薄暗いオレンジ色の光が部屋全体を照らす管制室には2人の教師がいた。
「ロッカールームに未確認のIS反応です!」
椅子に座り、目の前にあるコンソールを叩きながらいつになく真面目な口調で真耶は言う。
目の前にある空中投影モニターには、いつもアリーナを利用する生徒が立ち寄るロッカールームが写っていたが今は見るも無残な光景であった。淡い光に照らされている室内の地面や壁には強い衝撃を受けた痕跡があちこちに残されコンクリートの破片が散らばっている。ロッカーには弾痕や何かによって切り裂かれた痕があり原型を留めている物を探す方が難しいほどで、もはや使い物にならなくなっていた。そんな被害が尋常ではないロッカールームには二機のISがいた。
『はぁぁ!!』
一つは白式。
操縦者は右手に持つ雪片弍型から零落白夜を発動させている織斑一夏。そして、もう一つ。
『やるじゃねーか、ガキ!』
『うるせぇ!』
白式の斬撃を防いでいる、まるでクモみたいなISだ。
脚が8本あるISの操縦者はスーツを着ている女性だ。その姿からIS学園関係者ではない部外者であることが分かる。
「やはり学園祭を狙ってきたか。だが単騎か…。敵の増援が来る可能性があるな」
真耶の後ろで腕を組み、じっとモニターを見ている千冬はクモのようなISを見てそう呟いた。
「地下に入り込んだという不届き者の方はどうなっている?」
「まだ新しい情報は何も。依然としてシステムはハックされており、地下の各機能、及び地上施設の一部の制御コントロールは失われたままです。どうにか復帰させた防犯カメラから若い男性が地下へ向かったとのことで送り込んだ対人用装備の二機のラファール・リヴァイヴからの通信は何も。一人先に向かったという布仏さんからの連絡も入ってきません」
「妙だな…。男一人に手間取っているのか?それともかなり奥まで潜り込まれたか…?とにかく、地下への入り口で警備している教師には厳戒態勢の維持をさせろ。まだそいつ一人だけが入り込んでいるとは限らないからな。加えて一般生徒と来場者への避難命令を」
「了解しました」
真耶はコンソールを叩き、第四アリーナ、さらには学園全体への避難勧告をした。
私がこの日本のニンジャみたいな格好をしてまで演劇に乱入した事には理由があった。凶暴化するだろうシンデレラから一夏の身の安全を守る為だ。
会長は演劇に出て一夏の王冠をゲット出来れば一夏と同室になる権利を得られる、と一年の専用機組みに話を持ちかけたという。まるで、私にプレミアチケットを見せびらかした時のように。それを聞いた彼女らは血相を変えて参加すると言ったらしい。予想通りの様子から何を仕出かすか分からないための保険として私が抜擢されたのだ。一夏の用心棒として。
だがそもそもの話、彼女らにあんな凶器を持たせなければ会長が一夏の心配をする必要がないのである。武器配布について意見を述べたもののそれはいいのと却下された。どこが大丈夫なのかは私には分からなかった。
こうして伝説のバーガーキング入手のための条件として示された、何かがあったら一夏を守るという約束の下、このニンジャの格好をさせられたのである。私の役割を説明されていた時になぜ私を選んだのかと言ったら会長はこう答えた。
『だって、あなたに織斑くんと同室になる権利を得られるって話をしても彼に惚れていないあなたなら食いつかないでしょう?』
つまり会長は元々、演劇を行う第四アリーナへ一年の専用機組みを集めたかったのだ。
私の問いに扇子に口を当てて微笑む会長の姿は、私にどこか喉に小骨が刺さったような違和感を与えた。まるで、何かを企んでいるかのように…
遠くから王子様を探す
私は先程まで少佐と箒の相手をしていたが、フリーエントリーの生徒たちが
