67/ろくなな/ID:279396


「どうだ、明るくなっただろう。」

その一言は、真面目に働いている自分への侮辱なのかと。
だが違ったのだ。
いかにも成金といった容姿の男は、悪意なくお札を燃やしている。高級なジッポで。
ただ自分は彼の靴を探しているだけなのに。
それを、私へのただのお節介だと顔が物語っている。
不快だ。
どうしてこんな肥太った男が、なにも不自由なく豪勢に暮らしているのだろうか。
八百万の神々はどうして、こんな男を野放しにしているのだろうか。

「あぁ、ありがとう。」

男は靴を履きながら、くさみをする。
函館の気温にやられたのか、鼻水が止まらなくなったようだ。

私は塵紙を懐から出そうとしたが、男はそれを手で制止する。
そして徐に自分の懐から、もう一枚同じお札をひらりとさせる。
それを自分の鼻にあて、気持ちが悪い水音を出しながらお札を濡らしていく。

「また来るよ。」

満足したのか、てかてかしているお札をポイと玄関に捨てて店を出ていく。



その後、男が戻ってくることはなかった。
不景気が始まり、拝金主義者たちが次々と自刃していった。
私は暗い笑みを浮かべずにはいられなかった。

あぁ、清清した


投稿小説一覧(全2件)
子守唄に微睡んで 原作:Fate/ 短編 1 話 2022/12/30 21:08
平安のバーサーカー 原作:Fate/Grand Order 未完 45 話 2021/07/05 21:04