仮面ライダー鎧武 ― グリドン外伝 ―   作:たかだや

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まだ14話が書き上がっていないのですが、大晦日ということで、以前投稿して削除した番外編を再度投稿させていただきました。


最初に言っておきますが、城乃内も仮面ライダーも登場しません。

かつて何者にもなれなかった少年の、始まりのお話です。



番外編 『時の華』

1.

 

 

 その夜、少年は一人の少女を見つめていた。灯りも点いていない公園で、キャップを被ったツインテールの少女が一人、踊っている。

 少年は地元の高校から徒歩で帰宅する途中だったが、鞄を肩から下すのも忘れ、じっとその少女に見入っている。少女は少年を気にも留めずに、ずっと一人で踊り続けている。

 ダンスのジャンルはヒップホップだろうか。 少女は音楽も流さず、軽やかにステップを刻み、小柄な身体を思い切り大きく使ってターンを決める。少女がターンする度に、彼女の長いツインテールが小気味良く揺れた。

 高度なダンスではなさそうだが、少年はその少女のダンスに無性に心惹かれた。

 

 少女はひとしきり激しいダンスを踊ると、最後に大きくターンをきめて、突然動きを止めた。

 

───終わりか……

 

 少年がこの場を離れようとした途端、まるで何かに魂を抜き取られたように、少女の顔から表情が消えていく。

 

「……?」

 

 少年が少女の様子が突然変わったことに困惑していると、少年を他所に、少女は再び踊りを始めた。

 その踊りは、先程までのダンスとはまるで違う。リズムという概念とは無縁のもので、流れるような四肢の動きは「舞」といった方が相応しい。少女は己の全てを天に奉げるように舞を続けた。

 少女の優美な舞を見ていると、少年は今までいた世界とは別の世界に来たような錯覚すらした。

 少女は再び動きを止めて、今度は少年に顔を向けた。

 

「キミ、ずっとそうしてるけど、鞄くらい置いたら?重くない?」

 

「あっ、すみません。つい、見入ってしまって……」

 

 不意に少女から話しかけられ、少年は慌てて鞄を下して返事をする。

自分でも顔が真っ赤になっているのが分かった。

 少女はそんな少年の様子が可笑しかったのか、けらけらと笑った。先ほど舞をしていた時とは別人かと錯覚する位に無邪気な笑い方だ。

 

「別にイイって。元々人に見せるためのものだから。でも、見てて退屈じゃない?」

 

「いえ、そんな……とっても良いと思います……」

 

 それは少年の本心からの言葉だった。今まで生きてきて、これほどまでに他人に心惹かれた経験はない。

 少年が本気で言っているのが伝わったのか、少女は照れたように目を伏せて、口元をそっと緩める。

 

「そう言ってもらえると嬉しいかな……今はもう、他人に見せることもできないし……」

 

「えっ……?」

 

───どういう意味だろう?

 

 少年の疑問に答えるように、少女は言葉を続ける。

 

「高司神社祭りの『奉納の巫女の舞』。いつか巫女として皆の前で踊るのが、子供の頃の夢だったの」

 

「高司、神社……?」

 

 少年が聞き慣れない単語を繰り返すと、少女は少し笑いながら少年に問いかける。

 

「キミ、都市開発の後にこの町に来た子?」

 

「えぇ、まぁ」 

 

 少年の反応をみると、少女は笑顔とは裏腹に、どこか力の籠っていない声で、ポツポツと話しだす。

 

「そっか……沢芽市で一番大きい神社で、私がまだ小さかった頃にユグドラシルの土地開発で取り壊されて……あの舞を見せることもできなくなったんだ……」

 

「……っ!」

 

───ユグドラシル

 

 少年はその言葉を聞いた瞬間、背中から心臓をえぐられたような気分になった。同時に、自分のなかで何かがふつふつと煮えたぎる。その感情が何かは、少年自身にもわからなかった。

 

「ねえ!一緒に踊ってみない?」

 

 不意に少女の声が聞こえて、少年は現実に引き戻される。

 

「えっ……?」

 

「なんかキミ、踊りたいって顔してたから」

 

 戸惑う少年の手を、少女はそっと引いた。

 

2.

 

 

 ひとしきりダンスをすると、少年は息を切らして地面に座り込んだ。少女も笑いながら、彼の隣に座り込む。少年は息も絶え絶えに声を漏らした。

 

「すみません、下手で……」

 

 初めて踊ったヒップホップダンスの出来は、散々なものだった。ステップのリズムはつかめず、何度も体勢を崩しては転び、恥ずかしくて仕方ない。しかし、それよりも、少女と思い切り踊れた爽快感のほうがずっと大きかった。

 それを察してか、少女も笑って少年の声に応える。

 

「最初はみんなそうだって。大事なのは踊りたい、っていう気持ちだよ?」

 

「気持ち……ですか」

 

 少年がその言葉を心の中で反芻していると、少女は少年の目を見据えて言った。

 

「キミ、名前は?私は高司舞」

 

「僕は……」

 

 少年はそういうと、言葉を詰まらせた。一度でも名前を言えば、きっといつかは取り返しのつかないことになる。少年の頭はその脅迫感念でいっぱいになっていた。

 少年の様子を目の当たりにして、「舞」と名乗った少女はそっと口を開いた。

 

「言いたくないなら、言わなくてもいいよ…?」

 

 そう言った舞の顔はとても穏やかで温かかった。少年は自分が何を言われたのか、一瞬理解できなかった。

 

「え……?」

 

「この町にいる人はね、みんな他人には言えない問題を抱えてる。でもね、分かり合えなくても……一緒にいることはできるの。キミが誰で、何を抱えてるのかは知らないけど、私は君と一緒に踊ってみたい。どう?うちのチームに入らない?」

 

 舞のことばが本心からのものだということが、直ぐに分かった。

 少年は潤んだ眼を見られないように、そっと目を伏せる。

 

「ミッチ……」

 

「えっ?」

 

 少年の唐突な言葉に、舞は目を丸くして困惑する。

 

「チームでは……『ミッチ』って呼んでください」

 

 少年がそう言うと、舞はふっと頬を緩めた。

 

「わかった。よろしくね。ミッチ!」

 

 舞は立ち上がると、少年にそっと手を差し伸べた。




番外編、いかがでしたでしょうか?

更新が滞っているので、読者の皆様に忘れられないように、このお話を投稿をさせていただきました。

ここまで『仮面ライダー鎧武 ―グリドン外伝―』を読んでいただいて、ありがとうございました!
残り2話ではありますが、どうか2018年も、この二次小説をよろしくお願いします。

それでは、よいお年を!
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