Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP15 繁殖する侵略者を撃て -Ⅱ.小さな世界(リトルプラネット)で繋がる すれ違い-

 

――――――移動遊園地(funfair):リトルプラネット / ランドマークタワー / ロッカールーム(スイートルーム)

 

北条先生「みなさん、どうでしたか? 楽しんでいただけましたか? 盛り上がりましたか?」

 

尾刃 カンナ「ええ。途中からどこからどこまでが脚本通りなのか判断に迷いましたが……」

 

戒野 ミサキ「――――――とにかく凄かった。それしか言えない、ホントに」

 

戒野 ミサキ「というかさ、最後のアレって何だったの? 身体の調子が凄く良くなってさ、びっくりなんだけど」

 

黒舘 ハルナ「ええ。ええ。少し食べ過ぎて気分が悪いのを堪えていたところに、あの光は本当に効きました」

 

槌永 ヒヨリ「本当ですよね。不思議なことがあるもんですねぇ……」

 

北条先生「それについてはサーベラス様から説明があるでしょう」

 

北条先生「さあさあ、まだまだ楽しめるところはいっぱいありますから、遊び尽くしてくださいね」

 

北条先生「移動遊園地:リトルプラネットは入場整理券で、そこまで混雑していないでしょう?」

 

尾刃 カンナ「はい。生体認証も義務付けているおかげで、犯罪者の監視も容易で、非常にやりやすいです」

 

黒舘 ハルナ「本当ですわ。犯罪者に怯える必要がないのは思い切り楽しめて気分は最高です、先生」←キヴォトス中に名を轟かせる爆弾犯【美食研究会】のリーダー

 

尾刃 カンナ「あなたとそのお仲間の場合は部屋を分散して【公安局】と捜査協力者とで一気に取り抑えられるように割り振りされているんですよ」ハア・・・

 

尾刃 カンナ「しかし、【アビドス】におけるガリバーさんの活躍もそうですが、サーベラス様やグレゴリオ様といった頼もしい助っ人が味方になってくれていることは非常にありがたいことです」

 

北条先生「そうです。おかげで、僕としても【メトロポリス(首都:D.U.)】を 長期間 離れて【アビドス】の防衛の指揮を執る必要がなくて大いに助かっています――――――」ピピピピ・・・

 

北条先生「おっと、失礼します」ピッ

 

尾刃 カンナ「はい」

 

 

北条先生「――――――なに? “悪魔の穴”に到達したのか? では、穴の中を慎重にな」

 

 

北条先生「……怪獣め」ピッ

 

戒野 ミサキ「さっきのは?」

 

北条先生「旧アビドス自治区は豊穣の大地:アビドス居住区と不毛の大地:アビドス砂漠で構成されているわけなのですが、数十年前から始まった砂漠化でアビドス居住区が呑み込まれて明確な境界線が失われて久しい」

 

北条先生「今回、【カイザーコーポレーション】に支配されていても なおアビドス居住区に残り続けていた住民たちから不思議な話を聞き込みしたところ、“悪魔の穴”という突如として現れては消える巨大な穴が数年以内に何度も発見されていたらしい」

 

北条先生「私はそれを怪獣の口や鼻の穴だと思って情報を集めていましたが、ついに“悪魔の穴”の1つを見つけることができたようです」

 

尾刃 カンナ「……恐ろしい話ですね」

 

北条先生「他にも、“幻のオアシス”が不毛の大地:アビドス砂漠の方で何度か確認されているらしい……」

 

槌永 ヒヨリ「それも怪獣の仕業なんですか?」

 

北条先生「おそらくは」

 

黒舘 ハルナ「かつて【アビドス高等学校】ではアビドス砂漠にある巨大なオアシスで“アビドス砂祭り”が開催されていたらしいですわ」

 

北条先生「オアシスというのは“憩いの場”を意味するものであり、乾燥地域において生活に欠かせない水源の周りに位置する農地や居住区をまとめた緑地です」

 

北条先生「ですので、乾燥地域にある水場は全てオアシスで、乾燥地域にある河川もまたオアシスなのです」

 

戒野 ミサキ「じゃあ、四次元都市:フォーサイトからアビドス砂漠に突如として現れた移動遊園地(funfair):リトルプラネットも“幻のオアシス”ってことになるかもね」

 

北条先生「そうなるかもしれませんね……」

 

 

黒舘 ハルナ「ところで、先生! 私たちの水着姿ですが、どうでしょうか?」ドキドキ

 

 

尾刃 カンナ「………………!」ドクン!

 

黒舘 ハルナ「ヒヨリさんったら大胆なものを選んでおりますわよ! ほらほら!」

 

槌永 ヒヨリ「あ、ああ! や、やめてください! 雑誌に書いてあった『寄せて上げる』のがいいって思って少し小さ目のやつを買ってキツイですから!」ポヨーン!

 

戒野 ミサキ「ホント、くだらない……」ハア・・・

 

黒舘 ハルナ「カンナさんのも凄いですわ!」

 

尾刃 カンナ「あ、何をする――――――!?」

 

 

北条先生「――――――」ジー・・・

 

 

尾刃 カンナ「あ、せ、先生……!? そ、そんなに見ないで、ください……!」カア!

 

北条先生「足の裏、見せて」

 

尾刃 カンナ「へ? あ、足の裏……!?」ドキッ

 

戒野 ミサキ「あの目、セナが患部を診る時と同じ感じに見える……」

 

槌永 ヒヨリ「……先生?」

 

黒舘 ハルナ「では、カンナさん。先生の仰る通りに足の裏を」

 

尾刃 カンナ「こ、こうですか、先生?」ドクンドクン・・・

 

北条先生「えい」グイッ ――――――足ツボを突く!

 

尾刃 カンナ「ああ!?」ビクッ

 

北条先生「そうか、なるほどな」

 

 

――――――ライブショーでウルトラマンが放ったヒーリング光線(メディカルパワー)は生活習慣病や持病の類には効果がない対症療法(癒やすもの)であって原因療法(治すもの)ではないのか。気をつけておこう。

 

 

北条先生「これ、首、少し凝ってるね。それと足裏がゴリゴリとしてきているでしょう。これ、血液やリンパ液の流れが滞って老廃物が蓄積されているから、疲れが溜まっていきやすくなっているよ」

 

北条先生「まあ、無理を言って来てもらっているし、久々の現場の緊張感ということで身体が堪えているのでしょう」

 

北条先生「ですので、尾刃さんにはまだまだ頑張ってもらうために、足ツボマッサージをしてあげますね」

 

北条先生「せっかくですから、戒野さんと槌永さん、僕の真似をしながら黒舘さんに足ツボマッサージをしてあげてください」

 

黒舘 ハルナ「え? あの、先生……?」

 

戒野 ミサキ「悪いね、ハルナ。でも、先生の指示だから、これ」

 

槌永 ヒヨリ「すみません、ハルナさん。でも、先生の言うことですから」エヘヘ・・・

 

黒舘 ハルナ「ああ……!?」

 

北条先生「それじゃあ、足ツボマッサージを始めますよ、尾刃さん?」

 

尾刃 カンナ「お、お願いします……」ドクンドクン・・・

 

北条先生「さあ、よく覚えておいて。“第2の心臓”ともいわれる足の裏には約60〜70の反射区(ツボ)があって、体のどこかが不調になると足裏の反射区(ツボ)が固くなったり、カサカサしたり、押すと痛みを感じたりするようになるから、そこを探り当ててコリを解消することで血行を良くするんだ」

 

北条先生「やっぱり、【公安局】局長ともなるとストレスが溜まるんだろうねぇ。美容と健康のためにも施術してあげるべきだよね……」

 

北条先生「まずはここ。両足の親指。考え過ぎて頭が疲れていたり ストレスによる疲労を感じたりしている場合に両足の親指全体を押すことで頭痛が緩和されたり 頭がすっきりしたりする。もちろん、根本的な原因を取り除かないと血行がまた悪くなるけど、これをするだけでもだいぶ楽になるはずだよ」

 

槌永 ヒヨリ「えっと、こうですか?」グイッ

 

黒舘 ハルナ「あ! ああ!? あああああああああ!?」ドタバタ!