私の横を時折、王子様を探すプリンセスたちが通り過ぎていく。
誰しもが、友人たちと楽しそうに会話をしながら…とはいかず景品である一夏との同室になる権利を目当てに、目をギラつかせながら探索を行なっていた。その様子を目撃するたびにいつもの光景だと思いつつも何だか彼が可哀想に思えて仕方がない私がそこにはいた。
城エリアへと到着し、しばらく歩いていると舞踏会ゾーンにて私はお目当ての3人組を見つけた。
「たっくー、一夏はどこに行ったのよ…。逃げ足速いんだから」
「そもそもシャルロットさん、あなたが一夏をかばったりするからこうも必死になって探す羽目になったのですよ?」
「そんなこと言ったって…」
互いに愚痴をこぼしながらも一夏を探す鈴、セシリアそしてシャルロット。どうやら、彼は再び武装している彼女らに襲われてはいないようで私はホッとした。一夏が周囲にいないことを確認し、ここから立ち去ろうとした時だった。
「あれ?やっぱりクリスタじゃない。何やっているのさー!というか、その格好何よ?」
私の着ている服装が派手ということもあり、遠くにいた鈴にすぐバレてしまった。立ち去ろうとする私を大声で呼び止め、鈴がこちらへと駆け寄ってくる。そして私の方へと走る鈴を追いかけようとセシリアとシャルロットもこちらへと近づいてきた。逃げる訳にもいかないので、私も彼女たちに歩み寄る。
「クリスタさんもフリーエントリー組なのですか?」
「まあ…そういう所かなあ」
「ふーん。あんたが参加するとはねぇ…。にしても、派手な恰好しているじゃない」
セシリアは私がフリーエントリー組だと言ってくれた事を信じてもらえたが鈴はそうはいかないようだ。彼女は私の服装をまじまじとジト目で見る。
「そういえば、さっき向こうの大きな塔が立ち並んでいる所にスポットライトが当たっていたけれど何があったか知らない?」
城エリアにしかいなかったためかシャルロットは私に塔であったことを聞き出す。
「ああ、塔で少佐と箒が一夏を襲っていたんだよ。でも、今じゃあ逃げられたみたいだけどね」
私は余計な情報を省いて端的にシャルロットへ何をあったか説明した。さすがに私が介入したなどと言ってしまえばどうなるか想像することが容易であるからだ。
「なるほど…。二人はそっちのエリアにいたのか」
シャルロットが顎に手を当て考え事をしていた時だった。
「全く、襲うなどと誤解を招く発言は控えていただきたいものだな」
聞き覚えのある声が背後から聞こえ、振り返るとそこには二人のシンデレラがいた。
「さあもう逃げられないぞ、クリスタ」
「さっきは逃げられたが、どうして私たちを妨害したのか訳を聞こうじゃないか」
少佐は腰に手を当て、むすっとした表情でこちらを見ており、箒は手に刀を持ち剣先をこちらへ向けている。理由を聞こうとしているのに、刀をこちらへ向けている所から邪魔をされたことに相当腹が立っているご様子だ。
「クリスタさん、この二人に何をしたのですか!?」
剣幕な雰囲気を露わにしている二人を見て、セシリアは私に詰め寄る。鈴もシャルロットもこちらをじっと見つめいた。
このまま隠し続けることは得策でないと判断し私は素直に理由を話した。
「二人には黙っていて申し訳ありませんでした。実は生徒会長さんに頼まれて、一夏の護衛をしていまして。彼の生命が危ぶまれそうになった時にっと」
「「「一夏の護衛?」」」
その場にいた全員が口を揃えて言う。
「はい。方や武装をしているシンデレラ、方や身一つで逃げようとする王子様。その差は明確です。王冠欲しさに何をするか分からないシンデレラによってもし王子様に怪我でもされてしまっては困るという会長の意向により、私が一夏の危機に遭ったらその場でいき過ぎた行動を抑制することが目的だったのです」
