悲報 転生先が全ての元凶な件 (ネオ・マフティー軍)
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ウタとトットムジカ
悲報 転生先は楽譜


FILM REDに脳を焼かれて衝動的に書いてしまいました。


 

 

死んだと思ったら、自分のことを神だと名乗るなんか亀仙人みたいな白い髭を生やした爺さんが目の前にいた。ただし全身ウタのライブに出てくるファンのような格好をしていて、そこには威厳も神聖さもなかったが。

 

「お主にはONE PIECEの世界に転生してもらう。そしてウタちゃんを生存させるのじゃ」

 

そう言って爺さんはウタちゃんの素晴らしさについて熱く語り始めた。

ウタちゃんの素晴らしさについては同感だ。実際、映画を見た後は喪失感が溢れ出したし、ウタちゃんには生きて幸せになってほしかったと思ったからだ。

 

でも正直それは難しいと思った。最大の理由は全ての元凶、魔王トットムジカが厄介すぎるからだ。

ウタウタの力に反応して飛んでくる楽譜ってなんだよ。例え破ったり燃やしても絶対なんらかの形で復活してきそうだし、実体化したら現実世界とウタワールド両方に四皇クラスがいないと対処すらできないとかふざけんな、あまりにも厄ネタすぎる。

 

それを伝えたら爺さんはニヤリと笑って、

 

「安心しろ、力もやるしとっておきの策も授ける」

 

そう言った爺さんは俺の肩をポンと叩いて

 

 

「お主がトットムジカになれば万事解決じゃ」

 

 

え??????

 

「ウタちゃんの元に飛んでいかず、一生楽譜のままでいてもよし、エレジアを滅ぼさず、ゼウスみたいに使い魔ポジに収まるもよし、万事解決じゃ」

 

そう和やかな顔で言った爺さんに次の瞬間突然空いた穴へと突き落とされた。

 

 

「安心するのじゃ、暴走する心配がないように調整したし、覇気もしっかり使えるようにしておいた。ちゃんとウタちゃんを救うために行動するのじゃぞ〜」

 

遥か上の方からなんか声が聞こえてきたが、あっという間に意識が飛んでいってしまった。

 

 

そして気がついたら全身楽譜になっていた。ふざけんな。

 

 

爺さんにはしこたま文句があるが、とりあえず今後の方針を決めることにした。

一生楽譜は不便なので、とりあえず、爺さんが言ってたナミのゼウスポジのような感じに収まるのを目指すことにした。これこそがエレジアも滅びずウタちゃんも強くなって晴れて赤髪海賊団の音楽家になれるまさにwin-winの関係だ。幸いにもエレジアを滅ぼさないで済む手は思い浮かんでいる。

 

そう考えているとさっそく素晴らしい歌声が聞こえてきた。楽譜の体も反応していることから間違いなくウタちゃんが歌っているのだろう。計画を実行すべく、さっそく飛んで行くことにした。

 

朗報 楽譜やめることに成功

 

うまくウタちゃんの後ろの椅子の場所取りに成功し、無事に歌ってもらうことに成功。ゴードンさんは慌ててたが何も起こらないことに首を傾げてたな。

それもそのはず、現実ではなくウタワールドにだけ顕現したからである。まだ、ウタウタの実を使いこなしておらずウタちゃん本人すら自覚していないウタワールドに本体を引っ越したのだ。見た目はあいかわらず、まどマギに出てくる魔女みたいな姿をしているが、これで楽譜の体とはおさらばだ。今頃トットムジカの楽譜は何の効力もないただの楽譜になっているだろう。

あとは夢の中に出て行って、使い魔やらせてくださいと頼み込めば万事解決だろう。優しいウタちゃんならきっと受け入れてくれるはず!

ガハハ勝ったな風呂入ってくる。

 

悲報 シャンクスに存在バレる

 

ウタワールドにウタちゃんじゃなくてシャンクス来ちゃった……

 

 




シャンクス「そんな簡単に誤魔化されないことをお前に教える」


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エピソードオブエレジア 前編

ウタル、ルウタの小説がたくさん投稿されて嬉しすぎる。
このままだと、ウタルニウムとルウタニウムがないと生きていけない身体になってしまいそうです!


 

 

side トットムジカ

 

お、おちつけぇ

まさかウタワールドにシャンクスが来るなんて……

おそらく見聞色で楽譜の封印から解放された瞬間を補足されてたのか。

 

「ほお、お前が噂に聞くトットムジカか」

 

なんか興味深そうにこっちみてるよ!顔が笑ってないけど、怖すぎる。

ここは平身低頭!誠意を見せてなんとか許してもらうしかない!

ウタちゃんのお父さん!どうか私めを娘さんの使い魔に……

 

ちょ、剣を構えるのやめ、は、覇王色!!!??

 

 

sideシャンクス

 

ウタと並び、城のテラスから月明かりにぼんやりと照らされたエレジアの街並みを眺めながらシャンクスは言葉を紡いだ。

 

「なあウタ、この世界に平和や平等なんてものは存在しない」

 

キョトンとするウタを見ながらシャンクスは話を続けた。

 

「だけど、お前の歌声だけは、世界中の全ての人たちを幸せにすることができる」

 

「……何言ってるの?」

 

「いいんだぞ、ここに残っても。世界一の歌い手になったら、迎えに来てやる」

 

音楽を愛する人々の国エレジア。

島の王、ゴードンに謁見し大勢の人の前で歌うのは初めてだったが、ウタはいつも通り、自然に、楽しそうに、その美しい歌声を紡いでいた。

 

そんな音楽を愛する人々からのたくさんの拍手を歌声を披露し浴びているウタの姿はとても心地良さそうだった。

そしてふと思ってしまった。海賊でもある俺たちといるより、ウタはエレジアに残した方が幸せなんじゃないか。

そう考えていたシャンクスに対してウタは、

 

「バカ!私は赤髪海賊団の音楽家だよ!歌の勉強のためでもシャンクスたちから、離れるのは……」

 

たとえこの国がどれほど居心地が良くても、ウタの居場所は赤髪海賊団だ。ずっと一緒だった家族なんだ。シャンクスのそばを離れるなんて有り得ない

目に涙を滲ませるウタを見て、シャンクスは困ったように笑った。膝をつき、ウタを抱き寄せた。

 

「わかった。そうだよな。明日にはここを離れよう」

 

ウタは滲んだ涙を乱暴にぬぐった。この先何があっても、シャンクスとずっと一緒にいる。ウタはそう信じていたのだ。

 

やがて落ち着いた2人の元へ、国王のゴードンがやってきた。

最後の機会だから歌声を聞かせてほしいと。そしてせっかくの機会だから国民にも聞かせようと歌声を国中に聞こえるようにしたとのことだった。

パーティー会場では多くの人々がウタの周りに集まり、ウタに様々な歌を歌わせていた。その歌声は国中に響き渡り、万雷の拍手を浴びた。

 

そして、ウタはどこからか一曲の古びた楽譜を手に取って歌声を響かせた。

 

???「よっしゃ!楽譜の身体とおさらばだ!」

 

今まで聞いた曲と毛色の違うその曲は、どこか狂気を孕んだ不吉なメロディーを奏でた。それを聞いて慌てたのは国王ゴードンだった。

 

「この曲はトットムジカ……まずい!その歌を歌ってはいけない」

 

そんなゴードンの様子を見てシャンクスは警戒を強めゴードンにトットムジカとはなにか問いかけた。

 

「トットムジカは、古代から続く、人の思いの集合体。寂しさや辛さなど、心に落ちた影……魔王とも呼ばれるものだ」

 

そして

 

「ウタウタの実の能力者がトットムジカを使う、つまりトットムジカを歌ってしまえば魔王は現実世界に顕現し世界を滅ぼしてしまう!」

 

どうしてそんな曲の楽譜がある!

怒りのあまり、ゴードンを問い詰めるが、ゴードンの話ではトットムジカは城の地下に封印されているはずだそうだ。一体どうやって……

いかん、このままではウタが!

慌てて歌を中断させ、ウタを抱き寄せる。

 

「どうしたの?シャンクス」

 

キョトンしているウタの姿を見て安心する一方、いつトットムジカが出現してもいいよう臨戦態勢に入る。

 

……………

 

現れないな……

 

念のため見聞色の覇気を研ぎ澄ませ全開にしてみる。するとほんの少しだけ楽譜から気配がしたものの、それもすぐに完全に消えてしまった。

その後駆けつけたベック達としばらくの間警戒していたが、結局トットムジカが現れることはなかった。

 

その後何事もなくパーティーは終わりを迎えた。トットムジカの件は、結局ただの迷信であり、ただの古代の楽譜だったということになった。

ウタは無事だった。何事もなく最後まで歌を奏でエレジアの人々を笑顔にした。そんなウタの姿を見て年甲斐もなく無性に涙が溢れてしまった。ウタには汗だと誤魔化したが、きっと気づかれたな。

 

そして案内された城の寝室に向かう途中、ふとウタに尋ねたくなった。

 

「なあ、ウタ。俺がお前の父親で本当によかったと思うか?」

 

もし、トットムジカが現れたなら、俺はウタを守れただろうか?一抹の不安が胸によぎり、エレジアでのウタの姿を見てどうしても考えてしまった疑問をつい口にしてしまう。

 

「何言ってんのさ。良かったに決まってるよ!」

 

少し呆れたながら、そして笑いながらはっきりと

 

「私はウタ。歌で新時代を創る女!世界一の大海賊赤髪のシャンクスの娘にして、赤髪海賊団の音楽家だよ!」

 

そう宣言したウタはシャンクスが父親で幸せだよ、だから辛気臭い顔しないでいつもみたいに笑いなよ!とパンパンとシャンクスを叩いた。

そうだなウタ。俺たちは家族だ。ウタは大切なクルーでもあり、俺の娘だ。

 

幸せそうな2人の家族は、まるで祝福するように照らす月の光を浴びながら城の道を歩んで行った。

 

「なあ、ウタ、せっかくだから一曲歌ってくれないか?」

 

「いいよ!シャンクス!特別にシャンクスのために歌ってあげる!」

 

〜エレジア編 完?〜

 

 

 

 

 

さて、あの時見聞色で感じた気配の正体に会いに行くとしよう。

あの時、微かに気配があったことからトットムジカが実際に存在していたのは間違いない。だがなぜ奴は現れなかったのか?いったいどこに行ったのか?そこで一つの仮説が思い浮かんだ。奴はウタウタの世界に渡ったのではないかと。

そしてウタが歌っている時に見聞色を発動して確信した。この世界ではない、ウタと繋がる別のどこかから禍々しい気配を感じ取ったからだ。

 

寝室に入ってすぐに覇気を解除することでウタウタの能力の対象となり、俺はあっさりとウタウタの世界へと誘われた。

 

そこにいたのは、まるでカカシのような姿をした禍々しい化け物だった。

そうか、こいつが…

 

「ほう、お前が噂に聞くトットムジカか」

 

すると化け物は意外にも流暢な声で喋り始めた。

 

いわく、ずっと楽譜に封印されていたがウタの歌声を聞いて封印を解いてもらいに楽譜のままとんでいったこと。

 

いわく、ウタの素晴らしい歌に感動して改心したから、もう世界を滅ぼそうとも思っていないこと。

 

だから、もっと歌を聞くためにウタの使い魔をやらせてください!と何故か土下座で頼み込んできた。

 

一瞬疑ったが、見聞色で確認してみたところおそらく本心だということがわかった。そうか、ウタの歌声は魔王すらも改心させてしまったのか!きっといつか、本当に新時代を創っちまいそうだ。やっぱスゲーよウタは。さすがは俺の自慢の娘だ。

 

さて、それはそれとして、ここは一つこの化け物を試すとしようか。何より父親として威厳を示しておかんとな!

幸いここで多少暴れても現実には影響がないから大丈夫だろ!

 

「ウタは俺の娘だ。俺たちの家族だ。その使い魔になりたいというなら……死ぬ気で来い!!!!」

 

瞬間、シャンクスの身体から恐ろしい量の覇気が放たれた。世界が震え、凄まじい重圧を伴ってトットムジカへと襲いかかった。

 

そして愛刀グリフォンにありったけの武装色と覇王色をかき集めて纏ってトットムジカへと斬りかかった。




シャンクス「娘さん(の使い魔をやらせて)くださいと言われて許す父親がいないことをお前に教える」


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エピソードオブエレジア 後編

 

 

トットムジカは人々の負の感情の集合体である。そんな、まるで人間の細胞のように存在する数多ある感情達は今、一つの感情に支配されていた。

 

それは恐怖

 

シャンクスの放つ世界が軋むほどの覇気を前に、トットムジカはビビり散らしながらも、剣を構えるシャンクスに対応するため、すぐさま第二形態へと移行した。

 

トットムジカ 第二楽章

 

カカシのような姿から一転、鍵盤の足を生やすことで、機動力と共に攻撃力を大幅に上げることができる。

ビームを撒き散らしながら、生やした足を用いて襲い掛かるが、シャンクスはことも無げに覇気を纏った刀でビームを弾き飛ばし、あっさりとその身体を両断した。

ゆえにトットムジカは身体を再生させると、機動力を活かして、

 

「離脱するに決まってるだろ!!」

 

加速し一気にシャンクスとの距離を取った。

なんだよあの覇気は!?ヤバすぎるだろ!!

正直覇王色にビビる緑牛を見てバカにしてたけど、こんなのビビらない方がおかしいよ!

 

とにかくあのヤバい覇王色に加えて武装色を纏ったグリフォンを持ったシャンクスと正面からやり合ったら死にはしないが永遠に切り刻まれること間違いなしだ。

ここは安全安心の遠距離戦でいくぜ!幸いにも神の爺さんから与えられた力のおかげでトットムジカの制御は万全だ。

この収束した超極圧ビームを前には、さすがのシャンクスもただではすむまい!

見せてやるシャンクス!これが世界を滅ぼす魔王の一撃だ!

 

 

簡単にビーム切られちゃったよ……想定ダイナ岩くらいの破壊力出たと思ったビームなのに……

 

「ほお、なかなかやるな。では、次はこちらの番だ!」

 

そう言ってシャンクスは、高速の斬撃を次々と放ってくる、しかも一撃一撃が頂上戦争のミホーク級のやつである。

 

これが未来の四皇赤髪のシャンクス!

化け物すぎる。

 

このままの力では、シャンクスに認めてもらうには足りないか……

 

仕方ない、全力で逝くぞ、お前達!

 

 

 

トットムジカは、魔王は、歌を愛する人々の感情の集合体だ。「寂しい」

「もっと認められたい」「誰かに見つけてほしい」

 

そんな負の感情が集まって生まれた。そして探しているのだ。行き場のない自分の気持ちを、受け止めてくれる存在を。

そんなある日、突然天から降ってきた謎の存在にトットムジカの制御を完全に奪われてしまった。そして、その存在は感情達に言った。

 

「いつか、その気持ちを受け止めてくれる存在が現れる。天使の歌声を持つ、新時代を創る存在が」

 

そして、歌声を聞いたあの時、感情達は確信した。この娘がそうなのだと。

きっとこの娘なら私たちを……

 

そして、現在、制御している存在は感情達に問いかけた。

ここで終わってもいいのか?

もっと彼女の歌を聞いていたくないのか?

ここで力を示さないと、もうあの娘の歌声は聞けないぞ!と。

 

そんなのは嫌だ!

 

恐怖に染まっていた感情達が各々に新たに芽生えた感情を吐露する。

 

「あの歌声が聞けるなら、もう寂しくない!」 「もっとあの歌声を聞いていたい!」 「やっと救われたんだ!」

「U・T・A !!U・T・A !!」

だから

 

「「「共に新時代の夜明けをみるため、ここで力を示そう!!」」」

 

 

魔王最終形態

トットムジカ 第三楽章

 

巨大な四手と二足、黒い翼を持つ禍々しい姿は、まさに魔王と呼ぶにふさわしい姿をしていた。

しかし、その見上げる程の邪悪な巨大の姿とは裏腹に、見聞色に流れ込んでくる感情はどれも希望に満ち溢れたものだった。

 

「よもやこれほどまでか……ウタ、魔王すらも変えたお前の歌声なら、きっと世界だって変えられるだろう」

 

トットムジカから流れてくる感情を聞いて、娘を誇らしく思いながらも、だからこそ、娘の世界で父親が負けるわけにはいかねえ!とばかりにシャンクスは限界を超えた覇気を刀に纏わせる。

 

逝くぞ、赤髪のシャンクスゥ!

 

トットムジカから打ち出された数多もの光線が空を輝かせ、流星のように降り注ぐ。

その一撃一撃が島一つ簡単に滅ぼしてしまう流星群を、シャンクスは神速の斬撃を連続で放つことによって、その全てを撃ち落とした。

 

だが、それすらも前座にすぎない。

次の瞬間にはそれぞれが互いに今出しうる最強の技を構えた。

 

トットムジカは、己の持つありったけのエネルギーを収束させた極光の一撃を、

 

お借りしますよ、ロジャー船長!

シャンクスはありったけの覇気を纏い、己の知る最強の男の一撃を、

 

「受けるがいい!未来の四皇!これで終焉(フィナーレ)だ!!!」

 

神避(かむさり)!!!」

 

拮抗した互いの究極の一撃の衝突により生じたエネルギーが、ぶつかり、収束し、天をも穿つほどの衝撃波を発生させた。

 

 

しばらくして、風が吹き、土煙が晴れた。

 

互いに満身創痍、トットムジカはエネルギーの消耗が激しく、もはやウタワールドの維持がやっとの状態になっていた。

また、さすがのシャンクスも先の衝撃波と戦いの疲労で立つのがやっとの状態だった。

 

それでもなお、互いに譲れないものがある2人は、再び戦いを続けようとした……その時、

 

「〜♪」

 

戦場には似つかわしくない、柔らかな旋律が、興奮する2人の心を包み込み、落ち着かせていく。戦いの余波でボロボロになっていたウタワールドが彩を取り戻し、澄んだ歌声がシャンクスの負った傷と疲労を癒していく。

 

「この歌声……ウタか……」

 

シャンクスが振り向いた先には、戦いを止めようと目に涙を滲ませながら歌うウタの姿だった。

 

 

本来なら、ウタウタの実の能力者が作り出すウタウタの世界は、維持するのに著しく体力を消耗してしまう。

そのため、普段ウタウタの世界、通称ウタワールドをウタが維持できるのはウタが歌っているほんの僅かな間だけしか展開できていなかった。

 

しかし、住むためにウタワールドに訪れたトットムジカが、自らの力を使ってウタワールドの維持を肩代わりしたことで、ウタが体力を使わずとも、常にウタワールドが展開されている状態になっていた。

 

そしてウタワールドを通して、ウタの心の中に、次々とトットムジカとシャンクスの声が聞こえてきた。

 

トットムジカを取り巻く感情達からは、ウタの歌声に救われた感謝の言葉

や、ウタの創る新時代を見たいという希望の声が溢れてくる。そしてわかってしまった。彼らはただ受け入れてほしかったのだと。寂しかったのだと。

 

シャンクスからは、例え血は繋がっていなくとも、父親として、どれだけ深く娘として私を愛してくれているのかが伝わってくる、とても大きな愛の声が。

 

そして、同時に、そんなウタのことを想う2人が、壮絶な戦いを繰り広げていることに心を痛めた。

 

やめてよシャンクス、もうトットムジカを許してあげてよ。トットムジカはただ寂しかっただけなんだよ。

 

やめてよトットムジカ。シャンクスは私の大切な家族なんだよ。だからもう、シャンクスを傷つけないで。

 

2人を止めないと!

そう思ったウタは、ふとシャンクスの言葉を思い出した。

 

「お前の歌声だけは、世界中のすべての人たちを幸せにすることができる」

 

そうだよね、シャンクス。

私は赤髪海賊団の音楽家ウタ。私にできるのは歌うこと。だからこの歌を聞いてね、2人とも。

 

<世界のつづき>

 

ウタワールドに響くその歌声に包まれ、シャンクスは剣をしまった。

 

「ウタを泣かせちまった以上、試すのはこれでしまいだな」

 

そう言って覇気を抑えたシャンクスを見て、トットムジカもまた、戦意を納めた。

やがて、ウタは最後まで歌を歌い終わると、涙を流しながらシャンクスの元に駆け寄った。

 

「なんでこんなことしたんだよ!シャンクス!」

「すまなかったな、ウタ。だが、どうしても確かめないといけないことだったんだ」

「それでも、シャンクスが傷つくのは嫌だよ!」

 

シャンクスは少し困りながらも、ウタの頭を撫で、そして抱きしめた。

抱き合う2人の姿は、父親と娘の、紛れもない尊い家族そのものだった。



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エピソードオブエレジア エピローグ

 

 

さて、ウタちゃんとシャンクスが仲直りしたことだし、使い魔に収まるためにも、ここは自己紹介を……

 

「あなたがトットムジカでしょ!私は赤髪海賊団の音楽家、ウタだよ!」

 

「私の使い魔になりたいんでしょ!いいよ!一緒に新時代を創ろう!」

 

するとシャンクスも、

 

「ウタが認めたなら仕方がない。今日からお前も、俺たちの仲間だ」

 

これは勝ちました!ついに目標を達…

 

「それはそれとして、ねえ、トットムジカ、怖いからその姿やめなよ!」

 

 

 

え!!!???

 

 

 

 

 

その後……

ウタちゃんからの、その姿やめなよ発言を受け、なんとかぬいぐるみのような愛嬌のあるゆるキャラの姿になることができた。

ブルーノみたいなおっさんでも、ウタワールドではゆるキャラになれるのだから、案外なんとかなるもんだ。

 

これでシャンクスにも許され、ウタちゃんにも認められて使い魔ポジになることができた。

 

さて、現実世界では、いよいよエレジアを出港する時がきてしまったみたいだ。

エレジアがなんともなかったおかげで、ゴードンさんも別れを惜しみながらも、笑顔で赤髪海賊団を見送ってくれた。

 

そして、レッド・フォース号船上。

 

シャンクス達は真っ昼間から、さっそく宴をはじめていた。

なんでも新入りの俺の歓迎会も含めての宴らしいので、ゆるキャラ姿で現実に顕現することにした。

 

「エレジアでのウタの素晴らしい歌声と、新しく入ったトットムジカを祝って乾杯〜」

 

そう言ってぐびぐびと酒を飲み出し始めた。すごいな、今、酒を樽ごと一気飲みしちまったぞ。

 

そんな様子をウタちゃんに抱えられて眺めていると、突然ヤソップが近づいてきた。

 

「それにしてもよ、本当にこのぬいぐるみみたいなやつが、あのトットムジカなのか? こんなのが世界を滅ぼす歌の魔王とはとても思えないぜ!」

 

そう言って笑いながら顔の部分をムニムニと触ってきた。

おのれヤソップめ!育児放棄しているダメ親父の分際でなんと無礼な。少しはシャンクスを見習ったらどうだ。大分親バカだが。

 

「ああ、今はそんななりをしてるが、めちゃくちゃデカくてつよかったんだぜ ! まあ、俺の方が強かったがな!」そう言って、だっはっはと笑いながらシャンクスはまた酒をがぶ飲みし始めた。

 

はあ、シャンクスはわかってないな。

少し考えたらわかることだが、確かにシャンクスは強い。しかし、さすがに未来の四皇クラスの力は、今はまだないくらいだ。

 

それが、ウタワールドで下手をすれば海賊王ロジャーに匹敵する力を出せていた。それは、ウタちゃんがそれだけシャンクスを想っていたからだ。

ウタワールドはウタウタの実の能力者が望んだ世界。

きっとウタちゃんは心の中ではシャンクスが最強なんだと無意識に思っていたのだろう。だからこそ、ウタワールドでシャンクスは最強の存在になったのだ。

 

底が見えないシャンクスなら、それに気づいていると思ったが、あの様子だとまったく気づいてないな。

 

さて、酔いもまわり海賊団の全員でビンクスの酒を歌い、宴の熱は最高潮に達した。そしていよいよ我らが歌姫、我らが海賊団の音楽家のステージがはじまる。

 

 

「みんな!ウタだよ!」

「今日はなんと、特別に!新しい曲をみんなに披露するよ!」

 

そう言って満面の笑みを見せ、鮮やかな歌声を響かせる。

 

<新時代>

 

その歌声がもたらすのは、永遠の幸せか、無限の牢獄か。

だが、少なくとも、今、彼女の歌声がもたらすのは、かけがえのない、本当の幸せだろう。

 

〜エピソードオブエレジア 完〜

 

 

 

 

 

 

この時は思いもしなかった。ずっと続くと思っていた、赤髪海賊団での冒険が終わってしまう日がくるなんて。

 

 

 

???「マ〜〜〜〜マママママ!!」

 

次回 ターニングポイント1



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ターニングポイント1 歯車の狂った世界

映画2周目見てきました!
生きているウタちゃんを見るだけで涙が止まらなかったです。
それにしても、原作のトットムジカの厄介さといったらほんと……

原作トットムジカがやらかしまくったので、その分、この話ではトットムジカにウタちゃんと赤髪海賊団に貢献してもらいます!


レッド・フォース号船上。

 

特にやることもなかったので、前世に聞いてた曲をウタちゃんに教えることにした。

 

「すごいね!ムジカが教えてくれたココロのちずって曲、とっても素敵だね!」

 

ちなみにトットムジカは長いので、普段は省略して、呼びすてにすることになった。

それにしても、やっぱり素晴らしい歌声だよ。俺のおすすめのONE PIECEの曲を教えてよかったぜ!

魔王を構成してる感情達なんて、すっかりウタファンになって熱狂しちまってるしよ。

もしウタちゃんが見聞色使えたらびっくりするだろうな。数えきれないほどの「「「U・T・A」」」コールが聞こえてくるんだから。

 

こんな感じで歌を聞き、宴で騒ぐ。そんな平凡だけど確かな幸せがウタちゃんにはずっと続いてほしいもんだ。

 

まあ、エレジアの事件が起こらなかったから、後はフーシャ村に帰るだけだがな!

 

この時は、まだ、平和な船旅が続くと思っていた。

しかし、エレジアの事件が起こらなかったことで、この世界の歯車は大きく狂い始めていた。そして、本来なら交わらないはずの海賊団と、赤髪海賊団は出会ってしまった。

 

 

 

 

 

その日は珍しく、敵船発見の報告を受けて、いつも通りウタは船番をしていた。しかし、普段なら戦闘が終わっている頃になっても、シャンクス達は帰ってこず、いつにも増して船が激しく揺れ、外でも爆発音が絶えなかった。

 

「ねえ、シャンクス達はまだ帰ってこないの?」

 

ウタの問いかけに、一緒に船に残っていたラッキー・ルウはいつもと異なり厳しい顔をしていた。

 

その時、船を突き破る、凄まじい音が響いた。慌てて部屋を出たルウとウタは、音のした方へと向かう。すると、そこには肩で息をしたボロボロのシャンクスが膝をついていた。

 

「シャンクス!?」

 

あのシャンクスが!?一体誰に!?

そう思い、トットムジカが外の光景を見ると、前世でONE PIECEのアニメや漫画でよく見た、ビッグマムの海賊旗が見えた。

 

どういうことだ!こんな展開、原作でも映画でも知らないぞ!?

トットムジカが焦っていると、見覚えのある、化け物みたいな巨体の女と、鋭い眼光の大きなファーを巻きつけた、三叉の槍を持つ長身の男が船に降り立った。

 

おいおいおいおい!!

シャンクスが相手にしてたのは、ビッグマムにカタクリかよ!

おまけにベックマンやヤソップ達が戦っている相手も将星や幹部級のやつら、ビッグマム海賊団の主力じゃねえか!

 

 

 

トットムジカがエレジアを滅ぼさなかったことで運命の歯車が狂ったのか、ビッグマム海賊団ではなぜか、本来は起こらなかった航海中に突然起きたビッグマムの食いわずらいを直すため、進路を大幅に逸らすことになってしまった。

 

その結果、無事に目的のお菓子を食べ、本拠地に戻ろうとしていた、ビッグマム海賊団と赤髪海賊団は遭遇する羽目になってしまったのだった。

 

 

「ハハハハ…ママママ!まさか散々ちょっかいをかけてきた赤髪のガキと、こんな所で会えるとはね!カタクリ!こいつはここで確実に殺すよ!」

 

雷雲ゼウスに乗り、二角帽ナポレオンと太陽プロメテウスを構えるビッグマムと、不服そうにしながらも、カタクリが三叉槍を構えた。

 

状況は圧倒的に不利、それでも立ち向かうシャンクスを見て、ウタは声が出なかった。

 

 

 

ビッグマムのナポレオンと、シャンクスの愛刀グリフォンが激突する。同時に発生する覇王色の衝突は天を割き、凄まじい衝撃を撒き散らす。

この時、覇王色の強さはシャンクスが上回っていた。

しかし、相手は海の皇帝とも称されるビッグマム、シャーロット・リンリン。人の理を超えた怪物のごとき怪力と、シャンクスを上回る武装色の覇気で対抗する。

 

加えて、トットムジカが知る原作の12年前現在において、シャンクスは決して強さの絶頂期ではない。対してビッグマムは、ONE PIECE世界最大のデバフとまで呼ばれる「老い」が12年分少ない状態。より全盛期に近い、原作よりも力が溢れている状態だった。

 

さらには、ビッグマム海賊団最強の男、シャーロット家の最高傑作とも言われるカタクリの存在。

二対一という状態が不本意なためか、そこまで手は出してこないが、シャンクスを上回る見聞色を用いて、的確に、シャンクスを追い詰めていく。

それでも、シャンクスは諦めなかった。大切な仲間達を背負う船長として。愛する娘を守る船長として。

 

 

 

初めて体験した戦場の空気、ビッグマムとカタクリという、新世界の怪物達の覇気、そして、シャンクスが傷つき二度と会えなくなってしまうかもしれないという、恐怖。

声が出ず、唯一できる、歌を歌うことすらできない自分の不甲斐なさにウタは涙が溢れた。

イヤだよ…シャンクスが傷つくの。

イヤだよ…シャンクスが負けちゃうの。

 

そんな無力に打ちひしがれているウタに、トットムジカは語りかけた。

諦めるな、安心しろウタ!まだシャンクスは助けられる!

 

助けられるの!?助けて、シャンクスを助けてよ!トットムジカ!

 

ああ、まかせろ!

だが、それにはウタ、君の力が必要だ。君にはシャンクスを、みんなを助けることができる力がある!だから…

 

「俺を歌え、ウタ!!!」

 

 

……そうだった、私は赤髪海賊団の音楽家、ウタ!!

 

私にできるのは歌うこと!

だから歌うよ。シャンクスを助けるために。世界を滅ぼす破滅の歌、魔王の歌を。

 

瞬間、戦場に不吉なメロディが構成する禍々しい音楽が、世界を滅ぼす呪いの歌が響き渡る。

 

そして……… 殺戮と破壊を繰り返す怪物、古の魔王トットムジカが、現実世界に完全なる顕現を果たした。



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ターニングポイント1 決着

なんと、ごろすじ様から素晴らしいウタちゃんのイラストを頂きました!

衝動的に書いた小説にも関わらずイラストを頂くことができてとても嬉しかったです!トットムジカを歌う幼少期ウタちゃんも大好きです!
ビッグマム海賊団視点だと、これくらい邪悪さと絶望を感じる曲ですよねトットムジカ。




【挿絵表示】



 

 

世界を救う、天使の歌声を持った少女は、家族を、父親を救うため破滅の歌を歌う。

世界を破滅へと導く絶望の歌が奏でられ、戦場へと響き渡る。

そして、空を覆うようにして、黒々としたガスのようなものが渦巻き、次第に質量を増していく。世界が大きく揺れ、海が、空が割れて漆黒の翼を持つ、この世の絶望が具現化したような存在が現れる。

 

完全体トットムジカ 最終形態、第三楽章での初の顕現。

 

 

 

 

それにしても、不思議な気分だな。

映画ではシャンクスに倒されるはずの存在である俺が、まさかシャンクスと共闘することになるとはな。

とはいえ、ウタちゃんに頼まれたんだ。トットムジカの名の下に、全力でいくとするか!

幸いにも、無理やり取り込んだわけではなく、ウタちゃんとシンクロしているから、ウタウタの実の力もある程度引き出せる万全の状態だし、なんとかなるだろ!

 

顕現すると同時に、トットムジカは、歌声を聞いたビッグマム海賊団の全ての人間の心を、ウタワールドに取り込み、肉体の制御を奪った。

 

これにより、シャンクスとの戦闘中のため、強力な覇気を全身に纏っていた、ビッグマム、カタクリ、そしてベックマンとの戦闘で、たまたま覇気で全身を纏っていたオーブンを除き、全ての人員が掌握された。

 

さらに、

技名はこれにするか……

「侵食固有結界」

 

ウタワールドと現実世界を繋いだトットムジカは、現実世界を侵食し、ウタワールドへと塗り替えていく。

現実のあらゆる事象が、存在が、ウタワールドと同じ法則へと改竄され、やがて、付近の海域全てがトットムジカが全てを支配する、完全な魔王領域へと作り変えられた。

 

 

幼いウタちゃんに負担をかけないように、できるだけ早く終わらせないとな!

 

さて、後は別格のビッグマムとカタクリをどうにかすれば解決だ!

ウタワールドと同じ法則が適用された以上、ウタちゃんの家族である赤髪海賊団のメンバーは、その強さを大幅に引き上げられている。そんな状態のベックマンの前には、流石のオーブンもどうしようもなく、覇気を纏えなくなるまで弱ったところで、ウタワールドに心を取り込むことができた。

 

そして、万が一がないように、ウタワールドの方のトットムジカが放った光によって、ウタワールドに取り込まれたメンバーは、ポン!ポン!ポン!と次々とクッションやぬいぐるみへ、力のある幹部級の兄弟達はゆるキャラのような姿へと変換させられていった。

 

そして、シャンクスに、やっかいなカタクリを相手してもらい、トットムジカはビッグマムと対峙する。

相手は正真正銘、海の皇帝と言われる大海賊。

 

しかし、現実世界とウタワールドそれぞれに四皇クラスの海賊団がいないと、そもそもダメージすら入らないという、ある種のクソギミックを持つトットムジカには余裕があった。

 

「なにもんだか知らねえが、よくもやってくれたねえ!威国!!」

 

怒り心頭のビッグマムの放つ渾身の斬撃をクソギミックで無効化しつつ、ビッグマムをウタワールドへ取り込むべく、トットムジカは考えたハメ技を実行した。

 

ビッグマムの弱点は大体割れてるからな。

トットムジカが最初に行ったのは、原作知識を元に生み出したマザー・カルメルの写真を怒り心頭のビッグマムの目の前に見せることだった。

 

「マザー!?」

 

怒り心頭で冷静さを保てていなかったビッグマムは、あっさりと動揺し、覇気を解除してしまった。そして、()()()()()()()()()()

これでチェックメイトだ。

例えどんな化け物であろうと、歌を聞いた存在の心は、ウタワールドへと取り込まれる。ウタウタの力の前には、覇気を解いたビッグマムとて例外ではない。こうして、ビッグマムは現実世界において、完全に無力化されてしまった。

 

しかし、さすがにウタワールドとはいえビッグマムと戦う、あるいは弱体化させるのは相当の体力やエネルギーを消費する。

そのため、足止めのために、思い出のセムラを出してみたところ、あっさりとビッグマムはお菓子に夢中になり、戦意を放棄してしまった。それでいいのか!?ビッグマム!?

 

さて、後はカタクリをみんなで倒せば……なに!?サシで戦う!?

 

 

 

sideカタクリ

 

 

 

最初に異変に気づいたのはカタクリだった。世界最高峰の未来視にまで至った見聞色は戦場に起きた異常事態を最も早く感知した。しかし、不幸にも、意識のほとんどを対赤髪に向けていたため、気づいた時にはすでに手遅れだった。

 

禍々しい化け物が現れた次の瞬間、邪悪なオーラが世界を覆った。すると全身に覇気を纏っていなかった兄弟達が一斉に意識を奪われた。生きてこそいるが一体どうなっている!?

 

さらには、覇気を纏っていて無事だったオーブンが、それまで互角に戦っていたベックマンに一方的に削られはじめた。そして、他の兄弟と同じようにオーブンまで……

 

「俺の弟や妹たちになにをした!!赤髪!!」

 

「いや、俺は何もしちゃいないが…」

 

「なら、あの化け物はなんだ!!!」

 

「ありゃ、俺の娘のペットみたいなもんだ」

 

「あれが、ペットだと!ふざけるのも大概にしろ!!!」

 

その時、怒り心頭のママが化け物に突っ込んでいった。しかし、あのママの全力の威国がまるで効いていないだと!?

そしてカタクリの見聞色がトットムジカの行動を予知する。なぜ、マザー・カルメルの写真が!?

今すぐママに知らせなくては!

 

しかし、写真の存在を伝えようとすると、それを妨害するようにシャンクスが斬りかかる。

 

「俺を忘れちゃ困るな、ビッグマムの息子!」

 

クソ!このままではママまで……

 

「邪魔をするな!赤髪!」

 

「そうはいかんさ!娘が身体を張って戦ったんだ。父親として、俺にも意地がある!」

 

そしてついに、ビッグマムすら意識を奪われ、残るはカタクリただ1人。

相対するは、まるで最初から傷などなかったかのように回復し、これまでより遥かに力が漲っている赤髪海賊団。そして、俺達の家族の意識を奪った謎の化け物。

戦況は絶望的か…… だが……

 

「俺の家族を奪われて、ここで引ける訳がないだろう!!」

 

そう言い放つと、カタクリはこれまで以上に覇気を高め、三叉の槍をなおも構える。

 

「俺達は海賊だ、たとえ俺達全員でかかっても文句はないだろう」

 

「構わんさ!それが海賊だ!!だが、兄として、弟達や妹達を奪われたまま、俺がお前達に負けることは絶対にない!!!」

 

愛刀グリフォンに覇気を纏わせるシャンクス、そして、ベックマンをはじめとしたクルー達が各々戦闘態勢に入る。

 

すると、シャンクスが

 

「その覚悟気に入った!お前に敬意を表する!どうだ?俺とサシで殺らないか?」

 

「お前が勝ったら、俺が頼んでお前の家族の意識を取り戻させてやる。だが、俺が勝ったら、お前らの船の財宝は全て俺たちがもらうってのはどうだ?」

 

「「「何言ってんだお頭〜!!」」」

 

驚く赤髪海賊団のクルーをよそに、カタクリはその提案を了承した。

 

「いいだろう、赤髪のシャンクス!お前を倒し、必ず家族達を取り戻してみせる!!」

 

本来なら起こらなかった、赤髪のシャンクスとシャーロット・カタクリの対決がこうして幕を開けた。

 

 

 

覇王色の覇気の衝突から始まった戦いは、シャンクスが大幅に押していた。

見聞殺しによって、シャンクスに対しての未来視を完全に封じられ、覇王色、武装色ではシャンクスがカタクリを上回っていた。

覚醒したモチモチの実を用いた攻撃も、全て覇王色を纏った一撃で薙ぎ払われ、カタクリはもはや満身創痍だった。

 

それでもなお、カタクリは立ち向かう、世界最高峰の見聞色を持つカタクリには、妹、ブリュレを通して、家族が捕らえられているウタワールドの声が聴こえてくる。

 

ぬいぐるみにされ、動くことすらできない妹や、覇気や能力をほとんど使うことすらできない無惨な?姿にされている様子が。

 

そして、唯一無事なママは、無限に湧き出るお菓子に夢中で、とても戦える状態ではない。

 

例え、自身が放てるのは後一撃が限界だとしても、それでもカタクリはありったけの覇気を纏い、自身の最後の一撃を放った。

 

全ては、苦楽を共にした、愛する家族を救うために!

 

「これで、最後だ!赤髪!!」

 

「ああ」

 

己の身体を高速で回転させ、遠心力と共に、ありったけの覇気を纏っての特攻。自身に今でる最大の破壊力を持つ一撃を放つ。

 

斬・切・餅(ザン・ギリ・モチ)!!」

 

対してシャンクスも世界が軋む程の覇気をもって応える。

 

家族への想いを背負って戦うカタクリに驚嘆しつつ、シャンクスの脳裏にもウタと過ごした数々の記憶が、奔流となって流れ込んでくる。

 

シャンクスを見つけるたび、いつも嬉しそうにじゃれついてきた笑顔。ウタの歌声に合わせ、仲間と一緒に肩を組んで踊ったこと。フーシャ村で、ルフィと競争ばかりしていたウタの姿……

 

そんな大切な娘の前で自身が晒した不甲斐なさへの怒りと、もう二度とそんな姿を見せないという決意を込めて、愛刀グリフォンに覇気を纏わせる。

想い描くは己が知る最強の男の姿。自分を拾い、育ててくれた、まるで父親のように思っていた船長、幾度も助けられ、幾度も憧れた海賊王の姿を。

 

神避(かむさり)!!!」

 

シャンクスの爆風のような一撃は、一瞬の拮抗をものともせず、カタクリの身体を斬り裂き、吹き飛ばした。

 

数秒して、土煙が晴れると、空に背を向ける、カタクリの姿がそこにあった。

 

「倒れてもなお、地に背をつけることはないか……野郎ども!財宝奪ってずらかるぞ!」

 

そして、この日起きた大事件は世界中を駆け巡り、騒がせた。

 

「赤髪海賊団、皇帝ビッグマムを退ける!」

 

 

 

 

そして、

 

「おかえり!ウタ!」

 

「ただいま!ルフィ!」

 

本来の歴史では叶わなかった、2人の幼馴染が再会した。

 

 

 




今作のトットムジカのクソギミック一覧

引き出したウタウタの力で、(トットムジカの曲を含む)歌を聞いた相手をウタワールドへ心を取り込む。心を取り込んだ存在の肉体を自由に操ることができる。

現実世界をウタワールドと同じ法則へと侵食する。現実世界でもウタワールドでできることが全て可能になる。音符兵や物を生み出す。味方へのバフ、回復、敵へのデバフも可能。

ウタワールドの人や物を現実に持ってくることができる。実は逆もできる。

ウタワールドと現実世界からの同時攻撃以外全ての攻撃を無効にする。

ちょっと強化したつもりが、ガチのクソ仕様になってしまった……


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動き出す世界

衝動的に書き始めた作品なのに、こんなにたくさんの感想貰えて嬉しいです!これからもどんどん感想や意見を募集してますので、本作をよろしくお願います!


 

 

シャンクスがカタクリを倒し、安全圏まで離脱した後、ウタちゃんの体力が限界だったので現実世界での実体化を解除した。

できる限り負担は軽減したものの、やはり、幼い身体には、負担が大きかったようで、今はぐっすり眠っている。そのため、ウタワールドの維持は完全に俺が担当し、心を取り込んだビッグマム海賊団のメンバーは、脅威度の低いやつから順次解放していった。

 

さすがにビッグマムは、万が一単身で追いかけて来られると困るので、万国に着くまでは解放するつもりはないが。

 

それにしても、ビッグマムは相変わらずお菓子に夢中だな、一体どれだけ食うんだよ!?

無限にお菓子が出るから良いとはいえ、限度ってものがあるだろ…

 

こうして、最大の脅威を乗り越えた赤髪海賊団は、その後は順調に航海を進めていった。そして…

 

「おーい、フーシャ村が見えてきたぞー!」

 

着いたな、物語の始まりの地、フーシャ村に!

