勇者部の恋物語 (りりなの)
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犬吠埼風編
犬吠埼風 1


満開祭りに行ってきてその時に思い付いたネタです。

キャラの口調はアニメを見ながら書いたのですが自信がないのですみません。



 それは運命だったのか必然だったのかそれとも偶然だったのかそれとも最初から出会うことが決められていたのかも知れない。

 

「そこの貴方にぴったしの部活があるわ」

 

 それが犬吠埼風先輩との出会いであった。

 

「あっ、もう入る部活決めているので」

 

 僕は目の前にいる先輩に頭を下げてその場を去ろうとしたら先輩に回り込まれた。

 

「えっと、そろそろ部活の体験に行きたいんですけど」

 

「どこの部活に入るのか教えてもらっていいかな?」

 

 その先輩の顔がすごく怖く僕は本能的に教えてしまった。

 

「バスケ部ですけど、先輩の名前を教えてください」

 

「私は犬吠埼風よ、悪いことは言わないからバスケ部はやめておきなさい」

 

「犬吠埼先輩ですね、助言は有難いのですがこれで失礼します。

それと僕は吉野川遥です」

 

 もう一度、先輩に頭を下げて僕は茫然としている先輩の隣を通り過ぎて僕はバスケ部のある体育館に向かった。

 

side 風

 

 彼との出会いは大赦からの命令であり勇者の一人として私は彼に勧誘を行った。

 

 私はスマホに送られてきた大赦からのメールで彼の顔を教えてもらっている為、彼を探すのは簡単だった。

 

「そこの貴方にぴったしの部活があるわ」

 

 このセリフを言うのは友奈達以来だが初対面の子に言うのは少し恥ずかしい。

 

 彼、吉野川遥はキョトンとした表情でこちらを見て何もなかったように言った。

 

「あっ、もう入る部活決めているので」

 

 吉野川君はそう言って頭を下げて体育館に向かおうとしていた彼の前に回り込んだ。

 

 あれ、大赦からのメールでは彼は入る部活を決めていなかったはずだった。

 

「えっと、そろそろ部活の体験に行きたいんですけど」

 

 吉野川君は困ったような表情をしていたが私はそれどころではなかった。

 

「どこの部活に入るのか教えてもらっていいかな?」

 

 私は心の中で大赦に怒りながら彼に問いただした。

 

 彼は後ろに半歩下がり少し肩をビクつかせて言った。

 

「バスケ部ですけど、先輩の名前を教えてくれませんか」

 

 バスケ部か……同じクラスのゴリラが面白いやつを見っけたって彼の事だったのね。

 

「私は犬吠埼風よ、悪いことは言わないからバスケ部はやめておきなさい」

 

 あの部活にだけは彼を取られるわけにいかない。

 

「犬吠埼先輩ですね、助言は有難いのですがこれで失礼します。

それと僕は吉野川遥です」

 

 彼は茫然としている私に頭を下げて体育館に向かった。

 

 大赦からのメールの内容と彼の性格が全く違っていた、このことは後で大赦に報告しておくことにするが私は吉野川君がどこか私に似ているような感覚がした。

 

side out

 

side 吉野川

 

 僕は周りの人と少し違っている、それは僕には味覚と痛覚がないことこれは数年前に病院で生活していた時に気が付いた。

 

 それともう一つは病院に入る前の記憶がすべてなくなっていることそれは交通事故によるものだと医者に言われた。

 

 そしてその交通事故により親を亡くした僕は父親の祖父に引き取られた。

 

 周りの人間のことを忘れている僕は誰にも迷惑をかけにために大抵のことは自分でしようと決めた。

 

 そして今日もバスケ部の体験入部に顔を出した。

 

「ふぅ、今日も疲れた」

 

 犬吠埼先輩にはやめておけと言われたがそう悪いような部活でもない、それどころか練習は強豪校並みなのかわ知らないが結構ハードだった。

 

 そして僕は帰るために下駄箱に向かうと犬吠埼先輩と鉢合わせした。

 

「どうも、お久しぶりです」

 

 僕は頭を下げて帰ろうとしたが犬吠埼先輩はそんな僕を呼び止めた。

 

「吉野川君待って」

 

 下駄箱には僕以外にも部活の先輩もいる、同じクラスの人もいる。

 

「犬吠埼先輩ここはあれなのでかめやで話しませんか?」

 

 僕は周りの目線を気にしながら言ったらそれに気づいた先輩は顔を赤くしながら頷いた。

 

 そんな先輩を見てドキッとしたのは心の底に閉まっておこうと思った。

 

 僕と先輩はかめやまで話をすることなくうどんを来るのを待っているときに先輩が口を開いた。

 

「吉野川君、よかったら一度だけでもいいから私の部活に来てみない?」

 

 この先輩はまだ部活の勧誘を諦めていなかった。

 

「そうですね行かずに断るのもあれですから一回だけ行かしてもらいます」

 

 そういうと先輩の表情は明るくなった。

 

 なんでかこの先輩のコロコロ変わる表情に惹かれている自分がいるのを知った。

 

 それから店員が持ってきたうどんを目にした先輩の表情がこれまでにないくらいに嬉しそうにしていた。

 

「では、いただきます」

 

 僕は静かにうどんを食べ始める。

 

「吉野川君は静かに食べるわね」

 

 うどんを御代わりした先輩は僕の食べ方に関心するかのように言った。

 

「食べ方は昔からそうだったので」

 

 記憶がないから自分がどのような家庭で育ったのかを知らない。

 

「ということは坊ちゃん育ちなのね!」

 

 犬吠埼先輩は正解だ、みたいに確信した表情をした。

 

「それは僕にも答えられませんがそうだったのかもしれませんね」

 

 先輩は新しいうどんを食べようとしたが箸をおいて静かに言った。

 

「もしかして私、馬鹿にされてる?」

 

 ジト目で見てくるが僕は語るか迷ったがこの人ならいいだろうと思い僕は口を開いた。

 

「実は記憶がないんですよ」

 

 そう言ったら先輩は真剣な顔をした。

 

「昔、交通事故にあったらしいんですがそれが原因で記憶を失くしたらしいです」

 

 なんでこの先輩はこんな嘘かも知れない話をそんな真剣な顔で聞けるんだろう、そしてなんで僕のためにそんな悲しげな顔をしてくれるんだろう。

 

 この先輩と会うのは2回目のはずなのに僕はなんでこんなことを話したんだろう。

 

「まぁ、冗談ですよ」

 

 そう言って僕は薄ら笑いでごまかした。

 

「大丈夫よ、私は信じてあげるから」

 

 その言葉に心が嬉しさを感じた。

 

 彼女なら先輩なら頼ってもいいんじゃないのか、信じてもいいんじゃないのかと僕はこの感情が恋なのだと思ったこれが初恋の感情なのだと知った。

 

 でも、この時僕は知らなかったこれが初恋ではないということを失われた過去に大切な少女を忘れていたことを忘れないともう恋をしないと誓った過去を僕は忘れていたのだから謝らせてほしいあんなにも楽しかった日々を忘れてしまった僕を君を守れなかった僕を君を裏切ってしまったことを許してほしい。

 

 ごめん。



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犬吠埼風 2

やばい、話が浮かんでこないなんで樹ちゃんの話ばかり浮かんでくるんだよ

早く、樹ちゃんをかけと言うことなのか! 神樹様


 僕が勇者部に入部して三ヶ月が経ち今は夏休みの部活動のために家庭科準備室兼勇者部の部室に向かった。

 

「遅れてすみません、吉野川入ります」

 

 僕が部室に入ったら結城さんと東郷さんは部活の助っ人に行っており部室に残っていたのは風先輩だけだった。

 

「連絡送ってるんだから謝らなくていいわよ」

 

 部室にいた風先輩は今日向かう部活であるチアリーディング部の衣装を着ていた。

 

「今から行くんですか」

 

 僕は部室のドアの近くにある机に鞄を置きながら風先輩に話しかけた。

 

「そうそう、遥は剣道部の助っ人頼むわよ」

 

「分かりました。それにしても風先輩、似合ってますね」

 

 僕が微笑みながら言うと風先輩は頬を赤らめた。

 

「あ、ありがとう」

 

 今にでもスマホの撮影機能で取りたいぐらいに似合っていた。

 

「では、僕は遅れると相手に申し訳ないので行きます」

 

 そう言って僕はタオルとスポーツドリンクを持って剣道場に向かった。

 

 そして、僕は剣道部にて男子の嫉妬と言うものがいかに恐ろしいのかを今日一日で知った。

 

「勇者部、吉野川入ります」

 

 そう言って僕が剣道場に入ると男子の皆さんが獲物でも来たかのような目で迎えられた。

 

 するとその集団からいかにも強そうな先輩が出てきた。

 

「今日はすまないな、部長の柏木だ」

 

 そう言って握手を求めてきたので握手すると痛くはないのだが相手が本気で力を入れてきてるのは分かっているが僕は笑顔で先輩に挨拶をした。

 

「今日はお願いします」

 

 僕がそう言うと周りの部員は少しばかり驚いてるのが分かった。

 

 それから部活の内容をこなしてからの実践を入れての練習が始まると僕が部員全員との相対が始まった。

 

 試合内容はここでは省きますが結果的には部長と副部長に接戦したが何とか勝つことができた。

 

「はぁ、はぁ、疲れた」

 

 僕はお面と防具を取り汗を流そうと外にある蛇口に向かい頭から水を浴びる。

 

「はぁ~、大変だった」

 

 僕は水を浴び終わって左手でタオルを探すが見つからず「はい、たおる」と言う風先輩の声が聞こえる方に手を出してタオルを受け取る。

 

「あれ、風先輩も終わったんですか?」

 

 僕は風先輩の声がした方に顔を向けると頬が少し赤い風先輩がたっていた。

 

「休憩よ」

 

 だから、ここに居るのかと自己解決した。

 

「あんまり僕の近くに居たい方がいいですよ」

 

 僕はタオルで顔を拭き終わり首にタオルをかけると風先輩はなんでそんなことを言うのかという顔をしていた。

 

「防具のせいで汗とかがこもって臭いんですよ」

 

 剣道は臭いですからと最後に言うと風先輩は納得した顔になった。

 

「やっぱり、剣道ってそんなに臭うものなの」

 

 さっきまで顔をタオルで拭いていて気づかなかったが風先輩も汗を掻いていて衣装が汗で張り付いていたのを見て僕は顔を赤くして先輩から視線を外した。

 

「どうしたのいきなり顔を赤くしてって……あっ」

 

 先輩は自分の体を両手で抱きながらにらんできた。

 

「お詫びでなんですが放課後にかめやでうどん奢りますよ」

 

「こ、今度の休日に買い物手伝って」

 

「分かりました、午後の練習が始まるので行きますね」

 

 僕はその場を小走りで離れていったがあの時の風先輩の顔が頭の片隅から離れなく午後練に集中できなかった。

 

 それから剣道部の一人がグラウンドでチア部が応援している情報をどこから入手したらしく剣道部のほとんどが剣道所から消えた。

 

 僕もその一人と言いうかクラスメイトに拉致られグランドの片隅で休憩になった。

 

「なんで僕まで」

 

 僕は一応部活の応援で来たのにサボっていいのかと考えていたら。

 

「まぁ、偶にはいいんじゃないのか?」

 

 柏木さんがいつの間にか僕の横に座っていた。

 

「そもそも今回の応援はいらなかったのでは?」

 

 僕は今回の練習に僕がいらないことを問いただしてみると柏木さんは真面目な顔で答えた。

 

「今回の応援は君に対する当てつけだ」

 

「自分の勝手で僕を借りたんですか」

 

「あぁ、君が彼女の近くにいるから」

 

 柏木さんの目線は風先輩に向いている。

 

「好きなんですか」

 

 それを聞いて胸の奥から黒い感情が出てくる。

 

「小学校の時からな」

 

「告白はしようと思わなかったんですか?」

 

「思ったけど、勇気がなくてな……でも決心した」

 

「なら、僕はこれで失礼します」

 

 僕は立ち上がり剣道所に戻り袴を返して勇者部に荷物を取りに戻る最中にグランドを横目で見ると風先輩が楽しそうにしているのが見える。

 

 僕は自然にスマホを撮影モードにして風先輩を撮影していた。

 

 僕は自分がしていることに気が付いてその場を駆け足で去り荷物を取り家に帰宅した。

 

 来週の休日になる前にこの気持ちを整理しないといけない。

 

 僕は彼女を好きになってはいけない。

 

 誰にも迷惑をかけてはいけない。

 

 一人でいないといけないのに……なんで、なんで、風先輩を目で追ってしまうのだろう。

 

 なんで、僕なんかに構ってくれるんだろう。

 

 僕に構ってくれる人間なんていなかったはずなんだ。

 

 でもなんで僕の心は解放されたがっているのだろうか、魂が求めている。

 

 僕は、僕は解放されてもいいのかな?

 

 side out

 

 side 風

 

 あの日から彼、吉野川遥と話をしていない。

 

「勢いで誘ったけど」

 

 そこで風はベットの枕に頭を沈めた。

 

 これって、デートの誘いなのよねと思いながら足をバタつかせる。

 

 なんで私は彼の事を考えるとこんなに意識するのよぉ~

 

 いつから私は彼をこんなにも意識するようになったのだろう? 私は大赦の指示により彼にコンタクトをとった。

 

 それだけだった、勇者の適性が友奈の次に高かった彼を監視する事を大赦から私へのお役目である。

 

 それだけで私は彼に近づき彼の秘密を一つだけ共有した。

 

 そして、彼の表情をたくさん見てきた。

 

 優しすぎる彼はどこか脆いのかもしれないと思い私は彼を……そうなのか、これが恋だったんだ。

 

 私は彼に意識しすぎて自分の感情に気づかなかった。

 

 私、犬吠埼風は吉野川遥に恋をしている。

 

 だが、それが分かったところで今度は彼に会うのが怖くなってきた。

 

 彼は私のことをどう思っているのだろうとそんなことを思いながら私は目を閉じてゆっくりと眠りに入った。



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犬吠埼風 3

今回の話を書くにあたってと言いたいところですが、風先輩の話を書くにあたって作業中に流す曲をすべて内山夕実さんのキャラソンを流しながら書いていたからでしょうか内山夕実さんの声を聴くことが生活の一部になりかけています。

今回の話で折り返し地点なのかな?




 週末の部活が終わり月曜に戻った。

 

「集中できない」

 

 僕はこの前の柏木さんの言葉が頭から離れない。

 

 彼が風先輩に告白をすると考えると他の事が考えられない。

 

 この気持ちが恋なのは知っている。

 

 柏木さんが風先輩に告白する前に行動に移さなければならない。

 

 その前に目の前の授業に集中しなくてはいけない。

 

 side 風

 

 私は今、人生で一番驚いている。

 

「犬吠埼、放課後屋上に来てくれ」

 

 剣道部の部長、柏木君に教室でそう言われた。

 

「へぇ?」

 

 私は突然のことで思考が追い付かない。

 

「じゃ、放課後待ってる」

 

 そう言って柏木君は友人の輪に戻っていった。

 

 なんで私が彼の事で考えているときになんでこんなことになるのよ!

 

 あーもう、こんなことで考えるのは私らしくない覚悟は決まっている。

 

 放課後にすべてを終わらせる。

 

 そんな覚悟を決めて休み時間に彼に会い言われた言葉に唖然としてしまった。

 

「先輩、大切な話があるので放課後屋上に来ていただけませんか」

 

 彼は顔を赤くして言うものだから彼が言いたいことが分かってしまったがそれと同時に柏木君と同じ場所とか最近の告白は屋上が定番なのか!

 

 私がそのことを言う前に彼は走り去ってしまった。

 

 てか、これって告白よね! つまり私と彼はり、両想いなのよね。

 

 どうしよー考えただけ顔が赤くなるのが分かる。

 

 だから私のこの思いを彼に伝える全部、それからうどんを食べに行くんだから。

 

 side out

 

 side 吉野川

 

 休み時間に風先輩に会い要件を述べて逃げてきたけど僕がやろうとしていることはたぶんバレテいるはずだからなにも恐れることはない。

 

 そして放課後、僕はホームルームが終了して屋上に向かう途中で柏木先輩にであった。

 

「先輩、部活はどうしたんですか?」

 

 嫌味に聞こえるように言うと柏木さんはニヤッと笑い。

 

「それはお前もだろ」

 

「では、先輩は屋上になにか用事でもあるんですか?」

 

「あぁ、犬吠埼にな」

 

「へぇ~奇遇ですね僕も風先輩に用事があるんですよ」

 

 この瞬間、二人の思考がシンクロした。

 

「「振られろ」」

 

 二人はお互いを睨み合いながら屋上に向かっていく。

 

 屋上にはまだ、風先輩は来ていないし相手はやる気まんまんだ。

 

「まだ、来てないな」

 

「そのようですね」

 

 二人は学ランを投げ男の戦いがここに始まった。

 

 二人が殴り合いを始めてしまい出るにでれなくなった少女がこの場にいた。

 

 side out

 

 side 風

 

 タイミングを逃してしまった。

 

「どのタイミングで出ようかな」

 

 それにしても2人とも殴り合うということは告白なのよね。

 

 そう思うと顔が熱くなってくる。

 

 遥君は私のことが好きなのよね。

 

 それにしても男子の殴り合いなんて初めて見たけどなんでだろう。

 

 遥君は殴られても痛そうな表情をしないんだろう。

 

 痛みを感じないのだろうか、そう思うとなんだか私の心が痛くなってきた。

 

 彼が殴られるたびに私の心が痛い。

 

 彼の声が聞こえてくる。

 

「僕は風先輩のおかげでかわれた」

 

「風先輩がいたから僕はかわれた」

 

 その言葉は嬉しかった。

 

 初めて会った彼はどこか感情が読みにくい人だと思ったが関わっていくごとに感情が表に出てきた。

 

「だから僕は風先輩に惹かれていった」

 

 私もあなたの色々な顔を見る度に惹かれていった。

 

「だから僕は」

 

 私は

 

「犬吠埼風が」

 

 吉野川遥が

 

「好きなんだ!」

 

 好きになってしまった。

 

 気持ちが同じだと思った矢先の事だった。

 

「そろそろ、出てきてくれませんか風先輩」

 

 私はそんな遥君の声で驚いてしまった。

 

「髪、はみ出してますよ」

 

 そんなことを言われて私は慌てて出る。

 

「い、いつから気付いたのよ」

 

 私は嬉しさと恥ずかしさの両方で顔を赤くして登場した。

 

「殴り合いをしていたらちらちらとこちらを見ている風先輩がいたので」

 

「結構初めの方から気付いてませんか!」

 

 すごく恥ずかしい。

 

「それで風先輩、僕は用事を済ませたんで答えを下さい」

 

「もぉ、私も好きよ! これでいいんでしょ」

 

 そして、遥はにっこり笑った。

 

「はい」

 

 この日をもって私たちは彼氏彼女の関係になったが翌年、私たちにあんなことが起こるとは今はまだわからなかった。

 

 もし、私たちが勇者として選ばれなかったら彼はまだ。

 

 そして、彼の過去に繋がる物語が始まろうとしている。



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犬吠埼風 4

今回は本編に入る前にイチャイチャする話を書いてみました。

話は変わりますが嫁コレの風先輩と友奈ちゃんが可愛すぎて仕事に集中できません!


 夢を見た。

 

 どこか懐かしい昔にあった出来事のような夢だった。

 

「……と誓いをしたのに銀はまた遅刻!?」

 

 そう一人の少女が言うと眼鏡をかけた少年が呆れたように呟く。

 

「はぁ、あのバカ今日もか」

 

 その言葉を聞いた少女が少年に言う。

 

「暁人は遅刻の原因を知っているの?」

 

 暁人と呼ばれた少年は面倒くさいと思いながらも言う。

 

「これは俺から言うことではない本人に聞け須美」

 

 暁人は遅れてくる少女を恨みながら須美を睨む。

 

「なっ、暁人はそれでも銀の―――」

 

 と言いかけた時、遅刻してきた少女がやってきた。

 

「ごめんごめん、お待たせ!」

 

 その瞬間、暁人は瞬時に遅れてきた少女の目の前に行き両の頬を引っ張った。

 

「何がごめんだ銀! 毎回毎回、俺が注意しても治らんのか阿呆」

 

 それを見た須美は自分が怒ろうと思ったがそれ以上に暁人が怒っているのを見て傍観することに決めた。

 

「弟の世話をするのはいいが時間を守ることを忘れるな! それとお前はトラブル体質なのだからそれを考慮して先を見た行動をとらんかぁー」

 

 暁人の大噴火をの中、寝ている少女にも暁人の怒りの矛先が向けられた。

 

「それと、乃木!」

 

 その瞬間、木陰で寝ていた少女が慌てて起きた。

 

「あわわわっ、お母さんごめんなさい!」

 

 それを聞いた暁人はさらに怒りが増した。

 

「だれがお前の母親だぁ! 寝惚けるのもいい加減にしろ! 五分前にここに来るのはいいが寝て良いとは誰も言っとらん」

 

 そして暁人は銀の頬から両手を話して叫んだ。

 

「お前たちはたるんどる!」

 

 その言葉を聞いて須美はなんで自分も巻き込まれてるのと2人に恨めしそうな顔をしてにらんだ。

 

 夢の中の出来事なのに遥は不思議に思って知った。

 

 なんで自分はこの夢の出来事が懐かしいと思ったのだろう。

 

 そんなことを思った瞬間、乃木と言われた子が静かにこういった。

 

「これは夢じゃないよ」

 

 その言葉を聞いて遥は夢から覚めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 先ほどの一言で彼は目覚めてしまった。

 

「僕は知っているのか」

 

 でも、銀という少女の顔を思い出すととても懐かしく心の底から涙が出てくる。

 

「なんで、涙が出てくるんだよ」

 

 僕はあの少女の事なんか知らないのに何で涙が止まらないんだろう。

 

 それと同時に乃木と言われた少女が呟いた言葉が気になった。

 

「夢じゃない」

 

 意味が分からない。

 

 そんなことを考えていたら登校時間になっていた。

 

「もう、こんな時間だ」

 

 僕は急いで着替えて家を出て待ち合わせ場所に向かった。

 

 通学路の途中にある橋に近づいていくと待ち合わせの人物が見えてきた。

 

「待たせてしまってすいません」

 

 待たせてしまったのは僕の彼女である犬吠埼風先輩と風先輩の妹の樹ちゃん。

 

「おはよー遥君、そんなに待ってないからいいわよ」

 

 風先輩はそう言って笑顔で迎えてくれたが樹ちゃんはそこに最強の矛を突き立てた。

 

「お姉ちゃんそう言ってるけどさっきまですごくそわそわしてたよ」

 

 樹ちゃんは風先輩に笑顔で言った。

 

 すると風先輩は顔を真っ赤にした。

 

「い、樹そこは言わなくていいのよ」

 

 なんだかこのやり取りを見ていると朝の悩みが一瞬でなくなった。

 

「そわそわしてたんですか、見たかったです」

 

 すると風先輩の顔はもっと赤くなった。

 

「もぉー遥君もやめてよ」

 

 悪ふざけも大概にして僕たちは学校に向かっている途中に風先輩はスマホを見て険しい顔をしていたが僕はこのことを黙っていることにした。

 

 それに僕も彼女に隠している。

 

「それにしても風先輩」

 

 スマホを取り出して風先輩に聞く。

 

「このアプリどうやって使うんですか?」

 

 その言葉に風は呆れた顔になった。

 

「それ、私が入れたアプリよね」

 

 NARUKOと言われるアプリをこの間、風先輩に入れてもらったのだが使い方が分からない。

 

「入れてもらったんですけど使い方が分からないんですよね」

 

「思ったんだけど遥君って機械音痴よね」

 

 僕はそれを聞いて少しムッとなった。

 

「別に機械音痴ではありませんよ、これの扱い方が少し分からないだけですよ」

 

「それを機械音痴って言うのよ」

 

 そんなことを言いながら風はアプリの説明に入った。

 

「それにしても遥君はスマホを何に使ってるのよ」

 

「電話とメールと目覚ましですけど」

 

 そんなことを言ったら風先輩と樹ちゃんが驚いた眼で見てきた。

 

「何ですか、可笑しいでしょうか?」

 

「遥君……私たちと同じ十代よね?」

 

 なんで風先輩はそんなことを言うのだろうか?

 

「同じ十代ですよ」

 

「使い方がお年寄りとあまり変わらない」

 

 樹ちゃんがそんなことを呟いた。

 

「お年寄り……」

 

 僕はその言葉に落ち込んでしまった。

 

「だ、大丈夫よ遥君! スマホが苦手なだけで他の機械は大丈夫よね」

 

 それを聞いて遥はさっきより落ち込んだ。

 

「え、もしかして他の機械も駄目なの?」

 

 風は顔を蒼くさせた。

 

「……はい」

 

 遥は遠くを見ながら返事をした。

 

 その瞬間、三人の空気が死んだ。

 

「どうしよ樹、こんな時ってどう……っていない」

 

 風が遥の返事を聞いて妹にどうしようと相談しようとしたらそこには妹の姿はなかった。

 

「風先輩、僕ってポンコツですか?」

 

 落ち込んでいる遥に風は笑顔で告げる。

 

「そんなことないわよ、遥君は機械が少し苦手なだけで他の事なんかできるんだから少しだけ欠点ある方が私は安心するかな」

 

「安心ですか」

 

「そうよ、遥君ってなんか完璧すぎてたから苦手なものがしれて私は嬉しいわ」

 

 そう言われて遥は明るくなった。

 

「そうですか、僕は風先輩の苦手をまだ知らないので今後探していきますよ」

 

 すると風は違う意味で間違った言葉を言ったと思ってしまった。

 

 それから二人は他愛もない話をしながら学校に向かうと二人ともクラスメイトに今朝の事でからかわれた。



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犬吠埼風 5

今回はあと後書きにてとある説明を書いています。

明日は風先輩の誕生日になっておりますので番外編を考えています。


 毎日僕は夢を見るようになった。

 

 その夢には三人の女の子と一人の男の子が絶対に出てくる。

 

 そんな夢を毎日見ていた遥は毎朝枕を涙で濡らしていた。

 

 それを誰かにも言わず自分の心の中に留めている。

 

 そんな日々が続いていた中、とあることに巻き込まれてしまった。

 

 その日はいつもと変わらずに授業を受けていた時の事だった。

 

 自分の鞄から音が聞こえてきた。

 

「誰ですか、授業中に携帯を鳴らしているですか」

 

 担当の教師に言われて僕はすいませんと言いながらスマホを取り出して画面を見てみると『樹海化警報』と画面の真ん中に書かれていた。

 

「何だこれ?」

 

 そんなことを思いながら周りを見てみたら時間が止まったかのようになっていた。

 

「なんで止まってるんだ」

 

 僕はその光景に戸惑ったが直ぐに冷静になった。

 

 次の瞬間、世界が変わった。

 

 目の前は奇妙な世界が広がっていた。

 

「樹海」

 

 僕はいつの間にかそう呟いていた。

 

 それは夢で見たのと同じだったからだ。

 

 スマホを見てみると画面が地図に変わっていた。

 

「乙女座?」

 

 星座の名前が書かれているマーカーが気になり僕はそれを目指して歩いていく。

 

 夢と同じならと思いスマホの真ん中の黒薔薇を押すと周りに黒薔薇が吹き荒れると一瞬で服装が真っ黒な戦闘服に変わっていた。

 

「夢と同じだ」

 

 そう、僕が来ている戦闘服が夢に出てきた男の子とまるで同じだった。

 

 なら、バーテックスと戦うための力がある。

 

「バーテックス?」

 

 また、口から知らない言葉が出てきた。

 

 あの夢をみてから自分が自分ではないような気がしてきた。

 

「それに落ち着く」

 

 変身してから体が軽くなったかのようにリラックスしている。

 

 それに体は覚えているこれから何をしたらいいのか、これから起きることを知っている。

 

 そんなことを思いながら進んでいくと目標が見えた。

 

「あれがバーテックス」

 

 見つけたバーテックスを見ていると心の底から怒りがこみ上げれくる。

 

 あれを早く倒せと体が命じてくる。

 

 なんでだろう。

 

 なんで僕の体は勝手に動いてしまったのだろう。

 

「斬る」

 

 僕は何時のまにか右手に刀を握りしめて敵に真正面から突撃していた。

 

 こちらの突撃に気づいたバーテックスは体の付け根の部分からミサイルを飛ばしてきた。

 

「それがどうした」

 

 飛んでくるミサイルを遥は左手に数本のクナイを出してミサイルに投げつけてすべて爆発させる。

 

「葬る」

 

 そう言ってバーテックスに一太刀入れるが相手は怯むことはなかった。

 

「威力が低い」

 

 そう言って遥は右手に握っていた刀を敵に投げつけて新たに両手に斧を取り出して突撃する。

 

「力でねじ伏せる」

 

 そう言って遥はもう一度、バーテックスに突撃しようと足に力を入れようとした。

 

「遥君、待って」

 

 そんな声が聞こえてきて遥は静かに睨むような目線で声のする方に顔を向けると風と樹が近づいてきた。

 

 風の姿を見た瞬間、遥の怒りは一瞬で冷静に変わった。

 

「その姿」

 

 風は遥の姿を見て驚きの表情をした。

 

 それを遥は見逃さなかった。

 

「これの事を知っていたんですか?」

 

 そんな冷めたような声で遥が呟くと風は悲し顔をしたが遥にとっては今はそんなことはどうでもよかった。

 

「知っていてても今はいいです……あれに見つかっている以上、早くここから動かないと攻撃が来ますよ」

 

 そう言って遥はバーテックスに視線を戻した。

 

 遥にとって風と話をするよりも目の前にいるバーテックスを斬り伏せる事だけが頭の中を占めていた。

 

 冷静になったのは一瞬だけで風の悲しい表情を見た時には怒りが彼の体を動かした。

 

 遥は両手に持っている斧の重さを感じさせないようにその場からバーテックスに向かってジャンプした。

 

 遥の行動を見ているバーテックスは攻撃を仕掛けるためにミサイルを飛ばそうとしたがそれを読んでいたかのように遥は付け根の方に向かって左手の斧を投げ飛ばした。

 

 それから遥は攻撃のできなくなったバーテックスに斧で切り付ける。

 

 その姿を見た風と樹は恐れてしまった。

 

 普段は優しく起こる姿を見せない遥が今は怒り狂った顔でバーテックスを切り付けていた。

 

 合流した友奈も遥の姿を見て恐れてしまっていた。

 

「これで葬る」

 

 遥は戦い方を知っているのか斧を地面に突き立てるとバーテックスから塊が出てきた。

 

 それを見た遥は斧から刀に切り替えて塊に向かって突撃してそれを真っ二つにした。

 

 そして、世界は元に戻り学校の屋上に戻った勇者部達は茫然としていた。

 

「遥君」

 

 そんな沈黙を破ったのは風だった。

 

「はい、どうかしましたか?」

 

 遥は何もなかったかのような笑顔で風の声にこたえた。

 

 勇者部のみんなはそんな遥に恐怖を覚えてしまった。

 

 そんな中で風は遥が大赦の人間なのかもしれないと疑ったがそれは前に違うことが分かっていたがそれでもあの時の遥の姿を見て風は恐怖していたがそれと同時に辛いと感じてしまった。

 

 もしかしたら遥の過去にバーテックスによる被害を受けた人物の一人ではないのかと感じてしまった。

 

 もし、彼の過去に関係しているのならそれを知りたい。

 

 同じ気持ちを共有したい。

 

 そんな気持ちが渦巻く中、物語は災厄な時へと進んでいる。




黒薔薇の花言葉が今回の物語の主軸になっています。

黒薔薇の花言葉は「貴方はあくまで私のもの」、「憎しみ、恨み」、「決して滅びることのない愛、永遠の愛」となっております。

その花言葉の意味を崩すことなく物語を進んでいきます。



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犬吠埼風 6

さて、今回は昨日から考えながら書いていきましたが会話が少なくなりました。

今回も後書きにして花言葉の意味を書かせてもらいました。

では、今回の話もゆるりとお読みください。


 あれからバーテックスの襲撃もあったが遥の異常な強さと大赦からの新たな勇者の加入により戦力が増えた。

 

 勇者部に一人増えて賑やかになり楽しくなっていく一方で遥の顔色は日に日に悪くなっていった。

 

 それは毎晩見る夢のせいだった。

 

 今度の夢は橋の上だった銀と暁人の二人だけが立っていた。

 

「くっ、これ以上は持たないか」

 

 暁人は左手を押えながらもバーテックスを睨んでいる。

 

「あははは、これは絶体絶命だね」

 

 銀はピンチだと分かっていても笑ってごまかした。

 

「上手くこいつらを追い帰せても……」

 

 暁人はそこで言葉を止めた、止めずにいられなかった。

 

 バーテックスを追い帰すことに成功してもたぶん……いや、確実にどちらかの命が尽きてしまう。

 

 そう思い、暁人は銀を見て思う。

 

 銀をここから落として俺だけでこいつらを追い帰すしかない。

 

 俺が死ぬことで助かるのならそれでいい。

 

 銀が助かれば俺は死んでも構わない。

 

 暁人はそう思い目を閉じて決心した。

 

「なぁ、銀……」

 

 暁人が目を開けて言おうとしたら銀がこちらを蹴ろうとしていた。

 

「ごめん」

 

 銀はそう言って暁人を橋の上から蹴り落とした。

 

「なっ、銀!」

 

 暁人は落ちる中、銀に叫んだ。

 

「なんで、なんでお前が」

 

「好きだったよ、暁人」

 

 そう言って銀は笑った。

 

 なんでお前が残るんだよ。

 

 なんで今、そんなことを言うんだよ。

 

 遅いんだよ。

 

 そこで夢は終わった。

 

 だけど、銀という子が死んだんだと思った。

 

「何度目だよこの夢」

 

 最近はこの夢を何度も見ている。

 

 このことを忘れるなと言わんばかりに何度もこの夢を見る。

 

 起きると涙を流している。

 

 悲しい感情が出てくる。

 

 そして、バーテックスが憎く思えてくる。

 

 なぜ、あんな幼い子が戦わなくてはいけなかったのだろうか? 今の自分たちのように精霊がいないのだろうか?

