安価で安住の地を見つける (ハンドルを右に)
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件/1
1:名無しの海賊団
助けろ
2:名無しの海賊団
インペルダウン行け
3:名無しの海賊団
海軍さんこちらです
4:名無しの海賊団
海に飛びこめばええやん
5:名無しの海賊団
光の速さでスレ落ちされたことはあるか〜〜い???
んぅ〜〜???
6:名無しの海賊団
大海賊時代の“敗北者”じゃけぇ……
7:名無しの海賊団
大航海に出て大後悔ってかwwww
8:名無しの海賊団
>>7
9:名無しの海賊団
>>7
10:名無しの海賊団
冷えてきたな……
11:名無しの海賊団
ヒエヒエの実の全身ヒエヒエ人間じゃん
12:名無しの海賊団
青雉さん!? まずいですよ!
13:名無しの海賊団
申し訳ないが海軍大将を激寒オヤジギャグおじさんにするのはNG
14:名無しの海賊団
でも実際2年後のあの草臥れたおっさん感はさすがにね……
15:名無しの海賊団
割とマジで困ってんだほんと
頼むから知恵くれ
16:名無しの海賊団
>>15
コテハンつけろ
17:名無しの海賊団
安価まだ?
18:名無しの海賊団
安価しろ
19:>>1
>>16
こうか?
>>17
>>18
安価はしないよ?
20:名無しの海賊団
安価なしに生き残ろうとか思ってんの? そんなんじゃ甘いよ
21:名無しの海賊団
スレ住民の安価に対する信頼感なんなの
22:名無しの海賊団
とりあえずkwsk
23:>>1
いやさ、成り行きで海賊になっちゃったけど俺としては他海賊の抗争とか海軍に追われるとか勘弁なわけで
個人的にはクロッカスおじさんみたいに双子岬でひっそりと暮らしたいんだわ
でも船長が無理矢理船に乗せてきて脱退とか許可してくれないんだよちくせう
24:名無しの海賊団
このイッチ贅沢な考え持ってんな
25:名無しの海賊団
クロッカスさん海賊王の船医やぞ……
26:名無しの海賊団
時代を築いた海賊の船医と同格に扱われたいとか面だけは一丁前に厚くて草
27:名無しの海賊団
懸賞金とかかけられてんの?
28:>>1
今は船長だけだけど、絶対手配書載るよ
だから今がフェードアウトするチャンスなわけよ
29:名無しの海賊団
ルーキーレベルか
30:名無しの海賊団
半端な気持ち出でるんじゃねぇよ! 偉大なる航路になァ!
31:>>1
とりまスペック
海賊団
・構成員→6人
・戦闘員、航海士、狙撃手、コックいる
・東の海出身
・偉大なる航路に入るところ
俺
・家なし
・金なし
・役職なし
32:名無しの海賊団
ニートやん
33:名無しの海賊団
ニートだな
34:名無しの海賊団
やっぱ俺らやん
35:名無しの海賊団
人数カツカツなのに役職なしとか役立たずとかワロタ
ワロタ……
36:名無しの海賊団
というか偉大なる航路に入っている時点で手遅れでは?
37:>>1
やめてくれ、その正論は俺に効く
船長
・悪魔の実くってる
・肉ばっかくってる
・強い
・肉ばっかくってる
・陽キャ
・いいやつ
・でもアホ
・一番アホ
剣士(戦闘員)
・最古参
・剣士
・強い
・刀3本持ってる
・方向音痴
・酒カス
・アホ
38:>>1
航海士
・紅一点
・巨乳
・かわいい
・盗み得意
・俺より強い
・でも振り切るとアホになる
狙撃手
・鼻長い
・嘘つく
・たまにかっこいい
・故郷に彼女いる
・アホ
・俺より強い
コック
・飯うまい
・強い
・顔はいい
・でも女絡むと一番アホ
・男に厳しい
・でもちょっと俺に優しいから好き
39:名無しの海賊団
ここまで登場人物全員アホ
40:名無しの海賊団
アホしかいねぇじゃん
41:名無しの海賊団
女がいる時点で勝組ジャン氏ね
42:名無しの海賊団
役割はっきりしてるよね
船医いないのはキツイけど
43:名無しの海賊団
イッチは?
44:名無しの海賊団
イッチなんでいるの?
45:>>1
なんもないです……(小声)
46:名無しの海賊団
役立たずじゃん
47:名無しの海賊団
穀潰し
48:名無しの海賊団
ニトニトの実の全身ニート人間
49:>>1
だからだよ!!!!!! だから船にいるの辛いの!!!!!
みんな良い奴だから気にすんなって言ってくれるけどそれが辛いの!!!!!
50:名無しの海賊団
理解
51:名無しの海賊団
あー……
程度によるけどいっそブラックで使い潰される方がマシか……?
52:名無しの海賊団
でも中には実験体にしてきそうなところもあるし
53:名無しの海賊団
つかなんで役立たずを船長が許してんのかわからん
航海に穀潰し居ても備蓄減るだけでただの無駄だろ
54:>>1
仰るとおりでゲス
でも船長気に入ったやつなら無理矢理勧誘するタイプだし
あとワイ剣士と同期だからってのもあるかも
船降りるっていうと船長が肉食いながらぐるぐる巻にしてきて、打ち上がった魚みたいにされる
55:名無しの海賊団
ビチビチ死んだ魚の目で抵抗するイッチが見える見える……
56:名無しの海賊団
まあ初めて仲間になったなら愛着あるか……?
57:名無しの海賊団
船長肉食いすぎでは?
58:名無しの海賊団
>>1
もしかして麦わらの一味?
59:名無しの海賊団
は?
60:名無しの海賊団
は?
61:名無しの海賊団
マ?
62:名無しの海賊団
主人公一行じゃん
63:名無しの海賊団
どうせそっくりさんだろ
だろ?
64:>>1
身バレが早すぎる
ご推察のとおり一味でパンピーやらせてもらってます
【画像】
65:名無しの海賊団
あら
66:名無しの海賊団
この麦わら帽子は間違いないですね
67:名無しの海賊団
主人公じゃねぇか!
68:名無しの海賊団
刀3本ってゾロしかいないもんな
69:>>1
一応雑用とか手伝いとか率先してやってるけど戦闘とか本当に役立たずだし……
迷惑かけたくないからさっさとフェードアウトして皆の手配書見てニヤニヤする連中に仲間入りしたいんや
70:名無しの海賊団
ニヤニヤて
71:名無しの海賊団
それはそれとしてすっかり絆されているイッチであった
72:名無しの海賊団
でもイッチって偉大なる後悔入ってるよね
なら最初の島出る頃にはバロックワークスに追われね?
73:名無しの海賊団
>>72
偉大なる後悔(誤字にあらず)
74:名無しの海賊団
それ
75:名無しの海賊団
敵は多いからね
76:名無しの海賊団
ルフィくん各方面に喧嘩売ってくスタイルだし
77:名無しの海賊団
安息の地はないねぇ
78:>>1
それほどでもある
幸いウイスキーピークにはこれから着くわけだし、このあたりが引退どころかなって思うわ。さすがにバロックワークスも特徴もない無名のパンピーなんて人質の価値すらないって思うでしょ
これ逃したらアラバスタまで夜も眠れんわ
今のうちにビビに媚び売ってこ
79:名無しの海賊団
打算で王女に近づく人間の屑
80:名無しの海賊団
恋のナイトがブチ切れそうで草
81:名無しの海賊団
なんでサンジイッチに優しいの
82:>>1
>>81
配膳とか皿洗いとか率先して手伝ってるから
他に役に立たないしやっとかないと居心地悪すぎるからほぼ毎日やってるわ
83:名無しの海賊団
そこは律儀なのね
84:名無しの海賊団
単に弟扱いされてるだけでは?
チョッパーみたいな
85:>>1
(自分で言っててアレだけど、偉大なる航路に入って引退時って無理あるのでは?)
>>84
アッ……(納得)
86:名無しの海賊団
だからそう言ってるって
87:名無しの海賊団
そう
88:名無しの海賊団
終盤のインフレがエグすぎて忘れがちだけどそもそも偉大なる航路に入ること自体リスクなんだよなぁ
89:名無しの海賊団
つーかイッチ強いの?
90:名無しの海賊団
鍛えれば鍛えるほど強くなる世界やぞ
ワイやったらワンピ世界って自覚した時から鍛えるぞ
91:>>1
>>90
つ>>38
92:名無しの海賊団
ナミより弱いんか……
93:名無しの海賊団
何が楽しくて生きてんの?
94:名無しの海賊団
大人なのに恥ずかしくないの?
95:名無しの海賊団
いや待て慌てるなお前ら
まだ子供なのかもしれない
96:名無しの海賊団
そっかイッチの年齢まだ聞いてなかったな
97:>>1
>>96
ろ、16ちゃい
98:名無しの海賊団
草
99:名無しの海賊団
草
100:名無しの海賊団
充分に大人で草
101:名無しの海賊団
ぎ、義務教育終わったばかりだから(震え声)
102:名無しの海賊団
大海賊時代に義務教育も何もあるか!
103:名無しの海賊団
いやほんと今まで何してきたん?
104:>>1
ま、まあ、覇気はちょっと興味あったから色々試行錯誤してみたから一通りは使えるよ
カイドウさんも覇気こそが世界を制するって言ってたし
105:名無しの海賊団
ええ……
106:名無しの海賊団
なんで先にそこやるんだ
107:名無しの海賊団
階段何十段も飛ばしすぎィ!
108:名無しの海賊団
逆に覇気使えるのになんで戦闘で役立たずなんだよ
109:名無しの海賊団
わかった
イッチ覇気の修行ばかりやってたから基本的な身体づくりとかできてないんやろ
110:>>1
ぐぅ
111:名無しの海賊団
草
112:名無しの海賊団
図星か
113:名無しの海賊団
草
114:名無しの海賊団
つまりあれか
見聞色でどこから攻撃が来るってわかってても避ける能力がないし、
武装色で殴ろうにも身体能力貧弱すぎて当てられない……ってコト!?
115:>>1
>>114
ワァ……アア……(肯定)
ついでに言うと覇王色も弱すぎてネズミくらいしか気絶させられん
116:名無しの海賊団
覇王色持ってんのか……
117:名無しの海賊団
宝の持ち腐れすぎて草
118:名無しの海賊団
王の資質(笑)
119:名無しの海賊団
どうしてこんなになるまで放っておいた! 言え!
120:名無しの海賊団
ワンピ途中で読むのやめたけど覇気って何
121:名無しの海賊団
自分で調べろハゲ
122:名無しの海賊団
ものすごくざっくり言うと
小学生がいきなり大学の赤本やってるレベル
123:名無しの海賊団
>>122
これは生きるのが下手すぎる
124:名無しの海賊団
今からでも遅くないぞイッチ
コビーだって40日前後であんな変貌遂げるんだぞ
125:名無しの海賊団
>>124
40日!? うせやろ!?
126:名無しの海賊団
よくよく考えたらメリー号もらってから1ヶ月弱でウォーターセブンはさすがに無理ありませんかね……?
127:>>1
>>124
やだ
修行とか辛いの大嫌いなんだわ
128:名無しの海賊団
完全に思考がこどおじで草
129:名無しの海賊団
お前もう船降りろ
130:>>1
だから初めから降りたいって言ってんだろ!!!!!
いい加減話を進めさせろよ!!!
131:名無しの海賊団
そうだったわ
132:名無しの海賊団
ようやくスレタイ回収か
133:名無しの海賊団
やっぱ安価だ
134:名無しの海賊団
はよ
135:名無しの海賊団
安価しろ
136:>>1
だから安価しないって言ってるよね???
137:名無しの海賊団
しろハゲ
138:名無しの海賊団
諦めろイッチ
このスレ民は安価しないと助言してくれないぞ
139:名無しの海賊団
書き込む板間違えたな
140:名無しの海賊団
それ含めて生きるのが下手すぎて草
141:>>1
くっそくっそ
なら何を安価すればいいんだよ
142:名無しの海賊団
ようやく観念したな
143:名無しの海賊団
スレの趣旨的にはどこで船降りるかか?
144:名無しの海賊団
修行の内容だろ
145:名無しの海賊団
強くなれば船降りる理由なくなるしな
146:名無しの海賊団
逆に船降りられなかった時の罰ゲーム考えようぜ
147:名無しの海賊団
>>146
えっなにそれは
148:名無しの海賊団
追い込んでいくスタイル
149:>>1
あーはいはいじゃあこんな感じで
安住の地(仮)>>167
修行の内容>>174
罰ゲーム>>183
150:名無しの海賊団
何投げやりになってんだよ
151:名無しの海賊団
まじめにやれ
152:名無しの海賊団
加速
153:名無しの海賊団
まじめに安価ってなんだよ(哲学)
154:名無しの海賊団
ksk
155:名無しの海賊団
かそ
156:名無しの海賊団
かそく
157:名無しの海賊団
リトルガーデン
158:名無しの海賊団
ドラム王国
159:名無しの海賊団
ドレスローザ
160:名無しの海賊団
ワノ国
161:名無しの海賊団
ワノ国
162:名無しの海賊団
空島
163:名無しの海賊団
ワノ国
164:名無しの海賊団
ゾウ
165:名無しの海賊団
ウォーターセブン
166:名無しの海賊団
ワノ国
167:名無しの海賊団
アラバスタ
168:名無しの海賊団
ワノ国
169:名無しの海賊団
ksk
170:名無しの海賊団
かそく
171:名無しの海賊団
海王類スパーリング
172:名無しの海賊団
六式
173:名無しの海賊団
遠泳
174:名無しの海賊団
一味全員に聞いたものを全部やる
175:名無しの海賊団
筋トレ
176:名無しの海賊団
魚人空手
177:名無しの海賊団
かそく
178:名無しの海賊団
かそ
179:名無しの海賊団
加速
180:名無しの海賊団
インペルダウンLEVEL6往復
181:名無しの海賊団
エネルソロ討伐
182:名無しの海賊団
スマイルチャレンジ
183:名無しの海賊団
スマイル食べる
184:名無しの海賊団
スマイル
185:名無しの海賊団
空島スカイダイビング(ソロ)
186:名無しの海賊団
ここのスレ民鬼しかいない説
187:名無しの海賊団
ひたすら尊厳破壊させようとする層いるな
188:名無しの海賊団
スマイルはやめろォ! (建前)
やめろォ! (本音)
189:名無しの海賊団
熱いワノ国推し
190:名無しの海賊団
あっ
191:名無しの海賊団
麦わらの一味の脳破壊はいいぞ。
192:名無しの海賊団
失敗したら笑うことしかできなくなる
成功してもキメラの出来上がり
うーんこの曇らせ製造機
193:名無しの海賊団
スマイルは確かにエグいけどエネルソロ討伐も大概やぞ
194:名無しの海賊団
>>193
覇気使えてもルフィじゃないとほぼ無理ゲーなんだよなぁ
195:名無しの海賊団
しれっとカイドウさんいて草
196:名無しの海賊団
これで修行も手を抜けなくなったねぇ(暗黒微笑)
197:名無しの海賊団
罰ゲームでみんなイキイキするの草なんだ
198:名無しの海賊団
いざとなったら力づくで一味抜ければいいやん
覇気使えるんやし死ぬ気で鍛えれば出し抜けるやろ
199:>>1
うおおおおお!!! 目指せ玉の輿!!!!
助けてビビえもん!!!
200:名無しの海賊団
根性が腑抜けすぎる
201:名無しの海賊団
ナミより強欲で草
202:名無しの海賊団
別に玉の輿にはならなくても良いのでは……?
◆◇◆◇◆
どうすれば強くなれる、と聞いてみた。
「肉食え!」
「そういうこと言ってないんだけど」
「痛えェ!」
肉のことしか頭にない船長にデコピンを一発。
吹き飛ぶことはないが、額は赤く腫れている。
巨大クジラの胃の中から脱出し、傷ついたメリー号の修理を終えて腹ごしらえをしていた。期待通りのゼロ回答に溜息をつくと仲間たちも会話に加わっていく。
「んなこと言っても肉はお前が全部食っちまうだろ」
「ああ! サンジ! 肉食いてぇ!」
「今も食ってんだろ! ちゃんと味わえエレファント・ホンマグロ!」
ドン、とテーブルに切り崩された身が乗せられる。
どこの部位も脂がのっていて、ルフィの口から滝のように涎が噴き出す。
「サンジってマグロの解体もできるのすごいよね。料理人の中でもマグロ解体って限られた人しかできないみたいだよ。どう思う、ナミ?」
「え? うーん、さすがサンジくんよね?」
「ナミすぅわんのためならいくらでも解体するからねェ〜〜〜〜♡♡♡」
「んだよ、マグロだったら俺も斬れるぞ」
「うっせぇクソマリモ! お前斬ることしかできねぇだろ!」
「アァ!?」
いつものようにゾロとサンジの間に火花が散る。
メリー号で船番をしていたゾロだったが、せっかくのマグロだからといってハジメが連れてきたのだ。
良かれと思って連れてきたのに、結局いつもの流れになった。二人は無視してマグロの赤身を飲み込んだウソップが口を開く。
「なんだ、ハジメ。俺の強さが知りたいってかァ?
よぅし、聞かせてやる! キャプテン・ウソップの強さの秘訣は──────」
「じゃあいいや。ナミは何かいい案ある?」
「って聞けェーーーー!!!」
「いやあたしも強いわけじゃないけど……別に自分が強くなる必要ってなくない? 強い武器とかあれば充分だと思う」
「確かに。やっぱ同じ視点で見てくれるの有難いな」
「何ナミさんに色目使ってんだテメェコノヤローーーー!!!」
「狂犬かな?」
情緒不安定な恋のナイトは無視し、
少年は一同から聞いた情報をまとめる。
『肉』
『筋トレと睡眠と酒』
『武器』
『ハッタリ』
『愛』
「やばい、参考になりそうなのがナミしかいない」
「うぉい待て! 俺はまじめに答えたぞ!」
「おれもマジメだぞ!」
ウソップとルフィが肩を組んで抗議するがスルーする。確かにハッタリは大事だけど、あくまでウソップの機転の良さは才能と見ているせいか、どうも真似できる気がしない。
ルフィは論外である。肉を食えば傷も癒えるのはお前だけだと言いたい。
「そもそも、この手の話は際限ないだろうが。強ェ奴はそれぞれ試行錯誤しながら鍛錬してるから強ェんだ。近道なんて探している暇あったら行動しろ」
「いやまあ正論なんだけど……っと、ゾロのジョッキ空いてるじゃん。注ぐから出して」
「ん、悪ィ」
瓶に入った酒をゾロのコップへ一気に傾ける。
最後の一滴になるまで注ぐと、出てきた泡が表面張力で溢れないようなギリギリのラインで止まる。
些細な日常行為だったが、あらかじめこうなることを
「そもそも何でこんな話してんだ? 前からずっと降りる降りるって言ってたの諦めたのか?」
「え、降りていいの?」
「「「「「ダメだ(よ)」」」」」
「ひん……」
しゅん、とハジメは小さくなる。
ウソップは遊び相手が、ゾロは飲み相手が、サンジはアシスタントが、ナミはまともな人間が居なくなることが、そして何より──────
「なら俺の役割ってなにさ」
「「「「ルフィの世話係」」」」
「あー……」
「お前らァ!」
船長のストッパーがいなくなるのは避けたいわけだ。何故かわからないが、ハジメの拳は打撃の効かないゴム人間のルフィに効く。ルフィが「じいちゃんに殴られたみたい」と言うように、彼の暴走に対してお灸を据えることができるのはハジメしかいないわけだ。
……ナミもできるじゃん、と言葉が出かけたハジメも、ここでは飲み込んでいた。
「まあ俺も思うところはあるってこと。アーロンパークじゃ完全に役立たずだったし」
「……まあさすがにグルグルパンチはないよな」
殴り込みに行った男性陣は、手下ひとりに雄叫びをあげながら両腕を回して突撃したハジメの姿を思い出す。当然、頭を掴まれて投げ飛ばされ見事返り討ちにされたわけだ。
仲間になってから彼の戦績はその一戦のみ。白星を上げるのはいつになることやら。
「別に強い弱いとか関係ねェって言ってんのに」
「俺が気にすんの。まあ少なくともアラバスタまでは一緒にいるつもりだから」
「なんだそこ?」
「砂漠の島だよ。なんかゴタゴタしているみたいだけど結構住みやすそうで良いかなって思ってる。ほらマグロの頭って希少部位だし、ルフィ食べなよ」
「マジか!? 食う!!」
エレファント・ホンマグロの頭をそのまま口に入れるルフィ。希少部位、と聞いて黙っていられない他の仲間……というより、殆ど一人でマグロを食い尽くした船長の横暴に対して抗議する。
その光景を眺めるハジメは笑みを浮かべていた。
皆、これからの冒険に期待で胸を膨らませているんだろうと考えていた。
◆◇◆◇◆
220:>>1
【やることリスト】
・肉食べる
・筋トレと睡眠と酒
・武器作る
・ハッタリ考える
・愛?
やっぱり徹底的に仲良くなった後に俺がスマイル食べてこいつらの脳破壊してやろうかな
221:名無しの海賊団
ポジティブで草
222:名無しの海賊団
スマイルはワノ国までずっと船降りれなかった時の罰ゲームにしておこうず
その方が破壊力高そう
223:>>1
せやな
どうせやるなら盛大に花を咲かせたい
・ハジメ(イッチ) 役職:見習い/雑用/ルフィ係
スレ主。転生者。「序盤の海で覇気使えたらかっこよくね?」などと小学生レベルの思考で鍛えまくったのはいいが、対人戦闘の経験が足りず、偶々いた島に略奪しに来たアルビダの下っ端にすら負ける情けないやつに。
懲りて慎ましやかに生きたいと思っていても、なし崩し的に麦わらの一味入りしてしまい、降りるに降りられなくなってしまった。
掲示板に関してはスレスレの実の全身掲示板人間……というわけでもなく、転生者特典のようなものなので悪魔の実は食べられる(ニッコリ)
スレ民へ助けを求めたらいつの間にか追い込まれていた模様。便所の落書きに何を期待したのやら。
当面の目標は安価の特訓を渋々こなしながらビビに媚を売ること。しかし一味の脳破壊も「それはそれでおいしいな」とか、この世の終わりみたいな思考を持ち始めている。
・スレ民
どこかの時空にいる一般読者たち。
シャンク○単為生殖説とヒグマ56皇殺し説くらいには信用できる。
・麦わらの一味の皆さん
各々思惑はあるにせよ、イッチを船から降ろすつもりはない模様。
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件/2
ありがたいけど怖いねェ〜〜〜!!!
400:名無しの海賊団 ID:xlfUJZR3m
だからヒグマが56皇殺しは無理があるって
401:名無しの海賊団 ID:jWKKyTW2C
ヒグマさんを馬鹿にするなよ?
四皇の見聞色を煙幕一つですり抜ける男だぞ?
402:名無しの海賊団 ID:kHUhY8PJf
ガープのお膝元で800万ベリーの手配は普通じゃない
403:名無しの海賊団 ID:szZhgmRXG
>>402
海軍大将緋熊だからな
404:名無しの海賊団 ID:XLsaXGJi+
設定が盛りに盛られすぎている
405:名無しの海賊団 ID:mmRmZls0Z
多分オダセン聖もそこまで考えていないと思うんですけど(名推理)
406:名無しの海賊団 ID:RrOzVQ1y8
ならどうしてSBSでも一切触れないんですかねぇ……
407:名無しの海賊団 ID:PguEilSgT
同じく読者のおもちゃになってたウルージさんが本当に強かったんだからヒグマさんも相当なはず
408:イッチ ID:oV+OwtFfi
まだ赤髪海賊団の自作自演説の方が信憑性あるんだよなぁ……
409:名無しの海賊団 ID:bSBmEv/SB
>>408
おせーよイッチ
410:名無しの海賊団 ID:YMtFh+c6r
来たか!
411:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
>>408
安価はよ
412:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
>>408
いいから安価
413:名無しの海賊団 ID:WWIPGKuaO
>>408
シャンクスがルフィを騙すなんてあり得るわけないだろ! なんて酷いことを思いつくんだ!
414:名無しの海賊団 ID:iBixNmjTX
>>408
今どこらへん?
415:イッチ ID:oV+OwtFfi
安価しないよ?
>>413
鏡やるよ
>>414
ちょうどウイスキーピーク終わったとこ
ビビとカルーが仲間になったで
416:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
なんで? (殺意)
417:名無しの海賊団 ID:OjKcmRSsq
イッチは俺達のオモチャのチャチャチャ!
418:名無しの海賊団 ID:WWIPGKuaO
原作通りじゃん
419:名無しの海賊団 ID:x7y9Erw80
戦闘どうだった?
420:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>419
ゾロがひとりでやってくれました
421:名無しの海賊団 ID:THO6rKjKo
ニートじゃん
422:名無しの海賊団 ID:Ypn7g1XBe
期待通りのニートっぷり
423:名無しの海賊団 ID:FwTeELht5
ニトニトの実の全身ニート人間
424:名無しの海賊団 ID:46Uc6E3hQ
これじゃあ進歩ないじゃん
425:イッチ ID:oV+OwtFfi
ふざけんな一応見えないところでちゃんと役に立ったぞ
襲撃前にナミ起こしたりウソップとサンジを逃げやすい場所に避難させたり
あとルフィとゾロの喧嘩も仲裁したからな
426:名無しの海賊団 ID:FeN/WK4dV
戦え
427:名無しの海賊団 ID:ZCOa4woHj
ネームドキャラ倒してから言えよ
428:名無しの海賊団 ID:WSMuYwE4u
一味トップ2の喧嘩止めるって何したし
429:名無しの海賊団 ID:pTgNnvLQO
>>428
ナミが止められるんだったらイッチにも止められるだろ
あっ、イッチってナミより弱ゲフンゲフン
430:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>426
>>427
思い返せばミス・バレンタインくらいならいけたかも
直線に落ちてくるだけなら見聞色で見なくても避けられるし
>>428
ナミの代わりに武装色パンチしただけ
>>429
取り消せよ……今の言葉ァ……! (図星)
431:名無しの海賊団 ID:QgBG0G+7i
実に空虚じゃありゃせんか?
人生空虚じゃありゃせんか?
432:名無しの海賊団 ID:d1n17ns8s
なら次はちゃんと戦って♡
433:名無しの海賊団 ID:PxGf/HLSL
つーかどうやってイガラムたち出し抜いたんだ
イッチ酒強いの?
434:名無しの海賊団 ID:308bGL+x/
やめろめろめろ>>431めろ!
435:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>432
おう考えてやるよ(やるとは言っていない)
>>433
俺飲んでたの麦茶だし
みんな酒飲んでると勘違いしてたっぽい
436:名無しの海賊団 ID:oIfG3mtJ+
麦茶だコレ!
437:名無しの海賊団 ID:V87X6hDYf
麦茶だコレ!
438:名無しの海賊団 ID:h7dATIFuz
あまりにも気持ちの良い飲みっぷりで周りが気づかないとかギャグかな?
ギャグだわ……
439:名無しの海賊団 ID:Qkr3+8Tfx
じゃあ最初の方の戦闘も見てたわけか
440:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>438
普段ゾロと飲み慣れてるからな
>>439
もち
ビビの魅惑のメマーイダンスもちゃんと見聞色で見たぞ
次の宴会芸決まったな
441:名無しの海賊団 ID:nx8wHGvHE
草
442:名無しの海賊団 ID:SRNGAD/UA
やめてあげてよぉ!
443:名無しの海賊団 ID:7xR7WMaLH
他人の黒歴史を掘り起こす人間の屑
444:名無しの海賊団 ID:UdbwAH+FX
亡命希望先の王女にする態度か? これが……
445:名無しの海賊団 ID:rScGPfe60
変に恥ずかしがったらクロコダイルに怪しまれるからビビも必死だったのよ
もっとやれ
446:名無しの海賊団 ID:qeKWF291R
王女迫真の小物ムーヴ、見たけりゃ見せてやるよ(クネクネ)
447:イッチ ID:oV+OwtFfi
まあ今は楽しめる精神的な余裕もないだろうしカルーと練習しとくわ
448:名無しの海賊団 ID:HvcfM7tsM
>>447
そんなことしてる暇あったら修行しろ
449:名無しの海賊団 ID:S7sp2YMPQ
突然巻き込まれるカルー君かわいそう
450:名無しの海賊団 ID:wPulQayR1
そういえばちゃんと修行してんのかよ
451:名無しの海賊団 ID:GNDPuyE2y
安価は絶対だぞ
452:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>448
>>450
一応筋トレと睡眠は毎日ちゃんとやってるよ
武器はワポルからパクろうかと思ってるし、ハッタリも一応考えてる
肉は全部ルフィに食われるし愛は知らねェや
453:名無しの海賊団 ID:I3EHmCbc3
うーんこの圧倒的タンパク質不足
454:名無しの海賊団 ID:y6lUfEEYx
まず船長から肉を取り上げるところからはじめないといけませんねぇ……
455:名無しの海賊団 ID:mT27rIHAd
普通に筋肉傷つけているだけじゃん
456:名無しの海賊団 ID:n5U10tlk/
全身武器庫みたいな奴だしなワポル
確かにおあつらえ向き
457:名無しの海賊団 ID:uIW97Klbz
覇気使うならちゃんと纏わせられるものにしとけよ
458:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
何やってんだイッチ
武器も安価しろ
459:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>458
?????????
460:名無しの海賊団 ID:lIyS9sj5R
当たり前だよなぁ?
461:名無しの海賊団 ID:a2Rpy7UVP
安価から逃げるな
462:名無しの海賊団 ID:8uf9It2mo
ついでにリトルガーデンでの対戦カードも決めるか
463:イッチ ID:oV+OwtFfi
このスレ安価スレじゃないんだけど
464:名無しの海賊団 ID:a2Rpy7UVP
口答えするな
465:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
いいからやれ
466:名無しの海賊団 ID:SPtFUZ05C
やらないともう助けないぞいいのか
467:名無しの海賊団 ID:Vjh4Uitk2
>>466
助けるどころか追い込んでばっかなんだよなぁ……
468:名無しの海賊団 ID:alNFFW1FW
行動安価とらないだけマシだと思え
469:イッチ ID:oV+OwtFfi
武器>>479
戦う相手>>483
470:名無しの海賊団 ID:qUZvhHPFe
この渋々感すき
471:名無しの海賊団 ID:a2Rpy7UVP
待ってた
472:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
愛してるよイッチ♡
473:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
ずっと応援してるからね♡
474:名無しの海賊団 ID:2yPOlbG9y
水を得た魚のように活発になるスレ民たち
475:名無しの海賊団 ID:kGDui3p6V
刀
476:名無しの海賊団 ID:N3wAbyJiG
爪
477:名無しの海賊団 ID:d/ZCAY7rY
バズーカ
478:名無しの海賊団 ID:R7F7G7M6D
ヨーヨー
479:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
糸
480:名無しの海賊団 ID:a2Rpy7UVP
二丁拳銃
481:名無しの海賊団 ID:8Jl/sWYBi
ミス・バレンタイン
482:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
Mr.3
483:名無しの海賊団 ID:wBm9arZyh
Mr.5
484:名無しの海賊団 ID:bEvCd5zt/
ミス・ゴールデンウィーク
485:名無しの海賊団 ID:gxm0vmCOG
Mr.3
486:名無しの海賊団 ID:4qTPSMoqb
>>479
フッフッフッフ!
487:名無しの海賊団 ID:Uo/ucj547
>>479
フッフッフッフ!
488:名無しの海賊団 ID:Q1oqoyc+a
ドンキホーテ・ドフラミンゴ41歳!
489:名無しの海賊団 ID:blNj/2yTc
見てろよテメェら! フッフッフッフ!
490:名無しの海賊団 ID:k9SgGk3+I
>>488
まだ39歳なんだよなぁ……
491:名無しの海賊団 ID:xm5BzwAjh
糸で幼女を縛り上げる……?
見損ないましたイッチ、海軍に通報させてもらうね
492:名無しの海賊団 ID:utICfLBr8
ドンキホーテ・ドフラミンゴ41歳!
493:名無しの海賊団 ID:VbKbQHkxB
さすがに幼女に勝てなかったら目も当てられんぞ
494:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>491
>>493
安価は鼻くそ野郎だぞちゃんと見て
糸……糸かぁ
完全にドフィの二番煎じになりそう
495:名無しの海賊団 ID:3q2vg1JwH
そこは工夫次第やろ
496:名無しの海賊団 ID:EvlybnJxG
幸い障害物一杯あるんだからいくらでもやれるだろ
497:名無しの海賊団 ID:2Zp+rt+30
罠とか仕掛けるんです?
498:イッチ ID:oV+OwtFfi
こういうのウソップの領分なんだけどな
しゃーないちょっと考えてみるわ
499:名無しの海賊団 ID:jyqW2IY+v
四の五の言わずにやれ
500:名無しの海賊団 ID:k/zm346/7
ようやくイッチが主体で戦うのか
501:名無しの海賊団 ID:bEvCd5zt/
どうせならゴールデンウィークちゃんと戦ってほしかったけど残念
502:名無しの海賊団 ID:sePtaVIq+
Mr.3書いたやつ、明らかに一番強いやつと戦わせようとしてるの草
503:名無しの海賊団 ID:vcJxy02hw
Mr.3ってそこまでじゃね?
504:名無しの海賊団 ID:aBeQn1i2v
>>503
屈指の有能キャラやぞ
505:名無しの海賊団 ID:Anv8eX6gc
>>504
ドルドルは応用ききすぎてやばい
506:名無しの海賊団 ID:Leq+NDmA+
何事も段階よ
アーロン編とか見てみ、必死にグルグルパンチしてるイッチ見れるぞ
507:名無しの海賊団 ID:w8skBxLDI
>>506
草
508:名無しの海賊団 ID:MA0vBCMEe
>>506
草
509:名無しの海賊団 ID:CJ+c09e2w
>>506
やっぱりこどおじじゃないか!
510:名無しの海賊団 ID:vYLK7MRvy
>>506
完全に絵面がギャグなんだよなぁ
511:名無しの海賊団 ID:7H/DnMdg9
ルフィと一緒に啖呵切ってこれとか
512:名無しの海賊団 ID:meirFsLy7
>>506
これってどこで見れるの?
513:イッチ ID:oV+OwtFfi
や め ろ
拳があたれば勝ちなんだからああもなるよ
514:名無しの海賊団 ID:nj6VTZsFh
それでもあれはないわw
515:名無しの海賊団 ID:RJepaZPmT
当たっても腕力皆無の貧弱な覇気パンチやろ
516:名無しの海賊団 ID:G6skrs2mf
某烈さんレベルでようやく技として成り立つ高等技術やぞ(技とはいっていない)
◇◆◇◆◇
海上で轟々と燃え上がる船。
ウイスキーピークで、自ら囮になると言ってくれたイガラムが無残にも襲われてしまった。凄惨な光景とバロックワークスのやり方を前にビビを含めた麦わらの一味も唇を噛みしめる。
「イガラムさん生きてるねこれ」
そんな中、ビビにそんな言葉をかけてくれたのは同い年の男の子だった。
海賊とは思えないような温和な雰囲気がかえって特徴になってしまっている少年ことハジメは、実はこの海賊団の古株らしい。
「あっ、なんだ、ちくわのおっさん生きてんのか!
ししし、よかったなぁビビ!」
「……ちょっと待って。なんでそんなことがわかるの………?」
「だって
ルフィの言い分にはまるで根拠はない。
けれど、共にいるゾロもナミも一切疑う様子は見られない。今までの彼らの旅で同じようなことがあったのか、それとも余程信頼されているのか。
「まあ後ろ向きなこと考えてばかりじゃ、全部悪い方向に進んじゃうよ。死んだって思うのは死体見てからにしよう。すぐには無理かもしれないけど、少しずつ切り替えていこう」
ビビにとってイガラムは小さい頃から共に過ごし、バロックワークスに潜入している時も二人で苦楽をともにしてきた大切な人。
だからこそ、死を弔うよりも生を願う方が建設的だ、と言いたいのか。
「……ええ、気遣ってくれたのね。ありがとう」
そう答えると優しく笑い返すハジメ。
ああ、彼は確かに海賊らしくない。
ルフィたちもビビの知る海賊とは外れているが、ハジメはそれよりも感性が一般人寄りなのはわかる。貴族のよう、とまではいかないものの、行動の節々から育ちの良さが垣間見える。
同い年なのも相まってなのか、話が合って遠慮もない。まだ日が浅いが、故郷に残してきた
カルーも懐いていて、こうして船に乗っている間も二人で何かの練習のような遊びをしている。
「ルフィ、唐揚げとソテーどっちがいい?」
「両方!」
『!?』
時々突っ込んだボケをするところもあったりする。
いや、冗談であってほしい。カルーが不憫でならない。
短い航海の中でも親交を深めながら辿り着いたリトルガーデンでも、巨人族の戦士ドリーに恐れを抱くどころか自ら進んでコミュニケーションを取っている。
「げぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
「わーっはっはっはっは!」
樽とジョッキで乾杯を交わす。
飲み競争と言わんばかり息継ぎもせずに中身を一気に飲み干す。そういえばウイスキーピークでもあんな感じに飲んでいたのにどうして酔いつぶれなかったのだろうか。
「「麦茶だコレ!」」
「だっっはっはっはっは! 面白ェなお前ら!」
「ええ……」
仕掛けた側としては、なぜ周りの賞金稼ぎたちが気が付かなかったのか頭が痛くなった。いや、彼の演技力が逸脱していたと言うことにしよう。そうしよう。
楽しい反面、ビビは内心沸々とした焦燥感に駆られ始めていた。
リトルガーデンでログが貯まるまで1年と聞いた。
島に君臨する巨人族が敵対しないことはわかっても、さすがにそこまで待つことはできない。その間に祖国アラバスタがどうなっているのか気が気でない。故に、こうして忘れるためにルフィとハジメの二人とともに探検に出てきたのだから。
すると、不意にハジメがジョッキを置いて立ち上がる。
「……さてと、いい加減痺れを切らすところかな。
そこのお二人さん、
「んあ?」
「え?」
「クワッ?」
飲食店で顔見知りに会ったときのような気安さで話しかけ始めた。
視線の先は何もない茂み、のはずなのに、次第にその輪郭が顕になる。
「……なぜおれ達がいることがわかった」
「あっ、お前ら!」
苦虫を噛み潰すような表情のMr.5とミス・バレンタイン。ウイスキーピークでルフィとゾロに敗れたはずの二人が敵意を隠さずに姿を現した以上、目的は当然に報復に決まっている。
ところが、この場においてその敵意はルフィやビビではなく、残ったハジメに向けられていた。
「ルフィ、多分あいつらの仲間が決闘邪魔しようとしてるよ」
「なにっ! んにゃろう、おれがぶっ倒してやる!」
「あっ、途中でウソップと合流するはずだから一緒につれてってあげてね〜」
Mr.5の作戦は見破られていた。
当初は巨人たちの酒に爆弾を仕込み弱体化させ、さらに隙を見てペットを拉致した上で分断するはずだった。こんな卑劣な作戦を考えるのは、間違いなくMr.3に違いない。
しかしどういうことか。
雪辱を果たすために仕組んだ罠を、悉く見破られている。原因は間違いなく、そのハジメだったのだ。
背筋が凍りそうだ。
もし上手くことが進んでいたら、それこそ窮地に立たされていたはずだ。
しかし、今のビビに焦りはない。
「おいチビ、手ェ貸してやろうか?」
ほら、おかげでこうして1億相当の懸賞金をかけられた
ルフィは真っ先にもう一人の巨人のところに向かってしまったが、それでも戦力はこちらの方が上。勝算は断然こちら側に軍配が上がる。
「いや、貴方も行ってくれ。ブロギーさんのところに仕掛け人がいるはずだから、そっちをお願い」
「……そうか、そいつァ見逃せねぇな」
どういうことか。ハジメはそれすらも断った。
確かにMr.3は強敵だ。だがルフィとゾロの力は既に知っている。あの二人と、他の仲間たちがいれば充分に対処はできると思っていた。
そういった事情を考慮した上で、ハジメはドリーすらもこの場で“余分”と断じたのか。
Mr.5とミス・バレンタインの表情が怒りに変わる。
それはそのはず。バロックワークスのオフィサーエージェントとして、ここまで舐められて黙っていられるはずがない。
相手の敵意につられて対抗するように、ハジメから圧のようなものが滲み出ていた。
ピリ、と空気が重くなる。
一触即発。
火蓋を切ったのは、ハジメの言葉だった。
「瞬きしている間に死人が出ると思うよ?」
「誰がだァ!」
「誰がよォ!」
「俺です」
「キャハハ! 弱っ」
(ええええええええええええええええええ!!!!!)
今度こそ顎が外れそうになるビビとカルー。
どこかで聞いたようなフレーズとともにあっさり負けを認める少年について、ふとルフィはこんなことを言っていた。
『ハジメはスゲェんだ! 戦いは得意じゃねェけど!』
納得した。こうして地面に這いつくばっている彼を見て理解できた。
この人、一味の中で一番戦い慣れしていない──────!
いやだからといって、あれだけ自信満々に啖呵切っておいてそれはないだろう。こと生きるか死ぬかの世界でこんな冗談は勘弁してほしい。
「よし、予定が変わったが──────」
「キャハハハハハ! ええ!」
「クワッ!?」
「くっ! よくもハジメくんを!」
ビビは
Mr.5の能力で爆風を浴びすぎたせいで、汚れてしまった姿が痛々しい。そんな彼を当てになんて──────
ここでビビは気づいた。
ハジメの体は汚れていても、
「次にお前は『我が社の裏切り者を連れて行くとしよう』と言う」
「我が社の裏切り者を連れて行くとしよう……ハッ!?」
「は?」
一転。
寝ていたハジメが起き上がるとともに、腕を天に掲げる。すると、芝生から細いものが宙に舞う。
それは、糸だった。
裁縫などで使うような細い細い糸。
裁縫針の穴に通すことができるそれをハジメは引っ張ると、見事Mr.5とミス・バレンタインの二人に巻き付き、やがて纏めて縛り上げられる。
「こんなもので拘束したつもりだと!」
「舐めんじゃないわよ! すぐに千切って……って硬ッ! なんでこんな丈夫なのよっ!?」
針金やワイヤーのような太さもないのに、その
「ちっ、ならすぐに爆発させてやる……!」
「や、やめなさいよちょっと! そんなことしたら私もまる焦げになっちゃうじゃない!」
「っ! これが狙いか……!」
「ふっふっふっふ!」
ここでMr.5の能力が裏目に出る。
破壊力は抜群の“ボムボムの実”。
それは背中合わせに密着しているミス・バレンタインすらも巻き込んでしまう。
ならばミス・バレンタインの能力で脱出を試みるしかない。
無論、そんな暇を与えられるわけもないが。
「未遂に終わったけどそれはそれ」
このやり取りの間に移動してきたハジメは、裏拳でMr.5の胸元を叩く。
「キツイの一発入れといたから」
続いてミス・バレンタインの方へと向く。
ドアをノックするくらいの軽い打撃。
あんな弱い力で人を無力化することなんて到底無理な話。
「ゲブゥ──────!」
「ひっ!?」
しかし次の瞬間、Mr.5の口からおびただしい血が吐き出された。
力なく倒れ伏す彼の身に何が起きたか理解が及ばない。この、先ほどまで一方的にやられていた男を除いて。
「い、嫌っ、ちょっと、待ちなさいよ……!」
ミス・バレンタインは得体の知れなさに足を震わせていた。それを意にも介さず、ただ淡々と距離を詰めていくハジメ。
味方であるはずのビビも固唾を呑む。
Mr.5を潰れたトマトのような姿にした凶拳が、彼女に触れようとしたその時。
「あ、ごめんビビ。もう限界」
「えっ」
突然、滑り込むように芝生へと倒れ込む。
受け身も取ることもできず、地面と正面衝突した彼とともに、ミス・バレンタインを拘束していた糸も黒色から緑色に戻りながら、はらりと落ちる。
……しばしの沈黙。
この空気を破るのはもちろん、窮地に立たされていた側に決まっている。
「……おっ、おぼえてなさ〜〜〜〜い!!!」
「ま、待ちなさい!」
今がチャンスとばかりに一目散に撤退するミス・バレンタイン。
カルーに乗って追いかけようとするものの、様子が気になって倒れたハジメに視線を向ける。
痛々しいくらいに体中から大量の汗が吹き出ている。息も荒い。
圧倒していたようでも、相当無理をして不思議な力を使ってMr.5たちの攻撃に耐え、反撃してくれたのだろう。そんな彼をこの場に放っておけなくて、ビビはカルーの鞍に彼を乗せる。
戦いに向いてないのに、こんなになるまで頑張ってくれたのだ。おかげで、Mr.3の作戦も初めから破綻させることができたのだから。
ふと、視線が合った。
ハジメは笑いながらサムズアップする。
──────いかにもな空元気でも強がりたいところは、男の子なのね。
緊急事態であることは理解している。
それでもおかしくて、つい久しぶりに心の底から笑ってしまったビビであった。
◇◆◇◆◇
532:イッチ ID:oV+OwtFfi
キロキロは覇気でも無効化できんよ……(血反吐)
533:名無しの海賊団 ID:HSfkeAu6C
イッチ内部破壊できるんか
534:名無しの海賊団 ID:UsXe3l8dV
あれか、弱すぎていつもギリギリの窮地だから覇気だけが鍛えられちゃうのか
535:名無しの海賊団 ID:KXhC40i4O
>>532
直線で落ちてくるだけなら見なくても避けられるって言ってたやつおりゅ???????
