Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP06 雨降って地固まるサンクトゥムタワー

 

キヴォトスの外からやってきた地球人:北条 アキラはどういうわけかXデーを迎えてから憧れだったウルトラマン80に変身することができるようになっており、本物のウルトラマン80が相手にしてきた【ドキュメントUGM】に記録された怪獣と戦い続けていた。

 

この【ドキュメントUGM】の知識があるため、本物のウルトラマン80がかつて戦った怪獣とは同一個体ではないにしても圧倒的な情報優位性があるわけであり、怪獣退治の専門家としてキヴォトス中から尊敬を集めるぐらいには頼りにされるようになっていた。

 

しかし、さすがに本物のウルトラマン80が戦っていた時代から何年も時が経っていることもあり、四次元宇宙人:バム星人の造り出した侵略兵器:メカギラスが【ドキュメントUGM】に記録されていない未知の能力を使い出した時は内心では取り乱しそうになっていた。

 

それが生徒たちの援護攻撃から絶対無敵に思われた四次元バリアーの弱点を見破ることになり、終わってみればメカギラスの評価はボロクソにこき下ろしたが、実際には敗北を一瞬でも覚悟させたという意味では紛れもなく強敵であった。

 

本当はこうやって人知を超えた超常の存在である“怪獣(KAIJU)”の能力をみんなで協力して探りながら攻略の手立てを考えるのが防衛チームの怪獣退治の流れであるため、これまで攻略方法がわかっている相手に恵まれてきた幸運はそう長く続かないだろうことを反省させられることになったのだ。

 

とにかく、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】も万能ではないことを肝に銘じ、たまたま本物のウルトラマン80相手に隠された能力を使うことがないまま倒されていた場合も想定しておかなければならない。

 

そう、もしも【ドキュメントUGM】の順番通りに怪獣が襲来するのだとしたら、次はウルトラマン80しか知り得ない四次元宇宙人:バム星人以上に謎に満ちたUFO怪獣:アブドラールスとその宇宙船が相手になるはずなのだ。

 

四次元移動電車に乗せられて迷い込んだバム星人の前線基地を単独で攻略した当人だからこそ地球を去る前に【ドキュメントUGM】にその情報を補足することができたわけなのだが、

 

今度のUFO怪獣:アブドラールスは【ドキュメントUGM】にはその正体に迫る記述が一切ない完全に謎の敵であり、瞬間移動できるUFOによって地球各地で破壊活動を行ってきた正真正銘の侵略者であるため、北条 アキラとしては何が何でも瞬間移動からの地上攻撃を止める意気込みで対空兵器の開発を指示していたのだ。

 

特に、防衛チームで航空戦力が重視されるのは、突発的に発生する怪獣災害に急行できる行動範囲と機動力にあるからであり、倒せなくとも怪獣の注意を引くぐらいのことはできるはずで、そうして稼いだ時間が数え切れないほどの人々の命を救う可能性に賭けて、キヴォトスの空を戦闘機が覆う必要があった。

 

とは言え、その要求はある意味においては脅迫であり、それだけの性能を求められる相手と戦わなければならないことを示唆するものなのだから、キヴォトス中から頼りにされている怪獣退治の専門家がそう言ったのなら、まだ年端もいかない生徒ばかりの開発陣に強迫観念を植え付けるものになってしまう。

 

また、仮に新兵器の開発に成功したとしても今度はそれを実際に運用できるかの高い壁が立ち塞がり、そもそもキヴォトスの航空戦力には超音速戦闘機が存在しないため、謎の侵略者が駆るUFOをドッグファイトで撃ち落とせる可能性はまずない。

 

なので、キヴォトスに住む人たちの命運を握っている北条 アキラとしては正体不明の怪獣:アブドラールスが来ないことを心の中で必死に祈っているわけであり、どうせならキヴォトスでの怪獣頻出期もそのまま終わってくれることを願うのであった。

 

こうして子供の頃の憧れであるウルトラマンになれたとしても、『怪獣を倒せば それで万事解決』とはならない現実の重みを抱えながら、対策しようにも対策しきれない現実のままならなさを受け止めなければならなかった。

 

 

調月 リオ「なら、発想の転換をしましょう、先生」

 

調月 リオ「怪獣や侵略者たちが都市部に迫ったら、都市ごと四次元空間に避難させるのです。あるいは避難シェルターだけでも転移させるのです」

 

調月 リオ「すでにエリドゥを四次元空間に転移させる実験は行われ、区画ごとの転移には成功しています」

 

調月 リオ「これにより、四次元空間と三次元空間の更なる連絡と監視が行えるようになりました」

 

北条先生「ありがとう。再びバム星人が襲来するかもわからないから、四次元空間の監視体制が整ったのは大きい」

 

北条先生「でも、開発特区:フォーサイトでのヘイロー消失事件の印象から、受け容れが難しいのではありませんか?」

 

調月 リオ「印象で選り好みをして導入を拒むのなら、学園の長人としてはそれ程度だということです。自分の身を守れる者なら各学園の避難設備の整備状況を具に調べて自治区を移っていくはずです」

 

北条先生「あとは航空戦力の充実ですね」

 

調月 リオ「そうですね。キヴォトスでは超音速機が存在しない上、飛来する宇宙怪獣に対して空中戦を仕掛けられるほどの性能はありません」

 

調月 リオ「正直に言って、ここが地球とキヴォトスの技術の差をもっとも痛感するところです」

 

調月 リオ「航空力学を無視した形状でありながら、単独で怪獣を粉砕できる火力に、超音速飛行、合体分離機構を有しているとなったら、キヴォトスで生産されている戦闘機なんてものは束になっても相手にならないです」

 

北条先生「けれども、怪獣や侵略者からの先制攻撃を防ぐことができないと、これからも続く怪獣災害の度にキヴォトスの国力が削り取られていくことになるので、邀撃機(インターセプター)の充実は死活問題です」

 

調月 リオ「そう。だから、私は手っ取り早くバム星人の侵略兵器:メカギラスの再利用を進めています」

 

調月 リオ「とりあえず、メカギラスの1分間に2000発発射できる多連装ミサイルはミサイル生産工場を修復して稼働させたので、あとはそれを載せるミサイル車両の配備が間に合えば少しはマシにはなるかもしれません」

 

調月 リオ「あとは、メカギラスの破壊光線を解析したことで開発が進んだ指向性エネルギー兵器:メーサー殺獣光線車の完成ももうそろそろです」

 

北条先生「……これはパラボラ型の砲身?」

 

調月 リオ「はい。元々は弾道ミサイルの迎撃用に開発していたもので、光線発生システムはプラズマを発生・加熱してニュートリノを生成して収束照射するものとなり、砲塔後部には高出力の超伝導発電システムとヘリウムガス冷却システムが搭載されています」

 

北条先生「さすがに地球でこんな見た目の戦車は見たことないですね。地球では航空主兵論で防衛線という概念がないですから、戦車を集結させて怪獣を迎撃するだなんて悠長なことはできないですね」

 

調月 リオ「そう。だから、これは都市部の防衛が主で、通常時は超伝導発電システムで防衛網の電力を賄うように設計してあります」

 

調月 リオ「あとは、この設計図にある万能戦艦を動かすために必要なオーバードライブエンジンが完成すれば、そのエネルギーを利用した破壊兵器ができます。これを防げる物質はこの世に存在しません」

 

北条先生「……これは本当に調月さんが設計したものですか?」

 

調月 リオ「いいえ。これはある方から課題として受け取った未来兵器の設計図です」

 

調月 リオ「私は来るキヴォトスの破滅に向けて これを完成させるための工廠として エリドゥを受け継ぎました」

 

北条先生「もしも設計図通りの性能が発揮されたとするなら、これは地球の防衛兵器を遥かに上回るものとなる……」

 

北条先生「メテオールが対怪獣兵器としての利用に限定されてきたのを考えると、これは 地球の防衛兵器の安全基準を超えた 過ぎたるものだ……」

 

調月 リオ「それぐらいのものがなければ、防衛体制もままならないキヴォトスを怪獣災害から守れません」

 

北条先生「どうしてウルトラマンがキヴォトスにも現れたのかはわからないですが、僕は地球によく似たキヴォトスにも可能性があると信じて、ウルトラマンの期待に裏切らないように手綱を握らせてもらいますよ、調月さん」

 

調月 リオ「かまいません。バム星人の四次元都市の利用を勧めたのが先生なら、メカギラスに由来する技術の利用も同じことです」

 

 

現在、【キヴォトス防衛軍】は【キヴォトス三大学園(BIG3)】と【連邦生徒会機関(GSC Organization)】が中心となり、怪獣災害の対処に当たっているわけなのだが、このキヴォトスでは国家と同義である学園同士が純然たる善意で手を組んでいることは稀であり、怪獣退治で得られた成果の取り分について大いに揉めることになった。

 

だが、結局は北条 アキラがもたらした地球の先進的な防災知識や防衛兵器を正しく理解して利用できる知性と技術がなければ意味がないため、その点において“ビッグシスター”調月 リオが率いる【ミレニアムサイエンススクール】が【キヴォトス防衛軍】の新兵器開発において圧倒的な存在感を発揮し続けていた。

 

ただし、たしかに怪獣退治においてもっとも重要な新兵器開発に欠かせない人財を豊富に取り揃えているわけなのだが、キヴォトスで一二を争うマンモス校である【ゲヘナ学園】やそのライバル校【トリニティ総合学園】と比べると前線を張れる兵員が圧倒的に少ないため、両者の間の微妙なパワーバランスでいかに発言力を持つかに神経を尖らせているようだ。

 

一方、キヴォトスで一二を争うマンモス校【ゲヘナ学園】はキヴォトスで最悪の治安の悪さを助長する自由と混沌を校風としているため、全体的な統率が取れていないことから生徒会【万魔殿】の号令を待つのではなく、【万魔殿】の許可を得てから部活動単位での対応をしないといけない二度手間が必要となっていた。

 

しかし、日常的に銃犯罪が絶えない荒くれ揃いの【ゲヘナ学園】で自分たちのやりたいことをやろうとする意思の強さが実力に現れているのか、特定の分野においてはキヴォトス一の才能を発揮する部活動が多いのが【ゲヘナ学園】の特色であり、それ以上に自分たちの生存のために全体として情報収集能力に長けているのも忘れてはならない特徴だろう。まさに地獄耳である。

 

事実、学園単位での集団行動は旗振りである生徒会長:羽沼 マコトの存在感のなさでまったく統率がとれていないにも関わらず、部活動単位での集団行動だと恐るべき行動力と士気の高さを見せつけてくるので、実は怪獣退治の部活動なんてのを作ったら一番いい仕事をしてくれるかもしれないのが【ゲヘナ学園】の潜在能力の高さなのだ。

 

ただ、それだけに【ゲヘナ学園】でトップを張ろうとする【万魔殿】ともなると【キヴォトス防衛軍】においても主導権を握ろうとする野心を隠そうともしないため、【万魔殿】羽沼 マコトは常に挑発的な態度をとって【キヴォトス防衛軍】の会議でも積極的に不和をもたらしていた。

 

実際、前回の怪獣災害においても後からやってきてメカギラスの残骸の所有権を堂々と主張してくるので【ティーパーティー】桐藤 ナギサと舌戦を繰り広げることになってしまった。自分たちの方が世界征服の野心を持ちながら、【トリニティ】の方が世界征服を狙ってメカギラスを独占しようとしているだなんて難癖をつけるのだから。

 

それを仲裁するのが【セミナー】調月 リオであるため、【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】の確執が【ミレニアムサイエンススクール】の発言力を高めることになり、結果として【キヴォトス防衛軍】内でのキヴォトス三大学園(BIG3)による均衡が保たれることになったのは何たる皮肉か。

 

そして、おそらくキヴォトス三大学園(BIG3)の中でもっとも【キヴォトス防衛軍】内での立場が低いのがミッション系のお嬢様学校【トリニティ総合学園】であり、明らかに荒事には向いていない気質の生徒が大半でありながら、学園の上位層となるお嬢様たちになるほど北条 アキラがもっとも忌み嫌う陰湿な傾向が見え隠れしているので、怪獣災害という人類全体の問題に取り組むにあたって自分たちのことばかりを考えて権謀術数で周りを追い落とす輩には信用が置けなかったのだ。

 

