Blue Archive -Document GUYS feat.LXXX-   作:LN58

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EP07 キヴォトスから銃声が消えた日 -転変-

 

――――――音楽フェスティバル2日目の早朝

 

北条先生「まいったな。隕石が3つも落ちてくるだなんて……」

 

ロボット職員「すみませんが、先生は隕石の調査のために出動となります」

 

ロボット職員「そのため、【シャーレ・オフィス】も関係者以外立入禁止となりますので、ホテルや劇場の控え室をご利用ください」

 

チェロ弾き「わかりました」

 

――――――

調月 リオ「先生。先程は隕石と説明しましたが、正確には隕石ではありません」

 

調月 リオ「以前に飛来したザンドリアスと同じく、隕石に擬態した未確認物体であることがわかっています」

 

調月 リオ「これまでキヴォトスで確認された隕石とは全く異なる金属反応が出ています」

――――――

 

北条先生「それだけじゃない。地球で確認された天然隕石の最大のものは2.7m×2.7mのホバ隕石。ホバ隕石の衝突クレーターは確認されなかったけど、大気圏外から地表へ激突するエネルギーは想像を絶するものがある」

 

北条先生「なのに、50m級の怪獣と遜色ない大きさの超巨大隕石が降ってきたんだぞ!? ありえないほどデカい上に巨大クレーターを生み出す天変地異が起こらないだのは絶対にありえない!」

 

北条先生「あれは間違いなく着陸機能を備えた降下カプセルの類だ!」

 

――――――

調月 リオ「防空レーダーにも探知できなかった以上は、やはり侵略宇宙人の――――――?」

――――――

 

北条先生「……すみません。どうやら【ドキュメントUGM】の通りにはもうならないみたいです」

 

北条先生「あの隕石から何が出てくるのか、皆目見当がつきません」

 

北条先生「よりにもよって、3つも降りてくるだなんて。最悪だ…………」

 

――――――

調月 リオ「どうしますか? 場所は【メトロポリス(首都:D.U.)】【ゲヘナ】【百鬼夜行】となっていますが?」

――――――

 

北条先生「……【キヴォトス防衛軍】の戦力内訳を考えると、対怪獣兵器や軍備が整っていない【百鬼夜行】の応援に行った方が良さそうに思える」

 

北条先生「では、【ミレニアム】の戦力を【百鬼夜行】の防衛に回して、【トリニティ】を【メトロポリス(首都:D.U.)】にお願いできますか?」

 

――――――

調月 リオ「各学園への影響を考えると、それがいいでしょう。そのように手配します」

 

調月 リオ「しかし、こうなってくると本格的に対怪獣兵器の運用を私も含めたキヴォトス三大学園(BIG3)の生徒会が担うことになっていきますね」

――――――

 

北条先生「……やってもらわないと自分たちが困ることになるんだから、無理でもやってもらわないといけません。僕がいなくなっても」

 

――――――それだけ【キヴォトス防衛軍】の中核を担うキヴォトス三大学園(BIG3)の責任と役割は大きいのですから。

 

 

早朝のキヴォトスに3つの隕石が降り注いだ。【メトロポリス(首都:D.U.)】【ゲヘナ】【百鬼夜行】に落ちた。

 

しかし、隕石と呼ぶにはそれはあまりにも常識外れに巨大であったし、着陸があまりにも静か過ぎた。防空レーダーに探知されずに突如として地表に降り立った山のような大きさの金属の塊がそこに現れたのだから。

 

騒音怪獣:ノイズラーの次に来る怪獣を予測していたが、ついに【ドキュメントUGM】の通りにはならなくなったことを悟った北条 アキラはこの日が来るまでにキヴォトス三大学園(BIG3)の対怪獣兵器の保有を間に合わせることができていたことを再度確認しながらも、いきなり3つも降り注いだ隕石に擬態した謎の降下カプセルを見て、この先の展開を静かに予測していた。

 

地球の防衛チームの間では『50m前後の物体が宇宙から降りてきたら、十中八九それは怪獣の輸送機』というのが常識であり、広大な宇宙に進出している宇宙人や宇宙怪獣というものは50m前後の大きさにまで進化するのが一般的らしいのだ。

 

なので、保有している戦力がキヴォトス三大学園(BIG3)未満の【百鬼夜行連合学院】に落ちた隕石が50mよりも小さいものであったことを確認すると、【メトロポリス(首都:D.U.)】に落ちた隕石に音響兵器:ノイズクラスターを当てた分析結果を待つことになった。

 

とにかく、隕石の正体は侵略宇宙人が送り込んできた怪獣カプセルだという最悪の事態を想定して慎重に調査を進めることにし、中から怪獣が出てきた瞬間にサーモバリック爆弾で粉砕できるように入念な準備も徹底した。

 

また、今回は3つの地点に隕石が降りたわけなので、どうしても戦力を分散せざるを得ず、今まで以上に効率よく要領よくテンポよく立ち回らないといけない。

 

包囲はできた。なら、あれが怪獣カプセルだとするなら、それを逆手に取って出待ちすることにしたのだ。

 

地底怪獣:クレッセントを計算上は倒せる火力のサーモバリック爆弾に耐えたら、耐久力がご自慢のロボット怪獣だと推定して、精密機械の弱点である冷気や電気で攻め立てるように二重三重の罠も仕掛けた。

 

そうこうしている間に音楽フェスティバルの2日目が始まり、キヴォトスから銃声が消えた日が再び始まるのだった。

 

しかし、それは初日の高揚感が完全に消失した不安に包まれた静けさの中にあった――――――。

 

 

――――――オンライン会議

 

北条先生「いつまでもこうしているわけにもいかないですから、1つ区切りをつけましょう」

 

桐藤 ナギサ「――――――『区切り』というのは、先生?」

 

北条先生「こうして未知の脅威が宇宙から降り立った以上は無策でいるべきではありませんが、下手に刺激することもできず、事態を静観している状況となっています」

 

七神 リン「はい。そのせいでキヴォトス中に動揺が広がっています」

 

桐藤 ナギサ「無理もありません。怪獣1匹が入っていてもおかしくない超巨大隕石が音もなく3つも宇宙から降りてきたのですから」

 

羽沼 マコト「ああ。先生の呼びかけで始まった音楽フェスティバル、それに便乗して各学園の生徒会がお祭り騒ぎを始めたのだから、その最中に現れた未知の脅威に対処できなければ【キヴォトス防衛軍】をはじめとして我が【万魔殿】の沽券にも関わることになる」

 

調月 リオ「では、どうするのですか、先生? 脅威を取り除くまで部隊を解散させるわけにもいきませんよ?」

 

 

北条先生「なので、怪獣カプセルと思われる隕石を 順次 D.U.郊外にある射爆場に移送します」

 

 

北条先生「こうすることにより、怪獣退治の鉄則である民間人の安全が確保されます」

 

羽沼 マコト「そして、射爆場だから、いくらでも撃ち放題になるというわけだな、先生」キキキッ

 

桐藤 ナギサ「なるほど。それは名案ですね」

 

調月 リオ「となると、問題は50m未満の隕石に擬態した未確認物体の輸送方法です」

 

七神 リン「そうですね。怪獣1匹が入っていてもおかしくない大きさですから、陸運にしても空輸にしても一筋縄ではいかないことが予想されます」

 

羽沼 マコト「おいおい、何を言っているんだ、貴様らは? あんなもの、空間トンネルで直通で運べばいいではないか?」

 

羽沼 マコト「なんなら、手を貸してやろうか? 我が【ゲヘナ学園】で見つかったデカい隕石(石ころ)をどかすついでにな?」ニヤリ

 

桐藤 ナギサ「くっ」

 

調月 リオ「先生、参考までに『怪獣の空中輸送』の実績というものはありましたか? その時の怪獣の大きさと重量はわかりますか?」

 

北条先生「ああ、それならある。地球の防衛チームの初代となる【科学特捜隊(SSSP)】による古代怪獣:ゴモラの例がある」

 

桐藤 ナギサ「あるんですか!?」

 

北条先生「古代怪獣:ゴモラ。恐竜:ゴモラザウルスの生き残りとされ、1億5000万年の長い眠りから醒めた直後にも関わらず活発に暴れ回り、一度は初代ウルトラマンを退けた強豪怪獣だ。後年、その類似種のゴモラⅡが【UGM】と交戦している」

 

北条先生「で、その時の怪獣:ゴモラは身長:40m、体重:2万トンだったはず。それを大型ヘリ3機か4機かの編成でジョンスン島(南太平洋)から大阪万博まで空中輸送していた途中で目覚めて高度2000mの高さから落下してもピンピンしてた」

 

桐藤 ナギサ「……地球にはそんな怪獣が生息していたのですね!? 先生、キヴォトスにもいるんじゃないですか、そういうのが!?」

 

北条先生「で、どうなんですか? キヴォトスには怪獣を空中輸送できるだけの大型ヘリは何機あるんですか?」

 

調月 リオ「……ないわ、そんなもの。航空機の分野だけ見てもキヴォトスは地球の科学力の足元にも及ばないわ」

 

北条先生「……そうですか」

 

七神 リン「つまり、空中輸送は不可能ということですか?」

 

調月 リオ「ええ。最初から地球人である先生と前提がちがいました」

 

 

――――――先生は疑問にも思わないのでしょうが、『2万トンもある怪獣をたった3機か4機の編成で空中輸送できる大型ヘリってまず何?』って話ですよ、これは。

 

 

調月 リオ「この辺りの軍事技術の齟齬を正しておかないと、こういった有事の対策で致命的なことになりかねません」

 

北条先生「え、ちょっと待ってください! 大型ヘリの輸送機ぐらいあるんじゃないんですか?」

 

桐藤 ナギサ「先生、それは………………」

 

羽沼 マコト「なんだなんだ、こいつは最高に愉快な話だな、先生! 怪獣と戦うのが当たり前すぎてスケール感が狂っているときた!」キキキッ

 

七神 リン「先生、ティルトローターの輸送機は兵員輸送用で、戦車を格納して空中輸送すると言ったものはT型尾翼機:C-5(ギャラクシー)ぐらいしかキヴォトスにはありません」

 

北条先生「…………次からは輸送分野の強化に努めましょうか」

 

七神 リン「はい。広義の対怪獣兵器として予算申請を行ってきます。これも深刻な問題ですから」

 

 

羽沼 マコト「では、決まりだな! キヴォトス中に降ってきた隕石(石ころ)は我が【ゲヘナ学園】がどけてやるから、感謝するんだな!」キキキッ

 

 

桐藤 ナギサ「…………それもしかたありませんね」

 

