 

…迅さん。』

 

『分かってるよ。お前が例のブラックトリガー使いを倒した時点で俺たちの勝利は半分以上決まってた。…お前のおかげだよ。』

 

迅は穏やかにそう言った。

 

『オレのおかげかどうかはどうでもいい。これで貸し借りは無しだ。』

 

『…ホント可愛くないな、お前。』

 

迅は呆れたようにそう返した。

 

『最後に一つ聞かせろ。…あんたはオレが三輪に風刃を渡すと分かった上でオレに風刃を渡したのか?』

 

『…』

 

『あんたはどこまで見えてたんだ?』

 

『…さあ?でも…俺の行動は全てより良い未来のため…さ。お前の言葉を借りるとしたら…予知はお前の専売特許じゃない。』

 

『…そうか。

 

 

 

…やっぱりあんたとは仲良くやれなそうだ。』

 

 

 

──

 

迅悠一の予知により、これ以上の侵攻は無いと分かったものの、何が起こるか分からない以上警戒態勢は解けず、綾瀬川が基地に戻る頃には既に日は落ちかけていた。

 

「あ、清澄先輩お疲れ様です!」

 

巴が綾瀬川に駆け寄った。

 

「…悪かったな。俺のせいで。」

 

「清澄先輩は悪くないですよ。俺の実力不足です。それに清澄先輩は俺の分まで働いてくれましたから!」

 

屈託のない笑みで虎太郎はそう言った。

 

「…そうか。」

 

そう言って綾瀬川は虎太郎の頭をくしゃりと撫でる。

 

「…文香と柿崎さんはまだ戻ってないのか?」

 

綾瀬川が宇井に尋ねる。

 

「2人なら東さんと一緒に報告に行ってるよ。ほら、東さんと一緒にいたメンバーって生駒さんとかだから報告とかに向いてないでしょ。」

 

「…確かに。」

 

そんな話をしていると作戦室の扉が開く。

 

「お、帰ってきたなMVP。」

 

柿崎はそう言いながら綾瀬川の背中を叩く。

 

「ブラックトリガーと戦ったんですよね?どんな感じでした?」

 

「あっ!それ俺も聞きたいです!」

 

「後にしてやれ。清澄も疲れてるだろーからな。」

 

そう言って柿崎は照屋と巴を引き剥がす。

 

「お前ら、早く家に帰ってやれ。家族や、家が心配だ。」

 

「そうですね。」

 

「分かりました。」

 

柿崎のその言葉で柿崎隊は解散となる。

 

「じゃ、私も帰ろ。清澄先輩、奢りの件忘れてないからね〜。」

 

「分かってるって。…今度柿崎隊でどこか行った時はオレが払います。」

 

綾瀬川は柿崎に目を向けてそう言った。

 

「「「…」」」

 

その言葉に柿崎、照屋、巴は綾瀬川を引いた目で見る。

 

「清澄…お前まじか。」

 

「清澄先輩…。」

 

「…真登華、道は厳しいでしょうけど頑張って。」

 

「…アハハ…知ってた。

 

 

…清澄先輩のバカ、天然。

 

 

…表情筋死んでる。」

 

 

「唐突な悪口やめろ。」

 

 

 

──

 

「特級戦功…ですか?

 

 

…オレが?」

 

「当たり前だろ。ブラックトリガーを単独で撤退させたやつが何言ってんだ?」

 

大規模侵攻から数日。

上層部から論功行賞の発表があった。

 

 

特級戦功 褒奨金150万+1500P

 

A級7位三輪隊

三輪秀次

南西の人型近界民(ブラックトリガー)討伐を援護した後、本部基地前の攻防で人型近界民(ブラックトリガー)2体相手に奮戦。撃退に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 4

 

 

A級1位太刀川隊

太刀川慶

本部基地を襲った爆撃型トリオン兵を迎撃。

その後、ラービット中心に敵戦力を大きく削った。

東地区の被害を小規模に抑えた。

新型(ラービット)撃破数 15

 

 

S級(ブラックトリガー)

天羽月彦

単独で西部、北西部の広範囲を防衛。

人的被害をゼロに抑えた。

新型(ラービット)撃破数 5

 

 

玉狛支部

空閑遊真

C級を狙った新型をほぼ1人で掃討。

その後本部基地前の攻防に駆けつけ、人型近界民(ブラックトリガー)の撃退に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 17(レプリカの撃破数も含む。)

 

 

B級1位柿崎隊

綾瀬川清澄

人型近界民(ブラックトリガー)を単独撃破。

南部、南東部、南西部の広範囲を防衛し、敵戦力を大きく削った。

新型(ラービット)撃破数 4

 

 

 

 

一級戦功 褒奨金80万+800P

 

玉狛支部

三雲修

南西地区から避難するC級隊員を援護。

近界民の遠征艇を攻撃し撃退に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 3

 

 

B級6位東隊

東春秋

対人型近界民戦の指揮を執り、撃破に大きく貢献。

南部の被害を小規模に抑えた。

 

 

A級1位太刀川隊

出水公平

A級7位三輪隊

米屋陽介

A級4位草壁隊

緑川駿

対人型近界民戦で主力として戦い、撃破に大きく貢献。

その後避難するC級の援護に向かい、被害をゼロに抑えた。

 

 

A級3位

風間隊

東部の新型を撃破、その後人型近界民(ブラックトリガー)相手に善戦。

本部基地内の攻防では、指揮、強化聴覚のサイドエフェクトで撃破に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 5

 

 

玉狛支部

迅悠一

南西のC級隊員の避難を援護。

人型近界民を足止めし、捕虜にした。

 

 

玉狛支部玉狛第一

小南桐絵

南西のC級隊員の避難を援護。

その後南西を中心にトリオン兵の侵攻を迎撃。

人的被害をゼロに抑えた。

新型(ラービット)撃破数 6

 

 

A級5位

嵐山隊

警戒区域内の敵戦力を掃討。

南西付近の市民を守った。

新型(ラービット)撃破数 5(木虎の単独撃破を含む。)

 

 

B級1位

柿崎隊

対人型近界民戦、南部、南東部の防衛に主力として大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 8(綾瀬川清澄の単独撃破を含む。)

 

 

B級2位二宮隊

二宮匡貴

南東部の防衛の指揮を執り、敵戦力を大きく削った。

その後は基地に侵入した人型近界民(ブラックトリガー)の撃破に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 3

 

 

B級4位生駒隊

生駒達人

南東部の防衛の主力として防衛に貢献。

基地を狙った爆撃型トリオン兵を迎撃し、人的被害をゼロに抑えた。

新型(ラービット)撃破数 4

 

 

B級4位生駒隊

水上敏志

本部基地内に侵入した人型近界民(ブラックトリガー)相手に指揮で撃破に大きく貢献した。

新型(ラービット)撃破数 1

 

 

B級11位諏訪隊

榎沢一華

対人型近界民相手に主力として撃破に大きく貢献。

その後南西の人型近界民(ブラックトリガー)撃破の援護をした。

新型(ラービット)撃破数 7

 

 

二級戦功としては玉狛支部の烏丸、木崎が。

スナイパー合同として当真、奈良坂、古寺。

諏訪隊、村上、隠岐、辻。

B級合同の括りで、東隊、来馬隊、荒船隊、茶野隊が選ばれた。

 

 

 

「うち一級戦功だって!!」

 

文香と真登華は手を取り合って喜んでいた。

 

「なんかいいんですかね、俺まで貰っちゃって…。」

 

虎太郎はそう言って頭を掻く。

 

「上がくれるって言ってんだからいいだろ。貰えるもんは貰っとけ。」

 

柿崎はそう言って笑った。

 

「特級…オレが?」

 

オレはもう一度柿崎に尋ねた。

 

「いつまで言ってんだ。お前の戦績を考えりゃ当然だろ。ブラックトリガー単独撃破なんてお前くらいだぞ?特級じゃなきゃ逆に上に抗議してやる。」

 

「そうですよ!」

 

「150万か〜。高いとこ連れてってもらおー。」

 

 

 

「…まあお手柔らかに頼む。」

 

 

──

 

「綾瀬川隊員に特級戦功…ですか。もう隠しきれませんよ?城戸司令。」

 

城戸に尋ねたのはメディア対策室長の根付栄蔵だった。

 

「隠すことなど何も無い。清澄は変わらず城戸派直属の隊員であり私の息子だ。清澄のどこに問題があると言うのかね?」

 

「…ブラックトリガーを使った天羽君と迅君をノーマルトリガーで圧倒した綾瀬川君がもし反乱を起こしたら、どうするつもりなんですか?」

 

「…」

 

城戸は何も言わずに目を伏せる。

 

「忍田本部長、アンタから見て綾瀬川はどうなんじゃ?」

 

忍田に尋ねたのは開発室長の鬼怒田本吉。

 

「…戦闘力、技術、戦闘IQどれをとっても人間離れしている…。何をすればあそこまでの怪物が生まれるのか…「問題ありませんよ。」」

 

司令室の扉が開く。

そこには外務営業部長の唐沢克己ともう1人。

忍田、根付、鬼怒田には見慣れない男が立っていた。

 

 

「既に布石は打っている。」

 

 

「…榎沢一華の事ですか…?

 

 

 

 

…綾瀬川先生。」

 

 

 

──

 

「おい、テメェ…榎沢に何してやがる…!!」

 

 

目の前の光景に諏訪洸太郎は咥えていたタバコを落とす。

 

 

 

「…ッ…」

 

 

月明かりに照らされて、不気味な光を放つその瞳。

目の前の男は無機質な瞳を諏訪に向ける。

 

酷く冷たい視線だった。

 

 

「…悪趣味だな。尾行でもしてたのか?」

 

 

諏訪隊の銃手でありながら後輩の、榎沢一華の首を締め上げながら怪物は淡々と話す。

 

「手を離しやがれ…

 

 

 

 

…綾瀬川…!!」

 

 

 

 

──時は数刻遡る。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

小南桐絵→…後輩の女子と随分仲良いのね。
柿崎、照屋、巴→鈍感。割とマジで引く。
宇井真登華→鈍感、馬鹿、表情筋死んでる。もう知りません。
城戸正宗→懐刀。息子。
根付栄蔵→危険視。
忍田真史→怪物。

小南桐絵←友人。チョロい奴。
柿崎、照屋、巴←チームメイト。そんな目でオレを見ないで。
宇井真登華←最近遠慮ないよね。
城戸正宗←上司。父親代わり。
根付栄蔵←大変そう。
忍田真史←強い。それだけ。


次回、「榎沢一華②」と数話やってからお待ちかねのランク戦に突入すると思われます。
撃破数に関しては原作と比べてラービットが増えていますので必然的に多くなっています。

感想、評価等お待ちしております。


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榎沢一華②

投稿します。


諏訪隊作戦室

 

「…あ?榎沢はどうしたんだ?」

 

防衛任務を終えて、作戦室に入った諏訪は堤に尋ねた。

 

「榎沢ならさっき出ていきましたよ。綾瀬川と帰るって言ってました。」

 

「道理で緊急脱出でとっとと基地に戻りやがったのか。」

 

そう言いながら諏訪は緊急脱出用のベッドルームを覗く。

 

「…ん?」

 

緊急脱出用のベッドの上に落ちていたのはトリガー。

 

「あ?これ榎沢のじゃねえか。」

 

「一華ちゃん急いでたから忘れてっちゃったのかな?」

 

飴を咥えながら小佐野はそう言う。

 

「日佐人。お前同じクラスだよな?明日渡してやれよ。」

 

「いや、でも明日土曜なんで学校休みですよ?」

 

「あー…。じゃ、いいわ。一服ついでに届けてくる。そんな遠く行ってねえだろ?」

 

そう言いながら諏訪は上着を着てタバコをポケットに入れた。

 

「気をつけてねー。」

 

「おー。」

 

「…ついでになんか買ってきて〜。」

 

「おいコラ。」

 

 

──

 

「綾瀬川セーンパイ。」

 

夜道。

前を歩く綾瀬川に榎沢は話しかける。

 

「…榎沢か。何か用事か?」

 

「…特級戦功だってね。」

 

「まあな。…お前も一級戦功だろ?」

 

「うん!」

 

そう言いながら榎沢は綾瀬川の隣を歩く。

 

「よく一緒に帰ってるオペちゃんはどうしたの?」

 

「綾辻の所だ。オレは特にやることもないからな。」

 

「…ふーん。」

 

榎沢はそう言うと綾瀬川の前に立つ。

 

「ねえ、今回の戦績どうして隠さなかったの?」

 

何時になく真面目なトーンで榎沢は話す。

 

「大好きな城戸司令に隠蔽してもらえば良かったじゃん。そうすれば平穏に過ごせるでしょ?」

 

「隠せることでも無いだろ。」

 

そう言って綾瀬川は榎沢の横を抜ける。

 

「隠す気も無くなったんだ。」

 

「オレは一応B級1位部隊のエースをやってるからな。これくらい箔があった方がいいだろ。」

 

「…そっか。また柿崎隊。」

 

ものすごく低いトーンで榎沢はそう言った。

 

「もうすぐランク戦だね。…約束覚えてる?…あたしが勝ったら綾瀬川センパイ、あたしの隊長になってよ。」

 

「なるつもりも無いし、したつもりも無い。」

 

「いや、綾瀬川センパイはやってくれるよ。」

 

榎沢は立ち止まりそう言う。

 

「…そう言えば綾瀬川センパイって柿崎隊のみんなにどれくらい話してるの?」

 

「…何を?」

 

綾瀬川は声のトーンを落とす。

 

「綾瀬川センパイの事だよ。ホワイトルームでの事とか、先生の事とか。…もしかして何も話してないの?」

 

「…お前こそ諏訪さんに話してるのか?」

 

綾瀬川の問に榎沢は笑う。

 

「アハハ、話すわけないじゃん。諏訪隊はあたしが綾瀬川センパイと戦う為の居場所でしかないから。話してないならさ…

 

 

 

 

…あたしが柿崎隊のみんなに話してあげよっか?」

 

 

 

その瞬間、綾瀬川の蹴りが榎沢を襲う。

榎沢は腕をクロスしてそれを受ける。

 

「痛ったぁ…。アハハ、怒らないでよ。冗談…

 

 

…だって!!」

 

そう言いながら榎沢は綾瀬川に掌底を撃ち出す。

綾瀬川はひらりと避けると榎沢の腕を捻りあげる。

 

「ッ…!!」

 

榎沢は綾瀬川の腕に飛び付き、首を足で絞め、三角絞めを繰り出す。

 

「下着見えてるぞ。」

 

「綾瀬川センパイになら見られても良いし…!!」

 

綾瀬川は力で強引に解くと、榎沢を投げ飛ばす。

 

「ッ…いたた…

 

 

…ッ?!」

 

目前に綾瀬川の足が迫る。

 

「…っぶな!!」

 

榎沢は上体を逸らして避ける。

 

「あたし一応女の子なんだけど!!」

 

そう言いながら榎沢も綾瀬川に殴り掛かる。

 

「…」

 

綾瀬川はヒラヒラそれを避ける。

 

「遅いな。ホワイトルームで何を習ってたんだ?」

 

「!、最高傑作の綾瀬川センパイには分からないかもね!!」

 

綾瀬川のその言葉に榎沢の攻撃はさらに鋭くなる。

 

「遅い。それに単調だ。」

 

「!」

 

攻撃の隙間を縫って綾瀬川は榎沢の首を鷲掴み、壁に叩きつける。

 

「カッ…ハッ…!」

 

榎沢は苦しそうに息を漏らす。

 

「オレに勝てると思ったのか?」

 

「ア…ハハ…たし…かに…。」

 

榎沢は苦しそうにしながらも笑みを見せる。

 

 

──

 

榎沢のトリガーを届けに来た、諏訪の目に飛び込んだのは、壁に押さえつけられた榎沢だった。

首を絞め、押さえつけているのは柿崎隊の綾瀬川。

目の前の光景に、諏訪は思わずタバコを落とす。

 

「テメェ、榎沢を離しやがれ!!」

 

「ちっ…面倒だな…。」

 

綾瀬川は力を緩める。

 

…その瞬間、榎沢は足を振るい、綾瀬川の側頭部目掛けて蹴りを放つ。

 

 

「…」

 

綾瀬川は何でもないように避けると、榎沢の首を離す。

 

「ゲホッ!ガホッ!」

 

榎沢はその場に崩れ、苦しそうに息を吐く。

 

「榎沢!!」

 

「諏訪さん?邪魔しないでよ…。」

 

榎沢は立ち上がると綾瀬川に目を向ける。

 

「明白だろ。お前じゃオレには勝てないぞ、榎沢。」

 

その言葉に諏訪も綾瀬川に目を向けた。

 

「綾瀬川、テメェ…相手は女だぞ?」

 

「別にオレは落ち着いてますよ。ただ…」

 

榎沢は綾瀬川に飛びかかると、足を突き出す。

 

「…こうなれば反撃せざるをえなくなる。」

 

そう言いながら、綾瀬川は榎沢の飛び蹴りをヒラリと避け、手をプラプラと動かし、戦闘態勢に入る。

 

「余裕そうじゃん!その余裕崩してやる…!!」

 

獰猛な笑みを浮かべながら、榎沢は綾瀬川に飛びかかる。

綾瀬川は榎沢の拳を2、3回避けると、足払いをかける。

 

「っ?!」

 

榎沢はどうにか手を着いて、一回転して距離を取るが、その目前には綾瀬川が迫っていた。

 

そのまま、榎沢の側頭部目掛けて、蹴りを放つ。

 

 

「がっ!」

 

 

それよりも先に、榎沢の前に躍り出た、諏訪が腕でそれを受ける。

諏訪はその衝撃で横に吹き飛んだ。

 

「へぇ、よく止めましたね。」

 

「テメェ…止めろっつってんだろーが…!!」

 

「だったら榎沢を抑えてください。」

 

綾瀬川は呆れたようにそう言った。

 

「っ…もう止めろ…!榎沢。」

 

「…ちぇ、他の人に見られちゃったんじゃ仕方ないね。いい所だったのに…。」

 

そう言いながら榎沢は、服に着いた土を払う。

 

「楽しかったね、綾瀬川センパイ。動いたらお腹減っちゃった。褒奨金150万入るんでしょ?何か奢ってよ。」

 

「…お好み焼きでいいならここを真っ直ぐ行ったところにいい店がある。」

 

「!…お好み焼き?!」

 

榎沢は目を輝かせた。

 

「おい、待ちやがれ、綾瀬川。」

 

「…」

 

綾瀬川は立ち止まると、諏訪に目を向ける。

 

「分かってんだろーな?隊員同士のランク戦以外の戦闘は隊務規定違反だ。」

 

諏訪は綾瀬川にそう告げる。

 

「それは榎沢もでしょ。…それに…

 

 

 

…オレと榎沢はトリガーは使っていない。ただの喧嘩が隊務規定違反になるとでも?」

 

「!!」

 

そうだ。

榎沢のトリガーは諏訪の手にある。

 

「っ…じゃあさっきまでのは…」

 

「生身ですよ。城戸司令直属のオレが隊務規定を犯す訳ないでしょ。」

 

「あっ!それあたしのトリガー!届けに来てくれたの?ありがと、諏訪さん。」

 

そう言って榎沢は諏訪の手の中にあるトリガーを取る。

 

「じゃ、バイバイ諏訪さん。」

 

腰を着いたまま惚ける諏訪に榎沢は手を振る。

 

「待ってよセンパーイ!冗談だってば、そんなやり方面白くないし!怒らないでってば〜。」

 

「怒ってない。足が滑っただけだ。」

 

「うわっ…嘘下手過ぎでしょ…。」

 

「ほっとけ。」

 

先程までの空気が嘘だったかのように綾瀬川、榎沢は夜の通りに消えていった。

 

 

諏訪は先程の綾瀬川、榎沢の動きを思い出す。

榎沢の鋭い拳、それを楽々と躱す綾瀬川の身のこなし。

 

それら全てはトリオン体ではなく、生身での動き。

 

 

「…」

 

蹴りを受けた腕はまだ痺れている。

 

 

「…バケモンじゃねえか…マジで…。」

 

そう言いながら諏訪は苦笑いを浮かべた。

 

 

──

 

「…それで?話と言うのはなんだ?綾瀬川。」

 

翌日。

 

綾瀬川はA級7位三輪隊の作戦室に足を運んでいた。

 

 

「…先ずは礼を言いたかったんだ。大規模侵攻の時は助かった。」

 

「ふざけるな。礼など言われる筋合いは無い。俺はお前を助けた訳じゃない。そんなことを言いに来たのなら帰れ。」

 

綾瀬川を三輪秀次はそう言って切り捨てた。

 

「…」

 

しかし、綾瀬川はまだ何か言いたげと言ったように三輪をじっと見つめる。

 

 

 

今までと変わらない無機質な、不気味な瞳だった。

 

 

「ちっ…ランク戦ブースに来い。綾瀬川。

 

 

 

 

…10本勝負だ。相手をしろ。」

 

 

かつての友人に三輪はそう言って立ち上がる。

 

「マジで?!」

 

聞いていた米屋は驚いて立ち上がる。

 

「綾瀬川と三輪がやんの?!ちょ…弾バカと緑川呼んでくる!!」

 

そう言って米屋は走り出す。

 

 

「出し惜しみをさせてやるほど俺は温くないぞ?…綾瀬川。」

 

 

そして、ボーダートップの万能手(オールラウンダー)同士はぶつかり合う。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

榎沢一華→自分が届かない領域にいる。崇拝。
諏訪洸太郎→化け物。
三輪秀次→元友人。自惚れんな。ランク戦しろや。

榎沢一華←警戒。色んな意味で後輩。
諏訪洸太郎←タバコ。見られちった。
三輪秀次←仲直りしたい。


あと2話くらいかな?
そしたらランク戦に入る。(予定)


感想、評価等お待ちしております。


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三輪秀次①

投稿します。


「はあ?!綾瀬川と三輪が模擬戦?!」

 

米屋の言葉に出水公平は声を上げる。

 

「うん!そう言えばあやせ先輩とみわ先輩が戦ってるとこって見た事ないからさ、いずみん先輩も見に行こーよ。」

 

米屋、緑川はテンションMAXで出水を誘った。

 

三輪と綾瀬川が仲違いしていたのは知っている。

でもまさかそんな話になるとは思っていなかった。

 

「っ…あの馬鹿…

 

 

 

…上手くやれっつってんだろーが!」

 

そう言って出水は米屋、緑川の後に続いた。

 

 

 

──

 

ランク戦ブースは多くの隊員で溢れかえっていた。

 

「…これは何の騒ぎだ?」

 

「風間さん。」

 

通りかかった風間は米屋、出水、緑川に話しかけた。

 

「三輪と綾瀬川が模擬戦やるんすよ。貴重なんで見とこうと思って。」

 

「…ほう…。」

 

A級3位風間隊の隊長にして、No.2攻撃手の風間蒼也は綾瀬川の実力を知る隊員の1人。

興味深そうに目を細めた。

 

周りを見渡すと、荒船や影浦、村上など、多くの隊員が模擬戦の開始を待っていた。

 

そこには二宮の姿もある。

 

珍しいと思いつつも、三輪はかつてのチームメイト、綾瀬川は二宮隊をB級2位に落とした張本人とも言える男。

興味を持って当然かと思い、視線をモニターに移した。

 

「…風間さんはどっちが勝つと思います?」

 

出水が風間に尋ねた。

 

「…多くの隊員は三輪と答えるだろうな。」

 

そう言いながら風間は携帯をいじる。

 

「ですよね…。誰かにメールッスか?」

 

「歌川を呼んだ。綾瀬川の近距離(クロスレンジ)での動きは、同じ弾トリガーを使う万能手にとっては参考になる。」

 

「なるほど。」

 

どちらも、先の大規模侵攻の際に特級戦功をあげた実力者。

注目されるのは当然の事だった。

 

 

「あれ?弾バカセンパイと槍バカセンパイ、駿くんに小人さんじゃん。何してんの?」

 

 

そこにやってきたのは諏訪隊銃手、榎沢一華だった。

 

「「誰が(槍)(弾)バカだ、銃バカ。」」

 

「アハハ、ハモってるー。おもしろ。」

 

榎沢は笑う。

 

「…おい、小人と言うのは俺のことか?」

 

「?…他に誰がいるの?てか名前知らないし。」

 

「風間蒼也、21歳だ。口の利き方は覚えておくんだな。」

 

風間は榎沢を睨みながらそう言った。

 

「ハイハイ。風間さんね。覚えた覚えた。」

 

榎沢はそう言って適当に流すと、モニターに視線を向けた。

 

「!、綾瀬川センパイじゃん!相手は…三輪センパイ?なになに、模擬戦やるの?!」

 

榎沢は興奮気味に出水に尋ねた。

 

「…まあな。」

 

 

──

 

転送されたのは市街地A。

そこで、2人のトップ万能手は向かい合う。

 

「意外だな。お前がこんなにも行動力のある奴だと思わなかった。」

 

綾瀬川は三輪にそう話しかける。

 

「とっとと構えろ。先程も言ったが…

 

 

…出し惜しみはさせてやれないぞ。」

 

三輪は弧月を抜く。

 

「…やらなきゃ駄目か?」

 

綾瀬川は困ったように尋ねる。

 

「断るのなら、お前と話すことは何も無い。」

 

「…わかった。」

 

 

──個人ランク戦10本勝負、スタート。

 

その機械音と共に、三輪は一気に距離を詰めると、ハンドガンを発砲する。

 

綾瀬川はシールドを展開する。

 

 

 

…しかし、三輪の放った弾はシールドをすり抜けると、綾瀬川の体に重石を植え付ける。

 

「っ…!」

 

 

 

「真面目にやれ。」

 

 

 

その言葉と共に、動けなくなった綾瀬川のトリオン体は弧月で両断された。

 

 

 

「舐めているのか?俺に負けないとでも思ってるんじゃないだろうな?」

 

三輪は戻ってきた綾瀬川を睨みつけながらそう言った。

 

「どうやり過ごすか考えてる暇があるなら、とっとと構えろ。」

 

「…お見通しって訳か。」

 

綾瀬川は弧月を抜く。

 

「真面目にやらないとお前は話を聞いてくれなそうだからな…。それに…」

 

綾瀬川は諦めたように息を吐くと目を細める。

 

 

 

 

「…お前との模擬戦は楽しめそうだ。」

 

 

──

 

「おー、秀次が1本取ったな。」

 

「まあ綾瀬川センパイが勝つけどねー。」

 

榎沢は余裕そうにそう言った。

 

「出水はどうよ。やっぱ綾瀬川予想?」

 

「…いや、三輪の鉛弾は綾瀬川と相性いいと思うぞ。もしかしたら三輪が勝つかもな。」

 

出水は顎に手を当て、笑みを浮かべながらそう言った。

 

「ふーん。」

 

「なんでみんな当たり前のようにあやせ先輩予想なの?」

 

緑川が2人に尋ねる。

 

「そうか、お前は争奪戦の現場にいなかったもんな。…そう言う事綾瀬川から聞かねーの?」

 

米屋が緑川に尋ねた。

 

「…うーん、あやせ先輩が何か隠してるのは分かるんだけど…前にブラックトリガーの事迅さんに聞いたら、困らせちゃった事あって…あやせ先輩のもそんな感じなのかなって思って聞かないようにしてる。」

 

「…なるほどね、綾瀬川よりよっぽど人間出来てるわ、お前。」

 

そう言って出水は緑川の頭をクシャクシャと撫でる。

 

「ちょ、何ー?」

 

「2本目が始まるぞ。そこまでにしろ。」

 

風間はそう言って2人を窘めた。

 

──

 

──2本目、スタート。

 

機械音と共に綾瀬川と三輪は、距離を詰め、弧月を合わせる。

 

「っ…!」

 

三輪は鍔迫り合いの末、弧月を弾くと綾瀬川にハンドガンを向ける。

 

「…弾速自体は遅いみたいだな。」

 

綾瀬川はヒラヒラと避けながら、トリオンキューブを生成する。

 

 

「アステロイド。」

 

「…」

 

三輪はシールドで受けながら、隙を見てハンドガン、鉛弾を放った。

 

綾瀬川は全て弧月で受けると、弧月に重石が付く。

しかし、すぐに新しい弧月を生成する。

 

「バイパー。」

 

綾瀬川はトリオンキューブを半歩後ろに生成。

 

三輪はシールドを広げる。

 

 

「…旋空弧月。」

 

綾瀬川の代名詞、バイパーと旋空による後出しジャンケン。

 

 

…しかし、三輪は冷静にサブトリガーでシールドを展開。

 

 

「!」

 

展開されたのは綾瀬川の手元。

 

柄の部分がシールドで止められ、抜刀を防ぐ。

 

そのまま、シールドでバイパーを受けると、距離を詰める。

 

──

 

「上手い…。」

 

見ていた、鈴鳴第一の攻撃手、村上鋼は思わず口に出す。

 

「なるほどな、抜刀させねえって訳か。」

 

荒船隊隊長、荒船哲次も感心したようにそう言った。

 

「さすが、A級の隊長だな…。カゲはどう思う?」

 

「…綾瀬川のヤローはこんなもんじゃねえだろ。」

 

影浦隊隊長にして、ボーダートップクラスの攻撃手である、影浦雅人はそう見解する。

画面に目を向けると、鉛弾を植え付けられた綾瀬川が両断されていた。

 

 

──

 

──2-0、三輪リード。

 

「ふざけているのか?綾瀬川。」

 

三輪は綾瀬川を睨みながらそう言った。

 

「いつも通りやってるんだけどな。まあ…それじゃ三輪には勝てないって事が分かった。」

 

綾瀬川は目を細める。

 

そして3本目、開始の合図。

 

 

 

その瞬間、綾瀬川は三輪との距離を一気に詰める。

 

「…」

 

三輪は、冷静に受け太刀し、ハンドガンを向ける。

 

綾瀬川はそれを見切って避けると、三輪に蹴りを入れる。

腕でそれを受けた三輪は、後退り、鉛弾を撃つ。

 

それを弧月を振り、全て受けると、そのまま重石の付いた弧月を三輪目掛けて投擲する。

 

三輪はそれを避けながら、マガジンを変える。

 

 

「バイパー。」

 

シールドを張った綾瀬川を躱すように、三輪のバイパーは弾道を変える。

 

それを時間差のシールドで受けた綾瀬川は、バッグワームを取り出して、三輪目掛けて投げる。

 

「!」

 

 

それを目眩しに、体勢を低くした綾瀬川から、不可視の一撃が放たれる。

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

 

そのまま三輪のトリオン体は、切り裂かれた。

 

 

──

 

「おっ、取り返したな。」

 

「抜刀を隠して生駒旋空か…。えぐい事しやがるな。」

 

荒船は苦笑いを浮かべる。

 

「荒船ならどう戦う?」

 

「ソロなら無理だな。俺じゃ勝てねえ。チーム戦ならやりようはあるだろーけどな。」

 

「…そうか。」

 

荒船の言葉に、村上は目を細めてモニターを注視する。

 

(バイパーの合間にあれだけ鋭い旋空を持ち込まれたら手に負えないぞ…。つまり今まで俺とやり合ってた時は上手く手を抜かれていた事になる。)

 

「…ホント性格悪いな、アイツ。」

 

──

 

「先ずは1本。悪いがこのまま勝たせてもらうぞ。」

 

「1本取ったからといって調子に乗るな。」

 

三輪は綾瀬川を睨むと一気に距離を詰める。

 

 

「…いや、ここまでだ。癖も分かってきた。」

 

 

鉛弾を避けながら、綾瀬川は三輪が抜こうとした弧月の柄を足で抑える。

 

「!」

 

そのつま先から、スコーピオンが飛び出す。

 

「っ?!」

 

三輪はどうにか飛び退いて避けるが、肩からトリオンが漏れ出す。

 

それを一瞥して綾瀬川に視線を向ける。

 

 

…しかし、そこに綾瀬川の姿はなかった。

 

「余所見か?随分余裕なんだな。」

 

視界の右下、綾瀬川の弧月が三輪に迫る。

 

「くっ…!!」

 

三輪はハンドガンを綾瀬川に向けるが、左手はハンドガンごと切り落とされた。

 

 

──

 

「…これは開くな。」

 

「!…東さん。」

 

二宮に話しかけた東に二宮は視線を向ける。

 

「小荒井と奥寺に呼ばれてな。珍しくお前がランク戦ブースにいるから声を掛けたんだ。隣いいか?」

 

「どうぞ。」

 

「お前はどう思う?このランク戦。」

 

隣に腰掛けながら、東は二宮に尋ねた。

 

「秀次が不利ですね。秀次は近距離万能手(クロスレンジオールラウンダー)、綾瀬川は中、近距離、射程は綾瀬川に分がある。」

 

「…そうだな。」

 

そう言ってモニターに移る綾瀬川に視線を向ける。

 

「お前ならどう攻略するんだ?」

 

「1対1で戦うのなら射程を取って、火力勝負に持ち込むのが1番でしょう。」

 

二宮はそう答えた。

 

「…それをやって前シーズンはどうなった?」

 

「…」

 

「今回は俺たちは挑戦する側だからな。まあ色々考えてみるといいさ。」

 

考え込む二宮に、東はそう言うともう一度モニターに視線を戻した。

 

 

──

 

──三輪ダウン、5-2、綾瀬川リード。

 

「開いてきたな。」

 

出水はそう言ってジュースを口に運ぶ。

 

「まあ、綾瀬川の場合やればやる程勝てなくなるからなー。」

 

「サイドエフェクトの未来演算による、究極の後の先…ですか。少しの模擬戦で読めるものなんですか?」

 

歌川が風間に尋ねた。

 

「いや、あいつ分析得意なんスよ。」

 

それに答えたのは米屋だった。

 

「日常生活から俺たちの性格や癖なんかを見抜いて、そこを突いてくるんス。最初は俺の方が勝ってたのに、今なんか勝てる日が珍しいくらいっスからね。」

 

米屋はそう言うと、頭の後ろで手を組む。

 

「秀次と綾瀬川は付き合い長いっスから。秀次にとって綾瀬川は1番やりにくい相手じゃないスか?」

 

──

 

──ランク戦終了。8-2、勝者、綾瀬川。

 

「…何故、それ程の実力がありながら…っ…」

 

言いかけて三輪は俯く。

 

「ボーダーの実力者は皆そうだ。太刀川さんや当真さん…実力がありながら全員…意欲は無い…。それだけの力があれば近界民を駆逐できるというのに…!」

 

三輪はどこか乾いた笑みを見せる。

 

「…お前もそうなんだろう?綾瀬川。実の母を殺されたというのに…目的もない。それだけの力がありながら…お前は…!」

 

三輪は綾瀬川を睨む。

 

 

 

「…4年前、一次侵攻の時の事だ…。オレはそこで初めてオレがいたのは三門市だと知った。オレは…死ぬまで母親のことを知らなかった。」

 

「!」

 

「逆に聞かせてくれ…。どうすればオレは近界民を憎めるんだ?」

 

綾瀬川は三輪に尋ねた。

 

「オレには分からない…家族の温もりも、家族を失う辛さも。

 

…愛も…憎悪も。」

 

淡々と告げる綾瀬川の声はいつもより冷えきっているような気がした。

 

 

 

「…だが、ここに来て温もりは少し分かった気がする。柿崎隊でのランク戦に向けた作戦会議。勝ったあとの打ち上げ、玉狛で小南のカレーを食べた時もそうだ。

 

 

…オレは嬉しかったのかもしれない、柿崎隊、小南の温もりが。」

 

 

綾瀬川の独白に三輪は目を剥く。

 

 

「お前もだ、三輪。お前はオレにとって初めての友人だ。…オレはお前を失えば近界民を憎めるのか?柿崎隊も…小南もだ。」

 

「何を…言ってるんだ…お前。」

 

「ふと思ったんだ。オレは今、こうして仲間や友人の温もりを覚えることが出来た。

 

 

 

 

…ならそれを近界民によって失えば、オレは憎悪、憎しみを知ることが出来るのかもしれないってな。」

 

「そんな事…。」

 

「だが…オレはお前を失うのは御免だ。」

 

「!」

 

「柿崎隊も…小南も。…だからお前が教えてくれ…お前の憎しみ(・・・・・・)を。」

 

綾瀬川はそう言って、座り込んだ三輪に手を差し出す。

 

「お前の言う通りオレには今、目的が無い。だから手伝わせてくれ。お前の近界民を絶滅させるっていう目的を。」

 

「…そんな事をして…お前になんの得があるんだ?何を企んでる?」

 

三輪は綾瀬川を怪訝な目で見る。

 

「何も企んでなんかない。…損得の話でもないさ。

 

 

…ただ友人として、お前の手助けをしたいと思った。それだけだ。」

 

 

「…だったら先ずはA級に上がってこい、馬鹿め。」

 

 

そう言って三輪は綾瀬川の手を取った。

その表情はどこか晴れやかだった。

 

 

「…ああ。」

 

 

 

 

手を取った三輪に、綾瀬川はいつものように無機質な瞳、声でそう答えた。

──

 

そして大規模侵攻から1週間が経った。

 

 

 

 

…大規模侵攻の英雄が目を覚ます。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

綾瀬川清澄
三輪秀次→仲直り。友人。協力者。
出水公平→馬鹿。上手くやれ。
米屋陽介→マジで勝てん。
緑川駿→兄貴分。なにか隠してるのは知ってる。
風間蒼也→ボーダートップの万能手。
歌川遼→リスペクト。
荒船哲次→勝てない。
村上鋼→性格悪いな。
影浦雅人→ランク戦やりてえ。やろーぜ。
二宮匡貴→ライバル視。
東春秋→天才万能手。

三輪秀次←友人。協力させてくれ。
出水公平←友人。弾バカ。
米屋陽介←友人。槍バカ。
緑川駿←弟分。
風間蒼也←牛乳いります?
歌川遼←良い奴。ほんとに高一?ってくらいしっかりしてる。
荒船哲次←ライバル視やめて。
村上鋼←警戒すべきサイドエフェクト。
影浦雅人←ランク戦仲間。いい人。
二宮匡貴←トリオン富豪。この人も大概弾バカ。
東春秋←戦術の天才。

榎沢一華
米屋陽介→生意気。銃バカ。
出水公平→生意気。銃バカ。綾瀬川となんかあんのか?
緑川駿→友達。強い。
風間蒼也→口の利き方には気を付けろ。

米屋陽介←槍バカ先輩。
出水公平←弾バカ先輩。
緑川駿←友達。いい子。
風間蒼也←小人さん。



次1話やって、ランク戦編にはいると思われます。
皆さん察してるかもしれませんが、かなりオリジナルになると思います。
原作程面白く書けるか分かりませんが、頑張ります。

感想、評価等お待ちしてます!


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開幕、B級ランク戦

後半からランク戦突入です。


「あいつはお別れなんて言ってたけど…おれは絶対レプリカに会いに行くよ。」

 

目が覚めた僕に空閑はそう言った。

レプリカは生きていると。

 

「アフトクラトルに行けばレプリカに合える。

 

 

 

…A級を目指す理由が増えたな。」

 

そう言って空閑は笑った。

 

 

 

 

──空閑は…

 

こいつは僕が負い目を感じないようにわざわざ…

 

 

 

「空閑…済まない。僕が…僕の力が足りないせいでレプリカは…!」

 

 

「ちがうよ。」

 

そんな僕の言葉を空閑はそう切り捨てた。

 

 

「おれがレプリカに言ったんだ。オサムとチカを守れって。あいつはその頼みに100%応えた。オサムが謝ることじゃない。」

 

空閑はさらに続けた。

 

「…むしろレプリカを褒めるべきだろ。半分になってでもやりとげたからな、あいつ。

 

 

…さすがおれの相棒だ。」

 

その言葉に涙腺が緩む。

 

──ああ…クソ…

 

 

 

傷が痛むな…。

 

 

 

 

──

 

 

 

 

柿崎隊作戦室

 

「…どうしたんだ?珍しくテレビなんか付けて。」

 

作戦室に入った、柿崎隊万能手、綾瀬川清澄はテレビを見ていた後輩、宇井真登華、巴虎太郎に尋ねた。

 

「あ、清澄先輩、おはようございます。」

 

「おはよー、清澄先輩。今、テレビでボーダーの記者会見やってるの。」

 

「記者会見…ね。まぁ、あれだけ被害が出れば叩かれるか。」

 

そう言って綾瀬川は椅子に座るとテレビを注視する。

 

「酷い話ですよね…。ボーダーがなきゃもっと被害が出てたのに…。」

 

「行方不明者所の騒ぎじゃないな…。おそらく三門市は壊滅だっただろ。…記者達もそれは分かってる…だからイラついてるんじゃないか?」

 

宇井の言葉に綾瀬川はそう返す。

その言葉に宇井は不安そうに俯いた。

 

「…消すか?面白い内容じゃ無さそうだぞ?」

 

「ううん、だいじょーぶ。ありがとう、清澄先輩。」

 

宇井はそう言って笑うとテレビに視線を戻した。

 

「真登華と虎太郎は親に何か言われなかったのか?」

 

「大丈夫なの?…的なことは聞かれました。」

 

巴がそう答える。

 

「私もー。」

 

「清澄先輩は何も言われなかったんですか?」

 

その言葉に綾瀬川はテレビを見ながら答える。

 

 

 

「オレの親はあそこにいるからな。言うも何も無いだろ。」

 

 

 

テレビには城戸司令の顔が大きく映される。

 

 

「「…え?城戸…司令?」」

 

「オレの親代わりは城戸さんだ。…言ってなかったか?」

 

「「聞いてないですっ!!」」

 

そう言って巴と宇井は綾瀬川に詰寄る。

 

「…いや、柿崎隊でオレだけ城戸派だろ?その時点で察してると思ってたんだが…。」

 

「誰が城戸派ってだけで城戸司令の息子だって察せるんですか…?苗字違うし…。」

 

「親代わり、だからな。母親は一次侵攻の時に死んだらしいし。…父親は…まあいいだろ、オレの親は城戸さんしかいないからな…。」

 

「…すいません、答え辛いこと聞いちゃって…。」

 

巴が綾瀬川に謝る。

 

「別に気にしてない。」

 

 

 

『三雲修です。』

 

巴の謝罪に答えた後、テレビの記者会見に大きな動きがあった。

根付に変わり、病院服に身を包み、腕を吊るした眼鏡の少年がテレビ画面に映った。

 

「え?何…?誰?」

 

「…確か、三雲…だったか?」

 

「清澄先輩の知り合い?」

 

宇井が綾瀬川に尋ねた。

 

「ボーダー隊員だ。ほら、一級戦功に選ばれてたはずだ。」

 

「ああ、隊員の中で唯一怪我したって言う…。」

 

巴が思い出すように言った。

 

「でも…なんで…?」

 

宇井の質問に綾瀬川は目を細める。

 

「…さあな。

 

 

…だが…面白くなりそうだ。」

 

 

 

記者会見で、三雲修は連れ去られた隊員、市民を連れ戻すと宣言した。

 

 

その言葉は大きな波紋を呼び世間を騒がせる。

それはボーダー内でも例外ではなかった。

 

しかし、すぐにその話題は消えることになる。

 

 

ランク戦のシーズンがやって来たからだ。

 

 

1位 柿崎隊 15P

2位 二宮隊 14P

3位 影浦隊 13P

4位 生駒隊 12P

5位 弓場隊 11P

6位 王子隊 10P

7位 東隊 9P

8位 香取隊 8P

9位 鈴鳴第一(来馬隊) 7P

10位 漆間隊 6P

11位 諏訪隊 5P

12位 荒船隊 4P

13位 那須隊 3P

14位 早川隊 2P

 

中位部隊までが並び、そして…

 

21位 玉狛第二(三雲隊) 0P

 

下位の一番下。

そこに玉狛第二の名前はあった。

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「…緊張?なんで?」

 

堤の言葉に諏訪隊銃手、榎沢一華はキョトンとした顔で返した後、小佐野から貰った棒付きの飴を口に運んだ。

 

「なんでって…デビュー戦だぞ?」

 

「アハハ、大丈夫だってつつみんさん。」

 

そう言って榎沢は、妖艶な表情で飴を取り出すと、いたずらっぽく笑う。

 

「…あたしに勝てるのは綾瀬川センパイだけだから。」

 

 

B級ランク戦ROUND1

 

香取隊VS鈴鳴第一(来馬隊)VS諏訪隊

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「よし、一通りやれる事はやった。あとは本番だけだ。」

 

柿崎隊隊長、柿崎国治はそう言って立ち上がる。

 

「前シーズンで1位になったからって油断はしねえ。挑戦される側に立つ訳だが…俺たちはB級にいる限りA級への挑戦者だ。…今シーズンこそはA級に行くぞ!」

 

「「「「了解。」」」」

 

 

B級ランク戦ROUND1

 

柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊

 

 

──

 

「…で?説明してくれるんだろうな?出水。」

 

「いやー…三上に相方探して欲しいって言われて仕方なくっつーか?」

 

出水はヘラヘラと笑いながら詫びれる様子もなくそう言った。

 

「この後影浦隊と弓場隊とやるんだが…。」

 

ヒソヒソと話すオレと出水を隣に座る三上が横目で睨む。

 

オレと出水は肩を弾ませて慌てて前を向いた。

 

 

『さあ、B級ランク戦今シーズン、最初の試合がやって来ました!ROUND1最初のランク戦は香取隊、鈴鳴第一、諏訪隊の三つ巴対決になります!あ、紹介遅れました、実況は私、風間隊の三上が、解説席にはA級1位、先の大規模侵攻の際には一級戦功をあげた出水隊員、そして…

 

…前シーズンで柿崎隊をB級1位に導いた立役者、綾瀬川隊員にお越しいただいております!』

 

 

『どうぞよろしく。』

 

『…よろしくお願いします。』

 

後でぶっ飛ばすぞ…出水。

 

『さて、今回の三つ巴対決ですが…解説のお二方はどのような試合展開になると思いますか?』

 

『順位で言えば香取隊が上だな。前シーズンの後半から香取ちゃんが万能手になって手が付けられなくなったからなー。』

 

『なるほど…確かに前シーズンの中盤は下位近くに落ちたものの、後半で巻き返し中位の中でも首位に立っています。…前シーズン三隊どことも戦った綾瀬川隊員はどうですか?』

 

『…え?オレ?…えっと…オレは…まあ…諏訪隊ですかね。人数が増えたし。』

 

噛んでないだろうか。

 

『…うっ!』

 

隣で笑っている出水に肘打ちをする。

 

『なるほど…確か新たに入隊した榎沢隊員は大規模侵攻の際に一級戦功をあげていますね。』

 

『連携に難ありだけど、実力は確かだからなー…榎沢は。でも鈴鳴にはNo.4攻撃手の鋼さんがいる。火力で言えば諏訪隊、得意の形に持ってけば鈴鳴、上手く合流出来れば香取隊ってとこだろーな。』

 

『なるほど…マップの選択権は諏訪隊にあります。果たしてどのマップが選ばれるのでしょうか。』

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「えっと…あそこだよあそこ。デパートがあるとこ!」

 

榎沢は思い出し、そう言った。

 

「あ?D?なんだってそんなとこ…」

 

「あたし屋内戦の方が得意だし。てか選んでいいって言ったの諏訪さんじゃん!」

 

「文句はねえけどよ…。日佐人と堤もDでいいか?」

 

「はい。」

 

「問題ありません。」

 

──

 

『ここで諏訪隊によりマップは市街地Dに決定されました!マップの解説をお願いします。』

 

『綾瀬川、お前やるか?』

 

『…お前がやれ。』

 

綾瀬川は出水を睨みながらそう言う。

 

『怖…マジごめんって。まだ緊張してんのか?諦めろって。』

 

『どの口が。』

 

『2人とも…真面目にっ。』

 

『『アッハイ。』』

 

三上の叱責に2人は肩を震わせた。

 

『…えっと…市街地Dは大きな建物が多いマップですね…。屋内戦が多く、上に広いって感じかな…。特に大きなデパートでの屋内戦が多いイメージだ。』

 

『なるほど…ありがとうございました。』

 

出水の解説に三上は礼を言うとモニターに視線を戻した。

 

──

香取隊作戦室

 

「絶対勝つわよ。」

 

珍しくやる気十分な香取隊隊長、香取葉子が銃手の若村麓郎、攻撃手の三浦雄太にそう言った。

 

「ヨーコちゃん、今日は一段とやる気だね。」

 

三浦が香取に話しかける。

 

「当たり前でしょ。絶対上位に戻るわよ。」

 

そう言う香取だが、香取の視線はモニターの、榎沢に向いていた。

 

 

「身の程を分からせてやるわ。」

 

──

鈴鳴第一

 

「まーた鋼くんがやった事ない相手ね…。前シーズンに引き続き。」

 

鈴鳴第一のオペレーター、今結花はそう言ってため息を吐く。

 

「嘆いても仕方ないよ。警戒しつつ行こう。」

 

隊長の来馬辰也がまとめるようにそう言った。

 

「あっ、鋼さん起きました。」

 

「予習はどう?」

 

 

「バッチリだ。」

 

そう言ってNo.4攻撃手、村上鋼は笑みを浮かべた。

 

 

 

──

 

『さて、準備が整いました。各隊転送開始!

 

 

…転送完了!

マップ、市街地D、天候は曇り、B級ランク戦ROUND1昼の部…スタートです!』

 

 

そうして今シーズンもB級ランク戦が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

「アハ…

 

 

…みーっけ♡」

 

 

今シーズン開戦の狼煙は無機質な銃声からだった。




宇井ちゃんとの食事回(多分デート)は幕間に書くかも。

榎沢一華トリガーセット

メイン:アステロイド(ハンドガン)、グラスホッパー、メテオラ(グレネードガン)、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド(アサルトライフル)、シールド、バッグワーム

ガトリング砲は諏訪さんに止めとけと言われ、今回は入れてません。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND1 香取隊VS鈴鳴第一VS諏訪隊

投稿致します。

香取ちゃんは大好きなキャラです。

※変なところに投稿しちゃって1回消しました※


『さて、各隊ランダムな位置からのスタートとなります。転送と同時に鈴鳴第一の別役隊員、バッグワームでレーダーから姿を消した!』

 

『スナイパーは位置バレして詰められたら不利だからな。』

 

『そして中央のデパート内には香取隊の若村隊員が転送されています。』

 

 

──

 

『葉子、俺はデパートの中だった。雄太も近い。デパート内で合流しよーぜ。』

 

若村は隊長である香取にそう提案する。

 

『偉そうに指示出さないでよ。元からそのつもりだから。…華。』

 

『うん、デパートまでの道送るね。太一くんの射線は一応切ってるけどそこまで心配しなくても大丈夫だと思うわ。』

 

香取隊オペレーター、染井華は香取にデパートまでの道を表示する。

 

『…とっとと終わらせるわよ。』

 

──

 

『香取隊長と三浦隊員はデパートに向かっていますね。それを見てか他の隊員もデパートに向かっています。別役隊員はデパートを狙える位置を取る動きでしょうか…。』

 

三上は綾瀬川に視線を向ける。

 

『…まあ、屋内じゃ狙撃手は機能しませんから。』

 

『確かにそうですね。遮蔽物の多い屋内では狙撃手は不利!別役隊員は来馬隊長、村上隊員とは別行動を取った。』

 

『諏訪隊は散らばってるな…。それぞれデパートに向かってるからデパートで集合しようって考えか?』

 

──

 

『1人レーダーに映ってないね。太一くんだと思うよ。』

 

小佐野が諏訪に通信入れる。

 

『だろーな。位置がバラバラだ。デパート集合でいいだろ。太一の射線には気を付けろよ。…榎沢、初のランク戦はどうだァ?』

 

諏訪が榎沢に尋ねる。

 

『別にふつー。デパートは興味あるかな。ゲーセンとか再現されてんの?あたし行ったこと無いんだよね。』

 

『おま…、だからDにしやがったのか!?』

 

『?…そーだけど?』

 

諏訪の言葉に榎沢はそう返す。

 

『お前な…!』

 

『いいじゃん。

 

 

 

…どーせ勝つから。』

 

──

 

『さて、転送から10分。未だに戦闘は起こっていませんが、香取隊の3人がデパート内で合流!バッグワームで待ち伏せをする構えか!そしてデパートの北西部では鈴鳴第一の来馬隊長と村上隊員が合流。』

 

『デパートの周りに集まってきたな。いつ戦闘が始まってもおかしくないけどまぁ…仕掛けづらいわな。』

 

『…と、言いますと?』

 

『漁夫の利を狙う隊に意識を割かれるからな。諏訪隊も鈴鳴も動きづらいだろ。』

 

『…いや、動くみたいだぞ。』

 

綾瀬川はモニターに映る、少女を見て目を細めた。

 

──

 

「うーん…。」

 

榎沢はキョロキョロとデパートを見渡す。

そして動き出す。

 

『…おい、榎沢?』

 

『ちょっと行ってくるねー。』

 

そう言って榎沢はグラスホッパーを複数展開する。

 

『おま…待ちやがれ!…日佐人!ヘルプ行け!』

 

『了解です!』

 

笹森も動き出した榎沢に合わせて走り出した。

 

──

 

「!…動いた!」

 

三浦、若村は弧月、PDWを構え直し、階段、通路に向ける。

香取もハンドガンを構え、身を潜める。

 

 

 

「アハ…

 

 

…みーっけ♡」

 

 

「「「!」」」

 

 

バリィン…!

 

 

そんな音を立てて、窓ガラスが割れる。

 

現れた怪物はダイナミックに建物の外から、窓を蹴破り、天井に逆さに着地した。

 

「なっ…」

 

言いかけた、三浦のトリオン体は、一瞬で穴だらけにされる。

 

「雄太!この…っ!」

 

若村は榎沢にPDWを向け、乱射。

榎沢は緩急を付けた動きで避けると、グラスホッパーで距離を詰め、若村のPDWを蹴り飛ばす。

 

「がっ?!」

 

そして、若村の口に銃口を突っ込んだ。

 

「バイバーイ♡」

 

そのまま無慈悲に引き金は引かれ、若村は戦線離脱。

 

「…榎沢…!アンタ…!」

 

香取は忌々しそうに榎沢を睨む。

 

「あれ?まだ誰かいたの?」

 

榎沢は香取に視線を向ける。

 

「あれ?どっかで見たことある!えっと…」

 

「香取よ…!」

 

そう言いながら、香取はハンドガンを発砲。

 

「そーそー香取ちゃん。下の名前は確か…うーん…。」

 

思い出すように唸りながら、榎沢はシールドを張る。

 

「っ…!!」

(堅い…!)

 

香取はスコーピオンに切り替えると、グラスホッパーで距離を詰め、榎沢に斬り掛かる。

 

(攻撃手の間合いなら…あんたなんかに負けない…!!)

 

 

 

「ざんねーん♡」

 

 

(…は…?)

 

 

気付いた時には、香取の四肢は撃ち抜かれ、その場に崩れる。

いつの間にか榎沢はハンドガン2丁をこちらに向けていた。

 

「フッ…♡」

 

榎沢は右手のハンドガンの銃口に息を吹きかける。

 

「あたしの方が速いんだなー。」

 

──

 

『榎沢隊員による早撃ち炸裂!!香取隊は早くも全滅か…!』

 

『おいおい、マジかよ、今の早撃ち。下手すりゃ、弓場さん並みだぞ?』

 

出水は冷や汗を浮かべながらそう言った。

 

『…』

 

綾瀬川は興味深そうにモニターを見る。

 

──

 

「っ…くそっ!!」

 

達磨状態になった香取はどうにか動こうと藻掻く。

 

「あはは、芋虫みたいでおもしろ。」

 

そう言って榎沢は香取の目の前でしゃがみ込むと、香取の顔をツンツンと突く。

 

「この…!」

 

「ちょっと待ってね?今下の名前思い出してるから。…あれ?てか、学校の時より胸デカくなってない?うわ、何?…トリオン体盛ってんの?ウケるー。」

 

「っ!!」

 

香取の肩からスコーピオンが飛び出す。

 

「おっと。危なー。」

 

そう言いながらも榎沢は危なげなくそれを避けた。

 

「なになに?怒った?」

 

「っ…このっ!!あんっ…たっ!!」

 

榎沢の顔を狙うように飛び出すスコーピオンの連撃を榎沢は危なげなく躱す。

 

「もー…危ないなぁ!」

 

そう言って榎沢は自分の前に倒れ込む、香取を蹴り飛ばす。

 

「ダメダメ〜。顔狙ってるって丸分かりだよ?…えっと…胸盛りちゃん?」

 

そう言って、壁に這い蹲るように座り込む、香取に榎沢は視線を合わせる。

 

「っ〜!!…あんたぁ…!ふざけてんの…?!私の名前はかと「はい、時間切れ〜。」」

 

榎沢は香取の頭を撃ち抜く。

 

「っ…この…榎沢ぁ…!!」

 

「別に興味無いしー。」

 

「ムカつ…」

 

言いかけて、香取は光となって空に打ち上がった。

 

 

──

 

『ここで香取隊長も緊急脱出!諏訪隊の榎沢隊員、瞬く間に香取を全滅させ、諏訪隊、3ポイント獲得!』

 

『やっぱつえーな。…性格は難ありそうだけど。』

 

『…香取隊の3人はバッグワームを付けていたはず…どうして位置がわかったんでしょう?』

 

三上は出水と、綾瀬川に視線を向ける。

 

『サイドエフェクトだ。…調べれば分かることなんで詳しくは言わないが…榎沢は勘が良い。』

 

それだけ言って綾瀬川はモニターに視線を戻した。

 

──

 

『隊長、香取隊は全滅。諏訪隊に3点入りました。』

 

『香取隊が?…こんな短時間で…?』

 

鈴鳴第一のオペレーター、今結花の通信に、来馬は考え込む。

 

「!、隊長!」

 

村上が来馬の前に手を出し、制止する。

 

「!」

 

そこには諏訪、堤の2人が待ち構えていた。

 

『気を付けてね、鋼くん。笹森くんがレーダーに映ってないわ。榎沢さんもこっちに向かってるかもしれない。』

 

 

──

 

『おま…まじで香取隊全滅させたのか?』

 

『うん。言ったじゃん。綾瀬川センパイ以外には負けないって。』

 

『まあよくやったな。鈴鳴とやる。お前も降りてこい。』

 

『おっけー。あっ!ゲーセンみっけ!!…ちょ…遅れるー!』

 

そう言って榎沢は通信切る。

 

『オイィ?!』

 

 

「ど、どうします?諏訪さん。」

 

怒り心頭の諏訪に堤が恐る恐る尋ねる。

 

「ああなったらマジで来ねーぞあいつ…。しゃあねえ…。」

 

そう言うと諏訪はショットガンを構える。

 

「俺らで吹っ飛ばすぞ。」

 

「例の作戦ですね。了解!」

 

 

──

 

『えっと…榎沢隊員は一体何を…?』

 

『メダルゲームの台を揺らしてるな。』

 

『俺も金欠ん時、米屋とやったわー。』

 

『あ、諦めて今度はクレーンゲームに移りました!』

 

『ぬいぐるみに目移りしてるみたいだな。』

 

『お前ら…なんか可哀想だから実況してやるなよ…。』

 

出水は呆れたようにそう言った。

 

『…コホン、失礼しました。…綾瀬川くん、真面目に。』

 

三上は咳払いをすると綾瀬川に軽く叱責する。

 

『…え?三上だって…『さて!一方の戦場では諏訪隊長と堤隊員によるショットガン乱射が鈴鳴第一を追い詰める!』』

 

言いかけた綾瀬川を無視して三上は続けた。

 

『…』

 

 

解せぬ。

 

──

 

『こうも距離を取られると攻めづらいですね…。』

 

村上はシールドモードのレイガストで弾幕を受けながら来馬に通信を入れる。

 

『笹森くんがどこにいるか分からない以上迂闊に狙撃も出来ない、これは厳しいね…!』

 

来馬はフルガードでショットガンを受ける。

 

『…俺が隙を作ります。』

 

村上は弧月を構える。

そして、レイガストでショットガンを受けながら切り込む。

 

「来るぞ堤!」

 

「はい!」

 

 

「スラスターON!」

 

 

シールドモードのまま、スラスターで加速。

そのまま、弾幕を受けつつ、諏訪を吹き飛ばすと、堤の胸を切り裂く。

 

「くっ…すいません、諏訪さん。」

 

「いや、よくやった。」

 

そう言って諏訪は笑うと、吹き飛ばされながらも、照準を合わせ、村上を撃ち抜く。

 

 

『太一!』

 

『はい!』

 

 

別役は、ノーガードになった諏訪にレティクルを合わせる。

 

 

 

 

スコープを覗いて気づく。

 

 

スコープにこちらに迫る怪物の姿が映った。

 

 

 

『!…太一!』

 

 

別役は慌てて発砲。

しかし、高いトリオン能力を誇る榎沢のシールドには傷一つ付かなかった。

そのまま、別役を蹴り飛ばすと、手を抑えつけるように踏み、銃口を別役の額に押し当てる。

 

何故か、片手にはぬいぐるみを抱き抱えていた。

 

「4点目。」

 

そして発砲。

 

『すいません…。』

 

 

別役も緊急脱出。

残った来馬は諏訪と少し撃ち合うも、カメレオンで近づいた笹森にトリオン体を切り裂かれ緊急脱出。

 

──

 

『ここで試合終了!最終スコア8対1対0!今シーズン最初のランク戦は諏訪隊の圧勝!』

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 1P

堤 0P

笹森 1P

榎沢 4P

生存点+2P

 

合計 8P

 

 

 

鈴鳴第一

 

 

来馬 0P

村上 1P

別役 0P

 

合計 1P

 

 

香取隊

 

 

香取 0P

若村 0P

三浦 0P

 

合計0P

 

 

 

『おー、つえーな。諏訪隊。』

 

『解説のお二方、総評をお願いします。』

 

『総評っつってもなぁ…。終始榎沢の独壇場だったな。』

 

『なるほど…。他の隊の動きはどうでしたか?』

 

『香取隊に関しては相手が悪かったとしか言えないな。』

 

綾瀬川はそう評する。

 

『香取隊長の銃手のポイントはマスタークラス。やはり奇襲により、実力を発揮できなかったと言う所でしょうか?』

 

『いや、奇襲は関係無いな。香取のセンスは確かに天才的かもしれないが…

 

 

…天才ってだけじゃ勝てない相手もいる。』

 

──

香取隊作戦室

 

香取にとって、ここまでの屈辱は初めてだった。

暫くは緊急脱出用のベッドから起き上がれそうにない。

 

 

『天才ってだけじゃ勝てない相手もいる。』

 

 

万能手に転向して数ヶ月。

ほぼ負け無しだった香取はここで大敗を味わう。

 

 

 

「っ…!ムカつく…!」

 

榎沢にも、分かったような総評をする綾瀬川にも。

 

…そして榎沢に負けた自分にも。

 

 

──

 

『鈴鳴はなー、あそこまで距離取られて中距離戦に持ってかれちゃ厳しいだろーな。鋼さんが最後1点取ったのは流石だったけど。』

 

『諏訪隊は特に鈴鳴にとって不利な相手だったという事でしょうか?』

 

『そうだな。笹森も消えてたからやりづらかったと思う。』

 

三上の質問に綾瀬川はそう返す。

 

──

鈴鳴第一

 

「守りきれずにすいません。」

 

村上が頭を下げる。

 

「何とか対策を考えないとね。今回みたいな戦い方を他の隊にもされたら一溜りもないわ。」

 

今はそう言ってため息を吐く。

 

「うぶぶ…暫くぬいぐるみ見れなそうです…。」

 

榎沢に落とされた別役はそう言って項垂れた。

 

「…上位に食い込むね、諏訪隊は。」

 

──

 

『諏訪隊は文句なしの動きだったな。鈴鳴を不利な状況に上手く持ってってた。榎沢はやべーし。』

 

『一気に8点を獲得した諏訪隊はこの後の試合の結果によっては上位に食込みます。』

 

──

 

「えー!綾瀬川センパイが解説やってるの?!」

 

「みてーだな。」

 

「じゃあ、あたし次の綾瀬川センパイの試合で解説やる!!」

 

そう言って榎沢は作戦室を飛び出す。

 

「あ!ちょ…榎沢!」

 

笹森が呼び止めるが、意に介さず走り去ってしまった。

 

「ほっとけ。にしても…」

 

 

諏訪はそう言ってスコアを見る。

 

 

「予想以上の収穫だな。」

 

 

──

 

『さて、これにてB級ランク戦ROUND1昼の部を終わります。実況は私、風間隊の三上が。解説は太刀川隊、出水隊員と柿崎隊、綾瀬川隊員でした!』

 

『『ありがとうございました。』』

 

 

──

 

「急な話だったのに引き受けてくれてありがとう、綾瀬川くん。」

 

三上がオレに頭を下げる。

 

「別に気にしなくていい。…出水は後で話がある。」

 

「いぃ?!」

 

「あと1時間くらいでランク戦でしょ?頑張ってね!」

 

三上はガッツポーズを作って笑みを浮かべる。

 

「あ、ああ、ありがとう。」

 

 

なんと言うか…

 

 

…モテるんだろーな。

 

 

オレはそう思いながら去っていく三上の後ろ姿を見ていた。

 

 

 

 

柿崎隊作戦室

 

「あっ!清澄先輩おかえりー。解説お疲れ様。噛まなくて良かったね。」

 

「ほっとけ。」

 

真登華にそう返すと、椅子に座る。

 

「どうでした?初めての解説。」

 

虎太郎がオレに聞いてきた。

 

「思いの外楽しかった。実況をやってるオペは流石だな。特に三上は質問が的確でやりやすかった。」

 

「へー。…私も実況やってみようかな…。」

 

真登華はボソッとそう言った。

 

「よし!最後の調整をするぞ。集まってくれ。」

 

柿崎の合図で4人は作戦板の前に集まる。

 

「今回MAPの選択権は弓場隊だが…弓場は選択権がある時は必ず市街地Bを選んでくる。今回もBだろーな。…まあどのMAPが選ばれても関係ねえ。新生柿崎隊を見せつけるぞ!」

 

 

「「「「了解。」」」」

 

 

 

 

柿崎隊

 

隊長

柿崎国治

メイン:レイガスト、スラスター、シールド、free

サブ:アステロイド(アサルトライフル)、メテオラ(アサルトライフル)、バッグワーム、エスクード

 

ポジション、万能手(オールラウンダー)

 

照屋文香

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド

サブ:スコーピオン、メテオラ(ハンドガン)、バッグワーム、シールド

 

ポジション、攻撃手(アタッカー)

 

巴虎太郎

メイン:アステロイド(ハンドガン)、弧月、グラスホッパー、シールド

サブ:ハウンド(ハンドガン)、グラスホッパー、バッグワーム、シールド

 

ポジション、万能手(オールラウンダー)

 

綾瀬川清澄

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド

サブ:バイパー、イーグレット、バッグワーム、シールド

 

ポジション…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)

 

弧月 10000

バイパー 8500

イーグレット 8000

 




ボコボコにしたいくらいには香取ちゃん大好きです。

各キャラからの印象&各キャラへの印象

榎沢一華
香取葉子→ムカつく。まじでぶっ○す。
諏訪洸太郎→エース。予想以上。
綾瀬川清澄→銃手の腕は流石。

香取葉子←下の名前マジでなんだっけ?胸盛りちゃん。
諏訪洸太郎←隊長。あたしも麻雀やろうかな。
綾瀬川清澄←崇拝。あたしも解説やる〜!


綾瀬川清澄
出水公平→怒んなって。
三上歌歩→ランク戦頑張ってね!

出水公平←騙したな。○す。
三上歌歩←モテるんだろーな。


榎沢のぬいぐるみのくだりは、取れずにクレーンゲームを壊すと言う一連の流れもあったけど脱線し過ぎちゃったので書くのやめました。
ここで報告致します。


万能手の個人ランキングってどう決まるんですかね…。
やっぱ、近、中距離トリガーのポイントの合計ですかね?
そんで個人総合だと1番高いトリガーのポイントになる…とか?
レイジさんが総合1位じゃないってことはそういうことなのかな?

綾瀬川の今のポイントだとランキング食い込んでそうな気がするんだがw
なんなら三輪より高い可能性もある…?のか…?
葦原先生!万能手のランキングの決め方と三輪、嵐山の個人ポイントを教えてくだせえ!後、お身体を大切に!!


感想、評価等お待ちしております。


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初陣

お久しぶりです。
ちょっと近しい身内に不幸があり、色々立て込んでて、投稿の暇がありませんでした。
ようやく落ち着いたので投稿致します。
これからは通常通り、2、3日に1回投稿に戻します。
失踪しかけてすいませんでした。


柿崎隊作戦室

 

「…って感じだな。俺と文香、虎太郎と清澄が合流できるのがベストだが…転送位置によって臨機応変に対応する。文香と虎太郎は弓場とカゲとは1対1では戦うなよ。俺もだけどな。」

 

「了解です。」

 

「…分かりました。」

 

虎太郎は素直に。

文香は少し悔しそうにそう言った。

 

「清澄は大丈夫だろ?」

 

「…まあ頑張ります。」

 

「開始まで30分位あるな…。各自ゆっくりしててくれ。」

 

柿崎のその言葉で各々の時間となる。

文香と虎太郎は作戦板を見直し、柿崎と真登華は各マップの射線の確認をしていた。

 

…解説をやったからだろうか。

喉が渇いた。

 

「…ちょっと飲み物買ってきます。」

 

「おう、遅くなるなよ。」

 

「はい。」

 

そう言ってオレは作戦室を出て、自動販売機へと向かう。

 

 

 

 

「…ランク戦前なのに随分と余裕なんだな。」

 

 

自販機にお金を入れようとした時だった。

隣の自販機の前に立った人物に話しかけられる。

 

「…三輪。」

 

そこに立っていたのは三輪秀次だった。

 

「やれる事はやったからな。」

 

そう言ってオレはお茶のボタンを押す。

 

「…」

 

「…」

 

 

気まずい。

仲直りは出来たという事でいいんだろうか。

 

隣の三輪はお茶を買うとすぐに歩き出す。

 

「っ…三輪…。」

 

その言葉に三輪は振り返ること無く立ち止まる。

 

「…観戦席で見ている。無様な試合にはするなよ。

 

 

 

 

 

…慰めるのは御免だ。…やるのなら祝勝会だからな。」

 

「三輪…。」

 

「俺に協力してくれるんだろう?だったらとっととA級に上がってこい。お前なら…いや、柿崎隊ならすぐにA級になれるはずだ。」

 

そう言って三輪は歩き出した。

 

 

「…ああ。」

 

 

素直じゃないな…。

 

 

いや、ホントに。

 

──

 

「うぅ…解説席…どこ…?」

 

迷子になり途方に暮れる少女、榎沢一華は、そう言って項垂れる。

 

「急がないと始まっちゃうのにー!」

 

「…ホントよく迷子になるね、榎沢さん。」

 

声の方向に振り返る。

 

「!…とっきーくん!…と、こび…「風間だ。」…じゃなくて風間さん。」

 

そこに立っていたのは嵐山隊万能手、時枝充と風間隊隊長、風間蒼也だった。

 

「た、助かった!とっきーくん!あたし綾瀬川センパイの試合見たいんだけどどこ行けばいいの?!」

 

榎沢は時枝に尋ねる。

 

「…それなら僕と風間さんも行くところだから一緒に行く?」

 

「!…行くっ!」

 

「こっちだよ、付いて来て。」

 

食い気味に答えた榎沢に、時枝は小さく微笑むと歩き出す。

 

「とっきーくんと風間さんも綾瀬川センパイのランク戦気になるの?」

 

榎沢が尋ねた。

 

「俺と時枝は解説をする事になっている。」

 

榎沢の質問に風間が答えた。

 

「え!?風間さん!それあたしと代わって!!」

 

榎沢が風間の手を取りながら、お願いする。

 

「…断る。お前が真面目な解説をするとは思えない。」

 

「はぁ〜?!やるし!やってやるし!」

 

「ダメだ。信用ならん。」

 

「…はぁ?チビのくせに生意気なんですけど?」

 

「お前の方が俺よりチビだろう?榎沢。」

 

「ま、まあまあ風間さん。榎沢さんも落ち着いて。…いいんじゃないですか?さっきのランク戦で大活躍だった榎沢さんが解説をやれば盛り上がると思いますし。…フォローは僕がしますから。」

 

「…一理あるな。だが、甘く見るなよ。

 

 

 

 

…榎沢はお前が思っているほど利口なやつじゃない。」

 

 

 

───

 

拝啓、風間さん。

 

 

『えー、解説って特等席で試合見れるってことじゃないのー?ジュースとか出るもんだと思ってたー。てかどーせ綾瀬川センパイが勝つんだからMAPの紹介とか要らなくない?』

 

『えっと…解説をして欲しいのですが…。』

 

武富桜子は困ったように時枝に視線を向けた。

 

 

 

…僕1人じゃ無理かもしれません。

 

そんなことを思いながら時枝は観戦席に座る風間に視線を送る。

 

風間はため息を吐くと、立ち上がる。

 

「だから言った。詰めろ時枝。俺も座る。」

 

「…すいません、ありがとうございます。」

 

『風間さん!で、では気を取り直して始めていきましょう!B級ランク戦夜の部最初の試合は柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊の試合となります!実況は私、武富桜子が、解説席には嵐山隊時枝隊員と風間隊風間隊長、そして今シーズン初戦では大活躍!諏訪隊の榎沢隊員にお越しいただいています!』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『よろしくー。これって綾瀬川センパイにも聞こえてるの?てかジュースは?』

 

『えっと、今回の三つ巴ですが、解説の御二…御三方はどのような展開になると思いますか?』

 

『そうですね…『そりゃ綾瀬川センパイの勝ちだね!』』

 

時枝の言葉を遮り、榎沢が話す。

 

『全員綾瀬川センパイが倒して勝ち!って感じ!』

 

『諏訪…どうせ聞いているだろう、手網はしっかり握っておけ。』

 

 

 

 

「言われてるよ、諏訪さん。」

 

小佐野が隣に座る諏訪に話しかける。

 

「るせェ、そう簡単に握れたら苦労しねェんだよ。」

 

 

 

 

『柿崎隊は前シーズンの台風の目でしたからね。今シーズンもなにか見せてくれそうです。』

 

時枝が流れを戻すようにそう言った。

 

『なるほど。確かに前シーズン、柿崎隊は中位の13位から一気にB級トップに躍り出ました。』

 

『その要因は榎沢の言う綾瀬川の功績が大きい。二宮相手に1対1で勝った男だ。俺の予想が正しければ今シーズンのB級ランク戦は如何に綾瀬川を攻略するか…それにかかっているだろう。』

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「風間さんの言う通りだねー、どーする?カゲ。」

 

影浦隊銃手、北添尋は影浦隊隊長にしてエース攻撃手、影浦雅人に尋ねた。

 

「別に何もしねーよ。何かした所でどうにかなる相手でもねーだろーが。」

 

影浦はそう切り捨てる。

 

「俺のやる事は変わらねえ。あいつと会ったら喉元掻っ捌く。」

 

そう言って影浦は獰猛な笑みを見せた。

 

「はいはい。ヒカリちゃんとユズルもいつも通りよろしくね。」

 

「うん。」

 

「綾瀬川の弁当のおかずがかかってるんだ。絶対勝てよ。」

 

「ヒカリちゃん、勝手に変な賭けしないでくれる?」

 

──

 

弓場隊作戦室

 

「…」

 

弓場隊隊長、弓場琢磨はサングラスのブリッジを指で押し上げると、口を開く。

 

「今回のランク戦…明らかに不利なのは俺たちだ。神田が抜けた以上どこまで通じるかは分からねえ。」

 

弓場の言葉に、弓場隊万能手、帯島ユカリと弓場隊狙撃手、外岡一斗は俯く。

 

「だがそれは負けていい理由にはならねえ。いつも通り、俺たちの得意なマップで行く。

 

 

 

…気ぃ引き締めろやコラァ!!」

 

「「…ッス!!」」

 

 

──

 

『ここで弓場隊により、マップは「市街地B」に決定されました!』

 

『弓場隊はいつもここを選びますね。高い建物や低い建物が入り組んでるので「市街地A」より少し難しいマップになります。メテオラや旋空なんかで建物を壊せれば射線も通りやすいので上手く地形戦に持っていけば、どの隊も有利、不利になり得るマップだと思います。』

 

『時枝先輩、解説ありがとうございます。』

 

『てか試合まだー?あたしお腹減ったんだけどー。』

 

榎沢は椅子机に項垂れる。

 

『お前がやりたいと言ったんだろう?』

 

風間は榎沢を呆れたように睨む。

 

『榎沢さん、少ないけどお菓子あるよ。』

 

時枝は榎沢の前にお菓子を置く。

 

『!、さすがとっきーくん!風間さんと違って優しい!

 

 

…風間さんと違って!』

 

2回目は風間を見ながら。

 

『時枝…あまりこいつを甘やかすな。調子に乗るぞ。』

 

『はぁ?チビのくせにうるさいんだけど。』

 

『何度も言わせるな。お前の方がチビだろう。』

 

『え、えーっと!まもなく転送開始の時刻となります!皆さん準備は良いですか!!』

 

武富はそんな2人を遮るように声を張る。

 

 

…もう帰りたい。

 

時枝、武富の心の中は同じだった。

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「よし、真登華、市街地Bの射線は大丈夫か?」

 

「何とかー。」

 

柿崎の問いに、真登華はそう返した。

 

「文香と清澄が暴れて俺と虎太郎でサポートだ。まずは初戦…勝つぞ。」

 

「新生柿崎隊を見せつけよーっ。」

 

真登華は元気よく拳を突き上げる。

 

「勝ちましょう。」

 

前シーズンより、一層強者の風格が出てきた文香はそう言って笑みを見せる。

 

「清澄先輩、全力でサポートしますから。」

 

虎太郎はオレにそう言う。

 

 

 

静かに目を伏せ、三輪を思い浮かべる。

 

…初めて明確な目的も出来た。

 

自分の為の目的ではなく三輪の為…

 

 

 

…いや、それは建前だ。

 

大規模侵攻で戦ったヴィザは今までで1番の強敵だった。

 

それ以上の猛者が近界にはいるのかもしれない。

 

ヴィザよりも…

 

 

ホワイトルームの最高傑作(オレ)よりも。

 

 

 

 

 

 

 

 

…怪物はゆっくりと目を開く。

 

 

「負けはないです。

 

 

 

…勝ちましょう。」

 

 

こうして無機質なボーダー隊員の今シーズン、初戦が幕を開ける。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

綾瀬川清澄
三輪秀次→仲直り。協力してくれると言ってくれて嬉しい。

三輪秀次←ツンツンツンデレ。友人。


榎沢一華
時枝充→よく迷子になるね。友人。
風間蒼也→生意気。俺の方が年上だ。
武富桜子→解説…。

時枝充←恩人。とっきーくん。お菓子ありがとう!
風間蒼也←チビ。生意気。
武富桜子←解説してあげるんだからジュース買ってこいや。

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B級ランク戦ROUND1 柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊①

投稿します。


『さて、各隊転送準備が整いました!転送開始です!

 

 

 

…転送完了。MAPは「市街地B」!B級ランク戦ROUND1昼の部、スタートです…!』

 

 

──

 

オレが転送されたのは建物の一室だった。

 

レーダーで3人の位置を確認する。

 

『清澄先輩、先輩だけちょっと離れてるね。』

 

その前に真登華から通信が入った。

 

『そうみたいだな。』

 

そう言いながらオレは建物の外を見る。

 

『隊長、そっちは先に3人で合流してください。オレはバッグワーム付けてあとから合流します。』

 

そう言ってオレはバッグワームを羽織る。

 

『分かった。真登華、射線はどうだ?』

 

『だいじょーぶ!絵馬くんとトノくんには1点もあげないんだから。』

 

『ハハッ、心強いぜ。』

 

 

──

 

『さて、各隊ランダムな位置からのスタートとなります。まずは転送と同時に絵馬隊員と外岡隊員が、少し遅れて綾瀬川隊員がバッグワームでレーダーから姿を消しました。』

 

『狙撃手のバッグワームは基本、北添は場を荒らすためにレーダーから消えたという所か。綾瀬川は1人だけチームから離れた位置にいる。このまま見つからずに合流をするか…

 

 

…狙撃できる場所を探すかの2択だろう。』

 

『そうですね。この2択のどちらを取るか…影浦隊と弓場隊は消えた隊員が誰であるかと同時にそれも考えなくてはいけません。…狙撃も、白兵戦も出来る完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)はこういった駆け引きに持って行けるところが強みですね。』

 

風間の言葉に時枝が補足する。

 

『パーフェクトオールラウンダー…?』

 

榎沢が首を傾げる。

 

『そうでした!今シーズンから綾瀬川隊員はボーダーで2人目の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)でした!』

 

『分からない人のために説明すると完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)攻撃手(アタッカー)トリガー、射手(シューター)銃手(ガンナー)トリガー、そして狙撃手(スナイパー)トリガーの遠・中・近距離のトリガー全てのポイントがマスタークラスになっている隊員が名乗ることの出来るポジションですね。玉狛の木崎さんがそうですけど、木崎さんはランク戦には参加していないので…現在ランク戦に参加している隊員ではA級含め、唯一の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)という事になりますね。』

 

『へー、綾瀬川センパイ既にそれなりに目立ってんじゃん。これはあたしも様子見してる場合じゃないかもね。』

 

榎沢は意味ありげにそう言うと、笑みを浮かべてモニターに視線を戻した。

 

『さて、ランク戦に話を戻しましょう。マップの北には影浦隊長が、北東から南にかけて綾瀬川隊員を除く柿崎隊のメンバーが近い配置となっています。』

 

『逆サイド、南西では弓場隊が近いですね。綾瀬川隊員と影浦隊は全員1人でも点を取れるメンバーなので、各隊転送位置は悪くないんじゃないでしょうか?』

 

『綾瀬川センパイ映してよ。見たい。』

 

榎沢はまたしてもわがままを言う。

 

『大丈夫。綾瀬川先輩の活躍なら直ぐに見れると思うから。』

 

 

──

 

『よし、作戦通り行くぞ、懸念はゾエのメテオラか…。そろそろ撃つだろうな。』

 

柿崎の言葉の直後、少し離れた位置で爆発音が聞こえる。

 

『オレの近くですね。でもオレじゃないみたいです。』

 

『そうか、弓場隊か?』

 

『まあ北添先輩ならそれを囮に誘き出すとかもしそうですけどね。』

 

『!、もう2人レーダーから消えたよ、清澄先輩の近くと真ん中辺り。』

 

真登華の通信が入る。

 

『弓場隊で確定でしょうか?影浦先輩はバッグワームつけないでしょうし。』

 

巴が尋ねる。

 

『まあとにかく警戒しつついきますよ。』

 

──

 

『ここで北添隊員のメテオラが場を荒らす!』

 

『通称「適当メテオラ」。北添先輩の高トリオンから放たれるレーダー頼りのメテオラですね。』

 

『陽動、場荒らしの役目だな。影浦とは相性が良いだろう。』

 

時枝の言葉に風間が補足。

 

『それによりマップ中央の帯島隊員、南西部の弓場隊員がバッグワームでレーダーから姿を消しました。』

 

『追い討ち対策だな。弓場隊は今シーズン神田がいない。いつもの弓場が点を取るために1人で動く戦法とは違うようだ。帯島と合流するつもりらしい。』

 

『…あーあ、ダメだね。』

 

榎沢は時枝から貰ったポッキーを齧りながらそう言う。

 

『ダメ…と言いますと?』

 

武富が尋ねる。

 

『よりによって綾瀬川センパイの近くで場所を知らせるみたいにバッグワーム付けちゃったこと。

 

 

 

 

…これで柿崎隊に2点入るよ。』

 

──

 

『帯島、無事かァ?!』

 

弓場はメテオラで狙われた帯島に通信を入れる。

 

『弾道的に西辺りにゾエがいやがるなァ。藤丸、マーク付けとけ。』

 

『了解。初期位置的に南でも誰か消えてやがるぞ。』

 

通信を受けた弓場隊オペレーター、藤丸ののはそう告げた。

 

『みてェだな。絵馬ならいいが…綾瀬川の可能性もある。ちっ…帯島ァ、バッグワーム付けとけ。』

 

そう言いながら弓場もバッグワームを羽織った。

 

『はいっス!』

 

 

──

 

オレは民家に留まると、これまでの情報を整理する。

 

北東から南東にかけてウチのメンバーが近い。バッグワームをつけた隊員を除いた初期位置的に穴があるのは東、北西、西辺りか。西は北添先輩確定だとして、東と北西に絵馬と外岡、2人の狙撃手が居ることになる。

そして中央と南西にいた隊員がバッグワームで消えたってことは警戒すべきカゲさんは…

 

 

『影浦先輩は北だね。今のゾエさんのメテオラで降りてきてるかもしれないけど。』

 

真登華の通信が入る。

 

『カゲが少し近いか…警戒しつつ行くぞ。中央付近で集合だ。』

 

『『了解。』』

 

文香と虎太郎がそう答える。

 

『…虎太郎、東にデカいビルあるから。そこに絵馬くんかトノくんがいるかも。射線通らない道送るね。』

 

真登華のキーボードを叩く音が聞こえた。

 

『助かります。』

 

オレもそろそろ動くかな。

 

オレは持っていたイーグレットをしまうと、弧月に切り替えて、ベランダから飛び降りる。

 

『オレも向かいます。中央で落ち合いましょう。』

 

柿崎に通信を入れる。

 

『分かった。気を付けろよ。』

 

『了解です。』

 

そう言ってオレはかけ出す。

 

──

 

『マップ北東、そして東付近、柿崎隊の3人が中央に向かって動き始めました。東付近にいた巴隊員は少し複雑な動きをしていますね。』

 

『…東には絵馬がいる。初期位置的に東に狙撃手がいると見抜いたんだろう。宇井の射線管理はオペレータートップクラスだ。東のビルを警戒しないはずがない。』

 

『なるほど。これには絵馬隊員はたまらずアイビスを下ろしました。影浦隊長は北から降下、中央に向かっています!』

 

『北添のメテオラを最大限利用する為だろう。』

 

『そして、マップ南の綾瀬川隊員はバッグワームを付けたまま北上!チームメイトと合流する動きでしょうか?…おや?ですがこれは…』

 

 

──

 

マップの南東付近。

そこにはバッグワームを付けた、弓場、そして東の狙撃を警戒し、南東を経由して北上している綾瀬川がいる。

且つ、高い建物が多く、姿など見えるはずもない。

 

 

だからこそだろう。

 

 

「「!」」

 

弓場が十字路の真ん中に差し掛かった時だった。

 

通りの向こうを走るバッグワームを付けた綾瀬川が見える。

 

警戒していた綾瀬川も直ぐに弓場に気づいた。

 

 

綾瀬川は弧月、弓場は拳銃のホルスター。

 

 

 

手を掛けたのは同時だった。

 

 

──

 

No.2銃手、弓場拓磨。

 

威力と弾速に振った拳銃と早撃ちの腕で、数多の攻撃手を沈めてきた攻撃手キラー。

その腕は誰しもが認めているし、弓場自身、早撃ちには自信がある。

 

 

 

──()った。

 

 

手を掛けたのは同時だったが、弓場はそう直感する。

 

 

 

 

 

 

 

 

…だが瞬きの刹那、弓場の視界は上下2つに割れた。

 

 

 




綾瀬川のROUND1のトリガー構成でのパラメーター

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:バイパー、イーグレット、バッグワーム、シールド
 

トリオン 7
攻撃 9
防御・援護 8
機動 6
技術 10
射程 8
指揮 5
特殊戦術 4
TOTAL 57

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B級ランク戦ROUND1 柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊②

投稿おくれてすいません。



完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)、綾瀬川清澄。

最大射程35mの旋空弧月と、リアルタイムで弾道を引く変化弾(バイパー)

そしてそこに狙撃と合成弾が加わる。

まさに完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)

 

その最大の強みは、手数の多さ。

 

それに勝つための戦略、それは至極単純。

 

意識外からの狙撃。

 

そしてもう1つ。

 

何もさせない事。

 

 

奇襲による早期決着。

 

 

早撃ちが売りの弓場は拳銃を抜く。

 

 

 

 

しかし、目前まで迫った横薙ぎの旋空が弓場の視界を割る。

 

 

 

 

 

「っ?!」

 

 

…それは偶然だった。

決着を焦った弓場は足元のマンホールに足を滑らせる。

 

 

だからこそ、弓場は紙一重で旋空を避ける。

弓場の頭上スレスレを通り抜けた弧月は、弓場の後ろの建物を切り倒す。

 

 

弓場は直ぐに片手を突いて、もう片方の手で綾瀬川目掛けて、アステロイドを発砲。

 

綾瀬川は、シールドで受けながら、体勢を低くして弓場との距離を詰め、弧月を振り下ろす。

 

弓場は上体を反らして避けると、綾瀬川に回し蹴り。

 

綾瀬川は片手でそれを受ける。

 

──

 

『ここで中央に向かう弓場隊長と、綾瀬川隊員が衝突!綾瀬川隊員の旋空一閃!弓場隊長はギリギリでそれを避けました!』

 

『まあ偶然だねー。』

 

──

 

 

「今ので落としたと思ったんだがな。…演算をミスったか。」

 

そう言って綾瀬川は視線をマンホールに落とす。

 

「今日の俺はどうやらツイてるらしい。…バケモンが。どんな抜刀速度してやがんだ?あァ?!」

 

弓場は足を下ろすと、その足を軸にし、もう一度蹴りを叩き込む。

綾瀬川は、クロスした腕で受け、後ろに飛んで受け流すと、トリオンキューブを生成する。

 

「…バイパー。」

 

「!」

 

綾瀬川の背後。

トリオンキューブが生成される。

 

「させねェよ…

 

 

…トノ!」

 

 

『了解。』

 

弓場は外岡の名前を叫びながら拳銃を抜く。

 

 

 

「ウチのオペレーターを舐めないでください。射線はもう知ってるんですよ。」

 

そう言いながら綾瀬川は横目で、離れたビルにに視線を向ける。

 

極小に固められたシールド。

 

それが、外岡の放ったイーグレットを弾く。

バイパーは細かく分割され、弓場の弾を撃ち落とす。

 

 

「あとは弾道を演算すればいい。」

 

バイパーのアステロイドはお互いに相殺し合う。

 

 

 

「メテオラ。」

 

地面を抉るメテオラ。

 

視界を奪う。

 

「ちっ...ヤロォ…!」

 

弓場は土埃の中、レーダー便りでアステロイドを放った。

 

土埃の中、綾瀬川の反応がレーダーから消える。

 

 

『バッグワームか…トノ!見逃すんじゃねェぞ!』

 

『了解ッス!』

 

外岡のスコープには、土埃から距離を取った綾瀬川が映る。

その手は弧月に添えられていた。

 

『弓場さん!弧月です!旋空来ます!』

 

外岡はそう叫んで、綾瀬川に照準を合わせる。

弓場は旋空を警戒し、下がり警戒する。

 

 

 

(あれ…?俺…位置変えたよな…?)

 

 

 

スコープ越しに綾瀬川と目が合う。

 

 

「っ?!…ありゃ…?」

 

外岡は慌てて発砲。

しかし、読まれていたそれは当然防がれる。

 

そして、バッグワームを解除した綾瀬川はイーグレットを取り出し、外岡に向けた。

 

『…ハハ…マジか。

 

 

…すんません、弓場さん。』

 

 

そのまま、綾瀬川のイーグレットが火を吹き、外岡の額を撃ち抜いた。

 

 

──

 

『綾瀬川隊員のイーグレット狙撃炸裂!外岡隊員緊急脱出!初得点は柿崎隊!』

 

『さっすがー!』

 

榎沢は嬉しそうに言った。

 

『…綾瀬川の数少ない弱点と言えば意識外からの狙撃だ。

 

 

…だが…』

 

──

 

弓場は目の前で外岡を撃ち抜いた綾瀬川を見て、内心冷や汗を流す。

 

柿崎隊オペレーター、宇井真登華。

 

綾瀬川の下で、各マップの射線を研究し、その後は他隊に積極的に足を運び、機器操作技術や、オペレーターとしての指揮、あらゆる技術を学んだ。

 

宇井の射線管理能力、そして綾瀬川の演算で弾き出した狙撃手の移動先。

それにより綾瀬川には最早狙撃は通じない。

 

弱点であった遠距離からの攻撃は宇井のサポートにより弱点ではなくなってしまった。

それどころか、そこからカウンターで狙撃される始末。

 

これがB級1位、柿崎隊エース、綾瀬川清澄と、オペレーター宇井真登華の連携。

 

「なるほどなァ…なるべくして1位になりやがったわけか。」

 

 

 

 

『真登華、狙撃がないならもう大丈夫だ。』

 

宇井にそう告げて綾瀬川は弧月と、トリオンキューブを構える。

 

『もー、超疲れた…。』

 

宇井はぐったりと椅子に腰掛ける。

 

『おい、隊長達援護してやれよ…。』

 

『うわ、ひっどい清澄先輩。せっかく後輩が全力でサポートしてあげたのに労いの言葉もない訳ー?』

 

『へいへい。

 

 

…助かった、真登華。隊長達の方、頼んだぞ。弓場さんは手が掛かりそうだ。』

 

『はーい。』

 

宇井は嬉しそうにはにかむと、座り直し、モニターに視線を戻した。

 

 

──

 

『一方のマップ中央。柿崎隊の3人が合流しました!』

 

『影浦先輩が中央に降下しているので迎え撃つか、綾瀬川先輩の方に合流するかですね。帯島さんも弓場さんの援護に走ってますから。』

 

『あたしだったら綾瀬川センパイのとこには行かないかな。』

 

ようやくまともに解説しだした榎沢はそう告げる。

 

『なんで?』

 

時枝が尋ねる。

 

『だって綾瀬川センパイなら1人でもどうにかできるし。それだったら上から来てるえっと…ボサボサの人とやり合って1点取った方がいいでしょ。』

 

──

 

『弓場隊は清澄に任せる。やれるな?清澄。』

 

柿崎は綾瀬川に通信を入れる。

 

その言葉に綾瀬川は息を吸い、弧月を構え直す。

 

『了解。』

 

 

「俺たちはカゲとゾエをやるぞ。」

 

「「了解!」」

 

『真登華は絵馬の射線管理だ。やばそうなら清澄を援護してやれ。』

 

『りょーかい。』

 

──

 

『榎沢さんの予想通り、柿崎隊は影浦隊と交戦するつもりみたいですね。』

 

『影浦と北添はボーダーでもトップクラスの攻撃手と銃手だ。B級1位になったとはいえ影浦隊の2人は格上だ。それに東では絵馬が目を光らせている。』

 

『では、風間隊長は影浦隊が勝つと?』

 

 

『さあな。それは決着の時まで分からない。』

 

そう言って風間はうっすら笑みを浮かべると、モニターに映る照屋に視線を向けた。

 

──

 

3発の弾が空に打ち上がる。

 

「!、来たぞ、ゾエのメテオラだ。」

 

『絵馬くんの射線は私に任せて。』

 

『助かるぜ…真登華。』

 

「隊長。」

 

「ああ。」

 

柿崎はそう言ってレイガストを構え、地面に手を置く。

 

 

「エスクード。」

 

3人を囲むように大きな盾が地面に現れる。

 

少しして、北添のメテオラが着弾。

爆風に顔を覆いながら、来るであろう敵に警戒する。

 

爆風を切り裂くように、スコーピオンが伸ばされる。

 

柿崎はそれをエスクードで受ける。

 

 

「ハッ、綾瀬川のヤローがいねえのは残念だが…おもしれぇ。3人まとめてぶっ潰してやるよ。」

 

 

獰猛な笑みを浮かべ、B級最強の攻撃手、影浦雅人はスコーピオンを伸ばした。

 

 

──

 

『マップ北から降下していた影浦隊長と柿崎隊が衝突!』

 

『北添先輩の援護もありますからこれは読めませんね。』

 

『ふーん、これが…チーム戦…か。』

 

榎沢はぶっきらぼうに呟くと、棒付きの飴玉を口に運ぶ。

 

『榎沢さんは今回が初めてだもんね。』

 

 

 

 

『…まああたしは1人で良いけど。』

 

酷く冷えきった声でそう言うと、咥えていた飴玉を噛み砕いた。

 

──

 

「チイッ…!!」

 

影浦のスコーピオンは、柿崎のレイガストに弾かれる。

 

「メテオラ。」

 

エスクードの裏に隠れた照屋はトリオンキューブを分割し、影浦目掛けて放つ。

 

爆風をシールドで覆いながら、影浦は後ろに飛び退く。

 

それに合わせて、影浦の周りにグラスホッパーが展開される。

そして、巴がグラスホッパーの間を行き来しながら、影浦目掛けてアステロイドを発砲。

サイドエフェクトで弾道を読んだ影浦はシールドで受けつつ、避ける。

 

「エスクード。」

 

巴の相手をしている間に、柿崎は照屋と影浦を直線で結ぶように、エスクードで囲む。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

三つ編みの髪を振りながら、照屋は弧月を抜刀。

 

 

影浦はジャンプでそれを避けると、照屋にスコーピオンを伸ばした。

 

 

「っと…。文香、守りは任せろ。遠慮せず行け。」

 

「了解!」

 

それを柿崎がレイガストで弾く。

 

『!、隊長、北添先輩が来ます!』

 

空中からの攻撃兼、北添の接近を警戒していた巴の視界にバッグワームをつけた北添が映った。

 

北添は、こちらにアサルトライフルを向けると乱射。

 

高いトリオンから放たれるアステロイドは柿崎のエスクードを削り始める。

 

 

「ちっ、おせーぞ、ゾエ。」

 

「ごめんごめん。狭い道ゾエさんのお腹引っかかっちゃって。」

 

「痩せろや。」

 

そう言いながら影浦はスコーピオンを構え直す。

 

「手強ーぞ。」

 

「みたいだね。」

 

絵馬の射線も宇井が目を光らせている。

 

 

 

「ハッ…おもしれぇじゃねえか。」

 

 

そう言って影浦は笑みを見せる。

 

 

「畳み掛けるぞ、文香、虎太朗!」

 

「「了解!」」

 

そうしてB級トップチームの二部隊はぶつかり合う。




あとがきに書くこと募集しようかな。

各キャラからの印象&各キャラへの印象

弓場拓磨→化け物。B級トップ万能手。
外岡一斗→当たる気がしない。

弓場拓磨←No.2銃手。ヤクザ。
外岡一斗←真登華のおかげでやりやすい。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND1 柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊③

投稿遅くなりすいません。
やっぱランク戦書くの楽しいですね。


『一方の弓場隊長VS綾瀬川隊員の一騎打ちは、綾瀬川隊員が優勢!多彩な綾瀬川隊員の攻撃に弓場隊長攻めあぐねているか!』

 

『バイパーと旋空がある分弓場さんも迂闊に距離は取れませんからね。だからといって距離を詰めすぎる訳にはいきませんし、弓場さんにとって綾瀬川先輩は相性最悪の相手です。』

 

『おっと、しかしここで帯島隊員が弓場隊長の下に到着!これで2対1!分からなくなってきました!』

 

──

 

「ハウンド!」

 

畳み掛けるように弓場に切りかかろうとした綾瀬川に、バッグワームを解除した帯島のハウンドが襲いかかる。

 

「…っと…。」

 

綾瀬川は、シールドで受けると、拳銃を構えた弓場から飛び退く。

 

「すいません弓場隊長!遅くなりました!」

 

そう言って帯島は弧月を構える。

 

「いや、助かったぜ、帯島。こいつァ俺1人じゃどうにもならねェ。」

 

弓場は冷や汗を流しながらそう言う。

 

No.2銃手の弓場がそこまで言う相手。

帯島は息を飲む。

 

「ここが正念場だぜ、帯島。ビビってんじゃねえぞ!」

 

「はいッス!!」

 

そう言って弓場隊の2人は目の前の怪物と対峙した。

 

 

──

 

『さて、帯島隊員が合流したマップ南西の戦場ですが、数の有利がある分弓場隊が有利と言った所でしょうか?』

 

武富が解説の3人に尋ねる。

 

『いやいや、狙撃手がいない以上弓場隊に勝ち目は無いでしょ。』

 

榎沢はそう返した。

 

『え?2対1ですよ?』

 

『いや、前シーズンのROUND4で二宮隊相手に生き残ってるからね、綾瀬川先輩は。』

 

『…だがまあ…確かに、前シーズンの綾瀬川ならばここで緊急脱出という選択も取っていたかもな。』

 

風間はそう言って弓場隊2人を相手取る、綾瀬川に目を向ける。

 

『前シーズンからの成長を加味して…という事でしょうか?』

 

『成長とは違うな。全開とまでは行かないが…今シーズンは少しはまともにやるつもりらしい。』

 

『?』

 

首を傾げる武富。

しかし風間の視線は榎沢に向いていた。

 

(大規模侵攻で一緒だったとは言え…

 

…こいつは綾瀬川の何を知っている…?)