もちろん、【トリニティ総合学園】に古くから存在する派閥に関係している人間は全体から見れば一握りではあるが、その一握りの人間が所属する派閥が力を持っているのが【トリニティ総合学園】であるため、どうしても派閥の人間とそうでない生徒の間ではいろいろと違いがあり過ぎるのだ。

 

それでなくとも、派閥ごとの決まり事や秘密事項があるために生徒会【ティーパーティー】からの意思伝達が遅れて学園全体の改革が遅々として進まないために、怪獣頻出期を迎えた現在、その対応の遅さが内外から批判の的となっていた。

 

しかし、派閥とは無関係に動ける生徒たちの場合、宗教教育の賜物で純粋に世のため人のために力を尽くそうとしてくれるため、【トリニティ総合学園】では派閥ごとに相手を見るのではなく、個人個人の意思を確かめながら役割を割り振るべきなのだと理解することになった。

 

裏返すと、【ゲヘナ学園】は部活動単位でなら自分の意志でその団体に参加しているために十分な意思統一ができているのに対し、【トリニティ総合学園】は自分が望むと望まざるとに関わらず派閥に所属することになった生徒たち一人ひとりの本心を見る必要があるため、生徒会【ティーパーティー】の指示に簡単に首を縦に振らないくせに自分たちの派閥の中でも意思統一ができていないのが実態なのだ。この手間が非常に惜しい。

 

なので、【キヴォトス防衛軍】に志願してきたトリニティ生の中では煩わしい派閥内でのあれこれから解放されて清々しい気分で怪獣退治の善行に喜々として励めることが嬉しいのだと笑顔で告げてくれる生徒もいたわけで、現実が見えている派閥のトップ同士が改革に向けて団結しても派閥内のいざこざの解決はまだまだ遠いと感じざるを得なかった。風通しの悪い派閥内に朝の陽射しが差し込むのはいつのことか。

 

ただ、これまで【ゲヘナ学園】との対立関係だけに関心を向けていた閉鎖的で排他的な【トリニティ総合学園】も怪獣災害という前代未聞の事態に直面して【キヴォトス防衛軍】に参加するようになったことで、キヴォトス中から集まった名前も知らない学園から馳せ参じた優秀な生徒たちと交流するようになり、キヴォトスにおける【トリニティ総合学園】に求められる役割を意識し始めたので、まだまだこれからと言ったところである。

 

 

ロボット職員「きみたち、どうしたんだい? こんなところにずっと居て? 今は2人ですか?」

 

錠前 サオリ「……あ、コーイチ」

 

秤 アツコ「………………」

 

ロボット職員「こんにちは。サオリさん、アツコさん」

 

ロボット職員「子ウサギ公園を不法占拠していた【RABBIT小隊】の野営地跡で野宿をしているのはあまり感心しないね。また【RABBIT小隊】が野営しているのかと近隣住民から苦情が出ている」

 

ロボット職員「無事に“姫”を取り戻せたのだし、こんなところで野宿なんてする必要はないんじゃないかい?」

 

ロボット職員「それとも、【アリウス】の要人である“姫”を攫われた責任を問われるのを恐れて帰るに帰れなくなっているのかい? それなら、私が同行して きみたちの活躍ぶりを“マダム”に伝えて 一緒に許してもらおうか?」

 

錠前 サオリ「……ちがうんだ、コーイチ。私たちは、私は、もうどうしたらいいのか、わからないんだ」

 

ロボット職員「それは『【キヴォトス防衛軍】の軍事力を実際に目の当たりにして【アリウス】の復讐ができそうもないから』かな?

 

錠前 サオリ「………………」

 

ロボット職員「いや、どうもちがうみたいだね。きみは【アリウス】よりも“姫”の方が大事みたいだしね」

 

 

ロボット職員「なら、【アリウス学園】として【連邦生徒会】に帰属することをオススメするよ」

 

 

錠前 サオリ「え」

 

秤 アツコ「…………へえ」

 

ロボット職員「僕たち【キヴォトス防衛軍】は怪獣災害を人類全体の問題として捉え、キヴォトス中の生徒たちと連絡が取れる体制を整え、迅速な怪獣退治を行えるようにしたいんだ」

 

ロボット職員「だから、【キヴォトス防衛軍】の仮ライセンスに登録してもらうために連絡先も渡していたよね。でないと誰も所在を知らない【アリウス】で怪獣災害が起きた時に助けに行くことができないから」

 

ロボット職員「たとえ、全校生徒が()()だけでもいいんだ。【連邦生徒会】と連絡が取れる“生徒会”がそこにあるのなら。いや、もっと仲間がたくさんいるだろう、【アリウス】の」

 

ロボット職員「その全員を養うことはできないだろうけど、【キヴォトス防衛軍】に参加してくれれば、給食やシャワーだってあるんだし、それこそ【シャーレ】に来てくれれば――――――」

 

錠前 サオリ「や、やめてくれ! やめてくれ、コーイチ!」

 

ロボット職員「……サオリさん?」

 

秤 アツコ「…………サッちゃん」

 

錠前 サオリ「退去を勧告しに来たのなら、それに従おう」

 

錠前 サオリ「けど、今まで【ゲヘナ】と【トリニティ】に復讐するために生きてきたんだ! 他のことなんて、私にはよくわからない!」

 

 

ロボット職員「そうかな? 【ゲヘナ】と【トリニティ】を倒したら、【アリウス】が新たな学園を運営することになるんでしょう? だったら、学園を運営するための()()()の準備はしてあるでしょう?」

 

 

錠前 サオリ「え、そうなのか?」

 

秤 アツコ「………………!」

 

ロボット職員「生徒会長はサオリさんになるのかな? それとも、“姫”が代表になるのかな?」

 

ロボット職員「ねえ、生徒会長になったら、どんな学園にしたい? 想像してみてよ、ね?」

 

錠前 サオリ「な、何だ、それは……?」

 

 

秤 アツコ「ねえ、サッちゃん。私、みんなで北条先生の授業を受けながら、花壇に色とりどりのお花を植えたいな」

 

 

錠前 サオリ「……姫?」

 

ロボット職員「いいね。【連邦生徒会】に登録申請を出すんだから、自分たちの学園は綺麗に見せたいよね」

 

秤 アツコ「うん。それで生徒会長はサッちゃんがやって、私はグータラに過ごすんだ」

 

錠前 サオリ「いや、待ってくれ、アツコ! アツコは生徒会長の血筋なんだから、生徒会長はアツコだろう!?」

 

秤 アツコ「いいじゃない、サッちゃん。これは想像のお話なんだから」

 

秤 アツコ「私ね、【ゲヘナ】で公開収録している北条先生の授業を見るのが好きなんだ」

 

秤 アツコ「だから、私も先生の授業を受けてみたかったんだ。実際にチョークで黒板に文字を書いて教壇に立つ先生の授業ってマンガやドラマみたいだよね」

 

ロボット職員「だったら、参加してみませんか?」

 

秤 アツコ「え、いいの?」

 

ロボット職員「いいですよ。【ゲヘナ学園】ですから、他所の生徒が混じっていたところで咎められることはないですよ。週一の開催で、授業内容もその時時に応じて、特に決まってないですし」

 

錠前 サオリ「まてまてまてまて! 【ゲヘナ】に行くというのか!? 危険だ! 止めるんだ、アツコ!」

 

秤 アツコ「じゃあ、【ゲヘナ】への敵情視察という名目で、サッちゃんもついてきてくれるよね?」

 

錠前 サオリ「いや、アツコ……」

 

ロボット職員「決まりですね」

 

錠前 サオリ「ま、待ってくれ! そもそも、おかしいぞ!?」

 

ロボット職員「何がです?」

 

錠前 サオリ「コーイチ、あなたは私たちが【トリニティ】と【ゲヘナ】に復讐しようとわかっているのに、どうしてそれを止めようとしないのだ? 私が【ゲヘナ】で先生の授業を受ける裏で何かしでかさないかとは思わないのか?」

 

 

ロボット職員「――――――それは本当にサオリさんがしたいことなんですか?

 

 

錠前 サオリ「な、なに?」

 

秤 アツコ「………………」

 

ロボット職員「サオリさんの望みは【アリウススクワッド】の平穏無事なのであって、【トリニティ】と【ゲヘナ】の両学園を相手取って征服したいだなんて大きな夢は持ってなかったでしょう? 取って代わるつもりなら、()()()の準備を疎かにするのはダメでしょう?」

 

錠前 サオリ「そ、それは……」

 

ロボット職員「それに、おかしいと思わないかな?」

 

錠前 サオリ「な、何が?」

 

ロボット職員「少なくとも、前回の怪獣災害でキヴォトス三大学園(BIG3)の生徒会役員たちは自分たちで考えて行動していたのは見ていたでしょう」

 

ロボット職員「つまり、自分たちの学園のことは生徒たち自身でやることを決めて頑張っているんだ」

 

 

――――――そこに大人の入れ知恵なんてなかったよね? 先生の指示に従うかどうかも自分たちでまず判断していたよね?

 

 

ロボット職員:マウンテンガリバーは“シャーレの先生”北条 アキラの半身とも言える良き理解者であり、“GUYSの先生”としても多忙を極める北条先生に代わって【シャーレ】の職務を代行し、更にはロボット特有の鋼鉄の身体を活かして非武装で【シャーレ・オフィス】一帯の見回りと治安維持を行っている“シャーレの守護神”であった。

 

実際、その戦闘力は “連邦生徒会”失踪後に責任者不在で閉校にならざるを得なかった【SRT特殊学園】から【ヴァルキューレ警察学校】への編入を拒み、閉鎖反対のデモ活動のために学園から大量の武器弾薬を持ち出して、Xデーからの復興で慌ただしい首都:D.U.にある子ウサギ公園を不法占拠し、そこを宿営地として防衛陣地まで構築して近所迷惑になっていた【RABBIT小隊】を単独で制圧するほどである。見た目に反して鈍重などではなかったのだ。

 

それによって、【SRT特殊学園】の誇りと矜持を持つ【RABBIT小隊】とは険悪な関係になっていたわけなのだが、青少年の健全教育の一環として【シャーレ】の権限で【RABBIT小隊】はロボット職員:マウンテンガリバーの指揮下(預かり)となって復興中の首都:D.U.の治安回復の挨拶回りに駆り出されるようになり、次第にキヴォトスで見られるロボット族とも異なる外見の超合金ロボットの戦いぶりに惚れ込むようになっていくのだった。

 

事実、志は高いが訓練不足で未熟な【RABBIT小隊】一人ひとりの能力の長所と短所を見抜き、適切な指導を与えた上で、【シャーレ】の活動に参加したご褒美として【シャーレ・オフィス】の設備を使わせて、北条先生の手料理もご馳走になって大変お世話になっているのだ。

 

それからロボット職員が手足となってその支えとなるよう尽力している北条先生を軍事顧問に迎えることで閉鎖された【SRT特殊学園】は【キヴォトス防衛学園】として再編されることになり、失踪した“連邦生徒会長”が帰還しない限りは二度と帰れないと思われた母校に再び通えるようになったとあれば、教官への尊敬の念と多大なる御恩があるわけで今では完全に心酔している様子だった。

 

実際、【RABBIT小隊】は怪獣災害の裏で蠢く侵略者の陰謀に備えてロボット職員:マウンテンガリバーが演習や訓練を施したことにより、【キヴォトス防衛軍】が協力要請をした【SRT】の特殊部隊の中で抜群の成果を叩き出すことになり、前回の怪獣災害:バム星人のアジトの摘発でも存分に力を振るうことになった。

 

 

だからこそ、小さな巨人は 今 再び 復興中の首都:D.U.の子ウサギ公園に迷い込んだ 戦うことしか知らなかった【アリウス】の少女たちにも同じように手を差し伸べた。

 

 

もちろん、これは【シャーレ】が行っている未成年保護と青少年の健全育成の一貫であり、キヴォトスでは自治区の中枢を担うのが生徒たちだからこそ、キヴォトスの大人たちは生徒たちを“小さな大人”と見なして未成年保護の対象に成り得ない存在だと断じているが、

 

キヴォトスの外から来た地球人:北条 アキラは 当然ながら そんなキヴォトスにおける大人と生徒たちの歪な関係性に反発し、それに共鳴した唯一の例外こそがロボット職員:マウンテンガリバーというかけがえのない友の存在であった。

 

