stay nightでエロSS (月影57令)
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プロローグ
いい加減ゲス主人公も書き飽きたので、今作ではそれなりに純粋な主人公を描こう……そう思っていた頃もありました。
今日のみ日三回更新です。朝九時、昼十二時、夜九時、に投稿します。エロのある第二話を提供したかったのでこうしました。読む人は注意して下さい。
「いやぁ、やっと決まったねぇ」
「…………………………」
「あれ? やっぱり怒ってる?」
やっと決まったねぇじゃねぇよ! ふざけんな! 俺より十人以上後に死んだ人間が先に転生していったんだぞ! 俺はそんな内心を必死に押し殺した。相手は腐っても神だ。不満なんて述べたらどんな仕打ちをされるかわかったものではない。
「いや、君、私が君の心を読めること知っているでしょ」
知っている。だが心の声は止めようがない。ならば少しでも口に出さずに、押し殺した俺の謙虚さを見てもらおうと思っただけである。
「なるほどねぇ。まあいいや。話が進まないからさっさと転生について説明しよう」
OK。カモン!
「君にはゲーム、Fate/stay nightの世界に転生してもらうよ」
――絶望が、心を襲った――。なんて表現している場合じゃねぇ! snの世界だとぅ! どう考えても超危険な世界じゃねーか! ……あ。
「あの、その世界がどんな結末を迎えるかとか聞いてもいいですか?」
「聞くのは自由だよ。答えないけどね」
それでは聞いた意味がない。……しかし、結末がわからないのか。……………………それじゃあ原作介入するしかないじゃないか!
「だねぇ」
だけどあんな恐ろしい原作に介入なんてできるか! 回避できる道を探さねば。
「と、特典。特典が付与されるかも知れないという話はどうなったのですか!?」
それがあれば何とかなるやもしれぬ!
「かなり遅れてしまったからね。お詫びとして二つだけ特典を与えてあげよう」
「な、なら! 俺は原作の三百年前に生まれt」
「あ、それ無理」
ファ○ク!! クソッ、畜生! 原作から三百年前の日本に生まれれば聖杯戦争に巻き込まれなくてすむと思ったのに!
「特典は二つ許したけど、出生については決まっているんだよねェ。冬木市新都で第五次聖杯戦争が開始される時に十七歳になるよう生まれるよ」
フ○ック! ファッ○! どう考えても死ぬ! くそぅ!
「だからその為の特典でしょ。さあキリキリ決めなさい」
二つの特典か。それなら俺は…………。
§
出生:第五次聖杯戦争が開始される時に、十七歳になるよう冬木市新都で生まれる。
特典その一:魔術回路。魔力量は遠坂凛の二倍。起源は「譲渡」
特典その二:絶対催眠能力
一つ、絶対催眠とは、意思ある存在ならば必ずかかる催眠である。
一つ、絶対催眠とは、対象者の肉体・精神・魂全てに効果がある催眠である。
一つ、催眠のかける方法は二つ。
・目を合わせて頭の中で考えたことを相手に刷り込む。
・発声した内容を聴覚でとらえた相手に刷り込む。
一つ、能力をかける対象は自由自在に頭の中で選別できる。
§
「……はっ」
それから俺はあまり自由に動かない体で情報収集に走った。その結果を話そう。
まず、既に第四次聖杯戦争は終わっていた。あの大火災が発生した後なのだ。で、俺はその火災の被害者って訳。んで、当然今の俺は七歳だ。第五次から十年前の第四次の直後なのだから当然だ。どうして? 転生するんじゃなかったの? という疑問があるだろうが、ことは簡単だ。つまり俺は七年前にちゃんと転生したのだろう。だが七歳の子供にできることなどなく、大火災に巻き込まれた。そして、あまりのショックに七歳までの記憶を忘れてしまったということだ。転生前の記憶が残っている理由? 脳に物理的に記憶されているんじゃなくて、魂にアストラル的に刻まれているんじゃない? ……とにかく、今の俺は原作主人公衛宮士郎に近い。心が完全に死んだという訳だ。時折頭の奥でチリチリと赤い太陽のようなものが垣間見える。くそぅ、転生したってのに士郎と同じになっちまった。何やってたんだ記憶を失う前の俺は。絶対催眠があるならそれで家族を旅行に連れ出すとかできたじゃねーか!
今の俺は士郎と同じ状況だ。病院で火傷の治療を行っている最中なのだ。当然の如く両親(家族)はいない……火災で死んだのだろう。身よりがない。これじゃあ王様の魔力供給タンクに一直線じゃないか! いやだー! ミイラはいやだー!! ま、待て、落ち着け俺。とにかく普通の施設とかに入れるよう手続きをすればいいのだ。俺を引き取ろうとする言峰は絶対催眠で諦めさせればいい。それで当面の危機は回避できる。
と思っていたら、何と親戚が会いにきてくれました。どうやら病院側で名前がわからないから今まで会えなかったらしい。深山町に住んでいる母親の弟さんだ。彼は自分の妻である女性と一緒に、俺を引き取りに来てくれた。ミイラ問題クリアー♪ すまんな同じ境遇の子供達よ。大人しく王様の供物になってくれぃ。どうせ絶対催眠で止めたって言峰は魔力を供給できる人間を探すんだ。必ず誰かが犠牲になるのだから、誰がなっても一緒だろ(最低)。え? 言峰を殺せば供給タンクになる犠牲者を防げるんじゃないかって? そんなことしたら王様に警戒されて殺されるじゃん。そんなの嫌だよ。
さて、叔父夫婦に引き取られて半年が経過した。そろそろ動きますかね。
§
今俺は、ご町内でも結構有名な遠坂さん家に来ています。立派な洋館だなぁ。チャイムを鳴らす。
「貴方、うちに何かご用ですか?」
遠坂凛だ。うわぁ、ちっちゃい。
「魔術についてご内密に話があります」
「――!!」
首根っこを引っ掴むようにして家の中に入れられた。
「往来で魔術なんて単語を口にするんじゃないわよ!!」
ガーッと怒られた。頭が痛い。暴力系ヒロインはすぐアンチされちゃうんだぞ遠坂。とりあえず、居間に通されたので名乗る。
「
俺は平平凡凡な自分の名前を名乗る。さーて、大変だが頑張って説明しないとな。そして俺は説明した。自分が大火災に巻き込まれた被害者だと。それで両親が死ぬことになったあの災害を調べていくうちに魔術というものに辿り着いたと。この町の
普通に話せば一般人が魔術を知り得たとか、魔術を教えて欲しいとかは信じてもらえず、拒否されるだろう。だから目を合わせて絶対催眠をかけた。俺の言うことは極力信じるように。俺の頼みは同じくできうる限り叶えるようにと。しかし普通なら始末される。おっとっと。俺に攻撃できないように、とも慌てて催眠をかけた。原作の突然BadEndを踏襲してどうする。とにかく俺は例外として認めてもらわなければ。
「…………………………………………事情はわかったわ。でも魔術について教えることは……」
「遠坂さん。これはあまり言いたくなかったのですが、私は魔術の被害者ですよ。それも多分貴方の父親も関わっている災害の、です。遠坂家の当主となった貴女に、被害者である俺に説明してもらいたい」
更に催眠で説明しろと暗示をかける。普通に考えりゃ父親が関わった災害の被害者なのだ。説明する責務は確かにあるのだろうが、魔術が邪魔をする。魔術の秘匿はとても大事なものとして教えられているだろう。そう易々とは話してくれないはずだ。ってだから始末されるんだってば。物騒な思考ができないように催眠催眠。催眠のオンパレードである。
「…………はぁ。……仕方、ないわね…………」
そして会話が始まった。聖杯戦争についてだ。ここら辺は長いので割愛する。
………………説明中………………。
「そういうことだったのですか。そして私は、死んだ両親は、あの災害の被災者全員は、戦争にただ巻き込まれただけだったのですね」
「……そうね」
「大火災の真実についてはわかりました。では次です。俺に魔術を教えて下さい」
「貴方、どうしてそんなに魔術を教わりたがるの? 自分に被害を与えたものを」
普通は疑問に思うだろうな。理由はちゃんと用意してある。
「自衛の為です」
「自衛?」
「ええ。例えば変質者に襲われたら、防犯ブザーを鳴らしたり防犯スプレーを使ったり、警察に駆け込んだりして自衛するでしょう。事故や病気に遭っても、それぞれ警察や病院を頼ります。――でも、魔術はそうはいきません。これから先の人生で、同じような魔術による災害や、魔術師による襲撃などがあった場合、自分の身を守れるのは魔術だけです。ですから俺は、自分の人生で魔術による被害を受けそうな時に自衛できるよう魔術を習いたいのです」
「…………」
もっともらしい理由。しかしこれは減点だ。魔術師とは基本的に根源へと至る為に魔術師になる。自衛の為だろうが何だろうが、使う為に魔術を習うならそれは魔術使いだ。
「私はもうこれ以上、自分の人生で魔術による被害を受けたくありません。教えて、くれませんか?」
「そんなこと言われても」
遠坂は困っている。
「魔術を教えてもらって俺が魔術師になれば、先ほどの話をしたのが魔術の秘匿違反にならなくなりますよ」
一般人に魔術を知られるのは厳禁だが、その相手が魔術師になってしまえば同じ身内。秘匿もクソもない。
「じゃあせめて、俺に魔術が使えるかどうかだけ調べてみて下さいよ。魔術が使えないなら教えてもらおうと頭を下げている今の行為が全て無駄になりますからね」
魔術回路の有無を調べてもらう。遠坂は渋っていたがとりあえず調べてくれた。良し。俺はちゃんと魔術回路を持っているからな。これで後はなし崩しに魔術を習う流れにもっていこう。
§
――では、何故俺が危険な原作介入をするか、その訳を話そう。って言っても簡単なんだけどね。このFate/stay nightは原作がPCゲームだ。そしてそのEnd数は実に四十以上! しかもその内の大半をBadEndが占めている。つまり、この世界は四十分の一の確率で一つの未来へ辿り着くのだから、「確率的に言ったら、BadEndになる確率の方が圧倒的に高い」ということになるのだ。主人公の衛宮士郎が最初の教会で戦うことを選ばなかったらどうする? バーサーカーにあっさり殺されたらどうする? キャスターに、ライダーに、サーヴァントに殺されたら、マスターに殺されたら。――その時、聖杯はどうなる? 十中八九言峰に裏切られた遠坂が負けて、言峰が聖杯を手にするはずだ。そしたらどうなる? 日本どころか世界の危機である。どこにいても安全ではない。原作介入なんて馬鹿らしい、と俺を罵る人もいるかもしれないが、良く考えてみてくれ。――この世界がTrueEndやGoodEndを迎える可能性がどれだけ低いと思っているんだ。この世界がBadEndを迎えないという保証でもあるのか? ないなら俺は、原作を知る俺は介入しなくちゃいけない。衛宮士郎が死なないように。TrueEndのような幸せな終わりを迎える為に。だから、俺は原作介入する。力を持って!!
後書き
主人公の名前。他のSSで使った
遠坂との会話を読んでくれれば、どれだけ作者の頭が悪いかわかってくれると思います。催眠使いまくりのはしょり過ぎのいい加減過ぎです。ですがこのSSのストーリー部分なんてこんなもんです。エロが書ければいーんだよ。
原作介入する理由について。原作が、あれだけBadEndがあるゲームなんすよ? BadEndになる世界である確率だって十二分にあるじゃないですか。そしたら士郎が死んだりしないように手助けするのはむしろ当然でしょう。「主人公の士郎がどうにかしてくれるからへーきへーき」と安穏に構えていて、言峰が聖杯を手に入れてしまったらおしまいです。だから主人公君は頑張って原作介入するのでした。
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1月?日
先に注意しておきます。このSS(主人公)は間桐家に厳しいです。彼ら、特に間桐桜が好きな人は読むのをやめた方がいいと思います。
注意! 今日二回目の更新です! 今日初めてこの作品に気がついた人は、前話のプロローグから読んでね!
――あれから、十年の月日が流れた――
あっというまの十年は語るに値しない。何故なら退屈な日常と化したそれは物語ではないからだ。とりあえず、遠坂に魔術を習うのは成功したと言っておこう。彼女の兄弟子である言峰の教導も多分にあったが、俺はとりあえず一人前の魔術師……見習いになっていた。なんというか、こう、自分で自分のことを魔術師と呼ぶのは恥ずかしいものがあるのよ。見習いで充分だ。
で、俺はできるだけ原作を壊さないように行動した。具体的には未来のマスターである遠坂凛や言峰綺礼、衛宮士郎、間桐桜、間藤慎二、間桐臓硯といったメンバーを殺したり催眠の支配下に置いたりはしなかった。俺の目標は彼らを殺したり排除することじゃない。聖杯が悪い用途で使用されないようにすることだ。原作前に彼らを排除してしまったら、外から来た在野の魔術師がマスターになる可能性が出て来る。原作知識が通用しないリアルガチな聖杯戦争なんてしたくないのだ。だから原作通りにし、原作通りに主人公の衛宮を導き、だいたい原作通りにマスターとサーヴァントには退場してもらう。それが俺の目的。だから、聖杯戦争が始まったら、絶対催眠を使って暗躍する。ただしそれまでの間と、戦争の最中に絶対催眠がバレてはいけない。絶対催眠は強力な力だが、俺は人の身なのだ、催眠の効果範囲外から狙撃でもされたら俺は死ぬ。俺が絶対の催眠能力を持つという情報は極力漏れないようにしなければ。
そして俺は今、
「……私を、抱いて下さい」
秀麗な美女の前にいた。
§
柳洞寺、という寺がある。由緒正しい寺だ。この町の霊地でもある。そこに、聖杯戦争開始一ヶ月前付近、雨が降りしきる夜。それが条件だった。だから張っていたのだ、その条件に見合う時に。それは言うほど苦ではなかった。雨の降る夜という限定した条件があるのだ。その時だけ現場に居合わせればいい。――そこに、
「ハア――ハア、ハ――」
雑木林の中を、彼女はさまよっていた。紫の衣に血の跡が痛々しく、手には契約破りの短刀を携え、真っ白な手足は冬の雨に打たれて寒々しい。倒れ込むようにして歩く。泥に汚れ、呼吸は乱れ、助けを求める手がとても可哀相だった。サーヴァントである彼女は魔力によって自己を存在せしめている。それも枯渇していた。理由は知っている。彼女は魔力を受け取るべきマスターを自らの手で殺害したのだ。裏切りの魔女。その呼び名に相応しく。自由を得た代わりに一人山の中で消えようとしていた。
「ハ――アハ、アハハハ――」
乾いた笑いを漏らす彼女。自分の体がもたないことと、マスターの寝首をかいたことを笑っているのだろう。あるいは、そんなマスターでも繋がりがあることで支えられていた事実すら笑っていたのかも知れない。
彼女のマスターは、俺の記憶が正しければ正規の魔術師。三十代の男で、戦争をする気概がないのに勝利を夢見ている夢想家だ。他のマスター達の自滅を待つだけの男。彼は彼女を信用せず、それどころか罵倒した。他のサーヴァントに圧倒的に劣る彼女を。馬鹿な男だ。優劣など戦争においては大したファクター足り得ない。重要なのは「いかに使うか」だ。上手く使えば最弱も最強になる。とにかくそんな駄目なマスターに彼女は見切りをつけ、男の自尊心を満たすよう振る舞った。結果、どうでもいいことに令呪を使用してしまった。……本当に愚かな男だ。どうでもいいことに三つの令呪を使用し、その瞬間彼女によって殺された。
「っ――く、あ――」
しかし彼女は誤った。サーヴァントはマスターからの魔力供給で存在する。だが、それは魔力だけの話ではなかったのだ。サーヴァントは現在の”人間”と繋がりを持ち、この時代で存在することを許される。つまり――マスターを失うということは、外側に強制送還されるということなのだ。
更に最悪なことに、マスターである愚かな男はある呪いを残していた。男は、自分より優れた魔術師である彼女を認めなかった。ゆえに彼女の魔力を、常に自分以下の量に制限していやがったのだ。人間の魔力量で英霊を留めてなどおけない。本来なら、マスターを失った状態でも二日間は活動できたのに。だが今は、存在しているだけで砂時計の砂が落ちるように魔力が零れ落ちていった。……恐らく、もってあと数分。このまま次のマスターと契約できなければ彼女は消えてしまう。
「ア――ハア、ハ――」
……悔しいだろうなぁ。しかも、このあとに会うのが俺ときてる。最悪だ。彼女はいつだってそうだった。いつだって不当に扱われ、いつだって誰かの道具にされた。誰にも理解されずに。……いや、彼女の人生について考えるのはやめよう。俺は蹂躙する側なのだから。
「は――はは、あ、は――。あ――ぁ――」
――そう、こうやって俺が、本来出会うべき人物を遠ざけ、出会いを演出するのだから。がさり、と林を分けて出る。
「――――」
彼女は目前の俺を睨んだ。こんな山林に、まさか人がいるとは思ってもみなかったのだろう。
「あんた、大丈夫か?」
俺は腰から下を返り血で染めた女に話しかけた。彼女は気を失った。慌てて体を支える。
「っと」
そのまま、山の上にある寺へと足を運んだ。寺の部屋を勝手に借りる。出会った寺の人にはみな催眠をかけて見逃してもらった。
「大丈夫か? 起きたようですね。事情は話せますか?」
部屋で介抱し、気づいた彼女に問い掛ける。彼女は呆然と俺を見つめた。
「迷惑なら帰ればいい。忘れろと言うなら忘れますよ」
俺は彼女を許容する言葉を吐いた。
「……私を、抱いて下さい」
「………………抱く必要は無いでしょう。俺は魔術師ですからね。マスターを失ったサーヴァントさん」
言って、腕にある令呪を見せる。
「――――」
そして、俺は契約の言葉を放った。彼女はそれを受け入れた。
§
こうして俺はキャスターのサーヴァント、メディアを手に入れた。彼女には「催眠状態になれ」と催眠をかけたので、俺が命令を下さない限り反応しない。完全に奴隷のような扱いだ。酷いことは自覚している。しかし俺の計画には必要なことだ。彼女には運が悪かったと思って諦めてもらおう。これでUBWルートは潰れたようなもんだ。彼女はUBWのキーパーソンだからな。もう一人の人物、師匠が召喚するアーチャーに対しても衛宮士郎を殺さないように催眠をかければ、UBWルートは完全に潰れる。あとはHFルートだな、こっちはあのサーヴァントに催眠をかけて潰してもらうつもりだ。俺の望みはセイバールートだ。そのルートにする為に、この身を砕こう――。
後書き
このSSで最も可哀相な扱いかもしれないキャスターさん。最初は彼女とのエロも書くつもりでした。……馬鹿ですね。魔術師がマスターになれば性交しなくていいことに気づいてなかったのです。馬鹿ですね。
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☆1月28日(遠坂凛)
凛とのエッチです。エロゲー原作はいいですね。理由付けが簡単です。
それはそうと、このSSですが、寝取りタグをつけた方がいいでしょうか? 最初寝取りエロと書こうとして、次に「原作開始時点なら遠坂もセイバーも士郎のモノじゃねぇ!」と気づいて慌てて寝取りタグを外したのですが……。つけた方がいいと言う方が多いならつけます。
注意! 今日三回目の更新です。プロローグと前話がありますので、読まれる方はご注意を。
「明、その……優しく、しなさいよ」
「わかっているよ。師匠」
また女性の前からお送りいたします。今度は俺の師匠、遠坂凛だ。何故彼女とこういう状態になっているかを説明しよう。
§
「――パスを、繋ぐ?」
「ええ、私のサーヴァント召喚前に、貴方とパスを繋いで魔力量を底上げしておく。その最高の状態でもってサーヴァントの召喚を行うわ。わたしたちの性別が男女で良かったわね。契約みたいなものだから一番効果的だし」
理屈はわかった。パスを繋げば俺の魔力を師匠が自由に使えるようになる。自分プラス俺の魔力で強大なサーヴァントを召喚しようという腹だろう。しかしそれは、
「師匠。わかっているのか? それはつまり俺とセッ――」
「わ、わかってるわよ! 言うな!」
そう、つまりセックスするということだ。性交することで師匠と俺の霊脈を繋いで魔力を分ける。半分以上予想していたとはいえ、実際に言われるとクるものがあるな。そう、俺はこの展開を予想していた。俺と師匠はきたる第五次聖杯戦争でタッグを組む。第四次で師匠の父親と言峰がそうしていたように、だ。彼らが男同士だったのに比べて、俺達は男女、であればパスを繋ぐというのは当然のように出現する選択肢なのだ。開始前からタッグを組むなんて卑怯? アホ言うな。事前準備無しに戦争に参加する奴がいるもんかよ。これぐらいは当然の措置である。
原作で師匠がアーチャーを呼び出したのは1月31日。であればその数日前にこう言ってくることは予想がついた。しかしあれだな。本当にアーチャーを呼び出すのかね。キャスターは原作通りに呼び出されて原作通りに主を殺して以下略。って感じだが、師匠は俺がこの十年でもっとも関わった人物だ。どんなバタフライエフェクトが生じて原作が狂うかわからない。セイバーを呼び出すかも知れないし、アーチャーだけど○○○じゃない、という可能性もある。まさか未来の俺とか呼び出さねーだろうな。それはぞっとしないぞ。
「俺と、そういう行為をして師匠は平気なのか?」
「……ただ性交するだけでしょ。これが勝負に勝つ為に必要なことなんだから、それを行うだけよ」
ま、師匠はそうだろうな。そう考えるだろうとわかっていてしれっと質問している俺も、大概に人が悪い。
「まあ、俺の方は問題ないよ。知っての通り俺は魔力量なら大したもんだから、ある程度もっていかれても問題ない。キャスターの維持に支障がでない範囲ならいくらでも持っていってくれ。それと、貴女のような魅力的な女性を抱けるってなら喜んで相手をつとめさせてもらうよ」
キャスターについては既に説明済み。呼び出したんじゃなくて拾ったと言ったら紅茶吹いてたけど。
「じゃあさっそくやろうか?」
「ちょ、ちょちょちょっと待ちなさい! 私の側にも準備ってもんがあるのよ!」
ガーッと怒る師匠。照れちゃって、可愛いなぁ。
「わかった。準備が終わるまで待つよ。それからしようか」
「むぅーっ!!」
うなっている。俺の方が余裕を持っているので悔しがっているな。
と、こういう訳で俺は今師匠と向き合っているという訳だ。当然ながらキャスターには席を外してもらっている。
「それじゃあしますか」
一瞬だけ、名前で呼ばせてもらおうかとも思ったが、師匠という呼び方のまま関係を結ぶ方が俺達らしい気がした。俺は彼女を好きだが、師匠としての敬愛の方が大きい。彼女も俺を憎からず思っていてくれているだろうが、恋人のような甘いものではなく、可愛い弟子として思う感じだろう。
「師匠……目、つぶって」
顔を寄せる。
「ん――」
「ちゅ……」
「キス、しちゃった」
軽めのキス。それだけで頭が沸騰しそうだ。だが暴れそうな頭をコントロールした。冷徹に徹さなければ……!
電気が消えているので、そこまではっきりと見通せない。まあ、だが少しすれば目が慣れてくれるだろう。胸が脈打つ。これからのことを思うと眩暈がする。しかし俺とて十年の経験を積んだ魔術師、本能を理性で抑えるなど簡単なこと――。
「明」
すいません嘘つきました全然余裕ないっす。可愛げに俺の名前を呼ぶ師匠。顔が赤い。可愛い。くそぅ。女の子は反則だぜ。しかもこの世界では初めてなんだ。緊張しない訳がない。固まる手足を動かして師匠に触れる。そして今度は俺からキスをした。俺と、彼女の緊張をほぐすようにそうする。師匠は先ほどの言葉などどこかへやってしまったのか、体をきゅぅっと縮こませている。
「師匠。そうあまり緊張しないでくれ。こっちに移る」
「……! し、してないわよ緊張なんて! どうしてこんなことで身構える必要があるのよっ!」
「いや無理があるぞ師匠」
冷静に指摘する。師匠に比べれば俺は幾分か冷静でいられた。
「っ……い、いいから続けなさい! そのぅ、キ、キスの後じゃないと、これはダメなのようぅ――」
「師匠は可愛いなぁ……ちゅ」
「ぁぅ――そんな、の……」
顔を引く師匠。
「ごめん、その……今の、続けて」
瞳を閉じる。優しく、触れる。唇の感触。肉の質感が生々しい。呼吸が鼻から漏れる。それも甘い。
「ん……あ……、む、ンっ……」
距離がゼロになる。お互いが触れている。俺はそれを自覚すると、彼女の背中に両腕を回した。この可憐な少女を抱きしめたい。
「あ――明」
師匠にも抱きついて欲しいところだが、そうすると体が満足に動かせなくなる。抱き合ったまま触れ合えれば一番いいのだが。
「あ……はっ……んっ、ふ――あ、これ……」
抱き合ったが為に、俺の怒張したモノが衣服越しに彼女に触れていた。
「う、ん……なに、これ……明、なに、か……おヘソに――」
師匠の吐息が乱れる。かまわずに口を蹂躙する。
「はふ……んちゅ……ちゅぅ……ちゅる」
唇だけを貪る。舌を絡めたりするのは、彼女の許容量を超えるだろう。焦ってはいけない。唇をはむはむするだけの半端なキス。だけどそれでも良かった。
「んぅ……かたく……なって、るわよ……」
「っ……はぁ……師匠……」
「んっく……は、あ……」
押し倒した。ちょっと照れ隠し的な要素も多分にある。右手でそっと胸に触れる。優しく、優しく、と頭で繰り返す。
「バ、バカぁ……いきなり、そんなとこ、揉まないで……」
「嫌だ。師匠に触れたいんだ」
唇を合わせ文句を封殺する。やわやわと揉んでいく。
「触っているだけで気持ちいいよ……師匠の胸」
「……そんな……わたし、の……胸、が?」
「ああ」
「ちょ、ちょーっと待ちなさい。行きすぎはダメよ!」
「わかっている。今はただ触れるだけだから……」
ちょうど手にすっぽりと収まる師匠のおっぱい。柔らかくて弾力がある。むにゅむにゅと揉む。揉みたい。
「師匠、痛かったりしないか?」
それだけが気がかりだ。
「……だい、じょうぶ……慣れてきた、みたい。もう少しだけ、我慢する――」
吐息をこぼす師匠。彼女にとっては完全に初めての経験だ。できうる限り優しくしてやりたい。
「ん……」
唇、顔を離して距離をとる。体に触れるのにちょうどいい距離を。
「そろそろ始めていいかな、師匠」
くそ、照れるなぁ。赤面しているのは彼女だけではなかった。
「……………………うん。わたしも、そのつもり。服、脱ぐわ……後ろ、向いて……」
「ん。俺も脱ぐよ」
衣擦れの、音。それはこれから行いことの準備をする時間。
「いいわ。こっち向いて、明」
背中合わせで脱いだ俺達が向かい合う。
「ちょ、なによそれーーー!!?」
それはこっちの台詞じゃ。なんだって貴女は下しか脱いでいないのかね?
「うわ、ちょっと待って、こっち来んじゃないわよ……! なんなのソレ、うそでしょ、うそうそうそうそ……!?」
パニックに襲われる師匠。しかし目は確実に勃起したモノを見つめている。
「師匠、あのね。何に驚いているかわからないけど、男ってみんなこうだから。落ち着いてくれ」
「あぅ」
少しばかり冷静さを取り戻す。顔から火が吹きそうになりながら、恐る恐る観察してくる。
「いや、だから、そう無遠慮に見られるとさ、我慢できなくなるんだけど?」
「う……ごめん。けど、その、びっくり、して……」
初めて見たんだろうから、まあ無理はない。――と。
「うわぁ……へぇ……こんな……」
師匠が俺のモノをつんつんと指で突き始めた――。
「ア、アホか。何やってるんだ師匠!」
「だって、硬そうだから突ついてみようと思って」
「男だって敏感なんだ。安易なお触りは禁止だ……俺の、どこかおかしいか?」
それはないと思うが、今までそんなこと指摘されたことは無い。
「そのぅ……聞いてたのと違うから。男の子って、もっと小さいと思って、だから――」
師匠が示したのはせいぜい俺の半分くらいだった。そんな奴はいねぇ! 勃起前だろそれ!
「……ねぇ。こんなのが、ホントに入るの? ……うそ、でしょ?」
「本当に入るんだよ。師匠の中、師匠のものに。あのなぁ、俺だって初めてなんだから、そう余裕を壊すようなことばかり言わないでくれ」
「そっか。そうだよね。明も初めて……よね?」
そうだってば。
「師匠だって初めてだろう? あまり俺ばかりいじめないでくれ」
しかしそれはそれで問題なのだ。初めてということは痛みを伴い、かつ快感なんてそう簡単に感じられる訳がないってこと。
「師匠、ホントに大丈夫か? 無理しているなら――」
「……ふん。気にしなくていいわよ。言いだしっぺはわたしなんだから。覚悟の上よ。……痛み、には慣れているもの。わたしのことなんて考えなくていいから、アンタは達することだけ考えてなさい」
それも問題だ。
「確か、先に気を抜いたりしちゃいけないんだよな。二人同時に高みに達して、互いのプロテクト――理性を外さないと繋げられないんだろ?」
「うん。明との契約――魔術回路の接続はわたしの方でやるわ。アンタはわたしを抱いてくれるだけでいいから」
師匠に負担を押し付けるようで申し訳ないな。俺は性交に集中しよう。二人同時に絶頂を迎えられるように。初めての彼女がそこに辿り着けるように。
「そ、それから。目的はあくまで繋がることよ。それ以外のことは禁止! ……言うまでもないけど、ヘンなことをしたら怒るからね」
「了解。俺だって初めてなんだ。そんな変なことはしないよ」
中に出したり、口でしたりとかは禁止ってことだ。それはそれとして、
「なんで上だけ脱がないの?」
「べ、べつに理由はないわよ! そ、その、するだけなら下だけ脱げばいいんだから、裸にならなくても……」
「……俺、全裸になっているんだけど?」
「ア、アンタはそれでいいのっ! わたしには女の子の事情があるんだから、少し隠れているくらいでちょうどいいのよっ……!」
ちょい、と体を引かせる。どうやら譲れない一線らしい。……いや、不公平だろ。
「それは駄目だよ師匠。服を汚すだろうし、気になって集中できん。それに師匠の裸をちゃんと見たいよ。俺は師匠が裸になってくれないとやだ」
弟子のわがままを通す。
「バ――!」
「師匠、頼むよ」
「う、うぅう、わかったわよこのバカ! 言う通りにしてあげるわよ!」
何でお互いを高めあう儀式だってのに怒りばかりヒートアップしているのだろう、俺達は。
「はい。これでいいでしょ。こっち向きなさい明」
再度後ろを振り向く。彼女の体は白磁という言葉が似合うくらい、綺麗に磨かれたものを想い起こさせた。
「…………」
彼女は何も言わない。両腕で胸を隠してじっとしている。
「綺麗だな、師匠。凄く魅力的だ」
「~~~~!! うぅ、か、感想なんていいのよ!」
「うん、わかった。一々言わずに行為だけに集中しろってことだな。始めようか師匠」
ゆっくりとベッドに押し倒す。長い黒髪が広がる。ツインテールかわいい。
「ぁ、明。そのぅ、初めは」
「わかっているよ、師匠。ゆっくり、時間をかけてするから。師匠は不安に思わなくていいから」
できるだけ優しく声を出す。自分でもびっくりするぐらいの優しげな声が出た。多分それだけ彼女を大切に思っているんだろうな、俺は。
「あ……ん……ふぅ」
形の整った胸に触れた。体はじっとりと熱を帯びている。俺の手のひらも同様に温かい。しかし柔らかい、な。指を沈めればふにっとした柔らかさに包まれる。それでいて弾力があり、押し返してくる。
「っ……明…………優しい……」
「ん、弱すぎたかな?」
「大丈夫、それぐらいで丁度いいから、そのまま……」
ん、と頷いて揉む。むにむにと。手には乳房。乳頭が空いた。俺はそこに唇を寄せる。初めは驚かせないようにキスするだけ。
「……え……あ……んぅ、くすぐったいよぅ、明……」
「痛くないなら平気でしょ。黙って耐えてくれ」
「うぅ……」
手のひらも口も優しく。傷つけてはいけない陶器のように扱う。
「っ……あっん……う……」
はっはっ、と早まる呼吸。苦しくさせたら駄目だ。もっと優しくしよう。
「ちゅ……ちゅ……れろ」
軽く舐める。味わうかのように。舌先で舐め上げ、つつく。唇ははむっと挟むだけ。
「あ……っ、んぅ……」
徐々に体温が上がる。なだらかな丘も朱に色づいてきた。刺激された乳首は硬く、つんとしていた。甘噛みしたい衝動にかられるが、自制する。それは駄目だ。
「ん……んあ……ああ、……はあ……っ」
師匠の体は中々できあがってこない。感じにくい方なのかな。まあそれこそゲームじゃないんだ。初体験の女性が「あぁんイクーっ」なんて感じる訳もないか。俺はそう納得すると、手と口を動かした。
「はぁ……はぁ……明の舌、あつい……や、ん……」
「可愛いよ、師匠」
胸もそうだがその態度も。
「やっ、んっ、いわないで……」
その様がなお可愛くて抱きしめる。左腕を背中に回す。くっついていたかった。
「あ、は――う、んんぅ……」
むにゃむにゃと胸を揉んでいたら、下が気になった。右手を下に滑らせる。
「あ……やだ……や……はぁっ!!」
途中で触れたおヘソに反応した。ここが弱いのか? でもヘソってあんまりいじると簡単に内出血したりするって言うしな。どうしたもんか。俺はとりあえず舌でぺろぺろと舐めることにした。
「あう……ひゃ、ううう……! あ、や――ダメぇ、やだってば、明――」
「性交なんだ、恥ずかしくても普通だよ。師匠」
彼女は俺にされるがままだ。抵抗はしなかった。
「ぺろ、ぺろ……れろれろ……ぺろっ」
「あはぁぅ……そんな、おヘソばっかり……やぁ」
そろそろいいか。俺は更に顔を下げて下に行く。薄く生えた恥毛に触れて、小さな突起物に到達した。
「はぁんっ……!!!」
ひときわ高い声が上がった。性感帯のここは充分に刺激的らしい。よし。
「ぺろ……れろ……れるれる……るろっ」
「は、あっ……、あ、やっ……! ああんっ」
責めるポイントが見つかったので執拗に責める。舌で蕾の皮をぺろりとめくり、肉豆をあらわにする。剥き出しになった淫核はぷっくりと充血していて、ぷるぷるしている。その様が何だか可愛かった。
「は、ああ、あああうん……。っダメぇ、そこ、触っちゃやぁ」
「師匠はここ、弱いんだな。感じさせる為には必要な手順だ。諦めてくれ」
「ああう……ああん……そんなぁ……はぁ……あき、ら……」
師匠が股間にある俺の頭に両手をもってきた。少しでも距離を空けようとぐいぐい押してくる。
「師匠、押すのはなしだ。口でできない」
「あ――ん、だって、それ、やぁ……」
「これも立派な行為の一つだよ。黙って受け入れること」
クンニリングスだからな。
「ぁ……はぁ……その……はぁ……だ、から。ダメなの……そこされたら、そのぅ、先に」
ははぁ、なるほど。イきそうになっていたのか。確かにそれは駄目だな。せっかく絶頂に達するんだ。その感覚のままことに及んだ方が同時に絶頂になりやすい。
「わたしは、いいから……ね。挿れて……準備、OKだから……」
そう言われてもなぁ。熱が上がり始めてはいるが、陰裂には水気が足りないように見える。入れる余裕がありそうとは思えない。これ、入れたら痛いんじゃなかろうか? そう思った俺は一つの行動に出る。
「わかったよ。入れる。ただその前に一つだけ、するな」
「え……」
舌を尖らせて淫穴に入れる。そしてれろれろと内部を舐め回した。
「はぁ……っ! あ、……そ、な……は、……なかに……や……あきらぁ!」
叫ばれたが気にしない。そのまま続ける。
「ちゅぷ……れろれろれろ……ちゅぷちゅぷ」
舌先から口の中に溜めた唾液をねとーっと入れていく。これで幾分かマシになったはず。
「明のバカ、ばかばかばかぁ!」
ぽかぽかと頭を叩かれる。可愛い反応。
「濡れてないと痛いと思ったんだ。そう馬鹿馬鹿言わないでくれ」
「だって、明……嫌、だったでしょ?」
「師匠のなら全然平気だよ。むしろちょっと嬉しかった」
美味しかったと言いかけてやめた。それは彼女を噴火させるだろうから。
「そんな……そんなの……」
「準備はこれくらいでいいかな。するよ、師匠」
「……ぅん」
か細い声で答えた。俺は両脚を割り開いて自分の腰を前にもっていく。そして、手を添えた肉棒を師匠にアソコに――。
「っはぁっ……!」
ぐりぃっと亀頭の先っぽだけ入れたのだが、彼女は大きく反応した。薄桃色の襞がめくれている。入れているんだ。俺が――。思考が熱くなる。
「は、あ、ん……」
予想通り狭い。しかし熱くなった肉の感触は、こちらの興奮をアップさせる。唾液で濡らしていたのがどれほどの効果があったのやら、ぐいぐいと肉が摩擦する。
「はぁ――っ、あ、ああ、入ってく……」
「うん。俺のが師匠の中に入っているよ。あったかい」
あえて狭いとかきついとかは言わなかった。
「っ、い、……うく……んんんっ……!」
痛い、と言いかけてやめた様子が見てとれた。このまま続けると彼女が参ってしまいそうだ。だがまだ亀頭を少し入れただけだ。それなのにこれでは先が思いやられる。
「あぅ……はぁ……は……」
師匠は、全身びっしょり汗をかいている。手はシーツをぎゅっと掴んでいた。……先っぽでこれなら、本格的に入れたらきっと辛い。だけど彼女が言い出したことで、もう始まったことだ。仕方ないが続けよう。
「あ、ん……ふぁ……はぁ……はぁ……」
肩で息をする師匠。その彼女にゆっくりと挿入していく――。
「師匠、できるだけ、体の力を抜いてくれ。入らない」
「え……う、ん……わかっ……!」
少しだけ体を前に出す。師匠の中がきつい。襞と襞の合わせ目にねじ込んでいく。
「はっ……はっ……く……だ、め……こんなぁ、おっきいのはいらないよぅ……あきらぁ……」
甘えた声。愛おしくなって口づける。
「ちゅ……師匠……落ち着いて……ゆっくり、するから……」
彼女に痛みしか与えていない。凶器のような肉棒をひたすら拒絶するだけだ。肉壁は収束して異物として入り込んだモノを押し返そうとしている。
「あっく、く、ぁ……い、や、あ……」
全力で腰をコントロールする。一気に突き入れないよう。かといって押し返されないよう。それはそれとして俺にも余裕はない。師匠の膣に入れているという興奮と、亀頭に伝わる肉の感触。痛気持ちいい――。
「あきら……あきらぁ……ちゅぅ……」
子供のようなキスを繰り返す。そうしているうちに、なんとか亀頭が入った。一番太いここが入ったのだ。後は楽に……。
「んんっ……まだ、入らないの……?」
「一番太い部分は入ったよ。これから半分以上長いモノを入れるだけだ」
「そんなぁ……」
涙を必死に堪えて、師匠は俺を見上げる。不安、恐怖、その他色んな感情が渦巻いているのがわかる。
「もっと、深くまで入れるからな……!」
宣言して入れていく。ふと、そこまで急がなくていいことに気づいた。
「少し、休もうか? そうすれば余裕も――」
「ん……べ、別にいいわ。充分休ませてもらってるから。……ごめんね。気を使わせて」
強がりも多分に混じった返答を返された。しかしそう言われては仕方あるまい。
「どうしても痛かったら止めろって言ってな。そうしたら止めるから」
「……ん、ありがと」
師匠の腰が少しだけ緩む。そこに重圧を感じながらも前進する。
「はぅっ、く、んっ――!」
今までとは違い、カリが膣壁を削る。その刺激に師匠の顔が歪む。やはり痛いのだろうな。だが微量ながらも他の感情もあるようだ。
「はぁ……っ、ん……明、少し、慣れたわ。だから……もう少し……ん、強く……」
師匠は、おかしな表現だが、頑張って力を抜いてくれているようだ。俺を受け入れようとしている。俺を。
「師匠……ん」
上の口と下の口でキスをする。
「……! きゃっ、ふぁぁ、ん、んう――!!」
一突き分、強く進めた。ぬちゅっと音を立てて肉棒が沈む。竿の三分の一が入った。そして師匠の中がぐらぐらと揺れる。先っぽには弾力のある感触……!
