神様なんかいない世界で   作:元大盗賊

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第24話 残された爪痕

 あのISは今思えばどこか、セシリアの蒼雫(ブルーティアーズ)を彷彿とさせるものだった。

 

 自身の身長ほどの長さがあるレーザーライフルにビット兵器。背中には蝶のような羽が施されている点と、フルフェイスマスクで表情が分からない点は違えど大体の装備は同じであった。だが、その操縦技術はセシリアをはるかに超えるものだった。

 同時に動かすビット兵器には、躱すことで俺は手一杯だった。セシリアの攻撃には慣れているつもりでいたが、死角からの射撃を躱した場所へ再び射撃するという時間差攻撃は俺の予想をはるかに超えており、段々とシールドエネルギーが削られていった。また、止まないレーザーの雨の中をやつはそれと同時に接近戦を仕掛けてきた。ビット兵器を動かしながらも同時に自身も攻撃に加わる事に俺は驚かされんだ。ビット兵器で牽制をしながらライフルやランスでの追撃に俺は全く歯が立たなかった。

 そして対処しきれない攻撃に俺は、遂にはにシールドエネルギーは風前の灯火にまで追いやられたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…くっ…」

 

 視界がぐらついて、焦点が定まらない。

 ここはどこだ?

 

 手にまとわりつく感覚からすぐに白式を展開していることに気づいた。まだピントが合っていない視界には見慣れたアリーナの全体が見えていた。どうやら、アリーナの高い位置に俺はいるらしい。

 手を動かすと、硬い感触が感じ取られ何かが下へ落ちていく音が聞こえてきた。首を左右に動かしてみると、俺は石でできた建物にぶつかっていたようだ。そしてすぐに俺が今どのような状況になっていたかを理解した。

 

 羽野郎にライフルで突き飛ばされた俺は、その衝撃を受け取り切れないままアリーナに作られた舞台セットに衝突したのだ。

 

「あいつはどこに…」

 

 意識がはっきりしないまま俺はすぐに羽野郎をハイパーセンサで探す。すると、あっさりとそいつの居場所は分かった。

 羽野郎はアリーナの中に侵入して箒にシャル、ラウラ、そしてクリスタを同時に相手取っていた。

 

「あの野郎…」

 

 ビット攻撃に箒たちも回避をするだけで一苦労しており、羽野郎への攻撃がままならない状況だった。立ち止まりAICを発動させているラウラをかばっているクリスタは彼女の前に出てビット攻撃に耐えながらも羽野郎に攻撃を仕掛けるがあたる気配がなかった。どうやら羽野郎はビット兵器で箒たちに攻撃することでラウラから遠ざけるように邪魔をしてAICを解除しようとしていた。仲間のISを助けるつもりらしい。

 

 あと一回ぐらいなら零落白夜は使えるか…。

 

 なんとか視界が定まり、シールドエネルギーの残量を確認しながら塔に埋まっていた体を起こす。雪片Ⅱ型を強く握りしめ羽野郎に向かおうとした時だった。

 

「アリーナ天井にIS反応?」

 

『未確認のISを検知』という警告文が目の前に表示され視線を上に移す。

 アリーナの隙間からは風に乗ってゆっくりと流れゆく雲が見えているだけでISらしきものは何も見えていなかった。

 羽野郎はアリーナ内にいるわけであるので、天井になどいない。では何の反応なのだろうか?

 

 

 

 

 

 俺の疑問に思っていたその答えはすぐにわかった。

 確かにそいつは天井にいたんだ。なぜならそいつは、落下している()()()()()()()()()の上に乗っているのだから。

 一瞬の出来事だった。上から金属が軋む音が聞こえ、その部分を注視すると天井の一部に何か線が書き込まれたような黒い線が現れた。だがそれは切り取られた痕だった。金属部品同士が擦れ合う嫌な音を響かせてアリーナの天井が落ちてくる。そして、その天井だったものは羽野郎の相手をしていたクリスタたちの頭上に落ちてきていた。

 

「クリスタ、ラウラ!上だ!」

 

 俺は思わず彼女らに叫ぶ。

 

