仮面ライダー鎧武 ― グリドン外伝 ―   作:たかだや

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インベスの最初の犠牲者が出てしまった。この事態に、光実は……?


第四話 『ライダー乱戦』

1.

 

 ついに犠牲者を出してしまった。光実はその事実に打ちのめされそうになるが、なんとか事態を吞み込み、桜井に疑問をぶつける。

 

「事件が発覚したのは今朝だったんですよね?なんで復興局への報告がこんなに遅れたんですか?」

 

 光実の質問は、桜井も予想していたのか、すぐに答える。

 

「最初はインベスの被害かどうかの判断がつかなかったそうだ。目撃者の証言が取れて、ようやくインベスの関与が明らかになったらしい。目撃者の話によるとガイシャは事件の直前に恐喝をしていた。恐喝といっても所謂カツアゲのたぐいだがね」

 

「今時カツアゲですか……」

 

 城乃内はそう言いながらも、この町ではさして珍しくないかと納得する。

 

 沢芽市は治安が悪く、ギャングを名乗る若者同士の抗争も珍しくない。

 かつて、ユグドラシルの都市開発が行われる前の沢芽市は、空き地だらけで駐在所がいくつかあるだけの工業地域だった。

 警察権力が機能していないためか、暴力団やシティ・ギャングを名乗る若者グループが幅を利かせており、殴り合い切り合いの縄張り争いが横行していた。

 ユグドラシルによる都市開発に伴い、町の浄化と称して暴力団員の一斉検挙も行われたことで、不良少年達の抗争も一度は鳴りを潜めた。

 しかし、長らく土地に染みついた文化はそう簡単に消えるものではない。それまで通りの生き方ができなくなった不良少年たちが苦肉の策として思いついたのが、沢芽市のダンスグループ・ビートライダーズとして活動するというものだった。

 喧嘩で縄張り争いをすれば、すぐに警察に通報されるのがオチだ。しかし、ダンスで縄張り争いをする分には、逮捕されるような事態にはまずならない。

 そして現在、ユグドラシルが壊滅したことで、シティ・ギャングとしての活動を表立って再開する若者が増えているのだ。

 

 そんなことを城乃内が考えているうちに、桜井の説明は続いていた。

 

「その時に、被害者は恐喝相手を路地裏に連れ込んだんだそうだ。その被害者が目撃者なんだが……その人も事件の時はひどく酔っていたらしくてね、警察に事情を話すのが遅れたらしい。今からその目撃者に話を聞きに行く。なんでも、初瀬亮二の知り合いだったらしい。名前は『今井健司』(いまいけんじ)、23歳」

 

 光実は城乃内に目配せをする。「知っているか」と尋ねているのだろう。城乃内は首を横に振る。

 光実はそれを確認すると、再び桜井に問いかける。

 

「僕たちも同行できますか?」

 

「そう言うだろうと思って話は通してある。行こうか」

 

 桜井がそういうのと同時に、長身の青年が部屋に駆け込んでくる。

 城乃内は彼の姿を見るなり、嬉しそうに声を上げた。

 

「ザック!」

 

「おっ、城乃内も来てたか!」

 

 彼はビートライダーズ「チーム・バロン」のリーダー、通称「ザック」。

 アーマードライダー・ナックルとしてインベスやオーバーロード、黒の菩提樹との戦いで活躍した青年で、城乃内や光実にとっては戦友と呼べる存在だ。

 ザックはすぐに光実に顔を向けた。

 

「ミッチ、警報聞いたぞ。またインベスが出たってホントか!?」

 

「うん。それと現場で初瀬亮二の姿も確認されてる」

 

「はっ……?なにいってんだ。初瀬は……」

 

 光実の言葉に、ザックは混乱を隠せない様子だ。

 そんなザックに城乃内は声をかける。

 

「あぁ、死んだはずだ。でも、俺も初瀬ちゃんがインベスと戦ってたのを見たんだ」

 

「また死人が生き返ったってのかよ。ホントどうなってやがる……!」

 

 ザックは連続する異常事態に困惑している。

 城乃内は、ザックの肩を軽く叩いて言った。

 