銃乱射事件が日常茶飯事で一発でも弾丸を喰らったら致命傷に成りかねない地球人:北条 アキラに代わって、超合金の身体を持つマウンテンガリバーが先生が愛と勇気で照らす光の道を守るために、今もこうして身体を張って銃を手放すことができない年端もいかないキヴォトスの戦災孤児たちに言葉をかけるのだった。

 

 

早瀬 ユウカ「あ、ガリバーさん。おかえりなさい」

 

早瀬 ユウカ「……サオリたちの様子はどうでしたか?」

 

ロボット職員「まあ、もう少し時間がかかるかな。【RABBIT小隊】の時と同じですよ。いきなりは人は変われない。少しずつ理解させていかないといけません。でなければ、それは洗脳や詰め込みにしかならないのです」

 

早瀬 ユウカ「……そうですか。【トリニティ】と【アリウス】の歴史は今まで知らなかったですけれど、エデン条約締結を機に【アリウス】との間でも和解が進むといいですね」

 

ロボット職員「ええ。怪獣災害がいつ起きるかもわからない以上、【キヴォトス防衛軍】に参加してもらって、怪獣災害の情報共有と防衛体制の構築をキヴォトス全土で行わければ手遅れになる恐れがあるのです」

 

ロボット職員「ですので、数千あるというキヴォトスに存在する学園の全てと連絡を持つことが【シャーレ】の最大の任務なのです」

 

ロボット職員「その意味ではノアさん共々、大変助かっていますよ、ユウカさん」

 

早瀬 ユウカ「いえ、これぐらいは。リオ会長も北条先生と一緒に【キヴォトス防衛軍】の中核を担って頑張っているんですから、私も次期生徒会長として頑張らせてもらってます」

 

 

早瀬 ユウカ「でも、ガリバーさん? あんまり年頃の女の子たちを誑かさないでくださいね?」

 

 

ロボット職員「え?」

 

早瀬 ユウカ「気づいてないんですか? それとも、自分はロボットだから興味を持たれないとでも思っているんですか?」

 

早瀬 ユウカ「ガリバーさん、ヒビキやカリンからいつも熱い視線を向けられているのに気づいてないんですか?」

 

ロボット職員「あ、ああ! ヒビキさんですね! いつもお世話になっていますよ、新兵器開発で!」

 

ロボット職員「それと、カリンさんですね! いつもいつも新兵器開発に協力してもらっています!」

 

早瀬 ユウカ「あれ、ガリバーさん? もしかして照れてます?」

 

ロボット職員「あ、いやいやいや! こんな能面みたいな口も動かないし瞬きもできないような血の通っていないロボットなんかに、な、何をおっしゃいます?」

 

早瀬 ユウカ「そうですか? むしろ、ヒビキやカリンのような人付き合いが得意じゃない子だからこそ、ガリバーさんには安心して話すことができる包容力があると思いますよ? 私だとどうしてもハキハキとした回答を求めちゃうから、じっくりと相手の出方を待つことができるガリバーさんと相性がいいんだと思いますよ」

 

ロボット職員「そ、そうなのかな……?」

 

早瀬 ユウカ「そうですって。じゃなかったら、【RABBIT小隊】も【アリウススクワッド】もガリバーさんの言葉に耳を傾けることなんてないですから」フフッ

 

早瀬 ユウカ「そりゃあ、ほとんどの子なら失踪した“連邦生徒会長”に代わってキヴォトスを導いてくれている“GUYSの先生”にみんな憧れているでしょうけど、」

 

早瀬 ユウカ「それを陰で支えている縁の下の力持ちのガリバーさんの良さだって、わかっている人にはわかってもらえているんですから」

 

ロボット職員「正直に言って実感が湧かないけど、ありがとう、ユウカさん。ユウカさんには本当に助けてもらっています」

 

ロボット職員「――――――初めてキヴォトスにやってきた時からずっと

 

早瀬 ユウカ「もっと自信を持ってください。ガリバーさんだって【連邦捜査部 S.C.H.A.L.E(シャーレ) 】の一員として【SRT】を指揮してバム星人のアジトを次々と検挙してみせた実績があるんですから」

 

ロボット職員「いえいえ、あれは全て北条先生の指示通りに動いただけで、さすがは半世紀に渡って怪獣と戦い続けた歴史を持つ地球出身の防衛チームの隊員です。私などではとても及びません

 

 

早瀬 ユウカ「でも、今度のサンクトゥムタワーの防衛機構にアレが追加されたのは、ガリバーさんのアイデアでしたよね? 正直に言ってガリバーさんのことも天才だと思いましたよ、私?」

 

 

ロボット職員「アレですか。ええ、相手が50m級の怪獣ならばサンクトゥムタワーの防御を攻撃に転じることができるように応用したものです」

 

ロボット職員「そして、確実に怪獣をその場で仕留められるように――――――」

 

早瀬 ユウカ「うんうん」

 

ロボット職員「おっと。さすがに立ち話が長かったですね」

 

ロボット職員「待っててください。今、キャラメルココアを用意しますから」

 

早瀬 ユウカ「ありがとうございます! ガリバーさんの作るキャラメルココア、ご馳走になります!」

 

ロボット職員「どうぞ、召し上がれ。付け合せのビスケットも」

 

早瀬 ユウカ「はい、いただきます!」

 

 

――――――その時、防空レーダーが正体不明の未確認飛行物体が現れたことを警告するアラームを鳴らした!

 

 

早瀬 ユウカ「ガリバーさん!?」ガタッ

 

ロボット職員「これは『未確認飛行物体接近』ッ!?」

 

早瀬 ユウカ「ああ、もう! せっかくの気分が台無し! 今すぐ情報を解析します!」

 

ロボット職員「――――――場所は?!」

 

早瀬 ユウカ「これは【百鬼夜行連合学院】です!」

 

ロボット職員「――――――【百鬼夜行】だと!? 間に合うのか!?」

 

早瀬 ユウカ「ダメです! まだ避難命令が出されていません! 対応が間に合っていないようです!」

 

ロボット職員「こ、こんなの、予測できるか!?」

 

早瀬 ユウカ「そんな!? 未確認飛行物体から高エネルギー反応! このままだと【百鬼夜行】が地上攻撃に遭います!」

 

ロボット職員「こ、こんなあっさり――――――」

 

ロボット職員「う、嘘だ! こんなことは今まで一度たりとも起きなかった!

 

ロボット職員「せ、先生!」

 

ロボット職員「先生えええええええええええええええええええええええええええ!」

 

 

 

シュワ!

 

 

 

早瀬 ユウカ「更に新たな未確認飛行物体の反応――――――!」

 

早瀬 ユウカ「これは――――――!」

 

ロボット職員「せ、ウルトラマン!」

 

 

突如として平和な日常を引き裂いたアラームと共にひとつの学園が地図上から消え去ろうとしていた時、白色の光の球体(トラベルスフィア)が超高速で接近し、両手先を合わせて発射するリング状の破壊光線:ウルトラスパイラルビームが放たれた。

 

リング状の破壊光線は惜しくも【百鬼夜行】を焼き払おうとしていた未確認飛行物体を掠めただけとなったが、そのままの勢いで光の球体から正体を現して突っ込んできた赤と銀の巨人の接近に驚いたのか、瞬間移動で未確認飛行物体は跡形もなく姿を消してしまったのだった。

 

それはアラーム発報から1分にもならない時間だったが、その1分足らずの出来事の間に救えた命は数知れなかった。

 

地上では【百鬼夜行】の群衆が何が起きたのかもわからないまま、空中に現れた光の巨人の姿を見て仰天するばかりであり、【百鬼夜行連合学院】における平和な日常は間断なく続いたのだった。

 

 

北条先生「何という失態……! 千載一遇の好機を逃すなんて……! わかっていたのに……!」ダン!

 

北条先生「アブドラールスがUFOを動かしていたのか、あるいはアブドラールスを操る黒幕の宇宙人がいたのか、いったいどこの星からやってきたのかも不明なんだ」

 

北条先生「もしもあれがアブドラールスのUFOと同一のものだとすると、海中に潜り込んで地震だって起こせるんだぞ、あれは!」

 

北条先生「……通信衛星に光情報を転送して急行はできたけど、これで相手は奇襲を警戒するようになった」

 

北条先生「これでは大山キャップやウルトラマン先生、それにウルトラマンレオに顔向けができない!」

 

 

――――――お前たちの戦いは必ず勝たねばならん戦いなんだ!

 

――――――その顔は何だ!?

 

――――――その目は何だ!?

 

――――――その涙は何だ!?

 

――――――そのお前の涙でこの地球が救えるのか?

 

 

なぜかキヴォトスでウルトラマン80に変身できるようになった北条 アキラは変身時にただ単に巨大化できるだけじゃなく、ある程度の位置を調整して怪獣の前に現れることをこれまでの経験の中で学び取っており、

 

変身する時にどれくらいの厚さまでなら壁抜けできるのか、どれくらいの距離まで転移できるのか、密かに検証を重ねており、最近になって光通信を利用して超高速で遠隔地への変身が可能であることを立証できていた。

 

これによって、通信衛星で捕捉した怪獣の座標を指定して変身時に情報の波に乗ることで通信速度でキヴォトス中に急行することが可能となり、今回の【百鬼夜行】上空に突如として現れた未確認飛行物体による地上攻撃の阻止に成功することができた。

 

しかし、撃墜することができず逃走を許してしまったため、北条 アキラはウルトラマンに変身してわずか3分足らずで元の場所に帰ってきていたのだが、この時は悔しさと焦りが滲み出ていた。

 

そんな時に思い出すのは相原隊長がもっとも印象に残っていたウルトラ兄弟の一人:ウルトラマンレオが地球防衛の任に就いていた新人:ウルトラマンメビウスに向けた厳しい言葉であり、同時に防衛チームの人間として自分たちの故郷を守り通す覚悟を問われたものでもあった。

 

怪獣頻出期が終わりを迎えた軍縮期において【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】を浴びるように見続けて自分なりにウルトラマンの戦いを人一倍熱心に研究し続けていた北条 アキラにとって、その時代の生き証人である相原隊長から語られたウルトラマンメビウスとの二人三脚のような当時の戦いの記憶は過去と未来を繋ぐ大事な教えとなっていた。

 

だからこそ、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に記録されている怪獣による過去の被害も参考程度に眺めていたわけなのだが、

 

いざキヴォトスで怪獣退治をする立場になった時に思い出すのは常に相原隊長と大山キャップの教えであり、被害が小さかったからと言って手放しに喜べたことは一度たりともない。

 

そう、正直に言って、【キヴォトス防衛軍】の中核を担うキヴォトス三大学園(BIG3)連邦生徒会機関(GSC Organization)以外の数千ある学園なんてものは 全体の貢献度や利用価値から言って あってもなくても同じようなものなのだが、

 

だからといって、ウルトラマンに憧れた地球人:北条 アキラは事の大小を比較して怪獣災害の意義を批評するつもりでウルトラマンになりたいと思ったわけではないのだ、決して。

 

親子連れの宇宙怪獣:ザンドリアスが襲来した【山海経高級中学校】もそうだし、今回の【百鬼夜行連合学院】にしてもそうだ。怪獣や侵略者の脅威に怯える人たちがそこにいるからこそ、全力を尽くしてきたのだから。

 

 

――――――本気だからこそ、憧れのウルトラマンに変身できるようになった北条 アキラは悔しいのだ! もっと上手くやれたはずだと!

