Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP17 虚構と現実に揺れるココロ -Ⅲ.夢があふれる黄金郷の命令-

 

 

小鳥遊 ホシノ「ヒナちゃん、ヒナちゃん!」

 

空崎 ヒナ「もう、慌てないの、ホシノ」

 

朝霧 スオウ「そうだぞ。周りにもっと気を配れ」

 

小鳥遊 ホシノ「はーい! スオウお姉ちゃんも早くー!」

 

朝霧 スオウ「世話を掛けたな。ゲヘナ最強の風紀委員長までも手を焼くことになるとは」

 

空崎 ヒナ「いいのよ、これぐらい。これは先生への恩返しでもあるし」

 

空崎 ヒナ「それに【アビドス】の情勢が安定しないことには、私たち【ゲヘナ】としても楽観視できないわけだから、ホシノの保護は重要なことよ」

 

朝霧 スオウ「そうだな。これでまったく先の展開が読めなくなったぞ」

 

小鳥遊 ホシノ「ほら、何やっているの、ヒナちゃん! スオウお姉ちゃん!」

 

朝霧 スオウ「まったく、こうなっても あの双子より しっかりしているというのがなぁ……」

 

 

――――――本当に()鹿()()()()()だよ、ホシノ、お前は。

 

 

北条先生「元気いっぱいだなぁ……」

 

北条先生「本当に()()()みたいだ……」 ←本職が小学校の先生

 

仲正 イチカ「そうっすねぇ。ここから見ている分だと、本当にそれを見守る面倒見の良いお姉さんみたいになるっすね、スオウ監督官も」

 

北条先生「お忙しい中、空崎さんを呼んできてくれてありがとう、銀鏡さん」

 

銀鏡 イオリ「いや、それぐらいはかまわない。先生のおかげで【万魔殿】の嫌がらせもすっかりなくなったし、かえって時間を持て余すぐらいには【ゲヘナ】が平和になったからには、これぐらいは」

 

銀鏡 イオリ「ただ、【アビドス生徒会】副会長としては、これからどうなるんだ?」

 

仲正 イチカ「もちろん、【アビドス生徒会】の副会長がああなった以上、代表交代はしてもらわないと、ミカ様としても対応に困るっす」

 

北条先生「ですので、【アビドス生徒会】の後継組織であると公正証書を作らせた【アビドス対策委員会】で新たな代表の選出が行われています」

 

仲正 イチカ「順当に言ってノノミさんが次期生徒会長になるはずっす」

 

銀鏡 イオリ「そして、“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノは【万魔殿】のマスコットという立ち位置のイブキちゃんと同じく生徒会内で名誉職に据えられることになるだろうな」

 

銀鏡 イオリ「まさか、初等部の生徒が高等部の生徒会活動に参加するのとは逆の、高等部の生徒が初等部の頃まで精神退行して生徒会活動に席を残される展開が現実に起きるとはな……」

 

銀鏡 イオリ「我らが委員長もそうなりかねないことを思うと、【万魔殿】の暴走を抑えてくれている先生には本当に感謝しかない。あらためて礼を言わせてくれ、先生」

 

仲正 イチカ「本当に運がなかったっすよね、ホシノ副会長は」

 

仲正 イチカ「もう少し早くに先生に会うことができれば――――――」

 

北条先生「ちがんだ、逆なんだよ」

 

仲正 イチカ「え」

 

 

北条先生「公正中立を謳う【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】と【 キヴォトス防衛軍 CREW GUYS KIVOTOS(クルー・ガイズ・キヴォトス)】の両顧問だからこそ、これまで見過ごされてきた過去の過ちが正され、良くも悪くも公平に裁きが下ったんだ」

 

 

北条先生「つまり、僕が来て【アビドス】の真実を知らされることがなければ、小鳥遊さんは正気のままでいられたんだ。ついでに、これまでありえなかった奇跡のようなことを次々と起こしてきたことで、かえって内心では全てをあきらめていた小鳥遊さんの心を傷つけることになってしまった……」

 

銀鏡 イオリ「どういうことなんだ、それっていったい!?」

 

仲正 イチカ「それは先生が始めたアビドス遠征が深く関わっていることなんですか?」

 

北条先生「……これは公正中立を謳う立場の僕自身が()()()()をした結果でもあるんですけど、」

 

北条先生「アビドス遠征を始めるに当たって、僕は現地を実効支配している【アビドス高等学校廃校対策委員会】と、あくまでも【カイザーコーポレーション】に砂漠化が止まらない土地の管理を任せていただけの【真なるアビドス生徒会】の両方に【キヴォトス防衛軍】の進駐の許可を取り付けていたわけですよ」

 

銀鏡 イオリ「え、そうだったのか!? 最初から先生は【真なるアビドス生徒会】とつながりを持っていたのか!?」

 

北条先生「ええ。ですから、今回のアビドス遠征の裏には【真なるアビドス生徒会】からの強力な支援があったわけなんですよ。そのおかげで、あれだけのことができたわけなんです。資金や資源に関してはサーベラス様が全て持っているので、どちらかと言うと、現物をすぐに用意してもらうのに役立ってくれました」

 

北条先生「つまり、僕自身は最初から【真なるアビドス生徒会】の意向と許可を受けてアビドス遠征を開始したわけで、あくまでも【アビドス対策委員会】は()()()()()()()()()()()()()()()()という建前で接していました」

 

仲正 イチカ「じゃあ、マコト議長やミカ様とホシノ副会長が署名を交わしたのは全て演出に過ぎなかったんすか!?」

 

北条先生「いや、そうでもないんです。僕が【アビドス対策委員会】のことを現地協力者と報告したわけなので、あの時から【真なるアビドス生徒会】の代理人としての立場を得ていたんです」

 

北条先生「事実、僕が【カイザーコーポレーション】から一部の土地を取り戻して再出発させた自治区の名前は“新アビドス自治区”と公式文書に記載されていまして、【真なるアビドス生徒会】が現在も所有し続けている旧アビドス自治区からは独立した扱いになっているんです」

 

銀鏡 イオリ「え、それって、どういうことなんだ?」

 

銀鏡 イオリ「今までの認識だと、【アビドス高等学校】は数十年前から止まる気配のない砂漠化対策のためにあの手この手を尽くした結果、そこに付け込んだ【カイザーコーポレーション】に借金漬けにされて自治区を丸ごと簒奪される憂き目に遭っていた;学園に対する企業の侵略を受けていたんじゃなかったのか!?」

 

北条先生「それは現地の実態としては正確な事実です」

 

仲正 イチカ「え?」

 

北条先生「ただ、書類上の契約では【真なるアビドス生徒会】は土地の管理を【カイザーコーポレーション】に任せて、原因不明の砂漠化の対策ができるまでの100年間の租借契約を交わし、首都機能移転をして住民も資産も早い段階で遷していたんですよ」

 

北条先生「だから、書類上では依然として【真なるアビドス生徒会】が治める自治区なのは変わらぬ事実であり、“租借地”として借り受けた土地の管理のために【カイザーコーポレーション】が土地の権利の確保に邁進していたわけです。返還する時に耳を揃えて返さないと奪われた土地の分だけ補償金を支払うことになるので」

 

銀鏡 イオリ「は? それって、つまり――――――、いや、待ってくれ! 【真なるアビドス生徒会】が首都機能移転をして別の場所に遷った後に存在し続けた【アビドス高等学校】って言うのはいったい何なんだ!?」

 

 

北条先生「――――――後から跡地に移り住んできて自分たちのことを【アビドス高等学校】だと吹聴して回る不法滞在者の自称ですが?」

 

 

銀鏡 イオリ「えええええええええええええええええええええええ!?」

 

仲正 イチカ「はああああああああああああああああああああああ!?」

 

北条先生「だから、首都機能移転をした後もなおも増え続ける不法滞在者を一掃するために【カイザーコーポレーション】としては“租借地”の管理者として強行な手段を取らざるを得なかったわけですよ」

 

北条先生「その甲斐あって、ようやく【アビドス高等学校】に人っ子一人いなくなるぐらいにゴーストタウン化に漕ぎ着けることができたのが近年の話です」

 

仲正 イチカ「な、何なんすか、それって?!」

 

銀鏡 イオリ「正気を疑うぞ!? 何だ、それは!?」

 

北条先生「だって、砂漠化を解決できる見込みがない以上は将来的に砂漠に呑まれることが確定の土地に居続けても時間も資金も人生も無駄になるだけだから、為政者の判断として首都機能移転を早い段階で実行して、住民や財産の移動を再三に渡ってちゃんと主導してきていたそうですよ」

 

北条先生「この判断、間違っていると思いますか? キヴォトス最大の勢力を誇ったのが【アビドス高等学校】なんですよ? 即断即決でそれを実施できる能力があるに決まっているじゃないですか?」

 

仲正 イチカ「……いや、間違っていないっす。将来を見越して早いうちに首都機能移転を実施できたのが本当なら、それは【トリニティ総合学園】も見習って欲しいと思うところっす」

 

北条先生「そうでしょう。部分部分を抜き出せば、原因不明の砂漠化の対処としては誰も間違ったことなんてしていなかったんですよ」

 

北条先生「けれども、かつてキヴォトス最大の学園として名を馳せた 夢があふれる黄金郷への憧れで、それでも止むことなく移住者がやってくることになり、」

 

北条先生「無人となった家屋や施設が不法占拠され、自分たちが築き上げた街を無秩序に荒らされることに腹を立てて、都市封鎖(ロックダウン)政策の延長として“租借地”の管理を業者に言い渡しただけなんです」

 

銀鏡 イオリ「なるほどな。たしかに、かつてキヴォトス最大の勢力を誇った学園の跡地ともなれば、結局は誰かが入り込んで悪さをするわけだから、管理する人間が必要になってくるわけか」

 

北条先生「そういうわけで、現在、現地で【アビドス高等学校】を自称して不法占拠している集団というのは、砂漠化が進行した際にどこかのタイミングでなりすますことに成功した詐欺集団の系譜であり、今日まで命脈を保ち続けることができたのも、かつての黄金郷への憧れから砂漠化が進んで現地住民が遷った後もやってきた人間たちがそれだけ多かったことの現れでもあるんです」

 

 

――――――だから、みんな騙されていたんだよ、【アビドス高等学校】が今現在もそこに存在し続けているという虚構に。それは現在までキヴォトス最大の勢力を誇っていた歴史と学び舎を受け継いできたと思っていた【アビドス対策委員会】の生徒たちにしても。

 

 

銀鏡 イオリ「……それは、無理もないな、“アビドスの英雄”があんな状態になるのも」

 

仲正 イチカ「そうっすね。自分たちが存在し続ける正当性の根拠が実は全て嘘だったと言われたら、もう。それこそ、私なんて【正義実現委員会】なんて名前の組織に所属していますけど、『自分たちが信じていた正義が実は――――――』なんてことになったら、立っていられる自信はないっすよ」

 

北条先生「まあ、これで【カイザーコーポレーション】が“租借地”の管理のために不法滞在者を一掃する義務と根拠があることがわかっても、犯罪行為はただ犯罪ですから。人として許されざる行いをした者には相応の罰を与えるべきだと僕は思うんですよ」

 

銀鏡 イオリ「ああ、それはそうだな」

 

仲正 イチカ「つまり、【アビドス】の問題は『砂漠化による首都機能移転』と『不法滞在者の大量流入』が引き起こした二重構造になっていたわけなんですね」

 

 

北条先生「ところが、この問題を更にややこしくさせた張本人というのが 十数年前にこれまで誰もやらなかった砂漠横断鉄道なんてものをやろうとして かつて地元から逃げ去った大企業【セイント・ネフティス】だったわけです」

 

 

銀鏡 イオリ「そうか、ここで出てくるのが【“雷帝”の遺産】か!」

 

北条先生「そういうことです。本当に厄介な話ですよ」

 

仲正 イチカ「そうっすね。2年前に卒業したはずの史上最悪のゲヘナの生徒会長である“雷帝”の置き土産のせいで、ここまで【アビドス】の問題がこじれることになったっす」

 

 

北条先生「そして、【真なるアビドス高等学校】に関して絶対に覚えておいて欲しいことがあります」

 

 

仲正 イチカ「何です、それって?」

 

北条先生「仲正さんも銀鏡さんも、【キヴォトス三大学園(BIG3)】に数えられる母校に強い誇りを持っているじゃないですか」

 

銀鏡 イオリ「まあ、そうだな。前まではそんなでもなかったけど、先生が来てからは素直にそう思えるようになったよ」

 

仲正 イチカ「そうっすね。少なくとも、自分たちが恵まれた立場の人間であることを自覚するようにはなったっすよ」

 

北条先生「なら、【旧キヴォトス三大学園(BIG3)】の筆頭格だった【真なるアビドス高等学校】の生徒たちも自分たちの母校に強い誇りを持っていたことは納得できる事実ですよね」

 

仲正 イチカ「まあ、そうっすね。砂漠化が起きなければ、今もキヴォトス最強校として君臨していたはずっすからね」

 

銀鏡 イオリ「ん? まさか、その【真なるアビドス高等学校】の後継者たちもそのままの気質と歴史を受け継いでいるとでも言うのか?!」

 

北条先生「そういうことです。もし【真なるアビドス高等学校】がアビドス遠征の成功で表舞台に返り咲くことになったら、学園都市:キヴォトスの力の均衡(パワーバランス)は一気に変わることになるはずです」

 

北条先生「そうなれば、【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】で締結される軍事同盟【エデン条約機構】にも大きな影響が出ることでしょう」

 

 

北条先生「ですが、【真なるアビドス高等学校】が表舞台に戻って来ることで問題になってくるのが、他とは比べ物にならない郷土への愛着と信仰心にあるのです」

 

 

銀鏡 イオリ「だろうな。【カイザーコーポレーション】を使って不法滞在者の一掃をやらせてきた歴史がそれを物語っている」

 

仲正 イチカ「でも、『信仰心』っていうのは何の話っすか? それなら【トリニティ】も同じだと思うっすけど?」

 

北条先生「どうやら、【真なるアビドス高等学校】には代々受け継がれてきた歴史には土地の伝承も含まれているらしく、」

 

北条先生「十数年前に破れかぶれで【セイント・ネフティス】が砂漠横断鉄道の開発をするまで、キヴォトス最大の勢力を誇っていたにも関わらず、自然豊かなアビドス居住区に隣接するアビドス砂漠にほとんど手を付けてこなかったのは、そこが自分たちの栄光を生み出している源となる大切なものが眠っている聖地であると信じられていたからなのです」

 

北条先生「だから、原因不明の砂漠化によって生産性を失った土地であろうと決して売却することなく、あくまでも租借地として企業に貸し出して管理させ、いずれは偉大なる故郷に帰ることを誓って首都機能移転を完了させたわけです」

 

仲正 イチカ「じゃあ、【真なるアビドス生徒会】が離れている間に聖地となるアビドス砂漠で砂漠横断鉄道の開発が行われたのは相当な問題になっているのでは……?」

 

銀鏡 イオリ「だとすると、砂漠横断鉄道の再開発で事業提携することになった【ハイランダー鉄道学園】は――――――!?」

 

北条先生「もうなってます。ただ、砂漠化をどうにかしないことには砂漠横断鉄道も砂漠に呑まれるだけなので、それまでは『不法滞在者共が無駄なことをしている』とだけで済まされて放置されていたのです」

 

 

――――――しかし、今回のアビドス遠征で【アビドス】復興が現実味を帯びたことで、歴史の表舞台に返り咲く狼煙として、いよいよ聖地を荒らされていたことへの報復に【真なるアビドス生徒会】が動き出そうとしています。

 

 

 

 

 

ロボット職員「では、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】の立会の下、【アビドス生徒会】の後継組織【アビドス高等学校廃校対策委員会】の新たなる生徒会長は今から十六夜 ノノミさんとなります!」

 

十六夜 ノノミ「はい! みなさん、ありがとうございます! ()アビドス生徒会長の十六夜 ノノミです! よろしくお願いします!」

 

砂狼 シロコ「当選おめでとう、ノノミ!」

 

奥空 アヤネ「これから一緒に新しい未来を掴み取って行きましょう!」

 

黒見 セリカ「これまで【アビドス】を守り抜いてくれたホシノ先輩のためにも!」

 

 

パチパチパチ・・・!