 

戒野 ミサキ「暴れるな!」

 

北条先生「あ、ダメだよ、槌永さん。足ツボを押す時の強さはちょっと痛いけどクセになる感覚『痛気持ちいい』が目安でね。弱すぎると効果がないし、強すぎると激痛になってマッサージどころではなくなるから、ちょっと強い刺激があるのを感じるぐらいを目指して」

 

北条先生「だから、相手が痛いか気持ちいいか、その見極めをするために相手と確認しながらマッサージというのは進めていくんだよ」

 

北条先生「つまり、良いマッサージというのは合いの手というわけ。まさしく“(合い)”なんです」

 

北条先生「あ、尾刃さん、ここから少しずつ力を入れたら刺激が走ると思うけど、『痛気持ちいい』というところで声を掛けてね。我慢はしないでね」

 

尾刃 カンナ「は、はい……」

 

北条先生「じゃあ、行くね」グイッ

 

尾刃 カンナ「あ」

 

尾刃 カンナ「あ……」

 

尾刃 カンナ「あ、そこ。そこです、先生……」

 

戒野 ミサキ「へえ……」

 

槌永 ヒヨリ「たしかに気持ちよさそうですね……」

 

黒舘 ハルナ「ああ、いいですわね。羨ましいですわ、カンナさん……」

 

北条先生「あ、一応ね、言っておくけど、やり過ぎるのも良くないからね。過ぎたるは及ばざるが如し、強すぎる力で足ツボに刺激を与えすぎると筋肉や神経に過度の負担がかかって炎症反応を起こして痛いのがずっと続くことになるから。薬と毒は表裏一体であるようにマッサージもまた薬にも毒にもなるから気をつけてね」

 

北条先生「つまり、マッサージはあくまでも『痛みを和らげるもの』であって『痛みを治すものではない』ということは忘れないでください」

 

戒野 ミサキ「ねえ、先生? そう言うのって私にもできるようになるのかな?」

 

槌永 ヒヨリ「え?」

 

戒野 ミサキ「あ。いやさ、私にはセナのように医療行為はできないけど、マッサージなら日常でも使えるし、連日連夜の緊急出勤で夜が明けてから帰って来るセナのためになるかと思って」

 

北条先生「できますよ。ただ、足の裏をマッサージできる余裕があれば一番ですけど、それが無理ならば手のマッサージですね」

 

北条先生「たとえば――――――、はい、尾刃さん、左手を出して」

 

尾刃 カンナ「あ、はい……」

 

北条先生「こうやって左手で握手しながら、右手の親指で手三里を押す。腕の関節より親指一本分離れた箇所;ここが首肩をほぐす効果があるんです。薬用ハンドクリームを使いながらだとお肌のケアもできて一石二鳥なんですけどね」

 

尾刃 カンナ「せ、先生にいろんなところを触られている……」ドクンドクン・・・

 

黒舘 ハルナ「先生! 私にもお願いします! 私も先生のマッサージを受けてみたいです!」

 

北条先生「ダメ。マッサージっていうのは対症療法で、原因療法の補助とすべきものだから、これで得られる快楽を第一に求めるのは間違っている」

 

北条先生「あと、これからご客人をもてなさないとだから、何人もじっくりとやる時間がないです」

 

黒舘 ハルナ「う~!」

 

北条先生「じゃあ、しかたがないので 全員 1分だけ施術しますよ。足の裏を向けてください。尾刃さんももう一度」

 

黒舘 ハルナ「はい、先生!」

 

槌永 ヒヨリ「ど、どうぞ……」

 

戒野 ミサキ「お願いします……」

 

尾刃 カンナ「せ、先生……」

 

北条先生「じゃあ、行きますよ!」

 

 

キヴォトス史上最大の軍事力【キヴォトス防衛軍】が怪獣退治の最前線で戦う勇敢なる生徒たちの慰労のために造営を進めていた移動遊園地(funfair):リトルプラネット開園を無事に迎え、初日の昼の部のイベントが終わって、みんなが地図を見ながら思い思いの場所へと胸を弾ませながら向かっていく。

 

移動遊園地(funfair):リトルプラネットは中心となる臨時の避難所と管理運営を担う【ランドマークタワー】と周辺に展開される【Ⅰ.ショッピングモール(商業施設)】【Ⅱ.アミューズメントパーク(娯楽施設)】【Ⅲ.ワールド・エクスポ(展示施設)】【Ⅳ.アーセナル(軍事施設)】で構成されており、

 

今回は【Ⅱ.アミューズメントパーク(娯楽施設)】内の南国リゾート風のウォーターパークをメインアトラクションに据えて水着で歩き回れるようにしてあり、お気に入りの水着や涼し気な夏着で着飾って場内は肌色と活気に満ちていた。

 

あくまでも移動遊園地(funfair):リトルプラネットは【キヴォトス防衛軍】が所有するレクリエーション施設/軍需産業の産物という位置づけではあるが、積極的に一般開放しているのにも立派な理由がある。

 

怪獣災害という未曾有の危機によって世の中が暗い中、地域住民との交流や経済の活性化のために積極的に資金や資材を投じて景気が良いことを【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラは率先して実施しているわけであり、これも作戦完遂まで全体の士気を保ち続けるには非常に有用なことであった。

 

というのも、『学校は社会の縮図』という言葉を曲解して『学園が社会そのもの』となってしまっている学園都市:キヴォトスの政治中枢を年端もいかぬ女子生徒たちが運営しているわけだが、年頃の学生なんてものはテスト勉強しながら友達と思いっきり遊びたいと思うのが普通であるはずなので、そういった社会的背景を汲んで人心掌握に特に力を入れることになっていた。

 

この辺りは『孫子』の影響であり、『孫子、姫兵(ひめへい)(ろく)す』の逸話を頭の中で浮かべながら、怪獣退治をするための防衛戦力を中核となるキヴォトスの生徒たちで確実に運用するためにはどうするべきかを研究した成果であり、

 

さすがにヘイローの加護か、地球人を凌駕する戦闘能力を発揮するキヴォトス人に対して体罰や刑罰による統制は倫理的な問題以前に実行不可能であるため、軍規や理屈よりも感情や良心に訴える論法で次々と生徒たちの心を鷲掴みにして平らげていったのである。

 

その手練手管の代表例こそが地球の文化が宇宙に誇れるものだと信じて疑わない地球人:北条 アキラが繰り出す地球が誇る自慢の料理の数々であり、それらを北条 アキラが監修するブランド【地球文化館】によって急速に地球由来のものがキヴォトスで流行するようになっていたのである。

 

今や“連邦生徒会長”の実質的な後継者として怪獣頻出期に突入してしまった窮状を救うキヴォトスの頂点に立つ存在となった地球人:北条 アキラへの支持と信頼は絶大なものとなっていたが、

 

一方で、北条 アキラ本人が公言しているように、旧来のキヴォトスの価値観や伝統を破壊する文化侵略の意図はないとして、キヴォトス固有の良き文化や習俗の保護にも力を入れており、

 

今回の移動遊園地(funfair):リトルプラネットの開園に際して【Ⅲ.ワールド・エクスポ(展示施設)】にて、そういったキヴォトス中にある貴重な文化財を展示して多くの人に知ってもらう機会を設けることを事前に説明していたのである。

 

もちろん、愛銃をいつでも人に向けて襲撃や略奪が日常的に横行しているキヴォトス人の暴力的性質から展示品を守ることは困難であると難色を示されるものの、そこで登場するのが四次元都市:フォーサイトとデジタルツイン技術である。

 

展示品のオリジナルを四次元都市:フォーサイトで保管して、デジタルツイン技術で電脳世界に再現された展示品をAR(拡張現実)技術で四次元都市:フォーサイトに保管されているはずのそれらを見て聞いて感じられるようにしたデジタルミュージアムの形式で展示会を開けば盗難の恐れがないことを説明したのである。

 

これにより、四次元都市:フォーサイトが多くのキヴォトス人からヘイローが消失する呪われた土地として忌避されてきたことも相まって、すでに多くの銀行や倉庫が略奪の恐れの低い四次元都市:フォーサイトに支店を設けていたところに、時間の流れがキヴォトスよりも緩やかである利点も積み重なって、続々と貴重な文化財が運び込まれることになったのである。

 