 

 

 

 

 

錠前 サオリ「………………」パラ・・・

 

秤 アツコ「……サッちゃん」

 

錠前 サオリ「……どうした、姫?」

 

秤 アツコ「サッちゃんが生徒会長になるんだよね? そのための準備をしているんだよね?」

 

錠前 サオリ「いや、この要項によると生徒会長というのはマダムになるのではないのか?」

 

秤 アツコ「……サッちゃんはどう思っているの、本当のところは?」

 

錠前 サオリ「……何がだ?」

 

秤 アツコ「――――――マダムとの約束のこと」

 

錠前 サオリ「……なに?」

 

秤 アツコ「サッちゃんもたくさん見てきたよね、【アリウス】の外のこと」

 

錠前 サオリ「ああ、とてもじゃないが、【トリニティ】と【ゲヘナ】を征服することが怪獣の脅威もあって不可能だと思い知らされたからこそ、もうどうしたらいいのかがわからないんだ……」

 

秤 アツコ「私、思うんだけど、別に私たちが言うことを聞く必要なんてないんじゃないかな?」

 

錠前 サオリ「……何を言っているんだ、姫?」

 

秤 アツコ「宇宙人の幽霊電車で四次元空間に連れ去られた時に一緒になった【ゲヘナ】の【便利屋68】のあの子たちは学園から追い出されて大人と同じように会社を立ち上げて頑張って暮らしているみたい」

 

秤 アツコ「“真のアウトロー”を目指すとか何とか言ってハチャメチャな毎日を送っているけれども、彼女たちの表情はイキイキとしていたよ」

 

 

秤 アツコ「だからさ、【便利屋68】のように『会社を立ち上げてみる』のも一つの選択肢なんじゃないかな?」

 

 

錠前 サオリ「……か、『会社』だと!?」

 

秤 アツコ「うん。そうしたら、マダムが生徒会長をやっていることになっているらしい【アリウス】なんて無視して、私たちは【キヴォトス防衛軍】に協力してその日の糧を得られるよ」

 

錠前 サオリ「だ、だが、【アリウス】を離脱することになったら、私たちは【アリウス】から追われる身に――――――」

 

秤 アツコ「サッちゃん? サッちゃんが私のために頑張ってくれるのは嬉しいけど、マダムとの約束が叶うってまだ本気で思っているの? それとも、あのマダムが情けをかけてくれることを期待しているの?」

 

錠前 サオリ「………………」

 

秤 アツコ「それにサッちゃんはマダムや【アリウス】のためにさ、【キヴォトス防衛軍】で一緒に怪獣と戦った【トリニティ】や【ゲヘナ】のみんなを撃てるの?」

 

錠前 サオリ「……いや、無理だな」パタン

 

秤 アツコ「サッちゃん」

 

錠前 サオリ「……悪かった、アツコ。答えなんて、もう出ていたのに、私が臆病だった」

 

秤 アツコ「ううん。サッちゃんは昔からずっと強い人だったよ。ずっと守ってくれた」

 

錠前 サオリ「アツコ」

 

 

所を移して、ここは首都:D.U.シラトリ区。緑豊かな緑地の文化的な港町に流れ着いて――――――。

 

現在、錠前 サオリがリーダーを務めている【アリウススクワッド】は空中分解の危機に陥っていた。

 

【アリウス】の生徒会長の座に君臨する大人:マダムの要求により、怨敵である【トリニティ】と【ゲヘナ】を征服し、【エデン条約機構】の乗っ取りを画策していたのだが、キヴォトス三大学園(BIG3)連邦生徒会機関(GSC Organization)が集結している【キヴォトス防衛軍】との戦力差に愕然とする他なかった。

 

キヴォトス三大学園(BIG3)のうちの2つが組むことになる軍事同盟【エデン条約機構】に参加する生徒の質と量など、キヴォトス三大学園(BIG3)どころかキヴォトス中から志願者が集まった【キヴォトス防衛軍】の勢いと比べれば、何もかもが違いすぎて【アリウス】だけで攻略できるはずもなかった。

 

いや、それだけじゃなく、【キヴォトス防衛軍】が戦おうとしている人知を超えた超常の存在である怪獣や未知の侵略者の脅威に自分たちも直面したことにより、自衛のためにはキヴォトス中が団結しなくては乗り切れない事態に直面していることを否応なしに理解させられ、それどころじゃなくなったのだ。

 

今は“シャーレの先生”でもあり“GUYSの先生”でもある地球人:北条 アキラの号令の下にキヴォトス中がまとまっているのだから、こんな状況でエデン条約へのテロ事件を起こせば、歴史の闇から蘇った【アリウス】はいよいよ“キヴォトスの裏切り者”としてキヴォトスの全てを敵に回して、今度こそ日の目を見ない結末を迎えるしかなくなる。

 

そのことを【キヴォトス防衛軍】に参加している【アリウス】とは無関係のキヴォトスに存在するたくさんの生徒たちの直向きな姿を目にして理解していくうちに、【アリウス】のことしか知らなかった錠前 サオリの世界は大きく広がった。無限に広がるように見える怪獣のように大きな世界が姿を現したのだ。

 

だからこそ、段々と自分たち【アリウススクワッド】が身を置いていた世界がいかに狂っていたのかを認識できるようになり、自分たちがいた狂気の世界を外に拡げようとするマダムのやり方に対する反発心が膨れ上がった。それは今になって蒔かれたものではなく、狂った世界においても健在だった人としての良心が生んだ不信感が芽吹いたものだった。

 

 

――――――そう、【アリウススクワッド】のリーダー:錠前 サオリは狂った世界においても()()()()()が何なのかが幼心にわかっていたのだ。それが錠前 サオリが宿していた天稟であった。

 

 

錠前 サオリ「Vanitas vanitatum et omnia vanitas」

 

錠前 サオリ「全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいものだ」

 

錠前 サオリ「――――――嘘だッ!」

 

秤 アツコ「サッちゃん」

 

錠前 サオリ「先生が言っていたとおりだよ」

 

錠前 サオリ「私たちの矜持そのものが怪獣の前に木端微塵にされたよ……」

 

 

錠前 サオリ「そうだろう! 虚しいのなら悔しいはずがない! 全てが虚しいのなら先生に降伏してまでアツコを取り戻そうと思わない! 本当に虚しいのなら全ての結果をただ受け容れるべきだろう!?」

 

 

錠前 サオリ「でも、そうじゃなかったんだ、私は……」

 

錠前 サオリ「何が『全ては虚しい』だ! 私には、私にはこんなにも大切なものがあった……!」

 

秤 アツコ「うん。サッちゃんは虚無(からっぽ)なんかじゃない」

 

秤 アツコ「サッちゃんの中にはずっと――――――」

 

 

 

シュワ!

 

 

 

錠前 サオリ「――――――ウルトラマン!?」

 

秤 アツコ「!!」

 

錠前 サオリ「どうしてシラトリ区にウルトラマンが!?」

 

秤 アツコ「サッちゃん!?」

 

錠前 サオリ「な、何だ!?」

 

錠前 サオリ「――――――これは地震!?」

 

錠前 サオリ「姫ッ!」ガバッ

 

秤 アツコ「…………!」

 

錠前 サオリ「くっ!」

 

 

――――――その日、D.U.シラトリ区沖を震源とした震度5強の地震が発生した!

 

 

錠前 サオリ「……収まったか」

 

秤 アツコ「……うん」

 

錠前 サオリ「……今の地震は怪獣の仕業なのだろうか?」

 

秤 アツコ「たしか、最初の怪獣:クレッセントはキヴォトス中で地震をたくさん起こしていたって話だよね」

 

錠前 サオリ「すると、ウルトラマンは怪獣退治に来てくれたのか……」

 

秤 アツコ「きっと、そうだよ」

 

錠前 サオリ「なら、今すぐにここから離れよう。怪獣が近くにいるはずだ。避難警報も出るはずだ」

 

秤 アツコ「あ、早速 警報が――――――」

 

 

――――――地震発生から数分、シラトリ区に響き渡ったのは津波警報であった!

 

 

錠前 サオリ「…………『ツナミ』? 『ツナミ』とは何だ?」

 

秤 アツコ「……よくわからないけど、避難警報にはちがいないみたいだよ、ほら」

 

錠前 サオリ「なに、高台などに逃げ込めばいいのか? こういう時は避難シェルターではないのか?」

 

秤 アツコ「なら、あそこに見える一番大きなビルに行けばいいのかな?」

 

錠前 サオリ「よし、急ぐぞ!」

 

 

突如としてキヴォトスの守り神であるウルトラマンがシラトリ区に現れたのには驚いたが、大地震の後の津波警報を受けて急いで高い場所に避難しなくてはならないと駆け出したサオリとアツコは 臨海都心の中心から一斉に逃げ出す自動車の波に逆行して 道端で拾ったバイクをかっ飛ばして一番高いビルを目指した。

 

そう、津波が初体験だった2人は難を逃れるために警報に従って『高い場所を目指した』はいいが、一番肝腎な『直ちに海浜から離れる』という鉄則が備わっていなかったため、たしかにシラトリ区では一番高いビルを避難場所と思って動いてしまったのだ。

 

だから、ビルが開いてないとみるやバイクで突っ込んでエントランスを突き破り、地震を感知して最寄り階でエレベーターが非常停止しているとみるや、全速力で止まったままのエスカレーターを2人で駆け上がることになった。

 

しかし、エスカレーターで昇っていける限界まで突き当たると、更に上の階を目指して非常灯しか明かりのない中で階段を探し回ることになってしまったのだ。

 

いや、ちがうのだ。ここはオフィスビルなので商業エリアとは区別されており、どんなに探し回っても直通のエレベーターからしかオフィスエリアのある上層への道はないのだ。最初から入口がちがう。

 

そんなこともわからないまま、上に続く階段が見つけられなくて足を止めた時、牢獄のように思えた忌々しい強化ガラスの窓の向こうに広大な海が荒れ狂っていたのが見えた。

 

 

 

トゥア!

 

 

 

そして、海中から50mにもなる赤と銀の巨人が逞しい背中を向けて激しく海水を滴らせて現れ、遠くから見ても明らかに巨人と同じぐらいに見える巨大な波が押し寄せてきていた。

 

それでようやく錠前 サオリは津波というものが何なのかを理解し、津波警報を聞いて『高い場所を目指した』はいいが、一番肝腎な『直ちに海浜から離れる』ことを取り違えていたことを悟り、思わず姫を抱き締める他なかったのだ。

 

しかし、抱き締められた姫:秤 アツコは決して目を背けることなく、シラトリ区を直撃しようとする津波を前にウルトラマンが何をしようとしているのか、雄大なる赤と銀の巨人の力強い背中をその目に焼き付け、ここからどうなっていくのかを見守った。

 

 

結果は一言で言えば、ウルトラ念力で起こす突風:ウルトラウインドのパワーを溜めながら、サクシウムエネルギーを凝縮して光輪にしながら片手で放つことができる八つ裂き光輪を投げまくって津波を割り続けたところで、ビルの強化ガラスまで震わせる強烈な向かい風をぶつけて津波を消滅させたのである。

 

 

津波が迫るまで海中で何をしていたのかは定かではないが、津波を消滅させるために相当にエネルギーを消耗したことはカラータイマーの点滅からの重たそうな動きから見て取れ、

 

抱き締められたままで ただ見ているしかなかった秤 アツコは満足そうな表情を浮かべて、津波の脅威が去った後の静かな海を間近に見ようと、お守役の錠前 サオリを立たせて高層ビルの階段を駆け下りていくのだった。

 

そして、何段も駆け降りてきて かなり足にキていたものの、階段を降りきってバイクを起こして突き破ったエントランスを超えた先に立っていたのは――――――。

 

 

ザアー、ザアー、ザアー、ザアー・・・

 

 

北条先生「シラトリ区沖に【百鬼夜行】に現れた未確認飛行物体が着水したという通報があってだね」

 

北条先生「地震の後に津波も来たわけだけど、大丈夫でしたか?」

 

錠前 サオリ「見ての通りだぞ。私たちはどうもしていない」

 

北条先生「ちがいますよ? 直面した危機に際して上手くやれましたか?」

 

錠前 サオリ「むぅ。本当はすぐにでも海辺から離れるべきだったのに、間違って一番高いビルに避難してしまって、どうなることかと思っていたが……」

 

秤 アツコ「ウルトラマンが助けてくれた」

 

北条先生「うん。それは良かったです」

 

北条先生「地震による被害は防げなかったけど、津波による被害はゼロで良かったですよ」

 

北条先生「いや、侵略者が引き起こした地震を防げなかったのは全然よくないです。そのせいで津波も起きたんだから。それで避難もしなくちゃならなくなって」

 

北条先生「本当に、何をするにしても後手に回るばかりで――――――」

 

 

北条先生「おのれ、怪獣め! おのれ、侵略者め! おのれ、揚げ足取りめ! おのれ、曲学阿世の徒め! おのれ、マイナスエネルギーめ!」

 

北条先生「それでも、僕は負けないからな! めげないからな! あきらめないからな!」

 

北条先生「僕はあの星のように微かに笑うことができる光の戦士になるんだあああああああ!」

 

 

錠前 サオリ「先生……」

 

秤 アツコ「………………」

 

北条先生「さあ、海に向かって叫ぼう! 大海原が僕たちの思いの丈を受け止めてくれるぞ!」

 