「はぁ……い、ん……いた……あ……だめ……」
弱気が漏れる。膣の圧迫はもう痛いほどだ。それほどに肉棒を排出しようとする。急に進みすぎたか? しかしとまってはいられない。腰はそのままホールドする。
「あ……は……明……わたし、だいじょうぶ、……いたい、けど。もう少しだから……お願い」
「わか、った」
モノに与えられる刺激にうめきながら返事をする。これ以上進めば、進めば彼女を――。
「はぁ、ふぁ、ああああああ!!」
わずかな前進。ちょっとの挿入でも師匠は鋭敏に反応した。ビクンと体が跳ねる。
「はぁん……あたって、る……あたってるよぅ……」
「チュッ……師匠、もう少しだから……」
壁を前にして覚悟を決める。
「師匠の、初めて、もらうよ……」
「ん……うん、明……もらって……」
ぎゅぎゅっと締め付ける内部に構わず、入れた。
「あああう、んああああっ……!!」
弾力があるそれに突き込む。確かに、俺のモノが、師匠を貫いた。
「や、あ、いた、あうん……はあああっ――!!!!」
ぎちり、と音がするくらい締め付ける。肉穴。締め付けるというより痛めつけるという言葉が似合うくらいだ。だが、ややあって緩んできた。今までの狭さきつさが嘘のように、残っていた部分が師匠の中に進入を果たしていた。
「……ぁ………………ん……」
ぐし、と鼻をすする師匠。一筋の涙がこぼれていた。
「もう大丈夫、全部入ったよ、師匠。後は動いて出すだけだ」
肉棒はその全てを膣に収めていた。鞘に収められた剣のように、大人しく収まっている。亀頭の先が子宮口に当たっている。
「あぅ……動くと、わかる……」
師匠は結合を果たした性器をぼーっと見ていた。体が痛みと衝撃でろくに動かないのだろう。俺は彼女にキスをした。
「あ……ん、ちゅ……明……明……ちゅ……わたしの中……アンタでいっぱい……」
「少し、時間をおこう。師匠も俺も休まないと危険だ」
暴発なんてしたら、彼女が精一杯頑張って耐えているこの行為が全て無駄になる。俺たちは息を荒げながらも、少しばかりのタイムアウトを堪能した。俺は彼女を、彼女は俺を、お互いに感触を感じ合う。
「明……もう、大丈夫だから」
「ん、わかった。俺ももう我慢の限界だし、動くよ」
「うん……あ、はぁ……!」
ぐっぐっぐっ、と腰を引く。みなぎった肉棒をそこから引き上げる。まるで釣りのように。
「あ、……やん……は――んくぅ……」
ゆっくりと引き、またゆっくりと入れる。それを繰り返して彼女の性感を高めていく。俺の方は既に高まっているのだから、後は彼女を引き上げるだけだ。
「はっ……はっ……はっ……」
大きく息をする師匠。その彼女の呼吸に合わせて肉棒を出し入れする。
「あんっ……明、動くの……はぁ……こ、れ……いや……明の……わかる……わかっちゃう」
「んっく……え? 何が?」
「明の形……おっきいの……わかる……やぁ……」
そんなこと言われたら、興奮が更に増す。女の子はズルい。
「は――っ、明……」
「大丈夫、だよ、師匠」
俺は先ほどからしたかったこと、師匠の体を抱きしめた。背中に両腕を回す。
「はぁ……はぁ……明……?」
「師匠、俺、こうして抱きしめながらしたい……」
「う、ん……うん……いいよ……」
すると、師匠も俺の体に両腕を巻きつけた。抱き合う形になる。そのまま腰を動かす。
「う、ん……あ、はぁ……いた、い……」
「痛いか?」
ピタリと腰を止める。
「あ――だ、だいじょう、ぶ。続けて、明」
「ん」
抽送を再開する。慎重に、慎重に。できるだけ優しくするのだ。
「……っ! はぁ……っ、あ、ん……ふぅ……明……明は大丈夫?」
「大丈夫だよ。その、実を言うと気持ちいいのと締め付けがきついのでちょっと痛かったりしたけど、今はそれもない。師匠を抱けている興奮で今にも出そうだよ」
「そっ、か……良かった。わたし、ちゃんと抱かれてるのね……いいよ、明。もっと、して?」
可愛くおねだり。それでたまらなくなって腰を動かす。
「強く、して……わたし、だって、女の子、だから……」
俺に合わせてくる師匠。
にゅちゃ、ずちゅ、じゅぷじゅぷ……。
きつく、狭かった中が、ある程度動けるまでにはなった。蜜が分泌されてきているのがわかる。
「……ぁぅ、はあ、ん……は、ふ――んんっ、い、気持ちい、いっ」
どうやら師匠も慣れてきたらしい。俺の先走りと師匠の愛液が膣で混ざる。いやらしい音を立ててぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「師匠……ちゅ……ちゅぅ……」
「明……ちゅる……ちゅ」
もはや止める言葉はなかった。俺達はお互いに高めあい頂上を目指す。ぬぷぬぷとゆっくりとした腰の動きで刺激してやる。弱い刺激。だけど確実に感じさせているはずだ。
「明……なんとか、だい、じょうぶ……わたし、気持ちいいよ……」
「良かった。後は達するだけだな」
ん、と頷く師匠。そこまでいければ終わりだ。ただひたすらに、師匠を良くさせることだけ考えろ。
「あ……ん……ふぁ……明……」
突き上げた。お腹の裏側をこするように肉棒を動かす。中をかき回すのだ。パンパンと腰がぶつかり合う。動きが速くなっていた。どうやら自分で思っているより気持ち良くてしたくなっていたらしい。
「は……あ……明……ちょっと速い……」
師匠にも指摘された。少しピッチを落とす。
「ごめん、気持ち良くて速くなっていた」
「明も……気持ち、いいんだ……」
「ああ、師匠の中、あったかくてとてもいいよ」
「うぅ、あんまそゆこと言わないで」
了解、と頷き腰をゆっくり前後させる行為に戻る。
「は、んあ……ああ……はぁん……あ、当たってる……上にこすれて……やぁ」
「嫌かい?」
「だって、これ、あうん……こすれて、きもちい……はあん……」
師匠が気持ち良くなってくれて嬉しい。俺は衝動のままに腰を縦横無尽に動かした。ペースは緩やかに、だが。
「明……ちゅ……ちゅぷ」
口を吸う。お互いの求め合う気持ちも最高潮になろうとしている。
「はぅ……ふぅん、あ――はぁ……やっ、んっ」
最初に比べればだいぶスムーズになった。にゅるにゅると滑る。その摩擦で性器が喜ぶ。
「あ……あ、はぁん……いい、よぅ……」
鼻にかかった声。興奮が加速する。
「明……わたし……段々……」
イキそうになってきたか? 俺は腰の動きをほんの少しだけ速めた。少しずつ、師匠を追い詰めていく――。
「あはっ……くぅん」
師匠の中はいよいよ柔らかくなって俺に絡みつく。ねっとりと握るように絡んでくる。それを破るように直線的に竿が前後する。
「あぅん……おく、奥にくるのぉ……ああん」
こんな声を聞かせられて耐えられるものではない。俺も自分の快感を上手くコントロールして師匠に合わせないと――。
「はあ……はあん……いい、いいよぉ……あきらぁ……もっと」
初々しいおねだり。それに速度を上げることで応える。子宮の奥にまで届くイメージで突き込む。
「痛くないか? 師匠」
「あ――ん、だい、じょぶ……そのまま……そのままして……」
もう気遣いは必要なさそうだ。俺は本気で動いた。彼女の中を全部で味わう。更に締め付けがきつくなった中を蹂躙する。カリでこすこすと中をこする。受け止める柔肉はみっちりとモノを包む。
「あん……ああ……ぅああ……明……わたし……おかしく……」
「いいんだ師匠。一緒におかしくなってパスを繋ごう」
師匠と繋がれる。それは体だけでなく、心だけでもなく、全部でだ。もう言葉は要らない。後は最後まで駆け抜けるだけ――。
ぐちゅ、ぐちゅ、パン、パン。
接合の音が響く。
「あああああっ!」
声が上がる。これはいよいよきたな。俺は彼女に快感を同調させる。なんだ、既に精神は混ざり合っていた。なら後は達すればいい。
「明……わたし、もう……」
「う、ん……俺もだ……イこう、師匠。一緒に……」
白熱する思考。その中で考えるのは放出することだけ。俺は最後にズンと腰を突き上げると、一気に引き抜いて師匠のお腹にぶちまけた。
「…………あぅん……明の、あつい、ね……」
びしゃびしゃと液体をかける。遠慮する気持ちなんてなかった。拷問のような快感の我慢を強いられたのだ。思いっきりかけさせてもらって気持ち良くならせてもらおう。
「ん……ねばねば、してる……明の……わたしに、いっぱい……」
俺は師匠の汚れたお腹を拭いてやり、最後にぎゅっと抱きしめるのだった。
§
「師匠、体、大丈夫か?」
「ん、へいき……ありがとね、明」
お礼を言われた。
「? 何が?」
「アンタ、必死に我慢してたでしょ。わかったわよ」
「だってお互いの波長を合わせて良くならないと意味ないだろ」
「そうだけど……その、男の子って、出して気持ち良くなりたいんでしょ。実際、出してるアンタ気持ち良さそうだったし」
「そりゃ、ね。でも師匠にとって大切な初めてだから、弟子として気を使ったんですよ」
「……ばか」
「師匠……ん」
「あ、こら――」
ことが終わった後のキス。だけど師匠は受け入れてくれた。
「ん、ちゅ、ふ……」
「師匠……」
愛おしさで全身が満たされる。
「ん……明」
パスは問題なく繋げた。さて、これがどう影響してくるか、な。
後書き
先に言っておきますが大した影響ないです(爆) ただアーチャーのステータスがそれなりに強化される程度でしょう。
え? 凛のエッチが一回だけなのは何故だ! ですか? 理由がないからですよ。もう大手を振ってエッチできる理由がないからエロがないのです。まあ催眠能力があるので書こうと思えば書けますけどね(なら書けや!)。
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1月31日 ~ 2月1日
注意。二話目にエロがきたのでこのペースでエロがあると思うでしょ? 残念、このSSはストーリー八割(駄文)、エロ二割なのであった。次のエロは六話後です。
今日は師匠がアーチャーを呼び出す日だ。俺としてはできるだけ早く、召喚の後に呼び出されたサーヴァントの確認をしておきたい。ここでセイバーとか呼び出されたら計算外なんてもんじゃない。……まあ、そうは言ってもそういうイレギュラーな事態にも対応できるよう行動計画表は作ってあるがね。
行動計画表。まずは基本の三シナリオを頭に叩き込み、そのシナリオでの自分の行動を書き込む。次にイレギュラーな事態が起きた時の対応についても、一つ一つの事件に対して計画を練り、書き込む。そうして完成した俺の行動計画表は我ながらパーフェクトだ。隙はない……と思う。自信はない!
ちなみに、意識の上では十年以上前にプレイしたゲームのことなんてそんなに明確に覚えているものなの? という疑問があるだろうが、これは絶対催眠で解決した。催眠をかける対象は頭の中で任意に決定できる。つまり自分にもかけられるということだ。
「PCゲーム、Fate/stay nightの内容を全て思い出せ!」
と催眠をかければ、魂に刻まれた記憶がよみがえり、ゲームの内容を全て思い出せるという仕組みだ。便利だろう?
§
で、学校に着いた。廊下を行き来し、衛宮や間桐、師匠の状態を確認する。うーむ、特に変わりはないか。間桐はサーヴァントを保有しているがな。ちなみに衛宮との関係はお互い名前を知っている同級生ってだけだ。一年の時に委員会が同じになったから顔見知りなんだよね。
「それで? 師匠、今日サーヴァントを召喚するんだろう?」
昼休み、屋上で昼食をもそもそと取りながら話し合う。
「――ん、まあ、ね。」
さすがに十年以上の悲願である戦争だ、緊張しているのかも知れない。俺の知識が確かなら、今彼女の家は全ての時計が狂っているはずだ。だがそれも指摘しない。できるだけ原作通りになって欲しいからな。そう、俺の原作介入は基本原作沿いになるように行う。じゃないと知識が役に立たなくなるし、知識にある幸せなEndを迎えられないからな。
原作から大きく乖離した状態でも幸せな戦争終結を迎えられる道だってあるのだろうが、それは俺には手が届かないものだ。だから原作通りにする。全力でもってな。
とにかくサーヴァントの召喚である。聖杯、何でも望みを叶える杯でもって、過去の英雄をクラス(役割)ごとに呼び出す。正確に言うならクラスに該当する英雄でもって、無理やり型にはめることによって、何とか英霊を現界させるのだ。
セイバー
ランサー
アーチャー
ライダー
アサシン
バーサーカー
キャスター
七つのクラス、その英霊達をサーヴァントとして従え、他のサーヴァント六騎を殺し、望みが叶えられる聖杯を手にする。それが聖杯戦争である。俺はこの戦争に勝たなければならない。敗北は死と同意義なのだ。絶対に勝ってみせる。その為なら俺は鬼にだってなろう――。
§
一日が過ぎ、2月1日になった。いよいよ、いよいよ原作が始まるのだ。
「師匠は遅刻か、予想通りだな」
サーヴァントを呼び出したマスター、魔術師はその身に満ちるほとんどの魔力を消費してしまう。確か師匠はそれほど負担にならないほどの魔力の持ち主だが、やはり定刻通りに起床することはできなかったらしい。それはそれとして、昨日の夜から魔力を持っていかれています。純潔と引き換えに手に入れたパスは思う存分使っているらしい。相変わらずいい性格をしている。
それはさておき聖杯戦争だ。今日の夜にでも師匠の家を訪れよう。
普段と変わりない学校生活を送り、夜になった。俺はキャスターを連れて師匠の家を訪れていた。
「明、こいつが、私が呼び出したサーヴァントよ。クラスはアーチャー」
良かったー! アーチャーで○○○だ。原作通りだな。俺は頭の中の計画表に丸をつける。赤い外套に白髪、褐色の肌の男、アーチャーを見て俺は安堵した。しかしでけぇな。背の高さが尋常じゃない。これでホントにあいつなのかよ。
「初めましてアーチャー。俺は佐藤明。遠坂凛の弟子で魔術師見習いです。こっちは俺のサーヴァント、キャスターだ」
お互いのサーヴァントを紹介する。既に俺のことは話してあったのだろう。それほど混乱は見られない。しかし俺のことは凝視している。警戒してる警戒してる。自分の知識にない存在だから警戒してんだな。だが、俺が怪しい動きを見せなければ、平行世界とでも勝手に思ってくれるかも知れないので黙っておく。
それはさておき催眠の出番じゃ。目を合わせて……。
衛宮士郎を殺す意思をなくせ!
はい催眠完了。後は事前に決めていた通り、使えるスキルや宝具の説明を行う。だがアーチャーは、スキルはまだしも宝具は教えてくれなかった。召喚に不手際があって記憶に混乱があるんだと。……ホントは思い出している癖に。
「それにしてもアーチャーか、予定が狂ったな師匠」
「言わないでよ……」
予定通りならば、師匠がセイバーを呼び出して前衛を務めさせ、キャスターが後衛で魔術ぶっぱしようと決めていたのだが。まあそう悲観するものでもない。俺の想定通りならセイバーはすぐ仲間になってくれるさ。
「じゃあ俺は帰るよ。師匠も人の魔力を吸い上げるのはこれぐらいにして、ぐっすり休んでくれ」
「ええ、明、気をつけなさいよ」
「わかっている。それじゃ」
俺という異物が入ったのに世界は原作通り回っている。特に師匠には、パスを繋いで魔力を供給していたのに、だ。この世界は大体原作通りに進んでくれると思っていいのか……? いや、油断はすまい。ランサーやセイバー、バーサーカーが違う英霊になる可能性も充分ある。油断せずにことにあたろう――。
後書き
この辺りのシナリオを確認する為に、十年以上プレイしていない原作ゲーム(オリジナル版)を引っ張りだしてきましたが、凛がなんか予想以上に子供でした。しかも結構ちょろい。俺が大人になったからですかねぇ。
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2月2日
タグにあるとおり、基本セイバールートです。
さて、朝起きてトイレをすませ、顔を洗ったら朝食じゃ。むしゃむしゃとパンを食べる。朝はブレックファーストだ。叔父夫婦は共働きだからな。朝は俺とおばさんで用意する。今頃師匠は……「学校に明の他には魔術師はいないってば」、とかアーチャーとやり取りしている頃だな。ふむ、そして学校では……とにかく登校してみるか。
ちなみに俺は十年前の悪夢なんて見ないぞ。十年前に悪夢を見まくる日々が続いてむかむかしたので、自分に催眠暗示をかけて大火災の悪夢は一切見ないようにしたのだ。
登校して校門をくぐったら気配を感じた。結界だ。しめしめ。原作通り……っと。また頭の計画表に丸をつける。間桐のサーヴァントは間違いなくライダー(メドゥーサ)だってことだ。この結界も重要なポイントだ。このライダーが張った結界、夜にこれを消そうとして、アーチャーとランサーが激突するのだ。
しかし俺はそこに居合わせてはいけない。原作が狂うからな。衛宮が死ななかったりサーヴァントの激突が変わったりしたら目も当てられない。適当な用事を作って放課後は席を外そう――。
§
放課後なう。師匠とは昼に話したが、放課後どうしても外せない用事があると言っておいた。なので結界破りには付き合わない。すまない、と謝っておいた。その言葉通り俺は学校から離れた場所にいた。俺はキャスターが使う遠見の魔術で学校の様子をうかがう。
時間が経つのが遅い。イヤホンを耳に突っ込んで時間を潰す。退屈は最強の敵だよ。そうこうしているうちに夜の帳が下りて、時刻は八時になり学校の屋上に師匠が出てきた。霊体化しているがアーチャーも一緒だろう。さあ、出て来い!
……キター! ランサーが屋上に登場した。姿も見知ったあの青いピッチリツナギの男だ。アイルランドの光の御子だ。ランサーが槍を取り出した、と思ったら瞬時に突いてみせやがった! 師匠はギリギリ横に大きく跳躍して難を逃れている。師匠は魔術を使って体を浮かせると、屋上から飛び降りた!
着地の衝撃をアーチャーが消す。ナイスコンビプレイ。そのまま校庭まで走り抜ける。百メートルを七秒足らずで駆け抜けた脚力は、しかし無駄に終わった。ランサーが先回りしている。さすが敏捷性最強。速さには自信アリってか? そして相対した師匠とランサーの間にアーチャーが具現化する。彼の手には一振りの短剣。剣製しやがったな。
そして打ち合いが始まった。神速の突き、ランサーのそれをアーチャーがかろうじて弾く。それの繰り返し。だが槍術三倍段、剣と槍では間合いが違いすぎる。剣を持つアーチャーは負けるぞ。その俺の予想通り、アーチャーの持つ中華風の剣が大きく弾かれて彼の手を離れる。そこに急所狙いの三段突き――!! しかし、それは失敗に終わる。アーチャーの手には再び剣が握られていた。しかも双つ。左右対称の二刀が彼の身を守る。
「おーおーおお」
初めて生(魔術を通しているが)で見る英霊同士の殺し合いに、俺は感嘆の声を上げた。師匠はアーチャーの後方で固まっている。無理もない。あの現場にいるのだ。そりゃあ固まりもするという話だ。事前にゲームで見たことがある俺でも息を飲むような激しいやりあい。腰を抜かさないだけ上等というところか。
攻めあぐねたランサーが一旦距離をとる。そして少しばかり会話を交わしたと思ったら、
――――!!!
空気が凍った。見ているこちらまで伝わるそれは、まぎれもなくランサーの殺気。本気で魔槍を放つつもりだ。宝具を解放するか。しかしこのタイミングで、
はぁっ。
間抜けにも音(息)を立てやがった第三者がいた。チィッと舌打ちし、ランサーが逃げたその人物を追った。人物が逃げた校舎内に視点を移す。その中で行われた凶行を見て、俺はキャスターに転移の魔術を指示するのだった。
§
あの場に居合わせた生徒――顔を見た――は衛宮だった。ここまで全て原作通り、この後に俺が動く。俺という異物を介在させてもらうぜ。
俺とキャスターは今、師匠の家の前に来ていた。ここで待っていれば、衛宮の命を助けた師匠が戻って来るはず。
「おかえり、師匠」
「明……」
酷く疲れた顔の師匠を出迎える。実際に疲労しているのだろう。言葉は最小限に洋館の中に入った。師匠はソファーに腰を下ろす。その上でアーチャーの帰還を待つ。再度動くには彼の言葉が必要だった。いや、俺でも肩代わりできるけど、時間の関係上やってはいけないのだ。
「――と、いけないいけない、切り替えなくちゃね」
そう言って顔を上げる師匠はタフだ。俺ならそんな簡単に切り替えなどできないだろうな。俺は卑怯な転生者。知識だけの頭でっかちである。
「明、私達ね……」
「大丈夫、状況は大体把握している」
「え?」
「結界を張ったマスターとサーヴァントに出くわす可能性もあったから、師匠達のことは遠見の魔術で見張っていたよ。戦闘、お疲れ様。その後の救命治療もね」
「……アンタねぇ。見てたんなら、た・す・け・に・き・な・さ・い・よ!!」
襟首をぐいと掴まれて糾弾される。本当にやばそうなら転移して助けに行こうとしたんだってば。そうしているうちに時間は夜の十一時を回った。アーチャーがやっと帰ってきた。
「お帰りなさい。首尾はどう?」
アーチャーはすまなそうに頭を下げると、逃げたランサーを見失ったことを告げた。そして話は聖杯への願いに移る。アーチャーはまだ己のマスターのそれを確認していなかったようだ。
「願い? そんなの別にないけど」
あっけらかんとした口調で師匠が言い捨てる。アーチャーはあっけにとられた表情だ。
「叶える願いがないとはどういうことだ……!」
「ただ勝つ為だけに戦うのよ。ちなみに明も同じ。こいつの場合は聖杯戦争の被害を抑えたいっていうのが願いといえば願いね」
「ま、ね。俺は前回の聖杯戦争の被害者だから」
俺の経歴について軽く触れておく。アーチャーはやはり不審そうに俺を見ていた。
「――って、ちょっと待った」
師匠が声を上げる。気づいたか。ランサーはアーチャーとの戦いより目撃者を消すことを優先した。つまり、死にぞこなった衛宮を、
「放っておくわけないじゃない!」
さて、ここで俺とキャスターの番だ。キャスターの転移で一気に衛宮の屋敷まで飛ぶ――!
§
午前零時。夜の中、俺達は衛宮の武家屋敷を訪れていた。と、
「師匠、ちょっと待った。屋敷から変な魔力の流れを感じる。これはもしかすると……」
師匠が突っ込んでセイバーの召喚前に割って入らないようにする。
「……何? 何があるって言うの!? ランサーの気配は既にあるのよ!」
「だから待ってくれ。ランサー以外に魔力が感じられるんだよ」
「ランサー以外に――?」
話している間に、カアァ! と太陽が現れたような白光が迸る。屋敷の中、蔵だ。
(召喚――された!)
遂に現れた。最後のサーヴァント、セイバー。ブリテンの騎士王。ランサーが逃げてゆく……。逃げるランサーは放っておく。それより今は七番目に呼び出されたサーヴァント、セイバーの方が重要だ。
「まずい、師匠、キャスター、後ろに下がれ! アーチャーは前に出てくれ!」
催眠で指示を出す。アーチャーが一番前にでた。衛宮、頼むから令呪使って止めたりすんなよ! アーチャーめがけてセイバーが飛び込みつつ斬りつける! アーチャーは一太刀、体を斬られた。
「!? アーチャー、消えて!!」
師匠が令呪を使ってアーチャーを消す。よし! そこで、次に前に出ている俺はセイバーに背中を向ける。すげぇ怖い。
「ちょっと待ったーーー!!!」
背中を見せて両手を上げた俺に戸惑う気配。ちなみに待て、という言葉で暗示をかけた。じゃないと冗談じゃなく斬られる。
「降参! 降参する!! 俺達は君とは戦わない。だから剣を下ろしてくれないか!」
必死に叫ぶ。一応キャスターがいてくれるが、問答無用で切り殺されたら敵わん。
――止まって、いた。時間も、動きも、ピタリとその位置を変えない。師匠も止まってくれている。
「俺はキャスターのマスターだ。そっちにいるのが、アーチャーのマスター、そして俺のサーヴァント、キャスターだ。だけど俺達は君とは戦わない。降参だ。俺達は、ちょっとした事情で多分君のマスターになった少年、衛宮のことを助けに来たんだ」
情けない体勢で、急いでまくし立てる。これで師匠が十年間で溜め込んだ十の宝石のうち一つを消費することもない。何より背中を向けているのが効いているのだろう。剣士なら背中を向けている丸腰の相手を斬ることは抵抗があるはずだ、というのが俺の読み。とくにセイバー(アーサー王)はな。
「どういうつもりだ。……助けに、だと?」
「そろそろ前を向いてもいいかな、君と君のマスターに話をしたいんだ」
くるりと前を向く。この時点で目標は達成されたようなもんだ。セイバーは俺の知識通りの姿をしていた。よしよし。金砂の髪に翠の目。青い服に銀の鎧。そんで手に持っているのは風で見えなくした剣。間違いなくアーサー王だ。それにしても凄い美少女だな。
「や、止めろセイバー」
息も絶え絶えという風に――実際に息絶えた奴なんだから笑えない――屋敷から少年が出てきた。暗くて姿がはっきりと見えないが、衛宮で間違いないだろう。
「……止めろ、頼むから止めてくれセイバー」
「何故止めるのですかシロウ」
そのまま問答が始まる。
「だから、マスターとかなんとか俺にはさっぱりなんだ。まず説明してくれ」
衛宮が参ったとばかりにセイバーを制する。セイバーは戦いに望まない主を少しばかり睨むようにして静かに見つめた。
「順序が違うだろう。説明してくれるなら聞くから、そんなことは止めてくれ」
セイバーはなおも納得いかなげだ。だがここまで進めば後はスムーズにことが運ぶだろう。
「……つまり貴方は敵であろうが、傷つけるなと? そのような言葉には従えません。それでも止めたいなら令呪を使って私を縛りなさい」
うわぁ。カチンコチンやぞこのセイバー。
「? いやそうじゃなくて、女の子が剣なんて振り回すもんじゃないよ。怪我をしているなら尚更。――とにかく、女の子なんだからそういうのはダメだっ!」
何を血迷ったことを言っているのだろうこのど阿呆は。その女の子が戦ってくれて命が助かったというのに。
「何を血迷ったことを言っているのだろうこのど阿呆は、その女の子が戦ってくれたから命が助かったんじゃないか。お前馬鹿か?」
口に出していた。前世でゲームをしている時から癇に障っていたんだよな、こいつの腐れフェミニストぶりには。
「え――?」
「ヘロー衛宮。俺だよ。同じ学校の佐藤明だ」
ってそういえば師匠がだいぶ静かだな。それなりに心に想っていた相手で、先ほど命を救った奴で、今も殺されそうなところを助けようとしていたのが魔術師だった。更にマスターになりやがってセイバーを召喚しやがったからな。動揺しているのか?
「……佐藤、佐藤ってお前……あ」
そこでようやく俺達の姿に気づいたらしい。セイバーしか目に入っとらんかったのかこの男は。
「で、いい加減剣を収めて欲しいんだけど?」
師匠再起動。その言葉に、剣に力を込めるセイバー。だから止めろっての。主の意向ガン無視やなこの娘。
「諦めなさい。敵を目前にして下げる剣はありません」
「貴女のマスターは止めろと言っているのに? へー、セイバーともあろうサーヴァントが主に逆らうんだ?」
「師匠。無駄な挑発はしないでくれ。セイバー、俺達に交戦の意思はないんだ。善良な意思に従ってさっきのランサーに襲われることがわかっていた君の主、衛宮を助けにきただけなんだ。だから君には大変申し訳ないが、剣を収めてくれると嬉しい」
セイバーはその師匠と俺の言葉に、やっと剣を下げてくれた。うわ、この娘歯軋りしたぞ。すげぇ性格ぅ。ま、まあとにかく殺気は消えてくれたようだ。
「お、お前遠坂!? それに佐藤も……なんで!?」
「こんばんは、衛宮くん」
にっこりと笑う師匠。
「こんばんは衛宮」
「あ、いや、その、だから」
「まあネタばらしするとだ、この遠坂凛も俺も魔術師なんだよ、衛宮。とはいえこっちも驚いているけどな。お前さんも魔術師だったなんて」
「まったくね。とりあえず、話は中でしましょ。どうせ何も解ってないでしょ衛宮くんは」
ずんずん門へ歩いていく師匠。アクティブだぜ。さて、俺も行こうかね――。
§
ずずいっと前に進んでいく師匠の傍ら、セイバーを警戒しながら歩く。可愛いなぁ。金髪に青の服、銀の鎧が恐ろしく似合っている。ちらちらと見ていたら警戒された。
「……何か? キャスターのマスター」
眼光が鋭すぎますお嬢さん!