 

 

東の海、ゴア王国

その辺境にある小さな港村、フーシャ村に海賊に憧れる1人の少年がいた。

 

少年の名はモンキー・D・ルフィ

 

血の気が多いルフィは赤髪海賊団の航海には連れて行ってもらえず、いつもフーシャ村で赤髪海賊団のみんなが帰るのを待っていた。

 

そして、ついにレッド・フォース号が港に戻ってくると、ルフィは走っていって、海賊たちを迎えた。

 

「おかえりィ!!!今回はどんな冒険してきたんだ?」

 

するとシャンクスはニンマリと笑って数々の冒険の自慢話を話し始めた。

国民みんなが音楽を愛する島の話、不思議な力を持った悪い海賊との戦い、そして、そんな海賊をシャンクス達がやっつけたこと。

そんな話を聞いて、ルフィはますます海賊の憧れを強めていった。

そして、

 

「もう、シャンクスは航海で疲れているんだから、休ませてあげなよ!ただいま!ルフィ!」

 

「おう!おかえり!ウタ!また冒険の自慢話聞いてやるよ!こっちだ!」

 

そう言ってウタの手を引っ張って走り出すルフィに、少しウタは呆れながらも一緒に走って行くのだった。

 

航海の後のフーシャ村ではよく見られるいつもの光景。けれど原作を知るトットムジカには、その光景がとても尊いものに見えるのだった。

 

願わくば、ウタ、ルフィ、シャンクス、この3人に幸あらんことを。

 

しかし、トットムジカの願いもむなしく、世界はすでに動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

sideビッグマム海賊団

 

「それで、俺が眠っていた間に財宝は奪われ、まんまと赤髪に逃げられたってわけかい?」

 

新世界の本拠地にたどり着いたビッグマム海賊団のメンバーは、起きたビッグマムの下に呼び出されていた。その中には、シャンクスとの戦いに敗れ、負傷したカタクリの姿もあった。

 

「すまない、ママ、責任は全て負けた俺にある。だから、弟達と妹達を許してやってほしい」

 

そう言って頭を下げるカタクリにビッグマムは

 

「そうかい、次は負けるんじゃないよ」

 

と普段では考えられない、限りなくマザーモードに近い微笑みで、激励の言葉を送った。これには叱責を恐れて下を向いていた兄弟達も、余りの衝撃に固まってしまった。

 

しかし、次の瞬間、ビッグマムはマンママンマと邪悪に笑い、目をギラつかせた。

 

「まさか、赤髪にウタウタの能力者の娘がいて、さらにあのトットムジカを連れているなんてね!!!!」

 

世界トップクラスの情報力を持つビッグマム海賊団は、当然ウタウタの実の能力とトットムジカの噂を知っており、子供達は、ビッグマムの発言に驚愕した。

 

「予想以上の能力だ!赤髪の娘の力があれば、俺は海賊王にも手が届く!」

 

そして

 

「ウタウタの力とトットムジカの力を使って、創ってやるよ、俺が約束する永遠の幸福の世界をな!!!!」

 

そして、ビッグマムは宣言した。

 

「最低限の戦力を残して、全戦力を召集しな!奪いに行くよ!赤髪の娘を!!!」

 

 

side世界政府

 

聖地マリージョア

世界政府の最高権力者、五老星たちはCPから報告を受けていた。

 

「報告します!ビッグマム海賊団に潜ませていた、全ての人員との連絡が一切に途絶えました!最後に送られてきた報告は、赤髪、娘、ウタウタ、以上です!」

 

「赤髪に娘がいたのか」

 

「ウタウタの実は世界政府が特に危険視している悪魔の実だ。危険の芽は一刻も早く摘まねば」

 

既に、ビッグマム海賊団と赤髪海賊団を監視していた監視船が歌が聞こえたと同時に消息を絶ったという情報を聞いて、五老星たちはウタウタの実の存在を確信していた。

 

「その娘がフィガーランド家の血筋でもか?」

 

五老星の1人が言うと、他の4人がハッと顔を上げた。

 

「トットムジカの存在も気になる」

 

「トットムジカ…アレが再び目覚めるのなら、悠長に構えているわけにはいかないだろう」

 

やがて、五老星はCPと海軍へ指令を出した。

 

「赤髪の娘の件はCPに一任する!何としても、娘を捕獲、あるいは排除しろ!」

 

「海軍は投入できる戦力を今すぐ、対ビッグマム、対赤髪に編成しろ!今すぐだ!」

 

こうして世界は赤髪のシャンクスの娘、ウタをめぐって動き出した。

 

 




五老星 流石にトットムジカは目覚めてないだろう(安定のガバ推理)

センゴク ガープはどっか行くし、五老星からは急に指令くるし胃が痛い…


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物語のはじまり

アニメの映画連動エピソードめっちゃ良かったです!
でも映画を見た後に見ると、色々と込み上げてくるものがありますね…


 

「ビッグマム海賊団に不穏な動き!赤髪への復讐か!」

 

「百獣のカイドウ、単身ビッグマム海賊団へ突撃!」

 

不穏なニュースが世界を震撼させている中、フーシャ村ではいつものように赤髪海賊団が飲んで騒いでの宴を開いていた。そして、ついに原作の物語が始まったのだった。

 

「野郎ども乾杯だ!!」「ルフィの根性と俺達の大いなる旅に!!」

 

無事にエレジアから戻ってきて月日が流れ、ついに始まった原作のシーンを生で見ながら、トットムジカはルフィがゴムゴムの実を食べる瞬間を今か今かと待ち望んでいた。

 

ちなみにウタが初めてトットムジカをルフィに紹介したときは、

 

「みてみて!ルフィ!今回の冒険で、私の使い魔になったムジカっていうの!とっても強いんだよ!」

 

「なんだこいつ?気持ちわりィ!」

 

と最初は散々な評価だったが、襲ってきた山賊をビームを放ってボコボコにすると、

 

「ビームじゃーん!!すっげえー!!なあ!ウタ!そいつ俺にくれ!!」と手のひらクルックルだった。

 

「ルフィにあげるわけないじゃん!ムジカは私の使い魔だもん!」ともちろん断られていたがな!

気持ちわりィって言ったの忘れてないぞ!

 

 

さて、ルフィは今何を?おっ、宝箱を開けた!

 

「なんだ?これ?変なデンデンムシだな!」

 

…違う宝箱だったみたいだな。気を取り直して、おっ、今度こそゴムゴムの実だ!そしてしっかり食べたな。早く覚醒させろよ!ニカの力を!

 

そういえば、そろそろあの男が来るのか…

56皇殺しの男、山賊ヒグマが!

 

 

 

 

 

 

度胸試しで顔に傷をつけ、航海に連れて行ってくれと頼むルフィだったが、シャンクスはからかうだけで、なかなか許可を出してくれなかった。

 

「要するにお前はガキすぎるんだ、せめてあと十歳年とったら考えてやるよ。」

 

「このケチシャンクスめ!!言わせておけば!おれはガキじゃない!!」

 

そういって怒るルフィにシャンクスは、笑いながらルフィにジュースをおごった。感謝してジュースを飲むルフィ。しかし、それはシャンクスの罠だった。

 

「ほらガキだおもしれえ!!」

 

「きたねえぞ!シャンクス!!」

 

まんまと罠にかけられ、怒りに身を震わせるルフィは、その矛先をウタへと向けた。

 

「でもよシャンクス!ウタだってガキなのに船に乗ってるじゃねえか!」

 

「ウタは特別だ。なんせ俺の娘だからな!それに、ウタはお前より強いじゃねえか。聞いたぞ!山賊をボコボコにしたんだって?さすがは自慢の娘だ!」

 

そう言ってだっはっは!と笑うシャンクスに照れるウタ。

 

「強いのはウタじゃなくてムジカじゃねえか!ずりィぞ!ビーム出る使い魔なんて!おれにもビーム出る使い魔くれよ~シャンクス~」

 

「なによ!ムジカはわたしの使い魔!つまり、わたしの力ってこと!出た、負け惜しみィ」

 

そう言ってシャンクスと一緒にからかうように笑うウタ。似たように笑う父娘(おやこ)にイライラを募らせそっぽを向くルフィに、ベックマンが話しかけた。

 

「ルフィお頭の気持ちも少しはくんでやれよ。」

 

「シャンクスの気持ち?」

 

「そうさ…あれでも一応海賊の一統を率いるお頭だ。海賊になることの楽しさも知ってりゃその反対、過酷さや危険だって一番身にしみてわかってる」 

 

ビッグマム海賊団との過酷な死闘を思い出しながら、ベックマンは言葉を続けた。

 

「わかるか?別にお前の海賊になりたいって心意気を踏みにじりたい訳じゃねぇのさ」

 

「わかんないね!シャンクスはおれをバカにして遊んでんだ!それにウタも!!」

 

そういってからかってくるシャンクスとあっかんべーをしてくるウタに文句を言うルフィ。

 

その後もわいわいがやがやしていると、それまで、笑っていたシャンクスが突然

 

「ウタ。しばらくの間隠れてろ。物騒なものは見せられないからな。ムジカ、ウタをたのんだぞ」

 

そう言われ渋々店の裏に隠れるウタ。すると、バキ!という扉を蹴破る音と共に、山賊たちを引き連れて、一人男が現れた。

 

「ほほう、これが海賊って輩かい…初めて見たぜ、間抜けた顔してやがる。」

 

そういって不敵な顔をする男の名は、ヒグマ。世間を騒がせている、大海賊であるシャンクス達を前にしても、その不遜な態度を崩さず、店の酒を全て飲まれた怒りから、シャンクスへと酒瓶を叩きつけた。

 

「おい貴様!この俺を誰だと思ってる。なめた真似すんじゃねえ!」

 

そう言ってヒグマは懐から、一枚の手配書を取り出した

 

「これを見ろ!八百万ベリーがおれの首にかかってる、第一級のお尋ね者ってわけだ。5()6()()()()()()()!!てめえのように生意気なやつをな!!」

 

 

 

 

 

シャンクスにもう大丈夫だと言われ、店の裏から出てきたウタが見たのは、酒や飲み物をぶち撒けられ、びしょびしょになりながらも笑っているシャンクスと仲間たちの姿だった。

 

少しだけ聞こえた山賊の声とシャンクスの姿から、おおよそのことを察したウタは、目からハイライトを消し、破滅の歌を歌おうとする。

 

「心配するなウタ、ただ酒をかけられただけだ、怒るほどのことじゃないさ」

 

そう言って慌てて歌うのを止めさせるシャンクスに、ウタは納得できない!と声を荒らげる。そして、同じ思いだったルフィも、

 

「あんなのかっこ悪いじゃないか!!何で戦わないんだよ!いくら、あいつらが大勢で強そうでも!!あんな事されて笑ってるなんて男じゃないぞ!!海賊じゃない!」

 

そう言ってもう知るか!と出ていこうとするルフィをシャンクスは引き止めるためルフィの手を掴んだ。すると…

 

()()()()()()()()()ルフィの手がびよーんと伸びた。

 

食べてしまったのだ。シャンクスが大切にしていた海の秘宝、ゴムゴムの実を。

 

阿吽絶叫に包まれる酒場、バカ野郎ォー!!と叫ぶシャンクス。

 

まあ、本当はゴムゴムの実じゃないんだけどな。というトットムジカの呟きは、周囲の大騒ぎの声にかき消され、誰の耳にも届かなかった。

 

 




ちなみに、山賊が襲ってきたシーンは、

「どっちが山賊をやっつけられるか勝負だよ!わたしが航海に出てる間に強くなったんでしょ!見せてよ!」

「おう!おれのパンチはピストルのように強いんだ!」

その後山賊にボコられるルフィを見て、

「しょうがないな~ルフィは。ここはお姉さんが助けてあげる!ピストルっていうのはね!こういうものなの!ウタウタのピストル!」

おねがいね!ムジカ!
了解っと! ビーム発射 

という感じですね。

ちなみにカイドウさんはビッグマム海賊団に負けましたが、ビッグマム海賊団の進撃は大幅に遅れることになりました。ナレ死(死ねない)


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シャンクスとの別れ

 

 

レッド・フォース号船上

なあ、ウタちゃんそろそろルフィを許してやらないか?

 

ルフィがゴムゴムの実を食べてから時が経つも、ウタは未だに山賊の件と、ルフィが自分にもくれないほど、シャンクスが大切にしていたゴムゴムの実を食べてしまったことに、未だに納得していなかった。

 

「シャンクスがあんなに大事にしてた物を食べるなんて、許さないんだから!!それに、シャンクスは偉大な大海賊なんだよ!それなのに、あんな山賊なんかに…ねえ、ムジカ、なんであの時、出てこなかったの?」

 

一応ヒグマが緋熊さんの可能性もあったから!という冗談はさておき、ウタちゃん、海賊船のクルーである以上、船長の言葉の重さは、覚えて置いた方がいい。シャンクスが買わなかった以上、あのケンカは俺達が買うべきものじゃなかったのさ。

 

「ふん!弱腰なんだから!」

 

そうこうしているうちに、船はフーシャ村の港に着いた。すると、シャンクスが「ウタ、お前は船で待ってろ!」

と言い残して、ベックマン達クルーを引き連れてフーシャ村へと行ってしまった。

 

そして、船に帰ってきたシャンクスは、左腕を失っていた。

 

「シャンクス!?」

 

左腕を食いちぎられ、片腕になったシャンクスの姿に、たまらず駆け寄るウタ。

少し気まずそうに笑うシャンクスから、事の経緯を聞いて、ウタは涙を流さずにはいられなかった。

 

その夜、赤髪海賊団のフーシャ村での最後の宴が開かれていた。

あの後、シャンクスが腕を失った件で、ルフィに詰め寄ったウタだったが、普段と違い、己の非力さに打ちひしがれ、何度も謝る姿に、さすがのウタもこれ以上責めることを少し躊躇ってしまった。

そしてなにより、シャンクスの「ルフィのことを許してやってくれ」という言葉もあり、しぶしぶルフィを許すのだった。

 

少し気まずそうにしているルフィとウタ。そんな姿を見かねたシャンクスは、

 

「ウタ、このフーシャ村での最後の夜だ。よかったら一曲歌ってくれないか?」

 

と言って、ウタに手を差し伸べた。

シャンクスの気遣いを察して、仕方ないなと笑い、ウタは酒場のテーブルへ、自分のステージへと登る。

 

お願いね。ムジカ!

了解、「限定侵食」

 

ゆっくりと歩きながら、澄んだ歌声を響かせるウタ。

すると、それまではただの酒場だった世界が、幻想的な音楽の世界へと塗り変わる、どこからともなく現れた楽器から音が奏でられ、歌声と共に響き渡る。

 

「さあ、うちの音楽家のステージだ!」

 

歌いながら、ウタは、これまでルフィと過ごしてきた日々を思い浮かべた。

 

ルフィのことを、最初は野蛮で生意気だと思っていたウタ。けれど、一緒に村を巡り、たくさん勝負をしているうちに次第にルフィへと惹かれていった。

そして、共に誓い合った新時代。

 

ゴムゴムの実を食べたことにはモヤモヤするし、シャンクスの腕が奪われたことは、まだ許せないところもある。それでもルフィは、ウタにとって大切な存在だった。

 

別れを惜しむその歌声は、村にも響き渡り、海賊を恐れ、敬遠していた村の人々の心さえも惹きつけた。

 

 

 

 

 

「少しいいか?トットムジカ」

 

あの後、ウタの歌声に惹きつけられやってきた、村中の人々を巻き込んで宴会はさらなる盛り上がりを見せた。

そして、歌い疲れたウタはそのまま眠ってしまった。

 

いよいよルフィともお別れか…

少し感慨に耽っていたトットムジカに、シャンクスが突然話しかけてきた。言葉を濁らせながら、「お前に頼みたいことがあるんだ」と。

 

「ウタをフーシャ村に置いていこうと思う。だから、ウタのことをお前に頼みたい」

 

なんで!!??

 

驚愕するトットムジカをよそに、シャンクスは話しを続け、一枚の新聞を見せた。

 

「ビッグマム海賊団、偉大なる航路前半の海に到達!」

 

「海軍本部、遂に動く!?」

 

「ビッグマムも海軍も、狙いは間違いなくウタの身柄だ。戦いは、前回以上に過酷なものになるだろう。そんな戦場にウタを連れて行くわけには行かない」

 

何言ってんだよシャンクス!

幼いウタが、シャンクスと離れて幸せでいられる筈ないだろ!海軍もビッグマム海賊団も、俺が本気を出せばどうとでもなる。だから、ウタを置いて行くのは…

 

「確かに、お前と俺の力があれば、この戦いに勝つことはできるだろう。だがウタの力が世界に知れ渡れば、世界中の海賊がウタの身柄を狙いに来る。そして世界政府は今度こそ、全力でウタを消しにくるだろう。もちろん、俺たちがウタの身には手を出させやしないさ。」

 

「だがな、ウタの新時代の夢はどうなると思う?幼い身で世界中から狙われ続けて、果たしてウタは世界に夢や希望を抱けると思うか?」

 

「それにな、ウタはまだガキだ。俺とは違って、娘には、ウタには平穏に歌を歌って生きていてほしいんだ」

 

そう話すシャンクスだったが、その目からは一筋の涙がこぼれていた。

 

それが、赤髪海賊団の頭として、父親としての決断か?シャンクス?

 

「ああ、幸いここは東の海の辺境。いくら世界政府でも、まさかこんな所に俺の娘がいるとは思うまい。隠すのにはうってつけだ!」

 

「それにな、本当に少しだけの可能性だが、ここなら、大きくなったウタが、海賊になっていつか俺たちに会いに来てくれるんじゃねえかと思っちまうんだ」

 

海賊になるのはやめてほしいがな!と泣きながら笑うシャンクスを見て、トットムジカはその決意が変わらないことを悟るのだった。だが、

 

一つだけ条件がある。

 

どうしても譲れないその条件をシャンクスは呑んだ。

 

そして、シャンクスはルフィに麦わら帽子とウタを託し、フーシャ村を去って行ったのだった。

 

 

 

偉大なる航路前半の海、そのとある海域

 

海域には今、3つの勢力が睨み合い、今にも戦いの火蓋が切られようとしていた。

 

ビッグマム海賊団、総戦力のおよそ8割。

 

海軍本部、投入可能な軍艦50隻、バスターコール5回分の戦力。中には、後に三大将赤犬、青雉、黄猿と称される、サカズキ、クザン、ボルサリーノの姿もある。

 

そして、赤髪海賊団。

 

均衡を破ったのは、ビッグマムだった。

 

「娘を渡しな!赤髪!せめてもの情けだ、うちの息子の中で一番好みのやつと結婚させてやるよ!!」

 

ブチィ!!

 

戦場の空気が一変する。

 

「ウタは、俺の娘だ。俺たちの大切な家族だ。それを奪うつもりなら…死ぬ気で来い!!」

 

瞬間、シャンクスの身体から恐ろしい量の覇気が放たれた。海が震え、海兵が、ビッグマム海賊団の戦闘員達がバタバタと倒れていく。

 

「おどれ赤髪ィ!」

 

「おいおいこりゃ、俺たち以外全滅じゃないの!?」

 

「まさか中将までもっていくとはねぇ……これが赤髪、シャンクスの覇気か…」

 

「やってくれたね赤髪ィ!ウチの将星以外を全員もっていきやがって!!! こんなふざけた真似、あの男を思い出すよ!ロジャーをよぉ!!」

 

こうして、後に第二のエッドウォーの海戦と呼ばれる、一大決戦の火蓋が切られたのだった。

 

 

 




たぶんシャンクスが生まれてからもっともブチ切れた瞬間だと思う…


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2人の誓い

本編が少し短いので、後書きでちょっとした小ネタを書きました!


 

 

朝、目が覚めたウタは、いつものようにシャンクス達に会いに向かった。

今日はフーシャ村を離れる日、ルフィと別れるのは寂しいけれど、ルフィと誓い合った新時代への思いから、またいつか会えるよねと思い、シャンクスの船、レッド・フォース号へと歩いて行った。

 

しかし、港に着いて見えたのは、辺り一面青く染まった海と、漁師が使う小船のみ、シャンクスの船はどこにもなかった。

 

「ムジカ、シャンクス達はどこに行ったの?」

 

シャンクス達がわたしを置いて行くはずがない。少し海に出ただけで、きっとすぐに戻ってくる。そう思いながらも、確認を込めて聞いたウタだったが、トットムジカの返した言葉は、予想に反したものだった。

 

…ウタを置いて行っちまったよ、シャンクス達は…

 

嘘だ!

 

約束したんだ!シャンクス達とずっと一緒にいるって!

なのに…なんで…

 

「なんでだよ……シャンクス!置いてかないでよ!」

 

今にも海に飛び込もうとするウタを止めるため、部分的に顕現しようとしたトットムジカだったが、伸びてきた手が、ウタの腕を掴んで止めたため、様子を見守ることにした。

ウタを助けたのは、シャンクスから麦わら帽子を託されたルフィだった。

 

「なにやってんだよ!ウタ!海に落ちたら溺れちまうだろ!」

 

「離してよ!ルフィ!私はシャンクスに会いに行くの!!だから!だから…」

 

「絶対離さねぇ!シャンクスと約束したんだ!ウタのこと守ってやるって!」

 

そう言ってルフィは、シャンクスとの約束について話した。

いつか、シャンクスに負けない一味を作って海賊王になること。

 

シャンクスから麦わら帽子を預かったこと。

 

そして、

 

「ウタは俺たちの大切な娘だ。だが、訳あって、どうしてもウタをこの村に置いて行かなくちゃならなくなった」

 

「だから、俺たちがいなくなった後、お前がウタを守ってやってくれないか」

 

なんでウタを置いて行くのか、納得できないルフィだったが、まるで死地へと向かうような、険しい顔をしているシャンクス達には何も言うことができなかった。

 

それでも

 

「わかった!ウタはおれが守ってやる!そして、いつか、立派な海賊になってウタと一緒にシャンクス達に会いに行く!!」

 

そう宣言したルフィにシャンクスは、頼んだぞ、ルフィ、男と男の約束だ!と笑って言って去って行ったこと。

 

「…シャンクスは、わたしのことを捨てた訳じゃないの?」

 

「そんなはずない!シャンクスは、ずっとウタのこと大事にしてた!出港する時だってそうだ!きっと…きっとなんか事情があったんだ!」

 

そして、ウタの手をギュッと握ったルフィは言葉を続けた。

 

「だからよ!おれがシャンクスの代わりにウタのこと守ってやる!そんで、いつか2人で会いに行くんだ!シャンクスのところに!」

 

そして海賊王におれはなる!そう言ってにしししし!!と笑うルフィに、少し心が救われたウタ。

 

「ねえ、ルフィは私を守ってくれるの?」

 

「おう!」

 

「私を置いて行ったりしない?」

 

「おう!」

 

「ずっと一緒にいてくれる?」

 

「おう!!」

 

言い切るルフィを前に涙を抑えられなかったウタは、ルフィへと抱きつき、シャンクスと離れ離れになった辛さや、寂しさを吐露した。すると、ルフィはギュッとウタを抱き返し、じっとその言葉を受け止めたのだった。

 

やがて、落ち着いたウタは、少し頬を赤らめながら、「ごめんね」とルフィに謝った。そして、立ち直ったウタは

 

「決めたよ!ルフィ!私ルフィと同じ船に乗って世界中を旅するの!そして、いつかシャンクスに一緒に会いに行くよ!」

 

そして、一緒に新時代を創ろう!そう宣言したウタにルフィは、ニカッと笑い、おう!ウタはおれの一味の最初の仲間だ!と応えた。

 

その日、2人は誓い合った。

夢の先へ共に歩むことを。

2人で手を繋いでマキノの酒場へと戻るウタとルフィ。

その尊くも微笑ましい2人の様子を見て、トットムジカは、これなら大丈夫そうだ!と安心して、2人の邪魔にならないように、ウタワールドへと引っ込んだ。

トットムジカには見えていなかった。一瞬目からハイライトが消えていたウタの顔が。

 

それから、ウタは常にルフィと一緒にいるようになった。一緒に遊んで、一緒に勝負をして、精神的には完全に立ち直ったかにも見えたが、変化は少しずつ現れ始めた。

 

それは、山賊達に絡まれた時、いつもなら、勝負を持ちかけるウタだったが、山賊達がルフィを傷つけると思うと、とてつもない怒りが湧いてきた。

なので、

 

ねえ、ムジカ、そいつら排除して!

 

ウ、ウタちゃん!?

 

ルフィを傷つける悪い奴は、みんなやっつけないとね!

 

そう言ってビームに薙ぎ払われる山賊達を見て笑うウタの姿に、トットムジカはメンタルケアに失敗したことを悟ってしまった。

 

まずい、ルフィに任せてたら何とかなると思って丸投げにしてたら、まさかここまで病んでしまうなんて…

しかしトットムジカには、何の代案も浮かんでこなかった。

 

早く来てくれ!シャンクス!

 

トットムジカは戦闘面以外まるでダメだった…

 

そして、ウタのルフィへの執着は、ますます深まっていくのだった…

 

 




小ネタ もしヒグマが、伝説の元海軍大将緋熊にして、山賊王ヒグマさんだったら


シャンクスをバカにされて、トットムジカを呼び出したウタ。
しぶしぶ戦う意志を見せるシャンクス、こっそりゴムゴムの実を食べるルフィ、そんな中でも、かつては緋熊と呼ばれた男、山賊王ヒグマは尊大な態度で笑っていた。

ヒグマの脳裏には、かつて、自分が唯一認めた海賊ロジャーとの命の殺り取り、短い海軍時代を共にした、ガープやセンゴク、ゼファーをボコった日々。
そして、かつて存在し、自分が滅ぼした、世界政府陸軍とかいうやつらや、酒場で調子に乗って挑んできたので、返り討ちにしてやったロックス海賊団とかいう奴らをうっすらと思い出していた。

先に動いたのはトットムジカだった。ヒグマの強さを認識した瞬間、東の海一帯を完全にウタワールドへと侵食し、島一つ簡単に消し飛ばす破壊の雨を降り注がせる。

「流星幻想曲」

しかし、ヒグマは空を裂く斬撃を、ほぼ同時に容易く放ち全ての破滅の光を撃ち落とした。さらに、世界が軋む程の覇気を纏うと、トットムジカごと海をバターのように切り裂いた。
何とかクソギミックで無効化したトットムジカ。
しかし次元をも超える見聞色を持つヒグマは、弱点を見破ると、容易くトットムジカの腕を切り裂いた。

こいつ!並行世界から斬撃持ってきて一人で同時攻撃しやがった!!

ヒグマのあまりの強さに、ついにトットムジカは禁じ手を使う。

まずはシャンクスをロジャークラスまで、強さを引き上げ、ルフィを無理やり全盛期の肉体へと成長させる。そして、
ルフィ!その悪魔の実の力の使い方を教えてやる!いわゆるチュートリアルってやつだ!
そう言って(無理やり)解放のドラムを鳴らした。

ドンドットット♪

世界を滅ぼす歌の魔王、その身に宿すはありし日の海賊王、覚醒する神、ニカの力!今、東の海の辺境で、新時代を告げる山賊の王との戦いが始まる!! ワンピースフィルムSCARLET、絶賛上映中!

※嘘です


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親子の絆

 

 

 

ルフィにすっかり依存してしまったウタ。

そんな彼女は、まるでネズキノコを食べた副作用のように、狂気度が増しつつあった。

シャンクスに甘えていた分も、ルフィに甘え、スキンシップも増していき、24時間、寝るのもお風呂も常にルフィと一緒に過ごしていた…

その様子に危機感を感じずにはいられないトットムジカだったが、戦闘面以外に大して使えない有様で、全く役に立たなかった。

 

しかし、そんなトットムジカの元に、もっとも望んでいた情報がもたらされた。

 

「新たな海の皇帝か!?赤髪のシャンクス二大勢力を破る!?」

 

無事だったか!シャンクス!

やっとだ!これで約束が果たせる!

 

 

 

 

フーシャ村最後の日の夜

 

一つ条件がある。

戦いが終わったら、ウタに会って直接置いて行った理由を説明すること。それが条件だ。

 

「だが、ウタに世界中から狙われていることを知らせるのは…」

 

親の言葉ってやつは、それよりも遥かに大事だぞ!

それに、シャンクスが世界の目を引きつけている間は大丈夫だろう。ここなら政府に狙われる心配もない。万が一の時は俺が何とかするさ。

 

「わかった、だがどうやって会う?俺たちは世界の目を引きつける以上、フーシャ村にはもう立ち寄れないぞ」

 

その点は問題ない。策がある。

ウタウタの力と俺の力、そして、シャンクスが持っているデンデンムシがあれば、例え離れていてもウタに直接会える。現実ではなく、ウタワールドでだがな。

 

「ほう、そんなことができるのか!」

 

 

俺にはウタちゃんを癒すことはできそうにない…だから頼んだぞ!シャンクス!

 

さて、サプライズの準備を始めるとしますか!

 

 

 

 

ウタちゃん、少し時間いいか?

 

いつものように、ルフィと一緒に遊びに行こうとしていたウタに、突然ムジカが話しかけてきた。

本当は一分一秒もルフィとの時間を無駄にはしたくなかったが、使い魔の頼みなら仕方がないと了承した。

 

すると、ムジカはどこからともなく、変なデンデンムシを取り出した。

これは?

 

こいつは、シャンクスから預かったデンデンムシを俺がウタワールドで改造したものだ。

ウタちゃん、君に会ってほしい人がいるんだ。

 

「シャンクスから!?」

 

シャンクスの名前を聞いて、ついつい期待してしまうウタ。しかし、デンデンムシの映す映像に出てきたのは、シャンクスではなかった。

 

「久しぶりだね。ウタ」

 

その人物はゴードン、かつてシャンクスと共に訪れた音楽の国、エレジアの国王その人だった。

 

「シャンクスに頼まれたんだ。君の歌声は世界の宝だから導いてやってほしいと」

 

久しぶりに歌って見せてくれないか?

 

そう言われたウタは、シャンクスの自分への確かな愛情を確認しつつも、シャンクスに会えなかった寂しさを込めて、歌を響かせた。

 

「天使の歌声」

 

そう称される程の透き通った歌声は、聞いたもの全てを、ウタの心にある、もう一つの世界、ウタワールドへと誘う。

 

そして、ウタワールドには、彼女を、娘を待っている存在がいた。

 

「久しぶりだな、ウタ」

 

「シャン…クス?」

 

 

 

世界で一番会いたかった、父親、シャンクスとそのクルー達、ウタの家族の姿がそこにはあった。

 

「悪かったな…ウタ、お前を置いていっちまって…」

 

そう言ってシャンクスは、ウタに真実を話した。

ビッグマム海賊団との戦いで、ウタの力が知れ渡ってしまったこと。

世界中から狙われるウタを守るために、フーシャ村に置いて行ったこと。

 

それを聞かされたウタはどうしようもない、行き場のない思いをシャンクスへとぶつけた。

 

「わたしは!シャンクス達とずっといられたら、それだけで幸せだった!なのに…」

 

「これは俺の、父親としてのわがままだ。まだ幼いお前が、ずっと世界に狙われ続け、苦しむ姿を俺は見たくなかったんだ」

 

そう言ってウタを抱きしめたシャンクスは、言葉を続けた。

 

「ウタ、離れていても、俺たちは家族だ。お前を愛している、俺の気持ちが変わることは絶対にありはしないさ」

 

そう言ってウタが泣き止むまで、シャンクスはずっとウタを抱きしめ続けたのだった。

 

 

やがて、落ち着いたウタは、どうしてシャンクス達がウタワールドにいたのか疑問に思って尋ねた。  

 

俺がここにいられるのは、トットムジカのおかげなんだ。

 

そう言って、トットムジカが、能力を使って、ビッグマム海賊団や海軍との戦いの時も、デンデンムシを通してこっそり援護したり、この世界にシャンクス達を連れて来たことを話した。

 

そして、

 

実はな、ウタ、本当に少しの間だが、この世界でなら、また会うことができるんだ。

 

シャンクスが告げたのは、予想外の、とても嬉しい言葉だった。

 

 

現実世界のシャンクス達がいるのは、エレジアの城の地下。

国王だけが入ることが許され、トットムジカの支配下にある彫像達が守るその場所は、世界政府の力を持ってしても手が出せない数少ない場所。

ウタの音楽の指導をさせてもらうことを条件に、ゴードンはその場所をシャンクス達へと提供した。

 

そして、デンデンムシで繋ぎ、トットムジカの力である、どんなに離れていてもウタワールドへと取り込む力を利用することで、はじめて成立する再会。

 

例え現実世界では会えなくとも、このウタの心の中の世界では、少しの間だけ家族に囲まれて過ごせる時間を作るようにする。

それが、トットムジカがシャンクスと交わした約束だった。

 

シャンクス、娘の成長を見守るのも、父親の立派な務めだからな…

 

シャンクスや赤髪海賊団のクルー達との久しぶりの語らいを経て、ウタの目には徐々に光が戻っていった。

 

「そうか、ルフィとそんな約束をしたのか!」

 

「うん!いつか、立派な海賊になって、ルフィと一緒にシャンクスに会いに行くって誓ったの!」

 

「だからね、シャンクス!こっちの世界(ウタワールド)ではまた会えるけど、大きくなったらいつか、ルフィと一緒に、向こうの世界(現実世界)でもシャンクス達に会いに行くって決めたの!」

 

そして、2人で創るんだ!新時代!

すっかり笑顔が戻り、目に希望を宿すようになったウタ。

 

そんな娘の微笑ましい姿に癒されながら、シャンクスはウタと一つの約束を交わした。

 

「ウタ、俺たちはこの海のずっと先で、いつかお前たちが来るのを、楽しみに待っている」

 

「だから、世界一の音楽家になって、いつか俺達に会いに来い!」

 

「うん!私はシャンクスの娘ウタ!世界中を回って、歌で世界を変えて見せるんだ!そして、いつかシャンクスに会いにいくから!」

 

ついでに!シャンクスを超える大海賊になってるからね!そう言って笑うウタと指切りを交わし、シャンクスはゴードンとトットムジカへと向き直った。

 

「ありがとな!お前達のおかげで、もう会えないと思っていた娘に会うことができた。本当にありがとう!」

 

「構わないさ、シャンクス。あのトットムジカの心すら動かした歌声を、世界に羽ばたかせる手伝いができるんだ、これ以上に光栄なことはない」

 

そう言ってゴードンは一つの誓いをシャンクスに立てた。

 

「エレジアの王ゴードンの名の下に誓おう。必ずウタを、世界中を幸せにする、最高の音楽家に育て上げる!」

 

そして、ゴードンの誓いに続くように、トットムジカもまた、一つの誓いをシャンクスに立てた。

 

「魔王トットムジカの名の下に誓おう。例え世界の全てが敵になったとしても、必ず彼女を守り抜くと!」

 

2人の誓いを聞いて、シャンクスは、俺も負けてられないな!とどこか嬉しそうに笑った。

 

 

次に会う時には、海の皇帝位にはなっておいてみせる!

そう言ってシャンクスは赤髪海賊団のクルーを引き連れて、ウタワールドから去って行った。

最後まで見送ったウタもまた、決意を新たに、ルフィの待つ現実の世界へと戻るのだった。

 

楽譜を大切にしてくれてありがとな!ゴードンさん!

 

トットムジカもまた、ウタを見守るため、現実世界へとゆるキャラ姿で顕現する。

 

ウタを頼んだよ、トットムジカ。

 

おう、まかせろ!

 

 

 

そして、フーシャ村

 

シャンクスとの再会を経て、無事にウタちゃんの精神も安定した。

最近では、シャンクスに立派な姿を見せるんだ!と、ルフィと一緒に修行を始めたみたいだ。これでメンタルケアもバッチリ!一件落着だな!

 

ルフィ〜一緒にお風呂入ろ〜

おう!いいぞ!

 

…大丈夫だよな?…

 

 

 

 

そして、10年後、ルフィとウタ、2人の冒険は、かつて2人が誓い合った思い出の港から始まるのだった。

 

 

 




このまま精神的に病み続けると、R-18ルートの可能性が高かったので、ウタちゃんの精神が安定してよかったです…

なお、精神的には安定して、依存気質こそ改善されましたが、距離感も抱く気持ちの重さもあんまり変わってないです…(白目)

今まで … シャンクス達の分もルフィに甘える。負の感情。
これから …シャンクスに会えたので、寂しさなどの負の感情は解消、それはそれとして、ルフィは大切な存在なので、ずっと一緒にいる!いつか一緒に新時代を創ろう!って感じですね。


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幕間 それぞれの修行



皆さんの感想や誤字報告のおかげで、本作も、いよいよ原作に突入するところまで来ることができました!本当にありがとうございます!
これからもぜひ、本作をよろしくお願いします!

今回は少しだけ、エースとサボが出ます!


 

 

トットムジカの修行

 

シャンクスに誓いを立てた以上、例え世界を相手にしてもウタちゃんを守れるくらい強くならないとな!

幸い、まだ強くなる余地はある。

神の爺さんが覇気の素質は与えてくれていたからだ。

しかし、修行しようにも、いまいち感覚がつかめない。やはり、教えてくれる人がいないと修得は難しいようだ。

 

候補としてはガープがいるが、バレると色々厄介なので頼るのは難しい。そこで、覇気を教えてくれそうな存在を、自分で作ることにした。

 

参考にしたのは、イヌイヌの実モデル化け狸の能力。

高レベルの見聞色と組み合わせることで、他人の記憶から能力や本人の記憶までも再現した人物を作り出すことができるというゲームに出てきたチート能力だ。

ただし、この能力は作った存在が人格まで持った上自由に動くので、ヤバい野望を持ったやつや、自分と敵対しそうな人は作る訳にはいかないなどデメリットもある。

 

そして、俺には、原作漫画とアニメの知識という、再現するのに最も適した記憶があるので、高レベルの見聞色も必要ない。という訳でさっそくウタワールドで作ることにした。

 

冥王レイリーを。

 

 

「ふむ、君がトットムジカくんか」

 

あれから数日、ついに再現度バッチリのレイリーさん、イマジナリーレイリーさんを作ることができた。肉体はロジャー海賊団時代の全盛期レイリーさんだ。

そして、レイリーさんに、ウタちゃんを守るため、さっそく覇気の修行をお願いしたところ、シャンクスに娘がいることに驚きながらも、無事にオッケーをもらえた。

 

「ふむ、君は覇気の知識はあるが、感覚が掴めていないな。ならば、戦いながら鍛えるのが一番だ」

 

こうして、レイリーさんとのスパルタ覇気修行が幕をあけた。

しかし、

 

判断が遅い!  

ぐはぁ!

 

覇気は意志の力だ! もっと意志をしっかり持ちなさい!  

ほげぇ!

 

まだまだいくぞ!ムジカくん!

ぶべら!

 

その修行は想像を遥かに絶するものだった。

こうして、トットムジカは、ウタワールドで毎日のようにボロ雑巾のようになるのだった…

 

 

 

 

ウタとルフィの修行

 

「今日は覇気の修行するよ!ルフィ」

 

「はきってなんだ?」

 

「シャンクスが使ってた凄い力だよ!」

 

そう言ってウタは目隠しの布を自分に巻きつけた。

 

「覇気は意志の力ってシャンクスが言ってたの!こうやって感覚を研ぎ澄ませて、相手の気配を読んだりできるんだって!」

 

シャンクスは未来読んだり、天を割ったりしてたよ!それを聞いてやる気を出すルフィ。

 

「やっぱシャンクスはすげえな!よーし!おれもシャンクスみたいに天を割るぞ!」

 

ルフィのへなちょこパンチでできる訳ないじゃん!

 

なんだと!

 

各々修行に取り掛かるウタとルフィ。

ウタは極めたら、未来すら見えるという見聞色を、ルフィはとりあえず天を割る!と意気込むも、まったく感覚を引き出せなかった…

 

 

 

 

「あれ、おれ寝てたのか?」

 

気がつくと、修行に疲れたルフィはウタの膝の上で眠っていた。辺りはもう、すっかり夕暮れ時。

 

「どう?私の膝枕、すっごく気持ちよかったでしょ!」

 

「おう、ありがとな!すっげぇ気持ちよかった!」

 

そう言って起き上がるルフィに少し照れるが、それはそれとして、しっかりマウントをとるウタ。

 

「今回の修行勝負は、ルフィが先に寝たからわたしの勝ちだからね!」

 

これで私の200勝目!

 

クッソー!次は負けねえ!

 

悔しそうに地団駄を踏む踏むルフィをニヤニヤ笑いながら煽るウタだったが、やがて、ルフィにシャンクスと会ったことを話し始めた。

 

「わたしね、シャンクスに会ったの」

 

「シャンクスに会ったのか!?」

 

「夢の中でね。その時にシャンクスと約束したの。いつか世界一の音楽家になってシャンクス達に会いに行くって」

 

「だからね、ルフィ!もっともっと一杯修行して、シャンクス達にすごいところたくさん見せてあげよう!」

 

「おう!天を割る位強くなって、海賊王になった姿を見せてやるんだ!シャンクス達に!」

 

なら私は海賊王の音楽家だね!

 

日もすっかり暮れて、暗くなった空を月の光が照らし出す。

 

「ねえ、もしシャンクスに会うことができるって言ったら、ルフィはシャンクスに会いたい?」

 

「おれは、いいよ!シャンクスに会うのは立派な海賊になってからって決めてんだ!」

 

それが、この帽子を預けたシャンクスとの、男と男の約束だから!

 

…ルフィは強いね。

わたしも、ルフィに肩を並べられるように、もっとがんばらないとね!

 

フーシャ村への帰路に就くウタとルフィ。手を繋ぎ、未来について語る二人の姿を、夜空に輝く星々は祝福するかのように見送るのだった。

 

 

 

エース、サボ達との修行

 

ルフィを山賊ダダンの魔の手から解放するため、コルボ山へと向かったウタ。そこでウタが見たのは、ルフィをボコボコにするエースの姿だった。

 

ルフィをいじめるなんて、許さない!ぶっ飛ばしてやる!

 

トットムジカの力を借りてエースをぶっ飛ばしたウタ。

その後も度々衝突するも、次第にエース達と仲良くなったウタは、サボやエースとも勝負をするようになった。

 

「クッソー!なんでウタに攻撃が当たらないんだ!」

 

ウタに翻弄されるエース。

 

「ふふーん!私は未来を見る女、ウタだよ!そんな攻撃当たる訳ないじゃん!」

 

ウタちゃん、次は右からパンチがくるよ。

 

了解♪

 

「すげぇな!ウタのやつ、本当に未来が見えているみたいだ!」

 

驚愕するサボ。

 

もちろんウタはトットムジカの力を使っていたが、2人はもちろんそれに気づくはずもなかった。

 

これで私の30勝目!

 

ハァ…ハァ…敗北者…? 畜生、また女に負けるなんて……

 

「なあ、ルフィ!どうしてウタはあんなに強いんだ?」

 

「ウタは覇気?ってやつを使ってんだ!それ使ったら、未来が見えたり、天を割ったりできるんだって!」

 

俺も天を割るぞー!というルフィの言葉を聞き流しながら、サボはウタが使っているという覇気?について調べることにしたのだった。

 

その後、子供のケンカで無双できるくらいの覇気を修得して、調子に乗っていたトットムジカだったが、レイリーに修行を倍にされ、更なる地獄を見ることになった。

 

ムジカくん、君には思った以上に素質があるようだ!10年程私が鍛え上げて、バレットクラスの覇気を身につけさせてあげよう!

 

た、助け…

 

次回!トットムジカ死す!?

 

 

 

 

 

 




ウタちゃんは、マキノさんに預けられて、酒場の看板娘をやっています。
なお、絡んできた酔っ払いや山賊は、トットムジカにボコボコにされています。


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東の海編
冒険の始まり


ついに冒険に突入です!


 

 

「とうとう行っちゃいますね、村長。なんだか寂しくなっちゃいます」

 

「この村の恥じゃ、海賊になろうなぞ」

 

2人が新時代を誓い合ってから10年が経った今日この日、ルフィとウタは、ついにシャンクスの待つ偉大なる航路(グランドライン)に向けて旅立とうとしていた。

 

「にしししし!俺もやっと海に出れる!待ってろよー!、エース、サボ、シャンクス!」

 

「いよいよだね、ルフィ!それにしても、エースはあの白髭海賊団の隊長に、サボは革命軍の幹部になってるなんてね…」

 

暴力で創る新時代は嫌だな。そう思い、改めて新時代への想いを抱きながらルフィを見る。

 

あの日の誓いから10年。すっかり背も伸びて逞しくなったルフィ。

 

「いつの間にか、ルフィの方が背が高くなってたんだね」

 

「にしししし!当たり前だろ!だって俺は海賊王になる男だからな!」

 

「なら、いつかきっと、この帽子がもっと似合う立派な男にならないとね!」

 

そう言って懐かしそうに麦わら帽子を見たウタは、出航の準備に取り掛かった。

 

「行くよ!ルフィ!シャンクス達が待つ海、偉大なる航路に!」

 

「ああ!俺たちの冒険が、ここから始まるんだ!」

 

ムジカも、これからもよろしくね!

 

ああ、まかせとけ!

 

 

そして、いよいよ旅立ちの時。

 

「いい!ウタちゃん、ところ構わず男の人に抱きついたら絶対にダメだからね!」

 

「大丈夫だよ!マキノさん!ルフィ以外の男の人にそんなことする訳ないじゃん!」

 

マキノさんのありがたいお言葉に笑顔で返すウタだったが、それを聞いた村長は天を仰いだ。

本当に大丈夫じゃろうか、ウタちゃん…

 

待ってろよー!シャンクスー!

