仮面ライダー鎧武 ― グリドン外伝 ―   作:たかだや

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メガヘクスの暗躍を察知した城乃内達。全てを解決するため、彼らは初瀬姉弟の確保に乗り出すのだった……


第十話 『姉と弟』

1.

 ヘルヘイムの森では、ロックビールから降りた初瀬姉弟が岩の上に腰を下ろしていた。初瀬は既に戦極ドライバーを外しているが、姉の一葉はゲネシスドライバーを付けたままだ。

 

 「姉貴、いつまでドライバーつけてんだよ?」

 

 初瀬はいつもの粗暴な口調で一葉に声を掛けた。

「だって、いつまたインベスに襲われるか分からないじゃない!アンタこそ、なんでそんな余裕なわけ!?」

 一葉はまだ怯えた様子で、周囲を警戒している。一方、弟の初瀬はいたって自然体だった。

「もう襲われないから安心しろ。見てるこっちが落ち着かねぇよ」

 

「どうして襲われないって、分かるのよ?」

 一葉に訝しげな眼で見つめられると、初瀬は彼女から目を逸らした。

「なんとなくだよ。なんとなく…」

 

「じゃあ、どうして私の居場所が分かったの?」

 

「おい、何も言えないならそれでも良い、って自分で言ったろ?」

 

「全部それじゃ、本当に何も話せないじゃない…」

 一葉はどこか寂しげに、愚痴を漏らす。

 一葉はこの岩場に座り、警察や復興局が初瀬亮二を捕まえようとしていること、クラックを作っているのは『リンゴロックシード』を持つ者、といった情報を初瀬に教えたが、初瀬は何も具体的な情報を話そうとしない。

 初瀬は姉の様子を見かね、ため息交じりに応えた。

「別に無駄なことを話す必要はないだろ」

「なんかつまんない」

 

「はぁっ!?」

 言葉通り退屈そうにしている様子の一葉に、初瀬は思わず声を上げた。

「だって、 4 年振りにお姉ちゃんに会えたんだよ?嬉しくないわけ?」

 

「別に……」

 不満そうに口を尖らせる一葉を、初瀬は不機嫌そうにあしらう。

「ほんと生意気!昔はあんなに可愛かったのに……なにかあったら直ぐ『お姉ちゃーん、お姉ちゃーん』って泣きわめいて」

 

「いつの話だよ。本気で覚えてねえぞ」

 

「『覚えていない』で済んだら警察はいらないの!」

 

「今、俺たちは警察から逃げてるんだからな?」

 

「言葉の綾でしょ!変なとこばっかり細かいんだから……だから彼女もできないのよ!」

 一葉の態度は見ていて面白いほどコロコロ変わる。一方の初瀬はまともに取り合おうとしない。

姉貴(アネキ)だって、彼氏ができても、餌代がかかるからってすぐ振られるじゃねぇか」

 

「食事代よ!ていうか、古傷えぐるのやめてよね!ほんっと最低!」

 

「先に突っかかってきたのは姉貴だろ?逆ギレすんなよ」

 

「もういい!アンタなんか知らない!勝手に警察に捕まって殺されろ!この自己中もやし!」

 一葉は立ち上がると、本来は色白の顔を真っ赤に染めて、足場が不安定な森の中をヒール靴でつかつかと歩き出す。

「一人で行くなよ」

 初瀬がそう言って近寄ると、一葉はあっさり振り返る。しかし、彼女の顔は依然怒りに震えている。

「警察に戻る!ここから出して!」

「姉貴だって、捕まったらマズいだろ!」

 弟に突っ込まれても、一葉は腕を組んで言い返す。

「ご心配なく。いくら警察に追われてる人間を庇ったって、相手が実の弟なら情状酌量されて、大した罪にはならないわ」

 

「意外と考えて動いてたんだな……」

「当たり前でしょ!警察を敵に回すのよ?ノープランでどうすんの?」

 

「その割に、後先考えず歩いてたよな」

 

「……このっ!誰のために動いたと思ってるわけ!?」

 

「わかったから、勝手に動くなよ……」

 初瀬がため息交じりに言うと、一葉は腕を組んだまま突然無表情になる。

「じゃあ、謝りなさい」

 