「いや、セイバーのサーヴァントって最強の存在だと聞いていたんでね。こんなに可愛い女の子だとは思わなかったんだよ」
その俺の言葉に、きょとん、とするセイバー。自分が可愛いと言われるなんて想像の範囲外なのだろう。しかし俺もいい性格をしている。マスターのいるすぐ傍でサーヴァントを口説くなんてな。
「あ、衛宮くん、そこが居間かしら?」
貴女は貴女でゴーイングマイウェイですね師匠! 暗くなっていた部屋の明りが点けられる。ちらと見えた時計は午前一時を回っている。
「うわ寒い! なによ、窓が壊れているじゃない」
「仕方ないだろ、ランサーって奴に襲われてたんだ。家が壊れることなんて一々考えていられなかったんだよ」
「へえ、ってことはセイバーを召喚するまで一人でランサーと戦っていたのか。凄いな衛宮」
衛宮は一方的にやられただけ、というが実際こいつはとんでもない。あるルートだと最強のサーヴァント相手に勝つからなこいつ。
「――明」
師匠が顎をしゃくる。窓ガラスを直せということだろう。へいへい。
「セット」
ガラスの破片で指先を切り、窓ガラスに血をこぼす。粉々に砕けていたガラスは組み合わさって元通りの姿になった。まあこれくらいはね。十年も正規の魔術を習っていればできて当然だ。
「佐藤、今の――」
「ちょっとしたデモンストレーションってところかな。大人しく話し合いを選択してくれたお礼だよ。まあ俺がやらなくてもそっちで直せたんだろうが、魔力の無駄だからな」
衛宮にはできないと知っていてしれっとそんなことを言ってみる。
「――いや、凄いぞ佐藤。俺にはそんなことできないからな。直してくれて感謝だ」
「はあ?」
師匠がピタリと動きを止める。
「ちょっと待ちなさい衛宮くん。貴方自分の工房も管理できない半人前なの!?」
「……? いや、工房なんてないぞ俺」
馬鹿。その後師匠は五大要素の扱いやパスの作り方についても確認した。しかし衛宮から出てくる言葉は全て「非」だった。師匠が黙り込む。
「やめてくれよ修羅場とか。師匠は美人なだけに黙り込むと迫力が凄いんだからさ」
俺がそう言うと、師匠ははぁーっと息を吐いた。そして魔術について確認する。強化の魔術が使える、というかそれだけ、と言う衛宮に落胆する師匠。
「なんだってこんな奴にセイバーが呼び出されるのよ。まったく」
「それは違うぞ師匠。仮に衛宮が凄い魔術師であろうが、考えられないほどへぼだろうが、既に六体のサーヴァントは呼び出されていて席が空いていなかったんだから、サーヴァントを呼び出せば自動的にセイバーになるんだよ」
俺の言葉に、まあ仕方ないか。と肩をすくめる師匠。そして説明が始まった。マスターに選ばれたこと。令呪のこと。令呪がなくなれば殺されること。聖杯戦争という殺し合いに巻き込まれたこと。どんな願いをも叶える万能の杯。聖杯を奪い合う殺し合い。それが聖杯戦争である。七騎のサーヴァントが殺し合い、自分以外の六騎を倒す。すると聖杯が顕現して霊体であるサーヴァントが聖杯を手にする。
「もう貴方は巻き込まれているのよ衛宮くん。殺されかけたんじゃなくて殺された貴方なら解るでしょ」
だから微妙に挑発すんなっての。そんなにセイバーを呼び出されたことが不満なのかい。そうして俺達の会話をサーヴァント二人は黙って聞いている。セイバーも主に説明がなされるならばと沈黙を保っている。師匠の話は続く。サーヴァント、過去の英霊について。マスター(人間の魔術師)と同じく聖杯に叶えたい願いがあるから召喚に応じた過去の英雄、それがサーヴァントだ。サーヴァントは強力な存在なので、基本的にマスターは役立たずでサーヴァント同士で戦わせる必要がある。話を切り上げてセイバーに話を振る師匠。
「セイバー、貴方はマスターとしての心得がない魔術師見習いに呼び出されたのよ」
「確かに。私は万全の状態ではありません。シロウには私を実体化させる魔力がない。霊体に戻ることも魔力の回復も難しいでしょう」
敵と中立の間にいるような俺達に、素直に自分の状態を話すセイバー。やはり誠実な人物なのだろう。
「……驚いたわ。そこまで酷いこともだけど、貴女が正直に話してくれるなんて」
「セイバーは素直な人なんだね。……しかし、魔力の回復なら心配しなくてもいいんじゃないかな。今は敵未満って感じの俺がだけど、あてはあるし」
俺がそう言うと、興味深そうに俺を見てくるセイバー。その間高潔なセイバーを得られなかった師匠が衛宮をへっぽことか言っている。
「さて、話がまとまったところだし。そろそろ行きましょうか」
そう言って、聖杯戦争を良く知る監督役がいる教会に移動しようとする。
「隣町だから急げば夜明けまでには帰ってこれるぞ。明日は日曜だし夜遅くなっても大丈夫だろう?」
「シロウ。私は彼女と彼に賛成です。貴方は知識がなさすぎる。契約した私としては、貴方に強くなってもらわなければ困るのです」
行き先は隣町の言峰教会だ。さて行きますかね。
§
夜の町を歩く。体は鍛えてあるので片道一時間の道行きでも平気だ。魔術師は体も資本だからね。俺達は最低限の準備だけして移動していた。最低限とは、血まみれになっていた衛宮の着替えと、霊体化できないセイバーに大き目の雨合羽をかぶせることだったが。セイバーと師匠は知らぬ間に話をするくらいの中になっている。さすが女子やで。衛宮はといえば無駄に女子二人を意識してつかつか歩いてやがる。この童貞坊やが。
おっと忘れていた。衛宮に催眠をかけなければ。雑談するフリをして……。
聖杯戦争から降りてはいけない!
よし、これで教会の中で戦いを放棄するBadEndその一は回避された。外人墓地を通る。予定通りならここで戦う可能性もあるよな。まあセイバールートならそうはならないけど。だが油断は禁物だ。俺の知識通りに世界が動く保証などないのだから。
「この上が教会よ」
そして教会に辿り着いたが、
「シロウ、私はここに残ります」
セイバーが申し立ててきた。かつての敵である言峰とは会いたくないのだろう。セイバーは第四次聖杯戦争でもセイバーとして呼び出された人物だ。そして言峰神父は第四次聖杯戦争に参加していたマスターだ。
「俺も残るよ。言峰さんとはあまり会いたくないからね」
教会内での会話なんて俺には必要ないからな。カットだカット。
「セイバー。この先のことなんだけど……」
かなり警戒されているが、半端な笑顔など作らずに真顔で話しかける。セイバーには誠意を尽くす方が信用してもらえるだろう。
「今の俺達は敵になる前の段階と言っていいだろうが、逆の可能性もあると思うんだ。つまり、味方になる」
「……味方?」
「そう、俺はさ、聖杯に願いなんてないんだ。ただ十年前に起きた第四次聖杯戦争で被災してね。だから今回の聖杯戦争では、一般人に被害を出させない為にマスターになったんだ」
「…………」
第四次の大火災について、それなりに関わっている彼女だからこそ信用してもらえるはず。このセイバー、アーサー王は第四次聖杯戦争でもセイバーを務め、火災が起きる直前、直後? まあとにかくそこら辺に関与したからな。
「だから、俺には聖杯に願いなんてない。自分が勝ち残ろうという気持ちもない。そして俺のサーヴァントであるキャスターにも聖杯に願うような願いなんてないんだ。だから、俺と偶然戦争に巻き込まれただけの衛宮は同盟できると思うんだ」
「同盟…………しかし、貴方は凛の……」
「うん、師匠とも同盟を結んでいるよ。戦争が始まる前からね。だからつまり、同盟と言うのは俺と師匠と衛宮、三者で同盟を結ぼうってことだよ」
「!?」
いきなり言い出されたことに驚くセイバー。
「俺の考えはこうだ。まず三者で同盟を組み、他の四騎のサーヴァントを各個撃破する。三体一だがこれも戦争。卑怯とは言わせない。そして四体のサーヴァントを倒したら、勝ち残りたいセイバーと師匠・アーチャーが戦う。勝った方が勝ち残りに興味のないキャスターを倒して消滅させ、ジ・エンドだ。これが俺の腹案だよ」
「…………………………」
セイバーは考え込んでいる。これはセイバーにとってかなり条件のいい申し出のはずだ。今のセイバーは胸をランサーの槍で穿たれ負傷している。それを回復しつつ他六騎のサーヴァントを倒すより、四騎のサーヴァントを三体一で各個撃破し、最後にアーチャーと決着をつける方が楽だ。上手くいけば簡単に聖杯を手に入れられるのだ。
「ま、詳しい話は君のマスターである衛宮と明日辺りにでもゆっくり話そうと思う。ただ、キャスターのマスターである俺はこういう考えだと伝えておきたかったんだ。良ければ考えてみてくれ」
……よし、そんじゃ話も終わったことだし目を合わせて催眠をかけますかね。
日が進むごとに俺のことが好きになる!
はい催眠完了。この内容、日が進むごとにってのは既に中学生の時に実験済みだ。相手は一ヶ月経たない内に俺に告白してきた。聖杯戦争は大体約二週間。これなら「普通に好き」ってぐらいには、好きになってくれるだろう。ちなみに実験した女の子は告白を断って好意を消滅する催眠をかけたから大丈夫だよ。
そうして待つこと十数分。衛宮と師匠が出てきた。
「行きましょう。町に戻るまでは一緒でしょ。私達」
言ってさっさかと歩いていく師匠。追いかける。師匠は既に衛宮を敵とみなしているのだろう。彼とセイバーから距離をとっている。俺はそんな師匠と衛宮を繋ぐ掛け橋だ。さて、それじゃ覚悟を決めますかね。
と、歩いて帰る途中に
交差点に着いた。それぞれの家に続く坂道の交差点だ。
「ここでお別れね。義理は果たしたし、これ以上共にいても面倒でしょ。きっぱり別れて明日からは敵同士よ」
「師匠、それなんだが――」
俺が同盟の話を切り出そうとした時だった。
「――ねえ、お話は終わり?」
幼い声が響く。来たなイリヤ! 俺はキャスターを具現化させ、いつでも動けるよう臨戦体勢になった。奴には無意味だが心構えというやつだ。
「バーサーカー」
師匠が呟く。そこには、声の通り幼い容姿の女の子と、巨躯の大男がいた。バーサーカーのサーヴァント。絶望的な死の気配が周囲を取り巻く。
「こんばんは、お兄ちゃん」
会うのは二度目だね、などとにこやかに話すイリヤ。こっちはそんな余裕ね―っての。生身で対峙したバーサーカーは文字通りの化け物だった。
「――――や、ば。あいつ、桁違いよ」
師匠も身構えながらそう言う。だがその背中は絶望を映し出していた。
「ふふ、サーヴァントが二体もいるなんて面倒がなくていいわ。二匹いっしょに潰してあげる」
楽しげに呟く。
「師匠、どうする。二対一だぞ。顔見せ程度に戦うか、本気で潰し会うか、一目散に逃げるか。俺としては最低限の情報収集はしたい。どうせいずれは戦う相手なんだ。二体いて有利なうちに戦っておきたい」
俺が意見を具申する。
「……くっ、そう、ね。ここで逃げてちゃ女がすたるわ。頼むわよ明!」
――と、イリヤはスカートの裾を持ち上げ、戦いの場にふさわしくないほど行儀良くお辞儀をした。
「初めまして、私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」
当然、知っている。聖杯戦争を始めた、始まりの御三家。アインツベルン・遠坂・マキリ。その内のアインツベルンのマスターが彼女だ。体を固めた師匠に気を良くしたのか、笑みを浮かべながら、
「じゃあ殺すね。やっちゃえバーサーカー」
命令しやがった。それとほぼ同時にバーサーカーが跳躍してこちらにくる。
「――シロウ、下がってください……!」
セイバーが駈ける。この面子ならセイバーが前衛、キャスターが後衛を務めるのが理想的だ。
そして暴風が吹き荒れた。バーサーカーの持つ斧剣と、セイバーの不可視の剣が激突する。武威のぶつけ合いは、セイバーの敗北で終わる。
ざざざざ。
セイバーは受け止めた剣ごとこちらに押し戻された。そこに再びの攻撃。バーサーカーは手を休めない。俺と師匠プラスキャスターは機会をうかがっている。クソッ、大剣をもっているのになんてスピードだ。セイバーを上回ってやがるぞ。狂人であるバーサーカーに技巧はない。だというのに最優のセイバーを一方的に打ち据える。
「――――逃げろ」
衛宮が呟く。弱気になるの早いな。ま、無理もないか。俺のように切り札があるわけじゃなし。剣戟でセイバーの体が浮いた。敵の大剣を防ぎきれなかったか。地面に叩きつけられる前に、身を翻して着地した。
「……ぅ、っ……!」
だけど胸には紅がにじむ。やはりランサーの槍撃は確実に彼女にダメージを与えていた。追撃を行うバーサーカー、だがそこに、師匠の魔術と俺、そしてキャスターの魔術が突き刺さった! だが無意味っ! バーサーカーの体は無傷だ。セイバーのレジスト能力と違い、単純に効いていない。やっぱわかっていたけど反則だろアレ!?
「ぐぅぅっ! なんてデタラメな体してんのよ、こいつ!」
それでも師匠とキャスターは手を休めずに魔術を放つ。だが敵は意に介さずセイバーへ向かう。
「だめだ、逃げろセイバー……!」
衛宮が叫ぶ。だが彼女は聞いちゃいなかった。敵うはずのない敵めがけて突進する――!
「あっ!」
しかし、彼女は再び攻撃によって宙を舞っていた。その胸から鮮血が散る。もはや動くのが無理な体で、彼女は立ちあがった。
(これが、セイバー。これが、英霊)
その剛毅な意思には感嘆するしかない。だが――、
「あは、勝てる訳ないじゃない。わたしのバーサーカーはギリシャ最大の英雄なんだから」
驚くほどあっさりと、敵は正体をバラしてくれた。
「ヘラクレス……! 馬鹿な!」
俺は驚いたフリをする。佐藤明が知っていてはおかしい知識だからな。俺達程度に使役できる英雄とは格が違うと言い捨てるイリヤ。実際ヘラクレスの前ではメディアはまず役に立たない。かなりの深手、負傷しているセイバーも今は敵わないだろう。
そこで、隣にいた衛宮が動く気配がした。このままでは奴は原作通り特攻するだろう。だから、
「戻れ! ここまで戻るんだセイバー!!」
催眠を、かける! セイバーはその言葉を聞いて最後の力を振り絞り、後方の俺達の所まで跳躍した。よし、逃げるぞ。
「キャスター、転移!」
その俺の言葉と共に、俺達は逃げ出した――。
後書き
主人公の心理描写、モノローグは意図して薄くしてあります。なんでこいつこんな行動してるの? ということが多々あると思いますが、仕様です。理由は、あまり内心を語らせると先の展開などがバレるからです。ネタバレは厳禁。これ重要。
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2月3日
セイバーとのエロは日曜日までお預けです。それまで待ってね。
目を覚ました。見慣れない部屋だ。……ああ、そっか。バーサーカーから衛宮の家に転移して、そのまま雑魚寝したんだっけ。師匠は当然客間だ。さて、朝に弱い師匠を起こしますかね。弟子なので部屋に入るなんて当たり前だ。十年も共に過ごしていればそこら辺の遠慮はなくなる。
§
「な、え――――!?」
衛宮が家にいる師匠に驚いている。
「もう忘れたのか衛宮。昨日俺達は家に泊めてもらっただろう」
「……佐藤、あ、ああ」
なんつーか普通の高校生の反応だなぁ。もっとピリッとして欲しいぜ。それはそれとしてセイバールートの衛宮特攻(笑)がなかったので、衛宮の体に埋め込まれている聖剣の鞘が力を発揮しなかった。エクスカリバーの鞘は最高の防御力と治癒能力を誇る。だが怪我していないんだから治癒の力を発揮する訳はない。俺は頭の行動計画表にチェックを入れた。
「じゃあ真面目な話をしようかしら」
落ち着いた衛宮と三人で話をする。セイバーは衛宮家にある道場(道場付きの家なんてすげーな)、キャスターは霊体化して俺の傍に。ちなみに令呪で消されたアーチャーは遠坂邸で治療中だ。
「真面目な話……? いいよ、聞こう」
師匠は衛宮の今後の行動方針について聞いた。
「正直、わからないよ。競い合うって話だけど、魔術師同士の戦いなんて経験がない。第一俺は殺し合いは避けたいし、聖杯なんていう得体の知れないモノに興味はない」
「言うと思った。貴方ね、そんなことを言うとサーヴァントに殺されるわよ」
師匠は話す。サーヴァントの目的も聖杯だから。彼らは聖杯を手に入れられるから人間の召喚に応じている。聖杯を手にできる可能性があるからマスターに従う。だってのに聖杯なんていらないと言えば斬り殺されても文句は言えまい。……特に、セイバーの目的と衛宮の主義は反するからな。
「話を戻そう。人殺しが嫌いな衛宮は、他のマスターが何をしようが傍観するのか?」
「そうなったら止めてやるさ。サーヴァントさえ倒せばマスターは大人しくなるだろ」
甘いなぁ。それで大人しくなるマスターなんていないよ。
「問題点が一つね。昨日のマスター、イリヤって名乗ったあの子、私達を簡単に殺すって言ってきたあの子だけど、必ず私達を殺しにくるわ。それは衛宮くんにもわかってると思うけど」
そう、受けに回っても相手が攻めてくる場合があるのだ。
「あのサーヴァント、バーサーカーは桁違いよ。未熟なマスターである貴方にアレは撃退できない。貴方は身を守ることさえできないわ」
ちくちくと嫌なとこを突くなあ。
「悪かったな。けれど、そう言う遠坂達だってあいつには勝てないんじゃ?」
その通り、アーチャーが全力になっても厳しい。白兵戦で倒すのは難しいだろうな。
「だからっ、もう、ここまで言ってわからない? ようするに私達と手を組まないかってことよ」
「むむむ?」
変なうなり方。
「そ、これは明から提案があったんだけどね。私達は理想的なパーティーになれるのよ。前衛のセイバー、中衛のアーチャー、後衛のキャスター。特に貴方は、サーヴァントは申し分ないけど、マスターが足を引っ張って半人前だもん。力を合わせればいいでしょ」
「むっ。俺、そこまで半人前なんかじゃ」
「俺が知る限りでもう三回も死にそうになっているけどな。一日で三回も死にかけるとはある意味凄い奴だよお前は」
「ぐぐ」
「同盟の対価くらいは払うわよ。マスターとしての知識と、暇があれば衛宮くんの魔術を見てあげてもいいけど、どう?」
この上ない誘惑だな。
「衛宮、俺も一般人に被害が出ることをよしとしないマスターだ。できれば協力して欲しい」
声の方で催眠をかける。できれば協力、でかけたから、承諾してくれるはず……。
「――わかった。その話にのるよ。遠坂、佐藤。正直、そうしてもらえれば凄く助かる」
よし。これで同盟も結べた。また一つ問題がクリアされていく。
「決まりね」
「同盟期間はバーサーカーを含め残りの四体のサーヴァントを倒すまで、それでいいか?」
最終意思を確認する。
「わかった」
「OKよ」
師匠と衛宮が握手する。と、衛宮が慌てて手を引っ込めた。ははぁん。この童貞めが、照れてやがる。次にサーヴァントのステータスや宝具(英雄の象徴の武具、真名解放で威力を発揮する)について説明。説明は師匠がやってくれるので楽だ。ああお茶が美味い。
「協力関係になったといっても勘違いしないでね。私達と貴方はいずれ戦う関係よ。最後の日になって他のマスター達が倒れた後かもしれないけど、それだけは変わらない。だから――私を人間と見ない方が楽よ、衛宮くん」
ナイスツンデレ。
「それじゃあそろそろお暇しようか。あ、衛宮、セイバーなら道場にいると思うぞ」
そう言って自宅へ一時的に帰る。一時的にな。
§
で、荷物を持ってとって返してきた俺と師匠である。そいそーい。
「むむ? 何しに来たんだ?」
「何ってなぁ。家に戻って荷物を取ってきたんだろ。今日からこの家に住まわせてもらうんだから」
「っ……!!!? す、住むってお前ら二人が……!?」
俺達二人というより師匠の方に反応しているな。
「協力するってのはそういうことでしょ。……貴方ね、さっきした話を一体なんだと思ってるの」
「あ――う」
うーん、もっとシャンとして欲しいぞ衛宮。隙だらけじゃないか。
「で、私の部屋は? 指定がないなら好きに選ぶけど。そうそう、彼女にも部屋をあげたら? 同衾するならともかく、アーチャーやキャスターと違って彼女は場所を取るでしょう?」
「ど、ど、同衾なんてするかばかっ! セイバーは女の子じゃないかっ……!」
まーだそんなこと言っているよ。いいじゃないか同じ部屋で寝るくらい。
「ですってセイバー。士郎は女の子と同じ部屋が嫌だって」
じとっと、衛宮を見つめるセイバー。衛宮がそうであるように、彼女もこれまたわかりやすいな。これで王様やってたんだからなぁ。
「困りますシロウ。サーヴァントは主を守護するものなのですから。同じ部屋でないと」
「そんなこと困るっ。お前ら二人とも女の子じゃないか!」
「……………………」
「……………………」
沈黙が降りる。
「サーヴァントはサーヴァントとして、人間扱いしなくてもいいと思うけどね。士郎にそんなこと言っても無駄のようね。セイバー、士郎がこの調子だと同室は難しいわよ」
「シロウは困るといっただけだ。嫌とは言っていない」
「だーってさ。どうなの? 士郎」
「腹くくったら? 衛宮。俺も成人女性のキャスターが霊体化して傍にいるんだし」
「れ、霊体化している奴と一緒にするな!」
「シロウ、睡眠中の警護は私の役割です。マスターとして自覚して下さい」
むぐぐ。とうめく衛宮。往生際が悪いやっちゃ。
「ダメだ。セイバーにはできるだけ近い部屋を用意するからさ。それで我慢してくれ」
「――――」
「すごんでも駄目なものは駄目だ! こればっかりは男として譲らないからな!」
この話し合いは、結局衛宮が「れいじゅつかうー!」と情けなく言うことによって収束した。その後は三人そろって屋敷を案内してもらった。。
今は与えられた部屋で荷物を整理している。今の衛宮とセイバーは……魔力がないってことを話している頃か。衛宮からは全く魔力の供給がないのだ、あの二人は。ま、それも解消する案がありますけどね。
§
時間が過ぎ夜になった。夕食は交代制ということになったが、俺は辞退した。作れることは作れるがそこまで上手じゃない。なら上手い人間にやってもらうさ。実を言うと一人暮らしか家族と一緒に暮らすことしか経験がないのだ。自分一人分なら作れるが、複数人分作るというのは経験がないのだ。
「今後の方針は決まっているのですか、凛、明」
「今集まっている俺達三者。残り四体の内ランサーとバーサーカーは確認した。残るはライダーとアサシンだな。俺としてはまずマスターを殺される危険性が高いアサシンをどうにかしたいところだが……」
衛宮が夕食を作る間、居間で作戦会議。
「ほら。飯時に物騒な話をするなよな」
なんだ? 衛宮の奴なんか怒っているみたいだけど。あ、そっか。嫉妬か。俺や師匠がセイバーと親しげに会話するのが気に食わないのだろう。独占欲強いねぇ。
「方針を決めていただけよ。安心なさい、別に『貴方の』セイバーをとったりしないから」
顔を赤くする衛宮。純情ぅ。
「お、おま、おま」
オマール海老?
「あら違ったかしら。ならごめんねぇ、衛宮くん」
相手が悪いよ衛宮。この人はあかいあくまなんだから。飯ができた。腹が減っているのでありがたく頂戴する。
「さっきの、今後の方針ってやつだけど。他のマスターを探すって具体的にはどうやるんだ?」
「どうするも何も、足で地道に捜すのよ。そうだ、士郎。魔術師の気配はわかる?」
わかるわけないだろ。二年近く学校にいて、俺と師匠に気づかなかったんだから。
「セイバーはどう? サーヴァントはサーヴァントを感知できるって話だけど」
「あくまで身近で能力を行使している場合だけに限ります。私では半径二百メートルほどしか感知できませんね」
「なるほど。じゃあまずは相手の出方を見るしかないな。マスターが行動すれば痕跡は残るからな」
町中を捜すということはしない。相手にバレてしまうから。
「とりあえずは現状維持ね。今まで通りに生活してマスターと悟られないこと」
そう言って師匠は注意事項を挙げる。
「霊体化できる俺達と違う衛宮はセイバーを常に連れて歩くようにしないとな」
「――わかった。努力する」
わかってないんだな、これが。ゲームをプレイしている時にどれだけ歯噛みしたか。
夕食をとりおえて、セイバーと少し話をする。
「それで? 話とはなんですか?」
うーん、いちいち仕草が可愛い。
「君のマスター、衛宮についてだよ。……バーサーカーと戦っている時、最後の方だけど、傷ついた君を見てあいつは飛び出しかけていたんだ。俺がセイバーに戻ってくるよう言ったから実際には突っ込まなかったけどな」
「…………」
バーサーカーに押し負けて傷が開いたことを思い出したのだろう。顔色が優れない。
「君のマスターはどうやらそういうタイプの人間らしい。目の前で傷ついている人間――サーヴァントだろうが知ったこっちゃない――を見捨てられないっていうね」
「シロウが……」
「だから、今後は注意して欲しいんだ。もちろん俺や師匠も気をつけるけど、君自身が自分のマスターはどこか危うい、と思って注意していて欲しい。あいつは同じ状況になったらまた同じことをしようとするだろうから」
「…………………………わかり、ました。気をつけることにします」
「うん。わかってくれればいいんだ。じゃあ話はこれだけだから」
「……貴方は」
うん?
「私達は本来敵同士だというのに、どうしてそう私達を気にかけるんです?」
ふむ。理由か。
「衛宮は……俺と同じ境遇だった奴だから、かな。あとセイバー、君のことを純粋に好ましい人だと思っているから、かな」
そして説明してやる。第四次聖杯戦争が原因の大火災で家族を失い、自分も死にかけたこと。衛宮士郎も同じ境遇だということ。
「――――そう、ですか。シロウと貴方は前の聖杯戦争で……」
「ああ、だからあいつには仲間意識のようなものがあるんだよ」
実際はそうでもないけどな。建前だ。でも彼が死ぬとそれは大きな損失となる。セイバーもいなくなるし……戦力が激減するのだ。それはさけなければいけない。
「ま、そういうことだ。他意はないよ」
「わかりました。忠告、ありがとうございます」
貴女が好ましいと言ったことは完全にスルーですかそうですか。まあいいや。今はこれで。
そしてその日は終わった。
後書き
同盟の期間について。原作ではバーサーカーを倒すまでとしていましたが、別に最後まで同盟しようと言ってもいいと思うんですよね。他全部を倒し終わった後にやりあえばいいだけですからね。なのでそうしました。
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2月4日
土日はネットを利用できないのだ。なので感想返しは月曜の朝にやります。まあ、こんな中編のエロSSにそんなに感想はこないと思いますが、念のため。よろしくねー。
あーたらしい、朝がきた! と。
「おはよう師匠」
「……おはよ」
相変わらず朝が弱い師匠であった。と、チャイムが鳴った。間桐桜が来たんだな。高校の後輩、一年生で魔術師の家系である間桐の娘。その実態は十年以上前に遠坂から間桐へ養子に出された遠坂凛の妹だ。
師匠が勝手に出迎えている。そこに衛宮がやってきて修羅場の誕生である。ああ、横から眺める修羅場は面白いねぇ。師匠が下宿するということを伝え、桜の反応が止まる。だが彼女はやがて師匠の挑発的な言動に腹を立て、どすどすと台所に向かった。
「マズった……!」
恒例のポカですねわかります。師匠は戦場になるかも知れない衛宮邸から桜を遠ざけようとしたが、衛宮を慕っている桜には逆効果になってしまったようだ。その後、衛宮はセイバーに部屋で待機しているように言いに行った。俺は居間に顔を出し、宿泊するのは師匠だけじゃないんだよ。だから間違いとか起こらないよ、と示した。
「どうぞ遠坂先輩。佐藤先輩もいかがですか?」
飯時には穏やかな桜に戻った。なんとか落ち着いてくれたらしい。もぐもぐとご飯を食べる。確か元弓道部の衛宮が怪我をして、それを見舞う&助ける為に食事を作りにきて、それから毎日通い妻状態が続いているんだったか。高校の後輩に毎日通われるとかお前はギャルゲーの主人公かよ。……エロゲーの主人公だった。
あ、ちなみに俺の叔父夫婦には絶対催眠をかけて外泊することを認めさせた。まあ数週間の辛抱だ。
「おはよーいやぁ寝坊しちゃったよう」
我が学園の教師、藤村大河先生が顔を出した。衛宮の奴完全に考えてなかったという顔をしている。あー面白。
「おはようございます、藤村先生」
「おはようございます、藤村先生」
ユニゾンする師匠と桜。俺も少し時間をおいて挨拶する。
「?」
藤村先生はまだ気づいていないようだ。……いや鈍すぎでしょ! 一杯のご飯を平らげてから、衛宮にぼそぼそと尋ねている。……遅いよ。
「って、下宿ってなによ士郎ーーーーー!!!!」
爆発した。どっかーんとテーブルがひっくり返る。知っていたので食事を避難させていた俺。
「あちーーー!」
朝から鍋物になんぞするからそうなるんだよ衛宮。
「うるさい! アンタこそなに考えてんのよ士郎! 同年代の女子を下宿なんてどこのラブコメじゃい! ええいわたしゃそんな風に育てた覚えはないぞ!」
やかましいなぁ。いくら子供の頃から衛宮を知っているご近所さんだからって。
「同い年の女の子と一緒に暮らすなんて、そんなのお姉ちゃん許しませんえー!」
虎のように吠える先生。仕方ない、ここは第三者の俺が説明しますかね。
…………説明中…………。
「遠坂さん家が全面的な改装かぁ」
「ええ、ホテル暮らしではお金がもったいないからと衛宮が申し出まして」
「むむっ、それは確かに士郎っぽい発言」
「で、それを聞いた遠坂さんの遠縁の親戚である俺が心配しまして。若い男女が二人きりでは間違いがあってはいけないと思い、俺も一緒に下宿させてもらうことになったんです。既に二泊していますが、俺が衛宮を見張っていることもあり、間違いは起こっていません」
その後もなんやかやと言葉を尽くして説得した。こういう時は口が回るんだな、俺。
「じゃあ衛宮と一緒に学校に行くけど、衛宮のガードは任せてくれ。いざとなったらキャスターをこの家に転移させて、セイバーを連れて学校まで転移させるから」
「はい、わかりました。ありがとうございます、明」
わーい。せいばーにおれいをいってもらったー。――思わず幼児化してしまった。
衛宮、師匠、俺、桜の四人で固まって登校する。すると当然ながら周囲から奇異の目で見られた。師匠は慣れていないからか落ち着かない。
「師匠、こういう時はどーんと構えていればいいんだよ」
「そうは言うけどねぇ……」
普通に登校すればいいのだ。校門前でワカメのような人間がいた気がするが、気のせいだろう。
§
ただいま昼休み。昼飯を買って屋上へ行く。師匠と衛宮と三人でランチタイムだ。
「単刀直入に聞くけど、士郎。貴方、放課後はどうするつもり?」
その質問に対して、予定はないとか答える頓珍漢な衛宮。ちゃうっちゅーねん。
「――――」
ほら、師匠も呆れているぞ。
「師匠、衛宮をあまりいじめるなよ」
「いじめてなんていないわよ。ただ士郎が学校の結界に気づいてないようだから未熟だって言ってるの」
そして学校に仕掛けられている結界の説明。広範囲に仕込まれた結界は学校の敷地をほぼ包み込む。種別は人間から血肉を奪うタイプ。現在準備段階だが、それでも学校のみんなに元気はない、と。
「つまり――学校に、マスターがいる……?」
「そういうことだな。確実に敵が潜んでいる。そのあたり覚悟しておかないと死ぬぞ衛宮。まあ俺の考えとしては、残り二体の内一体が向こうから姿を現したんだ。願ったりかなったりというところかな」
まあ実は既に全サーヴァント揃い踏みなんだけどね。八体目も含めて。だが慎重にことをすすめなければな。俺の絶対催眠も無敵じゃない。いきなり遠方から狙撃でもされたら終わりだ。殺されれば、死ぬのだ。
「マスターについてはわかっているのか?」
「うちの学校にはもう一人魔術師の家系がいるのよ。アンタみたいなへっぽこでもマスターになれたんだもの、そいつにも万が一ってことがあるかも知れないわ」
だけど。
「けどそいつからはマスターとしての気配は感じられないのよ。最初に調べたけど、令呪もなければサーヴァントの気配もなし。まずそいつはマスターじゃないわ」
残念! そいつがマスターなのでした。
「ようするに半端に魔術をかじっただけの奴がいるって言うのか。でもそれじゃあ結界なんて張れないんじゃないか?」
いやいや、衛宮さんよ。聖杯戦争の主役を思い出せって。
「サーヴァントが張ったのかも」
「あ、そっか」
「結界の基点は弱めたけど、消去はできなかったのよ。先延ばしにしただけ。アーチャーの見たてではあと八日程度で準備が整うらしいわ」
「――じゃあ、それまでに」
「この学校に潜んでいるマスターを探し出して倒す。それが俺達のやるべきことだ」
あえて殺す、という言葉は使わなかった。
「といっても、隠れているそいつが表に出てくるのは結界を発動させる時だ。それまでは待ちだな。覚悟だけは決めておけってことさ」
まあ俺の計画が上手くいけば、その前に始末できるはずだけどね。
「私、帰りは用事があるから」
「りょーかい。俺と衛宮は一緒に帰るよ。護衛も兼ねてな」
「悪いな佐藤」
「気にするな。これも同盟の妙味よ」
「そ、そっか」
チャイムが鳴った。さて午後の授業だ。
§
家(衛宮邸)に帰ってきたぞ。セイバーが出迎えてくれる。彼女は今日の出来事を教えて欲しいとのことなので、衛宮が茶を入れる間に学校の結界について話した。次にサーヴァント、ランサーについてとうとうと話をする。彼の真名はクーフーリン。魔槍ゲイボルクを持つアイルランドの大英雄だ。と、桜が訪問してきた。
「セイバー、悪いけど、その」
「わかっています。部屋に戻っています」
俺もセイバーと一緒に引き上げる。
「……別に師匠と俺が泊まっていることを説明したんだから、セイバーも表に出してやればいいのにな、衛宮の奴」
「私を……ですか? 特に意味があるようには感じませんが……」
「いや、大事なことだよ。俺から機を見て衛宮に話してみるわ。それに、いつまでもごまかしていられないだろうしな」
「…………」
「衛宮、ちょっと話が」
夕食を作っているのは師匠だ。師匠の中華料理は絶品だからな。
「ん、どうかしたか? 佐藤」
「セイバーのことなんだけど……」
俺は一人で放っておかれるセイバーについて話をした。一人寂しく部屋に待機させているなんて可哀相じゃないか。ちゃんと桜と藤村先生に紹介してやれ、と。
「……やっぱりそうした方がいいのかな?」
「大事なことだと思うぜ。それにあの二人はお前にとって家族みたいなもんなんだろ? 隠し事は良くないぜ」
「……………………わかった。言ってみるよ。あ、そうだ。そういえば聞き忘れてたけど、キャスターは治癒の魔術とか使えないのか? セイバーの傷を治して欲しいんだけど」
「無理。そういう魔術は使えない」
バッサリ切り捨てる。彼女にもアーチャーにも傷を負ったままでいてもらわないと困るのだ。
と、いう訳で、夕食前にセイバーを紹介することになりましたとさ。で、また女子が同居ということで、予想通り藤村先生が爆発して、何故か剣道場でセイバーと対戦することになりました。何故だ。
「士郎を守るのはわたしだもん! 士郎が一人前になるまで、わたしがずーっと、傍にいるんだから!」
やれやれ、セイバーにかなう訳がないというのに。ああほら、あっさり負けた。
「うわぁぁぁぁぁあああん! ヘンなのに士郎とられちゃったーーーー!」
……やれやれ。そうして、夜はふけていった。
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2月5日
原作登場人物の死亡があります。ご注意下さい。
また朝がやってきた。聖杯戦争の朝だ。ああ気が重い。だが頑張らねばな。頑張って原作通りにするぞー! おー! と気合を入れて起きる。
「悪いわね桜、私バター駄目なの。そっちのジャムを頂戴」
「そうなんですか。遠坂先輩、甘いものが好きじゃないような口ぶりでしたけど」
「まさか、そんな女子はいないわよ」
「セイバーは良く食べるなぁ、小さな体して男並みじゃないか?」
「? そうでしょうか。私は平均だと思いますが」
中々に姦しい食卓である。衛宮の奴は沈黙しているが。藤村先生が来なかったが、昨夜のショックが大きかったということだろう。食事の後片付けは衛宮、君に任せた。
「それでは私も失礼します。何かあれば言って下さい」
「じゃあなセイバー。衛宮のことは任せてくれ」
「はい、シロウを頼みます明」
そう言って引っ込んでいくセイバー。TVのニュースは今日も安穏としたものだった。原作と違ってキャスターが俺の支配下だからな。ガス漏れ事故のニュース(魔術で精気を吸われた一般人のごまかし)などは流れないのだ。
今日も三人で登校する。桜は弓道部の朝練があるので先に出た。門をくぐると違和感が、これにも慣れてきたな。
「……本当だな。外と中じゃ空気が違うぞ。甘い蜜みたいな空気だ」
「へえ、士郎はそう感じるんだ。……貴方、魔力感知は下手だけど、そういうのには敏感なのかもね」
ふうん、と師匠は何やら考えこむ。
「まあとにかく、学校の生徒を巻き込みたくないのは三人一緒なんだ。ならやることは一つだろ」
「……わかってるよ。この結界を張ったマスターを探し出してそいつをなんとかする。結界を解かないって言うんなら、倒すだけだ」
衛宮、本音が透けているぞ。「解かないって言うんなら」ってことは、問答無用で倒すのではなく、その前に会話なりなんなりをしようってつもりだろ? 残念だが俺も師匠もそんな悠長な気持ちではない。見つけたら即殺するつもりだ。
「じゃ、私は結界を張った奴を捜してみるわ。士郎は不審な場所をチェックしといて。貴方はそういう特異点を探すのに向いてそうだし。明は魔力感知とキャスターでなんとかなるか見てちょうだい」
そう言って別れる。まずは午前中の授業か。今日の午後は……あれだな。よし、と。俺は頭の中に行動計画表を細かくチェックした。
昼休みである。俺の記憶が確かなら、この時間に間桐慎二が衛宮に接触する可能性がある。マスターと名乗ってな。俺はその場所――弓道場前を見張った。…………やはり、か。間桐が出てきて結界の基点を探していた衛宮に話しかけた。よし、この記憶通りってことはやっぱ基本はセイバールートのようだな。しめしめ。そうこうしていると、二人は学校を出た。午後の授業をさぼって間桐の家で話をするはず。んでライダーの姿も視認するはずだ。俺は念のためキャスターを単独行動させて後をつけていくよう指示した。
間桐は魔術師の家系、つーか聖杯戦争の御三家が一つ、マキリだ。今頃衛宮はその説明を受けていることだろう。きっと簡単に桜は魔術に関係ないって言葉に引っかかるんだろうなぁ。家の人間なのに魔術に関係ない訳ないだろスカタン。桜も立派な魔術師だよ。ライダーの本来のマスターでもある。まったく気の抜けた奴だ。
さて、俺の方で行うことは今は何もないな。午後の授業を粛々と受けるとしよう――。
§
藤村先生が姦しい夕食を終えて桜と外に出た。戦争の時間じゃぜ。衛宮から話があると切り出された。
「他のマスターの話だ。聞いて欲しいことがある」
何だ? 衛宮の奴やけにセイバーを気にしているようだが。
「シロウ、話があるのでは?」
「――ああ。そうだな。率直にいうと、今日の午後、ライダーとそのマスターに会ってきた」
「知ってる」
空気が変わる。二人が目を剥いた。
「な! ライダーのマスターに会ってきたですって! 明! アンタも知ってるってどういうことよ!」
「そんな馬鹿な! 一人で敵のマスターと会うなど、自分の安全をなんと考えているのですか!」
二人に糾弾されてやんの。やーい考えなし。
「落ち着け二人とも、俺は午後の授業を抜け出して学校の外に出た衛宮をキャスターに追尾させたから知っているんだ。でも詳しい話はわからないからまずは衛宮の話を聞こう。セイバーも、衛宮の馬鹿が簡単に敵に会ってきたのは問題だけど、今はこうして無事なんだから矛を収めてくれ」
「え? キャスター、ついて来てたのか!?」
「あのなぁ。同盟を何だと思ってるんだこのバカチンが。セイバーからもくれぐれもよろしく頼むと言われているのに、一人になんてさせる訳ないだろーが」
当然のことながらキャスターに気づいてなかったのか衛宮。これが
「私は怒ってなどいませんっ。シロウの浅はかな行動に呆れているだけです」
「右に同じ。ま、終わったことをあれこれ言ってもしょうがないわ。それで、どういうことなの士郎」
明かに怒っていますという風体で睨む師匠とセイバー。こいつの危機管理能力がガバガバなことなんて、最初の夜、学校に残っていたことでわかるだろうに。
「会ったのは、話し合いをするっていうから付き合ったんだ。別に戦闘した訳じゃない」
「見りゃわかるわよ。で、ライダーのマスターはどんな奴なの」
「どんな奴って、慎二だよ。話しかけられて、間桐の家まで行ったんだ」
「な――慎二って、本当にあの慎二!?」
俺は共通知識のないセイバーに慎二のことを説明してやる。間桐家の長男、桜の(義理の)兄。衛宮の友人。
「……とにかく、ライダーは慎二に従っていたし、聖杯戦争も知っていた。間桐の家は由緒正しい魔術師の家系なんだって?」
それは、とか間桐の子供に魔術回路はつかないはず、とか師匠はぶつぶつ言っている。イレギュラーに弱いなぁ。衛宮は自分と同じようなケースで魔力もないから探索に引っかからないと言った。
「ああもう、それじゃ私の行動はあいつに筒抜けだったんだ、ばか」
さすがの師匠である(ポカの遠坂)。
「私のミスね。知っていたら結界なんて張らせることもなかったのに」
「いや、学校の結界は慎二じゃないぞ。あいつが言うには、学校にはもう一人マスターがいるんだと」
「……衛宮。お前まさか結界を張っていないっていう間桐の言葉を信じているのか?」
「いやぁ、そこまでお人よしじゃない。半分の確率で慎二の仕業だと思ってるよ」
「……ま、いいわ。それで慎二と何を話したのよ」
「手を組まないか、だとさ。あいつも戦うつもりはないらしい。だから顔見知りの俺と協力したいって風だった」
それは嘘だ。しかしこれで嘘も含めて三人も戦いたくないマスターがいることになる。……今回の聖杯戦争は酷いなぁ。
「まさか士郎、貴方」
「いや、断った。俺はもう遠坂と佐藤の仲間だし、返事するにしても二人に話を通さないと駄目だろ」
「そうか。それはそれで正しかったと思うぞ、なあ師匠」
ん、まあね。などとごにょごにょ言っている。真っ直ぐな衛宮に当てられたな。
「とりあえずそんなとこだ。あと、ライダーについては……」
ふむふむ。見た限りそこまで強力じゃないと。バーサーカーはもちろんランサーより威圧感がない、か。しかしライダーの真価は宝具にある。
「油断は禁物です、シロウ」
「そうだぞ
「う――。た、確かに。でも、どこの英雄かはわからなかったけど。ランサーとかバーサーカーはいかにも英雄って感じだろ? けどライダーにはそれがなくて、どこか普通のサーヴァントとは違う気がした」
「ふぅん。理屈だけならわかるわよ。サーヴァントは結構似たもの同士で呼び出されるのよ。つまり清廉な人物がマスターなら、それに近い霊核をした英霊が召喚される。逆に言えば、悪徳な人間が英霊を呼び出せば、同じような英霊が現れるわ。士郎がライダーに感じたことって多分それよ。歪んだマスターは、時として英雄じゃなくて英霊に近いだけの怨霊を呼び出してしまうものよ」
師匠はこう説明しているが、怨霊のようなサーヴァント――俗に言う反英雄――が出現しだしたのは。第三次のあるサーヴァントが原因だ。それまでは正しい英雄しか呼び出されていなかったはず。
「まあライダーについてはそれだけ。最後にもう一つ、これが一番重要かも知れない。なんでも、ライダーの話じゃ柳洞寺にもマスターがいるらしい。この話、三人はどう思う?」
それはキャスターが反則で呼び出したアサシン(偽)である。まあそのことは師匠にも秘密にしているから誰も知らないんだけどね。
「どんなマスターか知らないけど、辺鄙なところに陣取ったものね」
「――いえ、シロウの話は信憑性が高い。あの寺院は押さえると有利になる場所です」
「? セイバー、あの寺院って――柳洞寺のこと知ってるのか? まだ案内してないぞ、俺」
「忘れたのですかシロウ。私は前回も聖杯戦争に参加しています。この町のことは熟知していますし、あの寺院が落ちた霊脈ということも知っています」
「――落ちた霊脈!? ちょっと待ってセイバー。それって遠坂の家のことよ!? なんだって一つの土地に霊脈の中心点が二つあるのよ!」
「……それはわかりませんが。とにかくあの寺院は魔術師にとって神殿とも言える土地です。この地域の命脈が流れる場所と聞きました」
「ようするに霊的に優れた土地ってことだろ? そんなのある意味当然じゃないか。そうでもない場所に寺なんて建てないぞ」
「だな、衛宮の言うことは正しい」
「でも、それなら何だって他のマスターは手中に収めないのかしら」
「凛、あの山にはマスターにとって都合の悪い結界が張られているのです。あの山には自然霊以外を排除する法術が働いています。サーヴァントにとっては文字通り鬼門なのです」
鬼門なんて言葉も知っているのか、サーヴァントって。
「それじゃあ、どうやって柳洞寺のマスターはサーヴァントを維持しているの?」
「寺院の中に入ってしまえば結界はありません。結界は外来の者を拒むだけの物。それ以上の能力はありません。寺に続く参道にだけは結界が張られていないと聞きました。正門のみ、サーヴァントを律する力が働いていないのです」
ふむぅ、と頷く師匠。よしよし、この流れなら……。
「――では結論を。マスターがいると判明したのですから、とるべき手段は一つだけです」
セイバーの言いたいことは簡単だ。敵の居場所が判明したのなら、後は攻め込むだけ、と言いたいのだろう。しかし――――。
柳洞寺には行くな!