 

 そんな疑問が浮かんでくる。

 

 毎日そんな疑問を抱いているせいでいつの間にか登校時間になっている。

 

 風先輩に会えば顔色の事で心配させてしまう。

 

 side out

 

 最近、彼の顔色が悪い。

 

 私が心配して体調を聞いても彼は笑顔で寝不足で少し疲れているだけだと言って本当の事を話してくれない。

 

 そして、最近では彼との会話も少なくなってきている。

 

 それに大赦からの連絡で次が一番大変だとメールが来た。

 

 二つの悩みがある中で私は勇者部の方を優先しようとしても目で彼を追ってしまう。

 

 そのことで夏凛に一言言われたがこの勇者部の皆を巻き込んだのは私なのだから最後まで私が纏めなくてはいけない。

 

 この場所だけは誰にも譲ることはできない。

 

 これは私の罪なのだから、最後までこの罪を背負わなくてはならない。

 

 だからこれから来る災厄を終わらして彼との話す時間を作る。

 

 だけどそれは叶うことはなかった。

 

 7体ものバーテックスが攻め込んできた。

 

 この時は絶望のような感じが漂ったが遥君、一人だけは絶望ではなくこれで全部なのかと呟いていた。

 

 最後の7体が出てきたのだからこれで全部と言う意味は分かるがなんだか遥君の顔は自分が犠牲になってでも終わらせるようなそんな雰囲気をだしている。

 

 そして彼は私たちの目の前で満開した。

 

 彼の左腕の方に強大な左腕が現れて刀を持っていたそれだけだった。

 

 見た目は弱そうに見えたがそれは見かけだけだった。

 

 刀は巨大化してバーテックスを真っ二つにしたり、縮んだと思ったら遥君がバーテックスに特攻して斬り伏せている。

 

 それを見た私たちはその場を動くことができなかった。

 

 彼の気迫に私たちは動くことができなかった。

 

 私たちが動けたのは彼の満開が終わってからの事だった。

 

 それから私たちも戦闘を開始するがひどいものだった。

 

 3体ものバーテックスが合体したり、神樹様に高速で接近するバーテックス、地面に潜るバーテックスがいたのだが高速に動くバーテックスは遥君が2度目の満開をして刀を伸ばして切り裂いた。

 

 切り裂いた直後に遥君は倒れてしまった。

 

 疲れて気絶したのだろうと思った、そう思いたかった。

 

 残りのバーテックスは友奈と東郷が満開を行い倒したが勇者部のみんなはボロボロになってしまった。

 

 勇者部の皆はそのまま病院に運ばれて検査することになったが目が覚めた遥君は片目の視力に声を失っていた。

 

「遥君、ありがとう」

 

 私がそう感謝したら遥君は笑顔で紙にこう書いた。

 

『僕は皆のために力を使っただけですよ』

 

 と言って私の頭を撫でてきた。

 

 初めてだった、遥君が私の頭を撫でたのは初めての事だった。

 

『泣かないでください』

 

 そう紙に書かれていて私は初めて自分の頬を伝う涙を知った。

 

「初めて遥君に泣かされた」

 

 そう言ったら遥君はオロオロして何をしたらいいのか慌てていた。

 

 だから私はそんな彼の病院服を引っ張ってキスをした。

 

「もうこれ以上、自分を傷つけないで、自分を大切にして」

 

「君が傷つく姿なんか見たくないから」

 

 彼は返事する代わりに強く私を抱きしめてくれた。

 

 やっと、終わったんだ。

 

 戦わなくていいとその時は思った。

 

 これで日常に戻れると思った。

 

 でも、現実はそんなに甘くなかった。




オキザリスの花言葉:『輝く心』、『母親の優しさ』、『喜び』、『決してあなたを捨てません』、『輝煌』、『あなたと過ごしたい』、『心で感じる』

こんな花言葉になっております、風先輩そのものですね。

さて、話を少しづつ省いていくので風先輩は残り二話で終わらせるつもりです。


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犬吠埼風 7

長らくお待たせしてすいません、仕事が忙しくなり中々作業に取り掛かることができませんでした。

次回で風先輩は終わりです。

話の方は頭の中でできているので早めにあげます。


 僕が片目の視力と声を失って数日経った。

 

 この二つが失ったが生活にはそれほど支障は出ていない、それどころか家での生活が変わってている。

 

 これも大赦からのものだと知っている。

 

 自分たちは神樹様の供物なのだからそれを大切に扱う大赦はうざい。

 

 どこで自分たちの生活を見られていると思うとぞっとする。

 

 そんなことを思いながら学校に向かう。

 

「おはよー遥君」

 

 玄関を開けると風先輩がいた。

 

 僕はスケッチブックを取り出してペンを走らせ書いた内容を風先輩に見せた。

 

『なぜに風先輩が家に?』

 

 僕は首を傾げる。

 

「今日は早く遥君に会いたくて」

 

 バーテックスの戦いから風先輩はそう言って家にまで迎えに来ることが多くなった。

 

 あれから樹ちゃんはクラスの子たちと登校している為、僕と風先輩の二人で登校する機会が増えた。

 

『では行きましょうか』

 

 僕は微笑んで風先輩の手を握った。

 

「目の調子はどう?」

 

 風先輩は視力の失った左目を見ながら聞いてきた。

 

 握っている手を離してくれなさそうなのでスマホで会話することにした。

 

『いえ、視力が戻る気配はないですよ』

 

 スマホを見て風先輩は悲しい表情をしたが何かを思い出したのか悲しい表情は直ぐに消えた。

 

「もうすぐ夏休みに入るけど勇者部の合宿をしようと思うのよ」

 

『合宿ですか?』

 

「合宿は表向きでバーテックス殲滅の褒美が大赦からでるの」

 

『どこに行くんですか?』

 

「海よ」

 

 そう言った風先輩の顔は先ほどまでの悲しい表情を忘れるかのようなこちらも元気になるような笑顔をしていた。

 

『海ですか』

 

「どうしたの、遥君は海は嫌いだった」

 

『いえ、風先輩の水着姿を楽しみにています』

 

 風先輩は握っていた手を離して背中を叩いてきた。

 

「そんな嘘言わなくていいわよ」

 

『本当ですよ、風先輩の水着姿見たいですよ』

 

 すると風先輩の顔は赤くなっていった。

 

「じゃ、じゃあ、期待しててよ」

 

 それでも最近の風先輩の雰囲気が変わってきている。

 

「それに遥君の言葉でほめて欲しいな」

 

 風先輩はこちらの目を真っ直ぐ見つめながら言ってきた。

 

「遥君の声が聴けなくなって私は少し寂しい」

 

「こうやって君と手をつないで登校するのも楽しいけど君の声が聴けないのがこんなにつらいとは思わなかった」

 

「大赦に連絡を入れても返事は同じだし……もしかして騙されてるのかな」

 

 最近、風先輩が壊れてきてます。

 

「もし、遥君の声が戻らないのならば大赦を潰す」

 

 あれ以来、風先輩が勇者が言ってはいけない言葉が時々出てくる。

 

 僕はそんな風先輩に微笑むことしかできない。

 

 もし、声が出るのならここで気の利いた言葉が出るだろうか。

 

 満開を使った代償として自分の体の一部を神樹様に捧げる。

 

 自分がそれを知ったのは夢で見たからだ。

 

 だから僕は風先輩に何も言えないし伝えることはしない。

 

 これは僕の罪であり罰なのだから、それでも東郷と結城を巻き込んでしまった。

 

 それでも今は目の前の彼女が壊れないようにしないといけない。

 

 僕はそう思いながら彼女の頭を撫でる。

 

「遥君の手って暖かくて優しい」

 

 風先輩は顔を赤くしてながら笑う。

 

 そんな時間が過ぎてくれたらと思った。

 

 でも、そんなに現実は甘くなんかなかった。

 

 夏休みの終わりごろに風先輩は僕らを勇者部室に呼んでこういった。

 

「バーテックスの生き残りがいて延長戦に突入した」

 

 それが彼女たちの考えを変えていった。

 

 二学期に入るとすぐにバーテックスが現れたそれはこの前殲滅した双子座だった。

 

 

 side 風

 

 

 双子座の殲滅が終わり数日後、私は東郷と友奈に学校の屋上に呼ばれた。

 

「どうしたの2人とも深刻そうな顔をして」

 

 二人の様子はこの前からおかしかった。

 

「風先輩、満開後の後遺症についての事なんですけど」

 

 私はその言葉を聞いて心が痛んだ。

 

「満開後の後遺症は治りません」

 

 東郷のその言葉に頭の中が真っ白になった。

 

「じょ、冗談よね」

 

 私は信じたくなかった。

 

 それを信じてしまったら私はこれからどうって遥君に話しかければいいのか分からなくなる。

 

「本当の事です。この前、前勇者に会いました」

 

「彼女は何回も満開を繰り返し散華を繰り返し体の一部を神樹様に供物にして戦っていました」

 

 まだ、戦いが続くという事は私たちも満開をするかもしれないし遥君も満開をするのかもしれない。

 

「こ、このことは他の三人には言ったの?」

 

 私は遥君にこのことが知らないでほしい。

 

「いえ、風先輩だけです」

 

 よかった。

 

「他の三人には言わないでおいて」

 

 私はこの話を完全人は信じていなかった。

 

 私は満開の後遺症は治ると信じている。

 

 それは数日のうちに裏切られた。

 

 東郷の家に呼ばれていくと東郷が勇者の呪いを見せた。

 

 死さへも許されないことを知り大赦に嘘を私たちを騙していたことを知り絶望した。

 

 私はそんな絶望を感じながらも細い糸のような希望があると思い大赦にメールを送るが返ってくることは同じことだった。

 

 東郷の話は本当だった私たちは体を失ってこれからも戦い続けなければならないそうなれば樹も遥君も体を失わなければならない。

 

 大赦は私たちを騙していた、それだけが私の思考を埋め尽くした。

 

「許さない」

 

 私はそれだけを今の行動力に変える。




次回で風先輩は終わりなのでアンケートを取らせていただきます。

活動報告の方で行いますので感想の方には書かれないでください。

アンケート内容は次回のヒロインを募集いたします


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犬吠埼風 8

 長らくお待たせしてすいませんでした。

 仕事の休みの間に書きたかったのですが体調を崩したり、他工場に応援に行っていたりと書いていく暇がありませんでした。

 内容もアニメの最後まで書いていませんがこの二人の物語はこれで終わりです。

 アンケートの結果は東郷さんに決まりましたので鷲尾須美編から書かせてもらいます。


 私は勇者に変身に家を飛び出して大赦のもとに向かった。

 

 この行動が運命を大きく変えることになるとは思はなかった。

 

 私は私たちを騙していた大赦を許せない……それと同時に友奈達を勇者部に誘ってしまった私が許せないそんな気持ちを抱いている中、私の中で嫌なことを思ってしまう。

 

 遥君の精霊の数の事だ、彼はこの前のスマホのアップデートから二体の精霊が増えて六体の精霊を持っていること。

 

 私の中で導き出された答えは遥君は前勇者であり満開を行い記憶と他に二つも神樹様に供物として捧げたことになる。

 

 私はそう思うとさらに大赦が許せなくなってきた。

 

 多分、遥君が戦っていたころは私の両親が亡くなった時期と重なっていると思う。

 

「許せない」

 

 私の両親が亡くなったころで考えると遥と東郷は小学生の時にバーテックスと戦っていたことになる、そんな幼いときにつらい経験をしている二人がまだ苦しむ必要はない。

 

「待ちなさい」

 

 その声と共に風の頭上から無数の刀が降り注いだが風はそれを大剣で一振りですべてを叩き落した。

 

「あんた、何する気」

 

 夏凛の問いかけに風は静かに答える。

 

「大赦を潰す」

 

 その答えを聞いた夏凛は驚いた。

 

「大赦は私たちを騙していた」

 

 風は地面に着地してまた跳躍した。

 

「満開の代償は治らない」

 

「だから、私は大赦を潰す」

 

 その瞬間、上から黒い何かが風に斬りかかった。

 

「なっ」

 

 風は自分に攻撃を加えようとした人物を見て驚いた。

 

「な、なんで、遥君!」

 

 攻撃を加えたのは遥だった。

 

「私たちは騙されているのよ!」

 

 風は叫ぶように遥に言うが遥はそれを知っていながら風に刀を構える。

 

「なんで遥君は大赦を庇うの」

 

 そう言って風は遥に向かって大剣をふるった。

 

 風の大剣の威力は大きく遥の持つ刀は一撃で壊れてしまうが遥は壊れた刀の代わりに斧を取り出して対応をしていく。

 

「もう、君が戦う必要なんてないの」

 

 その言葉に遥は顔を横に振るう。

 

 二人はお互いの武器をぶつけ合うその間に遥の満開ゲージが溜まっていくのを風は見逃さなかった。

 

「これ以上、あなたが一人で背負い込まなくていいの!」

 

 その言葉を聞いて遥の顔は険しくなった。

 

「もう、あなたが苦しむ必要もないの」

 

 遥は険しい顔から睨みながら風の目を見る。

 

 風はそれに恐れを抱くが言葉を続ける。

 

「二年前になにがあったか分からないけど」

 

 言葉を繋ごうとしたら遥は風に向かって突撃していた。

 

「   」

 

 遥は両手に持った斧を振り落とすが風は大剣を下から振り上げて弾く。

 

 遥は攻撃が弾かれた瞬間に両手の斧を消して6本の刀を出して人の動きでできないような反応速度で斬りかかるが風はそれを見切っていたのか全ての攻撃を防ぎ刀を破壊した。

 

 遥は刀を破壊されたことに驚きもせず後ろに下がって2本の槍を出して突撃する。

 

 大剣に対して2本の槍の攻撃は有効だったのか風は遥の攻撃の速さに反応できなくなってきた。

 

 それと同時に遥からの攻撃から苦しみが伝わってくる。

 

 そして遥君の変身が解けてしまった。

 

 この場にいた全員が驚いた。

 

 突然、遥の変身が解けてしまったのだ。

 

 遥君の手からスマホが落ちてその画面には『勇者の精神状態が安定しないため神樹との霊的経路を生成できません』と書かれていた。

 

 遥は涙を流しながらその場に膝を着いた。

 

 それを見た風は変身を解いて遥に近づいて風もその場に膝を付けて遥の頭をそっと後ろから自分の胸に引き寄せて話し出した。

 

「もう、つらい思いをしなくていいのよ。あなたは今まで頑張って傷ついて失って色んなことがあったと思うけどあなたの戦いは終わったの、だからあとは私たちに任せてあなたは休んでいて」

 

 風は泣き崩れる遥の頭を優しく撫でながら介抱していく。

 

 それから数分後には全員が大変な事態に追い込まれたが、この二人の物語は最後のページに進む。



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犬吠埼風 エピローグ

 今回の話は物語的には蛇足部分になりますので読まれるも読まれないのも皆様の自由です。

 読まれる場合は最後まで読まないことをお勧めします、千文字も浮かばなく六百文字あたりが最後です。


 七月の太陽が照らしている中、白いワンピースを着た幼い少女が2人石階段を走っていく。

 

 その後ろには大人の男女がゆっくりと階段を歩いていく。

 

 二人の少女は後ろを振り向いて親との距離が離れているのを見てその場で立ち止まり少しだけ身長が高い少女が親に声をかけた。

 

「パパ~ママ~はやく~」

 

 そんな姉を見て妹は両腕を頭の上で大きく振る。

 

 そんな二人の行動を見た親はお互いに微笑みあいながら娘のところに少しだけ早足で向かった。

 

 娘との距離が近づいたところで父親は二人に声をかけた。

 

「疲れてないか?」

 

 優しい声色で聞くと二人は元気に答える。

 

「つかれたからオンブ」

 

「わたしは、だっこ」

 

 父親にせがんでいくが母親が父親の腕に自分の腕をからめて言った。

 

「ダーメ、パパはママのだから」

 

 子供たちは頬を膨らましてケチだのイケズと言うのを見て父親は苦笑しながら「ほら、早くいかないと後でうどんが食べれないぞ」と言うと三人は驚いた顔をしてすぐさま階段を上がっていくのを見てから父親も階段を上がっていく。

 

 階段を上り切り道路を挟んだ先に一つの墓石が置かれていた。

 

 娘の二人は父親にこれは誰のお墓と聞かれて父親はどこか難しい顔をしながら「パパが守りたくても救えなかった……ママの次に大切な人のお墓なんだ」

 

 その墓石には『三ノ輪家之墓』と書かれていた。

 

 お線香をあげ終え、静かな空気の中、母親はその空気を壊すかのように元気な声で

 

「さぁーて、うどんを食べて女子力を上げに行くわよ」

 

 と言って三人を呆れさせた。

 

「本当に風はうどんが好きだね」

 

 父親である遥は自分の妻である風のうどん好きに笑ってしまった。

 

「だって~お腹が減ったんだも~ン」

 

 親子揃って階段を降り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀、君が救った世界は今もまだ人が楽しく生活をして頑張っているよ。

 

 あれから長い年月が経ってしまったけど僕はあの時、君を救えなかったことを後悔をしています。

 

 君が救った世界はこんなに美しくて儚くてどこか夢のような世界だと僕は思う。

 

 僕たちの戦いは本当に終わってしまったけど、この世界にはまだ残っている問題もあるけどそれを解決していくのは僕たち大人の役目であり子供たちには君が救った世界を存分に楽しんで過ごして欲しい。

 

 僕たちが楽しみ目なかった分、この世界を楽しんで欲しい。

 

 

 これで僕と風の物語は終わりを迎える。

 

 君が命がけで救った世界で風と出会い勇者として力を振るい。

 

 中学、高校、大学を卒業して結婚して娘ができてその子たちの未来がどのようになるのかが楽しみです。



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鷲尾須美・東郷美森編
鷲尾須美 1


今朝、感想の方に催促の感想があり8割方できていたのを急いでかき上げました。

今回から鷲尾須美編が始まります。


 とある神社で一人の少女が周りをキョロキョロしたり、セットした髪がおかしくないか弄っているとこちらに走ってくる少年を見つけると緊張しながら彼が来るのをそわそわしながら待っていた。

 

「すまない、時間に遅れてしまった」

 

 眼鏡をかけた少年は自分を待っていた少女に頭を下げて謝るが少女は少年が遅れたことに全く怒っていなかった。

 

「い、いえ、私も少し前に来たばかりですから」

 

 少年はそれを聞いて悪いと言って黙ってしまった。

 

「あ、あの、暁人そんなに見られたら恥ずかしいのですが」

 

 少女は顔を赤くしながら少年がこちらをじっと見ていることを聞くと少年はすまないと言いながら何事もなかったかのように少女に言った。

 

「俺は須美の制服しか見たことなかったから私服を見るのがこれが初めてだったから、気に障ったのなら謝ろう」

 

 と暁人は微笑みながら言った。

 

「そ、そう、似合ってるかしら」

 

 須美はさらに顔を赤くして服の感想を聞いた。

 

「あぁ、須美らしくて清楚で可愛らしいと思う」

 

 その言葉を聞いて須美は顔をさらに赤くさせた。

 

 顔を赤くした須美を見た暁人は心配そうに須美の顔を覗きこんだ。

 

「須美、顔が赤いが熱でもあるんじゃないか」

 

 暁人はそのまま自分の額を須美の額に当てて熱がないか確かめた。

 

「あっ、あ、あ、あ」

 

 須美は一連の行動に思考が追い付かづにショート寸前になっていた。

 

 暁人は瞼を閉じながら須美の熱を確かめている。

 

「(暁人の顔がめ、目の前に)」

 

 鼻と鼻が当たりそうな距離まで近づいていることにさらに須美はこれ以上は駄目だと思い行動する。

 

「あ、暁人、私は大丈夫ですから」

 

 そうすると暁人は目を開けて顔を少し離す。

 

「突然赤くなったから驚いた」

 

「暑くて赤くなっただけだから、それより早くいきましょう」

 

 私は暁人の手を取りその場を早足でかけていく。

 

 二人は歴史資料館に向かった。

 

「それにしても暁人も歴史に興味があったのですね」

 

「あぁ、お屋敷に居る時は昔の資料を読むのが趣味だったからな」

 

 暁人は本棚に並べられた本を見て自分が読んでいない資料を探していた。

 

「暁人は何時の資料が好きなんですか?」

 

 その質問をされた暁人は少し考えてから言った。

 

「そうだな、何時と言われたら難しいが尊敬している人物はエジソンだな」

 

「そうですね、彼が成功したことはこの現代にも大切なものですね」

 

 そう言った須美に暁人は顔を向けて静かに言った。

 

「俺は今こうやって須美と過ごしている時間が大切だよ」

 

 と言って暁人は右手を須美の頬に添えた。

 

「あ、あの、暁人冗談は」

 

「冗談じゃないよ」

 

 そして、暁人は顔を須美の耳元まで近づけて囁く。

 

「君を僕だけのものにしたい」

 

 そう言って暁人は須美の唇に

 

 

 

「なんてものを読ませるんですか!」

 

 顔を真っ赤にした須美は叫んだ。

 

「だって~わっしーがいずさんに積極的にいかないから小説のなかだけはと思って~」

 

 そう答えた乃木園子は満面の笑みをしていた。

 

「なっ、わ、私が暁人に惚れているなんてありえません!」

 

「じゃ、わっしーはいずさんが嫌いと」

 

 そう言って園子はどこからかノートを取り出して書き込んでいく。

 

「だ、だからと言って暁人が嫌いとは言ってません」

 

 もし、この時に少女が自分の感情を認めていて彼に思いを告げていたら、彼女は後悔をしなくて済んだはずだろうこの先に待つ絶望を知っていたら。




後、数回須美編の話をしてから東郷編に移ります。

その間はこのような日常回をやっていきます。


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鷲尾須美 2

なんだかんだでスランプに陥りました。

考えても考えてもよい話が出来上がりません。


 私と彼の出会いの話を語ろう。

 

 私が鷲尾家に養子に出されて神樹館に通い始めた頃だった。

 

 放課後に図書室に向かうっているときに自分より前に一人の少年が歩いていた。只、歩いているだけだったら普通なのだが彼が歩いている廊下の端による生徒の姿が見られる。

 

「(なんで、彼は避けられてるのだろう?)」

 

 なぜ、彼は避けられているのかが気になり私は図書室に着いたら聞いてみようと思った。

 

 図書室でも彼は一人で本を読んでいた周りの席には人はいるが誰も彼に近づこうとしなかった。

 

 私は彼から不思議な雰囲気に誘われて彼の近くに歩み寄った。

 

「前の席いいですか?」

 

 私は彼の前に移動して聞いたら彼は読んでいた本から顔をあげた。

 

「そうか、君は確か鷲尾須美さんだね」

 

 私は彼に名を告げていないのに知られている。

 

「なんで私の名を……」

 

 すると彼は軽く回りを見渡してから口を開いた。

 

「君が鷲尾家に養子に出された理由を知っているだろう」

 

 彼の口から出たのは私の周りに知られていないことだから驚いてしまった。

 

「僕は大赦の人間だから大抵のことは知っているよ」

 

 そうか、彼は大赦と関係のある人だった。

 

「自己紹介が遅れたが出雲家当主、出雲暁人だ」

 

 彼が口にした言葉に私は驚いてしまった。

 

「当主」

 

「僕が偉そうに言うのは何だが座ったらどうだ」

 

 彼は前の空いている席に視線を移した。

 

「そうします」

 

 私は席に座り彼を正面から見る。

 

 彼は手に持っていた本を閉じて机に置くと口を開く。

 

「さて、君は僕がここの生徒に避けられているのか聞きたいようだね」

 

 彼は私の心を覗いているかのように聞いてきた。

 

「先ほど君が驚いたように僕は出雲家の当主をこの年でやっているかだろう」

 

「何で、その年で当主に」

 

 私は彼の目をながら聞いた。

 

「祖父の意向だよ」

 

 彼はそう言って一旦目を瞑ってから話を進める。

 

「この世界の外に脅威がいるのは教えられているだろうか」

 

 私はそれに頷く。

 

「なら話は簡単だ、僕に適性反応が出たから無能な親ではなく僕を当主に選んだ」

 

 親を無能と言った彼の目は真剣だった。

 

「だから僕はこの年で出雲家の当主として大赦の会議に出ている」

 

「それに神樹館に通っている生徒の親は大赦で勤めているからねそれで会議に出ている僕を危険視している」

 

 私は彼の話を黙って聞いているだけしかできないのだろうか?

 

「なぜ、危険視しているのかと言う顔をしているからそれも答えよう」

 

「君は大赦のトップが誰か知っているだろうか?」

 

 私はその質問の答えを知っている知っているからこそ言葉にできない。

 

「乃木家と出雲家この二つが現在の大赦を仕切っている」

 

 なら私の目の前に居る彼は何時からその会議に出て大人達と対等に話してきたのだろうか。

 

「ならこの両家のどちらかが機嫌が悪かったり、目障りだと思った人がいたら……どうなると思う」

 

 私はそこで気づいた彼の目は真剣に言っているのかと思うがどこか少しだけ……違う彼の瞳は悲しみにあふれていた。

 

「私はあなたがそんなことをするように見えない」

 

 彼は私の言葉を聞いて少し微笑みながら言った。

 

「君はすごいね」

 

 どんなに言葉で飾ろうが彼は私と同い年なのだから一人でいるのは寂しい、悲しい、辛いそんな感情を彼はどこかに隠してしまっている。

 

「私からしたらあなたの方が凄い」

 

 なんで私は初めて会った彼の話を聞いてこんな気持ちになったのだろう。

 

「そこまで自分の気持ちを—――」

 

 それから先を言葉にしようとしたら携帯のバイブ音がした。

 

「迎えが来たみたいだ、今日はこれで」

 

 そう言って彼は図書室から出て行った。

 

 出雲暁人は校門の前に止まっている車に乗り込むと車は走り出した。

 

 車に座っている暁人は窓の外を見ながら先ほどの事を思い出した。

 

「……鷲尾須美」

 

 面白いな。

 

 彼はそう思いながら大赦に向かった。



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鷲尾須美 3

退院はまだしていませんが体調が良かったので書き溜めしてなんとか書くことができました。

病院室での勇者部活動報告生放送は聴くものではなかった、笑いをこらえるのに必死だった。


こんかいはスマホから投稿なのでいまいち改行がうまくいっているかわかりません


 あの日、彼と話してから私は可哀想な人だと思ったが交流を持ってから気付いたが彼は全く可哀想な人ではなかった。

 

「昨日の会議での春信の発言が面白くてね」

 

 彼は大赦の会議の内容を悪い笑みをしながら語っていた。

 

「ねぇ、それって私まで聞いてもいいの?」

 

 私はこれ以上聞いてはいけないと思いながら彼に聞いたが彼は呆れた顔をしながら言った。

 

「君も鷲尾家の人間なら聞いたところで問題ない」

 

「でも、そういう会議の内容は秘密なんじゃ……しかも図書室で」

 

 そう、私達が話すのはきまって放課後の図書室だ。

 

「しょうがないだろ? 君も僕もクラスは違うのだから……それに聞きたくなければここに来なければいいだけだが」

 

 彼はニコニコしている、そんな彼を見ているからだろうか最初の可哀想な印象がなくなった。

 

「だったら他の場所で話せないんですか?」

 

 この図書室以外で彼と話したことがないから……決して他の場所で話してみたいとは思ってませんから。

 

「それはできないよ。僕は屋敷と学校それに会議室以外の場所に行くことを禁じられているんだよ」

 

 彼は少しそこで言葉を繋ごうとはしなかったが少し考える仕草をしてから言葉を繋いだ。

 

「僕はとある少女の自由の為、鎖に繋がれることを選んだんだよ」

 

 そして彼は制服のポケットから携帯を取り出して告げた。

 

「さて、今日はこれでさよならだ」

 

 そう告げて彼は図書室から去っていった。

 

「……鎖に繋がれている」

 

 私はまだ、彼のことを知っていなかったその事が悔しかった。

 

 なんでこんなにも悔しいのか分からなかった。

 

 彼のことを知っていると思っていた自分が恥ずかしくて悔しい。

 

「誰が彼を鎖に繋いでいるの」

 

 自分より彼を知っている誰かに私は嫉妬した。

 

 これは恋ではないと自分に言い聞かせて私は図書室を出ていった。

 

 それから私は毎日図書室に通い彼と話をするが彼の自由を奪った少女が誰なのかを聞くことができなかった。

 

 それから月日がたち初めてのお役目を果たした時、私は乃木園子の発した言葉を聞き逃がさなかった。

 

「わっしーはいずさんと仲良くしてくれてありがとう~」

 

 彼女はいつものようにふわりとした口調でそう言った。

 

「いずさんって出雲君のこと?」

 

 私はこの時、何を思ってそう聞いたのだろう。

 

「そ~だよー」

 

 私は彼の言葉の意味が分かってしまった。

 

「そのっちは出雲君と古くからの知り合いなの?」

 

 こんなこと聴かなくても分かる。

 

「そうだね~いずさんとはおじいちゃん達が知り合いだから」

 

 それにと付け加えたときそのっちの表情は暗くなった。

 

「私のせいでいずさんの自由を奪ったから」

 

 そのっちも辛かったのだろう自分のせいで誰かの自由を奪ってしまったこと、だけどそのっちはニコニコしながら言葉を繋いだ。

 

「お役目が始まってから少しだけ行動できる範囲が広くなったんだって」

 

 少しだけでも彼の行動範囲が広まったことに私は喜んでしまった。

 

「わっしーはいずさんの事が好きなんだね」

 

「な、なんで私が出雲君のことす好きになるんですか」

 

 私は顔を赤くしながらそのっちを睨み付けるがそのっちは微笑みながら言った。

 

「だって、わっしーいずさんの話を聞いてるときすっごーく真剣だから~」

 

 その時、分かってしまった。

 

 私が彼に抱いていた感情を……これが恋なのだと知った。

 

 彼の色々な表情が好きなんだと、彼を知りたいから私はあの場所に足を運んでいた。

 

 彼の時間に自分が存在している事が嬉しかった。

 

 彼の自由を奪ったそのっちを嫉妬した。

 

 でも、彼を好きになったからこんな感情が自分もあったのだと知った。

 

「でも、私は出雲君の事は友人と好きだけどそこまでの特別な感情は抱いてないよ」

 

 彼の自由は奪いたくない。それが私の選択だ。

 

「わっしーその答えが正しいか分からないけどわっしーは自分の気持ちを伝えた方がいい」

 

 いつもにんなく真剣な表情で言われてなにも言えなかった。

 

 自分のこの時の選択は間違っていたのだろうか? それでも私は一度つけた仮面を剥がすようなことはしない。

 

 この選択が私を苦しめることになっても私はこの嘘を剥がすことはない。



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東郷美森 1

 鷲尾編が中途半端に終わりましたが今回から東郷編へと話が続いていきます。

 鷲尾編で書かれたなかった物語は書くので変わりなくこの作品を楽しんでください。


 私は記憶と足の自由を失ったが大切な親友ができた。

 

 その存在は私のなかで凄く大きなものになった。

 

 今日もおはぎを作り琴弾八幡宮の境内近くで食べていたときのことだった。

 

「少しいいでですか?」

 

 帽子を深くかぶった男の子が話しかけてきた。

 

「あっ、急に話しかけてすいません」

 

 男の子は急に話しかけたことを謝ったが帽子を被ったまま話続ける。

 

「ここの住所が分からないんですけど教えてもらっていいでしょうか?」

 

 男の子は住所がかかれた紙を私と友奈ちゃんに渡した来たので私は男の子を少しにらみながら言った。

 

「帽子をそんなに深くかぶって怪しい人を信じると思いますか」

 

 その言葉をきいて男の子は自分の失礼な態度をとっていたと気付いて一言だけ述べた。

 

「帽子をとっても驚かないで下さい」

 

 そう言って男の子は帽子をとり私と友奈ちゃんは言葉が出なかった。

 

 男の子の両目とも光を灯していないからだ。

 

「驚かせてすいません、目が見えないのでわざと深く被っていたんですけど間際らしくて」

 

 彼はそう言って謝ったが謝るのは私の方だ。

 

「こちらこそすいません、目が見えないのをしらなくて失礼な態度をとりました」

 

