生年月日:10月31日
血液型:B型
座右の銘:昔:面白き事は良きことなり 今:下剋上、捲土重来
瀬谷壮介の姉。大学二年生。
基本的に自由奔放だがたまに打算的になる。しかし根が良い人のため上手くいった試しがない。
休日は専ら大学で目をつけられた雪ノ下陽乃の付き添いをさせられている。ブラコン。
「で、隣にいるのは比企谷の妹さんか?なんでここに?」
「...さんざん説教した上に今更それかよ」
本当に、本当にさんざんと説教をした平塚女史とその横にいる姉は、一息ついたあとおれのとなりにいる小町を見て、また息をはいた。
「なにやら今日は予期せぬ出会いが多いな。比企谷妹がいるなら、勿論兄の方もいるんだな?」
「あっはい。さっき雪ノ下さんと一緒に奥の方に...」
「何!?雪ノ下もいるのか!全く、運命の出会いならせめて赤い糸の方がいいんだがな」
「...会いに行く気満々だな」
そう言ってやれやれと呟く平塚女史の口は微かに笑っており、出会い頭の時よりも若干気分が高くなっている様子だった。
「まぁな。せっかく学校外であったんだ。ラーメンでも奢ってやろうかと」
「...一部の生徒に肩入れしすぎると、面倒くさくなるんじゃないスか」
「なぁに、ばれなきゃイイのさ、ばれなきゃな。比企谷妹もどうだ?当然瀬谷、君も来るだろ?」
そう言ってこちらに目配せさせてくる平塚女史。正直奢りの言葉には心が引き寄せられるが...
「...太っ腹もいいが、俺もいくと先生の財布が軽くなると思うんで遠慮します、つうか姉貴もいるし」
「子供が大人に気を使うもんじゃない。瀬谷姉も一緒にどうだ?」
俺の返答に平塚女史は微笑を浮かべると、姉貴の方へも誘ってきた。
なぜ自らでそのような出費を増やすような行いをするのか全く理解できないが、やはりこの人は並みの男よりも漢らしいことはわかった。誰かもらってやれ。
「あはは~、流石に今日会ったばかりの弟の先生に奢ってもらおうなんて野暮な心ありませんよー、私たちは大丈夫なんで先生たちで楽しんでくださいな」
俺と同じく姉も平塚女史の誘いをやんわり断ると、こちらの方へ目を向けた。
その意図は分からないが。
「...そういうことなんで、まぁせめてあいつらと小町で遊んでくれ。つうかアンタは俺の担任じゃねぇだろ」
「遊ぶとは、はて何のことかな?あと、担任じゃなかろうが私は君の教師には変わりないんだ。他人行儀はやめてくれ」
「...そうかい」
それを皮切りに、俺達は平塚女史と小町に別れを告げ、元々冷やかし半分だったわんにゃんショーの会場から足を出した。
その間、隣では姉がなにやらムスッとしていた。
「...なにやってんだアンタ」
「ムゥー...」
先ほどから訪ねてみてもこの繰り返しであり、まともな答えは返ってこない。
どうしたものかと思い、会場を出て五回目のため息をはく。このごろは意識せずともため息をはくようになってきた、正直怖い。
「ねぇ壮介、小町ちゃんと何かあったでしょ?」
「...あン?」
やっと喋り出したかと思えば、不可解な一言。いや、その一言は確信をついたものだったが。
「小町ちゃんがなんか暗かったし、口数もいつもより少なかった。あと険悪な雰囲気出しすぎだし」
「.........」
ムスッとした顔と比例して不機嫌そうな声で感想をいってくる姉に、俺の方も少し声の調子が落ちる。
「...昔のこと話してただけだ、険悪ってわけじゃない。どちらかと言えば...」
「気まずさ?」
そうだ、それが一番しっくり来るだろう。
俺は昔を未だ引き摺ってはいるが、それに対して誰かに憎悪しているわけでも悲壮しているわけでもない。あれは結局、俺自信の自業自得なのだから。
しかし、小町はそうは思ってくれない。
小町はあの時、何もしなかった自分を責めている。そして、それで俺が傷ついたと思い込んでいる。そんなの気遣いはお門違いであるのに。
そんな感情がお互いすれ違いあい、今の気まずい状況が生まれているのだろう。
そんなことを考えていると急に隣人が人指し指を天に向けて話し出した。
「壮介、私は思います。小町ちゃんは可愛いと」
「...なに当たり前のこと言ってんだ、アンタ」
「そうです、当たり前なのです。なのに壮介はそんな可愛い子を悲しめました。可愛い子は国の、世界の宝です」
そこで姉貴は一旦話を区切る。そして天に向けていたその指をこちらへまた向けた。
「だから壮介は小町ちゃんをデートへ連れていかなければなりません」
「...は?」
一拍置いて呆れのこもった変な声が出た。
いきなり何を言い出してんだこの姉は、ついに頭も春のお花畑になったか?