このため、ブランド【地球文化館】の監修をしている地球人:北条 アキラの文化財保護活動は高く評価されることになり、『比較する楽しみがあることが豊かであるということ』という格言と共に地球の文化がキヴォトスの文化を淘汰することなく両立する新たな文化創造が模索されていくことになったのであった。

 

 

その代表格が【山海経高級中学校】における改革派【玄武商会】であり、全体的に強硬派の保守層で固められている学園を取り纏める生徒会【玄龍門】に先駆けて“シャーレの先生”地球人:北条 アキラとの接触を図っていたのだった。

 

 

元々は観光業や飲食業が盛んな【山海経】であったが、他の学園と基本的に交流を持たないといった長く閉鎖的な歴史を持ち、そのために学園全体が保守的な傾向にあり、外部の人間や学園の文化に影響を与える存在に対して敏感なきらいがあった。

 

前例のない事や例外に対して批判的な学生も多く、歴史や伝統が人的被害より優先すべきと主張する頑迷な生徒が普通であり、失踪した“連邦生徒会長”が招いたキヴォトスの外からやってきた地球人:北条 アキラに対しても強い不信感を抱く生徒が当たり前であった。

 

これはそこで暮らしている人たちの名誉のためにも地球人:北条 アキラは良識ある大人として決して人前で言うことはないのだが――――――、

 

“シャーレの先生”としての最初期の活動;閉校反対の抗議活動のために各地を不法占拠していた【SRT特殊学園】の生徒たちを次々と鎮圧して傘下に加えていったことで得られたキヴォトス中の学園の【ドキュメント・フォビドゥン】とでも言うべき非公開情報があり、

 

その中にあった 失踪した“連邦生徒会長”をはじめとする歴代の生徒会長たちの【山海経高級中学校】に対する評価を一読して、【山海経】がキヴォトスの中心から外れたマイナーどころ(隔絶された田舎)であったことを思わず神に感謝するぐらいには、本職が小学校の先生である地球人:北条 アキラにとっては【アリウス学園】以上に哀れに思える生徒たちの巣窟であった――――――。

 

しかし、16年前からの【トリニティ総合学園】の学制改革運動で加速したIT革命の恩恵でキヴォトス全土がデジタルネイティブ世代と化した今、

 

動画配信サイトで毎週【ゲヘナ学園】から公開授業している新進気鋭の怪獣退治の専門家:北条 アキラの存在はネットを通じてすぐに【山海経】でも評判となり、

 

最初の怪獣:クレッセントが出現したXデーからキヴォトスが前例のない怪獣頻出期に突入し、【連邦生徒会】の命令で基本的な怪獣災害対策となる避難シェルターの整備と安否確認サービスへの登録の徹底を通じて、【山海経】でも差し迫った危機として防衛体制の構築と予算の投入がかつてない勢いで進められることになった。

 

 

そして、ついに【山海経高級中学校】にも宇宙怪獣が現れた時、ウルトラマン80が降り立って宇宙怪獣をすぐにその場から連れ去って被害を限りなく抑えてくれた際の【玄龍門】の対応の悪さに批判が集中することになり、次第に【山海経】では改革を支持する世論が形成されていくことになったのであった。

 

 

そのため、【山海経高級中学校】における改革派の最大手である商人たちの連合組織【玄武商会】の会長:朱城 ルミと会長付護衛:鹿山 レイジョ、その裏にいる【玄龍門】門主:竜華 キサキとはその頃からの付き合いであり、

 

【山海経】の伝統を重んじる生徒会【玄龍門】とは非常に折り合いが悪いものの、怪獣退治の専門家として革新性の塊である“GUYSの先生”北条 アキラと繋がりを持つ誰かがいないと【山海経】が共倒れになる危機感から変革を重んじる気風の【玄武商会】がパイプ役となっているのだ。それは当人たちからすれば必死の思いであった。

 

そして、キヴォトス史上最大の軍事力【キヴォトス防衛軍】から発生する莫大な利権を中核をなす【キヴォトス三大学園(BIG3)】に割り込んで獲得するために、【山海経】の主な収入源となる飲食産業の根幹をなす複数の系列の飲食店を傘下に持つ有力グループとして売り込みをかけていた。

 

事実、【玄武商会】傘下の飲食店は【山海経】の伝統料理のみではなく、観光客のニーズに合わせて多国籍料理も取り扱っており、ありとあらゆる多様な食材や料理を提供して、その品質管理に厳しいことで格が保たれているグルメの名所として名高い。

 

とは言え、一番自信があるのはやはり【山海経】の伝統料理であるらしく、この点が現地の文化との共存共栄を願う地球人:北条 アキラの理想に合致することになり、【玄武商会】会長:朱城 ルミはもちろん、彼女を通じて“シャーレの先生”と秘密のやりとりをしていた【玄龍門】門主:竜華 キサキとも意気投合することになったのだ。

 

そのため、今回の移動遊園地(funfair):リトルプラネットの初開園に際して【Ⅲ.ワールド・エクスポ(展示施設)】には【山海経高級中学校】から数多くの出展があり、【京劇部】による舞台上演も実現されることになったのだった。

 

それ以上に今回の移動遊園地(funfair):リトルプラネットではセクション各所にある飲食店の大半が【玄武商会】傘下ということで莫大な利益を上げることに成功しており、先日のエキシビションマッチにおいても特設アリーナの飲食店の大半を占めていた。

 

そして、今回の【Ⅲ.ワールド・エクスポ(展示施設)】内のデジタルミュージアムで初披露となる最先端技術が公開されるのであった――――――。

 

 

北条先生「よし、そろそろですね」

 

北条先生「聞こえますか、竜華さん?」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「待っておったぞ、先生。大切なこと故、もう一度 告げようか。先生をずうっと待っておったのじゃ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「こういう形で先生と【山海経】の外を見て回ることになるとは、【山海経】の外がここまで進歩発展していたことに驚きじゃの……」

 

猫塚 ヒビキ「じゃあ、軽く基本動作をしてみて。手をグーパーグーパーしてみたり、足踏みしてみたり、その場でジャンプしてみたり。感度の調整もできるから違和感があったら言って」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「おお、本当に自分の手足のように動くのじゃ。これで遠く離れた場所を自分で見て聞いて触れることができるの」

 

北条先生「ええ。キヴォトス中から集まった貴重な文化財の盗難や破損を防止するためにデジタルツイン技術で電脳世界に再現された展示品をこのようにAR(拡張現実)技術で鑑賞する次世代のデジタルミュージアムですが、」

 

北条先生「そこで更に()()()()()()()()()をも実現させるものが、竜華さんが 今 体感しているAR(拡張現実)技術で遠隔操作する究極のバリアフリー機構:シンクロボットです!」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「おお、これは本当に素晴らしいの。屋敷に居ながらヘッドマウントディスプレイだけでこれだけの操作ができるのじゃ」ワイ! ――――――背を高くするためのばんざい体操!

 

北条先生「これなら一緒に【山海経】の外を見て回れますね?」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「うむ。可能性とは良いものじゃ。我の先を示してくれる」

 

北条先生「では、ご一緒しましょうか、竜華さん」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「このような形で今やキヴォトスの頂点に立つ其方に手を引かれて【山海経】の外を見て回れるのは恐悦至極じゃ」

 

北条先生「それでは行ってきます、猫塚さん」

 

猫塚 ヒビキ「はい。行ってらっしゃい、先生」

 

 

現在、【山海経高級中学校】から【玄龍門】門主:竜華 キサキがお忍びで視察に来ていると言われたら、【Ⅲ.ワールド・エクスポ(展示施設)】で上演している【京劇部】や移動遊園地(funfair):リトルプラネットではセクション各所にある飲食店の大半を取り仕切っている【玄武商会】の生徒たちは飛び上がるほどに驚くことであろう。

 

それを可能にしているのがデジタルミュージアムの究極形と銘打った()()()()()()()()()のためのバリアフリー機構であり、美術館が車椅子の貸出をして車椅子の利用者が鑑賞しやすいように配慮がなされているといった障害者対応の究極である第一世代型ARバリアフリーマシン:シンクロボットが初公開となった。

 

シンクロボットの外見はキヴォトスの生徒たちの奉仕種族として社会活動に従事している衣服を着用しているロボット族とは大きく異なり、真っ白い外見の簡素な形状の機械然としたオートマタであった。