北条先生「では、【メテオール規約】に基づいて【キヴォトス防衛軍】軍事顧問の北条 アキラがメテオール:Much Extreme Technology of Extraterrestial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)の使用を許可します」

 

七神 リン「作戦の第一段階として【ゲヘナ学園】から隕石を空間トンネルを使って指定の射爆場へ移送してください」

 

七神 リン「それから第二段階を【百鬼夜行】、第三段階を【メトロポリス(首都:D.U.)】とします」

 

調月 リオ「では、進行に合わせて射爆場に部隊を展開し直します」

 

北条先生「そこからですね、何をするにしても」

 

七神 リン「ええ。サンクトゥムタワーの防衛体制を整えただけではキヴォトスは守りきれない……」

 

七神 リン「まだまだ何もかもが足りていないです……」

 

 

こうして対策会議が行われた結果、ひとまず隕石を空間トンネルで射爆場に移送することにより鉄則である民間人の安全を確保することが決定された。そこからである、本格的な調査と対応は。

 

その手段として北条 アキラは普通に大型ヘリの編隊に吊るして運べばいいと簡単に考えていたのだが、世界最高峰の人類科学の結晶である防衛チームご自慢の防衛兵器どころか、その恩恵に預かって一般的な航空機の性能がキヴォトスのものを尽く凌駕していたという事実により、思った以上に作戦の幅が狭くなっていることを受け入れなければならなかった。

 

そのため、【ゲヘナ学園】で保有することになった本格的な対怪獣兵器を投入することを決定し、慎重かつ迅速な対処を開始することになった。これ以上の動揺を広げないためにも。

 

一方で、【トリニティ総合学園】副ホスト:桐藤 ナギサとしては【キヴォトス防衛軍】内での力関係で【ゲヘナ学園】に遅れるわけにはいかないと息巻いていたが、現状で事態の対処が可能なのが【ゲヘナ学園】であることに悔しい気持ちでいっぱいだった。

 

本当は同じことができるはずだったのに、そのことでますます【トリニティ総合学園】が遅れをとっていることを痛感させられており、水を得た魚のごとく【キヴォトス防衛軍】内での【ゲヘナ学園】の発言力が日増しに大きくなっていることを歯痒く思っていた。

 

こうして最近はずっとゴキゲンな生徒会長:羽沼 マコトの【ゲヘナ学園】が保有する対怪獣兵器が初出撃となった――――――。

 

 

北条先生「…………まずは【ゲヘナ学園】から」

 

調月 リオ「空間トンネルの調整が完了しました。目標:隕石αの目の前に出ます」

 

羽沼 マコト「よし! イロハ、発進しろ! そして、キヴォトスの大地に【万魔殿】の偉大さを示すのだ!」

 

――――――

棗 イロハ「はあ、どうしてこんなことに……」

 

棗 イロハ「まあ、こうなった以上、やることはやりますよ」

 

棗 イロハ「――――――初出撃が隕石の運搬、それから破壊だなんてね」

 

棗 イロハ「操縦士、準備はいい? マコト議長の言うことはあんまり聞く必要はないから、先生の指示通りにやって」

 

棗 イロハ「えっと、対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸、出撃」

 

棗 イロハ「それじゃ、メテオール、行きます」

――――――

 

北条先生「許可します」

 

羽沼 マコト「さあ、いよいよだぞ」キキキッ

 

桐藤 ナギサ「………………」

 

七神 リン「おお」

 

調月 リオ「対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸、目標:隕石αに転移しました。異常なし」

 

羽沼 マコト「よし! とっととそのドデカイ隕石(石ころ)を射爆場に運べ、イロハ!」

 

調月 リオ「それでは、射爆場αへの空間トンネルを使って射爆場αへ」

 

調月 リオ「――――――完了しました。部隊の到着まで その場で待機を」

 

――――――

棗 イロハ「わかりました。これぐらい簡単な作業なら、いくらでも引き受けますよ。待ち時間に読書が捗りますし」

――――――

 

調月 リオ「では、【ゲヘナ】の部隊を射爆場αに移動させてください」

 

羽沼 マコト「言われるまでもなく、もう移動させている」

 

調月 リオ「――――――順番がちがいますが? 機龍丸が到着する前に包囲を解いていたのですか?」

 

羽沼 マコト「細かいことをグチグチ言うな。機龍丸が四次元空間から現れるのに合わせて、後方部隊から移動を開始させていたんだから、影響なんて出るわけがないだろう」

 

羽沼 マコト「射爆場に部隊を移動させるまでの時間が一番かかるんだから、ここは少しでも早く部隊を動かすべき状況であろう?」

 

調月 リオ「機龍丸が隕石を射爆場に移送する前に動きがあった時に完璧に対応できるようになっていなければならないことがわからないのかしら?」

 

桐藤 ナギサ「こんなところで口論しないでください!」

 

北条先生「……ほう」

 

 

桐藤 ナギサ「先生! この場合はどちらの判断が正しいですか?」

 

 

北条先生「羽沼さん、今回の異常である隕石の対応について自治区の住民にどんな説明をしてきましたか?」

 

羽沼 マコト「なに――――――?」

 

北条先生「じゃあ、羽沼さんの判断は間違っています」

 

羽沼 マコト「な、なにぃいいいいいい!? まだ何も言っていないではないかああああ!?」ガビーン!

 

桐藤 ナギサ「ええ!?」ガタッ

 

北条先生「言いましたよね、僕は。怪獣退治の第一は民間人の安全を確保するところからだと」

 

北条先生「一番に気を配って説明すべき自治区の住民への対応を即座に回答できないようなら、僕は一切信用できない。守るべき民間人を戦闘に巻き込む可能性を恐れて戦えない」

 

北条先生「いいですか。基本的に怪獣退治は作戦通りに進むことはないと思っているので、目的を達成できたのなら多少のハプニングや命令無視は許容するつもりではいます。それが独占業務(ライセンス)の特権ですから」

 

北条先生「しかし、一番に優先すべき市民への配慮を怠った独断専行だけは怪獣退治の理念に反する行いなので、僕はこうして叱ります」

 

北条先生「現場の判断で命令に反する行いをするのだったら、情状酌量の余地を残すためにも最低でも民間人への説明を徹底してください。そうじゃないと、僕がみなさんのことを弁護できないので」

 

 

北条先生「――――――先生と約束ですよ、羽沼さん?」

 

 

羽沼 マコト「……そういうことなら、いいだろう、先生。次からは抜かりなくやっておこう」キキキッ

 

北条先生「調月さんも、一番重要なのは現場との通信なので、現場への確認を優先してください。状況把握の基本です」

 

北条先生「作戦司令部というのは、自分たちが任命した部下の人格や能力を信用して作戦に送り出した任命責任があるわけなので、任命した部下が直面している現実に耳を傾けてやってください」

 

北条先生「裏返すと、現場を無視している輩の発言は聞くに値しないので、まずはそこから確かめてください」

 

北条先生「これでいいですか、調月さん? 今回は作戦の進行を不可能にする致命的な問題が発生しなかったですね?」

 

調月 リオ「はい、先生。ありがとうございました」

 

北条先生「どういたしまして」

 

桐藤 ナギサ「お見事です、先生」

 

七神 リン「さすがです。非常に参考になります」

 

北条先生「そうは言いますけど、そういう意味で非常に心配なのは【ゲヘナ】もそうですが、【トリニティ】もなんですけどね!」

 

桐藤 ナギサ「せ、先生!?」

 

七神 リン「……飛び火しましたね」

 

 

北条先生「早く使える状態にしてくださいね。あれが【キヴォトス防衛軍】の保有物ではなく、【トリニティ総合学園】ひいては【ティーパーティー】からの供与という形で運用することになった以上は」

 

 

桐藤 ナギサ「はい。急がせます……」

 

羽沼 マコト「そうだぞ? 無理ならば、【ゲヘナ学園】に譲ってくれてもかまわないがな?」キキキッ

 

桐藤 ナギサ「くっ」

 

七神 リン「………………」

 

七神 リン「本当に一瞬でしたね、先生」

 

北条先生「本来はそれだけの脅威だったわけです、あのロボット怪獣:メカギラスは」

 

七神 リン「どんなに優れた超兵器も使い方次第というわけですね」

 

北条先生「いえ、本当に優れているのなら、あれだけの科学力を侵略なんて野蛮なことに利用しません」

 

七神 リン「そうですね」

 

 

四次元空間から突如として【ゲヘナ】に落ちた超巨大隕石の目の前に現れたのは、あの四次元宇宙人:バム星人がキヴォトス侵略のために現地人を拉致して造らせた四次元ロボ獣:メカギラスであった。否、現在は対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸である。

 

それも機長と操縦士の2人組が乗り込むコクピット、所属を示す識別コードや【万魔殿】の紋章がペイントされた肩アーマーに加え、全体的にダークブルーに塗り替えられて、【ゲヘナ】を象徴する悪魔の角が頭に生えた機体へと改造されていたのである。

 

そう、これこそが【ゲヘナ学園】ひいては【万魔殿】が保有するようになった本格的な対怪獣兵器であり、鹵獲した機体でどうにかしようとした現地改修型の有り合わせに過ぎないのだが、現状で50m級の怪獣と真向勝負できる戦力の当ては修復できた侵略兵器の転用しかなかった。

 

結果、【ゲヘナ学園】ひいては【万魔殿】が保有する対怪獣兵器を【キヴォトス防衛軍】の作戦行動の際に供与する形で怪獣退治に出撃する防衛兵器へと生まれ変わり、その強大な力の暴走や悪用に備えた安全管理には非常に気を使っていた。

 

元々が侵略宇宙人:バム星人の遺産であるロボット怪獣によるキヴォトス征服への野心の芽もまた【メテオール規約】によって抑えられており、搭載されている四次元移動機能;メテオールの使用許可が降りなければ三次元空間:キヴォトスに発進することができないため、保有先は【万魔殿】でも実質的な使用権は【キヴォトス防衛軍】の軍事顧問:北条 アキラが握っていたわけである。

 

しかし、保有先が【ゲヘナ学園】となったため、無理な稼働試験でスクラップにしようが、どのような扱いをしようが、そこから先は完全に【ゲヘナ学園】の自由であることを北条 アキラが明確にしたため、総力を上げて修復した機体を女の子らしく可愛らしく愛銃をデコレーションする感覚と同じように飾り付けすることに関しても黙認していた。

 

そのため、当初は手に入れたロボット怪獣の改造プランやデザイン会議で【万魔殿】は相当に揉めることになり、当然ながら超巨大兵器の開発など前人未踏の領域だったことも手伝って一向にまとまる気配がなかったため、結局は怪獣退治の専門家:北条 アキラの要望に基づいた現在の形のものに落ち着くことになった。

