Lyrical NANOHA The Lord 〜契約せし魔法使い〜   作:vegatair

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第4話です!




説明と買い物

 

 リビングにて話をすることになったトオル達四人。トオルとエルピスの対面に座るようにスバルとティアナが腰をかける。

 ニコニコとスバルは笑顔を浮かべ、その隣に座るティアナは極力隣を見ないように心がけている。トオルもまた、目の前のスバルから送られる圧力に視線を逸らす。

 

『トオル、何故彼女から目を逸らすのですか? 話し合うのですから、ちゃんと目を見て話さないとダメですよ』

 

 突如、トオルの脳内にエルピスの声が響く。いきなりのことにトオルは驚き隣に座るエルピスへ視線を向ける。

 エルピスはそんなトオルの反応が面白かったのか、にこりと笑顔を向け再び言葉を送ってくる。

 

『契約の恩恵でしょうか、何も言わなくてもトオルと意思疎通ができるようになりました』

 

『意思疎通……念話みたいなもんか』

 

 念話。それは魔導師達が使う、言葉を介さず脳内でやり取りができる魔法のことである。かつてスバルやその姉のギンガがやっているのを見たことがあるが、まさか自分がそれを経験することになろうとは。

 

「ふ〜ん、二人とも見つめ合って仲がいいんだね〜」

 

 その声にトオルの思考が現実に引き戻される。見ればスバルの威圧感がより一層増していた。

 スバルからしてみれば、互いに見つめ合った上にエルピスが微笑んでいるのだ。スバルはその仲睦まじ気な様を見せられ、額に小さな青筋を立てる。

 

『やべー、スバルの奴結構怒ってるぞ』

 

『え、怒ってるんですか? てっきりニコニコしてるから機嫌が良いのかとばかり』

 

『馬鹿野郎、あの漂う威圧感がわかんねーのか? あれは絶対に怒ってるって』

 

 どこか鈍感なところがあるのか、エルピスはスバルの醸し出す威圧感を全く感知できていない。

 トオルとしては、これ以上スバルの機嫌を損ねるわけにもいかない。とりあえず、紹介だけは済ませておこうとトオルは口を開く。

 

「まぁ、とりあえず自己紹介だけはしておこうか。こいつはエルピス、訳あって俺の家に居候することになったんだ」

 

「どうも、エルピスと言います。以後お見知り置きを」

 

「ティアナ・ランスターです。よろしくお願いします」

 

「……スバル・ナカジマです」

 

 居候と、その怪しげな単語にスバルの眉がピクリと跳ねる。

 

「トオル兄。居候ってどういうことなの?」

 

 そしてスバルは早速、その居候の件についてトオルへ質問する。だがトオルもその質問が来ることはわかっていたので、焦ることなくエルピスへ念話(仮)を送る。

 

『いいかエルピス、何かあったら俺が言うことに合わせるんだぞ?』

 

『合わせるですか? まぁトオルがそう言うならやってみましょう』

 

 エルピスの同意も得たことで、トオルは返答のために口を開く。

 

「実はエルピスは自分がどこから来たのかっていう記憶がなくてな」

 

「記憶がないって、記憶喪失ってこと?」

 

「まぁ端的に言えばな。それでお前を送った帰りに、行くあても帰るあてもないこいつを見つけてな。そのまま放置って訳にもいかねぇから家まで連れてきたんだよ」

 

 実際にエルピスとは帰り道にあったし、彼女には帰る場所も行くあてもない。ただ記憶喪失というところを除けば、ほぼ全ては真実なのである。

 スバルが唖然とする中、このチャンスを逃さんとばかりにトオルは言葉を続ける。

 

「なに、ちゃんと管理局には身元を探してもらうように相談はするさ。ただ身元が見つかるまでの間は預かるってだけの話だ……それくらい、別にいいだろ?」

 

「それはいいけど……その話、本当なの?」

 

 トオルの言葉信じていないわけではない。だが本当に記憶喪失で身元が分からないなら即刻、管理局にて身元を調べてもらう必要がある。スバルはトオルの隣に座るエルピスへ視線を移しそう問いかける。