 

これをヘッドマウントディスプレイを掛けた中の人が遠隔操作するわけであり、ただの遠隔操作ではない、見て聞いて触れることを売りにしているため、手の部分だけは完全に人間のものを再現しており、追加コントローラーとなるシンクロ手袋を嵌めることでシンクロボットが触れたものの手触りまで正確に伝えることが可能となっていた。

 

 

そう、これは破滅を迎えることになった未来世界で開発された“時空移動メカ(ロボット型タイムマシン):アドベンチャー”の技術を使って【ミレニアムサイエンススクール】で再設計されたヒューマン・マシンなのである。その意味ではロボット職員:マウンテンガリバーの子孫とも言える系列機なのだ。

 

 

当然、シンクロボットの手とはロボット職員:マウンテンガリバーの手と同じ規格なので『前回』“シャーレの先生”だったコーイチ先生の手そのものであり、16年間に渡るメンテナンス整備のために相当数が量産されていた。

 

すでにそのことに関しては何も思うことがなくなったロボット職員:マウンテンガリバーであったが、【ミレニアムサイエンススクール】にとっても“教父(ファザー)”である最重要人物のメンテナンス整備のために【セミナー】の歴代の会長たちが受け継いできた最重要任務として細心の注意を払って生産された良品で構成された予備品を組み上げて、ロボット職員:マウンテンガリバーの兄弟機を作り出そうという試み自体は昔からあったのである。

 

しかし、デジタルネイティブ世代の未来技術の習熟が不完全であったためにハード面(ガワ)だけは設計図通りに作れても、デジタルネイティブ世代のネットワーク技術の水準まで成長しないことにはソフト面で不完全であったため、兄弟機となる相当数の試作品が【セミナー】が完成させた要塞都市:エリドゥで死蔵されることになったのである。

 

そして、時が流れてキヴォトスの未来を変え得る救世主:北条 アキラの登場と、破滅の未来を変えるために過去の世界へと機械の身体に意識を移して一人送り出されたロボット職員:マウンテンガリバーの正体が明かされたことによって化学反応が起き、

 

景気良く金を落とす観光客を迎え入れる時だけしか愛想良くしてくれない【山海経高級中学校】から【玄龍門】門主:竜華 キサキの『怪獣頻出期を迎えた今だからこそ【山海経】の外を自らの目で確かめに行きたい』という願いが【玄武商会】会長:朱城 ルミを通じて届けられ、

 

そう言えばロボット職員:マウンテンガリバーの兄弟機となる試作品が 相当数 要塞都市:エリドゥに眠っていたことを思い出すと、即座にデジタルミュージアムの究極形であるバリアフリー機構:ARバリアフリーマシンの開発を依頼することになったのである。

 

怪獣退治の専門家がこうしてARバリアフリーマシンの開発に資金を投入するのも立派な理由があり、諸事情で現場視察に参加できない要人に遠隔操作してもらうことで現場の様子を臨場感をもって体験してもらうことができ、それはまさしく【玄龍門】門主:竜華 キサキの要望に応えるものとなっていた。

 

実際、これで【アビドス高等学校】とはちがった意味で連絡がとりづらい【山海経高級中学校】との繋がりを強固なものにして【キヴォトス防衛軍】の作戦行動への理解と協力が得られるのなら、決して高い買い物などではないだろう。

 

他にも、ARバリアフリーマシンの技術とノウハウを応用することができれば、様々な形状のものとシンクロできるシンクロボットの開発に繋がり、現場での作業ができないドローンに代わって危険地帯の調査にも使えて人命保護に繋がるため、バリアフリー機構:シンクロボットの開発に“GUYSの先生”北条 アキラはかなりの情熱を注いでいた。

 

なお、第一世代型ARバリアフリーマシン:シンクロボットはグレードが上がることで電脳接続(リンクアップ)した操縦者の好みに合わせてスキンの変更や立体ホログラムの搭載で投影するもの次第で見た目を自在に変えることが可能であった。

 

この辺りは愛銃に可愛らしいデコレーションを施すキヴォトス人の文化や趣味を汲んだマーケティングによるものであり、当初は頭部に小型ディスプレイを埋め込んで操縦者の顔をリアルタイムで映し出すだけの味気ない仕様になっていた。

 

そこを 記念すべき最初の利用者である【玄龍門】門主:竜華 キサキの要望に応えて 敢えて操縦者の素顔をさらさないプレーンな頭部が採用されることになり、余計な機能を廃して生産性を上げることに重点を置いた理由の裏には『あまりにも保守的な思考に凝り固まった【山海経】の多くの生徒たちに外の世界を見てもらいたい』と言う切実な願いが込められていたのである。

 

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「おお、これは凄いの。可愛い水着や綺麗めの夏着を来た生徒たちでいっぱいじゃ」

 

北条先生「ええ。今回のリトルプラネットは、かつてキヴォトス最大の学園として名を馳せていましたが 今や砂漠に呑まれてしまった【アビドス高等学校】で名物であったという“アビドス砂祭り”を意識した南国リゾート風のウォーターパークがメインとなっていますから、全てのセクションで水着姿での利用が可能となっています」

 

北条先生「僕もね。ほら、この下にはラッシュガードの水着を着込んでいますよ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「知っておるぞ。昼の部のライブショーは妾も其方が贈ってくれたQRコードから見ていたからの。本当に其方はキヴォトスの歴史に名を刻む類稀なる偉丈夫よ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「その、触ってみても良いか?」

 

北条先生「どうぞ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「おお、これが男の人の胸板というものか……!」サワサワ・・・

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「た、大変貴重な経験をさせてもらった。感謝するぞ、先生よ」コホン!

 

北条先生「いえいえ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「お、あれは【玄武商会】の者が経営している店か。リトルプラネットの飲食店の大半を占めることに成功したと聞いているが、【山海経】に構えている店とはだいぶちがうのじゃ」

 

北条先生「まあ、ここは【山海経】ではありませんからね。観光客に合わせて国際色豊かな多国籍料理の店を構えるようになったとあれば、ここではその強みを活かして更なるニーズを先取りしたものが売れ筋になっています」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「そうか。先日のエキシビションマッチに使われた特設アリーナの飲食店で出していたあれか。妾も口にしてみたが、なかなかのものであったの」

 

北条先生「お気に召して何よりです」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「しかし、贅沢な悩みではあるがの、周りの生徒たちのように試食や買い食いができないのはちと寂しいのじゃ」

 

北条先生「まあ、元々が美術館で貸出される車椅子と同じバリアフリー機構ですから、飲食は想定されてないんですよ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「わかっておるのじゃ。まあ、こうやって人間の手を完璧に再現したマシンで手に取ったものを現地におる者に言って買ってくるようにできるのは今までにない楽しみ方にはなるがの」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「いつか先生の手料理を食べてみたいのじゃ」

 

北条先生「そうですね」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「あと、もう少し この手の大きさを変えてもらえたら、違和感がなくなるのだがの」

 

北条先生「申し訳ないです。モデルが成人男性のものですので。そういったニーズに応えて手の大きさを選べるようにしますから、今回は大目に見てもらえませんか。規格もSサイズ、Mサイズ、Lサイズ、LLサイズと選べるようになっていきますから」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「冗談じゃ。これでも完成度の高さに十分に驚いているのじゃ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「だが、だからこそ、この手を通してでしか先生に触れることができないのが物足りなく思えてきての」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「――――――人間の欲望とはどこまでも際限がないの。妾もそうだとは思わなかった」ドキドキ・・・

 

 

【山海経高級中学校】の生徒会【玄龍門】は古くからの伝統に重きを置く中華マフィアを思わせる組織であり、その過激で威圧的な対応から黒い噂の絶えない組織である。

 

いや、本職の小学校の先生から言わせてもらえば、【山海経高級中学校】自体が【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】の悪いところを俗悪な僻地で煮詰めてできたもののように思えて全体的にアレであるため、

 

とてもじゃないが、まともな人間が見れば その在り方は公明正大とは言えないものがあり、【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラとしては【キヴォトス防衛学園】に留学させない限りは絶対に戦力に組み込もうとは思わないぐらいに信用がまったくできない扱いであった。

 