と、衛宮に催眠をかけさせてもらう。悪いが孤立してもらうぞセイバー。
「私はパス。どうにも罠っぽいし、正直それだけの情報じゃ動けないわ。相手の陣地に行くならせめてどんなサーヴァントか判明するまで待つべきね。……アーチャーも回復してないしね」
師匠は反対。まあそれも道理だろう、自分のサーヴァントであるアーチャーが療養中なのだから。
「それではシロウ、私達だけで寺院に赴きましょう」
いや、俺の意見も聞いてくれよ。アレ? 俺師匠の付属品とか思われているの?
「――――いや、俺も遠坂に賛成だ。まだ手を出さない方がいい」
衛宮も反対。やったぜ催眠。
「貴方まで戦わないと言うのか……!? バカな、今まで体を休めていたのは何の為だというのです! 敵の所在が判明したのなら、撃って出るのが戦いというものです!」
セイバーは戦いたい、と。
「それはわかっているよセイバー。だけど待つんだ。柳洞寺にいるマスターが用意周到な奴なら罠を張っているだろう。そこに無策で飛び込むのは自殺行為だよ」
「そのような危険は当然承知の上です! 初めから無傷の勝利など得られるとは思っていません。敵の罠が肉を切っても、この首を渡さなければ戦えます。どのような深手を負おうとマスターさえ倒せればいいのではないですか!」
猪武者だなぁ。その後も戦いは控えているんだぜ。しかも貴女魔力供給されてないでしょ。ただひたすら魔力を消費するだけの状態なんだから、避けられる戦いは避けるべきだろ。
「な――んなバカな話があるか! 怪我をしてもいいだなんて。危険だと知って行くのはいい、けど特攻なんて馬鹿げたことはさせられない」
そうだな。柳洞寺にはマスターとサーヴァントがいる、と思われている。んで、寺に続く道はただ一本だけ、なら何かしらの罠があってしかるべき(ないけど)。作戦もなしに挑むのはあまりに危険だ。いくらセイバーが強くても魔力とマスターという枷がある。無理して戦うべき場面ではない。
きっと今の衛宮は、頭の中で、血を噴き出しているバーサーカー戦のセイバーを思い出しているのだろう。正義の味方マンであるこいつには言っても無駄である。
「……はぁ。何を言うかと思えば。いいですかマスター、サーヴァントは傷を負う者。それを恐れて戦いを避けるなど、私のマスターには許しません」
私のマスターには許しません。私のマスターには許しません! 凄い言葉だ。とても従う者、サーヴァントの発言とは思えん。
「――ああ、許されなくて結構だよ。セイバーが無理をするなら止めるからな。……それが嫌なら体を万全の状態にしろってんだ。まだ傷が治りきっていないだろ、お前」
「戦闘に弊害はありません。傷を理由にして戦いを先延ばしにするなど、そのような気遣いは不要です」
頑固だな。ここら辺で折れると理想的な主従関係なのだが。
「――っ」
衛宮も処置なし、という顔をしている。
「ああそうかよ。だけど簡単に認められるか。この間だってセイバーはバーサーカーにやられただろ!? 無茶して戦って、俺もお前も共倒れ、なんて真似をするつもりか!? 冗談じゃない。俺はあんなセイバーを見るなんて二度とごめんだっ」
「私への気遣いは不要です。そんな弱腰では困ります。マスター」
お互い折れるってことを知らんのか。
「弱腰で悪かったな。とにかく、こちらから仕掛けることはまだしない。俺達は戦える状態じゃない。こんなんでやられたら、元も子もないからな。いいか! こっちから戦いに赴くのはお前の傷が治ってからだ。万全の状態になったら戦いも考慮する。それに文句があるなら、さっさと俺以外に契約してくれる他のマスターでも見つけろ」
「――わかり、ました。マスターがそう言うのでしたら」
「……そろそろいいかな? 俺とキャスターが完全に蚊帳の外におかれているようだけど」
その言葉に二人がこちらを向く。
「俺としては師匠と衛宮に賛成だけど、戦いたい、自分の本分に立ちかえりたいというセイバーの気持ちもわかる。できれば戦う意思を見せているセイバーには戦ってもらえばいいじゃないかとも思うが、マスターである衛宮が反対しているんだ。無理はさせられない。とりあえず、俺とキャスターで斥候を務めるから、その結果がわかってからまた改めて話をしよう」
俺はそれなりにセイバーの意思を尊重するような言葉を吐いた。それで話し合いは終わった。
§
時刻は夜中。眠ってはいない。この流れならセイバーは……。…………………………やはり、家を抜けだしたな。柳洞寺に行ったか。俺はキャスターの魔術でそれを感知すると。土蔵で眠る衛宮の元に行った。おし、寝ているな。瞳を閉じているから目では催眠をかけられない。だが俺には発声式の催眠がある。聴覚でとらえたらかかる、という能力なので、寝ていても一方的に催眠をかけることが可能なのだ。
「そのままずっと眠り続けろ。但し誰かに体を揺すられたら即起きるように」
これでよし。衛宮は原作のようにセイバーを追いかけることはできなくなった。それでは暗躍のターンだ。遠見の魔術で柳洞寺の下にセイバーが到着したのを見た。俺はキャスターに指示を出し、俺とキャスターを転移させる。同じく柳洞寺の下にな。もちろんセイバーに見つからないようある程度離れて、だが。
再び遠見の魔術だ。寺の階段を上がった山門付近に視点を置く。と、出てきた。キャスターがマスターとなって呼び出した偽アサシンだ。うーむ、またまたサーヴァント同士の戦いを見てしまった。マスターの中でもかなりの戦闘遭遇率だぞ、俺。
「秘剣――――燕返し」
偽アサシンが秘剣を振るう。死ぬなよ、セイバー、と。回避したな。さすがだ。
「……なるほど。確かに、手加減が許される相手ではないようだ」
セイバーが覚悟を決める。よし、このタイミングだな。俺は階段を駆け登った。上で大気が震えている。剣の仮初めの鞘として機能していた風を解き放つのだ。尋常でない風圧が上からやってくる。く、この――。
(風王結界、解除したか)
それに間に合うよう駆け出す。待っていろ、セイバー。あまりの風圧に飛ばされそうになる。キャスタ―に風除けをしてもらおう。……よし、だいぶ楽に進めるようになった。だが油断するな、ここには奴も来ているはず――。
そう思った途端に短刀が飛んできた。心構えをしていたので何とか避けられたが。やっぱりいやがったなライダー!
「こそこそと隠れていないで出てきたらどうだ!」
声を上げ、上段の二人にも存在を知らせる。と、風がやんだ。
「ここまでだ、セイバー。その秘剣、盗み見る輩がいるぞ」
着物の男――俺がキャスターに命じて呼び出させた偽アサシン――は言った。
「このまま続ければ、我らの勝負後、生き残った方に恥知らずが襲いかかる。それとも、お前の秘剣を見るだけが目的か。……どちらにせよあまり気分の良い話ではないな」
そしてそのまま階段を上り始める。
「――――待て! 決着をつけず退くつもりか、アサシンっ!」
「山門を超える輩は私が許さん。だが、生憎と私の役目はそれだけ。帰るというのであらば止める気はない。そこに隠れているたわけは別だが、な」
偽アサシンはつかつかと石段を上がっていく。
「良い場面で邪魔が入った。そなたにとっては良かったであろうがな」
「くっ――――」
セイバーはさぞかし無念だろう。だが今は飲み込んでもらわなければ困るのだ。セイバー自身、この場での戦闘は不利だと感じているのだろう。剣を下げた。
「迎えも来ているようではないか。盗み見の輩が小僧に標的を変える前に立ち去るがいい」
そして偽アサシンの姿は消える。ナイスフォロー。
「――――――」
セイバーは立ち尽くしている。まずい。俺は急いで階段を上ると、セイバーに近づいた。と、彼女を守っていた鎧が消える。無防備な青い衣だけになった彼女は倒れ込んだ。慌てて抱きとめる。セイバーは気を失っていた。
(魔力の使いすぎか。ま、当然だな)
そう思いながらも原作通り、自分の思い通りにことが進んでニヤリとする。さて、ではやりますかね。
§
俺はキャスターに命じて転移した。間桐家の目の前に。柳洞寺にいたライダーが戻ってこないうちにかたをつける。俺は絶対催眠をセイバーにかけた。
「催眠状態になれ。目覚めろ」
セイバーはぱちくりと目を開いた。だが意識はない。催眠状態だからな。次は……と。
「俺が合図したら宝具、エクスカリバーを目の前の屋敷に向けて放て」
これで準備完了。俺はセイバーの背後から腹を両手で支えるようにした。
「キャスター、この家の上空二十メートルに俺達三人を浮遊魔術で浮かせろ」
次の瞬間、俺と催眠状態のセイバーとキャスターは間桐邸の上空浮いていた。間桐家には結界も張られたりしているだろうが、神代の魔術師であるキャスターには無意味。そして上空二十メートルの地点で止まる。――よし。
「セイバー、宝具を放て」
――そう、最低の命令を下した。
「――――
上空から間桐邸に向けてセイバーの宝具が炸裂した。間桐邸が暴力的な光の渦に飲み込まれていく――。圧倒的なまでの光の斬撃。それがエクスカリバーだ。上空からの放射なので、他の人家に影響はでない、縦に深く穴が掘られるだけだ。
「セイバー、宝具をしまえ。キャスター、お前はここに残って生存者の有無を確認しろ、生きている存在がいたら問答無用で殺せ。それが終わったら衛宮家の俺の部屋に転移してこい、じゃあ俺達二人を衛宮家のセイバーの部屋に転移させろ」
一気に命令を下す。と、景色が変わってセイバーの部屋になった。俺はセイバーを布団に寝かせると、催眠状態を解除し、自分の部屋に戻った。キャスターが来るのを待つ。少し経って、キャスターが無言で部屋に現れた。
「生存者は?」
「いませんでした」
よし! よし! よし! これで間桐臓硯、間桐慎二、間桐桜は死んだ! 厄介なあの一家が死んだのだ。そのうち魔力切れでライダーも消え去るだろう。これで俺の計画は半分以上達成された、
残るサーヴァントはバーサーカーとランサーの二体、プラス八体目のあいつだけだ。ほぼ目標は達成できたようなもんだ。……いや、油断はすまい。ほんのちょっとでも気を緩めれば死ぬ。そう思っていた方がいい。
俺は衛宮を起こしに土蔵へ歩き出した。
§
衛宮と師匠、セイバーが居間にいます。あ、シャレじゃないぞ。
「――どういうことだ?」
疑問を呈す衛宮。
「――――」
下を向くセイバー。
「一番事情がわかっている俺から説明させてもらうな」
そして説明する。セイバーが屋敷を抜け出し、一人で柳洞寺に向かった。それをキャスターのおかげで察知した俺は取るものも取らず、転移でセイバーの元に駈けつけた。そしたらアサシン(偽)と戦闘しており、そこにもう一体隠れたサーヴァントがいた為戦闘は中断。戦闘の終わりに宝具を使用しかけたセイバーは一気に膨大な魔力を使おうとして、気絶した。俺はまたキャスターの転移で衛宮家に戻ったという訳だ。
「という訳だ」
間桐邸の破壊には気づいていないようなので、あちらについては何も喋らない。つーか仮に気づいていたとしても知らぬ存ぜぬで通すつもりだったけどね。きっと今頃間桐家の周辺は大騒ぎになっていることだろう。
「セイバー! お前な、自分が何をしたかわかっているのか!?」
衛宮は憤慨している。無理もないな、勝手に単独行動を取った挙句気絶して、協力関係にあるとはいえ自分以外の男に運んでもらったんだから。セイバーは当然自分の体におきた異変に気づいている。宝具を使用する寸前で気絶したのに、宝具を使用したのと同じくらい魔力が減っているんだからな。だが催眠状態と気絶にあった彼女は自分がエクスカリバーを使用した記憶がない。混乱しているのだろうな。
「わからない訳はないでしょう。私は敵の元に赴き、アサシンのサーヴァントと戦闘を行った。その際、私達の戦いを監視していた第三のサーヴァントに気づいて戦いを中断。それが私が行ったことです」
「……っ! だから、そうじゃなくて。~~!! どうして戦ったのかってことだ!!」
「……また、それですか。サーヴァントが戦うのは当たり前です。マスターこそ、何故私に戦うなと言うのですか」
混乱しているだろうに、それをおくびにも出さない。ここら辺は王様の面目躍如ってところかな。
「いや、だけど、それは――」
言葉に詰まる衛宮。セイバーに戦うなという方が矛盾しているのだ。これは衛宮に分が悪い。
「私の方こそ聞きたいですね。シロウは戦いを嫌っているようですが、生き残る気はあるのですか? 貴方の方針に従っているだけでは、他のマスターに倒されるのを待つだけではないですか」
剛毅だねぇ。これ、俺が悪いマスターだったら二人に契約破棄させて俺のサーヴァントにさせることができるんじゃないか? そう思うほど今の衛宮とセイバーは意見が合っていない。
「違うぞ。俺は戦うのを嫌ってるんじゃない。――その、女の子が傷つくのは駄目だ。そんなの男として見逃せない。だから、お前に戦わせるくらいなら、俺が自分で戦う」
その衛宮の言葉に、
「馬鹿じゃねーの?」
「なっ、私が女だから戦わせないと……!?」
俺とセイバーが同時に喋った。
「ああ、すまん。つい本音が漏れた。俺は邪魔しないからどうぞ二人で話し合ってくれ」
「……正気ですか!? サーヴァントはマスターを守護する者です。私達が戦闘で傷つくのは当然なのです。その為に呼び出されたモノにすぎない! サーヴァントに性別なぞ関係ありません。そもそも武人である私を女扱いとは何事ですか! 訂正して下さい、シロウ……!」
目つきがきついよセイバー。しかし衛宮の腐れフェミニストっぷりには辟易するな。
「誰が訂正なんてするものか! そりゃあセイバーは強いかもだけど、それでも女の子だろ! つまんないことにこだわるなバカ!」
「ワハハハッ」
笑いが漏れた。
「す、すまん。ツボった。くくく、つまんないことにこだわっているのはどっちだっつーのこの馬鹿」
「明の言う通りです。つまらないことにこだわっているのは貴方だ……! 女性に守護されるのは嫌だとでも言うつもりですか!? この身は既に英霊。性別など些末事だ!」
「些末なものかっ! ああ、もう。とにかく俺が嫌なんだ! 大体自分の代わりに戦わせるってのが間違いだったんだ。俺はそんなの――くそっ。とにかくセイバーは戦うな。喧嘩は俺の役割なんだから戦いは俺がやる。それなら文句はないだろ。セイバーの言う通り戦うって言ってるんだから」
特大の馬鹿がいた。こいつ女性の警察官とかSPとか自衛官の人を最大限侮辱してるって気づいているのかね? いや、女性差別だって立派な一つの思想だけど、こいつはそれをろくに自覚していないからたちが悪い。
「馬鹿は死んでも治らないって言うけどホントだな。ランサーに二回も殺されかけた癖に自分が戦うとか絵空事を言うなんて。悪いけどお前は全サーヴァント中最弱のキャスターにすら勝てないよ」
言う。思いっきり馬鹿にするように。
「……そんなの、やってみなくちゃわからない! あの時は何の準備もなかっただけだ。今ならやりようによっては寝首をかくことぐらいできる!」
――その時、本気でキャスターに命じさせて殺してやろうかと思った――。
いやいや、物騒な思考はやめろ。こいつは生かさないと駄目なんだ。
「笑止です。シロウの守りなど紙も同然です。貴方はサーヴァントを侮っている。人間が英霊を打倒しようなどと、何を思いあがっているのですか」
にらみ合う二人。と、師匠が口を挟んだ。
「違うわセイバー。士郎は侮っている訳じゃない。誤解しちゃうといけないから口を挟ませてもらうわね。ようするにね、そいつは純粋に貴女が傷を負うのを嫌がっているのよ。どうしてかはわからないけど」
ちらり、と衛宮に視線を送る師匠。
「ようするに、衛宮はセイバーが大切で大切でたまらないんだよ」
「っ――そ、そんなことないぞ……! 俺は別に大切なんて言ってないっ!」
照れるなよ。そこで照れると話がややこしくなる。
「嘘ね。だって貴方、自分がサーヴァントに勝てないのはわかってるんでしょ。それでも戦うって言うのは自分よりセイバーが大事ってことじゃない」
だよなぁ。
「え――――?」
セイバーが目をしばたたかせる。
「だから無理でも戦う。勝てないとわかっていながらね。その結果が自分の死でも構わないんでしょ。何故ならアンタの中では自分より他人の方が大切だから」
的確に衛宮を見抜く師匠。
「そういうことよ。わかるでしょセイバー。だから本気で、自分が戦うって言ってるの」
「――シロウ。貴方が戦うことは認めます。ですが、それならば私にも考えがある」
「な、なんだよ」
「剣の鍛錬です。私は貴方に剣を教える。それを認めるのなら、私もシロウの意見を認めます」
甘いなぁセイバーは。百本勝負して一本でも取れたら衛宮の言うことを聞く、逆に百本全部負けたら衛宮はセイバーの言うことを聞く、とかってすればいいのに。
「ちょ、ま、待て」
慌てる衛宮。
「うん、そうよ。士郎に剣を教えるなんて心の贅肉よセイバー。そんな気休めでサーヴァントに太刀打ちできる訳ないじゃない」
「それは当然です。ですが、本当の違い、戦いというものを知らないよりはマシでしょう。あとはシロウ本人の覚悟に賭けるだけですが、実戦とはそういうものです。向かない者には、何を教えても無駄です」
「ふーん、そっか」
「はい。ですからできる限りシロウには戦闘による死を体験させるのです。慣れてもらうのです」
物騒だなぁ。
「ちょ、ちょっと待て、俺はいいなんて一言も――」
「セイバーが妥協案を出したんだから文句言うなよ衛宮。それが嫌なら自分の方から妥協案を出せ。そうでないかぎりお前のそれはセイバーに自分のエゴを押しつけているだけだぞ」
「あ――う」
「私は魔術講座にしましょう。セイバーが体を鍛えるなら、私は知識を育てる。……ま、最初からそういう約束だったしね。明日から本格的にやりましょう」
「お願いします、凛」
「それじゃ今日のところは解散ってことで、みんな休もうぜ。特にセイバーはな」
「はい――あ」
ん? セイバーが少し慌ててこちらを向いた。
「明、すみません。助かりました。柳洞寺まで来てもらい。ありがとうございます」
「……気にしなくていいよセイバー。俺達は仲間だろ。セイバー一人じゃ危険と思ったから急いで駈けつけたんだ。大事がなくて良かった」
「…………ありがとうございます」
魔力がごっそりなくなっていることに気づいているだろうに、セイバーはただ、俺にそう言うのだった。
後書き
原作通りとは何だったのか()
魔力がなくなっていることに気づいているセイバー。しかし原因はわかりません。普通に考えれば気を失っている間に何かされたと思うでしょうが、助けてくれた相手にそう追求できるものではないでしょう。もしかしたら召喚の不具合に絡んでいるとでも思うかも知れません。まあそれも、間桐邸の悲劇を知るまででしょうが。
そしてやはり私にはゲス主人公しか書けないようです。ピュアボーイ? それって美味しいの?
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2月6日
あ、明日には。明日にはエロありますから、それまで待ってつかぁさい。
朝だ。また朝がやってきた。最低の殺人犯にも朝はやってくるんだな。俺はそんなことを思っていた。普通なら間桐桜がやってくる時間。しかし彼女はやって来ない。俺が殺したから。
§
普通に大騒ぎになっていた。そりゃそうだろう。隣の家とか衝撃だけでも凄いことになっているんだ。夜中の内に警察や消防が出動する大騒ぎになる。そして、
「た、大変大変! 士郎! 桜ちゃん家が――」
藤村先生が飛び込んできて、露見することとなったのである。
「――――」
衛宮は呆然としている。師匠もだ。当然だろう、友人と大切な後輩を失った衛宮。自分の妹を失った師匠。呆然として当然だ。目の前の間桐邸を見れば生存が絶望的なのは明らかだからな。
「一体何が起きたんだろうな。一番確率が高いのが、ライダーのマスターである間桐慎二を狙ったサーヴァントの仕業だろうな。マスターにこれだけのことは無理だろう。だとすると可能性があるのはバーサーカーとランサーか。俺達で三体、アサシンはセイバーと戦闘を行って柳洞寺にいた。ライダーは間桐邸にいてやられた。残るはバーサーカーとランサーだ。しかしあのサーヴァント達にこれだけの破壊を一瞬で行えるかと言うと……」
俺はしれっとそんなことを口に出す。
「なんで――なんで」
呟く師匠。
「…………」
無言で顔色をなくし、怒りにまみれている衛宮。サーヴァントの仕業だとしたら、マスターでも魔術師でもない(と思い込んでいる)桜が殺されたことに憤っているのだろう。正しい反応だよ。
「セイバーはどう思う?」
俺は衛宮の護衛として一緒に来ていた。セイバーに話を振ってみる。
「……………………」
こちらも呆然としている。恐らく目の前にある破壊の爪跡と、自分の減っている魔力から最悪の想像をしているのだろう。そしてそれは当たっている。
「………………………………明、私は…………」
「ん?」
何も知りませんよーという顔で聞き返す。
「私に、何か……何か、しましたか?」
「? 質問の意図がよくわからないな。なんでセイバーに何かしたかって話になっているんだ?」
「それは……」
魔力が減っているから、とは言いにくいのだろう。減ったのは偽アサシンとの戦いで宝具を解放しようとして気絶した後だから、何かされたとしたらその時だ。しかも体を運んだのはキャスター。絡め手を得意とする魔術師のサーヴァントだ。だが俺達は仲間としての善意でセイバーを助けた、はずなのだ。追求しにくいのだろう。
「…………実は、昨日、アサシンの前で宝具を使用して、気を失った後に気づいた時、自分の魔力が大幅に減っていることに気づいたのです」
「魔力が減っている。そりゃあ、宝具を使用したんならそれが原因じゃないか?」
「違うのです。私――私は、宝具を使用していません。その直前で止めたのです。だから魔力が失われるはずがないのです」
「ふーむ、そりゃつまり、気絶している間そばにいた俺とキャスターを疑っているって訳かい?」
そう言うとセイバーは落ち着かない雰囲気になった。
「すみません。私も疑いたくはないのです。しかし他に思いつく可能性がありません」
「うーん、そう言われてもなぁ。俺が知る限りキャスターに他人の――特にサーヴァントの――魔力を奪う魔術なんてないぞ。キャスターって言っても万能じゃないんだ。使える魔術と使えない魔術がある。そして俺だけど………………うん、セイバーにならいいか。俺の魔術の起源、方向性だけど、『譲渡』なんだよ」
俺の秘密をちょっとだけ話す。
「譲渡、ですか」
「うん。自分の魔力を他人に分け与えること、それが俺の起源。だから戦争前に師匠とパスを繋いだりしたしね。……とにかく、そういうことだから、俺は人にあげるの専門なんだよ。人から魔力を奪う魔術なんて習得してない」
キャスターや師匠に魔力をあげたいからこの起源にしたのだ。
「…………そう、ですか」
「セイバーが魔力を失ったってんならそれは大問題だな。でもそれはそれとして、目の前のこれも大問題だよ。こんな一般人が大勢いる街中で、恐らく魔術でこれだけの破壊を行った奴、とても許されることじゃない。特に、後輩を、恐らくだけど殺された衛宮と師匠はショックだろうな。俺はそこまで間桐と親しかった訳じゃないから、そんなにショックではないけどさ。……一般人に被害が出ていたら、俺ももっと義憤にかられていただろうけど、殺されたのはマスターと魔術師の家だからなぁ」
「違うっ!! 桜はっ、桜は違うんだ!!」
拳を握り締めて大声を張り上げる衛宮。俺の声が聞こえたのだろう。ここで落ち着けとか言ったらぶん殴られるだろうなぁ。
「間桐桜は違ったのか!? だったら、一般人に犠牲が出たってことか……」
「桜は――桜は魔術とは関係ない。かんけい、ないんだ…………」
そう言って崩れ落ちる衛宮。俺は肩を貸してやった。
「とりあえず、引き上げよう。ここで俺達にできることは何もない。ホントは魔術の痕跡とかを調べたいけど、警察や消防がわんさかいるところでそれはできない。監督役の言峰さんにでも調査は任せよう」
そう言って、引き上げた。
§
俺が作った食事をもくもくと食べるセイバー。さすがに空気が重いことはわかっているようだ。
「衛宮、師匠、食べないともたないぞ。それに放置していたら痛む。とりあえず今は無理にでも体を動かして食べてくれ」
朝食の用意をしている時に藤村先生が来たから、料理は完成していなかったのだ。それを俺が引き継いで作った。
「…………」
「…………」
のろのろ、と体を動かす二人。良かった。食べてくれるようだな。しかし、
「すまないなセイバー。しばらくは俺が食事を作ることになりそうだ」
「? 何故、謝るのですか?」
「俺の料理の腕なんてこの二人には遠く及ばないんだよ。だから、まずい飯を食わせてごめんってことだ」
「そんなことはありません。この食事はとても美味しい」
「それは、この朝食の準備をしたのが衛宮だからだよ。昼食からは俺が一から作ることになるからきっとグレードダウンするぞ」
学校? とても行ける状態じゃないので、藤村先生に伝えて休ませてもらった。
「それでも構いません。食べられるのであれば」
……さいですか。さすが腹ペコ王。
「ところで、さっき言っていた魔力を大幅に失ったって話だけど」
その話題を振るとあからさまに憂鬱な表情になった。きっと自分の失われた魔力と間桐邸お惨状から、あれはもしかして自分が関係しているのでは? ……いや、自分は気を失っていたのだからそんなはずはない! しかしキャスターが……しかし明は何もやってないと……。って感じに葛藤しているのだろう。だが彼女が真実に辿り着くことはない。実はさっきの会話の時に目を合わせて、俺の言葉はできる限り信じろ! と命じておいたからな。
「それが本当だとしたら厄介な話だな。……単刀直入に聞くけど、戦闘の方はどうなんだ。バーサーカーと打ち合えたり、宝具をもう一回使用したりできるのか?」
「………………今の状態では、とてもあのバーサーカーとは打ち合えません。宝具も、もう一回すら使用できないでしょう」
正確に自分の現状を話すセイバー。ある程度は信用されてきたみたいだ。
「そっか、なら、あの手を実行に移すしかないかもな」
「あの手?」
「セイバーの魔力を回復させる手段だよ」
「――! そ、そんなものがあるのですか!?」
意気込んでくるセイバー。
「ああ、まあ確率で言えば100%成功する確実かつ安全な手段だよ。だけど詳しい話は二人がショックから立ち直ってからにしてくれないか?」
「……わかりました」
もそもそと食べている二人を間において、俺達はそんな会話を交わしていた。
§
剣道場で正座する。衛宮家の道場だ。これから昨日の夜話したセイバーと衛宮の鍛錬が始まる。セイバーの方が渋ったが、
「いつまでも落ち込んでいる暇はないだろ。ランサーかバーサーカーか、どっちかわからないがあんなことを行うサーヴァントとマスターがいるってわかったんだ。聖杯戦争の途中なんだ、一日だって無駄にできないだろ」
と言って納得させた。まだぼーっとしている衛宮は無理矢理立たせた移動させた。俺がやっておいてなんだが、一人の死で全ての活動を止める訳にはいかない。まずは打倒バーサーカーである。
俺は準備の為の雑巾がけを行った。そして、試合が、始まった。
一方的に衛宮がボコられてるだけです。本当にありがとうございました! 見ているだけでも体が痛くなるような試合が繰り広げられた。
「……これぐらいでいいでしょう。今のシロウには酷というものです」
「確かにな。これ以上やっても結果は変わらないだろうから。そんで、衛宮さんよ。サーヴァントと打ち合って何かわかったかい?」
衛宮はぜはぜは言いながら道場に倒れ込んでいる。
「…………敵わない奴には絶対に敵わない、ってことがわかった」
「そうかそうか、それは良かったな。これに懲りたらサーヴァントに勝てるとか赤ん坊の産毛ほども思うんじゃねーぞ」
そう言いながら汗を拭ってやる。男の汗なんか拭いたくないが、セイバーにやらせるのもそれはそれで嫌だ。目の前でイチャラブなんて見せられてたまるか。
正午になったので鍛錬を中止する。衛宮は自分を取り戻しつつあるようで、材料を買いに行くと言い出した。良かった。まだ完全ではないだろうし、これからも悪夢にうなされたりはあるかもしれないが、立ち直る兆候が見えて。いつまでも沈んでいるようだったら催眠で強制的に躁状態にでもしてやろうかと思っていたのだ。それ以外にも、今日の昼は奴に外出して貰う必要があった。今日の昼はイリヤと出会う日なのだ。誰にも邪魔されず、できうる限り一般人に被害が出ないようにバーサーカーと戦うといったら、やはりアインツベルンの城がいいだろう。だからイリヤ関係についても原作通りにさせる予定である。
「師匠。今大丈夫か」
「……明……」
俺は師匠の部屋を訪れていた。午前中はセイバーとの鍛錬、午後は師匠との魔術講座と分けていたのだ。なので、午前中は部屋に入れて盛大に落ち込ませていたという訳。
「午後から、昨夜言っていた衛宮への魔術講座をしてもらう予定だけど……大丈夫か」
「ごめん。今ちょっと落ちてるわ。午後の講座までにはなんとか持ちなおすから」
さすが、強い。
「本当に無理だったら無理って言っていいんだぞ? ……それにしても、師匠がそんなに間桐桜と仲がいいとは思わなかったな」
彼女の弟子であるだけの俺は、桜が師匠の実の妹だとは知らないのだ。ゆえにそのように対応しなければならない。
「桜は……桜はね……」
まさか、言うのか?