「今から現場の目撃者に話を聞きに行くトコ。なんでも初瀬ちゃんの知り合いらしい」

 

「マジかよ誰だ?」

 

『今井健司』(いまいけんじ)っていうらしいけど……」

 

「誰だよ……」

 

「それをこれから聞きに行くんだ」

 

 4人は部屋を出て、建物の出口に向かって歩き出すと、施設内にアナウンスが響き渡る。

 

『クラック発生。今回は防犯カメラに写っています。場所は東沢芽公園、現在黒影と思われるアーマードライダーがインベスと交戦中』

 

 

「前のクラックが閉じてから、まだ1時間だぞ……!」

 

 通報を聞いた城乃内は、あまりにも早いクラックの発生に驚愕の声を漏らした。

 

「たくッ……!次から次に、ホントどうなってんだよ!」

 

 ザックも混乱している。しかし、この状況でも光実は動じない。

 

「とにかく急ごう。桜井さんは事件の目撃者の話を聞きに行ってください」

 

「しかし今は……」

 

「事態は一刻を争います。情報を集めるのが先決です。警察と復興局の縦割りの状況で、事件の全容を早期解明するには、桜井さんの力が必要なんです」

 

 桜井は光実を真っ直ぐに見た。決断ができたようだ。

 

「わかった。頼むぞ、光実君」

「はい。任せてください!」

 

 4人はすでに出口に到着しており、桜井は駐車場に向かって走り出した。

 

「ミッチはロックビークルで行くのか?」

 

「そうだね。ロックビークルの予備はないから、2人は城乃内の車で現場に向かって。これは無線だから車内でも情報は確認して」

 

「わかった!」

 

 光実はザックに無線を渡す。城乃内は二人のやり取りを聞いていると、後ろから何かの気配を感じて振り返った。

 

「城乃内さん!」

 

 城乃内が振り返ると、初瀬(はせ)一葉(いちは)が息を切らして駆け寄ってくる。おそらく、アナウンスを聴いて慌てて追って来たのだろう。

 一葉は胸に手を当て、息を整えると、城乃内に語り掛ける。

 

「亮二が戦ってるんですよね。私も連れて行って下さい!」

 

「危険ですよ!一葉さんはここにいて下さい」

 

「私なら亮二から何か聞き出せるかもしれません。お願いです、私も連れて行ってください!」

 

「いやでも……」

 

 城乃内は一葉を止めようとするが、一葉も引き下がらない。ここでも、光実が声を上げた。

 

「わかりました」

 

「おいミッチ!」

 

 城乃内は、光実が一葉の申し出を受け入れたことにさらに戸惑うが、光実は冷静だ。

 

「彼女の言うことももっともだ。それに、今は現場に急がないと」

 

「ああもう!わかったよ。一葉さん、俺の車で現場に向かうんで、付いてきて下さい!」

 

 光実はやり取りがひと段落したの見届けると、戦極ドライバーを腰にセットし、ロックシードを解錠する。

 

『ブドウ!』

 

 光実はロックシードをベルトにセットし、ベルトのブレードを倒す。

 

「変身ッ!」

 

『ブドウアームズ!龍砲!ハッ!ハッ!ハッ!』

 

 光実は緑のライドウェアに、紫のブドウの鎧を纏ったアーマードライダー・龍玄に変身する。

 龍玄はバラのような錠前・ローズアタッカーを解錠、錠前がバイク型のビークル形態に変形する。

 

「僕は先に行くね」

 

 龍玄はそう言って、ローズアタッカーにまたがり、現場に急行した。

 

「それじゃ、俺らも行くか」

 

 城乃内がそういうと、ザックと一葉は首を縦に降る。三人は駐車場に向かって走り出した。

 

2.

