Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP14 宇宙を翔る英雄は誉れと共に -後編-

 

 

 

――――――待たせたな! そうだ! 宇宙に帝王は一人、このオレだ!

 

 

 

カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー !

 

 

それは青天の【アビドス】にカイザーコールが鳴り響く直前――――――、3体のスペースビーストの襲来により避難命令が発令され、怪獣無法地帯の攻略の足掛かりとして再開発が進められていた新アビドス自治区が激震が走っていた。

 

ウルトラマン・ライドメカ・ロボット怪獣による正義の防衛チームと邪悪なスペースビースト軍団の3対3の乱戦は、クラスティシアンタイプビースト:グアンテラが地中に逃走したことにより、数的優位を確保するべくウルトラマンが展開したメタフィールドへと戦場が移った。

 

しかし、地中に逃走したと思われたクラスティシアンタイプビースト:グアンテラはすぐに地中から姿を現し、砂漠に呑まれたビル群の間を抜けて新アビドス自治区の境界となる防砂壁まで迫ろうとしていた。

 

怪獣無法地帯の最前線ということで最新鋭の装備が惜しげもなく投入された自動防衛システムが作動し、怪獣の弱点を探り出すべく様々な攻撃手段で構成された防衛ラインが形成され、そこから住民の避難が完了するまでの決死の時間稼ぎが始まり、同時にメタフィールドに消えたウルトラマンたちが戻ってくるまでのわずか数分間に全てが懸かっていた――――――。

 

見た目が二足歩行怪獣になったサソリであるクラスティシアンタイプビースト:グアンテラの光沢のある外殻の堅牢さと全身武器庫と言える火力は凄まじく、更には二足歩行怪獣として及第点の運動能力もあることから、都市を制圧するのならロボット怪獣以上の完成度ということで現地に常駐していた【キヴォトス防衛軍】の生徒たちは次々と顔を青褪めていく。

 

最初の怪獣:クレッセントを基準にして火力増々のキヴォトス人の決死の抵抗により何度も膝をつくことになったのだが、これまでの怪獣とは比較にならないほどの再生力によって決定打を与えることができないまま、絶望を擬人化したような怪獣の大きな一歩が着実に迫ってくる。

 

それでも、数々の怪獣退治に参加して修羅場を潜り抜けてきた歴戦の猛者たちはこの戦いはあくまでも最後に自分たちが四次元移動列車に乗って戦線離脱するまでの時間稼ぎでしかないことを周りに言い聞かせて、効果的なタイミングでグアンテラの侵攻を遅滞させることに鬼気迫る表情で全力を注いだ。

 

そして、次々と防衛ラインが突破され、最終防衛ラインまで差し掛かり、最後までよくがんばったと戦場に残っていた多くの生徒たちに総員撤退の号令がかかろうとしていた――――――、その時であった。

 

 

――――――突如として【アビドス】の透き通る青空から4本の巨大な剣が降り注いだのだ。

 

 

それらは新アビドス自治区を目指して侵攻するスペースビーストを囲み、その最終防衛ラインを突破しようとグアンテラが猛進した時、4本の巨大な剣からプロレスのリングのようにエネルギーロープが張り巡らされたのである。

 

それに突っ込んでしまったグアンテラは突然の超電圧で火花を散らしながらスペースビーストの巨体さえも弾き返す弾力を見せるエネルギーロープによって最終防衛ライン突破を目前にしてリングの中央へと弾き飛ばされてしまうのであった。

 

いきなり超強力なロープに引っ掛かって前に進めなくなったと思ったら超電圧を浴びてリングの中央へと吹き飛ばされて混乱するスペースビーストの前に新たに巨人が上空からまっすぐに降り立つのであった。

 

 

それは遠目に見ると銀の巨人:ウルトラマンのように見えたのだが、そうではない。それはよく見ると銀の光沢を放つフード付きのガウンコートを羽織った別の何かであったのだ。

 

 

スペースビーストでさえもウルトラマンと一瞬見誤った銀のコートを羽織った巨人に起き上がったグアンテラがハサミや尻尾による連携攻撃を軽快に繰り出す――――――。

 

しかし、銀のコートの巨人はハサミの攻撃を難なく捌き、振り回された尻尾を身体でしっかりと受け止めると、そのまま尻尾を片手で掴んでグアンテラをムチのように振り回して砂に塗れた地面に何度も叩きつけたのである。

 

何度も地面に打ち付けられて沈黙したグアンテラの尻尾を放した瞬間、グアンテラの尻尾から火球が放たれた。決して最後まで油断してはならないのが怪獣退治の鉄則である。

 

だが、次の瞬間にはグアンテラの尻尾が宙を舞い、グアンテラの外骨格にも巨大な切り傷がつけられていたのだ。

 

 

――――――銀のコートの巨人の両手にはプロレスリングの支柱になっていたはずの巨大な剣が握られていたからだ。

 

 

尻尾を切り落とされたことに反応が追いつかなかったグアンテラが後れて痛みに悶えると、すでに銀のコートの巨人は両手に持った剣を天に翳して交差すると、支柱として在り続ける残り2本の剣からの超高エネルギーがグアンテラの背後から貫いて両手の剣に宿り、今まさに怪獣を葬り去る必殺技(フィニッシュムーブ)が炸裂する――――――、はずであった。

 

プロレスリングを形成した超高エネルギーに背後から貫かれて動けなくなっているはずのグアンテラがそれ以上の強制力によって闇となって消えてしまったのである。

 

これには銀のコートの巨人も肩透かしを喰らい、怪獣にとどめを刺すことができなかったことで行き場をなくしたエネルギーを開放するため、天へと放出する。

 

それにより、天から地へと降り注ぐ青天の霹靂が巻き起こり、【アビドス】中に鳴り響く雷鳴と稲光が見る者の心を強く打ったのである。

 

そして、そのあまりの偉容に誰かが叫んだコールが一斉に【アビドス】の大地から天へと還されたのだ。

 

 

カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー ! カ イ ザ ー !

 

 

神代キヴォトス人「助太刀に感謝する」

 

神代キヴォトス人「我は神代より続く超古代文明の歴史を語る者。光の星雲より舞い降りた光の眷属:サーベラスである」

 

宇宙格闘士の帝王「オレはグレゴール星から来たグレゴリオだ。一人の格闘家として 超古代の伝説の巨人と決闘(デュエル)するために この辺境の惑星まで来た」

 

神代キヴォトス人「そうか。グレゴール星か。知らんな」

 

宇宙格闘士の帝王「この“宇宙の帝王”として名高い“帝王グレイ”の生まれ故郷であるグレゴール星を知らんとな。さすがは辺境の惑星と言ったところだな」

 

ロボット職員「地球で言うところのヘラクレス座/M-16惑星:グレゴール星ですよ、サーベラス様!」

 

神代キヴォトス人「ああ、なるほど、その辺りか」

 

宇宙格闘士の帝王「ほう」

 

ロボット職員「で、こちらの方はオリオン座/M78星雲:光の星雲から光の巨人と共にこの惑星に降臨した光の眷属なんです」

 

宇宙格闘士の帝王「それは本当か! 伝説は本当に存在したのだな!」

 

宇宙格闘士の帝王「なら、オレを伝説の巨人の許に案内しろ。オレはそのためにここまで来たのだ」

 

ロボット職員「あ、それは――――――」

 

神代キヴォトス人「コーイチよ、ここは我に任せておけ」

 

ロボット職員「……サーベラス様」

 

 

神代キヴォトス人「超古代の光の巨人に決闘を申し込むために来たという話だが、僭越ながら光の眷属である我がお相手しよう」

 

 

宇宙格闘士の帝王「ほう? さっき、『光の眷属』とか言ったな? このオレの実力を見定めるつもりか?」

 

宇宙格闘士の帝王「いいだろう。“宇宙の帝王”たる このオレの実力をその身に刻み込むのだな」

 

神代キヴォトス人「では、決闘のルールと日時について話し合おうではないか」

 

神代キヴォトス人「あいにくと光の眷属たる我は主人に近づく不埒者に対して容赦せんように躾けられているものでな。言いつけにないことを慮る優しさは持ち合わせてはおらん。あらゆる手段をもってして主人の敵を撃滅するのみだ」

 

宇宙格闘士の帝王「ふむ。この闘気、辺境の惑星にも隠れた実力者というのはいるものだな」

 

宇宙格闘士の帝王「そうだな。今すぐにでもここで始めてもかまわない」

 

神代キヴォトス人「そうか」

 

 

宇宙格闘士の帝王「だが、帝王の決闘(デュエル)はエンターテイメントでなければならない!」

 

 

神代キヴォトス人「その心は?」

 

宇宙格闘士の帝王「最初から帝王が全力で掛かったら一瞬だ!」

 

宇宙格闘士の帝王「しかし、それでは この“帝王グレイ”の比類なき勇姿を戦いを知らぬ女子供に見せつけることができん!」

 

宇宙格闘士の帝王「故に、決闘(デュエル)は女子供を集めての衆人環視で! 盛大に! 華々しくだ!」

 

神代キヴォトス人「いいだろう! 実に、我好みの回答である! 気に入った!」

 

宇宙格闘士の帝王「よって、そこのお前! そうだ、並々ならぬ大気を機械の身体に宿すお前だ! お前はオレのことを知っているみたいだな?」

 

ロボット職員「あ、はい! 帝王グレイ様、何なりと このマウンテンガリバーめにお申し付けください! あと、サインをください!」

 

宇宙格闘士の帝王「よかろう!」

 

宇宙格闘士の帝王「さあ、興行だ! この惑星に住む女子供を掻き集めて我が決闘場(リング)に招待しろ!」

 

 

――――――そして、帝王の偉大なる勇姿を目に焼き付けさせるのだ! 明日のために!

 

 

やっぱり、この人は変わらないな。いつでも誇り高くて、いつでもかっこよくて、いつでも強き者として弱き者にその背中を見せようとする――――――。

 

そう、『前回』の僕は 光のピラミッドが出現して超古代怪獣が復活したXデーから程無くして【アビドス対策委員会】からの支援要請を受け、単身で【アビドス】に来て【カイザーコーポレーション】が仕組んだ陰謀の影を追いかけながら、『今回』のようなアビドス砂漠に現れる怪獣とも戦う日々を送っていた。

 

キヴォトスでは特捜チーム【スーパーGUTS】の新人隊員で通していたけれど、本当は地球本国の後継組織【ネオスーパーGUTS】に配属予定の情報部の特務機関の人間になるように言われていた訓練生なだけに、意外とそういった方面の才能を“シャーレの先生”として発揮することができていたけれども、

 

これまで怪獣災害なんてまったくなかったキヴォトスで対怪獣兵器や防衛軍が存在しない状況で【スーパーGUTS】と同じだけの戦果を上げることは不可能な話で、キヴォトスで再び“(ティガ)”になることができた僕が一人で全て何とかしないといけない状況に早々に追い込まれてしまっていた。

 

なにしろ、怪獣はアビドス砂漠だけではなく、キヴォトス各地に何の前触れもなく現れるわけであり、北条先生とちがって ただの“シャーレの先生”でしかなかった僕は 怪獣が暴れ回ってSNSでトレンドになったのを見て それで怪獣災害の発生に気づいて、無視を決め込むこともできず 人知れず【アビドス】を離れて対処に向かうような有り様だったのだ。

 

しかも、僕は防衛チームの訓練生でしかない;それでいて、特捜チーム【スーパーGUTS】が誇る装備も手許にない状態なので、僕に与えられた唯一の武器はこれまで失わずに大事にとってきた“(ティガ)”しかない――――――。

 

北条先生のようにウルトラマンや怪獣に関する膨大な研究資料や戦闘記録を閲覧することができていたら、どれほどよかったか――――――。

 

キヴォトスに現れる未知の怪獣に対して、どこまでのことができるか“(ティガ)”となった僕自身も把握しきれていないから当然ながら苦戦続きで、辛くも怪獣を倒しきったとしても出現してすぐに倒しに行けなかったことで駆けつけるまでにいくつもの廃墟が生まれ、怪獣との激しい戦いの中で僕自身が押し潰してしまったことで家を失った人たちの嘆きの声が聞こえてくる。

 

今 思い出すだけでも、せっかく一人で“(ティガ)”になれるようになったというのに、自分の不甲斐なさに穴があったら入りたい気分に何度もさせられてきた。

 

けれども、北条先生とはちがって出来が悪い僕は誰にも打ち明けることができなくて、それで怪獣を倒して急いで帰ってきたとしても【アビドス対策委員会】のみんなからは『いつも体調が悪そうで 肝腎な時にいないことがあって 頼りにならなそう』だと思われているのもわかってしまうのだから、辛い。

 

そう、“光”と“シャーレの先生”の二重生活を両立させようとして早々に破綻しそうになっていたのが『前回』の僕であり、それはまさしく北条先生がその意志を受け継ごうとした“ウルトラマン先生”の失敗そのものであり――――――。

 

けれども、なんとか【アビドス高等学校】が抱えている問題に 解決とまではいかなくとも ある程度の方向性を示して依頼を完了させることができたのは――――――、

 

『前回』そこから放置し続けたせいで【アビドス高等学校】からキヴォトスの破滅が始まってしまったことはさておき――――――、

 

この時期に“超古代の伝説の巨人”と決闘しにヘラクレス座/M-16惑星:グレゴール星から遥々やってきた“宇宙の帝王”がキヴォトスに現れたからだった。

 

 

――――――本当に嬉しかった。伝説の英雄:アスカ・シン/ウルトラマンダイナと正々堂々と決闘をしてきた宇宙格闘士:グレゴール人ならば話が通じるはずだ。通じた。本当によかった。

 

 

特捜チーム【スーパーGUTS】の訓練生だったことで僕が知っている数少ない比較的友好的な宇宙人との交渉に僕は全神経を集中させた結果、僕の正体が“(ティガ)”であることを見抜いた“帝王グレイ”は僕の師匠になってくれたのだった。

 

なぜなら、宇宙船のリングで軽く試合形式の練習(スパーリング)をしてみると、あまりにも僕が弱すぎて話にならなかったのだ。遥々 宇宙の彼方から辺境の惑星までやってきたというのに本気を出すまでもないとなると、“帝王グレイ”の中の熱が冷めていくのは自然なことであった。

 

しかし、少しでも食らいついて その強さや技術を盗んで 怪獣退治に役立てようと必死になった僕が捨て身で放った一撃が“帝王グレイ”の心に響いたらしい――――――。

 

僕が試合形式の練習(スパーリング)で力尽きたと同時にキヴォトスに怪獣が現れたことを逸早く悟った“帝王グレイ”は僕をメディカルマシーンに入れると、後で見て学べと言わんばかりに“ウルトラマンティガ”の姿となって僕の代わりに怪獣と戦ってくれたのだった。

 

