楯無さんに言われた通りの場所へ行くと、そこには涙目を浮かべていた簪がいた。
簪曰く、IS学園のシステムが何者かによって掌握されているために、専用機持ちたちにISネットワーク・システムによる電脳ダイブを行ったものの、何らかの外的要因によって電脳ダイブをしたみんなと連絡が取れなくなってしまったという。
時々言葉を詰まらせながらの現状説明を聞いた俺は、とりあえずまずい状況なのを理解した。弱気になっていた簪を励まし、どう解決すれば良いかと尋ねたら、あっさりと解決方法を彼女は提示した。
それは、俺にも電脳ダイブとやらをさせることだった。コンピュータでいうところのウィルスが汚染されている状況にあるようで、俺がその外的要因とやらを排除すれば良いらしい。いまいちピンとこなく、ちんぷんかんぷんな俺としては、彼女の言葉に従うのが先決だった。ましてや箒たちが危険な目に遭っているならば尚更だ。アクセスルームとやらに案内され、ベッドみたいなよくわからない機械に寝そべさせられた俺は、意識をシステムに委ねる。
すると、俺は……
一軒の住宅の前に立っていた。
日は傾き、オレンジ色の夕日が辺りを照らしていた。先程まで3時ごろであったはずなので、明らかに今までいた世界とは別世界に来てしまったのだと改めて認識した。てっきりこう、電子的な世界に皆が囚われているものとばかり思っていた俺としては拍子抜けを食らった。
自身の姿を見てみると、先程までISスーツを着ていたはずの服装がIS学園の制服へと変化していた。
なんで制服なんだ?まあ服装はいい…。それにしても、と俺は目の前にある建物をまじまじと観察する。ここに直接来たということは、きっとここに入れと言う意味なのだろう。それにこの建物にはどこか記憶に引っかかるのだ。
そう、これは昔行ったことのある鈴の店に似ているのだ。家のつくりとか、近くにあるのぼりの広告とかが妙に懐かしさを俺に与えてくる。なんだかこの、ポワポワと実感のない感覚は夢を見ている感覚に似ていた。しかし、一つだけ疑問に思うことがあった。
「店の名前ってこんなだっけ…?」
看板にでかでかと『鈴音』と書かれている中華料理屋に疑問が浮かんだのだが、とりあえず、この店に入ることにした。
中に入ると思っていた通り、無人の店であった。そもそも、辺りに人の気配が全く感じられない。そして驚いたことに、店の入り口や店内のつくりが昔に入ってことのある鈴の店にそっくりだった。
「ふーん、良く出来ているもんだな」
電脳空間がまさか鈴の実家だと思っても見なかったために、誰もいない厨房やカウンター席を観察しながら、慣れた足取りで鈴の実家の母屋に足を踏み入れた。一階部分をちらりと覗くものの、やはりそこには誰もいなかった。リビングや台所を見てみるものの、人のいた形跡は残されていなかった。一つ一つ記憶を頼りに部屋を見渡していると、一ヶ所だけ違和感がある場所があった。
「あれ…?」
風呂場をのぞくと、なぜかそこは使われた形跡があったのだ。足元は水にぬれており、それは二階へと足跡を残しているかのように進んでいっていた。
鈴の実家が再現されているということは、これはつまりここには鈴がいる可能性が高いということだろう。それにしてもなんであいつは学園のシステムを取り戻さないといけないのにシャワーなんか浴びているんだ?
そんな疑問を浮かべながら、濡れた足跡をよけつつ二階に進む。木製の階段特有の軋んだ音を立てながら、階段を上っていると上から何かの物音が聞こえてくるのが俺の耳に入ってきた。しゃべり声だ。俺は忍び足になりながら、音の発する部屋の障子に聞き耳を立てた。
「可愛いぞ、鈴」
「んん……!やっ……!」
俺は思わず聞き耳を立てるのをやめる。
は…?え…?なんで?
