魔法少女リリカルなのは~俺は転生者じゃねえ!~ (サッカー好き)
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第1話『俺は転生者じゃねえ!』

こんにちは!

匿名ですが、サッカー好きと申します。

違う名前で作品を投稿しているのですが、ネタが浮かばず気分転換で書いていたものを投稿してみました。

楽しんでいただけたら幸いです。


今日は晴天でお出かけ日和。それなのに何故月曜日と言う学校の登校日なのだろうか?

 

俺の名前は橘。

どこにでもいる普通の小学三年生。

 

休日が空け、学校の登校日が5日(ゆとり教育です)も続くことに絶望している最中だ。友達に会えるのは嬉しいが勉強がマジで嫌いだ。

 

「おはようっす」

 

教室のドアを開け、いつも通りクラスのみんなに挨拶する。みんなもおはようと元気に返事をしてくれた。

 

俺は自分の席に座ると俺はノートを開いて周りの友達に声をかける。

 

「ここの問題がわからないんだ。誰か教えて!」

「えっ?またなの橘くん?」

「今回の宿題そんな難しいところあったけ?」

「ここなんだけどさぁ・・・・・・」

 

集まって俺にわからない問題について教えてくれる友人たち。本当に助かる。

 

「いや、みんな本当に助かったよ。ありがとう」

「ううん。大丈夫だよ」

「おう、これで貸し一つだな」

「つうか、なんでわからないんだよ?先週の金曜に習ったやつじゃん」

「しょうがねえだろ?俺の苦手な分野だし、習ったの一回だけじゃん。その一回で理解しろとか無理だろ」

 

「でも橘って『転生者』じゃん?」

 

俺は友達の一言に固まってしまう。だがすぐに回復し反論する

 

「だから、俺はその転生者じゃねえって言ってんだろ!何回言えばわかるんだ!」

「でもさあ・・・」

「ねえ?」

 

周りの友達たちも俺が転生者だと思っているようだ。何故なのかは当然俺も理解していた

 

「その輝く銀髪に」

「赤と黄色のオッドアイ」

「既に完成された美形なイケメン」

「そして名前が橘騎士(たちばなナイト)

 

「「「「この4拍子が揃って疑うなと言う方がおかしい」」」」

 

「ぬぐぐぐぐっ!」

 

友達の言葉に何も言い返せない俺。ちなみに俺の父さんや母さんは普通の黒髪黒眼のちゃんとした日本人。普通に考えたら俺みたいな子供が生まれるはずがない。

 

銀髪でオッドアイ。その異常変異に俺はすぐに精密検査が行われた。結果は異常なし。至って健康体のようだ。

 

そしてこの名前だが銀髪・オッドアイの組み合わせで普通の名前では後々俺が大変だろうと考えてくれた名前らしい。

 

「そんな事言われても俺には前世の記憶や特殊能力なんて持ってないぞ」

「そうだね。その4拍子を抜いたら橘くんなんて」

 

「「「ただのバカな普通の小学生だよね」」」

 

「待てコラ! なんだその一体感は!!」

「ヤバい! 転生者が怒った!」

「逃げろ! 騎士(ナイト)様に聖剣で斬られちまうぞ!」

 

俺が怒ったのを見て散開するみんな。俺は30cm程の定規を持ち席を立った。

 

「上等だ!お望み通り、俺の聖剣でお前らを叩き斬ってやる!!」

 

キャーと笑いながら逃げだすみんなを追いかける俺。

 

これがいつもの風景。

 

俺はなんやかんやで学校が好きで友達とバカするのが好きでちょっと容姿が変な普通の小学生だ。

 

 

 

 

 

 

 

朝のバカ騒ぎが担任の先生に発見され、鉄拳制裁(なぜか俺だけ)によって終了してから既に4時限目が終わり昼休みの時間だ。

 

俺が通っている私立聖祥大附属小学校は私立のくせに弁当持参と給食ではない。もう慣れたがたまにテレビで見る他の小学校の給食風景を見ると無性に食べたくなってくる。

きな粉揚げパンとかフルーツポンチとか食ってみたい。

 

「おーい、橘!」

「ん?」

 

俺が無駄に給食について考えていると友達が俺を呼んでいた。

 

「なんだ?」

「ほらお前のお姫様が迎えに来たぞ」

 

指さす方向を確認すると両腕を組んでこちらを見ている金髪で活発そうな女の子が居た。

 

「おいおい、前から言っているが、奴は俺のお姫様じゃねえって。あいつはどちらかっていうと俺の平穏を脅かす魔王と言っても過言じゃない」

「誰が魔王だって?」

「へぶっ!?」

 

いつの間にか俺の席まで来ていた魔王が俺に拳骨を喰らわせてきた。

「俺が殴られるまで気づけないとはこの魔王できる!!」

 

「だから魔王じゃないって言ってるでしょうが!!」

 

「あれ!? 俺まだ何も言ってないのだけど!?」

 

「口に出てたわよ!!」

 

うん、知ってた。

ちなみにこいつはアリサ・バニングス。

俺の幼馴染で宿敵と言っても過言ではない。

 

「とりあえず戦略的撤退!!」

「逃がさないわよ!」

 

逃げようとするが回り込まれた。だが甘い。俺はくるりとアリサを軸にして華麗にルーレットターンを成功させ―――

 

「ぐおっ!?」

 

―――出しっぱなしの椅子に突っ込みそのまま転倒してしまった。

 

席を立ったらちゃんと椅子を仕舞おうな?

俺みたいな犠牲者が出るから!

 

「ほぼあんたの自業自得でしょ。さあ、行くわよ」

「待って!?転倒したままの俺をそのまま連れて行こうとしないでくれ!?痛い!?背中擦れたり、机や椅子にぶつかって体中が痛い!?」

 

片足を掴まれ教室の外を出るまで俺は引きずられた。

 

「ほら、なのはやすずかが待ってるんだから寝てないでさっさと来なさい」

「お前は他に言う事はないのか?・・・んっ?と言うことはまたいつものお食事会か?俺なんか呼ばずに三人で食べればいいじゃないか?」

「何言ってんのよ?一年生の頃からそうしてるのだから今さらじゃない」

「そりゃそうなんだが・・・・・・・・」

 

呆れた表情で見るアリサをよそに俺はちらっと周りを見渡す。

 

『相変わらず仲が良いな~』

『微笑ましいね~』

『リア充爆発しろ!!』

『あれが、あれが転生者の力だというのか!?』

『とりあえず橘の筆箱の中に大量の画鋲を入れておこう』

『ついでに机の中に爆竹を仕込んでおこう』

 

「それじゃ行くわよ」

「ちょっと待って!無駄にハイレベルな苛めに遭おうとしてるんだけど!?」

「そんなのいつものことでしょ? 早く行くわよ」

「そんないつものことは嫌だ~~~!!」

 

俺はアリサに引きずられながら目的地の場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさ~、いつも思うんだがなんで俺を昼飯に誘うんだ?俺が居なくても楽しくできるだろ?」

「・・・・・・・・別に良いじゃない。前から一緒に食べてるんだから」

「まあ、良いけどよ・・・」

 

確かにアリサとは幼稚園の頃からの付き合いでその時から一緒に遊んだり、飯を食べたりしている。

 

今さら嫌とか思う訳ないのだが・・・

 

「それにあんたが居ればあのバカが近寄らないじゃない」

「俺は蚊取り線香かなんかか!?」

 

アリサは幼馴染を便利な何かと勘違いしているのではないだろうか?

 

「とにかく早く行くわよ。2人が待ってるわ」

「わかったよ・・・」

 

俺はアリサとの付き合いをもう少し考えるべきなのではないかと思いながら付いて行く。

 

この学校は基本屋上を開放してあり、昼食を食べたりなどの目的で使用する生徒が多い。

 

「なあなあ、良いだろう?」

「だから嫌だって言ってるでしょ!」

「そんな事言わずにさ。本当は嬉しいけど恥ずかしがっているんだろ?」

「もうしつこいよ!」

 

だから決してナンパをするような場所ではない。

 

1人の少年が2人の少女に声をかけていた。少女達はとても嫌そうにしているのが遠くからでもよくわかる。

まあ、全員俺の知り合いなんだけどね。

 

「アリサ・・・」

「ええ。一足遅かったようね・・・」

 

ちなみにその少女たちが一緒に昼食を食べる予定の月村すずかと高町なのはである。

 

そして、少年の方が神崎和也。こいつは何かとアリサ達にちょっかいをかけてくる。何やら俺の嫁だ!とかなんとか言ってくる変な奴だ。

 

「神崎!いい加減にしなさい!嫌がってるじゃない!」

「この声は嫁のアリサじゃないか。俺の事は和也と呼んでくれって言ってるじゃ・・・!?」

「よっ」

 

振り向いた神崎が俺を視線に捕えた瞬間、硬直してしまう。なので俺は軽い挨拶をすることにした。

この様子を見てわかると思うけど神崎は俺の事が苦手なのだ。

 

簡単に理由を説明すると俺と神崎が初対面の時、俺に暴力振ってきたんだよ。それで色々あって俺はまさかの一カ月入院するほどの怪我をしたんだ。

 

それで俺が退院すると神崎は俺を避けるようになってた。

 

・・・うん。説明した俺も何故苦手になったのか分からない。俺を大怪我させたことによる罪悪感なのか、俺が入院している時に何かあったのか。

 

まあ、なにはどうあれ。

 

「ちっ・・・。そういえば俺は用事があるんだった。俺の嫁たちよ、またな。」

 

そう言って神崎は屋上から立ち去った。

それを確認したアリサはすぐに絡まれていた2人の元へと駆け寄った。

 

「2人とも大丈夫だった!?あいつに変なことされてない?」

「う、うん」

「大丈夫だよ、アリサちゃん」

 

少しげんなりしているすずかと高町。神崎の相手はかなり疲れたようだ。

 

「すずか、高町。お疲れさん」

「あっ!騎士(ナイト)君!」

「こ、こんにちは、橘くん」

 

さっきまでの表情が嘘かのように晴れやかになるすずか。

高町はまだ少し元気がない。何故か俺を避けてるみたいなんだよな・・・。理由とか全く分からないし・・・。

 

「ごめんね、二人とも。このバカがすぐに従わなくて」

「ちょっと待て!逮捕されて抵抗する犯罪者みたいな言い方をするな。俺は無罪だ。善良な市民だ」

「Doubt」

 

それでも俺はやっていない。

決め付けは良くない事なんだぜ?

そして無駄に発音が良いアリサにイラッとくる。

 

「つか、あいつが居なくなったんだから俺はもう御役御免じやね?帰っていい?」

「何言ってんの、そんな訳ないでしょ。またあいつが戻ってくるかもしれないじゃない!」

「ええ~~」

 

大丈夫だよ。一回追い払えば来ないさ。

明日には来るだろうけど

 

「えっ・・・騎士(ナイト)君帰っちゃうの?」

「・・・そんな訳ないだろ?アリサのせいで持って来れなかった弁当を持ってくるだけさ」

「ちょっと!私との扱いの差が違いすぎない!?」

 

日頃の行いの差です。

俺はアリサの言葉を無視し、弁当を取りに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

アリサ達との昼休みが終わり、学校も終わって放課後。

俺はアリサ達と一緒に帰宅していた。

 

いつもは、アリサかすずかの送迎車が来るんだけど今日は塾があるから徒歩だ。

塾まで送ってもらえばいいじゃんと思ったが送ってもらう程距離はないし、塾の開始時間まで余り過ぎてしまうらしい。

 

「だからって、塾に通ってない俺も一緒に行くのはどうかと思う」

「良いじゃない。あんた、帰っても家でゲームしているだけでしょ?」

「そ、そそそそんな事ないし!ゲーム以外に脳トレとか知恵の輪とかしてるし!」

騎士(ナイト)君。その二つは広く見ればゲームじゃないかな?」

 

ええ、その通りです。脳トレもゲーム機の奴なんでゲームのようなもんです。

 

「でも、ゲーム好きのくせには弱いのよね。この前やった格闘ゲームだって、なのはにすら負けてたのに」

「違いますー。なのはには手加減してあげてたんですー。アリサと違って純粋な高町を苛めたら可哀想だろ」

「そのなのはに、十戦十敗して泣きの一戦でも完封されたの誰だったかしら?」

 

何ノ事カデショウカ?身ニ覚えガゴザイマセン

 

「で、でも橘くんは、すずかちゃんより運動神経が良いよ?私なんかじゃ到底及ばないもん」

「そうだね。クラス対抗のドッジボールも必ず私と騎士(ナイト)君との一騎打ちだし、その時の勝敗はナイト君が勝ち越してるし」

「でも、勉強はからっきしじゃない。そんなんじゃ将来が不安だわ」

 

さっきからアリサの俺に対する当たり具合が半端ない。俺の精神がどんどん削れていくよ!

 

「大丈夫だし!俺は将来、世界一のプロサッカー選手になるんだからな!」

「そう。ちなみにリフティングは何回出来んのよ?」

「・・・調子良くて10回です」

 

なんだよ!悪いのかよ!リフティング出来ないからってプロになれない訳じゃないだろ!

 

「正直あんたの将来が本当に不安よ」

「だ、大丈夫だよ!もし騎士(ナイト)君がニートになっても私の秘書として雇って上げるから!」

「ちょっとすずか!?・・・もう、仕方ないわね!ニートになったら私の執事にしてあげるわよ!」

「おいコラ!その申し出はありがたいが、人をニートになる前提で話してんじゃねえ!」

 

どんだけ失礼な奴らなんだ!せめて、夢の手伝いをしてくれるとか言ってくれてもいいじゃないか?

まあ、もしニートになったらその申し出はありがたく受け取るがな!

 

「・・・・・・」

「?どうしたの、なのは?」

「・・・何か聞こえない?誰かが呼んでいるような声が・・・」

 

高町がきょろきょろと首を動かして辺りを見回していく。

つか、声?俺には全く聞こえなかった。アリサとすずかも同じようで首を傾げている。

 

「あっちの方!」

「ちょっと、なのは!?」

「なのはちゃん!?」

「お、おい!待てよ!」

 

なのはを先頭に走り出す3人。俺はその後をすぐに追いかける。しばらくして立ち止まったかと思えば、3人はかかんで何かを見ているようだ。

俺もその上から覗き込んでみると、そこには黄色い毛皮をしたネズミ、ではなくフェレットが力なく倒れていた。

 

とりあえず、塾ではなく動物病院に向かう事になりそうだ。




如何でしたでしょうか?

少しは楽しんで頂けたでしょうか?


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第2話『本物の転生者がいた!』

2話目です!

今更ですが、主人公はあまり原作の戦闘に関わりません。

日常パートでのほほんとした感じを目標としてます。

それでは、本編を楽しんでくれればと思います。


「よっ!俺は橘騎士(ナイト)。宜しくな!」

「・・・・・・」

 

俺は目の前にいる男子に自己紹介をしたのだが凄い鋭い目で睨んでくる。

いきなりだから、順を追って説明すると昼休みに俺はいつもの通り、アリサに連行されたのだが、屋上に着いたらすずかと高町以外に知らない男子がいた。

 

どうやら神崎ではないようだったので、話を聞いてみれば、その男子は今日来たばかりの転校生で、名前は皇 拓真(すめらぎ たくま)。高町のお友達だった。

 

高町が幼稚園生だった時に、皇と一度遊んだだけらしいが、その時に色々と助けてもらったんだとか。

しかし、すぐに引っ越ししてしまい、今日まで会う事はなかったんだって。

凄い!まさに運命の出会いだな!

 

そんな話を聞いた俺は皇に自己紹介をして挨拶したんだけど、今のように黙って俺を睨み付けるだけ。

そう言えば、神崎と初めて会った時もこんな感じだったな

 

「ちょっと!騎士(ナイト)が挨拶してるのに何も言わないなんて失礼じゃない?」

「お、落ち着いてアリサちゃん。で、でもアリサちゃんの言う通りだよ?私達の時はすぐに返してくれたのに・・・」

「た、拓真くん・・・?」

「・・・皇拓真だ」

 

溜息を吐いてからそう言い、背を向けたかと思えばそのまま歩き出して俺達から離れていく。

 

「た、拓真くん!ど、どこに行くの?」

「用事があるんだ、着いてくるな。それと昼飯は1人で食うから一々誘うなよ」

「え、あ・・・」

 

高町を厳しい言葉であしらい、皇はすたすたと歩いていく。

 

「まあまあ、ちょっと待てって皇」

「っ!」

 

俺が皇の前に周り込んだら少し顔を歪めた。

やっぱり、原因は俺にあるんだろう。初対面だと、この髪や目で色々戸惑われるからな。

 

「・・・なんだ」

「用事済ませたらまた来いよ。皆で飯食べようぜ!」

「・・・断る」

「そんな事言うなよー。女子3人に、男子1人って気まずいんだぜ?」

「・・・・・・」

 

今度は完全に無視されてしまい皇は屋上から居なくなってしまった。

なんつーか、クールな奴だな

 

「あーあ、フラれちまった。すずか!慰めて!」

「え、う、うんっ!良いよ!」

「すずかー」

「なにバカな事言ってんのよ!」

「へぶっ!?」

 

腕を広げて笑顔で迎い入れようとするすずか(天使)に向かって抱き付こうとしたらアリサ()の拳骨によって阻止される。

痛いけどナイス。

 

「あんた、空気が悪くなったからってその冗談はないでしょ!」

真剣(まじ)すまないと思っている」

 

俺もすずかが慌てふためく姿を想像してたんだけど、まさかの両手を広げてウエルカムになるとは思わなかったぜ。

そのまま流れに乗ったけど俺はアリサが止めてくれると信じてた!

 

そして、すずかよ。冗談だったの!?と言いたそうな驚いた顔をするんじゃない。俺はそこまで軟じゃないぞ。

 

「今度はすずかじゃなく、高町にするよ」

「ええっ!?」

「そんな事言ってんじゃないわよ!」

「・・・分かった。じゃあ、アリサが俺を慰めてくれるんだな!アリサー」

「・・・・・・ふんっ!」

「痛い!?」

 

アリサに抱き付こうとしたら弁慶の泣き所にトゥーキックを頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

屋上から去り、階段を下りていく拓真は険しい表情をしながらある考え事をしていた。

それは、屋上で出会った橘騎士の事であった。

 

(「なんなんだ?あの馬鹿げた魔力量を持った奴は?原作にはあんな奴はいなかったぞ?」)

 

皇拓真は転生者である。

彼は神様のミスによって死んでしまった可哀想なテンプレ転生者。

そんな彼が騎士(ナイト)を見た時は思わず絶句した。騎士(ナイト)から溢れ出る魔力は、なのはを超え、測定不能とまさに規格外。

 

(「奴は、俺や神崎と同じ転生者なのか?だが、あんな警戒心ゼロで近づいてくるか?」)

 

拓真は、騎士(ナイト)が転生者ではないのかと疑うがあの行動でどうもそうには思えないでいた。演技の可能性も否定できないので頭を悩ませる。

 

ちなみに、神崎とはすでに接触済みで、彼が転生者だと断定している。初対面でモブ扱いする小学三年生なんて相当痛い奴か転生者以外ありえないからだ。

 

(「まあいい。俺の目的の邪魔となるならば排除すればいいだけだ」)

 

拓真は、あまり原作に関わるつもりはないのだが、ある目的を達成すべく原作に関わる事を決めたのだ。

 

(「絶対に生き返らせてみせるぞ。『アリシア』!」)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハヤえもーん!助けてー!」

「誰が狸型ロボットや!」

「猫型ロボットだろ!?」

 

俺は今、図書館に来ている。

そして、そこにいた車椅子に乗った少女にボケをかましたらボケ返されてしまった。

流石は似非関西人!だてに似非ってないぜ!

 

「それで、ナイ太君。今度はどないしたん?また苛められたん?」

「始めた俺が言うのもなんだが、まだ続いてんのかよ!そして、その呼び方だといつも泣いている奴みたいだから止めてくれ!」

「結構あってると思うんやけどなー」

 

ちなみに、この似非関西人は、『八神はやて』。

春休みの自由研究で丸写し出来る本ないかな、と図書館で本を探していたら出会った。

もっと正確に言えば、はやてが神崎にナンパされて困っていたので助けたのがきっかけ。

 

とてもフレンドリーで話しやすいし、ちょっとしたボケもツッコミを入れたり、逆にボケをしたりと会って間もないが意外と息が合う。

 

「おいおい。それは聞き捨てならんぞ、はやて!俺がいつ泣いているというんだ!」

「ほんじゃあ、もう宿題を手伝わなくてもええんやね?」

「ハヤえもーん。ナイ太のお願い聞いて下さい!」

 

泣いてはいないけど、泣きついてますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、もっと早く!」

「うおおおおおおおおっ!」

 

図書館で宿題を終わらせた俺とはやては、近くの公園で遊ぶ事にした。

今は、なんかぐるぐる回転する奴を俺が全力で回し、はやては乗って回る光景を楽しんでいた。

 

騎士(ナイト)君!次はブランコや!」

「ぜえ、ぜえ・・・少し待って・・・」

 

元気よくブランコに指を差すはやてだが、俺は両手を膝について息をついていた。

 

「情けないなー。それでもニッポン男子かい!」

「くっ・・・ニッポン男子でも限界がある!」

「あはは、冗談や、冗談。先にいっとるからなー」

 

笑いながらはやては自分で車椅子を動かしてブランコに向かう。つか、無駄に元気だな、はやては

 

「よいしょ、うーん!」

「・・・たくもうっ!」

 

俺が息を整えている間、はやては、自分でブランコに乗ろうと頑張っている。しかし、足が使えないせいでかなり危なっかしい。

俺は大きく息を吸ってはやての下へ駆け出した。

 

「ほら、無理すんなよ。乗せてやるから」

「あっ・・・」

 

俺ははやての背中と足に腕を入れて持ち上げる。毎回思うけどこいつ意外と軽いな

 

「あ、ありがとな!また運んでもろうて」

「ん?気にすんな。このお礼はまた宿題を手伝ってくれればいいからさ」

「そうかー・・・」

 

はやては、バランスを取る為に俺の首に腕を回してしっかりと抱き付いた。

俺は無事にはやてをブランコに座らせる事が出来たのだが首に通した腕を離してくれない。

 

「どうした?」

「う、ううん。なんでもない」

 

パッと離し、はやては笑ってそう言うがこいつは何だかんだ嘘が下手だ。

 

騎士(ナイト)君、早く押すんや!空の彼方まで行けるくらい!」

「・・・了解」

 

俺はそう言ってはやての後ろに回り込む。はやてが今、何を考えて悩んだのかは分からない。

でも、俺はどうにもする事は出来ない。

俺よりも頭の良いはやてが悩む事だ。仕方ない・・・でも

 

「よっと!」

「ひゃっ!?」

 

俺は、はやての背中を押すのではなく、飛び乗って漕ぎ始める。

 

騎士(ナイト)君!?2人乗りは危ないで!?」

「でも、さ!前を見て、見ろよ!」

 

俺は上手に膝のクッションを利用してどんどん大きく、俺達が乗るブランコは回っていく。

はやてからしたらまるで空を飛んでいるかのような気持ちになっているかもしれない

 

「はやて!楽しいか?」

「うん!楽しいで!こんなん初めてや!あの雲に手が届きそうや!」

「へへっ、俺はさ!はやてみたいに頭良くないから!はやてが何を迷っているか分かんないし!そんなはやての背中を押す事は出来ないけど!今みたいに!一緒に笑ったり!一緒にいる事は出来るから!」

「・・・!」

 

だからこそ、少しでも俺が出来る事をしてあげたいと思う。それが無意味であろうと怒られる結果になろうと何もしないよりかはマシだから

 

「あははっ!ありがとな、騎士(ナイト)君!」

 

とりあえず、はやては笑ってお礼を言ってくれる。それだけでも頑張ったかいがあったと俺は思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町じゃん!何してんだ?」

「た、橘くん?」

「ん?そいつは・・・あの時のフェレットか?」

 

俺ははやてを家まで送り届け、家に帰っている途中で高町と出会った。

相変わらず、俺と会う度に怯えた顔になる高町。

正直かなりへこむが、それよりも肩に乗るフェレットに注目した。

 

「名前は確か『ボーノ君』?」

「ユーノ君だよ!?」

「えっ?俺のじゃないよ?高町のペットだろ?」

「『Youの』じゃないよ!?ユーノ君!それにユーノ君はペットじゃなくお友達!」

 

良いツッコミだ。

高町も鍛えれば良い芸人になれるだろう。と、まあおふざけはこの辺にしとこう。

 

あのフェレットは先日、高町が見つけた怪我をしたフェレットである。

結局、高町が引き取る事になったんだけど、肩に乗せて出歩くぐらい仲良くなるなんて凄いな。

 

「悪い悪い。ユーノ君だったな。俺は橘騎士っていうんだ。宜しくな!」

「キュー・・・」

 

俺が頭を撫でようとしたらユーノ君は、高町の首裏に移動して隠れてしまう。

 

「あれ?いきなり頭を撫でるのはダメだったか?」

「ご、ごめんね、橘くん。ユーノ君、人見知りだから・・・」

「いや、高町が謝る必要はないよ。悪かったな、ユーノ君。撫でないから握手しよう、な」

 

俺はゆっくり人差し指を近づけていくとユーノ君が恐る恐るなのはの首裏から出てきて俺の指を握ってくれる。

 

「おおっ!凄いな、ユーノ君は!まるで、言葉が分かっているかのように握手してくれた!」

 

「「!!」」

 

凄いな、高町。短期間でこんな芸を仕込むなんて普通は出来ないぜ!

 

「おっと、そろそろ帰らないと日が暮れちまうな。高町、送っていこうか?ユーノ君がいるとはいえ女子1人じゃ物騒だろ?」

「あ、ううん!大丈夫だよ!私の家はもうすぐそこだから!」

「そっか?それでも気を付けて帰れよ?じゃあな!」

「う、うん。またね」

 

俺は手を振ってくれる高町に手を振り返しながら走って家に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふう」

「びっくりしたね、なのは」

 

ナイトが見えなくなるまで手を振って、居なくなったことを確認したなのはは深い溜息を吐いた。

そんななのはに声をかけたのは、なんとなのはの肩に乗るユーノだった。

 

「そうだね、ユーノ君。さっきの握手も不自然みたいだからもっと気を付けないとだね」

 

なのははその光景に驚いた様子はない。それも当然、彼女もユーノが喋れる事を知っているのだから。

 

「うん。でも、彼、橘騎士(ナイト)くんは一体何者なんだい?この町に来てからずっと気になっていた膨大な魔力の正体がまさかなのはと同い年の少年だったなんて・・・」

「私もよくわからないなの。橘くんはアリサちゃんと、すずかちゃんの幼馴染だから2人に聞けば何か分かるかもしれないけど・・・」

「正直言って彼は危険だ。あの魔力で『ジュエルシード』に触れたら危険だ・・・」

「うん・・・だから、早く『ジュエルシード』を全部回収しないとなの」

 

2人が言う『ジュエルシード』とは別世界で言うロストロギアという失われた古代技術遺産物で、ユーノはそのロストロギアを発掘する一族で、なのはから見たら宇宙人のような存在だ。

 

発掘されたロストロギア『ジュエルシード』を運んでいる途中で事故に合い、欠片となって地球の海鳴市周辺に飛び散った『ジュエルシード』を回収していたユーノだったが、暴走したジュエルシードの攻撃で負傷。

彼は苦渋の決断で現地の魔力を持つなのはに魔法の力を与え、回収を依頼した。

なのはは、快く了承し回収を手伝っている。

 

その探索の途中で騎士(ナイト)と出会った訳だが、魔法の力に目覚めたなのはは魔力という一般人には見えないものが見えるようになった。

そして、騎士(ナイト)が莫大な魔力を持っている事に気付いてしまった。

 

元々、素質の有ったなのはは、魔力が見えなくても違和感を感じる程度には気付く事が出来ていた。それがユーノの念話を聞き取れた理由でもある。

その念話よりもっと前、なのはが騎士(ナイト)と出会ったときに感じた違和感の正体。

それが魔力だった。

 

一般人には感じられない魔力をなのははずっと正体が分からないまま、騎士(ナイト)と会う度に当てられ続けていた。

騎士(ナイト)には、魔力という存在を知っている訳がなく、ましてやその魔力がなのはに不快感を与えて、苦手意識を持たせていたとは思いもよらないだろう。

 

これで、騎士(ナイト)を苦手意識する原因が魔力によるものだとなのはは理解した。

だが、苦手意識はなくなってもまた新たな感情が浮上してしまう。

 

それは恐怖。

同い年の男子が自分とは比べ物にならない程の魔力を有している。もしかしたらそれが原因で起こる筈のない事故が起きてしまうかもしれない。

 

そんな光景が頭を過ぎってしまうなのはは、それを振り払うように首を振って歩き出した。

まずは『ジュエルシード』を回収する事を考えよう。

9才の少女はいくつもの問題を抱えながら進んでいく。




フェイトではなく、はやてとアリシア(名前だけ)が登場しました。

フェイトファンの方すみませんがもう少しお持ちください!

クール系でアリシア派の転生者『皇拓真』に、ハーレムを目指す踏み台転生者『神崎和也』と本物転生者も登場です。

元モブと転生者という組み合わせにどうしようかと迷ってますが、頑張って書いていきたいと思います!


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第3話『サッカーしようぜ!前編』

連日投稿中!

今回は前編と後編で分けております!

1話、4000文字~5000文字を目安にしてるんで!


ついにやってきました、日曜日!

いつも以上にテンションが上がるぜ!

 

さらに俺が通っているサッカーチームの練習試合があるんだ!

練習も楽しいけどやっぱり試合だよな!

 

やべえ!オラ、楽しみでわくわくが止まらねえぜ!

 

「あら?相手チームにいるのってナイトじゃない?」

「あっ!本当だ!おーい!騎士(ナイト)くーん!」

 

やべえ!オラ、アリサ(魔王)すずか(天使)の登場でドキドキが止まらねえぜ!

 

「・・・・・・」

「あれ?聞こえなかったのかな?」

「いや、あれは無視しようとしているわね。私達のお誘いを断ってここに居るのがばれたから。コラー!ナイトー!無視すんじゃないわよー!」

 

はい、アリサの言う通り俺は2人のお誘いを断ってサッカーをしに来たわけで、かなり気まずい。俺はとりあえずボールで顔を隠しながら返事をしてみた。

 

「誰の事でしょうかー?私、橘騎士(ナイト)という銀髪でオッドアイでイケメンな天才少年なんて知りませーん!」

「知らない奴が言ってもいないフルネームや特徴を完璧に言い当てられるかー!しかもさり気なく、自分の事を天才とか言ってんじゃないわよ!」

騎士(ナイト)君!怒らないからこっち来てよ!」

 

当然、ばれました。

まあ、あの様子だと本当に怒ってはいないようだから2人の元に行こう。

 

「よっ!」

「よっ!、じゃないわよ!なんで騎士(ナイト)がここにいるのよ?」

「なんでって俺は今年からこのチームに入ってんだよ」

「そうなの?知らなかったよ。どうして教えてくれなかったの?」

「どうしてと言われても特に理由はないんだけど・・・」

 

言うならば、話すタイミングがなかったって感じかな?

俺的にはなんでアリサとすずかがここにいるのかが気になる。

 

「あれ?高町もいるじゃん。それに皇も。お前らってそんなにサッカー好きだったけ?」

「知らなかった?あんたが今から練習試合をするチームの監督がなのはのお父さんなのよ。だから、私達はその応援をしに来たってわけ」

 

なるほど。

そういえば、アリサやすずかの親は知っているけど、高町の親は全く知らなかったわ。

相手チームの監督を見てみればとても爽やかでイケメンな男性がいる。あれが高町のお父さんか

 

「うーん・・・。騎士(ナイト)君が相手のチームなら私、そっちを応援しようかな?」

「嬉しいけど、そこは高町のお父さんのチームを応援してやれよ。てか俺、スタメンじゃないし」

「そうなの?あんた運動神経は無駄に良いからスタメンだと思ってたわ」

 

運動神経だけでスタメンになれるほど甘くないんですよ、アリサさん。つか、無駄に、は余計だ

 

「でも、練習試合だし、途中で使ってくれると思うからその時は応援してくれよ」

「うん!分かった!」

「あんたが出てミスしたら思いっ切りブーイングしてやるわ」

「そうならないように気を付けるわ。んじゃな!」

 

俺はそう言って自分のチームへと戻っていった。そして、俺はこの試合がきっかけである可能性に気付くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、2人ともおかえりなさい」

「ただいま、なのはちゃん」

「ただいま。それにしてもびっくりしたわね。まさかナイトが相手チームにいるなんて」

 

少し不満そうに言うアリサ。わざとではないがナイトから何も聞かされていなかった事が気に入らないようだ。

 

「そうだね。でも橘くんってサッカー好きなの?」

「そうね。去年、サッカーのワールドカップがあったじゃない。その時見たトルコ対カンボジアの試合を見て感動したとか言ってたわ」

「日本の試合じゃない所が騎士(ナイト)君らしいよね?」

「にゃはは・・・」

 

騎士(ナイト)の感覚がどこかずれてるなと思うなのはだが、それは口に出さず苦笑した。

 

「まあ、私的には皇が居る事の方がびっくりなのよね・・・」

「ふん・・・。なのはがどうしてもと言うからきてやったんだ」

「そ、そうなんだ・・・」

 

アリサがジト目で拓真を睨み付け、その拓真の返事にすずかは苦笑した。アリサとすずかは、騎士(ナイト)との一件で険悪な雰囲気が漂ってしまっていた。

なのははそれをどうにかしようと3人を呼んだのだが、時間がかかりそうだと感じた。

 

「あっ!試合が始まるよ!橘くんは出てないみたいなの」

「ええ。まあ、入ったばっかりって言ってたから仕方ないんじゃない?」

「チームスポーツだもんね。上手くてもチームに馴染めないと勝てないもん」

 

すずかはそう言うがナイトが出ていない事に少し残念そうである。

 

試合が開始して数分後、トラブルが発生してしまう。

 

「あっ!危ない!」

「大丈夫かしら?今、転んだ子の足が一瞬変な方向に曲がってたわよ?」

「・・・大した怪我ではなさそうだな。恐らく捻挫だろう」

「それでもお父さんのチーム、今日は人数ぴったりで替えは居なかったはずなの・・・」

 

不安そうに見ているなのは達。すると、なのはの父である『高町士郎』が4人の元にやってくる。

 

「君が、皇拓真君だったね?僕はなのはの父、高町士郎っていうんだ。早速で大変申し訳ないんだがこっちのチームに助っ人で入ってもらえないかな?」

「ええっ!?お父さん、そんないきなり・・・」

「ああ。だから無理にとは言わない。でも君になら出来ると思ったから提案させてもらったんだが・・・」

「・・・分かりました。良いですよ」

「本当かい!助かるよ!ユニホームの替えがあるからそれを着てくれ!」

 

渋々、出場を了承する拓真は士郎と一緒にグラウンドへと向かった。

 

「・・・なのは。あいつってサッカー出来んの?」

「え?それは分からないなの。でも運動神経は良いよ?」

「どうなるか楽しみだね!」

 

グラウンドに向かう拓真を不安そうに見るなのはとアリサ。すずかは、ナイトの出場を今か今かと待ち望んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

高町父のチームの選手が怪我して大変だと思ってたら、なんか皇が助っ人として加わった。

そのまま試合が開始されたんだが―――

 

「そいつを止めろー!」

「2人、いや3人がかりで当たれ!」

「ふん・・・」

 

皇にボールが渡るとスルスルと相手を抜いていき、そのままシュートをしてゴールを決めた。

 

すげえ・・・。皇ってあんなに上手かったんだな。今度、教えてもらおうかな?

つか、皇一人でもう5点取ってる。まだ前半10分しか経ってないのにだ。

 

「皇くん!」

「・・・・・・」

 

また皇にボールが渡る。すると皇はまだセンターライン付近にいるのにも関わらずシュートモーションに入った。

 

「ここからシュートを打つつもりなのか?遠過ぎるだろ!」

「はっ!」

 

『ゴール!』

 

き、決めやがった。これで皇のダブルハットトリックが達成された。

いや、それよりも驚くべきことはあのシュートの弾道と威力だ。

 

弾道はゴールキーパーの頭一個上の高さを一直線に向かっていて、ゴールキーパーは両手でそのボールを掴んだけど凄い威力だったのか、ボールはゴールキーパーの両手を弾いて、そのままゴールネットに突き刺さった。

 

あ、ありえねえ・・・。サッカーアニメみたいにギュルギュルとゴールネットを突き破ってしまうような現象が本当にあるなんて・・・

 

「拓真くん!ナイスシュート!」

「す、凄いわね・・・」

「う、うん・・・」

 

そんな光景に高町は大喜びだが、アリサとすずかはドン引きしている。俺も正直これには引いた。

でも、それ以上に試合をしたいと思った。

だって、あんな凄い奴と試合が出来るんだ!わくわくしちまうよ!

 

「お、おいっ!大丈夫か?」

「うううっ・・・」

 

そんな事を考えているとゴールキーパーの子が両手を押さえて呻いていた。どうやら、さっきの強烈なシュートで両手を怪我してしまったようだ。

 

「このチームにはゴールキーパーの控えがいない・・・。だ、誰かゴールキーパーをやってくれる子はいないか?」

「む、無理だよ!あんなシュート止められる訳がない!」

「そうだ!そうだ!あんなのが顔にでも当たったら病院送りにされちゃうよ!」

 

監督の言葉に控えの選手は拒否する声を上げた。

でも俺は違う!

 

「監督!俺がゴールキーパーをやります!」

「た、橘!やってくれるのか!」

「はい!ゴールキーパーの経験はないけど頑張ります!」

「よし!頼んだぞ!」

 

こうして、俺がこのチームで初出場となるポジションは、ゴールキーパーとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!試合が再開されるみたいだよ!」

「って、ゴールキーパーやってるの騎士(ナイト)じゃない!?」

「だ、大丈夫かな?」

 

試合を見守る3人はナイトの出場に驚き、それと同時に心配になった。

拓真のシュートは、素人目からみても強力なのが理解できた。実際に1人負傷者を出したのだから心配になるのは当然である。

 

「あっ!拓真くんにボールが渡ったよ!」

「で、でも相手のチームの子達、誰もボールを取りに行かないよ?なんで?」

「どうせ、皇のシュートが怖くて近づけないんでしょ・・・。ちょっと!相手チーム!怖がってないで取りに行きなさいよ!」

 

アリサは相手チームでありながらも大声で活を入れる。それも当然だ。

あのままフリーで拓真にシュートを打たせれば、さっきのゴールキーパーみたいにナイトが負傷する恐れがあるのだから。

 

相手チームの選手達もそれは理解できていた。

しかし、彼らは皇の最後のシュートによって心を折られていた。

 

こんな奴を止める事なんて出来る筈がない。そう脳裏に刻み込まれた彼らは足が動かずただ見ている事しか出来ないでいた。

 

「はあ・・・。もう、終わりにしよう・・・」

 

拓真は先ほどと同じようにセンターラインからシュートモーションに入る。それを止めようとする者は誰もいない。

拓真のシュートは一直線にゴールを守るナイトの方へと向かった。

 

騎士(ナイト)!逃げなさい!」

騎士(ナイト)君、避けて!」

 

叫ぶアリサとすずか。だが、ナイトは動かない。拓真のシュートは、意図したものなのかナイトの顔面へと向かい―――

 

「――――」

騎士(ナイト)おおおおおおおおっ!?」

「きゃ、きゃああああああっ!?」

 

―――騎士(ナイト)の顔面に、直撃した。

 




作者名で察してくれているかは分かりませんが、サッカー関係の話でつい頑張ってみました。

まあ、自分的な話なので読者様からみたら大したことないかもしれないですが・・・


それと話は変わりますが、

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まだ2話しか投稿してないのに本当にありがとうございます!

自己満足の作品ですが、楽しんで読んで頂けると幸いです。


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第4話『サッカーしようぜ!後編』

感想にありました『クラスメートは何で【転生者】という言葉知っていたのか?』という件につきまして、私がその事に付いて書き忘れてしまっておりました。

申し訳ございませんでした。

1話に書き足そうと思いましたが、中途半端になりそうなんでこの前書きにて簡単に説明をしようと思います。



小学1年生の時、騎士(ナイト)と同じクラスになったモブが家族に騎士(ナイト)の容姿について話した。

モブの兄(高校生)がその事を聞いて『それもろ転生者じゃね?』と興奮しながらモブに転生者について説明する。モブの兄(高校生)はアニメオタクだった。

転生者について説明してもらったモブは騎士(ナイト)や友達にその事を話し回った。

騎士(ナイト)が『転生者』と呼ばれるようになる。←今ここ




みたいな感じです。

どの世界にもアニメがある筈!
ましてや日本なので私達みたいにアニメを元に二次元小説を書いていない訳がない!

と思ってこんな設定となっております。

ちょっと無理矢理ではありますがそこんとこはご理解いただけると幸いです。

では、本編をお楽しみください!


騎士(ナイト)おおおおおおおおっ!?」

「きゃ、きゃああああああっ!?」

「・・・・・・」

 

拓真のシュートがナイトの顔面に直撃した。そして、首が飛び跳ねるように上を向く騎士(ナイト)を見て叫ぶアリサとすずか。

そんな中、なのはは何故か冷静に違う事を考えていた。

 

(「おかしい。なんで、橘くんは避けないどころか両手でボールを取りに行かなかったの?」)

 

父がサッカーの監督をやってる影響でサッカーのポジションをある程度はちゃんと理解しているなのは。

騎士(ナイト)のポジションは、11人の選手の中で唯一両手が使えるGK(ゴールキーパー)。それなのに彼は両手を使おうとしなかった。

 

では、何故か?なのはには分からなかったが、1つだけ分かったのは、騎士(ナイト)わざ(・・)と避けずあえて(・・・)両手を使わなかった。

その答えは、なのはが思考の海に潜っている最中に分かる事になった。

 

「おっしゃあああああああああ!!」

 

「「「!?」」」

 

その場にいた騎士(ナイト)以外の人が驚いた。なぜならば、首が跳ね上がって固まっていた騎士(ナイト)が急に叫び出したのだから。

 

「皆、見てた!?俺、あいつのシュートを止めてやったぜ!」

「え?あ、うん・・・」

「お前、痛くないのか?あんな強烈なシュートを受けたのに?」

「何言ってんだ!あんなん痛くねえ!その証拠に俺、ぴんぴんしてんじゃん!」

 

笑いながらそう言う騎士(ナイト)は、今度はジャンプしながら自分が元気だって事をアピールする。そして、両手でぱんぱんと叩きチーム皆の注目を集める。

 

「皆が思う程の威力じゃねえぞ!さっきのキーパーは、虚を突かれて誤った取り方をしたから怪我しちまったんだ!」

「そ、そうなのか?」

「でも、騎士(ナイト)は顔面で止めても、ぴんぴんしてるぜ?」

 

騎士(ナイト)の言葉に心が折られていた選手達の顔色が良くなっていく。

 

「下を向くな!まだ試合は終わってないぞ!ゴールは俺が守る!気合入れて行くぞ!」

 

「「「う、うおおおおおおおおっ!!」」」

 

騎士(ナイト)の言葉に選手達の気合が蘇った。

そんな光景にアリサとすずか、なのはは唖然としている。

 

「まさか、あのバカ!皆の士気を取り戻す為にわざと顔面で受けたっていうの!?」

騎士(ナイト)君・・・無茶しすぎだよ・・・」

「す、凄い・・・」

 

騎士(ナイト)の行動を理解したアリサとすずかは、無事に復活を果たした騎士(ナイト)の姿を見て安堵する。

そして、なのはは、しようと思っても出来ない騎士(ナイト)の行動に驚くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「無理にボールを取りに行くな!その瞬間に抜かれるぞ!シュートコースだけ限定するんだ!」

「おう!」

「ちっ・・・」

 

皇が明らかに鬱陶しそうにボールをキープしている。そして、パスは出さず、強引にシュートを打ってくる。

 

「おらっ!」

「ナイスキーパー!」

「カウンターだ!」

 

俺はその強引なシュートを止めるとボールを相手陣地に蹴りこんでカウンター。

俺が何度も皇のシュートを止める姿に応えてくれるかのように、ちょっと前まで意気消沈だった皆が見事にゴールを決めてくれる。

 

「やったあ!ナイスシュート!」

騎士(ナイト)君!ナイスキーパー!」

 

相手チームの応援に来ていた筈のアリサとすずかがこっちを応援している。嬉しいけど、高町のお父さんのチームを応援してやれつーの。

 

これで、5対6の一点差まで追い付いた。

残り時間は監督が5分切ったと教えてくれる。

時間はあるからじっくり攻めて―――

 

「ボールを寄こせ!」

「お、おう!あっ!?」

「ちっ・・・この下手糞!」

「オーケー!俺がとる!」

 

クールな皇がらしくない大声を上げてボールを要求。

しかし、パスした選手がミスして皇を大きく追い越し、俺とディフェンダーの間の位置に蹴り込んでしまう。

これはチャンス!距離的に俺の方が近かったから声を出してボールを取りに走った。

 

「まだだ!」

「っ!?」

 

チャンスと思って油断していたのが悪かった。皇が凄い足の速さを見せて、もう俺と同じくらいの距離まで詰めている。

こいつ、マジで足が速い!?さっきまで、10mぐらいの距離があったのに!

 

「負けるか!」

「ぐっ!」

 

俺も走る速度を上げた。

これなら先に触れる!

 

「させるか!!」

 

皇はスライディングで飛び込んできた。俺はそんな皇を見て、先に触れたボールを咄嗟に浮かしてスライディングを回避。

 

「ぐっ!?」

 

そのすぐ後、俺の左足首に凄い熱が感じられた。同時に体勢が前に崩れていく。

顔から地面に突っ込んでいく最中、皇のスライディングが俺の左足首を刈り取っている光景が見えた。

 

「まだだ!」

「っ!?」

 

俺は顔が地面に着く前に両手を着いて勢いのまま前回りを行った。

前回りの勢いそのままに立ち上がると俺は前線にボールを蹴り込んだ。

 

「決めろ!」

 

俺は左足首がどうとかの前にそう吠えた。ボールが奇跡的にも味方に渡り、不意を突くことが出来たおかげでそのままゴールを決めた。

 

「おおっし!」

騎士(ナイト)、大丈夫か!?」

 

喜ぶ俺にチームメイトが駆け寄ってくる。恐らくさっきの皇のスライディングの件だろう。

 

「大丈夫!問題ない!」

「す、すげえ!」

「まるで、鉄人だぜ!!」

 

俺が無事をアピールするとチームメイトは輝く笑顔で称賛の言葉を言ってくる。

 

「おい・・・」

「ん?皇?」

「・・・済まなかった。俺、夢中で・・・」

 

皇が話しかけて来たと思ったら頭を下げて謝った。

本当に夢中だったのだろう。皇の申し訳ない顔がそれを物語っている。

俺は笑顔で皇の肩を叩いた。

 

「気にすんな!試合なんだから熱くなっちまうのも当然さ!」

「お前・・・」

「へへっ!これで追いついたんだ!このまま逆転だ!」

「・・・させるかよ。次こそお前のゴールを貫いてやる!」

 

闘志を燃やす皇を見て俺は思わず笑ってしまう。面白くなってきたぜ!

 

騎士(ナイト)君、頑張れー!」

騎士(ナイト)ー!残り時間わずかよ!気合い入れなさい!」

 

アリサの言う通り残り時間はわずか。

6対6の拮抗する試合に俺は満足している。そして、勝っても負けても俺は笑って試合を終える事が出来るだろう。

 

騎士(ナイト)!頼む!」

「オッケー!」

 

味方からのバックパス。

ゴールキーパーは手で取る事は出来ないので大きく前線にフィードをしようと、足を振り上げ、ボールに向けて振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

すかっ

 

 

 

 

 

 

 

「「「あっ・・・」」」

 

その場にいた全員が同じ言葉を吐いた。

それもそうだろう。俺はそんな大事な時にボールを空振ってしまったのだ。

そして俺が蹴ろうとしたボールはそのままゴールに吸い込まれ、そして―――

 

「試合終了!7対6!翠屋JFCの勝ち!」

 

試合終了の笛が鳴り、得点と勝ちチームの名前が宣言された。

それが俺の所属しているチームではない事は確かである。

どうやら俺は、この試合で笑って終える事は出来ないだろうと確信した。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

「えっと・・・」

「・・・・・・」

「まあ、その・・・ドンマイ?」

 

試合が終わってすぐに騎士(ナイト)の元へと駆け寄ったアリサとすずかであったが、体育座りをして俯きながら落ち込む騎士(ナイト)にどう声をかけてよいか分からなかった。

 

さっきの試合で、自分の活躍もあって勝利まであと一歩のところまで行ったのに、まさかの自分の凡ミスで負けてしまった騎士(ナイト)の心情に同情せざるを得ない。

 

でも、騎士(ナイト)は9才の子供。

自分がやってしまったミスにショックでかなり落ち込んでしまっている。

 

「やあ、橘騎士(ナイト)くん。大丈夫かい?」

「士郎さん?」

「今日の試合は凄かったよ!今まで見てきた試合の中で一番凄いと思ったよ」

 

士郎の言葉に騎士(ナイト)は耳を傾けて聞いていく。それを見た士郎はどんどん声をかけて行った。

 

「皇くんも凄かったが、今日のMVPは間違いなく君だろうね。皇くんのプレーで下を向いてしまった選手達を君の言葉と行動で蘇らせた。それだけじゃない。蘇った選手に力を与えていた。まさにゴールキーパーの理想像だったよ!」

「・・・そ、そうですか?」

 

士郎の言葉に騎士(ナイト)は顔を上げて士郎の顔を見る。

 

「そうだとも!君はゴールキーパーの才能がある!世界一のゴールキーパーだって夢じゃないさ!」

「あ、ありがとうございます!俺、頑張ります!」

 

士郎の褒め殺しによって復活した騎士(ナイト)

それを見たアリサとすずかはほっとした表情になる。

さっきも言ったが騎士(ナイト)は9才の子供。

ミスしてかなり落ち込んでも褒めればすぐに機嫌が良くなるのだ。

 

「アリサちゃん、すずかちゃん。彼はもう大丈夫だからなのはのところに行って上げなさい。なのはは寂しがり屋だからね」

「はい!分かりました!」

「士郎さん、ありがとうございます!騎士(ナイト)君、また後でね!」

 

2人がなのはの元に戻っていくのを確認した士郎は、再び騎士(ナイト)の方を向いて声をかけた。

 

「・・・大丈夫かい、騎士(ナイト)君」

「えっ?あ、はい。もうあの失敗は気にしてないですよ?」

「そっちじゃない。左足首の事を言ってるんだ」

「・・・ばればれでした?」

 

騎士(ナイト)は、士郎の真剣な顔を見て溜息を吐くと左足の履いていたスパイクとソックスを脱いで見せた。そこには青く腫れ上がっている足首があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・かなり酷い打撲のようだね。骨に異常はなさそうだ」

「分かるんですか?もしかしてお医者さん?」

「いや、僕は喫茶店の店長をしているよ。怪我に詳しいのは道場も開いているからさ」

「へえー」

 

的確な診断と治療をこなす高町のお父さん。

高町の家はもしかして結構特殊なんじゃないか?喫茶店に道場とか見た事ないけど?

 

「最初は僕も気づけなかった。恐らくアドレナリンの多量分泌で痛みを感じなかったんだろう。プロでも骨折しても気づかないでプレーをしていたって例もあるからね」

「なるほど・・・」

 

そうは言ったが本当はよく分かっていない。アドレナリンってなに?ポ○モンの技名?

 

「そして、アドレナリンの効果がつい先ほど切れた君は痛みに耐え切れず座り込んでしまった。でも、大声で痛みを訴えるのだけは我慢した。さっきまで体育座りして俯いてたのも痛みで耐え切れない涙を隠す為、アリサちゃんとすずかちゃんに心配かけさせたくなかったんだろ?」

「・・・・・・」

 

まさにその通りだったので、俺は何も言い返せない。

高町のお父さんってエスパーか?

 

「僕も男だからよく分かるよ。女の子に涙は見せたくないからね。よし、これで、大分楽になるだろう」

「あ、ありがとうございます」

 

高町のお父さんに巻いて貰った包帯のおかげで足を着くだけで痛かったのに歩いてもそんなに痛くない。

 

「だけど、歩き回るのはよくない。家に杖があるからそれを君にあげよう」

「そ、そんな!俺は大丈夫ですよ!歩けるなら家まで帰れますし、帰ったらベッドで安静にしてますから!」

「子供が遠慮しない。それに君は、これ以上彼女たちを心配かけさせたいのかい?」

「えっ・・・?」

 

高町のお父さんが振り向いた方向を見てみると、アリサとすずかがこっちの方を見ていた。

あれ?もしかしてばれてる?

 

「僕がこうして治療しているのだから当然ばれるさ」

「う、裏切られた!?」

 

高町のお父さんなら俺の気持ちを理解してくれると思ってたのに!

俺がそんな事を思っていると高町のお父さんは笑いながら話し出した。

 

「男の涙は見せたくない気持ちに同意したんだ。でも、大事な人に隠し事をするのは同意できない。下手な隠し事は、彼女たちを余計に心配させるだけなんだから」

「・・・分かりました。高町のお父さん、俺、2人に謝ろうと思います」

 

何故か高町のお父さんの言葉が深く心に刺さった。その言葉に何かとても重たい何かを感じたから・・・

 

「そうか。偉いぞ!それなら一緒に来なさい。僕の喫茶店で祝勝会をするから。それと僕の事は士郎と呼びなさい。良いね?」

 

頭を撫でられた俺は何も言えなかったが、高町のお父さんを名前で呼ぶのは良いとして、負かされたチームの祝勝会に参加するのは嫌だなと思った。




如何でしたでしょうか?

ちょっとご都合展開となった場面もありますが、楽しんで頂けたでしょうか?

騎士(ナイト)くんも男の子なので女の子の前で恥ずかしい所は見せたくないですよね!

それと話は変わりますが、

お気に入り277件、感想9件、評価9人

やべえ・・・お気に入りが1日で100人も増えやがったぜ!

感想や評価も増えて感謝感激であります!

それほど、読者の皆様に読んで頂けていると思うとやる気ビンビンです!

もっと面白いと感想で言われるように頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします!


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第5話『道場にドウジョー!』

5話目です!

内容はよくありそうな展開・・・テンプレです!

楽しんで頂けると嬉しいです!


「ただいま・・・」

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

 

今、俺は学校の帰り途中で喫茶店『翠屋』というところにいる。

何故かと言うならアリサとすずかに誘われたから・・・なんだが、その2人は今いない。

 

いるのは、俺、高町、皇の3人だ。アリサとすずかは一旦家に帰ってからくるらしい。

 

別に良いんだが、なる早で来てくれることを望んでいる。なぜなら高町や皇といると息苦しく感じてしまうのだ。

何故かと言うと、2人は俺をまるで腫れ物に触れるような、そんな余所余所しい扱いなんだよ。

出来ればもっとフレンドリーに接して貰いたいんだけどな~。

 

「あら、おかえり、なのは。隣の子達はお友達かしら?」

「う、うん。拓真くんと橘くんだよ」

 

出迎えてくれた高町と同じ色の髪でとても優しそうな女の人が来た。高町のお母さんか?

 

「・・・こんにちは、皇拓真です」

「こんちは!橘騎士(ナイト)です!」

「こんにちは。私は高町桃子。なのはの母です。拓真くんって確かなのはが良く話してくれていた―――」

「わー!わー!わー!お母さん、ストップストップ!」

 

高町のお母さんが喋っている途中に高町がそれを止める。一体どんな話をしていたんだ?

 

「うふふふ!なのはったらそんな慌てちゃって。騎士(ナイト)くんは士郎さんから聞いているわ。面白い男の子だって」

 

何がどう面白いのか気になるところ。悪い意味で無い事を祈る。

 

「でもまさか、なのはが2人のボーイフレンドを連れてくる日がくるなんて思いもしなかったわ。意外とやるわね」

「な、何言ってるのお母さん!?」

「そうなんですよ。俺達、高町の魅力にメロメロでどっちが付き合うか今日ここで決着つけようと思ってるんです!」

「橘くんも、何言ってるの!?」

 

とても楽しそうな高町のお母さんにそれと正反対に動揺しまくりの高町。

俺はそれに便乗すると高町はさらに動揺してかなり面白い反応をする。

 

「拓真くんと橘くんはお友達なの!それに後からアリサちゃんとすずかちゃんが来るからそういうのじゃないなの!」

「あら?そうなの?ごめんね、なのはの反応が面白いからつい・・・」

「右に同じく」

「ひ、酷いよ、2人とも!?」

 

高町の反応が面白いから悪い。

 

「それじゃあ、なのは。奥の空いてる席に座っていてね。後でジュース持っていくわ」

「う、うん。分かった。2人とも行こう?」

「ああ・・・」

「おう。それじゃあ、またね。高町のおば―――」

 

「『おば』?」

 

「・・・高町のお母様。失礼致しまする・・・」

「ええ。ゆっくりしていってね」

 

にこりと笑ってその場から居なくなる高町のお母さん。

今、とてつもない悪寒を感じたんだけど!?

 

「橘くん。お母さんにそれは禁句だよ?少し前にガラの悪い人達がお母さんにそれ(ばばあ)を言ったらその人達の姿を見た人は居ないって噂だよ?」

「・・・肝に銘じておきます」

 

何故かあの人ならやれそうな気がしてしまうのはどうしてなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、行くぞ!皇拓真!」

「ああ・・・」

「あわわ、どうしてこんな事に!?」

 

そうだね。どうして俺達は喫茶店ではなく、道場にいるんだろうね?

そして、その中央には皇と高町の兄『高町恭也』さんが互いに木刀を持って試合を始めようとしているのだ。

 

何故こうなったかと言うと、3人でアリサとすずかを待っていたら高町兄がやってきて皇に言い寄ってきたんだ。

 

「貴様になのはは渡さんぞ!!」とか言い出した時は兎に角驚いた。

多分、高町のお母さんが言っていた奴が関わっているんだろう。高町が皇の事について本当に何を言っていたんだろう?

 

「なあ、皇はまだいいとして、なんで俺まで試合する流れになってんだ?」

「それは・・・その・・・自業自得じゃない?」

 

皇だけではなく、俺にも渡された木刀を見ながら聞くと、高町は苦笑交じりにそう言った。

 

「俺は皇が連れていかれる時、『それじゃあ、俺は高町と仲良く待ってるぜ!』と言ったがそれで俺まで巻き込まれるのってなんか違わない?」

「お兄ちゃん的基準だとそれはアウトだったって事なの」

 

なんとも低い基準だな。

そんな事を考えていると試合が始まったのか、お互い動かずじっと睨み付けている。

凄い緊張感を感じられるんだけど?

 

「はあああっ!」

「甘い!」

 

先に動き出したのは皇だった。消えたかと思ったら高町兄の真上にいて木刀を振り下げた。

しかし、高町兄は凄い超反応でそれを防ぐ。

 

「ちっ・・・」

「中々やるな。だが、本番はこれからだぞ!」

 

2人のスピードどんどん上がっていく。そしてもはや2人の姿は見えない。

 

「あのさ、高町。俺、お前の兄にボコボコにされる未来しか見えないんだけど?」

「・・・拓真くん、頑張れ!」

「おいコラ!無視すんな!」

 

やだよ俺?何も悪い事してないのに痛い目に合うのは!

 

「そろそろ決着をつけるぞ!神速!」

「っ!?」

 

もう完璧に高町兄の姿が見えない。皇は見えているのか分からないけど、木刀を構えて目を瞑っている。

え?何?心眼か何か?

 

「そこだ!」

「なに!?」

 

皇が木刀を振るうと鈍い音が響いた。その皇の木刀が高町兄を捉えたのだ。

だが、高町兄は驚きはしつつも、ちゃんと木刀で防いでいる。

 

だから、この無駄にハイレベルな試合はなんなんだよ!?

 

「こうなったら皇には、最後まで粘ってもらって俺と戦う事をうやむやにしてもらうしかない」

「この勝負、引き分けだ」

「・・・ああ」

「ええっ!?」

 

言った矢先に終わっちまったよ!どうして急に終わるのさ!

 

「さっきので両方の武器が壊れてしまった。これ以上は続行不能だ」

「そうだな・・・」

 

おいおい!武器が壊れてしまう程、強く打ち合ってたのかよ!

 

「それとも、武器を新しいのにして再試合するか?」

「いえ、変えても結果は変わらないでしょう。止めておきます」

「俺も同意見だ。それじゃあ、次は橘の番だな」

「へっ!?あっ、お腹が痛いので帰ります!」

「逃がさんぞ!」

 

うおっ!?いつの間にか高町兄が俺の前に周り込んで俺の退路を塞いでしまう。速すぎるだろ!

 

「あの・・・俺、皇みたいに妹さんとイチャイチャしてないっすよ?後、妹さんにちょっかい出している奴(神崎和也)の情報を渡すんで止めてくれないですか?」

「橘くん、いろいろ最低なの・・・」

 

高町はちょっと黙ってください。男の友情は犠牲によって成り立つのだ!

 

「安心しろ。お前と戦う理由は(なのは)じゃない。すずかちゃんについてだ」

「すずか?なんで?」

「あっ、お兄ちゃんは、すずかちゃんのお姉さんとお付き合いしているのなの」

 

そういう事か・・・だから初対面の筈の俺を見て睨みこんでいたのか。

 

「俺が忍と話しているとちょくちょくお前の名前が出ていた。どのような男なのか確かめさせてもらう」

「だからって、確かめる方法が木刀を使った試合とか危険すぎるでしょ!」

「悪いが聞く耳は持たないぞ。剣士なら剣で語れ!」

「剣士じゃねえから!」

 

やばい。この人、人の話を聞いてくれない!

俺は助けを求めるべく、高町と皇の方へと視線を向ける。

 

「拓真くん、凄いなの!お兄ちゃんと互角に闘えるなんて!でも、怪我とかない?」

「ああ、大丈夫だ・・・」

 

なんだろう、2人だけの世界に入ってるあの空間は?

ていうか、こっちは完全に無視かよ・・・

 

「・・・・・・行くぞ!橘ああああああ!」

「うおっ!?」

 

いきなり高町兄が襲い掛かってきた。それも血の涙を流しながら。

皇と引き分けだったから強く言えないのだろうが、その怒りを俺に向けるのは違うんじゃないか!?

 

「ちょ、まじ、あぶな、い!?」

「うおおおおおおおおっ!」

 

俺は必死に高町兄の攻撃を避け続ける。いや、マジで誰か助けて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拓真くん!橘くんの試合始まっちゃったなの!」

「ああ、そうだな・・・」

 

恭也と騎士(ナイト)の試合が始まって慌てるなのは。拓真はどうでもいいといった感じだった。

 

「でも、何だかんだ避けてるな」

「う、うん。そうだね・・・」

 

ギャーギャー叫びながらも騎士(ナイト)は恭也の攻撃を避け続ける。格好は悪いが今のところ無傷で済んでいる。

 

「あっ!角に追い込まれちゃった!」

「救急箱の準備しとくか」

 

絶体絶命の騎士(ナイト)に、ハラハラするなのはとしれっと救急箱の用意を始める拓真。この2人、騎士(ナイト)を助けるつもりは全くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!追い詰めたぞ!」

「くっ!」

 

やばい。角に追い込まれたこの状況をどう乗り切る?