536:イッチ ID:oV+OwtFfi
なお5回に1回しか成功しない模様
あと予知した未来だと何度も死んでるし
537:名無しの海賊団 ID:VcmwRj4ET
未来予知もできるのか……
538:名無しの海賊団 ID:VyuxShCPm
覇気の練度に対して素の身体能力が貧弱すぎる
539:名無しの海賊団 ID:xb1PO+AMq
おれは信じていたぞイッチ
次の安価まだ?
・ハジメ(イッチ)
亡命先の王女に媚びへつらいながらも、とうとうやってきた戦闘安価を何とか達成できた男。
昔読んだ漫画を参考に、事前準備とシュミレーションを何度も繰り返してようやく掴んだ勝利。
さらっと見聞色の未来予知ができることが判明。しかし戦闘だと「否が応でも」見えてしまうし、予知でも何度も死んでいる模様。
単純に体力的な負担もさることながら、自分の死ぬ姿を何度も見ているため精神的な負担も計り知れない。
メマーイダンスのモノマネ精度は5割くらい。
カルーはおやつをダシに隠れて練習に付き合わされている。
・スレ民
そんなことは露も知らず安価を強いる。知っていても安価を強いる。
シャンクスより天竜人である可能性が高い奴ら。
・ビビ
色々と余裕がない頃の王女。この世界だと蝋人形にされるどころか、ウソップ、カルーとともにゾロとナミの解放に一役買うことに。
同い年でよわよわなイッチのことをくん付けで呼んでいる。よく話をするが、気候が穏やかで水源が確保できるアラバスタの物件を聞かれて「?」となっている。
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件/3
713:名無しの海賊団 ID:hkzG1pTbt
【悲報】ヒグマさん、56皇殺しじゃなかった
714:名無しの海賊団 ID:YkYR3C/tx
嘘乙
715:名無しの海賊団 ID:p1Pcd8pt+
ソースどこ?
716:名無しの海賊団 ID:mWJX96MZ0
>>715
映画でルフィが子供時代のシャンクスの懸賞金が10億だったと判明したから
717:名無しの海賊団 ID:4xpflnNzs
麦わら帽子かぶってたのに二つ名は赤髪のままなのか
718:名無しの海賊団 ID:xbNyycYwp
>>716
そんな……ヒグマさんは四皇クラスを56人殺したんじゃなくて四皇幹部クラスを56人殺しただけだったなんて……
719:名無しの海賊団 ID:M1uuugYTN
>>718
充分強すぎて草
720:名無しの海賊団 ID:KhlCd2gxR
>>718
むしろ現実味増してきたな
721:名無しの海賊団 ID:qu4IYChlf
>>718
ODくん……とうとうヒグマさんに向き合う決心をしたんだね……
722:名無しの海賊団 ID:dz+LJU/IS
>>718
推定懸賞金560億ベリーはかたい
723:イッチ ID:oV+OwtFfi
カタクリとキングと同格レベルを56人殺したって現実味ない……なくない?
724:名無しの海賊団 ID:Hyh4DxM+2
>>723
ある!(ドン!)
725:名無しの海賊団 ID:uPl40CjMI
来たか、イッチ(ドン!)
726:名無しの海賊団 ID:HG8rMyjVg
>>723
ヒグマさんが最強かどうかは俺達が決めることにするよ
727:名無しの海賊団 ID:Qy6Mz11If
>>723
仮にヒグマさんが最強じゃなくてもイッチ勝てないじゃんwwww
728:名無しの海賊団 ID:fAoVihOwE
イッチ今どこ?
729:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>727
ア……ウス……
今ドラム王国ついた
ナミの五日病治さなあかん
730:名無しの海賊団 ID:vTIev6/OP
強さで誰にもマウント取れるやつがいない件
731:名無しの海賊団 ID:uwndgQH0B
なんでイッチ患ってないの?
732:名無しの海賊団 ID:sreF6Jz2e
そこは原作通りなのね
733:名無しの海賊団 ID:K4/8m+DzY
>>730
Mr.5撃破したじゃん
734:イッチ ID:oV+OwtFfi
一応ローグタウンで買った蚊取り線香ナミに持たせたんだけどダメだったわ
Mr.3の蝋溶かすための火種にして油に引火させたとか言ってた
>>733
真っ向から来たら普通にやられます(小声)
735:名無しの海賊団 ID:FswKQsWUf
もっと虫除けスプレーとか持たせてやれよ
736:名無しの海賊団 ID:ZyMRbLEoW
おじいちゃん、蚊取り線香は持ち歩くものじゃないわよ?
737:名無しの海賊団 ID:XgQynMVaS
さらっとMr.3攻略の一助してる
738:名無しの海賊団 ID:TWvQu5K//
(密林地帯の蚊は線香程度じゃ効果)ないです
739:名無しの海賊団 ID:fqql//YeV
まあドラム王国経由しないとクロコボーイの刺客に襲われちゃうし
740:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
さーて、今週の安価はー?
741:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
ナミの弔い安価しろ
742:イッチ ID:oV+OwtFfi
ころすなころすな安価もしない
>>735
>>738
それしかなかっただけ
現代ほど何でも揃うわけじゃないのよ
743:名無しの海賊団 ID:hoW1bHc4i
は?
744:名無しの海賊団 ID:xCLpSLEJL
許さん
745:名無しの海賊団 ID:WiP8Br5dh
見損なったぞイッチ
746:名無しの海賊団 ID:IXMbxoGYV
リトルガーデンでのイッチはもっと輝いていたぞ!
747:名無しの海賊団 ID:kwAiavlFU
まあ島国やから物資運ぶにも限りあるし
東の海で密林に行くやつなんていないだろ
748:イッチ ID:oV+OwtFfi
というかやることが多くて安価の余地ないわ
ドクトリーヌが山から降りてきてるから待ち伏せしてナミ連れてってもらうし
ワポルたちはルフィサンジチョニキが戦う上に武器も安価で決まったから同行する必要もない
というかウソップが俺の側から離れるなってしがみついてきて動けん
749:名無しの海賊団 ID:sH6h2VK4v
思いっきり原作知識使ってて草
750:名無しの海賊団 ID:hsN219stB
知識なくても見聞色でわかるもんな……
751:名無しの海賊団 ID:9piKHeK8e
ウソップ必死で草
752:名無しの海賊団 ID:ENrZeWN9Z
「し、仕方ないから勇敢なる海の戦士である俺様が守ってやる! 絶対側から離れるな! いいな! わかったか!」とか言ってそう
753:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
歩くレーダーみたいなもんやからなイッチ
754:名無しの海賊団 ID:dqdKuVC11
雑魚だけど無能ではないことが判明した
船降りたいなら降りたいなりに無能アピールしろ!
755:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>752
一言一句同じこといってるぞ
さては現地にいるのか
>>754
やだよ
ただでさえ戦闘で役立たずなのにこれで更に無能だと思われたら本当にいたたまれなくなるだろ航海中地獄だぞ
756:名無しの海賊団 ID:uHQKoY9WJ
>>752
イッチの他にも見聞色持ちが現れるなんてな
757:名無しの海賊団 ID:GSXQ68Ns+
>>752
現地いるなら実況よろ
758:名無しの海賊団 ID:aeXwuFJ9P
>>752
一般ドラム王国民くんオッスオッス
そのまま現地実況よろ
759:名無しの海賊団 ID:ENrZeWN9Z
草
ワイ、ウソップの才能あるかもな……
760:名無しの海賊団 ID:fmRS+HZJE
さらっと流されてるけどイッチ虚栄心バリバリで草
761:名無しの海賊団 ID:P4Ucp+jA0
このスレで最も助言らしき助言が出たのにな……
762:名無しの海賊団 ID:A+4iEdMCC
このイッチ、いくら助言しても「やだよ」の三文字で却下しそう
763:名無しの海賊団 ID:NUw3DzVRN
・努力して強くなればいいじゃん
→やだよ努力嫌いだし
・なら無能アピールして追い出されればええやん
→やだよ航海中の肩身狭くなるし
うーんこの
764:名無しの海賊団 ID:scwu4kBuX
スレ民も大概だけどイッチも大概で草
765:名無しの海賊団 ID:EfXs5WLDb
体だけじゃなくて心までワガママ
ある意味覇王の器だな
766:名無しの海賊団 ID:4mQydixzj
>>765
ワガママどころかカスカス
クズの末路
767:イッチ ID:oV+OwtFfi
そんなことないぞ実際アドバイスくれた>>754にはめっちゃ感謝してる
ただこんな気のいいやつらからボロクソにされて捨てられてみるの想像してみろ?
俺はこの傷を抱えて一生生きていかないといけないのか?
二度目の人生とはいえ耐えられない
768:名無しの海賊団 ID:RmfBEAijp
気持ちはわかる
769:名無しの海賊団 ID:sWV/nEdqv
まあ確かに
770:名無しの海賊団 ID:UR1M3BHcg
麦わらの一味で駄目なら本当に世界不適合者すぎて救えないわ
771:名無しの海賊団 ID:KAvDAsPpv
でも努力嫌いなのは単にクズなだけなんだよなぁ……
772:名無しの海賊団 ID:M00+BoSxj
せっかく覇気の才能あるのに勿体なさすぎる
そのまま肉体改造して覇王目指して♡
773:イッチ ID:oV+OwtFfi
ああ忙しい
ゾロが寒中水泳とかアホなことやるから服とか用意しておかないといけないし
巻き添え食らったカルーも救出しないといけないし
私いじけちゃうし
774:名無しの海賊団 ID:jhVOZiAmp
逃げた
775:名無しの海賊団 ID:3Iv3n1IXU
逃げたぞ
776:名無しの海賊団 ID:Az5bl5QIS
追うえ! 安価させろえ〜!
777:名無しの海賊団 ID:3D9tuhJqw
(イッチがいじけるのは関係なくない?)
778:名無しの海賊団 ID:9+bwCzsqj
実際助言聞かないなら恨みっこなしで安価させるしかないのでは……?
779:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
よし安価だ
780:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
やっと安価?
781:名無しの海賊団 ID:L2k5jMbiI
>>779
>>780
こいつら安価のためにしか生きていないのか?
782:名無しの海賊団 ID:qXlp2qjiB
あれ、ゾロの寒中水泳ってことはその後戦闘じゃね?
783:名無しの海賊団 ID:qaLPYATKu
あっ
784:名無しの海賊団 ID:Gn5yun5Q3
せやな
785:イッチ ID:oV+OwtFfi
おう
ワポルんとこのいっぱんへたちが来た(白目)
786:名無しの海賊団 ID:richHfmCB
草
787:名無しの海賊団 ID:/iccbnkQo
草
788:名無しの海賊団 ID:JK63hxPdp
イッチ忘れてたな
789:名無しの海賊団 ID:NlVZlJFmk
まあここゾロがさらっと全滅させてたしな
790:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
いいから安価しろ
いつまでパンツ脱いでればいいんだよ
791:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
安価まだ???
そろそろ逆立ち辛いんだけど
792:名無しの海賊団 ID:uAlzajcUj
この二人ブレないな
793:名無しの海賊団 ID:qvMeWvH5k
イッチが安価するまで何かの耐久レースとかされてるんです……?
794:名無しの海賊団 ID:C2baLvO+N
このまま安価しないとお腹冷やすやつと頭に血が上りすぎるやつが生まれてしまう!
はやくしろーっイッチー!
間に合わなくなってもしらんぞー!
795:イッチ ID:oV+OwtFfi
作戦>>804
796:名無しの海賊団 ID:lh4Qoa0+c
ヒャッハー! 新鮮な安価だー!
797:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
さすが俺達のイッチだぜ!
798:名無しの海賊団 ID:N2dI2YKzB
別に安価しなくてもお腹冷やすやつと頭に血が上りすぎるやつが生まれるだけなんだよな……
799:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
しゅき♡
800:名無しの海賊団 ID:5FvXw9DSH
初めての対多人数の戦闘か
801:名無しの海賊団 ID:JsvM3e/w5
安価の時間だああああああ!!!!
802:名無しの海賊団 ID:uYUKbtH+c
雪玉投げる
803:名無しの海賊団 ID:t32sv7WP2
効くまで覇王色飛ばし続ける
804:名無しの海賊団 ID:Ybxlw2X2j
雪だるま作ろう
805:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
ストリングプレイスパイダーベイビー
806:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
ひたすら武装色パンチ
807:名無しの海賊団 ID:VU6pluIkK
>>804
!?
808:名無しの海賊団 ID:hI1TzVFrS
>>804
ドアを開けて一緒に遊ぼう!?
809:名無しの海賊団 ID:wgjTSliC+
>>804
どうして出てこないの!?
810:名無しの海賊団 ID:Q42OvW4UY
もう10年近く前になるのか
はやいもんだな
811:名無しの海賊団 ID:mv0nHRsQA
>>810
うせやろ……
812:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
>>810
嘘……
813:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
>>810
そんな……
814:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>810
あり得ない……
815:名無しの海賊団 ID:IznEMuxnS
イッチ安価の結果よりもショック受けてて草
816:名無しの海賊団 ID:/3embf612
年月って経つのはやいよね
817:名無しの海賊団 ID:qoP6iFY8X
草
818:名無しの海賊団 ID:6DHlh+kej
やーいやーいおじさーん
819:名無しの海賊団 ID:dvMlPweTa
いやでもこれどう戦うんだ?
820:名無しの海賊団 ID:9g4nb7Pel
そりゃあもう雪だるま作るんだよ
821:名無しの海賊団 ID:2FkUneHXU
当たり前だよなぁ?
822:名無しの海賊団 ID:ca3rb0M8W
安価は絶対だからな
823:イッチ ID:oV+OwtFfi
まあやって見るわ
少なくとも覇王色何度も飛ばすよりはやれそう
824:名無しの海賊団 ID:pPVG2CZT8
覇王色より楽なのか
825:名無しの海賊団 ID:/HZSPJ4me
結構疲れるのあれ
826:名無しの海賊団 ID:mH8KhrX/n
>>825
なお効くのはネズミだけの模様
827:名無しの海賊団 ID:aX1R+EUUT
こういう場面とか覇王色あると楽ちんちん(効くとは言っていない)
828:名無しの海賊団 ID:5qjAou9hn
忘れてないかイッチ
終わったらカルー助けるために寒中水泳だぞ
829:名無しの海賊団 ID:Z+Ln8p+Eo
あっ
830:名無しの海賊団 ID:rcckbeJxC
あっ
831:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
せやな
832:名無しの海賊団 ID:GuYDQc7NM
ビビの好感度あげないといけないもんな
833:イッチ ID:oV+OwtFfi
ちくせう! やってやらぁ!
◆◇◆◇◆
かつて、この冬島はドラム王国と呼ばれていた。
過去形なのは、とある海賊が襲撃しに来た際に国民を置いて我先に国王が逃げ出したため。悪政者はいなくなったが、かつて『医者狩り』と称して国中の医療を独占したせいで、もはや医療大国の影も残っていなかった。
リトルガーデンで病気を患ったナミを助けるためには、この島で唯一残った“魔女”と呼ばれる医者を見つけるしかなかった。
定期的に村に来て病人・怪我人を診てくれるが、つい先日来たばかりで次に来るのはいつになるか。旅を急ぐビビは当然だが、何よりナミの方がもたない。つまり、こちらから件の“魔女”へ会いに行くしかなかった。
国土は広くないにせよ、止むことのない雪の中、たった一人の人間を探すのはどれだけ骨の折れることだろうか。
幸い、現地人のドルトンが住処を知っていた。断崖絶壁のような山の上に建つ城こそ、“魔女”の根城。病人を抱えて山登りは無謀すぎる。
一刻の猶予もない以上やるしかないと思われたが、その必要はなくなった。
『ヒーーッヒッヒッヒ! なんだいお前ら、若さの秘訣でも聞きに来たのかい?』
『いや知らねェよ!』
山登りする前にタイミング良く近隣に降りてきていたところをギリギリで接触することができたからだ。
Dr.くれは。
年齢といい性格といい色々とデタラメな人であったが腕は世界最高峰の医者なのは確かだ。
ナミの容態を見せた途端に即座に病名を当てて、治療のために城まで連れて帰った。曰く、あと三日遅かったら命が危なかったという。
「いやー、一時はどうなるかと思ったけど何とかなったな」
「そうね……って、ウソップさん。ちゃんと地図見てる?」
「お、おう! この道であってるぞ! 進め進め!」
「心配だわ……」
雪原を滑走する橇の上。
ウソップとビビは前述の出来事を振り返っていた。
──────ワポルが戻ってきた。
その知らせを聞いたドルトンは一目散に村に戻ってしまった。あの思い詰めた表情から、彼自身もあの王様とは因縁が深いことを察することができる。
Dr.くれはの城にはルフィとサンジが付き添っている。あの二人なら、どんな敵が現れても対処できるだろうと踏み、村に残った面々は先にドルトンが戻ったビッグホーン村まで引き返している最中だ。
「ねえハジメくん。この道で大丈夫? 看板も見えないけど」
「んー、大丈夫大丈夫。人の気配があるところ目指しているから」
「良かった、なら安心ね」
「オイ、ビビー? 俺と扱い違くね?」
御者席で手綱を握るハジメは一面の雪景色を迷いなく進んでいる。
地図を見ずに慣れない雪道を通るのは自殺行為だ。
しかし、彼にとってはあってもなくても変わらない。気配に人一倍敏感な彼は、離れた場所でも察知する能力があると聞いた。リトルガーデンでもそうだったし、ここでも山から降りてくるDr.くれはの存在を見事に感じ取った。
もはやビビに疑う余地はない。頑なにハジメと別行動させないようにしたウソップの行動も充分に理解できた。
「あ、ごめん。ちょっとストップ」
「どうしたの?」
滑走する中、途中で橇が止まった。
何か問題があったのかと覗き込む。見たところ近辺で雪崩が起きたようで、至るところに針葉樹がなぎ倒されている。
おもむろに御者席から降りたハジメは膝上まで積もった雪をザクザクと踏み鳴らして突き進む。
少し離れたところで止まり、雪に手を突っ込んで引き上げると、見慣れた髪色の男が姿を現した。
「んあ?」
「Mr.ブシドー!?」
「ゾロ!? お前何やってんだ!?」
「……何って、寒中水泳だ。見ればわかんだろ?」
「アホかお前!」
上半身裸で歯ぎしりさせながら答えるゾロには似合いの言葉だった。余程酔狂な求道者でもない限り、こんな無茶な特訓をするやつなんていない。
見渡す限りの雪原、そこから一発で仲間の位置を特定する。これは特別な力を持っていることの証左になった。
『小僧、ひょっとして“覇気”が使えるのかい?』
『まあ少し……珍しいんですかね』
『そりゃあねェ。こんな前半の海で持っているやつなんて、それこそ海軍くらいしかいないってのに』
『へぇー、まあ俺はこれしか能がないもんで。へへ』
Dr.くれはとの会話を思い出す。
雪の中で埋もれていたゾロを見つけたのもこの力のおかげなのだろう。
聞き覚えのある単語ではあったものの、なかなか思い出せないビビ。何やら人の気配を感じとる力なのはわかるが……もしかしたら故郷に何か文献が残っているのかもしれない。
「ほらほら、さっさとタオルで体拭いて。橇に靴と防寒着あるから着替えて行くよ」
「悪ィな。ナミはどうなった?」
「良い腕の医者があの城で診てくれるってさ。ルフィとサンジが付き添うから俺達は戻ることにした。
あ、村から分けてもらったお酒あるから後でそれも飲んで。結構度数高いから体温まるよ」
「マジか。今飲もうぜ」
「俺は運転中だから後でね。あと何か村の方でゴタゴタしてるっぽいから多分戦闘になると思うよ。さすがに刀は持ってないけどどうする?」
「あー、仕方ねェ。敵の奪うか」
用意周到にゾロの装備を整えて橇を発進させる。
ハジメの言うとおり、戻ってきたビッグホーンではワポルたちの家来が村を制圧していた。
ああ、こうなることがわかっていてゾロを拾ったんだな、と今までの行動について合点がいった。現に、いつの間にかゾロは橇から降りて家来たちに飛びかかっていた。
「ウソップとビビはあっちの雪掘ってもらっていい? ドルトンさんが埋もれていると思うから」
「大変!? わかったわ!」
「お、おう! 任せろ!」
指差した方向に迷わず駆けるウソップとビビ。
掘ってみれば、明らかに土とは違う感触が手袋越しに伝わる。
「おーい! 見つかったぞー!」
「わかった! 皆、ドルトンさんを助けるぞ!」
「「「おおーっ!」」」
ウソップの言葉に反応した村の住民や、ドルトンに従う者たちが総出で救助にあたる。彼の人望も相まって、ワポルの家来に怯えていた人たちが全員駆け寄ってくる。
……数日前、ハジメは己の役割は雑用と自称していたが、とんでもない。
覇気とやらで危険を察知し、さらに無駄のない行動を思いつき、実行する判断力と行動力。リトルガーデンから彼の能力には驚かされてばかりだ。
「おーい! お前何やってんだハジメー!」
「雪だるま作ってるー!」
「「はぁ!?」」
明らかに無駄なことをやっていた。
こちらは村の住民たちも手伝ってくれて人命救助に当たっている中、何を呑気に雪遊びしているのかまるで意味がわからない。
……いや、待て。落ち着け。
ビビは頭を振る。
リトルガーデンでもそうだった。一見無駄なように見えて、実はれっきとした作戦なのだ。
いやしかし、共に過ごした時間の長いウソップも何やってんだと突っ込んでいるあたり、もしや本当に遊んでいるのでは?
「よしできた!」
見れば人間サイズの雪玉が出来上がっていた。
それをハジメが触ると、綿のように白かった雪玉が大砲の玉のように真っ黒に染まった。
「んしょ……何とかなれーッ!」
「う、うおおおおおおおお!!!」
ハジメが転がす度に大きくなる雪玉。
ゴロゴロと家来たち目掛けて接近していき、避ける間もなく追突する。
通過した跡には、家来の姿が消えていた。
異様な光景を目の当たりにした家来たちは、
「な、銃弾を弾くだと!?」
「なんだあの雪玉は!? 鉄球みたいに硬いぞ!?」
「スッゾオラー!」
「「グワーッ!」」
みるみる家来たちの数が減る。
ただの雪玉だったはずのものは家来を巻き込んでみるみる姿を大きくしていく。
質量は武器、ということを体現しているようだった。あれほどの雪玉を押し返すことなんて家来達では出来るはずもない。
「はあ……はあ……げほっ、おえっ、ちょっとタイム……」
「もう息切れしてるーっ!?」
無論、それを動かしている者も当然に疲れてくる。
わずか一回往復しただけでこの始末。最初ほどの速度で押すこともできまい。さすがにこれには相手も慣れて対処されてしまう。
……ただ、それが一人ではないなら話は違う。
「面白そうなことやってんな。オレも混ぜろよ」
「助かる。正直そろそろ腰キツかった。おえっ」
「結構足腰にクるな。へっ、ちょうどいい……!」
ちょうど雑兵狩りに飽きたゾロが加勢に来た。
明らかにハジメが押していたときよりも速い速度で転がる雪玉。ハジメはもはや手を添えるだけで充分だった。
家来たちは抵抗する暇もなく、誰一人残らず雪玉へと飲み込まれていく。そうして完成した雪玉は家一つを飲み込めるほどにまで育ってしまっていた。
「で、どうすんだコレ?」
「せっかくだし、記念に雪だるまにしようか。その後近くの坂に移動させて適当に転がしておこう」
「ちょっ、ちょっと二人とも! 今はそれどころじゃないと……ウソップさんも何か言って!」
「お前らァ! ウソップ様が顔作ってやったぞ!」
「「でかした!」」
「ウソップさん!?」
ワポルからこちらに寝返った医者たちによってドルトンが治療されている中、この三人はメリー号の船首を模した雪だるまを作っていた。なお、ドルトンが一命を取り留めたことがわかった後、家来たちも雪玉から救出して拘束してからはビビも普通に雪だるま作りに参加していた。
緊張感があるのかないのか。
それでも傷を負わずに勝ってしまうのだから、この一味は底が知れない。
こうしてワポルもルフィが倒し、ナミも助かり、新たにチョッパーという仲間もできた。別れ際に見た桜はチョッパーだけでなく、皆の心に深く刻まれた。
あとはカルーが極寒の海の中で溺れていたのをハジメが助けたり、助けたハジメが全身筋肉痛と風邪で寝込んでしまいチョッパーが怒ったが、まあ語るまでもないだろう。
「あれ、ビビ。看病してくれてたの?」
「……えっ」
ようやく、ビビは自身がうたた寝していたことを思い出した。起き上がってみれば、薬が効いて随分と顔色が良くなったハジメの姿が。
少し気恥ずかしくなって視線をそらす。
同時に自分でも不思議なくらいに、この一味に心を開いていたことを自覚してしまった。
察しのいい彼にはお見通しなんだろう。深くは追求せずに優しく笑っている。
むくりと起き上がり、体を大きく伸ばす。
「駄目よ! まだ病み上がりなんだから寝ていないと!」
「いやあ、そうもいかないでしょ。これから
「えっ」
「ほら、来るよ」
ハジメの視線は部屋の扉に向けられている。
耳をすませば、ドタドタと廊下を走る音。突き破られた扉から押し寄せるように三人の人間がなだれ込む。
「ハジメェ!!! 宴だァ!!! チョッパーの歓迎会とナミの退院祝いだァ!!!」
「お、おい! おれのことは良いから、アイツ寝かせてやれよ! その、歓迎会してくれるのは嬉しいけど、治ってからでいいって!」
「そうだぞ、ルフィ。ハジメだって病気のときくらいは休ませてやれ──────って何ビビちゃんの看病なんてクソ羨ましいこと受けてんだ皿洗いィ!!! 表出やがれクソッタレもう一度海に叩き落としてやる!!!」
「エエーーッ! さっきと言ってること違うぞお前!」
「……ね?」
「……ふふっ」
先を歩く少年の背中を押して、甲板へ向かう。
故郷までの道程はまだ先だ。国の情勢もまだ不安定で気が気でないのは変わらない。
けれど、自分たちは最高速度で向かっている。
空にはまん丸の満月。そして舞散る桜。
確かに、大人しく寝ているわけには行かない。
今日は何もかも忘れて、ただ笑ってみようと思った。
◇◆◇◆◇
878:名無しの海賊団 ID:eC6AvfJN+
イッチどじょうすくいノリノリじゃん
879:名無しの海賊団 ID:5XdaC5+wa
作画崩壊してて草
今こそメマーイダンスするときだろ
880:イッチ ID:oV+OwtFfi
カルー酔いつぶれたからだめだわ
あほくさ
881:名無しの海賊団 ID:9hC9WhHw8
鳥類のくせになんでアルコール飲んでんだよ
882:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ
てかイッチ戦えるやん
雑魚って言ってたの嘘かよ
883:名無しの海賊団 ID:bH2cqLMvQ
>>882
よく見てみろ
ギャグ補正で無理矢理勝ってるだけだぞ
884:名無しの海賊団 ID:2bKDhSpb8
多人数で囲まれて棒で叩かれたら何もできないもんネ……
885:名無しの海賊団 ID:O+8iAYPhD
今まで好き勝手やってたけどこれから海軍絡んでくるから派手なことできないもんな
886:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh
でも安価はするんでしょ
887:名無しの海賊団 ID:+KxR9/Blt
つーかビビといい感じじゃん
玉の輿いける?
888:名無しの海賊団 ID:IBieLvRkL
リア充しね
889:イッチ ID:oV+OwtFfi
>>887
計画通りですわタマノコシコシコシ!
まあマヂレスするといい友達程度で終わるっしょコーザくんいるし
俺NTR嫌いなンだわ
890:名無しの海賊団 ID:Q0lpH0KJq
ん?
891:名無しの海賊団 ID:9ZfKbgyxr
ん?
892:名無しの海賊団 ID:ZHrIp45YJ
あっそっかぁ……(察し)
893:名無しの海賊団 ID:hSBVzv0sE
ひらめいた
・ハジメ(イッチ)
船は降りたいけど嫌われたくないという贅沢な悩みを持つ男。雑用は勿論、索敵や指示も手を抜かず一味に貢献するあたりそういうところやぞとスレ民に指摘されるも治す気はない模様。お前本当に船降りるつもりあるの?
多人数相手にはギャグ補正でゴリ押しをする。え、雪玉は転がすと固まるから都合よく人を巻き込むことはない? 感じろ。
なおフィジカルはまるで成長していない。大体モチベーションとルフィのせい。チョッパー??? 自分より強いから全力で媚びますが???
あとNTRは苦手。
・スレ民
善良なスレ民はしっかり助言するも「やだよ」の三文字で一蹴されるせいで悪のスレ民へと堕ちていく。安価スレにされるのは相談する側のイッチにも原因があることをお前に教える。
・チョッパー
ルフィがナミサンジを抱えて山登りしなかったこと以外は原作と流れは変わらず仲間になった。
・Dr.くれは
絶対知ってると思って覇気のことを言及してもらった。若さの秘訣は冗談抜きで聞きたい。
日間1位ありがとうございます。
供養のつもりが続きを書いてしまいました。なっちゃったからにはもう……ネ……。
拙者、ドラム王国編の王女とウソ八の掛け合いが一味に馴染んでいることがわかって好こ侍。義によって視点を王女側で描写いたす。
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件part2/1
1:名無しの海賊団 ID:+SUPC5N0K
えーそれでは皆様ご起立ください
『次スレを始めます』
2:名無しの海賊団 ID:7XgdFsLjZ
>>1
たておつ
3:名無しの海賊団 ID:pMoOYVpn6
>>1
立て乙
4:名無しの海賊団 ID:qlIoZjn+4
>>1
乙
5:名無しの海賊団 ID:HB2vf+LWu
>>1
乙
6:名無しの海賊団 ID:mF9Zv/uu/
>>1
乙
安価して♡
7:名無しの海賊団 ID:iN2kutIGb
>>1
乙
なんか次スレまでいっちまったな
8:名無しの海賊団 ID:iSBSHspNr
なんだかんだ雑談してるうちに終わっちゃったし
9:名無しの海賊団 ID:Ah84TifSf
あーだこーだ言っていながら次スレたてるとか
やっぱ(安価)好きなんすね
10:名無しの海賊団 ID:t6Hj5AgU/
>>1
乙
11:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>1
コラコラコラーーー!!!
勝手に始めるなーーーー!!!!!!
12:名無しの海賊団 ID:pBLNHiFqV
>>11
!?
13:名無しの海賊団 ID:HxrluWqnT
>>11
イッチ!?
14:名無しの海賊団 ID:d9QWMo7MG
>>11
そんな! スレ立てしたはずじゃ!?
15:名無しの海賊団 ID:raMke2BKF
なりすましだろ
放置安定
16:名無しの海賊団 ID:A4ZwQLGGN
>>11
寒いからNGね!w
17:名無しの海賊団 ID:bbuikYVwQ
本当のイッチなら証拠を見せろえ
18:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>17
風呂網膜撮影したからおいておくね
【画像】
19:名無しの海賊団 ID:H+HBRj9yu
はい本物
20:名無しの海賊団 ID:5Hre//i6y
これはまごうことなきイッチ
21:名無しの海賊団 ID:lb9w48QW+
この弧線(ボディライン)のSilhouetteは……!
22:名無しの海賊団 ID:2PqB7HM7r
幸せパンチ!
23:名無しの海賊団 ID:gYaHtHSZy
改めて見るとほんとスタイルえぐいな良い意味で
24:名無しの海賊団 ID:y4RlXzIIk
>>1
ペロ……この味は乗っ取り団のティミー下野!?
25:名無しの海賊団 ID:4kcyCCWJN
このスレでは>>1とイッチが必ずしも一致しないことをお前に教える
26:名無しの海賊団 ID:C9SqzjMqa
>>25
イッチだけに一致ってかwwwwwwwwうぇらwwwwww
27:名無しの海賊団 ID:raMke2BKF
俺ははじめから信じていたぞイッチ
28:名無しの海賊団 ID:bbuikYVwQ
本物と偽物の違いがわからないやつは見聞色が足りん
29:名無しの海賊団 ID:A4ZwQLGGN
“凝”を怠るな未熟者共
30:名無しの海賊団 ID:CNR4PjMs5
すがすがしいほどの手のひらドリルで草
31:名無しの海賊団 ID:cefzTCUvK
これはまごうことなきマスカラブーメラン
32:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ここは安価スレでもSBSでもないんだよなぁ……
33:名無しの海賊団 ID:siNwja43T
次からイッチが建てなくても勝手に始められちゃうな
34:名無しの海賊団 ID:87Sr6vmja
スレ民の質問に答えていくのはSBSと同じだけどね
35:名無しの海賊団 ID:0AFTz/n5J
>>32
サラダ食べて海賊王になれ
36:名無しの海賊団 ID:+shKGa+vY
知らなかったのか?
安価スレからは逃げられない!
37:名無しの海賊団 ID:eUUA3f2Nn
ここまでテンプレ
38:名無しの海賊団 ID:H0O6rufYT
もうアラバスタついたの?
39:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
おう
というかエースにも会ったぞ
40:名無しの海賊団 ID:dGNibevEA
早っ、
41:名無しの海賊団 ID:ngc+fQXJy
時間経ちすぎだろ!
42:名無しの海賊団 ID:he7h1s+t8
敗北者じゃけぇ……!
43:名無しの海賊団 ID:1PUkpvv3Q
敗北者はエースじゃなくて白ひげ定期
44:名無しの海賊団 ID:XiUHsm7Hr
アラバスタ航海中は何もなかったの?
45:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
多分偉大なる航路入ってから一番平和だったよ
アホ船長のつまみ食いも阻止したし
ボンちゃんと“ユウジョウ!”したし
あと>>18の画像、実はボンちゃんだぞ
46:名無しの海賊団 ID:IC+EwKEZu
ヴォエ!
47:名無しの海賊団 ID:wiHIoyjAF
何も見たくねぇ……
48:名無しの海賊団 ID:vAeCyIK3L
おrrrrrrrrr
49:名無しの海賊団 ID:fq88aif/G
くぁwせdrftgyふじこlp
50:名無しの海賊団 ID:KSii6H23P
なんてことを……
51:名無しの海賊団 ID:YdtznTBN/
ここでイッチ反撃に出る
52:名無しの海賊団 ID:2g/a3OuR2
でもマネマネの実は外見だけなら完璧に同じなんだよな……
53:名無しの海賊団 ID:+ffv8Lgsy
>>52
エ……!
54:名無しの海賊団 ID:Uj/mx4HSI
実質ナミさんのヌード……ってコト!?
55:名無しの海賊団 ID:9iC0DySsd
>>54
フゥン……(ボロン)
56:名無しの海賊団 ID:ARhHHBDrj
>>54
俺も参加していースか? 師匠(コキ……)
57:名無しの海賊団 ID:P8ttUEAz7
他人が自分の体使ってアレコレしてんだぞ
ある意味最大の尊厳破壊やん
58:名無しの海賊団 ID:Uwj1yyTSx
ボンちゃんシャワー使わせてもらってて草
59:名無しの海賊団 ID:wtseGUrEk
後の一味の大恩人やぞ
崇めよ讃えよ
60:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
オカマには敬意を払え
古事記にもそう書かれている
そんなこんなで今はレインベースに向かっちゃブル
61:名無しの海賊団 ID:9IJ59cyYg
はやくなぁい?
62:名無しの海賊団 ID:6n2ar0i5Q
もうユバも通り過ぎたのか
63:名無しの海賊団 ID:+SUPC5N0K
ユバ反乱軍居なくなってるのに通る意味ある?
64:名無しの海賊団 ID:nZgAE7Fz2
あるだろ
あそこからビビとルフィが喧嘩して「仲間の命くらい賭けろ!」に着地するわけだし
たぶんあれやらないとビビって本当に犠牲になろうとするから……
65:名無しの海賊団 ID:b6jwdySOA
犠牲になったのだ……
66:名無しの海賊団 ID:R0szda9NK
ナミさんとビビちゃんのお体に触りますよ……
67:名無しの海賊団 ID:mF9Zv/uu/
>>66
申し訳ないがナミに鮫をぶつけるのは洒落にならないのでNG
68:名無しの海賊団 ID:h9RoeEC5z
ちょっと待って!? スモやんが入ってないやん!
スモやんがいるって聞いたからこのスレ開いたの!
69:名無しの海賊団 ID:c2MHauUNc
モクモクしちょるだけのロギアなんて映す価値なしじゃけぇ……
70:名無しの海賊団 ID:FoFkKGsWZ
ケムリンの出番ってむしろこれからでは?
ワニに捕まるところ
71:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
海軍に会ったら手配されるだろ!
ローグタウンからずっと徹底的に避けまくってるわ
72:名無しの海賊団 ID:0AFTz/n5J
ええ……
73:名無しの海賊団 ID:vAeCyIK3L
はたらけ
74:名無しの海賊団 ID:iRglJE1UY
ニート・ニート・イッチー
75:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いやローグタウンで足止めして、なし崩しに船降りようとしたこともあるけど普通に止められたわ
76:名無しの海賊団 ID:wGU9k1zVF
唯一有効打を入れられるの知らんのか……
77:名無しの海賊団 ID:+5VP9i8Vr
まあ一応イッチは“平穏”を求めているわけだからな
戦おうとするなら止めてあげるのも人情よ
78:名無しの海賊団 ID:xremmXewq
>>77
目的だけ見ると鷹の目と同じなの草
79:名無しの海賊団 ID:+/pJVsNHi
>>77
イッチの正体、鷹の目で確定か!?
80:名無しの海賊団 ID:wHKW+P2NN
>>77
お前の黒刀、おれによく馴染むぜ(持てない)
81:名無しの海賊団 ID:HTAqxxhaW
暇つぶしで東の海で木っ端を狩る鷹の目!
穀つぶしで東の海で木っ端にやられるイッチ!
そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!!!
82:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>81
何もかも違うのだ!!!!!!
83:名無しの海賊団 ID:MDwaYywyH
>>81
なんだかんだ穀潰しではない定期
84:名無しの海賊団 ID:2qDygjHAb
箇条書きのマジックやめろ
85:名無しの海賊団 ID:ZcZ5TmK1L
でも東の海で新世界レベルの覇気使えるとか目をつけられてもおかしくなさそう
86:名無しの海賊団 ID:dDy5C2aWN
嘘つけ素がクソザコナメクジだから見向きもされないゾ
87:名無しの海賊団 ID:tvSAQev0E
安価
88:名無しの海賊団 ID:nubrl4T5F
あん
89:名無しの海賊団 ID:mF9Zv/uu/
か
90:名無しの海賊団 ID:XLeG3EnlD
しろ
91:名無しの海賊団 ID:EJB9xUB1k
ながすくじら
92:名無しの海賊団 ID:LjCZMXs+8
なんだ今の
93:名無しの海賊団 ID:mwnR/CYIF
安価シロナガスクジラは普通に海王類にいそうだからやめろ
94:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
さてレインベース着いたぞう水だ水だ水だ死ぬ死ぬ死ぬ
95:名無しの海賊団 ID:m4kq+fqRp
おつ
96:名無しの海賊団 ID:+QH3oPWPc
(レインベースまでイッチの書き込みなかったのって砂漠で死にそうになってたからだなこれ)
97:名無しの海賊団 ID:h85iPaKfS
ゾンビみたいになってて草
98:名無しの海賊団 ID:oIt1qotqR
もうスリラーバーク編か、はやいな
99:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
その時はもう船にいないから……
アラバスタで身を固めるから……
さてとここから別行動でワニハウスいくぞ
100:名無しの海賊団 ID:/UoQHFVRW
スモやんとも対面することになるぞ
101:名無しの海賊団 ID:1M+os8Z2a
モクモクしてきたな
102:名無しの海賊団 ID:KgCynMtSt
身を固める(固められるとはいっていない)
104:名無しの海賊団 ID:nBIfg+Jn5
身を固める(大地と一つになるという意味で)
105:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
さて誰と行くか
ゾロも奇跡的に着くはずだから誰でもいいんだが
106:名無しの海賊団 ID:tvSAQev0E
よし安価だ
107:名無しの海賊団 ID:cierdvILl
誰でもいいんだったら安価しろ
108:名無しの海賊団 ID:g9H+ZCgGG
このスレ民にとって安価は砂漠での水に等しい
109:名無しの海賊団 ID:sbABlhDE1
カラカラになってしまう
110:名無しの海賊団 ID:XpcU3WK8F
助けて
111:名無しの海賊団 ID:6c6qM/DPe
くるしい
112:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
誰と行く? >>122
113:名無しの海賊団 ID:UeugbLDJL
騙されたな甘ちゃんが!
114:名無しの海賊団 ID:xMahHXFO9
ようやく尻尾を出したな!
115:名無しの海賊団 ID:KgCynMtSt
安価はいただくぜヘヘへ
116:名無しの海賊団 ID:tb/Evpi0I
砂漠で辛い思いをした後だからスレ民を不憫に思って安価してくれたのにこの始末
117:名無しの海賊団 ID:OqpSGwuqY
まさに大海賊時代
118:名無しの海賊団 ID:/VNY5juCY
かそく
119:名無しの海賊団 ID:CHGQMF46p
ビビ
120:名無しの海賊団 ID:UeugbLDJL
ビビ
121:名無しの海賊団 ID:4SZgswSwk
ビビ
122:名無しの海賊団 ID:SFyMtxuNY
ビビ
123:名無しの海賊団 ID:3ijvrSFbW
ビビ
124:名無しの海賊団 ID:EdQCsb42h
ビビ
125:名無しの海賊団 ID:KgCynMtSt
ビビ
126:名無しの海賊団 ID:7TCEmtPIQ
ビビ
127:名無しの海賊団 ID:oFTAlfn6C
安 価 の 意 味 な し
128:名無しの海賊団 ID:mbbMyiW80
なんだこれは
129:名無しの海賊団 ID:mcvygQy7X
全部同じじゃねぇか!?
130:名無しの海賊団 ID:G/yE01ob8
ここまで全部自演
ここからも全部自演
131:名無しの海賊団 ID:GHWCoIPkH
熱いビビ推し
132:名無しの海賊団 ID:IKzUGmmnS
そりゃこの内乱を止めるキーパーソンだから手厚く護らないといけないのは当たり前だよなぁ???
133:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
やだ意図が読めなくて怖い……やめてください……
まあ普通に考えたらそうなるけど……
134:名無しの海賊団 ID:UeugbLDJL
サンジ切れそう
135:名無しの海賊団 ID:u1DD/i2S5
イッチ考えてみろ
確かこの後ってビビは
136:名無しの海賊団 ID:8LXzWdiqm
あっ
137:名無しの海賊団 ID:O9LYhf9+2
あ
138:名無しの海賊団 ID:SB65fC58S
戦闘する機会は多いんだぞビビ
139:名無しの海賊団 ID:Xk9wR5uBd
ある意味もうひとりの主人公だから当然
140:名無しの海賊団 ID:CsW7auxqF
立ち回りミスったらロビンとも戦う羽目になるぞ
141:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ホ、ホアーーーー!!!!(気絶)
142:名無しの海賊団 ID:Z6IWbWxQ0
イッチが死んだ!
143:名無しの海賊団 ID:HiF1vNdY6
このひとでなし!
