神様なんかいない世界で   作:元大盗賊

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他は他 うちはうち と思っていてもなんだかんだUAを気にしてしまうこの頃。










第15話 進む者たち

 

 そこはとても狭い部屋だった。

 部屋は簡易的なベッドとトイレが置かれているだけのとてもシンプルな作りになっている。それら以外には何も置かれておらず壁には窓すら設置されていない。部屋の明かりも全くなく、しいていえば目の前に見える鉄格子の先の廊下から漏れてくる、足元を照らす暗い橙色の照明の光が差し込んでくるだけであった。

 

 俗に言う『独房室』へ入っている私は、特にすることもなくベッドの上で申し訳程度の厚さがある毛布にくるまり、ただじっと正面にある誰もいない独房を見つめていた。

 

 

 

 

「これは国際IS委員会により決定された取り決めだ。お前には申し訳ないがここでしばらく待機してもらう」

 

 いつものどこか気難しそうな表情をしているブリュンヒルデに連れられ、IS学園の地下にあるここへ私は入れられた。ある意味待機という名の隔離だろうか。

 学年別トーナメントで起きたラウラ・ボーデヴィッヒ少佐のIS暴走騒動。これにより少佐のIS「黒雨(シュヴァルツェア・レーゲン)」を所有するドイツ軍、そしてVTシステムを作り出した生みの親のメッゾフォルテ研究所にIS運用協定違反の容疑がかけられた。

 

 また、以前メッゾフォルテ研究所でVTシステム研究・開発のために使われたISを使い、少佐のISの評価担当をしていた私にも関係者なのではないかと判断された。そのため『サンドロック』は没収され私の身柄が拘束されたわけである。私が外部とコンタクトを取ることを恐れての事だろう。

 

 

 

 ここへ連れてこられてから6日程立ったのだろうか。12回目の食事を自動的に渡されたから違いない。太陽の光の届かぬこの場所では今が朝なのか、昼なのか、夜なのか今何時なのかが分からない。この頭に浮かぶ疑問を教えてくれるものなどここにはない。頭をこつんと()()()()()()()()()()壁につけて寄りかかる。

 

 私に指示された『VTシステム発動の誘導・観察』は既に目標を果たしている。何でも私が戦闘データを回収する必要がないという事で、随分と手間がかからないものであった。自動的に送られるように設定されていたのだろうか。とにかく役割はすでに果たしているので、後はドイツ軍属の研究所に罪を着せたことが発覚して事件が解決させるのを待つだけだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足音一つでさえ聞こえない虚無の空間。

 この空間に存在しているのはこの私だけ。

 誰とも会話をせず、一日中独房で過ごすことにはそれ程苦痛というものは感じてはいない。

 

 独房での暮らしには、精神的苦痛を伴うため精神崩壊を起こすと聞いたことがある。ただ、こうして用意された質素な食事をもらい、動物的本能に従って眠りにつき、起床し、ぼうっとしていることには何ら違和感を思うことはまだない。寂しさも悲しさもない。むしろ、人間的な生活をしていないということに何も思わない自分に対して恐怖さえ抱いている。もしかしたら、これが本当の自分なのだろうか。どこか懐かしさを感じているこの私に。せまく暗い孤独な所でただ理性に縛られずに、行きのうのうと何も考えずに過ごしていることが。誰もこの疑問には答えてくれない。

 

 少しだけ眠気が襲ってきたので毛布にくるまり目を閉じる。

 足音一つでさえ聞こえない虚無の空間。

 この空間に存在しているのはこの私だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です。ささ、お茶でもどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 千冬は轡木十蔵から湯呑を受け取る。

 

 授業も終わった放課後。

 先のVTシステム暴走騒動にて、主立って調査を行っていた千冬が用務員室へ集められた。障子に畳、掛け軸があるという用務員の趣味が垣間見える和室で、千冬は十蔵に倣い座布団に座っていた。

 

「さて、ここへお呼びしたのは他でもありません。丁度お昼頃に委員会の方から調査報告書が届きましてね。それが…こちらになります」

 

