二期は雪ノ下と由比ヶ浜を倒したヒロイン、一色いろはがその後数々のヒロインを倒していく話でしたっけ?(違う)
「へぇー。じゃあ君はアオコちゃんの弟くんなんだー。全然似てないね」
「...余計なお世話だ」
結局あのあと姉貴の連れである雪ノ下陽乃に捕まり、俺たちは近くのカフェで話をしていた。
今はテーブル席に俺・小町、向かいに姉`s(仮称)がいる。
「で、やっぱり君たちはデートの途中だったの? 私たち邪魔だった? ねぇ?」
「なんでそんな目をキラキラさせながら図々しい質問できるの!? 一人は私の弟なんだからやめてよ!」
「...はぁ」
人の噂話が三度の飯より好きそうに俺たちのプライベートを尋ねるこいつこそ、あの雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃である。
奇特な名字なだけに小町が自己紹介のあとに尋ねると、少し驚いた顔をしながらすぐに肯定の意を示した。そして何かの縁だと、無理矢理カフェに連れてこられたわけだが...
「でもさー、愛想のいいアオコちゃんの弟くんなのに物凄く目付き悪いよね。どうやってこんな可愛い彼女見つけたの? あ、もしかして弱味握ってるとか!」
「...んなわけないだろ」
カラカラ笑いながらとてつもなく失礼なことを言う雪ノ下姉に内心ため息をはく。
何とかしろと姉貴に視線を送るも、それに気づいた当人は苦笑いをしながら視線をそらす。おい...
「あのー、私たち別に付き合ってるって訳じゃないんですけど...」
「えー本当にー?」
姉貴の頼りなさに愕然としていると、隣の小町が交際の否定をする。だが、雪ノ下姉はそれにもまだ食い下がる。
だがその反応に少し違和感を感じた。言葉は興味を持っているように話しているが、中身がない。社交辞令のように俺たちをからかっているように思える。
それを裏付けるようにかは分からないが、その後雪ノ下姉は俺たちを問い詰めることはせず、注文したコーヒーにただ口をつけているだけだった。
「で、でも本当に偶然ですよね。まさか蒼子さんが雪ノ下さんのお姉さんと友達だったなんて」
雪ノ下姉がコーヒーに飲み始めたのを好機と見た小町は話を変える。すると雪ノ下姉もそれに肯定するように首を頷かせてコーヒーカップをおいた。
「うんうん、私もそれにはビックリしたよ。まさか雪乃ちゃんの知り合いとこんなとこで会うなんてって」
「雪乃ちゃんって確か一人暮らししてる妹さんのことだよね? 連絡とかとってないの?」
姉貴の問いに雪ノ下姉は首を横に振る。
「ぜんぜーん。だって雪乃ちゃん話すどころか、こっちから電話してもすぐ切るんだもん」
そう言って雪ノ下姉は眉をハの字にするが、すぐに表情を変えてこちらに詰め寄ってきた。急に詰め寄られたため俺は少し後ろにのけ反ってしまう。
「だからさ。君たちには是非とも雪乃ちゃんのこと、教えてほしいんだけどな~」
にっこりと、邪気のない笑みが俺と小町をとらえた。その笑みが俺にはなんとも、不気味に思えた。
あいつなりに言うなら、ボッチセンサーに引っ掛かった、というところだ。
「...悪いけど、あんま仲良くないんで」
そう言って小町に視線を送る。小町はその視線に気づき、雪ノ下姉の方に顔を向けた。
「あの、私も雪乃さんのことをあんまり詳しくは...」
「ふーん...まぁいっか」
雪ノ下姉は訝しげに俺と小町を見るが、すぐに興味を失わせたかのように体の位置を戻した。だが、すぐに思い付いたように手首を自分の目の前まで寄せ、腕時計を覗く。
「アオコちゃん、ネイルの予約もうすぐだよ」
どうやら姉`sは今日ネイルをしに来ていたらしい。雪ノ下姉は自分の腕時計を姉貴に見せて急かすが、姉貴はそれを覗きながらあー、と唸った。
「雪ノ下さん、ごめんだけど先いっといてくれる? ちょっと二人と話したいから」
「えー、だったら私も残るよー」
姉貴の頼みに難色を示す雪ノ下姉。だが姉貴もそれは予想済みだったのか両の手のひらを合わせて拝むようにまた頼んだ。
「ちょっと積もる話もあるからお願い! なんなら後でパフェ奢る!」
「よしのった!」
チョロいなおい。デビチルの最初に仲魔にできるデビルぐらいチョロいぞ。
そして話が決まると雪ノ下姉は自分のコーヒー代だけおいてさっさと行ってしまった。
喫茶店の窓の外から見送り、やっと姿が見えなくなった頃、姉貴は大きくため息をはきながら机へと突っ伏した。
「えーと...大丈夫ですか、蒼子さん?」
小町が心配そうにそう尋ねると、姉貴はまたあー、と唸りながら大丈夫と返事をする。
これはよくある、気を張りすぎてそれが解けたときに一気に来る疲れでやられる状態、だな。つうか家に帰ってきたときいつもこんな感じなんだが、まさか全部あの雪ノ下姉によるものだったのか? どんだけ緊張してんだよ...