144:名無しの海賊団 ID:tWZKJ8DhM
やっぱりスレ民は安価とイッチの苦しむ姿にしか興奮できないんや……
◆◇◆◇◆
砂漠はなぜ暑いのか。
太陽光を吸収する水分がないから、太陽光を遮るものがないから、砂が熱しやすい性質をもっているから。
オアシスも何もない、見渡す限りの砂丘をいくつも超えるために身を投じる者達は、まさに料理中の鍋に足を踏み入れることも同然だ。
「ア〜〜〜〜……」
「焼けるぅ……」
「ちょっとアンタらうるさいっ……そんな間延びした声聞いてたらこっちも余計ダレちゃうわよ……」
麦わらの一味はそんな日中の砂漠を練り歩いていた。
目指すのは反乱軍の拠点、ユバ。
かつて幼い頃のビビに夢を語ってくれた幼馴染がそこにいるはず。
このクロコダイルに仕組まれた反乱を止めるためには、まず彼と直接会わなければならない。そのためにもこの途方もない砂漠を踏破するしかない。
「ビビは大丈夫なの?」
「私はここで育ったからある程度は平気」
「すげぇなビビ。おれ暑いのはだめだ」
「チョッパーは雪国出身だから仕方ないわよ」
荷台に乗せられたチョッパーはずるずるとゾロに引かれる。旅に出て初めてたどり着いた場所が故郷と正反対の環境。さすがに生まれも育ちも雪とともに育った彼には酷すぎた。これは責められまい。
ゾロとサンジは元々体力があるし、水分補給のペース配分も心得ている。文句も言わず前を進み、チョッパーのフォローをしている。
まあ単に「コイツよりも先に音を上げてたまるか」と意地になっている節もあるだろう。きっとサウナでも同じようなことをやって、脱水症状で運び出されるのがこの二人だ。
「他の男どもはもっとしゃんとしなさいよ……」
「ア〜〜〜〜…………」
「暑い〜〜……」
そして、ルフィとウソップは先頭を歩くものの、犬のように舌を出しながら先を進む。
ウソップはともかく、馬鹿みたいに体力あるくせに弱音を吐くルフィには文句のひとつは言いたい。先程まで礼儀正しい兄と会ったせいか、つい比較してしまうのも無理はない。
「だから間延びした声やめなさいってば。もっとハキハキと!」
「死」
「アンタはすがすがしいくらいにシンプルねハジメ……」
最も危ないのはハジメだった。
顔は下を向き、足元はおぼつかず、置いていかれまいと何とか食らいついている。無意識なのか、両手を地面と平行に突き出しながらノソノソと歩いている。微かにうめき声も聞こえる。
メリー号を出発してから5分も経たずにゾンビのようになってしまった彼。最近体力がついてきたと胸を張っていた姿は影も形もない。脱落はチョッパーよりも早かった。
「ハジメくん大丈夫? よかったら私の水飲む?」
「
「砂漠で無理は禁物よ。何かしてほしいことあったら遠慮なく言ってね」
「オデ……ア、アア……オウエン……?」
「応援? え、ええと、頑張れっ頑張れっ」
「アリ……ガト……」
かつてないほどに原型をとどめていないハジメが気持ち程度立ち直る。
こういった過酷な自然を乗り越えるためには体力もだが、精神力というものは馬鹿にならない。折れてしまった時こそ、待っているのは遭難なのだ。
「羨ましい……オレ、アイツ……ケル……」
「ゾンビがもう一体増えたぞ」
本当に怨念からゾンビになりそうなコックは置いておく。
結局ジャンケンで負けたルフィが荷物を持つ流れでハジメも運ぼうとしても、他ならぬハジメは拒否し続けた。歩幅は全員分の荷物を持っているルフィよりも小さい。
次の岩場まで行ったら休憩できる、それだけが心の支えだったところでウソップが叫んだ。
「お、見ろ! 前方に岩場を発見!」
「やった! 休憩タイムだァ!」
「疾っ」
ルフィとウソップ、そして言語能力が著しく退化しているハジメも力を振り絞って駆け抜け……たかのように見えたが、すぐにルフィとウソップは戻ってくる。
なんと、岩陰には怪我をした鳥の群れが、首も良くない方向で曲がり、白目をむいているらしい。
「あ、ルフィさん。これは怪我してないわ。この鳥は“ワルサギ”って言って、弱っているフリをして獲物をかすめ取る習性があるの」
「なにっ!? こいつら騙して荷物盗ろうとしてたのか!」
「……あれ、でもこいつら全員気絶してるぞ? 特に殴られたりされた様子もないし」
「それは妙ね。本当にここで何かあったのかしら? ハジメくん、ルフィさんたちが離れた間に何かあったの?」
「死……!」
「なんかハジメがすげぇおっかねぇ顔してるぞ……!」
チョッパーは戦慄しているが、他の者たちには見慣れた光景だった。よくメリー号に紛れ込んだ虫とか見つけると、こんな顔したハジメが見ただけで堕ちていくから便利なものだ。今は本人が切羽詰まっているせいか、その形相に一層拍車がかかる。
なんとか物資を守り抜いたおかげか、水分や食料に困ることはなくユバにたどり着いた。陽が沈み、冷えきった砂漠は、かつてのオアシスは影も形もなくなっていた。
度重なる砂嵐の果てにオアシスは埋もれ、反乱軍も拠点を移し、残ったのはトトという老人ただ一人。
かつての恰幅の良かった体型は見る影もなく、皮膚の皺と骨がこの地に降り掛かった苦難の凄惨さを物語っている。
「頼む……! あのバカどもを止めてくれ……!」
「うん、反乱はきっと止めるから……!」
切実な願いを受けて笑顔を見せるビビ。
しかし、背後の仲間たちの表情はどこか訝しげだったことは彼女には見えない。
ここまで来る間にもその節はあった。
頼れる人がいない潜入生活で身についてしまったのか、それとも王女としての気質なのか、『誰も死なせたくない』という考えがある。
はっきり言ってそれは危険だ。
アラバスタ軍と反乱軍との緊張は頂点に達していて、その上クロコダイルたちが国を乗っ取ろうとしている。
もうその考えは通用する段階は、とうの昔に通り過ぎているのだから。
だからこそ、一度考えを改めさせなければならない。そして、彼女の抱えているものも吐き出させる必要もある。
そんな重荷を受け止める役目は──────
「いいから俺達の命も賭けてみろ!
───仲間だろうが!!!」
「!? ……う……くぅ……!」
「なんだ、出るんじゃねェか。涙」
殴りあって、言いたいことを全部吐き出して、そしてようやく出てきたビビの涙が乾いた砂へと落ちる。
悔しさ、惨めさ、そして何よりもここまで自分を想ってくれる仲間がいることの嬉しさ。
瞬く間に砂に染み込んで蒸発するものでも、その気持ちはこの場にいる皆の心に伝わった。
元凶をどうにかしないと、反乱を止めたところで誰も救われない。真っ先にやらなければならないことを再確認した一味はレインベース……そして敵の本拠地、カジノ・レインディナーズへと突き進む。
……街に着いてから休む暇もなく海軍に追われてしまっているため、散り散りになりながらではあるが。
「おいお前ら! 先行ってろ! 後で追いつく!」
「Mr.ブシドー! お願い!」
「助かる!」
ゾロに海軍の足止めを頼み、ビビとハジメは人混みに紛れながら先を急ぐ。しかし、彼らの敵は海軍だけではない。
「ビビ、15m前方に敵10人」
「わかったわ、こっち来て!」
「くっ! 逃がすな、追え!」
本拠地の膝下である以上、
「左建物隔てて10m先に3人、前方の建物4つ先の角、2人待ち伏せ」
「なら右ね!」
「ぶへっ! 足になんか引っかかりやがった!」
「糸かよこれ……くそっ、小細工をしやがって!」
しばし離れていても、ビビはこの国の王女。街の地理は熟知している。
敵の場所さえ事前にわかれば、抜け道なんていくらでも見つけられる。
一人なら正面突破しか手段はなかっただろう。
けれど、こと索敵に関しては最も優れている仲間がいれば、撒くことなぞ造作もない。
「おっと、左右から2人ずつ。前後からも1人ずつ」
「挟み撃ち……ハジメくん、上登れる?」
「ちょっと待って」
ハジメは走りながら首に巻いた長めのストールを解く。
靡くそれが直線状になったタイミングで
近場の家屋に立てかけたそれを足場に、二人は屋根へと登っていった。
「これで屋根を飛び越えていけばもう目の前。皆はもう着いてるかしら?」
「うん。ちょっと時間かかったけどね。
……っと、その前に空から何か来るよ」
「空?」
街中でも強烈な太陽光が降り注ぐ空。
言われて見上げれば、一羽の鳥がこちらに向かってきていた。
砂漠では一際目立つ白い衣を着ているのを確認すると、ビビから笑顔が浮かびあがった。
「ビビ様! よくぞご無事で!」
「ペル!」
「カルーの手紙が届いたみたいだね」
「まずは周りを黙らせます。しばしお待ちを」
大きな隼の姿が変化していく。
人間の輪郭を持ちながら、それでいて隼の翼と鉤爪は残したまま、屋根の下にいる
人獣型と呼ばれる“
「お待たせしました。ビビ様、そちらの男は?」
「私の仲間よ! ハジメくん、彼は護衛隊副官のペル。悪魔の実の能力で隼になれるの!」
「ああ、お手紙に記されていた“信頼できる仲間たち”の……ここまでビビ王女をお守りくださり、心より感謝申し上げる」
「お礼を言うのはまだ早いよペルさん。敵はまだいるみたいだし」
「!?」
二人はハジメの指差す先に視線を向ける。
隣の建物の上、ひとつ上の階層の屋根に足を組みながら座る女性がいた。
「あら、お話は終わりなの? もう少しなら待ってあげてもよかったのに」
「ミス・オールサンデー……!」
「こやつが、我が国を乗っ取ろうとする賊……!」
ミス・オールサンデーが同じ建物に降りてきた。
警戒するビビとペル。それを手で制したのはハジメだった。
「大方、
狙いを指摘されても動揺する素振りはない。
笑みを崩さずに招待するように手の平をレインディナーズへと向ける。
すると、屋根から屋根へ。橋をかけるように手が伸びていく。そのまま伝っていけばカジノの入口に降り立つように道が作られた。
「ええ。支配人として歓迎しましょう。王女様と、ついでに騎士様もどうぞ中へ。Mr.0がお待ちしているわ」
「クロコダイル……!」
「いけません、ビビ様! これは罠です!」
「大丈夫よ、ペル。あそこには私の仲間たちが戦ってくれているから」
ビビにとっては目の前の女も許せないが、優先順位は仲間との合流とクロコダイルの打倒だ。
迎え撃つというのであれば、今頃ルフィたちも戦っている途中なのかもしれない。
癪だが、ここは相手の意図に乗ってやろうと、先を急ぐビビ。納得はしていないものの、ペルもまたビビの後に続く。二人が足場を渡ってひとつ屋根を通り過ぎたところで、ハジメも橋に足をかけようとする。
「良かった。これで
「え」
ミス・オールサンデーはくすりと笑った。
「“
「おうっ!?」
ハジメの体から三本の手が伸びる。
首を、腕を、足を固められ、なす術無く体勢を崩されてしまった。
「ハジメくん!?」
「貴様、何をする!」
「元々王女様を連れてこいって命令だけだったのに、貴方がいるから仕事が増えちゃったわ」
「え、え??? は??? どゆこと???」
完全に油断していたのか。それとも来るとわかっていても理由がわからないために対処できなかったのか。ハジメの表情には戸惑いしか浮かんでなかった。
「全オフィサーエージェントに命令されているの。『この男を見つけたら最優先で殺せ』って。
船長や王女様よりも優先順位が高いみたいよ、
取り出した写真には確かにハジメの顔が。
目玉が飛び出さんとばかりに驚いたような変な顔をしているのは、Mr.2がマネマネの実の能力で再現しているせいだろう。
「!?!?!?!???」
……奇しくも、今のハジメもそんな変な顔をしていた。
◇◆◇◆◇
209:名無しの海賊団 ID:SGfuMbdVq
エネル顔やん
210:名無しの海賊団 ID:ik7sztbIJ
バレテーラwww
211:名無しの海賊団 ID:Xijz1tVQT
イッチ、迫真のエネル顔
212:名無しの海賊団 ID:xsyCA8Hg9
この先生きのこれないね
213:名無しの海賊団 ID:z3nEI2/TL
ワニ「許さねぇぞ……よくもこの俺をここまでコケにしてくれたな……殺してやる……」
ルフィ「くっ!」
サンジ「やべェぜルフィ!」
イッチ「大変だねあんたら」
ワニ「殺してやるぞイッチ」
イッチ「!?」
214:名無しの海賊団 ID:nY8eB5Fey
草
215:名無しの海賊団 ID:W3SA+YHxm
まあMr.3も自分の作戦をああも見破られたら報告するよね
216:名無しの海賊団 ID:2TbIv7MWo
次回、イッチ死す! デュエルスタンバイ!
217:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
死
218:名無しの海賊団 ID:7tiSCHf7t
こっちでもそれ書くのか
・ハジメ(イッチ)
なんだかんだ最初の安価を継続して体力はついてきたから砂漠もいけると思ったがそんなことはなかった。
原作知識を活かしたアラバスタ内乱終息RTAチャートも考えたが、エースからのビブルカード受け取りイベントなどスキップすると後々のイベントに差し障ると思い断念。原作通りの展開を進めたはずなのに、現在進行系でピンチに陥っている男。
余談だが、港町ナノハナで停泊した際の買い出しはサンジと同行していて、ちゃんと女性陣には踊り娘衣装以外の服も買ってあげている。衣装を気に入っているナミはともかく、なんでビビはずっと衣装のままなのか疑問に思っている。
・スレ民
どこかの空気にあてられたのか、イッチが不在のときはスレの乗っ取りや下品な会話が増えてきた。今度は変な絵を描いてイッチの代わりに一味にいれてあげろとか言ってくる。
・ビビ
アラバスタ編のもうひとりの主人公。幼少期の砂砂団といい、B.Wの潜入といい、ルフィとの殴り合いといい、相当アグレッシブなお姫様なので平気で砂漠横断しようとか言ってくる。
余談だが、踊り娘衣装を着つづけているのは単に新鮮だから。決して着替えてから何も反応もないクソボケに対して意地になっているわけではない。
・ サー・クロコダイル
Mr.3の報告を受けて、もしやと思いイッチへの警戒度がクソ高く設定されている。なんで七武海なのに覇気使えなかったのか諸々は、きっとこれからの本誌で補完されるはず。本作では“存在を知っている”程度にぼかしている。
沢山の評価、感想ありがとうございます。
ジャンプ+の無料期間中だから読み直しているけどアラバスタ編長い……長くない?
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件part2/2
レインディナーズのVIPルーム──────経営者であるクロコダイル専用の部屋はレインベースの地下奥深くにある。
周囲は巨大な水槽に覆われており、そのまま河に繋がっている。彼の趣味なのか、ガラス越しに見える獰猛な“バナナワニ”の数々は、彼に潜む本性と野心の顕れと言えよう。
「ちくしょう! 出せー! 勝負シボ……」
「だからその檻に触るなって言ってんだろ!!!」
殴り込みに来た麦わらの一味と、それを追う海軍の大佐スモーカーは“こうみょうなわな”によって海楼石の檻に閉じ込められてしまっていた。
檻の先には、全ての元凶のクロコダイルが安楽椅子に座りながら無様な姿を見て笑みを浮かべている。
袋の鼠である彼らを始末しないのは理由がある。
この企みの種明かしをするにも、“主賓”がいないと始まらないからだ。
「クロコダイル!!!」
「ビビ!?」
「よくきたな王女ビビ……いや、ミス・ウェンズデー」
階段から降りてきたのはビビと、護衛隊のペル。
明確な殺意を持った二人の視線は下のクロコダイルに向けられているが、当の本人は変わらず不気味な笑みを浮かべたまま、葉巻の煙を吹かす。
ここまでずっと沈黙を保っていたゾロが口を開く。
「おい! ハジメはどうした!? 一緒に来たんじゃねェのか!?」
「……ハジメくんは」
ビビとここに来る前の経緯を説明した。
道中で遭遇したミス・オールサンデーに案内されてここまで来たが、クロコダイルから最優先抹殺対象とされたハジメはそのまま彼女と戦闘になってしまったこと。
『ペルさん! ビビを連れて中へ行って! こいつは俺に用があるんだ!』
『ハジメくん駄目っ! こいつはクロコダイルの側近で、実力は──────』
『知ってる! その上で俺より
『あら、余所見している暇があるの?』
『や、やめろ! 俺に変なポーズをさせるんじゃあないっ! 宴会以外でこんなヘンテコな真似なんてできるかっ!』
『ハジメくん!』
『ビビ様! ここは彼に任せましょう!』
『くっ、殺すな……!』
「……ハジメくんは、ミス・オールサンデーと戦っているわ。今頃、あんな奴倒してこっちに来ていると思う」
不敵な笑みで答えるビビ。
実際、彼の読みは正しく、仲間の皆は絶体絶命のピンチを迎えていた。
彼のことは心配だが、リトルガーデンの時と同じだ。彼は勝算があって自分たちを先に行かせてくれたに違いない。だからこそ、信じてここまで来れた。自分も奴と決着をつけるために。
「……なるほど、迎えに行かせただけなのに一緒に来なかったのはそういうことか」
まあいいだろう、とクロコダイルは立ち上がる。
そして彼は己の計画の全容を明らかにした。
街の破壊工作、国王軍のスパイ、その引き金を引かせるオフィサーエージェント……彼が根回しし続け、国王軍と反乱軍が全面的に衝突する瞬間を嘲笑いながら、他ならぬこの国の王女に見せつける。
「ハッハッハッハ……『この国を守るんだ』って立ち上がった奴らが国を滅ぼす! 随分と泣かせる話じゃねぇか!」
「……っ!!!」
「この、外道がアアアアアア!!!」
耐えられなくなったペルが変身してクロコダイルに向け突撃する。
隼の降下速度はどの鳥よりも速い。室内のせいで充分な助走はつけられないにせよ、目にも留まらぬ速さに迎撃は困難を極める。
だが、それも速さに関係なく干渉する力があれば話は別だ。
「“
「ぐっ!」
「ペル!?」
体から生えた三本の腕によって体勢を崩される。
ペルはそのまま地面を滑走し、海楼石の檻へと体を強打させる。
「……遅かったじゃねェか」
「ごめんなさいね。彼、意外とタフだったの」
コツ、コツと階段からヒールの音が鳴り響く。
姿を表したのはミス・オールサンデー。
ビビは隣を通り過ぎる女を信じられない表情で呆然と見つめる。
彼女が来た、ということはつまり──────
嫌な予感がする。
動悸が荒い。汗が止まらない。
「首尾はどうだ?」
「ええ、この通り」
ミス・オールサンデーが手を持ったものをテーブルに置いた。
それは、彼が身につけていた長めのストール。あちこちに滲む泥と、それよりも存在を主張するおびただしい血痕ですっかり黒ずんでしまっている。
しかし、それでもビビにはわかった。
間違いない。これは、
「クク、案外呆気なく終わったか。これで唯一の懸念もなくなったってワケだ」
「……よくも、よくもやったなァ!!!」
階段から駆け下りるビビ。
この場においては、クロコダイルよりもこの
「おっと、今こいつに死なれると困るんだ。大人しくしてもらおうか、ミス・ウェンズデー」
「くっ!!!」
砂で伸ばした腕がビビを弾く。
奇しくもペルが飛ばされた方向に飛び、檻へと叩きつけられた。意識が飛びそうになるが、舌を噛んで無理矢理持ちこたえた。
フラフラと立ち上がり、目の前の二人を睨む。
心は折れない。折れてたまるか。
こいつらはどこまで、自分たちから大切なものを奪っていけば気が済むんだ──────!
「──────ッ!」
ガン、と、鈍い金属音が耳を劈く。
まるで誰かが、ビビの心情を表してくれたようだった。
この場の全員の注目が、檻の中に集まった。
ルフィが檻を力一杯叩いている。砕けんばかりに叩いたためか、拳から血が滲んでいる。
そのまま檻を握りしめた。海楼石に触れて力が出ないはずなのに、その握力はそのまま檻を捻じ曲げてしまいそうなほど強く圧迫されている。
彼がここまでする理由は唯一つ。
「あいつに──────ハジメに、何しやがったァ!!!」
大切な仲間を傷つけられたからに他ならない。
周囲の水槽を割りかねないほどのルフィの絶叫が、地下に響き渡った。
◇◆◇◆◇
291:名無しの海賊団 ID:n/YfcvJwO
死んだな
292:名無しの海賊団 ID:7KO4qqZf9
まあ順当
293:名無しの海賊団 ID:oIhqjGEWp
イッチ……いいやつだったよ
294:名無しの海賊団 ID:GbrRSwLCy
ここが安住の地だったね
295:名無しの海賊団 ID:s7ZOLjck0
安住の地(骨を埋める)
296:名無しの海賊団 ID:cierdvILl
ある意味安価達成
297:名無しの海賊団 ID:k7Pgusc18
まあ捉え方によってはスマイルよりはマシかもね
298:名無しの海賊団 ID:6c6qM/DPe
スマイルは生き地獄だし多少はね?
299:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
こ ろ す な
300:名無しの海賊団 ID:2nwH0v1KT
>>299
ファッ!?
301:名無しの海賊団 ID:zva5ZY1P/
>>299
!?!?
302:名無しの海賊団 ID:ler4wp8Id
>>299
ホいつの間に!?
303:名無しの海賊団 ID:ZfwU5GPoZ
>>299
生きていたのか!
304:名無しの海賊団 ID:l/UqAEP8x
>>299
まさかヨミヨミの実の後継者だった!?
305:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ピンピンしてるで
今ジュース飲みながら高速ワニ乗って砂漠滑走してる
306:名無しの海賊団 ID:XpcU3WK8F
>>305
安価達成ならずか
307:名無しの海賊団 ID:6c6qM/DPe
>>305
イッチ、大分タフになってきたな
308:名無しの海賊団 ID:dAiDE9z13
なにっ
309:名無しの海賊団 ID:ZeGXCPjAU
しゃあ! 安価!
310:名無しの海賊団 ID:433QQ6B1O
バナナワニをはなてっ
311:名無しの海賊団 ID:8jc9CsnmN
>>305
どうやってあの場凌いだん?
312:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いやまあちょいと交渉して見逃してもらった
来たのがロビンで本当に助かったわ
他の奴らだったらガチ戦闘しなきゃいけなかった
313:名無しの海賊団 ID:CHGQMF46p
交渉って
314:名無しの海賊団 ID:6k+0evvjC
まあ確かにそれなら余地あるか?
いやそれでもロビンの方がリスクあるんじゃねこれ
315:名無しの海賊団 ID:G/yE01ob8
イッチの切れる手札なんてそんなもんだろ
意図はわからんがそもそもロビン最初からイッチ殺すつもりなかったんじゃね
グレートサイヤマンのポーズとかさせて遊んでたやん
316:名無しの海賊団 ID:NURz4vZTd
>>315
草
317:名無しの海賊団 ID:0UDbVL3Rv
>>315
多分あれ全部わかったら相当本誌読み込んでる読者やぞ
318:名無しの海賊団 ID:3+xiPrPOm
>>315
明らかにネタに走ってたもんな
319:名無しの海賊団 ID:UeugbLDJL
>>317
グレートサイヤマンとチャクラ宙返りと天翔十字鳳くらいしかわからんかった
320:名無しの海賊団 ID:z9g4LhACC
お人形遊びされてる……
321:名無しの海賊団 ID:uD9DpBGj7
仲間が捕まってんのに何キャッキャウフフしてんだよ!
322:名無しの海賊団 ID:vgHH17rm5
じゃああのストールってなんなのさ
323:名無しの海賊団 ID:O9LYhf9+2
めっちゃ血ついてたよな
324:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
殺したアッピルのために預けたやつ
鼻の穴思いっきり指突っ込まれてめっちゃ鼻血でたから、それチーンしたからだな
325:名無しの海賊団 ID:icgnAjfG2
きったね
326:名無しの海賊団 ID:gO5zrWvS4
よくやった! それは俺達のイッチではない
327:名無しの海賊団 ID:XPwoJoph6
ロビン(汚いわね……)
328:名無しの海賊団 ID:ngKzQ6VLy
悪ィな
イッチのストールがイッチの鼻血を食っちまった
329:名無しの海賊団 ID:SB65fC58S
そこだけは攻撃らしい攻撃されていて草
330:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
両方の鼻の穴からでてるから口呼吸しかできないの辛ひ
まあ、ロビンの話は追々するわ
で、レインディナーズから適当にワニ奪ってアルバーナに先回りしている最中
331:名無しの海賊団 ID:SfqJuGCdW
なるほど
332:名無しの海賊団 ID:tuOLz/vU4
暗躍の時間だ
333:名無しの海賊団 ID:+/pJVsNHi
でも何するん?
オフィサーエージェント潰していくの?
334:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>333
そこら辺は皆がやってくれるし……
335:名無しの海賊団 ID:cRnI0PjRX
>>334
貴様アアアア! 逃げるなアアアア!
戦いから逃げるなアアアア!
336:名無しの海賊団 ID:fq88aif/G
はい生き恥
337:名無しの海賊団 ID:NIlJ/6xuF
“勇”を失ったな……
338:名無しの海賊団 ID:AM6A2sLZA
一味の姿か? これが……
339:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いや、俺は俺にできることをやろうかと
国王軍に潜んでる
340:名無しの海賊団 ID:9/M1tt6Jm
>>339
確かに
あいつら燃料投下のプロだからな
341:名無しの海賊団 ID:MJAJS4ICd
>>339
マジでピンポイントに戦争を激しくするタイミングついてくるから普通に有能すぎるんだよな
342:名無しの海賊団 ID:paGZKmYTX
も! もも、申し訳ありません! 手が滑って……←これ
343:名無しの海賊団 ID:g/hFNOqPT
社員使って演技指導したからな
劇団でも作るつもりかクロコボーイ?
344:名無しの海賊団 ID:BuZ+m07jS
こいつら居なかったらもっと早く終息してたんじゃね
345:名無しの海賊団 ID:x/V3ymrnu
>>344
そう簡単にいかんよ
346:名無しの海賊団 ID:2cdrqZXDr
ほんと時間かけて根回ししただけあるわこれ
347:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>345
まあそれでも片方のスパイいなくなれば状況はもっと単純になるだろうし、やれるだけやってみる
あと爆弾もどうにかしないといけないし
348:名無しの海賊団 ID:e9fudjQBG
でもそのこと軍の皆に言ったら絶対混乱するよ
349:名無しの海賊団 ID:s5p/XdnX1
まあビビだったらともかくイッチじゃあな
ちゃんと国の偉いやつバックにつけないと
350:名無しの海賊団 ID:hmy8yZ1R+
まあでも国王軍は裏で糸引くやついるってわかってるからやりやすいじゃん?
351:名無しの海賊団 ID:CS5GU6zm8
糸……引く? ドンキホーテ……
352:名無しの海賊団 ID:8+8YE7gBc
これも全てドンキホーテ・ドフラミンゴ41歳のせいなんだ
353:名無しの海賊団 ID:3uh/dlHsL
フッフッフッフ!
354:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>349
まあそこら辺は上手くやるさ、フッフッフッフ!
あ、でも俺ロビンに正体隠せって言われてたわ
355:名無しの海賊団 ID:evGg1jg1y
>>354
それな
356:名無しの海賊団 ID:fHO2r5pHV
>>354
それはそう
357:名無しの海賊団 ID:zW7rhdjg8
>>354
358:名無しの海賊団 ID:cNFdq4GSh
情報の横展開はスムーズなんよな普通に
なお縦展開……
359:名無しの海賊団 ID:nDmXwMwYJ
変装しろ
360:名無しの海賊団 ID:gYyHowkBP
国王軍のいっぱんへに成り代わる?
361:名無しの海賊団 ID:MLou0G9Ij
女装もありよ
362:名無しの海賊団 ID:/DLdqHZdS
男らしく女装で行こう
363:名無しの海賊団 ID:n1ti0hwnn
>>362
女装は男しかできないから一周回って最も男らしい理論やめろ
364:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
女装はせんよ
ウソップとふざけて買ったマスクあるしこれ使うわ
【画像】
365:名無しの海賊団 ID:PlGxnad3h
草
366:名無しの海賊団 ID:UnOxubt1J
レスラーかな
367:名無しの海賊団 ID:6igeS/O+F
プロレスでもやるんか
368:名無しの海賊団 ID:MPqLQbrzF
100均で買ったオベリスクの巨神兵みたい
369:名無しの海賊団 ID:hSWl8bLqL
アラバスタの仕組まれた内戦に怒り震えているマスクくん
370:名無しの海賊団 ID:ofuNGkVl0
銀行強盗みたいだな
371:名無しの海賊団 ID:ON3I2LAhv
ん、銀行を襲うの
372:名無しの海賊団 ID:6XlcnzCGQ
あとはアラバスタの国旗とか羽織ってみれば?
373:名無しの海賊団 ID:TAGDjxWmp
マントはかかせないぞ
374:名無しの海賊団 ID:LqluVdfMw
そげキングじみてきたな
375:名無しの海賊団 ID:AW7ruziO2
特に内乱中ならそこら辺にあるだろ国旗
376:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
出来た
【画像】
377:名無しの海賊団 ID:42Umr99hn
草
378:名無しの海賊団 ID:G/4j32JuI
草
379:名無しの海賊団 ID:IetgrWHjO
もう完全にレスラーなんよ
380:名無しの海賊団 ID:r7yJuAWF3
キレてないっすよ
381:名無しの海賊団 ID:ScGpMEcgz
こんなナリしてて肉弾戦クソザコナメクジなんよな
382:名無しの海賊団 ID:6WnV6fBK7
アラバスタご当地ヒーローの誕生じゃん
383:名無しの海賊団 ID:oUoKhenz6
むしろ商店街レベルなんよな
384:名無しの海賊団 ID:JLv+5q75h
名前決めるか
385:名無しの海賊団 ID:JblGd6FB4
せやな
386:名無しの海賊団 ID:+RfaNNGFg
安価だな
387:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
まあこれくらいならいいか
名前>>402
388:名無しの海賊団 ID:t9DNoNlYL
待ちくたびれたぜ
389:名無しの海賊団 ID:WIulH+b/k
おそばマスクよりマシな名前になるといいな
390:名無しの海賊団 ID:9WG966/4D
きたな
391:名無しの海賊団 ID:t8OX7Vele
“待”ってたぜェ! この“瞬間”をよォ!
392:名無しの海賊団 ID:1aRdrohdi
やってやるぜ
393:名無しの海賊団 ID:HobITsEzG
かそく
394:名無しの海賊団 ID:n3kRlL1fJ
俺に任せろ
395:名無しの海賊団 ID:UrvAe7BIL
かそく
396:名無しの海賊団 ID:l4H1YTZbn
いくぜ
397:名無しの海賊団 ID:aQ9IZV0px
ksk
398:名無しの海賊団 ID:22xp7k+dK
かそ
399:名無しの海賊団 ID:v1lJsMteF
デザートタイガー
400:名無しの海賊団 ID:9SvhFpd9Z
ワニキラー
401:名無しの海賊団 ID:WvBPBgdlf
フェニックス・ガイ
402:名無しの海賊団 ID:Pkpi/xIsO
マスク・ド・アラバスタ
403:名無しの海賊団 ID:Etub2eobL
バジリスク・タイム
404:名無しの海賊団 ID:sSJFL2c9L
クイ・コンドル
405:名無しの海賊団 ID:ZNpS1hwqK
草
406:名無しの海賊団 ID:ZXttoZi2q
それっぽくて草
407:名無しの海賊団 ID:MszvsJqYw
もう完全にご当地ヒーローなんよ
408:名無しの海賊団 ID:c98A7g/HV
非公式キャラクター爆誕してて草
409:名無しの海賊団 ID:oS7zAYfgI
どれもヒデェ名前だな
410:名無しの海賊団 ID:99jdDlZnA
水のように優しく花のように激しくは覇気の真髄に通じるものがあることをお前に教える
411:名無しの海賊団 ID:Qu4vFKECQ
こ れ は 酷 い
412:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>402な
宴会芸用じゃなくてもっとちゃんとしたの買えばよかったわ
413:名無しの海賊団 ID:VjtgknDEG
このイッチ宴のために生きてんの?
414:名無しの海賊団 ID:JtRR0Ljfo
そりゃ下っ端が率先して盛り上げないといかんからな
415:名無しの海賊団 ID:KUttzAmuE
そんなことしてる暇あったら鍛えろ
416:名無しの海賊団 ID:BVg4xWLqZ
>>415
ここに来てド正論はやめて差し上げろ
417:名無しの海賊団 ID:MZq28NiKZ
ちゃんと必殺技は頭にアラバスタ付けろよ
418:名無しの海賊団 ID:GHqXZz8He
ゴムゴムの〜的な技、イッチないもんか
419:名無しの海賊団 ID:oVpkFyxVE
まさかロビンも見逃した敵がご当地ヒーローになるなんて思わなんだ
420:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>417
その辺のネーミングセンスないんだよな
まあ俺のアラバスタ真拳みせてやるよ
でも真っ向から戦うのは負けるかもだから不意打ちメインで行くけど
421:名無しの海賊団 ID:lyR9YqJuE
やってること姑息で草
422:名無しの海賊団 ID:oTSLHd+UD
姑息な手を……
423:名無しの海賊団 ID:3K2Q7tG2C
ヒーローじゃなくて悪役(ヒール)やん
424:名無しの海賊団 ID:Gs1sk7/A0
イッチが真っ向勝負なんてできるわけないだろ! いい加減にしろ!
425:名無しの海賊団 ID:G0Kp4gMUv
勝てばよかろうなのだああああああ
426:名無しの海賊団 ID:OGTUArrlj
イッチ王宮の豪水どうする?
427:名無しの海賊団 ID:ji/ZfyF38
なんかちょっと出てきたよな
飲むと強くなる代わりに命削るやつ
428:名無しの海賊団 ID:ojHeq0IdS
なんかぽっと出のやつが飲んだけどワニさんに効果なかったよな
429:名無しの海賊団 ID:s2wnT4eS8
ハイリスクローリターンすぎる
430:名無しの海賊団 ID:dc+x+ZPsy
>>428
勝手に死ぬんだったら俺が手を下す必要ないよなァ?
ほんとそれ
431:名無しの海賊団 ID:4ZdQk4URo
あれイッチ飲めばクロコボーイワンパンいけるんじゃね
432:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
やだよ
どうせルフィがやってくれるし
そもそもそんな危険なもの置いておくな
433:名無しの海賊団 ID:Wmd/xlIwk
でました
434:名無しの海賊団 ID:VTGTxj+Ty
聖三文字
や だ よ
435:名無しの海賊団 ID:MMR3tsWsv
まあそれはそう
436:名無しの海賊団 ID:h4TWqrhBO
むしろ相手に飲ませた方が効果ある説
437:名無しの海賊団 ID:C4TE+Mnmm
>>428
我らツメゲリ部隊!
438:名無しの海賊団 ID:K9qLjms2c
>>437
エリートなのに……
439:名無しの海賊団 ID:Qg1vJ9x7e
>>437
アラバスタ編で明確に死んだやつらってこいつらくらいよな
440:名無しの海賊団 ID:ZPLGcnXxJ
>>437
別にそこまでの助け誰も求めてないんだけど
441:名無しの海賊団 ID:qF+3YbLQ9
横にいられると思い出す
442:名無しの海賊団 ID:uOpbl4mZU
君の「もはや数分の命……助からぬ!」
443:名無しの海賊団 ID:R9EbmOqPb
その豪水のせいだよ
444:名無しの海賊団 ID:HRc+cjNa2
なんすかこれ
◆◇◆◇◆
「各門に大砲を設置しろ!」
「ありったけの弾をもってこい! 急げ!」
「まもなくここは戦闘が始まります! 落ち着いて、ゆっくりと、東門から外へ避難してください!」
アルバーナは厳戒態勢になっていた。
国王軍は迫りくる反乱軍を前に応戦するべく急ピッチで準備をすすめる。
兵は武器を取り、城門に大砲を揃え、関係ない国民を外へ逃がしていく。
突如として消えたコブラ王が反乱軍の拠点であるカトレアへと進軍したことが決起となったこの戦争。
そもそもなぜ国王があんな真似をしたのか、全く以て理解が追いつかない。消えたタイミングと移動時間等を考えれば辻褄は合うにしても、10年以上仕えてきたチャカから見ると明らかに行動が不自然なのだ。
王の身に何かあったに違いない。
絶対何か裏があると確信している。
しかし、今の自分のできることは、国王が戻るまでこの国を守ることに他ならない。心苦しいが、相手がこの国の守るべき民でも武器を振るうしかない。
「我々が、アラバスタを守るのだ!!!」
「「「「応ッ!!!」」」」
王の為に、王女の為にも──────
その喝采を首都の外れにある岩壁の上で嘲笑う者たちがいた。
「国王だか何だか知らないけど、こんなやつを誘拐するだけで終わりかよ! こんな簡単な仕事なんてないったらありゃしないよまったく!」
「フォ〜〜〜」
老婆とおかっぱ頭の大男は退屈そうにあくびをする。彼らの背後の壁面には、一人の男が血濡れのまま拘束されている。
彼こそがこの国の
クロコダイルを討つべくレインベースへ兵をあげようとした矢先に、こうしてこの二人に誘拐されてしまっていた。
彼の全身は土と擦り傷に塗れて痛々しい。
こうなってしまったのは、彼の目の前で見張っているモグラのような老婆のせいだった。
「オイオイオイオイ、だからはやく戦争始めろってんだよ! あたしらもさっさとこんな奴の御守役から解放されたいんだっての! なあ、Mr.4?」
「う」
「オッセェなァ! お前の返事はいつもよォ!」
国王の周りは最も護衛が厚かったはず。
しかし、この老婆が地面から現れてからというもの、抵抗する間もなく地中を引きずり回されて今に至る。
護衛にいた皆はどうなっただろうか。
老婆の隣にいる大男にやられてしまったのだろうか。
二人の誘拐犯の正体は心当たりがある。
おそらく、こいつらが娘の手紙にあったクロコダイルの手下たちだ。内乱を加速するに当たってコブラ王の存在は邪魔だった故の誘拐だろう。
……
しかし、ここまで上手く奴の掌で転がされていることに対してコブラの心中は耐え難いほどの悔しさが募る。
ギリギリ、と口に詰められた縄を噛む力が強くなる。
チャカ。
コーザ。
この国を愛してくれている者たちが、なぜ互いに戦わねばならない。こんなことがあってたまるか。
そして、今も国を守ろうと奮闘してくれている娘と比べ、捕まっていることしかできない自分が何よりも許せない。
──────頼む、戦わないでくれ。
「このまま王女と海賊の“バッ”共が来てくれりゃあまだ退屈しないんだけどねぇ! さっさと西門行って待ち構えてやりたいのに、なあ、Mr.4!?」
「う」
「だーかーらいちいちノロいんだよお前の返事は! あー! 腰来た! 痛った! ピリッときた!」
その願いが、どこかに届いたのだろうか。
「それは大変だ。ならば私が指圧をしてあげよう」
「なんだ気が利くじゃねぇかMr.4──────ん?」
いつの間にか、コブラ王の視界には太陽を模した自国の国旗が。
それを羽織る中背の男は、老婆の背中に親指を添えていた。
「アラバスタ按摩!」
「ギエーーーーー!!!!」
稲妻が走ったかのような激痛が老婆を襲う。
あまりの痛みに前進してしまい、そのまま崖を転がり落ちてしまった。
相棒の異変に気づくのが遅れたMr.4と呼ばれた男も、曲者に応戦すべく背後に背負った凶器を手に取ろうとする。
「な〜〜〜ん〜〜〜」
「アラバスタ猫騙し!」
だが、動作が遅すぎた。
パァン、弾けたかのように鳴る拍手を目の前で受けたMr.4は腕を上げたまま、静止してしまう。その隙にマントの男はMr.4の巨躯を崖へと押し出した。
転げ落ちるMr.4を確認した後、ようやくコブラへと駆け寄った。
「おっも……あー、腰痛。んっんん!
……ふぅん、無事か、真なる王よ」
「あ、ああ」
口の縄を解かれたコブラ王は、自身を助けた男を見上げる。誘拐したあの二人も相当な実力者だったはず。
にもかかわらず、手際よく無力化したこの男は何者なのか。
もしや、彼こそが娘の手紙にあった仲間では──────?
空に浮かぶ小さい雲が太陽を隠し、逆光で見えなかった彼の顔が顕になる。
晴天のように青い肌と、顔中を覆う鋭利な角の数々。額には更に蒼いサファイアのようなビーズが光り輝く。
何より、悪魔の如き表情はこの反乱に対する怒りと嘆きに満ちているように見えた。
大分安っぽいが。
手を差し伸べた彼は自らをこう名乗る。
「私はマスク・ド・アラバスタ。
この戦争を止めに来た、アラバスタ王国公認のヒーローさ」
「いや認めとらんが」
無礼者と。
・ ハジメ(イッチ)
殺されたフリをしてクロコダイルを出し抜いたものの、直後にボケに走る男。安価とか関係なしにそういうことをやるのは一味に染まっている証。
必要なイベントは終わったので、今の方針はコブラ王を使って内乱を止めること。ただ、下準備として両軍に潜んでいる
・ マスク・ド・アラバスタ(非公式)
一体何者なんだ……?
・ スレ民
スレ供養していたら普通に生きていてビックリ。
いつもより大人しいのは多分時間帯のせい(適当)
・ ミス・オールサンデー(ニコ・ロビン)
後の仲間。イッチとの話し合いの結果、殺したことにして見逃すことに。でも鼻の穴に指突っ込む。
なおルフィには早々にネタばらしする模様。
・ ネフェルタリ・コブラ
アラバスタ現国王。ビビのパッパ。
クロコダイルの企みには気づかなかったものの、真実を知った時は宮殿を犠牲にしても国民のためにクロコダイル討つと全兵力を向かわせようとしていた。トトおじさんのように最後まで信じてくれる者もいたあたり、同じ境遇のリク王とどこで差がついたのか。
状況が状況なために助けてくれた不審者には冷静なツッコミを入れたが、普段だったら笑って許してくれるはず。
ヒューーッ! 見ろよやつの筋肉を……まるでパンピーみてえだ!
・アラバスタ按摩
内側から効く。
・アラバスタ猫騙し
弾けるようなすごい音がするのでかなりビックリする。
大変ありがたいことに総評20,000超えました。
アラバスタ編の完結を目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件part2/3
506:名無しの海賊団 ID:JHlJ3bnoU
そう言えばイッチって全身武装色できんの?
507:名無しの海賊団 ID:6l3UN5JWU
できるんじゃね
覇気だけは一人前だし
508:名無しの海賊団 ID:rZWFD1snF
ヴェルゴさんみたいに真っ黒になるのか……
509:名無しの海賊団 ID:mAilq+gsj
真っ黒になれば変装いらないんじゃね?
510:名無しの海賊団 ID:SPBM4TS8Z
>>509
それもうコナンの犯人やん
511:名無しの海賊団 ID:QnR2pH8UE
今の姿より不審者なんだよなぁ
512:名無しの海賊団 ID:DGnXDlGiE
コブラ王絶対信用しないだろそれ
513:名無しの海賊団 ID:7ERINHQ0+
全身武装色はともかく武装色できないところはないんじゃね
見聞色で予知できてもフィジカル貧弱で回避ができないなら守りを固めるしかないし
514:名無しの海賊団 ID:eturQkDss
確かに急所は武装色しておかないとな
515:名無しの海賊団 ID:rXQKxZwkx
急所……フム……
516:名無しの海賊団 ID:h7lT20JyC
フム……イッチくんは「アソコ」も武装色できるのかい……?
517:名無しの海賊団 ID:Z9syci1YQ
※本スレは下品で汚らしい表現が云々かんぬん
518:名無しの海賊団 ID:pjeebdU1R
えっ、今日はシモの話してもいいのか!?
519:名無しの海賊団 ID:NJAOs2WyQ
実際一味のそっち事情はガチで気になる
520:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
やめろ!!!!! こっちまで風紀を乱すな!!!!!!
ここは健全な少年誌の世界だぞ!!!!!!
521:名無しの海賊団 ID:rwrUoLiSg
健全な少年誌……?
522:名無しの海賊団 ID:7xDmWh/9j
それリトさんの前でも同じこと言えんの?
523:名無しの海賊団 ID:idn7NemGp
ボンナミの姿にイッチのイッチが武装色硬化……♡
524:名無しの海賊団 ID:FNrL02U7W
んおおおおお!!!!
525:名無しの海賊団 ID:h6nk0sKnQ
>>524
それ以上はやめろォ!
526:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ハイ!!! この話はやめっ!!!!
そんなことより爆弾の解除方法教えて!!!!
527:名無しの海賊団 ID:grFNsYy2m
もうそこなの!?
528:名無しの海賊団 ID:10Cy3YZiJ
はやくない?
529:名無しの海賊団 ID:mqUhQNuL0
スパイ見つけるって話はどうなった
530:名無しの海賊団 ID:MACVKV9u9
コブラ王助けてからそんな時間経ってないよな?
531:名無しの海賊団 ID:xBs/MnJ8X
クライマックスじゃねぇか!?
532:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
あ、誤解させてすまん。
爆弾はまだ先の話で、今はコブラ王が号令かけてスパイの洗い出しやってた
爆弾はどうしようかなーって考えてるだけ
533:名無しの海賊団 ID:8sFS3dXUA
なんだ焦った
534:名無しの海賊団 ID:7PGTp64Wn
ヒューーッ! 驚かすなよ!
535:名無しの海賊団 ID:KDuqHEvM3
戦争前にこんなことやって国王軍めっちゃ混乱するだろ
536:名無しの海賊団 ID:jCSLuzyvk
めっちゃブーイングありそう
537:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>535
>>536
多少はね?
でも王様としては宮殿落とされても構わんって言ってるし、チャカさんも王様戻って来たから従ってくれるし、大抵のやつは黙ったよ
黙らないやつとか誘拐狙ってるやつはスパイだったから俺とツメゲリ部隊が黙らせてる
538:名無しの海賊団 ID:fJjzJTpMj
でたわね
539:名無しの海賊団 ID:f2R6jcZo+
ツメゲリ部隊が活躍してる!?