このおかげで、僕が怪獣災害に対処できない状況には“帝王グレイ”が“ウルトラマンティガ”を演じて怪獣退治をしてくれていたので、そうして稼いでくれた時間のおかげで【アビドス対策委員会】と【カイザーコーポレーション】の紛争に一区切りをつけることができたのだ。

 

その後も僕と同じ地球人の姿となって“シャーレの指導員”という肩書で【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の協力者になってもらい、同時に僕に巨人の戦い方を教えてくれた師匠として力の使い方だけじゃなく戦士としての心構えも教えてくれた――――――。

 

 

――――――ああ、憶えているよ。ウルトラマン80にこれまでの戦いの記憶の全てが“光”となって受け渡されたと言うのに、師匠である“帝王グレイ”と駆け抜けてきた日々のことを。

 

 

そう、機械の身体になってしまって『今回』披露する機会は永遠に訪れることはないのだが、僕のウルトラマンとしての戦い方の基礎は宇宙格闘士:グレゴール人仕込みのものであり、

 

それまでは伝説の英雄:アスカ・シン/ウルトラマンダイナの戦闘記録から学んだものと、わずかながらの“(ティガ)”になった時の感覚を織り交ぜた我流であったため、

 

最初に“(ティガ)”となって特捜チーム【GUTS】と共に怪獣と戦い続けた偉大なる先人(マドカ・ダイゴ)とはだいぶ掛け離れた戦闘スタイルになっているのは自覚している。

 

それでも、僕の中でずっと大切にしてきた“光”は僕の求めに応えて、難敵に思えた数々の凶悪怪獣や侵略宇宙人を打ち砕く絶大なる力へと成長していき、最初の頃とはすっかり見違えるほどになった。

 

それ以外にも師匠との試合形式の練習(スパーリング)やメディカルマシーンによる治療、宇宙船による高速移動などによる手厚い支援の数々によって、エデン条約を巡る大波乱や企業勢力が引き起こしたクーデターにも怪獣災害と並行して対応することができるようになったのだ。

 

というより、僕と師匠が入れ替わりで“ウルトラマンティガ”になって戦うスイッチ戦法が生命線になっていたと言っても過言ではなかった。

 

そうして師匠と二人三脚で数々の怪獣災害を退けてきた僕はいつしか“帝王グレイ”から直々に決闘を申し込まれるぐらいに力をつけることができたのだった。

 

 

――――――これまでの感謝を込めて一人の戦士として“宇宙の帝王”に挑戦する;永遠に忘れることのない興奮に包まれた最高の一戦の中、互いの魂と魂が激しくぶつかり合って最後の一撃が交差した時、初めて僕の拳の方が速く届いたのだ。

 

 

僕にとっては最大の恩人とも言える師匠と再会できるこの日を何よりも心待ちにしていたところがあった。

 

向こうとしては当然ながら僕のことなんて何も知らないし、『今回』僕が“(ティガ)”になれなくなったことでユウカやノアと同じように『前回』とはまったくちがう関係性になることは覚悟していたとしても、その背中は今でも大きく感じることができた。

 

だから、物語の主役である“シャーレの先生”を支えながら、再び“シャーレの指導員”がキヴォトスの子供たちにその背中を見せ続けてくれるよう、僕は頼み込む他なかった。

 

 

宇宙格闘士の帝王「……待て、マウンテンガリバー。このパンチングマシンに打ち込んでみろ」

 

ロボット職員「え」

 

宇宙格闘士の帝王「お前が連れてきた姫矢という男をメディカルマシーンに入れることは認めよう」

 

宇宙格闘士の帝王「だが、今のオレはお前という存在にあらためて興味が湧いた」

 

宇宙格闘士の帝王「機械生命体との決闘(デュエル)はそう多くはないが経験がある」

 

宇宙格闘士の帝王「しかし、お前は純粋なロボットなのだろう? なのに、有機生命体に固有の魂の脈動を感じるのだ」

 

宇宙格闘士の帝王「お前の正体は肉体を失った幽霊ということになるのか? だとしても、あれには肉体から発する生気がない」

 

宇宙格闘士の帝王「――――――“宇宙の帝王”になっても宇宙にはわからんことがあることにオレは久々に気付かされることになった」

 

ロボット職員「これですよね? これにパンチを当てればいいんですよね?」

 

宇宙格闘士の帝王「そうだ。壊してもかまわん。全力で行け」

 

ロボット職員「では、思いっきり、ありったけの一撃を」ブン!

 

 

ドッゴーーーーーーーーーン! ――――――パンチングマシン粉砕!

 

 

ロボット職員「どうですか?」

 

宇宙格闘士の帝王「……惜しいな。実に惜しい」

 

ロボット職員「?」

 

宇宙格闘士の帝王「誰に習ったのかは知らないが――――――、あるいは自力でその境地にまで辿り着いたのなら、今すぐに決闘(デュエル)を申し込んでいたところだが、」

 

宇宙格闘士の帝王「残念だが、今の一撃はその機械の身体に多くを支配されたものだ。間違いなく全力でありながら全力を出しきれない身体になっている」

 

宇宙格闘士の帝王「どう説明したものか――――――、今のお前は本来のお前ではなく偽物だ。本来ならば戦士として極まった境地から放つ一撃で()()するのではなく()()させることもできたはずだ。それが実に惜しい」

 

ロボット職員「――――――!」

 

ロボット職員「……さすがは“宇宙の帝王”ですね。僕の正体を拳一つで見破ってくれるだなんて光栄ですよ」

 

宇宙格闘士の帝王「当たり前だ。真の格闘家は拳で語り合うものだ。拳に乗せた魂の叫びをぶつけ合うのだ」

 

宇宙格闘士の帝王「だからこそ、今の一撃にはオレへの熱い思い(クソデカ感情)が込められていて、このオレが思わず圧倒されるものがあった」

 

宇宙格闘士の帝王「これはどう考えてもおかしい。オレとお前は今日で初対面のはずだ。なのに、この宇宙船に入った時も、まるで何度も足を運んだことがあるかのように懐かしんでいなかったか」

 

ロボット職員「そ、そうなんですよ! よく見てますね、グレゴリオ様は!」

 

宇宙格闘士の帝王「となると、お前は本当に宇宙の何処かでオレが過去に会ったことがある誰かなのか――――――、それが肉体を失ってこの辺境の惑星に流れ着いたというわけか」

 

宇宙格闘士の帝王「だが、思い出せんな。そこまで素質があったというのに、実に惜しいことをしたものだ」

 

ロボット職員「そう言ってもらえるだけでも十分です。あなたが僕のことをここまで強く育ててくれたのですから」

 

宇宙格闘士の帝王「……肉体があった頃の名は何と言う?」

 

ロボット職員「――――――『コーイチ』です」

 

宇宙格闘士の帝王「……やはり思い出せんな」

 

ロボット職員「いえいえ、僕程度の存在のためにグレゴリオ様の気を煩わせることになるのは気が引けますので、『素質があった』と褒めてもらえただけでも十分ですから」

 

宇宙格闘士の帝王「そうか。だが、それではオレの気が済まない」

 

宇宙格闘士の帝王「コーイチよ、オレにできることがあったら何でも言え。この“宇宙の帝王”が力になってやろう」

 

ロボット職員「あ、ありがとうございます!」

 

ロボット職員「なら、初めて怪獣頻出期に突入することになった辺境の惑星:キヴォトスの窮状をお救いしていただけないでしょうか!」

 

宇宙格闘士の帝王「いいだろう、コーイチ! その願い、本気で戦えない身体になってしまったお前に代わって、この“帝王グレイ”が叶えてやろう!」

 

宇宙格闘士の帝王「そして、この“帝王グレイ”の伝説をこの星に刻みつけてくれよう!」

 

ロボット職員「や、やった! あ、ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます……!」

 

宇宙格闘士の帝王「いや、オレもこの惑星に来たばかりだが、キヴォトスには思うところがあったのだ」

 

 

――――――なぜ あの場では 女子供しか怪獣と戦っていなかったのか、とな。

 

 

 

 

 

神代キヴォトス人「そうか。早速、あのグレゴール星人を味方につけることができたのか。やはりな」

 

神代キヴォトス人「言ったであろう。お主こそが“光”の中心なのだ。お主がいるからこそ、みなが1つに集まれるのだ」

 

神代キヴォトス人「だからこそ、『前回』を踏まえて16年前の過去にお主が来て因果がより強固となったはずの『今回』なぜ“シャーレの先生”が北条 アキラになったのが未だに不可解ではあるのだがな……」

 

 

こうして【アビドス】にてキヴォトスの外からやってきた広義の異邦人である異星人:グレゴール星人と【ゲヘナ】の温泉街で噂になった絶世の美人である犬の獣人:サーベラスのエキシビションマッチが組まれ、その話題性と物珍しさからキヴォトス中から多くの観客が集まることになった。同時に動画配信サイトでの実況中継も実施。

 

このエキシビションマッチの主催者はキヴォトスの頂点に立つ存在である地球人:北条 アキラが軍事顧問となる【キヴォトス防衛軍】であり、怪獣無法地帯の最前線となる新アビドス自治区内に特設リングを設け、厳重な警戒態勢の許で興行は執り行われることとなった。

 

試合形式は【近接格闘戦】【戦術対抗戦】【巨大総力戦】の3本勝負となり、単純な勝ち負けの2本先取ではなく、観客に全試合内容を評価してもらって合計点数を競う採点競技となっており、

 

異星人であるグレゴール星人:グレゴリオはキヴォトスに来てすぐで知名度がないためにアウェイゲームとなって、このままでは巷で有名な絶世の美人である神代キヴォトス人:サーベラスに顔だけで不利と言ったところか。

 

そのため、事前の番組宣伝においては“宇宙の帝王”グレゴール星人:グレゴリオのパフォーマンス映像が流れ、対する“地獄の釜の番人”神代キヴォトス人:サーベラスもリングへの意気込みを熱く語った。

 

どちらも自前の金銀財宝を惜しげもなく見せつけるゴージャスな演出でキヴォトス中の興味を引き、キヴォトス人なら絶対に使わないであろう、あまりにも特殊すぎる武器を引っ提げて大迫力のCMを提供することとなった。

 

今回は出場給(ファイトマネー)を両者に支払うため、割と高めの席チケット(現地観戦)電子チケット(ネット観戦)となり、元々が【カイザーコーポレーション】が【キヴォトス防衛軍】の介入を恐れて変形闇怪獣:ガゾートを生み出すほどの強力な通信障害が発生しているため、自然と独占配信となっていた。

 

席チケット(現地観戦)は生徒たちの分を先に仕入れていた地球人:北条 アキラの宣伝もあって早くも完売となっており、電子チケット(ネット観戦)の売れ行きも好調。

 

ゴールドラッシュで需要が伸びていた現地の宿泊施設の宿泊プランも人気となっており、そこには【アビドス】への贖罪のために【セイント・ネフティス】が格安で用意したものもあった。

 

こうして【キヴォトス防衛軍】のアビドス遠征の重要拠点として十全に機能してもらうべく【アビドス高等学校】にこういった形の多大な経済支援が行われることになり、公認の生徒会活動への登録を目指している【アビドス対策委員会】としては嬉しい悲鳴が止まない日々が続いていた。

 

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!

 

 

ロボット職員「見てください。1万人規模の観客席は全て埋まっていて、ネット観戦も同時接続が10万人に届きそうな勢いですよ」

 

宇宙格闘士の帝王「大した科学力を持たない辺境の惑星だと思っていたが、四次元空間に領土を持っていて、そこで特設リングとなる会場を用意して、それを丸ごと四次元移動させて一夜にして会場設営を終わらせるとはな」

 

宇宙格闘士の帝王「これならどこでも興行ができる上に再利用ができて非常に経済的だ。屋根や空調も完備で女子供にも飽きさせない造りなのも実にいいぞ。いいアイデアだ。今後の参考にさせてもらうとしよう」

 

ロボット職員「そうでしょう。広告宣伝にしても、観客席の設計にしても、これらは全て“シャーレの先生”にして“GUYSの先生”である北条先生のアイデアですし、今回の興行を必ず成功させるために現在も万全の体制で【シャーレ・オフィス】に残っているわけです」

 

宇宙格闘士の帝王「相当なやり手だな、北条先生というのは。これまで怪獣災害がなかったキヴォトスで一から【キヴォトス防衛軍】を創り上げて万全の防衛体制を構築した手腕は見事としか言いようがない」

 

宇宙格闘士の帝王「このオレは40億年以上前から他の知的生命体の誕生や存在を許さずに根絶やしにしようと活動してきた“宇宙の帝王”を自称するバド星人の帝王を討ち取ったことで、その称号(タイトル)を我がものとして、それにふさわしい生き方をするようになったが、」

 

宇宙格闘士の帝王「暗黒宇宙で拳一つで成り上がってきたオレにはできないやり方で人々の心を1つにまとめあげて怪獣に立ち向かえるようにしたのは、さすがは“キヴォトスの頂点に立つ存在”と評されるだけのことはある」

 

神代キヴォトス人「ほう、“宇宙の帝王”というのはバド星人から勝ち取った称号(タイトル)というわけか。実に興味深いな」

 

ロボット職員「サーベラス様」

 

神代キヴォトス人「数十億年にも及ぶ宇宙の進化の歴史に取り残された 生きた化石とも言える 原始人の帝王の実力とはいかほどのものか……」

 

神代キヴォトス人「太古の宇宙で栄華を極めた種族が数十億年も経った現在でも続いていたとしても、ああいう 卑しく さもしく 醜い生き方はしたくはないものよな……」

 

宇宙格闘士の帝王「たしかにな。やつらはすでに過ぎ去ってしまった数十億年前の過去の栄光に囚われ続け、自分たちよりも優れた種族や文明が生まれることを妬み続けて 宇宙の発展を阻害する 生まれた時点で老醜の老いぼれ種族ではあった」

 

宇宙格闘士の帝王「だが、だからこそ、やつらが支配する暗黒宇宙の底に淀んだ妄執と老廃物で腐臭を放つ汚泥(ヘドロ)は想像を絶するものがあった」

 

宇宙格闘士の帝王「はたして、そんな汚泥(ヘドロ)を掴んだこともないような光の眷属にこのオレの暗黒拳を受け止めることができるかな?」

 

神代キヴォトス人「笑止。3000万年以上の超古代より古の神代から闇の勢力と戦い続けてきた我ら光の勢力がその程度の穢れを恐れるものか」

 

ロボット職員「あの……、良い感じに温まってきたところで、決着はリングでお願いします……」

 

宇宙格闘士の帝王「いいだろう。このオレの強さをこの辺境の惑星にも刻みつけてやろう。そして、女子供に“帝王グレイ”の伝説を語り継がせるのだ」

 

神代キヴォトス人「それは同感よな。その辺境の惑星を 古の時代より守り 生命を育んできた守護神の威光を現代に蘇らせるとしよう」

 

ロボット職員「――――――両雄、今、リング・イン!」

 

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 

四次元空間から用意された1万人以上を収容できるアリーナの中心に人間サイズのリングが設置されている。

 

観客席には全てWi-Fiスポットと充電スポットにイヤホンジャックが用意されており、肉眼でリングを見るのが困難な場合はデジタルネイティブであるキヴォトス人の必需品であるスマートフォンから席チケットの裏にあるQRコードと固有のパスワードから中継映像を閲覧することが可能となっていた。

 

今回は【近接格闘戦】【戦術対抗戦】【巨大総力戦】の3試合を通して観客が全試合内容を評価して合計点数を競う採点競技となり、最後となる【巨大総力戦】が終わるまでは双方の獲得点数がわからないため、最初から最後まで見逃せない一戦の連続となることが約束されていた。

 

そのため、銃撃戦が主体となるキヴォトスにおいては近接戦闘(CQB)を取り入れている部活動以外では習得者が極めて珍しい格闘技に興味があったり鍛錬を積んでいたりする生徒たちが【近接格闘戦】を目当てに足を運んでくる一方で、

 

キヴォトスの外から来た異邦人;その中でも怪獣頻出期の到来で一番の脅威となっている異星人による射撃戦というのがどういうものになるのか、その物珍しさに興味を惹かれて関心を持つ生徒たちは【戦術対抗戦】を楽しみにしており、

 

そして、今回の興行の最大の目玉となるのが怪獣災害という極めて危険な状況でしか見ることができない巨大な戦力同士のぶつかり合い【巨大総力戦】を特設アリーナでしっかりと安全を確保した上で間近で観戦できるという画期的な試みが行われていた。

 

しかし、広義におけるキヴォトスの外から来た異邦人の2人にとっての決闘(デュエル)とは【巨大総力戦】のことであり、その前の【近接格闘戦】【戦術対抗戦】の2つはいかにしてキヴォトスの人々に自身の存在を刻みつけるかのパフォーマンスの舞台に捉えているため、本気を出すまでもない相手ならそこまでだが、死力を尽くすよりも魅力を披露する演舞のようになったのだ。

 

なお、万が一に現地で怪獣災害が発生して試合が中断になった場合、基本的に延期はしないため、未実施となった試合の観戦料は返金となる。

 

 

――――――衆人環視のロープに囲まれたリングの中で 両雄 向き合い、第一回戦【近接格闘戦】の開始のゴングが鳴り響いた!

