凶王の果て 作:きんにく同盟
俺は新城祐也、この鎮守府の提督だ。
提督という役職に就いてはいるものの、自分でもなんで提督が成立しているのかが分からない。艦娘は現場で戦うし、現場に出ている奴が指揮をするのが1番だ。専らの俺の業務としては、建造や解体をして、鎮守府の整理をしたり。艦娘の心のケアをするだけだ。
はっきり言って、いらない役職だ。公務員でなければ、真っ先にリストラ対象になるだろう。最近では、艦娘の存在意義が失われる程、強い提督もいるらしいが俺には関係のない話だ。
ただ飯食らいというのも気分が悪いので、用意された執務を行う。そろそろ、海域突破を目的とした第一艦隊が帰る時だろう。
この鎮守府は海軍で1,2位を争う大規模だ。なので必然的に前線へと送られる。今現在第一艦隊が出撃している海域が激戦区であり、他の鎮守府の艦隊では手が出せないのだ。だからいち早い突破が必須。もし、敵がここではない鎮守府に奇襲攻撃をしかけたら、間違いなく壊滅するだろう。
「提督、失礼します。ただいま帰りました。」
第一艦隊が帰った様だが、声のトーンからして良くない結果だったのだろう。報告するのは声の抑揚が分かりづらい加賀だ。
「結果は?」
「戦艦2隻が大破、他は皆中破。やむを得ず撤退しました。」
「分かった。」
「・・・・・・・」
「下がっていいぞ。」
部屋から出ていく加賀の背中を見送りながら考えていた。確かに、厳しい状況だったが俺の立案した作戦通りにやれば、こんなにも繰り返しての撤退はありえないのだ。
つまり、彼女らは俺の指揮通りに動いていないという事がわかる。
普通なら、怒りを覚えて当然だが、彼女らの考えも分からんでもない。ここは俺が赴任する前は、提督のワンマン運営で艦娘たちに精神的苦痛を与えるほどのブラックだったと言う、性質が悪いのはその前任は俺の義理の兄だという事だ。
そんな俺を信用する者などいるはずもない。彼女らは俺を嫌っている。だが、それならそれでもいい。現在、この大規模な鎮守府の最高責任者が自分だという事実さえあればいい。
俺はもっと上に行きたい。つまり、出世したいのだ。
食堂
今日の事について艦娘たちは話し合っていた。世の中、特定の人を嫌っている人間ばかりではない。
提督を信用しない勢、作戦は信用してもいいんじゃないか勢、どうでもよい勢にパックリとわかれていた。
先ほど、報告に来た加賀は、作戦だけは信用してもいいんじゃないかと思っている。だが、実質第一を仕切っているのは、ビックセブンと名高い長門であり、彼女は前任者から凄まじい扱いを受けていたのだ。
現在ではドッグに入っている彼女は提督の作戦を無視し、自分の思うとおりに行っていた。加賀はそれを多少苦々しく思いながらも、彼女を思えば口に出すのも憚られてしまう。
「フッ!あいつも間抜けだよなあ。自分の立てた作戦が遂行されていない事にもきづかないなんて。」
そう、吐き捨てる様に提督を貶すのは、長門同様に酷い扱いを受けた天龍。
「それなんだけど。あの人は恐らくきづいているわ。」
「じゃあ、なんで折檻なりしねえんだ?」
「さあ、わからないわ」
「罪滅ぼしのつもりか?なめやがって!!」
罪滅ぼし?違うわ。
あの人の目は私たちを見据えていない。まるで無関心。
「大体、初めの挨拶から気に食わなかったんだ!」
1年前~
私たちの直訴が大本営に通り、前提督が外され、新しい提督が赴任する事になった。私たちの下には、新しい提督の履歴が送られて来た。
見てビックリ、あの提督の義理とはいえ弟だった。
まあ、赴任当初の挨拶会も敵対心剥き出しで臨んだのだが
「俺は君たちの新しい提督になる、新城祐也だ。よろしく」
と淡白な挨拶をしただけだった。
これには長門も激昂し
「おい!お前はあのクソの弟らしいじゃないか!なんか言う事があるだろう!!」
と掴みかかり、他の艦娘も
「どう私たちの信用を得るんだ?」
と遠回しな謝罪を求めた。無論、謝られても許すつもりなど毛頭も無かったが一言あってもいいんじゃないかと思っていた。
だが、提督が言ったのは
「信用なんて必要ない。君たちも給与を貰っているんだろ?なら、これは仲良しクラブじゃなく仕事だ。」
空気が凍ったのを感じた。
「き、貴様!!」
「長門だったな。不幸な事だとは思うが、俺に謝罪を求めるのは筋違いだ。」
と怖気もせずにきっぱりと言った。
あれから、私たちの待遇はかなり改善された。少なくとも前任者みたいではなく安心した。
「だからこれでいいのよ・・・・・・」
大本営
俺は幹部に呼び出された。いつになっても海域を突破できない状況に業を煮やしたというところだろう。
中央に鎮座しているのは、元帥、遠藤建造。俺の義理の父親だ。
「あいつの息子だから引き取ったのだが、早計だったか?」
回りの腰巾着と嘲笑う。
「すいません。」
俺に出来るのは平謝り、艦娘の命令違反がバレて提督を外されるよりは、俺が無能だと思われている方が都合がいい。
「お前の作戦が悪いのか?」
「その通りです。」
「やはり、私の本当の息子のままの方が良かったんじゃないか?」
テメエの息子の尻拭いをしているんだろうがと、内心毒づく。
「まあいい、下がれ。」
言いたい事など特に無いのだ。これは俺を徹底して潰そうとしている。最大の鎮守府を自分の身内が実権を握る為に
俺の父は英雄だ。奇襲作戦を立案させれば、成功を収め、先陣をきらせれば最高の統率力を見せる。外敵から日本を守り抜いた。軍人として申し分ない男だったが、最期は呆気なかった。
病気だったのだ。
しばらくして、幼かった俺はこの元帥の家に引き取られる。散々、いじめられてきた俺だが、歯を食いしばって耐えてきた。
全ては、この老害を引きずり下ろし、自分が海軍を牛耳る為に。
俺なら出来る、だって英雄の因子を受け継いでいるのだから。
ここまでにしておきます。
眠い。