南の島の大冒険!! -Alola Generation- 作:natsuki
第一話 VSイワンコ
南国にあるアローラ地方、その中でも風土が豊かな島として知られているのがこのメレメレ島だ。
メレメレ島、その中心街から少し離れた場所。そこが僕の新しい住まいだった。
「噂に聞いていた通りだけれど、すごい自然豊かな場所なのね……」
お母さんが僕に声をかける。遠い地方から引っ越してきて、僕もお母さんもへとへとだった。
それにしてもほんとうに豊かな場所だと思う。事前知識でしか仕入れていなかったけれど、このアローラ地方は四つの島で構成されている島嶼地方だということらしい。正直、島嶼の意味が解らなかったけれど、お母さん曰く、大小さまざまな島が点在していることを言うらしい。成る程、だったらそのアローラに素晴らしいものなのかもしれない。
「そうだ。お隣さんにも挨拶しないと。……あと、確か、ククイ博士? でしたっけ。お父さんの知り合いの方。あの方にも挨拶しておかないといけないわね」
挨拶……か。なんというか、あんまりしたくないことではある。内向的だと言われてしまえばそれまでだけれど。
そういうことで、僕はお母さんの言葉に従って、家を出るのだった。
◇◇◇
お隣さん。
正直響きとしては、不安と期待が入り混じる単語だと思う。仲良くなれるといいな、怖いな、という微妙な感じだったりする。うーん、やっぱり出来ることなら仲良くなりたいな。
文字通り隣接している家の扉をノックする。
少しして、扉が開かれる。
中に入っていたのは、褐色の少年だった。緑色の髪を頭の上で束ねている。見るからに温厚そうに見える。
「やあ、どちら様?」
「あ、あの……。実はここに引っ越してきたばかりで……」
「そうなんだ。俺の名前はハウ。よろしくねー。名前は?」
「僕は、サン」
「サン、か。いい名前だねー。実はさ、俺、今度『島めぐり』をするんだよねー。サンは、島めぐりって知っているかな?」
島めぐり。
聞いたことがないけれど、ただの観光というわけでも無さそう。
そう思って、僕はその言葉に首を横に振ることで返した。
「そうか。知らないか。まあ、しょうがないかな。だってここに引っ越してきたばかり、って言っていたもんね。詳しくはククイ博士に聞くといいよ。ククイ博士の研究所は高台にあるから、そこを目指すといいよ。……あー、でもあの道路はポケモンが出てくるなあ。サン、君はポケモン持っているの?」
「いや、持っていないよ」
「じゃあ、俺もついていくよ。俺もポケモン持っていないけれど……おいで、イワン」
そう言ってハウは家の中から一匹のポケモンを呼び寄せた。
犬のようなポケモンだった。ハウがその名前を呼ぶと、ハウに近寄ってそのままジャンプした。そしてハウはキャッチすると、イワンはぺろぺろとハウの顔を舐め始める。
「くすぐったいって……。こいつと一緒に行くから、たぶん道路は問題ないよ。ほら、挨拶しなよ」
そう言ってハウはイワンを地面に置くと、俺を見つめて――やがて笑みを浮かべた。
「イワン……って言ったっけ」
「種族名でいえば、イワンコが正しいかな。こいつはうちで飼っているペットに近い感じ。とはいっても、そこそこレベルは強いから番犬に近い感じかな」
「へえ。頼りにしてるぞ、イワン」
僕はイワンの頭をなでる。イワンは慣れているようで、笑みを浮かべつつ僕の足にすり寄ってきた。
こうして僕たちは一路高台にあるというククイ博士の研究所へと向かうのだった。