 

 

暗黒宇宙で拳一つで成り上がってきたという宇宙格闘士:グレゴール人の中でも傑出した才能で宇宙中を渡り歩いて“帝王グレイ”の名を轟かせた 見るからに真っ黒な宇宙人という風貌のグレゴール星人:グレゴリオの剛腕に対して、

 

神代から続く超古代文明において闇の勢力と戦い続けてきた光の眷属:サーベラスはエジプトの壁画に描かれているような頭身の高い犬の獣人といった風貌でありながら、しなやかで俊敏な動きで人間ではありえないような挙動を見せて会場を唸らせた。

 

振るわれる一撃が血飛沫を巻き上げる鉄の暴風のようなグレゴリオの猛攻を捌きながら、一気に姿勢を低くして懐に入り込むサーベラスの踏み込みの速さはキヴォトス人でも捉えることが困難であった。一瞬だけ本当に本物の犬と同じ四足歩行になっているからだ。

 

そのため、互いの実力を測りながら観客に自身の強さを見せつけるようにラウンド毎に戦い方を変えて技を競い合い、このことが格闘技にこれまで興味がなかったキヴォトス人に強い影響を与えることになり、ラウンドが進む毎に真っ黒な宇宙人と超絶美人の犬の獣人が激しくぶつかり合う血湧き肉躍るマットの振動に誰もが息を呑むのであった。

 

いやいや、【近接格闘戦】の後にも【戦術対抗戦】【巨大総力戦】があるというのに、1ラウンド:3分/インターバル:1分の10回戦の最終ラウンドにもなると、これで倒されるのならそれまでだと互いに本気で仕掛けることになり、

 

グレゴリオの一撃がついにサーベラスを捉え、その身体がリングのロープまで吹っ飛ばされてロープで勢いよく跳ね返ってきたところに腹に捻り込ませるボディブローでようやくダウンを奪ってマットに沈めたかと思いきや、

 

すぐに起き上がってきたサーベラスが反撃で繰り出したサマーソルトキックをグレゴリオが簡単に防いでトドメの一撃を加えようとしたところで後れて飛んできた尻尾がグレゴリオの顎に当たっただけで身体を天高くまで押し上げたのである。あり得ないと思ったのは観客も同じだ。

 

しかし、そこからグレゴリオが身を翻して落下の勢いでマットの上に立つサーベラス目掛けて拳を振り上げ、それをサーベラスが逃げもせずにグレゴリオの攻撃を真正面から迎え撃つと、あまりの衝撃に観客席の最前列には保護ガラスが張ってあったというのに観客席全体に激震が走るほどであった。中継映像も大きく揺さぶられた。

 

そして、観客が気がつくとリングのマットが破裂しており、グレゴリオとサーベラスはリングの支柱に立って、最終ラウンドの終了のゴングが鳴ると同時に支柱から跳び上がっての最後の攻防がすれ違い様に行われ、互いが立っていた支柱に入れ替わって降り立ち、そこで我に返ったレフェリーが試合が終わったことをようやく告げることができたのだった。

 

最終ラウンドだけでも互いに相当なダメージを負っただろうに、観客が全試合内容を評価して合計点数を競う採点競技ということで試合終了後のパフォーマンスを支柱の上で行うと、セコンド陣に迎えられて次の【戦術対抗戦】までインターバルとなったのであった。

 

正直に言って、最終ラウンドの攻防だけを見ても両者の実力は拮抗しているように見え、大恩ある師匠である“帝王グレイ”がキヴォトスに来訪した当初の目的である『超古代の伝説の巨人との決闘(デュエル)』を代理人を立てて実現させたロボット職員:マウンテンガリバーとしては勝負の行方にハラハラが止まらなかった。

 

というより、“地獄の釜の番人”が“帝王グレイ”と互角の肉弾戦ができることが驚きであり、今や惑星守護神:ギガデロスを駆って怪獣退治の一翼を担う戦力として欠かせない存在となっているが、まさか生身でもメチャクチャ強いことに度肝を抜かれていた。犬の獣人が二足歩行から瞬時に四足歩行に切り替えて足元から執拗に襲いかかってくるのはかなり恐ろしいものがあった。

 

あくまで全力全開の【巨大総力戦】まで勝負を預けておくつもりで【近接格闘戦】はまず互いのことを拳で語り合うだけに留めているのかと思いきや、最終ラウンドになった瞬間に相手を容赦なくマットに沈めるつもりで今まで以上の猛攻を互いに仕掛けての死力を尽くした応酬になってリングが破壊されることになった。

 

それだけでどっちが強いのかという単純な比較は無意味なものとなっており、マットが破裂した後もリングの支柱に跳び移っての最後の空中戦で完全に観客の心をただただ『スゴイ』という感想しか出てこない状態にまで叩き込んだのだ。

 

本当は現時点での両雄の獲得点数を主催者権限で覗くことができるのだが、『前回』と『今回』の大恩人である2人の師匠が次はどれほどのものを魅せてくれるのかとワクワクが止まらなくなっており、結果は最後のお楽しみにすることにした。

 

 

――――――打って変わって特設アリーナの中心に第二回戦【戦術対抗戦】の舞台となるキルハウスが現れ、スターターピストルの銃声と共に両雄が再び姿を現した。

 

 

この【戦術対抗戦】で使われるキルハウスはデジタルツイン*1によって観客からは中で何が起きたのかをリアルタイムで追跡することができるようになっており、キルハウス内での本格的な近接戦闘(CQB)をモニター鑑賞できるようになっていた。

 

しかし、本来ならば【戦術対抗戦】は部隊単位での集団戦を意味するのだが、武器を手にした場合の1対1の決闘(デュエル)においては帝王のエンターテイメントになっており、相手をただ銃撃の一射で屠るのは絵面としても地味ですぐに終わるということで こうしてエキサイティングな競技に変えられていた。

 

ルールは1ラウンド:3分/インターバル:1分の10回戦となり、キルハウス内や周囲に放たれた無人機と対象物を標的にしたものとなっており、インターバル中は全ての攻撃が封じられることになり、相手をドサクサにまぎれて狙い撃って戦闘不能にしても最終ラウンドまで続行となる。

 

そんなわけで、4✕4の碁盤の目に連絡橋が必ずある4階建てのキルハウスが規則正しく配置され、互いに対角線上のキルハウスの屋上に両雄が姿を現すと、会場はそれだけで大盛り上がりとなったのだ。というより、またしてもキヴォトス人としてはあり得ないような武装の選択となっていたのだ。

 

挑戦者である“宇宙の帝王”グレゴリオはなんと両脚に打ち上げミサイル、両肩にミサイルポッドを装着し、両脇には重機関銃を挟み、右手にアーミーナイフ、左手にダブルガトリングガンという超重量過多な歩く武器庫と化しており、そんな超重装備で4階建てのキルハウスの屋上に一飛びして床に亀裂を入れて登場(エントリー)したのだから、地球人を凌駕する身体能力を発揮するキヴォトス人であろうとも驚くのは不思議なことではない。

 

一方で、防衛側の“地獄の釜の番人”サーベラスは打って変わって左手に持った不思議な形状の弓らしきものだけ持って軽やかに屋上に現れたのだ。近接戦闘(CQB)として一定の需要がある格闘技に対して、銃火器が生徒たちの手足になっているキヴォトスで弓はあまりにも時代遅れとしか言いようがなく、よく見れば矢筒すらないのだから、観客席からは困惑と嘲笑の声が所々から漏れ出ていた。

 

しかし、スターターピストルと共に得点となる標的が次々と現れると、一気にキルハウスは銃声と爆発音が響き渡るキヴォトスの日常の縮図と化したのである。

 

開幕早々にグレゴリオが両脚の打ち上げミサイルを発射すると、当然それは対戦相手のサーベラスがいる方角へと打ち上げられたのだが、実はそれはクラスター爆弾*2であり、4✕4のキルハウスの半分近くがいきなり瓦礫の山と化したのである。

 

そこから驚異的な跳躍力でキルハウス上空から左手のダブルガトリングガンを乱射して目に付く標的に銃弾の雨を浴びせるという想像を絶するパワープレイ(ゴリ押しのゴリ押し)で観客を唖然とさせると、キルハウスの半分近くが倒壊したことで巻き上がった粉塵の向こうから彗星のように尾を引く一筋の光がグレゴリオを貫こうとした。

 

予想外の攻撃にグレゴリオは咄嗟にダブルガトリングガンの盾で防ぐが、その威力に体勢を崩すことになり、次々と放たれる光の矢から身を守るために近くの屋上に身を隠して体勢を立て直す他しかなかった。

 

そうしてグレゴリオ側のキルハウスに展開されていた遠隔の標的を次々と過たず光の矢が砂煙の向こうから着弾し、敵の狙いを悟ったグレゴリオが急いで自身の周りにある標的へ向けて両肩のミサイルポッドを発射するが、発射された瞬間にミサイルでさえも撃ち落とされ、その爆風にグレゴリオが晒されることになったのだ。

 

こうして第1ラウンドから開始早々にキルハウスの半分が倒壊するというキヴォトスの日常の縮図と化した決闘場に最初のインターバルを告げるスターターピストルが鳴り響き、1分間だけ全ての武器の使用が禁止となり、少しずつ砂煙が晴れていくと、そこから姿を現したのがサーベラスであり、相変わらず謎の形状の弓だけを手にしていた。

 

それがあまりにも大胆不敵で不気味であり、次のスターターピストルが鳴るまで倒壊した廃墟から見上げるサーベラスとキルハウスの屋上から見下ろすグレゴリオが睨み合う。

 

そして、第2ラウンド開始のスターターピストルが鳴り響いた瞬間に両者は一斉に武器を構え――――――、

 

グレゴリオは左手のダブルガトリングガンを手放し、両脇の重機関銃を手にして屋上からキルハウスの壁を駆け下り、

 

サーベラスは謎の武器の正体である超古代兵器:サークルアームズから光の弦と矢が形成され、変幻自在の光の矢の曲射によってグレゴリオを上下左右から撃ち貫こうとする。

 

しかし、サークルアームズから放たれた光の矢が収束するタイミングを見計らってキルハウスの壁を蹴ることで潜り抜け、グレゴリオはなおも変幻自在の光の矢を射掛けるサーベラスを目指し、両手の重機関銃を乱射しながら迫る。

 

最終ラウンドまでは様子見の雰囲気であった第一回戦【近接格闘戦】とは打って変わって、第1ラウンドから全力全開の様相を呈している【戦術対抗戦】は早くも第2ラウンドで決着がつきそうだと観客たちは思わず息を呑んで見届けることに集中していた。

 

互いの武器を乱射しながらも連射性に劣る弓の弱点を突かれて間合いを詰められていくサーベラスであったが、両手に重機関銃を持つグレゴリオとしても緊張の瞬間の連続であった。

 

犬の獣人であることを極めた動きで【近接格闘戦】でサマーソルトキックに続く思わぬサーベラスの尻尾の一撃を踏まえて、不意に四足歩行をとって一瞬で視界外の足元から一気に迫られる恐れがグレゴリオにはあったのだ。

 

そのため、グレゴリオは左手の重機関銃を途中で撃つことなく下に向けてサーベラスの動きを牽制し、サーベラスもまた光の矢を番えた状態で撃つことを止めて、両雄は自ら一足一刀の間合いにまで入った。

 

グレゴリオは右手にアーミーナイフを抜き取り、左手に重機関銃を持った自身の優位性を確信するのだが、これは近接戦闘(CQB)も有りのルールなため、【近接格闘戦】で見せた奇想天外な動きで反撃してくることも考えられたため、これでもまったく油断できない状況であった。

 

そんな時、第2ラウンド終了のスターターピストルが鳴り響いた瞬間、サーベラスが一瞬で間合いを詰めて来たのだ。決して油断していなかったグレゴリオだったが、こればかりはインターバルに救われたと思わせるには十分な奇襲であった。

 

なぜならグレゴリオがアーミーナイフでサーベラスの近接攻撃を防いだと思ったら、サークルアームズの刃が割れてハサミのようになって、アーミーナイフで片方の刃を防いでも もう片方の刃が自分の首筋に迫ってきていたのだ。

 

スターターピストルが鳴り終わる前の一瞬の隙を突いて勝負を決めようとした“地獄の釜の番人”サーベラスの奇襲を“宇宙の帝王”グレゴリオは間一髪で躱し、攻撃禁止のインターバルとなって仕切り直しになったわけなのだが、まさに両雄は実力伯仲と言って遜色ない。

 

そこから第3ラウンドは超古代文明の三段可変武器:サークルアームズを手にするサーベラスにアーミーナイフと重機関銃で立ち向かうグレゴリオによる激しい白兵戦となっており、変幻自在のサークルアームズに武器を絡め取られそうになるのをアーミーナイフで回転斬りをする荒業で切り抜けるなど見どころ満載であった。

