嫌顔至上主義   作:嫌至ξ紳士

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櫛田桔梗【二面性】

 彼女、櫛田桔梗は焦っていた。

 それはある男――自身の中学校時代を知る――に、裏の顔を目撃されてしまったからだ。

 

「……いつからそこに居たの」

 

 櫛田桔梗と男は、小学校や中学校の頃から知り合っていた、いわゆる幼馴染である。

 昔はそれなりに仲の良かった二人だが、しかし中学校時代に櫛田桔梗の起こした、例の事件の後は、二人の間は段々と疎遠になっていた。

 

「へぇ……最初から全部、聞いてたんだ」

 

 それでも心機一転。

 新たな環境で、高校生活を始めた彼女は、誰も自身の事件を知る者がいないはずの土地で、学園生活を謳歌しようとしていたのだが……。

 

「堀北だけじゃなくて、あんたまでこの学校に居たんだ」

 

 そこには既に自分の過去を知る女が一人、同じクラスに紛れ込んでいた。

 最悪な気持ちを抑えつつ、クラスの皆との交流を広げ、クラスポイントが0になるという問題も超えようと、バカ三人組の面倒を見ていたのだが……。

 先の女が全てを台無しにしたのだ。

 

「あーーウザい、本当にウザい」

 

 ゆえに櫛田桔梗のストレス値は許容を超え、爆発してしまった。

 裏の顔でドス黒い感情を吐露して、自身の感情をコントロールする。

 

「はぁ……仕方ない」

 

 だがその場面を、ちょうど他人にも見られてしまったのだから、問題はややこしくなる。

 それはよく見てみると、男であり、彼女自身の幼馴染であった。

 彼女は都合がいいと思い、どうせなら今後利用してやろうと、そのために彼女は何の躊躇いもなく自分の意思で、冷静に自身の胸を男の手に押し付けた。

 

「これで指紋はべったり付いたから。もし、あんたが私のこと言いふらそうとしたら、これを使って『レイプされそうになった』って訴えるから」

 

 ふっ、とニヤリ悪い笑みを浮かべる櫛田桔梗。

 余裕そうな表情で階段の踊り場から去っていこうとする。

 しかし、その瞬間。

 

 

――おパンツを見せてほしい

 

 彼女の足がふと止まる。

 なんだか、とっても失礼な言葉が聞こえたようだ。

 

 

ξ

 

 

 そして場面は続きに戻る。

 そこには冷ややかに睨みつけてくる彼女がいた。

 

「……はあ? あんたこの状況でそんなこと言うなんて正気?」

 

――櫛田のおパンツが、見たいんだ

 

 櫛田桔梗は、一瞬言葉を失った。

 今、自分が何を言われたのか理解しきれず、混乱が顔に出る。

 

 冷静を装っていたはずの彼女だったが、その言葉のあまりにも突拍子のなさに、つい動揺が表面に現れてしまった。

 

「……本気で言ってる?」

 

 彼女はじっと彼の顔を見つめた。

 彼の表情は真剣そのものだが、どこか余裕が感じられた。

 櫛田は少し焦りを感じ始める。

 

「この状況で、そんな馬鹿げたこと言って……」

 

 彼女は一瞬、彼がふざけているのかと思った。

 しかし、その顔には一切の冗談の気配はない。

 彼は本気だ。

 それが彼女の中に一層の困惑を生み、さらに焦りを感じさせた。

 

「……なんなの、あんた。本当にそれが見たいっていうの?」

 

 彼女は、軽蔑と苛立ちを隠せないまま、吐き捨てるように言った。

 すると男は携帯を取り出し、ある画面を見せる。

 そこには、罵詈雑言を叫び荒ぶった様子の彼女自身の姿が映っていた。

 

「それが目的? 私を脅して、そんなことを?」

 

 彼女の言葉には、彼をどうにかコントロールしようとする意図が感じられるが、同時に、完全にその場を支配できていないという微妙な不安が漂っていた。

 

「胸を触ったくせに、下着も? いいからソレをとっとと消して! 訴えるよ?」

 

 だが、彼の反応は予想とは違っていた。彼は一歩も引かず、むしろ彼女の弱点を見抜いたかのような視線を向けてくる。

 ただ一言、訴えられる前に動画を公開する、と。

 

「……っ!」

 

 その言葉に、櫛田の心が揺れ動く。

 彼の言う通りだった。

 今、彼にこの弱みを皆にバラされてしまえば、彼女の立場は危うくなる。

 

「……ふん、バカバカしい」

 

 櫛田はわざと鼻で笑って見せるが、内心では焦りが募っている。

 

「でも、もしそれでお前がそれで満足して動画を消すなら、見せてやってもいいけど?」

 

 櫛田は皮肉めいた調子で言ったが、その瞳にはまだ一抹の迷いがあった。

 さっきは咄嗟に自分の胸を触らせてしまったが、よくよく考えると破廉恥な行為だった。

 それの上塗りとも言える、下着を見せる行為など、さらに彼女の尊厳がえぐられる。

 

――おパンツを見せてほしい

 

 ……話にならない。

 櫛田桔梗はそう悟った。

 この男はどう脅しても懇願しても意見を変えないだろう。

 思い返してみれば、そんな頑固なやつだったなと懐かしい記憶が流れてくる。

 

「……ちっ」

 

 少しの間、過去に浸ってしまっていた自分に嫌悪する。

 もうあの頃の時間なんて戻ってこないのに。

 

 櫛田は再び彼を鋭く睨みつけた。

 が、次の瞬間には、ため息をつきながら手を伸ばし、スカートの裾をゆっくりと掴む。

 

「……これで満足するなら、さっさと消しなさいよ」

 

 彼女の声には、怒りと屈辱が入り混じっていた。

 しかし同時に、呆れと仕方なさがほんのり浮かんでいる。

 

 彼女は小さく舌打ちしながらも、ゆっくりとスカートの裾を持ち上げる。

 

 櫛田は、震える手でスカートの裾を掴みながらも、ふと、思わず視線を彼に戻した。

 黙り込んだまま彼は、ただ静かに彼女を見つめていた。

 その瞳には、どこか優しさと懐かしさが混ざったものが感じられ、櫛田は息を呑んだ。

 

「……何よ、どうせこれもからかってるんでしょ」

 

 彼は何も言わない。ただ静かに見つめている。

 その無言のままの優しさが、櫛田の胸にじわじわと入り込んできた。

 無防備に見つめ続けるその顔に、櫛田はため息をついて、目をそらした。

 

 そしてついに屈辱に応じ、彼女の下着が顕になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

の笑顔は偽りなのか自分でも分からない。

○○○れでも私はその生き方を貫いた、

○○○○○裏とは一体で彼女自身。

○○○○○○想郷は交互に連続。

○○○○○○○面性櫛田桔

 

 

 

 

 諦めたような様子でこちらを見る少女。

 その穢らわしいものを見る視線は、もはやご褒美であった。

 

 

……これで満足? さいてーの変態さん

 

―END―

 




変態不審者さんにご注意を!
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