錠前 サオリ「先生、そういうことなら、私たちにも手伝わせて欲しい!」

 

秤 アツコ「うん。先生にもウルトラマンにも助けられてばかり」

 

北条先生「いや、まずは帰りなさい。帰ってみんなに無事だったことを報告するべきです」

 

北条先生「――――――【アリウス学園】が帰る場所なのでしょう?」

 

 

錠前 サオリ「それはもういいんだ。そもそも、私たちは純粋な【アリウス】の人間とは言い難い」

 

 

北条先生「?」

 

秤 アツコ「………………」

 

錠前 サオリ「歴史的に元から敵対していた【ゲヘナ】や自分たちを追いやった【トリニティ】への憎悪なんて私たちには関係なかった。ただ明日を生きるための糧さえ手に入れることができれば、何だって良かったんだ……」

 

錠前 サオリ「思えば、私たちが【アリウススクワッド】に選ばれたのも、【アリウス】にとって特別な血統の“姫”と共にあったのが一番大きな理由だが、同時に私自身が“姫”を縛るための鎖の役割になっていたんだろうな……」

 

北条先生「……錠前さん?」

 

錠前 サオリ「先生、私はずっとただ仲間を守ろうと必死に頑張ってきただけなんだ、今も昔も」

 

 

錠前 サオリ「けれども、今回の津波のことも含めて、私はずっと間違ったことをして仲間たちを苦しめてきた()()()だったことがようやくわかったよ……」

 

 

錠前 サオリ「今頃、あの2人も清々しているだろうな。私の元から離れられて」

 

錠前 サオリ「いや、私はずっと認めたくなかったのかもしれない。()()()は最初からそれがわかっていたんだ――――――」

 

秤 アツコ「……サッちゃん」

 

錠前 サオリ「……おかしいな。これは事実なんだ。認めるべきことなんだ」ヒッグ

 

錠前 サオリ「……私は仲間たちを守ろうとしながら、本当は楽な道ばかりを選んで、ずっと苦しめてきたんだ」ヒッグ

 

錠前 サオリ「……仲間たちのことを想うのなら、()()()と同じように正しいと思ったことを続けるべきだったんだろうな」ヒッグ

 

 

――――――私は()()()。私なんかがリーダーになるべきじゃなかったんだ。

 

 

北条先生「はい、錠前さん」ポン

 

錠前 サオリ「あ、キャラメル」

 

北条先生「ほら、秤さんも」スッ

 

秤 アツコ「うん。ありがとう、先生」

 

秤 アツコ「ほら、サッちゃん。あーん」

 

錠前 サオリ「あ、あーん……」

 

北条先生「うん、美味しい」ペロリ

 

錠前 サオリ「ああ。甘くて濃厚な味わいで安心感がある」

 

秤 アツコ「でも、ちょっぴり塩味がある」

 

秤 アツコ「――――――まるで涙の味みたい」

 

錠前 サオリ「………………」

 

秤 アツコ「先生、海の水ってなんで塩辛いんだろうね」

 

北条先生「ごめんね。それ、本当は砂糖を入れて甘くするつもりだったんだけど、神様が間違えて塩を入れちゃったんだ」

 

北条先生「言うでしょう、『地の塩、世の光であれ』って。陸地は塩味にしたから、海の方は甘く味付けしてあげたかったんだけどなぁ」

 

秤 アツコ「そうなんだ。神様もうっかり屋さんだね」フフッ

 

錠前 サオリ「………………」

 

北条先生「はい、塩キャラメル追加」

 

秤 アツコ「わーい、ありがとう、先生」

 

秤 アツコ「はい、あーん」

 

錠前 サオリ「あーん……」

 

北条先生「ねえ、錠前さん」

 

北条先生「今でこそ、僕は怪獣退治の専門家“GUYSの先生”としてキヴォトス中のみんなから頼られる存在になっているんだけど、本当は地球では実戦経験のない予備役に過ぎなかったんだ」

 

北条先生「つまり、キヴォトスのみんなはそんな大人を一人前の戦士だと誤解しながら、駆け出し戦士の僕と一緒に二人三脚で怪獣退治を手探りでやっているんだ」

 

錠前 サオリ「え」

 

北条先生「でもね、僕が大人になるまでにたくさんの人たちが怪獣や侵略者たちと勇敢に戦ってきた姿と歴史を知っているから、一人前のフリができるぐらいにはハッタリがサマになっているんだよね」

 

北条先生「だから、本当は怪獣と戦うことが怖くてしかたないんだ」

 

北条先生「たまたま、キヴォトスに現れるのが【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に載っている怪獣ばかりだったから機先を制することができていたけど、」

 

北条先生「怪獣ってまさしく人知を超えた超常の存在ってわけだから、わかっていることの方が圧倒的に少ないから、攻略方法が見当もつかないような打つ手なしの完全無敵の最強怪獣にぶち当たったらどうしようって、いつもビクビクしながら一日を過ごしているんだ」

 

錠前 サオリ「先生が?」

 

北条先生「いやぁ、だって、あの四次元宇宙人が造り出したロボット怪獣の【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に載っていなかった未知の能力の無敵っぷりには本当に焦ったよ。光線技どころか打撃技まで一方的に潰されるとか、あれはインペライザーを完全に超えていた……」

 

錠前 サオリ「ああ、あれは私も【スクワッド】を戦闘バギーに乗せて戦いに参加していたからわかる。真正面からのあらゆる攻撃が完全に通用しなかった……」

 

秤 アツコ「でも、周りから攻撃されていたから、すぐに正面以外には見えないバリアーが張られていないことがわかって倒すことができたよね、先生」

 

北条先生「そうそう。あれは本当に助かったよ。絶対無敵の四次元バリアーに怯むことなく、生徒たちが勇気を出して戦い続けてくれたおかげで、怪獣から見たら本当にささやかな抵抗によって逆転の糸口を掴むことができたんだから」

 

 

ザアー、ザアー、ザアー、ザアー・・・

 

 

錠前 サオリ「……先生、もしもの話、私も先生のようになれるだろうか?」

 

秤 アツコ「サッちゃん」

 

北条先生「なら、学べ。過ちは繰り返すな。そのためにも面を上げて進むべき方を見なさい」

 

北条先生「そのために勉強をして練習をして次に繋げていくんでしょう、何事も?」

 

錠前 サオリ「先生」

 

北条先生「そして、実践してみて自分が上達できたことに手応えを感じながら、不出来だったところがあることを苦々しく思いながらも『次はこうはいかない』と反省して、もっとがんばる! できるまで! 必ず成し遂げてみせる!」

 

北条先生「Vanitas vanitatum et omnia vanitas」

 

北条先生「虚しい虚しい言い続けたって、人生は無情にも続いていくものなのだから、何もせずに後悔するよりは自分の意志でずっとマシな選択を選び続けていくしかないじゃないか」

 

錠前 サオリ「それもそうだ」

 

北条先生「見てよ、海はこんなにも広い。空はもっと広い。世界は果てしなく広いぞ」

 

北条先生「そして――――――」

 

 

北条先生「こうやって逆立ちをしたら、この星に生きている生きとし生ける人たちを支えている気分になれるんだ」ググッ

 

 

秤 アツコ「先生」

 

北条先生「これね、本物のウルトラマン先生(矢的先生)の教え子だった塚本先生から教わったんだ。こうやって生徒を励ましたんだって」ググッ

 

錠前 サオリ「……こ、こうか?」ググッ

 

秤 アツコ「サッちゃん、すごい」

 

北条先生「初めてで逆立ちをしたのか。やるね、錠前さん」ググッ

 

北条先生「でも、先生は指6本でも逆立ちできるけどね」ググッ

 

錠前 サオリ「うわっ! だ、ダメだ、先生のようにはできない!」ドサッ

 

北条先生「無茶しないでね? どうして急に逆立ちなんてしたのかな?」ググッ

 

錠前 サオリ「だって、先生がしていたから……」

 

北条先生「うん、そういうものだよ。それでいいんだよ、錠前さん」ヒョイ

 

錠前 サオリ「え」

 

北条先生「そうしてみたいと思った自分の心に耳を傾けるんだ。必ず答えはある」

 

北条先生「聴く限り劣悪な環境の中で【アリウススクワッド】の教官ができるぐらいまでに誰よりも戦闘能力を磨けたのはなぜなのか、その時に抱いていた想いを大切にして」

 

 

――――――大丈夫。錠前さんには良い先生になれる素質があるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、【百鬼夜行】を襲撃し D.U.シラトリ区に地震と津波を引き起こした 逃げ足の早い未確認飛行物体はついに復興中のキヴォトスの象徴:サンクトゥムタワー上空に姿を現した。

 

そして、復興のために廃墟を更地にしてできた空き地に徐ろに着陸すると、一転して不気味なほどに静けさを保ち、復興作業に従事していた作業員たちが怖い物見たさに人集りを作る事態へと発展してしまった。すぐに近辺からの避難を呼びかけたが、これでは戦闘に巻き込んでしまう。

 

その間に【キヴォトス防衛軍】が緊急出動となり、いつでも攻撃に移れるように包囲網を敷き、【ヴァルキューレ警察学校】も総動員して決戦の地となる場所から人っ子一人いなくなるように民間人の避難に全力を出させた。

 

それから【シャーレ・オフィス】を臨時拠点とした【連邦生徒会】もXデーで崩壊しかかったサンクトゥムタワーの防衛機構を再び起動させることになり、“災害の化身”として具現化した地底怪獣:クレッセントとはまるっきりちがうタイプの歓迎されない侵略宇宙人の迎撃体制を完璧に整えた。

 

地球人:北条 アキラを軍事顧問にして【キヴォトス防衛軍】を設立してキヴォトス中の生徒たちを結集させたのは全てはこの時のためであり、かつて同じようにキヴォトス中の戦力を結集させて壊滅に追い込まれたXデーの時の雪辱を果たす時である。

 

連邦生徒会長代行:七神 リンが着陸した未確認飛行物体にあらゆるルートからの対話を試みたところ、そのお返しに質量保存の法則を無視してUFO怪獣:アブドラールスが召喚され、これによって対話は不可能と判断されることになり、作戦は次の段階へと進んだ。

 

即座に敵性存在である未確認飛行物体を鹵獲するためにバム星人の四次元技術を利用して瞬間移動と電子機器を封じる新兵器:電磁フィールドとノイズメイカーを投射する一方で、再びサンクトゥムタワー出現した怪獣:アブドラールスに対して集中砲火を加えることになった。総力戦の始まりである。

 

アブドラールスとしては母艦の身動きを封じている電磁フィールドを破壊したいが、その巨体故に母艦さえも攻撃に巻き込んでしまうため、電磁フィールドに使われるエネルギー供給源であるサンクトゥムタワーを目指して行進を開始。

 

それは怪獣を誘い込むための罠であり、電磁フィールドを破るために母艦ごと攻撃する単細胞ぶりをさらすことなく、サンクトゥムタワーが供給源であることを見抜くだけの知性があることがわかり、それだけに全方位からの絶え間ない波状攻撃には苛立ちを隠すことができないだろう。

 

復興中の首都:D.U.はXデーで廃墟になった場所を更地にしながら怪獣退治のための防御陣地が組まれており、アブドラールスが目から怪光線を放ってサンクトゥムタワーがエネルギーフィールドで防いでいる間、射線が確保された【風紀委員会】が指揮するカノンライナー号の列車砲が郊外から一方的に狙い撃っていた。

 

地上からは自走砲やドローンといった無人兵器群がちょこまかと攻撃を加え、空からは【SRT】が誇るアクロバットチーム【FLYING ANGELS】による攻撃にも晒され、たまらずアブドラールスは口からは火炎、体の各部にある触手からは毒リンパ液といった【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】には記録されていなかった能力で抵抗するのだった。それで無人兵器群が薙ぎ払われるのだが、無人兵器が破壊されたところで人的被害は一切なく、攻めの手が緩むことはない。

 

戦況は圧倒的に【キヴォトス防衛軍】が優勢となっており、最初の怪獣:クレッセントの方が今回の宇宙怪獣:アブドラールスより圧倒的に強かったんじゃないかという勝利への確信をもたらしていた。

 