確かにさっき、鈴の声と俺の声が聞こえてきた。どういうことだ?再び聞き耳を立てた。
「ま、待って!」
「待てないさ」
何をやっているんだ!?全く想像がつかない。ただ、鈴の声がいつも聞いている以上に可愛げのある声だということははっきりしている。
「ブラ…外すぞ」
はぁ?何言っているんだ俺は?いや、正確には俺の声に似た誰かが、だ。
「う、うん」
って鈴はなにそれを了承しているんだよ!意味わかんねぇよ!
「こっちも…」
「待って…!あっ…!」
「待てないよ鈴」
明らかに場の雰囲気がおかしかった。特に、鈴の様子が。誰が聞いてもわかる猫なで声なんてまず変だ。きっと俺に似た何者かに何かをされているに違いない。
我慢ならなくなった俺は立ち上がると、障子に手をかけ、左へと開け放った。目の前には夕陽に照らされたベッドに押し倒されている制服姿の鈴と腰にタオルを巻いただけの押し倒している
「てめぇ、鈴に何をしてやがる!」
俺の顔を見て驚く鈴を横目に偽物の俺は、ニヤリと俺のほうを見て微笑み、呟く。
「ワールドパージ、異常発生。異物混入。排除開始」
すると、偽物の俺の目が黄金に輝き、白目部分が黒く変色した。それと同時に鈴は頭を抱えて急に叫びだした。
「ああああ!痛い!…痛い!」
やはりこいつが原因だったか。
俺は偽物に近づくと、やつはベッドから立ち上がりこちらへと殴りつけてきた。見慣れた攻撃をかわし、お返しに、とやつの顔面に一発拳をお見舞いした。
殴られたそいつは、反動で宙を舞うと光とともに姿を消した。
残された部屋には俺と、ベッドに半分脱げかかった制服を着る鈴だけがいた。うずくまる鈴に俺は手を差し伸べた。
「大丈夫だ鈴。俺はここにいるから。お前を守るから」
彼女は満足そうな表情を浮かべて、俺の手を握り返すと辺りは光に包み込まれた。
気が付けば俺は宇宙空間のような場所にいた。
目の前には5つの光る扉と、地面にうずくまる鈴がいた。鈴も気が付いたようで俺の顔を見たあとに、自身の姿を確認する。そして
「うわぁぁぁ!!!」
大声で叫びながら両手で自身の体を覆った。
「い、いい、一夏!!!」
叫び終えると鈴は鋭い目つきで俺をにらみ始めた。彼女の目つきにこの後の展開を予想した俺に残された選択肢は一つだけだった。
「いや待て鈴!俺じゃないぞ!俺は何もしていないからな!」
そう、俺はただ鈴を俺に似た変な奴から救っただけだ。鈴をこんなあられもない姿にしたのは俺じゃなくて、俺の姿に扮した偽物だ。決して俺は何もしていない。神に誓ってもだ。
「…なさいよ」
「えっ?」
ふいに彼女は何かをつぶやく。だが、彼女の声が小さくて何も聞こえなかった。
「だから、着せないよ服!」
「はぁ!?」
なぜその理論になる?