 

「じゃあ、ザックさんもアーマードライダーなんですか?」

 

 現場に向かう車中で、一葉とザックが互いに自己紹介を済ませた後、一葉は驚きつつザックに問いかけた。

 

「ああ!俺はアーマードライダーナックルだ!」

 

「敬語使え敬語!年上だぞ?」

 

 城乃内はハンドルを切りながら、助手席に座るザックに注意する。

 城乃内とザックは初瀬よりも二歳年上だ。初瀬の大学進学と一葉の就職が同じ年なら、一葉は彼らより二歳年上ということになる。

 

「そんなに気を使わないでください。それより、亮二もそうですけど、どうして一般人の皆さんがアーマードライダーになってるんですか?」

 

 一葉の疑問に、城乃内はハンドルを切りながら応える。

 

「そもそも、『アーマードライダー』って、『戦極ドライバーで変身したビートライダーズ』のことだったんです」

 

「え?」

 

 一葉はまだ要領を得ていない様子だ。

 それも当然だ。アーマードライダーの全容は世界中に発信されたが、ビートライダーズがヘルヘイム災害で果たした役割は、ほとんど公表されていない。

 

 城乃内は片手で戦極ドライバーを取り出して一葉に見せると、さらに詳しい説明を始める。

 

「戦極ドライバーの量産化には、大量の使用データが必要だったみたいです。でも初期の戦極ドライバーは身体に与える悪影響も未知数で、ユグドラシルの内部に被験者を買って出る人間はほとんどいませんでした。そこで被験者として選ばれたのが、初瀬ちゃんやオレ、ザックがやっていたビートライダーズです」

 

 

「……っ!?」

 

 城乃内の話に、一葉は言葉を失って呆然としている。城乃内は彼女の心情を計りながら、説明を続ける。

 

「元々、ユグドラシルは俺たちにロックシードを流して、疑似インベスを呼び出して戦い合うゲーム、『インベスゲーム』を流行らせていました。本物のインベスが人を襲っても、その犯人役をビートライダーズに押し付ける手筈だったそうです」

 

「ひどい……!」

 

 一葉の目には、先程までとは違って明らかに怒りが滲んでいる。それでも、今事情を知らせた方が良い。下手な隠しだては後になって、更に悪い結果をもたらしかねない。城乃内はそう判断した。

 

「だから、ロックシードと戦極ドライバーを使わせるのに都合が良かったんです。ユグドラシルは俺たちの何人かにベルトとロックシードを与えて、互いに競い合う新しいゲームをさせました。そうして、戦極ドライバーのデータを収集したそうです」

 

 これは復興局の局長に就任する直前に、呉島貴虎から直接伝えられたことだ。彼がすべてを話した後に、自分やザック、凰蓮に頭を下げたときの様子を、城乃内は今でも鮮明に覚えている。

 

「あの……」

 

 一葉が何か言おうとしている。城乃内はそれを察して、後部座席に座る一葉に軽く顔を向けた。

 

「なんでそんなに……平気な顔してられるんですか?城乃内さんもザックさんも、勝手に利用されて……少し運が悪かったら、死んでたかもしれないんですよ?」

 

「今は、このベルトで何ができるかを考えるべきなんです」

 

 一葉の問いかけに応えた城乃内は、思い出したしたように、ザックに今掴んでいる情報を教える。

 

「今のところ、インベスが確認されたのは今回を含めて7か所。どれも現場で黒影が目撃されてる。しかも、唯一防犯カメラで現場を写せた前回の現場では、クラックが出現するより前に初瀬ちゃんがいたらしい」

 

「つまり、クラックが出現する場所が分かってる、ってことか……」

 

 ザックも少しずつ事態を飲み込みつつある様子だ。そこで、一葉が独り言のように呟く。

 

「でも、なんで亮二にそんなことが分かるんでしょう?」

 

 一葉の疑問に答えられる者はいなかった。

 

3.

