オーバーロード ~四人の英雄~   作:古花めいり

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番外(その2)_怒鳴り声が

 

「だから何度も言っているでしょう!?」

 

 怒鳴り声が部屋に響く。

 テーブルを囲んで座る羽の着いた紅いヘルムを被る騎士風の者の怒鳴りに、斜め向かいに座るローブを着た骸骨は宥めるように言葉を返す。

 

「そう怒鳴らないでください。僕は事実を言ったまでです」

「だからといって、あの人たちを見捨てろと言うのか!?」

「見捨てる……まぁ、言い方は様々ですが、そうです。ドラゴンたちが人間を餌にするならそれは仕方ないと思いますよ。問題はこの間取り逃がしたドラゴンが使った未知の魔法です」

「仕方ないだと!? 人が、同族が食べられているんだぞ!」

「それは些細なことだと思いますが……では、エクルトさんは肉を食べなかったんですか? その肉の生物は殺して食用にしてもよくて、人間はダメと? 理不尽ですね」

「そこまで言ってなだろ!」

 

 紅いヘルムの騎士風の者──エクルトがテーブルを叩いた所で白に赤い線の入ったローブを纏う女性が立ち上がって手を叩いた。

 

「はいはい。怒鳴りあいはそこまで」

「僕は怒鳴ってませんよ。アラフィーさん」

「うっさい。スルシャーナはそう言うところが煽ってるようの見られるんだから少しは気を付けろ」

「……」

「エクルトも、今は助けた人をどうするかの怒鳴りあいよりも、あの緑のドラゴンが使ってきた魔法の対策だろ?」

「ええ……まぁ」

 

 脱線していた話を戻すとアラフィーは座り、意見を聞く姿勢になる。

 緑のドラゴン。捕らわれた人を助け、スルシャーナとの合流地点で合流したアラフィーたちの前に他のドラゴンより一回り大きい緑色のドラゴンに遭遇した。はじめは善戦し、そのドラゴンの腹にエクルトのスキルで傷をつけた時だった。ドラゴンは吠え、直後に空を覆うほどの巨大な魔方陣が現れて──閃光が降り注いだ。

 

「超位魔法にしては、発動の形状がおかしい気がするねぇ。けど、この世界独特の魔法なら、って納得もできるけどねぇ」

「この世界独特の魔法と言うのは同意です。《魔法反射(リフレクト・マジック)》でも反射できない魔法なんてユグドラシルにはなかったしな」

 

 深緑の服に翠の部分的な防具を着けた小柄な老人──コール大尉がコップの中の物を回しながら言い、同意したのは青い狩人衣装の男──セブンス。

 

「コル爺の見解も納得できるけどさー。でもさー、ホントにアレは魔法だと思う? ここがユグドラシルっぽくないからさー、ユグドラシルと同じだと考えない方がいーい気がするなー」

 

 テーブルに突っ伏したままの少女──が問う。

 超位魔法の中で最も早く発動する、というより普通の魔法と同じ速度で発動できる超位魔法《魔法反射(リフレクト・マジック)》は如何なる魔法も一度だけ反射するモノ。当然スキルは反射できない。それゆえの疑問だった。

 

「……」

 

 その場の誰もが口を閉じた。ユグドラシルであれば、未知の魔法など日常茶飯事であり、それを解明するのは楽しささえあった。しかし、現在では楽しさなどなく、下手をすれば死ぬ現実だ。

 かといって何もせず、対応もせずに現状維持ではいずれ緑のドラゴンに敗れる。だからか、その場の誰もが憤りを感じていた──一人を除いて。

 

「では、次に緑のドラゴンが出現した際は僕が相手をするということで」

「……は?」

「ま、まて、スルシャーナ! どうしてそうなる!?」

「現状、あのドラゴンの対策は立てられない。それは情報が少ないからです」

「んー、確かにねー。でも、どーしてスーさんが戦うって話になるのかなー?」

「ふむ、スー坊のスキル、かのぅ?」

「はい。《冥府の福音(ネクロ・ゴスペル)》であれば、死ぬことはなくなります」

「俺は反対だ。スルシャーナ一人だけに負荷をかけるのは。それにそのスキルがちゃんとユグドラシルと同じように発動するかもわからないんじゃないのか?そんな危険を──」

「エクルトが言いたいことはわかる。だが、現状じゃあスルシャーナの案が現実的だとアタシは思う」

 

 アラフィーの言葉に遮られてエクルトは眉間に皺を寄せて黙る。

 その場の誰もがわかっていた。エクルトは何も失いたくないのだと。

 

 

 

 




本当は9話の後編のあとに投稿する予定でした。
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