 

──

 

「旋空弧月。」

 

放たれた旋空を弓場は飛び退いて避けると、綾瀬川に銃口を向ける。

 

「ハウンド。」

 

それに合わせて帯島も、ハウンドを放つ。

 

綾瀬川は右往左往と駆けると、ハウンドをシールドで受けながら、弧月で弓場のアステロイドを叩き落とす。

受けている内に、弧月にはヒビが入り、折れてしまう。

 

「メテオラ。」

 

綾瀬川はすぐにメテオラに切り替えると、地面を砕き、2人の視界を奪う。

 

『藤丸!』

 

『分かってらァ!視覚支援!』

 

藤丸の視覚支援で、綾瀬川を視界に捉える。

 

「!、帯島ァ!来んぞ!

 

 

 

 

…イーグレットだ!」

 

「イーグレット!?」

 

帯島はすぐに飛び退くが、放たれたイーグレットに左腕を飛ばされる。

 

「帯島!」

 

「大丈夫ですっ!」

 

弓場は、視覚支援を頼りに、綾瀬川にフルアタック。

 

綾瀬川のシールドを削る。

 

「ちっ…。」

 

綾瀬川はフルガードに切りかえて、弓場の射程から外れるように後ろに飛び退く。

しかし、弓場も簡単には逃がしてはくれない。

じわじわと距離を詰める。

 

弾幕の刹那、綾瀬川の姿がぶれる。

後ろに下がっていた綾瀬川は、進行方向を変え、帯島との距離を詰める。

 

「っ?!」

 

帯島は、どうにか弧月で受けるが、弓場は帯島を巻き込む訳には行かず、射撃を止める。

 

「っ…問題ないっス!自分事撃ってください!」

 

「そういう訳には行かないな。1点減るだろ。」

 

綾瀬川は帯島の腹を蹴飛ばす。

 

「がっ…?!」

 

弓場に射撃の隙を与えることなく、帯島と距離を詰める。

 

『清澄先輩、ストップ!!』

 

そこで宇井の待ったが入る。

 

「ちっ、演算ミスか。」

 

 

その瞬間、帯島の体は東からの凶弾に貫かれた。

 

 

──

 

綾瀬川VS弓場隊の戦闘が激化する頃、柿崎隊VS影浦隊の戦闘も激化していた。

 

影浦のマンティスを、柿崎のレイガストと、照屋の弧月が。

北添の射撃を、巴のシールド、柿崎のエスクードが守り、隙を見た照屋の旋空、モールクローが繰り出される。

 

 

『どひー、守り堅いねー。』

 

北添はそう言いながら、アサルトライフルでアステロイドを乱射。

しかし、それをエスクードと、巴のシールドで受けられる。

 

「ハウンド。」

 

巴はエスクードの陰に入ると、ハンドガンを横に発砲。

ハウンドが北添に襲いかかる。

 

「あっぶな。」

 

北添はシールドでそれを受けた。

 

 

その隙に、巴のグラスホッパーで、照屋が飛び上がる。

 

「旋空弧月。」

 

「させるかよ。」

 

浮いた照屋に向かって、マンティスが放たれる。

 

「そっちがな。スラスターON。」

 

マンティスをスラスターで飛ばしたレイガストが弾く。

 

「ちぃ!ゾエ!!」

 

放たれた旋空を北添は飛び退いて躱す。

 

『ユズル!』

 

その合図で、絵馬はアイビスを構える。

しかし、その射線を切るように、ビルの壁から盾が出現する。

 

『ダメだ。射線を切られた。』

 

そう言って絵馬はアイビスを下ろす。

 

 

──

 

『柿崎隊VS影浦隊の戦闘は、柿崎隊の連携に影浦隊が後手に回っているか!』

 

『まるで要塞ですね。狙撃もエスクードで邪魔されています。1発撃てば壊せるかもしれませんが、位置バレしますからね。』

 

『だが柿崎隊にも隙がない訳ではない。エスクードと、レイガストがあっても守りきれない部分はある。それを巴、照屋が上手く補い、攻撃に転じている。』

 

風間はそう解説する。

 

『B級トップの連携と言っても過言では無いだろう。』

 

『このまま柿崎隊が押し切る形になるでしょうか?』

 

『…いや、影浦がこのまま黙っているとは思えない。』

 

──

 

『ゾエ、エスクードが邪魔だ。メテオラで退けろ。』

 

『うぇ?!カゲを巻き込んじゃうよ?』

 

『誰がてめぇの弾で死ぬかよ。問題ねえ、上手くやる。綾瀬川のヤローとやるんだ。こんな所で手こずってる暇ねえだろーが。』

 

『了解。』

 

そう言って北添はグレネードガンを取り出す。

 

 

「メテオラ来ます!!」

 

「メテオラ!」

 

照屋もトリオンキューブを分割。

北添のメテオラにぶつける。

 

その爆風で、エスクードが吹き飛ぶ。

 

「ちっ!」

 

爆風に顔を覆いながら、柿崎は2部隊の間にエスクードを複数展開する。

 

柿崎隊の3人は、そのエスクードに転がるように身を潜める。

 

「ちっ、ゾエ。」

 

「はいはい。」

 

北添はさらにメテオラを撃ち込み、エスクードを吹き飛ばした。

 

「1点。」

 

そう言って影浦は巴目掛けて、マンティスを伸ばした。

 

「っ!?」

 

巴は、後ろに飛び退きながら弧月で受ける。

 

影浦はすかさず2撃目。

 

 

「虎太郎」

 

「分かってます!!」

 

「!!」

 

巴は弧月で受けるわけでも、シールドを出す訳でもなく、グラスホッパーを展開する。

巴はそのまま、影浦のマンティスに貫かれる。

 

「ゾエ!!」

 

巴が展開したグラスホッパーに足を掛けたのは、照屋。

そのまま北添との距離を一気に詰める。

 

「うそーん。」

 

そのまま、すれ違いざまにスコーピオンで北添の首をはねた。

 

「あとよろしく。」

 

そう言って、北添はグレネードガンの引き金を引き、柿崎目掛けて、メテオラを放つ。

 

「くそっ!!」

 

柿崎は、レイガストでそれを受けるが、それを見逃す影浦では無い。

 

一気に距離を詰め、柿崎を切り裂く。

 

 

緊急脱出の光が3つ上がった。

 

 

──

 

『ここで巴隊員と北添隊員、柿崎隊長が緊急脱出!!』

 

『流石はB級トップクラスの名サポーターですね。巴隊員はグラスホッパーを、北添隊員はメテオラで柿崎さんを崩して、柿崎さんはエスクードを残して緊急脱出しました。最後まで仕事をする姿はまさにサポーターの鑑ですね。』

 

時枝はそう評する。

 

『おっと?!そしてそして、絵馬隊員が南西の戦いに乱入!アイビスが帯島隊員を撃ち抜いた!!』

 

『柿崎さんのエスクードを考慮してでしょう。でも柿崎さんが緊急脱出した今なら中央の戦いにも乱入出来ます!』

 

──

 

絵馬は影浦のサポートに入るつもりだった。

下手に綾瀬川と弓場の戦いに割込めば、カウンターを食らうのはこちらだ。

だから、絵馬はアイビスを放った後、狙撃位置を変えるために動き出す。

 

 

 

 

「メテオラ+バイパー…

 

 

 

 

…トマホーク。」

 

 

そんな絵馬に、出水には劣るものの、素早く合成された、大蛇の牙が襲いかかった。

 

 

 




柿崎隊パラメーター

柿崎国治

トリオン 7
攻撃 7
防御・援護 10
機動 5
技術 8
射程 4
指揮 7
特殊戦術 3
TOTAL 51


照屋文香

トリオン 7
攻撃 9
防御・援護 7
機動 8
技術 8
射程 3
指揮 5
特殊戦術 2
TOTAL 49


巴虎太郎

トリオン 5
攻撃 7
防御・援護 9
機動 9
技術 7
射程 2
指揮 3
特殊戦術 3
TOTAL 45


宇井真登華

トリオン 2
機器操作 8
情報分析 8
並列処理 8
戦術 7
指揮 6
TOTAL 37


あとがきに書くことネタ切れなんでアドバイスくれると助かりますw
感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND1 柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊④

投稿します!


綾瀬川は目の前で緊急脱出した帯島が残した光の道筋を目で追う。

 

『真登華、位置。』

 

『今やってる…!』

 

キーボードを叩く音と同時に、綾瀬川の視界には絵馬が撃ったアイビスの弾道と狙撃位置が表示される。

 

 

 

イーグレットは…

 

…もう遅いか。

 

 

 

綾瀬川は弓場のフルアタックを、フルガードで受けながら後退る。

 

『清澄先輩、ザキさんと虎太郎が落ちた。北添先輩はどうにか落としたけど…』

 

つまりあちらは照屋と影浦の一騎打ちという事になる。

ただでさえ照屋1人で影浦やるのは厳しいのに、そこに絵馬が加わると照屋の負けは目に見えている。

 

 

…絵馬の援護を潰すのが先決か。

 

 

綾瀬川は後退り、トリオンキューブを生成する。

 

 

「メテオラ。」

 

 

綾瀬川はメテオラで地面を抉ると、曲がり角、塀の裏に身を潜める。

 

 

 

『真登華、立体図出してくれ。』

 

『りょーかい…!』

 

 

「メテオラ+バイパー。」

 

そして弓場が来る前にトリオンキューブを練る。

 

 

 

「トマホーク。」

 

分割すること無く1発。

宇井から送られた立体図を頼りに、弾道を引く。

 

「余所見してんじゃねえぞコラァ…!」

 

土煙を切り裂き、弓場が綾瀬川のいる塀の裏にバイパーで弾道を曲げる。

 

「…っぶね。」

 

 

まだ着弾してないんだけどな。

 

 

綾瀬川は塀の上に飛び乗り、バイパーを避ける。

 

「影浦隊に浮気かコラァ…。俺と遊んでけや…!!」

 

弓場はフルアタックで綾瀬川に発砲。

 

『真登華、あと何mだ?』

 

綾瀬川は倒れ込むように避け、地面に着地すると縦横無尽に駆ける。

 

『40…30…20…10…

 

 

…着弾!当たったはずだけど…緊急脱出はしてないみたい。』

 

『削れりゃそれでいい。』

 

そう言って綾瀬川はシールドを展開。

その場に止まり、弓場のフルアタックをフルガードで受ける。

 

『文香、すぐにそっちに行く。少し堪えろ。』

 

『了…解…!!』

 

言葉を詰まらせながらも照屋は力強く答えた。

 

「余所見は終わりか、綾瀬川コラァ…!」

 

「悪いがあんたと遊んでる時間はもう無さそうだ。」

 

弾が途切れたタイミング。

そこで綾瀬川は弧月に手を掛ける。

 

逆手での抜刀。

そのままほぼノーモーションで旋空を放つ。

 

「ちいっ…!!」

 

縦に放たれた旋空を弓場は飛び退いて避けるが、片足を奪う。

そのままバッグワームを羽織り、弓場目掛けて駆ける。

 

「おもしれぇ…!!」

 

弓場は笑みを浮かべで、膝立ちでフルアタック。

綾瀬川は左右に避けながら、バッグワームを外し、弓場目掛けて投げる。

 

「っ…!!」

 

弓場はバッグワームごと、綾瀬川を狙いアステロイドを発砲。

 

しかし、それにより、バッグワームに隠したメテオラが起爆。

弓場の前で大きく爆ぜた。

 

『藤丸!!』

 

弓場のその合図で綾瀬川の姿がくっきりと視界に映る。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

抜刀の構えだった。

弓場は、飛び退くと拳銃を向ける。

 

しかし、綾瀬川から旋空が放たれることは無かった。

 

 

その代わりに、綾瀬川の背後から、分割されたトリオンキューブが。

 

 

 

…綾瀬川の形だ。

 

 

空中、それも弓場はフルアタックの体勢に入っている。

 

 

「ヤロォ…読み合いになってねえじゃねえか、バケモンが。」

 

どうにか間に合ったシールド。

バイパーを防ぐために広がったシールド。

この状況こそが、綾瀬川の勝ちパターンだった。

 

「旋空…弧月。」

 

今度こそ放たれた旋空。

弓場のトリオン体を真っ二つに切り裂いた。

 

その様子を綾瀬川は目もくれることなく、駆け出した。

 

──

 

『綾瀬川隊員の旋空一閃…!弓場隊長もここで緊急脱出!!』

 

『綾瀬川先輩の勝ちパターンですね。綾瀬川先輩のバイパーを防ぐにはシールドを広げるしかありませんが…そこに高速の抜刀による旋空が放たれます。』

 

『うわ、きっもー。誰が避けれんの?あれ。』

 

榎沢はカラカラと笑う。

 

『弓場隊はこれで全滅、綾瀬川隊員の合成弾、トマホークにより、絵馬隊員も右足を失う大ダメージを負っています。』

 

『メテオラとバイパーの合成弾だ。分割無しの射程と威力重視の1発だ。弾速は狙撃手トリガーに大きく劣るが、射程は充分、自由さで言えばイーグレットや、アイビスを大きく上回っている。』

 

『そして綾瀬川隊員は中央に向かうと思いきや、東に走り出しました!』

 

『絵馬を取る気か…。』

 

──

 

『ちょ、清澄先輩?文香やばいんだけど。』

 

『…』

 

綾瀬川は何も言わずに東に走る。

 

『大丈夫よ、真登華。どの道私は無理そう。絵馬くんを自発的でも緊急脱出させといた方が後々楽だから。…ですよね?清澄先輩。』

 

『…ああ。』

 

──

 

『ユズル!綾瀬川がそっち来てんぞ!』

 

『ちっ、ユズル、緊急脱出しろ。』

 

影浦隊オペレーター、仁礼は絵馬に通信を入れる。

影浦からも通信が入った。

 

「くそっ…。」

 

絵馬は地面を這い、綾瀬川のトマホークで半壊したビルから、影浦と照屋の戦場をスコープで覗く。

 

照屋は影浦のマンティスにより、防戦一方。

柿崎が死に際に残したエスクードを利用し、どうにか生き残っている状況だった。

 

「っ…。」

 

絵馬は最後にアイビスを発砲。

 

「…緊急脱出。」

 

そして綾瀬川が60mの間合いに入る前に自発的に緊急脱出をした。

 

 

──

 

「オラ、どうした。鬼ごっこじゃねえんだぞ?」

 

「っ…。」

 

影浦はスコーピオンを振り回し、照屋との距離を詰める。

 

「メテオラ。」

 

弧月で受けながら、照屋はトリオンキューブを分割。

影浦にメテオラを放つと、柿崎が残したエスクードの陰に身を潜める。

 

「ちっ、うぜえ戦い方しやがるじゃねえか。」

 

煽るように言う影浦だが、これは本心だった。

前シーズンのROUND7よりも明らかにマンティスに慣れている。

相当研究してきたのだろう。

このまま時間を使って、綾瀬川を待つ腹積もりか。

柿崎が残したエスクードにより、それを利用したメテオラ爆撃。

距離を詰めれば、モールクローにより、足を狙われる。

かと言って距離を取れば旋空。

隙のない攻撃手になったものだと影浦は思った。

 

 

「ハッ…ごちゃごちゃ考えるのは俺に合わねーな。…掻っ捌く。」

 

影浦は獰猛な笑みを浮かべてスコーピオンを伸ばした。

 

 

その時、南から緊急脱出の光が上がる。

 

「「!」」

 

それは弓場のものだった。

 

そして綾瀬川の反応はすぐに東に走り出す。

 

『ちっ、ユズル、緊急脱出しろ。』

 

影浦は絵馬に通信を入れる。

 

内部通話の刹那、影浦の体にチクリと痛みが走る。

 

「あ?」

 

照屋が、弧月を抜き走り出す。

 

影浦はこちらに突っ込んでくる、照屋にスコーピオンを伸ばす。

 

「っ…!」

 

照屋は弧月で受け流すと、影浦の懐に飛び込む。

 

「ワンパターンなんだよ。」

 

足に刺さる痛み。

影浦は飛び退いて、地面から飛び出たスコーピオンを避ける。

想定済みの照屋はすぐに弧月を振りかぶる。

 

しかし、次の瞬間、絵馬の狙撃により、照屋の弧月が砕ける。

 

 

「!」

 

『ごめん文香!武器の射線までは読めなかった…!』

 

 

「ユズルの奴…余計な真似しやがって。」

 

そして、無防備になった照屋は影浦のスコーピオンにより切り裂かれた。

 

──

 

『ここで照屋隊員緊急脱出!影浦隊、4点目を獲得!そして絵馬隊員が自発的に緊急脱出!この試合の決着は影浦隊長と綾瀬川隊員の、1対1に委ねられることとなりました!』

 

 

──

 

片やB級最強の攻撃手(アタッカー)、影浦雅人。

過去の暴力事件により、ポイントを没収されているが、かつては個人ポイント10000越えの攻撃手。

 

そしてB級最強の万能手(オールラウンダー)…いや、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)、綾瀬川清澄。

遠・中・近距離トリガー全ての個人ポイントが、8000越え、弧月は10000ポイントに至っている。

 

 

「よぉ、待ってたぜ、綾瀬川。」

 

弧月を片手にこちらにやって来た綾瀬川に、影浦は笑みを見せる。

 

個人ランク戦(ソロ)はしょっちゅうやってますけどね。」

 

綾瀬川は呆れたようにそう言うと弧月を抜く。

 

「前シーズンはお預けくらったんだ。

 

…楽しませてもらうぜ…!綾瀬川ァ!!」

 

影浦はそう叫んで、綾瀬川にスコーピオンを伸ばした。

綾瀬川は弧月でそれを砕く。

 

しかし、物怖じすること無く、影浦はさらにスコーピオンを伸ばす。

綾瀬川は、弧月を振るう。

 

 

勝敗を分ける、一騎討ちが今、幕を開けた。




この作品の前シーズンは作者のにわかにより、B級上位と中位混合でやりましたけど、今シーズンは分けようかなって思ってます。
そう考えると、原作のランク戦って上位も中位も同じ相手とめちゃくちゃやり合ってますよね。
例えばROUND7とROUND8では影浦隊と東隊は連戦ですし。
ROUND6で玉狛、生駒隊、王子隊がぶつかってるってことは、もう1つのB級上位ランク戦は二宮隊、影浦隊、東隊、鈴鳴ってことになるので、ROUND6と、ROUND7では影浦隊と鈴鳴、東隊は連戦ですよね?
てか、影浦隊と東隊3連戦ですねw
そんな感じで見てくと、分かってないROUND1とかから見てけば連戦とかヤバそうですよね。
二宮隊と連戦とかどんな罰ゲームですかねw
連戦がない玉狛ってやっぱ主人公補正入ってるんですかね。
玉狛は主人公部隊だから仕方ないにしても連戦無いの割と奇跡ですよねw
作品の面白みを増すには混合にした方がいいのかな…。
アンケート取るかもです。

感想、評価等お待ちしてます。


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B級ランク戦ROUND1 柿崎隊VS影浦隊VS弓場隊⑤

投稿致します。
決着ですね。


「オラ、どうした綾瀬川ァ!そんなモンじゃねえ筈だろーが…!」

 

繰り出される影浦のスコーピオンの連撃。

綾瀬川は弧月で捌きながら後退る。

 

「当然でしょ。…こっちはあんたに仲間をやられてるんだ。やり返させてもらう。」

 

綾瀬川は、引き気味にスコーピオンを受け流すと、再出力の合間に、影浦との距離を詰める。

 

「ハッ!やってみろや。」

 

影浦は身体を仰け反らせ、そのままバク転。

距離を取ると、綾瀬川の喉元目掛けてスコーピオンを伸ばした。

 

綾瀬川はひらりと躱すと、トリオンキューブを生成する。

 

「バイパー。」

 

「!」

 

綾瀬川の得意パターン。

バイパーと旋空弧月の駆け引き。

 

影浦はトリオンキューブが分割される前に、綾瀬川との距離を詰める。

そして綾瀬川のトリオンキューブ目掛けてスコーピオンを伸ばした。

 

「ちっ…。」

 

舌打ちをして、トリオンキューブを消す綾瀬川。

 

「旋空弧月。」

 

影浦はスコーピオンを重ねて、受け流す。

そして、笑みを浮かべて、綾瀬川に飛びかかる。

 

拳の先に、スコーピオンを付けた殴りを綾瀬川は紙一重で避けると、そのまま回し蹴り。

影浦は、左手で受けながら、後退ると、スコーピオンを伸ばした。

それを逆手で抜いた弧月で捌く。

その隙に影浦は飛び上がり、距離を詰めると、足から生やしたスコーピオンで綾瀬川に蹴りかかる。

綾瀬川が弧月でそれを受けた時、影浦の足元の地面にヒビが入る。

 

「!」

 

飛び退くと、地面からスコーピオンが飛び出した。

 

「チッ…お見通しかよ…!!」

 

「バイパー。」

 

飛び退いた綾瀬川の背後で、トリオンキューブが分割される。

 

影浦は旋空を警戒しつつ、シールドを広げ、バイパーを受け切る。

 

 

──

 

『さあ、会場のボルテージも上がってきました!白熱のラストバトルを制するのは影浦隊長か…!!綾瀬川隊員か…!!』

 

武富が興奮気味に実況をする。

 

『…ねえ風間さん。あの…ボサボサの人、スコーピオン以外にトリガー入れてないの?』

 

そんな時、榎沢は風間に尋ねた。

 

『影浦だ。…攻撃用のトリガーはスコーピオンだけの筈だ。射程はマンティスで補えるからな。』

 

『じゃあ、あの人はスコーピオンだけの攻撃手なんだ。』

 

『そうなるな。』

 

『ふーん。

 

…じゃあこのバトルは綾瀬川センパイの勝ちだね。』

 

榎沢はそう言ってモニターに視線を戻した。

 

『それはどういう事でしょうか…?』

 

武富が榎沢に尋ねた。

 

『いや、サイドエフェクトがある限りふつうの攻撃手じゃ綾瀬川センパイには勝てないでしょ。』

 

『え…?…つまりどういう事でしょう?』

 

武富は困ったように榎沢に尋ねる。

 

『綾瀬川は既に影浦のマンティスを見切り始めている。』

 

代わりに口を開いたのは風間だった。

 

『あまり使っていなかったモールクローや、肉弾戦も交じえているようだが全て綾瀬川の予想通りの搦手だ。初見殺しには至らない。長期戦になれば不利なのは影浦だ。それに、綾瀬川と影浦は常日頃個人ランク戦を行っている。普段の影浦の動きを知っているという事だ。そんな相手の演算などあいつはすぐに終わらせるぞ。』

 

風間はそう言って目を細めた。

 

『しかし、それは影浦隊長も同じ条件では?影浦隊長にもサイドエフェクトによる攻撃箇所の先読みがあるはずですが…。』

 

『…どういう訳か綾瀬川には影浦のサイドエフェクトが通じないらしい。』

 

──

 

っ…やっぱり何度戦っても慣れねえな、クソが…。

 

影浦は内心で毒づく。

 

大抵の相手は攻撃する時に、その箇所を攻撃するという感情が刺さる。

もちろん、物量がある攻撃や、認識してからのスピードが異常に早い、ライトニングなどの攻撃など、避けきれないものは存在する。

だが、弧月などの直接攻撃は大抵避け切れる。

 

っ…綾瀬川(コイツ)の攻撃は…

 

 

まだ刺さらない。

 

まだだ。

 

 

「っ?!」

 

そして感情が刺さらないまま綾瀬川の弧月が影浦を襲う。

 

 

普通の事だ。

普通攻撃の感情が刺さって痛いということは無い。

 

自分がおかしいのだ。

 

なのに…

 

 

 

「っ…気持ちわりぃ…。」

 

 

気持ち悪い。

攻撃の感情が刺さらない目の前の敵がでは無い。

 

 

 

クソサイドエフェクトに頼りきっていた俺が、だ。

 

 

 

皆、この土俵で戦っているのだ。

先読みの通じない戦い。

これこそが普通の戦いだ。

 

 

対して影浦は目の前の怪物に視線をやる。

冷静沈着。

機械のようにこちらの手に対応する戦闘IQ。

予測不能な圧倒的な手数。

そして、自分の代名詞だと思っていた、サイドエフェクトによる攻撃の予測。

 

攻撃が当たらない。

対して、こちらは綾瀬川の攻撃を対処するのが手一杯になってきた。

 

 

 

「おもしれぇ…!!」

 

手に汗握る戦い。

圧倒的に不利な状況下、笑みを浮かべる影浦雅人という男はどこまでも戦闘狂であった。

 

 

 

「っ…?!」

 

だが、長くは続かない。

 

影浦の肩に大きな一撃が入る。

 

今までとは比にならない程の、神速の一撃。

 

綾瀬川の受けに回って、カウンターを狙った今までの模擬戦での戦闘スタイルとは違い、今度は綾瀬川から仕掛けてきた。

 

影浦は飛び退いて、綾瀬川を睨む。

 

「てめえ…!」

 

「そろそろ時間切れになりそうなんで。」

 

──

 

『そして何より、綾瀬川が影浦との模擬戦でどれだけ経験値を与えているかが未知数だ。』

 

風間はさらに続ける。

 

『サイドエフェクトのある村上ほどでは無いが、人間は学習をする。模擬戦の経験を通してだ。だが…綾瀬川は底を見せていない。』

 

『つまり…?』

 

『影浦は知らないあのスタイルの綾瀬川に、対応できない。』

 

──

 

「やっぱり隠してやがったなてめえ…!」

 

「別に隠してたつもりは無いですよ。受けに回ってた方が色々盗めるんで。」

 

綾瀬川の突きが影浦のスコーピオンを砕く。

 

「バイパー。」

 

そう言って、至近距離でトリオンキューブを分割しながら、綾瀬川はさらに弧月を振り下ろす。

 

影浦の左腕が飛ぶ。

 

「クソが…!」

 

影浦は逃げるように飛び退くが、綾瀬川は影浦の顔目掛けてさらに弧月を突き出す。

 

「っ」

 

頬が切れ、トリオンが漏れ出す。

 

「ヤロォ…!」

 

右手から、スコーピオンを伸ばすが、綾瀬川は斜めに避けると、距離を詰め、影浦の右腕を掴む。

 

「っ…クソが、今回はテメェの勝ちにしといてやるよ。」

 

「どうも。」

 

そう言って綾瀬川は、影浦をこちらに引き寄せ、勢いそのまま弧月で両断した。

 

 

 

──

 

『影浦隊長、緊急脱出!激戦を制したのは綾瀬川隊員!』

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 0P

綾瀬川 3P

生存点+2P

 

合計 6P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 3P

北添 0P

絵馬 1P

 

合計 4P

 

 

弓場隊

 

 

弓場 0P

外岡 0P

帯島 0P

 

合計 0P

 

 

 

 

『前シーズンの好調は健在か!ボーダートップクラスの点取り屋有する二部隊を圧倒し、柿崎隊の勝利です!』

 

 

 

「…」

 

綾瀬川は影浦の右腕を掴んだ、左手に目をやる。

 

 

枝刃(ブランチブレード)だろう。

手のひらに穴が開き、トリオンが漏れていた。

 

 

 

「…強いな。」

 

そう言って怪物は無機質な目を細めた。

 

──

 

『さて、試合の結果を受けて、総評を頂きたいのですが…。』

 

武富の問に、口を開いたのは時枝だった。

 

『そうですね。まずは弓場隊。やはり、神田先輩が抜けた穴が大きかったですね。この試合は弓場隊長と帯島隊員が合流する動きを見せていましたが、相手が悪かったですね。神田先輩の抜けた穴をどう対応するか。それが弓場隊の今後の課題であり、見どころでもあると思います。』

 

──

 

弓場隊作戦室

 

「なんだアイツ?バケモンかよ…。」

 

そう言うのはオペレーターの藤丸のの。

 

「…」

 

腕を組み、目を閉じていた弓場は目を開く。

 

「課題は山積みだ。それに今回は綾瀬川にやられたせいで新戦術も試せてねえ。…気ぃ引き締めろよ、帯島!外岡ァ!」

 

「「ッス!!」」

 

──

 

『影浦隊はいつも通りの動きが出来ていた。北添が場を荒らし、影浦が点を取る。絵馬も援護、得点、両方を担っていた。』

 

次いで、風間が影浦隊の総評をする。

 

『絵馬隊員の判断の迅速さが良かったですね。柿崎隊に狙撃が通じないと分かると狙いを弓場隊に変えていました。絵馬隊員が帯島隊員を落としていなければ柿崎隊は7点取ってたかもしれませんから。』

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「っ…クッソ…。」

 

影浦は悪態を吐いて戻って来た。

 

「おつかれー。惜しかったね、カゲ。」

 

「ああ?慰めなんて要らねえんだよ。どう見ても俺の惨敗だっただろーが。」

 

北添の言葉に影浦はそう返した。

 

今のままでは綾瀬川には勝てない。

 

 

「オイ、ヒカリ。」

 

影浦は仁礼に声をかける。

 

「あん?」

 

「あいつのログまとめとけ。…あのヤロウ、俺相手に出し惜しみしてやがった…。ぜってー勝つ…。」

 

そう言って影浦は笑みを浮かべた。

 

「おー、分かりやすく火、着いてるねー。」

 

「…俺も見る。」

 

「…ユズルも?」

 

──

 

『柿崎隊は新戦術が良かったですね。あの鉄壁を崩せる隊は中々いないと思います。戦わないとなんとも言えないですけど…さらに磨けばA級でも通用するんじゃないでしょうか?』

 

『そうだな。宇井の射線管理に、エスクード、グラスホッパーによる援護。うちとしては戦いたくない。』

 

風間はそう評した。

 

『そして何より…』

 

 

『綾瀬川センパイだね!!』

 

風間の言葉を遮るように榎沢が割り込む。

 

『いやー、どれくらい見せるのかなって思ってたら結構見せるんだねー。』

 

榎沢はそう言って続ける。

 

『やっぱり狙うなら雑魚からかなぁ…。色々考えなきゃ…

 

 

 

 

…さすがあたしの将来の隊長だね!!』

 

 

『え?将来の隊長…ですか?』

 

『うん。あたしが柿崎隊にランク戦で勝ったら、綾瀬川センパイに隊長やってもらってあたしと綾瀬川センパイで綾瀬川隊を結成するって約束したから。』

 

『えぇ?!!』

 

『へえ、それは…とんでもない化け物部隊になりそうだね…。』

 

『…』

 

武富はそう声を上げ、時枝は冷や汗を浮かべる。

 

風間はただ1人、怪訝な目で榎沢を見ていた。

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「ちょ、ど、どういう事?!清澄先輩!!」

 

「聞いてないですよ!!」

 

「オペレーターどうするんですか?」

 

「文香…そう言う問題じゃないだろ…?」

 

榎沢の爆弾発言により、綾瀬川は質問攻めに合っていた。

 

 

「いや、あいつが勝手に言ってるだけだからな?そんな約束一言もしてないし、オレは柿崎隊を辞めるつもりは無い。」

 

 

綾瀬川は困ったようにそう返した。

 

「…ホントですか?」

 

「ああ。」

 

怪しむような目で見る宇井に、綾瀬川はそう返した。

 

「よかった…。」

 

巴は安心したようにそう言った。

 

「でもまあ…俺は止めねえよ、清澄。」

 

柿崎はそう言って綾瀬川の肩に手を置く。

 

「お前は誰かの下に埋もれるのは勿体ねえ人材だからな。」

 

笑みを浮かべながらそう言う柿崎に、照屋も賛同する。

 

「確かにそうですね。…出来れば相手にしたくないですけど。」

 

「いや、柿崎隊気に入ってるんで。」

 

柿崎と照屋の賛同を綾瀬川はそう一蹴した。

 

「どうかなー、榎沢さん可愛いから清澄先輩鼻の下伸ばしそうだしー。」

 

宇井はまだ納得行かない様子で、拗ねたように顔を背ける。

 

「拗ねるなよ…。それに文香が言ったようにオペレーターもいないしな。」

 

「そんなの清澄先輩くらいの実力があれば、どんなオペレーターでも上手く使うじゃん。」

 

「?…いや、お前以上のオペレーターなんてそう居ないだろ?」

 

「…え?」

 

綾瀬川のその言葉に宇井は素っ頓狂な声を上げる。

 

「風間さんが言った通り意識外の狙撃はどうにもならないからな。オペレーターはお前以外ありえないぞ?」

 

「ふえ?!」

 

綾瀬川のその言葉に宇井は一気に顔を赤くする。

 

「ちょ、急に褒めないでください!」

 

「?…ただ事実を言っただけだが…。」

 

「…清澄先輩の馬鹿!」

 

弾んだ声でそう言うと、宇井は顔を逸らしてしまった。

 

「?」

 

綾瀬川は困ったように3人に視線を向ける。

 

 

 

 

「「「知らねえよ。」」」

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

影浦雅人→クソが、次はぜってー勝つ
藤丸のの→バケモン。
絵馬ユズル→…ログ見る。
榎沢一華→どう攻略しよっかなー。将来の隊長。
宇井真登華→女たらし。もう知りません。…って、褒めてもなんも出ませんからぁ!


影浦雅人←強いな。
藤丸のの←女ヤクザ。
絵馬ユズル←横取りしやがって。
榎沢一華←この野郎、面倒臭いことしやがって。
宇井真登華←最高のオペレーター。何怒ってんの?感情が忙しい奴だな。

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ROUND1を終えて

投稿遅くなりすいません。

さて、記念すべき100話目となります。
ここまで投稿出来たのも、読んでくださる読者様とハーメルン運営様のおかげです。
感謝してもしきれません。
返せることと言えば投稿することだけですので、どうにか完結まで持っていきたいと思います。
いつになるか分かりませんがw
これからも「白い部屋の最高傑作、ボーダーにて」をよろしくお願い致します。



…ちょっと賛否両論ありそうな話になります。
最後の方ですね。

アンケート回答の為、この話のあと2話ほど話を挟んでROUND2に行きます。
回答の御協力よろしくお願い致します。

どっちでもいいが1番困るんだよなぁ…(←選択肢作ったのお前だろ。)


まあたぶん、好きに書きますよw


今シーズンが開幕した、B級ランク戦。

 

デビュー戦にも関わらず、元上位部隊を1人で全滅させ、諏訪隊を上位に導いた、天才銃手、榎沢一華。

そして、ボーダートップクラスの点取り屋2人を圧倒し、柿崎隊を勝利に導いた、ボーダー2人目の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)、綾瀬川清澄。

 

初日から大きな盛り上がりを見せた、B級ランク戦だったが、大トリが残っていた。

 

玉狛第二。

支部でありながら、ボーダーの3つの派閥の一角を担う、少数精鋭、玉狛支部。

 

そこの2つ目のチームともなればいやでも注目を集めるだろう。

 

 

 

 

『こ、ここで試合終了…!8対0対0!』

 

 

 

 

 

記者会見で一躍話題となった三雲修。

A級の攻撃手、緑川駿に勝ち越し、白い悪魔と恐れられる空閑遊真。

玉狛の大砲、雨取千佳。

 

その3人を有する新鋭部隊は、柿崎隊、諏訪隊を上回るほどのインパクトを残し、中位に駆け上がってきた。

 

 

 

──

 

「凄かったね、綾瀬川。」

 

オレの弧月を受けながら、友人である、B級2位二宮隊の攻撃手、(つじ)新之助(しんのすけ)はそう言った。

 

「まあカゲさんとは飽きるくらいランク戦してたからな。」

 

そんな注目にも特に興味が無い。オレはいつも通り、ランク戦ブースでランク戦仲間と鎬を削っていた。

 

辻にそう返すと、オレと辻は鍔迫り合いをする。

 

「俺も分析されてるって考えると複雑な気持ちだけどね…。」

 

「何を今更。それに辻の弧月は参考になる。弧月1本であれだけ援護出来るのはすごいと思うぞ。」

 

そう言って俺は、辻の弧月を上に弾くと、弧月を消す。

振り下ろした辻の弧月を、右手を抑えることで受け止めると、逆手で再出力。

辻のトリオン体を切り裂いた。

 

 

 

 

「マスタークラスに行ってるってだけでオレにとっては警戒に値する。これからもどんどん盗ませてもらう。」

 

「よく本人の前でぬけぬけと言えるよね…。」

 

「お前は援護寄りだからな。早めに仕留めといた方が得策だろ。…まあ文香がいれば何とかなりそうだ。」

 

「…ほっといてよ。」

 

辻はそう言って頬を赤めてそっぽを向いた。

 

そんな話をしながら、出水、米屋の元に戻る。

 

「よ、おつかれー。次俺なー、綾瀬川。」

 

そう言って米屋がオレに肩を組んでくる。

 

「へいへい。…そう言えば駿はどうしたんだ?」

 

「あー、あいつは白チビんとこ。」

 

白チビ…?

 

 

「…ああ、例の新入りか。」

 

「お、弟が取られて寂しいのか?」

 

「まあ…ちょっとはな。」

 

米屋に図星を突かれてオレは頭を搔く。

 

「そこは否定しろよ…。」

 

出水が呆れたようにそう言った。

 

「まあ、あれだけ注目を浴びれば駿が興味を持つのも当然っちゃ当然か…。同じスコーピオン使いだし。」

 

そう言ってオレはお茶のキャップを開けると、口に流し込む。

 

 

 

出水、米屋、辻がなにか言いたげな目でこちらを見ていた。

 

 

「?…どうかしたか?」

 

「いや、綾瀬川も人の事言えないからね?ROUND1で影浦先輩と弓場さん落としといて何言ってんの?」

 

「無頓着っつーかなぁ…?」

 

「2人目の完璧万能手が何言ってやがんだ。」

 

「いや、別に騒がれてないぞ?」

 

「よく言うぜ。周りの視線見てみやがれよ。」

 

C級隊員だろう。

こちらを興味深そうに見ていた。

 

 

「帰りたくなって来たんだが…。」

 

そう言っているとC級とは違う、帽子を被った見覚えのある隊員がこちらに歩いてきた。

 

「よう、探したぞ、綾瀬川。」

 

何やら不敵な笑みを浮かべてこちらに近づいてきたのは、荒船隊隊長、荒船(あらふね)哲二(てつじ)だった。

 

「どうも。オレは今から帰るとこなんでお暇しますね。」

 

そう言ってオレは荒船の横を抜ける。

 

「まあ待てよ、綾瀬川。」

 

そう言って荒船はオレの襟首を掴む。

 

「…何か?」

 

「なに、取って食おうって訳じゃねえんだ。聞いた話によりゃお前…

 

 

 

…完璧万能手になったらしいな。」

 

やっぱりか。

 

そう思ってオレは3人に助け舟を求めるべく、視線を向ける。

 

 

「お、噂をすりゃ緑川と白チビやってんじゃん。見に行こうぜ。」

 

「俺も気になる。」

 

「俺も〜。」

 

 

そう言って3人はオレから遠ざかる。

 

 

 

…覚えとけよ。

 

 

 

──

 

「いつ頃なりやがったんだ?報告もなかったな…?」

 

「え…?報告必要でした?」

 

「あ?」

 

「すんません。…なったのは最近ですよ。運良く特級戦功に選ばれたのでそのポイントとあとは…三輪とやった時の9本目はイーグレットで落としたので。弧月とバイパーは元々マスタークラスにはなってたんで。」

 

「…なるほどな。まあ俺じゃお前には勝てねえのは分かってたが…いざ抜かれると来るものがあるな…。」

 

「…」

 

そう言うと、荒船は立ち上がると、帽子を取る。

 

「5本でいい。付き合えよ。」

 

「…まあ、いいですけど。」

 

──

 

「弧月10000ってお前…よくそんな綺麗に数字揃うな…。」

 

転送と同時に、荒船は呆れ半分、疑い半分でそう言った。

 

「…言っときますけど偶然ですよ。」

 

「…ハッ、どうだか。」

 

そう言うと荒船は弧月を抜く。

逆手だった。

 

「…荒船さんって理論を広めるっていう割に唯一の逆手ですよね。」

 

「逆手で俺より使いこなしてるやつが何言ってやがる。ぶった斬るぞ。」

 

その言葉にオレは目を細めて弧月を抜く。

 

 

 

「…どうぞ。

 

 

 

…やれるものなら。」

 

 

 

「っ…!?」

 

──

 

前シーズンを見てれば嫌でも分かった。

 

こいつは俺とは別格だと。

 

 

 

弧月を抜いた途端、空気が変わる。

 

太刀川さんと構えた時以上の重圧。

俺は思わず息を飲む。

 

ここまでか…。

 

落ち着いて息を整える。

 

俺の目指す場所がどれほどの距離なのか。

見定めるために荒船哲二()は、目の前の怪物に挑んだ。

 

 

──

 

ボーダー本部司令室

 

「…」

 

そこでボーダー本部総司令、城戸(きど)正宗(まさむね)は考え込む。

 

 

数日前の事だった。

唐沢と共に、司令室に入ってきたのは城戸の息子、いや、正確には息子では無いのだが、親代わりとして面倒を見ている綾瀬川清澄の実の父親。

派閥争いの際に、綾瀬川によりスポンサーを降ろされた人物…

 

 

…のはずだった。

 

 

だがあの男は戻って来た。

前回よりも倍の金額を出すという条件で。

 

 

そして有望な銃手、榎沢一華の提供。

 

 

…断る理由が無かった。

 

 

 

一連の会話を思い出し、城戸はさらに眉間に皺を寄せる。

 

 

 

 

 

「城戸、随分と清澄に情を抱いているようだから忠告してやろう。清澄を普通の人間だと思わないことだ。いくら人間に似てきたとはいえ…本質は変わらない。…怪物はどこに行こうと怪物だ。あれ(・・)は道具としては最高傑作。どの良作も遥かに凌駕する。…だが…人間としてはあまりに不出来。不良品だ。」

 

「…」

 

「榎沢一華は失敗作。清澄には遠く及ばない。」

 

「…では何故彼女をストッパー役にした?」

 

「…直に分かる。」

 

そう言って男は振り返る。

 

「覚えておけ。今は人間として貴様に従っているが…奴は諸刃の剣。肩入れしすぎると後悔するぞ。

 

 

 

 

 

 

 

…道具は人間にはなれん。」

 

 

 

 

 

──

 

ボーダー本部屋上

 

「…」

 

オレは沈み行く太陽を眺める。

 

「おや?先客ですか…?」

 

カツンとそんな音を立ててオレの後から屋上に現れた少女はわざとらしく驚きの表情をする。

 

「…後ろを着けておいて白々しいな。」

 

そう言ってオレは視線を太陽に戻した。

少女は一瞬目を見開くが、すぐに笑みを作る。

 

「まさか気付かれていたとは。」

 

「…何かご用でも?」

 

「ふふ…そう怪しまないでください。同い年ですので、敬語は結構ですよ。」

 

そう言って少女はオレの前に歩み寄る。

杖を付き、ベレー帽を被った少女は儚くも、好戦的な笑みを見せる。

 

「B級1位柿崎隊の完璧万能手…綾瀬川清澄。数ヶ月前とは似ても似つかない肩書きですが…私の中でのあなたの認識は違います。…ホワイトルームの最高傑作、綾瀬川清澄。」

 

その言葉にオレは目を見開き、少女に冷たい視線を向ける。

 

「警戒せずとも言いふらすつもりはありませんよ?私は口が堅いので。」

 

夕日に照らされた銀髪が、風に靡く。

少女はベレー帽を抑えた。

 

「…何者なんだ…?お前は。」

 

 

 

「失礼、自己紹介が遅れましたね。私は唐沢(からさわ)有栖(ありす)。心配せずとも敵対する訳でも、あなたを連れ戻しに来たわけでもありません。ただ…興味があるのです。」

 

「興味…?」

 

「白い鳥籠から放たれ、自由を手にした天才がボーダー(ここ)で何を成すつもりなのか…ですかね。」

 

「…」

 

その言葉にオレは唐沢の横を抜ける。

 

「平凡な日々を…と言ってもお前は信じなそうだ。だからまあ見守るでも邪魔をするでもすればいい。

 

 

…どうせお前には理解できないだろうからな。」

 

 

「ふふ…そうさせて頂きます。」

 

 

夕日は沈む。

 

またしてもここ、三門市に暗い夜がやって来た。




はい、という訳でオリキャラです。
100話目なんでサプライズ的な?
賛否両論あるのは百も承知です。
私が書きたいから書いただけです。
後悔もしてませんし、登場には意味があります。

…これ以上増やすつもりはないです…!
ほんとです!
どうしても書きたい欲を抑えきれなかったというか…。
本格的に話に関わってくるのはガロプラ辺りです。
遠征選抜のための布石だとでも思っていただければ大丈夫です。
誰ベースかは分かるかとw

…唐沢…?

…聞いた事ある苗字ダナー。

各キャラからの印象&各キャラへの印象

辻新之助→友人。遠慮ないから呼び捨てにした。
荒船哲二→勝てない。先越された。
城戸正宗→息子。懐刀。
綾瀬川→諸刃の剣。道具。
唐沢有栖→???

辻新之助←友人。呼び捨て嬉しい!
荒船哲二←怖い。ライバル視されても困ります。
城戸正宗←父親代わり。上司。
綾瀬川←生みの親。それだけ。
唐沢有栖←???


ROUND1終了後
1位 柿崎隊 21P
2位 二宮隊 19P
3位 影浦隊 17P
4位 生駒隊 15P
5位 王子隊 13P
6位 諏訪隊 13P
7位 東隊 12P
8位 弓場隊 11P
9位 香取隊 8P
10位 鈴鳴第一(来馬隊) 8P
11位 漆間隊 8P
12位 荒船隊 8P
13位 玉狛第二(三雲隊) 8P
14位 那須隊 7P

感想、評価等お待ちしております…!


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無機質なボーダー隊員の日常⑩

遅くなりすいません。
投稿致します。


「ししょー、あの人と隊組むってホントですか?」

 

ムッとした表情で、加古隊攻撃手、黒江(くろえ) 双葉(ふたば)はオレに尋ねた。

 

「ああ、榎沢の事か?それなら榎沢が勝手に言ってるだけだ。オレは柿崎隊を抜ける気はない。あと師匠って呼ぶな。」

 

そう言いながら双葉の頭をチョップする。

 

「ならいいですけど。…ししょーは私にとってししょーです。呼び方は変えません。」

 

何故かドヤ顔でそう言う双葉に呆れたようため息を吐く。

 

「もう好きにしてくれ…。で?今日も10本でいいのか?」

 

「はい、この後宿題やらなきゃいけないので。」

 

何かを求めるような目でこちらを見る。

 

「へいへい、見りゃいいんだろ?…加古さんはいないだろうな?」

 

いたらあのロシアンルーレット炒飯(ダークマター)を食わされるのは目に見えている。

 

「?…いないと思いますけど。防衛任務は無いので。」

 

「そうか。じゃ、まあサクッと終わらせるか。」

 

そう言ってオレはランク戦ブースに歩き出す。

 

「!、今日は簡単にはやられませんから…!」

 

 

 

 

「…無理に避けようとするなよ。弧月で受けりゃいいだろ?」

 

ランク戦は10-0でオレが勝った。

 

オレの弧月を受けるでもなく、避けようとする双葉にオレは尋ねる。

 

「…ししょーはよく避けてるじゃないですか。」

 

「オレのはサイドエフェクトありきなんだよ。」

 

「…私もししょーみたいに避けてみたいです。」

 

拗ねたようにそう言う双葉。

 

「別に力量差があるような攻撃手や、弾トリガーは避けるって選択肢もありだと思うが…A級のランク戦だとそうも行かないだろ?まずお前は韋駄天を軸に動け。韋駄天起動までの時間の間に敵を近付かせるな。まあその為に加古さんと、喜多川がいるんだろーけどな。」

 

そう言って双葉にデコピンをする。

 

「あう…。だってししょーは韋駄天のルート見切ってくるじゃないですか。」

 

「A級ランク戦でのアドバイスが欲しいんじゃないのか…?目的変わってるぞ…。」

 

「それとこれとは話が別です!ししょーに勝ちたいです!」

 

「はいはい、言ってろ。…宿題はどこが分からないんだ?」

 

「またそうやって適当にあしらう…!

 

 

…数学です…!」

 

──

 

「…何?」

 

ランク戦ブースにやってきた榎沢。

途端絡まれ、胸ぐらを掴まれたまま、壁に押し付けられる。

 

「まず…誰?」

 

「っ…ほんっとムカつく…!」

 

「…ああ、胸盛りちゃん。」

 

「香取よ!次言ったら殺すわよ?」

 

「アハハ、やってみなよ。…で?何?」

 

香取の言葉に榎沢は笑いながら返すと尋ねる。

 

「ROUND1での事…忘れたわけじゃ無いでしょうね?」

 

青筋を浮かべながら香取は榎沢に尋ねた。

 

「えー?あたし何かしたっけ?てかROUND1あんま覚えてないや。鈴鳴は戦ってないし、もう1つの隊…何隊だっけ?

 

 

…弱すぎて覚えてなーい。」

 

「っ!!」

 

香取は榎沢に平手打ちをする。

 

「…トリオン体だから痛くないけどさ。…何?どうすればいい訳?」

 

榎沢は目を細める。

 

「ランク戦よ。10本勝負、付き合いなさい。」

 

「アハハッ!

 

 

…勝てると思ってんの?雑魚が。」

 

 

自分のプライド、ましてや、香取隊を馬鹿にされて黙っている香取では無い。

汚名返上すべく、榎沢に勝負を仕掛ける。

 

 

 

 

ボーダーの榎沢一華の評価は、突如現れた、天才銃手だった。

ボーダートップクラスのトリオン量を誇り、早撃ちの腕はNo.2銃手の弓場と同等かそれ以上。

元上位部隊の香取隊を1人で壊滅させ、諏訪隊を上位である6位に導いた立役者。

前シーズン、綾瀬川清澄と言う怪物を見てきた、他のB級部隊からは、それと同等の警戒をされている。

それに加えて、大規模侵攻の際は新型トリオン兵を1人で7体撃破し、一級戦功に数えられている。

警戒するなというのが無理な話だ。

 

 

 

「じゃ、ハンデあげる。あたしシールド使わないから。」

 

ヘラヘラとそう言ってのける榎沢に、香取はまたしても機嫌を損ねる。

 

「…はぁ?舐めてる訳?」

 

「舐めてるよ?他にどう見えるの?」

 

「…殺す。」

 

香取はスコーピオンとハンドガンを取り出す。

対して榎沢はニヤニヤと笑みを見せながら、チャームポイントのツインテールを弄っている。

余裕。

明らかにこちらを舐め腐っている榎沢に香取はさらに憤慨する。

 

香取はグラスホッパーを展開し、榎沢に急接近する。

 

 

 

「だから遅いんだって。ノロマ。」

 

 

まるで香取の動きがスローだったかのように、榎沢はハンドガン2丁を香取に向けていた。

 

「はい、おしまい。」

 

「っ?!」

 

そのまま香取のトリオン体は蜂の巣にされた。

 

 

『香取ダウン、1-0、榎沢リード。』

 

 

「公開処刑になりたくなかったら今のうちに止めとけば?尻尾巻いて逃げるなら今のうちだよ?胸盛りちゃん?」

 

「次その呼び方したら殺すって言ったわよね?」

 

「フフ、だからやってみなよ。」

 

そう言って榎沢は笑う。

 

「…」

(ほんとにムカつく。先にしかけても絶対に後手になる…なら…)

 

香取はシールドを構えて駆ける。

 

「まあそう来るよねー。」

 

榎沢は予想通りだったのか、そう言うと、ハンドガンを発砲。

香取はシールドで受けながら、グラスホッパーを展開。

榎沢の懐に飛び込んだ。

 

 

(とった…!)

 

 

 

 

 

…途端、物凄い衝撃が香取の顔面を襲う。

 

 

「っ?!は…?」

 

榎沢は目を細めながら握りこぶしを作っていた。

榎沢がやった事は至極単純、近接した香取の顔を殴った。

ただそれだけだった。

 

「攻撃手の間合いなら勝てると思った?ざんねーん。格闘(ボーリョク)は大得意なんだなー。これが。」

 

そう言って榎沢はファイティングポーズを取る。

 

「スコーピオンでもグラスホッパーでも好きに使いなよ。ボコボコにしてあげる…!」

 

「っ…!」

 

香取はハンドガンを榎沢に向ける。

榎沢は斜めに避けると、香取に近接。

腹に蹴りを入れる。

 

「がっ…?!」

 

そして2発の銃声。

 

威力重視に設定されたアステロイドは、香取の両足を吹き飛ばす。

 

その場に崩れた香取の顔を蹴り飛ばすと、アサルトライフルを向ける。

 

「…まだやるー?胸盛りちゃん?」

 

「っ…この…」

 

いい切る前に香取の顔は穴だらけになり吹き飛ばされた。

 

 

『香取ダウン、2-0、榎沢リード。』

 

 

 

 

 

3本目。

香取はバッグワームを羽織、榎沢から距離をとった。

 

「あれれ?ほんとに逃げちゃったー?」

 

榎沢は笑いながら尋ねる。

 

 

 

(ムカつく…。)

 

悔しいが正面からでは勝てない。

香取は茂みの中を移動しながら、ハンドガンを構える。

 

 

──刹那、榎沢と目が合う。

 

 

「…まあ場所分かってんだけどね。」

 

こちらに向けて放たれたグレネードガン。

 

「…は?」

 

メテオラが香取に襲いかかった。

 

 

「くそ…!なんで…」

 

失った右足を引き摺り、香取は悪態を吐く。

 

「うーん…勘。」

 

「!」

 

 

グラスホッパーで距離はとった。

バッグワームを着けている為、見つかることは無い…はずだった。

 

 

しかし香取の足は撃ち抜かれ、その場に崩れる。

 

「なん…でよ…!」

 

「あたしのサイドエフェクトでーす。」

 

「っ…何よ…それ。ずるじゃない。」

 

「?…なんで?」

 

榎沢はキョトンとして尋ねる。

 

「だってそうでしょ?生まれつき持った才能で勝つなんて…フェアじゃない。卑怯よ。」

 

「…」

 

その言葉に榎沢は笑顔を消す。

 

 

「アハハハハッ!!」

 

そして高らかに笑う。

 

「何がおかしいのよ…!」

 

そう言って香取はスコーピオンを突き出す。

榎沢はひらりと避けると、両腕を撃ち落とす。

 

「フェアじゃないって?当たり前じゃん。

 

 

 

…あたしとあなたがあなたの言う平等(フェア)だとでも思ってたのー?馬鹿みたい。

 

 

…お前があたしと同じなわけないじゃん。

 

…あたしは天才になるべくして(・・・・・・・・・)生まれたんだから。」

 

そう言って榎沢は香取の髪の毛を掴み、持ち上げる。

 

「っ…離せ…!」

 

「離しませーん。」

 

「っ…あんた…絶対普通じゃない…!」

 

榎沢は何も言わずに香取の顔を殴る。

 

「っ…!」

 

「痛くないでしょ?トリオン体なんだから。…でもさ…

 

 

 

…生身だったらもっと面白かったよねー。

 

 

 

…終わったら試してみよっか。」

 

 

 

「っ…?!」

 

 

 

香取の顔は明らかな怯えに変わる。

 

「不思議?さっきまであんなに下に見てたあたしに怯えるなんて。

 

 

…でもね、その感性は大切にした方がいいと思うよ胸盛りちゃん。」

 

そう言って榎沢は香取の額にハンドガンを押し付ける。

 

 

 

 

 

「…で?

 

 

 

 

 

 

 

 

…まだやる?」

 


 

BBF風

 

柿崎隊

 

万能手(オールラウンダー)2人、攻撃手(アタッカー)1人、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)1人の遠・中・近のバランス良く構成された部隊。

万能手(オールラウンダー)2人の援護の下、ダブルエースが点を取るスタイルで中位からB級トップまで駆け上がってきた。

オペレーターの宇井による、徹底的な射線管理と柿崎のエスクードにより、ボーダーでもトップクラスの守備力を誇る。

 

MEMBER

 

隊長

AR 柿崎(かきざき) 国治(くにはる)

 

AT 照屋(てるや) 文香(ふみか)

 

AR (ともえ) 虎太郎(こたろう)

 

AR 綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)

 

OP 宇井(うい) 真登華(まどか)

 

 

PARAMETERS

遠 4

中 7

近 9

 

攻撃手の照屋を始め、ボーダートップクラスの弧月使い、綾瀬川がいるため、近距離戦闘はB級トップクラスの数値。

中距離戦闘は柿崎の射撃、綾瀬川の旋空、弾トリガーが、遠距離もイーグレットの個人ポイントがマスタークラスである綾瀬川がカバーしており、無駄のない数値になっている。

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

綾瀬川清澄
黒江双葉→ししょー。憧れ。

黒江双葉←弟子(でいいやもう)。


榎沢一華
香取葉子→ムカつく。普通じゃない。恐怖。

香取葉子←胸盛りちゃん。興味無い。

感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑪

投稿致します。

アンケート締め切ります。

色々考えた結果、今シーズンは上位と中位分けますね。
大きな理由としてはまあ戦力差ですかね。
二宮隊と中位が当たってもいじめになるかと。
そう言ったコメントを頂き、色々考えた結果分けることに致しました。
混合に投票してくださった方が多かっただけに申し訳ないですm(_ _)m

でもどっちでもいいが1番多かったし…好きに書いていいよネ?


「噂のルーキー、今日はいないのか?」

 

ボーダー玉狛支部

 

そこに出向いたオレは玉狛第一の攻撃手、小南(こなみ) 桐絵(きりえ)に尋ねた。

 

「遊真なら修と千佳と一緒に出掛けたわよ。」

 

そう言って小南はキッチンに歩く。

 

「…まあランク戦の時期だし丁度いいか。」

 

そう言ってオレは小南の後に続いた。

 

「…綾瀬川か。」

 

「…どうも。」

 

キッチンから顔を出して話しかけてきたのは、玉狛第一の隊長、木崎(きざき) レイジ。

 

「…今日の昼当番は木崎さんですか?」

 

「…安心しろ。小南に譲った。」

 

濡れた手を拭きながら木崎はそう言った。

 

「聞いたぞ。完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)になったらしいな。」

 

「まあ、一応。なるつもりはなかったですけどね。気付いたらポイントが8000超えてたってってだけですよ。」

 

「そうか。…今シーズンは真面目にやるつもりなのか?」

 

「…オレはいつだって真面目ですよ。」

 

「何ふざけた事言ってんのよ。」

 

そう言って小南はヘッドロックを仕掛けてくる。

 

「ほら、早くランク戦やるわよ。」

 

「へいへい。」

 

そう言って歩き出した小南の後に続いた。

 

──

 

「本気でやんなさいよ。手、抜いたら許さないから。」

 

小南は綾瀬川に双月を向ける。

 

「…へいへい。」

 

そう言って綾瀬川も弧月を抜く。

 

 

 

いつものように抑揚の無い声。

無機質な瞳で小南を見据える。

 

「…」

 

まずは様子見か。

 

そう思って、小南は片手でトリオンキューブを生成する。

 

「メテオラ…!」

 

それに合わせて綾瀬川はシールドを張る。

 

爆風が綾瀬川を包み込み、小南はそれを割くように双月を振るった。

 

 

…しかし、手応えは無い。

 

 

綾瀬川は後ろに仰け反り、躱していた。

そのまま、綾瀬川は足を大きく振り、小南の腕を蹴飛ばす。

 

「っ…?!」

 

崩れた小南に、弧月を振る。

 

 

間一髪で避けると、小南の茶髪が数本散る。

綾瀬川の連撃はまだ止まない。

 

サブトリガーでスコーピオンを取り出すと、連撃を繰り出す。

小南は後退りながらそれを双月で受ける。

 

「っ…!…あ…」

 

弧月、スコーピオンを振りながら迫る綾瀬川に、小南は足が縺れ、バランスを崩す。

 

双月は2本とも上に弾かれた。

 

「…っと…。」

 

綾瀬川はそんな小南を倒れないように、腰を支える。

 

「っ…!!」

 

そして喉元にスコーピオンの切っ先を近付けた。

 

弾かれた双月が小南の後ろの地面に突き刺さる。

 

「べ、別に小手調べよ…!まだ本気じゃないから…!」

 

「そうか。なら真面目にやった方がいい。」

 

そう言って、小南を倒れないように抱き寄せると、首元をスコーピオンで切り裂いた。

 

 

『小南ダウン。1-0、綾瀬川リード。』

 

 

 

「…」

 

戻ってきた小南はじっくりと綾瀬川を観察する。

 

「…本気でやれって言ったのはお前だろ?」

 

「よく言うわよ。まだ隠してるくせに。」

 

「手を抜いているつもりは無い。」

 

「本気なんて…出すまでもないって訳…?」

 

「そんな事言ってないんだが…まあ、そういう意味にもなるか…。」

 

そう言って綾瀬川は目を伏せながら、ハンドガンを取り出す。

 

…そしてゆっくりと目を開き、小南にその無機質に輝く瞳を向ける。

 

 

 

「…出させてみろよ。」

 

 

 

 

 

 

「っ…上等じゃない…!」

 

小南は息を飲み、笑みを見せると、そう吠えた。

 

──

 

「…やっぱ強いッスね、綾瀬川先輩。」

 

モニターを見ていた木崎に話しかけたのは玉狛第一の万能手、烏丸(からすま) 京介(きょうすけ)

 

モニターにはトリオン体を切り裂かれた小南が映っている。

 

「…そうだな。」

 

「修達…勝てますかね。」

 

「…」

 

木崎は黙ったまま目を伏せる。

 

木崎と烏丸はブラックトリガー捕獲作戦の際の綾瀬川との戦闘を思い出す。

 

「やりようはあるだろう。相手は綾瀬川ではなく、柿崎隊だ。それに…今は目の前の相手が優先だ。」

 

「…そうスね。」

 

──

 

「もう1回よ!まだ本気じゃないから!本気出せばよゆーだから!!」

 

綾瀬川の肩をポカポカと叩きながら、涙目の小南が戻ってくる。

 

「コネクター使ってないし…!」

 

「オレも旋空とバイパーは使ってないな。」

 

「はぁ?!た、確かに!!むぎぃ…!!手、抜くなって言ってるでしょ?!」

 

そう言って小南は綾瀬川に掴みかかる。

 

「じゃあコネクター使えよ…。」

 

「まあまあ、こなみ。」

 

そう言って小南を抑えるのは、玉狛支部のオペレーター、宇佐美(うさみ) (しおり)

 

「今日もカレー作るんでしょ?」

 

「!」

 

その言葉に綾瀬川は心無しか目を輝かせる。

 

「ほら、綾瀬川くん待ちきれなそうだよ?」

 

「し、仕方ないわね…!」

 

そう言いながら小南は髪を後ろで纏めると、エプロンを付け、キッチンに歩き出した。

 

 

 

「いやー、やっぱ強いねー。レイジさん達がやられるのも頷けちゃうなー。」

 

そう言って宇佐美は綾瀬川の前にお茶を置く。

 

「…見てたのか。」

 

「ううん。後で聞いた。」

 

「宇佐美がいたら結果は変わってた。」

 

そう言って綾瀬川はお茶に口を付ける。

 

「いやー、どうかなー。」

 

「…大規模侵攻の時は助かった。」

 

大規模侵攻の際、敵の『星の杖』を解析して、綾瀬川に終始情報を送っていたのは宇佐美だった。

 

「どーいたしまして。綾瀬川くんの動きについて行くのが精一杯だったけどねー。」

 

そう言って宇佐美は笑う。

 

「私今、玉狛第二のオペもやってるから。ランク戦で当たったらお手柔らかに。」

 

「そうか。それは手強そうだな。

 

 

…何か用か?」

 

綾瀬川はキッチンからこちらに視線を向ける小南に尋ねた。

 

「べ、別に何も無いわよ…!」

 

「?」

 

「こなみは分かりやすいなー。…とりまるくん、カレー出来るまで時間あるし、綾瀬川くんと模擬戦してみたら?」

 

宇佐美はそう言って立ち上がり、烏丸に声を掛ける。

 

「…お願いできますか?」

 

「まぁ、お邪魔してるしな。」

 

──

 

「なぁ、玉狛って確かオリジナルのトリガーを入れてるんだよな?」

 

綾瀬川は烏丸の弧月受けながら尋ねる。

 

「?、はい。」

 

「烏丸も入れてるのか?」

 

「一応入ってますね。」

 

「…あの時は使わなかったんだな。」

 

弧月を弾き、距離をとると、烏丸に尋ねた。

 

「ガイストは最終手段なんで。…あの時は時間稼ぎが目的でしたから。」

 

そう言って烏丸は体勢を立て直すと、弧月を深く構える。

 

「…そうか。

 

 

…見てみたいな。」

 

「っ?!」

 

明らかに空気の変わった綾瀬川に烏丸は身構える。

 

 

 

 

 

「…引きずり出してやる。」

 

 

 

そして、弧月とハンドガンを構える怪物に駆け出した。

 

 

──

 

「…いただきます。」

 

そう言って手を合わせ、綾瀬川はカレーを口に運ぶ。

 

「美味い…。」

 

「あ、当たり前じゃない…!」

 

そう言って小南はそっぽを向く。

 

「ほんと好きだよねー、綾瀬川くん。」

 

「…小南のが1番美味いからな。」

 

「なっ…?!…あ、あ、あ…当たり前じゃない…。」

 

小南はそう言ってカレーを掻き込む。

 

「?…そう言えば噂のルーキーはどこに出掛けてるんだ?本部か?」

 

「お、やっぱり気になるー?」

 

「そりゃまあ。駿も気に入ってるみたいだし気になる。」

 

「修達は次のランク戦に向けて対策を練ってますよ。…その息抜きに自転車で出掛けました。」

 

「そうか。確か荒船隊と香取隊だったか。」

 

「そうそう。マップの選択権もうちにあるからねー。修くん色々考えてるみたい。…そう言う綾瀬川くんは次の相手大丈夫なの?」

 

「うちは生駒隊、王子隊、東隊だな。どこも攻撃手が主力だから小南に声掛けたんだよ。」

 

「…旋空、バイパー無しの縛りも何か考えがあるのかなー?」

 

宇佐美は勘ぐるように尋ねた。

 

「まあ初めての試みはしようと思ってる。

 

 

 

…どうせバレるからな。」

 

そう言って綾瀬川はカレーの最後の一口を頬張った。

 

 

 

 

「…おかわり、いいか…?」

 

 

「!…し、仕方ないわね…!!」

 

 

──

 

「じゃあ、ひらめいたんだな、オサム。」

 

そう言って空閑は修に尋ねる。

 

「ああ。上手くいくかは千佳と空閑にかかってる。宇佐美先輩に頼んで連携の見直しだ。」

 

「うん。」

 

「ああ。」

 

サイクリングのおかげで、ようやく良い作戦を思いついた。

ランク戦までは日がない。

修達、玉狛第二の3人は、支部へと急ぐ。

 

「…あれ?あの人は確か…。」

 

修は玉狛支部の玄関口で小南、宇佐美、烏丸と話している男性に目を向けた。

 

 

 

 

「…え?いいのか?でも後輩達の分残しといた方がいいんじゃないか?」

 

「いいのいいの、また作るし。ね?小南。」

 

「そーよ。あんた一人暮らしでしょ?カレーは寝かせた方が美味しいのよ。」

 

そう言って小南は綾瀬川にカレーの入ったタッパーを押し付ける。

 

「じゃあ遠慮なく。…今日は邪魔して悪かったな。ランク戦の時期に。」

 

「いえいえ、いい映像が取れましたからな。」

 

そう言って宇佐美は眼鏡を抑える。

 

「…なるほど、まあ楽しみにしとくよ。」

 

「…当たり前よ!うちの遊真にかかればイチコロなんだから!」

 

「へいへい。烏丸も、今日はいい経験が出来た。」

 

「…ども。」

 

「?」

 

そう言って拗ねたように目を逸らした烏丸に、宇佐美は苦笑い、小南は疑問符を浮かべた。

 

 

 

「あ、修くん達帰ってきたよ。」

 

話していると自転車を漕いで戻ってくる修達が見える。

 

「…じゃ、オレはこれで。」

 

「あ、うん。またね。」

 

「次はボコボコにしてやるんだから、早く来なさいよ!」

 

「気が向いたらな。」

 

 

そう言って綾瀬川は歩き出し、自転車を押す3人の横を抜ける。

 

 

 

 

「おかえりー、3人とも。」

 

「あ、はい。…今のって、綾瀬川先輩ですよね?」

 

修は宇佐美に尋ねる。

 

「あれ?知り合いだったの?」

 

「あ、いや、前に少し。」

 

「なんだ、挨拶して帰れば良かったのに…。」

 

「まあランク戦の時期だし、仕方ないんじゃないスか?」

 

宇佐美の言葉に烏丸はそう返した。

 

「む?あやせがわせんぱい、おれたちと戦うの?」

 

空閑が烏丸に尋ねる。

 

「勝ち進めばな。

 

 

 

…B級1位柿崎隊、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)綾瀬川(あやせがわ) 清澄(きよすみ)。遠征を目指すなら間違いなく、お前達の1番の敵になる。」

 

「「「!」」」

 

 

 

 

修は振り返り、小さくなった綾瀬川の背中を見て、息を飲んだ。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

小南桐絵→友人。ムカつく。…バカ。
木崎レイジ→強い。自分以上の完璧万能手。
烏丸京介→強い。…次は負けません。
宇佐美栞→つよい。眼鏡…かけよーよ…!

小南桐絵←友人。カレー美味い。斧。何怒ってるの?
木崎レイジ←筋肉。
烏丸京介←ガイスト良いなぁ。モサモサ。良い奴。
宇佐美栞←優秀なオペレーター。


トリガーセット
メイン:弧月、旋空、free、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、スコーピオン、バイパー、シールド

感想、評価等お待ちしております。


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ROUND2に向けて

とーこーします。


「おい、榎沢オメー、香取と揉めたらしいな。」

 

「香取…?ああ、胸盛りちゃん。揉めたって…あっちが一方的に絡んできたから返り討ちにしただけなんだけど。」

 

諏訪の質問に、榎沢はキーボードを叩きながら気だるげに返した。

珍しく眼鏡を掛けている。

 

「そーかよ。…それよか次の相手はあの二宮隊と影浦隊だぞ。大丈夫なんだろーな?」

 

「…ボサボサの人はよゆー。」

 

「二宮は?」

 

「…1対1なら勝てる。」

 

そう言って視線をモニターに戻した。

 

「何か案があんのか?俺らは何すりゃいい?」

 

「…んー、邪魔しなきゃなんでもいいよ。

 

 

…そこまで期待してないし。」

 

冷えきった声でそう言うと、榎沢は立ち上がる。

 

「お前な…もっと真面目に…どこ行くんだ?」

 

「諏訪さん来たから帰る。」

 

「オイオイ、そう言う訳にはいかねーだろ?相手は元A級だぞ?分かって…オイ!」

 

榎沢は無視して作戦室を後にした。

 

「…ヤロォ…。」

 

「榎沢、大丈夫ですかね?」

 

作戦室に入って来た笹森が諏訪に尋ねる。

 

「最近はロクに学校にも来てませんよ。」

 

「…」

 

諏訪はただ榎沢が出ていった作戦室の入口に視線を向ける。

 

「…ま、俺らは俺らでやれることをやるぞ。もう日もねえからな。」

 

「…はい。」

 

 

──

 

「…榎沢一華さん…ですね?」

 

「…誰?」

 

帰り道。

榎沢は話しかけられ、足を止める。

 

「ホワイトルームの5期生にして、天才同士の遺伝子で作られた試験管ベビー。…にも関わらず…

 

 

 

…失敗作。」

 

 

 

 

「…は?」

 

 

 

声を低くして、榎沢は目の前の女性に冷たい視線を向ける。

 

「お前誰?」

 

「申し遅れました。私は唐沢有栖と申します。通信室の方でオペレーターをやっております。以後、お見知り置きを。」

 

「ふーん。で?その通信室のオペレーター様があたしに何の用な訳?…てか、なんで知ってんの?あそこの関係者?言っとくけどあたしはあたしのやり方で「いえ。」」

 

有栖は笑みを見せながら榎沢の言葉を遮る。

 

「私はホワイトルームとはなんの関係もありません。上層部に私の義父がおりまして…その繋がりで知ったのがホワイトルームの最高傑作、綾瀬川くんな訳です。平たく言えば…私は彼のファンです。」

 

その言葉に榎沢は目を細める。

 

「…ふーん、じゃあ邪魔しに来たんだ。」

 

榎沢はファイティングポーズを取る。

 

「その割には弱そうだね。」

 

そう言って榎沢は有栖の足に視線を向ける。

 

「ふふ、榎沢さんの言う通り私に榎沢さんと戦う力はありません。見ての通り足に疾患がありますので。それに…邪魔をする気はありませんよ?私はただの傍観者。戦いの行く末を見守るだけです。ただ(ヒール)にも挨拶をと思いまして。」

 

「…挨拶…ね。はいはい、よろしく。」

 

そう言って榎沢は有栖の横を抜ける。

 

「…本当に勝てるとお思いですか?

 

…失敗作が最高傑作に。」

 

その言葉に榎沢は足を止める。

 

「…1つ聞きたいんだけど〜。あたし体が不自由な相手でも遠慮しないでぶん殴れる子だけど大丈夫?」

 

「確かに、それをされては私に打つ手はありませんね。

 

…ここは本部基地の近く。監視の目はいくらでもあります。」

 

「…」

 

「結果は明白ですが…楽しみにしていますよ?榎沢一華さん。」

 

カツンと、杖の音を響かせ、唐沢有栖は基地の中に姿を消した。

 

有栖の姿が見えなくなった後、榎沢は壁に拳を打つ。

 

 

 

「…うっざ。」

 

 

──

 

「有栖?…ああ、我慢できなかったのか。君に挨拶をしたみたいだね。」

 

本部基地の屋上で、唐沢克己は煙草の煙を吐く。

 

「失礼、今消すよ。」

 

「いえ、後から来たのはオレなんで。」

 

屋上に現れた少年、綾瀬川はそう言って唐沢の隣に座る。

 

「君の…若人の肺を汚す訳には行かないよ。」

 

そう言って唐沢は携帯灰皿に煙草を押し付けた。

 

「それで?私になんの用かな?」

 

「唐沢有栖について。彼女は何者なんだ?」

 

「私の養子だよ。血の繋がりは…あるがかなりの遠縁だ。第一次侵攻の後ボーダーに興味を持ってね。通信室でオペレーターをやっている。肩書きで言えばボーダー本部総司令補佐兼通信室長だ。先の大規模侵攻で通信室の責任者が重症を負ってね。その後釜が有栖という訳だ。」

 

その言葉に綾瀬川は目を見開く。

 

「17歳で通信室の責任者…凄いだろう?彼女は天才なんだ。

 

…まあ君には劣るかもしれないが。」

 

「何故彼女はオレの事を知っている?あの男の入れ知恵か?」

 

「…まあそれも少しあるけど…君の父さんと私はボーダー発足前から知り合いでね。ホワイトルームには足を運んだことがある。有栖を連れてね。その時に君を見たんだ。」

 

「…彼女の目的は?」

 

綾瀬川は目を細める。

 

「言ってなかったかい?傍観だよ。彼女は君のファンなんだ。仲良くしてやってくれ。」

 

そう言って唐沢は笑う。

 

「ああ、そうだ。君に1つ忠告だ。まあ城戸司令から聞いてるかもしれないが……君の父さんは今ボーダーにいる。」

 

「!」

 

「おいおい、そう睨むなよ。城戸司令も話してないのか。あれだけ優秀な銃手を提供されては、私が城戸司令でも断らない。」

 

「…榎沢か。」

 

「そこまで気にする事でもないと思うよ。君を取り戻せないと分かって戻って来たんだ。」

 

「あの男がそこまでボーダーにこだわる理由はなんだ?」

 

「さあ?それは綾瀬川先生にしか分からない。」

 

そう言って唐沢は立ち上がる。

 

「ROUND2楽しみにしているよ。有栖程ではないが…私も君のファンなんだ。」

 

そう言って唐沢は屋上を後にした。

 

 

「…」

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「よし、虎太郎もだいぶ慣れてきたな。行けそうか?」

 

「何とか。ランク戦で使うのは初めてなんで緊張しますけど…。」

 

そう言って虎太郎は笑う。

 

「ミスってもいい。そのために俺と文香がいるんだ。まあもっと大変なのは…」

 

そう言って柿崎はオレと真登華に視線を向けた。

 

「まぁ、オレも初めてなんで。」

 

「私の負担が1番なんですけど〜?」

 

そう言って真登華はジト目でオレを見る。

 

「へいへい、上手くやれたらなんか奢る。」

 

「ちょ、私チョロい奴だと思ってません?…約束ですよー?」

 

その様子を見て文香と柿崎は苦笑いを浮かべた。

 

「本番は明日だ。生駒と王子、東さんの度肝をぶち抜いてやろうぜ。」

 

「「「「了解。」」」」

 

 

 

ランク戦を翌日に控えた帰り道。

真登華との帰宅中にオレは足を止める。

 

「清澄先輩?」

 

「悪い、真登華。」

 

そう言ってオレは視界の端に見える人物に目を向ける。

 

「あ、OK。また明日ね清澄先輩。明日最初の試合なんだから遅刻したらダメだよー?」

 

「分かってるよ。…またな。」

 

「うん。」

 

そう言って真登華は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

「…邪魔して悪かったな。」

 

「別に問題ない。目のくま…良くなったか?三輪。」

 

帰り道、オレは三輪にそう声をかける。

 

「ふん。…今シーズンは真面目にやる気なんだな。」

 

「何を言ってるオレはいつでも…すいません。」

 

ギロリと睨まれオレは口を閉じる。

 

「真面目にもなるさ。…オレにも目的が出来た。

 

 

…負けは無い。」

 

そう言って目を細める。

 

「そうか。」

 

そう言って三輪はオレがいつも飲んでいるお茶をオレに押し付ける。

 

「やる。…頑張れよ。」

 

 

「…ああ。

 

 

 

…悪い。」

 

 

 

 

最後の謝罪は三輪に届くことは無かった。

 

 

──

 

『皆さんこんにちは!B級ランク戦ROUND2、上位昼の部!実況を務めます、A級5位、嵐山隊オペレーターの綾辻(あやつじ) (はるか)です!解決席にはA級3位、風間隊の歌川隊員とA級7位、三輪隊の奈良坂隊員をお招きしています!』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『さて、今回は柿崎隊、生駒隊、王子隊、東隊の四つ巴対決になりますが…解説の御二方に見どころを聞いてもよろしいでしょうか?』

 

『そうですね。俺個人としては綾瀬川先輩の戦術が気になります。尊敬する万能手ですので。どんな手を使ってくるのか、楽しみですね。』

 

『なるほど…奈良坂くんはどうでしょう?』

 

『そうだな。柿崎隊、東さん、王子先輩の戦術には毎度驚かされる。それが気になるのと、生駒隊がそれにどう対応するか…だな。綾瀬川と生駒さんの旋空対決も見れるかもしれない。』

 

『ありがとうございます。さて、マップの選択権は東隊にあります。果たしてどのマップを選ぶでしょうか…。』

 

──

 

生駒隊作戦室

 

「きよぽん、ぶった斬るで。」

 

開口一番。

生駒隊隊長、生駒(いこま) 達人(たつひと)はそう言った。

 

「明確に狙いつけるなんて珍しいッスね。なんか作戦があるんです?」

 

そう尋ねるのは生駒隊射手、水上(みずかみ) 敏志(さとし)

 

「前シーズン負けたんや。そろそろリベンジせなあかんやろ!

 

 

…ってのと、この前嵐山とカゲんちに行った時に見たんや…。」

 

「…何をです?」

 

「きよぽんが榎沢ちゃんとお好み焼きデートしてるのを…!」

 

「「「「…」」」」

 

「そんで後を付けたんやけど…」

 

生駒は続ける。

 

「後付けたって…ストーカーですやん。」

 

そう言うのは生駒隊狙撃手、隠岐(おき) 孝二(こうじ)だ。

 

「1人で後付けてるイコさん怖いっスね!」

 

屈託のない笑みでそう言うのは生駒隊攻撃手、南沢(みなみさわ) (かい)

 

「ひ、1人やないで!嵐山も一緒やったし!」

 

「オォイ!ボーダーのアイドルに何させてんねん!!」

 

水上がツッコミを入れる。

 

「でも特に何もなかったわ。…でもきよぽん最近女の子と仲良すぎやない?」

 

「そうですね。この前も小南ちゃんのカレー食べに行くゆーてましたわ。」

 

「オペの宇井ちゃんとよく一緒に帰ってるみたいですね。」

 

「あ、黒江チャンを弟子に取ったみたいッスよ!」

 

 

 

 

 

「…よっしゃー!!ぶった斬るでー!!」

 

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

「アホらし…。」

 

生駒隊オペレーター、細井(ほそい) 真織(まおり)は呆れたようにため息をついた。

 

 

 

──

 

東隊作戦室

 

「なるほど、マップは「市街地A」か。その理由は?」

 

そう尋ねるのは東隊隊長にして、ボーダーきっての指揮官、(あずま) 春秋(はるあき)

 

「柿崎隊の新フォーメーションです。BやDにしちゃうと射線がかなり絞られます。それこそ柿崎隊の思うつぼです。Aなら多少マシかと。」

 

「Cだとあからさますぎるので対策されてると思ったんで。」

 

東隊の2人の攻撃手、奥寺(おくでら) 常幸(つねゆき)小荒井(こあらい) (のぼる)はそう説明する。

 

「わかった。それで行こう。生駒隊は臨機応変に行くとして…王子隊はどうする?」

 

「俺とコアラが合流して、東さんが高台を取るまではしかけません。」

 

「…まあそれでいいだろう。柿崎隊…特に綾瀬川は手が読めない。臨機応変な対応が特に求められる。期待してるぞ。」

 

「「はいっ!」」

 

 

──

 

王子隊作戦室

 

「うーん…お手上げだ。考えても仕方ないね。」

 

王子隊隊長、王子(おうじ) 一彰(かずあき)はそう言って息をつく。

 

「うちらしくないけど利根川はアドリブで対応するしかないよ。」

 

「そうだな。」

 

「ですね。」

 

王子隊射手、蔵内(くらうち) 和紀(かずき)と王子隊攻撃手、樫尾(かしお) 由多嘉(ゆたか)は頷く。

 

「柿崎隊ばっか警戒してられないしね。…上手くやろう。」

 

「「了解。」」

 

──

 

『さて、東隊によりマップは「市街地A」に決定されました。どう言った狙いがあると思われますか?』

 

綾辻が尋ねる。

 

『柿崎隊対策…だろう。BやDは射線が絞られる。Cはあからさますぎるし、隠岐の手助けになってしまうからな。…三輪でもAを選ぶだろう。』

 

『なるほど。ありがとうございます。』

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「Aか。予想通りだな、清澄。」

 

柿崎はそう言って笑みを見せる。

 

「オレが東さんでもAにしますよ…。まあここで1番練習してたんで丁度良いですね。…頼むぞ、虎太郎、真登華。」

 

「はい!」

 

「りょーかい。」

 

「俺と文香はいつも通りやる。ヤバくなったら行くから気負い過ぎるなよ?虎太郎。」

 

「了解です。」

 

「じゃ…いっちょ見せ付けるか!」

 

 

 

柿崎隊トリガーセット

 

柿崎国治

メイン:レイガスト、スラスター、シールド、free

サブ:アステロイド(アサルトライフル)、メテオラ(アサルトライフル)、バッグワーム、エスクード

 

 

 

照屋文香

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド

サブ:スコーピオン、メテオラ(ハンドガン)、バッグワーム、シールド

 

 

 

巴虎太郎

メイン:アステロイド(ハンドガン)、弧月、グラスホッパー、シールド

サブ:ライトニング、ダミービーコン(試作)、バッグワーム、シールド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾瀬川清澄

メイン:スイッチボックス、弧月、シールド、free

サブ:バッグワームタグ

 

 

 

 

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

榎沢一華
諏訪隊→チームメイト。協調性ぇ…
唐沢有栖→失敗作。

諏訪隊←利用。
唐沢有栖←うっざ。


綾瀬川清澄
唐沢有栖→ファン。
唐沢克己→興味。
三輪秀次→友人。協力者。頑張れよ。
生駒隊→しゃー!!ぶった斬るで!!

唐沢有栖←警戒。
唐沢克己←敵にしたらヤバそう。
三輪秀次←友人、協力者(建前)。
生駒隊←面白い。



さて、何も考えずに綾瀬川のトラッパーデビューを書いてしまった訳ですが、如何せん分からない事が多いので、作者の見解で書きます。

バッグワームタグ→4枠使う代わりに消費トリオンがかなり少なくなる。冬島さんが首から下げてるやつ…?
スイッチボックス→攻撃用からショートワープまで。オペレーターも起動可。レーダーには映る…かなぁ?(冬島さんと言うか木虎の「罠があると思わせとくだけでどうたらこうたら」みたいなセリフから。)

てかほんとに考察なんで皆さんの意見を聞きたいんですけど、バッグワームタグってタグって言うくらいだからトラップを隠すためにあるんじゃ無かろうか。タグ付けみたいな?
隠したいトラップをレーダーに映らなくさせるみたいな?じゃないと消費トリオン減らすってだけで4枠分じゃ割に合わなすぎる気がしません?

書きたいので突っ走って書きます!
違かったら修正すりゃいいだけだ!!w

温かい目で見ていただけると幸いです。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND2 柿崎隊VS生駒隊VS王子隊VS東隊①

投稿遅くなりすいません。
有給を使って九州の方に旅行に行っておりました。
戻ってきたら寒さに驚きですねw
ワートリ10周年ですね!
この場を借りておめでとうございますと言わせて頂きます。

※ネタバレ注意(前回の話読んでない方)



綾瀬川のトラッパー起用についてですが、如何せん分からないことだらけなので、作者の考察で、その仕様を少し説明しときますね。

・トラップは自分で仕掛ける。(じゃないと冬島さんの射程4はおかしいですもんね。マップ上どこにでも仕掛けられるなら射程20くらいはありそう。)
・トラップは攻撃用とショートワープ等ありますが、さらに大きく分けると2つで、1つはトラッパーかオペレーターが自ら起動するものと、踏んだら自動で起動するものの2つ。前者は任意のタイミングで、起動したいトラップを発動できるが、スイッチボックスを開いておかないと起動出来ない。(カメレオンとの併用が出来ない。)
後者は、発動するトラップ、タイミングは踏んだ時に限られるが、スイッチボックスを閉じていても発動する。(スパイダーとかエスクードタイプ。)

みたいな感じですかね。
補足があればまた書きます。
最初にも言った通り分からないことだらけなので、温かい目で見ていただけると幸いです。また、ご意見、アドバイス等ありましたら教えていただけると助かります。


『転送開始!

 

…転送完了…!MAP「市街地A」、B級ランク戦ROUND2上位昼の部、スタートです!』

 

綾辻の合図でROUND2が幕を開ける。

 

『さて、まずは生駒隊、隠岐隊員と東隊、東隊長、そして柿崎隊の綾瀬川隊員と巴隊員がレーダー上から姿を消しました。…そして、これは…?!』

 

マップ中央。

次々とトリオン反応がレーダーに映り始める。

 

──

 

『ちょ、水上、俺の下んとこトリオン反応えぐない?誰か増えてへん?』

 

生駒は混乱したように、水上に通信を入れる。

 

『いや、ダミービーコンでしょ。』

 

『でも、誰の反応も映ってへんで。』

 

水上、生駒の言葉に細井が反応する。

 

『は?どないなっとんねん。』

 

──

 

『これは…東さん。』

 

小荒井は東に通信を入れる。

 

『トラップ…か。こんな手を使ってくるっていったらあいつしかいないだろ。』

 

『でもなんでまた…!』

 

東隊オペレーター、人見(ひとみ) 摩子(まこ)は忙しそうにキーボードを叩いた。

 

 

──

 

『これは…トラップか?王子。』

 

『消えてるのは東さん、オッキーは確定としてもう2人。おっくんとコアラ…とは考えにくいかな。トラップを2人のうちどっちかが使うとは思えないし。生駒隊もありえないよ。…となってくると消去法でこれは…。』

 

『綾瀬川…か。』

 

『早矢さん…大丈夫?』

 

『大丈夫…では無いわね。…ほんっとオペレーター泣かせなんだから…!』

 

王子隊オペレーター、橘高(きったか) 早矢(はや)はそう嘆いた。

 

──

 

『これは…綾瀬川隊員が着けたのはバッグワームタグ!』

 

特殊工作兵(トラッパー)…ですね。この動きは。』

 

『特殊工作兵!綾瀬川隊員がマップ中央から次々にトラップを広げていきます!予測不能なこの展開に他の隊はどう対応するでしょうか!』

 

 

──

 

「おいおい、まじかよ。」

 

観戦席。

そう言って冷や汗を浮かべたのは、冬島隊狙撃手、当真(とうま) (いさみ)

冬島隊は隊長が特殊工作兵の隊。

当真も予想外の特殊工作兵に、驚きの声をあげる。

 

「…機動力で言えば冬島隊長以上だね。トラップの設置スピードが桁違い。」

 

当真の隣でそう分析するのは、冬島隊オペレーター、真木(まき) 理佐(りさ)

 

「…綾瀬川清澄…ね。明らかに万能手としての範疇を超えてる。…面白いね。」

 

──

 

『みんな、2人バッグワーム着けたよ。隠岐先輩と東さんかな。それ以外にあんまりマップに動きはないから…みんな合流を目指してるみたい。』

 

『そりゃ、清澄がこんなことしてたら慎重になるだろ。』

 

『なってくれなきゃ困りますけどね。』

 

トラップを仕掛けながら、オレは柿崎にそう答えた。

 

『真登華、射線。もしもの時の逃走ルートもあると助かるな。』

 

『りょーかい。』

 

 

開始からそろそろ5分くらいか。

生駒隊はともかく、王子隊、東さんは何か動きがありそうな頃だな…。

 

『清澄先輩、真登華先輩、北に生駒さんを発見しました。』

 

虎太郎からの通信がオレに入った。

 

『了解。生駒さんの場所が分かったのはデカイな。真登華、タグ付けしといてくれ。』

 

『はいはい。』

 

『文香は俺と合流だな。虎太郎と清澄は見つからないようにな。』

 

真登華の通信を聞いて、柿崎の通信が入る。

 

『『了解。』』

 

『俺は清澄先輩と合流します。』

 

『分かった。』

 

『虎太郎、近くに来たら教えてくれ、ショートワープでこっちに転送する。』

 

『了解です!』

 

 

…さて、どう動くかな。

 

オレは民家の床に座ると、スイッチボックスを開く。

そして、レーダーの動きを見て目を細めた。

 

 

──

 

『どうします?東さん。トラッパー以外にもう1人消えてますよ?』

 

『…少し待て。』

 

奥寺の問に東は考える。

 

王子隊の新戦術の可能性もある。

綾瀬川と決めつけるのは早計か?

 

そう思いつつ、東は高台からトラップの仕掛けられた、マップ中央にスコープを向ける。

 

しかし、何も映らない。

 

『俺、様子見てきましょうか?』

 

そう提案したのは小荒井。

 

『相手はトラッパーだぞ?消えてるのが隠岐だとしてトラッパー以外にもう1人バッグワームで潜んでる。無闇につつくと反撃を貰うぞ。…俺の予想が正しければ他の隊も合流を始めるはずだ。今は待て。その内どこが消えたかが分かる。』

 

そう言って東は笑みを浮かべた。

 

 

──

 

『さて、マップ中央付近に転々と仕掛けられたトラップを見て、各隊合流を目指す動きでしょうか。』

 

『今の状況では生駒隊、王子隊、東隊はどの隊にトラッパーがいるか絞れていない。』

 

『…東さん、王子先輩辺りは綾瀬川先輩だって分かってそうですけど…決めつけて動くタイプじゃないですからね。』

 

歌川はそう分析する。

 

『王子隊は3人、生駒隊は隠岐を除いて3人、柿崎隊はバッグワームをしている2人を除けば2人になるはずだ。各隊合流すれば東隊は柿崎隊に、王子隊、生駒隊は東隊か柿崎隊にトラッパーのいるチームを絞れる事になる。そういう意味でもこの場面での合流には意味がある。』

 

『なるほど。…一方の柿崎隊は照屋隊員と柿崎隊長が中央に向かっていますね。巴隊員もバッグワームで中央に向かっています。』

 

『中央にはトラップもあります。そこで戦えば柿崎隊有利に立ち回れますからね。…巴がバッグワームで消えてるのも柿崎隊の作戦の内でしょう。東隊には効かないですが、生駒隊、王子隊はどのチームにトラッパーがいるか絞れない。東さんならトラッパーをしてくる可能性も有り得そうじゃないですか?』

 

『『確かに。』』

 

──

 

「きよぽんやろ。どう考えても。」

 

マップの北で合流した生駒と水上。

 

「まあ、東さんって可能性もあるんやないです?マップの選択権は東隊にありましたし。…マリオ、他の隊の動きはどや?」

 

水上は細井に尋ねる。

 

『マップ東に向かって3人、中央に向かって2人、南西に向かって2人合流の動きをしとるな。…東隊か柿崎隊で確定やない?』

 

「…」

 

水上は考え込む。

 

「東隊、柿崎隊は分かってるやろーな…ホンマいやらしいで、このバッグワーム。」

 

『イコさん、柿崎隊ですわ。南西の方はコアラと奥寺くんでした。』

 

隠岐から通信が入る。

 

『よくやったで、隠岐。』

 

そう言って水上は通信を切る。

 

「なら中央で柿崎隊合流させたら手に負えんくなりますよ。海は南から、俺らは上から柿崎隊を止めましょう。」

 

「せやな。」

 

──

 

『生駒隊が中央に向けて動き出しました。』

 

『隠岐が東隊の2人を視認したんだろう。王子隊が考え無しに中央に向かうとは考えにくい。そうなると中央に向かう2人はトラッパーと合流したい柿崎隊の2人という事になる。』

 

──

 

『!、王子くん、南と北のトリオン反応3つが中央に向かって動き出したわ。』

 

『イコさん達だね。東隊にしろ柿崎隊にしろ、この機は逃せない。僕らも行こうか。僕はバッグワームでそのまま行く。』

 

『『了解。』』

 

既に合流を終えた蔵内と樫尾。

王子の合図で2人も中央に向けて走り出した。

 

──

 

大方予想通りにここまで来たな。

 

レーダーを見ながらオレはそう考え込む。

 

北の2人は生駒隊、3人合流の動きを見せた東は王子隊、南と南東は推理のしようがないが王子隊と生駒隊の誰かだろう。

 

『文香、北から2人降りてきてる。生駒隊だ。中央に向かうよりも隊長との合流を優先してくれ。』

 

『了解です。』

 

あとの懸念は狙撃手2人か。

初期位置の穴からして西と北西なんだろうが…隠岐にはグラスホッパーがあるし、もう1人は東さんだ。

 

『射線管理は頼むぞ…真登華。』

 

『分かってますって。でも壁抜きとかは防ぎようないですからね?』

 

『それこそ分かってるさ。…隊長、東からも来ますよ。多分王子隊ですね。』

 

オレは柿崎に通信を入れる。

 

『分かった。作戦通り文香との合流を急ぐ。』

 

『隊長、清澄先輩、王子隊の2人を視認しました。どうしますか?』

 

『いや、まだ虎太郎が見つかる必要はねえ。生駒隊、王子隊は俺と文香で罠のある中央に引き込む。虎太郎はそれまで待て。』

 

 

『了解です。』

 

 

 

まさかの綾瀬川のトラッパー起用により、混乱を招いたROUND2初戦。

 

 

 

…膠着した戦場に、柿崎隊の秘密兵器が放たれる。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

当真勇→まじかよ。
真木理佐→面白い。
奈良坂透→三輪経由の友達。変態狙撃手。

当真勇←NO.1狙撃手。リーゼント。
真木理佐←怖い。睨まれたことある。
奈良坂透←那須の従兄弟ってまじ?