 

 

錠前 サオリ「おめでとう、ノノミ」

 

秤 アツコ「これからもよろしくね、ノノミ」

 

十六夜 ノノミ「ありがとうございます、私たちと同じく公認の生徒会活動を目指して同じ師の下で切磋琢磨し合った【アリウススクワッド】のみんな!」

 

十六夜 ノノミ「アビドス遠征が始まってから ずっと【アビドス】のために力を貸してくれた戦友のみんな!」

 

十六夜 ノノミ「そして、シロコちゃんが考案してくれた【キヴォトス平和連合】に賛同してキヴォトス中から集まってくれた良き友人のみんな!」

 

 

十六夜 ノノミ「――――――私、十六夜 ノノミはここに宣言します!」

 

 

十六夜 ノノミ「私たちを怪獣の脅威から救い、遠くの星から愛と勇気を教ええてくれる、涙の味をも知っている、そんな偉大な方が最初に目指したことが『犯罪ゼロ地区』の実現だったのです」

 

十六夜 ノノミ「その結果、Xデーを迎えて第2の政庁となった【シャーレ・オフィス】のある外郭地区で『犯罪ゼロ地区 第1号』が実現され、このキヴォトスで銃声も爆発音もしない平和な秩序がもたらされることの素晴らしさを私たちに教えてくれることになりました」

 

十六夜 ノノミ「ならば、私たちが新たに目指す“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノが守り抜いて 次代へと繋いで新生した【アビドス高等学校】の未来は『犯罪ゼロ自治区』への挑戦に他なりません!」

 

十六夜 ノノミ「もちろん、変形怪獣:ガゾートの襲来による【アビドス】初の怪獣災害が原因でキヴォトス各地へ散っていった不良生徒や傭兵バイトが次々と問題を起こしていることから、【アビドス】は犯罪者の輸出を行って平和を輸入したという批判もあります」

 

十六夜 ノノミ「その批判は甘んじて受け入れましょう」

 

十六夜 ノノミ「ですが、私たちはもはや存続が風前の灯火となった長く苦しい忍耐の時を越えて、それで偉大な方を迎えて【アビドス】復興の好機が到来したのです」

 

十六夜 ノノミ「この一生にあるかないかの絶好の好機に私たちは全力で乗ることにしました」

 

十六夜 ノノミ「ですので、私たちは何処よりも先生の教えや生き方を実践して、キヴォトス中の人たちが安心安全快適で過ごすことができる“憩いの場(オアシス)”を目指しましょう!」

 

十六夜 ノノミ「そのためにも! 今日も先生の怪獣退治のお仕事をお支えしましょう!」

 

十六夜 ノノミ「えい! えい! おーーー!」

 

 

エイ! エイ! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 

エイ! エイ! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 

エイ! エイ! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 

 

 

 

十六夜 ノノミ「き、緊張しました……」

 

奥空 アヤネ「おつかれさまでした、ノノミ新生徒会長」

 

砂狼 シロコ「よかったと思う、就任演説」

 

黒見 セリカ「うん。これから私たちが目指すべき未来像がしっかりしていて、みんなもわかってくれたはずよね」

 

錠前 サオリ「私もあんなふうに演説ができるようにならないとだな」

 

秤 アツコ「がんばってね、サッちゃん」

 

 

宮藤 セルマ「だが、どうするつもりなんだ? 事前に北条先生が【真なるアビドス生徒会】と話をつけておいたおかげで【アレクサンドリア財団】総帥:金獅子 シブキからの最高級のもてなしを受けて、それからは?」

 

 

御陵 ナグサ「北条先生のおかげで【アビドス】の救済が果たされるかと思えば、ここにきて【セイント・ネフティス】と【真なるアビドス生徒会】との砂漠横断鉄道をめぐる利害の衝突です」

 

山高 カムロ「ああ、もう先生の方で結論が下されている話なんだけど、今回のアビドス遠征が【セイント・ネフティス】と【真なるアビドス生徒会】との武力衝突を招く銃爪になるだなんてこと、誰も想像がつかなかったことだよ」

 

 

――――――夢があふれる黄金郷【アビドス高等学校】は砂漠化に呑まれていなかったんだ。今も昔もキヴォトス最強校としての歴史と誇りを抱いて高みから僕たちの世界を見下ろしていたんだ。

 

 

服巻 クロモ「そうなのよね。先生がアビドス遠征を始める前に【キヴォトス防衛軍】によるベースキャンプ設営とハザードマップ作成の許可を【真なるアビドス生徒会】から取って、現地協力者ということでお目溢しをもらえるようにした【アビドス対策委員会】からの許可も取っておいた、この完璧な対応のおかげで【真なるアビドス生徒会】からの制裁の対象からは外れてはいるのだけれどね……」

 

足坂 エル「逆に、【アビドス対策委員会】が先生から土地の権利の保障してもらった新アビドス自治区の存在意義とは軍都;防衛の要である【キヴォトス防衛軍】の防衛基地を置いた重要区画にあるわけでして、それ以外の旧アビドス自治区の全ては依然として【真なるアビドス生徒会】のものであることに変わりはありません」

 

ロボット職員「つまり、【真なるアビドス生徒会】では対応できなかった諸問題に関しては新アビドス自治区を治める【アビドス対策委員会】に対応を任せて、それ以外の実権は自分たちで全て取り戻す算段なわけです」

 

 

宮藤 セルマ「――――――要するに、隔離されたんだよ、お前たち【アビドス対策委員会】はな」

 

 

十六夜 ノノミ「だとしても、それはそれで良いのではありませんか?」

 

奥空 アヤネ「私たちが 今 使っている校舎は数ある分校の中の一つで【学園祭事務局】が設置されていた場所です」

 

砂狼 シロコ「そのことを考えると、アビドス遠征の最終目的地が“大オアシス”で、そこで“アビドス砂祭り”を復活させる流れはよくできていると思う」

 

黒見 セリカ「そうよ! 私たちは【アビドス】を何とかしたいと思って入学したんだから、いよいよ目的達成に手が届くところまでに近づけたわけよね!」

 

山高 カムロ「おそらく、【真なるアビドス生徒会】を擁している【アレクサンドリア財団】は聖地と崇めているアビドス砂漠から砂漠横断鉄道を消滅させるために【ハイランダー鉄道学園】と【セイント・ネフティス】に対して武力行使することも厭わないはず」

 

山高 カムロ「もっとも、怪獣無法地帯で鉄道工事を強行して怪獣災害に見舞われた結果、現場作業員がみんな逃げ出して、砂漠横断鉄道の再開なんてものは夢のまた夢になったわけだけどね」

 

錠前 サオリ「だが、【プライベートファンド】は諦めていないのだろう? いよいよ総会の開催日時が決まったと聞いたぞ?」

 

 

秤 アツコ「――――――事の発端は【プライベートファンド】が<シェマタ>を獲得しようと【セイント・ネフティス】に近づいてきたことにあるんだよね?」

 

 

十六夜 ノノミ「ええ。執事さんの言うことがどこまで信用できるかはわかりませんが、【セイント・ネフティス】も偉大な故郷であった【アビドス】復興を夢見ていたことはちがいありませんから」

 

十六夜 ノノミ「ですが、その方法が真っ当なものではない以上、かえって自分たちの寿命を縮めることになります」

 

十六夜 ノノミ「そうなることすら、もうわからなくなっているんでしょうね……」

 

砂狼 シロコ「ノノミ……」

 

宮藤 セルマ「忠ならんと欲すれば孝ならず。孝ならんと欲すれば忠ならず。進退これ窮まれり」

 

山高 カムロ「言うな」

 

錠前 サオリ「その、大丈夫なのか、ノノミは?」

 

十六夜 ノノミ「はい、覚悟していたことですから。【ハイランダー鉄道学園】ではなく【アビドス高等学校】への入学を決めた時から」

 

錠前 サオリ「そうか。強いんだな」

 

錠前 サオリ「私も【アリウス】からアツコを連れて逃げ出して、私たちが生きてていい場所となる 私たちの【アリウス】を創り上げようとしているわけだが、」

 

錠前 サオリ「先生やコーイチ、それからたくさんの人たちの教えや助けがなければ、そんな道を進む勇気なんてまったくなかったんだ……」

 

十六夜 ノノミ「大丈夫ですよ、サオリさん。この道を進むことを選んで不安でいっぱいなのは私たちも同じですから」

 

奥空 アヤネ「はい。これで本当に正しいのか――――――、ホシノ先輩に至っては根底から覆されてしまったぐらいですから、私たちの正しさを完璧に保証してくれるものなんて、本当にどこにもないんです」

 

秤 アツコ「でも、こうすると決めたからこそ、前を向いて進むことができているんだよね、みんな」

 

錠前 サオリ「ああ、その通りだ、アツコ」

 

砂狼 シロコ「うん。まずは決めること。それから全てが始まるんだって、先生が教えてくれたから」

 

 

十六夜 ノノミ「ともかく、総会に出席して【プライベートファンド】の思惑を挫く必要があります! それが【アビドス】の新生徒会長になった私の最初の大仕事です!」

 

 

砂狼 シロコ「うん。十数年前に完全に忘れ去られていた砂漠横断鉄道の話を持ってきたのは【プライベートファンド】だって言うし、【“雷帝”の遺産】を悪用させないためにもノノミを必ず総会の場所へと連れて行く」

 

奥空 アヤネ「スオウ監督官の予測では、私たちが総会に参加できないように【プライベートファンド】が部隊を展開してアビドス中央駅旧庁舎を封鎖するとの話です」

 

黒見 セリカ「だからって、私たちが日頃からお世話になっている【キヴォトス防衛軍】の対怪獣兵器なんて使っちゃダメなんだからね!」

 

砂狼 シロコ「それ、セリカがスオウ監督官に言われたことだよね」

 

黒見 セリカ「うっ! わ、忘れて! あれは冷静じゃなかっただけだから!」

 

宮藤 セルマ「いや、普通に考えて、人間相手に対怪獣兵器なんて使うな! 常識がないのか!? 正気か!?」

 

御陵 ナグサ「どうしますか? 【“雷帝”の遺産】とされる<列車砲:シェマタ>が本当に話の通りの脅威となるのなら、盟友として【アビドス対策委員会】に加勢いたしましょうか?」

 

服巻 クロモ「そうね! 【プライベートファンド】を構成しているのはブラックマーケット系の団体や悪徳企業なんだから、原点回帰運動でキヴォトスの秩序を取り戻そうと頑張っているメトロポリス系の私たちの敵よ!」

 

宮藤 セルマ「業腹だが、<シェマタ>の件は【マウンテンコリー】としても看過できない問題だ。【キヴォトス防衛軍】による急激な軍拡も環境にとっては無視できない影響を出しているが、私欲に塗れた金の亡者共が神様気取りで<列車砲>の砲弾を浴びせてくるとなれば、怪獣災害よりも罪深い結果しか生まれないだろうからな」

 

ロボット職員「ま、待ってください! そうなると、【プライベートファンド】との戦争状態になるじゃないですか!」

 

服巻 クロモ「ええ、いい機会です! キヴォトスの平和と秩序を弄んできたブラックマーケット系の連中に鉄槌を下す絶好の好機なのよ、これは!」

 

ロボット職員「たしかに、そうすることがキヴォトスのためにはなるとは思いますけど……」

 

 

十六夜 ノノミ「わかっています、ガリバーさん。これは私たちが自分たちの力でやらなくちゃいけないことなんです」

 

 

ロボット職員「で、でも――――――!」

 

砂狼 シロコ「うん。だから、心配しないで、ガリバーさん。【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】には公正中立の立場を貫いて、ノノミと一緒に総会に参加して事の成り行きを見守ってて欲しい」

 

奥空 アヤネ「はい、そのための道を私たちが切り拓きます!」

 

黒見 セリカ「ここまで来て絶対に負けないんだから! 大丈夫よ、『正義は必ず勝つ』でしょう?」

 

足坂 エル「しかし、そうなると開催場所のアビドス中央駅旧庁舎は【カイザーコーポレーション】から債権を購入して【セイント・ネフティス】ひいては【プライベートファンド】の所有地ということですが、」

 

足坂 エル「【真なるアビドス生徒会】の言い分では、先生の手によって取り戻されて新アビドス自治区として独立した重要区画以外は【カイザーコーポレーション】に貸し出された【アビドス高等学校】の租借地ということになっています」

 

足坂 エル「総会に出席するために【アビドス対策委員会】が戦端を開いた時、【真なるアビドス生徒会】はどう動くでしょうか?」

 

宮藤 セルマ「やつらの主張としては、聖地であるアビドス砂漠を砂漠横断鉄道とかいう粗大ゴミ置き場にされた恨みがあるわけだから、【セイント・ネフティス】に制裁するのは確定として、砂漠横断鉄道の再開発に与する【プライベートファンド】【ハイランダー鉄道学園】に対しても報復を実施するだろうな」

 

山高 カムロ「たしかに、アビドス砂漠に秘められているもののことを考えれば、伝統的に【アビドス高等学校】が砂漠横断鉄道をこれまで造ろうとしなかったのも納得できることだ。アビドス砂漠の秘密はこれからも守られるべきだと思う。あそこにあるものは人の手に負えるものじゃない」

 

ロボット職員「そうですね。【キヴォトス防衛軍】が厳重封鎖している地域以外にもまだまだ隠された何かがあるはずですから」

 

山高 カムロ「となると、総会の論点となっている【アビドス生徒会】【ネフティス】間の砂漠横断鉄道の売買契約をどうするのか――――――、」

 

山高 カムロ「聖地であるアビドス砂漠から砂漠横断鉄道そのものを抹消したい【真なるアビドス生徒会】と砂漠横断鉄道の再開発を必要としている【ネフティス】【ハイランダー】【プライベートファンド】の連合との利害の衝突――――――」

 

山高 カムロ「この2点について、僕たちの考えをまとめておきましょう」

 

宮藤 セルマ「そうは言うが、もう答えは出ているだろう」

 

 

十六夜 ノノミ「はい。ホシノ先輩がそう決めたように、総会で【ネフティス】に残額を支払って<シェマタ>の権利を得ます」

 

 

服巻 クロモ「でも、【“雷帝”の遺産】を得るために組まれた【プライベートファンド】なんだから、それを阻止するために部隊を展開して旧庁舎の封鎖をやるつもりなのよ」

 

服巻 クロモ「総会に無事に参加できたとしても『契約成立は現金じゃないと認めない』とか何とか難癖をつけるに決まっているから、残額:99万円分の現金か金塊を持っていった方がいいわよ。ぐうの音も出ない詰め方を考えないと」

 

錠前 サオリ「だが、そうなると現金か金塊を入れたアタッシュケースを運ぶ必要が出てくるぞ。会場に護衛対象である十六夜 ノノミを送り届けるだけでいいのなら話は簡単だが、乱戦で失われる可能性が高い嵩張るものを運ぶとなると、こちらの方が難易度が高い気がするぞ」

 

宮藤 セルマ「だろうな。護衛対象である人への攻撃は非人道的かもしれないが、中身がわからないアタッシュケースに攻撃を加えることを非人道的だと批難できるわけがないから、むしろ、アタッシュケースの中身に難癖をつけて攻撃を集中させることだってできるぞ。その場で没収も可能だろうな」

 

服巻 クロモ「さすがね、セルマ。性格が悪いあなただから、悪党の考えもお見通しってわけね」

 

黒見 セリカ「な、何よ、それ!? そんなの、無茶苦茶じゃない!」

 

山高 カムロ「それぐらい相手も必死と言うわけだね」

 

ロボット職員「でしたら、立会人の私が金塊を抱えて会場まで行きましょう。怪獣の破壊光線も短時間なら防げる電磁装甲を貫ける通常兵器はキヴォトスには存在しませんので、これが一番確実です」

 

奥空 アヤネ「それがいいと思います。立会人として公正中立な立場の人間が契約金を代わりに持って入るのは何もおかしくありませんし、信用があります」

 

砂狼 シロコ「じゃあ、99万円分の金塊を用意して、ガリバーさん。代金は銀行振込でいいよね」

 

ロボット職員「わかりました。半券を発行します」

 

黒見 セリカ「お願いね、ガリバーさん」

 

錠前 サオリ「これで契約成立に必要なものは問題ないな、クロモ?」

 

服巻 クロモ「あとは、契約が成立した直後に【アビドス対策委員会】から<シェマタ>の所有権を奪い取ろうと、その場でノノミを人質に取ろうとするはずだから、やり返せる戦力と脱出ルートの確保も考えないと」

 

ロボット職員「でしたら、ノノミさんは会場では私の側にいてください。電磁装甲で必ずお守りします。場合によっては窓を突き破って脱出します」

 

十六夜 ノノミ「はい、当日は頼りにしていますね、ガリバーさん」

 

錠前 サオリ「となると、会場に着いただけでは安心とはならないわけか」

 

御陵 ナグサ「むしろ、会場を完全に制圧するつもりで挑まなければなりませんね」

 

山高 カムロ「なあ、そこまでやる必要はあるのかい、クロモ?」

 

服巻 クロモ「必要よ。だって、【プライベートファンド】に与しているのはブラックマーケット系の団体や悪徳企業なんだから、やるなら徹底的に叩いておかないと、自分たちの悪行を棚に上げて いつまでもネチネチと付け狙われることになるわ」

 

服巻 クロモ「むしろ、【SRT】の特殊部隊を突入させて全員をお縄につかせたいぐらいよ、平和の敵なんだから! 何かネタはないの、ガリバーさん?」

 

ロボット職員「それは…………」

 

宮藤 セルマ「馬鹿か。“シャーレの先生”という異邦人が失踪した“連邦生徒会長”の実質的な後継者として万人受けしているのは、怪獣退治の専門家としての職務に忠実でキヴォトス征服の野心がないことでキヴォトス中の悪党共が先生と事を構えることがないからなんだぞ」

 

宮藤 セルマ「キヴォトス中に蔓延る悪党の存在を絶対に許さない圧政者になるようなら、“シャーレの先生”もそこまでの俗物だったということだ」

 

宮藤 セルマ「だが、それだけの権力と戦力を有する一個人:キヴォトスの頂点に立つ存在になってやることが、誰よりもキヴォトスのために働きながら、地球の文化を宇宙に誇れるものだと臆面もなく自慢して、トリニティ生以上の信仰心で“ウルトラマンの心”を実践していることなんだ」

 