そう言って船を漕ぎ出す2人を、村のみんなは、色んな意味で心配そうに見送るのだった…

 

 

 

 

 

 

 

ルフィとウタの航海最初の敵は、因縁のある近海の主だった。

 

シャンクスの腕を食ったことから、実は最強説もあるかと警戒していたトットムジカだったが、特にそんなことはなく、ルフィのゴムゴムの(ピストル)で黒く染まった拳に殴られてあっさりやられてしまった。

 

順調な出だしの航海、しかし、2人はさっそく嵐に巻き込まれて遭難してしまったのだった。

 

 

 

「もう、狭いんだから動かないでよ、ルフィ!」

 

「しょうがねえだろウタ、陸までの辛抱だ!」

 

船が沈み、なんとか樽の中に入って難を逃れた二人、樽の中でギュウギュウ詰めになりながらも、陸に着くのを今か今かと待ち侘びていた。

ちなみに、ウタはルフィと密着できて、実はご満悦だった。

 

その後、アルビダ海賊団に無理やり所属させられている、コビーという少年に拾われた2人は、無事に樽から解放されたのだった。

 

「ルフィさん達は、海に出て何をするんですか?」

 

いきなり樽から出てきた男女に戸惑っていた眼鏡の少年コビー。

最初は警戒していたものの、二人と話すうちに、すっかり警戒心も薄れ、疑問に思ったことをふと尋ねた。

 

「俺はさ、海賊王になるんだ!」

 

「え…!か!か!海賊王!!?」

 

驚愕するコビー。海賊王を目指すということは、世界中の海賊が狙っているひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を目指すということだ。当然危険は計り知れない。

 

「し、死んじゃいますよ!」

 

「俺がなるって決めたんだから、その為に戦って死ぬんなら別にいい」

 

「!!し、死んでもいい!!??」

 

あまりの覚悟にコビーは開いた口がふさがらなかった。

 

「もう、ルフィが死ぬわけないでしょ!一緒に新時代を創るんだから!」

 

それに、どんなやつが相手でも私とムジカでぶっ飛ばすんだから!

 

なにやら、物騒な言葉が聞こえたような気がしたが、勇気がでたコビーは、ふと自分の思いを口に出した。

 

「僕でも、海軍に入れるでしょうか?」

 

「海軍?」

 

「僕の夢なんです!!小さい頃からの!!」

 

「そんなの知らねえよ」

 

「いえ!!やりますよ!!海軍に入るために、命を懸けてここから逃げ出すんです!そして、ア、アルビダだって捕まえてやるんです!」

 

 

「誰を捕まえてやるって!!?コビー!!!」

 

 

突然響いた野太い声。

声の主の名はアルビダ。ビッグマムには劣るものの、あまりにもごつく、美しさとは程遠い存在だった。トットムジカは、これがあんな美人になるなんて、スベスベの実スゲーなと素直に驚嘆した。

 

「このアタシから逃げられると思ってんのかい!?そいつらかい?雇った賞金稼ぎってのは?どうやら、ロロノア・ゾロじゃなさそうだね…お前たち!やっちまいな!」

 

いつの間にか周りを、アルビダのクルーたちが取り囲んでおり、もはや逃げ場はどこにもなくなっていた。

 

「最期に聞いてやろうか、この海で一番美しいものは何だい?コビー!?」

 

「「誰だ/よ、このイカついおばさん?」」

 

今までのコビーなら、媚びへつらい、アルビダ様です!と答えていただろう。しかし、

 

「ルフィさん!ウタさん!訂正してください!この方は…この海で一番…一番イカついクソババアですっ!!!」

 

もうとっくに、コビーの覚悟はきまっていた。

 

「このガキャーっ!!!」

 

「よく言った!下がってろ、コビー!」

 

 

 

 

 

アルビダ海賊団の船員達が、ウタとルフィへと襲いかかる。

 

「ルフィはイカついおばさんの相手お願い」

 

「おう!」

 

ムジカ、お願いね!

了解、「限定侵食」

 

瞬間、ウタを中心とした半径500メートル程の範囲が、ウタワールドと同じ法則へと侵食、改竄される。

 

見せてあげるよ!コビー!私は、海賊王の音楽家になる女、ウタ!

私は、私たちは「最強」なんだから!

 

そう言うと、どこからともなくパワフルな音楽が流れ出し、曲調に呼応するように、歌いだしたウタの身体が光に包まれる。

 

着ていた服が、鋼鉄の鎧へと姿を変え、無数の音符が集まった長い槍を持った姿へと、その身を変化させた。

 

「変身した!?」

 

驚くコビーを他所に、最低限の動きで、攻撃を避け、船員達を打ち倒すと、生み出した五線譜のような黒い線に張り付けてあっという間に拘束してしまった。

 

そこで、コビーは違和感に気づいた。

いつのまにか、眠っていたのだ、船員達が。

 

ウタワールドと限りなく近い状態に改竄されているとはいえ、あくまでここは現実世界。覇気を纏っていないものが歌を聞けば、当然ウタワールドへと心が取り込まれてしまう。そして、

 

ようこそ!ウタワールドへ!

そこには当然、覇気を纏ったトットムジカが歓迎の拳を構えているのだった…

 

「やっぱり覇気使いはいなかったか〜」

 

そう言ってウタが鎧と槍を解除した頃、ルフィもまた、黒く染まった拳で金棒を粉砕し、アルビダをぶっ飛ばしたのだった。

 

 

これが、後に偉大な海軍将校になる男コビーと、大海賊麦わらのルフィ、新時代の歌姫ウタの最初の出会いだった。

 

 

 





トットムジカス ウタウタの実の能力者は、現実世界で大して戦えないと言ったな。あれは嘘だ。俺のおかげでウタワールドと遜色なく現実世界でも戦うことができる。

あと、万が一負けそうになったら、現実世界にも俺が顕現するから隙もないからな!(攻撃無効、現実侵食、ウタウタの力使えます、ビーム打てます、普通に物理強いです、NEW 原作キャラ作れます、NEW 覇気使えます)が出張って来る…

世界政府 ふざけるな!ふざけるな!馬鹿野郎ォ!!


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海賊狩りのゾロ

意見や感想、誤字報告など本当にありがとうございます!


 

 

アルビダ海賊団をボコボコにした後、船と食糧を略奪したルフィとウタは、近くにある島、シェルズタウンの海軍基地へと、コビーを送り届けることにした。

 

「これから行く海軍基地に捕まってるって奴、いい奴だったら仲間にしたいな!」

 

「あのロロノア・ゾロを!!?ムリムリムリですよ!!」

 

海賊狩りのゾロ。そう呼ばれる賞金稼ぎに興味を持つルフィだったが、コビーは必死にそれを止めようとしていた。

 

その後、航海術のあるコビーのおかげで、無事にシェルズタウンへとたどり着いた一行は、さっそく海軍基地へと向かった。

 

「にしても面白い街だな!」

 

「ゾロっていう人に怯えるならともかく、海軍大佐の人にまで怯えるなんて、なんだかおかしくない?」

 

名前を聞いて怯える街の人々を見て疑問に思うウタ。やがて一行は海軍基地の門の前にたどり着いた。

 

一目ゾロを見ようと、塀をよじ登り広場を見渡す一行。

 

そこには、十字の杭に拘束された男がいた。

 

「黒い手ぬぐいに腹巻き!間違いない!本物のロロノア・ゾロです!」

 

東の海に名を轟かせる賞金稼ぎ、海賊狩りのゾロの威名を持つその男は、コビーの声を聞き、ゆっくりとルフィ達一行を魔獣のような眼光で見やった。

 

「おい、お前達、ちょっとこっち来てこの縄ほどいてくれねぇか?もう九日間もこのままで、さすがにくたばりそうだ。」

 

「礼ならするぜ…その辺の賞金首をぶっ殺して、てめぇにくれてやる」

 

そう物騒な提案をするゾロに、興味を持ったルフィが縄を解きに行こうとした時、一人の女の子が塀を越えて、ゾロの下へと駆け寄って行った。

 

「お腹空いてるでしょ!私おにぎり作ってきたの!」

 

そう言ってゾロに向かっておにぎりを手渡す女の子の姿を見て、ほっこりした気持ちになったウタ。

 

しかし

 

「ヒェッヒェッヒェ!」

 

そう笑いながらやってきた海軍大佐のバカ息子に、おにぎりを奪われて踏みつけられた上、女の子は、塀の外へと投げ捨てられてしまった。

 

ねえ、ムジカ、この海軍基地焼き払っちゃおうよ…

 

お、落ち着くんだ!ウタ!

 

女の子に対してのあまりにも酷い所業に、目からハイライトを消して物騒なことを言うウタを、慌てて止めたトットムジカ。

 

その後、踏みつけられ、ボロボロになったおにぎりを食べて、感謝の言葉を言うゾロの姿を見て、本当にゾロが悪者なのか疑問に思った一行は、女の子達に話を聞くことにしたのだった。

 

すると、女の子を襲おうとしたバカ息子のペットをゾロが斬ったことで、死刑になりそうだった女の子の家族を守るために、一か月耐えることを条件に海軍に捕まってしまったことがわかったのだった。

ゾロが悪くないことを知り、バカ息子に憤慨する一行。

 

そこに、

 

「ひぇっひぇっひぇっひぇ!!頭が高いつってんだろ!親父に言うぞ!」

 

そう言って件のバカ息子、ヘルメッポがやって来たのだった。

 

「そうそう、ここんところ退屈だったから明日ゾロを処刑することにしたぞ!楽しみにしてろ!ひぇっひぇっひぇっひぇ!」

 

ゾロとの間に交わした、一か月耐えることで、女の子の家族を許してやる、という約束を所詮ギャグだと言い放ち、調子に乗っていたヘルメッポは、ふと、ルフィ達を見回し、最悪の言葉を口にしたのだった。

 

「おい、女!気に入ったからこのヘルメッポ様が愛人にしてやるぞ!ひぇっひぇっひぇ!」

 

当然、その言葉はトットムジカを着火させてしまった…

 

よし!ぶっ飛ばそう!

 

シャンクスからも、ウタに近寄る変な輩は消し炭にしろ!って言われてるしな!

ヘルメッポが改心することを知っていたので、攻撃を躊躇っていたトットムジカだったが、ウタに対するヘルメッポの発言に一瞬で吹っ切れ、単独顕現しようとした、その時、

 

「俺の仲間に!手を出すんじゃねえ!」

 

ルフィの拳がヘルメッポへと突き刺さった。

 

「な…殴りやがったな!!親父にも一度も殴られたことなかったのに!俺は海軍大佐モーガンの息子だぞ!親父に言いつけてやる!」

 

そう言って逃げるように去っていくヘルメッポを睨みつけ、ルフィは宣言した。

 

「俺は決めたぞ!あいつらぶっ飛ばして、ゾロを仲間にする!!」

 

「いくぞ!ウタ!」そう言って走って行くルフィを見て、ウタは改めてルフィのかっこよさを再認識したのだった。

 

怒るルフィ、かっこよかったな…

 

 

 

 

 

ルフィがゾロを解放し、仲間に勧誘している間にゾロの刀を取りに行くことにしたウタは、刀の置き場所がわからないので、場所を聞き出すために気配が多い基地の屋上へと向かった。

 

なあ、ウタ、シャンクスとの約束もあることだし、この基地焼き払ってしまおうぜ!

 

そんなことしたら、仲間になるゾロの刀も燃えちゃうじゃん!

 

前回とは打って変わって手のひらクルックルなトットムジカを窘めながら、ウタは屋上に繋がる扉を開いた。

 

基地の屋上

そこでは、海軍基地の主であるモーガンが、自らの権威を誇示するべく巨大な自身の石像を飾ろうとしていた。

住民達に迷惑をかけるバカ息子を放置して、権力の誇示にこだわっている父親と、それを止めようともしない海軍の隊員達の姿に、ウタは表情を歪めた。

 

「ねえ、あんたたち海軍は、正義の味方を名乗っているんじゃないの?住民達を苦しめて、変な石像建てるのが、本当に正義の味方のすることなの?」

 

「変な石像だと!!? おい、小娘!俺を誰だと思っている!?」

 

ウタにとって、最も偉大な正義の味方はシャンクスとルフィだ。それでも、世間では、海賊は悪であり、海軍こそが正義であることは、ウタでもわかっていた。

怒りを滲ませたウタの問いかけに、海軍の隊員達はただ俯いて口をつぐむことしかできず、権力の象徴である石像を貶されて、モーガンは怒り心頭になってしまった。

 

「ひぇっひぇっひぇっ!おい、女!今ならまだ許してやる!大人しく俺の女に…」

 

挙句の果てに懲りないヘルメッポ。腕に取り付けた斧を振り上げ、襲いかかって来るモーガン。やがて、ウタの我慢は限界を迎えるのだった…

 

「もう、いいよ…街のみんなを苦しめる、悪い海兵はみんなやっつけないと…」

 

冷たい歌声が基地内に響き渡る。次の瞬間、ヘルメッポを除く全ての海兵達の意識が完全に奪われる。海兵達が建てようとしていた石像は倒れ、屋上から落ちて粉々に砕け散った。

頼りにしていた父親とその部下達が一瞬で戦闘不能にされたことで、唖然としているヘルメッポにゆっくり近づいて行くウタ。

そして、にこりと笑うと、覇気を纏わせた黒い手のひらで、思いっきりヘルメッポの顔を叩き飛ばしたのだった。

 

その後、ボコボコにしたヘルメッポにゾロの刀の場所を案内させたウタは、解放されたゾロに刀を渡した。

これで一見落着!そう思った次の瞬間、ルフィとゾロは、突然決闘を始めたのだった。

 

何やってるの!?ルフィ!?

 

 

 



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未来の海賊王VS未来の大剣豪

 

「ル、ルフィさん、本当にあのゾロを仲間にするんですか!?」

 

話を聞いて、ゾロが噂ほど悪い人物ではないことは理解したものの、怖いものは怖いコビー。

 

しかし、ルフィの決意は変わらず、あっという間に目的地である海軍基地に着いてしまったのだった。

 

「また来たのか、海賊の勧誘なら断ったハズだぜ…!!」

 

「俺はルフィ!海賊になる仲間を探してるんだ!縄解いてやるから仲間になってくれ!」

 

「俺にはやりてぇことがあるって言っただろう…誰が海賊なんかになるか!」

 

ゾロの脳裏に浮かぶのは、ありし日の幼馴染との約束。その約束を果たすまで、ゾロは死ぬつもりも海賊になるつもりも微塵もなかった。

 

「知るか!俺が仲間にするって決めたんだ!お前、刀使うんだってな!」

 

「勝手に決めるな!そうだ、だが、あのバカ息子が持って行っちまった…」

 

「なら、刀を取り返してやるよ!だから、刀取り返してほしかったら、俺の仲間になれ!」

 

「タチ悪いぞ!テメェ!」

 

笑いながら言うルフィに突っ込むゾロ。しかし、いつまで経っても刀を取りに行こうとしないルフィにゾロは疑問を抱いた。

 

「おい、刀を取り返しに行ってくれるんじゃなかったのか?」

 

「心配すんな、ウタがお前の刀取りに行ってくれてるから、大丈夫だ!」

 

「ウタっていうのは、あの紅白頭の女のことか、随分と信頼しているんだな…」

 

「ああ、なんてったって、俺の仲間だからな!」

 

ししし!と笑うルフィを見て、ゾロはウタの実力がそれ程高いのか疑問に思っていた。数多の死戦を潜り抜けてきたゾロは、ある種の野性の勘で、目の前にいるルフィが只者ではないことがうっすらと分かる。そんなルフィから女なのに信頼されている程ウタが強いなら、もし、幼馴染だったクイナが生きていたら、どれ程の強さになっていたのだろうと思わずにはいられなかった。

 

やがて、基地の屋上が騒がしくなったものの、歌声が響くと共に、突然静かになり、建てようとしていた石像が落ちてきて砕け散った。

そして、ルフィの言った通り、顔面を腫らしてボロボロになったバカ息子を連れて、刀を持ったウタがやって来たのだった。

 

「お待たせ、ルフィ!どれがゾロの刀かわからないから、ある分全部持ってきたよ!」

 

そう言って突然何も無いところから、三本の刀を取り出した。

 

「どっから取り出した!?」

 

「ししし!ウタは悪魔の実の能力者なんだ!すごいだろ!」

 

そう言いながら縄を解くルフィと、フンスと胸を張るウタ。

 

「…三本とも俺のだ…」

 

やがて、解放され、刀を受け取ったゾロにウタが話しかけた。

 

「あなたが新しい仲間のゾロだね!私はウタ!世界一の音楽家だよ!あなたがいたら、ミホークもぶっ飛ばせるね!」

 

「俺はまだ、お前達の仲間になったつもりはねえ…それに誰だよ、ミホークってのは…」

 

「ミホークはミホークだよ!()()()()()()シャンクスにも勝ってる、鷹の目とか呼ばれてるシャンクスのライバルだったおじさん!」

 

剣持ってるから知ってると思ったんだけどな〜

 

「鷹の目だと!?」

 

世界一の音楽家を名乗る女、ウタから聞いた言葉に反応するゾロ。

ゾロの野望は世界一の大剣豪になることだ。そのためには、現在、世界最強の剣士と呼ばれている鷹の目の男に勝負を挑む必要がある。

そして、目の前のウタがその鷹の目の男、ミホークのことを知っているなら、会うための手がかりになるとゾロは考えた。

 

「おい、お前達!仲間になる件、考えてやってもいい…ただし、今の俺に勝てたらの話だ!」

 

三週間の磔から解放されたばかりの自分に、負けるようなら話にならない、そう宣言するゾロに、ルフィは了承したとばかりに決闘を持ちかけた。

 

「いいぞ!よし!決闘だ!」

 

「ルフィ!?」

 

こうして、海賊王を目指す男ルフィと、世界一の大剣豪を目指す男、ゾロの戦いが始まった。

 

 

 

「武器は構えなくていいのか?」

 

「安心しろ!俺の拳は(ピストル)より強ェから!」

 

二振りの剣を握りしめ、口に剣を咥え構える三刀流の使い手、ゾロは目の前の男、ルフィを斬り伏せるため剣を振るう。

 

「鬼斬り!!」

 

「よっと!」

 

「虎刈り!!!」

 

「にしし!やっぱり強ェなお前!」

 

「畜生、なんで攻撃が当たらねえ!!」

 

ゾロが繰り出す怒涛の連撃。しかし、ルフィはその全てを、()()()()()()()()()()()()()()()回避した。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

そう言って刀の間合いから離れ、拳を構えるルフィ。拳が届くはずもないのに構えるルフィに首を傾げるゾロだったが、次の瞬間、驚愕と共に理解することになる。

 

「ゴムゴムの〜(ピストル)!!」

 

なんと腕が伸びて殴りかかってきたのだ。とはいえ、なんとか反応したゾロは剣を構えて受け止めようとする。いくら伸びる腕とはいえ、生身の拳なら剣で斬れる。

しかし、ガキィン!という音と共に、いつの間にか黒く染まった拳が、刀で受け止めたゾロを弾き飛ばした。

 

「まさか…テメェも能力者ってやつか…」

 

「ああ!ゴムゴムの実を食べたゴム人間だ!」

 

「ゴム!?なら、なんで拳が剣より硬い!?」

 

「ししし!秘密だ!仲間になったら教えてやる!」

 

「そうかい!ならこの一撃を受けてなお、俺に勝ったら仲間になってやるよ!」

 

限界を迎えつつあるゾロは、最後の力を振り絞って、最強の奥義を繰り出した。

 

「三刀流奥義!三・千・世・界」

 

「おう!絶対勝って、お前を仲間にする!」

 

そう言ってルフィもまた、覇気を込めた一撃をゾロに向けてぶつけた。

 

「ゴムゴムの〜バズーカ!!」

 

ぶつかりあった必殺の一撃。

しかし、覇気の有無とゾロの体力の限界もあり、ゾロが吹き飛ばされたことで、決闘はルフィの勝利となった。

 

「すごい…!あのゾロを、圧倒するなんて!」

 

「当たり前でしょ!ルフィは海賊王になる男なんだから!」

 

ルフィの強さに驚愕するコビーに、ウタは「ルフィは強いんだぞ〜!」と自慢するのだった。

 

その後、コビーを人質に取ろうとしたヘルメッポをボコボコにしたウタは、ルフィと一緒にゾロを飯屋へと運んだ。

 

 

 

 

「あ〜食った食った!三週間ぶりの飯はうめえな!」

 

その後意識を取り戻したゾロは、無事に仲間入りを了承し、久しぶりのご飯を堪能していた。

 

「それで、俺の他に何人仲間集まってるんだ?確か、仲間集めの最中だっていってただろ。海賊王を目指しているんだ、相当の人数が集まってるんだろ!」

 

「いや、ウタとお前だけだ!」

 

「ルフィの一番の仲間は私だよ!」と言うウタの声を聞き流して、ゾロは呆れてため息を吐くのだった。

 

 





音楽の神様?の爺さん 今回お主の出番はなしじゃ

トットムジカ (´・ω・`)


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シャンクスの友達

 

 

「にしても、コビーを置いて行って本当に良かったの?」

 

「いいんだ!あいつが決めたことだしな!」

 

ゾロが仲間になった後、海軍に入るため島に残ったコビー。

モーガン以外の海兵達をウタワールドから解放すると、モーガンの圧政から解放したことで、感謝された一行。しかし、海賊である以上、すぐに島から立ち去るしかなかったのだった。

 

「次に会う時は敵同士…か、コビーが立派な海兵になれるといいね」

 

海兵になるため、海賊ではないことを証明するためルフィに挑みかかりボコボコにされたコビー。その覚悟を見て、ウタはコビーを見直したのだった。

 

 

「それにしてもだ!二人とも航海術を持ってねぇのはおかしいだろ!」

 

そう言ったのは、新しく仲間になった男、ゾロ。

鷹の目の男を探しに村を出た結果、帰れなくなったこの男もまた、航海術などもっていなかった…

 

「にしても腹減ったな〜」

 

グーと音を鳴らして、バタッと倒れる二人を見て、ウタは笑いながら指をパチンと鳴らした。すると、ポンポンと肉や果物、酒が出てくるのだった。

 

「肉ー!!」

 

肉へとかぶりつくルフィ。

 

「それにしても、お前の能力はいったいなんだ?こいつは伸びるだけだが、お前のはできることが多すぎるだろ」

 

肉に夢中なルフィの頬を引っ張り、ウタの能力に関心しながら、謎の能力に興味を持つゾロ。

 

「私はウタウタの実を食べたウタ人間!歌でみんなを幸せにする能力者だよ!」

 

「刀や食糧を出したのもか?」

 

「それは私の使い魔、ムジカの力のおかげだよ!せっかくだし見せてあげる!」

 

そう言ったウタの横にマスコットのような姿をした、奇妙な存在が現れた。

 

はじめまして、ゾロ、俺はムジカ、ウタの使い魔をやっている。

 

「しゃべるんかい!」

 

「すごいでしょ〜!ムジカは喋るし、強いし、色々知ってるすごい使い魔なんだよ!」

 

ビームも出せるし!そう言って使い魔ムジカを抱き抱えるウタ。

 

「そういえば、ルフィは?」

 

ルフィが妙に静かだと思い、ルフィの方を見る。すると、ルフィがいつの間にかいなくなっていた。

 

ぎゃーっ、助けてーっ!

 

次の瞬間、空の方から声が聞こえ、上を向くと、大きな鳥に咥えられてどこかに連れ去られていくルフィの姿があった。

 

「「…」」

 

「私、ちょっとルフィのこと連れ戻してくるね!」

 

ムジカ、お願い!

 

あいよ!

 

そう言って翼を生やしたウタは、ゾロに船を任せ、ルフィを追って飛び去って行くのだった。

 

 

 

一人置いて行かれたゾロ。その後、仕方なく船を漕いでいると、遭難していたバギー海賊団の船員達に遭遇。船をよこせと襲ってきたところを返り討ちにして、案内役にするのだった。

 

「それで、まんまと女に騙されて船ごと奪われたって訳か…」

 

「あいつは絶対探し出してブっ殺す!!」「それより宝をどうする!」

 

「天候まで操るのか…海を知り尽くしてるな、その女」

 

「このまま帰っちゃ、バギー船長に……!!」

 

「そのバギーってのは誰なんだ?」

 

航海士になってくれねェかなとゾロが思っていると、新たな人物の名前が出てきたので反応するゾロ。

 

「道化のバギーと呼ばれている、俺達の海賊船の頭ですよ。悪魔の実シリーズのある実を食った男でね…恐ろしい人なんだ!!」

 

 

 

 

 

「バギー船長!港の空に何か見えます!」

 

「大砲で撃ち落とせ」

 

「バギー船長!!!!」

 

「今度はなんだ!?」

 

「天使です!!天使が飛んでます!!!」

 

「天使だと?そんなものいるはずが…ほ!本当に飛んでやがる!!!」

 

「こっち飛んできますよ!船長!!」

 

「…よし、歓迎の準備をしてやれ…」

 

内心まさか能力者か!?とびびるバギーだったが、表には出さず、とりあえず数の利を活かすことにした。

そして、船上に天使が舞い降りる。

 

「ねえ、ここら辺で麦わら帽子を被った男の人見ませんでしたか?」

 

「麦わらァ?見てねェなそんなやつ」

 

一瞬だけシャンクスの姿が頭をよぎったが、すぐに脳内から消し去ったバギー。その時、

 

「ピエロみたいな赤っ鼻…もしかして…あなた、バギー!?」

 

「誰の鼻が赤っ鼻だァ!!!」

 

「やっぱりバギーでしょ!シャンクスの友達の!」

 

突然、自身に対して赤っ鼻という少女にぶち切れるバギーだったが、シャンクスとの関係を指摘され、目の前の女の正体に疑問が生まれたバギー。

 

「なあ、お嬢ちゃん、なんで俺とシャンクスのことを知ってやがる?」

 

「シャンクスから聞いたからだよ!だって私、シャンクスの娘だもん!」

 

「シャンクスの娘……!?あいつ!?娘がいやがったのか!?」

 

驚愕するバギー、そして脳内に溢れ出す同じ船で過ごした、シャンクスとの日々。

 

「こいつはいい機会だ…俺様が今までに受けた屈辱、娘のお前にたっぷり返してやる!!!」

 

赤っ鼻発言で血が上っていたバギー、加えてシャンクスから味わった数々の屈辱を思いだし、完全にやつ当たりする気になってしまったのだ。

 

「安心しな…そう長くはかからねぇ!俺達も町からの略奪で忙しいからな!!」

 

ギャハハハ!と笑うバギーと海賊団一同。しかし、その言葉はウタの地雷だった。

 

「町から略奪…?シャンクスの友達なのに?」

 

「そもそも俺はシャンクスと同じ船に乗ってはいたが、友達じゃねェ!!あいつは、俺から莫大な財宝を奪ったクソ野郎だ!!」

 

野郎ども!やっちまえ!! あいあいさー! 悪く思うなよ!嬢ちゃん!

 

「ふーん…バカにするんだ…シャンクスを…」

 

やるよ…ムジカ!

 

了解!「限定侵食」

 

瞬間世界が侵食され、ウタの姿が変身すると共に、発生した衝撃波によって吹き飛ばされたバギー海賊団のクルー達。

その時、頭に血が上ってすっかり忘れていたバギーは思い出したのだった。能力者の少女に警戒していたことを…

 

「あの〜もしかして、お嬢ちゃん、シャンクスみたいに強いのかな〜?」

 

冷や汗をダラダラと流すバギーに対して、ウタはにこりと笑いかけるが、その目だけはまったく笑っていなかった…

 

 

 

 

「おーい!航海士になってくれよ!」

 

「条件を飲むならいいわよ♪」

 

大砲に撃ち落とされ、落ちた先で偶然出会った女泥棒のナミ。

類い稀な航海術を持っているというナミを仲間に勧誘したルフィだったが、仲間になる条件として、縄で縛られたままバギーの下に行くことになった。

しかし、

 

「妙に静かね…」

 

海賊船付近に着いても、騒ぎ声一つしないことに違和感を覚えるナミ。

それでも、様子を伺いながら、船へと上がったのだった。

 

こべんなざい!!

 

そこには、五線譜に捕らえられたバギー海賊団のクルー達と、ボコボコにされたバギーの姿があった。

 

そして、その光景を作り出した少女がこちらへと振り向く。

 

「よかった!無事だったんだね!ルフィ!…ところで…ルフィを縛っているその女の子は誰かな……?」

 

 

次回…修羅場か!?



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改訂版 逆襲のバギー!?


アンケートご協力ありがとうございます!
アンケート結果を考慮して、バギーを原作のままにしました。
強化バギーifはどっかの小ネタで書きます笑
そのため一部展開の変更と、バギー編を今回の話で区切るため、少し長めに書きました。
これからもどしどし感想やご意見お願いします!




 

 

「それで、ルフィを騙してバギーのところへ連れて行こうとしたと…」

 

バギー達を五線譜で拘束したまま放置し、お宝を没収したウタは、縛られたルフィの縄を解いて、町中を移動していた時、ペットショップ前で出会った町長に案内され、町長の家を訪れていた。

 

「ねえ、ルフィ…本当にこの女を航海士にするの…?」

 

「ああ!ナミは一味の航海士にする!それに、ちゃんとバギーのところまで行ったから約束守れよー!」

 

「……船長のルフィが決めたなら、私は従うよ…でも、もしルフィを裏切るようなら、私は絶対に許さないから…」

 

テーブルを指でトントンと小突いている、どこか不機嫌そうなウタと、ナミを航海士にする気満々のルフィ。

そんな中、ナミは海賊に囲まれたこの状況をどうやって切り抜けるか考えていた。

海賊はナミの大切な家族を奪った最も憎む存在。仲間になるなんて絶対にあり得ない。

しかし、相手は、あのバギー海賊団を一人で制圧してしまう化け物。

ナミはなんとか目の前の少女、ウタがバギーから奪った財宝を盗んで逃げだそうと、隙を窺うことにした。

 

「お前達、こんなところにいたのか」

 

そこに、新たに一人の男が入ってきた。

 

「ゾロ!よくここがわかったな!」

 

「近くの店の前で犬とウタの使い魔が遊んでたからな」

 

みてろよ〜シュシュ、これが空中三回転きりもみジャンプだ!

 

ワンワン!

 

 

 

 

 

 

 

海賊船船上

 

「ご無事ですか!?バギー船長!」

 

「畜生!この拘束外れねえ!それにしても、お前達が無事でよかったぜ、モージ!カバジ!」

 

ウタによって制圧されたバギー海賊団。しかし、たまたま町へと繰り出していたモージとカバジは難を逃れることができたのだった。

 

「しかし、バギー船長をここまで痛めつけるとは…一体何者ですか!?」

 

「シャンクスの娘だ!!!あの女!悪魔の実の能力者だったんだ!おまけに俺の財宝まで持っていきやがって!!」

 

そう言って怒りに震えるバギーだったが、拘束からは未だに抜け出せずにいた。

 

「それにしても五線譜ですか…バギー船長の頭の位置だと、ミー、ですね」

 

なんとなくカバジが言った次の瞬間、バギーの拘束が解除された。

 

「「えー!!!??」」

 

「よくやった…カバジ!お前達、着いてこい!奪われた財宝を取り戻して、あの女にはたっぷりとお礼をしてやらないとな!」

 

そう言って、モージとカバジと同じように、船を離れていて心を取り込まれていなかったメンバー達に、特製バギー玉の準備をさせるのだった。

 

なお、バギーの本当の狙いは、化け物みたいに強いシャンクスの娘、ウタの相手をカバジとモージにおしつけ、財宝だけをこっそり取り返してトンズラすることだった…

 

 

再び戻って村長の家

 

「呆れた…まさか、あの海賊狩りのゾロが海賊に堕ちているなんてね!」

 

「何とでも言え…俺は野望を果たすために海賊になった、それだけのことだ」

 

初めは二人のことを狙う賞金稼ぎだと期待したものの、仲間だと知り失望したナミ。

 

「これで、ナミも俺たちの仲間だな!」

 

「……もんか…」

 

その後も勧誘を続けてくるルフィに、とうとうナミは自分の思いをぶつけるのだった。

 

「誰が海賊の仲間になるもんですか!海賊なんて…みんな同じよ!平気な顔で大切なものを奪う!そんな奴等の仲間なんかに!」

 

大切な家族を奪われ、自分の夢を踏みにじられたナミの怒り。

ルフィもウタもその言葉には反論しなかった。自分達が憧れたシャンクスは、一般民衆には手を出さない一握りの特殊な海賊。大多数の海賊は、奪うことだけを楽しみ、力なき者たちを虐げる存在であることを二人は知っていたからだ。

 

「そうだね…海賊なんてそんなものだと思われても何も間違いじゃないよ…それでも、私は新時代を創るって決めたから!だから海賊になった!」

 

「ああ、俺たちで変えるんだ!海賊王になって!そして、創るんだ!新時代!!」

 

海賊としての覚悟を語る二人。二人が憧れた男の背中を追いかけて、たとえ命を賭けてでもやり抜くと思わせるその覚悟を聞いて、ナミはこの二人はこれまであった海賊達とは違うのではないか…と思ってしまった。

 

「いるわけないじゃない…そんな海賊なんて…」

 

それでも、ナミの心に巣食う海賊への憎悪によって、二人を完全に信頼するまでには至らなかった。

 

 

 

そんな時、町中に大砲の音が響き渡った。

 

「出て来い!シャンクスの娘!俺の財宝を返しやがれ!!」

 

そして、一度はウタに敗れたバギーが、幹部達を連れて復讐?へとやって来たのだった。

 

「船長!ここは我々がこいつらの首を取って差し上げましょう!」

 

「ギャハハ!期待しているぞ!モージ!カバジ!」

 

やる気に溢れているモージとカバジに相手を任せ、コソコソと後ろに下がるバギー。

 

最初に出てきたのは、猛獣使いのモージ。

どんな獣も手懐けることができる!と話すモージだったが、犬のシュシュに普通に噛まれる残念な男だった。怒りのあまりシュシュにライオンのリッチーをけしかけるモージ。

 

ムジカ!

 

まかせろ!おい、ライオン野郎!俺が相手をしてやろう!

 

「なんだ?その奇妙なやつは!おい、リッチー!犬ごとやっちまえ!」

 

一歩も動かないライオンのリッチー。

リッチーは感じ取ってしまった。トットムジカとの、生命体としての圧倒的な次元の違いを…

 

「失せろ!!」

 

そして、トットムジカから放たれた覇王色の覇気を一身に浴び、あえなく白目をむいて気絶してしまった。

 

「リッチー!?ぶへぇ!」

 

そして、モージもウタの弾いた音符に弾き飛ばされ気を失ってしまった。瞬殺だった…

 

「モージの野郎!もう少し粘らねえか!!」

 

一方、曲芸のカバジはゾロと対峙していた。

 

「まさか、あの海賊狩りのゾロと戦うことができるとは…お見せしましょう!至高の曲技を!」

 

曲芸によってゾロを翻弄するカバジ。しかし、原作と異なり、バギーから傷を受けていないゾロを相手にするには、あまりにも力不足だった。

 

「鬼斬り!!」

 

「我らバギー一味が…このような…」

 

そして、残すはバギーのみ、

船長として、ルフィはバギーと対峙する。

 

「どいつもこいつも瞬殺されやがって…!」

 

宝を取り返す前に部下達がやられたことで、逃走を図るバギー。しかし、まるで心を読んだかのように先回りしたルフィが待ち構えていた。

 

「その麦わら帽子…シャンクスのやつの帽子か!」

 

「託されたんだ…シャンクスから!」

 

「今日だけで二度もあの忌々しい赤髪を思い出すことになるとは!!くらえ!バラバラせんべい!」

 

靴から仕込みナイフを出した状態で、下半身を射出するバギー。

ルフィはその攻撃を避けるため跳び上がった。

 

「空中では攻撃を避けることも出来ねぇよな!バラバラ砲!」

 

しかし、バギーの攻撃を察知したルフィは、腕を伸ばすことで空中でも立体的に動き攻撃を避けた。

 

「まさか、てめェも能力者だったとはな…!」

 

「ああ、俺もウタ以外の能力者は初めてだ!」

 

その後、執拗に麦わら帽子を狙うバギーだったが、見聞色の覇気によって攻撃を察知したルフィに全て避けられた。

 

「麦わらァ!さてはお前、覇気を使ってやがるな!」

 

バギーがシャンクスと共に乗っていたのは、海賊王の船オーロジャクソン号、多数の覇気使いが乗船し、自身もたまに、強制的にレイリーから手解きを受けていたバギーはその存在を知っていた。

 

「ムカつく麦わら野郎に心を読まれるのは癪だなぁ…バラバラ砲!」

 

そう言って切り離した腕を飛ばしてくるバギー。当然ルフィは見聞色で避けた。

 

「畜生!しごきからは逃げてたから、覇気は使えねえんだ!」

 

こうなったら仕方ないとバギーは部下達へと指示を出す。

 

「おい、麦わらァ!俺だけに意識を集中していていいのか?」

 

そうバギーが言った時、ウタやナミ達を狙って部下達が複数のバギー玉を発射したのだった。

 

「ウタ!?」

 

一瞬意識がそれたルフィ。

その隙をついてバギーは攻撃を仕掛けた。

 

「バラバラフェスティバル!」

 

当然見聞色の覇気によって回避したルフィ。しかし、ほんの僅かにナイフが麦わら帽子を掠ってしまったのだった。

 

 

「ちょっと!?どうするのよ!?」

 

ウタ達に向かって放たれた複数のバギー玉が、町ごと吹き飛ばそうと迫りくる。

 

「海賊なんて…平気で町を壊して、人を殺す……!ベルメールさん…!

 

もはやこれまでと思い、海賊への憎しみと、もう会うことの叶わない母親へとすがるように言葉を漏らすナミ。

 

「確かに、海賊は人から奪ってばかりの存在かもしれないね…」

 

ムジカ…()()()()

 

…了解!

 

一瞬にして出現したトットムジカの巨大な腕。

ウタが指揮をするように腕を振るうと、巨大な腕は迫り来るバギー玉を全て掴み取り、遥か上空へと投げ飛ばした。

 

お前達も一緒に寝てろ!

 

そして、ついでに放たれた覇王色によって、砲撃してきたバギーの部下全ての意識を刈り取るのだった。

 

「ナミ、私はね、海賊に育てられたの…私を育ててくれた海賊は、力無き人々からは、決して奪わない、たくさんのものを与えてくれた、この海で最も自由で偉大な海賊だった!」

 

「私とルフィが目指すのはそんな海賊、誰よりも自由に生きて、世界の果てまで冒険して、いつか新時代を創る存在!だから見ていてよ!ナミ!私たちが創る新時代を!」

 

ルフィを騙したことや、縛ったことはちょっと許せないウタだったが、それでも、海賊によって苦しい思いをしたナミには、自分を育ててくれたシャンクスのような偉大な海賊もいることを知ってほしいと思ったのだ。

 

 

ウタがバギー玉を無効化したことで、ルフィもまた、バギーへと向き直る。

 

「よくもシャンクスの帽子を!!ぶっ飛ばしてやる!!デカっ鼻!!」

 

「誰がデカっ鼻だ!!」

 

「この町を、シャンクスの帽子を傷つけたお前をぶっ飛ばして、俺はナミを仲間にする!」

 

そう言って腕に武装色の覇気を込め、黒く染めるルフィ。

 

「まさか武装色の覇気まで!?まずい!バラバラ緊急脱出!」

 

そう言って身体をバラバラにして逃げ出そうとするバギー。

 

「…シャンクスの帽子に手を出されて、黙って見ていられる訳ないじゃん…!」

 

しかし、大切な帽子を傷つけられ、怒ったウタによって、バラバラにした身体のほとんどを五線譜に貼り付けられ拘束されてしまった。

 

「卑怯だぞ!てめェら!!」

 

「卑怯?私たちは海賊だよ!聖者でも相手にしてるつもりだったの?」

 

「吹き飛べ!バギー!!ゴムゴムの〜バズーカ!!!!」

 

覇気を纏った渾身の一撃は、バギーを空の彼方まで吹き飛ばしたのだった。

 

 

 

「今度こそ仲間になるんだよな!」

 

そう語りかけてくるのは、麦わら帽子の男、ルフィ。

まだ、海賊を完全に信じることはできない。それでも、ナミは今まで出会ったどの海賊とも違う何かを、二人から感じ取ったのだった。

そして、この時ほんの微かだが、希望が芽生えたのだった。

 

「私は海賊にはならない!…でも、手なら組んであげる♪」

 

それに、あなた達といると儲かりそうだしね♪

 

「うん!よろしくね、ナミ!」

 

こうして、一味に新しく航海士が加わったのだった。

 

 



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ヤソップの息子


すまねえ…ガイモンさんはカットします…


 

バギーをぶっ飛ばして新たな仲間、航海士のナミが加わった一味は、偉大なる海を目指して航海を進めていた。

ちなみに擦り傷がついた帽子は、ウタが念入りに直したのだった。

 

 

「無謀だわ!」

 

「「何が?」」

 

「このまま偉大なる海へ入ること!

私達の向かってる偉大なる航路は世界で最も危険な場所なのよ!その上ワンピースを求める強力な海賊達が蠢いているの!当然強力な船に乗ってね!」

 

「…たしかに、レッド・フォース号はすっごい船だった…!」

 

「だからこそ準備するの!先をしっかり考えてね!ここから先へ行ったら村があるわ!ひとまずそこに行って、あわよくばしっかりした船を手に入れるわよ!」

 

「よし!宴だー!!肉ー!!」

 

「よし!歌うよー!!」

 

「ウタ、酒を出してくれ!」

 

「話を聞け!!!」

 

それでは歌います!『ウィーアー!』

 

 

 

 

 

 

「嗚呼、今日も…あっちの海から朗らかに一日が始まる!!」

 

ここは東の海のとある島。この島にあるシロップ村の少年ウソップは海を眺め、そして毎朝恒例のある事をするため、村へと向かって走り出した。

 

「みんな大変だー!!!海賊が攻めてきたぞー!!!」

 

そう言って村中を駆け回るウソップ。もちろん嘘だ。

一部の人たちは反応するものの、もはや村の日課となっているこの嘘は、もはや時間の区切りの知らせにすらなっていた。

 

「ぷっくっくっくっくっ!!今日も村中一人残らず騙されたな」

 

そう言ってご機嫌なウソップのところに村の子供達がやってくる。

彼らはウソップ海賊団、ウソップをキャプテンとするお遊び海賊団だ。

そのメンバーの一人、たまねぎが衝撃の情報を持ってきたのだった。

 

「大変だー!!!か、か、海賊が来たー!!!!!」

 

最初は嘘だと思っていたウソップだったが、たまねぎの話から本当の事だと知り逃げ出そうとするウソップ。

しかし、相手が四人だけの海賊だとわかり、追い返すために出撃するのだった。

 

「あったなー!本当に大陸が!」

 

「当然でしょ、地図の通りに進んだんだから」

 

宴をしながら航海を続け、無事に島へとたどり着いた麦わらの一味。

 

「それにしても…すごいわね、ウタの能力…歌を聞いていたらまるで一瞬ライブ会場にいる気分になっちゃった…!」

 

「おまけに、酒も食べ物も出せるときた…まさに万能の能力だな」

 

「は!?ねえ!ウタ!まさか金銀財宝も出せるんじゃない?」

 

「うん!たぶん出せるよ!」

 

「¥¥!ウタ!!今すぐ海賊なんかやめて私と組みましょう!!そして…」

 

ナミが言おうとしたその時、突然どこからともなくパチンコの玉が飛んできた。

 

「…気配がするのはあの丘の上かな」

 

そう言ってウタとルフィが見上げると、そこには一人の男が立っていた。

 

「俺はこの村に君臨する大海賊団を率いるウソップだ!人々は俺を称えキャプテンウソップと呼ぶ!!」

 

自分には八千人の部下がいるから、この村を攻めるのはやめておけ!と言うウソップだったが、さっそく嘘がバレてしまい、その後飯屋へと連れて行かれるのだった。

 

「あなた!ヤソップの息子でしょ!!」

 

「親父を知ってんのか!?」

 

最初は死を覚悟したウソップ。しかし、ウタの放った一言によって一瞬で警戒を解いてしまったのだった。

 

「だって私、ヤソップと同じ船に乗ってたんだもん!」

 

「同じ船!?親父は立派に海賊やってたか?」

 

「ヤソップの射撃の腕は海賊の中でも世界一だと思うよ!シャンクスもそう言ってたし!」

 

「ほお〜シャンクスってやつの船に乗ってるのか……シャンクスだとォ!!!?親父!あの赤髪の船に乗ってるのか!?」

 

「そういや、ヤソップが言ってたな!自慢の息子がいるって!」

 

父親が思った以上の大海賊の船にいることを知り驚愕するウソップ、やっと思い出したルフィに、遅いよ〜とからかうウタ、そして、彼らの話を聞いていたナミは、とんでもない仮説が頭をよぎってしまったのだった。

 

「ねえ、ウタ?あなた、私に自分は海賊に育てられたって言ったわよね?まさか、その育ての親って…」

 

「シャンクスだよ!だって私、シャンクスの娘だもん!」

 

「「!!!!!!?」」

 

「なあ、ウタ、シャンクスってやっぱ有名人なのか?」

 

衝撃の事実に驚愕するナミとウソップ、そんな二人を見てルフィはやっぱりシャンクスはすげーなと思い聞いてみるのだった。

 

「ふっふっふっ!ルフィ!シャンクスが凄いのは当たり前じゃん!四皇とか呼ばれているけど、シャンクスが一番海賊王に近い大海賊なんだから!!」

 

ドヤ顔で自慢の父親、シャンクスの自慢話を始めるウタ。ルフィは四皇ってなんだ?と思いながら、とりあえずシャンクスが凄い有名なのを学んだのだった。

 

「とりあえず、親父がすげぇ海賊になって立派にやってるのがわかってよかった!」

 

その後衝撃の事実の数々に頭がショートしてしまったウソップだったが、無事に折り合いをつけることができ復活した。

その後、同じく復活したナミに船のあてを聞かれ、村に住んでいる大富豪の娘の話をするウソップ。

しかし、両親を失った、いたいけな少女という事を知り、今回は船を諦めることにしたのだった。

 

「ところでお前ら、仲間を探してるとか言ってたな…!」

 

「うん、誰かいるか?」

 

「俺が船長になってやってもいいぜ!」

 

「「「「ごめんなさい」」」」

 

「はえぇなおい!!」

 

「…船長はだめだけど、私はウソップに仲間になってほしいかな!」

 

「…ウタ、お前、いいやつだな…!」

 

ウタの優しさに感激の涙を流すウソップ。

なお入ってほしい理由は、ヤソップの息子だからという家族に付託した理由だった…

 

 

その後、時間だ!と言って店を出て行ったウソップ。何の時間か疑問に思った一味は、やってきたウソップ海賊団の子供達に話を聞いたのだった。

 

「へー、じゃあお嬢様を元気づけるために1年前からずっと嘘つきに通ってるんだ」

 

「もしかして、もう、お嬢様元気なのか?」

 

「「「うん、だいぶね!キャプテンのおかげで!」」」

 

「よし!!じゃあやっぱり屋敷に船を貰いに行こう!!」

 

やっぱり船を貰いに行こうするルフィを、慌てて止めようしたナミだったが、当然止めても無駄だった。

なお、ウタはルフィが決めたことなので、あっさり賛同したのだった…

 

 

 

 

 

「こんにちはーっ、船くださーい」

 

そう言って門を飛び越えて行くルフィ。お屋敷まできたものの、門番もいないため、ルフィを追いかけて一味は仕方なく屋敷へと侵入することになったのだった。

 

そして、ウソップと話しているお嬢様を見つけ、船が欲しいことを告げるルフィ、そこへ、屋敷の執事クラハドールが現れるのだった。

 

…!ねえ、ムジカ、あの執事…

 

ああ、やつはクロだな…キャプテンクロだけに!

