Lyrical NANOHA The Lord 〜契約せし魔法使い〜   作:vegatair

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第5話です!!




狙われた少女達

 クラナガンの外れにある森。その中を黒シャツの青年、ワイバーンが意気揚々と歩いていた。

 そして森の最深部に当たる場所へ赴くと周りをキョロキョロと見回し

 

「おーいルルハリルー、出ておいでー」

 

 そう誰かを呼ぶように叫ぶ。

 するとワイバーンの目の前の空間が(いびつ)に歪んだかと思うと、まるでケーキを切るかのように二つに綺麗に裂け、その中から一匹の人狼を模した怪人が現れた。

 

「やぁやぁごめんね〜。ちょーっとボスに用があってさ、連れて行ってくれるかな?」

 

 ワイバーンはルルハリルと呼んだ人狼にそう言うと、人狼は無言のまま一度首を縦に振り背を向けて歪んだ空間の中へ歩き出す。

 ワイバーンもその後に続き空間の中に入っていくと、歪みが消え森は元どおりの姿に戻る。

 

 空間の中をワイバーンと人狼が進んで行くと、目の前に一人のローブ服を着た男が現れる。

 

「おーいボスー」

 

「ん? なんだ、ワイバーンか。いったいどうしたんだ?」

 

 男はワイバーンの存在に気付き、ローブの裾を靡かせながら話しかける。

 

「それよりも、あの女の居場所は掴んだのか?」

 

「それがさー、やっぱりあの子には味方がついてるよ。ちょっと戦ってみたけど、ガーゴイルを倒すだけの力はあったね」

 

 男の問いにワイバーンは頭の後ろで腕を組みながら答える。ワイバーンの言葉に男は「そうか」とだけ答え、ワイバーンに背を向けると

 

「連れて帰るのが無理ならば、せめてもう一つの命令くらいはこなしてこい、いいな?」

 

「あーはいはい、了解了解〜。まっかせといてよ」

 

 ワイバーンはひらひらと手を振り軽い口調で答えると、ルルハリルとともに再び空間の裂け目へと消えていった。

 

 そしてワイバーンがいなくなった後、一人になった男は

 

「ははははっ、そうか頼もしい味方がついたか。まぁそうでなくてはわざわざ逃した意味がない。彼女にはまだまだ逃げ延びてもらわないとな──私の理想のために」

 

 そう呟き、くつくつと楽しそうに笑う。

 そのローブの下から覗く双眸が捉えているのは、果たしていったい何なのか。それはまだ、彼以外は知らないことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ワイバーンとの戦いを終えマンションへ戻っているトオル達。

 マンションの階段を登りながら、トオルはエルピスに聞こえるような声で呟く。

 

「にしても、あそこであのファントムを逃がしちまったのは失敗だったな」

 

 買い物袋を片手に、逃してしまったワイバーンのことを思い小さい溜息を吐くトオル。ただでさえ厄介な相手なのだ、できることならばあの場で仕留めておきたかった、そう思いトオルはまた一つ溜息を吐く。

 あのファントムがエルピスを捕まえることの他に何か別の目的を持っていることは確か。しかしそれが何なのかがトオルには分からない以上、後手に回ってしまうのは確実。

 

「くそ、せめてあのファントムの居場所だけでも掴めたら……」

 

「仕方ありませんよ、トオル。過ぎてしまったことですし、引きずってもしょうがないですよ」

 

 対しエルピスはそんなトオルを励ますように言うが、それでも逃してしまったという現実は変わらない。

 

「しょうがないって言ってもな、あのファントムが何を目的として動いているのかわからねぇんだぞ? このままじゃ奴の後手に回るのは明確だろうが」

 

 せめてワイバーンの足取りを掴めるだけでも、そう考えながらトオルが階段を登りきり玄関の扉に手をかけた時

 

「あ、トオル少し待ってください。ドアノブに何かがかかってます」

 

「……ん?」

 

 何かに気づいたエルピスがそう言い、トオルがドアノブに視線を下ろすとそこには一つの古ぼけた巾着袋が下がっていた。

 いったい誰が、とトオルが巾着袋をドアノブから取り中身を見る。するとそこには黒と白のウィザードリングが一つずつ入っていた。

 

「こいつは……いったい誰が?」

 

 トオルはそれらを手に取り観察し、やはりどこからどう見ても自分が持っている指輪と同系統のものだと推測する。

 この効果が何なのかわからないため、家の中で試そうとトオルは急ぎ足で自宅へ入る。そして玄関に入り、まずは黒い指輪から試そうとそれを右手に嵌めベルトに(かざ)す。

 