 十蔵は、近くに置いてある鞄から紙の資料を取り出し、手渡した。

 

「それでは、拝見させていただきます」

 

 千冬がそう言うと、素早くパラパラと報告書に目を通していく。

 

「では、私から簡潔にお話ししますね。ああ、そのままそれを見ながらで構いませんので」

 

 ゆっくりとした口調で話すと、十蔵はずずずっとお茶を飲む。

 

「さて、単刀直入に言いますとドイツ軍がVTシステムの使用を認めました。何でも、ISに使用する新たな補助システムの開発を行いたかったためにVTシステムを参考にした、とおっしゃったとか。まあ、いずれにせよ真相は闇の中…ですけれどね」

 

「…つまりVTシステムについて確かな証拠が見つからなかったということでしょうか?」

 

 千冬が手元の資料から視線を十蔵に移し、質問をぶつける。

 

「そうですね。先日ニュースにもなっていましたが、ドイツ軍施設が何者かに襲撃を受けたという不可解な事件。それなのですが実はそれが、どうやら件のVTシステムを取り扱っていたそうで…。勿論、塵一つ残らないくらいきれいさっぱりなくなったそうなので、物的証拠は見つからなかったそうです。それにですね、肝心のVTシステムを取り扱っていた研究員たちから誰も証言が得られなかったそうなのです」

 

「誰からも?」

 

 千冬は思わず聞き返した。

 

「はい。IS運用協定で固く禁じられているVTシステム。システムは既に破棄され、国際IS委員会が厳密にその情報を保管・管理をしています。そのシステムを一体どこから入手したのかが今回委員会が知りたがっていたそうなのですが…分からなかったそうなのです。いや、誰も知らないそうなのです」

 

「誰も知らない?そのような事がなぜ?」

 

「そうですね…。これに限らず今回の事件は、実は不可解な点が多くあるそうです。監視カメラやレーダー探知機が数多くあるはずのドイツ軍施設に犯人は誰にも知られずに襲撃しました。どうやって探知されずに襲えたのか、一体誰が実行したのか。そして…これが一番の謎だそうですが、その施設にいた研究員全員の記憶がないそうなのです。VTシステムに関わってからのが」

 

「記憶が飛んでいる…ですか!?」

 

 千冬は思わず目を見開く。

 

「この襲撃事件では研究員には死者は出ませんでしたが、彼らは意識不明の重体を負い病院へ搬送されました。そして、意識が回復した彼らは口々にVTなんて知らない、研究はしていないと言うそうです。専門の医師に診てもらったところ全員が記憶障害を負っていたそうです。何せ、その犠牲者の中には研究所長もおり、その人でさえ分からないとなっているのでこれ以上のVTシステムの出所を見つける捜査は無理だと断念したそうです」

 

 余りにも摩訶不思議な事を言われた千冬は思わず口から言葉が出てこなかった。

 

「後ろ髪を引かれる所はありますが、後の処罰については委員会の方に任せて我々は校外実習の事に注視していきましょう。それに、疑いの目で見られていた生徒さんも解放してあげないといけませんね。無実であることが分かりましたし」

 

 十蔵は少しぬるくなったお茶をまたずずずっと飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた扉の前に黒いスーツを着た女性が一人立っていた。懐から取り出した専用のカードを読み込ませる。すると、高い音を立ててドアが自動的に開かれた。中へ右足を踏み入れると、暗闇に包まれていた通路の足元に灯りが灯される。その奥へと千冬は進んでいった。

 

 コツ…コツ…とヒールの音が静寂な廊下に響き渡る度に、進む先の通路が明るくなっていった。

 

 独房室と書いてある、目の前に現れた扉へ近づくとその横、丁度胸のあたりに設置されている機械に専用のカードを読み込ませる。

 赤色に光っていたランプが緑に変わると目の前の無機質な金属は、シュっと空気が押し出されたような音をして横にスライドされる。

 