 このとき私は不思議に思った目が見えないのにどうやって杖を使わずにここまで歩いてきたのだろうか? そして、私達がここにいることをどうやって分かったのだろう。

 

「謝ることはありませんよ」

 

 彼はそう言って微笑んだ。

 

 なんで、彼は優しいのだろうかと思ったが道を教えてほしいと言っていたのを思い出して道を教えた。

 

「ありがとう」

 

 そう言って彼は去っていった。

 

 私は去っていく彼にまたどこかで会えると思った。

 

 去っていく男は自分の帽子を深く被りなおすがその口元は笑っていた。

 

「元気そうで良かった」

 

 彼はそう呟き神社の少し離れていたところに止まっていた車に近づいていくと車のドアが開かれ少年は目が見えているかのように車に乗り込むとドアは閉まり車は走り出した。

 

「どうだったかい、久しぶりの外」

 

 彼の隣に座っている白衣の男は静かに聞いた。

 

「我儘を聞いてもらってすまない春信」

 

 少年は声は申し訳ないように言っているが表情は明るい。

 

「暁人、申し訳ないと思うなら少しはそう言った表情をしてくれないか?」

 

 春信は苦笑いをしながら暁人の方を見る。

 

「本当に感謝はしているんだよ、視力を失った僕の代わりに大赦の方を任せているのだから」

 

「僕も君がいるから今の地位があるからね」

 

 二人はそう言って笑いあった。

 

 二人の歳は離れているが傍から見たら同年の友人のように見える。

 

「それで彼女の様子はどうだった」

 

 春信は少し真剣な表情をしながら暁人に聞いた。

 

「まぁ、記憶を失っているが変わってなかったよ」

 

 暁人の視力を失った瞳はあの時の須美を映していた。

 

「それで隣に居たのが例の彼女なのかい?」

 

 暁人は須美の話からもう一人の少女の話にシフトした。

 

「あぁ、彼女が僕たちが見つけた最後の希望だよ」

 

 そう聞いた暁人は窓の方を見て呟く。

 

「彼女がこの世界の最後の希望か」

 

 彼が彼女の情報を聞いたときはどこにでもいる少女よりも少し特殊な家庭環境なだけの心優しい少女だった。

 

「彼女は優しすぎる」

 

「だから選ばれたんじゃないのかい?」

 

 春信は自分が思ったことを口にするが暁人は首を横に振った。

 

「いや、他に……時間か」

 

 そう言ったら彼の姿は薄れてきた。

 

「最近、短いな」

 

 薄れゆく暁人の姿に春信は驚くことなく呟く。

 

「僕の体も時間の問題だな」

 

「それが神樹に体のすべてを捧げた代償か」

 

「頼むよ」

 

 そう言って暁人の体は完全に消えた。

 

 春信は消えた暁人の方を見ながら呟く。

 

「本当に時間がないな」

 

 冷静に冷酷にそう判断した。

 

 春信を乗せた車は大赦に向かう。

 

 

「わっしーの様子はどうだった~?」

 

 病室のベットに寝ている少女はその隣に備えられている椅子に座っている幼い少年に聞いた。

 

「記憶はなかったけど元気そうにしてたよ」

 

 幼い少年はそう言った。

 

「そっか~いずさんはどう思った?」

 

 幼い少年はつい先ほどまで車に居た暁人だった。

 

「園子、僕の思ったことは言ったけど」

 

「私が聞いているのは本心だよ」

 

 暁人は幼い少年のように考え込む仕草をする。

 

「これ以上、この件に関わってほしくないよ」

 

「彼女の人生をこれ以上、僕たちの我儘に付き合わせる必要はないと思う」

 

 そう言った暁人の顔は出雲家の当主としての意見を述べた。

 

「でも、僕たちがここに居る以上は選ばれた彼女たちに託すしかない……」

 

 園子はそこまで聞いて言葉を発する。

 

「なら、悲しい現実を見る前に楽しい時間を作るのはどうかな」

 

「園子はそれでいいのかい?」

 

「うん、彼女たちが望めば元に戻せばいい」

 

「彼女たちが夢を選ぶか現実を選ぶかを決めるか」

 

「なら、今回の事は僕が全部責任をとるよ」

 

「時期を見て彼女たちを夢の世界に閉じ込めるよ」

 

 二人の計画は始まった。

 

 彼女たちが悲しい現実を受け入れる前のに選択の時間を与えるチャンス。




 物語とは関係ありませんが無事、先週退院しました。

 仕事の方にも復帰して大変ですがペースを落とさずに書いていきます。


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東郷美森 2

お待たせしてすいません


「初めまして、出雲暁人です。視力が悪いので皆さんに迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」

 

 私の目の前でこの前会った彼は制服を着て軽くお辞儀をしていた。

 

 お辞儀を終わった彼は見えない瞳でこちらを見て笑ったように見えた。

 

 私にはそんな風に見えてしまった。

 

 なんで彼はこの学校に現れたのだろうかそして新学期であるこの時期に転校してきたのだろうかと疑問が私の頭を悩ませた。

 

 そして彼がやってきたことで私の放課後まで変わろうとしていた。

 

 私と友奈ちゃんが勇者部に向かうと部屋から風先輩の話声が聞こえてきた、私たちは樹ちゃんと何かを話しているのかと思いながらも挨拶しながら部室に入ると彼は風先輩と樹ちゃんと談笑していた。

 

「友奈に東郷来たわね」

 

 風先輩は私たちが来るのを待っていたようだ。

 

「今日からこの部に入る新入部員を紹介しよう!」

 

 そんな風先輩の言葉と共に少しだけ空気が寒くなったと感じた。

 

「まぁ、紹介って言っても一人は前から参加してたから分かるけど私の可愛い妹、犬吠埼樹だ!」

 

 そう紹介された樹ちゃんは少しだけ顔を赤らめて挨拶しながら頭を下げた。

 

「もう一人は今日転校してきた謎のイケメン転校生の出雲暁人」

 

「お二人はクラスが同じなので省略しますがこれからもお願いしますね」

 

 そう言って微笑んだ彼は謎だらけで怪しいと思うのは私だけだった。

 

 この日から彼も勇者部の一員として部活動に参加をしているが目が見えない彼の仕事はあまりないと思ったのだが彼に相談にのってほしい生徒が多くて彼は毎日誰かの相談を聞いていた。

 

「雰囲気が違うわね」

 

 彼がいない場所で風先輩はそう口にした。

 

「何が雰囲気なんですか風先輩」

 

 友奈ちゃんはそんな風先輩の呟きに反応した。

 

「暁人のことよ、彼の持っている雰囲気って周りの同年代男子より大人びてるのよね」

 

 その言葉に樹ちゃんは力強く頷いていた。

 

「まぁ、そのおかげで彼の相談室は人気なんだけど」

 

 私はここでやっと口を開いた。

 

「それでもあれほどの人気は以上ですよ」

 

「そうですね、僕も一人であれほどの人の相談を聞くのは大変ですから」

 

「そうよね、暁人の言う通りよね……って! いつからそこにいるの!」

 

 いつの間にか彼は私たちの会話に参加していた。

 

「霊を見たような反応をしないで下さいよ、今日の相談が終わったので皆さんに差し入れを持ってきたんですよ」

 

 彼はそう言って左腕を少し上げるとビニール袋を持っていた。

 

「春とはいえ暑いと思いましたのでスポーツドリンクです」

 

 彼はそう言って私たちにドリンクを手渡していく。

 

「暁人を見てたら本当に見えてないのか疑いたくなるよ」

 

 風先輩は冗談交じりで彼にそう言ったが彼はにこやかに笑いながら返す。

 

「見えませんよ」

 

 そう言って彼はポケットから携帯を取り出して耳に当てて頷いてポケットにしまって笑顔でいう。

 

「迎えが来たみたいなので自分は今日はここで失礼します」

 

 そう言って彼は杖を突きながら門の方に歩いていく。

 

 

 車に乗った暁人だが車の中には誰も乗っていない。

 

 彼はとある病室の中に居た。

 

「準備は順調かないずさん」

 

 ベットに寝ている園子は隣に座っている小学生の暁人に話しかける。

 

「そうだね、彼女達との繋がりは出来たしアレが来たら彼女も讃州中学に送り込む」

 

「惨劇が起きる前に僕たちの精霊で夢の世界に閉じ込める」

 

「そこで選択をしてもらう」

 

「彼女たちの選択を僕は楽しみにするよ」

 

 そう言って暁人は姿を消した。

 

 静寂が支配する病室の中で園子はぽつりとつぶやいた。

 

「ごめんね」

 

 その言葉が誰に向けて言ったのかは分からないが園子は涙をそっと流す。



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東郷美森 3

 時間が開きすぎましたが書き上げるもとができました。


 あれから季節は少しだけ過ぎてバーテックスとの戦いが始まり夏凛が讃州中学にやってきた。

 

「なんで、出雲様がここにいるのよ!」

 

 部室に夏凜の大声が響いた。

 

「何騒いでるのよ夏凜」

 

 部長の風はすぐさま夏凜に声をかける。

 

「あんた達なんで普通に出雲様に話しかけてるのよ」

 

「僕のこと言ってないからね」

 

 そう言って出雲君は悪戯が成功した子供の様に笑顔で居た。

 

「こうして挨拶するのは初めてだね、大赦を纏めている出雲家当主の出雲暁人です」

 

 彼はそう言って挨拶をした。

 

 夏凜ちゃん以外の私たちは言葉が出なかった。

 

「もう少しだけ自分のことを隠そうとしてたのにな」

 

 悔しそうに言って彼は夏凜ちゃんの方を向いた。

 

「もぅ、この空気どうしてくれるの」

 

「えっと、すいません」

 

 私たちには辛口な彼女も彼には頭が上がらないのか素の彼女を見た。

 

「人の楽しみを奪うのは兄妹揃ってだよ、そこだけ兄妹アピールやめてよ」

 

 でも彼はそれを楽しんでいる。

 

「トップである出雲様が呼び捨てにされているのがアレだったので」

 

「でもでも、僕は夏凜には暁人で呼んでっていつも言ってるじゃん?」

 

 長年にわたる友人をからかっているようにも見える。

 

「いや、でも、出雲様は」

 

 彼女はとても焦っている遊ばれていることに気づいていない。

 

 私はそんな彼を知っているような思いがある。

 

「でも、学校で出雲様って呼ばれるのは嫌だよ」

 

 彼はとっても素直にそう言って遊んでいる。

 

「あ、あ、暁人でいいんですよね」

 

 名前を呼んでも彼はまだ物足りないみたいだ。

 

「敬語も抜きにしてよ、同級生だよ、同級生同士で敬語は気持ち悪いよ」

 

 学校のほとんどの生徒は彼に敬語で話している。

 

 彼女は顔を赤くして限界を向かえたようだ。

 

「分かったわよ! これでいいんでしょ……あ、暁人」

 

 名前で呼ぶのには少し間があったが吹っ切れたようだ。

 

 彼女の態度を見た彼は近づいて頭を撫でた。

 

「よーく出来ました」

 

 完全に遊ばれて終わった。

 

「うん、これで皆に馴染めるね!」

 

 そう言って彼はこちらを向いた時に扇子を広げて大成功と書かれていた。

 

 それを見た私達は笑ってしまった。

 

「暁人ナイスよ」

 

 風先輩は笑いながらも彼を褒めた。

 

 遊ばれていた本人は身体を震わせて自分が遊ばれていたことに今更気がついたようだった。

 

「馴染めるか!」

 

 大声で彼女は吠えた。

 

 それでもこのやりとりのおかげで私達は彼女に対する警戒心を解いてしまった。

 

 だけど、彼女の口にした言葉は忘れもしないものだ。

 

「出雲君、貴方は本当に大赦の人間なの?」

 

 だから私は口にした、誰も聞かないでいるから。

 

「夏凜が来たらみんなに説明しようとしていたんだけどね」

 

 彼は申し訳なさそうに言う。

 

「まぁ、僕には余り決定権がないから……飾りみたいなものだから」

 

 その意味は分からなかったでもこの言葉を理解した時は遅かった。

 

「僕からしてもこのグループが選ばてることはほんの1握りの可能性だったんだよ、だから僕が君たちを監視……言葉が悪いな見守る必要があった」

 

 その言葉を聞いて私は風先輩を見た。

 

「風先輩はこの事を知っていたんですか?」

 

 風先輩は頷いた。

 

「暁人が大赦の人間なのは知っていた、けどそこまで上の人だとは聞いていない」

 

 これは真実のようだ。

 

「君たちがお役目を授かることで僕の情報を開示する事は危ないからね、だから知っていても知らないふり支える事をしてきたんだよ」

 

「出雲君はあれを知っていて知らないふりをしていたの」

 

「それが僕の仕事であれを倒すのがお役目を授かった君たちの仕事だよ」

 

 静かに恐ろしいく低い声で彼は話す。

 

「僕はこのとおり目が見えないから君たちがナニと戦っているのかまでは知らない見ることが出来ない」

 

 彼の手は力強く握り拳をつくっていた。

 

「この目が見えるのなら君たちが戦っているものを見て危険だと知っていたら止めたよ」

 

「それでも僕には何も出来ない他の大赦の人の言葉に頷くことしか出来ない」

 

 彼は苦痛な顔をしている。

 

「だから僕は君たちに何を言われても構わないと思っている」

 

 彼は彼で苦しんでいた。

 

「すまない」

 

 それは彼の心の叫びだった。

 

 その日は活動はなくなりこれからの活動を話し合い終わった。

 

 

 部活が終わり僕は病室に戻った。

 

「作戦を始めようか」

 

 僕は園子に笑顔で言う。

 

「彼女達には選択の余地がある本当に戦うかどうかの」

 

「いずさんもそれでいいなら私は構わないよ」

 

「それが私にできるわっしーへの返せる時間だから」

 

 そう言って園子は札が大量に貼られている扉を見つめる。

 

「駄目だ! 扉の奥を見ようとしてはいけない」

 

 幼ながらも覇気のある声で暁人は園子を制止する。

 

「それを見たら君まで後戻りが出来ない」

 

 だってその奥には彼の本体があるのだから。

 

 その奥の部屋には体の9割を供物として捧げた暁人が祀られているのだから。

 

「さて、彼女達の選択が楽しみだ」

 

 暁人は笑みを浮かべながら姿を消した。



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東郷美森 4

 時間、場所を設けてみたが彼女達の決断は固かった。

 

 真実を言えなかったが絶望の待つ未来しかないことを伝えた。

 

 僕は自分の役目のために彼女達の前から姿を消した。

 

 それなのに彼女はここに来てしまった。

 

「やぁ、東郷三森さん……久しぶりだね鷲尾須美」

 

 自分の病室にやってきた彼女の顔は絶望に染めれられていた。

 

 祀られた姿で会うのは初めてだ。

 

「これがあなたの本当の姿」

 

 病室の入口から動かないそれほどまでにこの病室が気味悪いだろうと感じさせる。

 

「さて、君は園子に会ったのだろ? なら予想はできたはずだよ」

 

「君の決断を聞こうかな、この世界を終わらせるか」

 

 その言葉に彼女は驚く。

 

「君達も僕達も満開してこの身体になったのは知っているだろ?」

 

「満開システムは一人の犠牲と共に大赦が作り上げたシステム」

 

「1人の犠牲」

 

「そう、君のない記憶での出来事だから覚えていない方がいい」

 

「彼女は元からその実験の為だけに勇者に選ばれた」

 

「今回の勇者候補も実際は複数名もいない」

 

 本当のことを全部彼女に告げる。

 

 

 はじめから仕組まれていた友奈ちゃんや私達が勇者になることは全部仕組まれていた。

 

「大赦は記憶のない君にストッパーになる為の人物を近くに置いた」

 

 それが友奈ちゃんなの。

 

「記憶に関しては神樹さまに捧げたから戻ろことはないことは分かっていても君は賢いかここに辿り着くのも時間の問題だったけど」

 

 彼はどこまで予想していたのだろう。

 

「君がここに来るのは知っているけど君のその決断は過ちではないよ」

 

 彼は私がやろうとしていることを知っている。

 

「すまないね、この部屋にいる人の心なんて簡単に読めてしまうんだよ」

 

 彼は吊るされたまま愉快そうに話す。

 

「だから、ここでは本音で語っても許されるよ」

 

「君の選択に僕達は邪魔はしないよ」

 

「邪魔することは出来ないそれが君が望んだ世界のなら僕達はそれを受け入れるよ」

 

「それが僕の罪滅ぼしなのだから」

 

「貴方はそれでいいの」

 

「言ったろ、君が望むのならそれでいいよ」

 

 愉快そうに話していた彼は優しい口調に戻った。

 

「君がこの世界に絶望してその決断に至ったのなら僕は止めない……この体じゃ止めれないけどね」

 

「行きなよ、ここには君の落とした過去しかないのだから」

 

 その過去には大切なものがある。

 

「大丈夫、君は大丈夫だから」

 

 そんな言葉とともに部屋は姿を消していく。

 

「待って、私は」

 

 私は何を口にしようとしたのだろう。

 

 この言葉を言わないと後悔してしまうと思った。

 

「好き」

 

 その言葉が出た時には私は壁にその言葉を聞いて呟いていた。

 

 私はいつも遅い何でこんな感情が出てこなかったのか。

 

 記憶がなくてもわかる心が知っているのだから私は彼を知っている記憶はないけれど心の感情は覚えていた。

 

 そんな心の感情を知ろうともしなかったこんな時になって知るのは苦しい。

 

 友奈達が苦しむのは見たくないけど彼の辛い姿を見たくない。

 

 私はこの思いを信じて行動する。

 

「神樹様を破壊する」

 

 それがどんな結果になろうとも私のこの想いは止められない。




さて次回で東郷美森編は終わりです


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鷲尾須美・東郷美森 エピローグ

さて次の部員の準備しないと

誰にしよ(決まってるけどね


 私は神樹様を破壊することは出来なかったでも、私達は元の生活に戻った。

 

 神樹様に捧げた供物がすべて戻って私達は生活をしている。

 

 そのっちも体が動くようのなり同じクラスに転校してきた。

 

 暁人のことを聞いたが何も聞かされていないみたいだった。

 

 彼は開放されても大赦に束縛されていると思ってしまった。

 

 彼の立場はその立ち位置なのだから、仮に体が回復していようが屋敷から出られないでいるのだろうと思った。

 

 伝えれなかった想い。

 

 あの時にでも彼に想いを告げていたらどうなっていただろう。

 

 そんな事を後悔しながら私は図書室に本を返しに向かった。

 

 向かう廊下には生徒が誰もいない。

 

 この時間帯なら廊下で話をしている生徒が居てもおかしくないのだが今日は静かで少しだけ不気味だ。

 

 そう思い静かな廊下を進んでいき図書室のドアを開けるてひとつの机に視線がいった。

 

 静かに本を読んでいる生徒がいた。

 

 その姿は私が記憶より成長しているのが分かる。

 

 本を読んでいた彼は私に気づいたのか顔をこちらに向けて微笑みながら言った。

 

「そろそろ君が来る頃だと思っていたよ」

 

 彼が着ている制服はここのものではない、神樹館中等部のものだ。

 

「なんでここに」

 

 今ここにいる彼は偽物ではないのかと疑ってしまう。

 

 いや、そう思いたい自分がいる。

 

「今朝、こっちに転学してきたんだよ」

 

 彼は自分の袖を通している制服を見て思い出したかのように言葉を繋ぐ。

 

「急にここに来たから制服が間に合わなかったんだ」

 

 それを聞いて私は本物だと実感した。

 

 本物だと知り安心して私は彼の対面に座る。

 

「部活に行かなくていいのかい?」

 

 彼は知っている口調で聴いてきた。

 

「今日はお休みなの、だから図書室に本を返しに」

 

「そうか、ここに来て正解だ」

 

「もう、体は大丈夫なの?」

 

「たまにふらつくこともあるけど健康そのものだ」

 

「転学が遅れたのは大赦の馬鹿どもが混乱していて処理に時間がかかった」

 

 彼は昔のように大赦内部の話をしてくれた。

 

「本当はここに転学しようとは思っていなかったんだけどね」

 

 なぜそんな事を言うのだと思ってしまった。

 

「僕は君のまえに現れる権利はないん」

 

「権利なんて必要ない」

 

「権力を失った僕のせいで君はお役目を無理やりやらされた」

 

「あの時にすべてを終わらせていたら絶望的な未来を押し付けることはなかった」

 

「それでも貴方は動いていた」

 

「それは春信が協力していたからで僕は何もしていない」

 

 そんなことは無い彼は誰よりも苦しみここにいる。

 

 自分の全てを犠牲にしてでも誰かを一人でも多くの誰かを救いたい気持ちは伝わる。

 

「気持ちを隠して殺して辛い思いはしなくていいの」

 

 私は微笑みながら彼に伝える。

 

「悩んだら相談」

 

「勇者部五箇条」

 

「暁人はもう苦しむ必要はない」

 

 そう言ったら彼は笑った。

 

「なんで君も春信と同じことを言うんだよ」

 

「そこで笑うのは暁人らしいですね」

 

「それが僕の長所だろ」

 

 その言葉を聞いて私は笑い彼も笑うこれは初めての気持ち。

 

 たくさん笑って話してから帰宅する私は彼に尋ねる。

 

「なぜ、暁人は図書室にいたのですか」

 

「君が来ると思ったし、僕と君の出会いの場所はあの場所だから」

 

 彼は立ち止まり視線をこちらに向ける。

 

「あの時の雰囲気にも似ていてたから足が自然と向かったんだよ」

 

「君に出会えると思ったから……出会いたいと思った」

 

 その言葉は心の奥に響く。

 

「実は私も図書室に行く時あの時の雰囲気に似ていると思ったの」

 

 そしてそこには彼がいて隣にいる。

 

 あの時とは違う。

 

 私は彼の手を握り歩き出す。

 

「これからは私が隣にいます」

 

 これが今の私の限界だ。

 

「須美、頼むよ」

 

 不器用な私達の恋はここから始まる。



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犬吠埼樹
犬吠埼樹 1


樹ちゃんルート解禁しましたが安定の駄文なのでお願いします。


 私が彼と出会ったのは人気のない病院の裏にある公園だった。

 

 その日は何となく外で歌って見たくて人気のないところで歌っていた時の事だった。

 

「素敵な歌声だね」

 

 そう言って彼は現れた。

 

 それが、犬吠埼樹と出雲暁人との邂逅であった。

 

「えっ、あ、ありがとうございます」

 

 私は突然現れた男性に頭を下げてお礼をした。

 

「感謝をするのは僕の方だよ犬吠埼樹ちゃん」

 

 その男性は私の名前を知っている、怖いと思いながら私は顔を上げて男性の顔見る。

 

「あぁ、僕が君の名前を知っているのは僕が君のお姉さんと少しばかり知り合いで君の名前を聞いているからだよ。それと自己紹介が遅れたね、僕は出雲暁人この裏にある病院で入院している病人さ」

 

 そう言われて彼、出雲さんの服装を見ると病院で入院している人と同じ服装をしていた。

 

「あ、あの、抜け出していいんですか?」

 

 私はさっきまでの恐怖を忘れて彼に話しかけていた。

 

「いや、駄目だけど病室の中に閉じ込められているのに飽きていたんだよ」

 

 この人、見た目以上に悪い人なんだと思った。

 

「それにあんなにも綺麗な歌声が聞こえてきたら尚更ね」

 

 そう言ってほほ笑む出雲さんに私は顔を赤くしてしまった。

 

「君はいつもここで歌っているのかい?」

 

 私は顔を横に振った。

 

「そうなのか、残念だな」

 

 そう言って出雲さんは少し寂しそうな表情をしているのを見て私は咄嗟に声が出てしまった。

 

「あ、あの、またここで歌ってもいいですか?」

 

 そういうと出雲さんは一瞬目を見開いたが次の瞬間にはくすりと笑った。

 

「ここで歌うのに僕の了承はいらないよ、君が歌いたいかどうかの問題だから」

 

 そう言われて私は恥ずかしくなり顔を赤くしてしまった。

 

「でも、君がここで歌ってくれるなら僕は聞きに来るよ」

 

 微笑みながら出雲さんは言ってくれた。

 

「さて、僕は病室に戻るよ。怖い人が来るからね」

 

 と言って出雲さんは病院の方に向かって歩き出した瞬間に突風が吹き思わず目を閉じて風がやんでから目を開けると出雲さんの姿はなかった。

 

「思わずあんな約束したけど……どうしよぉー」

 

 人前で歌うのが苦手な私にとってはすごい約束をしてしまった。

 

 

 

 出雲は病室に戻り同室の少女に話しかけた。

 

「呼び出してどうしたんだい? 乃木園子」

 

 そう言って出雲はベットに視線を移すと顔は殆ど包帯が巻かれており見えている片目で出雲をにらんでいた。

 

「あれほど勇者候補にあったら駄目って言わなかったけ」

 

「僕自身は勇者候補には出会っていないじゃないか? ここから動けないのだから」

 

 そう言って彼女の目の前にあるベットに指をさすとそこには全身が包帯で巻かれており死んでいるのか生きているのかわからない状態になっている。

 

「それはいいわけだよいずさん」

 

「まぁ、僕が誰に会おうが僕の勝手であり神樹様の意志と考えてもらったほうがいいよ、なんせ僕は体のすべてを供物として捧げてここに居るのだからね」



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犬吠埼樹 2

乃木若葉を読んでいたら大赦が大社になっているのは原作者の意図的なものなのか知りたくなってきた最近です。


 あの日から毎日ではなく月に一度のペースであの場所を訪れると出雲さんは何時もいる。

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

 出雲さんはそう言ってほほ笑んでくれる。

 

「お、お久しぶりです」

 

 私はまだ出雲さんと話すのは苦手です。

 

「今日は少し疲れているのかな、元気がないように見えるよ」

 

 出雲さんは空を見ながら知っているような口ぶりで聞いてくるが今の私は色んな意味で毎日が大変です。

 

 大赦の勇者に選ばれたりバーテックスと戦ったりと今日もお役目を果たしてきたので少しだけ疲れています。

 

「冗談だよ」

 

 出雲さんはそう言って微笑むが少しだけ影がある。

 

「出雲さんもなんだか調子が悪そうですよ」

 

「むっ、僕の体調は問題ないのだがな」

 

 そう言って出雲さんは自分の体を触る。

 

「でも、入院してるのはどこか悪いんですよね?」

 

「いや、検査入院が長いだけでどこも悪くないさ」

 

「それにあそこに居てもつまらないからね」

 

 そう言って出雲さんはそう言って歌を口ずさむ。

 

 私はその歌を聞いていたら今日の事を忘れそうになるぐらいにリラックスしてしまった。

 

「いかがかな僕の歌は?」

 

 そう言って出雲さんは私に感想を求めてきた。

 

「凄く上手でした」

 

 私は思ったことをそのまま言ったが出雲さんは木にもたれ掛かり喉を触りながら言う。

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいが僕の喉では一曲も歌えない」

 

 そう言った出雲さんの声は少しだけ掠れていた。

 

「それに君の歌声の方が僕より魅力的だよ」

 

 その言葉は素直に嬉しいが出雲さんは自分に自信がないように思える。

 

 少し昔の私を見ているような気分になってしまった。

 

「そんなことないですよ出雲さんの歌も魅力的ですよ」

 

 そう言ったら出雲さんは少しだけ微笑みを見せた。

 

「感謝するよ。さて、そろそろ戻らないと怖い看護師が見に来るから僕は戻るよ」

 

 そう言って出雲さんが去っていくときに強風が吹き目を閉じて風が止むと出雲さんの姿はなくなっていた。

 

 出雲さんはいったい何者だろうといつも思ってしまう。

 

 お姉ちゃんに出雲さんの事を聞こうと自宅に戻ることにする。

 

 出雲さんは私の事を見透かしているような私は出雲さんの事を何も知らない。

 

 少しでも出雲さんの事を知りたいと思う気持ちが日に日に膨れていく。

 

 この気持ちは何だろう。

 

 

 

「本当になんで彼女が選ばれたのだろう」

 

 病室に戻り園子に話しかける。

 

「あれ~いずさんあの子の事が気になるの~」

 

「いや、僕にも分からないことがあるから聞いただけだよ」

 

 体を全て神樹様に捧げても僕には勇者の事には全く関係ないからね。

 

「いずさんでも知らないこともあるんだね」

 

「僕は何でも知っているわけじゃないよ」

 

「勇者に関しては大赦の奴らが勝手にピックアップしているだけだからね」

 

「今夜大赦にでも忍び込んで資料でも見てみるよ」

 

 僕はそう言って姿を消す。

 

 次に彼女に出会うときに絶望を見ることになるとは思わなかった。



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犬吠埼樹 3

今回から乃木若葉要素を持ち込んでいきますよ。

だが、駄文だがそれでも問題ないだろうか?