みんなTシャツ何に投票しました?
自分はABフライ、影絵(カニ)、川を汚されたカッパ、展開図(折り鶴)、狙われたいちご、1LDKにしました。
やっぱ水上の影絵は欲しいですね〜。
1日1回できるみたいなので、忘れずに投票しましょう。

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B級ランク戦ROUND2 柿崎隊VS生駒隊VS王子隊VS東隊②

投稿遅れてすいません。


『マップ中央、柿崎隊と生駒隊が衝突!』

 

『トラッパーがどこにいるか分からない以上、下手に合流させる訳にはいかないですからね。』

 

『一見するとボーダートップランカーの生駒隊長のいる生駒隊が有利に思われますが…』

 

『分からないな。ROUND1で見せた連携と、綾瀬川のショートワープで巴も近くに潜んでいる。近くにトラップも仕掛けられている以上生駒隊としてはやりづらいだろう。』

 

──

 

「やっぱり照屋ちゃんとザキさんでしたね。」

 

「せやな…で、周りのこの反応がトラップかいな。」

 

生駒、水上は柿崎、照屋の前に立ち塞がりながら、そう話す。

 

『カメレオンで潜んでるきよぽんの可能性もありますよ。虎太郎もどこおるか分からへんし。隠岐も良い位置取りました。海も後ろから来てます。…慎重に行きましょう。!、南東と東の反応が消えましたね。多分、王子隊ですわ。』

 

『どないする?』

 

『丁度いいです…』

 

 

 

 

 

 

『王子くん、中央で交戦開始。生駒隊と柿崎隊ね。』

 

『了解。ありがとう早矢さん。…僕らもバッグワームを付けようか。』

 

『『了解。』』

 

『仕掛けるのは柿崎隊だ…』

 

 

 

 

 

 

『『(王子隊)(生駒隊)と挟み撃ちし(ましょ)(しよう)。』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…って、王子先輩と、水上先輩なら考えるだろうな。」

 

そう言いながら、綾瀬川はスイッチボックスに目を向ける。

 

「どうします?仕掛けますか?」

 

「…いや、王子隊の到着を待ってからだ。最初の狙いは…」

 

「分かってます。水上先輩ですね。」

 

「そうだ。王子隊が到着すればあの人は隊長と文香を挟むように盤面を調整するはずだ。…そこを狙え。タイミングはオレが指示する。」

 

「分かりました。」

 

「…あとはあの人の動き次第だな。」

 

 

──

 

『東さん、中央で交戦開始!それに合わせて東と南東の反応が消えました。』

 

人見は東に通信を入れる。

 

『中央は柿崎隊と生駒隊だな。今スコープに王子隊の2人が映った。バッグワームを付けてたし確定だろう。射線は上手く切られたな。ここから柿崎隊を狙うのは難しそうだ。』

 

『宇井さんね…。』

 

『東さん、俺達も仕掛けますか?』

 

奥寺が東に尋ねる。

 

『そうだな。お前たちもバッグワームを付けろ。綾瀬川と巴は中央にいる。慎重に行けよ。』

 

『『了解!』』

 

──

 

「旋空弧月…!」

 

生駒の高速の抜刀から放たれる旋空。

柿崎は照屋の前に立つと、レイガストでそれを受ける。

 

「文香!」

 

柿崎のレイガストの裏で分割されるトリオンキューブ。

 

「メテオラ…!」

 

放たれたメテオラが生駒の足元に着弾。

視界を奪う。

 

『イコさん、そっちトラップありますよ。踏まんといてください。』

 

少し離れたところで援護をする水上の通信が生駒に入る。

 

『やりにくいな…!』

 

『もう少しの辛抱ですわ。王子隊の他に東隊の2人も消えました。こっち向かってるでしょ。』

 

『でもきよぽんおらへんで?』

 

『旋空飛ばしても出てこーへんってことはここにはおらんでしょ。』

 

水上はトリオンキューブを分割。

照屋目掛けてアステロイドを放つ。

 

それを柿崎が受けると、今度はハンドガンを向ける。

 

「アカンわ。」

 

放たれたメテオラをシールドで受けつつ、距離をとる。

 

「B級最強の盾は伊達じゃないっすね。」

 

「…なんや?ダジャレか?」

 

「濁点着いてるでしょ。」

 

そうツッコミを入れた後、水上は隠岐に通信を入れる。

 

『王子隊と東隊の動きはどうや?』

 

『東は蔵内先輩と樫尾くんですね。…東隊はまだ見えません。』

 

『了解。』

 

通信切ると、水上は考え込む。

 

(粘ったところで王子隊も東隊も到着する…このままやと3対1やで?

 

 

…何を考えとるんや?きよぽん。)

 

──

『各隊、マップ中央に向けて動き出しました。』

 

『柿崎隊を挟み撃ちにしようという考えでしょう。東隊も中央に向かっているのでこのままじゃ3対1になりますね。各隊トラッパーのいる柿崎隊を早めに落としたいはずですので。』

 

(綾瀬川と巴にに動きはない。…ここまで狙い通りということか…?)

 

そう考えながら奈良坂はモニターに映る、綾瀬川に目を向けた。

 

 

──

 

「…サラマンダー。」

 

 

『爆撃注意…!!』

 

宇井の通信に、柿崎はレイガストとシールドを構える。

 

「蔵内だな。王子隊が来やがった。」

 

爆風を掻き分けながら、樫尾、王子のダブル攻撃手が柿崎隊の2人に切り込む。

樫尾の弧月を柿崎のレイガストが、王子のスコーピオンを照屋の弧月が受け止める。

 

 

 

「イコさん!」

 

「もろたで。4枚抜きや…

 

 

 

…旋空弧月。」

 

キィと甲高い音を立ててボーダー最長の旋空が柿崎隊、王子隊に襲いかかる。

 

「させるかよ。…エスクード。…スラスター!」

 

柿崎はエスクードを2枚重ねて、展開。

スラスターで、樫尾を吹き飛ばしながら、照屋の前にシールドモードのレイガストを構える。

 

「文香!」

 

柿崎はそう合図をしつつ、2人を囲むようにエスクードを4枚展開する。

 

 

「…メテオラ。」

 

頭上に生成されたトリオンキューブ。

27分割して、周囲に放つ。

 

 

 

「こらアカンッスね。」

 

水上はシールドで受けながら、爆風の届かない高台へと飛び移る。

 

 

 

 

 

 

「ビンゴだ。…虎太郎。」

 

「…了解。」

 

バッグワームを着けた巴はハンドガンを構える。

息を深く吸い、引き金に指をかける。

それと同時に、綾瀬川はスイッチボックスのボタンを押す。

 

 

その瞬間、地面に現れたのはボーダーのエンブレム。

一瞬現れたエンブレムと共に、巴は忽然と姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

王子隊と共に、柿崎隊に弾トリガーでの攻撃をしようと言う時だった。

 

 

水上の視界の右端に、こちらにハンドガンを向けた巴が映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ま、そーやろーな。きよぽんなら真っ先に俺を狙ってくる思っとったわ。」

 

「!」

 

フルガード。

 

巴の放った、アステロイドは水上のフルガードに防がれる。

 

「残念やったな。虎太郎。」

 

 

 

 

 

キンッ…

 

 

「いいえ。私たちの勝ちですよ。水上先輩。」

 

 

「なっ…?!」

 

 

水上のトリオン体が両断される。

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

旋空を放った照屋の足元にはボーダーのエンブレムが。

 

(…バッグワーム着けた虎太郎が囮かい…。なん手先まで読んでんねん…。)

 

 

「…バケモンが。」

 

そう言って水上は笑うと、緊急脱出。

 

「水上!」

 

その言葉と同時に、今度は柿崎が照屋の隣にワープされる。

 

 

「!」

 

──

 

『柿崎隊の先読みの先読みにより水上隊員緊急脱出!そしてこれは…?!』

 

『今まで挟まれていた柿崎隊が王子隊と共に生駒さんを挟む形になりましたね。』

 

(なるほど、これが狙いか綾瀬川…。)

 

 

──

 

「ちょ、アカーン!」

 

生駒は王子隊と照屋、巴の攻撃をなんとかいなしながら叫ぶ。

 

『海!アカンわ!左手持ってかれた!』

 

「今着きました…!!」

 

グラスホッパーで南沢は王子に切りかかる。

 

 

『真登華、射線情報の更新だ。隠岐と東さんは多分見てるぞ。』

 

『他人事だと思って簡単に言うんだから…!清澄先輩は…!』

 

文句を言いながら宇井はキーボードを叩く。

 

──

 

『生駒隊長のピンチに南沢隊員が駆けつけました!しかし囲まれている状況は変わらない生駒隊がやや不利でしょうか。』

 

『そうですね。水上隊員が落とされて中距離に対応出来なくなったのはかなりの痛手だと思います。これは…動きのない東隊に注目でしょうか。』

 

 

──

 

『やっぱり見てたな。綾瀬川を発見。人見、マークつけてくれ。』

 

東は人見にそう指示をする。

 

『了解です。』

 

『コアラ、奥寺。今マークつけた建物に綾瀬川がいる。』

 

東は小荒井と奥寺に通信を入れる。

 

『了解です。』

 

『仕掛けます。』

 

『気をつけろよ。トラップも結構あるぞ。それに…

 

 

…相手はあの綾瀬川だ。』

 

 

 

 

小荒井、奥寺の中で、綾瀬川清澄という存在の脅威度は影浦や、生駒など、B級上位のエース隊員と同等のものだった。

もちろん、ROUND1で弓場、影浦を破ったのは知っている。

しかし、太刀川や、二宮、風間などのボーダートップランカーには及ばないと思っていた。

それに相手はトラッパー。

スイッチボックスは多くのトリオンを使うし、バッグワームタグをつけている以上、相手のトリガーは限られてくる。

現状綾瀬川に、小荒井、奥寺の連携対応できるトリガーはない。

 

 

…そう考えていた。

 

 

 

 

「なぜ、オレがカメレオンをトリガーに入れていないか分かるか?」

 

「「!」」

 

抜刀しようとした小荒井の弧月の柄の部分を足で、奥寺の弧月を持つ腕を締め付けながら、怪物は淡々と尋ねる。

 

 

「…必要ないからだ。オレが逃げると思ったか?…初めからオレは逃げるつもりは無い。」

 

そう言いながら、怪物は弧月を取り出す。

 

 

「「っ…弧月…!」」

 

 

 

「だが…

 

 

 

…お前たちを逃がすつもりもない。」

 

 

抑揚のない冷たい声と視線。

 

小荒井、奥寺は息を飲む。

 

 

 

 

 

「…来いよ。2人まとめて相手するぞ。」

 

 

小荒井、奥寺の前にB級最強の怪物が立ち塞がった。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

王子一彰→利根川。B級最強の万能手
水上敏志→バケモン。
小荒井登、奥寺常幸→強い。カゲさん、イコさん並み。

王子一彰←利根川呼びやめて。王子って苗字すげえな。
水上敏志←気の抜けない相手。頭いい。厄介。
小荒井登、奥寺常幸←仲良いな。連携は脅威。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND2 柿崎隊VS生駒隊VS王子隊VS東隊③

投稿遅くなりすみません。
まじで最近仕事忙しくて…。


『マップ中央、東隊の2人が綾瀬川隊員を捉える…!しかしこれは…弧月!綾瀬川隊員が弧月を抜きました!』

 

『まあ綾瀬川先輩がただのトラッパーをやるとは思いませんでしたけどね。』

 

『ですが片方はバッグワームタグに占有されているため、スイッチボックスを除けば後は3つしかトリガーを入れられないはずでは?』

 

『…カメレオンは入れていないんだろう。最初から逃げるつもりはなかったらしい。』

 

 

──

 

『どうする?コアラ。』

 

『そりゃ仕掛けるだろ。相手は弧月1本。弾トリガーもないし、シールドはあっても1枚だ。』

 

『距離を取って旋空でやろう。』

 

『了解…!』

 

 

そう言って通信を切った時だった。

綾瀬川の姿がぶれたかと思うと、1歩で距離を詰め、小荒井の懐に。

 

『コアラ!』

 

人見の通信で我に返り、小荒井は咄嗟に弧月を前に出す。

 

「ッ…!」

 

「コアラ!」

 

奥寺はすぐに綾瀬川目掛けて切りかかる。

それと同時に、小荒井も弧月を突き出した。

 

「っ…と。」

 

首を傾けて小荒井の弧月を避けると、奥寺の弧月を受け太刀する。

 

「足元がお留守だぞ。」

 

そのまま綾瀬川は腰を落とすと、小荒井に足払いをかける。

 

「がっ!」

 

奥寺の弧月を弾くと、小荒井に切りかかる。

 

「このっ…させるか…!」

 

奥寺はすぐさまもちなおすと、綾瀬川に切りかかる。

綾瀬川は頭を下げて避けると、そのまま奥寺の腹に後ろ蹴りを入れた。

 

窓を突き破り、奥寺は外に投げ出される。

 

「奥寺!」

 

奥寺はグラスホッパーで横の窓から戻る。

 

 

「お前たちを止めておけば隊長達はどうにかなりそうだ。射線も絞れてる。東さんの援護は期待しない方がいい。

 

 

…向こうが片付くまでオレと遊んでもらうぞ。」

 

 

無機質な瞳で綾瀬川は小荒井、奥寺に弧月を向けた。

 

──

 

『綾瀬川隊員強い!奥寺隊員と小荒井隊員の連携も物ともしない剣捌きで、2人を圧倒しています!』

 

『小荒井と奥寺の連携はマスタークラスも食える連携ですけど…綾瀬川先輩の方が上手ですね。綾瀬川先輩はボーダーでも数少ない10000超えの弧月使いですから。』

 

『だが、スイッチボックス、バッグワームタグ、弧月と来たら空いているトリガー枠は2枠しかない。1枠はシールドだろうし、これだけのトラップをしかけていればもう空きはないだろう。中距離には対応できない。』

 

『…それを体術で埋め合わせていますね、綾瀬川先輩は。小荒井と奥寺、どちらかに組み付く事で味方を巻き込む恐れがある旋空は撃てない。東さんの狙撃を潰す狙いもあるでしょう。』

 

『そして柿崎隊、生駒隊、王子隊の三つ巴対決は、囲まれた生駒隊が着々と削られています!』

 

──

 

『アカンな…。』

 

作戦室。

水上は細井の前のモニターを見ながらつぶやく。

 

『…やっぱ狙うならザキさんやな。…隠岐、アイビスちゃんと入っとるよな?』

 

『入れてますけど…。射線なんてないですよ。照屋ちゃんと虎太郎にも当たる気せーへんし。』

 

『ゆーとるやろ、狙いはザキさんや。市街地Aで射線を全部切るなんて無理や、いくらエスクード張っても穴はある。ザキさんはそれをシールドとレイガストで補ってる。…イコさんと海への指示は俺が出すわ。隠岐はタイミング見て撃て。』

 

『了解。』

 

──

 

「エスクード。」

 

戦場にさらにエスクードが追加される。

それを目眩しに、照屋の鋭い旋空が南沢目掛けて放たれる。

 

「どわっ!イコさんヤバいっす!」

 

南沢はそれを避けながら樫尾のハウンドをシールドで受ける。

 

「海、水上から通信や。…ザキを落とすで。このままじゃ終われんやろ。」

 

生駒は柿崎の射撃をシールドで受けながら弧月を構え直す。

 

「了解っス!」

 

──

 

『後ろのビル、おっくんとコアラがいるね。やり合ってるのは利根川かな?』

 

王子は後ろに目を向けながら通信を入れる。

 

『俺はそっちを狙うか?綾瀬川に弾トリガーはないだろう。エスクードが邪魔で俺はそっちじゃ役に立たなそうだ。』

 

『…うーん。動きがない東さんが気になるね。このままイコさんかカイくんを落とせればそれでいいけど、利根川が2人を止めてるおかげで上手く行ってる…。先にイコさんとカイくんを落としてからにしよう。』

 

『分かった。』

 

 

──

 

『粘るな、生駒の奴。』

 

柿崎は冷や汗を浮かべながら呟く。

 

『隠岐先輩がどこにいるか分からない分攻めにくいですね。生駒さんの旋空がある分射線も完全には潰せてませんし。』

 

『王子隊は蔵内とハウンドの中距離の攻撃に切り替えてる。俺らは近距離で生駒隊の逃げ道を無くすぞ。』

 

そう言って柿崎はレイガストをブレードモードに切り替える。

 

『清澄!そっちは問題ないか!?』

 

『まあ上手くやりますよ。東隊はそっちには行かせません。』

 

『助かるぜ…ほんとに。』

 

『…生駒隊には注意してくださいよ。

 

 

…水上先輩は裏で見てますよ。』

 

 

──

 

『生駒隊粘る!王子隊の中距離からの攻撃を生駒隊長が、近距離の攻撃を南沢隊員が上手く捌いています!』

 

『生駒隊にはまだ隠岐先輩がいます。東さんの動きも分からない以上柿崎隊も王子隊も攻めづらいでしょう。』

 

──

 

『…今やな、海。』

 

『りょーかいっ!』

 

南沢はグラスホッパーを展開。

それを踏んだ生駒が、柿崎隊に切り込む。

 

「!、文香先輩!」

 

「旋空弧月!」

 

「っと…!あぶねえ…!」

 

弧月をレイガストで受けながら、柿崎は冷や汗を流す。

 

 

 

『いや、王手や。…隠岐。

 

 

 

 

…外すなや。』

 

 

 

『…了解。』

 

 

 

 

銃声1発。

 

 

『!、ザキさん!』

 

 

宇井の通信で、柿崎は銃声の方向に視線を向ける。

 

「!、シールド…!」

 

 

頭か胴か。

柿崎がそれを一か八か賭けることができる性格であれば或いは防げたのかもしれない。

それを決めあぐねた柿崎はシールドを広げてしまった。

隠岐の高いトリオンから放たれたアイビスは、柿崎のシールドを割り、柿崎のトリオン体を吹き飛ばした。

 

 

──

 

『柿崎隊長がここで緊急脱出!マップ西、隠岐隊員の得点となりました!』

 

『エスクードの合間を縫った技ありの狙撃でしたね。』

 

(柿崎さんがあの位置に来るタイミング、隠岐の位置取り、トリオン…どれか1つ欠けてたらあの狙撃は成立しない…。水上先輩か…?)

 

──

 

『わりぃ、やられた…。』

 

作戦室に戻った柿崎は通信で謝る。

 

『問題ありません。…生駒さんは私が倒します。』

 

柿崎を落とされたことにより、照屋に火がつく。

 

 

 

『…いや、引け文香。』

 

 

それを綾瀬川が止める。

 

『!…この状況で引くんですか?』

 

『エスクードが無くなったんだ。隠岐と東さんは撃ってくるぞ。隊長が落ちた今オレ達は近距離で点を取るしかない。引くならオレが生きてる今しかない。

 

 

…離脱のタイミングは次の緊急脱出と同時だ。後ろのショートワープに乗れ。』

 

 

 

──

 

綾瀬川は通信を切って、目の前の2人に向き直る。

 

 

「野暮用だ。時間稼ぎの必要が無くなった。」

 

 

「「っ…!」」

 

所々、トリオンの漏れた2人は空気の変わった綾瀬川に、弧月を構え直す。

 

『引け、小荒井、奥寺。…流れが変わった。立て直すぞ。』

 

 

『『了解です。』』

 

 

東の通信に2人は短く答えて、窓の外に視線を向ける。

 

 

「っ!」

 

しかし、逃がしてくれるほど目の前の怪物は甘くなかった。

距離を詰めた綾瀬川は小荒井に切り掛る。

 

「言ったはずだぞ。逃がすつもりは無い。」

 

そのまま綾瀬川は弧月を傾けて、小荒井の弧月を滑らせる。

 

「はぁ?!」

 

勢いそのまま小荒井はバランスを崩す。

させまいと奥寺が綾瀬川に切りかかる。

 

「…っと。」

 

受け太刀すると、そのまま、弧月を絡めとるように捻ると、奥寺の弧月を弾き飛ばす。

 

「?!…太刀取り…?!」

 

そして奥寺を蹴り飛ばすと、その場所に、ボーダーのエンブレムが。

 

「しまっ…」

 

 

そして地面から現れたブレードに貫かれた。

 

「悪いな、今日のオレはトラッパーなんだよ。」

 

「くそ…!」

 

そのまま奥寺は緊急脱出。

 

綾瀬川は小荒井に向き直る。

 

「っ…くそ!」

 

小荒井はグラスホッパーを展開、綾瀬川の前から離脱した。

 

 

『今だ、文香、虎太郎。…離脱しろ。』

 

『『了解。』』

 

 

マップ中央。

照屋、巴はバッグワームを羽織り、ショートワープに足をかけ離脱する。

 

 

 

「さて、後は動きのないあの人だな…。駒は1人消えた…。

 

 

…どうする?戦術の天才、東春秋…。」

 

 

そう言って怪物は無機質な瞳を細めた。

 

 




綾瀬川清澄パラメーター(ROUND2)

トリオン 7
攻撃 6
防御・援護 10
機動 6
技術 10
射程 3
指揮 5
特殊戦術 10
TOTAL 57

トラッパーのパラメーターじゃないなw

感想、評価等お待ちしてます。


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B級ランク戦ROUND2 柿崎隊VS生駒隊VS王子隊VS東隊④

投稿します!


『綾瀬川隊員により、東隊、奥寺隊員が緊急脱出!柿崎隊が2点目を獲得しました。これにより柿崎隊は3人、生駒隊3人、王子隊3人、東隊が2人と東隊が不利な展開となりました。』

 

『有利不利で言えば生駒隊も不利だろう。柿崎隊が中央の三つ巴から離脱したことにより、生駒隊と王子隊の一騎打ちになった。生駒さんは左手を落とされている。生駒隊と王子隊では中距離火力が上の王子隊が有利だ。』

 

──

 

「きよぽん達また逃げよったで。」

 

「しんどいッスね…!」

 

南沢はそう言いながらも笑みを浮かべ、王子隊に向き直る。

 

「蔵内は、弾で援護。樫尾はグラスホッパーでの陽動だ。ここで生駒隊を落とす。」

 

王子はそう指示を出すと弧月を構える。

 

「生駒隊は窮地ほど強いよ。…油断せずに行こう。」

 

「「了解!」」

 

──

 

(トラッパーだからといって少しばかり軽率に動きすぎたか…。もう少し警戒すべきだった。)

 

東は考え込む。

 

(スイッチボックス、弧月、バッグワームタグ…後の枠は2つ。…さすがに1つはシールドだろう…。多くのトラップに、弧月を使うトリオンを合わせればもう1枠は空きと考えるのが妥当か。

 

 

 

…いや、綾瀬川相手に決めつけるのは悪手だ。それで何度も痛い目を見てきた。…綾瀬川清澄…か。

 

…本当に何者なんだ?)

 

「…たく、嫌になるな全く。」

 

そう言って東は笑みを浮かべると、アイビスを構えた。

 

──

 

「悪くない。…隊長が欠けたのは痛手だが…文香は残っているし生駒さんは手負いだ。虎太郎もまだライトニングは見せていないからな。」

 

照屋、巴を近くに転送した綾瀬川はそう言いながらレーダーに目をやる。

 

「どうしますか?隙を突いて中央にしかけますか?」

 

照屋が綾瀬川に尋ねる。

 

「仕掛けるのは生駒隊と王子隊の決着が着いてからだな。現状うちに中距離の火力はない。生駒さんと蔵内先輩が落ちてからがいいんだけどな。」

 

そう言いながら、綾瀬川はスイッチボックスを開く。

 

「こことここはショートワープになってる。

 

 

…奇襲で点を取る。」

 

 

──

 

『さて、マップ中央の生駒隊と王子隊の一騎打ちは激化!南沢隊員、樫尾隊員に組み付く!』

 

『上手いですね。相手との距離を詰めることで弾トリガーを封じています。蔵内先輩も無闇に手は出せないでしょう。樫尾を巻き込んでしまいますから。』

 

『王子隊もたまらず弧月で応戦!』

 

『遠くでは隠岐も目を光らせている。王子隊としても近距離で戦うしかないだろう。どちらも味方を巻き込む恐れがある以上、生駒隊は狙撃を、王子隊は弾トリガーを封じられている…近接戦闘では生駒隊に分がある。』

 

 

──

 

『どーします?水上先輩。俺移動しますか?』

 

隠岐が水上に尋ねる。

 

『それもいいんやけどな…。』

 

水上は顎に手を当てながら考える。

 

『…狙ってるやろうなぁ…どっちも。』

 

水上の懸念は綾瀬川、そして未だ動きを見せない東だった。

 

『ショートワープがある以上きよぽんは横取りに来るで。漁夫られるのは堪忍やなぁ…。』

 

『きよぽん達はさすがに移動してますよね?』

 

『…いや、してへんやろ。』

 

隠岐の問を水上は否定する。

 

『え?なんでです?あれだけ東隊と派手にやり合ってたやないですか。』

 

『あー、言葉の綾やな。…きよぽんは移動してるやろ。…ただトラップは増えてない。虎太郎と照屋ちゃんを動かせるのはさっききよぽんがいた部屋しかないんや、虎太郎と照屋ちゃんはそこにいるやろ。』

 

『…東さんは撃たないですね。壁抜き狙いそうな頃やのに…。』

 

『相手はバッグワーム付けてんで。博打にも程があるやろ。それに…だからきよぽんは場所を変えてないんや。射線は宇井ちゃんがある程度絞ってるやろ。変に壁抜き狙って失敗したら即位置バレやで。』

 

『うわ…きよぽんこっわ。狙撃手釣ろうって訳かいな。』

 

『ほんっと…厄介なチームになりよったで…柿崎隊。』

 

──

 

『仕方ない、クラウチ…弾トリガーを使おう。』

 

王子隊と生駒隊、お互い決め手がない現状に、王子は蔵内にそう指示を出した。

 

『ある程度巻き込んでも仕方ない。柿崎隊の奇襲の前に点を取っておきたい。』

 

『分かった。』

 

蔵内は短く答えると、トリオンキューブを生成した。

 

 

「!、海!」

 

「ハウンド。」

 

「うひゃぁ!?ヤバ!!」

 

樫尾と鍔迫り合いをしていた南沢はグラスホッパーで飛び退く。

 

「「ハウンド!」」

 

王子、樫尾の声が重なる。

 

「海、あんま距離とんなや…!」

 

生駒のシールドが南沢を守る。

 

「助かったッス…!」

 

南沢は生駒の隣に着地すると、すぐさまグラスホッパーを展開。

 

「!」

 

しかし、眼前にはタイミングをずらして放った蔵内の弾が迫っていた。

 

「っ…!」

 

南沢はシールドを展開する。

 

『イコさん、それ合成弾です!』

 

『マジかいな…!』

 

生駒、南沢はシールドを固定。

蔵内の放ったサラマンダーを受け切る。

 

しかし、その爆風を切り裂くように、樫尾、王子が飛び込んでくる。

 

「ヤッバ…イコさん!」

 

南沢はグラスホッパーを生駒の足元に展開。

 

生駒を後ろに逃がす。

 

「海!」

 

「後、任せたッス…!」

 

そのまま、王子の弧月に切り裂かれ、南沢は緊急脱出する。

 

「逃がさない…!」

 

好機と感じた、樫尾は生駒と距離を詰める。

 

 

『待って樫尾くん!狙撃手注意…!』

 

「!」

 

橘高の通信に樫尾は急停止するも、隠岐のライトニングに足を撃ち抜かれる。

 

 

 

 

 

「よーやったで、海、隠岐。」

 

 

「しまっ…」

 

「旋空弧月。」

 

 

足を失った樫尾。

それを逃がすほど、NO.6の攻撃手は甘くない。

 

放たれた旋空に樫尾は両断される。

 

「っ…!!」

 

王子はスコーピオンと弧月を重ねて旋空を受ける。

 

「サラマンダー…!」

 

「…」

 

直後放たれた、蔵内のサラマンダーにより、生駒もここで緊急脱出。

 

隠岐を除いた生駒隊が緊急脱出し、この場を王子隊が制した。

 

 

 

『清澄先輩、いつでも行けます!』

 

『了解。』

 

 

 

それと同時に、地面にボーダーのエンブレムが輝く。

 

 

「やっぱり来たね、てるてる、巴タイ…?!」

 

言いかけて、王子は目を見開く。

 

 

照屋と共にショートワープで戦場に現れたのは、巴ではなく、綾瀬川だった。

 

 

「なっ…綾瀬川!」

 

蔵内はトリオンキューブを構える。

 

 

 

 

『虎太郎。落ち着いて撃て。…蔵内先輩は動いてない。』

 

『了解です…!』

 

 

 

蔵内の背後50m。

綾瀬川、照屋の陽動の陰でひっそりと転送された巴はライトニングの引き金を引く。

 

「クラウチ!」

 

弾速重視のライトニングに、蔵内のシールドも間に合わず、為す術なく貫かれる。

 

「仕上げだ。畳み掛けるぞ、文香。」

 

「はいっ!」

 

 

「やってくれるね…利根川…!」

 

「その呼び方、止めてください。」

 

王子の言葉に、綾瀬川は目を細め、弧月を抜いた。

 

 

──

 

『く、蔵内隊員緊急脱出?!これは…ライトニング!巴隊員が使ったのはライトニングです!』

 

『…驚きました。巴が狙撃手トリガーを使うなんて…。』

 

『狙撃手の合同訓練にはたまに参加していたが…実践で使える程の腕ではなかった。蔵内先輩が合成弾を放った無防備且つ動かないタイミングを狙ったからこそ出来た芸当だ。綾瀬川が前線に出て来ると言う自分を使った陽動…そして…ライトニングでなければシールドも間に合っていた。本当に…』

 

 

(お前には何が見えている、綾瀬川…。)

 

 

──

 

不自然に、王子隊、生駒隊の戦場の離れた位置に設置されたトラップ。

最初に東はそこにカメレオンを使った綾瀬川が潜んでいると踏んでいた。

だが、実際には綾瀬川は戦場近くの建物に潜んでいた。

ならばその位置のトラップは何のために設置したのか。

その答えは、生駒隊、王子隊の戦闘の直後知ることになる。

そこに現れた巴の狙撃によって。

 

 

「これが答えか…綾瀬川。」

 

 

アイビスの銃声1発。

 

 

遠くから戦場を見ていた、No.3狙撃手東春秋により、巴のトリオン体が吹き飛ばされた。

 

 

「本当に…恐ろしい奴だな…。」

 

 

ROUND2もいよいよクライマックス。

 

好調の柿崎隊の前に、戦術の天才が立ち塞がる。

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

東春秋→恐ろしい奴。何者なんだ?
奈良坂透→どこまで見えてるんだ?

東春秋←何者?こっちのセリフ。
奈良坂透←誕プレできのこの里渡したらキレられた。いや、その髪型でたけのこ派は聞いてない。

次回で決着かな。

幕間挟むかも。

これからも読んでいただけると幸いです。


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B級ランク戦ROUND2 柿崎隊VS生駒隊VS王子隊VS東隊⑤

遅くなりすいませーん!!
試合自体は決着です。


「!」

 

トリオン体を吹き飛ばされ、虎太郎はそのまま、緊急脱出する。

オレは放たれたアイビスの弾道の先に目をやる。

 

不敵に笑う天才、東春秋がそこにはいた。

 

「ちっ…。」

 

オレ目掛けて、もう一度放たれるアイビス。

オレはそれを極小に固めた集中シールドで防ぐ。

 

「文香、作戦変更だ。…王子先輩はお前に任せるぞ。遠距離の要が落ちた。オレは逃げ延びる。」

 

その言葉に文香は息を大きく吸う。

 

 

「了解。」

 

そして、B級1位のエース攻撃手は短く答えた。

 

 

──

 

『ここで東隊長が動きました!ワープ先を狙った的確な砲撃に、巴隊員が緊急脱出です。』

 

『ワープの位置が不自然でしたからね…。そこを読んでの狙撃でしょう。』

 

『これには綾瀬川隊員、たまらず近くのショートワープに足をかけました。』

 

『隠岐、東さんが残っているからな。精度はどうあれ遠距離戦の要である巴が落ちた。シールド1枚の綾瀬川がこれ以上姿を見せているのは得策じゃない。』

 

『なるほど。中央の戦闘は柿崎隊のエース攻撃手、照屋隊員と王子隊長の一騎打ちとなりました!』

 

──

 

「いい機会だね、てるてる。前シーズンの最終戦のリベンジをさせてもらおうかな。」

 

王子はそう言って弧月とスコーピオンを構える。

 

「私の名前は照屋です。」

 

照屋はそう返すと弧月を握り直す。

 

 

まず仕掛けたのは照屋だった。

体勢を低くして、初動は斜めに動く。

 

「!」

 

 

 

 

(斜め…ですか?)

 

(ああ。人間は上下左右の動きには敏感で対処されやすいが…斜めは左右程敏感じゃない。特に斜め下だな。…低く、そして斜めに切り込め。)

 

 

 

 

視界の左斜め下から迫る弧月に、王子は何とか対応し、弧月で受けると、スコーピオンで切り掛る。

 

 

 

(お前は弧月とスコーピオンの両刀だろ?スコーピオンは弧月で受けるな。お前はトリオンも高いからな。スコーピオンの受け太刀はスコーピオンだ。弧月じゃ勿体ない。)

 

 

 

王子のスコーピオンを、照屋は左手から生やしたスコーピオンで受ける。

そして、そのまま、ハンドガンを生成する。

 

 

 

(いーい?メテオラはあくまで陽動。文香の攻撃手段は弧月かスコーピオン。当てるつもりで撃たなくていいわ。)

 

 

 

「メテオラ。」

 

ハンドガンから放たれたメテオラ。

王子はシールドで受けるが、爆風が視界を奪う。

 

 

 

(相手の視界を奪うって言うのはリスクが付き物よ。あっちがこっちを見えないってことは、こっちもあっちは見えないの。慎重に行きなさい。私?わ、私は別に良いのよ。ほら、感覚派だから。)

 

 

 

 

照屋は王子から距離をとると、スコーピオンを投げる。

そして、すぐに切り込む。

 

王子は飛んで来たスコーピオンにどうにか対応し弾く。

しかし、その隙の刹那、爆風を切り裂くように照屋の弧月が王子に迫る。

 

「っ!」

 

流石はB級上位の攻撃手。

王子はどうにか反応し仰け反るように躱す。

 

 

 

 

(手段が多くて考えて動く攻撃手…B級なら王子先輩か。そういう相手と戦う時はとにかく攻撃の手を緩めるな。主導権は握らせちゃダメだ。お前が後手に回ってちゃ相手に選択の猶予を与えることになる。相手を後手に回らせるんだよ。)

 

 

 

鋭く繰り出される、弧月とスコーピオンの連撃。

王子は防戦一方になっていた。

 

 

 

 

(お前はトリオンが高い。片方のメテオラはキューブじゃなくてハンドガンの方がいいと思うぞ。)

 

(どうしてですか?)

 

(ハンドガンは出したままスコーピオンを使えるようになれ。そうすれば相手は弧月、スコーピオン、そしてハンドガンの3つに警戒しなきゃ行けなくなる。相手に択を絞らせるな。)

 

 

 

 

ハンドガンは持ったまま、腕の側部からは、スコーピオンが生えている。

そして頻繁にこちらに向けられる銃口。

王子は発砲を警戒してか、攻めあぐねていた。

 

 

 

…強い。

 

 

 

王子はそう思わざるを得なかった。

当然と言えば当然だろう。

ボーダー最強部隊、玉狛第一のエース攻撃手、小南桐絵。

そしてボーダー2人目の完璧万能手、綾瀬川清澄。

2人のボーダー最強格に師事して数ヶ月。

持ち前のセンスと戦闘IQを活かして今や弧月、スコーピオンどちらもマスタークラスの攻撃手へと化けた。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

照屋は弧月を振りかぶる。

王子は来るであろう斬撃に備え、弧月を構える。

 

ここで王子は気付く。

 

照屋と、トラップの反応が重なっていることに。

 

 

しまった。

 

 

そう思った時には弧月は加速を始めている。

 

 

そして消えた照屋。

 

 

 

真横からの斬撃に、王子はトリオン体を両断された。

 

 

「っ…最後の最後にやってくれるね…利根川。」

 

そう言いながら、王子の足元の、トリオンキューブが光り輝く。

置き弾のハウンドである。

 

 

 

(あと最後に1つ。敵の死に際は油断するな。ROUND2でもお前は那須の置き弾にやられただろ?)

 

 

 

照屋は振り返り、弧月を納刀。

そして、シールドが照屋を覆った。

 

 

「…完敗だよ。

 

 

…本当に。」

 

 

納刀と同時に、王子のトリオン体は光となって空に上がった。

そして、放ったハウンドは虚しくシールドに弾かれる。

 

──

 

『ここで王子隊長も緊急脱出!柿崎隊が4点目を獲得しました!』

 

『強いですね。照屋さん。自分も1対1の斬り合いはしたくない相手です…。』

 

──

 

『援護ありがとうございます…清澄先輩。』

 

照屋はバッグワームを羽織り、すぐに離脱。

拗ねた様子で綾瀬川に通信を入れた。

 

『なんで拗ねてるんだよ…。』

 

『…結局援護されたなと。』

 

『それがトラッパーの仕事だろ…。それに今は個人ランク戦じゃなくて、チーム戦だ。…最後に柿崎隊が勝ってれば良いんだよ。』

 

『そうですけど…。それでいいです…。東さんと隠岐先輩は撃って来ませんでしたね。』

 

『それはそうだろ。東さんはオレと隠岐。隠岐はオレと東隊がどこにいるか分からないんだ。それにここは「市街地A」。高台は限られる。位置バレの恐れがある以上普通(・・)は撃ってこない。』

 

 

その通信を受けた直後。

照屋の視界にバッグワームが映り込む。

 

 

泣きボクロが特徴の機動型狙撃手、隠岐孝二は小さな笑みを浮かべ、照屋にライトニングを向けていた。

 

 

 

 

──数分前。

 

『いやー、何とか王子隊に一泡吹かせましたね。』

 

生駒の援護をした隠岐は、グラスホッパーで位置を変えながら、作戦室の4人に通信を入れた。

 

『まあいいとこまで行ったんちゃう?』

 

『あとは時間切れまでバッグワームで潜んどきや。』

 

『りょーかいですわ。』

 

細井、水上の通信に隠岐は短く答えた。

 

 

 

生駒隊作戦室

 

「いやー、柿崎隊強いなぁ。」

 

生駒は作戦室の椅子にもたれ掛かり、グラグラと椅子の脚を揺らしながらそう言う。

 

「照屋ちゃんヤバいっすね。王子も防戦一方やないすか。」

 

「いやー、きよぽん先輩ぶった切れなかったですねー。」

 

「こりゃきよぽん逃げ切り作戦使いますよ。」

 

水上の言葉に作戦室に沈黙が生まれる。

 

「…ええんか、きよぽんの思い通りにさせて。」

 

スイッチが入ったように生駒は立ち上がる。

 

「3人も彼女いるんやで?」

 

「いや、付き合ってへんでしょ。てか結局妬みやないですか。」

 

「きよぽんに…いや、隠れてるから無理か…。そ、それなら柿崎隊にやり返さな終われへんやろ!」

 

 

 

『隠岐!!』

 

『え?あ、はい?』

 

 

──という訳で今に至る。

 

 

放たれたライトニング。

 

至近距離且つ高トリオンの隠岐により放たれた神速の弾丸は、照屋のトリオン体を撃ち抜いた。

 

 

その直後、隠岐のトリオン体は、隠岐の横の路地からバッグワームを羽織り現れた、小荒井により切り裂かれる。

 

 

「ですよねー。」

 

2筋の光が空に上がる。

生駒隊、東隊にそれぞれ1点ずつ加点される。

 

 

 

 

──

 

「ちっ…。」

 

やはり生駒隊は思い通りに動かないな。

そういう意味じゃ、水上先輩みたいなタイプが4人いた方が相手としては楽だったかもしれない。

感情で動くタイプはどうもやりづらい。

 

「4対3対2対2か。まあ重畳だな。」

 

オレはマンションの屋上への扉を開ける。

 

 

 

…決着は次の機会にとっておくとしよう。

 

 

 

横からの砲撃。

オレは集中シールドで防ぐと、視線を向ける。

 

 

 

そこには天才、東春秋がこちらにアイビスを向けていた。

 

 

 

「…」

 

 

オレは遠くに見える天才を見据える。

 

 

 

 

「東さん、あんたはオレに敗北を教えてくれるのか?」

 

 

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 2P

巴 1P

綾瀬川 1P

 

合計 4P

 

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 2P

南沢 0P

 

合計 3P

 

 

 

王子隊

 

 

王子 1P

蔵内 1P

樫尾 0P

 

合計 2P

 

 

 

東隊

 

 

東 1P

奥寺 0P

小荒井 1P

 

合計 2P

 

 




まあこんな感じでROUND2は決着ですね。

照屋ちゃんの回想シーンでは、小南、綾瀬川が2人で照屋を教えているシーンを最初書いていたのですが、最終的に照屋ちゃんが「てめえらイチャイチャしてんじゃねえよ。」で終わる脱線エピソードになりそうだったので辞めましたw
見たい人が多そうだったら書くかも?


繁忙期で不定期にはなりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
感想、評価等お待ちしております。


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昼の部を終えて

投稿します!


『ここでタイムアップ!試合終了です!ROUND2昼の部を制したのは柿崎隊!』

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 2P

巴 1P

綾瀬川 1P

 

合計 4P

 

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 2P

南沢 0P

 

合計 3P

 

 

 

王子隊

 

 

王子 1P

蔵内 1P

樫尾 0P

 

合計 2P

 

 

 

東隊

 

 

東 1P

奥寺 0P

小荒井 1P

 

合計 2P

 

 

 

『やはり好調の柿崎隊!ROUND2も見事勝利を収めました!』

 

『レベルの高い試合でしたね。』

 

『そうですね!という訳で解説のお二方に総評を頂いてもいいでしょうか?』

 

『今回のランク戦のポイントはなんと言っても綾瀬川先輩の奇策、トラッパー戦術でしょうね。』

 

歌川のその言葉に奈良坂も頷いた。

 

『誤算もあっただろう。だが、生駒隊、王子隊、東隊は終始、綾瀬川の戦術に振り回されていた。この試合の主導権を握っていたのは間違いなく柿崎隊だ。』

 

『私も驚きました。…綾瀬川くんってトラッパーも出来たんですね…。』

 

 

──

 

「ほんっと、あいつマジでナニモンだよ…。」

 

当真はは呆れた様にそう言って、頭の後ろで手を組む。

 

「…」

 

隣にいた真木は無言で立ち上がる。

 

「総評聞いてかねーの?真木ちゃん。」

 

「大体分かる。…綾瀬川のログを集めとくわ。帰ったら見ときなさい。」

 

「え、なんで?」

 

「久しぶりにやろうと思ってね…。」

 

「…何を?」

 

その問いに真木は振り向きながら妖艶な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「…スカウト。」

 

 

 

──

 

『他のポイントとしては、隠岐の狙撃だな。柿崎さんを緊急脱出させたあの狙撃…柿崎さんの位置、隠岐のトリオン、エスクードの位置、そして生駒さんが南沢のグラスホッパーで切り掛るタイミング…どれか1つでも欠けていれば成り立たなかった。オペレーターの指示かもしくは…水上先輩だろう。』

 

『そうですね。援護の要だった柿崎さんが脱落して柿崎隊は奇襲で点を取る戦法に切りかえていましたから。最後の隠岐先輩の狙撃も柿崎隊としてはたまらなかったですね…結果的に隠岐先輩は緊急脱出しましたが、3点獲得しています。』

 

 

──

 

生駒隊作戦室

 

「よーやったな、隠岐。」

 

「よーやったやないですよ。結果的に東隊が残ったおかげで柿崎隊に生存点入んなかったですけど…。あの場面は逃げ切りでしょ。」

 

「え、でもきよぽん…柿崎隊にやり返せたやん?それにうち3点とって2位やし。」

 

生駒はキョトンとした様子で隠岐に尋ねる。

 

「そら結果論でしょ…。」

 

「隠岐。」

 

窘める様に、水上が隠岐の名前を呼ぶ。

 

「うちの大将はイコさんやろ。…それにあれや…

 

 

 

…終わり良ければ全て良し…や。2点とって大活躍やったやん。よーやったで。」

 

「…ホンマ…

 

 

 

…俺は先輩が怖いですよ…。」

 

「俺のどこが怖いねん。」

 

そう言って笑いながら水上は目を伏せる。

 

 

そして、目を開き、細める。

 

「将棋でも負けとったやろーなぁ…。」

 

「?」

 

 

 

 

「…バケモンが。」

 

──

 

『あとはやっぱり柿崎隊の動きには注目せざるを得ないですね。綾瀬川先輩のトラッパー然り、照屋さんと王子先輩の1対1…上から言うつもりはありませんが…前シーズンより磨きがかかった柿崎隊はまさにB級1位に相応しいチームになったと思います。』

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「あっ!おかえり、清澄先輩。」

 

戻ってきた綾瀬川に宇井が駆け寄る。

 

「よう。任せて悪かったな。清澄。」

 

「いえ。生存点取れなくてすいません。」

 

「謝る事じゃねえよ。お前は生き残ってそれにうちは勝ったんだ。喜ぶべきことだ。…ほんと、良くやってくれた。」

 

そう言って柿崎は綾瀬川の肩に手を置いた。

 

「オレよりも文香を労ってやってください…。…後ろで拗ねてますよ。」

 

「べ、別に拗ねてません。」

 

そう言って照屋は目を逸らす。

 

「ハハッ、文香も良くやってくれた。流石はエースだな。」

 

そう言って柿崎は照屋の頭を撫でる。

照屋は嬉しそうにはにかみ、それを堪能していた。

 

「…なあ、やっぱり文香って柿崎さんの事…「うるさい清澄先輩、うるさいです。」うっ!」

 

言いかけた綾瀬川の背中を叩いて、宇井は黙らせる。

 

「ほんっとKYですよねー。清澄先輩って。表情筋死んでるし。…隅っこで大人しくしといてください!」

 

「…酷くね?」

 

──

 

『他のB級部隊からしたら堪らないですね…。綾瀬川先輩のトラッパーまで警戒しなくてはいけませんから…。』

 

『綾瀬川がいる以上柿崎隊の戦術の予測は最早不可能に近い。常に想定を上回る動きをしてくる…。』

 

『ROUND1で風間さんが言っていた通り、今シーズンのB級ランク戦は綾瀬川先輩をどう攻略するか…それに尽きると思います。』

 

──

 

王子隊作戦室

 

「さて、どうしようか。ますます手が付けられないね、柿崎隊。てるてるもかなり強かった。B級でも5本指には入るくらいの攻撃手になってるよ。僕も1対1じゃしんどい。」

 

王子はそう言って顎に手を当てる。

 

「そうだな…。」

 

「対策のしようがありませんね…。」

 

「…でも、その割に楽しそうね。王子くん?」

 

橘高が王子に尋ねる。

 

「まあ…ね。そういう相手こそ攻略し甲斐が有るじゃないか。まだROUND2だ。研究する時間はいくらでもある。利根川は無理だとしても…柿崎隊相手ならやりようはある。」

 

そう言って王子は不敵な笑みを浮かべた。

 

──

 

東隊作戦室

 

「生き残ったとはいえ2点止まりか…。綾瀬川と戦ったお前たちはどうだ?」

 

東が小荒井、奥寺に尋ねる。

 

「…正直…今回綾瀬川先輩が弾トリガーと旋空を入れてたら俺と小荒井はどっちも緊急脱出してたと思います…。」

 

「そうだな。剣術だけで戦況を覆せる程の技術だ。…太刀川にも匹敵するかもしれない。見くびっていたつもりはないが…綾瀬川がトラッパーで来たのは、相手を油断させる狙いがあるのかもしれないな…。」

 

東は顎に手を当てながら考え込む。

 

「そうかもしれません…。」

 

「…まあ、相手は綾瀬川じゃなくて柿崎隊…だ。」

 

「でも、柿崎隊のあの連携に綾瀬川くんが加わるって可能性もあるわ。…想像したくないわね。」

 

「綾瀬川といい榎沢といい…

 

 

…ボーダーは暫く安泰だな。」

 

「言ってる場合ですか…。」

 

──

 

『さて、それではB級ランク戦ROUND2上位昼の部を終わります。実況は私、嵐山隊オペレーター、綾辻遥が、解説は風間隊、歌川くん、三輪隊、奈良坂くんでした。ご清聴ありがとうございました!』

 

『『ありがとうございました。』』

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「ROUND2でも勝ちやがったか、柿崎隊。」

 

「…まあ柿崎隊には綾瀬川先輩がいますもんね…。」

 

昼の部の結果を受けて、諏訪、笹森が呟いた。

 

「榎沢、まだ来ませんね。大丈夫でしょうか?」

 

数時間後には二宮隊、影浦隊とのランク戦が控えている。

まだ作戦室に顔を出さない榎沢に、堤は心配そうに尋ねた。

 

「…ま、時間はまだある。勝負を投げ出すようなタマじゃねェだろ、あいつは。」

 

その言葉と同時に作戦室の扉が開く。

 

 

「あれ?みんなもう揃ってるんだー。お待たせー。」

 

 

そこに、榎沢が現れる。

 

「偉く重役出勤だな。どこ行ってたんだ?」

 

「ちょっとねー。別に防衛任務ある訳じゃないし別にいーじゃん。あ、瑠衣ちゃんセンパイ、あたしにも飴ちょーだーい。」

 

そう返しながら、榎沢は小佐野から飴を貰う。

 

「まー別に良いけどよ。…連携の練習もなしに勝てると思ってんのか?」

 

「連携なんて意味無いよ。諏訪さん達が群れたってポケインスーツの人に勝てないでしょ?ボサギザの隊長さんもでかい人の援護が加われば諏訪さん達じゃ太刀打ちできない。…諏訪さん達はいつも通りでいいから。瑠衣ちゃんセンパイ、パソコン貸してー。」

 

そう言って榎沢は小佐野からパソコンを借りて、何やら作業を始める。

 

「…榎沢、オメーが強ェのは分かってる。俺らじゃ足を引っ張るのもなァ…。だが勘違いすんなよ。B級ランク戦は1人で勝てるほど甘くねェぞ。あの綾瀬川だってチームで連携して点を取ってる。」

 

「みたいだねー。馬鹿みたいだよねー。

 

 

…1人で戦った方が強いのに。」

 

諏訪の話に榎沢はキーボードを叩く手を止める。

 

「…柿崎隊だってそう。いくら少し強い烏合が群れたって…圧倒的な個の前には無力なんだよ。…諏訪さん達もよく知ってるんじゃないの?

 

…あたしは綾瀬川センパイとは違う。

 

…あたしなら1人でも上手くやるから。」

 

榎沢の言葉に、諏訪は嵐山隊、諏訪隊を蹂躙した、怪物を思い浮かべる。

だが、だとしたら…

 

 

 

「オメー、なんでうちに来た?」

 

「!」

 

その言葉に榎沢は目を見開く。

 

 

 

「はいはい、2人ともそこまでー。」

 

それを小佐野が止める。

 

 

「今やることじゃないでしょ。MAPの選択権はうちなんだからしっかりしてよね。」

 

 

 

──

 

玉狛支部

 

「3人とも、準備OK?」

 

「うむ。」

 

「はいっ。」

 

「大丈夫です。」

 

今シーズンからの新生部隊、玉狛第2の三雲修、空閑遊真、雨取千佳は答える。

ROUND1では8得点と言う高得点をあげた玉狛第2。

しかし次の相手は、荒船隊、香取隊の中位部隊。

しかも、香取隊は元上位部隊だ。

ROUND1のように簡単にはいかないだろう。

 

「やれるだけのことはやったんだろ?勝とうぜ、相棒。」

 

そう言って空閑は三雲に拳を突き出した。

 

 

「ああ…!」

 

 

そしてROUND2夜の部が幕を開ける。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

当真勇→化け物。
真木理佐→興味。
生駒達人→爆ぜろ。
水上敏志→化け物。今度一局やろうや。
東春秋→強い。ボーダーも安泰だな。
宇井真登華→KY、表情筋死んでる。

当真勇←狙撃の腕を評価。
真木理佐←あんま話したことない。見た目まじ怖い。
生駒達人←面白い。旋空仲間。
水上敏志←油断ならない相手。
東春秋←次は決着つけます。
宇井真登華←後輩。もしかして舐められてる?


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND2 二宮隊VS影浦隊VS諏訪隊①

投稿遅れてすいません…!
まじで忙しくて…。
年度末って毎年こうなんですよね…。

あと花粉症やばい。
1週間でティッシュ4箱くらい使った気がするw


『皆さんこんばんは。B級ランク戦ROUND2上位夜の部、実況を務めます。三輪隊オペレーター、月見蓮です。解説席には太刀川隊、太刀川くんと鈴鳴第一の来馬さんをお招きしています。』

 

『どうぞよろしく。』

 

『…なあ、月見。中位の方で東さんが解説やるみたいなんだが。俺そっち見に行って『太刀川くん。挨拶して。』』

 

『…どうぞよろしく。』

 

『さて、上位夜の部は二宮隊、影浦隊、諏訪隊の三つ巴対決になりますが…諏訪隊はROUND1で8得点を獲得し上位に食い込んでいます。』

 

『うん。凄く強かったよ。特に…』

 

『榎沢隊員ですね。トリオン量は二宮さんと同じレベル。これでまだ高校1年生なのは末恐ろしいわね…。』

 

『間違いなく前シーズンの綾瀬川くんと同じ、今シーズンの台風の目になると思うよ。』

 

『MAPの選択権も諏訪隊にあります。太刀川くんはどこが選ばれると思う?』

 

『えぇ…外すとカッコ悪ぃからあんま予想とかしたくな『太刀川くん。』』

 

『…撃ち合い有利なとこだろ。諏訪隊は中距離寄りだからな。

 

 

…良くも悪くも…な。』

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「さて、作戦通りMAPは『市街地A』で行く。まあやり慣れてるからな。上位になって早速二宮隊と影浦隊だが…まあいつも通り日佐人が陽動、俺と堤でぶっ放す。」

 

「はい、『市街地D』で送信…っと。」

 

「…榎沢、テメェ今何しやがった?」

 

何やら聞き捨てならない言葉が聞こえた諏訪は榎沢に尋ねた。

 

「え?…いや別に。続けて続けて。」

 

「テメッ、D?!何勝手なこと…「ごめーん、もう送っちゃったー。」」

 

「コノヤロッ…!」

 

「ま、まあまあ諏訪さん…!!」

 

──

 

『ここで諏訪隊がMAPを「市街地D」に決定しました。』

 

『ROUND1でもここだったね。確かに榎沢さんの機動力と早撃ちなら納得かな。諏訪さんも堤くんも近距離寄りの銃手だしね。』

 

『笹森くんのカメレオンも上手く機能しそうね。…でも、上位上がり立てで癖の強いMAPを選んできたわね…。そう上手く行くかしら?相手はあの二宮さんと影浦くんよ?』

 

『…ああ、榎沢ってあの新型撃破ランキングの上位にいたあいつか!』

 

太刀川はようやく合点が行き、拳を掌に打った。

 

『太刀川くん…。』

 

『あいつ諏訪隊だったのか。ランク戦し(バトり)てーなぁ!』

 

太刀川は笑みを浮かべながらそう言った。

 

『…まあそれも1つの基準になるわね…。榎沢さんは大規模侵攻の際は単独で新型トリオン兵を7体撃破して一級戦功に選ばれているわ。単独の撃破数だけで言えば、特級戦功の空閑くんと太刀川くん次いで3位。入隊して半年も経ってないのにこれは異常な数字ね。』

 

月見はそう言って考え込む。

 

『そうだね。南部の人型倒せたのは彼女の功績が大きいよ。』

 

『見物だな…こりゃ。楽しみが出来たぜ。』

 

──

二宮隊作戦室

 

「いやー、榎沢ちゃんやばいですねー。とりあえず辻ちゃんは接敵したら即撤退だね。」

 

「逃げられるか分からないですけどね…。」

 

二宮隊銃手犬飼(いぬかい) 澄晴(すみはる)の言葉に、辻は困ったように返した。

 

「銃手としての腕なら俺以上ですねー。弓場さん並み…いや、トリオン量も二宮さんクラスだし、機動力も桁違い…。ボーダーでもトップクラスの銃手ですよ。」

 

犬飼は同じく銃手である榎沢をそう評価する。

 

「…『市街地D』…か。諏訪隊有利のMAPだな。」

 

「俺もメテオラ入れときます?」

 

「…いや、辻が入れておけ。榎沢がいる以上諏訪隊と接敵した場合、辻は別行動になる。…警戒すべきは榎沢、影浦隊だ。合流を優先していつも通り蹴散らす。いいな。」

 

「「「了解。」」」

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「諏訪隊とやるのは久々だねー。」

 

そう切り出したのは影浦隊銃手、北添尋。

 

「MAPはDかぁ。ユズルはどうする?」

 

「「まず、Dってどこ(だ)?」」

 

影浦と絵馬の声が重なる。

 

「ほら、デパートあるとこ。ユズルはやりづらいかな。」

 

「転送位置次第でしょ。なるべく外から狙うよ。」

 

「気を付けてよ、ほら、諏訪隊の新入りの銃手の子。すごく強くて浮いた駒から落としに来るみたいだから。」

 

「…」

 

絵馬はモニターに映る榎沢に視線を向ける。

 

「それに二宮隊もいるしね。」

 

「どこが来ようと関係ねえよ。喉元カッ捌くだけだ。」

 

「お前ら4点以上取れよ〜。」

 

そこにオペレーター、仁礼光が会話に加わる。

 

「柿崎隊は4点取ってるからな。綾瀬川より点取らねーと。

 

…あいつの弁当のおかず懸かってるからな。」

 

「あのさ、ヒカリちゃん。仲良いのはいいけど変な賭けしないでね?」

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「テメェ、勝手に決めやがったけど策はあんのか?」

 

「だから諏訪さん達はいつも通りでいいって。今日はROUND1で使わなかった奥の手も使うし。」

 

「オメーが強ェのは知ってるよ。…ただ二宮と影浦はそう簡単には行かねーぞ?」

 

「それこそ知ってるよ。綾瀬川センパイが興味を持つ場所だもん。ボーダー(ここ)は。」

 

そう言いながら榎沢は棒付きの飴に歯を突き立てる。

 

 

 

「…楽しめそうじゃん。」

 

 

そう言って飴を噛み砕いた。

 

──

 

『さて、転送準備が整ったわね。…転送開始。

 

 

…転送完了。B級ランク戦ROUND2上位夜の部…開始。』

 

 

 

──

 

 

 

…壁を見た。

 

 

失敗作(あたし)最高傑作(綾瀬川センパイ)の。

その綾瀬川センパイと同格の近界民。

 

ギリ…

 

あたしは歯を噛み締める。

 

 

気に入らない。

1人でも強い綾瀬川センパイが格下もいい所の柿崎隊にいるのが。

 

 

 

(何でお前はうちに入った?)

 

 

先程の諏訪さんの言葉を思い出す。

 

「…」

 

 

(オレは柿崎隊を抜ける気は無い。)

 

何がそこまで綾瀬川センパイを縛り付けるのだろう。

 

気持ち悪い。

仲間なんて足を引っ張るだけ。

 

そう、諏訪さん達はあたしの道具。

 

かつて綾瀬川センパイがしたようにあたしも道具を使い潰す。

 

柿崎隊も道具なんでしょ?綾瀬川センパイ。

 

足でまといの道具がいる状況。

土俵は一緒だよ?綾瀬川センパイ。

 

 

 

 

…それにしても…

 

 

 

 

 

「…ここにもっといい道具がいるのに。」

 

 

 

 

 

榎沢は冷たい声でそう呟くと、ハンドガンを取り出し、グラスホッパーを展開。

デパートに向けて、一気に駆け出した。

 

──

 

『早速動いたわね、榎沢さん。』

 

『緑川とまでは行かねえがかなり使いこなしてるな。射線なんてお構い無しに動き回ってやがる。』

 

『サイドエフェクト、「超直感」ね。その特性は勘に委ねれば委ねるほど勘が当たりやすくなること…だったかしら。…二宮さんの1番苦手なタイプね。』

 

『そうだね。ROUND1でもバッグワームを着けた香取隊、うちの太一を見つけ出してる。…榎沢さんの前じゃバッグワームも無意味だよ。…多分狙撃も効かない。』

 

──

 

『瑠衣ちゃんセンパーイ。デパートの中何人?』

 

『2人だね。…ほんとに1人で行く気?』

 

『行くよー。2点取ってくるから任せてよ。』

 

そう言って榎沢は小佐野との通信を切る。

 

──

 

『目的地はデパートね。中には犬飼くんと北添くんがいるわね。』

 

『銃手同士の撃ち合いが見れるかもね…。』

 

来馬はそう言って顎に手を当てる。

 

『ポイントで言えば北添くんが1番。犬飼くんもマスタークラスだけど…有利なのはポイントが圧倒的に少ない榎沢さんね。』

 

──

 

『二宮さん、デパートに誰か来ますね。どうします?』

 

『…動きからして榎沢だろう。バッグワームも意味が無い。位置を教えてルートを絞る方が得策だろう。バッグワームは付けずに奇襲に備えておけ。俺もそちらに向かっている。それまで耐えしのげ。…行けるな?』

 

『犬飼、了解。』

 

 

──

 

『カゲ、ヒカリちゃん。デパート来てるよ〜!』

 

『ユズル、撃てそうか?』

 

『まだ高台取ってないし。それに今チラッと見えたけどあのスピードを撃ち抜くのは無理かな。位置バレしてもいいなら撃ってみるけど?』

 

『それはやめといた方がいいかも。…わかった僕が引き受けるよ。もう1人いるみたいだから急ぎできてね。こっち来るのが榎沢さんだったら、もう1人が諏訪隊だとかなりしんどいから。』

 

『チッ、死んだらぶっ殺すぞ。』

 

『うーん…ゾエさん頑張る。』

 

──

 

「あー、縦に広いから何階にいるのか分かんないのか…。」

 

榎沢はデパートの周りをグラスホッパーで飛びながら考える。

 

 

 

 

「…ま、勘で行けるか。」

 

 

そう言って榎沢は飛び回りながら、ガトリング砲を生成する。

 

 

 

「…炙り出してやる…。」

 

 

 

 

何の変哲もないデパート。

 

 

 

 

銃身の回転と共に、デパートにトリオンの嵐が降り注いだ。




榎沢一華トリガーセット

メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド(ガトリング砲)、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(ガトリング砲)、メテオラ(グレネードガン)、ハウンド(アサルトライフル)、シールド

強気のバッグワーム無しです。

4月になれば落ち着く予定(のハズ)なので暫し待たれよ!

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND2 二宮隊VS影浦隊VS諏訪隊②

まじで遅くなりすいません。
いやー…


…忙しいッスねw


『やばいですね、デパートの周り飛び回ってます。いつバレてもおかしくないかと…。』

 

犬飼は二宮に通信を入れる。

 

『榎沢も待ち伏せを警戒しての事だろう。』

 

『取り敢えず仕掛けてくるまでは動かず待機してます。』

 

『分かった。射程に入り次第撃ち落とす。巻き込まれるなよ。』

 

『犬飼、了か…』

 

 

その瞬間、窓ガラス、物が壊れる音が犬飼の通信から響き渡る。

 

『犬飼…?』

 

 

二宮はデパートに視線を向ける。

 

 

二宮の目に映ったのは、デパートに向けて放たれる弾幕。

ここからでも分かるほど凄まじい威力のものだった。

 

 

 

──

 

『榎沢さんが仕掛けたわね、これはガトリング砲…ね。』

 

『玉狛の木崎さんが使ってるやつだね。トリオン効率度ド外視の威力と連射に全振りの銃手トリガーだよ。』

 

『ハハッ、あのトリオンでこんなことされたら一溜りもねぇなぁ!』

 

太刀川は呆れたように笑った。

 

 

──

 

『犬飼、応答しろ。』

 

『っと…ふぅ…あ、二宮さん?何とか生きてます。でも結構トリオン削られました。また狙われたら死ぬ自信あるんでバッグワームしますね。』

 

犬飼は柱の陰に隠れ、バッグワームを羽織りながら二宮に通信を入れた。

 

『何があった?榎沢か?』

 

『はい。木崎さんと同じガトリング使ってますねー。あ、もう1人はゾエです。チラッと見えました。シールドで手一杯で狙うとか無理ですけど。』

 

『生きてるならそれでいい。

 

 

…俺も射程に入った。』

 

そう言って二宮は通信を切ると、トリオンキューブを生成する。

 

 

「ハウンド。」

 

 

──

 

『どひー!カゲ、死ぬ死ぬ!』

 

北添は影浦に通信を入れる。

 

『無茶苦茶しやがるなー。』

 

仁礼は冷や汗をうかべてそう言った。

 

『チッ、あの銃手か。』

 

『もう1人は二宮隊の誰かみたいだね。じゃなきゃあんな無差別攻撃しないよ。』

 

犬飼等しく、柱の陰に隠れながら、北添もバッグワームを羽織った。

 

『…目立ち過ぎだろ。ユズル。』

 

『うん。』

 

絵馬は縦横無尽に飛びまわる榎沢にスコープを向けた。

そして榎沢の脳天目掛けてイーグレットを放った。

 

 

 

「!」

 

 

しかし、榎沢はシールドでそれを受ける。

 

「今日もあたしの勘は絶好調だね。」

 

榎沢はデパートの屋上に着地すると、グレネードガンを生成。

絵馬のいる建物に山なりに放った。

 

「およ?」

 

絵馬の逆サイド。

 

榎沢目掛けて複数の弾が降り注いだ。

 

 

「アハッ!いいね…!」

 

榎沢はアサルトライフルに持ち変えると、降り注ぐハウンドに目掛けて乱射。

1つずつ的確に撃ち落とす。

 

 

──

 

『目立ちすぎたわね。絵馬くんの狙撃。二宮さんのハウンドが榎沢さんを追い詰める展開。このままじゃ2対1になるわ。』

 

『影浦くんもデパートに向かってるしね。』

 

『他の諏訪隊の動きに注目ね。』

 

──

 

『チッ、あのヤロー。好き勝手やりやがって…!日佐人。』

 

『了解です。最短で向かいます。』

 

『幸い二宮と絵馬の位置は分かってる。ビビらず行けよ。』

 

『はい。』

 

諏訪は今度は堤に通信を入れる。

 

『俺たちは合流だ。』

 

『了解です。』

 

──

 

降り注ぐハウンド。

榎沢は全て撃ち落とすと、アサルトライフルに持ち替え、デパートの内部に侵入する。

 

「あ、こっち来たの?これはまずい。」

 

そこにいた犬飼はアサルトライフルを榎沢目掛けて乱射。

榎沢もシールドで受けながら、犬飼目掛けてアサルトライフルの引き金を引く。

 

 

──

 

『今度は犬飼くんと榎沢さんの撃ち合いね。太刀川くんはどっちが勝つと思う?』

 

『まあ榎沢だろ。正面からの撃ち合いはトリオンが多い方が有利だ。』

 

『そうだね。犬飼くんもガードに手一杯になってきた。』

 

『でもまあ…ゾエもいるからな。』

 

──

 

犬飼と榎沢の撃ち合い。

その榎沢の背後から、バッグワームを羽織った巨体が、アサルトライフルを向けた。

 

「うわ、邪魔しないでよ。」

 

榎沢は背中にシールドを展開。

現れた北添のアステロイドを防ぐ。

 

『ゾエと榎沢ちゃんを挟みました。このまま畳み掛けます。』

 

犬飼は二宮に通信を入れると、シールドからアサルトライフルに切りかえ、発砲。

 

「もー、ウザイなぁ。」

 

榎沢はグラスホッパーを展開。

狭い室内を縦横無尽に飛び回る。

 

「ここは力合わせて榎沢ちゃんやろーぜ、ゾエ。」

 

「大丈夫?チーミングになんない?」

 

「大丈夫っしょ。隙あらば狙うし。」

 

「ちょ、怖。」

 

軽口を叩きながらも、2人は榎沢にアステロイドを乱射する。

 

「どこ狙ってんの?下手くそ。」

 

榎沢はグラスホッパーの数を増やし、乱反射。

その合間にガトリング砲を生成する。

 

 

そして着地すると、シールドを張りながら、ガトリング砲を2人に向ける。

 

「うわ、ヤバっ!!」

 

2人はフルガードに切り替え、榎沢から放たれる弾幕を受ける。

 

──

 

『最初から飛ばしすぎじゃねえか?このままじゃトリオン切れるぞ。』

 

『まあ…だからこれだけ目立ってるんでしょうね。』

 

太刀川の言葉に月見はそう返す。

 

『この試合は三つ巴。榎沢さんが目立って敵を集める。…短期決戦ならトリオンはそこまで気にしなくて大丈夫よ。ましてや二宮並みのトリオン量なら尚更。』

 

──

 

「これはやばい…!」

 

『カゲー!死ぬ死ぬ!!』

 

榎沢のガトリング乱射。

犬飼、北添の2人はフルガードで、身動きが取れずに削られていく。

 

「粘るなー。面倒いしトリオンの無駄だから早く死んでくんない?」

 

榎沢はにっこりと笑みを浮かべる。

 

『一華ちゃん、そっち誰か行ってるよ!』

 

小佐野の通信が榎沢に入る。

 

「チッ…面倒くさ…。」

 

犬飼の背後の窓ガラスが割れる。

 

「…カゲ、俺今ガードに手一杯なんだけど?」

 

「ハッ、そりゃざまぁねえな。…とっとと死ね。」

 

現れた影浦はガードに手一杯の犬飼にスコーピオンを伸ばした。

 

「これはウザイ。…すんません、二宮さん。」

 

スコーピオンに貫かれ、犬飼はここで緊急脱出。

影浦隊の2人と榎沢、2対1の形となる。

 

「1点減ったと思ったけどボサギザの隊長さんが来たから変わらないね。」

 

「あ…?」

 

「あたしから横取りしたんだから高くつくよ。

 

 

…死ね。」

 

「こっちのセリフだ、クソが。」

 

影浦は榎沢にスコーピオンを伸ばす。

 

榎沢はそれを避けると、影浦にハンドガンを発砲。

それを北添のシールドが防ぐ。

 

そして北添も榎沢目掛けてアステロイドを乱射する。

 

「邪魔。」

 

榎沢はハンドガンを北添目掛けて投げる。

 

「どぅえ?!」

 

突然の奇行に、北添は対応できず、ハンドガンは北添の顔に直撃。

その間に榎沢はグラスホッパーで北添と距離を詰める。

 

「テメェ、俺を無視してんじゃねえよ!」

 

銃を手放した榎沢。

そんな榎沢に影浦のスコーピオンが振り下ろされる。

 

「っと…それがマンティスってやつ?」

 

榎沢は後ろに飛び退くとガトリング砲を生成する。

 

「カゲ!あれはまずいよ!」

 

「チィ…!」

 

影浦の体に攻撃の感情が刺さる。

2人はフルガードで受けながら下がる。

 

榎沢の高いトリオンから放たれるガトリング砲での弾トリガー。

 

2人はガードに手一杯となる。

 

『ゾエ、俺が仕留める。ガードしろ。』

 

『了解。頼んだよ。』

 

割られた北添のシールド。

しかし今度は影浦の前にシールドが張られる。

 

そして影浦は榎沢にスコーピオンを伸ばした。

 

 

 

「うーん、ここかな?」

 

 

 

榎沢の首元。

そこに極小のシールドが張られる。

極小の集中シールドにスコーピオンは突き刺さるが、高いトリオンの集中シールドを割ることは叶わなかった。

 

「チッ…!」

 

「えぇ?ドンピシャじゃん。」

 

北添はそう言って冷や汗を浮かべる。

 

 

『カゲ!そっちでトリオン反応出たぞ!レーダーに映ってる!』

 

『あ?こっちには誰も…カメレオンか。』

 

もう一度伸ばされたスコーピオンを横から現れた笹森の弧月が砕く。

 

「榎沢!」

 

「日佐人くんじゃん。グッドタイミング。」

 

そう言うと榎沢は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「あの人のサイドエフェクトが邪魔だったからさ。

 

 

…良いバリケードだよ。」

 

 

 

「…え…?」

 

 

 

影浦と榎沢の間に立った笹森。

 

 

そんな笹森のトリオン体を突き破りながら放たれた榎沢の威力重視のガトリング砲によるアステロイド。

それは間に立った笹森により、サイドエフェクトの恩恵を活かすことなく、影浦のトリオン体を穴だらけにした。

 

 

 

 

「ッ…イカレ野郎が。仲間ごとやりやがった…!」

 

 

 

 

 

「ありがとう日佐人くん。今日のMVPは日佐人くんだよ。それに…

 

 

 

 

 

 

…これで取られる点も減るね。」

 

 

「っ…!」

 

笹森が緊急脱出する直前。

 

榎沢一華と言う怪物は小悪魔の様な笑みを浮かべ、そう言った。




ほんとに遅くなり申し訳ないです。
なるべく早めに投稿するようにしますんで何卒。
4月からは落ち着く(予定です)ので暫し待たれよ!

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B級ランク戦ROUND2 二宮隊VS影浦隊VS諏訪隊③

まあ早めに投稿出来た方ではないでしょうかw


『ここで影浦隊長が緊急脱出。…笹森くんも…ね。』

 

影浦の緊急脱出を知らせつつ、月見は目を細める。

 

『事故…かな?』

 

来馬は苦笑いを浮かべる。

 

『事故じゃねえだろ。明らかにわざと巻き込みやがった。…カゲ相手にはいいやり方かもしれねえが…

 

 

…褒められたやり方じゃねえな。』

 

──

 

『オイ…榎沢テメェ…どう言うつもりだ?』

 

『え?あー…ごめん、うっかり巻き込んじゃった。』

 

諏訪の問いに詫びれる様子もなく、榎沢はそう言う。

 

『テメ…『待ってください諏訪さん。』』

 

青筋を浮かべた諏訪を止めたのは既に緊急脱出した笹森だった。

 

『俺は結果的に緊急脱出しました。でも…影浦先輩相手にはいいやり方だったと思います…!今は…ランク戦に集中してください…!』

 

作戦室で笹森は俯きながらそう絞り出す。

 

『日佐人…チッ…わーったよ。お前がそれでいいなら今は何も言わねえよ。

 

 

…だが覚えとけよ榎沢…そんなやり方で勝てるほどランク戦は甘くねえぞ?』

 

『…』

 

 

──

 

「うわ…榎沢さん日佐人くんごとやっちゃったよ…?」

 

観戦席でそう呟くのはB級1位柿崎隊オペレーターの宇井真登華。

 

「…事故…じゃないよね?清澄先輩。」

 

「なんとも言えないな。誤射…と言われればそれまでだ。」

 

宇井の問いに答えたのは同じく柿崎隊完璧万能手、綾瀬川清澄だった。

 

「まあ影浦先輩相手だったらいいやり方…なのかな?アハハ…。」

 

宇井は苦笑いで頬をかく。

 

「…悪くないんじゃないか?…ぶっちゃけカゲさんの回避能力はあーいうやり方をやらざるをえないほど手強い。それに…取られる点も減るからな。」

 

「え…?清澄先輩も榎沢さんのやり方に賛成なの?」

 

「…あくまで手段の1つに過ぎないな。真似するつもりはない。」

 

「そっか…ちょっと安心。…清澄先輩表情筋死んでるから本気なのか冗談なのか分かんないや。」

 

「お前最近ちょっとキツいよな…。」

 

「気の所為じゃない?…でも清澄先輩もあんなやり方されたら厳しいんじゃない?」

 

「…それはないな…

 

 

 

あんなやり方しかできない時点でオレの敵じゃあない。」

 

 

 

 

 

綾瀬川は冷えきった無機質な目を細めて、モニター映る榎沢を見た。

 

「…中位の方を見に行かないか?」

 

そう言って綾瀬川は立ち上がる。

 

「え?最後まで見てかないの?」

 

「この後の展開は読めるさ。

 

 

 

…榎沢じゃあの人には勝てない。」

 

そう言って綾瀬川は出口に向かって歩き出した。

 

「あっ、待ってくださいよー。」

 

 

宇井を待ちつつ、綾瀬川はモニターに視線を向ける。

 

 

 

 

「本当に…

 

 

 

 

…お里が知れるな。」

 

 

──

 

(そんなやり方で勝てるほどランク戦は甘くねえぞ?)

 

諏訪の言葉を思い出す。

 

「あー…うるさいなぁ…。ねえ、あたしの何がいけなかったと思う?あなたの隊長さん相手ならいい作戦だと思うんだけどなー?」

 

榎沢はハンドガンを向けながら北添に尋ねる。

 

「えぇ…?僕に聞くの?」

 

北添はそう返しつつ、榎沢にアサルトライフルを向ける。

 

「うん。」

 

そう言いながら榎沢はハンドガンを早撃ち。

北添のアサルトライフルの銃口に刺さり、アサルトライフルは暴発。

北添の腕を吹き飛ばした。

 

「っ…ま、まあカゲ相手にはいいんじゃない?…チームワークとか絆そう言う問題じゃないの…?ちょ、答えてあげてるんだから撃たないで…!」

 

利き手を失った北添は、シールドで榎沢の弾を受けながら、そう返した。

 

「チーム…ね。」

 

榎沢はそう呟いた後、グラスホッパーを展開。

北添との距離を詰めると、鳩尾に蹴りを入れる。

 

 

 

 

 

「…くっだらない。」

 

 

 

 

そう言って、高火力の早撃ちを繰り出す。

虚をつかれた北添はシールドも間に合わず、トリオン体を撃ち抜かれた。

 

 

 

「みーんな道具に過ぎないのに…。

 

…そうだよね?綾瀬川センパイ…。」

 

 

──

 

『北添隊員もここで脱落…。影浦隊は後絵馬くんだけになったわね。』

 

『二宮隊は犬飼くんが、諏訪隊は笹森くんが落ちてるけど…エースを失った影浦隊はかなりしんどいね。』

 

『残った諏訪隊は絵馬くんを取りに行く動きかしら?』

 

モニター見て月見が太刀川に尋ねる。

 

『絵馬は最初に撃ってるからな。大体の位置は割れてるだろ。だがこれは…』

 

──

 

「!」

 

合流した諏訪、堤の2人をまとめて両断するように旋空が放たれる。

 

「っ…ぶねぇ…。お出ましだぜ、堤。」

 

諏訪、堤は現れた刺客にショットガンを向ける。

 

「辻1人か?」

 

現れたのは二宮隊攻撃手、辻新之助。

ボーダーでも特に援護寄りの攻撃手…

 

 

…のはずだった。

 

 

『二宮さん、諏訪隊を捉えました。

 

…戦闘開始します。』

 

目を細めた辻に、諏訪、堤はショットガンの引き金を引く。

 

「…」

 

低く、そして斜めに。

辻は堤の懐に切り込む。

 

「!」

 

堤の腕が、ショットガンごと落とされる。

 

「堤!ヤロォ…!」

 

諏訪のフルアタック。

辻はシールドで受けつつ、受けきれない散弾を弧月で弾く。

 

 

 

『諏訪さん!』

 

 

小佐野の通信が、その男の到着を知らせる。

 

 

「…サラマンダー。」

 

 

そして降り注ぐトリオンの嵐。

 

「やべえ…!来やがった…!」

 

個人総合2位にして、NO.1射手、二宮匡貴。

射手の王が諏訪隊の前に立ちはだかった。

 

 

 

…だが、今回の敵は二宮ではなかった。

 

 

 

「新戦術を試すぞ。援護する。諏訪隊を蹴散らせ。」

 

「…了解。」

 

 

 

 

辻新之助

 

弧月 9784

 

 

 

 

ボーダートップクラスの弧月使い、綾瀬川清澄のランク戦仲間にして好敵手である辻。

綾瀬川に揉まれつつも辻は、着実に経験を重ね腕を上げた。

今の辻は、B級トップクラスのサポーター改め、トップクラスの攻撃手。

 

その立ち振る舞いは、さながら王を護る騎士の様だった。

 

B級2位部隊の伏兵は、王の援護を受けて諏訪隊に牙を剥く。

 

 

──

 

『二宮くんが援護…?!』

 

解説の来馬は思わず声を上げる。

 

『辻くんが主体で攻撃するみたいね。』

 

『立ち振る舞いっつーか、さっきの堤への切り込み…腕を上げやがったな…辻のやつ。』

 

 

──

 

「ハウンド。」

 

「っ…!」

 

二宮の高火力のハウンドが諏訪、堤に降り注ぐ。

 

それを諏訪、堤はシールドで受けるが、その弾幕を抜けるように、辻が切り込む。

諏訪は、ショットガンを盾にして、弧月を受ける。

 

「オイオイ…冗談きついぜ…。前までは二宮のガードに徹してた癖によ…。」

 

「俺は攻撃手なので。」

 

辻は再び距離を取る。

そして今度は二宮の弾幕が襲いかかる。

 

「クソが…!」

 

諏訪、堤はシールドを構える。

 

だがその視界の端。

弧月を構える辻が映る。

 

二宮隊の新スタイル、二宮の弾幕、辻の旋空弧月による超攻撃。

 

 

二宮の弾幕で、シールドを誘ったところに、辻の鋭い旋空が放たれる。

 

 

奇しくも、二宮隊をB級2位へと突き落とした、綾瀬川のスタイルに似たものだった。

 

 

だが、二宮の高トリオンによる弾幕は躱すという選択すら取らせない。

もはや動くことすらままならない弾幕に、堤は為す術なく辻の旋空に両断された。

 

「諏訪さん、あと頼みます…!」

 

堤は死に際、二宮目掛けてフルアタック。

二宮は姿を見せない絵馬を警戒してか、サブのシールドを残す為、弾幕を止めてシールドを張る。

 

弾幕の止んだ刹那、諏訪は辻にショットガンを向けた。

 

「悪ぃな、一緒に死んでもらうぜ…!」

 

だが、それを甘んじて受けるほど、B級のエリート攻撃手は甘くない。

 

辻はシールドで受けつつ下がり、旋空の構えを取る。

 

 

その刹那、諏訪のトリオン体は、遠くからの砲撃に貫かれた。

 

「がっ…?!」

 

「ちっ…。」

 

二宮はトリオンキューブを四角錐に、4つに分割。

 

「メテオラ。」

 

砲撃の放たれたビルに放つ。

 

 

──

 

「っ…!」

 

放たれた爆撃に、諏訪を落とした張本人、絵馬ユズルは顔を覆う。

 

 

「おー、いい腕だねー。さすがB級上位。」

 

 

パチパチと可愛らしく手を叩き絵馬に話しかけたのは先程影浦、北添を葬った、榎沢だった。

 

「でも残念。逆転劇はここでお終いみたいだね。」

 

榎沢はにっこりと笑みを浮かべ、絵馬にアサルトライフルを向ける。

 

「お疲れー。」

 

そして乱射。

絵馬もここで緊急脱出となり、影浦隊は榎沢の手により全滅となった。

 

 

そして榎沢はグラスホッパーを展開。

ラストバトルへと向かうべく飛び立った。

 




辻(え?女の子と戦うの…?…詰んだ。)

絵馬(横取りの絵馬とか言われてそう…。)

綾瀬川(辻めっちゃ強くなってんじゃん!最後まで見てけば良かった!)


各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢)
諏訪洸太郎→ヤロォ…
北添尋→ヤバすぎる銃手。
二宮匡貴→警戒。
影浦雅人→イカれてる。
絵馬ユズル→イカれてる。


諏訪洸太郎←うるさいなぁ。
北添尋←デカい。
二宮匡貴←ポケインスーツの人。
影浦雅人←ボサギザ。
絵馬ユズル←チビ。


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B級ランク戦ROUND2 二宮隊VS影浦隊VS諏訪隊④

少しずつ投稿ペース戻していきます!


『堤隊員、諏訪さんに次いで絵馬くんも緊急脱出。これは…榎沢さんとしては逃げ切りも視野に入れていいところね。』

 

『…本人にその気はないみたいだね。』

 

『おいおい、バッグワームも無しに突っ込んでくぜ。』

 

太刀川は呆れたようにそう言う。

 

『これは予測だけど…彼女、バッグワームをセットしてないんじゃないかしら?』

 

『はぁ?!バッグワーム入れてないって…なんでだよ?』

 

『予想って言ってるでしょ。』

 

 

──

 

榎沢はグラスホッパーで、二宮、辻が諏訪隊と戦っていた戦場の、近くのビルに着地すると、ガトリング砲を取り出す。

 

「はっけーん。」

 

すっと目を細める。

 

 

「ハウンド。」

 

 

そのまま榎沢は2人に向けてガトリング砲によるハウンドを放つ。

 

 

「…」

 

それを見据えた二宮は何も言わずに、シールドを展開。

榎沢のハウンドを正面から受ける。

 

「流石に堅いか。」

 

そう言ってガトリング砲を下げると、今度は二宮がトリオンキューブを展開。

 

榎沢目掛けて放つ。

 

「撃ち合い?…いいね!!」

 

榎沢は瞳孔を開いた、獰猛な笑みでそう笑うと、アサルトライフルを構え、グラスホッパーを展開。

空中を飛びながら、二宮のハウンドを撃ち落とす。

そして、進路を変え、二宮、辻目掛けて飛ぶ。

 

二宮はさらにトリオンキューブを分割。

 

「辻、ガードしろ。」

 

「了解。」

 

こちらに放たれるハウンドを辻がシールドで防ぐ。

 

その間に、二宮はトリオンキューブを合成。

 

 

 

強化追尾弾(ホーネット)。」

 

 

ハウンドとハウンドの合成弾、ホーネット。

それは、不規則な動きでこちらに飛んでくる、榎沢をより正確に追尾し、榎沢に襲いかかる。

 

「っ…これが合成弾ってやつ…?」

 

榎沢はグラスホッパーでホーネットを引き付け、シールドを張りながら、別のビルを射線に入れ、受け切る。

 

 

 

…そして射線にビルが入った時、榎沢は方向を急転換する。

 

 

 

 

 

 

──

 

『いや、どう足掻いても榎沢に勝ち目はねえだろ。』

 

『…まあ厳しいでしょうけど…辻くんは攻撃には参加出来ない…相性的に。榎沢さんが勝つには榎沢さんの間合い、25mまで近付いて、二宮さんの弾を受け切ること。そこまで行けば、後は早撃ち。…それなら榎沢さんに分があるわ。』

 

──

 

方向を急転換した榎沢はビルの窓を突き破り着地すると、辻、二宮目掛けて走る。

 

 

(距離35。後10m…。)

 

榎沢は興奮気味に、舌を出し、唇を舐める。

 

榎沢はアサルトライフルで、二宮の弾を撃ち落としつつ、シールドを展開。

左手は、榎沢が一番得意なハンドガン(獲物)に手を掛ける。

 

右往左往、走りながら着実に距離を縮める。

 

(まずは邪魔な攻撃手…!)

 

弾幕の刹那の隙。

榎沢は、アサルトライフルを辻に向け発砲。

辻はシールドで受けつつ後ずさる。

 

『俺のことは気にしないでください。』

 

『…元よりそのつもりだ。

 

 

 

…死ぬなよ。隊長命令だ。』

 

二宮は一瞬辻に目配せするとそう言った。

 

『…辻、了解。』

 

 

 

(距離30…やばい火力だなぁ…正直舐めてたかも。)

 

だが榎沢が見せるのは笑み。

自分以上の火力を誇る射手の王に、榎沢は自然と笑みを見せていた。

 

 

(あと3m!)

 

 

ここで榎沢はフルガードに切り替える。

 

 

 

(2…1…)

 

 

 

 

「ゼロ!」

 

榎沢は笑みを見せ、急停止。

左手でホルスターの拳銃を弾く。

 

 

 

 

 

──榎沢一華のサイドエフェクトは『超直感』。

 

その性質は曖昧であるが、曰く、勘に委ねれば委ねるほど、勘が当たりやすくなるらしい。いわば天啓。

だが、この瞬間榎沢が委ねたのは神ではなく自分だった。

 

 

 

「かかったな。」

 

 

──故にサイドエフェクトは機能しなかった。

 

 

「!」

 

榎沢の左右に無造作に置かれたトリオンキューブが光り輝く。

 

 

──

 

『置き弾…?!』

 

『二宮さん…のじゃないわね。』

 

──

 

左右に置かれたのは辻が入れていたメテオラのトリオンキューブ。

 

「っ!!」

 

榎沢はすぐさまフルガードに切りかえ、メテオラを受ける。

 

 

 

「お前の火力、機動力は確かに脅威だ。

 

 

 

…だが…チーム戦を知らない一匹狼など俺の敵じゃない。」

 

メテオラに気を取られた榎沢。

そんな榎沢に二宮の火力から放たれるアステロイドは無慈悲に降り注いだ。

 

──

 

『トリオン漏出甚大──』

 

初めて聞く音声だった。

 

──は?

 

 

 

 

 

無理。このまま終われるわけがない。

 

 

 

 

 

『お前は清澄にはなれん。最高傑作はただ1人…清澄だけだ。お前はただ清澄を連れ戻すことだけを考えろ。ランク戦などど言う下らん遊びに時間を費やす暇があるのならな。

 

…これ以上私を失望させるなよ?一華(失敗作)。』

 

 

 

 

 

「本当に…

 

 

 

…皆うるさい!」

 

 

 

 

弾幕による土埃を割くように。

 

 

グラスホッパーを蹴った榎沢。

右足は吹き飛び、腕も右腕のみ。

緊急脱出寸前の榎沢は狂気的な笑みを浮かべて二宮にハンドガンを向ける。

 

 

だがそれは下からの射撃によりハンドガンを腕ごと落とされる。

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

「残念だが…

 

 

 

 

…無駄な足掻きだ。」

 

 

 

 

 

 

 

そして榎沢の緊急脱出の光が空に上がった。

 

 

 

こうして激動のROUND2上位夜の部は幕を閉じた。

 

 

『ここで試合終了。4対3対2。B級ランク戦ROUND2上位夜の部は二宮隊の勝利です。』

 

 

 

二宮隊

 

 

二宮 1P

犬飼 0P

辻 1P

生存点+2P

 

合計 4P

 

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 0P

笹森 0P

榎沢 3P

 

合計 3P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 1P

北添 0P

絵馬 1P

 

合計 2P

 

 

 

──

 

『最後…惜しかったね…。』

 

来馬が息を呑んでそう言った。

 

『そうかしら。』

 

『え?』

 

月見の返しに来馬はそう返す。

 

『読んでただろ。二宮も。だからこその二重の置き弾だ。』

 

太刀川は顎に手を当ててそう分析する。

 

『でも榎沢さんの腕も確か。荒削りだし課題も多いけど⋯その課題を克服すれば榎沢さんはボーダーでもトップクラスのエースになれると思うわ。それこそ二宮さんや太刀川くんみたいな。』

 

 

──

 

「…」

 

緊急脱出用のベッドに横たわったまま、榎沢は考え込む。

 

NO.1射手、二宮匡貴。

トリオンの数値は14。それに対して榎沢は13。

この1の差なのかもしれない。

 

 

「ダメだ…あたしが綾瀬川センパイに勝ってるのなんて…トリオンだけなのに…。」

 

いつになく覇気のない榎沢の声がベッドルームに響く。

 

 

「榎沢…?」

 

そこに笹森の声が。

 

「…今電気付けないで。

 

 

…あたし裸だから。」

 

 

「っ〜?!わ、悪い…!!」

 

暗くてよく見えないが、笹森はおそらく顔を赤面させて出ていく。

もちろん榎沢は裸な訳がなく、服を着ている為杞憂であるが。

 

 

 

榎沢はゆっくりと起き上がる。

 

 

 

(チーム戦を知らない一匹狼など俺の敵じゃない。)

 

(チームワークとか絆とか…そう言う問題じゃない?)

 

 

 

 

 

「っ!」

 

榎沢は拳を壁に打つ。

 

 

 

 

「うっざ。」

 

 

 

 

 

 

──

 

『二宮隊は辻が良かったな!あいつあんな強くなってたのか!』

 

『僕がたまに本部のランク戦ブースに来た時は、よく綾瀬川くんと一緒にいたからね。』

 

来馬は思い出すようにそう言った。

 

『綾瀬川…ね。いいねえ、まとめて相手してやるか。』

 

『なんで上からなのよ。』

 

 

──

 

二宮隊作戦室

 

「お疲れー、辻ちゃん。そっこー死んじゃってごめんね。」

 

作戦室に戻った辻に犬飼が謝る。

 

「問題ありません。新戦術も試せましたから。」

 

「おっ!期待してるよ。エース攻撃手。」

 

「綾瀬川とやり合ってたおかげですよ。てかエースは二宮さんでしょ⋯。」

 

そう言って辻は二宮に視線を向ける。

 

「今回は辻を主軸に置いたパターンだ。犬飼が生き残っていればあいつ(・・・)の対策も試せたんだがな。」

 

「すんません。」

 

「いい。手の内はそう見せるものでは無い。」

 

そう言って二宮は総評に耳を傾けた。

 

 

──

 

『影浦隊はまあ悪くなかったんじゃないかしら?犬飼くんを落とすタイミング、絵馬くんの狙撃。漁夫の利を上手く取ったわね。』

 

『それ褒めてんの?』

 

『あら?ランク戦において横取りは一番効果的な点の取り方だと思うのだけれど?』

 

『へいへい。』

 

──

 

「おいおい、2連敗かよ〜。綾瀬川の弁当食えねえじゃねえか!」

 

「あぁ?!知るか!つーか勝手に変な賭けしてんじゃねえよ!」

 

影浦はそう言ってドカッと座る。

 

「いやー、あんなカゲ対策があるなんてねー。ゾエさんびっくり。」

 

「対策なんて言える代物じゃねえだろーが。あんなイカれたやり方あの女しかやらねえだろ。」

 

「えー?でも今回で有効なのが明るみになっちゃったよ?東さんとか綾瀬川くん辺りが真似てきそうな気もするけど?」

 

 

 

「…その2人もれなくカゲさんの回避能力効かないよね。」

 

 

 

──

 

『さて、これにてB級ランク戦ROUND2上位夜の部を終了します。解説は三輪隊、月見が。解説は鈴鳴第一、来馬さん、太刀川隊の太刀川くんでした。』

 

『『ありがとうございました(ー)。』』

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「じゃ、お疲れー。」

 

そう言って榎沢は出口に向けて歩き出す。

 

「…」

 

しかし、諏訪が出口の前に立ち塞がる。

 

「…何?」

 

「何じゃねェだろーが。

 

 

 

 

 

 

…座れ。」




後書きェ…!
何を書けばいいんや…!