 《フェンリル・カモーン!》

 

 するとそんな音声とともにトオルの前に小さな魔法陣が現れ、その中から黒一色で統一されたプラモデルのランナーのようなものが出てくる。そしてでてきたそれは独りでに動き出しパーツが合体、黒い狼のようなプラモデルへと変形する。

 

「これは狼でしょうか?」

 

「まぁ見た目からしてそうだろ……にしても、こいつ全然動かねぇな」

 

 エルピスの呟きにそう返しつつ、トオルは完成したはいいものの全くと言っていいほど動かない目の前の狼に疑惑の視線を向ける。

 すると狼の背中に当たる部分に小さな円形の溝があるのを発見したトオル。その形や大きさが右手の指輪が入るくらいのものだと直感で判断し、トオルは指輪を右手から取り外しその溝へと嵌め込む。すると……

 

『──ワォオオン‼︎』

 

「あ、動きましたよトオル!」

 

 その考えはどうやら当たりだったらしく、狼のプラモデルは目に赤い光を宿し高らかに雄叫びを上げた。

 そしてトオルの肩に乗るや否や、彼の頬に顔を擦り寄せてくる狼。どうやらトオルにかなり懐いているようだ。

 

「どうやら、その狼は魔力で動く使い魔のようなものらしいですね」

 

「なるほど使い魔か、そいつはラッキーだな」

 

 不幸中の幸いとはこういうことではないだろうか。ワイバーンを逃してしまい足取りが掴めないない今、使い魔のような探索に向いている魔法が手に入るのは非常に心強い。

 早速、トオルは狼に向けて一つの指示を送る。

 

「お前は今からファントムを探してきてくれ。もし見つけたなら、何かしらの方法で俺にその場所を伝えること、いいな?」

 

『ガウ!』

 

 トオルの指示に狼──ブラックフェンリルは力強く吠えるとそのままどこかヘと走り去っていった。

 

「さて、もう一つは何かな?」

 

 ブラックフェンリルが出て行った後、トオルはもう一つの白い指輪に手をかけ右手の中指に嵌めベルトに翳す。

 

 《グリフォン・カモーン!》

 

 すると今度は白いプラモデルのランナーが現れ、先ほど同様独りでに組み合わさっていく。そして完成し出来上がったのは一羽に赤い鳥。トオルは白い鳥の胸の部分にある窪みへ指輪を嵌めると

 

『──キィイイイ‼︎』

 

 白い鳥の双眸が赤く光り甲高い声で叫ぶ。そしてその鳥──ホワイトグリフォンはくるくるとトオルの周りを旋回しながら飛行する。

 どうやらもう一つの指輪も使い魔らしく、トオルは先ほど同様ホワイトグリフォンへ指示を出す。

 

「よし、お前もファントムの足取りを追ってくれ。頼んだぞ」

 

『キィイイイ!』

 

 トオルの指示にホワイトグリフォンも力強く叫ぶと、そのままドアの外へと飛び去っていく。

 そんな小さな背中を見送りながら、トオルはある一つの疑問を抱く。

 

(あの指輪を送った人物、そいつは俺が魔法使いだって知っている……いったい誰なんだ?)

 

 あの二つの指輪をくれた人物、その全貌は全くの謎に包まれている。だがしかし、一つだけ確かなことがある。それはその人物が自分と同じく魔法に関しての何かを知っていることだ。

 

(俺以外の魔法使いって線が一番濃厚だな)

 

 だとすれば、味方になってくれれば心強いものはない。しかしこうしてコソコソと指輪(みやげ)を置いていくことからして、まだ味方になってはもらえないだろう、とそこまで考えたトオルは一度思考を止める。

 

「とりあえず、あのファントムのことはあいつらに任せるとして……俺たちは買ったもんの片付けといくか」

 

「そうですね。では、早速片付けといきましょう」

 

 どちらにせよ、行動を起こすのはまだ先のことだ。そう切り替え、トオルはエルピスとともに買い物袋を彼女の部屋に運び、各々片付けを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 どうも、ティアナ・ランスターです。登場早々溜息を吐いてしまっている私ですが、その理由はとある出来事故にです。

 

 先日、私は機動六課という部隊への誘いを受けました。ただしこの部隊は普通の部隊ではなく、管理局でも屈指の魔導師が集まる部隊だったのです。その他のメンバーも将来有望な新人達で固められ、一部隊にしては過ぎた戦力を有しています。

 

(そんな部隊に、私みたいな凡人が入ってもいいのかな?)