 

すなわち、バム星人が送り込んだ悪の侵略兵器だった過去の事実と印象を払拭させるために、正義の防衛兵器としての別のコードネームをつけること、メインカラーをメタルシルバーから塗り替えること、所属が【ゲヘナ学園】もしくは【万魔殿】であることを明示すること、様々な状況に対応できる追加装備を載せられる増設ハンガーを設けることなどの諸々の要望に従った結果が対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸であった。

 

今回が初出撃となる対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸は原型機である四次元メカ獣:メカギラスから大きな性能の変化はないものの、メテオール;四次元移動能力と空間トンネルを利用した三次元空間への自由自在な行き来が重宝されており、そこから能力範囲を拡張して 空間トンネルによる 三次元空間の点と点を結ぶ 物資輸送を超越した 物質転送に駆り出された。

 

やり方としては両肩の増設ハンガーに装備された電磁フィールドで囲った物体の輪郭を解析することで空間トンネルに手も触れずに対象を送り込むことができ、電磁フィールドによる走査で破壊や変質しないことを前提に液体や気体などの不定形物質も輪郭を捉えた一瞬で転送できる利点があった。

 

こうして出撃から転送までの手順を最適化すれば、今回の隕石を射爆場へ移動させる作業は、理論上は1秒で終わらせることが可能であり、初出撃であることや安全確認のために丁寧に手順を踏んでいくことが求められていたが、あらためてメテオール:Much Extreme Technology of Extraterrestial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)の凄まじさを誰もが体感することとなった。

 

 

さて、ここからは余談となるが、【ゲヘナ学園】に対抗している【トリニティ総合学園】の視点となる。

 

四次元宇宙人:バム星人への一大反抗作戦の第1段階として先行していた【C&C】のトップエージェントに基地ごと爆破されていたメカギラス1号機だったが、作戦に参加できずに後からやってきてバム星人の遺物の分け前を主張してきた【ゲヘナ学園】羽沼 マコトがその所有権を得ていた。

 

他にも分離合体機構を有するメカギラス2号機などもあったのだが、この選択によって羽沼 マコトは【トリニティ総合学園】に対して圧倒的優位に立つことに成功し、【ゲヘナ学園】が天下を取る確信を得るにまで至ったのである。

 

というのも、キヴォトス屈指の犯罪率の高さからくる【ゲヘナ学園】の日常的なトラブルに巻き込まれて作戦不参加という失態を犯したことを死ぬほど悔しがっていたのだが、

 

そこからいつものように冷静さを取り戻すと、作戦が終わってからまとめられた報告の内容を聞き出した結果、【C&C】に爆破されたメカギラス1号機を【ゲヘナ学園】に、ウルトラマンに撃破されたメカギラス2号機を【トリニティ総合学園】に渡すべきという冴え渡った状況判断に至ったのだ。

 

なにしろ、拉致されたキヴォトス市民の手で実際に整備されていた非可変機のメカギラス1号機と、基地奪還のために送り込まれた未確認の可変機のメカギラス2号機とではメンテナンス面での実績に差があるのだから、【C&C】に爆破された1号機の復旧は容易く、ウルトラマンの光線技で爆散した2号機の復旧は困難を極めることだろう。

 

結果、非可変機の1号機の所有権はそのまま【ゲヘナ学園】ひいては【万魔殿】のものとなる――――――。このことに異論を挟む余地はないだろう。

 

しかし、3つに分離する可変機の2号機の所有権は【ゲヘナ学園】羽沼 マコトへの対抗心もあって【トリニティ総合学園】のものとなったのだが、そのまま【ティーパーティー】で運用とはならなかったのである。

 

やや語弊があったかもしれない。というのも、【トリニティ総合学園】は古来から存続する派閥というのものが裏にあり、【ティーパーティー】だけでも【パテル】【フィリウス】【サンクトゥス】の3つの派閥で構成されているのだ。

 

つまり、2号機の所有権はたしかに【トリニティ総合学園】ひいては【ティーパーティー】のものになったのだが、その中の【パテル】【フィリウス】【サンクトゥス】の3つの派閥のどれに帰属するかで揉めることになってしまうのだ。

 

そのため、代表として会議に参加していた【ティーパーティー】副ホスト:桐藤 ナギサは【万魔殿】羽沼 マコトが非可変機の1号機の所有権を主張したことに内心では安堵していた。最初から3つに分離する可変機の2号機の所有権を得られれば、【ティーパーティー】で分け合って角が立たないということで、互いに望み通りの結果が得られたと思っていたからだ。

 

しかし、実際のところ、最初から実用面を評価して非可変機の1号機を求めた羽沼 マコトと、派閥の力関係を重視して3つに分離した機体の所有権をそれぞれ持たせようと考えた桐藤 ナギサとの間に生まれた大きな差が現実のものとなったのだ。

 

 

――――――羽沼 マコトは嘲笑う。はてさて、どの派閥が“(頭部)”で、“(胸部)”で、“(脚部)”なのかと。

 

 

そう、予定通りに可変機の2号機の所有権を掴み取ったことに満足していた副ホスト:桐藤 ナギサだったのだが、頭部・胸部・脚部の3つに分離する機体の所有権を【パテル】【フィリウス】【サンクトゥス】の3派閥にどのように割り振るかまではまったく考えていなかった――――――、その思考の隙を突かれることになったのだ。

 

というより、3機が合体しないと本領発揮できないのだから、どの派閥がどの機体を持っていようと関係ないと桐藤 ナギサは実際に現物を見ていたからこそ一緒くたに考えていたのだが、現場にいなかったからこそ客観的な判断ができた羽沼 マコトの狡猾な罠が炸裂したのだ。

 

何が起きたのか――――――。それはせっかく獲得できた可変機のメカギラス2号機だったが、【キヴォトス防衛軍】の作戦行動に参加するに当たっての改造プランやデザイン会議が【ゲヘナ学園】以上に紛糾することになり、それ以前にどの派閥がどの部分を保有するのか(上か、中か、下か)で【ティーパーティー】での派閥争いが激化してしまったのだ。

 

対等だからこそ【ティーパーティー】の生徒会長たるホストの座を持ち回りにしていた【パテル】【フィリウス】【サンクトゥス】の3派閥だったが、ここに来て『どの派閥が“(頭部)”で、“(胸部)”で、“(脚部)”なのか?』という序列化の概念がメカギラス2号機の保有を巡ってもたらされてしまったのである。

 

それどころか、対怪獣兵器としてバム星人の侵略兵器を転用する計画そのものが気に食わない清流派を気取る生徒もおり、後からやってきて所有権を主張してきた【ゲヘナ学園】に後追いする形で【トリニティ総合学園】がバム星人の侵略兵器を掴まされたと邪推する者や、メカギラスの正統派とも言えるロボット怪獣らしい外見が悪魔のようであるからと反発してくる者すら出てきた始末である。

 

また、ウルトラマンの光線技で爆散したメカギラス2号機の修復自体は【トリニティ総合学園】の外郭団体を通じて進められてはいるものの、ただでさえキヴォトスの科学力を超越したバム星人の侵略兵器なのに、超常的な可変機構に加えて推進機が見当たらない飛行能力などの未知の技術の解析にも時間がかかっていた。

 

その点、メカギラス1号機は非可変機なので、見た目通りの機能を修復できれば、すぐに型通りの運用が可能で、なおかつバム星人が拉致して洗脳した現地人に整備させた実績から、爆破された基地の修復も済めば メンテナンスが比較的容易であった。2号機には整備記録がないのだから、そこからして手探りなのである。

 

 

――――――結果、キヴォトス三大学園の一角【トリニティ総合学園】を清く正しく導くべき生徒会【ティーパーティー】の迷走が始まっていた。

 

 

元々がキヴォトス侵略のために差し向けられた悪魔の兵器であるため、宗教上の理由あるいは凄まじく偏狭な価値観から派閥内でも猛反発が起きていたのだ。残念ながら、由緒正しき宗教派閥は同じ目的や価値観を共有しているチームなどではなく、組織のための個人が存在しているだけのグループでしかなかったのだ。

 

まさか、このような不和を【ティーパーティー】にもたらすことになるとはまったく思っていなかった桐藤 ナギサは愕然とした。硫酸怪獣:ホーの一件で【トリニティ】が派閥の垣根を超えて新しい未来を作り出そうと派閥の代表たちが手を取り合ったばかりだというのに、今度は派閥内で猛反発を受けることになったのに怒りを覚え始めた。

 

それは派閥の代表であるから自身の見解が派閥の総意だと信じて疑わなかった自分の認識の甘さに対して。もしくは、わがままを通り越して時勢の読めない愚か者たちがこんなにも大勢いたことに対して。あるいは、同じ派閥に所属しているからと胸に抱く思いは同じだと信用していたのに決して少なくない生徒たちに裏切られたと感じて――――――。

 

そんなこんなで足踏みをしている間に、北条先生の要望を汲み取って逸早く学園が保有する対怪獣兵器として完成に漕ぎ着けたのが【ゲヘナ学園】に渡ったメカギラス1号機こと対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸であり、こうして初出撃となったのに対し、

 

【トリニティ総合学園】に渡ったメカギラス2号機は有人機にするのか、無人機にするのか、技術的な問題をどう解決するのかさえも議論が始まらないので、まったく実戦投入できる気配がないのである。

 

そのため、【キヴォトス防衛軍】で活躍している【正義実現委員会】仲正 イチカは派閥抗争どころか派閥内でも意見が対立して雁字搦めになって成すべきことが進められない母校の惨状に失望することになり、

 

このままだと【正義実現委員会】の命令権を持つ【ティーパーティー】が崩壊して指揮系統がメチャクチャになって機能不全になりかねないと副委員長:羽川 ハスミが“シャーレの先生”に泣きついてくる有り様であった。

 

当然、それだけが理由じゃない。なぜなら、【キヴォトス防衛軍】には劣るものの、【ゲヘナ学園】と【トリニティ総合学園】による軍事同盟【エデン条約機構】の結成が控えていて、それに向けて一丸となって取り組んできたというのに、

 

そこに対怪獣兵器へと生まれ変わったメカギラス1号機という巨大な戦力を擁することになった【ゲヘナ学園】と足並みを揃えることができなければ、条約締結で発足した【エデン条約機構】の主導権が【ゲヘナ】優位になってしまうのは確実だからだ。力の均衡はすでに崩れ去っているのに。

 

そう、ここまで来ると【ティーパーティー】への不信感がエデン条約締結のために忍耐を重ねてきた【正義実現委員会】でも隠しきれないものまで膨れ上がっていたのは言うまでもない。

 