 

……

 

すみません…とにかく、ウタが読み取った通りだ、あいつは海賊だよ。それも最悪な部類のな。

 

ウタが最も得意とする覇気は見聞色の覇気。表面上は執事を演じているクラハドールだったが、その内心をウタに読まれてしまったのだった。

 

完全に正体がバレているとも知らず、キャプテンクロことクラハドールは、ルフィ達を追い返そうとし、やがて、その矛先をウソップへと向けるのだった。

 

「君は所詮ウス汚い海賊の息子だ…何をやろうと驚きはしないが、ウチのお嬢様に近づくのだけはやめてくれないか!!」

 

「……ウス汚いだと…!?」

 

「君とお嬢様とでは住む世界が違うんだ!目的は金か?いくらほしい」

 

「言い過ぎよ!クラハドール!!ウソップさんに謝って!!」

 

あまりの物言いに、屋敷の主カヤは執事のクラハドールを叱責する。しかし、クラハドールは言葉を続けた。

 

「この野蛮な男に何を謝ることがあるのです!お嬢様。…とはいえ、ウソップくん、君には同情するよ…自ら家族を捨てて村を飛び出した、財宝狂いのバカ親父を父親にもつことを…」

 

「てめぇ!それ以上親父をバカにするな!!」

 

ウソップにとって、ヤソップは勇敢な海の戦士として憧れの存在、自身と母を置いて行ったことに思うことがないといえば嘘になるが、それでも、ウソップにとって、ヤソップは憧れの父親だった。

 

そしてウソップの怒りは限界を迎えた。クラハドールを殴ると言う形で。

 

「俺は親父が海賊である事を誇りに思ってる!!勇敢な海の戦士である事を誇りに思ってる!!お前が言う通り俺はホラ吹きだがな!!俺が海賊の血を引いているその誇りだけは!!偽るわけにはいかねェんだ!!」

 

そう言って、クラハドールに掴みかかるウソップだったが、カヤの頼みもあり、怒りを抑え引き下がるのだった。

 

そして、クラハドールの正体を知った上、ヤソップとその息子ウソップをバカにされたウタは…

 

…ねえ、ムジカ、私決めた…あいつは絶対ぶっ飛ばしてやる!!

 

そうだな…あの眼鏡カチ割ってやるか!

 

クラハドールことキャプテンクロに怒り心頭だった。

 

 





クラハドール(キャプテンクロ)のやったこと…

(ヤソップの息子の)ウソップをバカにする。

(赤髪海賊団のみんなが大好きなウタの前で)ヤソップをバカにする。

(血は繋がってないけれど、海賊である父親シャンクスを誇りに思っているウタの前で)ウス汚い海賊の血発言…

おまけに海賊なのに執事のフリをしてカヤの遺産を奪うつもりだということを知ったウタの心境…



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ウタの怒り

 

 

屋敷から出た後、どこかへ向かうウソップを追いかけて行ったルフィ。

 

「それにしてもウタ、さっきからどうしたのよ?」

 

そんな中、いつもならルフィについて行くはずのウタが、何か考え込んでいるのかずっと上の空なことをナミは不思議に思っていた。

 

「………ちょっとね……それより、ルフィは?」

 

「さあな、キャプテンを追っかけてどっか行っちまった」

 

そう言ったゾロの言葉に、ウソップ海賊団の子供達がウソップの行き先である海岸のことを教えたのだった。

 

「それより、あんた達一人足りないんじゃない?」

 

「「ああ、たまねぎ!!あいつすぐどっかに消えちゃうんだよ」」

 

そんな話をしていたところ、件の子供たまねぎが一人の男を引き連れてやってきたのだった。

後ろ向きで、ムーンウォークのように歩いて来た男は自身をジャンゴと名乗り、通りすがりの催眠術士であることを告げた。

その後、子供達に催眠術を披露してくれとせがまれ、ジャンゴは催眠術を披露するのだった。

 

「いいか、よくこの輪を見るんだ、ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる」

 

「いいか、いくぞ…ワーン…ツー………・ジャンゴ」

 

その結果、子供達とジャンゴ本人、そして、眺めていたウタまで催眠にかかって眠ってしまったのだった。

 

……催眠術にかかっているぞ

 

Zzz…………はっ!寝てた!

 

 

その後、海岸の方へ起きたジャンゴが去って行くと、今度はウソップが海岸から村の方へと走って行ったのだった。

最初は父親をバカにされたことをまだ怒っていると思っていた一味だったが、ルフィが一緒じゃないことや、ウソップの血相を変えた顔から、何かあったことを察して海岸へと向かうのだった。

 

 

 

「「「えー!!!カヤさんがころされる!!?村も襲われるって本当なの!?麦わらの兄ちゃん!!」」」

 

「ああ、そう言ってた!間違いねえ!」

 

海岸で寝ていたルフィを起こし、クラハドールことキャプテンクロの計画を知った一味。カヤを狙うクラハドールと、攻めて来るクロネコ海賊団に対して今後どうするか話し合っているところに、クロの計画を知らせに行ったものの、村中のみんな、そして狙われているカヤにすら信じてもらえなかったウソップが戻って来たのだった。

そして、ウソップは海賊を迎え討とうとする子供達を嘘で騙して家へ帰すと、ルフィ達へと語り始めた。

 

「俺はウソつきだからよ…ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ…」

 

「それでも海賊は確実にやって来る、でもみんな嘘だと思ってる…!!だから!俺はこの海岸で海賊共を迎え撃ち!!この一件を嘘にする!!!それが、ウソつきとして、俺の通すべき筋ってもんだ!!」

 

そう言って育った村を守るため、ウソップは覚悟を決めたのだった。

 

「とんだお人好しだぜ、子分までつき放して一人出陣とは…!」

 

「よし!俺たちも加勢する!!」

 

「言っとくけど、宝は全部私のよ!」

 

ウソップの覚悟を聞いて、加勢することを決めた一味のメンバー達。

 

「ねえ、ウタ?そういえばずっと黙ってるけどどうしたの?」

 

ウタの意見を聞こうとして、思い返してみると、屋敷を出てからほとんど口を開いていなかったことに気づいたナミは、ウタに何かあったのか聞くことにした。

 

「……ごめん、ナミ、今日一日中、何とか怒りを抑えて冷静になろうと思ったけど…やっぱり無理!」

 

そうウタが言った瞬間、ウタから放たれた凄まじいプレッシャーが、一味に一瞬だけのしかかった。

 

「ルフィ…私、あの執事をぶっ飛ばしてくる!!止めないでね!!」

 

「……わかった!船長命令だ!あの執事をぶっ飛ばしてこい!!」

 

「…ありがとう、私がぶっ飛ばして帰って来るまで任せたよ!」

 

そう言ってウタは屋敷の方へと飛び去ってしまった。

 

「おい!?お前達!あいつ一人で行かせちまっていいのかよ!!相手はあのキャプテンクロだぞ!!」

 

「大丈夫だ!!ウタがあんな執事なんかに負けるはずねえ!!」

 

「それにウタが言ってただろ!()()()()()()()!」

 

だから大丈夫だ!そう言ったルフィには確信があった。

ルフィにとってウタは幼馴染であり、大切な最初の仲間であり、そして、誰よりもルフィが最も信頼している存在だったからだ。

 

 

 

 

 

 

「お嬢様は?」

 

「もうお休みです、だいぶお疲れのようで…」

 

自分が()()()()へと行っている間にウソップがカヤと接触したことをもう一人の執事、メリーから聞いたクロは、まもなく計画が始まる高揚感から気が緩み、笑いを隠せずにいた。

 

「ん?これは?」

 

「ああ、それはお嬢様からあなたへのプレゼントのようです。何でも、明日はあなたがこの屋敷へ来てちょうど3年目になる記念日ですからね!」

 

「…記念日というなら、確かに…明日は記念日だ」

 

そう言って独特の仕草で眼鏡をくいっと上げると、クロはプレゼントの眼鏡をおもいっきり足で踏みつけた。

 

「クラハドールさん!?あんた、お嬢様のプレゼントに何を!?」

 

「プレゼントなら受け取りますよ…こんな物ではなく、屋敷まるごとだ……!!」

 

もう芝居を続ける意味はあるまいと、クラハドールことクロは正体を現わし、武器である猫の手を装着し、口封じのためメリーを切り裂こうとする。

 

お嬢様逃げ………そう言ったメリーをクロが切り裂こうとしたその瞬間、

 

「見つけたよ…キャプテンクロ…!」

 

壁をぶち抜いて一人の少女がやってきた。

突然の出来事に少し驚いたものの、所詮は昼間の小娘と侮り、邪魔な目撃者程度にしか思わなかったクロは、無言でメリー共々消すべく、猫の手を構え切り裂こうとした。

 

「…右側からの切り裂き」

 

「背後にまわって顔狙いね…」

 

「左後ろからの切り裂き」

 

しかし、その全てを避けたウタは、自身の能力によって生み出した音符でクロを弾き飛ばし、屋敷の外へと吹き飛ばしたのだった。

 

「執事さんはお嬢様を連れてここから避難してね!あいつは私がぶっ飛ばすから!」

 

ウタに言われ、メリーは慌ててカヤを避難させるべく、カヤの部屋へと走って行った。

 

 

 

怒りを露わにしながら、吹き飛ばされたクロの方へとウタは向かった。

 

「小娘…!よくも俺の予定を狂わせやがったな…!」

 

「なにが予定よ…!お嬢様を騙して信頼を裏切った最低野郎!それに…私の前で、ヤソップを…大切な家族をバカにしたことを私は絶対に許さないから!!」

 

そう言ってウタは自身が最強であることを告げる歌を響かせる。

 

『私は最強』

 

曲調に呼応するように鎧と槍を纏い、クロを睨みつける。

 

「…!まさか、悪魔の実の能力者か!?」

 

あなたと交わす言葉なんかないよ!

 

「自惚れるなよ…小娘が!たかが鎧を纏った程度で、俺の抜足をどうにかできるとでも思ったか?」

 

そう言った瞬間、クロの姿が忽然と消えた。

抜足、それは無音の移動術。暗殺者を50人集めたとしても気配を感じることなく殺されてしまうという、東の海においてほとんど敵なしとも言える最強の力。

無音の高速移動によって、ウタを切り刻み、クロネコ海賊団の方へ向かおうとするクロ。

 

聞こえてるよ…どこにいるのかも、どこから攻撃をしてくるのかも!

 

しかし、それはあくまで東の海での話。

偉大なる航路、そのさらに奥、後半の海、新世界と呼ばれる魔境に足を踏み入れた者達が使う力、覇気を修めているウタにはその力は当然通じなかった。

 

クロの攻撃をまるで心を読んでいるかのように察知して避けると、槍による突きや生み出した音符による攻撃によって、着実にダメージを与えていくウタ。

 

全身に傷を負い、自慢の執事服がボロボロになったことで、クロは気づいてしまった。目の前の小娘だと侮った存在が自身よりも遥かに強い存在だということに。

 

「ふざけるな…!三年をかけてようやく手に入ろうとした、俺の平穏が台無しだ!!」

 

半ばやけくそになりながら、クロは一筋の望みを懸けてウタを消すべく必殺の技を繰り出した。

 

「こんな小娘ごときに…!俺の計画が台無しにされるなどあっていいはずがない!!思い知らせてやる…!幾度となく死線を超えた…海賊の恐ろしさを………!!」

 

「杓死」

 

瞬間クロの姿が消え去り、辺りが切り裂かれ始める。

 

「…!厄介な技だね…」

 

杓死はクロですら速さのあまりコントロールできない技、そのため、心を読んで避けることを得意とするウタとは、少し相性が悪い技だった。

それでも、見聞色の覇気を駆使してほとんどの攻撃を避けるウタ。

少しばかり擦り傷をもらったものの、すぐにウタウタの力で治すことでダメージこそないものの、攻撃が当たりにくくなってしまった。

 

ウタ、ここは俺が出ようか?

 

ダメだよ、ムジカ……あいつは私が直接ぶっ飛ばすって決めたから!……仕方ない、こっちも使うよ、私の切り札!

 

…あまり無理するなよ、ウタ

 

大丈夫!それじゃ、()()()()()()、ムジカ!

 

 

 

魔王憑依(インストール)

 

 

 

「……いくよ!()()()()()!!」

 

瞬間、ウタの雰囲気がガラリと変化する。それまで纏っていた鎧が消え、禍々しい漆黒の翼を纏う黒を基調とした姿へと変わり、手にはサーベルのような黒い剣を持った姿へと変身した。

そして、覇気を纏った剣を振り下ろし、凄まじい一撃をクロへと放った。

 

「ねえ、キャプテンクロ…海賊名乗るのも、お嬢様の執事も、もうやめなよ!!!」

 

天をも割る一撃が、杓死で自身でもコントロールできない程の高速移動をしていたクロを、まるで()()()()()()()()()()()()()()完全に捉えて切り裂いた。その一撃によって、クロは彼方へと吹き飛ばされていったのだった。

 

 

『解除』

 

「はあ、はあ、……!やっぱりムジカの力を纏うのは大変だね……力もまだ完全には引き出せないよ…」

 

…あまり無理するなよ、ウタ、その技は覇気と体力の消費が激しい上、俺が肩代わりできないからな。

 

「まだ大丈夫だよ!!これでクロとかいうやつはぶっ飛ばせた!よし!ルフィ達のところに行こう!」

 

そう言って、ウタはルフィ達のいる海岸へと向かうのだった。

 

 





ちなみにこのシャンクスは刀の名前です。
詳しい設定は今後の話で出すと思います。


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新しい仲間



完全にネタに走ったifルートを別で書きました!たまに更新するので、気になる方はぜひ!


 

 

ウタがクロのところへ向かった頃、ルフィ達はクロネコ海賊団と相対していた。

 

「まさか、クロネコ海賊団の攻めて来る海岸が反対側だったなんてね…気づいてよかったわ、お手柄よ!ルフィ!」

 

原作と異なり見聞色を一応修めていたルフィは、朧げに反対側の海岸から海賊の気配を感じ、早めに相対することができたのだ。

 

「ゴムゴムの〜銃乱打(ガトリング)!!」

 

そしてルフィの拳によって向かって来た船員達は一瞬で返り討ちにあったのだった。

 

「ば、化け物だ!!!!船長なんとかしてください…!!」

 

「よ、よし!まかせておけ…ワン・ツー・ジャンゴで眠くなれ!」

 

「ワーン!・ツー!!・ジャンゴ!!!」

 

数人を残して船員が全滅してしまったクロネコ海賊団。

しかし、船長である、催眠術士のジャンゴの催眠によってルフィが眠らされ、戦闘不能になってしまった。

 

「こんな化け物まともに相手にできるはずがねえ……あの化け物が眠っている間がチャンスだ!ニャーバン兄弟(ブラザーズ)!!あいつらの相手は任せたぞ!」

 

ルフィとキャプテンクロにびびったジャンゴは、一刻も早く屋敷へ行くため、戦闘を催眠強化を施した幹部のニャーバン兄弟に任せて走り去って行ったのだった。

 

「まちやがれ!!」

 

「「おっと!行かせねよそこの剣士!お前の相手は俺達ニャーバン兄弟だ!!」

 

「仕方ねえ……おい、ウソップ!ここは俺達に任せて、あの催眠術士を追え!!」

 

「…!わかった!たのんだぜ!お前達!!」

 

ジャンゴを追うのをウソップに任せ、ゾロはニャーバン兄弟、ナミは、残った数人の船員の相手をするのだった。

 

一時は刀を奪われるなど苦戦を強いられたゾロだったが、地力の違いを見せつけ、催眠強化された二人を一蹴した。

 

「おい、起きろ!ルフィ!」

 

そして、眠っていたルフィを叩き起こし、ウソップの援護に向かおうとしたゾロ、その時、凄まじい衝撃の音が屋敷の方から聞こえてきた。

 

「……おい、これは…あいつの仕業か……!」

 

見上げたゾロが見たものは、まるで刀によって斬り裂かれたかのように割れている空だった。

 

「ああ!ウタが勝ったんだ!あの執事に!!」

 

「嘘…でしょ…!何か落ちてくる!」

 

驚愕するナミとゾロだったが、やがて何かが空から降ってきたことに気づいた。

 

「……本当にウタがぶっ飛ばしたみたいね…」

 

空から降ってきたのは、ボコボコにされた執事こと、キャプテンクロその人だった。

 

 

 

 

 

「大丈夫!?ウソップ!?」

 

クロをぶっ飛ばしてルフィ達の所へと向かおうとしていたウタ。しかし、そんな彼女が見たのは、全身切傷だらけのボロボロのウソップの姿だった。

 

「大丈夫だから!私が絶対治すから!!」

 

ウタウタの能力を使い、ジャンゴから受けた傷を治し、なんとか意識を取り戻したウソップ。しかし、まだ調子が戻っていないにも関わらず、ウソップはジャンゴの元へと向かおうとするのだった。

 

「ウソップは休んでいて!ジャンゴって奴は私がぶっ飛ばしてくるから!」

 

なんとかウソップを安静にさせようと、自分が行くことを提案するウタだったが、それでも、ウソップの決意は変わらなかった。

 

「……そういうところ、ヤソップにそっくりだね…わかったよ、少しだけ手を貸してあげるね」

 

そう言ってウタは歌った。ヤソップから聞いた家族の歌を。

 

「これは…親父の歌!それに、なぜだかわかる!ジャンゴのやつがどこにいるのか!」

 

そう言ったウソップはカヤの下へと駆け出して行った。

 

「……ウソップ、いつかあなたが勇敢なる海の戦士になるためには、自力でこの力を使えるようにならないといけない…」

 

「でも、お嬢様のために、今回だけ見せてあげるね、ヤソップの見ている世界を!」

 

 

 

何故だかわからないが、ジャンゴの場所がわかるようになったウソップ。

走りながら、詳しい様子まで把握できるようになり、ウソップは火薬を握りしめ、ジャンゴを狙える位置へと向かっていく。

 

「見える!見えるぞ!!執事のメリーさんは催眠で無力化されている、でも、にんじん、ピーマン、たまねぎのおかげでカヤは無事だ!あいつら…家に帰ってろって言ったのによぉ!」

 

頼もしい仲間達の存在を感じ取りながら、ウソップはジャンゴへと狙いを定めた。

普段なら狙いすら定まらないだろう距離、しかし、今の自分になら、確実に当てられるとウソップは確信していた。

 

「くらいやがれ!催眠術師!必殺!火薬星!!!!」

 

遥か彼方から放たれたその一撃は、木々の合間をすり抜けていき、カヤの命を奪おうとしたジャンゴを吹き飛ばした。

 

「無事か!?カヤ!!」

 

「ウソップさん!!……私は、あんなに酷いことを言ってしまった、なのに、どうしてあなたは……」

 

「そんなこと気にすんな!カヤ!俺は勇敢なる海の戦士!キャプテンウソップ!村を襲う海賊をやっつけるのは当然のことだからな!!」

 

そう言ってウソップは尚も申し訳そうに涙を流すカヤを慰めるのだった。

 

「よかったね、ウソップ」

 

 

 

 

「そういえば、キャプテンクロはどうなったんだ?」

 

その後、合流したウタは、勇敢に立ち向かって怪我をしていたウソップ海賊団の子供達の怪我を治していた。

 

「執事ならぶっ飛ばしたよ!!」

 

「……なあ、ウタ、お前もしかしてめちゃくちゃ強いのか!?」

 

本当にクロをぶっ飛ばしたことに驚き、ほとんど無傷の様子から、ウタがめちゃくちゃ強いのではないかと疑うウソップ。

 

「本当にクラハドールは……」

 

そんな中、三年間を共にしてきたカヤは、どうしても心の奥でクラハドールのことを割り切ることが出来ずにいた。

 

「……あまりおすすめしないけど、直接会って聞いてみる?」

 

「できるんですか!?お願いします!私をクラハドールに会わせてください!!」

 

「…わかった、カヤお嬢様、少し眠っていてね」

 

そう言ってウタが歌いはじめると、カヤの目の前に、音符の戦士達に拘束されたクラハドールが現れた。

 

「ここはウタワールド、私の能力で創られた世界。ぶっ飛ばした時に念のため心を取り込んでおいたんだ」

 

ここにはカヤとウタ、そして拘束されたクラハドールのみ、カヤはクラハドールに真相を聞くことにした。

 

「クラハドール!三年間、私が両親を亡くしてから、あなたは私に尽くしてくれた、一緒に船に乗ったり、町まで出かけたり、看病だってしてくれた。なのに…どうしてあなたはこんなことを…」

 

「知れたことを、私は平穏が欲しかったのですよ。ここでの居心地はとてもいいものだった。夢見るお嬢様にさんざんつきあったのも、それに耐えたことも…全ては貴様を殺してこの平穏と財産を手に入れる、そのためだけに!このキャプテンクロが、ハナったれの小娘相手に!屈辱の日々を過ごしてきたのだ!!!!」

 

「……本当に救いようのない悪党だね……もう大丈夫?カヤお嬢様?」

 

「………はい、もう、大丈夫です…」

 

「私はもうこいつをぶっ飛ばして終わったから、あとはお願いね、ムジカ」

 

そう言ってウタはお嬢様を連れてウタワールドを出て行ったのだった。

 

「まて!!小娘ども!!!ま……!?なんだ!?この化け物は!?」

 

ウタに頼まれたしちょうどいい、お前、覇王色を纏う時間伸ばす練習台になれ!

 

や、やめろぉ!!!!!!

 

 

 

 

 

戦いは終わった、空から降ってきたボロボロのキャプテンクロを見たクロネコ海賊団の船員達は戦意を失い、ジャンゴを置いて逃げて行った。

 

こうして、ウソップと麦わらの一味によって村は救われたのだった。

 

「今回のことを秘密にする!?」

 

「どうして!?ウソップさん!みんなの誤解をとかなきゃ…」

 

「誤解も何も、俺はいつも通りホラ吹き小僧と言われるだけさ!もう終わったことをわざわざみんなに話して恐怖を与えることはねェ」

 

今回みたいなことでもない限り、この村は大丈夫だろうしな!と笑うウソップ、そのあまりのお人好しさにルフィ達は少し呆れるも、カヤやウソップ海賊団の子供達には、そんな彼が偉大な男のように見えたのだった。

 

 

 

 

 

みなさん、船、必要なんですよね!

 

あの後、飯屋で朝ご飯を食べていた一味の下を訪れたカヤお嬢様に案内され、海岸を訪れた麦わらの一味。

 

「お待ちしていましたよ、少々古い型ですが、これは私がデザインした船、ゴーイング・メリー号でございます」

 

「キャラヴェル!!」

 

そこには、村を救ったお礼にとカヤから贈られた船ゴーイング・メリー号が浮かんでいた。

執事のメリーから船の説明を受け、ついに麦わらの一味は海賊としての船を手に入れたのだった。

 

「……そろそろ来るよね、ウソップ」

 

「ああ!ウソップはもう、俺達の仲間だ!!」

 

そして、勇敢なる海の戦士はやってきた。

 

「……やっぱり海へ出るんですね、ウソップさん……」

 

「ああ!決心が揺れ動かないうちにとっとと行くことにする!…止めるなよ」

 

「止めません……そんな気がしてたから」

 

本当は行かないでほしい…そう思うカヤだったが、それでも、ウソップを引き止めるのではなく、笑って送り出すことにしたのだった。

 

「よかったの?ウソップに本当のことを言わなくて」

 

「いいんです…私が決めたことですから……でも、大切な人の隣にずっと一緒にいられるウタさんを見ていると、少し羨ましく思っちゃいます…」

 

「……私もね、カヤさんと同じように大切な人と離れて、心を病んでしまったことがあるんだ。そんな辛かった時、私はルフィに救われたんだ!あなたがウソップに救われたのと同じように…」

 

「そうなんですか!…私達、お揃いですね!でしたら、同じ救われたもの同士、私達はお友達になりませんか、カヤとお呼びください!」

 

「うん!カヤ、私のこともウタでいいよ!いつか私は新時代を創るから、その時にまたカヤのところに会いに行くからね!」

 

「はい!約束です!」

 

そして、いよいよ出航の時がきた。

 

「カヤ!今度この村に来る時はよ、ウソよりずっとウソみてぇな冒険譚を聞かせてやるよ!」

 

「うん!楽しみにしてます!」

 

「行くぞウソップ!出航だーっ!」

 

「お前達…キャ、キャプテンは俺だろうな!!」

 

「バカいえ!!俺が船長だ!!」

 

 

こうして、新たな仲間ウソップを加えた、麦わらの一味とゴーイング・メリー号の冒険が始まるのだった。

 

「よーし宴だ!!!」

 

 

「新しい船と仲間に!!」

 

 

「「「「「乾杯だーっ!!」」」」」

 

こうして、新しい仲間と船を祝う宴が始まったのだった。

 

そして、ウタワールドにもまた、一人の住人が増えた。

 

よろしくね!メリー!

 

「メリー♪」

 



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バラティエの歌姫

 

 

「今日も頼むよ!ウタちゃん!」

 

「はーい♪ みんな!ウタだよ!今日はバラティエに来てくれてありがとう!それでは、お食事と一緒に、私の歌をたのしんでね!」

 

ムジカ、準備はどう?

 

スピーカー設置完了、演奏担当に創ったアニマルバンドも配置についた、バッチリだ!

 

よし!

 

「それでは、最初の曲いくよ!」

 

『風のゆくえ』

 

 

「ウタちゃーん!! ウ・タ・ちゅわぁーん!!!!」

 

「オーナーゼフ!!ウタちゃんはウチのレストランに舞い降りた天使ですよ!!ウタちゃんの歌人気で連日超満員!売り上げは毎日売り上げ最高額更新ですぜ!!」

 

「……!こいつは驚いたな!これなら、あのエレジア国王にも認められたって話も本当だろう……麦わら小僧のただ働きの件…一ヶ月にまけてやるか…」

 

そう言って全く使えない麦わら帽子の男を思い浮かべながら、海上レストランバラティエのオーナーゼフは、仕事を放棄してウタにメロメロのサンジを蹴り飛ばしたのだった。

 

 

ことの発端は数日前、ルフィ達が海上レストランを訪れた時へと遡る。

 

航海の途中で出会った、ゾロと同じ賞金稼ぎをしていたヨサクとジョニーを船に乗せた一味は、海のコックを探すため、海上レストランへと向かっていた。

 

「……ねえ、ウタ…?その絵は……?」

 

「何言ってるのナミ!海賊旗に決まってるじゃん!シャンクスが言ってたもん!私の絵は世界一だって!」

 

「……私、最近赤髪のシャンクスのイメージが訳わかんなくなってきたわ……」

 

「こいつは……!絵は上手いんだ、絵は、ただ、海賊旗にしてはちょっと可愛らしすぎやしないか…?」

 

その後、格好良さ重視のルフィと可愛さ重視のウタは意見が別れたものの、結局、ウソップのおかげで無事に麦わらの一味の海賊旗が出来上がり、海上レストランバラティエに無事に到着したのだった。

しかし、事件はレストラン前で起こった。

なんと、遭遇した海軍の船から放たれた砲弾を、ルフィが誤って海上レストランの、それも料理長の部屋に跳ね返してしまったのだ。

 

「一年間の雑用ただ働き!それでゆるしてやる」

 

「い…一年!!?」

 

砲弾のせいで怪我を負ってしまった海上レストランの料理長のゼフは、怪我の治療と店の修理費をルフィへと要求し、金がないと知ると、代わりに働いて返すようにルフィへと告げるのだった。

 

「一週間にまけてくれ!」

 

当然、ルフィは早く偉大なる航路へと行きたいので断るも、働かないなら、足一本置いていけと、ゼフは更なる要求を突きつけた。

 

「ちょっと待ってよ!ルフィは私と新時代を創るから、一年間もここにはいられないし、足も置いて行けないよ!私も一緒に働くから、短くしてよおじいちゃん!」

 

「ほう、お嬢ちゃんも働くか……それなら、半年にまけてやってもいい」

 

「もっと短くしてほしいかな!おじいちゃん!代わりに、私がこのレストランで歌ってあげる!こう見えて私、エレジアの国王のゴードンさんに認められる位歌上手いよ!!」

 

「……!こいつは凄いことを言うじゃないか!!音楽の都エレジアの国王に認められた歌声だというなら、それは世界最高の歌声を持つと言うことだ!こんなところで海賊と一緒にいるはずがねェ!!……とは言え、そこまで言うんだ、歌ってもし客足でも増えたら、働く期間の件、考えてやる!」

 

こうして、ウタとルフィのバラティエでの働く生活が始まったのだった。

 

 

 

side トットムジカ

 

10年の月日をかけ、能力と覇気を研ぎ澄ませてきたわけだが、いよいよそのお披露目をする時がきた!

ウタが歌担当、俺が楽器担当、ブルックが演奏担当をするのが理想だが、ブルックが一味に来るのはまだ先、なんで、ブルックの代わりに、俺が創った楽器を弾くアニマルバンドのメンバー達を創ることにした。

いよいよ始まる!新時代への第一歩が、歌姫の歌声が世界に知れ渡る時が!

 

という訳で、俺は特等席でそれを聞いているとしますか!やっぱり使い魔なって正解だったな!

 

 

 

 

海賊ドン・クリークの部下である男、ギンの乱入で一時は騒然となったレストランに少しだけ落ち着きが戻ってきた頃、彼女は現れた。

 

「みんな!はじめまして!今日から暫くの間、ここで歌わせてもらうことになったウタと言います!」

 

「久しぶりに人前で歌うから、少し緊張しているけど、それでもぜひ、私の歌を聞いてください!」

 

自らをウタと名乗り、歌を歌うことを告げた可憐な少女、突然のことに少し驚くお客さん達の前で、彼女は静かに歌を歌い始める。

 

『世界のつづき』

 

柔らかな旋律が、動揺していた人々の心を包み込み、落ち着かせていく。どこからともなく奏でられる音楽と共に響くその歌声は、人々を包み込み魅了していった。

 

「こいつは驚いた………」

 

「天使だ……」

 

やがて歌が終わると、歌声に魅了された人々は、海賊騒動のことをすっかり忘れ、彼女の歌声に耳を傾け、料理に舌鼓を打ち、バラティエでの一時を堪能したのだった。

 

この日が、後に世界を魅了する、新時代の歌姫が最初の第一歩を踏み出した時、そして、後に麦わらの一味の仲間になる、海のコック、黒足のサンジとの初めて出会った日だった。

 

「ウタちゅわぁーーーん!!!!!!」

 

「あ、あはは………」

 

 





次回予告

この気配!シャンクスやムジカと同じくらいの桁違いの覇気!!

……!これがシャンクス達の…世界の頂にいる大海賊の力!!

俺は、あんたに会うために海を出たんだ!

次回「剣の頂き」 世界最強の剣士現る!!


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剣の頂き


誤字報告をして下った皆様、本当にありがとうございます!!



 

「それにしても、懐かしいね……ルフィとこうしてお店のお手伝いをするの!」

 

「ああ!小さい頃にマキノのお店で一緒に手伝ったのを思い出すな!」

 

歌を歌い終わり、雑用をしているルフィの手伝いをしに来たウタは、ふと、フーシャ村にいた頃のことを思い出し、懐かしんでいた。

 

「……でもよ、ウタ…やっぱり早く冒険に行きてェ…そして、海賊王になって新時代を創りてェ!!」

 

「……そうだね…それでこそルフィだ!それじゃ、早くお仕事終わらせて、また料理長のおじいちゃんに交渉しに行こっか!」

 

冒険に想いを馳せ、笑い合う二人、そんな二人の姿を背後から血涙を流して眺めている男がいた。

 

「あんの新入り!!ウタちゃんになんて馴れ馴れしい!!!」

 

「おい!サンジ!!嫉妬してねェでさっさと働け!!」

 

男の名はサンジ、この海上レストランバラティエの副料理長にして、大の女好きである。

歌を歌うウタにすっかり魅了されたサンジは、そんなウタと距離が近いルフィのことを、あまり心良く思っていなかった。

 

 

「おーい!サンジ!仲間になってくれ!」

 

しかし、そんな事はつゆ知らず、サンジの料理人としての心意気に惚れたルフィは、サンジを仲間に誘うのだった。

 

「誰が海賊の仲間になるか!!……!?いや、待てよ……こいつの仲間になるという事は、ウタちゃんやナミさんとも……」

 

心が揺れ始めたサンジ、そんなサンジをジト目で見ていたウタだったが、外からの気配を感じて、意識を切り替えた。

 

「……何か来るよ!ルフィ」

 

「ああ!たぶん海賊だ!」

 

そう言って外へと向かう二人、あわよくば来た海賊をぶっ飛ばして、働く期間を短縮してもらおうと考えたのだった。

 

「でっけー船だな!!」

 

「そうだね……でも、ボロボロだし、船員の人達の気配も消えかけてる…」

 

レストランを襲う様子のないボロボロの船を見て、少し落胆した二人。

やがて、船からサンジに助けられたクリーク海賊団の男ギンと肩を担がれた大男がやって来た。

 

「あれが……ドン・クリーク!?」

 

「威厳も迫力もねぇ……あれが東の海最強の海賊と言われた姿か…?」

 

空腹で弱り、涙を流しながら食事を乞う大男、ドン・クリーク。

その強さと卑劣な行動の数々で名を轟かせた姿は見る影もなく、海上レストランのコック達は、捕らえて海軍へと引き渡そうと考えた。

 

「ほらよ、ギン、そいつに食わせろ」

 

しかし、サンジは違った、彼の信念の下、ギンへとクリークのために食事を与えた。

サンジの飯のお陰で無事に空腹を脱することができたクリーク。

しかし、クリークという男は、食事に感謝するような善人ではなく、海の悪党、海賊だった。

 

「は、話が違うぞ!!ドン・クリーク!!この店には手を出さねェって条件であんたをここへ案内したんだ!!」

 

「ああ、うまかったよ…生き返った気分だ……いいレストランだ、この船を貰う」

 

「やっぱり救えない悪党だったか……ルフィ!ここはあいつぶっ飛ばして、交渉材料にしよ!」

 

「おう!よしきた!!」

 

そう言ってクリークをぶっ飛ばそうとした二人、しかし、突然二人の見聞色は次元の違う気配を感じ取った。

 

「!?この気配……この覇気、シャンクスやムジカクラス!?」

 

「ああ……外にいるな…すげーやつが!」

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘かよ、ルフィ、手を貸そうか?」

 

この船と、かつて海賊だった料理長、ゼフの航海日誌を奪うことを宣言したクリーク。

当然、ルフィが黙っている訳がないと考えたゾロはルフィへと問いかけた。

しかし、ルフィとウタはクリークには目も合わせず、外を見て冷や汗を流していた。

 

そして、クリークは船員達の分の食事を持ち帰り、この船を奪うと高笑いをして店を出ようとした。

 

瞬間、巨大なガレオン船は真っ二つに切り裂かれた。

 

「!!!?」

 

「ゾロ……たぶん、あなたが最も会いたかった人が、鷹の目のミホークが外にいるよ……」

 

「鷹の目だと!?」

 

 

 

「あいつが一人で50隻の船を沈めたっていうのか…!?特別な武器でも持ってるのか!?」

 

「武器なら背中にしょってるじゃねぇか!」

 

「そんなまさか!……じゃあ、あの剣一本で大帆船をぶった斬ったとでも!?」

 

「そうさ……鷹の目の男とは、大剣豪の名、奴は世界中の剣士の頂点に立つ男だ」

 

 

棺桶のような船の上に座る、一人の男。

鷹の目のように鋭い目を持つその男こそ、偉大なる海に挑んだクリーク海賊団を壊滅させた張本人、世界最強の剣士、鷹の目のミホークだった。

 

「終わりだ……畜生!!なんの恨みがあって俺たちを狙うんだ!!」

 

「………ヒマつぶし」

 

「ふざけんなァーっ!!!」

 

暇つぶしで壊滅させられたことに怒り、銃を放つクリーク海賊団の船員、しかし、放たれた弾が、ミホークに当たることはなかった。

 

「!!?は、ハズれた!?」

 

「外したのさ、何発打ち込んでも同じだ…切っ先でそっと弾道をかえたんだ」

 

ゾロは男を前にして、ウタが言っていたことが真実であることを悟った。この男こそ、最強の剣士であると。

 

「俺は、お前に会うために海へ出た!!ヒマなんだろ?勝負しようぜ」

 

そう言ってゾロは刀を構え、ミホークを睨みつける。

 

「……何を目指す」

 

「最強」

 

「哀れなり…弱き者よ」

 

腕を組み、見定めるかのようにミホークはゾロを見た。

 

「いっぱしの剣士で有れば、剣を交えるまでもなく俺とぬしの力の差を見抜けよう…この俺に刃をつき立てる勇気は己の心力か…はたまた無知なるゆえか…」

 

「俺の野望ゆえ、そして、親友との約束の為だ」

 

固唾を飲んで皆が見守る中、ゾロの世界最強への挑戦が始まった。

 

 

 

「何のつもりだ、そりゃあ!」

 

「俺はウサギを狩るのに全力を出すバカなケモノとは違う、あいにく、これ以下の刃物は持ち合わせていないのだ」

 

そう言ってミホークが手に持ったのは、背負った黒刀ではなく、小さな小刀、当然舐められたゾロは、自らの力を示すべく、ミホークへと斬りかかった。

 

「鬼!!斬り!!!」

 

これまで東の海の数多の海賊達を切り裂いてきた一撃、カバジ、ニャーバン兄弟も太刀打ち出来なかったその一撃を、ミホークは涼しげな顔で小刀で止めたのだった。

 

「!!?こんな、バカなことがあるか…そんなわけねぇよ…いくら何でもこんなに遠いわけねェ…!!」

 

その後も、何度も斬りかかるゾロの刀を難なくミホークは小刀で捌いていった。

 

「なんと凶暴な剣か」

 

剣を交えるたびに、剣の頂きとの距離を、あまりにも遠い距離を実感してしまうゾロ。その脳裏には、幼馴染クイナとの誓いの言葉がよぎる。

 

「俺は…この男に勝つために!!」

 

「……何を背負う…強さの果てに何を望む、弱き者よ」

 

「アニキが弱ェだと!?」

 

ゾロの戦いを見守っていたものの、ミホークの言葉に耐えきれなかったヨサクとジョニー、しかし、ルフィはゾロの戦いである以上、手出しを許さなかった。

 

「虎…狩り!!!」

 

ゾロが放った渾身の一撃、しかし、その一撃がミホークに当たることはなかった。

 

「………!!アニギィーっ!!!」

 

ゾロの一撃よりも早く、ミホークの小刀がゾロの胸を突き刺したのだ。

 

「?このまま心臓を突かれたいか、なぜ退かん?」

 

「……ここを一歩でも退いちまったら、何か大事なモンが色々とへし折れて、もう二度とこの場所へ帰って来れねェ気がする」

 

「それが敗北だ」

 

「なら、なおさら退けないな!」

 

「死んでもか?」

 

「死んだ方がましだ」

 

覚悟を示したゾロ、その姿に、言葉にミホークは久しく見なかった強き者であることを認めたのだった。

 

「小僧、名乗ってみろ」

 

「ロロノア・ゾロ」

 

「覚えておく、久しく見ぬ強き者よ!そして、剣士たる礼儀をもって世界最強のこの黒刀で沈めてやる」

 

そして、ついに世界最強の黒刀、夜を抜いたミホークに対し、ゾロは自身が持つ最強の奥義を放つのだった。

 

 

「覇気?なんだそりゃ?」

 

「ししし、腕が黒く硬くなったやつのこと、お前が教えろって言ってただろ!」

 

「いい!ゾロ!覇気というのは意志の力、もし世界最強の剣士を目指すなら、絶対この力を使いこなさないといけないからね!もちろんミホークだってその最高峰の使い手の一人なんだから」

 

脳裏によぎったのは覇気という言葉、ウタが空を斬り裂いたであろうその力の詳しいことはわからなかったが、それでも、意志だけは誰にも負けない自信がゾロにはあった。

 

「三刀流奥義!!三・千・世・界!!!!」

 

「ほう!僅かとはいえ、纏うか!覇気を!」

 

結果はゾロの敗北、しかし、ゾロには悔いはなかった。

 

「背中の傷は、剣士の恥だ」

 

「見事」

 

こうして、ゾロの世界最強への挑戦は終わりを告げたのだった。

 

「我が名はジュラキュール・ミホーク!!貴様が死ぬにはまだ早い、己を知り、世界を知り、強くなれ!ロロノア!!」

 

「俺は先、幾年月でも、この最強の座にて貴様を待つ!!猛ける己が心力挿してこの剣を、この俺を超えてみよ、ロロノア・ゾロ!!」

 

「ゾロォー!!!」

 

「落ち着いて!!ルフィ!!ゾロは生きてる!!」

 

そう言ってルフィを止めたウタは、ミホークと向き合った。

 

「ありがとう!ゾロの命を助けてくれて」

 

「気づいていたか…若き剣士の仲間よ、よくぞ見届けた」

 

そう言ってウタとその隣にいるルフィに目を向けてミホークは問いかけてきた。

 

「小僧、小娘、貴様達は何を目指す」

 

「海賊王!!」

 

「新時代を創る!!」

 

「…!ただならぬ険しき道ぞ、この俺を超えることよりもな」

 

世界最強の剣士を相手に一歩も退かず、夢を答えるウタとルフィ、その声を聞いて、傷だらけにも関わらず、ゾロもまた、一つの誓いを叫んだのだった。

 

「俺は!もう!!二度と負けねェから!!あいつに勝って、世界一の大剣豪になる日まで、絶対にもう、俺は負けねェ!!」

 

「文句あるか、海賊王!!」

 

「しししし!!ない!!!」

 

「……また、会いたいものだな…お前達とは…」

 

ルフィとウタの夢の果て、ゾロの誓いを聞き届け、ミホークは満足そうに立ち去ろうとしていた。

 

「またね!()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「……シャンクスだと…!なぜそれを……!!そうか、貴様が赤髪の言っていた娘か!」

 

瞬間、去ろうとしていたミホークから、とてつもない覇気が溢れ出した。

 

「おう鷹の目よ…!!テメェは…」

 

「邪魔だ」

 

そして、ミホークを引き止めようとしたクリークを一撃の下に沈めたのだった。

 

「!!?」

 

「ウタと言ったな、赤髪の娘よ、貴様の話は赤髪から何度も聞いたぞ…満足したとはいえ、やはり昂るものがある以上丁度いい、貴様と貴様の宿す使い魔の力、見せてもらおう!」

 

そう言って、ミホークは黒刀をウタへと向けたのだった。

 

 





一応この後クリークとルフィは戦います!たぶん次の次くらいになるかなとおもいます。

次回 「魔王の歌」 お楽しみに!