「あんたが脱がせたんでしょうが!」
「それは偽物で、俺じゃないつうの!」
鈴の必死の抵抗にこちらも抵抗を見せるものの、彼女はふと押し黙り、こちらをにらみつける。だが先程とは違った。彼女の目に少しだけ涙がたまり、うるうるとした目で俺を見つめていた。彼女を泣かせてしまったことには変わらない。しかたなく、彼女の願いを了承した俺は彼女に近づく。
「わかったよ。今着せるから」
膝立ちになり、その場に立ち上がった鈴の制服に手を付ける。
「…そこじゃない」
制服のボタンを止めていると、鈴は頭を振り、抵抗した。
「じゃあ、どこだよ」
「…ん」
鈴は涙目で訴えながら足元に指をさした。そこには膝あたりにひっかかっているパンツがあった。
「…パンツ触るからな」
先に宣言をして、俺は鈴のパンツに手をかけた。たしかに肌着を着ていないのに、制服のボタンを止められても居心地が悪いだけだが…。しかしだ、もし俺がこのまま鈴のパンツを上げていけばどうなってしまうのかと、あられもない妄想が頭の中であれやこれやと広がる。
高鳴る鼓動を抑えつつ、鈴のパンツをそのまま上へと持ち上げた。するするとパンツが持ち上がり、鈴の白い肌を滑りながらパンツをはかせる。鈴の足はほっそりとしており、少しでも力を加えてしまえば折れてしまいそうなくらいだった。俺の手が鈴の足に触れるたびに、彼女は変な声を上げて体を震わせた。
俺の持つパンツが鈴のスカートの中へと入り込み、遂に未知の領域へと達してしまったそのときだった。
『えー、おほんおほん』
「「うわぁ!!」」
わざとらしい咳が俺の耳に聞こえてきた。二人して思わぬ声にびくつき、互いに距離を置くように離れて音の方を見る。そこには、簪の姿が映し出されているモニターがあった。
「あ、あんたいつの間に…!」
『一旦、鈴は帰還を。何らかの攻撃を受けた可能性も否定できない』
顔を赤らめ、慌てふためく鈴をよそに簪がこちらを見ながら話をする。
「…了解」
鈴は何か不満げな表情を浮かべながら短く返事をすると、こちらに体を向ける。
「一夏、ありがとう…ね」
そして彼女は笑顔を見せると、光とともに今いる世界から消えていった。
『一夏、ニヤニヤしない』
「してねぇよ!」
モニターに映る簪は眉をひそめながら言う。何を疑っているんだよ…。というかあれは事故だ!俺が鈴を脱がせたわけじゃないっていうのに…。
そもそも鈴はIS学園の仲間で、俺のセカンド幼馴染で…。
___本当に、それだけ?
え…?
幼い少女のような透き通る声が響いた。
「簪、何か言ったか?」
『いや、何も…。とにかく一夏は他の皆の救助へ。光っている扉に入って』
とりあえず、これで鈴を何者かから救ったというとになるのだろう。この調子でみんなを救っていけばいいのか。
「了解!」
俺は再びみんなを救うべく、目の前にある光の扉に手を伸ばした。
「今度はどこだ?」
光の扉を潜り抜けた先には大きな鏡があった。
鏡の縁には黄金に染められた装飾品が飾られ、部屋を照らすライトによってキラキラ光っていた。鏡の下は、白い石のようなものでできた洗面台があり、蛇口をはじめとして、これまた多くの金属品が金色に光っていた。
「どんだけ金色なんだよ…」
あまりの眩しさに俺は目を細める。どうやら俺は金持ちの家に飛ばされたみたいだ。周囲を見渡せば、一言でいえばモダンな雰囲気を醸し出している部屋だった。壁にはこれまたへんてこな装飾されたおしゃれっぽいランプが埋め込まれ、床は大理石のようなもので作られていた。そして、どこからか空調のような音が聞こえてくる。
間違いない、俺は脱衣所らしき場所にいる。俺はそう確信した。なぜならば、鏡のあるところの近くに、数多くの高級品が列をなしておかれていたのだ。ドライヤーによくわからないボトルの数々、そしてふかふかなタオルが置かれていた。
今の状況を一言で表せば、ベルサイユ宮殿の脱衣所に来ている、そう表現すればわかりやすいだろう。とにかくそんな場所に来ていた。
新たに高級そうな脱衣所に来たのはいいが、どうすればよいのだろうか。とりあえず、近くにあったこれまた高級そうな椅子に腰掛ける。座り心地はとてもいい。