メカギラスに対抗するために同じメカギラスが絶対に必要なのに、宗教上の理由とか個人の好き嫌いとか言っている場合じゃないはずなのに、それこそ【正義実現委員会】にはエデン条約締結のために無理強いするのに、なぜに指導層たる【ティーパーティー】で自分たちの代表の意見に逆らって好き勝手な対立が起きるというのか――――――。

 

しかし、そういった学園内のドロドロとした内情にも不干渉を誓っているのが“シャーレの先生”であり、【正義実現委員会】の面々の期待に応えることはできなかった。それをどうにかするのが自治区を運営する学園の責任であり、義務であり、手腕であるからだ。

 

ただ、この場合における最悪の事態とは何なのかを考えさせた後、怪獣退治の専門家の意見として【ティーパーティー】崩壊に備えた法整備を正ホスト:百合園 セイアに進めさせるべきだとはそれとなく伝えていた。

 

怪獣退治の鉄則;それは民間人の避難が最優先である。聡明な羽川 ハスミはそこに希望を見出して行動に移ることになった――――――。

 

そんなわけで、【万魔殿】羽沼 マコトは正ホスト:百合園 セイアの代理人として顔を合わせるようになった【ティーパーティー】桐藤 ナギサの全方位から叩かれ続けて苦悩する様を笑わずにはいられなかったのだ。深窓の令嬢として優雅な物腰を見せる彼女が紅茶を飲み干す回数の異常さに気づいてからは特に。

 

これは学園内の派閥の力関係にしか目を向けずに交渉を行ってきた副ホスト:桐藤 ナギサの完全な落ち度であり、派閥内の意思統一すらできない無能だと罵るのは簡単だが、彼女だけを責めるのはあまりにも酷な話である。

 

むしろ、彼女は長年の宿敵である【ゲヘナ学園】との平和条約締結のために内心はともかく非常に寛容で忍耐強く尽力してきたし、何の偏見も持たずに強大な戦力となるメカギラス2号機を【ティーパーティー】で分け合う発想に至るのだから、保守的な人間が大多数の【トリニティ総合学園】では非常に先進的で英明な人物であると言えた。

 

もちろん、先進的な分だけ戒律に厳しい保守的な価値観を蔑ろにしているところがあり、代々に渡って政治を司る【ティーパーティー】の3派閥のトップ層の人間としての高慢さも所々にはあるが、一個人としては非常に好感が持てるお嬢様であることは誰もが認めるところである。

 

しかし、悲しいかな、北条 アキラがキヴォトスに喚ばれてから怪獣頻出期の到来を告げるXデーを迎えて【トリニティ総合学園】も変わらざるを得なくなったわけなのだが、本当の意味で変わることができたのはごく一握りの選ばれた人間だけであった――――――。

 

詳細はいずれ語る時が来るが、結果としてキヴォトスが初めて直面する怪獣頻出期という破滅が押し寄せる変革期ひいては乱世への認識の差あるいは適性の差が現れたと言ってもいい。

 

 

 

 

 

ロボット職員「――――――スズミさん? どうして? 現在【キヴォトス防衛軍】の作戦行動中のため、【シャーレ・オフィス】は閉鎖していますよ?」

 

守月 スズミ「……すみません。居ても立っても居られなくなって」

 

ロボット職員「では、臨時の警備員をやってもらいましょうか?」

 

守月 スズミ「え?」

 

ロボット職員「ほら、ここはまだ安全ですけど、劇場でこれから演奏を始める楽団の安全も確保しないといけませんし」

 

ロボット職員「大丈夫ですよ。僕自身も【キヴォトス防衛軍】の所属ではないですが、協力関係にある【シャーレ】の職員ですから」

 

ロボット職員「要人警護をお願いできますか? 今日も閃光手榴弾をたくさん持ってきていますよね?」

 

守月 スズミ「はい! まかせてください!」

 

錠前 サオリ「……どうした、コーイチ? 姫の出番が近いから劇場に移動するのではなかったのか?」

 

秤 アツコ「………………」

 

ロボット職員「あ、すみません。急遽 護衛を増やすことにしました」

 

ロボット職員「紹介します。こちらは守月 スズミさんです。“トリニティの走る閃光弾”と呼ばれる見回りの達人です」

 

守月 スズミ「よろしくお願いします。守月 スズミです」

 

錠前 サオリ「錠前 サオリだ。よろしく頼む」

 

秤 アツコ「……秤 アツコ」

 

 

 

ロボット職員「まだ最初の部隊の移動が完了していないので、次の隕石に向かえないようですね」

 

ロボット職員「どこに向かっているかまでは知らされていませんが、全ての隕石を安全な場所に移して民間人の安全を確保することになっています」

 

守月 スズミ「そうだったんですね。道理であれっきり大きな動きがないわけです」

 

錠前 サオリ「しかし、本当にあれは怪獣が入った容れ物なのか?」

 

ロボット職員「わかりません。わからないから、万全な状態で調べる準備を今やっているところなんですね」

 

秤 アツコ「………………」

 

ロボット職員「さて、到着しましたよ。昨日、先生がライブ配信していたのはこの劇場です。緊急出動がなければ、2日目の舞台になっていたはずでした」

 

守月 スズミ「あ、今やっているのが終わったら、楽団の演奏が次に来ますよ」

 

ロボット職員「これをみんなで聴くために先生は音楽フェスティバルを開いたようなものですから、今日は貸し切りの特等席でしっかりと鑑賞してくださいね」

 

ロボット職員「私も久しぶりに演奏を聴きます」

 

錠前 サオリ「ああ、しっかりと聴かせてもらうぞ」

 

秤 アツコ「……楽しみ」

 

ロボット職員「演奏が終わったら、花束贈呈ですよ」

 

秤 アツコ「……うん」

 

守月 スズミ「あの、ガリバーさん?」

 

ロボット職員「どうしました?」

 

守月 スズミ「…………どうして秤 アツコさんはガスマスクをしているのでしょうか?」

 

ロボット職員「さあ、なんででしょうね?」

 

守月 スズミ「……まあ、人それぞれではありますけど」

 

ロボット職員「ごめんね」

 

守月 スズミ「いえ、気になっただけで詮索するつもりはないですから――――――」

 

 

守月 スズミ「――――――ッ」ジャキ!

 

錠前 サオリ「――――――ッ」ジャキ!

 

 

秤 アツコ「……サッちゃん?」

 

ロボット職員「……サオリさん? スズミさん? どうかしましたか?」

 

守月 スズミ「…………ガリバーさん、何か視線を感じませんでしたか?」

 

錠前 サオリ「…………妙な視線だったな」

 

ロボット職員「……すみませんが、会場内の間取り図を渡しますので、劇場内の警備を始めましょうか」

 

秤 アツコ「……うん」

 

 

 

 

 

チェロ弾き「始めよう。これが最後のコンサートだ」

 

 

 

 

 

――――――セミプロの楽団が観客がいない劇場で演奏を始める。その音は美しいと言うよりも不協和音に近い導入から始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――目標:隕石β【百鬼夜行】方面/現場指揮車(MOP)

 

北条先生「よし、射爆場αに部隊が到着完了」

 

飛鳥馬 トキ「ようやくですね。ずっと退屈でした」

 

調月 リオ「ええ。これでようやく次の段階に進めるわね」

 

調月 リオ「では、対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸は【百鬼夜行】の目標:隕石βの移動を――――――」

 

――――――

七神 リン「大変です、先生!」

――――――

 

北条先生「どうしました?」

 

――――――

七神 リン「こちらの映像を御覧ください! 隕石γから怪獣が出現しました!」

――――――

 

飛鳥馬 トキ「――――――モップが、手足の生えた赤いモップが立っています! 見たこともないヘンテコ怪獣です、先生ッ!」

 

北条先生「空間トンネルの行き先を変更! 対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸は目標:隕石γから現れた怪獣の迎撃に当たれ!」

 

調月 リオ「はい! 10秒 待ってください!」

 

北条先生「出てきた直後にサーモバリック爆弾は!?」

 

――――――

七神 リン「先生の指示通りに出現直後に直撃させました」

 

七神 リン「ですので、自由空間蒸気雲爆発が収まるまでは――――――」

――――――

 

北条先生「……どこかで見た覚えがあるな、あの赤い毛むくじゃらのチンチクリンな怪獣は」

 

北条先生「でも、生き物ならサーモバリック爆弾の直撃を受けて耐えられるはずがない」

 

北条先生「それに耐えられるとしたら、十中八九 ロボット怪獣だ。精密機械の塊なら電気や冷気が弱点のはずだ。そこを突けばいい」

 

調月 リオ「対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸、目標:隕石γ【メトロポリス(首都:D.U.)】に転移完了!」

 

飛鳥馬 トキ「本当にあっという間ですね、空間トンネルは」

 

北条先生「他の隕石は!?」

 

――――――

七神 リン「移動済みの隕石αに変化はありません」

――――――

 

飛鳥馬 トキ「同じく、目の前の隕石βにも変化はないようです」

 

調月 リオ「中身が 先生の言う通り 怪獣だとわかった以上、射爆場に移動済みの隕石αにも攻撃を加えますか?」

 

北条先生「いや、これはどういうことだ? 本当に超巨大隕石は怪獣カプセルだったんだぞ? こういう時は3つ同時に怪獣が出てきて暴れ出すものではないのか?」

 

調月 リオ「あるいは、時間差があるのか、できたのか……」

 

飛鳥馬 トキ「かと言って、3つ全てが同じ怪獣(赤いモップ)であるとも限らない」

 

――――――

七神 リン「先生、それなのですが、直前までノイズクラスターの反響で隕石γの中身を調べていたわけですが、隕石γから怪獣が現れる直前から謎の怪音波が観測されています。データを共有します」

 

七神 リン「ですので、隕石から現れた怪獣と何か関係があるのではないでしょうか?」

――――――

 

北条先生「でかした! 十中八九、それだ!」

 

調月 リオ「つまりは超音波――――――?」

 

北条先生「だとしたら、その発生源を特定できませんか?」

 

――――――

七神 リン「はい。調査中です。【SRT】の特殊部隊も出動させます」

――――――

 

北条先生「頼む! サーモバリック爆弾で跡形もなくなってくれ! それでキヴォトスは救われる!」

 

北条先生「……いや、待てよ? 本当に怪音波と関係があるのなら、他の隕石にも影響があるのかもしれない!」

 

調月 リオ「なら! 全部隊、すぐに超音波探知機で隕石γで観測された超音波の影響がないかを確認して! 今すぐに!」

 

調月 リオ「それと、通信妨害の準備もして――――――」ピピッ!

 

調月 リオ「この波形はッ!?」ピピッ!