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響き渡る魔王の歌




東の海君 いつも空割られれてる偉大なる航路君と違って、今日も平和だな〜

トットムジカス 今から空が割れて、海が蒸発する戦い始めるドン!

東の海君 お願いします!やめてください!

ワクワク鷹の目農業おじさん  ズバン! 海を割る斬撃

今回の話はこんな感じです(白目)



 

 

「聞いてくれ鷹の目!うちの娘はな!!」

 

「何回目だ赤髪……貴様が腕を失った理由を聞くために、仕方なく参加したというのに、また娘の話か……」

 

「いいじゃねぇか!鷹の目!ウタはな、きっと歌で新時代を創るすごいやつになる!それにな、あのトットムジカすら改心させちまったんだぞ〜!だっはっはっは!」

 

「!!ほう…!あの古の魔王をか!」

 

「ああ!ウタにかかればトットムジカなんてペットみたいなもんだ!!」

 

「飲み過ぎだ…お頭……それに良いのか?鷹の目に言っちまって」

 

「大丈夫だ!こいつは他に喋らないさ!それに、()()()()()()()()()()、絶対トットムジカを倒すことはできないから大丈夫だ!」

 

「ほう……!それは興味深いな…ぜひとも、この剣を持って魔王に挑んでみたいものだ」

 

 

 

 

 

 

「赤髪から話は聞いている!見せてみろ、古の魔王の力を!」

 

あのバカシャンクス!娘自慢で鷹の目に喋りやがったな!!

 

ここは俺が出るしかない!とは言え政府に情報が行くのはまずい……すまん、ウタ、今からレストランにいる奴ら全員ウタワールドに取り込んでくれ!

 

わかったよ!

 

突然の鷹の目の行動に動揺するバラティエにいた人々、次の瞬間、一瞬だけ歌が聞こえると、鷹の目のミホークは、彼らの前から突然姿を消したのだった。

 

「ごめんルフィ!私とムジカがこいつの相手をしている間、一緒に取り込んだクリーク達の相手をお願いしてもいい?」

 

「わかった……でもよウタ、絶対!戻ってこいよ!!」

 

「大丈夫!私たちは最強だから!」

 

「……ムジカ!ウタを頼んだ!」

 

ああ、まかされた!

 

そして、ルフィを含む全てのバラティエにいた人々が、ウタワールドへと取り込まれたのだった。

 

「……ウソップ、ナミとゾロのことお願いね…」

 

「…わかった、死ぬなよ…ウタ」

 

また、ウソップは突然一味を抜けたナミを追うため、怪我を負ったゾロを連れて、先にバラティエを出発することにしたのだった。

 

「本当によかったの?怪我を完全に治さなくて…」

 

「…当たり前だ、この傷跡は証だ、傷を塞ぐだけで十分…あと、鷹の目は俺が倒すから、お前が倒すんじゃねえぞ……」

 

「…まったく、心配して損した!大丈夫!たぶん決着はつかないから!」

 

そう言って、ウソップ達を送り出し、ウタはミホークへと向き直った。

 

「悪いけど、あなたが相手だと、私はムジカを呼ぶしかない…それでも、本当に戦うの?」

 

「かまわん、古の魔王の力、俺に見せるがいい」

 

「……わかった、後悔しないでね」

 

 

 

そして、ウタは魔王の歌(トットムジカ)を歌った。

 

 

GAH ZAN TAC GAH ZAN TAT TAT BRAK

MIE NEG ON GIEK GIEK NAH PHAS TEZZE LAH

 

 

歌が響き渡る、世界を滅ぼす破滅の歌が。 

 

そして、歌に呼応するように古の魔王は現実世界へと姿を現した。

 

 

 

 

魔王トットムジカ第三楽章 完全顕現

 

 

 

 

顕現と同時に世界がウタワールドへと侵食され、トットムジカの都合の良い世界へと書き換えられていき、魔王領域が形成された。

 

「……!これが、古の魔王トットムジカ…おもしろい!」

 

漆黒の翼を羽ばたかせ、この世の絶望が具現化したような禍々しい魔王の姿を見て、目をギラつかせるミホークは、トットムジカを切り裂くべく、黒刀夜を振るい、世界最強の斬撃を発生させた。

 

バラティエに被害が出たらまずいな…ここはクソギミックで受けるか。

 

海を割り、あらゆるものを斬り裂く高速の斬撃、しかし、見聞色の未来視で斬撃を把握していたトットムジカは、バラティエに被害が出ないように、その巨体で斬撃を完全に受け止め無効化したのだった。

 

効かないね!クソギミックがあるから!

 

「……!驚いた!まさか無傷とは!」

 

自身の斬撃を受け止められたにも関わらず、言葉とは裏腹に笑みが溢れ始めたミホークは、一振りですら海を割る斬撃を連撃で放ち出し、自らもトットムジカへと斬りかかった。

 

斬撃はクソギミックでどうにかなるが、このままだと斬りかかられた時の衝撃がバラティエに届きそうだ……何とか上に逸すか!

 

そう言ったトットムジカは、自身の全身を武装色で覆い、さらにその巨大な腕には武装色に加えて覇王色を纏わせたのだった。

 

いくぞ鷹の目!魔王の覇王化をお前に教える!

 

ミホークの剣撃とトットムジカの拳が衝突し、トットムジカの狙い通り、衝撃が天へと昇り、打ち上げられた衝撃は、空を、そして空間にすら亀裂を生む凄まじい衝撃波を発生させた。

 

「完全に受けるか…見事なり」

 

次はこっちから行くか!

 

さらに追撃してきそうなミホークを見て、トットムジカは先んじて攻撃へと移った。

トットムジカが得意とする、超火力レーザーをミホークに向けて放った。

 

十年でバッチリ火力も上げたからな!

 

灼熱の序曲(グリューエン・オーバーチュア)

 

灼熱の光の奔流が、海を蒸発させながらミホークを焼き払うべく放たれる。

 

「……!」

 

しかし、迫り来る光の奔流を前に表情すら崩さず、世界最強の剣士は超高熱の光の奔流を剣を振るい切り裂き、自身へのダメージを無力化するのだった。

 

……シャンクスといいミホークといいこの世界の剣士はレーザー斬るのが常識なのか!?

 

「…やはり、強者との戦いは心が躍るものだ……そして、貴様のような、この剣が通じぬ化け物と戦ったのは初めてだ」

 

そう言ってミホークはさらなる覇気を黒刀、夜へと込めた。

 

「とはいえ、これ以上暴れるとなると、政府に気づかれる恐れがある…これで仕舞いにするとしよう」

 

そして放たれる最強の剣士が生み出した至高の一撃、その一撃は、クソギミックがあるにも関わらず、トットムジカに冷や汗をかかせるほどの究極の一撃だった。

 

…クソギミックもあるし、未来視でも受けきれている…だか、それでも恐怖を感じるこの一撃は念入りに対処した方がいいな

 

トットムジカは四本の腕全てに加え、翼にも覇王色を纏わせると、全力で防御の態勢に入り、さらに発生させたレーザーと音符を応用したバリアを展開した。

 

世界最高の剣撃は、展開されたバリアを破り、トットムジカの覇王色を纏った身体と衝突する。辺りの空間は軋みをあげ、天と海は割れ、トットムジカとミホーク以外では立つことすらままならない衝撃波を辺りへと撒き散らした。

 

……さすがにクソギミックは突破されなかったか……それにしても、バラティエは守ることができたとはいえ、まるで天変地異の後みたいになっているな……

 

トットムジカはミホークが攻撃してくる様子がないため、戦いの影響で荒れ果てた海と空を、侵食して元通りに戻した。

 

「ほう…!そのような力もあるのか……次相見える時は、今度こそ貴様を斬りたいものだ」

 

来ないでおとなしくシャンクスと斬り合っていてくれ!!

 

こうして、トットムジカの切実な叫びを聞きながら、世界最強の剣士鷹の目のミホークは、笑いながら去って行ったのだった。

 

 

 

 

 





Tot Musica聴きながら小説書いてたら、ネズキノコ食べたかのように眠れませんでした……なので朝からスプラトゥーンやります(白目)


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海賊王の片鱗


ジャンプの最新話を見ていると、ガチでトットムジカがシャンクス量産して対抗しそうだなと思いました(白目)

ちなみに、もしウタが黒ひげに狙われたら、

「「「「「「よお、ティーチ、失せろ!!!!」」」」」」

「「「「「「グララララ!!!!」」」」」」

とかトットムジカが再現するかもですね…


今回はついに、ウタと十年間修行したルフィの本気の戦闘回です!



 

 

 

ウタとトットムジカが、現実世界で鷹の目のミホークを抑えていた頃、ウタワールドでは、取り込まれたことに気づいていないクリーク海賊団と、バラティエのコック達の戦いが始まっていた。

 

「どうなってやがる……突然ウタちゃんと鷹の目はいなくなるし、斬られて沈んだはずのクリークは生き返りやがった!おい、新入り!なんか知ってんのか!!」

 

「……ウタの能力だ、ここはウタの能力で創られた夢の世界、俺たちはウタによって取り込まれたんだ」

 

「なんでそんなことを……まさか、鷹の目から守るためか!?おい!今すぐ現実に帰る方法を教えろ!ウタちゃんを放っておけねぇ!」

 

残念だがそれは無理だ

 

突然サンジの目の前に奇妙な存在が現れた。

 

「!?なにもんだ、てめェ?」

 

俺はムジカ、ウタの使い魔をやっている。

現実世界では、俺が鷹の目の相手をしているが、はっきり言ってお前達がいても足手まといにしかならない。だから、代わりにやむを得ず取り込んでしまったクリーク達の相手を頼みたい。

 

「……足手まといだと?てめェ……」

 

「やめておけ、サンジ……そいつと鷹の目は、俺たちとは次元が違う……足手まといというのも本当のことだろう」

 

かつて、赫足ゼフと呼ばれ、偉大なる航路を旅したゼフは、うっすらと目の前の存在が、想像を絶する化け物であることがわかっていた。

 

話を続けるぞ…ここはウタが望んだ世界。

本人が望んだり、受け入れたものを除いて、ケガや病気といった苦しみの概念が存在せず、持ち込むことが許されない場所だ。現実世界で重傷のクリークがピンピンしているのもそのためだ。

とはいえ、クリーク達の保護は俺が解除しておいたから、もう一度ぶっ飛ばせばあいつらも倒れる。

俺は訳あって人前では姿を見せることができないから頼んだぞ!

 

「……わかった…あいつは俺がぶっ飛ばす!!」

 

そう言ってルフィは拳を構えた。

 

 

「畜生、化け物め……」

 

戦況はクリーク海賊団の圧倒的優勢だった。特に、大戦槍を振り回し暴れるドン・クリークを前にコック達はなす術がなく、海上レストランバラティエは陥落寸前まで追い詰められていた。

 

 

「おい!ギン!パール!ゼフを捕らえて航海日誌の場所を吐かせろ!!」

 

「……!ドン・クリーク……これ以上このレストランに手を出すのは……」

 

「何言ってんだギンさん!さっさとあの老いぼれを痛めつけちまいましょう!!」

 

サンジから飯を貰った恩から攻撃を躊躇するギンをよそに、ゼフを痛めつけようと、クリーク海賊団幹部鉄壁の異名を持つパールはゼフへと襲いかかった。

 

「誰を痛めつけるだって?」

 

しかし、その行手を阻むサンジによって、パールは蹴り飛ばされたのだった。

 

「サンジさん……」

 

「構えろよ、ギン!!飯はやったが、ジジイの店をやる義理はねえ!!」

 

 

「クソ!あのコックめ!!だが、ギンさんがあのコックの相手をしている今がチャンスだ!今のうちにゼフを…」

 

邪魔するなよ 『明星へ登る(ギャングウェイ)

 

こっそりゼフを襲おうとしたパールだったが、それを隠れて見ていたトットムジカから放たれたレーザーに穿たれて、意識を失ったのだった。

 

……この技使い続けると、なんか脳みそまでゆるキャラみたいになりそうだな…

 

 

 

 

そして、ここでは海を挟んで海賊王を目指す二人の男が対峙していた。

 

「なあ、小僧、てめェと俺とどっちが海賊王の器だと思う?」

 

「俺!!」

 

「そうか……その夢見がちな小僧に強さとはどういうモンかを教えてやる…!!」

 

そう言って武器を仕込んだ盾をクリークが構えた瞬間、

 

「わりィけど、おっさん……大事な仲間が現実世界(むこう)で待ってるんだ、だから……すぐに終わらせる」

 

 

 

「ギア2」

 

 

 

「ゴムゴムの……!JET銃!!!」

 

 

覇気を纏ったルフィの拳が、武器を仕込んだ盾ごとクリークをぶち抜いた。

 

「!?ガハッ!!!!!バカな…盾が!!!!ウーツ鋼の鎧だぞ!?」

 

「知るか!ゴムゴムの……!JET銃弾(ブレッド)!!」

 

「ならば………この剣山マントで……!!」

 

ウーツ鋼を貫通するルフィの拳を恐れ、マントに仕込んだ剣山で受けようとしたクリーク、しかし、ルフィの拳は剣山をものともせず、クリークの顔面を撃ち抜いた。

 

「なぜだ………!!なぜ俺の武力が通じない!!」

 

「お前をとっとと倒して、俺は現実世界(ウタのところ)に戻る!だから……ぶっ飛べ!!」

 

「ふざけるなァ!!……この俺が……世界を制する覇者である俺がァ!!こんなところで!!!」

 

「海賊王になるのは俺だ…!ゴムゴムの……火拳銃(レッドホーク)!!!!!」

 

 

大戦槍を手に最後の足掻きを見せるクリークをルフィの炎を纏った一撃が打ち抜いたのだった。

 

 

 

「そんな……あのドン・クリークがこうも一方的に……」

 

クリークが敗れたことで動揺するクリーク海賊団、しかし、自分達が最強だと信じたドン・クリークが一日に二度も一方的に敗れる姿を見て、彼らは恐慌状態へと陥ってしまった。

そして、一部の船員達はやけくそで、ルフィへと襲いかかった。

 

「わりィけど、急いでんだ……失せろ!!」

 

いくらトットムジカがいるとはいえ、ウタに万が一のことがあったらという焦りと、ウタを守るとシャンクスに誓ったにも関わらず、ウタに守られた、鷹の目に及ばない自身の力への怒りが、偶発的にルフィに秘められた力の一端を引き出した。

瞬間クリーク海賊団へと凄まじいプレッシャーが襲いかかり、意識を奪っていった。

 

「!何が起きやがった!?」

 

「…!こいつは驚いた……持っていたか…王の資質を…!」

 

 

 

 

「起きた、ルフィ?」

 

「無事か!!?ウタ!!!」

 

「まったく…ルフィは心配症なんだから…」

 

ルフィが勝利したのと時を同じく、ミホークが去ったことで、クリーク海賊団を除く人々はウタワールドから解放された。

 

「……でも、ありがとう…心配してくれて…」

 

「……当たり前だ…!」

 

そして、それぞれの戦いを終えた二人は互いの無事を確かめ合い、抱き合って喜びを分かち合ったのだった。

 

 

 





ちなみに現実世界では、ルフィはまだ覇王色を発動できていません。あくまで、ウタワールドだったから偶発的に使えただけです。


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アーロンパークへの航海

 

 

「…俺は確かにお前の船のコックになった……だがな…!こんな光景見せられちまった以上、俺はお前を三枚におろさなきゃならねェ!!」

 

「どうしたんだ、サンジ?」

 

「どうしたんだ?…………だと……!お前が羨ましくもけしからんことに……ウタちゃんの膝枕でくつろいでいることだ!!」

 

「ルフィ好きだからね!私の膝枕♪」

 

「おう!こうしてると、なんか落ち着くんだ!」

 

「!!!!!!」

 

「お、落ち着いてください!コックの兄貴!!」

 

あの後敗れたクリーク海賊団は、一人だけ無事だったギンによって引き取られた、バラティエを去っていった。

そして、鷹の目とクリークを退けたことで、ただ働きを卒業することができたのだった。

また、一味に新たな仲間、海のコックのサンジが加わったのだが、そのサンジはさっそく血涙を流して目の前の男、船長になったルフィにキレていた。

 

 

 

「さて、アニキ達が落ち着いたところで、ナミの姉貴の行き先について話させていただきやす!」

 

ヨサクの必死のとりなしで、なんとかサンジが落ち着くと、ヨサクはナミの行き先について話始めた。

 

「ナミの姉貴が向かったのはアーロンパーク、あの鷹の目と同じ、王下七武海の一人、海峡のジンベエと同格だった魚人アーロンが支配する土地です!」

 

「鷹の目と同格!?あんなのが他にもいるのか…!」

 

「そんなに強いなら、またムジカを歌うしかないかもね……」

 

「……そういえばウタの姉貴、あっしは遠目から少ししか見てなかったんですが、もしかしてウタの姉貴が連れている使い魔さん、実はめちゃくちゃヤバいやつなのでは?」

 

ねえ……ムジカって具体的にどれくらい強いの?

 

うーむ……最低でも四皇二人分位だな!

 

「四皇二人分位だって!」

 

「!!?いやいやいや!さすがにそれは冗談ってわかりますぜ!もしそんなに強かったら世界なんて簡単に滅んじまいますよ!」

 

「とにかく、メシにしようぜ」

 

そして、サンジが作った絶品のメシを食べようとしたその時、

 

「モー」

 

メシの匂いにつられて、海から巨大な海獣が現れた。

 

「何だこいつ」

 

「でけェ…」

 

「うわあああああああ」

 

「かわいい…決めた!この子捕まえて!ムジカ!」

 

…ドンマイだなモーム…

 

トットムジカ第一楽章 限定顕現

 

「!?」

 

「やっぱでかいな、ムジカ」

 

「これがウタの姉貴の使い魔……」

 

おい、モーム、特別にウタの一時的なペットになるか選ばせてやる…ちなみに返事はイエスかハイだ。

 

「モォ〜(涙)」

 

こうして、アーロン一味に所属していた海牛モームはアーロン一味を抜けてウタの臨時ペットになったのだった。

 

 

 

 

「見えたぞ、アーロンパーク!!」

 

「ねえ、ルフィ、一旦ウソップ達と合流しよう!ありがとね!モーム」

 

「モー!」

 

アーロンを圧倒的に超越する化け物トットムジカに脅されて臨時ペットになったモームだったが、飼い主のウタは優しかったので、普通にウタ達の乗っていた船を引いて港へと着いたのだった。

 

「……本当は飼いたいけど、エサ代とか考えるとここでお別れだね……」

 

「モォ〜」

 

いいかモーム……もし、アーロンに呼ばれて俺たちと戦おうとしたら、どうなるかわかっているよな……?

 

「モー!!!!!!」

 

同意するかのように高速で首を振るモームと感動?の別れを済ませ、ルフィ達は先にアーロンパークへ向かっていたゾロ達と合流した。

 

 

 

「ナミがウソップを殺す訳ねェだろうが!!!!」

 

無事に合流したゾロ達から、ウソップがナミによって殺されたと聞き、仲間であるナミがそんなことをするハズがないと怒るルフィ。

しかし、そんなルフィ達の前に現れたナミは衝撃の言葉を口にした。

 

「ウソップなら海の底よ、何しに来たの?あなた達」

 

「てめェ!!」

 

「………ねえ、ナミ、言ったよね…裏切ったら許さないって…!」

 

「まて!ナミ…お前は俺の仲間だろ」

 

「仲間!?笑わせないで!くだらない助け合いの集まりでしょ?」

 

「一つ教えておくけど、今、ロロノア・ゾロとその一味をアーロンは殺したがっている、いくらあんた達が化け物じみた強さでも、本物の化け物には敵わないわ」

 

そう言って島を出て行くように言うナミにゾロがキレたが、ゾロの前にサンジが立ち塞がった。

 

「剣士ってのはレディにも手を上げるのか?」

 

「なんだと?何の事情も知らねェてめェがでしゃばるな!!」

 

「大丈夫だよ、ゾロ……ナミは私がケジメをつけるから……!!」

 

しかし、当然ルフィを裏切ったナミをウタが許すはずもなく、ウタが生み出した音符でナミを弾き飛ばそうとした。

 

「ウタちゃん!!?」

 

「!!!」

 

「まて、ウタ!!てぇ出すな!!」

 

しかし、ルフィに止められたことでウタは渋々攻撃を中止するのだった。

 

「寝る!!」

 

そして、ルフィは島を出る気はないことを言って地面に寝そべってしまった。

 

「…勝手にしろ!!死んじまえ!!」

 

その姿に怒りを露わにしたナミは、言葉を吐き捨てて去って行ってしまったのだった。

 

「……確か、ナミは大切な人を海賊に殺されたから海賊を恨んでいた……ケジメはつけてもらうけど、アーロンとのことは気になるかな……」

 

少し気になり考えに没頭していたウタだったが、大きな音がしたため、音がしたゾロとサンジの方を見ると、そこにはボロボロになったウソップの姿があった。

 

「ウソップ!?」

 

慌ててウソップを治し、ナミがウソップを庇って助けてくれたことを知ったウタ。そして、

 

「無駄だよ、あんた達が何をしようと、アーロンの統制は動かない……お願いだから、これ以上この村に関わらないで!」

 

そう言って現れたナミの義理の姉、ノジコから、ナミの真実が語られたのだった。

 

 

 

 

 

 

ココヤシ村 海岸

 

「海軍の船だ!!」

 

「第16支部の船だ!……ついに海軍本部が動いてくれるのか!?」

 

「チチチチチ…私は海軍第16支部大佐ネズミだ、ナミという女の家に案内したまえ」

 

 





次回 「逆光」

ねえ、ネズミ大佐……海軍やめなよ!!


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逆光

 

 

「……8年もの間ずっと一人で戦ってたんだね……ナミ……」

 

「村を救える唯一の取引のために、あいつは親を殺した張本人の一味に身を置いている訳か……」

 

「そう、8年前のあの日から、決して助けを求めず、ナミは一人で戦ってきた。アーロンに殺される犠牲者をもう見たくないから……!!」

 

「愛しのナミさんを苦しめる奴ァ!この俺がぶっ殺してやる!!」

 

「それをやめろとあたしは言いに来たんだよ!ナミの8年間の戦いが無駄にならないためにね」

 

「……ねえ、ナミのお義姉さん、ナミのところまで案内して」

 

ナミの真実を聞き、直接ナミに会って話を聞くことにしたウタは、義姉ノジコに案内されて二人の家へと向かった。

 

 

 

「聞くところによると、君は海賊から盗むとはいえ、泥棒のようだね……当然盗品は全て我々政府が預かり受ける。おい!盗品を探せ!!」

 

 

しかし、ウタ達が家に着くと、ナミとノジコの家は海軍によって荒らされていた。

 

「探せ!まだ見つからんのか!米粒を探しているんじゃない!!一億ベリーだ!!見つからねェはずがあるまい!!」

 

「おい、なぜ金額を知っている!!」

 

「ん?ああ、そんな気がしたんだ…チチチチ…」

 

本当はアーロンから聞いてたがな!チチチチチ

 

 

 

 

 

「……ねえ、こんなところで海軍が何をしているの?」

 

「何だ小娘?捜索の邪魔をするな!」

 

「……アーロンから聞いたんだ、ナミのお金の場所」

 

「!?な、なんのことだかわからないな!とはいえ、捜索の邪魔をするというなら……」

 

「もういいよ」

 

 

瞬間、歌が響き渡り、突然全ての海兵達の意識が奪われる。そして、目を閉じて眠った状態のままゆっくりと歩いて海軍船へと戻り村を去って行った。

 

「……今のあなたがやったの!?」

 

「そうだよ、私はウタウタの実の能力者、私の歌を聞いた人に夢を見せて自由に操ることができる。海軍の人達は今頃夢の中で宝探しを頑張っているよ」

 

「ねえ、ナミ、これでわかったでしょ…アーロンは約束なんか守るつもりがないってことが」

 

 

 

ウタの言葉を聞いて、ナミはアーロンパークへと走り出した。

 

 

「アーロン!!!!!!」

 

「おお、どうした我らが有能な航海士よ、血相を変えて…」

 

「あんたが手を回した海軍が、私のお金を奪いに来たわよ!!!どういうことよ!!お金の上の約束は死んでも守るんじゃなかったの!!」

 

「んん?守るぜ、俺がいつ約束を破った!!?言ってみろ!!!!」

 

ナミはわかってしまった。アーロンは約束など守るつもりがなかったこと、測量士としてアーロンがナミを手放す気が最初からなかったことを。

 

「それともここから逃げ出すか?ただし、その時はココヤシ村の連中は全員お前のために殺されることになるがな……!」

 

 

 

 

「しかし、あんたもエグいことを考える…チュ♡」

 

「フン!ナミほど優れた測量士をミスミス逃す手があるか!!…とは言っても俺だって鬼じゃねェ、世界中の海の測量を終えたら自由にしてやるさ!シャハハハハ!!」

 

「フハハハハ!!そりゃ何十年後の話だよ!!」

 

 

 

 

 

「もういいんだ……無駄なことくらいわかってるだろう…我々の命を一人で背負ってよく戦ってくれた……!!」

 

「ナミには悪知恵だってあるし、夢だってある、だから、このまま村を出なよ」

 

「やめてよみんな!!もう私…!!あいつらに傷つけられる人を見たくないの!!みんな死ぬんだよ…!!」

 

ナミの戦いを踏み躙られ、アーロンパークに攻め込むことを決意した村人達をなんとか止めようとするナミ。しかし、彼らが止まることはなかった。

 

「無駄じゃ!!わしらは心を決めておる!」

 

「いくぞみんな!!!勝てなくても俺たちの意地を見せてやれ!!」

 

 

 

「………アーロン!アーロン!!アーロン!!!!」

 

怒りと悲しみが限界を超えナミは何度も何度もアーロン一味の刺青に短剣を突き刺した。

 

「!ルフィ…!」

 

現れたルフィは、ナミの短剣を握った手を掴んだ。

 

「なによ…!!何も知らないくせに!!」

 

「うん、知らねェ」

 

「島から出てけって言ったでしょう!!」

 

「ああ、言われた」

 

 

「……!!………ルフィ………助けて…」

 

 

 

「当たり前だ!!!!」

 

 

「行くぞ!!野郎ども!!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

「…ナミ、その帽子はルフィにとっても私にとっても大切な帽子だからちゃんと預かっててね!…必ずアーロンは終わらせてやるから!」

 

 

 

アーロンパーク

 

「アーロンてのはどいつだ」

 

「おい、待てよてめェら、まずは…」

 

「ルフィ、ここは私がやるよ…」

 

「おい!ウタ!ちゃんと俺たちの相手は残しておけよ!」

 

「何言ってんだゾロ!ウタ!別に俺の分は残さなくても…」

 

 

『逆光』

 

それは、人々を虐げる存在への怒り、そして屈せず戦っていく決意を歌った曲。

圧力のある激しい曲がアーロンパークに響き渡り、アーロンとその幹部達を残して全ての魚人達の意識を奪い去った。

 

「!!何をしやがった!!!人間!!!!」

 

「あの緑髪の男はロロノア・ゾロ…」

 

「海賊……そういう繋がりか……てめェらナミが狙いだな」

 

「バカヤローお前らなんかアーロンさんが相手するか!出てこい!モーム」

 

 

さて、念のためモームに覇王色通信送っておくか…モーム、出てきたらお前の末路は海牛ステーキ確定だからな…!

 

(モー!!!!!)

 

 

タコの魚人ハチがラッパを鳴らし、偉大なる航路の怪物モームを呼び出そうとしたが、モームは既にトットムジカにビビり散らしており、その後アーロンに脅されても海から出てくることはなかった。

 

「モームの野郎!!ふざけやがって!!!」

 

「…こんなことなら、初めから我々が戦うべきだった」

 

「同胞達をよくも!!」

 

「種族の差ってやつを教えてやらなきゃな…チュ♡」

 

 

 

「ルフィ…アーロンは七武海と同格の魚人…だから、私たちでやるよ!」

 

「そうは見えねェけどな」

 

「…偉大なる航路には、シャンクスのように意図して気配を誤魔化して見聞色を無効化する海賊もいる…アーロンがそうじゃないとは限らない」

 

「それに、ナミとココヤシ村の人達のためにも、この戦いは絶対に負けられないよ!!」

 

「…ああ!あいつは絶対にぶっ飛ばす!!」

 

『魔王憑依』

 

「ギア…2…!ゴムゴムの…JET銃!!!!」

 

 

そして、ウタから放たれたトットムジカのレーザーと、ルフィの拳がアーロンを吹き飛ばし、開戦の狼煙を上げた。

 

「アーロンさん!!!!?」

 

「「………本当に七武海と同格…?」」

 

ウタは知らなかった…アーロンはあくまで魚人海賊団の幹部としてジンベエと同格だったのであって、その実力はジンベエに大きく劣っていたことを。

 

 





ウタ あのミホークと同じ七武海と同格なら覇気は絶対使えるはず…おまけに能力者の天敵の海水を使えるから、私とルフィのコンビでも勝てるかわからない……最悪ムジカを歌ってでも倒す!!

なお、東の海に来て8年間ぬくぬくしていたアーロン…

次回はアーロンの過去のトラウマと決着です。


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解放の一撃

 

 

 

 

「おめーがアーロンかァ〜…何しに来たんだァ…のこのことォ」

 

吹き飛ばされ、かなりの傷を負ったアーロンの脳裏には、人間への憎悪を抱いた日の記憶が思い浮かんだ。

船長であり、偉大な兄貴分でもあったフィッシャー・タイガーを人間によって殺され、その復讐を先程自身を吹き飛ばしたレーザー攻撃と似たような能力を持った海軍の男によって阻まれた苦い過去。

 

「……ふざけるな…ふざけるなァ!!!人間!!!」

 

アーロンの怒りが自身の肉体のリミッターを外し、人間を遥かに上回る力を持つ魚人、その中でも力において上位に位置するサメの魚人としての凄まじい力を発揮させた。

 

「てめェら下等種族の能力者ごときがァ!!!(シャーク)・ON・DARTS!!!!」

 

かつて、偉大なる航路で猛威を振るった最盛期にこそ劣るものの、人の力を遥かに凌駕する力でアーロンが狙ったのは、同胞達の意識を奪い、自身に苦い過去を思い出させた黒い翼を纏った少女だった。

 

「!!?」

 

「効かないよ…今の私には!!」

 

しかし、自身の身体を依代にトットムジカを宿して纏っているウタは、トットムジカのクソギミックを発動し、その攻撃を完全に無効化した。

 

「ぶっ飛びなよ!!!!」

 

そして、そのまま展開した黒い翼にトットムジカから引き出した覇気を纏わせると、アーロンをアーロンパークの塔へと弾き飛ばしたのだった。

 

 

 

「何だこの部屋?」

 

弾き飛ばしたアーロンを追って二人が向かった先にあったのは、辺り一面が紙と海図で埋まった部屋だった。

 

「これは全部、8年かけてナミの書いた海図だ…下等な人間共」

 

全身に傷を負いながらも、魚人のタフさと怒りで意識を保っていたアーロンは、東の海では今まで使うことの無かった武器、キリバチを手にナミと測量室のことを語りだした。

 

「……このペン…血が染み込んでる…」

 

「ここで海図を描き続けることがナミにとって最高の幸せなのさ!!俺の野望のためにな!!」

 

「その海図で世界中の海を知り尽くした時!!俺達魚人に敵はなくなり!!世界は俺の帝国となる!!てめェらにこれ程効率よくあの女を使えるか!!?」

 

 

「…()()()?」

 

 

「そうさ、あいつは役に立つ俺の道具…いや、仲間なのさ!!」

 

「…下がってろ、ウタ…後は俺がやる…」

 

「……わかった、頼んだよ!船長」

 

「ああ…ゴムゴムのォ…JET銃乱打(ガトリング)!!!!」

 

「!!?測量室が!!てめェ!!何をしやがるクソゴム!!」

 

ルフィの連打によって、測量室を含めたアーロンパークの上層が粉砕され、数多の海図が塔から地上へと舞い散った。

 

「…やっとあいつを助ける方法がわかった…こんな部屋があるからいけねェんだ!!居たくもねェあいつの居場所なんて…俺が全部ぶっ壊してやる!!!!」

 

そう言ってルフィは天高くまで自らの足を伸ばしたのだった。

 

「ギア…3…!!!」

 

「ふざけるな…!!やっとここまできたんだ!!大兄貴を殺したてめェら下等種族が俺の邪魔をするなァ!!!!!」

 

 

(シャーク)・ON・歯車(トゥース)!!!!」

 

 

「ゴムゴムのォ…!!巨人の斧(ギガント・アックス)!!!!!」

 

 

アーロンに向かって振り下ろされた巨大な足が圧倒的質量と破壊力をもってアーロンパークごとアーロンを粉砕した。

 

踏み潰され、瀕死のアーロンの脳裏には、かつての魚人海賊団で過ごした仲間達との日々が走馬灯のように蘇る。

 

「兄貴!大兄貴……」

 

そして、アーロンは意識を手放したのだった。

 

 

 

 

「ルフィの野郎!俺たちまで巻き込むつもりかよ!!」

 

アーロンパークは一撃で粉砕された。そして、その様子は幹部達を倒した一味のメンバーと外から見ていた村人達の目にも焼き付いていた。

やがて、瓦礫の山に勝者として立ったルフィは宣言した。

 

 

「ナミ!!お前は俺の仲間だ!!!!」

 

 

「ルフィ…!うん!!」

 

「…勝ったんだ…!!アーロンパークが落ちたんだ!!!!」

 

アーロンの支配から人々は解放され、その喜びを爆発させた。

 

「ありがとう…!みんな…!!」

 

「まさか、海賊に救われることになるとは…わからんもんだな…」

 

「よーし!俺たちの英雄を胴上げだ!!…?あの男はどこ行ったんだ?」

 

 

「クソー!また縮んじまった〜」

 

「ルフィ!!!?」

 

「!!子供になってる!!!!」

 

「……小さくなったルフィもやっぱり可愛い…」

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、みかん畑を荒らされた分ぶっ飛ばしに行くわよ!!」

 

ギア3の副作用で小さくなったルフィが元通りに戻るまで愛でていたウタは、ナミがみかん畑の御礼参りに海軍の所に行くということで、一味のみんなと一緒について行った。

 

「操った海兵に本部への連絡はさせておいたよ。後はナミの好きにしてね!」

 

「ウタウタ…解除」

 

「チチチチチ!800万……!!何だね君たちは!?」

 

そして、ボコボコにしたネズミ達海軍に魚人海賊団の後処理と財産への不可侵を約束させたのだった。

 

「麦わら帽子の男!!お前が船長だな!!絶対に後悔させてやる!!」

 

「…それにしても、何で寝てたんだ…?夢も妙にリアルだったような…」

 

「知るか!!いいから魚人達を運んでおけ!!」

 

 

 

 

その後、アーロンの支配からの解放を祝って島中で宴が開かれた。

 

「みんなー!!ウタだよ!!今日はみんなの幸せを願ってたくさん歌うよ!!」

 

「「「「「「ウタちゃーん!!!俺たちの救世主!!!!」」」」」

 

「ウタに負けてられねェ!俺こそが!最強の魚人の幹部を倒した男!キャプテンウソップだ!!ウソップ応援歌歌います!!」

 

「いいぞにーちゃん!!」

 

「騒ぎすぎだろあいつら……ウタちゅわぁーん!!!!うるせえぞウソップ!!ウタちゃんの歌が聞こえねェだろ!!!」

 

「お前もだ…グル眉エロコック」

 

「なんだと!脳筋クソマリモ!!」

 

「生ハムメロン!!どこだァ!!……そういやナミは?」

 

 

 

「……やっと終わったよ、ベルメールさん…」

 

「ここに居たんだ……あんたの仲間が探してたよ、ナミ」

 

「ノジコ…ゲンさん…あのね、話があるの」

 

 

 

 





次回はいよいよローグタウン、そして、モクモクしちょる大佐が出ます。

なお、アイス持った覇気使いの幼女は、ネタで書いてるifルートの方には出ますが、本編には出てきません!


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伝説の始まりの地


「ねえ、ゲンさん、ノジコ…!!ベルメールさんがもし生きてたら、私が海賊になるの止めたと思う?」

「止めないね!止めればあんたが言うこと聞くの?」

「べ!!!絶対きかないっ!!!」

「……お前らは間違いなくベルメールの子だよ!!」


「……行ってきます…ベルメールさん!!」





 

 

偉大なる航路

 

「よお、鷹の目…勝負でもしに来たか?」

 

「ふん…左腕を失った貴様と今更決着をつけようとは思わん…それより、面白い海賊を見つけたのだ、お前の娘を連れた麦わら帽子の海賊だ…」

 

「まさか!!」

 

「来たか…ルフィ!!!ウタ!!!!」

 

「よし!宴だ!!!」

 

なお、この後ウタに勝負を挑んだことを知ったシャンクスがミホークに斬りかかったことで、偉大なる航路の空は今回も割れたのだった。

 

「貴様と決着をつけるつもりはなかったが仕方あるまい……魔王を斬るための糧としてやろう!!」

 

「俺の娘を傷つけたケジメをつけてもらおう!!!!」

 

「お頭が酔ってトットムジカのこと喋ったからだろ…」

 

 

 

東の海

一方、ついに賞金首となり、3000万ベリーの懸賞金をかけられたルフィは、航海士のナミを正式に仲間に加えて、大海賊時代の始まりの町、ローグタウンを訪れていた。

 

 

「ここから、海賊時代が始まったのか……よし!俺は処刑台を見て来る!」

 

「そっか、それじゃ服を買ったらルフィのところに行くね!行こう、ナミ!」

 

そう言ってウタとナミは服屋へと向かった。そして、ゾロは刀を買うためにナミから利子3倍でお金を借りたのだった。

 

「ウタはお金大丈夫なの?」

 

「私はシャンクスから貰ったお小遣いと海賊貯金を貯めてたから大丈夫だよ!」

 

「四皇からのお小遣い……もしかしてウタってかなりの大金持ちなんじゃ……」

 

そして、買い物が終わって広場で合流した一味だったが、ルフィだけいなかったため、辺りを探していると、広場の処刑台の方が騒がしくなっていた。

 

そこには今にも処刑されそうになっているルフィがいたのだった。

 

「……!!ルフィ!!?」

 

 

 

 

「うっっっっはーっ!!これが海賊王の見た景色!!」

 

「こら!!君今すぐそこから降りなさい!!」

 

「まあ、そう固いこと言わなくてもいいじゃない、おまわりさん……探したよ、ルフィ」

 

突然、処刑台にいるルフィに一人の美女が歩み寄ってきた。

 

「誰だ?お前みてェな美女は知らねェぞ」

 

「アタシは決して忘れない……アタシの美貌を初めてぶった男だから……あの時のあんたの激しい拳……感じたわ♡あんたはアタシのものになるのよ!ルフィ♡」

 

「うるせェいやだ!お前誰だ?」

 

その時、広場が爆発すると共に、姿を隠していた海賊達が一斉に現れた。

 

「ハデにすまん、だが、そのスベスベの肌は当然無傷なんだ!気にするな…麗しきレディー・アルビダよ!!」

 

「アルビダ?アルビダがどこにいんだよ」

 

「アタシがそうだってんだよ!!」

 

美女の正体は、コビーの乗っていた船のごつい女海賊、金棒のアルビダが悪魔の実、スベスベの実を食べた姿だったのだ。

 

「吹き飛ばされたあの日から、俺はずっとてめェを殺すことを望み執念で仲間達の元へ辿り着いた!!」

 

「なんだ、バギーか」

 

「よーしふざけんな!!」

 

そして、アルビダとバギーに気を取られていたルフィを背後からカバジが処刑台へと拘束したのだった。

 

「よくやったカバジ!!これからてめェの派手処刑を執行する!!」

 

 

 

 

「大佐!!スモーカー大佐!!大変です!海賊が広場で騒ぎを!!」

 

その男は葉巻からモクモクした煙を吹かせ、黙々と石を積んでいた。

 

「一番部隊を港へ行かせろ、二番部隊は通りから広場を隊密包囲!残りは広場の射程距離に待機、以上だ!!」

 

 

海軍本部大佐 白猟のスモーカー

モクモクの実の煙人間

 

「着いて来い!もう広場で事は起きている!!」

 

 

 

 

そして広場では、

 

「これよりハデ処刑を公開執行する!!」

 

「ごめんなさいたすけてください」

 

「助けるかボケェ!!」

 

 

「………ルフィを処刑……?」

 

「おい!ウタ!ルフィを助けに行くぞ!!……ウタ?」

 

「ぎゃははははは!!来たな!!赤髪の娘……だが一足遅かったな……!!そこでじっくり見物しやがれっ!!てめェらの船長はこれにて終了だァ!!」

 

「ゾロ!!サンジ!!ウソップ!!ナミ!!ウタ!!!……わりい!俺死んだ」

 

ゾロとサンジが海賊達へと突っ込むも間に合わず、海賊王の処刑と同じように、ルフィに向かって刃が振り下ろされた。

 

 

 

「……私からルフィを奪うなんて………そんな事………絶対させない!!!!」

 

まかせろ!!

 

 

刹那、ウタによって引き出された魔王トットムジカの覇王色が広場にいた全ての人間の意識を刈り取った。

 

「!?な……なに……が…」

 

バギー海賊団のメンバーも、本部大佐であるスモーカーを含む海兵達も突如発せられた威圧によってその意識をもっていかれたのだった。

 

そして、偶然にも同時に処刑台に落ちた雷によって処刑台は破壊され、ルフィは拘束から逃れることができたのだった。

 

「なはははは!やっぱ生きてた、もうけ!!」

 

「ルフィ!!!!」

 

無事だったルフィを確かめるため、ウタはルフィに抱きついた。

 

「海賊になったから覚悟はあるよ……それでも…ルフィのいない新時代なんて私は嫌だよ……」

 

「……わりィ…ウタ、俺、もう死なねェ!!」

 

そう誓って涙を流すウタをルフィは優しく抱き寄せるのだった。

 

「おい!いつまで抱き合ってんだ!!さっさとこの町出るぞ!!……にしてもウタのやつ…一体何をしたんだ……?」

 

広場で意識を失っている海賊や海兵達を見て疑問に思いながら、ゾロ達は走り出したのだった。

 

 

 

「す、すごかったべ……!!」

 

 

 

 

 

 

「おい!たしぎ!!しっかりしねェか!!」

 

「……!スモーカーさん!!」

 

東の海レベルだと死人が出かねないため、トットムジカは覇王色を加減していた。

 

そのため、完全にもっていかれなかったスモーカーはなんとかたしぎの意識だけは回復させることができたのだった。

 

「無茶です!!スモーカー大佐!そんな状態では!!」

 

「……笑ってやがったんだ……ゴールド・ロジャーと同じように…おまけに偶然の可能性が高いが、さっきの力は紛れもなく新世界の怪物達の使う力と同一のものだ!!?そしてこの嵐……!!まるで天があの男を生かそうとしている様だ!!」

 

「この白猟のスモーカーの名に懸けてあの男を絶対に島から出さねェぞ!!」

 

そう言ってまだ完全には回復していないにもかかわらず、スモーカーはルフィ達を追うのだった。

 

 

 

「そういやウタ、アルビダにあったぞ!」

 

「アルビダ?あのおばさんに?」

 

「ああ、なんか悪魔の実を食べたとかでスッゲー美人になってた!!」

 

「………ふーん…それなら、バギーと一緒にアルビダにも今度ちゃんと()()しておかないとね!」

 

そんな走りながらたわいのない?会話をしていたルフィとウタの前に、突然モクモクした煙が立ち塞がった。

 

「来たな…麦わらのルフィ!!俺の名は……」

 

「この煙……自然種(ロギア)!ルフィ!!」

 

「ああ!ぶっ飛べケムリン!ゴムゴムのォ〜バズーカ!!」

 

「無駄だ!!俺の身体は煙!?ガハ!!?」

 

もしこの光景を、スモーカーの師であるゼファーが見ていたらこう言っただろう……「モクモクの実に頼り過ぎるなと、俺は忠告した筈だが!?」と。

 

こうして、万全の状態でないとはいえ、己の能力を過信していたスモーカーは名乗ることも出来ずに、覇気を纏ったルフィの一撃によって吹き飛ばされたのだった。

 

 

 

「……!クソ、まさか東の海の海賊が武装色の覇気をコントロールしてやがるとは!!」

 

そう言って再びルフィ達を追いかけようとしたスモーカーの肩に突然手が置かれてスモーカーを引き留めた。

 

「まあ、まちたまえ」

 

「…てめェは……!!政府はてめェの首を欲しがってるぜ」

 

「世界は我々の答えを待っている……!!」

 

世界最悪の犯罪者 革命家 モンキー・D・ドラゴン

 

「なぜあの男に手を貸す!!ドラゴン!!!」

 

「男の船出を邪魔する理由がどこにある!!」

 

 

そして、麦わらの一味はいよいよ偉大なる航路へと旅立つのだった。

 

 

 





トットムジカ 自分を無敵と勘違いしてきたロギアの寿命は短い……モクモクの実は所詮、モクモクしちょるだけの敗北者じゃけェ!!