540:名無しの海賊団 ID:sSRJfmSe1
豪水のくだりで思い出したなイッチ
541:名無しの海賊団 ID:r/2a4wTHy
強いのは確かなんだろうな
542:名無しの海賊団 ID:OFhh9rbNO
まあ腐ってもネームドキャラ
そこら辺のモブでは勝てんぜ……
543:名無しの海賊団 ID:B389Jwrkw
ウスノロ……
544:名無しの海賊団 ID:VKL2rUFi9
ふふ……まだはやいよイッチ
あんな奴らもっと苦しめてやらなきゃ……
545:名無しの海賊団 ID:QbIdFSqZX
イキリ飯やめろ
546:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
そんなこんなで国王軍のスパイ掃討は時間の問題
反乱軍は国王軍スパイの横槍がないからビビが少なくともコーザ君は止めてくれるはず
全員が止まるはずもないし、王様の遣いが俺が乗ってきた高速ワニでイガラムとボンちゃん目撃者の子供を迎えに行ってもらってる
あとは反乱軍側のスパイをどうにかすればいいだけ
とりあえず俺にできることはやった
547:名無しの海賊団 ID:NnG7irN5A
原作知識フル活用じゃん
548:名無しの海賊団 ID:un8SPzFCz
予知ってレベルじゃねぇぞ!
549:名無しの海賊団 ID:jg9CRhS6k
周りが有能すぎる
550:名無しの海賊団 ID:5h6x/F85Y
イッチ容赦なくワニさんの計画覆してて首太くなる
551:名無しの海賊団 ID:UKHnmZkV8
誰だこいつに単独行動させたのは!
552:名無しの海賊団 ID:RW2OGa4NV
こういうことやるから安価で遊ばせないといけないんだ
553:名無しの海賊団 ID:fkxOTy5FQ
>>552
安価なしでも見た目が遊んでるだろ!!!
554:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
で、話を戻すけど問題なのは爆弾なのよ
点火止めても時限式だからどうやって止めようかなって
555:名無しの海賊団 ID:m/jbDHcIc
タイマー式だっけ
556:名無しの海賊団 ID:aS/MP3GbM
赤と青の配線切るってやつか
557:名無しの海賊団 ID:gu21sBDmh
>>556
そんなものあるわけないでしょう
漫画やアニメの世界ではあるまいし
558:名無しの海賊団 ID:s8Qp5EqmD
>>557
漫画やアニメの世界だろ!
559:名無しの海賊団 ID:IfQkdY37O
でもワンピ世界の爆弾ってどんな原理してるんだろうね
そもそもタイマーとか何で動いてるんだろう
560:名無しの海賊団 ID:X8S/stTyJ
>>559
決まってンだろ
コーラだ
561:名無しの海賊団 ID:BZVtswzpT
>>559
新人ンンンンンンン!!!
コーラはスゥーパァー万能エネルギーだぞ!!!
562:名無しの海賊団 ID:2SkjJrk/p
フランキーは出番もっと先だから座ってろ
563:名無しの海賊団 ID:XEGtvv8os
サニー号とかいうオーバーテクノロジーの塊
564:名無しの海賊団 ID:C/GBxr3GB
エネルギーの話はこのスレじゃ結論出ないでしょ
ODくんの匙加減で変わるし
565:名無しの海賊団 ID:rZWFD1snF
タイマーが時間になると点火装置に信号が行く→点火装置稼働→爆破
シンプルなやつはこんな感じじゃね、知らんけど
566:名無しの海賊団 ID:e1kQ/YRVC
点火装置さえなければ爆破しない?
567:名無しの海賊団 ID:JdZhFyU0a
まあそもそも火種がなければ火薬あっても爆発しないよな
C4とかワンピ世界特有のやつだとわかんね
568:名無しの海賊団 ID:vmgnEXh4p
イッチ内部破壊できるやん
569:名無しの海賊団 ID:8AE6EYCv6
>>568
外側から点火装置を内部破壊させるのか
570:名無しの海賊団 ID:gwwyprt0U
いける……か?
571:名無しの海賊団 ID:NXdiTUsI4
タイマーのリセット回路あるはずだけどね
問題はクロコボーイがそんなもの用意するかって話だけど
572:名無しの海賊団 ID:VnTmfazPi
あと破壊した時にちょっとでも火花出たら死ゾ
573:名無しの海賊団 ID:VKL2rUFi9
爆発オチなんてサイテー!
574:名無しの海賊団 ID:C6jhjsHsj
うーんこの分が悪すぎる賭け
575:名無しの海賊団 ID:OpxksfRx8
レイリーのグシャポイとはレベルが違うんよ
576:名無しの海賊団 ID:q6Pv0pt6n
(あれもぶっちゃけ原理よくわからん)
577:名無しの海賊団 ID:onPgtznHP
実際この爆弾に関しては解決策が明示されてないのよね
原作だとペルが空に運んで道連れにしたから無事で済んだわけで
578:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
なんだかわからんが俺には手に負えん! ヨシ!
579:名無しの海賊団 ID:vKFNpb7au
よしじゃないが
580:名無しの海賊団 ID:t6RF3MOTG
疑うな
581:名無しの海賊団 ID:TPaomhDIJ
せめて目前で未来予知してから諦めろ
582:名無しの海賊団 ID:vmgnEXh4p
関係ない、行け
583:名無しの海賊団 ID:6DEtwUShc
まだ時間ある状態でペルがいれば適当に街の外へ運んで終わりよね
584:名無しの海賊団 ID:rB+F+Oe7c
はいガバポイント
585:名無しの海賊団 ID:hpfV92uuS
再走しろ
586:名無しの海賊団 ID:pRbGr1qqg
俺の人生も再走してぇな……
587:名無しの海賊団 ID:DPB5QCioO
まあ何にせよMr.7たち何とかしないといけないな
588:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
いたなぁそんなやつら
589:名無しの海賊団 ID:byZ1sRBhC
あの二人よりも爆弾のほうがインパクトあって忘れてたわ
590:名無しの海賊団 ID:oRv7ZV2ht
なんでや! ペル撃ち落としただろ!
591:名無しの海賊団 ID:USPDLJ9AM
見せ場そこだけじゃん
592:名無しの海賊団 ID:t++6gffGy
みんながビビを時計台まで連れて行くシーン好きなんじゃ
593:名無しの海賊団 ID:/1vDb78QV
>>592
ワイトもそう思います
594:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>592
イッチもそう思います
まあ当事者だし可能なかぎり危ない橋は渡らせたくないから秘密裏に無力化させるのが一番なんだけどさ
595:名無しの海賊団 ID:idBZApVW4
いつも危ない橋を渡ってるやつがなんか言ってるぞ
596:名無しの海賊団 ID:O7jbfr7Qn
渡らせようとしてるのこのスレ民なんだよなぁ
597:名無しの海賊団 ID:L4uGeW0rx
で、どうすんのよ
爆弾近くにあるから派手なことしたらまとめてお陀仏だぞ
598:名無しの海賊団 ID:poAPI54fi
派手にやるじゃねぇか!
599:名無しの海賊団 ID:1uB048a8R
これから毎日宮殿を焼こうぜ?
600:名無しの海賊団 ID:FSnuuA+Ej
なんだかんだイッチの不意打ちあればいけるっしょ
601:名無しの海賊団 ID:C/GBxr3GB
やることMr.4たちと同じだもんな
アラバスタ突き落とし食らわせてやれ
602:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いや、その、大変申し訳無いんだが……
俺そろそろ……限界なんだよね
603:名無しの海賊団 ID:R5v35UiJE
は?
604:名無しの海賊団 ID:QasvnbUX5
え?
605:名無しの海賊団 ID:1tNjVozy3
なんて????
606:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いやだから覇気使いすぎて体が限界なンだわ
あと1回くらい武装色パンチ打てるかどうか
607:名無しの海賊団 ID:IAmhbdLbc
貧弱貧弱ゥ!
608:名無しの海賊団 ID:pRbGr1qqg
へ な ち ょ こ
609:名無しの海賊団 ID:nOWNpsiRc
イッチがホイホイ使いまくるから忘れがちだったけど本来覇気ってめっちゃ体力使うやつだからな
ルフィだってギア4で戦いすぎたらしばらく覇気使えなくなるだろ
610:名無しの海賊団 ID:mGx5w5iYU
>>609
知ってる(忘れてた)
611:名無しの海賊団 ID:rZWFD1snF
>>609
何を今更(忘れてた)
612:名無しの海賊団 ID:ROHpeqWWB
イッチ、アラバスタ入ってからずっと覇気使いっぱなしだもんな
砂漠で体力奪われてる中で見聞色で索敵とか、覇王色で鳥追っ払ったりとかしてるし
613:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>612
見聞色は時々未来予知もしてるからネ……
高速ワニの上で少し休んだけど悪ィやっぱ辛えわ
614:名無しの海賊団 ID:XjTQQJ2lG
言えたじゃねぇか……
615:名無しの海賊団 ID:J90ljenbe
実のところアラバスタ按摩はイッチなりの節約だったのか
616:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
イッチから覇気を取ったらただのウンチじゃん
なんで生きてるの?
617:名無しの海賊団 ID:7PGTp64Wn
一味のお荷物
メリー号の船底にへばりつくフジツボ
618:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
覇気だけで義務教育を終えた男
初期コビーの方が強い
619:名無しの海賊団 ID:yjoRGoBTH
ここぞとばかりにスレ民が容赦なくなって草
620:名無しの海賊団 ID:UWYUlF7ni
そこまで行くとただの悪口で草
621:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ワ……ァ……ア……ァ……
622:名無しの海賊団 ID:nIlrE/asP
>>621
泣いちゃった!!!
623:名無しの海賊団 ID:OdmR60hrx
せんせー! スレ民くんたちがイッチくん虐めてまーす!
624:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
覇気なしでできることやって、爆弾は仲間たちと一緒に処理すれば?
625:名無しの海賊団 ID:7PGTp64Wn
少なくとも場所はわかってるんだしさっさとゾロサンジに階段登らせて砲撃手は始末してもらえるし
時間に余裕があるからペルがそこら辺の砂漠まで爆弾運べるじゃん
626:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
とりあえず仲間たちが集まるまでできること考えたら?
国王助けたマスク・ド・アラバスタなんて美味しいポジションにいるわけだし、まだワニさんの計画引っ掻きまわせるでしょ
627:名無しの海賊団 ID:uvM5vwHJr
イッチ泣いちゃったからちゃんとしたアドバイス来て草
628:名無しの海賊団 ID:4XGWXIEmB
初 め か ら そ う し ろ
629:名無しの海賊団 ID:GuAsS3KIE
うーんこのスレ民
630:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
なんか涙出てきた……助かる
なら皆来るまで内乱止める方頑張るわ
631:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
おい何素直に受け取ってんだよ
632:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
やだよって言え
633:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
やだよがないとかどうしてくれんの?
責任取れハゲ
634:名無しの海賊団 ID:W6jkQ+UnG
>>631
>>632
>>633
この三人もしかしてカラーズトラップでも受けていらっしゃる?
635:名無しの海賊団 ID:O7jbfr7Qn
よく見たらID同じで草
636:名無しの海賊団 ID:kUN9wjT44
まだカイドウの方が情緒安定してるぞ
637:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
やめてくれよ〜〜〜〜ん♡
マスク・ド・アラバスタのテーマ安価するからよ〜〜♡
4フレーズでいくよ〜〜ん♡
>>646
>>649
>>652
>>655
638:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
安価がうめェ
639:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
安価がうめェ
640:名無しの海賊団 ID:7PGTp64Wn
安価がうめェ
641:名無しの海賊団 ID:739KXLw2s
安価がうめェが三人……来るぞ遊馬!
642:名無しの海賊団 ID:gYA2rsi1y
こいつらはイッチの安価がなければ生きていけないんだ……
643:名無しの海賊団 ID:CbJHwV58K
イッチが自分から安価をやるとはな
644:名無しの海賊団 ID:Qg6YZeJVG
安価上戸のイッチ
645:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
あれは誰だ! 誰だ! あいつは誰だ!
646:名無しの海賊団 ID:KdjACjtYG
悪には必ず裁きが下る
647:名無しの海賊団 ID:/C4m4itgK
俺がついてるぜ
648:名無しの海賊団 ID:THn+FPhwl
めざましジャンケンジャンケンポン
649:名無しの海賊団 ID:nyLC4qQPL
背中の太陽は彼の誇り
650:名無しの海賊団 ID:7PGTp64Wn
君のハートを内部破壊
651:名無しの海賊団 ID:wElkHclip
お天道様が見逃す悪は俺が討つ
652:名無しの海賊団 ID:Wgv8B/1ET
鉄槌を下せ、マスク・ド・アラバスタ
653:名無しの海賊団 ID:IPrMiLxoM
アラバスタ按摩は腰砕く
654:名無しの海賊団 ID:XJyl8z2A0
俺はパーを出したぞ
655:名無しの海賊団 ID:V8BpyDHoz
ベビベビベイベベイベベイベベイベベイベ
656:名無しの海賊団 ID:Q4Etw+JvO
隠れても無駄さ地の果てまで追いかける
657:名無しの海賊団 ID:pmCLYJsvN
最後台無しで草
658:名無しの海賊団 ID:+Q4VaHYlv
途中までそれっぽかったのに
659:名無しの海賊団 ID:n2GlKmCb6
うわぁ! 急にぽていになるな!
660:名無しの海賊団 ID:VR2G9WquZ
スリル感じちゃったかー
661:名無しの海賊団 ID:6I68cyatJ
他のやつらも充分アレなんよ
662:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
悪には必ず裁きが下る
背中の太陽は彼の誇り
鉄槌を下せ、マスク・ド・アラバスタ
ベビベビベイベベイベベイベベイベベイベ
うへへなぁにこれぇ
663:名無しの海賊団 ID:MRCuwu2NX
>>662
途中で考えるの面倒くさくなった感
664:名無しの海賊団 ID:bSn9mNOBD
>>662
これどうやって歌うんだよ
665:名無しの海賊団 ID:lWY4VLUGB
>>662
草
666:名無しの海賊団 ID:8foKfMVKn
>>662
途中でギター持ち出しそう
667:名無しの海賊団 ID:rZWFD1snF
宴会芸じゃんよかったな
668:名無しの海賊団 ID:Zj4Yxinfz
一発ギャグできたな
669:名無しの海賊団 ID:ZcrZ16F5b
次の宴会楽しみだな
670:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ああ!
671:名無しの海賊団 ID:1CzgItuxQ
>>670
ああじゃねぇよ
672:名無しの海賊団 ID:wymkANxq2
>>670
こいつは古代兵器プルトン
伝説上の兵器さ!
673:名無しの海賊団 ID:wymkANxq2
このイッチやっぱ宴会のために生きてるんじゃ……?
◆◇◆◇◆
「アルバーナは近いぞ! 士気をあげろ!」
「「「うおおおお!!!!」」」
反乱軍は目前となった国王がいる街が視界に入ると、一層雄叫びをあげる。
何千単位の軍勢の先頭を走るのは、
彼はナノハナで負った怪我の痛みをごまかすように馬の手綱を握りしめる。
ふと、昔のことを思い出していた。
以前ここに来たのはコブラにダンスパウダーの使用を求めて断られた時だったが、それよりももっと昔の話。
故郷が干ばつし、一時的にアルバーナに滞在したときの事を。
街の外れで集落の子供たちが集まり、“砂砂団”なんてグループを作って好き勝手遊んでいた。
護衛隊に稽古をつけてもらったり、時計台を勝手に秘密基地にしたりして怒られたこともある。さらに野盗に襲われたこともあったが、それでも間違いなく楽しかった。
コーザは昔の希望ばかりみていた自分を忌んでいても、あの日々を否定するつもりはない。
むしろ、自分たちはあんな笑い合える日々を取り戻すために立ち上がっているのだ。
この反乱軍の中にも、かつて“砂砂団”として共にいた仲間たちもいる。怖いものは何もない。
……唯一の気がかりは、一緒に遊んでいた一人の少女。
突っかかってきて、殴り合って、認め合って……今思えば王女のくせにやんちゃしすぎだろう、なんて呆れるばかりだ。
そんなことを考えていると首都の前まで来ていた。
感傷に浸るのはここまでだ。
意識を戦いに切り替える。リーダーとして、同志達に再び突撃の号令をかけようとした時だった。
「止まりなさい! 反乱軍!」
数万人単位の怒号の中、確かに聞こえた声。
この規模の軍隊を前に一歩も引かず、両手を広げて立ちふさがる一人の少女と一匹のカルガモ。
顔に痛々しい傷が残っているが、面影は確かに残っていた──────
「止まれええええええ!!!」
気がつけば、彼は大声で叫んでいた。
コーザの号令は全ての反乱軍には届かなかった。
無理もない。元々軍はあらゆる支部に分かれて機能させる程に大きな規模になっていた。九割はそのままアルバーナの城門をくぐり、都市の中に侵入した。
残った一割は──────
「仕組まれていた……だと!?」
「そうなの! この戦いは全て、クロコダイルがこの国を乗っ取るために仕組んだ罠なの!」
突如現れた王女ビビに、事の真相を聞かされていた。この国から雨を奪い、手下に街の破壊工作をしかけさせ、その悪意を国王へと集めさせたのも全て、この国の英雄ともてはやされる王下七武海のクロコダイルが計画していたものだと。
誰もが困惑していた。
それはそうだろう。この“国のために”起こした反乱が、全て一人の男の掌に踊らされているなんて突然聞かされて、到底信じられるはずがない。
「嘘をつくな! お前らがやったことは間違いねぇんだ!」
「そうだ! ナノハナで国王本人が言ったんだ! “全部自分のせいだ”ってなァ!」
「っ!? それは別人よ! 悪魔の実で姿を変えることができる手下がいるの!」
……同志達の言うとおりだ。
何せ、コーザは国王本人から目の前で言われたのだ。
全て、全て自分の仕業だと。
あの国王は、間違いなく彼の知っているものと同じ姿だった。
「コーザ……! お願い、皆を止めて!
国王軍も、反乱軍も、もう誰も血を流してほしくないの……」
しかし、目の前で懇願する王女の姿も間違いなく彼の知るものだった。目元を見れば、何度も泣いたかのように真っ赤になっている。
ひとつ、コーザは息を吐いて頭を冷やす。
何を信じればいいのかなんて、そんなもの
「……わかった。俺達は撤退する」
「ちょっ、リーダー!? あんた正気か!?」
「当たり前だ! 大至急、各支部に伝えろ!」
ビビの主張にすべて納得したわけではない。
しかし、彼が別れ際に約束した「いい王女になれ」という言葉が、目の前にいる彼女の姿と重なった。国王より遥かに信用に足るものだった。
……よくよく考えれば、ナノハナでの国王の言動は確かに不自然だったと思う。
露骨に自分へ悪意を向けさせるような口振りは勿論のこと、もし本当に犯人であれば、ずっとシラを切り続ければいいはず。
何より、この内乱が起きることで最も得をする者がいるとすれば──────
そこまで考えた瞬間、銃声が響いた。
「クエッ!?」
「カルー!?」
「なっ……」
ビビに向けられた銃は、カルーがその身を挺して防ぐ。銃声の先の同志は舌打ちをしてこちらへと近づいてきた。
「全くよ、困るぜリーダー。折角のチャンスなんだからよ、優柔不断にされちゃこっちも堪んねぇよ」
「……貴方たち、
へへっ、と下品に笑う同志の腕には髑髏のマークが刺繡されていた。見れば同じマークを持った者たちがビビとコーザ、そして残った数人の同志達を囲っていく。
「お前たち……騙していたのか!?」
「そういうことだ。この戦いに茶々いれることだけが俺達の仕事だったわけだが、こうなったらお前ら全員始末するしかなくなるなァ」
ビビとコーザは武器を取る。
多勢に無勢。数人の同志……かつて砂砂団として共にいた古くからの友人たちを除き、ここにいる全ての同志はスパイだったのだ。
これでもう疑う余地はなくなった。
この状況も含めた何もかもすべて、奴に誘導された果てなのだと。
「まあ、国王軍にも俺達の仲間がいる。この戦争は止まらなぶへ──────」
男は最後まで口にすることは叶わなかった。
彼を含むスパイの数々は猛スピードで走り抜けた物体に一掃されるように跳ね飛ばされ、彼方の方へと飛んでいってしまったからだ。
見上げれば、人を遥かに超える巨体のワニがジロリとこちらを見ている。
「……しまった、速すぎてブレーキが間に合わなかった……ゴホン、マ〜〜ママ〜〜♪ ま、非常事態ゆえ致し方ありませんな」
「「イガラム!?」」
ワニの上から出てきたのは左右に大きくカールする髪が特徴的なシルエット。
間違いなく、彼らの知るイガラムその人だった。
死んだと思われていたビビの目から何度目かわからない涙が落ちる。
『死んだって思うのは死体見てからにしよう』
初めて会った時に見た、彼の柔らかい微笑みが脳裏に浮かぶ。
信じていて良かった。彼の言ったとおりだった。
なら、彼もルフィもきっと生きているに違いない。
「おえ、気持ち悪い……」
「だ、大丈夫か? 怪我しているのに無理させて申し訳ない」
「い、いいよ。おれが行けば戦いが止まるんだろ? なら無理してでも行くよ」
「……お前」
イガラムとともにワニの上から出てきたのは、王国軍の遣いと、カトレアで反乱軍に志望した少年カッパが顔を青くしていた。
曰く、この少年はナノハナにいた国王が別人に変わる瞬間を目撃し、何者かに口封じされかけたという。
ビビの証言を裏付ける決定的な証拠になる存在が現れたわけだ。
「ビビ様、まだやらなければならないことが──────」
「っ……ええ! わかってる!」
内乱を止めるためのピースが続々と揃った。
状況を引っかき回す厄介なエージェントたちは、大切な仲間たちが抑えてくれている。
いよいよ現実味が帯びてきた希望的な結末を前に、ビビは涙を拭って力強く立ち上がる。
「行きましょう、
「っ、よし、行くぞお前ら!」
「「「ああ!」」」
とんでもない過ちを犯してしまったことには変わりない。それでも彼らはまだ“最悪”からは引き返せる段階にいるはず。
偶然なのか、この場に残った者たちはかつての“砂砂団”にいたメンバーたちだった。クロコダイルがこの国に来る前から知っている彼らがスパイである心配はないだろう。
全員が揃ったわけではないが、まるであの頃に戻ったような奇妙な気分になる。
……それも、
また感傷的になってしまう気持ちを抑え、コーザたちは成すべきことのために、南門へと急ぐ。
「……それにしても静かだな」
「く、クエ?」
少し離れた場所で怪我をしたカルーをワニの上に運びながら、イガラムは不意に呟いた。
「いや、戦争が起きている割にはアルバーナの中が大人しいと思ったのだが」
ここに残った者以外の反乱軍は、殆どは街中に入っているはず。にもかかわらず、外にいる分には怒号すら聞こえない。一体何が起きているのだろうか。
疑問を抱きながらも、イガラムたちはビビたちの後を追う。
◆◇◆◇◆
時は少し遡る。
反乱軍がアルバーナに向かっている中、国王軍は着々と戦いの準備を進めていた……はずだったのだが、波乱が起こっていた。
「国王!? 今までどこにいらっしゃったのですか!?」
「ああ……すまない、心配をかけたな」
まず、行方不明だったコブラ王が見つかったことだ。
体中につけられた擦り傷が、ここまで辿り着くまでの過程の壮絶さを物語っている。
自分はクロコダイルの配下によって誘拐された。
ナノハナにいた国王は偽物だ。
この内乱は奴によって引き起こされたものだ。
チャカやペルなど一部の人間しか伝えていなかったことも含め、詳らかに話し始めるコブラ。
そのことを聞いた国王軍は固唾を飲む。
到底信じられる話でもない。
王下七武海とはいえ、たった一人でこの何万人が関わる内乱を引き起こすように仕向けたなんて現実味がない。
「クロコダイルの部下には他人の外見をそっくりそのままコピーする能力者がいる。ナノハナに現れたのは奴で間違いないだろう。目撃者もいるぞ」
「そんな奴がいるとは……ん、お前は何だ?」
「マスク・ド・アラバスタだ。
存亡がかかっているこの国のために立ち上がったアラバスタ王国公式ヒーローである」
「だから認めとらんぞ」
何だかよくわからないマスク男がコブラの隣で補足し始めた。
安っぽい青マスクと国旗を羽織り、腕を組んで立つ姿はいかにも胡散臭い。こいつが囚われの国王を助けたなんて冗談にも程がある。
いっそ、クロコダイルの陰謀の話の方が信じることができそう、という意味ではコブラが告げる真相の信憑性を後押ししていた。
「……そして、この軍の中にも奴の組織“
「なっ、それは本当ですか!?」
「ああ、体のどこかに髑髏の刺青があるはずだ。
チャカ。この軍に5年以上いる者を中心に、各兵士の体を調べさせろ! 刺青のある者は見つけ次第拘束しろ! 大至急だ!」
「は、はい!」
ざわめく兵士たちをよそに、コブラはチャカと古株の兵士たちに指示を出す。
現存する国王軍の人間は何十万人もいる。反乱軍に寝返る者が抜けてもそれだけの規模の軍だ。中には国王の判断に疑念を抱く者も出てくる。
「で、ですがこうしている今も反乱軍がこちらに攻め入ろうとしています! 大砲の用意をしないと、一気にアルバーナへ攻め込まれ──────」
「それがどうした!
武器なぞ自分の身を守るためのもので充分だ!
大砲を用意する暇があるなら白旗を用意しろ!」
この王は迷わず降伏することを選ぶ。
国にとって大事なのは宮殿ではない。ましてや王族としての面子でもない。
この国の“人”こそが、最も尊ぶべきものと謳う。
それが、“ネフェルタリ・コブラ”という王なのだ。
「王よ。であれば秘蔵の兵士を借りるぞ。時間が迫っている以上、何より今は動ける人間が欲しい」
「う、うむ。では、ツメゲリ部隊を派遣しよう」
変な格好のままねっとりとした声で真面目なことを言われたコブラは一瞬頭が混乱しそうになる。
実際、マスク男のスパイを見つける速さと精度は相当なもので、刺青をしていない覆面スパイの存在すらも看破していた。
「ゆくぞツメゲリ部隊! アラバスタ悪質タックルを仕掛けるぞ!」
「お、おう?」
そこにツメゲリ部隊が鎮圧にかかれば、もはや誰も止めることはできない。
ついでにあのマスク男の謎のテンションも止めることはできない。
国王の迷いない命と、チャカたち軍の手腕。そして謎のマスク男の特異な力によって、スパイ探しは驚くほど早く終わったのであった。
そして、現在──────反乱軍がアルバーナへと攻め行った直後に至る。
「おい、なんだよこれ……」
特に何の障害もなく、街の北ブロックにあるアルバーナ宮殿前に辿り着いた支部のリーダーの一人が、状況を飲み込めずに立ち尽くしていた。
他の同志達も同じだ。
反乱軍の人数は国王軍の倍以上に膨れ上がっていて、なおかつ彼らの士気は最高潮に達していたはず。
にもかかわらず、誰もがその異様な光景に困惑していた。
「我々国王軍は、反乱軍に降伏する」
隣には護衛隊副官のチャカが控え、彼らの背後には手足を拘束された国王軍の兵士たちが横並びに転がっている。
これが最後の戦いだと。
終止符を討つべく乗り込んだ先に待っていたのがこの光景だ。
肩透かし、なんてレベルの話では済まされない。
同じ軍の人間が拘束されながら晒し者にされている状況もまた異様さを際立たせる。
そして、宮殿に入るための門の上。
本来なら大砲を並べ、外敵に備える用意をしていたはずの場所。
そこにコブラ王と同じく視線を集める存在がいた。
その悪魔のような形相は、この国の惨状への怒りを顕にしているのか。
肩に羽織る国旗のようなマントは、国を背負う覚悟の現れか。
砂塵を引き裂くように差し込む太陽を背に、門の上に立つ一人の男が──────
「悪には必ず裁きが下る〜♪
背中の太陽は彼の誇り〜♪
鉄槌を下せ、マスク・ド・アラバスタ〜♪
ベビベビベイベベイベベイベベイベベイベ〜♪」
なんか変な歌を歌っていた。
・ ハジメ(イッチ)
暑い中、安物のマスクを被り暗躍した過労と覇気の使い過ぎで色々と限界を迎えそうな男。
やれるだけのことはやったせいもあって気分がハイになっており、国王を差し置き宮殿でオンステージし始める。当然、正常な判断能力はレインベースに置いてきた。
もしこの光景をルフィとチョッパー以外の一味の誰かが見ていたら「悪酔いした彼はこんな感じ」と言うだろう。
この後限界を迎えて気絶する三秒前のことである。
・ マスク・ド・アラバスタ(非公式)
テーマソングは完成したものの、そげキングのテーマの方が先にリリースされて咽び泣く。単純に語呂が悪いのと版権的な諸事情があるのかもしれない。
みんなも歌ってみよう!
・ スレ民
下品で汚らしい注意文が流れると歯止めが利かなくなる。将来の夢はワノ国の湯屋にいる三助。このスレが始まってようやく助言らしい助言が出てきたと思えばイッチからの安価に大はしゃぎ。
これが……「ご褒美」ってコト!?
・ ネフェルタリ・コブラ
宮殿に戻ってきてから僅かな時間で何十万人いる軍の中に潜むスパイを全て洗い出した。
規模に比べてスパイの人数が多くなかったこと、戦争の準備を全て放棄した上で行動したこと、イッチの見聞色とツメゲリ部隊の強引な拘束を敢行したこと、諸々を差し引いても統率者として充分な働きをしてくれた。
マスク野郎に関しては信用しているが、ふざけた格好で真面目な言動する癖に、真面目な場面ではふざけたことするため脳がバグりそうになっている。あと王国は1ミリたりとも存在を認知しないつもり。
確かに反乱軍の戦意を削ぐ方法はないかと言ったが、わけわからないテーマソングを歌えとは言っていないだろう、と後に語る。
・ アラバスタ悪質タックル
死角からやってくるそれは簡単に体勢を崩させる。
・ サー・クロコダイル
数年間にわたり下拵えして、ようやく動かした計画の仕上げのためにウッキウキで移動中。
ジャンプ+のアラバスタ編無料期間が終わる前にこちらも終わらせるつもりだったのに、予想以上に書きたいことがでてくる不思議。
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件part2/4
714:名無しの海賊団 ID:3rHKJFxjU
ボン・クレー
イワンコフ
イゾウ
菊の丞
ヤマト
クロコダイル
結局のところ全部ホモなのでは……?
715:名無しの海賊団 ID:Pi1yw31Bp
>>714
なんだァ、てめェ……?
716:名無しの海賊団 ID:FcQ1wIho5
>>714
失せろ(ドン!)
717:名無しの海賊団 ID:fD1ji4O3q
あまり強い言葉を使うなよ
弱く見えるぞ
718:名無しの海賊団 ID:Pi1yw31Bp
この世界のオカマは男らしいの最上級の褒め言葉
719:名無しの海賊団 ID:x0KE83PQc
>>718
そこは芯が強いと言って差し上げろ
720:名無しの海賊団 ID:T81NAgAQt
性自認と性的指向は違うんだよなぁ……
イゾウに関しては女装しているだけだし
721:名無しの海賊団 ID:S9QBTy4St
しれっとクロコダイル女の子説を提唱するのはやめろ
722:名無しの海賊団 ID:Qt1ZXvLXk
ヤマトに関しては他の属性が強すぎる件
723:名無しの海賊団 ID:/yOa/LGAE
高身長アラサー巨乳鬼っ娘ボクっ娘無知ケモ反抗期箱入りお嬢様おでん
属性ペガサス盛りキメラやん
724:名無しの海賊団 ID:I4fVbaSb1
>>723
天才かな?
725:名無しの海賊団 ID:uZKgXK5pH
>>723
属性おでんとは
726:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
やばいやばいやばい死ぬ死ぬ
727:名無しの海賊団 ID:yHHUR4r4M
君もおでんにならないかい?
728:名無しの海賊団 ID:gpxfVacHt
その覇気(だけ)練り上げられている
至高の領域に近い(なお他)
729:名無しの海賊団 ID:POpqTGvOO
>>726
あれ、イッチじゃん
730:名無しの海賊団 ID:1X/AW+AXd
まーた死にそうになってんのか
731:名無しの海賊団 ID:yJO/TXfWN
いつものことじゃん
732:名無しの海賊団 ID:MSHqP0rl5
今どこらへん?(定型文)
733:名無しの海賊団 ID:lMGd9j7E6
はいはい覇気の訓練
734:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
>>732
ワニ到着したタイミングで起きたんだけど
・ワニ、黒幕だったことを暴露
・広場全体に流砂展開して皆逃げられない
・機を窺っていたら発見されて攻撃される←今ここ
735:名無しの海賊団 ID:Pi1yw31Bp
死んだな
736:名無しの海賊団 ID:GsMiyPNAG
じゃあな!
737:名無しの海賊団 ID:Hw2A9A6D8
黙祷
738:名無しの海賊団 ID:mwS/cNd0m
ち〜ん(笑)
739:名無しの海賊団 ID:dDVT0gVkI
ワニさん顔真っ赤になってそう
740:名無しの海賊団 ID:Jxb4X9wcx
爆弾で国王を脅迫する方針にしたのなクロコボーイ
741:名無しの海賊団 ID:b4OAJSKvy
ルフィは?
742:名無しの海賊団 ID:Oh0UbRKFl
>>741
多分ペルと一緒にアルバーナ向かってる最中だろ
海軍も同じく
743:名無しの海賊団 ID:55xry35q7
あっ……チャカの奮闘とツメゲリ部隊があれこれしたシーン丸々カットされてるからァ……
イッチがその分時間稼ぎしないといけない……ってコト!?
744:名無しの海賊団 ID:PZt6e/qA8
>>743
フ!(嘲笑)
745:名無しの海賊団 ID:6Orqut3la
>>743
YES! YES! YES!
OH MY GOD!
746:名無しの海賊団 ID:/H5J8ucsU
やっぱりテーマソング熱唱したのが悪いんや
747:名無しの海賊団 ID:S4rYHPC2L
>>746
あれやらなきゃまだどこかに隠れるくらいの体力はあっただろ
748:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
ギャーーーー!!!! フックの針出してきたああああああ!!!!
逃げろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
749:名無しの海賊団 ID:tvGNpAN/1
毒使う気マンマンで草
750:名無しの海賊団 ID:MEjZFrzuH
そりゃ(ここまで計画無茶苦茶にした奴がいれば)そう(毒でも何でも使って確実に殺す)よ
751:名無しの海賊団 ID:zNE4PboYk
放っておくとさらに掻き回される危険あるもんな
752:名無しの海賊団 ID:N9MTGdrsI
よかったなイッチ
船長より先にクロコダイルから認められたぞ
753:名無しの海賊団 ID:F/C45Bukk
お前だけは簡単に死なさんぞ……!
754:名無しの海賊団 ID:dWfDQPl1D
逃げるんだぁ……
755:名無しの海賊団 ID:KxiOMZdAn
勝てるわけがない!
奴は伝説の王下七武海なんだぞ!
756:名無しの海賊団 ID:1X/AW+AXd
もうダメだ……おしまいだぁ……
757:名無しの海賊団 ID:gDJD3nWMM
これではマスク・ド・アラバスタの名が泣くな!
758:名無しの海賊団 ID:aJ7157+0n
腐☆腐
地獄に行ってもこんな面白い殺戮ショーは見られんぞぉ
759:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
いいや! これは『勝つため』の逃走だ!
ルフィが来るまで時間かかるなら俺がこっちから向かってやる!
760:名無しの海賊団 ID:Hw2A9A6D8
どこへ行くんだぁ?
761:名無しの海賊団 ID:JMPPw/A6V
おーおー体力うんち野郎が足掻きなさる
762:名無しの海賊団 ID:eTpvx6SsU
こんな時にウルージさんがいればワンパンなのにな
763:名無しの海賊団 ID:evHyaYb6J
戦わずしてカイドウを自殺に追い込む男と比べるのはNG
764:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
誰か助言頼む!!!!! マジで死ぬ!!!!!
765:名無しの海賊団 ID:bOf/sREzM
やだよ
766:名無しの海賊団 ID:YyuBBPpnB
やだよ
767:名無しの海賊団 ID:yHHUR4r4M
大丈夫大丈夫
768:名無しの海賊団 ID:VLNOC0emo
生き残るのは確定濃厚バレバレ
769:名無しの海賊団 ID:yaKAIqw5X
死んでも生き残ってもまあ楽しかったからいいじゃないか
770:名無しの海賊団 ID:dmnaYZ6mY
やだよがまわりまわってイッチにかえってきてる
771:名無しの海賊団 ID:IAAMSbJTJ
人の心とかないんか?
772:名無しの海賊団 ID:F/C45Bukk
どうしても助かりたいなら……“
773:名無しの海賊団 ID:2As1V6cYa
もうこのスレ民の動かし方なんてあれしかないのわかってんだろ?
774:名無しの海賊団 ID:jI8DV89b1
さあ来いよ! “高み”に!
775:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
うおおおおおおおおおおおお!!!!!
クロコからの逃走方法!!!!
>>776
>>777
>>778
>>779
>>780
>>781
>>782
>>783
>>784
>>785
>>786
>>787
>>788
>>789
>>
776:名無しの海賊団 ID:s/oTO5E6S
草
777:名無しの海賊団 ID:LI8rYd4QG
途中送信してて草
778:名無しの海賊団 ID:DG5U6Kqk9
必死過ぎて草
779:名無しの海賊団 ID:Wf/0SZlQd
大盤振る舞いじゃんww
780:名無しの海賊団 ID:d9oCI8Uro
全部やる気かこれwwww
781:名無しの海賊団 ID:uZKgXK5pH
なりふり構っていられないよなwww
782:名無しの海賊団 ID:H0oLwqHXz
こんなの安価スレじゃないわ!
ただの助言スレよ!
783:名無しの海賊団 ID:472B5NarE
>>782
だったらアドバイスすればいいだろ!
784:名無しの海賊団 ID:1WxiqSkQY
>>782
元々安価スレじゃないんだよなぁ……
785:名無しの海賊団 ID:ypp7cdTFa
ずっと安価渋ってたのにえwww
悔しいえwwww
786:名無しの海賊団 ID:r9bvd1cCh
(命かかってるから)多少はね?
787:名無しの海賊団 ID:F/C45Bukk
そんなに怖いか? クロコダイルが!
788:名無しの海賊団 ID:bGoCucOoe
>>787
腕に掴まれたら水分吸収されて死
毒あるからフック掠っただけでも死
怖いに決まっているんだよなぁ
789:名無しの海賊団 ID:GvmtJu5rA
あ
790:名無しの海賊団 ID:s4dWEZmTD
安価終わったぞwwwww
791:名無しの海賊団 ID:PupQfKJf2
どうするwww
792:名無しの海賊団 ID:g1AEeXN9/
雑談で終わったなwwwww
793:名無しの海賊団 ID:/E9oQykcJ
安価ですら助けてもらえないの本当もう森生える
794:名無しの海賊団 ID:b5wDI6sIK
>>789
ここマジ悪意しかないだろwww
795:名無しの海賊団 ID:Pbawyi7SS
>>793
これには緑牛さんも安堵
796:名無しの海賊団 ID:GvmtJu5rA
正直すまんかったあます
797:イッチ◆oV+OwtFfi ID:hrSlOhN41
うわあああああああああああああああああああああ
798:名無しの海賊団 ID:KFRV6Ei5B
いやこの安価の取り方はイッチにも責任は……いやスレ民が悪いな
799:名無しの海賊団 ID:5oIBVudxs
プルトンの存在をチラつかせて無理矢理会話のテーブルに立たせろ
それで時間稼いでルフィ到着まで待て
800:名無しの海賊団 ID:TS03ZYf8z
なんとか水源探してクロコにぶっかける
少なくとも動きは遅くなるからな
801:名無しの海賊団 ID:J+Uq7Sn1a
戦い終わった仲間と合流するか
ウソップとかいればギャグ補正でワンチャン生き残れるかもよ
802:名無しの海賊団 ID:fBGX4k+R+
止まるんじゃない! 犬のようにかけ巡るんだ!
803:名無しの海賊団 ID:BkQ2MtH3H
遅い遅い遅い
804:名無しの海賊団 ID:V1y9RXjBt
>>799
>>800
>>801
もっと前に書いとけーーーー!!!!
805:名無しの海賊団 ID:DVijIUKGh
茶番が長いんだよォ!
806:名無しの海賊団 ID:HbFqoKdUU
イッチ大丈夫か?
807:名無しの海賊団 ID:t8z0wcRa1
生きてる?
808:名無しの海賊団 ID:29svsTaBn
反応して♡
・
・
・
819:名無しの海賊団 ID:pVDVxUmlk
イッチの霊圧が……消えた?
820:名無しの海賊団 ID:PupQfKJf2
マジで反応ないぞ
821:名無しの海賊団 ID:bGoCucOoe
え、マ?
822:名無しの海賊団 ID:LIKwB329b
ひょっとして本当にマズイ感じ?
823:名無しの海賊団 ID:yaKAIqw5X
スレ民のせいでイッチが死んじゃったァ……
824:名無しの海賊団 ID:Pi1yw31Bp
うせやろ???
825:名無しの海賊団 ID:9euq9lDXZ
あいつ死におったwwwww
826:名無しの海賊団 ID:WxUad5xHa
>>825
人が死んでるのに何ヘラヘラ笑ってんだよ!!!
827:名無しの海賊団 ID:teNPHnzO5
俺は信じてるぞ
◆◇◆◇◆
アラバスタ王国の内乱の構図は二度変わった。
初めは国王軍と反乱軍の戦いだった。
しかし、それは首都アルバーナに攻め込まれた時点で国王コブラ自らが降伏の意志を示したことと、安物のマスクを被ったなんだかよくわからない奴によるリサイタルにより膠着状態になる。
その後すぐに駆けつけた護衛隊隊長イガラムが、この内乱の真相を語った。
たった一人の海賊、それもこの国のヒーローとも言える者が、この国を乗っ取るための陰謀だった、と。
「嘘だろ……」
「クロコダイルがそんなことをするはずが……っ」
いかに荒唐無稽な話のように聞こえようか。
だが、生贄のように差し出された国王軍内にいた
「だ、騙されるな! これは国王が罪をなすりつけようと──────」
「その腕の刺青、ここに拘束されている者と同じように見えるが?」
「……くそっ!」
こうして反乱軍側にいるスパイの存在も示唆された。
見つかるのも時間の問題だと形振り構っていられなくなり、彼らは逃走を試みる。
それを抑える反乱軍及び国王軍……否、アラバスタ王国の者たちとの対立へと変化した。
そして、二度目の変化はすぐに起きる。
「……おい、どういうことだ? 予定では既にこの広場は戦争の真っ最中になっているはずだが?」
「クロコダイル!!!」
睨み合っている中、全ての元凶が現れた瞬間だった。
宮殿の門の上に立つクロコダイルに全員の視線が集まる。
「……よくも我が国を嵌めてくれたな」
コブラは宿敵に対して隠すつもりもない敵意を向ける。
他の者たちも驚愕、疑問……と言った感情が窺えた。
クロコダイルは周囲を見渡す。
この場にいる
これらだけで彼は悟った──────己の計画の破綻を。
「……ハァーッハッハッハ!!!!