 

飛鳥馬 トキ「先生ッ! 隕石がッ――――――!」

 

調月 リオ「――――――やはり、怪獣ッ!」

 

北条先生「……遅かったか!」

 

 

 

――――――【百鬼夜行】に落ちた隕石βからも赤い毛むくじゃらのチンチクリンな怪獣が飛び出してきた!

 

 

 

北条先生「サーモバリック爆弾を使うには街との距離が近すぎるから目標βに割り振ったのに、怪獣が隕石から出てきてしまったか……」

 

北条先生「けど、そんなことは折り込み済み!」

 

北条先生「戦闘バギー部隊! 順番を入れ替えてロボット怪獣に特効となるであろう電気攻撃や冷気攻撃を実施後、サーモバリック爆弾の投下予定地に誘い込む!」

 

北条先生「というわけで、お願いしますよ、【C&C】の精鋭たち!」

 

飛鳥馬 トキ「おまかせください、先生。今すぐにあの怪獣(赤いモップ)を始末してきます」スッ

 

北条先生「いや、ダメだから。飛鳥馬さんは行っちゃダメだから」

 

飛鳥馬 トキ「ブーブー! そうやって先生はまたネル先輩ばかりを優遇します! 先生は【C&C】最強のメイドである私の実力を信じていないのですか!?」

 

北条先生「いやね、面倒な話なんだけれど、飛鳥馬さんは【C&C】で唯一【キヴォトス防衛軍】の所属で、あそこに喚んだ【C&C】の部隊は【シャーレ】からの応援という扱いなんだ」

 

北条先生「つまりね、今の飛鳥馬さんは【C&C】じゃなくて僕が軍事顧問を務めている【キヴォトス防衛軍】の一員という扱いなんだ」

 

飛鳥馬 トキ「先生、意味がわかりません」

 

調月 リオ「要はね、トキ。私たち【キヴォトス防衛軍】は今ここに【シャーレ】から応援に来ている生徒たちに協力を要請することはできても命令ができないから、協定の範疇でネルたちのやりたいようにやらせるしかないの。協定違反を咎めることができても、命令違反は咎められないの」

 

調月 リオ「つまり、トキは先生から直接の命令を受けられる【C&C】で唯一のエージェントなの」

 

飛鳥馬 トキ「ああ、そういうことでしたか。理解できました」

 

飛鳥馬 トキ「つまり、私こそが唯一にして最強の選ばれたメイドだというわけですね」エッヘン

 

北条先生「納得してくれたみたいで何よりです」

 

北条先生「さて、サーモバリック爆弾の直撃を受けた怪獣γがそのまま倒れてくれるのなら、話は早いんだけど……」

 

調月 リオ「そうね。隕石αから3体目が出てこないかも視ておかないとだし、何とかして弱点を見つけ出して各個撃破しないと……」

 

北条先生「それと、怪音波――――――」

 

調月 リオ「発信源を特定して超音波の遮断を――――――」

 

 

被害の規模で言えばXデーに姿を現した最初の怪獣:クレッセントが未だに最上位であるが、これはある意味においてはXデー以来のキヴォトス滅亡の危機かもしれなかった。

 

怪獣が入っていそうな超巨大隕石から飛鳥馬 トキに“手足の生えた赤いモップ”と形容された怪獣が現れたわけであり、2体続けて同じ外見の怪獣が現れたのなら最後の1つも同じである可能性は高く、そうでなくとも同時に3体の怪獣が別々の地点に現れるかもしれないというかつてない危機が訪れていた。

 

幸い、最初に【ゲヘナ】から移動させた隕石αからは怪獣が現れる気配は今のところはなく、【メトロポリス(首都:D.U.)】に現れた怪獣γには対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸が向かい、サーモバリック爆弾も浴びせているので、その結果次第で戦況の有利不利が大きく変わる。

 

それまで【百鬼夜行】に現れた怪獣βを街から引き離してサーモバリック爆弾をお見舞いするために、順番を入れ替えてロボット怪獣になら特効になるはずの冷気攻撃や電気攻撃を浴びせ、そこからギャラクシー・スナイパーライフルやミサイルランチャーを構えた戦闘バギー部隊で誘い出す作戦に打って出た。

 

しかし、出現直後の怪獣γを焼き尽くす必殺のサーモバリック爆弾の自由空間蒸気雲爆発が虚しく消えたのと同時刻、怪獣βを誘い出すために戦闘バギーからギャラクシー・スナイパーライフルを引き撃ちする【C&C】の精鋭たちだったが、

 

3つの地点を同時に視ながら怪音波の発信源の特定を急ぐ司令部はサーモバリック爆弾にもギャラクシー・スナイパーライフルにも耐える宇宙金属:チルソナイトの驚異の頑丈さを目の当たりにすることになったのである。

 

 

飛鳥馬 トキ「――――――怪獣γは健在! サーモバリック爆弾に耐えた!」

 

調月 リオ「先生! この異常な温度分布はキヴォトス上のどの生物とも宇宙怪獣ともまったくちがいます!」

 

北条先生「耐えたか! やはり、ロボット怪獣か!」

 

――――――

美甘 ネル「おい、先生! 見ているか!?」

 

美甘 ネル「ヤバいぞ! ギャラクシーが効かねえぞ!? 光線が弾かれてるッ!」

 

美甘 ネル「しかも、普通に堅ぇみたいだから、ミサイルをもろに喰らってもケロッとしてやがる!」

 

美甘 ネル「電気も冷気も効かなかったし、どうすりゃいいんだよ、こんなやつ!?」

――――――

 

北条先生「な、なんだと!?」

 

飛鳥馬 トキ「たしか、ギャラクシー・スナイパーライフルは同じロボット怪獣:メカギラスにも確実なダメージを与えられたはずでは?」

 

調月 リオ「つまり、私たちの想定を遥かに超えたロボット怪獣よ、あれは!」

 

飛鳥馬 トキ「あんな見た目なのに」

 

北条先生「サーモバリック爆弾が効かない上に精密機械の弱点であるはずの電気や冷気にも耐えたとなると、とんでもない汎用性じゃないか!」

 

調月 リオ「単純な形状だからこそ、安定性に富んでいるわけね」

 

北条先生「くそっ。やっぱり、何かで見たことがある気がするんだけどな。思い出せないか」

 

――――――

棗 イロハ「先生! 怪獣γに光線が効きません! それに意外にもすばしっこくて装甲も堅いからミサイルが有効打にならないです!」

 

棗 イロハ「接近戦に切り替えて、怪獣を抑え込みます! マコト議長がうるさいんで!」

 

棗 イロハ「こっちは全長:60m、体重:5万トン! 相手は40mぐらいなんですから、余裕ですね!」

――――――

 

北条先生「いや、ダメだ! 運動性では明らかにメカギラスが負けているし、ざっと見て20m近い身長差があって金属の塊に手足が生えた形状だ! ふいに頭突きを喰らったら、逆に押し倒されるぞ!」

 

飛鳥馬 トキ「ああ、手足の生えた赤いモップがウサギみたいにジタバタして跳ね回っています。ピョンピョン」

 

調月 リオ「先生、怪獣γは機龍丸にまかせて、今は怪獣βの方に集中してください。【C&C】が指示を仰いでいます」

 

北条先生「むぅ」

 

北条先生「美甘さん、怪獣βには射撃能力や投擲能力は認められましたか?」

 

――――――

美甘 ネル「いや、その辺を跳ね回っているだけだ、今のところ」

 

美甘 ネル「くそっ、あたしらのことなんか眼中にもねえってことか!?」

 

美甘 ネル「おい! ウルトラマンはまだなのか!? まさか、隠れてずっと見ているわけじゃないよな!?」

――――――

 

北条先生「……戦闘バギー部隊はその場で待機。航空戦力の応援を待ってください」

 

北条先生「いや、市街地に怪獣βが向かう動きがあり次第、攻撃を再開してください」

 

北条先生「耐えてください。時間を稼ぐことができれば、機龍丸が怪獣γを撃退して駆けつけてくれる目も生まれます」

 

 

北条先生「――――――手も足も出ないか、ただ そこにいるだけで」

 

 

調月 リオ「……先生、ウルトラマンなら勝てる見込みはありますか?」

 

北条先生「――――――メカギラスとは方向性がちがうロボット怪獣か」

 

北条先生「パッと思いついたのだと、海に投げ込んでみようと思いましたが、侵略宇宙人が降下カプセルに入れて送り込んでくるぐらいだし、サーモバリック爆弾にも耐えて、冷気や電気にも耐性があるとなると、海に沈めたぐらいじゃ止まりそうにないです」

 

飛鳥馬 トキ「メカギラスとちがってしっかりとしてそうですからね」

 

北条先生「飛び道具なんてなくても、ただ巨体として存在するだけで威圧できるのが怪獣の恐ろしさだ」

 

北条先生「なら、装甲の薄い部分を狙って内側から衝撃を与えるしか――――――」

 

 

 

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウン・・・・・・パァーーーン!

 

 

 

北条先生「!?」

 

調月 リオ「これは……」

 

飛鳥馬 トキ「――――――昼間から花火ですか?」

 

北条先生「民間人の避難は済んでいたんじゃないのか!?」

 

調月 リオ「花火ぐらいで怪獣を倒せるのなら、サーモバリック爆弾も、接収した列車砲も、鹵獲したロボット怪獣も要らないわ」

 

飛鳥馬 トキ「今すぐに止めさせてきましょうか」

 

北条先生「頼みます――――――」

 

北条先生「ん?」

 

 

 

ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウン・・・・・・パァーーーン!

 

 

 

北条先生「んん?」

 

飛鳥馬 トキ「……先生?」

 

調月 リオ「まさか!?」

 

飛鳥馬 トキ「――――――もしかして 今 一瞬 動きが停まった?」

 

北条先生「……そうだった! 怪音波か! なら、答えは簡単だ!」ダダッ

 

調月 リオ「先生!」

 

飛鳥馬 トキ「待ってください! どこへ行くつもりですか、先生!」

 

 

北条先生「やっぱり、怪音波だ! 敵は怪音波でロボット怪獣を操っている! それも3つの降下地点に届いて射爆場には届かない範囲から!」

 

 

飛鳥馬 トキ「!!」

 

北条先生「それを割り出して【SRT】の特殊部隊を! あれは宇宙規模で言えば短距離通信によるラジコン操作だ!」

 

北条先生「それまでは花火でも何でもいい! 怪音波を掻き消せるもので時間を稼いでください!」

 

調月 リオ「なら、対怪獣兵器:ノイズクラスターがあるγよりも、今はこのβね」

 

調月 リオ「手元に音響兵器がない以上は、【百鬼夜行】にある打ち上げ花火を使わせてもらう他ないわね」

 

北条先生「それじゃ、飛鳥馬さん――――――」

 

 

飛鳥馬 トキ「――――――お断りします、先生」

 

 

調月 リオ「トキ?」

 

北条先生「……それは困る。誰だかは知らないけれど、きっと音楽フェスティバルのお祭り日和のために用意された大量の花火を持ち出している生徒の仕業のはずだ」

 

北条先生「だから、その人たちの避難――――――」

 

飛鳥馬 トキ「――――――ッ」ガバッ

 

北条先生「!!!!」ドンッ! ――――――突如として護衛のメイドに壁に組み伏せられる!