「…………ごめん。なんでもない」
「……そうか」
とりあえず。魔術講座をやらせてみよう。後は様子を見て催眠をかけるかどうか決めよう。
§
衛宮は首尾良くイリヤと会ってきたらしい。何かあったか、と聞くとあからさまに目を泳がせやがった。昼食を衛宮が作り、四人で食べる。そして午後から魔術講座が始まった。俺は邪魔にならないよう居間でまったりとTVを見ていた。セイバーは魔力が目減りしないように寝ている。ちなみにお風呂でばったりは起こらなかった。衛宮が買い物に出ている間にセイバーが風呂を使ったからだ。
夜になり夕食も作ってもらい食べる。どうやらルーチンをこなすことで本来の自分を取り戻そうとしているらしい。食事が終わり、藤村先生が帰ったので魔術の話をする。藤村先生は衛宮を慰めていたな。
「……それで、魔術講座はどんな感じだったんだ?」
「基本的なことを教えただけよ。思ったより士郎が素人だったからね。明日は念入りに準備してやるつもり」
「…………」
衛宮は戦々恐々としている。しかし誰も間桐のことは話さない。どうやらタブーになったようだ。恐らくバーサーカーとランサーに対峙した時にでも聞くことにはなるだろうがな。しかし真相は闇の中だ。
夜になると、なんとか回復したアーチャーが衛宮家を訪れた。衛宮にアドバイスなんだか皮肉なんだかわからないことを言って、屋根の上に移動し見張りを行ってくれた。まあ攻めてくる勢力なんて無……いや、いた。一人だけ、八人目のあいつが。あいつの行動だけは読めないからな。せいぜい油断しないでいよう。
それはそれとして、やはり二人には桜(慎二)の死は大ダメージになったようだ。師匠はたった一人残った家族を失ったのだ。衛宮は後輩を、そして正義の味方という自分の理想を守れなかった。後者は特に効くだろうな。あいつぶっ壊れ正義マンだから。目の前の、助けたいと思う相手こそを助けられなかった。それはあいつにとってどれだけの衝撃なのだろうか。そんなことを思いつつ、床についた。
後書き
本編中に書いているように、桜と慎二の死は士郎にとってこの上ないダメージになったでしょう。しかしそれを詳しく描写するつもりはありません。このSSはあくまで主人公の物語ですからね。
お風呂でばったりイベント。何故か昔から苦手です。特に男の方に嫌悪感を抱きます。なのでこのSSではさせませんでした。
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☆2月7日 ~ 2月8日(セイバー)
やっとエロ。(独自設定あり)
「悪い、藤ねえ。俺、しばらくの間、学校を休むよ」
朝食の後、出勤する藤村先生に衛宮がそう言った。一日遅れだけど原作通りだな。衛宮はやらなければならないことがある、と言って先生を説得している。不器用だなぁ。桜のことを持ち出せばもっと楽に説得できるだろうに、それを
「桜のことは関係ない。いや、少しは関係あるけど、これは俺自身の問題なんだ。しばらく学校には行けない」
多分、桜を殺した奴含め、一般人に犠牲を出すようなマスターを許さない。その為にもセイバーとの戦闘訓練を頑張らねば、とでも思っているのだろう。
「……わかった。昔から士郎は言い出したら聞かないからね。その代わりズル休みなんだからその辺を出歩いたりしないこと」
藤村先生はそう言って先に出た。
「……わたしは行くわ。いつまでも休んでいられない。今日はうちにも寄りたいし。遅くなるかもだけど、夕飯までには戻るわ。留守中に軽率なことはしないでね」
そう言って師匠も登校する。さすが遠坂の魔術師だ。一日で精神を立て直したらしい。
「んじゃ俺も行ってくるよ。セイバーがいるから敵襲があっても大丈夫だと思うけど、くれぐれも気をつけて」
俺は学校を休む理由がないので普通に登校だ。
§
「――結界が消えてる」
「ん。確かに。つまりこれは間桐邸にいたライダーが犯人だったってことかな」
「早計な判断は危険だけど、そう思ってもいいんじゃないかしら」
学校の結界は綺麗さっぱり消えていた。当然だな。結界を張っていたライダーを俺が殺したのだから。直接手を下したのは催眠状態のセイバーだが、殺したのは俺だ。その意識だけは殺人犯として最低限持っておかなければならない。これで学校のマスターは俺達三人だけになった。もう登校中に戦闘になることはないだろうな。と、油断は禁物、禁物である。
昼時になった。飯をむしゃむしゃと食べる。今頃衛宮はどうしているだろうか。俺の記憶が正しければ、選択肢でイリヤと会うかどうか決まるはずだが。まあ昼間のイリヤは心配いらない。……ま、それに最悪衛宮が殺されても、数時間以内に俺がセイバーと契約すればすむ話だ。セイバーも衛宮を大事にしているだろうが、殺されてしまっては聖杯が手に入らない。俺との再契約も承諾してくれるだろう。原作通りならそうはならないだろうが、「全てが原作通りになる」なんて甘い考えは抱かない。衛宮がイリヤに殺されたりすることも、イレギュラーの一つとして行動計画表に記載ずみよ。
午後になり、衛宮邸に帰るのだが、今日は柳洞一成が家に寄るはずだ。少し時間をおいてから帰ろう。俺は商店街でカニクリームコロッケなぞをつまみぐいし、帰宅するのだった。
夕飯の準備を衛宮がする間、ぼけーっとTVを眺める。特に興味を引くようなニュースはやっていないな。事件・事故も起きていない。いいことだ。そうしていたら藤村先生も来た。
「ただいま。お、晩御飯作ってるのね士郎。えらいえらい」
この人は元気だなあ。すぱーんと座布団に座る藤村先生。いつもこんな調子の人といて衛宮は疲れないのだろうか? 藤村先生もショックを受けているだろうに。さすがFateの良心、半端な精神ではないぜ。頑張っていつも通りに振る舞おうとしているのだな。
夕飯の席、帰って来た師匠と一緒に夕飯をつつく。
「それには間違ってもマヨネーズなんてかけちゃ駄目だぞセイバー」
「そうですか」
藤村先生、よくあんなにマヨネーズをかけられるもんだ。味覚も激烈かぁ?
さて、夕飯も終わって魔術講座の時間である。しかし俺にはやることなどない。先ほどと同じくぼへーっとTVを見るだけだ。セイバーも一緒だが。「衛宮が寝るまで起きている」とのこと。正しく忠節の人だなぁ。ということを言ってあげたら、
「これくらい当然のことです。感嘆するにはあたりません」
バッサリ。さすがのセイバーである。今頃衛宮は物凄く基本的な間違いを正されているところだろう。頑張れ主人公。俺は応援しているぞ。TVを見てお茶をすすりながらね。
「駄目、すっごく駄目。あいつ才能ないわ」
――以上、セイバーに概要を聞かれた師匠の所感でした。
今夜もアーチャーによる衛宮への皮肉が炸裂することだろう。魔術で覗いちゃれ。
そんなことをしながら、また一日消費した。
§
2月8日の朝。聖杯戦争が始まってから大体一週間が経過する。脱落はライダーだけだ。そして俺は全てのサーヴァントと接触済み。後一週間もあれば片はつくかな? まあのんびりしよう。原作ならここら辺はライダー戦で手一杯だからな。そのライダーが消えたのだ。余裕も生まれようというものよ。
衛宮が魔術のスイッチを入れられっぱなしで寝過ごすことを知っていたので、朝食の簡単な下ごしらえだけしておいた。師匠は基本的に朝食べない人間だから平気だろうが、俺はそうはいかないので準備しておいたのだ。
「アンタって、こういう細かいとこにばっか気がつくのよね」
うるさいぞ師匠。と、衛宮がやってきたので後を引き継いでもらう。
「悪い佐藤。助かった」
「構わんよ」
鷹揚に頷く。朝食は俺と藤村先生とセイバーにとって大事なことだからな。
原作と違うことが発生した。といっても大きなことではない。原作で師匠も学校を休み始めるのが今日なのだが、この世界では休まなかったのだ。一体何が影響したんだろう? まあ大勢に影響はないと思うから大丈夫だろうけど。
で、今日は原作なら間桐が衛宮を学校に呼び出す日だ。学校で結界が発動したりライダーが宝具を使ったりする日でもある。だがこの世界では両者とも死んでいるのでそれは起きない。普通に学校で過ごし普通に学校から帰ってきた。その際師匠に一つ催眠をかけさせてもらったが。
「大事な話がある」
夕食が終わって四人(霊体化が一人)でいる時に切り出した。
「大事な話……なんだ? 佐藤」
「セイバーの魔力についてだ」
そう、今まで棚上げしていたその問題に触れた。
「…………っ」
忸怩たる思いなのだろう。無言でうつむくセイバー。既に彼女の魔力が謎の減少をしたということはみな知っている。
「…………なんでかわからないけどセイバーの魔力が減っていたってことね。――確認するけど、明。アンタホントに何もしてないんでしょうね」
微妙に疑いの目を向けてくる師匠。そりゃあ疑われるよな。もし俺がサーヴァントなら令呪を使われて、真偽を告白して無罪を証明する場面なんだろうな。
「――潔白を主張するよ。師匠、衛宮、セイバー。あの夜俺は柳洞寺に特攻したセイバーを連れて、キャスターの転移魔術で家に連れてきて運んだ。それしかしていないよ」
「…………」
場に沈黙が下りる。限りなく怪しいが証明する手段はないからな。三人にはどうしようもなかろう。最終手段として魔術による催眠で俺の意識を催眠状態にして聞き出すという手がある。だがそれにも絶対催眠を自分にかけて対策済みだ。もし魔術をかけられても俺が間桐家を襲撃したとは告白しないようにしてある。だがその心配は杞憂だったようだ。弟子であり同盟相手である俺に魔術は使わないらしい。二人とも甘いねぇ。
「で、俺を疑うならそれでもいいよ。けど、それより今はセイバーの魔力だ。この同盟の中でアタッカーを務める彼女の魔力が底をつきそうなんだ。これは俺達の同盟にとって大問題だぜ」
「……セイバー、ホントに平気なのか?」
「……………………はい。戦闘には耐えられませんが、食事で少しだけ補給するのと、眠って魔力の消費を押さえていることで、こうして現界していることは、この身を保持していることは可能です。ですが、明が言う魔力を補充する方法があるなら是非お願いしたい」
はぁ。とため息をつく師匠。
「なんだ、どうしたんだよ遠坂?」
「……いえ、なんでもないわ。ちょっと眩暈がしただけ」
「?」
師匠は気づいているし、「そうなること」を容認するように催眠をかけたから静かに認めてくれている。
「とにかく、セイバーの魔力を補給するあてが俺にはあるんだ。ただ、これはちょっと厄介な方法だから、本人であるセイバーとマスターである衛宮に許可をとりたい」
「……? なんだかよくわからないけど、セイバーの魔力を補充する方法があるんだろ? 佐藤にそれができるっていうなら俺もセイバーと同じ気持ちだ」
……今は賛成してくれていても、実際にその内容を知ったら激怒するんだろうなぁ。
「ってことは賛成してくれるんだな。……はぁ、しかしホントに厄介な方法なんだよこれが、師匠はそれに気づいているから眩暈がした、なんて言ったんだ」
俺は覚悟を決めてその内容を話す。
「簡単なことだよ。衛宮とセイバーの間には、本来通っているべきパスが通っていないんだ。召喚に不手際があった影響だろうな。魔力を補充するってのはつまりそういうことだよ。『俺が』セイバーに魔力を与えればいい。それで問題は解決だ」
「佐藤が魔力を与えるのか?」
「抱くのよ。明が、セイバーをね」
師匠の言葉で、瞬間、空気が凍った。
「――は?」
まあ予想通りの反応である。
「だからな衛宮。性交、セックスだよ。魔力量が多くて譲渡の魔術師である俺がセイバーを抱くんだ」
「――――」
固まってる固まってる。
「セイバー、君は女の子で俺は男だ。だから簡単にできる。とはいえ本人の意思が最優先だ。どうだ? 君は俺に身を預けてくれるか?」
セイバーはわずかに赤面している。
「ちょっと待て! そんな……っ!」
「悪いけど衛宮くん。他に選択肢はないわ。これが最も効率のいい方法よ。明の魔力量は桁違いでね、私の二倍近くの魔力量なの。しかもこいつの魔術起源は譲渡。無駄なロスなく相手に魔力を送ることができるわ」
「っだから! ちょっと待てって! そんな、そんな方法認められるか!!」
往生際が悪いな衛宮。
「最初は衛宮に行ってもらおうかとも思ったがね、俺と衛宮じゃ魔力量が違いすぎる」
「衛宮くん。これは効率の問題よ。貴方がセイバーを抱いても、魔力は回復するわ。魔術師の精は魔力の塊だしね。でも、貴方が十回セイバーを抱くより、明が一回セイバーを抱いた方が魔力を回復できるとしたら? 貴方、食事以外の時間も使ってセイバーを抱きまくるような生活を送りたい? そうでもしなきゃ貴方じゃ明の魔力量に敵わないわ。そんな真似がしたいの? セイバー、貴方はどう?」
「私は……」
「駄目だっ! そんなこと!」
衛宮は興奮して反対してくる。やっぱ駄目か。
「――私は、構いません。シロウ」
爆弾が投下された。
「なっ――――」
絶句する衛宮。まあ当然だわな。
「いいんだな? セイバー」
「はい。覚悟などとうに決まっています。それが最良の手段だというなら選ぶだけです」
そんな、と呟く衛宮。彼にとっては手酷い裏切りのようなものだ。しかし――。
「わかった。じゃあ早速今夜からしよう。セイバー」
「じゃあ決まりね」
「ちょっと待てセイバー! おまえ、本当にそれでいいのか!?」
「何をためらうことがあるのですか。それを行えば魔力を補充できるのです。それとも、他に方法があるのですか?」
それは、と目に見えて勢いが落ち込む。
「――やっぱり駄目だ。セイバーは女の子なんだぞ。そんな方法、俺が許さない」
「往生際が悪いわよ衛宮くん。大体今こんなことになってるのは、貴方が不完全な召喚をしたからじゃない。魔力を送ることができない貴方は黙っていなさい。本人が了承したことよ」
師匠はどこまでも合理的だ。
「衛宮。悪いが諦めてくれ。これが一番の方法なんだ。それとも、他に魔力を回復できるあてでもあるのか? ――ああ、セイバーに人を襲わせて魔力を奪うって方法があるな。でもそんなの高潔なセイバーは絶対了承しないだろうな。それとも令呪でも使ってみるか? 俺と性交してはならない、とか人を襲って魔力を奪えとか」
「そんなこと……だけどっ!」
「シロウ。やめて下さい。私は一振りの剣。性別など関係ないと何度言えばわかるのですか。――貴方のそれは無用な感傷だ。」
ぐ、と詰まる衛宮。そしてとどめの一振りが下ろされた。
「――正直、迷惑です」
うわぁ。今のは効いただろうな。迷惑ですときたもんだ。
「――ああそうかよっ! 勝手にしろっっ!!!」
衛宮は怒りにまかせて部屋を出ていった。土蔵にでもこもるのだろう。
「……はぁ。こうなるのは予想してたけど、やっぱり気分のいいものじゃないわね」
「だな。すまないセイバー。俺の提案で君とマスターに仲たがいをさせてしまった」
「気遣いは無用です明。貴方が魔力を回復してくれるというなら、それで戦えるというなら私に否やはありません」
こちらもどこまでも冷静に徹しようとしている。
「わかった。それじゃ師匠、俺達は俺の部屋に行くよ」
「了解。優しくしてやんなさいよ、明」
そうして、決まった。
§
服を脱がせる。着衣の上から感じさせられるほど俺にテクはない。
「セイバー」
その体を抱きしめる。ぎゅっと。
「ホントに、悪かったな。これで衛宮と君に亀裂が走りでもしたら、全ておじゃんだ」
「……気にしないで下さい。生き残る為です」
そう言いながらも、セイバーはうなじを赤く染めている。
「わかった。なら俺ももう気にしない。……あいつのことは、今だけ忘れてくれ――」
言って、唇を重ねる。師匠もキャスターも衛宮もいない。ここにいるのは俺達二人だけだ。
「ん……」
セイバーの鼻息があたる。くすぐったさは興奮に消し去られた。今からこの可愛い女の子を抱くのだ。本当は部屋に着いたときから興奮しっぱなしだった。
「ン……ふぅ」
「はぁ……そう言えば、聞いていなかったな。セイバー、君、経験は?」
「…………女の身では、一度もありません」
「女の身では?」
「いえ、なんでもありません」
確か、王のお役目(夜)を果たす為に魔法で男になったんだっけか。
「セイバー。俺は、セイバーのことが好きだ。前から、好きだった。セイバーは俺のこと嫌いか?」
「え……。わ、私は、貴方のことは、嫌いではありません。むしろ、少しだけ好ましいと思っています」
それはきっと、まだ好意とも呼べないものだろう。だがそれでもいい。
「そっか、なら俺達は両思いだな。……ちゅ」
「そんな……んちゅっ……ゃ……ん……」
裸で抱き合い、キスをする俺達。
「こうしていると、恋人同士みたいでドキドキする……」
「こっ、こいびと、など……わたしは……」
「セイバー、好きだ……好きだぞ……」
優しく後頭部を撫でる。そしてキス。どこまでも優しく。セイバーの息が乱れる。少しは興奮しているのだろうか? なら嬉しいな。
「セイバー……俺。君を助けるとかそういう機械的な気持ちでは抱きたくない。ちゃんと、好きな女の子として、真正面から抱きたい」
「そんな……ン……ふちゅ」
慣れていないセイバーの為に、俺は優しく愛撫を開始した。
「明……」
セイバーが俺の名を呼ぶ。それが嬉しくて俺も、セイバー、セイバーと繰り返す。
「……あ、ん……つぷっ……ちゅ……あまい……」
俺の唾液を飲むセイバー。愛おしさが全身に広がる。舌を入れ、ざらつくそれを絡めた。
「んむ! ……つ……ちゅっ……」
「ん……セイバーも、舌、出して……」
「……は、い……あ……んちゅ」
ぬちゃぬちゃと舌が絡まる音がする。それだけで俺は既に臨戦体勢になっていた。手を、なだらかな丘に這わせる。セイバーの、胸。
「柔らかい……セイバー」
全身で求めたかった。左手でセイバーの背中を抱き寄せる。
「あ……」
セイバーが少しだけ反応を返した。それを受け止め、さわさわと触っていく。
「セイバーの胸……ふにふにして気持ちいい……」
「やっ……言わないで、下さい……明……」
「嫌だ。もっといっぱい言いたい。セイバーの体、凄く綺麗で可愛くて……興奮する」
「うぅ……」
恥ずかしがるセイバーも可愛かった。手を下にもっていく。
「あっ、だめ、ダメです明……そこは――」
「そこは何だって? ちゃんと言わないと聞いてやらないぞ、セイバー」
「ぅ……いじわる、しないでください……」
なんて可愛いんだろう。
「可愛いな……セイバーは。ぷちゅっ」
「んちゅぅ……私は、可愛くなどありません……」
「俺にとっては最高に可愛いんだよ。セイバー、もっと体の力を抜いて……俺に任せてくれ」
「はぁ……ふぅ……はい……」
セイバーのそこに触れる。熱をもっている。
「う、あ……指、が……はぅっ……あ、ん……」
潜り込ませていた。指を。傷つけないように丁寧に愛撫する。すると、セイバーはすぐに液を漏らし始めた。
くちゅっ……。
部屋に淫らな音が響く。
「やぁっ……」
わずかだが、滴ったものが太ももを伝う。その滴を追いかけて、手を伸ばす。太ももの内側も撫でる。
「あ……。優しいのですね。明」
(ん? 弱すぎたか?)
その声に俺は少しばかり力を込めた指先で中を探る。
「は……う、明……私に気遣いは無用です……もう、して下さい……」
「ダメだ。セイバーのここ、まだ全然濡れてないじゃないか。今入れたら痛いだろ。俺は、好きなセイバーに優しくしてやりたいんだ。感じて、欲しいんだ」
「そ……んな……はぷっ」
くちゅりくちゅりと秘穴を弄ぶ。やはりまだ早い。これではお互い痛みしか感じないだろう。俺はもっとセイバーを感じさせるべく全身を使った。
「ちゅぷ……れろ……れろ……ちゅぱっ……ちゅぅう」
「ん……明……」
彼女の腕が、俺の背中に回された。俺を信頼してくれたようで嬉しい。
「セイバー、っちゅゆぅ……ぺろぺろ……もっと……してあげるな……」
「ぁ……は……ん……い、いです……私は、痛みには慣れています……明のそれを……」
「ダメだ。もっと感じさせてやる」
セイバーの願いを切り捨てる。もっと気分を出してしたかった。愛し合う恋人のように。
「セイバーのこと、好きだから……痛くなんてさせたくない……大切にしたいんだ」
セイバーの顔が羞恥に染まる。
「明……どうして……そんなに……」
「セイバーが好きかって? こんな可愛い女の子なら誰でも好きになるよ……でも、誰にも渡したくないけどな……ちゅ、ふ……」
俺も大概独占欲が強かったらしい。誰にもこの体を触れさせたくない。
「んんぅ……そんな……」
「指、強くするぞ」
宣言して触り始める。はっきりと刺激させるように。
「はぁあ……ンあっ……」
中で指を折り曲げる。セイバーの感じるところを探り当てたい。
「あ……ふかい……そこ……だめです……明」
「ダメじゃないぞ。セイバー。もっともっとしてやるんだからな」
「あ、ん……く、はっ……」
ちゅぷ……ちゅぷ……。
既に陰唇の周りが濡れるほど滴っていた。それをかき混ぜて秘部を触る。
「セイバー」
体を抱き寄せ、ベッドに押し倒した。寝転がったセイバーの胸に左手を、アソコに右手を伸ばす。柔らかな膨らみ、ぐにぐにと揉み、先端に口付けた。
「ちゅ……れろ……ちゅう……ん……セイバーの胸、美味しい……」
「――な、何を……!」
「れろれろれろ……ちゅうううう」
先っぽを強く吸う。
「はぁん……っ、や、ふぁっ……」
セイバーの息が乱れてきた。
「は、あふぅ……胸、そんな……そんなに……だめ、です……」
起き上がろうとする体を手と頭で押さえつける。
「セイバー、暴れないで。痛くしないから」
「痛くは……けど、だめです……」
「どうして? どうしてダメなんだ?」
「そ、れは……」
感じるから、とは答えられないのだろう。セイバーの体は着実に熱を帯び始めていた。
「ん……ふぁ……あ、あ、あ……っ」
うめき声を上げるセイバー。駄目だ。まだ喘いでいない。
「俺から言おうか? 感じるから、気持ちいいから駄目なんだろう? セイバー」
「そんな……いや……言わないで……私、違います……」
セイバーのお腹が汗ばむ。筋肉もしっかりついているセイバーの体。だけどしなやかですべすべだ。
「は……や、だ……嫌です……明ぁ」
「セイバーのここは嫌だって言ってないよ」
そう言ってくちゅくちゅとアソコを弄ぶ。
「嘘ついちゃ駄目だぞセイバー。ホントはもう気持ちいいんだろ?」
「ちがう……ちがいます……」
ぶんぶんと頭を振る様が可愛い。俺はもうセイバーにメロメロになっていた。
「明……貴方、は……」
「乳首、勃ってきたぞ、もっと舐めてあげるからな……ちゅばっ、ちゅばばっ」
「はゥん! ……あう……はあ……明……だめです……ほんとにだめ……」
「ちゅうぱっ……ちゅる……じゅりゅりゅう……じゅぶ……」
執拗に胸を責めつつ、アソコをいじる手も休めない。快感に身悶えるセイバーをもっと追い詰めてやりたかった。
「ふぁ……ッ。や、はぁ……や、め――っ」
ぐちゅ、ぐちゅ……。
粘っこい粘着質な音に変わった。感じやすい方なのかな。手のひら全体と手首まで愛液に濡れている。
「うん……だいぶ濡れてきたな、セイバー」
「はぅ……明、だめです……それ以上奥は……」
「わかっている、するのは俺のモノでするから、それまで奥はおあずけだ」
トロトロに濡れたセイバーの秘穴に指を二本入れる。温かく濡れた膣壁をなぞる。
「あっ! んぅっ! は、はっ……はっ……だめ」
だめ、だめと繰り返すセイバー。愛おしくなって。口を塞ぐ。
「ホントはもっとして欲しいのに、駄目だなんて嘘を。悪い子だな、セイバーは……ん」
「ちゅ……れる……ちゅうっ……や……嘘じゃ……あん……」
俺はセイバーの目の前に右手を差し出した。
「あ、あアっ!」
「ほうら、セイバー、もうぐしょぐしょだ」
「そんな――私、違う……違います……明……私は」
「違わない。セイバーはエッチな女の子だよ。だけど恥ずかしがらなくていいぞ。俺はエッチなセイバーが大好きだ……っちゅぅ」
「んふ……ちゅ……ちゅ……あ、ひあ……だめ、いじめないで、ください……」
「ふふ、もっともっといじめてやるよ、セイバー」
限界が近いようだ。
「は……や……あぅ……ッ! んふぅ……はぁ……はぁ……あきら……もう、わたし――」
「ん……もう……イキそうか? セイバー」
「いや……イクなんて……だめ……はっ……はっ……」
「イって、セイバー。俺の手で、イってくれ――」
ぐちゅりぐちゅり。
膣に入れた二本指をかき回す。イケ、イケっ。
「あ、あ、あ……ああああっっ!!!!」
セイバーはビクンビクンと体を波立たせた。
「…………あ……は……わた、し……」
「ん、イったんだな、セイバー。可愛かったぞ……」
両腕で体を抱きしめてやる。
「は……そん、な……ああ、あああ……」
俺はセイバーの太ももの下に両膝をいれ、股間を近づけた。
「セイバー、入れる、ぞ」
「あ……はぁ……はぁ……する、のですね……明」
「ああ、セイバーのここに、俺のモノを入れるんだ……さっきからずっとセイバーに欲情していたんだ。見てた、だろ?」
「ああ、明が……私で……」
「そう、セイバーで興奮したんだ」
「はぁぁ……………………きて、下さい……明」
「――!!」
それで理性が飛んだ。あのセイバーが俺を求めていてくれる。怒張は完全に張り詰めていて、だらだらと汁をこぼしている。
ぐ、ぐぐっ。
「セイバー、痛いかも知れないけど、少しだけ、我慢してくれ――」
「はっ……はっ……平気、です……明の、したいように……」
ぐぐぐっ。
「あ、うぅっ」
余りの温かさにうめき声が漏れる。先っぽが気持ちいい……。今にも暴発しそうだっ。
ずぬぬぬぬっ。
「あ、明……私の、中に……」
ゆっくりと挿入していく。濡れた柔肉はしっかりとほぐれて、俺のモノを迎え入れてくれた。
「あ・あ・あああっ」
ぶ……ちぃっ。
「――――!!!」
破った。セイバーの、膜を。そのとたん、先ほどまでの柔らかさが嘘のように、きつく、ぎゅっと肉棒を締めつけてきた――。
「あき、ら――は、や、あ――!」
接合部に目をやると、確かに破瓜の証しである赤いものが垂れてきていた。
「ぜん、ぶ、入った。セイバーの、初めて、もらったぞ……」
「は……あ……私の……初めて……」
我慢できなくなり、唇を吸った。愛おしかった。抱きしめたかった。
「あきら……」
「セイバー……」
俺達はしばらくの間、はぁはぁと息を荒げながらもそのままの体勢でいた。
「あ、明……私は、慣れて、ますから……動いて、下さい……」
「……あまり、セイバーを痛い目に合わせたくないんだ。セイバーの頼みでも聞けない」
「わたし、私なら……いいんです」
「良くない。女の子の初めてなんだから、大切にしてやりたいんだ。そ、それに……俺も……動くと、出そうなんだ……」
「で、る……なら、出して下さい……貴方の、精を……お願いします……」
「嫌、だ……。大好きな、セイバーの中にもっといたい……感じてたいんだ……セイバーを」
「そ、そんな……」
精を放ち魔力を譲渡する行為なのに、俺はそれを拒否していた。本末転倒なのはわかっている。でもこの快楽をもっと感じていたかった。
「それと、感応して、一つにならないと駄目なんだ。だから、もう少しこのまま……」
「はぁ……はぁ……は、ぁ……」
しばらくそうしていたが、ようやく射精感が遠のいた。
「悪い、もう大丈夫だ。動くぞセイバー」
「は、はい……きて下さい」
腰をゆっくりと引き抜き、再度入れる。ぐちゅっとした感覚。柔らかくて、でも締めつけて……たまらない。感覚に流されないように気をつけて、肉壷をぐしぐしと動かした肉棒で押し広げる。
(少しでも気を抜くと出ちまうぞ、こりゃあ)
俺は暴発に気を付けながら、抽送を開始する。
ぐちゅ、ぬちゃ、ぬちゅ……。
淫音が部屋に響く。心地いい。
「んく……あ……ふぅ……明……もう少し、ゆっくり……」
「あ、わ、悪いセイバー」
慌てて腰の動きを制御する。優しく、なぞるようにゆっくりと。
「……っ、は……あ、はぁ……ん……くぅ……ふぅ」
「セイバー、痛いだろ。ごめんな」
痛みを感じさせたくないと思っていたのに。
「だい、じょうぶです。明……私に構わないで……」
「馬鹿、そんなことできるか。優しくするから……」
「ん……こんな……ゆっくり……あ……明の……形が……わかります……」
「っ……」
そんなエッチぃことを言われるとは思っていなかった。
「なか……こすれ……はう……ん……んぅ……わたし……おかしく、なる……」
「いいんだぞ、セイバー。もっとおかしくなってくれ。……俺で、感じてくれ――」
突き入れる、ゆっくりと、こちらも中の感触を楽しむように。
「あ、ん……はぁ……明……優しい……だめ、です……こんな、されたら……私……」
「セイバー、一緒に、気持ち良くなろう」
「は……ふ……一緒に、いっしょ、に……」
「ああ、一緒にだ。俺も気持ちいいからな」
「明、も……わたしで……よく、なってるのですか……はぁ」
「ああ、もう蕩けそうだ……セイバーの中、暖かくて、キュウキュウ締まって、ぐちゃぐちゃに濡れて……」
「そんな……恥ずかしいこと……言わない、で……ふ、く……下さい……」
「セイバーも、気持ちいいんだろ? 言って、くれよ」
「や……わたしは……悦んでなんて……いません……」
ぐちゅぐちゅぎちゅ!!