 

「橘!逃げてばっかりで情けなく思わないのか?同い年の皇だって勇敢に立ち向かったぞ!」

「と、言われても、ですね!?」

 

どっちかというと皇が異常ではないか!?

 

「忍もお前なら、すずかを任せられると言ってたが・・・お前みたいな奴にすずかちゃんは守れない」

「・・・は?」

 

高町兄の言葉に俺は頭の中がモヤッとした何かが感じられた。

俺では、すずかを守れない?

その言葉に数年前にあった事件の出来事を思い出してしまう。

 

「取り消せよ・・・」

「なに?」

「俺がすずかを守れないなんて取り消せって言ってんだ!」

 

俺は木刀を強く握りしめ、そう叫んだ。

この野郎、あの時のことを思い出させやがって!絶対に許さねえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!?た、拓真君・・・」

「気付いたか?」

「う、うん」

 

なのはと拓真は試合している2人から目を放さずに会話をしている。

2人は何かに気付いたようで、騎士(ナイト)の身体を見ている。

 

「ただ漏れだった魔力が少しだけど纏っているなの。これは身体強化?」

「ああ。しかも無意識でだ。もしかしたら怒りなどの感情変化で魔力が反応しているのか?」

 

憶測でしかないが、騎士(ナイト)の様子を見てその可能性は高いと考えられる。

 

「なのは。もしかしたら暴走する恐れもある。注意しとけ」

「う、うん!」

 

なのはと拓真は最悪の展開を予想し、騎士(ナイト)と恭也の試合を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。目付きが変わった・・・」

 

俺、高町恭也は、彼女の月村忍が話す橘騎士(ナイト)という少年と試合を行っている。

忍が言うに、すずかを任せられる少年だと聞いた。

 

さっきまでは忍の過大評価だと思っていたが、挑発したら少年の雰囲気が変化した。

最初に試合した皇拓真には劣るが中々の気迫だ。

 

「俺がすずがを守れないかどうかを、あんたが決めてんじゃねえ!」

「良い気迫だ!来い!」

「うおおおおおおおおっ!」

 

少年は上段に木刀を構えながら初めて俺に攻撃を仕掛けてきた。

良い踏み込みだ。俺はあえて受ける為、構えるのだが―――

 

「あっ!忍さんだ!」

「なに!?ってそんな訳ないだろ!」

 

少年はばればれの嘘を吐いてきた。

これで俺が騙されると思ったのなら心外だ。

だから俺は騙されたと思わせる為、わざと振り向き、その振り向いた勢いを上げて一回転し、木刀で横薙ぎにする。

 

しかし、手応えがなかった。

 

「居ない!?」

「こっちだよ!」

 

彼はどうやら俺に読まれるのを逆手に取って見事に俺の背後を取った。

なるほど、ただのふざけた子供ではないようだ。

 

「喰らえ!」

「ぐっ!?この!」

 

すぐに振り向いて少年が上段に構えていた木刀による攻撃を防ごうとした。

少年は素人だ。闇雲に木刀を振り回す事しか出来ない。だから、上段に気を向けていたのだが違っていた。

 

木刀ではなくローキックによる下段攻撃。

しかも、それが意外と芯に効く。

そう言えば、少年はサッカーをやっていると父さんから聞いた。

この足腰の強さはそこから来ているのか?

 

「ちっ!・・・ん?」

「・・・・・・」

 

俺は追撃を防ぐため、どんな攻撃でも防げるように構えを取る。

 

そこで、俺は気付いた。

 

少年は、橘騎士(ナイト)は何故か木刀を持っていない。

それに気づいた時、騎士(ナイト)の顔が笑顔であった。

 

なんで彼は笑っている?

 

俺がそう思ったその時だった。

 

「ぐっ!?」

「よっしゃ!一本!」

 

すこーん!と俺の頭に衝撃が走った。

その原因は俺の目の前に落ちてあるものが示している。

 

木刀だ。

 

俺が一瞬、目を離した隙に騎士(ナイト)は俺の頭上に投げていたのだろう。

ローキックは、その場所から俺の動きを止め、意識を俺より背の低い騎士(ナイト)に向かわせる為。

一つ一つに意味があり、罠だった。

もしかしたら、あの怒った時の気迫も罠だったのかもしれない。

俺はその罠にまんまと引っかかった。

 

騎士(ナイト)は人差し指だけ上げて俺から一本取った事をアピールしている。

なるほど。忍が言うだけある。

騎士(ナイト)は、すずかちゃんを任せられる男だ。

 

皇ほど強くはないし、俺も手加減や油断していなければ負ける事はまずない。

 

でも、騎士(ナイト)の年相応の笑顔がそう感じさせる。

騎士(ナイト)なら大丈夫だと、周りにいる人間を安心させてくれる男だと。

 

そういえば、騎士(ナイト)には無礼な事を言ってしまった。

ちゃんと謝らなければならないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった、やった!高町兄から一本とったぜ!」

 

俺は嬉しさのあまり跳んで嬉しさを表現している。あの皇でも取れなかったんだから喜んでも仕方ないと思う。

 

騎士(ナイト)。素晴らしかったよ」

「え?あ、ありがとうございます!」

「それと、さっきは済まなかった。あんな事を言ってしまって・・・」

「へ?・・・あー、すずかを守れないというあれっすか!」

 

嬉しさのあまりすっかり忘れてしまってた。

 

「大丈夫っすよ!高町兄さんはめっちゃ強いっすからそう言われてもしょうがないっす!」

 

試合している時、神速っていう速くなる奴を使われてたら瞬殺だったし、1000回やって1回勝てる割合だろう。

運よくその1回が最初に来たんだ。間違いない。

 

「そうか。そう言ってもらえると助かる。それに君は確かに、すずかちゃんを任せられる男だと俺も思う。すずかちゃんを任せたよ」

「は、はあ?」

 

今更だが『任せられる』ってどういう意味だ?

『守る』なら不良や悪漢から守るという意味だと思うけど・・・

 

「俺もまだまだ修行が足りないな。騎士(ナイト)をボコボコに出来るようにちゃんと精進しよう」

「高町兄さん!精進する方向が間違ってるよ!?」

 

怖いよ!なんで俺がボロボロにされなきゃいけないのさ!?

 

「ははは!冗談さ。それと俺の事は高町兄(たかまちあに)さんじゃなく、恭也さんと呼ぶように」

「あ、はい。わかりました」

 

さり気なくあの呼ばれ方は気に入らなかったのかな?

 

「よし。2人とも筋が良いから明日から道場に来ないか?良い訓練になるぞ?」

「「結構です!」」

 

俺と皇の思いが初めて一緒になった瞬間だった。

マジで勘弁してください!




如何でしたでしょうか?

少しだけ騎士(ナイト)の力の片鱗が明らかになりました。

これからの騎士(ナイト)に期待?



話変わって再び報告!

お気に入り486件、感想14件、評価19人

今度はお気に入りが200人も増えた!?
感想も評価も頂き嬉しい限りです!

次もちゃんと更新出来るように頑張ります!


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第6話『罠を張るのも計画的に』

休日でも頑張ります!

そして、騎士(ナイト)の足について本人に訪ねてみました。



Q.騎士(ナイト)くん。足はもう大丈夫ですか?
うん。大丈夫。

Q.怪我した時から一週間も経ってないのに凄い回復力ですね?
前から怪我は治りやすい体質らしんだよね。半年かかる怪我が2か月で完治したこともあるし。アリサとすずかのおかげでもあるよ。

Q.というと?
なんか最新の医療器具を用意してくれるんだ。
今回はなんかカプセルの中に入ってじっとしてる奴だったな~。

Q.結構、お値段がかかるのでは?
らしいんだけど、いらないって言われた。
その時のすずかの顔が怖かった記憶がある。

Q.ご臨終です。
えっ!?それはどういう―――




という訳です!

騎士(ナイト)くんの回復力が凄いのと金の力でした笑



言っておきますが忘れていた訳ではありませんからね!(訳:忘れてました。すみませんでした!)


という訳で作者の見苦しい言い訳はここまでにして本遍をどうぞ!


「相変わらずでっけぇな、ここ」

 

俺、騎士(ナイト)は今、でっかい門の前にいる。

別に神社とかいる訳じゃないぞ?

 

門は洋風だし、3・4mくらいの壁に鉄網が張ってたりとかなり警備がしっかりしている。

 

ここは、俺の幼馴染の1人、月村すずかの家の玄関だ。

なんかすずかの家は金持ちらしいけど詳しくは知らん。

 

そういえば、関係ないけど一回だけ壁をよじ登ろうとして怒られたことがあったな。去年の今頃だったけ?

 

まあ、そんな事はどうでもいいか。なんで俺がすずかの家の前にいるかと言うとお茶会に招待されたからだ。

さすが金持ち。おやつの時間をお茶会と呼ぶなんて住む世界が違うぜ!

 

「つーきむーらくーん、あーそびましょう!」

「いらっしゃいませ、騎士(ナイト)様」

 

呼び鈴を鳴らしてお決まり?の台詞を言った瞬間に門が開かれメイドさんに挨拶された。

色々早いし、ツッコんでよ!

ちなみに、このメイドさんは、『ノエル・K・エーアリヒカイト』さん。

すずがの家でメイド長をしてるんだ。

 

「こんにちは、ノエルさん!」

「はい、こんにちは、騎士(ナイト)様。すずかお嬢様が待ちわびておりましたよ。アリサお嬢様やなのはお嬢様、恭也様に拓真様が既にいらっしゃいます」

 

どうやら俺が最後だったらしい。それは悪い事をしてしまったな。

 

「ごめんごめん。サッカーの練習があってさ」

「はい、承知しております。ですが、その恰好のままお茶会に参加して頂く訳には参りません」

「あー、泥だらけだもんな・・・」

 

サッカーの練習が終わって直で来たから至る所に泥がこびり付いている。

この前の練習試合でゴールキーパーの楽しさをしった俺は、フォワードから、ゴールキーパーへとポジションを変えた。

練習後は必ず泥だらけになって親にぐちぐち言われるけど、なんか練習したって感じで楽しいんだよね。

 

「それじゃあ、一度帰って風呂に入ったらまた来るよ」

「それには及びません。お風呂の準備と騎士(ナイト)様のお召し物の準備が整っております」

 

流石は出来るメイド長のノエルさん。

でも、泥だらけで家に入るのも気が引けるんだよね

 

「歩いてるだけで土が落ちちゃうからやっぱり家に帰るよ」

騎士(ナイト)様がそう仰ると思いまして別施設にて仮設お風呂がございます。そちらをお使いください」

「えっ?そんなのがあるの!?」

 

何回目かは覚えてないけど、結構すずかの家に遊びに来ているがそんなのがあったのは知らなかったな

 

「はい。すずかお嬢様が騎士(ナイト)様に必要になるからと一昨年から建築に取り掛かり先月にて完成いたしました」

「色々とツッコミどころ満載なんだけど!?」

 

普通に言っているけど、一昨年から取り掛かったってどういう事さ!?

 

「では騎士(ナイト)様。ご案内致しますので付いて着てください」

「は、はい・・・」

 

俺のツッコミに全く動じないクールメイド(ノエル)さん。

とりあえず、そんなノエルさんの後に俺はついていく事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!すずか!」

「あっ!騎士(ナイト)くん!こんにちは」

「こんにちは・・・じゃないよ!なんだよ、あのお風呂は!?」

 

風呂から出た俺はお茶会が行われている部屋に飛び込むと、すずかが真っ先に挨拶をしてきたから咄嗟に挨拶を返すもそんな場合ではない。

すずかは俺が言っている事を理解していないのか首を傾げている。

 

「もしかして、お風呂気に入らなかった?騎士(ナイト)くんが好きな入浴剤を入れてたんだけど・・・?」

「お湯については満足・・・ん?なんで俺が好きな入浴剤知ってんの?」

騎士(ナイト)。とりあえず、落ち着きなさいよ。一体、何があったのよ?」

 

先に来ていたアリサがやってきてそう聞いてくる。入浴剤の件も気になるがもっと気になる事があるからそれを優先しよう。

 

「まずは、お風呂ご相伴に与りました。ありがとう」

「いえいえ」

「でも、なぜお風呂内に隠しカメラがあるんだよ!?」

「えっ!?」

 

俺の言葉に驚いたのはアリサである。

すずかはと言うと―――

 

「ぼ、防犯用だよ?」

 

首を横に向けて冷汗全開な様子で俺を誤魔化せると思うなよ?

 

「ほう?シャワーがある鏡の所や風呂の中に付ける必要があるのか?」

「ぴゅー、ぴゅー」

「すずか、口笛吹けてないわよ」

 

こんな動揺しているすずかを見るのは初めてだ。

正直、見たくなかったが・・・

 

「とりあえず、隠しカメラは全て没収。そして、すずかの部屋に転送されたデータも全て削除したからな」

「そ、そんな!?」

 

まるで、この世の終わりかと思うくらい絶望した表情をするすずか。

つか、俺の入浴映像見て誰が喜ぶんだよ・・・

 

「でも、どうやってカメラの位置やデータの事が分かったの・・・?」

「ノエルさんに聞いた」

「ノエル!?言わないようにお願いしてたのに!?」

 

確かに最初はグルだったのかノエルさんも知らない素振りをしていた。

でも、俺はこの人の弱点を知っている!

 

「抱っこさせてあげると言ったら全て話してくれた」

「・・・ノエル?」

「ふぇ!?」

 

すずかが、ぎぎぎっと壊れたブリキ人形のようにノエルが居た方向を見るが、居たのはノエルさんではなかった。

ノエルさんではないメイドさんがすずかの顔を見て怯えた表情をしている。

 

「・・・ファリン。ノエルは?」

「お、お姉ちゃんならさっきお紅茶のお代りを準備しに出て行っちゃいましたけど・・・」

 

びくびくと怯えながら返事するメイドさん。

この人は『ファリン・K・エーアリヒカイト』さん。

名前の通りノエルさんの妹である。

 

それにしても流石はメイド長?は退き際を弁えてる。

まあ、あの人、子供好きで俺みたいな少年を抱き上げるのが好きらしい。

え?ショタコン?なんか変な電波が飛んできて意味が分からない言葉が思い浮かんだけど忘れよう。

 

「とりあえず、こんな事は二度とするなよ?分かったな?」

「う、うん・・・。ごめんなさい」

 

ちょっときつく言い過ぎたかな?でも、これくらい言わないとダメ出しな

 

「今度は騎士(ナイト)くんにばれないように設置しないと・・・」

「ん?なんか言ったか?」

「ううん!何でもない!」

 

なんか呟いていた気がしたけど気のせいか?

 

騎士(ナイト)。早く来なさいよ。あんたの好きなモンブランがあるわよ」

 

いつの間にか部屋の窓側にあるソファーに座っていたアリサがそう言ってくる。

モンブラン、美味しいよね!俺はクリームだけでも食える!

 

「あれ?そう言えば、高町や皇、恭也さんが来てると聞いてたんだけど?」

「恭也さんはお姉ちゃんと一緒だよ」

「そう言えば付き合ってるんだっけ?あの2人?」

「うん!とてもお似合いのカップルだよね!」

 

確かに忍さんは美人だし、恭也さんはイケメンだ。

美男美女カップルとは世の中の男女を敵にしてしまいそうだ。

 

「私と騎士(ナイト)くんもそんな関係になれたらな・・・」

「え?なに?」

 

何か呟いてたみたいけど、いきなり突風が来てすずかの声が聞こえなかった。

 

「・・・騎士(ナイト)、早く来ないとモンブラン食べちゃうわよ!」

「なに!?」

 

アリサの奴、なんて酷い事言うんだ!つか、さっきイチゴのショートケーキ食ってただろ!

 

「そんなケーキをばくばく食ってたらさらに太るぞ!」

「何ですって!?私のどこが太っているというのよ!」

「お、落ち着いて2人とも」

 

なんかこう言うやり取りも久しぶりな感じがすんな。言い争いの末に俺はモンブランを口にして満足していると、ふと思ったことを口にする。

 

「話がそれちまったけど、高町と皇は?」

「2人は、あの庭の中だよ」

「ユーノが走って庭の奥にいっちゃったから、なのはと皇が追いかけて行ったわ」

「そうか・・・」

 

アリサが指さす方向には林がある。すずかの家は庭はどんだけ広いんだよ!ってツッコミは前からしてるからいいとして・・・

 

「それは、不味いな・・・」

「何がよ?」

 

顎に手を押さえて考え込む俺にアリサが訪ねてくる。

 

「あそこには俺が仕掛けた罠がある。落とし穴とか生えた草同士を結んだ輪っかとか」

「あんた、人の庭で何やってんのよ!?」

 

だって、あんな庭?があったら罠を作りたくならないか?

ならない?

 

「とりあえず、俺達も行ってみるか?もしかしたら高町か皇が罠にかかって気絶してるかもしれない」

「それ、洒落にならないよ・・・」

「というか、なのはが引っかかってたらぶん殴るわよ。恭也さんと一緒に」

「よし!急ぐぞ!」

 

それはマジ勘弁してください、アリサさん!俺、死んでしまいます!

 

「あっ、ちょっと待って!帰ってきたみたい!」

 

すずかの声に俺は庭の方を見ると高町をおんぶしている皇がいた。

 

「ちょ、ちょっと!何があったのよ!?」

「・・・なのはは、気絶しているだけだ。ユーノを追いかけている時に木の根っこに引っかかって転じまったんだ」

 

もしかして俺の仕掛けた罠に?

いや、そう決めつけるのは早計だ。なのははドジだから何もないところで転ぶ事だってあるさ!

 

「皇くんも泥だらけだよ?どうしたの?」

「・・・なのはを運んでいる途中に何故か落とし穴があってそれに落ちた」

 

「「・・・・・・」」

 

「マジ、すんませんでした!!」

 

はい!俺の作った罠が原因でした!

俺は綺麗な土下座を披露しながら大声で謝った。

この後、俺が全員から折檻とお叱りを受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――とある1シーン その①―――

 

 

 

 

ジュエルシードが発動し猫が強大化。

なのはと拓真が封印しようとするが、ジュエルシードを狙う黒いマントの少女が現れた。

拓真が応戦し、なのはが封印しようとするのだが―――

 

「なのは!ここは俺が引き受ける!お前はジュエルシードの封印を!」

「うん!拓真くん、気をつけて―――うにゃ!?」

「なのは!?」

「どうした!?」

「飛ぼうとしたら、いきなり頭から地面に落ちた?あっ、草の輪っかがある。これに引っかかったのかな?しかもよく見たらそこら中に同じようなものが・・・」

「うにゃあ~~・・・」

 

―――なのはが、騎士(ナイト)の罠に引っかかって気絶。

 

 

 

 

 

―――とある1シーン その②―――

 

 

 

拓真が黒いマントの少女とその仲間のオレンジ色の狼を追い込んで撤退させようと試みるのだが―――

 

「お前に俺は倒せない。例え2人がかりだろうとな」

「どうするフェイト?あいつ、かなりヤバいよ!」

「うん。でも、退く訳にはいかない!」

「仕方ない・・・。俺の力の一部を見せてやる。俺が地獄の特訓で得たスーパーサイヤ人のちか―――うわああああっ!?」

「「あっ」」

「拓真!?地面に降りっ立った瞬間、網が出てきて捕縛された!?」

「こ、こんな網ぐらい引き千切って―――アババババッ!?」

「電流!?大変だ!?今助けるよ!?」

「・・・フェイト。今のうちにジュエルシードを封印して帰ろっか」

「う、うん・・・」

 

拓真が元々設置されていた防犯用の罠に引っかかる。

その間にジュエルシードは封印され、奪われてしまった。

 

 

 

 

―――とある1シーン その③―――

 

 

 

ジュエルシードを回収され、拓真が気絶したなのはをおんぶし、アリサ達の所へ戻るのだが―――

 

「くそっ・・・酷い目にあった」

「大丈夫かい、拓真?ごめん、僕にもっと力があれば・・・」

「ユーノのせいじゃない。あんなところに罠が―――うおっ!?」

「ああっ!?拓真、なのは!?なんでこんなところに落とし穴が!?」

「本当に散々だああああああああああああっ!」

 

拓真が騎士(ナイト)の落とし穴に引っかかり落ちて泥だらけになる。

だが、なのはは無傷であった。




原作ヒロイン登場!

そして、皇くんの力が発覚!

次回はその原作ヒロインが!?





という訳でここまで読んで頂きありがとうございます!

いつもの報告会!

お気に入り564件、感想20件、評価22人

続けて100人は無理だったけど確実にお気に入りをしてくださった人が増えていて感謝感激です!

感想も毎回してくれる人もいますし、この作品を評価してくれる人も増えました。

ありがとうございます!本当にありがとうございます!

次も皆さんに喜んでいただけるように頑張ります!


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第7話『主人公は無邪気』

そろそろ辛くなってきた。(ネタ切れ)

でも、頑張ろうと思います!


「あー、疲れたー・・・」

 

時間は夕方17時頃。

俺、騎士(ナイト)は、珍しく1人で帰宅していた。

 

「まさか宿題が今日までだったなんて忘れてたぜ・・・」

 

そのせいで先生に怒られて、宿題が終わるまで帰らせてもらえなかった。

アリサやすずかは、バイオリンの稽古で先に帰った。まあ、なくても先に帰ってもらうように言ってたけどね。

 

「今日はサッカーの練習がなくて良かった。次からはマジで気を付けなければ・・・ん?」

 

なんか蒼い光が俺の視界に入った。見回してみると道路脇の花壇からだ。

 

「なんだろう・・・これかな?」

 

俺はその花壇に光る何かを確認してみると蒼いひし形をした石だった。

すっげえ綺麗だな・・・。これ、石は石でも宝石なんじゃね?

 

「それを渡して下さい」

「うおっ!?」

 

いきなり声をかけられたから、びっくりして変な声を出してしまった。

石に夢中で気付かなかったようで、目の前にはアリサみたいに金髪で、高町のように二つに結んだ女の子がいた。

そして、手には・・・なんだろ?

 

「あの・・・聞いてますか?」

「ん?ああ、ごめん!その黒くて格好いいのは何かと思ってさ!」

 

少し戸惑う表情をする女の子にそう答えた。

でも、まじでなんだろ、あれ?最近発売された玩具かな?

 

「これは私のデバイスです。それよりもその石を渡してください」

 

デバイス?帰ったら母さんに聞いてみよう。

というか、女の子はどうやらこの石が目的みたいだ。

 

「この石はあんたのなの?」

「・・・その石が必要なんです」

「ふーん・・・」

 

怪しい。

でも、この女の子はアリサと違って素直な子だ。表情が少し曇ってるし、嘘がつけないタイプ。

アリサだったら「そうよ!だから、早く渡しなさい!」とか平気な顔で言いそうだし。

 

「それじゃあ、俺のお願いを聞いてくれたら良いぜ!」

「・・・なにをお願いするの?」

 

女の子は恐る恐るそう聞いてくる。俺は少しホッとした。

もし、あのデバイス?とかいうので殴りかかれたらどうしようかと思ったよ。

玩具とはいえ、鋭い部分があるから痛いだろうし

 

「そのデバイスって奴を触らせてくれよ!」

「え?バルディッシュを?」

「なあ、頼むよ!そんな格好いい玩具初めて見たんだ!」

「バルディッシュは玩具じゃないんだけど・・・」

「そこをなんとか!」

 

俺は両手を合わせて拝むように頼み込む。女の子は少し考え込むとある質問をしてきた。

 

「・・・君は魔導士って知ってる?」

「マドウシ?」

 

牛の仲間か?

 

「・・・魔導士を知らない?それじゃあ、この子は現地一般人?こんなありえない魔力を持った子が?」

「???」

 

何をぶつぶつ独り言をしているのだろう?

 

「・・・分かった。でも、場所を変えても良い?出来れば多くの人には見られたくないから」

「ん?別に良いけどどこまで行くんだ?遠くだと帰りが遅くなって母さんに怒られちまう」

「・・・海のある公園に行こう」

「おっ!近いや!良いぜ!」

 

俺は女の子と一緒に海鳴水上公園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたな!」

「うん・・・」

 

私、フェイト・テスタロッサは現地一般人の男の子と海が見える公園に来ていた。

なぜならば、男の子が拾ったジュエルシードを渡してもらう為。

 

正直、私はこの男の子を敵だと思っていた。

先日、ジュエルシードが原因で巨大化した猫を封印した時、凄く強大な魔力を感じていた。

白い魔導士の女の子やオレンジ色の道着をした男の子と戦っている時、いつその強大な魔力を持った人がこっちに来るのか気が気でなかった。

 

結局は来なかったけど、その正体が目の前にいる男の子。

まさか魔法を知らない男の子とは思わなかった。

容姿は銀髪でオッドアイの男の子。只者ではないと思ってしまう。

だから、バルディッシュを起動させて威嚇した私は悪くない。

 

・・・でも、結局は逆効果で男の子に興味を持たれてしまって、バルディッシュを触らせるのを条件にジュエルシードを渡してくれる約束となった。

 

それで済むのならと思って了承したけど、1つ疑問に思った。

 

あれ程、強大な魔力に当てられている筈なのにジュエルシードが発動しない。

 

あれは、魔力を持とうが持たなかろうがちょっとした事で発動してしまう危険なもの。それがどうしてか発動しない。

 

私には理解できないが都合がいい。だから、早く約束を果たしてしまおう。

 

「んじゃ、はい」

「え?あっ・・・」

 

私がバルディッシュを渡そうと思ったら、男の子が先にジュエルシードを渡してくれる。

 

「あ、ありがとう・・・」

「おう!それじゃあ、デバイス?って奴触らせて!」

 

キラキラと年相応にバルディッシュを見る男の子。

正直、このまま逃げる事も出来たけど気が引けてしまう。なんか変に警戒していたのが馬鹿馬鹿しく感じてしまうくらい男の子は純粋に私を見ている。

 

「はい」

「おおっ!サンキュー!」

 

男の子は嬉しそうにバルディッシュを受け取るとお礼を言って観察を始めた。私が初めてバルディッシュに触れた時もあんな感じだったのかな?

そんな事を思っていると男の子は、嬉しそうな表情が一転し、不満げな表情になる。

 

「どうしたの?」

「いや、さっきみたいに黄色いのが、ぶわっ!ってなってないんだよ」

 

男の子が言っているのは魔力刃の事だろう。あれは、魔力で生成されてるけど使用登録者である私が許可しない限り出力はできない。

 

魔力を持っていても男の子は一般人。説明しても分からないし、理解してもらえないだろう。

だから、私は返してもらうように声をかけようとする。

 

「あっ、出た!」

「えっ!?」

 

私は声を出して驚いてしまう。

男の子は、感動した表情で出ない筈の魔力刃を出して喜んでいる。

 

「でも、黄色くないな・・・。真っ白だ。なんで?」

「さ、さあ?」

 

本当に何でだろう?

いや、白いのは恐らく男の子の魔力光が白だからだろう。

私が疑問に思ってるのは、なんで許可を出してないバルディッシュから魔力刃を出せたかである。

 

「よっ!ほっ!はっ!」

 

バルディッシュの今の形態はサイスフォーム。それを自在に操って男の子はバルディッシュを振り回している。

しかも、魔力刃を大きくしたり小さくしたりと自由自在に出力をしている。

 

「ま、まさか・・・」

 

もしかして、私はとんでもない失態を犯してしまったのではないだろうか?

 

男の子は、本当は魔導士で、白い魔導士の女の子の協力者。

ジュエルシードを狙う私の事もその子から聞いていて、顔を知らない私に近づく為に一般人を装い、私を油断させる為にジュエルシードを渡して、私を無力化させる為にバルディッシュを取り上げたのではないか?

 

もしそうならば、私は完璧に男の子の思惑通りになってしまった。

バルディッシュがない私に魔導士の男の子は倒せない。今すぐ、使い魔のアルフを呼んでもかけ着く前に私は捕らえられるだろう。

 

「ふう・・・なあ?」

「っ!?」

 

男の子に声をかけられて私は一歩後退る。

怖い。さっきまで無害だと思ってた溢れ出すほどの魔力を持つ男の子が敵になったのだ。

 

「母さん、ごめんなさい・・・」

 

私は海の波で掻き消されてしまう程小さな声でそう呟いた。

そして、男の子は私の手を掴んでこう言った。

 

「すーーーげえ、楽しかった!ありがとな!」

「・・・え?」

「これどこのおもちゃ屋さんで売ってんだ?教えてくれよ!」

 

男の子は笑顔で私にそう質問してくる。もちろん、私の手にバルディッシュを置きながらだ。

 

「えっと、その・・・」

「あっ、もしかして親にプレゼントされたものだから分からないか?」

「あの・・・」

 

も、もしかして私の勘違い?深読みしすぎちゃったの?

 

「それじゃあ、お前のお母さんに聞いてみてくれよ!それで今度俺に教えて!」

「う、うん・・・」

「よっし!・・・って、どうした?まるで、獰猛な肉食動物と出くわしたけど、何もされずに目の前を素通りされて安心した草食動物みたいな顔をしてるけど?」

「な、なんでもないよ・・・。ははは」

 

私は「まさにその通りです」とは言えず、安心しすぎて膝を地面につけ、笑う事しか出来ないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・落ち着いた?」

「う、うん・・・」

 

いきなり膝を突いて笑い出した時はどうしたかと思ったけど、どうやら俺がデバイス?って奴を自在に振り回すのを見て驚いたらしい。

これそんなに難しいものだったのだろうか?ちょっと疲れたけど、軽く走った程度くらいなんだけど?

 

とりあえず、女の子をベンチに座らせて落ち着くまで一緒にいる。ついでに、お小遣いで買ったアイスを一緒に食べている。

 

「ご、ごめんなさい。アイスまでご馳走になっちゃって・・・」

「別に良いよ。その代わりさっきの約束忘れんなよ?ちゃんとどこでそのデバイス?を買ったのかお母さんに聞いてくれな?」

「わ、分かった・・・」

 

よし!言質は取ったぞ!

 

「って、そう言えば名前聞いてなかった。俺は橘騎士(ナイト)。好きに呼んでくれ!君は?」

「私は・・・フェイト・テスタロッサ。フェイトでいいよ」

「へー!フェイトって言うのか!もしかして外国人?」

「えっと・・・」

「それともアリサみたいにハーフか?あっ!アリサって言うのは俺の幼馴染でさ。フェイトと同じ金髪なんだよな」

「そ、そうなんだ」

 

俺はこの後結構長い時間フェイトとお話をした。まあ、俺が一方的に話していただけでもあるんだけど・・・

それでも、笑顔を見せてくれてたから少しは楽しんでくれてただろう。

 

「あ、やべえ!そろそろ帰らないと母さんに怒られちまう!」

「もう日が沈みかけてるね・・・」

 

俺とフェイトが海を見ると太陽が海に沈んでいく。

 

「フェイトも帰らないとお母さんに怒られるだろ?家まで送ってくよ」

「えっ!?私は大丈夫だよ!騎士(ナイト)も早く帰らないと怒られちゃうんでしょ?」

「そうだけど、女の子を1人帰らせたらもっと怒られちまう。どこに住んでんだ?」

「えっと、ここから見えるあのマンションだけど・・・」

 

フェイトが指さすところは隣町のマンション。距離はそこまで遠くはないな

 

「よしっ!行こうぜ、フェイト!」

「あっ、うん・・・」

 

俺がベンチから立って先にマンションの方角へと歩き出す。それに付いてくるようにフェイトも歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、またな、フェイト」

「・・・うん。またね、騎士(ナイト)

 

騎士(ナイト)とマンションの玄関で別れた。私は騎士(ナイト)が見えなくなるまで手を振っていた。

久しぶりにとても楽しい時間を過ごせたと思う。

 

騎士(ナイト)の話はとても面白くて思わず笑ってしまう時もあった。

あんなに笑ったのもいつぶりだろう?彼にはとても感謝している。

 

でも、今度会ったときはデバイスがどこに売られているのか言わないといけない。

会わなければいい話だけど、私としてまた会ってお話がしたいと思った。

 

もし今度会ったら「聞いても分からなかった。ごめんなさい」と言ってみよう。騎士(ナイト)なら笑って許して、また楽しいお話をしてくれる筈だ。

 

早く母さんのお使いを済ませる為に頑張ろう。だから―――

 

「ふぇ、フェイト・・・」

「やっとおかえりだな。フェイト・テスタロッサ」

 

私がマンションの自室に入ると、私を見て不安そうな顔見せる人間形態の使い魔アルフと先日邪魔をしてきた道着の男の子がいた。

 

どうやら私の戦いは今、始まったようだ。




皆さん、お待ちかねのフェイトちゃん登場!

そして、騎士(ナイト)と出会い何事もなく安心していた所に拓真くん参上

一体、フェイトはどうなってしまうのでしょう!?


という事でまた報告会!

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よっしゃ!800人突破!

感想や評価も同じ人数ってある意味凄い!

これらが私の原動力となっております。
本当にありがとうございます!


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第8話『温泉旅行 前篇』

タイトルで分かるように温泉回です!

楽しんで頂けると幸いです!


いきなりだけど、連休って素晴らしいよね!

学校を休めるし、学校を休めるし、学校を休める!

 

兎に角、家でゴロゴロ出来る日なんだ。今度の連休はサッカーの練習も試合もないから。ゲームをいっぱいしようと思ってたんだけど・・・

 

「やっと着いた!」

「うーん!空気が美味しいね!」

「緑が綺麗なの!」

 

インドア(ゲーム)を楽しみたかった俺は何故かアウトドア(自然に囲まれた山の中)を体験していた。

しかも、お馴染の3人も一緒。そして、高町夫妻に兄妹。すずかの姉にメイド2人も一緒だ。

 

一応、説明しておく。

これは、高町家・バニングス家・月村家・橘家の合同旅行だ。

 

何故かバニングス家からはアリサだけだし、月村家は忍さんにメイドのノエルさんとファリンさん、橘家は俺と、共に両親が居ない。

大金持ちの親だから仕事が忙しいのだろう。俺ん家は逆に貧乏だから共働きで忙しいのだ。

 

「ここって、露天風呂があるのよね!楽しみだわ!」

「そうだね!」

「うん!しっかり浸かって疲れを取るなの!」

 

元気だな・・・。でも、高町はやけに爺っぽい発言だな

 

騎士(ナイト)!あんたさっきから元気ないじゃない?どうしたのよ?」

「なんでもない・・・」

騎士(ナイト)くんは車の中で携帯ゲームをしてたから車酔いしてるんだよ」

 

士郎さん。それは言わないでおいてよ。

アリサがめっちゃ冷たい目をして俺を睨んでいるじゃないか。

 

「それで騎士(ナイト)くん。君はどっちに入るのかしら?」

「忍さん、いきなり何の話ですか?」

 

ロングの髪で知的な女性はすずかの姉、月村忍さん。最近知ったが忍さんは恭也さんの彼女だったらしい。

 

「温泉よ。お・ん・せ・ん。男風呂に入る?それとも、お・ん・な風呂?」

「忍さんは俺の性別を知りませんでしたっけ?」

 

それともボケたか?

 

「失礼ね。もちろん知ってるわ。でも、ここは10歳以下の子供はどっちでも入って大丈夫なのよ?」

「えっ!?そうなの!?」

「なんで俺よりお前がそんなに反応するんだよ、すずか」

 

おっとりした目がぎらついてんぞ

 

「こら、忍。悪ふざけが過ぎるぞ」

「あら、でも私は本当のことを言っただけよ?」

「・・・騎士(ナイト)、分かってるよな?」

「ええ。女風呂は入りません。だから、恭也さんだけでなく、士郎さんもそんな怖い目で見ないでください・・・」

 

俺、こんな場所で骨を埋めたくないです。

 

「そうだよな、騎士(ナイト)くん。君は僕達と大事な男の話をするのだから」

「えっ?それも正直怖くて嫌なんですけど!?」

「そう言うな。話すのは主に剣の話だから安心しろ」

「・・・ん?今のを聞いてどう安心しろと?」

 

寧ろ危険だ、逃げろ!、と俺の勘がアラームを上げている。

 

「それじゃあ、私達は大事な女の話をしましょうか?」

「良いね!しようしよう!主になのはと皇くん関係で!」

「賛成!」

「うにゃ!?なんで、私と拓真くんなの!?」

 

どうやら高町は桃子さん、高町の姉の美由希さん、忍さんとの餌食になるようだ。頑張れよ

 

「でも、まだ風呂に入るのは早い。今から夕飯前まで自由行動にしよう。皆はそれでいいかな?」

 

「「「はーい!」」」

 

元気よく答えたのは女性陣の皆様。俺は車酔いで気持ち悪いから部屋に行って寝よう。

 

騎士(ナイト)!部屋に荷物を置いたらすぐ外に行くわよ!」

「拒否権を発動しても良い?」

「残念!騎士(ナイト)くんには人権はありません!」

「それは酷いだろ!?」

 

もはや、人扱いされないだと!?

んじゃあ、俺はなんなんだよ?

 

「えっと、下僕(ペット)、なの?」

「俺はユーノ君(友達)以下!?」

 

俺は膝を突いて嘆いた。

恐らく3人で打ち合わせをしていたんだと思うが高町に下僕(ペット)呼ばわりはダメージが大きすぎる!

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト。この近くにジュエルシードがあるのかい?」

「うん。そうらしい・・・」

 

私、フェイト・テスタロッサは使い魔のアルフと一緒に温泉街に来てます。

その理由はもちろんジュエルシード探し。

 

「確かに、微かにだけどジュエルシードの力を感じる。場所までは分からないけど・・・。でも、本当に良いのかい?」

「何がなの、アルフ?」

 

心配そうに聞いてくるアルフ。私は何を聞きたいのか分かってはいたけど敢えて知らないふりをした。

 

「あの皇っていうガキの言う事だよ。いきなりあたし達に協力するって言い出した時は耳を疑ったよ」

「うん。でも、彼は嘘を言ってはいない。彼自身は信用できないけど情報が確かならそれでいい」

「うーん。奴の目的が全く分からないよ・・・。でもまあ、温泉で身体を癒して来いってのは私も大賛成だ。フェイトは最近ずっとジュエルシード探しで休んでいなかったからね」

 

そう。私とアルフは皇という男の子からジュエルシード回収は夜に行うから昼間は温泉でゆっくりしろと言われたからここにいる。

 

「私は大丈夫なんだけどな・・・」

「ダメダメ!ほら、まずは腹ごしらえをして。お腹を満たしてから温泉に入ろう!」

 

私はアルフに背中を押されてされるがままに進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「や、やっと解放された・・・」

 

俺は最初アリサ達と温泉街を歩き回っていた。すると何故か、神崎がどこからともなく現れた。

仕方ないので俺が神崎を足止めし、アリサ達は士郎さん達の所(旅館)へ向かった。

 

何故か俺を苦手視する神崎。

とりあえず、時間を稼ぐべく話し合いを試みた。

話題の内容はサッカー。

最近のS(サッカー)リーグでどこが優勝するかをについてだ。

 

俺は川崎だと、言ったら神崎は広島と断言。

こいつ、意外とサッカー好きだった。

 

他にも好きなサッカー選手や好きなゴールシーンなど話が盛り上がり結果的にはアリサ達を逃がす時間は稼げた。

 

神崎も本来の目的を思い出したのか俺を払い除けてアリサ達を追いかけて行った。

まあ、もうアリサ達は士郎さんの所に到着しただろうし、大丈夫だろう。

 

何だかんだでサッカー談義に満足し、目標を達成した俺はかなり疲労感を感じていた。

 

「帰ってもまたアリサ達に色々言われるだろうし、どこかで休むか・・・」

 

俺は休めるところを探していると良い所を発見する。足湯だ。

 

「はあ~・・・。さすが温泉街。足湯なんてあるんだな~・・・」

「あの・・・お隣良いですか?」

「良いですよ~」

 

足湯に感動していると誰かが声をかけてくる。

なんか聞いたことのある声だな~とか思いながらも深く考えずオッケーを出した。

 

「ありがとう。騎士(ナイト)、奇遇だね」

「ん・・・?フェイト?」

「うん。・・・良かった。名前、憶えてくれてた」

 

なんと隣に座ったのは、この前会ったフェイト・テスタロッサだった。

少し嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「まあ、あのデバイス?って奴が印象的だったからな・・・。それに友達の名前だろ?そりゃあ、憶えてるさ」

「え・・・?」

 

少し目を大きくして驚くフェイト。俺、なんかおかしなこと言った?

 

「私って騎士(ナイト)と友達なの?」

「え?」

「え?」

 

どうやらフェイトは俺のことを友達認定されていないらしい。少しショックだが仕方ない。

 

「俺はフェイトの事を、『フェイト』って呼んでるし、フェイトは俺を『騎士(ナイト)』って呼んでるだろ。名前で呼び合う。友達になるのはそれで十分だ」

「そっか。私と騎士(ナイト)は友達なんだ・・・」

「嫌?」

 

俺がそう聞くとフェイトは首を振った。

 

「ううん、嬉しいよ。ありがとう、騎士(ナイト)

「お礼を言われるほどの事じゃないんだけどね。それで、そのお隣のオレンジ色の髪をしたお姉さんは誰?」

 

しれっと当たり前のように存在するお姉さん。多分、フェイトの関係者だと思うんだけど?

 

「アタシかい?アタシはアルフ。フェイトの姉さ」

「そうだったんですか。俺は橘騎士(ナイト)です。宜しくお願いします」

「宜しく騎士(ナイト)!ちゃんと挨拶出来て偉いじゃないか。それとアタシに対して敬語じゃなくて、フェイトと話すような感じで良いからね」

「そうですか?それじゃあ、遠慮なくそうするわ」

 

何とも人当たりが良いアルフ。フェイトの姉らしいがそんなに似てないな

 

「というかよく俺を見つけられたな。足湯に浸かる為に座ってたのに」

「魔力・・・その銀髪が目立ってたから」

「なるほど」

 

確かにこの髪は遠目でも目立つよな。

 

「足湯気持ちいいな」

「そうだね・・・」

「あっ!あの約束はどうなった?お母さんからデバイス?はどこで買ったか聞いた?」

「ご、ごめん。まだ聞けてないんだ・・・」

「そっか、残念」

 

あのデバイス?は本当に格好いい。

あの後、親に聞いても、自分で調べてもパソコン関係のデバイスしか分からなかったんだよな・・・

 

「・・・怒らないの?」

「ん?なんで怒らないといけないんだ?」

「だって、今度会ったときにって約束破っちゃったから・・・」

 

フェイトは真面目だな・・・。

 

「確かに約束したけど別に怒るほどじゃないよ。それに温泉に浸かってんだから怒る気持ちすら沸いてこない」

「そ、そうなんだ」

「あはは!面白いな、騎士(ナイト)は。でもアタシとしては温泉に肩まで浸かりたいとこだねえ」

「それじゃあ、入ってくればいいじゃないか。ここは温泉街だから入る場所には困らないでしょ?」

「それがねえ。フェイトが温泉に入りたがらないんだ。アンタからも何か言ってやっておくれよ」

「あ、アルフ!?」

 

アルフの言葉に顔を赤くして動揺するフェイト。

なるほど、それは確かに良くないな。

 

「フェイト」

「な、なに?」

「不衛生は良くないぞ?」

「待って、騎士(ナイト)!その言い方だと私がお風呂嫌いで滅多にお風呂へ入らない子みたいだから止めて!」

「違うの?」

「違うよ!」

 

必死に弁解するフェイト。

意外とフェイトもからかいがいがある。

 

「私は夜、お風呂に入るつもりなんです!」

「わ、分かった。俺が悪かったから、落ち着け、顔近いし」

「えっ?あ、ご、ごめん!」

 

フェイトも必死だったのか顔を近づきすぎていたのに気付いていなかったようだ。

すぐに顔を戻すが顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

「アルフ。フェイトにも入りたい時間があるようだし、今回は譲ってあげなよ」

「うーん。フェイトと一緒に入りたかったけど仕方ないね。騎士(ナイト)はフェイトの話だと隣の市に住んでるんだろ?今日は旅行かい?」

「そうだよ。俺の友達と一緒にお泊りさ」

「ふーん・・・。そこは温泉に入れるのは泊まっている人だけかい?」

「ええっと確か大丈夫な筈だよ?24時間入れるし、泊まっている人以外でも24時間いつでも入れるらしい」

「なるほど。それじゃあ、ちょっとここら辺を見終わったら行ってみようかね。フェイト、そろそろ行こうか?」

 

アルフが立ち上がってフェイトにそう言うとフェイトも立ち上がった。

 

騎士(ナイト)。次会ったときはちゃんと聞いておくから・・・」

「おう、頼むぜ!でも、そんな思いつめた顔していう事じゃねえからな」

「う、うん。わかった。またね」

「おう!アルフもまたな!」

「ああ、騎士(ナイト)。またね!」

 

フェイトとアルフが足湯から出て去って行った。俺も足湯から出て身体を伸ばしながら旅館へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー!広ーい!」

「凄ーい!」

「うん!」

 

なのは達は旅館の温泉に入っていた。

その温泉の広さや綺麗な内装に感動している。

 

「3人とも、お風呂に浸かる前にちゃんと身体を洗ってね」

「はーい!」

「それじゃあ、流しっこしようか?私がなのはの背中を流してあげる!」

「うん!ありがとうなの!私はすずかちゃんの背中を流してあげるね?」

「ありがとう、なのはちゃん!」

 

3人は仲良く洗い場へと向かう。そんな光景に桃子、美由希、忍が微笑ましい表情で見ている。

 

「それにしても、騎士(ナイト)の奴、ユーノを独り占めなんてずるいわ!」

「あはは、でも仕方ないよ。ユーノ君、私達と一緒に入りたくなかったようだし」

「必死に騎士(ナイト)くんの服を掴んでたよね」

 

アリサはユーノが騎士(ナイト)に奪われた?事を悔しがっている。なのはとすずかはそれを宥めながら体を洗っていく。

 

「それじゃあ、騎士(ナイト)くんごと連れてくれば良かったんじゃない?」

「ちょっ!忍さん!何言ってるんですか!?」

 

忍の言葉に激しく動揺するアリサ。なのはもそれはと言った感じで苦笑する。

 

「なるほど。さすがお姉ちゃん!」

「馬鹿な事言わないの!」

 

逆に賛同する(すずか)。そんなすずかにアリサがツッコミを入れた。

 

「そ、そんな事したら私達の裸を見られちゃうじゃない!そんなの絶対嫌よ!忍さん達は嫌じゃないんですか!?」

「ふふふ。私は見られても気にしないわ」

「私も」

「大丈夫よ、アリサちゃん。貴女の大事な騎士(きし)様を誘惑なんてしないから」

「な、なななななななな何バカな事言いてるのよ!?」

「痛い!?アリサちゃん、力込めすぎなの!?」

 

男と言えど子供に裸を見られるくらい気にしない大人の女性たち。

忍がアリサに笑いながら言った言葉にアリサは激しく動揺して敬語だった言葉が雑になってしまう。その被害にあってしまうなのはは痛みで声を上げる。

 

「私も恥ずかしいけど騎士(ナイト)くんなら・・・」

「はいそこ!変な事考えてないで私の背中を流しなさい!」

 

すずかに注意してアリサの背中を流させた後、女性陣は湯船に浸かった。

 

「それで、皇拓真っていうなのはの想い人はどんな子なの?格好いい?」

「え!?別に拓真くんとは、その・・・」

 

美由希の質問になのはは口ごもる。

 

「まあ、普通の男子よりは格好いいんじゃない?皆が言うには、顔は中の上で成績も中の上。スポーツ万能で人当たりは良くないけどそこがクールで良いらしいわ」

「へえ。そうなんだ」

「すずかの話だと、騎士(ナイト)くんと話した時は素気ない態度だったらしいわね」

「ええ。あいつは皇にそんな態度をされたのにも関わらず話しかけても無視されてたわ」

 

イラついても仕方ないと分かっていてもイラつく自分に溜息を吐くアリサ

 

「で、でも拓真くんも何か事情があったのかもしれないし」

「何よ、事情って?」

「それは分からないけど・・・」

「まあまあ。でも、サッカーの一件で初対面の時よりは仲良くなったよね」

 

なのはは拓真が騎士(ナイト)の魔力に警戒していると思っているので下手にフォローが出来ない。しかし、そこですずかのサポートが入る。

 

「まあ、確かにそうね。一方的に騎士(ナイト)が話しかけているけど、無視しないで聞いているわね」

騎士(ナイト)くんはどんな人でも仲良くなれるから凄いよね!」

「そうね・・・。そこだけは騎士(ナイト)の良い所よね・・・」

「その騎士(ナイト)くんは周りの評価はどんな感じなの?」

 

騎士(ナイト)をあまり知らない美由希が質問をする。

 

「どんなって、馬鹿ですよ。ただの馬鹿」

「ははは。アリサちゃんは厳しいね。すずかちゃんから見たらどうなの?」

「え、えっと、騎士(ナイト)くんは容姿は上の上。頭は良くないけどスポーツ万能で誰もが知っている人気者、かな?」

 

すずかは少し恥ずかしそうに騎士(ナイト)の評価を言う。

 

「へえ。確かに騎士(ナイト)くんってイケメンだよね。あれが大人になったら女の人はメロメロじゃないかな?」

「あ、ありえないわよ!あんな馬鹿なんだもの!」

 

美由希の言葉にアリサが反応する。だが美由希は構わず話を続けた。

 

「馬鹿な子ほど可愛いって言うじゃない。女性の母性本能をくすぐる感じだしね。もしかしたら2人の知らない所で他の女の子からラブレターを貰ってるかもね?」

 

ニヤニヤ笑いながらそういう美由希。

 

「大丈夫です。今のところ騎士(ナイト)くんが誰かからラブレターを貰った事はありませんから」

「え?どうしてわかるの?」

「毎日、下駄箱と机の中をチェックしてますので」

「そ、そうなんだ・・・」

「はい。ふふふ」

 

しれっと言うすずかに何も追及できない美由希。すずかの闇を感じた瞬間だった。




如何でしたでしょうか?

次は後篇になります!



そして、いつもの報告会です。

お気に入り922件、感想31件、評価33人

着々と増えて行って感謝感激であります!


これからも宜しくお願いいたします!


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第9話『温泉旅行 後篇』

後篇です!

ちょっとした急展開が!


「ほら、ユーノ。身体洗ってやるから大人しくしててくれよ?」

「きゅー」

 

俺、騎士(ナイト)はちゃんと男風呂に入り、何故か俺にくっついてきたユーノの身体を洗っている。

 

「ごしごしっと、お湯かけるぞ」

「きゅ!」

「しゃーしゃーっと」

 

シャワーをユーノが嫌がらない程度の強さで、泡を洗い流していく。

つか、こいつ俺の言ってる事ちゃんと理解してね?

高町の世話が凄いのか、それともユーノがとても賢いのか・・・?

 

騎士(ナイト)くん。僕が君の背中を洗ってあげよう」

「えっ?そのくらい一人で出来ますよ、士郎さん」

 

俺がユーノを洗い終わったと同時に士郎さんが話しかけてくる。

しかも、背中を流してくれるとか、目上の人にそんな事してもらうのは忍びない。

 

「遠慮するな。最近、恭也も洗わせてくれないから寂しいんだ」

 

まあ、恭也さんの歳になれば嫌だろう。

 

「それじゃあ、お願いします」

「ああ。・・・ふむ」

「・・・洗いながら何をしてるんすか?」

 

士郎さんが何故か洗うだけではなく、観察しているようにも見えたのでそう聞いてみた。

 

「いや、すまない。君の身体は年齢にそぐわない程、しなやかな筋肉をしているなと思ってね。何か特別なトレーニングとかしてるのかな?」

「いえ、サッカーの練習くらいしか・・・特に特別な事はしてないですよ?」

「ほう。という事は天然ものか・・・」

 

士郎さんではなく、恭也さんがそう言ってくる。男2人にじろじろ見られるのはなんか嫌だな。

 

「ああ。確かにこの筋肉の付き方は人工的なものではないな。どうだろう、騎士(ナイト)くん。今度、道場で剣を習ってみないか?」

「丁重にお断りいたします」

 

この人は何を言っているのだろうか?

俺は剣に興味ないっす。

 

「まあ、そう言わずに検討してみてくれないか?君には才能がある。あの恭也にも勝ったんだ。そしてその恵まれた身体。そんな君の才能と身体に埃を被せるのは実に惜しい」

「そんな事、言われても・・・」

 

恭也さんに勝ったのだって奇策の奇策でもう二度と通用する事のない手だ。もう勝てる気がしません。

 

「別にその力で誰かと闘えという訳ではないよ。その力で正しいと思える何かに使ってくれれば嬉しい」

「・・・・・・」

 

正しいと思える何か、か・・・。

俺にはよく分からないけど無駄にはならならいか?

 

「それじゃあ、サッカーの練習に影響がないくらいなら・・・」

「本当かい!もちろん、君の好きなサッカーに支障ないようにするよ!」

騎士(ナイト)が俺の弟弟子になる訳か。宜しくな」

「あ、はい。宜しくお願いします・・・」

「よし、ではさっそくうちの流派について説明しようじゃないか!」

 

そう言って士郎さんが話を始めた。

ちょっと早まった気もするが、まあ良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、熱い・・・」

 

あの後、士郎さんと恭也さんから流派について説明された。

確か『御神流』って言ってたけど話が長い上にのぼせたからよく覚えてない。

士郎さんと恭也さんは長風呂みたいなので先に失礼した訳だ。

ちなみにユーノは高町がいる部屋へと1人で戻っていった。頭の賢い奴だから大丈夫だろう。

 

「おや、騎士(ナイト)じゃないか。さっきぶりだね」

「・・・アルフ?どうしてここに?」

 

俺がソファーで横になっていると誰かに話しかけられたので見てみたらアルフだった。

 

「あの時言ったじゃないか。『行ってみる』って」

 

確かに言ってたね。でもまさかすぐに会うとは思ってなかったよ

 

「というか、騎士(ナイト)こそどうしたんだい?ソファーで寝てたら風邪ひくよ?」

「ああ。ちょっとのぼせちゃって・・・」

「そうなのかい?そんじゃあ、飲み物買って来てあげるよ」

「いや、大丈夫。そこまでしてもらう訳には・・・」

「遠慮しない。ちょっと待ってな」

 

アルフがそう言うとすぐに飲み物を買って来てくれる。

 

「ありがとう。お金は後で渡すよ」

「いらないよ。これはお礼さ。フェイトと仲良くしてくれてる、ね」

「別にお礼をもらうような事じゃないよ。フェイトは友達だ。仲良くするのは当然だろ?」

「・・・それじゃあ、貸し一って事で」

「うん」

 

俺は飲み物を一気に飲み干す。身体中に水分が行き渡って気持ちいい。

 

「まじ助かった。ありがとう」

「良いんだよ。それじゃあ、アタシはお風呂を堪能するかねえ」

「ここの温泉は気持ちいいよ。って、そう言えばフェイトは?」

「あの子はやっぱり後で入るってさ。人がいると落ち着かない子だからねえ」

「そうなんだ。それじゃあね、アルフ。飲み物ありがとう」

 

アルフは笑顔で「ああ、またね」と言って女風呂へと入っていった。

俺はアルフを見送って、部屋に戻ったのだが何故かアリサの機嫌が悪かった。

 

「どうしたんだ?」

「う、うん。実はなのはちゃんが変なお姉さんに絡まれちゃって」

「変なお姉さん?」

「オレンジ色の髪で目付きが悪い女よ!いきなりなのはを上から睨み付けて脅してきたのよ!」

 

オレンジ色?もしかしてアルフの事か?

 

「質の悪い酔っ払いだわ、きっと!」

「落ち着けよ、アリサ。イライラしたってしょうがないだろ?」

「そ、そうだよ、アリサちゃん。私は気にしてないから」

「なのははそうでも私は気にするのよ!もう!」

 

恐らく楽しい旅行を邪魔されて相当ムカついたんだろう。どうやってこの怒りを治めようか・・・

 

「まあ、とりあえず何かゲームでもしないか?トランプとかウノとかジェンガもあるぜ?」

「・・・良いわ。憂さ晴らしにあんたをけちょんけちょんにしてやるわ!」

「待て!どうして俺なんだよ!?」

「逆に聞くわ。このメンバーの中で誰に当たれば良いと思う?」

 

メンバーは、俺・アリサ・すずか・高町

なるほど、そういう事か

 

「ユーノだ!」

下僕(ペット)が調子に乗るな!」

「そのネタまだ続いてた!?」

 

こんな感じのやり取りが食事を挟んでも続き、寝る時間になった。

 

「えっと、確か部屋は3部屋とったんだよな?」

「うん。士郎さんと桃子さんで一部屋。恭也さんとお姉ちゃんで一部屋。それで、私達で一部屋だよ」

 

なんか納得いくようでいかない割振りである。

まあ、仕方ないと割り切り、寝る場所を決める訳だが・・・。

 

「俺は端っこが良いんだけど」

騎士(ナイト)くんは私の隣だよ?」

騎士(ナイト)は私の隣。これは決定事項よ!」

 

なにそれ?

これはもうすずかとアリサの隣に寝ろと?

 

騎士(ナイト)様。私の隣に寝ると言う選択肢もありますよ?」

「それは御免こうむる」

 

ノエルがすずかを置いて先に布団に入り、隣の布団を叩いて俺を呼んでいる。

俺の直感が奴は危ないとアラームを上げている。

 

旅行に行く前の日、この前の約束(第6話参照)で抱っこされたけど、その時のノエルさんは息が荒く、俺を強く抱きしめたのをよく覚えている。

何故か分からないけど、恐怖を感じた。

 

「それじゃあ、間を取ってファリンと高町の間で」

騎士(ナイト)様の隣ですか?良いですよ!」

「わ、私!?」

 

全く邪気のない笑顔のファリンと驚いた表情をする高町。この2人なら安全だろう。

 

「アリサちゃん。私、恭也さんを呼んでくるから士郎さんを呼んできてくれる?」

「分かったわ」

「と、思ったけど、やっぱりアリサとすずかの隣が良いな!」

 

こいつら、秘密兵器(士郎さんと恭也さん)を使うのは卑怯だぞ!

 

「最初から素直にそう言えばいいのよ!」

騎士(ナイト)くんは恥ずかしがり屋だから」

「高町。この2人をなんとかしてくれ」

「おやすみなさーい」

 

最後の頼み(高町)にも見捨てられた。

俺にはどうやら味方がいないらしい。

 

騎士(ナイト)様。私の隣は―――」

「お前が一番危険なんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、高町なのはは深夜にジュエルシードが発動された事に気づき、ユーノ君と一緒に向かいました。

 

そこには、すずかちゃんの家の時に出てきた女の子。そして、オレンジ色の狼さん。

 

オレンジ色の狼さんはユーノ君と、私は女の子との戦闘が開始された。

私と女の子、フェイトちゃん(狼さんが言ってた)との戦闘は、すぐに決着がついてしまう。

完敗だった。フェイトちゃんのデバイスが私の首に突き付けられる。

 

「レイジングハート!?」

「主思いの良い子だ・・・」

 

私の相棒(デバイス)『レイジングハート』が今まで集めてきたジュエルシードを放出してしまう。

フェイトちゃんがそのジュエルシードを取ろうとしたその時だった。

 

「させるか!」

「っ!?」

「か、神崎くん!?」

「大丈夫だったか?この俺様が助けに来てやったぞ!」

 

いきなり現れたのは神崎くんだった。

昼時にお父さんとお兄ちゃんにお仕置きされて強制帰宅された筈なのにどうしているのだろう?

 

「さあ、フェイト!俺の嫁よ!全力でかかってきな!」

「よ、嫁?というか君は誰?」

 

また神崎くんの病気が始まったなの。

フェイトちゃんもいきなりの事でかなり戸惑ってる。

 

「邪魔をするな、神崎」

「ああ?」

「・・・拓真」

「えっ?」

 

私はまた急に現れた人を見て驚いた。その人とは私が幼いころにお世話になった拓真くんだった。

 

「拓真くん!?なんでここに?」

「・・・なのは。ジュエルシードを」

「え?う、うん・・・?」

 

私は言われるがままに拓真くんにジュエルシードを渡す。

そしたら拓真くんは私の側から離れ、何故か敵である筈のフェイトちゃんの元へ行き、私から預かったジュエルシードを渡した。

 

「た、拓真、くん?」

 

私はその光景に何が起こっているのか理解できなかった。

頭の中が真っ白になる私。それを同じように見ていた神崎くんが声をあげる。

 

「そういう事かこのモブ野郎!お前はなのはではなく、フェイ党だった訳か!それで、アリs―――」

「お前は黙ってろ!」

「ぐあああああああああああああっ!?」

 

神崎くんが拓真くんに攻撃。

前に教えてくれた『かめはめ波』で神崎くんを吹き飛ばした。

 

「行くぞ、フェイト。ここにあるジュエルシードは回収した。ここにはもう用はない」

「・・・分かった」

「ま、待って!」

 

私の制止の声は届くことはなかった。2人は狼さんと合流した後、すぐに転移魔法で居なくなってしまった。

 

「なんで?なんで拓真くんがフェイトちゃんと一緒に・・・」

 

何が何だかわからない。

私は膝を地面に突き、涙を流す事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――とある1シーン―――

 

騎士(ナイト)がノエルの約束を果たす為、月村邸に。ちなみにすずかはお稽古でいない。

 

「では、騎士(ナイト)様。どうぞ、私の膝の上へ」

「え?立って抱き付くんじゃないの?」

「いえ、それは難易度が高いので。というか理性がもたないかも」

「はい?」

「こほん。気にしないでください。さあ、どうぞ」

 

不安になる騎士(ナイト)だが約束を破る訳にはいかないので言われたとおりにする。

 

「はい・・・」

「ああ・・・。騎士(ナイト)様がこんな近くに・・・はあ、はあ・・・」

「の、ノエルさん?」

 

いきなり息が荒くなるノエル。

騎士(ナイト)の不安が一気に加速した。

 

「では、失礼して・・・。ぎゅーっ!!」

「わっ!く、苦しい!ノエルさん、苦しい!?」

「はあ、はあ、はあ、騎士(ナイト)様・・・」

「き、聞いてない!?」

 

騎士(ナイト)からは見えないがノエルの目がかなり危険な状態にある。

 

騎士(ナイト)様って良い匂いしますね。くんくん」

「ひっ!?」

 

本能的に感じた騎士(ナイト)は叫び声をあげた。

 

「だ、誰か!誰か助けてええええええ!?」

 

この後、騎士(ナイト)の叫び声を聞いて駆け付けた忍とファリンが騎士(ナイト)を救出するのであった。

騎士(ナイト)はノエルが危険人物であると確信したのであった。




はい!

拓真が裏切りました!

仮面付けて変装!ってのも考えましたがこっちにしました。

拓真はハーレム志望ではないので・・・。




では恒例の報告!


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やべえ!?

とうとう千人超えてしまった!

感想も評価も40人突破して感謝感激であります!

これからも更新頑張ります!


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第10話『前を向こう』

なんだかんだでもう10話!

早いな・・・

そんなこんなで、今回はあの子がメイン!


