だからこいつの青春ラブコメはまちがっている   作:rinta

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15日遅れてしまいました。申し訳ございません。m(__)m


きっと比企谷小町は誰よりも優しい

結局由比ヶ浜が部室へ来ることがなかった平日が過ぎ、待ちに待った土曜日。

以前から小町を東京わんにゃんショーに誘おうと思っていた俺は比企谷家へ電話した。

しかし電話に出てきたのは小町ではなければ、あの腐った魚でもなかった。

 

『はい?もしもし』

 

「...あの瀬谷ですが、小町さんはいらっしゃいますか?」

 

『壮介くん?久しぶりねぇ、確かうちのバカと同じ高校言ったって聞いたけど』

 

「...はい。あの小町さんは...」

 

出てきたのは小町とあいつの母親で、俺もよく知っている人だ。気さくな人ではあるが、親ともに小町に甘いのはもはや周知の事実である。あと話すと長い。

その後はそんな会話が十分ほど続き、やっと相手に俺の意思が通じた。

 

『小町?さっきあいつと一緒に兄妹で東京わんにゃんショー見に行ったけど』

 

「............」

 

そして現在居間のソファにて絶賛落ち込み中である。

いや、別に小町に特別な感情など無いが。ただ、何かあいつに負けたような気がして嫌な気分なだけだ。

そうして少し落ち込んでいると、後ろからこらえた笑い声と、人を小馬鹿にした気配を感じた。(腐った魚いわく、ぼっちを体験したことのある人間は人の気配に敏感になるらしい)

 

「プププッ。だから早めに誘っとけば良かったのに。当日なんて予定重なるに決まってんじゃん」

 

「...うるせぇ」

 

その気配の正体は俺の姉、瀬谷蒼子だった。

 

「...別に絶対誘いたかったとかじゃねぇし。ただあいつが行きたがるだろうなと思っただけだし」

 

「はいはい、ツンデレ乙。ていうかいつも思うんだけどなんで壮介、小町ちゃんにだけそんな甘いのよ?」

 

「...そこまで甘くないだろ、あいつと比べたら」

 

「いや、ハッチーと比べたらまぁ、ねぇ...」

 

そこで姉は言いよどみ、俺はため息をはいた。

しかしどうするか。今日は東京わんにゃんショーで時間を潰そうと思っていたが、予定が崩れてすることがなくなった。仕方ない...

 

「...二度寝する」

 

「待て待てぃ!!」

 

そうして俺が部屋に戻ろうとすれば姉が俺の首根っこをつかんできた。というかやめろ、俺は猫か。

 

「小町ちゃんと一緒に行けなかったからっていじけるなバカ弟。どうせ寝るしかないなら外で動物と戯れてこい!大体幕張メッセ辺りで!」

 

「...あんたは弟に、みじめに一人で家族連れもいる和やか動物展示会に行けと?」

 

そんな端から見てかわいそうなことなどできるか。ていうか俺はたいして猫や犬なんかに愛着もないし、行くだけ無駄だ。

つうかわんにゃんショーには小町が来ているから会ったら会ったで気まずい。

つまり今から俺が行く利点がないのだ。

しかし姉はそんな乗り気でない俺を見て、つまらないのか口を尖らせていた。

 

「ふーむ、本当にいざというときに限ってへっぴり腰ね。なら仕方ない、私もついてってやろう!」

 

「...は?」

 

そしていきなり意味の分からない決心を決めると、瞬時に俺の首根っこをつかみ玄関の方向へ歩き始めた。

 

「...ってマジで行く気かよアンタ」

 

「行く行く、行くに決まってんじゃん。こんな面白そうなこと他にはないよ~。アンタも腹括りなさい」

 

「...はぁ」

 

姉が、瀬谷蒼子がこう言ったならもはや誰もこの人を止めることはできないだろう。昔よりこんな感じで俺を色んな所へ引きずり回してきたのだ。

反抗するだけ無駄である。

しかしただ言いなりになるのもあまりに情けなかったので俺はため息を一つ吐いた。

すると現在形で俺の幸せを奪っている張本人より、呆れた感じで言葉が出されていた。

 

「ため息ばっかりしてたら幸せが逃げるよ?」

 

誰のせいだ、誰の...

