神様なんかいない世界で   作:元大盗賊

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遂に6000文字突破。


クリスマスは色々手探りで小説を書いていました!










第6話 クラス代表争奪戦

 

 

 夕食を済ませて、自分の部屋に着くと私は、部屋の鍵を使わずにそのまま部屋のドアノブに手をかけた。

 

「ただいま」

 

「あ、おかえりー、クリスタ。先にシャワー使ったから後は自由に使っていいよー」

 

 部屋には、つい先日IS学園へ転入し、私のルームメイトとなった中国の代表候補生、凰鈴音がいた。

 時刻を見るとほぼ太陽が沈んでいる時間帯になっていた。窓にはブラインドが下がっており部屋の灯りを外へ漏らさないようにしている。鈴はというと、シャワーを浴びた後なのかラフな格好をしている。ベッドの上でとうつ伏せになり、足を上下にパタパタさせながら何かの雑誌を読んでいた。

 

「それでは、ありがたくシャワーを使わせていただきますね」

 

 私は、荷物を自分の椅子の上に置くと、シャワーを浴びるための準備をする。

 

「鈴。聞きたいことがあるのですが」

 

「んー、どうしたの?」

 

 鈴は雑誌を見ながら、気の抜けた返事をしてきた。

 

「ずっとモヤモヤとしていたのですが、何故あなたが、私の代わりにクラス代表になると言い出したのかが良く分からないのです。転入してきて早々、クラスの代表なるなんて普通は考えないと思うのです。今回は、この模擬戦には織斑先生が一枚噛んでいるようですが…。一体何を企んでいるのですか?」

 

「ふーん、そのことね。ってそんなに深刻そうな顔しないでよ!…そんなに悩んでいるなら、今でも遅くないからクラス代表、私がなろっか?そしたらその心配事はなくなるからさ~」

 

 鈴は、雑誌を読む状態から体を起こし、私に八重歯を見せながらニヤニヤしながら話した。

 

「模擬戦の結果が出るまでクラス代表の座は譲りませんよ。今更になって、私の考えは変えません。第一、私の質問に答えになっていません」

 

「まあ、そうだよねー」

 

 ちょっとだけ期待していたのか、残念そうな表情をしていた。

 

「クリスタもテストパイロットだからわかるとは思うけれども、私以外にもさ、代表候補生は他にもいるのよね。今は私に専用機を預けるくらいの評価を上の人からもらってはいるけれども、いつ別の代表候補生に私の使っている専用機を託されるかはわからないのよね。ISには限りがあるし」

 

 現存するISの数は、467機存在する。といっても専用機や研究用のISはその中の145機だけだ。その145機が世界各国ごとに分配される。さらに、大半のISは研究に回されるため、専用機として使われるものは更に限られてくる。代表候補生だからといって全員に専用機が配られることはまずないだろう。なので、専用機を持てる代表候補生というのは、それなりの信頼と実績があるという証拠になる。

 

「だから、IS学園でそれなりの実績を作り、本国の人たちからそのまま高い評価をもらい続けたい、というところですかね」

 

「まあ、そういう所かな。でも私は単純に、目立ちたいとか、代表候補になってちやほやされたいとかそういう生半可な気持ちで代表候補生を目指したつもりはないし、このまま他の人に今の座を譲るつもりは全然ないけどね~」

 

 鈴は、右腕に付けている黒いブレスレット、甲龍に触れながらそう話した。

 

「なるほど、そのあなた自身が持っている代表候補生の誇りがあったからこそ、織斑先生を通してこの模擬戦を提案できたのですね」

 

「…そこまで回りくどく言わなくても…でも言いたいことはそういうことよ」

 

「確かに、あなたのその強い意志はわかりました。ですが」

 

「ん?」

 

「私は、一企業のテストパイロットです。企業の看板を背負ってIS学園(ここ)に来ています。クラス代表の座を譲るなんて、情けない行為は企業の侮辱に値します。クラス代表はクラスの長です。ならば、クラスで一番強い人がなるのが合理的でしょう?」

 

「へぇ、言ってくれるじゃない。そこまで言うのなら、ますます模擬戦楽しみだわ」

 

「ええ、相手がテストパイロットだからって舐めては困りますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がアリーナへ入ると同時に、鈴もアリーナへ入ってきた。

 

「第三世代型IS、甲龍…」

 