 

 そう、それが私が溜息を吐いていた理由。

 私は特別すごい才能を持っているわけでもない、ただの一般魔導師だ。そんな私がこの部隊に本当に入ってもいいのだろうか、そんな考えが頭の中で繰り返される。

 

(スバルにはああ言ったけど、やっぱり気後れしちゃうわね)

 

 そんなこと考えちゃいけないってわかってるけど、どうしても考えてしまいまた一つ溜息を吐いてしまう。

 

「ティアー、どうしたの溜息なんか吐いちゃって」

 

 すると隣を歩くスバルが首を傾けながらそう聞いてきた。

 

「別になんでもないわ。それよりも、さっさと買い物を済ませちゃいましょ」

 

 スバルにそう返し、私は歩く速度を少しだけ上げる。

 今日私たちは、クラナガンに部隊でいる細々としたものを買いに来ていた。あっちは交通の便が悪いらしく、必要なものはある程度変え揃えておきたいと思ってのことだ。

 

 そしてぶらぶら買い物すること一時間。少しずつだが、必要なものが揃ってきたところでスバルが何かを見つけたらしく声を上げる。

 

「あ、ティアーあそこのアイスクリームのお店があるよ! ちょっと行ってみようよ」

 

「そうね、そろそろ歩き疲れてきたところだし、ちょっと休憩しましょ」

 

 そうして私たちはアイスを買い、近くの公園のベンチに座り休憩を取る。

 それにしても……

 

「あんたって本当にアイスが好きよね」

 

「ん〜美味しい!」

 

 スバルの持つアイスの量は異常だと思う。普通だったら私みたいな二段くらいだと思うんだけど、スバルはピラミッド状に重ねられたアイスを美味しそうに頬張っている。目測で約10個くらいかしら。

 

「スバル、そんなに食べるとお腹壊すわよ?」

 

「大丈夫大丈夫〜!」

 

 私の忠告を軽く流しながら、スバルはアイスのピラミッドをまた一口頬張る。

 そのまま私達がアイスを食べながら談笑していると

 

「そこのお嬢さん方、ちょっといいかな?」

 

 不意に、黒いTシャツの男が私達に声をかけてきた。男はニコニコと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべているが、私にはその笑顔がどこか不気味に感じられた。

 隣ではスバルも私と同じ気持ちなのか、警戒しながら男を見上げている。

 

「あの、なんでしょうか?」

 

「いやいや、少し君達にお願いがあってね。ちょっと僕と一緒に来てくれないかい?」

 

 やはりナンパの類か。この手の相手は無視してさっさと場を離れるのが得策。

 

「すいません、私達待ち合わせしている人がいるので。行くわよスバル」

 

「うん」

 

 そう断り、スバルと共にベンチから立ち上がり公園の出口へ向かって足を進める。だが私達の行く手を阻むように立ち塞がり、その嫌な笑みをより一層深める男。

 

「ちょっとどきなさいよ」

 

「残念だけど君たちを逃す訳にはいかないなぁ。せっかく見つけた()()()()なんだから」

 

「いい素材……?」

 

 男の言葉に何か意味深なものを感じ、一気に警戒の度合いを引き上げる。すると男は懐からなにやら石のようなものを取り出し地面にばら撒く。すると

 

「ゔゔゔゔゔ」

 

「ゔぉぉおおお」

 

 ばら撒いた石は形を変え、灰色の鬼のような異形へと変化した。鬼達は剣やら槍やらを持っており、じりじりと私達に詰め寄ってくる。

 

「ティア、なにこの怪物達!?」

 

「私が知る訳ないでしょ! とにかく、さっさとここから逃げるわよ!」

 

「逃げるって言ったって、もう囲まれちゃってるよ!」

 

 スバルの言う通り私達の周りはすでに鬼達に囲まれ、逃げ場など一つもない。

 ……となると、やることは一つしかなさそうね。

 

「……スバル」

 

「わかってるよティア」

 

 私が視線を送ると、スバルもどうやら私の言わんとすることを理解しているらしく、懐から待機状態のデバイスを取り出す。

 

「「セットアップ!!」」

 

 バリアジャケットを纏いデバイスの銃を構える。スバルも同じくバリアジャケットを身につけ、拳を構えて戦闘態勢へと入る。

 

「いいねぇ。抵抗された方が捕まえがいがあるってもんだよ……行きな、グール共」

 

 男が指示を送るとグールと呼ばれた鬼達が一斉に襲いかかってくる。

 

「行くわよ!」

 

「おう!」

 