 中は、足元に薄暗い灯りが灯されるだけであった。目を慣らしていなければ、今いる空間ではどこに何があるか分からないだろう。目的の人物に会うために、彼女は専用のカードを上着の内ポケットに入れると中へ入って行った。

 

 鉄格子が見えてきた所で千冬は、足を止める。何も音が聞こえなくなった所で、彼女は眼を閉じて軽く深呼吸をする。少し冷たい空気が体の中へ入り込んで、彼女の心を落ち着かせる。そして、眼を開けると意を決したように声を発する。

 

「クリスタ・ハーゼンバイン!返事をしろ!」

 

 透き通った彼女の声が、無音の空間に響き渡る。そして、彼女は一つの鉄格子の前に立った。眼を凝らして独房の中を見てみるとベッドの上に茶色い毛布にくるまりもぞもぞと動く何かがあった。

 

「…あれ?せんせい、おはようございます。次はどこに連れて行くのですか?」

 

「はぁ…今度はどこに連れて行けばいいのだ、馬鹿者。それに今は18時を過ぎたところだ。先程、待機命令の解除がされた。出てこい」

 

 どこか弱弱しく小さな声で発した、ぼさぼさ髪の少女に千冬はため息をつきながら何かの操作をして鉄格子の鍵を施錠する。そして、金属特有の音を発しながら扉を開けた。

 

 その少女は毛布を綺麗に畳むとベッドから降りる。IS学園の制服に素足と投獄当時から変わらない様子の彼女は、ペタペタと足音を立てて独房から出てきた。

 

「あれから何日が経ちました?」

 

「あれから一週間だ。ふらつかないか?」

 

「十分な睡眠をとっていたので健康そのものです」

 

「そんなやつれている顔で言われても説得力がないぞ。こっちだ、ついてこい」

 

 千冬はどこからともなくスリッパを取り出して、彼女に渡すと踵を返し、今いる所よりも明るい通路へと歩いて行った。それに少女もトボトボとついていく。

 

 

 

 

 クリスタが独房室から出た所で、千冬へ話しかける。

 

「そういえば、中井先生はどうしたのですか?てっきり織斑先生ではなくて中井先生が来るものだとばっかり」

 

「ああ、彼女は校外実習の現地視察に行っていて明日には学園へ戻ってくる」

 

「校外学習…そういえばそういうものがありましたね」

 

「それはそうと、お前は形式上ドイツへ緊急帰国をしたという事にしておいた。帰国中は公欠扱いにしておいたぞ。何、出席日数の心配はしなくていい。それに後4日もしたら海で3日間()()()()羽を伸ばすことが出来るから、安心しろ。その時に休めるだろう」

 

「それは……とても良いですね。先生のお気遣いに感謝します」

 

 千冬はにっこりと微笑むと、クリスタもそれにつられて苦笑をする。

 

「何だ、不満か?」

 

「いえ、ドイツで先生から教えていただいたことを活かして普段の生活に戻るように努力します」

 

「…私はそのような事をお前に教えた覚えはないぞ?」

 

「そうでしたか?てっきり教えてもらっていただいていたものだと思っていましたが」

 

「ふん、まあ良いだろう」

 

 廊下では二人の話し声が響き、反響していく。

 

「私が解放されるという事は、私の企業の仕業ではない…という事でしょうか?」

 

「ああ、そういう事だ。今回の件は、ドイツ軍が一枚噛んでいたそうだ」

 

「そうでしたか…」

 

 段々と廊下の灯りが明るくなるにつれて、クリスタは手で目を覆い隠し、細めながら千冬の後を付いていく。

 

 歩いていくと、ふと目の前にコンクリートで出来た段差が飛び込んでくる。見上げると地下と学園とを結ぶ扉があることが分かる。

 

「さて、今更だがこれをお前に返しておく」

 

 そう言うと、千冬は懐からゴーグルを取り出した。

 

「すまなかった。教師として委員会を止められなくて…」

 

 千冬は、先程とは打って変わりどこか悔しそうな表情をしてクリスタにゴーグルを手渡した。彼女は、ゴーグルを受け取ると懐かしむようにゴーグルを撫でる。

 