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND2 香取隊VS荒船隊VS玉狛第二

玉狛の試合です!
あんまり原作と変わりません。

まあちょっと違うので。


⋯てかまあまあ違うか。


これはB級ランク戦上位夜の部が1P差であるが、絶対的な強さを見せ二宮隊が制する少し前。

榎沢と、二宮隊のラストバトルが始まろうとしている裏ではB級中位のランク戦が行われていた。

 

「こっちは中盤ってとこか。」

 

「香取隊と荒船隊と…玉狛だよね。」

 

観戦席に来た綾瀬川、宇井は空いている席を探す。

 

「!、ししょー。」

 

そう声をかけたのは、A級6位加古隊攻撃手の黒江双葉。

 

「お、よー、アルティメットオールラウンダー。」

 

「なんだそれ?」

 

黒江の隣にいた米屋陽介の言葉にそう返す。

 

「いやー、トラッパーまで出来たらパーフェクトどころじゃないだろ?だから俺が考えてみた。」

 

「そんな幼稚臭いポジション勘弁だ。」

 

綾瀬川は視線を米屋の隣に移す。

 

「あ、ど、どうも。綾瀬川先輩。宇井さん。」

 

「古寺じゃーん。久しぶりー。」

 

米屋の隣にいたのは三輪隊狙撃手、古寺(こでら) 章平(しょうへい)

宇井がヒラヒラと手を振る。

 

「宇井先輩もこんばんは。」

 

「こんばんは、双葉ちゃん。」

 

そう言って綾瀬川と宇井は黒江達の上の席に座る。

 

「上位の方はどうよ。」

 

「…見るまでもないな。」

 

そう言って綾瀬川は目を細めた。

 

「…へえ。」

 

「…」

 

酷く冷たい目をする。

そう思いながら、古寺は冷や汗を浮かべながら息を飲む。

 

ブラックトリガー捕獲作戦。

結局のところ失敗に終わったこの作戦で、古寺は奈良坂と共に城戸派として参加。

しかし、忍田本部長派の介入、迅悠一のブラックトリガーにより撤退を余儀なくされた。

 

そこに切り札として投入されたのが、古寺の視線の先で冷たい目を細める綾瀬川清澄だった。

圧倒的な戦闘力、頭脳、判断に迷いのない冷酷さ。

城戸派の思想を形にしたような男。

 

それが古寺にとっての綾瀬川清澄という男の印象だった。

 

 

 

「…玉狛リードか。」

 

綾瀬川はモニターを見ながらそう呟く。

 

 

香取隊

 

香取 1P

若村 0P

三浦 0P

 

合計1P

 

 

荒船隊

 

荒船 0P

穂刈 0P

半崎 0P

 

合計 0P

 

 

玉狛第二

 

三雲 0P

空閑 2P

雨取 0P

 

合計 2P

 

 

 

「そうそう。相変わらず白チビがやべえな。…まあ今回はそれよりも⋯。」

 

「…マップか。『市街地C』か?」

 

「あれ?狙撃手有利なとこじゃなかったっけ?その割には荒船隊は0Pだね。」

 

宇井が首を傾げる。

 

「マップの選択権は玉狛だからな。んで今落ちてんのが…香取隊は若村と三浦、荒船隊は穂刈先輩が落ちてる。」

 

米屋の語る試合の流れはこうだった。

 

転送と同時に、荒船隊が高台を目指す。

それもそうだろう。

マップがマップだけに、狙撃手の動きは絞られる。

香取はいつも通り先行し、荒船隊の高台を取る動きを封じるべくグラスホッパーで上を目指す。

そしてそれを追う形で三浦、若村が香取を追う。

高台を取った荒船隊に対して、玉狛は下から雨取の射撃、いや、高いトリオンから放たれるそれは、もはや大砲による砲撃であった。

それに気を取られた荒船隊の穂刈は、下から詰めた香取により緊急脱出。

その香取を追っていた、三浦、若村は運悪くバッグワームを羽織った空閑と遭遇。

そのまま、若村をグラスホッパーを駆使して、緊急脱出させると、その後は三雲の援護を借りて、三浦も緊急脱出させる。

 

そして今に至るわけだ。

 

 

「なるほど。マップが『市街地C』である以上、狙撃手の動きは絞られる⋯よく考えたな。」

 

「大砲がある以上荒船隊は迂闊に撃てねえ。もし大砲が当たらなくても大砲に紛れて白チビに詰められりゃ普通は(・・・)お陀仏だからな。」

 

「香取隊は香取以外は全滅か。…厳しいな。」

 

「んー…まあ香取は1人でも点は取れっけど…マップがマップだからな〜。動きにくいだろ。」

 

「あ、あの。」

 

その合間に古寺が綾瀬川に話しかける。

 

「綾瀬川先輩ならこの状況…どうしますか?」

 

「…こうなった以上手の施しようがないんじゃないか?それに…地形戦は古寺の得意分野だろ?なんでオレに聞くんだ?」

 

「あ、いえ。綾瀬川先輩の意見を聞いてみたくて。」

 

「私も聞きたいです…!」

 

古寺に同調し、黒江が目を輝かせる。

綾瀬川は諦めたように口を開いた。

 

「…まあさっきも言った通り手の施しようがないな。特に香取隊は援護が死んだ以上迂闊な動きはできない。荒船隊に狙われるのを覚悟で大砲⋯雨取だったか?を落としに行くか、荒船隊を落としに行くしかないんじゃないか?カメレオンを使える若村と三浦が落とされたのは痛いな。」

 

「荒船隊はどうでしょう?」

 

「荒船隊もまあ厳しいが…

 

 

…あの人は狙撃だけじゃないだろ?位置も割れてないし、半崎の援護もある。」

 

 

 

──

 

「っ?!」

 

大振りで抜かれる弧月。

 

逆手だった。

 

香取はどうにか反応し、しゃがむように避ける。

 

「よう。うちの穂刈が世話になったみてーだな。」

 

ついに弧月を抜いたアクション派狙撃手、荒船哲次はそう言って笑みを浮かべた。

 

 

──

 

『玉狛有利なこの展開、動いたのはこの男!狙撃も弧月もマスタークラス!武闘派狙撃手、荒船隊長です!』

 

『荒船は元攻撃手ですからね。』

 

実況は海老名隊オペレーター、武富桜子、解説席には東隊隊長、東春秋と草壁隊攻撃手、緑川駿が座っていた。

 

『攻撃手の頃は弧月でバシバシ点取ってたね。今でもたまに弧月でランク戦してるよ。』

 

──

 

「ッ…!」

 

荒船の弧月により、香取は防戦一方。

半崎の存在もあり、攻めに回れないのが現状だった。

 

若村、三浦はもういないため、援護は期待出来ない。

 

(ほんっとに…)

 

 

「ムカつくわ!」

 

「!」

 

香取はグラスホッパーを複数展開。

乱反射とまでは行かないが、高速機動で荒船を翻弄する。

 

 

──

 

『香取隊長、グラスホッパーによる素早い動きで荒船隊長を翻弄!攻守逆転でしょうか?』

 

『まあ確かに荒船は旋空入れてませんからね。オプショントリガーがない以上攻めにくいでしょう。狙撃も狙いが定まりませんね。…ですが、不完全な乱反射⋯狙えない機動力じゃないですね。

 

 

 

…荒船隊には精密射撃のプロがいますからね。』

 

 

──

 

グラスホッパーで、隙を見て荒船に切り込みながら、香取は次のことを考える。

 

玉狛がいつ介入してくるか分からない以上長居は無用。

倒せないにしても、上手く離脱する必要がある。

 

 

「…考え事か?キレが落ちたな。」

 

 

その言葉と共に、香取の横から射線が。

 

「っ…しまっ…」

 

香取の足は撃ち抜かれ、その場に崩れる。

 

 

 

 

『うわ…ダルいわ。頭撃ち抜く予定だったんすけど。』

 

『いや、これでいい。頭に集中シールド構えてやがった。外してくれて助かったぜ。』

 

 

荒船はそのまま香取に切り掛る。

 

『荒船くん!ダメ!』

 

「!」

 

荒船隊オペレーター、加賀美倫の言葉に荒船は飛び退く。

そして香取を後ろからの射撃が貫いた。

 

「チッ!三雲か…!」

 

横取りする形で香取を落としたのは玉狛第二の隊長、三雲修だった。

香取の緊急脱出を確認すると、三雲はすぐにバッグワームを羽織、離脱する。

 

「逃がすか…!」

 

 

 

『千佳ちゃん!』

 

『了解です…!』

 

玉狛第二のオペレーター、宇佐美栞の合図で雨取はアイビスの引き金を引いた。

 

そのアイビスにより、荒船と三雲を隔てる建物を吹き飛ばす。

 

「チッ、このタイミングで砲撃かよ…!」

 

『半崎!!』

 

『分かってます。…こりゃダルいッスね。』

 

そう言いながら半崎は引き金を引く。

半崎の的確な射撃は移動する雨取の頭を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

『…半崎もここまでですね。』

 

 

 

 

 

「!」

 

後ろからの悪寒。

半崎は振り返る。

 

 

「…うわ…ダル…」

 

グラスホッパーで一気に距離を詰めた玉狛第二のエース攻撃手、空閑遊真は半崎のトリオン体の首をはねた。

 

──

 

『香取隊長の緊急脱出に次いで雨取隊員、半崎隊員が緊急脱出!玉狛第二が一気に2得点を上げました!』

 

『上手いですね、三雲隊長。他にも狙えるタイミングはありましたが、絶好の機会まで潜んでいました。そのまま雨取隊員の爆撃で離脱。作戦を練ってきた動きですね。』

 

『その後は半崎隊員が雨取隊員を狙撃!撃った後の隙は逃さない!さすがは精密射撃の名手ですね!』

 

『まあその後ゆーま先輩に詰められちゃったけどね。』

 

『狙撃手は詰められたらああなります。詰められちゃダメですね。』

 

──

 

「チッ…やってくれるじゃねえか、メガネ。」

 

三雲を追い詰めた荒船はそう言って弧月を構える。

三雲は冷や汗を浮かべながら、レイガストを構えていた。

 

──

 

『ここで荒船隊長、三雲隊長を追い詰める…!』

 

 

 

 

 

「決まったな。」

 

「だな。」

 

綾瀬川の呟きに米屋が同調した。

 

「決まったって…清澄先輩、何が?」

 

「三雲はレイガストで空閑が来るまで耐え切るつもりだろう。三雲の実力は知らないが…守りに徹すれば荒船さんの弧月くらい守り切れるだろ。」

 

「荒船さんの弧月くらいって…相手はマスタークラスですよ?」

 

「まあ綾瀬川は前に荒船さんボコってるからな。」

 

「仕掛けてきたのはあっちだ。…まあ、空閑はグラスホッパーで飛んでくる。多少削られても空閑は間に合うだろ。そうなれば玉狛の勝ちだな。」

 

「じゃあ荒船さんと空閑くんは空閑くんが勝つってこと?」

 

宇井が綾瀬川に尋ねる。

 

「そりゃな。白チビは緑川に8-2で勝つんだぜ?旋空がありゃ分からねえが…十中八九、白チビが勝つだろーよ。」

 

モニターでは空閑の到着と同時に三雲が緊急脱出する。

そして空閑と荒船の一騎打ちとなった。

 

 

「全部計算づくだろう。玉狛の完全試合だ。」

 

 

 

──

 

『ここで試合終了!7対2対1!終わってみればこの点差、圧倒的強さで玉狛第二がROUND2を制しました!!』

 

 

香取隊

 

香取 1P

若村 0P

三浦 0P

 

合計1P

 

 

荒船隊

 

荒船 1P

穂刈 0P

半崎 1P

 

合計 2P

 

 

玉狛第二

 

三雲 1P

空閑 4P

雨取 0P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

 

『さて、振り返ってみてこの試合、いかがだったでしょうか?』

 

武富が東、緑川に尋ねる。

 

『そうですね。玉狛が常に作戦勝ちしてると言う印象でした。荒船隊と香取隊は常に後手になってましたね。大きなポイントは3つ。香取隊の2人を早々に緊急脱出させた点。これは運も絡みますが空閑の実力ですね。2つ目は三雲が香取を落とした点でしょう。絶好のタイミング…半崎が撃つまで待っていたんです。おかげで空閑は半崎の位置をつきとめ半崎は接近を許してしまった。3つ目も三雲ですね。荒船を上手く引き付けました。荒船は三雲を追い詰めたつもりかもしれませんが…それも玉狛の罠。結果的に玉狛は7得点と言う大量得点をあげています。何より…』

 

 

 

 

 

「このマップだね。」

 

古寺はそう呟く。

 

「マップ?」

 

黒江が首を傾げる。

 

「『市街地C』は狙撃手有利なマップなんだ。そうなると狙撃手の勝ち筋は上を取ること。狙撃手の動きを限定できる。香取隊もそれは分かってるから上を取ろうとする荒船隊を止めにかかる。…全部玉狛の思惑通りに。…地形を使って相手を動かす。これは地形戦の基本であり真髄なんだ。」

 

 

「…尤も、香取隊はそれ以前の問題だと思うけどな。」

 

補足するように綾瀬川は目を細める。

 

「…と言うと?」

 

宇井が尋ねる。

 

「お前も分かってるだろ?香取隊の致命的な弱点。香取が死ねば何も出来なくなる。香取は勝手に動くから香取がいなくなって困る2人は援護せざるを得ない。…だから周りも見えない。まあこれに関して言えば2人と言うよりも香取自身の問題だな。…お山の大将も実力が伴わないとな…。上位じゃまず間違いなくやっていけない。」

 

そう言って綾瀬川は冷たい目を細めた。

 

綾瀬川のその言葉に会場は静まり返る。

 

 

「おい、どうすんだよこの空気。」

 

 

 

 

『えー、古寺と綾瀬川、お前ら解説代わるか?』

 

 

 

 

──

 

「お、嵐山さんちーっす!」

 

米屋が試合を見ていた、嵐山に話しかける。

 

「おっ、珍しい組み合わせだな。」

 

「嵐山さん、時枝先輩、お疲れ様です。」

 

黒江は嵐山隊の面々に頭を下げる。

 

 

…1人を除いて。

 

 

「お疲れ様!双葉ちゃん!」

 

にっこりと。

とてつもなくいい笑顔で黒江に挨拶をしたのは嵐山隊エース万能手、木虎藍。

 

「…どうも。」

 

酷くぶっきらぼうな声でそういうと、黒江は前を歩く綾瀬川に駆け寄る。

 

「ししょー!この後宿題見てもらっていいですか!」

 

「えぇ…加古さんはいないだろうな?」

 

綾瀬川は心底嫌そうに黒江に尋ねた。

 

「双葉ちゃんその男は危険よ!その男よりも私の方が「結構です。ししょーに見てもらうので。」」

 

木虎の言葉を酷く冷たい声で突っぱね、黒江は綾瀬川の手を引く。

 

「おい、双葉。」

 

 

 

 

「…ドンマイ、木虎。」

 

「うるさいです、米屋先輩。」

 

 

「おー!木虎ちゃんおっすー!あれ?!あやせ先輩は?!さっきまでいたよね?」

 

 

傷心中の木虎に、緑川の呑気な声が響いた。




まあこんな落とし所じゃないでしょうかw


ROUND2終了後
1位 柿崎隊 25P
2位 二宮隊 23P
3位 影浦隊 19P
4位 生駒隊 18P
5位 諏訪隊 16P
6位 王子隊 15P
7位 弓場隊 15P
8位 玉狛第二 15P
9位 東隊 14P
10位 鈴鳴第一(来馬隊) 11P
11位 漆間隊 10P
12位 荒船隊 10P
13位 香取隊 9P
14位 那須隊 9P

各キャラからの印象&各キャラへの印象

黒江双葉→ししょー。宿題見てください!
米屋陽介→アルティメットオールラウンダー。ランク戦仲間。
古寺章平→三輪繋がりで知り合った仲。強い。
東春秋→解説やる?
木虎藍→ライバル視。警戒。双葉ちゃんと仲良くでズルい!

黒江双葉←弟子。
米屋陽介←槍バカ。ランク戦仲間。
古寺章平←三輪繋がりで知り合った仲。
東春秋←見せ場取ってすんません。
木虎藍←やたらと睨んでくる為苦手。


尚、木虎は綾瀬川をライバル視してるが、綾瀬川は特に興味なさそう。


感想、評価等お待ちしております。


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ROUND2を終えて

投稿するぜ。



「ふー、勝った勝った。」

 

そう言って、空閑が緊急脱出用のベッドルームから戻ってくる。

 

「さすがオサム。ナイスな時間稼ぎだったぜ。」

 

空閑はそう言って親指を立てた。

 

B級ランク戦中位夜の部を終えて、三雲率いる玉狛第二はB級8位。

中位の首位に立っていた。

 

「今回は僕らはマップの選択権があった。…次は上手くいくか分からない。連携から見直そう。」

 

「うむ、了解。」

 

「了解!」

 

三雲の言葉に空閑、雨取はそう頷いた。

 

 

 

 

「うぃーす。」

 

「おつかれー。」

 

作戦室を出ると、三輪隊の米屋、古寺、草壁隊の緑川が待っていた。

 

「おー、ミドリカワ。」

 

「!、米屋先輩。」

 

そう言いながら三雲は見慣れない古寺に目配せし、頭を下げる。

 

「いい感じだったじゃんグラスホッパー。」

 

「サンキュー、お陰様でバッチリ。」

 

空閑と緑川はランク戦の約束をしていたらしくそのまま、ランク戦ブースに向かった。

 

 

「あ!陽介。」

 

そこに玉狛第二のオペレーター、宇佐美が作戦室から顔を出す。

 

「試合終わったあとの解説見てたよ。すごい分かりやすかった。さすがだね!」

 

「う、宇佐美先輩!ありがとうございます!」

 

宇佐美の言葉に古寺は嬉しそうに礼を言った。

 

「あれ?陽介、綾瀬川くんは一緒じゃないの?」

 

宇佐美が米屋に尋ねた。

 

「総評聞いてた感じ一緒だと思ったんだけど⋯。」

 

「あー、あいつは黒江の宿題見てやるんだってよ。」

 

「そっか…修くん達に紹介しようと思ってたんだけど⋯残念。」

 

宇佐美は三雲に視線を向けながら肩を落とした。

 

「勝ち進みゃいずれ当たる相手だしな。取っとけよ。⋯つーかやっぱ綾瀬川の音声も聞こえてた感じ?」

 

「あー…うん。」

 

「辛辣な事言ってたからな〜。

 

 

…香取はキレてんだろーな〜。」

 

 

──

 

香取隊作戦室

 

『お山の大将も実力が伴わないとな。…上位じゃまず間違いなくやっていけない。』

 

 

 

「なんなのよあいつ…!」

 

 

ROUND1からの2連敗。

香取隊は2試合を通してまだ1Pしか取れていない。

 

それに追い討ちをかけるように告げられた綾瀬川の酷評。

三浦、若村は目に見えて落ち込んでいた。

 

香取は分かりやすく怒りの矛先を綾瀬川に向けていた。

 

 

ふざけるな。

三浦、若村をボロクソに言うのは分かる。

実際、今回若村と三浦は上からの射線ばかりに警戒し、空閑の接近を許していた。

 

だが綾瀬川が告げたのは、香取の酷評。

 

「っ…上等じゃない…。そこまで言うなら見せてもらおうじゃないの。完璧万能手サマの実力。」

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「…で?何か言うことはねェのか?あ?」

 

諏訪は青筋を浮かべながら榎沢に尋ねる。

 

「えー…あっ、5位にランクアップだね。日佐人くんのおかげだよ〜。いえーい。」

 

「え?あ、ああ。」

 

そう言って榎沢は笹森に手を突き出す。

咄嗟のことに笹森も手を出し、ハイタッチをする形になる。

 

「テメェな…。」

 

諏訪は榎沢の頭にチョップを落とす。

 

「ちょ、いたーい。生身なんですけど?」

 

榎沢は痛そうに頭を抑える。

 

緩んだ空気の後に、諏訪はいつに無く真剣な表情になると、榎沢の胸ぐらを掴む。

 

 

「日佐人が許してんだ。今回だけは見逃してやる。…二度と同じ事すんじゃねえぞ。」

 

「…それをしなきゃ勝てない時でも…?」

 

「テメェはランク戦の意義を履き違えてんだよ。実践に向けた訓練で仲間撃ち殺す奴があるか。」

 

「ふーん。でもそれは諏訪さん達にとっては…だよね。」

 

榎沢はそう言って儚げな笑みを見せる。

 

「テメェの事情は知らねえよ。…綾瀬川みたく訳ありなんだろーな、テメェも。だが、分かっただろーが。テメェは確かに強えェ。…でもそれだけじゃ勝てねえんだよ。」

 

「…何も出来ずにやられた人に言われたくないんですけど。」

 

榎沢は目を細めた。

 

「るせェ。先輩からの忠告だ。

 

 

…特に次の相手はな。」

 

 

 

 

B級ランク戦ROUND3上位夜の部

 

柿崎隊VS影浦隊VS生駒隊VS諏訪隊

 

 

 

 

最高傑作と失敗作の衝突である。

 

 

──

 

「綾瀬川、ちょっとツラ貸しな。」

 

 

ROUND2の翌日。

風間隊の歌川とランク戦を終えた後、目の前で腕を組んだ女にオレはそう話しかけられる。

 

確か…

 

 

「真木…だったか?」

 

「冬島隊オペレーター、真木理佐。話すのは初めてだったね。」

 

「ツラ貸すって…今か?」

 

「何?何か予定でもあるの?」

 

真木はぶっきらぼうに尋ねる。

 

「いや、そう言う訳じゃないが。」

 

「心配しなくても手短に済ませるよ。

 

 

 

…綾瀬川、アンタ冬島隊に来な。」

 

 

「…はい?」

 

オレは思わず間抜けな声で聞き返す。

 

「アンタ…B級にいていい人材じゃないよ。当真(うちのバカ)から聞いたよ。玉狛と太刀川、迅をボコったんだってね。」

 

「はぁ。」

 

「アンタ城戸派でしょ?それも三輪と同等の。」

 

「城戸派なのは否定しないが…別に近界民に恨みはないぞ。」

 

オレは真木の言葉にそう返す。

 

「恨みの度合いはどうでもいいよ。アンタが城戸派って事に意味がある。柿崎隊は本部長派だよ。対立するってなった時…アンタどうする気?」

 

「…」

 

「うちのはアンタの力を最大限に引き出せる。

 

 

…私はアンタをかってるんだよ。」

 

真木はオレにずいっと顔を近づける。

 

「…オレは別に当真さんと仲良くもないし、冬島さんの事はよく分からない。」

 

「そんなのどうとでもなる。アンタA級2位を舐めてる?」

 

真木はそう言って目を細める。

 

「隊長がトラップで援護、当真は狙撃りそこにアンタが加われば手札は大きく増える。…A級1位だって夢じゃない。…遠征を目指すならいい話だと思うけど⋯?」

 

「なんでオレが遠征目指してる前提なんだ?」

 

「ならの話。でもその口振り…本気で目指してるの?」

 

真木がオレに尋ねる。

 

「…興味はあるさ。」

 

「それなら尚更「悪いが断る。」

 

 

 

…理由。」

 

オレの言葉に真木は押し黙った後、目を細めて一言そう言った。

 

 

「柿崎隊の事は気に入ってるんだよ。オレはお前の事をよく知らないしな。」

 

「…それだけ?」

 

「だけって…チームである以上これ以上に大事な理由は無いんじゃないか?」

 

「チーム…ね。アンタなんで柿崎隊にいる訳?」

 

「だから「気に入ってるかは別として。」」

 

真木はオレの言葉を遮るようにそう言う。

 

「アンタは1人でも強い。…ブラックトリガーを圧倒出来るくらいに。それこそ柿崎隊にいる意味は無い。…違う?」

 

真木はそう言ってオレに冷たい目を向ける。

 

「その理屈ならオレは冬島隊に入る理由もないんだが…。」

 

「馬鹿ね、アンタみたいな人材を上が隊にも入れずに放っとく訳ないでしょ。城戸派の有望な戦力が本部長派の部隊にいる…城戸司令はよく思って無いんじゃない?」

 

「…余計な心配だな。

 

 

 

…柿崎隊と敵対した所でオレのやることは変わらない。オレはただオレの任務を遂行するだけだ。」

 

オレの言葉に真木から息を飲む音が聞こえる。

 

「そ。

 

 

…また誘いに来るわね。」

 

「何度来ても答えは変わらないぞ。」

 

「…また来る。

 

 

…そう言えば…アンタS級にはならない訳?風刃⋯適合してるんでしょ?」

 

「…誰があんな不便なトリガー使うか。」

 

そう言ってオレは真木の横を抜ける。

 

 

「…ふふっ…そう…。ますます気に入ったわ。⋯絶対口説き落としてやるから覚悟しときな。」

 

「…」

 

真木は最後にオレの前に立つとそう宣言して去っていった。

 

──

 

「えぇ?!スカウトされたって…冬島隊にですか?!」

 

虎太郎はそう言って声を上げた。

 

「ああ。真木とは話したことなかったから驚いた。」

 

「そ、それで…どうするんですか?」

 

虎太郎は恐る恐るオレに尋ねる。

 

「そんな顔しなくても断ったさ。」

 

そう言ってオレは虎太郎の頭を軽く叩く。

 

「そ、そうですか。」

 

「加古隊に玉狛に冬島隊か…なんと言うか…流石だな。」

 

柿崎は苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

「迅さんのは本気じゃないでしょ。」

 

「でも…その話からしたら真木先輩まだ諦めてないですよね?」

 

真登華が何故か機嫌悪くなる。

 

「いや、次来ても断るぞ?…まあ柿崎隊をクビになったら考えますよ。」

 

「バカ言うな。お前をクビにしたら一生後悔するわ。」

 

「そうですよ!辞めたいって言っても逃がしませんから!」

 

そう言って真登華はオレの腕に抱きつきがっちり抑える。

 

「へいへい。」

 

 

「…それよか、ランク戦の話に戻るぞ。…影浦隊と生駒隊は前回と同じだ。連携して相手をする。問題は…」

 

「諏訪隊ですね。」

 

照屋の言葉に柿崎が頷く。

 

「諏訪隊というか榎沢だな。二宮さん並みの火力に緑川並みの機動力…手強いな…。うちが狙われたらエスクードのバリケード戦術で行けるか⋯?」

 

柿崎は不安そうに自問自答をする。

 

 

 

「榎沢は十中八九うちを狙ってきますよ。」

 

オレの言葉に全員、オレに視線を向ける。

 

「尤も…警戒するに足りませんけど。」

 

 

 

 

最高傑作は失敗作を思い浮かべ、目を細める。

 

 

 

 

 

「榎沢はオレが相手をします。」

 




各キャラからの印象的各キャラへの印象

宇佐美栞→友人。修くんを紹介したい。
三雲修→B級1位の完璧万能手。いずれ戦う相手。
香取葉子→ムカつく。
真木理佐→うちこいや。
宇井真登華→またスカウト…?…へぇ…?

宇佐美栞←友人。眼鏡かけねえっつってんだろ。
三雲修←メガネ。
香取葉子←お山の大将。
真木理佐←行きません。
宇井真登華←ちょ、なんか怖いよ?

真木の話し方これで合ってんのかなw

ちょっとしたアンケート取ります!
ぜひ回答をお願い致します。

感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑫

投稿します!

好きにしろって…それが一番困るんや!(選択肢作ったのお前。)


「「はあ?!冬島隊にスカウトされた?!」」

 

ランク戦ブース。

休憩中にオレの言葉に出水、米屋は声を揃える。

 

「ああ。断ったけどな。」

 

「真木のやつずるいどころの話じゃねえだろ!冬島隊に入るならうちに来い!」

 

出水は声を荒らげてそう言った。

 

「太刀川隊は勘弁だ。まあでも、柿崎隊をクビになって太刀川さんがいないなら別に…。」

 

「それ太刀川隊じゃねえだろ…。」

 

米屋が呆れたようにつっこむ。

 

「つーか今日緑川は?」

 

「空閑とランク戦するって言ってたな。」

 

「おーおー、弟はついに兄貴離れか?」

 

米屋が茶化すように言う。

 

「…まあ双葉がいるから別に…。」

 

「寂しいんじゃねえか。」

 

「ぶははっ!元気だせって俺が100本付き合ってやるよ。」

 

そう言って米屋がオレに肩を組む。

 

 

 

 

「ねえ、ちょっといい?」

 

 

 

 

話していると後ろから話しかけられる。

 

「香取じゃん。」

 

「よー、なんか用か?」

 

声をかけてきたのは香取隊隊長の香取葉子だった。

 

「って…あー…。」

 

機嫌の悪そうな香取を見て米屋が察したようにそう言った。

 

「…お前が撒いた種だ、綾瀬川。」

 

出水は目を伏せながらオレから距離をとる。

 

「じゃ、俺らランク戦してくっから。ごゆっくりー。」

 

「?、おい、どう言う「あんたが綾瀬川?」」

 

出水と米屋を問い詰めようとしたが香取の言葉に阻まれる。

 

「ああ。…一応先輩なんだけどな。」

 

「は…?」

 

は?って…。

こっわ。

 

「あー…いや、何でもない。えっと…香取だったか。何か用か?」

 

「心当たり無いわけ?」

 

「悪いが思い当たらないな。」

 

「っ…ROUND2、あんたうちの試合みてたんでしょ。」

 

その言葉にオレは考える。

 

「…ああ、玉狛と荒船隊とやってたな。」

 

「最後。散々アタシの事ディスってくれたじゃない。」

 

「…え?あれ聞こえてたのか?」

 

「っ…!聞こえてないと思ってたわけ…?」

 

香取は何かを押し殺すようにそう尋ねた。

 

「古寺と話してただけのつもりだったからな…。悪く言ったつもりは無かった。気を悪くしたなら謝る。」

 

「は…?あれのどこに悪く言うつもりがないって言う訳?」

 

「悪く言ったつもりは無いさ。

 

 

…オレはただオレが思った事実を言ったに過ぎない。」

 

 

 

「…は…?」

 

 

 

──

 

「…まあこうなるわなー。あいつ天然だからな。」

 

出水、米屋が見るモニター。

そこには市街地の真ん中で向かい合う綾瀬川と香取が立っていた。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「おま…それ聞くか?」

 

米屋の問いに出水は呆れる。

 

「…綾瀬川に決まってんだろ。香取ちゃんは確かにつえーよ。…天才って奴だ。…でも…あいつはバケモンだからな。いくら香取ちゃんが天才でも…

 

 

 

…怪物には勝てねえよ。」

 

 

──

 

「あんまりB級の奴に手の内見せたくないんだけどな…。」

 

綾瀬川は弧月の柄を触りながら頭を搔く。

 

「喧嘩売ってきたのはあんたでしょ。…ぶっ殺す。」

 

そう言いながら香取はスコーピオンとハンドガンを構える。

 

「はあ…オレはこれでも一応B級1位部隊のエースをやらせてもらってるんだ。だからまあ…

 

 

 

…安く見られるのは心外だな。」

 

綾瀬川は目を細めて弧月を抜く。

 

「胸を貸してやるから好きにかかってくるといい。」

 

──

 

香取自体、綾瀬川は簡単に勝てる相手では無いというのは分かっていた。

だが、榎沢の圧倒的な火力による暴力。

それの後ではどうしても見劣りする相手だと。

 

そう思っていた。

 

 

 

『香取ダウン。4-0、綾瀬川リード。』

 

「どうした?殺すんじゃなかったのか?」

 

「っ…。」

 

弧月1本。

旋空も使わずシールドすら使わない。

そんな相手に香取は為す術なく蹂躙されていた。

スコーピオンによる剣撃は簡単に捌かれ、アステロイドは避けられる。

 

(それなら…!)

 

香取はメインとサブのハンドガンを切替える。

 

(ハウンド…!)

 

香取が放ったのはサブトリガーのハウンド。

 

(お得意の回避も出来ないでしょ…!)

 

それに合わせて香取は地面を蹴る。

綾瀬川はハウンドを避けるが、ハウンドは綾瀬川を追尾するように曲がる。

 

「…ハウンドか。」

 

「!」

 

綾瀬川は弧月を振り、ハウンドを叩き落とす。

 

 

「工夫が足りないな。ハウンドなんて誰でも使えるぞ。」

 

綾瀬川は香取のスコーピオンを弧月で受ける。

そのまま、香取の腹に蹴りを入れる。

 

「っ…それなら…」

 

香取はグラスホッパーを複数展開。

綾瀬川の周りを縦横無尽に飛び回る。

 

死角に回り込んで切り込む。

 

「…」

 

しかし綾瀬川はそれら全てを最小限の動きで避ける。

 

「まだ手札はあるのか?使うなら早くしてくれ。オレもあんまり時間が無いんだ。」

 

「っ…!」

 

榎沢とやった時とは違う。

火力ではなく圧倒的な技術の差。

 

「…ムカつく…!」

 

そう言って香取はグラスホッパーに足をかけた。

 

 

──

 

『香取ダウン、6-0、綾瀬川リード。』

 

ここで香取の敗北が確定する。

 

「まあ、確かに綾瀬川が勝つとは思ったが…弧月1本でここまでやるかねー。香取の奴も強い方だと思うんだけどなー。」

 

「…相手が悪すぎんだろ。」

 

 

「っ…葉子…。」

 

隣でそう呟く声が。

 

「ん?おー、若村と三浦じゃん。お前らも観戦?」

 

隣で試合を見ていたのは香取隊の若村麓郎と三浦雄太だった。

 

「…米屋と出水か。まあ…な。」

 

そう言って若村は俯く。

 

「葉子ちゃん…大丈夫かな…。」

 

「…ま、いい薬なんじゃねーの?」

 

「…葉子ちゃん、ROUND1の後も榎沢さんに負けてるんだよね。」

 

三浦が不安そうに言う。

 

「あー…らしいな。でもまあ、綾瀬川は榎沢と違って興味ねえやつには構わねえから心配しなくてもいいんじゃねえの?」

 

「多分葉子ちゃん、そっちの方が傷付きそう。」

 

──

 

「あんた…ROUND1の時言ったわよね…天才じゃ勝てない相手もいる…って。あんたがそうだって言いたい訳?」

 

「…別にそう言う意味で言ったんじゃないけどな。」

 

オレは香取のスコーピオンを受けながらそう返す。

 

「まあでも…お前に負ける気はしない。」

 

「っ…偉そうに…ムカつく…!」

 

香取はオレの顔目掛けてスコーピオンを振る。

 

「…」

 

オレは上半身を仰け反らせて避ける。

 

「っ…!」

 

香取は片手でハンドガンを抜く。

だが、こちらに向けるより早く、腕を切り落とす。

 

「まだやるか…?」

 

「…」

 

──

 

(で?まだやる?)

 

あの時の榎沢と同じ目だった。

こちらに何の興味も無いような無機質な瞳。

負ける気はしないと言ったように上から見下ろしてくる。

 

「…自惚れんじゃ…ないわよ…!!」

 

香取は隠していたグラスホッパーを踏み、綾瀬川の後ろに回り込む。

 

 

──

 

「お、上手い。後ろを取ったな。」

 

「葉子…!」

 

若村が笑みを見せる。

 

「…まあ、気合いとちょっとの奇策でどうにかなる相手じゃねえだろ。あの怪物は。」

 

──

 

綾瀬川は、弧月で受け止める。

 

「まだ…!」

 

つま先から生やしたスコーピオン。

それは綾瀬川の側頭部に迫る。

 

「…」

 

 

しかし、それは綾瀬川が香取の足を掴むことで、無慈悲に止められる。

 

「これ以上お前から盗めるものは無さそうだな。」

 

そのまま、足を切り落とす。

 

「っ…この…!」

 

その場に崩れる香取。

それを見下ろすように綾瀬川は香取の喉に弧月を突き立てた。

 

 

 

『個人ランク戦終了。10-0、勝者、綾瀬川。』

 

 

 

 

 

「よ、おつかれー。」

 

出水と米屋が寄ってくる。

 

「どうだった?」

 

「まあ個人ポイントが増えて良かった。」

 

綾瀬川は抑揚のない声でそう言った。

 

「そういう事を聞いてるんじゃねえよ…。」

 

そう言いながら視線を後ろに向ける。

 

「若村と三浦か。お前達もランク戦か?」

 

「えっと…まあ、うん。」

 

「…」

 

控えめに答えた三浦と違い、若村はいつに無く神妙な表情だった。

挨拶を済ませると、香取が戻ってくる。

 

「よ、葉子ちゃん、お疲れ様。」

 

「何?アタシが惨敗するとこ見て面白がってたわけ?」

 

香取は若村と三浦に冷たい声で尋ねる。

 

「葉子ちゃん…。」

 

「分かっただろ?葉子。今のままじゃダメだ。綾瀬川にも…上位にも勝てねえ。」

 

「で?だからどうするの?あんた達がどうにかしてくれるの?」

 

「そう…してえけど…できねえのが現状だ。」

 

若村はそう言って俯く。

 

「そうでしょうね。何も出来ない癖に偉そうに言わないでよ。」

 

そう言って香取は綾瀬川に視線を向ける。

綾瀬川は表情を変えることなく、首を傾げる。

 

「っ…ムカつく…。」

 

そう言って香取は綾瀬川の横を抜けて行った。

 

「葉子ちゃん…!」

 

三浦は香取の後を追った。

 

「葉子がわりぃ…綾瀬川。」

 

「…別に生意気な後輩には慣れてるよ。」

 

「そうか…。なあ、聞いていいか?綾瀬川。」

 

「なんだ?」

 

「この前の総評、なんで俺らを庇ったんだ?ぶっちゃけあれはどう考えても俺と雄太が落とされたのがわりぃ。…正直に教えてくれ…。」

 

若村はそう尋ねた。

 

「…別にお前たちが空閑に倒されず生き残ったところで上から狙撃してくる半崎と荒船さんの点になっただろ。あそこで死のうが上で死のうが変わらないってだけだ。」

 

「で、でも俺らが生き残ってれば詰めてきた荒船さんに数で有利に立ち回れただろ?!三雲の奇襲だって…」

 

「まずお前たちが生き残ってれば荒船さんは詰めてこないだろ…。」

 

綾瀬川は呆れたようにそう言った。

 

「お前はどうしても自分を落としたいみたいだから言うが…オレはお前たちを庇った訳じゃない。香取隊は香取が死ねば終わりの部隊なんだよ。香取が突っ込んで勝てば良し、負ければそれまで。だからあれは1人で先行した香取が悪い。そう言う戦い方をするやつは格上には挑んじゃダメなんだよ。…元からお前の事は別に見てない。」

 

綾瀬川は冷たい声でそう言った。

 

「っ…!」

 

若村は俯く。

 

「キツイな、お前。なんかアドバイスとかねーの?」

 

米屋が苦笑いで尋ねる。

 

「知るか。それは香取と若村、三浦の問題だろ。オレがアドバイスしてやる義理もない。」

 

「っ…そう…か…。」

 

酷く落ち込んだ様子の若村に綾瀬川はバツが悪そうに頭を搔く。

 

「…米屋、出水。オレはROUND3が近いからな。もう帰るぞ。今言ったことはオレが思った事を言っただけだ。香取隊には香取隊の戦い方がある。まああれだ…忘れてくれ。」

 

そう言って綾瀬川はランク戦ブースを後にした。

 

 

──

 

「…おい、榎沢、こんなところで何やってんだ?」

 

時刻は夜8時を回る三門市。

その繁華街のコンビニの前で榎沢は体育座りで座っていた。

横には買い食いしたと思われる、ゼリー食のゴミが。

榎沢は話しかけた諏訪に顔を上げる。

隣には木崎と風間がいた。

 

「…諏訪さんじゃん。…別に。」

 

そう言って榎沢は顔を背ける。

 

「何時だと思っている。子供はとっとと帰れ。」

 

そう言うのは風間だ。

 

「風間さんに言われたくないんだけど…。」

 

そう言って榎沢は腕の中に顔を埋めた。

 

「…はあ…オイ、俺はこいつを送って来るわ。先行っててくれ。オラ、立て。」

 

諏訪はため息をついた後、そう言った。

 

「ほっといてよ。別になんも無いから。」

 

「ほっとけるわけねェだろが。2月だぞ?凍え死にてえのか?」

 

「…それもありかも。」

 

榎沢はそう言って笑う。

 

「お前な…。」

 

「ふふ、冗談。別に負けたから帰りたくないだけ。…何言われるか分かんないし。」

 

「あ?そりゃどう言う意味だ?」

 

「…関係ないから大じょーぶ。飲みにでも行くんでしょ?…行ってくればいいじゃん。」

 

そう言いながら榎沢は風間と木崎に視線を向けた。

 

「…あのな…。ったく、わーったよ。風間、レイジ、1人増えるぞ。」

 

そう言って諏訪は榎沢の腕を掴む。

 

「何?折られたいの?」

 

「怖ぇよ!…別に家に帰んなくてもいいがここじゃ風邪引くぞ。飯奢ってやるからオメーも着いてこい。」

 

「…」

 

歩き出した諏訪に榎沢はトボトボと後に続いた。

 

 

──

 

「えー?!ほんとにこれ全部食べていいのっ?!」

 

榎沢は興奮気味に諏訪に尋ねる。

目の前には唐揚げや、刺身などおつまみから、焼きそばなどが並んでいる。

 

「ああ。オメーはジュースな。」

 

そう言って諏訪は榎沢の前にジュースを置く。

 

「いただきまーす…!」

 

そう言って榎沢は唐揚げに箸を伸ばす。

 

「んーっ!美味しい!あたし唐揚げって初めて食べたかも!」

 

美味しそうに頬張りながら榎沢はそう言った。

 

「初めてって…唐揚げだぞ?」

 

諏訪は榎沢に尋ねる。

 

「うん!これも食べていいの?」

 

榎沢はだし巻き玉子に指を指す。

 

「好きな物を食え。」

 

木崎はそう言って榎沢の前に皿を置く。

 

「ありがと、木崎さん!」

 

そう言って榎沢は箸を伸ばす。

 

「ん〜っ!うまっ!」

 

「ゆっくり食え。飯は逃げない。」

 

風間は榎沢にそう言うとビールを飲む。

 

「ありがと、風間さん。」

 

榎沢は幸せそうな笑顔でそう言った。

 

「…で?あんな所で何してやがったんだ?」

 

諏訪が尋ねる。

 

「だから何もないって。…ほんとに帰りたくなかっただけ。」

 

榎沢は一瞬笑みを消してそう言うと焼きそばを頬張る。

 

「でもこんな美味しいもの食べれるならあそこにいて正解だったね!」

 

「お前な…。」

 

そう言いながらも諏訪は幸せそうな榎沢を見て、笑みを見せた。

 

 

──

 

「じゃ、俺はこいつ送るわ。じゃーな。」

 

諏訪は風間と木崎と別れると榎沢に目を向ける。

 

「…やっぱ帰らなきゃダメだよね〜。」

 

「たりめーだろーが。」

 

そう言って諏訪は歩き出す。

 

「…ねえ、ROUND2であたし、日佐人くんの事撃ったじゃん?」

 

「なんだいきなり…。」

 

諏訪は足を止めて榎沢に視線を向けた。

 

「総評でもつっこまれて…諏訪さんも瑠衣ちゃんセンパイにも間違ってるって言われた。だからあの後ずっと考えてた。…でも…やっぱり分かんないや。みんなの言ってること。…綾瀬川センパイが柿崎隊にいる理由も。」

 

「…そーかよ。でもまあ…お前は二宮隊に負けた。それが答えだろ。」

 

そう言って諏訪は歩き出す。

 

「別に送ってくれなくていいよ。」

 

「あ?そういう訳には行かねえよ。女子1人で帰せるか。もう10時になるぞ。」

 

「あたし諏訪さんより強いし。」

 

そう言って榎沢はファイティングポーズをとる。

 

「そう言う問題じゃねえよ。」

 

「うそうそ。冗談。…でもほんとに大丈夫。

 

 

…迎え来たから。」

 

そう言って榎沢の視線の先には1台の車が。

その車からはスーツを来た男が出てきた。

 

「あ、ああ。そーかよ。んじゃ挨拶だけでも…「大丈夫だって!」…オイ。」

 

榎沢はそう言って諏訪を押すと、車に向かって走る。

 

 

 

「あたしは…やっぱりあたしのやり方でやる。…文句ある?」

 

「文句しかねえが…。」

 

「大丈夫。約束通りもうあんなやり方はしないよ。失敗作は失敗作らしく…ね?」

 

「失敗作?おま、何言って…」

 

「バイバイ、諏訪さん。」

 

 

そう言って榎沢は手を振って車の中に消えていった。

 

 

 

酷く儚げに、悲しそうな笑みだった。

 

 

「さっぶ。」

 

 

そう言って諏訪は空を見上げる。

 

 

 

 

…そしていよいよB級ランク戦ROUND3当日がやってきた。




あとがき何書きゃいいかな?
なんかリクエストあったら教えてちょ。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND3 柿崎隊VS影浦隊VS生駒隊VS諏訪隊①

投稿します!
玉狛の試合は特に原作と変わりません。

先に言っとくと、原作と違って日浦ちゃんは脱退しない方針で行こうと思ってます。
理由はまあお察しで。
矛盾点出てきそうだったら変えますがおそらく大丈夫かな?
引っ越さないと分かった那須隊の面々は安心しつつ、この面子で続けれる喜びで気合い十分でROUND3に臨んだみたいです。



『皆さんこんばんは!B級ランク戦ROUND3、上位夜の部!元気に実況していきたいと思います!解説はわたくし、海老名隊オペレーター、武富桜子が。解説席には中位昼の部で激戦を見せてくれた鈴鳴第一の村上先輩、そして昼の部から引き続き、「ぼんち揚食う?」でお馴染みの迅さんにお越しいただいています。』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『さて、村上先輩、昼の部お疲れ様でした。』

 

『…玉狛にしてやられたよ。

 

 

…次は勝つ。』

 

そう言って村上は笑みを見せる。

 

『おお…実はまだ試合を拝見できておりません。終わったら急いで確認しますね!…話を戻しましょう。上位夜の部は柿崎隊、影浦隊、生駒隊、諏訪隊の四つ巴対決になりますが…解説のお二方はどのような展開になると思われますか?』

 

『そうですね。どの隊にもボーダートップクラスの点取り屋がいますからね。バチバチの点の取り合いになりそうで楽しみですね。』

 

迅はぼんち揚を齧りながらそう言う。

 

『なるほど、柿崎隊には綾瀬川先輩が、影浦隊長に生駒隊長、そして諏訪隊には榎沢隊員がいますね。…じ、迅さん、音声に入るのでぼんち揚は…』

 

『え?ああ、ごめんごめん。』

 

そう言いながらも迅はぼんち揚を口に運んだ。

 

『カゲと生駒さんはROUND1とROUND2で柿崎隊にしてやられています。諏訪隊は分からないですが…影浦隊と生駒隊は柿崎隊を狙ってきそうですね。』

 

村上がそう分析する。

 

『…後は選ばれるマップ次第ですね。』

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「おし!オメーら絶対綾瀬川に勝てよ!」

 

影浦隊オペレーターの仁礼光はそう言って影浦の背中を叩く。

 

「たりめーだろーが。あの余裕そうな面ァ、掻っ捌くって決めてんだよ。」

 

影浦はROUND1、綾瀬川との1対1で敗北を喫している。

いつもは見ないログなどを見て綾瀬川への対策を考えてきた。

そのため何時になくやる気で、ギラついた笑みを見せる。

 

「ゾエさん巻き込まれないように援護するねー。」

 

北添は影浦の様子を見て苦笑い。

 

「俺も。…綾瀬川先輩は俺が落とす。」

 

絵馬は珍しく闘志に満ちた表情でそう言った。

 

「あら?ユズルもやる気だねぇ。」

 

──

 

生駒隊作戦室

 

「なぁ、彼女の定義ってなんやと思う?」

 

もうすぐ試合開始だと言うのに、生駒隊隊長である生駒達人は訳の分からない質問を隊員達になげかける。

 

「俺思たんや。きよぽんは宇井ちゃんも小南ちゃんも黒江ちゃんも榎沢ちゃんも彼女じゃないゆーてんねん。…待って、仲良い女の子多すぎやない?」

 

「今更でしょ…。それで?」

 

水上が生駒に尋ねる。

 

「せやけど、2人っきりでお好み焼き食べに行ったり、ランク戦したり一緒に帰ったりしてるんやで?それってもう…恋人やない?」

 

「イコさんの恋愛観って小学生レベルですよね〜。」

 

そう言うのは生駒隊狙撃手、隠岐だった。

 

「う、うるさいねん!俺やって彼女の1人や2人…」

 

「え!?イコさん彼女いた事あるんですか?!」

 

飛び付いたのは生駒隊の攻撃手、南沢だった。

 

「な、無いわ!!」

 

 

 

 

「あはっ!ですよね!!」

 

 

 

 

「…水上、俺泣いていい?」

 

「めんどいんでやめてください。」

 

「ほんまランク戦の前に何やっとるん?」

 

オペレーターの細井は呆れたようにため息をついた。

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「諏訪さん諏訪さん、マップ前と同じとこねー。」

 

作戦室に入ってくるなり、諏訪隊銃手の榎沢はそう言った。

 

「またDかよ…。お前、大丈夫なんだろーな?」

 

「…分かんない。」

 

「分かんねえってお前…つーか頬…どうした?」

 

午前の防衛任務ではトリオン体だった為気付かなかったが、榎沢の頬には痣が出来ていた。

 

「なんでもなーい。…トリガー起動…っと。」

 

そう言って榎沢は換装する。

 

「榎沢、前回みたいなやり方は許さないぞ。」

 

そう言うのは同じく諏訪隊銃手の堤。

 

「役に立つか分からないけど…俺もいるから。」

 

「…うん。そだね。」

 

そう言って榎沢は椅子に座る。

 

「ちゃんとバッグワーム入れるんだよ!一華ちゃん!」

 

「今回は入れるよ。」

 

何時になく素直な榎沢に諏訪は怪訝な顔を浮かべる。

 

 

「榎沢、オメーまさか…

 

 

…緊張してんのか?」

 

 

 

「!」

 

榎沢は肩を弾ませる。

 

「ハッ!オメーも人間らしいとこあんだな。」

 

そう言って諏訪は榎沢の頭をぽんと叩く。

 

「…たなきゃ…」

 

榎沢は何かをボソッと呟く。

 

「あ?なんか言ったか?」

 

「大じょーぶ。…頑張る。」

 

 

 

 

(勝たなきゃ。あたしの存在意義を示す為にも。)

 

 

 

──

 

『ここで諏訪隊によりマップは『市街地D』に決定されました!』

 

『ROUND1でも諏訪隊はここを選んできましたね。』

 

『2もここを選んでましたね。』

 

村上に補足するように武富はそう言った。

 

『榎沢隊員は屋内戦が得意なんでしょうね〜。』

 

そう言いながら迅はぼんち揚を齧った。

 

──

柿崎隊作戦室

 

「Dか。…すげえな、清澄。」

 

予想を的中させていた綾瀬川に柿崎隊隊長の柿崎国治はそう言った。

 

「いや、1も2もここだったんで。真登華、メテオラな。」

 

「はいはーい。」

 

「お前の腕を疑う訳じゃねえが…榎沢は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫です。諏訪隊は十中八九うちを狙ってくるんで。あいつの勘ならすぐに戦えますよ。

 

 

…後は返り討ちにするだけです。」

 

そう言って綾瀬川は目を細める。

 

「そう言うことなら榎沢さんは清澄先輩に任せます。ヤバくなったら言ってくださいね?」

 

「そーですよ!俺グラスホッパーで飛んできますから!」

 

照屋と巴はそう言って笑う。

 

「ああ、その時は頼むよ。」

 

「じゃ、勝つぜ。頼むぞお前ら。」

 

「「「了解。」」」

 

「りょーかい。」

 

──

 

『さて、転送準備が整いました。全部隊、転送開始!

 

 

 

…転送完了!マップ『市街地D』!B級ランク戦ROUND3上位夜の部、スタートです!』

 

 

──

 

「始まりましたね…。」

 

「…あなたがどうしても見たい試合って…これの事ですか…。」

 

白と黒。

対極的な髪の色をした2人の少女はチェス盤を挟み、向かい合う。

 

「別に私は興味ないんですけどね…。」

 

「そう仰らずに。私が見たいのは最高傑作と失敗作の一騎打ちです。…それまでの暇つぶしに付き合ってくださいな。…チェックですよ、瑠花さん。」

 

「ま、また負けた…。」

 

そう言って瑠花と呼ばれた黒髪の少女は項垂れる。

 

「前より手こずりました。強くなりましたね。」

 

「1度もあなたには勝てていませんけど。…有栖。」

 

有栖と呼ばれた少女、唐沢有栖は、黒髪の少女、忍田(しのだ) 瑠花(るか)に微笑を浮かべる。

 

「ふふ、そう簡単には負けてやりませんよ。」

 

「…それにしても…なんでこの試合にそこまで興味が?失敗作とか最高傑作とか言われても私にはただのB級ランク戦にしか見えませんが。」

 

瑠花は有栖に尋ねる。

 

「直に分かります。…ボーダーの未来に関係のある2人の対決です。あなたにも見る価値はありますよ。」

 

「…」

 

怪しみつつも瑠花はモニターに目を向けた。

 

 

──

 

『さて、転送と同時にレーダーから姿を消したのは隠岐隊員と絵馬隊員、そして…綾瀬川隊員です。狙撃手の2人は分かりますが…綾瀬川隊員のバッグワームにはどのような意図があると思われますか?』

 

『うーん、バレずに合流ってのもあると思うけどこれは…』

 

『性格が出ますね。…綾瀬川はROUND2でトラッパーと言う奇策を見せています。…各隊は綾瀬川のトラッパーの線も視野に入れなければなりません。本当に性格が悪いですね…。』

 

『成程!…そしてデパート内部に転送されたのは生駒隊長と北添隊員!ここで北添隊員と生駒隊長もバッグワームを着け、レーダーから姿を消す!』

 

『うわ…デパート内にいる生駒っちも恐怖だな…。下手すりゃ訳も分からず上から旋空飛んできますね、これは。』

 

──

 

『マップがマップなだけにゾエはまだ撃たねえな。』

 

『デパートにあった2つの反応が消えたよ。もしかしたら、どっちかがゾエさんなんじゃない?』

 

宇井がそう考察する。

 

『かもな。でも榎沢もいる。あいつもグレネードガン使ってただろ。警戒するに越したことはねぇ。…虎太郎、文香。俺らは合流してデパート目指すぞ。』

 

『了解!』

 

『了解です!』

 

『清澄は1人で問題ないな?』

 

『大丈夫です。…榎沢とやるのにもそっちの方がいい。』

 

 

 

そう言って綾瀬川は腰のホルスターに付けたハンドガンを撫でた。

 

 

 

 




綾瀬川清澄トリガーセット

メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:バイパー、アステロイド(ハンドガン)、バッグワーム、シールド
 

榎沢一華トリガーセット

メイン:アステロイド(ハンドガン)、メテオラ(グレネードガン)、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、バッグワーム、ハウンド(アサルトライフル)、シールド


各キャラからの印象&各キャラへの印象

村上鋼→格上。性格悪い。
迅悠一→ボーダートップクラスの点取り屋。
影浦雅人→ぜってー勝つ。
絵馬ユズル→上に同じく。
生駒達人→彼女おらんって…嘘つきや…!!
榎沢一華→…勝たなきゃ。
唐沢有栖→ホワイトルームの最高傑作。ファン。
忍田瑠花→誰?

村上鋼←おでこ。
迅悠一←苦手。おでこ。
影浦雅人←ランク戦仲間。
生駒達人B級ランク戦仲間。彼女はいません、嘘じゃないです。だからいないって。
榎沢一華←潰す。
唐沢有栖←俺のファン?正気か。
忍田瑠花←知らん。

アンケート締め切ります。
幕間は1ラウンド終わる度に1話投稿しようかな。
新しいアンケート作っときますね。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND3 柿崎隊VS影浦隊VS生駒隊VS諏訪隊②

投稿します!


思えばそれは本能的なものだったと思う。

 

(綾瀬川清澄を越えろ。)

 

(去年の最高傑作、綾瀬川清澄の方が凄かった。)

 

あたしは天才同士の遺伝子で出来た、天才になるべくして生まれた存在。

そんなあたしよりも上の存在。

それが皆が口を揃えて評価する最高傑作、綾瀬川清澄と言う男だった。

 

…憧れた。

いや、憧れや尊敬なんて言葉じゃ生温いのだろう。

もはやあたしにとっては神に等しい。

崇拝とでも言うのだろう。

それがあたしに芽生えた綾瀬川清澄への感情だった。

 

…でもある時本能的にもう1つの感情が芽生えた。

 

次々と脱落していくあたしの同期達。

どれも上からの期待に応えることが出来ず狂っていく。

そんな同期達の瞳、涙を見て綾瀬川清澄(最高傑作)は何かを感じるのだろうか。

いや、あたしの崇拝する綾瀬川清澄はいつものように無機質な冷たい目で這いつくばった失敗作の山を見下ろすのだろう。

 

 

…失敗作。

 

綾瀬川清澄がいる限りあたしの評価は失敗作の中でもましな作品と言う評価だろう。

1人だけ狂わずカリキュラムをこなした。

トリオンだけは最高傑作以上。

 

それだけだ。

 

 

──

 

「っ?!」

 

建物を切り裂きながら、通り抜ける弧月。

間一髪で榎沢は避ける。

 

「やはりな。お前は直接オレを狙ってこないと思っていた。」

 

「あはは…バレてるや。」

 

「分かるさ。お前はオレのことを憎んでいるようだからな。オレが嫌がるよう仲間から狙ったんだろ?」

 

言葉一つ一つに圧倒的な重みを感じる。

ホワイトルームの無機質な最高傑作は、失敗作の前に立ち塞がる。

 

「お前はオレを潰したいんだろ?なら他の役者はいらないだろ。」

 

「…そうだね。ちなみに…

 

 

 

 

…あたしの間合いだけど大丈夫そ?」

 

榎沢はホルスターの拳銃を抜く。

 

間合い25m。

それ以上の射程の無いものには対抗する手段のない、榎沢のハンドガンによる早撃ち。

圧倒的なトリオンによる火力。

それが榎沢一華(失敗作)綾瀬川清澄(最高傑作)よりも唯一秀でているものだった。

 

「シールドごと削り殺してやる…!」

 

 

 

そして乾いた銃声が響く。

 

 

 

 

 

「鈍いな。」

 

 

「…は…?」

 

 

 

刹那、榎沢の右手は吹き飛ぶ。

 

 

榎沢のハンドガンによるアステロイドは威力と速度に、トリオンを大きく割り振っている。

それでも25mの射程があるのは榎沢の圧倒的なトリオンによるものだろう。

 

 

比べて綾瀬川がこちらに向けていたのは同じくハンドガン。

 

 

綾瀬川のハンドガンによるアステロイドは速度と射程にトリオンを振り分けている。

榎沢の半分程のトリオン量の綾瀬川のアステロイドは射程約25m。

威力はなく、弾速も榎沢には及ばない。

 

しかし、それを補ってあまりあるほどの早撃ちのスピード。

 

それは榎沢が引き金を引くよりも早く放たれ、榎沢のハンドガンの銃口を穿った。

その結果榎沢のアステロイドは暴発。

榎沢のハンドガンを右手ごと吹き飛ばした。

 

 

「なん…で…?!」

 

「確かにお前のトリオンによる早撃ちは脅威だ。ボーダーでもトップクラスの早撃ちだろう。…だがオレよりは遅かった。それだけだ。」

 

「っ…!!」

 

榎沢はグラスホッパーを複数展開。

綾瀬川から距離を取る。

 

 

 

『イコさん、きよぽんと榎沢ちゃん発見。…あー、もう1人いますね。』

 

 

「!」

 

榎沢が辺りに視線を向ける。

交戦開始により、漁夫の利を狙った、生駒隊の水上と南沢。

綾瀬川の背後からは、カメレオンを解除し、切り掛る諏訪隊の笹森が。

 

 

『もう1人は日佐人ですね。日佐人はきよぽんの方行きました。榎沢ちゃんが右手落とされてますわ。…ガトリングは撃てへんでしょ。俺と海と隠岐で榎沢ちゃん止めとくんでイコさんこっちに「申し訳ないですけど同窓会の最中なんで。邪魔しないで貰えます?」』

 

 

「は…?」

 

 

生駒隊射手、水上敏志。

盤面を整えるのが上手く、それはあの二宮も評価をするほど。

1歩離れた位置で攻撃手を援護し、エースの到着を待つ。

そのつもりでトリオンキューブを構えた時だった。

一気に距離を詰めた、綾瀬川にトリオン体を切り裂かれる。

 

『水上?』

 

「嘘やん…バケモンどころの騒ぎやないで?きよぽん。」

 

「この戦場だとあんたが1番厄介そうだからな。」

 

「先輩…!」

 

「っ…」

 

グラスホッパーで距離を詰めた南沢と後ろから笹森が綾瀬川に切り掛る。

 

「…」

 

綾瀬川は笹森の弧月を弧月で受けながら、南沢の弧月を1歩引いて躱すと、笹森の側頭部を蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 

──

 

『序盤も序盤!戦場に動きがあった!榎沢隊員に仕掛けた綾瀬川隊員、榎沢隊員の右手を削る!そしてそして、そこに駆けつけた生駒隊の水上隊員が瞬く間に緊急脱出!』

 

『あはは、榎沢隊員以上の早撃ちですね…。逆に綾瀬川に出来ない事あるのか?』

 

迅が苦笑いを浮かべる。

 

 

──

 

「っ…!日佐人くん邪魔…!!」

 

榎沢は我に返ったように、アサルトライフルを構え、3人に向けて放つ。

南沢、綾瀬川シールドを張り、笹森は飛び退きつつ綾瀬川に仕掛ける。

 

「っ…!!」

 

榎沢は今度は、グレネードガンを向ける。

それを見た笹森は飛び退く。

 

「死ね…!」

 

そして、メテオラが綾瀬川、南沢を包み込む。

それに合わせて笹森はカメレオンを発動。

爆風の中に切り込んだ。

 

 

 

「っ…くそ…!」

 

「マジか…!」

 

 

 

爆風の中から緊急脱出の光が2つ。

 

笹森と南沢のものだった。

 

 

 

榎沢のグレネードガンによる射撃は綾瀬川のシールドに防がれていた。

 

 

笹森、南沢の緊急脱出による得点は柿崎隊、綾瀬川のポイントとなる。

 

 

 

爆風の中から弧月を片手に綾瀬川が出てくる。

 

「…っ…どういうつもり…?本気じゃん…。」

 

榎沢は冷や汗を浮かべる。

 

「お前が望んだことだろ?手を抜いた方が良かったか?」

 

「…これだから…。っ…いいよ、どの道超えなきゃだからね。」

 

そう言って榎沢はハンドガンを構える。

 

「やってみろよ、後輩。」

 

──

 

『なんとなんと、南沢隊員と笹森隊員が一気に緊急脱出!やはり完璧万能手は伊達じゃない!』

 

『3点取って独走状態ですね。』

 

『いつになくやる気だな。綾瀬川の奴。』

 

『そして、デパート内部にも動きがあった!これは…』

 

──

 

『おいおい、カゲ!生駒隊が一気に半分死んだぞ?!綾瀬川が3点取りやがった!』

 

仁礼は影浦に通信を入れる。

 

「チッ…綾瀬川のヤロォ…外にいやがったか。」

 

『ヒカリちゃん、ちょっと今それどころじゃないかも。』

 

「リベンジマッチかよ?ザキさん。」

 

デパート1階。

合流を果たした影浦隊は目の前でエスクードによる砦を完成させた柿崎隊に視線を向ける。

 

「清澄ばかりにいい格好させられないからな…!」

 

 

キンッ…

 

 

その刹那、柿崎隊にとっては聞きなれた抜刀の音が響く。

 

 

『『斬撃警戒…!!』』

 

 

「チッ…!」

 

「おいおい、出てくんのかよ…!」

 

影浦、北添は飛び退き、柿崎はレイガストを構えつつ、エスクードを2枚展開する。

 

 

「なんや分からんけど気づいたら2人やられてるやん?」

 

 

約20m離れた位置。

そこで、NO.6攻撃手、生駒達人は弧月を振った。

 

 

 

「ほんなら俺が点取らなアカンやろ。」

 

 

 

──

 

『デパート内部、柿崎隊VS影浦隊の戦闘が始まろうと言う中、生駒隊長が乱入!』

 

『思い切りましたね、生駒さん。2部隊相手に1人で仕掛けるなんて。狙い撃ちされる可能性もあります。』

 

『いや、生駒っちの旋空の射程は40m。距離を取って旋空を撃っていれば…』

 

 

──

 

「旋空弧月…!」

 

「やべえぞ、生駒の奴。デパートぶった斬る気か?!」

 

縦、横に乱発される生駒旋空。

それによりデパートは崩壊を始める。

 

 

「やべえ…!文香!虎太郎!」

 

「クソが、イカレてんのか…?」

 

「ビルとかの爆破解体あるやん?やってみたかってん。」

 

『いや、爆破やないでしょ。』

 

 

──

 

『こうやって戦場を外に広げれば、生駒っちも割と戦える。』

 

『と言うと?』

 

『1番はやっぱり…』

 

 

──

 

2筋の光が、爆風の中に刺さる。

 

 

『狙撃手の射線が通るようになること…ですね。』

 

 

「っ…!」

 

「ちょ…ゾエさんやっぱ的デカい?」

 

 

柿崎隊の巴が絵馬、影浦隊の北添が隠岐の狙撃により緊急脱出。

 

影浦隊、生駒隊が1Pずつ獲得した。

 

 

「これで全員2人ずつやろ。」

 

「チッ…!」

 

「やってくれるじゃねえか…!」

 

 

デパート内部での戦闘は戦場を外に変え、さらなる混沌を産む。

 

──

 

「っ…!」

 

「どこを狙ってるんだ?」

 

榎沢の放つハンドガンによるアステロイド。

綾瀬川は縦横無尽に駆けながらそれを避ける。

 

火力は確かに榎沢が綾瀬川を大きく上回っている。

だが、片手のない今、榎沢は攻めあぐねていた。

 

グラスホッパーで、綾瀬川と一定の距離を保ちつつ、アステロイドを放つ。

しかし綾瀬川は何処吹く風。

避けるか、シールドで受ける。

 

「っ…!!」

 

榎沢はハンドガンを綾瀬川目掛けて投げ捨てると、アサルトライフルに切り替える。

 

「防いでみなよ…!」

 

「…」

 

綾瀬川はシールドで受けながら、漏らした弾を弧月でたたき落とす。

 

「まだ何かあるのか?」

 

「っ…!」

 

榎沢はグレネードガンを綾瀬川に向ける。

 

しかし、一気に距離を詰めた綾瀬川にグレネードガンを切り裂かれる。

 

「やっば…!」

 

榎沢は急いでグレネードガンを手放し飛び退いた。

 

 

「ここまでみたいだな。」

 

「まだだし…!」

 

榎沢はハンドガンを乱射。

 

「真面目にやるまでもなかったな。」

 

しかし、綾瀬川はシールドで受けながら榎沢に歩み寄る。

 

「っ…」

 

「後輩の実力に興味があったんだが…興醒めだ。」

 

「くっ…!」

 

榎沢は後退るが、足が縺れ、腰を着く。

 

「本当に…何を学んだんだ?お前は。」

 

「…うるさいっ…!」

 

榎沢は声を荒らげながら綾瀬川にハンドガンを向ける。

 

「最高傑作のセンパイには分からないよ…。失敗作…周りには目もくれなかった癖に。あたしがどんな思いでここまで「興味が無い。」ッ!」

 

「この世は勝利が全てだ。」

 

綾瀬川は榎沢が向けたハンドガンを蹴り飛ばす。

 

 

「敗者には語る権利もない。最後にオレが勝っていればそれでいい。」

 

 

そう言って綾瀬川は弧月を構える。

 

「あ…はは…やっぱりあの人の言う通りだよ。…センパイは人間にはなれない。どれだけ丸くなってもセンパイは道具のままだよ。あーあ、丸くなったセンパイになら勝てるかもって思ったんだけどな…。あたしの見込み違いだったって事…?」

 

「そうかもしれないな。」

 

「いつからあたしを倒せるって思ってたの…?」

 

「…出会った瞬間からだ。」

 

そして、綾瀬川は弧月を振り下ろす。

 

 

 

…ことは無かった。

 

 

「ちっ…無駄話をし過ぎたか。」

 

 

綾瀬川はフルガードに切り替える。

 

 

「よォ、悪ぃが先に俺らと遊んでもらうぜ、天才。」

 

バッグワームを羽織り、こちらにショットガンを向ける2つの影。

 

 

「勝てると思ってるのか…?」

 

「思わねえな。だが…榎沢もいりゃ、相打ちくらいには持ってけるだろ…!!」

 

 

 

榎沢の窮地に駆けつけた諏訪、堤。

 

フルアタックに切り替えた、2人のショットガンが火を吹いた。

 




読者の皆さんもそろそろ気付いてると思うので書きますが、榎沢は憎悪と崇拝を兼ね備えたホワイトルーム生です。
どっちも出したいけど出す訳には行かなかったのでこういう形にしました。
二重人格とかでは無いです。普通に2つの感情がごちゃ混ぜで、不安定なだけです。
よう実原作の天沢とは大分違いますが、あくまでリスペクトキャラですので。その辺はご理解いただけたらと思います。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND3 柿崎隊VS影浦隊VS生駒隊VS諏訪隊③

投稿します!!


『さてさて、綾瀬川隊員VS諏訪隊も大詰め!榎沢隊員を圧倒する綾瀬川隊員の元に、諏訪隊長、堤隊員が合流!』

 

『諏訪さんと堤さんは両端に転送されました。どうにか間に合いましたね。』

 

村上がそう付け加える。

 

『エースのピンチに駆けつけた諏訪隊の2人!これで3対1!綾瀬川隊員、万事休すか…!』

 

『まあ、普通はそうでしょうね。…エースの動き次第でしょう。』

 

 

──

 

諏訪、堤によるショットガンのフルアタック。

綾瀬川はシールドで受けながら飛び退く。

 

「大丈夫か?榎沢。」

 

堤が座り込む榎沢に声をかける。

 

「…なんで来たの?」

 

「お前な…。礼の1つも言えねェのか、可愛くねえな。」

 

諏訪は綾瀬川を見据えながら呆れたようにそう言う。

 

「…もう無理だよ…あんな化け物…どうやって…」

 

榎沢はそう言って俯く。

 

「あ?お前…」

 

「諏訪さん…!!」

 

諏訪、堤の射程から外れた綾瀬川。

 

 

しかしそこは綾瀬川にとっては射程内。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

「やべェ…!」

 

 

諏訪、堤は飛び退いて躱す。

 

「あん時は瞬殺してくれたじゃねェか、オイ。手ェ抜いてんのか?」

 

「…」

 

もう一度放たれた旋空をしゃがみながら避けると、綾瀬川にショットガンを向ける。

 

「堤ィ!俺が引き付ける!ぶっ放せ!」

 

「了解です…!」

 

 

堤、諏訪は左右に散開。

 

走りながら綾瀬川にショットガンを向ける。

 

 

「…」

 

榎沢は援護に入るでも、逃げるでもなくその場に座り込んだまま俯く。

 

 

 

次元が違いすぎる。

これですら本気ではないのだろう。

 

 

「っ…」

 

 

『コラー、一華ちゃん!なに座ってるの?!』

 

そこに小佐野から通信が入る。

 

「!」

 

『まさか諦める気じゃないよね?そんなの私が許さないぞー!』

 

『…もう無理だよ…。諏訪さん達だって…綾瀬川センパイの気が変わればすぐにやられる…。』

 

『一華ちゃんが加われば分からないでしょ!一華ちゃんはうちのエースなんだから!』

 

『エース?…本気で言ってるの?日佐人くんを撃ったのに?』

 

『…え?違うの?だって強いじゃん。』

 

『!…強い?あたしが?センパイに負けたのに?』

 

『いや、そりゃあやせくんのほうが強いのかもしんないけどさ。うちで1番強いのは一華(・・)だから。…ほら、行くよ、一華。諏訪さん達は一華を信じて時間を稼ぐように立ち回ってる。』

 

諏訪、堤に視線を向けると、綾瀬川と距離を保ちつつ、堤はフルアタック。

諏訪は綾瀬川の手に対応出来るように片手は空けている。

時間を稼ぐ戦い方だ。

 

『それに…今まで好き勝手やってきたんだから。偶には連携…してみればいいんじゃないの?』

 

 

「あはっ…ほんっと…皆うるさい…。…チームだの連携だの…。」

 

榎沢は渇いた笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「ようやくかよ。」

 

榎沢は諏訪の隣に立つ。

 

 

「…足引っ張らないで。

 

 

…邪魔しないで。」

 

 

「お前な!…ったく…感謝ろや、援護してやる。

 

…いつも通り暴れて来い。」

 

榎沢は覚悟を決めた表情で、目の前の無機質な怪物目掛けて駆けた。

 

 

──

 

『一方、戦場を外に移した、柿崎隊VS影浦隊VS生駒隊の戦闘は柿崎隊がやや不利でしょうか?』

 

『影浦隊、生駒隊には狙撃手がいますからね。照屋隊員もエスクードから出にくいでしょう。』

 

『宇井なら射線が分かるのでは?』

 

村上が迅に尋ねる。

 

『普段ならそうでしょうけど…今回は生駒っちが建物バカスカ切ってますからね〜。下手すりゃ一からマッピングですよ。そう簡単に射線も絞れないでしょう。』

 

『なるほど。』

 

──

 

『ちょ…イコさん?このままやとユズルに撃たれますよ?』

 

『ほんなら都合ええな。そん時は隠岐がユズル仕留めてや。』

 

『そう言う感じですか…。』

 

『それでええやろ。』

 

隠岐に通信を入れたのは既に緊急脱出した水上だった。

 

『上手い事バランス良く行ってるやんけ。』

 

──

 

『膠着が続く…ですか?』

 

迅の言葉に武富が尋ねる。

 

『そうです。どの隊にも有利、不利な点があるんです。まずは生駒隊。生駒隊は生駒っちの旋空。建物を崩せば柿崎隊に強く出れます。隠岐隊員の狙撃もそうですね。影浦隊長には狙撃は通じませんが、攻撃手同士の射程なら生駒っちのほうが影浦隊長より分があります。そして柿崎隊。柿崎隊は綾瀬川が点を取ってる分このまま粘ればタイムアップで勝ちです。防御力も他の隊と比べて圧倒的に高い。狙撃手がおらず、ザキが守りに専念してる分射程が無いのが痛いですが。そして影浦隊。影浦隊はなんと言っても狙撃が効かない点ですね。』

 

『なるほどー!』

 

『あとこれは絵馬隊員、隠岐隊員どちらにも言えることですが…撃てば位置がバレます。隠岐隊員が撃てば絵馬隊員に。絵馬隊員が撃てば隠岐隊員に狙われます。お互いがお互いに邪魔ですからね。絵馬隊員、隠岐隊員はそれが分かってるから撃ちませんね。絵馬隊員が落ちれば間違いなく影浦隊長が狙われる。隠岐隊員が落ちれば生駒っちが。

 

…この試合、痺れを切らした瞬間、決着が付きます。』

 

 

──

 

膠着が続く。

 

「チッ…!」

 

影浦は舌打ちをする。

 

このまま影浦が生駒に仕掛ければ、柿崎隊は影浦を狙うだろう。

狙撃が効かない駒はそうそうに落とすべきだろう。

そうなった場合、絵馬は生駒を狙う。

エスクードと言う守りが無い、何より射程のある攻撃手は邪魔だからだ。

柿崎隊はエスクードの砦がある以上狙いづらい。

生駒の存在がある以上挟まれて終わり。

 

対して生駒。

生駒は狙撃が1番通りやすい駒。

だが、絵馬が撃てば、絵馬は隠岐に位置がバレることになる。

グラスホッパーがある隠岐から逃げるのは難しいだろう。

だから、生駒は柿崎隊の嫌がらせと言わんばかりに、旋空を放つ。

柿崎隊が守りにしか専念できないように。

 

対して柿崎隊。

柿崎隊は最も狙撃が通りにくい。

エスクードによる全方位の守りは鉄壁と言っていいだろう。

だが、射程が無い分動きづらい。

生駒、影浦の考えが一致すれば最初に狙われるのは柿崎隊だろう。

 

 

 

「…ハッ…柄じゃねえな。全員ぶっ殺せば済む話だ。」

 

 

 

そう呟いた、B級最強の攻撃手はスコーピオンを構えて、柿崎隊の2人に切りかかる。

 

「旋空弧月…!」

 

「…っ…」

 

影浦は飛び上がり避けると、エスクードを足場に、向きを変え、旋空のタイムラグのある生駒にスコーピオンを伸ばす。

 

「どわっぶな…!!」

 

生駒は間一髪、それを避ける。

 

それを見た照屋はトリオンキューブを生成。

 

(メテオラ…!)

 

照屋のメテオラは影浦、生駒の間に着弾すると、この場にいる者の視界を奪う。

 

 

((旋空弧月…!))

 

 

照屋、生駒がお互いに旋空を放つ。

 

影浦は空中に飛び退く。

放たれた旋空は上下ですれ違うと、射程の短い照屋の旋空は生駒には届かない。

 

しかし、生駒の長い旋空は照屋に届く。

 

 

ガキン…!

 

 

しかし、それは照屋の前に出た、柿崎のレイガストに弾かれる。

 

 

 

それと同時に、一筋の光が柿崎のトリオン体を吹き飛ばした。

 

 

『勝ってよ。カゲさん。』

 

 

絵馬はその場にシールドを固定。

しかし、デパート奥のビルから放たれたアイビスに割られ、絵馬のトリオン体は吹き飛ばされた。

 

 

「たりめーだ。まだ1点も取ってねえんだからよ…!!」

 

 

柿崎、絵馬の緊急脱出を見届けた影浦、生駒、照屋の3人のエース攻撃手は再びぶつかり合った。

 

 

 

…そして、終盤。

 

空に5つの緊急脱出の光が上がる。

 

2つは照屋、生駒のもの。

エース対決を制したのは影浦だった。

 

 

そして残り3つ。

 

 

 

──

 

「っ…バケモンが…。」

 

「クソ…!」

 

「…っ…」

 

 

トリオン体を切り裂かれた、諏訪、堤。

 

そして榎沢。

 

拙いものではあるが、連携し綾瀬川に仕掛けるも、圧倒的な綾瀬川の技術を前に、敗北を喫した。

 

「これでも届かねえのかよ…!」

 

「そんな事は無いですよ。久しぶりにヒヤヒヤしました。」

 

そう言って綾瀬川は髪の毛を掻き上げると、耳の先端が1cm程欠けており、トリオンがうっすらと漏れていた。

 

「あんた達の連携はオレの演算を上回った。

 

…評価に値する。」

 

「っ…そーかよ…。」

 

諏訪のその言葉を最後に、3人は緊急脱出。

 

 

諏訪隊VS綾瀬川は綾瀬川に軍配が上がった。

 

 

──

 

『『『…』』』

 

観覧席は異様な静けさに包まれる。

 

『えっと…迅さん、諏訪隊と綾瀬川隊員の戦闘…何があったんでしょう?』

 

『あ、やっぱ俺?…そーだなー、諏訪隊の動きが良くなりましたね。それに綾瀬川が対応したって感じなんだけど…それじゃ分からないだろうから細かくね。まず、諏訪さん、堤隊員、榎沢隊員の連携…って言っても榎沢隊員が突っ込んで、近距離射撃、諏訪さんと堤隊員が外からってのを緩急つけてやってただけだけど…。フルガードじゃ受けきれなくなった綾瀬川が距離取ってバイパーで応戦。それに対応した諏訪さんと堤隊員が、榎沢隊員が気を引いてる隙に左右から2人でフルアタック。フルガードで防いでるところに榎沢隊員のハンドガン射撃が炸裂!…って感じで終わると思ったら、綾瀬川は弧月でハンドガンをたたき落としましたね。』

 

『えっと…フルガードだと弧月は使えないと思うのですが…?』

 

『綾瀬川は弧月を消さずに鞘に仕舞ってましたから。…弧月と言うよりは、切れ味ゼロの棒で榎沢隊員の手を叩いたって感じかな。…土壇場の綾瀬川隊員の発想力には脱帽ですね。』

 

『…その後は?』

 

村上が迅に視線を向ける。

 

『後は普通に…綾瀬川が素早く旋空で3人のトリオン供給機関を切り裂いた…かな。』

 

『…』

 

村上は怪しむように迅を見る。

 

『いや、実際そうとしか言えないから。まあ…

 

 

 

…抜刀から納刀するまでが速すぎて、諏訪隊からしたら何が起こったか分からなかっただろうけどね。』

 

『『!』』

 

武富はただただ驚き、村上は何とも言えない表情をしている。

 

『まあ、あの天才の圧勝だね。…武富ちゃん、時間時間。』

 

『!…し、失礼しました!ここでタイムアップ!最終スコア6対4対2対0!B級ランク戦ROUND3上位夜の部を制したのは柿崎隊…!!』

 

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 6P

 

合計 6P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 0P

絵馬 2P

 

合計 4P

 

 

 

生駒隊

 

 

生駒 0P

水上 0P

隠岐 2P

南沢 0P

 

合計 2P

 

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 0P

笹森 0P

榎沢 0P

 

合計 0P

 

 

 

 

『それでは今回の試合を振り返ってどうでしたでしょうか?』

 

武富が迅、村上に尋ねる。

 

『うーん、まあ色々言うことはあるけど…綾瀬川無双って感じかな。』

 

『流石はB級1位のエースですね…。目指す場所の遠さが分かりましたよ…。』

 

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「かーっ!榎沢がいても無理かよ…!」

 

緊急脱出用のベッドに座りながら諏訪はそう言う。

 

「完敗でしたね。」

 

そう言って堤はベッドルームの電気をつけようと手を伸ばす。

 

「あー…堤。付けなくていい。すぐそっち戻るからよ。」

 

諏訪はそう言って堤を止める。

 

「?…了解です。」

 

堤はベッドルームを後にする。

 

 

「なんつー面してんだよ…?」

 

まだベッドに横たわったまま、榎沢は溢れる涙を両手で拭う。

 

「…うる…さい…!」

 

そう言って榎沢は諏訪に拳を突き出す。

 

「ってオイ!俺生身!」

 

「っ…」

 

「はあ…ま、最後の方は上手くやれたんじゃねェか?あいつもそう言ってたしよ。」

 

そう言って諏訪は立ち上がる。

 

「…ねえ諏訪さん…あたし勝てるかな…?」

 

「普通にやって勝てる相手ではねェだろーよ。」

 

「…そっか…。

 

…あたし1人じゃ勝てないのかな…。」

 

「…ぶっ!」

 

諏訪は吹き出す。

 

 

 

 

「…は?何笑ってんの…?」

 

「痛えって!痛えよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人(・・)普通(・・)にやっても勝てない…か。」

 

諏訪がベッドルームを後にした後、榎沢は服の胸元から漆黒のネックレスを引っ張り出して外す。

それを大事に抱きしめると、呟く。

 

 

「やっぱかっこいいな…綾瀬川センパイ…ふふっ…大好き…」

 

 

 

そしてゆっくりと起き上がり、ネックレスをつける。

 

 

 

 

 

 

「…大っ嫌い。」




後書きなぁ…。
何書こうかね…w

という訳でこの話で小佐野の綾瀬川の呼び方が出たので、関わりのあるキャラの綾瀬川の呼び方&呼ばれ方です。原作前と変更があるキャラは前の呼び名も。()の中がそうです。ちな、原作前絡みなくね?ってキャラは原作が始まるまでの間に絡んでると思われる。

城戸正宗→清澄→城戸さん、城戸司令
忍田真史→綾瀬川くん→本部長
唐沢克己→綾瀬川くん→唐沢さん
唐沢有栖→綾瀬川くん→唐沢、有栖
寺島雷蔵→綾瀬川→雷蔵さん
木崎レイジ→綾瀬川→木崎さん
烏丸京介→綾瀬川先輩→烏丸
小南桐絵→綾瀬川→小南
迅悠一→綾瀬川→迅さん
宇佐美栞→綾瀬川くん→宇佐美
太刀川慶→綾瀬川→太刀川さん
出水公平→綾瀬川→出水、弾バカ
唯我尊→あ、綾瀬川先輩→えっと…お前
国近柚宇→あやせくん(綾瀬川くん)→柚宇さん(国近先輩)
当真勇→綾瀬川→当真さん
真木理佐→綾瀬川→真木
風間蒼也→綾瀬川→風間さん
歌川遼→綾瀬川先輩→歌川
三上歌歩→綾瀬川くん→三上
草壁早紀→あやせ→草壁
緑川駿→あやせせんぱい→駿
里見一馬→綾瀬川(綾瀬川くん)→里見
佐伯竜司→綾瀬川→佐伯
嵐山准→綾瀬川→嵐山さん
時枝充→綾瀬川先輩→時枝
佐鳥賢→綾瀬川せんぱい→さとり(佐鳥)
木虎藍→綾瀬川先輩→木虎
綾辻遥→綾瀬川くん→綾辻
加古望→清澄くん→加古さん
黒江双葉→ししょー(綾瀬川先輩)→双葉(黒江)
喜多川真衣→あやせっち→喜多川
三輪秀次→綾瀬川→三輪
米屋陽介→綾瀬川→米屋、槍バカ
奈良坂透→綾瀬川→奈良坂
古寺章平→綾瀬川先輩→古寺
月見蓮→綾瀬川くん→月見さん
片桐隆明→綾瀬川→片桐
一条雪丸→あやせせんぱい→雪丸
結束夏凛→綾瀬川→結束
柿崎国治→清澄→柿崎さん、隊長
照屋文香→清澄先輩→文香
巴虎太郎→清澄先輩→虎太郎
宇井真登華→清澄先輩→真登華
二宮匡貴→綾瀬川→二宮さん
犬飼澄晴→清澄くん→澄晴先輩(犬飼先輩)
辻新之助→綾瀬川(綾瀬川くん)→辻
氷見亜季→綾瀬川くん→氷見さん
影浦雅人→綾瀬川→カゲさん
北添尋→綾瀬川くん→ゾエさん(北添先輩)
絵馬ユズル→綾瀬川さん→絵馬
仁礼光→綾瀬川→ヒカリ(仁礼)
生駒達人→きよぽん→生駒さん
水上敏志→きよぽん→水上先輩
隠岐孝二→きよぽん→隠岐
南沢海→きよぽん先輩→海
細井真織→きよ…綾瀬川(綾瀬川クン)→マリオ
弓場拓磨→綾瀬川ァ→弓場さん
帯島ユカリ→綾瀬川せんぱい→帯島
外岡一斗→綾瀬川先輩→外岡
藤丸のの→綾瀬川ァ→ののさん
王子一彰→利根川→王子先輩
蔵内和紀→綾瀬川→蔵内先輩
樫尾由多嘉→綾瀬川先輩→樫尾
東春秋→綾瀬川→東さん
奥寺常幸→綾瀬川先輩→奥寺
小荒井登→綾瀬川先輩→小荒井
人見摩子→綾瀬川くん→人見先輩
香取葉子→綾瀬川→香取
若村麓郎→綾瀬川→若村
三浦雄太→綾瀬川くん→三浦
来馬辰也→綾瀬川くん→来馬さん
村上鋼→綾瀬川→村上先輩
別役太一→綾瀬川先輩→太一(別役)
今結花→綾瀬川くん→今先輩
諏訪洸太郎→綾瀬川→諏訪さん
堤大地→綾瀬川→堤さん
笹森日佐人→綾瀬川先輩→笹森
榎沢一華→綾瀬川センパイ→榎沢
小佐野瑠衣→あやせくん→オサノ
荒船哲次→綾瀬川→荒船さん
穂刈篤→綾瀬川→穂刈先輩
半崎義人→綾瀬川先輩→半崎
加賀美倫→綾瀬川くん→加賀美先輩
那須玲→綾瀬川くん→那須
熊谷友子→綾瀬川→熊谷
日浦茜→綾瀬川せんぱい→日浦
志岐小夜子→綾瀬川先輩→志岐さん
三雲修→綾瀬川先輩→三雲、メガネ
空閑遊真→あやせがわせんぱい→空閑、近界民

こんな感じで書いてるつもり。
違ってたら多分間違い。
誤字修正送ってくれると嬉しいな。
()の中が原作前の呼び方です。
絡みなくねってキャラは多分いつの間にか仲良くなってます。
片桐隊はいつかちゃんと書く。おそらく多分おそらく。


感想、評価等お待ちしております。


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ROUND3を終えて

遅くなりすいません!
ちょっと旅行に行ってまして。
このシーズンは色々誘われて楽しい反面正直めんどいですw
投稿のペースは戻りますんでお気になさらず。


「なるほど。これがあなたの言う最高傑作…綾瀬川清澄の実力ですか。ですが…見応えはありませんね。失敗作だという彼女…手も足も出ないじゃないですか。」

 

「…」

 

瑠花の言葉に、有栖は黙る。

 

「彼女…榎沢一華は十分な実力者ですよ。銃手ならB級…いえ、ボーダートップの実力者です。ふふ…流石と言うかやはりと言うか…期待通りですよ、綾瀬川清澄くん。」

 

そう言いながら有栖は手に持った白のクイーンの駒で黒のキングの駒を倒した。

 

「それでは戻りましょうか。」

 

そう言って有栖は杖を持ちゆっくりと立ち上がる。

 

「前から思ってたんですけど…トリオン体になればいいのでは?」

 

「いいえ。足に疾患があるのが私の体です。確かにトリオン体は便利ですが…所詮は仮初。それに慣れてしまえば私はありのままの私を愛せなくなってしまいますから。」

 

クスリと笑いながら有栖はゆっくりと杖を着いて歩き出した。

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

 

「あ、おかえり先輩。」

 

「…ああ。」

 

戻ってきたオレを真登華が笑顔で迎える。

 

「MVPが何シケたツラしてんだよ?」

 

柿崎がオレの背中を叩く。

 

「今更驚いたり、ビビったりすると思ったか?お前がすげえ奴だってのは俺らが一番よく分かってるんだよ。」

 

「そうですよ…。…次は私が6点取りますから。」

 

柿崎の言葉に次いで文香はそう言う。

 

「あはは、ズルとか言われないかな?」

 

「言わせとけば良いんですよ!清澄先輩はうちのエースなんですから!てか、銃手トリガー使えるなら言ってくださいよ!今度俺の見てもらってもいいですか?」

 

「…ああ。文香も凄かっただろ。お前が最後カゲさんの足を奪ってなきゃカゲさんとやり合う羽目になってた。」

 

「…次は倒します。」

 

オレが褒めるも文香は納得行かない様子でそう言った。

 

──

 

 

「よー、綾瀬川。お疲れ様。」

 

「…」

 

後ろから声をかけられ、綾瀬川は何も言わずに振り返る。

 

「チッ…あんたが解説にいる時点で怪しいと思っていた。」

 

「ちょ…ただ挨拶しただけなんだけど?…ぼんち揚げ…食う?」

 

そう言って実力派エリート迅悠一は綾瀬川にぼんち揚げの袋を差し出した。

 

 

 

 

 

「…で?何の用です?わざわざ解説をしてまで本部に来たんだ。何も無い訳が無い。」

 

綾瀬川はぼんち揚げを頬張りながら迅に尋ねる。

 

「いやいや、元々昼の部で解説引き受けてたし。お前が榎沢ちゃんをボコる未来が見えたからこれは解説しなきゃって思って。」

 

「…榎沢についてか?あんたなら榎沢の事は分かってるんでしょう?」

 

「まあ…ね。」

 

「ボーダーに…オレに不利益な未来でも見えたのか?」

 

「不利益かどうかは分からないけど…面倒な未来は見えた。だからお前に忠告に来たのさ。まあ前置きが長いとお前も嫌だろうし言うぞ…

 

 

 

…榎沢ちゃんの事はそこまで警戒しなくてもいいと思うよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

 

 

 

 

「…」

 

そう言う迅に対して綾瀬川は酷く冷たい無機質な瞳を向けた。

 

「いや、何か言えよ。」

 

「…まあ最初からオレはあんたの事を信用してないからな。」

 

そう言って綾瀬川は歩き出す。

 

「どう言う意味だコラ。…ま、どう取ってもらっても構わないよ。あ、それともう1つ。次綾瀬川が当たるのは俺の後輩達なんだ。お手柔らかに頼むよ。」

 

 

 

「知るか。敵なら容赦なく叩き潰すだけだ。」

 

 

──

 

 

「で?なんで、オメーは、また、こんなところに、いんだ?…あぁ?」

 

言葉に合わせて諏訪は榎沢の頭にチョップを落とす。

 

「ちょ、いたーい…生身だってば。」

 

榎沢は頭を抑えながらそう返した。

 

時刻は23時を回る頃。

前回同様榎沢はコンビニの前で座り込んでいた。

 

「今度はコート着てるから。」

 

そう言って榎沢は顔を埋めた。

 

「そう言う問題じゃねえっつってんだろーが。」

 

「じゃあまた居酒屋って所連れてってよ!」

 

「連れてかねーよ。今日は夜勤なんだよ。今から防衛任務だっつーの。高校生にはあんまり夜勤はやらせらんねェからな。」

 

「ちぇー。」

 

そう言って榎沢は頬を膨らませる。

 

「…はぁ…丁度いいわ。オメーも着いてこい。」

 

そう言って諏訪は榎沢の首根っこを掴む。

 

「えぇー…仕事やだぁ…。」

 

「じゃあ帰るか?」

 

「…仕事大好きぃ。」

 

 

 

──

 

「…なんでまたこいつがいるんだ…?こんな時間に。」

 

そう尋ねたのは風間だった。

 

「チビに言われたくないですよーだ。小学生みたいな身長してるくせに。」

 

そう言って榎沢は舌を出す。

 

「ほう…?よっぽど俺に斬られたいらしいな。」

 

「冗談でしょ。穴だらけにされて泣いても知らないよ?」

 

 

『2人とも、終わってからにしろよ?防衛任務中だからな。』

 

通信で遠くからそう言うのは東だった。

 

「てかなんでこんなオッサンだらけの臨時部隊でやんなきゃいけないわけ?」

 

「オッサンって…東さんはともかく俺と風間は21、二宮は20だぞ?」

 

『ハッハー。俺はともかくか。まだ25なんだけどな。諏訪、誤射には気をつけろよ?』

 

「てかポケインスーツさんいるじゃん。」

 

「ぶっ!」

 

諏訪が吹き出す。

 

 

「おい、俺は二宮だ。二度とそんなふざけた名前で呼ぶな。」

 

「ハイハイ、二宮さんねー。てかポッケ手突っ込んで偉そうにしてるからそう呼ばれるんじゃない?」

 

「あ?」

 

「お前な…。」

 

諏訪は榎沢の襟首を掴む。

 

「なんでオメーはそう人に突っかかるんだよ…。」

 

諏訪は呆れたようにそう言った。

 

 

 

「今日のランク戦見ていたぞ。」

 

そう言うのは風間だ。

 

「…ふーん、あっそ。見て笑ってた訳?」

 

榎沢は笑いながら尋ねる。

 

「勘違いするなよ。俺はお前の戦い方をバカにする気は無い。むしろお前のように1人でも点を取れる駒は自由にさせるべきだと思っている。…綾瀬川が異常なだけだ。」

 

「褒めてくれるんだ。ま、綾瀬川センパイは最高傑作だからねー。」

 

「最高傑作…?」

 

「そ。…失敗作のあたしとは大違い。」

 

「…お前は綾瀬川の何を知っているんだ?」

 

風間が真剣な表情で尋ねる。

 

「綾瀬川へのこだわり…綾瀬川もそうだが…ボーダーにいる期間が短いにも関わらず異常な実力…お前は何者だ?」

 

風間のその言葉に榎沢は怪しげな笑みを浮かべる。

 

「なになに?あたしのこと気になるの?ごめんね〜?あたしって綾瀬川センパイ一筋だから。浮気はちょっと。」

 

「ふざけるな。真面目に答えろ。」

 

そう言って風間は榎沢を睨む。

 

「綾瀬川センパイに聞けば?答えてくれるんじゃない?…てかそれ以前に…。」

 

そう言って榎沢は風間に近づく。

 

「知ってどうするの?まさかただの好奇心ってやつ?」

 

「好奇心の問題じゃない。同じボーダー隊員として話すべきだ。お前と綾瀬川は異常すぎる。そんな奴に背中は預けられない。」

 

「別に預けてくれなくていいよ。てか風間さんも分かるでしょ?ボーダーってのは正義のヒーローじゃない。目的も人それぞれ。

 

 

 

 

 

 

…余計な詮索は無神経なんじゃない?」

 

 

そう言って榎沢は風間の額に銃口を当てる。

 

「隊員同士の戦闘は禁じられている。隊務規定違反だぞ。」

 

「撃てばね。」

 

榎沢は銃を下ろす。

 

「…あたしは綾瀬川センパイに用があるだけ。これはあたしと綾瀬川センパイの問題だから。」

 

「…」

 

「大丈夫だよ。ちゃんと仕事はする。」

 

 

 

榎沢はガンスピンをしながら、ハンドガンを抜くと虚空にハンドガンを向ける。

 

そして引き金を引いた。

 

『門発生、座標は──』

 

三輪隊オペレーター、月見蓮が言い切る前に門が開き、現れたバムスターの口を榎沢のアステロイドが貫いた。

 

 

 

 

「あたしはボーダー隊員だからね。」

 

 

 

 

月明かりの下、榎沢一華は妖艶な笑みでそう言った。

 

 

「あっ、そうだ。二宮さん。

 

 

…ちょーっと頼みがあるんだけど〜。」

 

──

 

ボーダー本部基地司令室

 

大規模侵攻の際、迅悠一が捕らえた近界民、ヒュース。

そのヒュースを連れ、三雲修、空閑遊真はボーダーの司令室に来ていた。

 

 

その男は、城戸司令の横でまるで護衛のように立っていた。

 

 

それが三雲、空閑がROUND4で対決することになるB級1位のエース、綾瀬川清澄との4度目の対面だった。

 

「っ…!」

 

こちらを見据える酷く冷たい無機質な瞳に三雲修は冷や汗を浮かべた。




次回多分幕間を挟みます。
宇井ちゃんの独白かなー。
アンケート見てる感じ。
半分くらい書けてるので明日には投稿できるかと。
アンケートいいね。
またアンケート取りますね。
次の幕間についてです。

感想、評価等お待ちしております!