なるほど、全て知っているということか。ああそうさ、この内乱は全てこの
高らかに宣言するように自白する。
この瞬間から、対立構造はアラバスタ王国と
「ようやく正体を表したな、海賊め」
「ああ、俺は所詮“海賊”だ。だが、その“海賊”を英雄だの何だの持て囃したのはこの国の民衆たちだ。そして、それに甘えていたのは他ならぬ王国だ。違うか?」
「……っ」
コブラは黙るしかない。
実際、娘がこの危機を知らせてくれるまで気づくことすらできなかったし、あの謎マスクがいなければ内乱はかつてない規模にまで膨れ上がり、多くの国民が犠牲になっていた。
無意識なのか旗の柄を握る力が強くなっていた。
怒りは勿論のこと、言い返せない己の無力さと弱さ。その心中は余人では計り知れないほど複雑に違いない。
「本当はこのまま英雄ごっこを続けてやろうとも思ったが……いいだろう、お前たちに免じてここからは“海賊”らしくやるとしよう」
門から降りてきたクロコダイルは右手で地面に触れる。
一瞬、体が宙に浮いた。
まるで地面が揺れた感覚は、決して錯覚なんかではなかった。
「あ、足が!!!!」
「出られねぇ! 何だよこれ!?」
アラバスタでは縁がないため彼らには例えようがないだろうが、地面が雪のように柔らかくなった。
この場にいる人間は例外なく膝上まで沈む。いや、人だけでなく建物をも飲み込み、藻掻けば藻掻くほどに身を取り込まれる蟻地獄だ。
「クックック……安心しろ、この広場一帯の地面を柔らかくしてやっただけだ。変に動かなきゃ沈みやしねぇさ。広さは大体──────5kmってところか?」
「貴様ァ!!!!」
「ほう。その反応、やはり爆弾のことも知っているようだな」
「爆弾!?」
この場にいる者全員の視線が集中する。
ざわつく様子を見て、クロコダイルはさらに笑みを浮かべる。
「おっとしまった。これはまだ口にしてはいけなかったか?」
「くっ……」
「ククク、教えてやれよ王様。それとも、もうここまできて何でもありませんなんて言えるかな?」
コブラは視線をチャカたち近しい配下を見る。
一同は、目を閉じて首を縦に振った。
……やむを得ないか、とばかりにコブラは衝撃的な事実を告げた。
「っ……午後4時半、この男は広場に砲撃する段取りをつけている!」
「なっ……!」
「そうさ! 花火みてぇなチャチな威力じゃねぇぞ! この広場は間違いなく消し飛ぶことになる!」
一瞬の静寂は嵐の前の静けさだったか。
「「「うわあああああ!!!」」」
動揺と悲鳴が爆発する。
ある者は脱出をしようとして、みるみる流砂に囚われ。またある者はここから抜け出そうと、他人を足蹴にする。
このように暴露すれば死の危機に瀕した皆がパニックに陥ってしまう。故に、彼から存在を知らされた際にはチャカと言った近しい者たちにしか存在を教えなかった。
かと言って、あのまま沈黙を貫いてはせっかく味方になった反乱軍たちの不信感を買ってしまう。
苦渋の決断をさせられたコブラは、当のクロコダイルを一層睨む。
狙い通りになった奴は混乱に陥る群衆たちを見下し、嗤っていた。
「…………」
だが、クロコダイルの心中も決して晴れやかなものではない。実際、咥えていたはずの葉巻はくの字に折り曲がってしまっていた。
爆弾が残っているのは幸いだったが、それ以上に腑に落ちないことが多すぎる。
まるで計画の全容が筒抜けになっているような状況。
一瞬、
……内通者という線は薄い。普通に考えて、
であれば、残りの線は──────
「そこでじっとしてもらおうかコブラ王。この場にいる者たちの命はお前の判断に委ねられることになる──────
「ぐおっ!?」
城壁の影に隠れていた伏兵に向けて砂の刃を放つ。
幾百の兵が攻め入っても砕けない守りは瞬く間に切り刻まれる。
左腕を掠っただけで辛くも避けられたようだが、受け身すらとれず無様に転げ落ちる。尻餅をつく男の焦りは、趣味の悪いマスク越しからでも見て取れる。
「Mr.プリンスか、それとも“覇気使い”か。
さァ、お前はどっちだ?」
「はあ、はあ……ま、マスク・ド・アラバスタだ。覚えておくといいワニ野郎。フッフッフッフ!」
クロコダイルは眉を顰める。額には確かに青筋が走っていた。
このやり取りだけで確信したからだ。
目の前のこいつが
「いいだろう、てめェは直々に殺してやる」
右手に握っていた葉巻を一瞬で砂へと姿を変える。
彼の象徴たる左腕のフックの針。刀の鞘のように黄金の針を手前に引くと、銀色の針が姿を現す。
針から滴るそれはまぎれもない毒。
掠るだけで致命傷になり得るクロコダイルの切り札だ。
「……はっ、やだよ。そんな終わり方ゴメンだ!」
「お前!?」
「逃がすと思ってやがるのか!」
マスクの男は西側に向けて走り出し、それをクロコダイルが追いかける。コブラとチャカは止めようとしても、足が囚われていて動くことができない。
彼の意図は察することはできた。
自分がクロコダイルの注意を引きつけているうちに爆弾を止めてくれ、と。
余裕がないにもかかわらず、あからさまな挑発をする理由などそれしか考えられない。
「くそっ!」
だが、文字通り身動きが取れない今のコブラたちにできることと言えば、この地獄に囚われた国民たちを鎮めることくらいだ。
無謀な賭けに出てくれたはずなのに、それに報いることすらできない。助けられてばかりな自分たちの無力さを痛感するしかなかった。
「なんだよこれ……」
「な、何があったの?」
ビビたちが到着した頃には、広場は既に阿鼻叫喚に包まれていた。
あれほど栄えていた街並みは廃墟のように傾き、沈もうとしていた。
「ビビ様!」
「イガラム! どうしたの!?」
見れば、下半身が地面に沈んだイガラムがいた。
気づいたのを確認すると、そのまま両手に抱えたそれをコーザに向けて投げ飛ばす。
それがカッパだと確認すると、傷が痛むのを我慢しながら慌てて彼を受け止める。
「大変なんだ! クロコダイルが!」
「この広場にいる皆を爆弾を撃ち込んで吹き飛ばそうとしています!」
「なんですって!?」
「コーザ! その子とビビ様を連れてどこか遠くへずもももももも……」
「イガラム!?」
動き回ったせいで身を囚われ、言い終わる前に顔まで砂に浸かってしまうイガラム。
この砂地獄の中には反乱軍も国王軍も、そして
そして、自分の父とチャカの姿もあった。
「クロコダイル……!」
せっかく内乱を止められたのに、今度は直接国民の命を奪おうとするのか。
だが、裏を返せば奴自身も後がないことを悟っている証拠だ。確実に奴を追い詰めていることは間違いない。そう考えればほんの少しだけ溜飲が下がった気がした。
ビビは他ならぬ怨敵を探すと、その姿はすぐに見つかる。
奴は父を眼中に留めず、街の西側へと逃げる誰かを追いかけていた。
「“
「うおおおおおおっ!?」
巻き上げられる砂嵐と宙に舞う一人の男。
ビビは遠目で見てもわかる特徴的なマスクに見覚えがあった。
『え、これ? 宴会芸用のグッズだけど』
『なんでアンタがいてそんな無駄遣いすんのよ!?』
『だって無駄遣いじゃないから』
『ふんっ!』
ナノハナで買い出しに出た
深刻な顔をしながらそんなことを答える彼に、ナミが顔面にパンチしてめり込んでしまったのは記憶に新しい。
「“
「かはっ──────!」
空中で無防備な状態に砂の刃が振りかざされる。
首につけていた国旗が
左腕に巻いていた包帯も切断され、砂嵐の中に消えていった。
『よし! とにかく、これから何が起こっても左腕の“これ”が仲間の印だ!』
上陸する前のルフィの言葉が反響する。
ただ血が滲んだだけなのか、それともただの傷なのだろうか。彼の腕には
「お願い、コーザ! 私をクロコダイルのところへ連れていって!」
「ば──────何言ってんだ! そんなことしたら俺たちも巻き込まれるぞ!」
「早くっ!」
「……ちっ、直線距離で行くと砂に巻き込まれる! 周り込むぞ!
お前は巻き込まれていない連中を見つけて、砂に囚われているやつらをロープで引っ張ってやれ!」
「う、うん! わかった!」
ビビの必死な懇願には折れるしかなかった。
コーザはカッパを置き、円形に広がる流砂の縁を沿うように馬を走らせる。
ビビは、前に座るコーザの衣服を強く握りしめていた。皺どころか、そのまま破いてしまいそうだ。
王国軍の遣いがイガラムを迎えに行っていた時点で薄々期待していた。何せ、ビビの手紙にイガラムの安否については書いていなかったからだ。にもかかわらず、迎えに行かせられる人間なんて、それこそ
もっとも、その期待は多大な不安へと反転してしまっていた。考えれば考えるほどに、己の予感が正しいことを思い知らされてしまう。
──────死体を見るまで死んだなんて信じてたまるか。
辿り着くまでの数分間、彼から教わった言葉を何度自分に言い聞かせただろうか。
しかし、彼女は知っている。
この世界の現実はいつだって──────非情なことを。
「……来たか、ミス・ウェンズデー。コーザ」
「クロコダイル!」
「
口火を切ったのはクロコダイル。
ひと仕事を終えた後のように、新たな葉巻を咥えて火を灯していた。
「勝利を確信させた隙に死角から硬化させた糸を忍ばせて絞死を狙う。
手段は悪くねェが、忘れていたわけでもあるまい──────“覇気”は決して“能力を封じるものじゃねえ”ことをな。
残念だが、肉体を自在に変化させられる
ムカつく野郎を思い出した、と首元を触りながら独りごちるクロコダイル。特に傷はついていないのはコーザからは見えるが、ビビはその姿を直視ができない。
見たくもないし、聞きたくないとばかりに視線を下に落として首を振るばかりだ。
「チッ、ここに来て小娘になるとはな」
張り合いがねェ。
そんな吐き捨てる言葉とともにクロコダイルから何かを投げつけられた。べちゃり、と投げられた先はコーザが乗る馬の足元。
──────お前のせいで、こいつはこうなったと。
間違いなく、ビビへと見せつけようとする意図があった。
丁寧に外された青いはずのマスクはすっかり鮮血に染まり、瞬く間に足元に血溜まりが出来上がる。
肌の色は血を失っただけにしては明らかに毒々しい色へと変化しつつある。
そして、
「ハジメくんっ!!!」
変わり果てた仲間の姿を前に、ビビの悲痛な慟哭はアルバーナ中に響き渡る。
悲しいかな。名前を呼ばれたはずの男は、既に動くことはできなくなっていた。
・ ビビ
死んでないと思っていた仲間が本当に生きていてくれていたけど、目の前で殺されるという虐待コンボを食らわせられる王女。
作中屈指の鋼メンタルだから大丈夫でしょ。大丈夫だよね?
・ コブラ王
実はマスク野郎からロビンのことや爆弾の在り処までしっかり教えられているが、余計なことを口にして予定を早められても困るので口を噤んだ。
結局ペルが来ないと解決しようがないため、Mr.7たちはそのまま刺激せずにしている。
・ サー・クロコダイル
ビビ虐おじさん。アラバスタ虐待おじさん。
ここまで計画を無茶苦茶にされて勝ったなんて言えるわけもなく。毒針を使ってまで殺しに来たのは覇気を警戒したのは勿論だが、知略で上回られた彼なりに海賊として敬意があったのかもしれない。
アラバスタ軍事国家計画は半ば諦めて古代兵器の取得にフォーカスして目的達成に臨む。プルトンさえ手に入れられれば海軍も敵じゃねンだわガハハ。
・ ミス・オールサンデー(ニコ・ロビン)
取引して見逃した男が良い意味でも悪い意味でも想像以上の働きをしているため、どちらに着くか決めかねている模様。
平然とした顔で不干渉を貫いているが、内心穏やかではなかったりする。
・ 麦わらの一味の皆さん
基本的に原作通り。
船長は隼に乗ってリベンジしに向かっていて、他の仲間たちもエージェントたちを倒して集合しながら宮殿へ向かっている。
・ スレ民
惜しい人を無くしてしまった。
次のイッチはもっと幸福に安価することでしょう。
・ハジメ(イッチ)
イッチは激怒した。
必ずや、あの邪智暴虐のスレ民とついでにワニ野郎を根絶やしにしなければならぬと決意した。
今回ネタ少なめで申し訳ないっス。
そろそろ風呂敷を畳みにいく準備をしないといけないなァ……なんてネ……
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○○○
旅は続くよ、どこまでも。
雲一つない青い空の下、彼方へと続く水平線が一面に広がる。この大海原を突き進むのは一頭の羊。
ここは、偉大なる航路に入ってからずっと慌しかったメリー号の甲板。ドラム王国を抜けてからと言うもの、ようやく落ち着ける時間がやってきた。
船長たち幾人、幾匹が備蓄を
『この船に乗っている理由?』
そんな騒動から離れた見張り台の上。
ビビは食い逃げを阻止した
『別に俺なんてビビや他の皆に比べたら、大した理由とか夢とかないからなぁ……話さないとだめ?』
『だめ、って言ったらどうするの?』
『えー』
ハジメ本人はかなり渋っていた。
彼自身の性格なのか、船長自身が「話したくないことは話さなくていい」というスタンスでいるおかげでもあるのか、彼は仲間の話は沢山しても自分の話は滅多にしない。
今までのらりくらりと躱されてきたが、“風邪を看病した礼として”と添えると観念してくれた。単に自分がしたくてやったことを盾にするのは少し狡いような気もしたが、それより彼のことを知りたい気持ちの方が勝ったのだから仕方あるまい。
『いや、本当に成り行きで乗っちゃったんだよ』
アルビダという海賊に捕まって雑用をやらされていた中、ルフィがその船長をやっつけてくれたこと。
そのまま降りた島で不良海軍に囚われたゾロを助けたいと言ったルフィに、恩を返すために色々と手伝ってあげたこと。
晴れて仲間になったゾロと出港するのを見送りに行ったら、いつの間にかルフィの手が伸びてきて船に担ぎこまれてしまったこと。
『……で、俺がここにいるってワケ』
たはは、とハジメは笑いながらこれまでの旅を振り返る。
『なんというか、ルフィさんらしいわね』
その様子が容易に想像できてしまうビビ。
実際、チョッパーの時も同様だったから。
きっと、ナミやウソップ、サンジも細部は違えど、同じような流れで仲間になったのだろう。しかし、こうして誰もがかけがえのない仲間として固い絆で結ばれている。
ビビも、自身がその中にいるのだと考えると心地良い気分になれる。イガラム以外味方がいなかった二年間の潜入生活を癒やしてくれるこの時がいつまでも続いてくれればいいな、とも思ってしまうほどに。
『それからどこかで降りようとしても、いっつもあのゴム腕が伸びてくるから困ってるんだよ。最近だと他の皆も協力してくるからますます避けられないし。今度はどうしようかなあ』
『え、まだ降りる気でいるの?』
『うん……あ、でもこれ内緒ね。誰かに聞かれたらあんな感じに捕まっちゃうから』
甲板の方を指差しながら、もう片方の手で口元に人差し指を立てる。
見張り台から身を乗り出すと、縄で簀巻にされているルフィがいる。危うくアラバスタまでの一週間を食糧不足で過ごすことになりかけたわけだ。
当然のようにナミに殴られ、顔はたこ焼きのように腫れて膨れ上がっている。こんな状態でも「肉ゥ〜」と喚いているあたり、もはや彼は猛獣と同じ扱いをされている。
偉大なる航路に入るまで、あんな風に巻き込まれていたハジメを考えると、ビビはつい可笑しくなってしまう。きっと、死んだ魚のような目の諦め顔もしているんだろうな、なんて考えていると新たに疑問が生まれた。
『他の海賊船にいた、ってことは、ハジメくんはルフィさんに会う前には海に出ていたってこと? どうして?』
『…………』
『あ、イヤそう!』
『いてててて』
口を八の字に歪ませたハジメの頬を指でつつく。
先程まではため息を吐きながらでも、やんちゃする友人の後を追うような、微笑ましい様子で語っていたのに、今は露骨に顔を引きつらせている。
考えるに、この船に乗るきっかけよりも“前の話”が彼にとって聞かれたくない内容だったのだろう。
こんなチャンス、次はいつ来るかわからない。
海賊は常に危険と隣り合わせなのだから。
しばらくそのまま指で突いていると、ハジメは今度も折れてくれた。
しょうがない、と口にした後の言葉。
それは、決して軽いものではなかった。
『故郷がなくなったんだよ。
くらり、と温度差に目眩がした。
彼が育ったのは東の海の隅にある孤島。
地図に載っているかすらも怪しいくらいの、ド田舎の中でも最もド田舎と言っても過言ではないとは言っていた。
一応、島の名前も口にしてくれたが、ビビが聞いたことのないような名前だった。
余程、無茶苦茶な航路を進んでいなければ辿り着くことはないため、海軍も来なければ、逆に海賊も来ない。
いや、人はおろか、ニュース・クーすら立ち寄ることが稀なほど。
実質的な鎖国状態のような、世界から切り離された島。規模も辛うじて“村”と言えるような限界集落で、特有の変わった風習はあっても平穏に暮らしてきたのが彼だったそうな。
その後はざっくりとした粗筋しか語られなかった。
どこかの海賊が村の“秘宝”とやらの存在を嗅ぎつけて襲われて。
当時子供だった彼は船でこっそり逃されて。
その後に島が
『この時代、非加盟国とか取るに足らない小さな島国がどんな扱いされるかなんて容易に想像できるでしょ?』
『え、ええ。まあ……』
『それが偶々俺の故郷に回ってきたってだけ。こんなのよくある話だよ』
彼の自分語りはそんな諦観の言葉で締められた。
ビビこそ直接目の当たりにはしていないものの、為政者として非加盟国の扱いは聞き及んでいる。
天上金を払い、加盟国として扱われている彼女の住むアラバスタでさえ、海賊が略奪に訪れることは度々ある。海軍の力が及ばない地域なぞ、まさに地獄と言えることは想像に難くない。それこそ、四皇や王下七武海の“ナワバリ”ではないかぎり、ただただ搾取されるだけなのだから。
ただ、それにしても“島ごと吹き飛ばされる”というのは流石に度が過ぎているとは思った。いくら小さな島とはいえ、地形を変えるような真似ができる存在なんて、それこそ海軍大将や四皇クラスに限られると──────
『まあ、色々と修羅場は潜ってきて、何やかんやあってこうして生きていられるんだから儲けものだよね。まだ幸運は続いているようで何より何より』
ハジメはいつものように微笑んでいるが、その目は遠くを見ていた。
……確かにこれは、話したがらないのも無理はない。
暗いのは勿論、故郷がなくなったなんて話を誰かに話す気にならないに決まっている。
『…………』
『…………』
珍しく、二人の間に沈黙が流れた。
好奇心に負けてやぶ蛇をついてしまったかもしれないと気まずくなって、必死にフォローの言葉を取り繕おうとする。
『その、ハジメくんも大変だったのね。海賊に襲われて故郷をなくしたのに、また海賊に捕まってこき使われることになったなんて』
『あ、それ違う』
『え?』
違う? 何が?
そんな視線を向けると、ハジメも「しまった」と小声が漏れた。すぐに視線を逸して誤魔化そうとしても遅い。少し気が引けたものの、ここまで話したのだからもう隠し事はなしだと、ビビは視線で訴えた。
『…………………………』
『すごくイヤそう!!!』
先程よりも顔を歪ませていた。年齢が一気に老け込んだかのように、眉間と顎に皺が寄っている。
しかしこちらも負けていられないとじっと横顔を見つめていたら、ビビの頑固さには勝てないと悟ったのだろう。ハジメは盛大なため息とともに目元を抑えた。
そこで少しの後悔が胸中に生まれる。
もしや、ここにも何か話すことが憚られるほどの重い過去が──────
『いや……その……アルビダに喧嘩ふっかけたのって実は……俺でさ。倒せると思って自信満々に啖呵切ったのに下っ端に一撃で伸されちゃって……その……』
返ってきたのは歯切れの悪い、子供の言い訳のような拙い言葉。
見れば、風邪を引いていた時よりも顔が真っ赤になっていた。段々と声が小さくなるのは、本当に恥ずかしがっている証に他ならなかった。
身構えていた体の力がすっと抜けてしまう。
『ぷっ』
『ほら笑うと思ったァ! だから言いたくなかったのにさァ!』
『ご、ごめ……でも……ふふっ』
ビビは笑わずにはいられなかった。
故郷の話よりも“この失敗談”が一番聞かれたくなかったんだな、と確信して、自分が踏み込みすぎたことに関しては完全に杞憂だったのだから。
これまでの旅で彼の性格はもうわかっていた。
この船で頼りにされている大人のような振りをしていながら、根は仲間の皆と同じくらい子供っぽくて──────度が過ぎるくらいの見栄っ張りと言うことは。
彼の声に反応し、甲板にいた仲間たちの視線が集まる。
深堀されないように逃げるように見張り台から降りていく姿を見届ける。途中で樽に足をぶつけて、耳まで真っ赤にしながら悶えていた。
ふと、樽で思い出した。
……皆は偉大なる航路に入る際に、あのような酒樽に足を乗せて、己の夢に“誓い”を立てたと言う話を。
海賊王。
世界一の大剣豪。
世界地図の作成。
勇敢なる海の戦士。
オールブルーの発見。
各々が掲げる夢はどれも納得できるものだった。
ビビもまた、少し羨ましいと思っていたから印象に残っている。
……彼の夢だけどうにもイメージがつかなかったが、今は違う。
先の話を聞かされれば確かにあんな夢を口にするに違いない。
──────俺は、安住の地を探しに!
それは、故郷を無くした者にとっては非常にありふれていて、切実な願いなのだから。
潮風に包まれながら、ビビは心の中で祈る。
願わくば、そんな儚い夢が叶いますように、と。
◇◇◇◇◇
「ビビ!!!」
「え」
甲高い金属音が、ビビの意識を現実に戻す。
目の前には黄金のフックが迫っていて、それを長剣が受け止めていた。
腕を震わせながら剣を持つコーザと、微動だにせず葉巻を吹かしながら片手間に凶器を振るうクロコダイル。本気で当てるつもりのない牽制の攻撃でも力量差は歴然だった。
「コーザ! 皆!」
少しの間、呆然としてしまったようだ。
周りを見れば、ビビたちについてきてくれた反乱軍の者たちが膝をついている。
いつの間にかビビ自身も馬から降りていて、膝には血塗れのハジメが横たわっている。
喧騒の中で掻き消えそうな、隙間風のようにか細い空気音。それは、彼の口から発せられている確かな呼吸であった。
けれども失血のせいで体温の低下が著しく、加えて毒が体内を回っているせいか、微かな呼吸でさえ彼に苦痛を与え続けている。
そんな中、ビビとハジメを守るために、コーザがクロコダイルに立ち向かっていた。
「やめておけコーザ……今更お姫様を守るナイト気取りなんてするタマでもねェだろ」
「……はっ、んなもん俺には似合わないだろ。単にお前には
「借りだと?」
剣の柄を握る手から血が滲む。
その眼光は相手が七武海であろうと竦むことなく、向ける感情はビビのそれと匹敵する。
脳裏に浮かぶ、度重なる災害に遭っても折れずに立ち向かった父の姿。
ビビから砂嵐の正体を聞いた時からずっと、我慢していた感情を爆発させた。
「よくも、俺達の──────親父のユバを滅茶苦茶にしてくれたな……!」
「……なるほど。なら、親子揃ってガリガリにしてやるのも悪くねぇか」
「っ!」
黄金のフックとは反対側の腕が伸びてくる。
本能が避けろと叫ぶ。悪魔の実を宿したそれは、触れるだけでも取り返しがつかないことになる。
……だが、避ければその攻撃は背後にいる二人に及ぶ。
──────死んでも守れ、砂砂団!
ふと、かつての少年が口にした言葉が聞こえたのは果たして空耳なのだろうか。
確かに、奇しくもあの時と同じだと思った。
コーザはニヤリと笑う。
ならばやることは決まっている、と、腹を括った時だった。
「させんっ!」
黒い影がひとつ、砂漠を駆け抜ける。
クロコダイルの腕は空振り、ビビたちは抱え込まれたまま距離を離される。
……確かに速いが、捉えられない程度ではない。
腕を砂化させて伸ばそうとしたが、進路上に大きな影が重なった。
「次から次へと鬱陶しい、何だお前ら?」
「我ら、ツメゲリ部隊」
「ここは、我ら四人がカタをつけさせてもらおう」
アラバスタ護衛隊が誇るエリートの四人。
その腕力は、たとえ
とはいえ、クロコダイルにとっては取るに足らない石ころも同然。いくら腕っ節が強いところで、
「……あぁ?」
無論、それには
「さすがに顔色が変わったな」
クロコダイルが目を見張ったのは彼らの武器である。
身の丈ほどの大きい斧や槍。
それら全ての先から滴る水。
それは“砂”という特性上、最も警戒するべき“弱点”であった。
「なるほど、どこでそれを知った?」
余裕の笑みは消え、淡々とした調子で能力の弱点の出処を訊くクロコダイル。
今後のことを考えると、知っている者は全て始末する必要も出てくると考えたのだろう。
ツメゲリ部隊の彼らの脳裏に浮かぶのは一人の男。
囚われの王を救い、軍内部に回っていた毒を看破し、自分たちを戦いの土俵に立つための方法を伝授してくれた。さらに、この強大な敵に対して独りで立ち向ったヘンテコな覆面を被った男の姿。きっと、彼がいないと破れかぶれになっていた、のかもしれない。
……そんな彼のことを何と言うのか?
決まっているだろう。
四人は各々武器を構えながら言い放つ。
「「「「友からだ」」」」
「ハッ……いいだろう、“力の差”というものを教えてやる」
国のため、王女のため、そして友のため。
たとえ勝てないとわかっていても、立ち向かうには充分すぎる理由が彼らにはあるのだ。
「ビビ様、よくぞご無事でいてくださいました!」
「チャカ!?」
ビビたちを連れて離脱した影は変身したチャカだった。
イヌイヌの実──────モデルジャッカル。
それはアラバスタの守り神の一柱として扱われながら、こと砂漠の陸地における移動能力は群を抜いている動物。しかもそれが鍛え抜かれたチャカの身体能力と併さり、たとえ大人三人を抱えても馬に匹敵する速さで駆け抜ける。
「お前……」
「一人で抱えるな、コーザ。今となっては国王軍も反乱軍も関係ない」
「……悪い」
普段は人獣型による戦闘に利用しており、こうして全身の姿を変えている彼を見る機会は少ないためか、一瞬面食らったコーザ。
ただ、その言葉はかつて稽古をつけてもらっていた時と同じ声色だった。
「チャカ。貴方、あの流砂に捕まっていたはずじゃ……!」
「説明は後です。まずはこれを彼に」
「これは……」
「解毒薬です。コーザ、これを彼に」
「ああ!」
チャカから受け取った試験管サイズの瓶に入った液体を意識のないハジメの口に押し込むコーザ。
どこでこんなものを、と聞きたくなる気持ちはあるが、彼の容態は一刻を争っている。
効き目は抜群なのか、少し飲ませただけでも四肢の震えはみるみる落ち着いていく。
間近に迫った死への脅威はこれで解決した。
しかし、予断を許さない状況はまだ続いている。
「それにしても酷い出血だ。なんと惨いことに……」
「チャカ、止めろ! さすがにこれはこの場で応急処置しないとマズいぞ!」
「っ、仕方あるまい!」
チャカが走り抜けた後に残る血痕。
肉体に大きな空洞ができたように、おびただしく溢れ出ている。内臓が飛び出ていないのは果たして奇跡か、それとも今もなお必死に患部を押さえ続けている彼女の健闘のおかげなのか。
「お願いっ! 止まって! お願いだからぁ!」
この布は彼が使っていたマント。
しかしそれも血を吸いきれず地面に滴る。
鮮血に染まったそれは、元はアラバスタ王国の国旗だったとわかる者はもはや誰もいない。
「出血が止まらない……っ。これではもはや助からぬか……!」
「……くそっ」
チャカとコーザは目を伏せる。
毒のことと言い、あらゆることを予見していた彼であっても、目前に迫る死に抗うことはできない。
多くの国民を救える可能性を掴んだ代償は、彼一人の命だとでも言うのか。
「そんなことないっ!」
それでも少女は否定する。
涙で見えなくなった視界は、走馬灯のように再び彼との思い出を想起させる。
『アラバスタの住みやすい場所?』
『そうそう。具体的に言うと水源が豊富で暑すぎなくて虫とか少ないところ。あと都市に近くて陽当たりがいいと尚ありがたいかな』
『そんなところあったかしら……?』
出会ってばかりの頃に聞かれたあの問いかけ。
初めはどんな意図があるのかわからなかったが、彼の夢を知った今を踏まえてみればわかる。
彼は、この国を“夢の到達点”にしようと考えてくれていたのだ。
こんなにも光栄なことがあるだろうか──────王女としても、ひとりの少女としても。
だから、ナノハナで一度潜伏した時、ゆっくりとする暇がなく散策できないことを残念に思っていた彼とこんな約束を交した。
『なら、私がアラバスタを案内するわね!』
『えっ、いいの?』
『うん、任せてっ!』
あの時、彼の顔が一気に明るくなったのは今でも鮮明に覚えている。
……それが今は蒼白に変わり果ててしまっている。
「なんで止まらないの……止まってよぉ……!」
ビビは祈るように、手の甲に額をつける。
染み出た血が、手を伝って額にこびりつこうとも構わない。そんな少女の切実な願う姿に諦めかけた二人も何もせずにはいられなくなる。
どうにか医者を連れてくればあるいは──────と、藁にも縋ろうとしていたところだった。
「ぐおっ!?」
突如、チャカの胸が切り裂かれた。
「チャカ!? くそ──────ぐあっ!?」
コーザが余所見をした隙に、彼の腹部に何かが引っかかる。振り回されるようにチャカの元まで飛ばされ、二人が巻き込まれる形でまとめて遠くへ放り投げられてしまった。
サラサラ、と静かに地面へ砂が降りかかる音に反応し、ビビは顔を上げる。
……もはや誰の仕業かと疑う余地はない。
「まあ、いい運動にはなったな」
肩を回しながら、血の跡を追ってきたクロコダイルは悠々と歩いて来る。ツメゲリ部隊を相手にしても傷がついた様子は全くない。
「どこまで追いかけてくるのよ」
「おいおい、初めはそっちから乗り込んで来たくせに酷い言い草じゃねえか。
俺は“その男を殺し損ねていないか”念のため確認しに来ただけだ。俺自身、この目で死体を見るまでは死んだと信じられそうにねぇからな……」
「っ、殺してやる……!」
よりにもよって、お前が彼の言葉を使うのか。
偶然であっても、ビビの逆鱗に触れるには充分すぎるほど皮肉に聞こえる。
そんな殺意を示しても、レインディナーズの時と同じく奴が浮かべるのは嘲笑ばかり。
海賊王亡き今において
「もう頼りになる部下や仲間とやらはいなくなったな。次はどうする、ミス・ウェンズデー? 今度は誰を犠牲にするんだ?」
犠牲。
その二文字に、ビビは大きく肩を震わせた。
「犠牲、なんて」
「ここに倒れている奴らは、お前を守るために俺にやられたわけだ。あの“ツメゲリなんとか”とかいうヤツらも、“麦わら”も含めてな。
そして、あと30分もすればお前の大好きな国民共は広場ごと吹き飛ぶことになる」
淡々と事実を述べるクロコダイル。
同時に地面に座り込んだビビの首元を掴み、己の目線まで持ち上げた。
夢見がちな王女に、現実を突きつけるために。
「結局、お前の徒労は無駄な犠牲者を生んだだけだ。わかりやすく言ってやる──────お前に国は救えない」
「…………あ」
手に持っていた血濡れの国旗が地に落ちる。
ビビは目をつぶり、涙を流すことしかできなかった。
……
たとえ内乱を止められても、クロコダイルを何とかしないと意味がなかった。
計画を覆しても、奴は王下七武海。
こと砂漠において無敵に近いこの男は、たった独りでも万を超える軍勢相手を一蹴するのだから。
「ッ!」
それでも、ビビは心を持ち直して気持ちを振り絞る。
たとえ顔中が涙に濡れてみっともなくても、このまま命を奪われる寸前であろうとも。
大好きなこの国のために、仲間のために、父のように気高くあろうする。
……ああでも、ひとつだけ弱音を吐いても構わないだろうか。
自分のためではなく、近くに横たわる少年のために。
きっとこんな状態になっても、見栄っ張りなこの人は決して声に出して言わないだろうから。
本当なら救いの手を差し伸べるのが自分だったらいいのだけれど、どうやらそれは叶いそうにない。
だからせめて、無事であってほしいという祈りを込めて、代わりに言葉にしてあげよう。
誰か、彼を──────
「助けて」
雨粒のようにこぼれた言葉に反応したのか。
「………………ッ!」
バチバチ、と。
どこかで小さな稲妻が走る音がした。
・ ビビ
原作よりも犠牲者は少ないはずなのに曇っているのは変わりない……妙だな?
勿論、こちらでも彼女の声はちゃんと仲間達に届いている。
それは彼も例外ではない。
・ コーザ
大人になっても、反乱軍の頭目になっても、彼の性根はいつだって幼い頃に野盗から女の子を守ったときのまま。
状況が状況なので表面には表れていないが、血塗れに変わり果てた少年の姿を見た時の幼馴染の取り乱しっぷりに何かを勘ぐっている。
・ ツメゲリ部隊の皆さん
一時の力に頼ることなく、共に戦った戦友を守るために立ち上がった者たち。エリートらしくスマートに戦うが、健闘も虚しく敗れた。
実は個人個人に名前がある(公式)
・ チャカ
とある人物から助けられ、授かった解毒薬を使う。しかし想定よりもボロ雑巾だったため、結局、助からぬノルマを達成してしまう。
・ サー・クロコダイル
ビビとバギーを虐待している時に輝く男。しっかり反省し、直接自ら死亡確認しにきている。えらいね。
なお毒針はしまっている。認めた相手以外には使わないからこそ「奥の手」と言うものなのだ。
・ 少年
視界がモノクロになる〜……(絶賛走馬灯中)
次回も掲示板はお休みで、回想パートという名の東の海編ダイジェストになるかと。
タグ詐欺では?(自問自答)
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●●●
瞑想は嫌いではない。
自然と一体化するなんて大層なことは言えないにせよ、自分が草木のようにいられる時間が心地良い。
何も考えず、陽の光にあたりながら座るだけでも心が洗われていくようだ。
そよ風が頬をなでるように通り抜け──────
「隙ありいいいいいい!!」
木の棒が脳天をすっぱ抜く。
避けようと身を縮こませても、それを読まれていたかのように縦に振られ、激突した後は敢え無く意識を手放す。
次に意識が浮上した頃には、既に太陽は傾いていた。
また一日を無駄にしたと思いながらも、はだけた浴衣を正して炊事場へと向かう。僅かに見える真っ赤に燃えた空を見て、彼方遠くの世界へと語りかけた。
拝啓、顔も名前も思い出せなくなった前世の父と母へ。
──────私は今生の実父より“お務め”という名の虐待を受けています。
少年には前世の知識があった。
記憶と言うにはかつてどのような生活をしていたのか曖昧すぎる。ただ、現代日本で生きていたと自覚できるくらいには常識と倫理を兼ね備えているあたり普通に一般的な家庭にはいたのだろうとは思う。故に、今世での生活は明らかに異常だと理解できた。
まず、彼の住んでいる場所が挙げられる。
家の縁側から見上げれば、まず出てくる感想は「空が狭い」だった。
もはや崖の下にいると言った方が正確か、急勾配の岩山が蓋をするように周囲にそびえ立ち、三から四件の家屋と小さな渓流。村人も10人いるかいないかの、世界から切り離された限界集落。東西に伸びるように空が切り開かれているため、日照時間も保たれていて気候が穏やかなのは幸いか。しかしこんな場所に外から旅人なぞ来ることもないし、出る者もいない。
そんな秘境が少年が住む村であった。
それはまだ良い。
老後みたいなものと割り切ってスローライフに勤しむこともできるから。
もっと特異なのは、この村の習慣……もとい、村長的な立ち位置にいる彼の家であった。
父の口癖とも言えるこのフレーズを初めて聞いたとき、彼は戦慄した。
「この家には神がおられるのだ。我々はその使いとして、かの神が目覚めるまで日々務めに励まねばならない」
──────あ、これやべぇ家に産まれちまったな、と。
その予感は正しく、彼はろくに言葉も話せない時から“お務め”という名の仕打ちを受けることになった。
例えば、食事中や睡眠中でも、何の前触れもなく父親が警策を持って襲い掛かってくることや、どこから持ってきたかわからない鉄塊にひたすら拳を打ち込ませることなど。
とてもじゃないが、子供にやらせることではない。最近では、庭にある木偶人形を触れずに破壊しろなどと無茶を言われる始末。
「地獄では?」
炊事場にある一人分の食事を口に放り込みながら人生を振り返っていると、ついそんな言葉がでてきた。
お盆の上に視線をやれば、米と豆と野菜と豆と豆。今世では口にしたことのない動物性タンパク質に思い焦がれる。
精進料理でも流石にここまで質素ではないだろうと思うが、それがこの家の──────この島の教えなのだから仕方ないと諦めていた。
「隙ありいいいいいいいいいい!!」
「オラ! 箸ガード!」
机の下から出てきた不届者の警策を箸で受け止める。少しの間拮抗するものの、耐久面では勝てる道理もなし──────折られて額を叩かれる。
この生活に耐えかねて何度も脱走を試みたこともあるが、成功したことは一度もない。そもそもこの土地自体が閉ざされているし、何よりこの集落のどこに隠れても父親に見つかるからだ。
「あら、また逃げ出したのかい?」
「おれかくまって! ころさえう!」
「でも、貴方のお父さんもう後ろにいるわよ?」
「アバーーーーッ!」
このように他の村人に匿ってもらおうにも、彼らもまたこのイカれた家の教えを信仰しているため、決して悪い人はいないにしても当然皆グルである。土着信仰というものの恐ろしさを身に沁みて理解した少年の反骨心はもはやボロボロであった。
「テレビもねぇ、ラジオもねぇ、車なんてものある訳ねぇ、そもそもこの村には人の心がねぇ……」
薄い布団の上でお決まりのフレーズを口ずさむ。精神の安定を保つルーティーンを始めるために、彼は目を閉じる。
どぷり、と体が水に沈むような感覚。
瞑想の時よりも深く──────自分という存在をこの世界から切り離すように意識すると見えてくる文字の羅列。
はっきり言って書いてある内容の殆どがどうでもいいような中身のないものばかり。前世で覚えのあるスラングだったり、剣と魔法が蔓延る異世界の実況だったり。最近のお気に入りは“今まで転生者がほしいとか言ってきた特典で一番変態だったやつ挙げられたら優勝”というものだった。
いつ、どこで、誰が書いているのかわからない。
書いている者が同じ世界にいるのか、そもそも人間が書いているのかすらも眉唾もの。
少年の前世で馴染みのあった“掲示板”がそこにある。
けれど、そんな他愛のない書き込みを眺めることこそ、この閉ざされた世界に生きる少年が外の情報を得るための唯一の手段であり、娯楽であった。
「隙ありいいいいいいいいいい!!」
まあそれも父親の夜襲で水をさされて、気がついたら朝を迎えることになるのだが。
こんな生活を一体どれだけ過ごしたのだろうか。
産まれてから太陽が昇った回数を150あたりまで数えてから諦めたため、正確な年数はわからない。
おそらく産まれてから5年ほど経った頃だったか──────転機が訪れた。
「“務め”の成果を見せろ」
父親に首根っこを掴まれてつれてこられたのは、集落にある高台の上。
岩山の隙間から差し込む太陽の光がスポットライトのように少年を照らす。
わけもわからないまま村人たちから衆目に晒され、父親から無茶振りを下される。
この光景、少年は前世で覚えがあった──────上司や先輩たちに歓迎会と称してやらされるやつだ、と。
いや絶対違うと理性が語るが、それは今の今まで燻っていた反骨心に押さえ込まれる。
赤ん坊の時から刺激されたそれを止めることなぞできるわけもなし。こうなったらもう“むちゃくちゃにしてやる”と心中のストッパーが外れる。
務めを果たせ、と言ったか。
ならばとくと見よ、彼の答えを。
「……その後、上司が言ったのよォ。『光の速さで蹴られたことはあるかぁ〜い?』って。その人、潜入捜査のために犯罪者の振りしているのに酷いったらありゃしねぇ。力を持った軍は怖いねェ〜。これが本当の“パワハラ”ってやつかい。
──────御後がよろしいようで」
「………………」
それは、
しかし返ってきたのは沈黙。
逆張りの逆張りでやった芸は大失敗に終わる。
偶々、昨夜に読んでいた書き込みをもとに即興の落語を作ってみたら見事に滑った。やはり和服を着た者たちには落語がいいと思ったが、横文字には馴染みが薄かったか。
唖然とした村人たちの顔に居たたまれなくなり、少年は部屋へと駆ける。数時間程寝た後、自分が社会的に死んでしまったことを思い出し、また涙を流した。
ふと、目が醒める。
泣き疲れて眠ってしまったようだ。
水を飲みに炊事場へ行こうとしたら、偶然にも父親が縁側に座っていた。バレないように抜き足差し足で通り抜けようとしても無駄のようで、呼び止められてしまう。
「お前、今日の話は
やや質問のニュアンスに違和感を覚えた。
落書きのことを説明しても理解してもらえないだろう。かといって論理的な証拠があるわけでもない。故に、こう答えるしかなかった。
「勘」
「勘……だとォ……!」
ズンズンと近づいてくる父親。
また叩かれると思い、目を閉じて頭を抱える。
だが、降りてきたのはいつもの警策ではなかった。
「良くやった」
「え……」
産まれて間もない頃ぶりか、そっと頭を撫でられた。
撫でられて喜ぶような精神年齢でもないのに、体の方が涙を止めてくれなかった。
次の日から父親だけでなく、村人たちからの扱いも変わった。元々風当たりが強かったわけではないが、持て囃されるようになったと言うべきだろうか、貢物とばかりに食べ物を恵んでくれるようになった。
「期待の神童だもの。たんとお食べ」
「そんなこと言われたって皆も生活苦しいでしょ──────ホアアアアアアアアアア肉ぅ!?!?!?!!」
初めは遠慮したものの、食べ物の中に魚がいた時は変な声をあげたものだ。別に村全体で肉食を禁じているわけでなく、単に家の教育方針だったそうな。
少年は貰った魚を全て平らげた後に父親へ戦いを挑んだ。必ずや、あの邪智暴虐の虐待親父を斃さねばならぬと心に決めた。
立ち向かったことで手に入れた戦利品は、頭の上の瘤であった。
そして、“お務め”も無茶苦茶ぶりに拍車がかかるようになった。
日課の不意打ちは警策から真剣へと変わり、どこで用意したのかわからないような巨大な剣山に落とされたり。
殺す気か、と父親に戦いを挑んでは返り討ちにされる。だが成し遂げた時には必ず褒めるようになったし、生活にどこか“温もり”のようなものが生まれた気がした。
しばらくそんな日が続いた満月の夜。
少年は改めて尋ねてみる。
やはり自分はあの時、粗相をしてしまったのか、と。
「我らが神は何を祀っているのか知っているな?」
「いや知らんよ」
前置きはバッサリと切り捨てる。
こんな仕打ちをする家が信仰する神なんて絶対碌でもないと考えていたため、知ろうともしなかった。
拳骨がひとつ飛んできた後、言葉を続けられる。
「私にもわからん」
「ほんといい加減にしろよクソ親父」
もう一つ拳骨が飛んできた。
団子状になった瘤を擦りながらも、話は強引に進められる。
「だが、お前の“お披露目”を見たとき──────
ただ神を護り続けるだけの装置になり果てた我らにとって、雷が落ちるような衝撃だった」
「え」
「我が村が失ったものを、お前は無意識に感じ取り、形にしてみせたのだ。私はお前の才能を末恐ろしく思う。代々、“お披露目”であんな小話をしたのはお前だけだ」
「お、おう」
返事をした少年は怪訝な顔のままだ。
あんな拙いクソみたいな落語に、村を変えるような衝撃的なことがあったのか。
実はあの掲示板の書き込みに何か重要なことが書いてあったのだろうか。完全に前世で読んでいた漫画を読んでいる者向けの内輪ネタだったし、かなりの苦し紛れだったのだが。
宴会芸ってすごい。掲示板ってすごい。
「まあ代々と言っても私が開祖だから一人しかいないのだが」
「本当にお前なんなんだよ」
「父親に向かってなんだその口の利き方は!」
三度、拳骨が飛んできた。
その日はもう口を閉ざしておくことにした。
これ以上、何か余計なことを言ってしまえば頭の上の瘤を積み重ねるだけになるだろう、と直感した。積み上がって嬉しいのは、前世で食べ慣れていた球体状の氷菓子だけなのだから。
ふと、父親の脇に何か紙面が置いてあるのを見た。
それは前世でも馴染み深い紙の束。話題を変えるにはうってつけのものを見つけて飛びかかった。
「あ、ここ新聞来るのか。見せろ見せろ」
「ええい触れるなっ!」
丸まった新聞で叩かれると痛い。
またひとつかしこくなったしょうねんだった。
そんな平穏な生活がしばらく続いた。
相変わらず親は物騒だが、村人たちは優しいし、念願の動物性タンパク質を得られるようになったし、娯楽は少ないにせよある程度満たされている。
精神的な余裕ができたせいか、ふと魔が差した。
この家にいる神様って何なのだろう、と。
少年は家の奥にある祭殿にいた。
視線の先には重々しい鉄製の扉──────この中に、神様はいるらしい。
念の為、父親からは許可を取ってある。
前世の知識から、『扉を明けたらなんか闇みたいなものが流れ出て化物が出てきて大惨事』という場面を想像できたからだ。
見るだけなら大丈夫と言われたため心配はないはず。
両腕を引き、隙間から中を覗く。
外から差し込む光がそれを照らし、丸い輪郭が浮き彫りになる。
中に鎮座していたのは、両手で抱えられるくらいの大きさの。
「え」
──────
轟音とともに少年の記憶はここで途切れる。
次に目が醒めた頃には、頭から血を流した父親の顔が映る。つんと煙が気管を刺激して咳込んでしまいそうになるが、その眼力が許してくれなかった。
「よし、目が醒めたな。早速だがお前はこの箱を持ってここを逃げてもらう」
「な、何が……えほっ」
「棺桶みたいな作りで悪いが……ここから直接船で海には行けないからな。これなら渓流を流れて海に出れば浮くことができる。あとは誰にも目をつけられずに逃げのびろ。わかったな」
「ごほっ、わかんねぇって……おい!」
有無も言わさず扉を閉められ、川に放り投げられる。天地が交互に入れ替わり、転がるように川を流れていく。
あちこち体をぶつけながらも、やがて箱全体が上昇する感覚を覚えて、内側から扉を開ける。
初めて外から見た故郷は燃えていた。
時刻は既に夜。暗闇の空に、うっかり沈みそこねた太陽のように朱く輝いている。
周りには何隻もの帆船に囲まれており、大砲の音が何度も鳴り響く。波の音に紛れて、品のない男の笑い声も聞こえる。
船。大砲……夜でよく見えなかったが、帆には髑髏のような十字が描かれている。
大砲の音があちこちから聞こえる。小さい部屋で四方八方から壁を叩かれていられるようだ。
そして、祭壇で見たあの果物。
繰り返しになるが、この島には外からの情報が入ってこない。新聞なんて読ませてもらったこともない。
故に、少年が初めて己の生まれた世界を知ったのはこの瞬間だった。
ここ、
ごうごうと燃やされる故郷を呆然と眺めながら流されていく。波の流れに抵抗する力は、当時の彼にはなかった。
「すみません、色々とお世話になりました」
「いいってことよ。故郷、帰れるといいな!」
それから十年ほど時が過ぎた今。
近海の島々を転々と移りながら生き延びた少年は、世話になった漁師から譲り受けた船で、再び海に出た。
自作の海図をもとに船を進めながら、彼はこれまでを振り返る。
故郷から出てから幸運なことが三つあった。
一つ目は、彼が抜け出してきた小舟の中には備蓄があった。食べ慣れた豆類や野菜は勿論、魚の干物などが敷き詰められており、食物が手に入らなくても当面は生き残れるほどはあった。
干物にする暇あったら普通に食べさせてくれよ、とも思ったが、こればかりは大いに感謝した。
二つ目は、彼がいた海が“東の海”であったこと。
この大海賊時代、他の海賊から『最弱の海』なんて揶揄されることがあるが、かの英雄は『平和の象徴』と反論した場面を想起する。
少年はまさに後者に同意した。
海賊のような無法者は多くても、それに対して助け合って生きていく意識が根付いているのもあり、子供が困っていれば手を差し伸べてくれる人たちが多い。無償の愛なんて都合の良いものはないにしても、しっかり対価を払えば返してくれる。
子供が払える対価?