「いえ、気にしないでください」

 

 そして、慣れた手つきでゴーグルを頭に付けた。

 

「この子を受け取ったときから、その覚悟はできていますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ということで、ISコアは無事であったから黒雨(シュヴァルツェア・レーゲン)は予備パーツで組み直しておいた。一部武装は後に本国から送られてくるだろう。後でそのあたりの整備をしないといけないな…」

 

「なるほど…。ISの事は分かりましたが、少佐の体は大丈夫なのですか?」

 

「んん?ああ、ちょっとした筋肉疲労と打撲だけで済んでいる。あれから一週間が経っているのだぞ。もう治っているから、私の事は心配をしなくても大丈夫だ」

 

「そうですか…。それならば、安心しました」

 

 私がいる場所は1127の部屋である。

 今は私が解放されてから一日後の放課後となり、朝教室に行くと一週間ぶりに日本へ戻ってきた、という事と急にいなくなったということで私は二組の人たちにはもみくちゃにされた。それだけ私のことを心配してくれていたのだろう。自分としては内心嬉しい気持ちがあった。玲菜なんか、涙を流して心配をしてくれた。

 さてそのことは良いのだが、一組と二組の教室の一部が崩壊していた事には疑問に思わざるを得なかった。だが皆はまあ、あれはね…と話題に触れようとしなかったが…。

 

 

「なあシャルロット…このPICってあれだろ?ISを動かしたときに使うやつだろ…だよな?」

 

「そうだよ。ちなみに正式名称は『パッシブ・イナーシャル・キャンセラー』。このPICは物体の惰性をなくしたかのような現象を起こす装置で、ISだったら推進剤として主に使っているよ。他には、姿勢制御とか動きの停止にも使われているよ」

 

「おお、そうだった!全くメモしてなかったぜ」

 

「全く…一夏ってば。分からないからって手の動きを止めちゃ逆効果だよ。とにかく先生の言うことはメモしておかないと。特にIS操縦に関して基本的な事はよくテストに出るのだからさ。それに、…あ、後でなら僕が教えるからさ」

 

「ああ、シャルロットの言う通りだぞ嫁よ。IS操縦者たるもの基本を疎かにしてはいけない」

 

 

 そして、1127にはもう二人同室者がいる。少佐の一夏()とシャルロット・デュノアが一夏の勉強のサポートをしていた。

 なぜ少佐の部屋がこれほど賑やかになっているかというと、話を戻せば色々とある。

 

 

 情報というものは目まぐるしく新しくなる。私が一週間ぶりにIS学園へ戻ってきたときは、まさに驚きの連続であった。

 

 今一夏へIS理論についての先生役に徹し、黒いジャージを着ている人物。彼女はシャルロット・デュノアだ。そう、女。女の子だ。女性だ。決して男ではない。

 私の知っているデュノアという名前の人物はシャルル・デュノア。フランスの貴公子という異名がある。だが、いざ一週間ぶりに会ってみると彼は、彼女になっていた。ジャージの上からでもわかる、ありがたい膨らみが揺れるのを見るたびにシャルルはシャルロットであるという事実が私の心に突き刺さる。ついでに別の何かも一緒にだ。

 転入当時は男装をしており、分けあって今は本来の姿に戻ったとかなんとか。どうせ男性操縦者に近づくために国家ぐるみで男装をして入学でもしていたのだろう。前々から、デュノアという存在には疑問を持っていたが偽装してIS学園へ入学したとなると一見、大スキャンダルであるように見えるが今のところ国際IS委員会が動くといったことは耳に入ってこない。何か裏で取引でもしたのだろうか。とにかく、私の業務には支障をきたさないため放っておいても大丈夫だろう。そして、女子となったデュノアの部屋割りが変わり、空きがあった少佐の所へやってきたというわけだ。

 

 そして、個人的にとても驚いたのは……少佐だ。

 

 彼女はドイツの冷氷ともいわれ、その冷静かつ冷酷な性格から軍部では有名であった。

 