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ROUND4に向けて

投稿します。


ボーダー本部の司令室。

 

そこで三雲、空閑、そしてヒュースを待っていたのは、ボーダー本部総司令、城戸正宗、本部長、忍田真史、開発室長、鬼怒田本吉、A級3位風間隊攻撃手、菊地原士郎、そしてROUND4で三雲、空閑が対戦することになる、B級1位柿崎隊のエース、綾瀬川清澄だった。

 

「拷問で得られる情報は信用できない…か。」

 

空閑に近界での捕虜の扱い、拷問について聞いた後、城戸は口を開く。

 

「だがおまえなら何が本当か(・・・・・)分かるのではないか?」

 

「!」

 

空閑遊真は嘘を見抜くと言うサイドエフェクトを持っている。

 

三雲はそれを察して目を見開く。

 

 

その言葉を聞いた綾瀬川は一歩前へ出る。

しかしそれを城戸が制した。

 

 

「そのためにおれを呼んだの?」

 

「…確認したまでだ。気を悪くするな。」

 

「…」

 

城戸のその言葉を聞いた綾瀬川は元の位置に戻る。

 

 

そして今度は忍田の揺さぶりが始まる。

 

本部基地に侵入したエネドラが死んだ事。

アフトクラトルの隊長、ハイレインは元々ヒュースをここ、玄界に置いていくつもりだったこと。

だからこそ…

 

「アフトクラトルが君を故意に見捨てて行ったのなら忠義を立てる必要はもう無いんじゃないか?」

 

忍田はヒュースにそう尋ねた。

 

 

 

「…侮るな。遠征に出る以上は死ぬことも覚悟の上だ。それしきのことで本国の情報を漏らすか。」

 

 

ヒュースはそう言って突っぱねる。

 

『…液体化の奴が死んだ話でちょっとだけ動揺してますがそれ以外に心音の変化はないです。これ以上揺さぶっても無駄ですね。』

 

その言葉に城戸は綾瀬川に視線を向けた。

 

 

 

「揺さぶりが効かないならやる事は1つだろう。」

 

 

 

菊地原の通信を聞いて口を開いたのは綾瀬川だった。

 

 

「拷問しかないでしょ。…口を割ればそこの近界民…空閑はボーダーの隊員だ。隊員である以上玉狛だろうが何だろうが任務を果たすべきだ。真偽を確かめられる。拷問で死ねばそれで結構。邪魔な近界民を処理できる。黙秘を貫くならそれでいい。オレが地獄を見せる。…城戸さんの手を煩わせるまでもない。」

 

冷たい声色でそう言い、腕を捲りながら綾瀬川はヒュースに近付く。

 

「綾瀬川くん。早計すぎる。」

 

それを止めたのは忍田だった。

 

「捕虜は慎重に扱うべきだ。」

 

「情報を持っているであろう近界民をみすみす玉狛に一任しろと?」

 

綾瀬川は忍田に冷たい目で尋ねる。

 

 

 

 

「拷問をするというのなら好きにしろ。何をされても俺は口を割らない。」

 

ヒュースはそう言って綾瀬川を見据える。

 

「結構な心掛けだな。だがその愛国心…いつまでもつんだ?」

 

綾瀬川は忍田を押し退かすと、ヒュースに近付く。

 

司令室に緊張が走る。

 

ヒュースに手を伸ばす綾瀬川。

ヒュースはただ、綾瀬川の無機質な瞳を見ていた。

 

その光景に三雲はただ、冷や汗を浮かべ立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

『ダメですね、綾瀬川先輩。』

 

 

 

綾瀬川に菊地原からの通信が入る。

 

 

『まるで動じないです。』

 

 

 

「…チッ…。」

 

 

菊地原の通信を受け、綾瀬川はヒュースに伸ばした手を引っ込め司令室の扉を開ける。

 

 

「…え…?」

 

思わずそう声を漏らしたのは三雲だった。

 

 

「愛国心は本物みたいですね。…オレはこれで。拷問をするようだったらまた呼んでください。」

 

「この件に関して君を呼ぶことはもう無い。

 

 

 

 

…ご苦労だった。」

 

 

 

 

張り詰めた空気が晴れる。

 

 

「ふ〜、怖ぇな…。城戸さん。」

 

玉狛の支部長、林道(りんどう) (たくみ)は一息吐いた後、城戸に視線を向ける。

 

「…今日はここまでにしよう。林道支部長、捕虜をさがらせろ。」

 

 

三雲は開いた口が塞がらなかった。

全て演技。

 

その割には…

 

 

 

「すごいな。あやせがわせんぱい。」

 

隣の空閑が口を開く。

 

 

 

 

「演技のはずなのに俺のサイドエフェクトに反応しなかった。

 

 

 

 

…次のROUND4、相当やばい相手だな。」

 

空閑のその言葉に三雲は冷や汗を浮かべた。

 

 

 

───

 

「見たかよ?ROUND3。」

 

「見た見た。柿崎隊の綾瀬川先輩だろ?すごく強かった。」

 

ボーダー本部ロビー

 

ボーダー隊員にとっての憩いの場であるここは、ボーダーの色々な情報が飛び交っている。

ROUND3の熱が冷めないのか、玉狛のエースがNo.4攻撃手に勝っただとか、B級1位部隊のエースが大量得点を挙げたなど、様々な話が飛び交っていた。

 

「諏訪隊とか見た?全然相手になってなかったよな。」

 

「てか諏訪隊って諏訪隊に新しく入った…榎沢?だっけ?が強いから上位入りしてただけだろ?」

 

「分かる。他が大したことなきゃな…。特に諏訪さん。ガラ悪過ぎだろ。よく隊長になれたよな。年下の女子に点取らせて上位入りして嬉しいかね〜。」

 

 

 

 

「分かる〜。諏訪さんってガラ悪いよね〜。」

 

 

 

 

「「!」」

 

 

話していたのはB級に上がり立てかC級の隊員だろう。

 

そこに突然現れたのは件の天才銃手、榎沢一華だった。

 

「な、なんで…?」

 

「ん?あー…なんか噂してるなーって思って。2人はポジションどこなの?」

 

「え…あ…射手と攻撃手だけど…。」

 

「おっ!ちょうどいいね。次那須隊とやるんだ〜。

 

 

 

…ブース入ってよ。諏訪さんを年下に頼ってるって言って馬鹿にしてたんだ…2人とも見た感じあたしより年上だしね。2対1でいいよ。

 

 

 

 

…まさか年下からしっぽ巻いて逃げないよね?」

 

 

───

 

(次の対戦相手。さっき会ったあの人…綾瀬川先輩も出るよ。勝算はあるの?はっきり言って今の君たちじゃ3対1でもあの人には勝てないと思うけど?)

 

(お前たちのレベルで遠征部隊に選ばれることは無い。)

 

 

菊地原、二宮から言われた言葉を思い出し、三雲は考え込む。

 

 

「あの…」

 

鳩原の話が一段落着いたあと、三雲は木崎、小南、宇佐美に尋ねる。

 

「前に玉狛に綾瀬川先輩が来てましたよね?どう言う用事だったんですか?」

 

「あー、あれね。カレー食べに来ただけだよ。」

 

「「カレー?」」

 

三雲と空閑の声が重なる。

 

「そ。綾瀬川くんこなみのカレー大好きなんだよね。そのついでに小南ととりまるくんと模擬戦してたって感じかな。」

 

「よく玉狛に来るんですか?」

 

「前はもっと来てたけどね〜。

 

 

 

…柿崎隊の攻撃手、照屋ちゃんは小南の弟子だから。」

 

「「!」」

 

三雲、空閑が目を見開く。

 

「そうよ。あたしが教えることはもうないから実践を積むように言ってあるのよ。…手強いわよ。」

 

「綾瀬川くんは照屋ちゃんの付き添いでカレー食べに来てたよ。」

 

「あいつカレーだけ食べてさっさと帰るんだから…!」

 

小南はそう言って頬をふくらませる。

 

「またまた〜。嬉しかったくせに〜。」

 

「は、はあ?!嬉しくなんかないわよ!!」

 

「ふむ、こなみせんぱい、つまんない嘘つくね。」

 

 

 

 

「綾瀬川先輩はどう言う人なんですか?ログを見る度トリガーが変わってて…。」

 

「あー…あまりログは参考にしない方がいいよ?」

 

「え?」

 

三雲の言葉に宇佐美は気まずそうに返す。

小南も機嫌が悪そうに目を逸らした。

 

「うーん、何から話そうかな…。綾瀬川くんがボーダー2人目の完璧万能手なのは知ってるよね?」

 

「はい。烏丸先輩から聞きました。」

 

「レイジさんはほら、ある程度トリガーは決まっててたまに狙撃もするって感じなんだけど…綾瀬川くんは別。」

 

「別?」

 

その問いに答えたのは木崎だった。

 

「あいつは相手によってトリガーを変えてくる。攻撃手トリガー、射手・銃手トリガー、狙撃手トリガー。最近じゃトラッパーもやる。綾瀬川に対しては対策を立てても無駄だ。アドリブで対応するしかない。」

 

「そ、そんな...!後手に回るってことですか?」

 

「後手に回されるんだ。現状綾瀬川の弱点は初見殺ししかないぞ。」

 

 

対戦相手の強大さに、三雲は考え込む。

 

 

「綾瀬川くんに関しては他の隊も一緒だから。後手に回らざるを得ないの。まさに完璧万能手って感じだよね。」

 

宇佐美は呆れたように笑う。

 

「オペレーター泣かせだから本当に。ま、それでこそB級最強の万能手だよね。じゃ、私寝るね。」

 

「あ、はい。ありがとうございます。」

 

「私も寝るわ。あんまりこんを詰めすぎるんじゃないわよ。」

 

 

そう言って宇佐美、小南は自室へと戻って行った。

 

 

 

 

「B級最強…か。物は言いようだな。」

 

木崎はそう言って目を伏せる。

 

「物は言いよう…ですか?」

 

「ああ。お前たちには言っておく。覚えておけ。

 

 

 

 

…綾瀬川は間違いなくA級を含めた(・・・・・・)ボーダー最強の隊員だ。」




ROUND3終了後
1位 柿崎隊 31P
2位 二宮隊 27P
3位 影浦隊 23P
4位 生駒隊 20P
5位 王子隊 19P
6位 玉狛第二 19P
7位 東隊 18P
8位 諏訪隊 16P
9位 弓場隊 15P
10位 鈴鳴第一(来馬隊) 13P
11位 漆間隊 13P
12位 荒船隊 12P
13位 香取隊 12P
14位 那須隊 12P


各キャラからの印象&各キャラへの印象

三雲修→強敵。天才万能手。
空閑遊真→サイドエフェクト効かない。ヤバそうな相手。
ヒュース→脅しても無駄。
菊地原士郎→先輩。慕う。
林藤匠→怖ぇ。

三雲修←メガネ。
空閑遊真←白チビ。
ヒュース←チッ...口割らねぇか。
菊地原士郎←ロン毛サイドエフェクト。良い奴。
林藤匠←気の抜けない相手。


地味に林藤支部長初登場かもしれないw
きくっちーは綾瀬川に割と懐いてます。

榎沢の話はこんなの書きたかったのと、次の対戦相手を那須隊とアピールするために書いた話です。

宇井ちゃんの独白で17歳組のマッチアップを書いたおかげか、次の幕間アンケートで割と追い上げて来てます。


感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑬

投稿遅れました!
前回の話とタイトル逆だった説。
でも日常ってわけじゃないからなぁ、前回のは。


 

「お前なぁ…弱いものいじめする趣味なんてねえだろ…?」

 

そう言いながら諏訪は榎沢のあたまにグリグリと拳を押し付ける。

 

「ちょ…いたーい…禿げるぅ…。」

 

「トリオン体なんだから痛いわけねえだろ。」

 

 

 

忍田がたまたまランク戦ブースに足を運んだ時だった。

こちらに助けを求める声が。

 

それは先日B級になったばかりの隊員2人の悲鳴。

 

 

「何?年下から逃げんの?ほら、かかってきなよ。年下の女の子1人に2人で勝てないなんて…恥ずかしくないのかね〜。ざーこ。」

 

「テメッ…言わせておけば…!」

 

そう言って2人のうちの1人が、榎沢に殴り掛かる。

 

もちろん、模擬戦同士のインターバルの時間の為、模擬戦中ではない。

それを見た忍田は腕を押さえつける。

 

「そういう事は仮想戦闘空間の中でやりたまえ。」

 

「し、忍田本部長…!」

 

「ひ、ひえ…!」

 

 

「ほらほらー、本ぶちょー様もこう言ってるし行こーよ。自称射手と自称攻撃手さん?」

 

「はぁ?!俺らは正式に攻撃手と射手だ!」

 

「え〜?そんな弱いのに〜?ボーダー隊員向いてないんじゃない?辞めれば?」

 

「「なんだとてめぇ!!」」

 

「やめろと言っている。…榎沢くん、君も。挑発は止めるんだ。」

 

忍田は榎沢を宥める。

 

「えー?でも事実を言っただけだし〜。…適材適所ってやつ?向いてないやつに身の程分からせとかないと。そいつら向いてないよ?面接したの本ぶちょー?」

 

「てめぇ…!」

 

忍田が押えていた1人が榎沢目掛けて足を伸ばす。

 

「止めなさいと言っている。」

 

そう言って忍田は押さえつける。

 

「いーよいーよ、本ぶちょー。」

 

そう言いながら榎沢は近付く。

 

 

 

「あっ!足が滑ったー!!」

 

 

 

 

 

そう言って榎沢は押さえつけられた男の顔を思い切り蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

 

「いや、相手トリオン体なんだから怪我も何も痛くもないでしょ?」

 

「そう言う問題じゃねェよ馬鹿。」

 

忍田に呼び出された諏訪は榎沢の頭にチョップを落とす。

 

「すんません、忍田本部長。」

 

諏訪は頭を下げる。

 

「あっ!あれだよ!正当防衛!先に殴りかかろうとしたのあっちだし!」

 

「本部長が抑えてたんだろーが!…もう喋んな!」

 

「えぇ〜?」

 

その様子を見ていた忍田は薄らと笑みを浮かべる。

 

「状況は既に周りのものに聞いている。先に仕掛けたのがあちらというのも。」

 

「じゃあいいじゃん。いちいち怒んないで下さいよ〜。」

 

「お前な…!」

 

「ただし最後の行動は褒められたものじゃないな。」

 

忍田がずいっと榎沢に近づく。

 

「あれは違うんですよぉ…足が滑っちゃって。」

 

「通じるわけ…ねえだろーがっ。」

 

そう言って諏訪は榎沢の頭に先程より強いチョップを落とす。

 

「うわーん、いたーい。諏訪さんの暴力男!」

 

「あぁ?!トリオン体だろーがてめぇ!」

 

「心が傷つきましたー。」

 

「心臓に毛が生えてる様なやつが何言ってんだよ。」

 

「ふっ、可愛らしい部下をもったな、諏訪。」

 

「いやいや、生意気なだけっスよ。」

 

忍田の言葉に対して諏訪は榎沢の顔を頭をバシバシと叩きながらそう言う。

 

「いたいってばー。」

 

榎沢はジト目で諏訪を見る。

 

「先程の2人は諏訪、君の悪口を言っていたらしい。それに榎沢くんは腹を立てたのだろう。あちらが謝罪をしてどちらも不問になっている。…あまり怒ってやるな。

 

 

…彼女は君のために動いたんだ。本当にいい部下を持ったな。」

 

 

そう言いながら忍田は榎沢に温かい眼差しを向ける。

 

 

「は、はぁ?そんなんじゃないし。諏訪さんガラ悪いし。次那須隊とやるから攻撃手と射手のデータ欲しかっただけだし。」

 

「へぇ?データねぇ?」

 

そう言って諏訪はニヤニヤと笑う。

 

 

「…」

 

「…無言で殴んな。心が痛い。」

 

 

 

 

 

「で?ほんとはなんであんな真似したんだ?」

 

諏訪は榎沢に尋ねる。

 

「…べつに。」

 

「あァ?」

 

「諏訪さんは一応あたしの隊長だから。諏訪さんはあたしよりは雑魚だけど…」

 

「雑魚て。」

 

「諏訪さんより雑魚いやつに隊長バカにされたくないだけだし。」

 

 

「…」

 

その言葉に諏訪は黙る。

 

「何?」

 

「いや、忍田さんの話マジだったのか?」

 

「…撃っていい?」

 

榎沢は諏訪にハンドガンを向ける。

 

「やめろ馬鹿。」

 

 

 

「いやー、おめェも丸くなったな榎沢。」

 

「うるさい。」

 

「まあそう言うなよ。飯でも奢ってやる。行くか?」

 

「行きたーい!

 

 

 

…けど次勝ってにしてよ。」

 

挙げた手を降ろして榎沢は笑う。

 

「いいのか?」

 

「ちょっとこの後行くとこあってさー。」

 

「あぁ?行くとこ…?」

 

 

「そ。

 

 

 

 

 

…二宮隊。」

 

妖艶な笑みで榎沢はそう言った。

 

───

 

「かげうらせんぱい?」

 

「ああ、B級3位、影浦隊の隊長だ。綾瀬川については俺よりもカゲの方が詳しいよ。」

 

空閑遊真の問いに、村上鋼はそう返す。

 

「ふむ。」

 

「俺が勝ち越せない4人の攻撃手の内の1人だ。」

 

ちなみに後は太刀川、風間、小南らしい。

 

「攻撃手ではってこと?あやせがわせんぱいには勝ち越せるの?」

 

「…勝ち越した事はあるが…俺は勝ち越したとは思ってない。」

 

「?」

 

「会えば分かるよ。ほら、噂をすればだ。」

 

 

───

 

「…」

 

「オラオラ!前みてぇに攻めてこいや綾瀬川ァ!」

 

影浦から繰り出されるスコーピオンの連撃を、綾瀬川は弧月でたたき落とす。

 

「いや、カゲさんからはまだ盗み足りないんで。」

 

連撃の隙間に、綾瀬川は体勢を落として、影浦に踏み込む。

 

影浦は綾瀬川にスコーピオンを伸ばす。

 

それをヒラヒラ避けながら近接すると弧月を突き出す。

 

「チッ!」

 

感情の篭っていない、高速の刺突は影浦の髪の毛を数本散らす。

 

「この間合いならスコーピオンの方が良いか。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を消すと、スコーピオンを取り出す。

 

 

「ハッ!てめぇのスコーピオンとはあんまりやったことなかったなぁ…

 

 

 

…おもしれえ…ぶった斬る。」

 

 

───

 

「弧月とスコーピオン、両方使うんだね。」

 

「ああ。ログにチーム戦のものもあった。そこではレイガストも使ってたぞ。」

 

「ほほう。」

 

影浦と綾瀬川の模擬戦は5-5で引き分けとなり、2人が戻ってくる。

 

「テメッ、また手ェ抜きやがったな?」

 

「いやいや、能ある鷹は爪を…ちょ、痛いです。」

 

綾瀬川の頭にアイアンクローをする影浦に綾瀬川はそう返す。

 

「トリオン体だろーが。…あ?」

 

こちらへの視線を感じて影浦は視線を向ける。

 

「よう、カゲ、綾瀬川。」

 

「鋼。」

 

「…どうも。」

 

そう言いながら綾瀬川は後ろの空閑に視線を向けた。

 

「どーもどーも。あやせがわせんぱいと…かげうらせんぱい。」

 

「あ?なんだこのチビ。」

 

「玉狛第二の空閑遊真です。よろしく。かげうらせんぱい。」

 

「玉狛の空閑?なんだよ、鋼と荒船こんなチビに負けやがったのか。おもしれー。帰ったらログ見るわ。」

 

「見るなよ。」

 

「先日はどーも。あやせがわせんぱい。」

 

「ああ。」

 

「先日はうちのものがお世話に…」

 

「機密だぞ。首と記憶を飛ばされたいのか?」

 

「そりゃ失礼。」

 

「「?」」

 

影浦と村上は首を傾げる。

 

「カゲさんに用か?それならオレはこれで。」

 

そう言って綾瀬川は空閑の横を抜ける。

 

「まあ待てよ。綾瀬川。」

 

そう言って村上は綾瀬川の腕を掴む。

 

「次、こいつとやるんだろ?」

 

「まあ。」

 

そう言うと村上は空閑に視線を向ける。

 

「あやせがわせんぱい…俺と模擬戦やろーよ。」

 

「断る。情報収集はログでも見てくれ。」

 

「いや、お前相手にログなんて無意味だろ…?」

 

「知りませんよ…。て言うか村上先輩に勝つ奴となんてやりたくないっすよ…。」

 

その言葉に村上は目を細める。

 

「お前な…。」

 

「俺に勝つ自信無いって事?」

 

「まあな。お前の機動力は駿より手強い。一筋縄じゃ行かなそうだ。」

 

 

「へぇ…今度は分かりやすいね…。」

 

「は?」

 

 

 

「つまんない…いや…

 

 

 

…面白い嘘つくね、あやせがわせんぱい。」

 

「…」

 

空閑は綾瀬川の無機質な目を見据えて笑みを浮かべる。

 

 

 

「…ともかくだ。オレは易々と情報をやるほど慢心するつもりは無いし、次の試合も負ける気は無い。カゲさんと村上先輩、駿に情報を規制するつもりもない。情報収集なら別でやってくれ。」

 

 

そう言って綾瀬川は空閑の横を抜ける。

 

 

 

 

 

 

「その程度で出し抜ける程1位は甘くない。」

 

 

 

 

 

「時間を取って悪かったな綾瀬川。今度は俺とも模擬戦をやってくれ。聞いたぞ。荒船をボコッたんだって?あいつは俺の師匠なんだ。仇は取らせてもらう。」

 

綾瀬川に村上はそう話しかける。

 

「…まあ気が向いたら。あ、そうだ空閑。」

 

綾瀬川は空閑に振り返り、近づくと耳打ちする。

 

 

「お返しに聞くが…

 

 

 

 

 

…あの大砲は人が撃てないのか?」

 

 

「!」

 

空閑は目を見開く。

 

「…いや、いい。

 

 

 

 

…大体分かった。」

 

 

それだけ言って綾瀬川はその場を後にした。

 

 

 

「何を聞かれたんだ?」

 

村上が尋ねる。

 

 

「んーん、べつになんでも。

 

 

…かなりやばそうだね、あの人。」

 

 

 

───

 

そして時はあっという間に経ち、ROUND4当日がやってくる。

 

 

 

『さてさてー、皆さんこんっちは〜。太刀川隊オペレーターの国近でーす。B級ランク戦ROUND4、中位昼の部〜。ぶつかるのは諏訪隊、荒船隊、えっと〜、那須隊。…元気に実況していきましょ〜。ねぇ?米屋くんと…

 

 

 

…あやせくん?』

 

 

 

 

『米屋、お前ほんとに…

 

 

 

 

 

…覚えとけよ。』

 

 

 

 

 

 

 

『めんご。』

 

『殺す。』




各キャラからの印象&各キャラへの印象

榎沢一華
諏訪洸太郎→生意気な部下。エース。
忍田真史→優秀な銃手。

諏訪洸太郎←隊長。ガラ悪い。目付きも。口も。ヤニ臭い。…いい人。
忍田真史←本ぶちょー。強そう。



綾瀬川清澄
影浦雅人→ランク戦仲間。本気でやりやがれ。
村上鋼→性格悪い。師匠の仇。
空閑遊真→手強そう。面白い嘘つくね。
米屋陽介→めんご。

影浦雅人←ランク戦仲間。なんだかんだいい人。
村上鋼←仇て。荒船さん死んでないっすよ。
空閑遊真←警戒。白チビ。
米屋陽介←殺す。


先に榎沢ちゃん達の試合やりますねー。
榎沢ちゃんの試合終わったら幕間を挟んで本命書きます。


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B級ランク戦ROUND4 諏訪隊VS荒船隊VS那須隊①

投稿しやす。



 

ROUND4昼の部開始数分前。

 

「おい、いつまで拗ねてるんだよ…。」

 

「べ、別に拗ねてませんよ。ただ…清澄先輩モテモテでいいなーって思っただけですよ?」

 

綾瀬川の手には、チョコの袋が握られている。

それを見て宇井は顔を逸らした。

先程、三上から渡された物だ。

 

「そう言うのじゃないだろ…。」

 

「…昨日だっていっぱい貰ってたじゃん。加古さんに双葉ちゃん、小南先輩、月見さん、知らないC級の子とか。」

 

「だからそう言うのじゃないだろ…?」

 

「どーだか。清澄先輩って女たらしだし。」

 

「お前な…。」

 

 

 

 

 

「あっ!柚宇さん!暇そうな綾瀬川がいました!」

 

「でかした米屋くん!攫え攫え!」

 

 

 

横から突如現れた米屋に綾瀬川は紐で縛られる。

 

 

「は?」

 

「よー、暇そうだな、綾瀬川。」

 

「いや、今ちょっと後輩の機嫌取りが…。」

 

するとそこに国近も加わる。

 

 

「あやせくーん、おねがーい。ちょっと来て〜?」

 

 

国近は甘えるように、綾瀬川の腕に抱きつく。

 

「アッハイ。…悪いな、真登華。」

 

「…は?」

 

 

「綾瀬川借りてくなー。」

 

「後で返すね〜。」

 

そう言って国近と米屋は綾瀬川をしょっぴいて歩き出す。

 

 

 

「はあ?!」

 

 

 

 

───

 

という訳で今に至る。

 

『覚えてろよ、米屋。後で殺す。』

 

『いや、死ぬのお前じゃね?オペちゃん凄い顔でこっちみてるぞ?』

 

米屋の視線の先には満面の笑みでこちらを見る宇井の姿が。

しかし目だけは笑っていない。

 

『い、いや、急に縛ったのお前だろ?』

 

『柚宇さんに誘われてコロッと着いてきたのはお前だ。』

 

『解説なんて聞いてないぞ。』

 

『言ってないのに着いてきたのはお前だろ?』

 

『それはだな…』

 

『2人とも〜。』

 

それを止めたのは国近だった。

 

『そこまで。あやせくんも。解説嫌だった?どうしても人居なくて…。』

 

国近は申し訳なさそうにそう言う。

 

『いや別に。』

 

『よかったー。』

 

国近は笑う。

 

『知らねえぞ?マジで。』

 

米屋は宇井から放たれるプレッシャーに冷や汗を流す。

 

 

『じゃ、話戻すけど、今回戦うのは諏訪隊と荒船隊、那須隊だね〜。解説の2人はどう見る?』

 

国近が2人に尋ねる。

 

『諏訪隊と那須隊は中距離、荒船隊は遠距離特化って感じだなー。』

 

米屋は顎に手を当てながらそう言う。

 

『諏訪隊は狙撃手はいねーが…遠距離に対応できるA級エースレベルの榎沢がいる。人数も多い分、諏訪隊が勝つと思う。お前はどうよ?』

 

米屋は綾瀬川に視線を向ける。

 

『まあ諏訪隊が有利だろうな。だが諏訪隊が有利なのはマップの選択権がある那須隊も分かってるだろ。…だからまあ…マップ次第じゃないか?』

 

 

───

 

那須隊作戦室

 

「やっぱ何度見てもヤバいですね、榎沢さん。」

 

那須隊オペレーター、志岐(しき) 小夜子(さよこ)はそう言って冷や汗を浮かべる。

 

「そうね…。」

 

そう言って顔を顰めたのは那須隊攻撃手、熊谷(くまがい) 友子(ゆうこ)

 

「…中位に二宮さんがいると考えていいわ。」

 

そう分析するのは那須隊隊長兼エース射手、那須(なす) (れい)

 

「マップどうします?」

 

那須隊狙撃手、日浦(ひうら) (あかね)が尋ねる。

 

「荒船隊対策に『市街地D』にするのもいいけど…あそこは榎沢さんの庭よ。だとしたら榎沢さんがやったことがなくて射線も絞られる…」

 

 

───

 

『お、ここで那須隊によりマップが決定。「市街地B」だね。マップの説明プリーズ。』

 

『高い建物が多くて射線が通りにくいマップですね。荒船隊対策だと思います。「市街地D」にしなかったのは榎沢を考慮して…だと思います。』

 

綾瀬川がそう分析する。

 

『榎沢を?』

 

『榎沢は今シーズンがデビューだからなー。過去の3試合は全部マップ選択権があってDを選んでた。やったことねーマップなら慎重になるってことじゃないスか?』

 

『なるほどー。』

 

───

諏訪隊作戦室

 

「Bか。」

 

「今シーズンは初めてですね。」

 

諏訪の言葉に堤はそう返す。

 

「一華、初めてだけど大丈夫?」

 

「大じょーぶだって瑠衣ちゃん。…瑠衣ちゃんに言われて全部のマップ見といたし。」

 

「お、偉いぞ、一華。」

 

そう言って小佐野は榎沢の頭を撫でながら棒付きの飴を渡す。

 

「いつも通りでいいだろ。」

 

「俺たちは合流ですね。」

 

諏訪の言葉に笹森が返す。

 

「ああ。…榎沢、おめェは好きにしろ。」

 

「…いいの?」

 

「もう簡単に死ぬようなお前じゃねェだろ?」

 

諏訪はそう言って笑みを見せる。

 

「…分かってんじゃん。」

 

「じゃ、前回0点だった分取り返すか。」

 

「「了解!」」

 

「…ん。」

 

「勝ったら諏訪さんの奢りだよー!」

 

「あぁ?!」

 

───

 

荒船隊作戦室

 

「Bか。めんどくせえな。」

 

「行くか?弧月で。荒船は。」

 

そう尋ねるのは荒船隊狙撃手、穂刈(ほかり) (あつし)

 

「いざとなりゃな。だが、榎沢と正面からやり合って勝てる気がしねえ。」

 

「半崎くん、榎沢さんと同じクラスだよね?どんな感じ?」

 

荒船隊オペレーター、加賀美(かがみ) (りん)は狙撃手、半崎(はんざき) 義人(よしと)に尋ねる。

 

「あー、あんま絡みないっスね。いつも1人です。日佐人とかが話しかけてますけど。」

 

「ふーん。」

 

「…ま、俺らはいつも通りだ。早いとこ高台取って狙撃のタイミングまで待つ。狙撃手は待ちが基本だからな。」

 

「分かった。」

 

「了解ッス。」

 

───

 

『転送準備OKだねー。じゃ、転送開始〜。

 

 

 

 

…転送完了〜。B級ランク戦ROUND4、中位昼の部、スタートでーす。』

 

 

───

 

『バッグワーム付けたのは4人だねー。荒船隊と日浦かな。』

 

小佐野が通信を入れる。

 

『まあそうだろーな。俺らはバッグワームはいいだろ。射線に気をつけて合流すっぞ。』

 

『『了解。』』

 

諏訪の言葉に笹森、堤はそう返した。

 

 

 

 

シュドッ…

 

 

そんな音が響く。

 

 

「っ!?…きゃ…!!」

 

 

そう声を上げたのは、那須隊の日浦だった。

 

 

そして日浦の転送された高台のビルが爆発する。

 

 

「ちぇ、外した。」

 

 

そう言いながら、諏訪隊エース、榎沢はグレネードガンを下ろす。

 

───

 

『早速動いたね、榎沢隊員。』

 

『勘頼りのメテオラだな。』

 

『開幕速攻か?』

 

『…目立ったな。』

 

───

 

榎沢の砲撃から、5秒も経たないうちに、榎沢目掛けて一筋の弾道が。

 

「おっと。」

 

「!」

 

半崎の放ったイーグレットを榎沢は首を傾けて避けると、再度グレネードガンを向ける。

 

 

「やっべ…!!」

 

半崎はすぐさま飛び降りる。

 

『諏訪さーん、諏訪さんとつつみんさんが近いよー。仕事仕事。』

 

『たく…滅茶苦茶しやがるぜ。まあよくやった。』

 

諏訪、堤は榎沢が砲撃した建物に向かって走る。

 

 

 

 

「さてさて、あたしはどこに行こーかなーっと…。」

 

そう言いながら榎沢はレーダーに視線を向ける。

 

 

───

 

『無防備だな、榎沢の奴。』

 

米屋はそう言って苦笑い。

 

『…いや、逆だろうな。全部勘に委ねてるんだろ。どこから撃ってきても躱すぞ、榎沢は。』

 

『マジかよ…。』

 

『荒船隊もそれが分かってるから撃たないのかな?』

 

───

 

『荒船さん、ヤバいっす。思ったより相性最悪っすよ、俺ら。』

 

半崎は諏訪、堤から隠れながら荒船に通信を入れる。

 

『みてーだな。お前は諏訪さんと堤さんをどうにか撒け。加賀美、道出してやれ。…榎沢は無理でも他のやつなら隙はあんだろ。穂刈もな。』

 

『分かった。』

 

『了解。』

 

───

 

「日佐人くんも諏訪さん達の方に行ったから1点は取れるねー。」

 

榎沢はレーダーを見ながら呟く。

 

「…ん?…あは、面白くなりそう。」

 

勘で何かを察知した榎沢は視線を上に向ける。

 

 

そこには、こちらに降り注ぐ無数の弾幕が。

その先には、那須と、それを守るように立つ、熊谷がいた。

 

 

「いいね。」

 

榎沢はシールドを構えながら、アサルトライフルを生成する。

 

 

「全部撃ち落としてやる。」

 

そして乱射、降り注ぐバイパーを撃ち落としていく。

撃ち漏らした弾はシールドで防ぐ。

 

───

 

『ここで那須隊も仕掛けたねー。那須隊長のバイパーが榎沢隊員を襲う。』

 

『まあシールドも堅ぇしどうにか防げんだろ。…問題はどう攻めに転じるかだな。』

 

『…』

 

綾瀬川はモニターに映る榎沢を見て目を細める。

 

───

 

「これが鳥籠ってやつかー。…ならこっちは…」

 

榎沢はグラスホッパーを複数展開。

 

バイパーを避けながら、ビルを射線に入れると飛び上がる。

 

「!」

 

那須と同じ高さのビルの上に着地した榎沢。

 

 

 

その後ろには、那須とは段違いに大きなトリオンキューブが。

 

 

 

 

それは四角錐(・・・)に細かく分割されると、榎沢の周りに漂う。

 

 

 

「これをやる時はこうだよね。」

 

 

そう言いながら、榎沢は隊服のポケットに手を入れた。

 

 

 

 

 

 

「ハウンド。」

 

 

 

諏訪隊の怪物によるトリオンの暴風雨が、那須隊の2人に襲いかかった。




バレンタイン事情はおそらく近いうちに幕間にでも書くよきっと。

四角錐のトリオンキューブ?誰に習ったのかなー?あはは。

各キャラからの印象&各キャラへの印象

国近柚宇→ゲーム友達。
米屋陽介→死んだな、お前。
宇井真登華→…へぇ…?

国近柚宇←可愛い先輩。ゲーム友達。
米屋陽介←お、お前のせいだからな?
宇井真登華←ひえっ!ち、違うんだよ。万有引力の法則というものがあってだな。


榎沢一華トリガーセット
メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(アサルトライフル)、ハウンド、メテオラ(グレネードガン)、シールド

強気…ではなく普通に自信の表れのバッグワーム無しです。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND4 諏訪隊VS荒船隊VS那須隊②

投稿するぜー。


『榎沢隊員、トリオンキューブ?!』

 

国近が驚きの声を上げる。

 

『榎沢隊員は銃手だよね?』

 

国近が米屋と綾瀬川に尋ねる。

 

『まあ銃手がキューブ使うのは珍しくないッスけど…犬飼先輩とかがそうッスね。それよかあの割り方…。』

 

『どこかで見た形だな。』

 

米屋と綾瀬川が冷や汗を浮かべる。

 

 

 

時はROUND3終了後の防衛任務まで遡る。

───

 

「二宮さん、あたしにハウンド教えてくんない?」

 

「…」

 

そうお願いする榎沢に二宮は無言で顔を顰める。

 

「聞こえてるー?おーい、スタイリッシュポケインスーツさーん。」

 

「聞こえている。殺すぞ。…お前は元々ハウンドを使っていただろう。」

 

「そりゃあたしの獲物でね。」

 

榎沢は持っていたアサルトライフルを撫でる。

 

「ほら、キューブの方。あたしも弾トリガー使いたくてさー。」

 

そう言って榎沢は唇を尖らせた。

 

「断る。俺に何のメリットも無い。」

 

「えー…。減るもんじゃないんだから別にいいじゃーん。」

 

そう言って榎沢は二宮の腕に抱きつく。

 

「断ると言っている。」

 

そう言って二宮は榎沢を振り払う。

 

 

「けちぃ。」

 

 

 

 

翌日

 

二宮隊作戦室

 

 

「二宮さん、お客さん来てますよ。」

 

「…客?」

 

二宮隊銃手の犬飼澄晴にそう言われ、視線を向けると、そこには榎沢の姿が。

 

「あ、やっほー。二宮さん。お邪魔してまーす。」

 

そう言って榎沢は出されたであろうお菓子を頬張る。

 

「何の用だ?」

 

「言ったじゃん。あたしにハウンド教えてって。」

 

「断ったはずだが?」

 

二宮はそう言って榎沢を睨む。

 

「残念でした。諦めてませーん。」

 

そう言って榎沢は舌を出す。

 

「犬飼、つまみ出せ。」

 

「えー、俺ですか?…てかいいじゃないですか。教えてあげれば。」

 

犬飼は二宮にそう提案する。

 

「そーだそーだ。けち!」

 

「…」

 

榎沢のその言葉に二宮の機嫌はさらに悪くなる。

 

「あー、分かったー。これ以上あたしが強くなったら二宮さんあたしに勝てないもんねー?」

 

「…あ?」

 

二宮は榎沢を射殺すように睨む。

 

「なんだー、そういう事ね。強くなったあたしが怖いんだよねー?ならしょうがないかー。」

 

安い挑発。

二宮は怒りを通り越して呆れる。

 

「下らん。とっとと出て行け。」

 

「まあまあ、二宮さん。…榎沢ちゃん、それなら俺が教えてあげよっか?俺もハウンド使うし。」

 

犬飼は自分を指さしながらそう提案する。

 

「えー、チャラ男さんはお呼びじゃなーい。

 

 

…てか二宮さんじゃないと意味ないし。」

 

その言葉には犬飼だけではなく、二宮も耳を傾ける。

 

「?…なんで?」

 

「だってキューブを四角錐に割ってるのは二宮さんだけでしょ?普通のトリオンキューブのハウンドならあたしだって出来るし。あの割り方を教えて欲しいの。あと出来れば合成弾ってやつ?」

 

「ほう。…理由は?」

 

二宮はそう尋ねる。

 

「え、カッコイイから。」

 

「帰れ。」

 

「冗談だってばー。…あっちの方が細かく割れそうだから。威力とかも細かく調整出来そう。」

 

「…へえ。」

 

犬飼は興味深そうに笑みを浮かべる。

 

「…まあ別にいいよー?二宮さん、あたしが強くなったら困るもんねー?」

 

榎沢は挑発するようにニヤニヤ笑う。

 

「弾バカセンパイに頼むからいいやー。ジュースとお菓子ご馳走様ー。」

 

そう言って榎沢は出口に歩き出す。

 

 

 

「待て。」

 

 

安すぎる挑発。

 

 

二宮は榎沢を呼び止めると、青筋を浮かべる。

 

 

「1本だけ相手をしてやる。そこで俺を認めさせるのが条件だ。…身の程を教えてやる。」

 

「…いいねぇ。乗った。」

 

 

そんな挑発に乗るのが、NO.1射手、二宮匡貴と言う男であった。

 

───

 

那須の2倍近いトリオン量から降り注ぐハウンド。

那須は堪らず攻撃の手を止め、シールドに集中する。

 

「ほらほらー。どうしたの?」

 

榎沢はもう一度トリオンキューブを生成。

今度は、威力重視の6分割。

 

「まだまだここからでしょ?」

 

新兵器を携えた、榎沢の猛攻に、那須、熊谷は後ずさる。

 

 

「っ…と。」

 

榎沢は背中に集中シールドを展開。

弾丸を弾く。

 

「油断も隙もないね。」

 

榎沢は6発の内、3発を後ろに放つ。

 

その隙に、那須、熊谷は距離を取った。

 

 

「っ…!」

 

榎沢を撃った、荒船はシールドを構えつつ、飛び降りる。

 

───

 

『那須隊のピンチに助け舟を出したのは荒船隊長。なんでだと思うー?』

 

『那須隊に居なくなられたら困るから…ですかね。荒船隊は榎沢と相性が悪いみたいですし。』

 

綾瀬川はそう分析する。

 

『荒船隊としちゃ、連携して榎沢を落とたいんじゃないスか?』

 

『なるほどー。おっと、そして戦場に動きがあったー。諏訪隊長と堤隊員から逃げる半崎隊員でしたが、回り込んでいた笹森隊員により緊急脱出ー。先制点は諏訪隊となったー。』

 

───

 

『お、日佐人くんやるー。』

 

榎沢が通信を入れる。

 

『榎沢のおかげだよ。』

 

『そっちはどうだ?』

 

『えっとねー、那須隊が逃げた。今追いかけてるー。荒船さんは8時のビルにいたよ。移動してるだろうけど。』

 

『分かった。お前はそのまま那須隊を追え。』

 

『ほいほーい。』

 

 

「さーて、那須隊どーこだ?」

 

榎沢はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

「っと…。」

 

背後から横凪に振られた弧月。

榎沢は咄嗟に前に倒れ込むように躱すと、そのまま、地面に手を付き、カポエラの容量で弧月を振るった、熊谷を蹴り飛ばす。

 

「はっけーん。」

 

 

榎沢はアサルトライフルを構える。

 

その瞬間、こちら目掛けて放たれるバイパーの弾幕が。

 

それに合わせて熊谷は旋空の構えを取る。

 

 

「…あー、例の綾瀬川センパイごっこ(・・・)ね。」

 

熊谷の手元に榎沢のシールドが展開され、抜刀を防ぐ。

那須のバイパーは全方位を囲うように展開された、榎沢のシールドに弾かれる。

途中弾を集中させ、榎沢のシールドを割ろうとしたが、2倍近い榎沢のトリオンによるシールドは、ヒビが入るだけだった。

 

 

「100年早いんじゃない?」

 

榎沢はポケットに手を入れると、トリオンキューブを生成。

 

「玲!」

 

熊谷は那須を庇うように那須の前に立つ。

 

───

 

『後手…だな。』

 

解説の綾瀬川が呟く。

 

『後手?』

 

国近が綾瀬川に尋ねる。

 

『初見殺しのトリオンキューブによるハウンドに気を取られてますね。

 

 

…熊谷と那須は榎沢の本職を忘れてる。』

 

───

 

「…ざんねーん。こっちでしたー。」

 

榎沢はポケットから手を抜くと、そこにはハンドガンが握られていた。

 

「あたしの射程だよ、バーカ。」

 

 

榎沢のハンドガンによるアステロイドは、弾速と威力にトリオンを多く割り振っている。

 

熊谷の2倍以上ある、榎沢のアステロイドは熊谷のシールドを容易く撃ち砕く。

 

「くまちゃん!」

 

那須は裏で構えていたトリオンキューブを消して、フルガードに切り替える。

 

それこそ後手。

 

「おっと。危なー」

 

 

榎沢はトリオンキューブを分割すると、右に避ける。

 

 

後ろから放たれた、日浦のライトニングは、榎沢に当たることなく地面に着弾。

 

6分割されたハウンドは、日浦目掛けて放たれる。

 

『茜!』

 

『ど、どわあぁぁ!!』

 

ハウンドは日浦に着弾。

 

そのまま日浦は緊急脱出となった。

 

 

「ほらほら、年下のあたし相手に防戦一方?お得意のバイパーで攻めてきなよ。」

 

そう言って榎沢はクイクイと指を動かして挑発する。

 

「っ…この…!」

 

「あー、もー、邪魔すんなよー。」

 

「!」

 

榎沢は片手でグレネードガンを生成すると、那須、熊谷とは別の方向に向ける。

 

そして放った。

 

 

 

「っ…ほんとにクソゲーだな…。」

 

イーグレットを構えた、荒船はその場から離れる。

その数秒後に、荒船のいた位置に、榎沢の放ったメテオラが着弾する。

 

『瑠衣ちゃん、諏訪さん達に場所教えたげてー。』

 

『了解。でかした、一華。』

 

 

 

榎沢の早撃ちに防戦一方の那須隊。

 

 

「もう助けてくれる荒船隊は来ないよ?来ても返り討ちだし。…荒船隊の期待通りあたしを倒してみれば?」

 

榎沢はそう言いながらアサルトライフルを生成する。

 

 

「玲、ガードお願い。」

 

そう言って熊谷は弧月を深く構える。

 

「くまちゃん…。分かった。」

 

熊谷は、腰を落として榎沢に切り込む。

 

「はあっ!!」

 

銃口を下げた榎沢。

しかし、それを那須のフルガードと、熊谷のシールド1枚の計3枚のシールドが阻む。

 

「おお。」

 

榎沢は小さく声を上げる。

 

「なるほどー。捨て身で距離詰めるって訳ねー。でも残念。」

 

熊谷の弧月を榎沢は上体を逸らして避けると、弧月を持つ手を掴む。

 

「っ?!」

 

そのままアサルトライフルを捨て、熊谷の弧月を持つ手を小手返し。

熊谷は弧月を落とす。

 

そのまま熊谷の腕を背中に回し、身動きを封じると、熊谷のこめかみに銃口を押し付ける。

 

「近距離なら勝てると思った?攻撃手の間合いでも勝てちゃうんだなー、これが。ほら、

 

 

 

 

…あたしって天才だから?」

 

「くまちゃん!」

 

「玲!逃げ…」

 

「はい、バァン。」

 

そのまま、熊谷の頭は撃ち抜かれる。

 

 

 

 

「2点目。あ、違うか。

 

 

…あなたで3点目だね。」

 

 

 

そう言って怪物は那須に銃口を向けた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢)

二宮匡貴→生意気。腹が立つ。銃手としての実力を評価。不本意ながら弟子。
犬飼澄晴→可愛いねー。俺がハウンド教えてあげよっか?
那須玲→二宮さんクラスの実力者。
熊谷友子→ムカつく。化け物。

二宮匡貴←スタイリッシュポケインスーツさん。
犬飼澄晴←チャラ男さん。
那須玲←バイパーの人。
熊谷友子←弧月の人。


榎沢の丸くなった戦闘スタイルは勘とノリで戦うクレイジー銃手です。
あんま変わんねえよって?
今までは相手を舐めてかかってましたが、今は相手のあらゆる手に警戒して動いてます。煽りは健在。
煽りによる人心掌握、絶対的な勘による狙撃の無効化。
そこにトリオンキューブによるハウンドが加わりました。
置き弾等、戦略の幅が広がってます。
こうしてまた1人化け物が産まれましたとさ。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND4 諏訪隊VS荒船隊VS那須隊③

決着です!


『榎沢隊員強い!日浦隊員と熊谷隊員を瞬く間に緊急脱出させてしまったー!』

 

『すげえな、アレ。なんの武術だ?』

 

米屋が苦笑いで尋ねる。

 

『合気道だな。太刀取りも滑らかだったな。』

 

『ほぇー。体術まで一級品かよ。隙がねえな。』

 

『いっきに2人落ちた那須隊、そして次は那須隊長の番かー?』

 

 

───

 

「…」

 

「っ…!」

 

那須目掛けて発砲。

那須はシールドで受けながら後ずさり、ビルから飛び降りる。

 

「逃がさないよー?」

 

榎沢はグラスホッパーを展開すると、那須を追うように足をかける。

 

「!」

 

そこで気付く。

 

榎沢の周りに散らばったトリオンキューブに。

熊谷が残したメテオラだった。

 

「へぇ、いい置土産じゃん。」

 

榎沢はシールドを固定して、それを受ける。

 

「泣かせるねー。」

 

那須は離れた位置を駆けながら、こちらにバイパーを放った。

 

「ま、撃ち合いなら付き合ってあげますかー。」

 

榎沢はハンドガンを人差し指で回しながら、トリオンキューブを分割。

 

那須のバイパーを撃ち落とす。

 

 

『そっち大じょーぶ?諏訪さん。』

 

『ああ。お蔭さまでな。日佐人拾ってそっち行く。』

 

『りょーかい。…でもまあ…必要ないかも。』

 

那須は建物を射線に入れてトリオンキューブを分割する。

 

 

「もう見飽きたよ。」

 

榎沢はグラスホッパーを複数展開。

 

那須のバイパーが追い切れないほどのキレで那須に接近する。

 

「っ…!」

 

ハンドガンを向ける榎沢に那須は後ろに飛びながらシールドを構える。

 

「だから…無駄だって…!」

 

榎沢はハンドガンを発砲することなく、体勢を低くすると、そのまま那須に足払いをかける。

 

「3点目…!」

 

倒れた那須に榎沢は馬乗りになると、ハンドガンを向ける。

 

 

 

 

「!」

 

 

 

その背後。

建物を回り込んで、榎沢の死角にこちらに迫るバイパーが映った。

 

 

 

 

しかし、それは榎沢の背中に展開されたシールドに防がれた。

 

 

 

 

「へぇ、やるじゃん。日佐人くん。」

 

「間に…合った…!」

 

 

 

そして発砲。

榎沢の放ったアステロイドは那須の額に風穴を空けた。

 

 

───

 

『那須隊長も逃げきれず緊急脱出!那須隊はここで全滅、諏訪隊が4点獲得で独走状態となった。』

 

『熊谷の置き弾、那須の建物を死角にした奇襲は面白かったが…届かなかったな。』

 

『最後は惜しかったねー。笹森隊員が間に合わなければ、分からなかったんじゃない?』

 

『…ま、ればの話ですね。…笹森は間に合って那須は落ちた。それが結果であり隊としての実力の差ですよ。諏訪隊の方が強かった。それだけだ。』

 

そう言って綾瀬川は目を細めた。

 

 

───

 

「…ありがと、日佐人くん。」

 

そう言って榎沢は立ち上がる。

 

「え?あ、ああ。」

 

「それから…

 

 

 

…この前は撃ってごめんね。」

 

「…え…?」

 

榎沢は顔を逸らしながらそう言った。

 

「でもあたしは間違ったことをしたとは思ってないから。」

 

「…諏訪さんも小佐野先輩も榎沢の事怒ってたけど、ぶっちゃけ俺もあの場面ならあれが正解だったって今でも思ってるよ。だから気にしてない。」

 

「日佐人くん…。ふふ、話が分かるなー、日佐人くんは。次からもいいバリケード役として頑張ってくれたまえよ。」

 

そう言って榎沢は笹森の背中をバシバシと叩く。

 

「お前な…。」

 

そこに諏訪と堤も合流する。

 

「荒船隊はどうだ?」

 

堤が榎沢に尋ねる。

 

「え、知らない。諏訪さん達が追ってくれてたんじゃないの?」

 

「大体の位置はわかるがバッグワームで潜まれてちゃな…。」

 

「そこでお前の勘の出番って訳だ。」

 

「なるへそ。ちょいまち。」

 

榎沢は目を閉じる。

 

 

 

「あっちだね。」

 

 

そう言って榎沢は北を指さして歩き出す。

 

「は?さっきと逆だぞ?」

 

「まーまー。私の勘を信じたまえ!」

 

 

───

 

『おっと、諏訪隊は北に動いたぞ?』

 

『…逃げ切りか?』

 

『荒船隊は位置バレを避けて撃ちませんね。』

 

───

 

マップ北を一通り探して数十分。

 

 

 

もうすぐタイムアップの時間が来る。

 

 

「あ?」

 

 

そしてタイムアップまで数秒という時に、諏訪の胸に穴が空いた。

 

 

荒船隊がいたのは逆の南と、東だった。

 

 

 

 

「…おい、榎沢?」

 

「あり?北だと思ったんだけどなー。

 

 

 

 

 

…まあ勘だから?当たるわけじゃないよ?」

 

 

「テメッ!そう言う大事な事は早く言いやがれ!!」

 

 

そして諏訪は緊急脱出。

荒船隊が1点もぎ取った。

 

 

「…言ってなかったっけ?」

 

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 0P

笹森 1P

榎沢 3P

 

合計 4P

 

 

 

荒船隊

 

 

荒船 0P

穂刈 1P

半崎 0P

 

合計 1P

 

 

 

那須隊

 

 

那須 0P

熊谷 0P

日浦 0P

 

合計 0P

 

 

 

『ここで試合終了ー。4対1対0ー!米屋くんとあやせくんの予想通り諏訪隊が勝ったねー。』

 

『最後のはなんだったんだ?』

 

『…んー…散歩?』

 

───

諏訪隊作戦室

 

「いやー、勝ったねー。」

 

「…そうだな。」

 

諏訪はぶっきらぼうにそう言う。

 

「えー?諏訪さんまだ怒ってんのー?1点もとってないくせにー。」

 

榎沢はそう言って頬を膨らませた。

 

「そうだよ諏訪さん!一華は3点取ってるんだから!」

 

そう言って小佐野は榎沢の頭を撫でる。

 

「瑠衣ちゃん飴欲しい〜。」

 

「好きなだけ持っていきたまえー。」

 

「お前らな…。」

 

「まあまあ、諏訪さん。」

 

堤が諏訪の肩に手を置く。

 

「わーってるよ。」

 

そう言って諏訪は頭をかいたあと、榎沢を一瞥して笑みを見せた。

 

───

 

『今回のランク戦、2人はどー見る?』

 

『実力差が浮き彫りになった試合でしたね。』

 

『おい、綾瀬川?』

 

綾瀬川の直球な物言いに、米屋は冷や汗を浮かべる。

 

『とゆーと?』

 

『那須隊は榎沢1人にしてやられた。ROUND1の香取隊の時と一緒ですね。最後の那須のバイパーは面白かったですけど…那須隊の敗因は言うまでもなく実力差…ですね。狙撃が効かないとは言え2対1。射手とメテオラで射程もある攻撃手の2人。それで勝てないようじゃ上位は…『綾瀬川ー。』』

 

米屋が苦笑いで制する。

 

『…榎沢の技術の高さが伺えますね。』

 

『お前、意外とキツイよな。』

 

『荒船隊はど?』

 

それに答えたのは米屋だった。

 

『榎沢との相性が最悪でしたねー。榎沢がいる以上残りの諏訪隊は射線に気をつけながら動けば荒船隊は「市街地B」じゃ動けねえ。特に序盤で精密射撃の名手半崎が落ちたのが痛かったな。那須隊の援護をしてたみてーだが…そこは榎沢の実力だろ。終わってみば圧勝だ。』

 

『中々思うように動けなかったもんねー、荒船隊は。』

 

───

 

那須隊作戦室

 

「綾瀬川くんの言う通りだね…。」

 

那須はそう言って目を伏せた。

 

「っ…。」

 

熊谷は悔しそうにテーブルに拳を打つ。

 

榎沢の太刀取り。

動きが滑らかすぎて、何をされたか分からなかった。

気づいたら榎沢に背中で腕を抑えられ、頭を撃ち抜かれていた。

 

「クソ…。」

 

 

───

 

荒船隊作戦室

 

「とれたな、奇跡的に。1点。」

 

穂刈はそう言って親指を立てる。

 

「本当に奇跡的だが、よくやった。」

 

「影浦くんに、綾瀬川くんに、榎沢さん。みんな狙撃通じないよ…。狙撃手に恨みでもあるのか?」

 

加賀美はそう言って項垂れる。

 

「通じたところで今回勝てたかどうかは微妙だ。」

 

そう言って荒船は帽子を被り直す。

 

 

 

「狙撃手もマスタークラスに行ったからな…。そろそろ新しい事も考えてみるか。」

 

───

 

『と、言うわけで諏訪隊は夜の部の結果次第で上位復帰な訳だけどー。そこんところB級1位のエースとしてはどーよ?』

 

国近が綾瀬川に尋ねる。

 

『特には。当たったらいつも通り戦うだけですね。』

 

『楽しみってことだねー?』

 

国近が強引に話を締めくくる。

 

『じゃ、終わろっか。これにてB級ランク戦中位昼の部を終わりまーす。実況は私、国近が。解説は米屋くんとあやせくんの、2-Bの3バカのうちの2バカでしたー。』

 

 

『『おいコラ。』』

 

 

───

 

「うし、んじゃおつかれー、綾瀬川。この後二宮隊とかとやるんだろ?頑張れよー。」

 

「お前には後で話がある。」

 

米屋の肩を小突きながらオレは国近に目を向ける。

 

「じゃあねー、あやせくん。」

 

「アッハイ。お疲れ様です。」

 

 

国近にそう返すと、後ろから何やら不穏なオーラが。

 

 

 

「清澄せんぱーい?」

 

 

「「ひっ!」」

 

米屋と国近は声を弾ませた後、そそくさと立ち去った。

 

「悪いな、真登華。ちょっと解説頼まれて…

 

 

…怒ってるのか?」

 

 

「逆にどう見えますー?」

 

 

 

 

今度2人で映画見に行く約束した。

それで許された。

 

 

 

なんで怒ってたのかわからん。

 

 

───

 

「ふぅ…。」

 

真登華を宥めた後、オレは自販機の前のベンチに座って休憩していた。

 

「…お前は試合の前に何をやっているんだ?」

 

その言葉と共にお茶を投げられる。

 

「っと…三輪。」

 

なんとかキャッチした後、お茶を投げた張本人、三輪に視線を向けた。

 

「休憩だ。まあ色々な。久しぶりだな。くま、もう無くなったな。最近は寝れてるのか?」

 

「…あの後…嵐山さんと話した。」

 

そう言いながら三輪はオレの隣に座る。

 

「迅は…母親を近界民に殺されているらしい。」

 

三輪の飲み物を持つ手に力が篭もる。

 

「俺は分からなくなった。何を憎むべきなのか…。俺の敵は本当に…近界民全てなのか…?」

 

三輪はそう言って俯く。

 

「…知るか。」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「綾瀬川…。」

 

「近界民の絶滅でもいい。お前の姉さんを殺した近界民への復讐でもいい。オレはそれに付き合ってやる。だから…

 

 

 

 

…お前の敵はお前が決めろ。」

 

 

そう言ってオレは作戦室に向かって歩き出す。

 

「…お茶、ありがとう。」

 

「…」

 

 

 

 

そしてROUND4夜の部がやってくる。

 

 

B級ランク戦上位夜の部

 

柿崎隊VS二宮隊VS玉狛第二VS東隊

 

 





榎沢のサイドエフェクトの欠点、勘が当たるか分からない。(榎沢曰く勘に委ねた方が当たりやすい。)

まあ副作用って言うくらいだからね。

ちなみに綾瀬川のサイドエフェクトの欠点は情報を絞る即ち、膨大な情報が脳の1つの部分に一気に飛び込むことになるので、普通の人間が使うと、動けなくなる。五条の領域展開的な?(伝われ。)
てか普通に脳がショートする。
結論それを扱える綾瀬川は化け物。
多分人間やめてる。

次多分幕間かな。

ちょっと幕間とは別のアンケート撮りますね。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND4 柿崎隊VS二宮隊VS玉狛第二VS東隊①

遅くなりすいません!

前回幕間を投稿すると言ったな…あれは嘘だ。


すいません!
日常の小話を書こうと思ったんですけど思いのほかネタが思い浮かばなくて…

リクエスト待ってます!


遅れた理由これなんだよねwずっとネタ考えた。(←ふざけんな。)


Twitter知らないんかい!

https://twitter.com/a_tom_u?s=21&t=GaYuWX4_eF0qquutrwG09A

フォ、フォローしてね…?


二宮隊作戦室

 

「結局、榎沢ちゃんにハウンド教えたんですね、二宮さん。」

 

モニターを見ながら犬飼は二宮に尋ねた。

 

「ふん。人格に難はあるが奴は優秀な銃手だ。強くしておけばいざと言う時の戦力になる。…それだけだ。」

 

「素直じゃないなー、二宮さんは。」

 

「黙れ。」

 

「犬飼りょーかーい。」

 

犬飼はそう言って詫びる様子もなく笑う。

 

「でも他のB級部隊は二宮さんの事恨んでると思いますよ?怪物をさらに怪物にしちゃったんですから。」

 

「知ったことか。」

 

そう言って二宮は目を伏せた後、テレビ画面に視線を戻す。

そこにはハウンドで那須隊を蹂躙する、榎沢の姿が。

 

表情は変わらないが、新たに自分と撃ち合える敵の台頭に、二宮は心を躍らせた。

 

 

「…」

 

二宮はテレビの電源を切る。

 

 

「…ROUND4の作戦を伝える。

 

 

 

…柿崎隊を引きずり下ろすぞ。」

 

───

 

玉狛第二作戦室

 

「今回の僕らの相手は柿崎隊、二宮隊、東隊だ。」

 

三雲が、雨取、空閑にそう語りかける

 

「ふむ。」

 

「言うまでもなくみんな強敵だ。まずは東隊。攻撃手2人の狙撃手1人。要注意人物は隊長の東さんだ。どんな手を使ってくるか分からない上にマップの選択権は今回東隊にある。地形を生かした戦術を使ってくるかもしれない。そして前衛の奥寺先輩と小荒井先輩。単体なら空閑の方が強いけど…2人揃った時の連携はB級トップクラスだ。」

 

「マップの選択は小荒井くんと奥寺くんに任せてるみたいだから、東さん主導で地形戦ってのはないと思うな。」

 

宇佐美が補足をする。

 

「どのマップが選ばれてもいいように、各マップを頭に入れておこう。」

 

「りょーかい。」

 

「了解っ。」

 

「そして次は二宮隊。」

 

そう言って三雲はモニターの画面を切替える。

 

「元A級部隊だ。全員要注意人物だけど特に…」

 

「にのみやさんだな。」

 

空閑が答える。

 

「ああ。NO.1射手二宮匡貴。点を取りにくい射手でバンバン点を取ってる。銃手の犬飼先輩と、辻先輩もマスタークラスの実力者だ。」

 

「二宮さんとは1対1じゃしんどいな。」

 

「まあA級の時でも二宮さんとの1対1は避けられてたからね。出くわしたら逃げるって感じでいいと思うよ。」

 

「りょーかい。」

 

宇佐美にそう返すと、空閑はモニターに視線を戻した。

 

 

「そして柿崎隊。前シーズン中位からB級1位に駆け上がってきた部隊だ。その立役者が、完璧万能手の綾瀬川先輩だ。」

 

その名前を聞いて空閑は息を飲む。

 

「かげうらせんぱいとむらかみせんぱいが言うにはボーダートップのしょうわる?らしいよ。しょうわるってなんだ?」

 

「性悪…性格が悪いってことだな…。」

 

そう言って三雲は顎に手を当てる。

 

「あー…戦いではって事だね。振れ幅大きいからねー、綾瀬川くん。」

 

「どう言う意味ですか?」

 

三雲が宇佐美に尋ねる。

 

「例えば今シーズンだけど、ROUND1は3点、ROUND2では1点、ROUND3では6点取ってるんだよ。ROUND2ではトラッパーだったってのもあるけどROUND3では6点だよ?」

 

宇佐美は苦笑いをうかべる。

 

「これから試合って時にあんまり言いたくないけど…

 

 

 

…綾瀬川くんがどこまで真面目にやるかで勝敗は変わってくると思う。」

 

 

───

 

三輪との話を終えたあと、オレは作戦室には戻らず、三輪からは離れたベンチに座る。

 

 

(近界民は全て敵だ。)

 

(俺の敵は本当に…近界民全てなのか…?)

 

 

 

 

数日前の会話を思い出す。

 

 

(あ?ヴィザ?あのジジイとやり合ってたのはテメーなのか?根暗野郎。)

 

(一応な。)

 

(チッ…こんな根暗にやられたのかよ…。で?根暗野郎…ヴィザより強い奴だ?

 

 

 

 

…そんな怪物がうじゃうじゃいる訳ねぇだろ。少なくともアフトクラトル周辺じゃ俺は知らねえな。)

 

 

 

 

思い出したのは、基地に侵入した近界民、エネドラの成れの果てとの会話だった。

 

 

 

「…」

 

 

あの様子じゃ三輪はいい方向に吹っ切れるだろう。

ヴィザより強い近界民も期待出来ない…か。

 

 

 

 

 

 

「…つまらないな…。」

 

 

そう言ってオレは持っていたジュースの空き缶を握りつぶした。

 

───

 

『B級ランク戦ROUND4!開始ギリギリになってしまい申し訳ありません!実況を努めます、嵐山隊の綾辻です!』

 

綾辻は息を整えながら挨拶をする。

 

『解説席には風間隊の風間隊長と加古隊の加古隊長にお越しいただきました。』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『転送まではあとわずか!マップは東隊が既に「市街地B」を選択しています。「市街地B」は高い建物と低い建物が混在する、場所によっては射線が非常に通りにくいマップ。地形戦で射撃を封じて切り合いに持ち込むと言った所でしょうか?…地形戦と言えば第3戦で那須隊が天候設定を使って敵部隊の分断を狙うと言う大技も見られましたが…』

 

『あれは楽しかったけど東さんはそんな博打はしないわね。』

 

『だろうな。』

 

『なるほど。…ここで全チーム仮想ステージへ転送完了!

 

 

 

 

…四日目、夜の部、四つ巴!いよいよ戦闘開始です!』

 

 

───

 

「…」

 

空を見上げる。

 

雪…か。

 

 

───

 

 

『マップ「市街地B」、天候は雪!積もった雪は30cm程でしょうか?戦闘体なら走れなくはないが、移動には少々骨が折れるといった様子。』

 

『いきなりマップ予想を外したな。』

 

『これは東さんの趣味じゃないわ。きっと小荒井くんよ、小荒井くん。』

 

『転送位置はどの部隊もほぼ均等にバラけています。…雪上戦を仕掛けた東隊、そして仕掛けられた他チームはどう動くか!』

 

───

 

『隊長、これどうします?』

 

巴が柿崎に通信を入れる。

 

『…真登華、バッグワームつけたのは?』

 

『4人だね。東さんと雨取さんは確定として…あと2人消えてるね。多分コアラと奥寺じゃないかな。グラスホッパーで奇襲を狙ってるのかも。』

 

『位置的に俺が遠いな。バッグワームつけてそっちに向かう。そっちは3人で合流してくれ!』

 

『『『了解。』』』

 

───

 

『各隊合流を目指す動きですね。』

 

『二宮隊はいつになく慎重だな。』

 

 

───

 

『足は止めるなよ。東さんに狙い撃ちされるぞ。』

 

二宮はチームメイトにそう指示を出す。

 

『…玉狛が近い。犬飼、辻で抑えろ。俺は集まってきたところをまとめて撃ち落とす。』

 

『犬飼了解。』

 

『辻、了解。』

 

───

 

オレはバッグワームを羽織、ビルから顔を出してイーグレットを構える。

 

『玉狛を中心に集まってきてますね。奥寺…空閑、澄晴先輩が見えました。もう1人は辻か三雲だと思いますよ。』

 

『二宮さんの可能性は?』

 

『え、二宮さんのダッシュ姿想像できないんだが。』

 

『…確かに。』

 

『まあ乗らない手はねえな。虎太郎と文香は先行して玉狛を狙え。』

 

『『了解。』』

 

───

 

『各隊マップ中央を目指す動き。玉狛を中心に続々と人が集まってきた!』

 

『今回はあんまり派手に動かないわね。清澄くん。狙撃手に徹するつもりかしら?』

 

『…どうだろうな。』

 

───

 

『文香、虎太郎、オレもそっちに行く。合流した方がやりやすいだろ。』

 

そう言ってオレはグラスホッパーを複数展開。

 

窓から飛び降り、一直線に戦場へ向かった。

 

───

 

『ここでマップ南で静観していた綾瀬川隊員、一気にマップ中央へ動き出しました。』

 

『そう来なくっちゃ。』

 

加古は不敵に笑みを浮かべた。

 

───

 

マップの至る所で戦闘は開始される。

 

「空閑くんとは合流させないよ、メガネくん。」

 

「っ…!」

(犬飼先輩…二宮隊の銃手…!)

 

二宮隊

犬飼澄晴

アステロイド 8422

ハウンド 7009

 

 

玉狛第二

三雲修

アステロイド 4282

 

 

 

 

 

『遊真くん、修くんが交戦中!合流急いで!』

 

『了解、しおりちゃ…!?』

 

合流しようと駆ける空閑の行く手を阻むように旋空が通り抜ける。

 

「足止めか。」

 

「…」

 

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

「「!」」

 

 

そんな2人に、新たに、旋空が襲いかかった。

 

 

「ほほう、噂のあねでしさんだな。」

 

「…あ。」

(詰んだ。)

 

 

二宮隊

辻新之助

弧月 9791

 

 

玉狛第二

空閑遊真

スコーピオン 5172

 

 

柿崎隊

照屋文香

弧月 8801

スコーピオン 8113

 

巴虎太郎

弧月 7001

アステロイド 7888

 

 

 

 

『マップの各所で既に戦闘が始まっています!』

 

 

『…あとは二宮の動きと…

 

 

…あの怪物がどこに介入するか…だな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柿崎隊

綾瀬川清澄

 

弧月 10200

バイパー 8888

イーグレット 8022

 

 

 

そして三雲の緊急脱出により戦場は動くことになる。

 

 

 

怪物は無機質な瞳で弧月を振るった。




綾瀬川個人ポイント

弧月 10200(そういやオレの誕生日10/20だな。)
バイパー 8888(よし、ゾロ目。)
イーグレット 8022(遊び忘れた。てかムズい。)
アステロイド 7777(ラッキーセブン。)
スコーピオン 6666(縁起悪そう。)
ハウンド 6000(普通に使ってない。)
メテオラ 6530(6×5=30。)

ふざけてんなこいつ。


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B級ランク戦ROUND4 柿崎隊VS二宮隊VS玉狛第二VS東隊②

投稿します!

フォロワー増えて嬉しいな!
これからも投稿報告はするつもりです。
ぜひTwitterフォローしてください!
あらすじとか結構頑張ってますんで。

https://twitter.com/a_tom_u?s=21&t=GaYuWX4_eF0qquutrwG09A


三雲VS犬飼の戦闘は屋内に移り、柿崎隊と空閑を撒いた辻、東隊の小荒井、奥寺が介入。

 

 

そしてボーダー最初の狙撃手にして、元A級1位部隊を率いた東春秋により、三雲は早々に緊急脱出となる。

 

 

 

『三雲隊長緊急脱出!乱戦は東隊が先制!』

 

 

それにより建物内の戦闘は東隊VS二宮隊となった。

 

 

 

 

そしてそこに、玉狛第二の大砲、雨取のアイビスが炸裂する。

しかし、得点にはならず、雨取は居場所を知られる事となった。

 

 

 

『千佳!逃げろ!緊急脱出するんだ!』

 

位置のバレた狙撃手は浮いた駒。

犬飼、辻の動きを察して、三雲は作戦室から雨取に逃げるように指示を出す。

 

『りょ、了解…!』

(緊急脱出…!)

 

しかし何も起こらない。

 

「?!」

 

 

『あっと!雨取隊員自発的に緊急脱出?!しかし、60m圏内には東隊長と綾瀬川隊員が!』

 

 

 

『西に逃げろ!千佳!空閑がカバーに入る!』

 

 

 

「悪いね、てるやせんぱい。急用だ。」

 

 

照屋、巴と交戦していた空閑はグラスホッパーを展開し、雨取の元に駆ける。

 

「虎太郎!」

 

「了解!追います!」

 

巴も空閑を追うようにグラスホッパーを展開した。

 

そして空閑はグラスホッパーの勢いそのまま、雨取を追う犬飼に切り掛る。

 

 

 

ギンッ!

 

 

「!」

 

しかしそれは辻に阻まれる。

 

「辻ちゃんナイス!」

 

後ろからは空閑を追う、巴も接近している。

 

「…」

 

空閑は後ろからの巴の弧月を避けながら、グラスホッパーを起動。

それは雨取の足元に現れ、雨取を前に弾く。

 

「ハハッ!面白い。」

 

しかし、それは時間稼ぎにしかならない。

 

 

『千佳ちゃん!』

 

『犬飼先輩!』

 

 

玉狛第二のオペレーター宇佐美と、二宮隊オペレーター氷見の声は同時だった。

 

 

その声の直後雨取は目撃する。

民家の塀を切り裂きながら、横薙ぎに迫る、弧月の切っ先を。

 

 

「…え…?」

 

そのまま雨取の視界は上下に割れた。

 

 

「ハハッまじか。…これはウザイ。」

 

 

 

弧月は雨取の直線上にいた、犬飼諸共切り裂いた。

 

雨取、犬飼はそのまま緊急脱出。

 

 

得点を挙げたのは、柿崎隊の綾瀬川だった。

 

 

───

 

『で、出た!綾瀬川隊員の伸びる旋空…!』

 

『上手くかっ攫ってたわね。さすが清澄くん。バッグワームしたまま壁越しの旋空なんて誰が避けれるのよ…?』

 

『柿崎隊が一気に2ポイント獲得…!』

 

『しかも、戦場には柿崎隊が3人、東隊が揃った。次は空閑と辻が食われるぞ。』

 

───

 

「くそ。やられた。」

 

空閑はそう言って、こちらに歩いてくる怪物に目を向ける。

 

「…チッ。」

 

綾瀬川は舌打ちをする。

 

綾瀬川の視界の端には、バッグワームを羽織った二宮が映っていた。

 

 

そのままトリオンキューブを分割。

柿崎隊と空閑にアステロイドが襲いかかる。

 

 

「文香先輩…!」

 

虎太郎が照屋を守るように前に立ち、シールドでアステロイドを受ける。

 

しかし、高いトリオンから放たれるアステロイドは巴のシールドを砕き、巴を蜂の巣にする。

 

巴はそのまま緊急脱出。

二宮隊が得点を挙げた。

 

 

辻はそのまま、綾瀬川に切り掛る。

空閑もそれに合わせて、綾瀬川目掛けて駆けた。

 

 

辻の弧月を綾瀬川が、空閑のスコーピオンを照屋が受け止める。

 

「…これは…オレの相手は二宮隊か。」

 

「空閑くんと東隊は私と隊長が。」

 

「ああ。」

 

その言葉に、照屋は綾瀬川から距離をとるように駆ける。

それを東隊の小荒井、奥寺が追い、空閑もそれに続いた。

 

 

───

 

『乱戦から戦場はさらに分断!東隊VS空閑隊員VS照屋隊員、そして綾瀬川隊員は二宮隊と交戦!』

 

『グラスホッパーがない照屋ちゃんが不利に見えるけど…照屋ちゃんは柿崎くんの方に走ってるわね。しかもこのままいくと合流地点…東さんの位置からは狙えない…宇井ちゃんね。』

 

『綾瀬川は二宮隊と構える気らしい。』

 

───

 

踏ん張りどころだな…。

 

オレはそう言って弧月を構える。

 

「倒すよ…綾瀬川。」

 

辻もそう言って弧月を持ち直す。

 

「2対1は卑怯だろ。」

 

「これは

 

…チーム戦だからね!」

 

そう言って辻はオレに切りかかる。

それを弧月で受け、鍔迫り合いをする。

 

「いいのか?お前が邪魔で二宮さんは撃てないぞ?」

 

「どうかな…俺ごと撃つかも。」

 

オレの両サイド。

弾が通り抜ける。

 

 

東さんがいる以上合成弾は無いな…。

ハウンドか。

 

オレは辻の弧月を弾くと、辻を蹴り飛ばす。

そのまま、フルガードでハウンドを受ける。

 

 

「足癖…悪いんじゃない…?」

 

そう言って辻は弧月を突き出す。

それを弧月で受け流す。

 

攻めにくいな。

二宮さんじゃなくて辻主体で攻め来るのか。

 

 

───

 

『氷見、射線は?』

 

二宮は氷見に通信を入れる。

 

『問題ありません。壁抜きには注意してください。』

 

『ふん。東さんは2度も博打はやらない。』

 

そう言って二宮はトリオンキューブを2つ構え、フルアタック。

 

 

 

「!」

 

 

無数に分割されたハウンドは綾瀬川を閉じ込めるように、綾瀬川の周りに降り注いだ。

 

 

 

 

 

ROUND4数日前

 

 

「綾瀬川のサイドエフェクトによる回避能力…恐るべき能力だ。だが根幹は情報処理にある。」

 

二宮は犬飼、辻、氷見にそう話す。

 

「だから俺は数重視の弾を綾瀬川に当てないように(・・・・・・・)に撃つ。」

 

「当てないように…ですか?」

 

「そうだ。奴は当たる弾は避けてくる。そりゃそうだ。当たるんだからな。だが当たらない弾を無数に撃てばどうだ?そして前衛では辻が綾瀬川の弧月を捌く。俺と犬飼は弾の檻で奴を閉じ込める。奴は迂闊に回避出来ない。辻が落ちても俺たちは檻を縮めるだけ。…俺と犬飼が綾瀬川に優っている部分…それはトリオンだ。

 

 

…使えるものは使う。だが…

 

 

 

…フィニッシャーはお前だ…

 

 

 

…辻。」

 

 

───

 

完璧万能手、綾瀬川清澄。

 

辻は初めて剣を交えた時から、敵わない。

 

そう感じていた。

 

自分を上回る技術。

得意の援護も恐らく綾瀬川には敵わない。

旋空の鋭さも長さも。

何一つ綾瀬川に剣で勝る部分は無かった。

 

個人ランク戦では何度も負け、ポイントを取られた。

 

 

それでも毎日綾瀬川のログを見続け、癖や弱点を探した。

 

前シーズンのROUND8の敗北からほぼ毎日だ。

 

(ここは横薙ぎ…。)

 

綾瀬川はそれを受け止める。

 

(表情は変わらないけど…二宮さんの弾にかなり意識を散らされてる。)

 

突きの弧月を受け流す。

 

(受けに回ってるのは多分…俺が落ちれば弾の雨に削られるのが分かってるからだ。俺が近接している以上フルガードで無理やり抜けることは無い、サブの弾トリガーも逆に隙を作るだけ。

 

 

…絶好のシチュエーションだ。)

 

辻は内心で笑みを浮かべる。

 

(ただこの場所に縫い止めるための時間稼ぎ…そう思ってるんでしょ?綾瀬川。)

 

規則的な動きで辻は綾瀬川に弧月を振るう。

 

左、右、上、左、右斜め下。

 

規則的な動きで弧月を振る辻。

 

今度は斜め上も追加して、綾瀬川の弧月と切り合う。

 

『辻、まだだ。ギリギリまで弾の檻を縮める。それまで持ち堪えろ。やれるな?』

 

『辻、了解。』

 

───

 

読めないな。

 

オレは辻との弧月の応酬の刹那、二宮に視線を向ける。

弾は幾度も分割され、オレを閉じ込めている。

だがそれだけだ。

縮まってきてはいるがオレに当てる気は無いらしい。

 

このままオレの情報選択から二宮さんの弾の情報を消させて、弾で不意打ち…ってところか?

 

オレは辻の弧月を受けながら思考を巡らせる。

辻もここに縫い止めるのが目的なのか、さっきから規則的な攻撃ばかりだ。

 

次は右だろ?

 

 

右から横薙ぎに迫る弧月を弧月で受け止める。

 

 

…多少の被弾は仕方ないか。

 

そろそろ弾もギリギリまで寄ってきた。

 

次のトリオンキューブ分割の隙に、弾の檻を抜ける。

 

 

そう考えた時だった。

 

 

辻は弧月を後ろに引くと、オレに突きを繰り出した。

 

 

「…チッ…」

 

 

このタイミングか。

 

オレは辻の突きを弧月で受け流すべく、弧月を立て、辻の弧月の側面を叩く。

 

そしてくるであろう、二宮の奇襲に意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…かかったな。天才。」

 

 

 

 

 

 

 

「幻踊弧月。」

 

 

 

 

「!」

 

横に流したはずの辻の弧月。

 

それは大きく形を変え、曲がると、オレの胸に突き刺さった。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

辻新之助→友人。ランク戦仲間。敵わない。

辻新之助←友人。ランク戦仲間。援護能力をリスペクト。

















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B級ランク戦ROUND4 柿崎隊VS二宮隊VS玉狛第二VS東隊③

投稿します。


ちょっと今回の話はルール的にアリかナシかわからないですw

調べても分からなくて…。



ナシだったら修正するかもです。


『こ、これは!辻隊員、幻踊?!』

 

『今までは使ってなかったな。』

 

『あら?もっと清澄くんを見たかったんだけど…ここまでかしら?』

 

『…』

 

 

───

 

「…いくらなんでも…しつこいんじゃない?綾瀬川。」

 

辻は冷や汗を浮かべながらそう言う。

 

辻の放った幻踊弧月。

それは綾瀬川のトリオン供給機関に向かって曲がった。

胸に刺さり、トリオン供給機関を貫く…

 

 

…その前に綾瀬川は素手で弧月を掴み、強引に軌道を逸らした。

 

 

 

───警告、トリオン漏出甚大。

 

 

無機質な声が綾瀬川の中に響く。

 

 

「…チッ…!」

 

「二宮さん!俺ごとやってください!」

 

「させるか。」

 

綾瀬川は掴んでいた辻の弧月を乱暴に離すと辻に弧月を振るう。

それを辻は後ろに飛び退いて躱そうとする。

 

しかし、足はスコーピオンでその場に縫いとめられていた。

 

(モールクロー…!)

 

「くそ…!」

 

辻のトリオン体はそのまま両断される。

 

辻の緊急脱出と同時に、二宮のハウンドが綾瀬川に降り注ぐ。

 

綾瀬川はグラスホッパーを複数展開。

シールドを張りながらハウンドを躱す。

 

 

───

 

二宮隊作戦室

 

緊急脱出用のベッドから辻は勢いよく起き上がる。

 

「…」

 

もっと曲げていれば綾瀬川のトリオン供給機関に届いていたかもしれない。

最後のモールクローも綾瀬川がよく使う手。

勝ったと思って油断した。

 

「…くそ!」

 

辻は急いで作戦室に戻る。

 

『すいません、二宮さん。』

 

『…謝るな。

 

 

 

…お前の勝ちだ。辻。』

 

 

───

 

空中でハウンドから逃げ切った綾瀬川。

 

そのまま空中で抜刀の構えを取る。

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

キィと甲高い音で二宮に迫る弧月。

 

 

しかし、それは二宮の首に届く前に、音を立てて崩れる。

 

 

「…」

 

 

「お前の負けだ。綾瀬川。」

 

 

───トリオン漏出過多、緊急脱出。

 

 

緊急脱出を告げる音が響いた。

 

 

そのまま、光の道筋を残し、綾瀬川は今シーズン初の緊急脱出となった。

 

 

───

 

「よっしゃ!清澄くん撃破だよ!辻ちゃん!」

 

そう言って犬飼は辻に視線を向ける。

 

「…はい…!」

 

辻は嬉しそうにガッツポーズを作る。

 

「ちょっと。まだ試合終わってないよ。」

 

氷見は2人にジト目でそう言った。

 

 

『問題ない。辻、お前はお前の仕事をこなした。…見事だった。

 

 

 

…あとは俺に任せろ。』

 

───

 

『あと一歩及ばず!辻隊員を落とすも、綾瀬川隊員もトリオン漏出過多で緊急脱出!なお、得点は一番大きなダメージを与えた辻隊員の得点となります!』

 

『最後に点を取るのはさすがだな。』

 

『でも清澄くんが緊急脱出するなんてね。』

 

『そして二宮隊長はその場からハウンドをもう一方の戦場に放ちました!』

 

 

───

 

「清澄が負けた…?」

 

東隊、空閑の攻撃を捌きながら、柿崎は目を見開く。

 

「…」

 

照屋は弧月を構え直す。

 

「…それなら私が点を取ります。」

 

そう言って照屋は東隊、空閑目掛けて駆けた。

 

 

そんな戦場に無数のハウンドが降り注いだ。

 

 

───

 

柿崎隊作戦室

 

 

緊急脱出するつもりなど無かった。

だからといって本気を出す気も無かったが、勝つつもりで戦っていたのは事実だ。

あの状況からの幻踊弧月は効果的なのは分かっていたし、今考えれば防げる一手だった。

それを抜かり、辻の幻踊弧月を食らったのは他でもない、油断だった。

 

 

辻はそんな手を使ってこないだろうと。

 

 

 

オレの嫌いな決めつけで、二宮さんの弾に意識を逸らした。

 

 

言うまでもなく演算ミスだ。

 

 

「…」

 

綾瀬川はゆっくりと起き上がる。

 

ヴィザより強い近界民は期待できない?

 

ROUND4が始まる前に考えていたことを思い出す。

それ以前に、近界の敵でもない辻に負けたのはオレだ。

 

「…面白いな、ボーダー…。」

 

辻はただオレに負け続けていた訳ではなかった。

 

この一手のための伏線とも呼べる堅実な弧月をオレに見せつけていたのかもしれない。

 

負けに学ぶのがランク戦…か。

 

 

…だが、負けてやる気は無い。

 

自分の尻拭いは自分でする。

 

 

オレは立ち上がり、作戦室に戻る。

 

 

「あ、お疲れ様です、清澄先輩。あれは仕方ないですよ、清澄先輩だってたまには「ちょっと退いてくれるか?虎太郎。」」

 

そう言ってオレは虎太郎を押し退かすと、真登華のパソコンの前に立つ。

 

 

「清澄先輩…?」

 

 

オレは真登華が付けていたマイクを外す。

 

 

「え?わっ、ちょ、清澄先輩?!」

 

 

 

「…真登華。

 

 

 

 

 

…ちょっとそこ代われ。」

 

 

 

「…はい?」

 

───

 

一方、戦場では無数に降り注いだハウンドにより、東隊の2人は為す術なく緊急脱出。

空閑は削られ満身創痍、その状態で、こちらによって来た二宮に切り掛るも、ノーガードになった所を東に狙撃され、緊急脱出となった。

 

 

 

残ったのは、東、二宮、柿崎、照屋だった。

 

 

 

『隊長、文香。綾瀬川です。』

 

『!、清澄?おま、なんで?真登華は?』

 

『話は後だ。自分の尻拭いはする。…オレの指示通り動いてもらいます。…まず、東さんは無視でいいです。この状況なら二宮さんがいる以上撃って来ない。特に柿崎さんと文香は2枚抜きができる状況でも無い限り狙いませんし、真登華が射線管理はしてくれてる。…二宮さんが動きますよ、構えてください。』

 

「「!」」

 

二宮はトリオンキューブを分割。

 

『数重視ですね。文香がいる以上近付けさせない気でしょう。

 

 

…尤も、全部見切れますけど。』

 

『!』

 

 

柿崎、照屋の視界に、二宮の弾の弾道予測が表示される。

 

 

『もう二宮隊には1点もやらない。二宮さんは文香と柿崎さんで落としてください。』

 

『おま、無茶言うなよ…。』

 

表示された弾道予測にエスクードとレイガスト、照屋はシールドを展開する。

 

 

『出来ますよ。

 

 

…その為にオレがいる。』

 

 

───

 

『さて、試合もいよいよ終盤!玉狛第二は全滅、東隊長は逃げ切りの形になるか、試合の命運は柿崎隊VS二宮隊長に委ねられた!』

 

『ラストバトルね。人数は2対1で柿崎隊が勝ってるけど…清澄くんがいないんじゃちょっとね。』

 

───

 

「…」

 

二宮の放つハウンドの応酬。

それを放たれるより先に、柿崎、照屋の視界に映し出される弾道予測により、全てをシールド、レイガスト、エスクードで受ける。

 

 

「ちっ…。」

 

二宮は舌打ちをする。

おそらくボーダートップクラスの守備力だろうと。

柿崎を見てそう考える。

東がいる以上、フルアタックでのゴリ押しは得策じゃない。

 

そして何より…

 

 

ガードが的確すぎる。まるで軌道を読んでいるように防がれる。

 

かと言って威力重視の弾を撃てば、照屋に接近される恐れがある。

 

 

エスクードが邪魔だな…。

 

 

(それならエスクードごと吹き飛ばすだけだ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…って二宮さんは考えるはずだ。次、二宮さんが6発にトリオンキューブを割ればそれはメテオラです。』

 

『…分かった、信じるぜ、清澄。』

 

二宮のアステロイドをエスクードとレイガストで受ける。

 

 

 

そして二宮はトリオンキューブを分割。

 

 

6発だった。

 

 

『ビンゴ。今です、柿崎さん。』

 

 

 

「おう、エスクード!」

 

 

 

柿崎の足を伝い、エスクードは二宮を囲うように展開される。

 

 

「!…ちっ…!」

(読まれた…?)

 

 

二宮は自滅を防ぐべく、メテオラを空に打ち上げた。

 

 

「文香!」

 

「了解!」

 

柿崎のエスクードに乗り、照屋は二宮との距離を一気に詰める。

 

 

『隊長、合図したらマークつけたとこにエスクード出してください。』

 

『は?ここって…』

 

『念の為です。』

 

 

エスクードで飛び上がった照屋は二宮を囲うエスクードに近づく。

 

 

「っ…!」

 

二宮はトリオンキューブを分割。

アステロイドで照屋を迎撃する。

 

しかし、それは柿崎により二宮を囲う用に展開されたエスクードに邪魔される。

 

そして、距離は20mを切る。

 

 

照屋の間合いだった。

 

 

 

「旋空弧月。」

 

 

「ちっ…。」

 

縦に放たれた旋空を二宮は横にスライドして躱すが、躱し切れず、足を切り裂かれる。

 

 

「!」

 

しかし照屋の周りには四角錐のトリオンキューブがばらまかれていた。

 

 

 

 

『だろうな。だからエスクードで二宮さんを狙える東さんの射線を切ったんだ。』

 

 

 

 

「スラスター、ON…!」

 

 

柿崎はスラスターで照屋の前に躍り出ると、勢いそのまま、シールドモードのレイガストを振り回し、二宮の置き弾を撃ち落とす。

 

 

「ちっ…!」

 

二宮は照屋目掛けてアステロイドを放つ。しかしそれは柿崎のシールド、レイガストに防がれる。

 

 

 

 

 

『チェックメイトだ。キングは取ったぞ。辻。』

 

 

 

 

 

そのまま、柿崎の背中で回転しながらスイッチした照屋の弧月により、二宮のトリオン体は切り裂かれた。

 

 

「ちっ…。」

 

 

光の道筋を残し、二宮は緊急脱出。

 

 

 

『今です、隊長。』

 

 

「!、あ、ああ。」

 

柿崎は合図と同時にエスクードを展開。

 

 

 

 

その直後に、照屋を狙ったアイビスが現れたエスクードに着弾した。

 

 

 

───

 

『まさかまさかの展開!柿崎隊長と照屋隊員の連携により、緊急脱出したのは二宮隊長!』

 

『あら意外。とんでもない連携ね。』

 

『予測したようにガードしていた。二宮が撃つ前に…だ。宇井のオペレートで出来る芸当とは思えない。…奴が見てるな…。』

 

『そして、最終局面!やはり介入してきた東隊長!しかしこれは…?』

 

『…これも奴の采配か…?どこまで見えているんだ?』

 

───

 

『文香、バッグワームだ。…隊長、逃がさないでくださいよ。』

 

『色々状況が理解出来ないが…分かった。文香、もう1回行ってこい。』

 

「了解!」

 

『柿崎さん、飛ばすなら少し南にしてください。弾道解析だと52mです。緊急脱出するために東さんは動きますよ。』

 

『南にか?』

 

『はい。まあ、あれです。

 

 

…勘ですよ。』

 

 

『わーったよ。』

 

 

柿崎のエスクードで、照屋は飛び上がる。

 

 

───

 

 

「おいおい、冗談だろ…?」

 

東は南に走りながら、自発的な緊急脱出をしようと試みる。

 

 

しかし、それは受理されず。

 

 

「!」

 

東の前に、先回りしたように照屋が降り立った。

 

 

 

「動いたつもりだったんだがな。」

 

「…私も半信半疑ですよ。本当に東さんがここに動いてるなんて思いませんでした。」

 

照屋は不貞腐れたようにそう言って弧月を抜く。

 

「見事だ。狙撃手がここまで寄られたら勝ち目がないな…。」

 

東は降参するように、持っていたライトニングを落とす。

 

 

 

 

 

そして、東も緊急脱出し、試合終了となった。

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 2P

巴 0P

綾瀬川 3P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

二宮隊

 

 

二宮 3P

犬飼 0P

辻 1P

 

合計4P

 

 

玉狛第二

 

 

三雲 0P

空閑 0P

雨取 0P

 

合計 0P

 

 

東隊

 

 

東 2P

奥寺 0P

小荒井 0P

 

合計 2P

 

 

 

 

 

「ふう…こんなもんか…。」

 

 

綾瀬川はヘッドマイクを外し、立ち上がる。

 

 

「急に悪かったな、真登華。」

 

「い、いえ別に…。…え?清澄先輩、オペレーターも出来るの?」

 

「…休隊明けにちょっと教わったんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾瀬川くんの指示ね…。やっぱりすごいわね、彼。

 

…何者なのかしら?」

 

 

 

 

短い期間だったが、自分に師事した弟子を思い浮かべて、三輪隊、オペレーター、月見蓮は小さく笑みを浮かべた。





各キャラからの印象&各キャラへの印象

辻新之助→1点ゴチです!
二宮匡貴→抜かったな。
宇井真登華→え?オペも出来んの?
月見蓮→弟子。

辻新之助←やられた。本当にすごい。
二宮匡貴←負けてやる気はないですよ。
宇井真登華←急にごめんね。
月見蓮←師事。


綾瀬川トリガーセット

メイン:弧月、旋空、グラスホッパー、シールド
サブ:スコーピオン、イーグレット、バッグワーム、シールド
 


途中からオペ代わるのってありなのかなw
情報提供待ってます。


ずっと引っ張ってきた綾瀬川と月見さんの関係は師弟関係でしたとさ。
て言っても機器操作くらいですけど。


感想、評価等お待ちしております。


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ROUND4を終えて

とーこーしやす。


『ここで決着!最終スコア7対4対2対0!B級1位はやはり強い!大量得点を挙げ、ROUND4を制したのは柿崎隊!』

 

 

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 2P

巴 0P

綾瀬川 3P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

二宮隊

 

 

二宮 3P

犬飼 0P

辻 1P

 

合計4P

 

 

玉狛第二

 

 

三雲 0P

空閑 0P

雨取 0P

 

合計 0P

 

 

東隊

 

 

東 2P

奥寺 0P

小荒井 0P

 

合計 2P

 

 

 

 

『今回のランク戦はマップ中央で乱戦が繰り広げられ、かなり混沌としていたというイメージです。解説のお二方に総評を頂いてもよろしいでしょうか?』

 

『今回の試合は伏兵の辻を除けば、各隊エースが得点を挙げている。場を掻き乱し、二宮の得点機会を作った二宮隊、陽動の末、東さんに点を取らせた東隊、柿崎隊も、綾瀬川が二宮隊との戦闘に集中出来たのは、空閑と東隊を照屋、柿崎の2人が抑えていたからだ。』

 

『となると、三雲隊長と雨取隊員が何も出来ずに落とされたことが玉狛の敗因に繋がる…ということでしょうか?』

 

『落ちたことをどうこう言うつもりは無い。

 

 

 

…落とされて学んでいくのがランク戦の意義だ。』

 

───

 

玉狛第二作戦室

 

 

『隊長としての務めを果たせ。』

 

 

風間のその言葉が深く突き刺さる。

 

 

そして三雲は何かを決心したように立ち上がった。

 

 

 

───

 

柿崎隊作戦室

 

『落とされて学んでいくのがランク戦の意義だ。』

 

 

「…」

 

実際の戦場ならオレは今ここにはいないのだろう。

 

だが、ここはボーダー。

 

首を切られても、胴を裂かれても、緊急脱出するのみ。

 

 

 

生温いと思っていたが、なかなかどうしてよく出来ている。

 

 

 

「あ、おつかれー、文香、ザキさん。」

 

 

そんなことを考えていると、柿崎と文香が戻ってきた。

 

 

「おう。」

 

「4戦目も7得点!この調子で頑張りましょう!」

 

虎太郎は嬉しそうにそう言った。

 

 

「半信半疑だぜ…まさか二宮さんを落とせるなんてな…珍しく緊急脱出したと思ったら、まさか最初からオペレーターをやるつもりだったのか?」

 

柿崎はオレに尋ねる。

 

 

「まさか。…オレも緊急脱出するつもりは無かったですよ。辻の幻踊を見抜けなかったオレの演算ミスだ。負けに学ぶ…とは言っても負けてやる気はありませんよ。…言ったでしょ…自分の尻拭いは自分でする。」

 

 

オレのその言葉に柿崎は息を飲む。

 

「…て言うか…清澄先輩がオペできるなら私もう要らなかったり…アハハ…。」

 

真登華が複雑そうな表情でそう言った。

 

「馬鹿言うな。オペは本職じゃない。」

 

そう言って真登華の頭を軽く叩いたあと、頭に手を乗せる。

 

「それに…二宮さんとの戦闘に東さんが介入出来なかったのはお前が射線管理をしっかりしてたからだ。…オレはもうお前に射線管理で勝てる気がしない。自分を卑下するのは師匠のオレに失礼だぞ?…これからも頼む。」

 

「あ、う…は、はい…。」

 

真登華は照れくさそうに笑うとそう頷いた。

 

 

 

 

「これに懲りたらもう少し真面目にやったらどうですか?」

 

文香がジト目でオレに話しかける。

 

「何を言ってる。オレはいつだって…「そう言うのいいですから。」」

 

文香にそう突っぱねられる。

 

「…そうだな。…まずはインプットからだ。ログでも見るさ。」

 

「だったらそろそろやってあげたらどうです?いつも何かと理由つけて断ってるじゃないですか。…清澄先輩が断るといつも私のところにランク戦申し込んでくるんですから、あの人。」

 

その言葉に誰だと思いつつも、すぐに心当たりを見つける。

 

 

 

 

 

「…そうだな。次誘われたら引き受けることにする。」

 

 

 

───

 

『意外だったのは柿崎くんと照屋ちゃんの連携ね。二宮くんが負けたのは面白かったけど、まさか負けるとは思わなかったわ。』

 

『…二宮の弾を見切ったようにガードしていた。最後の東さんの狙撃もだ。東さんは宇井の射線管理の可能性もあるが…二宮の弾を見切ったのは宇井とは考えにくい。置き弾も的確に見切っていた。

 

 

…そんな芸当ができるのはあの男しかいない。』

 

───

 

二宮隊作戦室

 

「ちっ…。」

 

二宮は足を組んで舌打ちをする。

 

「やっぱりタダじゃ落ちませんねー、あの天才。」

 

「…綾瀬川だけでは無い、それを実行に移せる照屋と柿崎…特に柿崎だ。照屋と組んだ時の奴の援護は最早ボーダートップクラスだ。」

 

そう言って二宮は立ち上がる。

 

「綾瀬川もだ。今回は初見殺しで上手くいった。だが次回同じ手は通じないだろう。」

 

「じゃ、どーします?」

 

犬飼が二宮に尋ねた。

 

「決まっている。初見殺ししか通用しないというのなら何度でも策を練るだけだ。…想像よりもB級1位の壁は高い。今まで以上に働いてもらうぞ、犬飼、辻、氷見。」

 

「「「了解。」」」

 

───

 

『さて、これにてROUND4全ての試合が終了。順位は以下の通りとなりました。』

 

 

1位 柿崎隊 38P

2位 二宮隊 31P

3位 影浦隊 27P

4位 生駒隊 23P

5位 王子隊 21P

6位 鈴鳴第一 21P

7位 東隊 20P

8位 諏訪隊 20P

9位 玉狛第二 19P

10位 弓場隊 17P

11位 漆間隊 13P

12位 荒船隊 13P

13位 香取隊 12P

14位 那須隊 12P

 

 

 

『玉狛第二は中位、9位にランクダウン、柿崎隊、二宮隊、東隊は変動なしと言う結果になりました。』

 

『柿崎隊は独走状態ね。この調子じゃ来シーズンはAに来そう。楽しみだわ。』

 

 

───

 

諏訪隊作戦室

 

「えー!うち上位入りじゃないのー?!」

 

榎沢が駄々をこねるようにそう言った。

 

「仕方ねえだろ。鈴鳴が新戦術で生存点込みで8点も取りやがったんだ。つーかおめーが最後ドジらなきゃ2点取ってたかもしれねえだろーが。」

 

「うわ、瑠衣ちゃん聞いた?諏訪さん1点も取ってないのにあたしの所為ににしてきたよ?」

 

「諏訪さんサイテー。」

 

「あたし頑張って3点も取ったのに…!」

 

榎沢はわざとらしく泣き真似をすると、小佐野に抱きつく。

 

「あーあ、一華泣いちゃったよ?諏訪さん。謝れ〜。」

 

「そーだそーだ。」

 

「るせえ!…別に責めるつもりはねえよ。次で上位に入りゃいいだけだろーが。…再戦は直ぐなんだからよ。」

 

 

ROUND5中位昼の部

 

諏訪隊VS弓場隊VS荒船隊

 

 

「ん。次で上位入りだね。」

 

「んじゃ、今日はその前祝いに飯でも行くか。」

 

「いいですね。」

 

「久しぶりじゃないですか?」

 

「諏訪さーん、私肉〜。」

 

堤、笹森に続いて、小佐野がそう言って後ろに続く。

 

 

 

「オラ、テメーもだ、榎沢。食いたいもんねえのか?」

 

「…あたしもいいの?」

 

「…あ…?」

 

諏訪は顔を顰める。

 

「何言ってんの?一華。エースは一杯食べないと!諏訪さんの奢りだから好きなだけ食べていいんだぞー?」

 

そう言って小佐野は榎沢に近付き、頭を撫でる。

 

「そうだぞ、榎沢。諏訪さんの奢りだ。」

 

「諏訪さんの奢りだよ?榎沢。」

 

小佐野に続いて堤と笹森もそう続いた。

 

 

「お前らな…。」

 

 

「…あたしもお肉がいい。」

 

「んじゃ焼肉でも行くか。あんま食い過ぎんじゃねーぞ?オメーら。」

 

「やったー!ほら、行くよー、一華。」

 

 

 

 

「…ん。」

 

 

 

 

 

 

 

───

 

ROUND4翌日。

 

ボーダー本部会議室

 

そこで行われていたのは近々、新たに近界からの攻撃があるというエネドラの証言を元にした会議だった。

 

会議室には城戸、忍田、沢村の他に他県でのスカウト旅に出ている草壁隊、片桐隊、防衛任務中の加古隊を除いたA級部隊の隊長、そしてボーダーが誇る知将、東春秋、未来視のサイドエフェクトを持つ、実力派エリート迅悠一と言う錚々たるメンバーが揃っていた。

 

会議は進み、攻めてくるのは、「ガロプラ」か、「ロドクルーン」と言うアフトクラトルの従属国である可能性が高い。

今回の防衛作戦は大規模侵攻の爪痕を考慮して、市民には秘密裏に行い、B級以上の必要最低限のメンバーで行うことが決まった。

防衛任務、ランク戦は平常運転となる。

そして、東の口添えにより、天羽も防衛に加わる事となる。

 

 

そんな会議室にカツンと廊下を打つ、音が近付く。

 

 

 

 

「そして、今回の防衛の指揮だが…」

 

 

城戸のその言葉と同時に、会議室のドアが開く。

 

 

「遅れて申し訳ございません。何分足が不自由なもので。

 

 

…今回の防衛作戦の指揮を執らせていただきます。唐沢有栖と申します。初めましての方も多いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

…ふふっ、以後、お見知り置きを。」

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

綾瀬川
風間蒼也→底が見えない。化け物。
宇井真登華→頼れすぎる先輩。頭撫でてくれた…!
二宮匡貴→ボーダートップの万能手。

風間蒼也←小さい人。
宇井真登華←替えのきかない駒。顔赤いよ?
二宮匡貴←次は落とす。


榎沢
諏訪洸太郎→生意気なエース。
小佐野瑠衣→エース。妹分。

諏訪洸太郎←隊長。いい人。話してて楽しい。
小佐野瑠衣←飴くれる。面白い人。



諏訪隊と玉狛なぁ…何時ぶつけようかなw

ガロプラ編はおそらくオリジナルになる可能性高しです。



感想、評価等お待ちしております。


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ROUND5に向けて

遅くなったぜ…!
待たせたな!