 僕は大赦に居る春信に勇者に選ばれた子達のデータを持ってきてもらった。

 

「そうなのか、犬吠埼姉妹はあの夫婦の娘だったのか」

 

 僕たちが体を犠牲にした日に出した唯一の死亡者の2人の子供だった。

 

「彼女は僕の罪の塊か」

 

 僕はそう呟きながら資料を捨てる。

 

 彼女の姉は大赦を恨んでいるだろう、そしてヤツラにも恨んでいる。

 

 そんな彼女達にこれ以上役目をさせるのはいけないと思うが止めることはできない、それでも忠告だけはできる。

 

 だから僕は樹ちゃんに会うことがあれば忠告するつもりだったがそれは遅かった。

 

 次に樹ちゃんに会ったのは病院の中で樹ちゃんは声が出せないでいた。

 

 僕は遅すぎた。

 

 また、罪を増やしてしまった。

 

 

 7体のバーテックスを倒して病院に検査入院することになりその時に勇者システムの使用で声が一時的に出なくなり病院内を歩いていると出雲さんに出会った。

 

 出雲さんは私を見るなり驚いた顔をしてこちらに近づいてきた。

 

「どうして君がここに居るんだ」

 

 大声は出さなかったが出雲さんは焦っていた。

 

『検査入院でここに』

 

 私はカンペを使用して話す。

 

「―――」

 

 彼は私に聞こえない声で何かを呟き凄く後悔した顔をした。

 

「すまない」

 

 出雲さんはそう言ってどこかに行ってしまった。

 

 なぜ、出雲さんは謝ったのだろうそう思いながら私は勇者部のみんなが居る場所に向かう。

 

 数日して東郷さん以外の私たちは退院したがその間に出雲さんには出会うことはなかった。

 

 あの場所に行けば出雲さんに会えるかもと思い私は自然とその場所に足を運ぶと出雲さんはそこに居た。

 

 木にもたれ掛かりながら座っているが今までに見たことのないような雰囲気をしていた。

 

 私は近づいていくが出雲さんはこちらに気が付かない。

 

 近づいて出雲さんの顔を見てみると瞳に生気がない。

 

 この前まで普通だったのにこの数日でなにがあったのか気になり私は出雲さんの肩を触るとこちらに気づいてこちらに顔を向けた。

 

「やぁ、体調は悪いようだね」

 

 出雲さんは私の様子を知っているような口ぶりだった。

 

『はい、まだ声がでないです』

 

「そうか、それでは話しにくいね」

 

 出雲さんはそう言って私から視線を外す。

 

「今日は僕も気分が悪いからお開きだよ」

 

 そう言って出雲さんは立ち上がったと思うとそこには出雲さんの姿はなかった。

 

 私はその時、一瞬自分の目を疑ったがそれは見間違いではなかった。

 

 出雲さんは目の前から居なくなったのだ。

 

 本当に出雲さん何者だろうと気になるが知る術がない。

 

 

 

 僕は何もかもが遅かった。

 

 大切な人をヤツラを撃退するために命を落とした……その時の僕は大赦の連中に拘束されて動けなかった。

 

 土地神の声が聞こえる『巫女』の血を濃く受け継いだ僕は大赦の人間は危険だと知っていた戦いの前に大赦の血か牢獄に連れていかれた。

 

 土地神の声を聞いて銀が亡くなったことを知らされた。

 

 自分が居たら状況も変わったんじゃないかとその時は思った。

 

 その罪を償う形で僕は満開を代償を知っていながら数え切れないほどに使用した。

 

 そして抜け殻の様な人形が出来上がった。

 

 抜け殻になった今の僕は土地神の声は聞こえない。

 

 聞かないようにしていた。

 

 それが今回の様な事態を招いてしまった。

 

 これ以上僕はこの件に関わってはいけない。

 

 精霊の力を使って実体化することはもうないだろう。

 

 寝てしまった方が楽だ。

 

 僕は意識を闇の中に消すように消えるこの世界から意識を消すように。



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犬吠埼樹 4

樹ちゃんは今回で終わりです。

話的には短いかもしれませんがこれで次の話に行く。

次回はにぼっしーこと夏凛ちゃんですよ。


「貴方はまだ寝たら駄目だよ」

 

 声が聞こえる優しい声が聞こえる。

 

「貴方が諦めたら駄目」

 

 誰なんだ僕に話しかけるのは黒の世界に色を付けて話しかける人物を見る。

 

「君は誰」

 

 赤い瞳の女性は微笑みながら言う。

 

「貴方は私の名前を知っているよ」

 

 歳の離れた女性に知り合いはいないがどことなく同じような気配を感じる。

 

「上里ひなた」

 

 僕は自然と女性の名前を口にした。

 

 300年前に自分と同じ土地神の声を聞いた『巫女』僕の先祖に当たる人だ。

 

「君も大変な運命に巻き込まれたね」

 

「絶望しかない未来が待っているからね」

 

 僕はいつもの様に相手に自分の感情を読まれない口調で話す。

 

「いいんだよ、弱いところを見せてもここには誰もいない」

 

「貴方は頑張っている赦されてもいいんだよ」

 

 騙されるな、赦されるわけがないこの僕が赦されるべきではない。

 

 永遠に恨まれていくしかないのだ。

 

 だから、この言葉に耳を傾けてはいけない。

 

 心を閉ざさないといけない。

 

「立ち止まったら駄目だよ」

 

「あの子達は前を向いて歩いてるんだから」

 

「君が立ち止まったら終わりだよ」

 

「何でそんなこと言うんですか」

 

 僕は弱気な声で聞く。

 

「私は終わったけど君は生きている、だから諦めて欲しくないの」

 

「今の僕は生きているか分からない」

 

 あれでは死んでいるのと変わらない。

 

「君は動けるよ動く意思があればできる」

 

 僕は動きたくても動けない。

 

 動くことはできない。

 

 大赦の人間が監視しているから動くことができない。

 

 端末も大赦で保管されてるから戦うことはできない。

 

「今回は君にチャンスをあげるから頑張ってきて」

 

 そう言われた瞬間目の前は真っ暗になり次第に明るくなっていくがその風景は見たことある因縁の場所だ。

 

「樹海か」

 

 ここに足を踏み入れるのはあの時以来だ。

 

 思念体である体には勇者の服装に変わっている。

 

 なぜ、ここに居るのか思いながらも周りを見ていると壁が壊されて星屑が侵入している。

 

「勇者の暴走か」

 

 五人の内の誰かが壊したのかそう思いながらも襲ってくる星屑を武器を飛ばして葬っていく。

 

 彼女達ならこの困難を乗り越えれると信じて僕は動く。

 

 そして見つけるあの子を姉と一緒に戦う姿を見つけた。

 

「あれでは動くこともできないか」

 

 僕は彼女達に襲い掛かる星屑を一瞬で消し声だけをかける。

 

「君たちは行くんだアイツ等は僕が消してあげるから」

 

 その声に樹ちゃんは頷き姉の裾を引っ張り目で訴えかけ移動して行った。

 

「さて、来なよ星屑ども僕が相手をしてあげるよ」

 

 これで彼女たちを助けることができたのかは分からないがこれで良いかな……銀。

 

 

 

 

 

 

 

 東郷さんが暴走してバーテックスを倒した私は声が戻りいつも通りの生活に戻ったけど、あの日の以来出雲さんの声も姿も見なくなった。

 

 あの場所に行っても会えることはなかった。

 

 でも私は何時か会えると信じて毎日足を運ぶ。

 

 今日もあの場所に向かうと歌声が聞こえてくる。

 

 聞いたことのある歌声、私は歩く速さを速めて向かう。

 

 彼は居た。

 

 なぜか姿を見ると凄くうれしかった。

 

 そして彼はこちらを振り向き笑顔で言う。

 

「やぁ、また君の歌声を聞かせてくれるかな?」

 

「はい!」

 

 私は歌う、この人が褒めてくれたあの歌をそして歌い終わったら聞こう出雲さんの事を全部聞くんだ。



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三好夏凛
三好夏凜 1


今回から夏凜ちゃんが始まるよ


 俺は昔のダチに呼ばれて来たくもない場所に足を運んだ。

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

 俺を呼んだそいつはムカつく笑顔でそう言った。

 

「おい春信、俺をここに呼んだ理由は何だ? ふざけた用事ならお前の顔面殴るぞ!」

 

 俺は春信を殴りたい。

 

「いやぁー君に頼みたいことがあるんだよ乃木隼人君」

 

 よし、殴ろう。

 

「お前、俺がその名で呼ばれるのが嫌いなのを知ってて言ってるよな! 言っただろ!」

 

 俺は春信の服を掴み殴ろうとしたが繋ぎだされた声に殴ることができなかった。

 

「次の勇者候補が確定した、僕の妹もその中に含まれている」

 

「それでどうしろってんだよ、俺には何の権力もないぞ」

 

「そこには全く期待してないから大丈夫だよ、僕の妹を鍛えて欲しい」

 

「はぁ? 俺がお前の妹を鍛えるだと……嫌だね、他を当たれよここには俺よりも有能なゴミどもがわんさかと居るんだからよ」

 

「僕は君以上の人間なんか知らないよ」

 

「乃木家の神童と言われた君以外はいないよ」

 

「それは昔の話だ、今は只の凡人だ」

 

「まぁ、こんな話をして時間が勿体ないから歩きながら話そうか」

 

 そう言って春信は大赦の中に入っていく、俺は渋々後を追う。

 

「最初のバーテックスが来るのが早すぎて最初に選ばれた4人では苦労すると思って壊れていたスマホを修理しているんだ」

 

「待て、そのスマホってあの子だろ」

 

「今のところあれを大量に生産はできない」

 

「だからってお前は知ってるだろあのスマホは」

 

「知っているよ、知っているから使うしかなんだよ」

 

「隼人の気持ちも知っている……これで終わったら僕を殴ってもいいから夏凛を頼む」

 

 そう言って春信は振り向いて俺に頭を下げる。

 

「お前しか居ないんだ」

 

「今回だけだ、それ以外では手伝いはしないからな」

 

「夏凜が訓練しているところはここだ」

 

 そう言って春信は1枚の紙を俺に渡した。

 

「お前が案内するんじゃないのか?」

 

「いや、僕は夏凜には会わないよ」

 

「ったく、兄妹は仲よくしろよな」

 

「お前のところが羨ましいよ」

 

「まぁ、夏凜も何時か分かってくれるだろ」

 

「そうだろうかな? 嫌われてると思うけどな」

 

「バカかお前は? 妹思いな兄が嫌われるわけがないだろ」

 

 俺はそう言って紙に書かれた場所に向かう。

 

「まぁ、今回は俺に感謝するんだな」

 

 面倒ごとを押し付けられたがやるしかないか。

 

 迷うことなく訓練室に着いたのはいいが入りずらいな。

 

 園子、お兄ちゃん頑張れるかな? そんなことを思いながら部屋に入っていく。

 

「邪魔するぞ」

 

 入ると胡坐をかいて集中している夏凜が居る。

 

 俺が入ってきて目を開けて驚いている。

 

「は、隼人さん!」

 

「今日からお前の先生役になった」

 

「先生?」

 

 おいおい、聞いてないのかよ。

 

「大赦からの要望でお前の戦闘の教官役で来たんだわ」

 

 今日はなんか調子乗らないし明日からでもいいか。

 

「そんな訳だから明日からよろしくな」

 

 そう言って帰ろうと思ったがそうもいかなかった。

 

「今日からお願いします」

 

 お兄ちゃん、今日はお見舞いに行けないかも……



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三好夏凜 2

長くなりすいません、少しだけ鬱になっていたので暗い話だけを書いてしまいそうで怖くて時間がかかりました。

11月の満開祭り2の昼の部に参加します! なのでそれまでにこの小説を完結までに持って行きたいです。



 訓練を開始して数日経つが訓練の質は余り上がらないこれはどうしようか。

 

「難しいな」

 

 俺はお見舞い中なのにそんな事を呟いてしまった。

 

「お兄ちゃんどうしたの~」

 

 妹に心配されるなんて俺は駄目な兄だな。

 

「少し、頼まれごとをされてな」

 

 これは話す内容ではないからぼかそうとしたが妹は知っている風に呟いた。

 

「勇者のことだよね」

 

「お前には分かるか」

 

 俺はそこから真剣な顔をして話す。

 

「俺はまた繰り返すのかと思うと自分のやっていることが正しいのか思う」

 

 俺のせいであの子はいなくなった。

 

「だから俺に誰かを教える資格はないんだ」

 

「そんなことないよお兄ちゃん、お兄ちゃんの正義感がかっこよかったから憧れる人が多いんだよ」

 

「それがあの災厄を招いたんだぞ! 俺があんな姿を見せるから」

 

 あんな思いはしたくないんだ。

 

 俺は園子にごめんと告げてから病室を出て翌日にあいつに呼び出された。

 

「やぁ、隼人君の悩み聞いたよ」

 

 こいつは笑いながらそう言った。

 

「お前、人の妹に何聞いてるんだ」

 

「僕は定時連絡で彼女に会いに行ったら話してくれたよ」

 

 なんだか嫌な感じがする。

 

「そう言えば隼人君は教育免許持っていたよな」

 

「お前にそそのかされて取ったな、それがどうした?」

 

「今回の勇者候補見て見たいと思わないかい?」

 

「見たくない」

 

「そう言うと思ったから明日から讃州中学の教員として働いてもらうよ」

 

「拒否権が最初からないのは知ってるよ」

 

 俺は呆れながらも話を聞く。

 

「そこで君には勇者部の顧問をしてもらう手はずになっている」

 

「勇者部?」

 

「そう、そこに今回の勇者候補がそろっているんだよ」

 

「そこで俺に何をしろと言うんだよ」

 

「いや、君には普通に教員をしてもらうだけだよ」

 

 何か裏がありそうで怖いんだが……

 

「そこに居たら君の心のケア―もできると思うからさ」

 

 そう笑顔で言った瞬間、俺は春信を殴った。

 

「おい、お前は俺がロリコンだと思ってるだろ!」

 

「やだなぁ~彼女たちの活動を君には近くから見守ってもらいたいだけだよ」

 

「お前の考えがわからん」

 

「今はそれでいい」

 

 春信は一息ついてから述べる。

 

「君が変わるのを見て見たいんだよ」

 

 俺が変わる無理だろ、俺は壊して生きてきたのだから。

 

「行ったら分かるよ、彼女たちの輝きを君が忘れていたものが」

 

 そう言って春信は去っていく。

 

「俺が失くした輝きか」

 

 俺はそう呟きながら道場に向かう今日の鍛錬をつけに行くために自分の罪を増やしに行く。

 

「師匠、お待ちしていました」

 

 夏凜はそう言って俺を出迎えた。

 

「師匠はやめてくれよ」

 

 俺は苦笑いをしながらそう言ったが夏凜にはそう見えるのだろう。

 

「いえ、師匠の御蔭で自分が研ぎ澄ませれるのを感じますから」

 

 今日も鍛錬を行う自分の犯した罪を背負いながら新たな罪を増やす鍛錬を絶望を与えるために。



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三好夏凜 3

今回の話は長くなりそうと思いながら書いています。

満開祭りまでに間に合うかな……


 春信の裏の手引きにより教師になった俺は勇者部の顧問として家庭科準備室に訪れた。

 

「ここか」

 

 俺はノックをして中に入ると四人の少女が待っていた。

 

「乃木先生、遅いですよ」

 

 そう言って俺を出迎えたのは部長の犬吠埼風だ。

 

「すまない、職員会議が長引いて……自己紹介が遅れた俺は君たちの顧問になる乃木隼人、よろしく頼む」

 

 自己紹介した中で自分が知っている少女を見つけた、『鷲尾須美』今では東郷美森、俺の罪の一人だ。

 

 こんな少女達が今回の生贄になるのか。

 

 俺はそんな風に見ていたら元気一杯な子が話しかけてきた。

 

「乃木先生は得意な事ってあるんですか!」

 

 なんだかこの元気が銀に似ていると思ってしまった。

 

「得意な事か? これでも手先が器用なことだな」

 

 俺は自然にそんな風に呟いた。

 

 何なんだろうなこの空間はと思ってしまった。

 

 自ら誰かのために尽くしていく姿を見ると何度もそう思ってしまう。

 

 まるで昔の自分を見ているようだった。

 

 そして、あの子の姿を重ねてしまう。

 

 でも彼女たちは楽しそうにやっているそれだけは輝いて見える。

 

「はぁ、何やってんだよ俺」

 

 その姿を見ながら俺は電話を掛ける。

 

『師匠どうしたんですか?』

 

 電話の相手は夏凜だ。

 

「いや、練習のメニューをこなしているかと思っただけだ」

 

『それならしっかりこなしていますよ!』

 

 声を聞く限りは元気だな。

 

「そうか、仕事がなかったら見ながら訓練を見れるんだけどな」

 

『そ、そんな! お仕事があるんですから気にしないでください』

 

「我儘くらいは言わないと損することもあるんだよ」

 

 銀は俺に何も我儘を言わなかっただからこの子達の我儘は聞かないといけないと思ってしまった。

 

「先生、誰と電話してるんですか~もしかして彼女ですか?」

 

 近づいて来た風はそんなことを言ったがそれは違う。

 

「俺の教え子に電話してるんだよ」

 

 すまんと言って俺は電話を切る。

 

「剣を教えているんだよアレがいつ来るか分らんからな」

 

「ッ! 先生は知ってるんですか」

 

「俺は元々乃木家の人間だから大赦の事は大抵耳に入る」

 

「先生が来たのは私たちが選ばれたからですか?」

 

「そうだな……いや、お前たちが大赦の連中に選べれた、他の候補もいたが結城友奈の存在がデカいな」

 

 これは春信から聞いた話だ。

 

「そうですか」

 

 暗くなった風にどうゆう風に声をかけるか迷ったが言うしかない。

 

「お前たちにつらい思いをさせるかもしれないが大人の俺にできることがあるなら相談しろ? 五箇条にも書いてあることだからな」

 

 このまま平和のまま日常を過ごして欲しいと思って無駄な話だ。

 

 だから俺は見守ることしかできない。

 

 そんな俺に罪を増やすお前は俺に何をしろと言うんだよ。



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三好夏凜 4

来週に控えた満開祭り夏凜編で止まっている話、これはやばい終わらない。


ゆゆゆ二期と須美は勇者であるが始まることに興奮をしています。


 日が進みバーテックスが現れて部活内でいざこざがあったが俺が何もすることなく解決された。

 

 この光景を見て俺は若さは凄いなと実感した。

 

 そして俺の教え子である夏凜がやってきた。

 

「お前ら賑やかにするのは構わないが他の部活に迷惑かけるなよ」

 

 そう言って部室に入ると夏凜が友奈に怒っていた。

 

 それを見て俺は苦笑いをした。

 

 俺の学生の時はこんな日常を送っていなかったから微笑ましく思ってしまった。

 

 そんなことを思っていると夏凜が俺に近づいてきた。

 

「師匠聞いてくださいよ、こいつら勇者の自覚がないんですよ!」

 

「はいはい、お前は周りの奴に声が聞こえると思わないのか?」

 

 そう言いながら部室の椅子に座る。

 

「はぁ、ここんところ教師が面倒になる」

 

「いや、教師がそんな態度はダメでしょ」

 

「犬吠埼姉、俺は教師のふりをしたダメ人間なんだよ」

 

 そう言ってスマホを取り出す。

 

「大赦からの連絡はないな、俺の連絡は終わったからお前らはいつもの通りに頼むよ」

 

 さて、久しぶりに妹様のところに向かうか。

 

「園子、調子はどうだ?」

 

 俺は羊羹をお土産にしてそう言って病室に入った。

 

「お兄ちゃんの更生は進んでる~」

 

「お前はいつ鼻の長い男になったんだよ」

 

 そう言いながら椅子に座り羊羹を袋から出す。

 

「今日はこれでいいか?」

 

 そして羊羹を園子の口元に持ってく。

 

「美味しいか?」

 

「う~ん、メロン味のジェラートが食べたいな」

 

「ここに来る前に溶けるから無理だな」

 

 本当は持ってきたいんだよでもな溶けたジェラートは美味しくないだろうと思っているんだよ。

 

 本当は園子の喜んでいる顔が見たいんだよお兄ちゃんだからね!

 

「それで勇者部の方はどうかな?」

 

「バーテックスが来ないから平和そのものだなそれが続けばいいんだがな」

 

「そろそろ悲劇が来るから難しいと思う」

 

「お前でも何体のバーテックスが来るか分らないのか?」

 

「そこまでは分からないけど春信さんならわかると思うよ」

 

「そうか……あいつに聞くしかないのか」

 

 今度の出撃で満開を使わなければいいのだがと思っていたが現実は甘くなかった。

 

 俺にはバーテックスが来る時の感覚がないから春信からのメールでしか報告を受けることがなかった。

 

 いつ来るのか心配だったが部員が帰宅してから襲来するとは思わなかった。

 

 その日は職員会議中に春信からの連絡を受け急いで屋上に向かった。

 

「お前ら無事なのか!」

 

 そう言って行ってみると夏凜以外の勇者は気絶していた。

 

「師匠! 私たちやりましたよ」

 

 元気よく答える夏凜に俺は吠えるように聞いた。

 

「満開を使った奴はいるか!」

 

 そう言うと夏凜は少しだけ悔しそうな顔をして答えた。

 

「私以外の勇者は満開を行いました」

 

 俺はそう言われて一気に冷静になった、いや冷静にならないといけなかった。

 

「そうか」

 

 この子たちは何を犠牲にしたのだろうと考えながらも大赦に連絡をして病院への搬送と検査を依頼する。

 

 俺はこんなことしかできない。

 

 見守ることしかできない。

 

 なんて酷い大人なのだろうと自信に言い聞かせながら行動した。



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三好夏凜 5

もう無理だ。

来週までに終わらせることなんかできないよ。

ということで五話目です。


「夏の海は暑い」

 

 俺は只今、大赦が勇者部に労いを込めて色々と用意してくれたがそのせいで俺は監視という名の監視で同行している。

 

 あの戦いで四人の勇者は体の一部を神樹様に捧げている。

 

 それは元に戻らないものだけど俺たち大人は嘘を教えないといけない戦いの疲れで機能が低下したとそんな簡単な嘘を教える。

 

 それに本来は俺の仕事も終わるすべてのバーテックスを倒した今に勇者は必要ない。

 

 どこにでもありそうなヒーローの物語ならそうだがこの世界はそんな簡単なものではない。

 

 この世界の外は四国の外は滅んでいる。

 

 それは先祖の残してくれた書物に書かれていた。

 

 現在は昔よりも進行が深刻で四国の外は何もない。

 

 未知の空間が広がっているらしい。

 

 そしてバーテックスはまたやってくる。

 

 敵は休んでいるのではなく個体を作るために集合している。

 

 個体が復活すればまた進行してくる。

 

 そして戦い、満開して体の一部を減らしていく。

 

 それが今の大赦ができることらしい。

 

 聞くととても苛立ちそうな考えだ、だからと言ってお前が何か考えろと言われても何もないだから何も言わないで見ているだけなのだ。

 

 だから前の勇者である三ノ輪銀を皆殺しにしたのだ。

 

 さて、つまらない回想も終えて俺の目に映っているものでも見ていこう。

 

「乃木先生、座ってていいんですか?」

 

「俺はお前らの保護者の代わりだからな犬吠埼姉」

 

 中学生のくせに大人を心配するな。

 

「お前はこんな時ははしゃぐものだぞ」

 

 俺はあきれながら言う。

 

「そうでよね、この前までの事が嘘みたいに思えてしまって」

 

「誰だってそう思うよ、お前たちの立場に立ってこんな日常に戻ってきたら戸惑うよ」

 

「でも、夏凜は強いなと思います」

 

「そうか」

 

 俺が夏凜のほうを見ると遠泳していた。

 

「いつも通りにできてすごいと思いますよ」

 

「まぁ、夏凜にも思うところはあると思うけどな」

 

「先生はそこまでわかるんですね」

 

「一応、お前らの監視役だからな……それに夏凜は俺の教え子の一人だからな」

 

「夏凜が羨ましいですね、そうやってすぐに違和感が気づいてくれる人がいるなんて」

 

「俺は夏凜だけではなくお前たちのメンタルケアも担当しているからいつでも頼れ」

 

「遅すぎると何もかもがダメになる前にな」

 

「乃木先生がそう言うと怖いですね」

 

「あぁ、俺は毎回失敗してきたからなだから今回は間違いたくないんだよ」

 

「では、お言葉に甘えて遊んできますね」

 

 そう言って笑顔を作って海に向かっていった。

 

「無理に笑顔を作らなくてもいいのにな」

 

 でも今の日常を楽しむのもいいのかもしれない。

 

 いつか誰かが欠けるのかもしれないのだから。

 

「師匠」

 

 いつの間にか戻ってきた夏凜は俺の隣に座った。

 

「ほら、水分を取れ」

 

 俺はクーラーボックスからスポーツドリンクを渡した。

 

「ありがとうございます」

 

「でっ、お前は自分をあれだけ追いつめて何がしたいんだ?」

 

 俺がそう言うと夏凜は飲んでいたドリンクを喉に詰まらせた。

 

「い、何時から気づいていたんですか?」

 

「お前たちが病院でお菓子を食べていた時にだよ」

 

「師匠はすごいですね」

 

「まぁ、お前みたいな奴は昔から見てきたからわかるんだよ何を思っているのか」

 

「私は役に立てたんでしょうか?」

 

「あの日にお前がいなかったら戦力的には絶望的だっただろう」

 

「でも友奈達は満開して」

 

「もし、満開していなかったら?」

 

「そ、それは」

 

「今回はそう思っていいんじゃないのかお前がいなかったら終わっていたのかもしれないのだからな」

 

 今はそんな言葉をかけていたら大丈夫だろう。

 

 こいつはアイツと同じで強い子だからな。




夏凜ちゃんヒロインなのに空気だとか思わないでください。

作者が夏凜ちゃんを扱いにくくてこんな扱いになっているだけです。


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三好夏凜 6(完)

エピロ―グなしで今回の話は終わります。

夏凜はまじで動かしにくいこれは自分は凄く未熟者だからです。

満開祭り楽しかったです。黒羽焔さんともお話させてもらいました。

同じSSを書く人とお話しさせてもらえるのは自分にとって初めてだったので嬉しかったです。


 あの日常はどこに行ったのだろう。

 

 俺は園子の病室に来ているしかもすごく気まずい。

 

「なぜ、ここに乃木先生が」

 

 なんでここに東郷がいるんだよ。

 

「妹様のお見舞いだよ」

 

「やっぱり、乃木先生は乃木園子の兄だったんですね」

 

 俺は案内すると言って車椅子を押していく。

 

「ここが病室だ、二人で話してこい」

 

 俺はそう言って病室を離れたもしこの選択が間違っていたのなら……

 

 屋上で一人、たそがれながらコーヒーを飲んでいたら春信から連絡がきた。

 

「どうしたお前からの音声の連絡なんて珍しいな」

 

『お前はどこにいるんだ?』

 

「病院だが」

 

『今日は勇者部の子たちにあったのか?』

 

「いつも通りにしていたけどな……いや、様子がおかしかったな」

 

 犬吠埼姉に東郷、結城の三人の様子がおかしかった。

 

「何があった?」

 

『勇者の1人、犬吠埼姉が暴走した』

 

「そうか、お前に伝えるよあの子が園子に会いに来た」

 

『そうか、これが彼女たちの選択か』

 

「どうだろうな残りの3人の行動にかけるしかないだろうな」

 

『うまくいくだろうか』

 

「どうだろうな、だけどあいつらなら大丈夫だろ」

 

「なんだってあいつらは勇者だぜ」

 

『変わったな』

 

「そうか、ただ面倒になっただけだよ」

 

 最初から俺には何もできなのだから

 

「あいつらの選択を信じて帰る場所が必要なんだよ」

 

「夏凛の成長もすごいからな」

 

『お前が他人に自分の教え子を褒めるなんて珍しいな』

 

「お前が妬くかと思ってな、だけど夏凛は勇者部に入って変わったよ」

 

『そうか』

 

「なんだよ、そこは兄貴らしく嬉しがれよ」

 

『僕は隼人ほどシスコンじゃないからね』

 

「なんだよそれ、兄は妹の前ではさすがお兄様って思われる行動をするだろ」

 

 俺は可愛い妹の前ではそうだったな。

 

『お前は誰の目にもそんな風に映っているよ』

 

「そんなもんかな」

 

 すると世界が動く感じを感じる。

 

「始まったか」

 

『どうなるだろうな?』

 

「あいつらならできるだろ勇者だからな」

 

『もしもの時は夏凛の事頼むよ』

 

「はぁ、お前は自分の妹の事を他人に押し付けるなよな!」

 

 俺は携帯に叫ぶ。

 

「大体な夏凛が寂しがってるの知ってるだろ! あいつはお前と昔の様に仲良くしたいんだよ」

 

『今回の件が終われば僕はこれまで以上に忙しくなる』

 

「分かったよ、俺が面倒見てやるよ」

 

 俺は空を眺めながら言う。

 

「妹がもう一人いるみたいに可愛がってやるよ」

 

『まぁ、今はそれが現状か』

 

「意味は分からんが俺に任せろ」

 

 こんなことで俺の罪が減るわけじゃないがあいつらもいるなら寂しい思いわないが園子と同じくらいには可愛がろう。




夏凜「ねぇ、作者」

はい! 何でしょう!

夏凜「あんた、私の名前途中まで間違ってたわよね」

なっ、何のことで……すいません夏凛で書いてました。

夏凜「私だけ文字数少なくない」

それは……自分は三番目に好きなんですよこれだけは嘘ではありませんすいません!

では、次回は友奈ちゃんだよ


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結城友奈
結城友奈 1


友奈ちゃんの話はすんなりと出てくる、今まで不調が嘘のようだ!

これなら年内に終わりそうだ!

終われば映画までにわすゆの残りのキャラも書けそうだ書くぞやるぞ!

にしてもゆゆゆのアニメを見るとモチベが上がる。


「起きたか、出雲暁人」

 

 自分の名前だと思うものを呼ばれて振り向く。

 

「自分の名前を忘れたか……まだ君は使えるからこれを見てくれ」

 

 一枚の写真を渡されそこに移されている少女を見る。

 

「彼女は結城友奈、君が守らなくていけない者だ」

 

「守る?」

 

「そう、彼女は我々の希望だから君に彼女を守ってほしい」

 

「僕が彼女を守る」

 

 彼女の写真を見ながら呟く。

 

「彼女はこの世界には居ないと困る」

 

「僕が守れば」

 

「だが、君の端末は壊れていてバージョンアップに間に合わないのでバージョンを下げたこいつを使ってもらう」

 

 そう言って端末を渡せたが話が分からない。

 

「話は分からなくていい、それで結城友奈を守ればいいのだから」

 

「分かった」

 

 その言葉を聞いて僕はまた眠りにつく。

 

「君には消えてもらわなくてはならない、いかなる手を使っても」

 

 

 

 

 私たちが神樹様の勇者に選ばれて1ヶ月が経ち久しぶりにバーテックスとの戦闘がやってきた。

 

「戦闘目標確認殲滅する」

 

 そんな声と共に私たちの後ろから一人の男の子が颯爽とバーテックスに向かっていった。

 

「あんた何、一人で先走ってるのよ!」

 

 そう言って赤い勇者服を着た女の子がバーテックスに向かっていった。

 

「どこかで見たような」

 

 私はそう口にして男の子の動きを見た。

 

 刀を持ってそのままバーテックスの4つの足を斬りバーテックスを見上げて。

 

「切り裂く」

 

 そのままバーテックスを真っ二つにしてしまった。

 

「なに私の立場とってるのよ!」

 

「早く封印の儀をしろ」

 

 男の子は興味なさげに素気なく女の子に言った。

 

「あんたに言われるまでもなくやるわよ」

 

 そう言って武器を投げて封印の儀を行うとバーテックスから紫の霧が出てきた。

 

「邪魔だ」

 

 そう言って男の子は霧の中に入りコアを切り裂いてしまった。

 

「なんであんたはいいところまで持って行くのよ」

 

 こちらに向かってきながら男の子に怒っているが興味なさげに全く耳に入ってなさそうに歩いくる。

 

「君が結城友奈だな」

 

 突然声をかけられたがどこかで聞いたことのある声だ。

 

「えっ、うん」

 

「出雲暁人だ、君を守るために大赦から来た」

 

「守る?」

 

「そうだ、そのためにここに来た」

 

 そう言って出雲君はどこかに行ってしまった。

 

「何あれ?」

 

 風先輩の言葉も分かるけど出雲君はどこか東郷さんに似ていると思ってしまった。

 

「でも、あれって告白にも思えますよね」

 

 えっ!

 

「そうね、出会い頭に『君を守る』なんて」

 

「えっ、あれって告白なんですか!」

 

 私がわたわたしていたら後ろに居た東郷さんが呟いた。

 

「友奈ちゃんに告白」

 

 その言った東郷さんは黒色のオーラを纏っていた。

 

「で、でも大赦からって言ってたから告白じゃないですよ」

 

 私は笑いながらそう言ったがあの言葉を思い出すと顔が熱い。

 

 そんな色んな意味でビックリなことが起きた日から1日が終わり学校に転入生が2名来ていた。

 

 私のクラスには夏凜ちゃんが来て隣のクラスに暁人君が転入してきた。

 

 放課後に夏凜ちゃんを無理やり暁人君は話をするとすんなりついてきてくれた。

 

「大赦からの話はあまり知らない、結城友奈を守れとしか言われていない」

 

 そう言って窓際に背を預けて空を見ている。

 

「そいつは大赦からの預かりものよ」

 

「預かりもの?」

 

 風先輩は夏凛ちゃんにその話を詳しく聞いた。

 

「そう、最新の勇者アプリに適合しないから旧作の勇者アプリを使っている旧世代よ」

 

 部室に浮いている私の牛鬼を指さして説明を続ける。

 

「精霊がいない精霊の加護を持たない勇者よ」

 

「精霊の加護がないと違いがあるんですか?」

 

 今度は樹ちゃんが質問したら後ろに居た暁人君が口を開いた。

 

「精霊の加護がない勇者はダメージが肉体にそのまま反映され、バーテックスを殲滅するための封印の儀を行えない」

 

 ダメージが反映される。

 

「そ、それって死ぬかもしれないんじゃ」

 

 私が恐る恐る聞いたら暁人君は素気なく答えた。

 

「そうだな、勇者アプリを起動していたら少しだけ治癒力があるから問題ない」

 

 自分の事なのに気にしていない。

 

「自分に課せられたことをするだけだ」

 

 そう言って部室から出ていこうとしたが風先輩が止める。

 

「出雲も監視役としてきたのなら勇者部に来るんでしょ」

 

 風先輩は先ほどの話を忘れて勇者部の事を話し出した。

 

「そうだな」

 

 そう言って勇者部から出るときに暁人君は普通に言った。

 

「大赦の命令を遂行するなら命なんてどうでもいい」

 

 そう言って暁人君は帰っていった。

 

 なんでそんなに自分の命を軽く見れるのか分からなかった。

 

 彼の事をもっと知りたいと思ってしまった。




東郷「作者さん話の中に出てきた黒色のオーラはなんですか?」

 最初は黒いオーラって打ち込んだんですがテニヌの本を読んでたら黒色のオーラの方が東郷さんにぴったしだったので……

東郷「つまり私が老けて見えるんですね」

 その口は笑ってるんですけど目が笑ってないですよ……って別に老けているではなく古風なキャラが似てるかなって思ったんですけどね。

東郷「彼は武田信玄を模倣している点は素晴らしいと思いますが……」

 話が長くなりそうなので今回はここまでです!


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結城友奈 2

早い最近はネタが浮かんでくるので書く速さが異常じゃない。

というわけで2話目です。



 夏凜ちゃんと違い暁人君は勇者部の活動によく参加してくれる。

 

 参加してくれるのは嬉しいが話しかけても会話が続かない。

 

 もっと仲良くなりたいのに暁人君はどうでもいいかの様に話を聞き流す。

 

 それで私は暁人君に聞いてみた。

 

「暁人君はなんで勇者部の活動に参加するの?」

 

「君の行動を監視していたほうがいざの時に行動がとりやすい」

 

 そんな答えだった。

 

 バーテックスの襲来がないから暁人君が傷ついた姿は見たことないが想像もしたくない。

 

「でも、なんで私だけなの?」

 

「大赦から君以外の事は話されていない、だからほかのものは興味もないし関わりあう必要もないと思っている」

 

「それって寂しくない」

 

「寂しいという感覚が分からない、それに仲良くなってどうする?」

 

「友達ができて楽しい生活が送れるよ!」

 

「記憶がないからそんな事も忘れているし必要だと思ったこともない」

 

 そう言って静かに作業を続けていく暁人君、なんでそんな風に振る舞えるのだろう。

 

 私にはできない、したくない。

 

 皆で笑いあいながら過ごしたい。

 

「これから樹ちゃんの歌の特訓でカラオケに行くんだ! 暁人君も行こ」

 

 私がみんなの中に入れられる空気にしたい。

 

「必要ない、精神が弱いからそうなるメンタル面を強化すればそんなことで臆する必要もない」

 

 そう言って部室から出ていく。

 

「何よあいつは偉そうに」

 

 夏凜ちゃんは怒りながらそう言う。

 

「暁人って大赦に居た時からあれだったの?」

 

 風先輩が夏凜ちゃんに大赦に居た時のことを聞いた。

 

「えぇ、そうよ、あいつはいつも偉そうにして上から言ってくる奴だったわよ! 思い出しただけで腹が立つ!」

 

「最初の印象よりもドライな人なんですね出雲さんって」

 

 樹ちゃんは言われたことにショックを言いながら感じたことを言ってくれた。

 

「そうですね、友奈ちゃん以外の人との接触を避けてますし」

 

「バーテックスを倒す目的は同じだけどその理由事態が私たちと異なっているし」

 

 そう言って風先輩は私に視線を移した。

 

「まぁ、暁人は友奈に任せるわ」

 

「なんでそうなるんですか!」

 

「暁人とまともに話ができるのは友奈だけだし、私たちが話しかけても大事な内容以外はスルーされるし……部長の私にはお手上げよ」

 

「そうですけど」

 

「友奈にとっての行動をするんだから友奈個人のお願いなら聞いてくれるんじゃない?」

 

「頑張ってみます」

 

 そう言った私は暁人君とどうしたら仲良くなるのか考えてみるが浮かばない。

 

 うどんに誘ってみるとか……それだ!