そんなの、
「モノマネしまーす。旅行代理店をやっている王下七武海バーソロミュー・くま。
『……旅行するなら、どこに行きたい?』」
「「「うわぁ、本当にくまさん言いそうだな……」」」
それは、
前世の知識や例の掲示板でネタを仕入れて、酒場に入り、タイミングを見て一発芸をしてお金をもらう。
海軍相手にはセンゴク元帥や大将の赤犬や黄猿。
海賊相手にはドフラミンゴやモリア、名を挙げたばかりのトラ男やギザ男。
革命軍相手には有名人のくまやイワンコフ。
相手によってモノマネのレパートリーを使い分けながらやると受けがいい。酒場もオーナーからも売上があがるため快諾してくれるし、喧嘩なども宴会芸で収まることもあるので中々に重宝される。
やりすぎて名が広まるのもよくないので、ほどほどに稼いで酒場を転々とすることを心がけていた。ミホークのように人によってはしれっと東の海にいるから困るものだ。特にドフラミンゴに関しては、色々とスレスレなネタもやっている。
倫理?
知らんわこちとら大海賊時代やぞ?
とはいえ、時と場所は本気で弁えないと各方面から襲われてもおかしくないが。
とにかく、これが最も手っ取り早く稼げるのだから、本当にこの海は平和だと思う。
この生活が板につきすぎて、やることが終わったら芸人で生計を立てようと本気で考えるほどに。
そして、最も幸運なことは──────彼には過酷な環境でも生き抜くための力がついていたことだった。
「硬化」
夜営の最中、少年よりも遥かに大きい原生生物からの襲撃を難なく避け、お返しとばかりに黒くなった手で掌底を叩き込む。
獣は軽くうめき声をあげた後、脱兎のごとくその場を後にした。
「むぅ、仕留められないか。やっぱ腕力がないとどうにもいかないなぁ」
相変わらずの細腕にため息が出る。
いくら鍛えても前世で知っている人間よりも上回らない身体能力。理由はよくわからないが、どうにもこの体は他の人間と違って強くないらしい。
再び腕が黒く染まり、近くの細木に向かって拳を突き出す。
触れる寸前で止められたにもかかわらず、木は内側から裂けるようにメキメキと折れ、地面に落ちる。
知る者が見れば感嘆することだろう。
これはまごうことなき覇気による事象だから。
しかも一部の者のみが辿り着く境地に至っていた。
成長が乏しい身体能力と相殺されるような形で、この世界で最も重要な力の才能が備わっていた。
元より土壌はあったのだ。
度重なる父親の不意打ちは見聞色。
鉄塊を殴らせられていたのは武装色。
今までの“お務め”は、これらを鍛えるためにやっていたのだと。この世界の正体に気づき、ようやく点と点が線になって繋がった。
特に、見聞色の成長は著しい。
どうやら彼には数ある覇気の中でもそちらの才能が特出しているようだった。
おかげで、普段通り酒場でドフラミンゴのモノマネを披露しようとした際に、海兵として遠征に来ていたヴェルゴの存在を感知して、寸前で留まることができたのだから。
本気で死を覚悟したためか、あれ以来、数秒先の未来を視ることができるようになった。あとモノマネばかりでは敵を作るばかりなので、オリジナルの一発芸も考えるようになった。
やはりこの世界は危険が多い。一瞬も油断ができない、と再び認識を改めた。
閑話休題。
こうしてすくすくと育った少年は、いよいよ旅立つことにした。
全ては長年抱いた使命──────帰郷のために。
別に、父親や村人たちが生きているとは思っていない。ただ、それでも墓参りくらいはしてあげないといけないとは考えていた。
漁師たちにやんわりと聞き込みをしたことがあるが、やはり自分以外にあの島があることや人が住んでいたことを知る者はいないらしい。
であれば、自分が行くしかないだろう。
それをやってようやく、少年は自分の人生を歩めるのだから。
「あと謝らないとなあ。神様どっか行っちゃったし」
初めに流れ着いた島で箱の中を開けると、中には何も入っていなかった。
海に出るときには確認する暇がなかったが、おそらくあの中には例の果物が入っていたのだと思われる。それが、いつの間にかどこかへ姿を消していた。
しかし彼は何も気に留めるどころか、逆に安堵した。
元より少年に信仰心なんてものはない。
故郷が襲われた理由が“これ”であるなら、持っている事自体がリスクにしかならない。
……そもそもの話、初めに彼の頭から“海軍に保護してもらう”という選択肢を浮かばせなかったのも、あの果物──────“悪魔の実”が原因だった。
「神と崇められる悪魔の実。誰も存在を知らない島。日課で覇気を鍛える一族。うーん」
何もないはずがなく。
最初の神様云々の時点で間違いなく厄ネタでした。本当にありがとうございました。
下手に動けば件の“悪魔の子”の二の舞いになりかねないと判断した彼は、あの実に関しては墓場まで持っていく覚悟で無視を決め込むことにした。
無論、この帰郷もかなりの危険性を孕んでいることは認識している。けれども、前述のとおり自分なりにケジメをつけるためにはいつかは行かないといけないと思っていた。
故に、少年は準備を怠らず、じりじりと十年待ち──────こうして旅に出たのだ。
「っと、そろそろか。武装色硬化」
船底から振動を感知した少年は船に触れる。
黒く染まった船は海流に乗り、岩と岩の隙間をぶつかり、時には滑走しながら進んでいく。
何も知らないままこの海流を通り抜けようとすれば、何度も岩場に座礁し続けて船を大きく傷めてしまい、横転や、良くても竜骨を傷めて使い物にならなくなるだろう。これが外からの人間が来ない理由の真相であった。
「……帰ってきたんだ」
遠目から、火山のように三角形に角ばった島が見えてきた。
あれこそが彼の故郷。
初めて見た時は襲撃されているときだったため、こうして明るいうちに見ると見方が変わってくる。
これで空が晴れていれば尚の事映えただろうと残念がっていた時だった。
「──────
彼の鍛え上げられた見聞色が、人の存在を感知した。
個人の特定はできないものの、およそ十数人が固まっている。
あの時襲った海賊たちが根城にしているのか。
それとも、生き延びた者たちが復興させたのか。
何にせよ、とうに無人島になっていると思っていたため、人がいることに期待が募る。
もし後者であればこれほど嬉しいことはない。
神様を失ったことの謝罪と、自分だけ逃してくれたお礼をする機会に恵まれたのだから。
必死にオールで漕いで上陸を目指す。
天気が悪いのもあるが、気持ちが急いでしまう。
次の瞬間、全身に鳥肌が立つ。
本能が数秒先の未来を無理矢理頭の中に叩きつけてきた。
「あ」
振り返った時には、もう遅かった。
空から落ちてきた極光が、島中を包み込む。
地震が起きたかのように、津波が船を襲う。
そんな中──────子供の頃と同じように──────呆然とその光景を眺める男がいた。
「あ、ああ」
否、彼はあの時のように無力な子供ではない。
成長して強くなった。
彼は目の前の事象にどうすることもできない。
それどころか、島にいたはずの命が一瞬で消えていくのがわかってしまった。
時に、人は災害や爆撃に対して声を上げる暇もなく死んでいく、と聞いたことがある。
そんなの大嘘ではないか、と彼は語った。
膝をつき、頭を抱える。
無念に散っていく命の声が、頭の中に響く。
知らない、こんなもの、自分は知らない。
ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。
こんな悲鳴を聞くために、強くなったわけじゃない!
「うあ゛ぁあ゛あ゛ぁあぁ゛ああ゛!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
彼の慟哭は津波とともに飲み込まれる。
こうして彼の故郷は、地図上から姿を消した。
ガヤガヤとした騒ぎに反応して目が開いた。
ぼやけた視界にはみずぼらしい男たちに取り囲まれている様子が映る。
「なんの騒ぎだい?」
「へぇ、アルビダ様。何やら漁師の難破船があったもんで引き上げてみたらガキが乗っていたみたいで」
アルビダ、アルビダ。
どこかで聞いたような名前だ。
少し考えれば、彼の知るあのアルビダだと思いついただろう。
しかし、もはやそんな思考ができる精神状態ではなかった。
「へぇ、顔は……あまりいい顔はしてないねぇ。こんな死人みたいなヤツ、積荷だけ巻き上げて適当に捨てて──────」
「うるせぇよ」
静かだった海に荒波が立ち、船が大きく揺れ始めた。
ピリピリ、と甲板が軋む音もする。
まるで空気も海も、この男に怯えているようだ。
海賊たちは戦慄した。
これは、果たして一人の男が出していい気迫ではないだろう、と。
「俺の機嫌は最悪なんだ。とっととこの船寄越せ。今なら近くの島でおろしてやる」
「な、なんだいこいつ偉そうに!」
船長としての威厳を保つためにも、自分は気丈でいないといけないと判断したのか。女は汗をかきながらも、腰を抜かせてしまった部下に対して金棒を向ける。
「おいお前! たった一人のクソガキに何好き勝手言わせてるんだい! さっさと黙らせな!」
「え、ええ……オレですかい?」
「早くしなっ!」
渋々、船長の癇癪に従う部下の男。
少年が普通の精神状態であれば哀れんだことだろう。しかし、今の彼の目は相手を人として見ていない。
「……」
「ひっ、くるなっ……!」
今にも逃げ出したくなる気持ちを抑え、手に持った棍棒を振り回すが、意に介さずに歩みを進める少年。
互いに攻撃が届く距離にまで辿り着く。
こうなればもはや先に手を出した方が勝ちだ。
少年のやることは決まっている。
腕を硬化させて頭をかち割るだけ。破れかぶれになって攻撃されても見聞色で避けられる。相手になるわけがないのだ。
「ん?」
ふと、違和感が過る。
腕が黒く染まらない。どこから攻撃が来るのかわからない。息をするようにできていたことが、なぜかできなくなっていた。
いや、そもそも──────人ってどうやって殴るんだっけ?
「う、う」
「?」
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
「うわあああああああああああ!!!!」
雄叫びをあげて、腕を回しながら突撃する。
部下は反射的に腕と腕の間に棍棒を振り下ろした。少年の脳天に吸い込まれた。
「きゅ〜」
「え、弱っ」
こうして少年は意識を手放す。
次に目醒める頃には酷い仕打ちが待っていた。
手に持った鉄の棍棒で殴られ続ける。
見聞色も武装色も使えなくなった少年はそれをただ甘んじて受けて──────
「アルビダ船長のモノマネしまーす!
『うふん、この世で最も美しい女は誰だぁい♡』」
「いいぞいいぞー! もっとやれー!」
「おいコビー! お前こいつの先輩なんだから負けてんじゃねぇぞ! 一発かましてやれ!」
「ええええ!? ぼ、ぼくもですかぁ!?」
──────彼は雑用としてこき使われることを条件に何とか生きていた。
惨めに媚びへつらいながら、泥水を啜りながらも、彼は生きることを決めた。
あの場所に、あの島に、人がいたと証明できる人間は自分だけなのだから。
以上が、ハジメという男が辿ってきた人生であった。
「──────で、俺がここにいるってわけ。
どうっすか先輩。今度の宴会で話してみようと思うんですけど」
「いやそんな軽く話すことじゃないでしょう!?」
一連の話を聞いたコビーは大声を上げてしまう。
いけない、と口を塞いた後、甲板に落ちたブラシを拾い上げて掃除を再開させる。
「えー、せっかく笑い話になると思ったのに駄目っすかコビー先輩。聞かれると命が狙われそうな所は省いて話したからイマイチ臨場感が伝わらなかったのかな?」
「やめましょうよ! 笑い話になりませんからっ! そんな物騒な話、迂闊に口に出さないでくださいよもう!」
「はーい」
そんな気の抜けた返事とともに、ハジメは手に持った雑巾を放り投げた。それは綺麗に放物線を描きながら宙を舞い、拾ってきた樽の上へと乗る。
「あわわ、ハジメさん。またアルビダ様にお仕置きされちゃいますよ」
「あー、大丈夫大丈夫。この船にいるのは今日で最後になるだろうし」
「へ?」
素っ頓狂な返事を聞く前に、ハジメは雑巾の乗った樽へと近づき──────思いっきり蹴り上げた。
当たりどころが悪かったらしく、足を押さえて蹲っている姿に「何をしているんだろう」と呆れるコビーだったが、彼はすぐにハジメの意図に気付かされることになる。
「よく寝たーーーーーー!!!!」
樽から出てきたのは、麦わら帽子をかぶった少年。
これが、後の大海賊とされる“モンキー・D・ルフィ”との出会いだった。
後の出来事はハジメの知る“筋書き”通りだ。
いともたやすくアルビダを殴り倒し、コビーとともに海軍基地のある島に辿り着く。
そこで海賊狩りと言われる凄腕の剣士が捕まっていたところに立ち会った。
「おい、あのガキに伝えてくれねェか?
“うまかった。ごちそうさまでした”ってよ」
「やだよ」
「あァ!?」
「何がなんでも生き延びて、成し遂げたいことがあるんでしょ?
ならここから生きて出てから直接言いなよ。君の“成し遂げたい”ことって、そんなこともできないヤツに成れるほどちっぽけなものじゃないと思うけど」
「……テメェ。言うじゃねェか」
「……ししし! そうだな!」
ハジメが助けられた恩を返すためにやったことは、決して大したことではない。
ただ基地の中に潜入して、ゾロの刀を取ってきてあげた。やってもやらなくても、結局ルフィやコビーが解決できたことをやっただけ。
それで貸し借りなしのチャラ。
あとは頑張って新時代を作ってくれと、別れるはずだったのに。
「全員敬礼!」
「よし、せっかくだし敬礼しとこ──────え」
「はやくこいよハジメ! おれ達もう仲間だろ!」
「いや違うわあばばびばああああああああ」
「は、ハジメさーーん! お元気でーー!」
「コビーせんぱーーい! たちけてーー!」
なのに、えらく気に入られて旅に連れられてしまった。
「俺とシャンクスは昔同じ海賊団にいた。海賊見習い時代の“同志”ってやつだ。こんな汚え帽子なんてこうしてやる! ぺっ」
「へー、ならその帽子って元々シャンクスのものなの?」
「あん? 何だったっけな……確かアイツ、これは船長から……って、ギャーーーー!!?!!?!! やっちまったーーーー!!!!!!」
「よし、今だルフィ!」
「ゴムゴムの……バズーカ!!!」
次の島でも、あくまで茶々を入れただけ。
覇気の使えない自分など一般人よりも貧弱な人間なのだから、一緒にいて役に立つことなんてない。
できることなんてこんなことくらいだ。
でも、何もしないことだけはできなかった。
「すまん! 恩に着る!」
「俺も恩に着る! じゃあな!」
「気にすんな! 楽に行こう──────ハジメもな!」
「な……なんでェ?」
コビーや先の島での海兵たちのように。
あの村長のように。
相手が海賊であってもしっかりとお礼を言える人たちを前に、つい、遠い記憶の彼らを思い出してはセンチな気持ちになってしまうから。
「ワン・ツー……」
「させるか、オラ! 催眠!」
「くかー……」
「えっ、効いたよ……い、今だウソップ!」
「よし! 必殺“火薬星”!」
シロップ村でもそうだった。
ウソップ海賊団の子どもたち。カヤ、メリーも。
出会う人皆がどうしても故郷の皆と姿が重なる。
それが“放っておいてもルフィたちが何とかしてくれる”という考えに至る前に手を貸してしまう。
「何言ってんだ? 早く乗れよ」
「おれたちもう仲間だろ?」
「え……」
「そうだぞ! 行ってこいウソップ!」
「お前にも言ってんだよ! しれっと降りようとすんな!」
「ゾロもおおおおお!?!?!」
そうこうしているうちに、ルフィ以外も降ろしてくれなくなった。
こうしてやってきたバラティエ。
ゾロが目標と出会い、負けて、誓いをたてるあの瞬間。普段通り、冷静にやるべきことを淡々とやっているように見えただろう。
けれど、見とれてしまうほどに気高い彼の姿が、ハジメの目を灼いていた。
「文句あるか、海賊王!!!」
「ししし、ない!」
「よし、もう大声出さないでよ、ゾロ。今手当する──────」
……ああ、やはり彼の仲間はあそこまでできる奴じゃないと務まらないんだな。
諦観の果てに彼が
「──────あああああああ!!!!!」
悪寒が走る。全身に鳥肌が立つ。
本能的に腕が己の身を守ろうと動いていた。
「おい! ハジメになにしてんだ!」
「随分と窮屈にしていたようなのでな。少々
「フー……フー……」
息も絶え絶えで、顔中に脂汗がびっしりと貼り付いている。
しかし彼の両腕は、かの黒刀を受け止めている。
ハジメの両腕もまた
「大剣豪の刀を、素手で受け止めたああああああああ!!!!?!?!?」
ヨサクが、ジョニーが、サンジが、そしてルフィが。
気を失ったゾロ以外、周りが受け止めたことに驚嘆していた。
受け止めた?
初めから斬るつもりがなかっただけだろう。
言い返す余裕がないため、心中で反論する。
「見事な“覇気”だ。より鍛錬を積めば後半の海でも上澄みの強者になれるだろうに」
「……やだよ。俺はもう疲れたんだ。こんな力があったって、人は簡単に死ぬんだよっ」
「……その折れた心までどうこうする義理もない、か。苦労するな、小僧よ」
そこまで見透かされているのか。
覇気が使えるようになっても、ハジメの心は晴れることはなかった。
「よくもナミを泣かしてくれたなァ……」
「ははははは! 残念だったなぁ! こいつはあの“鷹の眼”の刀を素手で受け止めた男なんだぞ!」
「おい、ウソップ。さすがにそれはハッタリってバレるだろ」
「いやマジだぞ」
「おれも見た」
「は?」
しかし戦う力は手に入れた。
アーロンパークにやってきた彼は戻った力を遺憾なく振るおうとする。
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
「フン!」
「ぐはっ」
「「「「ええええええ!?」」」」
ほら見ろ。
ちょっと頑張っても、名前も知らない魚人に叩かれて終わり。
所詮自分なんてこんなものだ。
ハジメは何度も自嘲した。
ルフィのように叶えたい夢と、その果てがあるわけでもない。
ゾロのようにストイックな強さと気高さがあるわけでもない。
ナミのように虐げられても懸命に戦い続けられる美しさもない。
ウソップのように嘘をつけないような絶対に譲れない誇りもない。
サンジのように凄惨な生まれでも変わらず抱きつづけた優しさと誓いもない。
それに比べて、自分はなんだ。
折れてしまった枝木が、船を支えられるわけもない。近いうちに再び折れて、今度こそ薪にくべられるだけだろうに。
「あ、ルフィ。あそこの荷物取って」
「ん? これか?」
「
「あっ、ハジメ! また降りようとしてたな!」
「ついでにスっちゃった♡」
「
「じゃあね、みんな! 行ってくる!」
なのに、誰一人見捨てようとしてくれない。
もう頼むから放っといてくれ、と言っても誰も聞いてくれないだろう。
だが──────嫌いなのか、と聞かれれば真っ先に否定する。
行動は自分勝手でも、言ったことはやってくれる。
弱くても対等に扱ってくれる。
アホなことをやれば付き合ってくれる。
口に貼られたテープ越しに大声を出してやった。
──────畜生、お前らなんか大好きだ。
劣等感なんて抱くよりも先に、どこか静かな島で見守っていたいという感情が遥かに勝る。
だから、ハジメはこうして仲良くしてくれている間にも離れるべきだと思っているのだ。
「よし、進水式でもやろうか!」
とうとう偉大なる航路まで来てしまった。
ここからはもう語るまでもないだろう。半ば自暴自棄に身を委ねて、打算まじりに我儘を貫いてきた結果がこれだ。
血だまりになった砂の上で、この騒動における唯一の犠牲者として地に伏している。
なんてことのない。今まで上手くいってしまった分、こうして痛いしっぺ返しを受けただけ。道化にはお似合いの末路だろう。
まあ人も沢山助かったし、楽しかったからいいか。あとはルフィがやってくれる。
一周回って清々しい気持ちのまま、彼は二度目の死に身を委ねようとした。
「──────助けて」
彼女の声が、現実へと引き戻した。
目を閉じていてもわかる。
場所は違えど、彼女は“筋書き”通りクロコダイルに首を掴まれている。この後はルフィが助けて、そのまま決戦へと向かう。その流れは概ね変わることはないはず。
だが、その言葉をハジメは知らない。
たとえ己が命の危機に晒されても一度も口にしなかった言葉を、他ならぬ彼女が口にしていた。
ハジメは理解した。
あの日──────故郷が無くなった時から口にしてはいけないと誓った言葉。自分の過去はオハラと同じようなものなのだから。きっと一度口にすれば、周りまで同じ目に遭ってしまうと思い、蓋をした気持ち。
それを、彼女に言わせてしまったのだ。
自分はどうなってもいいから彼を助けてくれ、なんて。
ならばもう、やることは決まっている。
この責任まで投げ出しては、故郷の皆に顔向けできそうにないから。
それに──────
「──────ッ!」
見栄を張るなら最後まで張ってやろう。
彼女の前なら、それができそうだ。
◆◆◆◆◆
「……あ?」
不意に、クロコダイルの腕が弾かれた。
気がつけば静電気に触れたときのように、無意識に手を引いてしまっていた。
吊していたビビを受け止めたのは、他ならぬ先ほどまでクロコダイルが殺そうとしていた少年。
涙で濡れたビビの視界には、瞳の輝きが戻ったハジメの姿がしっかりと見えていた。
「ハジメ……くん?」
「借りるね」
じゃらり、と腕から刃のついた糸を見せる。
孔雀スラッシャー。
いつの間にか、ビビの武器が彼の手の中にあったそれをおもむろにクロコダイルへ投げつけた。
黒く染まったそれは覇気を纏っている。
当たれば自然系の能力者と言えど、実体を捉えて傷をつけられるものだ。
しかし、そんな苦し紛れの攻撃に当たるほど王下七武海は甘くはない。
「……立っているのもやっとだからって、油断するとでも思ったのか?」
クロコダイルは当たる部分だけを砂に変化させて変形することで回避する。死にかけでも何度も出し抜かれた目の前の男に対して油断はない。
「さっさと死ね、覇気使い」
今度こそ、クロコダイルは彼の命を摘みに行く。
フックのついた腕と反対側の腕。それは万物に“乾き”を与える必殺の腕。人に触れれば瞬く間に水分を吸収し、カラカラのミイラの出来上がりだ。
まさに死神の鎌。ただでさえ血を流しすぎているハジメにとっては死を決定的にするものだった。
「やだよ」
「っ!?」
パン、と音がする。
ハジメの左手が窓のカーテンを開けるように軽い動作で、力一杯振りかぶったクロコダイルの腕を容易く弾いた。
それだけではない。
弾かれた方の腕がビリビリと痺れていた。
いくら脳が動かそうと命令しても、全く言うことをきかない。
覇気の中には、直接触れずに攻撃を弾くことができる技術がある。実際にクロコダイルは海軍のおかっぱ頭の海兵が使っているのを見たことがあった。
内部破壊、という技術があることも知っている。彼が戦った白ひげ海賊団の中にも扱う者がいたはず。
だが、クロコダイルは直感していた。
目の前の男が使ったのはそれらだけではない。
もっと先の、何かを掴んでいる、と。
余計なものを削りきったハジメの見聞色はかつてないほど冴え渡っていた。
数秒先の未来はもちろんのこと、クロコダイルの体の節々にレーザーポインターを当てたように明るく
試しに覇気を流してみると、腕が痙攣したかのように震えている。
成程──────あれは
たとえ非力な自分でも致命傷を与えられるような、生き物である以上は必ず存在する決定的な弱点なのだろう。
すとん、と腑に落ちる。
先ほどのように攻撃を予測し、弾きながらあれらの弱点をつく……これが自分の戦い方だとようやく理解した。
ため息とともに笑みがこぼれる。
もう少し早く開花していたら、自分でも奴と戦えただろうに、本当に残念で仕方がない。しかも、これからやることは全く真逆のことなのだから本当にツいていない。
「“
次にやってくるのは遠距離攻撃。
それは既に視ていたため、身を傾けて避けてもよかったが、後ろにいるビビ達に被害がいかないように弾くと、地面を割くほどの刃が呆気なく霧散した。
そして次は接近戦だ。
今度こそ、あの毒入りのフックで切りつけてくるだろう。
「いい加減死ね! 目障りだ!」
ハジメはそれを待っていた。
あれに仕込まれた毒。体感した身としてはかなり厄介だ。
解毒薬をすでに使ってしまった以上、他の誰かが食らったら一巻の終わりである。
故に、ここで破壊するしかない。
クロコダイルの攻撃に合わせて、ハジメは拳を振りぬいた。
「だから、やだよって言ってんだよ!」
互いの衝突は地面の砂を吹き飛ばす。
筋力は明らかにクロコダイルの方が上。死にかけのハジメでは拮抗するはずもないのに、鍔迫り合いが起きてしまっていた。
いや、そもそもクロコダイルのフックは届いていなかった。
「
ハジメの拳から、さらに拳一個分の間隔が開いている。
そして、拳から迸る赤雷。
ああ──────これも見たことがある。
「白ひげ……!?」
かつて、新世界にて戦った最強の海賊。
あの巨体よりも大きい薙刀を受けた時の衝撃は、今もなおこの左手に感覚が残っているのだから。
大きさは比べるべくもないが、それと同じ現象が目の前で起きている。
そんな体で耐えられるわけが──────と考えたところで改めてハジメの体を見て驚愕した。
腰に巻き付いている糸の数々。
それは初めに投げた孔雀スラッシャーの糸の部分。糸の先を辿ると、クロコダイルの背後に伸びて地面に突き刺さっていた。
まるで、自身を逃げられなくするように固定するための
「『まさかお前!?』と驚く」
「まさかお前!?」
「残念だけど、もっと野蛮な力技だよ」
ハジメの腕から、聞こえてはいけない音が聞こえるも、構わず彼はさらなる覇気を拳に込める。
赤雷はやがて本当の雷のように轟き、上空へと昇っていった。
「───雷鳴八卦!!!!」
轟音とともに、クロコダイルの身は吹き飛ぶ。
折れたフックの破片とともに地面に何度も身をうちつけ、やがて宮殿の城壁へと叩きつけられる。
彼本来の戦い方とは真逆のもの。
当然、本家とは比べ物にならないほどに弱々しい。
けれど、それはまごうことなき皇帝の技であった。
「……なんちゃって。一卦あれば良い方だよね」
「ハジメくん!?」
「ビビ、少しは気が晴れた?」
「そんなことより、腕がっ!?」
駆け寄ってきたビビに倒れながら笑いかける。
彼女が視線を腕に集中させてようやく、肩から下がぐしゃぐしゃになった腕に気づいたハジメはその場で蹲った。
「お、おおおおおおおお……!」
「大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫大丈夫。痛くないし……!」
「すごくイタそう!」
気が付かないうちに顔に出てしまっていたようだ。
実際痛いのだから仕方ない。
本来、あの技は何か武器に纏わせて放つもの。
手元に武器がなかったために己の腕で代用したらこの様である。
「安心するのはまだ早いよ。まだアイツ倒せてないから」
「そんな……」
「こっちは肩から下がやられてるのに、あっちは肘から下しかやれなかったか。やっぱこの技向いてないんだな、俺って」
遠く離れた先には、瓦礫を押しのけて立ち上がるクロコダイルの姿がある。
あれだけの攻撃を受けて立ち上がるなんて、どれだけタフなのかと戦慄するビビ達。
しかし、ハジメは不敵な笑みで応える。
「まあそうだね。そもそも倒せるなんて欠片も思っていない。けど、
「えっ」
そもそも、あのフックを破壊するだけならばあそこまでする派手な技を使う必要なんてなかったのだ。
彼がそこまで体を張った理由は唯一つ。
「ハジメーーーー!!!」
「は、はやく……特にチョニキ、そろそろ死ぬ……」
「うおおお!!! ハジメが酷い傷だ! 誰か、医者アアアア!!!」
「お前だよ!!」
仲間たちが駆け寄ってくる。
皆、オフィサーエージェントたちを相手にして傷だらけではあるが、誰も欠けることなく無事でいてくれていた。
ああ、ようやくビビは理解した。
あの技はクロコダイルを倒すためのものではない。
彼なりに体を張った布石と、SOSだったのだと。
「ふふっ、あはははは」
こんな状況なのにビビはこらえきれずに笑ってしまった。
だっておかしいだろう。“助けて”と言いたくないからと言って、あそこまでの大技をやるなんて誰が想像できるだろうか。とんでもない見栄っ張りがここにいたわけだ。
だが、その甲斐もあって皆が揃った。
──────そして、彼が
ハジメはチョッパーに手当されながら腕を空に掲げる。そのまま清々しいほどの笑顔を以て迎え入れた。
助けて、とは言えない。
でもこの言葉なら言える。
「後任せた、
「───ああ、任せろ!」
この先のことは語るまでもない。
本来の筋書き通り、ルフィとクロコダイルの戦いは激戦を極め、舞台は
求めていた代物がないと知っても戦意は無くならず、最後まで戦いは拮抗したが、ルフィの決死の大技を以て斃された。
しかし、広場に向けられた爆弾は麦わらの一味たちと、護衛隊副官のペルの活躍によってアルバーナ外に運ばれて爆破される。
此度のアラバスタ国家転覆事件。首謀者たるクロコダイルの王下七武海の称号剥奪及び身柄の捕縛を以て終結することになった。
これまでの内乱によって命を落とした者は少なくない。しかし、最も激化したこの日においてアラバスタ国民の犠牲者は──────ゼロ。
夢見がちな理想だと嗤われた少女の願いは、こうして実現したのだ。
「あァ……3年ぶりの雨だ……」
降りしきる雨。
恵みの雨はアラバスタ国中……勿論、ユバにも潤いを与える。
トトは、今だけはオアシスを掘る手を止め、空を仰ぎながら勝利を噛み締めていた。
この雨は朝まで止むことはなかった。
まるで、今日までに流れた血を洗い流すかのように、ずっと、ずっと降り続ける。
・ ハジメ(イッチ)
折られた心を取り戻すためにケジメをつけに行ったら再び折られた男。割と宴会芸さえあればどこでも生きていけると思っている節がある人生ヤケクソ勢。ネタも各方面に喧嘩を売るスタイルで突き進む。メンタル強いのか弱いのかわかんねえな。
そんな折れた木でも、ささくれが指に刺さる程度には戦えていたと思いたい。
・ ビビ
合流した仲間たちとともに爆弾処理に奔走。パパから場所を聞いて、時計台にゾロサンジを連れて殴り込んでMr.7たちを一掃。あとはペルが爆弾を街の外に持っていって適当な場所に投下して完了。
もう彼女に怖いものはなかった。
・ ルフィ
あとは勝つだけ。そのために彼はここに来た。
・ サー・クロコダイル
何もかも邪魔されてようやく辿り着いた歴史の本文を前に、目的のものがないと知らされた気分はどうだ! 感想を述べよ!
・ ハジメの父
その突然生えた過去編……間違いない……
ワノ国からの違法出国者にして三色の覇気の免許皆伝……
悪魔の実を神と称し使える神官、ハジメの父……
この者を説明するのに空白の100年を理解する必要がある。少し長くなるぞ。
なぜ幼少から覇気の訓練をさせたのか? 色々あったが簡単に言うなら私欲のためだ。
彼奴、ハジメの中に“才”を見た。見聞色とは心の目。つまり心眼だ。これを理解するのにはものすごく時間がかかるのだ。
己の師に詳しく聞くといい。お前は物事をあせりすぎる。
・ 謎の光
何の光!?
結構がっつり過去編やってしまった問題。
神様は何の実だったのか?
村を襲ったのは本当に海賊だったのか?
お前にもいずれわかる時が来よう。
次号より新展開へ──────!
次回『絶対に船を降りようとするイッチvs絶対に船を降ろさせないルフィvs????』
目次 感想へのリンク しおりを挟む
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【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件3/1
1:名無しの海賊団 ID:xFeUgS5mF
次スレを!!!!!!!!
始めま!!!!!!!
やっぱやめた
2:名無しの海賊団 ID:/4TIJy5Nw
>>1乙
3:名無しの海賊団 ID:1yUjW3TgG
立て乙
4:名無しの海賊団 ID:oqL4zsT3X
>>1乙
始めろよ!!!!
5:名無しの海賊団 ID:cbfaKTiNJ
乙
こんなんじゃスレ始められねぇよ……
6:名無しの海賊団 ID:C3fOSkANe
>>1
やめんなーーーー!!!!
7:名無しの海賊団 ID:mwUDFrq1h
>>1
乙
諦めんなよ!
8:名無しの海賊団 ID:ivwrJGWrg
乙
なんか前スレあっという間に溶けたな
9:名無しの海賊団 ID:6l+IuTCL/
結局イッチどうなったの?
死んだ?
10:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
一応生きてるよ
ただ毒と失血で死にかけた上に両足と右腕骨折は確実
11:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
>>10
他にも怪我してるだろうな
砂嵐巻き込まれて地面ビターンしてたし
12:名無しの海賊団 ID:FeXUDsWFn
ウソップレベルの重傷じゃん
13:名無しの海賊団 ID:py0howm0w
その後イッチの腹の中から巨大な龍が出てきてアラバスタごとクロコダイルを滅ぼしたんだよね……
14:名無しの海賊団 ID:isWG5W2go
>>13
嘘乙
本当は兄弟分のクイーンがやってきてアラバスタごとクロコダイルを殲滅したんだゾ
15:名無しの海賊団 ID:2jT+k6CeM
まてまて情報を錯綜させるな
本当はイッチが密かに食べていた悪魔の実が覚醒してアラバスタが爆発して沈んだんだぞ
16:名無しの海賊団 ID:4ne7kXfdc
???????????
17:名無しの海賊団 ID:L84+cimyw
何この流れ
18:名無しの海賊団 ID:VthegcFIC
あまり情弱共をいじめるなよ
19:名無しの海賊団 ID:UDiW9T0q/
俺が真実を話そう
ここまで追い込んだイッチを評価して、おもむろにフックを抜いてイッチにぶっ刺して毒を注入
そしてクロコダイルとイッチの二人は幸せなキスをして終了
ビビの脳が破壊されてチャンチャン
20:名無しの海賊団 ID:wMYdx+cqm
>>19
真ん中のキス以外は合ってる
21:名無しの海賊団 ID:HZIgVS4Ll
>>19
やっぱりクロコダイルは女の子じゃないか
22:名無しの海賊団 ID:1IhGLmeMd
過剰な覇気に能力は効かないから……イッチの覇気がイワちゃんに施術してもらったホルホルの実の能力を打ち消しちゃった……ってコト!?
23:名無しの海賊団 ID:wwjC1MFpB
>>22
ハァ?
24:名無しの海賊団 ID:tCFBVedL3
>>19
お前の減らず口なんかこうしてやる……んっ、ちゅ
25:名無しの海賊団 ID:VDQPBMzSk
だーかーらークロコダイル女の子説はやめロッテ
26:名無しの海賊団 ID:/fJ61qjaA
そろそろマジの怪文書が投稿されそうだからやめろォ!
27:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
一応>>19も含めて最後の書き込みから何があったのかお前に教える
①イッチ、毒と出血多量のコンボで死にかける
②ツメゲリ部隊が足止めしている間にビビコーザチャカが逃げながら解毒と手当
③追いかけてきたワニがチャカとコーザに攻撃
④ビビが殺されそうになった時にイッチが覚醒
⑤覇王色纏ったなんちゃって雷鳴八卦でワニ撃退
⑥麦わらの一味勢揃い
あとはペルが犠牲にならなかったり海軍が到着したのがワニ倒された時だったりちょっと誤差ある程度で原作通り
28:名無しの海賊団 ID:oV0eNbRgQ
>>27
thx
29:名無しの海賊団 ID:AsNOCcxbg
>>27
なんちゃって雷鳴八卦と言う割には結構吹き飛んでたぞワニのやつ
30:名無しの海賊団 ID:HUiFG9Huw
>>27
シャンクス
礼にこの帽子をお前に預ける
31:名無しの海賊団 ID:VGoTrXtWz
>>27
乙
色々ツッコミどころ満載で何から触れていいのかわからんけどちゃっかり覇王色纏ってるの草なんだ
32:名無しの海賊団 ID:0Sbh2PPyp
>>27
前スレに書いていたやついたけど正直ごちゃごちゃしてて何があったのかわからなかったわ
助かる
33:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
というかなんでお前ら知らんの
イッチの状況リアルタイムで観測してないの?
34:名無しの海賊団 ID:r9rF6xz/f
>>33
おっ、喧嘩売ってんのか?
35:名無しの海賊団 ID:rksHsttjT
>>33
……すぞ
36:名無しの海賊団 ID:2adzMlVsN
>>33
突然の田舎煽りはやめて差し上げろ
37:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
え、なんかごめん
38:名無しの海賊団 ID:ABPjXCkCc
うおっ急にすげぇ低姿勢……初心者かな?
39:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
>>37
ここのスレ民が必ずしも自分と同じ時同じ方法で観測しているとは限らないことをお前に教える(二度目)
中には平気で3日とか一週間遅れで観測するやつもザラにいるからな
40:名無しの海賊団 ID:s7LWranCl
不用意な発言は気をつけろよ
41:名無しの海賊団 ID:L1VYjEWAS
>>37
そしてほぼリアルタイムで観測できるやつは大抵碌でもない性格の人間辞めてるか人間じゃないやつだからな
つまり>>33もその可能性大
42:名無しの海賊団 ID:WufxJxvRu
だからイッチ本人から「今どの辺?」と聞く必要があったんですね(棒読み)
43:名無しの海賊団 ID:l0emmh5l2
>>41
×大抵碌でもない
○そもそもこんなところに書き込みしてる奴ら大なり小なり碌でもない
44:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
>>39
>>41
心当たりありすぎたわすまん
何卒詮索しないでいただけると助かる
45:名無しの海賊団 ID:lRdNMiOI1
お前の事情なんて興味ねえよハゲ
46:名無しの海賊団 ID:qvk0qiA4w
本当に初心者なんだな
かわいいね♡ 死ねよ
47:名無しの海賊団 ID:jpAAlN5pK
>>44
お詫びにコテハンつけてイッチ実況して♡
イッチ全然浮上してこないから状況わからんの
48:名無しの海賊団 ID:8b/JD5BsL
そもそも何でここまでイッチからの書き込みないん?
俺達なんかやっちゃいました?
49:名無しの海賊団 ID:KkaUqnRQT
>>48
心当たりがありすぎる
50:名無しの海賊団 ID:PtszAjT4E
>>48
己の胸に詳しく聞くといい
51:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
これでいい?
52:名無しの海賊団 ID:rAnny6hPi
>>48
人の心以下略
53:名無しの海賊団 ID:R89cSVOKX
>>51
よし
54:名無しの海賊団 ID:qmrmpM3Lo
>>51
いいぞ。
55:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
よし、じゃあ実況するぞ
初めてなんでお見苦し失礼
今は戦い終わって二、三日経ったくらい
サンジとウソップが買い出ししてるの見えたからちょうど原作で描写されたところか
56:名無しの海賊団 ID:0J21cODj4
ああ、あのチャカが海軍にメンチ切ってるあれか
57:名無しの海賊団 ID:TMobEqhSK
ここに海賊がいる証拠はあるのか!?(横チラッ)
58:名無しの海賊団 ID:RoZmnti2Y
チャカからしたら海軍なんて肝心な時に役に立たなかった奴らやからな
自分たちも呑気してたのは確かだけど海軍側がもっと七武海の手綱握っておけば国家転覆されかけずに済んだわけだし
59:名無しの海賊団 ID:3VwVkjyDb
>>58
藤虎さん覚悟ガンギマリしそう
60:名無しの海賊団 ID:ISh2V/FHn
イッチは何してる?
61:名無しの海賊団 ID:Pv6JhRA8c
重傷だから寝ててもおかしくないやろ
62︰一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
>>60
>>62
ちょうど昨日起きたっぽいよ
サンジ曰く横でビビがめっちゃ泣いてたらしい
あとツメゲリ部隊に囲まれて驚いていたとか
63:名無しの海賊団 ID:8tjLLME1u
おやおやおやおや
64:名無しの海賊団 ID:jrz5jQtEb
確かに起き抜けであいつらの顔がドアップで映るのは心臓止まるよな
65:名無しの海賊団 ID:QWXXJSiOi
なーかしたなーかした
責任取れオラッ!
66:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
ずっと寝てたらいつの間にかメリー号の中に居るかもとか考えたのかね
67:名無しの海賊団 ID:3k/1YEHnC
>>66
フィジカル貧弱なのに変なところでタフだなイッチ
68:名無しの海賊団 ID:tvJIkyCeY
ぶっちゃけ覇王色纏える時点で戦闘面でも役立たずじゃないしもう船降りる理由なくなりましたよね?
忌憚のない意見ってやつっス
69:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
なんか覇気使えなくなったとか言ってるぞイッチ
70:名無しの海賊団 ID:w8hsSMPSC
え
71:名無しの海賊団 ID:qdb7zowG5
あー、かなり無理してたみたいだしな
72:名無しの海賊団 ID:Z1i+HBoLy
ルフィ以外に覇気の使い過ぎで使えなくなるのいるんやな
まあイッチも一時的なものだろ
73:名無しの海賊団 ID:7bC+2UtEz
覇気使えなったら本当に役立たずじゃん
74:名無しの海賊団 ID:Ds0iS2ii3
イッチ的には船降りる理由が増えてラッキー的に考えてそう
75:名無しの海賊団 ID:ZVSR2eMiu
オイラわかっちゃった
イッチが浮上してこないのって覇気使えなくなったからじゃね?
76:名無しの海賊団 ID:Edkupb31G
は?
77:名無しの海賊団 ID:FkJGo8f4H
オイオイオイ
78:名無しの海賊団 ID:0J21cODj4
>>75
イッチってどうやってこの掲示板見つけんやろなってずっと疑問だったけど見聞色のおかげなの?
79:名無しの海賊団 ID:xofdw0HxY
草
80:名無しの海賊団 ID:9T8aZrQS4
環境:見聞色は新しすぎる
81:名無しの海賊団 ID:t2UtzK3Jo
どっかでイッチが転生特典とか言ってなかったっけ
82:名無しの海賊団 ID:ZVSR2eMiu
>>81
その転生特典が覇気の才能って可能性
そもそも特典が掲示板って何だよ(何だよ)
83:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
>>82
まあ気がついたら使えるようになっていたならそう認識しても不思議じゃないよな
84:名無しの海賊団 ID:0EZXzs6p0
前提が……前提が崩れる……!