 天井部分に乗っていたそいつは天井だったものをさらに三つに斬り裂き、それらを強く蹴りつけて落ちるスピードをさらに加速させる。

 俺の声に気づいたクリスタは一瞬だけ動きを止めて、頭上を見上げて事の重大さに気づくとすぐさま地上にいるラウラへ駆け寄る。すると、彼女はラウラに対して思いっきりタックルをかました。クリスタによって吹っ飛ばされたラウラは地面を数回跳ねてアリーナの壁際まで飛ばされる。これで、ラウラは天井のガレキから逃れることは出来た。だが、助かったのは彼女だけだった。

 ラウラを突き飛ばしたクリスタがその場から離れようとした時には、既に頭上に落ちてきている天井のガレキの下敷きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 天井部分が落ちた辺りには落下してきた破片によって粉塵が舞い、一瞬だけ周りが見えなくなる。近づこうにも行くことができなかった。それらが晴れてなくなったときに初めて天井を落としてきたやつの姿を見ることが出来た。

 

 そいつはまるでクリスタのIS「サンドロック」のような顔つきだった。人の顔を表現したような目に口、そして額にあるv字アンテナ。ただ、違うとしたらそのISの大きさと色だ。一回りは大きい真紅に包まれたそのボディや背中のゴツゴツしい羽、胸の位置で光る緑色の装飾は誰しもが目に止まるほど派手で、そして不思議と綺麗に見えた。右腕には大きく緑色に光るサーベルを持ち、左腕には地面につくほど長い黒い鞭が取り付けられており全く見たこともない特徴のISだった。

 

 蜘蛛のISに蝶のIS。そして、赤いIS。

 奴らは互いに距離を置きつつも何かを話し合うように顔を合わせる。

 

 その余裕を見せている様子に俺は無性に腹が立ち、居ても立っても居られない気持ちに苛まれた。俺の白式を奪おうとしたどころか、皆を傷つけやがって…。

 

 

 

「てめぇ、よくもぉぉ!!」

 

 

 

 その場で立ち上がり、背中にある塔を蹴りつけ、残されたエネルギーを一気に解放して奴らへと瞬時加速(イグニッション・ブースト)をかける。右手に握る雪片II型をさらに強く握りしめる。

 

 だが、俺の行く手をビット兵器が阻んだ。

 道を塞ぐように放たれたレーザーを俺は雪片II型で斬り裂いてその攻撃を弾く。

 

 後ろから来るレーザーをもろともせず俺は真っ直ぐスピードに乗り、赤いISへと斬りかかった。

 

「はぁぁぁ!」

 

 両手で握りしめた雪片II型が赤いISの背中を斬り裂く…はずだった。

 手には確実に斬ったという確かな手ごたえはなく、雪片II型は空を切る。奴はそこにはいなかった。奴は右足を軸に体をひねり回避していたのだ。

 

 奴が躱した右側に目線だけを送る。奴はただそのエメラルドに光る目で俺の事をじっと見つめていた。

 次の瞬間、背中に強烈な衝撃が走る。

 

「がぁ…!」

 

 奴による左足の蹴りを受けた俺は抵抗できずにそのまま地面に擦り付けられながら転がる。砂埃が周りに舞い、視界を狭くする。

 

「迎撃態勢が整いすぎている。帰投するぞ」

 

 どこか懐かしく思えるような、ただどこか引っかかるような聞き慣れない声をハイパーセンサが音をキャッチする。

 全身に広がる痛みに耐えながら体を起こすと、あの羽野郎はさらに上空に浮かび上がり、地上にいた俺たちへ無差別に攻撃を仕掛けていた。ライフルとビットによる弾幕で地上にいる俺たちは攻撃を防ぐことで手一杯であった。地上は攻撃によって土埃が舞い、辺りの視界を支配する。

 しばらくして、敵の攻撃が止み先程まで聞こえていたレーザー発射音も聞こえず静寂に包まれた。砂煙が晴れたアリーナには既に奴らの姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その部屋は広く暗かった。

 部屋全体を照らす光は天井に申し訳程度に取り付けられており、主に一つのディスプレイから漏れ出る淡い光が部屋の輪郭を映し出す。部屋の丁度半分くらいの位置に人間ドックのような、だが人が乗るには二回り程大きい機械が複数置かれ、その近くにも複数のディスプレイが連ねる。その何とも不思議な空間には二人の教師がおり、二人ともディスプレイに注視していた。ディスプレイの右半分には先程まで行われていた戦闘の映像、左半分にはISのスペックデータが映し出されていた。