 

「ええ、確かに私は記憶がありません」

 

 トオルの指示通り、彼の話に合わせるため一つ返事で頷くエルピス。

 ですが、とエルピスは続け

 

「私は別に不安ではありません。貴女のお兄様はとても優しい人で、そんな人に保護してもらえたのですから」

 

 そう言い、スバルに柔和な笑みを向ける。

 対するスバルは自慢の兄を褒められ、先ほどとは一変し上機嫌になると

 

「そうだよね! トオル兄は優しいもんね!」

 

 嬉しそうな声音でそう答え、まるで子犬のように可愛らしい笑顔を浮かべる。なんやかんやでスバルのご機嫌が戻ったところで、トオルはごく自然に話題をすり替える。

 

「ところでスバル、高町一等空尉にはちゃんと礼は言ったのか?」

 

「うん! なのはさんも私のこと覚えててくれてたんだ!」

 

 嬉々として高町一等空尉との出来事を話すスバル。その一挙一動に嬉しさが滲み出ており、そんなスバルを見てトオルはふっと口元を綻ばせる。

 

 かつてスバルは、巨大な火災事件に巻き込まれた。臨海空港一つを全焼させてしまうほどの大火災にだ。そして火災の中スバルを助けてくれたのが先の人物、高町 なのは一等空尉である。彼女のおかげでスバルは命を落とすことはなく、無事に火災現場から生還できた。

 

(……本当に、あの人にはどれだけ礼を返しても返しきれないな。ギンガを助けてくれたテスタロッサ執務官にも)

 

 あの時、スバルと彼女の姉のギンガが火災に巻き込まれたと聞いて、あれほどにまで自分の無力を呪ったことはない。

 ──魔力。たったそれだけ、たった一つそれだけが無いだけ。だがそのたった一つの有無がトオルと魔導師達との埋めようのない差であり、過去のトオルにとっては何物に変えても手にしたかった力だった。

 

「はははっ、そりゃあよかったじゃねぇか。お前の憧れだもんな、高町一等空尉は」

 

「うん! それにね、私の魔法も褒められたんだよ!」

 

 まるで花を咲かせるような、そんな笑顔を浮かべるスバル。そんな彼女の笑顔を見て、こうして彼女が笑っていてくれることが一番大切だと、そう思いながらトオルはスバルの話に耳を傾ける。

 

「それとね、私達新しい部隊へのお誘いが来たんだ!!」

 

「新しい部隊?」

 

「機動六課という新しく設立される部隊です」

 

 新部隊へのお誘い。まだまだ魔導師としては若い二人を誘ったその部隊とやらに疑問を抱くトオル。

 すると未だテンションの高いスバルが、興奮冷めやまぬ声音で話を続ける。

 

「それにねトオル兄、その部隊にはなのはさんもいるんだよ!」

 

「他にもフェイト・テスタロッサ執務官に八神 はやて二等陸佐もです」

 

「はぁ……そりゃなんつーか、豪華すぎるメンツだな」

 

 先に述べた高町 なのは、フェイト・テスタロッサは管理局を代表すると言ってもいいほどの実力を有した魔導師だ。そして八神 はやてもまた、前述の二人に勝るとも劣らないトップレベルの魔導師である。

 そんな有名どころの魔導師が集まる部隊に、まさかスバルとティアナが勧誘されるとは、とトオルは驚き半分関心半分な声でそう漏らす。

 

「ま、そんな部隊だったら嫌でもいい経験ができそうだな。揉まれるだけ揉まれてこいよ」

 

「うん、頑張るね!」

 

「ティアナちゃんも、スバルのことよろしく頼むな」

 

「はい、任せてください」

 

 スバルとティアナ、トオルは二人にそう告げる。

 そのまま話は終わり、スバルとティアナはトオルの家を後にする。そしてスバル達が去り、再びエルピスと二人きりになるトオル。

 

「ふふっ、いい妹さんでしたね」

 

「まぁな、自慢の妹だ」

 

 喜怒哀楽と表情がころころ変化するスバル。そんな彼女をエルピスは褒め、トオルは当然だとでも言わんばかりの声音で答える。

 