 そこから私達は迫り来るグール達を相手に戦った。とは言っても、このグールと呼ばれる鬼はそこまで大した戦闘能力がある訳でもなく、スバルは拳で私は銃弾で応戦するが

 

「ゔぉおおお」

 

「ティア! こいつら、全然倒れる気配がないんだけど!」

 

 スバルがいくら殴り飛ばしてもこの鬼達は全くダメージなど負っていないかのように立ち上がり、再び襲いかかってくる。対し私が狙撃した鬼達は数発の銃弾を要したものの、倒れると砂になって消えていった。

 スバルの拳はダメで私の銃弾では倒せる。でもスバルの魔力で強化した腕力は私の銃弾よりも強力だ。つまりこの鬼達を倒すのは力じゃないってこと?

 

 脳をフル回転させ、私とスバルの違いを探す。

 打撃と銃撃……いや違う。知らず知らずに弱点に当たっていた……いや、これでもないわね。だとすると何が、私のはただの魔力の弾丸だし……魔力の、弾……──っ!

 

『スバル! 魔力をあいつらに直接ぶつけて!』

 

『わ、わかった!』

 

 スバルに念話を送り、この仮説を証明するための指示を出す。もしもこれが正しければ、この鬼達を倒せるはず。

 

「ナックルダスター!!」

 

 スバルは拳に魔力を付与させ、鬼達を殴り飛ばしていく。すると先ほどまでと同じく鬼達は吹き飛ばされるが、今度は立ち上がることなくそのまま砂となって崩れ落ちていった。

 先ほどまで全く倒せなかった鬼達を倒せたことに、スバルは目を丸くして私を見てくる。

 

「これではっきりしたわ。あの鬼達、魔力を付与させた攻撃でしか倒せないみたいね」

 

「凄いよティア! よくそんなことわかったね!」

 

 笑顔を浮かべ私を賞賛してくるスバルだが、まだ戦いは終わってはいない。すぐに残りの鬼達がスバルと私へ襲いかかってきた。

 

「よし、倒し方はわかったしもう大丈夫!」

 

 そう言うと、スバルは魔力を付与させた拳で次々と鬼達を薙ぎ倒していく。その結果みるみる内に鬼達は数を減らし

 

「てりゃあ!」

 

 最後の一体をスバルが殴り倒し、残るは黒Tシャツの男一人だけとなった。

 

「残るはあなただけ、抵抗せずに大人しく投降しなさい」

 

 デバイスを向け男にそう忠告する。だがしかし男は顔色一つ変えることなく、むしろより一層楽しそうな笑みを浮かべ

 

「いいよいいよ、想像以上だよ君たち! これは何としてでも連れて帰りたいね」

 

 嬉々とした声でそう言ってきた。この状況でこの余裕な態度……なにか奥の手が残っている?

 

『ティア、この人何か変だよ』

 

『何か奥の手があるのかも。油断しないでよスバル』

 

 スバルも男の態度に何か感じるものがあったのか念話でそう聞いてきた。取り敢えず周りも警戒しながら男の出方を待つようにと指示は送ったものの、何か嫌な予感がしてならないわね。

 

「さてさて、前座をクリアしたお嬢さん方に特別サービスだよ」

 

 そう言うと男の姿が歪み始めた。そして歪みは次第に形を変化させていき

 

「な、によ……あれ」

 

「トカゲ……?」

 

 歪みが収まり姿を現した男に私たちは驚愕させられた。なぜなら男の姿は先ほどまでの人の姿ではなく、トカゲはたまたドラゴンを連想させるような異形へと姿を変貌させたからだ。

 なに、この化け物……あの男がなったっていうの……?

 

「さて、今度は僕が相手をしてあげるよ。あ、死なないように頑張ってね?」

 

 異形から聞こえてきた声や口調は先ほどの男のもの。やはり、あの男がこの異形に変化した……信じられないけど、現実でそんな出来事が起きている。

 

 どうやらこの一件は、私が思っていた以上に厄介なものだったのかもしれない。

 

 

 

 

 





いかがだったでしょうか?

スバルとティアナがついにファントムと相見えることに。
ワイバーン相手にスバルとティアナはどう立ち向かっていくのか?

では、次の話も気長にお待ちください!



オリジナルリング

・フェンリルウィザードリング

 プラモンスター『ブラックフェンリル』の指輪。
 トオルや他のプラモンスターと視覚を共有することができる。
 絵柄は黒い狼。

・グリフォンウィザードリング

 プラモンスター『ホワイトグリフォン』の指輪。
 トオルや他のプラモンスターと視覚を共有できる。
 絵柄は白い鳥。

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