 

 暁人君を誘ってかめやに来たのはいいのだけど何を話したらいいのかわからない。

 

「それで呼んだ理由はなんだ?」

 

 暁人君はうどんのメニュー表を見ながら言った。

 

「えっと、うどんが好きかと思って……」

 

「記憶にないだが、好きなのかもしれない」

 

 えっ、記憶にない。

 

「記憶がないのは辛くないの」

 

「さぁ、辛いと感じたことはない」

 

「そ、そうなんだ」

 

「記憶がなくても感じるままに生きればいい、今は受けた任務だけするだけだ」

 

 そう話している間に暁人君は肉うどんを頼んだ。

 

「それに友奈を守るためなら何でもする、それが今の自分にできる事なら」

 

「なんでそこまで私を守るの?」

 

「分からない、だけど僕はどこかでそんな約束をしたから誰かは忘れたが絶対に守ると約束した」

 

「そうなんだ」

 

「だから友奈が心配する必要はない」

 

 肉うどんが暁人君のところに到着して暁人君は静かにうどんを食べ始めた。

 

「ところで友奈は何杯うどんを食べるんだ」

 

 静かに横に置かれた器を見ながら聞く。

 

「難しい話をするとお腹が減って」

 

「面白いな」

 

 そう言って優しく微笑む暁人君はどこか懐かしくて温かかった。

 

「そ、そうかな」

 

「これが美味しいから箸が進むのは分かるがその年でそのカロリーは……いや、うどんだからそこまでカロリーはない」

 

 そんなに悩むことかなと思いながら私は笑ってしまったがこんな楽しい時間が一瞬で終わるとは思わなかった。

 

「近い」

 

 暁人君はうどんを食べ終わるとそんなことを言った。

 

「なにが近いの?」

 

「早く来い」

 

 暁人君は私の分もお会計をして店の外に出ると景色が怪しく光っていた。

 

「最悪の事態か」

 

 そう言っていたら端末に樹海警報の文字が出ていた。

 

「安心しろ友奈は守る」

 

 そんなことを言われながら景色は樹海に変わった。



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結城友奈 3

間が空きましたが何とかかけました。

年内に書ききることはできないな! 友奈ちゃんはじっくり話を練りながら書いていこうかなと思います。


 7体ものバーテックスが攻めてきた。

 

 この状況でも暁人君は静かにこちらを見て呟いた。

 

「自分は大丈夫」

 

 そう言ってバーテックスの群れに一人で向かっていった。

 

「待ってバーテックスの進行は遅いわ」

 

「遅いなら今のうちに襲撃した方がやりやすい」

 

「なんでそこまで無茶するのよ」

 

「こんなのないよ」

 

 私はそう言って暁人君を追いかける。

 

「あいつは毎回出すぎなのよ」

 

 そう言って夏凛ちゃんが私の先を行って暁人君に合流した。

 

「封印の儀をしてくれ」

 

 夏凛ちゃんが合流した時にはバーテックスの一体の行動を封じていた。

 

「言われなくても分かってるわよ」

 

 夏凛ちゃんが封印の儀を行うとコアが出てきたが勢いよく回りだした。

 

 そんな突然な事態でも暁人君は落ち着いていた。

 

「まずは一体目」

 

 そう言って武器も持たずにコアに勢いよくジャンプするとコアを殴り回転を止めるが腕から血を流している。

 

 コアの回転を止めた時には東郷さんがコアを打ち抜き封印をした。

 

「暁人君、腕は大丈夫」

 

 私はすぐに暁人君の近くに行き腕のけがを聞くが静かに。

 

「問題ない」

 

 そう言って次のバーテックを討伐しようと動き出すが凄く頭に響く音で動けなくなってしまった。

 

 周りの私たちは動けない中、暁人君は自分の両手の小指を自分の耳に勢いよく突いた。

 

 その行動に私たちはとても不愉快な気持ちになったがそんな行動をとった暁人君は先ほどと変わらない動きでバーテックスに斬りかかる。

 

「音なんか聞こえなければどうということない」

 

 近づいていき鐘の付け根を破壊した。

 

「はっ、今のうちに」

 

 そう言って風先輩は後ろの二体を斬りつけた。

 

「三体の封印を行うわよ」

 

 風先輩がそう言って封印を行おうとしたらバーテックスが引いていく。

 

 その中でも暁人君は戦闘態勢を崩さない。

 

 それがよかったのか合体したバーテックスの攻撃は私たちを追いかけてくる追尾型だった。

 

「追いかけてくるなら相手にぶつければ」

 

 そんな現実ではないような発想をしたけれど正面から攻撃がやってきた。

 

 駄目だと思ったとき自分の横から何かが飛んできて私を突き飛ばした。

 

「暁人君」

 

 暁人君は私を突き飛ばして攻撃を受けてしまった。

 

 私は直ぐに暁人君のそばによるがそれは見てはいけないような姿だった。

 

 体の至るところは火傷をしていて服も焦げていて物が焦げたような匂いがする。

 

 見てはいけないと分かっていても目線が外せない。

 

 皆が傷ついているのに一番暁人君を心配してしまう。

 

 このままだと暁人君が死んでしまう、そんな事にはさせてはいけない。

 

 だからやることは一つだ!

 

 

 バーテックスの攻撃から友奈を庇って気絶していたみたいだ。

 

 体は痛いが何とか動くが激しくは動けない。

 

「うっ」

 

 体を動かそうとすると体のあちこちが悲鳴を上げる。

 

 だけど動かないといけない、そうしないといけない。

 

 体に鞭を打って立ち上がりふらつきながらも体を動かす。

 

「あんたそんな体で何してるのよ!」

 

 封印の儀をしている夏凜から怒鳴られるがそんなことはどうでもいい。

 

「友奈は何処だ」

 

「その体で友奈を守るって言うんじゃないでしょうね」

 

「それが使命だから」

 

 そう言って上を見上げると御霊が空に浮かんでいた。

 

「あそこにいるのか」

 

 あの場所に行ける手段がないそれに意識も朦朧としてきた。

 

 今でもできることはあると思いながら最後の力を入れながら刀を握り空に向かって全力で投げる。

 

「頼む」

 

 そう言って視界はまた暗闇に包まれた。




「やぁ、作者さん」

 お、お前は樹ちゃん編の出雲君ではないか!

「僕がここに居るのがそんなにも驚くことかな?」

 驚いてないよ! 友奈ちゃん編なのになぜにと思っただけ……

「それよりも作者さん、君は小説を書かずに何をしていたんだい」

 え、えっと姫路の花田丁に行って遊楽舎の店長に会いに行ったりスクフェスACで遊んだりしてました。

 で、でも仕事も忙しかったんだよ!

「パソコンを打つ振りをして寝ているのに」

 それは報告書を作ろうと思ったら眠気がして……ってそれは関係ないじゃん!

 リアルな理由は気分がハイになったりロウになったり鬱みたいな症状が出てて病院に行ったら精神病の疑いがありました。

「ほら、最初から本音で話せば済むのに」

 なんだか悲しので次回をお楽しみに!


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結城友奈 4

話ができるまで時間がかかりましたがその間にお気に入り登録が50件を超えているのを見て嬉しかったです。

それを見てしまって早めに話を書かなくてはいけないと焦ってしまったりしましたが映画公開までに残りをかき上げたい。

文才が欲しいと願ってしまう。


 目が覚めると白い天井が目についた。

 

 体に痛む個所はあるが受けないほどではない。

 

「あれから何時間経ってるんだ」

 

 そんな疑問を浮かべながらベットで横になっていると扉がスライドする音が聞こえてくる。

 

「暁人君目が覚めたんだ」

 

 そう言って友奈が入ってきた。

 

「どれくらい眠っていた」

 

「三日間は寝てたよ、凄く心配したんだよ」

 

 顔を見たらどれほど心配されていたのか分かる。

 

「それはすまない」

 

 

 私たちはバーテックスをすべて倒したけど暁人君は重傷で一番ひどかったがいつ目を覚ますのかもわからなかったが私は毎日彼の部屋にお見舞いに行く。

 

 目を覚ました時に誰かいた方が寂しくないからだ。

 

 そして今日、私が行った時には暁人君は目を覚ましていた。

 

 どれくらい眠っていたのかだけをきいてきたけど私はお礼を言いたかった。

 

 諦めそうになった時に私のもとに届いた暁人君の刀。

 

 それの御蔭で諦めることなく御霊を封印することができた。

 

「ねぇ、暁人君」

 

 私は自分が置かれている立場を忘れて言った。

 

「今度、うどん食べに行こうよ」

 

 どんな返事をされようが彼を無理やり連れていくのは決定している。

 

「そうだな」

 

 だからこの返事は反則だ思ってもいなかった。

 

「なら、約束だね」

 

 そう言って私は笑った。

 

 味覚がないのにこの約束をした私はどうなのだろうと思ったけど関係ない。

 

 だけどそんな約束は果たされることなく私達は退院して部活に顔を出すが暁人君の姿だけがない。

 

「風先輩、暁人君がいないんですけど」

 

 私は気になり風先輩に聞くが複雑そうな顔をして答えた。

 

「暁人はバーテックスを全て倒したことによりここに在籍する理由がなくなったから大赦に戻った」

 

「私が聞いたのはこれだけよ」

 

 嘘だ、暁人君は約束をしてくれたのにどこかに行くはずがない。

 

 なんでこんなことになるんだろう。

 

 私は少し落ち込みながら東郷さんとは別で帰宅していたら彼が居た。

 

「待ってた」

 

 彼はそう言って私に寄ってきた。

 

「なんで、大赦に戻ったんじゃ」

 

「友奈との約束があったからきた」

 

「ありがとう」

 

 自然とそんな言葉が出たけど彼は少しだけ微笑んだ。

 

「なんだいそれ、友奈なら早く行こうと言うと思ったよ」

 

 彼は私が知っているだった。

 

「それじゃ、早く行こ」

 

 そう言って彼の手を掴んでかめやに向かおうとしたが仮面を付けた人が出てきた。

 

「出雲暁人探したぞ」

 

 そう言って仮面を付けた人は暁人君に近づいていく。

 

「今日は外出させてくれる約束ではなかったか」

 

 暁人君は静かにそう言ったが仮面の人は携帯端末を弄り暁人君に言う。

 

「そんなことは私は聞いていない、大赦から脱走した君を連れ戻すことを言われた」

 

「っち、そこまでしてお前たちは友奈との接触を阻むか」

 

 そう言った暁人君は何かを知っている顔だった。

 

「さぁ、私たちは上に言われたとおりに君を迎えに来ただけだが?」

 

 それでも仮面の人たちは知らないと言う。

 

「もし、ここでお前たちの言葉を無視したらどうなる」

 

「その時はその時の判断を私たちは承っている」

 

 そう言われ暁人君はこちらを向いてすまなそうな顔をした。

 

「すまないな、何時会うか分からないがその時にでも」

 

 そう言って私が掴んだ手を離して大赦の人の元に行く。

 

「会えるよね」

 

 私がそう言うと暁人君は足を止めて呟いた。

 

「友奈がそう強く願うなら会える、近いうちに」

 

 その言葉の意味は少しだけ分からなかったがその言葉の意味を知るのは近い日に知った。

 

 でも、暁人君が大赦の人に元に行くとき少しだけ不安に思った。

 

 なぜ、彼だけあんな扱いを受けるのだろうと。

 

 まるで犯罪者を扱うような言葉だった。

 

 本当に彼は何をやったのだろうと思った。



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結城友奈 5

もうすぐ映画が公開される

間に合わないよ

でも何とかして間に合わせる

公開初日はfripsideのライブで埼玉に行くので見れないですがね

舞台挨拶も見に行けない

くそこれも大赦に仕掛けられた罠のなのか!

大阪に日曜の夜に帰る自分への策略なのか!




 大赦からのご褒美で海に行き楽しんだけど、そこには暁人君の姿はなかった。

 

 それからまた、バーテックスがやってくると言われて新しい端末を渡されたが暁人君は大赦から派遣はないと風先輩は言った。

 

 なぜだろう、なぜ今回は暁人君は来ないのだろう。

 

 そんな事を思ったがそれをそれを解決してくれることが起きた。

 

 バーテックスを倒して学校に戻ったと思ったが大橋の近くに居た。

 

「あれ?」

 

 私と東郷さんだけこの場所に居る。

 

 だけど、その近くにベットに寝ている誰かが居た。

 

 その子は前勇者と言った。

 

 そこで勇者の秘密を聞いたけど私は聞かないといけないことがあった。

 

「あの、出雲暁人君を知っていますか?」

 

 その質問をするとその子は目を見開いて言った。

 

「いずさんを知っているの!」

 

 その言葉は今までのゆったりとした雰囲気とは違った。

 

「はい、この前まで私たち勇者部と一緒にいました」

 

「この前まで?」

 

「大赦の人が暁人君を連れて行きました」

 

 そう言うとその子は納得した様に言った。

 

「そっか、大赦はまだいずさんを利用するつもりなんだ」

 

 利用する。

 

 その事を聞こうと思ったら大赦の人たちが出て私達は連れ戻された。

 

 大赦の人は暁人君をなんで利用するのだろう。

 

 何のために命を落とすような真似をさせるのだろう。

 

 そんな事を考えた、私たちはなぜ大怪我をしないのかそんな些細なことは直ぐに知った。

 

 東郷さんはあらゆる手段で命を経とうとしたがそれを精霊が邪魔をしたという。

 

 精霊が守らなければ死ぬ。

 

 暁人君には精霊はいない。

 

 答えは簡単だった、大赦は暁人君の命なんかどうなってもいい。

 

 軽いものだと見ている事がわかった。

 

 頭が悪い私でも分かってしまった。

 

 暁人君は大赦にいいように使われているだけだ。

 

 なんで、それを知っていて暁人君は何の為に戦うのと私は思った。

 

 東郷さんが大社に神樹さまに反旗した時に彼は私の前に現れた。

 

 変身ができない私の前に現れてくれた。

 

「助けに来た」

 

 勇者の恰好をした暁人君が私の前に現れた。

 

「暁人君」

 

「友奈は東郷を止めろ、それはお前にしかできない」

 

 暁人君は武器を構えて言う。

 

「友奈が今したいことをしろ、その為の道づくりならする」

 

 そう言って飛び出していくと光が暁人君を包むそこから現れたのは満開した姿の暁人君だった。

 

「満開してる」

 

 今の暁人君は精霊の加護を受けている。

 

 それは死ぬことはないが体を失う負の代償。

 

 誰が暁人君にそれを私のかは知らないが暁人君死なないことを確信した。

 

 この戦いが終わったら私はするべき行動をする。

 

「東郷さんを止めないと」

 

 だから私に力を貸してくれた暁人君の為にも私は私のしたいことをする。



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結城友奈 エピローグ

無理矢理終わらせた感が半端ないけどこれにて勇者部編は終わりました。

そんな訳で皆様にリクエストを貰う企画をします。

短編で皆様に勇者部の誰かのこの話を読んでみたいと思ったリクエストを活動報告にて募集します。

募集の締め切りはしません。

そこに書かれたリクエストは全てやります。

それと並行しながら鷲尾須美は勇者であるの『乃木園子編』、『三ノ輪銀編』をやりたいと思っています。

物語の形は出来ています。

勇者部の五人の話よりかは悲しい物語になる予定です。

これからもこんな未熟者なりりなのの作品を読んでください。


 私が目覚めて数日が経った。

 

 いつもの日常に戻っても彼の姿はなかった。

 

「暁人君」

 

 私は学校の屋上でそう呟いた。

 

 あの日から彼の姿を見ていない。

 

 あの日、私以外は彼の姿を見ていない。

 

 誰も彼を見ていないのだ。

 

 悔しい、あの日の事を何も言えていない。

 

 だから私は暁人君に会いたい。

 

「呼んだか」

 

「えっ」

 

 私は声の方を振り向くとそこには会いたかった人がいた。

 

「死人を見たような顔をしているがどうした?」

 

 片目には眼帯を付けているが他人の感情を理解しない彼はそこに居る。

 

「暁人君!」

 

 私はそう言って駆け出し彼に抱き着く。

 

「良かった、良かった」

 

 私は涙を流しながら暁人君に抱き着きながらその存在を確かめた。

 

「少し治療が長引いた」

 

 暁人君はそう言いながら私の頭を優しく叩く。

 

「満開の後遺症を甘く見ていた」

 

 でもその声には優しさがある。

 

「病院でその過酷を思い出したが使って後悔はしていない」

 

「ありがとう」

 

 私は暁人君を見上げなら感謝した。

 

「感謝するのはこちらだ、記憶を体を解放させてくれたんだ」

 

「でも、暁人君が居なかったら東郷さんと話せなかった」

 

「いや、友奈ならできた」

 

「暁人君が居たから最速で最短で行動できたんだよ」

 

「なら、そうしておくよ」

 

「今日は友奈に感謝を言いに来たのだが逆に感謝されるか」

 

 暁人君は少しだけ考えるような仕草をする。

 

「暁人君は何時頃に学校に来れるの?」

 

 私はそれを知りたいまた皆で部活をしたい。

 

 けれど、暁人君の顔は少しだけ困っていた。

 

「すまないが俺は学校にはいけない」

 

「えっ」

 

「俺と園子が動けない間に大赦は過激派が主権を握られた」

 

 暁人君は現状の説明をするけど頭に入らない。

 

「大きな組織は一枚岩ではないのを知ってほしい」

 

「御三家の内の乃木家、出雲家は力を失い過激派である者が横暴に権力を振るい」

 

 そこで暁人君は苦しい顔をしながら言った。

 

「出雲家の俺を殺そうとした」

 

 それは衝撃的な事だったが自然と分かってしまった。

 

「そう、友奈も知っている旧勇者システムを用いてのバーテックスとの戦闘だ」

 

「大赦でもそれなりの力を持っている出雲家が消えれば過激派が一気に力を振るう」

 

「でも、俺は生きているだから過激派を洗うために時間がかかる」

 

「安全な勇者システムの開発にも関わらないといけない」

 

「だから俺は学校には行けそうにもない、けれど可能性は低くない」

 

「友奈には待ってもらうことにはなるけど俺は友奈の元に戻ることを祈って欲しい」

 

「大赦の内部を洗うのは大変な事かも知れないけど」

 

 だから私は言う。

 

「勇者部五箇条、なせば大抵なんとかなるだよ」

 

「ありがとう」

 

 私はそっと暁人君から離れる。

 

「うん、待ってる」

 

 私は貴方に微笑む。




この作品はこれで完結にはなりませんのでこれからもごゆりとお楽しみ下さい。


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番外編
犬吠埼風 誕生祭記念


挿絵を描こうと思いましたが時間がなく描くことができませんでした。


 5月1日は勇者部部長、犬吠埼風の誕生日でありそれをサプライズで祝うために2人の勇者部員が裏で行動をしていた。

 

「遥さん、今日はお願いします」

 

 発案者である少女、犬吠埼樹は姉の彼氏である吉野川遥と共に準備をしていた。

 

「時間稼ぎ任されたよ」

 

 そう言って2人は行動に入った。

 

 発案者の樹は昼休みに学校を早退して家でサプライズの準備を遥は早退した樹を心配する風を少しでも長く足止めをする、それが2人の作戦でありその為に他の勇者部員にも手伝って貰うことになった。

 

 そして、放課後に入り勇者部の部室では風は案の定そわそわしていた。

 

「風先輩、そわそわしてますけどどうしたんですか?」

 

 遥は理由を知っているのに風にそんなことを聞いた。

 

 それが勇者部員への合図になった。

 

「き、聞いて遥君」

 

 樹がと言いかけた瞬間、勇者部の部室のドアが開いて友奈が慌てて入ってきた。

 

「大変大変!」

 

 友奈の両手は大きな段ボールでふさがっていた。

 

「こんなにいっぺんに捨てられてたんだって!」

 

 箱の中から大量の子犬と子猫が出てきた。

 

「12匹、多すぎる」

 

 遥はその数を数えてひっそりを呟いた。

 

「そ、それじゃあ、いつも通りチラシとホームページで里親を探すということで、私は先に帰……」

 

 風はいつも通りに仕切り指示を出して帰ろうとするがそれを東郷が阻止する。

 

「風先輩。今月のスケジュールなんですけど休日が多いので、調整が必要かと」

 

 風は苦虫をつぶしたような顔をした。

 

「そのことは、後日改めて……」

 

 そう言って風は帰ろうとするが段ボールから子犬と子猫が勢いよく飛び出した。

 

「わぁ~、子犬たちが脱走しました」

 

 それを見て風は諦めてしまった。

 

 そして、夜まで部活は続いて風は疲れながらも樹の心配をしていた。

 

「今日はすっかり遅くなりましたね」

 

 帰り道、遥は遅い時間に帰る風を自宅まで送っている。

 

「樹、大丈夫かな」

 

 遥はそんな風を見て微笑んだ。

 

「大丈夫ですよ」

 

 そうしている家に着き風がドアを開けるとクラッカーが鳴った。

 

「お誕生日おめでとう!」

 

 樹ちゃんは満点の笑顔で風を迎えた。

 

「……は!?」

 

「遥さん、上手くいきましたね」

 

 風はその言葉に遥の顔をみる。

 

「誕生日おめでとうございます」

 

 そう言って遥は鞄から一つの袋を取り出した。

 

「これは僕からです」

 

 受け取る風は少し顔が赤かった。

 

「開けてもいいかな」

 

 遥は静かに頷き風は袋を開けるとネックレスが入っていた。

 

「あ、ありがとう遥君」

 

「それでは僕はこれで」

 

 遥は自分のすることが終わり帰ろうとしたら

 

「遥さんも一緒にご飯食べませんか?」

 

 樹ちゃんが止め。

 

「ねぇ、遥君も食べて行ってよ」

 

 そう言われた遥は断れなくなりご飯を頂くことになったのだが……

 

「これ全部、樹が作ったの」

 

 テーブルの上にはたくさんの料理が並べられていた。

 

「お姉ちゃんに楽させてあげたくて」

 

 樹は頬をかきながら言った。

 

「美味しいかどうかは自信ないけど」

 

「そんなことないわよ、美味しいにきまってる」

 

 そう言って椅子に座り僕たちは料理を食べ始める。

 

 僕は味が分からないが風先輩は涙を流しているのだから美味しいのだろう。



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ありふれた日常

完結しても皆さんが読んで下さってお気に入り登録が90件超えたので思い付き程度で書いてみました。

読むも読まないも皆様のご自由ですが三ノ輪銀編を読んでかお読みください。


「まだ、銀は来ないの」

 

 須美は隣でお怒りになっている。

 

「まぁ、いつもの事じゃないの」

 

 僕はそんな事を気にしないで小説を読んでいく。

 

「何時もの事は分かるけど一時間よ」

 

 銀だけが集合場所に来ていない。

 

 乃木は須美の膝でスヤスヤと眠っている。

 

 凄く眠りやすそうだ。

 

 僕は木陰で一冊目の本を読み終えるところだった。

 

「心配なら電話をかければいい」

 

 こんなやり取りをしていたら変なセンサーを搭載している乃木が反応しそうだ。

 

「乃木、寝たふりは止めろよ」

 

 何となく直感的に言ったのだが須美の膝の方から声がした。

 

「むむ、このまま会話を楽しみたかったのに~」

 

 ほら、変なセンサーが働いていた。

 

「そのっち、起きてたの」

 

「いずさんと夫婦みたいな会話の時に~」

 

 それって数分前からですよね。

 

 夫婦、それはない。

 

 怖いし。

 

「ふ、夫婦ってまだ」

 

 まだってなに。

 

 ならないから暁人さんはこの物語は死んでるから!

 

「2人とも盛り上がっているところ悪いんだけどこの物語のヒロイン知ってるよね」

 

「銀よね」

 

「みのさんだよ~」

 

 なんで2人は間髪入れづに答えれるんだよ。

 

「分かって言ってるんだよね」

 

「いずさんキャラ崩壊してるよ」

 

「僕が悪いの! お前たちの方がキャラ崩壊してるとおもうんだけど!」

 

 そうしている内に遅刻の銀がやってきた。

 

「どうしたのさ暁人がキャラ崩壊してるけど」

 

 お前もか!

 

「これは夢なのか、夢に違いない」

 

 そうだ、僕は死んでいるんだ。

 

 だからこれは僕の夢なんだ。

 

 そうに違いない。

 

「それで、今日はなんで僕も呼んだんだ」

 

「イネス行くのに暁人誘わないのも可哀想だとおもって」

 

「図書館で本を読んでいる方がいい」

 

 そうだ、これで図書館に行けば夢は醒めるはずだ。

 

「イネスにレッゴー!」

 

 銀は僕の襟首を掴んでそのまま歩き始める。

 

 力が強くて首が絞まる。

 

 これは死ぬ、その前に死んでた。

 

 少ししてから解放されたが心配してくれた須美の顔が凄かった。

 

 なんだろ、これが恋する少女がしていい顔なのだろうか。

 

「イネスに来るのはいいけど」

 

 全員うどんを食べている。

 

「うどん食べるのに来るか」

 

 なんで僕の隣に須美が普通に座ってるのかな。

 

「暁人君、これ美味しい」

 

 須美はうどんを食べさせようとしているがそれは振りなの? 平成時代のコントをしたいの?

 

「それ同じうどんだから」

 

 そう、食べているのは同じうどんなのだ。

 

「だったら」

 

 須美は僕の前に自分のお椀を置いて僕の器を素早く奪い食べてしまった。

 

「これで暁人君は私のうどんを食べるしかない!」

 

 何だろ、一番キャラ崩壊してるの須美じゃない。

 

「じゃ、頂います」

 

 そう言って食べようとした時には目の前が真っ白になった。

 

 目が覚めたのだろう。

 

 白い部屋。

 

 そうだ僕は呼ばれたのだ。

 

 夢とは違い失った腕はないままだ。

 

 左目もない。

 

 服装は学校の制服だ。

 

「うどんが食べたい」

 

 夢を思い出したわけではない。

 

 うどんが恋しい。

 

 食堂に向かうと白髪の男がエプロンを付けていた。

 

「どうした」

 

「うどんが食いたい」

 

 少ししたらうどんを出された。

 

「それにしてもうどんが好きなんだな」

 

 僕はうどんを啜ってから答えた。

 

「うどん以上に美味いものがあるか?」

 

「何時の時代の考え方だ」

 

「この時代よりも未来だよ」

 

「未来も大変の様だ」

 

「神が敵だからな」

 

 この人とは話しやすい。

 

「またうどんが食べたいのなら来るがいい」

 

「そうさせてもらうよ正義の味方」

 

 僕は食べ終えた器を戻して廊下に出る。

 

「こんな時間に何してるマスター」

 

 存外、こんな時間も大切なのかも知れない。



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リクエスト 疑似親子結成?

ゲートさんからのリクエストです。

風編後からゆゆゆいの世界軸に持って行くような形です。

なので主人公は吉野川遥君と小学生時代の遥君(出雲暁人)が登場します。

小学生の遥君は全て暁人と書いているのであれ?って思われる方もいるかもしれませんが風編を読み直してもらえれば分かります。

ちゃんと風編で遥君の回想は全て暁人と書いていますので


「遥さんとお話しできて嬉しいです」

 

 過去の自分が自分に話しかけられると少しむず痒い。

 

「あはは、遥さんはよしてくれよなんか暁人君に言われるとむず痒いよ」

 

 僕は頭を掻きながらそう言うがこの子はそれを良しとしない。

 

「いえ、俺は年上にそんな態度はとれませんよ」

 

 本当に礼儀正しいんだけど礼儀正しすぎるんだよね。

 

 満開の代償が戻ってきているから記憶も少しずつであるが戻っているけど僕って変わりすぎだよね。

 

「待って、マイシスター!」

 

 遠くの方から風の声が聞こえるのと走る足音が聞こえてくる。

 

 僕はふと考えるが樹ちゃんが走るようにも思えないんだけどなとそんな事を思っていると僕らの間を銀が通り過ぎようとしていた。

 

「ちょっと、通りまーす!」

 

 そう言って僕らの間を通り過ぎようとしたが暁人君はそれを良しとしなかった、僕の腕も自然と動いていた。

 

「廊下を走るとはどういうつもりだ銀」

 

 そう、暁人君は言いながら僕らは銀の襟首を掴んでいた。

 

「ちょっと暁人に遥さん離してくれないと首が絞まります」

 

 そう言って銀はバタついていた。

 

「あっ、ごめんよ自然と腕が動いていたんだ」

 

 僕はそう言って離してあげるが暁人君は掴んだままだ。

 

「銀、お前は何をしでかしたんだ」

 

 僕の横で鬼の様な顔をした暁人君が居る。

 

「何もしてないって」

 

「ならなぜ風さんがお前を追いかけているんだ」

 

 何となく嫌な感じがするから早く来ないかなと待っていると息切れした風がやって来た。

 

「ハァハァ、やっと追いついた」

 

「風なにがあったの?」

 

 僕は二人の喧嘩を聞きながら風に尋ねた。

 

「その事なんだけど私が悪いのよ」

 

「なにがあったか聞かせてもらえないかな?」

 

「あれ、遥君怒ってない?」

 

「怒ってませんよ」

 

 僕はニコニコしながら風に事の事情を聞いた。

 

「まぁ、風が悪いことは悪いけど暴走した銀も悪いよ」

 

 そう言って僕はその場に2人を正座させながら説教をしていた。

 

「なんだかこれだと親父に怒られてるみたいです」

 

「やめぇてこれだと私が遥君に何も言えなくなるから!」

 

 その風の言葉に銀は不思議そうに言った。

 

「あれ、もしかしてお2人って付き合ってるんですか!」

 

 なんて鋭い子なんだ。

 

 そして隣から鋭い目つきで睨まれているんですけど。

 

「勇者部の人は知っているんだけど余りこう言うと喰いつく人がいるしね」

 

 僕は人差し指を口元に持って行き内緒にしてとお願いした。

 

「おぉ、そうなると遥さんは義兄さんになるんですね」

 

「そう言われ慣れてないから恥ずかしいな」

 

 僕は頬を掻いて恥ずかしがっているが隣の風は顔を真っ赤にしていた。

 

「となると暁人からしたら風さんは義姉になるのか」

 

 その言葉を聞いて暁人君は少しだけ複雑そうな顔をしていた。

 

 彼は分かっているんだろう僕が君だと言うことに、でも進む未来が変わればそれもまた違うかもしれない。

 

「となるとあたしたちの立ち位置的には娘と息子になるんじゃ」

 

「いや! その過程はどこから来るの、別に遥君と夫婦が嫌じゃないけれど」

 

 そう言っているから僕は笑顔で答える。

 

「この時間が何時までも続くわけじゃない、でもこの時間を大切にしたいって思うならそれでいいんじゃないかな?」

 

 僕は少しだけ屈んで銀と暁人の頭を撫でる。

 

「まぁ、父親としては少しばかり若いかもしれないけど2人がそう望んでいるなら僕はいいよ」

 

 そう言って風に言葉を投げた。

 

「遥君のその言い方ズルいじゃない」

 

「よぉし! 改めて樹お姉ちゃんに挨拶だ!」

 

 そう言って銀と風は前を歩いていく。

 

「ほら行こう暁人」

 

 僕はそう言って暁人に手を差し伸べる。

 

「本当に遥さんは後悔してないんですか?」

 

「僕には守る人が居る、それに暁人にも守りたい人が居るだろ」

 

「そうですが」

 

「その守りたい人は暁人にしかできないんだ」

 

 そう言って僕は差し伸べた手の小指以外を閉じた。

 

「だから暁人が守って欲しいんだ約束できるかな」

 

 その約束は本当に叶うのかは分からないけど僕にできないことを君はやらないといけない。

 

「約束します」

 

 そう言って繋がれた小指で約束をした。

 

「遥君置いていくわよ~」

 

 廊下の先で待っている風と銀は笑顔でこちらに手を振っている。

 

「ほら、待ってるから行こう」

 

 そう言って手を取って合流しに行く。

 

 これは叶いもしない約束の物語、でもこの約束が守られるなら僕は嬉しいよ。




なんか最後の方は酸っぱい感じになってしまいましたがいかがでしょうか。

もしかしたら思っていた様な短編ではないと思われてしまうかもしれません。

でも銀ちゃんの笑顔が守られるなら嘘を固めた仮面を被り続ける覚悟はできております。


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短編 こんな再会はいかがかな?