「にしても、今日は一段と疲れたな。さっさと風呂に入って飯食って寝るとすっか」

 

「そうですね。早めに休息をとったほうが体にもいいでしょうし」

 

 初めての魔法を使った戦闘をしたせいか、体に思った以上の負担がかかっているらしい。トオルはちゃちゃっと風呂に入り、夕食を済ませるとすぐにベッドに横になる。そしてそのまま数分と経たないうちに寝息を立て、夢の中へと落ちていった。

 

 ちなみに、エルピスにはトオルの隣の部屋を貸し与えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、買い物だ」

 

「……はい?」

 

 翌日、朝食を終えたトオルはエルピスへそう告げる。対しいきなりそんなことを言われたエルピスは、首を傾げてトオルに返す。

 

「だから買い物だ。お前、服とか下着とかの替え持ってねぇだろ? 今からそういった日用品を買いに行くんだよ」

 

「ですが……いいのですか?」

 

 エルピスは恐る恐るといった風に言う。居候させてもらっている上に日用品まで買ってもらうなどご迷惑では、とそう目で語るエルピスにトオルはチョップを喰らわせる。

 

「ふみゅっ!?」

 

 可愛らしい悲鳴をあげ、叩かれた頭部を抑えるとエルピスはトオルを見上げる。そんな彼女にトオルは右手で拳を作り、視線を鋭くさせて言う。

 

「次そんな顔したら、今度はもっと痛ぇ拳骨(もん)お見舞いすっからな」

 

「はい……ごめんなさい」

 

「ったく、次からは気をつけろよ」

 

 頭をさげるエルピスにトオルは溜息と共にそう告げると、握りしめた拳を開きエルピスの頭にポンと乗せる。

 

「理由はどうであれ、お前はもうこの家の一員だ。下手な気なんか使ってねぇで気楽にいこうや」

 

「……はい!」

 

 一転し笑顔を浮かべるエルピス。彼女の表情が変わったのを見たトオルはよし、と頷き出かける準備を整える。

 

 

 

 

 

 場所は変わりミッドチルダの首都クラナガン。

 

「さて、買い物開始と行きたいが……お前、こういった場所は初めてか?」

 

「はい、ここまで大きい所は初めてです」

 

 キョロキョロと、そびえ立つビル群を見上げながら感嘆の声を漏らすエルピス。

 

(そういやこいつのことを何にも知らねぇんだよな、俺って)

 

 知っていることといえば、契約の際に見た彼女の両親のことだけ。やはりこれから共に戦う以上、ある程度のことは知っておかなければ、とトオルは考える。そして隣で未だビルを見上げるエルピスを横目に見てふっ、と口元を緩める。

 

(ま、そう急ぐことでもねぇか)

 

 そう、これから知っていけばいいだけだ。そう結論を出し、トオルは足を進める。トオルが歩き出したことで、エルピスも彼の背中を追うようにして歩き始める。

 

 

 

 

 

 それから1時間と少し、服や下着など必要なものを粗方買い終えたトオルとエルピスは喫茶店にて休憩を取っていた。

 

「とりあえずはある程度のもんは揃ったな」

 

「はい。ありがとうございました、トオル」

 

 コーヒーに口をつけつつ、買い物袋へ目を向けたトオルはそう呟く。エルピスもまたコーヒーを一口飲み買い物袋へ視線を向け、それにしても、と言い

 

「こんなに買って貰って、お金とか大丈夫なんですか?」

 

「まぁ基本的に俺は何も買わねぇしな。そのくらい別にどうってことねぇよ」

 

 そう言い再びコーヒーを一口飲むトオル。そしてカップから口を離すとエルピスへ質問する。

 

「エルピス、ファントムってやつは元は人間だって話だったよな?」

 

「はい。『ゲート』という強大な魔力を持った人間が絶望した時、その人間の死と引き換えにファントムが生まれます」

 

「おいおい、魔力を持った人間ってここはミッドチルダだぞ? 魔力のある人間なんざ数え切れねぇほどいる」

 