打ち明けて言うと、その存在が許され続けてきたのは【山海経】そのものが そこまで重要視されるほどの国力でも要衝でもない 地政学的に価値のない土地だったからであり、【キヴォトス防衛軍】は【メトロポリス(首都:D.U.)】と【キヴォトス三大学園(BIG3)】だけで戦力の大半が構成されているぐらい、その他の学園の存在感がないのだから、【山海経】からの戦力提供はむしろ逆にマイナスにしかならない。

 

そうでなかったら、【キヴォトス連邦】が成立する以前に【山海経】は人身御供の鮮血の歴史に恐れ慄いたスペイン人に攻め滅ぼされたアンデス文明のようになっていてもおかしくなかった。

 

なので、【山海経高級中学校】とは【ドキュメント・フォビドゥン】に記録されていた宇宙調査員:メイツ星人を虐殺した暴徒たちの予備軍だと思って最低限の付き合いに済ませたと言うのが本音である。これは失踪した“連邦生徒会長”も同意見であろう。

 

しかし、そのトップである【玄龍門】門主:竜華 キサキだけは評価は別であり、巷では“山海経の黒い君主”とも呼ばれ、見た目は非常に幼いながらも独特の大物感を漂わせ、国家に相当する学園を統率する生徒会長の地位相応のカリスマ性を放っており、オンライン会議で顔合わせをした時からとびきりの才女であることを北条 アキラは見抜いていた。

 

事実、【山海経】において畏敬と尊敬の念を得ており、【玄武商会】鹿山 レイジョなどの【玄龍門】の体制に反発的な生徒からさえも揃ってトップとしての器は認められているのだ。

 

 

――――――それだけに、“GUYSの先生”北条 アキラは憐れんだ。キヴォトスでは才能と引き換えに身長が犠牲になるほどに『特定の個人の早熟した才能によってでしか学園の円滑な運営は図れないのだ』という諦観を抱いていただけに。

 

 

事実、自らが率いる【玄龍門】に限らず、【山海経】全体の平和と発展を願っており、過激な保守勢力である【玄龍門】の長でありながら“竜華 キサキ”という一個人としては穏健な改革派であることを自認している良識人ではあった――――――。

 

というのも、それなりの規模があるにも関わらず、キヴォトス内では知名度や認知度が低い【山海経】を【キヴォトス三大学園(BIG3)】とまではいかずとも更に有名にしたいと言う大望を抱いている一方、頑迷で強硬的な保守勢力の制御には日頃から苦労させられている様子であり、

 

聞けば、キヴォトス最強とも噂されている【風紀委員長】空崎 ヒナと年齢、身長、誕生日が同じであり、学園で誰よりも実力があったが故に学園の業を一身に背負わされているだろうことは空崎 ヒナに通じる風格と背丈で想像させられていた。

 

彼女自身、自身を“門主”という玉座に添え置かれた装置と捉えており、それに相応しく“門主”として強権を振るう一方で、【玄龍門】の掲げる歴史と伝統を破壊する者にはなれないというジレンマを抱えて生きており、

 

【玄龍門】の構成員たちもまた 長年のトップダウン形式に慣れきってしまっており、自己判断能力や責任能力の欠如も、“山海経の黒い君主”として君臨しているはずの竜華 キサキの大きな悩みの種になっていたのだ。

 

このような重責と閉塞感に苛まれる日々を過ごしているため、時折 息抜きも兼ねて 趣味で密行を行っており、門主の座を抜け出し、変装して市井を見回っているのだとか。『椅子に座っていては見えぬものもある』とは本人の談である。

 

その辺りのストレスの対処法も北条先生と共通しており、互いに親近感が湧いたことが より一層 憐憫の情を地球人:北条 アキラに掻き立てさせるのだ――――――。

 

 

――――――そんな哀しみを背負っていた【玄龍門】門主:竜華 キサキに訪れた転機が最初の怪獣:クレッセントが現れたXデーであり、天変地異の時代:怪獣頻出期の到来と地球人:北条 アキラの台頭であった。

 

 

実は、地球人:北条 アキラの存在自体は失踪した“連邦生徒会長”が遺していった超法規的機関【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の顧問である“シャーレの先生”ということで最初から知っており、

 

最初期の活動が【SRT特殊学園】の閉校反対の抗議活動のために【メトロポリス(首都:D.U.)】の各地を不法占拠していたSRT生の鎮圧であり、キヴォトスでも有数の練度と装備を持つ精鋭たちを迅速に制圧したというのだから、【山海経】では注目する者が誰もいない中、これは只者ではないということで密かに注目していた。

 

それは超法規的機関【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が有する強大な人事権と、失踪した“連邦生徒会長”がキヴォトスの窮状を救うために呼び寄せた“シャーレの先生”の実力に、【山海経高級中学校】のより良き未来を想像したからなのか――――――。

 

それから最初の怪獣:クレッセントが引き起こしていたキヴォトス各地での異常現象の調査のために【連邦生徒会】からの正式な依頼であちこちの学園を訪れては卓越した人心掌握術で行く先々で人脈を築き上げていくことになり、

 

最終的にもっとも被害を受けていた【ゲヘナ学園】を第2の拠点にして調査を進めていき、【万魔殿】議長:羽沼 マコトの信頼を得るまでとなっていたのだ。

 

そうして異常現象の発生原因が“怪獣(KAIJU)”であることを突き止めて空前絶後の軍備強化:対怪獣兵器の開発を要請したところ、あまりにも前例のないことで荒唐無稽であったので【連邦生徒会】から否決されてしまっている。

 

しかし、本当に怪獣:クレッセントが現れてしまい、あわやサンクトゥムタワーの崩壊によってキヴォトスが滅亡の危機に瀕した時に初めて赤と銀の巨人:ウルトラマン80が現れ、それを皮切りにして“シャーレの先生”にして“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラがキヴォトスの頂点に立つ存在へと駆け上がっていくことになったのである。

 

 

――――――ずっと焦がれていたのかもしれない。会って話がしてみたくなった。連邦生徒会長代行を背負った北条先生のポスターを部屋に飾ってずっと眺めていた。

 

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「ああ、もう3時間 経ってしまったのか。時間というものはあっという間に過ぎていくの……」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「楽しかったのじゃ、先生」

 

北条先生「夜の部も楽しみにしていてください」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「うん。今日はいい体験をした。趣味の密行にしても、外での学びにしても、やはり 椅子に座っていては見えぬものだらけじゃ、この世は」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「だから、また誘って欲しいのじゃ、先生」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「そして、いつか【山海経】に招待できる日がくることを願っている」

 

北条先生「ええ。できれば、怪獣災害とは関係ない平和な日常の中でお会いしたいですね」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「そうじゃの。それはとても大切なことじゃ」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「む、先生、あれは知っておるか?」

 

北条先生「えっと、あれはマンゴープリンですか? 変わってますね。かろうじて背景にあるマンゴーの絵で判別できましたが」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「ああ、芒果布丁(マンゴープリン)だ。あれを買ってきてはくれぬか?」

 

北条先生「いいですよ」チャリーン!

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「さあ、こっちの席に」

 

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「先生、あーん、なのじゃ」

 

 

北条先生「……竜華さん?」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「ほれ、今の妾では口にすることができぬのだから、ここは先生が食べる他ないのじゃ」

 

北条先生「いや、そうじゃないかと思ってはいたけど、さすがにこれは予想外……」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「さあ」

 

北条先生「あ、あーん……」

 

北条先生「――――――」パクッ

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「どうじゃ?」

 

北条先生「これ、カスタードプリンかと思いましたけど、実態はマンゴーのフルーツゼリーですね。ゼラチンは入っているとして、卵はなくて生クリームは入ってるっぽい。果肉感たっぷり」

 

北条先生「そして、造形も凝ってますね。双魚ですか」

 

シンクロボット(竜華 キサキ)「うん。2匹の魚が描かれる双魚紋は吉祥図案の1つで子孫繁栄の意味があるのじゃ」

 

 

――――――先生、妾は【山海経】のみならず、キヴォトスの子らの共存共栄を切に願うものじゃ。これはその記念となる双魚なのじゃ。

 

 

 

 

 

朱城 ルミ「……良かった。楽しめているみたいだね、キサキ」

 

朱城 ルミ「……あれって何を語り合っているんだろうね、先生と?」

 

朱城 ルミ「……そうだよね、成り上がりのあたしなんかよりも生徒会【玄龍門】の門主様の方が大事だよね、先生にとっては」

 

 

――――――あれ、おかしいな? 先生にこうして夢を叶えてもらえたのに、どうしてこんなに胸が苦しいのかな?