「全く…ISの基本を知らないとは、同じIS操縦者の私の嫁としてのじ、自覚が足りていないぞ!」

 

「だぁー!だから、なんで俺が嫁になるのだよ!普通逆だろ!?」

 

 彼女はもじもじして少し頬を染めながら一夏に言う。

 そう、彼女は変わってしまったのだ。威勢を放つ虎がとても可愛らしい猫に変わってしまうくらいにだ。以前のようなプレッシャーはなく、どこか表情も豊かになったという印象を受ける。

 私としては、この変化はそれはそれで良い変化なのではないかと思っている。少佐は周りの人間にその冷酷さを振る舞い孤独を貫いてきた。だが、そのようにしてしまったのは元からではない。戦うために生まれ、戦いの事だけを教えられ、そして使えないと見放され......。まるで、消耗品のようにかつては扱われてきた身だがそんな彼女にも人の持つ感情があったのだ。きっと黒兎隊のメンバーにこの事を言ったらびっくりするだろう。

 そして、あれだけ忠誠を誓っているブリュンヒルデの汚点として粛清しようとしていた相手(一夏)を嫁と称するところから分かるように惚れてしまったのだ。あの、ラウラ・ボーデヴィッヒがだ。ついでに言うと、少佐は一夏のファーストキスを奪ったらしい。さすがは少佐である。

 

 

「そうだ、ラウラの心配をするよりお前はどうなのだ?クリスタ」

 

 一夏がふと、思い出したかのように私に聞く。

 

「え?私?」

 

「そうだよ。一週間も閉じ込められていたのだろ?体調とかは…」

 

「そこのことは私も大丈夫。食べたら元通りになったから」

 

「そっかぁ。それにしても心配したのだぜ?あれから二組にクリスタがいないって分かって思わず千冬姉に直談判しちまったよ。まあ、お前が元気ならそれでいいのだけれどさ」

 

 一夏は、目を細めてにっこりと笑う。

 

「それにしても、3日後には海かー。楽しみだなぁ」

 

 ふと彼はそのような事を言うと、デュノアそして少佐とともに会話に花を咲かせる。そう、三日後には臨海学校がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街中にそびえ立つガラス張りの高級マンションがあった。

 太陽はすでにいなくなっており、地上からライトアップされたそれは幻想的な風景を作り出していた。

 

 そのマンションの最上階。その階のある一室は一言で言い合わらすならば豪華絢爛だろう。大理石で出来た部屋を覆う壁に大きなソファー、華やかな色彩を放つ造形品に触ったら壊れてしまいそうな壺など惜しみなく部屋に飾られていた。また、壁の一部がガラスで作られているので、人工的な光で灯された街を一望できるようになっていた。

 

 そんなきらびやかな部屋に一人の女性がソファーに腰かけていた。白いバスローブを身にまとっており、少しはだけた所からその豊満な乳房が見えていた。また少し濡れている長い金髪は、艶かしく見えその背中を飾っている。

 その女性は腕を組みどこか楽しげな表情をして誰かと会話をしていた。

 

「あなたからの報告はすでに目に通しているわ。やっと満足させられたのね、ゼロを」

 

『はい、今のところは何も要求をしてこないのであれも満足していただけたのではないでしょうか』

 

 彼女の頭部の右後ろ辺りから聞こえてくる男性の声は、まるでその場にいるかのようにはっきりとした声であった。

 

「これで、クラウスの仕事もやっとひと段落するのね。何時から私たちから離れたのかしら。ほんとあなた達には待ちくたびれたわ」

 

『はい、ひとまずはですが』

 

 脚を組み、その紅い瞳はちょっとした夜景が見られる外の風景に視線を移す。

 

「あなた達には、どれだけの投資と期待がされているかは知っているわよね。それに見合った働きをしてもらわないと困っちゃうわ」

 

『そのことは十分に承知しております』

 

「分かっているならばよろしい。それじゃあ、先に言っておこうかしら。『ようこそモノクローム・アバターへ』あなたの帰りを歓迎するわ。フロスト」

 

 

 

 

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