 エルピスの言葉にトオルが眉を(ひそ)めながらそう言うと

 

「その点については大丈夫です」

 

 トオルを安心させるように落ち着いた口調で言うエルピス。

 

「この世界の魔導師の魔力を正とすれば、ゲート並びにファントムの持つ魔力は負となります。そしてこの二つの魔力は互いに拒絶しあい、一つの体に同時に存在することはありません」

 

「……つまり、魔導師はファントムにはならないってことか?」

 

「端的に言えばそうなりますね」

 

 エルピスが言うことが本当ならば、スバルやティアナがファントムになることはほぼないだろう。彼女の説明を聞き、トオルは内心安堵する。

 そんなトオルへ、まだ安心はできない、とそう言わんばかりの声音でエルピスは続ける。

 

「しかし、賢者の石の力があればその不可能を可能にすることもできます」

 

「……なるほどな、結局は賢者の石を守れってことか」

 

 つまりやることは変わらない。トオルは約束通りエルピスをファントムから守る、それだけの話だ。トオルは椅子に凭れかかり窓の外へ視線を移す。窓の外には多くの人が行き交い賑わいを見せている。

 そんな街の景色をぼうっと眺めていると、トオルはその人集(ひとだか)りの中から不自然な人物の姿を捉える。

 

 その人物は黒のシャツにジーパンといたって普通の格好をした青年だったが

 

(あいつ、俺を見て笑った?)

 

 そう、その青年はトオルと目が合うとニヤリと口元に笑みを浮かべたのだ。

 何故自分を見て笑顔を浮かべるのか、トオルが思い浮かぶ理由は一つ。

 

「……もう新手が来たってか。随分と早い対応だな」

 

「トオル、窓の外に何が? それに新手とはいったい」

 

 一人ぶつぶつと呟くトオルにエルピスは不思議そうな目を向ける。トオルは席から立ち上がると荷物を持ち

 

「エルピス、どうやら買い物の時間は終わりのようだ」

 

「まさか、ファントムですか?」

 

 目を見開きトオルに尋ねるエルピス。彼女の問いにトオルは一度だけ頷き肯定の意を示すと、代金を払い喫茶店を後にする。

 外に出たトオルは先ほどの場所へ目を向けるが、そこには先ほどの青年の姿は無く

 

「……人が多いな。ここで戦うのはちょっとマズイか」

 

「場所を変えますか?」

 

 エルピスの言葉にもう一度頷き、トオルは場所を変えるために人気のない場所へと移動する。

 

 

 

「よし、この辺りでいいか」

 

 トオル達がやってきたのはクラナガンの外れにある廃工場。トオルは周りに誰もいないことを確認し

 

「どうせ付いてきてんだろ、出てこい!」

 

「──あはは、やっぱりばれてたか〜」

 

 大声でそう言うと、廃工場の陰から先ほどの青年が姿を現す。青年は先ほどと同じく笑顔を浮かべており、その笑顔にどこか嫌なものを感じ取るトオル。

 

「お前、ファントムだろ?」

 

「まぁね。そう言う君は魔法使い、であってるよね?」

 

「まぁな」

 

 青年と言葉を交わしつつ、トオルはその仕草一つ一つに最大限の警戒をする。そんな中、青年はトオルの隣にいるエルピスへ視線を向けると

 

「ガーゴイルがやられたって聞いて驚いたけど……ふぅん、そう言うことか〜」

 

「つべこべ言ってねぇで、()るってんならさっさとかかってこいや」

 

「あははっ、随分急ぐじゃないか」

 

 一笑の後、青年の姿が一瞬ぼやけたかと思うとその姿が変貌する。

 全身は茶色く、腕や足や胸部は鱗のようなものが覆い、爬虫類のような頭部からは鋭利な角が2本伸びている。そして背中には一対の翼と細い尻尾がゆらゆらと揺れる。

 

「僕はファントム『ワイバーン』。さぁ、戦いを始めようか魔法使い」

 