リクエストいただいたんですけどね、内容変えて書かせていただきました。

これじゃリクエストの意味ないじゃんと言われると思いますがねこれが書きたかった


「やっと役目が終わったか」

 

 少年は体が消えるときにそう言った。

 

「ありがとうね暁人」

 

 そんな言葉に暁人は呆れながら言った。

 

「あぁ、半人前のマスターのせいでとんだ召喚になったよ」

 

 だけどその顔はまんざらではなかった。

 

「僕は座に戻るが必要になれば呼べ、君はトラブルに巻き込まれる体質らしいからな」

 

 暁人はマスターをとある少女と重ねて見てきた。

 

 そして消えるときに最後の言葉を告げる。

 

「君に出会えて感謝する」

 

 そう言って暁人は座に戻った。

 

 戻ったはずだった。

 

 目の前に見えるのは何処かの教室だった。

 

 そして暁人は嫌なことを思った。

 

 座に戻ってそのまま召喚されたのか。

 

「誰だ、僕を召喚した愚か者は」

 

 そう言って召喚した人物を見ると見たことある人物が目に見えた。

 

「突然でもうしわけありませんが私は上里ひなたです」

 

 この時代における情報は確かに得た。

 

「ほぅ、死者が死者をよんだか」

 

「貴方のお名前を聞いてもいいですか」

 

「マスター失格だな、召喚した英霊に名前を聞くか三流以下だな」

 

 暁人はため息を付きながらも周りを見る。

 

 やはり、この時代はおかしい。

 

「なぜ、君がこの時代に居る?」

 

「ちゃんとした説明がいるみたいですね」

 

「なるほど諏訪の巫女までがいるのか」

 

「なぜ、私達の事を知っているんですか?」

 

 2人の巫女とこちらを見ながら驚いている園子を置いて話をする。

 

「なるほど、君たちは英霊の召喚をやったことがないのか」

 

「では、一応召喚されたのならこちらの流儀で返すか……クラスはアヴェンジャーどうやら今回も出来損ないのマスターに引き当てられたようだ」

 

「名前はないんですか」

 

「あぁ、僕には語るような名前なんかないからね」

 

 それにしてもこの世界に呼び出されてしまうか。

 

「それで僕になにをして欲しい?」

 

「四国を救うのに協力してください」

 

「ならば答えよう断る」

 

 その言葉に2人は驚いている。

 

「なぜ、協力できないんですか」

 

「君たちも知っているように僕は元勇者だそれは理解できるだろ」

 

 その問いに頷く2人だ。

 

「そして僕のクラスはアヴェンジャー意味がわかるかい?」

 

「復讐ですか」

 

「僕はこの世界を妬みそして殺された、それなのに僕が手を貸す理由はない」

 

 それに園子の反応を見るからに僕が死んでいる世界と繋がっている。

 

 であるなら銀もこの世界にいる。

 

 今はまだ再会してはならない。

 

「ねぇ、いずさんだよね」

 

 今まで会話に参加していなかった園子が切り出した。

 

「自分の名は忘れた召喚に不備があったんだろ」

 

「何でいずさんは死んでるはずなのに成長してるの!」

 

 彼女の疑問はそこだったみたいだ。

 

「話が進まん、そこの馬鹿はほっといて君らの選択を聞こう」

 

「神託で貴方を呼んだんです、だから残っていただきます」

 

 そうなるのか。

 

「なら僕は自由にやらせてもらう」

 

 そう言って霊体化してこの場から離れた。

 

 あのままあそこにいては頭が痛くなる。

 

 そして僕は学校の屋上で実体化した。

 

 周りを見ていなかったからだろうか僕はつくづく不幸体質が感染したと呪った。

 

「えっ」

 

 一人の少女がこちらを見て驚いていた。

 

 会いたくなかった。

 

 なぜ君がここに居るんだ。

 

「暁人だよな」

 

 銀は走ってきて僕の両腕を掴んでその名を呼んだ。

 

「でも、なんで腕があるんだそれに今のあたしと同い年ぐらいになってるし」

 

 そんな銀に僕は何も言わずに見つめた。

 

「なぁ、暁人なんだよな! こっちにはさ過去のあたし達が来たけど暁人はいないんだ……なんて言ったらいいんだ」

 

 僕は優しく呟く。

 

「平行世界って言いたいんだろ」

 

「そうそれだ、ってことは暁人なんだ」

 

「悪いが僕は君が知っている出雲暁人じゃない」

 

 そう言った僕の頬に銀の手が触れた。

 

「姿は変わってるけどさお前はあたしが知ってる暁人だよ」

 

 目から涙を流しながら笑いかけてくる銀に僕は呟いた。

 

「一つの世界を救ったんだ」

 

「その話聞いてくれるかな」

 

「当たり前だろ」

 

 そう言ってくれた銀の額に自分の額をくっけた。

 

「ただいま」

 

「おかえり」




余談

「なぁ、暁人聞いて良い」

「どうしたんだ?」

「そのマスターって女なのか……」

「あぁ、そうだけどってどうしたんだ睨んだりして」

「へぇーふぅーん」

「でも、僕が好きなのは銀だけだから」

「ちょっ! いきなり何言ってるのさ」


といった流れまで書こうと思ったけど蛇足気味と思い書きませんでした。

ではでは次のリクエストを書きますよー


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リクエスト あの子の水着は

今回もリクエスト回です! 銀ちゃん編ifは中々の灘作で時間がかかっています。

リクエスト回なんですが途中まで書いててリクエスト板見たら「やべ……やっちまった」と言いながら後半は書き足すような形になりましたが友奈編の最初の言葉と組み合わせて今回の短編を書かせてもらいました。

伏線を触れるようなリクエスト回にしてしまった。


 太陽の熱が熱いここから動きたくない。

 

「おーい、暁人君も一緒に泳ごうよ」

 

 友奈が海につかりながらこちらに手を振っている。

 

 手を振り返すだけで俺は動こうとはしなかった。

 

「暑い」

 

 長袖のパーカーを着ていたらそれはそうだと言われるがこれを誰かに見せる訳にはいかない。

 

 記憶を失くして大赦の訓練を受けていた俺の体はボロボロなんだから。

 

「呼ばれているわよ」

 

 隣でゲームをしながら郡千景にそう言われた。

 

「こっちの都合で楽しいのを壊したくはない」

 

「真面目なのね」

 

「そうでもない、現に友奈の笑顔を奪っている心苦しい」

 

 俺は側にある水に手を伸ばす。

 

「言葉では何とでも言えるわ」

 

 多分、俺の表情が変わっていないからそうなるのだろう。

 

 感情までも戻っていてもその間に過ごしてしまった時間は戻ってこない。

 

 俺は言葉でしか感情を表すことはできない。

 

「郡はいかなくていいのか水着まで着てここでゲームをしなくてもいいんじゃないのか?」

 

 そう言うとゲームをしまい立ち上がった。

 

「せっかく高嶋さんが選んでくれたから行くわ」

 

 そう言って静かに海の方に行った。

 

 これでこの空間は俺の物だ。

 

「暁人君、ぐんちゃんと何話してたの?」

 

 見上げると目から光を失くした友奈がこちらを見ている。

 

「いや、こんなに暑いのに長袖は暑くないのかと話していただけだ」

 

「そんなことないよね、暁人君悔しそうな顔してたもん」

 

 なんでか友奈は俺の微妙な表情の変化が分かるらしい。

 

 高嶋の方は分からないらしいそこは近くにいる人の特権らしい。

 

「それにぐんちゃんが離れた時少しだけ寂しそうな顔してたからもしかし暁人君浮気かな?」

 

 あの、本当に純粋だった彼女は何処に行ったのだろう。

 

 東郷の影響なのかもしれないがここまで退化(せいちょう)するとは思いもしなかった。

 

「悪かった、なぜ泳がないのか聞かれたんだ」

 

 素直に言うと友奈はいつも通りに心配そうな顔をした。

 

「そうだったんだね、暁人君泳げないの?」

 

「いや、訓練されているからにぼしの様に泳げる」

 

「だったらなんで」

 

 俺は周りを見て人気のないところを見つけて立ち上がり友奈の腕を掴んでそこに誘導する。

 

「あ、暁人君どうしたの」

 

 友奈は何を想像しているのか顔を赤くしている。

 

「何を想像している」

 

 そう言いながら俺はパーカーのジッパーを下げた。

 

「えっ」

 

 友奈は驚いている。

 

 それは無理もない体中に傷が沢山あるのだから。

 

「他の皆が楽しんでいるんだそれをこれで気を悪くしたら申し訳ないからな」

 

「本当に優しいね暁人君」

 

 そう言って友奈は俺の体に触れながら言った。

 

「でも、自分も幸せじゃないと辛いよ」

 

「ありがとう、友奈の気持ちだけで俺は幸せだから」

 

 そう言って俺は友奈の頭を撫でる。

 

「それに水着を着た友奈を今は独占できているからな」

 

「照れるよ~」

 

 何とかこれで納めることができた。

 

 でもせっかく海に来たんだ夜にでも来ようと思い昼間を過ごした。

 

 夜になり寝静まったころに俺は海に足を付けに来た。

 

「そう言えば海に来るのは初めてだったな」

 

 そう言いながら静かに海の波音を聞いていた。

 

「こんなところに居たんだ暁人君」

 

 後ろを振り向くと友奈が居た。

 

「あぁ、昼間は人目があるからな夜なら足を付けるぐらいはいいかと思ってな」

 

 そう言って友奈に近づくが少しだけ違和感を覚えた。

 

「んっ、高嶋か間違えたな」

 

「ばれちゃったか」

 

 そう言って微笑む姿は似ている。

 

「いや、夜で薄暗かったから間違えたこちらが悪い」

 

 俺はそう言って砂浜に座る。

 

「私的には間違ってほしかったかな」

 

 そんな事を言って高嶋は隣に座った。

 

「君が忘れても私は忘れてないよ」

 

 俺の靄がかかった記憶に君は関係しているのか。

 

 でも、今の俺には関係ないはず。

 

「そうだ暁人君」

 

 急に名前を呼ばれて横を向いた時、唇になにかが触れた。

 

「……」

 

 一瞬の時間だった。

 

 このニオイを俺は知っている。

 

「これは罰だよ」

 

 そう言った彼女は微笑んでいた。

 

「また明日」

 

 そう言って戻って行く彼女の後姿に俺は戸惑った。








すいませんでしたー!今回のリクエストはW友奈と暁人君だったの最初すげーノリノリで書いててよしこれで投稿するかと思ってリクエスト板見たら間違ってたの恥ずかしい(*ノωノ)

友奈ちゃんが最高に依存したらああなると思った。

そんで高奈とは過去との因縁? 多分新しい創作ができるんだけどこれに関しては無理です。
現代の主人公が過去に行ったら他者の作品パクることになるじゃんそれで自分のもう一つの作品ヒーローになりたかったは構想を練り直しております。

リクエストの方はまた時間を空けて投稿させてもらいます。


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君の為に

リハビリがてらにリクエスト消化いたします。

なんだよ、一時間でかききれるじゃねぇかよ

何やってんだよ!

頭の中でよぉ、オルガが止まるんじゃねぇぞって追っかけてくるんだ…そんなの見たら止まれねぇじゃん


「何処で僕は選択を間違えたのだろう」

 

 燃え盛る景色を見ながら呟く。

 

 脳裏に映るのは泣いている友奈の姿だ。

 

 心が痛い。

 

「それでも僕はこの選択が正しいと思っている」

 

 そう言って俺は前に足を出した。

 

 なんでこんな事になったのか、それは俺の慢心だったのだろう。

 

 ちゃんと俺が管理していたらこんな事態にはならなかったのに。

 

 そう言って思い出すのはこの数日の間のことだった。

 

 

「暁人君、少しいいか」

 

 そう言って部屋に入ってきたのは三好春信さんだった。

 

「どうしたんだ」

 

 俺は資料から視線を外して眼鏡を外した。

 

「例の件だが」

 

「勇者候補だった娘達のことだね」

 

 俺が知らない間に動いていた量産型勇者の試作品のテスト。

 

「部下からの情報だと過激派の奴らは奉火祭を決行しそこの巫女を生贄に使うと言っていたそうだ」

 

 それを聞いて僕は机を殴った。

 

「アイツ等は人がやりたくない事を平気でやりやがる」

 

「その話にはまだ続きがある最も神に近いものにコンタクトを取ると」

 

 俺はその言葉を聞いて友奈の姿を脳裏に映った。

 

「数人、結城友奈の監視に回せ」

 

 アイツ等の目的は友奈だ。

 

 それだけは絶対に手を出させない。

 

「分かっていると思うが私情で人を動かすなよ」

 

「分かっている! 友奈は体の8割以上を満開で持って行かれて神樹様の創り出したものを使っているその意味が分かっているだろ!」

 

「資料に目を通したがそれが本当だとしたら」

 

「友奈の体は神に近い、それがもし生贄にされたとしたら別の神はどう思う」

 

「和解、それとも解放」

 

「そうだ、こちら側の神をだしたと勘違いしたら? 和解に持って行けるとして解放まで行けるかは分からないが数年は進行はないだろう」

 

 だけどそれは俺が赦さない。

 

 誰かを犠牲にしてこの国を守りたくない。

 

「記憶が操作できたとしても人は何時か思い出す……魂に刻んだものは忘れる事は出来ない! 思い出した人が悲しむ、俺はそんな顔を見たくないもう二度と」

 

「その為に俺たちができることをするんだったな」

 

「だから神童と呼ばれた貴方の知恵が必要だこれ以上、赤嶺家の奴らの手のひらで踊らされたくもない」

 

 もしこの時にでも奉火祭の件を飲んでいたら?

 

 鷲尾須美、東郷三森の事を忘れていなければ俺は別の選択をできたのだろう。

 

 何か妨害ができるか考えた。

 

 考えたが何も出てこない、犠牲を出さずにやり過ごすことも考えた。

 

 でも何も思いつかなかった。

 

 そして今の今まで外の事を気にしてなかった。

 

「暁人君!」

 

 そう言って部屋に春信さんが入ってきた。

 

「なんですかこっちは調べ物で忙しいと」

 

 春信さんは静かに俺に紙を渡してきた。

 

「読んだら分かる」

 

 この時、春信さんの表情が読めなかった。

 

 俺は受け取り紙に目を通した。

 

 それは俺がここに居た間に起った外の報告書だった。

 

「な、なんで友奈が」

 

 友奈が神の祟りに侵されている事だった。

 

「えっ」

 

 俺は手から報告書を落とした。

 

「頭のいい君なら分かるだろ」

 

 そうだったのか、俺は最初から騙されていた。

 

 まだ手の平で踊らされていた。

 

「君はこの写真を見て決断は付くだろ」

 

 それは泣いている友奈の姿だ。

 

「俺は、オレは――」

 

 ごめんね。

 

 俺は友奈が一人になった時に会いに行った。

 

「暁人君」

 

 その顔はとても悲しみにあふれていた。

 

「久しぶりだね、友奈」

 

 そう言ったら友奈は突然抱き着いてきて泣き出した。

 

「暁人君、私、私ね」

 

 俺は優しく頭を撫でた。

 

「大丈夫、何も言わなくても知ってるから俺が何とかするから」

 

 俺は笑顔で告げる。

 

「何時もの元気な友奈で居て欲しい」

 

「ごめんね、私のせいで」

 

 友奈にも話は告げられていたのだろう。

 

 だったらなお愛おしい。

 

「また友奈に会いに来るから」

 

 そう言って静かに友奈にキスをした。

 

 最初で最後の愛する人の温もり。

 

 それだけで十分だ。

 

「だから行ってくるね」

 

 そう言って歩き出す俺に友奈は叫ぶ。

 

「私、待ってるから! 暁人君が合いに来るのをずっと待ってるから」

 

 2人とも分かっている。

 

 会えないと。




Bad endでした。

いかがでしょうか?

以外にもね頭の中でスラスラ出てくるんだよ


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これからの未来

皆さんお久しぶりです…

転職して色々あって書けるまで過ごせるようになったのでリハビリがてらにリクエスト消化いたします


 神の脅威から四国は開放されて四国の外が現れたときはニュースになっていたのが今では懐かしい。

 

「風さん、朝なんで起きてください」

 

 僕は朝食の用意を終わらせて布団で眠っている彼女を起こす。

 

「もぅ、朝なの?」

 

「朝ですよ、僕も仕事に行くので朝ごはん一緒に食べましょか」

 

 あれから僕は教師になった。

 

 教師は昔からなりたい職業だった。

 

 上里家の方からは家に戻り大赦の仕事を手伝ってもらいたいと言われたが僕はやんわりと断り教師となった。

 

 誰かを見守る人になりたいのが一つと安芸先生の様な人になりたいと思ったのだ。

 

「遥君、今日は帰りは遅いの」

 

「ううん、今日は大切な日にしたいから早く帰ってくるよ」

 

 僕はそう言って一つの箱と紙を机に置いた。

 

「同棲して3年経ちますし、僕も風さんもゆとりが出てきたと思うんですがいいですか?」

 

 僕は微笑みながら箱を開けた。

 

「私からしたら少し遅いと思ってた」

 

 瞳から涙を流しながら風さんは言った。

 

「お互い忙しかったから遥君も忘れてたのかなとか私の思いが重いのかなと思ってたの」

 

 僕は風さんの手を取る。

 

「遅くなってごめんね、でも僕は風さんの思いが一度も重いと思ったことはないですよ」

 

 僕はそう言いながら風さんの指に指輪をはめる。

 

「こんな僕でよければずっと一緒に隣を歩いてくれますか?」

 

「よろこんで」

 

 風さんは涙を流しながらニッコリと笑顔をくれた。

 

「では、仕事が終われば出しに行きましょうか」

 

 そう言った僕に風さんは苦虫を潰した顔をした。

 

「そ、それなんだけどね遥君」

 

 怒らないで聞いてねと風さんは言って話を続けた。

 

「同棲始めた次の日にね実は出してるの」

 

「……はい?」

 

「えっと、だから私と遥君は書類上三年前に結婚してるの」

 

 意外な事実が分かった。

 

 すると風さんは座っていた椅子に土下座した。

 

「遥君が一緒に住もうって言ってくれて凄く嬉しくて浮かれてそのまま婚姻届出しに行きました! すいません!」

 

 それを聞いて僕は笑ってしまった。

 

「そ、そうだったんですね」

 

「笑わないでよ」

 

 風さんは顔を赤くして拗ねる。

 

「だったら報告に行かないとね正式に結婚しますと」

 

「そうね、もう一つ報告しないといけないこともあるし」

 

 もう一つと僕の頭の処理が追い付かない。

 

「もしかして妊娠してたの」

 

「……うん」

 

 風さんは更に顔を真っ赤にさせた。

 

「双子の赤ちゃんだって」

 

「そっか、ありがとう風さん」

 

「喜んでくれるかなお義母さん」

 

「喜んでくれるよ、でもこれだとデキ婚だと思われるかなぁー」

 

 それでも僕は貴方と過ごすこれからがとても楽しくなると確信した。

 



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三ノ輪銀編
三ノ輪銀 1


では鷲尾須美編その2である銀ちゃんの話を書いていくぞ!


 たまに禍々しい夢を見る。

 

 赤い服を着ている僕の幼馴染みでてくる。

 

 前身は傷だらけなのに大きな武器を武器を振り回している。

 

 音は聞こえないけど一生懸命なのが分かる。

 

 分かっているからこそ止めたい。

 

 この夢を見た最初のころは止めようとしたけれども僕の声は届かない。

 

 やめてほしいこれ以上、この夢を見せないでほしい。

 

 なにかをやり終えたのだろう。

 

 僕の幼馴染は武器を手から離して立ち続ける。

 

 全身から血を流して立ち続けているのではなく。

 

 彼女は死んでも立ち続ける。

 

 そこで僕の夢は醒める。

 

 涙を流しながら僕の朝が始まる。

 

 彼女との待ち合わせはゆっくり行けばいいと思い夢を忘れる為に考え事をしながら支度をする。

 

 家を出る前に大赦から支給された携帯端末を制服のポケットに忍ばせて家を出る。

 

「行ってきます」

 

 声をかけても返ってくる声がないのを知っているがこれもいつもの事だから気にしない。

 

 気にする必要はないのだから。

 

 朝日を浴びながら待ち合わせ場所に到着するが彼女は来ていない。

 

「これもいつもの事だよね」

 

 そう自分に言い聞かせてランドセルに入れてある本を取り出して読み始める。

 

 どれ位、時間が経ったのか忘れていたころに彼女は走ってやって来た。

 

「遅れるよ暁人」

 

 そう言ってこちらに来る彼女にため息を付きたくなるが学校に遅れるのは嫌だなと思いながら彼女が来る前に学校の方に走り出す。

 

「なっ、待ってくれないの!」

 

「銀が来るのを待っていたら自分まで遅刻する」

 

 そんな何時もの言い訳をしながら銀を置いて自分が遅刻しないように走って学校に向かう。

 

 神樹館それが自分と銀が通っている学校だ。

 

 普通の学校よりも厳重な警備がされている。

 

 多分それは大赦の御蔭だろう。

 

 大赦で働く子供や名家の人たちが通っている。

 

 一般の子供の僕がここに通えるのはとある理由があるからでその理由がなければ僕はここには居なかっただろう。

 

 僕が教室入るのと同時にチャイムが鳴る。

 

 僕が教室に入れば楽しそうに話しているクラスメイトが僕の方を見て冷めた目で見てくる。

 

 これも何時もの事だから気にしていない。

 

 気にする必要がない。

 

 僕は窓際の一番後ろの自分の特等席に向かう。

 

 机には何かしら言葉が書かれているがこれもいつもの事だから気にしていない。

 

 本当にこいつ等はゴミな考えしかできないのだろうかと思いながら来るべき日のために僕は過ごしていく。

 

 このくそたれで救いようのない世界で僕は銀の為だけに今日も過ごしていく。

 

「早く来いよ」

 

 その言葉は校庭を走っている銀ではなく、この香川の外に居るであろう何かに呟いた。



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三ノ輪銀 2

戦闘描写を丸々カットしました。

映画が近々後悔なのでどんなバーテックスが出てくるのかを伏せるための処置をとらせてもらいました。

原作を知っている人は今回の処置をとったことをお許しください。

まぁ、原作を知らない人がこの作品を読んでいるとは思いませんが原作を知らない読者の皆様は来週の土曜から公開の鷲尾須美は勇者であるを見に行ってください。

全部で三章になっています。

来週の入場者プレゼントはわっしーミニ色紙だそうです。

予想的に二週目は園子で三週目は銀だろうと予想しているので全部で三回見に行かないといけませんね。

劇場公開日に第一章の円盤も販売するらしいのでお金が飛ぶな……

てなわけで第二話お送りします。



 昼休みはやることはなく図書室に行く。

 

 持ってきている本を持って行くそうでなくては本が汚されてしまう。

 

「残念だ」

 

 図書室の窓際の日差しが差してくるこの場所は僕の特等席だ。

 

 滅んでもいいこの世界でもこの場所は特別だ。

 

 時間を忘れて居られる。

 

 なにが残念なのかはこの世界が平和であることだ。

 

 大赦で機密文書を読んでみたが今と違って死か生きるかの西暦時代の文章だった。

 

 所々、黒い墨で修正されているがそれは誰にも読まれては困ることを書いてあるのだろう。

 

 機密文書を何時も持っている小説がそれなのだ。

 

 大赦のとある人に協力してもらい手に入れた。

 

 勇者の秘密を知りながらも僕はお役目をする。

 

 死に場所を求めるために僕は来るべき日の為に存在する。

 

 昼休みが終わりを迎えるその寸前に世界は静止した。

 

 世界の時が止まっている。

 

 僕の目には幻想的な風景が見える。

 

 これが樹海化前の世界の風景だ。

 

「役目をまっとうしよ」

 

 携帯端末を取り出しアプリを起動したら赤黒い衣装に変わる。

 

「不気味な色だ」

 

 一人で先に大橋に向かい武器の確認をしようとしたら声を掛けられた。

 

「暁人早いね」

 

 僕に遅れて三人がやってきた。

 

「遅刻だ」

 

 そう言って武器を取り出してみたがでない。

 

「故障か」

 

 そう思いながら三人との違いを確かめたら自分の武器が分かった。

 

「籠手」

 

 肉弾戦か。

 

 一番死に近い場所で戦えるのか。

 

 それは嬉しいことだなと思っていると銀が声を掛けてくる。

 

「あれ、暁人の武器は?」

 

 斧を構えている銀はそう聞いてきた。

 

「見たらわかるだろ、籠手だよ」

 

 そう言ったら銀は自分の腕を見る。

 

「それが武器ってありなの」

 

「知らない、僕はこれで丁度いい」

 

 武器を持つということはそれの特性も考えて戦わないといけない。

 

 籠手だけなら重くなく自分の能力を十分に発揮できる。

 

 その結果、怪我はなくバーテックスを撃退することができた。

 

 バーテックスとの戦いの後はメディカルチェックを受けて帰ろうと思っていたがとある人物に声を掛けられた。

 

「少し、話でもいいかい」

 

 その男は三好春信、大赦にスカウトされてここに居る人間だ。

 

「少しなら」

 

 そう言って僕は彼の研究室に向かった。

 

「コーヒーしかないがいいかい」

 

 そう言ってビーカーに入ったコーヒーを渡された。

 

「僕をここに呼び出して何を聞きたいんですか?」

 

「君は今日みたいな戦闘をこれからも行うつもりならやめたほうがいい」

 

「タゲを集中させて味方が攻撃しやすいように誘導をしているのにですか」

 

「君は死ぬつもりかい? いや、君はそのつもりでだったね」

 

「それで僕をどうしたいんですか」

 

 話が止まってしまったから僕はお暇することにした。

 

「では、僕はこれで」

 

 コーヒーを飲み干してから大赦の施設を後にしようとしたらがバカはいる。

 

「暁人遅いって」

 

 大赦のロビーで銀はまっていた。

 

「コーヒーをご馳走になっていた」

 

「うわぁ、暁人はよくあんなの飲むな」

 

「しょうゆ味のジェラートを食う奴に言われたくない」

 

 それよりも早く帰りたい。

 

「早く帰るぞ、疲れた」

 

 疲れてはいない。

 

 ここに居るのは短く済ませたい。

 

「帰ろうか」

 

 そう言って笑う銀、笑顔でいられる君が見られるのなら僕の命がどうなってもいい。



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三ノ輪銀 3

映画公開されましたね

僕は二日目に見に行くことができました初日は埼玉の方でfripSideのライブに行っていたので行く時間がありませんでした。

次回で銀ちゃん編は終了です。

この話では銀ちゃんとのイチャコラは全くないよ


 バーテックスが襲来する度に生傷が絶えなくなってきた。

 

 勇者の時には回復力があっても完全に治ることはない。

 

 怪我をしたところを包帯やらを付けながら学校に行けば少しづつ嫌がらせはなくなった。

 

 所詮その程度で止めるのなら最初からやらなければいい。

 

 三回目のお役目が終わりいつものごとく春信に呼ばれる。

 

「今日は何の用ですか?」

 

 今回は銀の御蔭で怪我は少なく気怠さだけが残っていた。

 

「次回の出撃は危険だということを頭に入れといてほしい」

 

「それが」

 

 僕の返答に春信は肩を掴み勢いよく言う。

 

「君はまだそんなことを言うのか!」

 

「今度のお役目では本当に君は死ぬかもしれないんだぞ」

 

 それでもいい。

 

 彼女が生きているのならそれでかまわない。

 

「僕はかまわない銀が生きていてくれたらこの命を差し出す」

 

 銀が僕をこの世界に生かしてくれたのだから彼女の笑顔がある今を失くさせるわけにはいかない。

 

「それが君の望むことなのか!」

 

「それで君は幸せなのか!」

 

「貴方にはわからない、銀以外の奴は僕なんかを必要としていない」

 

「世界から隔離してみている」

 

「親から期待されて、大赦に引き抜かれて期待され続けている貴方に僕のことなんかひとつも分からないだろうね」

 

「僕には銀さえいればいい」

 

「銀さえ無事なら死んでもいい」

 

「だから僕に関わるな」

 

「なにも知らないで語るな」

 

 僕はそれだけを言い残して部屋を出ると乃木がいた。

 

「いずさん」

 

「なに」

 

 僕はなにもなかったように言った。

 

「聞いてないよね」

 

 僕は乃木に少しだけ顔を近づけて言う。

 

「別に聞いていても君やもう一人には関係ないよ」

 

 そう言って大赦の施設を後にした。

 

 その数日後の昼休みに僕の机の前ではしゃぐ銀がいる。

 

「暁人、遠足だな」

 

「そうだな」

 

 銀は楽しそうに話している。

 

「銀、出雲、少しいい」

 

 鷲尾さんが僕の席に近づいて紙の束を渡してきた。

 

「遠足のしおり?」

 

 銀は不思議がっていたが僕は引いていた。

 

「えっとこれはなに?」

 

「これは私たちの班の遠足のしおりよ、データ版も端末の方にも送っておいたから」

 

 なんでこんなのを作るんだ。

 

 毎回思うがリーダー気質があるのはいいが巻き込まれるのは勘弁だ。

 

「出雲、銀が遅れないように連れてきてよ」

 

「分かっているできるだけ遅れないようにする」

 

 銀の事を知っているからこそ誰かがストッパーにならないといけない。

 

「須美の言い方じゃ、アタシが絶対遅れるみたいじゃん」

 

「銀、お前の不幸体質は異常だよ」

 

「なっ、暁人までそれを言うのかよ」

 

「僕は銀と一緒にいるから巻き込まれてるだけだ」

 

 僕はそう言いつつ太いしおりのページを適当にめくっていく。

 

「にしても詳しく書きすぎじゃないか?」

 

 僕はページをめくりながら言う。

 

「暁人それで分かるのか!」

 

「まぁ、情報はないより多いに越したことはないからね」

 

「出雲は詳しいのね」

 

 鷲尾は話に食いついてきた。

 

「パソコンは持ってないけれど古き良き時代の紙があるから」

 

 そう言って本を見せる。

 

「西暦時代の本ね、私も何度か見たことあるけれど手に入らないから見ることが余りないわ」

 

「僕は大赦の管理書物とかの閲覧が僕らにはできるからそれで書物とかを貸してもらえる」

 

「盲点だったわ」

 

 そう言って良き古き時代の話に盛り上がっていたら話に入れない銀が詰まらなそうに見てくる。

 

「銀、詰まらないからってそんな顔をするなよ」

 

「ち、違うし、暁人と須美は仲がいいなーと思って」

 

 銀は顔を赤くしながら否定する。

 

「ふっ、図星がバレて焦ってたら余計ばれるぞ」

 

「なぁー! アタシはそんな小さなことで焦ってないし」

 

「帰りにイネスに寄るから機嫌を直せ」

 

「まぁ、ジェラート奢ってくれるなら考えてもいいけど」

 

 少しだけ、願っていた願望だ。

 

 銀と楽しく学校で会話出来たら、小説の一ページの様な風景を描けたら僕はそれだけで満足だ。

 

 君の居る世界だから僕は今が幸せだ。

 

 だからありがとう。



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三ノ輪銀 4

そんな訳で四話目です。

次回はエピローグで園子にバトンを繋ぎます。




 僕が読んできた書物には楽しい後、幸せになった後には絶望が待っている。

 

 遠足が終わり帰りのバスでは僕以外の人はぐっすり眠っていた。

 

 僕の後ろの座席にいる三人は心地よく眠っていた。

 

「この日々は続かないよな」

 

 そう言って端末を取り出して密かに撮影した。

 

 それからこの平穏な時間を過ごす。

 

 神樹館に到着し僕らは会話をする。

 

「明日は訓練で終わりそうだ」

 

 そんな事を言った僕に2人は疑問を言った。

 

「暁人、明日は午前で訓練は終わりだぜ」

 

「そうですよ、出雲も聞いているはずですよ」

 

 話がかみ合わない。

 

「大赦からはそんな連絡はもらっていない」

 

「明日は訓練としか聞いていない」

 

 銀が何かを言おうとした瞬間、奴がやってきた。

 

「何でこんな時にくるんだ」

 

「銀、それには肯定だ」

 

 素早く片付けて帰りたい。

 

 そんな気持ちで挑んだからだろうか、それとも二体来てもこの四人ならなんとかできると慢心していたからだろう。

 

 勝てると思っていた時、それは天から降ってきた。

 

「上から」

 

 幾千もの光の矢が降ってきた。

 

 それを拳で急所に当たる場所のみを破壊していた。

 

 だけど攻撃は上からだけではなかった。

 

 横からの突然に攻撃に構えることはできなく吹き飛ばされる、その時に左目に光の矢が刺さってしまった。

 

「左目が」

 

 体は痛いが左目の方がさらに熱く焼けるように痛い。

 

 体を無理やり起こし銀たちの元に行こうとした時に見てしまった。

 

 銀が鷲尾と乃木を橋から投げた。

 

 戦えない二人を銀は投げた。

 

 それはなぜか、自分を犠牲にして誰かを助ける銀だから取った行動だ。

 

 だから僕は銀に悟られないように静かに忍び寄った。

 