ほんますんません。


「唐沢だと…?」

 

突如会議室に現れた少女、唐沢有栖。

聞き覚えのある苗字に三輪隊隊長、三輪秀次は眉をひそめた。

 

「ああ…唐沢克己は私の義父に当たります。

 

 

…三輪秀次くん。」

 

「!」

 

「当然でしょう?ここにいるものの名前は全員分かります。…私はボーダー本部通信室長兼本部司令補佐を担っています。…正隊員の名前、ポジションなどのプロフィールは全て暗記しております。」

 

「指揮を執る…と言ったな。君がか?」

 

嵐山隊隊長の嵐山准はそう尋ねる。

 

「はい。A級、B級全ての指揮権を私が担います。」

 

有栖はそう言って笑みを浮かべる。

 

「…本部長。」

 

風間隊隊長、風間蒼也は忍田に視線を向ける。

 

「彼女の言う通りだ。今回の防衛は唐沢有栖くんの指揮の下動いてもらう。」

 

「忍田さん。

 

 

…正気ですか?」

 

いつものように飄々と。

しかし、鋭い視線でそう尋ねたのは太刀川隊隊長、太刀川慶。

 

「おや?私では不服ですか?太刀川さん。」

 

「不服っつーかよ…。」

 

太刀川は迅に視線を向ける。

 

「…大丈夫だよ、有栖ちゃんに任せて。」

 

「ああ?」

 

太刀川は眉をひそめるが、迅は、

 

 

「…俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

 

 

そう言って不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「迅さんの言う通りです。心配せずとも勝ちます。…そのために私に声がかかったのですから。それに…ボーダーにはあちらの世界で言うところの玄界の最高戦力がいる…」

 

そう言うと有栖は目を伏せ、好戦的な笑みを作る。

 

 

 

 

「従属国如き敵ではありませんよ。」

 

 

 

──

 

ランク戦ブース

 

弧月と弧月がぶつかり火花を散らす。

 

 

「どうした?幻踊は使わないのか?」

 

「っ…根に持ってる?綾瀬川?」

 

「そりゃな。だからこうしてお前に声をかけた。」

 

綾瀬川は辻の弧月を絡めとるように上に弾き飛ばす。

 

「あれは初見殺しが上手く効いただけだよ。…次は通じる気がしない。」

 

「当然。

 

 

…次同じ手を食らう気は無い。」

 

そう言って綾瀬川は無防備になった辻のトリオン体を切り裂いた。

 

 

 

 

ランク戦ブースに戻ると、ブースに繋がる廊下で見知った相手を見つける。

 

「綾瀬川、あれ柿崎さんじゃない?」

 

「そうだな。もう1人は空閑か。」

 

しかし、そこに近づく1人の影が。

 

「「!」」

 

辻と綾瀬川は肩を弾ませ隠れる。

 

空閑と柿崎に話しかけたのはA級6位加古隊隊長、加古望だった。

 

 

「なんで綾瀬川まで隠れるの?」

 

ヒソヒソと辻が綾瀬川に声をかける。

 

「炒飯。」

 

「なるほど。」

 

 

 

 

「あ?お前らここでヒソヒソ何してやがんだ?」

 

 

──

 

「うちのチームは全員イニシャル『K』で揃えてるのよ。」

 

柿崎と空閑に会ってすぐ。

加古は空閑をチームに誘う。

しかし、空閑はそれを断り、加古は説得すべく説明を始めた。

 

「ふむ…いにしゃるけーとは?」

 

空閑は首を傾げる。

 

「名前がかきくけこで始まるってことだ。」

 

柿崎が説明する。

 

「ほう。」

 

「だから『K』で才能ある子は誘わずにはいられないのよね。」

 

「じゃあ、かきざきせんぱいも誘ったの?」

 

「生憎俺は加古さんのお眼鏡にはかなってねーよ。」

 

「あら?前はそうだったけど…柿崎くんのエスクードは双葉とも相性が良さそうだと思うわ。…あなたもついでにうちに入らない?」

 

「ついでって…。入りませんよ。」

 

柿崎は呆れたように断る。

加古はその後も空閑をあの手この手を使って誘うが、空閑は全てを断る。

 

 

「オイコラ、空閑ァ!」

 

 

そうしているとオラついた声が響く。

 

空閑を呼んだのは影浦隊隊長の影浦雅人だった。

…何故か、綾瀬川の首に腕を回していた。

 

「いつまで待たせんだテメェ!八つ裂きにすんぞ!」

 

「カゲ、清澄。」

 

「あら影浦くんと清澄くん。」

 

「ザキさん…ファントムばばあ。」

 

影浦は柿崎と加古に気付く。

 

「第3の『K』。」

 

「あ?」

 

「…で?なんでお前はカゲに絡まれてんだ?」

 

柿崎が呆れたように綾瀬川に尋ねる。

 

「オレが聞きたいです。」

 

「空閑とやるついでにテメェも一緒にやんだよ。つーか空閑ァ!遅れんなら遅れるって連絡入れろボケ!」

 

「すまんねかげうらせんぱい。道に迷った。」

 

「オラ、さっさと来やがれ!」

 

影浦は空閑を引っ張る。

 

「あら、まだ話終わってないのよ?」

 

加古も負けじと空閑を引っ張った。

 

「待った待った!子供を引っ張るな!」

 

柿崎が慌ててそれを止める。

 

「カゲさん、オレもいるんで乱暴しないで貰えます?」

 

 

その瞬間、空閑の携帯が震える。

 

「…3人とも申し訳ない。」

 

「オレは別に誘ってないけどな。」

 

「リーダーからの帰還命令だ。」

 

 

そう言って空閑は支部へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

「…カゲさん、オレを囮に逃げてった辻、2人でやりません?あいつ幻踊覚えて強くなってますよ。ポイントも増えてるんで搾り取りましょう。」

 

「乗った。」

 

 

──

 

翌日

ボーダー本部司令室

 

 

「…お呼びでしょうか?城戸司令。」

 

 

オレは司令室に呼び出されていた。

 

「近界民による侵攻の件でしょうか?…ランク戦の最中であればオレは参加出来ませんが。」

 

「問題ない。その場合は不参加で構わない。今回呼んだのは彼女の件だ。」

 

その言葉の同時に司令室の扉が開く。

 

「…申し訳ございません。城戸司令。遅くなりました。」

 

司令室に現れたのは唐沢有栖だった。

 

「お久しぶりです。綾瀬川清澄くん。」

 

「…唐沢か。」

 

「それでは父と被ります。…どうか私の事は有栖と気軽に呼んでください。」

 

そう言うと有栖は椅子に座る。

 

「…それで?オレを呼んだのは?」

 

「件の近界民の侵攻の件です。それに関して綾瀬川くん頼みがありまして。」

 

「頼み?」

 

そう言うと有栖は司令室の机にあるものを置く。

 

 

 

チェス盤だった。

 

 

 

「私と1戦、手合わせ願えますか?」

 

 

──

 

そして時は進み、あっという間にB級ランク戦ROUND5、当日がやってくる。

 

上位昼の部

柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一

 

上位夜の部

二宮隊VS生駒隊VS東隊

 

中位昼の部

諏訪隊VS弓場隊VS荒船隊

 

中位夜の部

玉狛第二VS漆間隊VS香取隊VS那須隊

 

 

これがROUND5の組み合わせだった。

 

 

 

『皆さんこんにちは!B級ランク戦上位昼の部の実況をさせていただきます、風間隊オペレーターの三上歌歩です!解説席には、玉狛第一のお2人、木崎隊長と烏丸隊員をお招きしています!』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

烏丸ファンの間に歓声が上がった。

 

『さて、昼の部は柿崎隊、影浦隊、王子隊、鈴鳴第一の四つ巴対決になりますが…解説のお二方はどのような試合展開になると思われますか?』

 

『鈴鳴第一は新戦術でROUND4、高得点を獲得して上位に上がってきました。鈴鳴の新戦術がどこまで上位に通用するか…見所はそこだと思いますよ。』

 

『なるほど。木崎隊長はどうでしょう?』

 

『柿崎隊の戦術が気になる所だ。二宮隊の追随を寄せ付けないポイントでB級1位に君臨しているからな。』

 

木崎はそう言うと目を伏せた。

 

『なるほど。柿崎隊と木崎隊長と言えば、柿崎隊には木崎隊長と同じ完璧万能手の綾瀬川隊員がいますね。木崎隊長から見て綾瀬川隊員はどうでしょう?』

 

三上が木崎に尋ねる。

 

『あいつも俺も完璧万能手だが…戦い方は違う。間近で見て参考にさせてもらおうと思っている。』

 

『ありがとうございます。さて、マップの選択権は鈴鳴第一にあります。果たしてどのマップが選ばれるでしょうか…。』

 

『まぁ新戦術を使うとしたら撃ち合い有利のマップでしょうね。』

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「鈴鳴とやるのは前シーズン以来か。久しぶりだがどうだ?」

 

柿崎がチームメイトに尋ねる。

 

「やることは変わりません。いつも通り連携して点を取りましょう。」

 

「サポートします!」

 

「太一くんには1点もあげませーん。」

 

「ハハッ、心強いぜ。

 

 

…清澄はどうだ?」

 

 

「まぁ…負けてやる気はありません。

 

 

 

…中位に送り返すだけです。」

 

 

 

綾瀬川清澄

 

メイン:アステロイド、バイパー、弧月、シールド

サブ:アステロイド、メテオラ、バッグワーム、シールド




各キャラからの印象&各キャラへの印象

唐沢有栖→玄界の最高戦力
辻新之助→ライバル。囮にして逃げるぜ。
影浦雅人→丁度いい。ランク戦付き合えや。

唐沢有栖←杖の人。髪白い。
辻新之助←ライバル。覚えとけよ。
影浦雅人←ランク戦仲間。一緒に辻やりましょう。


今回は射手スタイルですね。
他のチームはこんなふうにコロコロスタイル変えてくる綾瀬川に対応しなきゃ行けません。
割とクソゲーな気がしてきた。
しかもちゃっかり弧月入ってんのもクソゲー。


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B級ランク戦ROUND5 柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一①

遅くなりすんません。


鈴鳴第一作戦室

 

「…さて、いよいよ上位だ。」

 

来馬が隊員の前でそう切り出した。

 

「僕らの新戦術が上位にどれだけ通用するか分からないけど…。」

 

来馬は緊張した面持ちでそう言った。

 

「大丈夫ですよ!俺の考えた作戦もありますし!」

 

別役はそう言って親指を立てる。

 

「まったく、気楽なんだから。鋼くんも寝てるし…緊張してる私と隊長が馬鹿みたいじゃない…。」

 

鈴鳴第一のオペレーター、今結花はそう言って呆れたようにため息を吐きながらも、笑みを見せる。

 

「そうだね。…やれる事はやった。あとは勝つだけだ。」

 

 

──

 

『ここで鈴鳴第一によりマップは「市街地D」に決定されました!マップの解説をお願いしてもよろしいですか?』

 

三上の言葉に、烏丸は頷く。

 

『「市街地D」は高い建物が多い、縦に広いマップですね。バッグワームをつけて建物に潜んだらまず見つかりません。…中央にある大きなデパートでの戦闘が多いイメージです。…今シーズンは諏訪隊がよく選んでいるマップです。狙撃手は不利なので…太一の狙撃を抜きにしてまで絵馬を止める狙いじゃないですか?』

 

『なるほど。』

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「Dかー。極端なマップ選んでくるねー。鈴鳴。」

 

北添はそう言って唇をとがらせる。

 

「ユズルはどうする?デパートの外から?」

 

「…俺も中に行くよ。壁抜き狙ってみる。」

 

「おっけー。カゲは大丈夫そ?マップ分かる?」

 

「問題ねえよ。綾瀬川だけじゃなくて久しぶりに鋼ともやれるんだ。俄然燃えてきたぜ。」

 

「しゃー!勝てよお前ら!綾瀬川の飯がかかってんだからよ!」

 

そう言って仁礼は3人の背中をバシバシ叩く。

 

「もうゾエさんツッコミませーん。」

 

──

 

王子隊作戦室

 

「現状一番不利なのはうちだ。」

 

作戦室に入ってきた王子は開口一番、そう口にした。

 

「不利…ですか?うちに狙撃手はいませんが…。」

 

樫尾は疑問符を浮かべて王子に視線を向ける。

 

「狙撃手がいてもいなくてもうちが不利なのは変わらないよ。鈴鳴はマップの選択権と新戦術がある。柿崎隊は言わずもがな、影浦隊にも総合力で勝てない。…パワーバランスの一番下なのがうち、王子隊だ。利根川や鈴鳴が舐めてかかってくれば付け入る隙はあるだろうけど…それは無いだろうね。」

 

王子はお手上げというように、手を広げる。

その言葉に樫尾は俯く。

 

「…と、悲観しても仕方ない。僕らには僕らのできることをやろう。柿崎隊にはやられっぱなしだからね。いつも通り合流して、狙撃手や、浮いた駒を取る。…負けっぱなしは悔しいからね。」

 

 

そう言って王子は笑みを浮かべた。

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「Dか。…絵馬を抑えられると喜ぶべきかもな。」

 

そう言って柿崎は顎に手を当てる。

 

「そうですね。エスクードも有利なマップだと思います。」

 

照屋もそう分析した。

 

「手強そうですね…鈴鳴の新戦術。」

 

巴はそう言って息を呑む。

 

「私はマップがDだから楽出来そう。…次はサクッと落とされないでくださいよー?清澄先輩。」

 

「…分かってるよ。

 

 

…勝つさ。」

 

 

そう言ってボーダー最強の怪物は抑揚のない無機質な声で答えた。

 

 

──

 

 

『転送準備が整いました。…転送開始!

 

 

…完了!

 

マップ「市街地D」、時刻「夜」!

 

 

 

B級ランク戦ROUND5、上位昼の部、スタートです!』

 

 

 

 

『夜…か。意地でも狙撃手を封じたいのか?鈴鳴は。』

 

『まあ鈴鳴の新戦術は中距離特化っスからね。絵馬の狙撃は脅威だし何より、綾瀬川先輩もイーグレット入れてるかもしれないですから。』

 

『…なるほど…。木崎隊長とは違い、各試合ごとにトリガー構成を変える綾瀬川隊員の戦い方。木崎隊長はどう思われますか?』

 

『相手にするとしたら「やりにくい」だ。相手にする度に綾瀬川のトリガー構成に気を散らされる。決めつけてかかれば予想外の奇襲に遭う。アドリブの対応を強制させるという強みがあるな。』

 

木崎はそう言って目を伏せた。

 

『とは言ってもトリガー構成を頻繁に弄ると咄嗟の切り替えを失敗しやすくなります。俺も万能手の端くれですけど…真似出来ない芸当ですね。』

 

『ああ。それ以前に綾瀬川の強みの根底はどのトリガーもトップランカー並みに使いこなせる技量があってこそだ。

 

 

…俺でも真似はできない。』

 

 

『なるほど。…さて!各隊ランダムな位置から始まったこの試合、中央のデパート内、最上階には村上隊員が、2階に巴隊員、1階には別役隊員が転送された!各隊デパートに寄った転送位置となっています!』

 

『来馬さんもデパート近いッスね。転送位置的には鈴鳴が有利だと思います。』

 

『転送と同時にバッグワームでレーダーから姿を消したのは、王子隊の3人と絵馬隊員、別役隊員の狙撃手両名、そして柿崎隊の巴隊員と綾瀬川隊員です!』

 

『王子隊は開幕速攻で合流を目ざしてるな。このスピードなら一番乗りで交流できそうだ。』

 

『綾瀬川先輩はまあ…いつもの嫌がらせッスね。トラッパーを警戒させるのはバッグワームだけで十分スから。』

 

──

 

『隊長!俺デパートの中でした!この階にはいないみたいですけど…下か上かのすぐ近くに反応ありです。』

 

『分かった。俺と文香も直ぐに向かう。清澄はどうする?』

 

『オレはちょっと遠いんで。まあ一応デパート目指しときますよ。高台に狙撃手いないか探しながら行きます。』

 

『分かった!』

 

『狙撃手以外に3人消えてるよ。ゾエさんもよくバッグワーム付けるから気をつけてね。』

 

『了解。助かるぜ。』

 

──

 

『試合開始から5分経過。依然試合は各隊マップ中央、デパートを目指す動き戦闘は始まっていません。』

 

『虎太郎と村上先輩は近いッスけど…2人とも合流優先みたいですね。』

 

『来馬が近いからな。新戦術は来馬がいないと始まらない。』

 

『そしてデパート南東、影浦隊長と絵馬隊員が合流しました。』

 

『絵馬は高台じゃなくて合流…ですか。』

 

『2人ともデパートに動き出しました。』

 

──

 

『デパート内にゃ、1人だなー。』

 

仁礼が影浦に通信を入れる。

 

『でもあとからバッグワームつけた奴がいたから気をつけろよ?カゲ、ユズル。』

 

『ゾエさんは?』

 

絵馬が北添に通信を入れる。

 

『僕はもうちょいかかりそう。どーする?デパートにメテオラ撃っとく?』

 

『綾瀬川先輩も消えてるかもだから止めといた方がいいんじゃない?マップ狭いし。旋空の射程にいるかもよ。』

 

『確かにー。怖っわ。』

 

 

──

 

『そしてデパート西では早くも王子隊が合流を果たした!しかし、デパートには入らず動きません。まずは様子見と言った所でしょうか!』

 

『王子先輩は考えて動くタイプですからね。鈴鳴の動き、あとは綾瀬川先輩のトリガー構成が分からない以上、様子見してから乱入する気じゃないですか?』

 

『そうだな。全員が射程持ちな上にバッグワームだ。奇襲の準備は万端だな。』

 

『そして柿崎隊、柿崎隊長と照屋隊員が合流。そのままデパートの扉を潜りました。』

 

『中には虎太郎もいますからね。鈴鳴も来馬さんが来たので…そろそろ始まると思いますよ。』

 

 

 

──

 

『隊長、デパートの反応は村上先輩でした。最上階で待ち構えてます。』

 

『ってことは来馬さんも来てんな。俺と文香も合流した。虎太郎も合流してくれ。』

 

『了解です。』

 

『慎重にな。まだ誰か潜んでるかもしれねえ。』

 

──

 

『続々とデパートに集まってきた4チーム。鈴鳴も合流を果たしました。1階には別役隊員と影浦隊、2階に柿崎隊、最上階に鈴鳴の2人が合流、王子隊は依然としてデパート前で身を潜めています。』

 

『…始まるな。』

 

 

──

 

デパート2階

 

吹き抜けを突き抜けるように、伸ばされたスコーピオンは、手すりに引っかかる。

そして、それを利用しながら、2階に降り立ったのは、影浦だった。

 

 

「隊長!」

 

「ああ!」

 

照屋の合図でエスクードが展開される。

 

『カゲだけか?ゾエがいねえな。』

 

『絵馬くんも警戒しましょう。ここなら壁抜きも有り得ますよ。』

 

そういいながら、照屋はエスクードの陰で、弧月とハンドガンを構える。

 

 

そして照屋の視界の影。

レイガストと弧月を構えた村上。

そして来馬が映る。

 

 

B級ランク戦ROUND5、開戦の狼煙をあげたのは、影浦の伸びるスコーピオンだった。




あとがきは何を書こうかしら。
私のワートリの好きなトリガーでも。

弧月です。


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B級ランク戦ROUND5 柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一②

遅くなりすいましぇん!


『ここでいよいよ柿崎隊と影浦隊、そして鈴鳴第一がぶつかった!』

 

『いきなりの三つ巴ですね。』

 

三上の言葉に烏丸はそう話す。

 

『この三つ巴、どの隊が有利だと思われますか?』

 

三上の質問に答えたの木崎。

 

『柿崎隊だな。既に3人合流している。ただでさえA級レベルの連携だ。』

 

 

──

 

木崎の言葉通り、戦況は柿崎隊有利に進んでいた。

 

影浦をエスクードを利用した照屋が押え、エスクードの陰からレイガストを構えた柿崎による射撃、巴のハンドガン射撃が、鈴鳴を襲い、防戦一方となっていた。

 

『鈴鳴は様子見でしょうか?』

 

巴がアステロイドを放ちながら柿崎に尋ねる。

 

『だろーな。太一もどこにいるか分からねえ。レーダーの反応も1人消えた。ゾエもこっち向かってるだろーな。ここは慎重に清澄の到着を待とう。』

 

『了解です。』

 

──

 

『不利なのは影浦隊に見えるが…下の階、絵馬が戦場の真下に来ている。天井抜きも有り得るだろう。北添もバッグワームで姿を消した。北添が加われば、影浦隊が有利になるだろう。…綾瀬川ももう直デパートに着く。鈴鳴としては北添、綾瀬川が到着する前に何点か取っておきたい所だろう。』

 

──

 

『柿崎隊の動きも慎重ですね。…綾瀬川の到着を待ってるんでしょう。隊長、仕掛けましょう。』

 

鈴鳴第一エース攻撃手、村上が来馬にそう提案する。

 

『…分かった。』

 

来馬のその言葉と同時に、村上はレイガストをシールドモードに切りかえ、メイントリガーも、シールドに回せるように空ける。

 

そして、村上の後方にいた来馬はフルアタックに切り替える。

 

 

「!、文香!」

 

「!」

 

柿崎の言葉に、照屋は影浦との斬り合いを止め、シールドを構えながらエスクードに飛び退いた。

影浦も同様に、フルガードに切り替え、柿崎隊の射線に入らない、デパートの柱に隠れた。

 

「チッ!」

 

『ゾエ、テメェまだ着かねーのか?』

 

『もうデパート登ってるよ。鈴鳴の後ろ周り込めそう?』

 

『鈴鳴の後ろは吹き抜けだ。後ろからは無理だ。』

 

北添の問いに仁礼が答える。

 

『りょーかい。じゃ、カゲの援護に入るね。ユズルは?一緒に上来る?』

 

『…いや、柿崎隊の動きが止まった。レーダー便りだけど…ここから上、狙ってみる。』

 

『おっけー。』

 

──

 

『出ました!鈴鳴第一の新戦術!』

 

『新戦術と言うよりは新フォーメーションですね。村上先輩が来馬さんをレイガストで護って来馬さんは後ろからフルアタック。ROUND4、これで大量得点を挙げてます。』

 

──

 

『体感すると凄いですね…!撃ち合いに持ってけないです。』

 

来馬のフルアタックにより、柿崎のエスクードにヒビが入り始める。

エスクードは消費トリオンが高いため、数は出せない。

柿崎隊の3人も防戦一方となる。

 

『清澄先輩。』

 

『分かってるよ。もう着いた。王子隊と鉢合わせそうになったから裏から回ってるんだよ。…王子隊も1階にいますよ。』

 

『了解。じゃあここを凌ぎ切るぞ。』

 

『隊長。影浦先輩、先に落としませんか?』

 

照屋が柱の陰にいる影浦を見て柿崎に尋ねる。

 

『あそこにいられるとやりずらいです。フルガードの今なら…』

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「3、2…1

 

 

 

…スイッチョフ。」

 

 

 

柿崎がレイガストを構え直した刹那。

デパートは暗闇に包まれた。

 

 

「!、照明が…?!」

 

 

「!、隊長!!」

 

「っ?!」

 

柿崎のレイガストが腕ごと落とされる。

 

トリオンの光を狙って、放たれた村上の下からの鋭い切り込みは、柿崎の左手を奪う。

 

「クソ…!」

 

『真登華、視覚支援だ!』

 

『了解!』

 

「…」

 

照屋は弧月を構えながら視覚支援が行われるのを待つ。

 

(太刀筋が見えなかった。弧月特有のトリオンの光も見えない。)

 

「っ?!」

 

空を切る音に、どうにか反応した照屋は村上の弧月を受ける。

 

その直後に、柿崎隊にも暗視が入る。

 

「!、黒い弧月…?!」

 

村上が握っていたのは黒い弧月。

 

「!、文香!」

 

柿崎はスラスターで照屋の後ろに移動。

照屋に放たれたスコーピオンを受ける。

影浦隊も暗視を入れていた。

 

 

 

『太一。』

 

『了解です。

 

 

…スイッチョン。』

 

 

次の瞬間、眩い光が、柿崎隊、影浦隊の視界を奪った。

 

 

「…旋空弧月。」

 

「しまっ…」

 

 

視界を奪われた照屋は為す術なく、村上の旋空に両断された。

 

「文香…!」

 

『真登華!暗視戻せるか!?』

 

『りょ、了解!』

 

『虎太郎。照明を壊せ。真登華は暗視の切り替え画面から動かすな。』

 

そこに綾瀬川の的確な指示が入る。

 

『!、了解!』

 

巴は柿崎のレイガストの後ろに身を潜めながら照明目掛けてハンドガンを乱射する。

 

「カゲ、僕らも仕掛けよう。」

 

影浦の後ろには北添も到着する。

 

 

──

 

『デパートの照明とオペレーターの連携による環境戦術に、照屋隊員が緊急脱出!鈴鳴第一が先制!』

 

『黒い弧月…太刀筋を隠すためですね。』

 

『柿崎隊はその後の照明を壊す対応が良かったが…照屋を失ったのは痛手だな。北添と影浦も合流した。柿崎隊が一気に不利になったぞ。』

 

──

 

「っ…エスクード。」

 

柿崎は地面に手を付き、エスクードを複数展開する。

 

影浦隊の猛攻を柿崎のレイガストが、鈴鳴のフルアタックを巴がフルガードで受ける。

しかし、1人で抑え切ることはできず、地道に削られていく。

 

 

 

 

その瞬間、デパート6階の階段、トリオンキューブを構えた天才を影浦隊、鈴鳴第一が捉える。

 

 

「アステロイド。」

 

綾瀬川のアステロイドは影浦隊の北添目掛けて放たれる。

 

「っぶな…!カゲ、綾瀬川くん来たよ!」

 

北添はそれをシールドで受けると、綾瀬川にアサルトライフルを向ける。

 

綾瀬川は走りながらそれを避けると、柿崎、巴と合流する。

 

「清澄!」

 

「遅くなりました。…隊長と虎太郎は影浦隊を。

 

 

…鈴鳴はオレが倒します。」

 

──

 

『ここで柿崎隊、綾瀬川隊員が合流!』

 

『来たな。』

 

『これで分からなくなりましたね。』

 

『っと、ここで、デパート1階でも動きがあった!配電室にいた別役隊員を王子隊が捉える!鈴鳴に次いで得点を挙げたのは王子隊!』

 

『王子隊は浮いた駒を獲るスタイルだからな。』

 

──

 

『鈴鳴とやるったって…勝算は?』

 

柿崎が綾瀬川に尋ねる。

 

『エスクード1枚。それだけで充分です。』

 

『はっ…もう何も聞かねーよ。…頼むぜ、エース。影浦隊は俺と虎太郎で押さえとく。』

 

『了解。』

 

 

 

フルガードで鈴鳴の弾を受ける綾瀬川。

 

次の瞬間、綾瀬川と鈴鳴第一の2人を隔つようにエスクードが展開された。

 

 

「!」

 

現れたエスクードは数秒、鈴鳴第一の2人から綾瀬川の姿を隠す。

 

 

そして、村上の視界から見て右側から綾瀬川は飛び出す。

それと同時に逆サイドから、弾が。

 

村上はそれをレイガストで受けた。

 

来馬が放つフルアタック。

綾瀬川は軌道を見切り、まるで人混みを抜けるような動きで躱しながら接近する。

 

──

 

『ここで綾瀬川隊員が鈴鳴にしかけた!』

 

『相変わらず化け物じみた回避ですね…。』

 

烏丸が呆れたように言う。

 

『ハウンドはシールド…か。アステロイドとハウンドも見切ってるな。銃手故の弱点を突いている。』

 

──

 

綾瀬川はそのまま早歩きで飄々と鈴鳴の2人と距離を詰める。

 

村上はもう片方の手で弧月を生成。

綾瀬川を迎え撃つべく構える。

 

 

「隙だらけだな。」

 

「は?」

 

綾瀬川のその言葉に、村上は一瞬、虚を突かれる。

 

右手は弧月、左手はレイガスト。

隙なんてとてもない。

 

 

「大事な隊長のお守りを忘れてる。」

 

 

 

次の瞬間、村上の背後にいる来馬は、後ろからの弾トリガーに貫かれる。

 

 

 

「え…?!」

 

「来馬先輩!!」

 

村上は振り返る。

その刹那、綾瀬川は弧月を生成。

急発進し、村上に切り掛る。

 

「っ?!」

 

村上はレイガストでそれを受ける。

 

──

 

『来馬隊長被弾!右腕を失う大ダメージか!今の射撃は一体?!』

 

『さあ?』

 

烏丸も首を傾げる。

 

『バイパーだろう。綾瀬川はさっきエスクードの陰で置き玉をしていた。数発は最初、村上に撃った分。そして残り。綾瀬川の放ったバイパーは、階段を下って下の階に。そこから吹き抜けを登って後ろから来馬を貫いたんだろう。』

 

『!…来馬さんの弾の弾道を演算しながらバイパーの弾道も引いてたって事ですか?…それもそれだけ複雑な?』

 

烏丸は目を見開いて、木崎に尋ねた。

 

『そうなるな。これで来馬のフルアタックは封じられた。綾瀬川がさらに詰めるぞ。』

 

──

 

「っ…鋼!」

 

右腕を失い、体中に穴の空いた来馬は、村上に合図をすると、横に飛び退いてハウンドを放つ。

 

それに合わせて、村上は綾瀬川に切り込む。

 

「仮にも銃手だろ。もっと弾は散らすべきだ。」

 

綾瀬川は来馬の弾を弧月一振で切り落とす。

 

そして村上の弧月をしゃがんで避けると一気に体勢を落として、村上の鳩尾を蹴り上げる。

 

「っ…?!」

 

あまりの衝撃に、村上は吹き抜けを突き破り、落下する。

綾瀬川は来馬のハウンドをシールドで受けながら、来馬と距離を詰める。

 

 

蹴り飛ばされた村上はそのまま落下する…ことはなく、スラスターを起動して、戦場である6階に戻ってくる。

 

 

 

「いい連携だな。上位にも通用するだろう。」

 

 

「っ…綾瀬川…!」

 

 

 

綾瀬川は無機質な声、瞳で村上に話しかける。

 

 

「…尤も、オレには通用しないみたいだな。」

 

 

 

 

そう言いながら、怪物は弧月で来馬の胸を貫いた。




原作ROUND7のスイッチョフ戦法をROUND5に流用してます。
柿崎隊と諏訪隊がいる分鈴鳴あんま出番なそうなんで。
ガロプラ戦頑張ってね、鋼くん。

26巻の表紙いい!
ゾエさんと海くんいいね!(語彙力)
カバー裏誰になるんだろ。
そろそろ林道支部長来るかな?


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B級ランク戦ROUND5 柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一③

とうこうするお。


 

「…尤も、オレには通用しないみたいだな。」

 

無機質な瞳でそう言う綾瀬川。

弧月で貫かれた来馬は最後に綾瀬川にアサルトライフルの銃口を向けた。

 

至近距離の1発。

 

「っぶね。」

 

そう言う綾瀬川だが、危なげなくそれを躱すと来馬を蹴り飛ばしながら弧月を引き抜いた。

 

「っ…くそ…。」

 

来馬はそのまま緊急脱出。

柿崎隊が鈴鳴から1点を取り返した。

 

「これで自慢の新戦術も使えない。照明役の太一も死んだ。…あんた1人だな。村上先輩。」

 

「…」

 

村上は綾瀬川の挑発に乗ることはなく、冷静に弧月とレイガストを構えた。

 

──

 

『来馬隊長緊急脱出!鈴鳴の新戦術を攻略し、綾瀬川隊員が鈴鳴から1点取り返した!』

 

『攻略って言っても綾瀬川先輩にしかできない芸当ッスね。』

 

三上の言葉に烏丸がそう補足する。

 

『最後の来馬の道連れも読んでいた。鈴鳴は絶体絶命だな。』

 

──

 

「…」

 

「…上位には通用してお前には通用しない…か。大した自信だな。」

 

村上はそう尋ねながら弧月を構える。

 

「…実際に死んだのはあんたの隊長だ。それだけが事実だろ?」

 

そう言いながら綾瀬川はトリオンキューブを2つ生成する。

 

「!」

 

そしてトリオンキューブを練り始める。

 

「隙だらけなのはそっちだろう…させると思ってるのか?」

 

村上は綾瀬川に素早く切り込む。

綾瀬川は合成を止める事無く、村上の弧月を避ける。

 

切り返しの弧月も先読みされたように避けられる。

 

 

そうしている間に合成弾は完成する。

 

「…ギムレット。」

 

「ちっ…!」

 

村上はレイガストとシールドでそれを受ける。

 

その隙に綾瀬川は距離を詰め、弧月を生成。

ギムレットで削れた村上のレイガストを砕いた。

 

「ちゃんと首…狙えよ、No.4攻撃手。」

 

「生意気だな…!」

 

綾瀬川の弧月と村上の弧月がぶつかる。

 

その刹那に村上はレイガストを再生成。

しかし、綾瀬川はそれを許さず、村上のレイガストを持つ手を蹴飛ばす。

 

「!」

 

レイガストは村上の手から落ちる。

目を見開いた瞬間、綾瀬川の連撃が繰り出される。

 

「っ…!」

 

今まで村上とやって来た綾瀬川の弧月とは違う、止めどない弧月の連撃。

次第に村上は捌けなくなり、肩、腕とじわじわと削られ始める。

 

「っ…!」

 

──

 

ROUND1終了後

 

本部にやってきた村上はランク戦ブースを訪れていた。

 

「カゲ。」

 

村上は座ってモニターを眺めていた影浦に声をかける。

 

「鋼…。」

 

「すごいギャラリーだな。誰がやってるんだ。」

 

「…見りゃわかる。」

 

そう言われた村上はモニターに視線を映す。

 

そこには村上の師匠である荒船。

その荒船と向かい合うように綾瀬川が立っていた。

 

 

…そして8-0で綾瀬川が勝ち越していた。

 

 

「!」

 

村上は目を見開く。

 

自分の師匠であり、マスタークラスの攻撃手、荒船哲次。

荒船の考えた理論は自分をNo.4攻撃手へと導いた。

実力もA級レベルの荒船が、8-0で負け越していた。

 

「…綾瀬川は旋空もシールドも使ってねェ。ブレード1本で荒船相手に遊んでやがる。…マジモンのバケモンだぞ、ありゃあ。」

 

影浦はそう言って頭を搔く。

 

「っ…荒船…。」

 

そのまま荒船は綾瀬川に一太刀も与えることが出来ずに、緊急脱出。

 

 

ランク戦は10-0で綾瀬川の勝利で終わった。

 

 

 

「…荒船。」

 

「!、鋼…来てたのか。」

 

ランク戦が終わったあと、荒船は村上に気付き声をかける。

 

「…ああ。綾瀬川とやってたのか?」

 

「…まあな。」

 

そう言って荒船はベンチに腰掛ける。

 

「先越されちまったからな。力試しだ。」

 

「…」

 

「なんだよ、そんな辛気臭い顔しやがって。」

 

そう言って荒船は村上にヘッドロックをかける。

 

「…」

 

「攻撃手としてお前や太刀川さんを見てきたんだ。今更才能の差を感じて打ちひしがれるとでも思ったか?」

 

そう言いながら荒船は村上へのヘッドロックを緩める。

 

 

 

「…って、言いてえとこだが…今回ばかりはキツイな…。」

 

「荒船…。」

 

「才能の差だけじゃねえ。弧月1本で遊ばれちまった。攻撃手から身を引いたとは言え自信はあったんだがな…。」

 

そう言って荒船は虚空を見上げる。

 

 

「…天才ってのはどの分野にもいる。ボーダーで言えばお前や太刀川さん、当真なんかもそうだ。」

 

「…綾瀬川もか?」

 

「…」

 

村上の言葉に荒船は押し黙る。

 

「…違ぇな。

 

…戦術、戦略、理論、努力…いくら積み重ねても…あいつ相手にサシで勝てる気がしねえ。初めて見たぜ。太刀川さん以上かもな…覚えとけ、あいつは天才なんて言葉じゃ生温い。

 

 

 

 

…人智を超えた怪物だよ。」

 

 

 

──

 

「…」

 

前シーズンのROUND1。

初めて綾瀬川と剣を交えた時に感じた予感は正しかった。

 

 

村上の横薙ぎの弧月。

綾瀬川は仰け反り、避けると村上を蹴り飛ばす。

 

吹き抜けを落ちて、いつの間にか戦場は2階まで下がっていた。

 

 

「よく耐えるな。流石はNo.4。…ギムレット。」

 

「っ…!」

 

出水には及ばないが、素早い合成弾の生成。

圧倒的な剣術。

回避能力。

 

村上相手には見せることのなかった戦い方。

 

これが怪物、綾瀬川の真の姿。

 

 

村上は内心で冷や汗を浮かべる。

荒船が負けるのも頷ける。

 

どういう心境の変化か、綾瀬川は化けの皮を剥いでみせた。

 

ならば村上がやることは1つ。

 

より多くの手札を使わせ、次に備える。

ここで勝てなくてもいい。

 

綾瀬川の動きを学習し、次に備える。

 

 

 

上階で誰かが緊急脱出する。

影浦隊、絵馬の得点となる。

 

柿崎隊の柿崎が緊急脱出となった。

 

 

「お前の隊長…落ちたみたいだぞ?綾瀬川。次は巴の番だ。」

 

「問題ないな。…オレは生きている。あんたは満身創痍だ。」

 

そう言って綾瀬川はトリオンキューブを2つ生成する。

 

 

「…アステロイド+バイパー。」

 

 

「!」

 

綾瀬川が初めて見せる合成弾。

 

村上はレイガストを深く構える。

 

 

「…コブ…っと…。」

 

しかし、綾瀬川はトリオンキューブを消して、フルガードに切替え、放たれた弾を受ける。

 

 

 

「敵はどちらも1人だ。距離を取って戦おう。」

 

「了解です!」

 

戦場に現れたのは王子隊の王子と樫尾だった。

 

 

──

 

『試合も中盤、戦場に動きがあった!5階にいた絵馬隊員による壁抜きならぬ床抜き狙撃が炸裂!柿崎隊長が緊急脱出!巴隊員はすぐさまバッグワームを羽織り、グラスホッパーでデパートの外へ離脱しました!』

 

『いい判断だな。別役は既に緊急脱出済み、絵馬も中にいる。王子隊が中にいるのも別役の緊急脱出で確認済みだ。待ち伏せは無いと踏んでの離脱だろう。奇襲に繋げられるいい判断だ。』

 

木崎は巴をそう評した。

 

『そして戦場をデパート2階に移した綾瀬川隊員と村上隊員の戦闘は綾瀬川隊員有利な状況に、王子隊が乱入した!』

 

『影浦隊も降りてますね。虎太郎の奇襲もある。…村上先輩が圧倒的に不利ですね。』

 

三上の言葉に烏丸はそう解説する。

 

『この乱戦が天王山だな。』

 

──

 

『すまねえ、清澄、虎太郎。』

 

『問題ないですよ。隊長は最後の最後に虎太郎を逃がしてくれましたから。』

 

『ザキさんのメテオラで影浦先輩の腕削れてるからそこが狙い目かも。』

 

『了解。虎太郎はオレが指示するまではバッグワームつけて待機しててくれるか?蔵内先輩が見えないのが不気味だ。絵馬も動いてるだろ。』

 

綾瀬川は巴にそう指示を出す。

 

『了解です。』

 

 

 

綾瀬川、村上目掛けて放たれるハウンドの応酬。

綾瀬川はフルガード、村上はレイガストとシールドでそれを受けていた。

 

そして、トリオンキューブ分割の隙に、綾瀬川、村上は同時に動き出す。

 

綾瀬川は樫尾との距離を詰め、バッグワームを投げる。

 

「!、旋空警戒!」

 

樫尾が叫ぶ。

 

村上は意地でも綾瀬川狙いのようで、綾瀬川に斬りかかった。

 

 

 

「だと思ったよ、No.4攻撃手。」

 

「!」

 

綾瀬川が投げたバッグワーム。

それにはトリオンキューブが包まれていた。

 

 

「バイパー。」

 

それと同時にバッグワームは消える。

 

 

「クソ…!」

 

 

バイパーは村上のレイガストを躱すように軌道を変える。

 

村上は弧月を消して、シールドを展開。

 

 

軌道を変えたバイパーを受ける。

 

 

しかし、距離を詰めた綾瀬川にレイガストを蹴りあげられ、無防備となる。

そのまま、村上のレイガストを持つ手を弧月で切り落とすと、村上の胸ぐらをつかみ、盾にするように王子隊の前に引きずり出す。

 

そして、王子隊のハウンドが着弾する前に弧月で首を切り落とした。

 

 

ハウンドはそのまま綾瀬川の盾となった村上に着弾した。

 

 

 

 

 

「…オレのポイントだ。」

 

「やってくれるね、利根川。」

 

 

 

「その呼び方、やめて貰えます?」

 

 

そう言って無機質な怪物は、今度は王子隊の前に立ちはだかった。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

来馬辰也→天才万能手。
村上鋼→化け物。性悪。
荒船哲次→怪物。勝てる気がしない。
王子一彰→利根川。

来馬辰也←鈴鳴の隊長。
村上鋼←No.4攻撃手。
荒船哲次←完璧万能手目指してる人。
王子一彰←呼び方やめろ。




カバー裏風人物紹介

色々隠しすぎた鷹
あやせがわ

爪だけじゃなく、核を隠し持っていたタイプの鷹。
1人で1部隊どころか、1人で遠征選抜部隊全員を賄える程の実力者。
人間らしくなったとは言え、まだまだ人間になりきれない怪物。
本人は否定するが作中トップクラスの戦闘狂。
育った環境がアレなだけにどこかイカれてる。
数年間トリオン体だったせいか、生身で自分の部屋のベランダ(3階)から飛び降りたこともあるイカれ野郎。もちろん無傷。
裏話をするとすれば、ROUND4辻ちゃんに負けてなければ、強い敵を求めて、ボーダーに反旗を翻し、近界に密航していた。提供は某予知予知歩き。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND5 柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一④

終わらなかった…。




 

(人智を超えた怪物だよ。)

 

 

視界が低くなる中、村上は荒船の言葉を思い出す。

 

 

太刀川や風間とは違う異質な強さ。

表情1つ変えず、こちらの手に対応してくる。

 

村上の首を撥ねた後、綾瀬川は村上に目もくれることなく王子隊に視線を移していた。

 

 

分からなかった。

これほどの実力がありながら、実力を隠していたこと。

今になって化けの皮を剥いで見せた理由。

 

「っ…クソ…!」

 

 

その呟きを聴いた綾瀬川は一瞬こちらに目を向ける。

 

 

最後に村上が見たのはやはり、こちらに微塵の興味もないような、無機質な瞳だった。

 

村上は最後に諦めたように笑う。

 

 

「…怪物が…。」

 

──

 

『村上隊員緊急脱出!柿崎隊が2点目を獲得!』

 

『えげつないですね。村上先輩を封じてから盾にしましたよ。』

 

『シールドも使えない土壇場なら有効だろう。』

 

烏丸の言葉に木崎が返す。

 

『ちゃっかり自分の点にしてるのも綾瀬川先輩らしいですね。』

 

『鈴鳴はここで全滅!…そして戦場には影浦隊の影浦隊長と北添隊員も参戦!一転して綾瀬川隊員が王子隊と影浦隊に囲まれる形となった!』

 

──

 

「チッ、鋼のヤロー死にやがったのかよ。つまんねえ。」

 

「いやいや、綾瀬川くんとオージとやりながら鋼くんとやるつもりだったの?」

 

そう言って北添は綾瀬川にアサルトライフルを向ける。

 

「…」

 

『清澄先輩!俺今そっちに向かってます!』

 

『…いや、虎太郎は引き続き潜んでろ。』

 

『!、無茶ですよ、清澄先輩!影浦隊と王子隊は全員生き残ってますよ?!』

 

声を荒らげたのは宇井だった。

 

『だからこそだろ。絵馬はどこにいるか分からないからな。牽制の為に虎太郎の場所はバレてない方がいい。』

 

『でも…。』

 

虎太郎は不安そうにそう言う。

 

『…心配するな。負けは無い。』

 

『わかりました。』

 

『…』

 

素直に頷いた巴とは対照的に宇井は不安そうに押し黙る。

 

『それに…1人じゃない。お前がいるだろ?真登華。…オレを1人で戦わせる気なのか?』

 

『…はぁ…勝ってくださいよ、先輩。サポートしますから。』

 

『…ああ。』

 

 

 

 

「「「…」」」

 

一触即発。

王子を背に綾瀬川は影浦と向き合う。

 

 

 

…狼煙は北添によるアステロイドの乱射だった。

 

綾瀬川は跳びながら避けると、バイパーを放つ。

 

「ゾエ!」

 

「りょーかい。」

 

北添は影浦をシールドで守る。

影浦はスコーピオンを綾瀬川に伸ばした。

 

綾瀬川の背後からは、グラスホッパーで距離を詰めた樫尾が。

 

「…」

 

綾瀬川は影浦のスコーピオンを弧月で受けると、樫尾を一瞥。

 

そのまま地面に倒れ込むように躱す。

 

「!」

 

樫尾の眼前には綾瀬川により受け流された影浦のスコーピオンが。

 

「…っと。」

 

 

倒れ込こんだまま、綾瀬川は樫尾の持っていた弧月の柄を蹴りあげる。

 

「しまっ…」

 

 

バキンッ…!

 

 

影浦のスコーピオンは樫尾に刺さる前に、前に躍り出た王子の弧月に砕かれる。

 

綾瀬川は北添の弾を避けながら、トリオンキューブを分割。

 

「アステロイド。」

 

樫尾、王子はシールドで受けながら下がる。

 

影浦は飛び退いて避けると、スコーピオンを伸ばした。

 

 

「カシオ!利根川が弧月を持っていない!」

 

「!」

 

樫尾は地面に目をやる。

 

そこにはトリオンキューブが散らばっていた。

 

 

 

「…メテオラ。」

 

 

「チッ…!」

 

「くっ…!」

 

影浦はシールドを広げ、爆風を利用して後ろに下がる。

樫尾、王子も飛び退いた。

 

──

 

『上手いな。多対1に慣れた動きをしている。』

 

『なんて言うかトリガー構成も想定してきたみたいな感じスね。今回は射手スタイルみたいですけど。』

 

『…流れを変えれるとすれば姿を消している3人。絵馬、蔵内、巴だろう。3人がどう介入するか…。それにより勝敗は左右される。』

 

──

 

『王子、いつでも行けるぞ。』

 

蔵内は王子に通信を入れる。

 

『了解。じゃ、始めようか。』

 

『…本当にやるんだな?』

 

『そりゃね。

 

 

…やってみたい。』

 

『お前な…。』

 

 

 

 

「3、2、1…」

 

その間に王子、樫尾は攻撃の手を止め、弧月を消す。

 

 

 

「スイッチオフ。」

 

 

 

バチンと。

叩くような音ともに、もう一度デパート内が闇に包まれる。

王子隊には視覚支援が入った。

 

 

樫尾はすぐに距離をとると、鞘ごと弧月を再生成。

綾瀬川に切り掛る。

 

 

 

(とった。)

 

 

突然の暗闇に気を取られ、綾瀬川はこちらを見ていない。

これは入ると、樫尾は確信する。

 

 

 

 

 

ギンッ!

 

 

 

「!」

 

しかし、それは綾瀬川の弧月に防がれ、火花を散らす。

 

「っぶね。」

 

視覚支援はまだ入っていない。

 

『真登華、視覚支援はしなくていい。』

 

綾瀬川は宇井に通信を入れる。

 

『え?』

 

『いちいち変えるのも手間だろ。眩しいよりは見えない方がマシだ。』

 

 

そう言いながら、バッグワームを羽織り接近し、横なぎに振るわれた王子の弧月を飛び退いてかわす。

 

 

「!」

(視覚支援は入れてないはず…バッグワームはしてる…

 

 

 

 

…何故バレたんだ…?)

 

 

──

 

明かりが消えた瞬間。

オレは視覚による情報を全て遮断。

耳から入る情報と肌で感じる情報に絞った。

バッグワームと隊服が擦れる音。

動いたことによる僅かな風。

 

それを感じたオレは樫尾の弧月を受ける。

 

「っぶね。」

 

弧月と弧月がぶつかった事により、響き渡った音。

 

その音の反響から王子先輩、影浦隊の位置を割り出す。

影浦隊はバッグワームをつけていない為、割り出すまでもないが。

 

王子先輩は動いたな。

 

オレは王子先輩の弧月を飛び退いて躱した。

 

 

──

 

影浦隊にも視覚支援が入る。

北添は先程と同じく、照明を全て撃ち抜いた。

 

『虎太郎、お前は蔵内先輩だ。真登華は視覚支援な。』

 

『『了解!』』

 

綾瀬川は影浦のマンティスを避けながら、巴、宇井に通信を入れ、王子隊、影浦隊が視界に入る位置に下がる。

 

 

「…旋空…」

 

綾瀬川は弧月を振りかぶる。

 

「チッ!」

 

「カシオ!」

 

 

影浦は飛び退き、樫尾、王子も引き気味に弧月を構える。

 

 

しかし、綾瀬川は旋空をトリガーには入れていない。

 

弧月のブレード部分の光が消えると、綾瀬川の背後で、トリオンキューブが合成される。

 

「!、合成弾!」

 

「チッ!ブラフかよ…!」

 

 

 

「ギムレット。」

 

 

トリオンキューブは64分割されると放たれる。

 

「カゲ!」

 

「チッ。」

 

 

影浦隊、王子隊はシールドを固定。

ギムレットを受け切る。

 

しかし、その隙に綾瀬川は王子隊の2人と距離を詰める。

 

「!、グラスホッパー!」

 

樫尾は距離をとるべくグラスホッパーを展開する。

 

「逃がすか。」

 

樫尾が展開したグラスホッパーは、足ごとギムレットに射抜かれる。

 

「時間差か…!」

 

「俺を無視してんじゃねえよ、綾瀬川ァ!」

 

固定シールド解除後、影浦は綾瀬川と一気に距離を詰める。

 

 

綾瀬川は樫尾の胸ぐらを掴むと、引き寄せ、影浦の方へ蹴り飛ばす。

 

「っ…あ…!」

 

そのまま樫尾はスコーピオンに貫かれた。

そして、樫尾の後ろから綾瀬川に切りかかった王子の弧月を避けると、緩急をつけた動きで懐に潜り込み、王子の胸を蹴り、吹き抜けから1階へと突き落とす。

 

「ハッ!ようやく邪魔がいなくなりやがったか。」

 

影浦は樫尾の緊急脱出を見送り、臨戦態勢に入る。

北添もアサルトライフルを構えた。

 

 

「悪いがオレは勝ちに来てる。…楽しませてはやれないぞ?…いや…逆ですね。」

 

「…あ?」

 

「オレの事を研究してきたんでしょ。

 

 

 

…少しは楽しませてくださいよ?先輩。」

 

 

「おもしれぇこと言うじゃねえか。

 

 

 

…掻っ捌く。」

 

 

 

──

 

「王子。」

 

バッグワームを羽織った蔵内が王子と合流する。

 

「やられたね…。」

 

「ここから狙うか?」

 

「…それもいいけど…巴タイガーの姿が見えないのが不気味だ。影浦隊は狙撃手も生きてる。…上の戦いに戻るのが得策な気がするよ。影浦隊と戦って消耗したところをとろう。」

 

そう言いながら王子はバッグワームを羽織る。

 

「分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ、思ったより遅かったですね、王子先輩。」

 

「「っ?!」」

 

 

戦場である2階に戻った王子隊。

 

 

 

「くそったれ…バケモンが。」

 

 

 

王子、蔵内が目にしたのは、綾瀬川の前で膝を突く影浦の姿。

右足は切り落とされており、横腹にも穴が空いている。

北添も同様で、トリオン体の所々に穴が空いている。

 

 

 

 

「…第2ラウンドだ。

 

 

 

 

 

…あんた達はオレを楽しませてくれるのか?」

 

 

 

そう言って怪物は無機質な目を細めた。




そろそろアンケート取ろうかな。


カバー裏風人物紹介

ヤンデレメスガキ銃手
えのさわ

育った環境がアレなだけに憎悪やら崇拝やら、色々拗らせた銃手。
敬うと言う感情をドブに捨てている為、相手を怒らせるのが上手い。
意外にも二宮のことはしっかりと認めており、二宮との1本勝負の際は辛勝したものの、師と仰いでいる。(敬ってるとは言ってない。)
何やらいわく付きのネックレスをしており、本人曰く、幼なじみの成れの果て。ネックレスの名前は「血鎖(けっさ)」。
綾瀬川の圧倒的な力を前に敗北するも、しっかり負けに学ぶエリートで、チームで勝とうという気になった。
諏訪さんに懐いて、ツンデレ属性も備え始めた。
多分Cカップくらい。



BBF風データグラフ
 
・ボーダー入隊時期
オッサムと同期。
 
・モテるキャラグラフ
モテる、別にモテなくてもいい。
(那須と奈良坂の間くらい。)
 
・キャラ別派閥グラフ
本部長派よりの城戸派。
(二宮の上。)
 
・通っている高校
普通校1-C
(佐鳥、別役、笹森、半崎と同じクラス)
 
・成績グラフ
バチくそいい。
(鬼怒田さんの上。)
 
・生身の運動能力
バチくそいい。
(1番右上。)
 
・異性の好み
グラフにはいません。
(綾瀬川にしか興味無いので。タイプとかないです。)


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND5 柿崎隊VS影浦隊VS王子隊VS鈴鳴第一⑤

推しの子おもろいよねー。
決着です。


『ここで綾瀬川隊員により、階下へと落とされた王子隊長が、蔵内隊員と合流!そのまま2階、綾瀬川隊員と影浦隊長の戦闘に乱入!』

 

『第2ラウンドですね。2対2対1ですけど…やっぱめちゃくちゃ強いッスね…綾瀬川先輩。』

 

そう言って烏丸は呆れたように頭を搔く。

 

『ボーダートップクラスのスコーピオン使いと、ヘビー銃手相手に被弾ゼロで圧倒…か。本性を見せてきたな。』

 

 

──

 

「チッ…!」

 

影浦は片膝を突いたまま、綾瀬川にスコーピオンを伸ばす。

しかし、綾瀬川は危なげなく躱し、影浦と距離を詰め、こちらにアサルトライフルを乱射する北添の弾を避けながら影浦を蹴り飛ばす。

 

そして振り返り、王子の弧月を受けると、飛び退いて蔵内のハウンドを避ける。

そのまま体勢を落とし切り込み、王子の左手を切り飛ばした。

 

 

「カゲ、大丈夫?」

 

蹴り飛ばされた影浦を受け止めた北添が影浦に尋ねる。

 

「問題ねえよ。…あいつがやる気になりやがったんだ。…邪魔すんじゃねェぞ?ゾエ。」

 

瞳孔を開き、影浦は獰猛な笑みで再び綾瀬川に飛びかかる。

 

「はいはい。ゾエさん援護しまーす。…て言っても僕もカゲもトリオンすっからかんだけど。」

 

『タイミング見て俺も撃つよ。』

 

狙撃の機を伺うのは絵馬だ。

 

『虎太郎くんは?』

 

『分かんない。1階か3階じゃない。…天井抜きすると思ってるでしょ。』

 

 

 

絵馬が居るのはデパートの外。

2階と同じ高さのビルの一室にいた。

 

 

『…ここなら邪魔されずに狙える。』

 

 

そう言って絵馬はスコープのレティクルを綾瀬川に合わせる。

 

『次の乱戦。王子隊とカゲさんの攻撃が合わさった時が狙い目だ。』

 

 

 

──

 

『うーん。厳しいね。』

 

王子は諦めたように蔵内に通信を入れる。

 

『普通の相手ならもう20回以上は死んでるはずなのに…。なんで僕らが逆にやられてるのかな?』

 

『…それだけ綾瀬川が異常なんだろう。…どうする?一旦引くか?巴と絵馬の奇襲が怖いぞ?』

 

蔵内は王子にそう尋ねた。

 

『1点止まり…狙撃手の位置も分からないんじゃ浮いた駒も取れない。参ったね…。利根川さえ落とせれば影浦隊は瀕死なのに。』

 

そう言って王子は目の前で影浦のマンティスを受けながら、北添の弾を避け、自分が放ったハウンドをシールドで受ける綾瀬川に目を向ける。

 

『仕方ない。少し距離を取って戦おう。カゲくんが暴れられるのも時間の問題っぽいし。距離取っとかなきゃ次はうちが食われるよ。』

 

そう言って王子はトリオンキューブを分割しながら後ずさる。

 

 

 

 

「逃がすと思うのか?」

 

 

 

 

…しかし、それを許すほど、目の前の怪物は甘い相手ではなかった。

 

王子の視界を覆うようにバッグワームが投げられる。

 

「っ…!」

 

王子はそれをハウンドで迎撃。

 

そして下からの奇襲に目を向ける。

 

 

『!、王子くん!上!』

 

王子の左斜め上。

壁を走りながら、綾瀬川は弧月を抜いた。

 

「チッ…。」

 

王子は舌打ちをしながら、綾瀬川の弧月を受ける。

 

「ハウンド!」

 

蔵内はすぐさまハウンドで綾瀬川を迎撃。

 

綾瀬川は弧月で自分の弧月を受けた王子の胸を前蹴りして、蔵内の方へ蹴り飛ばす。

 

そして旋空の構えをとる。

 

『旋空!!』

 

蔵内は身構える。

 

「ブラフだ!利根川のトリガーに旋空を入れる空きは無い!」

 

「さすが。よく見てますね。王子先輩。でも…」

 

綾瀬川は王子の胸の上で踏み込み、蔵内との距離を一気に詰めた。

 

 

 

 

「…気付くのが少し遅かったな。」

 

 

踏み込み1回。

一気に距離を詰めた綾瀬川に蔵内は接近を許してしまう。

 

 

「!」

 

しかし、綾瀬川の周り。

そこにはトリオンキューブがばら撒かれていた。

 

蔵内によるメテオラの置き弾だった。

 

 

「ハウンド…!」

 

王子は横になりながらハウンドを放つ。

その直後に王子は影浦のスコーピオンに貫かれた。

 

 

そしてデパートの向かい。

メテオラとハウンドの応酬の最中、最良のタイミングで絵馬は引き金を引いた。

 

 

 

 

メテオラ、ハウンド、少し遅れてアイビスが放たれた。

王子隊と絵馬による3段攻撃。

 

メテオラとハウンドが放たれた直後。

王子を仕留めた影浦は目撃する。

 

綾瀬川は絵馬の発砲の直後、絵馬のいるビルを一瞥したのだ。

 

そして一言。

 

 

「…よくやった。真登華。」

 

 

そのまま、メテオラの爆風で綾瀬川の姿が見えなくなる。

 

「クソッタレ…。」

 

 

──トリオン漏出過多。…緊急脱出。

 

綾瀬川により、横腹を抉られ、足を失った影浦もここでトリオン切れ。

王子と共に緊急脱出となる。

 

 

そして綾瀬川を包んだ爆風を吹き飛ばしながら、遅れてもう1つ。

緊急脱出の光が空に上がった。

 

 

 

「嘘でしょ。化け物すぎない?綾瀬川くん。」

 

 

 

緊急脱出したのは蔵内。

爆風が晴れるとそこには無傷で立っている綾瀬川が。

 

アイビスの弾痕は綾瀬川の頭の直線上。

デパートの壁に付いていた。

 

 

「…チッ。やっぱり向かいのビルにいたか。」

 

『ほら!私そう言ったじゃないですかー!絵馬くんもう動いてるよ!』

 

『上から来ると思ったんだがな。虎太郎、追えるか?』

 

『夜なんでどうでしょう。メテオラも持ってないし…。追ってみますけど…影浦隊の隊服黒なんで…。』

 

綾瀬川の質問の後、上の階で窓が割れる音がする。

外にはグラスホッパーで空を駆ける巴が。

 

 

「ま、取れなくてもどっちでもいいか。…あんたで5点目だ。」

 

「…やるだけやってみよー。」

 

そう言って北添は綾瀬川にグレネードガンを向けた。

 

 

 

 

──

 

『ここで北添隊員も緊急脱出!…そしてタイムアップ!絵馬隊員が逃げ切り、5対3対1対1!綾瀬川隊員が1人で5得点を挙げ、柿崎隊の勝利です!!』

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 0P

巴 0P

綾瀬川 5P

 

合計 5P

 

 

 

影浦隊

 

 

影浦 2P

北添 0P

絵馬 1P

 

合計 3P

 

 

 

王子隊

 

 

王子 1P

蔵内 0P

樫尾 0P

 

合計 1P

 

 

 

鈴鳴第一

 

 

来馬 0P

村上 1P

別役 0P

 

合計 1P

 

 

 

 

『さて!今回のランク戦を終えて解説のお2人に総評をいただきたいでもよろしいでしょうか?』

 

三上が木崎、烏丸に尋ねる。

 

『…いや、総評も何も綾瀬川先輩の独壇場でしたね。』

 

烏丸はぶっきらぼうにそう言った。

 

『ROUND4で辻に落とされた事がきっかけか。かなりやる気だったみたいだな。』

 

『今後もこんな試合が増えるかもしれませんね…。』

 

 

そう言いながら烏丸は考え込む。

 

 

(想像の数倍はキツイぞ…修。)

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

 

「清澄先輩おかえりー!さっすが先輩!汚名返上ですね!」

 

そう言って真登華は微笑む。

 

「すいません、絵馬見つけられませんでした。」

 

「いや、メテオラもないのにあのビル群の中から見つけるなんて無理だって。」

 

申し訳なさそうに言う虎太郎に真登華がツッコミを入れた。

 

「俺こそ申し訳ねえ。俺が生きてりゃ清澄もやりやすかっただろうに。」

 

「いや、隊長は虎太郎を逃がしてくれたでしょ。おかげで絵馬の狙撃に脳を使わずに済みました。…真登華もな。」

 

柿崎にそう返すと、真登華も忘れずに労っておく。

 

「そう言えば文香は?」

 

「ランク戦ブース。何も出来ずに負けたのが悔しいんだろ。相手探しに行ったぞ。」

 

「…文香ってそんなに戦闘狂でしたっけ?」

 

柿崎に尋ねる。

 

「まあその辺は師匠譲りじゃないか?」

 

「…ああ、小南か。」

 

オレは頭の中で、「もう1回よ!」と叫ぶ小南を想像する。

 

「いや、清澄先輩も大概ですよ?てか、小南先輩以上でしょ。」

 

「?」

 

 

──

 

『一部隊ずつ見ていくとすれば鈴鳴。新戦術はよかったと思いますよ。現にB級1位部隊から照屋さんを落としてますから。…太一の照明操作も面白かったです。』

 

『…あの感じなら上位でも通用するだろう。…相手が悪かったな。』

 

 

──

 

鈴鳴第一作戦室

 

「守りきれずにすいません、来馬先輩。」

 

「いや、僕こそ。何も出来なかったね。」

 

謝る村上に、来馬はそう返した。

 

「…でも手応えはあったじゃないですか。太一の作戦で照屋さんも落とせたし…。」

 

今はそうフォローするも、空気は暗いままだった。

 

 

「でもでも、今回で鋼さん、綾瀬川先輩の動き覚えたじゃないですか!」

 

別役の大きな声が響く。

 

「次は勝てますって!」

 

そう言って別役は親指を立てた。

 

「楽観的ね、相変わらず。」

 

「?、そーですか?」

 

「すいません、来馬先輩。…寝ます。」

 

そう言って村上は座ったまま目を閉じる。

 

 

 

「こ、鋼。寝るなら布団で寝てね!」

 

 

 

確信した。

アレはまだ底を見せていない。

だが、尻尾は見せ始めた。

 

 

このチャンスは逃していられない。

 

 

そうしてNo.4攻撃手は眠りにつく。

師の雪辱、何より自分自身のリベンジの為に。

 

 

 

──

 

『王子隊は慎重すぎたな。もう少し大胆に動いてもよかっただろう。』

 

木崎は腕を組みながらそう話す。

 

『まあ相手が綾瀬川先輩と影浦先輩、村上先輩じゃ慎重にもなるんじゃないスか?』

 

烏丸が木崎に尋ねた。

 

『それで点を取れなければただ、逃げているのと変わらない。太一が潜んでいれば点は入らなかった。』

 

『もう少し大胆に動くべきだったと?』

 

三上が尋ねる。

 

『…王子は考えて動くタイプの隊長だ。だが…今回は考えすぎた。それが敗因だ。』

 

『それで言えば途中で鈴鳴を真似て照明いじったのは大胆でよかったし、王子先輩らしかったですね。』

 

──

 

王子隊作戦室

 

「あはは、レイジさんの言う通りだね。」

 

そう言って王子は笑う。

 

「大胆…か。」

 

蔵内も天を仰いだ。

 

 

 

「トラッパーでもやって見ようかな?」

 

 

 

「「「考え直(せ)(してください)(しなさい)。」」」

 

 

 

「冗談。」

 

──

 

『影浦隊はいつも通りだったな。北添の援護で影浦が点を取り絵馬が隙を狙う。…特に絵馬が良かった。最後の狙撃を失敗してからすぐに姿を消し逃げ切っている。床抜きも見事だった。』

 

木崎がそう評した。

 

『絵馬も今回気合い入ってましたね。最後は移動はしましたけどデパートの中に入ってくるなんて。』

 

『柿崎隊には負け続きだからな。思うところがあったのかもしれない。』

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「まぁ負け続きは悔しいよね〜。」

 

そう言って北添は口を尖らせる。

 

「…」

 

影浦は何も言わずに座っていた。

 

「ユズルのおかげで柿崎隊8得点ってのは免れたね。」

 

「…別に。MAP運が良かっただけだよ。それに巴がメテオラ入れてたら普通に負けてた。」

 

「そーかなぁ?でもユズル今日結構やる気だったよね?やっぱ火、着いてる感じ?」

 

「…」

 

絵馬は押し黙る。

 

「ユズル?」

 

ROUND4。

自分の想い人である雨取の緊急脱出を思い出す。

 

 

綾瀬川の旋空により、顔を切断されると言う緊急脱出だった。

 

 

 

「…別に。ちょっとやり返したかっただけ。」

 

 

──

 

『ランク戦に参加していない玉狛第一のお2人から見て、B級ランク戦はどうでしたか?』

 

『上から言うつもりは無いが…レベルが上がっているな。うちの後輩にとっては茨の道かもしれない。…特に綾瀬川はな。』

 

『やはり今後も綾瀬川隊員を如何に攻略するかが鍵になると思いますよ。』

 

『なるほど…お2人ならどう攻略しますか?』

 

 

 

 

『『まず戦(わない)(いません)。』』

 

 

『あっ…そうですね…。』

 

三上はそう言って苦笑いを浮かべる。

 

『で、ではこれでB級ランク戦ROUND5上位昼の部を終わります。実況は私風間隊の三上が。解説は玉狛第一の木崎隊長と烏丸隊員でした!』

 

 

 

──

 

一方の中位昼の部。

 

諏訪隊VS弓場隊VS荒船隊の試合は始まりのときを待とうとしていた。

 

 

『皆さんどうもこんにちは!海老名隊オペレーターの武富桜子です。解説席にはこのお2人が。二宮隊銃手の犬飼先輩と加古隊攻撃手、黒江隊員です。』

 

『どうぞよろしく〜。』

 

『よろしくお願いします。』

 

 

 

奇しくも榎沢にとっては良き先輩。そして榎沢にとって生意気な後輩を迎え、中位の部は幕を開けた。




ROUND5パラメーター(後ほどスカウト旅を終えた結束が試合を見た目算)

トリオン 7
攻撃 13
防御・援護 10
機動 9
技術 15
射程 4
指揮 7
特殊戦術 4

TOTAL 73

結束曰く、とにかく技術がやばい。


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B級ランク戦ROUND5 諏訪隊VS弓場隊VS荒船隊①

遅くなりまして申し訳ねえっす。


『さて!今回のB級ランク戦ROUND5中位昼の部ですが…衝突するのは諏訪隊、弓場隊、荒船隊の3部隊です!…解説のお二方はどのような展開になると思われますか?』

 

実況を担当する海老名隊オペレーターの武富桜子は解説である、二宮隊銃手、犬飼澄晴と、加古隊攻撃手、黒江双葉に尋ねた。

 

『うーん、同じ銃手としては弓場さんと榎沢ちゃんが気になるかな…。』

 

犬飼は顎に手を当てて、そう答えた。

 

『個人ポイント的にはNo.2銃手の弓場さんの方が上だけど…火力は榎沢ちゃんの方が圧倒的だね。弓場さんの好きな1対1になったらどうなるか…それが見物かな。』

 

『なるほど!黒江隊員はどうでしょう?』

 

『…榎沢先輩…強いんですね。』

 

黒江はぶっきらぼうにそう呟く。

 

『お手並み拝見させてもらいます。』

 

『アハハ、師匠を取られそうで怒ってるの?双葉ちゃん。』

 

『うるさいです。犬飼先輩。』

 

茶化す犬飼に黒江は顔を背けた。

 

『嘘嘘。…まあ後チーム戦で言えば荒船隊かな。今回はMAP選択権があるし。狙撃手有利なところ選んで来るんじゃない?…狙撃が榎沢ちゃんに通じれば…だけど。』

 

 

──

 

荒船隊作戦室

 

「MAPは…「市街地C」で行く。」

 

荒船は穂刈、半崎、加賀美の前でそう切り出した。

 

「妥当ね。」

 

「でもどうするんだ?榎沢は。通じないだろ?狙撃。」

 

穂刈が荒船に尋ねる。

 

「榎沢の勘は確かにうちとの相性は悪い。だが他は別だ。弓場隊や榎沢以外の諏訪隊には通じる。」

 

「弓場隊はトノがいるのがダルいッスね。」

 

半崎はそう言って頭を搔く。

 

「トノも上に来るだろ。

 

 

 

 

…そこを俺がぶった斬りゃいい。」

 

 

そう言って荒船は笑みを浮かべた。

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「えー!この試合の裏で綾瀬川センパイがやってるのー?!」

 

「柿崎隊は昼の部だからな。」

 

榎沢の質問に諏訪がそう答えた。

 

「見に行きたい!」

 

「ざっけんな。オメーもこの後試合だっつの。…しかもMAPはCだぞ…?」

 

そう言いながら諏訪は肩を震わせる。

 

「つつみんさん、Cってどこー?」

 

榎沢は堤に尋ねる。

 

「狙撃手有利なとこだな。」

 

「クソマップじゃねえか!」

 

「弓場隊にも外岡がいますね…。」

 

笹森は顎にを当てて考え込む。

 

「…ふーん。狙撃手有利…ね。」

 

そう言って榎沢は荒船隊を思い浮かべる。

 

 

「問題ないでしょ。前回は荒船隊に逃げられたからねー…

 

 

…逆に燃えてきた。

 

 

 

…叩き潰してやる。」

 

 

──

 

弓場隊作戦室

 

 

「やっぱ何度観てもやべーな。」

 

弓場隊オペレーター、藤丸ののはそう言って端末を注視する。

そこに映し出されていたのは、ROUND1、早撃ちで香取隊を殲滅する、諏訪隊銃手の榎沢一華だった。

 

「弓場並みの早撃ちにこのトリオン…前シーズンの綾瀬川、今シーズンは玉狛に榎沢…どうなってんだ?B級ランク戦は。」

 

そう言って藤丸は頭を掻く。

 

「神田が抜けてうちは負け続きだ。」

 

弓場が口を開く。

 

「そろそろ勝ち星を挙げねえとな…。」

 

そう言って弓場はサングラスのブリッジをあげる。

 

「榎沢一華…相手にとって不足はねェ。気合い入れろよ、トノ、帯島ァ!」

 

 

「はいっス!」

 

「はい!」

 

 

──

 

『さて、MAPは「市街地C」に決定されました!MAPの解説を犬飼先輩、お願いします。』

 

武富は犬飼に視線を向けた。

 

『斜面に作られた住宅地って感じかなー。上からだとバンバン斜線が通るから、上を取れば狙撃手や、射手が有利って感じ。逆に言えばROUND2で玉狛がやったみたいに狙撃手を上に釣り出すこともできるから…俺的には結構難しいMAPだと思うよ。まあ…狙撃手有利ってことだけ覚えとけばいいかも。選んだのは荒船隊だから。特殊な意図とかはない気がする。』

 

『犬飼先輩、ありがとうございます。…さて、転送準備が整いました…転送開始…!

 

 

 

 

…転送完了!MAP「市街地C」!B級ランク戦ROUND5上位昼の部、スタートです!』

 

 

──

 

数日前

 

二宮隊作戦室

 

「無理無理!弾バカセンパイとかどうやってあんな早くキューブ合わせてるのー?!」

 

「出水は別だ。俺でもあれだけのスピードでキューブを合わせることは出来ない。」

 

榎沢、そして二宮は出水が合成弾を使っているログを見ながらそう話す。

 

「…合成弾に関しては出水に習った方が早いかもしれないな。アポは取ってやる。」

 

「んー…いいや。」

 

そう言って榎沢は立ち上がる。

 

「…合成弾はついでだし。…てかいいの?あたしにこんなに色々教えちゃって。もしあたしが上位に来たら敵対するわけだけど?」

 

「ボーダー隊員の本分は防衛だ。ランク戦ではない。お前程のトリオン能力があれば防衛に役立つ。…手札は多い方がいいだろう。…敵対するならその時はその時だ。…お前の戦い方を間近で見ているのは俺だと言うことを忘れない事だな。」

 

「…ふーん。でもあたしも二宮さんの戦い方見てるし。」

 

そう言って榎沢は小悪魔のような笑みを浮かべる。

 

「次は負ける気しないよ?」

 

「…ふん、言っただろう。

 

 

…その時はその時だ。こちらも負ける気は毛頭ない。」

 

 

──

 

 

『さて、ランダムな位置から始まったこの試合、早くも荒船隊の穂刈隊員と半崎隊員が上を取った!』

 

『これで迂闊には動けないね。バッグワームがあるとは言え、上はかなり視界がいいから。諏訪隊、弓場隊はかなり動きにくいんじゃない?トノくんも上を目指したいだろうけど…動きづらいね。』

 

──

 

「っ…。」

 

笹森はゆっくりと、家屋の隙間から上に視線を向ける。

 

「!」

 

その瞬間、放たれるイーグレット。

諏訪は急いで笹森を引っ張った。

 

「気をつけろ、日佐人。」

 

「すいません。」

 

 

 

『いやいや、撃たせたのはナイスだよー、日佐人くん。』

 

『あ?なんか作戦でもあんのか?』

 

『できるだけ上の2人に撃たせてよ。…まだ15秒くらいかかるから死なないでよ。』

 

『よく分かんねえが了解だ。行くぞ日佐人。』

 

──

 

『ここで諏訪隊の2人が動いた!』

 

『…射線、お構い無しに走ってますね。』

 

『堤さんが逆からバッグワームで走ってるから…諏訪さんと日佐人くんで穂刈と半崎くんを引き付けて、堤さんで取ろうって考えかな?』

 

『しかし、堤隊員の上を目指すルートには荒船隊長、そして弓場隊が待ち受けていますが…。』

 

『うーん、そうなんだよね。弓場さんと帯島ちゃんはバッグワームつけてないから分かるはずなんだけど。』

 

そう言って犬飼は顎に手を当てて考える。

 

──

 

走り出した、諏訪、笹森。

それを狙い、穂刈、半崎はイーグレットを放つ。

 

 

「!」

 

半崎は目を見開く。

頭を狙って放ったイーグレットは集中シールドに弾かれる。

 

「やっぱ頭狙いだなァ…!」

 

「ダルいッスね…。」

 

『ちっ、穂刈、半崎。今一瞬上に向かってる堤さんが見えた。気をつけろよ…!』

 

『了解。…見えたぞ。こっちからも。』

 

そう言って穂刈は堤にスコープのレティクルを合わせる。

 

 

 

 

その瞬間、諏訪、笹森のいる西でもなく、堤、弓場隊のいる東からでも無い、MAPの1番下。

 

 

そこから6発の弾が空に打ち上がった。

 

 

「!、ハウンド…!」

 

「榎沢か?」

 

穂刈、半崎は背中合わせに、シールドを固定する。

 

 

 

 

「ふふ、残念。

 

 

 

 

…サラマンダー。」

 

 

そして着弾。

 

 

それは、着弾した途端爆ぜ、穂刈、半崎のシールドを割る。

 

「!、ダル…これ合成弾です!」

 

「ちっ…!」

 

穂刈、半崎はサブのシールドも展開する。

それにより、2人はレーダー上に姿を現した。

 

 

「っし、今だ日佐人!」

 

「はい!」

 

笹森はカメレオンで姿を消す。

諏訪もバッグワームを羽織り、走り出した。

 

 

「ちっ!」

 

爆撃が止んだ後、穂刈、半崎は急いでイーグレットを構える。

防ぎ切れなかったのか、体の数箇所からトリオンが漏れていた。

 

 

 

『奇襲警戒!』

 

加賀美の叫ぶような声が、穂刈、半崎に届く。

 

『大丈夫ッスよ、諏訪さんは見えてます。日佐人もカメレオンしてますけど『違う!』』

 

 

その瞬間、爆風を裂くように、バッグワームを羽織った怪物が、半崎の諏訪を映すスコープを遮った。

 

 

『榎沢さんよ!!』

 

 

「半崎!」

 

 

 

「バーンッ。」

 

そして銃声1発。

 

半崎の額に穴を開ける。

 

「っ…!」

 

穂刈は急いで距離を取って、イーグレットを向ける。

 

 

 

大胆不敵。

サラマンダーは陽動。

爆風が視界を奪う中上を目指す、諏訪隊3人を囮に榎沢はグラスホッパーで一気に駆け上がって来た。

 

 

 

穂刈のイーグレットを避け、距離を詰めた榎沢は穂刈のイーグレットを蹴り飛ばし、そのまま体勢を落として、足払いで穂刈を転ばせる。

 

 

「これがチーム戦ってやつだね。」

 

 

そう言って榎沢は穂刈のトリオン供給機関を撃ち抜いた。

 

 

 

 

『チーム戦って…お前な!結局俺ら囮かよ…!』

 

 

 

 

 

肉壁(バリケード)よりマシでしょ?』




各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢)

犬飼澄晴→二宮さんの弟子。二宮さんにあの態度で嫌われないのはすごいと思う。
黒江双葉→…強いですね。ムカつくけど。
荒船隊→天敵。
弓場拓磨→自分以上の銃手。
二宮匡貴→不本意ながら弟子(とか言いつつノリノリ。)

犬飼澄晴←チャラい。お菓子くれるいい人。
黒江双葉←泥棒猫。
荒船隊←叩き潰す。
弓場拓磨←ヤクザかと思った。グラサンいいね、あたしもつけようかな。
二宮匡貴←師匠。面白い。

榎沢一華トリガーセット
メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、メテオラ、バッグワーム、シールド


ホワイトルーム勢は多分トリガー構成色々弄ります。
なんでって?
色々書きたいからや!
榎沢は綾瀬川程大胆に変えないけど。
まあホワイトルームで過酷なカリキュラムをこなしてきた2人なので、咄嗟の切り替えもあんまりミスらないでしょうという事で。

ちな、榎沢の合成弾は未完成で、合成に15秒程要します。

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B級ランク戦ROUND5 諏訪隊VS弓場隊VS荒船隊②

遅くなっちった。
ごめんなさいm(._.)m


『大胆不敵!MAPの斜面を一気に駆け上がった榎沢隊員、荒船隊の半崎隊員と穂刈隊員を瞬く間に撃ち抜き、諏訪隊が2点獲得!』

 

武富が興奮気味にそう言った。

 

『諏訪さん達をいい感じに囮にしたねー。』

 

『…目立ちすぎじゃないですか?』

 

──

 

「!」

 

榎沢は勘で察知し、背中に集中シールドを展開する。

直後、集中シールドがイーグレットを弾いた。

 

「ありゃ…!」

 

榎沢の視界の先。

イーグレットを携えた外岡が、榎沢から逃げるように建物から飛び降りた。

 

「…ハウンド。」

 

榎沢はポケットに手を入れたまま、キューブを分割。

外岡目掛けてハウンドを放つと、グラスホッパーを展開。

外岡を追った。

 

 

『弓場さん、榎沢釣れました。』

 

『…ああ。助かるぜ、トノ。』

 

──

 

榎沢が外岡を追い始めた直後。

MAP東にいた、堤がMAP西の諏訪、笹森を視界に捉える。

 

「!、堤!!」

 

「っ?!」

 

直後、背後からの弾幕。

堤は咄嗟のシールドを張るが、数箇所射抜かれ、トリオンが吹き出し、片腕を失う。

そこにはバッグワームを羽織り、リボルバーを構えた弓場が。

横には帯島も控えていた。

 

「チッ、ヤロォ…!」

 

すぐさま臨戦態勢。

諏訪はショットガン2丁を構え、笹森はカメレオンで姿を消した。

 

『笹森先輩は自分が引き受けるッス!』

 

帯島はトリオンキューブを生成。

レーダーを頼りに、笹森にハウンドを撃ち出す。

 

笹森はシールドで受けながら姿を現す。

 

──

 

『ここで弓場隊が諏訪隊を急襲!堤隊員が大きく削られたか!』

 

『弓場さん強気に出たねー。堤さんが削られてるとはいえ、帯島ちゃんは笹森くんの相手だろうから2対1。トノくんはガン逃げ中だから援護も入れないでしょ。』

 

犬飼はそう言って顎に手を当てた。

 

『…外岡先輩も逃げ切れなそうですね。』

 

黒江は不機嫌そうにそう言った。

 

 

──

 

グラスホッパーによる高機動。

外岡を射程に捉えた、榎沢の早撃ちが炸裂する。

 

「ありゃ、ヤバ…。」

 

外岡は足をいぬかれ、その場に転ぶ。

その隙を逃す榎沢では無く、左手でもう片方のホルスターに手を添え、フルアタックの構えを取る。

それを察して外岡はシールドを張りながら、ライトニングを生成。

ダメ元で榎沢にライトニングを向けた。

 

 

…その直後、榎沢目掛けて、旋空が放たれる。

 

「…っと。」

 

榎沢は体を仰け反らせ、避けるとそのままバク転。

後ろに飛び退くと、外岡にハンドガンを発砲。

しかし、それは外岡のシールドと、突然現れたシールドに防がれる。

そして外岡はライトニングを発砲。

榎沢は首を動かして避けると、再び発砲。

しかし、再び外岡のフルガード、そしてもう1枚のシールドに防がれる。

 

「ちぇ、めんどくさ。」

 

「ありゃ…。」

 

そして、後ろからバッグワームを羽織り現れた荒船に、外岡のトリオン体は切り裂かれた。

 

「悪ぃが1点貰うぜ。」

 

「別にいいけど返してもらうよ?」

 

そう言って榎沢は拳銃を2丁、荒船に向ける。

 

──

 

『ここで外岡隊員緊急脱出!荒船隊長が榎沢隊員から横取り、1点獲得!』

 

『上手く持ってったね、荒船。』

 

『でも、弧月だけじゃ榎沢先輩には勝てないですよね?』

 

黒江が犬飼に尋ねる。

 

『まあ榎沢ちゃんは射程と火力が上がった弓場さんみたいなもんだからね…。並の攻撃手じゃキツイかな…。』

 

──

 

「ほらほらー、逃げてばっかじゃ勝てないぞー?」

 

榎沢は走りながら、逃げる荒船にフルアタック。

荒船はバッグワームを解除し、フルガードで榎沢の射撃を受ける。

 

「時間切れまで粘る気?」

 

「ハッ!…まさか。

 

 

…ぶった斬るに決まってんだろ。」

 

 

荒船は曲がり角で急旋回。

弧月を抜いて、榎沢に切り掛る。

 

 

「見え透いた奇襲だね。言っとくけど、攻撃手の間合いでもあたしの方が強いよ?」

 

 

榎沢はしゃがみこんでよけると、地面に手を付き、そのまま手を軸に荒船の胸を蹴り飛ばす。

そしてハンドガンを発砲。

 

「チッ…!」

 

荒船は片腕でそれを受けながら、後ろに飛び衝撃を逃がすと、シールドで榎沢の弾を受ける。

 

 

「前回は逃げられたからさ。叩き潰すって決めてるんだよね。」

 

榎沢はもう片方のハンドガンに手をかけ、フルアタックの構えを取る。

 

「…」

 

荒船はバッグワームを生成。

それを羽織る事無く、榎沢に投げる。

 

「っと、ぶな!」

 

「チイッ…!」

 

バッグワームを両断しながら放たれた旋空。

榎沢は勘でそれをよける。

 

「いいね…!一方的じゃつまんないしっ!」

 

距離を詰めた荒船は榎沢に絶え間なく弧月を振り下ろす。

榎沢はヒラヒラとそれをよける。

 

「っ…お前といい綾瀬川といい…嫌になるぜ、全く…。」

 

荒船は余裕そうに弧月を避ける榎沢を見て、苦笑いを浮かべる。

天才銃手、榎沢一華。

入隊して半年と経たず、頭角を現したまさに天才。

大抵の攻撃手では相手にならない程の火力。

そして、奇襲の通じない超直感。

 

自分が勝てないのは目に見えていた。

 

だが、そんなの諦める理由にはならない。

 

 

「またー?」

 

再び投げられたバッグワーム。

荒船は後ろに飛び退いた。

 

今度は、榎沢がそれを利用し、荒船に飛びかかる。

 

「!、あれ?」

 

バッグワームが消え、榎沢の視界に映った荒船。

 

荒船は笑みを浮かべながら、アサルトライフルをこちらに向けていた。

 

 

──

 

『アサルトライフル?!』

 

武富が声を上げた。

 

『…ハハッ、これは予想外。…でも…

 

 

 

 

 

…ちょっと遅いかな。』

 

──

 

荒船はアサルトライフルに指をかける。

 

「撃ち合いで勝とうなんて、100年早いんじゃない?」

 

荒船の瞬く間。

榎沢はハンドガンを抜いて、荒船のアサルトライフルの銃口を撃ち抜いた。

 

「っ?!」

 

アサルトライフルは暴発。

荒船の右手を奪う。

 

「アイデアは面白いけどね。」

 

そう言って榎沢は荒船を蹴り飛ばすと、榎沢の背後に生成されていた、トリオンキューブが光り輝いた。

 

「ヤロォ…!」

 

そう言って荒船は悔しそうに笑みを浮かべ、トリオンの嵐に包まれた。

 

──

 

『荒船隊長もここで緊急脱出!諏訪隊が3点目を獲得!』

 

『荒船の銃手トリガーか。楽しみになる負け方だったねー。』

 

犬飼はそう言って笑った。

 

『荒船も本格的に完璧万能手目指し始めたってことかな?』

 

『そしてもう一方の戦場でも動きがあった!堤隊員がトリオン漏出過多で緊急脱出!笹森隊員と帯島隊員も相討ちとなり緊急脱出!弓場隊、諏訪隊両隊が得点をあげた!』

 

──

 

『諏訪さーん、死んでるー?』

 

『生きてるわ馬鹿!とっとと来やがれ!』

 

堤が落ちたことにより、諏訪は弓場の早撃ちの前に防戦一方となる。

 

「っ…やべぇ…!」

 

弓場の早撃ちにより、諏訪の片腕がショットガンごと撃ち落とされた。

 

『ちょっとー?あたしが60m入るまでに死なないでよー?』

 

『うるせェ!』

 

諏訪はフルガードに切り替える。

 

「…」

 

弓場はそれを見るや否や、ハンドガンのマガジンを切り替える。

 

「っ…おいおい…。」

 

「…悪ぃな、諏訪さん。逃げ切りはさせてやれねェ。」

 

弓場が放ったのはバイパー。

それを防ぐために、広がったシールドを、弓場のアステロイドが撃ち砕いた。

 

 

──

 

『諏訪隊長も逃げきれず!弓場隊VS諏訪隊、MAP西での攻防は弓場隊が制する形となった!そして残ったのはボーダー屈指の銃手2人!』

 

『おお、見たかった形!』

 

犬飼は少し興奮気味に声を上げた。

 

『犬飼先輩はどっちが勝つと思いますか?』

 

黒江が犬飼に尋ねた。

 

『うーん、ハウンドがある分射程は榎沢ちゃんだし、火力も榎沢ちゃんが圧倒的だよね…。』

 

『じゃあ榎沢先輩予想ですか?』

 

黒江が尋ねる。

 

『…でも、早撃ちで言えば弓場さんに分があるね。それに弓場さんって1対1だとめちゃくちゃ勝負強いから。…分からないかな。』

 

──

 

「…」

 

「…」

 

家屋の屋根に立つ榎沢。

榎沢はポケットに手を入れたまま、トリオンキューブを分割する。

 

弓場はそれを見据えると、シールドを展開しながら、榎沢目掛けて駆けた。

 

「メテオラ。」

 

弓場目掛けて放たれたメテオラ。

 

その爆風を、シールドに包まれた弓場が抜けてくる。

 

「へえ…。ハウンド。」

 

さらに分割。

今度は多角的なハウンドで攻める。

 

しかし、弓場は巧みにシールドを動かしながらそれを受ける。

 

 

『距離30!』

 

藤丸の通信が響く。

 

 

 

 

『距離25!』

 

 

この通信は小佐野。

弓場は、榎沢の射程に入った。

 

榎沢はポケットから手を抜くと、ホルスターのハンドガンを弾く。

 

──

 

『ここ…だね。ここを弓場さんが耐え抜いて射程に入れば弓場さん有利だ。』

 

犬飼が目を細めながらそう呟いた。

 

──

 

「っラァ…!」

 

 

 

『抜けた!距離20…!』

 

 

「うわ、すっごい!!」

 

榎沢は思わず声を上げる。

 

弓場の間合い。

ホルスターから拳銃を抜いた弓場のアステロイドが榎沢を襲う。

 

シールドが間に合わず、弓場の弾は榎沢の頬を掠める。

 

「…」

 

榎沢はシールドで弓場の弾を受けながら、グラスホッパーを複数展開する。

 

「逃がすかよォ...!」

 

「逃げないよ。」

 

「!」

 

榎沢はグラスホッパーに足を駆けて、シールドを構えたまま飛び上がる。

弓場は弾道をあげて、榎沢を追うが、グラスホッパーで縦横無尽に飛び回る榎沢を追いきれなくなってくる。

 

「チッ…!」

 

弓場はもう片方の拳銃を抜き、フルアタックを仕掛ける。

 

「っと…!ほんっとに早いね…!」

 

榎沢のツインテールの片方が射抜かれ散る。

 

「あたしのチャームポイントなんですけど?」

 

榎沢は弓場の弾を避けながらグラスホッパーで空を駆け、トリオンキューブを分割する。

 

「メテオラ。」

 

「!…チッ!藤丸!」

 

地面を穿ったメテオラ。

爆風に視界を遮られた弓場は手で顔を被いながら、藤丸に通信入れる。

そして視覚支援を頼りに、こちらに迫る榎沢に拳銃を向けた。

 

榎沢もこちらに拳銃を向け、アステロイド同士の撃ち合いとなる。

 

 

距離は15m。

有利なのは依然、弓場であった。

 

「っと、あ。」

 

榎沢のハンドガンが射抜かれ、ハンドガンは暴発。

榎沢の右手を奪った。

 

榎沢はシールドを張ったまま棒立ち。

 

 

好機と見た弓場はフルアタックに切り替え、畳み掛ける。

 

「っ…!」

 

榎沢はシールドを構えながら、後ろに飛び退いて弓場の射程から出ようとする。

 

「言ったはずだぜ、逃がさねぇってよ!」

 

「すごいね弓場さん。早撃ちなら勝てないや。」

 

榎沢と距離を詰めた弓場。

そしてトドメを刺すべく、榎沢に拳銃を2丁向けた。

 

 

 

 

その瞬間、上からの射撃に、両腕を落とされる。

 

 

「!?」

 

弓場は視線を上にあげる。

 

「チッ、フルガードじゃねえのかよ…。」

 

「あたしトリオン高いからねー。使えるものは使うよ。

 

 

…あたしの才能だもん。」

 

「ハッ、違いねェ。」

 

そのまま、上からの弾幕にトリオン供給器官ごと撃ち抜かれた。

 

 

──

 

『ここで試合終了…!銃手対決を制したのは榎沢隊員!7対3対1!B級ランク戦ROUND5、中位昼の部を制したのは諏訪隊!』

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 0P

笹森 1P

榎沢 4P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

 

弓場隊

 

 

弓場 2P

外岡 0P

帯島 1P

 

合計 3P

 

 

荒船隊

 

 

荒船 1P

穂刈 0P

半崎 0P

 

合計 1P

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢)

荒船哲次→天才銃手。
弓場拓磨→強い。自分以上の銃手。

荒船哲次←帽子。銃手トリガー教えたげよっか?
弓場拓磨←グラサン。強い。早撃ちの腕まじか。


荒船さんは多分アサルトライフルを使う銃手になる予想で、荒船さんの銃手トリガーを解禁してしまいました。
原作と矛盾が出てきそうだったら修正するかもです。
ゾエさんか犬飼が師匠になりそう。
多分ゾエさん。

感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑭

本当に遅くなりすいません。
忙しくて。



「あ。」

 

「…」

 

 

ボーダー本部、ロビーの自販機前。

ROUND5昼の部が終わり、数十分。

缶ジュースを飲みながら、オレの存在に気付いたツインテールが特徴の少女は小さく声を上げた。

 

「…榎沢か。」

 

そう言ってオレは財布を取りだしながら、自販機前に歩く。

 

「やっほ。久しぶり、センパイ。」

 

「中位は圧勝だったらしいな。弓場さん相手に流石だな。」

 

「手強かったよ。…センパイ、ココア好き?」

 

「藪から棒になんだ?」

 

「いーから。」

 

その言葉にオレは辺りを見渡す。

 

「あそこを出て1年も経ってない。…飲んだことないな。」

 

「あはは、あたしも。じゃあ挑戦だね。」

 

そう言いながら榎沢はココアのボタンを押す。

 

「はい。」

 

そう言って榎沢はオレにココアを差し出す。

 

「…」

 

「別になんも入れてないよ?見てたでしょ?バレンタインってやつ。溶かしたチョコみたいなもんでしょ?…ん。」

 

「…じゃ、ありがたく。「その代わり。」」

 

受け取ろうとした刹那、手は空を切る。

 

「ちょっとお話してこーよ。」

 

そう言って榎沢は小悪魔のような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「それで?もので釣ってなんの用だ?」

 

オレはココアの飲み口を開けながら榎沢に尋ねた。

 

「別になんも企んでないってば。」

 

榎沢はジト目でオレにそう言った。

 

「あれから会ってなかったからさー。センパイは最近どーよ?」

 

「どう…とは?」

 

「…あたしあんまり世間話とかしたことないわ。何話す?」

 

「帰っていいか?」

 

そう言ってオレは立ち上がる。

 

「あーん、待ってよぉ。」

 

榎沢はオレの裾を掴む。

 

「ココアどお?美味し?」

 

榎沢が話題を作るべく、強引に尋ねた。

 

「…前に隠岐と飲んだチョコシェイクに似てる。」

 

「ふーん…。」

 

そう言って榎沢はオレのココアを一瞥。

口を離した瞬間、オレの手からココアを取り上げる。

 

「一口貰うねー。」

 

「おい、まじかお前。」

 

オレが口を付けたのも気にせず、榎沢はココアを口に運んだ。

 

「うっげ…あまぁ。」

 

榎沢は舌を出しながらそう言って笑う。

 

「あたしもっと苦いやつがいいな。」

 

「意外と舌は大人なんだな。」

 

「意外とって…失礼しちゃうなー。」

 

「コーヒーなんかがいいんじゃないか?オレでも飲めたし、美味かった。まあ、これはこれでオレは好きだが。」

 

そう言ってオレは榎沢からココアを返してもらうと、残りを口に運んだ。

 

「コーヒー…ね。ここに来てから毎日が色んな経験だよ。センパイは居酒屋って知ってる?」

 

榎沢がオレに尋ねた。

 

「知ってるが行ったことは無いな。」

 

「なんかもうすごいとこだよ。あそこに入った後だと風間さん、ポストと格闘始めるからね。」

 

どう言う状況だ?それ。

 

「焼肉も美味しかったなー。」

 

「…諏訪隊で行ったのか?」

 

「うん。」

 

「…そうか。」

 

「何?その間。」

 

榎沢が横目でオレに尋ねた。

 

「仲良くやってるんだなと思ってな。」

 

「…別に。そう言うんじゃないし。」

 

榎沢は目を逸らしながらそう言った。

 

「あたしは失敗作…それは変わらない。センセイからの評価は変わらないし、センセイはあたしになんの期待もしてない。でも…でもさ。諏訪さんに瑠衣ちゃん、日佐人くんにつつみんさん。…二宮さんも。皆…失敗作としてのあたしを認めてくれてるみたい。…迷惑な話だよね?」

 

榎沢は儚げな笑みを浮かべ、オレに尋ねた。

 

「さあな。オレが知ったことじゃない。だが…ログしか見てないが、オレは諏訪隊のお前を弱いと思ったことは無い。」

 

「…あっそ。」

 

そう言って榎沢は立ち上がる。

 

「もう行くね。」

 

「…ああ。」

 

榎沢は歩き出す。

 

だが、数歩歩いて歩みを止めた。

 

 

「でも…あたしは綾瀬川センパイを超えるよ。失敗作、榎沢一華じゃなくて…」

 

そうして振り返る。

 

 

 

「良作、榎沢一華として。」

 

 

そう言って榎沢はオレを睨む。

 

 

その胸元には漆黒のネックレスが輝いていた。

 

 

 

──

 

「知っていますか?綾瀬川くん。チェスと将棋は似通っているらしいです。」

 

綾瀬川の目の前で、白髪の少女はそう言ってポーンの駒を動かした。

 

「そうらしいな。まあどっちも王を取るって言う意味じゃ同じだろ。」

 

その言葉に、少女、唐沢有栖は小さく笑みを浮かべる。

 

「ですが、将棋の方が遥かに難しいと聞きます。取った駒を自分の駒に出来る分、戦術、戦略は百手、それこそ万にも及ぶ程、パターンが増えます。」

 

「違いない。水上先輩は凄いな。チェスをやらせても強いんじゃないか?それこそ相手はオレじゃなくていい。…降参だ。」

 

唐沢のチェックに対して、綾瀬川はお手上げと言うように手を上げる。

 

「ご謙遜を。あなたの実力はこの程度では無いはずです。もう一度やりましょう。」

 

「あのな…。」

 

目の前の少女、唐沢有栖。

なんでも、近々あるらしい、アフトクラトルの従属国の侵攻。

その防衛の指揮を執るのが唐沢なのだ。

 

その為か、少し離れたテーブルでは、太刀川、迅、小南がババ抜きをしている。

 

 

「将棋、チェス…どちらも戦争です。」

 

唐沢はそう言うと、キングの駒を弄る。

 

「兵が戦い、王を取られれば負け。王を守るように、金将、銀将…ルーク、ビショップ。将棋の戦い方は利口です。倒した兵を捕虜とし、自分の兵にする。…近界民のやり口と似ています。」

 

唐沢はそう言うと目を伏せた。

 

「対してチェスは違う。」

 

目を開き、そして好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

「敵兵は徹底的に殺し尽くす。有能なナイトであっても。…だから私はチェスが好きなんですよ。」

 

「怖いんだが。」

 

「だってシンプルじゃないですか。…今回の任務もそうですよ。チェスに守りの概念は無いです。

 

 

…あちらがしかけてくるのなら好都合。真正面から叩き潰しましょう。」

 

「…」

 

そんな様子を小南はジト目で見ていた。

 

「何かご用ですか?小南さん。」

 

クスリと笑いながら唐沢は小南に尋ねる。

 

「べ、別に何も無いわよ!」

 

小南は慌てて視線を外す。

 

 

 

 

「…小南さん。

 

 

…あなたも一戦どうですか?トランプだけでは飽きるでしょう。」

 

 

 

 

「あんた、司令室のオペレーター?」

 

「はい、そうですよ。それから小南さん、ビショップは斜め、ルークが縦です。…もしかしてルール知らないんですか?」

 

「は、初めてやるんだから仕方ないじゃない!」

 

小南は恥ずかしそうに声を上げた。

 

「なら初めからそう仰ってください。…嘘をついてまで私にお聞きしたいことでも?」

 

「…あんた、綾瀬川と親しいのね…。」

 

小南は目を泳がせながら唐沢に尋ねた。

その様子を見て、唐沢は一瞬驚いたあとクスリと笑う。

 

「ええ、まあ。」

 

「ど、どう言う関係なの?」

 

小南はそう言って、離れた位置で本を読んでいる綾瀬川に視線を向けた。

 

「ふふ、そうですね。説明するのは難しいですが…簡単に言えば…

 

 

…幼馴染のような関係…ですね。」

 

「お、おさ…ななじみ?」

 

「はい。」

 

「そ、それってどう言う…」

 

言いかけて、迅が立ち上がる。

 

 

「忍田さん、有栖ちゃん、敵が来るよ。パターンは一応Aで。」

 

「基地防衛ですね。」

 

そう言うと唐沢はモニターに視線を向ける。

 

「じゃあオレも戻るかな…。」

 

そう言って綾瀬川は立ち上がる。

 

「ああ、綾瀬川くんは残ってください。」

 

「は?」

 

綾瀬川は素っ頓狂な声で聞き返す。

 

「柿崎隊は他隊と同様に基地の外を防衛。…ですが綾瀬川くん。あなたは切り札です。まだ戦場に立つ必要はありません。」

 

「唐沢くん、しかし…」

 

食い下がったのは忍田だった。

 

「敵の全容が見えない。綾瀬川くんと言う戦力を使わない手は無いだろう。」

 

「何も遊ばせる気は無いですよ。天羽くんと同様私のサポートに入ってもらいます。…万が一は戦場にも立てる準備を冬島隊長にもしてもらっています。」

 

そう言って唐沢は立ち上がり、モニター前に座る。

そして目の前のチェス盤に駒を並べた。

 

「…心配せずとも勝ちますよ。私は負けることが大嫌いなので。さ、綾瀬川くん、座ってください。」

 

そう言って唐沢は綾瀬川を唐沢の前に座らせる。

 

 

 

「さて、改めて…

 

 

 

 

…一戦、お手合わせ願えますか?」

 

 

 




各キャラからの評価&各キャラへの評価

榎沢一華→色んな意味で先輩。崇拝。憎悪。
唐沢有栖→幼馴染のような関係。切り札。

榎沢一華←後輩。警戒。生意気。
唐沢有栖←チェス強いな。

次回から本格的にガロプラ…


の前に幕間かこーっと。


感想、評価等お待ちしております。


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ガロプラ①

どうも。
Twitterで投稿するとかツイートしといて投稿しない嘘つきチンパンです。


さーせーん!
サボりました!

