元デブでインストラクターやってます。   作:タンパン

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筋肉の魔導士

七年前、漢は未だ十九だった。彼は特別、魔法の才能に恵まれたわけではない。また、ある程度階級を持った兵士の息子でしかない。魔法に関心があったが、ギルドに入れる程ではない。学問はそこそこできた彼は商業ギルドで就職しようと考えていた。無事に加入の通知が届き、彼、ランドルフは向かうことにした。

 

だが、悲劇が起こる。護衛に雇っていた男たちに身包みを剥がされたのだ。

 

護身魔法程度は使えるが戦えないランドルフは、護衛に二人組の男を雇った。書類上彼らは傭兵ギルド組員と成っていた。しかし、彼らはある富豪の依頼を達成できずにギルドから除名されている。

 

太っていて、ある程度資金を持っていたランドルフは彼らの強奪対象にされたのだ。だが、ランドルフはタダでやられぬように戦った。独自で磨いてきた魔法を放ち、彼らから足掻こうとするため。しかし、彼らに届かなかった。

 

火、水、風、魔導士になれなくても、憧れて身につけた魔法は呆気なく散る。巨大なフライパンに防がれ、待った無しに殴られる。ランドルフの至る所の骨が砕かれる。意識が薄れる中ランドルフは彼らの言葉が耳に残った。

 

「前回は規格外の化け物にヘマをしたが、貴様のような体を鍛えないエセ魔導士は俺たちのような鍛錬を積んだ者に勝てるわけがないだろう……」

 

その言葉を残し、傭兵崩れは去って行った。

 

その後、ランドルフはギルドに加入せず、己を鍛えた。脂肪で覆われた体は、燃焼され強靭な肉体へ変貌した。それだけで飽き足らず、己の肉体を強化し武器にする魔法「筋肉造形魔法」を開発した。

 

そして、彼はマグノリアで最強の傭兵に上り詰めた。彼の放つ拳は最強の矛であり、彼の力んだ体は鉄壁の盾である。

 

今も語り継がれているが、「彼の矛は竜の鱗も砕き、彼の盾はエーテリオンも防ぐ」と。評議員から聖天の称号をあたえられることになったが、断り、表舞台から姿を消した。

 

そして人は言っている。「今も、彼は鍛えているのだろう」と。

 

天狼組が七年の眠りについている間、クリムゾンシェールとは別に闇ギルドから大陸を守っていた英雄は、今も、何処かで鍛えているのだろう……

 

 

***

 

マグノリアにトレーニングジムを構えてから二年がたった。今は平穏な日々を過ごしているが、それまでの出来事が濃かった。丁度、妖精の即戦力が行方不明になり、闇ギルドが活発になった。それまで傭兵をやっていた私は闇ギルドの壊滅の依頼をこなしていた。その経緯で悪魔を倒したりしていたら最強と呼ばれ、次第に英雄と呼ばれるようになっていた。中には、全く別の者たちが壊滅させた手柄も私の者になっている。その報酬で無事に店を構えられたが、噂に聞く「クリムゾンシェール」の者たちに礼を言いたい。まぁ、もし会えたらでいいが……

 

ともあれ、今は充実している日々だ。地元の人に愛され売り上げも繁盛している。やりがいもある。ぽっちゃりな女の子が最初の顧客だった。昔の自分を思い出し、共に汗を流した。彼女は今はスタイルが良くなり、ギルドの看板娘をやっている。昔、仕事で知り合った聖天や水商売をしていそうな美男美女なども良く来てくれる。片思いの女の子が戻ってくるまでにダイエットすると言った会員もいたが、何故か痩せずに倍加いている。こちらも商売上あまり言わないが、食事制限をしっかりしてほしい。

 

さて、今年はやけに筋肉が疼く。何か起きそうな予感だ。




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