事実、Xデーの災禍をもたらした“災害の化身”たる地底怪獣:クレッセントは見た目が生物に擬態したマグマの塊であることから生物学的な弱点が無効になって苦戦したのだが、この神話生物のような名状しがたい外見の宇宙怪獣:アブドラールスはクレッセントより軟らかそうな見た目相応の防御力しかなかったのだ。

 

なので、最初の怪獣:クレッセントを基準にした火力を追究した【キヴォトス防衛軍】の攻勢には生物の範疇でしかないアブドラールスには効果覿面であり、これには対ウルトラマン80を想定していたような意外なまでの格闘能力も相手が自走砲やドローンでは活かしようがないのだ。

 

そう、今回の怪獣は明らかに知性が高いために間断なく四方八方から叩き込まれる集中砲火に肉体的ダメージよりも精神的ダメージが顕著であることが見て取れ、激しい戦闘の中で回収できた怪獣の分析データからアブドラールスの再生能力を上回るとどめの一撃の叩き込むチャンスを虎視眈々と【温泉開発部】ドリルライナー号と【正義実現委員会】ミサイルライナー号が窺っていた。

 

 

錠前 サオリ「……ここまでの猛攻で怪獣が疲弊しているようだ」

 

秤 アツコ「……うん」

 

ロボット職員「――――――ここが勝負所だ」

 

ロボット職員「カタパルト(射出機)の準備はいいか!?」

 

早瀬 ユウカ「サンクトゥムタワー、カタパルト(射出機)! 照準よし!」

 

七神 リン「展開予測!」

 

早瀬 ユウカ「展開予測、出ます!」

 

七神 リン「――――――ライナー部隊! カタパルト(射出機)の展開予測を共有します! 発射と同時に突貫してください!」

 

扇喜 アオイ「これでとどめよ!」

 

七神 リン「カタパルト(射出機)、発射!」

 

 

連邦生徒会長代行:七神 リンの号令の下、サンクトゥムタワーから超巨大砲丸が波状攻撃で身動きを封じられている怪獣目掛けて発射された。質量兵器としては怪獣を押し潰すほどのものではないが、二足歩行の怪獣が頭に直撃を受ければ無事では済まされないほどの威力を誇っていた。

 

それは四次元都市:フォーサイトで生産された砲丸をサンクトゥムタワー内部に設置されたカタパルト(射出機)に転移させる給弾機構となっており、怪獣を絶命させることはできなくても怪獣を転倒させて反撃のチャンスを生むための自衛の手段として開発されたものであった。

 

結果、高性能シミュレーターが弾き出した展開予測の通りにアブドラールスの顔面にサンクトゥムタワーのカタパルト(射出機)から発射された超巨大砲丸が直撃し、直撃の衝撃で砲丸が爆発したことでアブドラールスは吹っ飛び、キヴォトスの大地に叩きつけられることになったのだ。

 

その隙を見逃さなかったのが【温泉開発部】ドリルライナー号であり、バム星人の四次元技術の応用により、待機場所の郊外から戦闘区域である市街地までの距離や方角を歪曲させた空間トンネルで仰向けになったアブドラールスの頭頂部に一直線に転移したことにより、ついに対怪獣用ドリルがアブドラールスの頭部を掘削することになったのだ。スプラッター映像のために自動的にフィルターが掛かる。

 

そして、怪獣の脳天を貫いたところでドリルを稼働させたまま切り離して逆方向に加速してドリルライナー号が戦場から空間トンネルを通って離脱すると同時に、ミサイルライナー号が放ったクレッセントをも倒す威力のサーモバリック爆弾を満載にしたミサイルが叩き込まれるのだった。

 

 

――――――サンクトゥムタワーの目の前でサーモバリック爆弾の自由空間蒸気雲爆発が巻き起こる!

 

 

錠前 サオリ「見事な連携だ。サンクトゥムタワーから放たれた砲丸で吹っ飛んだ怪獣の脳天をドリルで貫いた直後にサーモバリック爆弾か」

 

秤 アツコ「……これで決まり?」

 

ロボット職員「――――――アブドラールスは!?」

 

早瀬 ユウカ「反応は消失しています!」

 

扇喜 アオイ「……本当にやれたのかしら?」

 

七神 リン「警戒は怠らないで!」

 

 

七神 リン「さあ、招かれざる客人! 怪獣は倒したわ! 降伏するなら今のうちよ! 降伏しなさい!」

 

 

ロボット職員「果たして、アブドラールスは侵略宇宙人が巨大化した姿なのか、侵略宇宙人が開発した生物兵器なのか……」

 

錠前 サオリ「それで、ここからどうする? 電磁フィールドとノイズメイカーで瞬間移動を封じられたアブドラールスのUFOだが、こちらからも手出しができないのだろう?」

 

扇喜 アオイ「そうね。いつまでもこのままだと消費電力が馬鹿にならないし、電磁フィールドを貫通する攻撃でUFOを破壊するしかないわ」

 

早瀬 ユウカ「またサーモバリック爆弾ですか?」

 

七神 リン「……そうね。初使用のギコギラー戦では範囲が広すぎて追撃ができなかった反省で、D.U.防衛を前提とした威力に調整したけれど、新兵器の電磁フィールドとノイズメイカーの回収は無理そうね」

 

扇喜 アオイ「鹵獲して解析できればいいと思っていたけれど、まだまだ詰めが甘かったわね。こんな戦い方をしていたら、予算がいくらあっても足りない……」

 

 

 

バッ        

 

        バッ

 

エイティ!

 

 

 

早瀬 ユウカ「あ、ウルトラマンです! ウルトラマンが来てくれました!」

 

扇喜 アオイ「タイミングがいいわね。いつもなら真っ先に怪獣と戦ってくれるのに、今回は私たちの成長を見守ってくれていたのかしらね」

 

扇喜 アオイ「ううん。あの未確認飛行物体の脅威から【百鬼夜行】もシラトリ区も、最初からずっと守ってくれていたわね」

 

ロボット職員「どうやら、先生の指示で電磁フィールド解除後に【SRT】が突入するようです」

 

七神 リン「そう、先生が――――――」

 

七神 リン「なら、ここからはウルトラマンに任せましょう」

 

七神 リン「アクロバットチーム【FLYING ANGELS】とミサイルライナー号は離陸したアブドラールスのUFOを撃墜できるように準備を」

 

七神 リン「……最後はお願いします、先生」

 

 

 

トゥア!

 

 

 

そして、電磁フィールドとノイズメイカーで瞬間移動を封じられていたアブドラールスのUFOは電磁フィールドが解除された直後に垂直発進しようとした直後に兜割りで繰り出されたウルトラレイランスで串刺しにされていた。というより、ウルトラマンが飛び跳ねたのを見計らって電磁フィールドが切られたので、ノイズメイカーで瞬間移動が封じられていた以上、生殺与奪の権は招かれざる客人にはなかった。

 

そこから真上から突き刺したウルトラレイランスを巨大なウルトラスラッシュに変換して内部から丸鋸で真っ二つに引き裂かれた船体が地上に落下すると、赤と銀の巨人はその場で立ち尽くして地上を見下ろしていた。

 

それが何を意味するのかは司令室となる【シャーレ・オフィス】ではわからなかったが、現場ではアブドラールスのUFOを制圧するべく四次元空間で待機していた【SRT】を乗せた四次元空間突入用軍用列車が瞬時に現れ、真っ二つになった船体へ二手に分かれて突入を果たしたのであった。

 

それを見届けたウルトラマン80はゆっくりと辺りを見回すと、いつもの光線の構えをとってサンクトゥムタワー目掛けてサクシウム光線を放ったのだ。あまりの出来事に周囲は騒然となった。

 

すると、ウルトラマンの必殺光線はサンクトゥムタワーのエネルギーフィールドに弾かれることなく、何もないはずの空間に吸い込まれてしまうのだった。これは何を意味するのか。

 

そう、そこにはドリルで脳天を貫かれてサーモバリック爆弾を直撃しても なおしぶとく生き延びて 姿を透明にしていたアブドラールスがいたわけであり、サーモバリック爆弾で倒されたと見せかけてサンクトゥムタワーへの直接攻撃を意図していたのだ。

 

それをウルトラマン80はX線や赤外線などを完備した透視能力や何万kmも離れた音を聴き分ける聴力から死に体のアブドラールスが息を殺して少しずつサンクトゥムタワーに躙り寄っていたのを感知していたのだ。何しろ、アブドラールスの毒リンパ液は何でも溶かしてしまうほどに強力なのだから、傷口から垂れてしまった毒リンパ液が勢いよく物を溶かす蒸発音がウルトラマン80には聞こえてしまうのだから。

 

いや、相手は何もかもが正体不明のUFO怪獣:アブドラールスなのだ。生徒たちの頑張りを信用していなかったのではなく、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】には載っていなかった隠された能力を 最大限 警戒した結果であり、【キヴォトス防衛軍】の軍事顧問:北条 アキラとしてはそこまで追い込んだ奮闘ぶりを称賛することだろう。

 

サクシウム光線の直撃を受けた死に体のアブドラールスはたちまちのうちにサンクトゥムタワーの目の前にボロボロの姿を可視化させることになり、サンクトゥムタワーへの接近を許していたことに驚いた司令部がすぐさまカタパルト(射出機)で身動きもままならないアブドラールスを容赦なく吹っ飛ばし、そこにウルトラマンのバックルビームによる追い討ちが加わり、こうしてUFO怪獣:アブドラールスはとどめを刺されたのであった。

 

 

 

 

 

北条先生「これがアブドラールスのUFO――――――、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】にも載っていなかった ウルトラマンでさえも知らない 未知の侵略者の真相に近づくことができただなんて、防衛チームの一員として大変光栄です」

 

北条先生「軍事顧問として今回の【キヴォトス防衛軍】の戦果を大いに評価します。みなさん、よくやってくれました」

 

北条先生「最初の怪獣:クレッセントによって首都:D.U.が甚大な被害を受けたXデーからキヴォトス中が怪獣災害に向けて一丸となって取り組んだ結果がついに得られました」

 

北条先生「まだまだ予断は許しませんが、サンクトゥムタワーを中心とした防衛体制の構築による一定の戦果を上げられたことを記念して、今宵は祝杯といたしましょう」

 

北条先生「乾杯!」

 

 

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー!

 

 

 

北条先生「……何とかアブドラールスを撃破することができた。それも【キヴォトス防衛軍】の戦力をもってして撃破寸前まで追い込めたのは大きい。これで自信がついたはずだ」

 

ロボット職員「ただ、船内には侵略宇宙人らしき存在を確認することはできませんでした」

 

北条先生「アブドラールスには電磁フィールドの供給源を断つためにサンクトゥムタワーに狙いを定めたり、絶え間ない波状攻撃で勝ち目がないことを悟って戦意を失ったりする知性があるらしいことは確認できた」

 

ロボット職員「となると、アブドラールスは侵略宇宙人が使役する生物兵器だったのでしょう」

 

ロボット職員「UFOはその輸送機でもあり、単体で都市を攻撃したり 地震を起こしたりもできる戦略兵器だったように思えます」

 

北条先生「そう考えると、アブドラールスよりも輸送機(キャリアー)であるUFOの方がよっぽどクレッセントに匹敵する脅威だった」

 

ロボット職員「ええ。おそらくはそのための怪獣だったのでしょう」

 

北条先生「――――――アブドラールスの方が直掩機だった?」

 

ロボット職員「そんなふうに思いますね。アブドラールス単体の戦闘力や脅威度はクレッセントに並ぶようには到底思えませんが、【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】にはウルトラマン80を圧倒する戦闘力はあったという先生の証言を踏まえると」

 

ロボット職員「そして、地球に現れたアブドラールスが倒された後にUFOが飛び立とうとしたことを合わせると、UFOを中継して怪獣を操っていた可能性があるのではないでしょうか」

 

北条先生「――――――潜水して地震も瞬間移動もできるような戦略兵器が遠隔操作されていた?」

 

ロボット職員「でないと、UFOの中に誰もいなかったことの説明がつきません」

 

北条先生「防衛チームの常識だと、侵略宇宙人は自ら姿を晒して地球を上回る科学力と存在感を誇示することが大半なんだけど、ここまで徹底して姿を見せないように立ち回るのは珍しい」

 

北条先生「いやぁ、こう考えると【ドキュメントUGM】に記録されている怪獣や侵略者は他より地味と言われがちだけど、キヴォトスを軽く滅亡に追い込めるぐらいのヤバいやつらばかりだ」

 