騎士(ナイト)!ちょっと来なさい!」

「ん?」

 

俺、騎士(ナイト)は下校準備をしていたんだけど、いきなりアリサが怒鳴りながら俺を呼んでいる。

鞄を持ってすぐにアリサの所へと向かった。

 

「どうした?俺これからサッカーの練習が―――」

「良いから来なさい!」

 

俺の言葉は完全に無視され、何も説明されずに手を引っ張られる。そのまま校門の前まで連れてかれた。

 

「あ!騎士(ナイト)くん」

「よっ、すずか。それに執事の鮫島さんもお久しぶりです」

「はい。お久しぶりでございます、騎士(ナイト)様」

 

校門の前には、すずかとバニングス家の執事である鮫島さん。その2人の後ろには高級リムジンがある。

 

騎士(ナイト)!乗りなさい!」

「・・・ああ、うん。了解」

 

俺はアリサの言われるがままにリムジンへ乗った。いつもだったらレディファーストだとかなんとかでアリサに怒られるんだが今回はこれでいい。

俺は席の中央に座る。

 

「ほら、どうぞ」

「ん・・・」

 

俺が膝をぽんぽんと叩くとアリサがその上に乗ってきた。そして、すずかが俺の横に座る。

アリサは完全に身体を俺に預けるようにのしかかる。

 

「それで、今日はどうしたんだ?高町が居ないって事は、高町関係か?」

「・・・だって、なのはがぼーっとしてるのが悪いのよ・・・」

「高町が?どういう事?」

「うん。旅行が終わって・・・ううん、旅行から帰る時には様子がおかしかったよね?」

 

そう言えばそうだな。

高町は妙に元気をなくしてしまった。俺は同じクラスではないから旅行後はよく分からないが親友の2人が言うなら間違いない。

 

「何回理由を聞いても『大丈夫だから』ってだけ。明らかに私達に何かを隠しているのは間違いないわ・・・」

「高町は嘘を吐くのが下手だしな」

「本当にね。それなのにあの子は頑固だから絶対に話さない・・・ああ、もう!!」

「まあ、落ち着け」

 

アリサが背筋を伸ばし、両手で頭を掻き毟ろうとしたので、その前に俺がアリサの頭を撫でてやる。

するとアリサは大人しくなり、とすっと、またアリサの身体が俺に寄りかかる。

 

「私達じゃそんなに頼りない訳?なのはの何の力にもなれないの?」

「何も言わないって事はそうなのかもしれないな」

「うん。とても悔しいけど・・・」

 

アリサもすずかも悲しそうな表情を見せる。俺は2人の頭を撫でてやる。

 

今更だが、この状態はちょくちょくあったりする。

アリサやすずかがどうしようもない程に怒り狂ったり、気持ちが沈んでしまった時、何故か2人はこうして俺に甘えてくるのだ。

 

こうなると、俺の用事などは無視。2人が満足するまで続くことになる。

 

「そう言えば皇はどうしてるんだ?あいつなら高町の助けになるんじゃないか?」

「あいつは役に立たないわ。学校に来てないもの」

「来てない?」

「休学中なの。理由は家庭の事情らしいんだけど・・・」

 

皇が休学中?もしかしたら、高町がぼーっとしているのもそれに関係しているかもしれないな

 

「まあ、俺達が出来る事は高町を見守ってやる。ただそれだけかもしれないな」

「・・・そうね。もし、なのはが私達に頼ってきたら、その時は全力で力になってやるわ!」

「うん!」

 

どうやら話はまとまったようだ。

俺も高町に見守る以外の何か出来る事がないか考えてみよう。

 

「それじゃあ、そろそろ降ろしてくれ。教室でも言ったがサッカーの練習があるんだ」

「休みなさい!今日は私達と遊ぶのよ!」

「ええー・・・」

 

なんたる横暴!流石アリサ(悪魔)!俺の用事なんて完璧無視してくる!そこに痺れる!憧れる!(やけくそ)

 

「だ、駄目だよ、アリサちゃん。騎士(ナイト)くんにも用事があるんだから・・・」

「でも・・・」

「サッカーの練習が終わったらで良いなら行くからさ!18時には終わるし!」

 

俺はそう提案すると少し不機嫌な表情が緩むアリサ。それに気づいたアリサは首を振った。

 

「し、仕方ないわね。それじゃあ、練習が終わったら車を寄こすわ。それに乗ってすぐに家に来なさい!分かった?」

「はいはい。分かりましたよ、アリサお嬢様」

「んんっ・・・って!いつまで頭を撫でてるのよ!この変態!」

「がふっ!?」

 

アリサの頭を撫でたら、逆襲の頭突きが俺の顎にクリーンヒットした。

その後、アリサも俺の顎に当たった箇所を押さえて悶えている。どうやら自爆したようだ。

そんな俺達を見てすずかはとても楽しそうに笑顔を見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、美由希さん」

「あっ、騎士(ナイト)くん。おはよう。今日は宜しくね」

「はい。こちらこそ宜しくお願いします」

 

早朝、俺、騎士(ナイト)は黒髪で三つ編みな高町の姉美由希さんに挨拶をした。

そして、場所は高町家の道場。ここに来るのは2度目になる。

 

何で俺がここにいるのかと言うと、旅行の時に士郎さん、恭也さんと約束した剣の稽古をするためだ。

 

「来たな、騎士(ナイト)。おはよう」

「おはようございます、恭也さん」

「ああ。それじゃあ、早速だが始めようか」

「はい!宜しくお願いします!」

 

剣の稽古が開始された。

初日だったので、筋トレと道場内を走ったり、竹刀で素振りを行ってその日の稽古は終わりとなった。

 

「やっぱり筋が良い2・3年もすれば美由希に追い付くんじゃないか?」

「そうかも。騎士(ナイト)くんは今日、稽古受けてみてどうだった?」

「正直、いつもとは違う筋肉を使ったせいか疲れました。だから今日は居眠りしても仕方ないですよね?」

「ははは。そんな事したら毎日地獄を見る事になるけどいいのかい?」

「すみませんでした!」

 

恭也さん。冗談なんで木刀を取り出さないでください。死んでしまいます。

 

「それで?何か聞きたい事があるんだろ?」

「え?どうして分かったんですか?」

「今日の騎士(ナイト)は妙に落ち着きがなかったからな。何か聞き難い事を言いあぐねているように感じた」

 

流石、恭也さん!マジ、エスパー!と言うべきなのだろうか?

それとも俺が分かりやすかったのだろうか?

 

「妹さんの事です。最近元気が無い事には気付いてますよね?」

「・・・ああ」

「高町は家族にもその理由を言っていないんですか?」

「そうだな」

「そうですか・・・」

 

高町は家族にすら相談できない問題を抱えているのか

 

「分かりました。ありがとうございます」

「・・・聞くのはそれだけで良いのかい?」

「はい」

「そうか。もっとなのはの行動について聞いてくるのかと思ったが」

 

恭也さんは腕を組みながらそう言ってくる。

 

「聞いたところでどうしようもないですよ。俺には高町の悩みを解決できないと思うし」

「では何でなのはの事を聞いたんだ?」

「俺が出来る事が何かをはっきりさせる為ですかね?」

「・・・騎士(ナイト)に出来る事か。その答えは既に出てるのか?」

「まあ、それとなく・・・」

 

俺が出来る事なんて些細な事。でも、やれる事はやっておきたいんだ。

 

「ならいい。俺や家族が出来るのは、なのはを信じて見守るだけだ。騎士(ナイト)がなのはに出来る事がちゃんと為になる事を祈るよ」

騎士(ナイト)くん。もし失敗してなのはを落ち込ませたら私、恭ちゃん、お父さんの3人で地獄の稽古を受けさせるから覚悟しててね!」

 

そりゃあ、大変だ。これは気合入れて頑張らないと!

 

「了解っす!橘騎士(ナイト)、頑張ります!」

 

俺が出来る高町の為になる事。まあ、気合入れて頑張ろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・」

 

私、高町なのはは、お昼休みに屋上で1人お昼ご飯中なの。

いつもは、アリサちゃんやすずかちゃんと一緒なんだけど、私のせいで怒らせてしまい、まだ仲直りできていない。

私は逃げるように屋上に来てお弁当を食べようとするけどご飯が喉を通らない。

 

原因は分かってる。拓真くんが私とユーノ君を裏切ってフェイトちゃんの仲間になってしまった事だ。

なんで拓真くんがフェイトちゃんの仲間になったんだろう?

私の事が嫌いになったから?それとも、元々フェイトちゃんの仲間で私は利用されてたの?それとも他に目的があったの?

 

分からない。

 

考えれば考えるほど、謎は深まるばかり。一体どうすれば・・・

 

「よっ!高町!」

「・・・橘くん」

 

目の前に現れたのは橘くんだった。

いつもなら橘くんから溢れ出す魔力で近くにいる事はすぐに分かる筈なのにこの距離になるまで気付くことが出来なかった。

どうやら私はそれ程、周りが見えなくなっているみたいなの。

 

「・・・どうしたの?私に何か用なの?」

「おう。アリサと喧嘩したんだって?珍しいなと思ってさ」

「うん。ちょっと、ぼーっとしちゃってて」

「ふうん。隣良い?まあ、断られても座るけど」

 

そう言って橘くんは私の隣に座った。なんだろう・・・いつもの橘くんと雰囲気が違う。

 

「ぼーっとしてた理由は誰にも言わないのか?それとも言えないの?言いたくないの?」

「・・・それは」

 

拓真くんの事に魔法やジュエルシードの事。言ったら皆に迷惑がかかる。皆を危険に巻き込みたくない

 

「俺がさ、サッカーの練習試合で皇に怪我させられた事覚えてる?」

「う、うん・・・」

「俺さ。心配かけさせたくなかったから怪我を黙ってようとしたんだ。でも、ばれてさ。めっちゃ2人に怒られた」

「うん」

 

あの時のアリサちゃんとすずかちゃんは怖かったなの。次そんな事したら怪我した所を蹴って怪我を悪化させるって言ってたなの。

 

「お前のお父さんに言われたよ。下手な隠し事は、彼女たち、大事な人達を余計に心配させるだけだって。今のお前はまさにその状況な」

「・・・分かってる。でも橘くんの怪我とは次元が違うの!私が抱えている事は誰にも解決する事は出来ないの!」

 

私は大声で橘くんにそう言った。頭に血が上っていた私は言い切った所で我に返った。

橘くんはただ私の目を真っ直ぐ見つめていた

 

「ああ。俺は高町の抱えている事を解決する事は出来ない。でも、こうして話を聞くことができる。今みたいに高町に話しかける事ができる。それが怒らせる結果になろうと構わない。俺が出来る事をするだけだ」

「そ、そんな自己満足・・・。勝手だよ!勝手すぎるよ!」

 

自分を満たす為だけの行動なんて良い筈がない!

 

「自己満足?勝手?結構だ!でも、何もしないで後悔するより、何かした方がマシだね!高町。お前が抱えている問題はそうして悩んでいるだけで解決するのか?」

「それは・・・」

 

そう言えば、私はなんで拓真くんがフェイトちゃんと一緒にいるのか知らない。

こうして、勝手な憶測ばかり考えて真実へ、前へ進めていない。

 

「それが今日お前に言いたかったことだ。また会う時、高町が同じような状態だったら俺も同じことを繰り返すんでよろしく!」

「えええ・・・」

 

それは正直嫌なの。橘くんって、いつもはアリサちゃんやすずかちゃんの言う事を渋々聞いているけど、今回みたいなのだと頑固なんだよね

 

もしかしたら、私以上に頑固かもしれない。もし私と橘くんが喧嘩したら一生決着がつかないかもなの

 

「ふふふ・・・」

「おっ、笑った!」

「えっ?」

「うんうん。やっぱり女の子は笑顔じゃないとな!」

 

橘くんが腕を組み、満足そうな顔をしながら首を振っている。

私はどうやら気付かない間に笑ってしまっていたらしい。

 

「高町は、可愛いんだから笑ってないと勿体ないぞ!」

「ふぇ!?」

 

私は橘くんの言葉で急激に顔が熱くなるのを感じた。

橘くんって不意に恥ずかしい事を平然と言うなの。拓真くんは絶対に言わないし、神崎くんは毎日言うけど誰にでも言うから気持ちが感じられない。

でも、橘くんは真っ直ぐだ。何をやるにしても真っ直ぐで格好いい。

 

「あ、あれ?私、何考えてるなの?」

「ん?どうした?」

「うにゃ!?」

「へぶしっ!?」

 

バチーンっと良い音が響く。

橘くんが急に顔を覗き込んできたから思わずビンタしちゃったなの!?

 

「ご、ごめんなさい!」

「よ、よく分からないけどナイスビンタ・・・元気が出たみたいだな?」

 

橘くんは笑顔でそう言ってくれた。私はその笑顔に答える為、私の最高の笑顔で答える事にした。

 

「・・・うん!騎士(ナイト)くんのおかげなの!」

 

拓真くん。貴方が何を思ってフェイトちゃんの仲間になったか絶対に聞かせてもらうの!

だから、待っててね!!

 

 

 

 

 

 

 

「アリサ!すずか!高町が話あるってよ!」

「本当!?・・・ってその顔どうしたのよ?」

「ま、真っ赤になってるよ?」

「・・・気にするな」

 

これは事故?らしいのでとりあえず無視させ、高町と話をさせよう。

俺は高町を前に立たせ話すように促した。

 

「アリサちゃん、すずかちゃん。ごめんね?2人に心配かけさせちゃって・・・」

「なのは・・・」

「なのはちゃん・・・」

「今は話せないけど、いつか必ず皆に話すから!だから、信じてほしいなの!」

「・・・絶対よ?待ってるからちゃんと話しなさいよ?」

「うん!信じてる!だから、頑張ってね?なのはちゃん!」

「アリサちゃん・・・すずかちゃん・・・ありがとうなの!」

 

3人は目に涙を溜めながら抱き合った。

ああ。とてもいい場面だな、と俺はまるでドラマの1シーンのような光景に感動していると高町のある一言で状況が変わった。

 

騎士(ナイト)くん!騎士(ナイト)くんのおかげで2人と仲直り出来たなの!ありがとうなの!」

 

「「『騎士(ナイト)』くん・・・?」」

 

あれ?アリサとすずかの雰囲気が変わった?一体なぜ?

 

「ちょっと、なのは。なんで騎士(ナイト)の事をいきなり下の名前で呼ぶようになってるのよ?」

「ふぇ?なんでって言われても・・・騎士(ナイト)くんには優しくしてもらったし」

「優しく?そうなんだ・・・」

 

すずかの目が鋭くなった。この時のすずかは危険である。

最近分かったが、アリサよりすずかが怒った方が怖い。なんていうかアリサの怒り方はまだ可愛いく感じるけど、すずかのは冷たく感じる

 

騎士(ナイト)くん・・・。なのはちゃんにどう『優しく』したのか説明してほしいな?」

「い、いや、俺はただ話をしただけで・・・」

 

本当のことを言ってるのに何故か焦っている俺。

 

「あっ、騎士(ナイト)くん!さっきはごめんね?いきなり顔を近づけて来たからびっくりしちゃって」

「ん?いや大丈夫だよ、高町」

「へえ・・・」

 

あれ?すずかの雰囲気がさらに冷たくなったような?

 

「それと、騎士(ナイト)くん。私の事は『なのは』って呼んで欲しいなの!」

「ん?おう、良いぞ。なのは、これでいいか?」

「うん!ありがとうなの!」

「ふうん・・・私達が見てない所で随分と仲良くなったみたいじゃない・・・」

 

あ、あれ?アリサもすずかみたいに冷たい雰囲気になったぞ?これは一体どうなってんだ?

 

「ちょっとお話聞かせて欲しいな?良いよね?拒否権はありません」

「なのははそこで待ってなさい。ほら、来なさい」

「え?なんで?ちょっ、まっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああああああっ!!??」

 

この後、俺の身には何があったのか自分でもよく覚えていない。




如何でしょうか!

なのは達も小学生です。(正直、精神はそれ以上だと思うが・・・)

心の変動があっても問題ないと思うのですよはい。

タグにご都合主義って付けてるから良いよね?



ちょっと怖いけど、いつもの報告会行ってみよう!


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わおっ!

また一気に増えましたね!

感謝感激なのであります!

この調子で頑張りたいと思います!


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第11話『馬鹿×天然=カモ』

踏み台をだそうと考えてもだせないのが最近の悩み。

まあ、良いんですけどね!空気は空気で良いかもですし!






「と、まあ先日そんな事があったんだけど、どう思う?なんで2人を怒らせたのか全然分からないんだ」

「せやね。とりあえず、馬に蹴られてそのまま豆腐の角に頭ぶつければええんちゃう?」

「意味が分からない!?」

 

はやてに、先日の事を話したら何故か良い笑顔で怖い事を言われる俺、騎士(ナイト)

今回は別に宿題を手伝ってもらおうって訳じゃなく、相談をしにきたのだ。

 

「ちゅうか、なんで私にそんな話をしに来たんや?惚気話は犬でも食わんで」

「惚気?よく分からないけど、はやてならこういう時の対処方法を熟知してそうな気がしてさ」

「それは褒めとるん?」

 

目を細めて俺を見るはやて。溜息を吐き、片手で頭を抑えた。

 

「私から助言出来る事はないで。これは騎士(ナイト)くんが自分で気付かないといけない事やからな」

「ふーん?まあ、はやてがそう言うならそうなんだろな。ありがとな、はやて。話を聞いて貰ってさ」

「別にええよ。このお礼は倍にして返してもらうで」

「分かった。50円チョコ2個分で良いよな?」

「良い訳あるかい!安いなあ!?私の価値は50円しかないんか!?」

 

ばんばんと机を叩くはやて。それじゃあと俺ははやてに質問する。

 

「はやてはどのくらい価値があると思う?」

「従者が5・6人くらい雇えるくらいや!」

「値段が見当つかないけど、それはないな!つか、はやてに従者とか片腹痛い!」

「なんやと!」

 

こんなやり取りを図書館でしていたら大人に怒られました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで、その『なのはちゃん』て子も休学してもうたんか?」

「ああ。その抱えている何かを解決するためにね。今頃、何をやっているのやら」

 

俺は雲一つない空を見上げてそう言った。

ちなみに図書館で騒いだら怒られたので俺とはやては公園に移動している。

 

「心配?」

「もちろん!」

「そうには見えへんで?」

 

はやてが笑いながらそういう。

失礼だな。滑り台の滑るところで横になりながらアイス食って欠伸しているが心配はしているぞ!

 

「まあ、なのはは俺よりもしっかりした奴だし大丈夫だろ」

騎士(ナイト)くんからしたら誰でもそう見えるんと違う?いつでも能天気やから」

「さっきから失礼だな!?」

 

こいつ俺のことが嫌いなのか!?

 

「まあまあ。言いたい事を言い合えるのも仲が良い証拠やで」

「それは確かに。それじゃあ俺もはやてに言いたい事があるんだけどいいか?」

「なんや?」

「この前教えてもらった宿題の答えなんだが・・・間違ってたから先生に怒られたじゃねえか!どうしてくれる!」

「なんちゅう責任転嫁!?どうもせんわ、ボケ!」

「うわっ!?砂かけんなよ!」

 

俺の逆切れにはやては頭に直接ではなく、滑り台に砂を流した。

頭に直接かけるのではなく、滑り台に流す事で頭だけではなく服の中にまで入ってきやがった。

 

「自業自得や。それで?相談はこれで終いか?」

「いや、実はもう一つある。これははやてとは比べ物にならない程可愛い金髪の女の子との話だ」

「なんか聞く気が一気に失せたんやけど・・・」

 

はやての言葉を完全に無視し、俺は話を続けた。

そう、あれは旅行から帰ってまだアリサとなのはが喧嘩する前の話・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、騎士(ナイト)

「フェイト!おっす!」

 

学校が終わり、サッカーの練習も終わって帰宅していると、珍しくフェイトが挨拶をしてきたので俺も元気よく返事をする。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・?」

 

向かい合ったまま何も話さないフェイト。

俺もフェイトから話しかけて来たからてっきり話し出すと思っていて待っていたらへんな空気になっていく。

 

「えっと・・・どうした?」

「あ、うん・・・偶然見かけたから話しかけただけで特別話があった訳じゃないんだ・・・」

「ふーん?なあなあ、フェイト今暇?」

「え?う、うん。大丈夫だけど・・・」

 

少し不安げにそう答えるフェイト。

よし、暇ならちょっとお願いをしよう!

 

「ちょっと公園でサッカーしない?ちょうど練習相手が欲しかったんだ!」

「別に構わないけど・・・」

「どうした?」

「サッカーってなに?」

 

フェイトの衝撃的な言葉を聞いた俺はかなり驚愕した。

 

「さ、サッカーを知らない!?マジ!?」

「う、うん・・・」

「なんという事だ・・・。フェイト。お前は人生の約4割は損をしているぞ!」

「そ、そうなの?」

 

いや、4割は言い過ぎなんですけどね。でも、フェイトがサッカーを知らないのはマジなようだ。

 

「よし!俺が教えてあげるから行こうぜ!」

「あ!う、うん・・・」

 

俺はフェイトの手を掴んで公園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――というルールなんだ。分かった?」

「うん。騎士(ナイト)GK(ゴールキーパー)だからシュートを打ってくれる練習相手が欲しいんだよね?」

 

公園に着いた俺とフェイトはとりあえずサッカーのルールの説明をした。

物覚えの良いフェイトはすぐに理解してくれたようで俺がしたい練習も完璧に察してくれた。

 

「ああ、頼むよ」

「でも、私に出来るかな?一度も蹴った事ないし・・・」

「大丈夫だよ。何回も蹴ってればいずれはちゃんと出来るようになるさ!それに変なキックでもそれはそれで練習になるし」

「わ、わかった。やってみる!」

 

フェイトが俺の練習に協力してくれることになった。

ブランコの外枠?をゴールに見立ててシュートを打ってもらう。

 

「い、行くよ!」

「来い!」

 

フェイトが助走を始めてシュート。俺の胸元に飛んできた。

ばしんっ!と両手でしっかりとキャッチ。

予想以上の良いシュートに俺は驚いた。その威力は素人の打てるシュートではなかったからだ。

 

「やった!ちゃんとイメージ通りに蹴れた!」

「よ、よし、フェイト。この調子で宜しく」

「うん!」

 

しかも、コントロールも抜群のようだ。次々とシュート打つフェイトのボールは俺の要求したコースにも使い分ける事も出来ている。

こいつは天才か?

 

「フェイト!次からは自由に打ってくれ」

「分かった!」

 

嬉しそうに返事をしてシュートを打ってくるフェイト。

俺はなんとかそのシュートを止めて行くが途中から止め切れないシュートを打たれてゴールを決められる。

 

「さ、さっきまでサッカーの存在も知らなかった子とは思えないや・・・」

「凄いね!サッカーってとても楽しいかも!」

 

フェイトは満面の笑みを浮かべている。今まで会ってきた中で一番の笑顔かもしれん。

 

「よし!もっとやるぞ!次は10本中、フェイトが決めた回数と俺が止めた回数でどちらが多いか勝負だ!」

「うん!望むところだよ!」

 

俺とフェイトが絶好調でサッカーを楽しんでいる時だった。

 

騎士(ナイト)!」

 

公園の出入口から俺にとって聞き慣れた声が響き渡った。

俺とフェイトがその方向に視線を向けると、そこにはスーツを着て眼鏡をかけた女性―――

 

「母さん!」

騎士(ナイト)、貴方はこんな時間まで何やってんの!」

 

俺の母さんがいた。しかもめっちゃ怒ってる。

それに時間?

 

「あ、もう20時回ってる」

「マジ!?」

 

確か俺とフェイトが会って公園に付いたのが18時過ぎだからもう2時間ぐらい練習しちまってたのか!

 

「ご、ごめんなさい、母さん!俺、夢中になっちゃって・・・」

「全く・・・騎士(ナイト)はこの女の子にも謝らないといけない事があるわ。分かってる?」

「う、うん。女の子をこんな遅くまで付き合せちゃだめだよね」

「時間もそうなんだけど・・・どうやら気付いていないみたいね。騎士(ナイト)もそっちの女の子も」

 

そう言うと母さんは何故か溜息を吐く。

俺とフェイトは母さんの言っている意味が分からず首を傾げた。

 

「えっと、貴女お名前は?」

「は、はい!私、フェイト・テスタロッサと言います」

「フェイトちゃんね?貴女も分かってないから言っておくわ」

「な、何をでしょうか?」

 

俺の母さんの言葉に緊張気味のフェイト。

母さんはフェイトの肩を叩いて俺には聞こえないくらいの声で言った。

 

「これからサッカーをする時、『スカート』は止めなさい」

「・・・え?」

「見えてたわよ。貴女のパンツ」

「@*#$&%>+!?」

 

フェイトが全く聞き取れない悲鳴を上げた。

しかも、顔を真っ赤にしながら母さんは何を言ったんだろう。

 

「な、騎士(ナイト)・・・気づいてた?」

「え?なにを?」

 

顔が真っ赤なフェイトが何を言っているのか分からない。

俺の反応に母さんが再び溜息を吐きながら言った。

 

騎士(ナイト)。フェイトちゃんからシュートを受ける時、どこ見てた?」

「え?そりゃ、フェイトの下半身だけど?」

 

シュート打つまでの助走と軸足。そしてボールに当たる足の面をよく見てた。

 

「はうううっ!?」

「んんっ?」

 

フェイトの顔がさらに真っ赤になった気がする。何で?

 

「フェイトちゃん。多分、騎士(ナイト)が言ってるのはスカートより下の足の部分だけよ。もし、気付いてたならこの子はすぐに言ってるもの」

「そ、そうですよね・・・」

「えっと一体何の事でしょうか?」

「とりあえず、騎士(ナイト)は土下座してフェイトちゃんに謝らなければいけないってこと。今からその理由を説明してあげるから正座しなさい」

 

そう言われた俺は正座になって母さんの話を聞いた。

その内容を聞いていく内に俺がフェイトに酷い事をしてた事にようやく気付いた。

 

「マジで、すみませんでしたあああああああああああ!!」

 

おでこを地面にこすり付けるようにして土下座をする。

当然だ。俺は普通気付くはずの出来事に気付けず、フェイトに恥ずかしい思いをさせてしまっていたのだから。

 

「本当に、本当にすみません!」

「な、騎士(ナイト)。私も騎士(ナイト)のお母さんに言われるまで気付かなかったから仕方ないよ。確かに恥ずかしかったけど、サッカーは楽しかったし、怒ってないよ。だから顔を上げて、ね?」

「フェイト・・・」

 

どうやら、本当の天使はフェイトみたいだ。

え?すずか?あいつは最近暴走気味なので天使から堕天使に変更します。

 

「ありがとう。それでも俺は何か償いをしないと気が済まない!俺に出来る事なら何でも言ってくれ!」

「な、なんでも・・・」

 

俺の言葉にフェイトが真剣な顔になって悩みだす。

あの、本当に俺が出来る事にしてね?

 

「うーん・・・」

「フェイトちゃん。とりあえず、こう言っておきなさい」

「え?・・・はい・・・はい?よく分かりませんが分かりました」

 

なんか母さんがフェイトに耳打ちしてたけど何を話したんだ?

 

「えっと、せ、責任をとって下さい!」

「・・・責任?どういう事?」

「えっと・・・私にもよく分からない?」

 

俺もフェイトもよく分からず、母さんに視線を向ける。

その母さんはというとスマホをいじっている。そして、ピロンっと音が鳴った。

 

「よし、良い動画が撮れたわ」

「なにやってんの?」

 

どうやら動画を撮っていたらしい。本当に何やってんだ?

 

「気にしないで。これは将来役に立つものでしょうから」

「「はあ?」」

 

俺とフェイトは母さんの言葉にそういう事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があったんだ」

「ほう・・・」

 

俺の話を聞いてはやては、腕を組んで溜息を吐いた。

 

「ちなみにその後、その女の子は何かお願いしてきたんか?」

「いや、思いつかないから考えとくってさ」

「ふーん・・・」

「それで責任の事なんだけどどういう事なのか分からないんだ。はやては分かるか?」

「それはまあ、分かるちゅうか・・・」

 

はやては、少し頬を赤くし、何故か目をそらす。

 

「本当か!それじゃあ、教えてくれ!なんか俺の直感が嫌な予感を出してんだよ!」

「うーん・・・これも騎士(ナイト)君が気づかないとあかんもんなんやで?というか、恥ずかしくて説明できん」

「え?」

 

恥ずかしい?なんで?

 

騎士(ナイト)君は変な所で鈍感なんやもんな・・・。試しに私に『何があっても俺が責任とる!』って言うてみ?言ってみたらなにか分かるかもよ?」

 

なるほど。確かにはやての言う通りだ。

分からなければ実際に行動してみるのが一番だ。

 

「はやて・・・」

「な、なんや?」

「何があっても俺が責任をとる!・・・・・・どうだ?」

「・・・・・・」

 

あれ?はやての返事が来ない。何故か顔を赤くして固まっている。

 

「はやてー?」

「はっ!?」

 

俺の呼びかけにびくっと震わせるはやて

 

「よ、予想以上の破壊力に意識が飛んでもうてたわ・・・。騎士(ナイト)君、恐るべしや・・・」

「んー?やってみてもよく分からないな・・・。つか、はやて。顔が真っ赤だぞ、大丈夫か?調子が悪いならもう帰った方が良いんじゃないか?」

「え?あ、うん!そうやね!ちょーっと顔熱いし、汗も出て来たから帰ろうかな!」

「ああ。そうした方が良い。大事な体を壊したら大変だ」

「う、うん。ありがと・・・」

 

こうして、俺は体調が悪くなったはやてを家まで送り届けた。

送り届ける間、妙にしおらしかったけど、本当に大丈夫だったのだろうか?

今度お見舞いに行った方がいいかな?




という訳でフェイトサッカーをする!

さらに騎士くんの母親参上!

悪戯が好きなのはこの人の影響だったりします笑



いつもの報告会!


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どれもこれもしっかり増えていて嬉しいかぎりです!

感謝感激であります!


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第12話『物事は知らぬ間に進んでいく』

なんとか12話だけど、そろそろ連日更新はこれで最後かな。

仕事が忙しい泣

でも更新頑張ります!


騎士(ナイト)!屋上に行くわよ!」

「待て、今俺は手が放せない状態なんだ!」

 

昼休みにいつも通り昼食へ誘いに来たアリサに俺、騎士(ナイト)はそう冷たく言い放つ。

アリサには悪いが俺は今、とてつもないピンチに陥っているんだ!

 

「手が放せないって、一体何やってんのよ?」

「次の授業の宿題!」

「今、やってんじゃないわよ!」

 

アリサにすぱーんっと頭を叩かれる。

 

「ま、待ってくれアリサ!この宿題が終わってないと今日居残りになってしまうんだ!?」

「自業自得よ!・・・と、いつもなら言うんだけど、今回は手伝って上げるわ」

「マジっすか!?」

 

どうしたんだ、今日のアリサは?

とてつもなく優しいぞ?明日は雪でも降るのか?

 

「なんかとてつもなく邪魔したくなってきたわ・・・」

「アリサ様!どうかお願い致します!」

 

俺は土下座して、宿題を手伝ってもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

俺はアリサ、すずかと一緒に昼食タイム。

 

「で、俺の宿題を手伝ってくれる程に大事な話ってなんだ?宿題手伝ってもらった分の働きはするよ?」

「当然よ!それにあの程度の宿題でもたついてんじゃないわよ、まったく!」

「俺、算数ダメなんだよ・・・」

「まあまあ。えっとね、実はなのはちゃんから連絡があって次のお休みに戻ってくるんだって」

「おおっ!なのはが!」

 

なのはが休学してからもうどのくらい経ったのだろうか?

忘れちまったがかなり久しぶりな感じがするな。

 

「それで、私の家でなのはと遊ぼうと思うんだけど、騎士(ナイト)も来なさいよ!」

「ちなみに何時から?」

「午後からだよ!」

 

それなら大丈夫だ。

サッカーの練習は朝で終わるから問題なし!

 

「分かった。行くよ」

「よし!それじゃあ、サプライズでなのはが驚く凄い事をするわよ!」

「一体何をするんだ?」

「それを今から考えるんじゃない!」

騎士(ナイト)君ってそういう事考えるの得意だよね?」

 

すずか、それは俺が悪戯大好き少年だと言いたいのかい?え?違う?

 

「うーむ。古いが、ケーキにある火のついたロウソクをなのはが消すと同時にケーキを爆発させる。なんてどう?」

「誕生日でもないのに?それにそんな事したら危ないでしょうが!」

「サプライズでも喜んでくれるサプライズにしようよ」

 

喜んでくれるサプライズか・・・

 

「それじゃあ、無難にプレゼントで良いんじゃない?」

「そうね。どんなプレゼントにする?」

「箱を開けたら人形が飛び出てくるなんてどうだ?」

「普通にお人形だけで良いんじゃないかな?」

 

そんな感じの打ち合わせをしながらいつもの昼食タイムは終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

ここは、次元航行艦『アースラ』。

『ミッドチルダ』と呼ばれる世界が数多に存在する次元世界を管理を維持する機関『時空管理局』。

そこで提督を務める女性『リンディ・ハラオウン』。

彼女は席に座り、モニターを開いて何かを見ている。その顔は真剣な表情をしている。

 

「艦長。何をしているんですか?」

「クロノ」

 

リンディに話しかけたのは黒い髪で黒い服を着た少年『クロノ・ハラオウン』。

名前で分かるようにリンディと親子(よく姉弟と間違えられる)である。

 

「ちょっと気になる事があって」

「何がです?」

「この地球の異常発生というべきかしらね。なのはさんを始め、優秀な人材がいる事よ」

 

クロノはモニターを除くとそこにはなのはの画像がある。

今、なのははこのリンディ率いる部隊に地元協力者としてアースラに住み込みをしてジュエルシードの回収作業を手伝っている。もちろん、ユーノも一緒に。

 

「それに神崎君に皇君」

「確かに魔法文化レベル0の筈の世界でこんなに適合者が出るのは大変珍しいケースです。ですが・・・」

「ええ・・・」

 

リンディはモニターを操作すると騎士(ナイト)が写った画像が出てくる。

 

「橘騎士(ナイト)・・・この少年ははっきり言って危険です。いつ魔力暴走が起こるか分からない。いや、とっくの昔にしていてもおかしくない」

「それでも、なのはさんが言うには一度もそんな事は起きていないらしいわ。あ、でも・・・」

「なんです?」

「関係ないけど神崎君はこの子が怖いと言ってたわ」

「あの傍若無人で人の事をカス呼ばわりするあいつが?」

 

実は和也もなのはと同じように地元協力者としてアースラに同行している。

まだ少しの付き合いだが和也の評価が低いのはもう流石としか言えない。

 

「詳しくは聞けなかったけど、神崎君は一度彼を怒らせた時、もう二度と怒らせない様に決めたらしいわ」

「あいつは一体何をしたんだ・・・?」

 

呆れて溜息を吐くクロノ。

リンディは苦笑しながら再び画面に顔を戻した。

 

「どっちみち、この一件が終わったら彼と話をしてみようと思うのだけどどうかしら?」

「異論はありません」

「うん。じゃあ、その話を他のメンバーにも話を通しておいて」

「分かりました艦長。では失礼します」

 

一度敬礼してクロノはその場から離れて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

薄暗くて色んな機械設備が置いてある部屋に1人の女性が居た。

その女性の前には、ジュエルシードが浮かんでいる。

女性の名前は『プレシア・テスタロッサ』。

フェイトの母親で、フェイトにジュエルシードを回収するように指示している。

 

プレシアは少し前にフェイトからジュエルシード集めの報告を聞いていた。

結果は9個。

フェイトとアルフ。そして、フェイトが連れてきた皇拓真という少年。

この3人だけで集めたのならば上々である。

しかし、プレシアはフェイトを叱りつける。(鞭で叩こうともしたが、それは拓真に防がれている。)

 

そして、拓真と2人きりで話した時に彼は言った。

 

『俺にはアリシアを生き返らせる手段がある』

 

とてもじゃないが信じれない言葉だった。

まだ9歳という少年が死者を蘇らせるなどあり得ない。

しかし、そんな少年が知る筈がない『アリシア』の存在。そして、フェイトがクローンである事を知っていた。

 

「信用ならないけど可能性があるなら・・・」

 

プレシアには時間がない。自分の寿命も残り少ないのだ。

使えるものなら何でも使う。

例えそれが死神に魂を売ろうとも・・・。

 

「そして、一つだけ輝きが違うジュエルシード・・・」

 

プレシアの前に浮かぶ9個のジュエルシード。

その真ん中に浮かんでいる1個は白く輝いていた。

 

それ以外は蒼く輝いている。これが本来の輝き。

では、どうしてそんな輝きになっているのか。

拓真に聞いても分からないと言われ、フェイトに聞いたらある人物の名前が出てきた。

 

 

【橘騎士(ナイト)

 

 

フェイトの聞いた話では、その少年に受け取ったジュエルシードは既に白く輝いていた。

原因は騎士(ナイト)が触れたからであるのは間違いない。だが、その理由は不明。

 

調べれば分かるとは思うがそんな時間はない。

だが、分かったのは白く輝くジュエルシードは普通のジュエルシードよりも力が安定している事だった。

 

プレシアは騎士(ナイト)に興味を持った。

この白いジュエルシードならアルハザードへの道を開けるかもしれないと。

だから、騎士(ナイト)を連れてくるように言ったのだが―――

 

『ご、ごめんなさい母さん。それは出来ません。騎士(ナイト)を巻き込みたくない』

 

それは、まさかの拒否だった。

フェイトが生を受けてから初めてだった。

なんでも2つ返事でプレシアの命令を聞いてたフェイトがだ。

 

『えっと、騎士(ナイト)は魔法に関わってはいけないと思うんです。例え母さんのお願いだろうと・・・』

 

その顔は真剣で騎士(ナイト)という存在がとても大きいものだと理解する。

それとなく騎士(ナイト)の事をどう思っているのか聞いてみた。

 

騎士(ナイト)は・・・私を温かい気持ちにさせてくれる子・・・。話してると自然に元気にしてくれる大事な人』

 

知らぬ間にフェイトが青春を謳歌している。

そして、そんな話をしながら恥ずかしさで頬を赤くしながら俯いているフェイト。

そんなフェイトにプレシアは不覚にも可愛いと思ったのは内緒である。

 

そして、聞いてもいないのに、騎士(ナイト)との馴れ初めを話しだしたのでイラついて鞭で叩いてしまったプレシアは悪くないと思った。

 

「まあいいわ。質よりも量。あの子の提案は最後の手段。ジュエルシードをもっと集めさせなければ・・・」

 

ジュエルシードをしまい、プレシアはその部屋から出て行こうとするが一度振り向いて部屋の中心にあるポッド『生体維持装置』に目を向けた。

 

「アリシア。もうすぐだから、待っててね・・・」

 

その顔は母親のように優しい笑顔。フェイトには見せたことない笑顔。

 

「・・・でも、あの子のあんな笑顔初めてみたわね。橘騎士(ナイト)・・・その子とは一度お話をしてみたくなったわ。ふふふ・・・」

 

フェイトどころかアリシアにすら見せた事のない怖い表情でその場を後にした。

どれくらいかと言うと、プレシアに鞭打ちされて傷ついたフェイトを見て怒り、抗議しに行ったアルフがプレシアの顔を見て抗議を止め逃げ出した程である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくし!」

「うわっ!汚いわね!」

「だ、大丈夫?騎士(ナイト)?」

「あ、ああ大丈夫」

 

俺、騎士(ナイト)は鼻をすすりながらそう答える。

なんか急に寒気を感じたんだよな。もう感じないけど。

 

「もう!今なのはの為にケーキ作ってるんだから唾とか飛ばすんじゃないわよ?」

「分かってるって。それで次に何をすればいいんだ?」

「えっと次は卵を・・・」

 

俺とアリサとすずかは今、すずかの家のキッチンで料理中である。

ちなみに何を作っているかと言うと、もうすぐ帰ってくるなのはの為にケーキを作ってるんだ。

言っとくがもちろん普通のケーキだぞ?本当だよ?

 

「つか、なのはのお母さんにお願いしても良かったんじゃねえか?」

「そんな事言わない!こういう特別な日こそ、普段では味わえないケーキを作ってプレゼントするの!」

「なるほど」

 

アリサの言葉に俺は納得する。

まあ、高町のお母さんのケーキは食べようと思えばいつでも食えるしな。

 

「これはなのはの喜ぶ顔が目に浮かぶぜ!」

「そうだね。なのはちゃん、早く帰ってこないかなー」

「そうね・・・って騎士(ナイト)何やってんのよ?」

「な、なにも?」

「ほう?それじゃあ、その手に持っている赤い瓶は何かしら?」

 

俺は明後日の方向に首を向ける。

 

「べ、別にこれはタバスコなんかじゃないからね!勘違いしないでよね!あっ、これアリサの真似ね」

「わあ、とても似てたよ騎士(ナイト)君!」

「似てないわよ!そして、タバスコじゃないならなんなのよ!」

 

アリサに頭を叩かれながらそう聞かれた。

良いだろう!教えてあげよう!

 

「これは『キャロライナー・リーパー』だ!」

「きゃ、キャロライナー・リーパー?何よそれ?」

「ノエル知ってる?」

 

流石の2人も知らないものだったらしく、俺達3人じゃ危ないからと見守っているノエルに聞いた。

 

「『キャロライナー・リーパー』。トウガラシ種で世界一辛いとギネスに載るくらい辛い食材です」

「タバスコより性質が悪いわ!」

「へぶっ!?」

 

次はアリサに拳骨される。

最近、アリサの暴力が激しくなってきたような気がする。

 

「でも騎士(ナイト)君。よくその食材の事知ってたね。私達でも知らなかったのに」

「ノエルに聞いた」

「よし!あんたら正座!」

 

俺とノエルさんは仲良くアリサに説教されるのであった。

 

俺が全く知らぬ間に変な組織や怖い人に目を付けられているとは知らずに。




という訳で今まで出なかったアースラ陣とプレシア登場!

そして何故か騎士君に注目が集まる件。

これはもはや宿命!かもしれない。




という訳で、懲りずに報告会!


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アレ?目がおかしくなったのカナ?

お気に入りが一気に400人近く増えてる気がする。

きっと気のせいだな!

ついさっき見た今日(2016年7月1日)の日間ランキング7位に入ってたのも気のせいだ!

だから気にせず更新頑張ります!


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第13話『別れがあれば出会いがある』

なんとか更新できた・・・。


「今日は楽しかったな、なのは」

「うん!皆のおかげだよ!」

 

俺、騎士(ナイト)は今日帰ってきたなのはのサプライズパーティーが終わってなのはと一緒に帰っている。

なのはは本当に嬉しそうな笑顔でそう言ってくれる。

そんな笑顔みたらパーティーを頑張ったかいがあったとそう思える。

 

「でも、騎士(ナイト)君は大丈夫?忍さんが用意したロシアンクッキーでとても辛いクッキーを食べて悶絶してたけど」

「あれは辛いではなく痛いだ。そして、救急車を呼んでもらおうとマジで思ってたくらいだし」

 

まさか忍さんにあの調味料を使われていたとは誤算だった。

まあ、なんとか治ったから良いんだけど。

 

「でも、思ったよりに元気そうで良かった。あっちでは元気でやれてるみたいだし」

「えへへ。もう少ししたら帰れると思うから」

「そうか。アリサやすずかもやっぱり学校では少し元気がないから早めに頼むぜ?」

「うん!頑張る!」

 

そこまで話して少し沈黙し、歩いて行く。

そして俺はなのはに話しかけた。

 

「俺の気のせいだったら悪いんだけどさ」

「なに?」

「なのはが俺と屋上で話した時よりも確かに元気になったけどまだ何か元気がないような気がして・・・」

「・・・にゃははは。騎士(ナイト)君ってやっぱり凄いな」

 

なのはは少し悲しそうな表情をして俺を見た。

なんか俺と同い年には見えない大人びた様子に俺は少しだけ距離が遠くなったように感じた。

 

「でも、大丈夫!絶対に解決するから!」

「・・・ああ。今のなのはならきっと解決できる。頑張れよ!」

「うん!ありがとう!」

「でも、もしやばかったらさ」

「わ!・・・騎士(ナイト)君?」

 

俺はなのはの頭に手を置いた。

そして、なのはの目を見て俺は自分でも珍しく真剣に話した。

 

「俺やアリサ、すずかに相談しろよ。絶対になのはの力になるからさ」

騎士(ナイト)君・・・」

「まあ、アリサやすずかに比べたら俺は些細な力でしかないけどさ」

「そ、そんなことないよ!」

 

なのはがいきなり大声でそう言った。

そして、なのはの頭に置いていた俺の手を握ってきた。

 

騎士(ナイト)君があの時、話しかけてくれなかったら私はショックで立ち直れなかったかもしれない・・・。騎士(ナイト)君がいたから今の私があるの。騎士(ナイト)君はちゃんと私の力になってくれてるから」

「お、おう・・・。ははは」

 

なんか予想以上に褒めてくれるなのはに俺は唖然としてしまう。

でも、俺はとても嬉しく感じた。そしてとてもおかしく思った。

 

「ありがとう、なのは。とても嬉しいよ」

「う、うん。あっ!ごめんね?急に手を握って・・・」

 

少し慌てた様子で手を話す。

だけど、俺がなのはの頭から手を離す事は止めない。

 

「な、騎士(ナイト)君?」

「なのはの髪ってサラサラして気持ちいいなって思ってさ」

「そ、そうかな?」

「おう。アリサやすずかに負けてないぜ?」

「ふーん・・・」

 

ん?なんかなのはの表情が不機嫌に変わったぞ?

 

騎士(ナイト)君。こういう時に他の女の子の話は良くないと思うの」

「は、はあ・・・?」

 

ますますなのはが不機嫌になった理由が分からない。

他の女の子って知らない子って訳じゃないし。

 

騎士(ナイト)君。罰としてこの状態まま家まで送るの」

「え?俺、流石に疲れたからそろそろ離そうと思ったんだけど・・・」

「ダメ」

 

あっ、これはダメなパターンのやつだ。

なのはも俺と同じで頑固だからなー。

 

「わかった。わかりましたよ」

「分かればいいの」

 

俺はなのはの頭に手を置きながら家まで送って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはのサプライズパーティーをして数日が経過した。

俺は変わらずの毎日を過ごしてきたつもりだけど、周りでは変化があった。

その変化は俺にとって嬉しい事と悲しい事だった。

 

嬉しい事では、休学中だったなのはが帰ってきた。

どうやらパーティーの時に言った通り問題は解決したみたいだ。

アリサやすずかはとても嬉しそうだったし、俺も当然喜んだ。

 

そして、悲しい事だが、俺の友達が1人転校した事だ。

その人は、皇拓真。

 

親の都合らしい。休学中に何があったんだろうか?

アリサとすずかは少し嬉しそうだったけど、なのはは少しさびしそうな様子だった。

俺はあいつともっと話したかったし遊びたかった。

 

だから先生に転校先を聞いてみたが教えてもらえなかった。というか知らなかった。

なんで知らねえんだよと思ったが言っても仕方ないし諦めた。

今生の別れって訳でもない。

また会った時笑いあいながら話せればいいなと思う。

 

「・・・ん?」

 

俺は珍しく1人で家に帰っていると俺の歩く道の前に立ち塞がる女の子がいた。

その顔は最近見ていない女の子に良く似ていた。

 

「こんにちは、騎士(ナイト)

「こ、こんにちは」

 

笑顔で挨拶された俺は少し戸惑いながら返した。

 

「えっとなんで君は俺の名前を知っているのかな?」

「あれ?分からない?多分騎士(ナイト)が勘付いてる事であってると思うよ?」

「・・・フェイトの妹?」

 

その女の子は顔はフェイトとそっくりだった。

身長がフェイトより低くなければ分からないくらいに。

 

「残念!私はフェイトのお姉さん!『アリシア・テスタロッサ』だよ!宜しくね!」

 

別れがあれば出会いがある。

そんな風に思った俺なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、高町なのはは海鳴市に帰ってきました。

 

ジュエルシードの回収も完了。

その間に色々な事が起きました。

 

フェイトちゃんのお母さん。

プレシアさんがジュエルシードを強制発動して次元震を起こしてしまい、プレシアさんは虚数空間という魔法が使えず何もない空間に落ちてしまった

でもギリギリの所で拓真君と神崎君が救助してくれました。

 

でも、問題はそこからだったのです。

プレシアさんは拘置所のベッドで寝たきりになってしまったの。

前から身体が悪くてこのままではもう数日で死んでしまうのではないかと言われました。

 

フェイトちゃんもプレシアさんに作られたクローンと知っていてもどうにか元気付けようと奮闘するけど効果がない。

そんなときに、拓真君が信じられない事をした。

 

それはずっと昔に死んだフェイトちゃんの元となった女の子『アリシア・テスタロッサ』を生き返らせたの。

拓真君が言うには一度しか使えない特殊なスキルらしい。

 

そのままプレシアさんとアリシアちゃんの感動的な再会。

そこまでは良かった。

私もその時はフェイトちゃんと一緒に涙を流したくらい感動していた。

 

問題は変わらずプレシアさんの身体だった。

精神的には回復したけど、身体に負担をかけすぎた。

もう3日ももたないとお医者さんから言われてしまった。

 

フェイトちゃんやアリシアちゃんは泣くしかなかった。

娘の為に頑張ってきた母親が再会して数日しか過ごせないなんて悲しすぎます。

そして、拓真君がアリシアちゃんを慰めようと声をかけたのですが・・・。

 

涙を流すアリシアちゃんに頬を叩かれたのです。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「どうして・・・どうして私を生き返らせたの?」

「え・・・」

 

いきなり叩かれた拓真は頬を押さえながら唖然としている。

そんな拓真なんてお構いなしにアリシアは話し出した。

 

「ずっと昔に死んだ私が生き返って・・・どうして私やフェイトの為に頑張って生きてきたお母さんが死ななきゃいけないの!おかしいよ!そんなの・・・そんなのってないよ!」

「あ、アリシア・・・。俺はお前を助けたくて・・・」

 

拓真は酷く動揺している。彼は感謝してもらえると思っていたのだ。

そして、プレシアが短い命だろうと少しでも一緒の間過ごせれば十分だろうと心の中で決めつけていた。

だが、人の心はそう思い通りに行く筈がなかった。

 

「私は生き返りたくなかった!生き返ってこんな気持ちになりたくなんてなかった!」

「・・・ふ、ふざけんな!」

「きゃっ!?」

 

拓真がすごい剣幕で迫り、アリシアの肩を掴んだ。

 

「い、痛い!」

「俺が今日までどんな苦労をしてきたのか分かっているのか!それが生き返らせて欲しくなかっただと!ふざけ―――」

「止めやがれ!」

 

暴走気味の拓真の顔面に和也が拳を振るった。

拓真はアリシアから手を放し、吹き飛ばされる。

 

「見苦しいぜ、モブ野郎。まあ、せっかく建ったと思ったフラグが折られちまったのは同情するがな」

「か、神崎・・・」

「見てみろよ、俺の嫁たちをよ」

 

拓真はアリシアの方を見た。そこにはフェイトやなのはの姿もある。

3人は拓真の事を酷く怯えた目で見ていた。

拓真の豹変ぶりを見て恐怖を抱いたのだ。

 

「残念だったな。せっかくなのはのフラグを折ってまでフェイトの元に向かったのによ」

「俺は・・・俺は・・・うわあああああああああっ!」

 

拓真は発狂しながらその部屋から出て行ってしまった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

あれから拓真君の姿を見ていません。

家は既に蛻の殻。学校も転校扱いになっていた。

 

拓真君は一体どうしてしまったのか。

一応、今回の事件の関係者ということもあり指名手配されるかもとクロノ君は言ってたけど・・・。

 

今は考えてもしょうがないので拓真君の事は置いておきます。

その後の事だけど、また信じられない事が起きた。

 

あの後、フェイトちゃんとアリシアちゃんが家族3人だけにして欲しいとお願いされたので、3人残して部屋を出たのですが暫らくして凄い魔力反応が起こりました。

 

その場所はフェイトちゃん達がいるお部屋。

 

私はすぐに向かいました。

何が起こったのか分からない私は最悪な展開が頭を過ぎってしまいます。

 

扉を開け、見たのはベッドの前に立つフェイトちゃんとアリシアちゃん。

それを見て最悪な展開でなかった事に安心し、では何が起こったのかだろうかと私はよく確認してみました。

 

フェイトちゃんとアリシアちゃんはどこも怪我した様子はないけど表情がとても驚いていた。

その視線の先はプレシアさんが寝ていたベッド。

 

もしかして、プレシアさんの身に何かが!と焦った私はすぐにベッドの前に行ってプレシアさんを見たのだけど・・・私はすぐに2人が驚愕した顔になった理由が分かった。

 

 

 

 

プレシアさんが『若返っていた』。

 

 

 

 

何を言ってるんだと思うんだけどこれは紛れもない真実でした。

疲れ果てたように皺だらけだった身体に艶が出ており、とても綺麗でした。

プレシアさんも自分の肌に触れて信じられない表情をしていました。

隈も皺もない。完全に若返ってます。みんなが居なくなった数時間で一体何が起こったのでしょう?

 

結論から言うと原因はジュエルシードでした。

 

プレシアさんが持っていたジュエルシードはすべて使って次元震を発生させた筈なのに何故か1個だけジュエルシードがアリシアちゃんの手の中にあったらしい。

 

そして、アリシアちゃんがそのジュエルシードを握りしめ、神に祈るように両手を合わして願いを言った。

 

『お母さんを助けてよ!』

 

その願いが聞き遂げられたかのように光輝いて部屋中を包み込んだ。

それが先ほどの膨大な魔力反応の正体。

 

謎はさらに増えてしまった。

どうしてジュエルシードがアリシアちゃんの手の中に現れたのか?今まで歪んだ形で願いを叶えていたジュエルシードがアリシアちゃんの願いには正しく叶えたのだろうか?

 

何一つ原因は分からなかった。

でも私はそれでも良いんじゃないかと思う。泣いて喜び笑う家族の姿を見ればどうでもよくなってしまう。

終わり良ければ全て良し!

 

でもね、少し気になった事もあるの。

 

それは、フェイトちゃんが願いを叶えてただの石となったジュエルシードを握りしめている時に呟いた言葉だった。

 

騎士(ナイト)・・・騎士(ナイト)、ありがとう。本当にありがとう・・・」

 

聞き間違いだと思いたかったけど確かにフェイトちゃんは騎士(ナイト)くんの名前を・・・いやでもまだ本人と決まった訳じゃないし!

 

「ぐずっ・・・フェイト。ナイトって?」

「うん。私が地球で会った男の子。あのジュエルシードは騎士(ナイト)からもらったものなんだ。でも、内緒だよアリシア。騎士(ナイト)は凄い魔力を持ってるけど一般人だから」

「うん!わかった!」

 

丸聞こえである。

2人とも私が隣に居る事を完全に忘れているの。

 

というか、本当に騎士(ナイト)君だった。

え?騎士(ナイト)君、ジュエルシードに触れてなんともなかったの!?

というか、フェイトちゃんとなんでそんなに親しい感じなの!?

 

「もしかしてフェイトってその男の子好きなの?ラブなの?」

「ら、ラブ!?そ、そう言う訳じゃないよ。私なんかじゃ騎士(ナイト)と釣り合わないよ」

「なるほど、脈ありですね。私も騎士(ナイト)って男の子に興味出てきたな!」

 

フェイトちゃん、顔真っ赤にしてそんな事言っても説得力ないよ。

そしてアリシアちゃんも悪い笑みで何かを企んでるみたいだし!

 

「フェイトちゃん、アリシアちゃん、良かったね。プレシアさんが元気になって」

「あ、なのは!うん、本当に良かった・・・あの、なんで手首を掴んでるの?」

「ちょっとOHANASIしたい事あるからトレーニング室に行こうか?」

「え?ええ?」

「フェイト、頑張ってね~」

 

なんと言いますか・・・しなきゃいけないと思ったんです。

だから私はトレーニング室でフェイトちゃんとお話(物理)をしました。

良く分からないけど、海上でやった時より思いっきり動けた気がします。

その時にアースラを潰す気かとクロノ君に怒られました。

本当に反省してます。

 

 

 

ま、まあ、そんな事もあってアリシアちゃんが生き返り、プレシアさんが若返った。

そして最後の問題であるフェイトちゃん達の処遇ですが―――

 

 

 

【プレシア・テスタロッサ】

書面上・・・ジュエルシードが暴走し、次元震によって出来た虚数空間に落ちて消えた為、死亡とみなす。

実際・・・居住を第97管理外世界『地球』に移し、絶対に他世界に移動しない事を約束。

 

【アリシア・テスタロッサ】

書面上・・・遺体はプレシアと一緒に虚数空間に落ちて消えた為、不明。

実際・・・プレシアと同上。

 

【フェイト・テスタロッサ】

書面上・・・一連の出来事の重要参考人として裁判を受ける。

実際・・・裁判と言ってもほぼ確実に勝てる裁判で保護観察になるだろう。

 

 

―――という具合になった。

リンディさんやクロノ君、オペレーターのエイミィさん達アースラの皆さんのおかげで罪がかなり軽くなりました。

 

本当に良かった。これですべて解決した。

そう安心していた私に、リンディさんから通信が入った。

 

『明日、橘騎士(ナイト)君って子に会いたいのだけど、協力してくれないかしら?』

 

安心した私の心が一気に不安へと急変した。




1つ言っておこう。

この作品に戦闘描写はほぼ無しである!

私の文才がないってのが大きな原因ですが・・・。

ともかく、これでPT事件は終幕。
拓真は失踪。
プレシアとアリシア生存。
アリシアが騎士君と接触。
管理局が騎士に・・・。

と色々な事を詰め込んだ話になってしまいました。

次回はどうしようかな・・・。
とりあえず、頑張って更新します!




そんなこんなで報告会!

お気に入り2431件、感想87件、評価96人

日間ランキングの影響か全体的に跳ね上がりました!
ランキング効果、恐るべし!

先ほど、ちらっと見た日間ランキングも第11位としぶとく頑張ってるみたい。

この調子で頑張って行けたらなと思います!


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第14話『怒らすな、危険』

やっと更新できました!

お待たせしてしまい申し訳ありません!


「・・・騎士(ナイト)君。ちょっといいかな?」

「ん?なのは?イタタタタッ!?」

 

絶賛、なのはからアイアンクローを喰らっている俺こと騎士(ナイト)です。

 

何でこのような状況になっているのかと言うと・・・俺にもよく分からない。

 

「なのはちゃん。それ以上はいけない。騎士(ナイト)の頭蓋骨がスプラッタになっちゃうよ?」

「・・・アリシアちゃん。外出許可を出してたけどまさかここにいたなんて・・・」

「うん!実はこっそり会いに来てました!フェイトの言うとおり面白い子だね!」

 

そして、そのすぐ傍でフェイトの姉のアリシアとなのはが連れてきたライトグリーン?の髪をしたお姉さんが仲よさげに話していた。

というか、止めてくれると嬉しいんですが。

 

「どうして、騎士(ナイト)君は、公園で私とリンディさんに会う約束をしてたのに、アリシアちゃんと家でゲームしてたのかな?」

「え?」

 

そういえば、そんな約束をしてたような・・・。

 

「すまん。アリシアと遊んでてすっかり忘れてたタタタタタタタタッ!?」

「少し反省しようか?しかも、まだ会って間もない筈のアリシアちゃんと名前を呼び合う程の仲なんて許せないの・・・」

「後半なんか違くナナナナナナナナいです!ま、マジ、すみませんでした・・・」

 

なのはを怒らせるのは、ほどほどにしようと俺は誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと、どたばたしたが俺はなのは達と公園にやってきた。

 

「それで、なのはが会って欲しいって言ってた人が・・・」

「ええ、私よ。私はリンディ・ハラオウンと言います。よろしくね、騎士(ナイト)君」

「あ、はい。橘騎士(ナイト)です」

 

とても知的な女性って感じかな?

それにどこかなのはのお母さん桃子さんに雰囲気が似てるよな・・・?

 

騎士(ナイト)君。急に赴いたのに会ってもらってありがとうございます。君に大事なお話があるの」

「大事なお話?」

 

なんだろう?

俺、この人と初対面でそんな大事な話をされるほど関係があるのか?

 

「君は、魔法を信じているかしら?」

「・・・?」

「君には魔法の力があるの」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???

 

「はい?」

「君には信じられない話だと思うわ。その反応だってこの世界では正しい。でも、貴方の身体から溢れだす魔力は異常なの。どうやら貴方には見えていないみたいだけど、私やなのはちゃんみたいな魔導士からみたらとても危険な状態なの」

「え、えっと?」

「そこで騎士(ナイト)君にまずは魔法という存在をちゃんと認識してもらって自分の状態を理解してもらいたいの。だから、今度の休日に―――」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

 

俺はハラオウンさんの言ってる事がよく分からなくて呼び止めた。

 

「さっきから魔法って、何言ってんのさ!そんなの漫画やゲームの話でしょ?」

「違うわ。これは本当の話よ」

「な、なのは。このお姉さん、おかしいぞ?」

「えっと・・・その・・・」

 

なのはもとても気まずそうな表情をしている。

なのはもこのお姉さんには苦労しているんだろうな。

 

「・・・騎士(ナイト)君。今日はここまでにしておきましょう。でも、これだけは覚えておいてくれないかしら」

「・・・なんですか?」

「君の力はいずれ多くの人を傷つける。そうなりたくなければ次に私と会う時、真剣に私の話を聞いてちょうだい」

 

ハラオウンさんはとても真剣な表情でそう言ってくる。

いやいやいや!魔法なんて存在する筈ない!

この人がただ痛い人なだけさ!

 

「それでは、私はこれで失礼するわ。アリシアちゃん、一緒に行くわよ」

「はーい!」

 

俺の隣にいたアリシアはハラオウンさんの元まで行き、手をつないで俺の方を向いた。

 

騎士(ナイト)!また遊びにいくね!」

「あ、ああ・・・」

「なのはさん。後は宜しくね」

「は、はい!」

「なっ!?」

 

俺は夢でも見ているのだろうか?

いきなりハラオウンさんを中心に光る円が現れた。

 

「転送!」

「ばいばーい!」

「き、消えた・・・?」

 

ハラオウンさんの声と同時に円が少し輝きを増したと思ったら2人の姿が消えていなくなっていた。

 

「ど、どうなってんだよ・・・。な、なのは。ハラオウンさんって奇術師かなんかか?」

「違うよ。時空管理局という組織で働いている偉い人なの」

「じ、時空管理局?なのは、お前まで何言ってんだよ。そんな組織聞いたことないぞ?」

「にゃはは。とりあえず、そんな組織があって騎士(ナイト)君の事を心配しているって覚えてもらえればいいの。そして、魔法は本当にあるから・・・」

 

なのはの真っ直ぐな目は少しもぶれずに俺を見ている。

嘘がつけないなのはがここまで言っている。

でも、『魔法』というアニメや漫画のような言葉が現実にある筈がないんだ。

でも、アリシアやハラオウンさんが消えたやつはどう説明する?