 

調月 リオ「トキ!?」

 

飛鳥馬 トキ「嫌です。私はメイドです。メイドは命令されたら、絶対に従わないといけません」ググググ!

 

飛鳥馬 トキ「だから、何も言わないでください、先生」ググググ! ――――――タオルで口を縛り上げようとする!

 

飛鳥馬 トキ「そして、このまま私に身辺警護の一切をお任せください」ググググ!

 

 

 

北条先生「――――――ごめんね! それはできない相談だ!」ゴンッ! ――――――勢いよく壁に頭を打ち付けた反動で身体が跳ねる!

 

 

飛鳥馬 トキ「なっ!?」グラッ

 

北条先生「羽根のように軽いね、飛鳥馬さん」ドサッ ――――――浮き上がったトキの首を掴み上げて背負投の要領で肩越しに引き込みながら、床に倒れ込む!

 

北条先生「民間人の避難をお願いします。助けて上げて欲しい」ググググ!

 

飛鳥馬 トキ「…………わかりました、先生。メイドとして命令を受けた以上は善処いたします」クッ

 

北条先生「ありがとう」パッ

 

飛鳥馬 トキ「ですが、終わったら、ご奉仕させてください、必ず。このままされっぱなしなのはメイドの名折れです」スッ

 

北条先生「うん。楽しみにしているよ」ヨロ・・・

 

 

状況は最悪であった。四次元ロボ獣:メカギラスより弱そうに見えた隕石怪獣であったが、メカギラスよりも遥かに堅牢な装甲によって【キヴォトス防衛軍】の攻撃が一切通用しないのだから、なぜか派手な破壊活動をせずにその辺を彷徨いているにしても本当に見ているだけしかできなかったのだ。

 

可能性があるとすれば、鹵獲して生まれ変わった対怪獣兵器:機龍丸(メカギラス)が全ての隕石怪獣を撃破することだが、現状では搭載された兵装がまったく効かないために格闘戦を強いられているわけであり、それどころか、運動性は機龍丸(身長:60m)よりも小柄の隕石怪獣(身長:40m)の方が足のバネを利かせて圧倒していた。

 

そのため、体格差を活かして機龍丸(メカギラス)が悪の侵略兵器を押し潰して取り押さえるだなんてことはなく、非武装に見える小柄な怪獣のピョンピョン飛び跳ねる動きに翻弄されており、すぐに応援に来ることはないだろう。

 

 

しかし、転機が訪れたのは、キヴォトスでも際立って和風の【百鬼夜行】の名産品となる打ち上げ花火による攻撃が怪獣βに無許可で行われた時であり、直撃した打ち上げ花火特有の音によって 一瞬 怪獣βの動きが停まったのを見逃さなかった。

 

 

最初の調査で音響兵器:ノイズクラスターの反響で超巨大隕石の中身を分析していたわけなので、偶然にも隕石怪獣を起動させる怪音波が発生した瞬間を捉えることに成功しており、怪音波が攻略の鍵になる情報が得られていたのは幸いだった。

 

なので、音響兵器:ノイズクラスターで分析していた隕石γ【メトロポリス(首都:D.U.)】にはそれを活用するように指示し、音響兵器が手元にない隕石β【百鬼夜行】は攻略のヒントになった打ち上げ花火を接収して効率よく使うことを考えた。

 

そのため、勇気ある【百鬼夜行】の民間人の奮闘(蛮勇)を称えつつ、花火の接収も兼ねて戦場に乗り込んできた民間人を避難させる(追い返す)よう、【C&C】飛鳥馬 トキに指示しようとした時、突如として【キヴォトス防衛軍】に唯一参加しているトップエージェントが軍事顧問の“GUYSの先生”をそこまで広くない現場指揮車(MOP)の壁に押し付けて拘束しようとしたのである。

 

突然の反抗に“ビッグシスター”調月 リオは驚愕するが、自身を最強と信じて疑わない飛鳥馬 トキはどうやら現状の扱いに相当な不満を抱えていて、それでいて『命令を受けたらメイドとしての矜持で必ず遂行しなければならない』とする二律背反から、それなら『命令を封じてしまえばいい』という発想から文字通りの口封じをしてきたのだ。

 

だが、キヴォトス人に比べて脆弱な地球人であるために戦闘能力は低くても戦闘技術はキヴォトス人を凌駕していた“GUYSの先生”は最強を自負する戦闘メイドに驚くような力で壁に押し付けられても屈することなく、

 

思い切り壁に頭突きをかました反動で車体を揺らし、その行為にメイドが驚いた一瞬に片手で飛鳥馬 トキの首根っこを掴むと、体重そのものは外見相応の女の子らしい身軽さから力尽くで背負投をしながら、床に倒れ込んだのである。

 

狭い車内で飛鳥馬 トキの身体が首から一回転したと思ったら、北条 アキラの身体は床面に倒れ込むことになり、首根っこを掴まれていた飛鳥馬 トキの身体もまた北条 アキラに重なるように床面に落ちたのだ。

 

こうして先生の命令を受けたくないがために口封じで壁に押し付けて拘束しようと反抗してきた飛鳥馬 トキだったが、結果は何枚も上手だった北条 アキラに一瞬で首根っこを掴まれて床の上でお願いを耳元で囁かれてしまうのだった。

 

 

――――――飛鳥馬 トキはもう従うしかない。それが自身が誇りとするメイドとしての矜持である以上は。抱き寄せられた先生の胸元から起き上がって任務を遂行しなければならない。

 

 

こんな時に何をしているのだと誰もが思うことだろうが、『実は誇りあるメイドだからこそ反抗してきた』と言えば、上官に反抗してきた相手に対する北条 アキラの生温い対応も理解できるのではないだろうか。

 

ただただ、『ご奉仕させてください』、それだけが望みであり、それを叶えてくれない相手に対する欲求不満が飛鳥馬 トキの視点では【キヴォトス防衛軍】の勝機がまったく見出だせない場面で爆発したのである。

 

飛鳥馬 トキにとって北条 アキラとは現在仕えている主人:調月 リオと肩を並べることができる唯一無二のパートナーという認識であり、つまりは“もうひとりのご主人様”であり、“ビッグシスター”調月 リオと肩を並べるほどの存在感を放つ“GUYSの先生”は誠心誠意お仕えする相手として申し分なかった。

 

しかも、最強のメイドを自負している飛鳥馬 トキさえも認めざるを得ない卓越した戦闘技術や知識の豊富さがあり、それでいて人格面もケチのつけようがない善性の塊で、私生活もほとんど隙がないという欠点の見当たらない立派な大人だったのだ。

 

つまり、飛鳥馬 トキが認めた“もうひとりのご主人様”は基本的にメイドのお世話を必要としないぐらいに自立した完璧超人であり、戦闘面でもこうして反抗してきた最強メイドのワガママを軽く流すぐらいのことはやってのけるので、完璧で究極のメイドであることを自負している自身の価値を認めてもらえていない焦りが無表情の裏で募っていたのである。

 

また、“GUYSの先生”が怪獣退治で求めるものは個の強さよりも群の強さであり、強力無比な対怪獣兵器の運用能力であり、こうして本格的な対怪獣兵器:機龍丸が実戦投入されたのもあり、最強メイドである自分の活躍の場が失われていく危機感もあったのだ。

 

最近になると、対怪獣兵器の携行火器が支給されて本格的に【C&C】のトップエージェントたちも怪獣退治に参戦するようになり、初期から【キヴォトス防衛軍】にいた飛鳥馬 トキよりも目立つ活躍の場を与えられ、バム星人が四次元空間に築き上げた前線基地の制圧と拉致された生徒たちの救出を成し遂げたという功績が記憶に新しいのだから、活躍の場が欲しくてしかたがなかった。

 

 

――――――しかし、本当のところはそんな程度のことで飛鳥馬 トキが癇癪を起こしたわけではなかった。赤と銀の光の巨人の手のひらであの温かさに包まれた一人としては。

 

 

調月 リオ「まさか、トキが……」

 

北条先生「怒らないでやってください。僕の判断で飛鳥馬さんの活躍の機会を奪ってきたわけですから」

 

調月 リオ「たぶん、そういうことじゃないわよ、先生」

 

調月 リオ「トキは先生に怪獣と戦って欲しくなくて――――――

 

調月 リオ「先生、額から血が滲んでいます。手当をしますから、腰を下ろしてください」

 

北条先生「調月さん、【百鬼夜行】に現れたガラモンβは僕が何とかしますから、発信源の探知に全力をお願いします」

 

調月 リオ「わかっています。無理はしないでください、先生こそ」

 

調月 リオ「――――――今、『ガラモン』と言いましたか、先生?」

 

北条先生「うん。“ガラダマから現れたモンスター”縮めて“ガラモン”。隕石怪獣:ガラモン。ガラダマは隕石の方言だから、そのまんまの名前だったのをさっき頭を打ち付けた時に思い出せたよ」

 

北条先生「あれは最初の防衛チーム【科学特捜隊(SSSP)】が結成されるきっかけとなった異星人が送り込んできた初の侵略ロボットだったから、防衛チームの隊員なら必ず教科書で目にするロボット怪獣だったのに……」

 

北条先生「飛鳥馬さんにいきなり壁に押し付けられた瞬間に、目の前が真っ暗になった時にあの怪獣の姿が黒ずんで、ようやく思い出せた」

 

 

――――――だって、モノクロだったんだよ、その当時(ウルトラQ)! 実物があんな真っ赤(総天然色)だなんて思わなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッ        

 

        バッ

 

エイティ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

棗 イロハ「くうっ!」

――――――

 

羽沼 マコト「な、何をやっているんだ、イロハ!? さっさと怪獣をやっつけろ!?」

 

七神 リン「……先生の言う通りでした。格闘戦では機龍丸が明らかに不利となっています」

 

桐藤 ナギサ「まさか、足がバネの構造になっているだなんて!? なんて跳躍力ッ!?」

 

七神 リン「しかも、推定される重量はメカギラスの5万トンより重い6万トンです。それがあれだけの跳躍力でぶつかってきたら――――――」

 