 鈴の操縦するISは燃費と安定性を重視に設計されたISだ。できるだけ長期戦は避けていきたいところ。鈴はというと私の頭から足先まで、舐めまわすようにまじまじと見ていた。

 

「へぇ、あんたのIS変わっているね、今時全身装甲(フルスキン)だなんて」

 

「まあ、ちょいとお古のISだから、珍しいかも」

 

 私は、準備運動をするように、腕を伸ばしながら答えた。お古、という言葉を聞いた時に、鈴の口元は緩んだ。

 

「ふーん、ってことは第二世代か。最新鋭の第三世代の私に勝てるかな?」

 

「オールドタイプだからって思っていたら痛い目に合うよ?」

 

 私は、サブマシンガンを右手にコールしながら返答をした。

 

「じゃあ遠慮なく全力で行かせてもらうわ」

 

 それに答えるように、鈴は主力武器である、双天牙月を右手にコールした。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

 教師による、淡々としたナレーションが入り、模擬戦の始まりが告げられた。

 

 

 

 

 鈴は、双天牙月を構えると、私へ突撃してきた。

 私は格闘戦を仕掛けさせないようにマシンガンで弾幕をはる。

 

 マシンガンから放たれる銃弾を左右に動き、躱しながらもなお、鈴は私の方へ近づいてきた。

 

 これ以上は無理だと判断。マシンガンを収納し、両手にヒートショーテルをコール。双天牙月を振り下ろし、放たれる斬撃を両方のヒートショーテルで受けとめる。

 

 さすが、第三世代と言ったところかやはり双天牙月の威力はサンドロックにとって耐えがたい一撃だった。

 

「随分と奥手ね、もっと積極的にならないの?」

 

「くっっ!」

 

 少し余裕の表情を見せる鈴に対し、こちらは相手の攻撃を対処することで頭が一杯だ。

 

 両手に更に力を込め、鍔迫り合いを振り切り、互いに後ろへ距離をとる。

 

 

 距離をとったところで、すぐさま手に持っていたヒートショーテルを鈴へ思いっきり投げつける。

 

「!?」

 

 まさか武器を投げつけてくるとは思わなかった鈴は、ヒートショーテルを避けようと投げつけた射軸の直線状から横にずれた。

 だが、勢いよく回転する刃は直線に進まず、鈴のいる方向へ曲がり進む。

 

 鈴はそのまま、双天牙月を前に構え防御の姿勢に。刃は目の前の物体を削るかのごとくその場で回転し続けた。

 

「っ何よこれ!?」

 

 勢いの衰えない刃に困惑する鈴を見逃さない。

 私は肩部ミサイルをコールし、発射した。その場で身動きの取れない鈴へと放たれたミサイルは、刃もろとも巻き込み、大きく音を立て、爆発した。

 

 爆発による煙が鈴の周辺に立ち込める中、マシンガンをコールした時だった。

 ハイパーセンサから警告の文字が表示される。衝撃砲だった。

 

 目に見えない砲弾を右横にスライドして回避運動をする。同時にマシンガンで迎撃をするが、続けざまに放たれる砲弾が右肩と脚に当たったのだろう。私はよろめき、そのまま地面に叩きつけられた。

 

 

 

「中々、面白いこと…するじゃない。でもね…!」

 

 ロックオンされているという警告が響き渡る。

 すぐさま体制を整え、発射したであろう衝撃砲を左へ地面を滑るように躱した。

 

「こっちは、第三世代なもんでね!」

 

 地面からは、土埃が立ち上る。時折、頭の横から、風を切る音が響いていた。

 地面から離れ、上空に飛び立ち、背中にオミットされていたヒートショーテルを投げつける。

 

「もうそれは知っている!」

 

 だが、衝撃砲をぶつけられたヒートショーテルは、勢いを失い地面へ落ちていった。

 

 

「ちっ!!」

 

 マシンガンをコール。鈴へ迎撃を行っていく。

 

「何度も同じ手を!」

 

 鈴は連結していた双天牙月を分け両手に持つと、マシンガンを躱しながら近づいてくる。

 

 後ろへ移動しながら、マシンガンで何発か命中させているものの、僅かなダメージだ。

 

 意を決してマシンガンをしまい、再びまだあるヒートショーテルをコール。

 こちらも格闘戦をするべく鈴へブーストをふかし、近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラスカ条約?」

 