 

 城乃内の車が現場近くに到着すると、公園の周囲50メートルほど手前では、一般人の立ち入りを禁止するために制服姿の警官が交通規制をしている。

 城乃内の車もいったん止められたが、警察官は城乃内が持つ復興局の客員証と車のナンバープレートを確認すると、すぐに道を開けてくれた。

 

 東沢芽公園はすでに戦場と化している。公園の周りが空き地や取り壊し予定のアパートであるため被害が出ていないのが唯一の救いだった。

 すでに到着していた龍玄は、キウイアームズに武装を交換し、アームズウェポン・キウイ戟輪をインベスに振るっている。そしてもう一人…

 

「初瀬ちゃんか……?」

 

 見慣れない重厚な鎧に身を包んだ黒影が、両手で二振りの黒染めの旗を振るい、インベスを次々と粉砕している。

 その姿は嘗て葛葉紘汰が纏っていたカチドキアームズによく似ていた。

 

「にしても、なんだよこの数……」

 

 ザックは久しく目にしていなかった異形の大群に、思わず言葉を漏らした。15体ほどのインベスが、二人のアーマードライダーと交戦している。インベスの中には巨大なシカのインベスもいた。

 

「俺たちも行くぞ!」

 

 城乃内の言葉を合図に二人は戦極ドライバーを装着する。

「変身ッ!」

 

『ドングリアームズ!Never give up!(ネバー・ギブアップ)

『クルーミアームズ! Mister…… Knuckle Man!』

 

 城乃内はアーマードライダーグリドンへ、ザックはアーマードライダーナックルへ、それぞれ変身する。

 

「よっしゃ!いくぜ!」

 

 ナックルの量産型戦極ドライバーは、通常の黒影トルーパーのものとは異なり、マツボックリロックシード以外のロックシードでも変身することができる、ユグドラシル幹部の護身用として制作されたモデルだ。

 

 ザックが愛用する錠前は、クルミロックシード。

 ナックルは軽やかなフットワークで敵の攻撃をかわし、グローブ型のアームズウェポン・クルミボンバーでインベスを殴り倒していく。

 グリドンもドンカチを大きく振り回して、インベスを叩きのめしていく。多少の攻撃を受けようとも、その堅牢な鎧で耐えながら攻撃の手を休めることはしない。

 派手さのない木の実系のアームズを用いる二人だが、その戦い方は対照的だ。

 

「俺が一葉さんを守る、みんなは思いっきりやれ!」

 

 グリドンの言葉を受けて、龍玄とナックルはそれぞれ新たな錠前を解錠しベルトにセットする。

 

『ミックス!クルーミアームズ! Mister……Knuckle Man(ミスター・ナックルマン)!ジンバーマロン!ハハァ!』

『スイカアームズ!大玉ビッグバン!』

 

 ナックルは、栗が描かれた陣羽織を纏った強化形態、ジンバーマロンアームズに変身する。巨大なスパイク付きのグローブ型アームズウェポン・マロンボンバーを構えるその姿のインパクトは強烈だ。

 一方、龍玄は巨大なスイカ型のアームズに乗り込む。

 

『ヨロイモード!』

 

 龍玄スイカアームズは接近戦特化形態「ヨロイモード」に変型する。その両手には、二丁拳銃型のアームズウェポン『スイカ双龍砲(そうりゅうほう)』が握られている。スイカの切り身から伸びたヘタのようなグリップが特徴的だ。

 スイカ双龍砲の引き金を引くと、巨大なスイカのような弾丸が発射される。発射には時間がかかるが、その弾丸は一撃で数体のインベスを消滅させる。

 

 ナックルはマロンボンバーを纏った拳を、次々にインベスに打ち込む。クルミアームズと同じ戦法だが、その威力は格段に上がっており、下級インベスならば一撃で倒すことができる。

 

 グリドンは他のアーマードライダー達の戦況を見ながら、一葉を公園の出口に連れていく。そこでふと、背中に悪寒が走る。

 

「たくっ、こっちにも来たよ」

 

 グリドンが振り向くと、巨大なシカインベスが追ってきいた。グリドンは溜め息を吐き、ドライバーのブレードを倒した。

 

『ドングリスカッシュ!』

 

「一葉さん!そこに隠れててください!」

 

 グリドンはドンカチをスイングして、琥珀色の光弾を放った。

 

「グガァァオ!」

 

 グリドンの攻撃を浴びたインベスは、身体から煙を上げながら、苦悶の雄たけびを上げた。

 

「かーらーのっ……」

 