85:名無しの海賊団 ID:cOE4tTeud
覇気極めた果てが便所の落書きとか終わってんな
86:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
まあ本人に聞いてみないとわからんだろうな
なんかチョッパーの話によるとイッチの怪我は全治2.5年だそうだぞ
87:名無しの海賊団 ID:KztzZHgfE
長っ
88:名無しの海賊団 ID:RTbsUYuOy
それは盛りすぎ
89:名無しの海賊団 ID:qvk0qiA4w
怪我なんて数日で治る世界だろ
90:名無しの海賊団 ID:KkaUqnRQT
ウソップとか全身包帯巻くレベルの重傷だったのに平気で歩いてるぞ
91:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
>>89
>>90
なんか怪我が治りにくい体質らしいぞ
実際ウソップの怪我と比較されて明らかに回復スピードが遅いこと説明されてる
92:名無しの海賊団 ID:p9RpQfHxc
そこは転生前基準なのかーい
93:名無しの海賊団 ID:AOa8wZ/Sy
クソザコ故ずっと極限状態だったから感覚麻痺していたけどずっと怪我だけはしないように立ち回ってたからなイッチ
実際スレ立てしてから負った怪我なんてドラム王国でカルー助けるために寒中水泳した時くらいだし
94:名無しの海賊団 ID:jrz5jQtEb
>>93
いやミス・バレンタインの攻撃でも負傷してる
まあ武装色で目立った外傷はなかったしその時まだチョッパー加入前だから誰も説明できる人いなかったのもあるか
ひょっとしてあの時もイッチずっと我慢していた説
95:名無しの海賊団 ID:Rzva72JOk
お前らどうした
いきなりこのスレ内の知能指数上がったぞ
96:名無しの海賊団 ID:8b/JD5BsL
リハビリ含めてだろうけど全治2年は長すぎだろ
現実でも重傷で1年程度なのに
97:名無しの海賊団 ID:wMYdx+cqm
>>96
毒の後遺症とかもあるのかね
普通に辛そう
98:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
>>97
でもイッチ悪い顔して笑ってるぞ
【画像】
99:名無しの海賊団 ID:AChEWZTXP
計 画 通 り
100:名無しの海賊団 ID:8A+9jlZJ9
デ ア ス ノ テ
101:名無しの海賊団 ID:WwGuzMI3a
(あっ、狙ったな)
102:名無しの海賊団 ID:xFeUgS5mF
これは俺達のイッチ
103:名無しの海賊団 ID:4lnQ92dqC
再起不能になれば船降りられるとでも思ってんのか
思ってるわこれ……
104:名無しの海賊団 ID:ALiOPugBI
・覇気が使えない(ガチ)
・全治2年の大怪我(ガチ)
雑用には致命的ですねぇ(ゲス顔)
105:名無しの海賊団 ID:ZvOEZaKKP
降りられなかったらスマイル√だぞ
一生笑顔よりは大怪我した方がマシ
106:名無しの海賊団 ID:eh1oFY6Or
律儀に安価守るのが俺達のイッチだからな
107:名無しの海賊団 ID:jrz5jQtEb
問題は降ろしてくれるかなんだが
108:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
一味の仲間も一応は納得してるな
ウソップとかナミは「嘘だろ……」みたいな顔してるあたり皆すごい渋々っぽい
109:名無しの海賊団 ID:S49a0pEbt
まあ流石にこんなボロボロで旅続けさせるのは酷だよね
110:名無しの海賊団 ID:rwzLiGBYU
非戦闘員からの絆が厚い
というか作中の登場人物からの評価は異様に高いな
111:名無しの海賊団 ID:MnmD8XKDc
>>110
クズムーブはスレの中しかやってないし
傍から見たら信頼できる仲間だしアラバスタ国民からは大恩人やぞ
112:名無しの海賊団 ID:2Srr9Hu/F
どう見えるかだ
まだまだ心眼が足らぬ
113:名無しの海賊団 ID:zkbsu7Nuy
俺、どれが本当のイッチがわからなくなっちまったよ……
114:名無しの海賊団 ID:80cr2YjZB
改めて考えてみるとイッチのこと何も知らねぇな
もっと自分語りしろ(全ギレ)
115:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
イッチが自分の話をしないのもあるけどスレ民も聞かなかったじゃん
安価強要しかしてないだろお前ら
116:名無しの海賊団 ID:4+v+qWkZJ
>>115
いきなりの正論はやめろ
117:名無しの海賊団 ID:yO6cqEsPH
>>115
ぐう
118:名無しの海賊団 ID:8b/JD5BsL
>>115
いや全くもって……仰るとおりです……!
119:名無しの海賊団 ID:gdG5OdH7M
>>115
いつか観測できると思ってました
実際イッチ過去編はいつくるのかのう
120:名無しの海賊団 ID:qvk0qiA4w
努力嫌いの軟派野郎だしそんな重い背景ないっしょ(鼻ホジ)
121:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
>>119
>>120
一応>>27の間に描写挟まるよ
こういうのって捉え方次第だから何も言えんわ
122:名無しの海賊団 ID:EU2RIIS1W
そこら辺はネタバレになるっぽいから控えようか
123:名無しの海賊団 ID:deYITmPvg
まあ>>121も人の心あるか怪しいし感想はあてにしないほうがいい
124:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
あ、ルフィ起きた
125:名無しの海賊団 ID:bYxae0ppT
>>124
お、来たな
126:名無しの海賊団 ID:jy8pwRWSO
ということは宴会か!
127:名無しの海賊団 ID:wMYdx+cqm
そろそろ狩るか……♠(メマーイダンス)
128:名無しの海賊団 ID:gyU9WIlry
>>127
イッチ大怪我してるぞ
無理だろ
129:名無しの海賊団 ID:jrz5jQtEb
>>128
無理かどうかは俺達が決めることにするよ
130:名無しの海賊団 ID:0DJJHi6xu
その前にイッチ船降りる話だろ
他の仲間は納得してもどうこうするかは船長が決めることだし
131:名無しの海賊団 ID:7NJAY0CpE
どうなんだろう
マジで読めないな
132:名無しの海賊団 ID:OLFvKJiYk
ルフィ、別に頭悪いわけじゃないからさすがに理解するんじゃないの
133:名無しの海賊団 ID:8b/JD5BsL
主人公なのに思考が一番わからないの不思議
134:名無しの海賊団 ID:B4Y2NxQBm
>>133
理解しても納得するかは別
135:名無しの海賊団 ID:6/3WwRcwO
どう説得するか
ここにイッチがいたら安価できるのにな
136:名無しの海賊団 ID:T6rTpdxS7
あ
137:名無しの海賊団 ID:QosTs3YHY
そっか
イッチがここ観測できないから安価しようがないのか
138:名無しの海賊団 ID:av+RsA21S
うにゃああああああああああ!!1!1
139:名無しの海賊団 ID:M2yYExrEW
あああああああああああああああ
140:名無しの海賊団 ID:QFs4WaC15
終
わ
り
だ
141:名無しの海賊団 ID:/iceoD6hT
安価がない! 安価がない!
142:名無しの海賊団 ID:2K7GyWxTo
うーんこの阿鼻叫喚
143:名無しの海賊団 ID:U+aTYH3u4
あ、あり得ないぃ……
144:名無しの海賊団 ID:0mX3Y1VaK
イッチが見聞色使えるようになったら起こして
145:名無しの海賊団 ID:qvk0qiA4w
風呂入ってくる
146:名無しの海賊団 ID:6lp7YflCi
本当に安価しか興味ない層はイッチの状況観測してスレから去ってるだろ
147:名無しの海賊団 ID:TJjdL9xWG
便所の落書きと言われる所以
148:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
おーおー言い合いになっていらっしゃる
ルフィが「やだ」の一点張りだわ
149:名無しの海賊団 ID:/ttoTiFez
伝 家 の 宝 刀
150:名無しの海賊団 ID:KAN69nh7M
聖 三 文 字
151:名無しの海賊団 ID:oFv+28Xr2
イッチ語録が世界汚染してるの草
152:名無しの海賊団 ID:DDoX9ZPru
ダメじゃなくてヤダなのが頭では航海続けられないのわかっていながらわがまま言ってる感あるな
153:名無しの海賊団 ID:UaLVhWdsL
ウソップが一味抜ける時も顔に出そうとしなかっただけで滅茶苦茶動揺してたしなあ
起きてから急に言われたらこうなるわな
154:名無しの海賊団 ID:kqTa2IZ4P
>>150
三文字じゃなくて二文字なんだよなあ……
155:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
なんか埒明かないからとりあえず保留になったな
これから宴らしい
156:名無しの海賊団 ID:D4yC0TJEX
ここで食い意地張るの本当にルフィ
157:名無しの海賊団 ID:8b/JD5BsL
脳の半分肉でできてそう
158:名無しの海賊団 ID:9zAYYeysZ
身体は肉でできている──────
159:名無しの海賊団 ID:3UEY+Q36y
>>157
>>158
普通じゃん
160:名無しの海賊団 ID:dlsVcY2L5
まあしばらくは原作通りかな
161:名無しの海賊団 ID:nVdhkqhyZ
宴やって風呂入って
夜逃げがどうなるか
162:名無しの海賊団 ID:V8ZJ0sg2d
他に何か原作とは違うところある?
163:名無しの海賊団 ID:2DZn+uaQ7
まあ結果は同じだしそんなバタフライエフェクトないだろ
164:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
>>162
ロビンいる
165:名無しの海賊団 ID:DkEURBdNi
は?
166:名無しの海賊団 ID:UkFAbjM5g
は?
167:名無しの海賊団 ID:9JWk02jDD
え
168:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
だからもうロビンいる
169:名無しの海賊団 ID:Lgly7Ia7p
>>168
二回も書かなくていいよ
170:名無しの海賊団 ID:3Jzx8hC6J
(あ、修羅場じゃん)
171:名無しの海賊団 ID:Qe3DHsdhG
ビビとバチバチや
ファイッ!
172:名無しの海賊団 ID:8aBh+iHN9
イッチ何したの
173:名無しの海賊団 ID:qvk0qiA4w
いいから安価させろえ!!!!
◆◆◆◆◆
大型のカジノが立地するレインベース。
港町のナノハナから離れていても、国内外から様々な人が行き交って日々喧騒に溢れている歓楽街。この砂漠の中、澄み渡っているように見えるサンドラ河の支川がまさにこの街の豊かさの象徴だ。その下には──────獰猛なワニが血に飢えているとも知らずに。
そこに現れた、クロコダイルの打倒を目的とした麦わらの一味と王女ビビの御一行。
それをスモーカー率いる海軍が追いかける。
紛れて王女ビビ並びに麦わらの一味を狙う
三者三様、互いに思惑が絡みあうこの日の歓楽街は、いつもよりあらゆる意味で賑やかであった。
俯瞰すると、まさにこの日のレインベースはアラバスタで起きようとしていた事件の縮図があったと言えるだろう。
そんな人々の“うねり”から外れたところにも、別の思惑が進もうとしていた。
ミス・オールサンデー。真の名をニコ・ロビン。
彼女もまた
歴史を知りたい。
言葉にすれば簡単なはずの、たったそれだけの夢のために彼女はこの計画に加担していた。
世界政府が必死に隠そうとする「空白の100年」──────それを紐解くために必要な“
その「歴史が記された石」のもとへ連れて行く。
代わりに、そこに記されているはずの“古代兵器”の在り処を教える。
それが、Mr.0──────クロコダイルと交わされた密約であった。
彼女自身は利権やら古代兵器そのものには興味はない。無論、そんな危険なものをクロコダイルのような野心溢れる海賊の手に渡すつもりもない。
何年も共に過ごしたからこそわかる。
律儀に約束通り事が進んだとしても、用が済んだロビンは始末されることは容易に想像がついた。
だからこそ、彼女にはクロコダイルに対抗するための秘策が必要だった。
いつものように、裏切るために。
服に忍ばせた、砂人間の弱点である水。
それだけでは心もとないため、ロビンは彼が水と同等に警戒する“覇気”という力に目をつけた。
こうして偶然を装い、他のエージェントよりも先に“覇気使いの少年”と接触したのもこのため。
裏社会で生き抜いた術を如何なく発揮し、クロコダイルを出し抜こうとしていた。
『取引だ。ニコ・ロビン』
予想外であったのは、ハジメと呼ばれた少年もまたロビンと同じ狙いがあったということか。
まるで彼女の意図を察したかのように、王女たちを先に行かせて分断させた彼は、今までの余裕のなさが嘘のように表情が切り替わる。
ユートピア計画の全貌。
古代兵器の存在。
そして、ロビンの目的は“
彼の口から語られたことは全て的中していた。
能力で拘束し、生殺与奪の権利を握っているはずなのに、ロビンは冷や汗を止められない。
なるほど、これはクロコダイルが恐れるのも無理はない。
この数年間かけて組み立てた計画を見通しており、かつそれを一気に覆す算段を、彼は持っていたのだから。
『こちらの味方をしてくれるなら、代わりに君が望むはずの条件を三つ差し出すよ』
両腕を天に掲げアルファベットの“Y”の形を象ったポーズをさせながらも、ハジメは構わず話を進める。まるで鳳凰の翼を幻視してしまうような、命乞いにしては華麗で堂々とした佇まい。
こちらが脅迫する側のはず。では、ここまで彼を余裕とした表情にさせるものの正体は一体何だというのだ。
『ひとつは、この国の“
彼の国家転覆“転覆”計画の中には、『国王の救出』がある。
たとえ途中でクロコダイルの計画が頓挫しても、国王を助けた立場を利用して、アラバスタにある“
ぽっと出のルーキーと王下七武海。
どちらについていけば“
ハジメ本人としても、そんなことになる前にクロコダイルとともに“
故に、彼は自分の立場を優先していいと譲歩した。
計画破綻に伴うリスクケア……そう考えてようやくロビンの利になる条件であった。
条件としては、弱いと言わざるを得ない。
その分、次に提示された条件の衝撃が重くなった。
『次に、俺が知る他の“
『っ!』
それはロビンにとって喉から手が出るほど望むものであった。
……一瞬、靡きかけた心を落ち着かせる。
ロビンでさえ、この長い逃亡生活で見つけられたのは極僅か。果たしてそれは信用に足るものなのか怪しい。いや、急に二人称が変わったのはそう言い切れる自信のあらわれだろうか。
『それが確証足り得る証拠はあるのかしら?』
『この場で提示しろって言われると厳しいけど……どれも四皇がナワバリにしていることが多少の裏付けにはなるんじゃないかな?』
もう半分答えを言っているようなものか、と笑いながら腕を頭の後ろで交差させながらキメ顔を作っていた。
……なるほど、確かにこれは交渉の余地はある。
いや、既にアラバスタ以外の手がかりを失っている彼女としては、たとえデマでも飛びつかざるを得ない。もしここで死なせてしまえば、夢を叶えるための大きなチャンスを逃すことになる。
こうして、ロビンは交渉のテーブルに座るしかなくなってしまった。
この手の交渉をする場合、最後に提示される条件は決まって前に挙げられたものより勝るもののはず。
二つ目で満腹感に襲われているというのに、さらに勝る条件などあるだろうか。
『最後の条件は──────』
それは、逃亡生活に疲れ果てたロビンにとっては何よりも優しく、甘美に聞こえるものだった。
『……』
『何か不満とかあった?』
『……私にとって条件が良すぎるわ』
明らかにロビンが享受するメリットが多い。
故に、どうしても裏があるのか勘繰ってしまうのは無理もないだろう。ロビンは裏切った数も多ければ、裏切られた数もまた多いのだから。
『いや始末されるかされないかの瀬戸際にいる以上は出し惜しみなんてしてる余裕ないでしょ』
しれっと、そう口にするハジメは膝を直角に曲げ、空気椅子の要領で腰を落としていた。手はなぜか何かの“印”を結んでいる。
ここでようやくロビンは、今まで能力を無意識に働かせていたことに気がつく。決して彼がふざけているわけではなく、ただ毅然とした態度で必死に命乞いをしていたわけだ。
どうやら交渉のテーブルに座っていると思っていたのはロビンだけだったらしい。
少し考え込む仕草をした後、彼はさらに衝撃的なことを口にする。
僅かに抱いた肩透かしは、ここで吹き飛ばされた。
『それと、うーん……境遇が似ているから、かな? 俺も故郷が無くなった身だからさ、つい他人のように思──────も゛お゛っ!』
『あら、ごめんなさい』
つい、鼻に指を差し込んでしまった。
声だけは冷静でいられただろうか。
元より“
なぜオハラのことを知っているのか。
なぜ政府が必死に隠す“
しかし、そんなことよりも先立つ感情がある。
故郷がなくなった。
こんなことを言われて、他ならぬ彼女が動揺せずにはいられないだろう。
……ここでようやくロビンは一息つく。
これ以上、独り相撲をさせられても不毛だと割り切ることにした。
『お互い、詮索しない方が良さそうね』
『う゛ん、ば、
兎角、交渉は成立した。
ロビンはハジメの死を偽装し、裏から“麦わらの一味”を支援する。
代わりにハジメは、クロコダイルの計画を破綻させた上でロビンにアラバスタの“
おあつらえ向きにできた殺害の証拠になりそうな鼻血まみれのストールを、能力で生やした手で持ちながらレインディナーズへと踵を返す。
その後、一度敗北したルフィを救出したり、やり過ぎな程に活躍したハジメに内心焦ったりしたのだが、さして語ることでもない。
アルバーナにやってきた後、“
さらにクロコダイルに始末される前に船長であるルフィが決着をつけてくれた。
過程はどうあれ、全て彼の思惑通りに着地した。
幾回か悩んだものの、彼女は最後まで麦わらの一味の味方を続けた甲斐はあった。
あとは、目覚めたハジメから“
改めて考えると、クロコダイルが過度に警戒するだけある恐ろしい少年だ。
ニコ・ロビンという女が“
『クロコダイルが倒されたら──────君を仲間に迎えよう』
それは、居場所だった。
『おめでとう。君の長い逃亡生活は“
久しく見ていなかった、純粋に他人の幸せを祝福する笑顔。
似ていないはずなのに、今は亡き友の面影を見て、彼女は信じてみてもいいと思ったのだから。
そして、戦いを終えて何日か経った今。
「やだ」
「うおおおおお~~~~ん!!
どうしてだよォォ~~~~!!」
多分、あの時見えた面影は気のせいだった。
なぜかハジメは船長に泣きついていたから。
こうなったのはルフィが三日間の眠りから目覚めた直後から始まる。顔面と左腕以外、全身包帯で巻かれたハジメがあることを口にした途端にこれである。
「怪我なら肉食えば治るだろ!」
「それはルフィだけだよ。チョニキの前で医学否定しないの」
「酒飲んでりゃ治るだろ」
「ゾロまで乗らないでね。話がややこしくなるから」
仕切り直そうと咳払いをするハジメ。
そんな軽い動作でも激痛が走るのか、顔をしかめながらひとつひとつ言葉を並べる。
「よし、もう一回説明するからちゃんと聞いてね。チョッパー、俺の怪我が治るのはいつくらいになる?」
「……少なく見積もって2年。リハビリを含めると2年と半年は欲しいぞ」
「よしありがとう──────そんな長い間、船に寝たきりのやつを抱える余裕はうちにはないよね? だから俺はここで置いていくしかない。オーケー?」
「怪我治しながら旅続けりゃいいだろ! こっちには船医がいるんだぞ!」
「すごくイヤそうだなルフィ……」
ルフィを知る者としては、意外と論理的な反論が返ってきたことに驚くかもしれない。
確かに、彼らが船医を仲間にしたのは、旅を続けられるようにするためなのだから。
「それを他ならぬ船医が反対してるんだよ」
ルフィの視線がチョッパーに向く。
見たことないほどの不満顔に一瞬後退りしてしまうが、それでもチョッパーは己の職務を忠実に果たす。
「ルフィには悪いけど、おれは許可できない。皆とも話し合った結果なんだ」
続いて、ルフィの視線が周囲の仲間たち皆に移る。
彼らも心情は船長と同じなのは表情から察せられる。しかし、こればかりは飲むしかない事情があった。
口火を切ったのはサンジだった。
タバコに火をつけながら諭すように言葉を紡ぐ。
「気がつかないか、ルフィ。今回の戦いで、俺たちもそれなりに怪我をした。今はある程度は動ける状態になってるだろ?」
「ウソップなんか全身包帯巻くレベルの重傷だったのよね」
「おう! どっかの誰かが敵のモグラババアの腰痛治しちまったからな!」
「いやほんとごめんて……」
モグラ、となると思い浮かぶのはミス・メリークリスマス。
捕えたコブラ王を見張っていた彼女は、ハジメの不意打ちによりMr.4とともに崖から突き落とされた。
どうやらその際、当たりどころが
長年悩まされた腰痛が嘘のように消え去り、ハイテンションになった彼女はウソップを文字通り擦り切れるまで引き摺りまわしたとのことだ。
幸い、相方のMr.4が消耗していたおかげで辛くも勝利を掴むことができたようだが、苦戦を強いられたウソップの外傷は見ていられないほどに痛々しいものだった。
しかし、この二日三日で包帯の面積はみるみる小さくなり、今ではサンジとともに買い出しに行ける程に回復している。少し根には持っているが。
二人の怪我は単純に比較はできない。しかしそれでも、同じく包帯を全身に巻かれてベッドで寝ているハジメの問題を浮き彫りにしていた。
「ハジメは擦り傷ひとつ、治るのが遅いんだよ。おれ達はもちろん、この国……いや、もしかしたら
「……」
チョッパーの言葉に、ルフィは唖然としてしまう。
無理もない。他の仲間も同じ反応をしたのだから。
人間、誰だって必要以上の怪我はしたくないもの。痛いのは嫌だから。それはルフィだって例外ではない。ゴム人間になってからも祖父からの拳骨は変わらず痛いままだからこそ、彼の祖父に対する畏怖は相変わらず存在している。
しかし、ハジメは怪我の治りが遅い。
怪我は治らなければ痛いまま。
……つまり、彼は他の
きっと、アーロンの手下にやられた傷も、寒中水泳でできた霜焼けも、ずっと痛かったのだろう。それを一切顔に出さなかった彼を称えるべきか、それとも気がつかなかったことを悔やむべきなのか。
仲間である彼らの心境は複雑という言葉につきる。
「あー、じゃあ俺がいくら鍛えても強くならないのってそれが理由のひとつなのか」
「かもしれない。筋肉は筋繊維の破壊と再生を繰り返して鍛えられるものだから。治りが遅いなら、育つのも遅くなる。そして、
「難儀な体質だよねぇ」
言いにくそうにしていたチョッパーの代わりに、ハジメは自ら感想を述べた。口ぶりからして本人もあまり自覚がなかったようだ。
それでも本能的に察していたのか、これまでの旅でも、ハジメは極力怪我をしないように立ち回っていたのだろう。
加えて、その本能的な感知能力もまた、問題を起こしていた。
「ついでに覇気が使えなくなったのもあるね。限界を超えて使いすぎた反動かな」
「改めて考えると、あの能力って本当に便利よね……使えなくなるの、本当に痛手だわ……」
誰よりも恩恵を与っていたナミが頭を抱える。
航海術だけではカバーできない海王類や海賊の接近も感知できる彼の“覇気”は、これまでの旅でも相当助けられてきた。
ここまで説明すればわかるだろう。
──────これからの旅、ハジメはついていける状態ではないのだ。
「というわけで、俺は少なくとも怪我が治るまではアラバスタを出られないし、寝たきりでも役に立つ術がない。それに、海賊王を目指す以上、これからの旅はもっと過酷になるのは間違いない。だからこのまま置いていくしかない。わかった?」
「……やだ! 怪我なんて肉食えば治るだろ!」
「会話がループする〜」
「無敵か?」
何度か説得を試みても、究極の護身を身に着けたルフィにはびくともしない。
この均衡がいつまで続くのか、互いに息を呑む接戦が続く。
それを破るのは、空気を読めない虫の声。
ぐぅ。
耐えかねたルフィの腹から悲鳴があがる。
「……腹減った! とりあえずメシにしよう!」
「確かに」
「待て待て待てェ!
まだ話さないといけないことあるだろ!」
さすが最初期の仲間故か、今までの言い合いがなかったことのようにけろっと切り替わる。
だがそれは許されない、とばかりにウソップからのツッコミが入った。
「なんだウソップ? おれ三日分のメシ食うんだよ」
「そうだぞー、宴会は待ってくれないぞー」
「そうね、他に話すことあったかしら長鼻君?」
「お前だよ!」
ビシ、と指差す先。
楽しそうだなーと少し離れたところで成り行きを見守っていたニコ・ロビンがいた。
忘れてたのか、ハジメからようやく彼女がここにいる成り行きをルフィへ説明した。
──────このまま仲間になるということも含めて。
「なんかハジメが話してたみてェだけど、こいつ元
「いいぞ」
「「いいの!?」」
「ハジメもビビの父ちゃんも助けてくれたんだ。おれも色々助けてもらったし、悪ィやつじゃねえよ」
事実、ルフィはクロコダイルとの初戦後、流砂に閉じ込められた際に助けられている。その際にハジメの無事と、交した取引の内容を教えられていた。
ルフィにとって、この話はもはや事後の確認でしかなかった。
無論、それだけで納得できない者もいる。
ゾロはあえて中立の立場を取っているが、反対しているウソップとナミの意思は曲がらない。
何より、一番因縁が深い彼女の意向を聞く必要がある。
「ビビはどうなの? 嫌じゃないの?」
ビビの心境は決して晴れやかなものではないはず。
なにせ、自国を存亡の危機にまで追いやった組織の実質的なナンバー2だ。レインディナーズでもあそこまで感情を顕にして殺そうとした女が船に乗るなんて、到底許すことなぞ──────
「ううん、特に何も」
「ビビ!?」
けろっと、何事もないように言い切った。
「だって、ハジメくんとルフィさんが大丈夫って言ってるんだから大丈夫よ」
「この二人に対する信頼が厚すぎね? 割とこいつら適当だぞ?」
「ン俺は美人が増えるのは大歓迎どぅわーーーーーーい♡♡♡♡♡♡♡」
「お前はそうだろうな」
賛成4人、反対2人。
多数決で決めるわけではないが、船長が認めた以上はロビンの加入はもはや確定事項なのだ。
後に、疑ってかかっていたナミは宝で懐柔され、ウソップも同様に絆されていくのだが、それはまた先の話。
◆◆◆◆◆
王宮内の大食堂では宴が繰り広げられた。
彼らにとって宴は好き勝手飲み食いして騒ぐこと。
王族の気品やテーブルマナーなんて知ったことか。
どんちゃんどんちゃん。
とても荘厳な王宮では出てこないような音は、やがて呆気にとられていた衛兵すら巻き込んだ無礼講の行事へと発展した。
しかし、それを羨ましく眺める者もいる。
「これが……地獄……!」
この男、ハジメである。
砂漠超えをしていた時よりも死人に近い表情で、ギチギチと歯を鳴らしていた。
「ならなぜ運ばせた」
「俺抜きで宴会とか許さねェ……!」
駄々をこねるから仕方なく連れてきたはずのイガラムが理不尽な怒りをぶつけられて困惑していた。
彼の覇気が本調子であれば、容赦なく覇王色の覇気が滲み出ていたことだろう。これには同じくベッドを運んであげていたツメゲリ部隊も苦笑いを浮かべるばかり。
こんなのに国は救われたのか……と一瞬思ったのも束の間、どこからともなく腕が伸びてきた。
「オラ! 肉食えハジメ! 肉食わねェと治らねェぞ!」
「もがががが……」
無理矢理骨付き肉をハジメの口の中に放り込むルフィ。一応、彼の腕には点滴がつけられているので食事の必要はない。しかしルフィにそんなものは通用しない。
肉を食えば治る。
民間療法もビックリなトンデモ持論だが、実際ルフィ自身が治っているのが質が悪い。
彼は善意十割で次々と肉を押し込んでいく。しかし、それは一味にとっては衝撃的なことのようで──────
「「「ルフィが……肉を分けてる!?」」」
「そこに驚くのか!?」
「ルフィさんも食べながらだけど……」
ビビの指摘通り、ルフィの頬はリスのように膨れっぱなしだ。
全身ゴム人間だから飯が沢山入るのだ。
だが、それがゴム人間以外にできるはずもなし。
同じ量を突っ込むのは明らかに無謀だ。
「うおおおおおお!!!!
ゴムゴムのォ、肉乱打ゥ〜~!!!!」
「…………よし」
「やめろルフィ! 肉詰め込みすぎてハジメが呼吸できてねェ! ゾロも笑顔で酒樽持ってくるなよ!」
変身したチョッパーがへばりついたルフィを引き剥し、ゾロへと投げつける。
一息ついたところで振り向くと、ベッドからハジメの姿が消えていた。
「おい、ハジメーー! なに起き上がろうとしてんだ!! 絶対安静だって言ってんだろォーー!!」
「げほっ、おえっ……いくぞカルー、今こそあの超大作を見せつけてやろうぜ……!
俺が、俺達がっ! “世界の中心”になるンだよ……!」
「クェ……」
「カルーも『アホだろ』って言ってるぞ! 頼むから寝てくれェェェ!」
「あいつ宴会になった途端IQ3くらいになるよな」
「チョッパーが心労で倒れるぞ。そろそろ止めてやれよアホ三人」
無理矢理手足を拘束されたハジメは悔し涙を流す。
俺は弱い、と無力感に苛まれそうになった時──────
先程の死人顔を作り、痛みに耐えながら背筋をピンと伸ばす。
「ミイラのマネ」
「「あっひゃっひゃっひゃっ!!!」」
ウケた。主にルフィとウソップ。
これはいけると瞬間的に判断したハジメはある方向に目配せする。
「で、そしてこれが墓地に保管されている先々々々々代前くらいのアラバスタ国王のマネ」
「な……貴様、よくも国王様の御前でそのような……!」
「うむ、不敬! ぶはっはっはっはっは!!!! ひーっ! ひーっ……!」
「おい国王コノヤロウ」
砂漠ならではのミイラコンボが思ったよりウケた。
しれっと頭から指が生えて王冠のようになり、完成度を上げてくれたおかげか。
アイコンタクトでロビンへ感謝を捧げたハジメと、同じくウインクで返すロビンであった。
えんもたけなわ。
そんな宴もお開きになり、誰もいなくなった大部屋。
しん、と静まり返った部屋からガリガリという音だけが響く。
……他の皆は風呂で疲れを癒やしているところだろうか。
本来雨季にしか使っていない大浴場を特別に使わせてくれると聞いた彼らは一斉にこの部屋から出ていった。
この部屋には、動けないハジメ一人しかいない。
黙々と、彼は白紙のノートにペンを走らせていた。
船を降りる以上、今までハジメがやっていた仕事は誰かに引き継ぐ必要がある。
とはいえ、所詮内容は雑用。決して常にハジメだけがやっているわけではなく、日頃から分担してやっていることに過ぎない。
わざわざ残す必要はないと思うが……念には念を。
これから仲間になる者たちにも役立つだろうと、彼はマニュアルのような記録を残そうとしていた。
書くスピードははっきり言って遅い。
利き腕が不自由なせいもあるが──────
「前が見えねェ」
タコ殴りにされた顔で視界が狭いことが一番厄介だ。ハジメが風呂に入れないことを悔しく思い、サンジに
完全に自業自得なので文句は言えない。
不思議と痛みと腫れはどんどん引いていっている。どうやら回復が遅い体質でも“愛のある拳”は外傷に含まれないらしい。
……なるほど、どうりで今まで気づかなかったわけだ、と一人で納得している。
不意に、部屋の扉が開いた。
つい先程までスキップしながら大浴場へ向かっていたはずのコブラがやってきていた。
「あれ、王様。一緒に風呂行ったんじゃないの?」
「いや、私もこの後に行く。その前にやることがあってな」
「?」
首を傾げるハジメの隣に腰を下ろす。
そしてそのまま、深く頭を下げた。
「──────ありがとう。君のおかげで、我が国は救われた」
……ああそうか。
それは本来、大浴場で口にする言葉のはず。
きっとイガラムがいればそんな簡単に頭を下げるなとか言うのだろう。
だから、わざわざそれを言うために一人でここに立ち寄ってくれたのか、とハジメは筆を止めた。
「別に俺は大したことはしてないよ。クロコダイルは当然だけど、
倒せたと思ったミス・メリークリスマスのコンビも倒しきれず、結局生きていたわけだ。
結局、倒せたのはリトルガーデンでのMr.5くらいか。
あれも充分大金星ではあるが、下っ端ひとりすら倒せていないのは変わりない。他の
「……何も、敵と戦って倒すことが全てではないはずだ」
しかしそれは他ならぬ救われた王から否定された。
彼がいなければ、私は命がなかったかもしれない。
彼がいなければ、もっと内乱は止められないほどに過激なものとなり、多数の死者がでたかもしれない。
コブラたちアラバスタ国民からしたら、クロコダイルを倒した船長たちも称えるべきであろうが、身を張って犠牲を最小限にしてくれた彼に、一体どれだけ感謝を捧げればいいのだろうか。
奇しくも、チャカとコーザ、ツメゲリ部隊も同じことを口にしていた。
故に、国王が
「これ以上、我が国の大恩人を貶さないでやってくれ」
為政者としても、一国民としても、この少年の偉業を貶す者をコブラは誰も許さない。たとえそれが本人であったとしても。
その目は真剣そのもの。彼から発せられる覇気にハジメは息を飲む。
腫れが引いた顔の口元から苦笑いが浮かぶ。
随分重く受け止められたものだ、と困っていた。
色々と持ち上げれられたが、結局彼がここまでやったのは私欲のためなのだから居心地が悪い。
……この場合、何か対価を要求した方が変に拗れずに済みそうか。
そう考えたハジメは海賊らしく条件を提示してみることにする。
「ならひとつお願いがあるんだけど」
「なんだ」
まずは軽いものを。
飲み物を一杯奢ってほしい程度の調子で言ってみた。
「マスク・ド・アラバスタ……
公式キャラクター化しない?」
「それだけは勘弁してくれ」
「なんで!?!?!!!?」
とてつもなくイヤそうな顔で却下された。
体の痛みを忘れてしまうほど大きな声で反応してしまう。
適当にノリで考えたキャラクターでも、ここまで露骨に嫌悪されるとさすがに傷つくハジメ。
むしろこの国王こそ性格的に便乗してもおかしくないはずなのに、どうしてここまで頑なに拒否するのか理解が追いつかなかった。
「り、理由を聞いても……?」
「クロコダイルを英雄視しすぎたせいでここまで好き勝手されたのに、また新しいヒーローを奉り上げる……今回の件の被害者たちからどう思われる?」
「うん、この国学習しないなってなるよね」
こちらの考えが浅はかだったと反省するハジメ。
真っ当な為政者なのは頭で理解したつもりであったが、ここまで正論で返されるともはや何も言えない。
「仕方ない……なら国王非公認の公式キャラクターとしてグッズを売り出すか……」
「もはや公式の意味がわからなくなるな」
マスク・ド・アラバスタが国から認められるのはいつになることだろうか。
まあ個人的には嫌いではない、と言ってくれたので少し救われた気になる。
そういったフォローを欠かさないあたり、この国王は本当に人ができているなとハジメは改めて思う。
……こうなればもはや遠慮はいらないか。
彼は意を決して素直な欲求を口にすることにした。
「じゃあ、この国で水源が豊富で暑すぎなくて虫とか少なくて、都市に近くて陽当たりがいい物件とか紹介してくれない?」
かつて娘にも同じことを言ったが、彼女からは曖昧な回答しか返ってこなかった。内乱でそれどころではないのだから仕方ないだろう。
当然、内乱抜きにしても無理を言っていることは彼自身も自覚している。この世界にゾロの頭のような緑色のキャラクターがマスコットをしている検索ツールなぞないのだから。
しかし、現国王であればあるいはそんな都合の良い場所を知っているかもしれない、と。
今こそその願いを聞き届けてくれたらいいなと思って、ハジメは切り出した。
「本気か?」
そんな淡い期待を胸に聞いてみたのだが、今度は目を丸くしていた。
マスク・ド・アラバスタの件とは別にイヤそうではないにせよ、困惑が先立っているように思えた。
「え、ま、まあ。高望みしすぎだったり?」
「……考えてみよう」
「?」
そう言い残してコブラは去っていった。
「……しまった。別のことを話せばよかったかな」
ハジメの胸中に困惑と不安が募る。
娘の時とは違った反応。父は果たしてどんな感情を抱いたのだろうか。
こういう時、見聞色の覇気が使えればいいのに。
今の彼には、航海中のように相手の感情の機微を上手く察することができない。
便利な力に頼りきっていたことを自省しながら、彼は再びノート作成へと取り掛かる。
字が二割増し汚くなったのは、失敗を忘れたい気持ちの顕れだろうか。
夜もすっかりふけてしまった。
あれだけ慌ただしかった王宮も、すっかり静まり返ってしまった。
もうここに、麦わらの一味はいない。
船長が目覚めた以上、もはや長居する必要はないからだ。時間をかければかけるほど、海軍の包囲は強固になると考えればタイミングは今夜しかないだろう。
椅子に座りながら月夜に照らされる街を眺めるビビ。
この王宮に残ったのは彼女と──────ハジメだった。
『いやだ!!!
ハジメは連れていくぞ!!!』
『ほら行くぞルフィ! いつまでも愚図ってんじゃねぇ!』
『ビビ! 絶対来いよ! ハジメも連れて来い!
いや、二人とも今来い!』
『はいはい。じゃあね、皆。
朝、調子良かったら見送りにいくから』
これが完全なお別れではないにせよ、随分と締まらない去り方だった。
……ビビは彼らが去った窓をぼうと眺める。
ハジメもカルーも、既に眠ってしまった。あれだけ騒いだのだから無理もないか。
未だに悩んでいるのは彼女だけ。
このまま王女を続けるのか。それとも海賊を続けるか。
クロコダイルから痛手を受けたアラバスタ国内はこれから大変になる。これから王女として必要とされる機会は多くなる。それは苦ではないし、むしろとても誇らしいことだ。
だが、これから大変なのは麦わらの一味も同じ。自分がどれだけ役に立てるかはわからないが、彼らとともに冒険することはきっと……未知に溢れたとても楽しいものとなるだろう。
どちらが大切かなんて到底選べないその答えを、
ビビはあと十時間で決めなければならない。
『残念だけど、俺は口出しできないよ。それは誰かに強制されることない、ビビ自身が“自由”に決めることだ。
大丈夫。どんな選択をしても、俺はビビの意志を尊重する』
枕元で眠る彼の額を撫でる。
いつもなら明確な答えを出してくれる彼も、今回ばかりは口を閉ざした。
……こういう時に言ってくれれば、こちらも勇気を出して踏み出せたのに。
「本当、ずるいんだから」
数時間前まで埃が被っていた本を手に、部屋を後にする。
目当ての人物は既に向こうから来てくれていた。
「お父様、大切な話があるの」
「奇遇だな。私も話があった」
親子の密話は闇夜が連れ去っていく。
さあ──────王女の立志式は目の前だ。
・ ハジメ(イッチ)
絶対船降りるマン。スレ主のくせに浮上すらできないスレ主の屑。
故意的に重症を負って下船しようとしている……というのはスレ民の主観。実際は「海に出ると死んでしまう病」的な仮病をでっち上げて治療のために降りようとしていたため、この状況は全くの偶然。
ルフィに話す前、チョッパーから予め聞かされた時は『え、俺そんな病弱キャラなん?』と素直に驚いていた。顔芸はスレ民フィルター。
覇気も使えなくなっているのも本当。これも偶然。見聞色も働いていない。通常の彼がクソボケ人であれば、今の彼は伝説の超クソボケ人状態。
コブラにもバッドコミュニケーションしてしまったかもと少し焦っているし、裏で思惑がコソコソ動いている輩がいても全く気がつかない。コソコソ何をやっている!
まあ好都合なので旅を続けられないと診断されたのを全力で便乗する。思惑通り一味の皆は彼を置いていったが、いざぽつんと独りになったせいか、アルバーナかレインベースあたりに居を構えてゆっくり余生を過ごしたい気持ちとは裏腹に、どこかで『これでいいのか』と思う気持ちもなくはない。
心が二つある〜。
・ スレ民
一体いつから全員がリアルタイムで状況把握ができると錯覚していた?
どうやっても安価をさせられない状況を知ったため、もはや成り行きを見守ることしかできなくて悶絶している。
・ ルフィ
絶対船降ろさないマン。突き動かされるようにハジメの下船を阻止するが、実力行使は普通に仲間たちに止められ、超カルガモ部隊に引きずられながらメリー号のもとへ運ばれる。
旅を続けるのは難しいことは頭では理解している。しかしそれで納得するかは話は別。
なぜなら、まだちゃんと答えを聞かされていないから。
・ ビビ
虐待おじさんをコテンパンにしてくれたルフィとイッチに全幅すぎる信頼を向けるウーマン。特にリアクションをしていなかったが、しれっと仲間になろうとしたロビンとは一悶着があった模様。事件解決直後のため、流石に何もないというわけはいなかった。
ただ境遇やら何やら腹を割って話した結果、互いに落とし所は見つかったため、ルフィが起きる頃には原作通り『貴方たちほどの人が言うなら……』という形で落ち着いた。
余談だが、女湯覗く云々のくだりで何やら意味深な反応を返したようだが、肝心の伝説の超クソボケ人状態の彼はナミにボコボコにされて気づかなかったらしい。
後、宮殿の中に埃まみれの書物を持って父親のもとへ。
・ ニコ・ロビン
境遇的にイッチとシンパシーを感じてしまってもおかしくはない28歳児ウーマン。気持ち悪いほど色々と見通しているイッチだが、藪蛇案件だと察した彼女は追及は控えた。
交渉の流れでどうしてもコブラなど一部の人間から過去を知られてしまったものの、結果的には和解の機会を得られた。
イッチが残したあの言葉を真に理解するのはエニエス・ロビー編までお預け。例の宣戦布告シーンで少しだけ今回の回想が入ったらいいナ(記憶の刷り込み)
・ コブラ王
謎マスク公式キャラクター絶対認めないマン。決してイッチのことをクロコダイルと同じとは見ていないが、心眼の足りない国民から『どう見えるか』と言う観点から公式化は断固拒否する。
原作ならビビから一方的に大切な話をするはずが、どうやら彼からも話すことがあるようで……?
