あくまでifなので、温かい目で見守ってやってください。
コメントお待ちしております。
with Freyja~re:start~
覚悟するんよ!と言われて口づけを交わしたのはいいが、覚悟、というのがどこまでのことを指すのかハヤテにはわかっていなかった。
恋人ととして正式に付き合い始めることを指すのか、それとも一足飛びに同棲までいったりするのだろうか。
ハヤテはフレイアを機体から降ろした後、一人機内に残って悶々と考えていた。
正味一時間ほど考え込んで、ハヤテはもう一度きちんとフレイアに告白しようと決めた。
一度は告白しているとはいえ、戦闘中に思い余って叫んでしまったものであり、もっとしっかり自分の気持ちを伝えたいと思ったのだ。
ハヤテが機体を降りると、アラドやカナメ、マキナなどの戦闘に参加していた隊員がハヤテを待ちかまえていた。
「ハヤテ、おめでとう!!!」
どこから持ってきたのか、各々がクラッカーの紐を思い切り引く。
ひとしきりクラッカーの乾いた破裂音が響いたあと、ふと、ハヤテは無意識のうちにフレイアの姿を探していた。
「なあ、フレイアはどこ行ったんだ?」
「あ、フレフレね……」
マキナが俯く。
「あいつに何かあったのか!」
思わずハヤテの声が大きくなる。
「フレフレ、ハヤテと同じようにお祝いしてあげたら、顔真っ赤にして走って逃げちゃった♪」
てへ、とマキナが舌を出す。
「なんだよ……はぁ……」
フレイアに何かあったわけではないとわかって、ハヤテは力が抜けた。
「追いかけてあげなさい、ハヤテ」
カナメがフレイアが走っていったのであろう方向を指差した。
「サンキュ!」
カナメが指差した方向へハヤテは駆け出した。
五分ほど走ると、前方にフレイアのオレンジがかった頭が見えてきた。
「フレイア!」
ハヤテが名前を呼ぶと、フレイアはびくっと身体を震わせ、ハヤテの方へと向き直った。
「あ、は、ハヤテ……」
一瞬目があったが、フレイアはすぐに下を向いてしまった。
だが、ルンがものすごい勢いで点滅している。
ああ、フレイアも気恥ずかしいんだな、とハヤテは考えつつ、言うなら今しかない、とも考えた。
一度も二度も、大して差はない、とハヤテは覚悟を決めた。
「あのさ、フレイア。聞いてほしいことがあるんだ」
「な、なんね……?」
「もう一度言うよ。俺、お前のことが好きなんだ!」
ハヤテがそう言い終えた瞬間、フレイアのルンが、更に速く点滅し始めた。
「は、は、はや……」
つっかえながら何かを言おうとしたフレイアが、突然倒れた。
「フレイア! しっかりしろ!」
フレイアが目を覚ますと、そこにはいつもの見慣れた、寮の天井があった。
「あれ、私……?」
「フレイア、目を覚ましましたか?」
フレイアのベッドの横で、ミラージュが椅子に腰掛けていた。
「ハヤテ、は……?」
近くにハヤテがいないのが不安だとでも言うように、フレイアは部屋を見渡す。
「ハヤテなら寮に戻りましたよ。フレイアをよろしく、と言われました」
「ミラージュさん、ありがとうございました!」
「いえ、私はただ座っていただけですから」
ミラージュが微笑む。
「私、ハヤテに会って話してきます!」
「そうですか、いってらっしゃい、フレイア。そうそう、今日は帰ってこなくてもいいですよ?」
ミラージュがいたずらっぽく笑いながら言った。
「そ、そ、そんなことあるわけなかねー!」
フレイアは、顔を真っ赤に染め、部屋を飛び出した。
「やれやれ、妬けますね、まったく。だから、少しだけ、少しだけなら泣いてもいいですよね……?」
ミラージュにフレイアのことを頼んだあと、ハヤテは自室で寝転がっていた。
フレイアのことだから、すぐに返事をすることはないだろうと思っていたが、まさか倒れられるとは思っていなかった。
単に驚いて倒れただけだろうから、そこまで心配はしていなかったが、やはり、ハヤテはフレイアのことが気になっていた。
ベッドの上でハヤテが寝返りをうち、このまま寝てしまおうかと思った時、部屋のインターホンが鳴った。
電子ロックを外し、ドアを開けると、外にはフレイアが立っていた。
「あれ、お前、寝てなくていいのか?」
ハヤテが茶化すように言う。
「もう大丈夫やけん! それより話!」
フレイアは両手を振り回し、照れを隠すように答えた。
「話?」
「さっきの話の続き! 私もハヤテに言いたいことある!」
「お、おう……」
フレイアの勢いに圧されたのか、ハヤテは言葉が詰まった。
「あの、あのね! 私もハヤテのこと好き!ちゃんと好きだから!」
ルンを点滅させ、顔を真っ赤にしながらフレイアは言う。
「ちゃんとってなんだよ」
フレイアが必死に気持ちを伝えようとしているのがわかって、ハヤテは笑ってしまった。
「ちゃんとはちゃんと! で、何か言うこととかあったりせん?」
「なんだよ、言うことって」
「こういうのは男の人から言うものやと思うんだけど……」
フレイアがちらちらとハヤテを上目遣いで見る。
ああ、この後のことか、とハヤテは理解した。
色々考えている途中だったけれど、ハヤテは覚悟を決めて、言うことにした。
「フレイア、好きだ! 俺と、付き合ってくれ!」
「……はい! 喜んで!」
嬉しくなって、ハヤテがフレイアを抱きしめた瞬間、突然大音量の拍手が聞こえてきた。
「ハヤテ、フレイア、改めておめでとう!」
見ると、廊下の角からワルキューレのメンバーから隊員、それに馴染みの店の店員までが顔を覗かせている。
「お前らいつからそこに……!」
ハヤテは素早くフレイアから離れようとしたが、フレイアは逆にハヤテに思い切りくっついた。
「私達恋人なんやから、離さんからね!」
「みんなに密告したやつ誰だよ……」
ハヤテが目頭を抑えながら呟くと、
「ああ、それは私です」
と、ミラージュがあっさり名乗り出た。
「お前か!」
今にも掴みかからん、という勢いでミラージュに噛み付く。
「まあ、私はあなたに色々と迷惑をかけられましたから。ゲロをかけられたりゲロをかけられたり、ゲロをかけられたり。ですから、これくらいはバチも当たらないでしょう」
「それまだ根に持ってたのかよ!」
「ええ、もちろん。私は恨み深い女なので、気をつけてくださいね?」
ミラージュが満面の笑みでそう言った。
私があなたのことを好きだったなんて、あなたは夢にも思わないんでしょうね、とミラージュは心のなかで呟いた。
フレイアに負けるのなら本望だけれど、私の気持ちに気付いてくれなかったあなたが、ちょっとばかり恨めしい。
せいぜい、この先ずっとからかってやります。
そのうち消える気持ちなのだから、せめてあとほんの少し思っているくらいは許してくれてもいいでしょう?
ミラージュは、少しだけ流れそうになった涙を抑えつつ、そう思った。