「ふむ…。あの女狐め、余計な真似を…。まあ、まだ私の技術に追いついてない嫁のことを考えれば少しばかりやり過ぎていたか。これからはもっと嫁に教え込まないとな…」
「なるほど…。お前の活動目的の理由には少々癪に触るが、確かに私もラウラも行き過ぎていた所があったな…。反省しよう。だがお前が王冠を横取りするためではなく、あの生徒会長の指示でやっていたという事が聞けて安心した」
二人ともどうにか私の言い分を飲み込んでくれたようで、少佐は顎に手を当てボソボソと何かをつぶやく。箒は刀を鞘に戻すといつもの腕を組むポーズをしてうんうんと首を縦に振った。彼女の安心する部分がずれていると心の中でツッコミたくなったがどうにか理解をしてくれたようだ。
「なるほど、塔の方で起きていた事はクリスタがやっていたのね。にしても、よりによってよくあの二人の相手をしようと思ったわね、あんた…」
私の話を聞いて鈴は呆れ顔でそう言った。
「ん?なんだ、鈴知らないのか?クリスタはドイツ軍でも右に出る者がいない程の格闘センスを持つダガー使いだ。悔しいが私でも敵わない相手だ」
「嘘っ!?あんたそんなこと出来たの!?」
「鈴に言うほどのことじゃないかなってね…」
鈴たち三人は少佐の言葉を聞き、目を丸くさせる。自慢する程の事でもないので、同室の鈴にもこの事は知らないはずである。それに朝練でよく格闘の自主練を起きてから行なっていたが、布団の中で気持ちよさそうに眠りにつく鈴には知る由もないだろう。
「所でだクリスタ。私は王冠を、もとい嫁を探している。お前は我々の行動を監視して、もしも大惨事になりそうになったら救出に向かうようにしていたのだろう?」
「ええ、そうです。それがどうかしたのですか?」
「なるほど。つまり、お前は
少佐はにんまりとしたり顔で言った。
この瞬間、私は少佐のこの顔を今すぐにカメラで保存し、ドイツ軍の黒うさぎ隊全員に一斉送信したいという衝動に駆られた。それほどいい表情をしていたのだ。いつもなら、口元が緩んでいることに気づかない程に喜ばしい気分になるが、すぐに私は現実に引き戻されてしまった。
ふと周りからなんとも言い難いオーラというものだろうか、とにかく威圧のようなものを感じた。
「クリスタ、それは本当なのか?」
「クリスタ…そういう大事な事は早く言ってよねぇ…」
「一夏さんはどこにいらっしゃるのですか!?」
「クリスタ、早く一夏の場所を教えなさいよ!」
目の色を変えてシンデレラたちが私に迫ってくる。正直、彼女たちの迫力に少しだけ恐怖を感じた。
確かに少佐の言う通り、私は通信機を通して会長から一夏の位置情報や指示を受けて行動をしていた。だが、今は肝心の会長が応答しないのだ。つまりはアリーナの放送室に彼女がいないことを意味する。
一体どこへ行ったのだろう。おそらく
「ちょっとみんな落ち着いてよ!確かに一夏の場所の位置を確認しながら行動していたけれども…。今は出来ないの」
「それはどういうことだ!」
箒が言い始めた事を皮切りに次々と抗議の声が殺到する。私は普通の人間だ。残念ながら同時に何人もの声を聞き取れる程の器用さは兼ね備えていない。私の耳にはシンデレラたちが私は怒っています!という感情しか伝わらない。とりあえず、順を追って説明するべきだろうか。即座に話の順序を組み立てた私は抗議者へ説明をする。
「だから、落ち着いてって!最初から説明を…」
その時だった。以前から聞き慣れた警報サイレンが聞こえてきたのが。
アリーナ内には警報が鳴り響く。それは無人機が攻めてきた時や少佐のISが暴走した時の警報と同じだった。
「何!?」
皆はすぐに周囲を警戒する。
そしてすぐにアナウンスが流れた。
「ロッカールームに未確認のIS出現、白式と交戦中。専用機持ちはただちにISを展開。状況に備えてください」