 ひるんだ巨大シカインベスに、グリドンは一気に接近する。今度はブレードを二回倒すと、グリドンの胴体を覆うドングリアームズが、木の実形態に戻る。

 

『ドングリオーレ!』

「これでもかぶっとけ!」

 

 グリドンはドングリアームズを頭から外し、巨大シカインベスに被せた。

 

「グオォォ……!」

 

 目隠しをされて混乱しているインベスの胴体に、ドンカチを打ち付け、その巨体を突き飛ばした。

 

「挑む相手を間違えたよ、お前は……」

 

 グリドンは再びアームズを纏い、『最後の一撃』を放つ構えをとると、ベルトのブレードを三回倒した。

 

『ドーングリスパーキング!』

 

 グリドンは両足にドングリ状のエネルギーを纏うと、全身を回転させながら、巨大シカインベスに接近する。 

 遠目に見ると、ドングリのコマが回転しているようにしか見えない。

 グリドンはインベスの目の前で跳ね上げり、回転しながら、『最後の一撃』を叩きこんだ。

 

「グリドンキーック!」

 

 グリドンの必殺キック「インヴィット・フィナーレ」が巨大シカインベスの胴体を貫く。

 巨大シカインベスは轟音を上げて爆散した。

 この場で最も弱い相手を選ぶという点では、巨大シカインベスの本能は決して間違っていなかった。

 

 

 グリドンが巨大シカインベスを倒した頃、公園内でのインベスとアーマードライダーたちの戦闘も終盤を迎えていた。

 

『スイカスカーッシュ!』

 

 龍玄スイカアームズはスイカ双龍砲を逆手に持ち替え、トンファーのように構えると、インベスに向かって投げつける。

 スイカ双龍砲は巨大な円盤状の紫のエネルギーを纏いながら、ブーメランのように弧を描いてインベスを切り刻み、殲滅していく。

 これが龍玄スイカアームズの必殺技「ドラゴンスライサー」だ。

 

『クルーミスパーキング!ジンバーマロンスパーキング!』

 

「うおぉぉぉぉ……!うぉりゃああああッ!」

 

 ナックルも必殺技の準備態勢に入っている。マロンボンバーにエネルギーを込めると、両腕の拳を一気に突き出す。

 グローブを覆うスパイクが飛び散り、インベスを次々に突き刺していく。

 グローブの棘が無くなったときには、目の前のインベスはすべて爆散していた。

 

 クラックはすでに消滅したが、クラックの目の前に陣取っていた黒影の周りには、まだ大量のインベスが残っていた。

 しかし、黒影に焦りは見られない。ベルトからロックシードを外し火縄漆黒DJ銃にセットする。

 

『ロォックオゥン!カチドキチャージ!』

 

 火縄漆黒DJ銃から放たれた一撃は、黒影の目の前の十数体のインベスを一気に消滅させる。

 黒影は開いた道の中央まどぇ歩くと、「S」と描かれた錠前「ロックサプリ」を取り出し、戦極ドライバーにセットする。

 ベルトから鳴るほら貝のような音色をBGMに、黒影の左手には、鍔に銃口が装備された刀型マルチウェポン「無双セイバー」が現れる。

 黒影は無双セイバーを火縄漆黒DJ銃の銃口に差し込み、火縄漆黒DJ銃・大剣モードを完成させた。

 

『イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン、オク、チョウ、無量大数!!カチドキパワー!!!』

 

 火縄漆黒DJ銃の刀身を赤い炎が包み込むと、黒影はそれを残りのインベスに向けて一気に切り付ける。

 インベス達は刃に触れるまでもなく、刀から放たれる熱線によってすべて爆散した。

 

「亮二!」

 

 インベスが全滅したの確認すると、一葉は黒影に向かって叫ぶ。

 

「なんでインベスが出てくる場所がわかるの?なんで一人で戦おうとするの?なにも言ってくれないと、私達だって、どうしたらいいかわからないよ……!」

 

「まだ何も言えねぇ」

 

「なんでよっ……!」

 

 一葉が黙り込むと、今度は龍玄が黒影に語り掛ける。

 

