南の島の大冒険!! -Alola Generation-   作:natsuki

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第九話 VSラッタ(アローラのすがた)

「……お前たち、何をしているんだ?」

 

 声が聞こえたのは、その時だった。

 

 そこに立っていたのは、黒いパーカーのような服を着た少年だった。やけに前髪が長く、右目は隠れるほどだった。パーカーの胸の部分には何か切り刻まれたような跡を、チャックで加工しているように見える。

 

 一言でいえば、変わった少年。

 

 それが僕のファーストインプレッションだった。

 

「ぐ、グラジオ……。貴様、いったい何をしているんでスカ!? お前は、スカル団の用心棒じゃないでスカ!」

 

「確かにそうだ。俺は、スカル団の……用心棒だよ。だが、それはスカル団のやり方か?」

 

 グラジオと呼ばれた少年は、スカル団が持っていた袋を見て言う。

 

 睨みつけるその様は、どこか威圧感すら感じさせるものがある。

 

「う、うう……。覚えてろよ、グラジオ。お前は、いつかボスに何か言われてもおかしくないんでスカら!」

 

「イリマのポケモンなんかいりませーん!」

 

 そう言って、スカル団は袋を置いて船に乗り込むとそのままどこかへと消えていった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……いやはや、それにしてもあっという間の出来事だったね」

 

 イリマさんは僕たちに向かってそういうと、小さく溜息を吐いた。

 

 気づけばグラジオと言っていた少年もどこかに消えているようだった。

 

 残されていたのは、大きな袋だけだ。

 

「たぶん、その中には……」

 

「ワルイデー!」

 

 ポケモンの……鳴き声?

 

 イリマさんは袋を開けると、そこに入っていたのは――。

 

「わー! アローラッタだ!」

 

 ハウはそういうとぴょんぴょん跳ね始める。

 

 何だ、アローラッタって。ラッタなら知っているけれど。というか、ラッタっぽい風貌ではある。黒い肌に、普通のラッタに比べると肥えた身体をしている。……何というか、ちょっと怖い見た目ではあるかもしれない。

 

「アローラの姿……リージョンフォルムのラッタ、ですね」

 

 イリマさんはこちらを向いてそう言った。

 

 イリマさんの話をまとめると、あのポケモンはぬしポケモンらしい。そして、そのぬしポケモンを育てることもまた、キャプテンとしての務めだというのだ。

 

 ラッタを袋から出して、イリマさんはラッタの頭を撫でた。

 

「さてと……それじゃ、戻ることにしましょうか、リリィタウンへ。きっと、ハラさんも待っていることでしょうから」

 

 そうしてイリマさんと僕たちは、一路リリィタウンへと戻ることになった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 リリィタウンへと戻ると、ククイ博士が僕たちに声をかけてきた。

 

「ククイ博士。どうなさったのですか、そんなに慌てて」

 

「イリマ……リーリエを知らないかい?」

 

 ククイ博士の言葉に首をかしげるイリマさん。

 

 ククイ博士はさらに話を続ける。

 

「そろそろ帰ってくる頃だろうから、サンたちにリーリエのことを紹介してあげようと思ったのだけれど、彼女、どこかに行ってしまってね」

 

「また、戦の遺跡へ向かったのではないでしょうか?」

 

「戦の遺跡。ああ……カプ・コケコの住まう遺跡だね。確かに、その可能性はあるかもしれない」

 

 そう言うと、僕たちに向かって博士は頷く。

 

「そうだ。どうせならサンたちも行ってみるといいよ、戦の遺跡! あそこはいい場所だ。何せ、アローラの守護神たるカプ・コケコを祭っている場所だからね。サンはアローラに来たばかりだし、一度は行ってみるといいと思うよ。運がいいと、カプ・コケコに会えるかもしれないし、さ!」

 


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