許してちょ。


「うわっ!見てゾエさん。本当にいっぱいトリオン兵が来たよ。」

 

そう呟くのは諏訪隊銃手、榎沢一華。

 

「人型…?見たことないやつだね…。」

 

榎沢のその言葉に影浦隊銃手、北添尋はそう返した。

 

 

B級ランク戦ROUND5夜の部開始30分前。

基地北東に発生したゲートから、無数のトリオン兵がなだれ込んで来る。

基地屋上からは狙撃手による集中攻撃が始まっており、トリオン兵を削っていく。

 

『側面から崩すぞ!狙撃班の援護だ!』

 

『『了解!』』

 

嵐山隊隊長、嵐山准の合図で、地上戦も幕を開ける。

 

 

「敵の数が多い!前に出すぎんな…「ハウンド。」」

 

 

…っておいコラ。」

 

諏訪の制止を無視して、榎沢はトリオンキューブを分割。

グラスホッパーを展開しつつ、トリオン兵「アイドラ」目掛けて駆け出した。

 

 

屋上からの狙撃も、榎沢が飛び出したことにより、一旦止まる。

 

 

『あー、狙撃班聞こえるー?あたしのことは気にしなくていいから。構わず撃って?

 

 

 

…あたしが避けるから。』

 

 

『諏訪。』

 

木崎の通信が、諏訪に入る。

 

 

『…ったく、あの馬鹿!…でもまあ聞いての通りだ。気にせず撃て、レイジ。』

 

『…了解。』

 

 

──

 

「…榎沢一華…勝手なことを…。」

 

そう言って唐沢有栖は、チェス盤の駒を並べ直す。

 

「ままならないものですね…。」

 

「…いや、いいんじゃないか。」

 

そう言って唐沢の前で、綾瀬川はナイトの駒を動かす。

 

「盤上を自由に動けるナイト…強い所の話じゃない。…ま、自由に動かせないのはネックだが…。」

 

そう言って綾瀬川はナイトの駒を倒した。

 

「…ふふ、まあそれを動かすのもまた一興。…少し遊びましょうか。」

 

そう言って唐沢はいたずらっぽく笑みを浮かべた。

 

 

──

 

『いくらなんでも勝手すぎます!榎沢先輩!下がってください!』

 

そう榎沢に通信を入れたのは、嵐山隊エース万能手、木虎藍だった。

 

『えっと…誰?集中乱れるから話しかけないでくんない?』

 

『なっ…!』

 

あまりの身勝手さに、木虎は絶句する。

 

『榎沢くん!危険だ!単身突撃など!下がって狙撃手の…『いいえ。彼女はそのままで結構ですよ。』』

 

嵐山の言葉を遮るように、唐沢の通信が入る。

 

『狙撃手もこのまま妨害なく撃てると言う訳には行かないでしょう。…この場に於いて彼女は最も高火力な駒。地上部隊は彼女の援護を。』

 

『っ…!そんなの…!』

 

『木虎さん、問答は時間の無駄です。そろそろ屋上の火力は一旦消えます。』

 

『なんでそんなこと分かるんですか?』

 

『…私が敵でもそうするからですよ、木虎さん。』

 

その言葉と同時に屋上に紫色の光が振り注ぐ。

 

『…さ、仕事ですよ。』

 

『…』

 

 

唐沢有栖。

外務営業部長、唐沢克己の娘にして、17歳と言う若さで通信室の責任者を務める少女。

木虎は嵐山からの通達により、この防衛作戦の指揮を執るのが彼女だと知った。

 

だからこそ不満だらけだった。

 

大規模侵攻の際は父親、唐沢克己とともに外回りに出ていたらしく、作戦には参加していない。

 

つまりはただの後釜。

しかも大規模侵攻の時は自分は安全な場所に逃げていたことになる。

 

ふざけるな。

安全圏でたまたま生き残ってその後すぐにオペレーターのトップ?

そんな女を信用出来るはずがなかった。

今すぐにでも指揮権は忍田本部長に移すべきだ。

 

木虎は歯噛みしながら、狙撃が無くなったことで、こちらを襲ってくるアイドラに、シールドを展開する。

 

 

 

一方の屋上。

突如撃ち込まれた紫色の閃光。

その後、ゲートが開き、中から複数の犬型トリオン兵「ドグ」が現れる。

 

 

「トリオン兵?!」

 

「…」

 

驚く別役とは対照的に、影浦隊狙撃手、絵馬ユズルは近距離でありながら、ドグにイーグレットを命中させる。

 

だが…

 

「ジリ貧だ。仲間を撃ちかねない。」

 

そう言って絵馬はイーグレットを下げる。

 

そこで動いたのは、玉狛第一、木崎レイジと荒船隊、荒船哲次だった。

2人とも、攻撃手トリガーを使える実力者。

的確にドグを仕留めていく。

しかし、狙撃は止み、下の部隊も下がらざるを得なくなった。

 

 

『榎沢!てめえも一旦下がれ!数に食われるぞ!』

 

 

諏訪の通信に、榎沢は銃撃の手を止め、辺りを見渡す。

囲まれていた。

 

『…メテオラでぶっ飛ばしていい?』

 

『メテオラは禁止だっつってんだろーが!』

 

『ちぇー。つまんなー。』

 

榎沢はフルアタックのまま後退する。

 

『でもこのままじゃ基地に着いちゃうよ?どーすんの?オペさん。』

 

榎沢は唐沢に尋ねる。

 

『問題ありませんよ。増援は向かっています。それまでに榎沢さんは基地にトリオン兵は近づかせないでください。…できますよね?失敗作。』

 

『…うっざ。死ね。』

 

 

そう言って通信を切ると榎沢はグラスホッパーで飛び上がりながら、ハンドガンを発砲。

そのまま上空でトリオンキューブを分割。無数のハウンドがアイドラに降り注いだ。

 

「ちっ、意外とガード堅いなー。」

 

榎沢はそう言って舌打ちをした。

 

 

 

 

「不味いな、トリオン兵の中に色の違うのが交じってる。」

 

「なに?」

 

「あら。」

 

 

その直後、唐沢のモニターには基地に侵入した3つのトリオン反応が。

 

 

『人型近界民侵入!』

 

沢村の声が響く。

 

 

『…榎沢さん、3匹侵入しましたよ?』

 

『うっさいなぁ…。そんなん言うならとっとと増援寄越せっての、ばーか!』

 

 

 

「はぁ…仕方ありませんね。」

 

 

 

唐沢はそう言って立ち上がると杖を突き、デスクの前に移動する。

そこには10台にも及ぶモニターが。

 

「綾瀬川くん。」

 

「へいへい。3匹ならカゲさんだけじゃしんどいかもしれないからな。」

 

そう言って綾瀬川はトリオン体に換装する。

 

 

 

 

「ちょっと行ってくる。」

 

「ふふ…はい。オペはまかせてください。」

 

綾瀬川の言葉にそう返すと、唐沢も換装。

オペレーターの服装へと切り替わる。

 

 

『榎沢さん、今屋上に攻撃手1人と万能手1人を向かわせました。…2人ともグラスホッパーを持っています。すぐに到着するでしょう。そうなれば上からの狙撃が息を吹き返します。地上にも部隊を送りましたが…地上での掃討の要はあなたです。…失敗は許しませんよ。』

 

『…うっざ。

 

 

 

…分かってるっての。』

 

榎沢はそう言ってハンドガンを握り直した。

 

 

 

 

『さて、三輪くん。』

 

唐沢は今度は三輪隊隊長、三輪秀次に通信を入れる。

 

『今月見さんに、屋上に犬型を送り込んでいる敵の予測位置を送りました。』

 

その言葉とともに、月見のパソコンにデータが送られる。

 

『尤も月見さんもそれはもうやっていると思いますが…三輪くんと米屋くんの相手はその近界民です。』

 

『…三輪了解。』

 

三輪はそう短く答えた。

 

 

 

『有栖ちゃん、敵捕捉。…狙いは有栖ちゃんの予想通り…遠征艇だ。』

 

迅からの通信に唐沢は小さく微笑む。

 

『なるほど。…冬島隊長、手筈通りに。』

 

『了解。』

 

 

唐沢のその様子を忍田は横目で見る。

 

圧巻の一言だった。

未来が見えているわけでもないのに一手、二手先まで見据えた指示。

 

まるで盤上を動かすように。

 

 

「…唐沢くん、私も戦場に出よう。」

 

「おや?地上ですか?」

 

「ああ。榎沢くん同様駒として好きに使ってくれて構わない。」

 

忍田はそう言うと換装する。

 

「分かりました。ではお気をつけて。」

 

 

そう言うと、唐沢は妖艶な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「ふふ、チェックメイト…ですね。」

 

 

 

 

──

 

「ハッ!まさかテメェと組むことになるとはな。」

 

「まあ敵は3匹いるみたいなんで。いくらカゲさんでも厳しいでしょ。」

 

影浦隊隊長、影浦雅人の言葉に、柿崎隊完璧万能手、綾瀬川清澄は抑揚の無い声でそう返した。

 

「つーか、そんならテメェ1人でやれよ。」

 

「聞いてました?…相手はどんなトリガー持ってるか分かんないですよ。ここは1つ共同戦線という事で。」

 

そう言って綾瀬川はトリオンキューブを分割。

 

 

 

「バイパー。」

 

 

そう言って綾瀬川は侵入した近界民の背後にバイパーを撃ち出す。

 

「じゃ、行きましょうか。」

 

「おう。」

 

 

 

 

そうして、B級最強の攻撃手とB級最強の万能手は基地に侵入した近界民と向き合う。

 

 

 

 

『こちら綾瀬川。人型近界民を捕捉…処理を開始する。』

 

 




多分あと1話か2話でカロプラは終わります。
読んでの通り、オーバーキルなので。
原作と大分違いますが、大まかな流れは変わりません。

基地内の近界民
攻撃手TOP4、綾瀬川&影浦、風間隊

基地外の近界民+トリオン兵
屋上 木崎、当真、佐鳥、奈良坂、古寺、絵馬、別役、荒船隊
地上 烏丸、嵐山、木虎、加古隊、三輪隊、柿崎隊、北添、諏訪隊、来馬、忍田
西と南の警護 王子隊、弓場隊。

ちな屋上に向かった攻撃手と万能手は緑川と虎太郎です。

原作の辻ちゃんってどうやって屋上まで登ってきたんかな。
緑川はグラスホッパーなのはわかるけど辻ちゃんグラスホッパー入れてないよね?w
ひょっこり緑川の隣飛んでたけど何あれ。
緑川のグラホ借りてんのかね。

敵側にオリキャラ出す予定は無いです。
ボッコボコの返り討ちにします。

感想、評価等お待ちしております。


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ガロプラ②

遅くなりさーせん!!
ごめんなさいm(._.)m
暑いし忙しいしまじ最悪です。
どうにか隙間時間見つけて書きますんで…!


アフトクラトル従属国ガロプラ。

少数精鋭のガロプラから今回遠征に派遣された小隊は、隊長ガトリン、副隊長コスケロ、ウェン・ソー、レギンデッツ、ラタリコフ、ヨミの6人。

その内、基地に忍び込んだのは、隊長ガトリン、ウェン・ソー、ラタリコフだった。

 

そんな3人を待ち受けるように、2人の隊員が現れる。

 

『ガトリン隊長。』

 

ラタリコフがガトリンに通信を入れる。

 

『分かっている。予定通りウェンを置いていく。俺とラタは予定通り──!』

 

言いかけて、ガトリンは飛び退く。

 

「オォイ、作戦会議は終わったかよ?」

 

影浦が伸ばしたスコーピオン。

それはガトリンのいた地面を切り裂く。

 

「こっちは待ってやる義理は無いんだぜ。」

 

そう言って影浦は瞳孔を開き、獰猛な笑みを浮かべる。

そして、ガトリンに飛びかかった。

 

 

「!、隊長!」

 

影浦が飛び上がった直後。

その背後には弧月に手をかける綾瀬川が。

 

「…旋空弧月。」

 

ウェンが前に躍り出て、シールドでそれを防ぐ。

 

 

『カゲさんは好きに暴れてください。サポートします。』

 

「ハッ!そりゃいい。とりあえずこいつらぶった斬りゃいいんだな?」

 

「…はい。」

 

 

 

『…作戦変更だ。標的には俺1人で向かう。

 

 

…こいつらはウェン1人の手には余りそうだ。』

 

『『了解。』』

 

 

──

 

基地北東

 

B級諏訪隊のエース銃手、榎沢一華を主体とした掃討作戦。

遅れて、加古隊、柿崎隊、緑川が現着する。

 

『虎太郎、上はどうだ?』

 

『問題ないです!狙撃手、復活します。』

 

虎太郎のその言葉と同時に、屋上からの狙撃が放たれる。

 

『…なんで清澄先輩だけ中なんですかねー。』

 

拗ねたような声で宇井がそう呟いた。

 

『ハハハ…。ま、それだけ期待されてるってことだろ。チームメイトとしては喜ぶべきじゃないか?』

 

『…そうですけど…。』

 

 

 

『さて、地上部隊の皆さん。』

 

 

その通信は柿崎隊だけではなく、本部基地外の防衛をしている全隊員に向けられ発信される。

 

『知らない方もいると思いますので今一度自己紹介を。私は唐沢有栖。今回の防衛作戦の指揮を務めさせて頂きます。…以後お見知りおきを。』

 

 

『真登華、知ってるか?』

 

『知ってるも何も私たちオペレーターのボスですもん。…ま、話したことはありませんけど。』

 

綾瀬川を基地内部の防衛、それも主力に指名したのはこの唐沢有栖。

宇井は分かりやすく警戒する。

 

『外の防衛の主力は榎沢一華さんです。…現場の指揮は…

 

 

 

…忍田本部長が。』

 

 

その言葉と同時に、基地の屋上から、1人の影が降りてくる。

 

 

ボーダー本部本部長、忍田真史。

本部長でありながら、現場でも主力以上の実力を持つ、ボーダートップクラスのノーマルトリガー使い。

しかし、その主な役割は指揮。

こうして戦場に出てくるのは極めて稀な事態であった。

 

そんな空気を察してか、口を開いたのは唐沢だった。

 

『問題ありません。何しろ本部長が前線に立つのですから。

 

 

 

…圧倒的な勝利以外認めませんよ?忍田さん、榎沢さん。』

 

 

『無論だ。』

 

『あーあー、うるさいなー。分かってるっての。』

 

 

『…では問題ありませんね。

 

 

…出し惜しみをする必要はありません。

 

 

 

 

 

…蹂躙しなさい。1匹たりとも討ち漏らしは無いように。』

 

 

そう言って天才は静かに、そして好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

──

 

大誤算だった。

 

外の兵力は玄界にとって脅威。

中に戦力を割けるほど、玄界に余裕は無いと。

 

ガロプラの遠征部隊隊長のガトリンはそう考えていた。

 

だが、蓋を開けてみれば基地内部で待ち構えていたのは、猛獣2人。

 

ドグを託し、置いてきたラタリコフとウェンは既に満身創痍。

 

 

「…」

 

随分とあっさり逃がされた(・・・・・)

 

ガトリンは先程対峙した2人の隊員を思い浮かべる。

ボサボサ髪、そしてギザギザの牙の様な歯を持つ少年。

ムチのように伸びるブレードで戦っていた。

 

 

そしてもう1人。

 

ピクリとも動かない表情、そして何よりその無機質な瞳。

 

その2人は自分を追うことなくラタリコフ、ウェンと接敵した。

 

 

 

嫌な予感が頭を過ぎる。

 

 

そして、基地の地下へと繋げた穴を降りきった時、その嫌な予感は的中したと知ることになる。

 

 

 

 

 

 

「カゲと綾瀬川を撒いてきたのか?…ハハッ、マジか!」

 

「…なーに喜んでんのよ…。」

 

「でも1人ですね。」

 

ガトリンを待ち構えていたのは3人(・・)の隊員。

逃がされた時点で察しは付いていた。

 

「ちっ…。」

 

ガトリンの本当の戦いはこれからだった。

 

 

──

 

『オイ、綾瀬川!1人こっちに来たぞ?上で苦戦してんのか?』

 

そうオレに通信を入れたのはA級1位太刀川隊隊長にして、ボーダーNO.1攻撃手、太刀川慶。

 

『…はぁ、結構きついんスよ』

 

『あぁ?テメーとカゲに限ってそりゃありえねー。手ェ抜いてやがんな?テメー。』

 

『分かってるなら聞かないでくださいよ。分担ですよ分担。…仕事ないと暇でしょ。アンタらも働け。大トリを送って上げましたから。』

 

 

そう言ってオレは通信を切って目の前の敵の攻撃を避ける。

 

「よそ見?随分と余裕じゃない。」

 

そう言って手の甲に着いた10角形のブレードで攻撃を仕掛けてくるのは女の近界民だった。

 

「まあ実際余裕だからな。それに比べてお前は随分焦ってるな。…そこまで時間も掛けてられないんだろ?お前たちの隊長が向かった先にはうちの主力が待ち構えてる。…助太刀に行った方がいいんじゃないか?」

 

そう言いながらオレは弧月を振るう。

 

「っ…!!」

 

そしてトリオンキューブを分割。

 

「バイパー。」

 

放ったバイパーは女近界民の後ろの犬型、そして影浦に後ろから迫る犬型の2匹を貫いた。

 

「カゲさん、女と犬はオレが受け持ちます。あとは臨機応変に。ヤバかったら言ってくださいよ。」

 

「あぁ?!こっちのセリフだボケが。」

 

 

そう言いながら影浦が相手をしているのは男の、坊主風の髪型をした近界民。

衛星のように自在に動くブレードを操るトリガーを使っている。

 

 

…ま、カゲさんには通じないか。

 

 

影浦の持つサイドエフェクトは「感情受信体質」。

攻撃箇所の先読みが出来る影浦にとって、避けるのは容易であった。

 

先程の隊長が置いていった犬型は撹乱メイン。

攻撃力はないが、数が多く盾にもなる。

頭にブレードの着いたタイプのものもおり、捨て身で突進してくる。

 

目の前の女はそこまでの敵ではない。

カゲさんと戦った方が楽しめる。

 

 

『…天羽、色は?』

 

『2人ともA級レベルって感じ。…清澄さんが苦戦する相手じゃないよ。

 

 

…それこそ影浦先輩も。』

 

 

影浦は今シーズン、打倒綾瀬川を目標に珍しくログを見たり、綾瀬川との模擬戦を繰り返してきた。

故に、

 

 

 

「その程度かよ?あの野郎のバイパーの方がまだ鋭いぞ?」

 

 

そう言って繰り出された影浦のマンティスは男の近界民の腕を切り落とした。

男の近界民は飛び退くと、その後ろから犬型が躍り出る。

しかし、影浦にとってそれは時間稼ぎにもならず、瞬き1つする間に切り伏せられる。

 

──

 

「…」

 

目の前の女近界民は、背中から何かを取り出すと、地面に転がす。

途端、煙幕が吹き出した。

 

 

「「!」」

 

影浦、綾瀬川は目を見開く。

 

それは煙幕に驚いたと言う訳では無い。

煙幕が綾瀬川、影浦の視界を奪ってからコンマ1秒。

 

2人の視界は視覚支援により、光を取り戻した。

 

 

『言ったでしょう?オペレートは任せてください。…さ、ご存分に。』

 

 

綾瀬川の目に映るウェンの姿がぶれたかと思うと、そのシルエットは影浦のものへと変わる。

そして、綾瀬川の背中へと回り込んだ。

 

 

 

「下手な手品だな。」

 

 

ウェンの視界。

その目前には綾瀬川の弧月が迫っていた。

 

 

咄嗟に躱すが、ウェンの右目からトリオンが漏れる。

 

 

 

 

影浦も同様だった。

視界支援に加えて、サイドエフェクトによる先読み。

影浦は巧みに跳んで避けると、ラタリコフにスコーピオンを伸ばした。

 

 

 

「「っ…」」

 

 

ラタリコフ、ウェンは息を飲む。

そして、踏み入ってしまったのは地獄だったと理解し始めた。

 

 

「あ?今度は組んでかかってくんのか?」

 

隣り合わせに立ったラタリコフとウェンを見て影浦は顔を顰める。

 

「みたいですね。」

 

「…足引っ張ったらテメェからぶった斬る。」

 

そう言って影浦はスコーピオンを構えて目の前の敵に目を向けた。

 

 

 

 

 

「了解。」

 

 

その言葉の直後、勝敗を決める2筋の刃が振り下ろされた。

 




唐沢有栖

トリオン 0.5
機器操作 9
情報分析 10
並列処理 11
戦術 10
指揮 9
TOTAL 49(トリオンは除く)

トータル戦闘員みてーな数値してんなw
生身でいることが多いのは単純にトリオンがかなり少ないから。

感想、評価等お待ちしております。


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ガロプラ③

遅くなりましたー!
サーセン。

多分次くらいで終わる。ガロプラ。


 

『今からここに1匹の近界民が来ます。』

 

唐沢の通信は基地の地下、遠征艇の前に集まった、ボーダートップ攻撃手、太刀川慶、風間蒼也、小南桐絵、村上鋼に届く。

 

『上での戦いの決着はすぐに付きますし、榎沢さん、忍田本部長の参加した基地防衛も私たちが勝ちます。』

 

唐沢はそう言いきった。

 

『ですが油断はしないように。』

 

『そうは言ってもなー。1人だけかよ?』

 

太刀川がつまらなそうにそう言った。

 

『近界民たかが1匹…ですが…されど1匹。油断は禁物ですよ?私たちと敵とでは勝利条件が違うのですから。』

 

『勝利条件?』

 

村上が尋ねる。

 

『1対4…一見有利に見えますが、あちらは遠征艇を壊せば勝ち、こちらは遠征艇を背に、守りながら敵のリーダーを倒す…天羽くん曰く、忍田本部長と同等レベルの色らしいですよ?』

 

『…何よそれ、だったら上で戦えばいいじゃない?』

 

小南がそう不貞腐れる。

 

『綾瀬川くんが逃がしてしまったもので。良かったですね、太刀川さん。大トリですよ。』

 

『なんも良くねーよ。あのヤロォ…。』

 

太刀川は舌打ちしながら、綾瀬川に通信を入れた。

 

 

 

『ま、油断は禁物…と言いましたが、私たちに負けはありません。攻撃手が1位から4位まで揃っていて負けるなんて…まさかそんな事は無いですよね?』

 

『煽ってるわけ?』

 

小南が尋ねる。

 

『ふふ。どう捉えてもらっても結構ですよ。それに冬島さんのワープもあるので困ったら綾瀬川くんを呼びます。』

 

『綾瀬川の出番を作る気などないぞ。それよりも上は大丈夫なんだろうな?』

 

風間が唐沢に尋ねた。

 

 

『それこそ問題ありません。基地内の戦闘も数分で決着が付きますし、三輪くんと米屋くんの元へも迅さんが向かっています。…1番心配なのがあなたがたですので。』

 

『心配無用だ。』

 

『ふふ、でしたら頼みますよ。くれぐれも気を付けて。』

 

そう言って唐沢は通信切った。

 

 

「なんなのよあの女…癪に障るわね…。」

 

そう言って小南は顔を顰めた。

 

「まあ唐沢の言うことは一理ある。向かっているのは敵のリーダー格だろう。」

 

「綾瀬川の奴…面倒事押し付けてきましたね。」

 

「暇だから働け…だとよ。おもしれえ。」

 

太刀川弧月を抜く。

 

 

 

 

「…近界民の次は綾瀬川だ。」

 

 

そう言って笑みを浮かべた。

──

 

「旋空弧月。」

 

そう言って忍田は弧月を振る。

 

旋空はアイドラのシールドの隙間を縫うように放たれ、アイドラを切り裂いていく。

 

「各隊数人で動いて榎沢くんの援護。囲まれれば食われるぞ。一定の距離を保って防衛に当たれ!」

 

忍田の声が戦場に響く。

 

「いいね、さすが本ぶちょー。やりやすいよ。」

 

榎沢はハンドガンを2丁構えて、アイドラの隙間を抜けながら1匹ずつ的確に撃ち抜いていく。

榎沢が通った後には、無数のアイドラの残骸が。

リロードのタイミングに撃ち漏らした敵を、諏訪隊、嵐山隊がカバーする。

 

忍田も同様に、加古隊、柿崎隊の援護を受けながら着実に数を減らしている。

 

 

「本部長。」

 

「柿崎か。」

 

柿崎が忍田に近寄る。

 

「流石っすね。…このまま終わりだったり?」

 

「なんとも言えないな。だがこの戦いは所詮陽動。本命は中だろう。

 

 

…中には君たちのエースがいるだろう?」

 

忍田はそう言って笑みを浮かべる。

 

 

 

「まあ心配はしてないっすよ。」

 

 

 

──

 

「「「「…」」」」

 

2対2。

綾瀬川、影浦VSウェン・ソー、ラタリコフ。

 

膠着の中、動いたのはウェンだった。

 

走り出すと、その姿は分身する。

 

「!、カゲさん。…7…いや、8ですね。」

 

「ああ。」

 

 

 

ウェンの使うトリガー、「藁の兵(セルヴィトラ)」。

分身体を視界、そしてレーダーに投影する。

ただし、実体があるのは本体のみ。

それ以外はどれだけ斬ろうとダメージは入らないが、逆に攻撃出来るのも本体のみなのだ。

つまり、

 

 

 

「わりぃが俺のクソサイドエフェクトと相性最悪だな、そりゃ。」

 

 

 

「!」

 

影浦を狙った攻撃はスコーピオンに弾かれる。

 

 

そしてその背後。

ウェンの陰から、複数のブレードが現れる。

ラタリコフのトリガー、「踊り手(デスピニス)」。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

その言葉と当時に影浦は頭を下げて、しゃがみこむ。

 

 

「っ?!」

 

 

影浦を狙ったブレードは、踊り手のブレードが並び、一列になった絶好のタイミングで綾瀬川の旋空に弾かれた。

 

そして影浦の足元がひび割れる。

 

「!、下!」

 

「!」

 

ラタリコフの叫びは時すでに遅し。

影浦のモールクローにより、ウェンはその場に縫い止められる。

 

「捕まえたぜ。いくら増えようが動けなきゃ意味ねェだろ?」

 

そう言って獰猛に笑う影浦。

 

「ウェンさ…」

 

ラタリコフが援護に入ろうとしたタイミング。

それを遮るように、ラタリコフの前に大きな盾がせり上がる。

 

そしてその盾の死角から、無数の弾がラタリコフに襲いかかる。

 

(先程の曲がる弾…!)

 

ラタリコフはすぐさま踊り手のブレードを自分の周りに集める。

しかし、バイパーはあらゆる方向に軌道を変えると、ウェンの援護に入ろうとしていたドグを貫いた。

 

 

 

乱戦開始数秒、1番に脱落したのはウェンだった。

動けないウェンでは、影浦のクロスレンジには対応出来ず、鼻から上の頭を切り落とされる。

 

 

 

「終わりだ、近界民。」

 

 

地面からせり上がった盾、エスクードを飛び越え、ウェンを落とした影浦がラタリコフに飛びかかる。

 

 

その背後、トリオンキューブを2つ生成した綾瀬川が。

綾瀬川の放ったフルアタックのバイパーは影浦に当たらないよう、地面を走り、ラタリコフを囲うように曲がると、影浦のスコーピオンと同じタイミングで、一斉にラタリコフに襲いかかった。

 

360度。

 

逃げ場はどこにも無かった。

 

 

(この弾は軌道を変えてくる…付け入る隙があるとすれば…目の前の伸びるブレード使い…!)

 

ラタリコフは影浦を飛び越えるように、地面を駆ける。

 

 

そして気付く、影浦と同じ場所にもう1つのトリオン反応があることに。

重なっていたため見落とした。

 

 

 

「だろうな、オレでもそうする。

 

 

 

 

…終わりだ。」

 

 

そう言って綾瀬川はバイパーを操るためにこちらに向けていた人差し指を地面に向けた。

 

 

その直後、ラタリコフの上の天井に冬島隊のエンブレムが表示される。

 

 

そこから現れたブレードにより、ラタリコフは串刺しとなった。

 

 

──

 

「お疲れ様です。俺らの出番無かったですね。」

 

ウェン、ラタリコフに勝利した綾瀬川、影浦の元に風間隊万能手、歌川と攻撃手、菊地原が寄ってくる。

 

 

「もう直トリオンが切れて生身に戻るだろう。」

 

そう言いながら綾瀬川は、ラタリコフの胸に足を乗せる。

 

 

「あと任せていいか?」

 

 

そう言って綾瀬川はラタリコフを歌川、菊地原の方へ蹴り飛ばした。

 

 

「了解です。2人はどうするんですか?」

 

「早めに終わったからな。下に行ってもいいし上に行ってもいいが…カゲさん下行ってくださいよ。」

 

「ああ?何でだよ?」

 

影浦が尋ねる。

 

「いや、太刀川さんいるんで。それに村上先輩と仲良いでしょ。仲良く敵の大ボス…」

 

 

言いかけたタイミングで、階下から轟音が響いた。

 

 

「!、カゲさん。」

 

「チッ、わーったよ。終わったら俺とランク戦しろよ。」

 

「分かってますって。」

 

綾瀬川のその言葉を聞いた後、影浦は遠征艇目掛けて駆けた。

 

 

「じゃ、オレは上だな。任せるぞ、歌川、菊地原。」

 

「はい。お気をつけて。」

 

「…了解。」

 

 

──

 

『唐沢、こちら綾瀬川。基地内の近界民を2匹駆除。オレはこのまま上に行けばいいのか?』

 

綾瀬川が、唐沢に尋ねる。

 

『はい。敵もここで焦るでしょう。策を打ってくるとすればここです。なのでトドメを刺します。』

 

『…確認だが下は大丈夫なのか?』

 

『問題ありませんよ。戦場が狭い分これ以上メンバーが増えると動きづらいでしょう。特に攻撃手は。』

 

『なるほど。』

 

唐沢の言葉に綾瀬川は納得する。

 

 

『それでは…

 

 

…幕引きと行きましょうか。』

 

 

そう言って唐沢は笑みを浮かべた。




綾瀬川トリガーセット

メイン:弧月、旋空、バイパー、シールド
サブ:バイパー、エスクード、バッグワーム、シールド




綾瀬川くんの得意なトリガー順(攻撃用)

1位 弧月
2位 アステロイド(ハンドガン)
3位 スコーピオン
4位 アステロイド(キューブ)
5位 バイパー
6位 スイッチボックス
7位 イーグレット

それ以外はトントンです。


…リアルタイムで弾道引いといてバイパー5位?
…ノールック狙撃できて7位?

なんだこいつ。



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ガロプラ④

お待たせしました。


ボーダー本部基地北東

基地目掛けてなだれ込んで来る人型トリオン兵「アイドラ」。

その動きに変化があった。

 

 

「!」

 

多くいるアイドラのうちの2体。

明らかに動きの違うアイドラが出てくる。

 

 

「敵トリオン兵の色が変わった。」

 

唐沢の隣でモニタリングをしていた天羽がそう呟く。

 

 

その2体は防衛の主力となっている、榎沢、忍田に明らかに狙いを定めており、他のアイドラを盾にしながら襲いかかる。

 

 

「なるほど。想像していたうちの一手…ですね。」

 

 

──

 

「!、榎沢くん。」

 

「あー、嫌な予感したんだよね。」

 

忍田の言葉に榎沢はそう言って、アイドラの攻撃を避ける。

 

榎沢の持つサイドエフェクト「超直感」。

そのサイドエフェクトにより、榎沢は敵の変化を察知していた。

 

 

「ま、ちょっと強くなったからって変わらないよね?本ぶちょー。」

 

「当然だ。」

 

 

榎沢は榎沢に狙いを定めたアイドラに、ガトリング砲を向ける。

忍田も同様に、多角的な攻撃ではなく、忍田を狙うアイドラに狙いを定めた。

 

 

当然そうなれば、他のアイドラからの攻撃は捌けない。

しかし、他の部隊がそれを許さない。

すぐさま援護に入り、1対1の状況を作り出す。

 

 

「ハウンド。」

 

「旋空弧月。」

 

 

ボーダー屈指の実力者である榎沢と忍田。

仕留めるのに、2手目は必要なかった。

 

 

「ま、B級下位が中位くらいになった感じ?」

 

 

そう言って榎沢は穴だらけになったアイドラを蹴飛ばす。

 

 

『まだですよ、榎沢さん。天羽くん曰く…色が移りました。

 

 

…また来ますよ。』

 

 

その言葉に、榎沢はレーダーを見て明らかに動きの違うアイドラに視線を向けた。

 

 

「…面倒くさ。」

 

そう言って榎沢はトリオンキューブを生成する。

 

『ただ倒すだけでは駄目ですよ、榎沢さん。おそらくまた色が移ります。』

 

『なんで分かんの?』

 

『勘ですよ。おそらく近界民が操縦しているのでは?』

 

『はぁ?2匹いんだけど?』

 

榎沢が呆れたようにそう言った。

 

『おや?私はできますよ?』

 

『うっざ。…で?じゃあどうする訳?』

 

その答えには榎沢だけでなく、全隊員が耳を傾ける。

 

『とりあえず様子見で。倒して標的を失うよりは生かして留めて置く方がいいでしょう。…1体は柿崎隊が、もう1体は…そうですね、嵐山隊に任せたいところですが…中距離の火力は欲しい。…木虎さんと、黒江さんに任せましょうか。…やれますよね?木虎さん、黒江さん。』

 

『っ…見くびらないでください。』

 

『了解。』

 

 

木虎は唐沢の命令で動くのが癪なのか、不服そうに。

黒江は素直に頷いた。

柿崎隊も屋上で狙撃手を護衛している巴を除いて、柿崎と照屋が動き始める。

 

『基地内に侵入した近界民2匹は綾瀬川くんと影浦隊長により処理が完了しています。敵は焦っていますが、こちらは綾瀬川くんと言う最高戦力が浮いています。敵がどんな手を使ってこようと負けは無い。頼みましたよ。』

 

 

 

 

それだけ言うと唐沢は通信を切る。

 

 

「さて、問題はこっちですが…ま、問題という程のことはありませんね。」

 

 

唐沢はそう言って基地内、地下の戦闘に視線を移した。

 

 

──

 

ガロプラの遠征部隊、隊長のガトリン。

 

4対1で、ボーダートップ攻撃手4人の相手をしていた。

初手の風間のカメレオンによる奇襲により、左腕を失い、脇腹からトリオンが漏れているが、左腕は遠征艇を壊す用の大砲で賄う。

そしてガロプラの強化トリガー「処刑者(バシリッサ)」。

背中からの4本の刃で4人の攻撃を器用にいなす。

 

『思ったりよりしぶてーな。』

 

『あの女も忍田さんレベルって言ってたでしょ?』

 

飄々とそう言う太刀川に小南がツッコミを入れる。

 

『ブラックトリガーでもない限りあの大砲は連射はないだろう。畳み掛けるぞ。』

 

『次撃って来ても俺が止めます。』

 

風間の言葉に村上はレイガストを構え直す。

 

『上より早く終わらせてえな。綾瀬川には負けたくねえ。』

 

『は?何それ。幼稚ね。』

 

内部通信でそう話しながらも、ガトリンへの攻撃の手は緩めない。

 

 

淡々と着実に攻撃手4人の攻撃を捌くガトリンだったが、内心はかなり焦っていた。

目的が遠征艇であると何故かバレていたこと。

上に残してきた部下2人。

目の前の髭の男曰く、

 

 

「上の部下はいいのか?俺ら4人が束になっても勝てねえ奴とやり合ってるぞ?」

 

 

ブラフだと思えばそれまでなのだが、おそらく髭の男が言っているのはあの獰猛そうなブレード使い…

 

 

ではなく、一緒にいた曲がる弾を使う男の事なのだろう。

あの無機質な瞳は何故か忘れられなかった。

底知れない悪寒を覚えていた。

 

 

 

…そして、その悪寒は的中することになったのだ。

 

 

『すみません、ガトリン隊長。』

 

 

ラタリコフのその言葉。

ウェンとラタリコフ、そして副隊長コスケロの敗北。

 

 

「…」

 

ガトリンは諦めたように、目元を押さえる。

 

 

「…認めよう。我々は玄界を見くびっていたようだ。

 

 

…だが任務は遂行する。」

 

 

そう言ってガトリンは格納庫に大砲を向ける。

 

 

「!、村上!」

 

「了解!」

 

 

しかし、それはガトリンのブラフ。

銃口を下げると、格納庫に向けて距離を詰める。

村上と村上の援護に入った風間の動きを止める。

 

「通すわけないでしょ!」

 

「旋空弧月。」

 

 

それを通すほど、ボーダーのトップ攻撃手は甘くない。

 

小南の双月、太刀川の旋空弧月がガトリンを襲う。

 

ガトリンは処刑者でそれを受けると、またしても格納庫に銃口を向ける。

 

 

「チッ…!」

 

 

先程の大砲の威力を知っている太刀川と小南。

そのブラフは単発ではない威嚇力がある。

 

 

 

 

『時間稼ぎご苦労様でした。』

 

 

『あ?』

 

 

 

ガトリンの背後。

ガトリンが避けたトリオン反応があった位置に、冬島隊のエンブレムが現れる。

 

 

そこには、獰猛な笑みでスコーピオンを構えた影浦が立っていた。

 

 

「っ?!」

(ワープのトリガー…!!ただの罠ではなかったか…!)

 

ガトリンの両足を影浦のマンティスが切り落とす。

 

「ちっ、あの女…!」

 

崩れたガトリンに、太刀川、小南が切り掛る。

太刀川が処刑者の刃を抑え込むと、小南が素早く、ガトリンの腹部に切り込んだ。

 

 

「「!」」

 

小南の一撃はガトリンを真っ二つにする一撃だった。

しかし、ガロプラ遠征部隊の隊長の意地はここで終わることを許さなかった。

ガトリンは上半身だけになりながら、格納庫に銃口を向ける。

 

 

しかしそのタイミング。

影浦が、格納庫とガトリンの間に躍り出る。

 

 

「…鋼!俺の胸だ。

 

…止めなきゃぶっ殺す。」

 

 

影浦のサイドエフェクト「感情受信体質」。

ガトリンの前に出た影浦はサイドエフェクトにより、先読みした弾道を村上に伝える。

 

そのまま放たれた大砲は影浦を貫くと、村上のレイガスト、集中シールドに弾かれた。

 

 

「完敗だ。

 

 

 

 

…見事。」

 

 

影浦の緊急脱出と同時に、ガトリンのトリオン体も黒い光に飲み込まれた。

 

 

「これは…

 

 

…緊急脱出か?」

 

 

──

 

『綾瀬川隊員、影浦隊長が捕らえた近界民、並びに三輪隊が捕らえた近界民も反応消失!』

 

 

沢村の通信を聞いて唐沢は考え込む。

 

「緊急脱出…ですか。なるほど。大胆な動きの裏はこれでしたか。」

 

そう言って笑うと、今度は地上での戦闘に目を向ける。

 

 

 

『基地内部の戦闘は終わりました。あとは地上戦のみです。

 

 

…フフ、さあ、ご存分に。』

 

 

 

榎沢、忍田を主体に次々と削られるアイドラ。

動きを変えたアイドラも柿崎隊、そして木虎と黒江により抑えられている。

 

「倒す必要は無いですね。重要なのは他を狙わせないこと。韋駄天もトリオン消費が激しいので極力使いません。援護してくださいよ、木虎先輩。」

 

「!」

 

黒江はA級とは言え、13歳の中学1年。

B級中位から見ても、最年少。

センスはあるが、戦術や状況判断には乏しい印象であった。

しかし、今の黒江は違った。

周りを見て状況を理解し、自分のなすべきことをなそうとしている。

剣術も上がっている。

 

「…了解。援護は任せて。」

 

 

──

 

 

『これは…オレは必要なのか?唐沢。』

 

 

そう尋ねながら、怪物は弧月を抜きながら戦場へと歩を進める。

 

 

『言ったでしょう?トドメです。』

 

『了解。』

 

 

「!、綾瀬川先輩。」

 

綾瀬川に気付いた烏丸が声をかける。

 

「必要ないとは思うが…援護に来た。」

 

「助かります。」

 

その言葉を聞いて、綾瀬川はゆっくりと近界民の群れの中に歩いていく。

 

「!、綾瀬川くん。」

 

忍田がこれに気付く。

 

「!、センパイだ!」

 

榎沢の横を抜ける綾瀬川。

アイドラの群れは無防備に立つ綾瀬川に襲いかかる。

 

怪物はゆっくり目を細めると弧月を構える。

 

 

 

『さて、今度こそ。

 

 

 

…チェックメイト…ですね。綾瀬川くん。』

 

 

 

 

 

放たれる玄界最強の怪物の剣撃。

 

 

 

 

ガロプラの侵攻は、予知、知略、そして圧倒的な武力の前に完全敗走を喫することになった。

 

 

 

 

 

ガロプラ侵攻

 

 

ボーダー

死者 0人

重症 0人

軽傷 0人

行方不明 0人

緊急脱出 1人

 

 

 

近界民

死者 0人

捕虜 0人

緊急脱出 5人

 

 

 

 

特級戦功 

 

玉狛支部A級隊員

迅悠一

 

A級2位冬島隊

冬島慎次

 

 




かなり端折ってます。
ぶっちゃけ三輪隊VSコスケロは原作と変わらないのでw
その後とか、ヒュースの件は次回で。

特級戦功は原作通り迅と、大活躍だった冬島さんです。

双葉ちゃんは怪物に弟子入りしてたので成長してますね。


感想、評価等お待ちしております。


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ガロプラ⑤

遅くなりすんません。
Twitter見てくれた方は分かると思うんですがスマホ無くしてまして…。
見つかったんで投稿しやす。


ガロプラはこれで終わりです。


柿崎隊完璧万能手、綾瀬川清澄の介入により、基地を攻めるアイドラは次々と掃討されていく。

途中市街地に攻め入る動きもあったが、三輪隊の援護に向かっていた迅悠一が介入。

最後に残された人型近界民も、トリオン反応消失。

 

そして、

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

残されたアイドラの最後の1機も忍田により切り伏せられた。

 

 

 

『負傷者0、緊急脱出は1名ですが策の内。

 

 

…お見事です。綾瀬川くん。』

 

『…主力はここにいる隊員だろ。労う相手が違う。それにお前の指揮があっての事じゃないのか?』

 

『ふふ、お褒めの言葉をどうも。こう言えば綾瀬川くんが褒めてくださると思ったので。』

 

そう言って唐沢はクスリと笑った。

 

 

 

 

 

「双葉ちゃん。お疲れ様!」

 

そう黒江に話しかけたのは、木虎だった。

 

「…どうも。」

 

黒江は酷くぶっきらぼうにそう言った。

 

「!、ししょー!!」

 

その直後、遠くに綾瀬川の姿を捉え、黒江は韋駄天を起動。

文字通り一瞬で木虎の前から消え去って行った。

 

「え!?ちょ、双葉ちゃん!?」

 

木虎の声を他所に、黒江は綾瀬川の元へと消えた。

 

 

 

 

 

「ししょー!!」

 

「っ…と。」

 

綾瀬川の元に飛び込んできた黒江を、綾瀬川はひらりと避ける。

 

「お疲れ、双葉。…変なとこで韋駄天使うなよ…。」

 

「お疲れ様です。…なんで避けるんですか?」

 

「避けるだろ。韋駄天で突っ込んで来るな。」

 

そう言いながら綾瀬川は指で黒江の額を弾いた。

 

「大活躍だったみたいだな。」

 

「!、当然です!」

 

そう言って黒江は何かを求めるような視線を向ける。

 

「へいへい。」

 

綾瀬川は呆れたように黒江の頭を撫でた。

 

 

「よ、お疲れさん、清澄。」

 

黒江の頭を撫でる綾瀬川に後ろから柿崎が話しかけた。

 

「中での戦闘も圧勝だったみたいじゃねえか。さすがだな。」

 

「…どうも。」

 

綾瀬川を中心に続々と人が集まってくる。

 

 

 

「お前は行かねえのか?榎沢。」

 

その様子を遠くから見ていた榎沢に諏訪が話しかけた。

 

「…ねえ、質問なんだけどさ。」

 

「あ?」

 

「このトリオン兵何体くらいいたの?」

 

「何体ってそりゃ…100体くらいいたんじゃねえのか?」

 

「ふーん。…壊れたやつは全部開発室に持ってくの?」

 

「全部かどうかは知らねえけどな。如何せん数が多い。…なんでそんな事聞くんだよ?」

 

「ちょっとねー。あたしもセンパイんとこ行こー。

 

 

…センパーイ!!」

 

 

「?」

 

 

 

 

 

「ねぇ、邪魔なんだけど。金髪ツインテ。」

 

綾瀬川に労われている黒江を見て、榎沢は笑顔でそう言った。ただし、目は笑っていない。

 

「私が先にししょーと一緒にいたので。後からしゃしゃり出て来ないでくれますか?榎沢先輩。」

 

「はぁ?生意気じゃん。緊急脱出させたげよっか?」

 

「別に望むところですけど…?」

 

黒江に銃口を向ける榎沢に対して、黒江は弧月に手をかけた。

 

 

「「やめろ馬鹿。」」

 

 

榎沢には諏訪が。

黒江には綾瀬川がチョップを落とした。

 

 

 

「基地内での戦闘は滞りなく済んだようだな。綾瀬川くん。」

 

綾瀬川に話しかけたのは忍田だった。

 

「よくやってくれた。」

 

「どうも。…まあ城戸司令の命令なんで。」

 

そう言って綾瀬川は忍田の横を抜け、遠くにいた三輪に声をかけた。

 

 

 

 

「迅さんと連携したらしいな。玉狛はもう大丈夫なのか?」

 

「…好き嫌いの話じゃない。あの場面は迅を使うのが最善の策だっただけだ。」

 

「そうか。」

 

そう言って綾瀬川は三輪の隣に座る。

 

「敵の戦力的にオレは必要無かったかもな。何より唐沢の指揮があった。」

 

「ふん。

 

 

()に対して出し惜しみをする必要も無いだろう。」

 

 

 

「…そうだな。」

 

三輪の言葉に対して綾瀬川は一瞬目を見開くも、すぐに目を細めてそう返した。

 

 

「…近界民はやはり憎い。」

 

そんな綾瀬川を見て、三輪はそう切り出した。

 

「だから近界民は殺す。それは変わらない。」

 

そう言って三輪は立ち上がる。

 

「だが殺す近界民は選ぶ。お前も手伝ってくれ綾瀬川。」

 

「…ああ。それがお前の望みなら。」

 

綾瀬川は敵のトリガーで歩けなくなった三輪の肩に腕を回す。

 

「お前には無いのか?綾瀬川。」

 

三輪が目を伏せながら綾瀬川にそう言った。

 

「何がだ?」

 

「やりたい事…だ。俺の目的を手伝って貰うんだ。当然俺も手伝ってやる。」

 

そう話しながら本部に向けて歩く。

 

「…そうだな。教えてやってもいいが…

 

 

 

 

 

 

…オレに勝てたら…だな。」

 

 

 

──

 

『外のトリオン兵も掃討完了、近界民のトリオン反応も消えた。文句なしの俺らの勝ち…だな。

 

…だが納得いかねえな。なんで最後カゲをこっちに寄越しやがった?』

 

通信でそう尋ねたのは太刀川だった。

尋ねられた唐沢はその言葉に笑みを浮かべる。

 

『おや?勝てたのは影浦先輩のおかげでは?』

 

『そう言う問題じゃねえよ。』

 

『…別に太刀川さんの腕を疑った訳ではありません。…風間さん、小南さん、村上先輩も同様です。…私は使えるものを使っただけです。』

 

唐沢はそう言うと換装を解いて通信をスピーカーに切替える。

 

『私はこの作戦の指揮を任されている身ですので。初めての大きな仕事…それならばいい結果にしたかったんです。…まあ結果的に影浦先輩は緊急脱出してしまったので完勝とはいきませんでしたね。…残念です。』

 

そう言って唐沢は杖を手に立ち上がる。

 

『戦功が欲しいのなら私が城戸司令に相談してみましょうか?』

 

『あ?余計なお世話だ。』

 

『ふふ、では話は終わりですね。お疲れ様でした。』

 

そこで唐沢は通信を切った。

 

 

 

「…ちっ、いけ好かねえ女だぜ。」

 

「まあ結果的にカゲが居たおかげで遠征艇は守れましたからね。」

 

悪態を吐いた太刀川に村上がそうフォローを入れる。

 

「ああ。上の戦闘も圧勝だったと聞く。敵の緊急脱出という予想外の事態もあったが…この結果に大きく貢献しているのは唐沢の指揮だ。」

 

「…」

 

それは小南も分かっているのだろう。

風間の言葉に小南は不機嫌そうに黙る。

 

「唐沢有栖…か。」

 

風間は唐沢について調べていた。

ボーダーに入ったのは、義父である唐沢克己と同時期。

三輪や綾瀬川、自分も含めた古参メンバーよりも早い入隊。

だが、その存在を知ったのは大規模侵攻が終わって、唐沢が通信室の室長になってからだった。

前シーズン突如台頭した綾瀬川。

今シーズンは榎沢。

そして唐沢。

 

「…」

 

「?、風間さん?」

 

村上に話しかけられ、風間は我に返る。

 

「…考え事だ。…戻るぞ。」

 

「?…はい。」

 

 

──

 

「圧勝…か。清澄と一華がいる以上当然と言えば当然か。」

 

男は喜ぶでもなく、ただ淡々とそう言った。

 

「どうされますか?」

 

秘書のような男が尋ねた。

 

「ふん、従属国ごとき初めから期待などしていない。そう簡単に滅びるボーダーでは無いだろう。」

 

そう言って男は目を伏せる。

 

「今回の侵攻では収穫もあった。それに唐沢有栖の片鱗も見れた。」

 

「榎沢一華はどうされますか?未だに遊んでいるようですが…。」

 

「放っておけ。今行動を起こしてもどうせ失敗する。血鎖を使うには時期尚早だ。」

 

そう言うと男は立ち上がった。

 

 

 

「…近界なんぞに囚われているボーダーは最早不要だ。

 

 

…清澄諸共私の手で潰す。」

 

 

 

──

 

アフトクラトル従属国、ガロプラの侵攻は、内密に、短時間で終結した。

ボーダーの圧倒的勝利で。

 

当然その裏ではB級ランク戦が行われていた。

 

 

ROUND5中位夜の部

玉狛第二VS漆間隊VS香取隊VS那須隊

 

 

オレは試合の結果を任務中にスマホで知ることになる。

 

 

 

玉狛第二

 

三雲修 2P

空閑遊真 3P

雨取千佳 0P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

漆間隊

 

漆間恒 1P

 

合計 1P

 

 

香取隊

 

香取葉子 1P

若村麓郎 0P

三浦雄太 0P

 

合計 1P

 

 

那須隊

 

那須玲 1P

熊谷友子 0P

日浦茜 0P

 

合計 1P

 

 

 

 

 

 

…何かあった。




今後の大まかな展開ですが、ランク戦終わって遠征選抜…


…の前に、オリジナルストーリーを挟もうと思ってます。

榎沢とか、ホワイトルーム関係の。
よう実読んでないよって方でも読める話です。
てか、この作品自体よう実要素あんまねえしw
オリジナルですので賛否両論あると思いますがご理解いただけると幸いです。

感想、評価等お待ちしております。


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榎沢一華③

サボってすいません。
まじ暑すぎて筆が乗らないんすよw

あづいよ〜…ι(´Д`υ)


『清澄先輩、中位の結果見ました?』

 

アフトクラトル従属国、ガロプラの侵攻は終結。

しかし、警戒態勢は解けず、そのまま防衛任務をしていた柿崎隊。

 

オレにそう声をかけてきたのは、同じく柿崎隊の攻撃手、照屋文香だった。

 

「任務中にスマホ見るなよ。…玉狛の圧勝だったみたいだな。」

 

「清澄先輩も見てるじゃないですか。」

 

「たまたまな。…やけに玉狛に注目してるみたいだな。」

 

「空閑くんは弟弟子なので。」

 

「なるほど。」

 

文香と玉狛第二の空閑はどちらも玉狛第一の攻撃手、小南桐絵の弟子に当る。

 

…待てよ?確か小南はオレのことを勝手に弟子にしてたはず。

 

「…なあ、文香。」

 

「言いたいこと分かりますよ…。どっちでもいいんじゃないですか。」

 

 

──

 

B級ランク戦ROUND5中位夜の部を終えた玉狛第二。

漆間の奇襲、新戦術であるワイヤーを香取に逆に利用されるという誤算もあったものの、結果は圧勝。

 

しかし、三雲の顔は晴れなかった。

それは中位昼の部の結果を受けての事だった。

 

 

諏訪隊

 

 

諏訪 0P

堤 0P

笹森 1P

榎沢 4P

生存点+2P

 

合計 7P

 

 

 

弓場隊

 

 

弓場 2P

外岡 0P

帯島 1P

 

合計 3P

 

 

荒船隊

 

 

荒船 1P

穂刈 0P

半崎 0P

 

合計 1P

 

 

それにより順位は、

 

 

1位 柿崎隊 43P

2位 二宮隊 34P

3位 影浦隊 30P

4位 生駒隊 27P

5位 諏訪隊 27P

6位 玉狛第二 26P

7位 王子隊 22P

8位 鈴鳴第一 22P

9位 東隊 22P

10位 弓場隊 20P

11位 漆間隊 14P

12位 荒船隊 14P

13位 香取隊 13P

14位 那須隊 13P

 

 

ROUND5、中位で暴れた諏訪隊、玉狛第二は東隊そして鈴鳴を中位に蹴落とし、上位にくい込んできた。

 

それはいいのだが、それにより玉狛第二の次の相手は、

 

影浦隊VS諏訪隊VS玉狛第二VS王子隊の四つ巴対決となった。

中でも、今シーズン玉狛と並んで台風の目ともくされる、諏訪隊。

絶対的エースである榎沢一華の活躍により、一気に順位を上げた。

 

 

 

「ふーん、次の対戦相手…ね。…まず誰?」

 

三雲、そして隣にいる空閑にそう尋ねたのは、件の諏訪隊エース銃手、榎沢一華だった。

 

「すいません。僕は玉狛第二の三雲です。こっちは攻撃手の空閑。」

 

「どーもどーも。よろしく、えのさわせんぱい。」

 

「ああ、アホ毛ちゃんがいる所。」

 

「…アホ毛?千佳の事ですか?」

 

「?、誰?」

 

どうやら雨取のことでは無いらしい。

玉狛でアホ毛…。

三雲はもう1人空閑の師匠である、小南が思い当たる。

 

「…で?その玉狛がなんの用なの?もしかして次の試合負けてくださいってお願いしに来たとか?」

 

「違う違う。次の試合、すわ隊はうちとやるでしょ?その前におれとソロやろうよ。」

 

煽る榎沢に、空閑はそう切り出した。

 

「…ふーん、敵情視察ってやつ?」

 

「そうそう。てきじょうしさつ。」

 

「必死だね。A級でも目指してるの?」

 

榎沢が尋ねる。

 

「はい。

 

 

…僕達は遠征選抜入りを目標にしているので。」

 

──

 

ROUND5、そしてガロプラの侵攻の翌日。

三雲率いる玉狛第二の3人は、司令室へと足を運んでいた。

その目的はただ1つ。

 

アフトクラトルの捕虜、ヒュースのチーム入りを認めさせる為。

 

 

「私は賛成ですよ。城戸司令。」

 

城戸司令と答弁を繰り広げる中、透き通った声でそう言ったのは初めて見る、白い髪の少女だった。

 

「案内役もそうですが…玉狛第二に加わるという事はもちろん防衛任務に参加することになります。…人手はいくらあっても困りません。それにこの話は棚からぼたもちではないですか?城戸司令。」

 

「…良いだろう。特例としてヒュースの入隊を許可しよう。」

 

「!、ありがとうございます…!」

 

 

 

「…ただし、こちらからも条件がある。」

 

 

──

 

城戸の出した条件、それは雨取千佳を遠征に貸し出すこと。

それは玉狛第二が遠征選抜に選ばれずともだ。

そして玉狛第二が遠征選抜に選ばれるための条件、それは今シーズン、最終順位B級3位以上になることだった。

残り3試合。

 

時間が無かった。

 

 

 

「ふーん、遠征…ね。」

 

榎沢はそう言って笑みを浮かべる。

 

「…何がおかしいんですか?」

 

「別に馬鹿にした訳じゃないよ?随分先を見てるんだなーって。…明日どうなるかも分からないのに。」

 

いまいち掴みどころの分からない榎沢の言葉に、三雲は疑問符を浮かべる。

 

「冗談だってば。ソロね。別にいいよ。」

 

そう言うと榎沢は立ち上がる。

 

「どっちがやんの?メガネくん?」

 

「おれおれ。」

 

そう言って空閑は自分に指を指す。

 

「はいはい。5本先取?10本勝負?」

 

「10本で。」

 

 

──

 

「へえ、生駒さんが二宮さんを落としたのか。」

 

「うん。壁越しの旋空で。」

 

「あの人の壁越し旋空とか想像したくないんだが。」

 

「俺も同意見だけど綾瀬川も大概だからね…。」

 

個人戦の休憩中、辻はそう言ってジト目でオレを見る。

 

そうしていると、何やらブースの方が騒がしくなる。

 

「騒がしいね。」

 

「どうせまた太刀川さんと迅さんが個人戦するんだろ。」

 

「いや、太刀川隊は今防衛任務だよ。」

 

そう言って辻はモニターを注視する。

 

モニターにはこう記されていた。

 

空閑遊真VS榎沢一華

 

どちらも今シーズンから台頭したA級レベルのエース。

 

「へぇ、気になるし見に行こうよ。」

 

「そうだな。」

 

ランク戦ブースには試合開始を待っている多くの隊員が溢れかえっていた。

 

 

「おっ、綾瀬川じゃん。」

 

 

そう声をかけたのは三輪隊攻撃手、米屋陽介だった。

 

「いつもランク戦ブースにいるな、お前。学年末テストは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫大丈夫。秀次もお前もいるし。いざとなったら辻ちゃんがいる。」

 

「手伝わないからね…。」

 

辻は呆れたようにそう言った。

 

「…で?綾瀬川はどっち予想?」

 

辻がオレに尋ねる。

 

「空閑とやりやったことないからな…。何とも言えない。まあ向かい合っての試合形式だから有利なのは榎沢だろ。」

 

「空閑は強えよ。鋼さんや、カゲさんレベルだ。問題はどう近付くかだな。おっ、始まるぜ。」

 

 

──

 

空閑と榎沢は市街地の真ん中で向かい合う。

 

「んじゃ、はじめよっか。」

 

榎沢はポケットに手を入れたままそう言う。

 

「うん、よろしく。」

 

 

──個人ランク戦10本勝負…スタート。

 

 

機械音と同時に、榎沢はトリオンキューブを1つ生成、空閑はグラスホッパーで接敵する。

 

 

「ハウンド。」

 

接敵する空閑に6分割された威力重視のハウンドが襲いかかる。

しかし、空閑はグラスホッパーで巧みに避けると、榎沢に接近、スコーピオンで切りかかった。

 

「おっと。グラスホッパー上手いね、シロくん。」

 

榎沢は上体を仰け反らせて避けると、空閑の腹を蹴り飛ばすと、ハンドガンを抜いて、空閑目掛けて発砲。

空閑はシールドで受けながら体勢を整えると再びグラスホッパーを展開。

榎沢に接近する。

 

そして、乱反射の動きで榎沢を翻弄すると、胸を切り裂いた。

 

「おー、ほんと上手いね。目で追えないや。」

 

そのまま榎沢は緊急脱出。

先制したのは空閑だった。

 

 

──

 

「おお、白チビが1本先制したな。」

 

「グラスホッパー上手いな。下手すれば駿以上じゃないか?」

 

オレはそう分析する。

だが、

 

「…様子見か。」

 

「お、お前もそう思う?」

 

──

 

「へえ、やるねー。胸盛りちゃんよりずっと強いよ、シロくん。」

 

「そりゃどーも。でもえのさわせんぱいもまだこんなもんじゃないでしょ?」

 

「んふふ、可愛くないなー。」

 

そう言って榎沢はハンドガンを構える。

 

──2本目スタート。

 

2人は同時に駆け出した。

 

 

 

──

 

「4-0で空閑くんリードか。開いてきたね。」

 

「…同じパターンだなー。白チビが近づいて乱反射。対応出来ずに榎沢が落ちてる。」

 

辻の言葉に米屋はそう分析した。

 

「流石…煽るのが上手いな…。」

 

「?、どういう意味?」

 

「…見てれば分かる。」

 

──

 

「いやー、参った。強いねーシロくん。」

 

「ねえ、これどう言うつもり?」

 

ヘラヘラと空閑を褒める榎沢に空閑が尋ねた。

 

「何が?」

 

「えのさわせんぱいまだサブ使ってないでしょ。」

 

空閑は目を細めてそう言った。

 

「?、そうだけど?」

 

「なんで使わないの?」

 

「必要ないかなーって。」

 

「ふーん、でもこのままじゃ負けるよ?えのさわせんぱい。」

 

空閑はそう言ってグラスホッパーで榎沢と距離を詰める。

 

「アハハ、そりゃないっしょー。

 

 

…もう慣れたし。」

 

 

そう言って榎沢は、空閑のスコーピオンを避けると、そのまま腕を掴む。

 

「!」

 

そして、背負い投げの要領で、地面に叩きつける。

 

「まだまだこれからでしょ。それとももっとハンデ欲しい?」

 

 

そう言って榎沢は空閑の額にハンドガンを押し付ける。

 

「なるほど、ここからって訳ね。」

 

 

諏訪隊の怪物が空閑に牙を向いた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象(榎沢)

三雲修→同期。警戒。
空閑遊真→初めまして。ランク戦やろーよ。

三雲修←メガネ。同期(なんだー。)
空閑遊真←シロくん。グラスホッパー上手いね〜。


新たにアンケート取ります。

次の更新は明後日か明明後日の夜〜深夜になると思われます。
サボりません。

感想、評価等お待ちしております。


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無機質なボーダー隊員の日常⑮

遅くなりすみません。
ちょっと筆乗らなくて…。



──砕けろ、『鏡○水月』


という訳で前回の話のB級2位は実はB級3位でした。



…っていう冗談は置いといて、前回の話の玉狛の今シーズンの目標、投稿した時はB級2位にしてたんですけど、よく考えたら無理じゃね?って思って、感想でもTwitterのDMでもそう言った声がありまして…。
B級3位に修正しました。
無理やり二宮隊より上にするよりもこっちの方が書きやすいなーと。

皆さん私の完全催眠に引っかかったということで…。
何卒ご了承ください。


──いつから○花水月を使っていないと錯覚していた?


後、ヒュースの加入早めマース。


 

──4-1空閑リード

 

空閑を撃ち抜いた榎沢はファイティングポーズをとる。

 

「さ、まだまだここからでしょ。シロくんみたいに強い相手は二宮さんとやった時以来だからさ。もう少し楽しませて?」

 

「じゃ、お望みどーり。」

 

そう言って空閑はスコーピオンを伸ばす。

影浦の得意技、マンティスだ。

 

 

「っと…!」

 

榎沢は飛びながら避けると、ホルスターのハンドガンを弾く。

 

空閑はシールドを構えながら榎沢に近づいた。

 

 

「残念!」

 

榎沢はハンドガンを撃つ事無く、体勢を落とすと、空閑の懐に蹴りを入れる。

 

「っ…と。」

 

空閑は腕をクロスさせて受ける。

その隙に榎沢はトリオンキューブを生成。

ハウンドと同時に、空閑に飛びかかる。

 

「攻撃手の間合いでも強いんだよねー。あたし。」

 

榎沢は空閑のスコーピオンの刺突を貫かれるのを構わず、掌で受けるとそのまま空閑の腕を掴む。

 

「!」

 

そのまま足払いをかけると、榎沢が放ったハウンドが空閑に降り注いだ。

 

 

──

 

「強いね。体術だけで言えばボーダートップクラスじゃない?それこそ綾瀬川ともやり合えるくらいかな。」

 

辻はそう言って顎に手を当てる。

 

「いやいや、オレはあんなに動けないぞ?」

 

「「…」」

 

呆れたようにそう言う綾瀬川を米屋、辻はジト目で見ると、視線をモニターに移した。

 

「でも異常だろ、ありゃ。」

 

「異常?」

 

米屋の言葉に辻が尋ねた。

 

「ああ、つーか綾瀬川もそうだが…なんで武器より先に手と足が出んだよ。お前ら喧嘩慣れでもしてんの?」

 

米屋は呆れたように綾瀬川に尋ねた。

 

「榎沢は知らないが…オレはそう言うのじゃない。…単純に近距離は格闘の方が得意なだけだ。」

 

綾瀬川はさらに続ける。

 

「サブは空けといた方が狙撃にも対応出来る。それに空閑や駿のグラスホッパーは移動だけじゃなくて乱反射や、高速起動で敵を翻弄し隙を作るためのものだろ?」

 

「まあ攻撃手のサブやオプショントリガーは殆どはそんなもんだろ。」

 

「オレや…多分榎沢も同じだ。

 

…肉弾戦で崩れたところを獲物で仕留める…それだけでしかない。」

 

「そうなると…榎沢さんは勿体ないね。あれだけ肉弾戦ができるならスコーピオンの1つでも入れておけばグラスホッパーとの相性もいいと思うんだけど…。」

 

「確かに。あいつの攻撃手トリガーは見た事ねえな。まああれだけトリオン高くて体術も出来りゃハンドガン1つで近接も問題ないのかもしれねえけど。まず並の攻撃手じゃ近づけないだろーし。」

 

「…」

 

 

 

──

 

「ふむ…強いな…。」

 

4-2で依然空閑のリード。

しかし状況は芳しくない。

近接戦でも体術でスコーピオンを上手く捌かれる。

かと言ってマンティスで距離を取れば、火力の餌食だ。

マンティスとシールドは一緒に使えない。

 

勝機があるとすれば近接か。

 

だが榎沢は素手で捌ききれずとも、ある程度のダメージは無視してくる。

 

 

 

「さて、どの程度かな。」

 

 

空閑はグラスホッパーに足をかけ、榎沢のアステロイドを避けながら榎沢に切り込む。

榎沢は素手で空閑の腕を捌く。

 

 

「!」

 

 

途端、地面からブレードが伸びる。

モールクロー。

地面に潜らせたスコーピオンが、榎沢の足を縫い止める。

 

そのまま空閑の腕を掴んだ榎沢の腕を枝分かれしたスコーピオンが切り落とした。

 

モールクローと枝刃の組み合わせだった。

 

「っと、マジか。」

 

榎沢は片足で飛びのきながらトリオンキューブを分割。

ハウンドを放つ。

 

しかし空閑はグラスホッパーで縦横無尽に駆けながら榎沢に接近する。

 

 

「ちっ…。」

 

 

 

榎沢はサブでもハウンドを分割。

二宮直伝の変則フルアタックが空閑に襲いかかった。

 

 

「サブ、使ったね?えのさわせんぱい。」

 

「…」

 

 

そのまま榎沢の高火力に、空閑は為す術なく削られ、緊急脱出となった。

 

 

 

──4-3、空閑リード。

 

 

「サブトリガー使わなくても勝てるんじゃなかった?えのさわせんぱい?」

 

空閑は笑みを浮かべて榎沢を煽る。

 

「言ってくれるじゃん。…いいよ、認めてあげるシロくん。戦闘力、判断力、発想力…どれをとってもシロくんは強いよ。

 

 

 

 

…だから本気で叩き潰してあげる。」

 

 

そう言って榎沢はホルスターに手をかける。

 

 

 

「!」

 

 

 

次の瞬間には、空閑の体は蜂の巣にされていた。

 

 

 

「射程25m。伸びるスコーピオンがあっても届かない。シロくんの射程じゃ勝てないよ。」

 

 

「なるほど。こりゃ手強い。」

 

 

そして空閑は緊急脱出となった。

 

 

──

 

 

『個人ランク戦終了、6-4、勝者榎沢。』

 

 

「ありがと、えのさわせんぱい。完敗でした。」

 

空閑はそう言って唇を尖らせた。

 

「…ま、相性的に私が勝つでしょ。でも強かったよ、シロくん。で?メガネくんもやるの?」

 

「い、いえ、僕は…。」

 

三雲はそう言って冷や汗を浮かべる。

 

「ふーん。まあいいや。次うちとやるんだっけ?」

 

「はい。」

 

「ちょっと楽しみかも。じゃ、またねー。」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

 

 

 

「あれはやばいな。」

 

去って行く榎沢の背中を見て空閑がそう呟いた。

 

「ログで見た弓場隊の隊長よりは遅いけど…その分射程と火力がある。」

 

空閑はそう分析する。

 

「えのさわせんぱいの言う通り並の攻撃手じゃまず近付けない。それこそかげうらせんぱいでも厳しいと思う。」

 

「そこにグラスホッパーの機動力とハウンドか。手強いな…。」

 

 

 

「ま、火力に関しては新入りが何とかしてくれるでしょ。」

 

 

 

 

翌日、2月20日。

ROUND6の2日前。

 

そして、玉狛に新たに加入予定のヒュースの入隊日だ。

 

──

 

「まずは10本勝負でいいか?」

 

いつものようにランク戦ブースでオレは辻にそう尋ねる。

 

「うん。今日こそはバイパーを引きずり出すから。」

 

辻はそう返すと弧月の柄を撫でる。

 

 

 

「あっ!おーい辻せんぱーい!綾瀬川せんぱーい!」

 

 

ランク戦ブースの一室からオレと辻を呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「…奥寺の方だったか?」

 

「いや、コアラでしょ。」

 

呼んでいたのは東隊攻撃手、小荒井だった。

 

 

 

話を要約するとこうだった。

今日は入隊式らしく、そこで1日と経たずにB級に上がった隊員がいたらしい。

 

そこまでは分かる。

凄い事なのだろう。

 

問題はその隊員。

どう見ても玉狛が捕虜にしている近界民だった。

玉狛の新たなメンバーにでもするつもりだろうか。

 

「…あのメガネ頭大丈夫か…?」

 

「?」

 

ブースには小荒井の他に虎太郎、諏訪隊の笹森、香取隊の三浦がいた。

 

「お前も負けたのか?虎太郎。」

 

「はい…。1本しか取れませんでした。」

 

そう言って虎太郎は肩を落とす。

 

 

「…いや、まあ1本取れりゃ良いだろ。辻も終わったみたいだからな。」

 

5-3で近界民の勝利だった。

 

 

「悪い、ちょっと飲み物買ってくる。」

 

「あ、はい。」

 

 

 

 

虎太郎の分も一緒に飲み物を買って戻ると、何故か生駒が緊急脱出用のマットで正座していた。

ブレードのみの模擬戦で旋空を使って失格負けとなったらしい。

 

「生駒さんにも勝ったのか…。」

 

「あ、清澄先輩。」

 

戻ってきたオレに虎太郎が話しかける。

 

「ほら、これでいいか?」

 

そう言って虎太郎に飲み物を渡す。

 

「ありがとうございます。」

 

 

「お!きよぽんや!ええ所に。この新入りめっちゃ強いで!きよぽんもやりーや。」

 

 

「…なんでそんな嬉しそうなんですか。」

 

そう言いながらオレは噂の新入り、ヒュースに模擬戦の申請を送る。

 

 

 

──

 

「!…綾瀬川…。」

 

申請を受けたヒュースは目の前に表示された名前を見て反応する。

 

弧月 10200P

 

「柿崎隊のエースだね。強いよ。やってみれば?」

 

「…」

 

時枝の言葉にヒュースは少し考え込んだ後、申請を受理した。

 

 

──

 

「…なんで近界民がここにいるんだ…?」

 

オレは目の前の男にそう尋ねる。

 

「…」

 

しかし、目の前のヒュースは答える事無くオレに斬りかかった。

 

「っと…。」

 

さらに追撃をかけるヒュースの弧月をヒラヒラと避ける。

しかし、どんどんキレを増すヒュースの弧月はオレの胸を捉えた。

 

──1-0

 

 

「お、新入りが先制した!」

 

小荒井がそう声を上げる。

 

「様子見でしょ。綾瀬川、攻撃どころか弧月すら抜いてないよ。」

 

辻はそう言って画面を注視する。

 

──

 

「どう言うつもりだ?何故戦場で武器を持たない?」

 

戻ってきたオレにヒュースは開口一番に尋ねた。

 

「さあ?」

 

「そうか。」

 

そう言ってヒュースはオレに切り込む。

 

「でもまあお望み通り。」

 

そう言ってオレは逆手で弧月を抜く。

 

「…見た事のある剣だ。

 

 

 

…お前はヴィザの弟子か何かか?」

 

 

 

「!、貴様、何故それを?何故ヴィザ翁を知って…」

 

 

「お前もオレの質問に答えなかったろ?答えてやる義理はないな。それに…」

 

 

たじろいだヒュースに切り込み、ヒュースの腕を飛ばす。

 

 

「お前の言う通りここは戦場だ。気を抜くなよ。」

 

 

そう言ってオレは目を細めた。




榎沢一華トリガーセット

メイン:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド、グラスホッパー、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、ハウンド、バッグワーム、シールド

後、1話か2話日常やら何やら書いて、ROUND6に行くつもりです。


ダンガーとの模擬戦書くかも…?


暑いですねー。
かく言う私は一昨日熱中症になってしまいました。
気をつけてくださいね?←おま言う?

感想、評価等お待ちしております。


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ヒュース①

遅くなりすいません。
間違えて全部消しちゃって…。


入隊初日でB級へと上がった新人、ヒュース。

そしてB級最強、柿崎隊のエース、綾瀬川の模擬戦はヒュースのリードから幕を開けた。

しかし、ヒュースの内心は腕を落とされたことの焦り、そして師の名前を出した綾瀬川への疑念で満ちていた。

 

「ぶれたな。安い剣だ。」

 

「っ?!」

 

3度の鍔迫り合いの刹那、綾瀬川は腰を落としてヒュースのトリオン供給器官を切り裂いた。

 

1-1の互角。

綾瀬川がヒュースから1本取り返した。

 

 

「…」

 

戻って来たヒュースは目を閉じ、深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

 

「へぇ…。」

 

その様子を見て綾瀬川は素直に感心する。

 

 

「ヴィザの弟子というのは本当みたいだな。」

 

「黙れ。俺が揺らぐことはもう無い。」

 

「別にそんなつもりで言ったわけじゃないさ。」

 

そう言って綾瀬川は肩をすくめる。

 

 

 

 

落ち着け…こいつのペースに呑まれるな。

 

 

 

 

そう自分に言い聞かせ、ヒュースは目の前の敵に視線を向ける。

 

B級1位のエース、綾瀬川清澄。

遠征を目指す上で、1番の障害になると言われている男。

遠征は本国への切符。

すなわち、ヒュースにとって綾瀬川はアフトクラトルに帰る目的の上で1番の障害となるのだ。

 

無防備。

 

脱力した様に弧月を持ち、隙だらけで立つ綾瀬川。

 

「っ…?!」

 

しかし、綾瀬川の姿がぶれたかと思うと、次の瞬間には綾瀬川の弧月がヒュースの眼前に迫っていた。

ヒュースはギリギリで反応し、弧月で受け流す。

 

鍔迫り合いの末、綾瀬川の弧月を弾くとヒュースは弧月を構え直す。

そして、綾瀬川に切り込む。

 

下から振られたヒュースの弧月を綾瀬川は足で柄を押えて止めると、そのまま綾瀬川は横薙ぎに弧月を振るった。

 

「最初の一撃で仕留めたつもりだったんだがな。さすがはヴィザの弟子か。」

 

「ちっ…!」

 

間一髪で躱すが、ヒュースの頬からトリオンが漏れる。

今度は押さえられないよう、上から体重を乗せた振り。

 

綾瀬川は弧月を横に両手で持ち、受け止める。

 

 

そしてそのまま力を緩め、右に流した。

 

 

バランスを崩すヒュースに、綾瀬川は足払いをかける。

 

しかし、ヒュースは弧月を杖にし持ち直すと、片膝をつきながら振り下ろされた弧月を受ける。

そのまま綾瀬川の弧月を弾くと、綾瀬川に切り掛かる。

それを綾瀬川は当たらないギリギリで避けると、弧月を振ったことでがら空きになった脇腹に蹴りを入れた。

 

 

──

 

「さ、流石強いですね、綾瀬川先輩。」

 

観戦していた笹森がそう呟いた。

 

「俺の体感だけど…俺としては綾瀬川は太刀川さんよりやりにくい。ルーキーの剣は確かに強かったけど…綾瀬川には及ばない気がする。」

 

「せやなー。俺も最近勝てへんわ。」

 

 

──

 

 

試合は進み、今の戦況は、

 

 

3-1で綾瀬川リードの状況だった。

 

 

「これ以上続けても意味ないぞ?お前の剣はヴィザの剣と同じだ。あの爺さんの剣は嫌という程見たからな…。下位互換のお前の剣なんて目を瞑っていても避けられる。」

 

「見くびるなよ。まだ終わっていない。」

 

「はぁ…。

 

 

…4本くらいが丁度いいか。」

 

最後に綾瀬川はボソリとと呟くと、ヒュースの剣を受ける。

数回火花を散らした後、ヒュースは綾瀬川の剣に違和感を覚える。

 

 

先程までと比べて明らかに握りが緩い。

 

そして次の弧月同士の衝突の際に、綾瀬川は弧月を落とした。

 

 

好機。

 

ヒュースはその隙を見逃すはずもなく、綾瀬川のトリオン体を切り裂いた。

 

 

 

 

──模擬戦終了。5-4、勝者綾瀬川。

 

数分後。

綾瀬川の勝利で決着は付いた。

しかし、先程までの綾瀬川の圧勝とはならず、その後互いに緊急脱出を繰り返しつつ、綾瀬川の勝利となった。

 

 

「お前…。わざと握りを緩めたな…。」

 

先程の呟き。

ヒュースに聞こえたそれは空耳ではなかった。

 

「…さあ?なんの事やら。素直に自分の実力を認めたらどうだ?」

 

そう言って綾瀬川は肩を竦めた。

 

 

 

 

「さっすがきよぽんやなー!」

 

「ルーキーの方も惜しかった。」

 

戻ってきたオレに生駒は興奮気味にそう言ったり

 

「強いですね。本当にギリギリ勝てたって感じですね。」

 

綾瀬川はそう言ってヒュースに視線を向ける。

 

 

「ちっ…。」

 

ヒュースは心底嫌そうに綾瀬川から視線をずらした

 

 

 

「嫌われたか…?」

 

 

 

 

「なんだなんだ?楽しそうなことやってんな。」

 

そんな所に現れたのはA級1位太刀川隊攻撃手、太刀川慶。

攻撃手ランク1位、個人総合1位の男。

 

 

「俺も交ぜろ。」

 

 

──

 

「こいつかなり強いな。いきなり1本取られた。」

 

戻って来た太刀川は嬉しそうにそう言った。

 

 

 

「よー、ルーキー!お前超つえーな!何もんだ?!」

 

「戦ってくれてありがとね。」

 

そう言う小荒井と三浦。

 

「もうどのチーム入るか決めてんの?」

 

「まだならうちに来いようちに。」

 

「悪いが先約があるんでな…。」

 

ヒュースはそう言った後オレに視線を向けた。

 

「…」

 

数秒視線を交わした後、ヒュースは振り返り、ランク戦ブースを後にした。

 

 

「…うし!じゃあ次はお前だな、綾瀬川。」

 

太刀川は好戦的な笑みでオレに肩を組む。

 

「離してください。」

 

そう言ってオレは太刀川の腕を振り払った。

 

「ちぇっ、てめえがどうせやってくれねえのは分かってたよ。辻、10本やろうぜ。」

 

そう言いながら辻の方に歩く。

 

 

「…別にやらないとは言ってないでしょ。」

 

 

オレのその言葉を聞いて太刀川は足を止める。

 

「あ?」

 

「やってもいいですよ。本気で。」

 

そう言いながらオレは弧月の柄を撫でる。

 

「…はっ!どう言う心境の変化だ?そりゃ。何を企んでやがる。」

 

「何も企んでなんかいませんよ。…そうですね、さっきのヒュースとの模擬戦に倣ってブレードのみでどうですか?」

 

綾瀬川に疑いの目を向ける太刀川に、綾瀬川は淡々とそう返した。

 

 

 

 

 

「…おもしれぇ。」

 

そう言ってNO.1攻撃手、太刀川慶は好戦的な笑みを浮かべた。

 

──

 

太刀川慶にとって綾瀬川清澄は、因縁の相手だった。

綾瀬川本人は認めないが、太刀川は過去、綾瀬川に大敗を喫している。

 

 

「この場だから聞くがよ…マジでどう言うつもりだ?」

 

 

仮想空間の市街地。

太刀川は目の前の綾瀬川に問いかけた。

 

「…」

 

「ま、なんでもいいか。せっかくやる気になったんだからな…。

 

 

 

…楽しませてもらうぜ。」

 

そう言って太刀川は弧月を抜き、綾瀬川に斬りかかった。

 

 

綾瀬川も弧月を抜き、太刀川の剣を受けるか避けながら後ろに下がる。

 

 

──

 

ランク戦ブース

 

「嵐山さん、狙撃手志望の隊員の案内終わりました。…なんの騒ぎですか?」

 

今日は入隊式。

その案内を担っているのは嵐山隊。

嵐山隊エース万能手、木虎藍はざわついているランク戦ブースを見て、嵐山に尋ねた。

 

「お疲れさん、木虎。見ればわかるさ。」

 

そう言って嵐山が指を指したモニター。

 

そこには弧月で切り合う綾瀬川と太刀川が映し出されていた。

 

 

「!、綾瀬川先輩…。」

 

「ブレードのみの5本勝負らしい。」

 

「…」

 

木虎は綾瀬川と模擬戦をし、負けを経験している。

そして、玉狛のブラックトリガーを巡った派閥争いの際、綾瀬川の本性、真の実力を知る。

 

綾瀬川が自分に無関心なのは分かっているが、木虎は綾瀬川をライバル視していた。

 

そのため木虎は2人の戦闘に食い入るように視線を向けた。

 

 

──

 

「おいてめぇ、本気の模擬戦だっつってんだろーが。」

 

依然、太刀川の猛攻は続いており、綾瀬川は防戦一方。

誰がどう見ても太刀川が有利な状況だった。

 

「ちっ…黙りかよ。またいつも見てーに逃げんのか?」

 

「…」

 

しかし、綾瀬川は何も言わずに太刀川の弧月を受ける。

 

「ちっ…。」

 

太刀川は攻撃の手をさらに速める。

 

綾瀬川のトリオン体はどんどん削れていき、綾瀬川はトリオン漏出過多で緊急脱出となった。

 

 

1-0で太刀川のリード。

 

 

「結局変わらずかよ。なんの意味があんだ?この時間。」

 

戻ってきた太刀川は綾瀬川に訪ねる。

 

 

「意味ならありますよ。インプットは大事ですから。」

 

「イン…なんだって?」

 

「まあ要するに…

 

 

…様子見はここまでです。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構え直す。

 

 

「別にオプション使っていいですよ。ハンデだ。」

 

「…ほざけ。」

 

 

そうしてボーダートップクラスの2人の弧月がもう一度火花を散らした。




各キャラからの評価&各キャラからの評価

ヒュース→こいつ…!
太刀川慶→ランク戦〜!

ヒュース←近界民。ヴィザと同じ剣。
太刀川慶←まじうるさい。戦闘狂。苦手。


次回は幕間かな。

感想、評価等お待ちしております。


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太刀川慶①

投稿します。
多分次くらいからランク戦に戻ると思われます。


 

「木虎は以前綾瀬川とランク戦してたな。」

 

綾瀬川VS太刀川。

ボーダートップクラスの弧月使い2人の模擬戦は、太刀川が先制。

2本目が始まる前、観戦していた嵐山は隣にいる木虎に尋ねた。

 

「…ええ。あの時はブレードのみではなかったですけど。」

 

「どうだった?」

 

「…強かったですよ。それこそこんな簡単に1本を許す強さじゃなかったです。…馬鹿にして…。どーせいつもの手抜きですよ。」

 

不貞腐れたようにそう言う木虎に、嵐山は苦笑いを浮かべる。

 

「今回もどう切り抜けるか考えてるだけじゃないですか?…時間の無駄ですよ。」

 

そう言って木虎は踵を返し、歩き出す。

 

 

「いや、待て木虎。」

 

その言葉に木虎は足を止める。

 

「やる気みたいだぞ。綾瀬川。」

 

そう言って嵐山は笑みを浮かべた。

 

 

──

 

「様子見はここまで…か。真面目なお前を期待していいってことか?そりゃ。」

 

「どう捉えて貰っても結構ですよ。まあ言うとすれば…別にオプション使ってもいいですよ。」

 

「あ?」

 

太刀川は目を細める。

 

「得意の弧月二刀流でもいい。オレも真面目にやるが…あんたも真面目にやれよ。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構える。

 

 

「ハッ…ほざけ。」

 

 

踏み込みは同時。

綾瀬川と太刀川の弧月がぶつかる。

弾き合ってもう一度。

次は弧月同士がぶつかる事無く、綾瀬川は上半身を仰け反らせ避けると、太刀川の懐に飛び込む。

 

 

 

 

「言ったろ?2本目使っていいって。」

 

「こっちも言っはずだろ?