俺の夢?幻覚?でも、なのはから喰らったアイアンクローの痛みがまだ残ってるし・・・。

 

「だあああああああああああああっ!分からん!なのは!」

「は、はい!?」

「とりあえず、帰ろう!家まで送って行く!そして、今日の事はぐっすり寝て明日考える!」

「わ、分かったの・・・」

 

こうやって考え込んでも何も変わらない。

だから、寝よう。

寝てすっきりさせた方が考えも纏まるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事があったんだけど、どう思う?」

「・・・知るか、モブ!とっとと消えろ!」

 

酷い言い草である。

ただ相談しに来ただけなのに。

 

「そもそも、何故俺に相談してくるのだ!」

「いや、なんか和也ってこういうのに詳しそうだからさ」

 

そう結局、俺一人ではどうすればいいか分からなかった。

だから、なんとなく和也に相談しに来た。

 

「黙れ!俺はモブと触れ合う気はない!それにさっきから嫁達の目が怖いのだ!」

「あー、それは俺もだから我慢してくれ」

 

和也はアリサやすずかになのはと同じクラス。

俺が珍しくこの教室に訪れて3人に驚いた顔をされつつ、挨拶してすぐに和也の元に向かったからか、めっちゃ睨みつけられている。

 

「そして、俺の事を軽々しく名前で呼ぶな!馴れ馴れしいぞ!」

「それでさ。魔法って本当にあるのかな?」

「俺の話を聞け!」

 

俺は和也の威嚇を無視して話を続ける。

こいつは怒ってもそんなに怖くないんだよね。

 

「どうなのさ?」

「ちっ!あるもないも貴様はあの時、それを目の当たりにしただろう!」

「へ?あの時?」

 

いつの事だ?

俺が魔法に関わった事があるのか?

 

「忘れているのか?俺と喧嘩した時の事だぞ?」

「ああー、俺が大怪我した時の事か!」

「大怪我とか言いながら2週間で退院してたがな」

「十分大怪我じゃね?それでも医者には最低でも全治3カ月はかかるって言ってたよ。退院した時、凄い回復力だと驚かれたわ。そう言えばなんで俺と和也って喧嘩したんだっけ?」

「それも忘れたのか・・・まあいい。もう授業が始まるぞ!早く教室に戻れ!」

「へいへい。また来るわ」

 

俺はそう言って自分の教室に戻った。

 

ん?なんか自然と話してたから気付けなかったけど・・・。

 

「俺と喧嘩した時使ったって・・・という事はあいつも魔法を使えるって事じゃね?あれ?マジか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(神崎君、聞こえる?)」

「(おおっ!我が嫁のなのは!聞こえてるぞ!)」

 

嫁じゃないの。

私、高町なのはは神崎君の相変わらずの様子に溜息を吐く。

 

「(さっき騎士(ナイト)君と魔法の事について話していたようだけど、もっと声のボリュームをさげられなかったの?ちょっと離れた私たちにも丸聞こえだったよ)」

「(奴が一々しつこいのが悪いのだ。それでいきなり念話なんてどうしたんだ?俺の声が聞きたくなったのだな?)」

「(違うの。その騎士(ナイト)君と喧嘩したとかって話を詳しく聞かせて欲しいの)」

 

しかも、魔法で大怪我させ全治3カ月と医者に言われるくらいの重傷。

これは内容次第ではリンディさんとクロノ君に報告するの。

 

「(それは・・・まあ、嫁の頼みだし話してやろう。あれは俺達が小学校に入学して数カ月経った初夏の事だ)」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「おい!モブ!お前の事だ、銀髪頭!」

「あっ、俺?」

 

まだ小学生になって間もないのにアリサやすずかと仲の良かった騎士(ナイト)が和也は気に食わなかった。

元々騎士(ナイト)は転生者じゃなかろうかと疑っていた和也。

 

原作でならば、なのはと出会い喧嘩して仲を深める筈なのに既に仲良しになっているアリサとすずかを見て和也は騎士(ナイト)が転生者だと決めつけた。

 

「ちょっと来い!」

「うわっ!?なんなんだよ!?」

 

和也は騎士(ナイト)を無理矢理に屋上へと連れ出した。

 

「えっと、急にこんなところに連れて来てなんなのさ?俺、アリサ達と帰る約束してるんだけど・・・」

「そのアリサとすずか・・・俺の嫁達についてだ」

「嫁?ああ!最近、アリサが愚痴ってた変な奴って君の事か!」

「んだと?」

 

ただでさえ、イラついてた和也に追い打ちをかける騎士(ナイト)

 

「嫁とかよく分からないけど、あんまりアリサを怒らせるのは止めてくれないか?その飛び火が俺に来るんだよ」

「知るか!そもそもお前が嫁達の側から消えればいいんだ!」

「え?なんで?」

 

キョトンと首を傾げる騎士(ナイト)

いきなり初対面の子から友達の前から消えろと言われればそうなるのも当然である。

 

「嫁達の隣には俺のように相応しい男ではないといけないのだ!」

「ふーん?でも、俺はアリサとすずかの側から離れたくない」

「ほざくな、モブ!転生者のよしみだから穏便に済ませてやろうしてやったのだが仕方あるまい!結界発動!」

 

和也は魔力感知されない様に結界を展開させる。

 

「結界?何言ってんの?」

「モブ。最後のチャンスだ。嫁達の前から消えろ。そうすれば多少は手加減してやる」

「だから嫌だって言ってんじゃん。そっちこそ、モブって呼ぶな。意味は分からないけどバカと似たような感じがしてむかつく」

 

流石の騎士(ナイト)も和也の言動にイラついてくる。

だが、そんな騎士(ナイト)の行動に和也はキレた。

 

「このモブが!」

「ぐっ!?」

 

和也が小学1年生とは思えない脚力で騎士(ナイト)の前まで移動して騎士(ナイト)の顔を殴る。

騎士(ナイト)は尻餅をついて殴られた個所を押さえ涙目になる。

 

「い、痛え・・・」

「お前はちょっと痛い目に遭わないと分からねえようだから覚悟しろよ!」

「ぐっ!?」

 

今度は鳩尾に向かって蹴りを放つ。

その蹴りは騎士(ナイト)の身体を浮かせ後ろへと転がっていく。

先ほどから和也は小学生らしからぬ力を持っているのは身体強化魔法を使っているからだ。

もちろん、本気でやれば死に繋がる致命傷を与えられるだろう。そこはしっかり手加減をしているがそれでも小学生の身体にはかなりのダメージである。

 

「ごほっ!?ごほっ!?」

「さあ、誓え!もう2度と俺の嫁の、アリサとすずかの側に近寄らないと!」

「・・・・・・だ」

「んあ?」

「いや、だ!」

 

騎士(ナイト)は腹を押さえながら立ち上がる。

 

「絶対に嫌だ!」

「このモブが!」

 

今度は上段回し蹴りが騎士(ナイト)を襲う。

もうふらふらな騎士(ナイト)が受け切れる訳もなく、喰らってコンクリートに沈む。

 

「俺は・・・絶対に・・・嫌だ」

「しつこいぞ!」

 

それでも騎士(ナイト)は立ちあがった。

何度も和也に殴られても強い意志と気持ちで立ち上がっていく。

 

「お・・・れ・・・は・・・」

「ぐっ!解放(エーミッタム)!」

 

騎士(ナイト)がふらふらな身体で和也の肩を掴んできた。

そして、和也は騎士(ナイト)の目を見た。

金と赤のオッドアイ。その瞳のさらに奥に見える白き輝き。それに和也は恐怖を感じた。

 

「桜華崩拳!」

「がはっ!?」

「ぬっ!しまった!?」

 

和也の魔法を使った攻撃が騎士(ナイト)に直撃する。

今までと比べ物にならない一撃に騎士(ナイト)は壁まで吹き飛び減り込む。

そして、壁は崩れ、騎士(ナイト)は瓦礫に埋まってしまう。

 

「や、やっちまった・・・」

 

騎士(ナイト)の気迫に呑まれたとはいえ、咄嗟に全力を決めてしまい後悔する和也。

 

「い、いや、でもあいつも転生者の筈だ。この程度でくたばる訳ねえ!」

≪マスター。宜しいでしょうか?≫

「セイバー?こんな時にどうした?」

 

凛々しい女性の声が和也の腕輪から発せられる。

その正体は和也の専用デバイス『セイバー』。

これは特典の1つで神様に創られた特別製である。

 

≪神様からマスターを含め、この世界には2人いると言われたのは覚えていると思います≫

「ああ。だからこうして転生者を―――」

≪しかし、神様からの情報では黒髪黒眼であるとあります≫

「なに!?だ、だが髪の色を変えたって可能性があるじゃねえか!」

 

セイバーの発言に驚く和也は必死に否定する。

当然だ。自分と同じ転生者と思っていたら全く無関係の一般人だったのだから。

 

「とにかく、あいつをどう処分する―――」

 

青ざめた顔をしながら和也は瓦礫の所へ向かおうとした瞬間だった。

 

瓦礫が爆音と共に突然吹き飛んだ。

そして、白く輝く魔力の柱が現れる。

 

「て、てめえは!?」

「・・・・・・」

 

魔力の柱が治まるとそこには立ち上がっている騎士(ナイト)がいた。

 

「おい。本当にこいつが転生者じゃねえのか?」

≪間違いありません≫

「ちいっ!これは俗に言うイレギュラーって奴かクソったれ!」

「・・・・・・」

 

騎士(ナイト)は和也の元に歩いて行く。

その足取りはかなり危うい。今にも倒れてしまいそうである。

 

「おいおい。あいつの怪我、凄い勢いで治ってねえか?」

≪恐らくあの膨大な魔力が傷を癒しているのだと推測。そして、あの子供の魔力量はSSSを超えています≫

「はあ!?この俺より上だって事か!?ふ、ふざけた魔力してんじゃねえぞ!解放(エーミッタム)雷の斧(ディオス・デュコス)!」

 

もう手加減を止めた和也の雷の刃が騎士(ナイト)に襲いかかる。

 

「なっ!?」

 

しかし、白い魔力が騎士(ナイト)を護るように覆い、バリアとなってそれを防いだ。

 

「1つ・・・言っておく・・・」

「ひっ!?」

 

騎士(ナイト)の気迫が和也の足を震えさせ、一歩また一歩と後退させる。

そんな中、騎士(ナイト)は精一杯の力を振り絞りながら喋り出す。

 

「俺がアリサ達に嫌われて迷惑をかけているなら消えるよ。でもさ、なんでお前に言われて2人から消えなきゃいけないんだ!ふざけんじゃねええええええええええ!!」

「ぐおっ!?」

 

感情の爆発によって魔力が弾ける。その反動に和也は吹き飛ばされベンチに突っ込んだ。

 

「ぐっ・・・なんだなのだ。このバカみたいな魔力・・・あ、ありえ―――」

「おい・・・」

「ひっ!?」

 

さっきと反対の状況になった尻餅をつく和也に見下す騎士(ナイト)

その騎士(ナイト)の顔は和也を怯えさせるのに十分だった。

 

「もう・・・2度と・・・そんな事・・・言・・・うな。わか・・・たな?」

「わ、わわわわわ分かった!もうそんな事は言わない!だから許してくれ!」

「・・・・・・」

 

和也はすぐに土下座をして許しを請う。

もうプライドとかどうでもよかった。

それほど騎士(ナイト)の威圧から解放されたかったのだ。

 

「ゆ・・・」

「へ?」

「許す・・・」

 

その言葉を最後に騎士(ナイト)は仰向けに倒れた。

そして、暫くして寝息をかき始める。

 

「な、なんなんだこいつ・・・」

 

その一言を最後に和也はその場を後にした。

そして和也はもう騎士(ナイト)を怒らせない様にしようと誓った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「(という事があってな。そしてあのモブは屋上の階段下で見つけられ病院に送られた。恐らく起きた奴が帰ろうとしたら怪我と魔力の消費による疲労で足を踏み外し転倒したのだろう)」

「(リンディさん、この人です。捕まえてください)」

「(分かったわ。明日から休みらしいし、2日間みっしり教育するわ)」

「(え!?ちょ!?)」

 

放課後、和也はリンディとクロノに連行され、色々と教育的指導された。




如何でしたでしょうか?

リンディとの会合とテンプレ踏み台君・和也との過去話でした!

めっちゃ悩んだ挙句こうなりましたが楽しんでくれたでしょうか?

次回は・・・どんな話にしようかな・・・





という訳でしつこく報告会!

お気に入り3444件、感想112件、評価135人

前話から5日程空いてしまいましたが・・・千人もお気に入りが増えるとは思ってもいませんでした!

感想も3ケタを超えて読者の皆様には感謝でございます!

そして、誤字や指摘を頂いたりと本当に嬉しいです!ありがとうございます!

次の更新も頑張ります!


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第15話『大人の階段登る』

どうもお久しぶりです!

久々に更新する事ができました!

本当に久々すぎてちゃんと書けているか不安ですが楽しんで頂けたら幸いです。

では、本編をお楽しみください!


「艦長。橘騎士(ナイト)の処遇はどうするんです?なのはやユーノが言うには今のところ害はないので放置という手もありますが・・・」

「そうね。でもあの子の魔力量は異常だわ。何がきっかけで暴走するか全くわからない。もしも暴走した時に2人では荷が重すぎるわ」

 

アースラに帰ってきたリンディはクロノと話し合いをしている。

その内容は騎士(ナイト)についてだ。騎士(ナイト)との会合は失敗に終わってしまった為どうすべきかを話し合っているのだ。

 

「それに私たちには時間がないわ。今回の事件、PT(プレシア・テスタロッサ)事件の報告でミッドチルダに帰らないといけない」

「わかってます。他にもフェイト・テスタロッサの裁判の準備もしなければなりません」

「そうなのよね・・・・・・!」

 

顎に手をつけて考えるリンディが何かを思いついた。しかし、その表情は浮かない様子である。

 

「本当はすべきではないのだけどあの人にお願いするしかないわね・・・」

「ま、まさか・・・」

「早速連絡してみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「30・31・32・33・34・35・36、あっ・・・」

「はい、36回!前より6回増えたよ!」

 

俺、騎士(ナイト)は最近遊びに来るアリシアと公園でサッカーの練習をしている。

まあ、アリシアは見ているだけなんだけどね。

 

「アリシアはいつも見てるだけだけど、つまんなくない?」

「大丈夫!楽しいよ!」

「なら良いんだけど・・・。リフティング上達しないな・・・」

 

俺の最近の悩みでリフティングが全く上達しない。

周りの皆は100回ぐらい普通に出来るのに俺は30前後くらいがやっとだ。

 

「うーん・・・。もっと力を抜いてみたら?力んでてちゃんと蹴れてないんじゃない?それにもっと上に蹴るようにしてみるといいかも!」

「なるほど。やってみるか・・・ってアリシア詳しいね」

「うん!家だとフェイトがリフティングしてるし、テレビでもサッカーのDVDを見てる事が多いから少し詳しくなっちゃった」

 

なんと!

あれからフェイトと会ってないけどサッカーはしっかりやっているみたいだ。

 

「なあなあ。フェイトは元気にしてる?」

「うん、元気だよ!最近、必殺シュートの練習してるし」

「必殺シュート!それは凄い楽しみだな!」

 

必殺シュートってなんだろう!

バナナシュートとかブレダマかな?それともオーバーヘッドかな!

 

「そうだ!今からフェイトに会いに行こう!」

「え?それは・・・」

 

ん?

アリシアには珍しい戸惑った表情をしているな?

 

「ちょっと今日は都合が悪いと言うか・・・」

「そうなの?」

「うん・・・あ、電話だ。ちょっと待って―――」

 

最新式のスマホで電話するアリシア。

俺のはぱかぱかする携帯だから羨ましい。

 

騎士(ナイト)!お母さんが家に来て良いって!フェイトにも会えるよ!」

「マジか!」

「それと夕御飯も食べていかないかって?」

「いいの?」

「もちろん!フェイトも喜ぶよ!」

「んじゃあ、荷物を家に置いて行かないとだな」

 

親にもこの事を話さないといけないからね。

 

「よし!それじゃあ、早速行くぞ!」

「おー!」

 

俺は、アリシアとフェイトの家に向かうため公園を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!?騎士(ナイト)が来るの!?しかも今から!?」

「ええ、そうよ。ついでに夕御飯も食べて行くわ」

 

ここはテスタロッサ家のマンション。

一時的に帰宅を許されたフェイトはプレシアから騎士(ナイト)が来訪すると言われ、慌てふためいていた。

 

「ちょ、ちょっと待って!私今、汗かいてるのに!」

「いくらこの部屋が広いからってここでリフティングしてるのが悪いの。というか外でやりなさい。」

「だ、だって外出は管理局に禁止されてるし、アースラでリフティングするのも局員さんに迷惑だろうし・・・」

「なんで家の中なら大丈夫だと思ったの・・・。でも、安心しなさいフェイト」

「?」

 

フェイトの肩に手を置いて良い笑顔をするプレシア。

 

「貴女の汗は良い匂いするから問題ないわ」

「問題しかないよ!?」

 

最近のフェイトの悩み。

母のプレシアが子煩悩で変態になりつつある事。

 

「私、お風呂入ってくるから!」

 

フェイトは急いでお風呂へと向かう。

その15分後の事だった。

 

「ただいま!」

「お邪魔します!」

「あら、お帰りなさい。そして、あなたが橘騎士(ナイト)君ね?私はアリシアとフェイトの母プレシアよ。娘たちがお世話になっているわ」

「はい!橘騎士(ナイト)です!あっ、これ母さんからです」

 

騎士(ナイト)とアリシアが帰宅。

プレシアと挨拶を済ませた騎士(ナイト)は中に入って行く。

 

「あら、とても美味しそうなプリンね。夕御飯の後に頂きましょう」

「わーい!」

 

プリンではしゃぐアリシアを見て笑顔になるプレシア。

とても幸せそうな家族だなと騎士(ナイト)は思った。

 

「それじゃあ、手を洗って来てね。アリシア、案内してあげて」

「はーい!こっちだよ、騎士(ナイト)!」

「おう!」

 

アリシアは騎士(ナイト)の手を引っ張って洗面台へ向かった。

ちなみにだが、テスタロッサ家の洗面台はお風呂に繋がっている。

そして、プレシアは忘れていた。

フェイトがお風呂に入っている事に。

 

「ここだよ!」

「おう!」

 

ドアが開かれる音が聞こえて数秒後。

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

 

か弱い女の子の悲鳴が部屋中に響き渡った。

その後すぐに―――

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

 

 

電気を纏った1人の少年が悲鳴を上げて吹き飛ぶ姿が見られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルス!・・・って、あれ?俺は、何を・・・?」

 

なんか見てはいけないようなものを見てしまったような・・・?

 

「というか、ここどこ?」

 

俺の部屋じゃない。

ベッドに寝ているようだけど・・・?

 

「な、騎士(ナイト)!」

「ん?フェイト?」

「良かった!起きたんだね!」

 

ドアの方を見ると、涙目のフェイトが安心した表情で俺に話しかけてくる。

そういえば、フェイトの家にお邪魔してんだった。

 

「えっと、俺なんで寝てんの?」

「お、覚えてないの?」

「んー・・・家に入ってフェイトのお母さんに会って・・・そこから覚えてない・・・」

「そ、そっか。良かった・・・」

 

また同じように安心した表情をするフェイト。

一体どうしたんだ?

 

「あ!騎士(ナイト)、起きたんだ!」

「アリシア!あのさ、俺なんでこんなところで寝てんだ?」

「え?覚えてないの?」

「ああ」

「そうなんだ~。それは勿体ないね。せっかくフェイトのはd―――」

「あ、アリシア!?」

 

アリシアの言葉を慌てて止めるフェイト。

その顔はとっても真っ赤に染められていた

 

「な、騎士(ナイト)。とりあえずご飯にしよ?」

「それもそうだな!お腹空いちまった!」

 

フェイトに案内され、料理が並ばれたテーブルがあり、椅子にはプレシアさんと―――

 

「おっす、騎士(ナイト)!久しぶり!」

「アルフ!本当に久しぶり!」

 

オレンジ色の髪をしたアルフがいた。

あの温泉以来じゃないかな?

 

騎士(ナイト)は相変わらずドタバタ騒ぎの中心にいるようで安心したよ」

「どういう事さ?」

「両端を見てみなよ」

 

俺はそう言われて見てみると左にはニコニコ笑うアリシア。右には顔を真っ赤にしているフェイトがいる。

 

「どういう事さ?」

「分からないならそれでいいよ。悪い事じゃないからさ」

 

だから、どういう事さ?教えてよ。

訳のわからないまま、テスタロッサ家のお夕飯をご馳走になる。

ハンバーグがとても美味しかったです。

 

「あのね、騎士(ナイト)。ちょっと話があるんだ」

「ん?どうしたんだ?」

 

オレンジジュースを飲んでのんびりしている時にフェイトが深刻そうな表情で俺に話しかけてくる。

 

「実はね。私とアルフは、明日からここを離れて遠い所に行くんだ」

「・・・え?」

「詳しくは話せないんだけどとても大事な事があって・・・」

「・・・・・・」

「あ!でも、安心して!アリシアと母さんはここに残るか―――」

「出来ないよ!」

 

俺の言葉にびくっと肩を震わせる。

フェイト、何をどうすれば安心出来るんだよ。

 

「安心なんか出来ないよ!一体どこに行くんだ?」

「日本ではない遠いところ・・・」

「・・・いつ戻ってくるの?」

「分からない。今年中は無理かも。来年・・・それ以上になるかも」

「・・・・・・」

 

なんだよそれ。いきなりすぎるじゃねえか!

 

「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ?そうすれば俺の友達と一緒にパーティーを開いたのにさ」

「ご、ごめんね。言うタイミングがなくて・・・」

「・・・いや、謝らなくていいよ。それより」

 

俯くフェイトの肩を掴む。

フェイトはゆっくり顔を上げるのを見て俺は絶対に聞かなければならない事を聞いた。

 

「絶対に帰って来るんだよな?俺はもっとフェイトと遊びたい。サッカーをしたい。どうなんだ?」

「・・・うん。絶対に帰ってくる。私も騎士(ナイト)と一緒に遊びたいし、サッカーがしたいから!」

 

俺はその言葉を聞いて安心する。

やっぱり友達が遠くに行くのって嫌だからさ。

でも、ちゃんとフェイトと約束したから大丈夫!

 

「よし!それじゃあ、帰るとしますか」

「えー!もう帰っちゃうの?泊って行きなよ!」

 

満足した俺がそう言うとアリシアがアヒル口になりながら文句を言ってくる。

 

「いや、流石にそこまでお世話になる訳には」

「あら、(うち)は構わないわよ」

 

プレシアさんからも許可を貰ってしまった。

でも親に許可を貰わないとだし。

 

騎士(ナイト)のお母様からは電話で許可を貰っているわ。明日は休みだからどうぞって」

 

用意周到でした。

というか、いつの間に俺ん家の番号を・・・。

 

「アリシアが貴方の家に寄った時にお母様本人から電話番号が書かれた紙を渡されたそうよ。しかもお泊まりセットも一緒に」

「母さん・・・」

騎士(ナイト)のお母さんて凄い人だねえ」

 

アルフは苦笑しながらそう言ってくるけど、本当にね。

俺の知らぬ間にどんどん仕掛けてくる。母さんは最初から泊めさせる気だったみたいだし。

 

「分かりました。それじゃあ、泊まらせてもらいます」

「そうしなさい。フェイトとアリシアの部屋で良いかしら?」

「俺は良いですよ。フェイトとアリシアはそれで良い?」

「私は大丈夫!」

「わ、私も大丈夫・・・」

 

こうして俺はテスタロッサ家に泊る事が決定した。

 

「それじゃあ、騎士(ナイト)君、お風呂に入ってきてね」

「はい!分かりました!」

「お、おふ!?」

 

ん?

なんかフェイトが慌てているようだけど・・・

 

「・・・お風呂。フェイト・・・うっ!頭が・・・」

「あわわわわわわっ!?」

「ねえねえ、騎士(ナイト)!私と一緒に入ろうよ!」

 

顔を真っ赤にして慌てふためくフェイトの前に出てそんな大胆な事を言ってくるアリシア。

 

「いや、もうこの年になって女の子と風呂に入るのは・・・」

「えー!いいじゃん!」

「あ、アリシア!だ、ダメだよ!騎士(ナイト)が困ってるよ」

 

アリシアを止めようとするフェイト。

そうだ。もっと言え。

 

「でもさ。フェイトだけアピールして、ずるいじゃん!私もアピールしないと!」

「あ、アピールって・・・あれは事故だし、好きでやった訳じゃ―――」

 

アピール?

よく分からんが今の内にお風呂へ退散しよう。

 

「確かここだったな」

「待ってたよ、騎士(ナイト)

 

ドアを開けたらそこにはアルフがいた。

しかも、上半身が・・・

 

「ご、ごめんなさい!」

「まあ、待ちなよ」

 

すぐにその場から離れようとしたらアルフに襟を掴まれてしまう。

 

騎士(ナイト)は風呂に入りに来たんだろ?なら一緒に入ろうじゃないか」

「え!?」

 

何を言ってんですかこの人は!?

 

「この前の温泉の時は一緒に入れなかったからねえ。良い機会さ」

「いやいやいや!」

 

止めてください!

面と向かってそう言いたいけどアルフが全く隠しもしないからそれも出来ないし!

 

「あー!2人とも何やってんの!」

「あ、アルフ!騎士(ナイト)も!?」

 

こんな時にフェイトとアリシアが来ちゃったよ!?

ど、どうする。何故か分からないがとてもヤバい気がする!

 

「フェイトにアリシア。2人もどうだい?皆でお風呂に入ろうじゃないか」

「「ええ!?」」

 

アルフの提案に俺とフェイトが驚愕する。

当然だ。いきなりそんな提案をすれば誰だって驚く。

 

「うん!入る!」

「「なっ!?」」

 

と、思ったらアリシアは別だった。

しかも、返事と同時に上着を脱ぎ始める。

 

「あ、アリシアさん!?止めていただけませんか!?」

「フェイトはどうすんの?」

「無視しないで!?」

 

アリシアは顔が真っ赤なフェイトに呼びかける。

ま、まさかフェイトまで入るとか言わないよね?フェイトなら止めてくれるよね?

 

「これで私も騎士(ナイト)にアピールして1歩前進だね」

「っ!わ、私も入る!」

「フェイトさん!?」

 

アリシアが俺に聞こえない声でフェイトに耳打ちしてたけど何を言ったんだ!?

フェイトまで上着を脱ぎ始めた。

これは本当にヤバい!

 

「て、撤退!」

「ふっ、そうはいかないよ!」

 

俺はアルフに掴まれていた上着を脱いでその場から逃げようとするもアリシアが立ち塞がる。

だが、俺もここで止まる訳にはいかない。勝負は一瞬だ!

 

 

 

ずるっ

 

 

 

「あっ・・・!?」

「えっ?」

 

今起きた事を説明しよう。

俺はアリシアを抜くために足に力を込めたのだが、ちょうど俺の足元にタオルが落ちていた。

それを踏んだ俺は見事に足を滑らせて転倒。しかもアリシアを巻き込んで。

 

それが一体どうなってか。俺がアリシアを押し倒してしまい、俺の右手がアリシアの胸に―――

 

「な、騎士(ナイト)・・・?」

 

アリシアはさっきのフェイトみたいに顔を真っ赤にしている。

というか、この体勢ってヤバいんじゃないのか?

 

「えっと、その、ア、アリシアーーー」

「き」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、姉さん?」

 

私、フェイト・テスタロッサは今起こった事に唖然としています。

簡単に何が起こったのかまとめて見ると・・・

 

1、騎士(ナイト)がアリシアを押し倒す。

2、騎士(ナイト)が話しかけようとした時にアリシアが悲鳴をあげる。

3、その悲鳴と同時にアリシアの平手打ちが騎士(ナイト)の頬に炸裂。

4、まるでトラックに撥ねられたかのように回転しながら宙を舞う騎士(ナイト)

5、床に叩きつけられ気絶する騎士(ナイト)に顔を真っ赤にし息を荒げるアリシア←今ここ

 

私は精神年齢が大人なアリシアが子供である騎士(ナイト)にむ、胸を触られたからって手を出すなんて思いもよらなかった。

ましてや、あんな悲鳴をあげるなんて・・・

 

騎士(ナイト)、大丈夫かい?・・・駄目だね。完全に気絶してる」

「あ、あがが・・・」

「ね、姉さんは大丈夫?」

 

騎士(ナイト)は気絶してるけど、アルフが確認しているかぎり大丈夫そうなのでアリシアに声をかける。

姉さんは触られた胸を両腕で隠すようにしながら上半身を起こした。

 

「え、えっと、男の子に胸を触られるって意外と恥ずかしいんだね・・・」

「えええ・・・」

 

どう返事すればいいのか分からない私は少し唖然としてしまったが、気絶した騎士(ナイト)を介抱するため母さんを呼ぼうと動き出したのだけどーーー

 

「アリシア、大人の階段を一つ登ったのね・・・可愛いわ!」

 

ビデオカメラを片手に口を押さえる変態、いや母さんがドアの前にいた。

この人は近い将来に別の理由で管理局にお世話になるかもしれないと私は思った。




如何でしたでしょうか?

久しぶりの投稿はテスタロッサ一家とのお話でした。
ナイトが久々に酷い目にあってましたね笑

次回はとうとうA'Sに突入か?






という訳で久々だけど変わらず報告会!

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3か月も更新してなかったのに・・・ありがとうございます!
感想は返信出来ず申し訳ありません。
出来る限りは致しますので・・・

次の更新はいつになるか分かりませんが期待して待って頂けたら嬉しいです。
ではでは!


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第16話『夏休み!と、言えば?』

みんな、待たせたな!

いや、本当にお待たせしてしまいすみませんでした!
m(_ _)m

楽しんで頂けると幸いです!


とうとうこの日がやって来た。

 

この日を騎士(ナイト)こと俺や、クラスの全員がどれ程待ち望んで来たか・・・。

考えただけで身体が震えてくる。

 

他のみんなもそうだ。

すずかやアリサ、なのはだって待ち望んでいただろう。

 

そうそれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで授業は終わりだ。思う存分楽しめ・・・夏休みを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおっしゃああああああああああああああっ!」

 

「「「わあああああああああああっ!!」」」

 

俺を筆頭にクラスの皆が騒ぎ出す。

そう今日、この瞬間から、始まった夏休み!

皆は今日から学校のない楽しい日々を暮らすに決まっている!

 

なのに・・・

 

 

 

 

 

 

なのに・・・

 

 

 

 

 

 

なのに!

 

 

 

 

 

 

「なんで俺は椅子に縛り付けられてんだ!?」

 

夏休み早々に俺は悲痛の叫びを上げていた。

 

・・・こうなった経緯を説明すると俺が始まる楽しい夏休みにワクワクしながら下校していると、いきなり黒くて長い車に押し込まれた。

部屋に閉じ込められ、ロープで椅子に縛られてしまった。

そして、俺の目の前には恐ろしいものが置かれている。

 

それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『楽しい夏休みの算数ドリル』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、放せええええええええええええっ!?」

 

「大人しくしなさい!」

騎士(ナイト)君。これも貴方の為なんだよ?」

 

暴れる俺を鎮めようと怒鳴るアリサに心配した表情でそういうすずか。

そう。この事件の犯人はこの2人だったのだ。

 

つか、人を縛り付けて夏休みの宿題を強制的にさせようとする事のどこが俺の為なんだ!?

 

「あんた、去年に夏休みの宿題を『朝顔の観察』以外全部忘れて先生に怒られていたじゃない。去年だけじゃなくてその前も。だから協力してあげようとしてんじゃない」

「まだ夏休みは始まったばかりなのにどうして宿題をしなければならないんだよ!?」

 

俺は夏休みを堪能したいんだよ!

 

騎士(ナイト)君の気持ちも分かるけど、そうやって後回しにしてたら終わる物も終わらなくなるんだよ?」

「うっ・・・」

 

すずかの言う通り。俺は夏休みの宿題を後回しにしては残りの休みが数日というところで焦り出し、後悔しながら最終的には諦める。

アリサやすずかに宿題を写してもらおうとも考えた事もあった。

だが、それでは俺の為にはならないし、下手したら2人に迷惑をかけてしまうかもしれないと思って止めた。

そんな事思うなら宿題やれよって話だが・・・

 

「分かった。ちゃんとするよ・・・」

「あら?やけに物分かりが良いわね?いつもなら駄々をこねる癖に」

「手段はともかく、俺を心配してくれてる2人の好意を無下にする訳にはいかねえからな」

「べ、別に騎士(ナイト)を心配してる訳じゃないわよ!ただ・・・そう!あんたが宿題を忘れたら先生の迷惑になるじゃない!」

 

な、なるほど・・・。

アリサの言うとおりだ。宿題を忘れて迷惑なのは先生だもんな。

 

「アリサは先生想いなんだな!」

「え、あ、うん・・・」

騎士(ナイト)君・・・」

 

あれ?なんかアリサが目に見えて落ち込んでないか?

それにすずかが哀れんだ目で俺を見ているぞ?

 

「・・・さあ!宿題を始めるわよ!」

「お、おう・・・」

「こんな宿題、日記以外は今日中に終わらせるわ!」

「いや、無理だから!?約1か月半ちょっとの夏休みに出された宿題を1日でなんて普通に無理だから!?」

「え?そうなの?」

「何言ってんのよ。このくらいの量、1日で十分じゃない」

「・・・・・・」

 

こ、この2人、本気でそう言ってやがる・・・。

確かにこの2人なら出来ても不思議じゃないかもしれん。

同じクラスではないが2人は学年でトップクラスの学力なんだよな。

 

「せ、せめて一週間にして頂けませんか?」

「アリサちゃん。騎士(ナイト)君もやる気になっているみたいだし・・・」

「仕方ないわね。まあ、なのはも宿題を終わらせてから来るって言ってたし、本当に始めるわよ!」

 

こうして俺は楽しみだった夏休みに最初に始めたのは宿題を一週間で終わらせる事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、始めるわよ!まずは英語よ!」

「よ、宜しくお願いします・・・」

 

初めにやるのは英語だ。

やる事はそう難しくなく、指定された英単語を10文字ずつ書いていくだけだ。

 

「ちょっと!そこのスペル間違ってるわよ!『house』が『horse』になってる!」

「うおっ!やべっ!?」

 

日本語もそうだが英語も結構似てる単語が多いよなー

だが、アリサの指摘のおかげで問題なく終わらせられそうである。

 

そんなこんなで宿題を始めて1時間くらいが経過した。

黙々とやっていた俺だが、そんなに集中力が持続するはずがなく、アリサに話しかけた。

 

「そういえば、すずかはどこに行ったんだ?」

 

宿題を始めてから姿が見えなくなったんだよな。

 

「今、宿題を終わらせてるわ。だから今日は私とマンツーマンよ!それで明日は私が宿題を終わらせるからすずかとマンツーマン。そして明後日は宿題を終わらせた2人で相手するわ」

 

そこまで計画を立てられていたとは驚きである。

つーか、マジで1日で宿題を終わらせるとか本当に俺と同い年なのか?

 

「あれ?そういえば、なのはも来るような話をしていたけど?」

「なのはは最後よ。私とすずかは4日までしか付き合えないしね」

「えっ?なんでだ?」

「私たちは家族旅行に行くのよ。一週間の海外旅行にね!」

 

アリサはとても嬉しそうな表情をしている。

まあ、あまり会えないお父さんと旅行なんだ。楽しみなのは当然だろう。

 

「場所によっては時差が反対の所に居るだろうけど私は構わず電話するから絶対に出なさいよ!出なかったら帰った時にその回数分殴るから!」

「俺の都合とか完璧に無視なのかよ!?」

 

この扱いは酷いと思うのは俺だけではないはず!

 

「うるさい!あんたの都合なんてサッカー以外どうでも良い事じゃない!」

「そんな事はないんだが!?」

 

確かに優先順位的にはサッカーが一番だけどさ!

 

「それに!」

「・・・なんだよ?」

 

ガバッと顔を腕に埋めたと思ったら少しだけ顔を上げて俺のことを睨み付けるアリサ。

心なしか顔が赤いような気がするけど気のせいか?

 

「・・・一週間、あんたの顔や声が聞こえないのは、その・・・・・・寂しいのよ」

「・・・ふーん」

 

何故だろう?

今のアリサを見たら胸の辺りが熱くなったような気がする。

 

「まあ、俺も騒がしい奴がいないとつまらないからな。電話が来たらちゃんと出てやるよ」

「な、なによそれ!あんただって実は寂しいくせに強がってんじゃないわよ!」

「べ、別に俺は寂しくなんてねえし!アリサが居なくたって平気だし!」

「あんた・・・それ、本気で言ってんの?」

 

今日のアリサはどうしたんだ?

やけに元気がないな。それに顔が赤い・・・ん?

 

「アリサ。おでこ貸せ」

「ちょっ、なにすんのよ!」

 

俺は自分の手をアリサのおでこに乗せる。

とても熱かった。クーラーが効いてる筈なのに凄い熱を持っている。

それはつまりーーー

 

「お前、風邪ひいてんじゃねえか!!」

「うっ・・・ひ、ひいてないわよ!少し食欲がなくて、怠くて、目眩がして、吐き気がするだけで風邪なんてひいてないわ!」

「百パー風邪だよ!?」

 

こいつはどんだけ風邪を認めたくないんだよ!

 

「とりあえず鮫島さんを呼んで体温計を持って来てもらおうぜ?そうすれば風邪かどうかすぐに分かるからさ」

「平気よ!風邪なんて私がひくはずないじゃな・・・・・・くしゅん!」

「鮫島さーん!急患でーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?私・・・」

 

私はアリサ・バニングス。

今日から夏休みが始まった・・・のに何で私はベッドで寝ているのかしら?

 

私は寝起きで回らない頭をフル活動して考える事にした。

 

確か、一番初めに行ったのは幼馴染を拉致、いや誘拐・・・どっちも同じね。とりあえず騎士(ナイト)を私の家に連れて行った。

 

なんでかと言うと、あのバカは放っておくと夏休み中遊んでばっかりで夏休みの宿題を一切やらないからである。

 

そして宿題をやらなければと焦りだしたかと思えば開き直って遊び尽くす始末。

仕方ないから宿題を写させてあげようとしたけど頑なに断るし、なんでそういう所は馬鹿真面目なのかしら?

 

でも今年はちゃんとやると宣言してくれた。

そして、騎士(ナイト)に「先生想いなんだな」と褒められたが気にしない事にしよう。

あいつが鈍いのは今に始まった事じゃないしね。

 

それで、すずかは宿題を終わらすために帰って私と騎士(ナイト)の2人きりの勉強会が始まって・・・そうだ。

 

私は急に体調を崩してしまったんだ。

 

なんとか誤魔化そうとしたけど駄目で騎士(ナイト)に鮫島を呼ばれ、そのままベッドに連れて行かれ、あっという間に寝てしまったんだった。

 

「なんでこんな日に限って体調崩しちゃうのよ・・・」

 

私は思わずそう呟いた。

久しぶりに騎士(ナイト)と2人っきりを私は密かに楽しみにしていた。

あいつとは小学生になってから一度も同じクラスになった事がなかったから幼稚園の時より話す時間が減った。

放課後は出来る限り一緒に居ようとしているけど、習い事だったりでどんどん話す時間が減ってきている。

 

だから私は今日のノルマを終わらせたらいっぱい遊んだり話したりしようと思ってたのに・・・

騎士(ナイト)の事だから私に気をつかってすずかの所に行っただろうし・・・

 

あー、考えれば考えるほど惨めになって涙が出そうだわ。

 

「顔洗おう・・・」

 

私は顔を洗って、この気持ちも一緒に洗い流そうとベッドから出ようとした時、ある事に気付いた。

 

騎士(ナイト)?」

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

そこには、居ないと思っていた騎士(ナイト)がいた。

私のベッドから見える位置のテーブルで寝ている。どうして?

私はすぐに騎士(ナイト)がいるテーブルの前に移動した。

 

「なんで・・・」

 

眠る騎士(ナイト)を見て私はそう呟いてしまう。ふと、テーブルに置いてある物に目がいった。

 

「夏休みの宿題・・・・・・ちゃんと出来てる。しかも目標の量よりも多い」

 

もしかして私が寝てからもずっと頑張ってやったいたの?

 

「うーん・・・アリサ・・・」

「あっ、起こしちゃったかしら?」

 

騎士(ナイト)はもぞもぞと動いたが再び寝息を立てる。どうやら寝言だったみたい。

私の名前を呼んでたってことは、私が騎士(ナイト)の夢に出てるって事よね。

どんな夢を見ているのかしら?

 

「嘘、だから・・・怒んな・・・よ・・・」

 

また寝言を喋ったかと思ったらうなされ始めた。

この馬鹿は夢の中でも私を怒らせてるの?

そう言えばテレビで夢の中で出てくる人は自分の第一印象で決まるとかなんとか言ってたような・・・

 

と言うことは騎士(ナイト)が私に対する印象は怒りっぽい女ってこと?

 

「俺も・・・寂しい・・・から・・・」

「えっ?あ・・・!」

 

騎士(ナイト)が何を言っているのかすぐに理解出来なかったけど、うっすらと何のことであるかを思い出した。

私が熱で気が滅入っている時にうっかり口にした言葉。

 

 

 

 

『・・・一週間、あんたの顔や声が聞こえないのは、その・・・・・・寂しいのよ』

 

 

『べ、別に俺は寂しくなんてねえし!アリサが居なくたって平気だし!』

『あんた・・・それ、本気で言ってんの?』

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

私は全身が燃えるように熱くなるのを感じた。

いくら弱ってたとはいえ、何てことを口走ってんのよ、過去の私!

穴があったら入りたいとはまさにこの事ね。

でも・・・

 

「そっか・・・寂しいんだ・・・ふふっ」

 

思わず笑みがこぼれる。

胸にあったモヤモヤが消えて晴れやかになった気がした。

こんな些細なことでもこんな気にさせる此奴は本当にずるい奴だと思うわ。

 

「うーん・・・」

 

また寝言かしら?

私は次はどんな事を言うのかしら?

少し楽しみにしながら聞き耳を立てる。

 

「今度は頭を撫でてくれって?本当にお前は甘えん坊だな・・・」

「なっ!?」

 

騎士(ナイト)の寝言を聞いた私はさっきよりも身体全身が熱くなる。

そんな私を気づく様子も無く寝言は続いていく。

 

「さらに抱きしめろって?じゃないと泣く?分かった。分かったから・・・」

「なっ、ななななな!?」

「ベッドで抱きしめながら寝ろって?アリサは本当ーーー」

 

私はそれ以上騎士(ナイト)の言葉を聞いてしまったら風邪とは違う意味で寝込んでしまう。

だから私は拳に力を込めてーーー

 

「な、なんて夢見てんのよ!この馬鹿ああああああああああっ!!」

「イッテエエエエェ!?」

騎士(ナイト)の馬鹿馬鹿馬鹿!!」

 

私はそんな事を言いながら部屋から出て行った。

そして私は騎士(ナイト)の夢の中の私みたいにもっと素直で積極的になれたらなと思うのであった。




如何でしたでしょうか?

久しぶりの投稿は夏休み突入編。
A'S編だと思いましたか?
でもある意味では突入か?
あと何話かA'S編までの空白期間を書きたいと思います!




という訳で負けずに(誰に?)変わらずの報告会!

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前投稿したのが2016年10月で今は2018年2月だから、、、

あれ?もう1年4か月?も更新してなかったのか・・・

それでも待ってます!という感想は本当に励みになりました!
ありがとうございます!


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第17話『誰もが通る道』

皆さま、こんにちは!
2ヶ月ぶりの更新!
もう少し早く更新出来れば良いんだけど、、、

楽しんで頂ければ幸いです!


「ただアリサを看病してる時につい寝ちまったくらいで普通殴るか?酷くね?」

「うーん・・・」

 

俺こと騎士(ナイト)は夏休みの宿題をするべくすずかの家に訪れている。

 

そして、昨日の出来事をすずかに話していた。

 

「でも、アリサちゃんがそんな事で怒るかな?」

 

そう言われると確かに・・・

 

「いや怒るだろ?」

「・・・こればかりはアリサちゃんの日頃の行いのせいかな?」

 

俺の言葉に苦笑するすずか。

 

まあ、この話ばかりしていても仕方ないから本題に入ろう。

 

「それで、今回はすずかが夏休みの宿題を手伝ってくれるんだろ?」

「うん!一緒に頑張ろうね!」

 

とても嬉しそうに笑うすずか。

遊ぶ訳ではないのになんでそんなに楽しめるのだろうか?

 

「そう言えば、すずかは昨日アリサが言ってた通り、夏休みの宿題を全部終わらせたのか?」

「そんな訳ないよ。夏休みの宿題を全部終わらせるなんて無理だよ」

 

すずかは笑いながらそう言った。俺はそれを聞いて安堵する。

 

そうだよな!

いくらなんでも一日で終わる訳ないよな!

 

「夏休みの宿題は後、絵日記とプチトマトの観察日記が残ってるよ」

「・・・・・・」

 

それはもう終わっていると言うんじゃないのか?

なんていうか、すずかやアリサと俺の頭脳は全く別のもので出来ているのではなかろうか?

 

「そ、それで今日は何をやるんだっけ?」

「今日は国語だよ!まずは漢字の書き取りだね!」

 

そんなこんなで宿題が開始された。

順調に終わり、昼食を食べ、ある意味国語で一番の難関が始まろうとしている。

 

「読書感想文か・・・」

騎士(ナイト)君は何を読むの?」

「それなんだよなー。何を読んだらいいかなー」

騎士(ナイト)君は読書苦手だもんね」

「自慢じゃないが俺の部屋にはサッカーの教本、漫画くらいしかねえぜ!」

「本当に自慢じゃないよね・・・。教科書なんて全部学校に置いてってるし」

「だって、一々持って行ったり帰ったり面倒じゃん。教科書って地味に重い・・・・・・ん?なんで俺が教科書全部置いてってるの知ってんの?」

 

俺がふと感じた違和感に気づいて尋ねた。

その事は誰にも話してないし、知っている人はいないはずなのだが。

 

「・・・・・・」

 

すずかの目があらぬ方向を向いている。

 

「おい・・・」

「それよりも!今は読書感想文だね!付いて来て。良い所があるから」

「あ、ああ・・・」

 

なんか納得いかないが俺は言われた通りついて行く。

とりあえず、宿題を終わらせることを優先しよう。

少し歩いて、すずかの言う良い所に到着した。

 

「おおっ~!本がいっぱいあるな!」

 

そこは天井に届きそうな本棚が沢山ある部屋だった。

本棚には隙間などどこにもないくらいびっしりである。

 

「ここは書斎だよ!私とお姉ちゃんが集めた本が置いてあるの」

「す、すっげー!」

 

こんな数え切れない本を2人で集めたのかよ!

俺じゃあ一生かけても無理だな!

 

「でも、これだけあると選ぶの大変だな・・・。そうだ!すずかが選んでくれよ!」

「えっ?私が?でも、こういうのは自分が選んだ方が良いと思うけど?」

「そうかもしれないけどさ。すずかの選んだ本なら飽きずに読められると思うんだ!すずかはセンス良いし!」

「そ、そうかな?じゃあちょっと待っててね!」

 

すずかは本を選んでくれている。

その間暇なので俺は適当にこの部屋を探索する事にした。

と言っても本しかないのだけど。

 

「ん?あそこだけタイトルが書いてない?」

 

隅っこまでやって来て背表紙には何も書いてない本を見つける。

1冊だけではなく6冊くらいはあった。

 

興味本位で俺はその中の1冊を取り読んでみようと開いてみた。

 

「・・・写真?」

 

どうやらこれは本ではなく、アルバムであるようだ。

次々とページをめくれば出会って間もない時やそれ以上前のすずかの写真がある。

一緒に忍さんが写っているのもあった。

そういえば、俺とすずかがあったのは今から2年前だったな。

 

アリサが連れて来たのがきっかけで。

なのはと仲良くなるまでは遊ぶときはいつも3人だった。

 

最初は俺と2人になると少し余所余所しくなったりしていたもんだけど随分変わったもんだ。

 

「さて、次のアルバムを・・・ん?これは・・・」

騎士(ナイト)様。何をなされているのですか?」

「ひゃあっ!?」

 

背後からの声に驚いて奇声をあげた俺は振り向くとそこにはメイド長のノエルがいた。

 

「ま、全く気づかなかった。いつの間に背後にいたんだよ」

「メイド足る者。気配を絶って背後に立つなど容易い事です」

「メイドにそんな特技必要なのか!?」

 

すずかもだが、ノエルもかなり変わったよな。

この人の本性(性癖)?が明らかになったら随分とオープンになってしまった。

 

俺もそんなノエルに、最初はさん付けで敬語だったけど、今では呼捨てでタメ語である。

前にその事でアリサから注意を受けたけど、ノエル本人に問題ないと許可された。

 

最後に『むしろご褒美』と言ったので流石のアリサもそれ以上何も言うことは無かった。

 

騎士(ナイト)様。すずか様がお探しになっていますよ」

 

しまった。

アルバムに夢中になってすっかり忘れていた。

 

「ここは私が片付けておきますので、すぐに行ってあげてください」

「でも悪いよ・・・。片付けならすぐに終わるから・・・」

騎士(ナイト)様がそう仰るなら構いませんが・・・。私と騎士(ショタ)様が2人っきりで私が我慢できるかどうか・・・」

 

現状を確認しよう・・・

場所は、広い書斎の隅っこ。

しかもかなり狭い。

居るのは、俺と何故か少し息を荒らげ始めたノエル。

 

悪寒を感じる!?

 

「なんか分からないけど分かった!片付け、よろしく!」

「はい。かしこまりました」

「ありがとね!」

 

お辞儀をするノエルを背にして俺は猛ダッシュですずかの元へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう。危ないところでした」

 

私の名前は、ノエル・K・エーアリヒカイト。

月村邸のメイド長を担っております。

 

騎士(ナイト)様を見送った私は床に積まれているアルバムを片付け始める。

数冊程なのですぐに終わりますが、私は騎士(ナイト)様が最後に持っていたアルバムを手にして開いた。

 

綺麗に並べられた写真に写っているのは幼稚園の頃のすずかお嬢様。

今よりも髪短く、なのは様のようにツインテールにしていてとても可愛らしいです。

 

「あの様子だと見られていないようですが、もう少し気をつけておく必要がありますね・・・」

 

私はそう呟きながら1枚の写真に視線を向ける。

そこには、はにかむすずかお嬢様と満面の笑みを浮かべる『銀髪』の少年がいた。

 

「それと、すずかお嬢様には謝らないといけませんね」

 

「いやああああああああああああ!!」

 

私が呟いた瞬間、すずかお嬢様の悲鳴が聞こえる。

その後すぐにドサドサドサーッ!と大きな音が聞こえた。

 

普通なら慌てて向かうところではありますが、私は冷静に通信機で妹のファリンへこう伝えた。

 

騎士(ナイト)様の救出を手伝いに来なさい。救護箱を忘れずにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

~時を少し遡る~

 

「すずか。勝手に動き回ってごめん!」

「ううん。大丈夫だよ」

 

俺、騎士(ナイト)はすずかと合流してすぐに謝った。

すずかは笑顔で許してくれる。

 

騎士(ナイト)君はじっとしているのは苦手だからしょうがないよ。何してたの?もしかして、良い本とか見つけちゃったかな?」

「いや、本は見つけられなかったけどアルバムは見つけたぜ?」

「えっ」

「すずかって、幼稚園の頃は髪をなのはみたいにしてたんだな。初めて見たけど新鮮だった!」

「そ、そうかな?」

 

でも、なんか違和感があるんだよな。新鮮だけど懐かしいって思っちまうっていうか・・・。

 

「な、騎士(ナイト)君はそっちの髪型の方が好みなの?」

「ん?いや、そう言う訳じゃないけど。俺は今の髪型の方が好きだぜ」

「えっ!?あ、ありがとう・・・」

 

何故か急に顔を赤くしながらもお礼を言うすずか。アリサみたいに風邪ではなさそうだけど・・・?

 

「とても懐かしかったよ。すずかと友達になって二年くらいしか経ってないのにさ。色んなことを思い出したよ。どれも楽しい思い出ばかりだ」

「そ、そうだね。私もアリサちゃんや騎士(ナイト)君と出会ってからとても楽しいことばかりで嬉しい」

 

本当に楽しいことばかりだな。こんな日々がいつまでも続けばいいのに・・・

 

「でも、アルバム見られちゃったんだ・・・。変な写真とかなかった?」

「・・・えっ!?いや、その、な、なかったぜ!」

 

あっ、なんか変な空気になってきた。俺の反応にすずかは変わらず笑顔・・・に見えるが俺にはそう見えなかった。

 

騎士(ナイト)君・・・。正直に言えば許してあげるよ」

「えっと・・・」

 

俺は色々と覚悟を決めた。

 

「すずかがベッドに世界地図を描いてた写真が・・・」

「えっ・・・?」

 

静まり返る書斎。

最初は理解出来ていなかったようだが、事の次第を理解したすずかはみるみるうちに顔を真っ赤にした。

 

「い、いやあああああああああああああああああ!!」

 

・・・俺はこの後の記憶が無い。

正確に言えば、すずかが悲鳴を上げながら一瞬で拳を振りぬこうとしているを見たのが最後の記憶である。

 

聞いた話では俺はすずかに顔面を殴られ、本棚へと突っ込み、その衝撃で本棚から落ちてきた大量の本に押し潰されてしまったらしい。

 

ノエルやファリンさんが応急処置をしてくれたけど、予想以上に重体だったらしく病院へ搬送となった。

 

結局俺は2日間、病院のお世話になった。

本当は、俺の異常?な回復力もあってすぐに退院出来たが医者に止められてしまい、念のためお世話になることになった。

 

その間に、アリサやなのは、アリシアにまさかのはやてまでお見舞いに来てくれた。

 

アリサ、なのは、アリシアは繋がりがあるから分かるけど、はやてはどうして入院したのを知っているのだろうか?

 

聞いてみたら、よく通院している病院で珍しい容姿と名前の子供が入院したと聞いてすぐに俺だと分かったらしい。

そして俺の入院理由を聞いて同じような言葉を言っていた。

 

騎士(ナイト)(君)が悪いけど・・・。どんまい」

 

俺はその言葉にただ苦笑いする事しか出来なかった。

 

すずかもお見舞いに来て謝ってもらったけど、俺は謝られる前に謝った。土下座で。

俺はその時に誓った。

もう勝手に人様のアルバムを見ないと。

 

余談だが、入院した3日間で読書感想文の宿題を無事に終わらせた。

しかも、クラスで一番の量で先生から花丸をもらった。




今回は、すずかのターンでした!
粗末な事は誰もが通ってるよね?
すずかファンの方すみませんでした!

ちょっとした伏線入れちゃったけど、バレバレだよな、、、

まあ、その伏線を回収するかは分かりません!

もし回収してたらそんなやつあったわ〜、な感じでお願いします!


と言うわけで、報告会!

お気に入り5299件、感想142件、評価209人

増えてる増えてる!
これが私のモチベーションアップの1つだったりします!
なので、お気に入り・感想・評価バシバシお願いします!

では、また!


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第18話『誰にも得意不得意はある』

こんにちは!

仕事中だけど、更新だぜ!
バレたらヤバイぜ!

でも更新!

楽しんで頂ければ幸いです!


おはようございます!

私、高町なのはです!

 

夏休みが始まって一週間と数日が経ちました。

最近、私は日課で早朝6時前に家を出て1時間くらい魔法の特訓をしています。

終わったら家族みんなで朝食を食べる為、家の道場で鍛錬しているお父さんとお兄ちゃん、お姉ちゃんを呼びに行くんだけど、最近はもう一人頑張っている子がいます。

 

「やあああああっ!」

「くっ!このっ!」

「美由希!脇が甘いぞ!騎士(ナイト)君!美由希の気迫に圧されるな!動きが鈍るぞ!」

 

そうです。騎士(ナイト)君です。

お父さんやお兄ちゃんに気に入られた騎士(ナイト)君は週一くらいで早朝か学校終りに通ってたんだけど、一昨日から毎日参加しています。

 

「ん?ああ、なのは。おはよう」

「おはよう、お兄ちゃん。騎士(ナイト)君、頑張ってるね!」

「そうだな。最初に比べたら大分様になってきた。むしろ、騎士(ナイト)に防がれている美由希が情けないくらいだ」

「にゃはは・・・」

 

そういえば、お姉ちゃんも騎士(ナイト)君の成長ぶりに負けてられないと張り切ってたなぁ

 

「父さん!そろそろ終わりにしよう!」

「もうそんな時間か。では、先に一本取った方がそのまま終わり。取られた方は腕立て伏せ100回だ」

 

お父さんがそう言うとお姉ちゃんが距離を取った。

さっきまで騎士(ナイト)君に防がれ続けていたから仕切り直したのかな?

 

「・・・っ!?」

 

お姉ちゃんが一瞬で前に出たかと思えば1m手前くらいで止まって下がってしまいました。

 

「ほう・・・」

「ふむ・・・」

 

その光景にお父さんやお兄ちゃんは何かに気づいたようです。

正直、私には分かりません。

 

『ユーノ君はどうしてお姉ちゃんが急に下がったか分かった?』

『うーん・・・。僕には分からないな。美由希さんが何かに気づいた様子にも見えたけど・・・』

 

私の魔法の師匠ユーノ君(フェレット形態)でも分からなかったようです。

考えているとお姉ちゃんが再び動き始めました。

 

さっきと同じように一瞬で間合いを詰めます。

 

「やべっ!?」

「はあっ!」

 

騎士(ナイト)君が上段で斬りかかるもお姉ちゃんは寸前で避けて横に回りこみ、すかさず騎士(ナイト)君の首筋に斬りかかり寸止め。

お姉ちゃんの勝ちです。

 

「そこまで!美由希の勝ちだ。騎士(ナイト)君は腕立て100回だ」

「ありがとうございました!」

「あ、ありがとうございました・・・。くっそ~!」

 

礼をすると騎士(ナイト)君はすぐに腕立てを開始しました。とても悔しそうです。

と言っても騎士(ナイト)君が勝ったところはまだ一度も見たことはありません。

頑張れ、騎士(ナイト)君!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝の特訓を終えて、俺、騎士(ナイト)は高町一家と朝御飯!

 

「桃子さん、おかわり!」

「はいはい。騎士(ナイト)君は良い食べっぷりね」

「よく食べて、よく動いて、よく寝る。騎士(ナイト)君はそれがよく出来ている。素晴らしい事だ」

 

がつがつ食べる俺の姿を見て微笑ましく見てる桃子さんと士郎さん。

俺は気にせず食べ続ける。最初は遠慮してたんだけど、最近、運動量が増えたからかお腹がかなり減るし、もうそんな遠慮する仲ではないのでたくさん食べる事にした。

 

「食べながらで構わないんだが騎士(ナイト)君。君、うち以外にも剣を学んでいないかい?」

「ごぶっ!?ごほっごほっ!?」

「な、騎士(ナイト)君!?大丈夫!?」

「はははっ。図星みたいだね!」

 

俺が誰にも言ってないことを言い当てられたことに驚き咳き込んでしまう。

でも、なんでわかったんだ?

 

騎士(ナイト)君の最近の成長の伸び具合は目を見張るものがある。それにさっきの美由希との試合で見せた美由希の攻撃の軌道を先読みし反撃しようとしていたね。最初は美由希に殺気を察知されて失敗。二度目は美由希のフェイントに引っ掛り失敗」

 

ここまで言って士郎さんはお茶を飲んで一息。

俺もなのはから水をもらってようやく落ち着いた。

 

「ああいう戦い方はまだ早いと言うよりも段階ではない。一体誰に教わったんだい?」

「えっと・・・教わったと言う訳じゃないんすよ?俺の友達のお姉さんが剣道をやってるらしくて、たまに試合させられるんだ。その人もかなり強いから相談してみたんすよ。一度でいいから一本取れる方法は無いかって」

「それで先読みか。確かに1回勝負で一本取るには悪くはない手段でもあるが・・・」

「そうっすよね・・・。でも何度もやっている相手なら少しは相手の癖とか分かるだろ、と言われたからやってみたんすけど・・・」

 

でも失敗に終わった。

士郎さん曰く殺気がどうとか言ってたけど・・・

 

「お父さんの言う通りで、騎士(ナイト)君の殺気というか『狙い』がバレバレだったよ。私もここに打たれるって感じたから下がったんだもん」

「なるほど・・・もっとポーカーフェイスが上手くなれば良いって事か!」

「ちょっと違う気がするの・・・。それに騎士(ナイト)君がポーカーフェイスするのは無理なんじゃないかな?」

 

いつもなら苦笑いしながらフォローしてくれるなのはが真顔でそう言ってきた。

・・・えっ?俺ってそんな絶望的に下手?

 

「だって、トランプ関係のゲームなんてかなり分かりやすいよ。ババ抜きなんてババを持った瞬間がっかりするし」

 

確かにアリサやすずかからも言われたことあるな・・・。本当に勝ったことないし・・・。

 

「なのはも言ってたがポーカーフェイスは殆ど関係ないよ。騎士(ナイト)君には騎士(ナイト)君に合った戦い方がある。それをゆっくり見つけていけばいいよ」

「了解っす・・・」

 

俺に合った戦い方か・・・。

まあ、最悪は見つけられなくてもいいんだけどね。

俺はサッカーがメインだし。

 

「そういえば、今日もこれから夏休みの宿題をやるのよね?どのくらいで終わりそうなの?」

「後は算数と図工と観察日記っすね」

「へえ。もうそのくらいしかないんだ!まだ8月にもなってないのに凄いね!」

 

そうだよね!美由希さんもっと褒めて!

ちょっとトラブルがあったけど、アリサやすずか、なのはが頑張って手伝ってくれたおかげ宿題も後もう少し。

それが終われば俺は晴れて夏休み生活を思い切ってエンジョイ出来る!

 

「なのは!今日中には算数を終わらせるぞ!」

「うん!頑張ろうね!私も頑張って協力するから!」

 

笑顔でそう言ってくれるなのは。なのはは数学はアリサと同じくらい成績優秀だから頼もしいぜ!

 

騎士(ナイト)。まさかとは思うが、なのはがやった宿題を丸々写す。なんて事はないよな」

「そ、そそそそそんなことするわけないJAN!」

「なのは。もし写させてと言って来たらこれで殴って良いからな」

騎士(ナイト)君。ポーカーフェイス以前の問題なの・・・」

 

恭也さんから木刀を受け取りながらそう言うなのは。

俺はどうやらポーカーフェイスなんかよりも何事にも動揺しない精神力が必要なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

高町なのはです!