嘘をついたので、罰として思いっきり激しくピストンする。
「あ――あああああっ!!」
「嘘はいけないぞセイバー。ちゃんと気持ちいいって言うんだ。じゃないとこれ、もっとするぞ」
「そ、な……は……」
乱暴に突く。突きまくる。激しく責めたてた。
「あああああ……はぁっ! ……い、言います……いいますから……」
「ん、言ってごらん」
「は…………どうして……こんな……はぁ…………………………きもち、いい、です」
「何が気持ちいいんだ?」
「そんな……そんなこと言えません……あきら……ゆるして……」
「わかったよ、許してあげる……」
ピッチを緩くして、セイバーの負担を減らしてやる。
「は……あん……」
上体を倒してセイバーに抱きつく。抱きしめて腰を使う。
「あ……明……こんな……」
「抱きしめながら、したいんだ。セイバーをもっと感じたい……セイバーも、俺を抱きしめてくれ」
「は……はい……わかり、ました……」
セイバーの両腕が背中に回される。胸と胸が合わさり体温を分け合う。
「あぁん……はぁ……はぁん……あ……なに……これ……っこんなの……わたしは……」
セイバーはだいぶ感じているようだ。
「セイバー。セックスはお互いが気持ち良くなる行為なんだから、何もおかしくないぞ。俺もセイバーの中、凄く気持ちいいから……」
「はぁ、はぁ……明も……気持ち、いいのですか……私の、中……」
「セイバーも中が気持ちいいだろ?」
「やあ……やめて下さい……こんなの……私は知らない……あっ」
セイバーが感じている。もっともっと感じさせてやりたかった。気持ち良くさせてあげたい。俺は腰をズンズンと奥まで突き入れてやった。
「ああぁう……はぁ……ぁ……ぁん……や……これ……奥に……」
「奥に、当たっているな。セイバーの子宮の入り口と、俺のモノがキスしているんだよ」
「は……あ、ん……やだ……いやです……あきらっ……」
快感を否定しようとセイバーがいやいやする。それが可愛くて俺は更にいきり立った。腰が動いてしまう。
「セイバー、好きだ……好きだぞ……ちゅっ」
キスをしながら愛を囁く。
「ふぅ……ん……明……明が……私を……」
「ああ、好きだ……セイバーが好きだぞ……」
限界が近づいていた。
「明……私……もう、だめです……あ……」
「んっ、俺も、もう……出すぞ……セイバーの中に、子宮に、精液を注ぐからな……!」
「ああっ、そんな、明の、精液が……」
もう我慢できなかった。欲望に任せ腰を突く。
「セイバー、セイバー!」
「明、きて、きて下さい……私の、中に……!」
抱きしめ合い、唇を重ねて、俺はセイバーの中に放っていた。
ドクッ、ドクッ、ドクン!
「あ――んあ、あああああぁぁぁあっ……!!」
「う、く……で、てる……セイバーの、中で……はっ」
俺は余りの吐精の気持ち良さに、全ての力が奪われ、セイバーの体に倒れ込んでいた。
「はぁ……はぁ……はぁーっ」
「はぁ……ああ……明の……熱いものが……中に」
「ん……全部、出したぞ……セイバーの中に、注いだからな」
施術も完璧だ。俺は自分の魔力をごっそり持っていかれて、かなりの負担から体が重くなっていた。
「セイバー……ちゅ……ちゅう……」
キスをする。モノをセイバーの中に入れたまま。そうしたら、むくむくと欲望が鎌首をもたげてきた。
「悪い、セイバー。俺、また……」
「あ、謝らないで下さい明。男性のことは、理解しているつもりです。そ、それに、精を頂ければそれだけ私は回復します。して、下さい」
嬉しすぎる言葉。
「……! ああ、もっと、もっとしよう、セイバー」
そうして俺達は、夜を通して肌を重ね続けた――。
後書き
セイバーとの初エッチ。セイバーはきっとそれが最良の手段なら迷いませんよね。士郎は拗ねると思います。こんな感じですが原作の人物をちゃんと描写できていますかね? まあエロSSなのでそこら辺はどうでもいいっちゃいいのですが。
ちなみに、原作に魔力量の多い魔術師なら性交で与える魔力も多くなるなんて設定はありません。譲渡の性質を持っているとロスが少ないというのも捏造です。信じる人なんていないと思いますが、年の為記述しておきます。
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2月9日 ~ 2月10日
セイバーの完全状態時の魔力量とか、エクスカリバーの使用魔力とかがわからない……ので適当に書きました。原作で一度士郎に抱かれて、その後のバーサーカー戦で「宝具を使用すると消える」と言われていたんですよね。選択肢でエクスカリバー使用させるとBadEndになりますし。だけど、バーサーカーに勝った後、再び抱かれて魔力を補充していないにも関わらず、王様相手に宝具を使用しているんですよね……どっちやねん! 原作がその調子なので曖昧な書き方にしました。指摘する感想が多ければ後で訂正するかも知れません。
※10月26日に、イリヤの心臓について訂正しました。すみません。
夜が明けた。結局夜通しセックスし続けた。おかげで俺の魔力はからっぽだ。まあいいんだけどね。師匠には魔力を持っていくなと言えばいいし、キャスターは今までの魔力で充分動ける。暗躍時とか転移魔術ぶっぱなしだったけど、今は基本霊体化してて何もやることがないのだ。魔力の消費は最小限になっている。だから全てをセイバーに渡すつもりでしていた。
「それでどうなの? セイバー。魔力はどの程度回復したの?」
「さすがに宝具を全力で使用できるほど回復はしていません。ですがこれならバーサーカーとも全力で打ち合えるでしょう。また、魔力の量を調節したならば、宝具の使用もなんとか可能でしょう。言われていた通り明の魔力量はとても多いですね。」
「さすがに英霊の宝具、全力で放つそれほどの魔力量は確保できなかったか……。セイバー、感覚でいいから教えてくれ。後何回昨日と同じくらいすれば全力の宝具を使用できるようになる?」
顔を向けると、セイバーは少し顔を背けながら言ってきた。……照れているな?
「そ、そう、ですね。限界まで魔力を込める宝具の使用は、後一回もすれば充分かと」
「……………………」
「そうか、二回で完全な宝具一回分か。なら今日もしないとな」
「……………………」
さっきから沈黙しているのは衛宮だ。自分が作った朝食を不機嫌そうに食べている。女の子なのにそんな方法で戦いの準備をしたのが気に入らないんだろう。セイバーと違って心が狭いぞ主人公。
「そうは言っても無茶は禁物よ。アンタだってキャスターを抱えているし、それに今日一日休息をとったからって、ほぼ十割なくなった魔力が全快する訳じゃないんだからね」
「わかっているよ。とりあえず学校は休むつもり、一日寝て、食べてだけをするつもりだ。しかし俺がそうすることでセイバーが戦闘可能になったのなら言うことはないだろ」
藤村先生がいなくて良かったな。ズル休み二人目でガーッと怒られるところだった。ちなみに今日は早く出勤していった。
俺から衛宮に言うことは何もない。できればマスターである彼にも承諾してもらいたかったが、セイバー本人が了承しているのだ。俺から言うことは何もないよ。後はセイバーと彼の間で話すことだ。
「じゃあ今日学校に行くのは私だけってことね」
「師匠は学校休まなくて平気なのか? 調べることとかないのか?」
「うーん、まあまったく無いって訳じゃないけど、ね」
師匠には師匠の考えがあるということか、ならば止めはすまい。
「行ってらっしゃい」
悠々と見送りをする。………………さて、寝ますかね。
§
グースカ眠った。昼だけは起きて食べるものを食べたが。それ以外はずっと寝ていた。魔力の枯渇はだいぶ深刻らしい。今後はあんな猿みたいにヤりまくるのはやめなきゃな。九割か八割くらいでやめておくべきだったか。でも気持ちいいんだもんしょうがないだろ。それはそうとセイバーと衛宮は相変わらず剣道場で鍛錬していたらしい。サーヴァントはいいねぇ。眠らなくていいんだから。
さて、俺は自分の部屋でノートを取り出した。行動計画表の現物である。既に2月8日までは消化済みのこれをパラパラとめくって内容を再確認する。今日は本来なら、学校から逃げたライダーを探して、新都のビルでライダーとセイバーが激突する日だな。その末ライダーが倒されることを考えると、俺のとった間桐邸襲撃で狂った歯車が元に戻るとも考えられるな。まあ爺様と桜が死ぬのは本来の出来事じゃないけど。後学校で結界が作動していないから藤村先生が休んだりもしていない。まあこっちは大きく変わることはないな。で、明日になれば、これがこうなってあーなって……。よし、と大体確認し終えた。俺はノートを荷物の一番下にしまうと、夕食を食べに居間へ向かった。
――その夜も、俺とセイバーは激しく交わった。
§
2月10日。さあ決戦の日だ。今日が訪れるのを怖いような、待ち遠しいような気持ちで待ちつづけた。まずは衛宮に外に出てもらわないとな、と思っていたら昼食の買い出しで普通に出かけていった。セイバーを置いて、である。
「十分十五分のこととはいえ、サーヴァントから離れるのはいかがなものかねぇ」
「……………………」
昨日と同様に魔力回復の為寝ていた俺は昼なので起き出してきた。……ハイソウデス。マタアサマデヤリマシタ。
「セイバー、意識してしまうのはわかるけど、相槌くらい打ってほしいぞ」
「…………!! そ、そうですね。ま、まったくシロウはサーヴァントを何だと思っているのか!」
慌てて衛宮を糾弾する言葉を口にした。
「可愛いなぁセイバーは」
「なっ! な、な」
七々?
「…………こほん。明。できればそう言うことはあまり言わないで欲しい」
「何で?」
「…………そ、それは…………」
照れるから、とは言えないよなぁ。
「最初から言っていたじゃないか、俺。召喚されたその日に言った覚えがあるぞ。可愛い女の子って」
「………………た、確かに……」
「だから俺の態度は最初から変わっていないんだよ。俺はセイバーを可愛いと思っているよ。ずっと」
「~~~~!!」
照れてる照れてる。可愛いなぁ。……と、思考を蕩けさせている場合じゃない。今衛宮とイリヤは会っていることだろう。しかし衛宮が
「…………遅いですね、シロウ」
「ああ、遅いな」
これは攫われたか? 一応家を出る前に「イリヤのものにはなるな!」と催眠をかけておいたので、攫われた後BadEndになることはないだろうが。まあ最悪殺されても(以下略。
「確かに遅いな。キャスターの魔術で商店街を見てみよう」
え? 最初からやっとけって? だってあいつが必要ないって言ったんだよ。
「…………………………商店街から家までの道を見たが見つからない」
「っまさか!」
「バーサーカーかランサー、そのマスターにでも出会ったとか……とりあえず探そう!」
§
アインツベルン城なう。あれから、セイバーと師匠と俺で町を捜索した。結果白い髪の少女、イリヤに連れられてタクシーに乗り込む目撃情報があった為、師匠の知識とセイバーの記憶(第四次聖杯戦争ではアインツベルン勢として召喚された)を頼りに城までやってきたという訳だ。今は城の中に侵入して衛宮が囚われている部屋に直行している。
「無事ですかシロウ!」
セイバーが扉をくぐる、すると椅子に縄で縛られている衛宮がいた。
「縛られているのですね。すぐに――」
「う、いや、縄は解けてるんだ」
どうやら縄に縛られているフリをして脱出の機会をうかがっていたらしい。それなりに機転がきく衛宮だ。
「まったく! 貴方という人は! 易々とイリヤスフィールに拉致されて……!」
「まあまあセイバー、説教はそれぐらいにして早いとこ脱出しようぜ。いつ戻ってくるかわからないんだから」
どうどう、と両手を前に出してセイバーをなだめる。
「……そうですね。今は脱出を優先させましょう」
イリヤとバーサーカーが外に出たのは確認済みです。そうでもなければ忍び込んだりしないよ。玄関についた。さて、
「――なぁんだ。もう帰るの? せっかく来たのに残念ね」
くすくす、と笑ってゴーゴー……ってそれは別の奴だ。笑い声と共に現れたのはイリヤだった。はい、知ってましたけどね。
「イリヤ……スフィール」
「こんばんは。貴方から来てくれて嬉しいわ、リン」
楽しそうですね。そんなに戦いや殺し合いが好きですか。その後もちょっとした会話をしている隙に殺されそうだった。バーサーカーの威圧感は本当に危険だ。これは実際に対峙した人間じゃないとわからないだろうな。
と、巨体が消えた。跳躍したバーサーカーがロビーの中心に着地した。玄関へ逃げようと背中を見せれば斧剣で殺される。このまま手をこまねいていても同様。残されたのは、戦うという道しかない。
「――誓うわ。今日は逃がさない」
キャスターの転移を防げると? それは自信過剰じゃないかね?
――そうして、戦いが始まった。前回の戦いをちょっと変えただけのものだ。アーチャーとキャスターが後ろから攻撃を放ち、セイバーが前に出て打ち合う。違うのはアーチャーがいるのと、セイバーの傷が治りきっていること、但し魔力は少し減っている。よし!
「衛宮! 令呪を使ってセイバーに宝具を使用させろ!」
「え!?」
俺は急いで説明した。昨夜の情事でなんとか宝具を使用できるまでに回復した。そのことは全員知っている。だからこそ宝具はさっさと使わなければならない。セイバーは保有スキル:魔力放出を持っている。武器や自身の肉体に魔力を帯びさせて、瞬間的に放出するやつだ。それがあるからこそのジェット噴射のようなダッシュや後退、剣戟ができるのだ。だが逆に言えば、戦闘が進むごとにセイバーからはドンドン魔力が失われていくことを意味する。つまりこのまま小競り合いを続ければ、バーサーカーに満足な傷をつけられないまま、少しずつセイバーの魔力が減り、いずれは宝具を使用できなくなるのだ。だから、宝具を使用するなら戦闘開始後すぐ、しょっぱな、今しかないのだ。
「ってことだ、だから、『全力で宝具を放て』と令呪で命令して全力全開の宝具による攻撃で決着をつけるんだよ!」
「…………」
「士郎! 私からもお願い! 令呪を使って!」
衛宮は突然の説明に思考を働かせている。
「くすくす、そんな手が通じると思うならやってみればいいじゃない」
会話が丸聞こえなのでイリヤにも知られているが、構うこっちゃない。
「いつまでも、バーサーカーとの戦いを延ばし延ばしにはできない、ここで決着をつけよう!」
「…………わかった。セイバー! イリヤを巻き込まないような位置をとれ」
こいつはまた! この腐れフェミニストめ! ここはむしろイリヤごと攻撃するような位置取りをさせるべきだろうが!
「セイバー! 全力で宝具を使え!」
衛宮が令呪を使った。――そして。
「――
セイバーのエクスカリバーが炸裂した。バーサーカーは両腕を顔の前で交差させて防御の構え、だが無意味、神造兵装のエクスカリバーには――。
パチパチパチ。と火のはぜる音がする。衛宮と師匠は呆然としている。ブリテンの騎士王、アーサーが持つと言われるエクスカリバー、それが宝具ということは……。セイバーの真名は……。
ここだ! 俺も
「キャスター! イリヤスフィールを殺せ!」
「え!」
「な!?」
師匠と衛宮が驚くが知ったこっちゃない。原作ではカリバーンで七回ほどバーサーカーは死んだ。エクスカリバーでも大体同じくらいの威力があるとして、それでもバーサーカーは殺しきれない。奴は十二回殺さなければ死なないのだ。それが奴の宝具。だからこそのマスター殺し、この瞬間ならバーサーカーは主を守れない――――。
ドドドドド!!!
キャスターの放った全力の魔術がイリヤの胸から下を襲う(攻撃するなら心臓は傷つけないように、と事前に催眠済み)。イリヤは瞬間、魔術回路を起動させ相殺しようとするが、神代の魔術師であるキャスターの全力魔術には無意味――。
「……………………」
飽和した攻撃により惨状と化したロビー。腹から下がごっそり削られた少女の体。沈黙が場を支配する。と、
「■■■■■■■■■■ォォォーーー!!!」
バーサーカーが再起動しやがった。だが残念だったな、お前のマスターはもう死んだよ。
「全員集まれ! キャスターの魔術で転移する!」
そうして、あの夜と同じように、俺達はバーサーカーから逃げ出したのだった。
§
「お前! どうして!!」
ガツン、と後頭部を窓ガラスにぶつけた。俺の襟首は衛宮に掴まれている。
「バーサーカーは強敵なんてもんじゃない。万が一の可能性も含めてマスターも即殺すべきだと判断したんだよ。そしたら案の定バーサーカーは死んでいなかった。命のストック、蘇生魔術でも使っていやがったのかはわからないが、こちらの最大戦力、セイバーの宝具をもってしてもあいつは殺せなかった。結果的に、俺は最善の一手をとったことになる。何か文句があるのか?」
「イリヤは、イリヤは!」
激発する衛宮。
「小さい子供だった、とでも言うのか? アホらしい。聖杯戦争、殺し合いに身を投じたなら殺せる時に殺すべきだ。魔術師なら当然の覚悟だろ。その程度の覚悟すらもっていなかったのか? ……あの時、キャスターがバーサーカーのマスターを殺していなければ、ここにいる誰かが死んでいたかも知れない。それはお前だったかも知れないし、セイバーだったかも知れないんだぞ。それでもお前は言うのか? 殺すべきじゃなかったと。自分が死んだり、セイバーが殺された後に、「手加減せず殺しておけば良かったー!」とでも後悔しろってか? 馬鹿じゃないのか」
「お前ぇっ!!」
バキィッと音を立てて殴られた。痛ぇ。だけどバーサーカーに殺される痛みに比べれば、この程度安いものよ。
「…………止めなさい、衛宮くん。明の言うことは間違っていないわ。あの時セイバーに宝具を使用するよう貴方に言ったのも、キャスターに令呪まで使ってイリヤスフィールを殺したのも、間違いじゃない。貴方だってわかっているんでしょ。本当は」
「……ぐぅっ!!!」
すげー顔。人が二・三人ぐらい殺せそうな顔をしてやがる。
「…………マスター。明と凛の言う通りです。私も、宝具を使用した時に彼を倒したと思いました。一瞬とはいえ気を抜いてしまった。騎士失格です。ですが明の打った手により、私達は勝利し、味方の損害は最小限ですみました。イリヤスフィールを殺したくないという貴方の希望は理解できないわけではありませんが、彼の行動は間違いではありません」
間違いではない、か。正しいとは言ってくれないんだな。アーチャーは沈黙を保っている。戦士としては俺が正しいと思いつつも、イリヤを目の前で殺されたのでお怒りなのだろう。
「話は終わりか? それなら部屋で休ませてもらおう。疲れているんでな」
そう言って、部屋に引っ込む。今は誰の前にもいない方がいいだろう。そうしてその日は終わった。
後書き
VSバーサーカー。え? 戦闘描写? そんなものうちにはないよ! バトルが好きなら原作やりな!
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☆2月11日(セイバー2)
日を改めて、朝である。昨日の夜はさすがにセイバーとしなかったよ。まあ当然と言えば当然だ。そして、
「みんなどうしたの?」
藤村先生が不思議な声を上げる。
「………………」
「俺と衛宮がちょっとばかり喧嘩しましてね。それで空気が少しばかり悪いのですよ」
その言葉に目を見張る先生。
「士郎が、喧嘩。へー珍しい。何が原因なの?」
「原因は俺ですよ。俺が一方的に悪いんです。そして衛宮が正しいんですよ」
欠片もそう思っていない口調で話す。
「佐藤くんが悪いの? じゃあごめんなさいしなきゃ」
「そうですね。自分の行動が間違っていたと思えたら、謝ります。あ、それと、体調が回復したので俺は今日学校に行きますから」
「そう。良かったね、風邪治って」
「まったくです」
§
学校に登校する。今は衛宮とも師匠とも会話しない方がいいだろう。さて、退屈な授業を受けますかね。
「だらけていますね。凛」
「そりゃあね、だらけもするわよ。バーサーカーがいなくなった今、あとはランサーとアサシンだけじゃない。わたし達三組なら余裕で撃退できるわ」
「それはわかりませんよ。ランサーのマスターは不明。アサシンも一筋縄でいく相手ではありません」
学校から帰ってきて、だらーんだるーんとしていた師匠をセイバーが見咎めた。それはそれとして、
「あ、アサシンならランサーと戦って敗れたよ。キャスターが観測したから間違いない」
新情報を投下する、と。
「はぁぁあ!?」
「アサシンが……敗れた!?」
もちろん嘘である。単純にキャスターに令呪で自害を命じさせただけだ。予定を繰り上げる為にな。原作のセイバールートじゃキャスターが八人目に倒されて自動的に消えたのだろう。それを再現したって訳。もちろんやったのは昨日の夜ね。バーサーカーが消滅したのをキャスターの魔術で見届けてからの行動だ。
「だから残りはランサーだけだよ。ランサーを三対一でボコったら、同盟解消。セイバーとアーチャーが戦って勝った方がキャスターを倒す。それで今回の聖杯戦争は終わりだ」
「なんだ……更に気の抜ける情報じゃない」
「残るはランサーだけですか……」
そうなんだよね。ここで言っているようにランサーはどうとでもなる。でも厄介なのが八人目だ。あいつはセイバーかアーチャーで倒さなければならない。
「ランサーは敏捷性が高いからな。何とかマスターを捜したいところだ。キャスターに大規模な陣地作製でもさせて釣ろうかね」
「うーん、そうねぇ……」
「ところでセイバーさんや、同盟の解消が迫っている時になんなんだが、魔力の供給はどうする? 二回行って宝具を使用できるようになったけど、その分を昨日消費したと思うんだが」
「え……それは……」
「ランサーを倒すだけなら、現状でも問題はないかも知れないね。アーチャー、キャスターと一緒に三人で攻めるんだから。でもその後に行うアーチャーとの決戦はそうはいかないんじゃない? 最低でも宝具を一回使用できるようになっておかないとまずいと思うんだけど」
「…………」
考え込むセイバー。というか八人目の王様がいるから是非回復させて欲しいところだ。
「明……アンタね、アーチャーのマスターであるわたしがいるところでそういうこと言う?」
「隠したって仕方ないだろ。どうせするならバレるんだから」
「そりゃあそうかもしれないけど」
「師匠には悪いがセイバーとアーチャーが戦うなら対等の条件でないと気分が悪いからな」
「…………明、その……お願いしても、いいでしょうか」
「ん、いいに決まっているじゃないかセイバー」
「…………はぁ」
師匠。その呆れたようなため息はなんなんだよ。しかし、二人は俺と普通に会話してくれる。イリヤのことは吹っ切ったと考えていいか。セイバーなんてセックスの約束までしたし。
残るは衛宮だな。だが問題あるまい。まさか同盟中に喧嘩吹っかけてはこないだろうし、同盟が終われば、戦争前は友達でもなかった俺達だ。普通に学校の同級生に戻るだけよ。
§
「師匠。調子悪そうだけどどうしたんだ? セイバーはだらけているって言ったけど俺には調子が悪そうに見える」
十年来の付き合いは伊達ではないのだ。
「……自信、なくしてるのよ。昨日アンタがイリヤスフィールにやったアレ、本当なら私がやらなきゃいけないことだったのよね。やらなきゃいけないって言うより、やってなきゃマスターとして失格というかなんと言うか」
なるほど。それで凹んでたのか。
「まあいいんじゃない? 弟子がフォローしたってことでさ。あと、過ぎたことを悔やむのも意味がないよ。終わったことは終わったことなんだから、次からは同じ失敗をしないように注意すればいいだけだよ。ま、元気出してよ」
「むー」
うなるなよ。それにしてもそうか、師匠より弟子の方がマスターらしい行動をしたんで自信をなくす、か。それを言うなら俺も失敗ではあるよ。どうせイリヤを殺すなら事前に師匠に絶対催眠でそう命令しとけば良かったんだ。師匠がアーチャーに命じてイリヤを殺させていたら。そしたら衝突するのは衛宮と師匠になってたんだし。まあ今更言っても仕方ないが。
さて、それじゃ部屋に戻りますかね。
§
「あれから、衛宮と話したりしたか? セイバー」
「え……いえ、シロウとは、その……話していません」
「理由を聞いても?」
部屋にやってきたセイバーにいきなりあの話をしてみる。
「私は……私は立場的に明の側ですから、あの瞬間こそ驚きましたが、あなたがとった手段はとても理にかなっている。もしバーサーカーが私の一撃で倒れていたとしても、私は続けざまにあの少女へ向けて剣を振るっていたでしょう。……話をしないのはそういう理由です。どれだけ話し合おうと、私はシロウの側につくことはできない」
「そうか……いや、悪かったな。いきなりこんな話をして」
「いえ……」
「じゃあ、しようか。セイバー」
言って、抱きしめる。
「うぅ」
既に二回しているのだ。俺にも余裕というものも生まれる。今日は上を責めてやろう。ふにふにとセイバーのちっぱいを揉む。セイバーはあまり大きくないのだ。そこも可愛らしい。
「セイバーの胸、可愛いな」
口に出していた。
「……! そ、そんな……」
「柔らかくってふにふにしてる」
「あ……ぃや、です。明……するのなら、早く……」
「だからまだ濡れてないって。早く終わらせたいセイバーの気持ちもわかるけど、俺はじっくりやるからな」
「あぅ……」
やわやわと揉む。乳頭はさけて。できるだけ乱暴にはしたくないからな。
「は……あ……」
セイバーの声。だがまだ喘ぎには遠い。ゆるゆると揉む。繊細なタッチ。手というよりは指で揉む。むにゅむにゅ。
「あ――はぁ……はぁ」
ピクンと動くセイバー。セックスの効果か、性感が多少なりとも発達してきたらしい。
「ちゅぷ」
口付けていた。セイバーの乳房に。あくまで乳首には触らない。
「はぅ……明、そのようなこと……」
「ちゅぱぁ……ん……嫌かい? セイバー」
「嫌、というより。……そんなことをして、何が……」
意味がわからない、と。
「ただの愛撫だよ。セイバーは身を任せてくれればいいから……ちゅぽん」
乳肉を吸う。吸って、舐める。肉に刺激を加えて柔らかくするのだ。
「ちゅっぷ、ちゅぷ……れろぉっ……れろ」
「は……っ。くぅ……」
ベッドに寝転んだセイバーの体に覆い被さる。セイバーの背中に腕を回す。
「ちゅ……ちゅ……」
「ふぅ……ふ……あ、こんな……や」
「チュッ……ちゅる……ちゅうう」
「明……そんな、優しく……」
「ん、優しいのは嫌いか?」
「い、いえ」
もどかしいのかな? なら、
「もう少し強くしてあげよう……ちゅううううう!」
「あはぁっ!」
乳を強く吸われて体を浮かせるセイバー。
「強いほうがいいんだろ?」
「い――いえ、こんな、強いのは……だめ、です……」
「感じすぎる?」
「ちが、います……」
「弱いのも駄目、強いのも駄目。セイバーはわがままだなぁ」
強いのは感じすぎるから。弱いのは……なんだろう。それも感じて嫌なのかな?
「ちゅっぱ、ちゅっぱ……ちゅぱ……れろんっ」
強いのと弱いのの中間くらいにしてやった。これももどかしいかもしらんが。
「はぁぅ……あきら……」
セイバーが切なげに俺の名を呼ぶ。それが嬉しくてもっといじめたくなる。
「ちゅ、ちゅ、ちゅう」
セイバーの両手が俺の肩に乗せられた。少し力が入っている。押し返そうとしているんだな。
「セイバー、押すのは駄目だ。俺ができなくなる。どうせなら背中に回してくれよ。こう、抱きつくように」
俺はセイバーの両手をはがして、背中に回してやる。これでいい。抱き合う恋人のような体勢になった。
「あ……っ。明……」
セイバーが俺をぎゅっと抱きしめる。俺もセイバーを抱きしめてあげる。
「明……このような……だめ、です……」
「恥ずかしいかい?」
「……うう……はい……」
「大丈夫だよセイバー。もっと恥ずかしいことをするんだからな。これぐらい耐えなきゃ」
「そんな……」
抱きついたまま乳を吸う。そしていよいよ乳輪に舌を這わす。れろれろ。
「はぁ……はぁっ……く、う……」
やはり周辺は感じるポイントらしい。
「ちゅううううううっっ!!」
いきなり、吸った。乳頭。
「ふぁあああぁあああ!」
突然の刺激にビクンと反応するセイバー。俺の思い通りに動かされている。
「ちゅぷ、ちゅ、ちゅう、れろれろれろ、ちゅううう!」
「はぁ……くぅ……あああ……んっく……や、あ……」
セイバーの両腕に力がこもる。結果的に俺を自分の胸に押しつけるような状態になった。
「ちゅる、りゅるぅ……れろちゅっ……ちゅっ……ちゅっぽちゅぽ」
愛情をたっぷり込めて吸ってやる。
「じゅっ、ちゅぱっ、じゅぱぱ、はぁ、じゅっ、ふぅううんっ、れろれろぉお」
「ああ、ああああ、あああぁぁぁあっ」
もうすっかり喘いでいるセイバー。
「んじゅう、じゅ、ちゅっぱ、じゅじゅっぱ、れろっれろっ、ちゅるる~~っ」
乳房にも指を埋めてやる。
「はあぁん……ああ、ああ、だめ……こんな……だっめ、です……あきらぁ……」
哀願。だけど止めない。最後までもっていく。とどめとばかりに、俺は両方の乳頭を指で潰してぐりぐりっとねじり押した。
「あはぁぁぁん!!!」
セイバーは大きな声を出してくたっとなった。
「セイバー。イったな?」
「はぁ……はぁ……いや……いわないで……」
セイバーは両手で顔を覆った。快楽に蕩けた顔を見せたくないのだろう。
「セイバー。隠さないでくれ。セイバーの顔、見たい」
俺はやんわりその手をどける。予想通り、快感で紅潮した顔がそこにあった。綺麗な白い肌が赤く色づいてもっと綺麗になっている。
「セイバー。ちゅ……ちゅ」
「ああ……んふ……ふぅ……」
優しくキス。セイバーを認めるように。そして手を下方にもっていった。
くちゅり……。
淫音が鳴る。どうやら準備は万端のようだ。
「セイバー、ここ、もう濡れているな」
「……はぁ……やめて……これいじょう、いじめないでください……」
恥ずかしそうに顔を背けるセイバー。
「セイバー、可愛い……んちゅっ」
「は……んっ……ちゅ……わたしは、かわいくなど……」
「可愛いよ。可愛くていじめちゃうんだ。ごめんなセイバー」
「っはぁ……そんな……」
俺はセイバーの上体を起こしてやった。
「セイバー、今日はこの体勢で……な」
俺は座ったまま向かい合う格好で股間を近づけた。いわゆる対面座位だ。
「え……こ、こんな、体勢で……?」
「大丈夫。俺に任せてくれ、セイバー」
淫裂に亀頭を近づける。セイバーの秘穴はヒクヒクしていた。そこに狙いを定め……。
ぬ、くちゅっ。
「あぁっ」
粘膜が接触して音を立てる。そして先っぽを入れる。
「んっく、明……こん、な……」
セイバーは息を乱している。一番太いカリの部分が入る。
ぐりっ。
「あぁうっ、あ、こんな……少しずつ……」
「ゆっくり、入れてあげるからな」
ゆさ、ゆさ、と腰を揺すってじれったいほどゆっくりと入れる。
「んぅ……はぁ、セイバーの、中の襞が絡みついて……」
「はっ、そんな……」
ずぷぷっと最後まで入る。
「ああぁぁっ」
「う、く……」
あまりの快感に意識が飛びそうだった。
「あ、ああ……セイバーの中、凄く気持ちいい……」
「や……言わないで下さい……明」
「セイバーは可愛いな」
「か、わいくなど……ありま、せん……」
「可愛いよ、セイバー」
「あうぅ……」
恥ずかしそうに身をよじるセイバー。ああ、ホントに可愛いなぁ。
「んちゅっぅ、ぬ、れろっ……れるれるれっ……ちゅぱ」
舌を入れる。いやらしく舐め回してやる。
「あぅ……や……キス……だめ……ちゅれ……」
股間の快感と口の快感が頭の中を犯す。気持ちいい――。
「そろそろ、いいかな。セイバー、動いて」
「うご、く……?」
「自分で腰を上下させて、俺のモノをしごいてくれってこと、俺が動くんじゃなくて君が動いて気持ち良くなるんだ」
「そ、そんな……そんなこと……」
「この体勢じゃそうするしかないんだよ。セイバー、早く終わらせたいならはしたないくらいに腰を使ってくれ……」
「あぁ……うぅ」
セイバーは決心がつかないのかしばらくそうしていた。だが本当に俺が動かないので、仕方なく動き始めた。両足に力を込めて腰を上げる。
ぬぬぬっ。
モノが少しずつ引き抜かれる。カリが膣壁をこする。
「はぁ、あ……こ、れ……」
中で感じているな?
「あ、あ……こす、れて……んんぅっ!」
限界まで上げたら今度は下げる。ゆっくりと腰を下ろしモノを呑み込んでいく。
ずっずっずっ。
「あはぁう! や、あ……明……これ、だめです……」
「まだ一回上下させただけじゃないか。根を上げるのは早すぎるぞ、セイバー」
「で、でも……これ」
「いつもと違う入り方で感触が違うよな。それに、お互いの形が良くわかる」
「あ……あ……」
セイバーは恥ずかしがっているが、俺の言葉は正しくセイバーの状態を見抜いていた。
「明……いやです……いつものように……いつもの、体勢でして下さい……」
「どうして? この体勢でも気持ち良くなれるなら問題ないじゃないか」
追い詰める。
「だって……これ……これはぁ……はぁ」
「さ、腰を動かして、さっきのをもっと速くするんだ」
「はぁ……はぁ……そんな……」
セイバーは困った表情をしていたが、俺が動いたり体勢を変えないのを知って、また腰を動かした。
「あ……はあ……ああ」
ぬちゃ……ぬちゃ。
「ふぅ……くぅ……」
ずぬ、ぬぬぬ。
「いいよ……セイバー、セイバーの膣でこすられて、俺のモノも喜んでるよ……気持ちいい」
「あ……恥ずかしい……」
「うん、じゃあもっと速く動いてみて」
「くっ、明……どうして……こんな……」
理由を問われる。
「セイバーの色んな顔が見たいんだ」
色んないやらしい顔をね。
「そんな……」
少しずつ腰の動きが速められる。セイバーの中はもうトロトロになっていた。
「セイバー、気持ちいいかい?」
「わた、しは……私は……どうでもいいんです……明が気持ち良くなって……精を……吐き出して下さい……」
ぱちゅ、ぱちゅ、と淫音が響く。それは彼女の腰が動いている証拠だった。
「はぁ……はぁ……セイバー、好きだ……ん、ちゅっ」
上に乗っているセイバーの乳首を吸う。
「あ……う、だ、め……だめ、です……いわないで……あきら……」
「どうして? 俺が勝手にセイバーを好きになったんだ。それくらい言ってもいいだろう?」
「だめです……いわれると……わたし……」
嬉しいってことかな? それは自意識過剰すぎるか。
「セイバー、好きだ……好きだからもっとしたい……」
「は、アッ、……そんな……」
戸惑いながらも腰を動かすセイバー。と、その動きが変化した。なんと腰をぐりぐりと回転させるような動きが加わったのである。具体的に言うとゲームセンターのスティックを回すような感じだ。セイバーが円の動きをする。
「明……んっ……早く……早く出して下さい……ふぅっ……」
早く出して欲しくてこの動きをしだしたらしい。
「嫌だ……もっと……もっとセイバーの中を感じていたい……」
俺は亀頭をぐりぃっと刺激され、出そうになりながらも必死に耐えていた。
「そ、んな……はぁ……んっく……」
早く出して欲しいセイバーと長くセイバーの中に留まりたい俺。お互いの欲望がせめぎあっていた。俺は腰を動かしたくなるのをこらえながら、セイバーに身を任せた。
「はっ……はっ……はっ……」
セイバーは一心不乱に動いてくれている。
「はぁ……明……いやだ……はやく……はやくおわって……」
「んんぅ……気持ちいいよ……もうすぐ出そうだ……」
「ホントですか……? なら、出して下さい……中に、たくさん……」
精液をおねだりされる。男としてこの上なく嬉しい瞬間。
「んっく、くぅ……はぁ……セイバー」
唇を合わせる。腕で抱きしめ密着する。セイバーも俺を抱きしめてくれている。愛し合う体勢。
「あ、セイバー、出る……出るよ……」
「はぁ……明……出して……だしてぇ……」
蕩けた声を出すセイバー。可愛くてたまらなくなる。そして……。
ドクッ、ドクッ、ドクン!