 

「このISはアメリカ強奪されたアラクネ、そしてもう一機はイギリスで強奪されたBT二号機サイレント・ゼフィルスのようです」

 

 真耶は椅子に腰かけ、コンソールを操作して映像を切り替えながら話す。彼女の後ろでいつものように腕を組んでいる千冬は映り変わるディスプレイの映像を見ながら口を開く。

 

「例の亡国機業という輩か」

 

「はい、そのようです。次のターゲットが私たち学園であったというわけですね」

 

「それにしても、情けない話だな。世界中から出資と最新技術をもらい成り立っているはずの教育機関があろうことか、どこの馬の骨とも分からない連中にこうもあっさりと学園へ招き入れてしまうとは」

 

 千冬は映像に映るISを見ながら頭を抱えて一つため息をつく。

 

「相手からしたらIS学園は宝の山ですからね。まだ分からないところがたくさんある白式もそうですし、()()()()無人機コアもそうですし…」

 

「ああ、更識には織斑の特訓と警護をしてもらったが…まさか地下にまで侵入するとは思わなかった」

 

「今後はセキュリティ面を強化していかないといけませんね。システムを掌握されては、こちらは手出し出来ないので…」

 

「いや、それ以外にもやらないといけないことはある」

 

「え?」

 

 千冬の発言を聞いた真耶は思わず振り返る。

 

「それは一体…」

 

「そもそも、IS学園に地下施設があるという事実を知っている人物はIS学園関係者以外知らないはずだ。国や大企業にさえその事を知らせていない。精々知っている事としたら我々が無人機のコアをどこかに保管していたということぐらいだ」

 

「…つまり織斑先生は私たちの中に内通者がいるということですか?」

 

「ああ、その可能性は否定出来ない。だが、あの侵入者がシステムを奪った時に発見したという可能性もある。どちらにせよ、疑いの目を向けていく必要がある」

 

 少しだけ沈黙が訪れた後、再び真耶はコンソールの操作を続ける。

 

「それにしても、この赤いISは一体何者なのでしょうか?データベースに検索をかけても出てこない事から、ISに正式に登録されていない物だということは事実ですが。これでは報告書に何と書けば…」

 

 ディスプレイには少々荒い映像だが、天井と一緒に落ちている赤いISの映像が映っていた。

 

「ISコアを作り出せるのは、あの()()だけだ。新たに製造されたISではない。ただ言えることは、あのISの操縦者が()だということだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽が地平の彼方に消え去り、月が星の光とともに現れた夜。

 地上は人工の光で埋め尽くし、まだ賑わいのある街々の様子がうかがえる。そんな明るい街に高層マンションが立ち並ぶ一画があった。20階以上はあるそのマンション群の一つ、とりわけ他のマンションよりも高いマンションの最上階の部屋で黒いタンクトップに黒い短パンを着た女性は怒りを露わにしていた。

 

 

 

 

「てめえ、一体どういうことだよ!」

 

 オータムは不機嫌だった。

 その原因は今彼女が壁に向かって突き飛ばした少女にその理由があった。全身を黒い服装で身を包み上半身を黒いマントで覆う黒髪の少女、Mはその暴力に対抗せずにそのまま綺麗な夜景が一望できるガラスでできた壁に打ち付けられた。

 

 オータムは怒り狂っていた。

 その原因としてIS学園での出来事にあった。

 IS学園に一企業の渉外担当として潜入したオータムに与えられた任務は白式の強奪だった。

 

 当初、あの初代ブリュンヒルデの愛用機暮桜とほぼ同じ武装をしているという事で白式は話題になった。それにその操縦者がブリュンヒルデの弟で初の男性操縦者ときたものだ。注目をせざるを得ない。だが、話題になったのは最初だけだった。ISの武装の中では最高峰の威力を持つ零落白夜の能力を白式も所持していると判明したが、組織ではあまり第三世代としての評価はいま一つだった。

 

 零落白夜、もとい雪片はあのブリュンヒルデが扱うからこそ最強であったわけで、彼女と肩を並べるほどの技術を持つIS操縦者はまずいない。それもそのはず、燃費という言葉を知らないのではないか、とISを詳しく知らない一般人でも疑うくらいシールドエネルギーの使用効率が悪いのだ。