 ワイバーン。そう名乗ったファントムは鋭い爪が光る右手を上げるとクイクイ、と挑発するように曲げる。

 トオルは右手に嵌めた指輪を懐へと持っていく。そこには以前のような機械的なベルトではなく、中央に小さな右手の手形のついたベルトがあり

 

 《ドライバーオン・カモーン!!》

 

 指輪をかざした直後その音声とともにベルトが変化、以前の機械的なベルトがその姿を現わした。

 トオルはベルトの手形『マーノオーサー』を操作し左手側へと傾ける。

 

 《シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!……》

 

「……いくぞ、エルピス」

 

「はい、トオル!」

 

 エルピスの返事を聞き、トオルは左手の指輪をベルトへ翳す。

 

「変身!!」

 

 《ロード・カモーン! イエス! アドベント!! マイロード!!!》

 

 銀の魔法陣が通過し、エルピスがトオルと一体化する。そしてトオルはロードへと変身した。

 

『王の御膳です、控えなさい!!』

 

 《コネクト・カモーン!》

 

 エルピスが叫び、ロードはコネクトウィザードリングを使用しローブレイドバスターを取り出し構える。

 ロードの戦闘準備が整ったのを確認したワイバーンは

 

「さて、それじゃあ始めようか!」

 

 嬉々とした声音でそう告げ、ロードめがけて駆け出した。ロードもまた武器を構え、ワイバーンを迎え撃つ。

 

 ワイバーンは鋭利な爪を利用した切り裂き、突きでロードを攻める。ロードは武器を巧みに使いワイバーンの攻撃を受け流し、ブレイドモードの両刃でワイバーンの体を斬りつける。

 

「痛ててっ! くっそー、お返しだ!」

 

 一歩後退したワイバーンは、口から数発の火炎球を放つ。だがロードはそれらを斬り裂きながら前へ進み、再び数度ワイバーンを斬りつける。

 

 その一撃でワイバーンは吹き飛ばされ地面を転がり、斬られた箇所から煙が上る。ワイバーンは傷を押さえながら立ち上がると、変わらず楽しそうな声音でロードへ言う。

 

「いやーやっぱり強いね〜。ガーゴイルを倒しただけあるよ」

 

「よく言うぜ。まるっきりやる気なんてないくせしてよ」

 

 ワイバーンに対し、どこか不機嫌そうな口調で言うロード。

 この短いやり取りの中で、ワイバーンはこれぽっちも本気を出していない。まるでこちらの様子を見ているような、そんな感じで戦っているようロードには思えた。

 

「まぁ僕のやるべきことは他にもあるからね。ここで殺られるわけにはいかないのさ」

 

「なにしようとしてるかは知らねぇが、お前はここで俺が倒す!」

 

 《キャモナ・ブラスト・タッチノック!》

 

 ロードはブラストモードに変形させマーノオーサーを操作し、左手の指輪を窪みへとはめる。

 

 《ロード! ブラストストライク! ガンガンガン!》

 

 ブラストストライクを発動させ、ワイバーン目掛けて放つ。放たれた弾丸はワイバーン目掛けて飛んでいき、巨大な爆発を起こしもくもくと煙が立ち上る。

 ロードは目を凝らして煙の向こうを見るとそこにはワイバーンの姿はなく、小規模のクレーターのみだけが映った。

 

『やりましたか?』

 

「……いや、逃がしちまった」

 

 エルピスにそう返しロードは変身を解除する。元の姿に戻ったトオルはクレーターを眺め、先ほどワイバーンが言った言葉を思い返す。

 

「……他にやるべきこと。あいつ、いったい何をしようってんだ?」

 

 ファントムの狙いは賢者の石だけではない。それがいったいなんなのか

 

(この一件、ただエルピスを守ればいいってそんな単純なもんじゃねぇらしいな)

 

 腕組みしながらそう考えるトオル。

 だがいくら考えても答えは出るはずなく、トオルは考えるのを止めると荷物を置いた場所へと歩き、荷物を持つとエルピスへ声をかける。

 

「帰るぞエルピス」

 

「あ、はい」

 

 そして二人は廃工場を後にし、家へ向けて足を進めた。

 

 

 

 

 





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