宮藤 セルマ「あれを見て自分たちと同じ人間だと思う方がおかしい。私たちとは視えているものや考えていることがちがう。それは様々な媒体で残してきたアーカイブを見れば、知識や技術に関しても総てが非凡なものになっていることでわかる」

 

宮藤 セルマ「それに、これまでキヴォトスの歴史に存在しなかった“怪獣(KAIJU)”という災害の化身を倒すのを邪魔することに何の利益もないことだしな。それが悪党共から漏れ無く消極的以上の支持を受けている最大の理由だ」

 

 

――――――()()()()()()()()()()()が地球人:北条 アキラをキヴォトスの頂点に立つ存在足らしめている完璧な中立性の証明なんだ。

 

 

山高 カムロ「おいおい、どうしたんだ、宮藤? べた褒めじゃないか?」

 

宮藤 セルマ「勘違いするな。信賞必罰;善行には称賛を送るのは当然のことだ。でなければ、社会の秩序は安定しない」

 

山高 カムロ「たしかに、先生は人類同士の戦争が終結した遠くの星(地球)の出身だから、天変地異の時代:怪獣頻出期で『人類同士で争っている場合じゃないだろう』ってことで、協力と理解を求める姿勢を徹底しているわけだよね」

 

山高 カムロ「そう言われてみると、()()()()()()()()()()が先生は本当に完璧だよな。【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】の間を取り持って【キヴォトス防衛軍】で協力体制を取らせているし」

 

 

十六夜 ノノミ「だから、【プライベートファンド】との戦いは自治区を治める私たち生徒会活動の課題なんです。先生の足を引っ張りたくはないです」

 

 

ロボット職員「それがキヴォトスの平和のためには一番なんですけど、<シェマタ>を獲得するために何をしてもおかしくない連中を相手に無傷でいられるかどうか……」

 

服巻 クロモ「じゃあ、そのことを宣言して周知するべきね。あくまでも民事に介入しない姿勢をアピールし続けていれば、【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ)】が立ち会っている手前、【プライベートファンド】も無茶なことはできなくなるはずだわ」

 

足坂 エル「それも、北条先生ご本人ではない代理人だからこそ、対応はより慎重にならざるを得ないでしょう」

 

ロボット職員「ああ、そう考えることもできるのか」

 

服巻 クロモ「これは情報戦よ。自分たちが悪党だと自覚しているからこそ、【ネフティス】を隠れ蓑にして結成された【プライベートファンド】なんだから、世間の目に晒されることを何よりも恐れているわ」

 

服巻 クロモ「そして、立会人となるのが対怪獣兵器:レールガン<スーパーノヴァ>と怪獣の攻撃も防げる電磁装甲で攻防一体の 北条先生に半身と称えられた “シャーレの職員”ロボット職員:マウンテンガリバーとなれば――――――」

 

 

黒見 セリカ「――――――どっちが悪者かだなんて決まり切っているんだから、実はこれ、()()()()()()()ってことなのね!」

 

 

服巻 クロモ「そうよ! 悪徳企業だろうと企業活動は信用が命なんだから、『信用を失ってまで<シェマタ>を欲張るメリットがない』とあきらめさせることができれば、私たちの大勝利よ!」

 

ロボット職員「それはそうですよ。北条先生が怪獣無法地帯を攻略している真っ最中に『旧アビドス自治区で、お前ら、何をやっているんだ』って話なのは最初からですし、それで【ハイランダー】と【ネフティス】の評判が落ちているわけですから、【プライベートファンド】としても自分たちに飛び火する可能性を恐れて下手なことはできないですよ」

 

錠前 サオリ「なるほど、先生が言っていたな。この戦いの勝ち方は『心を攻める』にあるのだな」

 

秤 アツコ「全てはそういうことだよね。脅しを掛けるのも『心を攻める』立派な戦術だね」

 

 

砂狼 シロコ「ん! なら、【プライベートファンド】が利用している銀行を襲う!」

 

 

ロボット職員「や、やめるんだ、シロコさん! 恐喝のために銀行を襲うのは 全然 正当防衛じゃないですから、情状酌量の余地はないです! 【カイザー】に現金で返済していた借金が【ヘルメット団】に横流しされていた時とはちがうんです!」

 

御陵 ナグサ「そうです。自分から悪党と同じところまで落ちたら、勝ち目なんてないですよ」

 

御陵 ナグサ「そのための【キヴォトス平和連合】じゃないですか。先生の生き方や考え方をどこよりも実践してキヴォトスのみんなにとっての“憩いの場(オアシス)”を作ることで人々を呼び込む話じゃなかったですか」

 

十六夜 ノノミ「まあまあ。シロコちゃんも悪気があって銀行を襲う提案をしているわけじゃないですから」

 

服巻 クロモ「そうよ、シロコの発想は間違ってないわ。相手と対等に交渉するためにも、それぐらいのことを言ってのけるタカ派の人間が居た方が悪党から舐められないわ。飴と鞭よ」

 

山高 カムロ「それで和平を引き出せる可能性があるなら、武力と交渉はワンセットと言うことで、武力を背景にした交渉も平和のための手段として推奨されるわけだけど、」

 

山高 カムロ「それをやろうとして最大化した<列車砲:シェマタ>がもたらした今の現状を考えると、結果として僕たちがそうであるように敵ばかりを作るわけだから、それを選ぶなら覚悟しないとだよ」

 

宮藤 セルマ「いやいや、言うだけ無駄だぞ、カムロ」

 

山高 カムロ「宮藤」

 

宮藤 セルマ「十数年前、原因不明の砂漠化の解決策として【セイント・ネフティス】が自己の利益の最大化を追求した結果が<シェマタ>というのが結論の全てなんだぞ」

 

宮藤 セルマ「つまり、目先のことしか見えていない 後先のことを考えない馬鹿がやらからすわけだから、人類全てが馬鹿にならない世界を作らない限りは、人類社会は馬鹿を生み出し続けては その馬鹿に足を引っ張られ続けるのを繰り返してきたんだ」

 

宮藤 セルマ「人類の失楽園が始まった時からの“一歩進んで二歩下がる”マイナスの状況が改まるわけがないだろう」

 

十六夜 ノノミ「じゃあ、私がシロコちゃんのことをちゃんと見ていますからね、シロコちゃん」

 

砂狼 シロコ「うん。ノノミも遠慮なく言って欲しい。情報が大事だからこそ、いろんな人の意見や視点を得ることがもっとも正解に近づく方法だから」

 

十六夜 ノノミ「それに私は宣言しました」

 

十六夜 ノノミ「私たちが尊敬する先生の教えや生き方を実践して『犯罪ゼロ自治区』という“憩いの場(オアシス)”を目指すわけなんです」

 

十六夜 ノノミ「じゃあ、先生がキヴォトス屈指の犯罪発生率を誇った【ゲヘナ学園】に一定の秩序と平和を取り戻したことを見習って、()()()()()()()()()を実践していこうと思います」

 

十六夜 ノノミ「もちろん、負けるつもりはありません。私たちは大事なものを背負っていますから」

 

錠前 サオリ「そうだな。負けるわけにはいかないな」

 

秤 アツコ「うん。そうだね、サッちゃん」

 

ロボット職員「ノノミさん、シロコさん、素晴らしいです」

 

 

――――――先生、あなたの教えや生き方は確実にキヴォトスを善き方向へと導いていますよ。

 

 


 

◆夢があふれる黄金郷【アビドス高等学校】の真なる歴史のまとめ◆

 

◯最強校時代:【ゲヘナ学園】ー【アビドス高等学校】ー【トリニティ総合学園】による三角貿易“アビドス・トライアングル”の成立

 

・【アビドス高等学校 シーワ分校】を【ゲヘナ学園】に盗らせ、【アビドス高等学校 アレクサンドリア分校】を【トリニティ総合学園】に盗らせることで中継貿易の拠点を築き、【ゲヘナ学園 シーワ分校】ー【アビドス高等学校 本校】ー【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】による三角貿易“アビドス・トライアングル”が成立。

 

・【ゲヘナ学園 シーワ分校】はシーワ・オアシスの辺りに建てられた【ゲヘナ】屈指の犯罪発生率を誇る砂漠の中の繁華街:カジノの都として繁栄し、【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】は史上最古の神学校を聖域として囲った【トリニティ】屈指の富裕層が住む超高級住宅街:歴史ある古都として繁栄。

 

・【アビドス高等学校 本校】の意向によって中継貿易の拠点となる【シーワ分校】【アレクサンドリア分校】で流通を制御されて経済が成長させられることになり、【アビドス高等学校】が経済面から【旧キヴォトス三大学園(BIG3)】を完全に支配していた。

 

・【アビドス高等学校】はキヴォトス中の各学園に“王冠の貸し出し”を行い、丁重に返却されれば【アビドス】に屈したと宣伝し、期限までに返却されることがなければ大義名分を得たとしてキヴォトス各地に派兵して、キヴォトス屈指の兵力と資金力を誇っていた。

 

・そうして【アビドス高等学校】がキヴォトス中の各学園に侵略や干渉を繰り返すことで【アビドス】の影響力を保ち続け、キヴォトス中に【アビドス】への憧れを植え付けたことで、“夢があふれる黄金郷”として【アビドス】に人々が集まり続け、ますます兵力と資金力が拡大していく好循環を築き上げていた。

 

 

――――――しかし、繁栄と栄光は永遠のものではなかった。

 

 

◯数十年前:原因不明の砂漠化が始まる

 

・最初はしばらく侵食に気づくことがなく、アビドス砂漠の隣接地域で砂がいつもより多く入り込んでくるという違和感程度しかなかった。

 

・やがて、隣接地域に砂漠の砂が継続的に侵食していることに気づくことになり、砂漠化の原因解明と対策が求められることとなった。

 

・砂漠化の原因解明が進まず 対策も虚しく隣接地域が砂漠に呑まれることが確定した段階で、【真なるアビドス生徒会】で首都機能移転が可決されることになり、【アレクサンドリア財団】を通じて“アビドス・トライアングル”の中継貿易の拠点であった【ゲヘナ学園 シーワ分校】と【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】に住民や財産が早い段階で遷されていた。

 

・これは砂漠化の対策ができるまでの一時的な首都機能移転であり、自分たちの聖地であるアビドス砂漠への信仰から望郷の念は決して失われることはなかった。

 

 

――――――キヴォトス最強校を率いた【真なるアビドス生徒会】の歴史と信仰を引き継ぐディアスポラ(撒き散らされたもの)系キヴォトス人の誕生である。

 

 

・しかし、そうして首都機能移転でゴーストタウン化した跡地に夢があふれる黄金郷を目指して不法滞在者(賊徒)が集まり、家屋や設備が不法占拠されて街が荒らされているという報を受け、いずれは帰還することになる土地の管理が必要不可欠となり、業者に管理を任せることが可決され、旧アビドス自治区が租借地となる。

 

・その管理業者に選ばれたのが【カイザーコーポレーション】であり、100年間の租借契約を結び、耳を揃えて返還することができなければ補償金を支払うことになっているため、【カイザーコーポレーション】も当初の治安維持活動は真っ当で数多くの不法滞在者を摘発していた。

 

・ところが、元々は不法滞在者(賊徒)を一掃する目的で【カイザーコーポレーション】に治安維持活動を任せていたのだが、ますます勢いを増す砂漠化に巻き込まれたことで一時的に治安維持活動の停滞期が生まれてしまう。

 

・その隙に、いつの頃からか【アビドス高等学校】を自称する詐欺集団に()()()()()()()事態となり、【連邦生徒会】に公認されて既成事実化され、【カイザーコーポレーション】としては手が出せない事態が発生してしまう。

 

・一方で、キヴォトス最強校としての自負心から選民意識と経済的合理性を持っていた【真なるアビドス生徒会】は租借地のことは完全に業者に任せて一切見向きをしなかった悪癖のため、管理の不行届を断じて 耳を揃えて租借地を返還できなかった時に受け取れる補償金目当てに【カイザーコーポレーション】を揺さぶりを掛けていた。

 

・そのため、【連邦生徒会】に公認された【アビドス高等学校】を自称する詐欺集団を追い出すために『借金漬けにして土地の権利の合法的に差し押さえる』という気が遠くなる戦略を【カイザーコーポレーション】が実施することになり、租借地の返還期限までに耳を揃えられるように長期的な計画を立てることとなった。

 

・しかし、原因解明が進まない砂漠化の勢いは凄まじく、【アビドス高等学校】を自称する詐欺集団を時間を掛けて借金漬けにする消極的な戦略へのモチベーションの低さも相まって、租借地の管理業務が【カイザーコーポレーション】内部で左遷先と見なされ、本来の治安維持活動に身が入らなくなってしまう悪循環を生み出していた。

 

 

――――――それから時が流れ、当時の真相の全てが砂漠に呑まれて忘れ去られてしまうのであった。

 

 

◯十数年前:砂漠横断鉄道の始まりとアビドス自治区の衰退

 

・地元の大企業【セイント・ネフティス】が【アビドス生徒会】を自称する詐欺集団と事業提携して起死回生の策:砂漠横断鉄道を立ち上げることになるが、根本的な砂漠化の解決にならない的外れなものであるため、当然ながら失敗して経営破綻により同地から撤退することとなる。

 

・それにより、最後の砦と見なされていた大企業【セイント・ネフティス】が故郷を見捨てたことで【アビドス】の衰退が決定的となり、【アビドス】の過疎化に歯止めが掛からなくなってしまうのであった。

 

・もっとも、首都機能移転を果たした別荘地で悠々自適な暮らしを続けている【真なるアビドス生徒会】としては、自分たちがいずれ帰還することになる聖地を不法滞在者(賊徒)に荒らされることに腹を立てた結果、管理を業者に委ねてアビドス自治区を租借地にしていたため、アビドス自治区から不法滞在者(賊徒)がいなくなる状況をむしろ歓迎していたのである。

 

・それと同時に返還期限までに耳を揃えて租借地を返還しないと補償金を支払わなければならない【カイザーコーポレーション】としては最後の砦を失った【アビドス生徒会】から金を巻き上げて土地を取り戻す絶好の好機となった。

 

 

――――――ここから現在の【アビドス対策委員会】の代まで続いた借金地獄による逆境が始まるのであった。

 

 

◯現在:英雄の登場とアビドス遠征の成功が招くもの

 

・その結果、【アビドス高等学校】が治めていた自治区の大半の土地の権利を【カイザーコーポレーション】が不法滞在者たちから取り戻すことに成功し、その報告には【真なるアビドス生徒会】も気を良くしていた。

 

・最終的に【アビドス高等学校】の生徒が【アビドス生徒会】生徒会長:梔子 ユメと副会長:小鳥遊 ホシノしかいなくなったことで消滅が確定となり、不法滞在者(賊徒)の一掃が秒読みの段階に入ったということで、【真なるアビドス生徒会】の“天上人(トップス)”たちの気まぐれで2人は監視対象となった。

 

・しかし、最後の生徒会長:梔子 ユメのどれだけ絶望的な状況であろうと笑顔を絶やさずに希望を信じて現実に抗い続ける姿勢に夢があふれる黄金郷の輝きの精神を見出すことになり、その成り行きを見守ることを【アレクサンドリア財団】次期総帥:金獅子 シブキが提案し、密かに庇護下に置かれていたのである。

 

・もしも、その在り方を最後まで貫いて卒業を迎えられたのなら、その時はその頑張りを称えて【アレクサンドリア財団】総出でお祝いして、【アビドス生徒会】を自称する詐欺集団の最後の頭目に栄誉を与えて、めでたく不法滞在者(賊徒)の一掃を完了させる手筈となっていたのである。

 

・その庇護は梔子 ユメの後を継いだ【アビドス対策委員会】委員長:小鳥遊 ホシノに対しても同様であり、本来ならば返済不能な額にまで膨れ上がった借金だったが、租借地の貸主【アレクサンドリア財団】が保証人になることで実質的に返済期間が無期限になっていたわけであり、総帥:金獅子 シブキとしては【アビドス生徒会】最後の2人には物凄く入れ込んでいたわけなのである。

 

・もっとも、所詮は下層民(サテライト)の無駄な足掻きを面白可笑しく楽しむ賭けの対象でしかなく、不法滞在者(賊徒)の一掃が秒読み段階になった記念のお目溢し(大赦)に過ぎず、依然として悪辣なやり方で土地の権利を差し押さえている【カイザーコーポレーション】の管理業務の遂行は徹底させている。【真なるアビドス生徒会】の差し金となる嫌がらせも指示されていた。

 

――――――そして、天変地異の時代:怪獣頻出期の突入と、キヴォトスの頂点に立つ存在となる地球人:北条 アキラの出現によって始まるアビドス遠征。

 

・アビドス遠征前に【真なるアビドス生徒会】まで辿り着いた地球人:北条 アキラの力量や生き様に魅了されることになり、あくまでも不法滞在者(賊徒)という認識の【アビドス対策委員会】をアビドス遠征の現地協力者として生かすことを認めることとなる。

 

・この裏交渉の結果、【カイザーコーポレーション】は管理を任されていた租借地の一部を【アビドス対策委員会】に引き渡すことになり、これが旧アビドス自治区から独立させた重要区画:新アビドス自治区となるのだ。

 

・要するに、【カイザーコーポレーション】に管理を委ねた租借地が旧アビドス自治区となり、【アビドス対策委員会】に管理を委ねた租借地が新アビドス自治区となる。これによって、不法滞在者(賊徒)がそれまでに結んだ取り決めや取引などの処理を円滑に進めることが可能になり、【キヴォトス防衛軍】の進駐やイベントの開催なども【真なるアビドス生徒会】の承認を得る必要がなくなり、円滑な地域の活性化に繋げたわけなのだ。