「ああ、そうだ。IS運用協定。通称、アラスカ条約とも言われている。これを掻い摘んで言うと、ISの運用方法と当時IS技術を独占的に保有していた日本へ技術情報の開示を求めた協定だ。まあ、本来の目的は後者だろうな」

 

「それで、織斑先生。そのアラスカ条約とあのISとの関係性が見えてこないのですが、一体どういう関係なのですか?」

 

「それは私から説明をしましょう」

 

 箒が質問をすると、山田先生の隣に座っていた、見かけない先生が椅子を回転させ、こちらへ体の向きを変えた。

 

「皆さん、初めましてかな?二組の担任をしています、中井佳那と言います」

 

 茶髪で髪を後ろに結い上げているこの先生は中井先生というらしい。

 基本、授業は担当のクラスの担任、副担任だけで行うので、他のクラスの先生は廊下で見かける程度にしか知らない。

 

「IS運用協定が定められた当時まだ、ISが登場したばかりでISについてまだ開発途上にあったものでした。ですので、たびたびISの運用方法には随時更新がされています。さて、あのIS、「サンドロック」ですが簡潔に言うと、サンドロックは昔、といっても4、5年ほど前のことですが、IS操縦者に対し危害が及ぶシステムの研究・開発で使われていた実験用のISでした。その情報を手に入れた国際IS委員会は、研究・開発を行っているとされていた研究所へ調査を行い、事実が確認されたため、そのシステムに関わる研究・開発・使用を今後一切禁止するという項目がIS運用協定に新たに盛り込まれたのです」

 

「それで、そのシステムというものは…?」

 

「これは、2年生後期の時に習うことだとは思いますが、先に教えますと研究者たちはサンドロックを使ってVTシステムを開発していました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 幾度となくぶつかり合う刃。お互いに相手のシールドエネルギーを削ろうと鋭い斬撃を相手に放つ。

 

 一方が切りかかれば、もう一方はその斬撃を手に持つ刃で阻止する。時には足技も用いながら、相手のシールドエネルギーを減らしていった。

 

 クリスタのISは甲龍と同じ近接格闘型だろう。ただ、あまり格闘を仕掛けてこないことから見ると、苦手な事は確か。私の格闘で押し切れば勝負が見えてくるはず。

 

 鍔迫り合いに勝ち、ひるんだクリスタへ回し蹴りを放ってお互いに距離を置く。

 

 すると、またしても相手は手に持っていた曲剣を投げ飛ばしてきた。

 

「そんなの何回やっても!」

 

 龍砲で撃ち落とそうと、衝撃砲を放った時だった。

 

 

 衝撃砲を曲剣に当てると爆発を引き起こした。視界は煙が立ち込める。

 

 一旦、その場から離脱しようとした時、左側から警告音が鳴り響く。

 

「左からっ!?」

 

 左へ振り返ると、周囲の空気を切り刻むかのごとく熱を帯びた曲剣が迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「VTシステム…Valkyrie Trace System、その名の通りモンドグロッソの部門優勝者(ヴァルキリー)の戦闘データからヴァルキリーのIS操縦を忠実に再現するシステムだったようです。ただこのシステムには、ISの特徴である自己進化を否定しているおり、また操縦者への負担が強く、最悪生命が危ぶまれる大変危険なものでした」

 

 簡単に言えば、今の二組クラス代表が使っているISは昔に危険な研究で使われていたもの、ということだろうか。でも、既に調査というやつが終わっているのであれば、警戒する必要はないはず…。

 

「あの先生、でしたらなぜ俺たちを呼ぶまでに警戒をしているのですか?もう調査とやらが終わったのですから、そこまで神経質になるようなことでは…」

 

「それにはきちんとした理由があります。さて、これから話すことは機密事項ですので、くれぐれも口外しないように…。確かに、ISの調査とそのシステム研究、開発をしていた、メッゾフォルテ研究所への調査は終わり、その研究チームの解散とプロジェクトは凍結が行われ、サンドロックは研究所へ返還されました。このメッゾフォルテ研究所についてですが、以前にも不可解な事故が起きており、国際IS委員会としても見逃すわけにもいかなく、メッゾフォルテ研究所が行うISに関する研究について、監視・データの回収を行うよう、決められました」

 

「サンドロックは現在、ドイツの第3世代主力機とする「レーゲン型」の武器に関わる実験機という報告を受けています。今のところは、サンドロックに搭載されているものやソフトウェアには何も異常はありませんが、まだ何が起こるかはわかりませんので皆さんには警戒をしてほしいのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金属同士がぶつかり合う音がアリーナ内に響き渡る。