 シールドエネルギー、つまりはISの中で勝敗を左右する重要なエネルギーを犠牲にしなければ発動できない零落白夜は他の兵器と比べたら単なる劣悪品でしかなかった。とてもではないが、雪片を使うくらいならパイルバンカーのような他の威力の高い武装を使ったほうがマシなのである。

 

 もちろん、零落白夜は他の武装と比べ物にならないほどの威力を持つがそれはあくまでダメージを与えられた時だけ。相手は案山子ではないので回避や攻撃をしてくる。もちろん零落白夜の発動中だとみるみるうちにシールドエネルギーはなくなる。自身のエネルギー減少以上に相手のシールドエネルギーを削らなければならない雪片は実用的ではなかった。そんな諸刃の剣を適切に扱えるブリュンヒルデがいたからこそ、この玄人甚だしい武装が注目を集めたのである。

 

 男性操縦者には興味を示していたものの、このように白式は組織としては関心が向いていなかった。だがある転機が訪れたのである。それは白式の『二次移行(セカンド・シフト)』だ。未だその現象は前例が少なく、まだ謎な部分は多い。最近では銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が。そして初の男性操縦者のISである白式も二次移行を行った。二次移行が行われればただ見た目が変化する以外にも、これまで培われてきた蓄積データを元に新たな武装や性能を進化させることが確認されている。なおさら襲う理由があるのは明白だった。

 銀の福音についてはMによる潜入作戦によって強奪を試みるも失敗に終わり、次のターゲットとして白式を次の目標にしたのである。

 

()()が使えねぇって、お前分かっていただろ!」

 

 オータムによって突き飛ばされたMは彼女の問いには答えずにただ不気味にほほ笑む。いつもの態度を取るMにオータムはさらに目を吊り上げる。オータムはMが組織に参加した当初から嫌いだった。特にあの態度。あの他人を見下すような目にはいつも腹を立てていた。

 だからこそ、いつもと同じような目で自分を見るMにオータムの怒りのボルテージはさらに高まる。

 

 白式強奪の任務ではある試作品の投入がされた。

剥離剤(リムーバー)』、対象としたISのコアを強制的に取り出すというとんでも機械だ。まだ試作品で実験の行われていないこの機械を、あのMが本作戦で使用させようと提案を持ちかけたことには少々癪が触るのだが、その剥離剤の性能はダンチだった。

今までのIS強奪の際は誰にも装備されていない状態のISであることが条件であった。そのため、これまで準備の為に多くの時間と労力が必要であった。だが、この剥離剤は誰かがISを装備していても使える代物なのだ。これまではISそのものを盗み出す必要があったがこれはISコア自体を盗み出す。例え装備をしていてもコアがなくなってしまえばISは消滅する。まるで夢のような機械だった。

 使()()()()()

 

「なんとか言え、このガキが!よくもあんな剥離剤(ガラクタ)を使わせやがって!何で取り出したコアがあいつの命令にすぐ従うんだよ!」

 

 彼女は白式に対して剥離剤を使用し、見事ISコアを取り除いた。だが、それは持ち主(織斑一夏)の呼び出しよってすぐに彼の手に戻り、緊急展開されてしまったのだ。

 彼女にとってみれば今回の作戦は必ず成功すると約束されたようなものだった。何せ任務の対象はあの初の男性操縦者ときたものだ。相手は素人当然の高校生、今まで行ってきた任務に比べればその差は歴然だった。

 だが、結果としては闖入者の邪魔もあり、強奪は失敗してしまった。その事実がより彼女を感情的にさせる。

 

 

 

「それはオータムの不手際だろう?」

 

「ああ?」

 

 やっと口を開いたMに、思わずオータムは聞き返す。

 

「確かに剥離剤は強制的に装備されたISを取り出すことが出来る。だが、あくまで操縦者から奪っただけ。所詮、待機状態のISをオータムが持っているのと同じ。遠くにあっても持ち主の声にISが反応することは知っているだろう?あの男を気絶でもさせておけばよかったものを。少しは頭を…」

 

「てめえ!」

 

 我慢ならなくなったオータムは太ももにある短剣を手に取り、Mに向ける。

 