山田先生によるアナウンスが聞こえ、その場にいた専用機持ち全員がすぐに状況を把握した。
「「「了解!」」」
セシリア、鈴、箒、シャルロット、少佐、そして私は体に光を灯しながらISを緊急展開させる。
ロッカールームに未確認のIS…。
つまりは組織が白式奪取に行動を移した、という証拠だ。だが、会長がアリーナにいないとなると既にもう…。
いや、今は私としてのやるべき事を全うするだけだ。目の前のことに集中しなければならない。
私は気持ちを切り替え、皆よりも少しだけ遅れてISを展開させた。
ISを展開させるとオープンチャンネルから織斑先生の指示が聞こえてきた。
『敵の増援に備えて、オルコットと凰は哨戒につけ』
「「はい!」」
二人はその場から飛び上がり、少しだけあるアリーナ天井の隙間へと飛んでいく。
『さて、お前たち四人にはこれから織斑の援護及び未確認のISの撃破、確保をしてもらう。まず、お前たちに織斑のいるロッカールームの位置情報を送る。確認してくれ』
すぐさま、ISへ新たな情報が着信される。
それを選ぶと、立体的な地図に赤く色塗られている部分が表示された。赤く示されたロッカールームは今いる第四アリーナの丁度真下辺りにあった。
『現在、何者かによってアリーナにはレベル4まで警戒レベルが引き上げられており、こちらからの制御は出来ないようになっている。そのため、まずはお前たちにはロッカールームにいる未確認のISの退路を塞いで欲しい』
「つまり敵が通るだろう逃げ道に我々が先回りするということでしょうか?」
『ああ、そういう事になる』
少佐の質問に織斑先生は肯定する。逃げ道をなくすということは最も効果的な作戦だろう。何せ、相手は地下にいるのだ。地上にさえ出てこないようにすれば良いだけだ。
『篠ノ之、ボーデヴィッヒはアリーナ内で待機。敵がロッカールームからアリーナを通って逃走するのを防げ』
「はっ!」
「了解です」
『ハーゼンバイン、デュノアはロッカールームに向かい可能であれば、織斑の援護をしろ。おそらく直接入ること出来ないだろうが、侵入出来そうな部分にはチェックをしておいた。送った情報を確認してくれ』
「わかりました」
「よし、行こう!」
私とシャルロットは手に武器をコールすると、地図情報に則り敵がいるというロッカールームへと向かった。
「わあ…ここも以上は先へ進めないね」
目の前にそびえ立つ隔離シャッターを見て、シャルロットはぼやいた。
地下は非常灯で周りが見えるか見えないかのギリギリの明るさで照らされていた。地図に従い、アリーナのピットからISを装備したまま廊下を通っていた。だが、途中でシャッターが私たちを阻んだ。
「別の箇所もシャッターが下りていたし、どこもこんな感じだろうね」
「だね。どうする、クリスタ?一応、最後の一つのルートも残っているけれども…」
「いや、ここを通ろう。もう一つのやつはここからだと遠いし、何より時間がかかる」
目的地のロッカールームへは4通りの行き方があったもののそのうち二つは頑強なシャッターが下ろされていた。システムハックによってシャッターで塞がれているのであれば、どこも同じ状況だろう。まさにロッカールームには誰も邪魔者を寄せ付けないようにしている。だが一夏の援護に回るならば、無理にでも入る必要がある。
「え?でもどうやって…」
シャルロットの答えを聞く前に私は整備用のIS設定オプションを開く。
「何をしているの?」
「うんとね、ヒートショーテルの威力を弄っているんだ。ここを突破するためにね」
キーボードのようなコンソールを叩き、ヒートショーテルの威力を弄って、それを最大まで引き上げた。
「それじゃあ、シャルロットはちょっと後ろに下がってね」
「あ…う、うん」