 

 マシンガンで撃ち落としたヒートショーテルを囮にすることに成功し、すぐさまもう一振りのヒートショーテルをコール。

 甲龍の斜め後ろまで移動し、横なぎに薙ぎ払う。だが、ISに当たったという手ごたえを感じることはなかった。何かの衝撃を全身で受け、後方へ飛ばされていた。

 

 

 ここにきて、シールドエネルギーの残高が少なくなってきている警告が目の前に表示される。

 正面を見据えると背中を向けている甲龍の龍砲がこちらへ向いているのが見えた。

 

 

 

 ”龍砲の射角には制限がなく、死角のないのが特徴である。”

 

 

 

 焦りすぎたか、覚えていることを生かし切れていない。

 

 

「自分で撃ち落とすか…。でも、龍砲には死角がなくってね!」

 

 

 足元の方、地面から金属音がぶつかり合う音が耳に伝わってきた。

 

 甲龍はこちらへ振り向き、あたりに残っていた煙を両手に持っていた双天牙月で振り払った。

 

 再び間合いを作ろうと、マシンガンをコール。

 

「また、あんたのペースには乗らないよ!」

 

 双天牙月を構えるとこちらへ距離を縮めてくる。

 

 こちらは負けじと、マシンガンから銃弾を放ち応戦した。向こうにはシールドエネルギーに余裕があるのだろうか。回避運動はするもののマシンガンによるダメージを気にせずそのまま距離が近づいてくる。

 

「これで!!」

 

「一か八か…!」

 肩部ミサイルをコールし、近づいてくる甲龍へゼロ距離発射した。前方から爆音と爆風が私の体を襲い、後ろへ飛ばされる。

 

 すぐさま体勢を立て直す。

 マシンガンを投げ、ヒートショーテルをコールした。

 このまま強襲すれば…。そう確信し、甲龍へブーストをふかして近づいた。

 

 

 

 だが、相手も同じ事を思っていた。目の前に警告の文字が表示され、耳には警告音が響き渡る。

 

 気が付くと正面から衝撃砲が迫ってきていた。左に装備している盾でなんとか飛ばされないように防ぐ。

 

 こちらへ来ているのはそれだけではなかった。視界に入ってきたのは双天牙月を構えた鈴だった。

 

 双天牙月から放たれる斬撃をヒートショーテルで防ぐが、スピードを重ねた攻撃には耐えられなかった。

 

 体勢が崩れ、そのすきを狙って飛び膝蹴りを食らう。

 

 そのまま、土で覆われた固いアリーナの地面に全身でぶつかった。

 

 辺りには土埃が舞い、乾燥した土の臭いが私の肺に入ってきた。

 全身でまともにぶつかったため体がすぐには言う事がきかない。

 

 

 

 

 呼吸がいつもより速いペースで行われている。

 

 

 心臓の鼓動がいつもよりはっきりと聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 目の前には、開けたアリーナから映る空を見ることが出来ていた。太陽に照らされ、影で多くの部分が黒く映る雲が右から左へゆっくり流れており、空の半分は少しだけ黄色く染まりかけていた。

 

「…綺麗ね」

 

「っな、何、急に言い出すのよ、びっくりするじゃない!」

 

 人に似た形をした黒い物体が視界に現れ、どもった声で話をした。

 

 

 

「ふふ、そのままの感想を言っただけですよ。今日はありがとう、鈴」

 

「ふん、オールドタイプだからってちょっとだけ油断はしたけど、中々テクニカルなことをするじゃない。でも、基本もきちんとやったほうがいいわよ」

 

「そうね、練習しないと…だめだね。格闘をしっかりしないと」

 

「後は私に任せなさい。きちんとこなして見せるわ」

 

 第3世代との戦闘データは得られた。後は私自身の鍛錬を積み重ねることが必要になりそうだ。もっと強くならないと。

 

 

 

 ISからロックオンの警告表示が現れていた。

 

 

 

 

 




見ていただきありがとうございます! 元大盗賊です。




初の戦闘描写ということで、うんうんと唸りながら書いてみました。



いやー大変ですね、読者として作品を読んでいる際は何とも思わず読んでいましたがいざ書いてみるとなるとうまく言葉をどう選ぶか迷ってしまいますね(;´・ω・)
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