 

・また、地球人:北条 アキラがもたらした先進的な知識や技術によって、ついに砂漠化対策の切り札:砂漠の砂を建材にする技術が発表され、アビドス遠征も折り返しを過ぎて【アビドス】復興がいよいよ現実味を帯び、【真なるアビドス生徒会】も帰還事業の開設を始めることとなった。

 

・帰還事業を開始して【真なるアビドス生徒会】が歴史の表舞台に返り咲くのは【アビドス対策委員会】の全員が卒業した辺りを予定しており、それで後腐れなく租借地である旧アビドス自治区と新アビドス自治区を統合する算段であったのである。

 

――――――しかし、十数年前に未完成のまま砂漠に放置されて忘れ去られたはずの<列車砲:シェマタ>の存在が発端となって、アビドス遠征が完了していないにも関わらず、【プライベートファンド】【セイント・ネフティス】【ハイランダー鉄道学園】が砂漠横断鉄道の再開発を強行することとなったのである。

 

・帰還事業の準備を始めた【真なるアビドス生徒会】にとっても予想外の出来事であり、管理を託された租借地を【セイント・ネフティス】に勝手に売り渡した【カイザーコーポレーション】に詰問することになり、実は【カイザーコーポレーション】内部で怪獣無法地帯と化した旧アビドス自治区の管理義務に耐えかねて謀反が発生していたことが発覚。

 

・謀反を起こされて半ば目的を達成されたことで無能呼ばわりされ、更に莫大な違約金の支払いを迫られて絶体絶命の【カイザーコーポレーション】だったが、この場を切り抜けるために【セイント・ネフティス】が聖地であるアビドス砂漠を粗大ゴミ置き場にした砂漠横断鉄道の再開発を狙っていることを告げ、【真なるアビドス生徒会】の怒りの矛先を【セイント・ネフティス】に向けることに成功。

 

・そのため、砂漠横断鉄道の廃止もしくは電気鉄道から波動鉄道(バイブレール)への切り替えと規模の縮小を【セイント・ネフティス】に要求することになり、突如として歴史の表舞台に戻ってきた【真なるアビドス生徒会】の存在に驚いた【プライベートファンド】は一刻も早く<列車砲:シェマタ>の所有権だけを確保して、それ以外は切り捨てて【真なるアビドス生徒会】の怒りの鉄槌を躱そうと必死になったのだ。

 

・ところが、なぜか【ハイランダー鉄道学園】の倉庫から【アビドス生徒会】【セイント・ネフティス】の間で砂漠横断鉄道の所有権の売買に関する契約書が見つかってしまい、放置しておけば期限まで所有権が確定しないため、<列車砲:シェマタ>以外はどうでもいい【プライベートファンド】としては鉄道工事をせざるを得ない【セイント・ネフティス】【ハイランダー鉄道学園】を尻目に【真なるアビドス生徒会】と裏取引を開始していたのである。

 

・一方で、事業提携先の【ハイランダー鉄道学園】には【真なるアビドス生徒会】のことは伏せて【キヴォトス防衛軍】の庇護下に置かれた【アビドス対策委員会】を通じて制裁を回避しようと【セイント・ネフティス】は動き出しており、<列車砲:シェマタ>はそのための献上品として悪巧みを持ちかけた【プライベートファンド】に全て罪を擦り付ける計画を立てていたのだった。

 

・また、【ハイランダー監理室】朝霧 スオウ監督官が属する派閥も【ハイランダー鉄道学園】の生き残りを賭けて多方面に動き回ることになり、特に朝霧 スオウは【キヴォトス防衛軍】【アビドス対策委員会】【CCC(中央管制センター)】にもっとも近い立ち位置で立ち回る工作員として暗躍していた。

 

 

――――――このため、今も昔も租借地の支配者である【真なるアビドス生徒会】の帰還と砂漠横断鉄道の裏に隠された<列車砲:シェマタ>を巡る紛争が【プライベートファンド】の総会の開催日に勃発しようとしていた!

 

 


 

 

北条先生「――――――ふざけるな♪」バサッ ――――――報告書の束を手放す。

 

北条先生「さすがは犯罪天国(ゴッサムシティ):キヴォトス。自分さえ良ければいいと言う嘘つきしかいないね。これじゃあ、理想郷なんていつになっても辿り着けるわけがない」

 

北条先生「予想通り、砂漠横断鉄道に真面目に取り組んでいるのは何も聞かされていない【CCC(中央管制センター)】だけで、【ハイランダー監理室】はもちろん、【セイント・ネフティス】も【プライベートファンド】も、【真なるアビドス生徒会】からの制裁を回避するために独自に立ち回っているか」

 

北条先生「いや、そこは素直に『知らなかったとは言え、【真なるアビドス生徒会】に無断で砂漠横断鉄道の再開発をしてすみませんでした』と連帯して公式に謝罪しようよ。自分だけ制裁を免れようと裏でコソコソとしている様がますますサテライトのクズっぷりを加速させていることに気づいて欲しいものだ」

 

金獅子 シブキ「そうなのですわ、お兄様。これだからサテライトのクズ共は。もう報告書を読むだけで目が穢れますわ」

 

金獅子 シブキ「ああ、お兄様! 目にゴミが入って気分が悪くなってきましたので、お兄様のキヴォトスの未来を作る力強くて逞しい腕の中で抱きとめてください!」

 

北条先生「おーい、誰かー! 総帥閣下が体調不良を訴えてますぞー!」

 

金獅子 シブキ「もう! お兄様! お兄様はどうして可愛い妹のおねだりを聞いてくださらないのですか?」

 

北条先生「いや、さっきから、きみは僕の妹じゃないでしょう?」

 

金獅子 シブキ「はい。既成事実にするために言っております」

 

北条先生「なんで?」

 

金獅子 シブキ「もちろん、北条先生が私たちに親近感を持ってもらうためのスキンシップの第一歩ですわ」

 

北条先生「本当のところは?」

 

金獅子 シブキ「先生と婚姻関係を結びたいのが正直なところですが、そうすることでキヴォトス中からの猛反発が起こり、先生の使命である怪獣退治に支障を来すことによるデメリットが私個人が得られるメリットを遥かに上回るからですわ」

 

金獅子 シブキ「ですので、せめて各方面に角が立たない特別な関係性を模索して、親愛を込めて“お兄様”と呼んでおりますわ」

 

金獅子 シブキ「あ、先生の方から求婚なさってくださるのなら、私、いつでも大歓迎ですわ! 結婚指輪も式場もその場で手配できますから!」

 

北条先生「それはないです」

 

金獅子 シブキ「お兄様のいけず……」

 

 

北条先生「でも、本当にやるつもりなのですか?」

 

金獅子 シブキ「―――――――当然ですわ」

 

 

金獅子 シブキ「これは【アビドス高等学校】が何故にキヴォトス最大の勢力の誇った最強校として時代の覇者で在り続け、夢があふれる黄金郷として人々を惹きつけていたのかを、歴史を忘れ去った愚者共に思い出させてやる必要がありますから」

 

金獅子 シブキ「帰還事業も準備に入ったことですし、これはその示威運動(デモンストレーション)としてちょうどいい機会ですわ」

 

北条先生「しかし、当日は何が起こるかわからなくなりましたよ」

 

金獅子 シブキ「結構ですわ。どうせ、あの辺り一帯を全て更地にするのですから。砂漠横断鉄道という粗大ゴミは綺麗さっぱり片付けないといけませんわ」

 

北条先生「それは待ってはいただけないでしょうか?」

 

金獅子 シブキ「なぜ? 私たち【真なるアビドス生徒会】が今も昔も所有している土地を不法占拠している輩が一箇所に集まっているのなら、私たちの法に基づいて制裁を下すのが一番手っ取り早く問題を解決する方法ですわよ?」

 

北条先生「それでも、無関係の人間を巻き込むわけにはいかないんです」

 

金獅子 シブキ「その場にいる全員が同罪ですわ。私たちが代々受け継いできた愛する郷土に土足で踏み入って我が物顔をしている者たちには神罰が下されるのです」

 

金獅子 シブキ「先生? 本当は罪人たちの大赦を引き出すための交渉材料として、先生に私との婚姻を強要してもよろしかったのですよ?」

 

金獅子 シブキ「ですが、それで先生の在り方を損ねたり 怪獣退治の使命に対する熱意を失ったりした場合のデメリットが大きいからこそ、お兄様に免じて こうして話を聞いてあげているだけに過ぎませんのよ?」

 

北条先生「そこのところの理解が足りているようで何よりです」

 

金獅子 シブキ「結論としては、総会当日に【アビドス対策委員会】が出席する必要はありません」

 

金獅子 シブキ「なぜなら、【プライベートファンド】なる団体は地上から抹消されますので、総会そのものが存在しないことになるのです」

 

北条先生「いったい何をする気ですか?」

 

金獅子 シブキ「簡単なことですわ」

 

 

――――――サーモバリック爆弾でアビドス中央駅旧庁舎を中心とした半径2km以内に存在する全てを吹き飛ばして差し上げますわ。

 

 

北条先生「な、なんだって!?」

 

金獅子 シブキ「ですからね。そもそもとして、<列車砲>なんて要らないんですのよ、私たち。ペンは銃より強し;私のペン先だけで全てが解決いたしますわ」

 

金獅子 シブキ「だいたい、どうやって<列車砲>を運用するつもりなのかしらね、クズ共としては? 砲弾に使うのは1トン以上の爆弾という話だし、それだけ巨大な<列車砲>を動かせる線路があるのかしらね? もしかして1発撃っただけで満足しちゃうような出来なのかしら? 貧乏人の努力は涙ぐましいですわねぇ?」

 

金獅子 シブキ「で、砂漠化の根本的な解決にならない<列車砲>を運用するために必要な人員やインフラをアビドス砂漠の未調査領域を配置して、何年、いや、何週 維持できるのか 見物ですわね、お兄様?」

 

北条先生「対怪獣兵器を除けば戦略兵器では核爆弾に次ぐ威力があるサーモバリック爆弾を自分たちの領土に対して使うと言うのか!?」

 

金獅子 シブキ「ええ、私たちが土地の所有者として 私たちの土地をどうしようが 私たちの自由でしょう、先生? それが自治というものでしょう?」

 

金獅子 シブキ「それに、今のアビドス自治区は重要区画として分割した租借地(新アビドス自治区)以外に守るべき住民はいないゴーストタウンですわよ? 自治体が管理している住民が誰もいない場所で何の心配をしているというのですか?」

 

金獅子 シブキ「ですからね、お兄様? ほら、何も心配することはありませんのよ?」

 

金獅子 シブキ「ホシノちゃんが精神崩壊するまで守り抜いた偉大なる学園の看板はちゃんと私たちがサテライトのクズ共全員が理解できる形で復活させて、かつての繁栄と栄光を取り戻してみせますから、今は安心してアビドス遠征に集中なさってください。終わりの時は近いですわよ」

 

北条先生「いくら政治への不干渉を掲げている立場とは言え、それでは【プライベートファンド】が<シェマタ>でやろうとしていることとまったく同じではないのですか?」

 

金獅子 シブキ「いいえ、私たち【アビドス高等学校】にはキヴォトスの覇者として君臨していた歴史的事実がありますわ」

 

金獅子 シブキ「それが原因不明の砂漠化という異常事態によって一時的に途絶えてしまっただけで、今も昔もキヴォトスは私たち【アビドス高等学校】のものなのです」

 

金獅子 シブキ「ですので、私たちが力を誇示するのは当然の権利であり、義務であり、伝統なのです。一昔前の旧き良き時代の秩序に戻ることは歓迎されるべきことでしょう」

 

金獅子 シブキ「そうは思いませんか、お兄様? 【アビドス高等学校】が砂漠化によって一時的に砂隠れしてしまった後の学園都市:キヴォトスの崩壊した秩序をこれから元通りにすることができるのはどこなのかはおわかりですね?」

 

北条先生「……たしかにそうなのかもしれないね、それは」

 

 

――――――いよいよ『この時がやってきた』と言うべきなのだろう。

 

 

『今回』“シャーレの先生”となった地球人:北条 アキラは『前回』“シャーレの先生”だったコーイチ先生では辿り着けなかった【アビドス高等学校】の真実に辿り着くことができていた。

 

数十年前から始まった原因不明の砂漠化に呑まれて消滅寸前までに追い込まれていた【アビドス高等学校】への支援要請のために“シャーレの先生”が向かい、そこで【カイザーコーポレーション】が仕掛けた借金地獄に苦しめられていた【アビドス高等学校廃校対策委員会】の生徒たちと共に【アビドス高等学校】の看板を背負って巨悪に立ち向かうという筋書きであったはずが、

 

真実としては、数十年前に砂漠化が止められないとわかった時点で【真なるアビドス生徒会】は【旧キヴォトス三大学園(BIG3)】を成長させた原動力となる三角貿易“アビドス・トライアングル”で栄えた【ゲヘナ学園】【トリニティ総合学園】にある交易都市に首都機能移転を早い段階で済ませており、

 

【アビドス高等学校】の正式な住民や財産が遷された後に砂漠に呑まれることが決定づけられた街並みに住み着いた不法滞在者を一掃するための管理業者として租借契約を結んだのが【カイザーコーポレーション】だったのだ。

 

つまり、『前回』“シャーレの先生”だったコーイチ先生の認識では企業による学園の侵略という学園都市:キヴォトスにおいては許されざる行為を【カイザーコーポレーション】が働いていたとみなされて敵対することになったのだが、

 

実は、【真なるアビドス生徒会】に管理を任されていた【カイザーコーポレーション】としては業務を遂行するにあたって『土地の権利を不法滞在者たちから取り戻していた』というのが真相であり、

 

悪事を働いていたのは むしろ【アビドス高等学校】を自称していた非公認部活動【アビドス対策委員会】の方だったことで、全ての前提がひっくり返ってしまっていた。

 

しかし、それぞれの学園の自治区はその学園に帰属するのが当たり前の常識とされる学園都市:キヴォトスでは『自治区の管理を業者に任せる』という他では真似できるはずもない前代未聞の政策を正しく理解することは難しく、それもキヴォトス最大の勢力を誇った最強校【アビドス高等学校】がそれを実施するなど予想もつかなかったことなのである。

 

現に、“租借地(leased territory)”という言葉は『今回』“シャーレの先生”となった地球人:北条 アキラによって地球の歴史にあった香港返還を例に解説されることになり、これまでのキヴォトスにはなかった あまりにも経済的合理性を突き詰めた 画期的過ぎた概念だったのだ。

 

それは本社である【カイザーコーポレーション】の命令で何の利益も生み出さない不毛の大地でせっせと土地の権利を確保していた系列企業【カイザーPMC】も同様であり、

 

事の真相を知らないばかりに、最終的には【アビドス高等学校】を解体して【カイザー職業訓練学校】にしようとカイザーPMC理事は考えていたようだが、

 

実際にはそんなことには絶対にならないどころか、そんなことをしたら、今も昔もアビドス自治区の所有者で在り続ける【真なるアビドス生徒会】から容赦ない制裁を受けることになるのだから、

 

この租借契約が不履行になった場合に責任をなすりつけることを前提に可能な限りギリギリまで現地から金を搾り取るために配置された憎まれ役(スケープゴート)というのが【カイザーPMC】であるため、そんな思い上がりも甚だしい人間は遠からず首が飛ぶことになるであろう。

 

そのため、原因不明の砂漠化と前代未聞の租借契約が大元となって、いくつもの要因が重なって誤解が誤解を生み、更なる誤解を加速させることになり、そうして混迷を深めていった(権利関係が複雑になった)【アビドス】の情勢であったが、

 

ここに来て“シャーレの先生”であり“GUYSの先生”である地球人:北条 アキラ率いる【キヴォトス防衛軍】によるアビドス遠征によって【アビドス】復興の可能性が現実味を帯びたことで、数十年の年月を経てアビドス自治区の正真正銘の支配者である【真なるアビドス生徒会】の帰還事業が動き出すことになったのが現状となる。

 

そのため、あくまでも砂漠化が解決されるまで土地の管理を業者に任せて別荘地に一時避難をして数十年経っただけの認識で下界の様子などにまったく関心を寄せなかった天上人(トップス)たち【真なるアビドス生徒会】としては、

 

いざ帰還事業を始めようとしたら【アビドス高等学校】を自称する不法滞在者(賊徒)共がなぜか【連邦生徒会】から公認されて()()()()()を果たしており、【アビドス高等学校】の看板を使って今まで散々好き勝手やっていたのだから、本当は怒り心頭なのは言うまでもないだろう。

 

特に、砂漠化がだいぶ進んだ後も残り続けていた地元の大企業【セイント・ネフティス】と【アビドス生徒会】を名乗る詐欺集団が事業提携して、これまで絶対にしてこなかった砂漠横断鉄道を立ち上げた挙げ句に 案の定 経営破綻に追い込まれた【セイント・ネフティス】が現地から完全撤退した見苦しさと、そうして放置された砂漠横断鉄道で聖地であるアビドス砂漠を粗大ゴミ置き場にしたことが許されざる罪であったのだ。

 