「はあっ!?」

 

「早く」

 一葉は表情を変えずに、弟を見据える。姉に逆らう気力は初瀬にはもう残っていなかった。

「ごめん。悪かった」

 

「はい」

 

「『はい』ってなんだよ!」

 一葉は弟の言葉を無視して近くの岩に座り込むと、初瀬も彼女から少し距離を置いて座り込んだ。

 一葉はしばらく不機嫌そうに黙っていたが、まるで独り言のような調子で弟に話しかける。

 

「ねえ、城乃内さんて……どんな人?」

 

「『どんな』って?」

 

 弟が問い掛けられると、一葉は今度は彼に向き直ってゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「最初はね……友達思いで、ちょっと頼りない感じだけど、信用できる人だと思ってた……」

 

「違ったのか?」

 弟の問いかけに一葉は顔を落とし、しばし黙り込む。

「違ったていうか……なんか、分からなくなったの」

 

「まあ、昔俺がドライバー壊されたときも、アイツはおれと協力関係だったのに『ドライバーがないならもう終わり。一から出直せ』とか言って切り捨てやがったし、油断ならない奴かもな」

 初瀬が笑いながらそう言うと、一葉は目を鋭く尖らせる。

「土壇場で手のひら返すんだ……なんか最低……」

 

 一葉がそういった瞬間、初瀬が突然立ち上がる。

 

「な、なによ……?」

 

 必死の形相をしている弟に動揺しながら、一葉は問いかける。

 

「沢芽市にインベスが出た。行くぞ」

 

「えっ?だってまだクラックは開かないはずじゃ…」

 初瀬は、動揺している一葉の言葉には構わずに、チューリップホッパーの錠前を取りだす。

 

「待って!」

 

 初瀬が錠前を解錠しようと左手を振り上げたが、一葉は初瀬の腕に抱きついてそれを強引に制した。初瀬が呆気にとられて一葉を見ると、一葉は震えながら初瀬語りかけてきた。

「ねえ……行く必要ないよ。どうせ呉島光実や城乃内さんたちが、インベスを倒しに来るよ。それだけじゃない。亮二を捕まえようとする!あの人たちを助けても、なにも良いことなんてないじゃない!どうして亮二ばっかり辛い目に遭わなきゃいけないの!?」

 二人はしばらくそのままじっとしていたが、初瀬はおもむろに表情を緩める。

 

「亮二……?」

 

 一葉は戸惑いながらも、弟から視線を離さない。初瀬はゆっくりと話し始めた。

「この力を手に入れてから、ずっと考えてたんだ。なんで俺なのか。今聞かれて分かったよ。理由なんてない。だから決めた。この力の使い方は俺が決める。それで何か悪いことが起こったら、俺が止める。多分それが俺の果たさなきゃいけない責任なんだ」

 弟の言葉に、一葉は顔を落とた。しかし、すぐに顔を上げて彼の目を見据える。

「わかった。なら私も付いていく。それがきっと、私の責任……」

 姉の手が離れると、初瀬は左手に持った錠前を振り上げ解錠した。

2.

 初瀬と一葉がクラックを通ると、何か固いものが激しく衝突しているような音が聞こえる。音が聞こえる方向に二人が歩いていくと、グリドンとナックルが大量のインベスと戦っていた。

「城乃内さん……」

 一葉の視線の先では、グリドンがドンカチを豪快に振るっている。ナックルは既にジンバーマロンアームズとなっており、二人のライダーはインベスを次々に撃破していた。それでも、多勢に無勢であることには違いない。

 初瀬は戦極ドライバーを取り出し、声を上げる。

 

「行くぞ。姉貴」

 

「……うん!」

 