桐藤 ナギサ「あれだけの身軽さにそれだけの重量が合わされば質量兵器になりえます!」

 

羽沼 マコト「おい、また後ろを取られたぞ、イロハ!?」

 

――――――

棗 イロハ「今度は正面から受け止めてみせますよ! そこから押し倒す!」

――――――

 

七神 リン「――――――ッ!?」

 

七神 リン「ダメです! 敵の攻撃を受け止めるのは危険です!」

 

桐藤 ナギサ「どうしたのですか!?」

 

七神 リン「すでに射爆場αに移送した怪獣カプセルの表面調査を行ったところ、隕石の材質が機龍丸:メカギラスを凌駕する堅さをもっています!」

 

七神 リン「もし体毛に見える硬質のトゲが隕石と同じ材質だったら、メカギラスが串刺しになります!」

 

桐藤 ナギサ「なら、今すぐに回避をッ!」

 

羽沼 マコト「な、なんだとおおおお!? 避けろ、イロハああああああああああ!」

 

――――――

棗 イロハ「きゃああああああああああああああああ!?」

――――――

 

羽沼 マコト「イロハ!? 返事をしろ! イロハ! イロハあああああああ!?」

 

七神 リン「――――――装甲貫通」

 

桐藤 ナギサ「嘘ですよね!? 大丈夫なんですか!?」

 

――――――

棗 イロハ「くぅうううううう……」

 

棗 イロハ「うぅ、押し負けた、だけじゃなくて、コクピットに穴を開けられましたか。空が見える……」

 

棗 イロハ「ああ もう! このッ! 憎たらしい!」

 

棗 イロハ「ほら、起きて! 起きなさい、操縦士! 生きているでしょう!?」バンバン!

 

棗 イロハ「……ああ、ダメです。正面装甲が貫通しただけなんですが、操縦士の方がダメになりました」

――――――

 

桐藤 ナギサ「あ、よかったです、無事で」

 

七神 リン「ですが、もう機龍丸は――――――」

 

羽沼 マコト「おお、無事だったか、イロハ! だったら、使えない操縦士は外に放り投げて、お前が操縦しろ! できるだろう?」

 

桐藤 ナギサ「な、何を言っているんですか!?」

 

――――――

棗 イロハ「まあ、そのための複座式ですから、脱出装置を起動させて席をどかすとしましょうか」

 

棗 イロハ「このままやられっぱなしっていうのも癪に障りますから!」

――――――

 

七神 リン「落ち着いてください! 頭に血が上っていますよ!」

 

桐藤 ナギサ「そうですよ! どうやってあの怪獣を倒すつもりなんですか! ミサイルもビームも効かない! 格闘戦に至っては完全に負けているんですよ!?」

 

羽沼 マコト「じゃあ、このまま逃げ帰るのか!?」

 

七神 リン「そ、それは――――――」

 

桐藤 ナギサ「何とかしなくちゃいけないのに……」

 

七神 リン「あ、待ってください。今、目標:隕石β【百鬼夜行】方面から通信です」

 

羽沼 マコト「どうした!? 何か攻略の糸口が掴めたのか!?」

 

桐藤 ナギサ「先生からですね! お願いします、この状況を打開する一手を!」

 

 

七神 リン「まず、今回の目標であるロボット怪獣は“ガラダマ・モンスター”縮めて“ガラモン”と命名する。あれは()()()()()()()()()だそうです」

 

 

桐藤 ナギサ「……が、『ガラモン』ですか。随分と可愛らしい名前ですね」

 

羽沼 マコト「いや、そんなことより! 『あれは地球でも現れた怪獣』、そう言ってきたんだな!?」

 

七神 リン「はい。ガラモンは超音波で動くラジコン操作のロボット怪獣とのことなので、求められるのは超音波の受信の妨害と、発信源の探知と破壊となります」

 

羽沼 マコト「よし! そこまでわかれば希望は見えてきたぞ!」

 

桐藤 ナギサ「はい! 目の前にいる怪獣は倒さなくてもいいんです!」

 

七神 リン「ええ! 発信源の特定さえできれば、【SRT】で制圧します!」

 

七神 リン「ですので、それまでは――――――」

 

――――――

棗 イロハ「はあああああああああああああああああああああ!」

――――――

 

羽沼 マコト「おい、やめろ、イロハ! 聞いてなかったのか、おい!?」

 

桐藤 ナギサ「そうです! それ以上は危険です!」

 

羽沼 マコト「急げよ! イロハが――――――!」

 

七神 リン「言われなくても!」

 

――――――

棗 イロハ「――――――今までにない動き!? 何をする気!?」

 

棗 イロハ「こ、これは……!?」

 

棗 イロハ「ああああああああああああああああ!? あ、頭が割れるぅうううううう!?」

――――――

 

 

一方、今回の怪獣の正体が【アウト・オブ・ドキュメント】に記録されている隕石怪獣:ガラモンだと判明したことで攻略の糸口が少しずつ見出だせたのだが、怪獣退治の専門家“GUYSの先生”からの情報伝達に致命的なタイムラグが発生していたため、

 

意気揚々と初出撃していた対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸だったが、意外なほどに身軽で全身を棘状の鱗に覆われたガラモンのヒップアタックをもろに喰らって正面装甲が破られるほどの損傷を受けてしまっていたのだ。

 

とてつもなく頑丈なロボット怪獣の正面装甲が安安と破られるのはあまりにも信じられない光景であり、【万魔殿】から選抜された操縦士はあと数cmで額にまで達しそうになったガラモンの赤茶色のトゲに血の気が引いて気絶してしまっていた。

 

後部座席の機長:棗 イロハには達することはなかった赤茶色のトゲではあったが、正面装甲を貫いてきたということはそれだけガラモンの身体が食い込んでいるわけであり、20mの体格差を諸共せずに機龍丸は再び大地に押し倒されてしまっていた。勝ち誇るようにガラモンが跳ね回る姿が裂けた正面装甲の隙間から見える。

 

それでも、気絶してしまった操縦士を押し退けてでも勝ちに行こうとするのは普段はサボり魔の棗 イロハらしからぬ激情とも言えたが、

 

ここがXデーの舞台であったサンクトゥムタワーの方面だったからこそ、Xデーで戦車部隊を率いて地底怪獣:クレッセントに成す術もなく蹂躙された屈辱が昨日のことのように蘇ってくるのだ。

 

今度は負けない――――――。棗 イロハにとって、一度 キヴォトスは怪獣:クレッセントによって滅ぼされたも同然なのだから、もう二度とあの時の絶望を味わわないために力を求めてきたのだから。

 

脳裏に浮かぶのは溺愛している丹花 イブキとの日々であり、先生の授業をみんなで一緒に受けている情景。もっともっと続いて欲しいと思える明日が棗 イロハにはあった――――――。

 

 

しかし、ロボット怪獣を駆る赤毛の少女に対して赤茶色のロボット怪獣がもたらす現実は非情であった。

 

 

怪獣退治の専門家“GUYSの先生”から敵の正体が隕石怪獣:ガラモンであることが告げられ、『地球でも現れた』ということは『対処できた』という一筋の光明が行き渡ったのに気づかぬまま、

 

不退転の覚悟で鬼気迫る棗 イロハが操縦桿を握った機龍丸には今までにない何かを感じ取ったのか――――――、そこから同じように今までにない行動パターンを取り出したガラモンの超音波攻撃に晒されたのである。

 

耳を塞いでも響いてくる 画面越しには決して伝わることのない ヘイローが割れかねないほどの衝撃が脳幹を揺さぶり、目の前が真っ暗になりかけたその時だった――――――。

 

 

羽沼 マコト「イロハあああああああああああああああ!?」

 

桐藤 ナギサ「そんな!? 超音波で攻撃してくる!?」

 

七神 リン「大変です! 大気圏突入してくる物体が――――――!」

 

桐藤 ナギサ「まさか、増援ですか!?」

 

七神 リン「――――――照合が完了した? すでに登録されているものが来た?」

 

羽沼 マコト「おい、何だと言うんだ?!」

 

七神 リン「まさか、これは――――――!?」

 

 

――――――ノイズラーです! 昨日 先生が武器を使わずに歌で追い払った騒音怪獣:ノイズラーが戻ってきたんです!

 

 

桐藤 ナギサ「この状況で!?」

 

七神 リン「しかも、降下地点はサンクトゥムタワー、目標:隕石βの方面です!」

 

羽沼 マコト「ふ、ふざけるなああああああああああああああああ!」

 

七神 リン「ノイズラー、地表に到達……」

 

羽沼 マコト「見ればわかる!」

 

桐藤 ナギサ「逃げてください! 今の状態でノイズラーの相手なんてできっこないです!」

 

七神 リン「…………いや、これは、いったい?」

 

――――――

棗 イロハ「――――――?」

 

棗 イロハ「…………音が消えた?」

 

棗 イロハ「え、こいつはたしかノイズラー!? 昨日のやつ!? ど、どうして!?」

 

棗 イロハ「それに、あの怪獣の動きも停まっている?」

――――――

 

七神 リン「聞こえますか? 信じられないことですが、隕石怪獣:ガラモンが発している超音波を先生が歌で追い払ってくれた騒音怪獣:ノイズラーが食べているみたいなんです!」

 

七神 リン「そして、ガラモンは超音波で遠隔操作されているロボット怪獣なので、制御を失って棒立ちになっています!」

 

七神 リン「ですので、今のうちに空間トンネルでガラモンをここから射爆場へ転移させてください! おそらく、3つの隕石が降下した地点が重なる範囲にガラモンを操る超音波の発信源があるはずなんです!」

 

――――――

棗 イロハ「え」

――――――

 

羽沼 マコト「イロハ! ガラモンだけは何としてでも排除しろ! ノイズラーは先生がやってみせたように音楽フェスティバルの生放送でも聞かせて大人しくさせるから!」

 

桐藤 ナギサ「ええ! 千載一遇の好機ですよ!」

 

七神 リン「すでにリオ会長が空間トンネルの調整を済ませていますので、すぐにいけます!」

 

七神 リン「それにガラモンβはウルトラマンがやってくれました!」

 

――――――

棗 イロハ「――――――!」

 

棗 イロハ「そうですか。怪獣なんかに借りなんて作りたくなかったんですけど……」

 

棗 イロハ「これも先生が昨日作ってくれた道だと思えば……」

 

棗 イロハ「さあ、機龍丸――――――!」

 

棗 イロハ「掴んだ!」

 

棗 イロハ「メテオール発動!」

――――――

 

 