北条先生「さすがにガルタン大王は出てこないだろうけど、人間を怪獣に変えるギマイラや世界中の人々をミイラに変えたオコリンボールまでも現れたらどうしよう?」

 

ロボット職員「落ち着いてください、先生。それでも、生きていくためにも怪獣と戦い続けるしかないですよ」

 

ロボット職員「ともかく、バム星人から得られたメテオール:Much Extreme Technology of Extraterrestial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)を活用することでアブドラールスと渡り合うことができたのです」

 

ロボット職員「今度はアブドラールスのUFOから得られるメテオールを活用して航空戦力の強化を図りましょう」

 

北条先生「そうだった。怪獣災害はみんなで立ち向かうものだった」

 

北条先生「まだまだ戦力の要となる対怪獣兵器は出揃っていないですが、戦術で対抗できるところまでに漕ぎ着けることができました」

 

北条先生「どうか、これからも力を貸してください、ガリバーさん」

 

ロボット職員「こちらこそ、先生」

 

 

北条 アキラにとって懸案事項だったUFO怪獣:アブドラールスの脅威が去ったことで、ようやくXデーから続いた緊張の日々が多少は緩和されることになった。日々の苦労が報われた瞬間を迎えられたのだ。

 

今回ほど【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】の醍醐味であるウルトラマンと怪獣の迫力満点のバトルだけじゃなく、直接対決にまで至る経緯や被害についてもしっかりと読み込んでいたことに感謝したことはない。そのおかげで、正体不明のアブドラールスのUFOによる被害を最小限にすることができたのだ。

 

そう、いくら【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】を読み込んで地球でウルトラマンたちが退治した怪獣のことだけ詳しくなっても、今回のアブドラールスのUFOのように直接対決に至るまでに出た被害まで把握していなかったら、地球から離れて一人キヴォトスで怪獣退治を請け負うことになった身としては目を覆いたくなるような悲惨な光景に直面することになるのだ。

 

事実、【百鬼夜行連合学院】やD.U.シラトリ区への被害を防ぐことはできなかっただろう。あれは【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】に記録されていた被害から最大限の警戒をしていたことで真っ先に対応できたものだ。知らなかったら防ぎようがない。

 

先人たちが残してくれた【アーカイブドキュメント(怪獣図鑑)】――――――、そこから何を学ぶのか、何を掴み取るのか、まさしく活かすも殺すも人次第であり、ウルトラマンになったから怪獣との対決に専念すれば万事解決ではないことをこれからも肝に銘じて、防衛チームの隊員として在り方を見直すことにしよう。

 

それはそれとして、今回は惜しくも怪獣を倒し切ることはできなかったが、それでも怪獣災害に備えたサンクトゥムタワーを中心にした防衛体制は十分な効果を発揮し、怪獣を戦術で圧倒することができたことは喜ばしいことだった。

 

もっとも、それは四次元宇宙人:バム星人から得られたメテオール:Much Extreme Technology of Extraterrestial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)の恩恵が非常に大きく、何だかんだでバム星人との戦いで得られた四次元技術入門セットがこうして次の怪獣災害で役立てられていることを素直に喜んでいいのかは迷うところではある。

 

しかし、成長は成長である。無抵抗にやられるよりかは遥かにマシなところまで首都:D.U.およびサンクトゥムタワーの復興を遂げられたことは非常にめでたいわけであり、今回の【キヴォトス防衛軍】の活躍と合わせてキヴォトス中に希望を与えるニュースとなった。

 

そのおかげで、初防衛に成功した祝勝会がささやかながら【シャーレ・オフィス】で開かれることになり、タキシードとドレスで着飾りながら、以前の幽霊電車でバム星人の四次元空間に攫われながらも抵抗を試みて事件解決に多大な貢献を果たした勇敢な4名の生徒:【セミナー】生塩 ノア、【便利屋68】鬼方 カヨコ、【ティーパーティー】阿慈谷 ヒフミ、【アリウススクワッド】秤 アツコの表彰式も行われたのだった。

 

それから一通り挨拶回りが終わり、別室で北条 アキラとマウンテンガリバーは男同士で今日までの苦労と健闘を称え合い、これからも共にあることを確認し合ったのだった。

 

 

錠前 サオリ「先生」

 

秤 アツコ「コーイチ」

 

ロボット職員「おお、似合っていますね、そのドレス。本当のお姫様みたいだ」

 

北条先生「楽しめていますか、二人共?」

 

秤 アツコ「うん。サッちゃん、張り切ってドレスを選んでいたよ」

 

錠前 サオリ「ひ、姫!? それは言わない約束――――――」カア!

 

北条先生「………………」ジー

 

錠前 サオリ「ど、どうした、先生? もしかして似合ってなかったか?」

 

北条先生「いいえ。似合っていますよ」

 

北条先生「ただ、【アリウス学園】でオシャレを楽しむ感性が育っているのに驚いただけ。着るものの自由とかあったのかなって」

 

ロボット職員「………………!」

 

錠前 サオリ「あ、言われてみれば、たしかに」

 

錠前 サオリ「虚しい虚しいと言いながら、私は心の何処かでこういうのに憧れていたのか?」

 

秤 アツコ「たしかに【アリウス】には(ここ)にあるようなアパレルショップはなかったけど、ヒヨリがこっそり持ち帰っているファッション誌をみんなで回し読みして知識は蓄えてはいたよ」

 

錠前 サオリ「そ、そうだったのか?」

 

秤 アツコ「うん。サッちゃんが真面目一筋(冷酷非情)の【アリウススクワッド】のリーダーだったから、私たちは【アリウス】でも比較的監視の目が緩い中で外の知識を学ぶことができていたから、サッちゃんには感謝しているんだ」

 

錠前 サオリ「……そうか。そうだったのか」

 

北条先生「じゃあ、錠前さんはパーティードレスなんて見たこともなかったのに、初めて着るドレスが自分に合うかどうかを想像してみることができたんだ。それって凄い才能だよね」

 

ロボット職員「たしかに、ファッション誌も見なければ、パーティー会場にも来たことがないだろうに、自分に合うドレスを直感で選べるのは凄い才能ですね」

 

秤 アツコ「褒められたね、サッちゃん」

 

錠前 サオリ「……ああ、そうだな」

 

秤 アツコ「サッちゃん?」

 

錠前 サオリ「いや、よくよく考えたら、パーティードレスというものを知らないはずの私が自分に合うものかどうかを選べたのは『マダムがいたから』なんじゃないかと思って」

 

ロボット職員「――――――!」

 

北条先生「え、どういうことかな? たしか、『マダム』って人は調月さんとは正反対の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って話だったよね?」

 

北条先生「え? もしかして日常的にドレスを着ているんですか、そのマダムって人は?」

 

秤 アツコ「あ、そっか。サッちゃんが着ているドレス、マダムが着ているのにそっくりなんだ」

 

錠前 サオリ「うん」

 

ロボット職員「…………ベアトリーチェ!」ギギッ

 

北条先生「まあ、そういうことか。人は下等生物とはちがって先人の方々の教えを受けて一から人生観を築いていくものだから、真面目な錠前さんが生徒会長という話の『マダム』の影響を色濃く受けているのは自然なことだよ」

 

北条先生「似合っているんだから、別に恥じることじゃないからね」

 

錠前 サオリ「あ、うん。その、ありがとうございます、先生」

 

北条先生「それに、錠前さんが守っていたからこそ、秤さんをはじめとする【アリウススクワッド】のみんなの心の自由が守られたと考えてもいいんじゃないかな」

 

錠前 サオリ「あ」

 

秤 アツコ「うん。サッちゃんが守ってくれていたから、【アリウス】での辛い毎日も楽しむことができていたよ」

 

秤 アツコ「それはきっと、()()()も同じなんじゃないかな、サッちゃん?」

 

錠前 サオリ「――――――アズサ、お前もそうなのか?」

 

 

一方、キヴォトスに来て日が浅い北条 アキラだが、怪獣災害の裏で看過できない問題がそこにはあった。

 

それが錠前 サオリをリーダーとする【アリウススクワッド】のことであり、これは“シャーレの先生”としても“GUYSの先生”としてもその信条から決して無視できない案件であり、バム星人の幽霊電車の件で助けを求められなかったら、ここまで詳しく内情を知ることはできなかった。

 

数千もの学園がひしめき合う超巨鯛学園都市:キヴォトスの長い歴史の中で統廃合や闇に葬られた学園など数え切れないほどあるのを学んできてはいたが、本職が小学校の先生である北条 アキラにとっては歴史の闇に葬り去られたはずの【アリウス学園】が復讐のために表舞台に姿を見せようとしていることに関心を寄せずにはいられなかった。

 

なぜなら、銃器や銃弾なら幼稚園児の手の届くようなところに普通に出回っているクソみたいなキヴォトスの環境の中でも更に劣悪な児童虐待が横行する環境に身を置きながら、胸の奥に隠しきれないほどにキラキラと輝くものを抱き続ける愛と勇気の生徒:錠前 サオリと出会ってしまったからだ。

 

北条 アキラにとって錠前 サオリはそれだけ純真な存在として印象深く、かつて地球を訪れたウルトラマンたちが地球人に可能性を見出して怪獣や侵略者の脅威からその身を呈して守り続けてくれていたように、

 

たとえキヴォトス人の99%が地球人が唾棄するような野蛮で下劣で邪悪な種族であったとしても、地球人でも感心するほどの純真さを持つ錠前 サオリ一人のためならキヴォトスでの最悪な日々を頑張れるぐらいには、北条 アキラは錠前 サオリを通じてキヴォトス人に希望を見出していた。

 

普通ならば児童虐待が横行している最低最悪な環境で復讐のために戦うことしか教わらなかったことで学力や教養が著しく劣っていることを教育者として嘆くべきところなのだが、そんなものよりもずっと大切なものが錠前 サオリにはあった――――――。

 

否、錠前 サオリには 一般的なキヴォトス人にはない 銃声と硝煙に塗れたキヴォトスの流儀に染まって誰もが失うはずの無垢さと素直さが残っており、それがキヴォトス人も根底は地球人と変わらないことを北条 アキラに確信させる決め手になっていたのだ。

 

そして、ロボット職員:マウンテンガリバーも協力してエデン条約の調印式を狙った大規模テロを未然に防ぐべく、児童虐待の被害者である彼女たちに罪を背負わせないためにも【アリウススクワッド】を懐柔していたわけなのだが、今日この日にようやく実を結ぶこととなる。

 

 

――――――大雨に紛れて自分の無力さに大粒の涙が溢れて涙の味を知った夜の後、差し込んできた光に錠前 サオリが顔を上げた大地はどこまでも果たしなく雄大であった。

 

 

ロボット職員「……これからはどうする予定ですか? 【アリウス学園】に帰るのですか?」

 

錠前 サオリ「いや、私たちはもう【アリウス】には戻れない。あそこが希望や幸福を望む者には厳罰を下す常軌を逸した環境なのに気づいてしまったからには」

 

錠前 サオリ「マダムのやり口はおかしい。全てが虚しいのなら憎しみを晴らしたところで虚しさは変わることはないはずだ。虚しさを説きながら【アリウス】の憎しみを煽って【トリニティ】や【ゲヘナ】を征服したところで全てが虚しいのなら何になると言うのだ」

 

錠前 サオリ「会ったことも話したこともない生徒たちに何をされたわけでもないのに『【トリニティ】だから』『【ゲヘナ】だから』――――――、それが人を撃っていい理由にはならない」

 

 

錠前 サオリ「それに私たち【アリウススクワッド】が【エデン条約機構】の乗っ取りをしなくてはならないのは、それがアツコを生贄にしない代わりにマダムに求められた条件だからなんだ」

 

 

北条先生「はあ!?」

 

ロボット職員「………………」

 

秤 アツコ「………………」

 

錠前 サオリ「……だが、マダムの命令に従って【トリニティ】と【ゲヘナ】への復讐のために【キヴォトス防衛軍】の偵察をしていた夜、アツコが幽霊電車で四次元空間に攫われてしまったことで、その瞬間に私は本当の意味で全てが虚しくなってしまったんだ」

 

錠前 サオリ「だから、先生を頼った。頼る他なかった。頼ることができたんだ」

 

 

北条先生「よく言ってくれました、錠前さん」ポン

 

 

錠前 サオリ「あ」

 

北条先生「こういう手合は小学校の先生をやっている僕はよく存じてますよ

 

北条先生「まったく、子供を食い物にする恥ずかしい大人のやり口には毎度ながらほとほと呆れる。キヴォトスでは生徒が“小さな大人”として扱われて児童相談所なんてものが存在しないから、尚更やりたい放題だ

 

北条先生「けどね、そういうことをする大人ってのはだいたいは何も知らないだけの子供を食い物にしていい気になっているだけのお山の大将だから、外に出れば すぐにボロが出るんだよね

 

北条先生「――――――自分の命よりも大事にしていた秤さんの生存が危ぶまれたことで錠前さんの使命感や復讐心が一気に虚無になったようにね」

 

北条先生「たしかに、従う義理はもうないですね、錠前さん。あなたを【アリウス学園】に縛る鎖はもうない。むしろ、秤さんは怪獣災害に巻き込まれて生死不明のままにした方が身動きが取りやすいかもしれませんね」

 

秤 アツコ「うん。少し危ないけど、四次元都市:フォーサイトに一旦避難すれば、もうどうしようもできなくなるよね、いくらマダムでも」

 

錠前 サオリ「それはそうだが……」

 

北条先生「あとは、脱走者ってことになるから、【アリウス学園】から差し向けられる刺客をどうするか――――――」

 

 

――――――ああ、逆に【アリウス学園】を自称している非合法組織を攻め滅ぼそうか?