 初瀬と一葉がドライバーを腰に瞬間、インベス達の中心にクラックが開き、すべてのインベスがヘルヘイムの森に返っていく。

 初瀬と一葉が唖然としていると、頭上から声が響いた。

「動くな!」

 二人が声の聞こえた四階建ての雑居ビルの屋上を見上げると、ドラゴンフルーツの柄が入ったジンバーアームズの龍玄が、ソニックアローで初瀬姉弟に狙いを定めていた。

 二人は自身の胸の急所に、赤いマーカーが照らされるのを確認する。

 矢を持つ龍玄の右手に解錠されたキウイロックシードが握られているのを見て、初瀬は呟いた。

「そういうカラクリか……」

 ゲネシスコアをつけたドライバーの装着者は一つ錠前で大量の疑似インベスを召喚することができる。龍玄はその機能とキウイロックシードを使って、復興局のライダーとインベスの戦闘を演出したのだ。

「やっぱり、あなた達にも情報が漏れていたね」

  冷ややかな声を放つ龍玄を、憤怒の表情に染まった一葉が睨み返す。

「何の話よ!ていうか、私たちを捕まえるためにここまでするの!?」

 

「あなたこそ、何が目的か知らないけど、随分好き勝手やってくれるね。で?初瀬亮二、初瀬一葉。どっちがメガヘクスと通じてるの?」

「何の話だ?」

 

龍玄の問いかけに、初瀬はまともに答えようとはしない。

「まあいいよ。話は後でゆっくり聞かせてもらう」

 龍玄はそういうと、ソニックアローを構えたままグリドンとナックルに顔を向けた。

 グリドンとナックルはそれを確認すると、初瀬姉弟に歩み寄る。

 しかしその瞬間、龍玄の両腕を何かが拘束した。

「なっ……!?」

 龍玄が意表を突かれて自分の腕を見ると、それは何本もの植物の弦の束だった。弦はビルの真下に開いたクラックから伸びているおり、龍玄の身体を一気に引きずりこむ。

 弦は龍玄をそののまま地面に叩き付けるとその拘束を解き、クラックに姿を消した。

「初瀬、ちゃん?」

 植物が龍玄を拘束している間、初瀬がわずかに弦を操作するような仕草をしたのをグリドンは見逃さなかった。

「あの攻撃……戒斗と同じ……!」

 ナックルも思わず声を漏らす。

 それはかつてオーバーロードとなった駆紋戒斗が、ザックの目の前でグリドン達に使った戦法と瓜二つだった。

 戒斗と初瀬の違いは、戒斗が当時沢芽市全体に自生していたヘルヘイムの植物を操ったのに対して、初瀬はクラックからヘルヘイムの植物を呼び出した点だ。

「クラックとヘルヘイムの植物を自在に操ってる…」

 龍玄は駆け寄ってきたグリドンとナックルの手を借りて起き上がると、今起こったことを分析する。初瀬姉弟も龍玄も臨戦態勢を解く気はない様だ。

 

「初瀬ちゃん!一葉さん!今はおとなしく従ってくれ!」

 城乃内はグリドンの変身を解き、初瀬姉弟に向かって叫んだが、二人の城乃内への態度は冷ややかだった。

 

「断る…」

 

「もうあなたの言うことは信じません」

 初瀬姉弟はそう言い放つと、それぞれの錠前を解錠する。

『カチドキ!』

『マツボックリエナジー!』

「一葉さんまで……!やめろ!」

 城乃内の叫びも虚しく、初瀬姉弟はベルトに錠前をセットする。

「……変身」

 

『カチドキアームズ!いざ、旗揚げ!エイエイオー!!』

『マツボックリエナジーアームズ!ハッ!ヨイショッ!ワッショイ!』

 変身が完了すると、黒影が黒影・真よりも先に歩き出す。

「ぅっ…うおおおおおお!」

 

 城乃内は絶叫しながら黒影に駆け寄り、漆黒の鎧で覆われた肩にしがみついた。

「やめてくれ!俺は、初瀬ちゃんと戦いたくない……!」

 

「なんだ城乃内、その程度の覚悟で俺を呼んだのか」

 黒影は城乃内の腕を乱暴にほどくき、彼の胸に左手の拳を叩き込んだ。

 

「っがぁぅ……」

 

 言葉にならない吐息が、口から洩れでた。城乃内の身体は大きく吹き飛ばされ、地面に打ち付けられる。

「城乃内!」

 

 龍玄とナックルが同時に叫んだ。

 

「……!」

 