一方で、そんなようなことが起こらないように不法滞在者の一掃を任せた管理業者【カイザーコーポレーション】も『期限までに土地の権利を全て取り戻していればいい』という消極的な戦略を展開していたせいで、聖地であるアビドス砂漠が十数年前に砂漠横断鉄道という粗大ゴミ置き場になったことを詰め寄るのはもちろん、

 

近年になってようやく不法滞在者の一掃が果たされるという報告を受けていたのに、アビドス遠征によってアビドス砂漠が怪獣無法地帯になっていた事実が発覚してしまい、その恐怖に耐えかねた社内の謀反で【アビドス生徒会】を自称する詐欺集団から取り戻していた土地の権利を【セイント・ネフティス】に勝手に売り払われ、砂漠横断鉄道の再開発がまたしても無断で開始されたことへの怒りの鉄槌を下す以外になくなったのだ。

 

その制裁として【セイント・ネフティス】を隠れ蓑にして<列車砲:シェマタ>を得ようとしている【プライベートファンド】の総会に半径2kmを跡形もなく吹き飛ばす戦略級サーモバリック爆弾を落とすというのは銃弾を浴びたぐらいでは死ぬ気配がない学園都市:キヴォトスにおいても人道に対する罪が適応されそうなほどの過激な主張ではあったものの、

 

今も昔も土地の所有者で在り続ける【真なるアビドス生徒会】としては当然の権利であり、義務であり、報復であるため、元から血の気の多いキヴォトス人の気質からして それは避けられない事態であった。

 

しかし、アビドス遠征が始まる前に『前回』“シャーレの先生”だったコーイチ先生こと『今回』“シャーレの職員”であるロボット職員:マウンテンガリバーから現地にいる【アビドス対策委員会】の事情や為人を聞き、

 

更には独自の人脈や情報網で【真なるアビドス生徒会】に辿り着くことになった『今回』“シャーレの先生”である地球人:北条 アキラがひたすら理を説いて粘り強く執り成していたため、今日まで【真なるアビドス生徒会】の怒りの鉄槌が下されることはなかったのだ。

 

 

それでも、忍耐にも限度と言うものがあり、いつかは堪忍袋の緒が切れることになり、今日【真なるアビドス生徒会】に届けられた報告書に目を通して、ついに『この時がやってきた』というところまで行ってしまったのだ。

 

 

土地の所有者として現在の【アビドス】で何が起きているのかを正確に把握するために状況や動静に注視していただけに、今回の問題の最大の論点となる砂漠横断鉄道の再開発の仕掛け人である【プライベートファンド】だが、【“雷帝”の遺産】の獲得だけを目的にして【セイント・ネフティス】を巻き込み、『<列車砲>が獲得できれば砂漠横断鉄道の再開発などどうでもいい』という魂胆が浮き彫りになったことに【真なるアビドス生徒会】は怒り狂ったのである。

 

というのも、十数年前に自分たちに無断で粗大ゴミになる砂漠横断鉄道を立ち上げた【アビドス生徒会】と【セイント・ネフティス】ではあったものの、曲がりなりにも根底にあるのは【アビドス】復興を願う愛郷心によるものであり、現在になっても【アビドス】復興のために動いていることは合格点をあげられないでも得点は得点である。

 

しかし、仕掛け人である【プライベートファンド】にはそれが一切ない。利用するだけ利用して<列車砲>の権利さえ手に入りさえすれば 後は知らん顔を決め込むわけであり、そのために今回の報復で今一番に処分を下さなければならない標的になってしまったのである。その次は言うまでもなく 十数年前に無謀でしかない砂漠横断鉄道を立ち上げて問題を更にややこしくした張本である【セイント・ネフティス】である。

 

しかも、自分さえ良ければいいという姿勢は【プライベートファンド】を構成する身内にすら向けられており、誰もが【真なるアビドス生徒会】から制裁を受けたくないがために仲間を売り飛ばす密約を交わそうと必死であり、そうした接触があったことは全て【真なるアビドス生徒会】に報告されているのである。

 

なので、こうしてアビドス遠征の主導者:北条 アキラを招いて総会に戦略兵器を撃ち込むことを事前通告しているわけであり、その同意を得ようと論戦を繰り広げていたのである。決して北条先生が持ってきた地球の銘菓を再現したお茶請けを味わいながら楽しくお茶を飲んでいるわけではなかったのだ。

 

 

――――――どうすることがこの場合の正解なのか、どうすればより良い結果が得られるのか、【真なるアビドス高等学校】が復活したことによる影響は如何ほどのものになるのか、それぞれの使命に則ったキヴォトスの将来を賭けた一世一代の論陣を張っていたのである。

 

 

北条先生「難しいですね。砂漠化の解決が現状ではできない以上、首都機能移転を速やかに実施したことは僕も正解だと思っていますが、その後の展開を読みきれなかったことが悔やまれますね。砂漠化の進行自体も前代未聞のことでしたから、可能な限りの最善手を打っても『どうしようもなかった』と言うのは命を預かる身としてはとても不誠実でもありますからね」

 

金獅子 シブキ「はい。経済的合理性を極めた【アビドス】と言えども、凡俗共の動きまでも制御することはできませんでした」

 

金獅子 シブキ「そのせいなのか、そのおかげなのか、【アビドス高等学校】という絶対的な覇権が失われたことでキヴォトスの統制が失われた結果、こうして“連邦生徒会長”がお招きしてキヴォトスの頂点に立つ存在になったお兄様とお会いできたのは幸なのか、不幸なのか……」

 

金獅子 シブキ「それに、お兄様はキヴォトスにはずっと居てくださらないのでしょう?」

 

北条先生「ええ。そのつもりです。僕は今も地球に籍を地球人ですから」

 

金獅子 シブキ「なら、お兄様が築き上げてくれた秩序と平和を受け継いで、私たちがより良きキヴォトスを後世に伝えていきますわ」

 

金獅子 シブキ「それで、不満はありませんわね?」

 

北条先生「……『お手並み拝見』とだけ言っておきましょう」

 

金獅子 シブキ「となると、次は不遜にもお兄様に近づく虫共についても対処を考えないといけませんわね。特に、【ゲヘナ】の文明人のフリをし続ける野蛮人、【トリニティ】の清貧を謳って肥え太った背教者、【ミレニアム】の全知を気取る痴れ者をね」

 

北条先生「今日のところはこれで帰ります」

 

 

金獅子 シブキ「あ、お兄様。今、新アビドス自治区にお帰りになるのはオススメしませんわよ。もう少しだけお茶を楽しみましょうよ」

 

 

北条先生「え」

 

北条先生「………………!」

 

北条先生「ま、まさか――――――!?」

 

金獅子 シブキ「ええ。【アビドス対策委員会】が真に【アビドス高等学校】の一員にふさわしいかを見定めるためにアマネを送りつけましたわ」

 

金獅子 シブキ「今頃、新アビドス自治区の各地で火の手が上がっていることでしょうね」

 

金獅子 シブキ「あ、もちろん、【キヴォトス防衛軍】の管轄への攻撃は厳禁とさせていますわ。おそらく、多くの市民がそこに避難していることでしょうね」

 

北条先生「なんてことを!? 今すぐに止めさせるんだ!」

 

金獅子 シブキ「はて? 銃声と爆発音が響き渡るのが学園都市:キヴォトスの日常でしたのよ? 何を慌てる必要がありますの?」

 

金獅子 シブキ「それに、正式に私たち【アビドス高等学校】の一員になるからには、これから兵隊としてキヴォトス各地に派遣されることになりますから、軍事演習として区画丸ごと戦場に変えることにも慣れてもらいませんと」

 

金獅子 シブキ「お兄様もその必要性を十分に理解しているものと信じておりますわ。いくつものキルハウスを用意しての迫力満点の【戦術対抗戦】を開催しているのですからね」

 

金獅子 シブキ「とても素晴らしいアイデアでしたわ、あれは。さすがは先進的な技術と知恵が発達した遠い星からやってきた先生です。おかげで軍事演習の効率が格段と上がりました」

 

北条先生「………………」

 

金獅子 シブキ「もちろん、破壊された家屋は建て直して差し上げますわ。だって、貧乏人の所有物ですもの。全額補償なんて簡単ですわよ」

 

北条先生「それがキヴォトス最強校の名を欲しいままにした兵力と資金力から繰り出される軍事演習の全容か! 自治区で平然と実弾演習をして、それで街を定期的に建て直して経済を回しているとでも言うのか!?」

 

北条先生「いや、そうやって支援に託つけて資本を流入させて自分たちの影響力を広げるか! まさに一石二鳥の侵略の手口だ!」

 

北条先生「あ、まさか――――――!?」

 

北条先生「もしや、そうやって街を破壊することに慣れさせた兵隊たちが【真なるアビドス生徒会】が砂隠れした後、キヴォトス各地に散らばった結果が――――――!?」

 

金獅子 シブキ「ああ、もしかしたら そうですわね。銃声と爆発音が日常的に響き渡る銃社会がキヴォトス全土に広がりましたわね。もっとも、壊すだけで作り直すお金がない中途半端さがいかにも下層民の在り方ですけど」

 

北条先生「それでも、戦火で失われてしまった『時間』や『思い出』という価値が付与されたモノまでは弁償できない! モノそのものに価値があるんじゃない! 価値あるものと認めたモノにだけ価値があるんだぞ!」

 

金獅子 シブキ「わかっていますわよ、それぐらいのことは。現にどれだけ大金を積んでもお兄様の心は買えなかったわけですし、それ以前に砂漠化の解決策も見つからなかったのです。それによって【アビドス高等学校】がもたらしてきたキヴォトスの秩序が失われたことは大変悔やまれます」

 

金獅子 シブキ「だからこそ、お金のない社会的弱者にもあるとされる自分だけの大切なモノを守るために必死になってもらう必要があるとは思いませんか? いつまでも地べたに這いつくばってないで、そこから這い上がらせるためにもね? 是非とも、社会の進化に必要な競争原理に参加してもらって社会の役に立ってもらいましょう」

 

金獅子 シブキ「というわけで、おわかりになったでしょうか、お兄様? キヴォトス中に広がった銃社会を治めることができるのは私たち【真なるアビドス生徒会】だけなのですよ? 社会の秩序や治安を維持するためには為政者に対する信頼と実績が不可欠であり、支配を盤石するための力が何よりも最初に必要なのです!」

 

 

――――――力あっての正義なのです! 今も昔も! そして、これからも!

 

 

2年前に【アビドス】にやってきてキヴォトスの情勢を調べ回っていた戦場カメラマン:姫矢 ジュンは【ゲヘナ学園】はナチス・ドイツ的、【トリニティ総合学園】のモチーフはイギリスやイスラエルであり、【メトロポリス(首都:D.U.)】はニューヨークに代表されるアメリカ東海岸のイメージが強いと評していた。

 

そこで【アビドス高等学校】はどうなのかと言えば、豊穣の大地:アビドス居住区側は自然豊かな日本的な気候や街並みであり、不毛の大地:アビドス砂漠側はエジプトのようだという感想を『前回』“シャーレの先生”だったコーイチ先生ことロボット職員:マウンテンガリバーはそう教えてくれた。

 

もちろん、地球でもっとも有名な砂漠の国:エジプトとは似ても似つかないのがアビドス砂漠なのだが、エジプト文明に繁栄をもたらしたナイル川の氾濫に相当する機能が眠っていることが“クジラの谷”で判明したため、実は本当にエジプトっぽいことがわかってしまった。

 

そして、アビドス遠征の前に【真なるアビドス生徒会】と接触することに成功し、数十年の間に砂漠化によって忘れ去られた在りし日の夢があふれる黄金郷の本当の歴史や信仰を知ることになり、ますます砂漠化以前の最強校としてキヴォトス中で恐れられていた超大国【アビドス高等学校】はアメリカ合衆国に相当するものだと確信を深めることになったのだ。

 

と言うのも、【ゲヘナ学園】のモチーフがナチス・ドイツで、【トリニティ総合学園】のモチーフがイギリスもしくはイスラエルだった時、古来より【旧キヴォトス三大学園(BIG3)】として筆頭格として君臨していた【アビドス高等学校】はエジプトのような砂漠と日本のような様式や風土が両立していることを踏まえると、これらの全てを結びつけることができるのがアメリカ合衆国に他ならないのである。

 

人類同士の最後の戦争(第二次世界大戦)におけるアメリカ合衆国との関係が如実に反映されているのが【旧キヴォトス三大学園(BIG3)】であり、特に砂漠化以前の夢があふれる黄金郷として名を馳せていた【アビドス高等学校】は世界金融の中心地で在り続け、アメリカンドリームのような誰もが夢を掴むことができる憧れの場所としてキヴォトス各地からヒト・モノ・カネが絶えず集まっていた歴史がそれを物語っている。

 

一方、その上でなぜエジプトがモチーフである場所にアメリカ合衆国との縁があると断言できるのかと言えば、1928年から規格が統一された1ドル紙幣の裏面の左側に描かれているアメリカ合衆国の国璽こそが“未完成のピラミッドの頂きに立つプロビデンスの目(神の全能の目)”なのである。なお、その反対側に配置された国璽は“ハクトウワシが翼を広げたもの(ボールドイーグル)”と呼ばれるものである。

 

そう考えると、キヴォトスの歴史と地球の歴史の比較がすんなり行くわけであり、【真なるアビドス生徒会】やそれに率いられる人間の傲慢さや経済的合理性は資本主義陣営の盟主であるアメリカ合衆国に相応するものと捉えれば、意外と【真なるアビドス生徒会】の面々と心を通わせるのは簡単であった。

 

砂漠化によって砂隠れして影も形もなくなった時代はモンロー主義(孤立主義)の時代と考えれば、次からはルーズベルトの棍棒外交を修正した“世界の警察官”と称して世界各国で影響力を持ち続けようと積極的に介入を行ってきた覇権主義(hegemonism)の時代を復活させようとするだろう。

 

なにしろ、その正体は道理を説けば理解できる知性や潤沢な兵力と資金力を持ち合わせている経済的合理性に生きる資本主義の猛禽類なのだから、そうした歴史的事実を踏まえて好物となる餌を用意すれば容易に誘導することは所詮は人生経験の足りない生徒を相手にする北条先生からすれば容易かった。

 

それでも、好きなものを与えるだけで目先のことから誘導するのにも限界があった。そのプライドの高さから嫌いなものを遠ざけるべく動き出した時、政治に不干渉の立場を唱えている“シャーレの先生”の制止を振り切るほどの感情のうねりが発生してしまえば、もうそこからは止めようがなくなる。

 

 

――――――新しい時代の価値観と旧い時代の価値観とがぶつかり合い、トゥキディデスの罠に嵌まったのだ。*1

 

 

 

 

 

チュドーーーーーーーーーーン! ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 

黒見 セリカ「うぅ……」

 

奥空 アヤネ「あれだけ攻撃したのに、息すら上がってないなんて……」

 

間門(マカド) マニー(アマネ)「アハハハハハハハ! 楽しいネー! 今日はみんなにとって記念すべき日になったネー!」 ――――――カジノの都を支配する道化師は世界を嘲笑う!

 

間門 マニー「さあさあ、ドンドン盛り上がっていこうヨー!」ドゴンドッゴーン!