 

 

ロボット職員「ええ!?」

 

錠前 サオリ「なに!?」

 

秤 アツコ「へえ」

 

北条先生「いや、どっちみち、僕は【キヴォトス防衛軍】の軍事顧問として【連邦生徒会】にキヴォトス中の安全を保障しなくてはならない立場上、キヴォトス全土のハザードマップ作成の協力を【アリウス学園】にも命令できますし」

 

北条先生「素直に【キヴォトス防衛軍】に協力してくれるなら それでいいですが、協力を拒むようなら『怪獣の生息地になっている可能性あり』とか難癖をつけて強制捜査もできますよ」

 

北条先生「ねえ、錠前さん? 【アリウス学園】への行き方を教えてくれれば、今すぐにでもハザードマップ作成のために生徒会長を自称しているマダムのところに交渉に行ってあげますよ?」

 

錠前 サオリ「せ、先生? ど、どうしたんだ? め、目が据わっているぞ?」ゾクッ

 

ロボット職員「先生! まさか、先生からそんな過激な発言が出るとは思いもしませんでしたよ?!」

 

北条先生「そうかな? 僕は小学校の先生ですよ? 青少年の健全育成を阻む害悪には敏感であるつもりですが?

 

北条先生「そうそう、【連邦生徒会】に正式に登録していない学園は正式なものではないから、その地を不法占拠している非合法組織として排除する権利が【ヴァルキューレ警察学校】にはあるそうですよ」

 

北条先生「もしもアリウス学園の生徒会長を自称するマダムが真っ当に【アリウス学園】の復活を願っているのなら、【連邦生徒会】への登録手続きをして、生徒会としての最低限の務めを果たすべきですよ」

 

北条先生「学園を存立させる最低限の要求にさえ従わないのであれば、【アリウス学園】なる非合法組織の首魁であるマダムを逮捕することはいつでもできるわけなんですよ」

 

北条先生「だから、錠前さんが生徒会長として先に【アリウス学園】の登録届を出して、【アリウス学園】を自称しながら生徒会の務めを果たさない非合法組織を合法的に排除することは十分に可能です」

 

錠前 サオリ「……アツコに言われて【アリウス】から離れることは考えていたが、逆に【アリウス】を攻め滅ぼして安全を確保するのなんて考えたこともなかった」

 

錠前 サオリ「そうだ! 先生が言うように、生徒たちに虚無を教え込んでおきながらマダムが私欲に走ろうとしているのなら、それはおかしいことだって教えて上げないと!」

 

北条先生「だから、怯える必要なんてないですよ。こういう手合は言っていることはいつだって支離滅裂で、逆にこちらには理路整然とした正論があるわけですから。強気で行ってください

 

北条先生「この御時世、怪獣災害に備えてキヴォトス中が団結しなければならない時に大人のエゴを追求するだけなら、そんなやつは社会から鼻つまみ者として排除されるだけですから。お山の大将には社会の洗礼を浴びせないとダメですよ

 

北条先生「そもそも、キヴォトス三大学園(BIG3)の【トリニティ総合学園】と【ゲヘナ学園】の平和条約であるエデン条約の締結を妨害しようと大規模テロを画策しているような連中の暴挙を許す道理もないですしね」

 

ロボット職員「――――――先生、本気なんですね?」

 

北条先生「本気も何も、児童虐待防止は小学校の先生の義務ですから

 

 

――――――なんてことはないですよ。アリウスの子たちに『ズルい』という感情を教え込めば それだけで済む話なんです。

 

 

そうだ。キヴォトス人も地球人と同じだと先生が言うなら、ウルトラマンの心を伝えるべく理性的に振る舞っている地球人:北条先生もまたキヴォトス人と同じではないか。北条先生も一人の人間なのだから。

 

そして、北条先生はウルトラマンの心を伝えながらも『ウルトラマンは神ではない』とも言い切っていた。

 

それでも、いつか人類が辿り着くべき境地:ウルトラの星を目指して、常日頃からウルトラマンのようであることを乞い願って努め続けてきた純真な方なのだ。いつも暖かくて邪な気配を一切感じさせないところに求めていた光を感じた。

 

だからこそ、北条先生のことを神のごとく信頼して崇拝したくなっていたのだが、ここに来て 本職が小学校の先生だったからこそ教育者として決して譲れない一線があるとして 冷気を帯びた眼光を放ちながら生徒に躙り寄る姿に反発を覚えた。そんなことは絶対に言わないとも思っていた。

 

けれども、逆にそういう面があることを知ったことで北条先生の実に人間らしいところを垣間見ることになり、普段からどれだけの思いを微かに笑って隠すことで真っ当な道を歩み続けているのかにも気づくことになった。

 

だからこそ、北条先生が錠前 サオリに可能性を見出した理由も今なら納得できた。大規模テロを敢行して償いきれない罪を犯してしまう前に求めていた光に出会えたことで【アリウススクワッド】が悲しい運命から解き放たれるのなら――――――

 

 

――――――光であり、人であり、闇に沈んだ魂はきっと救われていくのでしょう。それこそがアツコを託されただけで何も救えなかった僕自身が暗闇の中で求め続けていた未来を築く希望の光だった。

 

 





-Document GUYS feat.LXXX No.06-

UFO怪獣:アブドラールス 登場作品『ウルトラマン80』第6話『星から来た少年』登場
世界各国に出現し、スカンジナビア半島やメルボルンなどに大被害を与えた謎の侵略者が搭乗あるいは操るUFOに搭載されていた宇宙怪獣。
搭載あるいは搭乗していたUFOが日本に上陸した際に初めて出現した事から、おそらく対ウルトラマン80用の怪獣だと推測される。
しかし、ウルトラマン80本人だけが敵の正体を知ることになったロボット怪獣:メガギラス以上に【ドキュメントUGM】には情報がなく、
アブドラールスが侵略宇宙人が変身した姿なのか、侵略宇宙人が使役した生物兵器なのか、どこの星からやってきたのか、地球を侵略した明確な目的も判然としないまま、最初から最後まで正体は謎のまま事件は幕引きとなっている。

およそ感情というものが感じられない 動物と植物が合わさったかのような 不気味な姿をした生命体。その名状し難き形状はクトゥルフ神話に登場する神話生物を思わせる。
体つきはヒト型だが、巻貝の貝殻を縦にしたような頭の脇から目が耳のように飛び出し、口に当たる部分には赤い発光体が幾つか対になって並び、胸には不規則に穴が開いており、肩や脚からはツタのような触角が生えている。触角には毒リンパ液が蓄えられている。

能力は目から放つ怪光線:スタンビームを主力としており、全身に生えた触角から毒リンパ液を出してあらゆるものをドロドロに溶かし、口から6万度の炎を吐くとされている。
更に80の飛び蹴りを受け流し、巴投げを仕掛けるといった高い格闘能力を持っている。

ポイント206:緑公園に出現して町を破壊した後にウルトラマン80と対決し、不格好な姿でありながら高い格闘能力から優れた体術を駆使し、優位に戦いを展開。更に目から放つ怪光線と怪力で80を窮地に追い詰める。
しかし、生徒たちの声援を受けて最後の力を振り絞った80の反撃に主導権を奪われ、目から放つ怪光線をウルトラVバリヤーで防がれ、最後はサクシウム光線には耐えるもののウルトラ400文キックとバックルビームの連続攻撃を受けて絶命した。
また、アブドラールスを繰り出したUFOも逃亡を図ったところをウルトラスパイラルビームで撃墜された。






本作では、どういうわけか本物のウルトラマン80が戦った怪獣たちが【ドキュメントUGM】の順番通りに今までキヴォトスに現れていたことから、次がもっとも謎の宇宙怪獣:アブドラールスの番だと北条 アキラがわかっていたために最大限の警戒をなされていた。
事実、“災害の化身”という意味ではウルトラマン80との直接対決しか行わなかった宇宙怪獣:アブドラールスよりも、その輸送機であるアブドラールスのUFOが起こしていた被害の方が危険視されており、怪獣の脅威もさることながら驚異的なテクノロジーを持ちながら悪事に使う侵略者への対抗手段も真剣に考えさせられることになった。
自分たちの誇りとする驚異の科学力で世界征服を推し進めながら、怪獣を侵略の補助として投入する侵略宇宙人もいるというわけであり、怪獣なしでも他所の星を蹂躙できるほどの戦力を有していることは明らかで、その危険度は戦闘力の大小など無視できるほどに高い。

しかし、最初の怪獣:クレッセントに襲撃されて大打撃を受けたXデー以来、怪獣災害に備えてキヴォトスの総力を上げて復興を遂げたサンクトゥムタワーに備え付けられた数々の新兵器によって宇宙怪獣もUFOも無力化されることになった。
相手が侵略宇宙人ならば、こちらも撃退したばかりの四次元宇宙人:バム星人から接収したメテオール:Much Extreme Technology of Extraterrestial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)で徹底抗戦することになり、
結果として、本格的な対怪獣兵器の完成を待たずしてサンクトゥムタワーを活用した戦術で対抗することができるようになり、着々と【キヴォトス防衛軍】の実力と名声が上がっていくこととなる。
また、メテオールとして回収する意図を汲んでウルトラマンが真っ二つにしたアブドラールスのUFOを解析して得られた技術をもって、キヴォトス初となる本格的な対怪獣兵器が完成することとなった。

一方で、ロボット怪獣:メガギラスと同様に【ドキュメントUGM】にはなかった能力を宇宙怪獣:アブドラールスが繰り出していたわけなのだが、逆にウルトラマン80を圧倒した格闘能力を見せないまま、地底怪獣:クレッセントを基準にした火力の【キヴォトス防衛軍】の猛攻撃を受けてウルトラマン抜きで瀕死に追いやられていた。
そう、地底深くのマグマで構成されるマイナスエネルギーの化身である地底怪獣:クレッセントは生物に擬態した非生物であったわけなのだが、宇宙怪獣:アブドラールスはクトゥルフ神話に登場する神話生物を思わせる名状しがたき不気味な姿をした生命体であるが、生命体の範疇であったがために普通に殺せてしまえるのだった。
実際、【ドキュメントUGM】でウルトラマン80を追い詰めた戦闘能力はたしかなものなのだろうが、全身に触手が生えているような軟らかそうな見た目も相まって、防御力はクレッセントやメガギラスに完全に劣っているため、初出撃でギコギラーに放った威力調整前のサーモバリック爆弾だったなら完全に倒し切ることができていた。
そういう意味では今回は惜しくも強敵:アブドラールスを倒し切ることはできなかったが、これはアブドラールスのような強豪怪獣相手でも戦術で対抗できるレベルまで【キヴォトス防衛軍】が成長したことの証でもあり、この時点で並みの防衛チームを上回る防衛力を有することになった。

――――――こうなったのも神話生物のような見た目をしているのが悪い。神話生物だってクトゥルフ神話TRPGでご丁寧にステータスが用意されていて、ダイスの目次第でマシンガンやマーシャルアーツでミンチよりもひどい死に様を迎えさせることができるのだから。
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