・ イガラム
一方、自室でスヤァしている。嫌な夢を見た模様。
どうなっても知らんぞ。
・ ダークライ
あんこくポケモン。あくタイプ。
いつも たたかいに まきこまれて みつどもえにされる かなしい ポケモン。
なにもしらない おとこのひと と きょうえんも させられているが こんかいは おやすみ。
よかったね。
次回、最終回。
イッチの運命やいかに。
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ハジメ登場
船の上での雑用の仕事は多岐にわたる。
航海士など専門的な知識が必要なことはできないが、裏を返せば“専門性のないものは”何でもやる必要があるということだ。
甲板の清掃やら備品の確認や点検などは当然、少数精鋭の“麦わらの一味”では他の役割を担う者をフォローする必要もある。
それ故か、メリー号の上では一人でいることは殆どなかった。
少々ノスタルジックな気分になっているせいか、つい最近味わったばかりの走馬灯のように思い出が想起される。
『“鷹の目”の剣のこと? ああ、あれは向こうも切る気なかっただけだよ。まぐれまぐれ』
『嘘つけ。お前のその黒くなるやつに秘密があるんだろ』
『まあ、これは旅を続けていれば嫌でも覚えるやつだし……』
ゾロと一緒に船の夜番をしている時。
大抵酒を酌み交わしてアホな会話をしているか、覇気について教えろとせがんでくるのを躱すことばかりしていた。
正直教えた方が戦力アップに繋がるからいいとも思ったが、そもそも一朝一夕で身につくものでもないし、変に先入観を持たれても本格的に教わる時に困ると思ってざっくりとしか説明しないことにしている。
勿体ぶるなとか言われても、やはり物事には順序というものはある。変に先取りしても自分のような歪な存在ができあがると考えると、どうしても教える気にはなれない。まずは鉄を切れるようになってからにしようと酒を渡して何度乗り切ったことか。
これからどこまでも強くなるのだから焦らなくていい。つい頼られていることに嬉しさが勢い余って教えそうになってしまうハジメだったが、こればかりは口を閉ざし続けた。
バラティエでの死闘。
あの瞬間、井の中の蛙が現実を知った。
己の夢への道のりは果てしなく遠いこと。
『──────あああああああ!!!!!』
そして、薄れゆく意識の中に聞こえた仲間の悲鳴。
目を閉じる寸前、霞む視界に見えた、仲間が
幻覚か、それとも夢かと思われたその光景が事実だと他の仲間から知らされた時。ゾロは悟った。
少なくとも、あの力がないと鷹の目と戦う土俵にすら立てないのだと。
故に、ずっとハジメのことを観察していた。
見て盗もうとしたが、肝心の本人が戦いに向いていないことから中々見る機会がなかったし、何より見ただけで身につけられるような代物でもなかった。
痺れを切らしたゾロは直接聞いてみたが、結局はぐらかされるばかり。強さを求めるのに貪欲な彼ならば、しつこく問い詰めて聞き出そうとするはずだろう。
『……まァいいか』
けれど、彼はそれ以上の追求はしなかった。
ルフィの仲間になった順番なんて誤差の範囲内だろうが、ゾロとハジメは誰よりも共に過ごしてきた仲間。
意味もなく黙ることはしないとわかっていたからこそ、彼はハジメの意図を察することができた。
ローグタウンで、ルフィがバギーに処刑されそうになった時、誰もが慌てて駆けつけようとする中、ハジメだけは退路の確保を優先していた。
そして、雷が落ちた時も特に驚くことなく自分たちを誘導する。
一見、淡白な反応に見えるが、ゾロにはまた違った見方で見えた。
『“三代目鬼徹”に“雪走”か。譲ってくれた店主さん、きっと大物になるね』
ハジメはただ、心の底から信じているのだ。
ルフィが海賊王になることを。
そして──────ゾロも世界一の大剣豪になることを。
『別に俺も
『そんな涎垂らしながら言われても説得力ないわよ……大体、アンタなら何でも武器にできるじゃない。今更必要あるの?』
『いやだってそんなおもしれー宴会グッ──────んん、武器があれば色々できそうだし』
『ちょっと待って今すごい不穏な言葉聞こえたんだけど!? その“俺わかってますよ”みたいなのやめなさいってば!』
ナミとはこんな話もしたか。
ベポではないが、見聞色で“歩くソナー”と化していたため、おそらく皆の中で一番会話したのはナミかもしれない。
八割方業務上の会話なのだが、サンジから変なヘイトが向いていたのは理不尽極まりないと何度思ったことか。
自分がいなくなるのが痛手と言っていたが、こんなものに頼ってばかりでは前に進めないだろう。
危険は増えるが、その分仲間も増えるのだから心配はいらないはず。強く生きてほしい。
それはそれとして“
別にあれを使えば数百万ベリー稼げるとか本当に思っていない。
『ま、アンタがいてくれればいいわ。いざって時はフォローお願いね♪』
ろくに戦えないのに前に出る──────が、その時は決まって大丈夫な時。
そんな安心感があるが、時々暴走する彼を、どこか手のかかる弟のように見るようになったのはいつからだったか。
心当たりがあるとするならば、それはアーロンパークの後か。
事の顛末を仲間から聞くと、彼はルフィの次に魚人たちに立ち向かってくれたと聞く。本当は真っ先に殴り込みたい気持ちを、船長の顔を立てるために耐えてくれたのだろう。自惚れかもしれないが、という注釈をつけるものの、ナミとしてはそう考えていた。
当の本人は誰も倒せなかったとか気にしているようだが、ナミにとっては関係ない。
──────どうしようもなく悔しくてたまらない時、弱いのに立ち上がってくれたことに、彼女は救われたのだから。
『いや別に全然
『前ナミにも言ってたよな』
そんなことを創造主にも口にしたことがあった。
ドラム王国上陸前、ワポルに食べられたメリー号は少なくない損傷を受けていた。
これはアラバスタへ向かっていながら、優先順位的に後回しにしていた部分を修理するべく二人でトンカチを振いながら駄弁っていた時のこと。
『メリーもだいぶ傷んできたねぇ』
『確かにな。でもこいつはまだまだ走れる。俺は船大工じゃねぇけど、できる限りのことはやってやりてぇんだ』
『……ウソップのそういうところ、本当に尊敬するよ』
まごうことない本心から出た言葉だ。
嘘はつくし、怖がりだし、すぐ逃げるし。
それでも、いざという時は仲間のために立ち向かえるのが彼だ。
いつだって彼を卑下しているのは彼自身だけ。
そのことにいい加減気づけと思ったことは数え切れない。
『な、なんだよ急に。褒めたって何も──────』
『ところで俺は
『未練タラタラだなおい』
いつか、嘘を交えないで本当に自分を誇れるようになって欲しい。たとえ離れていても応援している。
それはそれとして本当に天候棒は欲しくない。欲しくない。
『へへ、いつかお前にもすごいの作ってやるから大人しく待ってろ。このキャプテン、ウソップに任せておけ!』
鏡を見ているようだった。
勝てない相手にも見栄を張るし、不思議な力を持っていてもルフィたちのようにデタラメな戦闘能力があるわけでもない。むしろ、自分よりも弱いとウソップですら思っていた。
境遇として近しいものがある。
だからこそ、窮地で彼が胸を張っている時は自分も堂々としていなければという気持ちが湧いてきた。アーロンパークで魚人幹部にも臆せず戦えたのも、そのおかげだと思っている。
隣でトンカチを指にぶつけそうになっている彼を横目に、ウソップはぼんやりと考えていた。
きっと、双子の兄弟がいたらこんな感じなのだろう──────と。
『どうして……俺はこんなところで寝てるんだよぉ……!』
『……今回ばかりはお前に同情する。きっと、俺がお前の立場だったら泣き喚いているよ』
いじけていると、真っ先に励ましてくれるのがサンジだったりする。
レディ優先で野郎に対してはぶっきらぼうでも、しれっと間食を作ってくれたり、賄いと言いながら少し豪華な料理を作ってくれたり、その優しさは誰にだって向けられている。
アラバスタでも同じだ。
戦いが終わった後、風呂に入れないことを残念がっていると──────
『……俺の“夢”を、お前に預けるッ』
『……ああ、確かに受け取った。
お前の分まで──────女湯覗いちゃうもんね~~♡♡♡』
『サンジくん? 何か言った?』
『何も言ってますぇん♡ ハジメのバカが女湯覗きたいとか言ってましたぁ♡』
『こ、この糞眉ゥーーーー!!!』
──────やっぱ知らんわ。
裏切り者には二年間オカマに追われ続ける呪いをかけておくことにした。
楽しみにしておけよ。
『まあいい薬になるだろ』
サンジもまた、ずっとやきもきしていた。
一見同志を売ったクズのように見えるかもしれないが、船の上であれだけ見せつけられていた彼の気持ちもわかってほしい。
そして、彼はいつだって乙女の味方だ。
決して
ふと、煙草を吹かしながら考えることがある。
……こうしてアラバスタの問題が解決し、縛るものがなくなった彼女は、果たしてどんな選択をするだろうか。
件のクソ羨ましい男もこの船旅で短くない間を過ごした仲。食い意地全開の船長を抑えて冷蔵庫の備蓄を共に守ったことは数知れず。
皿洗いからの卒業はまだまだでも、時に紳士の会話に付き合える彼ならばギリギリ、ほんの気持ち程度の僅差で許すことができそうだ。
『よし、ハジメの分まで楽しんでやるかァ!!!!』
──────まあ女湯は覗くが。
目がハートなのはご愛嬌か。
なおこの後痛い目を見るのを彼は知らない。
『なあ、ハジメは何で船降りようとしてるんだ?』
ふと、チョッパーからそんなことを聞かれたことを思い出した。
『あれ、チョッパーが来てからそんな真似してたっけ?』
『皆から聞いたんだ。
『ゆるしてください』
『なんでおれ、質問しただけなのに謝られてるんだ???』
つい反射的に謝ってしまった。
このままではチョッパーすらも降船反対勢の仲間入りを果たしてしまう、と思うと体が勝手に動いてしまっていた。
ナミ、ウソップ、チョッパー。
“最弱トリオ”よりも更に弱いのがハジメという男。
戦力的なヒエラルキーの最下層に位置する彼は逆らえない。フィジカルで完全に負けてしまっている以上、もう肉食動物に囲まれているリスも同然なのだ。
冗談はさておき、と頭を下げながらどう乗り切るか思考を巡らせる。
確かにチョッパーからしたら疑問に思うのは無理もない。まだ仲間になってから一週間も経っていないのだから。
『……実は持病の“船に乗り続けたら死ぬ病”があってだな』
『ウソップも似たようなこと言ってたなそれ!?』
『嘘です。すみません』
駄目だった。
この時期のチョッパーは何を言っても信じそう、と失礼なことを考えていたことが、ハジメを再び甲板に額を擦り付ける姿勢にさせる。
しかも船医として診察してくれようとするチョッパー。
こんな献身的にされては兄貴と呼ばざるを得ない。
『…………?』
それはそれとして、ハジメは問診をしていた時のチョッパーの表情が印象に残っていた。
既にハジメの体質について違和感を覚えていたのか。
チョニキという渾名に何かしら思うところがあったのか。
それとも、つい溢れた独り言を聞いていたのだろうか。
『
◆◆◆◆◆
「え、あれ?」
目を開けると、曇りガラス越しのようなピントのあっていない景色。何度か瞬きすると、果てが見えない水平線が続く。
波が岩場にぶつかる音がいい気付けになったようで、すっかり目が覚めてしまった。
「あー、そっか、気絶していたのか」
朝になって、ツメゲリ部隊の四人の力を借りてここまでやってきたことを思い出す。
ロビンから譲り受けた高速ワニでここまでやってきたのはいいが、あの重力は怪我人には堪える。
眠っていたというよりは、気絶していたと称する方が正しいか。おかげで久しぶりではない走馬灯を見てしまった。
……ここ数日で何度死に掛ければいいのだろう。
改めて、己の弱さに苦笑いが出てくるハジメだった。
「ちょっと早めに来ちゃったかー」
さて、ここに来るまでルフィたちは海軍を振り切らなければならない。
さすがに懸賞金一億超えの海賊となると、対する海軍も将官クラスの人間が平気で出てくる。ここではスモーカーの同期の“黒檻のヒナ”がメリー号に鉄の杭を放つことで大きなダメージを与えてくる厄介な存在と記憶している。
それなりに時間がかかるはずなので、しばらく重力で痛んだ怪我を労ろうとしたのだが。
「おーーーーーーーーーーーーい!!!」
「あれ、思ったより早いな?」
誰だと疑う余地もない、ルフィの声が聞こえた。
その方向には正真正銘のメリー号。本来なら側面に鉄の杭を打たれた後の傷があちこちにあるはず。
だが、見ればその数は二つあるくらいか。
想定より早い上に、損傷も少ない。
唯一無事な左腕を挙げて返事するとともに、自分の知らない何かがあったのかと考えを巡らせると──────甲板にいるロビンと目があった。
なるほど、確かに彼女なら距離が離れていても干渉できる能力がある。海軍側もさすがに想定外だったために出し抜くことは容易になったのか。
決して全て狙ったわけではないにせよ、自分の選択が良い方向に働いてくれたことに安堵する。
追ってくるはずの海軍もまだ姿を現していない。
今が千載一遇のチャンスというわけだ。
さて、あとはこの特等席でビビの答えを聞くとしよう。
と思ったのだが。
「え゛」
いつの間にか、ベッドの側面に見覚えがありすぎるゴム腕が。
ルフィがメリーの船頭から腕を伸ばしてきていた。
「捕まえたぞ~! 乗れ~!」
「待て待て待て待て!」
反射的に左腕が何かに捕まろうとするも、手の届く範囲はベッドの骨組みしかない。
しかしそれを掴んだとしてもベッド自体が動いているために意味を成さない。
悲しいかな、絶対安静の患者に抵抗する術は何もない。
この期に及んで、まだ連れて行こうとしている!
内心、ハジメはかなり焦っていた。
呆れる暇すら与えられない。その往生際の悪さは敵にだけ向けてほしい。
ベッドが宙に浮き、万事休すかと思われたその時だった。
「ふん!!」
「ツメゲリ部隊の皆!」
ここまで共に来た戦友の四人が、それぞれベッドの足を掴んで引き止める。
「ぐぎぎぎぎぎぎ……!」
「我ら四人がかりで互角とは……」
こちらはごつごつとした岩場。
あちらは揺れるものの、慣れ親しんだ船の上。
足場での有利はあれど、二倍以上の体格差がある男四人に一歩も引かないルフィの馬鹿力には誰もが戦慄を覚える。
「おいルフィ、やめろって!」
「ハジメだって困ってるでしょ!」
「困ってるのはおれもだ! お前らも手伝え!」
ウソップとナミが止めに入る。
しかし船長は言うことを聞かない。
この程度で引き下がるようであれば、彼はあの強大な敵であったクロコダイルを倒すことなぞできていないはずだ。
……しかし、聞き捨てならない言葉が聞こえた。
──────
困らせている元凶が何を口にしている。
さすがにハジメも黙っていられなくなった。
「もういいよ! 頼むから離してくれ!」
つい、大声が出てしまう。
「いい加減わかれよ! 俺は皆と行けないんだって! 怪我してるし、覇気も使えないし──────どう考えても、俺はお前たちの重荷にしかならない!」
だって、道理に合わないだろう。
ゾロのように特別強いわけでもない。
ナミのように卓越した航海術があるわけでもない。
ウソップのように百発百中の狙撃能力があるわけでもない。
サンジのように料理が得意なわけでもない。
チョッパーのように皆を治せる医術もない。
ロビンのように誰にも読めない文字を読める知恵もない。
何一つ役に立たないやつを乗せて何になる?
せめてもの、と考えてやっていた雑用すらも怪我で満足にできない。
ほら──────こんなの居る価値ないだろう。
いや、怪我なんてあってもなくても関係ない。
初めから自分はただの
「いいから! さっさと行けよ!」
「うるせェ!!!」
そんな
「行けない理由は散々聞いた! おれが聞きたいのはそんな話じゃねェよ!」
ルフィだって旅を続けることが難しいことなんてわかっている。
平行線なのは当たり前だろう。
そもそも、ルフィが聞きたいことはそんなことではなかったから。
「
結局はこれに尽きる。
できるできないの話ではなく、やりたいかやりたくないかの話。
できないなら、できる方法を皆で考える。
それが──────仲間というものなのだから。
「俺は……!」
ハジメも、ルフィの性格はわかっている。しかし、面と向かって聞かれたことは初めての経験だった。
さて、ここが平行線であった彼らが交わる瞬間だ。
……ここで一緒に行きたくない、と言えば諦めてくれるだろう。
『バジメ゛……だずげごぼぼぼぼ……』
『メリーの船首ってそんな安定しないんだから気をつけてよもー。ゾロ、縄投げるから引っ張るの手伝ってー』
『ぐがー……』
『起きろマリモォ!』
『いでっ!?』
脳裏に浮かぶのはこれまでの船路。
降りようとしていながら、随分と遠くまで来た気がする。
『おいハジメ! この料理うめェぞ!』
『うん、それ俺が注文した料理なんだけど』
『……泣くな。俺のわけてやるから』
『ありがとうウソップン……』
振り回されっぱなしでも、泣きそうになっても。
いつでも手を伸ばしてくれる仲間がいる。
ああ、なんて安心できることだろうか。
『
『ああ、色々考えたんだけどな。やっぱ必要だろ──────音楽家!』
『アホかお前』
『うん、必要だよね。音楽家』
『お前も乗るなハジメ!』
『こいつ多分宴会のことしか考えてないぞ』
たった数ヶ月のはずなのに、記憶が溢れてくる。
どれも楽しかった。心の底から弾むものがあった。
それに嘘をつくことは、今までの船路全てを否定することを意味する。
そんな真似が──────できるわけがないだろう。
「お前たちと一緒に居たかったよ……!」
もう駄目だ。
ココヤシ村では口を閉ざされていて出なかった言葉が出てしまった。
顔に巻かれた包帯が湿っていく。
みっともない姿をしているためか、背後から息を呑む音が聞こえる。
けれどもう無理だ。
ずっと思っていた感情が吹き出て来て止まらない。
「楽しかったんだよ。心の底から笑えるようになったんだ」
あの日、故郷が燃えた。
次は光に包まれて、跡形もなくなくなった。
一度死んだ経験があるからこそ、己は毎日死んでもおかしくない身として生きてきた。昇る朝日が、あの光のように見えて何度驚いてしまったことか。
酒場を転々として生きてきた時もそうだ。
他人を笑わせても──────果たして自分が上手く笑っていられたのかわからなかった。
ただ、これまでの旅の中での自分は間違いなく笑っていられた。自分が識っているものは勿論、それに外れた日常の一幕も全て刺激に溢れたものだったから。
「だったら来いよ! おれはお前と冒険してェ!」
ルフィはメリー号の船首で足を踏ん張る。
この先、何をやろうとしているかは未来が視えなくてもわかる。きっとツメゲリ部隊の隙をついて、釣り竿のように引っ張り上げるつもりだろう。
このまま流されて、途中で後悔して、それでもやはり楽しいからいいか、なんて考えに至る。
ハジメが辿ってきた“お決まり”の流れだ。
「やだよ」
「おわっ!?」
なら、尚更振り払わないといけない。
唯一自由に動くことができる左腕で伸ばした手を弾いた。
突然の衝撃に思わずルフィは力を緩めてしまう。
勢い余ったツメゲリ部隊の力によってベッドは上空に放り出されてしまうが──────運良く元の形に着地する。
綱引きは、縄が切れてしまえば成立しないのだ。
「なんで……」
「一緒に居たいのも、足手まといになりたくないのも本心なんだよ」
「だから、足手まといとか関係ねェって!」
“おれには強くなんかなくたって、一緒にいてほしい仲間がいる”
いつかルフィが口にする言葉の通り、彼が仲間に求めることは強さや役割ではない。
ここまでハジメを引き止めるのがその証左。
ただ、そのために寿命を削るような戦いをする船長の背中を見て、その仲間はどんな気持ちになる?
それに続くように先を行く他の仲間たちを見て、どんな気持ちになる?
頼りがいがあるのは確かだ。けれど、それ以上に──────
「今のままだと俺が“
「!?」
おそらくルフィが最上級に嫌う言葉の一つ。
ほら、ショックのあまり言われた側の顎が外れそうになっている。
少しだけ胸が空いた気分になるが、まだルフィは諦めない。頬を叩いて意識を切り替えた。
「でもよォ! お前の夢はどうすんだ!
“安住の地”はこの先にあるかもしれないだろ!」
「俺はアラバスタを“安住の地”にする!」
実際にやってきて、トトのような人々と触れ合って──────何より、王女であるビビと共に旅をして、この国の良さは仲間全員が理解していた。
見つける、ではなく、する。
そう口にした彼はここをより良い国にするという覚悟を示していた。
双子岬でハジメが「そこまでついていく」と言った時からどうやって海に連れ出そうか考えていたが、他ならぬ彼が“夢の到達点”としてしまった以上は何も言えない。
海賊王や大剣豪、勇敢なる海の戦士。
他の仲間たちだって、到達点を決めるのはいつだって自分自身なのだから。
では、夢を叶えた後はどうするのか。
どうするも何も、もうハジメの自由。
ならば、こんな約束を交わしてもいいだろう。
「だけど……もし怪我が治って、それでも俺が必要なら行ってやるから!」
起き上がらないはずの上体を起こす。
息を吸って、ここ一番の声で、高らかに宣言した。
「それまで先行ってろ!!!
──────
その瞬間、時間が止まったように音が消えた。
ローグタウンの時とはえらく違う。
風も、海での戦闘の音も止まり、ここにいる何もかもが彼の言葉を聞いていたようだった。
「……絶対来いよ! 待ってるからな!」
同じく、ここ一番の大声で返すルフィ。
目元に涙を浮かべながらも“ししし”と笑っているのを見て、ハジメも笑顔で返す。
そう、いつだって別れは互いに笑っているべきだ。
いつか再び逢えると、安心できるから。
「ごめん。先に色々言っちゃった。言い出しづらくしちゃった?」
まだ以前ほど人の気配は感じられないハジメ。
それでも背後にいる者たちには、見聞色なんて必要ない。
「ううん、そんなことない」
「クエ」
王女としての装いを正したビビと、彼女をここまで送り届けてきたカルー。
いつの間にかツメゲリ部隊の四人が黙って遥か背後に後ろで控えはじめた時から察していた。
優しい返事をしてくれた一人と一匹。
……みっともない姿を見せたとか、この一連の流れで大声を聞いた海軍の軍艦が来てしまったとか。
様々な理由を込めた謝罪だったのだが、言わぬが花ということにしたハジメは口を閉じる。
さて──────この後はビビの番だ。
『私、一緒に行けません!』
電伝虫を通じて、国中に王女の声が響き渡る。
この一件を締めくくる、彼女の決意表明だ。
ハジメは目を閉じて、しっかり聞き届けることにした。
『冒険はまだしたいけど、私はやっぱりこの国と──────』
◆◆◆◆◆
突然だが、ここで前日の夜に時を遡ろう。
麦わらの一味が超カルガモ隊とともにメリー号へ向かっている最中、ビビと父のコブラは机を挟んで座っていた。
パタン、と本が閉じられる。
コブラは娘から渡された書物を読み終え、そのまま差し出した。
『なるほど、これが彼の力の正体か』
表紙は既に色褪せて読み取れない。
ずっとずっと昔、それこそビビが生まれる前からあったとされる本に書かれたそれは、この世界に生きる者誰もが持っていながら、それを自在に操る者の記録。
覇気──────それは意志の力。
時にそれはあらゆるものの気配を捉え。
時にそれは不可視の鎧を纏うように固くなる。
また、時にそれは戦わずして有象無象を蹴散らす威圧を放つ。
とある国では“流桜”とも呼ばれるそれは、偉大なる航路後半の海で戦士たちが身に着けている潜在能力。
極めた者は、寸前の未来を視せるものでもあった。
アラバスタ王国の王族は元々は天竜人に連なる存在故か、そんな情報も書庫の奥深くに眠っている。
ビビが掘り起こしたそれは確かに、今までの彼の行動を理由付ける“答え”が載っていた。
ただし、全てではなかったが。
『それでも、彼の──────ハジメくんの覇気は常軌を逸している』
これまでの旅の様子を静かに語るビビ。
糸だろうとストールだろうと、彼が握るそれは何でも武器になった。
陸や海にいようと、彼には危険がどこから迫るのか手に取るようにわかっていた。
このアラバスタの騒動も、終息のために必要な要所を的確に抑える立ち回りを見せた──────数秒先よりも、
極めつけには、クロコダイルに放った最後の一撃。
物理法則すら反するそれは文献にすら載っていない“果て”に至っていることを理解させるものだった。
彼がなぜそんな力を身に着けているかは知らない。
文献の中には、“窮地や敗北を乗り越える際に強くなる”なんて記述も確認された。
……故郷を失い、お世辞にも強いと言えない彼。
そんな中で生き残るために、
そんな環境下にいたのだろうと思うと、つい胸元の服を握る力が強くなる。
しかし、それは今抑えるべきだ。
この話の本題はここからなのだから。
『だから、彼がここに居てくれればアラバスタにとっても大きなメリットになるわ』
ビビが提案したのは、ハジメのアラバスタ王国の定住だった。
こと政治において覇気の力がどれほど優位に立てるかは言うまでもない。
それを抜きにしても、民衆や軍を率いるカリスマ性があることも此度の一件で証明されている。
……何やら変な仮面や歌を歌っていたようだが。面白そうなのでもし機会があったら今度見せてもらおうと思っている。
閑話休題。
とにかく、本人が望んでいることもあり、これはチャンスだとビビは父に告げた。
今は怪我と反動で満足に動けないが、上手くいけばこの国の復興……ひいては発展に大きく貢献できると説く。
『……ふっ』
『お父様?』
不意に、コブラが笑いだした。
腹を抱え、涙を浮かべてもいる。
自分は変なことを口にしたのだろうか。
至って真面目な話をしているのだから、笑うのは彼が宴会芸をしている時にして欲しい。
諌めようとする前に、コブラが掌を突き出した。
『いや何、成長したと思ったが、やはりまだまだ子どもだな。建前をつくるのはいいが、私を前に政治を言い訳にするのはお前らしくない』
『? な、なにがかしら???』
そんなコブラの言葉に、ビビはぎこちなく首を傾げる。
幼い頃はやんちゃをしていたビビだったが、彼女は既に大人になった王女。感情の隠し方や腹芸なんてお手の物だ。
イガラムの助力もありながらだったが、彼女は秘密結社で二年もスパイを続けて来ている。それが何よりの証拠だろう。
……しかし、そんなものは肉親には通用しないようで、
『はっきり言いなさい。
──────彼を好いているんだろう?』
こんな風に満面の笑顔で、看破されてしまうものだ。
『~~~~~っ!』
『はっはっはっは! 照れながら不満そうにするのは母さんそっくりだなぁ!』
『パパのばかっ!』
取り繕う余裕もなくなるほどに赤面させたビビによって、国王は扉ごと吹き飛ばされることになる。
もう彼女は野盗に襲われても返り討ちにできる力を持っている。
しかしこの瞬間は年相応の──────女の子であった。
◆◆◆◆◆
さて、時を戻そう。
そんな夜を経た彼女は、笑顔のままおもむろに少年の左腕を手に取る。
先程の彼のように、高らかに宣言する。
『───この人が、大好きだから!!!』
この場にいる誰もが錯覚しただろう。
国中が、揺れた──────と。
『だから、行けません!』
そのままぎゅっと腕を組むビビ。
件の少年の方をちらりと視線を向ける。
「!?!????!?!??!?!!?」
驚愕のあまり、この世の終わりのような顔をしていた。
無理もない。ハジメが識っていた未来にそんな言葉はなかった。いやそもそも、彼自身、そんなことを言われる自覚すらなかったのだから。
「へぇ、やっぱ強ェ女だな、あいつ」
「やだ、ビビったら大胆!」
「ようやくかよ! おーい、恥かかすんじゃねぇぞ、ハジメ!」
「なんだ? 何でみんなそんな盛り上がってんだ?」
「フフ……貴方にもいつかわかるわ」
沸き立つメリー号。
大慌てをするツメゲリ部隊、あとカルー。
三者三様の反応が返ってくる。
「……そっか!」
「こいつ本当にわかってんのか?」
中には淡白な反応をする者もいれば、
「俺は一体……何を見せられているんだ?」
「お前はそうだろうな」
わかっていても怨念が滲み出る者もいた。
『私は、ここに残るけど!!
いつかまた会えたら──────もう一度仲間と呼んでくれますか!?!?!?』
余韻に浸る暇もないまま、メリー号はそのまま海へと突き進む。言葉はいらず、ただ仲間の証を掲げて去っていった。
「出港だーー!!!!」
さあ、麦わらの一味の旅は終わらない。
海賊王へと至る道は、この大海原のようにまだまだ先まで続いているのだから。
かくして、ビビの冒険はここで区切りをつけられた。
彼らを見届けたビビはようやく隣で固まっている少年へと向き合う。
「……で、どう?」
「え……えっ?」
「だから、返事!」
間抜けな声が返ってくるが、ビビとしても余裕はない。
何せ、国民全員を前に告白したようなものだ。
彼女の覚悟を推量ることなぞ、この世の誰ができようか。
「あの……コーザくんは?」
「なんでそこでコーザが出てくるの?」
「???????」
そしてなぜそこでまた驚くのかわからない。
片や国の王女、片や反乱軍のリーダー。
確かに構図としてはラブロマンスのようなものがあるとロマンチックに映ることだろう。
けれど、当人同士は大切な幼馴染と思っているだけだ。
きっとコーザがここにいれば「お転婆なところをなおしてから来い」なんて言われて、そのまま取っ組み合いになっていることだろう。
「あ、あばばばばばばばばばば…………」
「あ、逃げた!」
ベッドで震え始めるハジメ。
彼は略奪を嫌う。恋人や夫婦の仲は特に。
勝手に二人を“そういう仲”もしくは“そこまでは行っていないけど互いに想い合っている”と思い込んでいたハジメは、自身が間男になってしまったと思ってしまい──────とうとう脳が破壊されてしまった。
……全く、女の子がここまで勇気を出したと言うのだから、最低限の甲斐性は見せてほしい。
そうは思っても、ついつい微笑ましく思ってしまうのだから、どうしようもない。
「あのー、ビビ様」
「ひゃっ!?」
危うく二人の世界に閉じこもってしまうところだったビビから間抜けな声が出てしまった。
声をかけたのはツメゲリ部隊の一人。
ドッドッ、と高鳴る胸を抑えながら振り向く。
「あ、ご、ごめんなさい。居心地悪くしちゃったかしら」
「いえ、まあ……我々も彼なら異存はありませんが……イガラム隊長はこのことは?」
今頃、ビビの代わりに王宮で変装しているイガラム。
もはや第二の親と言っても過言ではない彼。コブラ王を除けば、この一件で間違いなく荒れると思われる以上、当然話を通しているものだと彼らは考えていた。
「? 特に何も?」
しかし、王女ここで痛恨のミス。
あの夜でグッスリと眠っていたイガラムを起こすのは忍びなかったことや、長年共にしていたための安心感が、つい事後報告で大丈夫という意識を働かせてしまっていた。
ツメゲリ部隊、一同は互いに視線を合わせる。
カルーもその輪に混ざったその光景はまさに異質と言えよう。
「隊長……黙っていませんね……」
「マ、マ゛マ゛マ゛マ゛マ゛…………」
その言葉は見事的中しており。
同時刻、首都アルバーナでは女装したイガラムの脳が破壊されていた。
「イガラム隊長が泡吹いて倒れたぞ!?」
「誰だ! あんなクソ羨ま……不届者は!」
国民もまた浮足立つ。
王国史上──────最も荒れた告別式はこうして幕を閉じた。
一難去ってまた一難。
アラバスタ王国は当分この嵐の海の上を走り続けることだろう。しかし、灯台のように光を灯す者がいれば、この先どのような苦難があったとしても進んでいけるはずだ。
これは、一人の迷い子が拠り所を見つけた物語──────その旅路はこれからも続いていく。
351:イッチ◆oV+OwtFfi ID:CE2EJigoS
???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????
352:名無しの海賊団 ID:pVc8DQvBd
あ、イッチだ!
353:名無しの海賊団 ID:F6UqrowNM
来たか、イッチ
354:名無しの海賊団 ID:W1jrPyqfx
イッチ! 見聞色は使えないはずじゃ……
355:一般通過初心者 ID:jl7O8V4pS
これで俺は御役御免だな
一般スレ民に戻るわ
楽しかったからまあいいじゃないか
356:名無しの海賊団 ID:yNP0/WBYA
>>355
おつ
357:名無しの海賊団 ID:4cXM2RZFz
>>355
シャンクス、ありがとうございました
358:名無しの海賊団 ID:tGpMGXZDG
>>355
よくやったよお前
359:名無しの海賊団 ID:NVjPwvDog
>>354
あまりのショックで叩き起こされたのか
360:名無しの海賊団 ID:iMor5azAR
>>355
褒美に安価をする権利をやろう
361:名無しの海賊団 ID:Zi5z4qOe4
で、感想は?
362:名無しの海賊団 ID:8nejUbfpn
お気持ち表明してみろ! オラ!
363:イッチ◆oV+OwtFfi ID:CE2EJigoS
なんで???
こんなクソザコナメクジ好きになる要素なくない??????
364:名無しの海賊団 ID:plUooIQaH
>>363
お前本気で言ってるの?
365:名無しの海賊団 ID:+G1l9iBhA
>>363
うーんこの朴念仁
366:名無しの海賊団 ID:8AYB9AxTj
>>363
前スレでタマノコシコシ言ってたやつとは思えんな
367:名無しの海賊団 ID:PIbMZ30z0
>>363
リトルガーデンの時といいアラバスタの時といい二度も窮地救われればねぇ
368:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
>>367
さらにルフィにあれだけボロクソ言われた理想論を身を削ってまで叶えてくれた男だし
どう考えてもスパダリです本当に
369:名無しの海賊団 ID:bhpZzegu0
てか何でコーザとデキてるって思っていたのかが謎
370:イッチ◆oV+OwtFfi ID:CE2EJigoS
>>369
だって幼い頃野盗から守ってるし……
エンディングでもあんなに顔ドアップにされてるし……明らかに気があるじゃん
371:名無しの海賊団 ID:iMor5azAR
>>370
イッチも同じことやってるじゃん
しかも相手が王下七武海
372:名無しの海賊団 ID:yVCgS2gD6
>>370
野盗とはレベルが違うんだよなあ
373:名無しの海賊団 ID:xsaeCf4vk
>>370
エンディングに関しては本当に何なんだろうな
イガラムやパッパより画面占有率高いし
374:名無しの海賊団 ID:Z2pbtcakT
見聞色使えるくせになんでこんなクソボケに育ってしまったのか
375:名無しの海賊団 ID:5OPD9+BkU
>>373
トトおじさんと再会した直後なら頭の中一杯になってもおかしくないし(震え声)
376:名無しの海賊団 ID:0nn9TOiVD
ボケボケの実の全身クソボケ人間
大人しく王宮に囲われろ
377:名無しの海賊団 ID:jl7O8V4pS
>>374
まあ過去が過去だし現在も現在だったから自己肯定感ウ○チになってもおかしくないだろう
378:名無しの海賊団 ID:j0W9ThT9e
とにかくこれで安価達成だな
おめでとう
379:名無しの海賊団 ID:eUzaOVwFA
最終的に肉も愛も手に入れたから地味に最初の「一味に言われたやつ全部やる」安価も達成してるし
この安価遂行能力はさすがの一言
380:名無しの海賊団 ID:HyQH+HJbb
危うく一生ネットで笑う者になるところだったな
381:名無しの海賊団 ID:0IzZTdDoa
別に食べたかったら食べてもいいんだよ? (スマイル)
382:名無しの海賊団 ID:5bVjhShdl
(でももしこれで本誌でコーザとくっついたらNTRですね)
383:イッチ◆oV+OwtFfi ID:CE2EJigoS
>>382
うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!1!!!111
384:名無しの海賊団 ID:ymxXkSiHi
よくやった! それはNTRではない! (まだ寝ていないため)
385:名無しの海賊団 ID:1Rdx2acFg
イッチの悲鳴、俺達によく馴染むぜ
386:名無しの海賊団 ID:2YyyuD00F
腹括れよ男子
傍から見たら超羨ましいポジションにいるの忘れんな
387:名無しの海賊団 ID:iggxpWFEd
2年後サンジにボコボコにされても文句言えないぞ
388:名無しの海賊団 ID:ZP3MWSpeZ
よし、じゃあ次の安価だな
389:名無しの海賊団 ID:E4e0aJTxl
はやくしろ
390:名無しの海賊団 ID:y+3xCR++R
見聞色使えるならやれるな
さあ来い
391:名無しの海賊団 ID:VxKx3FnN2
あ
392:名無しの海賊団 ID:vJq8+mTTJ
ん
393:名無しの海賊団 ID:7oPOtYMLn
か
394:名無しの海賊団 ID:RKsBOruuS
し
395:イッチ◆oV+OwtFfi ID:CE2EJigoS
するかバーーーーーーーーーカ!!!!!!
もう安価なんてこりごりだよ!!!!!!!
396:名無しの海賊団 ID:UA4z+k3YZ
うるせェ! やれェ!
397:名無しの海賊団 ID:tGpMGXZDG
ゆるさん
398:名無しの海賊団 ID:E+SAvgpqQ
イッチは俺達のオモチャのチャチャチャ!
399:名無しの海賊団 ID:x4OL/s7sD
ホビホビの実で安価し続けるだけのオモチャにしてやる
400:名無しの海賊団 ID:o1fffP/CQ
最後にひとつだけいいか?
別に安価なくてもイッチの結末変わらなかった説ない?
401:名無しの海賊団 ID:29DtDMf+M
>>400
身も蓋もない話はやめろ
402:名無しの海賊団 ID:vakCHTB13
安価しろえ~
スマイル食べろえ~
403:名無しの海賊団 ID:vvtD8OeV+
イッム様(ニッコリ)
404:名無しの海賊団 ID:jcbJWVv2a
保守
405:名無しの海賊団 ID:DjZitzzUD
ほ
406:名無しの海賊団 ID:gen+cr0UR
ほしゅ
407:名無しの海賊団 ID:px9RqtS+w
ほしゅ
408:名無しの海賊団 ID:C+R07UqMy
来ないか
409:名無しの海賊団 ID:3vTF1/n2m
イッチなら俺の隣で寝てるよ
・ ハジメ(イッチ)
トホホ、もう掲示板はこりごりだよぉ~。
・ スレ民
同じ世界の同じ能力を持った人間かもしれないし、別の生き物かもしれない。
はたまた違う世界から書き込んでいるのかもしれないし、はたまたもっと上の次元から書き込んでいるのかもしれない。
書き込みしている者がわからないからこその“匿名”掲示板。今日も今日とて様々なスレッドが立っていく。
とりあえず、本編はこれで一区切りとなります。
まさか没ネタの供養のつもりがここまで皆様のご愛好を賜われるとは思ってもいませんでした。
あとは何やってもオマケということで何卒。
色々と書きたいことはあるのですがこちらに載せています。よかったら見ていってくださいな。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=289637&uid=130579
最後に、ここまで読んで頂いた皆様、感想や評価、誤字報告をしてくださった皆様に、心よりお礼を申し上げます。
それではまたどこかでお会いしましょう。
麦わらの一味の死亡説は、もはや遠い過去のようだ。
今や五人目の皇帝と呼ばれる大船長へと成り上がり、苦しい戦いを強いられながらも四皇ビッグ・マム海賊団の最高幹部──────シャーロット・カタクリをも下し、もはやその勢いは留まることを知らない。
サウザンドサニー号の上では懸賞金の話題で持ちきりだった。
サンジの懸賞金がゾロを超えて喜んでいたら生みの親の悪名によるものと知り複雑そうにしていたり、ルフィの懸賞金が下がったと思えば桁が一つ増えていたり、と。
そんな男衆を尻目に、ナミはパラパラと新聞を捲る。
紙面もその話題で持ちきりになるかと思えば、最も大々的な特集を組まれている行事があった。
“
各国の王が聖地マリージョアに集まる一大行事。
毎回、何かしらの騒動の渦を生むが、今回は特に注目されている。
何せ、あのリュウグウ王国がおよそ二百年ぶりに出席を表明したのだから。
「あいつ地上に出たのか! 強くなったな、“よわほし”!」
「あんたのおじいちゃんが護衛だったみたいよ。なら安心して出てこれるわね」
「ド、ドクトリーヌ゛ぅ~~!!!」
「へー、まだ生きていたのかあのババァ」
「ウラァ!!!!」
リュウグウ王国だけではない。
各国の王達の写真も載っている。当然、中にはルフィたちが今まで旅で顔なじみとなった者達も沢山いた。ドレスローザ、ドラム王国改めサクラ王国、あと何故かワポルまで。
そして──────
「んビビちょわぃーーーーん♡♡♡♡」
アラバスタ王国もまた出席している。
新聞に映るのは、笑顔で視線を上に向けているビビの姿。
髪を下ろし、ドレスを身にまとう彼女はもう立派な王女だった。
「美しい王女になって~~♡♡♡ 誰の為っへっへ!?♡♡」
無論、サンジなわけもなく。
視線の先は、カメラ目線で変顔をしながらダブルピースをキメている一人の男のため。
華やかな社交界からは明らかに浮いていると言わざるを得ないが、その姿こそ皆が知っているありのままの彼の姿だった。
「「ハジメだァーーーー!!!!!」」
「ハジメかァーーーー!!!!!」
「うっさいアンタら!」
ルフィとチョッパーの瞳が輝き、サンジの全身から炎が燃え盛る。
そして、ナミの両腕がルフィとサンジに降りかかる。
頭から煙を出しながらも、全員の視線は新聞紙に注がれた。
「ししし、あいつ元気そうだ!」
「……本当にね、すっかり背も伸びちゃって」
「ちゃんと大人しくしてくれたから早く治ったみたいだ! 良かっだぁ゛!」
最後に見た姿が包帯グルグル巻のミイラ状態だったのもあり、こうして五体満足で立っている姿を見ると安心する一同。
ナミが口にしたように身長も頭一つ分伸びていることもあるが、いつも下ろしていた黒髪はオールバックにしていることもあり、あどけなさが抜けた大人らしい印象を受ける。
旅をしていた頃、特徴的だった黒目のハイライトの薄さはもう見る影もない。むしろ目元が鋭くなって、紙面上でも“覇気”が増したような気がするくらいだ。
変顔で全て台無しだが。
とにかく、この二年間彼もまた壮健に過ごしていたようだ。
一方、物申しておきたい者もいるようで──────
「俺が二年間あんな目にあったのは全てアイツのせいだ……!」
「さすがに言いがかりがすぎるでしょ……」
「いいやナミさん! あの野郎なら何を知っていてもおかしくねェ!」
こればかりは愛の奴隷たるサンジでも譲らない。
二年間、カマバッカ王国でオカマたちに追われ続けていた時も何度思ったことだろうか。
あいつは砂浜でビビちゃんとキャッキャウフフしているのに、なんで俺はオカマたちとキャッキャウフフしないといけないんだ、と。
まさに天と地。
ジェルマが如き悪い笑みで蔑むハジメを、サンジはずっと幻視していた。
無論、本人はそんな顔は微塵もしていないが。
「チックショーーーー!!! ビビちゃんを幸せにしねェと三枚におろしてやるから覚悟しろコンニャローーーー!!!
あと、ついでに幸せになりやがれクソ皿洗いーーーー!!!!」
「いつにも増して情緒が不安定ねサンジ君……」
先の戦いはそれだけ過去の因縁があったものだったため無理もない。
サニー号からアラバスタへ向けて複雑な感情を滾らせているサンジを他所に、コツコツと軽い足音が聞こえ、床に広げた新聞が持ち上がった。
「なるほど、彼らがハジメさんとビビさんですか」
「そっか、ブルックとキャロットは会ったことねェよな」
「誰なのその人たち? おともだち?」
素朴な疑問を投げかけるキャロット。
友だち。
確かにそうだが、そのとおりと答えるには少し足りない。短くない間、メリー号とともに旅をした彼らのことを指す言葉は、これに決まっている。
「「「「仲間だ(よ)!!!」」」」
ルフィが、ナミが、サンジが、チョッパーが口を揃えた。きっと、ゾロやウソップ、ロビンも同じことを言うだろう。
「ヨホホホホホホ、かなりの慕われようですね」
「ああ、きっと皆も二人と仲良くなれると思うぞ! ししし!」
「それは重畳。特にビビさん、お会いしたら
────パンツ見せてもらえるでしょうか?」
「見せるかァ!」
再びナミの鉄拳が振るわれ、サニー号の甲板は騒ぎたつ。
彼らの近況はバルトロメオがアラバスタに行った時に預かっていた手紙に、そして、
……それでも久しく会えていないためか、少し感傷的になってしまう。
ハジメから貰ったノートを空に掲げる。
業務の引き継ぎとは別に、これから先の冒険について書いたとされていたノート。
どうしようもなく行き詰まった時にだけ読めと言われたもの。
ルフィの性格から絶対に読まないとされたが……エースの処刑後、失意に暮れていたルフィのもとで、とうとう開かれたそれ。
蓋を開けてみれば、冒険のことなんて何一つ書いてなかった。
あったのは前述のやらないといけないことと──────見開き一杯の“仲間”という二文字のみ。
たったそれだけなのに、ルフィにとってはジンベエとともに再起のきっかけをくれた“宝物”になった。
「あいつら、今何してるんだろなぁ……」
ルフィは甲板に寝そべって空を見上げた。
どこまでも続く青天井。
新世界とはいえ、今日も空と海はひとつで繋がっている。
まず、懐かしい顔や新しい顔が見れた。
互いに成長した姿で会えたコビー。
ドルトンやDr.くれは、そして、しらほし姫やレベッカなどのルフィたちに救われた者たち。
また、ワポルやルッチと言った、ルフィに立ちはだかった敵たちも。
途中、天竜人たるチャルロス聖がしらほし姫を奴隷にしようとしていたが、それも同じく天竜人のミョズガルド聖に救われて事無きを得る。
こうなることがわかっていた彼だったが、しらほし姫が怖い思いをするのを黙って見ているのは忍びなかった。
せめてミョズガルド聖が来るまでの時間稼ぎのためにルッチを煽り散らかしてヘイトを稼いでいたのだが……果たしてその甲斐はあったのだろうか。
しかし──────それは彼にはもう確かめようがない。
案の定、世界会議は荒れた。
色々と手を尽してきたが、結局最後まで顛末を見届けられなかったからだ。
彼はずきりと痛む頭に手を添える。
頭を強く打ったためか、記憶が少し飛んでいる。
一時的なものではあると思われるが、彼の体質を鑑みれば元に戻るのは時間がかかってしまうことだろう。
しかし、その中でもはっきり覚えていることはある。
あの日、聖地マリージョアで革命軍が動き出した時。
彼の更に冴え渡った見聞色でも予想しなかった事態が起きた─────────
『リョコウスルナラ、ドコニイキタイ?』
こうしてハジメは実に二年越しの、
「な、なんでェ……?」
上も下も、前も後ろもどこまでも続く青天井。
今日もひとつで繋がっている空を、猛スピードで飛んでいく彼の疑問に答える者は誰もいない。
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