 

しかし、このままだとサークルアームズとアーミーナイフの近接戦闘(CQB)の応酬になって観客がずっと緊張の瞬間の連続で見るのが疲れてくるし、【近接格闘戦】との大きなちがいがなくて退屈ということで、“帝王グレイ”の信条であるエンターテイメントに反する今の流れを打開するべく第4ラウンドから動いた。

 

第4ラウンドは切り結んだ2人が睨み合いながらグレゴリオ側の倒壊していないキルハウスへと双方が駆け出し、ようやくキルハウスを利用した立体的な近接戦闘(CQB)が始まろうとしていた。

 

先程までの激戦とは打って変わって静かな試合運びになっていたが、キルハウス内部にある標的を駆け足で撃ち抜いていく本来の競技内容がようやく開始され、サークルアームズの光の矢と重機関銃の弾幕が競いながら次々と駆け抜けていくように標的を撃ち抜いていった。

 

一方、サーベラスはサークルアームズによる光の矢の曲射を隙あらば窓から射掛けて、正確にグレゴリオの移動先を予測してグレゴリオ側のキルハウスに次々と彗星のように尾を引いて弾痕を作っていった。窓から窓へと光の矢が曲射で射抜くことは明らかに不可能なことに思われていようと、壁に弾痕を刻む音が常に耳元に響いていれば、相当な恐怖心を煽るものになるはずだ。

 

そして、勝負は第8ラウンドへと縺れ込み、4✕4で配置された4階建てのキルハウスの半分を開幕早々にグレゴリオがクラスター爆弾で破壊し尽くし、残り半分のキルハウス内部の標的の破壊を両雄が驚異的なペースで達成した後、連絡橋や窓から超人的な身体能力で跳び移っての立体的な激しい攻防が繰り広げられた。

 

基本的に犬の獣人としての極まった運動能力を披露してきた神代キヴォトス人:サーベラスが俊敏に射線を遮って一方的に光の矢の曲射で圧力を掛け続ける展開は変わらず、超古代兵器のインチキ具合に宇宙格闘士の帝王:グレゴリオが防戦一方になっているように見えた。

 

しかし、最終的にグレゴリオが屋上に残していたダブルガトリングガンで対抗し、再びキルハウスに銃弾の雨を降らせながら連絡橋より下に落ちたと思いきや、ダブルガトリングガンで四方八方に開けた壁の穴に掴まってサーベラスの裏を掻くことに成功し、

 

グレゴリオが投擲したアーミーナイフをサーベラスが間一髪で反射的にサークルアームズで弾いてしまったところにダブルガトリングガンの砲身で殴り飛ばすという奇襲が炸裂したのである。

 

これにはサーベラスも反応が遅れた。なぜなら、先程までクラスター爆弾や重機関銃などの轟音が響き渡る戦場だったのだ。轟音に慣らされてしまった耳と連絡橋より下に落ちたはずだという思い込みにより、ダブルガトリングガンで直接殴りに来る近接戦闘(CQB)を完全なる奇襲へと至らせたのだ。

 

このまま勢いよく連絡橋の上を転がっていくサーベラスに対して情け容赦なく追い討ちのダブルガトリングガンが火を噴く。

 

それでも、追撃のダブルガトリングガンの猛火に対して怯むことなく、剣を展開して弓にしたサークルアームズを連絡橋に突き刺すことで無理やり勢いを殺しながら光の矢を放って反撃してくるのにはグレゴリオも対応しきれず、双方が直撃弾を受けることになったのだった。

 

観客席は再び熱狂に包まれ、インターバルを告げるスターターピストルが鳴った。次で最終ラウンドである。

 

連絡橋の上で互いに直撃を受けた両雄が息を整えながら互いに武器を構え、睨み合い、静かにその時を待った。

 

そして、運命の最終ラウンドを告げるスターターピストルが鳴り響き、ダブルガトリングガンが火を噴くと、その弾幕を全て引き裂いて刃から眩い光を放つサークルアームズが投げ込まれたのである。光の弦で光の矢を放つかと思いきや、変形した剣自体が光を放って矢として射出されたのである。

 

しかし、ダブルガトリングガンの弾幕を切り裂くサークルアームズの光の剣が迫ると否や、グレゴリオは咄嗟にダブルガトリングガンを手放し、サークルアームズの光の剣を暗黒の力を宿した裏拳で弾き飛ばす。

 

サークルアームズがあらぬ方向へと弾き飛ばされた瞬間、そこには射出したサークルアームズの光の剣を目眩ましにして四足歩行の低姿勢で一気にサーベラスが迫っており、口から地獄の業火(ヘルフレイム)を放ったのである。

 

まさかの火吹きに観客席が大きくざわめくと、それを闇の障壁(ダークバリヤー)で遮ったグレゴリオは連絡橋から屋上へと大きく跳び上がり、サーベラスも屋上へと後退して向き合った。

 

そこからサーベラスが生身で腕を振り抜いて放つ赤い光刃(ヘルスラッシュ)が物凄い勢いで連射され、グレゴリオが闇の障壁(ダークバリヤー)でエネルギーを吸収して巨大な火球にして撃ち返す(ダークガルネイトボンバー)と、一直線上にあるキルハウスの屋上を完全に吹き飛ばしたのであった。

 

もはや武器なんてなくても街を破壊し尽くすことができる恐るべき戦闘力を発揮し続けた両雄の激戦は最終的に4✕4で配置された4階建てのキルハウスのほとんどを廃墟にするという結果に終わり、最後のスターターピストルが鳴り終わるその瞬間には再びサークルアームズとダブルガトリングガンを手にして両雄が撃ち合う直前になっていた凄まじい展開となっていた。

 

こうして第二回戦【戦術対抗戦】は見応え抜群のこの世の地獄のような空前絶後の内容となり、最後のスターターピストルが鳴り終わって構えを解いた両雄が最後の一戦に向けてその場を後にしても、観客席は静まり返ったままの状態が長く続いたのだった。

 

 

ロボット職員「派手にやってくれましたねぇ……」

 

神代キヴォトス人「これは警告だ。我々が本気を出せば街一つ消滅させることは容易い。そのことを知らしめておけば、我々が所属する【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】に無謀にも挑戦しようとする輩への抑止力にはなるだろう」

 

神代キヴォトス人「それに、我は先生やお主のように優しくはないぞ。そもそも、我の使命は【ゲヘナ】の豊穣の大地を司ることであって、民草を慰撫することにかまけて精魂を削ぐことは使命に反することになる。これで軽々しく我に近寄る者も減るであろうよ」

 

ロボット職員「ええ。それはわかっております。本当に感謝しております」

 

神代キヴォトス人「まあ、濫りに力を使わないにしても、現在のこの身体でどこまでのことができるのかを測るのと、“帝王グレイ”の実力を見極めるためにも、決闘場となるキルハウスは徹底的に破壊し尽くすことはあらかじめ盛り込んでいたことなのだ」

 

神代キヴォトス人「やはり、暗黒宇宙で拳一つで成り上がってきたとやつ自身が言っていたように、基本的には闇の側に属する一般的な宇宙人ではあったな」

 

ロボット職員「なら、不倶戴天ということですか? “帝王グレイ”は『仲間にはなれない』ということですか?」

 

 

神代キヴォトス人「いや、必ずしも光と闇は相容れないというわけではない」

 

 

ロボット職員「どういうことです?」

 

神代キヴォトス人「所詮は光と闇というものは相対的なものだ。絶対的なものではない」

 

神代キヴォトス人「現に、祖先が結んだという『新約』に則った宗教教育を施しているという【トリニティ総合学園】が絶対的な善であるなら、その生徒会である【ティーパーティー】が3つの派閥で構成されていることで派閥争いなんて醜いことが起こるはずがないであろう」

 

ロボット職員「……それはそうですね」

 

神代キヴォトス人「たしかに秩序を構築するためには善悪の価値基準は必要ではあるが、光と闇は社会の進化の方向性の違いでしかないのだ」

 

ロボット職員「そうなんですか?」

 

神代キヴォトス人「簡単な話だ。テーブルの下で本を読むのと、テーブルの上で本を読むのでは、どちらがしっかりと本を読み込むことができるかだ」

 

ロボット職員「当然、テーブルの上に出して明るいところで読んだ方が本に書かれている内容がよく見えます」

 

神代キヴォトス人「そういうことだ」

 

 

神代キヴォトス人「光の本質とは視えるようにすることで物事の輪郭を捉えることであり、光はそれを照らすことで真実を明らかにする働きがある」

 

神代キヴォトス人「一方で、闇の本質とはそれとは逆に視えなくすることで物事の輪郭を曖昧にすることであり、闇はそれを覆い隠すことで秘密を作り出す働きがあるということだ」

 

 

神代キヴォトス人「これを現実世界での事象に表すと――――――、光の戦士は集団における他者の尊重が際立ち、闇の戦士は集団における他者の支配が主となる」

 

神代キヴォトス人「故に、闇の戦士は自分自身や他者との境界を曖昧にして支配的に力を一つにすることが容易であるのに対し、光の戦士は自分自身や他者との境界を明確にして協調性をもってして力を一つにする過程が必要となってくる」

 

神代キヴォトス人「であるからこそ、人は誰に対しても真実()秘密()を抱えている以上は完全な光や闇というのは存在し得ないわけだ」

 

神代キヴォトス人「ほら、完全な光であろうとして自身が思っていることや感じていることを素直に口にすることが社会にとって完全な善であるかどうかなんては社会人であるならば論ずるまでもないであろう」

 

神代キヴォトス人「社会とはそういうもの。善悪なんてものは光と闇が相対的なものであるからこそ後付された理想でしかないのだ」

 

神代キヴォトス人「ただ、単純な脳味噌しか持っていない単細胞は得てして存在し得ない完全なる善悪(もの)を追い求めて等しく原初の闇に陥るわけなのだがな」

 

ロボット職員「――――――光にはならないのですか?」

 

神代キヴォトス人「ならないぞ。そもそも、光という物理現象がなぜ尊ばれているのかをよく理解していない愚か者が馬鹿の一つ覚えで光を善なるものだと結びつけて論ずるから話がおかしくなるのだ」

 

神代キヴォトス人「よいか。先程も言ったが、光とは視えるようにすることで物事の輪郭を捉えることなのであって、それが果たされないものが闇なのだ。人の役に立たない光は闇と同じだ」

 

神代キヴォトス人「疑問に思うのならば、生命の源である太陽を直接その眼で視てみればいい。たちまちのうちに眼を灼かれて失明に陥るではないか。あるいは逆光や反射光でもかまわん。明るすぎて視えなくなったのなら本末転倒ではないか」

 

ロボット職員「あ」

 

神代キヴォトス人「つまり、()()()()()()()()()()()の間にある()()()()()()()というのが“光”というわけなのだ」

 

神代キヴォトス人「だから、光というのは匙加減が難しいのだ。振り切ってはいけないし、抑え気味になってもいけないという、危ういバランスを常に維持し続けねばならん」

 

神代キヴォトス人「しかし、難しいからこそ磨かれた価値というものがあって尊いのだ。それだけ進歩した在り方であり、我ら光の勢力はそれを誇りにして生きているのだ」

 

ロボット職員「さすがですね。そういう風に光と闇を論理的に解説した教えは初めて聞きます」

 

 

神代キヴォトス人「いや、これは先生が書いていた研究論文の内容だ」

 

 

ロボット職員「!」

 

神代キヴォトス人「先生が見せてくれた途中の論文には光と闇についての正規分布というものがあってだな、『光という理想状態は正規分布における平均(ピーク)である』という仮説を立てていた」

 

神代キヴォトス人「つまり、理想状態である光は平均(ピーク)であるからこそ常にユラユラと変化し続けているものであり、一定であることはありえないから『光は絶対ではない』という結論だ」

 

神代キヴォトス人「そして、正規分布の頂点になる平均(ピーク)に位置できる層は常に一握りで一定ではないからこそ、平均(ピーク)を維持するための努力として他者の尊重が“光”の特徴になってくるのだと」

 

ロボット職員「そうか。みんなが正しいと主張している価値観は時代と共に変化するからこそ、“光”という理想状態を維持するために他者との協調が必要になってくる――――――」

 

神代キヴォトス人「そうして光の絶対性を否定して相対性であることを導き出したことにより、そこから“光”と“闇”の共存共栄の可能性を導き出しているわけだ」

 

神代キヴォトス人「更に論文では、『光と闇』『文明と生態』の相関図において、光は文明の進歩をもたらし、闇は生態の進化をもたらすものと書かれてもいた」

 

ロボット職員「たしかに、僕の印象からしても“光”は高度な文明や秩序の側で、“闇”は野蛮とか退廃的で原始的なものに思えます」

 

神代キヴォトス人「そうであろう。我も漠然とそう思ってきていたが、これで我ら光の勢力が築き上げた神代から続く超古代文明が滅んでしまったのもいろいろと納得できてしまったぞ」

 

ロボット職員「ええ。“光”という理想状態を維持する努力を文明が怠った結果、時代の価値観となる平均(ピーク)から自ら“闇”へと転げ落ちてしまったからなんですね」

 

神代キヴォトス人「そして、“闇”というのは文明の進歩よりも原初的なものである生態の進化を決める方向性に社会を動かしていく思想運動でもあるわけだから、そういう意味では時代の価値観となる平均(ピーク)に位置づけられた“光”を揺るがす敵対する概念に成り得るわけだな。文明とは平均(ピーク)を維持する意味合いもあって安心安全快適を求めるものであるから」

 

 

――――――だから、やつの振るう拳は暗黒拳ではあるが、光の戦士としての素養が開花しているように思えたぞ。

 

 

こうして今回のエキシビションマッチの最終戦にして一番の目玉である【巨大総力戦】の時間がやってきた。

 

これは“帝王グレイ”が申し込んだ決闘(デュエル)ではあるものの、衆人環視の中のエンターテイメントであるという趣旨であることから、観客席となる特設アリーナの安全を万全にすることが前提の極めて健全な興行となっていた。

 

新アビドス自治区に設けられた決闘場に巨大な4つの剣が降り注いで特設リングが築き上げられると、“宇宙の帝王”グレゴリオが意気揚々と巨大化し、一見すると銀の巨人に錯覚するフード付きの銀のコートの姿を見せた後、勢いよくコートを脱ぎ捨てて素顔である真っ黒な宇宙人の姿を露わにした。

 

一方、“地獄の釜の番”サーベラスもまた300万年前のアンバランス期の文明を守り抜いた惑星守護神:ギガデロスと“光”となって一体化し、コーナーポスト代わりの4つの剣から放つ超高エネルギーの柵の中に降臨した。

 

こうして共通ルールの1ラウンド:3分/インターバル:1分の10回戦として始められることになるものの、この対戦カードに関しては評価は一転したものとなり、

 

特異な身体能力から繰り出す機動力でグレゴリオにフットワークで優位をとっていたサーベラスであったが、固定武装のロボット怪獣ではその強みは発揮しきれないのではないかという予想が立てられていたのだった。

 

事実、そのまま巨大化したグレゴリオの方が運動能力が高いように思われ、本来の身体である最凶獣:ヘルベロスの石像を失ったために借り物の身体で戦わざるを得ないのが苦しい点と見なされていたのだ。

 

たとえ惑星守護神:ギガデロスに物足りなさを感じていたとしても、天変地異である怪獣災害に対して言い訳は一切できないため、あるものであらん限りを尽くす他ない。

 

だからこそ、光の眷属:サーベラスは逃げも隠れもせずに異星人:グレゴリオの挑戦を受けるのだ。

 

 

――――――そんな時ッ! 突如として新アビドス自治区の外の廃ビル群が倒壊していく怪奇現象が発生していたのである!