 

 

かつて平凡な商店街だった【玄武商会】をキヴォトス屈指のグルメ街へ成長させた卓越した運営能力を持つ【山海経】の改革派の代表である朱城 ルミは飲食店にとっては一番忙しい時間帯であるお昼時を捌くために移動遊園地(funfair):リトルプラネット中を奔走し、状況が落ち着いたことで夕飯時まで休憩に入っていた。

 

厨房の熱気で火照った身体を宛てがわれたロッカールームという名の高級ホテルのスイートルームのシャワーで洗い流し、いつもはストッキングで覆われていた美脚を晒した涼し気な夏着で散策を始める。せっかくのメインであるウォーターパークであったが、水遊びをするよりもキヴォトス中から集められた珍しい食材や料理などを見ることに躊躇はなかった。

 

そして、本当は料理だけしていたいと語る程の生粋の料理人で、かつ新作料理や創作料理を好み、中華料理を基礎としながらも他の食文化圏の研究も怠らない【玄武商会】会長:朱城 ルミはセクション各所の開店準備で忙しくてじっくりと見て回ることができなかった【Ⅰ.ショッピングモール(商業施設)】の品揃えに惚れ惚れとするのだった――――――。

 

 

――――――そう、料理人:朱城 ルミにとって ここは()()()()()()()()()夢の世界なのだから。

 

 

かつてXデーの到来によって怪獣災害に見舞われるようになった【山海経高級中学校】の未来のために、生徒会という学園の中枢にしか目が向いていない【連邦生徒会】との仲介役を引き受けることで、無事に【玄龍門】門主:竜華 キサキを“GUYSの先生”北条 アキラに引き合わせることに成功したことで【山海経】の未来は約束されたも同然だった。

 

同時に【山海経高級中学校】を二分する改革派の筆頭格にまで急拡大してしまった【玄武商会】会長としての重責に思い悩んでいたのを見て取った本職の小学校の先生:北条 アキラが料理人として振る舞ったのが日本の焼き餃子であり、

 

さすがに臭いが半端じゃないニンニクは入れていなかったが、専用の餃子皿に盛り付けられて香ばしそうな焼き色の底を上にした“ひっくり返っている”焼き餃子を初めて目にした時、これが何なのかがすぐにわからず、自分の中の常識が勢いよくひっくり返るのであった。

 

つまり、これまでの常識をひっくり返したところに新たな価値観が生まれることを示し、単なる焼き目に美意識を見出すのが日本流であり、こうして三日月型に形を揃えて専用の餃子皿に並べて同じ形の窪みにタレを浸けてビールの肴として食べるのが風情があるとしたのだ。もっとも、酒は嗜む程度の北条 アキラはビール風味の炭酸水(ビールテイスト飲料)を飲んでいたが。

 

本場中華料理の餃子は厚い皮の水餃子が一般的であるのに対し、日本式中華料理としての餃子は主食であるご飯のおかずとして薄皮の焼き餃子が好まれたという歴史的背景があった。というより、日本の汁物に本場の水餃子の相性が悪かったのが実情なのだろう。

 

そのため、薄皮の“ひっくり返っている”焼き餃子には大きな違和感があったものの、これはこれで大変美味ということで料理人:朱城 ルミと料理人:北条 アキラの交流は深まることとなった。

 

そして、料理人:朱城 ルミが料理人:北条 アキラが繰り出すキヴォトスでは見たことも聞いたこともない地球の銘店の味を再現した料理や菓子に魅了され、その中で実践された茶道の一期一会のおもてなしの精神を聞かされ、その深遠な哲学と尊い在り方に深い感銘を受けるようになったのだ。その裏で北条先生が【茶道部】がないらしいことに悲嘆に暮れていたことまでは知らない。

 

ただ、それ以上にあまりにも北条先生と一緒にいる時間が嬉しくて、可笑しくて、楽しくて、温かくて、満たされていて、地元である【山海経】よりも美味い空気が肺を満たして血肉となっていることをやがて自覚していくこととなる。

 

 

――――――そう、何かの拍子で尊敬の念が憧れの人への思慕に変わっていくのは時間の問題であり、部屋に連邦生徒会長代行を背負った北条先生のポスターを飾りだすようになっていたのだ。

 

 

決定的となったのは、あれから互いに多忙な日々を送る中で【シャーレ・オフィス】に足を運んだ何度目かに朱城 ルミが『商会長の重荷を捨てて一人の料理人として気ままに料理をしていたい』と愚痴をこぼした時であり、

 

北条 アキラもまた 失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者として責任重大な立場を押し付けられたことへの不満を露わにすることになり、責任ある立場にある誰もがその重責に思い悩みながら生きていることを実感することになる。

 

そんな中、料理人:朱城 ルミが口にした夢というのが『キヴォトス中の食材や料理に囲まれながら創作料理や新作料理に励むこと』であり、これまでの学生生活は【山海経】の平凡な商店街をキヴォトス一のグルメ街へと押し上げて【玄武商会】の発展のためにひたすら費やされてきたことを振り返っていた。

 

もちろん、そうした日々を後悔しているわけではないが、独自勢力の成長を警戒する生徒会【玄龍門】から目の敵にされたことで、みんなに美味しいと喜んでもらえることだけを純粋に考えて ただ一所懸命に取り組むことができた 一介の料理人ではいられなくなっていたことへの未練を抱いていたのだ。

 

いや、本当はちがうのだ。たしかにそれは本当のことではあるのだけれど、【メトロポリス(首都:D.U.)】から遠く離れた【山海経】という片田舎の商店街を発展させていく中でどんどん見える世界が広がっていき、最終的に【山海経】の外の世界を流れる自由の風が【玄武商会】会長としての自分ではない 一人の料理人:朱城 ルミを思い出させていたのだ。

 

片田舎を飛び出して大都会の真ん中で自分の原点を振り返ってみた時、一番大切な場所に今までいなかった大切に思える誰かが新しく入り込むようにようになっていたから、そんな夢物語を追ってみたくなる昔の自分が知らぬ間に現れていたのだ。

 

 

すると、地球人:北条 アキラは『それ、いいなぁ。作っちゃおうか、世界中の食材を掻き集めた万博みたいなやつ』と事も無げに言い放ったのだ。

 

 

その真意はあくまでも商売人に過ぎない朱城 ルミには測りかねたが、それからアビドス遠征が始まる前に【玄武商会】会長:朱城 ルミへ“GUYSの先生”北条 アキラが打診を試みたのが、移動遊園地(funfair):リトルプラネットでの飲食店の経営という大口の発注であったのだ。

 

そして、【Ⅰ.ショッピングモール(商業施設)】にはいつか北条先生に打ち明けていた料理人:朱城 ルミの夢であった『キヴォトス中の食材や料理』が掻き集められることになり、料理人や美食家にとっては夢のような場所が現実にアビドス砂漠に現れたのである。

 

だから、【キヴォトス防衛軍】軍事顧問:北条 アキラから壮大な計画を持ち込まれた【玄武商会】会長:朱城 ルミは感動のあまりに打ち震えることになった。

 

その前にはエキシビションマッチが開催される特設アリーナにデモンストレーションとして店を出して【玄武商会】の名と味を知ってもらうことになり、同時に怪獣退治にも駆り出されることになって朱城 ルミは尊敬している北条 アキラの役に少しでも立ったのではないかと胸を弾ませることになった。

 

そこから、キヴォトス中が注目する移動遊園地(funfair):リトルプラネットが開園を迎えて、張り切ってセクション各所の飲食店の切り盛りをして確かな手応えとかつてないほどの充実感を味わいながら、休憩時間に入って北条先生が()()()()()()()()()()()()()()食の万博へと今すぐ駆け込みたくなる気持ちを抑えながら、【ランドマークタワー】に宛てがわれたロッカールームという名の高級ホテルのスイートルームで身形を整える。

 