朝食も食べ終わり、早速夏休みの宿題を始めたのですけど・・・。

 

「なのは様!宿題を写させて下さい!」

 

早速、これ(木刀)の出番が来るとは思わなかったなの。

 

騎士(ナイト)君。そのまま動かないでね?」

「うおっ!?マジでそれは勘弁してください!」

 

土下座の体勢を止めて後ずさる騎士(ナイト)君。

流石に本当には殴らないけど効果覿面のようです。

 

「もう・・・騎士(ナイト)君はどうしてそんなに算数が苦手なの?そんなに難しくないよ?」

「算数はマジ駄目なんだよ・・・。計算問題ならまだしも文章問題や図形に距離とかを答えろとか意味分からない」

 

床にうつ伏せになって愚痴を言う騎士(ナイト)君。

こんな騎士(ナイト)君を見るのは初めてなので相当嫌なんだろうと思います。

 

「それじゃあ、まずは計算問題からやっていこう?出来る事からコツコツと、なの!」

「ん~・・・了解」

 

騎士(ナイト)君は苦い顔しながらも宿題を開始した。

計算問題から行い、他の問題も私がヒントを出しながら少しずつ片付けていく。

 

「ああ~。頭を使った後のカキ氷は美味い~」

「にゃはは」

 

半分ほど終わらせたくらいで、お母さんがおやつ休憩にとカキ氷を持ってきてくれた。

騎士(ナイト)君が幸せそうに食べるのを見て私は思わず笑ってしまう。

 

「算数の宿題をパッと片付けられる魔法とかないかな~」

「それはないかな~。空を飛ぶ魔法とかはあるよ?」

「アタタタタッ!?頭キーンってきた~!」

「にゃははは」

 

リンディさんと会ってから騎士(ナイト)君は未だに魔法の存在を認めてくれません。

時々、さっきみたいに魔法がある事を言ってはいるけど、邪魔が入ってしまって伝わらなかったりします。

 

他にもレイジングハートを見せても最新の玩具と言って興奮したり、ユーノ君に協力してもらって人間に戻ろうとするのですが、その瞬間に猫が現れてユーノ君を連れ去ってしまったりと様々な事が起こってしまう。

 

まるで誰かが邪魔をしているかのような出来事に私はもう諦めました。

リンディさんやクロノ君には悪いと思いますけど、騎士(ナイト)君には魔法の事を知らせる必要はないと思うから。

 

「それじゃあ、残り半分頑張ろうね!私も頑張って教えるから!」

「おう!宜しく頼むぜ、なのは先生!」

 

カキ氷を食べて回復した騎士(ナイト)君。

分からない事を教えたりしていたらいつの間にか「先生」と呼ぶようになってたけど意外に嬉しかったりします。

 

「そういえばさ。なのはは図工の宿題で何を作ったんだ?」

「え?ど、どうしたの急に?」

「いやさ、アリサとすずかは好きな動物の貯金箱で凄く上手かったからなのははどんなの作ったのかなって思ってさ」

 

勉強しながら聞いてくる騎士(ナイト)君。

ちゃんと出来てはいるけど正直見せたくない。

 

「わ、私はユーノ君をモデルに作ったよ。ここには置いてないけど・・・」

「おおっ!ユーノか!それは見たいな!どこに置いてあるんだ?」

「そ、それは・・・」

 

言いたくない。

咄嗟に言ってしまったけれど本当はこの部屋に作品があるなの。

でも、控えめに言っても上手ではない。

だから絶対に見せないようにしなければ・・・

 

「クローゼットの中なのか?」

「きゅー」

「ユーノ君!?」

 

意志を固めている間に騎士(ナイト)君が部屋のクローゼット前に居た。

しかも、ユーノ君が先導している。

 

『何やってるの、ユーノ君!?』

『なのは・・・。流石の僕もあれを提出するのはどうかと思うから・・・』

 

まさかの裏切り。

念話で話している間にも騎士(ナイト)君は乙女のクローゼットを問答無用に開いていた。

 

「・・・なのは」

「・・・はい」

 

騎士(ナイト)君がクローゼットから私の宿題を持って机の上に置いた。

ユーノ君・・・なのだが、言われて「えっ?・・・ああ、そうなんだ?」と微妙な感想を言われてしまうだろう。

 

「去年まではどうしてたんだ?」

「お父さんやお母さんに手伝ってもらってました」

 

割合的には1:9でなのはは殆ど何もしていなかったりする。

 

「俺も手伝うから作り直さないか?」

「・・・お願いします」

 

今の私は顔がとても赤くなっているに違いない。

それくらい今とても恥ずかしく感じているのだから。

 

「なのは・・・」

騎士(ナイト)君・・・?」

 

騎士(ナイト)君が私の両肩を掴み、真剣な顔で私を呼びます。

騎士(ナイト)君の不意打ちに私は心臓が跳ね上がりさらに顔が真っ赤になるのを感じました。

そして、騎士(ナイト)君がその口を開きます。

 

「誰にも向き不向きがある。気にすんな」

 

「そんな慰めいらないよ!?」

 

止めを刺されてしまいました。

私はこのときもっと図工も頑張ろうと心に決めたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ、ちなみに算数の宿題を終わらせ図工の宿題も終わらせましたが、騎士(ナイト)君の作った作品(原寸大の大鷲)がコンクールで金賞をもらい、学校から表彰されました。

 

そして、騎士(ナイト)君に手伝ってもらった私の作品(原寸大のユーノ君)は優秀賞をもらいました。

 

なんというか、とても複雑な気持ちでした・・・。




騎士くんは着々と成長してますね〜
でも、スーパー高町人に勝てるのはまだまだ先です。
世の中そんな甘くない!

そして、この小説のなのはは、絵心みたいな芸術関係の創作センスはない仕様です!

そういう仕様にしました!

料理が上手くても図工・美術が苦手な人いますもんね!

今回は予想以上に早く書けたんで、いつものは無しです笑

次もこの調子で更新出来るように頑張ります!


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第19話『夏だ!合宿だ!サッカーだ!前編!』

皆さん、こんにちは!
サッカー好きです!

今回はタイトル通りの内容です。
1話だとかなりの文字数になりそうだったので前編後編で分けることにしました。

楽しんで頂ければ幸いです!
よろしくお願いします!


8月の初め。

初夏は過ぎて暑さもこれからって時に、とあるサッカー場では沢山の子供達が元気よく汗を流していた。

 

「回せ回せ!」

「こっちだ!パス!」

「フリーだ!シュート!」

 

「させるか!!」

 

俺、騎士(ナイト)もその内の一人だ。

枠内に入った相手のシュートを弾き出す。

 

騎士(ナイト)、ナイスキーパー!」

「おう!」

 

俺は今、チームの合宿で海鳴市ではない県外でサッカーをしている。

沢山の少年団チームが集まって行う大会だ。

 

グループリーグ第2試合目の最中。

1日に3試合というハードスケジュールだが俺にとっては沢山試合が出来てとても嬉しくある。

 

「もう時間がないぞ!全員でゴールに押し込め!」

 

2試合目ももう終盤。

現在、1-0で俺のチームがなんとか勝っているが、相手のコーナーキックでまだどうなるかは分からない状況。

相手はGKも上がってまさに全員攻撃。

 

「みんな!ここは絶対に死守だ!」

「おう!」

「任せろ!」

 

俺の活に味方が鼓舞され気合が入る。

そして、コーナーキックが開始された。

ボールは高く上げられ、一番背の高い相手GKへと向かっていく。

 

「させるか!」

 

相手GKがジャンプすると同時に味方DF数人もジャンプして競り合う。

いくら背が高くても数人と競り合えば容易にシュートを打てないだろう。

 

それが相手の狙いでもあった。

 

「なっ!?スルー!?」

 

相手GKはジャンプしただけでそのボールには触れずにスルー。

ボールはそのまま軌道が落ちファーポスト付近へ。

そして、相手GKによって惹きつけられた事によってフリーになった背の低い相手FWがダイビングヘッドで飛びつく。

 

「まだだっ!」

 

俺も少し遅れてだがセービングで飛びつく。

 

皆と同じように相手GKに惹きつけられていたがいやな予感がして飛びつく事はしなかった。

もし飛びついても相手GKに邪魔されて触れなかったかもしれない。

 

相手FWの頭と俺の両手が同時にボールへ触れる。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

 

俺達はそのまま交錯し地面へと落ちた。

凄い衝撃だったけど、両手にはボールの感覚はある。

後はボールがゴールラインを越しているかどうかだ。

 

「大丈夫かい!?」

「ううっ・・・あっ、ボールは!?」

「ふうっ・・・GKは大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」

「良かった。申し訳ないがそのまま動かないでくれるかい?」

「分かりました」

 

主審がやってきて交錯した俺達の安否を確認する。

相手FWはすぐに起き上がりボールの行方を探している。

 

その様子に少し安心した主審は俺の安否とゴールかどうかを確認を行われる。

 

俺は閉じていた目を開ける。

目の前には感覚どおり両手でボールをがっちり掴んでいた。

 

少し視線を頭の上へ移動させるとすぐそこにゴールポストがあった。

頭は痛くないので当たってはいないようだが、かなり危なかった。

 

「ボールはライン上だ。ノーゴール!」

 

主審のジャッジに観客が沸き、同時に試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 

勝利に喜ぶチームメイトが俺の元へと集まってくる。

俺も同じようにみんなと一緒に喜びを分かち合う。

 

グループリーグ第2試合は1-0で勝利する事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無茶し過ぎだよ!」

「はい・・・」

 

第2試合が終わりお昼休憩になったんだけど、俺は説教を受けている。

 

フェイトの姉であるアリシア・テスタロッサにだ。

 

俺が合宿で暫く遊べないと話しはしたけど、まさか応援に来るとは思わなかった。

現地で仁王立ちしながら「応援に来た!」と言ってきたのにも驚いたな。

 

ちなみにアリサ・すずか・なのはにも声をかけたらしいのだけど、予定が合わず来れないそうだ。

 

「聞いてるの?少しでも間違ってたらゴールポストにぶつかってたんだからね!」

「わ、分かってるって。でも身体がつい動いちゃうから・・・」

「ついじゃない!騎士(ナイト)のポジションはGKで身体を張ってゴールを守らなければいけないのは分かるけどそれで大怪我したら元も子もないんだから!」

「はい。すみません・・・」

 

背は低いけどアリシアには何故か逆らえないんだよな。

これが年上の貫禄ってやつか?背は低いけど。

 

「今、失礼な事考えたでしょ」

「いへへっ!?すふぃまふぇん!?」

 

考えが読まれたようで不機嫌顔のアリシアが俺の両頬を抓ってくる。

これがかなり痛い。

俺はすぐに謝った。

 

「ふふふ。怒るアリシアも可愛いわね」

「お母さんも写真撮ってないで何か言ってあげてよ!」

 

フェイトやアリシアの母プレシアさんも応援に来てくれたのは嬉しいが親バカを発揮してないで助けてもらいたい。

 

「そうね。騎士(ナイト)君は他の子より身体能力が高いから出来る事が多い分、負担が大きくなってしまっているわ。実際に午前中の2試合は相手のシュート数の方が多いし、枠内シュートが8割だった」

 

ずっとアリシアの事ばっかり見ていると思ってたけど、いつの間にそんな分析を行ったんだ?

俺がそう思っている間にも話は続いていた。

 

「その枠内シュートの8割が騎士(ナイト)君のビッグセーブによって防がれているわ。その結果が1試合目、2試合目共に1-0で勝っている。とても凄い事だわ。まさに守護神と呼ばれる働きをしているわ」

「えへへ。そうでしょ?」

騎士(ナイト)!調子に乗らない!」

 

プレシアさんに褒められてにやけてしまう俺にアリシアが怒ってくる。

ちなみにもう頬は引っ張られておらず、胡坐で座る俺にアリシアが座っている状態で話を聞いている。

 

「でもGKはシュートを止める事が仕事でもあるけど本質は違うわ」

「本質?」

「なんだと思う?」

 

GKの本質か。なんだろう?

シュート止める以外で何かあるのか?

 

「それは味方を動かしてシュートを打たせないこと」

「シュートを打たせない・・・」

「打たれなければゴールは生まれない。騎士(ナイト)君がビッグセーブする必要も無い。そうでしょ?」

「それはそうですが・・・」

 

シュートを打たせないなんて不可能じゃないか?

 

「シュートを打たせないなんて不可能。でも減らす事は出来る。その為には的確なコーチングが必要になるわ。そこはこれから経験を積んで勉強していくしかない」

「はあ・・・?」

 

なんかどんどん難しい話になってきて俺の頭が追いつかないでいる。

経験して勉強か・・・。俺に出来るのかな?

 

「ふふっ。焦る必要は無いわ。騎士(ナイト)君には時間があるのだからゆっくり理解していけばいいわ」

「・・・了解っす。ていうか本当に詳しいですね」

「娘達が好きなものだからかしらね。自然と調べて詳しくなってしまったのよ」

「家では家事以外は私達の写真や動画を撮るか、サッカーの本を読んでるもんね」

 

それは凄いな。前者はあれだけど・・・。

 

「後少しで最後の試合だよ!体力は回復した?」

「勿論さ!次の試合も勝って1位トーナメント進出だ!」

 

この大会は4グループで試合した後は順位ごとでトーナメントになるんだ。

今は2連勝で3位以上は確定してる。

最後に戦う相手も2連勝しているようで無敗同士が戦う事になった。

 

勝てば、文句なしの1位。

負ければ、他の試合結果で2位か3位。

引き分けだと、得失点差で1位か2位。

 

「そういえば最後の相手の戦績を知らないや」

「そうだと思って私が調べてきたよ!」

 

未だに俺の上から降りないアリシア。

暑いからそろそろ降りて欲しいんだけど、今は戦績を知りたいので黙っておこう。

 

「相手はガンツ大阪ジュニアユース。1試合目は10-2。2試合目は8-3。騎士(ナイト)のチームとは相対的な攻撃的チームみたいだね」

「ま、マジ?」

 

ガンツ大阪といえばプロチームじゃん。

まさかそんなチームまでいるとは・・・。

 

「こんな時に限ってウチのエースがいないなんて・・・」

「エース?」

「和也だよ。神崎和也。夏休みに入る前に和也をチームに誘って入ったんだ」

 

でも和也は急に家庭の用事とかなんとかでこれなくなったらしい。

入って間もないし、自分勝手なプレイが多いけどそのポテンシャルの高さから一気にエースとなった和也が抜けた穴は大きい。

 

「和也がいれば少しは楽になったんだけど・・・」

「神崎君か・・・」

「ん?何か知ってるのか?和也の携帯に連絡しても返事が来ないから分からないんだよな」

 

和也は俺には偶にしか返事をしないけど、アリシアとかならすぐに返事するだろうし何か知っているかも

 

「えっと、確かね。夏休みが終わるまで、(薄暗くて)涼しい部屋で(道徳の)宿題を終わらせるって(リンディ提督が)笑顔で言ってたよ」

「へえ!避暑地にでも行ってるのか?」

「まあ、暑さとは無縁のところだとは思うよ」

 

避暑地に旅行か!

後でお土産期待してるぜ!ってメールしとこう!

 

「そんな事より!騎士(ナイト)は次の試合に勝つために集中しないとだよ!」

「それもそうだ。でも、ウチに作戦なんてないし、全力でぶつかるのみさ」

「うーん・・・不安だな・・・」

 

俺は笑いながら次の試合へ挑んだ。

アリシアの不安が的中するとは知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは。アリシア・テスタロッサだよ。

騎士(ナイト)のサッカー合宿を応援する為に秘密でやってきたんだ!

 

合宿の目的は大会に参加する事みたいで、騎士(ナイト)がいるチームは2連勝と絶好調。

騎士(ナイト)も活躍しているし来た甲斐があったよ。

 

と、まあ応援というのが建前で、本当は騎士(ナイト)の膨大な魔力が暴走しないように監視する事が本来の理由であったりします。

 

今のところは問題なさそうだし、お母さんもいるから私は騎士(ナイト)の応援に集中しよう!

 

「フレー!フレー!騎士(ナイト)!頑張れ!頑張れ!騎士(ナイト)!」

「ハアハア・・・アリシアのチアガール姿・・・ハアハア・・・可愛すぎる!」

「仕事してよ!?」

 

カメラ片手に息を荒げるお母さん。

仕事しないならせめて騎士(ナイト)の応援しようよ・・・。

最近のお母さんの病気が悪化しすぎで怖い。

どこで道を外れてしまったんだろう。

とりあえず、着替えようかな?

 

「おおおおっ!!」

 

いきなり回りの観客が声を上げる。

私は急いで視線を向けると、ボールをしっかり掴む騎士(ナイト)の姿があった。

どうやらまた相手のシュートを止めたのだろう。

 

「凄いけど・・・」

 

これで一体何本目だろう?

 

試合が開始されて前半15分。

この試合は20分ハーフなので残り5分で前半が終了する。

 

スコアは2-0と騎士(ナイト)のチームが早い時間に先制していた。

相手のガンツ大阪ジュニアユースは全試合で失点してるから守備はそこまで上手くないんだなって思った。

 

でも、前半残り10分って所で相手の雰囲気が変わったの。

DFの当たりが強くなったり、寄せも速くなって騎士(ナイト)のチームがボールを持つ時間が一気に減ってしまった。

 

シュートもたった5分で10本以上は打たれている。

騎士(ナイト)がなんとか止めてるけど、明らかにさっきとは違っているのが分かる。

 

私はさっき近くにいた相手チームの応援客が気になることを喋っていたことを思い出した。

 

『クラブチームと少年団じゃあ実力差がありすぎるから最初は何点かゴールを決めさせてあげるらしいけど、エグイ話だよな』

『仕方ないんじゃない?最初から絶望するより、少しくらい良い夢見させてもらった方がマシだろ』

 

そんな会話にまさかとは思ったけど、確かに得点は全部先に決められているし、そこからは怒涛な攻撃で一気に逆転。守備も最初とは比べ物にならないほど強固になっていたらしい。

 

嫌な予感がする。

そんな事を思っていると笛の音が鳴り響いた。

 

「キーパーチャージ!」

「ちっ!」

「イテテ・・・」

 

見るとゴール前で倒れている騎士(ナイト)の姿。

すぐに起き上がる所を見ると怪我はしていないようだけど、私は声をかけずにはいられなかった。

 

騎士(ナイト)~!大丈夫~!?」

「はあはあ・・・おう!大丈夫!」

 

騎士(ナイト)は元気良く返事してくれる。

でもいつもより元気がないような気がする。

 

「流石の騎士(ナイト)君も体力がなくなってきたようね」

「お母さん・・・。でも騎士(ナイト)なら大丈夫だよね?」

「・・・・・・」

 

私の質問にお母さんは答えてくれなかった。

ただ心配そうに試合を観ている。

そこまで騎士(ナイト)は危険な状態ってことなの?

 

「フレー!!フレー!!騎士(ナイト)!!頑張れ!!頑張れ!!騎士(ナイト)!!」

 

私に出来る事は精一杯応援する事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、前半残り1分過ぎた所だった。

味方のハンドによって与えてしまったPKによって失点。

 

2-1で前半が終了。

ベンチに戻る騎士(ナイト)のチームメイト達は勝っているのに負けているかのような表情でとても辛そうだった。

 

そして、PKで失点するも前半を1点で抑えきった騎士(ナイト)はベンチに戻る選手達の中にはいない。

 

私はすぐにゴール前へと視線を向ける。

そこにはゴールポストに背を預け、座り込み俯いている騎士(ナイト)の姿だった。

 

騎士(ナイト)!」

 

私は急いで騎士(ナイト)の元へと走るのであった。




如何でしたでしょうか?

どうもサッカーの話になると色々と文字数が増えてしまうのが少し悩みですね、、、

後編は土曜日に更新予定です!
お待ち頂けると嬉しいです!


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第20話『夏だ!合宿だ!サッカーだ!後編!』

こんにちは!

宣言通りに更新出来てほっとしてます!

楽しんで頂ければ幸いです!


「はあ・・・はあ・・・。やべえな・・・」

 

グループリーグ最終戦。

ガンツ大阪ジュニアユースとの試合。

2-1と善戦して前半を終了した。

 

でも、俺、騎士(ナイト)は連戦且つ怒涛ともいえる相手の攻撃に終了間際のPK以外は守りきった俺の身体は悲鳴を上げていた。

俺は少しでも体力を回復させるためその場に座り込んだ。

いや、座り込んでしまった。

 

ここは日陰もない炎天下のグラウンド。

座り込むだけでは回復どころか、じわじわ体力が削り取られていく。

 

起き上がろうとしたけど、身体が言う事を聞かない。

 

騎士(ナイト)!大丈夫!?」

「アリシア・・・?」

「ほら水だよ!飲んで!」

 

流石にやばい。

そう思ってたとき、アリシアが態々水を持ってきてくれた。

マジ助かる。

俺は水を受け取ろうとするが―――

 

「あっ・・・」

「わ、悪い。手が滑っちまった」

 

―――違う。

手に力が入らなくて受け取れなかったんだ。

これは本格的にやばい。

 

しかし、アリシアに心配をかける訳にはいかないのですぐに拾わないと。

 

「待って」

 

アリシアの静止の声。

そして何も言わずに水を拾い上げ、水口を開けて俺の口元に向けてくれる。

 

「少しずつ傾けるから飲んで」

 

アリシアの言葉に俺は黙って頷いた。

それを見たアリシアは言葉通り少しずつ傾けて俺に水を与えてくれた。

 

ああ・・・生き返る。

身体中に水が行き渡り潤って行くのを感じる。

 

「すぐにお母さんが氷とタオル持ってきてくれるからそれまでゆっくり水を飲んで身体を休める。良い?私は監督さんを呼んでくるから」

 

そう言ってなんとか水を持てるまで回復した俺に渡してその場を離れるアリシア。

持っていた日傘も置いていってくれたし、感謝しかない。

 

少ししてアリシアが監督を連れて戻ってきた。

 

騎士(ナイト)君、大丈夫・・・ではないな。喋れるか?」

「はい。喋れます。言っておきますけど交代しませんよ?」

「アリシアちゃんの言う通りか・・・」

 

溜息を吐きながらそんな事を言う監督。

どうやらアリシアにも同じことを言われたようだ。

 

「皆には悪いけど俺が交代したら一気にチームは崩れます。まだ勝ってるし、このまま抑えきれば―――」

「本当に抑え切れるのか?そんなボロボロの身体で?」

 

俺の言葉を遮ってそう聞いてくる監督に俺は即答で答えた。

 

「出来ます!」

「即答・・・少しは言い淀んだりしてくれよ。交代させ難いじゃないか・・・」

「じゃあ―――冷たい!?」

 

いきなり俺の首筋に冷たい何かが当てられた。

しかし、すぐにそれは気持ちの良い感覚へと変わる。

 

視線を動かすとアリシアとプレシアさんの姿。

手には沢山のタオルと大量の氷が入ったバケツを持っている。

 

「監督さん。騎士(ナイト)君を外に運びましょう。ここでは治療が出来ないので」

「分かりました。騎士(ナイト)君、持ち上げるぞ」

 

監督がプレシアさんの指示に従って俺をコートの外へと運び仰向けに寝かせた。

それと同時にバケツに入っていた大量の氷を俺の身体にぶっかけた。

 

「冷たい!?」

「荒療治だけど普通に冷やすよりは効果的よ」

「あ、ありがとうございます」

騎士(ナイト)君、そのままでいいから聞いてくれ。確かに君の言う通り。君を交代させたらチームは総崩れ。大量失点で負けるだろう」

 

厳しい現実を告白する監督。

チームメイトがいないこの場だからこそ言える内容だ。

 

「今、2-1で勝っている。だが、騎士(ナイト)君だけではなく他の選手たちも限界ギリギリだ。そんな状態で騎士(ナイト)君があのチームに後半無失点で乗り切るのは不可能に近い」

「はい・・・」

 

悔しいが監督の言う通りだった。

プレシアさんのアドバイスを生かし、味方にも助けてもらってギリギリの試合だ。

後半がそれにも頼れないとなるとかなり絶望的な状況である。

 

「だから約束して欲しい。点差が逆転されてしまった時、どんな状況であろうと交代すると。それが後半試合に騎士(ナイト)君を出す条件でもある」

「分かりました」

「ま、また即答・・・騎士(ナイト)、ちゃんと状況分かってるの?」

 

アリシアが心配そうな表情で聞いてくる。

それと同時にハーフタイム終了の笛が鳴らされた。

 

当たり前さ。ちゃんと分かってる。

俺は勢い良く氷から飛び出した。

 

「俺が無失点で抑えてハッピーエンドさ!」

「な、何も分かってない!?」

 

俺の回答が悪かったようで嘆くアリシア。

そうだ。アリシアに言いたい事があったんだ。

 

「アリシア!水ありがとな!」

「あ、うん!」

「それと!」

 

俺はアリシアにお礼を言ってコートへと入り首だけ振り向きながら最後の一言。

 

「俺の勇姿に惚れるなよ?」

「なっ!?」

 

心配された表情で試合を観られるのが嫌だったから冗談を言ってみたんだけど予想以上に効いたのか珍しく大きな声をあげるアリシア。

 

しかも顔を真っ赤にするアリシア。

それを見て満足した俺は後半戦へと臨むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ななな・・・」

 

騎士(ナイト)に恥ずかしいセリフを言われ顔を真っ赤にするアリシア。

気持ちを落ち着かせ、走っていく騎士(ナイト)を見ながらそっと呟いた。

 

「とっくに惚れてるよ。バーカ・・・」

 

その呟きは騎士(ナイト)には聞こえていないだろう。

 

しかし―――

 

「良い・・・良い表情よ、アリシア」

「はっ!?」

「いやはや、青春って素晴らしいね」

「はうっ!?」

 

すぐ近くにいたプレシア(撮影中)と監督にはばっちり聞かれていた。

 

「わ、忘れてええええええええ!?」

 

アリシアの黒歴史のページが1枚追加された瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなバカな・・・」

 

ガンツ大阪の監督は試合中にも関わらずそう呟いていた。

 

ガンツ大阪はこの大会に毎年参加している。

例年の流れ、暗黙のルールがあった。

 

前半の序盤。

格下の相手には何点か取らせるハンデだった。

 

それでもその実力差で結果的には凄い差を付けて終わってしまう。

 

だが、この試合は違っていた。

聞いたことのない無名のチーム。

2点先制させて後はいつもの流れ・・・そう思っていた。

 

拙い守備でありながらも全員が全身全霊で勤めていた。

何よりGKが別格てあった。

 

ガンツ大阪に所属する高学年のGKでも取ることは出来ないだろうシュートを難なくセーブしてみせ、裏の飛び出しは鋭い嗅覚で防ぎ、センタリングでの競り合いはGKとしては小柄ながらも身体を張って防いでいる。

 

前半間際でPKをもらっていなかったら無失点で前半を折り返すことになっただろう。

それでも負けている状態で前半を折り返したのは監督として就任して初めての事だった。

 

監督はハーフタイムで選手達を叱咤するのではなく、相手を称えた。

なぜなら、監督はこの後の展開はこっちのワンサイドゲームになると確信しているからだ。

 

ハーフタイム時に、相手のフィールドプレイヤー達は失点により、意気消沈。

GKは激しい消耗で虫の息。

この条件で前半のような動きが出来るなどありえない。

 

そう・・・思っていた。

 

後半が始まって10分。

半分が過ぎ、そのスコアは

 

1-2

 

「集中を切らすな!」

『おう!』

 

変動はない。

しかも、意気消沈だったフィールドプレイヤーは嘘のように声を出して頑張っている。

 

ガンツ大阪の監督や選手達はもう騎士(ナイト)達を舐めてはいない。

それでも得点出来ない理由が分からない。

 

ガンツ大阪の選手達も時間はあるが焦りを感じる時間になってしまう。

 

しかし、ガンツ大阪にはまだ奥の手が残されている。

 

「頼むぞ、俊輔」

「へーい・・・。まさか最後の大会で決勝じゃなく予選で出る事になるやなんて思わへんかったわー」

 

俊輔と呼ばれた少年の言葉に監督は不甲斐ない気持ちになった。

しかし、勝つには俊輔の力が不可欠であると判断する。

 

「選手交代です!18番代わって10番入ります」

 

ガンツ大阪ジュニアユースが選手の交代。

俊輔は派手な金髪で気の抜けた表情をしてピッチに入るが他の選手とはどこか雰囲気が違う選手だった。

 

「ほー!銀髪なんて初めて見たわ!しかも目の色が凄い事になっとる!」

「なっ・・・」

 

俊輔は真直ぐに騎士(ナイト)の前に来るとジロジロと観察してそんな事を言う。

唖然としている騎士(ナイト)に構わず、彼は笑顔で話しかける。

 

「ワイは本田俊輔。よろしゅうな」

「あ、うん。俺は橘騎士(ナイト)

騎士(ナイト)?またえらい変わった名前やな!キラキラネームってやつか?」

 

初対面の相手にお気楽な態度でバカにされているように感じた騎士(ナイト)は睨みつけると、俊輔は笑ってまた喋り始める。

 

騎士(ナイト)はん。見定めさせてもらうで?ワイのライバルに相応しいかどうかをな」

「っ!」

 

騎士(ナイト)は今まで感じた事のないような何かを感じ、すぐに行動を始めた。

 

「斉藤!田中!2人で10番をマーク!ボールを持たせるな!」

「お、おう!」

「わ、分かった!」

 

ガンツ大阪の監督はその行動力に感嘆する。

しかし―――

 

「良い判断やけど・・・甘いで?」

「なっ!?」

「速い!?」

 

ガンツ大阪のスローイン。

2人にマークを付かれていた本田は足の速さで2人を置去りにする。

しかし、トラップしている間に詰められる距離だ。

 

「このっ!」

「前には向かせないぞ!」

「甘い甘い!」

 

スローインは少し浮いたボール。

俊輔は半身の状態で近い右足でボールを浮かすようにトラップ。

すると、ボールは2人の頭上を通り、俊輔は2人の間をすり抜けた。

 

「たったワンタッチで2人を抜いた!?」

 

観客も俊輔のプレーで盛り上がる。

ガンツ大阪ベンチも盛り上がるが監督は当然のようにそのプレーを見ている。

俊輔はたった2人で止められるほど甘い選手ではなかった。

 

そのワンプレーで俊輔が別格の選手である事を理解した騎士(ナイト)

驚いている間にも俊輔は次々と抜いていき、騎士(ナイト)のコーチングも意味をなさず、あっという間に騎士(ナイト)と一対一へと持ち込まれる。

 

「いくで?騎士(ナイト)はん!」

「くっ・・・」

 

騎士(ナイト)は前へと飛び出して少しでもシュートコースを消し、俊輔はシュートを打たず、ドリブルを選択。

 

彼達はペナルティエリア内での対決となる。

 

俊輔は凄い足捌きで騎士(ナイト)を抜こうと翻弄する。

なんとか喰らい付いて味方が戻ってくるのを待つ騎士(ナイト)

下手に飛び込めばあっという間に抜かれてしまうからだ。

 

ガンツ大阪の監督は、俊輔の足捌きでは抜かれず喰らい付く騎士(ナイト)を賞賛し、間違いなく大会一、いや彼らの年代では国内でトップクラスのGKであると認めた。

 

しかし、彼は俊輔の勝利を疑わない。

 

「でも甘いで?」

 

俊輔は足裏でボールをコントロールして騎士(ナイト)との距離を離すと、今度はボールを軽く浮かしてループシュートの体勢に入った。

 

騎士(ナイト)は驚異的な反射神経を発揮し、距離を詰めながら手でループシュートのコースを消す。

 

この時点で一対一は騎士(ナイト)の勝ちに思えた。

 

「下ががら空きや」

 

俊輔は寸前で飛び低空一人ボレーシュートを放った。

ループシュートだと思い跳んだ騎士(ナイト)の足元はがら空き。

シュートはそのままゴールへと突き刺さった。

 

騎士(ナイト)はGKを始めて1年も経たないがプロのジュニアユース監督から国内トップクラスだと認められる彼は天才と言える。

しかし、俊輔は小学生ながらも世界の様々なトップチームからスカウトされ、将来を約束される程の桁違いな天才だった。

 

俊輔のチームは盛り上がり、逆に騎士(ナイト)のチームは沈黙した。

 

騎士(ナイト)もゴールに突き刺さり、転がったボールを見て唖然としている。

その姿に俊輔はつまらなそうな顔をして自陣へと戻っていった。

 

天才の彼には国内で同年代のライバルが存在しない。

試合に出ればすぐにゴールを決め、その圧倒的な差に相手選手のやる気さえ奪ってしまう。

 

そんな彼に国内は狭すぎた。

この大会を最後に世界へと飛び立つ。

 

本当はこの大会にも出場するつもりはなかった。

しかし、監督の指示でもあったが、騎士(ナイト)のGKとしての実力に食指が沸いた。

 

しかし、あのワンプレーで騎士(ナイト)も他の奴らと一緒だと見定めた。

もうこの国に楽しみはない。

 

試合が再開され、俊輔はすぐに相手からボールを奪うと数人を抜き去ってミドルシュートを放った。

 

止めの一撃。

 

誰も勝敗は付いたと思ったときだった。

 

「うおおおおおおおおっ!!」

「・・・なんやて?」

 

騎士(ナイト)の必死のセービングで俊輔のシュートをキャッチ。

 

俊輔はキャッチにも驚いたが、本当に驚いたのはその後だった。

 

「えへへっ・・・」

 

騎士(ナイト)は笑っていた。

絶望的な状態にも関わらず、まるでこの状況を楽しんでいるかのように笑っていた。

 

「絶対に勝つ!」

『おうっ!』

 

騎士(ナイト)の笑顔が感染するのかのように他の選手達も笑顔になった。

そんな光景に俊輔も笑った。

 

国内最後の試合に面白いライバルになりそうな選手とめぐり合えたからだ。

 

「おもろいわ・・・。おもろい奴やな、騎士(ナイト)はん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半残り2分を切った。

俺、騎士(ナイト)は失点した後もチームの皆と守りに守って2-2と手に汗握る試合展開だ。

 

俊輔を中心に攻め立てるガンツ大阪。

だが、攻めるのは俊輔だけで他の選手は全く攻めてこない。

 

確かにこのまま引き分けならガンツ大阪は得失点差で1位だ。

俊輔が攻めてくるのは独断によるものなのかもしれない。

 

しかも、最初以外一対一を仕掛けてこず、ペナルティエリア外からのミドルシュートしか打ってこない。

 

俺にキャッチされたのが相当悔しかったと見える。

 

「これならどうや!」

「うおおおおっ!!」

 

何本目か分からない俊輔のミドルシュート。

最初のシュート以外は弾くのが精一杯だったが、2度目のキャッチに成功した。

 

「カウンター!」

「なんやと!?」

 

俺はすぐさま前線へとボールを蹴り込んだ。

ガンツ大阪の選手達はまさかカウンターされるとは思ってなかったようであっという間に攻め込んでいく。

 

久しぶりのシュートまで持ち込んだが相手GKに阻まれてコーナーキックとなってしまう。

 

時間的に最後の攻撃だ。

俺はセンターラインまで上がり、俺以外の全員はゴールを狙うためペナルティエリアに集まった。

 

相手も俊輔まで下がらせ全員守備の態勢だ。

膝に手を置いて休む俺は攻撃に参加しないだろうと判断されたのだろう。

 

ここだ。ここしかない!

 

「寄こせ、加藤!!」

 

俺はセンターラインから走り出した。

それと同時にペナルティエリアにいる味方が動き出す。

相手は俺の声に振り向くもすぐに自分のマークを追った。

 

しかしボールはペナルティエリア内ではなく、俺に向かって出された。

俺が敵を引きつける役に見せかけて、本当に俺がロングシュートを打つ。

裏の裏をかいた作戦だった。

 

「そう来ると思ったわー」

「なっ!?」

 

ペナルティエリア内にいた筈の俊輔だけは騙されず俺に付いて、しかも俺が触る前にボールを奪ってしまう。

 

「最後の最後はエースが決める。分かるでーその気持ち・・・でもそれが仇になってしもうたな?」

 

俺が俊輔からボール奪い返すなんて出来るはずがない。

喋る俊輔を他所に俺は自陣ゴールへと走り出した。

 

「良い判断や。・・・もうドリブルして持ち込む時間はないやろし、残念やけど、こっからのロングシュートで止め刺したる」

 

急げ!急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ!

 

「楽しかった・・・で!」

 

ボールが蹴られる音が聞こえた。

それはまるで時限爆弾のスイッチが押されてしまった。

そんな気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでスローモーションに感じる。

 

そんな言葉を私、アリシア・テスタロッサは思い描いていた。

 

相手10番のシュートが天高く弧を描いて無人のゴールへと向かっていく。

そのシュートはフィールドにいる選手だけでなく、私を含めた観客さえ目を奪われてしまうほど、綺麗で時間が止まっているんじゃないかと錯覚してしまう。

 

そんな中、目を奪われる私に一筋の光が入る。

その眩しさに思わず目を細めた私は、すぐに原因が何か理解する。

 

ミッドチルダでも珍しい銀髪。

その銀髪は風になびかれて太陽の光をあらゆる方向に反射している。

その結果、髪が大変な事になっていくがそれに構うことなく全力疾走を続ける騎士(ナイト)の姿。

 

騎士(ナイト)がどこから走り出したかは分からないがセンターラインより後ろであったのは間違いない。

 

騎士(ナイト)・・・頑張れ・・・」

 

私は願うようにして騎士(ナイト)を応援する。

騎士(ナイト)が必死に走って追いかける姿に私は涙を流した。

 

普通ならさっきの私や他の人達みたいに目でボールを追いかけることしか出来ないだろう。

でも、騎士(ナイト)は最後まで諦めずに走り続ける。

 

私はそんな騎士(ナイト)の諦めない心に感動してしまった。

 

「頑張れ・・・頑張れ・・・頑張れ!騎士(ナイト)!」

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

私はさっきよりも大きな声で応援すると、騎士(ナイト)の走るスピードがどんどん速くなっていく。

騎士(ナイト)の身体はもう限界のはず、これは明らかにおかしい!

 

「お母さん!」

騎士(ナイト)君の魔力が足に集まっているわ。どうやら私の推測は間違っていなかったようね」

「ど、どういうことなの?」

「普段垂れ流しの魔力はある条件によって動く時が合った。それは騎士(ナイト)君の感情の変化よ。恐らく騎士(ナイト)君がもっと速く走りたいという気持ちに呼応してるんだわ。でも、あれでは・・・」

 

お母さんが険しい表情になる。

それだけで私は騎士(ナイト)が危険な状態になろうとしているのが理解できた。

 

しかし、私達には見ていることしか出来ない。

それがとても心苦しかった。

 

でも私は諦めない。

だって、目の前で諦めない人が頑張っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息が苦しい。

 

 

でも、もっと速く!

 

 

足が痛い。

 

 

でも、もっともっと速く!

 

 

負けたくない。諦めたくない。

 

 

だから、もっともっともっと速く!

 

 

俺、騎士(ナイト)は自分がどういう状態なのか全く分かっていないが、状況は理解できた。

 

『○○○○!○○○!』

 

ゆっくりと落ちてくるボールにそれをもうすぐ追いつきそうな俺。

 

『○○○れ!○○ト!』

 

目に映るものが全てスローモーションに見える。

 

『○ん○れ!ナ○ト!』

 

ボールはゴールエリア付近に落ちるだろう。

だが、そのままボールはゴールへと吸い込まれてしまう。

 

『がん○れ!ナ○ト!』

 

俺のやる事は一歩でも早く足を前に出してボールに追いつくことだ。

そして、さっきから聞こえる。聞き覚えるのある声に応える為に。

 

「頑張れ!騎士(ナイト)!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

ゴールエリアでバウンドし、ゴールに吸い込まれるボールに俺は片手を伸ばして跳んだ。

 

『届けええええええええええええ!!』

 

俺とアリシアの声が重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈍い金属音が鳴り響く。

 

それはボールがゴールバーに当たる音だった。

 

届いたのだ。

俺の片手の指先が。

 

バウンドして跳ね上がったタイミングであったのも良かった。

指先だけでもボールの軌道を変えるのに然ほど力は必要としなかった。

 

そしてボールはゴールの中ではなく、俺の後ろへと飛んでいく。

その行方を俺はしっかりと目で追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「認めるわー。騎士(ナイト)はんは俺のライバルやって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最悪だった。

視線の先には、本田俊輔がいた。

まさか止めと言って打ったのに、そのこぼれ球を一番早く詰めてくるなんて誰が思う?

 

「これで本当に終いや!」

 

俊輔はダイレクトでボールを押し込もうとしている。

これがエースの底力ってやつなのか?

 

でも悪いな。

俺は諦めが悪いんだ。

 

「ぬおりゃあああああああっ!」

「なんやて!?」

 

俺は最後の力を振り絞って立ち上がる。

ただ立ち上がるだけでそれ以外何も出来ない。

身体のどこかに当たるのを祈るのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐふっ!?」

「あっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よりにもよって・・・

 

よりにもよって、俊輔のシュートは俺の顔面へとめり込んだ。

顔面ブロックである。

 

そして、ボールはふわふわと俺の頭上を越え、さらにゴールバーの上も越していった。

 

「もう・・・ダメ・・・」

 

俺は外に出たボールを確認したところで意識を失うのであった。




如何でしたでしょうか?

感想お待ちしてます!


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第21話『八神家と乙女の顔』

こんにちは!

少し空いてしまいましたが無事投稿出来ました。
皆さんの感想を励みに頑張りました。

この話も楽しんで頂けたら幸いです!


「それで、試合結果2-2の引き分け。得失点差で2位トーナメントに進出するも騎士(ナイト)君は試合の無理がたたってドクターストップ。しかも、両脹脛は肉離れ、両アキレス腱断裂。医者に一ヶ月絶対安静と言われてこっちの病院に搬送された・・・ちゅうわけか・・・」

「おう!やっちまったぜ!」

「やっちまったぜ!、じゃないわ!アホ!」

 

はやてに怒鳴られる俺、騎士(ナイト)ははやての説明通りな状態になっている。

 

ちなみに病院は、はやてもお世話になっているいつものところだ。

 

・・・というか。

最近もすずかのときでお世話になってたな。

念のため3日間の入院となってしまったが、夏休みの間で何度も病院のお世話になるとか初体験だ。

 

「本当に驚いたんやで!?定期通院で病院に来たら、友達が車椅子乗ってたんやから!」

「だから、悪かったって!」

「心配したんやで・・・」

 

泣きそうな表情になるはやて。

出会い頭に大声で俺の名前を呼び、病院では出していけない車椅子捌きで詰め寄ってきたはやてには驚いた。

でも、友達がそんな状態になればそうなるのも無理はない。

 

「そうよ、騎士(ナイト)君。私も見たときはかなり驚いちゃったんだから」

「シャマルさん・・・」

 

はやての隣で椅子に座る金髪ショートボブのお姉さん『シャマル』さんも心配そうな表情をしてしまっている。

 

この人は、はやての親戚の人らしい。

とても優しくて気が利く美人のお姉さんだ。

 

「スポーツに怪我は付き物だけど、怪我をしないようにするのも大事な事なんだから」

「はい。ごめんなさい・・・」

「ふふふ。素直でよろしい!ヴィータちゃんもこれくらい素直だと良いんだけど・・・」

 

怪我をしないようにするのも大事か・・・。

 

そうだよな。

スポーツ選手は大半が大怪我で引退するって聞くし、もっと真剣に考えるべきだな・・・。

 

「・・・騎士(ナイト)君。なんか私とシャマルで対応が違わない?」

 

ジト目でそう訴えてくるはやて。

しかも、少し機嫌が悪そうだし、どうしたんだ?

 

「まあ、シャマルさんは年上だし、大人だし。はやてはちんちくりんだし」

「ちんちくりん!?私のどこがちんちくりんなのか教えてもらおうか!」

 

おっと。

はやての逆鱗に触れてしまった。

 

「それは―――」

「この胸かこの胸がいいんか!?」

「おい・・・」

 

はやては、隣にいるシャマルさんの胸に手を伸ばし触りだした。

なにやってんだが・・・。

 

「この!このこのこのこのっ!!」

「ちょっ!?やっ!はやてちゃん!や、やめっ!あん!」

 

病内では静かにしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで看護婦さんに怒られて外出してるわけだ」

「くだんねえ・・・。なにやってんだよ、はやて、シャマル」

「あはは・・・つい・・・」

「私は何も悪くないと思うんだけど・・・」

 

俺と同じ年くらいの赤髪の女の子に怒られるはやてとシャマルさん。

なんかとてもシュールな光景である。

 

この女の子は『ヴィータ』。

はやての親戚らしい。

初めてあった時は睨まれて警戒されたけど、今では俺の車椅子を押してくれるほど仲良しになった。

 

「車椅子押してくれてサンキューなヴィータ」

「別にいいよ。でも、その状態じゃサッカー出来ないな。シュート受けてもらおうと思ったのに」

 

残念そうに言うヴィータ。

やっぱり仲良くなるのはサッカーが一番だよな。

最近はゲートボールにはまっているらしい。

 

「別に足が使えないだけでシュートは受けれるぞ?動けないけどシュートコントロールの練習と思えばいいんじゃね?」

 

俺も3週間サッカー出来ないのは痛すぎる。

せめて、ボールを触って感覚を鈍らせないようにしないといけない。

 

「マジか!それじゃあ、ボール持ってくるから早速やろうぜ!」

「よしきた!」

「ダメに決まっとるやろ!」

 

隣にいたはやてにハリセンで叩かれた。

痛くないけど、どこからハリセンなんて出した?

 

「えー・・・」

「えー、じゃない!ヴィータも自覚のない怪我人に変な事させない!」

「わ、分かったよ・・・」

 

自覚のないって、酷い言われようだ。

ヴィータも残念そうだが、はやてには逆らえない。

 

「まったく・・・騎士(ナイト)君はもっと落ち着きを持つべきや。今度、騎士(ナイト)君に座禅させるようにシグナムにお願いしようかな?」

「か、勘弁してくれ。ただでさえ会えば、腕慣らしと試合という名の虐めが始まり、俺を叩きのめしては分かり難い大雑把な説教をしてくる脳筋シグナムさんだぞ。座禅なんてやらせたら1mmでも動いたら叩いて『動いた』と脳筋で意味不明な事を言ってくるに決まってる!」

 

俺が士郎さん達に剣術を学んでいなかったらもっと大変な事になってたぞ。

でも、逆に学んでいたからこういう事態になっているような気もする。

 

「ほう・・・。騎士(ナイト)はいつもそういう事を思っていたのか・・・」

「え?」

「あら、シグナムにザフィーラ。お買い物の帰り?」

 

車椅子に座っているせいで後ろを見ることが出来ないが声とシャマルさんの発言で理解した。

 

シグナムさんが俺の背後にいる。

それを理解した俺はぶわっと汗を掻き始める。

 

「ああ、シャマル。暑さに弱い物もあったのだが、聞きなれた声が聞こえたのでな。来てみれば酷い罵倒を浴びせられたが・・・」

「なあ、ヴィータ。アイス奢るから逃げるの手伝ってくれない?」

「悪いな、騎士(ナイト)。それは出来ねえよ。この前一緒にやったあーるぴーじーってやつで似たような状況があったじゃねえか」

 

そう言って、ヴィータは車椅子を動かして俺とシグナムさんの顔合わせが成された。

俺が言うのもあれだけど、珍しい桃色の髪にポニーテールをした女性『シグナム』さん。

 

俺は先制攻撃とばかりにすぐ話し出した。

 

「こ、こんにちは!シグナムさん!サッカーの試合でちょっとやらかしてしまいましたよ。は、ははは・・・」

「そうかそうか。それは災難だったな」

 

俺は引き攣っているだろう笑顔で挨拶をして怪我をアピール。

ヴィータが言ったRPGで言うならば『逃げる』を選択した感じだ。

 

「そうなんですよ!これじゃあ、サッカーどころか運動もままならないです!」

「なるほど。確かにサッカーは出来ないな」

 

俺は必死に説教(リンチという名の試合)を避けるべく怪我をアピールする。

そして、シグナムさんは俺の前でしゃがみ込むと肩を掴んできた。

 

俺は掴まれた手に視線を向けた後、シグナムさんの方へと戻す。

シグナムさんは笑顔だった。

 

でもその笑顔は俺が望むものと違うものだとすぐに理解できた。

 

どうやら、『逃げる』は失敗した。

ヴィータが言う状況になっているのは間違いなかった。

 

「だが、上半身トレーニングは出来る。『脳筋』の私が教えてやろう。じっくりみっしりと、な」

「・・・ちなみに拒否権は?」

「ない」

「助けて、ザフィーラ!!」

「頑張れ」

 

ボス(シグナム)からは逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、腕がヤバイ・・・」

「自業自得や」

「そうなんだけどさー。ん?そういえばシグナムさんに連れて行かれるときザフィーラ喋んなかった?」

「気のせいや」

 

こんにちは、八神はやてです。

騎士(ナイト)君がシグナムに筋肉痛間違いなしの筋力トレーニングで、あっという間に病室へ戻らないとあかん時間になった。

 

騎士(ナイト)君を病室へ連れて行き、面会時間ギリギリまで話す事にした私は付き添いのシャマルはトイレのようで席を外して騎士(ナイト)君と2人っきりの状態。

 

あかん。

何故か緊張してきた・・・。

 

「はやて」

「は、はい!?」

「どうしたんだよ、黙り込んじゃって?それに何だよ、今の反応?マジウケる」

「なんやて!?酷くない!?」

 

色々台無しやん!

別に何か期待してた訳じゃないけど、その反応はあんまりやん!

またハリセンで叩いてやろうと顔を向けると騎士(ナイト)が先に安心したような表情で話し出した

 

「そうそう。はやてはそんくらい元気じゃないと!俺は元気良く笑って喋るはやてが好きなんだから」

「ぐ・・・うううっ・・・」

 

屈託のない笑顔に私が抱いた怒りが吹き飛び、行き場をなくなったハリセンを床に落とす。

その笑顔をずっと見ていることができず、顔を背けて俯いてしまった。

 

なんやねん!

なんやねん、あのセリフ!

そして、いつもの無邪気な笑顔じゃなく、大人な感じの笑顔とか反則やん!

どこで、そんな高等技術覚えてきたんや!

 

「どうした?」

「な、なんでもあらへん!しゃ、シャマル遅いな~」

 

自分でも自覚してしまう下手な演技に泣いてしまう。

落ち着け、八神はやて!

 

相手は騎士(ナイト)君や!

空気が読めなくて、デリカシーがなくて、勉強嫌いで、サッカーバカで、落ち着きが全くないどこにでもいる同い年の男の子やん!

 

「おーい?」

 

それに、綺麗な銀髪で、目が宝石のように輝いているかのような赤と黄色のオッドアイで、そこらのモデルより格好いい顔をしてるだけやんか!

 

「はやてー?」

 

でも、優しいし、頼もしいし、シグナム達の事は何も追及しないでいてくれるし、困った時は強引だけど助けてくれるし・・・。

 

「おいってばー」

 

はっ!

なに考えてるんや私!

これじゃあ、私が騎士(ナイト)君を異性として意識してるみたいやんか!

そんな事絶対に―――

 

「はやて!!」

「っ!?騎士(ナイト)君!?」

「やっと戻ってきたか」

「え?あっ、顔、ちかっ!?」

 

私の様子がおかしかったからなのか騎士(ナイト)君がベッドから身を乗り出し、両手で私の肩を掴み引き寄せてきた。

その結果、私の顔と騎士(ナイト)君の顔が急接近。

本当に近くて少し顔を近づけたらキス―――

 

「どうしたんだよ?悩み事でもあるのか?」

「いや、その、そういう訳じゃ・・・でもある意味悩みはあるっちゃあるような・・・」

「そうなのか?俺で力になれることなら遠慮せず言えよ!」

 

騎士(ナイト)君が真剣な表情で私の目を見てくれる。

悩みは、この状況なんやけど。

 

騎士(ナイト)君の目に吸い込まれそうな感覚が私の思考能力をも吸い込んでいるような気がする。

 

「ええの?」

「当たり前じゃないか!俺とお前の仲だろ?」

 

本当に優しいな騎士(ナイト)君は・・・

 

「じゃあ、目、瞑ってくれる?」

「目?こうか?」

 

私のお願いに何の疑問も持たずに従ってくれる騎士(ナイト)

ああ。目を瞑る騎士(ナイト)君も格好ええな・・・

 

「そのまま・・・そのままで、な?」

「はやて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少ししかなかった私と騎士(ナイト)君との距離は0に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ニャアアアアアア!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――0になる前に颯爽と現れた猫によって邪魔された。

 

『ニャア!ニャニャニャ!!』

「いてっ!痛い痛い痛い!?」

 

颯爽と現れた猫に飛びつかれた騎士(ナイト)君はそのまま猫に襲われている。

一体何がなんだか・・・

 

「もう~!何やってんのよ、ミーちゃん!邪魔しちゃダメじゃない!」

「惜しかったですね~」

 

唖然としている私の耳にそんな声が聞こえてきた。

すぐに声がした方へと振り向くと、一人はトイレに行っていたはずのシャマル。

もう一人は少し前に挨拶した騎士(ナイト)君のお母さんだった。

 

騎士(ナイト)君のお母さん?それにシャマルまで・・・。ふ、2人して何してるんですか?」

「こんにちは、はやてちゃん。馬鹿息子の顔を見に来たら病室前でシャマルさんが部屋の中を覗き見てたのよ。どうしたのかと思ったら馬鹿息子とはやてちゃんが良い雰囲気じゃない。これは覗くしかないわよ」

「良い雰囲気・・・はっ!?」

 

騎士(ナイト)君のお母さんに言われてようやく自分が何をしようとしてたのか理解してしまった。

その瞬間、全身が熱くなるのを感じた。

 

「それなのにミーちゃんが邪魔しちゃうんだから!」

「あの猫はペットなんですか?」

「うーん・・・。騎士(ナイト)がもっと小さい頃に拾ってきたんだけど、とても弱ってたのよ。でも病院が閉まってる時間帯だったからろくに治療が出来ないまま一晩過ぎたの。でもあっという間に元気になっちゃって一体何がなんだか分からなかったわ。そのまま居座るようになっちゃったけど、普段は外に出てて寝る時だけ家に帰ってくるから寝床作るくらいで世話する事ないし。だからペットと言うより居候って言った方がいいかも?」

「なるほど・・・」

 

猫『ミーちゃん』の事で盛り上がっているようだが、私にはその内容が頭に入らないほど動揺していた。

 

「これは、ちが、違うんです!?」

「あら?何が違うのかしら?」

「それは、その、あの!?」

 

ニヤニヤしながら言ってくる騎士(ナイト)君のお母さんに動揺している私では何も出来ない。

騎士(ナイト)君は未だミーちゃんに襲われているし、役に立たない。

 

「はやてちゃん」

「え・・・?」

 

頭の中が真っ白になっていく私に騎士(ナイト)君のお母さんが携帯の画面を見せてきた。

 

 

『そのまま・・・そのままで、な?』

 

 

自分でも見た事がない表情。

なんといえばいいのか分からない。

だけど見られてはいけないものだって事は理解できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、イヤアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、車椅子で自動車を抜く少女が見られたと噂されたが事実かどうかは定かではない。

byザフィーラ




正直、サッカーの話があんなに好評だとは思いませんでした!

そして、サッカー関係の話だけ前編後編で分けていることから自分も力を入れてしまっているんだなと改めて感じました。

サッカーはやっぱり偉大ですね!

本当はA’Sから騎士を参戦させようかと考えていましたが、間接を貫いていこうと思います!

色々ツッコミ所が満載になってしまうかもしれませんが、よろしくお願い致します!

それでは、また次回でお会いしましょう!


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第22話『俺がサッカーを続ける理由』

投稿出来ました!

ツッコミ所満載かもですが、温かい目で読んでもらえると助かります。

よろしくお願いします!


季節は秋。

完治には3ヶ月以上かかる筈の怪我も相変わらずの回復力で1ヶ月で完治し、大好きなサッカーの練習に取り組んでいる俺、騎士(ナイト)は練習後に監督に呼び出しをくらった。

 

近くの喫茶店『翠屋』で話をする事になった訳なんだけど、事前に連絡してあったのか俺の母さんまで居て三者面談という形になった。

 

騎士(ナイト)。あんた、また何かやらかしたの?」

「今月はまだ何もやってないんだけど・・・」

 

母さんはジト目で俺を睨みつける。

確かに俺は月ごとに練習中に怪我をしたり、ゲーム中に接触して相手に怪我をさせてしまったり、帰りにパス練習のつもりで壁当てしながら帰ってたらミスって人に当てたり、塀を越えてガラスや植木鉢を割ってしまったりしちゃってるから疑われるのは仕方ない。

 

でも、今月は始まったばかりだからまだ何もやらかしてはいない。

 

「いえいえ、騎士(ナイト)君のお母さん。今回はそういったお話ではありません」

 

監督の言葉に安心する俺と母さん。

では一体何の話なのだろう?

 

「実はですね。先日、私の元にある電話が入ったんです。もちろん、内容は騎士(ナイト)君についてです」

「電話?一体誰から?」

「日本サッカー協会の方からです」

 

日本サッカー協会?

何でそんなところから俺についての電話が?

 

「その人物は、U-12サッカー日本代表監督『安部(まさる)さんだ。騎士(ナイト)君。君にU-12日本代表候補として強化合宿に参加してほしいと連絡が来た」

騎士(ナイト)がU-12日本代表候補!?」

「え?え?」

 

当人である俺よりも母さんが凄く驚いていた。

どうやらとても凄い事らしい。

 

「はい。きっかけは元々選ばれていた子が怪我で離脱してしまったようなんです。それで代わりに誰を招集するかという話で、安部監督から騎士(ナイト)君の名前が挙がったんです」

「で、ですがどうして騎士(ナイト)なのでしょう?」

 

母さんの疑問は当然だ。

俺の名前がどうして安部監督に知られていたんだ?

 

「阿部監督は夏の合宿でガンツ大阪ジュニアユースの視察に来ていたんです。その時に騎士(ナイト)君のプレーを高く評価してくれたようなんです」

「ああ。あの時ですか!でも、あの試合でそんな高く評価付きます?」

 

俺が大怪我しながら頑張った試合の時だ。

でも、2失点したし、最後は気絶して情けない姿を見せちゃったから、あまり良い評価をもらえると思えないんだけど・・・

 

騎士(ナイト)君。君は自身の力を過小評価し過ぎだ。だから直向きに努力し練習を欠かさずこなしている。君の良い点だ。GKを始めてまだ1年も経っていないから良く分からない気持ちもあるだろうが、君の今の実力は日本代表候補として呼ばれるくらいあると理解してほしい」

 

俺の今の実力が日本代表候補レベル・・・

実感が湧かないな・・・

 

「リフティングがまだ100回も出来ない俺にそんな実力ありますかね?」

「ま、まあ、GKとしての実力だからそこを求めてはいないと思うぞ?」

 

苦笑する監督はコーヒーを飲みながらそう言ってくれるが、まだ80回出来て喜んでいるレベルなんですよ、俺。

 

「詳しい内容は後日連絡が来ますが、日程は12/1から12/26の約4週間だそうです」

「え?4週間も?」

 

それは流石に長すぎじゃないの?

 

「どうやら海外遠征合宿のようでして、移動時間も考慮してこの日程になってしまうそうなんです」

 

国内ではなく、海外!

話がどんどん大きくなっていくのが流石の俺でも理解できる。

 

「勿論、その間の勉学は空いた時間に専任講師を呼んでいますので問題はありません。お金も個人の買い物以外は全て日本サッカー協会が負担するそうです」

「そうですか・・・騎士(ナイト)。あんたはどうしたい?」

「4週間、海外、日本代表候補・・・。うーん・・・」

 

急だけど悪い話じゃない。

それは分かってるけど、頭の整理が追いつかない。

 

騎士(ナイト)君。これは強制ではないから断ってもらっても全然問題ない。お母さんとしっかり話し合って決めなさい」

「・・・分かりました」

 

その日俺は結局返事が出来ず、保留という形になった。

 

返事は11月15日には絶対、とのこと。

母さんや父さんは俺の好きな通りにしなさいと俺に全てを任せた。

 

それで期日の前日。

俺は未だに決めかねている。

 

サッカーの練習がない日であったが、いつものグラウンドで俺はある人物と待ち合わせをしていた。

 

「おい、モブ野郎。急に呼び出しやがって一体何のようだ?」

「よっ、和也!来てくれてサンキューな!ちょっと相談したい事があってさ」

 

その待ち合わせしていた人物とは、俺と同じ学校でチームメイトの神崎和也。

俺と居る時はいつも不機嫌そうな顔をしているが今回はいつも以上に不機嫌そうだ。

 

「相談だと?ついに自分が転生者だと認めたか?」

「違えよ!俺は転生者じゃねえ!何回その話をしたんだよ・・・。相談があるんだよ」

 

どうも和也は俺が転生者だと信じているらしい。

他の友達は冗談だと分かって言っているのに和也は何で信じているんだろうか?

 

「お前が俺に?」

「ああ。実はさ―――」

 

和也は信じられないって顔しているが、俺は構わず今悩んでいる事を打ち明けた。

 

「・・・馬鹿かお前?いや馬鹿だったな」

「酷い!?」

 

開口一番馬鹿扱いされた。

流石に酷いと思うのだけれど・・・

 

「そもそも。悩む必要なんてあるのか?親も許可してるし、好きなサッカー、それも上手い奴らと試合できるなんてお前が特に好きな条件じゃねえか」

 

和也の言う通りではあるが・・・

 

「俺はサッカーが好きだ。でも、それはつい最近なったものでさ。そんなぽっと出の俺が、俺以上に長い間サッカーを真剣に取り組んで日本代表になるまで沢山の練習をしてきた人達と肩を並べて良いのかと思ってさ・・・」

 

俺はまだサッカーを始めて日が浅い。

好きになったきっかけだって、去年たまたまテレビで見た試合が楽しかったからだ。

 

そんな俺が真剣に取り組んでいる人達に混ざっていいものなのか、それが俺が今日まで決めかねていた理由である。

 

「真剣に取り組む?沢山の練習?馬鹿らしい。お前に良い事を教えてやる。日本代表に選ばれるような奴らは天才なんだよ。そこに凡人なんて一人も居ない」

「天才・・・」

「当たり前だろ?真剣に取り組んだり沢山練習するなんて誰もがする事だ。それでも日本代表に選ばれる奴とそうじゃない奴がいる。それは何故か?天才か凡人かの違いだ」

 

和也がそういうとペナルティエリア外まで歩いていった。

 

「シュートを受けろ。お前もそのつもりだったんだろ?」

「お、おう・・・」

 

俺はゴール前に立つと和也のシュートが放たれた。

軽いシュートだったので、キャッチして和也に返す。

 

「話の続きだが、お前は天才か凡人かで言うなら天才だろう。だから日本代表に選ばれる」

「候補、だけど、な」

「お前の言う通りで、他の天才達はお前より長くサッカーを真剣に取り組んで来ているし、練習量だってお前の倍以上は練習して来ただろう」

 

シュートがどんどん強く、鋭くなっていく。

だが、和也の話は止まらない。

 

「だが、それがなんだ?お前は今、真剣に取り組んでなくて、練習も適当にやっているのか?」

「そんな訳、ないだろ!」

「だろうな。でなければ俺のシュートをごとごとく止める事など出来る筈がない」

 

確かに全部止めてはいるけど、それが関係あるのか?