さっきは一心不乱に行動していたが、鈴を襲おうとしていた偽物の俺をぶっ飛ばすことで鈴を救出することができた。簪が言うには、システムから帰れなくなったみんなを助けてほしいということだ。難しいとこはよくわからんが。
さっきの”鈴の世界”を例にとってみれば、まずこの世界の
少し名残惜しいものの、高そうな椅子から離れた俺は部脱衣所を物色し始めた。さっきは鈴の実家っぽいところが舞台だったから、きっと”この舞台”と”いる人物”には関係性があるはず。だから今度はこの部屋にふさわしい人物がこの世界のどこかにいるに違いない。となると、箒はこんな煌びやかな所は苦手っぽいし、ラウラはこういうのに疎そうだから除外だ。シャルも違うし、残っているとすればセシリアかクリスタか。
だが、俺はどちらがこの世界にいるのかが自信が持てなかった。クリスタは確か実家が結構すごいところで、執事を雇うくらいすげぇって話だ。そういや家見たことねぇな。後で見せてもらうか。
んで、セシリアはイメージそのまま、というか本物のお嬢様だ。ある意味こういうような脱衣所を持っていそうである。
一体どっちがいるのだろうかと悩みながら部屋を見渡していると、俺はあるものを見つけた。部屋の片隅にある収納スペースに籠が置いてあり、脱がれた服や下着が入っていた。しかも丁寧に折りたたんで。
ここにはセシリアがいる。絶対にだ。籠に入っている下着を見て俺の疑惑は確信へと変化した。なぜなら、その下着はセシリアにしか着けられないからだ。
「絶対あいつには無理だな…」
籠に入っていた下着を手に取り、その大きさを確認する。クリスタには絶対に似合わない代物である。これをつけるとなると、体と下着にかなりの隙間が出来てしまう。というか着けられないだろう。鈴といいとこ勝負だしな、あいつ。こんなのを着らけるはずがない。となると、セシリアはあそこにいるはずだ。
俺の視線には、曇りガラスで仕切られた大きな扉へと自然に動いていた。
「セシリア、無事か!」
俺の予想していた通り、あの扉の先は風呂場だった。
辺りには視界を遮るほどの湯気が立ち、足元でさえあまり見えない状況だった。部屋に入るや否や、俺はすぐにセシリアを呼ぶ。すると、ざばんと水の中から何かが出る音が聞こえ、湯気の隙間から俺の目に綺麗な金髪がちらりと見えた。
「だ、誰ですの!?」
セシリアの戸惑う声が聞こえてきた。
「俺だセシリア!」
俺は困惑するセシリアに自分の名前を叫ぼうとした時、何者かが俺に掴みかかってきた。
「異物混入。異物排除。異物…」
そいつは囚人服のようなボーダー柄の水着を着る
「だから、なんで俺がいるんだよ!」
機械のように抑揚のない声を出す俺に怒りを覚えた俺は、俺自身の感情をぶつけるかのようにそいつに頭突きをかました。
顔面に当てた一撃にそいつは目を閉じ、その場を後退りする。俺はそのまま勢いよく走り出しやつとの距離を縮めて、逆にそいつに掴みかかった。
「はあぁぁ!」
そしてそいつの右腕と襟を掴み、そのまま脱衣所の方へと投げ飛ばした。偽物の俺はなすすべもなく、そのまま投げ飛ばされると大きな音を立てて地面にたたきつけられた。ぶつかる際に何かが割れるような不愉快な音が聞こえた後、そいつはその場で動かなくなり光とともに姿を消していった。
「はぁ…はぁ…」
俺は息を整えながらそいつが消えていく様を見届けると、セシリアの方へと体を向ける。
「もう大丈夫だセシリア。これで…」
気づくと辺りに湯気はなく、部屋全体を見通すことができた。風呂場でさえも何か高そうな石で作られている高級そうな場所だった。そしてセシリアは小さな浴槽に浸かっていた。お湯には何かの花の花弁が浮かび、風呂場全体に良い香りを放つ。そしてその白いバスタブには髪を結いあげた、いつもは見ない髪型をしているセシリアが驚いたような表情を浮かべてこちらを見ていた。そこで初めて俺はあることに気づいた。
ここは風呂場。風呂に入るならば、その人物は服を着ていないのだ。
辺りを光が包み込む最中、俺は一糸まとわぬ姿をしているセシリアから目を背けることだけで頭の中は一杯いっぱいだった。
光が消えると、そこは再びあの宇宙みたいな変な空間にいた。