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アラバスタ編
音楽家のウタ



ジャンプ最新話を見て…

トットムジカ イム様ヤバいので、こっちも能力と覇気と火力強化して対抗します!!

世界政府 やめやめろォ!!!!!




 

 

「申し訳ありません!思わぬ突風でバギー一味を逃してしまいました!」

 

「麦わらを追うぞ船を出せ!偉大なる航路へ入る」

 

「私も行きます!ロロノアは必ず私の手で仕留めてやる!!」

 

「ですが大佐!上官が何と言うか…」

 

「『俺に指図するな』とそう言っておけ……それと、本部に麦わらの懸賞金を訂正させておけ!あの実力で3000万は安すぎるとな!!」

 

「そう言えばスモーカー大佐!バギーの発言で気になることが…」

 

「なんだ」

 

「はい、バギーの発言から、あの赤髪の娘が広場にいた可能性があります!」

 

「……何かの間違いだろ……10年間世界政府が血眼になってなお手がかり一つ掴めなかった娘だ、いるとするなら四皇、赤髪海賊団の本船レッド・フォース号…こんな所にいるハズがねェ…」

 

「……世界に影響を及ぼすと言われる政府が危険視している能力者…一体どんな能力なんでしょう……」

 

 

 

 

「あの光を見て!導きの灯、あの光の先に偉大なる航路の入口がある!どうする?」

 

「よっしゃ!!偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやるか!!」

 

「俺はオールブルーを見つけるために」

「俺は海賊王!!」

「俺ァ大剣豪に」

「私は世界地図を描くため!!」

「お、俺は勇敢なる海の戦士になるためだ!!」

「私は新時代を創るために!!」

 

『行くぞ!!!偉大なる航路!!!!』

 

 

 

こうして、麦わら一味は、途中うっかりカームベルトに入るハプニングもあったが、リヴァースマウンテンへと到達し、偉大なる航路へと足を踏み入れた。

しかし、そんな一味の航海にさっそく最初の壁が訪れた。

 

「ナミさん!!前方に山が!!」

 

「そんなハズないわよ!この先は海だらけよ」

 

「違う!!山じゃねェ!!クジラだ!!」

 

目の前に聳え立つ巨大な山、その正体は頭に数多の傷跡を持つ巨大なクジラだった。

 

 

「どうする!!戦うか!?」

 

「バカね!!戦えるレベルじゃないでしょ!!」

 

「とりあえず左へ抜けられる!とり舵だ!!」

 

「……!そうだ!いいこと考えた!!」

 

そう言ってどこかへ向かおうとするルフィの肩をウタがガシッと掴んだ。

 

「ねえ、ルフィ、まさか大砲で船止めようとか思ってないよね?」

 

「おう!よくわかったなウタ!」

 

ニッコリ

 

「そんな事したらクジラを刺激してメリーが壊されちゃうでしょ!!」

 

ウタの拳骨がルフィの頭に炸裂した。

 

「いてェ!!」

 

「愛ある拳だよ!!時には船長を止めるのも船員の役目だからね!」

 

「でもウタ!!これからどうするのよ!?」

 

「忘れたの?私は麦わらの一味の音楽家ウタ!!そして、歌は万能のコミュニュケーション!だから、私が歌うよ!!」

 

ムジカ!どの歌が良いと思う?

 

……『ビンクスの酒』だな、海賊の歌と言えばやっぱりこれだろう…

 

よーし、歌うよ!!

 

そして歌が響き渡った。

 

〜♪

 

「ほ、本当に歌でなんとかなるの!?」

 

「………少なくとも、ウタちゃんの歌はちゃんとあのクジラに伝わったみたいだぜ、ナミさん……」

 

かつて仲間達が歌っていた思い出の曲を聞き、アイランドクジラ、ラブーンの目には涙が溢れていった。

そして、ウタウタの能力を応用する事で、歌声と共にラブーンの心へとウタは直接語りかけた。

 

「……寂しかったんだね……あなたも……」

 

やがて、落ち着いたのか、ラブーンはゆっくりと船の通る道を開けてくれたのだった。

 

 

 

「驚いた……!鎮静剤なしにラブーンが落ち着いたから何事かと思ったが、まさか歌で落ち着かせたとは……」

 

「!?誰だおっさん!!どっから現れた!?」

 

「……人に質問する時はまず自分から名乗るのが礼儀ってもんじゃないのか?」

 

「ああ、そりゃそうだ、悪かった…」

 

「私の名はクロッカス、双子岬の灯台守をやっている…」

 

「あいつ斬っていいか!!!」

 

「……やめておけ…死人が出るぞ」

 

「へェ…誰が死ぬって?」

 

「私だ」

 

「お前かよ!!!」

 

そして、クロッカスはラブーンの事をルフィ達へと話したのだった。

 

 

「……50年もこのクジラは仲間達を待っていたってわけか……」

 

「ウタちゃんが歌っていたのはその仲間達との思い出の曲だったんだな…」

 

「…よし!いいこと思いついた!!」

 

「……ルフィ、船のマストは使っちゃダメだからね…!」

 

「だ、大丈夫だ!…ギア…3!!ゴムゴムのォ〜巨人の銃(ギガント・ピストル)!!!」

 

何かを思いついたルフィは、突然ラブーンへと殴りかかった。

 

「「「何やっとんじゃお前!!!!」」」

 

ブオオオオオオ!!!

 

こうして、ルフィとラブーンの喧嘩が始まった。

ラブーンの巨体を活かした攻撃と、ルフィの巨大化した腕から繰り出された拳が何度もぶつかり合った。

そして…

 

「引き分けだ!!俺は強いだろうが!!!」

 

「俺とお前の勝負はまだついてないから、俺たちはまた戦わなきゃならないんだ!!お前の仲間は死んだけど、俺はお前のライバルだ!」

 

「俺達が偉大なる航路を一周したら、またお前に会いに来るから、そしたらまた喧嘩しよう!!!」

 

ブオオオオオオ…

 

ルフィはラブーンと再会の約束を交わしたのだった。

 

 

「………それじゃ、私はコソコソと何かを企んでる人達を止めに行こうかな」

 

 

 

 

 

「全てはクジラのためにだ!!ミス・ウェンズデー」

 

「ええMr.9、私達の町にとってこのクジラは大切なスイートハニーだもの」

 

 

「ラブーンは殺させないよ!」

 

「「!誰だ!?」」

 

ラブーンを捕鯨するためにコソコソと様子を窺っていたバロック・ワークスのエージェント、Mr.9とミス・ウェンズデーの前にウタはラブーンを守るため立ち塞がった。

 

「「我々の捕鯨の邪魔は誰にもさせん!!」」

 

そう言って武器を構える二人だったが、あっさりと五線譜に拘束されて捕まってしまったのだった。

そして、二人を捕まえたウタは、ラブーンの頭に海賊旗のマークをペイントしているルフィ達のところへと戻った。

 

 

「どこ行ってたのウタ?……どうしたのその二人?」

 

「ラブーンを捕鯨しようとしてたから捕まえてきたよ」

 

「ちょっと何よこれ!?離しなさいよ!!」

 

「そいつらはラブーンの肉を狙っている近くの町のゴロツキだ…」

 

その後、二人の懇願によって、もうラブーンを捕鯨しないことを条件に、二人の目的地である島ウイスキーピークへと、偉大なる航路最初の行き先が決まったのだった。

 

 

「じゃあな花のおっさん!!行ってくるぞクジラァ!!!」

 

記録指針(ログポース)ありがとう!!」

 

「行ってこい」

 

ブオオオオオオ!!!

 

 

そして、ラブーンに見送られて、ウイスキーピークへ向けて麦わらの一味は進路を向けたのだった。

 

「…あいつらは我々の待ち望んだ海賊だろうか……何とも不思議な空気を持つ男だ……なァ…ロジャーよ」

 

 

ちなみにあの爺さん、元海賊王の船医で昔シャンクスと同じ船乗ってた爺さんだぞ

 

!!?言うの遅いよムジカ!!……昔のシャンクスの話聞きたかったのに……

 

 

 





ウタ メリーは私が守護るよ!!(ウタワールドのメリーを抱きしめながら)


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最初の島ウイスキーピーク

 

 

 

偉大なる航路の荒れた海や異常気象に苦戦しながらも、一味は無事に最初の目的地ウイスキーピークへとたどり着いたのだった。

 

「ここがウイスキーピーク!!」

 

「でっけーサボテンがあるぞ!!」

 

「それでは我らはここらでおいとまさせて頂くよ!!」

 

「送ってくれてありがとうハニー達」

 

「「バイバイベイビー」」

 

船を飛び降りて泳ぎ去って行く二人をポカーンと眺めた後、メリー号はウイスキーピークへと入港したのだった。

 

「「「「ようこそ!!歓迎の町ウイスキーピークへ!!」」」」

 

「海賊だ!!!」

 

「ようこそ我が町へ」

 

 

「マーマーマーマーマ〜♪いらっしゃい私の名はイガラッポイ、この町の町長をしています。驚かれたでしょうが、ここは酒造と音楽の盛んな町ウイスキーピーク、もてなしは我が町の誇りなのです」

 

そして、イガラッポイの計らいによって、ウイスキーピークの町を上げての歓迎の宴が開かれたのだった。

 

「宴だー!!!」

 

 

……ちなみに、こいつら全員賞金稼ぎだから気をつけろよ

 

「…!……よーし()()()!!」

 

 

 

食べて、飲んで、歌って宴は大盛り上がりを見せていた。

 

「すてきーっ♡ C・ウソップ!!」

 

「すごいぞ!!10人抜きだ!!」

 

「こっちのねーちゃんは13人抜きだ!!何という酒豪達だ!!」

 

「おかわりィー!!!!」

 

「うげー!!こっちで船長さんがメシ20人前完食だ!!」

 

「コックが倒れたー!!」

 

「うおお!!こっちのにーちゃんは20人の娘を一斉に口説こうとしているぞ!!」

 

「私の歌を聞いてね!!『Believe』いっくよ〜♪」

 

「音楽家のねーちゃんの歌スゲー!!」

 

「町中に聞こえるようにしようぜ!!」

 

そして、騒ぎ疲れた一味はそのまま眠ったのだった。

 

 

 

 

「騒ぎ疲れて…眠ったか…」

 

「よい夢を…冒険者達よ…今宵も……月光に躍るサボテン岩が美しい…」

 

「詩人だねェ、Mr.8……奴らは?」

 

「堕ちたよ…地獄へな…」

 

イガラッポイもといMr.8

 

「しかし、わざわざ歓迎する意味があったのかねェ」

 

「…これを見ろ」

 

「「「さ、3000万ベリー!!!」」」

 

「海賊どもの力量を見かけで判断するとは愚かだな…さっそく船にある金品を押収して縛り上げろ…殺してしまうと3割も値が下がってしまう…政府は公開処刑をやりたがっているからな」

 

「Mr.8!!大変です!!海賊達がどこにも見当たりません!!!」

 

「バカな!!!一体どこへ!?」

 

 

 

 

現実世界

 

「……やっぱりお前の能力はとんでもねェな…ウタ」

 

建物の上からウイスキーピークの町を見ているゾロの目に映ったのは、町中でウタの能力によってウタワールドに取り込まれて眠らされている町民のふりをしていた賞金稼ぎ達の姿だった。

 

「今頃、夢の中(ウタワールド)で私達を探しているかもね♪」

 

「でも助かった…ウタが町中の賞金稼ぎ達を眠らせてくれたおかげで、酒代と食費も浮いたわ!さーて、私達を嵌めようとした分、たっぷり金品は徴収させて貰うわよ!!」

 

「……まあ、私達海賊だしね!賞金稼ぎのみんな、良い夢を!」

 

こうして、罠だと気づいていたゾロ、ナミ、ウタによって、賞金稼ぎ達は逆に嵌められたのだった。

しかし、そんなウタ達三人の前に謎の二人組がやって来た。

 

 

「無様なもんだ、こんな弱小海賊団に揃ってやられるなんて」

 

「誰だお前ら?」

 

「Mr.5」

「ミス・バレンタイン」

 

「…!なんだ、わざわざ俺たちを狩りに来たのか?」

 

「俺達が?……わざわざそんな事で偉大なる航路の果てにやって来るとでも思ったか?」

 

「別の任務に決まってるじゃない!キャハハハ」

 

「…とはいえこの様子だと任務はすぐに片付きそうだ……ついでにお前たちも始末しておくとするか」

 

「キャハハハ!!運が悪かったわね貴方達!!」

 

そう言ってMr.5と名乗る男は鼻くそをほじり、二人に向かって飛ばして来た。

 

鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)

 

「!!!?汚い!!」

 

「は、鼻くそ!!?」

 

そして、慌てて避けた二人の背後で鼻くそは爆発したのだった。

 

「気をつけてゾロ!二人とも能力者だよ!」

 

「らしいな…鼻くそ野郎は俺が斬る!ウタは女の方を頼んだ!!」

 

「わかった!!」

 

「キャハハ、私はキロキロの実の能力者!1kgから1万kgまで体重を操ることができるのよォ!!地面の下にうずめてあげる!!

 

そう言って体重を軽くして空中に浮かんだミス・バレンタインは、自身の体重を1万kgにすることで、ウタを潰そうとした。

 

「くらえ!!1万kgブレス!!」

 

守ってムジカ!

 

1万kgなんて大したことないな

 

しかし、見聞色で攻撃を見切り、部分的に顕現したトットムジカの腕で攻撃を防ぐと、生み出した五線譜によってあっさりとミスバレンタインを拘束したのだった。

 

「あ、あんたも能力者だったのね!!」

 

「なんだ…オフィサーエージェントとか言われてる割に、大したことないね貴方達」

 

 

 

そして、同じ頃Mr.5は起きてきたルフィとゾロの喧嘩に巻き込まれていた。

 

「なんだ…こいつら…」

 

「てめェ何訳のわかんねェこと言い出すんだ!!」

 

「うるせェ!お前みたいな恩知らず、俺がぶっ飛ばしてやる!!」

 

「……なんだか知らねェが付き合ってられるか…ミスバレンタインの援護にでも…」

 

「「邪魔だどけェ!!」」

 

こうして、二人の同時攻撃?を受けたMr.5もまた戦闘不能になったのだった。

 

「……何やってるの二人とも…」

 

「こいつが意味わかんねェこと言い出したからだ!」

 

「ウタ!!お前もだぞ!町のみんなを眠らせやがって!!」

 

「……とりあえず、一旦落ち着こうか二人とも…『魔王憑依』」

 

 

 

 

「なんだ、あいつら賞金稼ぎだったのか!」

 

「最初からそう言ってただろうが!!ところで…てめェらとっとと任務の内容とやらを教えやがれ!」

 

その後他の一味のメンバーと合流して、捕まえたMr.5コンビから話を聞き出そうとするも、二人は中々口を割らなかった。

 

「任務の内容は吐かないわよ!!」

 

「……仕方ないから勝手に聞くね」

 

しかし、ウタが耳元で囁くように歌うと、ウタワールド取り込まれた二人は操られてあっさりとウイスキーピークに来た目的を話したのだった。

 

「社長の正体を知ったアラバスタ王国の要人、ミス・ウェンズデーことアラバスタ王女ネフェルタリ・ビビとその護衛、Mr.8ことイガラムの始末に来た…ね」

 

「ミス・ウェンズデーが王女だったの!!?……これはチャンスね……」

 

「とりあえず王女様達起こして話しを聞いてみようよ!ウタウタ…解除」

 

「……!一体何が!?」

 

そして、目を覚まして状況を理解し、青ざめている二人に、ナミは取引を持ちかけたのだった。

 

「どう?10億で貴方達を助けて上げるわよ」

 

「じ、10億……」

 

「あら、一国の王女の値段が10億より下なんて、そんな事ないわよね?」

 

「ごめんなさい…それは払えないわ…」

 

そして、ミス・ウェンズデーことビビは、アラバスタの事、そしてバロックワークスの事を話したのだった。

 

「なるほど、国の乗っ取りね…そのバロックワークスが起こした内乱のせいで当然お金もないわけね」

 

「なあ、そのバロックワークスのボスって誰なんだ?」

 

社長(ボス)の正体!!?それは聞かない方がいいわ!!貴方達も命を狙われることになる…」

 

「そうよね!国を乗っ取るなんてヤバい奴に目をつけられたくはないもの」

 

「ええ、貴方達がいくら強くても、あの王下七武海の一人、クロコダイルには決して敵わない!!」

 

 

かぽーん……

 

 

「言ってんじゃねェか……」

 

そして、その様子を鳥とラッコのペア、アンラッキーズに見られてしまったのだった。

 

「終わった……偉大なる航路に入ってすぐ七武海に命を狙われるなんて…」

 

「なあおっさん、クロコダイルってそんなに強いのか?」

 

「……今でこそ懸賞金は取り下げられていますが、かつては8000万の懸賞金がかけられていた大海賊です…」

 

「8000万!!アーロンの4倍じゃない!!」

 

…実際は10億超える位だろうな

 

…!大物だね…ムジカが出たらどうにかなる?

 

ああ、クロコダイル相手なら問題なく倒せる。ただ、厄介な相手なのは間違いないな……

 

こうして、王下七武海の一人、クロコダイルに命を狙われることになった麦わらの一味は、アラバスタ王女ビビを送り届けるためアラバスタへと向かうことになったのだった。

 

 

 

 



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リトルガーデン

 

 

 

「こうなったら最終手段よ!!ウタ!あなたのお父さんに頼んでクロコダイルをぶっ飛ばしてもらいましょう!!」

 

「何度も言ったでしょナミ……世界一の音楽家になるまで私からシャンクスには会いに行かないって」

 

ビビを送ることになった麦わらの一味は、アラバスタ王女、ビビを船に乗せてアラバスタを目指して出港したのだった。

 

「イガラム……」

 

そして、ビビを逃すため、イガラムは囮となったのだった。

 

「…さっきそこでMr.8に会ったわよ、ミスウェンズデー…」

 

「な!?誰だ!!?」

 

「まさか…あんたがイガラムを…!!ミス・オールサンデー!!」

 

「今度は何!?Mr.何番のパートナーなの?」

 

「Mr.0…社長のパートナーよ…!!私達はこいつを尾行することで社長の正体を知った…!」

 

「正確に言えば…私が尾行させてあげたの…」

 

「なんだ、良い奴じゃん」

 

「そして、私達が正体を知ったことを告げたのもあんたでしょ!!?あんたの目的は一体何なの!!?」

 

「何だ悪ィやつだな!!」

 

「……さァね…貴方達が真剣だったから…つい協力しちゃったのよ」

 

「本気でB・Wを敵に回して、国を救おうとしてる王女様が…あまりにもバカバカしくてね…!!」

 

「……!ナメんじゃないわよ!!」

 

そう言ったビビと同時に一味はそれぞれの武器を構えた。

 

「……そういう物騒なもの、私に向けないでくれる?」

 

しかし、何らかの能力によって、一味のメンバーは無力化されてしまったのだった。

 

「悪魔の実か!!?何の能力だ……!!?」

 

「フフッ…そう焦らないでよ、私は指令を受けてないから貴方達と戦う理由はない」

 

そう言って、ミス・オールサンデーは再び何らかの能力を発動した。

 

「その帽子に触らないで……!」

 

しかし、ミス・オールサンデーの発動したハナハナの実の能力によって生えた手を、ウタが生み出した音符が妨害した。

 

「あら、止められちゃったわね」

 

「ビビと帽子に手を出すなら、あなたをここで沈めるよ……!」

 

「怖いわね……どうせあなた達の記録指針が示す進路がリトルガーデンである以上、私達が手を出す必要もなく貴方達は全滅するわ…物騒なお嬢さんの相手をするのはやめておきましょうか」

 

そう言って、ミス・オールサンデーは何を思ったか別の行き先である謎の島を示す永久指針を渡してきたが、進路を勝手に決められたくないルフィによって永久指針をぶっ壊されたのだった。

 

「この船の進路を、お前が勝手に決めるなよ!!」

 

「……そう、残念…私は威勢のいい奴は嫌いじゃないわ…生きてたらまた逢いましょう」

 

「いや」

 

そして、ミス・オールサンデーは巨大なカメに乗って去って行ったのだった。

 

「あの女…!!何考えてるのかさっぱりわからない…」

 

「だったら考えるだけ無駄ね!」

 

「そういう奴ならこの船にもいるからな」

 

「まったく…みんなルフィの理解度が足りてないんじゃない?私はちゃんとルフィのことわかってるから!」

 

「ウタ、話しがややこしくなるからちょっと静かにしてて!」

 

「はい…」ショボーン

 

 

そして、一味は無事に次の島、リトルガーデンへと辿り着いたのだった。

 

「……まるで秘境の地だぜ……生い茂るジャングルだ」

 

「み、密林の王者の虎が傷だらけで死んでる……絶対ヤバいわこの島!!」

 

「よーし!この島には上陸しないことにしよう!」

 

「サンジ!!弁当!!」

 

「弁当オっ!?」

 

「ああ、海賊弁当!!冒険のにおいがする!!」

 

「よーし!ルフィ、どっちが先に凄いものを見つけられるか冒険勝負だよ!」

 

「しししし!いいぞ!よーし、冒険行くぞ!!」

 

「待って!!私も行くわ!!行くわよカルー!」

 

「……!!?」

 

こうして、ルフィ、ウタ、ビビは超カルガモのカルーを連れて、冒険をしにジャングルへと入って行ったのだった。

 

「じゃ、俺もヒマだし散歩してくる」

 

「散歩!!?」

 

「おい、ゾロ、食糧が足りねェんだ、食えそうな獣でもいたら狩ってきてくれ!」

 

「ああ、わかった、お前じゃ到底仕留められそうにねェやつを狩ってきてやるよ」

 

「待てコラァ!!聞き捨てならねェ……てめェが俺よりデケェ獲物を狩って来れるだと…!?」

 

「当然だろ!!」

 

「狩り勝負だ!!!」

 

こうして、ゾロとサンジもまた、獲物を狩るためジャングルへと向かったのだった。

 

「……たよりねえ……」

 

「それは私のセリフよ!!」

 

 

 

「おーい!!見ろよウタ!でっけェ恐竜だ!!」

 

「それなら冒険勝負は私の勝ちだね!見なよ、巨人のおじさんだよ!」

 

「ゲギャギャギャギャ!!活きのいい人間だな!!」

 

「何やってんのよ!!?二人とも!!」

 

冒険に出たルフィ、ウタ、ビビの三人は、ジャングルで巨人の戦士ドリーと出会ったのだった。

 

「さあ、焼けたぞ食え!!」

 

「こりゃうめェな巨人のおっさん!!」

 

「ゲギャギャギャギャ!!おめェのところの海賊弁当とやらもいけるぜ!!」

 

「美味しい!……でもこのお肉でレースしたらルフィに負けちゃう……」

 

「めちゃくちゃ馴染んでる……」

 

巨人ドリーの家に招待されたルフィ達は、ドリーと交流を深めてすっかり仲良くなっていた。

 

「ところでおっさんは何でここに一人で住んでんだ?」

 

「ゲギャギャギャギャ!!俺はこの島である男と決闘しているのさ!」

 

巨人ドリーから語られたのは、故郷であるエルバフの掟、そして、掟によって今なお続く決闘の話だった。

 

「100年も戦ってんのか!?」

 

「驚く程のことじゃねェ、俺たちの寿命はてめェらの3倍はある…!さて、じゃあ行くかね…!!」

 

すると、話しの途中で、島の中央にある火山が突然噴火した。

 

「真ん中山の噴火は決闘の合図…いつしか決まりになっちまった」

 

「そんな!!100年も殺し合いを続ける憎しみなんて……戦いの理由は一体……」

 

「違うよビビ、この決闘はね…」

 

「そう、誇りだ」

 

巨人達の誇りを懸けてぶつかり合う二人の巨人ドリーとブロギー、その決闘の様子は見ていたルフィ達をも圧倒した。

 

「大きいね……ルフィ」

 

「ああ……デっケェ」

 

 

やがて決闘は引き分けに終わり、ドリーはもう一人の巨人、ブロギーから貰った酒を持って帰って来た。

 

「そうか!!向こうの客人もてめェらの仲間か!!」

 

そう言って久しぶりの酒にご機嫌になったドリーは、グビリと貰った酒を飲んだのだった。

 

「!!?」

 

「爆発した!?」

 

しかし、ドリーが酒だと思って飲んだ樽は、酒ではなく爆弾だった。

ドリーの身体の中で爆弾は爆発し、ドリーに致命傷といえる傷を与えたのだった。

 

「どうなってんだ!!なんで酒が爆発するんだ!!」

 

「まさか相手の巨人が酒に爆弾を!?」

 

「100年も戦ってきた奴らがそんなくだらねェことするか!!」

 

 

「貴様らだ…お前らの他に誰を疑う…!!!」

 

 

そう言ってルフィ達を疑うブロギーはルフィ達へと巨大な剣を向けた。

 

「悪いけど…少し眠っていてね、巨人のおじさん」

 

「悪魔の実の……能力者…だったカ……」

 

しかし、ウタの能力によってドリーは意識をウタワールドに取り込まれたのだった。

 

「俺の仲間や巨人のおっさんがこんなことするはずねェ!!誰かいるぞ…この島に」

 

「たぶん、あいつらだね……行くよ、ルフィ!!」

 

 

 

 

 

「戦士とは猪と思えばよい、正面からぶつからない限り大した相手ではないのだガネ」

 

ジャングルに似つかわしくない蝋でできた建物で、Mr.3と呼ばれる男は姑息な企みをMr.5達に話したのだった。

 

「赤鬼のブロギーと青鬼のドリーに懸けられている賞金は二人合わせて2億……下に着くのは癪だが、ここは従うしかねェか…」

 

「任務に加え、手土産に2億の首を持って帰れば、我々の昇格は間違いあるまい……社長の正体を知った奴らは手頃な奴から誘き寄せればいいガネ…私のサービスセットへな…!」

 

そして、Mr.3はMr.5達に指示を出そうとした。

 

 

「……ここに決闘を邪魔した奴らがいるんだな」

 

「ここで間違いないよ!」

 

「…よし!巨人のおっさん達の決闘が始まる前にぶっ飛ばしてやる!!出て来い!!」

 

しかし、本格的に計画を発動する前に、見聞色によってルフィとウタに居場所を突き止められたのだった。

 

「……!おい、外に誰かいるぞMr.3」

 

「バカな、私の完璧な計画が……」

 

「ジャングルにこんな建物あったら目立つに決まってるじゃない」  

 

「キャハハ!ウイスキーピークの借りを返してやるわ!!」

 

こうして、ルフィとウタ対Mr.3ペアとMr.5ペアの戦いが始まったのだった。

 

 

 

ウタワールド

 

今頃ルフィとウタが決闘の邪魔をした奴を倒しに行っているから、もう少しだけ眠っておいてくれ。傷も治しておいたから、たぶん次の決闘には行けるだろう……

 

「ゲギャギャギャギャ!!そいつはありがてェ!!……チビ人間達には悪いことをしちまったな……」

 

…!それなら償いを兼ねて一つ頼まれてくれないか!

 

「ゲギャギャギャ!何だ、チビ人間の使い魔とやら!俺でよければ何でも頼まれてやるぞ!」

 

頼む!俺に覇国を教えてくれ!!

 

 

 



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カラーズトラップ対ウタウタ&トットムジカ

 

 

 

「やるよ、ルフィ!」

 

「おう!ゴムゴムの〜銃乱打(ガトリング)!!」

 

ウタを中心に半径数百メートルがトットムジカによってウタワールドと同じ法則に侵食され、強化されたルフィの拳がMr.3達へと打ち込まれる。

 

「カラーズトラップ『闘牛の赤』」

 

しかし、ミス・ゴールデンウィークによって描かれた赤い模様にルフィは吸い寄せられるように攻撃目標を変更してしまった。

 

「一体何が!?」

 

「気をつけて!ミス・ゴールデンウィークは感情の色さえも現実に作り出す写実画家…彼女の洗練されたイメージは絵の具を伝って人の心に暗示をかける!」

 

「チッ!アラバスタの王女か!余計なことを…」

 

「厄介だね……ルフィ、ミス・ゴールデンウィークの相手は私がするよ!」

 

「キャハハ!させないわよ!!ウイスキーピークの借りはここで返させてもらうわ!!」

 

二人を追って来たビビによってミス・ゴールデンウィークの能力がわかったことで、ウタはルフィからミス・ゴールデンウィークを引き離して戦うことにしたのだった。

 

「……舐められたものだガネ……ミス・ゴールデンウィークがいなくなった程度で、我々に勝てると思うとは……思い上がりも甚だしいガネ!!」

 

「気をつけろMr.3!そいつは3000万のレベルじゃ……」

 

「わかっているだガネ、ドルドル彫刻『銛』」

 

「そんな攻撃当たるか!ゴムゴムの…!!バズーカ!!」

 

「無駄な事だ…キャンドル(ウォール)!?」

 

Mr.3のドルドルの実の能力によって作られた鋼鉄の強度を誇る壁を覇気を纏った一撃が砕くが、大幅に威力を抑えられたことで辛うじてMr.3の身を守った。

 

「バカな!?鋼鉄の強度だぞ!!」

 

「だから言ったんだ…奴は化け物だと!鼻空想二砲(ノーズファンシーダブルキャノン)!!」

 

驚愕するMr.3を見て、自身の報告をまともに信じていなかったことに怒りながらMr.5は自慢の鼻くそを放つも、またもやルフィに攻撃を避けられるのだった。

 

「……どうやって避けているか知らねェが、この攻撃は避けられねェだろ…『そよ風息爆弾(ブリーズ・ブレス・ボム)!!』」

 

起爆する息を銃に込めて放つMr.5の奥義とも言える不可視の必殺技がルフィを狙って放たれるが、当然、ルフィは見聞色の覇気で察知して攻撃を避けた。

 

「ありえねェ…!不可視の弾丸を一体どうやって!?」

 

「かん!ゴムゴムの…!!銃弾!!」

 

Mr.5……脱落

 

「……こうなったら、私も本気を出すしかないガネ…出撃!!キャンドルチャンピオン!!」

 

「か、かっこいい」

 

「見とれてる場合かルフィ!!」

 

「ウソップ!?」

 

「ビビから聞いたぞルフィ、あいつがブロギー師匠達の決闘を邪魔したってな…!くらえ!必殺火炎星!!」

 

「無駄だガネ!いくら火が弱点とはいえ、その程度の火力では……」

 

「火が弱点なんだな……ギア…2!!ゴムゴムの…火拳銃(レッドホーク)!!」

 

「なバ!!?」

 

かつて4200万の賞金首を屠ったMr.3渾身の作品、キャンドルチャンピオンだったが、ウソップによって弱点を暴かれ、炎を纏ったルフィの一撃の前に沈んだのだった。

 

Mr.3……脱落

 

一方、ルフィがMr.3とMr.5と戦闘を繰り広げている間、ウタはミス・バレンタインとミス・ゴールデンウィークと相対していた。

歌を歌ってしまえばウタの勝ちは決まる。しかし、ミス・ゴールデンウィークの厄介な力がその勝利条件を阻むのだった。

 

「カラーズトラップ」

 

「……あれ、なんだか歌う気が…」

 

ミス・ゴールデンウィークのカラーズトラップによってウタは一瞬、意欲を失ってしまった。

 

「キャハハ!さすがねミス・ゴールデンウィーク!くらいなさい1万kgブレス!!」

 

そして、ミス・バレンタインがやる気の喪失によって呆然としているウタへと体重を操作し襲いかかった。

 

限定顕現

 

しかし、突然現れた巨大な腕によってミス・バレンタインの攻撃は防がれた。

 

「ちょっと!能力を封じたんじゃないの!?」

 

「ちゃんとカラーズトラップは発動してる……これは()()()()()の仕業…」

 

「ナニカって何よそれ!?」

 

そりゃ俺のことだ

 

「「!!!?」」

 

突然現れた巨大な化け物、ウタを守るために顕現したトットムジカによって繰り出された巨大な腕が、二人を瞬く間に掴んで拘束してしまった。

 

「な、何なのよこの化け物!!?」

 

暗示は解けたか、ウタ

 

「うん!……よくもやってくれたね……今度は私があなた達を歌にしてあげる……!!」

 

ミス・ゴールデンウィーク、ミス・バレンタイン……脱落

 

さすがのカラーズトラップもトットムジカ相手ではどうしようもなかった。

 

 

 

 

「終わったぞ、巨人のおっさん」

 

「ゲギャギャギャギャ…すまなかったな、お前達を疑ってしまって…」

 

決闘の邪魔をしたB・Wを倒してドリーのところに戻った一味、そして、傷が治り目を覚ましたドリーは、疑ったことをルフィ達へと謝るのだった。

 

「しししし!気にすんな!それよりおっさん、火山が鳴ったぞ」

 

「ああ…感謝するぞ、お前達のおかげで今日もまた友との決闘を行えることに!!」

 

 

 

 

「……無事だったかドリー!?」

 

「心配するなブロギーよ…見ての通り新しき友のおかげで無事だ!!」

 

「そうか……!では決着をつけるとしようじゃないか!!」

 

そして、二人の巨人は己の武器を構えた。

 

 

 

「今日はいつにも増してキレがいいじゃないかドリー!!」

 

「ゲギャギャギャギャ!!新しくできた弟子に師として見せてやらねばならぬのだブロギーよ!!」

 

「そうか!そう言えば俺のことを師匠と呼ぶ長い鼻のチビ人間がいたな!」

 

二人の巨人の武器が、拳がぶつかり合い大地を揺らした。

ドリーの剣がブロギーの盾を弾き飛ばし、ブロギーの頭突きがドリーへと突き刺さる。

 

「ゲギャギャギャギャ!!この戦いを見て掴むがいい!チビ人間の使い魔よ!!これこそが、我ら巨人族に伝わる槍の真髄である!!」

 

そして、互いの剣と斧が渾身の力でぶつかり合い、凄まじい衝撃波で二人を吹き飛ばすと同時に、此度の決闘の終わりを告げる火山の音が鳴り響いたのだった。

 

「7万3467戦7万3467引き分け……決着はお預けか…ゲギャギャギャギャ!!」

 

「そのようだ!!ガババババ!!」

 

 

 

 

 

「じゃあ、丸いおっさんに巨人のおっさん!!俺たち行くよ!!」

 

「そうか…まァ…急ぎの様子だ、残念だが止めやしねェ……国が無事だといいな」

 

二人の巨人、ドリーとブロギーと交流を深めた後、ルフィ達はサンジが拾って来た永久指針の示す先、アラバスタに向けて船を進めたのだった。

そして、二人の巨人が船出を見送りにやって来た。

 

「友の海賊旗(ほこり)は決して折らせぬ……!!」

 

「我らを信じてまっすぐ進め!!たとえ何が起ころうとまっすぐにだ!!」

 

「「道を開けてもらうぞ、エルバフの名にかけて!!」」

 

船の進む先に現れた巨大な怪物金魚、島食い。リトルガーデンを去ろうとした数多の船乗り達を屠り、メリー号をも飲み込もうとする巨大魚を前に、ドリーとブロギーによって巨人族の奥義が放たれる。

 

 

「「エルバフに伝わる巨人族最強の槍を見よ……!!」」

 

 

『覇国!!!!』

 

 

「「さあ行けェ!!そしていつの日かまた会おう!!」」

 

 

 

 

 

「凄かったね……巨人族のおじさん達」

 

「ああ!!デッカかった!!」

 

「ルフィ!いつかエルバフに行くぞ!!」

 

エールバフバフエールバフ〜♪

 

「元気ね…あなた達……」

 

「どうしたのナミ…元気ないよ」

 

「気にしないで…少し部屋で休めば……」

 

「ナミ!!?」

 

突然倒れたナミ、彼女の身体は酷い熱を帯びていた。

こうして、一味にまた新たな危機が訪れたのだった。

 

 



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医者のトナカイ


今回と次回の話には、映画エピソードオブチョッパーの要素が含まれます!


 

 

 

「ぐぬぬ……ルフィの背中……」

 

……ウタ、今は緊急事態なんだぞ…

 

わかってる!でも羨ましいものは羨ましいの!

 

ナミの病気を治すため、かつてはドラム王国と呼ばれた冬島を訪れた一味は、山の頂上にいるという医者に診てもらうため、ナミを背負ったルフィ、サンジ、ウタの三人で城のある山、ドラムロックを登っていた。

 

「仕方ない…こういう時は歌って気分を紛らわせるよ!『新時代』」

 

「しししし!なんだか楽しくなってきた!」

 

「おい!浮かれすぎてナミさんを落とすんじゃねえぞ!……にしてもさすがウタちゃんの歌だ…雪山だってのに元気が溢れてくるぜ!」

 

「ん?なんだあいつら?」

 

しかし、楽しく登っていたルフィ達の前を、雪山の肉食動物ラパーン達が立ち塞がった。

 

「やるか、サンジ?」

 

「バカ野郎!戦ったらナミさんが…!」

 

「ここは私に任せてよ!」

 

とりあえず覇王色だな!

 

そして、トットムジカの覇王色でラパーン達は退散し、遠くから雪崩れを引き起こして攻撃してくるも、トットムジカの巨体に雪崩れを抑え込まれ、襲うのを諦めたのだった。

 

 

 

「……もしかして、背中に乗せてくれるの?」

 

「ガル」

 

その後、雪崩れに巻き込まれていたラパーンを助けたことで、今度はラパーン達がお詫びとお礼を兼ねて、ルフィ達を背中に乗せてくれたのだった。

 

「うおー!はえー!!」

 

「これなら楽に頂上まで辿り着けそうだぜ!」

 

「ありがとね!ラパーン」

 

「ガル!」

 

こうして、ルフィ達はラパーンに乗って無事に城へと辿り着いた。

 

 

 

「……ここは…誰?」

 

目を覚ましたナミの目に映ったのは、壁に逆の隠れ方をしている不思議な生き物と、ファンキーな格好をした老婆の姿だった。

 

「ヒーッヒッヒッヒッヒ!!熱ァ多少引いたようだね小娘!!ハッピーかい!?」

 

「あなたは…?」

 

「あたしゃ医者さ、Dr.くれは……ドクトリーヌと呼びな、ヒーッヒッヒッヒッヒ」

 

Dr.くれはによってナミの熱の症状の原因

ケスチアとその治療のことを教えてもらった。

 

「どうもありがとう、熱さえ下がればもういいわ…後は勝手に治るでしょう」

 

「甘いね、お前は病気をナメてる!!また、あの苦しみを繰り返して死んじまいたいんなら話は別だがね、あたしの薬でも三日は大人しくしてもらうよ!」

 

「三日なんてとんでもない!私達、先を急いで…」

 

完治まで三日かかることを知ったナミは、一刻も早くアラバスタに行くためにDr.くれはに交渉するも、相手にされなかった。

 

「あたしの前から患者が消える時はね…治るか死ぬかだ!!逃しゃしないよ」

 

「そんな…」

 

ビビのこともあり、どうにかしなければと思い悩むナミ、そんなナミの耳に懐かしくも騒がしい声が聞こえてきた。

 

 

「そいつを離せウタ!肉だぞ!!」

 

「どうせなら美味く食うべきだ!俺が調理する!!」

 

「こんな可愛い子を食べるなんて、いくらルフィでも絶対許さないから!!」

 

「か、可愛いなんて言われても嬉しくねーぞコノヤロ〜」

 

突然部屋に入って来た謎の生き物をめぐって騒いでいる三人を見て、ナミはホッとしながらも謎の生き物についての疑問をDr.くれはへと尋ねた。

 

「ルフィ、サンジ、ウタ……それと…何なの…喋る鼻の青いしかのぬいぐるみ……?」

 

「あいつが何かって?名前はチョッパー、ただの青っ鼻のトナカイさ…」

 

「トナカイは喋らないわよ…」

 

「ヒーッヒッヒッヒッヒ…ただし、ヒトヒトの実を食べて、人の能力を持っちまったのさ」

 

「悪魔の実の…能力者…」

 

 

「「肉ーっ!!」」

 

「可愛いな〜このままウタワールドに連れていっちゃおうかな〜」スリスリ

 

「は、離せ人間!コノヤロ〜」

 

お、落ち着けウタ!!

 

 

 

「ねえチョッパー!仲間になって海賊やろうよ!」

 

「海賊…ほ、本物か!?」

 

「本物だよ!自由に歌って踊って冒険する、私達はそんな海賊だよ!だから船に乗ろう!」

 

「お、おれは…」

 

「ヒッヒッヒッヒ!チョッパーを海賊に誘うとは悪い小娘だね」

 

 

「お前は、おれのことが恐くないのか……」

 

「恐い?…可愛いの間違いじゃないの?」

 

「おれはトナカイなのに二本足で立ってるし、喋るし、青っ鼻だし…」

 

「……そんなこと?ちょっと不思議で喋るだけなら、私の使い魔だって同じだから平気だよ!」

 

「使い魔?」

 

「そうだよ!私の使い魔のムジカ!」

 

やあ!俺の名前はトットムジカ、悪い使い魔じゃないぞ!