 

「お前はゴールを守る為に真剣に取り組んで、沢山の練習を欠かさずに今日まで頑張ってきた。それがしっかりと結果として現れている。結果こそが全てなんだ」

 

和也は休むことなくシュートを打ち続ける。

俺もそれを止め続ける。

 

「天才か凡人かの違いはな。結果を出せるか出せないか。ただそれだけなんだよ。特にスポーツなんて特にな!」

「ぐっ・・・」

 

さっきから容赦のないシュートの嵐。

それでも俺は頑張って止め続けるがギリギリなのが殆どだ。

 

「お前より長くサッカーをやり、努力し、頑張ってきた者など沢山居る!今お前が言ってる戯言はそいつらを馬鹿にしているようなものだ!」

「そんな事は―――」

「ある!」

 

腹の下正面に放たれたシュートを俺は抱えるようにキャッチする。

そのシュートはとても重く感じた。

和也の何かしらの想いが込められているように思えた。

 

「お前に足りないもの。それは自分が特別な存在であるという立場の認識と凡人達の前を歩き、期待や嫉みを背負う覚悟だ!」

「立場の認識と背負う覚悟・・・」

 

俺はその言葉で本田俊輔の事を思い出した。

あいつは試合が終わった後、とても悔しがっていて、大会が終わって海外に留学するまで鬼のように練習をしていたらしい。

 

理由は俺との勝負に負けたからと言っていた。

自分のシュート数に対し、得点が1点など負け同然だとのこと。

試合だって、残り10分もない短い時間ながらも1点を取り、FWとしての役目は果たしている。

だが、俊輔はそれで満足できる選手ではなかった。

 

『ワイはストライカーや。点を取るなんて当たり前や。途中出場だろうと出たらチームを勝たせる。それが本当のストライカーなんや!それが出来ないストライカーなんて何の意味もない!』

 

試合結果は2-2。

確かに俊輔はチームを勝たせることは出来なかった。

 

だが、俊輔が変にミドルシュートに拘らずにドリブルで一対一を仕掛けられていたら結果はどうなっていたか分からない。

その拘りも含めて俊輔は負けたと思っているのだろう。

 

その話を聞いた俺は、俊輔に対して恐怖を感じた。

俺とは明らかに違う恐ろしい何かを感じたからだ。

 

多分、それがストライカーとしての立場の認識と周りの期待を背負う覚悟の違いだったのだと思う。

 

試合に出るからには最高の結果を求める。

俊輔は得点をとってチーム勝利に導く事が最高の結果なのだろうと思う。

それは俊輔だけではなく、周りの皆がそう期待していて、その期待を裏切らないように頑張っているんだ。

 

だけど、俺はどうだ?

楽しいから、負けたくないから、自分の事しか考えていない。

根本的には同じ考えを皆が持っている筈だ。

でも、俺にはそれしかない。

 

俺がどういった立場なのか、周りの皆からどんな風に思われているのか全く理解できていなかったんだ。

 

それで、今回みたいに日本代表候補というはっきりとした立場に、期待に、周りの目に、俺は戸惑っていたんだ。

 

「ここがお前の人生の分岐点かもしれないな!」

「分岐点・・・?」

「簡単な話だ!サッカーで(プロ)の道を進むか、そうじゃないかって話だ!」

 

そう言って和也は今までで一番の助走をとった。

本気の本気のシュートがやってくる。

 

ポストに当たるか当たらないかの際どいコースを狙い、それで尚手が痺れてしまうくらい重いシュートなのだ。

俺ですらそんな和也の本気のシュートを完璧に止めた事がない。

 

「さあ、どうすんだモブ野郎!らしくもなく、ウジウジ悩んでないで決めやがれ!!」

「くっ!」

 

俺はシュートに喰らいつく為に懸命に走り出す。

相変わらずの凄いシュートだ。

まるで俺から逃げるようにしてゴールへ向かっていく。

 

俺はどうしてこんなに必死になっているんだろう?

止めた時の瞬間が楽しいから?

そもそもどうして俺はGKをやっているんだ?

 

サッカーが好きになったきっかけはテレビで見たサッカーの試合が面白かったからだ。

GKが特に凄かったとかそういうのはなかった。

寧ろ点の取り合いでGKが可愛そうに思えたくらいだ。

 

それじゃあ、どうして俺はGKをやっている?

GKを始めたきっかけは、拓真との試合で―――

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前は神崎和也。

転生者だ。

 

今日も社会で役に立たない授業の始まりか・・・

 

『ええええええええっ!!??』

 

机でうんざりしていたら教室に綺麗な声が大きく響き渡った。

確認すると、なのは、アリサ、すずか。

俺の嫁達が驚いた表情をしている。

 

騎士(ナイト)君がサッカーのU-12日本代表候補!?」

「しかも、遠征合宿で12月から海外に行くって本当なの!?」

「おう!昨日参加するって返事したぜ!」

 

嫁達に囲われている銀髪モブ野郎がへらへらしながら自慢してやがる。

今すぐ止めさせたいが、リンディ様(無意識)から極力接触は禁止されているから近づけねえ。

 

「あんたがここ最近悩んでたのってその事だったのね」

「え?そうだけど、良く分かったな?」

「分かるわよ。騎士(ナイト)はすぐに顔に出るんだから。なのはやずずかだって気づいていたわ」

 

アリサの言葉に頷くなのはとすずか。

まあ、昨日、顔を合わせた俺ですら何か悩んでいるのには気づいたが・・・

 

「まじか・・・。確かに、海外遠征合宿に参加するかどうかで悩んでたけど・・・」

「何で黙ってたのよ?相談してくれれば良かったのに・・・」

 

ジト目で睨みつけるアリサ。

なのはやすずかも頷いて賛同している。

 

「悪い悪い。深い理由はないんだけど3人よりも和也の方が相談しやすかったんだ」

「和也?神崎のこと?」

 

いきなり俺の名前が呼ばれて思わず肩をビクつかせてしまう。

振り向いてみると4人全員が俺の方を見ていた。

 

騎士(ナイト)君。神崎君に何もされなかった?」

「怪我とかはない?」

 

おろおろと心配した表情モブ野郎の身体を確認するなのはとすずか。

失礼だとも思ったが前科があるので何も言い返せない。

 

「大丈夫だよ!というか和也のおかげで参加を決意する事が出来たんだ。なっ、和也!」

「だ、黙れ!馴れ馴れしく肩に手を置くな!」

 

俺は馴れ馴れしく肩を組もうとするモブ野郎に抵抗しながら、昨日の事を思い出した。

 

あの日、俺の最後のシュートはモブ野郎に止められた。

今まで誰にも止められた事のないシュート。

魔法で軌道を操作し、威力を増大させたインチキシュートだ。

 

それをモブ野郎はキャッチして止めやがった。

モブ野郎から逃げていくように軌道を操作しているのに諦めずに喰らいつき、ただ手を伸ばしただけじゃ弾かれる威力にしたボールをセービングでがっしりとキャッチした。

 

俺のインチキシュートを初めて止めて喜ぶモブ野郎は笑顔でやってきてこういったのだ。

 

『ありがとう!俺、合宿に参加するよ!』

 

(プロ)の道を選んだのかと聞いたがそうではないらしい。

 

『プロになるかは分からないけどさ。俺が今後どうしていくかは決めたんだ!』

 

その日にあった糞情けない顔とは打って変わって晴れやかな表情をするモブ野郎。

 

『俺は守護神になるんだ!どんな相手でも安心して任せてもらえる存在に!それが今の俺が目指すべき目標だ!』

 

とても難しい事を簡単に言いのけるモブ野郎。

だが、モブ野郎の顔は本気だった。

 

自分の立場や覚悟をちゃんと理解しているのかは分からないが、さっきの糞情けない顔をしている時よりかは十分に信じられる。

 

だが、俺はそんな事は言ってやらない。

 

「そんな事言って、周りは味方ばかりじゃねえんだぞ?お前を陥れようとする奴も現れる。その時にお前は耐えられるのか?」

 

寧ろ不安を仰ぐ言葉を送ってやった。

しかし、モブ野郎は笑顔でこう返す。

 

『大丈夫!俺は「ナイスキーパー!」って言って喜ぶ人達がいればどんな事でも耐えられる!それが俺の力の源だから!』

 

喜ぶ人達・・・。

チームメイトだけではなく、試合を観ている全ての人達を指しているんだろう。

名前も知らない他人でも喜んでくれれば力になるってか?

 

そんな事はありえない・・・。

俺のときはそんな奴一人としていなかった。

 

でも、モブ野郎が言うと本当にありえそうだ。

今も同じクラスでもない奴らがモブ野郎の話を聞いて楽しそうだ。

モブ野郎には人を惹きつける何かがあるのかもしれない。

 

「神崎君が・・・」

「ふーん。あんたもやる時はやるじゃない」

「うん!少し見直しちゃったよ!」

 

そして、それは他人をも巻き込んでくれるようだ。

今まではモブ野郎と一緒にいても近づいてくれなかった俺の嫁達が自分から来てくれたのだ。

しかも褒め言葉なんて初めての経験である。

 

「と、当然だ!俺にかかれば『騎士(ナイト)』の悩みのひとつやふたつ簡単に解決出来る!」

「おう!頼りにしてるぜ、和也!

「ぬはははっ!任せておけ!騎士(ナイト)よ!」

 

俺はその日前世含めて一番楽しい学校生活を過ごす事が出来た。

 

そして、絶対に本人には言わないが親友と呼べる初めての友達が出来た。




如何でしょうか?

とりあえず、怪我については騎士の反則級の回復力という事で納得してくださいm(_ _)m

そして、海外遠征も突発的で普通に考えたらおかしいかもですが騎士を巻き込まないようにする為には仕方ないかと思います、、、

それでも楽しんで読めたと言ってもらえると幸いです!

次の更新も早く更新出来るように頑張ります!

感想・評価お待ちしております!


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第23話『彼が居ないそれぞれの日常』

こんにちは!

書けたので更新します!

楽しんでもらえたら嬉しいです!

よろしくお願いします!


アリサ・バニングスよ。

 

騎士(ナイト)がサッカーU-12日本代表の海外遠征に行って一週間が経過したわ。

 

あいつが居なくなって少しは静かになると思っていたんだけど、実際はそんな事はなかった。

 

『ねえねえ!騎士(ナイト)は今、どこの国にいるの?』

『バニングスさん!橘君は昨日どっかと試合したの?』

『試合に出場出来てるの?』

『海外でも転生者扱いされてたりする?』

『お土産頼むの忘れてたから頼んどいてくれない?』

 

等など、私が騎士(ナイト)の幼馴染という事もあってか、海外に行った騎士(ナイト)について尋ねられる事が多くなった。

 

騎士(ナイト)のクラスメイトだけではなく、上級生や下級生、先生方にまで尋ねられているから毎日が騒がしい。

 

これでもまだ落ち着いてきた方よ。

最初の時なんて朝だけじゃなく、休み時間になれば誰かしらがやって来て質問されてたわ。

 

「ふう・・・」

「アリサちゃん。今日も大変だね」

「ごめんね、アリサちゃん。私も答えられたら良かったんだけど・・・」

 

朝の質問ラッシュが落ち着いて一息つく私の様子に苦笑するなのはと申し訳なさそうに謝るすずか。

 

なのははともかく、最初は私だけではなくすずかにも尋ねられていたが、あの子は人見知りで無理はさせたくないから基本私が対応している。

 

「大丈夫よ、すずか。これも全部騎士(ナイト)が悪いんだから。あいつが帰ってきたらいっぱい扱き使ってやるわ」

「ア、アリサ。流石の騎士(ナイト)もこんな事態になるとは思ってないだろうし・・・」

 

私の冗談半分の言葉に不安げな表情で言ってくる金髪の女の子。

この子はフェイト・テスタロッサ。

騎士(ナイト)と入れ替わるように転入してきた子だ。

 

私は転入前になのは経由で知り合って、ビデオレターを送り合っていたから仲は良いし学校では基本一緒にいるわ。

 

すずかのように物静かで大人しい子。

でも人当たりはいいからすぐクラスに馴染めることが出来るだろう。

 

転入初日はとても騒がれたわ。

可愛いから特に男子が大騒ぎ。

神崎なんて意味不明な『俺の嫁』発言をする始末。

 

そんな中で、男子が「聞きたいことがあったら何でも聞いてね」という言葉にフェイトはひとつの質問をした。

 

『えっと、橘騎士(ナイト)って男の子はどこのクラスかな?』

 

その言葉で男子達の熱が目に見えて冷めていくのが分かった。

質問が自分達以外の男子の事だとは思わないだろう。

 

当時の私もかなり驚いたわよ。

聞いてみたら一度海鳴へ来た時に騎士(ナイト)と会っていたそうだ。

しかも、かなり仲良くなって再会の約束もしているらしい。

 

冷める所か凍り付いてしまった男子達の代わりに私が騎士(ナイト)のクラスが隣である事と、騎士(ナイト)が4週間ほど不在である事を伝えた。

 

フェイトは最初とても驚いていた。

そしてすぐに「そうなんだ・・・」と言いながら残念そうな、寂しそうな表情をする。

その姿は飼い主が居なくなって寂しそうにする子犬を連想してしまったわ。

 

そんな事を思っていたら我に返った男子達が怒りの炎を宿しながら騒ぎ出した。

 

『あの野郎!学校外でもフラグ建てるとかどこのラノベ主人公だ!』

『しかもこんな美少女にとか転生者とか本当なんじゃないかって思ってきたぞ!』

『そんな事はどうでもいい!奴が帰ってきたら制裁するぞ!』

 

とても盛り上がっていたが、私は私で騎士(ナイト)からそんな話を一度も聞いたことがなかったことに怒りを感じてたわね。

 

そんなこんなでフェイトよりも騎士(ナイト)の方が良い意味でも悪い意味でも注目されるようになった。

比率的には悪い意味でかしらね。

 

自業自得ね。

この私にすら教えていなかったんだから。

なんか思い出したらイライラしてきたわ。

 

「とりあえず、騎士(ナイト)に一発殴らないと気が済まないわね」

「えっ!?どうして!?」

「あ、私も良い?」

「すずか!?」

「私も私も!」

「なのはまで!?」

 

私の言葉に慌てふためくフェイト。

そんなフェイトの姿を見て悪ノリするすずかとなのはは流石ね。

 

午前中の授業が終わってお昼ご飯。

騎士(ナイト)は居ないけどフェイトが加わり、さらにもう一人が加わっている。

 

「みんなお待たせ!アリシアお姉さんの登場だよ!」

「アリシアちゃん、こんにちは」

「アリシア、今日も元気ね」

 

そのもう一人はフェイトにそっくりで、でも背は私達よりも低い女の子アリシア・テスタロッサだ。

最初会った時はフェイトの妹だと思ってたんだけど、2個上の5年生であると聞いて驚いてしまったわ。

 

「アリシア。クラスの人達とはもう馴染めた?大丈夫?」

「フェイト。それはどっちかというと私の台詞だと思うんだけど?」

 

確かにアリシアはフェイトとは正反対の性格ですぐに友達が出来るどころかクラスの人気者となっているそうだ。

そんなアリシアに心配は不要なんだけど優しい子だからもはや癖みたいなものなんだろう。

 

騎士(ナイト)が海外遠征に行って一週間かー。皆ちゃんと騎士(ナイト)から電話もらってる?」

「うん。もらってるよ」

 

アリシアが言うように私達は騎士(ナイト)が出発する前に一日一回は連絡するように約束しておいた。

海外からの電話料金って高いんじゃないのかって騎士(ナイト)が言ってたけど、騎士(ナイト)のお母さんがそんなの気にしないでいいと怒られていた。

 

でも本当に一日一回しか電話してくれないのよね・・・

 

「やっぱり代表に選ばれる子は皆上手らしいね。毎回楽しそうに話してるよ」

「それに海外のチームはどこも強くて楽しいとも言ってたね」

「選任講師が面白いから勉強が捗っているって言ってたけど本当かな?」

 

騎士(ナイト)が話している内容はどうやら皆同じのようだ。

悪い事ではないがなんかモヤモヤしてしまうのはどうしてだろう?

 

「アリサちゃん、どうしたの?なんか難しい顔してるけど・・・」

「え?いや、なんでもないわ」

「ホントー?どっかの誰かさんのこと考えてたんじゃないの?」

「べ、別に騎士(ナイト)の事なんて考えてないわよ!」

「アリサちゃん、アリサちゃん。アリシアちゃんは別に騎士(ナイト)君とは言ってないよ?」

 

しまった・・・。

私の失態に苦笑するすずか、なのは、フェイト。

アリシアはニヤニヤとしている。

 

「な、なによ!」

「別にー?騎士(ナイト)も愛されているなーって」

「あ、愛ってなによ!?そんなんじゃないんだから!」

「そんなんってどんなんかなー?」

 

ニヤニヤした表情を崩さずに私をからかって来るアリシア。

同姓で年上だけど。もの凄く殴ってやりたいわ。

 

「うるさい!うるさい!うるさーい!!さっさとご飯食べるわよ!」

 

私は真っ赤になっているだろう顔を隠すように弁当に喰らい着いた。

こんなにからかわれるのもあのバカ(騎士)のせいよ!

帰ってきたらぶん殴ってやるから覚悟してなさい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

どこかの雪が降り積もる管理外世界。

私、シグナムは闇の書を完成させる為、この世界に生息する魔法生命体から魔力を蒐集している。

 

闇の書の所有者である主はやてから蒐集行為は禁止されている。

人様に迷惑をかけたくないと主の優しさだった。

闇の書の完成を望まない主は初めてで我々は困惑したが、その命に従い穏やかな毎日を過ごしていた。

 

しかし、事態は急変する。

 

主はやての足の麻痺の原因が闇の書だと分かったのだ。

このままでは主はやてが死ぬと分かった私達は主の命に背き独断で蒐集を開始した。

 

その進捗は著しくない。

人ではなく魔法生命体をメインにしているからなのは分かっている。

 

しかし、下手に動けば時空管理局が黙っていない。

慎重に動かなければならないのだ。

 

「ヴィータ。どうした?」

 

蒐集が終わり視線を向けると手を眺めているヴィータ。

気になった私は声をかける。

 

「いや、暖かいなって・・・」

騎士(ナイト)のか・・・」

 

ヴィータが手に付けている赤い毛糸の手袋。

あれは主はやての友人橘騎士(ナイト)からクリスマスとやらのプレゼントとして渡されたものだ。

 

ヴィータや主はやてだけではなく、我々全員の分も用意してくれた。

 

主はやてとヴィータには手袋。

私とシャマルにはマフラー。

狼形態のザフィーラにはセーター。

 

全てが手編みだというのだから驚きだ。

シャマルが今度教えてもらうんだと喜んでいたな。

 

「シグナムは着けないのか?」

「ああ。マフラーだと戦闘の邪魔になるからな」

「そっか」

 

騎士(ナイト)と出会ったのは、主はやてと出会って数日後の事だ。

 

強大な魔力を持つ人物が家に近づいているのを感じ、敵と判断した我々は主に事情を説明して戦闘態勢に入った。

 

シャマルには家の敷地内に対象が入ったら封鎖結界を展開、ヴィータとザフィーラに主の護衛。

私は先手を取る為、玄関の扉に身を潜んだ。

 

対象は敷地内の一歩手前で停止。

勘付かれたか?

そう思った私は特攻するか悩んでいた時、リビングから主はやてが持つ携帯の着信音が聞こえてくる。

 

それから数秒後、主はやてが急いで玄関へとやってきたのだ。

 

『待って、シグナム!その敵かもしれない人、私の友達だと思う!』

 

主の言葉にその時の私はとてもじゃないが信じられなかった。

通常の魔導師の数十倍はあるんじゃないかという魔力を持つ人物が管理外世界に居るはずがない。

 

主の懸命の説得に折れた我々は敵であった場合、攻撃にすぐ対処出来る様、私とヴィータの同行を許可してもらい玄関の扉を開けた。

 

『おっ・・・はやて、その後ろの人たち誰?』

 

それが騎士(ナイト)とのファーストコンタクトだった。

 

「今思えば、騎士(ナイト)は本当に不思議な子供だ」

「本当だな。得体の知れないアタシ達がいるのに何度も遊びに来たり、ご飯を一緒に食べたりもしたし」

「ご飯といえば、シャマルの微妙な料理に美味いと騎士(ナイト)は褒めていたな」

 

念の為、本人に確認を取ったが本当に美味しいと思ったそうだ。

だが、騎士(ナイト)は基本好き嫌いはない。

何でも美味しいというから味音痴の可能性は否めない。

それほど、シャマルの料理は微妙なのだ。

 

「でもよ。あいつもはやて程じゃないけど料理上手いよな。この前、ホットケーキ作ってもらったけど美味かったぜ?それにアイスを乗せたらさらにギガウマだった!」

「そうか・・・ん?ヴィータ。お前、いつの間にホットケーキなど作ってもらったのだ?食材の使用は主はやての許可をもらわないとダメだった筈だが・・・」

「・・・・・・そんな事よりさ!シャマルは兎も角、ザフィーラやシグナムも騎士(ナイト)といつの間にか仲良くなったよな!?」

 

墓穴を掘ったヴィータは無理矢理話題を振ってきた。

こいつ、無許可で勝手に使用したな?

一週間おやつ抜きにしてやろう・・・。

 

シャマルは料理の一件で仲良くなった。

ザフィーラは主や騎士(ナイト)と散歩時に敵ではないと判断したそうだ。

 

「そういうお前も急に仲良くなったではないか。確かサッカーというスポーツで勝負したのだったな?」

「あれは熱い勝負だったぜ?PKはまだ一度も勝てなかったけど、サッカーテニスやしりとりリフティングではアタシが勝ち越してるぜ!」

 

どういった内容かは分からないが楽しそうに笑うヴィータ。

こんな笑顔を見せるなど以前では考えられなかった。

今宵は主とその周りに恵まれているな。

 

「そういうシグナムは初対面の時から気になってたんじゃないか?」

「む・・・」

 

確かに気にはなった。

だが、それはどうしてあの時敷地内に入らずに主はやてに電話をしたのか気になったからだ。

騎士(ナイト)は「なんか嫌な予感がした」と言っていた。

 

押し殺した殺気に気づいたのかもしれない。

そう思った私は剣をやっているか聞いたら騎士(ナイト)に「なんで分かるの!?」と驚かれた。

 

騎士(ナイト)は友人の道場で剣術を習っている。

その剣術が気になった私はとある日、騎士(ナイト)と剣を交えるようにお願いし、彼は渋い顔したが了承してくれた。

 

戦場に出ていない子供にしてはそこそこ動ける。

そのくらいの評価だった。

受けに徹していた私は見定めが終わったので攻めに転じたのだが、そこで面白いことが起きる。

 

私が攻めに転じても中々一本が取れないのだ。

本気ではないとはいえ、騎士(ナイト)の実力を考慮した上での攻めは十手もしないで終わるはずだった。

 

それなのに騎士(ナイト)は必死に防いでいる。

しかも、騎士(ナイト)の目は隙あらば反撃してやると闘志を剥き出しにしている。

 

その姿に心踊った私は少しずつ騎士(ナイト)が耐えられないレベルまで上げていき、一本を取った。

 

そして私は思った。

騎士(ナイト)を鍛え上げたらどんな剣士になるのだろうと。

 

攻めは真直ぐすぎるが、守りは柔軟に対処出来る剣士は珍しい。

そんな剣士と戦えたらどんなに楽しいのだろうと私は思った。

 

だから私は騎士(ナイト)を育ててみようと考えた。

正直、剣術の指南などは出来ないから今の道場に任すとして身体能力を鍛え上げようと決めた。

 

その事を騎士(ナイト)に話してトレーニングを(強制的に)開始した。

最初は泣き言ばかり言ってたが、しっかりついてきてくれる。

 

休憩中に相談を受けたりもして、いつの間にか仲良くなっていたな。

 

騎士(ナイト)も可愛そうに。こんな戦闘狂(バトルジャンキー)に目付けられるなんてよ」

「まあ、私が一番嫌われているだろうとは思うがな」

「そうか?アタシはシグナムに一番懐いていると思うぜ?」

「・・・何故そう思う?」

 

私はヴィータの言葉に唖然としてしまう。

トレーニングを開始してからは厳しい言葉を沢山言った。

 

狼形態のザフィーラは兎も角、優しい言葉をかけるシャマルや友達のように接するヴィータに比べれば嫌われても当然だと思うのだが。

 

騎士(ナイト)が言ってたぜ?『トレーニングは辛いし、怒られてばかりだけど、俺が出来ないトレーニングは絶対にしないし、怒るだけじゃなく悪い所は出来るまでしっかりと教えてくれる。褒めてもらった事はないけど、トレーニング中は一度も目を離したことはなかった。間違った動きをしないようにする為だとは思うけどその姿に俺は優しさを感じたな。だからとても感謝してる』ってな」

「そ、そうか・・・」

 

騎士(ナイト)はそんな事思っていたのか?

てっきり嫌われていると思っていたから妙な気持ちだぞ。

 

「おっ?顔が赤くなってるがどうしたんだ?」

「な、なっていない!なっていたとしても寒いからだ!」

「へぇー?」

 

ヴィータがニヤニヤしながら私の方を見てくる。

 

「さ、さあ!休憩は終わりだ!次に行くぞ!」

「へいへい」

 

平穏な日常を得る為に私とヴィータは蒐集を再開する。

この先、どんな障害があろうとも必ず闇の書を完成させ、主はやてを救ってみせる。

絶対に・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒐集中。

ヴィータが何度もニヤニヤした顔を見せてきたので、一週間おやつ抜き。

そして、騎士(ナイト)のトレーニングを倍に増やす事にした。

 

感謝しているのならなんの問題もあるまい。

騎士(ナイト)が帰ってくるのが楽しみだ。

ふふふ。




初めてのシグナム視点でした!

騎士君がいない合間にフラグが立つのはお約束ですね!

早目に更新出来るように頑張ります!

感想・評価お待ちしてます!


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第24話『俺がモテる?そんな訳ないじゃん!前編』

更新しました!

楽しんで頂けると幸いです!

よろしくお願いします!


12月。

俺、騎士(ナイト)がU-12サッカー日本代表海外遠征合宿に参加して2週間が経った。

 

代表初参加で最年少、それにクラブチームではない選手という事もあり、他の選手からはこいつで大丈夫なのかと不安の言葉や舐めきった視線を向けられた。

 

だが、この2週間で色んな海外のチームと試合して俺も多少なりとも活躍。

その活躍で皆から信用を得ることが出来た。

 

もう友達といっても良い人もいる。

 

「なのになんで・・・なんでこんな事をするんだよ!」

 

ここはホテルの一室。

かけ布団で簀巻き状態にされた俺はそう叫んでいた。

 

目の前にいるのは俺を仲間として認めてくれたチームメイト達。

その先頭にいるのは、夏の合宿で会った本田俊輔だった。

 

俊輔は元々U-12日本代表でキャプテンに任命されている。

未来のエースストライカーとしてかなり注目を浴びているそうだ。

 

チームメイトと仲良くなれたのは俊輔のフレンドリーな対応のおかげと言っても良いだろう。

 

そんな俊輔がどうしてこんな事を?

 

「そんなの決まっとるやろ・・・制裁や」

「せ、制裁・・・?一体俺が何をしたっていうんだ!」

 

全く見に覚えのない罪に俺は必死に冤罪を主張する。

 

「自覚ないちゅうんは尚更性質が悪い。騎士(ナイト)はんは俺たちだけではく、全男子達を敵にしたんや!」

「全男子!?」

 

あまりのスケールの大きさに俺は愕然とした。

 

でも、俺は本当に何もしていない!

ついさっきまで、あんなに仲良かったのにどうしてこうなったんだ!

 

「自覚ないようやから、分からせる為に制裁に至った理由を教えたる。斉藤はん頼むで」

「おう」

 

このチームの中で一番背の高い斉藤大吾さん。

12歳で俺と同じGKのポジションだ。

ポジション的に俺のライバルなんだが、まだ基礎がなってない俺に丁寧に指導してくれた優しい人だ。

 

そんな人まで俺を敵視していたなんて・・・。

 

騎士(ナイト)。今から聞く質問を正直に答えるんだ。良いな?」

「は、はい・・・」

「今日の昼頃。お前は誰かと電話していたな?誰としていた?」

 

で、電話?

 

「えっと、幼馴染とですが・・・」

「名前は?」

「月村すずか、です」

「その後、すぐに自分から電話していたな。それは?」

 

一体何の意味がある質問なんだ?

よく分からないけど俺は正直に答える事にした。

 

「アリサ・バニングス、です。この子も幼馴染です」

「電話したのはその子だけではないだろ?親を除いて全員答えるんだ」

「あ、はい。高町なのは、フェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、八神はやて、です」

 

俺は今日連絡したみんなの名前を挙げていく。

みんなから1日一回は必ず連絡しろと俺が海外に行く前に言われたんだよな。

 

俺が海外に行って2週間。

あっちではかなり動きがあったらしい。

 

まずはフェイトが海鳴市に帰ってきた。

 

予想以上に予定が早く終わったらしく、俺と入れ替わりになってしまってとても残念である。

 

そのフェイトとアリシアが俺やアリサ達が通う小学校に転入した。

フェイトはアリサ達と同じクラスで早速クラスの人気者だそうだ。

 

アリシアは年が違う為、違うクラスだが持ち前の明るさで友達がすぐに出来たらしい。

 

時折、フェイトの様子を見に行くそうでその度にみんなからそっくり過ぎて驚かれるそうだ。

 

そして残念な話もある。

はやてが入院した。

 

かなり驚いたが命に別状はないとのこと。

本人から私は大丈夫だからちゃんと代表に集中してな、と釘を刺されてしまった。

 

これで散々な結果になってしまったらはやてに申し訳ないので頑張っているんだけど・・・。

 

「えっと、この質問に何の意味が?」

「今あげた子達は皆女の子か?」

 

俺の質問は華麗にスルーされて斉藤さんに質問されてしまう。

なんか周りの皆の空気がどんどん悪くなっているような・・・?

 

「そうですけど・・・」

「俊輔。弁解の余地はない。どうする?」

「ええっ!?」

「せやなー。みんなはどうしたい?」

 

弁解の余地ないの!?

俊輔の問いかけにチームメイト手を挙げて発言をしだした。

 

「今夜は簀巻きで吊るして寝させる!」

「逆さ吊りの方がよくない?」

「今から監督の目の前で監督の悪口を言わせる!」

「女の子を紹介してもらう!」

 

『・・・それだ!』

 

それだ!、じゃねえよ!

訳がわからないよ!

 

騎士(ナイト)はん。あんたはモテ過ぎたんや。だから皆から怒りを買ってもうた。観念しいや」

「出来るか!っていうかモテ過ぎって俺が?そんな訳ないじゃんか!」

 

俺は告白とかされた事ないし、した事もないんだぞ!

告白しようと思ったことはないけどさ!

 

「まさかのモテている自覚もなしなんか・・・アリシアちゃんも苦労するわな」

「なんでそこでアリシアの名前が・・・?」

「そりゃあ、態々遠くまで応援に来てくれて、気絶して病院に搬送される騎士(ナイト)を泣きながら付き添う女の子なんて、好き以外なんやちゅうねん」

 

え?

そういうもんなの?

友達がそうなってたら俺もそんな感じになると思うんだけど・・・?

 

「こりゃあ、アリシアちゃんや他の女の子の為にも一肌脱がなければあかんな」

「い、一体何を・・・?」

 

ニヤリと笑みを浮かべる俊輔。

そんな笑みは大抵悪巧みで良い事があった試しがない。

 

「題して『俺の事大好きですか?ゲーム』!」

『FUuuuuuuuuu!!』

 

俊輔の言葉にチームメイト達が大盛り上がりする。

俺だけが盛り上がる事が出来ず唖然としていた。

 

「ゲームは至ってシンプルや!騎士(ナイト)はんがさっき名前を挙げた女の子達に電話して『俺の事好き?』って聞くだけや!」

「まあ、それくらいなら・・・」

「しかし!十中八九、女の子達は『好き』と答えるはずや。その後が本番や!」

 

本番?

何が何やら分からない俺は黙って俊輔の話を聞いていく。

 

騎士(ナイト)はんは『それは異性として?』と聞くんや。その時の反応で女の子達が騎士(ナイト)はんの事をどう思っているのか分かるちゅう寸法や!」

 

俊輔の説明に感嘆の声をあげるチームメイト達。

俺はもう嫌な予感しかしない。

どうにしかして逃げたいと思ったが狭い部屋で俊輔達相手に逃げ切れると思えないので諦める事にした。

 

「そんじゃあ、早速やってもらうで!最初は月村すずかちゃんや!」

「はいはい」

 

俺は携帯ですずかに電話を行った。

少ししてすずかが電話に出る。

 

『はい、すずかです』

「すずか。騎士(ナイト)だけど今大丈夫?」

『うん。大丈夫だよ。今からお稽古で車に乗っているところだから』

 

もう学校は終わっているようだ。

俺の遠征先はヨーロッパで時差が7時間くらいあるらしいが、日本だともう学校が終わる時間帯らしい。

 

「もしかして、アリサも一緒?」

『ううん。アリサちゃんはいないよ。どうしたの?』

「いや、その・・・すずかに聞きたいことがあってさ」

『聞きたいこと?なに?』

 

うっ、いざとなると緊張してきた。

俊輔達は声に出さず『言え!』と書かれた紙で指示してくるし、覚悟を決めよう。

 

「すずかさ・・・。俺の事、好き?」

『え?』

 

さっきまでスムーズになされていた会話が止まった。

どうしよう。

この沈黙が心を苦しめるんだけど・・・。

 

『う、うん。好きだよ』

「そ、それは異性として、か?」

 

言ってしまった。

なんかとても心臓がバクバク言ってやばい。

 

『それは・・・』

「それは・・・?」

『・・・秘密、です』

「え・・・?」

 

秘密?

どうして?

 

『私がその先を言う資格はないから・・・。でも、いつか言えるときが来たらその時はちゃんと言いたいな・・・』

「すずか・・・」

 

なんだろう。

とても深い何かを感じたような、そんな気がした。

 

『ご、ごめんね。なんか暗くなっちゃったね。あっ!騎士(ナイト)君がクリスマスプレゼントでくれた毛糸の帽子、今も大事に使ってるよ!』

「お、おう!気に入ってもらえてよかった。本当はクリスマスに渡したかったんだけどな。そうすればもっとクオリティ高く作れたんだが・・・」

『え?これ騎士(ナイト)君が作ったの?お店で買った物だと思うくらい暖かいし手触りも良いし可愛いデザインなんだけど・・・』

 

そういえば手編みだって言うの忘れてたな。

 

「おう!時間がなくて急ごしらえだったが心を込めて作ったからな!気に入ってもらえてよかった!」

騎士(ナイト)君の女子力高すぎだよ・・・』

 

何故か落ち込んだ感じになってるけどどうしたんだ?

 

「長話も悪いからそろそろ切るな。急に電話して悪かったな」

『う、ううん!私はいつでも電話してもらって大丈夫だから!またね、騎士(ナイト)君』

「おう」

 

こうして、すずかとの電話が終了した。

一息ついて俊輔達を見ると何故かとても気まずい表情をしていた。

 

「な、なんだよ?」

「い、いや、なんかとても悪い事をしてしもうた気がしてのう・・・。ワイが思い描いてた展開と少しばかりそれてもうたから・・・」

 

そう思うなら最初からこんな事させないでほしい。

言っておくが俺のほうが罪悪感が半端ないんだぞ?

 

「いや、でも、訳ありはあの子だけかもしれへん!次や次!」

「まだ続けんのかよ・・・」

「ほらほら、はようせんかい!」

『はーやーく!はーやーく!』

 

うるさい奴らである。

俺は溜息を吐きながら、今度はアリサに電話をかけた。

 

『もしもし?』

「アリサ!俺だよ俺!」

『生憎、俺俺詐欺は間に合ってるわ。さようなら』

「オイコラ!?分かって言ってんだろ!騎士(ナイト)だよ!」

 

会話始めてまだ10秒で切られるのは勘弁願いたい。

 

『冗談よ冗談。で、何の用?』

「えっ?ああー、その・・・」

『切るわ』

「ちょっとは待ってくれても良くないか!?」

 

なんて我慢の出来ない奴なんだ。

 

『だって、騎士(ナイト)が用もないのに電話してくるなんてありえないし』

「うっ・・・」

 

確かに俺は携帯で連絡を滅多にしない。

電話とメールくらいしか出来ない安物の携帯だから仕方ないんだけど・・・

 

「そ、そういえば、俺がプレゼントしたマフラーは使ってくれてるか?」

『ああ、あれ?まあ、使ってあげてるわよ』

「それは良かった。あれが一番作るのに手間がかかったからな。使ってもらえてるなら良かった』

『やっぱりあのマフラーは騎士(ナイト)が編んだのね』

 

アリサにも手編みとは言ってなかったのだがどうやら気づいていたらしい。

 

「どこか不具合でもあったか?」

『いいえ。適当な店で買うよりも良い出来だったわ。あんたは主夫にでもなりたいの?』

「いや、そういう訳ではないのだが・・・」

 

何故かは分からないけど機嫌が悪くないか?

 

「どうしたんだ?もしかしなくても怒ってる?」

『別に?怒ってないわ。どっかの誰かさんが本当に一回しか連絡してくれないからムカつくとかそんなんじゃないわよ?』

 

答えじゃねえか!

 

「わ、悪かったって!明日からはもっと連絡する回数増やすから、な?」

『・・・本当?』

「本当本当!」

『なら、許してあげるわ』

 

やっぱり怒ってたんじゃねえか!

というツッコミは置いといて、おかしい。

当初の予定とは違う展開になってしまったではないか!

 

「そ、それとさ。アリサにひとつ聞きたいことがあるんだけどさ」

『何よ?』

「俺の事好き?」

『・・・はあ!?きゅ、急に、な、ななななに言ってんのよ、あんたは!?』

 

ある意味想像通りの反応でほっとしている。

とりあえず、話を進めよう。

 

「どうなんだよ?」

『ええっ!?そ、そんなの・・・す・・・』

「す?」

『す・・・好きじゃないわよ!このバカバカバカ!もう本当に切るからね!それと約束ちゃんと守りなさいよ!良いわね!』

「あ、ああ」

『じゃあね!』

 

最後はまるで嵐のようなマシンガントークで終わらされてしまった。

 

「ふう、疲れた。・・・みんな何飲んでんの?」

「コーヒーや。ブラックの」

「なんで?」

 

一応もう夜中だぞ?

眠れなくなっても知らないからな。

 

「あんな甘い会話聞かされたら苦いコーヒーを飲みたくなるに決まっとるやんか!」

「俺、初めてブラック飲んだけどこんな甘かったっけ?」

「俺も俺も!」

「コーヒーがなかったら砂糖を吐いてたかもしれん・・・」

 

意味が分からない!

人から砂糖なんて吐ける訳ないじゃないか!

 

「でも、これで俺がモテてなんかいないと証明出来たろ!」

「これでモテてないと言い切れるお前の方が意味が分からんわ!」

『そうだ!そうだ!』

 

なんでさ!?

俺は今、触れてもいないのにファウルをとられてイエローカードもらった選手の気持ちだよ!?

 

「コーヒー飲んで目が冴えたし、この調子でガンガン行くで!」

『おおおっ!!』

 

俺はコーヒー飲んでないからとても眠いんですけど・・・。

どうやらこのバカ騒ぎするチームメイト達と長い夜を過ごす事になりそうである。




如何でしたでしょうか?

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第25話『俺がモテる?そんな訳ないじゃん!後編』

更新しました!

今更だが文才が欲しい、、、

楽しんで頂けたら幸いです!


うーん、眠い!

俺、騎士(ナイト)が今一番思っていることである。

 

本来ならもう寝ている時間なんだけど俊輔達がしつこ過ぎて寝させてもらえないのだ。

 

俺のモテ過ぎ(俺はそう思っていない)が原因で制裁されているのだが、その内容がまた面倒だった。

 

今のところ、すずかとアリサまで行ったが俊輔達は満足せず続行するように言われている。

これはもう、終わるまで解放されないと判断した俺は早く終わらせる為に電話をした。

今度はなのはである。

 

『はい!なのはです!』

「なのは。俺の事好き?」

『いきなりどうしたの!?』

 

しまった。

早く終わらせたいが為に一言目に本題を切り出してしまった。

 

「すまん。つい」

『つい、で切り出す内容じゃなかったと思うんだけど・・・』

 

ごもっともであるが早く終わらせたいのでガンガン攻めたいと思う。

 

「なのは。これは大事な話なんだ。俺の事、好きなのか?嫌いなのか?どっちなんだ?」

『ふぇっ!?き、嫌いじゃないよ?』

「それじゃあ好きなのか?」

『う、うん。好きだよ?』

「それは異性としてか?」

『・・・ふぇえええええええっ!?』

 

いきなりの大声に俺は携帯を遠ざけながら耳を塞ぐ。

どんだけ驚いてんだよ・・・。

 

「どうなの?」

『えっと、その、異性としてと言われましてもですね。なのははまだ小学3年生だし、そういうのはまだ早いかなと思いましてですね?』

「お、おう・・・」

 

ぺらぺらと早口で話し出すなのは。

しかも何故か敬語だし、一体どうしたんだろうか?

 

『でも、異性として嫌いって訳ではなくてですね?私の友達の男子の中では上の方だけど好きかどうかで表すのは難しいと言いますか、えっと、その・・・』

「お、落ち着けよ、なのは。そんな早口で言われたら聞き取れないから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は携帯を落としてしまう。

 

なのはではない男性の声。

その声には殺気が含まれていたので俺は咄嗟に手を放してしまったのだ。

 

というか、この声には聞き覚えがあった。

 

「きょ、恭也さん?」

騎士(ナイト)か。なのはが顔を真っ赤にしながら正座で喋っていたから何事かと思ったが・・・』

 

俺だけではなく俊輔達も恭也さんの声で動けないでいる。

 

『それに好きとか異性とか聞こえたが・・・ふむ。1、5、9か。なるほど、そういったゲームをしていたのか』

 

9。

その数字に俺はすぐになんなのか理解した。

俺を含めたこの部屋にいる人数である。

 

つまり、恭也さんは電話越しで俺たちの人数を把握し、何をしていたか理解してしまったのだろう。

 

騎士(ナイト)の事だからなし崩しに流されて、こんなゲームをやらされてるって所だろう』

 

恭也さんは電話で人数を把握できるだけじゃなく、状況も把握してしまうとは恐ろしい人である。

 

『おい』

「はい!?」

『そんなゲームに大事な妹を巻き込むな。次、こんなゲームをしてきたら・・・ちょん斬るからな』

 

どこをでしょうか、恭也さん!?

俺が返事をする前に電話が切られてしまった。

かなりのお怒りのようだ。

 

「死んだ・・・帰ったら地獄の乱取り100本やらされる・・・」

「えっと、すまんかったわ」

「謝って済んだら警察は、って電話がきた!?」

 

悲しんでいると俺の携帯が急に鳴り出した。

着信者はなんとなのはだった。

俺は恐る恐る電話に出る事にする。

 

「も、もしもし?」

『あっ、騎士(ナイト)君!急にお兄ちゃんが電話に出てごめんね?』

「いや、全然大丈夫だよ。なのはの方は大丈夫だったのか?」

 

てっきり恭也さんから話を聞いて怒っているのかと思っていたんだけど、声からしてそんな様子は感じられない。

 

『私?大丈夫だよ!でも少しびっくりしちゃったからもうしないでね!』

「おう。もうしないよ」

 

したらちょん斬られるからな、という言葉は飲み込んだ。

 

『それでね。さっきの会話を聞いていた人達ってまだそこにいて今の会話聞いてる?』

「ああ。聞いているけど、どうした?」

『うん。ちょっとお話がしたくて』

 

お話?

 

『えっと、皆さん、こんにちは。高町なのはです。騎士(ナイト)君がお世話になってます。連絡をもらう度に皆さんの凄い話を騎士(ナイト)君から聞いてて海外遠征に参加して本当に良かったなって思います。騎士(ナイト)君は色々と無茶をしてしまう子なんでしっかり見張っていてくださいね?そうしたら今日の事は許しますので!』

 

なのはのお話に誰もが驚いた表情をしている。

てっきり怒られると思ってたもんな。

というか、確かに俊輔達のサッカーが上手くて凄い話をメッチャしたけど本人達の前でそんな事を言うのは勘弁してほしかった。

 

『えっと・・・?騎士(ナイト)君。皆さんにお話聞こえてたかな?』

「うん。聞こえてるよ。皆!返事は?」

『はい!しっかり騎士(ナイト)をお世話します!!』

 

俺の言葉に全員が大きな声でなのはに返事した。

つか、もう夜なんだからもう少し音量を抑えろよ。

 

『にゃはは、宜しくお願いします!それじゃあ、騎士(ナイト)君。遠征頑張ってね!』

「おう!なのはも風邪とかひかないように頑張れよ!」

『うん!騎士(ナイト)君の毛糸の手袋があるから大丈夫!またね!』

 

なのはとの通話が終わり、俺は溜息をひとつ吐いた。

 

「・・・俊輔」

「・・・なんや?」

「さっきの子の家は喫茶店なんだ。そこのシュークリームが絶品だ。俺の言いたい事が分かるよな?」

「もちろんや」

 

俊輔はチームメイト達の方を向いて息を吸う。

 

「遠征終わったら天使の喫茶店でシュークリームパーティーや!!」

『おう!!』

 

なのは(天使)のおかげで翠屋は大繁盛の予感である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、次いくで!」

「え?まだやるの?」

 

あれで終わるかと思ったんだけど・・・

 

「さっきの天使のお兄さんのおかげで眠気が吹き飛んでもうたわ!」

 

どうやら皆そうらしく頷いている。

まあ、俺もそうだったりするから強く言えない。

 

「分かったよ。それじゃあ、次はフェイトに電話するか」

 

俺は溜息を吐きながらフェイトに電話する事にした。

少し時間がかかるもちゃんと繋がったようだ。

 

『もしもし、フェイトです。騎士(ナイト)、どうしたの?』

「・・・・・・」

騎士(ナイト)?』

「・・・アリシア。なんでお前がフェイトの携帯に?」

『・・・ありゃ、ばれちゃったか!』

 

最初の大人し目の声とは打って変わってはきはきとした声になった。

それも当然だ。

フェイトではなくて、その姉アリシアが電話に出たのだから。

 

『うーん。フェイトのモノマネ、完璧だと思ったんだけどなー』

「残念だったな。アリシアの元気で明るい声にフェイトの澄んだ声は出来ないのだ!」

『むー。クロノやエイミィにはばれなかったのに・・・』

 

目に見えなくてもアリシアの悔しい顔が目に浮かぶ。

おっと、危うく目的を忘れるところだった。

 

「アリシア。フェイトはどうしたんだ?」

『フェイトは・・・あっ!今、出てきたよ。フェイトー!騎士(ナイト)から電話だよ!』

『ええっ!?』

 

フェイトの驚いた声に、ばたばたと走って向かって来ているだろう音が聞こえてきた。

 

『もしもし、騎士(ナイト)?』

「よお、フェイト。忙しいようならまた掛け直すけど?」

『だ、大丈夫だよ!全然大丈夫!』

 

何故か焦っているフェイト。

本人が大丈夫って言ってるなら大丈夫か。

 

「学校の方はどうだ?アリサ、すずか、なのはの三人以外にも友達は出来たか?」

『学校は楽しいよ。友達も出来た。まだなのは達が一緒じゃないと不安だけどね』

「というか、タイミング悪いよな。俺が遠征に行っている間に帰ってくるなんてさ」

『ご、ごめんね?私も予想外で・・・』

 

とても落ち込んだ様子で謝ってくるフェイト。

 

「いやいや、フェイトを責めている訳じゃないからな?俺も年内には帰ってくるからもう少しの辛抱さ!」

『うん!騎士(ナイト)はサッカーの日本代表で海外に遠征しているんだよね。それって凄いことだよね?』

「欠員で補充されたのが偶々俺だったってだけさ。実際足引っ張ってばかりだし」

 

ん?

俊輔達が何言ってんだこいつ?って顔をしているような気がする。

 

『そうなの?でも凄い事だよ。帰ってきたらサッカーしながらその時のお話聞かせてね?』

「もちろんさ!海外のすげえ上手い奴らと試合した話をしてやるぜ!そこで俺がどう活躍したのかも含めてな!」

『楽しみにしてる―――くしゅん』

 

電話越しでもフェイトが話している途中で、くしゃみをしたことがわかった。

もしかして、風邪でもひいているのか?

 

「どうし―――」

『フェイト?バスタオル1枚で何やってんのさ?』

『あ、アルフ!?』

 

俺が喋ろうとしたらそれを遮るようにアルフの声が聞こえてきた。

その内容に俺は思わず咽てしまう。

 

バスタオル1枚って本当に何してんだよ!

 

『お風呂から戻ってこないと思ったら電話してたのかい?誰と電話をしてるのさ』

『えっと騎士(ナイト)と・・・』

『あーなるほどねー』

 

フェイトとアルフの会話に割って入れない。

とりあえず、アルフがニヤニヤ笑っているんだろうなとは思った。

 

『そりゃあ服を着るよりも大事な人と電話する方が優先だよね。ふふふ』

『あ、アルフ!?』

『でもこれ以上は湯冷めして風邪引いちまうよ。早く終わらせなよ』

『う、うん・・・。あっ、ごめんね騎士(ナイト)。アルフが割ってきちゃって・・・』

「それは良いんだけど、なぜバスタオル1枚で電話してんだよ・・・」

 

俺は少し呆れながらフェイトにそう言った。

そりゃあ、くしゃみも出るわな。

 

『ううっ・・・騎士(ナイト)との電話が楽しくてつい・・・』

「そう言ってくれるのは嬉しいけどそれで風邪を引かれたら申し訳ないぞ・・・」

『ご、ごめんね!騎士(ナイト)、電話ありがとう!』

「おう!海外遠征の話、楽しみにしとけよ!」

『うん!楽しみにしてる。でも・・・』

 

フェイトが急に黙りだす。

でも何だろうか?

 

『・・・ナ、騎士(ナイト)との再会の方がとても楽しみだから!!』

 

今までで一番大きな声で嬉し恥ずかしい事を言ってくれるフェイト。

フェイトの顔を真っ赤にして言っている姿がなんとなく想像できた。

 

「おう!俺もとても楽しみだ!」

『うん!それじゃあ、またね!』

 

そう終わりの挨拶を言い合って電話を終了した。

 

「あっ、悪い。話に夢中で例のやつ聞くの忘れてた」

「いや、かまわへんよ。それで、今電話した子の写真ってある?見せてほしいんやけど」

「えっ?あるけど・・・見せるのは止めとく」

 

何故か分からないけど皆の目が怖い。

こういうときの俊輔達は碌な事を考えていないからだ。

 

「別に言いやんけ!その写真でバスタオル1枚の姿を妄想するだけやから!」

「尚更見せる気なくなったよ!?」

 

こいつ自分に正直すぎだろ!

 

「こうなったらその携帯を無理矢理奪い取るで!いくぞ!お前ら!」

『おう!!』

「無駄な団結力発揮すんな!絶対に守りきってやる!」

 

これから数十分間。

俺と俊輔達の鬼ごっこする事になる。

 

しかし最後には、チーム関係者の大人に見つかり、全員仲良くお説教を受けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・電話?」

 

説教も終わり各自部屋に戻って就寝する俺だったが、携帯のバイブ音で目が覚めた。

4人部屋だったので他の奴らが起きないか心配だったがマナーモードにしていたから着信音はならないおかげで俺以外はぐっすりと眠っていた。

 

「もう日付変わってんじゃん。発信者は、はやて・・・」

 

一応、この時間帯は寝てるって伝えてある。

それでも電話してきたって事は何かあったのであろうか?

 

俺は他の3人を起こさないようにベッドから出て、玄関前で電話に出た。

 

「もしもし?」

騎士(ナイト)君・・・ごめんな。夜遅くに電話してもうて・・・』

「いや、大丈夫だけど・・・」

 

なんかいつものはやてじゃないな。

いつもはもっと元気に話すのに今では弱弱しく喋っている。

 

「なにかあったのか?」

『特になにかあった訳じゃないんよ。シグナム達は元気で毎日見舞いに来てくれる。シャマルと外出した時は図書館で新しい友達も出来た。今度、友達と一緒に病院に遊びに来てくれるって約束もしてくれたんよ。とても楽しみにしてる。でも・・・もの凄く騎士(ナイト)君の声が聞きたくなって・・・』

 

声は明るく話している。

でも、なんでだろう。

見えないはずなのに、はやてがとても悲しそうな表情をしているような気がした。

 

「そっか。何を話そうか」

『いや。私は騎士(ナイト)君の声が聞けたからもう十分や。夜遅くに電話に出てくれてありがとな』

「おいコラ。勝手に満足して切ろうとすんな」

 

俺はすぐに電話切ろうとするはやてを止めた。

残念だが、俺は満足していない。

 

『で、でも騎士(ナイト)君は明日サッカーがあるんやろ?』

「あるけど、はやてのせいで目が覚めちまった。責任持って俺の話を聞いてもらうからな!」

『しょ、しょうがないなー。騎士(ナイト)君がそこまでいうんやったら付き合ったるよ』

 

なにがしょうがないだよ。

最初よりとても嬉しそうな声してんじゃねえか。

 

「んじゃあ、今日あった話なんだけどさ。チームメイトの奴らが急に俺を布団で簀巻きにしやがってさ―――」

 

俺とはやてのお喋りが始まった。

笑ったり怒ったり呆れたりととても楽しい時間を過ごしていった。

そのお喋りはもう2時間近く費やされていた。

 

『まさかすずかちゃんが騎士(ナイト)君の幼馴染とは思わなかったわ』

「本当だな。世間は狭い」

『・・・本当にありがとう。私の我が儘に付き合ってくれて。もう少し付き合ってくれる?』

「ああ」

 

はやてのお願いにそう答える。

 

『最近な。シグナム達と話す機会が減ってきてるんや。シグナム達が自立してくれる事は嬉しいんやけど・・・私はもっと皆とお話がしたいんよ』

「・・・・・・」

『このままだといつか皆、私の前から消えてしまうんじゃないかって。そう思ったら怖くなって・・・』

 

それで俺に電話してきたのか。

シグナム達に限ってそんな事はないと思うんだが、それでも怖く感じてしまえばそう思ってしまうもんだ。

 

「安心しろ、はやて」

『・・・えっ?』

「俺やシグナム達は絶対に、はやての前から消えたりなんかしない。約束する」

『本当に?』

「ああ!今電話越しでしか話せない俺が言っても説得力がないかもしれないが約束する!」

 

俺に出来る事はこうやって約束する事だけだ。

それでも、少しでもはやての気持ちが和らいでくれればいいんだが・・・

 

『せやね。確かに説得力がないな。騎士(ナイト)君はサッカー一直線やから尚更信用できないよ』

「ぬぐぐっ」

 

あれ?

俺ってそんな信用なかった?

確かにサッカーで合宿やら遠征、そこで怪我して病院とか落ち着きはない感じだけど

 

『でも騎士(ナイト)君は約束を守れる男や。実際に遠征行く前に私達のクリスマスプレゼントを用意してくれたしな』

 

はやての言う通りで俺は遠征に行く前に皆のクリスマスプレゼントを用意すると約束した。

遠征まで2週間くらしかなかった。

途中、はやて達には気持ちだけで大丈夫と言われたが、俺が大丈夫じゃないので必死に準備して完成させて約束を守ることができた。

 

「その通り!だから俺やはやての家族が居なくなる事はない!そんな心配する暇があるなら早く病気を治す事に専念しろ!分かったか?」

『うん・・・。ありがとう、騎士(ナイト)君』

 

この後、おやすみの挨拶をして電話を切り、ベッドに戻った。

 

これで少しははやてを元気付ける事が出来ただろうか?

顔が見れないからなんともいえないけどそう信じるしかない。

 

俺はそう考えながら眠りにつくのであった。




いかがでしたでしょうか?

なんか上手くまとめられなかったのでこんな結果になりました、、、

もうそろそろA´S編は終わりかなって思ってます。

次はGODかReflectionか、、、

Reflectionは観てないからGODかなと考えてますが、最悪はかき混ぜですかね汗

皆さんの感想や評価は私の創作意欲の源になってます!
本当にありがとうございます!

次もこのくらいで更新出来るように頑張ります!


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第26話『サプライズは計画的に!』

更新しました!

皆さんからの感想や評価をいただいてとても嬉しいです!

ありがとうございます!

これからも楽しんで読んで頂けるようなお話を書けるように頑張ります!

では、本編をお楽しみ下さい!


「さて、どうしたものか・・・」

 

海外遠征から無事に帰ってきた俺、騎士(ナイト)は考え事しながら散歩していた。

 

今日は12月26日。

俺は海外遠征から帰ってきたんだけど、本当は深夜に帰ってくる予定だったが飛行機の都合で早く帰ってきた。

 

早朝に家に着いて、移動疲れで寝たけど、起きたのは14時。

何もする事がなかったので俺はある事を思いついたんだ。

 

「そうだ。サプライズをしよう」

 

皆には26日の深夜に帰るからその次の日に会おうぜって話してあるから、いきなり帰宅報告すれば驚くに違いないって思ったまでは良かったんだけど・・・。

 

「まさかの不在とは・・・」

 

全くのノープランによる行動が裏目に出た。

アリサ、すずか、なのはの家は親や使用人は居たけどその本人達が居ない。

はやて、フェイト、アリシアの家に至っては誰も居なかった。

 

残念であるが、こればかりは仕方ない。

俺はとりあえず、所属している少年団が練習している河川岸のグラウンドへと向かう。

 

「ふう・・・」

 

もちろん、練習などやっていないし、人は誰も居なかった。

本当に暇な時はここでボールを蹴ったり、トレーニングをしたりする。

 

だけど、ボールはないし、そもそも運動が出来る格好ではないのだ。

だから坂になっている芝に腰を下ろして休憩しながらどうするか考える事にした。

 

「携帯置いて来ちまったしな・・・。寒いし、やっぱり家に帰るか・・・・・・ん?」

 

さっきまで人っ子一人居なかったのに、グラウンドの中心でボールを持った女性がいた。

驚く事にその女性は俺と一緒の銀髪。

俺より長いその銀髪は太陽の光を浴びて反射し、女性が輝いて見える。

 

「つうか、どっかで見たことがあるような、ないような・・・?」

「・・・・・・」

「あれ?こっち、ていうか俺を見てる?」

 

しかも、俺の方に向かって歩き出したぞ?

女性は坂の下まで来て、俺を見上げる形になる。

視線は完全に俺と合っているしどうしたんだろう?

 

「橘騎士(ナイト)。私のこと覚えているか?」

「えっ!?」

 

まさかの知り合い!?

確かにどこか見覚えがあるなーって思ってたよ?

でも、俺以外の銀髪の知り合いをそう簡単に忘れるはずがないのだが・・・。

 

俺が必死に思い出そうとする姿に女性は微笑んだ。

 

「やはり覚えていないか。私の名前はリインフォース。一緒にサッカーしようと貴方と約束したんだ」

「俺が?悪いけど何時したんだ?リインフォースさんの事は見覚えがあるような気はするんだけど思い出せなくて・・・」

「落ち着いて。まずはサッカーをしよう。身体を動かせば思い出すかもしれないだろう?」

 

なるほど。それは一理ある。

俺はリインフォースさんとサッカーをする事にした。

 

2人だけだからパス交換しか出来ないけど・・・。

 

「ん~・・・?」

 

パス交換を開始して身体が少しずつ温まってきたけど、どうも思い出せない。

でも、あと少しで思い出せそうな気がするんだよな・・・。

 

「思い出せないか?12月24日。夜天の書の中で。貴方からすれば夢の中でと言えば良いのかもしれない」

「えっ・・・ああっ!?」

 

『夜天の書』、『夢の中』。

その2つのキーワードに俺はある記憶が飛び込んできた。

真っ黒な空間で、はやてとリインフォースさんの3人で話した夢を俺は思い出した。

 

「思い出した・・・。た、確かにその夢で俺はリインフォースさんに会った。そして、その名前をはやてからもらっていたのも・・・」

「そうか。思い出してくれたか」

 

リインフォースさんは安心した様子でボールを止めてパスをくれる。

というか、普通に上手である。

 

「そして、はやてが恥ずかしい夢を見ていて、俺は思わず叩いてしまった事とか」

「・・・それは主の名誉の為にも忘れていて欲しかった」

 

一度思いだぜば湯水のように溢れ出る。

あの夢は壮絶だった。

 

はやてがリインフォースさんに名前を授けて闇の書の闇とかいうのを倒す為に真っ黒な空間から居なくなった。

 

俺は空間にひとり残されたが、画面が現れてその光景が映りだされる。

 

はやてがシグナムさん達を呼び出したり、なんか凄い化け物が出現したり、驚く事ばっかりだ。

あれを倒すにはゴ○ラとか呼ばなきゃ無理じゃね?って思ったよ。

 

最終的には色んな人が協力して倒したんだけど、その色んな人達ってのが殆どが俺の友人だった。

 

最初に出てきたのが、なのはで、アリサ、すずか、フェイト、アルフ、和也と続々。

知らない男子2人がいたけど記憶にない。

 

皆で協力して倒す映像を見て感動した俺はスタンディングオペレーションしていた。

そんな時、リインフォースさんが俺の前に現れる。

 

さようならと、はやてをよろしく頼むと最後の別れのような挨拶をしてきたから俺は思わず怒鳴った。

 

『ふざけんな!さよならしたいんだったら俺とサッカーしてからにしろ!』

 

そういって俺は夢から覚めたんだ。

 

本当に咄嗟の言葉だった。

今思い返せばどうしてサッカーだったんだろう?

もっと良い言葉があったんじゃないかなって思う。

 

「でも、あれは夢の中の話であって、現実の話じゃ・・・」

騎士(ナイト)がそう思いたいのであれば構わない。だが、私にとってあれは夢でなく現実なんだ。だからこうして貴方とサッカーをしにきた」

 

リインフォースさんにとって現実。

それはつまりあの映像は本当に合ったことで、アリサ達はあんな化け物と戦った事になる。

 

とてもじゃないけど信じられない・・・。

でも、なぜか妙に信じられるというか・・・。

 

「えっと、リインフォースさん。その時の俺との約束を守ってくれたのは嬉しい。でも、これが終わったらリインフォースさんははやての傍から居なくなってしまうんですか?」

「・・・私はそもそも約束を守るつもりはなかった。いや、守れないはずだったんだ」

 

守れないはずだった?

どういうことだろう?

 

「細かい説明は省くが、倒した闇の書の闇は私が生きている事でいずれ復活してしまう。だから、主の為にこの世から去ることを決意した。貴方の御友人、高町なのはとフェイト・テスタロッサに私の破壊をお願いした」

「・・・・・・」

 

俺はいつもだったら信じられなくてふざけだすんだけど、パス交換を止めて、リインフォースさんの話を聞いていた。

 

「それを聞きつけた主に止められたが、私は主にこれ以上迷惑をかけたくなかった。私は十分に幸せでしたと、主を説得して破壊を行なってもらった。大事な人達に看取られながら逝くはずだった。薄れ行く意識の中である声が聞こえたんだ」

「声?」

「逝くな!っと騎士(ナイト)の声が聞こえたんだ・・・」

 

俺の声?

 

「意識がはっきりすると死んだ筈の私は主たちの目の前にいたんだ。泣いて抱きついてくる主に私は理解が追いつかなかった。それは周りの者達も同じだった。だが、調べた結果騎士(ナイト)のおかげだと分かった」

「俺のおかげ?俺は何もしてねえぞ?」

「正しく言えば騎士(ナイト)の魔力にだが、私は貴方に感謝していると思ってくれればいい」

「はあ・・・?」

 

俺が知らないところで間接的に人助けをしていたって事か?

というか、魔力って確かなのはやリンディさんが言ってた奴だな。

リンディさんのときはとてもじゃないけど信じられなかったけど、リインフォースさんに言われると信じてしまいそうな自分がいる。

同じ銀髪だから信じたくなっているのか?