 黒影・真も、黒影を見つめて呆然としている。アーマードライダーの一撃は、人間相手なら十二分に致命傷になりうる。

 城乃内を見たところ、意識は失っていないようなので、黒影も手加減はしたのだろう。しかし、黒影が人間相手に攻撃を振るってきたことで、龍玄とナックルの警戒は自然と強まる。

「僕は姉の方を取り押さえる。ザックには初瀬亮二の相手を頼みたい」

 

「……わかった。任せろ!」

 龍玄は自ら汚れ役を引き受けると言っているのだ。それが彼の決意であると受け取ったナックルは、彼の指示通り黒影の元に歩み寄る。

「初瀬……俺が相手だ……!」

 

「売られた喧嘩は買うぜ……!」

 黒影は二本のカチドキ旗を、ナックルは両手のマロンボンバーをそれぞれ構えて向かい合った。

 

 一方、龍玄と黒影・真もそれぞれの武器を向け合って対峙している。

「あなたを拘束します」

「呉島光実……あなたにだけは負けない……!」

 先に動き出したの黒影・真だ。黒影・真は影松・真の一本鎗で鋭い突きを打つ。その攻撃をかわした龍玄は、ソニックアローの刃で反撃を図るが、今度は影松・真の三又の刃がソニックアローを払いのけた。

 

「だったら……!」

 

 龍玄は敵の間合いに入り込めないと見るや、バックステップで距離を取り、ソニックアローの矢を放った。

 だが、黒影・真は影松・真でその攻撃も払いのけ、一気に龍玄に接近する。接近戦に備え身構える龍玄だったが、突然何かに右足を取られる。

「またかっ!」

 龍玄は直接目視する前から、足を拘束したのは黒影が操るヘルヘイムの植物だと気づいていた。しかし、すでに自分の体勢を崩され黒影・真の攻撃を回避することができない。

「やあ!」

 

  黒影・真は体勢が崩れた龍玄の胸部に、渾身の突きを打ち込む。

 

 龍玄は吹き飛ばされながらも、右足に纏わりついた弦の束をソニックアローで切断し、なんとか着地すると黒影・真に牽制の矢を乱射した。

 

「ぃたっ…!」

 

 影松・真の一撃を放って崩れた体勢では、すべての矢を回避することができない。龍玄の反撃を受けた黒影・真は、たまらず後ずさった。それを確認すると龍玄も先ほど受けた攻撃が響いたのか地面に膝をつき、思わず声を漏らす。

「この二人、強い…!」

 

 一方、黒影はカチドキ旗でナックルが放つマロンボンバーの攻撃をいなしながらわ黒影・真へのアシストを狙っている。

 

 

「姉貴のヤツ、結構やるじゃねえか」

 

「お前の相手は俺だ!」

 ナックルはマロンボンバーをシールド代わりにして、黒影の間合いに入り込み、マロンボンバーを一旦消滅させ脇の下から黒影の腕を抱え込む。

 

「なんで一葉さんまでベルトを持ってる!」

 

「お前には関係ねえだろ…!」

 

 ナックルの必死の問いかけにも、黒影はまともに取り合わない。

 ナックルはさらに語気を荒げた。

 

「お前の姉ちゃんを、危険に巻き込む気か!」

 

「そうしないために、いつまでもお前に構ってる暇はねえんだよ。戒斗(かいと)の腰巾着が!」

 

 黒影はナックル顔面に思い切り頭突きを打ち込むと、続け様に空いた左腕でストレートを浴びせ、距離をとる。黒影は瞬時に火縄漆黒 DJ 銃を構えると大砲を放った。

 ナックルも咄嗟にマロンボンバーを再装備してガードするが、攻撃を受け止めきれず吹き飛ばされる。

「ザック!」

 城乃内が倒れた自分に駆け寄ってきたことに気付くと、ナックルはドライバーからエナジーロックシードをゲネシスコアごと外し、城乃内に差し出した。

「城乃内、これ使え……!」

 

「お前、これ……」

 

 城乃内は呆気にとられて、ナックルの顔を見返す。

「二人とも同じ戦法なら息も合わせやすいだろ?」

 

「ザック、俺はっ……!」

 

