南の島の大冒険!! -Alola Generation- 作:natsuki
その日、僕たちはククイ博士の研究所へ戻ってきていた。
「それじゃあ、今日はここまでにしようか」
ククイ博士はいつものように笑いながらそう言った。
「ハラさんとの大試練は明日にしよう。今日はポケモンたちも休ませてあげること。トレーナーもポケモンも、調子が万全じゃないと良い勝負は出来ないからね」
「はーい」
ハウは元気よく返事をする。
ムーンもアシマリを抱えながら静かに頷いた。
ニャビーは相変わらず僕の足元で毛づくろいをしている。
なんというか。
自由だ。
主人が何を話していても気にしていない。
だけど、不思議と嫌な感じはしない。
少しだけ気を許してくれているような気がする。
「それじゃあロ!」
突然だった。
研究所中に響くほど大きな声。
机の上に置かれていたロトム図鑑が勢いよく飛び上がる。
「今日からボクがみんなをサポートするロ!」
「おっと」
そのまま僕の顔へ突っ込んできそうになり、慌てて両手で受け止める。
「危ないよ」
「すまないロ!」
そう言いながらも全く反省している様子はない。
ころころと宙を飛び回るその姿を見ていると、本当にポケモンなのだということを実感する。
「ろとろとって、落ち着きないねえ」
ハウが笑う。
「ハウの図鑑はどうなの?」
「俺の?」
ハウは腰から図鑑を取り出した。
ボタンを押してみる。
しかし。
しん、と静まり返ったままだった。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も喋らない。
いや。
喋れない。
「反応しないロ」
ろとろとが言った。
「いや、それは見れば分かるよ」
「博士がロトムを逃がしたからロ」
「それも知ってるよ」
「二匹目を捕まえればいいロ」
「そんな簡単に言わないでくれるかな!」
ククイ博士が勢いよく立ち上がる。
「ロトムってそんなに簡単に見つかるポケモンじゃないんだから!」
「博士が逃がしたロ」
「うっ」
「全部博士の責任ロ」
「ぐぅ……」
痛いところを突かれたのか、博士は頭を抱えた。
ハウは腹を抱えて笑っている。
ムーンも口元を押さえながら笑っていた。
研究所は、一気に賑やかになった。
僕も思わず笑ってしまう。
アローラへ来たばかりの頃は、知らない土地で不安ばかりだった。
だけど。
今は違う。
ハウがいて。
ムーンがいて。
ニャビーがいて。
ろとろとまでいる。
まだ数日しか経っていないのに、不思議とここが自分の居場所になりつつある気がしていた。
その時だった。
研究所の奥から、小さな電子音が響いた。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
「ん?」
ククイ博士が振り返る。
奥の通信機。
画面には赤いランプが点滅していた。
「珍しいな……」
博士は首を傾げる。
「本土から通信かな」
画面を開こうとした、その瞬間。
――ザーッ。
画面全体に砂嵐が走った。
映像は映らない。
音声だけが、途切れ途切れに聞こえてくる。
『……こちら……国際……』
『……アロー……』
『……ウルト……』
そこで通信は途絶えた。
「故障かな」
博士は苦笑いを浮かべる。
「あとで見ておこう」
誰も深く気には留めなかった。
けれど。
ろとろとだけは、通信機をじっと見つめていた。
「…………」
「ろとろと?」
「……今、知らない周波数を受信したロ」
「え?」
「でも消えたロ」
そう言うと、ろとろとは何事もなかったかのように笑った。
「きっと気のせいロ!」
その時の僕は。
その通信が。
数年後。
アローラ地方だけでなく、世界中を巻き込む出来事の始まりになるとは。
まだ知る由もなかった。