「おやめ下さい、オータム様」

 

 オータムがこの気に入らない女の顔をぐちゃぐちゃに切り刻もうとした時、聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。後ろを振り返り、声の主を見る。

 白いワイシャツ、黒いジャケットとスラックスに身を包む男は、いつものように備え付けのカウンターテーブルでティーカップを拭いていた。

 

「お前はすっこんでろ!」

 

 オータムは癖毛の茶髪に虚ろな瞳の男に向かって叫ぶ。だが、男はこの場を収めようと言葉を慎重に選んで話す。

 

「オータム様が感情的になるのも分かりますが、彼女を傷つけた所で結果は何も変わりません。それにこのような行為は…」

 

「そのくらいわかっているんだよ、しゃしゃり出るんじゃねぇ!それよりも、お前も元々開発側の人間だったんならアレのきちんと説明を言え!」

 

 オータムは右手に持つ刃物を男へ向け、彼へ怒りの矛先を変える。

 彼は数か月前に彼女たちの部隊の補充要員として加えられた一人だ。Mのように自分を見下すような態度をするわけでもなく、自分たちを上司として敬い、今まで自分たちがしていた雑用や任務を淡々とこなしていく、まるで機械のような部下だ。特にあまり感情を表に出さない彼をオータムは苦手としていた。根を上げずにやるべき仕事をこなしていき、多少面白がって痛めつけようとも表情を変えず、対した反応もしない彼をどちらかというと不気味な奴だと認識していた。

 

「お前みたいな命令通りに動く人形なんかに…」

 

「やめなさいオータム、うるさいわよ」

 

 彼を罵倒しようとした時、一人の女性が部屋へと入ってきた。

 

「スコール…」

 

「落ち着きなさい、綺麗な顔が台無しよ」

 

 白いバスローブを着ているスコールと呼ばれた女性は今にも暴れようとしていたオータムを落ち着かせる。スコールの姿を見た途端、オータムは先程とは打って変わり頬を赤らめさせながら太ももに短剣をしまい込んだ。

 

「フロスト、いつものお願いね」

 

「はっ、スコール様」

 

 フロストと呼ばれた男に何かを頼み込み、スコールは目の前にあったソファーに座る。少しして、ソファー前にあるテーブルには遠くが透き通って見えるほどの透明感のある白ワインの注がれたワイングラスが置かれた。スコールはそのグラスを手に持ち、一口味わうと立ち去ろうとするフロストを艶気のある声で呼び止める。

 

「フロスト、あなたの取ってきたコアはどうしたのかしら?」

 

「はい、現在二つの無人機コアは組織の施設へ渡しており解析中です。結果が分かり次第、スコール様へデータをお渡しいたします」

 

「そう、わかったわ。それにしてもあなたのエピオンとゼロに学園の地下施設を任せてよかったわ。さすが皆から『勝利の女神』と呼ばれるだけの事はあるわね」

 

「そう言っていただけて光栄です」

 

 スコールの言葉にフロストは綺麗なお辞儀を返す。その様子を見ていたスコールはその背後で部屋の扉へと歩いていくMの姿を見つけた。

 

「M、サイレント・ゼフィルスをフロストに渡しといてちょうだい。あれはまだ調整が必要よ」

 

「…わかった」

 

 Mはスコールを見向きもせずに短い返事をすると、そのまま部屋を後にした。

 

「ちっ、あのガキ。ふざけやがって…」

 

「オータム。本人のいない所でそのような発言は止しなさい。あなたの悪い癖よ」

 

「んぐ……。ごめん、スコール…」

 

 Mが部屋を出ていった扉に向かって愚痴を言ったオータムをスコールは咎める。彼女にピシャリと言われたオータムは顔を背けて長い赤毛が混じった金髪をいじる。そんなしょんぼりとした表情をするオータムを微笑ましく見ていたスコールは再びカウンターテーブルに戻り食器を拭く作業を行っていたフロストに視線を移す。

 

「フロスト、Mの事は頼むわね。あの子織斑一夏と接触したのでしょ?何か嫌な予感がするわ。勝手な行動をされては困るからお願いね」

 

「はい、お任せくださいスコール様」

 

 彼は虚ろな目でスコールを見ながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

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