 

「では行くとしようか、騎士(ナイト)

「え?行くってどこに?」

「貴方の友人達が居るところにだ」

 

そう言ってリインフォースさんは俺の背後へと回ると抱きついてきた。

 

「えっ!?な、なにを!?」

「行くぞ?転移!」

 

俺とリインフォースさんの足元が光りだしたかと思えば、一瞬にして景色が変わる。

俺とリインフォースさんしか居なかったグラウンドではなく、どこかは全く理解できないが、横一列で俺たちを迎えた人物達は俺の友人だった。

アリサやすずかを始め、フェイトにアリシア、はやてもいた。

他にもシグナムさん達やアルフにプレシアさんに和也もいる。

 

そんな光景に俺が唖然としていると列の真ん中にいたなのはが一歩前に出た。

 

騎士(ナイト)君!」

『海外遠征お疲れ様!お帰りなさい!』

 

みんなからお帰りなさいのお出迎え。

まだ理解が追いつかないが、分かった事はひとつある。

サプライズしようと思ったらサプライズされてしまったって事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、高町なのはです!

騎士(ナイト)君が予定よりも早く帰ってきた事に気づいた私達はアリサちゃんの提案でサプライズを仕掛けることにしました。

 

最初は戸惑ったんだけど、騎士(ナイト)君も私達にサプライズ仕掛けるつもりだろうからお互い様というアリサちゃんの説得で納得。

 

案の定、サプライズを仕掛けようとした騎士(ナイト)に私達の逆サプライズは無事成功。

唯でさえ、転移魔法で居場所を変えられてから不在だと思っていた皆からのお出迎えに騎士(ナイト)君は思考を停止しているようだ。

 

後ろから抱き着いているリインフォースさんはとても楽しそうに騎士(ナイト)君の顔を見ています。

なんかムカッとしますが、今は置いておきます。

 

騎士(ナイト)君は暫く停止してそうなので彼が帰ってくるまでなにが起こったのか振り返りたいと思います。

 

『闇の書事件』と呼ばれるだろう今回の事件はとても壮絶でした。

闇の書を完成させようとするヴィータちゃん達と戦ったり、リインフォースさんと戦ったり、『闇の書の闇』という怪物と戦ったりと戦闘ばっかりでした。

 

その戦闘の最中で驚く事もありました。

ヴィータちゃん達が使うベルカ式の魔法や闇の書の闇の事も驚きましたが、私がいう驚く事はそれではありません。

 

それは騎士(ナイト)君の事です。

 

そうです。

彼はまたやらかしたんです。

プレシアさんの若返りと同じくらいかそれ以上の事を今回の事件でやらかしたんです。

 

まずは、私とフェイトちゃんが暴走するリインフォースさんと戦っている時でした。

 

その時に封鎖結界に巻き込まれたアリサちゃんとすずかちゃん。

リインフォースさんが私の魔法『スターライトブレイカー』を放った時、2人を助けたのは騎士(ナイト)君の魔力でした。

 

その魔力は、クリスマスプレゼントとして渡されていた手編みの帽子とマフラーから出現したそうです。

 

・・・それだけでしたら私もそこまで驚かなかったと思います。

でも、騎士(ナイト)君の魔力は2人を守るだけでは終わらなかったのです。

 

2人を守るように覆っていた騎士(ナイト)君の魔力が消えると2人の姿が変わっていたんです。

 

アリサちゃんは赤、すずかちゃんは白と紺を基調とした可愛らしい服を着ており、アリサちゃんの右手には橙色を基調にした刀のような武器、すずかちゃんは両手にグローブを付けています。

 

・・・簡潔に言いますと騎士(ナイト)君の手編みの帽子とマフラーがデバイスとなってしまったんです!

 

なにを言っているのだと思いますが、これは紛れもない事実なんです。

原因は騎士(ナイト)君の魔力ですが、どういう摂理でそうなったのかは分かっていません。

 

アースラの技術班員さん達が一日かけても何も判明されませんでした。

そもそも2人のデバイス(アリサちゃんのがフレイムアイズで、すずかちゃんのがスノーホワイト)から解析を拒否されてしまい、何もさせてもらえなかったようです。

 

2人が参戦してくれたおかげで随分と楽になったので、私としてはどうでもいいかなと思います。

・・・はい、現実逃避ですね、すみません・・・。

 

驚く事はまだあります。

正直、ひとつでお腹一杯なのですが報告しないといけないの。

 

それは闇の書の闇との激闘が終わり、全てが終わったと思った時でした。

 

私とフェイトちゃんはリインフォースさんから自らの破壊をお願いされました。

 

リインフォースさんが生きている限り、防衛プログラムは蘇ってしまう。

不幸な出来事が繰り返さない為にもと説得され、リインフォースさんを破壊しました。

 

リインフォースさんが光の粒子となって空へと消えてしまいます。

大事な人の死に悲しみがその場を支配していた時でした。

 

急に騎士(ナイト)君の手編みの手袋が光りだしたんです。

それは私のだけではなく、騎士(ナイト)君からプレゼントを貰った人全員から光が発生しているんです。

 

その光は騎士(ナイト)君の魔力。

騎士(ナイト)君の魔力は空へと向かっていきます。

 

急な事に動揺する私達。

少しするとその光は1つの塊としてはやてちゃんの前に降り立ちます。

光が消えた時、私達は目を疑いました。

 

ついさっき消滅した筈のリインフォースさんが現れたのです。

 

その後、リインフォースさんは精密検査をする事になった。

その結果はまた驚く事に上々。

リインフォースさんは一度消滅したから防衛プログラムとの繋がりも完全に絶たれた為、蘇る事はないそうです。

 

これでリインフォースさんが一人寂しく消滅する必要はなくなりました。

 

とてもハッピーエンドな結末です。

でも、気になるのはリインフォースさんがどのようにして蘇ったのかって事です。

 

本人に詳しく聞いてみると、意識を失う最中に騎士(ナイト)君の魔力が本人の姿となって無理矢理引き下ろしてきたそうです。

 

『逝くな!俺との約束を破るだけじゃなく、俺がはやてとした約束を破れさせるんじゃねえ!』

 

と、中々に理不尽な理由です。

でも騎士(ナイト)君らしくて笑ってしまいました。

 

それは私だけではなく、皆も笑っていました。

まだやらなければいけない事、考えなければいけない事は沢山残っているけど今この瞬間は笑って過ごしていいと思います。

 

「どうしたの、なのは?皆、騎士(ナイト)の元へ行っちゃったよ?」

 

ユーノ君に声をかけられて思い耽っていた私は目の前の光景を確認した。

 

車椅子から身を乗り出して騎士(ナイト)君に抱きつくはやてちゃんを中心にそれを囲うヴィータちゃん達。

 

フェイトちゃんは久々の再会で声をかけられずおどおどしていてそれを応援するアリシアちゃんとアルフさん。

 

ちょっと離れた所で仕方ないと溜息を吐きながら見守るアリサちゃんとすずかちゃん。

 

気に食わないのかギャーギャー文句を言いながら騒ぐ和也君。

 

そして、いきなり囲われて慌てふためく騎士(ナイト)君。

 

中心の人物以外は皆笑顔で楽しそうだ。

あんな楽しそうなのに思い耽っているのは勿体無いよね!

 

「なんでもないよ!行こう!」

 

私は笑顔が溢れる輪の中へと駆け出すのでした。




とうとう騎士君は魔法を認知します!

幼馴染のアリサやすずかが認知してるのに騎士君がしてないのは個人的におかしいなと思ったのが理由の一つです。

他にこれからの展開でそろそろ魔法を認知させときたいのもありますが、、、

騎士君は原作の戦闘にはほぼ参加しません。
ほのぼの日常会がメインですのでよろしくお願いします!

私の生きる活力である、
感想・評価もよろしくお願いします!


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第27話『非日常を知ったけど俺の日常は変わってない気がする』

投稿出来ました!

なんとなく流れは思い浮かべてるけど言葉にすると中々書けないのが現状、、、

難しいです、、、

楽しんで読んで頂けたら幸いです?
よろしくお願いします!


「魔法は存在したんだな・・・」

 

俺、騎士(ナイト)はアリサの家でそう呟いていた。

皆からお出迎えサプライズをされた後は流れるように事情を説明された。

 

皆からの魔法に関する説明で今まで逃げてきた俺は認めざるを得なかった。

特にアルフ、ユーノ、ザフィーラの変身を目の当たりにすれば信じざるを得ない。

そして俺にも魔法の力があるらしく、とても強大らしいって事くらいしか理解出来なかった。

 

俺にも魔法の力がねー。

 

「なに悩みこんでんのよ。騎士(ナイト)らしくない」

「アリサ・・・」

 

複雑な気分でいると隣で優雅に紅茶を飲んでいるアリサから厳しいお言葉をもらってしまう。

 

「だって、魔法だぜ?俺がありえないと否定し続けていたものが実在してたなんて変な感じなんだよ」

「まあ、分からなくもないわ。私だって実際に見て感じなければ信じられなかったもの」

 

そういえば、アリサはその魔法を実際に使ったんだっけ?

俺の魔力で作られたデバイスって奴で、リインフォースさんやでっかい怪物と戦ってたし、凄い幼馴染だよ。

 

「その魔力ってやつはアリサや他の皆は見えてんだよな?」

「ええ。今も騎士(ナイト)の魔力はただ漏れ状態よ。そして、その一部がフレイムアイズに流れ込んでる」

 

赤くて長方形の宝石を見せるアリサ。

あれが、フレイムアイズと名付けたデバイス。

魔法を使いやすくする為のアイテムだったか?

 

というか、流れ込んでいると言われても俺にはその魔力が全く見えない。

だからこそ実感がわかず納得出来ていない理由の1つだ。

 

「アリサ自身には魔力は殆どないんだっけ?」

「私だけじゃなくてすずかもね。戦えたのは騎士(ナイト)の魔力があったから。つまり騎士(ナイト)の魔力がなければ私は一般人って事になるわ」

 

俺の魔力がない状態ではデバイスを起動させるのも困難らしい。

まるで、充電式の携帯ゲーム機のようだ。

 

ちなみに充電の限界はないらしく、充電すればするほど長く使えるらしい。

 

「ふーん。で?急に呼び出した理由を教えてくれる?」

 

今の時刻は20時を過ぎている。

少し前まで俺は親と炬燵でのんびりしていたら、アリサから電話で呼び出しをくらったのだ。

 

流石に寒くて炬燵から出たくないって答えたら次の瞬間家のチャイムがなった。

 

アリサにお願いされて俺を迎えに来た鮫島さん。

鮫島さんは、親に高級レストランをご馳走するから俺を連れて行っていいかと交渉してきた。

俺の両親は二つ返事で了承し、お泊りセットを持たされて俺は追い出された。

 

酷い親である。

まあ、俺は俺でアリサの家で豪華な食事にありつけているから良いんだけど。

 

食事が終わった後、アリサの部屋で現在に至るわけだ。

それまで、急に呼び出した理由を教えてもらってない。

今回みたいな無理矢理な行動は何かしらの理由があるはずなのだ。

 

「それは、その・・・こ、これよ!」

「ん?あれはCMでもやっていた『人をダメにするソファー』だな」

「そ、そうよ!最近買ったから使わせてあげようと思ってね!」

「へえー。それじゃあ遠慮なく」

 

俺はソファーに座ると飲み込まれるかのように沈んでいく。

これは確かにダメになりそう・・・。

 

「どう?良い感じでしょ!」

「おう・・・」

「・・・私も座るけど良いかしら?」

「うん、どうぞ」

 

元気のない声で言うアリサに俺は二つ返事で答えた。

アリサはソファーではなく、ソファーに座る俺の上に座った。

予想通りだったので俺は特に何も言わず、アリサを受け入れた。

アリサの後頭部が俺の胸へ収まるのを確認して俺はアリサに話しかける。

 

「で、どうしたんだよ?」

「・・・怖い夢を見たのよ」

「夢?」

「闇の書の闇っていう怪物と戦った時の夢」

 

それは怖いな。

あんなテレビでしか見れないような戦闘を実際に経験したんだから。

 

「でも、ちゃんと戦えてたじゃん」

「私はなのはやフェイトの補助をしていただけ。ちゃんと戦ってた訳じゃない。それに私のデバイスは近接がメインだから本来の役割じゃないわ。それが分かっていても私は前線に出れなかった。怖かったのよ。あんな激闘に参戦するなんて怖くて出来なかった」

 

俺は震えるアリサの頭を撫でる。

やっぱり俺の幼馴染は凄い。

 

「アリサは頑張ってたさ。初めての戦闘が世界を救うレベルで前線に立てる方が可笑しい」

「でも!」

「分かってる。なのは達が傷つき頑張っているのに、たいした事が出来なくて悔しいんだろ?」

「うん・・・」

 

初戦闘で、でかい怪物戦う恐怖と同じくらい、目の前で傷つき苦しむ友達に何も出来ない自分の不甲斐なさが悔しいなんて自慢の幼馴染だよ。

 

「次なんてあって欲しくないけど、その時が来たらちゃんと隣に立てるように頑張ろうな」

「うん・・・。その時の為にも魔法の訓練をしっかりしないといけないわ。騎士(ナイト)にもしっかり手伝ってもらうから覚悟しときなさい!」

「はいはい」

 

どうやらいつもの調子に戻ったようだ。

元気じゃないアリサなんてアリサじゃないからな。

 

「そろそろ眠くなってきたし、寝ようぜ?」

「なに言ってんのよ。明日も休みなんだし、お話するわよ。海外遠征でいなかった分ちゃんと付き合ってもらうから覚悟しておきなさい!」

 

どうやら今日は夜更かし確定のようだ。

勿論、体勢も変わらないまま俺とアリサは寝落ちするまでお話を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで起きたらソファーじゃなくベッドにいて、その後すぐに俺の腕を枕にして寝ていたアリサが起きたんだ。何故か分からないけど、アリサが顔を真っ赤にするくらい怒って部屋から追い出されたんだけど、すずかはどう思う?」

「アリサちゃんは真面目だから・・・」

 

翌日の朝、俺はすずかの家に来ていた。

何故かと言うとアリサに追い出されたからなんだが、部屋の外から理由を尋ねても返事が返ってこなかったので仕方ないからその場を後にした。

 

道中考えても追い出された理由が分からないからすずかの家に来た訳である。

 

というか真面目って答えになってなくないか?

 

「とりあえず、アリサちゃんは気持ちの整理が済むまで放っておいた方がいいよ」

「それもそうか。そういえば、すずかのデバイスはその紺色の宝石だっけ?」

「そうだよ!スノーホワイトって名前!」

 

アリサのと色違いのデバイス。

宝石の形が待機状態で実際に使用すると全く違う形態になるらしい。

 

「そういえば、すずかはリインフォースさんや怪物と戦っているとき怖かった?」

「うーん・・・。緊張はしたけど恐怖はそこまで感じなかったな。楽しかったとも違うし・・・興奮・・・なんでもない」

「聞こえてるからな!?」

 

明らかに興奮って言ったぞ!

あんな激闘で興奮ってマジでヤバイと思うぞ!?

 

「ち、違うの!なのはちゃん達のサポートをして戦況を有利に進めていくのを見たら達成感みたいのを感じて気分が高揚したっていうか・・・。ほ、ほら!騎士(ナイト)君だって凄いシュートを止めた時とか気持ちが高まるでしょ?それと同じ事なんだよ!」

「すずか。お前はとりあえず暫く魔法の使用は禁止な?」

「お願いだから信じて!?」

 

必死になるすずかに俺は思わず笑ってしまう。

 

「冗談だよ。こんなに必死なすずかを見たのは久しぶりだからからかっちまったよ」

「も、もう!騎士(ナイト)君のいじわる・・・」

「ごめんごめん」

「・・・昨日のアリサちゃんみたいに膝の上に乗せてくれたら許してあげる」

「そんな事ならお安い御用さ」

 

俺は膝を叩いてすずかを呼ぶ。

すずかは席を立つと俺の方へと歩き出し俺の膝へと座るんだけど・・・

 

「・・・すずか」

「・・・なに?」

「座り方が逆なんだけど・・・」

 

アリサは俺の膝の上に座るときは決まって背中を向けてから座る。

その逆という事は、すずかは俺と対面する形で座ってきたのだ。

 

「お、思った以上に恥ずかしいね」

「そう思うんだったら止めてほしいんだが?」

「やだ。もう少しこのまま・・・」

 

すずかは顎を俺の肩の上に置いて抱きつく。

これだと俺は何も出来ないんだけど・・・。

 

「なんか前より我が儘になったな、すずか」

「・・・そうだね。騎士(ナイト)君が私やアリサちゃん以外の女の子と仲良くなったからかも」

「・・・ん?」

 

どういう意味なんだろうか?

なんか聞ける雰囲気じゃねえし・・・。

 

「まだこの体勢でないとダメ?」

「・・・うん。私も騎士(ナイト)君と会えなくて寂しかったからもう少し・・・」

 

そう言われると何もいえない。

もう少しと言ってもう10分は経っている。

仕方ないから言う通りにするけど・・・。

 

「すー・・・はー・・・すー・・・はー・・・」

「・・・すずか?おーい?」

 

すずかは顎ではなく顔を俺の肩ではなく胸へと埋め始めたと思ったら急に呼吸が荒くなっていた。

心配になった俺はすずかの肩を掴んで引き剥がし、すずかの容体を確認する為、顔を覗き込んだのだが―――

 

「すずか。お前、目が赤く―――」

「失礼致します」

「うおっ!?ノエル!?」

 

俺が喋りきる前にノエルが割り込んできた。

会話だけではなく、顔も俺とすずかの間に割り込んでいる。

びっくりした俺がすずかから手を放すと同時にすずかを抱え込んで俺と距離を離した。

 

その一連の流れは見事と言うほかしかない。

 

騎士(ナイト)様。すずかお嬢様はこれから忍お嬢様とお出かけしなければいけないので今日はここまでとさせて下さい」

「え?それは良いけど、今すずか―――」

騎士(ナイト)様は何も見ていない。良いですね?」

「・・・分かりました」

 

いつものノエルさんとは思えない迫力に俺はそう答えることしか出来なかった。

これ以上、聞いても答えてくれないだろうと判断した俺は席を立ち部屋を出る。

 

「5分間抱きついて良いから事情を説明してくださいって言ったらどうです?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんの事でしょう?」

 

・・・あれ?

もう少し粘ればいけそうじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、アリシアとプレシアさんって俺の監視役だったんですよね。これって警察にストーカーですって言えば捕まるんですかね?」

「いきなりあがりこんで来たと思ったらなに恐ろしい事を言っているのかしら!?」

 

結局、ノエルさんの言う通りにした俺はテスタロッサ家にやってきた。

暇だから思いついたことをプレシアさんに言ってみたら凄く驚かれてしまう。

 

「でも、監視ってどこまでやってたんですか?そこんところ気になってしまって・・・」

騎士(ナイト)君が外出している時ぐらいよ」

 

外出の時か。

それでもいけないような気がするんだけど・・・。

 

「という事は昨日や今朝の事も?」

「アリサちゃんやすずかちゃんの家に行ってたわね。流石に室内は見てないから安心しなさい」

 

安心して良いのか?

 

「そういえば、フェイトとアリシアとアルフはどうしたんですか?」

「フェイトはアースラで自主訓練をしているわ。アルフはその付き添いよ」

 

フェイトは相変わらず真面目だな。

久しぶりに再会した時は抱きついてきてかなり驚いた。

感動のシーンなんだけど、他のメンバーが見ていたからそんな気分には全くなれなかったけどね。

 

「ん?アリシアは?」

「あの子はまだ寝てるわ。冬休みに入ってずっとそうなのよね。ぐうたらするアリシアも可愛いけど困ったものだわ」

「ほほう」

 

それは良い事を聞いた。

 

「プレシアさん。俺が起こしてきますよ」

「・・・あら、悪いわね。それじゃあ、お願いできるかしら?私は色々と準備があって忙しいし」

 

俺の言葉に何かを感じ取ったプレシアさんは一瞬悪い顔をして俺にそういった。

 

「お任せください!」

 

さて、お寝坊さんはすぐに起こしてあげないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ふわあっ・・・」

 

おはよう、いや、こんにちはかな?

アリシア・テスタロッサだよ。

 

最近、昼まで寝て過ごすのが楽しくなっていたりします。

学校も楽しいけど、学校じゃ出来ないことをするのがまた楽しいんだよね。

 

そろそろこの生活習慣を直さないと新学期に影響しちゃいそう。

まあ、今年は後三日だし新年になってから直せばいいや!

 

「・・・もう一眠りしようっと。おやすみなさーい」

「お邪魔しまーす」

「・・・・・・?」

「よしよし。ちゃんと寝ているな」

「・・・っ!?」

 

私の眠気が一気に飛んでいきました。

 

寝直そうと再び布団に潜り込んだすぐ後に誰かの声が聞こえた。

フェイトとアルフはアースラで自主訓練って昨夜聞いたし、お母さんなら寝ている私の布団に飛び込んで過剰なスキンシップをしてくる。

 

家族の誰でもなく、聞き覚えのある声に覚醒しきっていない頭をフル回転させて騎士(ナイト)である事が分かった。

 

「そういえばアリシアの部屋に入ったのは初めてだ。思ったよりシンプルな部屋だな。もっと人形とか可愛いものがいっぱいだと思ってた」

 

目を瞑って寝たふりをしているから分からないけど、騎士(ナイト)は私の部屋を眺めているようだ。

 

しょ、しょうがないじゃん!

妹のフェイトの部屋がそういう可愛い系を置いていないのに、姉である私が好きなだけ可愛い系を部屋に置くのには抵抗があるんだもん!

 

「今度、ぬいぐるみでも作ってプレゼントしてみるか?クマか猫のどっちかで」

 

あ、出来れば猫が良い。

って、そうじゃない!

どうして騎士(ナイト)が私の部屋にいるのかだ。

 

「さて、お寝坊さんをどのようにして起こしてやろうか?」

 

顔は見えなくても騎士(ナイト)の悪そうな笑みを浮かべているのは理解できた。

起きるタイミングは完全に逃してしまったし、どうしよう・・・。

 

「耳元で風船爆発、頬っぺたぷにぷに、蛇の人形をベッド全体に撒き散らす。どれにしようか?」

 

どれも止めてほしい!

最後の選択肢なんて特に嫌だよ!

 

・・・しょうがない。

ここは今起きたふりをして悪戯を阻止しないと―――

 

「・・・よし。第4の選択肢。ベッドに潜り込んで眼前でおはよう大作戦だ」

「・・・・・・」

 

も、もう少し様子を見ようかな?

 

い、いや、別に起きても良いんだけど、騎士(ナイト)が楽しそうにしてるから起きてがっかりさせるのも悪いなって思っただけだから!

ちょっと良いかもなんて思ってないから!

 

「それじゃあ、お邪魔します」

 

もぞもぞと私の前の方から布団に入る音が聞こえる。

本当に騎士(ナイト)が潜り込んできてる・・・。

 

「よしよし。まだ寝てるな」

 

起きてます!

騎士(ナイト)の声が私の目の前です!

 

やばい。

心臓がバクバクしてるよ!

 

「・・・・・・」

 

騎士(ナイト)はどのように起こしてくる?

大きな声で脅かすように?

普通の声で普通に?

それとも優しい声で耳元に優しく?

 

「・・・・・・・・・」

 

ていうか、絶賛寝顔を見られてる事がとても恥ずかしい!?

絶対に顔が赤くなってるよ!?

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

・・・あれ?

騎士(ナイト)が一向に行動してこない。

私は思い切って目を開けて確認することにした。

 

「・・・すー、すー」

「・・・寝てる」

 

騎士(ナイト)は布団の温もりに耐えられなかったのか寝てしまっていた。

さっきまでの葛藤をどうしてくれるんだこの男は・・・

 

騎士(ナイト)は本当にどうしようもないんだから・・・そこも可愛いところなんだけどね」

 

私が頬っぺたぷにぷにしても騎士(ナイト)は起きる様子がない。

こんな機会滅多にないだろうから一緒に寝ちゃおう。

 

「そういえばこんな間近で騎士(ナイト)の顔を見たのは始めてかも・・・」

 

騎士(ナイト)って普段は年相応に感情豊かで表情がコロコロ変わるけど、サッカーしてる時や寝てる時はとても格好良い顔してるんだよね。

 

「これはチャンス、かな?」

 

私は少しずつ顔を騎士(ナイト)へ近づけていく。

心臓がバクバクと騎士(ナイト)に聞こえてしまうんじゃないかってくらい大きくなってる。

 

フェイトには悪いけどチャンスはものにしないと、ね?

 

「いつもありがとう、騎士(ナイト)

 

私は騎士(ナイト)が起きない声で感謝の言葉を述べて唇を近づけてキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おでこに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

私は顔を真っ赤にしているだろう。

そして、私は思った。

 

ひよったあああああああああああああ!?

 

なにしているの私!

あそこはおでこじゃなくて唇でしょ!

 

もう一度と行きたい所だけど、さっきので勇気振り絞ったからもうできないよ・・・

で、でも、これで他の皆より一歩リードかもしれないし!

騎士(ナイト)は寝てたけど、やったって事実は変わらないもん。

 

「もう完全に目が覚めちゃった・・・。起きて顔を洗おう・・・・・・ん?」

 

上体を起こすと私はあるものが目に入った。

紫色の光球。

それを私は何度も見たことがある。

 

騎士(ナイト)の監視の為に使われたお母さんのサーチャー。

映像を写すだけではなく、動画や写真を撮ることも出来る優れた魔法だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やられた(見られた/撮られた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さああああああああああああああん!!??」

 

私はベッドから飛び起きるとお母さんの元へと走り出した。




アリサ、すずか、アリシアの回でした

なんだかんだでこの3人といることが多い騎士くんです。

もっと色んな子と絡ませたいけどビジョンが見えてこない、、、
もっと頑張ります、、、

楽しんで頂けたでしょうか?

毎回感想してくれる読者様、ありがとうございます!
作品を見て評価をくれる読者様、ありがとうございます!

次も頑張れるように感想や評価をお待ちしております!
よろしくお願いします!


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第28話『男の意地は女から見たらしょうもなく感じるみたい』

投稿しました!

今のところ週一で頑張れているから続けていきたいですね!

今回も楽しく読んで頂けると幸いです!


「・・・・・・」

「よし。今回はここまでにしよう」

「あ、ありがとうございました・・・」

 

いきなりだが俺、騎士(ナイト)は倒れている。

場所はなのはの家の道場。

倒れている俺の目の前には恭也さん。

 

何故このような事になっているのかというと、何故か俺の顔を見ることが出来ないとアリシアに言われて追い出されてしまった俺は、ぶらりと散歩していたらなのはのお母さんに出会ったんだ。

 

翠屋新作ケーキを食べていかないかと誘ってくれたから付いていき待っていたら恭也さんに見つかり、海外遠征の時の電話についてお話(稽古)する事になった。

 

結果、俺は倒れてしまうまでお話(稽古)をする羽目になってしまったって訳だ。

 

「お兄ちゃーん!騎士(ナイト)君!お母さんがケーキ出来たってー!」

騎士(ナイト)。片付けはやっておくから行っていいぞ」

「は、はい・・・」

 

許可をもらった俺は呼びに来たなのはと一緒に翠屋へと向かう。

 

騎士(ナイト)君、大丈夫?」

「大丈夫じゃない・・・。俺が悪いとはいえ、まだ怒っていたとは・・・」

「私は気にしてないんだけどね」

 

翠屋に着いて新作ケーキをご馳走になる。

うん。美味い!

 

「そういえばさ。日程は決めてないけど日本代表のメンバー達がシュークリームパーティーやろうって話になってるからよろしくな」

「シュークリームパーティー!?なんでそんなパーティーを・・・?」

「なのはのおかげだぞ?」

「私!?」

 

全く身に覚えがないと言いたげななのは。

でも俺の言ってる事は間違っていない。

 

「興味深い話をしているね。メンバー達ってどれくらいいるのかな?」

「士郎さん。20人です。皆絶対に行くって言ってましたよ?」

 

なのはのお父さんが飲み物を持って俺達の会話に参加してきた。

 

「そのくらいだったらなんとかなるかな?日程決まったらちゃんと言ってくれよ?急に来られたらシュークリームが足りなくなってしまうかもしれないからね」

「分かりました!」

「いやはや、うちの店に日本サッカー界期待の世代達が来店してくれるとは楽しみだ!」

 

俊輔達の来訪をとても楽しみにしてくれる士郎さんだが、少し気になる単語があったのを俺は見逃さなかった。

 

「士郎さん。『日本サッカー界期待の世代』ってなんです?」

「おや?知らないのかい?騎士(ナイト)君含め海外遠征に参加したメンバーは凄い成績を残したからとメディアからとても注目されているんだよ?この雑誌を見てごらん」

 

凄い成績?

良く分からない俺は士郎さんに渡された雑誌を読んでみた。

あ、有名なサッカー雑誌だ。

 

なになに。

 

『U-12サッカー日本代表快挙!海外有名クラブチームに勝利を果たす!』

 

そんな大きな見出しが書かれている。

集合写真に俺も写っているから確かに俺達のことだ。

続きを読んでみよう。

 

 

 

『4週間の海外遠征にてU-12日本代表含めた9チームのU-12海外クラブチームと交流戦を行なった。

 

成績は6勝1敗1分で2位と好成績。

過去最高が7位だったのでこの成績は見事なものであった。

 

日本の10番を約束された少年『本田俊輔』君が全試合で得点をあげる大活躍でチームの要として貢献。

他の選手も素晴らしい動きを魅せてくれた。

 

この世代の選手達は将来とても期待できるとU-12日本代表監督安部氏も大満足の結果であった』

 

 

 

「凄いね、騎士(ナイト)君!好評価だよ!」

「いやいや、凄いのは俺じゃなく他の皆だよ。俺は3試合しか出てないし」

 

褒めてくれるのは嬉しいが、欠員補充で入った俺としてはあまり自慢出来ない。

 

騎士(ナイト)君は相変わらずの謙虚だね。それと僕としてはその次のページがお勧めだね」

「次・・・なっ!?」

騎士(ナイト)君が写ってる写真が沢山だね!さっきの集合写真じゃなくて個人で!」

 

なのはの言う通りで俺がプレーしている写真が1ページの二分の一くらい載っている。

他の二分の一は俊輔だった。

 

どういうことなんだ!?

俺は隣のページに書いてあるテーマを読んだ。

 

 

 

『海外クラブチームから見た将来有望選手!』

 

 

 

「将来有望選手?」

「えっと、U-12日本代表と試合したクラブチームの監督や選手、取材に来ていた海外記者達に将来有望そうな選手を投票してもらいランキングにした。投票された40票でばらける事無く2人の選手に投票される。その2人が『本田俊輔』君と『橘騎士(ナイト)』君だ。だって!」

 

態々朗読してくれたなのは。

その内容に俺はただただ驚く事しか出来ない。

 

だって、そうだろ?

欠員補充で参加して半分も試合に出れなかったのに周りから将来有望だと評価されたら驚くのも無理なくない?

 

とりあえず落ち着こう。

まず、どんな内容が書かれているのか確認しようではないか!

 

『23票を得たFW本田俊輔君(12才)はガンツ大阪ジュニアユースから海外のチームへ移籍が決定している有望な選手で多くの投票が得られるのは予想されていた。

しかし、GK橘騎士(ナイト)君(9才)は全くの無名で招集前に怪我をした選手の補充として呼ばれた選手だったが、そんな彼が本田選手に続いて17票の投票を得た。

 

しかも、その内の2票は世界でも有名な強豪「バルサリード」の監督と選手から得ている。

他の投票した監督や海外記者からのコメントでは「驚きだよ。リアルSGGKが存在した」「彼が無名なんて信じられない。これはスカウト達が黙っていないね」等など素晴らしいコメントを頂いている。

 

橘選手が出場した試合のデータを観ると

 

8試合中3試合出場。

0得点1アシスト2失点。

vsブルーダ   ○3-1

vsマルコッティ ○1-0

vsバルサリード △1-1

 

橘選手が出場した試合は2勝1分。

その1分が交流戦7勝1分で1位強豪バルサリード相手に1失点。

それだけでなく得点を決めた本田選手にラストパスをしてアシストも記録している。

しかも、9才で最年少。

橘選手の今後が期待される』

 

 

 

「ふう・・・」

 

途中まで読んで俺は上を向いた。

 

なんだこれ?

 

予想を遥かに超える俺に対する内容が多いんだけど?

しかもスカウトってなにさ?

今のところどこにもそんな話はないんだけど?

 

「お父さん。SGGKってなに?」

「なのはは流石に知らないか。SGGKはS(スーパー)G(グレート)G(ゴール)K(キーパー)の略称さ。簡単に言うとキーパーがとても上手な選手に贈られる言葉さ」

「ふええっ!?騎士(ナイト)君ってやっぱり凄いんだね!」

「うん。そうらしい・・・」

 

なのはの尊敬の眼差しを送られるが驚きすぎて素直に受け取る事が出来ない・・・。

 

「これを読んだ時は僕も驚いたよ。バルサリード戦で1失点だけでなくアシストまでしているんだから。どんな風にアシストをしたのか聞いてもいいかい?」

「良いですけど偶然なんですよね。狙ったわけじゃないんですよ」

「というと?」

「実は俺がアシストする前は相手のPKだったんです。時間もロスタイムで絶体絶命。PKは俺から見て右に跳んだんですけど相手は真正面。それを見た俺は跳びきる前だったから踏み止まって足を伸ばしたんです。足に当たる感覚がしたから思いっきり振りぬきました。そのボールが前線にいた俊輔に偶々渡って、時間がないことを理解していた俊輔が振り向きざまにロングシュート。それがゴールに吸い込まれ得点。試合終了、って感じです」

「それはまた劇的な展開だったんだね」

「そうですね・・・。3試合しか出てませんがそれが一番辛くて楽しい試合でした。流石は名門って感じで終始攻められっぱなしでした」

 

今思い出してもまるで無限に続く波のような攻撃で休む暇なんて殆どなかったんだよな・・・

 

「それは相当疲れたんじゃないかい?」

「疲れたなんてもんじゃないですよ。終わった瞬間、皆ピッチに座り込んでましたよ。俺なんて身体中青痣だらけで暫く動けませんでしたもん」

 

何故かと言うと相手のFWの一人がやたらと荒い接触プレーばかりで何回も吹き飛ばされたんだ。

酷い時なんてスライディングがボールじゃなくて俺の身体に来たくらいだ。

しかも足の裏を向けて。

そいつはあまりのプレーに途中で替えられてたな。

 

「そうなのかい?なのはからそんな話は聞かなかったが?」

「言う訳ないじゃないですか。言ったら、なんでそんな無茶したのって怒られるじゃないですか。ははは・・・・・・あっ!?」

騎士(ナイト)君・・・それ本当なの?」

 

し、しまった!?

話に夢中になり当時を思い返していたら、なのはが隣にいる事を忘れていた!?

 

「えっと、その・・・」

騎士(ナイト)君は私に嘘、吐いてたんだ・・・」

 

やばい。

目がかなり怖い。

 

「ち、違うんだ!そこまで大した事のない怪我だから言うまでもないって思ったんだ!実際に青痣はもうないk―――痛っ!?」

「ふむ。少し動きに違和感があると思っていたがやっぱり怪我してたんだな」

「きょ、恭也さん!?ば、バレてたんですか?」

 

いつの間にか恭也さんが隣にいて俺が怪我したところを正確に触ってきた。

俺はその痛みに耐えられず涙目で恭也さんを見た。

 

「お前と何度剣を交わったと思っている。そのくらいすぐに分かる」

「それじゃあ、稽古のとき少しは手加減してくださいよ・・・」

「それはそれ。騎士(ナイト)が痩せ我慢しているのが悪い」

 

何も言い返せない。

確かに俺が悪いんですけど・・・。

 

「なのは。道場に特性の軟膏を用意しておいたから騎士(ナイト)に塗ってやれ」

「ありがとう、お兄ちゃん。行くよ、騎士(ナイト)君」

「え?でもまだケーキが残って―――」

「行、く、よ」

「あ、はい」

 

なのはのなんとも言えない迫力に逆らえず、なのはに手を捕まれた俺は抵抗できずにそのまま連行されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「傷を見せて」

「はい・・・」

 

・・・こんにちは、高町なのはです。

今、騎士(ナイト)君と一緒に家の道場にいます。

 

なぜならば、騎士(ナイト)君の治療の為です。

騎士(ナイト)君は怪我しないように無茶しないようにと約束したのに、それを破り嘘を吐いてたんです。

 

今回ばかりは私も怒り心頭です。

それを理解してくれているのか騎士(ナイト)君は素直に私の言う事を聞いてくれます。

 

「・・・酷い」

「ははは・・・」

「ははは、じゃないよ!青痣だらけだよ!」

 

騎士(ナイト)君が上着を脱いで見えたのは脇腹、腕、胸、背中と色んな所にある痣。

とても痛々しくて目を背けてしまいそうになってしまいました。

 

騎士(ナイト)君は苦笑いしてますが、これで出歩いたりお兄ちゃんと稽古していたなんてありえない。

私はカッとなって怒鳴ってしまいます。

 

「こ、これくらいどうって事ないって。見た感じは酷いかもしれないけどそれほどじゃないから!」

「また嘘を吐く!その青痣を片っ端から押していくよ?」

「すみませんでした!それは勘弁してください!」

 

土下座して謝る騎士(ナイト)君。

前からだけど騎士(ナイト)君はどうしてこんなに無茶をするんだろう?

 

騎士(ナイト)君は・・・。ううん、なんでもない。軟膏塗るから大人しくしててね?」

「?分かった」

 

聞いたところでちゃんと答えてくれなそうだから聞くのはやめました。

私は青痣の治療を開始した。

 

「・・・はい。これで終わり」

「サンキュー、なのは!あっ、道具の片付け手伝うよ!」

「大丈夫だよ。しまうだけだから」

 

治療が終わり騎士(ナイト)君は笑顔でお礼を言います。

そして、道具の片づけを手伝ってくれようとしますが、棚にしまうだけなので私はやんわり断りました。

 

「確かこれは一番上の段だったよね。よっと」

 

私は道具箱を棚に戻す為、台を使います。

それでも少し届かないので背伸びして道具箱を置く事が出来たのですがそこで事件が起きます。

 

「あっ!?」

「なのは!?」

 

バキッっと台の脚の部分が老朽化の影響で折れてしまったんです。

確かにずっと前からあった台だったけど、このタイミングで折れるなんて・・・

 

いきなりの事で私はバランスを崩して背中から落ちてしまいます。

私は衝撃に耐える為、目を瞑ります。

 

「・・・あれ?騎士(ナイト)君?」

「なのは、大丈夫か?」

「ご、ごめんね、騎士(ナイト)君!?すぐに退くから!」

 

衝撃が来ないと思ったら騎士(ナイト)君が私と床の間に滑り込んで受け止めてくれました。

私の耳元から騎士(ナイト)君が安否の声をかけてくれます。

 

状況を理解した私はすぐに退く為、立とうと動くのですが―――

 

「痛っ!?」

「え?」

 

騎士(ナイト)君が突然悲痛の叫びをあげたんです。

私は首だけを動かして騎士(ナイト)君を見ました。

 

騎士(ナイト)君は顎を上にあげる様にして私から顔を見せないようにしていますが、片手を口に当てて何かを我慢しているように見えます。

 

その原因はすぐに分かりました。

私が騎士(ナイト)から退こうとしたときに使った手が騎士(ナイト)君の太ももを触っています。

立とうとしたときに私の体重がかかるわけですが、いつもの騎士(ナイト)君ならあんな悲鳴をあげる筈がありません。

 

ならばどうしてか?

青痣は上半身だけではなかったって事です。

 

騎士(ナイト)君、脱ぎなさい」

「え?もう脱いでるけど・・・」

「上じゃなくて下の方!そっちも青痣があるんでしょ!」

「な、ななな無いし!」

「じゃあ、なんで叫んだの!」

「なのはの体重が重くて痛かっただけだし!」

 

むかっ!

嘘を吐くだけでなくそんなデリカシーのない事を言うなんてもう許さない!

 

「こうなったら実力行使だよ!」

「うおっ!?ピンクの輪っかが締め付けてくる!?これは魔法か!?卑怯だぞ、なのは!」

「素直に言う事を聞いてくれない騎士(ナイト)君が悪いの!」

 

バインドで騎士(ナイト)君を縛り付けた私はズボンを脱がしにかかります。

しかし、騎士(ナイト)君はそれでも必死に抵抗してきます。

 

往生際が悪いの!

私は騎士(ナイト)君のお腹に座って上半身を動けないようにしてから再度脱がしにかかります。

 

「さあ、覚悟するの!」

「や、やめて―――」

「なのは?さっきからドタバタ煩いけど何してる―――」

 

道場の扉からお姉ちゃんが入ってきました。

私と騎士(ナイト)君は動きを止めてお姉ちゃんの方を見ますがどうも様子がおかしいです。

 

「な、ナニしてるの?」

「え?何って騎士(ナイト)君の服を脱がそうと・・・あっ!?」

 

顔を引き攣かせながら質問してくるお姉ちゃん。

その質問に答えながら改めて状況を確認したらある事に気づいてしまったのです。

 

上半身裸でバインドで縛られる騎士(ナイト)君。

その騎士(ナイト)君に馬乗りして彼のズボンを掴んでパンツが見える所まで脱がしている私。

 

事情を知らない人が見れば誤解されてしまいそうな状況です。

 

「お、お姉ちゃん?これは―――」

「美由希さん、助けて!(男のプライドが)汚されるー!」

「な、なのはが、小学生のなのはが高校生の私より(性的に)先に進んでいたなんて!?」

 

割り込んできた騎士(ナイト)君の言葉で状況が悪化してしまいました!?

騎士(ナイト)君の発言とお姉ちゃんが考えている内容は絶対に違うのがわかります。

 

というか、お姉ちゃん!

動揺しながら携帯で写真撮るの止めて!?

 

「広めなきゃ!これは皆に広めなきゃ!?」

「待って!お願いだからなのはの言い分を聞いてええええええええ!?」

 

外へ出て行くお姉ちゃんを追いかける為、私は必死に走り出しました。

魔法を行使してようやく追い着いた私は必死に弁解して何とか誤解を解くことに成功しました。

 

道場に戻った時には騎士(ナイト)君は下半身にあった青痣を自分で治療した後でした。

 

帰ってきた私に「お帰り」と親指を立てながら良い笑顔をする騎士(ナイト)君にイラッとして、青痣がある部分を思いっきり叩いた私は悪くないと思います。




いかがでしたでしょうか?

今回は、なのはの回でした。
さりげなく騎士君が遠征で大活躍してます。

その話を書こうと思ってましたが、下手したら2〜3話じゃ済まないくらい費やすそうなので断念しました。

そんな訳で楽しんで頂けたでしょうか?
このペースを保っていけるように頑張りますので応援して頂けると幸いです!

ついでに、感想・評価をして頂けるとさらに頑張れると思いますのでよろしくお願いします!


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第29話『未来の為にベストを尽くせ!』

少し早く書けたので更新します!

ぶっちゃけツッコミ所満載ですが(今更感

それでも楽しんで読んで頂けると幸いです!

それではどうぞ!


「暇だから遊びに来たぞー」

「いらっしゃーい。って、騎士(ナイト)君。アースラはそんな簡単に遊びに来れる所じゃないんやけど・・・」

 

俺、騎士(ナイト)はアースラっていう宇宙船?で拘束扱いになっているはやて達に会いに来た。

出迎えてくれたはやては微妙な顔をされるが、艦長であるリンディさんからは「いつでもいらっしゃい」と許可をもらってあるから問題はない。

 

「遊びに来たはいいけど、ここってなんか遊ぶ物とかある?一応サッカーボールは持ってきたんだけど?」

「まだ足が治っていない自分に対する嫌がらせか!どんだけサッカーが好きなんや・・・」

 

溜息を吐いて呆れるはやて。

そんなつもりはないんだけどな。

 

「でも実際どうしてんだ?」

「私は本を読んだりして時間を潰してるな。シグナム達は基本トレーニングルームで訓練や。それ以外だと皆でテレビを見たりしとるで」

「テレビとかあるのか。それって地球の番組?」

「そうやね。エイミィさんが気を使ってくれて見れるようにしてくれたんよ」

 

なのはやフェイトが言っていた通りここの人たちはとても良い人達のようだ。

 

「ここが今私達が住んでいる部屋や」

「住んでるんじゃなくて監禁じゃなかったっけ?」

「名目上なー」

 

入ってみるととても広くてはやて達全員が寝転んでも全然余裕がある。

それにソファーやテーブルにテレビと快適に暮らせそうな用具が色々と置いてある。

 

騎士(ナイト)。良く来たな」

「よっ、ザフィーラ!今日は狼形態なんだな」

 

ソファー近くにいたザフィーラが俺達に気づいて挨拶をしてくれてた。

 

サプライズをされた日。

ザフィーラが狼(犬と思ってた)から人間の姿にもなれると教えてくれた。

実際にその光景を見せてもらったときは凄く驚いたものだ。

 

「ああ。この姿の方がお前も見慣れているだろうからな」

「確かにね。ありがとう、ザフィーラ」

 

そこまで気を使わなくても良かったんだけど俺の為に考えてくれたのは素直に嬉しいな。

 

「なあなあ、ザフィーラ。リインフォースやシグナム達はどうしたん?」

「シグナムとヴィータはトレーニングルームで己を研鑽し、シャマルは医療班と雑談すると出て行きました。そして、リインフォースは騎士(ナイト)の後ろに」

「え?うおっ!?」

「良く来てくれた騎士(ナイト)!」

 

ザフィーラの言葉で俺が振り向くよりも早く誰かに脇の下から腕を通され持ち上げられてしまう。

誰がこんな事をしたのかなんてすぐに分かる。

リインフォースさんだ。

 

「やあ、リインフォースさん。後ろから近づいて抱きつくのは止めてほしいんだけど・・・」

「別にいいじゃないか。君とこうして触れ合うのが私にとって1つの楽しみなんだ」

 

見えないがニコニコ笑顔だろうリインフォースさんは俺を人形みたいに抱くのが気に入ってしまったようで隙あれば抱きついてくる。

背後からいきなり抱きついてくるのは心臓に悪いから勘弁してほしい。

 

「今日ははやて達と遊びに来たんだ。とりあえずサッカーでもするか?」

「だから私が一緒に遊べないやんか!それにサッカーするにしてもこの部屋じゃダメ!」

「ならトレーニング室に行くのはどうだ、騎士(ナイト)?あそこなら広いし、烈火の将と紅の鉄騎がいるはずだ」

 

烈火の将と紅の鉄騎?

誰の事だろう?

 

騎士(ナイト)君。烈火の将がシグナムで紅の鉄騎がヴィータやで」

 

俺が首を傾げているのを見てはやてが俺が疑問に思ってたことを教えてくれる。

格好良い呼び方だけどなんか堅苦しいな。

 

「リインフォースさん。その呼び方止めない?シグナムさん達から何も言われないの?」

「いや、特に言われてないな。何か問題がある訳でもないし良いと思っているが?」

「リインフォース。ちょうど良い機会やし、その呼び方止めにしよか。私も気になってたんや」

「しかし・・・」

 

困惑した様子のリインフォースさん。

まあ急に呼び方を変えるのは違和感があるかもだけど今後の為に我慢してもらおう。

 

「嫌なら俺はリインフォースさんの事を祝福の風さんって呼ぶ事にする」

「分かった。騎士達の呼称を改める事にしよう」

 

即断だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおっ!!」

「はああああああああっ!!」

 

あたし、ヴィータはシグナムと模擬戦をやっている。

かなり激しくなっているが多少なら問題はないらしい。

旧ベルカ式の魔法を使うあたし達の戦闘データを取りたいからだそうだ。

 

あたし達の戦闘データで少しでも役に立つなら良いんだ。

それで、はやての罪滅ぼしになるなら・・・。

 

「おーい!シグナムさん!ヴィータ!」

騎士(ナイト)か。ヴィータ。少し休憩にしよう」

「お、おう・・・」

 

模擬戦中に声をかけてきたのは騎士(ナイト)だった。

何故かリインフォースに抱きかかえられているが気にした様子もなく、あたし達に手を振っている。

 

あたしとシグナムは休憩もかねて騎士(ナイト)達がいる所へと向かった。

 

「シグナムさん、ヴィータ。遊びに来たから遊ぼうぜ!」

「別に構わないが何故お前はリインフォースに抱えられているんだ?」

「どうしてもってお願いされたんです。リインフォースさん、そろそろ下ろして」

「分かった」

 

リインフォースから解放された騎士(ナイト)はあたしの前までやってきた。

って、なんであたし?

 

「ヴィータ、サッカーしようぜ!」

「え?あ、おい!引っ張るな!」

 

騎士(ナイト)があたしの手を掴んで無理矢理連れて行かれる。

そういえば、会って間もない時もこんな風に強引だったよな・・・。

 

「久しぶりにシュート練しようぜ!」

「いやいや!ゴールがねえから無理だろ!」

「大丈夫だ!黒いスプレー缶持ってきた!これで壁にゴールを作れる!」

「させるか!?リンディ提督やクロノに怒られるだろ!」

 

こいつってなんでサッカーの事になると見境がなくなるんだ?

 

「そんな時はこのシャマルにお任せ!」

「シャマルさん!」

「お前どこから出てきた!?」

 

確かにさっきまで居なかったよな!?

 

「細かい事は気にしない!私のデバイス『クラールヴィント』を使えば―――」

 

シャマルは伸縮自在のクラールヴィントであっという間に模造ゴール(ネット付)を作り上げた。

 

「シャマルさん、スッゲー!」

「そうでしょ!この日の為にと練習してたんだから!」

「いつから練習してたんだよ!?」

 

くっそう!

さっきからツッコミしてばかりじゃねえか!

騎士(ナイト)は喜んでゴール前に行っちまいやがったし!

 

「さあ、打ってきな!久しぶりだろうから真直ぐボールが飛ぶかな?」

「・・・ああ?舐めんじゃねえ!今日こそお前からゴールを奪ってやる」

 

あたしはシュートを打ち続けた。

それを騎士(ナイト)は余裕そうに受け止めている。

あいつってあんなに上手かったのか?

少し前まではもっとシュートを決めていたのに・・・。

 

「ヴィータ!そんな軽いシュートじゃ決まらないぞ!なんか不安や悩みでもあるのか?」

「不安、悩み・・・」

 

ないといえば嘘になる。

あたし達の今後についてだ。

はやての為とはいえ、あたし達は色んな人たちに迷惑をかけた。

 

その罪滅ぼしとして、はやては管理局に勤める事を心に決めている。

はやてがそう決めたのならあたし達はそれに着いて行く。

 

でもはやての決めた道はとても大変なものになるだろうとあたしを含めた騎士達は全員思っている。

昔の記憶から考えるに、犯罪者というレッテルが貼られたはやてに嫌がらせが殺到するだろう。

 

それからはやてを守ることが出来るのだろうか?

あたしは不安でしょうがない。

 

「よく分からないけどベストを尽くせ!」

「ベストを尽くせ?」

「海外遠征の時監督が言ってたんだ。1つのことを気にかけて全てを疎かにするなって。だったら全て全力で挑む!結果がどうあれベストを尽くさないと後に残るは後悔しかない。その悩みもベストを尽くせば問題ない!だから何も気にしないで全力でシュートを打って来い!」

 

ベストを尽くしたってどうにもならない事なんていくらでもある。

私はそれを知っているけど、騎士(ナイト)の言葉に胸が熱くなった。

 

騎士(ナイト)に影響されて変になっちまったのかもな。

でも悪くない・・・。

 

「上等だ!これでも喰らえ!」

「ん?ヴィータの足が光ってる?」

「ラケーテン、ハンマー!!」

「速い!でも正面だ!」

 

あたしは全力でボールを振りぬいた。

真直ぐに飛んでいくボールは騎士(ナイト)の真正面で抱え込むようにしてキャッチを試みる騎士(ナイト)だけど―――

 

「お、重っ、うわああああああああああああっ!!??」

 

騎士(ナイト)はボールごとゴールネットへと突き刺さった。

当たり前だ。

鉄槌の騎士であるあたしの全力を乗せたシュートだからな。

 

「お、おい。ヴィータ。今のはやり過ぎじゃないか?」

「リインフォース、いつもの紅の鉄騎って呼ばないんだな?そっちの方が楽だから良いんだけど」

騎士(ナイト)にお願いされてな。って、そうじゃない!デバイスでないとはいえシュートに魔法を使うのはどうかと思うぞ!」

 

怒った顔でそういうリインフォース。

こいつがそういう顔見せたのは初めてだ。

最近分かったけど騎士(ナイト)の事になると感情豊かになるんだよな。

 

騎士(ナイト)が全力でって言ったんだから問題ないだろ」

「だからって―――」

「うおおおおおおおっ!すっげええええええ!!」

 

騎士(ナイト)の歓喜の声。

見てみるとゴールから出て嬉しそうにこっちを見ている騎士(ナイト)

見た感じ怪我はなさそうだ。

 

「なんだよ、ヴィータ!そんなすっげぇシュート打てるなんて聞いてねえぞ!」

「まあ、あたしも初めてあんなシュート打ったから当然だろ」

「な、騎士(ナイト)、怪我はないか?魔法で放たれたシュートだったんだが・・・」

 

リインフォースが心配そうな表情で騎士(ナイト)の周りをうろうろしている。

怪我がないか確認しているようだがパッと見で大丈夫だって分かると思うんだけど・・・。

 

「大丈夫だよ!というか魔法でシュートする事も出来るんだな!すっげえ!」

「無事なら良いんだが・・・」

「ヴィータ!さっきのもう一回やってくれよ!次こそは止めてやるから!」

 

わくわくした顔であたしを見る騎士(ナイト)

しょうがねえ。

期待には応えてやらねえとな。

 

「止められるものなら止めてみな!あたしのは全力はこんなもんじゃねえぞ!」

 

これから悩みや不安は沢山ある。

でも、今みたいに全力でベストを尽くしていくしかないんだ。

だから、あたしは後悔のない様に生きていこう。

それが今出来るあたしのベストなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやった、ヴィータ?騎士(ナイト)君とのサッカーは楽しかった?」

「うん!とても楽しかった!」

 

こんにちは、八神はやてです。

今日は騎士(ナイト)君が遊びに来てついさっきまでヴィータとサッカーやってたんやけど、そのヴィータに感想を聞いたらとても嬉しそうに答えてくれた。

 

最近のヴィータは思い詰めている様子だったから心配してたんやけど騎士(ナイト)君とのサッカーのおかげで吹っ切れたようやね。

良かった良かった。

 

「はやて。ヴィータ。ここにいたのか」

「あっ、クロノ君!どうしたん?何か用?」

 

アースラに所属する執務官クロノ君がやってきた。

今日は取り調べみたいな用事はなかったと思うんやけど。

 

「いやなに、彼がアースラに来てると聞いて挨拶でもと思ったんだが?」

「あー、騎士(ナイト)君なら・・・」

「ん?」

 

私は視線を部屋の中心へと向ける。

そこには竹刀を持って向き合う騎士(ナイト)君とシグナムの姿があった。

 

『シグナムさん。俺さっき全身青痣だらけで満足に動けないから稽古はなしでってお願いしたはずなのですが?』

『ああ。だが、それはそれで良い機会だ。満足に動けない身体で敵と戦う時、どう動かせば影響なく戦う事が出来るのかを学べ!』

 

シグナムの無茶振りが来たなー。

あの子は騎士(ナイト)君をどういう方面に育てようとしているのかわからへん。

 

『そんな無茶苦茶な!?そもそも敵と戦うなんて俺の日常じゃありえませんよ!』

『その怪我した状態でヴィータとサッカーしてた奴が何を言うか!ごちゃごちゃ言わず始めるぞ』

『うぐぐぐ』

 

サッカーの事言われて反論出来なくなってしまった騎士(ナイト)君。

騎士(ナイト)君はサッカーの事になればどんな状態であろうとやろうとするからなー。

 

「はやて。あの2人の周りに居るシャマルとリインフォースは何をしているんだ?」

「応援しているようなんやけど・・・」

騎士(ナイト)君!怪我しても私が治してあげるから頑張ってね!』

『と、止めるべきだろうか?だが、シグナムがこれも騎士(ナイト)の為だと言ってたし・・・』

 

騎士(ナイト)を応援するシャマルにその隣でハラハラと心配そうにしているリインフォース。

そんな光景に私はつい笑ってしまう。

 

「あの慌てよう。闇の書事件で圧倒的な強さを見せた彼女の姿は感じられないな」

「せやね」

『こうなれば自棄だ!かかって来いやあ!』

『良い気合だ。軽めで済ませようと思ったが気が変わった。本気で行くぞ』

『・・・え?』

『はあああああああっ!』

『いやああああああっ!?』

 

「はははっ。楽しいなあ・・・」

 

シグナムの猛攻から逃げ惑う騎士(ナイト)君を見て私はまた笑いそう呟いた。

これが私が望んだ幸せな日常なのかもしれん。

 

この日常がいつまでも続くように頑張ろう。

私の家族や壊れかけた日常を救ってくれた騎士様の為にも、私は頑張る。

 

私は改めて心に刻んだ。




八神家のお話でした!

アースラ内部とかよく分からないけど、そんな部屋とかあったらいいなぁって感じで書きました!
なんだかんだで本局言ってるからアースラ内のお話見ないんですよね、、、

そして、リインフォースの口調が難しい!
イノセントのアインスが好きな作者からすると間違ってそっちにしてしまわないか心配だったりします汗

と言うわけで楽しんで頂けたでしょうか?

次も早く更新出来るように頑張りますのでよろしくお願いします!

皆さんの感想や評価は作者の元気の源です!
感想・評価お待ちしてます!

そして、誤字報告をしてくれてる皆さん。
毎度すみません!助かっております!
本当にありがとうございます!


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第30話『衝撃的な水色』

なんだかんだで30話になりました!

ここまで長かったなぁ、、、

それなのに、いつもより短くなってしまいました。
すみません!

楽しんで読んで頂けたら幸いです!


「ここなら大丈夫よね!」

「うん!大丈夫だと思うよ!」

「・・・えっと何が?」

 

冬休み残りわずかで新学期もうすぐ始まるって日に、俺、騎士(ナイト)はアリサとすずかと共に何故か山奥にいた。

 

「何がって、特訓よ。特訓!」

「特訓?」

「魔法のだよ。騎士(ナイト)君のおかげで私とアリサちゃんは魔法が使えるようになったからもっと使いこなせるようになりたくて特訓しようって事になったんだよ」

 

なるほどね。

俺のおかげと言われても全く自覚が持てないから何ともいえないんだけどさ。

 

「まあ、アリサに魔法の特訓を付き合う約束をしてたから良いんだけど、なんで山奥なのさ?」

「人目に付かない為よ」

「でもさ、ユーノから聞いたけど、結界みたいなの張ればどこでも良いんじゃないのか?」

「そうなんだけど、今回はその結界を貼る練習も兼ねているの」

 

そういうことね。

結界が出来ないんじゃあ人目がある所で魔法は使えないもんな。

 

「そもそも、なのはとユーノは呼べば良かったんじゃ?」

「ダメよ!私達が華麗に魔法を操る姿を見せて驚かせてやるんだから!それじゃあ、すずか、結界お願いね!」

「うん!行くよ、スノーホワイト!」

【了解です】

 

すずかがポケットから取り出した紺色の宝石スノーホワイトから女性の声が聞こえる。

確か、インテルジェンデバイス?

 

なんか違うな・・・。

よく覚えてないけど、人工知能を搭載しているとかで挨拶や返事をしてくれるらしい。

 

「・・・うん!結界張り終わったよ!」

「え?特に何か変わったような気がしないんだけど・・・」

 

俺は辺りを見渡すが何かが変わったようには感じない。

そういうものなのか?

 

「それじゃあ、バリアジャケットを展開するわよ!フレイムアイズ!」

「スノーホワイト!」

『セットアップ!』

 

アリサとすずかが掛け声と同時に光りだす。

暫くして光が弾けると変身した2人の姿。

日曜朝にやっている変身とは少し違うな。

 

「ちゃんと出来たわね!」

「うん!クリスマス以来だったから少し緊張しちゃった!」

 

変身出来たのが嬉しいのか自分の姿を見渡しながらはしゃいでいる。

 

「それで?特訓ってなにすんだよ?」

「ちょっと騎士(ナイト)。あんた、私達の姿を見てなんも思わないわけ?」

「ナ、騎士(ナイト)君、どうかな?」

 

そう言いながらジト目で俺を睨んでくるアリサ。

すずかは恥ずかしそうにしながら俺に何かの感想を聞いてくる。

 

「んー、その格好、日曜朝にやってるのに似てるな!」

「そういう感想を聞いてんじゃないわよ!」

 

アリサの感情に連動しているのか、右手で握る剣から火が出始める。

やばい。

下手な感想を言えばあれで斬りかかってくるかもしれない。

 

 

「えっと、よく似合ってると思うぜ!可愛い!超可愛い!」

「な、何言ってんのよ!このバカ!」

「あの、その、あ、ありがとう騎士(ナイト)君・・・」

 

褒めても怒鳴ってくるアリサと恥ずかしそうにお礼を言ってくるすずか。

まあ、襲ってこないから間違いではないっぽい。

 

「で、だ。特訓って何をやるんだ?」

「そ、そうね!なのはが言うに初期登録されている魔法から練習していくべきだって言ってたわ。すずか、盾だして」

「うん!」

 

アリサに何かをお願いされたすずかは何もない方向に掌を向ける。

すると、少し離れた場所から氷が現れたと思うと、あっという間に俺がまるっと隠れてしまうくらいの大きな氷が現れた。

妙に薄いけど盾と言ってたし、かなり頑丈なんだろうな。

 

「あれが、すずかの初期登録されていた魔法。分類的には防御魔法で、すずかはそっちの適正が高いそうなの。それで、私のは、それっ!」

 

アリサが氷の盾の方を向いたと思ったらその場で剣を振り抜く。

すると剣から炎が飛び出して一直線に氷の盾へと向かっていく。

 

炎の斬撃が氷の盾にぶつかると凄い音が鳴り響いた。

氷の盾は粉砕されたようで跡形もなくなっている。

 

「私はこの攻撃魔法が初期魔法として登録されているわ」

「す、すげえ・・・。つか、今でも十分に使いこなしてるんじゃねえの?普通に魔法使ってたし」

「それがそうでもないのよ。フレイムアイズが言うにはこの魔法は一振りで複数の斬撃が飛ばせるらしいの。そうよね?」

『ああ。お嬢の練習次第でそうなるぞ。数だけじゃなく、威力やスピードも自由自在に出来れば一人前だ』

 

アリサの剣から男性っぽい声が聞こえる。

それがフレイムアイズの声らしい。

 

「という事は、すずかの場合は盾の数や大きさ、作る速度に強度が自由自在に出来れば良いって訳か」

『その通りでございます。旦那様』

 

俺が憶測を言うとスノーホワイトが肯定してくれる。

当たったのは嬉しいがその『旦那様』は止めてほしい。

フレイムアイズも何故か俺のことを『旦那』って呼ぶんだよな。

 

2人、いや2機か。

2機がそれを言うと片方が恥ずかしそうになったと思ったら片方が機嫌を悪くするんだ。

同時に言えば両方黙っちゃうけどそれはそれで面倒なんだよな・・・。

 

騎士(ナイト)!早く特訓を開始するわよ!」

「わ、分かったよ。というか俺は何を手伝えばいいんだ?」

「え?それは・・・」

「えっと・・・」

 

ん?

アリサとすずかが微妙な顔をしているぞ?