びゅくびゅく、どぷどぷと精を吐き出す。
「あぁっ……うぁ、あ、あつ……ぃ」
濁液の熱さにセイバーがうめく。
「セイバー、ちゅ……セイバー……チュッ」
キスを繰り返す。お互い腕と脚を絡めたまま。とても幸せだった。
「あきらの……でています……これで……」
「まだ、だよ。セイバー」
「あ、あきらの……また、おおきく……」
自分の中で大きくなる肉棒に気づくセイバー。
「ごめん、セイバーが好きすぎて全然収まらないんだ。もっと、していいかい?」
「は……い。して、ください……あきら」
既に魔力を回復する精を受ける為というより、お互いの情愛をぶつけあうために結合する。
「せいばー、せいばー」
「あきら、あぁぁ……」
そうして、俺達は交わり続けた――。
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2月12日
イリヤが死んだシーンで重要な一文が抜けてました。アホですみません。編集で訂正しておきました。死亡したけど心臓は破壊していない、ということでお願いします。
さて、聖杯戦争も残すところ後一人の敵となり、戦争も二週間目に入ったところですが。
「士郎はまたセイバーにいじめられるの?」
「人聞きの悪いことを言わないで下さい凛」
「言葉を変えてもやっていることは同じと言いたいのさ、師匠は」
「明までそのような」
俺達同盟は和気藹々としています。まあ衛宮と俺はまだ口を利かないんだけどね。って衛宮の奴ぼーっとしているな。何か……ああそうか。この辺りの朝セイバーの過去を夢に見るんだっけ。セイバーはセイバーで衛宮の過去を見るしな。
「セイバー。最近夢とか見たりした?」
「――え?」
「何言ってんのよアンタ」
「いや、夢とか見たのかなーって世間話だよ」
「…………夢、とは違うと思いますが、似ているものなら……」
「…………」
「そっか。それはマスターとサーヴァントにとって通過儀礼みたいなもんだよ。あまり気にしない方がいい」
「……そうですか」
過去を見たからといって何か変わる訳ではないしな。
§
「ふーむ」
今俺は衛宮邸の部屋で行動計画表を見ていた。今日は考えることが色々あるので一つずつ整理していこう。
この辺りになれば、セイバー、アーサー王の夢を見た衛宮がセイバーの望みを聞き出そうとするのだが……。
「そんな気配がないな……何かが影響しているのか?」
これが進まないとセイバーが自分の望みは間違っていると気づかない可能性があるが。
「っま、いいか。そうならなくても」
俺の行動計画表は基本的に自分の生存と聖杯の破壊を元に作ったものだ。衛宮の葛藤やセイバーの答えなんて解消されなくても構わない。セイバーが別の聖杯を求めるなら、それに付き合うのもいいかもしれない。
イリヤの心臓を残して殺した。心臓、つまり小聖杯を壊してしまうと、原作のように聖杯が顕現するかどうかわからなかったので残した。王様と言峰さんなら確保してくれるだろう。でも原作のセイバールートであった言峰戦、あの泥は出てこない、か、な? だってセイバーもアーチャーもキャスターも残っているのだ。確か六騎のサーヴァントが死なないと起動しないはず。ギルガメッシュを倒すと出るかねぇ?
俺はペンを鼻の下と唇に挟んでへこへこさせた。ふむぅ。さて次は……と。ペラリとノートをめくる。
うむ、そろそろアーチャーさんの警戒レベルが高くなって、彼の精神にアラートを鳴らすことだろう。詰問されそうになったら催眠をかけなくちゃな。
そして残りは同じ陣営のランサーだけになった訳だが、王様は動くのだろうか?
なんて考えていたら敵襲ですよ。衛宮邸に設置されている警鐘、鈴の音が響く。来たか! 一日早いが充分想定内だ。扉を開けると師匠も出てきた。
「外だ!」
叫んで皆に行動を促す。そして外に出る――と。
ガンガンガンガン!
豪雨じみた武器によって、視界が埋め尽くされた。武器が、降ってくる――。
「キャスター転移!」
一瞬で転移魔術を始動させ、その場を逃れる。最初に外に出たのが俺で良かった。俺以外の誰かだったらやられていただろう。
「え……? な、に……」
「お前は! アーチャー!!」
俺に続いて外に出てきたのは師匠とアーチャー、そしてセイバーだ。衛宮はまだ来ていない。セイバーによってアーチャーと呼ばれた奴――もう面倒だから真名で呼ぼう、ギルガメッシュ――は屋敷の塀に立ってこちらを見下ろしていた。そこにいたのは月をバックにした黄金の姿。金色の甲冑に身を包んだ倣岸不遜な男だった。
「アーチャー、ですって?」
師匠がセイバーの声に反応する。その間もギルガメッシュはセイバーだけを見つめている。
「セイバー、説明を! アーチャー、迎え撃ってくれ!」
ことここに至ってはアーチャーも宝具を使用せざるをえまい。一応不安なので「迎え撃つ」を催眠にしておいたが。
ギルガメッシュがセイバーに声をかけた俺を見た。クソッ見んなよ。人間扱いしていない目で見やがって。
「雑種。とく消えるがいい」
死の宣告がなされた。パチン、という指を鳴らした音で攻撃が始まった。アーチャー頼む! 突然空中に現れた無数の武器。それは散弾銃のように炸裂した。が、
「
ガンガンガガガガガ!!
家の中からも無数の武器が打ち出され、男が撃ち出した武器が撃墜される。
「……
ギルガメッシュは贋者に打ち落とされてたいそうご立腹の様子だ。良かった。アーチャーが助けてくれて。ギルガメッシュは怒りのままにまた武装を撃ち出した。だがそれも撃墜される。ギルガメッシュは持っている蔵の中から武器を投擲する。アーチャーは投影魔術で宝具の偽物を造って迎撃する。
「アーチャー、アンタ……」
師匠が呆然と呟く。アーチャーが宝具らしきものを使っているので驚いているのだろう。
「何故、貴方が現界しているのです。
セイバーの声に目を向けるギルガメッシュ。ようやく出てきた衛宮と、師匠は驚いた。
「何故も何も――聖杯は
雑種か。アーチャーとキャスターのことを言っているのだろう。
「ふざけたことを……!」
「騎士王よ。戦うつもりではあったが、興が削がれた。ここはみすぼらしすぎる」
言って、踵を返す。
「いずれ会おうぞセイバー。それまでにその雑種どもは始末しておけ、いいな」
塀の向こうに姿が消える。良かった。引いてくれたぞ。とりあえず襲撃が終わったことで、俺は安堵するのだった。
§
「セイバー、貴女さっきの奴と顔見知りなの?」
「………………」
セイバーは答えない。聞いてみるか。
「セイバー、知っていることを話してくれないか? さっきのあいつの正体を。アーチャーと呼んでいたが」
「……はい、私は彼を知っていました。ですが、あり得ないのです。サーヴァントは七人だけ。彼が召喚されることなど……」
「もしかして、セイバーが参加していたっていう前回の聖杯戦争のサーヴァントか?」
既に答えを知っているので誘導してみる。
「は、はい。その通りです。前回の聖杯戦争における最終日に、私と彼は戦いました。ですが、倒すことはかなわなかった。何故なら、私は」
「逆にあいつに負かされた。ちゃんと召喚された前回で貴女が勝てなかったのね?」
顔をうつむかせるセイバー。
「セイバーが――勝てなかっただって?」
衛宮は信じられないという風に頭を振る。
「じゃあ、あいつは今回呼ばれたんじゃなくて、前回からそのまま残ったサーヴァントってこと? そうじゃなければ辻褄が合わないわ」
「前回の戦いで生き残ったサーヴァントって訳か」
うーん、知っていることを確認するだけなのに手間だなあ。
「聖杯を手に入れれば、現界することが可能なのか……」
衛宮が感心したように言う。
「それで? あいつの正体、真名は?」
俺は話をちゃっちゃか進めたいので手早く聞く。
「それが……わからないのです。前回も、私は彼の正体が掴めなかった。シンボルとなる宝具が存在しないのです」
「あいつ、沢山武器をもってたな。しかもどれも本物っぽかった」
鑑定眼を持つ衛宮が保証する。
「そんな馬鹿なことがある!? あんなデタラメな数の宝具を持っている英雄なんていないわ」
逆に湯水のように宝具を持っているので、特定できなかった、とセイバーは語る。
「士郎、明。アンタ達は何かないの?」
「お手上げだ」
「一つ思いついたことが……あれって全部の宝具が本物で、なんて言うのかな、原典なんじゃないか?」
「原典?」
「そう、つまり、大昔の、全ての宝具の原典を所有している奴だよ。例えば、メソポタミアの英雄ギルガメッシュとか、彼の逸話とかそれっぽくないか? 世界全ての財を所有していたっていう」
「宝具の、原典……なるほど、確かに」
セイバーがコクコクと頷く。
「ギルガメッシュか……確かにそういう逸話があったわね。全ての財を所有しているから、宝具の原典となった武器を所有している……か」
いやあ、実に簡素なギルバレである。え? 情緒? んなもんないよ。
「次に、あいつの目的だけど……」
俺はちらっとセイバーを見る。
「何だかあいつ、セイバーを特別視していたみたいね。そこんとこどうなのよ」
師匠、面白がらないでくれ。にやにやするな。
「彼が考えていることなどわかりません。ですが前回の戦いで求婚されました。無論、斬って捨てましたが」
「うわぁ……敵同士で求婚とか本気かよ」
「私にも良くわかりません」
「セイバーはそうでも、あいつはかなりお熱だったみたいだけど。セイバーも頑固さでは負けてないし、ああいう奴のがお似合いだったりして」
師匠、こっちみんな。
「ですから、私はそのようなことに関心がないのです」
「へー。だってさ明。セイバーは男なんて関心がないんだって。安心した?」
「安心はしないかな。あいつ間違いなく強いサーヴァントだし、セイバーをとられたくない俺にとっちゃでっかい障害だよ」
「凛! 今のは明には関係ありません。明も、そのようなことは言わないで下さい」
むすっとした顔でセイバー。
「はいはい」
心の底から面白がってんな。まあ対応した俺も俺だけど。
「……さて、夜もふけたことだし、寝るとしますかね」
「そうね」
俺達の味方である方のアーチャー、彼の宝具らしきことには触れなかった。あれは師匠とアーチャーの問題だ。二人になんとかしてもらおう。……ちなみに寝る、とは言ってもセックスはします。これで宝具一回分溜まる。
§
「セイバー、実は一つお願いがあるんだ」
「お願い……ですか?」
ベッドの中、まどろみながら話をする。事後とジゴロって似てるよね。
「うん……セイバーの善意にすがるようで申し訳ないんだけど……俺のお願いを聞いて欲しいんだ」
「どのような、ことなのでしょう」
「うん、セイバーのね、一日を貸して欲しい」
「一日を、貸す。ですか」
「明日一日を俺に預けてくれないか? 簡単に言うと、俺と隣町に出かけて欲しい」
恥ずかしいなぁ。デートの申し込みってやつは。
「出かけると言われても」
「衛宮のことなら心配ないよ。キャスターをつけておいて、いざとなったら転移で合流するから。だからお願いだ、俺と一緒に行動してくれないか?」
「マスターを捜すのですか? しかし私と貴方で出かけるというのは……」
「違う、二人で遊びに行くんだ」
「は――?」
呆然とするセイバー。そりゃそうだよなぁ。今まで戦いしか知らなかったのに急にこんなこと言われたら。
「えっと、その、明……遊びに行く、とはどういう意味ですか? 明と凛ではなく、その」
「俺と、セイバーの二人っきりで出かけたいんだ」
「一体どういうことですか」
は、話が通じない。
「ようするに、俺とデートしてくれっていう誘いなんだよ」
「ますますわかりません。具体的に言って下さい」
きょ、きょうてきだぁ。
「だからね、デートってのは、女の子と遊びに行くってことなんだよ」
「はい?」
ピタリ、と動きを止めるセイバー。
「女の子……? 私のことでしょうか?」
「もちろんそうだよ」
「言葉の意味は理解しましたが、意図がわかりません。何故そんなことを」
「…………はぁ。ようするにだねぇ、逢い引きするってこと。好きな女の子と一緒に遊びたいっていう俺の願望なんだよ」
「っ――!」
「ということでセイバー。俺とデートしよう。一緒に、遊ぼう」
「良く、わかりません。明になんの意味があるのか……」
「大好きな女の子と一緒に遊んで楽しい気持ちになりたいんだ。一緒に、行ってくれないか?」
「そ、そのようなことを言われても……あ……」
抱きしめた。
「セイバーと一緒なら俺が楽しい。衛宮のガードはキャスターに任せて、俺と一緒に来てくれ」
「……………………」
わずかに赤面するセイバー。やれやれ、前途多難である。
後書き
次回、ストーリー的に全く無意味なデート。
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2月13日
「行ってきなさい。お土産よろしく」
俺達を見送る師匠。くそ、楽しみやがって。しかし一度肌を合わせた相手だというのに、師匠は俺に対してさっぱりしすぎだと思うの。やっぱ弟子としてしか思われてないのかねぇ。……師匠には、俺の内心が見抜かれているかな。見抜かれているだろうなぁ。ちなみに衛宮にもちゃんと話は通してある。不満そうだったが、セイバーを楽しませたいんだ。というと大人しくなった。事後承諾ですまん。
「――それで? これからどうするのですか、明」
何とかセイバーは俺の言うことを聞いてくれました。最終手段として催眠も考えていたんだけどね。結局使わなかった。やはり俺を好きにならせる催眠がボディブローのように効いているのだろう。やったぜ催眠。
「とりあえず隣町に行く」
交差点からバスが出ているのだ。平日の朝九時は静かだ。道には人影がない。学校をズル休みしたがまあいいだろう。
「マスターなのですから、出歩く方がおかしいのです」
セイバーに苦言を呈される。おっしゃるとおり。普段よりピリピリしているな。それもそうか、マスターである衛宮と引き離しているのだから。悪い見方をすれば、こうやって引き離している間に、キャスターとアーチャーで衛宮を殺そうとしているとも考えられるからな。まあそう思われない程度には俺達は信頼関係を築いているはずだ。
バスに乗った。もう少し早ければ乗客は多いのだろうが、この時間は数えるほどしかいない。……セイバーは黙ったままだ。……綺麗だなぁ。横顔に見惚れる。新都駅前についた。にぎわっているな。
「……………………」
セイバーは不機嫌そうに翠の瞳を細めている。そりゃ仕方ない。無理言って連れ出しているのだ。嫌われていないだけマシ、か。
「セイバー。君はどこか行ってみたい所とかはあるか?」
「別に、これといって興味のある場所はありません」
やれやれ、一応プランは練っておいて良かった。
「……まさか、何の計画も立てていないのですか、明?」
「いや、ちゃんと計画はあるよ。ただセイバーの意向を聞いてみたかっただけ。とりあえず、この辺の店を見て回ろう」
「そうですか」
セイバーは休憩をとろうという考えは理解できます。とか言っている。お説教される前に行こう。
「聞いているのですか、明」
「聞こえている。まあ納得がいかないのは想定済みだよ。俺に連れてこられてつまらないとか、嫌がるのは当然だけど」
「え、いえ、その……そういうことではなく、私は、このような場合ではないと――」
「わかっているよ。でもきかない。俺は今日一日セイバーに付き合ってもらうんだ。こればっかりは曲げられないぞ」
多少強引だが押しとおす。セイバーは呆然としている。
「でも、言いたいことや不満があるなら聞くよ。その方が気兼ねせずに済む。俺とデートするのが嫌なら別の方法も考える」
いえ、その、ともごもごするセイバー。
「よし行こう」
セイバーの手をそっと握って歩き出す。
「あの、明! 不満などありませんが、手を掴む必要は……」
「俺がセイバーと手を繋ぎたいんだ。はぐれないようについてきてな」
「えっと、その、こんな状態は……」
セイバーの手を握ったまま、人ごみをさけて歩いていく。しばらく文句を言っていたセイバーだが、少し経つと観念してくれた。
昼までの二時間を簡素に語ろう。普段行かないような女性が喜びそうな店にも足を運んだ。ゲーセンでエアホッケーをしたりもした。ボロ負けしたが。俺のデートプランは無理せず楽しむ、だ。セイバーは元々そんなに興味がないのだから、強く押しつけるのは好ましくない。しかしそれでも少しぐらい楽しむ反応が見たいな、と思った。
「明、お昼の時間です」
さすが食欲魔人。食事時は妥協しないらしい。とりあえず小休止だ。気軽に食べられる店に行こう――。
「屋敷に帰りたいかい? セイバー」
「いえ、そのぅ……今日は緊張してしまい、普段より疲れます」
「ありゃ、それは申し訳ない。セイバーにも楽しんでもらおうと思ったのに」
「楽しむ……ですか、よくわかりません」
隊長! 敵の牙城が崩せません!
「とりあえずここでしばらく休憩だな」
きゅう、と音が鳴る。
「お腹減ってたのか、セイバー」
「……言わないで下さい」
赤面してうつむくセイバー。
「セイバーは可愛いなぁ」
「…………うぅ……酷い拷問です……」
簡単に昼飯をすませ、食後のコーヒーなどをすする。午後の予定は……と。おっと、予定ばかり気にして目の前の女の子を無視してはいけない。俺はセイバーに楽しんで欲しいのだ。俺と過ごす現世の楽しさを感じて欲しい。反応はつぶさに見ねば。
午後になってもやることはそう変わらない。思いつく店を冷やかしつつ歩く。セイバーは黙ってついてきてくれる。午前中ほどとげとげしくない。よくよく見れば怒っている表情とそうでない表情には差がある。足取りが軽い時もあったりと、そう悪くない感触だ。で、やってきた訳だ。
「こ、ここは……」
ぬいぐるみがいっぱいのお店だ。セイバーはふるふると肩を震わせている。
「せっかくだ、好きな動物とかはいるかい?」
「えと、その……獅子や豹などは愛らしいと思います……おかしいでしょうか?」
上目遣いでそんなことを言う。ぎゅっと手を握る。
「そんなことないよ。セイバーの好きなものを見て回ろうか」
セイバーを許容する言葉を吐く。
「明。……まさかとは思うのですが、貴方は自分が行きたくない場所を選んでいるのでは?」
俺は軽く笑って否定する。
「そんなことないよ。セイバーが楽しめそうな場所で、俺も行きたい場所を選んでいるよ。一緒に楽しめるようにね」
「そう、ですか」
「俺に気を使わなくていいんだよ、セイバー。今日はセイバーに楽しんでもらうのが目的なんだから」
「……私、が?」
うん、と頷いてやる。
「セイバーが楽しんでくれれば、俺は嬉しい。好きな人に楽しんでもらいたいってことだよ」
「――――」
ぽっと赤面するセイバー。
「な……なにを、馬鹿な。私はサーヴァントです。戦闘でない時だからといって、私を女性扱いすることはありません。サーヴァントとして扱って下さい」
「扱っているよ。衛宮はどうしても君を女の子扱いしてばかりで、サーヴァントとして扱っている部分は少ないかもだけど、俺はサーヴァントで女の子のセイバーに惚れたんだ。だからサーヴァント、かつ女の子として接しているよ」
そんな、とセイバー。
「女性扱いするのに対して、自分はサーヴァントだと主張するのも。自分はサーヴァントだと主張するのに女の子扱いするのも、どっちも変わらないよ。セイバーはサーヴァントで、同時に女の子だ。それが俺の意見。君が自分をサーヴァントだと主張するのは正しいことだけど、女の子であることを否定するのは間違っているぞ。でなきゃ魔力の補充している行為も認めないことになるからな」
「ぁ――う」
「まあ、そんな俺に対して頑なに君をサーヴァント扱いしたくないのが衛宮だけどな。あいつの頭の中では君は女の子ってだけなんだろうな」
「…………」
そうして、慣れないデートはあわただしく過ぎた。セイバーが数回笑顔を見せてくれたので、俺は満足だ。美少女の笑顔。無敵になった気分だ。
帰りは歩き。バスに乗ろうとしたらセイバーが歩こうと言ったのである。
前回の聖杯戦争で被害が出た川などを見つつ帰る。
「セイバー、今日、楽しめたかな」
「……そう、ですね。新鮮でないと言えば嘘になります」
「そうか。一回限りだけど、こうしてセイバーと出かけられて良かった」
「……はぁ。結局最後まで明の意図はわかりませんでした」
「だから何度も言っているだろ。好きな女の子と出かけたかった。楽しくなりたかった。一緒に、笑いたかったんだ」
まあ当然他の意図もあるけどね。
「…………とに」
「え?」
「本当に、私が好きなのですか」
セイバーは顔を真っ赤にしてうつむき、そう言った。
「ああ……好きだよ。セイバー」
俺はセイバーを抱きしめていた。
「なっ、なにを……」
「あんまりセイバーが可愛いから抱きしめたくなったんだ」
「そんな……」
そっと、優しく、抱きしめる。
「やめて――やめて下さい明。こんなところでは……」
「ん、ごめん」
嫌がるならやめる。
「…………」
セイバーはぽつんと言った感じで立っている。
「行こうか」
手を、繋いだ。
「……はい」
その手が、握り返される。
「――どこへ行く。勝手に我のものを持っていくな、小僧」
…………きたかぁ。五時間ぐらい誤差があるから八割くらいの確率で来ないと思っていたのに。
「明、後ろへ」
素早く体を入れ替えるセイバー。その身は既に武装している。
「待たせたなセイバー。迎えに来たぞ」
おおよそ人間らしい感情が見当たらない傲慢さでそう言い放った男。
「アーチャー」
八人目のサーヴァント。死がそこまで迫っていた。
「ふん、我が出向いてやったというのに、黙っているのは無礼であろう?」
「……明、なんとしても初めの一撃は防ぎます。その間に貴方だけでも離脱して下さい。それで精一杯です」
「一瞬の隙があればキャスターを呼ぶ。任せるぞ、セイバー」
まるでマスターとサーヴァントみたいな会話だな、と思った。こんな時になんてのんきな――。
「その様子ではまだ我に下る気はないようだな。理解に苦しむ」
「世迷言を、英霊となっても私は王。貴様の軍門には下りはしない!」
悠長に会話しているが、こっちにそんな余裕は毛筋ほどもない。一瞬の判断が生死を分かつ。しかしデートしたことは後悔していない。俺はセイバーと一緒にいたいのだ。
「もう一度だけ言うぞセイバー。我の物となれ。この世界で共に二度目の生を謳歌しようぞ」
「断る。貴様と共に生きるなど、気を違えてもありえません」
後退もせず真正面から受け止める。ギルガメッシュは笑っている。自分の思い通りにならないものを前にして楽しいのだろう。
「アーチャー、貴様は一体何が目的だ」
「目的、か。生憎この世全ての財は手に入れた身でな。望むモノなぞとうにない」
「聖杯を、求めていないだと――!」
「聖杯? 不老不死か、そんなものは蛇にくれてやった。――そうだな、再びこの世で君臨するのも悪くはない。それをたやすく行えるのであれば、聖杯の力も悪くない」
セイバーが斬りかかった――。だが、瞬間、相手も武装していた。
「――――よい。刃向かうことを許す」
そして死闘が始まった。不可視の剣は、奴の鎧に直撃する。鎧を叩き、削り、火花を散らす。奴は両手で頭を守っているだけだ。だが、奴は無傷だった。
「戯れはこれくらいにしようか。その肢体、ここで我に捧げろ」
その腕に、鍵が握られていた。次の瞬間男の手には剣が握られていた。また火花が散る。だが今度は剣と剣の衝突だった。
「最後だ。前回の決着をつけるとしよう。アーチャー」
セイバーは決める気だ。だが――。
「――――
奴の剣がセイバーの腕を切る。取り出されていた、剣。新しいものが。
「そんな、馬鹿な」
ギルガメッシュの周囲には、無数の柄が浮かんでいる。それが奴の宝具。十や二十ではきかない数の宝具の柄だ。まさに底無し。古今東西、あらゆる武器が浮かんでいた。
「ギルガメッシュ――人類最古の英雄王――」
呆然としたセイバーの声。それを奴は満足そうに受け止めた。
「いかにも」
それで腹が決まったのだろう。セイバーが風を解き、黄金の剣が現れる。俺はタイミングを計った。
「ふん。伝説の聖剣か。いいだろう」
王はそれを鷹揚に受け止めた。
「では、こちらもとっておきを出そう」
蔵の中から剣と呼ぶべきか迷う物体を引き出した。
「純粋な宝具の力比べ――――」
俺は目の前で起こる奇跡に目を見張った。
「
セイバーは臨界まで魔力を込めると、聖剣を解き放った!!
「
「キャスター、来い!!!」
瞬間、俺は二つ目の令呪を使いキャスターを呼び出した。
「
まったく同位の光が、激突する。しかし聖剣の光は一方的に破られた。奴の放った光がセイバーを包み込む――。
「転移!!」
俺の叫びと共に、俺達は消えた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「何とか……逃げられたな……」
衛宮邸、俺達は敗北して帰ったのだった――。
後書き
王様が来る可能性が低いのにデートした理由? まあ色々とあります。好きに想像して下さい(描写しろよ)。
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☆セイバー3
2月13日のことですが、あそこからエロに入るのはさすがに余韻ブレイカーもはなはだしいので、別話として投稿しました。
「セイ、バー。綺麗だ……ちゅ」
「ん……む……ふぅ……明……あまり、言わないで……」
「嫌だ。セイバー、すき、だぞ……」
「ぁぁ……」
うめくセイバー。戦いに敗れた後だというの、いや、だからか、俺達は昂ぶっていた。
「ん、セイバー。今日は、もう一つお願いしていいか……?」
「……は、ぁ……なん、ですか……」
「それはな――」
§
ベッドに腰掛ける。ぎし、という音が鳴った。俺とセイバーは互いに裸身を見せ合い、顔を赤らめていた。
「明は……その、元気なのですね……」
「セイバーが魅力的だからこうなっちゃうんだ」
俺は股間の逸物を隠しもせず、むしろ見せるように突き出していた。
「……あ…………。宝具を、使いましたから、だから……」
「ああ、魔力を補充しないとな」
「~~~~うぅ」
「じゃあ、して、くれ。セイバー」
顔も体も朱に染めたセイバーが綺麗で、可愛らしくて、俺はもうたまらなくなっていた。ぺたんとベッドの脇に座り込むセイバー。その様が可愛い。この前、二度目から髪を下ろして行為をするようになった。素のセイバーに触れられるようで嬉しい。
「それじゃあ、その、始めますね……」
ゆっくりとにじり寄ってくる。セイバーはまじまじと俺のモノを見つめた。もう痛いくらいに張り詰めている。
「大きい……ですね」
う、そんなことを言われるとは想定外。嬉しくてモノがビクンと動く。
「……かわいい。すぐ、してあげます」
セイバーの白魚のような指が、モノに絡みつく。それだけで嬉しくてたまらなくなる。
「ん……かた、い……」
「は……あ……セイバー。焦らさないで、くれ……」
「ふふ……もうたまらないのですね。任せて下さい。私も、殿方の悦ばせ方は知っているのです」
はぁ、という吐息がかかる。くすぐったい。そして、肉棒に、キスをした。
「ん……ふ、明、じっとしていて下さい……」
亀頭に襲いかかる柔らかな舌。あったかいそれが、俺を迎える――。
「は・あ・あ……! せい、ばー」
「ん、ちゅ……ちゅ……ふ……明……大丈夫ですから、腰、突き出して下さい」
俺は言われた通り腰を前に突き出していた。こんなの理性がもつ訳ないだろう。亀頭の先に水気を帯びた舌がぴちゃぴちゃと音を立ててぶつかる。表面のざらついた感触もいい。
「はぁ、はぁ、はぁ……くっ……ああっ」
拳を握り締めて耐える。そうしなければすぐにでも果ててしまいそうだった。
「んく……ん……ちゅぷ……明の……本当に、元気ですね……口の中で跳ねています……」
咥えながら喋られる。その声の振動が……。
「あああ……せいばー、せいばー」
「……ん……気持ち、いいですか? 明……」
「は……あ、ああ……さいこう、だ……おかしく、なりそう……はぅっ」
声が漏れてしまう。こんな快楽があるなんて。
「ちゅむ……ふ……はぁむ……ちゅぱ……んっ……明……可愛いです……」
いつもと立場が逆だ。こんなことになるなんて。
「はぁ……うぅ……セイバー……ああ……も、く……は……」
抑えられない。みっともなく声を上げてしまう。亀頭を咥え込んだ唇が前後してカリを刺激してくる。口内に含まれると、容赦のない舌がカリ裏をぺろぺろと舐めてくる。
「んちゅっ……ぁ……明、出てきましたね……く、ちゅぅ……どうぞ、我慢、しないで下さい――」
「は、あっ! いや、だ……もっと、もっと、して、ほしい……っ!」
セイバーは少しずつ肉棒を口に収めてくる。竿には手が添えられ前後に動く。
「……もっと……ですか……はむ……ちゅる……ちゅぅ……ちゅるるぅ……ちゅぱ」
そうして責められる既に防波堤は壊れている、後は波が来るのを待つだけだ。
「セイバー、セイバー」
「はい。明」
名前を呼び合う。愛おしくてたまらない。俺は手でゆっくりとセイバーの髪、頭を撫でた。
「ふぅ……ふぅ」
息をつく。そうして耐えるのだ。欲望をコントロールする。
「セイバー……気持ちいい……あったかくて、柔らかくて……凄く気持ちいい……」
「ん……そうですか……うれしい、です……明……もっと、良くなって……じゅる……じゅ……は、んっ……また、大きく……あふ……すご、い……」
セイバーがしてくれている。それだけで嬉しい。それだけが嬉しい。
「は……ん……ちゅぶ……ちゅっ……ぷちゅ……ん、こく……」
彼女の喉が動く。こくこくと、唾液と共に俺の液を飲んでくれている。頭がカァッとなった。セイバー。
「はふ……ちゅ……んく……いっぱい、濡れて……明の……たくさん……ふちゅ、……いい、です。もっと、感じて……ちろ、ちゅぱ」
セイバーは亀頭をくるくると舐め回して、その後ちろちろと舌先で鈴口を舐める。
「はぁっ……それ、イイっ……セイバー、ああ、あああ……」
「ん……ぬむ……ゆっくり、してあげますね……」
口内のぬめった感触と、愛らしい舌先。それが俺を狂わせる。
ビクンッ!
体が跳ねてしまう。抑えつけてこらえる。今のはやばかった。もう少しでもっていかれるところだった。
「は……も……出そう……だけど……出したく、ない……」
「ちゅ……んあ……は、む……ふふ……明……ここが弱いのですね……?」
ちゅぷちゅぷと淫音が響く。耳まで犯される。熱心に愛撫するセイバー。愛おしい。このまま、ずっとこのままでいられたら――。
「くちゅっ……くちゅ……くちゅくちゅ……ちゅばばっ……ちゅ・う・う・うぅっ」
口内でたっぷり唾を絡められたあと、思いっきり吸われた。引っこ抜かれるような感覚。口から見え隠れする肉棒が、セイバーの唾液でぬらりと光る。
じゅっ、じゅっ、ずちゅっ……。
口元の音が止まらない。口でセイバーとエッチしているみたいだ。
「セイバー、い、い……はぁ……ああ……」
「んぷ……ぷふちゅっ……れろ、れろ……ねろ……ん、また、おおきくなりました……明の、すご、い……」
まるで夢のような時間。
「はぷ……ちゅるぱっ……ちゅぱっ……ちゅく……むぅ……んっ……んっく、んく……ちゅうるぅ……ちうちぅ……」
激しくなっていくセイバーの口淫。熱を増して。唇をきゅっと締めて頭を前後に振り、しごく。
「ずぶちゅっ……ずちゅぅ……ずちゅ……ちゅっちゅる……あ、ふ……こんなに、いっぱい、出て、きて」
こくり、こくり、と喉が嚥下する。先走り、飲まれている。
「ふ――く」
「ん……堪えて、いるのですか? ……出して、欲しいのに……」
「あ! そんな、そんなこと言われたら……っ!」
「んくちゅ……最後まで……しますから……明……たくさん、出して下さい――」
指に力がこもる。亀頭に強く吸い付き、モノを舐めしゃぶる。
「ちゅ……む、ちゅる……ちゅ……ふちゅぅ……」
丁寧に奉仕される。あったかい口内が俺のモノを犯す。
「ちゅ……ん……あ、ふ……くちゅ……くちゅ……んぁ……」
ねぶるように舌が動く。彼女も感じてくれているのだろうか? 俺のモノを求めるようにうごめく。セイバーへの愛おしさが爆発的に高まって、思いっきり抱きしめたくなる。だけどしてもらいたい。
「ちゅく……ん、む……明……あつい……です」
前後する顔。唇での刺激が先っぽを襲う。そろそろ限界も近い。だというのにセイバーの舌はいよいよ俺を責めたててきた。
「セイバー、俺、そろそろ……っ!」
「んく……いい、ですよ……このまま……」
セイバーの許しが出た。出てしまった。
「苦しそうです……早く、だして……は、ちゅっ」
竿を握っていない手が、袋を優しく揉む。くにくにと精が溜まったそこを愛撫される。こんなの反則だろ!
「は……あ……あ……だめだ……イキたく、なっ……」
「ふふ……明、ここも弱いのですか? ……ぴくぴく震えていますよ……」
もう耐えられない。全てを捨てて吐き出したい。このまま、彼女の口に――。
「明……辛いのなら無理に我慢しないで下さい……私に……出して……ん……っちゅぅ……あむ……んちゅぅ……楽になって……ちゅふ……んっ……私に、下さい……ちゅぅぅぅう!」
最後に尿道口を吸われた。それがとどめとなった。
「あああああっ、で、出る、セイバー!」
ドクッ、ビュクッ、ビュルルッ!
溜め込まれた精液がセイバーの口内で破裂する。頭がおかしくなりそうな快感……!