 

 

…ほざけ。」

 

 

 

太刀川は綾瀬川が振った弧月をギリギリで避けるが、肩からトリオンが漏れる。

太刀川はお構い無しに、横薙に振るった弧月を綾瀬川目掛けて振り下ろす。

それを、右に避けると綾瀬川は振り下ろされた弧月を左足で地面に踏みつける。

 

 

「おっ?」

 

そのまま綾瀬川は右足で、太刀川の弧月の付け根を踏みつける。

綾瀬川の全体重が太刀川の弧月に乗り、太刀川は弧月を手放す。

 

 

「もう一度言う。2本目使っていいぞ?」

 

「ハッ…。うっせ。」

 

 

綾瀬川の弧月が太刀川を捉えた。

 

 

──

 

「凄いな、きよぽん。なんで太刀川さんの弧月あんなヒラヒラ避けれるん?」

 

「サイドエフェクトでしょ。」

 

辻が生駒にそう言う。

 

「きよぽんのサイドエフェクト、俺知らんわ。」

 

「俺もぶっちゃけよく分からないっす。」

 

生駒に続いて、小荒井もそう言って口を尖らせた。

 

「まあ別に綾瀬川は言ってもいいって言ってたし言うけど…綾瀬川のサイドエフェクトは『情報の調律』だね。」

 

「「ちょうりつ?」」

 

生駒、小荒井の声が被る。

 

「目、耳、肌、鼻、口…五感から伝わる情報を脳で取捨選択してる。」

 

「「しゅしゃせんたく?」」

 

「…要するに、情報を絞ってるって事。耳から聞こえる情報をシャットアウトして、視覚に絞ったり、逆もできる。」

 

「…それと綾瀬川先輩の回避能力になんの関係があるんでしょう?」

 

尋ねたのは笹森だった。

 

「…人間の脳が100パーセント使えない…ってのは知ってる?」

 

辻が笹森に尋ねる。

 

「?」

 

「人間は脳を約10パーセントしか使ってないって言われてる。…でも綾瀬川のサイドエフェクトを使えば別。視覚と嗅覚、聴覚なんかは同じ脳を使ってる。…後頭葉だね…そこを視覚だけでフル稼働できる。視覚以外の情報をシャットアウトできるから。ある一定の情報に絞ることで後頭葉で処理する情報を視覚に絞れるんだ。」

 

生駒、小荒井は既に着いていけずにいた。

 

「つまり…視覚に脳を集中することで…100パーセントに近いパフォーマンスを発揮できる。」

 

「つまり…?」

 

「…他の五感をシャットアウトする代わりに、綾瀬川は視覚の強化、聴覚の強化…菊地原くんと同じこともできるってこと。」

 

「っ…。」

 

笹森は息を飲む。

 

「回避能力の秘密は…?」

 

「あれは応用らしいよ。情報を微調整して絞ってる。情報ってのは五感だけじゃない。記憶もそうだ。過去の戦闘経験やログを戦闘中に記憶から持ってきて、視覚や、聴覚からの情報と併せて、相手の攻撃を予測する。それが綾瀬川の情報処理と合わされば…未来予知に等しい、未来演算になる。」

 

「なるほど…わからんわ。」

 

生駒はそう言って匙を投げた。

 

「聞いた俺もよく分かってないですよ。」

 

「そんな事可能なんですか…?」

 

笹森が尋ねた。

 

「可能なんでしょ。平気で俺の弧月の動き読んでくるし。…正直、本当に可能なのかは俺も分からないな。でも現に太刀川さんの太刀筋を見切り始めてる。ROUND4で俺の幻踊が通じたのは本当に奇跡だよ。綾瀬川が油断してたのと、幻踊を1度も見せたことが無かったから。…俺はこの勝負綾瀬川が勝つと思う。1本目で太刀川さんの太刀筋を見ちゃったから。ログも見てるだろうし。1度覚えられたらもう終わりだ。村上先輩のサイドエフェクトよりタチが悪いよ。詰み…だよ。

 

 

…あの怪物の前じゃね。」

 

──

 

「どうした?NO.1。手、抜いてるのか?」

 

綾瀬川に高速に、何度も振り下ろされる太刀川の剣撃。

それを綾瀬川は顔色一つ変えずに、弧月で受ける。

 

「っ…舐めんな、こっからだろーが…。」

 

鍔迫り合いの後、綾瀬川の弧月を上に弾き、がら空きのボディに、蹴りを入れる。

 

「へぇ、今までにない情報だ。」

 

綾瀬川は地面に手を着いて、一回転すると、着地して弧月を構える。

その時には太刀川は綾瀬川の懐に切り込んでいた。

 

 

「さすがNO.1ですね。」

 

 

そのまま綾瀬川のトリオン体は真っ二つに切り裂かれた。

 

 

 

──2-1、太刀川リード。

 

 

 

(こいつ…やっぱり…。)

「見てやがるな…?」

 

太刀川が綾瀬川に尋ねる。

 

「どんどん俺の剣が見切られ始めてやがる。後出しジャンケンでもしてやがんのか?…お前のサイドエフェクトか?」

 

「…ご名答。オレは今のあんたを知らない。過去数回の模擬戦の記憶とログの情報しかないからな…。盗ませてもらう。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構え直す。

 

「ハッ!そんなもんテメーが見切る前にぶった切りゃいいだけの話だろーが。」

 

太刀川は先程よりもギアをあげて綾瀬川に切り掛る。

 

 

 

 

 

「後、忘れがちなのは…綾瀬川はサイドエフェクト無しでも滅茶苦茶強い。剣術、体術…他のトリガーもボーダートップクラスじゃないかな。」

 

 

 

 

 

 

「っ…?!」

 

綾瀬川に切り込んだ太刀川。

しかし、綾瀬川は深く沈みこんで太刀川の弧月を避けると、そのままの体勢で、太刀川の足に切り込んだ。

 

「…ぶねえ…油断も隙もねえな…!」

 

太刀川は飛び退いて避けると弧月を綾瀬川に振り下ろす。

綾瀬川はそれを弧月で受け止めると、太刀川の腹に蹴りを入れる。

 

「ワンパターンなんだよ。」

 

太刀川はそれを左腕で受けて、衝撃を弱めると、横凪に弧月を振る。

 

 

「ワンパターンでいいんだよ。勝てるからな。」

 

 

綾瀬川は左から右へ振られた弧月を仰け反って避けると、そのまま太刀川の懐に潜り込み、弧月を持つ腕を掴む。

 

「っ?!」

 

「もうあんたの剣は当たらない。弧月が無くても避け切れる。」

 

太刀川に顔を近づけてそう言うと、太刀川と距離を取りながら、腕を切り落とした。

 

「利き手じゃない方でオレの弧月は捌けないだろ?」

 

 

「ヤロォ…。」

 

 

──

 

「綾瀬川が太刀川さんの剣に対応し始めたね。」

 

「やっぱり弧月1本じゃ勝てないっすかね〜。」

 

小荒井が口をとがらせてそう言う。

 

「太刀川さんは弧月1本でも十分強いやろ。現に俺より強いさっきの新入りに勝ち越してるやろ?」

 

生駒は居合の名手。

ボーダーでもトップクラスの弧月強いだ。

 

「多分これからもっと開く。これからだよ、綾瀬川が怖いのは。」

 

 

──

 

「っ…ハハッ…!」

 

──4-3、綾瀬川リード。

 

太刀川がリードしていた展開は一転し、綾瀬川が逆転を果たした。

そして、あと1ポイントで綾瀬川の勝利が確定する。

 

そんな状況でも太刀川は笑みを浮かべていた。

 

「つえーなぁ!綾瀬川!!」

 

そう言って太刀川は綾瀬川に切り込むが、鋭い突きに、肩を切り裂かれる。

 

「それだけ強くてなんで本気でやらねえんだよ?!」

 

太刀川は肩からトリオンが吹き出るのをお構い無しに突き進み、そのまま綾瀬川の腕を掴む。

 

「テメー程強かったら俺から総合1位の座だって奪えんだろーが…何で戦わねぇ…?」

 

乾いた笑みで綾瀬川に尋ねる。

 

「オレは生憎あんたと違って戦闘狂じゃないんですよ。」

 

「嘘だな…。テメーは戦いが好きだ。俺と同じだよ…。じゃなきゃこんなに強くねえだろーが!」

 

そういいながら太刀川は綾瀬川の腕を手繰り寄せ、弧月を振り下ろす。

しかし、綾瀬川は振り下ろされる弧月を、太刀川の腕を掴んで止める。

 

「お前の剣から伝わってくるぜ…強者を求める心の叫びが…。俺がその剣ごとぶった切ってやるよ…!」

 

綾瀬川はそのまま腕を手繰り寄せて、太刀川の顔に手を近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

「あんたじゃ無理だ。あんたにオレは葬れない。」

 

「っ?!」

 

 

 

 

間近で見る綾瀬川の無機質な瞳。

太刀川は息を飲む。

 

「ハッ…!」

 

しかし、すぐに笑みを浮かべて、綾瀬川に頭突きをする。

 

 

「見限ってんじゃねえよ馬鹿が。」

 

 

太刀川の剣を学習し、太刀川を圧倒する綾瀬川。

 

 

「俺だってテメーの剣とはあの時の敗戦から何度もイメージで戦ってんだよ。勝った気でいるんじゃねえよ。」

 

そんな綾瀬川に対して、そう言って太刀川は笑みを浮かべると、唇を舐める。

 

「お楽しみはまだまだこれからだろーが。余計なこと考えんな…。

 

 

 

…俺との戦いに集中しろ…俺との戦いを楽しみやがれ…!」

 

 

「!」

 

太刀川の剣撃は更にスピードを増し、鋭くなる。

 

 

綾瀬川は目を見開き、すぐに弧月で受け、飛び退くが、避けきれなかった弧月が、綾瀬川の腕を捉え、トリオンが漏れる。

 

 

 

「…なるほどな。ログや、記憶だけじゃ分からない事もあるらしい。」

 

 

 

そう言って綾瀬川は腕から漏れたトリオンを手で拭った。

 

「太刀川さん…

 

 

 

 

…あんたはオレに敗北を教えてくれるのか…?」

 

そう言って綾瀬川は無表情のまま、人差し指を立てると、挑発するように動かす。

 

それを見て、太刀川は怒りもせず、ただ好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

「…おもしれえ…!!」

 

 

 

そしてついに、勝敗を分ける一撃が振り下ろされる。

 

サイドエフェクトにより見切られた太刀川の弧月。

それらを避け、綾瀬川の弧月は太刀川の右腕を捉え、切り落とす。

だが、太刀川は左手に持ち替え、弧月を振る。

 

「終わりだ。そっちの腕でオレに勝てると思ってるのか?」

 

トリオンが漏れ、ボロボロの手。

指は数本落ち、握るのもままならなかった。

 

綾瀬川は手首から下を切り落とす。

 

 

 

 

「終わってねえよ、バーカ。」

 

「っ…ちっ…!」

 

太刀川は、肘の間で弧月をキャッチすると、綾瀬川に飛び込んだ。

 

正真正銘、最後の攻撃。

そしてお互いの弧月がぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

「ハハッ…

 

 

…アハハハハッ!!

 

 

 

…バケモンが。」

 

 

そのまま太刀川のトリオン体にひびが広がり始める。

 

 

 

「…猛獣(あんた)に言われたく無いな。」

 

そう言った後、ちぎれかけていた、綾瀬川の左腕が落ちた。

 

 

綾瀬川の左胸目掛けて迫る、太刀川の決死の刃を綾瀬川は弧月を持つ右手では間に合わないと判断し、左腕で外に逸らした。

その結果、左腕の伝達系は切断。

しかし、逸らすことに成功。

そのまま太刀川に弧月を振り下ろした。

 

 

 

「…楽しかったですよ、太刀川さん。」

 

「ハッ…だったら少しは表情変えやがれ、マネキン野郎。」

 

 

そのまま太刀川は光の道筋を残し、緊急脱出。

 

 

NO.1攻撃手VS怪物の模擬戦は、無機質な怪物の勝利で幕を閉じた。




各キャラからの印象&各キャラへの印象

太刀川慶→俺との戦いを楽しみやがれ。バケモン。
辻新之助→やってらんねー。いつか超える。友人。

太刀川慶←戦闘狂。強い。楽しかったのは割と本音。
辻新之助←ライバル。優秀な攻撃手。友人。


綾瀬川の未来演算とかのメカニズムはこんな感じです。
常人じゃ処理できません。

綾瀬川のことは歩くコンピューターだとでも思ってもらえればいいと思います。
高性能レンズ(目)とマイク(耳)付きの。
綾瀬川以外は多分使いこなせません。

感想、評価等お待ちしております。


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ROUND6に向けて

遅くなり申し訳ございません。


──5-3、模擬戦終了。勝者、綾瀬川。

 

 

そんな機械音が響き、モニターにも綾瀬川の勝利が表示された。

 

 

「本当に勝つとはな…。」

 

冷や汗を浮かべながら嵐山がそう言った。

 

「っ…。」

 

木虎は俯く。

 

分かっていた。

綾瀬川の本性を見たあの時から。

常人離れした技術。

そして何より、敵に対して一切の躊躇いを見せない冷酷さ。

自分が一方的にライバル視しているが、綾瀬川は自分など眼中に無いのだろう。

今の木虎が太刀川に勝つのは無理だ。

見せつけられた実力差。

 

「うえ?!まじで綾瀬川と太刀川さんやってるじゃねえか!」

 

「てかもう終わってない?!」

 

「まじかー…。」

 

そんな空気を壊すように、3馬鹿の間の抜けた声が響いた。

 

 

──

 

「おかえりなさい、清澄先輩。」

 

仮想空間から戻ってきたオレを労ったのは、虎太郎だった。

 

「…ああ。」

 

「本当に勝っちゃうなんて…さすが清澄先輩ですね!」

 

そう言って虎太郎は、無邪気に笑う。

 

可愛いやつだな。

 

「ま、ブレード1本縛りだからな。」

 

そう言ってオレは立ち上がると、虎太郎の頭を撫でる。

 

 

…目立ちすぎただろうな。

 

そう言ってオレはゆっくり部屋の扉を開けると、ランク戦ブースは多くの人間がごった返しており、オレと太刀川さんの戦闘を見て、興奮していた。

 

 

「虎太郎。オレは帰る。…伝言頼めるか?」

 

 

「はい?」

 

──

 

ゾワリと。

その何も映していない様な無機質な瞳を見た瞬間、全身の毛が逆立つような悪寒に襲われた。

 

その直後に、太刀川慶の身体は緊急脱出用のベッドに投げ出された。

 

「…ちっ…。」

 

舌打ちした後、太刀川慶はゆっくりと起き上がる。

 

「お疲れ様です。太刀川さん。」

 

「最後惜しかったっすねー!」

 

そんな太刀川の元に、笹森と小荒井が近付いてくる。

 

「太刀川さんに勝つなんてきよぽんやばいなー。次きよぽんの所とやるんやけど…どないしょ。」

 

「うちもですよ…。」

 

「うっしゃ、次は俺や。」

 

そう言って生駒は綾瀬川のいる部屋に、模擬戦の申請を送ろうとする。

 

「待て生駒。」

 

そんな生駒に太刀川が待ったをかけた。

 

 

「…もう一回俺がやる。」

 

「えー!ズルですやん!」

 

「やるったらやる。リベンジだぜ…。」

 

 

 

「あ、あのー…。」

 

そんな生駒と太刀川に恐る恐る話しかけたのは、綾瀬川と同じ部屋で観戦していた、巴虎太郎。

 

 

「清澄先輩帰っちゃったんですけど…。」

 

 

「「あ?」」

 

「で、伝言預かってて…。

 

 

 

…偶然だよ偶然。旋空やそれこそサブトリガーの弧月ありだったら太刀川さんが勝ってた。…だそうです。」

 

 

 

 

「…あ?」

 

──

 

 

『清澄先輩、今どこですか?』

 

虎太郎からの電話を取ると、虎太郎はヒソヒソ声でそう尋ねた。

 

『作戦室に向かってるが…何かあったのか?』

 

『太刀川さんが清澄先輩の事血眼で探してますよ。』

 

『は?伝言は?』

 

『伝えましたけど…怒るに決まってるじゃないですか。』

 

『…まじ?』

 

『まじです。生駒さんとか米屋先輩達も巻き込んで一緒に探して『おっ、虎太郎…電話の相手は綾瀬川か?』あっ、ちょ太刀川さ…』

 

虎太郎の声が遠くなる。

 

『よぉ、綾瀬川。何帰ってやがんだ?ああ?』

 

『いや、模擬戦終わったんで。』

 

『終わってねえよ。誰が1回なんて言ったんだ?』

 

『…』

 

これだから戦闘狂は…。

 

『これだから戦闘狂は。』

 

『あ?』

 

やべ、声に出てた。

 

『まあいいや。伝言預かったぜ?お望み通り次はフル装備でぶった切ってやるよ。みんなで探してるからよ…せいぜい逃げ切れよ。』

 

そう言って通話は切れた。

 

 

 

 

 

「おい、この近くで綾瀬川見なかったか…?」

 

 

そんな声が聞こえた気がして、オレは咄嗟に自販機の裏に隠れた。

米屋の声だ。

 

「綾瀬川ここ通んなかった?」

 

出水の声も聞こえる。

 

「おい、綾瀬川を見なかったか…?」

 

…ん?この声…

 

 

…二宮さんじゃないか?

 

 

 

「…どうやって釣ったんだ?」

 

 

「あっ!ししょー!!」

 

次の瞬間、自販機を指さして黒江が駆け寄ってくる。

 

「やべ…。」

 

そう言ってオレは駆け出す。

 

「!、ししょー!なんで逃げるんですか!!」

 

そんな声を他所に、オレは角を曲がる。

だって後ろに太刀川さんいるから。

二宮さんも走ってる。

レア過ぎて写真撮りたい。

 

 

 

曲がり角。

その先には何やら資料を持った、A級2位、冬島隊オペレーター、真木理佐が立っていた。

 

「丁度いいところに。これからあんたの所に行こうと思ってた。」

 

よく見ると、すぐ近くには冬島隊の作戦室が。

 

「今日こそは口説きおとしてやるから。逃がさないよ。」

 

「…聞いてやるから匿ってくれないか?」

 

「…はい?」

 

──

 

「よう、真木…。綾瀬川がどっちに行ったか分かるか…?」

 

太刀川は真木にそう尋ねた。

 

「…20歳にもなって廊下走り回るなんて…馬鹿じゃないの?」

 

その言葉は、太刀川の後ろにいた二宮にも刺さり、二宮は何も言えなくなる。

 

「さっきここ走って行ったよ。出口の方向だから帰ったんじゃないの。…あいつ何したの?」

 

「俺に勝ち逃げしやがったんだよ…ぶった斬る。」

 

「…へぇ…。ま、とにかくどこに行ったかは分からない。邪魔だから散ってくれる?」

 

 

 

 

「行ったよ、あの馬鹿共。」

 

「それには二宮さんも入ってるのか?」

 

太刀川達を見届けた後、冬島隊の作戦室に戻った真木に、綾瀬川はそう尋ねた。

 

「助かった…。」

 

「じゃあ約束通り。」

 

 

そう言って真木は綾瀬川の前に座り、資料を広げる。

 

「聞いてって貰うよ。あんた模擬戦で太刀川をボコったんだって?」

 

そう言って笑みを浮かべ、真木は髪を耳にかけた。

 

 

──

 

玉狛支部

 

「えー?!ヒュースくんもうB級になったの?!」

 

そう声を上げたのは、玉狛支部オペレーター、宇佐美栞だ。

 

「ああ。」

 

「すごいすごい!最速記録じゃない?」

 

「当然だ。…そのついでに何人かの正隊員と手合わせしてきた。」

 

「へえ、だれと?」

 

そう尋ねたのは空閑遊真。

 

「名前はうろ覚えだが、コアライ、ミウラ、ササモリ、トモエ、イコマとアヤセガワとタチカワだ。」

 

「結構戦ってきたね…。」

 

「む、あやせがわせんぱいと、たちかわさんとやってきたのか。」

 

「ああ。シオリ、アフトクラトルの遠征チームに老人の剣士がいただろう。」

 

ヒュースは宇佐美にそう尋ねた。

 

「戦ったのはアヤセガワか?」

 

「ヒュースくん、一応捕虜って自覚ある?ま、これくらいは誰でも知ってるからいいか。…そうだよ。」

 

「やはりか。」

 

そう言ってヒュースは考え込む。

 

「何かあったのか?」

 

三雲修が尋ねた。

 

「…俺の剣を見切っていた。」

 

「!」

 

「…問題ない。今回はあくまで手合わせ。下見だからな。…そっちはどうだったんだ?次の対戦相手…エノサワとの模擬戦は。」

 

ヒュースが空閑と三雲に尋ねた。

 

 

「完敗だったよ。6-4で俺の負け。」

 

そう言って空閑は口を尖らせる。

 

「攻撃手と榎沢ちゃんは相性悪いからねー。4本も取れたならすごいよ。」

 

宇佐美はそうフォローする。

 

「いやいや、前半はメインしか使ってなかったから…手、抜かれてた。4本取れたのはそのおかげ。最初からやる気だったら1本も取れてなかったかも。」

 

「ハンドガンでの早撃ちに、ハウンドが加わって手強くなったからねー。火力も二宮さん並みだし。」

 

「ROUND6まで時間が無い…。ヒュースもボーダーのトリガーに少しでも慣れておいてくれ。」

 

「無論だ。」

 

 

 

──

 

『皆さん、こんにちは!海老名隊オペレーターの武富桜子です!B級ランク戦ROUND6上位、昼の部!元気に実況していきたいと思います!』

 

あっという間に時は流れ、ROUND6当日がやって来た。

 

『実況席にはROUND5に引き続き、太刀川隊射手出水先輩、そして嵐山隊万能手の木虎隊員をお招きしております!』

 

『『どうぞよろしく。』』

 

『なになに、やっぱ木虎は綾瀬川のランク戦が気になる感じ?』

 

『…スケジュールが空いていただけです。』

 

木虎は出水の言葉をそう一蹴する。

 

『ROUND6上位昼の部は柿崎隊、二宮隊、生駒隊の三つ巴対決になります!解説のお2人から見て見所はどこだと思いますか?』

 

武富が尋ねる。

 

『ま、色々あるけど…柿崎隊と二宮隊の対決は気になるかな。二宮さんも柿崎隊…て言うか綾瀬川にはやられっぱなしだから柿崎隊から直接点を取りたいだろーし。』

 

『なるほど…。木虎隊員はどうでしょう?』

 

『私も概ね同じです。…そこに生駒隊がどう介入するかだと思います。』

 

『…なるほど。MAPの選択権は生駒隊にあります。果たしてどのMAPが選ばれるとでしょうか…!』

 

 

ガロプラを退けたボーダー。

そんなボーダーに、ランク戦の日常が戻って来た。

 

 

B級ランク戦ROUND6

 

昼の部 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊

 

夜の部 影浦隊VS諏訪隊VS玉狛第二VS王子隊

 




各キャラからの印象&各キャラへの印象

太刀川慶→勝ち逃げしやがって…ぶった斬る。
木虎藍→強い。ライバル視。
真木理佐→口説き落としてやる。

太刀川慶←戦闘狂。
木虎藍←何かいつも機嫌悪い。オレなんかした?
真木理佐←恩人。話は聞く。

ちなみに黒江は普通に師匠を見つけて声をかけただけ。
逃げられて泣いてると思います。


原作ではROUND6は玉狛は昼の部なのですが、マッチアップが変わったので、夜の部にしました。


感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND6 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊①


危ねー、1ヶ月空くとこだった。

え、えっと…その…


…ご、ごべーん!!

まあその…理由は色々あるんですけど…。


…言い訳にしかならないので止めときますw

言うとすれば日本にはいなかったです。


生駒隊作戦室

 

「…きよぽん…やばいな!」

 

開口一番、そう口にしたのは生駒隊隊長、生駒達人。

 

「え…?やばない?太刀川さんに勝ちよったで?」

 

「やばいっすね。」

 

生駒隊射手、水上敏志が短く返した。

 

「せやんな。ROUND5とか見た?カゲと鋼どっちも落としとったよな?」

 

「はい!2万回見ました!」

 

「嘘つけ。」

 

元気よく答えた生駒隊攻撃手、南沢海にツッコミを入れたのは生駒隊狙撃手、隠岐孝二。

 

「いや、強いのは分かってたんやけど…化け物過ぎひん?」

 

「…二宮隊もいますからね。マップどないします?」

 

柿崎隊の綾瀬川に夢中の生駒に、水上は呆れたように尋ねた。

 

 

「そら…あれやろ。…任すわ。好きに使ってや。」

 

そう言って生駒は自分に指さした。

 

 

「きよぽんとやれればどこでもええわ。」

 

 

──

 

二宮隊作戦室

 

「生駒隊が選んでくるのは『A』か『C』だろうな。狙撃手がいるのは生駒隊だけだ。そうなれば必然的に綾瀬川もイーグレットが選択肢に入る。」

 

二宮は開口一番そう言った。

 

「それを見越して他のマップを選んでくる可能性は?」

 

「…無くは無いな。だが俺が生駒隊なら『A』を選ぶ。」

 

辻の質問に二宮はそう返した。

 

「生駒隊の武器は2つ。生駒旋空とアドリブの対応力だ。唯一狙撃手がいる利点を生駒隊…水上が生かさない手はない。『B』や『D』は外れる。『C』は隠岐を活かすにはいいが…生駒とは相性が悪い。」

 

その直後、生駒隊によりマップは『市街地A』が選ばれる。

 

「読み通りか。」

 

そう言って二宮は立ち上がる。

 

 

「…行くぞ。」

 

「「了解。」」

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「「「…」」」

 

前シーズンの好調は続き、B級最強部隊として、今シーズン1位に君臨している柿崎隊。

しかし、試合前だと言うのに作戦室は異様な空気に包まれていた。

 

その要因は…

 

 

「な、なあオレのトリガーも「え?清澄先輩エンジニアもできるんでしょ?自分でやればいいじゃん。弾道解析だって真木先輩にやってもらえば?」」

 

「え?まだ怒ってるのか?」

 

「だ〜か〜ら〜…

 

 

 

 

…怒ってませんって。試合前にふざけないで貰っていいですか?」

 

 

事の発端は今朝。

柿崎隊の作戦室の机に無防備に広げられた資料。

 

それはA級2位冬島隊オペレーターの真木理佐が作成したものだった。

そこには、冬島隊に綾瀬川を加えることによるメリットや、逆にデメリット。

それをどう補うか、新フォーメーションなど、事細かに記されていた。

 

 

「清澄…お前…」

 

 

 

 

「「「なんで無防備に机の上にに広げとくん(だよ)((ですか))!!」」」

 

 

 

 

「?…見てたからですけど…。いや、適当に流すつもりだったんですけど結構考えられてたので…目を通さないのも失礼かなと。」

 

 

失言に次ぐ失言。

 

 

「…へえ…?」

 

 

「「「ひぃっ…」」」

 

「?…なんで真登華は怒ってるんだ?」

 

「えー?私超笑顔じゃないですかー。

 

 

 

…怒ってるように見えます?」

 

「そ、そうか。

 

 

…ならいいか。」

 

 

「「「良くねえよ。」」」

 

 

 

そうして今に至る。

 

 

「ふーん、清澄先輩と冬島さん2人のトラッパーで当真さんをサポートする戦術なんかもあるんだー。へー。清澄先輩を狙撃手にして2人の狙撃手で点を稼ぐ戦法だってー。へー。」

 

「お、怒ってるよな…?」

 

「しつこい。怒ってませんよ。先輩うるさい。」

 

「はい。」

 

 

もうすぐランク戦だと言うのにこの調子である。

 

 

 

『こ、虎太郎、文香。なんとかできるか?』

 

内部通話で柿崎が照屋と巴に話しかける。

 

『えっと…。』

 

巴はものすごいオーラを纏いながら綾瀬川を睨む宇井に目をやる。

 

『む、無理です…。』

 

そう言って巴は肩を落とした。

 

 

『私に任せてください。』

 

 

そういうと照屋は立ち上がり、宇井を連れて作戦室を後にする。

 

 

 

 

そして数秒後。

 

 

 

「みんな!絶対勝ちますよっ!」

 

 

…気合い充分の宇井が作戦室に戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

──何したんだ?!文香!!

 

 

 

 

 

「焚き付けただけです。」

 

 

──

 

『ここで生駒隊によりMAPは「市街地A」に決定されました!選ばれることの多い標準なMAPです!』

 

『選んだのは生駒隊だからなー。イコさんを活かそうって手だろ。』

 

『射線も程よく通りますし、唯一狙撃手のいる生駒隊にはいいマップだと思います。』

 

 

『なるほど!

 

…さて!各隊転送準備が整いました!

 

 

 

 

…転送開始!

 

 

 

 

 

 

…転送完了!MAP「市街地A」!

 

 

 

…時刻は「夜」!

 

…B級ランク戦ROUND6、上位昼の部、スタートです!』

 

 

──

 

「夜…か。」

 

そう言ってオレは空を見上げる。

 

選んだのは生駒隊。

やりにくいな。

考え無しの気まぐれの可能性もあれば、水上先輩の考えという可能性もある。

 

 

「…まあどうとでもなるか。」

 

そう言ってオレは合流すべく走り出した。

 

──

 

『転送と同時にレーダーから姿を消したのは、狙撃手の隠岐隊員!それ以外の隊員はそれぞれ合流に向けて走り出したという所でしょうか!…さて、今回のマップは「夜」という時間帯。どのような意図があると思われますか?』

 

武富が解説の2人に尋ねた。

 

『そーだなー…。選んだのは生駒隊だからなー。撹乱させるだけで特に意図は無いかもしれないし、なんか策があるのかもしれない。』

 

『…ROUND5で鈴鳴第一がマップを「夜」にした照明操作を行ってましたけど…市街地じゃ意味は無いですね。街灯もありますし。』

 

『なるほどー。』

 

『ま、イコさんを活かすにはいいかもな。暗闇の中壁越しに飛んでくる生駒旋空なんて恐怖だろ。』

 

『「生駒旋空」!生駒隊長の代名詞、最大射程40mを誇る旋空弧月ですね!』

 

出水の言葉に武富が補足する。

 

『…そうなると綾瀬川先輩にも警戒しないといけなくなりますね。』

 

そう言って木虎は考え込む。

 

『そうですね。綾瀬川隊員も旋空を伸ばせるボーダートップクラスの旋空弧月使い。…しかし、射程は生駒隊長が若干上。有利なのは生駒隊長でしょうか?』

 

武富が出水に尋ねた。

 

『…うーん、俺はイコさんともやった事あるけど…やり辛いのは綾瀬川だなー。』

 

『と、言いますと?』

 

『まあこれは心理的にも物理的にもなんだが…イコさんは旋空が来るって分かるからな。旋空を警戒しとけばあとは近づけさせなきゃいい。現にその時の模擬戦は俺が勝ったし。』

 

出水はそう言って頭の後ろで腕を組む。

 

『旋空以外のパターンがある分綾瀬川の方がやり辛い。あいつ近距離でイーグレット出したりするからな…。』

 

『なるほどー。旋空で来ると分かっている分、旋空を警戒出来る。逆に綾瀬川隊員は何で来るか分からない分、意識を散らされる…という事ですね。』

 

『平たく言えばな。』

 

『…それは心理的…ですよね?出水先輩の言う物理的な理由と言うのは?』

 

木虎が出水に尋ねる。

 

『…うーん、いまいち説明が難しいんだが…体感、綾瀬川の旋空の方が避けづらいっつーか…。いつ飛んでくっか分かんねーんだよな…。』

 

『『?』』

 

頭をかいて説明する出水に武富と木虎は疑問符を浮かべる。

 

『…まあ見てりゃ分かる。…動くぜ。』

 

 

マップ東。

柿崎隊の柿崎、照屋が合流を果たす。

巴も合流を果たすベく東に走っていた。

 

マップの中央では二宮隊の犬飼、辻が合流。

北東からは、2人と合流すべく二宮が。

 

そしてマップの南では生駒隊の生駒、水上が合流。

近くでは、狙撃手の隠岐が目を光らせていた。

 

 

『位置的に、二宮隊と柿崎隊がやり合いそうだな。二宮さんはそのまま南に下りて、辻ちゃんと犬飼先輩で挟めるしな。』

 

『綾瀬川先輩の位置が悪いですね。転送位置がマップ西。合流するには隠岐先輩の射線を通らなきゃですし、運が悪ければ生駒隊とぶつかります。』

 

『おっと?ここで南沢隊員がバッグワームを着け西に向けて動きました。』

 

『ま、綾瀬川は明らかに浮いてるからなー。イコさんと水上先輩も西に動いてる。浮いた駒は落とそうって事だろ。南沢は先行だな。お、綾瀬川も察してバッグワーム着けたぜ。』

 

──

 

「…なあ、秀次。さっき弾バカが言ってた綾瀬川の旋空…お前はどう思う?」

 

観戦席。

試合を見守っている三輪隊の三輪、米屋。

米屋が隣に座る三輪に尋ねた。

 

「出水の言いたい事は分かる。綾瀬川の旋空が避け辛い理由も。綾瀬川の旋空には…」

 

 

 

──

 

『海!あんま先走んなや!』

 

南沢をそう制するのは、生駒隊オペレーター、細井真織。

 

『大丈夫っすよ!やばかったらグラスホッパーでそっこー逃げるんで。』

 

そう言って南沢は舌を出しながら走る。

 

『敵さんはバッグワームしてるで。気ぃつけや。』

 

『了解っす!』

 

そう言って南沢は駆ける。

 

 

そして、街灯の下に人影を捉えた。

 

 

「っ…やば!」

 

そこに居たのは柿崎隊完璧万能手、綾瀬川清澄。

 

『きよぽん先輩でした!!』

 

『やばいやん!はよ逃げ!』

 

『了解っす!』

 

そのタイミングで綾瀬川と目が合う。

 

「やべ…。」

 

南沢はバッグワームを解除。

グラスホッパーを展開する。

 

綾瀬川は手を腰の位置まで下げる。

 

次の瞬間には、南沢目掛けて、旋空が放たれていた。

 

 

 

いつの間にか逆手で振り抜かれた弧月。

綾瀬川の放った旋空はグラスホッパーで飛び上がった南沢の右足を切り飛ばした。

 

 

──

 

「綾瀬川の旋空には…予備動作が無い。」

 

「ヨビドーサ?」

 

三輪の言葉に、米屋は首を傾げた。

 

「生駒さんは…居合いを旋空に応用している。だからこそ、旋空を撃つ前に居合いの構えがある。他の旋空弧月使いも同じだ。当然だが旋空を撃つ前は振りかぶる。それが予備動作だ。…だが綾瀬川にはそれが無い。ノーモーションかつ、最速で放つためにそのままの体勢で、逆手で弧月を振り抜く。だから綾瀬川の旋空は避け辛い。ROUND1でも弓場さん相手に使っていた。出会い頭ならより有効だろう。」

 

「その間も他のトリガーも警戒しろってことだろ…?

 

…笑えねー…。」

 

 

──

 

「ちっ、避けられたか。」

 

 

『清澄先輩!』

 

「…ああ。」

 

綾瀬川はその場で飛び上がる。

 

 

次の瞬間、拡張された弧月が、綾瀬川の下を通り抜けた。

 

 

「ちょ、マジできよぽんやん。」

 

「4対1でも勝てるか分かりませんね。」

 

 

そこに、生駒、水上が合流する。

 

 

「…」

 

綾瀬川は2人を見据えると、右手、そして左手で弧月を構える。

 

 

「…ワクワクさせてくれるやんけ、きよぽん。

 

 

 

 

 

…二刀流かいな。」

 

 




綾瀬川清澄トリガーセット

メイン:弧月、旋空、スコーピオン、シールド
サブ:弧月、イーグレット、バッグワーム、シールド

攻撃手タイプのトリガーセットです。
とか言いつつ地味にイーグレット入れてんのクソゲー。


各キャラからの印象&各キャラへの印象

生駒達人→旋空仲間。ヤバない?
宇井真登華→怒ってませんよー?
出水公平→ランク戦仲間。化け物。

生駒達人←旋空仲間。おもろい。
宇井真登華←なんか最近怖い。ごめんて。
出水公平←ランク戦仲間。弾バカ。


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B級ランク戦ROUND6 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊②

遅くなりすいません。
そろそろ投稿ペース戻さないとなぁ…。


 

『南沢隊員のピンチに生駒隊のメンバーが集結!隠岐隊員を入れて4対1!圧倒的不利なこの状況、綾瀬川隊員は2本目の弧月を抜きました!』

 

『綾瀬川の二刀流か。…前シーズンのROUND3でちょっとやってたな。でもそれ以降じゃ個人ランク戦でも見たことねえ気がする。』

 

そう言って出水は顎に手を当て、笑みを浮かべる。

 

『…突拍子も無いことして…。生駒さんの剣術に勝てるんですか?』

 

木虎が尋ねる。

 

『…さあな。でもまあ…あいつは右左両手で弧月が使える。単純計算すりゃ…

 

 

…2倍だろ。』

 

 

 

──

 

『海!あんま詰めんなや!片足だけやろ?』

 

『了解っす!』

 

綾瀬川と鍔迫り合いしていた南沢がグラスホッパーで後ろに飛び退いた。

 

 

「旋空弧月。」

 

 

そこに生駒の旋空が放たれる。

綾瀬川は飛び上がり避ける。

 

『浮いたで、水上!』

 

「了解。アステ…ロイド!」

 

「…ハウンドか。」

 

「バレてるやん。」

 

水上のアステロイド改め、ハウンドは綾瀬川を追うように進路を変える。

 

綾瀬川は右手の弧月でそれを叩き落とす。

 

『隠岐!』

 

『りょーかい。』

 

遠くで戦場を見ていた隠岐は、飛び上がった綾瀬川の頭に照準を合わせる。

 

 

 

『清澄先輩、そこから45度。絶好の狙撃ポイントだよ。』

 

『助かる。』

 

綾瀬川は宇井の指定した位置に視線を向ける。

 

 

 

 

 

『!、アカン!アカンっすわ。きよぽんと目合いました。』

 

隠岐の放ったライトニング。

綾瀬川は首を動かし、最小限の動きで避ける。

 

『海!畳み掛けぇや!隙作ったら終わりやで!』

 

『了解ッス!』

 

着地した綾瀬川に、南沢がグラスホッパーで組み付く。

 

「片足でよくやるな。」

 

綾瀬川は南沢の弧月を受けながら、視線を南沢の足に落とした。

 

「っ…?!」

 

南沢は足への攻撃を警戒し、視線を落とす。

 

 

 

「ハズレだ。」

 

「!、やべ。」

 

綾瀬川の左手で持っていた弧月の光が消える。

 

そして、綾瀬川の右手の側面からスコーピオンが飛び出した

それは、南沢がの弧月を持っていた腕を切り飛ばす。

 

 

「1点目。」

 

 

「旋空弧月。」

 

 

南沢に弧月を振り下ろす前に、綾瀬川目掛けて旋空が放たれる。

南沢の頭上スレスレを通り抜けたそれは、綾瀬川に牙を剥く。

 

 

「ちっ…。」

 

綾瀬川は2本の弧月を重ね、後ろに飛びのきながら受ける。

 

 

「させるわけないやろ。」

 

ゴーグルの奥。

生駒の目がギラつく。

 

「4人もいるんだ。

 

…ハンデ下さいよ。」

 

そう言って綾瀬川は目を細める。

 

 

そして再び、綾瀬川と生駒の弧月がぶつかった。

 

 

 

──

 

『生駒隊の連撃炸裂!綾瀬川隊員、防戦一方か!』

 

『つってもあれで生き残ってるのがおかしいけどなー。』

 

出水は頭をかく。

 

『流石の回避能力ですね。』

 

木虎は少し悔しそうにそう言った。

 

『あいつの回避能力は相変わらずだが…やべえのは隠岐の位置見抜いて指示出したオペ…宇井ちゃんだろ。』

 

出水はそう言って目を細めた。

 

『現場とオペじゃ比較になんねーかもしれねえが…射線管理だけでいや全オペレーターどころか…綾瀬川以上じゃねえか?』

 

『!、おっと!ここでマップ東にも動きがあった!犬飼隊員と辻隊員が柿崎隊を急襲!』

 

『まずいな、二宮さんも来てる。』

 

 

──

 

「うお、迎撃態勢は十分って感じだね。」

 

柿崎隊の元にたどり着いた犬飼と辻。

そこには無数のエスクードが。

そして2人待ち構える様に照屋が立っていた。

右手に弧月。

左手にハンドガン。

臨戦態勢で照屋は目を細める。

 

「!、巴くんがいない。

 

 

 

…!、犬飼先輩!」

 

 

「どわっと!!」

 

横から飛び出した巴が振り下ろした弧月を、犬飼は既で避けると、アサルトライフルの銃口を向ける。

巴はグラスホッパーに足をかけると、シールドを構えながら飛び退いた。

 

「すいません、仕損じました。」

 

そう言って巴は照屋の隣に立つ。

 

「問題ないわ。でも、二宮さんが来る前にどちらか…出来れば両方落としたいわね。」

 

そう言う照屋だが、そう上手くは行かないことは分かっている。

どちらも元A級。

マスターランクの猛者だ。

 

「相性的に私が辻先輩の相手をするのが良いけれど…そうさせてはくれなそうね。」

 

目の前の辻は明らかに巴狙いだった。

 

『俺と文香で犬飼をやる。虎太郎は辻を引き付けてくれ。』

 

『了解です。』

 

その言葉と同時に、巴はバッグワームを羽織り、グラスホッパーで戦場から離脱する。

 

 

「!、辻ちゃん。」

 

『…誘われてますね。でも、このまま巴くんに潜まれると面倒です。』

 

『だよねー、奇襲も警戒しなきゃ行けなくなる。…これはめんどい。辻ちゃんが照屋ちゃんとやる?』

 

その問いに答えたのは隊長である二宮だった。

 

『バカを言うな。辻は巴を追え。犬飼は俺が到着するまで時間を稼げ。死ぬなよ、やれるな?』

 

『辻、了解。』

 

『はあ、しんど。やっぱそうなりますよね。…犬飼了解。』

 

──

 

『マップ東の柿崎隊VS二宮隊の戦闘は2手に分かれました!』

 

『まあ辻ちゃんは照屋ちゃんとは相性わりぃからなー。妥当っちゃ妥当だが…犬飼先輩の負担はでかくなる。』

 

『犬飼隊員がピンチということでしょうか?』

 

武富が出水に尋ねた。

 

『いや、ピンチって訳でもねえな。ザキさんの要塞…エスクードの弱点はなんだと思う?』

 

『?、消費トリオンが多いのと…動かせない…でしょうか?』

 

木虎がそう答える。

 

『そうだ、動かせねえ。だからこの状況で犬飼先輩がとるべき最善の策は…』

 

 

──

 

「じゃ、逃げるね。照屋ちゃん。」

 

犬飼はアサルトライフルを構えたまま照屋、柿崎から距離をとった。

 

「まともに戦うわけないでしょ。勝てる気しないし。」

 

「隊長!」

 

「ああ!」

 

照屋、柿崎はすぐさま犬飼の後を追う。

 

 

──

 

『ここで犬飼隊員が戦場から離脱!柿崎隊の2人が後を追う!』

 

『ま、そうなるわな。俺でもそうする。機動力なら照屋ちゃんの方が上だろうが…犬飼先輩はガードに徹して粘れば…

 

 

 

 

…逃げた先には絶対的なエースがいるって寸法だ。』

 

──

 

『ザキさん!文香!』

 

走っていた照屋と柿崎に宇井が待ったをかけた。

 

「ちっ…お出ましかよ…。」

 

柿崎、照屋が見上げた上空に無数の弾幕が映る。

柿崎はすぐさまエスクードを展開。

レイガストを構えた。

 

降り注ぐ弾幕を照屋を庇う様に柿崎が受け切る。

 

「いやー、助かりました。」

 

犬飼は飄々とそう言いながら、ナイトのように王の隣に立った。

 

「上出来だ。このまま蹴散らすぞ。」

 

「りょーかい。」

 

射手の王、二宮匡貴が柿崎隊の前に降臨した。

 

 

──

 

『ここで二宮隊長が柿崎隊の前に立ち塞がった!』

 

『やっぱこうなったかー。ROUND4じゃザキさんと照屋ちゃんの連携で二宮さんに勝ってるが…ありゃ綾瀬川のオペありきだ。それに今回は犬飼先輩もいる。二宮隊が有利だろうな。』

 

出水はそう見解する。

 

『二宮隊長の参戦で大ピンチ!柿崎隊、どう切り抜けるか…!』

 

 

──

 

『清澄先輩、二宮隊と交戦になっちゃった!こっち来れそう?』

 

『虎太郎は?』

 

『辻先輩を引き付けてくれてる。』

 

『なるほど。』

 

生駒の弧月を弧月で、水上の弾をシールドで受けながら綾瀬川は内部通話でそう返した。

 

『了解した。…すぐに向かう。

 

 

 

…ってことなんで…死なないでくださいよ、隊長、文香。』

 

『無茶言いやがるぜ…。

 

 

…ああ。』

 

『了解!』

 

 

「…」

 

生駒の弧月を受けながら、綾瀬川は息を大きく吸い、目を閉じる。

 

そしてゆっくりと開けられる目。

明らかに雰囲気の変わった綾瀬川に生駒は冷や汗を浮かべ、笑みを浮かべた。

 

 

「野暮用だ。」

 

「!」

 

綾瀬川は鍔迫り合いをしていた生駒の腹を蹴り、距離をとる。

 

「逃がさせへんで!俺と遊んでこうや。」

 

背中見せた綾瀬川を追いながら生駒は好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

──

 

「柿崎隊がB級最強…?ハッ、そりゃねえだろ。綾瀬川が居なきゃ上位にもなれないんじゃねえの?」

 

 

これはロビーで他の隊員が話していた事だった。

 

「分かる。特に隊長の柿崎さん。前シーズンのROUND2から得点なしだろ?いくら援護に特化したとは言えB級1位の隊長で無得点って…恥かしくないのかね。」

 

 

分かってる。

俺がB級1位に入れるのは清澄、文香、虎太郎、真登華のおかげだ。

分かってる。

隊長だって本当は清澄がやるべきだ。

俺みたいに優柔不断じゃない。

戦況を見抜く慧眼と判断力。

太刀川さんにも勝ち越す程の弧月の腕。

非の打ち所の無い、まさにボーダー最強の傑物。

そんな奴が俺の隊にいる。

 

 

「あーあ、うちにも綾瀬川先輩みたいなエースが運良く入ってこないかなー。」

 

「おいおい、そう言う事は本人の前で言うんじゃねえよ。」

 

そう言って俺はチョップを落とす。

 

 

「か、柿崎さん?!」

 

「ま、言いたいことは分かるけどよ…

 

 

 

…こんなんでも一応隊長なんだよ。」

 

「え、えっと…その…。」

 

 

「ま、要するに…

 

 

…うちは清澄だけじゃねえ。ROUND6、楽しみにしとけ。」

 

 

 

 

──

 

柿崎と照屋に降り注いだサラマンダー。

 

 

その中からシールドを固定した照屋とエスクード、そしてレイガストとシールドに守られた柿崎が。

 

 

「申し訳無いですけど清澄が着くまで時間稼ぎさせてもらいますよ。」

 

「出来ると思っているのか?」

 

そう言って二宮はトリオンキューブを分割する。

 

 

 

 

 

「出来ますよ。こう見えて俺は…

 

 

 

 

 

 

…古参なんで。」

 

 

そう言ってB級1位の隊長は白い歯を見せて大胆に吠えて見せた。




柿崎隊ROUND6トリガー構成

柿崎国治
メイン:レイガスト、スラスター、エスクード、シールド
サブ:レイガスト、ハウンド(アサルトライフル)、バッグワーム、シールド

照屋文香
メイン:弧月、旋空、メテオラ、シールド
サブ:スコーピオン、メテオラ(ハンドガン)、バッグワーム、シールド

巴虎太郎
メイン:アステロイド(ハンドガン)、弧月、グラスホッパー、シールド
サブ:ハウンド(ハンドガン)、グラスホッパー、バッグワーム、シールド


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B級ランク戦ROUND6 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊③

まあ早い方でしょ。
後、感想でご指摘頂きました。
虎太郎きゅんのトリガー構成ですが、
サブのアステロイド(ハンドガン)はバッグワームです。
アステロイドはメインに入ってるもんね。
修正してお詫び致します。


「…ギムレット。」

 

アステロイドとアステロイドの合成弾ギムレット。

守りを砕くのに特化した徹甲弾が柿崎のエスクードを容赦なく砕く。

 

「っ…エスクード!」

 

そう言って柿崎は地面に手を付き、追加でエスクードを生成する。

そして片手でアサルトライフルを空に放った。

 

「ハウンド!」

 

「おっと…。」

 

二宮に向けて曲げられたハウンドは犬飼のシールドに弾かれた。

その隙を突いて照屋が犬飼に切り込む。

 

「ちっ…。」

 

それを見た二宮はアステロイドを生成。

照屋目掛けて放つ。

照屋はシールドで受けると、すぐにエスクードの陰に身を潜めた。

 

──

 

『二宮隊長の高火力が炸裂!柿崎隊を追い詰める!』

 

『ま、確かに二宮隊が優勢だが…攻めあぐねてんな。』

 

出水はそう言って笑みを浮かべる。

 

『俺が二宮さんでもやりにくいな。』

 

『なんと言うか…陰湿…ですね。言葉を選ばずに言うと。』

 

木虎はそう言って目を細めた。

 

『まあ余裕はねえだろ。今は二宮さんも様子見って感じだ。ザキさんのトリオンにも限界がある。ザキさんが少しでも気を抜けば一気に崩されるぞ。』

 

──

 

『うわ、これはウザイ。まじで清澄くん来るまで粘る気ですよ、ザキさんと照屋ちゃん。』

 

『…氷見、綾瀬川の位置は?』

 

『はい、狙撃手の射線を考慮してか遠回りはしてますが…着実に迫ってきてます。綾瀬川くんの足を考えれば…10分程で到着するかと。』

 

『そうか。…分かった。』

 

そう言うと二宮は目を細め、トリオンキューブを生成。

 

『犬飼、照屋の注意を引け。まずは柿崎からだ。奴を崩せば照屋もそこまでだ。』

 

『りょーかい。』

 

そう言うと犬飼もトリオンキューブを分割する。

 

「ハウンド。」

 

二宮隊銃手、犬飼澄晴のトリオン量は二宮の陰で目立たないが、数値8とボーダーでも上澄みの数値を誇る。

照屋以上の数値だ。

照屋もそれを分かっていてか、犬飼のハウンドに意識を割かれる。

 

その間に二宮もトリオンキューブを分割。

威力重視の6発だ。

柿崎はエスクードの陰に隠れながら、レイガストを深く構える。

しかし、二宮は柿崎が威力重視のアステロイドを受けている間に、サブトリガーのアステロイドを分割。

今度は数重視。

二宮の得意とする変則フルアタックだ。

 

「!」

 

それを見た柿崎はサブトリガーでもレイガストを展開する。

メイン、サブのレイガスト、そしてエスクードを駆使して二宮の変則フルアタックを受ける。

 

「なるほど。本気らしいな。俺相手に時間稼ぎをするというのは。」

 

「清澄ばっかに良いカッコはさせられないんでね。」

 

柿崎はそう言って笑みを浮かべるが、虚勢だ。

割られる度に生成するエスクード。

加えてレイガストの持続した使用により、柿崎のトリオンは余裕が無い。

 

…だがこれでいい。

 

これが柿崎の仕事だ。

粘り強いなんて綺麗な言葉は使わない。

ただしつこく、陰湿にしぶとく。

二宮のトリオンキューブ分割の隙を狙って、柿崎はアサルトライフルでハウンドを放つ。

 

「ちっ…。」

 

二宮は変則フルアタックをやめて、サブのシールドでガード。

このまま時間を稼ぐ。

 

 

だが、柿崎の考えも長くは続かない。

割られたエスクード。

威力重視の弾が柿崎の脇腹を掠めた。

 

「っ…。」

 

掠めただけだが、柿崎の倍と言う高いトリオンを誇る二宮の威力重視のアステロイドだ。

掠めただけとは言え、二宮のそれは柿崎の脇腹を抉った。

 

「っ…。」

 

好機。

そう見た二宮はさらにトリオンキューブを分割する。

 

その時、遠くからではあるが、土煙が上がる。

 

『生駒さんの旋空だと思います。建物が崩壊したかと。』

 

氷見の通信を一瞬二宮は気に留めるが、攻撃を続行する。

生駒隊には機動力のある攻撃手、南沢、起動型狙撃手、隠岐、攻撃手トップの射程を持つ生駒、射手である水上が居る。

綾瀬川と言えど、そう簡単に撒ける相手では無い。

氷見が示した綾瀬川の位置もかなり離れていた。

故に、このまま押し切れると、二宮は確信していた。

 

 

 

1番初めに気付いたのは、オペレーターである氷見だった。

綾瀬川の位置が変わっていない。

そして、先程の建物の倒壊。

その位置から綾瀬川は不自然に移動せず、生駒隊の攻撃をいなしていた。

崩れたのは大きなアパートのような建物。

気になった氷見は辻をオペレートしつつ、マップの更新を行う。

 

『!、これって…二宮さん!』

 

 

 

 

『行ける?清澄先輩。』

 

『ああ。…流石だな。』

 

 

 

 

「…本当に…出来過ぎた後輩だぜ。」

 

「?」

 

柿崎の呟きの数秒後。

 

『二宮さん!』

 

氷見の叫ぶような通信が。

その瞬間二宮はとてつもない悪寒に襲われる。

 

柿崎が二宮と戦闘をしている位置。

そこから一軒家を超えると、そこはT字路になっていた。

そのT字路を進んだ先には、生駒の旋空により倒壊した建物が。

 

つまり、現在綾瀬川と二宮の間にある遮蔽物は、一軒家ただ1つということになる。

 

 

悪寒を感じた時には、時すでに遅し。

一軒家の窓が割れると、塀の隙間を縫って飛んできたイーグレットの弾が二宮のトリオン体を穿った。

 

「っ?!」

 

「言ったはずだぜ、俺の仕事は時間稼ぎだってよ…!」

 

「…ちっ…!」

 

──警告。トリオン漏出甚大。

 

機械音が二宮の命の灯火の小ささを告げる。

 

「あいつは負けず嫌いなんですよ。最初から二宮隊狙いみたいですよ。」

 

「…クソ…。」

 

その言葉は二宮から漏れてしまった本音だった。

 

──

 

「え?なんやきよぽん、今なんか撃たへんかった?」

 

鍔迫り合いの刹那、生駒がオレに尋ねた。

 

「気の所為でしょ。」

 

オレはそう言ってシラを切る。

 

「…ま、なんでもええか。でも…余所見はなしやで…!」

 

「ちっ…。」

 

いつもより気合い十分の生駒。

何より、射線を切ってもグラスホッパーで場所を変えてくる隠岐が煩わしかった。

 

「さすがに1対4は分が悪いか。」

 

「…なんかそれ嫌味に聞こえるんやけど。」

 

──

 

『すいません、二宮さん。綾瀬川くんの狙撃技術を見誤り、マップの更新が遅れました。…私のミスです。』

 

氷見の通信は酷く落ち込んだ声に二宮は聞こえた。

 

謝る氷見だが、これに関しては氷見のミスなどではない。

1人で4人を相手取りながら、民家の窓を2枚破って二宮を撃ち抜く。

綾瀬川の狙撃技術と宇井の射線コントロールがあってこそ為せる神業だった。

氷見のオペレーターとしての技術はB級トップだが、今回は全マップの殆どの射線を把握している宇井に軍配が上がった。

綾瀬川が不自然にその場所に留まっていたのは絶好のタイミングを待っていたという事。

 

(申し訳無いですけど清澄が着くまで時間稼ぎさせてもらいますよ。)

 

先程の柿崎のこの言葉自体がブラフ。

待っていたのは綾瀬川だった。

二宮がこの位置でシールドが使えないフルアタックを使うのを。

 

「なるほどな…全て計算づくか…。」

 

「俺の仕事はあくまで援護なんで。」

 

「っ…。」

 

 

──トリオン漏出過多。…緊急脱出。

 

 

そしてトリオン切れで二宮は緊急脱出。

 

この試合初の緊急脱出は二宮隊隊長、二宮だった。

 

──

 

『な、なんと!綾瀬川隊員の長距離スナイプが炸裂!!この試合初の緊急脱出はまさかまさかの二宮隊長?!』

 

武富が声を上げる。

 

『おいおい、1キロ近く離れてるぜ?それも片手かよ?!』

 

出水は信じられないというように口を開ける。

 

『な、何が起こったんでしょう?!』

 

『見ての通りだろ。邪魔なアパートがイコさんのおかげで無くなったからな…。後はタイミング見計らって窓抜き片手狙撃だな。…言ってて笑えてくんなー、長距離窓抜き片手狙撃って。スコープも見てねえぞ。』

 

出水は苦笑いを浮かべる。

 

『ルートを示したのは…宇井先輩でしょうか…?』

 

木虎がそう分析する。

 

『だろうなー。さすがにオペなきゃこの狙撃は出来ねえだろ。』

 

──

 

「アハハ…嘘でしょー?」

 

二宮の緊急脱出により、犬飼は1人残された形となり、照屋、柿崎と向き合う。

 

「辻ちゃんの所まで逃げ切れるかな…?」

 

そう言って犬飼はアサルトライフルを向けると後ろ向きに走り出した。

 

──

 

『清澄先輩、そっちに虎太郎が向かってるからもうちょい頑張ってねー。』

 

宇井の通信が綾瀬川に入る。

 

『了解。…悪かったな。』

 

綾瀬川は宇井に謝る。

 

『?、何が?』

 

『お前の表示してくれた射線より1ミリズレた。おかげで二宮さんの供給機官を撃ち抜けなかった。緊急脱出までタイムラグがあったからな。

 

 

 

 

…オレもまだまだだな。』




トリオン 7
攻撃 10
防御・援護 7
機動 6
技術 14
射程 13
指揮 5
特殊戦術 2
TOTAL 64

この試合での綾瀬川のパラメーターは多分こんな感じ。
綾瀬川が本気で狙撃手やればこんな芸当も出来ちゃいます。
こうしてボーダーにまた1人変態狙撃手が誕生しましたとさ。

そろそろアンケート取りますね。
幕間の。

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND6 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊④

セーフ!
1ヶ月空くとこだったぜ…!


ご、ごめんなしゃい…!




二宮隊作戦室

 

「…」

 

緊急脱出用のベッドに投げ出された二宮はゆっくりと起き上がる。

 

結果的にこの試合で最初の緊急脱出となってしまった。

あの距離を精確に狙撃出来る狙撃手はボーダーでも数少ない。

奈良坂や、精密狙撃に定評のある半崎など限られて来るだろう。

それを綾瀬川は生駒隊との戦闘の刹那、遮蔽物越しに狙撃して見せた。

ボーダーにこんな芸当ができる狙撃手はいないだろう。

 

「…辻と犬飼の様子はどうだ?」

 

二宮が氷見に尋ねる。

 

「犬飼先輩は後退、辻くんは巴くんを綾瀬川くんと合流させない様に立ち回っています。」

 

「…そうか。優先すべきは犬飼のオペレートだ。」

 

「了解。…すいません、二宮さん。私の「謝るな。」」

 

氷見の言葉を遮り、二宮はそう言って目を伏せる。

 

「奴を侮っていた俺のミスだ。…ちっ…。」

 

二宮は目を伏せながらそう言った。

 

「俺にはもうここから指揮することしかできない。…辻と犬飼を頼む。」

 

 

「…了解。」

 

二宮の言葉に氷見は深呼吸をした後、モニターに向き合った。

 

 

──

 

「…え?!二宮さん落ちたん?!」

 

生駒隊オペレーター、細井真織の通信を受けて生駒は驚きの声を上げる。

 

『さっきのきよぽんの狙撃っすね。…どないします?』

 

「どうもこうもないやろ。…ぶった斬るで、きよぽん。」

 

「りょーかい。2人消えてますよ、こっち来てる可能性高いです。気をつけて行きましょ。」

 

そう言って水上はトリオンキューブを生成する。

 

「りょーかい…!

 

 

 

…旋空弧月。」

 

 

──

 

生駒から放たれた旋空を飛び退いて避けながら、シールドを生成。

水上のアステロイドを受ける。

 

『虎太郎はどれくらいで着きそうだ?』

 

オレは真登華にそう尋ねる。

 

『すぐ着くよ。辻先輩は犬飼先輩の援護に向かったから。』

 

『文香と隊長に任せて問題ないな。辻は…文香がいるしな。』

 

『アハハ…。』

 

オレの言葉に真登華は苦笑いを浮かべる。

 

『…じゃあオレの相手は…海だな。』

 

オレと虎太郎の連携はグラスホッパーを用いた立体機動による戦闘。

同じグラスホッパー使いの南沢は邪魔になる。

 

鍔迫り合いをしていた生駒を蹴り飛ばすと、もう片方の弧月で南沢の弧月を受ける。

 

「満身創痍だな、海。…もうトリオンも少ないんじゃないか?」

 

南沢にそう声をかける。

 

「はい!死にそうッス!」

 

南沢は元気良くそう答えた。

 

「でも諦めないッスよ…!きよぽん先輩と戦うの楽しいんで…!」

 

そう言って南沢は舌を出して笑う。

 

「…そうか。」

 

「海!」

 

生駒の合図で南沢が飛び退くと、視界の先には弧月を構えた生駒が。

 

「旋空弧月。」

 

『清澄先輩!!』

 

生駒の旋空と同時に真登華の通信が入る。

表示された場所から、光の反射が。

 

隠岐か。

 

オレは旋空を跳んで避ける。

そしてこちらに向けて弾が放たれた。

 

「っ…と。」

 

オレは体を捻らせ避ける。

 

『っ…あらら…ホンマ宇井ちゃん嫌いになりそうやわ…。』

 

そう言って隠岐はイーグレットを下げて移動すべく走る。

 

「逃がすか。」

 

そう言ってオレは空中でイーグレットを片手で構える。

 

「させるわけないやろ。」

 

水上はオレにアステロイドを放つ。

 

そのアステロイドは2枚のシールドに阻まれた。

 

「ちっ…邪魔すんなや虎太郎…!」

 

「よくやった虎太郎。」

 

そう言ってオレは引き金に指をかける。

 

『隠岐!狙われてんで!』

 

細井の通信が隠岐に入る。

 

『全速力で逃げるわ…。』

 

 

──

 

水上は違和感を覚える。

隠岐はグラスホッパーを持っている。

トリオンも綾瀬川より高く、来ると分かっている狙撃は防げるだろう。

虎太郎も到着し、守りは一瞬であるが虎太郎に任せられるこの状況。

誰もが狙撃をするだろうと読めるこの状況。

全て綾瀬川の手の上にいる気がしてならなかった。

そして視界に映るのは腰に携えた弧月。

綾瀬川は片手で引き金を引こうとしている。

 

 

…利き手が空いている。

 

 

誰しもの視線はイーグレットに向いている。

しかし水上は見逃さなかった。

弧月へと下げられた綾瀬川の利き手を。

 

 

「アカン!旋空来ます…!」

 

その言葉の直後に、南沢目掛けて放たれる死神の鎌。

 

「どわっ!」

 

水上の声が無ければトリオン体は両断されていただろう。

 

「!…これを読んだのか。…さすが水上先輩だな…。だが…」

 

片足の南沢はバランスを崩す。

崩れた南沢の抜けた今、グラスホッパーを持った巴を上回る機動力の者は、この場にはいなかった。

 

 

「助かった、虎太郎。」

 

そのまま巴はグラスホッパーに足をかけ、南沢に切り込みそのトリオン体を切り裂いた。

 

「マジかいな…。」

 

隠岐は冷や汗を浮かべる。

 

『アカンで隠岐!綾瀬川まだ撃って来るで!』

 

「っ…?!」

 

放たれたイーグレット。

隠岐は集中シールドで防いだ。

 

 

 

「遅くなりました。」

 

そう言って巴は綾瀬川の隣に立つ。

 

「いや、ナイスタイミングだ。生駒隊の機動力は死んだ。…反撃するぞ。援護頼む。」

 

そう言って綾瀬川は弧月を構える。

 

「了解。」

 

巴のその言葉の直後、生駒隊を囲うように複数のグラスホッパーが展開される。

 

──

 

『ここで南沢隊員が緊急脱出!柿崎隊が早くも2点目を獲得!』

 

『狙撃しながら旋空とか…。』

 

出水は呆れながら言葉を失った。

 

『今の旋空…ノールックで撃って来ました。それも逆手で。出水先輩が言っていた綾瀬川先輩の旋空が避けづらいって…こういう事ですか?』

 

『…そうそう。いつ飛んで来るか分からねえんだよ。』

 

『なるほど…。』

 

木虎は考え込む。

 

『南沢隊員を落とした柿崎隊!そして巴隊員は四方にグラスホッパーを展開しました!』

 

『反撃開始…だな。来るぜ、虎太郎と綾瀬川の連携が。』

 

そう言って出水は視線をモニターに移した。

 

──

 

柿崎隊は綾瀬川が入るまでは一枚岩の連携が売りだった。

中・近距離に対応出来る3人が全方位に対応する。

それが綾瀬川が加わる前の柿崎隊。

しかし、綾瀬川が加わってからは別だ。

2人ずつに分かれた連携をよく見せている。

中でも、照屋と柿崎、綾瀬川と巴。

この2人ずつに分かれる機会が多い。

しかし、今シーズンは綾瀬川は単独で動く事が多かった。

だからこそ、綾瀬川が今シーズン味方の援護を受けて攻撃を仕掛けるのは稀有な事だった。

 

 

「っ…?!」

 

生駒の死角から繰り出される剣撃。

生駒はどうにか反応し弧月で受け止める。

綾瀬川はすぐに飛び退くと、そこに出現したグラスホッパーに足をかける。

そして今度は水上に切り掛る。

 

「っ…水上っ!」

 

生駒はどうにか反応し綾瀬川のスコーピオンを受ける。

 

そして綾瀬川はまた離脱。

もう一度グラスホッパーに足をかける。

 

(冗談きついで…!居合が得意なイコさんやなかったらとっくに落とされとる…!)

 

水上はトリオンキューブを分割し、巴を狙う。

 

綾瀬川は一瞬後ろに視線を向けて、サブのシールドを展開。

巴もサブでシールドを展開した。

 

(きよぽんは攻め、虎太郎は援護…そしてガードは分担かいな…。)

 

水上は冷や汗を浮かべ、目の前の2人に視線を向ける。

 

これがB級トップの連携。

 

『イコさん、どないします?』

 

「どうもこうもないやろ…。ここできよぽんにぶった斬られたら俺らの負け、俺らがきよぽんをぶった斬れば俺らの勝ちや…!」

 

そう言って生駒は目をギラつかせる。

 

「りょうか…「時間切れだ。」」

 

水上が答える前に、綾瀬川はそう言って後ろに視線を向ける。

 

その瞬間、建物は倒壊。

照屋の連撃を受ける二宮隊の2人が後ずさりながらやってくる。

 

「おっ、逃げきれた感じ?」

 

犬飼は苦笑いでそう言った。

辻も照屋から距離をとって弧月を構え直した。

 

 

 

 

最悪だ。

 

水上はこの状況を見て、内心で舌打ちをする。

乱戦になれば、点が取りやすい…とも言える。

 

だが違う。

水上が懸念していた事態が起きてしまった。

 

 

 

…この場に柿崎隊が4人揃ってしまった。

 

 

柿崎は地面に手を付き、エスクードを展開。

道を塞ぎ、二宮隊、生駒隊の退路を断つ。

 

 

「虎太郎はグラスホッパー、俺はトリオンが少ねえ、エスクードは控える。」

 

柿崎はそう言ってレイガストを構え直す。

 

「文香と清澄は好きに動け!…援護する。」

 

「「了解。」」

 

 

 

 

 

…今シーズン、綾瀬川は殆ど単独で動いている。

 

だからこそ、考えていなかった。

いや、考えないようにしていた脅威。

 

 

 

「冗談きついで…?虎太郎だけでも厄介やのに…。」

 

 

 

 

それは柿崎隊が今シーズン見せているB級トップの連携に怪物が加わるという事実。

 

 

 

1人ずつ落とされ、満身創痍の二宮隊と生駒隊。

そんな2部隊の前にB級最強の要塞が立ち塞がった。




マジな話遅くなり申し訳ございません。

大事な話しますね。
感想の返信なんかで察してくれた方もいるかもしれませんが、ちょっと長い事患っておりまして手術&入院しておりました。
元々、ハーメルンでの小説投稿もワートリ&よう実にハマったのも入院の暇つぶしみたいなものなんですよね。
まあ書き始めた頃は仕事もしてて、通院って感じだったんですけど。
今はもう仕事も辞め、治療に専念しております。
来月頃また手術があるんですが、今はなんとか落ち着いております。
病名は伏せますが、今行っているのは対症療法でして、この治療法もいつまでもつかは分かりません。
薬もあるのですが副作用もキツく、最近特に酷くなって来ました。
死期が近いんですかねw(←笑えない。)
お医者様からは治って来てる証拠!
と言ってもらっていますが、まあキツいことにはキツいですね。

…と、悲観しても意味は無いので止めます。

何が言いたいかと言うとなんとか生きてる状況ですので、書き続けられるうちは投稿致します。
病状の悪化に伴い、ここの所不定期も不定期になっておりました。

2ヶ月…ですかね…。

これ以上空いたらまあちょっとお察ししてもらえればと思います。
勝手に書き始めて、中途半端では終わりたくないし、我儘にはなりますが、ご理解頂けると幸いです。

あとがきに書くことじゃねえなw

感想、評価等お待ちしております。


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B級ランク戦ROUND6 柿崎隊VS二宮隊VS生駒隊⑤

まあ早い方では…?

前回のあとがきを読んでくださり、心配の声や、温かい声援をくださった読者様、ありがとうございます。
本当に励みになります。

生きることを諦めるつもりは毛頭ありません。
だって死にたくないしw
闘病は苦しいですが、励ましてくださった方や家族のためにもいくら惨めでも足掻こうと思います。
…とは言いつつも、どんどん抜けていく髪の毛や変色する爪に気落ちしている今日この頃ですw

ま、今は結構元気な方ですw

さて、決着ですね。


『ここで生駒隊に猛追をかける綾瀬川隊員、巴隊員の元に二宮隊の2人が乱入か!これにより柿崎隊の4人が合流する形となった!』

 

『こりゃ…かなりまずいな。』

 

出水はそう言って顎に手を当てた。

 

『二宮隊は弾幕を張れるエース、生駒隊はグラスホッパーを使える遊撃役が落ちてる。…ぶっちゃけ今の状態で柿崎隊の連携…それも綾瀬川が加わった連携に対処なんて出来ねえだろ…。』

 

出水は最悪の事態を想像し苦笑いを浮かべる。

 

『今シーズン多少の援護はあれど、綾瀬川隊員が本格的にチームメイトと連携するのは初めてな気がするのですが…。』

 

武富が出水に視線を向ける。

 

『そりゃまああいつは1人でも強ぇし、それに…下手な援護は逆効果だ。あいつの足を引っ張るだけだろ。』

 

今シーズン、生駒隊の水上だけではなく、他のB級部隊が恐れつつ、考えないようにしていた事態。

 

 

…すなわち、綾瀬川の連携への参加。

 

──

 

二宮隊にとってこの状況は狙い通りであった。

 

現状、綾瀬川を除いた1番強力な駒は生駒隊隊長、生駒達人である。

綾瀬川ではなく照屋でさえ、二宮隊の手にはあまっていた。

今シーズン腕を上げた辻も女性の克服には至っていない。

 

 

「ほんと辻ちゃん何しに来たの?」

 

犬飼がカラカラ笑いながら辻に尋ねる。

 

「う…すいません…。」

 

二宮が緊急脱出した直後、辻は犬飼を援護すべく巴の追跡を諦め、犬飼の元へ急行。

しかし柿崎隊には攻撃手3位にして、玉狛第一のエース小南桐絵の弟子であり、数少ないマスターランクの女性攻撃手、照屋文香がいる。

個人ポイントで言えば、綾瀬川との模擬戦の日々で鍛えられた辻の方が上。

しかし、相性は最悪。

それにより援護に来たは良いものの、牽制しつつ逃げる形になったのだ。

 

「うそうそ。」

 

どうにかここまで逃げきれたが、逃がされた感が否めない。

綾瀬川、巴と合流するために。

そんな嫌な予感もあってか、犬飼、作戦室で戦況を見ていた二宮の考えは一致していた。

柿崎隊の相手を生駒隊に押し付け離脱する。

バッグワームで潜みながら、奇襲で点を取る。

正直な話、二宮が落ちた今、二宮隊が点をとる手段は限られてくる。

理想は生駒隊が照屋を落としてくれる事。

そして綾瀬川を少しでも削ってくれる事。

 

1番の脅威は綾瀬川。

次いで生駒。

最善策は生駒を綾瀬川に当て、隙を見て離脱する事だろう。

 

「俺が退路を開きます。」

 

「お、照屋ちゃんから離れた途端強気だね。」

 

「ほっといて下さい。」

 

そう言って辻は旋空で退路を塞ぐエスクードを切り裂く。

 

 

 

 

「…旋空弧月。」

 

 

「「!」」

 

放たれたのは生駒と相対している綾瀬川から。

後ろ向きかつ、逆手から放たれた旋空は家屋を倒し、辻、犬飼の退路を再び塞ぐ。

そして綾瀬川は巴により目の前に展開されたグラスホッパーに足をかける。

 

「逃がさへんで!」

 

綾瀬川を追うように弧月を振りかぶった生駒の前に柿崎が躍り出る。

 

空中で一回転しながら綾瀬川は辻、犬飼の前に降り立った。

 

「ま、そう簡単には逃がしてくれないよね。」

 

犬飼は冷や汗を浮かべながらアサルトライフルを向ける。

 

「そういう事です。」

 

綾瀬川は弧月を構える。

 

「っ…。」

 

辻も弧月を構え直した。

 

 

──

 

『戦場から離脱を試みる二宮隊!しかし立ちはだかったのは完璧万能手、綾瀬川隊員!』

 

『ROUND4で落とされた事、かなり根に持ってやがるなー、綾瀬川の奴。こりゃ相当厳しいぞ。』

 

──

 

「…ふぅ…。」

 

辻は深く息を吸い込む。

トリガー構成は、

 

メイン:弧月、旋空、幻踊、シールド

サブ:メテオラ、バッグワーム、シールド、free

 

(どうにか油断を誘って犬飼先輩を逃がす…!綾瀬川の弧月は何度も…)

 

 

その瞬間、辻の視界目前に綾瀬川の弧月が迫っていた。

 

「辻ちゃん!!」

 

辻は仰け反りどうにか躱して一回転。

犬飼の援護射撃を受けて体勢を立て直す。

 

「色々考えているみたいだが…無意味だな。

 

 

…2度目はない。

 

 

 

…お前相手に油断なんて…一瞬だってしてやるものか。」

 

 

「っ…いつもよりやる気だね…。」

 

 

次の瞬間、綾瀬川は無言でしゃがむ。

 

「!」

 

後ろには弧月を振りかぶる照屋が。

 

「旋空弧月。」

 

「ちょ、辻ちゃんと清澄くんで決着つける流れだったでしょ?!」

 

辻、犬飼はどうにかそれを避けるが、横からグラスホッパーに足をかけた巴が。

 

『隊長、避けて下さい。』

 

『了解!』

 

綾瀬川は辻、犬飼に視線を向けたまま、弧月を後ろに振り抜く。

 

「どわっ!?」

 

生駒隊目掛けて放たれた旋空。

生駒と水上はギリギリで避ける。

 

 

「っ…なるほどなぁ…やりづらいわ…。」

 

 

柿崎隊のこれまでの連携は綾瀬川は殆ど参加していない。

照屋を攻めの主軸とした、柿崎がエスクード、レイガストによる守り、巴がグラスホッパー、状況を見てシールドによる守りや、弧月かハンドガンで援護をするスタイルだった。

 

 

…だが、ここに綾瀬川が加わることにより、そのスタイルは大きく変わる。

柿崎の守りは変わらない。

変わるのは攻め。

綾瀬川、照屋、巴による絶え間ない連続攻撃。

柿崎1人で賄えない守りは視野の広い綾瀬川がカバーする。

 

 

しかも、この連携は対多部隊にも特化した連携。

攻め手も攻撃対象も絶え間なく入れ替わる。

現に先程二宮隊の相手をしていた綾瀬川は、今は生駒隊に仕掛けようとしている。

 

「!、アカン…!」

 

この連携の要は柿崎と綾瀬川。

綾瀬川は無理でも、柿崎なら。

 

そう思って水上は柿崎にハウンドを放つ。

 

しかし柿崎はそれに目もくれることなく、二宮隊の相手をしている巴の援護をする。

水上のハウンドは綾瀬川か、照屋の張ったシールドに守られる。

 

「…メテオラ。」

 

そう呟いたのは綾瀬川。

 

綾瀬川の頭上にトリオンキューブが現れ、分割される。

 

 

(…いや、おかしいやろ!きよぽんはメテオラ入れられるほどの余裕は無いはずや!)

 

 

 

そう、このメテオラは綾瀬川のメテオラではなく、綾瀬川の後ろに潜んでいた照屋が分割したトリオンキューブ。

 

『はい、視覚支援っと。』

 

仲間を巻き込まないよう、絶妙に調整されたメテオラは地面を穿ち、二宮隊、生駒隊の視界を奪う。

 

 

『アカンっすよ、ザキさん以外バッグワームつけました。またスイッチしてきますよ!』

 

『目の前は敵さんだけやろ?ちゅーことは…』

 

 

「まとめてぶった斬っていいってことやな…!」

 

生駒は大きく弧月を振りかぶる。

 

その瞬間、砂煙を切り裂きながら、生駒目掛けて旋空が飛んできた。

 

 

(イコさんより早い…!きよぽん…!)

 

 

水上は生駒を突き飛ばす。

 

「水上!」

 

水上はトリオン体を両断される。

 

「っ…!」

 

生駒は崩れた姿勢のまま、斜めに弧月を振る。

 

「…」

 

綾瀬川は咄嗟に首を傾けるが右耳が切り飛ばされる。

生駒はすぐさま体勢を立て直し、もう一度弧月を振りかぶる。

 

 

「!」

 

しかし、その視界の横、巴のグラスホッパーに足をかけた照屋が生駒に迫っていた。

 

それを一瞥した綾瀬川は、弧月を構えると二宮隊の方に振り返った。

 

 

緊急脱出の光が3つ空に上がる。

 

水上と柿崎、そして犬飼。

 

生駒が体勢の悪い中放った旋空は柿崎の右足を切り飛ばした。

元々二宮との戦闘で、少なくない量のトリオンを失っていた柿崎。

足を失い崩れたところを犬飼により撃ち抜かれた。

 

柿崎を仕留めた犬飼は、柿崎との距離を詰めたことにより、位置を変えていた隠岐の射線に入ってしまった。

速度重視のライトニングに撃ち抜かれ、犬飼も離脱。

 

 

──

 

『混沌とした戦場!一気に3人落ちた!』

 

『メテオラの煙で見えねえな…。落ちたのは水上先輩とザキさん…犬飼先輩か?』

 

出水が目を細め、そう言った。

 

『得点を挙げたのはそれぞれの部隊、綾瀬川隊員と犬飼隊員、そして遠くで戦場を見ていた隠岐隊員!』

 

『ザキさんが落ちて守りが薄くなったとはいえ…

 

 

…勝負あったな。』

 

 

──

 

生駒VS照屋、巴の戦闘も決着を迎える。

 

グラスホッパーでの援護をしていた巴は生駒旋空により両足を失う大ダメージ。

剣術では生駒が照屋に勝っている。

十数回の競り合いがあったものの、最終的に生駒が照屋のトリオン体を捉える。

 

しかし、緊急脱出と同時に笑みを見せた照屋。

 

その瞬間、生駒の足元にばらまかれたトリオンキューブが光り輝いた。

 

 

「…やられたわ。」

 

 

照屋のメテオラによる道連れ。

 

柿崎隊、生駒隊が双方得点を挙げる。

 

 

「虎太郎、隠岐が動いてる。射線から外れろ。」

 

「了解です。」

 

綾瀬川のその言葉に巴はグラスホッパーで転がるように家屋の中に飛び込んだ。

 

 

「虎太郎のトリオンも少ないんでな。このままじゃ生駒隊の得点になる。悪いが時間はかけさせてやれないぞ?」

 

怪物は辻にそう声をかける。

 

「…本気できてくれるならウェルカムだよ。」

 

絶体絶命のこの状況。

辻は怪物相手にそう吠えて見せた。

 

 

その数秒後、試合を決める一撃が振り下ろされた。

 

 

 

 

──

 

『ここでタイムアップ!5対2対1!B級ランク戦ROUND6上位昼の部を制したのは柿崎隊!!』

 

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 1P

綾瀬川 3P

 

合計 5P

 

 

 

二宮隊

 

 

二宮 0P

犬飼 1P

辻 0P

 

合計 1P

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 1P

南沢 0P

 

合計 2P

 

 




これが綾瀬川の加わった柿崎隊の連携です。
今回はザキさんのトリオンが少なかったのでエスクード無しの連携。
柿崎の守りを拠点としたヒット&アウェイ戦法。
攻撃してはスイッチの繰り返し。
厄介なのは、どれが誰のトリガーで使っているのか分からない点。
柿崎、照屋、綾瀬川はトリオンの数値が一緒。つまり3人固まっているところでトリオンキューブなんか出されたら誰が使っているか分らない。
攻め手も攻撃対象もコロコロ変わるので、まじで迎撃要塞。
射線も宇井が徹底管理。

なにこれ?クソゲー?

感想、評価等お待ちしております。


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ROUND6昼の部を終えて


作者「よう…久しぶり。」

読者「…マジか。」

作者「大マジ!元気ピンピン…では無いけどなんとか生きてるよ!」

読者「!…反転○式…!」

作者「正っ解っ!!」



…という茶番は置いておいて…えっと…どーも、作者です。覚えてます?


…もうダメだと思った?思ったでしょ〜?笑



…私ももうダメかと思いました。


だが死に際で掴んだ、呪○の核心!!


という訳ではなくまあざっくり説明しますと、最後の投稿のあとどんどん体調悪くなって衰弱していきまして…。
移植手術が控えていたんですが、ドナーが用意された頃には手術が出来る体力も無かったんですね。
そこで家族には医師からこのまま衰弱死するか、体調がマシな時に移植手術をするか(ヒットポイント切れで死ぬかも)とか言う2択を出されたらしいんですね。
んじゃ一か八か手術すっか!って事でどうにか生き延び、一安心!


…という訳には行かず、移植手術の拒絶反応と言うものがありまして…。

諸々あって死にかけて、何とか生にしがみついて戻ってきた所存であります。

じゃあもう大丈夫なのかって?


…お医者様曰く…










…なんとなく後書きに書こw




あ、読み返し推奨です。


いや、俺は戻ってくると信じていつ投稿されても読めるように毎日読んでたよって言う作者の事大好きな愛読者様は本編どーぞ。


『ここでタイムアップ!5対2対1!混沌の乱戦となったROUND6上位昼の部を制したのは柿崎隊…!』

 

柿崎隊

 

 

柿崎 0P

照屋 1P

巴 1P

綾瀬川 3P

 

合計 5P

 

 

 

二宮隊

 

 

二宮 0P

犬飼 1P

辻 0P

 

合計 1P

 

 

生駒隊

 

 

生駒 1P

水上 0P

隠岐 1P

南沢 0P

 

合計 2P

 

 

照屋、生駒の緊急脱出後の展開はこうだった。

綾瀬川と辻の1対1は綾瀬川の二刀流相手に善戦するも、綾瀬川の弧月をブラフにした足スコーピオンの蹴りにより、辻は緊急脱出。

そこで二宮隊は全滅となった。

辻が緊急脱出したことにより、半径60m以内に敵のいなくなった巴は足のトリオン漏出を鑑みて、自分では役に立たないとして自発的緊急脱出。

残ったのは柿崎隊万能手、綾瀬川と生駒隊狙撃手、隠岐。

巴の離脱により、グラスホッパーを失った綾瀬川は隠岐を追うことはしなかった。

どこからでも撃ってこいと言わんばかりに、バッグワームも着けずポケットに手を入れたまま堂々と立っていた。

もちろんカウンターで狙撃されると思い、結局隠岐が撃ったのは試合終了と同時。

威力よりも弾速を優先し、ライトニングにより放たれた弾丸。

しかし綾瀬川はライトニングによる特徴的な発砲音を聴いてすぐに集中シールドを2枚展開。

シールドに防がれ隠岐の弾が綾瀬川を捉えることは無かった。

 

 

『さて、ツッコミ所の多かったこの試合、解説の御二方に総評を頂きたいのですが…。』

 

『柿崎隊が総合力で二宮隊、生駒隊を上回った…って感じだろ。』

 

出水は顎に手を当て、分析する。

 

『終始柿崎隊のペースでした。柿崎隊が連携で点を取るために障害となる二宮さんと南沢先輩を落とす。その後は…柿崎隊の思い通りね。』

 

そう言って木虎は目を伏せた。

 

『柿崎隊は全員が全員MVPだろ。綾瀬川は言わずもがな、虎太郎は海を落としてるし、ザキさんと照屋ちゃんは特にだ。綾瀬川があんな常識外れの狙撃が出来たのはザキさんと照屋ちゃんが二宮さんをあの場所に誘ったからだ。…二宮さん相手にあそこまで生き残るのは素直に尊敬するぜ…。』

 

 

──

 

柿崎隊作戦室

 

「むふふー、お疲れ様でーす。清澄せんぱーい?」

 

いつもより自慢げに綾瀬川を迎えた、宇井。

 

「あ、ああ。援護助かった。」

 

「でしょ?!二宮さんの射線管理も完璧でしたよね?!」

 

そう言って宇井はさらに綾瀬川に詰め寄る。

 

「ああ、そうだな…。逆にオレが1ミリズレた…。」

 

「ですよねー、私がいなきゃ二宮さんのこと落とせなかったですよね?」

 

宇井はさらに綾瀬川に近づくとそう尋ねた。

 

「まぁ…そうなるな。」

 

綾瀬川は困惑したようにそう答えた。

 

「ですよね〜…

 

 

…これでもまだ私じゃなくて真木先輩の方がいいんですか?」

 

 

スっと笑顔を消して宇井は綾瀬川に詰め寄った。

 

「いや、オレは別に真木の方がいいなんて一言も…」

 

「ん?」

 

「いや、なんでもないです。」

 

笑顔の裏の圧を感じて、綾瀬川は押し黙る。

 

「…別にオレは冬島隊に移る気はないから安心してくれ…。」

 

綾瀬川は困ったように頭を掻きながらそう言った。

 

「…真木先輩より私の方がいいですか?」

 

宇井は目を逸らし、口を尖らせそう尋ねる。

 

「…いや、だから移る気はないって「清澄。」」

 

言いかけて柿崎が綾瀬川の肩に手を置く。

 

「…諦めろ。」

 

柿崎はそう言って宇井に視線を向ける。

綾瀬川も宇井に視線を向けると、頬を赤らめてこちらを見ていた。

 

「…」

 

そんな宇井を見て、綾瀬川は無機質な目を細める。

 

「っ…?!」

 

その酷く冷たい無機質な目を見た柿崎は息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

「ああ、真登華、お前は真木より優秀なオペレーターだ。…オレにはお前が必要だ。」

 

 

 

 

 

宇井は喜んでいるが、そんなセリフを恥じらうことも無く、抑揚の無い淡々とした声で話す綾瀬川に柿崎はもう一度息を飲んだ。

 

──

 

二宮隊作戦室

 

「いやー、まさかの1点止まりですねー。」

 

二宮隊銃手、犬飼はそう言って作戦室の椅子に腰掛ける。

 

「…ちっ…。」

 

二宮はただ舌打ちをするのみだった。

 

侮るはずなどない。

綾瀬川…延いては柿崎隊には最大限の警戒で臨んだ。

 

…だが、出し抜かれた。

 

B級1位。

その称号は今や二宮隊ではなく、柿崎隊。

名実ともに柿崎隊なのだ。

 

「…いつまでも下を見るな、氷見。さっきも言ったがお前のミスじゃない。」

 

二宮のその言葉に氷見は肩を弾ませる。

 

「…今回の敗戦は俺のミスだ。…次だ。次こそ柿崎隊に勝つ。」

 

二宮は拳を握りしめた後、立ち上がる。

 

「…少し考える。」

 

そう言って二宮は作戦室を後にした。

 

──

 

『いやー、それにしても綾瀬川が連携に加わるとあんな感じになるのかよ…。A級に来たらって考えたら…笑えねー。』

 

出水は頬をひくつかせてそう言った。

 

『ROUND6に来てこの連携…。

 

 

 

…他のB級部隊も出水先輩と同じ気持ちですね。』

 

 

──

 

「…」

 

玉狛支部

そこのテレビでROUND6昼の部を観戦していた三雲修は、言葉を紡げずにいた。

 

二宮隊を1得点に抑えて見せた。

 

これがB級1位柿崎隊。

ROUND4では完敗。

そしておそらく勝ち進めば再戦することになる相手だ。

 

「オサム、そろそろ本部に行くってレイジさんが…なんか見てたのか?」

 

そこに玉狛第二のエースである、空閑遊真が入ってくる。

 

「空閑…ま、まあちょっとな…。」

 

そう言って三雲はテレビを消そうとリモコンに手を伸ばす。

 

「柿崎隊…あやせがわせんぱいのとこか。」

 

空閑の言葉に三雲は動きを止める。

 

「さすがに強いな、B級1位。」

 

そう言って空閑は三雲の隣に座る。

 

「空閑…。」

 

「…柿崎隊に勝つためにも…まずはROUND6、勝たなきゃだな。…相棒。」

 

自分の不安を分かっているかの様に空閑は三雲に拳を突き出した。

 

「…ああ!」

 

そう言って三雲は空閑と拳を合わせた。

 

 

──

 

『さてさてー、どーもこんばんは〜。B級ランク戦上位夜の部〜。元気に実況していきますよ〜。太刀川隊の国近で〜す。』

 

のほほんとした声が観戦席にこだまする。

 

『解説席にはとーまくんと米屋くーん。アホの子A級トリオだね〜。』

 

『『うんうん。』』

 

『あれ?否定しない感じ?』

 

『しないっつーか…』

 

『出来ないッスね〜。』

 

米屋は何故かドヤ顔でそう言う。

 

『そうだね〜、私も最後まで今ちゃんに迷惑かけたなぁ。』

 

国近はしみじみと言ったように頷く。

 

『俺はまだ学年末テスト残ってますよ…。』

 

『おっ、頑張れよ後輩。』

 

『まあ秀次と綾瀬川がいるんで。』

 

『おっとっと…ランク戦に戻ろっか。夜の部は影浦隊、諏訪隊、玉狛第二、王子隊の四つ巴だね〜。2人はどこに興味ある感じ?』

 

国近が当真と米屋に尋ねた。

 

『…興味っつーか…玉狛1人増えてね?』

 

『ヒュースって…外国人か?』

 

『太刀川さん曰くかなり強かったらしいよ。』

 

国近は口元に指を当て、思い出す様にそう話した。

 

『…え?太刀川さんもうバトってんの?』

 

米屋が尋ねる。

 

『うん。なんでも入隊初日にB級になっちゃったみたい。』

 

『ほえー、最速じゃねえか?』

 

『分かんないけど多分。』

 

『太刀川さんが強いって言うなら気になりますねー。…んであとは影浦隊と諏訪隊ッスかね。』

 

米屋は顎に手を当てながらそう言う。

 

『玉狛は遠征目指してるらしいッスから玉狛より上の影浦隊と諏訪隊は、どうしても越えなきゃならない壁ですね。…特にカゲさんと…

 

 

…諏訪隊の銃バカは。』

 

 

──

 

諏訪隊作戦室

 

「アハハ、銃バカだってー。槍バカ先輩に言われちゃってるよー?諏訪さん。」

 

榎沢はカラカラと笑いながら、小佐野に貰った飴を口の中で転がす。

 

「バーカ。オメーのことに決まってんだろ。」

 

諏訪は呆れたようにそう言う。

 

「こんだけ期待されてンだ。今回も好きに暴れていいぞ。クソ生意気なエース様よォ?」

 

その言葉に榎沢は目を見開いた後、表情を輝かせる。

 

「いいの?!」

 

「ああ。ただししっかり点取ってこいよ。」

 

「ンフ、当たり前じゃん。ボサギザ先輩にシロくんもいるからね。楽しめそう。」

 

「でも、玉狛のルーキーが不気味ですね…。」

 

堤はそう言ってモニターに映るヒュースに目を向けた。

 

「日佐人、コイツとやったらしいな。」

 

「はい。メチャクチャ強かったです。ブレードのみですけど辻先輩とイコさんにも勝ってました。」

 

「て事は攻撃手…ですかね?」

 

堤が諏訪に尋ねる。

 

「まぁそーだろーなァ…。」

 

 

 

「いやー?分かんないよ。」

 

 

 

そう答えたのは榎沢だった。

 

「多分なにか隠してるよー?

 

 

…勘だけどね?」

 

 

そう言って榎沢は笑みを浮かべた。

 

 

──

 

影浦隊作戦室

 

「ああ?!玉狛が増えてる?どー言う意味だコラ?」

 

影浦は北添にそう尋ねる。

 

「そのままだよ。1人増えてんの。」

 

影浦の問いに北添はそう返した。

 

「あ?元々4人じゃなかったか?」

 

「3人だってば。空閑くん以外も見てね…?」

 

「ヒュースって名前らしいぞ。結構イケメンじゃねえか。」

 

仁礼はヒュースの顔を見てそう言った。

 

「ポジションは?」

 

絵馬が尋ねる。

 

「さぁ…?玉狛ってうちと同じ遠中近でしょ?うーん…中距離がちょっと火力不足だから射手か銃手とか?」

 

「ハッ!どこだろーと関係ねえよ。

 

 

 

…掻っ捌く。」

 

──

 

『王子隊はどお?』

 

国近が尋ねる。

 

『王子隊は柿崎隊、諏訪隊、玉狛が活躍してる分今シーズンはあんまり得点出来てねえ印象だな。オージも相当参ってるんじゃねえか?…ま、あいつはこういうのを楽しむタイプだから余計な心配だろーけどな。』

 

『マップの選択権は王子隊だからね〜。どこ選んで来るかな?』

 

 

──

 

王子隊作戦室

 

「…はぁ…。」

 

倉内は頭を抱える。

 

「アハハ、さすが玉狛だねー。大胆大胆。」

 

王子は笑いながらそう言った。

 

「笑ってる場合?」

 

橘高が呆れた様に王子に尋ねた。

 

「ちょっとこだわりすぎてたからねー。」

 

「こだわりすぎてた?」

 

樫尾が王子に尋ねた。

 

「そう。僕らも玉狛に倣って…

 

 

…大胆にね。」

 

 

そう言って王子は不敵な笑みを浮かべた。

 

──

 

『さてさてさーてー。ここでマップ決定!「市街地A」だって。ふつーのマップだね〜。』

 

『最早説明も要らないッスね〜。』

 

 

 

──

 

玉狛第二作戦室

 

「さて、いよいよ本番だ。」

 

三雲は作戦室で、そう切り出す。

 

「敵チームのおさらいだ。今回当たるのは影浦隊、諏訪隊、王子隊だ。どこも初めてやるチームだ。」

 

「影浦隊は、かげうらせんぱいとは何度かランク戦したけど…強いな。サイドエフェクトが厄介だった。」

 

空閑が思い出す様にそう言った。

 

「ああ。影浦先輩だけじゃなくて、狙撃手の絵馬、銃手の北添先輩もマスタークラスの猛者。全員が1人で得点できる元A級の強敵だ。」

 

「かげうらせんぱいとはおれがやるよ。リベンジしたいし。」

 

そう言って空閑は好戦的な表情を見せる。

 

「ああ、転送位置次第にはなるが…空閑に任せる。」

 

三雲はそう言って頷いた。

 

「そして諏訪隊。僕らと同じ、今シーズン大量得点を挙げて上位に上がった中距離特化のチームだ。特に要注意なのは榎沢先輩。高火力の早撃ちで今シーズンの諏訪隊の得点はほぼ榎沢先輩だ。」

 

「榎沢さんはROUND4からキューブのハウンドも使ってるからね〜。まさに鬼に金棒って感じで手に負えなくなっちゃったね。二宮さんと同じで1対1は控えた方がいいかも。」

 

宇佐美がそう釘を指した。

 

「そうだな、悔しいけど近距離しかないおれじゃ無理だな。」

 

「ああ、ここでヒュースの出番だ。高火力のメテオラで目くらまし、アステロイドと弧月で攻める。頼むぞ、ヒュース。」

 

「…当然だ。」

 

そう言って玉狛のルーキー、ヒュースは口を開く。

 

「王子隊は今回のマップ選択権がある。『市街地A』は普通のマップだけど…王子先輩はよく考えて動くタイプの攻撃手だから何か仕掛けてくるかもしれない。…作戦通り上手くいくとは思わないけど…上手く噛み合えば勝てると思う。…力を貸してくれ!」

 

「うん!」

 

雨取は元気に。

 

「うむ。」

 

空閑はいつも通り。

 

「モチロン!オペレートは任せてね。」

 

宇佐美は頼もしく。

 

「…ふん、勘違いするな。おれたちは利害が一致しただけに過ぎない。…指揮官はお前だ、オサム。だがおれは勝てると思う作戦にしか従わない。」

 

ヒュースは淡々とそう告げた。

 

「ああ、それでいい。

 

 

…絶対に勝とう!」

 

 

 

こうして玉狛第二のROUND6が幕を開ける。




如何せん久々に書いたものですからおかしなところ矛盾点等ありましたらご指摘頂けると助かります。

さて、前書きの続きになりますが、まぁ移植手術が成功した時点で、ほぼ治ってる様なもんだよね…

…と言うのがお医者様のお話になります。



…見たか!神よ!!生き延びてやったぞ!これが人間様の力よ!!


まぁ、生き延びたら生き延びたでその後色々大変なんですけど、今は考えるのはやめて、生き延びた喜びを噛み締めたいと思ってます。

…再発のリスクもあるらしいけど先のことなんて知らん知らん!


まぁ病み上がりなんで不定期にはなると思いますが、投稿再開って事でw





三上「真面目に!!」




はい、ここまでなんか軽いノリで書いてきましたが、信じて待っていてくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
この通り生きてますんで。
心配かけて申し訳ないです。
もっと早く生存報告しろよと言う意見もあると思いますが、どうせなら投稿再開と合わせたくて。
余計心配かけたかもですね。
まぁともあれ、今後もこの作品をよろしくです。

多分次は幕間になるかな。
アンケート的には掲示板形式のやつが多いけど書いたことないんで勉強からですね。
先にバレンタインの続き書くと思います。

感想、評価等お待ちしております。






…ただいま!!


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