 

 

ロボット職員「なに!? アビドス砂漠から現れた巨大なアリが自治区外の廃ビル群を食い荒らしているだと!?」

 

ロボット職員「大きさは怪獣ほどではない巨大生物だが、10m級ののアリが大群で迫ってきているのは人類の危機だ!」

 

ロボット職員「試合は即刻中止だ! 巨大なアリの大群が【アビドス】に迫ってきている! アリーナを四次元都市へと避難させてくれ!」

 

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「……どうやら、決闘(デュエル)は中止か」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「興醒めだが、そのようだな。これからだと言うのに」

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「我はこれからアリの駆除に向かうが、どうする?」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「無論、女子供が安心して暮らしていけるように害悪を駆除しておくのもエンターテイナーの務めだ!」

 

 

バキューン! バキューン! バキューン!

 

 

黒見 セリカ「何なのよ、アレ! 気持ち悪いったらありゃしない!」ウゲェ・・・

 

奥空 アヤネ「とにかく、可能な限りのMH-60R(シーホーク)で対地攻撃を行いますが、この数だと……」

 

十六夜 ノノミ「ああ! また廃ビルが倒壊して……!」

 

砂狼 シロコ「自治区外の廃ビルであっても、あれは元々【アビドス】のもの! これ以上はやらせない!」

 

小鳥遊 ホシノ「私が行く!」ザッ

 

黒見 セリカ「ホシノ先輩!?」

 

小鳥遊 ホシノ「私が囮になって誘い出すから、良い感じに袋叩きにしておいてね!」

 

砂狼 シロコ「ホシノ先輩! だったら、私が背中を守る!」

 

小鳥遊 ホシノ「じゃあ、頼んだよ、シロコちゃん!」

 

 

朝霧 スオウ「――――――小鳥遊 ホシノが戦っている」

 

朝霧 スオウ「こんな“呪われた地”のために今も戦い続けているか」

 

朝霧 スオウ「そして、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が雇い入れた異邦人の力は絶大……」

 

朝霧 スオウ「私は……」

 

朝霧 スオウ「とにかく、今は【セイント・ネフティス】の信頼を回復させるためにも、この防衛戦で功績を上げねば……」

 

 

玄武商会「あ、アリだーーー!」

 

玄武商会「こっちに来ます(昆虫キモス)!」

 

鹿山 レイジョ「いよいよですね」

 

朱城 ルミ「しばらくの間、螞蟻上樹(マーイーシャンシュー)*3を作る気にはなれないね。廃ビルをのたうち回るアリなんて見たら」

 

朱城 ルミ「さあ、みんな! ここで逃げ出したら【玄武商会】が出張ってきた甲斐がないよ!」

 

鹿山 レイジョ「私たちの役割は【キヴォトス防衛軍】本隊の撃ち漏らしを徹底的に叩いて、側面からの【アビドス】への侵入を防ぐことにあります。迂闊に前に出てはいけません」

 

玄武商会「撃てー! 撃てー!」

 

玄武商会「何だ、これは!? これはアリの体液か?」ジュウウ・・・!

 

玄武商会「うわっ! 酸!?」

 

玄武商会「酸だあああああああああああああああ(サンダーーーーーーーーーーーーーー)!!」

 

朱城 ルミ「落ち着いて! ハチの仲間であるアリの一部は毒液を外敵に吹きかけて巣を防衛したり獲物を狩ったりするのよ! それが蟻酸!」

 

鹿山 レイジョ「危ないです! 蟻酸は蒸気だけでも皮膚や目に対して有害であるだけじゃなく、強烈な刺激臭を伴います! 吸入した場合でも呼吸器系に多大な障害をもたらします!」

 

朱城 ルミ「防毒マスクとゴーグルの着用を急いで!」

 

 

錠前 サオリ「よし! やつらの外殻は先日のサソリのスペースビーストよりも脆いぞ! しかも、再生しない! 一匹一匹、確実に仕留めていけば勝てるぞ!」

 

ロボット職員「くそっ! 対怪獣兵器で市街地戦をやったら、街の被害が拡がっていく一方だ……!」

 

秤 アツコ「コーイチ」

 

ロボット職員「見た目はクロアリなのに、やっていることはシロアリじゃないか!」

 

――――――

鬼怒川 カスミ「なら、ここは【温泉開発部】にまかせたまえよ!」

――――――

 

ロボット職員「カスミさん!?」

 

ロボット職員「辺り一帯を吹っ飛ばしてもかまわないわけじゃないですからね! 曲がりなりにも【カイザーコーポレーション】が所有している土地なんです!」

 

――――――

鬼怒川 カスミ「わかっているさ。心配性だな」

 

鬼怒川 カスミ「いいかい。あのクロアリは廃ビルの建材を食糧としているわけだが、アリはアリさ。廃ビルに味をしめたのなら、砂漠の真ん中に廃ビルを置いておけば次々と集まってくるわけだろう」

 

鬼怒川 カスミ「そこを焼き払えばいいだけじゃないか。弾痕だらけになるのと焼け跡になるのに何のちがいがあるんだい」

 

鬼怒川 カスミ「それじゃあ、手っ取り早く倒壊した廃ビルを運んでもらおうか」

――――――

 

ロボット職員「効率よく手早く片付けるためには、それも已む無しか」

 

宇宙格闘士の帝王「コーイチ! そういうことなら、このオレが砂漠に廃ビルを投げ込んでやろう!」ズバババ・・・! ――――――ダブルガトリングガンが火を噴く!

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「我がギガデロスでアビドス砂漠からの侵攻を食い止めるから、廃ビル群を蝕むアリ共の掃討を徹底してくれ!」

 

ロボット職員「わかりました。お願いします」

 

 

秤 アツコ「――――――コーイチ! 何か来るッ!?」

 

 

ロボット職員「なに?!」

 

秤 アツコ「あっちの方角!」

 

ロボット職員「――――――【玄武商会】が守りを固めている方角だと!?」

 

ロボット職員「聞こえますか、ルミさん! そっちの方に何か来ています! それが怪獣だった場合は即座に撤退を!」カチッ

 

秤 アツコ「あ、あれ!」

 

ロボット職員「くっ! GUTSガルーダ! 発進ッ!」

 

 

――――――砂漠に埋もれた市街地を引き裂いて 首なしの二足歩行の胴体で 股間から長い首が生えているような 異形の怪獣が現れた!

 

 

朱城 ルミ「な、何あれ!?」

 

鹿山 レイジョ「……か、怪獣!?」

 

玄武商会「お、大きいぃぃ(大きいねぇ)!」

 

朱城 ルミ「総員撤退! 急いで!」

 

玄武商会「う、うわあああああああああああああ!」ベトーーーーー! ――――――怪獣の口から糸状の粘液が吐き出される!

 

朱城 ルミ「い、糸……!?」

 

玄武商会「と、溶けてるぅううううう! ああ、痺れて……!」ジュウウ・・・!

 

鹿山 レイジョ「急いで脱いで!」

 

玄武商会「死ぬぅ! 糸に巻かれて死ぬんだよぉ!」アハハハハ!

 

鹿山 レイジョ「まだ死んでない!」

 

戦場カメラマン「診せてみろ」ササッ

 

鹿山 レイジョ「あ、あなたは――――――」

 

戦場カメラマン「落ち着け」スッ ――――――エボルトラスターから放つ光で毒性の粘性の糸を除去する。

 

玄武商会「あ、ああ…………」ホッ

 

戦場カメラマン「行け!」

 

鹿山 レイジョ「あ、ありがとうございます!」

 

朱城 ルミ「あなたも!」

 

戦場カメラマン「ああ。俺が見届けるからお前たちは撤退を急げ」

 

 

勘解由小路 ユカリ「ここにいましたか、姫矢様あああ!」ドドドド!

 

 

戦場カメラマン「……どうして俺を追ってきた? 目の前に怪獣がいるのが見えないのか?」

 

勘解由小路 ユカリ「で、でも! み、身共は姫矢様に助けてもらったお礼をまだできておりません!」

 

戦場カメラマン「そんなのは後でいい。今は避難が優先だ。おとなしくみんなと避難するんだ」

 

勘解由小路 ユカリ「い、嫌です! み、身共は、身共は誇り高き【百花繚乱】の一員として退くわけにはいかないのです!」

 

朱城 ルミ「危ない! 避けて! また怪獣から糸が――――――!」

 

勘解由小路 ユカリ「あ!」

 

戦場カメラマン「――――――!」ブン! ――――――エボルトラスターで糸状の粘液を切り払う!

 

鹿山 レイジョ「おお!」

 

戦場カメラマン「彼女を安全な場所へ」

 

鹿山 レイジョ「わかりました。さあ、一緒に行きましょう」

 

勘解由小路 ユカリ「ま、また、身共は姫矢様のお役に立てなかった……」

 

戦場カメラマン「さあ、急げ!」バンバン! ――――――ブラストショットで怪獣に反撃!

 

戦場カメラマン「――――――来たか!」

 

鹿山 レイジョ「あれはGUTSガルーダです!」

 

朱城 ルミ「よし! みんな、急いで!」

 

 

エキシビションマッチの最終戦【巨大総力戦】が開始される直前、突如として巨大なアリの大群が廃ビル群を蝕み、その防衛に名乗り出て別方面からの侵攻を防ぐ役割を任された【玄武商会】の前に百足怪獣:ムカデンダーが地面を割って現れ、口から吐く相手を絡めとって動きを封じる毒糸を浴びせてきた。

 

すでに謎の巨大アリの蟻酸攻撃に恐れ慄く【玄武商会】であったが、そこにムカデンダーの毒性の糸を浴びてしまった生徒の悲鳴で完全に逃げ腰になってしまい、今にも潰走しそうな雰囲気に包まれていたが、そこに颯爽と現れた戦場カメラマン:姫矢 ジュンが見せた奇跡によって落ち着きを取り戻すことができていた。

 

そこにGUTSガルーダが駆けつけたことで百足怪獣:ムカデンダーから【玄武商会】が総員撤退する隙が生まれ、引き続きムカデンダーの糸を姫矢 ジュンが不思議な力で祓う。短剣型の変身アイテム:エボルトラスターが日本古来より伝わる神事で振るわれる神剣のごとく魔を祓い続けたのだ。

 

 

鞘を左手で持って左腰に構え!

 

右腕で鞘から短剣を前方に引き抜き!

 

短剣を左肩に当て、右腕を伸ばして空に掲げた!

 

 

 

小鳥遊 ホシノ「シロコちゃん、少し見ない間に随分と腕を上げたね」

 

砂狼 シロコ「ん、私はもっと強くなる。今日のエキシビションマッチのように宇宙にはもっと強いやつがいっぱいいるから」

 

小鳥遊 ホシノ「うん、そうだね。これからも【アビドス】を守っていくためにも強くならないとだね……」

 

宇宙格闘士の帝王「ホシノ。シロコ。無事か」

 

砂狼 シロコ「グレゴリオ様。うん、私たちは大丈夫」

 

小鳥遊 ホシノ「そうそう。グレゴリオ様が邪魔な廃ビルを砂漠の方に放り投げてくれて辺り一帯がスッキリしたし、サーベラス様がこれ以上の旧市街地への侵入を防いでくれているし、カスミちゃんたち【温泉開発部】も良い仕事をしてくれているから、時間が経つに連れて楽になってきたよ」

 

宇宙格闘士の帝王「あともう一踏ん張りだ。苦しいのなら、後はこの“帝王グレイ”にまかせて休んでおけ」

 

小鳥遊 ホシノ「心配ご無用だよ。ここは【アビドス】なんだ。私たちの手で守らないと」

 

砂狼 シロコ「そのために私たちはサーベラス様やグレゴリオ様に鍛えてもらっている」

 

宇宙格闘士の帝王「……お前たちのような女子供がこんな寂れた場所で重たい役割を背負わされているのは狂っているとしか言いようがないキヴォトスだが、このオレが来たからには安心して眠れるようにしてやる」

 

小鳥遊 ホシノ「ありがとう、“帝王グレイ”! 小休止は終わり! じゃあ、行こうか!」

 

砂狼 シロコ「うん!」

 

――――――

奥空 アヤネ「大変です、ホシノ先輩! シロコ先輩!」

 

奥空 アヤネ「旧市街地のアリの掃討は間もなく終わりますが、【温泉開発部】がアビドス砂漠から押し寄せてくるアリの大群を一箇所にまとめて焼き払う作戦を実施したところ、炎の中で巨大アリが1つになって怪獣へと変異を遂げました!」

 

奥空 アヤネ「ですので、今、サーベラス様がギガデロスで抑え込んで【温泉開発部】が撤退していますので、それに合流して【アビドス】まで後退するように指示が出ました!」

――――――

 

砂狼 シロコ「…………!」

 

小鳥遊 ホシノ「そう。それじゃあ、ここは下がるしかないみたいだね」

 

宇宙格闘士の帝王「では、助けに行ってやるとするか」

 

砂狼 シロコ「……グレゴリオ様」

 

宇宙格闘士の帝王「心配するな。アリん子ごときにこのオレが遅れを取るわけがない」

 

宇宙格闘士の帝王「そして、害虫駆除にエンターテイメント性など必要ない。一瞬で片を付けてやろう」

 

小鳥遊 ホシノ「じゃあ、がんばってね~、“帝王グレイ”」

 

宇宙格闘士の帝王「ああ、観客席からオレの勇姿を目に焼き付けろ!」

 

 

――――――待たせたな! そうだ! 宇宙に帝王は一人、このオレだ!

 

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「手こずっているようだな。この“宇宙の帝王”が手を貸してやろう」

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「なら、手早く片付けて向こうで別の怪獣と戦っているコーイチとウルトラマンを助けに行くぞ」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「よかろう」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「一瞬だ! 最初から帝王が全力で掛かったら一瞬で勝負はつく!」

 

 

――――――受けてみろ! ダークガルネイトボンバー!