 

ロボット職員「やめろ! やめてくれ! やめるんだ! こんなことがいったい何になる!?」

 

間門 マニー「あ、ごめんネー。ヘリ3台が相手だったから、うまく手加減できなくてネー」

 

間門 マニー「でも、楽しんでもらえたよネー、空中爆発ショー!」

 

十六夜 ノノミ「や、やめてください! セリカちゃんとアヤネちゃんはホシノ先輩が本当に大事にしていた【アビドス】の未来を担う素晴らしい後輩なんです!」

 

間門 マニー「うんうん、知ってるヨー。だから、【真なるアビドス生徒会】の先輩として、ボクたちのやり方を身体に教え込んであげているんだよネー」

 

ロボット職員「は、はあ?」

 

間門 マニー「あれれー? まだ教えられてないのカナ、カナー? ボクたち【アビドス高等学校】が砂漠化が始まる前に最強校として君臨していた理由って本当に知らないのカナー?」

 

十六夜 ノノミ「し、知らないです、こんなやり方……!」

 

間門 マニー「じゃあ、教えてあげるヨー!」

 

間門 マニー「こうやってネー、自治区の一帯で実弾演習をして鍛えた兵隊さんをキヴォトス各地に送り込んでいたからなんだヨー! これでわかったよネー!」

 

ロボット職員「ええ!?」

 

十六夜 ノノミ「!!!?」

 

間門 マニー「ああ、安心してネー。壊れたら建て直して上げるから、みんなで景気よく街を壊そうネー! 最高に楽しいヨー! それを何度も自治区で繰り返して他の自治区でも同じようにやっていくんだヨー!」

 

十六夜 ノノミ「そ、そんなことのために新アビドス自治区を火の海に変えようと言うのですか!?」

 

ロボット職員「じ、自分が何を言っているのか、わかっているのか!?」

 

間門 マニー「わかっているヨー。ちゃんと【キヴォトス防衛軍】の管轄になっている場所は対象にしていないヨー! だから、ちゃんと みんな 避難できているよネー! 凄いでショー、ボクの爆弾捌き!」

 

ロボット職員「ま、まさか……!?」

 

十六夜 ノノミ「だから、【キヴォトス防衛軍】にまだ貸し出されている校舎は無事だったんですね……」

 

ロボット職員「し、シロコは!? シロコはどこだ!?」

 

十六夜 ノノミ「シロコちゃん!?」

 

間門 マニー「ああ、シロコちゃん! シロコちゃんネー! あの子ならボクの所に真っ先に来て『ボンッ!』だったネー!」

 

間門 マニー「そう言えば、シロコちゃんって常日頃から借金返済のために銀行を襲うことを計画していたんだってネー!」

 

十六夜 ノノミ「そ、それは……」

 

ロボット職員「………………!」

 

間門 マニー「だったら、良かったヨー! ボクの所にも来て銀行強盗をしようとしていたシロコちゃんだったら、これからドンドン強くなってキヴォトス中の銀行を襲ってくれる良い兵隊さんになってくれると思うナー!」

 

間門 マニー「えっとね、総帥が言うには【プライベートファンド】は総会の日に仕留めるから、【アビドス対策委員会】のみんなにはネー、手始めに神聖なるアビドス砂漠を穢した【セイント・ネフティス】と【ハイランダー鉄道学園】を襲ってもらうことになっているからネー! 張り切っていこうヨー!」

 

十六夜 ノノミ「!?!!」

 

ロボット職員「ふ、ふざけるなッ! たしかにノノミは親御さんとは道を違えることになったかもしれないけど、親に銃を向けるほど落ちぶれちゃいない! ノノミにそんな残酷なことを命令するな!」

 

間門 マニー「ええ? でも、キミたちが【アビドス高等学校】を自称しているってことは、そうやってキヴォトス中でブイブイ言わせたいと思っているんだよネー?」

 

間門 マニー「それとも、これまでの【アビドス生徒会(不法滞在者の詐欺集団)】と同じように【アビドス】の看板を使って甘い汁を吸うことだけを考えていたってことなのカナ、カナー?」

 

間門 マニー「じゃあ、ボクたちの法に則ってボクたちの自治区から不法滞在者の賊徒を追い出さないとダヨネー?」

 

間門 マニー「ボクたちのやり方を否定するってことは【アビドス高等学校】の歴史や覇権を否定するってことだけど、それってどうなのサー?」

 

ロボット職員「な、なにぃ!?」

 

 

十六夜 ノノミ「……どうしたら、止めてくれますか、こんなこと?」

 

 

間門 マニー「――――――『こんなこと』って?」

 

十六夜 ノノミ「お願いです。これ以上の破壊と暴力は止めていただけないでしょうか」

 

間門 マニー「そんなことをボクに言われても困るんだよネー。これは総帥からの命令で、聖地であるアビドス砂漠を砂漠横断鉄道とか言う粗大ゴミ置き場にしたことへの制裁なんだからサー」

 

十六夜 ノノミ「つまり、砂漠横断鉄道の再開発を止めることができれば、【ネフティス】と【ハイランダー】への襲撃は避けられると言うことですか?」

 

ロボット職員「――――――ノノミ!?」

 

ロボット職員「や、止めるんだ、ノノミ! ノノミは【アビドス生徒会】生徒会長になったばかりじゃないか!? 始まったばかりじゃないか!? まだ何も!」

 

十六夜 ノノミ「ごめんなさい、ガリバーさん。でも、こうするしか止める方法が思い浮かばなくて――――――」

 

間門 マニー「言っていることがよくわからないナー。砂漠横断鉄道の再開発を止めるために【ネフティス】と【ハイランダー】に襲撃を掛けるという流れだったと思うけどナー」

 

 

十六夜 ノノミ「私が直接【ネフティス】に赴いて砂漠横断鉄道の再開発を止めさせます」

 

 

間門 マニー「へえ」

 

十六夜 ノノミ「ですから、これ以上の破壊と暴力は止めてください! お願いです!」

 

ロボット職員「ノノミ! ダメだ、そんなこと!」

 

奥空 アヤネ「そうです! ノノミ先輩は私たち【アビドス高等学校】の生徒なんです!」

 

黒見 セリカ「だから、自分を犠牲にするやり方は――――――!」

 

間門 マニー「ねえ、ノノミちゃん。キミ、最高におもしろいネー。ボク、好きだヨー、そういう生き方」

 

十六夜 ノノミ「え」

 

 

間門 マニー「自分の都合のために周りの期待を裏切り続ける人生って、最高にスリリングでたまらなくて気持ちいいよネー!」

 

 

十六夜 ノノミ「!!!?」ゾクッ

 

ロボット職員「ダメだ! 耳を貸すな! 聞いてはダメだ!」

 

十六夜 ノノミ「えぇ?」

 

間門 マニー「わかるヨー! ボク、カジノの都【シーワ分校】の分校長だからサ、勝つまで止められないってことで絶対に賭けちゃいけないものまで差し出したのに、運命を変えることができずに破滅していく子たちをたくさん見てきたからネー!」

 

間門 マニー「でも、自分の全てを差し出して自分の全てを他人に握られる瞬間の“支配された感覚”は得も言われぬ絶頂へと導いてくれるんだヨー! 人間は支配されたい生き物なんだってことを実感させてくれるヨー!」

 

間門 マニー「ノノミちゃんもそうなんだよネー! 親の期待を裏切って【ハイランダー】ではなく【アビドス】に入学して、今度はみんなの期待を裏切って【アビドス】から【ハイランダー】に鞍替えして、自分だけにしか価値がない自己満足感を満たそうとしているんだもんネー!」

 

間門 マニー「どう考えても破滅しかない選択肢を選んで自分で自分を追い込むのって、『蛙の子は蛙』って言うけど、血は争えないもんだネー! キミたちは背徳感とスリルが病みつきなんだネー!」

 

十六夜 ノノミ「ち、ちがっ――――――」

 

間門 マニー「じゃあ、この場で一番信頼している大人の言うことに逆らうのはどうして? 後輩の言うことに耳を貸さないのはどうして? 親の言うことを聞かなかったのはどうして?」

 

十六夜 ノノミ「あ……」

 

 

ロボット職員「戯言を聞くのはもうたくさんだ!」ギュッ ――――――思わずノノミを抱き締めて距離を取る!

 

 

間門 マニー「おっと」

 

十六夜 ノノミ「が、ガリバーさん、あ、あの、私……」

 

ロボット職員「いいんだ。いいんだよ。何も間違ってなんかない、ノノミは……」ギュッ

 

間門 マニー「ああ、いいよネー。そうやって守ってもらえるのってサー。悲劇のヒロインをその場で演じられる辺り、【連邦生徒会】を騙してボクたち【アビドス】の看板を良いように利用してきた不法滞在者の詐欺集団の頭目にふさわしい才能だネー」

 

奥空 アヤネ「それ以上、何も喋らないでください!」バンバン!

 

黒見 セリカ「そうよ! 私たちのノノミ先輩に近寄るなあああああああああ!」バババババ!

 

間門 マニー「おお、まだ立ち上がれるのかい? いいネー、いいネー! もっともっと楽しもうヨー、破壊も暴力も! そうしたら生きていることが最高に楽しいヨー!」

 

間門 マニー「でも、まだまだ足りないカナー? 弱すぎるカナー?」キンキン・・・ ――――――銃を下ろして無防備な状態で銃弾の直撃を受けても平然としている!

 

奥空 アヤネ「ええ!?」

 

黒見 セリカ「そ、そんな……!?」

 

間門 マニー「ボクはネー、これでもカジノの都の支配人なんだよネー。ギャンブルの結果をひっくり返そうと暴れ回る負け犬がいっぱいだし、借金取りから逃げるために周りを巻き込む人間のクズもたくさんいて、ボクはそんな犯罪都市(クライムシティ)の秩序を規定する分校長だから、これぐらい強くないと務まらないんだよネー」

 

間門 マニー「もっとも、【シーワ分校】は兵隊さんを養成するために意図的に犯罪都市(クライムシティ)にしている場所だから、今日は新入りの歓迎会を兼ねて【アビドス高等学校廃校対策委員会】のみんなにボクがお手本を示してあげているんだヨー!」

 

間門 マニー「ほらほら! もっともっと楽しもうヨー!」バババババ!

 

奥空 アヤネ「ううっ!?」ドサッ

 

黒見 セリカ「きゃあああああ!?」ドタッ

 

ロボット職員「アヤネ!? セリカ!?」

 

十六夜 ノノミ「止めて、止めてください! お願いですから、本当に……!」

 

 

――――――新アビドス自治区は【アレクサンドリア財団】総帥:金獅子 シブキの命令によって火の手が上がっていた。

 

 

アビドス遠征によって平和と秩序を取り戻して再生の道へと進んでいた砂漠の街の各地で突如として爆発が起こり、これまで怪獣災害に向けた防災訓練に意識が割かれていた新アビドス自治区の人々は爆破テロの脅威に逃げ惑うこととなったのだ。

 

怪獣無法地帯と化したアビドス砂漠に隣接した場所だからこそ、【キヴォトス防衛軍】の防衛基地が置かれ、優先的に避難シェルターが整備されていたことで無事に避難者を収容することができたものの、かつてのキヴォトスでは日常茶飯事であったはずの銃声や爆発音がこうまで恐ろしく感じられるようになっていたことに誰もが驚くこととなった。

 

しかし、これはかつての繁栄と栄光が砂漠化によって全てが忘却の彼方へと追いやられた【アビドス】の地を地球人:北条 アキラが蘇らせたことによって起きてしまった惨劇でもあったのだ。

 

それは破壊と暴力こそが繁栄と栄光の源であったと言う忌々しい歴史を継承した【真なるアビドス生徒会】の生徒たちが起こしたものであり、これこそが現地を実効支配している【アビドス高等学校廃校対策委員会】を特別措置で自分たちの仲間に迎え入れるための歓迎会であり、通過儀礼であり、踏み絵であったのだ。

 

新アビドス自治区が本来は誰のものであるかを思い知らせるべく、そのために遣わされたのが【ゲヘナ学園 シーワ分校】分校長:間門 マニー(マカド アマネ)というカジノの都の支配人であるホワイトフェイスの道化師(ピエロ)であったのだ――――――。

 

 

それは【アビドス生徒会】副生徒会長:小鳥遊 ホシノが記憶喪失を起こして精神退行までしてしまったことで代表交代を余儀なくされ、新たに【アビドス生徒会】生徒会長に選出された十六夜 ノノミと立会人であるロボット職員:マウンテンガリバーが所用で校舎を離れている時だった。

 

 

【アビドス対策委員会】を訪ねてきた奇妙な来客を真っ先に警戒した砂狼 シロコだったが、それを制して ひとまず話を聞くために部室に案内した奥空 アヤネと黒見 セリカに対して【シーワ分校】分校長を名乗るホワイトフェイスの道化師(ピエロ)は面白可笑しく語りかけて軽快な話術で緊張を解していったのだった。

 

そして、どういった経緯でアビドス遠征が始まったのか、知る人ぞ知る前日譚が語られることになり、北条先生が【真なるアビドス生徒会】に辿り着いてアビドス遠征の許可と支援を取り付けるきっかけとなったのが他ならぬ【ゲヘナ学園 シーワ分校】であったことを嬉々として語る様に警戒心を捨てきれない砂狼 シロコも一安心することとなった。

 

なぜなら、ホワイトフェイスの道化師(ピエロ)は熱のこもった視線を記憶の中の北条先生の勇姿に向けており、白化粧の上からでもわかるぐらいに紅潮した恍惚の表情がまさしく恋する乙女のものであったからなのだ。

 

最初の怪獣:クレッセントが出現してキヴォトスが滅亡寸前に追いやられたXデーに至る前の冒険譚;クレッセントが原因のキヴォトス各地の異常現象の調査のために【アビドス】に隣接するカジノの都【ゲヘナ学園 シーワ分校】も訪れることになった北条先生は『そこでは賭け事で全てを決める』と言う決まりのカジノの都の力の論理に真っ向から立ち向かって、最強の賭博師でもある分校長:間門 マニーを相手に一世一代のポーカー勝負で小細工なしの運否天賦で打ち破っていたのである。

 

それは怪獣退治の専門家として喚ばれているのに肝腎の怪獣がどこにもいない謎の超巨大学園都市:キヴォトスにおいて自分の存在が本当に必要になると言うのならば、普通に考えて損耗率が5割を超えていそうな過酷な怪獣退治の戦場で異常なまでに死傷率が低かった歴代の防衛チームの隊員たちと同じぐらいの運勢があるという確信とも自惚れともとれる信仰が地球人:北条 アキラにはあったのである。

 

そのため、最強の賭博師のホームグラウンドでのアウェイゲームとなった万に一つ勝ち目のないポーカー勝負の必勝法が、まさかの、まさか、文字通りに運を手繰り寄せて最初に配られた手札でロイヤルストレートフラッシュを完成させる神業(トリック)とイカサマを見透かした思わせぶりな態度で場の空気を支配する気迫(ブラフ)であったのだ。

 

その場にいる全員を呑み食らった大勝負の結果、北条先生は【シーワ分校】や【アビドス高等学校】に関する情報提供を勝ち取った他、最強の賭博師であったホワイトフェイスの道化師(ピエロ)すらも『この人には絶対に勝てない』と思わせる神業(トリック)気迫(ブラフ)を見せつけたことで自分を完全に支配してくれる存在に心を奪われ、“王”と崇めて絶対服従を誓ったことを恍惚とした表情で語るわけである。

 

それには話を聞き入っていた【アビドス対策委員会】もドン引きだったものの――――――、話は【キヴォトス防衛軍】の戦力が十分に揃ったということで、いよいよキヴォトス各地の未調査領域の調査に乗り出すことになり、未調査領域100%の広大なアビドス砂漠が最初に選ばれたことによりアビドス遠征が始まる(くだり)となった。

 

未調査領域100%の場所の調査を実施するに当たって少しでも現地の情報が得るべく、再び【シーワ分校】を北条先生が訪れたことで【真なるアビドス生徒会】の一員であった間門 マニーはアビドス遠征の詳細を聞かされることになり、

 

これは『悲願であった【アビドス】復興が果たされるかもしれない』ということで、間にいくつもの難行が挟まったものの、間門 マニーの紹介で【真なるアビドス生徒会】の代表である【アレクサンドリア財団】総帥:金獅子 シブキの許に北条先生は辿り着いて、アビドス遠征で前人未到の数々の奇跡を起こすこととなったのである。

 

それについては北条先生を紹介できた【シーワ分校】分校長:間門 マニーとしては鼻が高く、もう間もなくでアビドス遠征という偉業が果たされるわけなので、【アビドス】の総力を上げて北条先生を称えるための式典の準備が進められていることを【アビドス対策委員会】に打ち明けると、それに反対する者はいなかったわけなのだが――――――。

 

 

――――――で、話は変わるんだけどサー? 北条先生の偉業を称えるアビドス遠征完遂記念の式典の前に、後顧の憂いを断つ必要があるんだけど、手伝ってくれないカナ、カナー?

 

 

 

 

 

バキューーーーーーーン! キィイン!