「というか、二人ともごめんね。なんか図々しく質問しちゃってて。あの人に気遣いはないから...」
ハハハッ、と乾いた笑いを漏らしたあとにまた深くため息をつく姉貴。顔はまだ突っ伏したままだ。
もしかしてこいつ、話がしたいとか言っといてただ雪ノ下姉から離れたかっただけなんじゃないのか?
「...それより、話があるんじゃなかったのか?」
突っ伏した状態のままの姉を見下げながら本題を問う。リア充ならこのまま華々しく中身のない、大体の言葉が「あーそれな」で終わらせられるトークを挟みながら本題に移るのだろうが、あいにく俺は速さを求める男子のため真っ先に聞く。
やつなら「無駄を徹底的に排除し、速さが求められる現代において、ボッチはそのニーズを完璧に答えたエコでエリートな存在である。つまりは無駄が多い今のリア充こそ排他されるべきものではないか」など言うだろう。おそらくボッチという存在事態が無駄だろうが。
「あ、それなんだけど。二人とも雪ノ下さんの妹さんと結構仲いいよね?」
突っ伏した顔をあげ言いはなった姉貴のその質問に俺と小町に少し緊張が走る。だが、近くに雪ノ下姉がいないことを認めると、小町が微かに首を縦に振った。ちなみに俺は振らなかった。
「やっぱり。なんで雪ノ下さん...陽乃さんにあんなことを? ...あぁ別に責めてるわけじゃないの。ただちょっと気になっただけ」
姉貴の問いにそれは、言いよどむ小町は困り顔でこちらを見てくる。俺も姉貴の方を見ると、そこにはいつにもなく真剣な姉の表情があった。別にやましいことはないが、その表情に若干気圧される。
「...俺は仲良いってわけじゃないが、別に深い意味はねぇよ。ただ、本人のいないところで許しもなくそいつの話するのが嫌だっただけだ」
嘘はついていなかった。しかし実際は違った。俺は雪ノ下姉に、実の妹である雪ノ下のことを話すことがとても不安だったのだ。
雪ノ下姉は間違いなく『好い人』だ。どのような人であっても完璧な対応がとり、面した誰もに仲良くなりたいと思わせる力を持つ人物だろう。
小町も今回、出会った状況が状況なだけに雪ノ下姉にやや引いた形の接し方になったが、もし別の出会い方だったならば、もっと良好な関係になっただろう。
だがしかし、俺は雪ノ下姉、雪ノ下陽乃を『良い人』とは思わなかった。
確証などない。ただの勘だけでこうやって疑っているのだから俺はとても嫌なやつだろう。
ただそんな自己嫌悪をしても、雪ノ下姉に対する警鐘を抑えることは出来ない。
少なくとも俺は今まであんな人間を見たことは無いのだから。
「まぁそれもそうなんだけどね... 実は陽乃さんの妹さんね、実家にあまり顔出さないみたいなの。だから親御さんとかが心配してるって雪ノ下...陽乃さんがよく言っててね」
それで私も少し心配なの、と姉貴が話を締める。
確かにそうだろう。先ほど姉貴がいっていたことが正しければ、雪ノ下雪乃は一人暮らしをしているらしい。妹が目の届く場所に居ず、しかも連絡も全くないとなれば、それはさぞかし心配だろう。
まぁあの雪ノ下姉がそんなこと考えているのかは疑問だが。
そこでふと思いたった。
「...つうか、そもそもなんでアンタは雪ノ下姉の方と知り合いになったんだよ?」
「あ、それは私も気になりました」
家族事情まで話し合う仲までもつれ込むのはそう容易ではない。俺と小町はそこに興味津々だった。
姉`sの馴れ初めを聞き出そうと口を開くと、突然姉貴がまた顔を机へ突っ伏した。
「そ、その話は...聞かないで...」
「「......」」
突っ伏しているため顔を確認できないが、その声には確実に涙声が含まれている。
姉貴のその挙動に哀愁、もしくは惨めさを感じて、俺と小町はもはやなにも言えなくなった。
そんなに酷い馴れ初めなら何でそんな心配出来んだよ...とは嫌でも口には出せん。
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