 

 

帝王の宣言通り、かつて地球でウルトラマンタロウと交戦した記録が残されている大羽蟻怪獣:アリンドウは“地獄の釜の番人”神代キヴォトス人:サーベラスが駆る惑星守護神:ギガデロスと、宇宙格闘士の帝王である“帝王グレイ”の黄金タッグの前に瞬殺となった。

 

本来は口からは火炎とアントネラ酸という蟻酸を吐き、レーダーになる触角からは電撃を発射し、両手の鉤爪は高層ビルすら切断し、羽を使って空中をマッハ6で飛ぶことができるまでに 突然変異を起こした日本の羽アリの群れが融合した 怪獣頻出期の最高潮に産み落とされた大怪獣の1体である大羽蟻怪獣:アリンドウはかつてヤプール人が送り出した大蟻超獣:アリブンタに匹敵していた。

 

しかし、大怪獣であるアリンドウも決して弱い怪獣ではなかったのだが、大怪獣以上に厄介極まりないスペースビーストと渡り合った惑星守護神:ギガデロスが相手ということで、一つの完成形とも言えるロボット怪獣の圧倒的戦力の前では火炎も蟻酸も電撃も斬撃も効かないということで成す術がなく、普通に戦っていれば何の問題もなくギガデロスが嬲り殺しにして終わる戦いとなっていた。

 

その一方、今回は別方面でウルトラマンネクサスとGUTSガルーダが百足怪獣:ムカデンダーと交戦しており、自分たちでは完全に抹殺することが出来ないスペースビーストやそれを使役する闇の巨人への対抗策として変身者である適能者(デュナミスト):姫矢 ジュンには無茶をさせられないとして、すぐさま助太刀をしなければならない理由があった。

 

そのため、対応が決まった直後にアリンドウの腹をギガデロスの刃がさっくり貫いたところをグレゴール星人:グレゴリオが暗黒宇宙で会得した 暗黒拳から繰り出す 暗黒の気の力を両拳を合わせてパンチアクションで射出する闇の超高熱光弾:ダークガルネイトボンバーを放ってアリンドウを跡形もなく消し飛ばしたのだった。

 

ダークガルネイトボンバーに巻き込まれる直前、ギガデロスは光線技のエネルギーからデロスイリュージョンで作った分身と入れ替わって事なきを得ており、こうした局面で囮もこなせるギガデロスはサポーターとしても非常に優秀であった。

 

と言うより、いつでも予告なく起きる怪獣災害のせいで即刻中止になった今日のエキシビションマッチの最終戦【巨大総力戦】だったが、宇宙格闘士:グレゴール人が決闘場として用意する4本の巨大な剣から張り巡らされる超高エネルギーを浴び続けることでデロスイリュージョンによる質量を持った分身を無尽蔵に生み出し続けることができるため、実は挑戦者である“宇宙の帝王”グレゴリオがかなり苦しい戦いを強いられることになっていたのはここだけの秘密である。

 

逆に言うと、グレゴール人が用意する決闘場とはギガデロスはとんでもなく相性が良く、超高エネルギーの柵によって特設リング内に閉じ込めた敵を一方的に逃げ場を封じて苦しめながら、無尽蔵に増殖する分身で圧殺する凶悪コンボが炸裂すれば、決闘場は速やかに処刑場へと早変わりするわけなのである。

 

また、ギガデロスの強みは悠久の時を超えて戦い続けることができる汎用性と安定性に富んだ継戦能力にあるが、逆に決定力に欠けるところがあり、スペースビーストのような驚異的な再生能力を持つ怪獣にとどめを刺すことができない点に尽きるのだが、そこを“宇宙の帝王”グレゴリオが繰り出す剛拳が組み合わさることで足りなかった決定力が補えるため、ギガデロスと一体化したサーベラスから見たグレゴール星人:グレゴリオとの相性は抜群であったのである。

 

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「無茶をするな! ここは我々に任せてスペースビーストに備えて体力を温存しておくのだ!」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「待たせたな! “帝王グレイ”が駆けつけてやったぞ!」

 

ロボット職員(インナースペース)「グレゴリオ様! サーベラス様!」

 

戦場カメラマン(インナースペース)「助かる」

 

神代キヴォトス人(インナースペース)「しかし、1体の怪獣相手に袋叩きというのはどうなのであろうな?」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「ふん! 神聖なる決闘(デュエル)の場に土足で踏み込んできた乱入者()を相手に失う誇りなどあるものか!」

 

宇宙格闘士の帝王(巨大化)「一分一秒 生き永らえさせるのも 不愉快極まる! 消えろ!」

 

 

こうしてエキシビションマッチの縁日の賑わいの中で起きた怪獣災害は【キヴォトス防衛軍】とは軍事協定を結んでいる扱いの【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が結成した特捜チーム【GUTS-SAFETY(ガッツ・セイフティ)】の大勝利で幕を閉じた。

 

百足怪獣:ムカデンダーはスペースビーストとは別方向に対人能力(大量殺戮)に特化した凶悪怪獣であり、顔のない胴体の股間から伸びる龍の首には1滴で人間を50人殺せるという猛毒*4を宿す牙があり、10万度の火炎を口から吐き出す有効射程300mの火炎攻撃:ピード火炎に加え、口から吐く毒糸で獲物を絡めとって動きを封じることが可能であった。

 

そう、こいつもスペースビーストと同じ対人能力(大量殺戮)に特化した凶悪怪獣であるが故に、逆に惑星守護神:ギガデロスのようなロボット怪獣に対する有効打を持っていないのだ。

 

さすがは300万年前のアンバランス期の文明を救ったことで“惑星守護神”と崇められてきた光のロボット怪獣であり、スペースビーストほどの再生能力を持たない並大抵の怪獣ではまったく勝ち目がないという超然とした強さをこれでもかと見せつけることになったのだ。

 

このことから神代から続く3000万年以上昔の超古代文明の守り手である“地獄の釜の番人”神代キヴォトス人:サーベラスと300万年前のアンバランス期の文明を救った惑星守護神:ギガデロスの組み合わせは最高ではなくとも最良と言えるものであった。

 

そのため、アリンドウ同様に成す術なくギガデロスの刃によってあっさりとムカデンダーの首が切り落とされたのだが――――――、

 

なんと、切り落とされたムカデンダーの首が一人でに浮き上がってマッハ8で空の彼方へと飛んでいく――――――、

 

そうなる前にスペースビースト退治の専門家:ウルトラマンネクサスが切り落とされたムカデンダーの首に生気が戻った瞬間に居合抜きのようなクロスレイ・シュトロームで撃ち落としていたのであった。

 

それと同時に、首だけで爆速で飛び上がるとは想像がつかなかったサーベラスとグレゴリオが呆気に取られるたのを他所に、首を失ったはずの胴体もまた動いていたのを見て即座にGUTSガルーダのハイパワーメーサービームキャノンが降り注ぎ、ムカデンダーの胴体の撃破も完了したのである。

 

しかし、それに先立って、【メトロポリス(首都:D.U.)】では 第2のXデーとも言える キヴォトスの存亡を懸けた一大決戦の決着が一足早くついていたのであった――――――。

 

 

 

Come on!

 

Tiga-let!

 

Connect on!

 

 

サクシウム ゼペリオン光線!

 

 

――――――

棗 イロハ「こ、今度こそ、エレキングを撃破できましたよね!?」ゼエゼエ

――――――

――――――

七神 リン「ええ。闇怪獣反応は完全に消失しました。私たちの勝利です……」

 

明星 ヒマリ「や、やりました。やりましたよ、リオ……」ゼエゼエ

 

調月 リオ「強敵だったわ。一度は機龍丸とGUTSファルコンの地底怪獣の強固な皮膚を貫通するチルソナイト製の武器によって蜂の巣にされたと思いきや、手足のない長い胴体の姿になって体組織を電気エネルギーそのものにするデンキウナギのようになるだなんて……」フゥ・・・

 

七神 リン「しかも、首都:D.U.がウォーターフロントであるからこそ、まさに水を得た魚となって水面下から飛魚のように何度も襲いかかってきたのです……」

 

明星 ヒマリ「今回は完全にしてやられました。次からは対潜装備を用意しますよ、リオ」

 

調月 リオ「ええ。ウルトラマンが自らを避雷針に(ウルトラサンダー)して変異したエレキング(EXエレキング)を誘き寄せる捨て身の策を取らなければ、電気系統をやられたGUTSファルコンも機龍丸も水辺のオブジェにしかならなかったわ」

 

七神 リン「けど、変異したエレキングが闇怪獣であったことで、とどめを刺す手段は本当に限られていた……」

 

七神 リン「闇怪獣の特性でその場で復活したエレキングがサンクトゥムタワーに巻き付いて50万ボルトを遥かに超える電気ショック(EXエレキングコレダー)を浴びせてきた時は本当にこの世の終わりかと思ったわ……」

 

調月 リオ「まったくよ。今は予備電源で機能を維持しているけど、おかげでサンクトゥムタワーの機能が異常をきたしてキヴォトス各地で異変が起きているはずよ……」

 

明星 ヒマリ「しかし、やはり最後に決めてくれたのがウルトラマンです! 変異したエレキングを目から放つ光線(ウルトラアイスポット)で元に戻したところで、とどめのサクシウム ゼペリオン光線が炸裂です!」

 

調月 リオ「けど、これまでの戦いの中でウルトラマンが一番ダメージを受けた死闘でもあった……」

 

七神 リン「……先生」

 

七神 リン「――――――先生!」ダダッ

――――――

 

 

――――――怪獣を倒したと言うのに、いつまでも大空に飛び立つことなく、首都:D.U.の青い水面に膝をついて光の粒となって消えるウルトラマン80!

 

 

北条先生「うあっ」フラッ

 

北条先生「うぐっ」ドサッ

 

北条先生「な、何なんだったんだ、あのエレキングは……?」ゼエゼエ・・・

 

北条先生「途中で闇怪獣になって変異したのはわかるが、なぜエレキングがキヴォトスに現れたんだ? あれは【ドキュメントUG(ウルトラ警備隊)】に記録されていた、変身怪人:ピット星人が操る侵略用の生体兵器だったはず……!」

 

北条先生「聞こえているのか! どういうことなんだ? ピット星人の侵入を許したと言うのか!? もう いいかげんにしてくれよ……!」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「……いや、あれ以来 監視網を徹底強化している。異星人の侵入は検知されていない」

 

北条先生「じゃあ、なんで宇宙怪獣が――――――!? エレキングはギマイラとはちがって自力での大気圏突入はできないはずだ!」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「そこで仮説を立てた」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「今、この惑星がおよそ300万年に一度のダークマター漂う未知の宇宙空間:アンバランスゾーンを通過したことでアンバランス現象が起き、それによって怪獣頻出期が発生するようになり、怪獣頻出期に観測される空間の歪み:ウルトラゾーンによって地球人であるきみがキヴォトスに飛ばされることになったという理解で話を進めよう」

 

 

守月 スズミ?(アストラル体)「結論を言おう。地球からキヴォトスへのウルトラゾーンが発生したように、怪獣墓場とのウルトラゾーンが地上で発生している可能性が極めて高い」

 

 

北条先生「!!!?」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「そして、それとは別に、今まで我々が宇宙人や宇宙怪獣の侵入を検知できなかったのは、この惑星の空がそれぞれ別の宇宙とのウルトラゾーンと化していたからなのだ」

 

北条先生「……そんな! アンバランス現象だからって無茶苦茶な!?」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「現に、我々が知らないウルトラマンや宇宙人の情報が次々ともたらされていることを踏まえると、そう考えた方が自然だとは思わないか」

 

北条先生「……たしかに。ちがった歴史を歩んできた地球人がここには何人も集まっている」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「これ以上はきみ一人で無理をする必要はない。きみはよくやってくれている。いつでもウルトラサインで救援要請をしてくれてかまわない。私たちを信用して欲しい」

 

北条先生「………………」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「――――――今、怪獣無法地帯となっている【アビドス】で戦闘があったのが確認された。戦闘は終結しているようだ」

 

守月 スズミ?(アストラル体)「きみは無理をせず、【アビドス】に現れた怪獣が何だったのか報告を受けてきて欲しい。それできみが持つ【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】の知識と記憶が今回の怪獣無法地帯の発生源が怪獣墓場へのウルトラゾーンであると結論づけてくれるはずだ」

 

北条先生「わかりました。すぐに確認してきます……」ヨロッ・・・

 

北条先生「あぁ、上手く身体に力が入らない。避雷針になった時にかなりガタが来ていたのか……」ズサッ・・・

 

北条先生「ダメだ。身体の痺れがとれてからにしようか……」ビリビリ・・・

 

 

七神 リン「――――――先生!」タッタッタッタ・・・!

 

 

北条先生「ああ、七神さん。エレキング、無事に撃退に成功しましたね……」ニコッ

 

七神 リン「先生――――――」スッ ――――――その手が触れようとした時!

 

北条先生「あ」バチッ ――――――静電気が盛大に火花を散らした!

 

七神 リン「…………!」ビクッ

 

北条先生「今、除電するために潮風を浴びてないといけないんですよ――――――」

 

七神 リン「先生!」ギュッ

 

北条先生「七神さん……」バチバチバチ・・・! ――――――静電気が盛大に音を立て続ける。

 

七神 リン「何も言わないでください。変異したエレキングがサンクトゥムタワーに巻き付いて放電してきた時、私たちはこの世の終わりだと思いました……」グスン

 

七神 リン「でも! 自分自身を避雷針にしてエレキングを捕らえられたことで私たちの比ではないダメージを負った状態で闇怪獣となったエレキングを最後の力を振り絞って倒してくれました……!」

 

北条先生「ええ。そうですね」ビリビリ・・・

 

七神 リン「――――――立てませんよね?」

 

北条先生「ええ、間抜けにも腰を強く打っちゃったみたいで……」ハハッ・・・

 

 

七神 リン「…………先生、もう少しだけ ここで風を感じていきませんか?」

 

 

北条先生「え」

 

七神 リン「どうぞ、先生」ポンポン ――――――膝枕のお誘い!

 

北条先生「あ」グイッ ――――――全身が痺れて動けないので同意は待たない!