 

 

小鳥遊 ホシノ「きゃあああ!」ビクッ

 

朝霧 スオウ「大丈夫か、ホシノ!」ギュッ

 

空崎 ヒナ「くっ! いったいどこから狙ってきているの!?」

 

朝霧 スオウ「いいかげんに出てこい、卑怯者! あちこちで火の手が上がったのは、狙いは私か! ホシノか! ヒナか!?」

 

小鳥遊 ホシノ「ねえ、あれって――――――?」

 

空崎 ヒナ「……あれはドローンね」

 

朝霧 スオウ「……ようやくお出ましか」

 

――――――

江ノ口 メト(えのくち メイヤ)「突然のAW-Magnum、どうかお許しいただきたい」

 

江ノ口 メト「ドローン越しで恐縮ですが、お初にお目にかかります。私は【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メトと申します」

 

江ノ口 メト「本来は天上人(トップス)である私が出る幕ではなかったのですが、下層民(サテライト)の要注意人物リストに載っている3人が一緒にいるということで足止めをさせてもらっています」

――――――

 

空崎 ヒナ「どういうこと? どうして【アレクサンドリア分校】がここで出てくるの? 【トリニティ総合学園】が新アビドス自治区で爆破テロを指示しているの!?」

 

――――――

江ノ口 メト「誤解があるようですが、これは爆破テロではありません。アビドス自治区で伝統的な実弾演習です。それを現代に蘇らせた記念すべき第1回となります」

――――――

 

朝霧 スオウ「――――――!」

 

朝霧 スオウ「ま、まさか、そんな――――――、それは本当なのか!?」

 

小鳥遊 ホシノ「何か知っているの、スオウお姉ちゃん?」

 

空崎 ヒナ「聞かせて、スオウ。【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】と言えば、【アビドス】に隣接した 自治区で一番の富裕層が住まう超高級住宅街で最古の神学校を囲った場所であると同時に、【ティーパーティー】や【シスターフッド】が支配している中央の政治や動向にまったく無関心の閉鎖的なコミュニティとだけ聞いているわ」

 

朝霧 スオウ「そうだ。その認識で間違ってない。【アレクサンドリア分校】は古来から【トリニティ総合学園】から独立した勢力を持っていたわけだが、それも当然の話だ。【アレクサンドリア分校】は元々は【アビドス高等学校】の最大版図に含まれていた分校の1つだったからだ」

 

空崎 ヒナ「それって、まさか――――――」

 

朝霧 スオウ「ああ、【トリニティ総合学園】に編入された後も【アビドス高等学校】の影響下にあったことをいよいよ隠す必要がなくなったというわけだな」

 

朝霧 スオウ「北条先生の登場によって【アビドス】復興が現実のものになろうとしたことで、かつてキヴォトス各地をその圧倒的な兵力と資金力で震え上がらせた覇権を取り戻そうとしている」

 

朝霧 スオウ「そして、長い潜伏の末に復活の狼煙を上げる最初の標的にされたのが【ハイランダー鉄道学園】と【セイント・ネフティス】というわけだ。やつらにとって聖地であるアビドス砂漠に砂漠横断鉄道なんていう粗大ゴミ置き場にしたことへの神罰だそうだ」

 

空崎 ヒナ「…………!」

 

朝霧 スオウ「これには私も本当に驚いたが、長老からかつての【アビドス】の恐ろしさを聞かされた【ハイランダー】の理事会の連中に至っては椅子から転げ落ちるほどの衝撃を与えた」

 

朝霧 スオウ「そんな連中が 今更 歴史の表舞台に返り咲くことになれば、キヴォトスの力の均衡(パワーバランス)は一気に崩されて、失踪した“連邦生徒会長”が推進していたエデン条約も画餅に帰すかもしれないな……」

 

朝霧 スオウ「だから、先生は起こしてはならないものを目覚めさせてしまったんだ……」

 

空崎 ヒナ「そんなことが――――――」

 

空崎 ヒナ「ううん、先生がしたことは絶対に間違ってなんかない!」

 

空崎 ヒナ「それとこれとでは話がちがうわよ、スオウ」

 

朝霧 スオウ「だが、完全に無関係というわけでもないんだ」

 

小鳥遊 ホシノ「……つまり、アレは悪い奴ってこと?」

 

朝霧 スオウ「ああ、悪い奴らだ」

 

――――――

江ノ口 メト「何やら一方的な物言いですが、己を正義と定義するのならば、あなたたちのどこに正義があるのかを証明してもらいましょうか?」

 

江ノ口 メト「教えてください、空崎 ヒナ。キヴォトス征服の野心を隠そうともしない【万魔殿】議長:羽沼 マコトの命令に従い続けることは明確な悪ではないのでしょうか。なぜ悪を排して正義を世に広める努力をしないのでしょうか」

 

江ノ口 メト「答えなさい、朝霧 スオウ。各路線ごとの問題を理解することなく現場を振り回してばかりの無能な【CCC(中央官制センター)】を排することなく、常に批判的な批評家の立場に甘んじているのはなぜですか」

 

江ノ口 メト「みなさん、目の前にいる身近な悪を野放しにしているのは、本当は正義も秩序も愛していないからなのでしょう?」

――――――

 

小鳥遊 ホシノ「え」

 

空崎 ヒナ「それは……」

 

朝霧 スオウ「黙れ。それこそ、それとこれとでは話がちがう」

 

――――――

江ノ口 メト「それから小鳥遊 ホシノさん。今日まで【アビドス高等学校】の看板を背負ってよく頑張って来ましたね。記憶喪失になって精神退行にまでなって本当にお労しい限りです」

――――――

 

小鳥遊 ホシノ「あ、はい……」

 

――――――

江ノ口 メト「ですが、『私たちに無断で【アビドス高等学校】の看板を使っていた』という悪いことをしていた自覚はありましたか?」

――――――

 

小鳥遊 ホシノ「え?」

 

――――――

江ノ口 メト「ホシノさんは悪い子です。悪いことをしたら謝るのが人の道ですよ」

 

江ノ口 メト「ですので、一度足りとも手放したことがない私たちの土地に無断で砂漠横断鉄道なる粗大ゴミを生み出しておいて今まで放置し続けてきた悪党である【セイント・ネフティス】と【ハイランダー鉄道学園】に罰を与えるのに協力してください」

 

江ノ口 メト「それであなたたち【アビドス高等学校廃校対策委員会】の罪は許されますよ」

――――――

 

小鳥遊 ホシノ「え、でも、それってノノミお姉ちゃんとスオウお姉ちゃんの――――――」

 

空崎 ヒナ「スオウ」

 

朝霧 スオウ「…………これが【アビドス】の名残、か」

 

 

一方、記憶喪失の上に精神退行までしてしまった【アビドス生徒会】副生徒会長:小鳥遊 ホシノを心配して ここ しばらく様子を見に来ていた【風紀委員会】風紀委員長:空崎 ヒナと【ハイランダー監理室】管理監督官:朝霧 スオウの下にも刺客が送り込まれていたのだった。

 

それは【真なるアビドス生徒会】を擁する【アレクサンドリア財団】の本拠地となる【アビドス高等学校】に隣接した 最古の神学校を囲った もっとも裕福な超高級住宅街にある歴史ある古都【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】――――――、そこに集められた価値あるものを管理している【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メト(えのくち メイヤ)の襲撃であった。

 

今回の記念すべき【アビドス高等学校】伝統の自治区一帯を丸々使った軍事演習の復活第1回の目的とは、傘下に組み込まれることになる【アビドス高等学校廃校対策委員会】の面々に【真なるアビドス生徒会】の流儀(やり方)を身体に刻み込ませるための躾のようなものであり、【ハイランダー鉄道学園】【セイント・ネフティス】への報復攻撃に使う兵隊に仕立て上げるためのものであった。

 

しかし、実質的に最後の【アビドス生徒会】の役員だった“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノの戦闘力は【真なるアビドス生徒会】でも一目置かれており、記憶喪失になった上に精神退行までした幼気な重症患者を労る目的も兼ねて、今回の軍事演習を妨害されないように監視する役割が必要となっていたのである。

 

そのため、【真なるアビドス生徒会】の復活を宣言する意味も込めて【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メト(えのくち メイヤ)が、ドローンの投影モニター越しではあるものの、自ら姿を現して体を張って時間稼ぎをすることとなったのである。

 

かつてキヴォトス最大の勢力を誇った圧倒的な兵力と資金力の源とは経済的合理性に裏付けされた計算高さにあり、“アビドスの英雄”小鳥遊 ホシノを【アビドス対策委員会】から引き離すことを念頭にして立ち回り、ここまで“ゲヘナ最強”と名高い空崎 ヒナや“傭兵バイトの出世頭”として一部界隈で名が知られている朝霧 スオウという強力な護衛が側に居ても狙いを悟らせない完璧な誘導をしてみせたのだ。

 

つまり、『自分から姿を見せた』というのは作戦が最終段階となって目的が果たされたという勝利宣言でもあり、【真なるアビドス生徒会】に名を連ねる天上人(トップス)下層民(サテライト)に言葉を投げかけたのは、時間稼ぎや持ち前の知的好奇心を満たす以上に軍事演習によって今以て火の手が上がる自治区で何の働きもできなかった護衛2人の無能ぶりを嘲笑っていたからなのだ。

 

いかに現在のキヴォトスが砂漠化以前の【アビドス高等学校】が健在だった頃と比べて平和ボケしているかがわかるわけであり、この様子なら再び【アビドス高等学校】がキヴォトスで覇を唱えることも不可能ではないという確信を得たのである。

 

それは個人の強さを言っているのではない。個々の強さなどキヴォトス最大の勢力を築き上げた歴史と信仰を受け継いで自分たちの繁栄と栄光の源がなんであるかをよく知る者たちからすれば些細なものでしかない。

 

 

――――――その上で、自分たちの正当性や正義を問うのだった。

 

 

もちろん、この場においては紛れもない詭弁ではあるものの、積み重ねてきた歴史と揺るぎない信仰を継承して迷いのない強さを体現している【真なるアビドス生徒会】の面々としては、下界で暮らす下層民(サテライト)にはそれがあるのか、敵とみなせるだけの脅威が存在するのかを可能な限り知っておくべきだと言う慎重さが生まれていたのだ。

 

なにしろ、原因不明の砂漠化によって永遠に続くかと思われた繁栄と栄光を奪われてしまった【アビドス高等学校】を復活させるかもしれない偉大なる巨人(異邦人)と出会ってしまったわけなのだから。

 

自分たちを“天上人(トップス)”と位置づけて それ以外を“下層民(サテライト)”と見下すことで 古代からの伝統と信仰を維持するためのアイデンティティ(精一杯の強がり)を形成してきた 傲慢極まりないディアスポラ系キヴォトス人にとっては、まさに黒船来航や青天の霹靂とも言えるカルチャーショックがもたらされることになったのである。

 

 

いつか復活の狼煙を上げた時に使う兵隊を養成するために治安を最悪にしているカジノの都【ゲヘナ学園 シーワ分校】から紹介状を持たされて、中央の政治から完全に切り離された超高級住宅街の世間から隔絶された自治区(ゲーテッドコミュニティ)である【トリニティ総合学園 アレクサンドリア分校】への入場許可を得た地球人:北条 アキラはそこでも奇跡(トリック)気迫(ブラフ)で人々を魅了することになったのである。

 

 

と言っても、やっていることはソクラテス式討論という古来からある弁証法で、地球の文化を宇宙に誇れるものだと豪語するほどに地球人の代表を気取る(ウルトラマンに憧れた)超エリート社会人と、たかだか【アビドス高等学校】という1つの地域の歴史と信仰だけを継承する世間知らずの学生によって行われた討論大会の結果と過程は言うまでもないだろう。

 

なにより、初めて【シーワ分校】を訪れた時から時間が流れ、キヴォトスの頂点に立つ存在にまで昇りつめてから【アレクサンドリア分校】を訪れたのだから、キヴォトスでも屈指の犯罪率を誇るマンモス校【ゲヘナ学園】やそのライバル校【トリニティ総合学園】の生徒たちから絶大な支持を受けるほどの人望を得ているのだ。

 

それは今更な話である。自分たちを天上人(トップス)と称して他を見下して過去の栄光にしがみつくだけの【真なるアビドス生徒会】のディアスポラ系の生徒たちの視野の狭さや未熟な情緒も、本職が小学校の先生であると同時にマイナスエネルギー対策の第一人者を自負する地球人:北条 アキラならば、子供心に意のままに触れることができるのだから。

 

そのため、自分たちを天上人(トップス)と位置づけて中世の城郭都市に倣った塀で囲われた超高級住宅街の中で完結された世界でずっと生きてきた者たちが、紹介状を持っていたとしても突然やってきた余所者を今すぐにでも自分たちが住まう聖域から追い出そうとするものの、それを人格陶冶で磨いてきた器量で軽やかに躱していくのだ。

 

そして、余所者を排除する目的で失言を引き出そうと仕掛けられた討論大会であったが、大人としての圧倒的な知識量とこれまでキヴォトスにはなかった斬新な切り口で会場を湧かせる一流のエンターテイナーでもあった北条先生は役者が違った。

 

知の宝庫を司る筆頭書記官として自身の才知を誇っていた【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メトであったが、何を言っても北条先生に流れを握られてしまう焦燥感と生まれて初めて味わう敗北への恐怖に切羽詰まって【トリニティ総合学園】においては至上の命題とも言える『楽園を実現するためにはどうすればいいのか』という禁断の問を発してしまうのであった――――――。

 

数十年前の砂漠化で鳴りを潜めることを余儀なくされても自分たちのことを選ばれた民としての確たる誇りと信仰を維持し続けていた【真なるアビドス生徒会】のディアスポラ系キヴォトス人ではあったものの、

 

それでも、書類上の正式な所属はキヴォトスでも指折りのミッション系お嬢様学校【トリニティ総合学園】であり、遥か昔に【アビドス高等学校】が三角貿易による経済圏“アビドス・トライアングル”を完成させるためにわざと盗らせた 今も昔も【真なるアビドス生徒会】への忠誠を誓う 面従腹背の場所だとしても、

 

それこそ、生まれる前から首都機能移転を果たしていたぐらいに【トリニティ総合学園】の分校としての歴史は長かったため、アビドス生としての誇りと信仰を持ちながらもトリニティ生としての感覚や趣向に染まっている部分もあり、宗教的命題に対する関心も人一倍あったわけなのである。

 

だからこそ、何でも知っている風を装って 人よりも遥かに優れた才知を誇っている自身を論戦で追い詰めて 認めたくない敗北感や惨めな思いを抱かせる 目の前の大人が憎いと思うのと同時に、知の宝庫を司る筆頭書記官として何か新しい発見や知識が得られるのではないかという知的好奇心とが二律背反となって、誰にも答えることができないために討論の議題に出すべきではない永遠の命題について、迂闊にも、欲に釣られ、誘惑に駆られて、つい訊いてしまったのだ。

 

しかし、そこにどれだけの戸惑いや葛藤が込められた問だったのか、それを汲んで答える側には全身全霊で取り組んで欲しいという願いも虚しく、地球人:北条 アキラはそんなような問であっても何でもないかのように答えてみせたのだから、【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メトのこれまでの価値観や人生観が完全に崩壊することになったのである。

 

 

――――――それは非常にシンプルな答えだったのだ。しかも、それは言葉などではなく、実践であった。

 

 

必死の思いで投げかけられた問に対し、誰もが注目する中、北条先生は事も無げに聖書のページを手繰った後『会場が盛り上がって暑くなったので上着を脱いでいいか』と訊いた流れに、誰もが意表を突かれることになったのだ。

 

そう、心はアビドス生だと主張していても表向きはミッション系お嬢様学校のトリニティ生であり、それも【トリニティ総合学園】でも屈指の富裕層が住まう閉鎖空間で育った文字通りの箱入り娘しかいないのが【アレクサンドリア分校】であるため、

 

その場で堂々と服を脱ぎ始めるという凶行に深窓の令嬢たちが盛大に悲鳴を上げてしまうわけなのだが、実際には北条先生は上着しか脱いでいない。

 

が、それは投影モニターで一瞬だけ黒いラッシュガード姿になるという奇策であり、ラッシュガードの上からでもわかる逞しい肉付きが目に焼き付いてしまい、冷静な判断力を奪われた中でいけしゃあしゃあと『何をそんなに騒いでいるのか?』と訊いてくるものだから、当然ながら破廉恥な行いについて問い質す声が出てきてしまう。

 

しかし、落ち着いて北条先生の方を見ると 北条先生は本当に上着を脱いだだけでしかなく、逆に『何が破廉恥なのか?』を問い詰める流れが作られてしまい、討論相手である江ノ口 メトは呂律が回らないほどに取り乱しながらも『ここで一言も発さなかったら負ける!』という必死の思いで言われた通りの質問をする他なかったのである。

 

つまり、これこそが詰めであり、超高級住宅街に住まう富裕層の見栄の張り合いとして自慢のコレクションを披露し合ったことで自治区のあちこちで博物館が建てられるようになった知の宝庫【アレクサンドリア分校】の長人たる分校長:江ノ口 メトへのチェックメイトとなった。

 

その答えと言うのが『襟元を開ける』という言葉が“隠し事をせずに心の中を打ち明ける”という意味を持ったのなら、『知恵の実を食べる前の()()()()()()をみんなができるようになれば楽園は実現される』というあまりにもあんまりな暴論であり、小道具として用意した聖書の例の(くだり)を指さしながら『聖書に書かれていることをそのまま受け取ったら、たしかに楽園追放に至る前の状態こそが楽園そのものである』と言う屁理屈が認められてしまうのだった。

 

ただでさえ冷静ではなかったのに それが完全に正しいように思わされてしまった【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メトはこの時に得た敗北感よりも体中に広がった開放感にいつしか逸楽を覚えてしまうのであった。

 

いや、投影モニターで破廉恥な姿を見せつけて相手の動揺を誘う卑劣な戦法を地球人:北条 アキラがするはずがなかったのだ。本当に『襟元を開ける』例えの実践から回答に繋げるつもりだったので、演出としては上着を脱ぐだけで十分だったのだ。

 

ただ、この瞬間に至るまでの現地のお嬢様方の客人に対する礼儀がなっていないことに対する鬱憤が北条先生の同行者の中にあったのなら――――――。

 

しかし、この時に得た命題に対する答えと乙女の純情から産声を上げた開放感からイケナイ感情に目覚め、【アレクサンドリア分校】分校長:江ノ口 メトは達してしまったのだ。

 

討論大会を終えた江ノ口 メトは上気した表情のままに『襟元を開ける』ために服を脱ぎ出すことになり、自分と言うものを見せようとしてきたのだった。この人になら、自分の全てを見せてもいい。いや、見て欲しい――――――。

 

何がこうさせたのかを瞬時に理解して刺激が強すぎたことに慌てた北条先生は責任を感じて、公序良俗を守りつつ自分らしさを表現するための方法としてファッション論の講義を開くことになり、これが更なる波乱を呼んだのは別の話である。

 

――――――だから、先生と出会って壁の外の大きな世界に触れたことで、知の宝庫と呼ばれた小さな世界を飛び出していく開放感と知の探求への征服欲が大きな世界へと溢れだそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――姫矢さん。

 

 

――――――姫矢さん。

 

 

――――――姫矢さん。

 

 

戦場カメラマン「うぅ……」

 

戦場カメラマン「ここは……?」

 

梔子 ユメ「あ、良かった、姫矢さん。やっと起きてくれた」

 

戦場カメラマン「……ゆ、ユメ? ユメなのか?」

 

戦場カメラマン「ん?」

 

 

忘れてはならない声に導かれて目覚めると、戦場カメラマン:姫矢 ジュンは広大な砂漠の中を流れる雄大な河川の辺りのヤシの木の陰に寝そべっていたことに気づいた。

 