 

ーーーーーーーーーーー

 

「...アンタ、車上手くなったか?」

 

結局姉の横暴に抵抗することも虚しく、俺は車へと乗せらせ、わんにゃんショーへと連れていかれた。

その際姉が普段では見せない運転姿を見せていたので、珍しく思い、ふと声に出してしまう。

 

「姉にアンタって言うな。...まぁ休日に知り合いとよく遊びに行ってるからね。そのうちに上手くなっちゃったかな?」

 

「...そういやいつも日曜には家にいないな」

 

思い返せば、大学に入ってから姉はよく外で食事を済ませたり、帰りが遅くなったりすることが多くなった。

単純に大学生になり、付き合いが多くなっただけかもしれないが、そのたびに家に帰ってくる姉の顔はいつもげっそりとしている。

気になりはするが、とやかく聞くと気持ち悪がられるのでその時はあまり尋ねない。

個人の問題は個人の責任だ。俺だってそうだったのだから。

 

「...まぁ帰りが遅いのはいいが、連絡はしろ。飯の用意で手間取る」

 

「あー、それについてはごめんなさい」

 

そんな話をしている間に俺たちは幕張メッセの入場口へ入り、お待ちかねの動物とのふれあいに心を馳せ...る年齢でもなく、ただ横目でチラッと見る程度で納めていた。

いや、隣人はちがうようだが。

 

「...随分と目を輝かせてるな」

 

「えー、当たり前だよ。こんなに可愛い動物たちがたくさんいるんだよ。逆に壮介が感動無さすぎっていうか」

 

そんなことを行っている限りでも、どうやら姉は回りを囲む動物に予想以上に興味をもったらしく、首を右へ左へ振りながら笑みを浮かべている。

そしてまた少し歩き鳥ゾーンへと入ったとき、姉は入場口でもらった地図を見ていた。

 

「あっ、この先小動物ゾーンだって。ふれあい広場とかあったよね~。早くいこ」

 

「...いや、鳥が」

 

小動物に興味津々の姉をおいとき、俺は現在いる鳥ゾーンから離れる気が起きない。目の前で首を捻るインコがなんとも神秘的である。

 

「あー、壮介本当にそういうとこだけハッチーに似てるね。あの子も鳥好きだったし」

 

「...怖いこと言うな、口は災いの元って言葉...」

 

「おや、瀬谷じゃないか?」

 

言葉の途中で後ろから話しかけられ、まさかと思い、振り返ってみればそこにいたのは予期した人物ではない、ここにいるのが意外な平塚女史だった。

 

「...うっす」

 

「あぁ、こんなところで会うとは奇遇だな。君も動物に癒されにきたのかね?」

 

「...いや、別に」

 

話し込む平塚女史をよく見ると肩には大荷物のショルダーバッグ、首には明らかにその通の人しか持ち合わせていないだろう、一眼レフのカメラがあった。

つか、この人こんな大荷物もって何しに来たんだよ...撮影会じゃねえぞここ。

 

「ん?そこの人は...まさか君のいい人では...!?」

 

「あ、始めましてー。壮介の姉の瀬谷蒼子です」

 

大いな勘違いをしようとした平塚女史の発言に食い気味に訂正をいれる姉。

それにより平塚女史も自分の間違いに気付き、少しホッとしていた。

いや、生徒に嫉妬すんなよ。いい加減誰かもらってやれ。

 

「そうか、瀬谷のお姉さんか、よかった...ゴホン。始めまして、私、瀬谷くんの部活の顧問をさせていただいてます、平塚です」

 

「あっ!?あなたがあの平塚先生でしたか!!噂は予々聞いていますよ!いやー今時鉄拳制裁な教育方針なんて、ギリギリを生きてますね!」

 

「ハハハッ。生きざまは常にギリギリを目指してますから」

 

いや、もっと余裕もって生きろよ。だから婚期逃すんだろうが。いや、口には絶対出さないが。

そして何やら姉と平塚女史は話があったようで、そのまま二人とも井戸端会議へと突入。

その姿は正に熟年の...いや、これ以上は殴られそうだからやめとこう。

しかし話があったのはいいが、逆に俺が孤立してしまった。(別に慣れているが)

こういうときは話の邪魔にならないように静かに立ち去るのがベスト。途中でいないことに気がついても携帯による呼び出しが可能のため、なにも問題がない。

ちなみにソースは腐った魚である。

 

「あの~、もしかしたら何ですけど平塚先生って雪ノ下...さんのこと」

 

「ん?蒼子さんは...のことご存じなんですか?」

 

後ろでは何やら聞き覚えのある名前のやり取りが為されているが、俺には関係がない。先へ進もう。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「いっよーしよしよし、君可愛いなー♪君にはカマクラ二号の称号を与えよう!!光栄に思えー♪」

 

「...俺はあのブサイク猫の二代目を次がされたそいつが可哀想に思えるのだが」

 

子ウサギの肉球をいじりながら、とんでもないことを言う小町へ突っ込みながら俺はため息をつく。

どうしてこうも奇跡的に出会ってしまったのだろうか。いや、本当に偶然だったのだが。

 

 

俺はとりあえずあの二人より離れ、次の小動物ゾーンへ来ていた。

姉は小動物を見に行きたがっていたし、あの大カメラを持っていた平塚女史もこのふれあいゾーンには目がないと予測できる。

つまり話を終えた二人は必然的にこの場所へ来ると俺は勝手に思い、ふれあい広場の片隅でたまによってくる小動物と戯れながら待っていた。

しかし予想と反し、二人が来るようすが全くなく、代わりに来たのが...