 

騎士(ナイト)君は私達の魔法が当たらない安全な場所で待機、かな?」

「それってなにもないって事だよね!?」

「しょ、しょうがないじゃない!騎士(ナイト)はその場にいるだけで役に立つってことで納得しなさい!」

 

確かに2人のデバイスは俺の溢れ出てる魔力で充電して使用可能になるのだから近くにいるだけで魔法は使いたい放題って訳だ。

だからって、このまま何もしないで2人の魔法を見ているだけは流石に辛いぞ?

 

「まあ、仕方ないか・・・。サッカーボールとか持って来れば良かったぜ」

「氷で作ったボールなら作れるよ」

「いや、それ絶対途中で割れたり融けたりしちゃうだろ!」

「それじゃあ炎の―――」

「蹴れるか!たくっ、俺は適当に辺りを探索してるよ」

 

せっかくの山奥だ。

なんか面白いものが落ちているかもしれない。

 

「うん。ごめんね、騎士(ナイト)君」

「拾い食いして腹壊すんじゃないわよー」

「しねえよ!!」

 

まったく。

アリサの奴は俺をなんだと思ってやがるんだ!

拾い食いなんて小学生に入る前に卒業してんだよ!

 

最後に拾い食いをした時はあまりの腹痛で救急車に搬送されてからはもうやってない。

というかあの腹痛はもう二度と体験したくないわ。

 

「さてと、そこそこ歩いたけど―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウウウウウウウウウウウッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ?この呻き声みたいなのは・・・」

 

不意に聞こえた音に俺は周辺を見渡すが誰も居ない。

なにが起こっているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちから聞こえる。行ってみるか」

 

耳を澄ましてどこから聞こえるのか分かった俺はその方向へと歩いていく。

どんどん音は大きくなっていく。

そして、少し歩いて俺の目の前にある茂みの先にその音の原因がある。

 

「よし・・・」

 

俺は意を決して茂みの先を確認した。

その先にあるものは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うううううっ、お腹が、お腹が痛い~。ううううううううっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

なんかいた。

いや、人なんだけどさ。

 

顔は見えないけど水色の髪で背中にはマントを付けている俺と同じくらいの子供が蹲っていた。

お腹を抱くようにしているからお腹が痛いのだろう。

さっきの音はあの子供の呻き声だったようだ。

 

流石に放っとく訳にはいかないよな・・・。

 

「おい。大丈夫か?」

「うううっ、お腹が痛い~」

「なんでお腹が痛いんだ?」

「生えてたキノコを一口食べたら急に痛くなって・・・」

 

生えてたキノコ?

もしかしなくてもこの子供の側に転がっている食いかけがそうなんだろう。

 

「こんな水色なキノコを良く食べようと思ったな・・・」

「水色は・・・正義・・・だから・・・」

 

水色は俺も好きだけど、キノコだと状況が変わってくるぞ。

 

「原因はそのキノコで間違いない。食べたのはついさっきか?」

「うん・・・」

「それじゃあ、そのキノコを吐き出そう。出来るか?」

「出来、ない・・・」

「出来なくてもやらないと当分そのままだぞ。汚いやり方だけど教えるから頑張れ」

「わ、分かった・・・」

 

そうして、俺が吐き方を教えてなんとかキノコは出すことが出来た。

 

「お前のおかげでお腹が痛くなくなったぞ!ありがとー!」

「ああ・・・」

 

元気になって良かったのだが、俺はそれよりも気にかかることがある。

 

「お前ってフェイトとアリシアの知り合い?」

「ヘイト?アリシア?誰それ?」

 

お前と顔が瓜二つな人のことだよ。

ただの勘だけど、こいつ嘘は吐いていないと思うんだよな。

 

「まあいいや。俺は橘騎士(ナイト)って言うんだ。お前は?」

「僕?ふふふっ、聞いて驚け!僕の名は・・・・・・・・・なんだっけ?」

 

分からないんかい!?

意味深な笑みに仁王立ちまでしておきながら分からないってどういう事だよ!

緊張して聞いてた俺がバカみたいじゃないか!

 

「なんかここまで来てるんだけどどうも思い出せないなー。そうだ!また喉に指を突っ込めば出てくるかも!」

「止めろ!出てくるのは胃の中身ぐらいだ!」

 

教えた俺が言うのもなんだが、女の子がそういう事をする姿は見たくない。

 

「もしかして復活したばかりだから記憶がおかしいのかも」

「復活したばかり?」

「うん。・・・そろそろ行かないといけないや」

 

急に真剣な表情になって空を見る女の子。

俺も同じように見るが何もない。

ただ彼女のように水色の空が広がっているだけだ。

 

「どこに行くんだ?」

「分からないけど・・・僕の中にある何かが何かに引き寄せられてる。だから行く」

「そっか・・・気をつけてな」

 

俺はこいつを止める理由がない。

でも、フェイトやアリシアと瓜二つの顔だから気になってしまう。

 

「うん!君の名前は騎士(ナイト)、だったよね?僕を助けてくれたからお礼をしてあげよう!」

「お礼?いや、別に大した事じゃないから平気―――」

「ちゅっ」

 

・・・え?

この子は今、俺に何をした?

 

いつの間にか俺の横にいて無邪気な笑顔をしている女の子。

そして、俺の頬には柔らかい何かの感覚が未だに残っている。

 

「えへへっ、この僕のキスは凄く貴重だぞ!光栄に思うんだぞ!じゃあ、またね!」

「・・・・・・」

 

女の子はそういって空へと飛んでいった。

その姿は雷が落ちるかのようにあっという間に消えてしまった。

 

誰も居ない空を俺はアリサとすずかが心配してやってくるまで眺め続けていたのであった。




今回はアリサ・すずかの説明会と水色の初登場でした。

ちなみにBOAはこの話でしかやりませんのでよろしくです!

次はもっと早く更新出来るように頑張りたいです、、、

毎回感想や評価、誤字報告をしてくれる読者の皆様、本当にありがとうございます!
引き続き、作者の元気の源である感想と評価お待ちしてます!


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第31話『ドッジと罰ゲームと秘密の告白』

更新しました!

朝早く起きたら二度寝出来ず、書いてたら出来たのでそのままアップしちゃいました!

楽しく読んで頂けたら幸いです!


こんにちは、フェイト・テスタロッサです。

 

冬休みが終わって新学期になりました。

皆、変わりなく元気な姿で登校しています。

 

でも、一人だけ様子がおかしい人がいるんです。

 

「あっ!騎士(ナイト)、おはよう!」

「お、おうフェイト。おはよう・・・」

 

私や私の家族の恩人橘騎士(ナイト)の様子がおかしいのだ。

今みたいに挨拶をしても挙動不審になるし、お話をしている時はあまり目を合わしてくれない。

 

「悪い、フェイト。俺、今日、日直だから先行くな?」

「あ、うん・・・」

 

それに何故か私と距離を離そうとしているような気がする。

少し前まではそんな事なかったのに一体どうしたんだろう・・・。

なのは達に相談してみよう。

 

騎士(ナイト)が?私の時はそんな事はないけど・・・」

「私も。なのはちゃんは?」

「なのはもいつも通りだよ」

 

なのは達には変わった様子は見せていない・・・。

姉さんや神崎はどうだろう?

 

「えっと、どっちかというと私の方がそんな感じになっているからなんともいえない・・・」

「え?姉さんが?どうして?」

「それは、その、出来れば聞かないで・・・もう少しで落ち着く筈だから」

 

姉さんから顔を真っ赤にしてそう言われてしまったので私はそれ以上何も聞かなかった。

 

「一応、聞いてはいるが・・・教えないぞ」

「えっ!どうして!?」

「本人から誰にも言うなと言われているからでもあるが、俺も思い出したくないからだ・・・。思い出すと俺は騎士(ナイト)を襲いたくなる!」

 

神崎の鬼のような形相に私はこれ以上聞くのは無駄だと判断した。

神崎が怒るようなことに私が関わっているみたいなんだけど、私にはよく分からなかった。

 

「どうしよう・・・私、騎士(ナイト)に嫌われちゃったのかな・・・」

「そんな訳ないよ!騎士(ナイト)君が何もなしに人を嫌いになる訳ない!」

「ええ。なのはの言う通りよ。こうなったら私が無理矢理にでも問いただしてやるわ」

「待って、アリサちゃん」

 

なのはが慰めてくれて、アリサが怒りながら騎士(ナイト)の元へと向かおうとする。

そんなアリサをすずかが止めます。

 

「なによ、すずか?あいつの肩を持つつもりなの?」

「そういう訳じゃないけど私に考えがあるの」

「考え?」

 

すずかの考えを聞いた私達はそれを実行することに決めました。

待っててね、騎士(ナイト)

貴方がどうして私を避けるのかしっかりお話してもらうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騎士(ナイト)!勝負よ!」

「勝負?」

 

いきなりだが、俺、騎士(ナイト)はアリサに勝負を挑まれた。

事情を簡単に説明すると、

 

俺のクラスの担任が体調不良で早退。

先生不在の為、別クラスの授業に混ざる。

そのクラスはアリサ達のクラスで授業は体育。

ボールを持ったアリサに勝負を挑まれる。←今ここ

 

 

何で俺がアリサに勝負を挑まれたかは分からないが、勝負を挑まれたからには逃げる訳にはいかねえな。

 

「いいぜ?何するんだよ?サッカーか?」

「なわけないでしょ!私が持ってるもので察しなさいよ!」

 

やっぱり?

アリサの持っているボールはドッジボールで使う柔らかめのボールだ。

もう何で勝負するのかは分かったが、アリサがただで勝負するとは思えない。

 

「何か罰ゲームとかあるのか?」

「勿論!負けた方のクラスが用具の片付けをしてもらうわ」

「用具と言っても出てるのはボール入れとライン引きだけだからそんなに負担はないか・・・まさか個人的な罰ゲームが・・・」

 

アリサの条件があまりにも軽いことにおかしいと思った俺はアリサを見たらニヤニヤしながら俺を見ている。

なるほど、狙いは最初から俺だった訳だ。

 

「その通りよ。騎士(ナイト)には個人的な罰ゲームを私達が準備してるわ。覚悟しなさい!」

「私達?」

 

ふとアリサの背後を見たら、すずか、なのは、フェイトの3人がいた。

もしかして、負けたらアリサ含めて4人から罰ゲームを受けなきゃいけねえのか?

 

「ねえ、すずかちゃん。元々の予定はそういうのじゃなかったよね」

「うん・・・」

「流石に騎士(ナイト)に申し訳ないよ・・・」

 

あ、でも3人は困った顔をしているからそこまで乗り気ではないのかもしれない。

 

「おい、アリサ。俺に罰ゲームがあるって事はアリサ達にも罰ゲームがあるって事で良いんだよな?」

「え、ええ、そうよ」

「お前が勝手に決めて、もし負けた時、後ろの3人を巻き込むのは酷いんじゃないか?」

「そ、それはそうだけど・・・」

 

よしよし。

良い感じに流れが変わってきた。

このまま行けば罰ゲームは1人分で済むぞ。

 

「それに罰ゲームなんだ。皆が嫌がることを俺は平気でやるぞ」

「あ、あんた、一体何をするつもりなのよ!」

「え?あー、そうだなー」

 

脅しだけのつもりだったから罰ゲームの内容なんて考えてないぞ。

まあ、適当に言っておくか。

 

「すずかには、一週間毎朝俺を起こしに来ることだ!俺より早く起きないといけないから大変だろうな!」

「ええ!?」

「なのはには、一週間俺に弁当を作ってきてもらおう。朝早くに起きて準備しないといけないから大変だろうな!」

「ふえっ!?」

「フェイトには、俺の自主練習に付き合ってもらうぜ。俺が満足するまで帰さないぞ!」

「ええ!?」

 

よしよし。

皆俺の嫌がるだろう罰ゲームに驚いてる。

このままアリサにも嫌な罰ゲームを言ってやる気を失くしてやろう。

 

「そしてアリサ!お前には、俺がアリサの家に遊びに来る度にベッドを使わせてもらうぜ!お気に入りのベッドを好き勝手使われるのは嫌だろうな!」

「・・・・・・」

 

アリサが黙り込んだ。

これはもしかしなくてもやったんじゃないか?

俺の完全勝利で罰ゲームを回避―――

 

「確かに酷い罰ゲームだわ・・・。でも受けて立とうじゃない!」

 

出来なかった。

アリサは仁王立ちをしながら承諾しやがった。

こいつ、男の俺よりも格好良いじゃねえか!

 

「でも、すずか達は許してくれないかしら?これはあくまで私と騎士(ナイト)の勝負という事にしましょう」

 

よし。

アリサはダメだったが他の3人は無しになったぞ!

 

「別に構わな―――」

「ちょっと待って!」

 

アリサの提案を承諾しようとしたら、すずかが待ったをかけてきた。

どうしたんだ?

 

「私達もその罰ゲームで構わないから勝負を受けます!」

「うん!絶対負けないなの!」

「罰ゲームが嫌で逃げるなんて私はしたくない!」

 

なん、だと・・・。

まさかのすずか達まで勝負を受けるなんて・・・。

アリサが勝手に言い出した事なのに・・・。

 

「アリサちゃん。さりげない抜け駆けは酷いと思うよ」

「な、何のことかしら?」

 

なんかすずかに言い寄られてるアリサ。

ああいう光景はなんか珍しい。

 

まあ、そんな事はどうでもいい。

残念だが罰ゲームを減らすことは出来なかったが、用は勝てばいいのだ。

 

「上等だ!負けて罰ゲームになっても後悔すんなよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗ドッジボールが始まって10分後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかやるじゃないか、アリサ。褒めてやるぜ!」

 

俺はボールを持つアリサに賞賛の言葉を送った。

俺以外の奴らからも狙われていたがよく生き残ったものだ。

 

「・・・そんな状況で何であんたが上から目線なのよ」

 

ジト目でアリサに睨まれる。

そろそろ現実を見るか・・・。

 

現在の状況だが、

 

 ―――――――――

|         |

|         |

|    俺    |

|         |

|         |

 ―――――――――

|         |

| 和也 すずか  |

|  フェイト   |

| なのは アリサ |

|   他10人   |

 ―――――――――

 

まさに絶対絶命。

俺のクラス、弱すぎじゃない?

というか、すずかとフェイトが規格外に強かった。

 

2人の投げるボールはとても鋭く、今のところは俺以外誰も取れずに餌食となった。

当たったボールをキャッチしてセーフにしたりもしたが、俺から遠い人を狙い始めてついには俺1人となってしまったのだ。

 

騎士(ナイト)。潔く諦めるのも悪くないわよ?」

「残念だけど俺は諦めの悪い男でね。最後の最後まで諦めたりしない!」

 

俺の言葉に外野から歓声が起こる。

そんな俺の様子にアリサは溜息を吐いた。

 

「分かってたけど、しょうがないわ。普通に勝負しても最後まで粘られろうだろうから奥の手を使わせてもらうわ」

「奥の手?」

 

アリサは、すずかにボールを渡した。

どうやら奥の手とはすずかにあるらしい。

 

「頼むわよ、すずか」

「うん」

 

すずかのボールは観察したが、ただ鋭くて重いボールを投げるだけではない。

ターゲットの手前で変化するのがやっかいなんだ。

 

「やあああっ!!」

 

すずかの剛速球が俺に襲い掛かってくる。

だが、どんなボールだろうとキャッチしてやるぜ!

 

『あー、騎士(ナイト)。聞こえるか?』

 

和也の声が俺の脳内に直接語りかけてくる。

確かこれは念話ってやつだったな。

最近、聞く事が出来るようになったけど俺から念話をする事が出来ないんだよね。

魔法の練習なんて一切してないし。

 

というかアリサの奴、これで俺の集中力を削ごうって魂胆か?

甘いな。

そんなんで俺の集中力を削ぐ事は出来ないぜ!

 

『お前に謝らなければいけない事がある。頬にキスされた件、フェイトに言っちまった』

 

・・・・・・はあ!?

和也!?

それは誰にも言うなって約束したじゃんか!

それに、よりにもよってフェイトに言うとかどういう了見だ!

 

『すまん。嘘だ』

「え?あ、ぐほっ!?」

 

なるほど、そういう事か。

和也はアリサになんでも良いから俺の気が削がれる事を言うように指示されたんだろう。

 

それで和也が思いついた内容がそれだった訳だ。

見事に気を削がれてしまった俺は、腹下に投げられ上へと軌道を変えたすずかの剛速球に対応出来ず、胸元へ当りそのまま顎へクリーンヒット。

 

ボールは地面へ落ち、俺も地面へ崩れ落ちた。

俺のクラスの敗北と罰ゲームが決定してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、くっそう。まさかジャンケンで1人負けするとは・・・」

「・・・来た!」

 

私、フェイト・テスタロッサは体育倉庫の中で隠れています。

騎士(ナイト)の愚痴に足音が1つしかない事から、騎士(ナイト)は1人である事が分かる。

 

ここまでが、すずかが立てた計画だった。

 

ドッジボールに勝利して罰ゲームの片付けを騎士(ナイト)1人にやらせるように仕向ける。

ジャンケンだってアリサが、騎士(ナイト)が最初で出すだろう手を他の皆に教えていたりと裏工作を行なった。

 

これで、ボールのかごを片付けに来た騎士(ナイト)とお話しすることが出来る。

 

「ふう。これで片付け完了だ」

「・・・よし!」

 

奥まで入ったのを確認した私は覚悟を決めて物陰から飛び出ます。

扉の前に立ち、閉めるのも忘れません。

騎士(ナイト)が逃げないようにする為の行動です。

 

「び、びっくりした。フェイトか、どうしたんだ?」

「ご、ごめんね、騎士(ナイト)騎士(ナイト)にどうしても聞きたいことがあるんだ」

 

いきなり閉まったことに驚いていましたが、私の姿を見てホッとしている騎士(ナイト)

私は申し訳ないと思いながらすぐに本題に入ることにした。

 

騎士(ナイト)。最近私のこと避けてるよね?どうしてなの?」

「え?あ、いや、それは・・・」

 

とても言い辛そうにする騎士(ナイト)

こんな騎士(ナイト)はとても珍しい。

 

そんな騎士(ナイト)を見て私はとても心が苦しくなります。

それでも私は話を続けます。

 

騎士(ナイト)は私のことが嫌いになっちゃったの?」

「え?いや、そんな訳ないだろ!」

「それじゃあ、どうして避けてたの?教えてよ!」

 

騎士(ナイト)は違うというけど、優しいから嘘を吐いてる可能性もある。

私は騎士(ナイト)に詰め寄ります。

すると、騎士(ナイト)は何故かそっぽを向いてしまいます。

 

・・・そうか、そういうことなんだ。

騎士(ナイト)は私の顔を見たくないくらい、嫌いなんだ。

 

「・・・ごめん、騎士(ナイト)。私はもう極力騎士(ナイト)前には現れないようにするから」

「は?ちょ、待てよ!なんでそうなるんだよ!?」

「私のことが嫌いだから顔を背けたんだよね?ごめんね」

「違うって!分かった!ちゃんと話すから!」

 

騎士(ナイト)が凄く慌てた様子で私の肩を掴み、その場を去ろうとした私を止めます。

話すって何を?

 

「えっと、だな・・・は、恥ずかしかったんだよ!フェイトの顔を見ると思い出しちゃうから!」

「恥ずかしい?思い出すって何を?」

「・・・少し前に闇の欠片事件ってあっただろ?」

 

そう。

新学期が始まる少し前。

闇の書の闇を破壊したけど、その残骸が突如私達の姿を模倣して現れた闇の書の欠片を使い復活されそうになった。

 

無事、事件は解決したけど、それが騎士(ナイト)とどう関係しているのだろう?

 

「皆には言ってなかったけど、俺、フェイトに似た奴と会ってたんだ。髪が水色の奴」

「えっ!?」

 

私達の姿を模倣した闇の欠片は殆んどが過去の記憶に囚われた者ばかりだったが、3人ほど自分の意思を持った者もいたんだ。

その3人の内1人が騎士(ナイト)の言う私をベースにされた水色の髪をした子だった。

 

あの子が私達と会う前に騎士(ナイト)と会っていたなんて・・・。

 

「あの子が騎士(ナイト)に何をしたの?」

「えっと、その・・・。とても言い難いんだが・・・・・・キスをされた」

「・・・・・・・・・え?」

 

キスを・・・された?

私は騎士(ナイト)の言葉に頭の中が真っ白になっていく。

 

「色々あってその子を助けたんだけど、お礼にと言って頬にキスされたんだよ」

「・・・頬に」

 

少し落ち着きを取り戻す私。

これで唇だったらどうなってたんだろ・・・。

 

「思い返すととても恥ずかしくてさ・・・。フェイトと同じ顔だからフェイトを見るとその時を思い出して、ついあんな態度をとっちまったんだ。ごめん」

「う、ううん!だ、大丈夫だよ!」

 

予想外な理由だったが、私の事が嫌いになって避けているんじゃなくて本当に良かった。

でも、少し気になったことが出来た。

 

「でも姉さんにはそんな素振りは見せてなかったよね?」

「アリシア?確かにそんな意識する事はなかったな。でも水色はフェイトの姿だったし・・・。あっ、フェイトはアリシアのクローンだからある意味では同じなのか?」

「うん。そうだ・・・・・・え?今なんて言ったの?」

 

私は聞き間違いだと信じて騎士(ナイト)に聞き直した。

騎士(ナイト)が私のあれを知っている筈が―――。

 

「ん?フェイトはアリシアのクローンだからあの水色とある意味同じなのかなって」

「な、なんで私がアリシアのクローンだって知っているの!?」

 

聞き間違いじゃなかった。

いつかは話そうと思っていた私の秘密をどうして騎士(ナイト)が知っているの!?

 

「俺が魔法を知って数日後に和也が話してきた」

「神崎・・・」

 

私はこれほど人を憎いと思ったのは初めてかもしれない。

人の重大な成立ちをあっさり話すなんて信じられない。

背後から不意打ちでプラズマザンバーをしてやろうかな・・・。

 

騎士(ナイト)は・・・私がクローンだと知って何も思わなかったの?」

「何もってなにさ?」

「だって私、アリシアのクローンだし・・・」

「ん?んー?よく分からないけど、フェイトはフェイトだろ?アリシアと全然違うじゃん」

 

そう、なのかな?

そういえば、少し前にアリシアが私の声真似をしてイタズラをしていた事があって騎士(ナイト)は騙されなかったって言ってた。

騎士(ナイト)はクローンとかどうとかで判断してないんだ。

 

良かった。

本当に良かった。

騎士(ナイト)が私がクローンであろうと受け入れてくれる人で本当に良かった。

私はさっきまで沈んでいた心が晴れやかになっていくのを感じている。

 

「まあ、水色の奴で動揺しちゃったけどこれからは大丈夫だから」

「うん・・・。ねえ、騎士(ナイト)。最後に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

 

こんな晴れやかな気持ちだったらなんでも出来るようなそんな気がする。

だから私は普段出来ないことをやってみようと思った。

 

「なんだ?」

「・・・その子にキスされた頬ってどっち側?」

「あまり思い出させないで欲しいんだけど・・・。えっと確か左頬―――」

「ちゅっ」

 

騎士(ナイト)が左頬に手を添えたので私はその逆側の頬にキスをしました。

 

「え?は?」

騎士(ナイト)が私に迷惑をかけた罰、だよ・・・」

 

状況を理解できていない騎士(ナイト)に私はそう言ったが、本当はコピーの自分に負けたくないと思ったからだ。

でも、これ思った以上に恥ずかしいよ・・・。

 

「えっと、頬にキスって罰になるのか?水色の奴はお礼って言ってたし、和也は羨ましがってたんだけど・・・」

「えっ!?その、騎士(ナイト)はどう思う?」

「俺?・・・嫌じゃない、か?」

 

騎士(ナイト)が予想以上に冷静に質問を返してきて、逆に私が凄く動揺してしまった。

質問を質問で返してしまったけど騎士(ナイト)は素直に答えてきた。

 

しかも、嫌じゃないって・・・。

 

「えっと、その、あの!?」

 

やばい。

どうすればいいのか分からないよ!?

と、とりあえず騎士(ナイト)との距離を開けて冷静になろう!

 

「あっ・・・!?」

「フェイト!」

 

私は後ずさろうとしたら、後ろにあった棚に気づかずぶつかってしまった。

しかも、棚から何かが落ちてきて私に降りかかってきます。

騎士(ナイト)が私を助けようと手を掴んで引き寄せてくれました。

だけど、咄嗟だったからか凄い勢いで引き寄せられた私は身体ごと騎士(ナイト)にぶつかってしまう。

 

「だ、大丈夫か?」

「う、うん・・・」

 

騎士(ナイト)のおかげで落下物から回避出来たし、ぶつかった勢いで一緒に倒れてしまったけど怪我はなかった。

 

だが、倒れた体勢は騎士(ナイト)が私を押し倒している状態だった。

助けてくれたのは感謝しているけど、なんでそんな体勢になっちゃったの!?

 

「あの、その・・・」

「フェイト?」

 

私、絶対顔が赤くなってるよ!

というか、この状況どうすればいいの!?

 

「フェイト!凄い音がしたけど大丈夫なの!?」

 

今の声はアリサだ。

3人には外で待機している話だったから心配してきてくれたのだろう。

 

あ、でも、この体勢って色々やばいんじゃ・・・。

 

「ナ、騎士(ナイト)!?あ、あんたフェイトを押し倒して何やってんのよ!」

「え?いや、これは―――」

「天誅!!」

「ぐぼはっ!?」

 

騎士(ナイト)の説明が入る前にアリサが蹴りを入れて騎士(ナイト)を吹き飛ばした。

止められなくてごめんね、騎士(ナイト)

 

その後は騎士(ナイト)と一緒に事情を説明をしてなんとか誤解を解くことが出来ました。

 

今回の一件で私は騎士(ナイト)とより一層仲良くなれたと思う。

キスはもう当分する勇気は出ないけど私のこの気持ちが変わらない限りまたしてみたいと思った。

 

あっ、話は変わるけど、どっかの管理外世界で任務で出ていた神崎が雷に打たれて大怪我をしたらしい。

どうしたんだろうね?




どうでしたでしょうか?

キスは騎士君の意識がない状態でしかされた事なかったので動揺しちゃった感じです。

これでフェイトが一歩出たか?

次回の更新はいつになるかは分かりませんが早く更新出来るように頑張ります!

評価・感想お待ちしております!

よろしくお願いします!


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第32話『実験とスカウト』

最近、忙しくて全然更新出来ませんでした、、、

約1カ月ぶり、、、

お待たせしてしまいすみません。

今回も楽しんでもらえたら幸いです!


「はやて。仮釈放おめでとう!」

「その言い方は止めい!」

 

俺、騎士(ナイト)は休日にはやてがアースラから自宅に戻ってくると連絡を聞いたのでお祝いする為にはやての家にやってきている。

 

久しぶりに来たが特に変わった所はないけど、少し埃が落ちているのが気になった。

その為、皆で大掃除する事になった。

 

その掃除もあっという間に終了。

自宅に帰ってきましたパーティが開催されたのだ。

 

「アースラでの暮らしも悪くなかったですが、やはりこの家の方が落ち着きます。リインフォースはどうだ?」

「ああ。顕現する前だがやはりこの家がいい。騎士(ナイト)もそう思わないか?」

「いや、俺はアースラに住んだ事ないからわからないですよ。そろそろ降ろしてもらっていいですか?」

 

リインフォースさんは相変わらず俺を抱っこするのが好きで隙あらば抱っこしてくる。

凄く嫌という訳ではなかったが、前に嫌な振りをして抵抗してみたら凄く悲しそうな顔をされてしまった。

 

それを見て良心を削られた俺は無闇に抵抗することは止めた。

 

「リインフォース。私にも騎士(ナイト)君を抱っこさせてくれないかしら?」

「シャマル。そういう事は私ではなく本人に聞くものだぞ。騎士(ナイト)、どうだ?」

「まあ、いいですけど・・・」

「やった!騎士(ナイト)君、おいでおいで!」

 

俺から許可を貰って嬉しそうなシャマルさんは膝を叩いて俺を呼ぶ。

俺はリインフォースさんのように膝の上に座った。

 

「へえー。思ったより騎士(ナイト)君は重たいのね。ヴィータちゃんと全く違うわ」

「そりゃそうですよ」

 

俺は男子でヴィータは女子。

背丈だって俺の方があるし、ある程度鍛えているから筋力も合って見た目以上に重たいのは理解している。

 

「それに騎士(ナイト)君を抱きしめると落ち着くわね。どうしてかしら?」

「マイナスイオン的な何かが出てんじゃねえの?」

「というか、騎士(ナイト)君の魔力がシャマルに纏われとるんやけど大丈夫なんか?」

 

え?そうなの?

俺からは自分の魔力が見えないからどうなっているのか全く分からないんだけど・・・。

 

「そうなんですか?私からも全く見えませんが・・・」

「主。これは騎士(ナイト)に触れてるから見えないと考えるべきかと」

「なるほどな。騎士(ナイト)君、ザフィーラの上に乗ってみてくれへん?」

「いいぜ」

 

とりあえず、俺に触れている人に俺の魔力が纏われるのかを皆で試しにやってみようって事になった。

 

ザフィーラさん(狼形態)の背中に乗って確認してみた。

 

「ザフィーラさん。重くないですか?」

「問題ない。ふむ。乗せているだけだが、確かにリラックス出来るな。そして騎士(ナイト)の魔力は私からは見えないのも同じだ」

「なるほどな。次はシグナムや」

「わ、私もですか?」

 

ザフィーラさんから降りてシグナムさんの所へ向かう。

 

「・・・・・・」

「?」

 

向かったはいいが、シグナムさんが妙に困った表情をしている。

シグナムさんがこんな表情をするのは珍しいな。

 

「あ、主。私はどうすれば良いのですが?」

「ん?抱きつくなり、膝に座らせればええんと違う?」

「しかし、私と騎士(ナイト)は師弟の関係であります故にそんな軽率なことは・・・」

 

相変わらずお堅いなシグナムさん。

確かについ最近、師弟の関係になったけど、それは剣の修行の時だけで良いと思うんだけどね。

 

「それじゃあ、シグナムさん。握手はどうです?それなら問題ないでしょう?」

「それなら・・・」

 

俺が差し出した手を握るシグナムさん。

へえ、思った以上に柔らかい手してる。

すべすべしているし、とても剣を振っている人とは思えないな。

 

俺みたいにゴツゴツしてないし、どうしたらこんな手で鬼みたいな攻撃ができるんだろう?

 

「って、痛い!?シグナムさん、メッチャ痛いです!?」

「今、とても失礼な事考えていただろう・・・」

 

思いっきり手を握られて悶絶する俺。

なんでそんなに察しが良いんだよ!?

 

「す、すみませんでした!?綺麗で柔らかい手なのに鬼のような力を出せるなんて思ってすみませんでs、痛いいいいいいいいいいいっ!?」

「この馬鹿弟子!師匠の私に綺麗で柔らかい手などと恥ずかしい事を言うとは何事だ!」

「怒るとこ、そこなんですか!?」

 

普通は鬼のような力って所で怒りませんか!?

というか手からメキメキ音が出てるんだけど!?

 

「あらあら。シグナムったら顔を真っ赤にして照れてるわね」

「シグナムは初心やからなー」

「のんびり眺めてないでシグナムさんを止めてくれ!?手が折れる!?」

 

この後すぐにシャマルさんとリインフォースさんに助けてもらった。

危うくGKが出来なくなる所だった。

 

「それでどうやった?騎士(ナイト)君の手を握って」

「は、はい。思ったより小さい手で年相応でしたが、手まめの数からしてサッカーだけではなく、剣も真面目に行なっているようです」

「シグナム。そういう事を聞いてるわけじゃないんやけど・・・」

 

どうやらシグナムさんはまだ正常ではないらしい。

 

「私も騎士(ナイト)の手を握っても良いか?」

「後でね、リインフォースさん。それといきなり背後から現れるのは止めてください」

 

少しは慣れてきてしまっている自分が怖くなるよ。

 

「そんじゃ、次はヴィータや」

「あ、あたしはいいよ・・・」

「そう?せっかくの機会なんやけどな」

「という事は次ははやてって訳だな?おりゃ!」

「え?はぶっ!?」

 

俺は、はやてがヴィータと話している間に近づくと素早い身のこなしではやての膝の上へと座った。

 

「どうだ?」

「お、重いー!」

「へへへ。それじゃあもっと重くしてやるぜ!」

 

俺は背中を後ろに倒してはやてに圧し掛かる。

止めてー、とはやては言っているが本気で嫌がっているようではないのでそのまま実行する。

 

「ヴィータ!お前も来いよ!」

「え?でも・・・」

「ちょい待って、騎士(ナイト)君。流石にヴィータまで乗られるときつ―――」

「ほら、早く!」

 

はやてが何かを言おうとしてたのでそれを遮るようにヴィータへ言葉をかける。

 

「ううー・・・うりゃあ!」

「おっと」

「ぎゃー」

 

悩むヴィータは少し葛藤した後、背中を向けて飛び込んできた。

流石にあの勢いで来られたらはやてが危ないので、両手でヴィータの勢いを殺して俺の膝へと着地させた。

 

それでも、最終的な重さは変わらないのではやてはさっきよりも苦しんでいる。

まだ余裕ありそうだから大丈夫だろう。

 

「ヴィータちゃん、どう?」

「・・・よ、よく分からねえ」

「はやてちゃんは?」

「お、重たくてそれどころじゃ・・・」

 

はやては兎も角、ヴィータの様子がおかしいのでとりあえず降りることにした。

 

「うううっ、あたしはなんでこんな緊張してんだよ・・・」

「ヴィータ?どうした?」

「っ!い、いやなんでもねえ!ちょっとアイス取ってくる!」

 

そう言ってヴィータがキッチンの方へ行ってしまった。

本当にどうしたんだ?

 

騎士(ナイト)君。少しは私の心配をしてくれてもええんと違う?」

「あ、悪い悪い。それでどうだったんだ?実際のところ、俺は特にこれといった変化は感じられなかったけど」

「んー、確かに騎士(ナイト)君の魔力は見えなくなったな。どういう現象でそうなってしまっているのか全く分からないけど・・・」

 

どうやら俺の魔力はとことん不思議なものであるらしい。

はやて達と俺は最終的には専門家にちゃんと調べてもらわないと分からないと決断した。

 

まあ、今のところ専門家に見てもらおうとは全く思わないからどうでも良いんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騎士(ナイト)。あんたにお客様よ」

「俺に?」

 

はやての家から帰ってきたら母さんが玄関で出迎えてくれた。

俺に客らしいけど一体誰だろう?

 

「こんにちは」

「こんにちは。君が橘騎士(ナイト)君だね。私は石井武彦と言う者です。以後お見知りおきを」

「は、はあ・・・」

 

母さんと一緒に居間へ行くと石井さんという人と挨拶をした。

スーツを着ているけど、そんな人が俺になんのようだろう?

 

「改めまして、私は石井武彦。ジェット海鳴の専属コーチをしているものです」

「ジェット海鳴?聞いたことない・・・」

「ええ。今季からS3に参戦する新規チームですから知らなくても仕方ないことです」

 

今季からなのか。

しかもS3ってプロサッカーでは一番下のカテゴリー。

でもそんな人がどうして俺に?

 

「ジェット海鳴はプロリーグへ参入すると同時に下部組織としてジュニアユースチームを作ることにしました。そのチームに是非とも騎士(ナイト)君に入って欲しいと思いお話をしに来ました」

「という事は、俺をスカウトしに来たってことですか?」

「そうなります」

 

俺の質問に即答する石井さん。

まさか俺に石井さんのようなスカウトマンさんが来る日が来ようとは・・・。

 

「でも俺少年団に入ってるし・・・」

騎士(ナイト)君の少年団の監督さんともお話させてもらいました。君の意志を尊重するとのことです」

「・・・・・・」

 

また急な話だ。

俺としては去年からとはいえ、せっかく仲良くなったチームの皆と別れになるのは嫌だな・・・。

 

「勿論。急に入れとは言いません。小学生を卒業し、チームも卒団してからでも構いません」

「え?本当ですか!?」

「はい。ですが、練習には来てもらいたいと思っています。参加費用は要りませんが交通費などはそちらの負担でお願いしたいと思います。その練習は少年団の試合や練習と被らないように調節も致します」

「な、なんでそこまで待遇してくれるのでしょうか?まだ騎士(ナイト)は9才でサッカーも始めたばかりなのに・・・」

 

一緒に聞いていた母さんが石井さんにそう尋ねた。

本当にそうだ。

こんな好待遇は普通にありえないだろうと思う。

 

「それ程、私達は騎士(ナイト)君に期待しているのです。君は将来、ジェット海鳴だけではなく、日の丸を背負って戦う選手になってくれるとね」

「・・・・・・」

「これで私の話は以上となります。後日、詳細を載せた資料を郵送させて頂きます。もしジェット海鳴に入団してくれるようであれば私か、その資料にある電話番号にご連絡下さい。ご馳走様でした」

 

石井さんは立ち上がって俺達に礼をする。

玄関までお見送りすると、石井さんが思い出したかのように話し出した。

 

「ちなみにプロチームでは交渉週間というのがあって、選手にスカウトする期間があるのです。今日からなので騎士(ナイト)君にはこれから私のようなスカウトマンが沢山来るでしょう」

「・・・え?」

「私が聞いた噂ではかなり沢山のチームが貴方をスカウトしたがっている模様です。他のチームがどのような条件を提示してくるかは分かりませんが騎士(ナイト)君がジェット海鳴を選んでくれる事を信じてますよ」

 

そう言って石井さんは帰っていった。

少し前に士郎さんに見せてもらった雑誌の記事に『スカウト達が黙っていない』ってコメントがあった。

 

今日まで何もなかったのはそういう期間があったからなのか?

 

「いや、まさか・・・」

騎士(ナイト)。貴方にお手紙が来てるわ」

「え?」

 

母さんから渡されたのは10通以上はある封筒。

その封筒には見たことがあるエンブレムやチーム名が書かれている。

 

「これは大変な事になりそうだ・・・」

 

そう呟いた俺は母さんと一緒にリビングへと向かい封筒を開けるのであった。




如何でしたでしょうか?

シグナムは初心な印象なんですよね、、、

そしてスカウトの話。
管理局じゃなくてサッカーでした!
チーム名は適当です笑笑

感想・評価をしてくれている読者様本当にありがとうございます!

今回もして頂けると大変嬉しいです。

よろしくお願い致します!


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第33話『バレンタイン!』

お久しぶりです!

約5カ月ぶりの投稿です!

皆様、本当にお待たせしました!

楽しんで読んで頂けたら幸いです!


「ふ、わあああ・・・。眠い・・・」

 

2月に入ってまだまだ寒い早朝。

俺、騎士(ナイト)はなのは家の道場でストレッチをしながら欠伸をしていた。

 

6時に家を出て、ランニングでなのは家に到着。

準備が出来た後、恭也さん達と一緒に剣術の稽古。

その稽古が終わって今に至る訳なのだが、シャワーを浴びて温まっている身体では欠伸が出るのも仕方ないと俺は思う。

 

騎士(ナイト)。朝ごはんが出来たぞ」

「あ、はい!今行きます!」

 

そして早朝稽古が終わったら、なのは家と一緒に朝ごはんだ。

俺の母さんのご飯も美味しいが桃子さんのご飯もとても美味しい。

俺はいつも通りお代わりをしてお腹を満たしたのだが、少し気になることがある。

 

「・・・なのは、さっきからどうした?」

「ふえっ!?な、なななんでもないよ!?」

 

なんでもないわけないだろ?

俺もだが、なのはも嘘を吐くのが下手過ぎだろ。

 

「ほら、なのは。食後に渡すんでしょ?」

「う、うん・・・。な、騎士(ナイト)君。た、食べて欲しい物があるの。ちょっと待ってて」

 

そういってなのははキッチンの方へ行ってしまった。

食べて欲しい物って一体なんだ?

 

騎士(ナイト)君。その様子だと何を貰えるか全く分かっていないようだね」

「はい・・・。士郎さんは知っているんですか?」

「勿論さ」

「ふむ。騎士(ナイト)くらいの年だとまだ気にしないものなのか?」

「そんな訳ないよ!私が小3の時は男子皆そわそわしてたもん!」

 

笑顔で答えを知っていると言う士郎さんに、恭也さん、美由希さんと話が弾んでいく。

なのはは一体何をくれるんだ?

 

「な、騎士(ナイト)君。お待たせ」

「お?チョコレートケーキ?」

「う、うん。ハッピーバレンタイン、騎士(ナイト)君」

 

ああ、なるほど。

そういうことか。

なのはが喋るまで今日が何の日なのか全く気にしてなかった。

 

今日は2月14日。

世間で言うバレンタインデーだ。

 

なのはは態々チョコレートケーキを手作りで用意してくれた。

とても美味しそうだ。

流石は喫茶店の娘って感じかな?

 

「食べて良い?」

「う、うん。どうぞ・・・」

 

俯きながらなのはは許可をくれた。

美味しく作れたか不安なのかな?

俺はケーキを一口食べる。

 

「・・・・・・」

「ど、どうかな?」

「美味い!!とっても美味いよ、なのは!」

「よ、良かった~」

 

進んで食べる俺の姿を見てホッとしているなのは。

いや、お世辞なしに美味しい。

これだったらいくらでも食べられる自信があるぜ。

 

「良かったわね、なのは」

「うん!」

「一ヶ月も前から練習してた甲斐があったね。騎士(ナイト)君、しっかり味わいなよ?そのケーキには、なのはの努力と愛情が込められているんだから!」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?ち、違うからね!愛情というより感謝が込められているんだからね!」

 

美由希さんに練習していた事実を言われて顔を真っ赤にして俺に弁解してくるなのは。

とりあえず、俺はこのケーキをしっかり味わう事に集中しよう。

 

騎士(ナイト)君。この飲み物もどうぞ」

「桃子さん、ありがとうございます。・・・あ、チョコレートの味がする!」

「それは私からのバレンタインよ。士郎さんは後で、ね?」

「ああ。とても楽しみだよ」

 

いきなり視線を合わせて笑いあう士郎さんと桃子さん。

この2人は相変わらず仲良しだよな。

 

「子供の前でピンクな雰囲気を出さないでもらいたいなー。あ、私からもハッピーバレンタイン!」

「ありがとうございます!・・・ん?チョコは分かりますけど、この大きな袋は?」

 

チョコは市販の板チョコにリボンを巻いたもの。

一緒にかなり大きな袋を渡されたんだけど、何に使うんだろう?

 

騎士(ナイト)君は沢山貰うだろうからね。用意しておいたよ!」

「はあ?ありがとうございます?」

騎士(ナイト)君。よく分かってないでしょ?」

 

俺の様子を見て溜息を吐くなのは。

その通りでなんで必要になるのか全く分かっていない。

 

「まあ、なんとかなるだろ。なのは。ケーキありがとう。とても美味しかった」

「うん!喜んでもらえて嬉しいよ!」

 

ケーキの感想とお礼を改めて言うとなのはは満面の笑みを見せてくれた。

それを見た俺は今日一日良い日になるだろうなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

騎士(ナイト)じゃねえか。お前、下駄箱の前でなにアホな顔をしてるんだよ。って、なんじゃこりゃあ!?」

 

隣で和也が驚いているが、俺も現在進行形で驚いているところだ。

小学校へ登校して上履きを取ろうとしたら、俺の下駄箱の中は上履きではない何かに埋め尽くされていた。

 

恐る恐る一個だけ取ってみるとちゃんと包装された箱にクラスと名前が書かれている。

これは一体何なんだ?

 

騎士(ナイト)。それ全部バレンタインのプレゼントじゃねえか?」

「ま、マジ?」

 

確かに少しだが箱から甘い匂いがする。

これ全部がバレンタインプレゼントなのか?

 

「あ、あの、橘くん!」

「え?あ、はい」

 

唖然としている中、話しかけてきたのは俺の知らない女子だった。

女子は両手で持っていた箱をぐいっと前に突き出してきた。

 

「う、受け取って下さい!」

「あ、はい・・・」

「ありがとう!」

 

箱を受け取ると女子は嬉しそうな表情をしながらその場から去ってしまった。

 

「わ、私のも受け取って!」

「私も私も!」

「お願いします!」

 

去っていった女子がきっかけになったのか、次々と女子が俺に詰め寄ってきてバレンタインプレゼントであろう物を渡してくる。

 

「え、あの、うわああああっ!?」

 

あっという間に女子に囲まれてしまった。

そういえば隣に和也がいた筈なのにいつの間にかいなくなってるぞ?

 

「女子のバレンタインパワー半端ねえ・・・」

「か、和也!?」

 

かなり離れた位置に横たわっている和也。

恐らく女子の圧に吹き飛ばされてしまったのだろうと思う。

 

授業の予鈴が鳴るまで俺はプレゼントを渡してくる女子達に囲われ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やっと解放された・・・」

「大変だったね、騎士(ナイト)君」

 

昼休み。

俺は、屋上のベンチでうな垂れている。

そんな俺になのはが苦笑しているが、どうやら俺がこんな事になあるのは予想通りだったそうだ。

 

「まさかあんなにプレゼントを貰うとは思わなかった」

 

結局、朝から昼休みに入るまでずっと女子に囲われてはプレゼントを受け取っていた。

 

同級生だけではなく、上級生や下級生にまでプレゼントをもらった。

美由希さんから貰った袋(予備x3)がなかったら大変なことになってたと思う。

今度会った時にお礼を言っておかないとな。

 

「私のクラスの女子も騎士(ナイト)にチョコあげちゃった、とかいって騒いでたよ。人気者だね、騎士(ナイト)

「人気者って言われてもなんでそうなったか分からないんだが・・・。俺はどこにでもいる普通の小学生だっつうの」

「あんたみたいな小学生、どの小学校を探してもいないわよ」

 

アリサの言葉にすずか、なのは、フェイト、アリシアが頷いた。

お前ら酷くないか?

 

「唯でさえ、銀髪オッドアイで目立ってるのにU-12サッカー日本代表候補になるやら、ファッション雑誌のモデルになってるやらで目立ちすぎなのよ」

「容姿とサッカーは兎も角、モデルは俺も予想外だったんだぞ?」

 

ジェット海鳴の石井さんが言っていた通り色んなチームからスカウトの話が来ていたが、それ以外にも雑誌のインタビュー依頼も来ていた。

 

ただ海外遠征の話を聞くだけと言ってたから了承し、そのインタビュー風景を写真で収めていた。

インタビュー風景だけでなく、立ってポーズもお願いされたけど特に気にしないでいたが、そんな事になるとは夢にも思わなかった。

 

「油断しすぎなのよ。一応、パパにお願いして雑誌を回収させたけど全ては無理だったのよね・・・」

「寧ろ回収させる事が出来たことに驚いたけどな」

 

アリサのお父さんの社会影響力ってマジ凄いんじゃないか?

 

「で?結局何個貰ったの?」

「50個までいった辺りで数える事を諦めた」

「す、凄い数だね。食べ切れる?」

 

フェイトが心配そうな表情をして聞いてくる。

まあ、あの山積みになったプレゼントを見ればそう思うのも仕方ない。

 

「とりあえず、三食+おやつにチョコレートは絶対だな。歯磨きもしっかりと念入りに行なうよ」

「賞味期限もしっかり確認しないとだよ?」

「確かに」

 

全部包装されているから面倒だけど、期限切れで駄目にするよりかは良いだろ。

 

「後はくれた人の名前を忘れないようにメモしとかねえとな」

「え?どうして?」

「そりゃあ、来月のホワイトデーで今日のお返しをする為さ」

「ホワイトデー?」

 

どうやらフェイトはホワイトデーを知らないようだ。

この世界の人間じゃないから知らないのも当然といえば当然だけど。

 

「フェイトちゃん。ホワイトデーというのはバレンタインでプレゼントしてくれた女子にお返しをする日なんだよ」

「それも3倍返しでね」

「さ、3倍!?」

「おいこら!さり気なく怖い事を教えてんじゃねえよ!」

 

補足で説明してくるアリサに俺は焦りながら止める。

唯でさえ、すごい量なのに3倍返しなんてどうすればいいんだつうの。

 

「冗談よ。ほらこれ」

「ん。毎年ありがとな、アリサ」

 

流れるように渡されたが、アリサからプレゼントをもらった。

そういえば、親以外でバレンタインのプレゼントを初めてくれたのはアリサだったな。

顔を真っ赤にして投げつけてきたっけな。

 

「なに、ニヤニヤしてんのよ」

「いや?アリサも成長したんだなって」

「どういう意味よ、それ!」

「別に~」

「ぬぐぐぐっ」

 

睨みつけてくるアリサを口笛を吹きながらスルー。

 

「あははっ。騎士(ナイト)君。私からも」

「おっ?ありがとう、すずか」

 

すずかからもプレゼントを受け取った。

しかし、少し気になるのがプレゼントの大きさだ。

メロンが丸々一個入ってそうなくらい大きいぞ。

 

「気になるから空けてみて良い?」

「うん。良いよ」

「・・・こ、これはサッカーボールの形をしたチョコ!?」

 

空けたらびっくり。

等身大のサッカーボールのチョコだった。

黒白のよく見るタイプで、黒はよく見ると茶色になっている。

という事は白はホワイトチョコなのか?

 

「食べるのが難しそうだな・・・」

「大丈夫。ワンピース毎に取れるようになってるから」

 

そう言ってワンピースを取ってみせるすずか。

なるほど。

これなら齧り付く必要はないな。

 

「はい。あーん」

「あーん。おっ、美味いな!」

「でしょ?うふふ」

 

とても嬉しそうに笑うすずか。

でも何故か周りの目が怖い気がするのはなんでだろう?

 

騎士(ナイト)!次は私のを受け取ってよ!」

「お、おう。ありがとう、アリシア」

「私の想いがたっぷり入ってるからね!」

 

という事は手作りなのか?

気になったので空けてみることにした。

 

「凄い!棒状に加工してから色鮮やかにチョコチップをまぶしてあるんだな!」

「可愛いでしょ?味も保障済みだよ!お母さんが!」

「母さんに味見をお願いしたからね。体重が増えて嘆いてたけど・・・」

「尊い犠牲だった・・・」

 

死んだような言い方だけど、女子からしたら体重が増えるのは死活問題だと俺の母さんも言ってたからそうなのだろう。

 

騎士(ナイト)。これには他に隠されしゲームがあるんだよ。それを見せてあげる!」

「むぐっ!?」

 

アリシアがいきなり俺の口にチョコを突っ込んできた。

これでどんなゲームをしようって言うんだ?

 

「あむっ!」

「!」

「ちょ、アリシア!?」

 

反対側をアリシアが口に入れる。

お互い向かい合った状態に周りがどよめいている。

 

「もぐもぐ」

 

周りの事などお構いなしにチョコを食べ始めるアリシア。

なるほど。

これはそういうゲームなんだな?

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ!」

「!?」

 

俺は凄い速さでチョコを食べ始めた。

アリシアの動きが何故か止まったので俺は勝負を決める為にさらにスピードを上げる。

 

「止めなさい!」

「ぐふっ!?」

 

アリサの拳骨が俺の頭に炸裂した。

そのせいで俺はチョコから口を離してしまったのだ。

 

「あ、アリサ。何すんだよ!」

騎士(ナイト)こそ何しようとしてんのよ!この変態!!」

「はあ?ただ勝負してただけなのになんで怒られなきゃいけないんだ?」

「勝負って・・・あんた何の勝負をしてたのよ?」

「両端から多く食べた方が勝ちってやつ」

 

俺がそういうと周りの皆が溜息を吐いていた。

え?なに?

 

「なんか間違えた?」

「もう良いわよ。アリシア。騎士(ナイト)にそういうのを仕掛けたいならもっと大人になってからが良いわよ」

「う、うん。そうする・・・」

 

顔を真っ赤にしているアリシアが小さな声でそう返事した。

あのゲームってそんなにハードルが高いものなのか?

 

騎士(ナイト)。これは私から」

「サンキュー、フェイト!」

 

フェイトからもプレゼントをもらった。

俺はどんなものか気になったので空ける事にした。

 

「おっ・・・」

「あっ・・・」

「?」

 

中身は、なのはと同じ手作りのチョコレートケーキだった。




如何でしたでしょうか?

久しぶりだから少し変かも?

次はもっと早く投稿出来るように頑張ります!


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第34話『バレンタイン!!』

なんとか書けました、、、

楽しんで読んで頂けたら幸いです!


「おっ・・・」

「あっ・・・」

「?」

 

俺、騎士(ナイト)がフェイトから貰ったバレンタインプレゼントの中身を見ると、なのはと同じ手作りのチョコレートケーキ。

 

自分と被った事に動揺したのか、なのはも思わず口に出てしまったようだ。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ。頂きます!」

「ど、どうかな?ケーキ初めて作ったんだけど・・・」

「おう!とても美味しいぜ!」

「本当?良かった・・・」

 

とても安心した表情を見せるフェイト。

俺はフェイトのチョコケーキを食べ続ける。

 

「なのはは騎士(ナイト)にバレンタインのプレゼントをあげないの?」

「ふえっ!?」

 

フェイトはこの中でなのはだけが俺にプレゼントをしてないから気になってそういったのだろう。

だが、なのはからは既にもらっているからある訳がない。

 

「えっと、もう渡してあるんだ」

「そうなんだ!どんなのをあげたの?」

「うーんと・・・」

 

とても話しづらそうな表情をするなのは。

なのはとしてはアリサ以外のプレゼントを見てしまったから自分も教えないといけないのではと考えているのかもしれない。

 

「私は、その・・・」

「フェイトと同じチョコレートケーキだったぞ」

騎士(ナイト)君!?」

 

このままじゃ変な流れになりそうだから俺が変わりに言ってやった。

 

「ほら、これがなのはが作ったケーキだ」

「えっ、写真撮ってたの!?」

 

俺はなのはが作ったケーキの写真を皆に見せる。

なのはが止めようとしてくるが、片手で抑えることで無力化させた。

 

「へえ!なのはが作ったケーキなんて初めてみたわね!」

「うん!とても美味しそう!」

「・・・・・・」

 

感心した様子のアリサとすずかだったが、フェイトの様子が少しおかしい。

それをなのはも気づいたようで、フェイトの方に視線を向ける。

 

「なのは・・・」

「な、なに?フェイトちゃん?」

「私に・・・私にもケーキの作り方を教えて!」

「・・・ふえ?」

 

フェイトのお願いに唖然としているなのは。

どうやらなのはが思っていた展開とは違っていたようだ。

 

「だ、ダメ、かな?」

「う、ううん!大丈夫だよ!」

「ありがとう、なのは!」

 

なのはは深く考えすぎなんだよな。

被ったくらいでフェイトは何も思わないだろうに。

 

「それで、どっちのケーキが美味しかったの?」

「・・・ふえ?」

 

あ、なのはのがうつった。

アリシアがいきなり質問をぶつけてきたのだ。

なのはのケーキとフェイトのケーキ、どちらが美味しかったのかと。

 

「・・・どっちも美味しかったぞ?」

「そうだろうけど!どっちかというなら?」

 

妙にしつこいアリシア。

俺はふとなのはとフェイトの方を向いた。

 

「・・・・・・」

 

2人とも俺の方をジッと見ていた。

凄く答えにくい。

こうなればやる事は1つだな。

 

「どちらも美味しかった!以上!さらばだ!!」

「あっ、逃げた!!」

 

お弁当と貰ったプレゼントを持った俺は風のようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局、放課後に捕まって正直に言うたんか?」

「言ったさ。想いが込められた物に優劣なんてつけられないって」

 

学校が終わった後、はやてと遊ぶ約束をしていたのでそのままはやての家に来ていた。

その日の事を話していた訳だが、はやてに引かれた顔をされてしまう。

 

「それで皆が納得したんか?」

「しなかった・・・。だから、後日料理対決をしようって話になってしまった。あ、はやては審査員役な」

「なんでやの!?」

 

いや、お前は他の皆に比べたら料理歴長くてずるいじゃん。

一部では俺の母さんより美味い料理作るし。

 

「それほど、皆がはやての料理を認めているってことさ。俺もそうだしな」

「むう。まあ、そう言われて悪い気はせえへんけど・・・」

 

それでも自分の得意分野で対決に参加出来ないのは残念なようだ。

 

「なあ、騎士(ナイト)。このチョコ食べていいか?」

「良い訳ないだろ、ヴィータ」

 

皆から貰ったプレゼントが入っている袋を持ちながら聞いてくるヴィータ。

えー、と残念そうな顔をするな。

 

「でも、一緒に食べるなら良いぞ。好きなの選んできな」

「マジで!?よっしゃー!どれにすっかな!」

「なんだったらはやて達も選べよ。勿論、俺も食べるから絶対に全部食うなよ?」

「ええの?」

「ああ。そうでもしないと、一向に減らないからな」

 

それでダメにするくらいならそうした方がいい。

各自、自分の食べたい物選んで一緒に食べる。

 

「箱がカラフルで可愛いから選んだけど、チョコもカラフルで可愛いわ!それにとっても美味しい!はい、騎士(ナイト)君、あーん」

「あーん」

 

シャマルさんにピンクで可愛いチョコ食べさせてもらう。

確かに美味しいな。

 

騎士(ナイト)。これは少し苦いがコクがあって美味しいぞ。あーん」

「あーん」

 

リインフォースさんに長方形で薄いチョコを食べさせてもらう。

確かに少し苦い。

でもこれが大人の味と言うやつなのだろう。

 

「おい、騎士(ナイト)!この丸いチョコ。中にジャムが入ってて美味いぞ!ほら!」

「あむ」

 

ヴィータに一口サイズの丸いチョコを食べさせてもらう。

噛んだら甘酸っぱいジャムが出てきて、それがチョコと上手く絡み合って美味しい。

 

「・・・騎士(ナイト)。選んだやつがチョコではなく抹茶ケーキだったぞ。口直しには丁度いいのではないか。あ、あーん」

「あーん」

 

シグナムさんに抹茶のケーキを食べさせてもらった。

さっきからチョコばっかりだったから助かる。

というか、シグナムさんはなんで頬を少し赤らめていたんだろう?

 

「ちょい待ち!なんや?なんやこの状況は!?」

 

いきなりはやてが叫びだした。

 

「どうしたんだよ?」

「どうしたじゃあらへん!騎士(ナイト)君は周りを見て何も思わないんか?」

 

周りの状況?

 

えっと、とりあえず、俺は一人用のソファーに座るリインフォースさんの上に座っている。

これは、はやての家にくれば必ずなる状況だ。

 

 

両端にはソファーの手かけに座るシャマルさんとシグナムさん。

2人とも美味しそうにお菓子を食べている。

 

足元にはソファーを背もたれにして床に座りながらお菓子を食べるヴィータ。

 

そして、テレビの前で何かの番組を見ているザフィーラ。

 

この状況から見て・・・。

 

「なんで皆俺の近くでチョコ食べてんの?」

「そうだけど、それだけじゃないやろ!なんで皆、騎士(ナイト)君にチョコを食べさせてあげとるんや!恥ずかしくないんか?!」

 

言われてみると確かにそうだ。

4人が新しいチョコを食べる度に俺に食べさせてくれる。

まるで一国の王様になったような気持ちになるな。

 

騎士(ナイト)君が素直に食べてくれるのでつい」

「他の者がそうしていたので、そういうものなのかと・・・」

「言われてみたら確かに恥ずかしいな・・・。お菓子が美味しくてテンションが上がってた・・・」

 

シャマルさん、シグナムさん、ヴィータと自分の意見を言った。

リインフォースさんはというと、

 

騎士(ナイト)が来る度にこうしてます。つまりいつも通りです!」

「そういえばそうだな。俺も最初は恥ずかしかったのに今では全然違和感を感じない・・・」

「あかん。騎士(ナイト)君がリインフォースに洗脳されとる・・・」

 

はやての言う通りで俺はいつの間にか食べさせて貰う事に違和感を感じさせないように洗脳されていたのかもしれない。

昼ごはんの時だって、すずかから食べさせて貰ったけど特に抵抗は感じなかった。

 

「すまん、はやて。もう少し自重するように気をつけるよ」

「その方がええよ。どうしてもって言われた時にするんやで。はい、あーん」

「あーん・・・あっ」

 

はやてにチョコを差し出されたのでそのまま食べてしまった。

自重するって言ったばかりだったのに・・・。

 

「先は長そうや」

 

ちくしょう・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、騎士(ナイト)君。私達からのバレンタインプレゼントを受け取ってもらうで?」

 

こんにちは、八神はやてです。

騎士(ナイト)君が持ってきたバレンタインのプレゼントを少し頂いた所で私がそう言い出した。

 

「お?用意してくれてたんだ」

「当たり前や。というか、その為に今日は呼んだんや」

「なるほど。それで何をくれるんだ?」

 

とても嬉しそうに言ってくれる騎士(ナイト)君。

数え切れないほど貰ってるから少し心配やったけど杞憂だったようやね。

 

「リインフォース、ヴィータ。渡してあげて」

「はい、主」

「うん」

 

指示して2人が持ってきたのは2つの袋。

それを騎士(ナイト)君に渡してくれた。

 

「両方ともでかいな。何が入ってるんだ?」

「それは空けてみれば分かるよ」

「なんだろうな!」

 

騎士(ナイト)君がわくわくした顔で空け始める。

プレゼントを気に入ってくれるとええんやけど・・・。

 

「おおっ!?GKグローブとサッカースパイクじゃん!しかも俺のお気に入りのメーカーの最新モデル!!」

「気に入ってくれた?」

「ああ!って、バレンタインってそういうんじゃなかった気がするんだけど?」

 

まあ、確かにそうかもしれへんけど、お世話になっている・感謝したい人にあげたいって所は一緒だからええんや。

 

「私達八神家からのバレンタインプレゼントって思ってくれればええんよ」

「でも、これだけで2万はかかった気がするんだが・・・」

「値段など無粋な事は気にするな」

「その通りだ。それにこの程度では私達が受けた恩を返しきれない・・・」

 

シグナムやリインフォースの言う通り。

騎士(ナイト)君のおかげで今の私達がある。

その恩はサッカースパイクやGKグローブの1個や2個くらいじゃ返せない。

 

騎士(ナイト)は全く理解できてないようやけどね。

 

「まあ、そこまで言うならありがたくもらうぜ。でも両方とも少しサイズがでかいな」

「それはあえてそうしたのよ」

「急にプレゼントしても今使ってんのを捨てる訳にはいかないだろうからって考えてさ。騎士(ナイト)はこれから背が伸びるだろうから何サイズか大きめにしといたんだ」

 

シャマルとヴィータが説明で、なるほどと納得する騎士(ナイト)君。

しかし、騎士(ナイト)は何故か腕を組んで悩みだした。

 

「どうしたん。なんか変なところでもあった?」

「いや、そうじゃなくてさ。はやて達への一ヵ月後のお返しはどうしたら良いんだろうかと思ってさ」

 

どうやらもうホワイトデーの事を考えているらしい。

 

「別に気にせんでも良いよ。これはバレンタインというより普段のお礼って感じやし。最悪なくても問題ないで」

「それじゃあ、俺の気が済まない!絶対皆が喜んでくれるようなお返しを渡すからな!」

 

そういってまた腕を組んで悩む騎士(ナイト)君。

これで、私達を喜ばせるプレゼントをされたら、また私達がお返しをしないといけなくなる。

 

したらしたで、騎士(ナイト)君がまたお返しをして無限ループになりそうやね。

 

でも、それはそれで楽しそうや。

一ヵ月後のお返し、期待してるで騎士(ナイト)君。



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