 

七神 リン「どうですか、先生? 固くはないですか、私の膝?」

 

北条先生「………………」

 

 

うちひさす(うちひさす) 宮の我が背は(みやのわがせは) 大和女の(やまとめの) 膝まくごとに(ひざまくごとに) 我を忘らすな(あをわすらすな)

 

 

七神 リン「え」

 

北条先生「うんとね、『宮に仕える私のカレは大和の女性の膝を枕にすることもありましょう。でも、カノジョである私のことは忘れないでね』って意味の和歌だよ。『万葉集』だったかな。実際には膝というよりも腿の部位にあたるところに置くのが膝枕なんだけどね」

 

七神 リン「……先生って意外と意地悪なんですね」ムスッ

 

北条先生「え、どうして?」

 

七神 リン「そういうところがです」

 

七神 リン「でも、いいです、今は」

 

七神 リン「今はただ、こうして先生と一緒に【メトロポリス(首都:D.U.)】に吹く風を感じることができますから……」ウツラウツラ・・・

 

七神 リン「本当に良かった……」ウツラ・・・

 

北条先生「七神さん?」

 

北条先生「あ」

 

七神 リン「」コクン・・・

 

北条先生「おつかれさまでした、七神さん」

 

北条先生「ああ、まいったな。報告をすぐに受けたいんだけど、動けないんじゃなぁ……」ビリビリ・・・

 

北条先生「まあ、アビドス遠征への参加にずっと反対していたことだし、これぐらいのわがままは叶えてやってもいいのかな……」フゥ・・・

 

――――――

明星 ヒマリ「まあ! 膝枕だなんて! どうしましょうか、これ?」ヌフフッ

 

調月 リオ「覗きだなんて悪趣味よ、ヒマリ」

 

明星 ヒマリ「ちがいます! これは怪獣退治した後の見回りのための偵察ドローンからの監視映像ですから、偶然! 偶然なんです!」

 

明星 ヒマリ「それよりも、迎えに行かなくていいのですか、リオ?」

 

調月 リオ「……今は怪獣退治の後始末が最優先よ。【アビドス】の方でも怪獣が現れていたみたいだし」

 

明星 ヒマリ「リオも素直になったら、どうなんですか? あの連邦生徒会長代行もあそこまで自分の気持ちに素直になったんですよ? 会う度に女の子らしい可愛らしさが滲み出ているようになっているんですよ!」

 

調月 リオ「……私は十分に“教父(せんせい)”に甘えてみたわ、この前」

 

明星 ヒマリ「それはそれ、これはこれ! あなたも北条先生を労って膝枕でもしてあげたらいいじゃないですか!」

 

調月 リオ「そんなことで喜ぶような人じゃないわ、あの人は」

 

明星 ヒマリ「もう! もらって困るようなものでも嵩張って邪魔になるものでもないのですから、『いつも無愛想なんだから、気持ちを身体で表現しなさい』と この私が忠告してあげているのですよ、リオ!」

 

調月 リオ「……そういうものなのかしら」

 

明星 ヒマリ「そういうものなんです!」

 

明星 ヒマリ「だいたい、よく考えてみなさいよ!」

 

明星 ヒマリ「あなた、北条先生からいろいろと可愛らしいプレゼントを贈られて日常的に使っているのに、そのお返しが対怪獣兵器って可愛げがなさすぎですよ! たまには殿方が喜ぶようなことをしてあげたらどうですか?」

 

調月 リオ「……そういうのは先生はまったく望んでいない」

 

明星 ヒマリ「ちがいます。まったくちがいますよ、リオ」

 

明星 ヒマリ「プレゼントに贈るものはたしかに()()()()()()()が最高ですけど、それとは別に()()()()()()()()()()()()()()()()を贈ったっていいんです! むしろ、普通の人付き合いで望んだものが必ず手に入るだなんてありえないことですよ、リオ!」

 

調月 リオ「……そう?」

 

明星 ヒマリ「そう。だから、嬉しい気持ちになる言葉をプレゼントに選んだっていいんです。そうやって人は情熱的な恋文を交わしていたんですから」

 

調月 リオ「……それは未来の自分自身からの助言?」

 

明星 ヒマリ「そうですよ、リオ! あなたとちがって私は“教父(せんせい)”と同じ時間を過ごした未来の自分の在り方を引き継いで、キヴォトスを救うためとは言え、あまりにも重すぎる使命を背負わされてしまった“シャーレの先生”の心に寄り添う道を選んだんです!」

 

 

明星 ヒマリ「リオ、あなたは北条先生とのこれからのことを決めなくていいのですか?」

 

 

明星 ヒマリ「私たち【ミレニアムサイエンススクール】こそがキヴォトスの未来を切り拓いていると言うのに、今も昔も何の解決策も出すことができない烏合の衆の【連邦生徒会】なんかに“シャーレの先生”を渡していいのですか!?」

 

調月 リオ「……あの人はそういう次元の人じゃない。支配なんて望んでないし、私たちが独り立ちすることを何よりも願っているわ」

 

調月 リオ「むしろ、独占欲を肯定するための口実にあの人を利用しているのはあなたの方ではないのかしら、ヒマリ?」

 

調月 リオ「――――――怖いの、ヒマリ? 『今回』の“シャーレの先生”が()()()()()ことに」

 

明星 ヒマリ「…………ッ!」

 

明星 ヒマリ「相変わらずですね、リオ! そうやって いつだって わかった風に! 人の心を顧みないのは!」

 

調月 リオ「……ヒマリ」

 

調月 リオ「……そうね、その人に尽くしたのだから『報われたい』と()()()を願うものよね、人というのは」

 

調月 リオ「でも、先生、私は――――――」

――――――

 

 

元々は【キヴォトス防衛軍】のアビドス遠征が中断となり、スリム化を果たして再出発した【アビドス高等学校】の経済支援の一環として大々的にエキシビションマッチの開催が宣伝されており、

 

そして、迎えた当日の縁日の賑わいの裏でキヴォトスが再び滅亡の危機に追いやられていたことを後から知って冷や汗を掻かない者は誰一人としていない。

 

それは我らがヒーロー:ウルトラマン80があまりにも受けたダメージが大きく、怪獣を倒して大空を飛んで去ることなく、首都:D.U.の青い水面に膝をついて光の粒となって消えたことからも大々的に報じられたことなのだった。

 

後にEXエレキングと名付けられることになったデンキウナギのような怪獣の圧倒的なまでの水中機動力に【キヴォトス防衛軍】が誇る機龍丸もGUTSファルコンも完全に翻弄された事実もあり、まだまだ怪獣の脅威は底が知れないことをキヴォトス中に再認識させる機会となったのである。

 

そうした中、【アビドス】に出現した大羽蟻怪獣:アリンドウと百足怪獣:ムカデンダーが明らかにアビドス砂漠から突然変異で現れるはずがない純粋な地球怪獣であることや、

 

メトロポリス(首都:D.U.)】を襲撃したのはたしかに宇宙怪獣:エレキングではあったものの、正確にはウルトラセブンに倒されたエレキングが後に日本で復活を果たした月光怪獣:再生エレキングであったことを踏まえると、これも広義での地球怪獣に当てはまるので、

 

やはりキヴォトスに出現するはずがない怪獣が立て続けに現れたことで、そのことを納得させる認め難い事実として『怪獣墓場と繋がっているウルトラゾーンが地上に存在していること』を地球人:北条 アキラは確信せざるを得なくなったのだ。

 

そう、本当ならば怪獣無法地帯となったアビドス砂漠の攻略の足掛かりとして【アビドス高等学校】には前線拠点としての十分な防衛体制を構築しておきたかったのだが、そうも言ってられなくなってきたのである。

 

ウルトラゾーンを通じて怪獣墓場から未知の強豪怪獣が次々と送り込まれる事態となってしまった時点で人類の敗北なのだ。

 

しかし、秘密を探ろうとする者の敵になる性質を持つアビドス砂漠にウルトラゾーンがあるらしいのだから、事態は最悪であった。

 

それでも、その不安を決して口に出すわけにもいかなかったのだ。失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者としてキヴォトス中のみんながついてきているのだから。

 

それよりも、ロボット職員:マウンテンガリバーを中心にして頼もしき仲間が増え、それぞれに光を宿す者たちが集った特捜チーム【GUTS-SAFETY(ガッツ・セイフティ)】の戦力が充実していっていることに一縷の望みを託すしかないのであろう。

 

 

――――――こうして光と闇の戦いは特捜チーム【GUTS-SAFETY(ガッツ・セイフティ)】の成立によって新たな局面を迎えたのであった。

 

 

*1
実世界における物理的対象の状態や挙動をIoTやセンシング技術で取得し、その物理モデルを仮想世界にリアルタイムで再現する仕組み。CAEによる設計開発、産業用ロボットの動作シミュレーションの他、スポーツ中継で各選手の動きをコンピューター上で再現する技術などに応用される。

*2
2006年2月16日には世界に先駆けてベルギーがクラスター爆弾を法的に禁止した。 2007年2月22日と2月23日にはノルウェーが呼びかけたクラスター爆弾禁止に関する国際会議がノルウェーの首都:オスロで開催され、49か国が参加したこの会議では参加国中の46か国によって2008年中にクラスター爆弾の使用・製造・移動・備蓄の禁止条約を実現させることを目指すという内容の『オスロ宣言』が採択された。この宣言は、「受け入れがたい民間人被害をもたらすクラスター爆弾を禁止する条約を08年中に作る」とも述べ、クラスター爆弾の廃棄、使用された爆弾の撤去や被害者のケアへの枠組づくりも含んでいる。ノルウェーなどの提唱有志国が禁止条約作りを目指す運動を『オスロ・プロセス』と呼ぶ。

*3
中国の四川料理の一つ。名前は『木に登る蟻』という意味であり、春雨に絡まったひき肉を枝に上る蟻に見立てたものである。日本の創作中華料理:麻婆春雨に似ている。

*4
フグ毒:テトロドトキシンは青酸カリの約1000倍、致死量は0.5~2mgと言われ、 標準的なトラフグ一匹分の毒は約10人分の致死量になる。




-Document GUYS feat.LXXX No.14-

大羽蟻怪獣:アリンドウ 登場作品『ウルトラマンタロウ』第9話『東京の崩れる日』登場
新建材が燃焼する時に発生する化学物質:PG-500を吸収して突然変異を起こして狂暴化した羽アリの大群が、ZATの火炎攻撃のエネルギーを吸収して一体化して巨大化した怪獣。
そのため、怪獣化する前の外見はクロアリに近いものの、その時点で蟻ん子どころか子供の腕ぐらいのショッキングな見た目の大きさになっており、大群で高層ビルに潜んで異常発達した顎と多量のPG-500を含んだ強力な蟻酸によって鉄骨までをボロボロにして一昼夜にして建築物を倒壊させていく生態はむしろシロアリのそれである。
しかも、その状態で子供たちに捕獲された個体が口から火を噴いて瓶を溶かして脱走する程であり、ただでさえ高層ビルを一昼夜にして倒壊させる害虫なのに、とんでもない危険生物である。
とにかく食欲旺盛で、東京の高層ビルの新建材を次々と食い荒らして倒壊事故を多発させ、ZATがばらまいた殺虫剤噴霧装置すら食べて駄目にしてしまったため、存在が発覚するまでビルの設計を担当した建築士はミスを疑われ、ノイローゼに陥ってしまった。
最終的に巣食っていたビルが特定されたことでZATによる徹底駆除が開始されるが、殺虫剤や殺虫ガス、熱湯や火炎放射でアリを撃退しようとするが、効き目がない。
一度スカイホエールへ退却したZATは、アリが仲間に危険を知らせるために使う蟻酸を空中から撒いて一箇所に誘き出して一気に焼き殺す作戦に出る。
しかし、その作戦は裏目に出ることになり、億単位の羽蟻の大群が炎の中で溶け合って結合し、アリンドウという怪獣に変貌してしまったのだ。
なお、クロアリの集合体である怪獣:アリンドウであるが、どういうわけか二足歩行の人型怪獣となって“怪人:羽アリ人間”と言える風貌となっており、元のクロアリの原形を残さない突然変異の極みとなっている。

能力は口から火炎とアントネラ酸という蟻酸を勢いよく吐き、何でも燃やし、何でも溶かす。
レーダーになる触角に触れた相手には電気ショックをお見舞いし、両手の鉤爪は高層ビルすら切断する。
また、羽を使って空中をマッハ6で飛べる他、ストリウム光線すら寄せつけないほどの頑強さを見せることから、同じくアリがモチーフの大蟻超獣:アリブンタに勝るとも劣らない能力を持っており、
怪獣より強い超獣に匹敵する地球怪獣が化学物質による突然変異で誕生するのがウルトラ兄弟最強の肉体を持つウルトラマンタロウをもって苦戦させる怪獣頻出期の最高潮に襲来し続けた大怪獣の最たるものとなる。


突然変異した羽アリの大群が更に突然変異して怪獣化し、多量のPG-500を含んだ強力な蟻酸で建物を次々溶かしながら暴れ回るアリンドウに対し、スカイホエールすらも対空攻撃の蟻酸で撃墜される中、東 光太郎は怯まずビルの屋上からアリンドウを敢行。
アリンドウの火炎攻撃にさらされながらも、生身でアリンドウの触角にしがみついて攻撃を加えた後に再びビルに飛び移ろうとするが、失敗して落下してしまう。
真っ逆さまに落ちながら光太郎はウルトラマンタロウに変身し、開幕直後にストリウム光線を浴びせるものの、それを真正面から受け止められてしまう。
しかし、格闘戦ではタロウが圧倒しており、タロウがアリンドウの触覚を掴んだ時、触覚から電気ショックを浴びせられ、続けざまに蟻酸と火炎を加えられるものの、
反撃のウルトラシャワーで弱点となる液体ををかけられてアリンドウが苦しんでいる隙に、全身から火炎を放つタロウの新技:ファイヤーダッシュが放たれたことにより、アリンドウは木端微塵に爆散することになった。


百足怪獣:ムカデンダー 登場作品『ウルトラマンタロウ』第26話『僕にも怪獣は退治できる!』登場作品『ウルトラマンメビウス』第13話『風のマリナ』登場
八幡ヶ岳に古くから妖怪:大百足として伝説の残る怪獣。
別名は百足怪獣だが、その顔つきは虫というより爬虫類型となっており、その辺りは龍神の一族を迫害していた大百足を退治した俵藤太秀郷の伝説にルーツがありそうだ。
しかし、ウルトラ怪獣の中でも類を見ない造形となっており、首なしの二足歩行の胴体に股間から長い首が生えている異形となっている。

最大の特徴は 切断された百足のごとく 切り離された首と胴体がそれぞれ別々に動けること。切り離された首は念力によるものなのか自由自在に宙を舞い、頭のない胴体にあるムチで容赦なく殴りかかって踏みつけてくる。
これにより、首を切断しても生きていられる上に首と胴体がそれぞれ独立して行動でき、切られた首も元通りに繋がるため、首への切断攻撃は完全に無効化されてしまう。
一方で、分離した状態でも感覚は繋がっており、一方が攻撃されるともう片方もダメージを受けてしまう弱点もあるため、そんな虚仮威しを無視して一方を倒しきってしまえば問題はないが、異形の連携を捌ききれるかが戦いの肝となる。
武器は口から吐く相手を絡めとって動きを封じる毒糸と射程300mを誇る10万度の火炎放射。牙には猛毒があり、大昔の伝承に登場する典型的な人食い怪獣の能力である。
また、ZATの作戦を看破できるほどの知能の高さも相まって、まったく空を飛べそうな気配がないのにも関わらず念力によってマッハ8で空を飛ぶことができる。