 

「おぉ、ソウくん!こんなところで会うなんて珍しー!」

 

「うぇ、なんでお前いんだよ。しかも小動物ゾーンって。似合わないな」

 

「比企谷くん、偏見でそんなこと言ってはいけないわ。確かに目付きの悪い瀬谷くんがウサギと戯れていると、どうみても捕食の現場にしか見えないけれど」

 

「いや、それこそ偏見じゃないのか?」

 

「...はぁ」

 

何故かいつもの奉仕部メンバー(一人除く)プラス小町が現れた。

小町たちはわかる。今日来ていることは元々知っていたし、多少の覚悟もしていた。(すでにこの先まで行っていると思ってはいたが)

しかし意外なのは雪ノ下である。こんなふわふわしたイベントは雪ノ下の眼中にはないと思っていたが。しかもよりにもよってこの腐った魚と同伴でとは。

 

「まぁ人のことは言えないのだけれど、まさかあなたが一人でこんなところに来るなんて。少し...いえ、かなり意外だわ」

 

「...誰が好き好んでこんな場所一人で来るか。姉貴と一緒に来たんだよ」

 

「...?あなた姉がいたの?」

 

「...あぁそうだけど」

 

俺がその雪ノ下の質問に答えると雪ノ下は一瞬苦い顔をしたが、すぐにいつもの冷たい氷のような表情へ戻す。

 

「そう...一緒にきているということはそれだけ仲が良いのね、あなたたち」

 

「...あン?まぁ仲悪けりゃ一緒には来ないが、そんなのこいつらに比べればまだまだだと思うがな」

 

足元にいるハムスターを捕まえながら無邪気に笑う小町と、それを危なっかしい様子で見ているあいつ。

お互いに無いものを補っているとは言いにくいが、そばにいても仕方がない人。そういう雰囲気が両人から流れている。

それは腐った魚が一番近くの他人と割りきっているからでもあるが、しかしそれ以上にお互いのことを理解しあえてないと、成り立たない繋がりであるのだろう。

 

「そうね...確かに彼女たちの関係は、とても素敵なものよね」

 

「...まぁ、見習う必要もないけどな」

 

関係など人それぞれで成り立つものだ。

誰とでも同じ関係を保てるなど、そんなのは誰にでも同じ顔をするのと同義だ。

俺はそんな、簡単な人間になりたくない。

 

「...つか、来る途中で平塚顧問見なかったのか?」

 

「見かけたけれど...とても話しかけられる状況ではなかったから挨拶は見送ったわ」

 

...いったいなに話してたんだよ、あいつら。

 

 

その後は腐った魚が先へと急かしたことより、まだふれあい広場に残る小町のお守りを俺に任せ、残る二人が猫ゾーンへと向かった。(ちなみに提案したのは小町である)

 

「...お前、なんのつもりだよ」

 

あの雪ノ下雪乃と腐った魚を二人きりにするなど、腐った魚を凍死させるつもりなのだろうか、こいつは。

 

「いやいや、苦節17年。本当に苦しかった思春期の時代を乗り越え、お兄ちゃんに今まさに青春のドアが開こうとしてるんだよ。妹的にはこれは後押しするしかないっしょ。あ、今の小町的にポイント高い」

 

「...あぁそうだな、凄く兄思いで良いと思うぞ」

 

着々と貯まっていくあいつの小町ポイントに危機感を覚えつつ、なぜこいつはこんなに兄のことになると打算的になるのか不思議に思う。

なにかと責任感が強いタイプであるのは感じるが、別に背負わなくてもいいことは放っておいてもいいと俺は常に思う。

それこそ、こいつは気負いすぎてボロを出すことが多いのだから。

 

「......ねぇソウくん。今更なんだけど、お兄ちゃんのこと、まだ怒ってる?」

 

そんなことを考えていると、小町より似合わない悲壮の声が聞こえた。内容は、まぁあの事で間違いないだろう。

 

「...気にしてねぇよ。あいつと俺は知り合いであっても結局他人だ。無理に助け合うような仲でもないだろ」

 

「だってソウくんはっ...!」

 

「あっ!やっと見つけたぞ瀬谷!急にいなくなる奴がいるか。探したんだぞ」

 

小町が何かを言おうとしたとき、タイミングを見計らったかのように平塚女史が俺たちのところへやって来る。

小町はそれに焦り、ばつが悪そうにそのまま足元のフェレットを持ち上げ、それで俺から顔を隠す。俺はそれになにも反応してやることはできない。

平塚女史はその状況になにやら訳がわからず困惑していたが、すぐに姉がやって来ると、何故か俺は二人からの説教を受けてしまった。

 

「...はぁ」

 

説教中に出たそのため息に、二重三重の意味が込められていることはおれしか知らない。

 

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