 ナックルは城乃内の言葉を待たずに、黒影に向かって走り出す。

『クルーミアームズ!Mister… Knuckle Man!』

 クルミアームズに戻ったナックルは黒影に殴りかかるが、黒影は火縄漆黒 DJ 銃を楯替わりにナックルの攻撃を受け流し再びナックルに大砲を打ち込む。

 地面に叩きけられたナックルは這いつくばりながら、城乃内に向かって叫ぶ。

「城乃内!お前が苦しいのはわかる!話し合いで済ませられるならその方が絶対良い!でもな……!まだその時じゃない……!」

「うるせえ!」

 黒影は起き上がろうとするナックルに、火縄漆黒 DJ 銃の大砲を放った。砲撃を受けたナックルの変身は解除され、ザックの姿に戻ってしまう。思わず城乃内は叫んだ。

「ザック!」

 ザックは地面に這いつくばりながら、なおも城乃内に訴える。

「いつか分かり合える時がくるなら……!ここで戦ってからでも遅くない!今初瀬と向き合わなかったら、一生後悔するぞ!だから立て!城乃内!」

 

「……!」

『これは俺の罪滅ぼしでもあるんだ……!』

 ザックの言葉に、城乃内はいつか自分が決意した時のことを思い出す。

 

──あの時決めたじゃないか。初瀬の死に向き合う、彼を死なせてしまった自分の罪と向き合うと。

 

城乃内は自分の中からあふれる感情をこの一言に託し、叫ぶ!

「――変身ッ…!」

 

『ミックス!ドングリアームズ!Never give up!ジンバーマロン!ハハァ!』

 友から託された力を手に、城乃内は新たな姿、グリドンジンバーマロンアームズへと変身した。

 グリドンは今なお「友」と信じる男を見据える。

「城乃内……」

 黒影がグリドンに向き直る。グリドンはマロンボンバーを構え、黒影に飛び掛かった。

「うおりゃあ!」

 グリドン渾身の左ストレートを避けた黒影は、火縄漆黒 DJ 銃の銃口をグリドンに向ける。

 

「まだだ……!」

 

 しかし、黒影が引き金を引く直前、グリドンはマロンボンバーで火縄漆黒 DJ 銃を弾き、開いた黒影の胸部を右の拳で殴り、さらに黒影の顔面に左フックを見舞った。

「がっ…!」

 黒影は背中から倒れながら、クラックを開き、グリドンの足元にヘルヘイムの蔦を走らせる。

 グリドンは、蔦の動きを五感で感じ取りながら、無言でベルトのブレードを倒した。

 

『ドングリスカッシュ!ジンバーマロンスカァーッシュ!』

 マロンボンバーの棘が一斉に飛び散り、ヘルヘイムの植物の往く道を塞ぐ。

「マジか……!」

 

『ドングリスパーキング!ジンバーマロンスパーキング‼』

 黒影は慌てて立ち上がるが、もう遅い。グリドンは棘が無くなり高熱を纏ったマロンボンバーで、黒影の顔面に左ストレート叩きこむ。

「うおらぁあ!」

 

「クソがっ……!」

 黒影は地面に叩き付けられると、変身が強制的に解除され、初瀬亮二の姿が現れた。

「亮二ッ!」

 初瀬が倒れこむのを見た黒影・真は咄嗟に彼に駆け寄ろうとするが、龍玄は目ざとくそのすきを突く。

『ブドウスカッシュ!ジンバードラゴンフルーツスカァーッシュ!』

 

「ハア!!」

 龍玄は敵のゲネシスドライバーを掴むと、ソニックアローの刃に紅蓮のエネルギーを込め、必殺の一撃を黒影・真に放った。

「ぁうっ…」

 黒影・真はドライバーをもぎ取られ変身が解除される。しかし、龍玄の攻撃で吹き飛んだ一葉はまだ空中を舞っている。このままでは地面に叩き付けられる。

「しまった!」

 龍玄が慌てて駆けつけようとした瞬間、一葉の身体が空中で青白く光った。次の瞬間、彼女は全身青白い金属で覆われた異形の姿となって、地面に転げ落ちた。

 一葉だった者は起き上がると自分の手を見つめて震えている。

 その手は明らかに人間のものではない。腕全体が青白い金属に覆われ手の甲がランスのように鋭く伸びている。

「なによっ…これ…」

 