「じゃあ、次にクラックがいつ、どこに出現するか、教えてもらえるかな?」

 

 一葉は龍玄を一瞬睨みつけるが、それ以上何も言わない。話しかけられた当の黒影は、微動だにせず答える。

 

「さあな。こっちも行き当たりばったりでやってるんでね」

 

「そんなデタラメが通じると思う?」

 

 スイカのロボットに搭乗しながら交渉する龍玄の姿はどこか滑稽ですらあるが、この場にそんなことを気にする余裕のある者はいない。

 

「そういや狗道供界が消えたときに、この錠前も消えたらしいな。くれてやるよ」

 

 黒影は「話は終わり」とばかりに、ゲネシスコアに装着された赤いエナジーロックシード「ドラゴンフルーツエナジーロックシード」を取り出す。

 

「それは……!」

 

 光実は以前、狗道供界(くどうくがい)が生み出したドラゴンフルーツエナジーロックシードとゲネシスコアを奪い取り、使用したことがある。

 しかし、狗道供界が消滅すると、彼が生み出したロックシードもゲネシスコアも、同時に消滅してしまった。

 

 なぜそれを黒影が持っているのか、龍玄が問いただそうとするが、黒影は龍玄の言葉を遮るように、取り出したロックシードを目の前に放り投げた。

 黒影は更に、ベルトに装着されたロックサプリを取り外して、銃形態に戻った火縄漆黒DJ銃にセットする。

 

『コネクティング』

 

 黒影が火縄漆黒DJ銃から光弾を放つと、ドラゴンフルーツエナジーロックシードに直撃する。

 エナジーロックシードを直撃した光弾は、そのまま反射するように龍玄に向かって飛んでいく。

 

「しまった!」

 

 予想外の攻撃に龍玄の反応が遅れ、ベルト中央のスイカロックシードに銃弾を受けてしまう。

 その途端に、スイカアームズの鎧が龍玄から離れていった。

 

「なにっ……!?」

 

『ジャイロモード!』

 

 龍玄の戸惑いを他所に、スイカアームズは飛行形態・ジャイロモードに変形した。

 スイカアームズは両手の指のガトリングで、グリドンとナックルに攻撃を仕掛ける。

 

「うおっ!?あぶねっ!」

 

『ヨロイモード!』

 

 突然の攻撃に戸惑うグリドンたちを他所に、スイカアームズは接近戦特化型のヨロイモードに変形する。スイカアームズはアームズウェポン「スイカ双刃刀(そうじんとう)」で、グリドンとナックルに切りかかる。

 

「なんだよこれっ!どうなってんだ」

 

 突然のスイカアームズの暴走に戸惑うナックルだったが、異常事態はそれだけではなかった。

 

 スイカアームズと同時に銃弾を受け解錠したドラゴンフルーツエナジーロックシードからは、真紅の鎧・ドラゴンエナジーアームズとソニックアローが生成される。

 ドラゴンエナジーアームズとソニックアローは龍玄の元に翔んで行き、彼の身体を包み込む。

 

「くっ……!うぁ……!」

 

 龍玄は強制的にドラゴンエナジーアームズを纏わされ、苦悶の声を上げた。

 

「ミッチ!大丈夫か!?」

 

 グリドンは、疑似的にドラゴンエナジーアームズとなった龍玄に駆け寄るが、咄嗟に足を止めた。

 

「……」

 

「ミッチ……!?」

 

 龍玄は右手に持ったソニックアローの刃を、グリドンに向けていた。

 




おまけ
(車中にて)
一葉「城乃内さんが変身した姿はなんて言うんですか?」
城乃内「えっ!?え~とっ……」
ザック「グリドンって言うんスよwww」
城乃内「オイッ!?」
一葉「アーマードライダー……グリドン、ですか?」
城乃内「えっ!!えぇ、まぁ……」

一葉「かっ……カッコいいですね!!!」キラキラ
城乃内「ど、どうも……」
ザック「 」

どうやら血は争えないようです……。

前にも書きましたが、このSS で「ロックサプリ」と呼んでいる錠前の公式名称は「シドロックシード」です。

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