怪訝な目で見ていれば、姉貴はようやく恥ずかしく思い始めたか、少し頬を染め咳払いを一つした。
「だから!壮介は小町ちゃんを悲しませた罰として小町ちゃんと出掛けなくちゃ行けないの!」
そして言い出し始めたのは意味不明な刑罰執行。しかも語調を強めて半分切れ気味に。
「...いや、分からん。何でそんな取って付けたようなラノベ的展開になるんだ?俺には到底理解できないんだが」
姉の言い分を頭が受け付けず、先程よりも増した怪訝な目で姉貴を見る。
その目は姉貴には効果抜群のようで、ぐうっと唸るとまた顔を真っ赤にさせた。今度は頬だけでなく顔全体だ。
「う、うるさーい!行くっつったら行け!行かないとアンタの部屋にある自作の歌詞と楽譜をネットに晒すぞ!」
「...てめぇ自分の弟を社会的に殺す気か」
そんなこんなで車までの道のりの間この会話が続けられ、結局俺が折れて明日小町を誘って出掛けることになった。
「...意味が分からない」
不毛な結果に俺はため息さえもこぼせなかった。
ーーーーーーーーーーー
「.........」
時間は変わって現在は自宅の自分の部屋。
東京わんにゃんショーより疲れて戻った俺は、人の気も知らずに嬉しそうにうきうきとしている姉を放って、すぐさま部屋へと入り疲れた体をベッドで休ませてそのまま寝入ってしまった。
そして起きてから飯と風呂を済ました今、俺は携帯電話を片手に悩んでいた。
姉は確かにああ言っていたが、昼に気まずい思いをさせたのだ。そんな当日に簡単に連絡を取れるわけがない。
そしてもう十分ぐらいになるだろうか、携帯電話とにらめっこをしていれば、ついに決心をつけた時、突然その携帯が震え始めた。
通話先は...何かの偶然かそれとも運命か小町と表示されている。
「...もしもし」
「あ、ソウくん。今いいかな?」
「...悪けりゃ電話に出てねぇよ」
「アハハッ、そうだよね......」
出てみると本当に小町だった(当たり前だ)。
しかし話してみるとやはり昼のことを思っているのかいつもの軽い口調ではなく、どこかよそよそしい他人行儀を思わせるしゃべり方。
...いや、仕方ないのか。
「...なにか用があるんだろ」
こんな状態で世間話など出来るはずもなく、俺は本題を急かす。
「うん、実はね...」
携帯越しより小町より概要を話される。
俺はその話を聞いて口に出したのはまず、安堵のため息だった。
ーーーーーーーーーーー
翌日、日曜日。
昨日の電話より小町から待ち合わせ場所として聞いた駅前につき、携帯で時間を確認する。待ち合わせ時間ちょうどだ。よし...