シャルロットは言われるがまま後ろへと下がる。離れた位置に彼女が移動した事を確認した私は背中にあるショーテルを掴み、そして投げた。
いつもより回転数が少なく、そしていつも以上に光り輝いているヒートショーテルはシャッターへ近づくとまるでそこには何もなかったかのようにそのままシャッターに食い込み、奥へと消えていった。
「嘘…」
「よし、これで通れるね」
私はヒートショーテルが通過した部分のシャッターへと近づく。ヒートショーテルが通過した部分は、熱によって赤く光り、所々アイスのように溶けていた。その部分を蹴り倒すと、切り取られたシャッターが奥に倒れ、甲高い金属音が聞こえてきた。丁度IS一機が通れそうな幅の道がそこには出来ていた。
後ろを見ると唖然としているシャルロットはその場で動かなくなった。
「シャルロット、先に進むよ」
「…ああ。行こう」
我に返ったシャルロットを連れて私たちはロッカールームへと進んでいった。
投げ飛ばし、道中の壁に刺さっていたショーテルを回収し、ロッカールームへと向かっている時だった。何かが炸裂したような爆発音が聞こえてきた。それと同時に地面も揺れ、その爆発の規模の大きさが伺える。
「爆発!?」
「もしかしたら、敵がロッカールームの天井を破壊したのかも、急ごう!」
先ほどよりも早足気味になるシャルロットに追いつこうと私も歩くスピードを早めた。
目的のロッカールームに到着すると、それはもはや更衣室とは呼べない空間であった。地面にはガレキがあちこちに散らばり、ロッカーは規定の位置にないものがほとんどで横に倒れたりしている。それらはどれも使い物にならないほどのダメージ受けており、戦闘の激しさを物語っていた。そして、何より部屋に入った時に私たちは違和感を覚えた。
「熱っ、何で湿度が高いんだ!?」
シャルロットが思わずたじろぎ、ハイパーセンサーを確認する。
そう、部屋の湿度が異常なほど高かったのだ。あまりの蒸し暑さに体が不快に思うほどである。だが、そのことを気にしている暇はない。気にせずにロッカールームへ入り、奥へ進むとそこには片膝をつく一機のISがいた。
水色を基調とした色に塗られたISだった。
上半身は腕部装甲のみ。下半身は蝶の羽を模したような装飾が施された脚部ブースターのみというよく言えば機動性重視のIS、悪く言えば貧相なISだった。両手には螺旋が描かれているランスで体を支えるように持っていた。見覚えのある水色の髪に私はすぐにそのISの操縦者が誰かが分かった。
「会長さん!大丈夫ですか?」
私の声を聞き、会長は振り返って私たちの方を見る。その表情は何か奇妙なものを見た時のような表情をしていた。
「あれ?二人ともどうしてここに…?」
「クリスタが無理矢理シャッターを壊してここまできたんです。一夏は!?」
「一夏君は敵を追ってアリーナに行ったわ。私はちょっと無理してしばらく動けそうにないの。あなたたちは先にアリーナへ」
「「はい!」」
ロッカールームの天井には案の定、ぽっかりとISが通れるほどの穴が開いておりそこからアリーナの天井が見えていた。先を急ぐシャルロットの後を追い、暗く暑苦しいロッカールームから出る。少しだけ風が通り過ぎる心地良いアリーナに出ると既に敵は包囲されていた。
「貴様、逃がさん」
「これまでだな、無法者め」
目の前の城エリアの広場には少佐が敵ISをAICで停止させ、箒が
「見たこともないISだ…」
シャルロットは敵のISを見て思わず言葉を漏らす。
そのISは何とも独特なデザインをされているISだった。紅と茶色、そして黄色の塗装がなされ、蜘蛛をモチーフにしたようなISは8本の脚と背後にある大きな腹部分が大きな特徴と言えるだろう。
「さあ洗いざらい話してもらおうか、蜘蛛女」