「暁人には謝らないとな」

 

 大丈夫、君は死なせないから。

 

「これが終わったらアタシの気持ちを暁人に伝えよ」

 

 知ってるよ。

 

 だって、僕は銀が好きだから。

 

 だから、君は生きて欲しい。

 

「ありがとう、銀」

 

 僕はそう言って銀の服を掴んだ。

 

「なっ、暁人!」

 

「銀の武器借りるから」

 

 そう言って僕は銀を橋から投げた。

 

「ダ、ダメ! 暁人!」

 

 そう言った銀の顔には涙が流れていた。

 

 好きな女の子を泣かせてしまった。

 

 後で謝らなとな。

 

「さぁ、始めようか」

 

 僕は銀の武器を手に取り構えて言う。

 

「どちらかが生き残る殺し合いね」

 

 そう言って僕は不気味に不適な笑みを浮かべた。

 

 さきほど光の矢を放ったバーテックスに飛び掛かる。

 

 数分の観察で分かった。

 

 こいつらは個々の能力では僕ら4人には弱すぎる。

 

 だが集団で来ればその弱点を埋められる。

 

 なら近接ができず遠距離から狙ってくる相手を先に潰すのは戦争の要だ。

 

 斧で斬りかかりながら後ろから迫ってくる巨大の針を避ける。

 

 一体ずつ潰していけばいい。

 

 どれだけ相手の回復力が高かろうが時間がかかれば意味はない。

 

「蹂躙してやるよ」

 

 目の前の3体を潰すそれだけに意識を集中させる。

 

 こいつを潰せば残りの2体は同時に潰せる。

 

 潰す為の策略はある。

 

 片目があれば十分だ。

 

 それが油断なのだろう。

 

 相手に斬りかかるために振りかぶった左肩に力が入らない。

 

 代わりに激痛が走った。

 

「アイツかァ!」

 

 巨大の針を持ったバーテックスが視界から左腕を抉り取った。

 

 左腕がないのなら右で斬りかかればいい。

 

 一体目のバーテックスを両断して戦えないと判断して残りの2体に向かう。

 

「人間を舐めるなぁ!」

 

 

 

「銀、銀」

 

 アタシはその声で目を覚ました。

 

「す、須美」

 

 それでアタシの頭は冴えた。

 

「暁人が! いっ」

 

 無理やり体を動かしたのか体が痛い。

 

「いずさんが一人で」

 

 園子の一言で私たちは急いで橋の上に行く。

 

「暁人が居ない」

 

 橋の上にはバーテックも暁人の姿もない。

 

「銀、あの斧は銀のじゃないの」

 

 そうだ、暁人はアタシの斧を貸した。

 

 アタシは痛みが走る体を無理やり走りそこまで行くが見なかったら良かった。

 

「うっ」

 

 そこには暁人の左腕が斧を握っていた。

 

 吐いたら駄目だ。

 

 これは暁人の腕だ。

 

「銀……っ、これは出雲君の腕よね」

 

「暁人はこの先に居る」

 

 後ろに居る園子は何かを悟ってなにもしゃべらない。

 

 アタシは絶対にそんな可能性を捨てる。

 

 それはアタシが望んでいないことだから。

 

 それから橋の奥まで壁の近くまで行くとそこには砕けた斧がある。

 

 斧には誰かが背を預けている。

 

「出雲君!」

 

 須美が叫んで近づいていくアタシも遅れて走り出す。

 

「暁人!」

 

 アタシが暁人の名を呼んでも声が返ってこない。

 

 片目を失くして左腕を奪われ斧を背もたれにしながらも壁を睨み付ける暁人がいる。

 

「バーテックスはもう居ないんだ」

 

「だから、返事をしてくれよ暁人!」

 

 その日、アタシの最愛の人は亡くした。

 

 暁人の死はお役目の中で亡くなったと学園で話された。

 

 クラスメイトの大半は涙を流していただけどアタシはその涙を許せなかった。

 

 その涙を流していたのは暁人を苦しめていたなんでそんな奴らが涙を流すんだよ。

 

 アタシたち三人はそれぞれの感情を抱きながら暁人の葬儀に参加した。

 

 葬儀には暁人の親族は誰一人も参加していない。

 

 知っている。

 

 あの親が来るわけがない。

 

 暁人を居ない者として扱っていた奴らが来るわけがない。

 

 須美はその光景を見て茫然としていた。

 

「何なのコレ」

 

「須美、これが暁人が生きてた世界だよ」

 

 アタシは須美に静かに言った。

 

「銀は、銀は知ってて涙を流さないの!」

 

 須美は涙を流しながら叫んだ。

 

「出雲君の事を知っていて」

 

「知ってたさ! でも、暁人は心配するな銀には関係ないって言うんだよ!」

 

「もう、暁人は居ないんだよ」

 

 その時、いつもの感覚がやってくる。

 

「なんで今日なんだよ!」

 

 私は吠えるように端末を睨む。

 

 そして壁の向こうを睨む。

 

 お前たちが居るから居るから暁人は苦しい思いをするんだ。

 

 アタシと須美はそれぞれの怒りのままにその力を振るった。

 

 須美は暁人が好きだったのだろう。

 

 だからこそお役目をやっていく。

 

 何を犠牲にしてでもやっていくと決めた。

 

 決めていたけど新しい機能が体を犠牲にしていくとは思わなかった。

 

「こんな姿、暁人に見せれないな」

 

 満開を使い両腕、足が使えなくなってしまった。

 

 アタシたち三人の中で動けるのは須美だけだった。

 

 でもその須美は記憶を失くして元の名前に戻ったと聞いた。

 

 なら須美は誰のために戦うのだろう。

 

 新たな勇者にアタシは期待する。

 

 暁人が命を賭けて託してくれたバトンを勇気のバトンを受け継いで欲しい。




銀を救済するということは誰かを犠牲にするしかないのですよ。


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三ノ輪銀 エピローグ

連続投稿しますよ

最後は尺が余ったのでネタみたいにやってやりましたよ。


 満開による代償で失った腕と足が戻り、旧勇者三人はある場所に訪れた。

 

「3人でここに来るのは初めてだな」

 

 アタシはいつもの様に笑顔でいう。

 

「そうね、私は忘れていたから来れなかった」

 

 須美は暗い顔をしながら言う。

 

「しょうがないよわっしー」

 

「そうそう、暁人絶対に来なくても良いとか言いそうだけどね」

 

「出雲君、自分の事は疎かにするものね」

 

 ようやく須美は笑った。

 

 ここに来る前に大赦で暁人の最後の映像を見せてもらった。

 

 いや、端末が修理が終わって中に入っていた遺言だった。

 

 アタシ達はその映像を瞬きすることなく見た。

 

 瞳に焼き付けたその姿を雄姿を記憶に刻む。

 

『終わった』

 

 体中から血を流しながらフラフラした足つきのまま壁の向こうを睨んでいる。

 

『血を流しすぎた意識が遠のいていく』

 

 斧を背もたれにしながら地べたに座る。

 

『死にたくないな』

 

 その呟きを聞いた園子は驚いていた。

 

『謝ら、ないと』

 

 だんだんと声は弱々しくなっていく。

 

『誰?』

 

 暁人はそんな呟きをした。

 

『いいよ、契約してやるよ』

 

 その言葉と共に暁人は力なく終えた。

 

「これが最後の言葉だ」

 

 大赦の人はそう言って1枚の紙を渡した。

 

「ここに彼の眠る墓がある、行くかは君たちが決めてくれ」

 

 その翌日、アタシ達は暁人の眠るお墓に来た。

 

「それにしても暁人はなにを契約したんだろ」

 

 その言葉に須美は答える。

 

「神樹様なのかしら?」

 

「いや、暁人に限ってそれはないでしょ」

 

 そんな事を言いあいながら着いたお墓は数年放置されて汚れていた。

 

「まぁ、想像付いてたけどこれは酷いな」

 

「えぇ、掃除しましょ」

 

「う~ん、いずさん一人で寂しいよね」

 

 アタシ達はお墓を掃除する。

 

 暁人が託してくれたバトンは確かに受け止めたから暁人も頑張りなよ。

 

 アタシは空を見上げながら呟く。

 

「あぁ、僕も頑張るよ」

 

「えっ」

 

 そんな声が聞こえて後ろを振り向いても誰も居なかった。

 

「銀、サボらないで」

 

「みのさん」

 

 二人の声を聞いてアタシはお墓の掃除に戻る。

 

「僕も呼ばれたから行くよ」

 

 そんな声を聞いてアタシは嬉しかった。

 

 暁人は存在している。

 

 アタシ達はその事を覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だ、僕を呼んだ未熟なマスターはクラスはアヴェンジャー『出雲暁人』」

 

 神樹館の制服を身に纏った少年は召喚陣から出てきた。

 

「僕の復讐の為に協力するんだな」

 

「えっ、子供」

 

 召喚陣から出てきた少年にオレンジの髪の女はそう言った。

 

「見てくれで判断するのは命取りになるぞ」

 

 そう言って少年は微笑むのだった。




出雲暁人がアヴェンジャーの件での補足

天の神がバーテックスを送り込むそれを阻む勇者

暁人は世界が嫌い、神が嫌い

銀の為なら全部を敵に回す覚悟がある

神に抗い死んだのでアヴェンジャーが妥当かと思いました

最初はバーサーカーでも良かったんですけどね……

では、次は乃木園子で会いましょう。


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if 三ノ輪銀編 6

最初にこの話を構想では作っていたのですがどうにもしっくりこないので没にしていた話なのですが勇者の章を見てから自分が描いた構想に持って行けると思い書かせてもらいました。

今回の話は全部で4話構成で書いていくつもりですが短くなったり長くなるかもしれませんが少しの間お付き合いください。

三ノ輪銀編4での暁人ではなく銀が原作通りになってしまった世界線です。


 あの日、僕は目を負傷してそのまま気を失っていた。

 

 目が覚めた時には全て終わっていた。

 

 そう、三ノ輪銀は犠牲になった。

 

 その言葉を聞いて僕は涙が出なかった。

 

 好きな女の子が死んでいるのに涙が出ない。

 

 あぁ、僕は壊れているそう確信した。

 

「君を本当に危険な目に遭わせてしまってすまない」

 

 そう言って謝ったのは本当の両親だった。

 

 そこまで行くと自分の扱いが雑だったのが余計に分かってしまった。

 

 僕は最初から誰にも望まれて生まれてきたんじゃないんだ。

 

「もう、その言葉はいいです」

 

 僕は窓の外に視線を向けながら言う。

 

「謝っても僕の目と三ノ輪銀は返ってこないんですから」

 

 僕はそう言って視力を失った左目の眼帯に触れた。

 

「何もかもが遅すぎたんですよ」

 

 僕には生きる気力なんてない。

 

 銀が居ない世界で僕はどうしたらいいんだろう。

 

 銀、君の声が聴きたいよ。

 

 僕はそう言って誰にも耳を傾けることなく静かに眠りにつく。

 

 できればこのまま永遠に眠りたい。

 

 どれだけ日が過ぎようが僕の病室には大赦の人間しか来ない。

 

 今日も病室のドアが開いて誰かがやって来たので追い返そうと口を開いた。

 

「何度来ても僕は勇者にはなりませんよ」

 

 そう言ってきた人の方を向いたら先生がたっていた。

 

「安芸先生、あなたが僕に何を言いに来たんですか」

 

 僕は端末を見ながら言う。

 

「こんなものまで用意して僕を死なせないつもりですか」

 

「試したのね上里(・・)君」

 

 先生は無表情でそう言った。

 

「ここでできることは全てやりましたよ」

 

 銀がいない世界で僕に生きる意思はない。

 

「こんなもの只の呪いだ! どうせ、満開と言う機能もなんらかのデメリットがあるはずだ……なんで、なんで銀が居なくなってからこんなものを」

 

「それでもあなたはその力を使わないと」

 

 僕は先生を見ながら、いや先生の方に顔を向けているが視線はそこにはない。

 

「銀が居ない世界なんて僕にはどうでもいいですよ」

 

 それが僕の本音だ。

 

「なら、あなたは三ノ輪さんが命を落としてまで救った命を捨てるのね」

 

「そんな命どうでもいい、僕には銀しかいなかったんだ」

 

 そこでようやく僕は心から泣けるのだろう。

 

「大切で失いたくない人を失ってこれ以上僕に何を望むんだよ!」

 

「また、上里君の返事を聞きに来るわ」

 

 そう言って安芸先生は病室から出て行った。

 

 何度来ようが僕の気持ちは変わらない。

 

 その日、夢を見た。

 

 とても酷いものだった。

 

「暁人はどうしたいの」

 

 後ろを向いた銀が僕にそう聞いてくる。

 

「僕は銀を守れたらそれでいい」

 

 そう言った僕に銀は振り向いたが姿は先ほどと違い右腕を失っていた。

 

「守れてないのにな」

 

 やめて、君はそんな事を言うはずがない。

 

 銀がこちらに近づいてくると体のいたるところから血を流していた。

 

「暁人が守ってくれないからこうなったんだよ」

 

 銀はそう言いながら左手で僕の頬に触れる。

 

「だから、暁人も—――」

 

 それ以降の言葉は聞こえなかった。

 

 いや、聞きたくなく夢から逃げた。

 

「僕はどうしたらいいんだよ」

 

 誰も居ない病室にそんな言葉だけが余韻を残した。



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if 三ノ輪銀編 7

残り2話で完結無理だわ……

文字数を増やしても良かったんですけど僕が1話をかき上げたところでキリのいいところで終わってしまうのでもう少しかかりそうですよ

大人の都合により戦闘描写はオールカットでいかせてもらいます。(書いたところそこまで話としていいことを書けないのでカットしました)

まぁ、大人の都合を使えば残り2話で終わることはできますがそうしてしまうと内容のない小説になってしまうのでもう少しお付き合いください。

後、4~6話ぐらい伸びるかもね♪


「すいません、遅れました」

 

 あれから1年数か月経ち普通までとは行かないが中学生活を送っている。

 

「上里また遅刻したらしいわね」

 

 風先輩にそう言われて僕は苦笑いをしながら言う。

 

「すいません、登校中に困っている人を見かけてしまって」

 

「これで何度目か知ってるの」

 

「数えてないですね」

 

 そう言うと風先輩はため息を漏らした。

 

「上里の遅刻は毎回部長の私に届くのよ」

 

「それにしてもその奇抜な絵はなんですか?」

 

 僕は黒板に描かれている絵の事を聞いた。

 

「上里は昨日巻き込まれなかったの」

 

 風先輩は真剣に聞いてきた。

 

「僕はいつも何かに巻き込まれていますが昨日のとは何ですか?」

 

「そう言うのね、大赦の方から連絡は来ているの」

 

 その言葉に部室でタロット占いをしていた樹ちゃんが驚いていた。

 

「えっ、上里さんも大赦から派遣されてるのお姉ちゃん」

 

「分かりました、昨日自分も樹海にいましたよ」

 

「上里についての連絡が着ていたのよ私にそれで分かった」

 

「黙っていたのは申し訳ないですが僕がここに居るのは僕個人の我儘ですから」

 

「いいわよ、私の方こそ黙っていたから」

 

 そう言っているが僕には知っている情報だ。

 

「まぁ、僕は最初から風先輩が何者かは知っていましたから」

 

「大赦のトップは知っていてここに上里を送ったの」

 

 そう言った風先輩の瞳は怒りを現していた。

 

「いえ、大赦は分からずにここ以外で当たりが見つかれば僕はここから当たりの方へと転校させられますからね」

 

「それだけが聞けて良かったわ」

 

「昨日のお役目ご苦労様です、僕は遠くの方から見学させていただきました」

 

「だから、近くから反応がなかったのね」

 

「昨日の件で東郷と喧嘩にでもなりましたか」

 

 人数の数的にも彼女の性格上、黙っていたことに腹を立てていると思うしね。

 

「早く上里が着てたらもう少し穏便に終わりそうだわ」

 

「やだなぁー僕はそこまで人を納得させる話術なんて持ってないですよ」

 

「この学校の生徒の半分は上里が嘘を付いても信じるわよ」

 

「それじゃまるで僕が洗脳してるみたいじゃないですか」

 

 僕は苦笑いをしながら答えた。

 

「それほどこの学校の生徒は上里を信じているのよ」

 

「そこまで信じられることをしている覚えはないんですがね」

 

「上里に覚えがなくても助けてもらってる人たちは信用してるってことよ」

 

 その言葉を聞いて僕は別に他人からの信頼なんていらないと思った。

 

 銀だけが僕を信じてくれたらそれだけでいい。

 

 それに助けたではなく銀が守ったこの場所を守りたいだけだから。

 

「それよりもどうやって東郷に謝ればいいのよ」

 

 そう言って頭を抱え込む部長に声をかけようとしたが邪魔が入ってしまった。

 

 樹海警報の合図が部室に響き渡った。

 

「連続で襲撃か」

 

 僕がそう呟いている間に視界は慣れ親しんだ樹海に変わっていた。

 

「邪魔が入ったけどさっさとかたずけるわよ」

 

 僕は一応、端末で敵の数を確認した。

 

 確認した瞬間に考えが変わった。

 

あぁ、お前らが来たんだ

 

 僕はそう呟きながら勇者アプリを起動させた。

 

 懐かしい赤黒い勇者服を身に纏い、大鎌を手にしていた。

 

「得物があるのはいいな」

 

 僕はそう言って武器を握る。

 

 さぁ、お前たちは楽には倒させないよ。

 

 時間をかけて己の攻撃手段がなくなるまでじっくり蹂躙してから葬ってあげるよ。

 

「手助けはいらないので」

 

 僕はそう言ってバーテックスに向かって跳躍していく。

 

 先に蠍座の針から取り除いておかないと邪魔になりそうだ。

 

 そこからは只の僕の暴走だった。

 

 1人で倒しきることはできなかった。

 

 それどころか他の3人にまで手を出していた。

 

 だけど、後悔はしていない。

 

 だって、僕は銀を苦しめた3体を消すことができた。

 

 それだけで僕は満足だ。

 

 後日、僕は大赦に勇者に手を出したことで謹慎処分を受けた。

 

 謹慎どころかスマホの取り上げで良かったのに思いながら僕は瞳を閉じた。

 

 銀はなんて言ってくれるだろう。

 

「暁人、なんで仲間を傷つけたんだ」

 

 違う僕はそんな事を言ってほしいわけじゃない。

 

「また、あたしの様に誰かを殺したいの」

 

 やめてくれ。

 

 違う。

 

 こいつは銀じゃない。

 

 だって、銀は死んでいるんだ。

 

 だから僕に何かをいう事なんてないんだ。

 

 これは銀じゃないのだから切り裂いてしまってもいい。

 

 いつの間にか手にしていた大鎌で銀を切り裂いていた。

 

「暁人はいつになったらこっちに来るの?」

 

 崩れ落ちる銀は僕にそんな言葉を残した。



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乃木園子編
乃木園子 1


乃木若葉下巻を購入したのでその設定を今回から入れていきました。

少しだけ強引すぎましたが乃木若葉を読んでいた時にはこの設定をどこかで使いたいと思っていました。

千景ちゃん可愛そうだよね。

それと皆様の御蔭でお気に入り登録60件なりました。

これに関しては作者は驚きです。

ありがとうございます、これからも頑張っていきます。


「没だな」

 

 僕は原稿を読み終えて隣で寝ている奴に言い渡す。

 

「酷いよいずさん」

 

「話が面白くない」

 

 僕はそう言って原稿の端をちぎり口に加える。

 

「不味い」

 

「今回は自信作だったのに~」

 

「甘いか苦いかどちらかにして欲しい」

 

 原稿を食べ終わり水を飲む。

 

「おやつをくれるのは有難いが俺にはこのジャンルは理解が出来ない」

 

 なぜ、女性同士で恋をするのだろう。

 

 そんな、不思議そうにしていたら園子は目を光らせながら語る。

 

「わっしーとミノさんを書こうとしたらこのジャンルが当てはまるんだよ」

 

 今にでもこちらに襲い掛かりそうに言うので俺は少し引いてしまった。

 

「そうか、だから甘くもあり苦くもあるのか」

 

 そう言って右手を園子の頬に持っていく。

 

「と言うとでも思ったか!」

 

 頬を引っ張る。

 

「いひゃい、いひゃいよいずさん」

 

「僕が苦いのが嫌いなのを知ってて書いただろ」

 

「ごめんなひゃい、次は甘いのを書くから~」

 

 僕たちは毎日同じことをしている。

 

「はぁ、次からは頼むよ」

 

 僕はそう言って手を離す。

 

「さて、時間だから僕は行くよ」

 

「そんなに時間たってたんだ」

 

 悲しそうな顔をする。

 

 その表情を見ると胸が痛い。

 

「明日も来るから」

 

「待ってるね」

 

 外に出ると大赦の仮面を被っている男性が待っていた。

 

「わざわざすまない、春信さん」

 

 彼の手には書類が数枚持っている。

 

「上層部からの報告書だ」

 

 渡された書類を目に通しながら病院の廊下を歩く。

 

「結城友奈か大赦が名を渡した子だよな」

 

 昔から続いている独特な習慣、生まれた子供が生まれた時に逆手を打てばその子が女の子であるのなら『友奈』と大赦から英雄の名を送られるらしい。

 

「そうですね、私も古くからの文系を読んでいるので英雄『高嶋友奈』にあやかり送られるのを知りました」

 

「高嶋友奈ね」

 

 僕はその名前を知っている。

 

「上里様、今日は本家の方での会議です」

 

 そう、出雲家は父の家の名

 

 母は巫女の家系である上里家の人間である。

 

 子供に恵まれたのは母だけであったから僕は出雲家から上里家へ移った。

 

 園子は今でもいずさんと呼ぶのは昔からだからいまさら変えれない。

 

 変えたくない彼女の我儘なのだろう。

 

「分かった、車の中でこれを捨てるがいいか?」

 

 僕は手に持っている書類を恨めしいそうに見ながら言う。

 

「そちらの書類は上里様の方で処分していただいて構いません」

 

「ありがとう」

 

 移動の間に書類は僕の胃の中に消えていく。

 

 大赦は僕がコントロールをしていかないといけない。

 

 ご先祖様が作り替えた大赦を悪い方に行かないように。



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乃木園子 2

スランプから立ち直ったのか分かりませんが書けた。

後は三章が始まる前に完結させたい。


 あの日、シンと輝く真っ白な木蓮の木の下で、彼に出会ってしまったから私は彼の為の作家になった。

 

 私はその日は母に連れられてとある家に来ていた。

 

 その家は広くてお昼寝するとっておきの場所があった。

 

 でもその日は先客が居た。

 

 木蓮の木の下で小説を読んでいる男の子がいた。

 

 その姿はとても絵になるように綺麗だった。

 

 でもそれは一瞬の出来事だった。

 

 彼は読んでいた小説の端を千切って切れ端を口に含んだのだった。

 

 その出来事に茫然としたがなんだか知れないけど一緒にお話をしたくなってしまった。

 

「あれれ~知らない人がいる~」

 

 私はふざけた様に彼に近づいた。

 

「……」

 

 彼は一瞬だけこちらを見たがすぐに本に視線を戻した。

 

「私の名前は乃木園子だよ~あなたは?」

 

「出雲暁人」

 

 彼は素気なくそう答えた。

 

「じゃ、いずさんだね」

 

「でも、今日から上里暁人になった」

 

 それだけだった彼との会話はこれで終わってしまった。

 

「暁人様、こちらにいらしたのですね」

 

 そう言って仮面を付けた人が現れた。

 

「屋敷の中でも動き回れたら困ります」

 

「分かった」

 

 彼はそう言って立ち上がり横を通り過ぎるときに呟て言った。

 

「見たでしょ」

 

 たった、数分未満の邂逅だった。

 

 それだけで私は最初に見た彼の光景が頭から離れなくなった。

 

 異性なのに綺麗で切なげで触れてしまえば壊れてしまいそうに見えた。

 

 だからこそまた話をしたいと思ってしまった。

 

 彼に会うためにはお母さんを説得しないといけない。

 

「お母さん、また上里家に行きたいな~」

 

 お母さんはにっこりと笑みを崩さずにそうねと言ってくれた。

 

 会うのが楽しみだ。

 

 でも、彼の瞳は悲しみにあふれていた。

 

 私を見る目は憐れんでいるようだった。

 

 彼の瞳には私はどのように写っているのか気になる。

 

 だから私は彼に会いに行った。

 

「やっほーいずさん」

 

 いずさんの部屋に入るといずさんは部屋の隅で呟いていた。

 

「赤の花は摘み取られ、青の花は芽に戻り、紫の花は散る」

 

 その言葉は嫌な感じがした。

 

「それは何の詩?」

 

 私の言葉を聞いたいずさんは静かに振り替えり答えた。

 

「回避することができない未来」

 

 意味が分かんないよ。

 

「上里は巫女の家系で神託を聞くことができるけど僕はぼやけた映像と声を聞くことができる」

 

「じゃ、さっきの詩は神託なの?」

 

「そうだ、僕は文字でその神託を書くのが苦手だから詩になる」

 

 彼はそう言って手に持っている本のページの端を破いて口に含んだ。

 

「美味しくない」

 

 本は美味しくないと思うのだけど彼の顔にはページに味がついているような様子だった。

 

「何を不思議がっている昨日も見ただろ」

 

 そう言って彼は冷めた目でこちらを見てくる。

 

「でも、本は食べ物じゃないよ」

 

「出雲家は大赦の書物を管理してきた一族でその中では僕みたいに本を食べる者もいる」

 

「ページには書き手の気持ちやその時の文章によって味も変わるし管理の仕方も変わる」

 

「じゃ、ご飯はそれだけ?」

 

「あぁ、毎日同じ文章で変わらない味を食べている」

 

 だからその言葉を聞いたときに私は思った。

 

「じゃ、私が物語を書くね」

 

 彼だけの書き手になりたいと思った。



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乃木園子 3

映画第三章公開されました。

アプリゆゆゆいが配信されました。

感想で文学少女ですねと書かれて昔の作品だけど知っている人が居て嬉しいです。

作者の人生で初めて買って青春を過ごした作品なので思い出があったので題材にしたかったので園子の中の人が遠子先輩で書きました。

書く人、食べる側を交換してやりました。

では、続きをお楽しみください。


「これも美味しくない」

 

 いずさんはそう言って勇者部の感想文を読み終えた。

 

「君たちは文章をバカにしているのか?」

 

 冷めた目で私たちを見るいずさんにフーミンは困った風に言う。

 

「いや、急に来てお役目の事を簡単に思ったことを書けって言われて書いただけなんですけど」

 

「これは先代の勇者が書いていた日記を見つけたのから今の勇者にも書かせようと思っただけだけど」

 

 いずさんは持ってきてた小説のページを破って口に含む。

 

「文章というのはこの味だよ」

 

 最高のおやつを食べている様に微笑むいずさんは可愛いけど人前でするのはなんだか嫌だ。

 

「本を食べる方がどうかしてるわよ」

 

 にぼっしーの的確なツッコミにいずさんは可哀そうな子を見るような目で見ながら言う。

 

「この美味しさが分からないなんて……ふっ」

 

 その言葉にゆーゆが目を輝かせながら反応した。

 

「本って美味しいの」

 

「これは君たちの主食みたいなものだから、君には美味しくないと思う」

 

 いずさんは急にゆーゆに顔を近づけられて照れて本音を言う。

 

「そうなんだ、残念だよ」

 

「君は寿命に悪い」

 

 いずさんはそう呟くが顔は赤い。

 

 その姿を見るのは嫌だな。

 

「いずさん、おやつだよ」

 

 そう言っていずさんに原稿を渡すがいずさんは不思議そうに顔を見てくる。

 

「なんで怒ってるんだ」

 

 その言葉は意外だった。

 

 今の自分が怒っている事、たぶんそれは自分以外が書いたものを彼が食したのが原因なのは分かっているがそれが顔に出ている事だ。

 

「怒ってないよ」

 

 私はそう言っていつもの笑顔をする。

 

「そうか」

 

 彼はそう言って今日のおやつを読み食べていくがその顔が青くなっていく。

 

「ま、不味い」

 

 そう言ってもう一度、原稿を食べて感想を述べた。

 

「お豆腐のお味噌汁に、あんこを浮かべた味がする」

 

 彼の目には薄っすらと涙が出ていた。

 

「変な味がする」

 

 彼は鞄から本を探すが先ほど食べた本しか持ってきてなかった。

 

「口直しの本がない」

 

 その顔を見ると安心してしまう。

 

 みんなの文章はいと口だけで自分の原稿は全部食べてくれるのだ。

 

 美味しくなくても全部食べてくれる、それだけで安心してしまう。

 

「園子、君は僕がゲテモノが大好きな妖怪だと思っているのか?」

 

 いずさんは涙を浮かべながらこちらを睨む。

 

 勇者部の一部は本を食べるのだから十分妖怪だろと言いたげな視線をしていた。

 

「いずさんのお題が駄目なんだよ~」

 

「それを美味しく仕上げるのが作家だ」

 

「なら、いずさんが書く?」

 

「僕はあくまでも食べる側だからな」

 

「お題がなかったらう~んっと甘いのかけるのにな~」

 

「百合百合な小説は拒否だ!」

 

 あっ、いずさんの変なスイッチが入った。

 

「あれは甘いだけじゃない口の中が砂糖だらけになって暫くは何を食べても甘くなり感覚が痺れるんだよ!」

 

 それから怒り出したいずさんのお説教が暫く続いた。

 

 でも、この時間が続いてくれればいいと思った。



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乃木園子 4

長いこと皆様を待たせてしまいすいません。

この話にてこの物語は終わりです。

まぁ、ここまで書いてきて色々なことがありました。

病気が見つかり入院したりを2回程して、精神不安定で書けなくなったことがありましたがここまで書けたのは読んでくださる皆様が居たからです。

ですが、これ以上書くには時間が必要です。

まだ、精神的に不安定な部分もありますので気持ちの整理が終わるまでは筆を休めることにします。


「さようなら」

 

 そう言って振り返り歩き出すと後ろから迫真の演技が聞こえてくる。

 

「先輩、先輩!」

 

 いずさんに舞台は向いていない。

 

 正面に見えるふーみんは苦笑いをしていた。

 

「はい、ストップ」

 

 わっしーがすかさず止めたが表情が輝いている。

 

「上里君、練習だろうと本気の演技をするなんて」

 

「文学少年だからこそ演技だろうと手を抜くことはできない」

 

 いずさんはこういうところは可愛いと思うんだけどな。

 

「上里暁人の本気の演技とくと見るがいい!」

 

 調子に乗りすぎるんだよね~

 

 だから練習が終わればいつものように戻る。

 

「疲れたから甘~い、おやつ頂戴」

 

 この時は扱いやすい。

 

「今日は書いてないんだ」

 

 その言葉でいずさんはポケットから小説を取り出して食べ始めた。

 

「ねぇ、生まれ変わったらなになりたい事変わってない?」

 

 いずさんは小説から目を離して外を見た。

 

「昔も今も変わってないよ」

 

「僕は鳥になりたい、この空を大地を自由に飛びたい」

 

 思い出したようにいずさんは口にした。

 

「園子はまだ、木になりたい?」

 

 私は驚いた、大抵の事は忘れているのにそれを覚えていたことに。

 

「何を驚いている、自分で言って置いて忘れていたのか?」

 

「逆だよ、覚えていたからビックリしたの」

 

 それからいずさんはこっちを向いて微笑みながら言った。

 

「人は木になれないと僕は以前そう言った、けどその意味は汲みとれたよ少し時間はかかったけど」

 

 彼がその事を疑問にして考えてたなんて。

 

「僕を誰だと思っているんだい?」

 

 彼は立ち上がり言う。

 

「物語の意味、言葉の意味を後世に伝えるための管理者だよ」

 

 彼は忘れずに覚えていてくれた。

 

「いずさん」

 

 私は鞄から原稿用紙を取り出した。

 

「今日のおやつだよ」

 

 彼はそれを受け取るとじっくり読み始めた。

 

 いつもなら受け取る前は何か言ってくると思っていた。

 

 でもいずさんは静かに受け取り静かに読み始めた。

 

 原稿を一口も食べようとしない。

 

 なにか、駄目だったのだろうか。

 

「僕はこれを食べれない」

 

 その言葉はショックだった。

 

「これは送るべき場所にだすべきだよ」

 

「でも、これはいずさんのおやつだよ」

 

「君はそう思って書いていない」

 

 いずさんはそう言って原稿を読み直す。

 

「いつも自由に書いてもらっていたけどこれは僕の口じゃなく人の目に触れるべきものだよ」

 

 私の作品はいずさんだけのものなの。

 

「これは食べたら美味しいと思うよ……けど、本当に誰かに見せるべきこれは食べてはいけない」

 

「なんでなのいずさん」

 

「それは僕が‟文学少年″だからだよ」

 

 それは分かっている。

 

 いずさんはその理由で拒絶することは知っている。

 

 けれどこの物語はいずさんに食べて欲しい。

 

「ならここで賭けをしよう、この本が世に出て時には最初に僕がこの本を食べよう」

 

「この本が出ないのであれば僕は君の作り出した物語は食べない」

 

 いずさん、それは賭けじゃなくて脅しだよ。

 

「でも、この本は世に出るよ」

 

「なんで分かるのそんなこと」

 

「僕の勘は外れることはないからね」

 

 そう言っていずさんは原稿を私に渡して言った。

 

「行よ、僕だけの作家さん」

 

 私が皆の作家になってもいずさんは側にいる。

 

 なんで忘れてたのかな、私は彼の側に居たい。

 

 それだけだったんだ。




皆様、本当に長い間お付き合いさせてもらいありがとうございます。


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郡千景編
郡千景 1


活動報告では短編を書くつもりでいたのですがこの話を書いていました。

お気に入り登録100件記念として郡千景編を書いていきます。

千景は作者の好きなキャラなので書いてみたい気持ちはありましたが運命は変わらないから書いてて絶望しそうだからと断念しましたが書きます。


では、久々に書いていきますか!