ウォーターパークで遊ぶつもりはないから水着ではなく夏着を持ってきていたわけなのだが、朱城 ルミの頭の中では北条先生とキヴォトス中の食材を掻き集めた万博を一緒に見て回っている光景が浮かんでおり、この夏着はそんなことを考えて選んでいたものだった。少しでも見てもらいたくて。

 

もちろん、自分以上に多忙を極めている北条先生と そう都合よく ふたりきりになれるだなんてできるはずもないと思いながらも、少しだけ期待してしまう自分がいた――――――。

 

そうして、キヴォトス中のありとあらゆるものが集結した【Ⅰ.ショッピングモール(商業施設)】の品揃えは想像以上のものであり、食の万博と評したようにどのような料理に使われているのか、レシピがチラシやミニモニターで確認できるようになっており、様々な形態のレンタルキッチンまで完備されているため、すぐに買ったもので試してみたくなる料理人の血が疼いてしかたない。

 

逸る気持ちを抑えながら【玄武商会】で手分けして『これは!』と思った食材や調理器具を買い漁ることになり、同業他社や美食家たちとの熾烈な情報戦が繰り広げられ、商会長:朱城 ルミは片田舎の商店街をキヴォトス一のグルメ街へと生まれ変わらせた抜群の商才を惜しみなく発揮して、早速いくつかの商談をまとめることとなったのである。

 

こうして得るものがたくさんあり、まだまだ見るべきものがいっぱいあるはずの宝物の山である【Ⅰ.ショッピングモール(商業施設)】での買い出しと商談を今日のところはこれで済ませ、自分たちも研究と称して他所の店が出している軽食で小腹を満たそうとしていた時、偶然 見かけることができたのが北条先生の姿であった。

 

その隣には見慣れない地味目の白いロボットが連れ添っており、どこかの組織や企業のお偉いさんの接待をしているのではないかと思い、声を掛けることが憚られたのだった。いつもどこかでみんなのために頑張っているその姿が誇らしくて――――――。

 

 

しかし、不思議なことにその白いロボットの立居振舞がどこか自分がよく知っている誰かと重なってくるのだ。

 

 

おかしい。だって、背丈だってちがうし、動きもどこかぎこちない。それなのにあの白いロボットから奇妙な既視感を覚える。

 

だから、目が離せなくなって無意識に目で追っていくことになり、あまりにも気になっている様子だったから、部下たちが気を利かせて商会長に北条先生へ挨拶をしてくるように促すのであった。熱のこもった視線の先に誰がいるのかははっきりしていたから。

 

部下たちの気遣いに感謝しながら北条先生と白いロボットの後を恐る恐る尾けることになった朱城 ルミは双魚の芒果布丁(マンゴープリン)を買ってくるように指差した白いロボットが先に席に腰を下ろす様子に強烈な既視感を覚えたのだ。

 

 

――――――キサキ? え? あれってもしかしてキサキなの? キサキが先生とデートしているの? どうして? どうして? どうして?

 

 

やがて、朱城 ルミは気づいてしまった。白いロボットの中の人が 同い年の幼馴染であった 今は敵対関係となってしまっている【玄龍門】門主:竜華 キサキであることに些細なことから。

 

そう、同い年の幼馴染:竜華 キサキを()()()()()()()と思っている朱城 ルミにしかわからないような何かで白いロボットと電脳接続(リンクアップ)した操縦者を直感で見抜いてしまったのである。

 

腐れ縁と呼んで断ち切れない絆がなせる業が、まったく色気を感じさせないプレーンな白いロボットが憧れの人である北条先生に対して双魚の芒果布丁(マンゴープリン)をあーんして食べさせている光景の真相を言い当ててしまい、たちまちのうちに朱城 ルミの視界が揺らいでいくことになる。

 

そして、気づけば部下の鹿山 レイジョのように夏着で大きく晒した素足は地面にペタンとつくことになり、茫然自失となっていたところに見回りをしていたヴァルキューレ生に声を掛けられたことで我に返るのだった――――――。

 

 

――――――

 

竜華 キサキ「……終わった。終わったのじゃ」スチャ ――――――ヘッドマウントディスプレイを外す。

 

竜華 キサキ「ああ、本当に楽しかった。楽しかったのじゃ、先生……」ドサッ ――――――ベッドに寝転ぶ。

 

竜華 キサキ「本当に夢のような一時であったの……」チラッ ――――――視線の先には連邦生徒会長代行を背負った北条先生のポスター

 

竜華 キサキ「随分と見栄を張ってしまったの。素直に妾のサイズに合った機体を用意してもらうべきだったかの……」

 

竜華 キサキ「いや、妾はようやく触れることができた其方と同じ視線の高さに近づけたかったのじゃ。多少の好奇心もあったが……」

 

竜華 キサキ「先生、其方は妾のことを愛してはくれてはいるがの、妾と同じように恋い焦がれてはくれんのじゃろう?」

 

 

竜華 キサキ「そう、愛とは“(合い)”であり、恋は“(乞い)”であるからしてな。先生の公開授業を毎週欠かさず見ているおかげで、妾の中に生まれたこの感情が何かを冷静に分析することができているのじゃ。妾も立派な先生の教え子じゃろう」フフッ

 

 

竜華 キサキ「其方は地球では小学校の先生だと言った。そして、高等部3年の(144cm)が小学生の高学年の平均身長*1と同じなことに憐れみの眼差しを向けておったの……」

 

竜華 キサキ「其方がモニター越しにしか会ったことがないはずの妾のことをこんなにも愛してくれたのは、先生が小学校の先生で、妾が小学生に見える容貌だからだったのじゃな?」

 

竜華 キサキ「其方の目には小学校の生徒にはあまりにも不釣り合いな重たい役目を背負わされているように見えていたから、妾は其方に愛されたということでよいのじゃな?」

 

 

竜華 キサキ「ああ、それでよいのじゃ、先生。それで……」ポタポタ・・・

 

 

竜華 キサキ「先生は【山海経】にまで来る必要はないのじゃ。妾は【山海経】を捨てることも変えることもできぬ。時代の荒波によって【山海経(みな)】が滅ぶのを共に受け入れるのみじゃ……」

 

竜華 キサキ「妾はもう十分に其方から愛を受け取った。夢を見させてもらった。人の可能性を信じさせてくれた……」

 

竜華 キサキ「其方は本当に賢い人じゃ。【山海経】が此度の怪獣頻出期で 世のために 人のために 力になれることなんてないことを見抜いて最小限の付き合いに留めているのだからの……」

 

竜華 キサキ「それでいいのじゃ。伝統を重視する者たちが慣例を破ってまで2年生だった妾を満場一致で門主に就かせておきながら、門主に就いて初めて妾がくだした決定に対して同じ口で『伝統に則って執り行うべきである』と言ってのけるのが【山海経】なのじゃ……」

 

 

竜華 キサキ「身支度をせねばな……」スクッ

 

 

竜華 キサキ「それでも、妾は【山海経(みな)】を放ってはおけぬのじゃよ、先生」

 

竜華 キサキ「妾は“玄龍門の門主”じゃからの。門主に就いた頃から身体に異常が出て数時間しか身体を動かせないような身になっても――――――、いや、そうなってしまったからこそ、妾は“玄龍門の門主”であることを受け入れられたのかもしれんの……」

 

竜華 キサキ「だから、先生、妾に何かあった時はルミのことをくれぐれもよろしく頼む。この先、【山海経】で生き残る者がいるとすれば、ルミと共に怪獣頻出期を迎えた新たな時代に適応した正しき教えに従う者たちじゃ……」

 

 

――――――ルミ、先生のことを信じておるのなら、生きて夢を叶えよ。先生のことを好いておるのなら、最後まで添い遂げよ。妾はもう十分なんじゃよ、ルミ。

 

 

――――――

 

 

神代キヴォトス人「まったく、我が居ぬ間に【アビス】を掠め取ろうとする狼藉者が現れるとはな?」 ←怪獣退治帰り

 

秤 アツコ「でも、ああいうのを『嘘から出た真』って言うんだよね」 ←怪獣退治帰り

 

錠前 サオリ「いや、『噂をすれば影が差す』と言ったところだな」 ←怪獣退治帰り

 

秤 アツコ「うん、本当にまさかだよね」

 

 

――――――本当にまさか昼の部のライブショーに出てきた()()()()()()がヒノム火山に現れるだなんて。

 

 