八幡ヶ岳の麓にある神社で言い伝えにある大百足の紙芝居が語られている最中、紙芝居を見ていた人たちの意思が同調し、眠りから覚めて出現した。
復活後、神社に飾られていた槍を拝借して紙芝居屋のオヤジ:笠井仙吉は客を守るために立ち向かうも火炎攻撃を受け重傷を負ってしまう。
続いて出撃したZATの戦闘機からワイヤーを射出して首を絞める首吊り作戦を受けるも、首を切り離す能力で難を逃れて返り討ちにする。
胴体にあるムチでZATの戦闘機を撃墜し、脱出した乗組員に火炎攻撃で追い打ちをかけた上に捕食しようとするが、東 光太郎の陽動によって失敗。
街に進攻を開始後、火の見櫓に登った光太郎の狙撃で触覚のひとつを破壊されるが、これに怒って光太郎を糸で絡めとって動けなくさせた上で、櫓ごと叩き潰そうとする。
そこにZATのスプレー銃を拝借した仙吉の息子:タケオ少年によって糸を解かれ、光太郎はタロウに変身。
スワローキックでムカテンダーの首が飛ばされるが、首と胴体それぞれが分かれて攻撃を開始し、タロウを大いに苦しめる。
しかし、掴んだ首へ攻撃を加えることで感覚を共有している胴体にもダメージが加わり、首を空中に投げ飛ばすことで胴体も勢いよく空に飛んでいき、そこからストリウム光線を放って首を撃破すると、首を完全に失った胴体は制御を失って転落し、アトミックパンチを受けて木端微塵になった。

後の時代の『メビウス』においては【ドキュメントZAT】に記録されており、体色が緑から黒っぽくなっている別個体が登場。
また、新たな能力として地底移動する際に特殊な電磁波を発生させて通信を妨害することができる。
初代と同じく八幡ヶ岳に生息して人々を襲っており、たまたま近くにツーリングに来ていたマリナやその友人たちを執拗に追跡した。
彼女が呼び出したマケット怪獣:ミクラスの電撃で怯んだものの、ミクラスが時間切れで消滅。
再びマリナたちを追いかけ回すが、マケット怪獣の反応をキャッチしたGUYSやウルトラマンメビウスが到着。
メビウスとの戦いでもお馴染みの分離攻撃で翻弄するも、メビュームシュートを受けて胴体は爆散、首の方も不意打ちしようとした所を乱入してきたウルトラマンヒカリのナイトシュートを受けて倒された。


月光怪獣:再生エレキング 登場作品『ウルトラマンタロウ』第28話『怪獣エレキング満月に吼える!』登場
かつてウルトラセブンに倒されたピット星人が繰り出してきた宇宙怪獣:エレキングが地球で復活した再生怪獣。
大まかな体型こそ変わっていないが、白色のボディがレモン色のような黄色になっており、尻尾も短くなって体重が1万トンも減っている。
また、ピット星人からの指令電波を受けるアンテナとなるエレキングの角が回転していないのも、どこか物悲しさを感じさせる。
また、月光怪獣の名の通り、月光をエネルギーにしているため、満月の晩にしか出現できない。
ピット星人のコントロール下にあった生前でも釣り人に釣られそうになるなど間抜けな面があり、
復活を果たしても月を背景に踊ったり、子供の挑発に乗って側転しようとして失敗したり、その後 見事 側転を成功させて得意気になったりと愛嬌たっぷりなところは変わらず。
ちなみに、映画『ウルトラマン物語』ではメフィラス星人二代目によって蘇生し、改造されて地球に送り込まれた別個体:改造エレキングとして登場し、劇中におけるウルトラマンタロウが初めて戦った怪獣となる。

元々は尾からの電気ショック:エレクトリックテールや口から発射する三日月状の光線:放電光線を主軸に戦う電気怪獣だったのだが、怪獣頻出期の最高潮に月光怪獣として復活を遂げたせいか、
口や尾の先端からの電気エネルギーで火力増強した火炎放射:月光火砲や爆発力の高い光弾などを放ち、性質は大きく変化している。
しかも、ウルトラセブンにあっさり倒された生前と比べ、押し倒されてタコ殴りにされても尻尾で逆に首を絞めてくるなど、ウルトラ兄弟最強の肉体を持つウルトラマンタロウと互角の戦闘を繰り広げている辺り、再生怪獣の中ではかなり健闘している方である。
また、身体は実体ではなく木曽山中に残されていた月光を浴びた角の残骸が本体であるため、角の残骸を放置すると再び復活する恐れがある。
なお、『ウルトラ怪獣モンスターファーム』では普通のエレキングがこの個体の技である高熱火炎を出せるようになっている。


ある満月の夜、かつてウルトラセブンに倒されたはずの宇宙怪獣:エレキングが木曽山中にて月光怪獣として復活した。
ZATの攻撃が開始されるものの、日の出と共にエレキングは姿を消してしまう。
次の満月までに探し出すため、ZATの捜索が開始されるものの、虚しく時は過ぎていき、次の満月の日が近づいてきてしまった。
姿を消したエレキングを探す健一少年は、ターザン、孫悟空、猿飛佐助と名乗る3人の兄弟と出会い、彼らはなんと大好物のピーナッツが食べられない祖父のために怪獣の角で入れ歯を作ろうとしていたのだった。

やがて、日が暮れ、満月の光を浴びたことでエレキングが動き出してしまう。
報告を受けて駆けつけた東 光太郎は、エレキングが動いたことで崩落した洞窟からターザンたちを救出。
その間、ZATはエレキングと戦闘を開始するも苦戦してしまい、ターザンたちはエレキングを刺激してしまった責任を取るため、エレキングと戦おうとする。
エレキングの角にロープを巻きつけ、動きを封じたターザンたちであったが、ロープを結んでいた木がエレキングの力に負け、エレキングの拘束は解かれてしまった。
光太郎はウルトラマンタロウに変身してエレキングと戦うものの、ターザンたちを逃がすための隙を突かれてしまう。
しかし、ターザンたちが巻きつけたロープを利用してウルトラチェーンに変化させる奇策により、ウルトラ兄弟最強の身体能力でエレキングの角を引き抜くと、角を引き抜かれたところから鮮血と言わんばかりに泡が吹き出していき、全身が泡塗れになったエレキングは爆散するのであった。
こうしてウルトラマンタロウはエレキングが二度と復活しないように、エレキングの角を月へと運んだのだった。


宇宙怪獣:EXエレキング 登場作品『ウルトラマン Fighting Evolution Rebirth』第3話『異形の怪獣』登場
EXエレキングの名称は『大怪獣バトル』シリーズでついたものであり、初出では改造エレキングであり、前述の月光怪獣:再生エレキングの『ウルトラマン物語』における名称:改造エレキングと名前が被ってしまっている。
こちらは怪獣酋長:ジェロニモンの能力によって復活した宇宙怪獣:エレキングが宇宙忍者:バルタン星人によって改造されたものとなる。
腕と足が無くなったことでデンキウナギを思わせるフォルムとなっており、頭部もよく見るとオリジナルとはデザインが少し変わっており、頭部や口先が角ばっておらず 頭頂部から口先にかけての黒模様が無くなって のっぺりとした印象を与えるものになっている。よく見ると体が半透明に透けており、体内の発電器官が見える。
映像作品では その特異な身体構造で 現時点でも未登場。前述の特異な体型のムカデンダーの再登場はそれなりにあるのになぜだ。

エレキングと同じく50万ボルトを超える電気エネルギーを主力にする点は変わらないが、自らの体を電気エネルギーに変換することが可能で、その威力も大きく上昇している。
元より水中戦を得意とするエレキングから手足がなくなったことで機動力が上昇しているが、代わりに体つき故に格闘戦が苦手となっている。
しかし、尾長二足歩行怪獣である宇宙怪獣:エレキングにはない機動力を活かした電光体当たり:ライトニングタックルや、瞬時に体を相手に巻き付けて勢いのまま空中で放電する迫力満点の必殺技:EXエレキングコレダーがあり、EX怪獣に恥じない高次元の戦闘能力を有している。


山岳部の水力発電所に出現して電気を吸収していたエレキングがウルトラセブンに倒された後、紫色のオーラに包まれることにより、EXエレキングとなって復活。
セブンがエメリウム光線を使用すると水中に逃げ、ダムを突き破って出現するが、最終的にはウルトラセブンのワイドショットによって撃破された。






新アビドス自治区で開催された“地獄の釜の番人”サーベラス対“宇宙の帝王”グレゴリオのエキシビションマッチの日において怪獣災害が同時発生することになる。
【アビドス】においては大羽蟻怪獣:アリンドウ、【メトロポリス(首都:D.U.)】においては月光怪獣:再生エレキングが襲来。
そこから大羽蟻怪獣:アリンドウに続いて百足怪獣:ムカデンダーが別方面から襲来、撃破した再生エレキングが突如としてEXエレキングに変異するという流れである。


まず、【アビドス】には10m級のクロアリの大群がアビドス砂漠から押し寄せ、新アビドス自治区外となる砂に覆われた廃ビル群を蝕んで次々と倒壊させていく異常事態が発生し、この異常事態に対して避難命令を発令し、【キヴォトス防衛軍】による害虫駆除が始められることになった。
スペースビースト:グアンテラの襲撃を経験していたことで、スペースビーストのような再生力を持たない巨大アリに対して怯まず防衛隊が迎撃するものの、強力な蟻酸と顎によって次々と廃ビル群が倒壊していく。
エキシビションマッチが即刻中止に追い込まれ、サーベラスとグレゴリオが参戦することにより戦況は優勢となっていき、【温泉開発部】鬼怒川 カスミの作戦により倒壊した廃ビルを餌にして一箇所にまとめたところを焼き払ったところ、炎の中で巨大アリの大群が大羽蟻怪獣:アリンドウへと進化してしまうのだった。
しかし、大羽蟻怪獣:アリンドウの能力はロボット怪獣である惑星守護神:ギガデロスの前ではまったくの無力であり、さくっと腹にギガデロスの刃を貫かれたところに、グレゴール星人:グレゴリオが繰り出すダークガルネイトボンバーで一瞬で消し炭にされている。

一方、【玄武商会】が担当する防衛エリアにて地中を割って百足怪獣:ムカデンダーが出現し、早速 捕食するべく毒性の糸で生徒たちを絡め取っていくが、そこに適能者(デュナミスト):姫矢 ジュンの繰り出すエボルトラスターが神事で振り下ろされる神剣のごとく魔を祓っていったことにより、迎撃に向かったGUTSガルーダの援護もあり、人的被害を抑えることに成功。
そこからGUTSガルーダとウルトラマンネクサスがムカテンダーと対峙するが、アリンドウを手早く駆除してきたギガデロスとグレゴリオも合流して、人喰い怪獣:ムカテンダーはアリンドウと同じように惑星守護神:ギガデロスの前には手も足も出ずに嬲り殺しにされてしまう。
とどめとばかりに振り下ろされたギガデロスの刃によって首を切り落とされたことで窮地を脱しようとしたムカテンダーだったが、
驚異的な生命力と残忍さを持ったスペースビーストと戦い続けてきたウルトラマンネクサスには小細工が通用せず、そのままクロスレイ・シュトロームで撃破され、残された胴体も空中で待機していたGUTSガルーダによって撃破されるだけとなった。

全体的に【アビドス】での戦いは惑星守護神:ギガデロスだけで並大抵の怪獣を殲滅できることを確信させるものとなったが、
それでも、常識が通用しない超常の存在である“怪獣(KAIJU)”には出し抜かれることや、一人だけではどうしても手が足りない場面があることも明示されることになり、それぞれの戦力の良さが引き立つものとなった。


一方、【アビドス】における縁日の賑わいを他所にほぼ同時刻に水中からサンクトゥムタワーに肉薄したエレキングの対処に機龍丸とGUTSファルコンが出撃し、【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラからの情報によってエレキングの強みである50万ボルトの強力な電撃攻撃を封じることに成功。
しかし、エレキングなのに妙に黄色いことや口から火炎放射してきたことに多少は驚くものの、それ以上に強力な超古代闇怪獣:ゴルバーを3度撃破した実績のあるコンビには通用するものではなかった。
そして、元々が地底怪獣の強固な皮膚を貫くことができるチルソナイト製の武器でエレキングを蜂の巣にしたことにより、危なげなく怪獣撃破数が更新されたことに沸き立つことになる。

しかし、突如として蜂の巣になったエレキングの遺骸が紫色のオーラに包まれることによりEXエレキングとなって復活し、その異形のフォルムから繰り出される水中機動力に翻弄されることになる。
水中の敵に対して有効打を持たない機龍丸とGUTSファルコンをライトニングタックルで一挙に電気系統を狂わせて一蹴すると、そのままの勢いでサンクトゥムタワーに突撃してくるが、
そこを我らがウルトラマン80が立ちふさがり、自らを避雷針とするウルトラサンダーで電気エネルギーそのものとなったEXエレキングを自身に誘導することに成功するものの、そのまま全身に巻き付かれて大空高くで大放電:EXエレキングコレダーをまともに喰らうことになってしまった。
人類の守護神:ウルトラマン80さえも倒してサンクトゥムタワーに巻き付いてEXエレキングコレダーが放たれ、サンクトゥムタワーにXデー以来の大打撃を与えることに成功するものの、
人々の叫びが届いたことで起き上がったウルトラマン80が一か八かで放ったウルトラアイスポットによって元のエレキングの姿に戻されたところで、続けざまに放たれた闇怪獣特効のサクシウムゼペリオン光線によって完全に消滅することになった。

最初の怪獣:クレッセントによるキヴォトス滅亡の危機であるXデー以降、再びキヴォトスを滅亡の危機に追いやった強豪怪獣としてEX怪獣がついに登場することになり、
今回のEXエレキングは臨海部であることから地の利を活かして首都:D.U.及びサンクトゥムタワーへの奇襲を完全に成功させており、
これまでの戦いで大ダメージを受けることなく常に余裕を持った立ち回りをしてきたウルトラマン80ですらも自身を囮にしないと捉えられないほどの水中機動力を発揮した。


結果として、【アビドス】では縁日の賑わいに集まった同志たちの結束と数の暴力で怪獣たちが捻じ伏せられていたが、
その裏で【メトロポリス(首都:D.U.)】ではさらりとXデー以来のキヴォトス滅亡の危機を迎えており、そのあまりの落差に関係者が風邪を引きそうになるのも無理はなかった。
そのため、エレキングは第2のXデーを招いた怪獣として最初の怪獣:クレッセントと同じぐらい対策を意識される怪獣として記憶されることとなる。
しかし、大羽蟻怪獣:アリンドウ、百足怪獣:ムカデンダー、月光怪獣:再生エレキングはいずれも【ドキュメントZAT】に記録されている地球怪獣であり、その成り立ちからキヴォトスの歴史に存在するはずがない怪獣であるため、
これにより、キヴォトスには怪獣墓場と繋がっているウルトラゾーンが存在する可能性が極めて高いということを地球人:北条 アキラに確信させることになるのであった。





――――――しかし、ピット星人が使役していたことで知られる宇宙怪獣:エレキングの出所については大いなる誤解があったことが後々に判明することとなる。

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