 一葉の変わり果てた姿を見て、龍玄は声を荒げた。

 

「初瀬一葉……あんたがメガヘクスだったのか!」

 龍玄が「メガヘクス」と呼んだものは、途端に頭を抱え絶叫した。

「あっ…ぁ…いやぁぁああ!」

 

「一葉さん!」

 グリドンが駆け寄ろうとすると、メガヘクスは腕から六角形の光弾を放ちグリドンの身体を弾き飛ばす。不意打ちを受け、変身が解けた城乃内は地面に叩き付けられる。

「初瀬亮二、撤退だ」

 先程とは打って変わってメガヘクスの声が男性のものに、話し方も挙動も無機質になる。そして、それこそ龍玄達がよく知るメガヘクス本来の姿だった。初瀬は軽く舌を打つ。

 途端にクラックから先ほどとは比べ物にならない量のヘルヘイムの植物の弦が現れ、アーマードライダー達を締め上げる。初瀬は植物に拘束された城乃内をそっと見つめた。

「初瀬ちゃん!初瀬ちゃ……っ!」

 城乃内は必死に初瀬に呼びかけようとするが植物が首を締め上げているせいで声が途切れてしまう。龍玄もザックも必死にもがくが身体中に巻き付いたヘルヘイムの植物は彼らの身体を放そうとしない。

 クラックが開き、メガヘクスとヘルヘイムの森に歩いていく初瀬を薄れる視界に捉えながら城乃内は意識を失った。

3.

 ヘルヘイムの森に入ってしばらくするとメガヘクスは目の前を歩く初瀬に語り掛ける。

「罠だと分かりながらその中に飛び込むとはな」

 

「テメーがこっちの森で下らねえ小細工するからだろうが!」

 

「3 対 1 では不利だ。戦力を増やすのは当然である」

 

 振り返って毒づく初瀬にそういうとメガヘクスは一葉の姿に戻る。一葉は目を開いて弟がいるのが分かると彼の腕にすがりついた。

 

「へっ!?え?ねぇ、なに?これ……え!?なんなの!?」

 

「……」

 一葉は恐怖と混乱に顔を歪ませている。涙を流しながら震え、わけもなく笑いだす。初瀬が何も言わないでいると一葉はしきりに彼の腕を揺さぶる。

「さっきの、何……?私、何なの!?こたえて!」

 一葉も少しずつ冷静になってきたのか、頭に浮かんだ疑問を弟に次々に投げつける。

「まだ話せないんだ。でも頼む。俺を信じてくれ!」

 

 初瀬の返事を聞くと一葉はその場にひざまずいく。

 

「なんで……?もう、わけわかんないよ……」

 初瀬はしゃがみ込むと、すすり泣く姉の両肩にはそっと手を置いた。

 

「姉ちゃん……」

 

「…全部…私の為なんでしょ?」

 

 一葉の言葉に、初瀬は瞬間血の気が引くのを感じて固まった。自分が言ったことが図星だと分かると、一葉は弟の両肩を掴んで必死に訴えかける。

「もういいから……もう私のために頑張らなくていいから……」

 

「さっき言ってくれたよな?俺を一人にしないって」

 初瀬は熱の篭った声で一葉に語り掛ける。

「亮二……」

 一葉は自分の目を見つめてくる弟を見返す。だが、直ぐに彼が自分ではない何かを見つめていることに気付く。

 

「ごめん、姉ちゃん……メガヘクス、姉ちゃんの記憶を消せ」

 

「やめて……亮二!おねがっ……」

 

 一葉は自分の身体の自由が一気に奪われていくのを感じる。

 

『いいだろう』

 

 一葉は薄れ行く意識の中で、自分の口が勝手にそう言ったのを感じた。




いよいよ物語も大詰めに入って来ました。

ライダー5人が入り乱れる乱戦はいかがでしたか?

グリドンの今作2つ目の新アームズも登場しましたが、メガヘクスの攻撃によりあえなく変身解除となりました。

この先、城乃内は活躍できるのか?次回も読んでいただけると嬉しいです。
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