神代キヴォトス人「あのような怪獣は超古代には存在していなかった。ましてや、我の根城であるヒノム火山を噴火させようなどと」

 

神代キヴォトス人「いったい誰の許可を得て火山を噴火させるつもりだったのだろうな?」ゴゴゴゴゴ

 

神代キヴォトス人「となれば、アーストロンによく似た怪獣:ギーストロンは何者かが送り込んできた改造怪獣なのであろう。あのような能力を自然発生で得られるとは思えん」

 

神代キヴォトス人「だが、我の敵ではなかったがな」

 

錠前 サオリ「初めての機龍丸との共同戦線だったが、完璧な連携だったな」

 

神代キヴォトス人「当然であろう。我が友:デスドラゴの力を宿しているのだ。あれぐらいのことができなければ困る。まあ、イロハもよくやってくれている」

 

秤 アツコ「うんうん。惑星守護神:ギガデロスは本当に頼りになるよね」

 

錠前 サオリ「ああ。決定打に欠けるところはあるが、圧倒的な汎用性のおかげで空から攻めることも意のままで分身能力(デロスイリュージョン)を使わなくても変幻自在だ」

 

神代キヴォトス人「さあ、我が居城【アビス】の防衛は済んだのだ。お前たちは好きに過ごせ」

 

錠前 サオリ「いや、私たちは運営側として何日も前から下見をしていたんだ。もう十分に遊ばせてもらった」

 

秤 アツコ「サーベラス様は?」

 

 

神代キヴォトス人「我か。この辺りでな、細胞が壊死したような 腐敗臭を漂わせる とんでもないのが彷徨いていたらしくて 臭くてかなわんから、我は死臭の浄化だ」

 

 

錠前 サオリ「なに?!」

 

秤 アツコ「大変!」

 

神代キヴォトス人「この感じの死臭は突然の死とか自殺とかじゃないな。病魔や遅効性の毒で身体が蝕まれているものが発する死臭だな。まあ、大病を患っている者がこんな華やかな場所を歩き回れるわけがないから、十中八九、これは遅効性の毒だろうな」

 

錠前 サオリ「…………『毒』だと!」

 

秤 アツコ「何か私たちにできることはないかな?」

 

神代キヴォトス人「そういう死の運命を変えることができるのが【トリニティ】の悟りの霊地に秘めおかれたものぞ。我も“地獄の釜の番人”としてやれんことはないが、それは我が特別だからなのであって正攻法ではない」

 

神代キヴォトス人「とは言え、加持祈祷で未然に災禍厄難を回避する段階は過ぎている以上は、北条先生が説いた対症療法と原因療法の併用で現実のものと化した災禍厄難を退ける他あるまい」

 

神代キヴォトス人「ん」

 

神代キヴォトス人「待たれよ、そこの薬師よ。ネズ耳よ」

 

 

薬子 サヤ「――――――ぼく様のことか? って、うわっ!? 何だ、この美人さんは!?」

 

 

錠前 サオリ「昼のライブショーや先日のエキシビションマッチを見ていないのか? “シャーレの研究員”に聞き覚えは?」

 

薬子 サヤ「あ、もしかして本物!? 本物ってこんなにも美人なの!? へえ、こうして実物を間近で見ると輝きがこんなにもちがう!?」

 

秤 アツコ「やっぱり、ケモミミの人たちにはサーベラス様は絶世の美人に見えるんだね」

 

神代キヴォトス人「いかにも我こそが“シャーレの研究員”のサーベラスだ」

 

神代キヴォトス人「して、薬師よ。霊薬の臭いに混じって随分と細胞が壊死した腐敗臭のような死臭がするが、お前にはまだ死相は出ていない――――――」

 

神代キヴォトス人「となると、お前の担当患者がそうなのか? 臭いから早くどうにかしてくれ」

 

薬子 サヤ「……いったい何のことかな? たとえ そうだとしても、患者のプライバシーは秘密なのだ!」

 

神代キヴォトス人「そうか、お前は【山海経】の人間だな。【京劇部】とは毛色はちがうが、【山海経】らしい雰囲気を漂わせているな」

 

薬子 サヤ「だから、何だと言うのだ? 偉大なぼく様は忙しいから、用がないのなら、これでさよならなのだ!」

 

 

神代キヴォトス人「ああ、憶えておくぞ、()() ()()()。今度、チーズを奢ってやろう」

 

 

薬子 サヤ「!?」ピタッ

 

薬子 サヤ「どうしてぼく様の名前を――――――!? それにチーズも――――――!?」

 

神代キヴォトス人「見縊るな。これでも我は【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の人間ぞ。各学園の代表や有力者のことは頭に入れてある。それにチーズの臭いが強烈だからな」

 

神代キヴォトス人「さあ、移動遊園地(funfair):リトルプラネットは開園初日。まだまだ楽しめるのだから、心ゆくまで探求するがよい」

 

 

――――――移動遊園地(funfair):リトルプラネットにはキヴォトス中から集められた()()があるのだからな。人も、物も、金も、出会いも、幸せも。()()がそこにある“そういう場所”なのだ。

 

 

*1
令和四年度 日本人女子 平均身長:10才 141.4cm、11才 147.9cm




-Document GUYS feat.LXXX No.15-

凶猛怪獣:ギーストロン 登場作品『ウルトラマンタイガ』第22話『タッコングは謎だ』登場
元々は『ウルトラマンフェスティバル2019』にて初登場したアーストロンの強化体。
姿は凶猛怪獣の二つ名通りにアーストロンが進化したものとなっており、正統派の尾長二足歩行怪獣を順当にパワーアップさせたようなものとなる。
『帰ってきたウルトラマン』のオマージュ回『タッコングは謎だ』においては、大地の怒りの化身として人類によって穢され続けて来た地球の大地を清めるために報復攻撃を仕掛けようと考えている凶暴な地底怪獣として登場。
大昔からタッコングと交戦していたらしく、長きに渡り封印されてきたが、タッコングが歳を取り過ぎた為に力が弱った事で抑えが効かなくなり、遂に地上へと解き放たれてしまった。

頭部の角からはビルをも切断するレーザー光線:ギーストロン雷電波、両腕のツメをスパークさせて放つ巨大なカッター光線:ギーストロン超雷電波などのアーストロンの鋭いイメージを反映した切断技が多い。
更に、マグマを活性化させる電磁波:ギーストロン大振波を角から発生させることも可能で、これを使って一気に人類を滅ぼして大地を浄化しようとしていたが、幸いシンジの指摘を受けたタイガに妨害され不発に終わっている。
そのままタイガと交戦状態となり、タッコングとタイガの共同戦線に追い詰められ、最終的にはタイガブラストアタックで倒された。






突如としてゲヘナ自治区/ヒノム火山に現れ、マグマを活性化させる電磁波:ギーストロン大振波でヒノム火山を噴火させようとしていたが、
ヒノム火山ひいてはゲヘナの豊穣の大地を司る神代キヴォトス人:サーベラスが異常を察知して火山の噴火を停めている隙に、【ゲヘナ学園】が保有する対怪獣兵器:機龍丸によって迎撃されることとなる。
そうして時間を稼いでいる間に惑星守護神:ギガデロスを呼び出したサーベラスが機龍丸と共同戦線を張り、ギーストロンの光線技はデロスイリュージョンで無効化できる他、サンクトゥムタワーまで迫った強敵:EXエレキングとの戦いで防電性能の向上が入念に図られた機龍丸とは相性が悪く、特に苦戦もすることなくギーストロンは2体の防衛兵器の連携の前に葬られることとなった。
とにかく、惑星守護神:ギガデロスと一体となったサーベラスの立ち回りが上手く、とどめは超無敵鉄鋼機龍丸(ハイパーモード)のデスドラゴ・サンダーで跡形もなく吹き飛ばされている。
まるで昼間のライブショーで吹き飛んだ 舞台ギミックとして登場のアーストロンのアニマトロニクスの大仕掛けのように――――――。

しかし、『ウルトラマンタイガ』に登場した個体とは歴史性が異なり、そもそもヒノム火山を噴火させようとして神代キヴォトス人:サーベラスの居ぬ間に狼藉を働く怪獣はこれまで存在していなかったため、何者かがアーストロンを改造して送り込んできたという疑いが掛けられている――――――。

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