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掲げた剣は、その白く美しかった刀身に血を吸い続け、ボロボロになっていた。
もう何年も手入れをしていない。できるはずもない。
見上げれば空は蒼く、その壮大さにいつまでも見ていたい誘惑に
その空に、この空を冒涜するかのように、我が物顔で舞う存在が居るからだ。
その有り様に怒りよりもため息が出る。
あと、何体殺せば良いのだろう?
空には羽虫の如く、鬱陶しく舞う竜と異形のような何かが。
足元には地面を覆い隠す程の竜と人と異形の何かの死骸が。
掲げた剣を挑発と受け取ったのだろう。竜が一匹、咆哮をあげながら急降下して向かってくる。口を開き、此方を噛み砕く為に。
片足を半歩後ろに、剣を下段に構えて──目の前に迫った竜の横を一足跳びですり抜け、すれ違い様に首を落とした。
なまくら同然であろうと、長年……ユグドラシルに居た時から持っていた剣は竜の鱗だろうと容易に切り裂く。
竜を切り伏せ、力無くだらりと腕を下げてふと思う。
「なぜこんな事をしているのだろう?」と。
確か、オンラインゲームのサービス終了の最終日にログインしていて、大晦日にも引けを取らない程にプレイヤー達が騒ぎたてていたのを覚えている。
ギルド内で日付が変わってもログアウトされずにいたので、メンバー達と話して外に出てみればこの世界──いわば異世界だった。
ゲームの
瞼はない目を開けて
空には畜生どもが、大地には屍が。
フッ。と、皮もない骨だけの顔で、笑った。つい“屍”の単語に反応してしまった。……あの人のせいだろう。
どこに居るのか、はたまた此処に来ているのかさえわからないのに。
『スルシャーナ』
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「なんです? アラフィーさん」
『今どこだ? こっちは避難を終えて、奴らは撒いた』
さすがに早い。別れてからそう時間は経ってないだろうに。スルシャーナの頭上の異形種はまだまだ存在していた。
「僕の方はまだです。と言うか、避難完了ならポイントまで到着したって事で、圏外ですよね? 魔法撃ちますよ? 慣れない接近でチマチマやるの面倒になってきましたし」
『嗚呼、問題ない。終わったら合流してくれ』
「りょーかい」
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空の異形よりもずっと高い位置から、雨のように無数の黒い刃が降り注いで異形のモノ達を撃ち落としていく。
落下する黒の刃と異形のモノを遠く眺めながら、スルシャーナは再び思案する。
「今更更新して、番外編とは」と怒られそう(半泣き)
ごめんなさい。