視線の先にあった扉の数は一つ減り、4つになっていた。残りは後4人か、と俺は出来るだけ視線を下げないようにして、扉と囚われている皆との間には関係性があると再認識する。俺が頑なに下を見ないようにしているのは、俺の勘がそう告げているのだ。今下を見てはいけない、と。だが俺の努力もむなしく、視線の下にいた
「一夏さん!」
セシリアは俺を睨みつけていた。なんだか数十分前に同じような体験をしたものとは異なるものだった。こっちはとても刺々しいイメージだ。攻撃的で威圧感のある…。
それはそうと、彼女は見慣れたIS学園の制服を着ていた。良かった、服を着ていて。もし何も身につけていなかったら、既に俺の命はないだろう。あ、でもここって電脳世界だからそんなこと
「…私の裸を見ましたわね!」
セシリアは怒っていた。彼女の言葉で忘れようと無意識にしていた記憶が、濁流のように激しい勢いで頭の中を駆け巡る。
「いや、見ていないぞ」
「嘘おっしゃい!」
先程見た光景を思い浮かべながらとっさに否定したが、彼女は許してくれなかった。
彼女が叫ぶと、どこからともなく青い機械が現れ、俺の周りを取り囲んだ。
「やりなさい、ティアーズ!」
「待て待て!」
彼女が呼び出したブルー・ティアーズを横目に、言葉を続けた。首筋に冷や汗が流れるような感覚が走る。
「あいつは敵でお前を…」
「私を辱めておいて今更何を!」
セシリアは俺の言葉を聞いてくれなかった。顔を赤らめ、両手の拳をぎゅっと握りしめて怒鳴った。
どうしても俺はあの光景を思い浮かべしまう。忘れられるはずもない。あの風景、あの香り、あの表情、そして彼女の姿。一瞬ではあった。きっと10秒もなかった光景だ。でも、それは写真で撮られたようにはっきりくっきりと俺の頭の中にこびりつき、離れようとしなかった。
「セシリア…」
「聞く耳持ちませんわ!」
とっさに彼女の名前を呼ぶも、何て言葉をかけてあげればいいのか思いつかなかった。謝ればいいのか?涙目を浮かべている彼女に?でも…。
あの時の様子がループ再生のように何度も同じ光景を映し出される。何度も何度も。その時だった。ずっと映し続けてきた映像を遮るようにある言葉が浮かんできた。それは、一体誰の言葉でいつ言われたものだったかは思い出せなかった。でも、不思議とパズルのピースがハマるくらいにぴったりとするものだった。
「…きれいだった」
「えっ…」
俺は素直な感想を言った。
「その…綺麗だったぞ。セシリアの体」
一体何が綺麗だったか自分自身でもわからない。でも綺麗だった事は事実だ。彼女の描く体の曲線が、バランスが、彼女のいたあの場所が、何もかもが。正直言って自分自身こんなことを言ってしまって恥ずかしいし、きっと今自分の顔は真っ赤に染め上がっているだろう。
セシリアは俯いてただただ押し黙った。先程とは違い、すっかり静かになっていた。すると、俺を威嚇するように空中に留まっていたブルー・ティアーズ達が消え去っていく。そして彼女は両手を頬に当てて、体をくねらせる。
「そんなっ世界一綺麗だなんて、もう一夏さんったら!」
彼女は嬉しそうに、そして幸せそうなにっこりとした笑顔になる。
まもなくして、彼女の体は光に包み込まれて電脳世界から現実世界へと戻っていった。
「はぁ…」
彼女が消えると、どっと体に疲れが押し寄せてくる。ついに耐えきれなくなり、俺はその場に尻餅をついた。
いつ以来だろうか、あれほど彼女の威圧を受けたのは。初めて会った時、いやそれ以上のものだったかもしれない、そんな印象だった。
「そういやモデルもやっているって言っていたしなあ、セシリア」
前に鈴が代表候補生になるとモデルの仕事もすると言っていた事を思い出す。現にセシリアがモデルをしていたファッション誌を見たこともある。前々からスタイルがいいのは知っていた。
「でもなんであんなことを言ったんだろう…」
再びあの時自身が発した言葉を思い出し、頭をブンブンと振る。なんて我ながら恥ずかしいことを言ったんだ!いつもあんなこと言わないのに…。
思いもよらぬ発言をした事にしばらく悶々としていたものの、結局その答えを導き出す事には叶わなかった。
_____少しは見る目が変わった?