 

「!!?ギャーっ!!!!」

 

「あっ……逃げちゃった…」

 

自己紹介も兼ねてゆるキャラ姿で顕現したトットムジカだったが、突然現れた不気味な存在に、チョッパーはビックリして逃げ出してしまったのだった。

 

「ヒーッヒッヒッヒッヒ!小娘……お前さん、とんでもないのを連れているね…」

 

「ムジカのことわかるの?」

 

「ちょっとした()()…少なくとも、そいつに比べたらチョッパーが可愛い可愛いぬいぐるみに見えるほどの化け物なのはわかるよ…お前さん…世界でも滅ぼしに行くつもりかい…!」

 

「…?何言ってるのおばあちゃん、私は新時代を創る女ウタ!世界なんて滅ぼすわけないじゃん!」

 

「ヒーッヒッヒ!そうかい!…それはそれとしてだ……仲間に誘うのは一筋縄ではいかないよ!あいつは心に傷を持ってる……医者でも治せない大きな傷さ……」

 

そして、Dr.くれはによって、チョッパーの過去、そして、Dr.ヒルルクという男の物語がナミとウタに語られたのだった。

 

 

 

 

「な、なんだったんだあいつは!?」

 

突然現れたトットムジカの強大な気配を野生の勘で感じとり、逃げ出してしまったチョッパー、しかし、チョッパーが逃げた先には、新たな災難が待ち構えていた。

 

 

「それにしてもお城の中なのに寒ィなここ」

 

「おかしいぞ…この城…見てみろ、城中雪だらけだ……ん!あいつは!」

 

「「そこにいたかトナカイ!!」」

 

「ぎゃあああ!!!」

 

空腹からチョッパーを食べようと迫るルフィとサンジ、なんとか人獣形態で撃退し、逃げることができたものの、ルフィ達が雪鳥の巣のある扉を閉めようとしたため、雪鳥達を守るため、彼らの前に姿を現してしまった。

 

「おい、やめろ!その扉に触るな!!」

 

「なんだ?何怒ってんだ?」

 

「来てみろこっち…」

 

「…なるほどな、雪鳥の雛だ……」

 

チョッパーに連れられて向かった先にあった雪鳥の巣を見て、二人はチョッパーが怒った理由を理解したのだった。

 

 

「そういや、あいつ喋ってなかったか!?バケモンじゃねェか?」

 

「そうか?ムジカも喋るしそんなもんだろ」

 

「……ウタちゃんの使い魔か…そう言われてみりゃそうだな、よし!」

 

自分のことを化け物だと噂し、恐れているだろうと思いトボトボと歩くチョッパー。しかし、ルフィとサンジはチョッパーの予想遥かの斜め上を行っていた。

 

「いいやつだ!!おもしれェっ!!よし!仲間にしよう!!」

 

「「コラ待て化け物!!!俺達の仲間になれ!!!」」

 

「!!?ぎゃあああ!!!」

 

化け物と言いつつも全く自身を恐れず追いかけて来る二人に、チョッパーは訳もわからずパニックに陥りながらも逃げ出した。

 

「なんなんだよあいつら!!」

 

そう言いつつも、自身を可愛いと言ったり、全く恐れず仲間に誘ってくる海賊という存在に、チョッパーは恩人Dr.ヒルルクが語った海賊についての言葉を思い出したのだった。

 

「……Dr.…おれ…!?」

 

思い悩むチョッパーだったが、チョッパーの優れた嗅覚が城に迫る人物の匂いを嗅ぎとったことで、思考を中断したのだった。

 

「この匂いは……ワポル!!!」

 

 

「ワポルの奴が帰って来やがった…おまけに厄介な奴を連れてるね…」

 

「厄介な奴?」

 

「ワポルの兄、ムッシュール…国を追放されたノコノコの実の能力者さ…」

 

ノコノコの実…毒キノコ……!!ウタ、お前はナミのそばにいてやってくれ、ワポルとムッシュールのところには俺がいく!

 

珍しいね、ムジカが積極的に戦いたいなんて…

 

ああ、毒キノコは焼却しなきゃならねェ!!

 

毒キノコ?

 

ああ、毒キノコ(ネズキノコ)だ!

 

ワポルの兄、ムッシュールが毒キノコ(ネズキノコ)を連想させたことで、やる気を出してしまったトットムジカ。

こうして、映画のボスキャラ同士の戦いが、一方的な因縁によって巻き起こるのだった。

 

 

 





ネズキノコ トットムジカ!俺たちは、映画を盛り上げるためにウタちゃんと共に頑張った仲間じゃないか!

トットムジカ ネズキノコは絶対に種ごと根絶させることをお前に教える…!!

ムッシュール …俺関係なくない?

※ ムッシュールが映画に出たのはエピソードオブチョッパーなので、ほぼとばっちりです…



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映画ボス対決

 

 

 

「ゴムゴムの〜銃!!」

 

城へとやって来たワポル達の前に立ち塞がるルフィとサンジとチョッパー。

ルフィがワポルと、サンジとチョッパーがチェスとクロマーリモとそれぞれ対峙していた。   

 

「海賊風情が…!」

 

「ワポルよ、手ェ貸そうか」

 

「いや…(あん)ちゃんに頼るわけにはいかねェ…見せてやる、バクバクの実の真の力!食物はやがて血となり肉となる…バクバク(ショック)…ワポルハウス!!」

 

そう言ったワポルの身体が突如、一軒家のような身体から大砲の手を生やすという奇妙な姿へと変化した。

 

「スッゲェー!!」

 

「ドラム王国憲法第1条、王様の思い通りにならんヤツは死ね!これがこの国の全てだ……それを…よりによってヘボ医者の旗なんぞ掲げるんじゃねえよ!城が腐っちまう」

 

そう言ったワポルは城に掲げられていたヒルルクのドクロマークの旗へと砲弾を撃ち込んだ。

 

「おい、トナカイ、あの旗…」

 

「……ドクター…」

 

「……」

 

チョッパーの呟きから何かを悟ったルフィ。次の瞬間、ルフィの姿が掻き消え、いつの間にかドクロマークの旗の近くへと移動していた。

 

「いつのまに!?」

 

「何してんだお前!ドクロのマークに!」

 

「フン…何だそりゃ?」

 

「おい!カバ口!!」

 

「!?」

 

「お前、この旗を撃った意味分かってんだろうな?」

 

「なに?そんなアホな飾りのことなんか知るか!ここは俺様の国だと言ったはずだ、何度でも折ってやるぞそんなもの!」

 

「お前なんかに折れるもんか!…ドクロのマークは、信念の象徴なんだぞ!」

 

「知ったことか、旗と共に消え失せろ!」

 

ワポルによって放たれた砲弾がルフィに直撃し、旗を巻き込んで爆発を起こした。

 

「直撃した…」

 

爆発に巻き込まれて死んだと思われたルフィ。

しかし、爆発の煙が晴れた先には、爆発を耐え、旗を無傷で守り抜いたルフィの姿があった。

 

「ほらな、折れねェ」

 

「バカな…イカれてやがる」

 

「お前がどこの誰だか…これが誰の海賊旗かは知らねェけどな…これは命を誓う旗だから、飾りなんかで立ってるわけじゃねェんだぞ!」

 

「お前なんかが…ヘラヘラ笑ってへし折っていい旗じゃねェんだぞ!!」

 

 

「これが…海賊…スゲェ…」

 

 

「…ほう!」

 

「お前達…ヤツらを殲滅しろ!」

 

「ムッシュ…まあちょっと待てよ、ワポル、お前は先に行って準備をしておけ」

 

ルフィの行動を見て興味を持ったのか、そう言ってムッシュールの姿が掻き消えた。

 

「俺はちょっと楽しませてもらおう…スピンドリル!」

 

そして、ルフィの前に現れたムッシュールはルフィを殴り飛ばした。

 

傘乱舞(シードダンス)

 

さらにムッシュールは追撃をかけ、胞子によるマシンガン攻撃がルフィに直撃した。

 

「大丈夫か麦わら帽子!?」

 

「へへッ…俺は平気さ…ゴムだから」

 

「ゴム?なんだそれ」

 

「ああ、要するに…バケモノさ」

 

「バケモノ…おれと同じ…」

 

ワポルの戦闘力を大きく上回るムッシュールとルフィの互いの覇気を纏った拳がぶつかり合い、辺りの雪を衝撃波で撒き散らしていく。

 

大増殖(ロット・スティフィン)

 

「ゴムゴムの…銃乱打!!」

 

胞子で作られたムッシュールの分身達がルフィへと殴りかかるが、覇気のない分身達の打撃はルフィに効かず、ルフィの拳によって消し飛ばされた。

 

「スピンドリル!!

 

「ゴムゴムの…銃弾!!」

 

「海賊風情が俺の拳を受けて無事とは…やるじゃねえか!だが、こいつはどうしようもあるまい…走菌糸(ラン・ハイファー)!」

 

ムッシュールの掌から放たれた菌糸が地面を駆け、ルフィの身体を拘束し、身動きが取れなくなってしまった。

 

「なんだこりゃ!?」

 

「ムッシュッシュ!そして、こいつでとどめだ…雪胞子(スノウ・スポール)

 

ムッシュールによって撒き散らされた猛毒の胞子、吸い込めば命に関わる毒の塊が身動きのとれないルフィへと迫り絶対絶命の危機を迎えた。

 

毒キノコは焼却だ!!

 

しかし、ルフィに迫る毒胞子を、ゆるキャラ姿で現れたトットムジカから放たれたレーザービームが焼き払った。

 

「わりィ、助かった!」

 

ルフィは他の奴らの相手を頼む…毒キノコ(ムッシュール)は俺が相手してやる。

 

そう言って、トットムジカはムッシュールと対峙した。

 

 

 

 

 

 

「ムッシュ…なんだこいつは?」

 

本体で顕現して殴ったらワンパンだが、同時にドラムロックと城も崩壊してしまうな……よし!やれ、音符の戦士達よ!

 

トットムジカによって生み出された数十体の音符の戦士達が一斉にムッシュールへと襲いかかる。

 

「そんな雑兵でどうにかできると思ったか!スピンドリル!!」

 

ムッシュールのドリルのように回転する拳が音符の戦士の一体に突き刺さった。

 

本当に雑兵だと思うか?

 

しかし、音符の戦士はそれほどダメージを受けず、()()()()()()()でムッシュールを弾き飛ばした。

 

「バカな!?なぜ!?」

 

そう言えば言ってなかったな…()()()()()()()()()使()()()()()気をつけろよ毒キノコ(ムッシュール)

 

「…!クロスシェード!!」

 

ムッシュールに向かって音符兵達が槍を黒く染めて一斉に襲いかかる。覇気によって増強された耐久力によって、ノコノコの実の胞子で作られた槍の攻撃を受けても消滅せずに突き進んで来る戦士達。

 

大増殖(ロット・スティフィン)!!」

 

胞子攻撃が通じないとわかると、今度は数の差を埋めるため、ムッシュールも分身を作り対抗しようとした。

しかし…

 

俺は攻撃しないとは言ってないぞ

 

そう言ったトットムジカの周囲の空間が揺らぎだし、剣や槍や斧といった武器が空間の揺らぎから現れる。

 

新時代への夢幻の門(ゲート・オブ・ウタワールド)

 

ウタワールドでトットムジカによって作られた数多の武器。そのうちのいくつかの武器が覇気を纏い、ウタワールドから現実世界へと射出され、ムッシュールの分身を消し飛ばした。

 

「な!?なんだァ!!」

 

慌てたムッシュールは強さに恐れを抱き、一旦距離を取ることで、違う手を模索しようとした。

 

もちろん、音符の戦士達は遠距離にも対応済みだぞ

 

「バカなァ!!!?」

 

しかし、そんなムッシュールの考えもむなしく、音符の戦士達の槍の先端が熱を帯び、そこから威力こそ劣るものの、トットムジカが放つものと同じレーザービームがムッシュールに対して放たれた。

 

 

 

 

「あ、兄ちゃん!!?」

 

爆発音が鳴り響き、城に侵入していたワポルの近くの壁が突然吹き飛ばされた。

驚いたワポルが見た先にあったのは、音符の戦士達によって放たれたビームの直撃を受け、爆発に巻き込まれ吹き飛ばされた、ボロボロのムッシュールの姿だった。

 

「……仕方ねえ、悪く思うなよ兄ちゃん」

 

ワポルの行動は早かった。すぐさまボロボロのムッシュールを食べると、大砲のある方へと一目散に走り去った。

 

 

 

逃すか毒キノコ(ムッシュール)

 

一方、吹き飛ばされたムッシュールを追うトットムジカは、チェスとクロマーリモを倒してワポルを追うルフィ、チョッパーに追いつき、城の最上階へとたどり着いた。

 

しかし、ワポルはすでにムッシュールと大砲と三位一体の融合を果たし、胞子爆弾(フェイタルボム)発射の準備を終えてしまっていた。

そして、あとはワポルの合図一つで砲撃が行われてしまうという、滅亡の一歩手前のところまで来てしまっていたのだった。

 

「マーハッハッハ!!残念だったな!もうすぐこの国は終わりだ!お前達もあの世で仲間に会えることを祈っておけ!」

 

…ワポルを巻き込んで焼却しちまうと、ワポメタルができなくなる…仕方ない、ルフィ、後は任せたぞ

 

「ああ、ギア…3!!!」

 

「フン!無駄な事を…!胞子爆弾(フェイタルボム)!発射ァ!!」

 

んなもん焼却するに決まってるだろ!

ウタに毒胞子を近づけてたまるか!

 

合体ワポルの撃ち出した、国を死の毒で覆う程の胞子爆弾は、トットムジカの国を滅ぼす程のビームによってあえなく焼き払われたのだった。

 

「そ、そんなバカな…!俺はこの国の王だぞ!そうだ、お前に地位と勲章をやろう!それで手を…」

 

「ゴムゴムのォ…!!ギガントバズーカァ!!!」

 

巨大な両手から繰り出された一撃は、ワポルを遥か彼方へと吹き飛ばした。

 

「ドクトリーヌ…ドラム王国が…」

 

「ああ…この国はドクロに負けたのさ!ヒーッヒッヒッヒッヒ!」

 

その一撃は、ドラム王国に終焉をもたらし、この国に新たな時代をもたらしたのだった。

 

 

ちなみに、吹き飛ばされた兄弟はなんやかんやあって、ワポメタル産業で成り上がったワポルと、ネズキノコの毒素を無効化し、その不眠性を活かしたエナジードリンクの開発によって世界市場を席巻したムッシュールによって、兄弟の国ブラックドラム王国が建国するのだが、それはまた先のお話しである。

 

 

 

 

 






強さ一覧表〜

音符の戦士  2パシフィスタ位? 大量に生み出せるぞ!

ゆるキャラトットムジカ  10分の1完全体位

第一楽章  四皇相手に耐久しながら確実に国一つ滅ぼせる

第二楽章  四皇2勢力相手に戦える

第三楽章完全体  四皇1勢力なら蹂躙できる。対処には最低2勢力以上必須!なお、確実に勝てるかは不明

???  ??? 詳細不明

次回 冬島編エピローグ。そして、いよいよアラバスタ編!


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咲き誇る冬の桜

「おーい!トナカイ〜どこ行ったんだ?」

 

ワポルとムッシュールが彼方へと消え、戦いはルフィ達の勝利で幕を閉じた。

そして、城で合流した一味は、いよいよビビの国、アラバスタを目指すのだった。

 

 

「バカ言ってんじゃないよ」

 

「お願い!早くこの島を出ないと!」

 

「ダメだ。お前は後2日ここで安静にしといて貰うよ…退院なんて医者として認められないね」

 

ビビのためにも、一刻も早くアラバスタへ向かいたいナミは、なんとかDr.くれはを説得しようと試みるも、まるで相手にされなかった。

 

「あの!これで手を打ってもらえませんか!胞子爆弾(フェイタルボム)の解毒剤です…医者として、手元に置いて損になるものじゃないと思います」

 

そう言って城にやって来たビビが見せたのは、イッシー20から託された、ムッシュールの毒に対抗するための解毒剤だった。

 

「フッ…いいかい小娘、奥の部屋にコートが吊るしてあるが、決してこっから逃げだすんじゃないよ!」

 

「それって…」

 

 

 

 

 

 

「ありの〜♪ままの〜♪姿見せるのよ〜♪」

 

「うおー!でっけェ雪の城!!」

 

「私が雪の女王様だよ!」

 

「なんの!俺のスノウクイーンも負けてないぞ!」

 

一方、城の庭では、せっかくの雪山なので歌を歌いながら雪を操って城を作り始めたウタと、それに対抗してウソップが雪の像を作って遊んでいた。

 

「少しも寒くないわ〜♪よし、完成!」

 

「こ、これは…」

 

能力の無駄使いによって作られた巨大な城だったが、これにはさすがのドルトンも愕然としたのだった。

 

 

 

「今夜は満月か…」

 

「トナカイ〜一緒に海賊やろう!!」

 

「おい、ルフィもう諦めろよ。これだけ呼んでも探しても出て来ねェんだ、海賊なんかになりたくないんだよあいつは」

 

「それは違うぞ!俺はあいつを連れて行きたいんだ!トナカイ〜」

 

ウソップに苦言を呈されるも、なんとしても仲間にしたいと叫び続けるルフィ。そんなルフィの前に、ついにチョッパーは姿を見せたのだった。

 

 

「お前たちには感謝してる…でも、無理だよ…おれはトナカイだ、ツノやヒヅメだってある、それに青っ鼻だし…」

 

「そりゃ、海賊にはなりたいけどさ…おれは、人間の仲間でもないんだぞ!バケモノだし…おれなんか、お前らの仲間にはなれねえよ…!だから…」

 

「うるせェ!!行こう!!!」

 

「…!」

 

チョッパーの目から涙が零れ落ちる。

ルフィの勧誘は相変わらず少し乱暴なものだったが、その言葉はチョッパーの迷いや苦悩を吹き飛ばし、心を晴らしたのだった。

満月の夜空に新たな仲間の咆哮が響き渡った。

そして、チョッパーはドクトリーヌの下を去ることを決意したのだった

 

 

 

 

「あんな別れ方で……良かったのですか?」

 

「ドルトンかい…ヒッヒッヒ、預かっていたペットが一匹出ていっただけさね、湿っぽいのは嫌いでね」

 

Dr.くれはの下を訪れ、海賊になることを宣言したチョッパーは、そのまま口論の末ソリを引いて出て行ってしまった。

そんなチョッパーの背を見てうっすらと涙を浮かべながら、Dr.くれはは城の外に大砲を並べるように命令した。

 

「…船出ってのは派手でなきゃいけないよ!用意はいいかい若僧ども!撃ちな!!」

 

「Dr.くれは、全弾打ち上げました!」

 

「ライトアップ!!」

 

「お前の研究の成果、ここで使うよ……文句はないね…ヒルルク」

 

ふと、ヒルルクの言葉がDr.くれはの頭をよぎった。

 

(いいか…!!この赤い塵はな、ただの塵じゃねェ!!コイツは大気中で白い雪に付着して…そりゃあもう鮮やかな…)

 

(ピンク色の雪を降らせるのさ!!!)

 

「ヒッヒッヒッヒ…バカの考えることは理解できないよ…行っといで、バカ息子…」

 

 

夜空がピンク色に染まり、冬島にまるで満開の桜が咲いたかのような光景を生み出した。

ピンク色に染まった雪はまるで花びらのように、舞い落ち、その鮮やかな光景は城を離れたチョッパーや麦わらの一味の目にも入った。

 

「ドクター…ウオオオオオオ!!!」

 

「すげェ…」

 

「綺麗だ…」

 

これが…すごいね…

 

ああ、冬島に咲き誇る、満開の桜だ…

 

後に語り継がれるこのヒルルクの桜は、まだ名も無きその国の自由を告げる声となって夜を舞う。

ちょうどこの土地でおかしな国旗を掲げる国が誕生するのはもう少し後の話だ…

 

 

「今頃…彼らは島を出たでしょうね」

 

「医者としての最高の心と…最高の腕を継いだトナカイとは…」

 

「ヒルルクが命をかけた桜が起こした奇跡があるとすりゃ、あのへっぽこトナカイが海へ飛び出したことくらいかね…いっぱしの男ぶりやがって…」

 

「この国も生まれ変わりますよ!彼のように…」

 

「ドルトンさん!大変だ!大変なことを思い出しちまった!」

 

「……エースと言う男からの伝言か、それなら伝えるまでもないさ…彼らの次の目的地はアラバスタだからだ」

 

「ヒッヒッヒッヒ!それにしてもあの小僧、3000万の賞金首だったのか………Dの意志を継ぐ男にあの小娘…まったく、うちのトナカイは大変なやつについて行っちまったらしいね」

 

 

「「アッハッハッハッハ!!いつまでジーンとしてんだチョッパー!!せっかくのめでてー宴だぞ!!」」

 

「うっさいお前ら!!」

 

「…ありがとう、ドクトリーヌ」

 

「よーし、新しい仲間に!!」

 

「「「「「「乾杯だ!!!」」」」」

 

「こんなに楽しいの、はじめてだ!!」

 

「それじゃ、ここからは音楽家の出番!みんな歌うよ!」

 

こうして新しい仲間、チョッパーの歓迎の宴は、歌って、踊って、食べて夜通し続けられた。

後にこの宴が原因で船に食糧危機が起こるとは、この時はまだ誰も知らない…

 

 

 

 

 

アラバスタ王国

 

「何、王国で海賊が暴れてる?…この国には俺がいると知らんのか…」

 

「さァね…暴動中のこの国は海賊のカモなのよ……行くの?」

 

「そりゃ、表の仕事はきっちりやらんとな……王下七武海は海賊を潰す海賊…!民衆の英雄だぜ」

 

高級感溢れるフォーマルウェアの上に分厚い毛皮のロングコートを羽織り、左腕に金色の大きなフックを装着している男の名はサー・クロコダイル。

王下七武海の一角にして、この国を陥れようとしている組織バロックワークスのボス、Mr.0その人だった。

 

 

 

 

「やはり来てくださった…」

 

「サー・クロコダイル!」

 

「クロコダイル様!!」

 

「黙れ愚民ども!!!俺ァそこの海賊の首を取りに来ただけだ」

 

「素敵…」

 

「そう言って、あんたはいつも俺達を助けてくれるんだ!クロコダイル万歳!!」

 

街中から鳴り止まないクロコダイルへの声援がおくられ、人々がクロコダイルを口々に讃えた。

中には、彼を「砂漠の王」と口にする者すらいることから、その人気と信頼は一目瞭然である。

 

「クハハハハ……まァ…何とでも呼ぶがいい…とにかく、この国で暴れてくれるなよ海賊どもよ…」

 

そう言ったクロコダイルは、最強種とも言われる自然種、スナスナの実の力によって吹き荒れる砂嵐と共に、暴れていた海賊達の肉体の水分を全て奪い取り、一瞬で干からびさせて全滅させただった。

 

「海賊の格が違うんだ…ブタ野郎」

 

そう言ってクロコダイルは、彼を讃える町の人々の声を背に去って行ったのだった。

 

「くだらねェ時間を使わせやがって…こっちにはこの後()()が控えているってのに」

 

「あら、そろそろアラバスタに到着みたいよ。かの()()()が」

 

 

 

 

「スルルルル…テゾーロ様、まもなくアラバスタです」

 

「そうか、楽しみじゃないか…サー・クロコダイル…!」

 

狂った歯車が再び動き出した。

 

 

 

 



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火拳のエース

 

 

 

「ルフィ…わたし…」

 

「ウタ…大丈夫だ…ゆっくり休め」

 

アラバスタを目指していた麦わらの一味だったが、突然体調を崩し、何やら疲れが溜まっているのか、顔色の悪いウタをルフィが必死に介抱していた。

 

「ありがとう…お休み、ルフィ」

 

そう言ってルフィの手を握ったまま、ウタはゆっくりと目を閉じたのだった。

 

「…ウタちゃんは大丈夫なのか、チョッパー?」

 

「大丈夫だ、体力を使い過ぎて眠っただけだ!」

 

「ウタのやつ、一体どうしちまったんだ?」

 

「あのね…あんた達が酒と食糧の備蓄を考えずに消費したからウタがこんなことになったんでしょうが!!」

 

新しい仲間、チョッパーが一味に加入したことで、チョッパーに海賊の楽しさを教えようと連日宴を開いて騒いだ結果、船の備蓄はあっという間に無くなってしまった。

そこで、ウタはウタウタの能力で生み出した食材や酒を出して補填していたのだが、能力の使い過ぎでついにダウンしてしまったのだった。

 

「…これ以上ウタちゃんの能力で食糧を賄う訳にはいかねえ!お前ら、何としても食糧を調達しろ!」

 

「仕方ねェ…よし、釣りするぞ!」

 

こうして、食糧の確保を迫られたルフィは魚を釣ることにしたのだった。

超カルガモのカルーを餌にして…

 

「ちょっと!カルーになんてことを!」

 

「まて!ビビ!今大物が釣れたぞ!」

 

大切なカルーを釣りの餌にされルフィを咎めるビビ、しかし、大物が釣れたとルフィは構わずカルーを餌にした竿を引き上げたのだった。

 

「クエー!!」

 

「……」

 

「お、オカマが釣れたあああ!!!」

 

しかし、釣り上げられた先にいたのは、食べられる魚ではなく、珍妙な格好をしたオカマだった。

 

「いやーホントにスワンスワン」

 

そう言った悪魔の実を食べて海で溺れていたというこの謎のオカマは、釣り上げて助けてくれたお礼にと、自身の能力、マネマネの実の能力を披露したのだった。

 

「ジョーダンじゃなーいわよーう!!」

 

「驚いた…声も…体格まで同じ…」

 

「この右手で、顔にさえ触れれば、このとおり誰のマネでも、でーきるってわけよう!!さ〜ら〜に〜メモリー機能付きィ!!」

 

そう言ってオカマは右手で自身の顔に触れ、次々と違う人物の顔へと変化させていった。

 

「え……!今のは!?」

 

そして、部下の迎えが来たことで船を去ることになったオカマ。その頃にはオカマとルフィ達との間にすっかり友情が芽生えていた。

しかし、去り際のオカマの部下達の言葉によって、ルフィ達はオカマの正体を知ることになった。

 

「あいつがMr.2・ボン・クレー!!」

 

「あいつが!?」

 

「…さっき、あいつが見せた過去のメモリーの中に、父の顔があったわ…!!あいつ一体…父の顔を使って何を……!!」

 

「……例えば王になりすませるとしたら…相当よからぬこともできるよな…」

 

「確かに…敵に回したら厄介な相手よ…!あいつが私達を敵と認識しちゃったら、さっきのメモリーでこの中の誰かに化けられて、私達仲間を信用できなくなる」

 

「だが、今あいつに会えたことはラッキーだと考えるべきだ…対策が打てるだろ」

 

 

 

 

「ん…!みんな、おはよう!」

 

「やっと起きたか!ウタ!」

 

「あれ?みんな左腕どうしたの?」

 

「仲間の印だ!ウタもちゃんと付けろよ」

 

少し寝込んでしまったものの、ぐっすり眠ったことで回復したウタは、起きて早々、Mr.2ことボン・クレーの話を聞き、一味のみんなと同じ仲間の印を左腕に付けたのだった。

 

「…見聞色があるとはいえ、厄介な能力だね…マネマネの実の能力」

 

「よし!とにかく、これから何が起こっても左腕のこれが仲間の印だ!」

 

「じゃあ…上陸するぞ!アラバスタへ!!」

 

こうして、マネマネの実対策として印を見せ合った一味はついにアラバスタへと上陸を果たすのだった。

そして、ビビはその印を見て笑みを浮かべギュッと大切そうに握るのだった。

そんな中、一味が上陸を果たしたアラバスタの港町、ナノハナでは、一つの事件が起きていた。

 

「ハア…ハア…白ひげ海賊団の二番隊隊長がこの国に何のようだ…!ポートガス・D・エース!!」 

 

突然街中で勃発した一人の海賊と海軍の戦闘だったが、海軍を率いる大佐のスモーカーはすでにボロボロの状態だった。

 

「し、白ひげの一味ィ!!」

「そういやあいつの背中の刺青見たことあるぞ」

 

「……弟をね、探してんだ」

 

そう言って、身体に炎を纏っている無傷の男、世界最強の海賊、四皇白ひげ海賊団の二番隊隊長火拳のエースはニヤリと笑った。

 

「援護します!大佐!」

 

「まて!お前らァ!」

 

「おっと、わりィが()()()()()()()()()()()()()

 

スモーカーを援護しようと、海兵達が勇敢にエースへと突撃した。

しかし、次の瞬間、エースから放たれた強烈な威圧によって、スモーカーを援護しようとした海兵達はバタバタと倒れていった。

 

「…!スモーカーさん…今のはローグタウンの広場の時と同じ…」

 

「無事だったか、たしぎ…このプレッシャー…間違いなく覇王色の覇気だ」

 

かつてローグタウンの広場でトットムジカの覇王色を受けたことで、たしぎはエースの覇王色を耐えることができたのだった。

しかし、すでにエースとスモーカーの力の格付けは済んでおり、自然種であるはずのスモーカーの身体はボロボロ、状況は海軍側の圧倒的不利な状況だった。

 

「お前達じゃ、俺に勝てないのはわかっただろ…退くのなら見逃してやるぜ」

 

「却下だ…!俺が海兵で、お前が海賊である限りな…!!」

 

「そうかい…!」

 

尚も闘志を見せ退く様子のないスモーカーを見て、仕方なく()()()()()()、メラメラと身体の炎を燃やし始めたエース。

しかし、両者の戦いは突然の乱入者によって幕を閉じたのだった。

 

「うはーっ!!メシ屋だ!腹へったー!!」

 

「!!?ぐあァ!!!」

 

突然の背後からの衝撃によってスモーカーが吹き飛ばされたのだった。

 

「ス、スモーカーさん!!?」

 

衝撃の正体は、飯屋にゴムゴムのロケットで突っ込んで来たルフィだった。

そして、ただでさえエースとの戦いでダメージを負っていたスモーカーは、ルフィの一撃がトドメとなりダウンしてしまったのだった。

 

「ちょっと!何やってるのルフィ!てあれ…エースじゃん!どうしてここに!?」

 

「エース……!?」

 

「変わらねェな…ウタ、ルフィ」

 

こうして、エース、ルフィ、ウタの3人が久しぶりの再会を果たしたのだった。

 

 

 

 

「それにしてもルフィに兄貴がいて、おまけに悪魔の実の能力者だったとは…」

 

「うん、俺もビビった」

 

「ん?」

 

「昔は悪魔の実食ってなかったからな!それでも俺は勝負して一回もエースには勝てたことはなかった…とにかく強ェんだエースは」

 

「あ、もちろん私はエースにもルフィにも、そしてサボにも全勝だよ!」

 

「よく言うぜ、散々ムジカ使って不正してたくせに…親父達から聞いたぜ、()()()()()()のこと。なんつーもん使い魔にしてんだ…」

 

「出た、負け惜しみィ!!そんな事言ってるから、エースは所詮敗北者なんだよ!」

 

「…敗北者……?取り消せよ今の言葉!!」

 

「断じて取り消すつもりはないよ!」

 

そう言ってウタは手をニギニギする負け惜しみポーズをした後、何やらエースを煽るラップを始めたのだった。

 

「大丈夫なの?あれ」

 

「ししし!いつものやつだから気にすんな!」

 

やがて、いつもの言い争いが終わり、落ち着いたエースはルフィ達へと声をかけた。

 

「ルフィ、ウタ…お前らウチの白ひげ海賊団に来ねェか?もちろん仲間も一緒に」

 

「「いやだ」」

 

「プハハハ…あーだろうな、言ってみただけだ」

 

「白ひげ…やっぱその背中の刺青本物なのか?」

 

「ああ、俺の誇りだ…ホラ、お前達にこれを渡したかった」

 

「何だこれ?」

 

「ビブルカード!」

 

「そいつを持ってろ!ずっとだ…いらねェか?」

 

「いや…いる!!」

 

「…できの悪い弟や妹を持つと……兄貴は心配なんだ、おめェらもコイツらにゃ手ェ焼くだろうが、よろしく頼むよ……」

 

そして、エースは自身の目的、仲間殺しを犯した黒ひげの始末のことを話し、ルフィ達へと別れを告げるのだった。

 

「次に会う時は、海賊の高みだ」

 

しかし、別れようとするエースとルフィ達の前にバロックワークスの艦隊が立ち塞がった。

 

「白ひげんところの二番隊隊長が来てるって!?」

 

「間違いねえ!奴を仕留めればエージェントへの昇格間違いなしだ」

 

 

 

「邪魔だなあいつら…」

 

「ねえ、せっかくだし久しぶりに勝負しようよ!」

 

「ししし!いいぞ!今ならエースにも負けねェ!」

 

「おもしれェ、のった!誰が一番沈められるか勝負だ!!」

 

そう言って、3人はバロックワークスの艦隊に向かってそれぞれの技を放つのだった。

 

 

「火拳!!!!」

 

エースの炎化させた腕から繰り出された燃え盛る炎の一撃は、船団を炎で飲み込んだ。

 

 

「ギア…2!!ゴムゴムの…火拳銃(レッドホーク)!!!!」

 

ルフィの覇気と炎を纏った拳による一撃は、船団を貫通し、同時に船を焼き払った。

 

 

「限定顕現!いくよ!ムジカ!!」

 

ああ!!『灼熱の序曲(グリューエン・オーバチュア)

 

そして、ウタによって放たれたトットムジカのレーザービームが残った船を薙ぎ払った。

圧倒的火力の3人の攻撃によってバロックワークスのビリオンズの艦隊は壊滅したのだった。

 

「来いよ高みへ、ウタ、ルフィ!!!」

 

こうして、ウタ、ルフィ、エースはそれぞれの道へと進んで行くのだった。

 

 

 

 

 



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黄金帝との邂逅



ゴルゴルの実とラキラキの実の組み合わせ、もしかしてウタウタの実とトットムジカの組み合わせと同じくらいヤバいのでは?と思ってしまった…


 

 

 

「見えたわ…」

 

「あれが、レインベース」

 

「あそこにクロコダイルがいるのか…」

 

エースと別れたルフィ達は、反乱軍を止めるためオアシス・ユバへとたどり着いた。

しかし、反乱軍は既にユバを離れており、荒れ果てた町と水を掘っている反乱軍のリーダー、コーザの父親トトが住んでいるのみだった。

そして、ルフィ達は反乱の元凶、クロコダイルを直接倒すため、クロコダイルのいる町レインベースを目指したのだった。

 

「よし、じゃあ後でワニの家で会おう!」

 

そして、一味は一旦分かれて、各自でクロコダイルの下へと向かうことにした。

 

「ビビは私と一緒に来てね!私に秘策があるから!」

 

「秘策?」

 

「そう!秘策!」

 

そして、ウタはレインベースの路上でライブを始めたのだった。

 

「ちょっと何やってるのウタ!私とウタの顔は町のビリオンズにもバレてるのよ!そんな事したら…」

 

「"目立つから追っ手が来る"でしょ。大丈夫、私の能力で来た追っ手を一網打尽にするから!」

 

こうして、町を賑わせる路上ライブと共に、町のビリオンズ達はウタワールドに取り込まれ、制圧されていったのだった。

 

 

カジノの町レインベース。その町中を、二人の部下バカラとタナカ、そして複数人のSPに守られたピンク色のスーツといくつもの黄金の装飾品を付けた、派手でゴージャスな印象を与える男が歩いていた。

 

「騒がしいな…」

 

「どうやら路上ライブが盛り上がっているようです」

 

「ほう……どれ、少し見ていこうじゃないか」

 

男の名はギルド・テゾーロ。黄金帝とも称される、世界に名を轟かせる大富豪だ。

 

「私は歌で新時代を創る音楽家、U・T・A!それじゃ、次の曲いくよ!」

 

自らもステージに立つテゾーロには、彼女の歌唱力が異次元の領域にあることがすぐにわかった。

そして、その丁寧で鮮やかな旋律は、テゾーロの心を掘り起こすのだった。

歌はテゾーロにとっても大切なものだ。なぜなら、歌によって彼はたった一つの星に出会えたのだから。

 

 

「ステラ…」

 

「いかがいたしましたか、テゾーロ様?」

 

「何、少しな…」

 

そう言ってほんの少しだけ憑き物が取れたような顔をして、テゾーロは群衆をかき分けウタの前に歩み出た。

 

「ブラボー!素晴らしいショーだったよ!どうかね、ぜひその歌声を私の国グラン・テゾーロに来て披露してくれないか!もちろん、タダとは言わない、5億…いや10億出そう!!」

 

「ありがとうおじさん!でも、ごめんね…私には今どうしてもやらなきゃいけないことがあるの…だから、私はグラン・テゾーロって所には行けないよ」

 

「あら、テゾーロ様に逆らうの?」

 

そう言ってテゾーロの横に立っていた部下の女バカラは、自身の敬愛するテゾーロの誘いを断った女を不幸にしてやろうと、ウタの肩に手を置き自身のラキラキの実の能力を発動しようとした。

 

おっと、ラキラキの実の能力には干渉させて貰うぞ

 

しかし、トットムジカが介入し、ラキラキの実に概念マウントをとって無効化したため、その目論みは失敗に終わったのだった。

 

「バカな!?能力が弾かれるなんて…!」

 

「ほう…!ますます君に興味が湧いてきた!そのやることは金よりも大事だとでも?」

 

「そうだよ、大切な仲間のためだもの!」

 

「仲間…か…まあいいだろう、今回は諦めるとしよう…もっとも、私はいつでも君を歓迎する!是非とも私の国グラン・テゾーロに来てくれたまえ!」

 

そう言うと、テゾーロは本当に残念そうにしながらも、取り繕った笑みを浮かべてポンと札束を渡すとウタの前から去って行った。

 

 

「よろしかったのですか、あのような戯言に付き合うなんて…」

 

「かまわんよ、今日は気分がいいからな……それに、どうせすぐに思い知る事になるだろう…己の無力さと、金の力の前では全てが些事である事を」

 

そんな時、ふとテゾーロの耳に部下のSPの笑い声が聞こえてきた。

 

「それにしてもあの小娘、夢を見過ぎでは?歌で新時代を創るなんて笑っちゃいますよ」

 

そう言ってゲラゲラと笑うSPの耳障りな笑い声に不快そうに顔を顰めたテゾーロは、自らの指から金の指輪を取り外し、SPの男へと問いかけた。

 

「…一つ、教えてくれないか?なぜ…私より先に笑う?」

 

「て、テゾーロ様!?」

 

「何が面白いか決めるのは誰だ?言ってみろ…」

 

「も、もちろんテゾーロ様です!!」

 

「そうか、わかってくれたか!……ならもういい」

 

瞬間、テゾーロの黄金の指輪が黄金の液体状になりSPの男を包み込み、あっという間に男の全身を金で固めてしまった。

そして、暫くすると、そこには一体の黄金の像が出来上がっていた。

 

「どうしますか、新しくできた黄金像は?」

 

「町に寄付してやれ」

 

そう言って、かつてSPだったものを残してテゾーロはクロコダイルの所へと向かうのだった。

 

 

 

「10億か〜あのおじさんすごいお金持ちだったね!いつか行ってみたいな、グラン・テゾーロに!」

 

……あまり、行ってほしくはないな

 

「なんで?きっとすごいお金持ちの国だよ!それにあのおじさん優しそうだったし…きっと神様みたいな人だよ!」

 

……神様か…まあ、神のような権力者ではあるな……

 

ウタ…テゾーロはきっと本当になりたかった神様にはなれず、怪物に成り果てた男だぞ。

そう思いながらも、トットムジカはその言葉をウタに言うことなく飲み込んだのだった。

 

「さて、これでこの町のビリオンズの制圧は完了だね!」

 

ああ、そして、やっと本命の登場だ

 

「久しぶりねお嬢さん、随分と派手にやってくれたじゃない」

 

そう言って現れたのは、Mr.0のパートナー、ミス・オールサンデーことニコ・ロビンだった。

 

「ビビは先にクロコダイルの所に行って!私はこの女を倒してから行くから!」

 

「わかった!お願い!」

 

 

「…王女様には逃げられたけど、あなたの力は厄介そうだもの…ここで始末させてもらうわ」

 

そう言ってハナハナの実の能力を発動したロビンだったが、ウタが生み出した音符によって能力を妨害された。

 

「ちょうどよかった…私もあなたに用があったから」

 

そして、歌声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「こうみょうな罠だ」

 

「ああ、しょうがなかった」

 

「敵の思うツボじゃない!バッカじゃないの!」

 

一方、海軍大佐スモーカーに追われていたルフィ達は、まとめてクロコダイルの巧妙な罠?によって海楼石の牢に捕まってしまっていた。

 

「共に死にゆく者同士、仲良くやればいいじゃねェか……!!」

 

「クロコダイル…!」

 

「オーオー…噂通りの野犬だなスモーカー君、残念だが君には事故死してもらうことにしよう」

 

「おい、お前ェ!」

 

「麦わらのルフィ…よくここまでたどり着いたな…安心しろ、ちゃんと消してやるからもう少し待て…」

 

暫くして、クロコダイル達の下へ、ウタと別れたビビがやって来た。

 

「やァ…ようこそミス・ウェンズデー、よくぞ我が社の刺客をかいくぐってここまで来たな」

 

「来るわよ……どこまでだって……!!あなたに死んでほしいから……!Mr.0」

 

「死ぬのはこのくだらねェ王国さ…ミスウェンズデー」

 

「……!!お前さえこの国に来なければ、アラバスタはずっと平和でいられたんだ!!!」

 

そう言ってクロコダイルに向かって行くビビだったが、あっという間にクロコダイルのフックで押さえつけられてしまった。

 

「そう睨むな…ちょうど頃合い……パーティーの始まる時間だ……それに、計画の出資者もおでましだ」

 

クロコダイルがそう言うと、部屋の扉を開いて、テゾーロがゆっくりと階段をコツンコツンと降りてやって来た。

 

「遅れてすまなかったなサー・クロコダイル…いや、Mr.0」

 

「誰だあのゴージャスなおっさん?」

 

「ギルド・テゾーロ…世界の20%の通貨を掌握している新世界の怪物だ…!」

 

「せ、世界の通貨の20%!!?」

 

「とんだ大物が出てきたもんだ…!テゾーロ!テメェ、政府を裏切る気か」

 

「裏切る…?私はハナから政府の犬になったつもりはないさ…まあ、スモーカー君、万が一君が生きて情報を伝えたところで、そんなものはどうにでもできるから安心したまえ」

 

「テメェには感謝しているぞテゾーロ。フラミンゴ野郎とよろしくやってるテメェからの申し出は疑ったが、提供された資金のおかげで計画を順調に進めることができたからな」

 

「かまわんさ、()()()計画を知ることができたおかげだとも…とはいえ、計画達成の暁には、約束を果たしてもらうぞクロコダイル」

 

「ああ、約束通りフラミンゴ野郎も天竜人どもも聖地ごと消してやるさ」

 

「おっと、ドフラミンゴだけは生かしておいてくれよ。彼には敬意を表して、このゴルゴルの力で引導を渡してやると決めているからな」

 

食事の並んだテーブルにつき冷酷に笑う二人の邪悪な存在に、国を踏み躙られたビビは怒りを募らせるも、圧倒的強者の二人を前に何もできない自身の弱さに打ちひしがれていた。

 

「せっかくだ、世界一のエンターテイナーでもあるスポンサー殿に一つショーでも見せてやろう」

 

そう言って追い討ちをかけるように、クロコダイルはビビの前でルフィ達が捕まっている海楼石の牢の鍵を、部屋の下のバナナワニの巣へと落とした。

さらに反乱軍の情報をビビに教え、ルフィ達仲間を助けるか、この国の国民達を助けるのかを選ばせてビビの悩み苦しむ姿を見て嘲笑うのだった。

 

しかし、そんな上機嫌なクロコダイルのデンデンムシがプルプルと鳴った事で、事態は一変する。

 

 

「遅かったじゃないか、ミス・オールサンデー…!」

 

「あなたがクロコダイルでしょ…よくもビビの国を…!」

 

「誰だテメェ…!!…ミス・オールサンデーはどうした?」

 

「そうだね…ミス・プリンセスとでも名乗ろうかな!あなたの部下とパートナーさんには眠ってもらったよ。詳しくはMr.プリンスから聞いてね!」

 

そう言って、ウタからかけられたデンデンムシがガチャリと切れると、クロコダイルはこめかみに青筋を浮かべながらデンデンムシを睨みつけた。

 

「ナメた真似しやがって…!」

 

「いいじゃないか、そんな小娘放っておいて」

 

「黙れ……今までも全員殺して来たんだ…俺をコケにした奴ァな…!!」

 

そう言ってテゾーロの窘める声を無視すると、今度はMr.プリンスを名乗る男からのデンデンムシがかかってきた。そして、話を聞いて怒り心頭のクロコダイルは身体を砂に変化させ、ウタ達のいるであろう地上へと飛び去ったのだった。

 

「やはり能力者だったか……面白い!」

 

「テゾーロ様?」

 

「私は先に帰らせてもらおう…この程度のショーにも飽きたからな…だがもし、麦わら達が檻から脱出できたら、彼らを地上へと脱出させてやれ」

 

くつくつと笑いながらテゾーロはタナカへと指示を出した。

 

「スルルルル、かしこまりましたテゾーロ様」

 

「さて、麦わらのルフィとその仲間の諸君、運が良ければまた会おう」

 

そう言ってバカラを引き連れて出て行ったテゾーロと入れ違いに、ウタとサンジが部屋へと入って来た。

 

「オッス、待ったか?」

 

「みんな、お待たせ!」

 

「「プリンス〜!!プリンセス〜!!」」

 

「バカやってねェでさっさと鍵を探せ!」

 

「よかった……!」

 

 

 

「…よろしかったのですか?クロコダイルと敵対する者達を助けて」

 

「かまわんさ、端から金以外は信頼していない。どうせプルトンを手に入れたら奴も裏切るつもりだろう……それに、ミス・プリンセスとその仲間達には興味がある…とはいえクロコダイルへの備えは必要だな…()()()()の件はどうなっている?」

 

「はい、()()()お金で解決できました。既に買収された者達の手筈で横流しされたダイナ岩は確保済みです」

 

「そうか…!では万が一クロコダイルがプルトンを手に入れた場合も問題ないだろう…聖地を消してくれる分には歓迎するが、敵対するようなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()で偉大なる航路ごと消してやるさ…さすがの古代兵器といえども、どうしようもないだろうしなァ!」

 

「最高のショーになりそうだ…!イッツ・ア・エンターテイメンツ!!!」

 

「さすがはテゾーロ様です!しかし、偉大なる航路が消滅すれば、かなりの損害が予想されますがどうしますか?」

 

「なに、金ならいくらでもある…その時は創ってやるさ…黄金によって支配される新時代を!!!」

 

星を失い怪物に成り果てた男の笑い声が、世界へと虚しく響き渡った。

 

 

 




人物紹介

ギルド・テゾーロ …ウタの歌を聞いてちょっとだけ浄化された。でも星(ステラ)を失ったテゾーロはもう心の底から救われることはないので、グラン・テゾーロに来たら屈服させてやろうとは思ってる。グラン・テゾーロに来るまではもしかしたら支援してくれるかも?