「セイバー、セイバー!」
頭を掴みそうになる手を必死に堪えた。それはしちゃいけない。俺は腰を突き出してセイバーの喉にびしゃびしゃと精液を浴びせた。そして……。
「じゅ……じゅずっ……ごく……ん、く……は……ちゅるっ……」
セイバーは全てを口の中に収め、肉棒を咥え込んだまま、こくり、こくりと喉を鳴らした。
「あ……セイバー、そんな、飲むなんて……」
「んく、んく……ぷは……はぁ……ふぅ……」
飲みきれなかった白濁が、唇の外にわずかだけれど飛び出した。それを舌を使って舐めとるセイバー。いやらしすぎるその所作に、俺はもうたまらくなっていた。だが彼女は休まず、手で肉棒をしごいて最後まで出させようとする。股間が痺れる。どぴゅっと出た最後の液体が、セイバーの胸にかかる。
「あ……こんな……セイバー、汚して……ごめん」
「謝らないで下さい明。……ん、それにしても、多い……明の、味……ちゅ、こくっ」
はぁ、と息をつくセイバー。俺はたまらずセイバーを抱きしめた。
「セイバー。好きだセイバー」
繰り返す告白。
「明……私、上手にできたでしょうか……?」
「うん、凄く、気持ち良かった。セイバー、ありがとう」
心をこめて感謝を伝える。
「それなら……良かった。……ん」
セイバーは力が抜けた体を俺に預けた。抱き上げて、ベッドに寝かせる。
「セイバー、今度は俺が……」
俺はセイバーの股間に顔を近づけた。
「あ、明! そんな!」
慌てるセイバー。
「俺も、セイバーにしてあげたいんだ。受け入れてくれ……」
「はぁっ……そ、そんなことしなくていいですから、やめて、離れて、明……!」
「嫌だ。たっぷりセイバーを愛してあげるんだ」
「あ、あい……はぁん」
ピンク色の秘裂が目に鮮やかだ。そこに指を当てる。クリトリスはぷっくりと充血している。丘の盛り上がった肉付きが柔らかそうで欲望をそそる。
「ダメです! わた、し、見られたくな――」
逃げようとするセイバーの両足を掴んで鼻先を股間に当てた。
「ちゅっ」
「は……あ、ダメ、ダメ、明……そんな、汚い、ですから……」
「馬鹿、セイバーだって俺の汚いのを舐めてくれたじゃないか。それにセイバーのここは汚くなんてないぞ。凄く綺麗だ。ぴちゃ」
セイバーの両手が俺の頭を押し返そうとする。それに抵抗するように首に力を入れた。
「ちゅる……ちゅぱ……れろれろれろ……」
陰裂を舐め上げる。既にそこは濡れていた。
「セイバー、濡れている……俺のをしてくれて興奮していたんだな……」
「いやっ、いや、いわないで、あきら」
「セイバーが興奮してくれて嬉しいよ。もっともっと良くしてあげるからな」
「は、ぁ……そん、な……舐める……なんて……」
「舐めるだけじゃないぞ、こうやって……んんっ」
「はっ! や、そ、そんな……! 中に……くぅっ!」
俺は尖らせた舌先をセイバーの膣穴に入れた。そしてぐにゃぐにゃと舌を動かす。内壁を舐め回すのだ。溢れてきた蜜を音を立ててすする。
「じゅるるるる」
「あ、明……! な、なな、何を……何をするのですか! そんなものを口に……ダメです。貴方が汚れてしまう……!」
「だから、汚くないし汚れもしないよ。でも、そうだな、セイバーがそう思うなら好きにしたらいいさ。さっきセイバーが俺ので汚れたように、俺もセイバーでいっぱい汚れてやるんだ」
夢中で舐める。
「セイバーの愛液……セイバーの味がする」
「ば、ばかぁっ! そ、そんな、私を辱めるなんて!」
やばい、セイバーが可愛すぎる。愛情が溢れて止まらない。
「ちゅぷ……ちゅぱ……ちゅる……じゅるぅ」
舌で温かい肉壷を味わう。こぼれ出した愛液は、シーツを濡らした。
「やぁ……いやです……いやです明……意地悪しないで……」
「セイバー、可愛いよ……もっともっといじめてやる」
「っ……。そんな、そんなの……は、離れて下さい! いくら明でもゆる、はぁっ……あっ、あぁん」
嫌がるセイバーに無理矢理顔を近づけて舌で舐める。舐める。舐め回す。
「んんっ……や、あっ……ああっ……ぁん……!」
「ひだひだも舐めてあげるな……ちゅれ……ちゅりゅぅ……れろんっ……れろれる……」
「んふぅ……はぁ……やっ……」
セイバーがしてくれたように、俺もセイバーを愛してあげたい。心にあるのはそれだけだった。
「そんな不浄なとこ……明……舐めないで……」
哀願。あまりに可愛いそれに心がぐらつく。でもダメだ。セイバーにしてあげるんだ。セイバーの両足を二の腕で挟む。そして口を使う。分泌された愛蜜を舐めとる。陰毛も顔に当たってくすぐったい。肉豆は舌先で剥き出しにしてあげる。
「あっ……は、う……」
セイバーの腰がビクンと跳ねる。体は正直に感じていてくれた。
「ああっ……は、ん……はぁ……はああっ……ああぁああ……ダメ、ダメです。やめて下さい。やめて、明……」
言葉とは裏腹に彼女のそこはしとどに濡れていく。
「セイバーは嘘吐きだな。ここはこんなに悦んでいるじゃないか」
「だって、それは……だって、このままだと、その」
快楽に身を委ねてしまいそうになるのだろう。それが怖いのだな。
「セイバー、怖がらなくていいから。俺はセイバーのどんなことでも受け止めるから。セイバーが好きだから、受け止めてあげたいんだ」
「ダメ、ダメ、このままだと、私……」
「どうなるの?」
「あ、でも、だって、や、あっ……」
「ちゅる、ちゅぷく……ちゅっ……れろんっ……れろれろ……れるれる……」
舌先で壷の中を刺激してやる。するとたまらず声を上げた。
「やぁ……ふ、う……あん……くっ……」
「セイバー、痛かったりしないよな?」
「あ、ふ……いたく、は……ありませ、ひっ!」
肉豆に吸いついていた。強めに吸ってやる。
「ちゅううううぅ!」
「ああああああっっ!!」
髪を振り乱し悶えるセイバー。蜜が止めど無く流れる。
「くちゅ……くちゅ……んく……ごく……じゅるる……」
ためらうことなく飲んでいく。極上の蜜だ。飲む以外の選択肢がない。
「あん……あっ……明……そんな……いやらしい、音――!」
「セイバーの、美味しいぞ……」
「あき、ら……そんな」
「じゅる、じゅる、じゅれろ……れろちゅっ……ちゅばばっ」
「あああっ、そ……あふ……だめ……これ以上、わた、し……」
セイバーの体がビクビクと痙攣している。もうすぐだ、もうすぐで――。
「んんんっ……あ、もっと……あぁ……んぅ――――!!」
腰がガクガクと震えた。それでイったのがわかった。男としての喜びが胸に広がる。
「は……ぁ……あきら……」
セイバーはどこか物足りなさそうに俺を見つめてくる。
「明……私、……わたし、まだ」
「うん、わかっている。足りないんだろ? これで、してあげるからな」
俺は勢いを完全に取り戻した一物に手を添えて主張する。セイバーが見つめてくる。
「セイバー、入れるぞ」
もう何度したかわからない挿入を開始する。脚を掴んで勃起したモノをアソコにあてがう。
ぬちゃ……。
粘つく音が聞こえる。セイバーのそこを亀頭で割り開いていく。
「はぁ……明、あつい……」
「ん、セイバーも熱いぞ……」
お互いの性器の熱さにうめく。
「いくぞ、セイバー」
こくん、と頷いてくれた。可愛い仕草。俺は彼女を抱きしめながら挿入していた。
「あはぁぁあ……ん、う……明が、入って、くる……」
既に五度目のセックス。処女だったセイバーの中は驚くほどスムーズに俺を受け入れてくれる。モノが完全に奥まで入り、子宮口をノックする。
「ン……はぁ……い、ん……あっ!」
強すぎる快感に怯えるように、セイバーは俺に抱きついてきた。このセックスの時に抱き合うの、好きだ。喜びが体から溢れる。
「動くよ、セイバー」
「あ、ん……はい……明の、したいように……」
ゆっくり腰を動かした。くちゅぐちゅと粘膜がこすれる音がする。
「はぁぁぁっ……ん、明……こんな、優しく……」
「ん? もっと強い方がいいか?」
「あ、いえ……このまま、このままで……」
「うん、わかった。ゆっくり、な?」
緩やかに腰を動かす。押しては引き、引いては押し、中をかき回す。セイバーの中は奥まで俺の肉棒をみっちりと包んでくれていた。
「っっく」
できるだけセイバーに負担をかけないよう平気に振る舞っているが、実際はそんなに余裕がない。セイバーの中ぎゅうぎゅうと俺自身を締めつけてくる。肉の隙間を通るようにモノを前後させる。濡れているので痛みはない。しかしこすれる粘膜の感触だけで飛んでいきそうなほど気持ちいい。
「あ、は……んふぅ……いいです、明。きもちぃ……っ」
二回目の途中から、素直に快感を認めてくれるようになった。一回目は痛みでそれどころじゃなかったしな。
「ふぅっ……俺も、気持ちいいよ。セイバーの中……」
「あ……明……いいのですか……なら、もっと……」
「うん、もっと、いっしょに気持ちよくなろう――」
じりじりと快感が増してくる。ゆっくりとした抽送はろうそくが溶けるかのような緩やかさで感度を上げてくる。
「ふ……はぁっ! あっ、んんっ……」
襞がモノに纏わりつく。ああ、心地よい。こんなに気持ち良くなれるなんて。俺は縦横無尽に腰を動かした。
「あっ、んっ、そんな……そこ、は……」
亀頭とカリでゆっくりセイバーの中を引っかく。
「あ……っ! ふ、く……あア、はぁ……」
セイバーの真っ白な肌が色づいていく。それがとても綺麗で俺は見惚れた。
「はぁん、きもちいい……あ……ふ、ぅ……明、わたし、も……わたしも、明に、してあげたい――」
セイバーは俺にその柔肉を絡みつかせてきた。うねうねと内部が動く。
「う、わ―ー!?」
どうやらセイバーにも火がついたらしい。こんなことをしてくれるなんて。
「はっ、くぅ」
セイバーの膣が俺に巻きつく。何重にも襞が絡みつく。優しく、包むように。
「セイ、バー、すご、はぁっ」
「ん……あ、明にも、気持ち良くなってもらいたいんです」
セイバーが更に愛しくなるようなことを言う。この子はどれだけ俺をメロメロにさせれば気がすむのだろう。俺は理性を捨て去り、セイバーの中をぐちゃぐちゃに突いた。
「ああ、ふぅ、んンッ! 明、おく、に……」
セイバーの可愛いいおねだり。叶えてやる。深く肉棒をねじ込み、ぐりぐりぃと押しつける。子宮に当たった亀頭が口をこじ開ける勢いで暴れる。
「はあぁっ……ふぅ、んくっ、あ、ん……」
顎を反らせて快感に耐えるセイバー。しかし彼女の中はもう快感の虜になっているようで、ダラダラと愛液をこぼす。そこはもう洪水のようだった。もうゆっくりなんてしていられなかった。俺は激しいピッチで腰を動かす。
「は……う、あ……もっと……明、もっとお願いします……構いませんから……強く――」
再びおねだり。そう言われては男として答えない訳にはいかない。彼女の要望に答えるように貫く。
「あぁ……! そう、……あ……んはぁあ」
突き込む。セイバーの体に俺の体を叩きつけるようにして腰を打ちつける。
「明……ああ……すごい……おなか、まで、とどいて……いい、ですっ」
悦びの声。完全にセイバーは快楽に落ちていた。
「や……ん……くっ……あぅっ……!」
俺が中に出入りするたびに乱れた声を上げるセイバー。その体を両腕でしっかと抱きしめる。肉と肉が激しくこすれ合う。あったかい膣内は既にトロトロのほぐれたお肉になっていた。それを必死で貪る俺の肉棒。
「は、あ――! あきらぁ、あきらっ」
セイバーが俺を呼ぶ。俺を、呼んでくれる。それが嬉しくて腰の動きが止まらない。
「セイバー、セイバー!」
首筋にキスをしながら叫ぶ。
「だめ、だめぇ……きもち、よすぎ、る……あ、こわい……あきら、あなたがきもちよすぎて、んんぁっ」
パンパンと俺の下腹部とセイバーの太ももが打ち合わさる音がする。熱くたぎる肉棒はセイバーのお腹の裏側をなぞり上げる。
「や、あん……あああ、ふあっ」
お互いの快感が、お互いを通して循環しているよう。まるで快楽の円還だ。
「だめ、だめ、あきら……わたし、お、おかしく、なっちゃ、あううっ!」
少しだけ残った理性を繋ぎとめるように言葉を吐くセイバー。俺は何かを言う余裕なんてもうとっくにない。頭が白くなっていく。
「すご、い……あきらの、おおき、くてぇ……わたし、なか、こすれ……ンんっ!」
蠕動する膣内。ざらざらした感触が敏感な亀頭をこする。もう限界だ。
「セイバー、俺、もう、イク……っ!」
「はぁ……あぁん……あき、ら……わたし、も……わたしもぉ……」
セイバーの体がびくびくと震える。兆候を感じとって最後のスパートに入った。
「あきらっ……あきらぁっ……いっしょに、いっしょ、に――」
「セイバー。出す、ぞっ!」
どくっどくっと吐き出される濁液。それがセイバーの中を染めていく。俺が、セイバーを汚している。そのあまりの快感に眩暈がしそうだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……ふぅ……はっ……せいばー」
俺はたまらなくなってセイバーを抱き寄せる。
「あきら……ああ」
「セイバー、凄く、良かった……」
「あ、ん……わたし、も……あなたが、すごく、て……」
俺達はどちらからともなく唇を寄せて、キスをした。
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2月14日
目を覚ました。最初に見えたのは金と白。セイバーの顔だった。昨日ヤってそのまま寝ちゃったんだ。……衛宮のサーヴァントとしてはいかがなものか。まあ俺がヤったんだけどね。時計を見ると昼飯の時間だった。よしよし。俺はセイバーが眠っているのを確認すると、発声式の催眠でもう少し眠っているように暗示をかけた。セイバーはこれでよし。後は衛宮だな。奴にも催眠をかけなくては。
§
衛宮には催眠をかけて教会に行ってもらった。原作再現である。それが起こればランサーは死ぬ。面倒なので原作そのままになってもらおうという訳だ。さて、それではセイバーを起こそうかね。上手くタイミングを計らないといけない。早すぎても駄目、遅すぎても……いや、遅かったらそれはそれでいいか。最悪衛宮が死んでも(以下略。
タイミングを見計らってセイバーを起こす。
「セイバー、起きてくれセイバー」
「う……ん。……? はっ」
「おはようセイバー」
優しい声色で挨拶をする。
「あ――う」
「ま、とりあえず話の前に起きようか。セイバー裸だし」
「う、うぅ」
そうしてセイバーが身繕いを整えた後、
「シロウが?」
「うん。ギルガメッシュについて聞きたいから教会に行ってくるって」
「――はぁ。またですか。…………!!」
セイバーがビクンと反応する。マスターの窮地を感じ取ったか。
「明! キャスターを貸して下さい。教会に転移を! シロウが危ない!」
「……了解」
さて、いよいよオーラスだな。
転移で飛んだのは教会の前だ。セイバーはそこから武装して飛び出していった。俺も後を追いかける。追いかけた先、教会の地下室ではセイバーとランサーが殺し合っていた。
「明! シロウを――!」
「へ、無粋な真似を!」
と。
「そこまでだセイバー。己の主を救いたいのならば、剣を納めろ。明、お前もだ。不用意に動くなよ。衛宮士郎が死ぬぞ」
ランサーのマスター、言峰綺礼の登場だ。衛宮に刃が突きつけられる。これで俺も動けなくなった。原作より早く教会に来たが状況にそれほど変化は見られない。衛宮もランサーの槍に刺されてやがるし……さて、どう動こうか。
そして、原作通りの問答が始まった。
「お前は聖杯など要らないと言った。だが、仮に十年前の出来事をやり直せるとしたらどうだ? お前は聖杯を欲するのではないか――さあ、応えろ。お前が望むのならば聖杯を与えよう」
十年前の大火災。それをやり直すことが可能な聖杯。だが、
「――いらない。そんなことは、望まない。……そうだ。やりなおしなんかできない。死者は蘇らない。起きたことは戻せない。そんなおかしな望みなんて持てない」
衛宮は泣いている。泣きながら奇蹟が手に入らないことを嘆いている。――それでも、
「それを聖杯は可能にする。万物全て君の望むままだ」
「その道が、今までの自分が、間違ってなかったって信じている。聖杯なんて要らない。俺は、置き去りにしてきた物の為にも、自分を曲げることなんてできない」
セイバーが答えを得た。これでいい。これでいいんだ。彼女の意思が変わるかどうか、それについては彼女に任せよう。でも、もし、彼女が……。
「そうか、おまえたちはつまらない」
さて、外道神父との戦いだ。と、上から降りてくる男が一人。
「お前達には不要だろうが、紹介しておこう。彼はアーチャーのサーヴァント。前回の聖杯戦争で私のパートナーだった英霊だ」
しれっと言いやがって。しかしギルガメッシュがきたか。原作通りになってくれればいいのだが。
「お、お前がアーチャーのマスターだったのか!?」
衛宮、無理すんな。お前体に穴空いてんだぞ。
「答えろ。アーチャーは何故残っている。あの火事は何故起きた。切嗣に倒されたというお前は、何故今も生きている!」
セイバーが長年の疑問をぶつける。
「そのようなこと、言うまでもなかろう。奴とお前は強力だったので、分断させる為の目くらましが欲しいと願ったのだ。あのような出来事が起きるとは私も驚いたのだよ」
「では。あの火災は、貴様が聖杯の力で起こしたと言うのか!」
「私でなくとも聖杯は同じことをしただろう。アレはそういう物だ。万能の杯と言うが、その中に満ちたモノは血と闇と呪いでしかない。お前も見たのだろう? 聖杯を破壊した際に、そこから溢れ出た闇を」
「世迷言を、聖杯は持ち主の願いを叶える魔法の釜だ。ならばあの火災はお前の願望だろう!」
「私はただ、あの土地から人がいなくなればいい、と思っただけだ。そもお前達は想像力が貧困だぞ。願いが叶う? では願いとはどうやって叶えるのだ? まさか願った瞬間に世界が変わるとでも思っていたのではあるまいな?」
「――――」
絶句するセイバー。いやぁ酷い真実である。もしセイバー視点で第四次聖杯戦争から今日までの物語が描かれたら、これほど酷い目に遭う
「元の聖杯はどうあれ、今の聖杯は力の渦に過ぎない。緻密な計算、相互作用による矛盾の修正など論外だ。アレはな、ただ純粋な力に過ぎない。わかるか? あの魔力の釜は、持ち主の願いを『破壊』という手段でしか叶えられぬ欠陥品だ」
「な――それでは話が違う!」
「違うものか。人を生かすということは、人を殺すということだろう。この世はすべからく等価交換だ。調和など気にしていては願いなど叶わぬ。つまり弱者からの略奪による変動だ」
セイバーが息を呑む。彼女が求めていたものとはあまりに違うからな。
「ならば、聖杯というのは」
「持ち主以外のモノを排除する。この上ない毒の壷だ」
だからこいつにだけは聖杯を渡しちゃ駄目なんだよ。今すぐ殺したい。でもそうするとギルガメッシュに俺が殺される。全員に死ねと命じることもできるが、もうそれはしなくていいだろう。ランサーが俺の想定通りに動いてくれれば、絶対催眠を使わなくても聖杯戦争は終結する。サーヴァントを催眠で殺したら俺の身がヤバイ。ばれたら終わる。
「ではゴミを始末しろ、ランサーは小僧二人を、アーチャーはセイバーだ」
そして言峰は後ろを振りかえることなく階段を上って行った。――で、
ガキィッ!
飛び出す二つの影。
「っ!?」
「なっ!?」
驚く衛宮とセイバー。それもそうだろう。ランサーとギルガメッシュがお互いを攻撃したのだから。ランサーは元々別の人物に召喚されたが、言峰に奪われたのだ。そしてここにきて我慢の限界を迎え、反抗したのだ。さて、俺達は二人が争っている隙に逃げるかね。
§
衛宮邸に戻ってきたぞ、と。とりあえずセイバーには衛宮の近くにいるように言った。そうすると聖剣の鞘が効力を発揮して少しでも回復力が上がるだろうからな。ランサーはすぐにでもギルガメッシュに敗れて消えるだろうし、それで衛宮の傷も塞がるだろう。今は衛宮とセイバーを二人きりにしてやろう。詳しい話は落ち着いてから、かつ師匠も交えてだ。
「聖杯を壊そう」
回復した衛宮がそう言う。
「それがいい」
「…………」
師匠は黙っている。言峰さんがランサーとギルガメッシュのマスターでかつ
「言峰さんがいるのは柳洞寺だ。そこで聖杯の降霊を行うつもりだろう」
今回の聖杯戦争で聖杯役を務めるのはイリヤの心臓だ。原作では生きて衛宮邸にいたところを攫われたが、この世界では既に俺が殺した。下半身を潰すという酷い状態でな。恐らく言峰か王様がアインツベルンの城に赴きイリヤの心臓を手にしているだろう。
「しかしあの人が聖杯を手にするには障害が三つある。セイバー、アーチャー、キャスターだ。俺達はこの三人のサーヴァントで言峰さんとギルガメッシュを相手にしなければならない。ま、そこんとこ俺は気楽に考えているけどね。ギルガメッシュはセイバーとアーチャー、言峰さんはキャスターで相手にすれば勝てるよ」
「……明、それは……」
昨日聖剣での勝負に敗れたセイバーが不安そうにしている。
「だーいじょうぶ、アーチャーがいればギルガメッシュは恐れるに足らない。な、師匠?」
「…………明、アンタどこまで知ってるの?」
「詳しい原理は全くわからないけど、アーチャーにギルガメッシュと同じ真似ができるってことはわかるよ。この間の初対面の時やっていたらね」
「……お見通しって訳か……にしてもこんな形で聖杯戦争を終わることになるとはね」
師匠も見ていたからアーチャーに問いただしたはずだ。つまり今の師匠はアーチャーの能力を十全に知っているということ。ならばわかるだろう。アーチャーこそがギルガメッシュに勝てる唯一のサーヴァントだと。そこにセイバーを加えれば勝率は更に上がる。言峰(把握していない)もギルガメッシュ(贋作者だと侮っている)もアーチャーがそこまで天敵だとは思っていないだろうからきっと倒せる。
乖離剣を使われる前、余裕を見せている時に倒すよう言ってある。まあアーチャーがいれば乖離剣は使えまい。アーチャーが弾幕を張っていれば、一つの剣を取り出して魔力を込めて放つ動作ができないだろうからな。
エクスカリバーの鞘については黙っていた。話しても信じてもらえないだろうし、信じてもらえたら今度は何故知っているって話になるし。
§
そうして全ての準備を整えて柳洞寺に到着した。これから決戦だ。
「来たか。セイバー」
山門のすぐ前にいるのはギルガメッシュだ。奴はセイバーしか見ていない。しかし、言峰はいないのか。まあ一緒に王様と一緒にいるパターンも考えていたが、別々にいるなら面倒がなくていい。……ギルガメッシュにセイバーと戦うからお前は下がっていろとでも言われたのかな。そうでないとさすがに言峰がアホすぎる。この状態ならほぼ確実に俺達が勝つよ。いやぁ王様の手綱を握るのは大変ですなぁ。俺は絶対催眠があって良かった。キャスターは自由意思ゼロです(最低)。
「邪魔は要らぬ。雑種共、言峰に用があるのなら早々に消えよ。奴は祭壇で貴様らを待っている」
「……」
俺達四人は通りすぎた。セイバーとアーチャーを残して。そして、
「よく来たな衛宮士郎、凛、明。このような展開になるとは思ってもみなかったが……まあいい」
「前口上なんて必要無い。キャスター、攻撃しろ」
そうして、蹂躙が始まった。
聖杯であるイリヤの心臓は持っているのだろうが、肝心のサーヴァントが三体も吸い込まれずに残っているのだ。孔など開かない。泥も出ない。一方的にキャスターが言峰を釣瓶打ちしただけで終わった。ギルガメッシュと一緒にいればもう少し何とかなったかもな。まあその場合でも二人を上手く引き離して個別に殺すんだけど。そうしていると、セイバーとアーチャーも到着した。――と。
「なんだ……アレ」
孔が開きやがった。ギルガメッシュを倒したからか、確かあいつめっちゃ容量があるサーヴァントらしいからな。三人分一気に埋まったってか。
「どうやら八人目のサーヴァントであるギルガメッシュを倒したことで、聖杯の起動に必要だったものが埋まってしまったみたいだな。――衛宮。セイバーに命じてエクスカリバー使用させてくれ。どうせなら二つある令呪、二つとも使った方がいいな。確実に聖杯を壊したいなら重ねて命令すべきだろう」
俺がそう言うと衛宮は顔をしかめた。イリヤとバーサーカーの時を思い出したのだろう。だが事態がもはや一刻の猶予もないことを察知すると、静かに命令を下した。
「セイバー、令呪をもって命ずる。聖杯を破壊しろ」
そうして、終わった。辺りには何もない。何もかも吹き飛んだ山頂は、まっ平らな荒野に変わっていた。
「これで、終わったのですね。私達の契約もここまでです。貴方の剣となり、敵を討ち、御身を守った」
「いや、まだだよセイバー」
万感の思いを込めた述懐を遮る。
そして俺は――。
後書き
同じ大火災の被害者である主人公には、言峰は問答しないの? という疑問があるでしょうが、十年の生活の中でそれなりに交流のあった二人なので、言峰は主人公が過去の救いを求めているような人物ではないと知っていたのです。
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☆エピローグ(セイバー4)
目が覚める。朝だ。朝がやってきた。戦争がない朝が。
「おはようございます。明」
一緒のベッドで寝ていたセイバーが挨拶をしてくる。自然、笑顔になる。
「おはよう。セイバー」
そして俺は彼女を抱きしめる。
「あっ、明……」
軽くキスをする。
「ん……ちゅ……ちゅっ」
「ちゅぅ……明……まったく……」
仕方ないという風だが、しっかり顔が紅潮しているセイバー。
「ん、起きるか。朝飯にしないとな」
「はい」
名残惜しいが起きて学校に行かないとな。
§
あれから、俺はセイバーと契約した。令呪を失った衛宮とセイバーの間に割って入ったのだ。そしてお願いした。俺と契約してくれないかと。聖杯がなくなったのだ、魔術師と契約していないとこの世に留まれない。だから俺の使い魔になってもらったのだ。俺の馬鹿みたいに容量のある魔力でセイバーを支える。その分の働きはしてもらうが、繋がりとしてはそんな感じだ。UBWルートのGoodEndだな。とにかく俺の使い魔としてならセイバーを現界させられる。後はセイバー自身の意思だけだった。
朝食を食べたら片付けをセイバーに任せて学校へ行く。
「それじゃセイバー、行ってくるよ……ちゅ」
いってきますのキスをする。
「んっ……行ってらっしゃい、明」
セイバーに見送られ、借りているアパートから出発する。セイバーはこの間自由だ。主に家事をやってもらっている。食料などの買い物もだな。と、
「おはよう佐藤くん」
「おはよう遠坂さん」
師匠の登場だ。今更だが魔術師としての師弟関係は秘密なので、人目のある場所ではお互い苗字で呼ぶ。連れだって歩ったりもしない。ある程度距離を置いて学校へ行く。
校舎に入ったら最近常に一緒にいた人物が目に入った。
「あ」
衛宮だ。
「おはよう衛宮」
「……ああ、おはよう、佐藤」
俺に対して思うところはあるだろうが、表面に出されることはない。俺としては血を見るくらいの喧嘩になることも覚悟していたのだがな。
俺は自分の教室に行き、席に腰掛ける。そして誰も俺に意識を向けていないことを確認して、行動計画表を取り出した。まあ見られても黒歴史ノートのような反応をされるだけだろうが。既に戦争は終わっている。俺はチェックがついたそのノートをパラパラとめくった。聖杯戦争の被害は、言峰綺礼、間桐慎二、間桐桜、間桐臓硯、イリヤ、彼らだけが被害者だ。あ、ランサーとキャスターのマスターもいたっけか。でも全員マスターか魔術師だ。それでもって聖杯を破壊できた。セイバーも使い魔にすることができた。俺の計画と違うところも多々あるが、おおむね平和的に終わったと言っていいだろう。間桐家には災難だったがな。衛宮も自分の契約したサーヴァントを取られた形になったが、まあこれはいいだろう。
後は、破壊の願望器と化した聖杯を、何年後かに解体して冬木市の聖杯戦争は終了だ。そしたら後は普通に暮らしていけばいい。魔術に関わる出来事が起きたら自分の魔術とセイバーに解決してもらう。
俺は無事に終わった聖杯戦争を思い、窓の外をぼーっと眺めた。ああ、終わったんだな……。
§
学校を終えて帰る。アパートは先日新しく契約したものだ。叔父夫婦に催眠をかけて一人暮らし――正確には二人だけど――を認めさせた。
「明、おかえりなさい」
「ただいま、セイバー」
真名はわかっているが、セイバーと呼ぶ。セイバー自身がそう呼んで欲しいと言ってきたのだ。過去に生きたアルトリアではない。アーサー王でもない。この時代に呼び出され、俺と出会ったセイバーという名前で呼んで欲しいと。
「んちゅっ……セイバー」
「あ……んむぅ……ちゅ」
お帰りなさいのキス。俺達はまるで夫婦だ。まったりと午後の時間を過ごし、夕食をとる。そしたら後は夜の時間だ。
§
「セイバー、入れるぞ」
既に濡れそぼったそこに俺の一物を入れる。
「あぁ……明……」
俺のモノを入れられてうめくセイバー。可愛いなぁ。ぎゅっと抱きしめる。体位は正常位だ。以前後背位をためしたこともあったが、
「あ、明……この格好は、その……貴方の顔が見えない……」
「不安かい?」
「は、はい……できれば、向き合った状態の方が……」
ということで正常位や座位などが主流となった。騎乗位はまだ試していないが、無理だろうなぁ。
「明……そのぅ、動かないのですか……?」
おっと、考え事をしていたら時間が経っていたようだ。俺はモノをセイバーの最奥に突っ込むと、ゆっくり、ゆっくりと引き出す。カリで膣壁を引っかく。ぞりぞりと。
「あぅん……はぁ……あ、あ……」
「気持ちいいかい? セイバー」
「は……い、明のが……中をなぞって……はぁ、きもち……いいです……」
蕩けた表情で接合を享受するセイバー。愛おしくなってキスをする。
「んちゅっ……ちゅ……ちゅ」
「んむぅ……は、ふ……」
抱きしめたままするキス。甘美だ。温かな体が心地いい。
「ちゅる……ちゅぱっ……ちゅぷ……」
「ちゅっ……っ……ぴちゅっ……」
ぢゅるぢゅるとセイバーの口内を味わう。舌が内部を舐め回し、唾液を交換する。
「明……あきらぁ……ちゅっっぅ」
セイバーも俺の唾液を吸ってくれる。思わずにやけそうになるのを全力でこらえる。だらしない顔は見せたくない。
「セイバー、好きだ……」
「明……私も……愛、してる……」
告白。あの時もしたが、それからもずっと俺の意思を伝え続けている。彼女が大切だと、愛していると。
ちなみに、日が進むごとに俺のことが好きになる、という催眠は解除しておいた。あまりに俺を好きになりすぎてしまうと日常生活に支障が出るからな。
「んっ……んんっ……」
腰を動かす。下腹部でセイバーのお尻を打ちつける。ぱすぱすと音が鳴る。
「ぁっ……うぅん……くふぅ……」
セイバーの喘ぎ声。思考が溶ける。柔らかな彼女の体。ああ、幸せだ。
「っゃぁああっ……あああっ……んんっ……ぁふ……あつっ……!」
モノがぬるぬるの膣に刺激されて気持ちいい。だけど必死に我慢する。耐えれば耐えた分だけ快楽も大きくなる。
「ん……っぁああっ……あ……ああっ!!」
突き立つ俺のモノに、柔らかく溶けた熱いモノが覆う。
「ん……んっ……ぁ……は……あ……」
狭く、窮屈な肉の隙間を、グイグイと押し進む。
「あ……は……」
セイバーは全身から汗を噴き出している。玉の汗が浮かぶ。
「きつかったら言ってくれな」
「は……はい……んんん……ぁあああっ……は……あ……」
なんとセイバーの方から腰を動かして俺のモノを奥まで咥えた。
「あ……熱っ……ぃ……これ……ぁ……はっ!」
中は確かに熱い。でも彼女が感じている熱さは別のものだろう。
「あ……ぁは……っ……や……動いては……ん……っ……ぁ……」
俺が腰を動かすといやいやしてきた。体をブルッと震わせ、内側からわき起こる何かを必死に耐えている。
「あ……明……私の、なか……どう、ですか……?」
驚くような質問がきた。
「あ、ああ……凄い、気持ちいいよ……」
「ん……うん……」
セイバーの中は熱くって、狭くって……。モノをキュウッと締め付けたまま、中々離してくれなかった。
「セイバー、できればもうちょっと力を抜いて欲しい……」
「ん……そんな……こと、言われても……」
モノを差し込まれた状態では、そう簡単に体の力は抜けないらしい。
「は……ぁあ……」
少し苦しそうだ。背中にそっと手を伸ばす。なでなでする。
「ひゃっ……ああ……うん……明……あまり、触れないで……」
肌が敏感になっているのだろう。
「あ……や……は……あ……ぁ……は……んんっ……あ……や……ぁあっ……ん、んっ……ふぁ……」
声に甘い響きが混ざる。寝転がった状態でお尻を微妙に動かしてくる。やたらエッチだ。小さな腰がせわしなく揺れ動き、こすりつけられる。
「ん……ぁ……は……ぁ……あ……あっ……」
くちゃ……ぴちゃ……。
二人の重なり合う部分から、湿った音が聞こえ始める。セイバーの動きに合わせて、少しずつ俺も腰を揺らし始める。
くちゅっ……ぷちゃっ……パン……パン。
いやらしく肌がぶつかる音がする。
「セイバー、あったかい」
膣の中と、体。両方が俺を暖めてくれる。
「ああ……あきら……私も、温かいです……中の、これ……あつ、い……」
俺の棒は熱く、硬くなっていた。それでこつこつとセイバーの奥を叩く。
「あぁ、ん……んっく……こ、んな……ああ、硬い……明の……硬い、です……」
「中で俺の硬さがわかるかい?」
「は、い……明の……たくましくて……私……参ってしまいそうです……」
「俺はセイバーの柔らかさに包まれて、気持ちいいよ」
お互いの感触を味わう。すっかり慣れた内部。だけど気持ち良さと愛情には慣れることはない。何度でも、互いを貪りあうのだ。俺は少し体勢を変え、カリで中を突きながら、引いてぞりぞりとひっかく。
「はぁぁぁん。ああ、明……それ、駄目……」
「駄目じゃないよセイバー、もっと、もっと、してあげる……」
「は……あ……もっと……なんて……ああ、わたし、だめになってしまいます……」
セイバーは綺麗だなぁ。そしてとても可愛い。
「セイバー、キス」
「んっ……きす……ですか……ちゅ……ちゅぷ、れ……」
「んくちゅっ……ちゅ……ぷちゃ……ちゅぅ……」
唇を吸う。ちゅうちゅうと。更に腰を使って追い込む。
「あ……ん……はぁふっ……ダメ……です」
「どうして?」
わかっているが問いかける。
「わ、たし……もう……果ててしまいそうで……」
「ん、それじゃ俺もイクよ……」
頑張ればまだまだいけそうだったが、セイバーに合わせて腰の力を抜く。
「セイバー、このまま、中に……」
「……はい。出して……下さい。明の……精……」
こんなことを言われたらたまらなくなるのは当然だ。先っぽ、亀頭をぐりぐりと壁にこすりつけて突破しようとする。
「んぁああっ!」
「くっ!」
ドクッ、ドクッ!
精液が発射される。セイバーの中を汚していく。
「セイ、バー」
「あきら……あ、ああ、あ……」
俺達はお互いの熱に浮かされたようにまどろんでいた……。
§
こうして俺とセイバーは毎日のように交わっている。お互い愛し合っているから。
最後に、セイバーがこの現代に残ったことについて、俺が催眠を使ったかどうか気になる人もいるだろう。真実は伏せておく。自由に想像してみてくれ。だが、俺は今、とても幸せだ。そしてセイバーも幸せを感じてくれているだろう。だからこれでいい。これでいいんだ。
俺は無事生き残り、愛する人を手に入れた。今はただ、この平穏を味わっていたい。ずっと、このまま……。
後書き
これにてstay nightでエロSSは終了です。ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
ここまで四作品のエロSSを書いてきた私ですが、さすがに疲れました。今書きかけのエロSSが三作品ありますが、どれも完結は厳しそうです。完結しなければ投稿することはないので、日の目を見ることは無いかな……。まあもしかしたらいつか投稿するかもしれませんが、予定は未定です。私の拙い作品を楽しんで頂いた皆様には感謝の言葉もございません。
それでは、またどこかで。
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