身動きの取れない敵に対して少佐は詰め寄る。
「お前のISは第二世代型のアメリカ製か…。どこで手に入れた?」
「はっ、そんなこと言うわけ…」
蜘蛛女が口答えしようとしたとき、突如赤い粒子が彼女を襲う。
「がっ!」
「今、この状況が分かって言っているのか、お前は?」
箒は手に持つ空裂によって生み出された赤い粒子を蜘蛛女へ放ちながら言う。だが、蜘蛛女の態度は一向に変わらなかった。
「ああ、分かっているさ。お前らこそ、周りをよく見たほうがいいぜ?」
追い詰められた状況で随分と落ち着いている様子に私が疑問を感じた。
今この状況は相手にとっては四面楚歌だ。他に味方でも来ない限り助かる余地はない。
そんな時だった。後方で何かがぶつかる音が聞こえてきた。
ハイパーセンサーで確認すると、舞台セットの城の塔の中腹から大きな煙が上がっていた。その煙の中には残り僅かなシールドエネルギーの白式を身にまとう一夏が苦悶の表情を浮かべていた。
「「「一夏!」」」
私以外の専用機持ちが思わず叫ぶ。
すると、センサーから警告文が突如現れる。
『大型熱源感知』
場所は上空からで上を見上げるとアリーナの天井の隙間から一機のISが射撃をしながらこちらへ近づいてきていた。
まるで蝶のような美しい羽を広げる紫色のISはライフルと周囲に取り巻く自立機動兵器でこちらへ無差別に射撃を行ってきた。AICを使っている少佐以外はその場を離れ、回避行動を取る。身動きの取れない少佐を援護するべく私はビームマシンガンをコールすると、少佐をかばうように前に出て蝶のISへ射撃して牽制する。
狙いを定めた射撃だったが、そのISは踊るようにこちらの攻撃を躱して全くダメージを与えられなかった。
「少佐、無事ですか?」
「ああ、大丈夫だ。これくらいで集中力を切らすやわではないからな」
先程のダメージを受け、苦痛の表情を浮かべつつも少佐は頑なに右手を放さなかった。
ふと蝶のISへ攻撃しているのが私だけだと気づき、ハイパーセンサーで周りを見て私は驚愕した。
箒もシャルロットも、二機の自立機動兵器の相手をするだけで手一杯だったのだ。それらはうまく巧みに動いて彼女らの死角から的確に射撃を行い、彼女らの自由を奪う。反撃を行ってもそれらはそれぞれ回避行動をとり、再び死角へと回り込む。
そう、あの蝶のISは私たち四人の相手を同時にしていたのだ。
あまりにも差のある相手の強さに驚きつつも左後ろにいた自立機動兵器の攻撃を右に動くことで回避した時だった。
「クリスタ、ラウラ!上だ!」
突如ハイパーセンサー越しに一夏の声が聞こえてきた。
余りにも唐突すぎる言葉に動きを止め、上空を見上げる。
見上げると、そこには複数の黒い物体がこちらへと近づいていることに私は気づいた。最初は何の物体なのか分からなかったもののすぐにそれは何なのか理解できた。白い金属板に何本もの金属棒が張り巡らされ、大型のライトが取り付けられているその黒い物体は先程まで
重さに耐えきれずに自由落下をするそれらは、AICに集中力を割いている少佐の地点へと的確に落としていた。
「少佐ぁ!!!」
私はなりふり構わず、地面にいる少佐へと近づくと力一杯のタックルをして突き飛ばす。
集中力を割いており、いきなりの事に反応できていなかった少佐は困惑した表情をしてアリーナの壁部分へと転がっていく。
認識できていなかった少佐を助けることが出来た。
そのことに満足した私は安心感に包まれた。だが、物音に気付いて上を見ると大きな音を立てて、くるくると回転しながら落ちてきている金属部品が私の目に飛び込んできた。
評価やお気に入り登録者が増減して嬉しくなったり落ち込んだりもしたけど、私は元気です。
これからもこんな感じで投稿頻度が空いてしまうのでご了承ください_| ̄|○