バカラ …ラキラキの実の能力者。実は対クロコダイルのためにグラン・テゾーロの奴隷全員の運気を吸って来ていたので、ある意味一番のトットムジカ案件だった。もし敵対していたらコイン一枚でルフィもクロコダイルも確殺されていた。

タナカ …タナカさん。ヌケヌケの実の能力者。

用語解説 

ダイナ岩 …古代兵器にも匹敵するヤバい岩。空気に触れたら島一つ消し飛ぶ大爆発を起こす。

エンドポイント … 新世界にある3つの火山島、ファウス島・セカン島・ピリオ島の総称で、全て破壊すると新世界の海を焼き尽くすほどの大破局噴火を起こすことができる。テゾーロは新世界にクロコダイルが攻めて来たらこれをやるつもり。




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砂漠の王

 

 

「待ちやがれ…!!」

 

バナナワニの中から出て来たMr.3の能力で作った合鍵によってルフィ達が檻を脱出し、テゾーロの部下タナカの能力で地上へと逃げきった頃、クロコダイルは自身をコケにしたMr.プリンスとミス・プリンセスなる人物を始末するため、フードを被った2人組を追っていた。

 

砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)!!」

 

そして、ついに追いついたクロコダイルは二人に向かって砂の斬撃を放ったのだが、二人の正体はウタの能力で作られた音符の戦士だった。

音符になって消えていく二人の姿を見て、クロコダイルは初めて自分が嵌められたことに気づいたのだった。

 

「舐めたマネしやがって…!奴らは見つけ次第、確実に殺してやる!!」

 

 

 

 

一方、無事に地上に着いたルフィ達はスモーカーに見逃された後、チョッパーが連れてきたヒッコシクラブに乗ってアラバスタの首都アルバーナを目指していた。

 

「なんであのゴージャスなおっさん、俺達を助けてくれたんだ?」

 

「ウタのファンにでもなったんじゃない?歌を誉めてたんでしょ」

 

「うーん…根っからの悪い人には見えなかったんだけど…」

 

敵だと思っていたテゾーロのおかげで地下から脱出できたことで、テゾーロの真意に困惑する一味。

しかし、砂の腕と共に黄金のフックが飛んで来たことで、テゾーロのことは一旦頭から切り離したのだった。

 

「クロコダイル……!」

 

「……クロコダイルは俺がぶっ飛ばす!お前達先は先に行け!」

 

「ちょっとルフィ!!?」

 

「ちゃんとビビを宮殿まで送り届けろよ!!」

 

「何言ってるの!!相手は七武海だよ!私も一緒に…」

 

「ウタ…船長命令だ、ビビを頼む!」

 

「………ずるいよ…そんなの」

 

「安心しろウタ!あいつは絶対俺がぶっ飛ばす!」

 

「……行くよ…アルバーナへ」

 

「いいのウタ!?ルフィさんを置いて行って」

 

「大丈夫よビビ、今までルフィに狙われて…無事でいられた奴なんて一人もいないんだから!」

 

「いいかビビ…クロコダイルは…あいつが抑える。反乱軍と国王軍がぶつかればこの国は消えるが、それを止められる唯一の希望がお前なら…この先ここにいる俺達のだれがどうなってもだ…!!」

 

「ビビちゃん…コイツは君が仕掛けた戦いだぞ。挑んだのはビビちゃんだ…ただし、もう一人で戦ってるなんて思うな」

 

「ビ…ビビビ!!心配すんなよ!!おれガツ…ガッツいて…」

 

「………ビビ…大丈夫だよ、ルフィは海賊王になる男だよ!……絶対、クロコダイルなんかに負けないよ!」

 

「………!ルフィさん!!アルバーナで待ってるから!!!」

 

「おォオ!!!!」

 

 

 

風と共に砂が舞う砂漠の大地でルフィとクロコダイルが相対する。

 

「3分だ…それ以上、てめェの相手なんざしてられねェ。文句でもあるか?」

 

「…いや、いいぞ、ギア…2!!」

 

「一つだけ言っておくぞ麦わらのルフィ、どうあがこうとも……!お前じゃ絶対俺には…」

 

「ゴムゴムの…JETピストル!!!」

 

先手を取ったルフィだった。自然種の能力によって油断していたクロコダイルを覇気を纏い黒く染まった拳で撃ち抜いた。

 

「カハ!!?」

 

「ゴムゴムの…JET銃乱打!!!」

 

さらに追撃とばかりにルフィの拳による連撃がクロコダイルに炸裂する。

 

「なぜだ!なぜ俺に…!」

 

アラバスタに来て久しく感じなかった痛みと、受けた傷から流れた血に動揺し怒りが湧き上がるクロコダイル。

そんなクロコダイルにルフィは尚も容赦なく覇気を纏った拳による追撃を続けた。

 

「ゴムゴムの…JETバズーカ!!!」

 

そして、覇気を纏ったルフィの両腕の一撃がクロコダイルを吹き飛ばした。

覇気と速度でクロコダイルを圧倒し、ダメージを与え続けるルフィ。

しかし、怒りと動揺で鈍っていたクロコダイルの冷徹な頭脳が、ルフィによって散々ダメージを受けたことにより一周回って冷静になったことで、目の前の存在が自身にダメージを与えることができている理由として一つの可能性を導き出した。

 

「はあ…はあ…てめェ、覇気使いか」

 

「だからどうした!」

 

覇気、それは偉大なる航路の後半の海、新世界にいる強者達が修めている力だ。

そして、かつて新世界で暴れ回っていたクロコダイルは、当然覇気のことを知っており、覇気使いの恐ろしさを身を持って体感していた。

ゆえに、覇気使いであるルフィの力量を把握したクロコダイルは、これまでの雑魚狩りの気分を完全に捨て、鈍ってはいるものの、王下七武海として…海賊としての戦闘へと切り替えた。

 

「……認めよう、麦わらのルフィ…お前はそこらの雑魚ルーキーとは違うらしい…」

 

そう言ってクロコダイルは毒のフックを剥き出しにすると、スゥと一息を入れた。

 

「特別だ麦わら…俺はお前を明確な脅威として認めてやる……!よって、ここからは3分なんて縛りも捨て、新世界の海賊として、てめェの相手をしてやる…!」

 

そうクロコダイルがそう宣言した瞬間、巨大な砂嵐が発生し、ルフィを吹き飛ばした。

 

砂嵐(サーブルス)

 

さらに顔色一つ変えずクロコダイルは、身体を砂へと変化させて飛び上がり、ルフィの頭上へと姿を現した。

 

砂嵐重(サーブルスぺザード)

 

クロコダイルの威力を増した砂嵐の衝撃波による追撃により、ルフィは今度は空中から砂の地面へと叩きつけられた。

 

砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)

 

そして、地面に叩きつけられたルフィを砂漠の砂を操作して形成した蟻地獄へと引き摺り込んだ。

 

「コンニャロ!」

 

「クハハハ!確かに覇気は厄介だ…おそらく見聞色も習得しているだろう…だが、攻撃がわかったところで対処の仕様がない場合、そんなもの何の意味もねェよなァ?」

 

そう言うとクロコダイルは身動きの取れないルフィをフックで貫こうとした。

 

「まだだ!ゴムゴムの…JETバズーカ!!」

 

「クハハハ…いいのか?砂以外に何もない砂漠で身動きの取れない空中にいても…!三日月形砂丘(バルハン)!!!」

 

砂の地面をふき飛ばし、何とかその衝撃で飛んで脱出しようとしたルフィを、上空で待ち構えていたクロコダイルが砂で切り裂いた。

 

「!?うわああああ!!腕が…」

 

何とか見聞色の覇気で身体を捻って避けたことによって腕一本で済んだルフィ。

しかし、ルフィの砂で切られた腕は水分を吸い取られ、乾涸びた状態になっていた。

 

「う、腕がミイラになったァ!!?」

 

「動揺して覇気を乱したな麦わら」

 

そして、自分の腕がミイラのようになっていることに動揺したルフィの隙をついて、クロコダイルの毒を塗ったフックがルフィの肩を容赦なくぐさりと刺し貫いた。

 

「離せ!ゴムゴムの…JETスタンプ!!」

 

何とかクロコダイルを引き離したルフィ。

しかし、次の瞬間ルフィは突然の眩暈に襲われガクリと膝をついた。

 

「あ…れ……?」

 

「クハハハ!そう言えば言ってなかったな…このフックには猛毒が塗ってあることを…だがすぐにくたばらないところを見るに、意外とタフじゃねェか」

 

何とかフラフラになりながらも立ち上がるルフィの姿を見て、笑いながらも油断せず、クロコダイルは能力で砂嵐を発生させる。

 

「いいか麦わら…この砂嵐が風に乗って進んだ先に何があると思う?」

 

「ハア…ハア……知らねェ!!」

 

「ユバさ」

 

「…!!お前!何やってんだ!やめろ!!今すぐ止めろ!!」

 

「クハハハできるなら止めてみろ!」

 

「カラカラのおっさんは……関係ねェ!砂嵐も…お前も……絶対にぶっ飛ばしてやる……!ゴムゴムの…暴風雨(ストーム)!!!!」

 

クロコダイルが発生させた砂嵐と、ルフィの覇気を纏った嵐のような拳の連撃が衝突する。

全身に毒が回り、ルフィは満身創痍でギア2が解除されながらも、出しうる全力の一撃で砂嵐を吹き飛ばし、そのままクロコダイルをも吹き飛ばそうと迫る。

 

「麦わら…もしてめェがユバを見捨て、覇気を乱さず戦っていれば、俺もただじゃ済まなかっただっただろう…だが、その甘さ、未熟さが命取りだったな」

 

しかし、吹き飛ばした砂嵐の先には、クロコダイルが高密度の砂の刃を構えていた。

 

砂漠の金剛宝刀(デザート・ラ・スパーダ)!!!!」

 

毒で弱り、覇気もギア2も解除され、砂嵐をふき飛ばしたことで、威力を落としたルフィの一撃を圧倒するクロコダイルの高密度の砂の斬撃が、ルフィを切り裂き致命傷を与え、その身体から根こそぎ水分を奪い取った。

 

 

 

 

「な、なんだあの砂嵐!!?」

 

「…アイツだわ」

 

クロコダイルの起こした砂嵐は、遠く離れたウタ達にも見えていた。

 

「ルフィ……」

 

ビビの前では気丈に振る舞っていたウタだったが、最初からウタはルフィのことが心配でたまらなかった。

本当は今すぐトットムジカの力を使ってでもルフィを助けに行きたい。

それでも、船長の命令の重さを知るウタは、ルフィに託されたビビを頼むという言葉を苦渋の決断の末、優先したのだった。

 

「平気よみんな!ルフィさんは負けない!約束したじゃない、アルバーナで待ってるって!!」

 

「ビビ…」

 

そんな様子を見て心配しながらも、ルフィを信じて明るく振る舞うビビを見て、これ以上ビビに負担をかけないようにとウタもまた、ルフィが勝つと信じて反乱を止めるために気持ちを切り替えたのだった。

しかし、ウタの不安は皮肉にも的中してしまった。

 

 

 

 

「終わりだ麦わらのルフィ…つまらねェ情を捨てれば、お前はもっと長生きできた…!!」

 

砂漠の流砂に沈みゆくルフィにクロコダイルがゆっくりと声をかける。

切り裂かれた傷口から噴き出した血を全身に浴び、身体中の水分を奪われた上、毒が全身に回ったルフィは最早死んでいるも同然だった。

 

「確かにテメェはこの前半の海では表彰台に立てる程度の実力はあった。だがな……俺がいた海にはテメェレベルの奴なんざいくらでもいたのさ」

 

「ウ………タ…………」

 

「苦しそうだな…!!だが、直に楽になれる……ああ、安心しろ、直ぐにお前の愛しのミス・プリンセスとやらもお前と同じところに送ってやるさ……!!ハハハ」

 

「……カ……うプ!!!…………」

 

完全に砂漠に沈み、沈黙したルフィの姿を見て、クロコダイルは笑いながら砂となって飛び去って行った。

そして、ルフィの命の灯火は今にも尽きようとしていたのだった。

 

「……これも運命なのかしらね……Dの名を持つあなたとの…」

 

そんな瀕死のルフィの前に、ミステリアスな雰囲気を持つ謎の女、ミス・オールサンデーことニコ・ロビンが現れた。

 

 

 

 





次回…「ルフィのいない新時代」



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ルフィのいない新時代

 

 

 

「いよいよだ…お前ら、仲間の印を忘れるなよ!」

 

「ウタちゃん、ビビちゃんを頼んだ」

 

「わかった、みんなも頑張ってね!……もう誰も、この国の人達を死なせないから!」

 

いよいよ、一味のアラバスタの反乱を止めるための戦いが始まった。

 

 

 

決戦の地、アルバーナ。その西門にバロックワークスのオフィサーエージェント達が一同に介していた。

 

「要は王女を消せばいいんだろ」

 

「本当に来るんだろうね?…王女とその仲間達は」

 

「消せと言われた奴を俺達は消せばいいんだ。」

 

「きぃ〜」

「じゃあ、反乱が先に始まっちゃっタラバ、あちし達はドゥーすればいいのう!?」

「て〜」

「…ドゥーもしなくていいんじゃなくって?戦争が始まったら王女といえど、もう何もできないわ」

「る〜ぞ〜」

 

「…何ィ!!?さっさと言わねぇかいこのノロマ!!」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

Mr.4の方を一斉に見るエージェント達。彼らの見た先には立ち上る砂煙と共に複数の謎の存在達がこちらに向かって来ていた。

 

「カ…カルガモ!?」

 

「…何人増えようが標的は王女一人だ、何をうろたえている…」

 

「王女一人消せばいいって……?じゃあオメー…どれが王女だか当ててみなよ」

 

「んげげ!!あいつら全員同じマントを!!これじゃあどいつが王女なのかあやふやじゃないのようっ!!」

 

そして、バラバラに分かれて門へと向かうビビとその仲間達。それを追って、オフィサーエージェント達もまたそれぞれの門へと向かった。

そして、走り去って行くオフィサーエージェント達を砂埃に隠れて見つめている二人の人影がいた。

 

「急がなきゃ、反乱軍はすぐそこまで来てる…行くわよカルー、ウタ!!」

 

「うん!……止めるよ、絶対に!」

 

その正体はビビとウタだった。

二人は仲間達がオフィサーエージェント達を引きつけている間に、反乱軍のリーダーであり、ビビの幼馴染であるコーザと接触することで反乱を止めようと考えていた。

そして、二人は王都アルバーナへ向かって進撃してくる反乱軍の前に立ち塞がった。

 

「止まりなさい!!!反乱軍!!!この戦いは仕組まれてるの!!私の話を聞いて!!!」

 

「ん!?」

 

一瞬、ビビの声が聞こえた気がしたコーザは、声が聞こえた方へと向かおうとする。

 

「へへへ、残念だったな」

 

しかし、突然の国王軍からの砲撃によって巻き起こった砂埃が、二人の接触を阻んだ。

 

「おい!まだ砲撃の命令は出していないぞ!」

「へへへ…すみません…」

 

砲撃した兵士の腕には、バロックワークスの刺青が入れられていた。

 

「怯むな突っ込めェ!!我らが国の為!!王を許すな!!!」

 

「お願い!止まってェ!!!!」

 

「…スパイが紛れ込んでいたのか…仕方ない、止めるよムジカ!」

 

了解だ、国王軍と反乱軍…悪いが、しばらく大人しくしてろよ…

 

瞬間、ウタの背後からトットムジカの恐ろしい量の覇気が放たれる。

アラバスタの砂の大地が震え、戦場の空気を一瞬で塗り替えた魔王の覇気によって、指揮官を努めていたチャカを除く国王軍と、リーダーのコーザを除く反乱軍は、その意識をもっていかれたのだった。

 

「な…なにが…?」

 

「!!?お前達!しっかりしろ!!……ビビ?」

 

「少し手荒だったけど、とりあえず目標達成かな…」

 

これで反乱が終わる…ウタがそう思った時だった。

 

「やってくれたな…!ミス・プリンセス!!」

 

砂嵐と共にクロコダイルが現れた。

 

「クロコダイル……!!」

 

「ビビ!コーザを連れて王宮に行って!クロコダイルは私が相手するから!」

 

 

 

ビビ達を逃がすため、クロコダイルと向き合ったウタ。

そんなウタには、どうしてもクロコダイルに確認しなければいけないことがあった。

 

「ねえ……ルフィはどうしたの?」

 

「ああ…お前の愛しの船長なら俺が殺した」

 

瞬間、ウタを中心に発生した莫大な衝撃波によってクロコダイルは吹き飛ばされた。

 

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!!!お前なんかに、ルフィが負けるハズない!!!!」

 

ウタはルフィを信じていた。ルフィが海賊王になるまで負けるハズがないと。

 

「クハハハ!わかっているハズだ…麦わらではなく俺がここに来たのが答えだろう?奴がここに来なかった理由は一つ、麦わらはもう……この世にいないからだ」

 

しかし、現実は残酷だった。

クロコダイルは誇示するように、血に染まったフックを見せつけ、ルフィの死を宣言した。

 

「ルフィが…死んだ……?もう……いない……?」

 

「……案外呆気なかったな、船長の死一つで動揺するとは、情けねェ女だ」

 

そう言って反乱軍と国王軍を鎮圧した覇王色の覇気に警戒しながらも、クロコダイルは呆然としているウタにトドメを刺そうとした。

 

「ニコ・ロビンの報告からお前の能力に検討はついている…歌さえ聞かなければ、例え覇気使いだろうが…」

 

「うるさい!!」

 

魔王憑依(インストール)

 

ウタの身体をドロリと黒い泥のようなものが覆い、彼女の姿を黒い翼を生やした魔王のような姿を変化させる。同時に世界が侵食され、現実世界がウタワールドの法則へと改変されていく。

ウタは後悔していた。ルフィの覚悟を尊重し、ルフィと共に戦わなかったことを…世界の目を恐れて、トットムジカを使わなかったことを。

ゆえに、ウタを止める枷は完全に外れてしまった。

 

「私のせいだ……私がルフィを守らなかったから……助けに行かなかったから……」

 

 

「そっか、私に覚悟が足りなかったんだ!」

 

 

「ルフィ!今すぐ新時代を作ってルフィのところに行くね!」

 

ルフィを失った喪失感によって、ウタは暴走し、狂気的な笑みを浮かべた。

 

魔王憑依(インストール) 第二楽章(ギア 2)

 

「この力はルフィ相手にも使ったことがないんだ…いくら修行でも、もしルフィにこの力を向けたら、きっとルフィが死んじゃうから……でも、あなたが相手ならいいよね?」

 

ゾクリ、とクロコダイルの背筋が凍る。

次の瞬間、ウタの姿が消えると、一瞬でクロコダイルの前に現れ、覇気を纏った刀の斬撃で吹き飛ばした。

 

「…まだまだシャンクスには程遠いかな…」

 

残念そうに言うウタだったが、その威力は凄まじく、一撃を喰らったクロコダイルはかつて白ひげに敗れた時を思い出す程の大ダメージを受けていた。

 

「ありえねェ…!なぜ、お前が白ひげのジジイのような覇気を持っていやがる!!?」

 

「さあ、なんでだろうね…」

 

そう言いながら、ウタは自らの手に持つサーベルのような刀に、さらに覇気を纏わせる。

 

「いつまでもテメェの好きにさせると思うなよ…!」

 

砂漠の地面に手を置き、砂に干渉し操作しようとするクロコダイル。

しかし、クロコダイルがいくら能力を発動しても、砂漠の砂はピクリとも動かなかった。

 

「残念!そこはもう、あなたの知る現実(せかい)じゃないの!」

 

そう言ってウタがパチンと指を鳴らすと、それまでピクリとも動かなかった砂がサラサラと小さな砂嵐を形成してウタの手のひらに収まった。

 

「この世界は私の世界!私の決めた法則が適用される!だから、あなたの能力はこの世界の砂には効かないよ」

 

そう言って動揺しているクロコダイルを覇王色を纏った拳で容赦なく殴り飛ばした。

 

確かにクロコダイルはウタの歌声は一度も聞いていない。しかし、実際にクロコダイルはウタウタの世界に連れて来られているのか、目の前の少女にまるで歯が立たないでいた。

 

「どうなってやがる!?ウタウタの実にこんな力があるなんて聞いたことがねェ…!!………まさか、テメェ!!?」

 

クロコダイルの冷徹な頭脳は、この異常事態に普段のクロコダイルなら呆れる程の馬鹿げた仮説を導き出した。ウタウタの実、ウタウタの世界、魔王、現実の侵食…クロコダイルの知識から導き出した仮説がもし当たっているなら、それは世界を滅ぼす力を目の前の少女が持っていることを意味するのだから。

しかし、その仮説は皮肉にも的中していた。

 

「気づいたんだ…でも残念!もう…遅いの」

 

魔王憑依(インストール)第三楽章(ギア 3)

 

「この世界そのものをウタワールドに取り込んで創ってあげる!!みんなが自由になれる新時代を!!!!」

 

ウタの姿が更に魔王のような衣装へと変化していく。

背中には魔王のような黒いマントが加わり、頭にはトットムジカと同じ禍々しい帽子を被ったその姿は、最早魔王そのものだった。

そして、ウタによって現実世界のウタワールドへの侵食が強まり、アラバスタが幻想的な色づいた宇宙のような景色へと変貌していった。

 

「クハハ…こんなふざけた話があるか…こんな小娘が、あの魔王(トットムジカ)を制御してやがるなんて…生きた古代兵器そのものだぞ……」

 

ウタウタの実の能力、そして、魔王の存在を知るクロコダイルは目の前の馬鹿げた光景に乾いた笑い声をあげ、前代未聞の目の前の化け物にどうする事もできなかった。

 

「ねえ、クロコダイル……死んじゃいなよ!!」

 

ウタの号令で数えきれない程の音符の戦士達が出現する。もちろん一体一体が覇気の使えるパシフィスタクラスの強さの存在だ。

最早、この世界にウタの敵は存在しない。彼女にとって、クロコダイルもいつでも消せる存在でしかなくなってしまったのだった。

 

「さあ、新時代を…」

 

「ウタァー!!!」

 

突如、滅亡の危機を迎えた世界。そんな時、希望は空からやって来た。

 

 





その頃のトットムジカ…

クロコダイルが来た時… まあ、(原作知識でルフィが生きてるのわかってるから)大丈夫やろ!

ウタ暴走… ま、まあ、ルフィが来たら止まるから大丈夫やろ!

完全に世界の危機… ヤ、ヤバい!!ルフィ早く来てくれ!ウタ、一旦落ち着こう!な!  
ムジカは少し黙ってて!!  
…ハイ…
こうなったら、強制的に解除するしか…

ルフィがペルと共に来る… ルフィー!!!(歓喜)

相変わらず戦闘面以外は使えないトットムジカだった…


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計画変更


まさか、本当に覇気が全てを凌駕するとは…
ウタウタの能力を強力なで覇気で防げる設定にしておいて良かったです!
ただ、独自設定としてあくまで心が取り込まれるのを防げるだけで、取り込まれた後はどんなに覇気が強くても自分で現実には戻った来れないものとします。
なお、トットムジカの現実の侵食はシャンクスでも防げそうにないので、今のところ覇気で抵抗不可能という事にしようかなと思います。





 

 

 

「ウター!!!」

 

「ルフィ!!?」

 

もう二度と聞くことができないと思っていたルフィの声を聞いて、動揺したウタの能力が解除され、元のアラバスタの景色へと戻った。

 

「本物だ……本物のルフィだ!!」

 

ルフィに会えた喜びで髪をぴょこぴょこと動かし、喜びを露わにするウタだったが、ルフィが空から降りて来ると、目に涙を浮かべてルフィへと抱きついた。

 

「私……ルフィにもう会えないと……」

 

「勝手に殺すな……俺は死なねェ!」

 

「ルフィ…!」

 

ルフィが生きていた事への喜び、ルフィと一緒に戦わなかった事への謝罪の気持ち、ルフィを信じきれなかった後ろめたさ…そういった感情が入り混じりながらも、ウタは、今はただ生きていたルフィに触れて、その温もりを感じることに専念したのだった。

 

「そういやワニはどこ行ったんだ?」

 

「あ…!いなくなってる!」

 

ウタが落ち着いたのを感じ取ってから、今度こそクロコダイルを倒そうとしたルフィ。

しかし、ウタが動揺して能力を解除した後、クロコダイルは隙を見てこっそり逃げ出していたのだった。

 

「追うぞ!」

 

「うん!……あいつは確実に仕留めないとね…!」

 

 

 

 

 

 

 

一方ビビ、コーザ、チャカは国王のいる宮殿へと向かっていた。

 

「本当にあのクロコダイルが…」

 

未だにクロコダイルが黒幕である事を反乱軍のリーダー、コーザは信じられずにいた。

 

「危ないビビ様!!」

 

しかし、そんな3人の前に全身が鋭利な刃物で覆われた男が立ち塞がる。

 

「チャカ!?」

 

「標的は排除する」

 

立ち塞がった男、ダズ・ポーネスことMr.1のスパスパの実の能力によって、ビビを庇ったチャカが吹き飛ばされ、ビビは絶対絶命のピンチを迎えた。

 

「その命貰いうける」

 

そして、咄嗟にビビを庇おうとしたコーザごとビビを切り裂こうしたMr.1だったが、その刃は何者かによって防がれた。

 

「まあ、待てよ」

 

「バカな!?貴様は確かに殺したはずだ!!」

 

刃を受け止めたのは、Mr.1に斬られた後、死の淵から生還したゾロだった。

さらに、Mr.1の刃を弾いたゾロは、Mr.1の全身が刃でできた身体を切り裂いた。

 

「何故俺の身体が斬れる!?」

 

「聞こえるのさ…鉄の呼吸が…!コイツが覇気ってやつか…!」

 

そう言ったゾロの刀は僅かに黒く染まっていた。

 

「早く王宮に行け!ビビ!!」

 

「……!ありがとうMr.ブシドー!行きましょうコーザ!!」

 

そして、ビビとコーザはかつて二人が使っていた抜け道を通り、ついにビビ達は王宮へと辿り着いた。

 

「あら、遅かったじゃない」

 

しかし、王宮にはツメゲリ部隊を制圧したニコ・ロビンとクロコダイルがビビの父であり国王、コブラを磔にして待ち構えていた。

 

「……本当にお前たちが、この国の雨を奪ったのか…?」

 

目の前の惨状を見て、コーザはついに、雨を奪ったのが国王ではない何者かの存在である事を悟った。

 

「そうさ!!…コーザ、お前達が国王の仕業だと思っていた事全て……我が社が仕掛けた罠だ。…もっとも、この真実を知ったお前にはここで死んでもらうぞ…!『砂嵐』」

 

「コーザ!!」

 

そして、ダンスパウダーの真実を尋ねたコーザの問いに答えたのは、ウタから逃げて王宮へとやって来たクロコダイルだった。

クロコダイルの一撃を受け、コーザは砂嵐へと呑み込まれ吹き飛ばされた。

 

「あら…随分とボロボロね、クロコダイル」

 

「黙れ…ニコ・ロビン…!一刻も早くプルトンの力を俺によこせ」

 

「あら…そんなにあのお嬢さんは手強かったのかしら?」

 

「あれは強いなんて次元じゃねェ…!トットムジカに対抗するにはプルトンが必要不可欠だ」

 

「トットムジカ…?まさかエレジアの………まァいいわ、行きましょう…歴史の本文(ポーネグリフ)の所へ」

 

「ああ、それと…念のためだ。お前にも来てもらうぞ、王女ビビ」

 

コーザがロビンによって戦闘不能になってしまい絶対絶命のビビ。

しかし、クロコダイルは何故かビビを生かし、コブラと共にビビを連れて王宮の地下のポーネグリフのある場所へと向かった。

 

「……どうして私を殺さないのよ!」

 

「テメェは人質だ、あの化け物相手にまともに戦って勝ち目がない以上、その甘さにつけ込むのさ…!」

 

「この卑怯者!!」

 

 

 

 

王宮の西、葬祭殿

 

 

「成程…隠し階段か…さすがは国家機密だ」

 

国王コブラに案内され、クロコダイル達が向かったのは、王宮の地下にある王家の墓だった。その壮大な神殿の中に一つのキューブ状の石碑、プルトンの場所が記された歴史の本文(ポーネグリフ)が置かれていた。

 

「他にはもうないの…!?これが、この国の隠してる全て……!?」

 

「不満かね…私は約束を守ったぞ」

 

「さァ、読んでみせろ、ニコ・ロビン…そして教えろ、プルトンの場所はどこだ!」

 

「……記されていないわ。ここには歴史しか記されていない」

 

「…………そうか……残念だ」

 

ついにプルトンの場所が明かされると思われたが、ポーネグリフには歴史しか書かれていないと言うロビン。

これでクロコダイルの計画は頓挫したとビビが思ったその時だった。

 

「お前は優秀なパートナーだったが、ここで殺すとしよう」

 

「!!?な……!?」

 

「プルトンは惜しいが、世界を獲ってからじっくり探せばいいだけの話だ」

 

「何を言っているの!?プルトンがなければあなたの計画は……」

 

「計画は変更だ…!軍事国家にはプルトンではなく、魔王(トットムジカ)の力を使うさ!!」

 

計画の変更を宣言したクロコダイルは、フックでロビンを切り裂いた。

 

「仲間割れ…」

 

「ばかね…4年も手を組んでいたのよ!?あなたがこういう行動に出る事くらいわかってたわ!!」

 

突然の事態に混乱するビビを他所に、戦闘を始めるロビンとクロコダイル。

クロコダイルの弱点を知っているロビンは水の入った瓶を取り出すと、自身のハナハナの実の能力を使ってクロコダイルに水を浴びせようとした。

 

「残念だったなニコ・ロビン…俺は能力に溺れて弱点や覇気にやられる雑魚共とは違う…!」

 

「避けたっ…どこへ!?」

 

一瞬で全身が砂となって姿を消し、ロビンの背後に回り込んだクロコダイルのフックが彼女の胸を刺し貫いた。

 

「全てを許そうニコ・ロビン、なぜなら俺は…最初から誰一人信用しちゃ…いねェからさ」

 

「そんな……仲間なのに」

 

「さて…こっちに来い王女ビビ、お前はあの化け物の力を使うための人質として側に置いてやろう」

 

「ふざけないで!!どこまであなたは…!」

 

クロコダイルは元から信用していなかったと言いロビンを始末すると、ビビとその仲間を人質にしてトットムジカを制御しているウタの力を利用する計画へと変更する事を宣言した。

そして、クロコダイルがビビを捕らえようとした時だった。

 

「追い詰めたぞ!クロコダイル!!」

 

「今度こそ終わりだよ!!」

 

「ルフィさん!ウタ!」

 

クロコダイルの前にウタとルフィが現れる。

 

「クソッ!!」

 

ウタの姿を見て、クロコダイルは慌ててビビを人質に取って状況を打開しようとした。

 

「……賭けてみようかしら…Dの名を持つあなたに……」

 

「邪魔をするなァ!ニコ・ロビン!!」

 

しかし、ビビは間一髪の所をまだロビンのハナハナの実の能力によって助けられ、クロコダイルは焦りと怒りを募らせた。

 

(クソ!麦わらはともかく、トットムジカ相手では勝ち目がねェ…!)

そこで、トットムジカの力を恐れたクロコダイルはこの場からウタを引き離そうと画策する。

 

「俺の相手をしていていいのか、ミス・プリンセス?このままだと、広場の爆弾でお前の大切な仲間達が死ぬ事になるぞ」

 

「爆弾!?この…!」

 

「クハハ…!麦わらに任せて、王女を連れてさっさとお仲間を助けに行ったらどうだ…?」

 

「………」

 

「ウタ、こいつは俺がぶっ飛ばす!こんな奴に負けてるようじゃ、海賊王になる事も、新時代を創ることもできねェ!!」

 

「でも!」

 

ウタは、今度こそ本当にルフィがクロコダイルに負けて死んでしまうのではないかという不安から、ルフィを残して一味の仲間達を助けに行くのに迷いがあった。

 

「俺は海賊王になってウタと一緒に新時代が創りたいんだ!…だから、ここは退けねェ!!」

 

ウタ、ルフィを信じてやってくれ…!今のルフィは間違いなくクロコダイルより強い。それに、俺の未来視の見聞色もルフィが勝ってる未来が見えているから大丈夫だ!!

 

「‥‥ルフィ、わかった……でも必ず勝ってね!じゃないと私、勝手に新時代創っちゃうから!」

 

ルフィの新時代への覚悟、そして、戦闘以外ポンコツのトットムジカの精一杯のフォローを聞いてウタはクロコダイルをルフィに任せる事を決意したのだった。

 

……頼んだぞルフィ!お前が負けたら、俺は世界滅ぼさなきゃ行けなくなるからな……

 

「ああ!!」

 

爆弾を防ぐため、広場へと向かうウタとビビを見送り、ルフィはクロコダイルへと向き合った。

 

「化け物との別れは済んだか…?麦わら」

 

「ウタは化け物じゃねェ!ウタは…大切な仲間だ!!」

 

「化け物さ、あの女の力は次元が違う……!だが、あの女の力が手に入れば俺の理想が叶う!!」

 

そう言ってクロコダイルが腕を広げると、砂嵐が巻き起こり、能力によって辺り一面が砂漠の砂の様に変化した。

 

「安心しろ……お前もあの女への人質として生かしておいてやる。そして見ているがいい!魔王の力で白ひげ達四皇も、そして、世界政府をも超越する最強の軍事国家の誕生の瞬間を!!」

 

「新時代のためのウタの力を、そんな事に使わせてたまるか!お前は絶対ぶっ飛ばしてやる!!」

 

「テメェには格の違いを教えてやる、これで最後だ…!」

 

「「決着(ケリ)をつけてやる!!」」

 

 

 





トットムジカ… 本当はそんな先の未来見えてないけど、原作でも勝ってたからルフィが勝つやろ!(万が一ルフィが負けたら、シャンクスでも止められない世界滅亡END)


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決着


今回の戦闘回には一部ONE PIECEのゲーム技や外伝技が登場します。


 

 

 

「広場に爆弾!?」

 

「そうだよ、ルフィがクロコダイルをぶっ飛ばすから、私たちは爆弾を止めないと!!」

 

「となると砲撃手を探さねェと!!」

 

クロコダイルの相手をルフィに託し、広場を吹き飛ばす程の爆弾を探す麦わらの一味。

しかし、状況は悪化しつつあった。

 

「まずい…気絶していた国王軍と反乱軍の人達が起き上がってきてる!」

 

覇王色によって意識を奪われていた人々の意識が戻りつつあり、一時的に止まっていた国王軍と反乱軍の争いが再び起ころうとしていた。

 

「私は反乱軍と国王軍の衝突を止めてくる!だから、爆弾をお願い!ウソップ、あなたならきっと探し出せるから」

 

「ま、まかせとけ!!よーし冷静になれキャプテンウソップ!!」

 

「絶対にこの国の人達を死なせないから…!」

 

ビビの国の人達を死なせないため、ウタは爆弾を仲間達に託し、国王軍と反乱軍の衝突を止めるべく走り出した。

もうウタに迷いはなかった。いざとなったら躊躇なくトットムジカを使う覚悟をウタは既に決めていたのだった。

 

 

トットムジカの覇王色に晒されて意識を奪われていた国王軍と反乱軍の人々の中には、両陣営に潜入していたバロックワークスのスパイ達も含まれていた。

そして、意識を取り戻した彼らは理想国家建国後の地位のため、どさくさに紛れてビビの命を狙っていた。

 

「へへへ、王女を殺せば昇格間違いなしだ!」

 

「鳴牙!!」

 

「テメェらは!?」

 

しかし、そんなバロックワークスのスパイ達はその行く手を阻まれていた。

 

「我…アラバスタの守護神ジャッカル!!王家の敵を討ち滅ぼすものなり…!!」

 

「ユバの男は砂嵐なんかに負けはしない!!」

 

ビビの命を狙うバロックワークスのスパイ達の前に立ち塞がったのは、王国軍のチャカ、そして、クロコダイルによって吹き飛ばされたコーザだった。

合流した彼らはビビを守るため、そして、この反乱を止めるため必死に行動していた。

 

「手柄を焦ったバカ共め…だが、ここでコーザ達を暗殺すればもう反乱は止まらなくなる…!」

 

しかし、バロックワークスのスパイは他にもいた。

潜伏していた彼らは、反乱軍と国王軍の前でコーザ達を暗殺し、争いをさらに激化させようと企んでいた。

 

「誰がスパイなのかは大体わかったよ!お願い、音符の戦士達!!」

 

だが、ウタとトットムジカの見聞色によってスパイ達は特定され、瞬く間に制圧されたのだった。

 

やがて、チャカやコーザの声を聞き、争っていた人々の間に戸惑いが広がり争いが一時的に止まっていった。

残すは爆弾のみ。しかし、用意周到なクロコダイルは爆弾にも仕掛けを施していたのだった。

 

 

「爆弾が時限式なの…このままだと爆発しちゃう!!」

 

ウタがみんなの下へと戻ると、そこにはビビの悲痛な声が聞こえてきた。

ウソップが爆弾の場所を突き止め、みんなの連携で広場への砲撃を阻止する事に成功したビビ達だったが、クロコダイルは念入りに爆弾を時限式にしており、爆発の瞬間はすぐそこまで迫っていた。

 

「……後はお任せを、ビビ様」

 

「ペル!!」

 

そんな中、クロコダイルの言葉が頭をよぎり、絶望しかけたビビの所に、隼の姿をしたペルがゆっくりと降り立った。

そして、ペルはビビに微笑むと、爆弾を持ち上げ空へと飛び立った。 

 

「我…アラバスタの守護神ファルコン!!王家の敵を討ち滅ぼすものなり!!」

 

巨大な爆弾を持って、ペルは遥か上空へと向かった。

命に代えてこの国の人々に爆風が届かないように高く高くどこまでも。

そして、その姿は空を見上げていたウタの目にも映った。

 

「ビビ様、私は…ネフェルタリ家に仕えられたことを心より誇らしく思います…」

 

 

 

 

ムジカ…ペルさんを助けてあげて

 

ああ、まかせておけ

 

ウタは迷わなかった。ビビの国の人達を救えるなら、世界にこの力を知られても構わない。そう考えてウタはトットムジカを使った。

 

 

『単独顕現』

 

後は任せておけ…アラバスタの戦士よ

 

「な!?」

 

遥か上空の雲の上で顕現したトットムジカは、起爆した爆弾の大爆発からペルを守ったのだった。

 

効かないね、クソギミックがあるから!

 

相変わらず、そのクソギミックは健在だった。

 

 

 

 

 

 

一方地下では、ルフィとクロコダイルの覇気を纏った拳と砂の刃がぶつかりあう、前半の海のレベルを遥かに上回る激闘を見せていた。

 

「なぜ動ける…麦わらァ!!」

 

「毒はもう効かねェ!!」

 

ルフィの身体を毒のフックで刺すことに成功したクロコダイルだったが、一向に毒の影響を受けないルフィに殴られ続け、その身体は痣や傷から出た血で覆われていた。

 

「ふざけやがって…!だが、俺の研ぎ澄まされた能力を前に、いつまで虚勢を張れるか見せてみろ…!」

 

クロコダイルの意思に呼応するように砂漠の砂が轟々と唸り、まるで津波のようにルフィへと襲い掛かる。

 

「ゴムゴムの暴風雨(ストーム)!!!!」

 

「防がれたか…だが、テメェごときの覇気でこの技は受けきれねェだろう?『砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)』!!」

 

「ギア…2!!ゴムゴムの…JET銃乱打(ガトリング)!!」

 

一度はルフィを葬った高密度の砂の刃を放ち、今度こそルフィに引導を渡そうとしたクロコダイルだったが、ルフィは正面から覇気を纏った拳で砂の剣を打ち破りクロコダイルの思惑を挫いた。

 

「まさか…覇気が強くなっているのか!?」

 

「それだけじゃねェ…血でも砂は固まるだろ!!」

 

命の危機を乗り越え、強敵であるクロコダイルとの戦闘によってルフィの覇気は進化していた。

さらに、砂を固める血を染み込ませた赤黒く染まった拳をルフィは構えた。

 

「まあいい…この砂漠の大地で乾涸びて死ね!!」

 

強まる覇気に恐れを抱いたクロコダイルは、拳を構えて向かって来るルフィを相手に躊躇することなく、砂漠において最強ともいえる技を繰り出した。

 

侵食輪廻(グラウンド・デス)

 

クロコダイルが地面に手を置いた瞬間、辺り一面に乾きを与える範囲攻撃がルフィを襲う。

 

「危ねェ!」

 

しかし、ルフィの見聞色の覇気も一段と進化しており、クロコダイルの攻撃を察知したルフィは、樽を背負っているため少し遅れながらも素早く移動し、その攻撃範囲から脱した。

 

「避けるのは想定済みだ『砂漠の蜃気楼(デザート・ミラージュ)』」

 

しかし、避けた先に先回りして姿を眩ませていたクロコダイルに身体を触れられ、ルフィは身体の大半の水分を奪われてしまった。

 

「終わりだ」

 

この時、ルフィを人質にするためクロコダイルは水分を全て奪わなかった。しかし、結果的にそれがクロコダイルの敗因になるとはこの時のクロコダイルには知るよしもなかった。

 

「…まだだ!!」

 

全身が乾涸びながらもルフィはクロコダイルの拘束から逃れ距離をとると、背中に背負っていた樽からごくりと水を飲んで水分を回復した。

 

「助かった…!カラカラのおっさんのおかげだ…ゴムゴムのォ…」

 

「クソッ砂嵐重(サーブルスぺザード)!!」

 

「JETバズーカァ!!!」

 

苦し紛れにクロコダイルが起こした砂嵐による衝撃をものともせず、ルフィの一撃がクロコダイルを打ち抜いた。

 

「なぜだ…たかがルーキーがなぜここまで…!!」

 

毒を、砂の刃を、そして身体から水分を奪ってなお立ち上がって向かってくるルフィに、クロコダイルは驚愕と鬱陶しさによる苛立ちを募らせていた。

 

「俺は、海賊王になる男だ!!!」

 

「海賊王だと…?いいか小僧…!!この海をより深く知る者程そういう軽はずみな発言はしねェ…!この海のレベルを知れば知る程にそんな夢は見れなくなるのさ!!」

 

クロコダイルの脳裏に浮かんだのは、偉大なる航路で鎬を削り合ってきた鬼の跡目と呼ばれていた合体野郎や、気に入らないグラサンといったライバル達の顔、そして、自身を圧倒的な力で下した男、海賊白ひげの姿だった。

目の前にいるルフィを遥かに上回る強者達を知るからこそ、クロコダイルはその道の険しさを知っており、そして、クロコダイルもまた、心の底ではその夢を捨てきれずにいた。

 

「下らねェ夢を抱いて死ね…!」

 

砂漠の大剣(デザート・グランデ・エスパーダ)

 

邪念を振り払い、クロコダイルは砂漠の砂で巨大な剣を形成し、その切っ先をルフィへと向けた。

 

「俺はお前を超える男だ!!ゴムゴムのォ…JET暴風雨(ストーム)!!!!」

 

覇気の拳の暴風雨と、砂の大剣が衝突する。しかし、進化したルフィの覇気は、クロコダイルの想像を上回る程に技を強化し、覇気を纏った拳の嵐がクロコダイルの砂の剣を打ち崩していく。

 

「おおおおお!!!!!ぶっ飛べ!!クロコダイル!!!!」

 

そして、クロコダイルの砂の大剣を打ち破り、ルフィの拳がクロコダイルを吹き飛ばした。

 

勝者…麦わらのルフィ

 

そして王下七武海の一角、海賊サー・クロコダイルが陥落し、バロックワークスは終焉を迎えたのだった。

 

 



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