そして、河の向こう岸には【アビドス生徒会】生徒会長:梔子 ユメが最後に見た姿とまったく変わらない屈託ない笑顔を浮かべてこちらに呼びかけていた。

 

まるでエジプトのナイル川沿いを思わせるヤシの木の並木で身を起こして状況を理解するに連れて、梔子 ユメとの距離を実感した途端、少女の声が遠退いていくのが感じられた。

 

それに慌てた姿をカメラに収めるように向こう岸の梔子 ユメに意識を集中させると、まるで目の前にいつもいつも傷だらけの笑顔を絶やさなかった芯の強い女の子の気配を感じられるようになった。

 

 

梔子 ユメ「ああ、良かった。姫矢さん。姫矢さんだ」

 

戦場カメラマン「……ユメなんだよな?」

 

梔子 ユメ「うん。そうだよ、姫矢さん。私は梔子 ユメです」

 

戦場カメラマン「……そうか」

 

戦場カメラマン「……また会えてよかったよ」ググッ ――――――何かを悟り、その実感から涙腺が込み上げる。

 

梔子 ユメ「うん!」

 

梔子 ユメ「それでね、あのね、姫矢さん。お願いがあるの」

 

戦場カメラマン「何だ、ユメ?」

 

 

――――――“私”を止めて欲しい。ううん、あれは“私”であって()()()()()()()()()。ホシノちゃんやみんなを苦しめるだけの存在(もの)

 

 

梔子 ユメ「だから、お願い。今もキヴォトスで一所懸命に生きているホシノちゃんやみんなを助けてあげて」

 

梔子 ユメ「それだけが私の――――――」

 

梔子 ユメ「姫矢さん?」

 

戦場カメラマン「――――――わかっている、ユメ」ナデナデ

 

戦場カメラマン「……よく頑張ったな、今まで」

 

梔子 ユメ「ありがとう、姫矢さん。大好きです、姫矢さん。ホシノちゃんと同じぐらいに」

 

梔子 ユメ「……よかった。間違ってなんかなかったよ、今まで」

 

戦場カメラマン「……うん」

 

戦場カメラマン「ん?」

 

梔子 ユメ「あれは――――――!」

 

 

――――――広大な砂漠に突如として砂嵐が吹き荒れる。あれはアラビア語で“50”を意味するハムシーンなのか。

 

 

戦場カメラマン「……砂嵐;エジプトなら“ハムシーン(50日続く砂嵐)”と言ったところか」

 

梔子 ユメ「――――――セト、あなたは今も彷徨い続けているの?」

 

戦場カメラマン「……ユメ?」

 

梔子 ユメ「()()に伝えて。世界の全ては私たちキヴォトス人が積み重ねてきたものが形となって現れた表象;これから現れるものはキヴォトス人が積み重ねてきた罪業が形となって現れた人類悪なの」

 

梔子 ユメ「キヴォトスで栄華を極めた【アビドス】から滅ぶことになったのも、全ては因果応報・善因善果・悪因悪果の因果の法則によるもの」

 

梔子 ユメ「それでも、生きとし生ける者の中で生かされる者はすでに選別されていて、これから篩にかけられることになる」

 

 

梔子 ユメ「――――――これはもう避けられないことなの」

 

 

梔子 ユメ「でも、()()はその身を犠牲にすることで次の可能性を引き出すことができた。破滅を救うためのチャンスを引き出すことができた」

 

梔子 ユメ「だから、人類発祥の地【アビドス】で起きることは全て未来の予言;未来で起きることの雛形(原型)となって、最終的に死んだ者たちが蘇ることになる奇跡に繋がる」

 

戦場カメラマン「なら、俺の目の前にいるきみは――――――?」

 

 

梔子 ユメ「――――――梔子 ユメの死も全てはそういうことなの。そういう巡り合わせなの」

 

 

戦場カメラマン「…………そうか」

 

梔子 ユメ「だから、梔子 ユメ()の人生というのはセラちゃんと同じ」

 

梔子 ユメ「セラちゃんとの出会いと別れが、姫矢さんを“姫矢 ジュン(姫矢さん)”にして、そこから“光”を繋ぐことになったでしょう?」

 

梔子 ユメ「それが今世;キヴォトスに肉体を持って生まれた“梔子 ユメ()”の役割で、過去から託されてきた“光”のバトンを最終走者(アンカー)の役割を持った“小鳥遊 ホシノ(ホシノちゃん)”に渡すまでが大きな天命だった……」

 

 

梔子 ユメ「でもね、これはみんながずっと願って辿り着いた結論(未来)だったんだよ」

 

 

戦場カメラマン「え?」

 

梔子 ユメ「――――――過去は変えることはできない。もう運命(結論)づけられちゃったから」

 

梔子 ユメ「そうだよね、姫矢さん?」

 

戦場カメラマン「ああ。過去はどうあっても変えることはできない」

 

戦場カメラマン「だからこそ、過去となっていく現在をかけがえのないものとして大切にして生きていくべきなんだ」

 

梔子 ユメ「じゃあ、それを裏返すと、未来が運命(結論)づけられた過去を生きた人たちは『みんなで選んだ未来を運命(結論)づけることができた』ってことにならない?」

 

戦場カメラマン「!」

 

 

梔子 ユメ「そう。だから、これは()()()()()()()()()()なの。そこに躊躇いなんてないのだから」

 

 

戦場カメラマン「………………」

 

梔子 ユメ「でも、そうなると残されていった者たちは悲しみに暮れることになる」

 

梔子 ユメ「それを慰めて過去(原因)未来(結果)を結ぶ架け橋となる現在(方程式)を完成させないと、運命(結論)づけられた奇跡は容易く覆されることになっちゃう」

 

梔子 ユメ「だから、“梔子 ユメ()”だったの。“大切な人を失った痛み()”が未来(結論)に必要だったの」

 

 

梔子 ユメ「そして、“梔子 ユメ()”から死と生を超越した次元からやってきた“存在()”が()()に宿ることになった」

 

 

戦場カメラマン「……そういうことだったのか」

 

戦場カメラマン「だから、アビドス遠征の締めは“アビドス砂祭り”の復活――――――、復活祭――――――」

 

梔子 ユメ「見て、姫矢さん」

 

戦場カメラマン「ん? あれは――――――?」

 

 

――――――光り輝く巨大な環が空に浮かぶ。

 

 

梔子 ユメ「あれがこの運命(結論)に達するまでに紡がれた人々の想いが環となった“円環の理”なんだけど、」

 

梔子 ユメ「()()が生み出した“光”が外から“円環の理”の中心に来たことで完全な円に谷が生まれて形が歪んだかと思うと、2つの“円環の理”が“光”で結ばれた“円谷の理(メビウスの輪)”が生まれたよね」

 

戦場カメラマン「ああ。まるで細胞分裂したかのようだ」

 

 

梔子 ユメ「――――――これが無限の未来です」

 

 

戦場カメラマン「そうか。これが無限の未来の雛形(原型)か」

 

梔子 ユメ「でも、人々の想いが未来を形作るなら、邪悪な意志があるべき未来を歪めることだってできる」

 

戦場カメラマン「それと戦うために人々の想いによって喚ばれた一人が俺というわけなのか」

 

戦場カメラマン「だから、俺はユメやホシノと出会って、またこうして――――――」

 

梔子 ユメ「はい」

 

梔子 ユメ「見てください。この惑星に巣食う邪悪の種が芽吹こうとしています」

 

梔子 ユメ「あれはその内の1つ――――――」

 

 

――――――土塊の魔王:禍蔵鬼(まがぐらき)

 

 

戦場カメラマン「……あんなものが生まれようとしているのか。スペースビーストとは比べ物にならない威圧感だ」

 

梔子 ユメ「いいえ。まだあれは物質界に顕現する前の状態。卵から孵化する前の未熟な状態」

 

戦場カメラマン「わかった。あれを倒せばいいんだな」

 

梔子 ユメ「はい。それもお願いです――――――」

 

梔子 ユメ「あ」

 

戦場カメラマン「どうした、ユメ?」

 

梔子 ユメ「うわああ! ごめんなさい、姫矢さん! お願い、1個だけじゃなかった!」アワワ・・・

 

戦場カメラマン「なんだ、そんなことか」

 

戦場カメラマン「いいんだ。これが俺が戦っている宿命だ」ニコッ

 

 

――――――こんな形にはなってしまったが、また会えてよかったよ、ユメ。

 

 

鞘を左手で持って左腰に構え!

 

右腕で鞘から短剣を前方に引き抜き!

 

短剣を左肩に当て、右腕を伸ばして空に掲げた!

 

 

NEXUS それは受け継がれてゆく魂の絆

 

 

 

 

 

ロボット職員「――――――姫矢さん?」ドクン!

 

 

北条先生「……今もどこかで戦っているのか、姫矢さん」ドクン!

 

 

ロボット職員「なら、僕も負けるわけにはいかない」

 

 

北条先生「怪獣災害は怪獣退治の専門家に任せて、独立自尊は自分たちの手で掴み取っていくんだ」

 

 

ロボット職員「誰もが“光”になれるのなら――――――!」

 

 

北条先生「宇宙の彼方から僕たちに愛と勇気を教えにやってきてくれたのだから――――――!」

 

 

――――――ウルトラマンは神ではない。どんなに頑張ろうと、救えない命もあれば、届かない想いもある。

 

 

――――――大切なのは最後まであきらめないこと。

 

 

 

*1
従来の覇権国家と台頭する新興国家が戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す。アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語。

この概念は紀元前431年にアテネとスパルタの間でペロポネソス戦争が勃発したのは『スパルタがアテネの勢力拡大を恐れていたからである』と言う、

実際にペロポネソス戦争に参加したアテネの将軍であり 追放刑を受けてスパルタの支配地にも逗留した経験によって 双方を客観的に観察することができた古代アテネの歴史家:トゥキュディデスの示唆に由来する。




-Document GUYS feat.LXXX No.17-

土ノ魔王獣:マガグランドキング 登場作品『ウルトラマンオーブ』第2話『土塊の魔王』登場
土のエレメントを司る魔王獣であり、世界を滅ぼそうと破壊の限りを尽くしていたが、事態を察知して結集した光の巨人:ウルトラマンたちとの壮絶な戦いの末に封印された魔王獣の1体。
『ウルトラマンオーブ超全集』によると、その正体は遥か古代の地球に飛来して寄生した大魔王獣:マガオロチの卵のエネルギーが地球のエレメントと結びつき誕生した、謂わば「大魔王獣の子供達」であり、同時に「歪められた地球の分身」。
その性質上、地球の環境に与える影響が大きく、魔王獣戦役でウルトラマンたちが殺害ではなく封印と言う形に留めたのも、魔王獣が失われる事で当時の不安定な地球環境に大きな影響を及ぼしてしまうのを避けるためであったとされている。
事実、元となった怪獣の出自は全てが宇宙であり、文字通り地球生まれの宇宙怪獣ということになる。
全体的なフォルムは『ウルトラマンギンガ』に登場したスーパーグランドキングに酷似しているが、体色は黒鉄色の無骨な配色になり、顔つきも初代グランドキングに近い姿になっている。
また、頭部には魔王獣に共通する特徴である赤色結晶:マガクリスタルが付いている。

1体1体が嘘偽りなく世界を滅ぼす能力を持つ魔王獣らしく、全身の装甲は初代グランドキングと同様に非常に頑強で、オーブの肉弾攻撃をを受けても微動だにせず、逆に攻撃を加えたオーブの方が痛がっていたほどであり、スペリオン光線ですら完全に弾き返して無力化してしまう鉄壁ぶりを誇る。
主武装は左腕の鉤爪と右腕の大鋏は使用する際には黄色いエフェクトのようなものがかかり、大抵のウルトラマンが5万トン程度なのに対し、体重:21万5千トンの見た目に違わぬ超ヘビー級として4倍近い重量差があるため、肉弾戦においてもウルトラ戦士に圧倒的有利をとっている。
全身からエネルギーを放出して周囲のあらゆるものを吹っ飛ばすマガ一閃もあり、接近戦における安定感はずば抜けている。
しかし、それだけなら超ヘビー級相応の鈍重な怪獣として付け入る隙はありそうなものだが、世界を滅ぼす魔王獣の二つ名にふさわしいマガ穿孔により、他の魔王獣と比べると派手さに欠けるが、攻守共に隙のない難攻不落ぶりでオーブを大苦戦させ、マガ穿孔の弱点を利用しなければ倒せなかったほどの無敵っぷりは、視聴者たちに魔王獣の次元の違う強大さや恐ろしさを改めて見せつけるに十分足り得た。
胸部の発光体から発射するレーザー光線:マガ穿孔は凄まじい貫通力を誇り、着弾したビルを倒壊させずに大穴をあけてしまうほど強力であり、その上で連射も可能ということで、これにより遠近共に隙のない最強の盾と矛を持った最強怪獣となっているのだ。
しかし、現代日本の街並みでビルの窓に偶然にも反射してしまったことで『鏡面では反射させられてしまう』という意外な弱点が露呈し、すぐに対策されてマガ穿孔を反射されたことにより最強の矛が最強の盾を貫く結果となったが、正攻法ではどうしようもなかったところがまさに最強怪獣たる所以である。


ウルトラマンオーブが最初に撃破した風ノ魔王獣:マガバッサー同様、古文書:太平風土記に出現記録が書かれており、土を禍々しく乱せし巨大な魔物“禍蔵鬼(まがぐらき)”として記録されており、地球を訪れた“角持ちし赤き巨人(ウルトラマンタロウ)”の手で龍脈の力によって封印されたとされる。
しかし、現代においてジャグラス・ジャグラーによって怪獣カードを介して力を与えられたことで蘇り、封印に使用されている龍脈の上にある建造物を地盤沈下によって崩落させていった。
全ての龍脈を破壊し終えて完全復活を果たすと、地上に出現して暴れ始め、駆けつけたウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオンと戦闘になる。
頑強な装甲でオーブの攻撃を完全に防ぎ、更にマガ穿孔の連射でオーブを追い詰めていったが、マガ穿孔がガラス張りのビルに着弾した際に貫通せずに反射したことで、オーブにマガ穿孔の特性を見破られてしまい、
最後は放たれたマガ穿孔をスペリオンシールドで逆に自身目掛けて反射させられて体に大穴をあけられ、そこ目掛けてスペリオン光線を体内に直接撃ち込まれて爆散した。
爆発の刹那、光線が体内で反応した事でマガグランドキングの体は異様に膨らんでおり、如何に体表の装甲が堅かったことをうかがわせる。
その後、ガイはウルトラマンタロウのウルトラフュージョンカードを、ジャグラーはマガグランドキングの怪獣カードをそれぞれ入手することになる。






砂漠を流れる河川の辺りで姫矢ジュンが死亡したはずの梔子 ユメと再会する夢の中で遭遇することになった魔王獣であり、『前回』1周目の世界では出現するはずがなかった怪獣であった。
しかし、『今回』2周目の世界へと繋がったことで『前回』から受け継がれた因果によって魔王獣復活に必要な因子が揃ってしまったため、近い将来に復活を果たしてキヴォトスに絶望の未来をもたらすことになっていたのである。
そのため、まだ現実世界に顕現するだけの力を持っていない今が撃破するチャンスということで、2年前に梔子 ユメと絆を結んでいた適能者(デュナミスト):姫矢 ジュンが戦いを挑むこととなった。

その戦いは壮絶なものとなり、原型となるグランドキングがウルトラ6兄弟の力を1つにしたスーパーウルトラマンから繰り出される宇宙最強の光線:コスモミラクル光線で倒されたことも相まって、そもそもが不完全体であるウルトラマンネクサスではどう足掻いても太刀打ちできないほどに戦闘力に差があったのである。
見た目通りの鈍重さに対して機動力を活かした攪乱戦法を狙うものの、重量差もさることながら、どんな攻撃も寄せ付けない堅牢な装甲の前ではウルトラマンも赤子も同然であり、極め付きはコアインパルスを貫通してくるマガ穿孔である。
しかも、命を削るメタフィールドを展開して起死回生で放ったオーバーレイ・シュトロームもマガグランドキングの装甲に弾かれることになり、もはや打つ手なしの万事休すと思われた瞬間であった。

しかし、再び訪れることになったキヴォトスでの日々で得られた数々の経験がどんな状況でもあきらめない強さをウルトラマンに与えていたのである。

マガ穿孔を浴びる瞬間、全身から発するオーラで敵の動きを封じるオーラミラージュを放った一瞬、マガ穿孔をアームドネクサスで受け止めながら、そのままマッハムーブでマガ穿孔を突っ切ってマガグランドキングの胸部へ直接スピルレイ・ジェネレードを叩き込むジュネッスパンチの渾身の一撃によって、マガグランドキングの胸部に風穴を開けたのである。
まだ現実世界で実体を得て活動するだけの力を蓄えていない状態であったため、本来の魔王獣の力はこんな程度ではなかったにしろ、
魔王獣の存在の根源が惑星のエレメントと結びついて誕生した“歪められた地球の分身”というマイナスエネルギー怪獣と似たような性質であったのが決め手となり、
そのままウルトラマンが内なる“光”を解放(ダークフィールドリバース)して大魔王獣:マガオロチの邪悪な波動を打ち消すことで、魔王獣からエレメントとの結びつきが失われ、ここに土塊の魔王:禍蔵鬼(まがぐらき)は人知れず消滅することとなる。
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