「...定時だな」
「いいえ遅刻よ」
不意に後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはいつも部室で見る冷たい表情を更に二倍乗せした雪ノ下雪乃が立っていた。
「...ンでだよ、時間ちょうどだろうが」
「あなた、十五分前行動という言葉を知らないの?現代の社会人なら誰しも保有している必須スキルよ。そんなことも出来ないようではそこの比企谷君より使えないわよ」
雪ノ下の言葉に納得できず一つ反論すると、容赦のない舌技により三倍になって返ってくる。そしてその毒舌に俺は内心でため息をはく。こいつ銀行員に向いてるな、金融庁も怖くて迂闊に手が出せん。
「まぁまぁ雪乃さん、落ち着いて」
未だ口を止める気配のない雪ノ下に抑制をかけ、宥めようとしてくれているのが昨日電話をくれた小町だ。
そしてその奥では遠目で御愁傷様とでも言いたげな目を向けてくる腐った魚もいる。つうかやめろ。お前に同情されると人生に負けた気がする。
「おい雪ノ下、そこら辺にしとけよ。もうすぐ電車来るだろ」
「えぇそうね。あなたがもう少し早く来ていればもっとゆっくりできたのだけれどね」
「...モウシワケゴザイマセンデシタ」
「何かしらその謝罪、反省の意のない謝罪は相手にとっては侮辱にしかならないことをあなたは...」
未だ雪ノ下はこちらへしつこく冷たい視線と小言を送ってくるので一応の形として謝罪を述べる。しかし反省の意の無さを見抜かれまたお得意の舌技を食らう破目になる。
説教を貰っている際確信した、間違いなくこいつは友達が少ない。
そんなことを思ったが、決して口には出さないようにし、代わりにため息を一つはいた。
「いや、だから電車遅れるぞ...」
「...で、由比ヶ浜へのプレゼント探しって具体的に決まってんのか?」
雪ノ下の口撃をなんとか留めさせ電車に乗り込むと、今日集まった目的についてを再度聞いた。
聞くところによると6月18日は由比ヶ浜の誕生日であるらしい。そして雪ノ下たちはそのお祝いがしたいと今日そのためのプレゼントを買いにきたのだ。
つまり小町は昨日これを手伝ってもらうため俺に電話を掛けたということだ。
「いいえ、一応情報は集めてみたのだけれど。私、同世代の子からプレゼントを貰ったことがないから」
「なんだ、お前本当にアレだな。俺なんてアレだぜ、ちゃんともらったことあるぜ」
俺の問いに答えた雪ノ下に勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる腐った魚。
その態度にてっきり雪ノ下は睨み付けるなどするかと思ったが、意外にもその表情には驚愕と疑惑の色だけで染まっていた。
「まさか、嘘でしょ」
「嘘じゃねぇよ、今さらお前に見栄張ったところで意味ないだろ」
雪ノ下の疑惑の問いに自虐ぎみに答えるこいつ。
こいつがこんな強気な姿勢を出すとは...いやもしやアレか、高津くんの話か。それなら普通の反応か。
しかしなんとも不毛な会話だ。まさか誕生日プレゼントをもらったか否かで互いの傷の見せあいをするとは。これがぼっちの神域というやつか。
ちなみに俺は小学校まではごく普通にもらっていた。中学になってから友人の間でそういうことしなくなったような気がするが、つうかその辺りから回りと疎遠になっていってたな...いや、考えるのはやめるか、鬱になる。
「...つうかおまえそれ、ご近所付き合いで渡されただけのお情けのプレゼントだろ。そんなもんカウントすんな」
「ちょっお前、ネタばらし早すぎだろ。もう少し優越感浸らせろ」
「...しかももらったのってトウモロコシだろが」
「バッカ、高津くんの家が農家だったんだよ!言っとくけど超うまかったからな!」
何故か切れ気味に言ってくる腐った魚。
そんなこいつに全員が哀れみの視線を...いや、雪ノ下だけ冷たい視線を送っていた。
その後突如として始まった腐った魚による自分語りによって、またも知りたくもないトラウマ話(俺は知っていたが)を聞かされた。
意外だったのはその話に雪ノ下が少し同感を得ていたことだ。
(...こいつらやっぱ似てんな)
ふと心のなかでそう思ったが、即刻考え直し、外の天気をひたすら眺めるようにした。
電車の窓から見える澄みわたった青空は、これから始まるであろう夏の暑さを予感させるには充分だった。
毎度申し訳ございません。更新遅れました。