サンクトゥムタワーがよく見える【メトロポリス(首都:D.U.)】での初のロボット怪獣同士の決戦はまさかのノイズラーの乱入によって、その隙を逃さなかった機龍丸のメテオール:四次元移動能力によってガラモンγを怪音波の範囲外に連れ出したことでガラモンγの無力化に成功し、これによって【キヴォトス防衛軍】は全てのガラモンの無力化に成功し、勝利を拾う結果となったのである。

 

一方、機龍丸の初出撃を見事やり遂げた棗 イロハは九死に一生を得たわけなのだが、完全に機能停止したガラモンの口から緑色の液体がゴボッと溢れ、四次元移動能力に巻き込むためにガラモンに密着していたため、チルソナイトの鱗で引き裂かれた正面装甲の裂け目に一部が入り込む事態に直面していた。

 

なので、最後の最後に悲鳴を上げることになり、勢いに任せて機龍丸の剛腕で機能停止したガラモンを思いっきり突き飛ばして、それで怪獣退治を遂行できたことを実感して、ようやくコクピットの裂け目から見えるキヴォトスの空の輝きを受け止めることができた。

 

下手をすると怪獣が同時に3体現れるかもしれなかった絶望的な状況――――――、それを覆したのは他ならぬ機龍丸のメテオール:四次元移動能力のおかげであり、最初に隕石αを射爆場に移送していたことでガラモンαの出現を未然に防ぐことができたのが一番大きかった。

 

ガラモンγもまたラジコン操作のロボット怪獣の弱点を突くことでこうして無力化に成功したため、初出撃は格上のロボット怪獣に傷一つつけるどころか翻弄された挙げ句にズタボロにされるという展開になってしまったが、それでも不退転の覚悟で戦い続けた結果の逆転勝利は誉れ高いものであった。

 

やはり、対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸ひいては四次元メカ獣:メカギラスは特殊能力特化のロボット怪獣であり、ロボット怪獣としての戦闘力は他に見劣りするところが数え切れないぐらいのポンコツであったものの、スペック差を覆すだけの戦える武器はあったのである。

 

そのため、【キヴォトス防衛軍】と【連邦生徒会】から表彰されることになった今回の初出撃の戦果を【万魔殿】羽沼 マコトが言いふらさないわけもなく、正面装甲を引き裂かれながらも勝利へと導いた【万魔殿】が保有する防衛兵器:機龍丸は【ゲヘナ学園】の新たな象徴となるのはすぐのことであった――――――。

 

 

一方、対怪獣特殊空挺機甲(特空機):機龍丸の初出撃での活躍が誇らしいが、土日を通して行われた音楽フェスティバルで“怪獣(KAIJU)”に対する認識が大きく変わる契機にもなったことは忘れてはならない。

 

 

そう、機龍丸とガラモンγの対決でキヴォトス防衛に貢献してくれたのがまさかのノイズラーであり、昨日の音楽フェスティバル1日目に宇宙から飛来してきたところをお出迎えの北条先生のロック魂をキヴォトス中に響かせた秘密の屋外ステージに満足して宇宙に帰ったと思いきや、2日目の今日もキヴォトスに降り立ったのであった。

 

しかも、駆けつけて早々に『音を食べる』という生態から超音波でラジコン操作されている隕石怪獣:ガラモンを機能停止に追い込むという最高の援護を行い、その後もガラモンを操る怪電波をひたすら食べ続けて暴れ回ることは一切しなかったのだから、明確に人類に味方をした怪獣として記憶されることになったのである。

 

そのため、1日目にノイズラーを自ら屋外ステージで歌を聴かせて満足させ、2日目にノイズラーを結果として人類の味方に引き入れる布石を打っていたことになる怪獣退治の専門家:北条 アキラの評価が更にとんでもなく上がったのは言うまでもないことだろう。

 

しかし、今回の隕石怪獣:ガラモンによるキヴォトス侵略はこれで幕を閉じたわけではなかったのである。

 

 

――――――実は、ロボット怪獣同士の激突の裏で同時進行していた物語があり、更に【百鬼夜行】に出現したガラモンβをウルトラマン80がどうにかしたことについても語らなければならない。

 

 




-Document GUYS feat.LXXX No.07-

隕石怪獣:ガラモン 登場作品『ウルトラQ』第13話『ガラダマ』、第16話『ガラモンの逆襲』登場
初代ウルトラマンと共に戦った科学特捜隊(SSSP)が結成される以前の怪獣頻出期の始まりを告げる怪事件や怪現象を取り扱ったアウト・オブ・ドキュメントに記録されている、記念すべきウルトラシリーズ初の侵略宇宙人が使役した怪獣/ロボット怪獣/量産型ロボット怪獣である。
当時はモノクロで撮影されているが、『総天然色ウルトラQ』で色付けされた際はカサゴを思わせる顔面に手足を生やした赤茶色の怪獣となっている。

地球侵略を狙うセミ人間(チルソニア遊星人)が隕石に擬態させて送り込んだチルソナイト製の電子頭脳が発する電波によって操られるロボット怪獣であり、ロボット怪獣らしく電波のような声を発し、歩くと金属音が響くが、ロボットっぽくない有機的な外見を有する。
地球上には存在しない物質:チルソナイトで構成された巨大隕石の中から出現し、弓ケ谷地方の方言で隕石を意味するガラダマから現れた怪獣ということで、“ガラダマ・モンスター”縮めて“ガラモン”と命名される。
トゲとも鰭ともされる部位は電子頭脳からの極超短波を受けるアンテナとしての役割があり、それによってコントロールされている設定となっている。
ただし、どういうわけか、ガラモン本体に電子頭脳を積めばいいのに、電子頭脳だけ先に送り込んだ結果、地球人に回収されて対策されてしまったため、電子頭脳からの電波が遮断されると口から緑色の謎の液体を垂らして活動を停止する致命的な欠陥を抱えている。

ボディを形成する未知の金属:チルソナイトの特性により地球上の兵器は全く通用せず、おまけに半永久的に稼働できるというコミカルな見た目に反してハイスペック。
また、足は複数のリング状の節で構成されているが、実際にバネとして機能する部位であり、そのバネ足を活かして飛び跳ねるように移動をして、ボディの頑丈さと掛け合わせてあらゆる障害物を真正面から跳ね除ける。
更に、これだけの性能で大量生産されてバリエーションも豊富であるらしく、東京タワーを真正面から破壊した推定150m以上の超巨大個体も確認されている。


最初に確認された個体は弓ケ谷付近の熊谷ダムの水を溢れさせて被害を一帯にもたらした巨大隕石から出現し、そのまま電子頭脳が研究されている東京に向かってダムを破壊して侵攻を始めたが、程なくしてその動きが停止することになる。
実は、ガラモン出現の報からすぐに東京にある電子頭脳に電波遮蔽網を被せて誘導電波を遮断されたわけであり、口から体液のような粘液を放出して機能停止させることに成功する。
ただし、地球の技術では電子頭脳を解体することが不可能であったため、ガラモンの脅威が去ったということで電子頭脳はそのまま保管されることになったのだが――――――。

結果、地球侵略のためにガラモンを送り込んできたセミ人間(チルソニア遊星人)が地球人に擬態して電子頭脳を奪還する事態となり、
再び電波を発信させ始めた電子頭脳に引き寄せられて、今度は1体どころか大量の隕石が地球に降り注ぎ、地球各地に現れたガラモンたちが、逃亡を続けるセミ人間(チルソニア遊星人)の電子頭脳に従うかのように縦横無尽に暴れ始め、東京では超巨大個体によって東京タワーまで破壊してしまった。
だが、勇敢な民間人(万丈目 淳)たちの活躍で電子頭脳をセミ人間(チルソニア遊星人)から奪還する事に成功し、再び電子頭脳の電波を遮断することで地球上のガラモン全てが活動を停止。口から液体を吐いて倒れた。
そして、作戦に失敗したセミ人間(チルソニア遊星人)の方も仲間の宇宙船からの攻撃で処刑され、何とか事態は収まったのであった。

これがウルトラシリーズ(M78ワールド)初の本格的な宇宙人による地球侵略であり、世界中に降り注いだ隕石怪獣の脅威からパリに本部を置く国際科学警察機構が組織され、その下部組織に科学特捜隊(SSSP)が結成されることになった歴史的大事件のあらましである。
なお、科学特捜隊日本支部創設の中心人物には『ウルトラQ』で勇敢な民間人(万丈目 淳)たちに“先生”と呼ばれて東南大学物理学研究所所長にして 怪奇現象や怪獣に通じ 数々の事件の解決に貢献した 世界的な権威を持つ科学者:一の谷博士がいる。






例によって『ウルトラマン80』同様のマイナー作品『ウルトラQ』からの登場で、ウルトラシリーズ初の侵略宇宙人とロボット怪獣なのだが、それ以降も現れ続けた数々の侵略宇宙人やロボット怪獣にも引けを取らない圧倒的脅威であった。
絶望的なまでの物量で降り注ぐ隕石怪獣の軍団に加え、その全てを統率する電子頭脳に、数々の超能力を駆使するエージェント組織による計画的侵略は非常に完成度が高く、しかも科学特捜隊が結成される以前の時代なので、普通に考えて詰み;どう足掻いても地球滅亡待ったなしの状況である。
しかし、あの時(ウルトラQ)にしても、今回(本作)にしても、セミ人間(チルソニア遊星人)の科学力を前にしたら取るに足りない科学レベルの惑星で花開いていた文明文化の底力によって絶望的状況からの起死回生の一手が果たされることとなった。
それこそがM78星雲の光の国からやってきたウルトラマンたちが認めた地球人の可能性であり、それはキヴォトス人の中にも見出だせるものであったのだ。

ちなみに、本作では鹵獲したメカギラスとガラモンによる史上初のロボット怪獣同士の対決が繰り広げられたが、完成度が圧倒的に高いガラモンに打つ手なしのメカギラスの特殊能力による逆転勝利となっている。
前述した通り、ガラモンは侵略宇宙人の量産型ロボット怪獣としては単純な造形ながら極めて完成度が高いのだが、唯一にして最大の欠点がセミ人間の命令を受信しないと動けないラジコン操作であるという弱点を突かれた形となっており、
創設されたばかりで戦力がまともに揃えられていないキヴォトス防衛軍の戦力で勝てるロボット怪獣の対戦カードとしては相性抜群だったわけである。
また、今回は怪電波ではなく怪音波で操作していたために、音を食べる生態の騒音怪獣:ノイズラーの介入によって完全に無力化されるという事態にもなっており、
ガラモンもマイナー作品出身だが冷静に考えると実はとてつもなくヤバい怪獣であったが、それに相性抜群をとれる怪獣が序盤に2体も登場している80怪獣のヤバさに気づくことができたことだろう。
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