「それで? なんで私が足に使われてんのかなぁ」
「いつでも暇で車持ってる人って
「……はぁ。まぁいつものことだしいいけど」
時は巡り夏休み真っ只中。現在例のボランティアのため千葉村に向かっている僕は、友人である
菜月は僕より三つ年上の二十一歳。とはいえ大学には通っておらず、若くして夜は小洒落たBARを営んでいる。元々美人だったことと性格故か、それなりに繁盛しているらしい。ちなみに僕もよくお世話になっている。
なんだかんだで仲が良い僕ら。こんな急なお願いでも聞いてくれる菜月であるからありがたい。
菜月は僕の目的を、願いを知る数少ない一人であり、勿論前の学校でのこともしっかりと把握している。いや、多分言わなくても裏で色んなところから情報収集をしている菜月のことだからすぐにバレていたに違いない。
「で、内申だけが目的じゃないんでしょ?」
「まぁ、ね。少し気になる奴がいるんだ。現段階で一番僕のキャラを看破しそうな奴」
「……それ、大丈夫なの? 前みたいなことになったらさ」
「大丈夫だよ。二度も同じ失敗は繰り返さない。昔からそうだったでしょ?」
「そうだけどさ。……気を付けなよ?」
「言われなくても」
それからはラジオをBGMにたわいもない話をして千葉村に到着した。車から降りると、見たことない顔の他に見知った顔が見える。
葉山隼人、三浦優美子、戸部翔、海老名姫名、由比ヶ浜結衣。僕の所属するクラスのカーストトップグループのメンバーだ。それと話したことはないが同じクラスの戸塚彩加。顔とある程度の情報はタブレット端末に入っているデータから知っている国際教養科二年J組に所属する才色兼備の雪ノ下雪乃。そして、今回の目的の一つでもあった比企谷八幡。あともう一人中学生っぽい女子がいるけど、おそらく比企谷八幡の妹だろう。あのアホ毛とか似ているし、端末の情報にも比企谷八幡の家族構成に中学三年生の妹はいたからな。
ここまで送ってくれた菜月に手を振ると、菜月も手を振り返してから引き返していった。
「やぁ、悠里。まさか悠里も参加しているなんてな」
「やぁ、隼人君。こっちも、僕以外に結構参加していて驚いているよ」
「っべー。雨宮君も一緒とかー、テンション上がりまくりっしょー!」
一通り隼人君グループと会話を済ませてから比企谷兄妹、雪ノ下雪乃の元へと足を進める。
「初めまして。雨宮悠里です。F組に転校してきました。今回のボランティアで一緒になったので、よろしくね?」
「私は雪ノ下雪乃。J組よ」
「比企谷小町です! ここにいるごみぃちゃんの妹で中三です!」
「……小町ちゃん? お兄ちゃんそんな扱いされてショックなんですけど」
「まぁまぁ、仲が良いのは良いことじゃないか比企谷八幡君」
「……お、俺の名前知ってたのか?」
「まぁ同じクラスだしね」
「あら、良かったわね比企谷君。あなたの名前を覚えてくれる人がいてくれて」
「……なにそれ嫌味? まぁいいけどよ」
……もしかしたら思い過ごしだったのかもなぁ。
確かに比企谷君は僕に対して警戒心はあれど、僕のキャラを看破しているようには見えないし、そういう僕の本質的な面に気付いた素振りもない。前の学校でのこともあってか少し過敏になっていたかもしれないな。
それからほどなくして平塚先生から集合がかかる。どうやら小学生達の前で紹介するらしい。
まぁ、取り敢えず気は抜かずに、比企谷君や一応他の人達も警戒しながらやっていきますか。
*
小学生達の前での紹介が終わり、現在森の中でスタンプラリーのオリエンテーリングをやっている。僕も小学生の時にやったなーとかどうでもいいような感想を抱きながらも、森の中を歩いて行く。
隼人君グループを筆頭に進む中で、僕は一番後ろを歩いていた。まぁその方が彼らの行動を把握しやすい、というのが一番の理由だけど、少しだけ気になる子がいたのだ。
ーーぽつん、と一人だけ露骨な間を空けてグループ行動している子達。一番後ろにいる彼女は、誰がどう見てもハブられている。
どうやらそのことに気付いているのは僕以外に比企谷君、雪ノ下さん、隼人君だけみたいだ。
すると何を思ったのか隼人君がその子に声を掛けに行った。あまり良いやり方ではないと思うけど、ヒーロー君は黙ってはいられなかったみたいだ。あんな中途半端なことしたって、ただの偽善にしかならないというのに。でも、ああいう優しさも人によっては美点なのかもね。
他の班員に嘲笑われながらもその後ろを俯いて歩く少女を尻目に、僕も足を進めた。
取り敢えずの2話連投。3話はいけるかなぁ。