 平成2015年6月30日

 

 彼女は周りから比べたら物静かで影の薄い子だと僕は思っていた。

 

 でもそれは僕の中だけで彼女は虐められていた。

 

 理由は知らない他の人の考え方まで知りたいとは僕は思わない。

 

 けど僕は彼女にだけ興味を持った。

 

「やぁ、君が郡千景ちゃんだね」

 

 僕が好きだった小説の人物の喋り方を借りて話しかけてみたが無視された。

 

「早速無視かい? さすがに僕でも傷つくよ」

 

「何の用」

 

 こちらを見た彼女の瞳は濁っていた。

 

 だから彼女はアレに惹かれているのかも知れない。

 

「暇そうだから僕の話し相手になってくれるかい?」

 

「嫌よ」

 

 表情もなく死人に近い表情だろう。

 

「じゃあ、これから話すのは僕の独り言だ」

 

 そう言って僕は語りだす。

 

 交渉人として知っている事を話しておかなければならない。

 

「近々各地で天変地異が起こると予想されている、君は少なからずこれの被害者になるだろう」

 

 そう言ったら睨まれてしまった。

 

「助かる方法を知りたいかい」

 

 僕は挑発的な言葉を放った。

 

「教えて」

 

「これは言ってもしょうがないが君は勝手に助かる」

 

「はぁ?」

 

「助けが来るわけなく君は勝手に一人で助かるよ」

 

 僕はそう言って立ち上がる。

 

「さて、僕は調べることがあるからこれで失礼するよ」

 

 立ち去る前に言って置く言葉があった。

 

「まぁ、覚えなくてもいいけど僕の名前は……そうだな忍野とでも呼んでくれ」

 

「偽名」

 

「そう、僕は近々姿を隠さないといけないからね本名は今捨てたよ」

 

 それじゃねとそう言ってこの場を去る。

 

 去ってすぐに黒塗りの車が目の前に止まった。

 

「大社って言うのは仕事が早いんだね」

 

 車のドアは勝手に開く乗れとの事だ。

 

「僕にできることは少ないんだけどな」

 

 そう言って僕は乗り込む災害が起こる前に香川に向かうべく。

 

 

 平成2019年2月

 

 大社の仕事で色んな所に行ってきたけど命が幾つあっても足りない。

 

「まぁ、そんな仕事も今日で御終いなんだけどね」

 

 災害が終わってから3年振りに四国に足を踏み入れた。

 

 各地の勇者の情報、地域ごとの汚染情報をまとめてみたけど酷いものだ。

 

「これで残っているのは四国(ここ)と……」

 

 長野も長いこと持っていたみたいだけど終わってしまったみたいだ。

 

 僕にできることは何もないのだけど。

 

 大橋を渡り終えると迎えの車が待っていた。

 

「おや、今日戻るとは言ってなかったんだけどね」

 

 僕は頭をかきながら車に乗り込み四国を守っている勇者が集まっている丸亀城に向かう。

 

 今回の調べたことを大社に報告する義務があるからだ。

 

「それにしてもここは変わりないね、外は荒れに荒れているのにね」

 

 この地は他の地よりも勇者の数が多いのがあったからだろう。

 

 それともう一つの御蔭でか。

 

「君たちの方もなにか情報は得ているんだろ」

 

 僕は正面に居る男に話しかけると紙の束を渡された。

 

 その紙を見て納得いった。

 

「まぁ、僕の予想通りだよ」

 

 さて、彼女たちにレクチャーしなくてはならないな。

 

 彼女たちが使っている物がなんなのか。

 

「こういうのは僕の仕事じゃないんだけどね」

 

 彼は感情のない声でそう言って窓の外を見る。



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郡千景 2

今回の話は作者の仮説が混ざっています。

ご了承の上お願いします。


 3年前に私におかしなことを言った男が私たちの教室に入ってきた。

 

「どうもお嬢ちゃんたち、今日から君たちに特別講習を受けてもらうよ」

 

 変わっているのは冬なのにアロハシャツを着ている事だけ。

 

「さて、ここに居るお嬢ちゃん達は奥の手を使ったことがある者は手を挙げてくれるかい」

 

「その前に貴方の名前は」

 

 乃木さんは手を挙げながらそう言った。

 

「僕の名前は言っても意味ないから言わないよ」

 

 そう言って生えている髭を触りながら見渡していく。

 

「まぁ、挙げなくても大社から情報を貰っているから挙げてない子がいても意味はないけどね」

 

 そう言って私達を見渡していく。

 

「お嬢ちゃん達は自分たちの精霊の名前を憶えているかい? まずはそこからだね」

 

 私はそんな事を聞いてもお役目には関係ないと思い聞かないでおこうと思った。

 

「まず、そこで僕の話を聞こうとしていない千景ちゃん答えてくれるかい」

 

 そう言って彼はこちらを見ながらそう言った。

 

「今、千景ちゃんはなぜって思っただろ? 答えは簡単だ君たちの性格などの情報も貰っているから聞かないであろう君をあらかじめ決めていた」

 

 目を見開いて彼を見る。

 

「まぁ、言いたくないのなら僕が勝手に言うだけだ」

 

 そうして彼は答える。

 

七人御先(しちにんみさき)なんだけどお嬢ちゃん達はこの名前を知っているかい?」

 

 この言葉に誰も口を開かない。

 

「全滅かい? 伊予島杏ちゃんなら知っていると思ったんだけどな」

 

 彼は教卓を指で数回たたいてから解説を行った。

 

「お嬢ちゃん達に分かりやすく言うのならば妖怪の類だよ」

 

 妖怪

 

「今回、大社から聞いた報告書には一目連、七人御先、輪入道、源義経、最後のは妖怪に関わりのある人間なんだけど」

 

 そこまで言い切って彼はとんでもないことを口走った。

 

「ここからは僕の持論になるんだけど、バーテックスは神の使いだ」

 

 いきなりすぎる妖怪の話だと思ったらバーテックスが神の使い。

 

「僕はおかしなことは言ってはいないよ、神樹にアクセスして奥の手を使うのにそれが妖怪の類であるこれが僕の仮説を成り立たせるには必要なものさ」

 

「妖怪は人に害、悪をもたらすものって言うのは理解しているだろ」

 

「それを力に変えている時点で可笑しいと思わないかい? もし、神様が力を貸してくれているのならその力はイザナギ、アマテラス、ツクヨミ、スサノオと言った神へのアクセスができるはずだ」

 

「だが、それは出来ないのならば僕の仮説は正解へと導いてくれる」

 

 そう言って彼はポケットから携帯を取り出して時間を確認する。

 

「まだ、時間的には余裕があるね」

 

 そう言って画面が見えるように教卓に置き話を続ける。

 

「この話を聞いて反論したい気持ちがあるには分かるけど、この仮説を覆すだけの持論がお嬢ちゃん達にはない」

 

「まぁ、これは仮説だから信じなくてもいいかな」

 

 そこまで言って置いて信じなくてもいいと言われてもどうしようもない。

 

「お嬢ちゃん達が知っておくのは君たちが使う奥の手は大変危険なものだと認識してほしいだけさ」

 

 そう言って教卓に置いてある携帯をしまい。

 

「これで特別講義は終了だ、しばらくはこの敷地にいるから質問があるなら声をかければいいさ」

 

 ではと言って彼は部屋から出て行った。

 

 彼は何をしたかったのか、私達をどうしたいのだろうと思った。

 

 だけど私は私の為に戦わないといけない。



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郡千景 3

「この世も末だね、そう思わないかい」

 

 僕が声をかけても彼女は答えることはない彼女は死んでいる。

 

「だから言っただろ、君たちの力は強すぎると」

 

 僕は立ち上がり彼女の遺体を回収してこの場を離れる。

 

「お待ちください」

 

 仮面を付けた者に止められる。

 

「おや、君たちが頼んだんじゃないのかい?」

 

「今、貴方にここを離れられるのは得策ではありません」

 

「交渉人としての能力を買ってくれるのは有難いけど彼らとの交渉には巫女の生贄が必要だ」

 

「その用意ができました」

 

「ならそこからは君たちが勝手にやってくれるかい、僕には大事な用があるんだ」

 

 動こうとしたら銃を見せられる。

 

「何の抵抗もできない僕を撃ち殺すきかい」

 

「貴方は知りすぎているこの世界には必要はありません」

 

 どこで間違えてしまったのだろう。

 

 怪異の声を聞いた時からだろうか。

 

「初めから君たちが僕を処分することは知っていたよ」

 

 ここまで生きてここまで怒ったのは初めてだろう。

 

 生まれてから死ぬまでの人生を知っているのだから僕はここでは死ねない。

 

「君たちに殺されようが僕は数日の間に死ぬんだから気長に待ってくれないかい、ここまで彼らと交渉をしてきた僕への報酬さ」

 

 そこからの先の記憶はない。

 

 気が付いた時には彼女を弔うために選んでいた山の中を歩いていた。

 

 ここを歩いているということは僕は報酬を貰えたと思っておこう。

 

 目的の場所に向かうとそこは彼岸花で綺麗に見える。

 

「時期はまだ早いんだけどねこれは驚いたよ」

 

 彼女を弔うための柩の中まで彼岸花で埋められている。

 

 まるで彼女の悲しい思い出と一緒に旅立つように花が咲いている。

 

「鎌の方は神社に祀り直したはずだったんだけどな」

 

 鎌まで柩の中に入っている。

 

「これほど気に入られているとは」

 

 時間はないのだから手短に終わらそう。

 

 彼女を柩に入れ僕が用意していた白い彼岸花を持たして火葬する。

 

「知っているかい、白と赤の彼岸花には同じ花言葉がある『また会う日を楽しみに』」

 

 こんな世の中ではなければ君を助けただろう。

 

 僕が敬愛している小説の主人公の様に。

 

 まぁ、彼女を助けるのは未来の誰かに託すとするよ。

 

 ここまで読んでくれていた君に書いておくが僕はただ普通の子供で居たかったよ。

 

 西暦2019年6月

 

 

 神世紀300年

 

 僕は汚れたノートを読み終えて僕は家から急いで学校に走っていく。

 

 なぜ走っているのだろう。

 

 ノートを見てからやらないといけないと思ったことがある。

 

 手を伸ばさなければいけない人が居るからだ。




急な展開になってしまっているけれど作者が書きたいことは次の話で書き終わるから。








今で救いがないのなら未来で救済してしまえばいい。


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郡千景 4

さて、これにて記念話は終わりです。

書きたいキャラも書いたので本当に終わりかな。




 僕は走り自分の教室に入っていった。

 

「良かった、まだ教室に居た」

 

 僕はそう言って彼女に近づく。

 

「私に何の用」

 

「今から星を見に行こう」

 

 そう言うと彼女にゴミを見ているかのような目で見られた。

 

「まだ夕方よ、高嶋君」

 

「僕だってそれは知ってるよ! 着くころには星が出る前だから」

 

「私をどこに誘拐する気なの?」

 

「何で星を見に行こうが誘拐なんだよ、行くのは土佐山だ」

 

 その名前を聞いて彼女は一層軽蔑した目で僕を見てくる。

 

「もしかして高嶋君はそう言ったスポットが好きなのかしら」

 

「この時期にしか見れない景色があるんだ」

 

「知っているでしょ高嶋君もあそこで何かが出るって話」

 

「女の幽霊だっけ」

 

「違うは私が出るのよ」

 

 幽霊騒ぎはお前か!

 

「毎晩行ってたのかよ」

 

「嘘だけど、間違ってはいないわ」

 

「嘘なのかよ」

 

 そんなやり取りをしながら彼女を自転車の後ろに座ってもらい目的の場所に向かう。

 

「ねぇ、高嶋君」

 

「どうした」

 

「おしりが痛いんだけど」

 

 僕は絶賛背中が痛いです。

 

 背中を抓らないでもらいます。

 

「高嶋君は彼女いないでしょ」

 

「なんでそんな事知ってるんだよ」

 

「だって童貞臭いもの」

 

 なに、僕を虐めて楽しいですか。

 

「だったら郡も彼氏いないだろ」

 

「えぇ、居ないわよ……でも好きな人は居るわ」

 

 その言葉に僕は驚愕した。

 

「でも、彼女と結ばれることはできないのだけど」

 

 それを聞いて自転車から落ちかけた。

 

「同性かよ」

 

「悪いかしら?」

 

「悪くはないけど、その気持ちは伝えないのか?」

 

「伝えようにも伝えられないわ、彼女はもう死んでいるのだから」

 

 なんだか聞いたらいけないことを聞いてしまったような気がする。

 

「高嶋君が気に病むことはないは彼女は300年前になくなっているのだから」

 

「西暦時代の偉人か何かか?」

 

「そうね、名前は覚えてないけれど素敵な人よ」

 

「ところで高嶋君は好きな人は居ないのかしら?」

 

 僕への攻撃が始まった。

 

「僕には居ないよそんな一途に思える人なんて」

 

 自転車を漕ぐちからを緩める。

 

「僕は誰かを想うだけで十分だ」

 

 そう言っている間に山の近くまで来てしまった。

 

「ここからは歩きね」

 

 郡は自転車から降りて自分の先を歩いていく。

 

 その歩調は道を知っているように歩いていく。

 

「本当に来たことがあるんだな」

 

「今日が初めてよ」

 

「その割には僕の先を歩いてないか」

 

「高嶋君が行きたい場所はたぶんこの先でしょ」

 

 その言葉はあっている。

 

「それはそうなんだけどな」

 

 すると前の方からアロハシャツを来た男性が降りてきた。

 

「おや、こんな時間に若いカップルがどうしたんだい」

 

 絡まれるとは思はなかったが男性はニヤついている。

 

「カップルじゃないわ、貴方こそここで何をしているの」

 

「僕は花を置きに来たのさ」

 

 その男は懐かしむような表情をしている。

 

「ここには大切なものを置いているからね」

 

 そう言って僕たちの横を通り過ぎる際に男は僕に呟く。

 

「彼女を大切にしなよ」

 

 僕にしか聞こえない声でそんな事を言われた。

 

 そのまま山道を進み目的の場所に着いた。

 

「ここでしょ、高嶋君が来たかった場所」

 

 そこには赤の彼岸花が咲き誇っている。

 

「その通りです」

 

 一面赤で覆われている場所に一部だけ白が混ざっている。

 

「本当に花を置いていったのね」

 

 花束が置かれている場所は花が咲いていない。

 

 ここだけ寂しく何もない。

 

「白の彼岸花って初めて見るな」

 

「そうなの、私は白も好きよ」

 

 そう言って郡は空を見る。

 

「月が綺麗ですね」

 

 僕は自然にそう呟いた。

 

「死んでもいいわ」

 

 そんな事を隣で言われたら驚く。

 

「何をそんなに驚いているの高嶋君」

 

 蔑んだ目で言われた。

 

「意味が分からなくて」

 

「ビックリだわ、意味も分からず告白したの」

 

 僕が告白?

 

 告白したの。

 

「Iloveyouを昔の人は月が綺麗ですねと言っていたのよ」

 

 この日、僕は人生で初めての告白をしたことになる。

 

「ならさっきの返事はなに!」

 

「あら、意味を知らない人には教えないわよ」

 

 でも、その日の月は本当に綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、今日は珍しいお客さんだね」

 

 呟いた彼の前には学生服を着た少女が居た。

 

「毎年、花を置きに来るなんて貴方も暇なの」

 

 その言葉を聞いて男は笑う。

 

「まさか300年越しにそんな事を言われるとは思わなかったよ」

 

「なにか他の言葉がよかった」

 

「いや、また会えてうれしいよ」

 

「それで貴方は何時までここに居るの」

 

 まさかの言葉に男は言おうとした言葉が出なかったが静かに落ち着いて言葉にする。

 

「僕はもう少しここに居ようかな」

 

「貴方が来たところで私には会えないけど」

 

「その時は交渉人の力を使って会いに行くよ」

 

 彼は火を着けていない煙草を加える。

 

「次は貴方が私に会いに来て」

 

「約束しよう、どれだけかかろうが君の元に行こう」

 

 男は叶うはずのない約束をまたしてしまった。

 

 彼の前には少女の姿はなくなっていた。

 

「僕は君を想っているだけでいいのさ」

 

 火のついていない煙草を見つめながらそう言って立ち上がる。

 

「さて、僕の仕事をやり遂げに行こうか」




では皆様、いつかまた会いましょう。


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設定集

 ここでは全ての物語を読み終えた貴方に贈る各章でのキャラクター設定を書かせていただきます。

 

 各章の主人公だけを書いていくのでヒロインの方はまた時期が来たら書こうと思います。

 

 犬吠埼風編

 

 吉野川遥(よしのがわはるか) 旧名:上里暁人(かみさとあきと)

 

 元々上里家の人間だったが勇者適性があり分家の出雲家に養子としてだされる。(ここまではどの章も同じです)

 

 大橋の決戦時に数回の満開の後遺症で記憶、味覚を失っているがそれ以外にも失っている。

 

 そのため上里家、出雲家は彼を守るために一般家庭に身を隠すように配慮したが当たってしまった。

 

 当初、このキャラを書くにあたって最初はヤンデレキャラにしようと思っていたのですが予定を変更してメンタル面が弱く守りたくなるような男の子の様な印象で書かせてもらいました。

 

 最後のエピーログは自分がアニメに惹かれた作品であるBLOOD+の最終回をオマージュさせてもらいました、なので子供が2人いる訳です。

 

 

 東郷三森・鷲尾須美編

 

 出雲暁人(いずもあきと)

 

 出雲家に出されるが扱いは風編よりも厳しく最初は園子の許嫁の設定がありましたがこれは書いている途中で消しました。

 

 彼は基本的に大赦は好きではないので内部情報を漏らすことが好きですがそれは須美又は東郷さんにしか話さない、これは相手のリアクションが面白いからからかっているだけです。

 

 大赦の中では唯一信頼しているのは三好春信だけで彼を弄るのも彼の楽しみであるが作中ではあまり絡みを書いていません。

 

 

 犬吠埼樹編

 

 出雲暁人

 

 この章で初めて上里ひなたを登場させて上里家の人間だったことを掲示しました。

 

 最初に彼を書くにあたってキャラの印象はエヴァの渚カヲルの様なポジショニングを予定していました、ですがこの小説は勇者一人一人の恋物語が主体だったのでこの設定を白紙に戻し歌うことが好きな不思議な少年風に書き直しました。

 

 作者の中ではこの樹編が考える中で一番難しくスランプに陥った物語でした。

 

 樹ちゃんが惹かれるようなキャラを書かなくては、恋をさせるにはそうすればいいのと考えて書いているうちに迷走しているうちにこのような物語になってしまった。

 

 

 三好夏凜編

 

 乃木隼人(のぎはやと)

 

 この章では初めての暁人君から離れたキャラで書かせてもらいました。

 

 彼は乃木家の血をより濃く受け継いでいるために刀の扱いは神童と謳われるほどでしたが自分に憧れを持ってくれた三ノ輪銀の死によって腐ってしまう。

 

 乃木家の血を濃く受け継いでいる為なのか人間付き合いは苦手である、友人は三好春信のみで妹の園子には激アマである(只のシスコン)。

 

 銀ちゃんの一件がある為に春信は彼の心の治療の為に勇者に選ばれた讃州中の教師として彼を赴任させる。

 

 今回の主人公が大人の為に恋愛までは進みませんでしたが作者にそんな文を書く才能がなかっただけですが、良き師弟関係とさせてもらいました。

 

 

 結城友奈編

 

 出雲暁人

 

 彼は満開の影響で記憶全てと感情を捧げてしまった。

 

 そのせいで大赦の過激派に殺される手前まで行くことになる。

 

 彼を書く上に与えらてことを真っ直ぐに行う男、守られた約束を果たす男というスタンスて書かせてもらいました。

 

 

 

 三ノ輪銀編

 

 出雲暁人

 

 ここでの暁人の扱いはとても酷く最初から死ぬ設定をしていましたのでより家庭環境も酷く郡千景ちゃんの子孫として最初は考えておりました。

 

 ですがここまで来て設定を壊してしまうのはと考えて今までの出雲家の人間を屑の様に書かせてもらいました。

 

 彼は幼少の頃に上里家から出雲家に養子として出されたがその目的は出雲家の人間が金目的だけに養子をもらった設定にさせてもらいました。

 

 彼はトラブルに巻き込まれる銀にあえて巻き込まれているそれは彼女との時間を少しでも大切にしたい気持ちがあったからである。

 

 最終的にカルデアに呼ばれることになるがそれは大赦からの扱いは雑であったがそれは彼の才能、戦いの才能を見極めての訓練であり、大赦では勇者を守った英雄として扱われている為にその信仰心が強いため英霊の座に就くことができたがそれは規格外のアヴェンジャーとして召喚された。

 

 最初は召喚されてからの物語も考えていたがこれはその内、書きたいと思います。

 

 

 乃木園子編

 

 上里暁人

 

 この話では勇者適性があり一時的に出雲家に居たが上里家に戻り勇者ではなく勇者の日記、書物を管理するために管理者として上里家に戻った。

 

 自称文学少年、本を食べることで味を楽しむことができるが普通の料理では味を感じない本を食べる妖怪と言われているが本を食べることに相手が書く気持ちその時の感情を読み取ることができるいとど読んだ本は本がなくても音読できるほどに記憶力が良い。

 

 



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高嶋友奈編
高嶋友奈 1


指が勝手に書きやがったんだ!

そんなわけで平成悲恋シリーズ開幕


 空から視線が降り注ぐ。

 

 なんで僕はこんな所で倒れているんだ?

 

 そう思って体を動かそうにもまるで自分の体ではない、まるで糸の切れたマリオネットの様だ。

 

 まるで死んでいるみたいだ。

 

 そんな視界の中に数枚の桜が舞ったように声が聞こえてきた。

 

「暁人君!」

 

 この声は誰の声なんだろう。

 

「嫌だよぉ、約束したよね」

 

 約束?

 

 僕は誰と何を約束したんだ。

 

 駄目だ視界が真っ暗になっていく。

 

 体は動かなくても口は動くと思い声をだす。

 

君は誰?

 

 何を言ったのか分からないけど何かが空から落ちて肌にあたり弾ける。

 

嘘だよね! 私だよ高嶋友奈だよ

 

 駄目だ何も聞こえない。

 

 そうか僕はこのまま死ぬのか、そして僕の視界は闇に染まっていった。

 

 

 

「兄さん、起きてください」

 

 誰かが僕を起こしている。

 

 でも僕を起こそうとする人物は一人しかいない。

 

「ひなた、起こすのをやめてくれ僕は眠たいんだ」

 

「何を言ってるんですか兄さんも若葉ちゃんと一緒に戦うんですよ」

 

 そう、僕はなんでかこの世界で敵と戦うことのできる唯一の男らしい。

 

「僕はやりたくないって言ってるんだ! 戦うなんて脳筋の若葉一人でいいだろ!」

 

 僕は戦いたくない。

 

 戦うくらいならここに引き籠る。

 

 ここにはゲームもPCもある。

 

 不満と言えば妹のひなたがいることだ。

 

「頑固な兄さんですね! アレが攻めてきたときに剣を振っていたのは誰ですか!」

 

「あれは死にたくないから適当にやってただけで僕は動きたくないんだ!」

 

 ここまでくれば徹底抗戦だ。

 

「特訓は参加しなくとも授業には参加してください」

 

 僕は布団から指だけを出してパソコンの画面を指さす。

 

「大丈夫、最低登校表作ってるから」

 

 僕は年齢的には高校2年生だ。

 

 だけど今の僕は授業を受けている時間なんてない。

 

 敵が何時来るから分からないのだから、だから大人は戦うための戦力の育成に力を入れる。

 

 戦力を増やすのではなく、今いる人員で何とかしろと言うのだ。

 

「そんな無駄なもの作ってないで早く行きますよ」

 

 そう言ってひなたは僕が指を出していた布団の隙間に腕を入れて僕を布団から引きずり出した。

 

 こいつ、何時の間に握力ゴリラになったんだ!

 

「やめろ、僕はここから出たくないんだァー」

 

「子供みたいなこと言ってないで行きますよ」

 

 僕は寝巻のまま部屋から連れ出されて教室まで連行された。

 

 ねぇ、君のお兄さん土だらけなんだよ? しかも寝巻のまま教室に連行とか鬼畜の所業じゃないの?

 

 そしてここま教室だ、僕の苦手としている娘が笑顔でやってくる。

 

「暁人君、おはよう」

 

 僕はこの高嶋友奈が世界で一番苦手だ。



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高嶋友奈 2

 彼が私を苦手としているみたいに私は彼が嫌いだ。

 

 嫌いなのになぜ私が笑顔で接しているのかってそんなのは簡単だ。

 

 そうすることで彼の露骨に嫌な顔をするのが見れるからだ。

 

 人の嫌な顔を見るのは本当は好きではない好きではないけど彼のその顔を見るのはとても好きだ。

 

 なぜかと言われると答えることはできない、これは自分でも不思議だ。

 

 彼の昔のことを探ろうとひなたちゃんに話を聞いてみた。

 

「ひなたちゃん、暁人君って昔からあんな感じなの?」

 

 私はいつも通り笑顔で聞いた。

 

「そんな事はないですよ」

 

 この言葉には驚いた。

 

「昔は誰にでも優しく今の高嶋さんの様な方でしたよ」

 

 そこで私は思った自分を昔の自分と重ねて彼は私を苦手としているのだと。

 

「そーなんだ、何となくだけど優しいいって感じは今もあるよね」

 

「分かりますか!あんな風に見えて最後には本当に嫌そうな顔をしますがちゃんと行動してくれるんですよ」

 

 これは地雷を踏んじゃったかな。

 

 ひなたちゃんは若葉ちゃんを語る時よりも前のめりになりながら語りかけてくる。

 

「昔からお兄ちゃんは期待されてなんでも出来て妹の私が見てもとても輝いていたんですよ」

 

 意外だな、今では何も出来なそうに見えるんだけどね。

 

「でもある日、お兄ちゃんは変わりました」

 

 明るい話からいきなり暗い話にされた。

 

 これは後でお腹いっぱいにうどんを食べないと駄目だね。

 

「今みたいな感じになったの」

 

「今よりもっと酷かったですよ、1年は部屋から出てきませんでしたから」

 

 それは意外も意外だった。

 

 あんな性格をしているんだすぐにネットの世界に引き籠るんだと思った。

 

「お兄ちゃんはとても信頼してた友人に裏切られたんですよ」

 

 そう言ってひなたちゃんは私を見る。

 

「容姿は高嶋さんにとても似ていますよ」

 

 その瞳は私を見ているのではなく、彼を裏切った女を見ているみたいだ。

 

「そんなことがあったんだね」

 

「ええ、容姿も似ていますが性格も似ていましたね」

 

 そう言ってひなたちゃんは私の頬に手を伸ばし始めた。

 

「そう、あの時も私はお兄ちゃんを傷つけたあの女の目を指で押したんですよ」

 

 そう言って頬に伸ばした手をゆっくりと目に持ってくる。

 

 そう言うことなんだ昔の自分を重ねていたのではなく。

 

 私をその女と重ねて見ていたんだ。

 

 ふ~ん、それは嫌だなぁー

 

 今のひなたちゃんは怖いけどそんなこと言うことすら忘れてどうやって彼にもっと嫌なことをしようかと考える。

 

 そんな考えをしていると誰かがひなたちゃんの手を掴んだ。

 

「な、なにしてるんだ、ひなた」

 

 それは自分の妹に怯え切った彼の姿だった。

 

 そうだったのか彼が私を苦手としているのではなくて私がどこかの誰かに姿が似ているからひなたちゃんに手を出されると思って苦手な振りをしていたんだ。

 

「兄さん」

 

 そう言ってひなたちゃんは自分の手がどこにあるのかを自覚した。

 

「その手は何なんだ」

 

「すいません、また兄さんが壊れると思って私」

 

「僕は大丈夫だから、部屋に戻ってくれ」

 

 その言葉でひなたちゃんは部屋に戻っていった。

 

 彼は最初から私を心配していたんだ。

 

 でもその感情に腹が立ちそうだった。

 

 嫌いな人に心配されることがどれだけ屈辱的なものだと初めて知った。

 

 それと同時にこの嫌いな感情の反対の感情も持ち合わせている自分に腹が立つ。

 

 それと確信したのは彼は私を傷つけたくないのだと。



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高嶋友奈 3

皆様、お久しぶりです。

暫く何も思いつかなくうだうだしていましたが久々に書けましたわ。

とそんなことを言いたいのですがこの話はリクエストの話からの伏線を少しばかりかじっていくことになりますので大体の予想はできると思いますわ。

後数話で完結させて銀IFとリクエストを消化していきますのでもう少しお付き合いください。


「それでは次のための作戦会議を始めるぞ」

 

 そう言った暁人君を私は疑いの目を持ちながら見つめる。

 

 なぜ、私がこんな気持ちになってしまったのかは大怪我をして入院した時だった。

 

 病室でじっとしてられなく廊下を歩いている時だった。

 

「高嶋友奈さん、病室から抜け出るのはダメじゃないんですか?」

 

 そんな少年の声を聴いて振り返ると小学生ぐらいの男の子が立っていた。

 

「なんで君は私の名前を知っているの?」

 

 少年は不思議そうな顔をしながら言った。

 

「そんなの簡単なことですよ……僕が上里暁人だからですよ」

 

「可笑しいな、私の知っている暁人君はもっと大きいよ」

 

 暁人と名乗った少年は微笑みながら言った。

 

「この時代の上里暁人はそうですね」

 

 その言葉で少し理解した。

 

 この暁人君は別の上里暁人だと。

 

「分かっていただけましたか? 上里暁人は死んでも別の時代に生まれ変わる」

 

 輪廻転生だということだ。

 

「この世界の歪みのせいで世界に罰が与えられる時に上里家には男子が産まれる、それは君たちが守っている神樹様の呪いなんだよ」

 

 それならば今の暁人君はその呪いを受けていない。

 

「なら、今の時期に暁人君が死んだら呪いは受けないのかな?」

 

 暁人君はクスリと笑いながら言った。

 

「それは無理だよ、上里暁人が産まれた瞬間にこの呪いは永遠に続くよ」

 

「僕が産まれた瞬間にこの世界は別の世界線に切り替わる、これがこの世界の仕組みだよ」

 

 だとしたら彼は何回も絶望する世界を見ているのだろうか。

 

「そうだなぁ、この時代が最大の絶望かな? 他の時代の僕は幸せになったり更に呪いを受けた者もいる」

 

「なんでそんな話を私にするのかな?」

 

「だって君が最初で永遠の僕の初恋の相手になるからじゃないのかな?」

 

 暁人君が私に恋をしている? それも初恋、それはおかしい。

 

「この時代の僕は誰かと付き合っていると言われたのかな? まぁ、ひなたが言ったと思うけどあれは嘘だよ」

 

「だってひなたは兄である上里暁人を異性として好意を持っているから他の者に奪われたくないために嘘をついている」

 

 だからひなたちゃんは私にあんな目をするのか。

 

「でも私にそんな話をしてもいいの?」

 

「いいのさこの恋は決して実ることない恋だから」

 

 その言葉に私はどう返せばいいのか分からない。

 

「だからさ君は普通に過ごしたらいいよ」

 

 暁人君は黒い笑みを浮かべながら言った。

 

「叶わぬ恋を頑張って実らせてみなよ、僕は期待も希望もしてないからさ」

 

 そう言って不気味に笑いながら消えた暁人君を私は探した。

 

 だけどどこにも見当たらずに私は普段の生活に戻った。

 

「高嶋、聞いてるか?」

 

 この前の事に意識しすぎて話を聞いていなかった。

 

 黒板の前には暁人君と郡ちゃんが立っていた。

 

「千景、後で高嶋に今回の作戦をザっと説明しといてくれるか」

 

 暁人君のその言葉に郡ちゃんは少し頬を緩ませながらうなづいた。

 

「えぇ、私でいいのなら」

 

 郡ちゃんと暁人君は趣味のゲームのお陰で仲がいいのは知っているがここまでの中だとは思わなかった。

 

 でも、暁人君は私が好きなんだよねと頭の中で少年姿の暁人君の言葉を思い出す。

 

「あとそれから切り札の使用は禁止だからな、時と場合によって杏には使用してもらうが」

 

 そう言った暁人君の顔は少し前に見たよりも凛々しく見えた。

 

 あぁ、私は本当に彼が好きなんだと再確認してしまった。



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